とある炎剣使い達は世界最強 (湯タンポ)
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おまけ
没話



皆様お久しぶりです。八か月もの間投稿をさぼっていた湯たんぽです。

投稿期間がこんなに空いてしまった理由は後ほど活動報告にてご報告いたします。



さて、タイトルでもう分かっていると思いますが、今回はこの物語を作る過程で出来た没話です。

八か月も待たせて置いてそれかよ! と思っているかと思われますがすいません。もうそろそろ本編も更新いたしますので、しばらくお待ちください。



それでは長くもない上に滅茶苦茶中途半端ですが、本編の更新までの食いつなぎにでもしといてください。

あ、言い忘れてましたが、この没話いちよ本編に関係あるので暇な人は考察でもして感想欄に書いといてね♡。




ほな、いってらっしゃい


前回のあらすじ。

 

 

「…まさか主…貴方は…」

 

そして、何かを察したハジメは驚きで目を見開いていた。

 

驚くハジメに輪廻は淡々と告げる。

 

 

「…よく気付いたな……そう、俺は人では無い……神だ(・・)

 

 

やっぱ輪廻君はヤベー奴だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まあせっかく聞かれたんだから聞かせてやるよ…俺の過去をな。」

 

「…お願いします。」

 

ユエやシア達は勿論、ハジメや妖夢を筆頭とする人外組すらも緊張した様子で、そのピリピリとした空気の中で輪廻の秘められた過去が解き明かされる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……とは言ったものの、残念ながら彼の過去話はここでは明かせませんが、とある童話を置いて行きましょう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

むかしむかし一人の女の子の妖怪がいました。その女の子は力が弱く、妖術の1つも扱えませんでした。

でもそんな彼女には到底叶えられない夢を持っていました、それは人間と仲良くしたいという夢でした。当然、妖怪としても生を受けてからそう長くも無く、大した力も持たぬ少女には無理な話で、唯一の友達である鬼の少女にも笑われてしまいました。

…しかし彼女は諦めず、自分が持てる少ない武器である知恵と能力を頼りに夢へと足を一歩ずつ進めて行きました。

 

 

それから何百年もの月日が立ち、都が平安京へと移り変わる頃、少女は大人になっていました。しかし少女は大人になっても未だ夢を諦めていませんでした。ですが大人になり自らの夢が難しい事を理解した彼女は悩んでいました。どうすれば自分の夢を成せるかと…そんな時でした、彼女の夢に賛同する者が現れたのは……彼女に手を差しのべてくれたのは四人の男女でした。

 

そして彼女は彼等と力を合わせ、彼女の夢である人間と妖怪が仲良く出来る楽園を築き上げました。

 

そして彼女らはのちにこう呼ばれることとなります。『原初の五人』と。

 

 

 

めでたしめでたし。

 

 

 

パタン

 

 

 

何者かが黒い空間でひとつの本を閉じ何処かを向いた。

 

 

「と、終わる訳は無いが今回は勘弁して欲しい。何せこの物語は代わりに過ぎないのだから。」

 

 

何者かはそう言うと何かに気づいたかのように目を丸め、また何処かへ向けて喋りかけた。

 

 

 

「おや?そろそろあちらも話し終わるみたいですね。それではまた御機嫌よう……」

 

 

そう言って何者かは消えていった……果たして向かったのはどこなのだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃……

 

 

「……………と、まァこんな感じだな。今となっちゃただの昔話だがな……」

 

 

ちょうど輪廻の話も終わりを迎えていた。

 

輪廻の周りには開いた口が塞がらないハジメ達が居た。

 

…誰もが彼の壮絶過ぎる人生に対して唖然とし誰も何も言えかなったのだ。

…輪廻に試され、熊に片腕を食われながらも生を望み生き長らえたハジメも。

…家臣や肉親に裏切られ封印されたユエも

…家族を失いながらも生き延びたシアも

…一家を滅ぼされ、恨むことすら許されなかったティオも

 

 

そんな静まり返った空気の中、一番早くに我に帰ったのは妖夢達幻想郷組で、彼に1つの疑問を投げかけた。

 

 

「…それでも…それでも分かりません、何故貴方はそうまでして幻想郷を壊そうとするのですか!?貴方が復讐を誓ったのは紫様では無いのですか!?」

 

しかし、妖夢のそんな叫びなど知らぬとでも言うかのように、彼はとある選択肢を彼女たちに示した。

 

「…今お前達が取れる選択肢は三つだ………1つ、『俺に立ち向かってくる』…2つ、『大人しく幻想郷に帰り滅びを待つ』…3つ、『俺に着いてくる』…おっと、選ぶ前にこれを返さなくてはな。」

 

輪廻がそう言って指を鳴らした瞬間、脳に欠けたピースを無理やり嵌められるような感覚と、激しい痛みが妖夢達幻想郷組を襲った。

 

 

そして彼女らは思い出した…主を、従者を、友人を、家族を、目的を、数々の激闘を、動乱を、異変を、そして何よりも…『十五夜輪廻』の事を…。

 

 

 

「「「「…思い…出した…」」」」

 

彼女たちの声がそう重なった時、ハジメ達は己の獲物たちを取り、彼女等にその矛先を向けた。

 

 

「…おいおい、何か感動のシーンと言うより、仇敵との会合シーンみたいだが?」

 

「まぁ実際そうなんだろうな、我が君の話にも出てきてたし。」

 

ハジメと清水はそう言い合い、「まぁ、例えそうだとしても。」と一泊置き、ユエたちと一度目を合わせてからこう言い放った。

 

「「主(我が君)の邪魔をするなら誰だろうと排除する!」」

 

対する妖夢達も己の武器を構えて対峙していた。

 

しかし、そこに輪廻の一言が場を驚かせた。

 

「…面白い、殺れるものなら殺ってみろ!」

 

これには流石の妖夢達も驚いた様だが動揺は一瞬。

霊夢と魔理沙が居ないのは痛手だが、これなら殺れる!そう妖夢達は思い一斉に輪廻へと攻撃を仕掛ける、がしかし、その瞬間頭に過ぎったのは輪廻を殺すことではなく、思い出(過去)だった。

 

 

 

 

 

 

_________________________

 

 

 

 

 

「…………どうした?手が止まっているぞ、俺を殺すのでは無かったのか?」

 

そう挑発的な笑みを浮かべながら輪廻はそう言った。彼女らの攻撃は輪廻が1歩歩もうものなら、確実に当たるほどの距離をた保たれていた。

 

 

そして、輪廻の前に立つ妖夢は方を小刻みに震わせてこう言い放った。

 

 

「…出来るわけ………できるわけないじゃないですか!!私に…貴方を殺せる訳ッ無いじゃないですかッ!どれだけ体に動けと命令しても!どれだけ殺そうと思っても!いざ貴方の前に立つとそんなもの全部消えるんです!あなたの姿を目に映すと、敵意も殺意も消えて!貴方の言葉を耳に宿すと、あなたに全てを捧げたくなる!」

 

そんな彼女の叫びを聞き、レミリア達は頷き己の獲物たちを下げ、ハジメ達も攻撃の姿勢を解いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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とある炎剣は世界最強 二周年特別編

待たせたな!(猛省)

今回は、キャラ崩壊、作者の人格の出現、時空の捻じ曲げ、メタ要素など大量の地雷が設置されております。

あとハチャメチャ回なのでそういうテンションが嫌いな人はブラウザバックがオススメだゾ

そう言った物が苦手な方は閲覧を辞め、咲夜さんの画像でも見に行ってください(布教)


作者の一言・最近の流行りはベレス先生


 

 

 

という訳で………とある炎剣は世界最強、ついに二周年を突破しました!!皆、乾杯ー!

 

 

 

輪廻「挽肉にしてやろうか?」

 

なんで?

 

ハジメ「死ね」

 

ストレートなら言いわけじゃないよ?

 

ユエ「……一度死んで悔い改めて。」

 

嫌です

 

シズエ「…湯タンポさん、擁護してあげたい所だけど、貴方はやっては行けない事をしてしまった。」

 

何気にハイライトの無い瞳で言われるのがいちばん怖いんですけど。

 

セリカ「五素に分解してやろうか?」

 

黙れぽっと出BBA!

 

咲夜「まぁまぁ、皆さんそう仰らずに、紅茶でも如何ですか? 湯タンポさんもお飲みになりますか?」

 

っしゃWRYYYYYY!咲夜さんの紅茶じゃジャマイカ!(´p◎q゚`。) ゴクンゴクン

これは青酸カリ!?うん、美味しい!(マジキチスマイル)てかなんかこの咲夜さん世界線違くない?何かちょっと違和感が……。

 

 

ヴラド「うつけ!それは私の咲夜じゃ!」

 

 

アイエエエ!?ヴラドクン!?ヴラドクンナンデ!?

 

 

輪廻「久しぶりだな、ヴラド。」

 

おしりかじりm…お知り合いなの?

 

 

輪廻「は?なんでテメェが知らねえんだよ。」

 

 

え?だって私あくまで作者の人格のコピーですしお寿司。完全な設定までは知らないんだヨット。

 

 

輪廻&ヴラド「「じゃあ歯ァ食いしばれ!!」」

 

ドギャッ

 

グェェ!な、何をするだァーッ、私が一体何をしたと言うんだア゛ーッ!言ってみろこの汚らしいアホがァーーッ!

 

 

 

 

輪廻&ヴラド「お前作品の更新は?」

 

 

マジでスイマセン*1

 

 

 

輪廻「取り敢えずお前焼き土下座な。」

 

 

そんなことする環境無いだろ

 

 

ヴラド「焼き石ならここにあるぞ」

 

何でそんな物あんだよ!お前ら何でもアリか!?

 

 

ハジメ「主だぞ?」

 

せやなぁ…( ˘ω˘ )

 

ユエ「……ん…当たり前」

 

(°꒳° )そだね

 

シズエ「輪廻さんですよ?」

 

お、そうだな(適当)

 

セリカ「神も殺すアイツだぞ?」

 

ディアボロ風ハンバーグウマウマ(゚∀゚)

 

咲夜「あの御二方ですよ?何をやっても不思議ではありません。」

 

。゚(゚^∀^゚)゚。ギャーハッハッハッハッハッハハッハッハッハッハッハ !!やーいやーいやーいやーい!!咲夜さんにも言われてやんの!(ノ´∀`*)ぷーくすくすくす! この 紅眼!白髪!厨二病!吸血鬼!天才!チーター!バランスブレイカー!ジジィ!変態!ゴリラ!おしりかじりm グェェェェ!何をするだァーッ!

 

輪廻「黙れ、いい加減にその茶番を辞めろ、本題に入れなくなる。あと死ね」

 

本題ってなんだっけ?

 

輪「は?」

ハ「は?」

ユ「…え?」

シ「あれ?」

セ「何言ってんだお前」

咲「はい?」

ヴ「…このうつけが…」

 

忘れちゃった☆めんご‪ww

 

全員「………(イラッ)」

 

そんな顔でこっち見ないで?……ま、まあいいや、取り敢えず皆飲みなよ、さっきから僕以外誰も手付けてないじゃん……焼き鳥うま。やっぱ焼き鳥ってももダレがいちばん美味いよね。

 

輪廻「塩胡椒のねぎまが一番に決まってるだろうが」

 

味覚無いのに?

 

ハジメ「ぼんじりに決まってんだろ」

 

油っこくない?

 

ユエ「…輪廻が好きな物なら何でも。」

 

誰かジャベリン持ってきてー

 

シズエ「私は、食べたことない…かな。」

 

すいませーん焼き鳥全種類十本ずつお願いしまーす。

 

セリカ「皮だな、塩胡椒の奴。」

 

羊と一緒に紙でも食ってろ。

 

咲夜「白レバーですね。」

 

甘くて美味しいよね。

 

ヴラド「純けいじゃな、固めの方が私の好みじゃ。」

 

あ、焼き鳥きた、シズエちゃん食べる?

 

 

てか、ヴラド君も焼き鳥食うの?……秋〇行く?

 

 

輪廻「行かねぇよ!つかさっさと話進めろ!いつまでシズエに焼き鳥食わしてんだ!」

 

え〜!だって、ちょっと困惑しながらも美味しそうにモグモグしながら焼き鳥食べてるシズエちゃん可愛いもーん!

 

あ、次ハツ食べてみる?…えっとね、ハツって言うのは心臓の事だよ。さっき鳥をぶち殺して作った新鮮な奴だから美味しいよ〜……え?流石に心臓は食べたくない?可哀想?え〜食べなよ〜……喰え(豹変)。嫌って……抵抗しても無駄だよ、ほら、口開けて〜そうそうそのまま噛んで〜、飲み込んで!……美味しかったでしょ?……あっ涙目のシズエちゃん可愛い…。

 

 

輪廻「シズエで遊んでねぇで早くしろ!」

 

 

ちぇっ仕方ないなぁ……まぁいいや、取り敢えず話す事の順序を立てようか、

 

一、この作品が出来た理由。

 

二、勝手に想像!質問コーナー。

 

三、今後について。

 

 

ま、こんな感じかしら。

 

 

輪廻「まずはこの作品が出来た理由だな。」

 

 

この作品が生まれた理由1は……ズバリ、ありふれに一方通行のクロスが(ほぼ)無かったから!

 

ハジメ「まあ、ありふれてるっちゃありふれてるな、今の時代二次創作なんてそれくらいの理由で誰でも出来るからな」

 

まあね。

 

活動報告とか見てもらえれば分かる(筈)なんですが、この作品の初期プロットって、残火の太刀と鏡花水月、そして鬼道を持った一方通行の肉体(能力付き)のオリ主が無双する!……っていう話だったんだけどなあ〜、どうしてこうなったのやら(チラッ)

 

輪廻「……何だよ、何か文句あんのかよ」

 

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

 

十五夜輪廻 [($¥’”$#/¥歳 男 レベルฅ★/ΣΣฅΣ

 

天職:破壊神

 

筋力:/_∀>☆,.`

 

体力:,<||!.|\

 

耐性:~☆>☆∀.`~

 

敏捷:,★,!{.<\\\\>

 

魔力:_<∀<_:;?<

 

魔耐:∥^●―<\∀

 

霊圧:_};>_;_!`/★`:

 

技能:無から有を創造する程度の能力·運命を決定する程度の能力·創造·浅打創造·超剣技·超剣術·日の呼吸+[爍刀]·斬魄刀+[始解]+[卍解]+[卍解ニ式]+[卍解三式]+[卍解四式]+[卍解終式]·鬼道+[縛道]+[破道]·ベクトル操作+[反射]·魔人化+[魔神化]·自己再生·不老不死·霊槍シャスティフォル·魔力操作・以下略・限界突破+[覇潰][+上限突破]·錬成以下略、言語理解

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

 

 

……逆にコレで何も言われないと思ったの?作者が面倒くさすぎて以下略とかやってんじゃん。

 

 

ハジメ「何か文字バグってるし。」

 

 

まあそんな感じで、紆余曲折ありながらも、作者が好きな物を詰め合わせた結果がこの作品ですね。

 

 

一応この作品が生まれた理由はもう1つありまして、それが……作者が夢で見たからです。

 

 

輪廻「は?」

 

 

…作者が夢で見たからです!

 

輪廻「やっぱりミンチにしてやろうか?」

 

 

だが断ります。まあおまけ程度に聞いて欲しいんですが、何かある日突然輪廻くんが夢で暴れてたんですよね……。ま、そんだけです。

 

 

全員「雑ッ!」

 

まあもうほとんど覚えてないからね、仕方ないね。

 

じゃ次行こ!

 

 

 

 

 

 

勝手に想像!質問コーナー

 

 

輪廻「じゃあ俺らで順番に読み上げるぞ〜。…『この作品の次の更新は何時?』」

 

 

出来上がったら更新します。

 

 

ハジメ「次は…『他の作品の更新はどれくらいですか』」

 

私でも何時になるかわかりません。取り敢えず本格的に更新するのはこの作品が完結してからかな?やっぱり時間があまり無いのでね。

 

 

ユエ「…次は……『新しい作品を作る予定はある?』」

 

 

連載なら無いよ、前編後編の短編とかならあるかも……っていうか現状の作品すら更新が追いついてないから暫くは無理かなー。

 

 

シズエ「…えっと…次は……『この作品は結局リメイクするんですか?』」

 

多分する。でも正直結構先になると思う。先ずはこの作品を完結させなきゃ行けないからね。

 

 

セリカ「じゃあ次は〜……『この作品はシリーズ化したりするの?』」

 

 

する予定だよん。ジョ〇ョみたいに主人公変わったりするけどね。……取り敢えず今の所予定してるのは、『最凶と死神編』、『第三次幻想大戦編』、『幻想の黙示録編』の3つだね。

 

 

咲夜「…では次に移らせていただきます。……『一周年は何処に行ったんですか?』」

 

 

気が付いたら時期を逃してました。

 

 

 

ヴラド「コレで最後じゃな……『この作品の話がイマイチ理解出来ない、もっと分かりやすく書け。』」

 

 

今はこれが私の表現力の限界なんだよなぁ……リメイクして出直すから1年くらい待ってて。リメイクするならそれくらいかかるからね。

 

 

以上!質問コーナー終わりィ!

 

 

 

 

今後のことについて。

 

 

 

輪廻「やっぱ先ずはこの作品の更新だろ。」

 

 

やっぱりソレだよなぁ……取り敢えず今月はちょっと忙しいから、更新するにしても、今月の最後の方かな〜。

 

 

まぁ、今後の方針としては、まずはこの作品を完結させる。そしたら、他の作品を更新したり、新しい短編を作る。って感じだね。

 

 

 

ハジメ「今まで通りだな。」

 

 

五月蝿いよぼんじり君、それが普通なんだよ。

 

 

ま、そゆ事で、改めて二周年\( ・ω・`\)おめでと(/´・ω・)/

 

 

輪廻「ま、そもそもここまで読んでる奴がいるか問題だけどな。」

 

 

そこを言っちゃあお終いよ。だって絶対みんな途中の焼き鳥の下りで帰ってるでしょ。

 

 

全員「その話し始めたのお前だろ」

 

 

 

 

……………ま、まあいいや(震え声)

 

そんな感じで終わり!閉廷閉廷!

 

 

輪廻「そういやお前勉強は?

 

 

 

 

 

*2

 

*1
約三ヶ月ぶりの更新

*2
今月受験




勉強しよ。

進撃の巨人やばいわ。

因みに悪魔の子大好きです。

最近はロシアとウクライナがやばいらしいですねー、取り敢えず日本は核シェアリングなり議論を進めてクレメンス。


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原作開始前
原作前の話 前編


新作、新作、新作だ!
と言う訳でですね新作です。
前から言ってた新作です、

この作品を見る際の注意

オリ主強すぎか?
作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
台本になっても気にしない。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。

それでも見るんですね?




それではお気をつけて、


どうぞ






私は八重樫雫、ある道場の娘。

突然で悪いが皆さんは誘拐する人はどんな人だと思う?

太ったおじさん?ドラマで見るような若い人?

あの時私を誘拐したのは、私と同い年の人だった

 

あれは小学校6年生の時、家に帰る途中だった。

「はあ........ホントいい加減にして欲しいわ。光輝も他の女子も、本当にキレそうだわ、キレて竹刀持ち出して殴りそうだわ」

と、何時も通りに光輝やイジメて来る女子達の愚痴を言っていたら

 

ストン 「あっ....」

意識が暗転する中で私が見たのは

「じゅ、十五夜君。」

クラスの中で唯一光輝に反発している、隣の席の子

十五夜輪廻君だった。

 

彼はクラスの皆からは光輝のせいで悪い印象を持たれ、名前が、ぶっちゃけキラキラネームなので、遠ざけられていた。

 

特に光輝と口論から喧嘩になった時は光輝の腕と足を一本ずつ折った、「初めだからこれ位にしやらァ」と言って。

彼が光輝に手加減していたのは明白だった、何しろ売られた喧嘩は全て買い、年上ならば意識不明の重体になるまで殴り蹴り、同じ年なら軽くて1本折り、酷ければ四肢骨折な時も有った。

 

何なら光輝と十五夜君の口論と喧嘩を見てみましょう

 

「おい!十五夜!何故君は喧嘩した相手の骨を折るんだ!明らかにやり過ぎだろう!」

「.......zzzzzzzzzZZZ」

「おい!聞いてるのか!」

「んだテメェはよォ、人が休んでるのを邪魔すんじゃねェ!用が有るんならさっさと言えや!」

「単刀直入に言おう、何故喧嘩した時に相手の骨を折るんだ!」

「はぁ?んな事も分かんねえのかテメェはよォ、

決まってんだろ、また喧嘩しに来られても困るからなぁ、そんなんだったら最初から喧嘩をしにこさせなければいいからってな」

「そんなことで!やり過ぎだろう!」

「はぁ?こっちは喧嘩をしに来られてるんですけどォ?

あと、喧嘩は売ってるんじゃ無くて買ってるんだよ

正当防衛だよ正当防衛、分かる?

せ·い·と·う·ぼ·う·え·い。」

「だからって、やり過ぎだ!過剰防衛だ!と言うか相手を叩き呑めしてるのだから防衛では無いだろう!」

「はあ?君日本語通じてますかぁ?あっごめんねぇ、君幼稚園生どころか産まれたばっかりの赤ちゃんよりも知能がカスだったけ〜?プークスクス、草生えるわ、いや草どころか大草原だわーwww」

「お前ーーーー!うおおー」

「うーわ、きしょ!ゴリラみたいな雄叫び上げながら

コッチに来てるんですけどー。wwwwww

めっちゃ笑えるわー、天野川光輝なんて言う勇者(笑)みたいな名前したやつがゴリラみたいな雄叫び上げながらコッチに来てるわwwwwwwこれは大森林だわwwwwww」

「お前ぇぇえー、俺が正義の鉄槌を下してやる!正義は必ず勝つ!」

そう言ったら皆が光輝を持ち上げた

「「「「「光輝!光輝!正義の味方!光輝」」」」」

「皆ありがとう!行くぞ!そうだ!俺は正義の味方だ!正義は必ず勝つんだ!」

「正義、正義ってうるせえなァ、まるで俺が悪みてえじゃねえかァ、」

「そうだ!お前は悪だ!」

「いいねぇ、いいねぇ!、ヤハハハ!いいぜぇ、今から俺が悪だァ、お前らに正しい悪を教えてやるよォ!」

そこからは一瞬だった、光輝が十五夜君に近づいたと思ったら、光輝が腕と足を折って、水平に飛んでロッカーにぶつかって意識を無くし、クラス中が騒ぎ、その音で担任の先生が来て十五夜君を連れて行こうとしたらいつの間にかカバンと一緒に消えていた。

 

後日光輝が十五夜君に謝罪を要求したが「俺は悪なんだろぅ?悪は謝らねえよ」と言ったのを光輝がまた怒って突っ掛かって腕がもう一本折れた為入院になった。

 

話を戻そう、そんな彼が何故私を気絶させたか。

私が目を覚まして聞こえて来た声は十五夜君と誰か知らない大人の人だった

「おい、爺さん連れて来たぜ。」

「ああ、ご苦労だったな、休むと良い。」

「あぁ、で?そいつを連れてどうすんだぁ?」

私は十五夜君がこんな会話をするのが慣れているような感じがしていて怖かった。

「あーそうだな、こいつの実家は表向きは唯の道場だが

裏は唯の忍者屋敷だからな、どうすっかなぁ?」

「まぁ、金とかが妥当な所じゃねえの?」

当時の私はあまり言っている事が分からなかったが怖い事が起きていると言うことは解っていた

「そうなんだけどねぇ、もういいや飽きたから開放すれば?」

「相変わらず飽きんのが早ーな、まぁ俺は別にいいんだけどよ、この後面倒いじゃねえかァ、まあいいか」

と言って十五夜君は此方へ近づいてきた

「おい、八重樫何か一つだけ願いを叶えてやるよ。」

「え?はい?」

「だーかーらー困ってることとか悩みとか有ったら解決してやるって言ってんだよ」

「え、そうなのあ、ありがとう?」

「おう、なんで感謝されたかは分からんが、何か有るなら言えよ?」

「じゃ、じゃあ私をいじめて来る女子達を追い払ってくれないかしら?」

「そんだけで良いのか?」

「うん」

「そうかァ、八重樫、なら明日そいつらに呼び出された場所と時間を言え、追い払ってやる」

「あ、後私の事は雫でいいよ」

「そうかァそれなら呼び方が楽でいいなァ」

その時に笑った顔がカッコよかった、何時も光輝を煽る時の狂人の様な笑い方では無く微かに笑っていた、今で表すとキャップ萌えだった、カッコよかった、只々カッコよかった、惚れた、彼に惚れた。今思うと私がチョロかっただけなのかもしれなかったけど。

 

翌日

「あんた、また光輝君と一緒に居たでしょ、あんたマジムカつくのよ、この女狐が!放課後体育館裏にきなさい。」

 

「十五夜君、体育館裏に放課後だって」

「アァ、わかったぜェ、じゃ、後でな」

「うん!」

 

放課後

 

「ようやく来たわね!あんた光輝君に色目使ってんの知ってんだからね!」

「ホントいい加減に!「そこまでだァ、テメらァ」「ひっ、なんで十五夜君がここに!?」

「それより、ききてェ事が有るんだがなァ」

「な、何かしら?」

「何でそんなに天の河が良いんだ?」

「え?」

「だから、何でそんなに天の河が良いんだって」

「そ、それは、だってかっこいいし優しいし、頭も良いし。」

「待て、顔が良いのは認めるが、優しいのは自分を持ち上げる奴らだけだろうが、そして頭が良いと言うのは頑固として否定する!あいつご都合解釈の塊じゃねえか、

まあそんなことはどうでも良い」

「どうでも良いならなんで聞いたの!?」

「いや、ちょっと気になっただけだ。

それよりも其の愛しの天の河にこの事を言われたく無かったら失せろ」

「こ、光輝君が十五夜君のいうことは聞かないと思うよ?」

「それでもまだやるってんなら、天の河の二の舞にしてやろうか?」

「ひいっ、も、もうしません」

「なら失せろ」

そう言うと彼女達はダッシュで逃げていった

「あ、ありがとう」

「おう、」(微笑)

ああ、やっぱり私は彼が好きなんだ、だけど

「十五夜輪廻君が転校する事に成りました」

それを伝えさせてはくれないみたい、

そして次に会ったのは高校の時だった

 

 

 

 




今度の更新もコッチかも知れ無い

誹謗中傷は控えて、よろしくぅ!

後感想と高評価よろしくぅ!

作者Twitter

https://syosetu.org/?mode=url_jump&url=https%3A%2F%2Ftwitter.com%2Fn28e4GrACABKckD


※超重要なお知らせ→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=239594&uid=294968


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原作前の話 後編


こんちわ、湯たんぽです。
今回結構長く成りました。
それでは何時もの注意書き言ってみよー
この作品を見る際の注意

オリ主強すぎ
作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
オリが何言ってるか解らなくても気にしないで。

其れでもいーよーと言う方のみご覧下さい。







僕は中村恵理、昔の私は天の河に依存していた

 

「ふふ、光輝くーんもうちょっとで私の者になる!はふっ」

「何でそんなに天の河は人気なんだろうナァ、不思議でたまらないぜェ」

輪廻君は突然現れるので何時もびっくりしていた

「!!じ、十五夜君?、どうしたの?」

(やばい、バレたか?こいつも消すか)

「俺を消そうなんて思ってンなら辞めといた方がイイぜぇ?」

「な、何の事かな?、そんな事思ってる訳無いじゃん」

「おい、おめえ素が出てんぞ。」「え!?な、何で素だってわかったんだ?」

「そんな事より、何でそんなに天の川が好きなんだァ?」

「それは、だってかっこいいし頭も言いし優しくて私を助けてくれたから!」

「..........何かこのやり取り前もやった気がすんなァ、

まあいいか、一つ聞く、お前は本当に助けられたのか?」

「え?」

「お前が助けられたって言ってんのは、大方親に虐待されてそれが嫌になって自殺しようとしたところを、天野川に「俺がずっと守ってあげるよ」とでも言ってきたんだろ?」

「そうだよ!そうやって僕は助けられて、ずっと守られるんだ!」

「.......一つ天野川に関する話をしてやろう、

ある女子の話だ、 その女子は天野川の幼馴染だった、 ただその女子はある時から 天の川が好きな女子からいじめられるようになった。」

「それが、どうしたの?もしかして僕に光輝くんを好きになるのを辞めろって言うの!?」

「アァ、それをオススメするぜぇ、アイツは将来俺に殺されるかも知れんし、その前にあいつが何かやらかすからなァ、まじで辞めといた方が良いぜぇ?」

「それでも僕は、「好きになったら虐められるぞ?そして天野川はそのいじめを止めない」え?なんで?」

「正確には一回いじめを注意しただけで、いじめを辞めさせたつもりになってんだよ」

「なら、ならどうすれば良いのさ!どうしたら光輝君は僕をずっと守ってくれるんだよ!」「は?無理だろ?」

「なんで!じゃあどうすればいいの!?「天野川に結婚してとでも言えや、多分無理だろうけどな、頑張れやー」何故結婚なのさ!」「だってアイツはずっと守るって言ったんだろ?それならその言葉通りずっと守って貰えばいいじゃねえかァ、まぁ、今は白崎もいるし無理だろうな。」

「だれ?その白崎って女は!」「いや、とりま、どうでも良いけど、お前、分かってんだろ?」

「な、何が?」

「心の奥底では本当は天ノ川を好いちゃいねえって事をな。お前は、天ノ川を好きなんじゃない、天ノ川に依存しているだけだ。」

僕はここまで言い当てられて、全て白状した

「そうさ!そうだよ!全部そのとおりだよ!本当はあんな奴好きなんかじゃない!好きだと思っていると言う偽の感情で誤魔化してるんだよ!ほら、ここまで喋らせたんだから、責任取ってよ!」

「そりゃぁ無理な相談だなァ、俺は天ノ川と違って

(自称)正義の味方じゃねぇ、悪だ、悪は責任何て取らねえよ、」

|「何なんだよそれ、何も解決してな「ただ、」なにさ?

「流石に責任は取らねえよ、取って貰いたかったらあの馬鹿に言え、だがな、友人位にはなってやるよ、それが悪の俺に出来る事だ」え?」

 

そう、僅かに笑いを浮かべて言って来たんだ、その笑顔がカッコよかったのだ。正直その時はもう天ノ川の事なんてどうでも良かった、まぁ、要するに彼が好きになったのだ。彼の本当の笑顔は女を落とす力でもあるのだろうか?

こうして僕は輪廻君と友人になったんだけど、本音を言うと今すぐにでも付き合いたい位には好きなんだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

僕は南雲ハジメ、僕は普通の学生だけど僕の親友がちょっと普通のじゃ無いんだよね。

そんな彼と僕の出会いは、ある出来事がきっかけだった。

 

その日はお気に入りのラノベの新刊の発売日だったから買いに行くことにしたんだ。

その道中でお婆さんと小さい子供が、ちょっと顔の厳つい人の服にたこ焼きをぶつけてしまったんだ、その時なんでかは自分でも解らないけれど、お婆さん達の前に出て全力で土下座したんだ、でも、その不良見たいな人達はそれでも辞めずに僕を蹴って来たんだ

 

「なんだこいつ!気持ちわりいな!どけよ!」

そんな事を言いながら僕を蹴っていた時だった

「何だ何だよ何ですかァ?そんなちっこいガキと婆さんにいちゃもんつけて金取ろうとしてんじゃねえよォ?」

彼がすっごく喧嘩腰でやって来たんだ

「あぁん?なんだテメェはよぉ、もしかして俺たちに喧嘩売ってんの〜?」

「はぃ〜?喧嘩売ってんのはそっちだろうがよォ!あ、もしかして俺が怖いんでちゅか?バブちゃん?」

「!!てめぇ!おい!なんとか言えよ!」

「なんとか、ねえ」

ドンッドンッドンッドドドンッ

「ひぃ!」

「な.ん.と.か.」

いや、これに関しては僕も最初何言ってるか分かんなかったな。

「え?はい?」

「だから〜お前が何とか言えっつったんだろうが!!」

ドンッひゅーんドガッ

そんな音がして不良っぽい人のうちの一人が水平に飛んでいき壁にぶつかった、彼はと言うと.......

「ヤハハハハハハハハハ!虫けらが壁にぶつかって死にそうになってんなァ!!」

何か狂人みたいになってた

「あれは!一方通行じゃないの!?」

と、近くに居た女の子がその名を口にした、

一方通行(アクセラレータ)は当時有名なある中学生だった、何故有名かと言うと剣道、フェンシングで、全国大会三連覇、喧嘩になった相手は全員病院送り。

中学生なのに、国内最難関の大学の試験に合格。

等、かなりやばい記録ばかり出している、と言うかよく退学にならなかった物だと思う人も居るだろうが、これには訳が有る、その訳とは喧嘩は全て売ったのでは無く買った物だからである、それから学校側の都合も有った、話さなくても分かると思うので割愛する。

更にその容姿が注目を浴びるのだ、白い髪、紅い目、病的までに白い肌、なんと言うか僕に言わせて見れば、完全に厨二の化身である。<後にブーメランが刺さる事を知らない奴の言い分)

「あ、一方通行だと!やばい逃げ「遅えよ」ドゴォッ

とこの騒動はこうして終わった、と、思ったら

「おい、てメェ」

「ぼ、僕!?」

「アァ、一つ聞きてえ事が有るだがなァ、いいか?」

何か話しかけられた

「え、う、うん」

「お前は、何であん時謝ったんだァ?」

、、、、、、、、

「え?、い、いや実は僕も何で謝って居たのか分からないんだ」

「そうかァ、ならもう一つ聞く、その時はどう言う気持ちで謝ったんだァ?正義感か?」

「え?う、うーん、よく分からないんだけどね、正義感では無いと思うよ。」

「ハハハハハハ、おもしれえなァ、気に入ったぜ、、、だがなァ少しコッチに来い」

「え?うん」

呼ばれたとき死んだかと思ったよ

「正義感からでも無いのに他人の為に謝れるのは凄えがなァ、直ぐに謝るんじゃねェ、まずは相手の出方を伺ぇ、出ねえと何をするにも失敗するぜェ?」

「で、ても僕そういうの苦手何だよね」

「まぁ、頭の片隅にでもおいておけやァ、、一つ聞く、、お前いじめられてんだろ?」

「ど、どうして分かったの?」

「昔、似たような奴が居たからな、それで?おめえはどうしてぇんだァ?」

「ど、どうしたいって何が?」

「決まってんだろ?そのいじめをどうしてぇか聞いてんだよ」

「そりゃあ無くなったら嬉しいけどさ、そんな事してくれるの?」

「してやっても良いがなァ、それじゃてめえの成長になんねえだろうがァ?、、今のてめえは周りに流されているだけだ。それをどうにかしたいと言う意思が無ければ、今助けたとしても意味がない、だからなァ?助けて欲しけりゃ覚悟を決めろ、悪や悪魔に力を借りるって言うのはそういう事だ。さぁ、決めなァ、この手を取るも払うもお前次第だ」

そう言って手を差し出してきてくれたんだ。

、当時の僕は何時もいじめられてたんだ、でもみんなそれを見て見ぬ振りをしていて、誰もこんなふうに手を差し伸べてくれなかったんだ、だからこんなふうに接してくれるのが嬉しかったんだ、どれ位かと言うと、彼に忠誠を誓っても良い程にね。

「お願いします!僕はこんなのは嫌だ!あんな奴等に服従するぐらいなら、君に忠誠を誓っても良い!」

そう言うと彼は笑っていた

「ヤハハハ!おめぇやっぱりおもしれえなァ!

良いぜぇ、そいつらにやられた時は言えやァ、直ぐに行くぜぇ」

そう言ってくれたんだ。

「ありがとう!所で名前は?」

「俺かァ?俺は、十五夜輪廻だァ、おめえは?」

「僕は南雲ハジメ、よろしく。」

「アァ、ハジメ、一つだけ聞く」

「どうしたの?」

「お前は、正義になって死ぬか、悪になっても生きたいか、どっちだ?」

「ぎゅ、急にそんな事を言われても、そりゃぁ悩むけど」

「まぁ今は良いがなァ?何か有った時はそれを決めろ、

それで2つ目を選んで生きるのに必死な時は自分の事だけを考えろ、その時に助けられる奴が居ても見捨てれば良い、俺が後から変わりに助けに行ってお前も助けてやるからな、だがなァ何時でも助けに行ける訳じゃねェ、だから他人の力ばかりを当てにするな、自分で自分を守れる程度の力はつけろ、それで待ってりゃ、俺が助けに行くからなァ。」

「うん、分かった!よろしくね!後さっきの忠誠を誓っても良いって言うの冗談じゃないからね、そんな時になったら僕は君に忠誠を誓うよ」

「そうかァ、じゃそん時はよろしく頼むぜぇ」

 

こうして僕は彼、十五夜輪廻の親友となり、後に彼に忠誠を誓うようになったんだ。

 

 

 

 

 

 

 




ハジメ君は、このオリ主の助言に従っており、後にユエと出会った時もこの助言のせいで見捨てて居ます。
まぁ、他の理由もあるんですけどね。

それでは感想、高評価、よろしくぅ!


まじでそろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。wwww


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原作前の話 高校入学編

こんちわ、湯たんぽです。
今回いろいろ詰め込み過ぎた気がするけど反省はしてません。今回話がめっちゃ急展開だよ、後今回から、オリ主君の過去について書くのですが、余り詳しくは書きません。何故ならその過去を小説にしたやつがあるので、そちらで過去編は出します。
ついでにタグ増やしときまーす。
後非ログインでも感想書けるよーにしときましたー。

それでは何時もの注意書き+言ってみよー

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
オリが何言ってるか解らなくても気にしないで 。
何かクロスしてるのが増えたけど今後はちゃんと調整するから許して。
東方要素が出てきたぞ!。

それでも良いという方のみご覧下さい。

何度も言いますが、輪廻君の過去が見たければ、
幻想郷の大厄災と言う作品をご覧下さい。ここに来る前の輪廻君の過去が書かれてます。(ま、嘘なんですけどね)


ハジメが輪廻と出会って一年がたったある日

 

「入学式も三回もすると慣れてくんなァ、ハジメはどうだァ?」

「うーん僕はそこまで慣れてないけど、輪廻と一緒じゃ無ければ、この学校には行きたくないね」

そう!この時期は入学シーズンである!

「まあいいかァ、行くぞハジメ」

「うん」

説明しよう!何故こんなにハジメがこの学校に行きたくないか!それは、

「また会ったな!十五夜!今度こそは正義である俺が勝つ!うおおおー!」

そう!こいつ(既に名前がない)のせいである!後に檜山達が居るのも分かった。

「アァ?またてめえかゴミ野川、相変わらずそのゴリラ見てえな雄叫びを上げんな、うるせぇなァ、そろそろゴミ収集車で回収して埋めて貰うか?それとも精神内科と脳外科に行ってその腐りすぎてもう手が付けられない脳を直して貰ったらどうだ?いや、もう手遅れか、現にあん時みたいにゴリラ見てえな雄叫び上げてんしな、まぁ精々てめえに出来る事と言ったら、大草原か、大森林か、ジュラ紀か、埋め立て場に永眠する事くれえだろうけどな。wwwww」(この間僅か四秒でこの長文を言いました)

「お前ー!あの時と同じだと思うなよ!俺はもうお前より強くなっている!⬅(自意識過剰) 舐めるなよ!うおおおおおーー」⬅絶対舐めプされるやつ

 

「だからァ〜、そのきめえ雄叫びをやめろっつってんだろうがァ!うるせぇんだよ!ぶち殺すぞガスが!まぁテメェの攻撃(笑)なんて酒飲みながらでも、避けれるっつーの!」

 

そのことばに、こうきはげきどした、だかそんなにおこっていては、かの最強の足元にも及ばんわぁ!(私の日本語は崩壊しました)

 

「くそっ、仕方無い!あれを使うしか!でもあれには少し時間が掛かる!」(何言ってんの?)

 

その言葉に一言

 

「3分間待ってやる!」byハジメ、ハジメによるとこの言葉は人生で一度で良いから使いたかったらしい。

 

「黙れ!お前なんかが俺に指図するな!」

 

その言葉に切れた人が居た、しかもこの世で一番キレさせてはいけない人物が

「あぁ?んだてめぇ、何時から俺の連れにそんな口聞けるほど偉くなったんだ?ァ?言ってみろよドカスが、いい加減にしねえと、てめえをミンチにして、ハンバーグ作って、蟻の餌にすんぞゴラァ!」

 

「おい何をゴニョゴニョ言っている!まさか俺に怖気づいたのか(⬅自意識(ry)!おい!何とか言え!」

 

ハジメはデジャヴを感じたので早急に

 

「おーい八重樫さーん早く逃げないと折れたあれが飛んでくるよ〜」

こう言った、それで雫は察したみたいで

 

「ありがと〜南雲君私達も離れるわー」

と、言って離れて行こうとしたのだが、生憎邪魔な腰巾着が居た。

「おい、何処に行くんだよ八重樫、白崎!」

そう、邪魔な腰巾着こと坂上なんちゃらで有る

「はぁ?この状況見てまだ分かんないの?龍太郎もさっさと逃げないと、折れるわよ?と言うかアイツはまだ学習しないのかしら?ホントいい加減に自分が勝てない事ぐらい学習して欲しいわ。」

 

だがしかし、そんな腰巾着の言葉など正論の前では一蹴された、確かに普段ならこうはしないだろうが、今はそれどころでは無い、何故か?それは

 

「なんとか、ねェ」

こう言う事である、後ハジメは、この言葉で確信した。

この時逃げで正解だったと。

 

ドゴッドゴッドゴンッドドドコンッ

「うわぁー」

うわーゴミが叫んでるー

「な ん と か」(同じネタでゴメンネ?)

「え?、え?、はい?」

「だから〜お前が何とか言えっつったんだろうが!!」(何度でも言おう、同じネタでゴメンネ?」

ドゴッ、バキッヒューンドッがっーん

 

「ねえ、輪廻、少しだけやり過ぎじゃない?

「チッ、ちょっちやり過ぎたか、いやアイツのことはどうでもいいかァ」

「おい!誰か救急車をよべ!後警察も!おいっ!そこの君!何処へ行こうと言うのだね!」

「はぁ?ンな事も分かんねえのか爺、入学式に決まってんだろ?」

「はぁ、これだから最近の若者は、いいか?彼が被害者で君が加害者何だ、なのに何故さっさと行こうとしているんだ!」

「はぁ、これだから老害は、うるせぇし完全に立場が逆だろうが、じゃぁ何か?お前は、自分の家族や親友を馬鹿にされても怒らねえのか?怒らねえなら人間じゃねぇ、悪魔でもねぇ、唯の屑だ、そんな事も分からねえようなやつに授業何てしてもらいたくねえなァ、違うとこ行こうかなァ?あのゴミと腰巾着もいるしなァ」

 

そんな感じてで何やかんやあり結局入学式は一週間延期になった。

クラスメートは一度決まると三年間ずっと一緒だ(ちなみに輪廻はハジメや気になる人物もクラスが一緒になる様に裏の力を使いました)

「ねぇ、輪廻?これって絶対裏で操ったわよね?」

「さァ?何の事か分かんねえなァ?」

「絶対嘘でしょ!だって輪廻と関わりある人全員このクラスに居るのにアイツと龍太郎だけ違うクラスなのは流石におかしいわよ!」

「ハハッハジメと良い雫といい、おもしれえ奴ばっかりだからなァ、少しクラスの人間をいじらせて貰ったぜェ。」

そう言うと雫は呆れたように苦笑し

「まぁ別に私は貴方と三年居られれば良いんだけどね。」

「ああ、そろそろホームルームで自己紹介あるらしいぜぇ?めんどいなァ」

「でも、輪廻の気になる人もこのクラスにいるのよね?」

「アァ、だがなァ、漢字の読み方があってりゃだが、確実に二人は抹殺しなきゃいけねえ奴等がこの中にいるんだよ、あとは6、七人、確かめなきゃいけねえ。」

そんな事を話して入ると、担任の先生が入ってきた

「は〜いでは今からホームルームを始めまーす。

ではみんな自己紹介からしましょう!

では私から、私は皆さんの担任になった畑山愛子です、担当科目は社会です!趣味は裁縫です、では席順で自己紹介してください、あ、あと最後に趣味か特技を言ってくださいね?」

一人の少年がたった、その時輪廻の手が血が滲み出る程握り締めていた事に気づいたのは雫とハジメだけだった。

「俺は雨宮快斗だよろしく!特技はサッカーだ」

続いて上がった名前達に、輪廻は

「やっぱりまた来やがったな、あいつ等はまた俺の邪魔をするのか、殺す殺す殺す。」と、小声で呟いていたのに気付いたのは、やはり雫とハジメだけだった。

その後の自己紹介は

「博霊霊夢よ、趣味は裁縫と神社の手伝いね、よろしく。」

「霧雨魔理沙だぜ!趣味は本を盗sんん、読む事だぜ、よろしくだぜ!

「魂魄妖夢です。趣味は庭の世話ですかね。よろしくお願いします。」

「アリス、マーガトロイドよ、趣味は人形づくり、よろしくね。」

「レミリア、スカーレットよ、趣味は紅茶を飲む事かしら?よろしくね。」

「フランドール、スカーレットだよ!趣味は遊ぶ事だよ、よろしくね!」

「十六夜咲夜です、特技は料理です。よろしくお願いします。」

「パチュリー、ノーレッジよ、趣味は読書、よろしくね。」

それぞれが自己紹介を終わる頃には輪廻の額には何個も血管が浮いていた、後手の平にも甲にも。

そして彼の番がやって来た、彼は血管を浮かび上がらせながらも行った。

「十五夜輪廻だァ。趣味、趣味ねえ、強いて言うなら………殺しだよ!」と何時もの狂人の様な笑みを貼り付けたままそう言った。

そうすると教室から驚愕の声や震えた声、冷や汗を流す者、乾いた笑みを浮かべるもの、皆それぞれの反応をしたが、共通点が1つあったそれは、その反応をしている者が全て怒っているからだ。

「あ、あんたまさか、こっちの世界にまで来たって言うの!!冗談じゃないわ!」

その言葉にクラスは困惑するばかりだ。

だが次の言葉で凍りつく

「あんた、殺して封印までしたのに何で生きてんのよ!!」

 

 




感想くれればちゃんと返信しときますんで。
と言う訳で感想と高評価よろしくぅ!
尚誹謗中傷や低評価は受け付けておりません。

話はちゃんと次回以降説明しますのでお待ち下さい。
いきなり霊夢とか出て来て困惑する方が多いでしょうから、多少の説明を此処でします。



まずオリ主は正確に言うと転生では有りません。
後東方からヒロイン出ます。(オリ主の)
最後に出てきた封印とか霊夢達が来た理由とかは次回説明します。後明言しときます、オリ主めっちゃチートです。
今回は書いてる途中から作者自身も頭が、吹っ飛んだので、よくわからん内容になってました。でもまぁここまで来たって事は注意書き全部読んだって事だから良いのか。では、また次回お会いしましょう。さようなら〜(@^^)/~~~


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高校入学編2 そして召喚

こんちわ、今全力で寝たい湯たんぽです。
今回もいろいろ詰め込み過ぎた。だけど反省も後悔もして無い。
今回何でか作者も知らんけど呼吸出てきた。
てか、輪廻君人数がすごいことになりそうハーレムが。
後本編にも有りますが輪廻君の過去の話を、別小説で書きました。輪廻君の過去が書かれてます。(幻想郷の大厄災と言う作品です。)

それでは注意書き言ってみよー

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
オリが何言ってるか解らなくても気にしないで 。
何かクロスしてるのが増えたけど今後はちゃんと調整するから許して。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十人ぐらいになりそう!
輪廻君の過去は別小説で畫かれるぞ!(もう投稿済み?)
輪廻君強過ぎて最早草

それでも良いという方のみご覧下さい


「紫!今すぐここに居るやつ眠らせて、アイツを外にだして!私達も行くわよ!」

霊夢が愛子に向かってそう言う

「ええわかった!直ぐにやるわ!」

その言葉から、雫と、ハジメ以外の全員がこの先の記憶を覚えていない、(生徒だけ)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ハジメ、雫Saido

 

目を開くと教室じゃない場所にいた。

そこでは、八人と輪廻が闘っていた、比喩では無く。

あと一人そこに倒れている人が居た、確か雨宮快斗と言ったか?恐らく輪廻にいの一番に倒されたのだろう。

 

そして何かあっちでは、紫の槍とか、光ってる剣とか、弾幕みたいなのが飛び交ってるね、でも輪廻はそれを、炎の着いてる刀と、手から出してる砲弾で攻撃して、鎖とかで相手を捕まえて叩き切ってる。人によっては輪廻が押されてるように感じるかも知れないけど、僕達は、「「輪廻が負ける姿とか想像できない」」。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷組

 

「あいつが刀を開放する前に叩くわよ!」

「ああ!わかっt「話し合いは終わったかァ?」ガハッ」

「っとおまけだ、破道の三十二改、桜花線!」

レミリア「なっ!あれでも以前の私ぐらいの力は有ったのに!」

「それはそれは拍子抜けだなァ、あいつがたったあれだけって事は、開放しなくても今は勝てるかもなァ?だっててめえ等あん時と対して実力が伸びてねえみたいだからなァ!まァ油断はせずに行くぜぇ!全集中·日の呼吸·陸の型、日暈の龍 頭舞い!」業ッ

「ッ!!ザ・ワールド!」カチッ

「チッ!クソがッ邪魔すんじゃねェ!テメから先に潰すッ!日の呼吸·円舞(えんぶ)

碧羅の天(へきらのてん)

烈日紅鏡(れつじつこうきょう)

灼骨炎陽(しゃっこつえんよう)

陽華突(ようかとつ)

日暈の龍 頭舞い(にちうんのりゅう かぶりまい)

斜陽転身(しゃようてんしん)

飛輪陽炎(ひりんかげろう)

輝輝恩光(ききおんこう)

火車(かしゃ)

幻日虹(げんにちこう)

炎舞(えんぶ)!」

この連続の斬撃を昨夜は避けきれず。

「かハッぐ、う」そして時は動き出す。

レミリア「咲夜!あんたッ私は怒ったわよ!「スカーレットシュート!スピア·ザ·グングニル!「遅えよ!てめえ等諸共一瞬で切り伏せてやラァ!ザ・ワールド!」何故それを!つk」カチッ

 

「ヤハハハッ!やっぱりこれは便利じゃねえかァ、まァいい、終わらせるかァ。

日の呼吸·円舞(えんぶ)

碧羅の天(へきらのてん)

烈日紅鏡(れつじつこうきょう)

灼骨炎陽(しゃっこつえんよう)

陽華突(ようかとつ)

日暈の龍 頭舞い(にちうんのりゅう かぶりまい)

斜陽転身(しゃようてんしん)

飛輪陽炎(ひりんかげろう)

輝輝恩光(ききおんこう)

火車(かしゃ)

幻日虹(げんにちこう)

炎舞(えんぶ)」ザクザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザンっザンザンザンザンザシュ!

「解除」

「「「「「「「が!ゴフッ!」」」」」」」

時が止まっていた事も有り、全く避けられず、弾幕を打つ事すら不可能な重症を負ってしまった。

「な、んで貴方が咲夜の能力をつか、使え、ゴフッ、るの?」

「それすらもわすれたんかァ、平和ボケしすぎだろてめえ等はァ、て言うかまだ息の根が有ったか、相変わらず見上げた生命力だぜェ、まァてめぇ等の一番の敗因は、あっちで平和ボケしすぎたことだなァ、取り敢えず恨むなら俺じゃなくて、あのゴミを恨むこったな、じゃァそ~ゆー訳でさいなr「この様子だと私達は貴方の心の外にいたという訳ですか。」てめぇは!「はい、古明地さとりです。」「こいしもいるよー」殺!「時を止めるのですか?」勝手に心を読むんじゃねぇ!殺すぞ!」「出来るのでしたらどうぞ」殺す!日の呼k「今です!」「夢想転生!」ガハッ、……………」

霊「ふう、ようやく腕が繋がったわ、どうやら平和ボケしてたのはあんたの方みたいね、なんて言ったって厄災とまで言われた奴が友達なんて。」

レミ「そうね、でも怒りは治まったわ、それよりみんなの手当をしないと。」

妖「そうですね、それに二回目に合った時は、敵だったとは言え、私の首を締めてきましたからね。「こんな風にかァ?」な!?なぜ生きて!がぁ、ぁ、ぅ、ぁ、……」

霊「妖夢!それにあんた何故生きて!「俺がいつ鏡花水月を使って無いと言ったァ?お前らは俺を殺した気になってただけだ。」倒したいけどもう私の霊力も残ってない!レミリアは!?」

「期待するだけ無駄だァ、オメェらの魔力やら、霊力やらは一時的に全て奪ったぜェ?アァ、後あの姉妹にも期待しねえほうがいいぜえェ?」

さ「かはッ、霊夢さんすみません、私とこいしも魔力を奪わられした、」

「............まだ喋れんのかァ、念の為もう一発撃っとくか、日の呼吸、円舞(弱)。」

輪廻は、首が飛ばないほどの威力でさとりを斬ろうとしたが、霊夢が輪廻の右足を引っ張り邪魔をしたので、首では無く、右肩から左の脇腹へ掛けて斜めに斬れた、だがきっと首にされるよりよっぽど痛いだろう。

「ぁがぁ、く、ぅ、」「チッ、邪魔が入ったか、まァいい、どうせ殺すからな、さてそろそろ終いにしようじゃねえかァ、縛道の九十九禁、 滲み出す混濁の紋章不遜なる狂気の器 湧き上がり否定し痺れ瞬き 眠りを妨げる跛行する鉄の王女絶えず自壊する泥の人形結合せよ反発せよ地に満ち己の無力を知れ、破道の九十黒棺。

からの日の呼吸

円舞(えんぶ)

碧羅の天(へきらのてん)

烈日紅鏡(れつじつこうきょう)

灼骨炎陽(しゃっこつえんよう)

陽華突(ようかとつ)

日暈の龍 頭舞い(にちうんのりゅう かぶりまい)

斜陽転身(しゃようてんしん)

飛輪陽炎(ひりんかげろう)

輝輝恩光(ききおんこう)

火車(かしゃ)

幻日虹(げんにちこう)

炎舞(えんぶ)」

 

私の意識はそこで途切れた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

雫、ハジメsaido

輪廻があの人たちに止めを刺そうとしてた、止めようと思ったけど、南雲君の「僕が言ってくる」って言ったから、行かせたんだけど、何か悪い予感がするわね

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

僕は輪廻に対してある説得を行っていた

「ねえ、輪廻?その人達まだ生かして置こうよ、あ、その雨宮って奴は殺せばいいよ。」

「まァ、コイツラに個人的な恨みはねェ、だがおメェの事だ、またおもしれぇ事考えてんだろ?言えよ」

「その通り、ある考えが有るんだけど、それはね······

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

霊夢達saido

 

あれ、生きてる?目を覚ますとそこはどこかの家の部屋見たいな所にいて周りには、魔理沙や妖夢、アリス、レミリア、フラン、咲夜、パチェ、さとり、こいし、紫が眠っていた、とゆうかこの家広く無い?何か紅魔館と同じぐらい広い気がするんだけど。そうして部屋を見ていると、見覚えの有る顔が入ってきた、白い髪、紅い目、白い肌。

「起きてたかァ、ちょうど良い、てめぇに話がある。付いて来い。」

「ええ、所でこの家誰の家なのかしら、貴方のお友達?」

私がそう言うとアイツは呆れた用な顔になって言った。

「はぁ?頭大丈夫か?俺の家に決まってんだろ?良いからさっさと来やがれ。」

そして次の部屋に付き、彼はそこに居たメイド(オバサンでは無く普通に美女だ)にコーヒーを淹れてもらい私は紅茶を貰った。

「それで?私に話って何かしら?もしかして、今まで話して無かったあんたが快斗を憎む理由や、幻想郷を壊滅寸前までした過去の話かしら?」そんなわけ無いと思いつつも聞いてみたら思いもよらない答えが帰ってきた

「アァ、そうだ、今から俺の過去を話すからちゃんと聞けよ?」

 

「はぁ?過去の話ぃ?」

「うんそうだよ、輪廻の過去は一言で言えば悲惨に尽きるからね、あの戦い慣れているのに、ちょっと平和ボケしてるあいつらなら大丈夫さ!」

ーーーー

説明したところ(輪廻君の過去が知りたい人は幻想郷の大厄災、第二話を見よう!)

「それってホントなの?」

真実かどうか疑われた

「今更嘘言うわけねぇだろうが!馬鹿なのかてめぇは!」

「いえ、ただ少し気になる所が有るんだけど、なぜ貴方は彼を恨むの?」

「確かに、怒った本人はあの女だ、だがな俺はアイツの存在のせいでこうなってんだ、恨むのは当たり前だろ?」

「そう言えば彼はどうしたの?見当たらないけど、」

「は?殺したに決まってんだろ?そんな事も解らなくなっちまう程力が衰えたか?博霊の巫女」ばたーん

「で?てめぇ等は何してんだ、あ?殺すぞ?人の家のドア壊しやがって、壁も少し壊れてんじゃねえか!てめぇこの家そこの壁とドアだけで三十万するんだぞ、あ?」

よ「すみません、つい盗み聞きに集中しちゃいまして、

それでさっきの話は本当ですか?雨宮さん死んだって」

「てめぇこの家であのゴミの名前出すとどうなるか分かって言ってんのかァ!?ぶっ殺すぞ!何なら死に方選ばせてやる、首締めか?それとも首締めか?首締めか?首締めか?首締めるか?アァ?」

「みょ、みょん、」プシュー

完全に妖夢、首締めがトラウマになってるわね。

 

その後何やかんや有り霊夢、妖夢、レミリア、咲夜、さとりが輪廻を好きになったらしい。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あの騒動から一年後

二年B組朝

「おいおいまたキモオ「死にたくなけりゃ失せろ」ひぃ、い、何時までも勝てると思「なら失せろ」ドコッ

 

「おいハジメ、今日飯忘れたんだろ?」

「あはは、ハイそうでございます、よって主よどうか私にも恵みを!」

「おう、別にやるが、あの突撃野郎に貰えるんじゃねえの?いや、だからあえて俺から貰ってるのか」

雫「相変わらず頭の回転が早いわね、その通りよ、まあ香織は香織で最近光輝に付き纏われてるらしいけど、どうでも良いわね、さて、そろそろ一緒に...「輪廻さん一緒に食べませんか?」(妖夢)「「そうよ!こっちに来なさいよ」」(レミリア&霊夢)

「そうですよ、こっちで、一緒に食べましょうよ?あ、雫さんも一緒で結構ですよ?」クスクス「うぬぬぬ」

「チッしゃーねーな、今そっちにいk「香織!来たぞ」うるせぇ人の前で騒ぐな、そして帰れ、むしろ土に還れ」ドゴッドガッガスっぴかーん。

その時に床から魔法陣の様なものが浮かび上り、輪廻は咄嗟に、ハジメ、雫、東方組を集めた。

 

 

 

 

 




つ か れ たZOY☆

感想高評価、よろしくZOY☆

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ちなみに輪廻君はゲームの大会だけで、数十億稼いでいます。


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第一章
第一話 召喚された先


こんちわ湯たんぽです。

最初の方はやっぱりほぼ原作通りになっちゃうね。

と言うわけでー何時もの注意書き言ってみよー

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
オリが何言ってるか解らなくても気にしないで 。
何かクロスしてるのが増えたけど今後はちゃんと調整するから許して。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十二人ぐらいになりそう!
輪廻君の過去は別小説で畫かれるぞ!(もう投稿済み)
輪廻君むっちゃちーと。
霊夢達もそこそこ強い。


両手で顔を庇い、目をギュッと閉じていたハジメは、ざわざわと騒ぐ無数の気配を感じてゆっくりと目を開いた。そして、周囲を呆然と見渡す。

 

 

 

 まず目に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。(但し輪廻はめっちゃ気持ち悪がってた)

 

 

 

 背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのように、その人物は両手を広げている。美しい壁画だ。素晴らしい壁画だ。だがしかし、ハジメはなぜか薄ら寒さを感じて無意識に目を逸らした。

 

 

 

 よくよく周囲を見てみると、どうやら自分達は巨大な広間にいるらしいということが分かった。

 

 

 

 素材は大理石だろうか? 美しい光沢を放つ滑らかな白い石造りの建築物のようで、これまた美しい彫刻が彫られた巨大な柱に支えられ、天井はドーム状になっている。大聖堂という言葉が自然と湧き上がるような荘厳な雰囲気の広間である。

 

 

 

 ハジメ達はその最奥にある台座のような場所の上にいるようだった。周囲より位置が高い。周りにはハジメと同じように呆然(輪廻は無表情だったよ)と周囲を見渡すクラスメイト達がいた。どうやら、あの時、教室にいた生徒は全員この状況に巻き込まれてしまったようである。

 

 

 

 ハジメは左右を見回すと、輪廻君を見つけてホッとしていた。

 

 

 

 そして、おそらくこの状況を説明できるであろう台座の周囲を取り囲む者達への観察に移った。

 

 

 

 そう、この広間にいるのはハジメ達だけではない。少なくとも三十人近い人々が、ハジメ達の乗っている台座の前にいたのだ。まるで祈りを捧げるように跪き、両手を胸の前で組んだ格好で。

 

 

 

 彼等は一様に白地に金の刺繍ししゅうがなされた法衣のようなものを纏まとい、傍らに錫杖しゃくじょうのような物を置いている。その錫杖は先端が扇状に広がっており、円環の代わりに円盤が数枚吊り下げられていた。

 

 

 

 その内の一人、法衣集団の中でも特に豪奢で煌きらびやかな衣装を纏い、高さ三十センチ位ありそうなこれまた細かい意匠の凝らされた烏帽子えぼしのような物を被っている七十代くらいの老人が進み出てきた。

 

 

 

 もっとも、老人と表現するには纏う覇気が強すぎる。顔に刻まれた皺しわや老熟した目がなければ五十代と言っても通るかもしれない。

 

 

 

 そんな彼は手に持った錫杖をシャラシャラと鳴らしながら、外見によく合う深みのある落ち着いた声音でハジメ達に話しかけた。

 

 

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 

 

 そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺こうこうや然とした微笑を見せた。

しかし皆が彼を見ている中で、輪廻だけが目を瞑っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ハジメ達は場所を移り、十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通されていた。

 

 

 

 この部屋も例に漏れず煌びやかな作りだ。素人目にも調度品や飾られた絵、壁紙が職人芸の粋を集めたものなのだろうとわかる。

 

 

 

 おそらく、晩餐会などをする場所なのではないだろうか。上座に近い方に畑山愛子先生と光輝達四人組が座り、後はその取り巻き順に適当に座っている。ハジメは最後方だ。

 

 

 

 ここに案内されるまで、誰も大して騒がなかったのは未だ現実に認識が追いついていないからだろう。イシュタルが事情を説明すると告げたことや、カリスマレベルMAXの光輝が落ち着かせたことも理由だろうが。

 

 

 

 教師より教師らしく生徒達を纏めていると愛子先生が涙目だった。

 

 

 

 全員が着席すると、絶妙なタイミングでカートを押しながらメイドさん達が入ってきた。そう、生メイドである! 地球産の某聖地にいるようなエセメイドや外国にいるデップリしたおばさんメイドではない。正真正銘、輪廻の家に居るような美女・美少女メイドである!

 

 

 

 こんな状況でも思春期男子の飽くなき探究心と欲望は健在でクラス男子の大半がメイドさん達を凝視している。もっとも、それを見た女子達の視線は、氷河期もかくやという冷たさを宿していたのだが……

 

 

 

 ハジメも傍に来て飲み物を給仕してくれたメイドさんを思わず凝視……しそうになってなぜか背筋に悪寒を感じ咄嗟に正面に視線を固定した。

 

 

 

 チラリと悪寒を感じる方へ視線を向けると、なぜか満面の笑みを浮かべた香織がジッとハジメを見ていた。ハジメは見なかったことにした。(輪廻は慣れているのか別に凝視はして無かった)

 

 

 

 全員に飲み物が行き渡るのを確認するとイシュタルが話し始めた。

 

 

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

 

 

 そう言って始めたイシュタルの話は実にファンタジーでテンプレで、どうしようもないくらい勝手なものだった。

 

 

 

 要約するとこうだ。

 

 

 

 まず、この世界はトータスと呼ばれている。そして、トータスには大きく分けて三つの種族がある。人間族、魔人族、亜人族である。

 

 

 

 人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きているらしい。

 

 

 

 この内、人間族と魔人族が何百年も戦争を続けている。

 

 

 

 魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗していたそうだ。戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないらしいが、最近、異常事態が多発しているという。

 

 

 

 それが、魔人族による魔物の使役だ。

 

 

 

 魔物とは、通常の野生動物が魔力を取り入れ変質した異形のことだ、と言われている。この世界の人々も正確な魔物の生体は分かっていないらしい。それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣とのことだ。

 

 

 

 今まで本能のままに活動する彼等を使役できる者はほとんど居なかった。使役できても、せいぜい一、二匹程度だという。その常識が覆されたのである。

 

 

 

 これの意味するところは、人間族側の〝数〟というアドバンテージが崩れたということ。つまり、人間族は滅びの危機を迎えているのだ。

 

 

 

「あなた方を召喚したのは〝エヒト様〟です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という〝救い〟を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

 

 

 イシュタルはどこか恍惚こうこつとした表情を浮かべている。おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろう。

 

 

 

 イシュタルによれば人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしい。

 

 

 

 ハジメが、〝神の意思〟を疑いなく、それどころか嬉々として従うのであろうこの世界の歪さに言い知れぬ危機感を覚えていると、突然立ち上がり猛然と抗議する人が現れた。

 

 

 

 愛子先生だ。

 

 

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

 

 

 ぷりぷりと怒る愛子先生。彼女は今年二十五歳になる社会科の教師で非常に人気がある。百五十センチ程の低身長に童顔、ボブカットの髪を跳ねさせながら、生徒のためにとあくせく走り回る姿はなんとも微笑ましく、そのいつでも一生懸命な姿と大抵空回ってしまう残念さのギャップに庇護欲を掻き立てられる生徒は少なくない。

 

 

 

 〝愛ちゃん〟と愛称で呼ばれ親しまれているのだが、本人はそう呼ばれると直ぐに怒る。なんでも威厳ある教師を目指しているのだとか。(無理だろうけど)

 

 

 

 今回も理不尽な召喚理由に怒り、ウガーと立ち上がったのだ。「ああ、また愛ちゃんが頑張ってる……」と、ほんわかした気持ちでイシュタルに食ってかかる愛子先生を眺めていた生徒達だったが、次のイシュタルの言葉に凍りついた。

 

 

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

 

 

 場に静寂が満ちる。重く冷たい空気が全身に押しかかっているようだ。誰もが何を言われたのか分からないという表情でイシュタルを見やる。

 

 

 

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

 

 

 愛子先生が叫ぶ。

 

 

 

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

 

「そ、そんな……」

 

 

 

 愛子先生が脱力したようにストンと椅子に腰を落とす。周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた。

 

 

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

 

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

 

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

 

「なんで、なんで、なんで……」

 

 

 

 パニックになる生徒達。

 

 

 

 ハジメも平気ではなかった。しかし、オタクであるが故にこういう展開の創作物は何度も読んでいる。それ故、予想していた幾つかのパターンの内、最悪のパターンではなかったので他の生徒達よりは平静を保てていた。

 

 

 

 ちなみに、最悪なのは召喚者を奴隷扱いするパターンだったりする。

 

 

 

 誰もが狼狽える中、イシュタルは特に口を挟むでもなく静かにその様子を眺めていた。

 

 

 

 だが、ハジメは、なんとなくその目の奥に侮蔑が込められているような気がした。今までの言動から考えると「エヒト様に選ばれておいてなぜ喜べないのか」とでも思っているのかもしれない。

 

 

 

 未だパニックが収まらない中、光輝が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音にビクッとなり注目する生徒達。光輝は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。

 

 

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

 

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

 

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

 

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

 

 

 ギュッと握り拳を作りそう宣言する光輝。無駄に歯がキラリと光る。

 

 

 

 同時に、彼のカリスマは遺憾なく効果を発揮した。絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ。光輝を見る目はキラキラと輝いており、まさに希望を見つけたという表情だ。女子生徒の四分の一は熱っぽい視線を送っている。

 

 

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

 

「龍太郎……」

 

「私は反対よ」

 

「雫!どうしてだ?この世界は俺達に助けを求めているのに?」

 

「え、えっと、雫ちゃんがやらないなら私も辞めとくよ!」

 

「香織……」

 

 

 

 いつものメンバーが光輝に反対するも。(腰巾着を除く)後は当然の流れというようにクラスメイト達が賛同していく。愛子先生はオロオロと「ダメですよ~」と涙目で訴えているが光輝の作った流れの前では無力だった。そう、愛子先生ならば、

 

「ヤハハハッ、おいゴミィ、相変わらず馬鹿みたいな事しか言えねえのかァ?戦争したきゃ勝手にやってろ、俺達は帰るぜェ。」

彼等はあのゴミの影響を受けない。

「なぜだ十五夜!この世界の人達は困ってるんだ!なぜ一人で帰ろうとする!」

「ハァ?誰も一人で帰るなんて言ってねぇだろうが、俺達は八人でかr「ごめん、輪廻、こっちに来てから紫と連絡が取れないんだけど。」チッしゃぁねぇ、おい爺」

「何ですかな?」

「戦争に参加する事についてだかなァ、2つ条件がある、一つは戦争参加を志願制にする事。

2つ目は、滞在している間は訓練を実施して、実演練習、就寝時を除く基本の時間は各自で決めたグループ事で行動する事。

この条件が呑めるってんなら手を貸してやってもいいぜェ?」

「解りました直ぐに手配しましょうぞ。」

この時ハジメは、

世界的宗教のトップなら当然なのだろうが、油断ならない人物だと、頭の中の要注意人物のリストにイシュタルを加えるのだった。

 

 

 

 




今日はもう一話あるぞい。

感想、高評価、よろしくZOY☆


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第二話 ステータスプレート

こんばんわ湯たんぽです。
今回は~、説明回で す!
先に言っとくよ?輪廻君めっちゃちーとだよ!それは思わずハジメが、キ○オウさんになる位。
今回もほぼ原作通りになっちゃった



それではー何時もの注意書き言ってみよー

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
オリが何言ってるか解らなくても気にしないで 。
何かクロスしてるのが増えたけど今後はちゃんと調整するから許して。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十二人ぐらいになりそう!
輪廻君の過去は別小説で畫かれるぞ!(もう投稿済み)
輪廻君むっちゃちーと。
もう一回言うよ?輪廻君むっちゃちーと。





イシュタル曰く、この聖教教会本山がある【神山】の麓の【ハイリヒ王国】にて受け入れ態勢が整っているらしい。

 

 王国は聖教教会と密接な関係があり、聖教教会の崇める神――創世神エヒトの眷属であるシャルム・バーンなる人物が建国した最も伝統ある国ということだ。国の背後に教会があるのだからその繋がりの強さが分かるだろう。

 

 ハジメ達は聖教教会の正面門にやって来た。下山しハイリヒ王国に行くためだ。

 

 聖教教会は【神山】の頂上にあるらしく、凱旋門がいせんもんもかくやという荘厳そうごんな門を潜るとそこには雲海が広がっていた。

 

 高山特有の息苦しさなど感じていなかったので、高山にあるとは気がつかなかった。おそらく魔法で生活環境を整えているのだろう。

 

 

 

 ハジメ達は、太陽の光を反射してキラキラと煌めく雲海と透き通るような青空という雄大な景色に呆然と見蕩れた。

 

 

 

 どこか自慢気なイシュタルに促されて先へ進むと、柵に囲まれた円形の大きな白い台座が見えてきた。大聖堂で見たのと同じ素材で出来た美しい回廊を進みながら促されるままその台座に乗る。

 

 

 

 台座には巨大な魔法陣が刻まれていた。柵の向こう側は雲海なので大多数の生徒が中央に身を寄せる。それでも興味が湧くのは止められないようでキョロキョロと周りを見渡していると、イシュタルが何やら唱えだした。

 

 

 

「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん――〝天道〟」

 

 

 

 その途端、足元の魔法陣が燦然さんぜんと輝き出した。そして、まるでロープウェイのように滑らかに台座が動き出し、地上へ向けて斜めに下っていく。

 

 

 

 どうやら、先ほどの〝詠唱〟で台座に刻まれた魔法陣を起動したようだ。この台座は正しくロープウェイなのだろう。ある意味、初めて見る〝魔法〟に生徒達がキャッキャッと騒ぎ出す。雲海に突入する頃には大騒ぎだ。

 

 

 

 やがて、雲海を抜け地上が見えてきた。眼下には大きな町、否、国が見える。山肌からせり出すように建築された巨大な城と放射状に広がる城下町。ハイリヒ王国の王都だ。台座は、王宮と空中回廊で繋がっている高い塔の屋上に続いているようだ。

 

 

 

 ハジメは、皮肉げに素晴らしい演出だと笑った。雲海を抜け天より降りたる〝神の使徒〟という構図そのままである。ハジメ達のことだけでなく、聖教信者が教会関係者を神聖視するのも無理はない。

 

 

 

 ハジメはなんとなしに戦前の日本を思い出した。政治と宗教が密接に結びついていた時代のことだ。それが後に様々な悲劇をもたらした。だが、この世界はもっと歪かもしれない。なにせ、この世界には異世界に干渉できるほどの力をもった超常の存在が実在しており、文字通り〝神の意思〟を中心に世界は回っているからだ。

 

 

 

 自分達の帰還の可能性と同じく、世界の行く末は神の胸三寸なのである。徐々に鮮明になってきた王都を見下ろしながら、ハジメは言い知れぬ不安が胸に渦巻くのを必死に押し殺した。そして、とにかくできることをやっていくしかないと拳を握り締め気合を入れ直すのだった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 王宮に着くと、ハジメ達は真っ直ぐに玉座の間に案内された。

 

 

 

 教会に負けないくらい煌びやかな内装の廊下を歩く。道中、騎士っぽい装備を身につけた者や文官らしき者、メイド等の使用人とすれ違うのだが、皆一様に期待に満ちた、あるいは畏敬の念に満ちた眼差しを向けて来る。ハジメ達が何者か、ある程度知っているようだ。

 

 

 

 ハジメは居心地が悪そうに、最後尾をこそこそと付いていった。

 

 

 

 美しい意匠の凝らされた巨大な両開きの扉の前に到着すると、その扉の両サイドで直立不動の姿勢をとっていた兵士二人がイシュタルと勇者一行が来たことを大声で告げ、中の返事も待たず扉を開け放った。

 

 

 

 イシュタルは、それが当然というように悠々(ゆうゆう)と扉を通る。光輝等一部の者を除いて生徒達は恐る恐るといった感じで扉を潜った。

 

 

 

 扉を潜った先には、真っ直ぐ延びたレッドカーペットと、その奥の中央に豪奢ごうしゃな椅子――玉座があった。玉座の前で覇気と威厳を纏った初老の男が立ち上がって・・・・・・待っている。

 

 

 

 その隣には王妃と思われる女性、その更に隣には十歳前後の金髪碧眼の美少年、十四、五歳の同じく金髪碧眼の美少女が控えていた。更に、レッドカーペットの両サイドには左側に甲冑や軍服らしき衣装を纏った者達が、右側には文官らしき者達がざっと三十人以上並んで佇んでいる。

 

 

 

 玉座の手前に着くと、イシュタルはハジメ達をそこに止め置き、自分は国王の隣へと進んだ。

 

 

 

 そこで、おもむろに手を差し出すと国王は恭しくその手を取り、軽く触れない程度のキスをした。どうやら、教皇の方が立場は上のようだ。これで、国を動かすのが〝神〟であることが確定だな、とハジメは内心で溜息を吐く。

 

 

 

 そこからはただの自己紹介だ。国王の名をエリヒド・S・B・ハイリヒといい、王妃をルルアリアというらしい。金髪美少年はランデル王子、王女はリリアーナという。

 

 

 

 後は、騎士団長や宰相等、高い地位にある者の紹介がなされた。ちなみに、途中、美少年の目が香織に吸い寄せられるようにチラチラ見ていたことから香織の魅力は異世界でも通用するようである。

 

 

 

 その後、晩餐会が開かれ異世界料理を堪能した。見た目は地球の洋食とほとんど変わらなかった。たまにピンク色のソースや虹色に輝く飲み物が出てきたりしたが非常に美味だった。

 

 

 

 ランデル殿下がしきりに香織に話しかけていたのをクラスの男子がやきもきしながら見ているという状況もあった。

 

 

 

 ハジメとしては、もしや矛先が殿下に向くのではと、ちょっと期待したりした。といっても、十歳では無理だろうが……

 

 

 

 王宮では、ハジメ達の衣食住が保障されている旨と訓練における教官達の紹介もなされた。教官達は現役の騎士団や宮廷魔法師から選ばれたようだ。いずれ来る戦争に備え親睦を深めておけということだろう。

 

 

 

 晩餐が終わり解散になると、各自に一室ずつ与えられた部屋に案内された。天蓋てんがい付きベッドに愕然がくぜんとしたのはハジメだけではないはずだ。ハジメは、豪奢な部屋にイマイチ落ち着かない気持ちになりながら、それでも怒涛の一日に張り詰めていたものが溶けていくのを感じ、ベッドにダイブすると共にその意識を落とした。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 翌日から早速訓練と座学が始まった。

 

 

 

 まず、集まった生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。

 

 

 

 騎士団長が訓練に付きっきりでいいのかとも思ったハジメだったが、対外的にも対内的にも〝勇者様一行〟を半端な者に預けるわけにはいかないということらしい。

 

 

 

 メルド団長本人も、「むしろ面倒な雑事を副長(副団長のこと)に押し付ける理由ができて助かった!」と豪快に笑っていたくらいだから大丈夫なのだろう。もっとも、副長さんは大丈夫ではないかもしれないが……

 

 

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

 

 

 非常に気楽な喋り方をするメルド。彼は豪放磊落ごうほうらいらくな性格で、「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員達にも普通に接するように忠告するくらいだ。

 

 

 

 ハジメ達もその方が気楽で良かった。遥はるか年上の人達から慇懃いんぎんな態度を取られると居心地が悪くてしょうがないのだ。

 

 

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

 

「アーティファクト?」

 

 

 

 アーティファクトという聞き慣れない単語に光輝が質問をする。

 

 

 

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属けんぞく達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

 

 

 

 なるほど、と頷き生徒達は、顔を顰しかめながら指先に針をチョンと刺し、プクと浮き上がった血を魔法陣に擦りつけた。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。ハジメも同じように血を擦りつけ表を見る。

 

 

 

 すると……

 

 

 

===============================

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1

 

天職:錬成師

 

筋力:10

 

体力:10

 

耐性:10

 

敏捷:10

 

魔力:10

 

魔耐:10

 

技能:錬成・言語理解

 

===============================

 

 

 

 表示された。

 

 

 

 まるでゲームのキャラにでもなったようだと感じながら、ハジメは自分のステータスを眺める。他の生徒達もマジマジと自分のステータスに注目している。

 

 

 

 メルド団長からステータスの説明がなされた。

 

 

 

「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に〝レベル〟があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

 

 

 

 どうやらゲームのようにレベルが上がるからステータスが上がる訳ではないらしい。

 

 

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」

 

 

 

 メルド団長の言葉から推測すると、魔物を倒しただけでステータスが一気に上昇するということはないらしい。地道に腕を磨かなければならないようだ。

 

 

 

「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

 

 

 

 ハジメは自分のステータスを見る。確かに天職欄に〝錬成師〟とある。どうやら〝錬成〟というものに才能があるようだ。正食どれだけの才能かわかんないけど

 

 

 

 ハジメ達は上位世界の人間だから、トータスの人達よりハイスペックなのはイシュタルから聞いていたこと。なら当然だろうと思いつつ、口の端がニヤついてしまうハジメ。自分に何かしらの才能があると言われれば、やはり嬉しいものだ。

 

 

 

 しかし、メルド団長の次の言葉を聞いて喜びも吹き飛び嫌な汗が噴き出る。

 

 

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

 

 

 この世界のレベル1の平均は10らしい。ハジメのステータスは見事に10が綺麗に並んでいる。ハジメは嫌な汗を掻きながら内心首を捻った。

 

 

 

(あれぇ~? どう見ても平均なんですけど……もういっそ見事なくらい平均なんですけど? チートじゃないの? ……ほ、他の皆は? やっぱり最初はこれくらいなんじゃ……まあ輪廻は例外だろうけど)

 

 

 

 ハジメは、僅かな希望にすがりキョロキョロと周りを見る。皆、顔を輝かせハジメの様に冷や汗を流している者はいない。

そして、輪廻達がこちらへよって来た、

「ハジメは、どうだったァ?」

そこで表示されていた、輪廻たちのステータスは、以下の通り。

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

博霊霊夢 17歳 女 レベル50

 

転職:巫女

 

筋力:1500

 

体力:2000

 

耐性:1000

 

敏捷:800

 

霊力:5000

 

魔耐:5000

 

技能:空を飛ぶ程度の能力·スペルカード·気配感知·魔力感知·先読み·高速霊力回復·言語理解

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

霧雨魔理沙 17歳 女 レベル50

 

転職:魔法使い

 

筋力:1000

 

体力:1000

 

敏捷:2000

 

耐性:500

 

魔力:6000

 

魔耐:2000

 

技能:魔法を使う程度の能力·スペルカード·全属性適正·全属性耐性·高速魔力回復·ほうき·気配感知·魔力感知·言語理解

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

魂魄妖夢 17歳 女 レベル50

 

転職:剣豪

 

筋力:2300

 

体力:3000

 

耐性:1700

 

敏捷:5000

 

妖力:3500

 

魔耐:3000

 

技能:剣を操る程度の能力·スペルカード·超剣術·先読み·超縮地·超気配感知·魔力感知·高速妖力回復·言語理解

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

レミリア·スカーレット 500歳 レベル50

転職:吸血姫

 

筋力:2000

 

体力:3000

 

耐性:2300

 

敏捷:3000

 

魔力:5000

 

魔耐:5000

 

技能:運命を操る程度の能力·スペルカード·槍術·全属性適正·全属性耐性·先読み·高速魔力回復·気配感知·魔力感知·言語理解

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

フランドール·スカーレット 495歳女 レベル50

 

転職:吸血鬼

 

筋力:500

 

体力:7000

 

耐性:6000

 

敏捷:4000

 

魔力:8000

 

魔耐:4000

 

技能:ありとあらゆる物を破壊する程度の能力·スペルカード·剣術·分身·高速魔力回復·気配感知·魔力感知·言語理解

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

アリス·マーガトロイド 17歳 女 レベル50

 

転職:人形使い

 

筋力:1700

 

体力:1200

 

耐性:3000

 

敏捷:2000

 

魔力:4000

 

魔耐:4000

 

技能:魔法を扱う人形を操る程度の能力·スペルカード·魔力感知·気配感知·高速魔力回復·全属性耐性·全属性適正·言語理解

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

十六夜咲夜 17歳 女 レベル50

 

天職:時間操術者

 

筋力:2500

 

体力:5000

 

耐性:3000

 

敏捷:4000

 

魔力:5000

 

魔耐:5000

 

技能:時間を操る程度の能力·スペルカード·ナイフ投撃術·先読み·気配感知·魔力感知·高速魔力回復·言語理解

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

古明地さとり 17歳 女 レベル50

 

天職:心解読者

 

筋力:1000

 

体力:3000

 

耐性:2500

 

敏捷:3000

 

魔力:7000

 

魔耐:5000

 

技能:心を読む程度の能力·スペルカード·読心術·全属性適正·全属性耐性·先読み(強)·気配感知(強)·魔力感知·高速魔力感知·言語理解

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

「や、やっぱりすごいね、流石輪廻とあれだけ戦える人達だ、それで?肝心の輪廻は?

「アァ、これだ」と言いこっちへ投げて来た。

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

十五夜輪廻 534歳 男 レベル1

 

転職:死神·剣豪·学園第一位·魔神

 

筋力:800000

 

体力:700000

 

耐性:1200000

 

敏捷:500000

 

魔力:1000000

 

魔耐:300000

 

技能:無から有を創造する程度の能力·運命を決定する程度の能力·創造·浅打創造·超剣技·超剣術·日の呼吸+[爍刀]·斬魄刀+[始解]+[卍解]·鬼道+[縛道]+[破道]·ベクトル操作+[反射]·魔人化+[魔神化]·自己再生·不老不死·霊槍シャスティホル·魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・纏雷[+雷耐性][+出力増大]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛[+部分強化][+集中強化][+付与強化]・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復[+魔素集束]・魔力変換[+体力変換][+治癒力変換][+衝撃変換]・限界突破+[覇潰]·錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成][+高速錬成][+自動錬成][+イメージ補強力上昇][+消費魔力減少][+鉱物分解]·言語理解

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

「チートやろこんなん!チートや!チーターや!」

ハジメは、そういう他言葉が見つからないらしい。

 

いよいよ皆が呼び出されている。

メルド団長の呼び掛けに、早速、光輝がステータスの報告をしに前へ出た。そのステータスは……

 

 

 

============================

 

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

 

天職:勇者

 

筋力:100

 

体力:100

 

耐性:100

 

敏捷:100

 

魔力:100

 

魔耐:100

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

 

==============================

輪廻達のステータスを見てからだと全く持って驚きが無い。

 

 

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

 

「いや~、あはは……」

 

 

 

 団長の称賛に照れたように頭を掻く光輝。ちなみに団長のレベルは62。ステータス平均は300前後、この世界でもトップレベルの強さだ。しかし、光輝はレベル1で既に三分の一に迫っている。成長率次第では、あっさり追い抜きそうだ。輪廻のステータスは、神(自称)ですら超えられないが

 

 

 

 ちなみに、技能=才能である以上、先天的なものなので増えたりはしないらしい。唯一の例外が〝派生技能〟だ。輪廻にたくさん付いてた技能は大体派生技能だ

 

 

 

 これは一つの技能を長年磨き続けた末に、いわゆる〝壁を越える〟に至った者が取得する後天的技能である。簡単に言えば今まで出来なかったことが、ある日突然、コツを掴んで猛烈な勢いで熟練度を増すということだ。

 

 

 

 光輝だけが特別かと思ったら他の連中も、光輝に及ばないながら十分チートだった。それにどいつもこいつも戦闘系天職ばかりなのだが……

 

 

 

 ハジメは自分のステータス欄にある〝錬成師〟を見つめる。響きから言ってどう頭を捻っても戦闘職のイメージが湧かない。技能も二つだけ。しかも一つは異世界人にデフォの技能〝言語理解〟つまり、実質一つしかない。

 

 

 

 だんだん乾いた笑みが零れ始めるハジメ。報告の順番が回ってきたのでメルド団長にプレートを見せた。

 

 

 

 今まで、規格外(特に霊夢達)のステータスばかり確認してきたメルド団長の表情はホクホクしている。多くの強力無比な戦友の誕生に喜んでいるのだろう。ちなみに輪廻のはまだ見てない、輪廻は最後だった

 

 

 

 その団長の表情が「うん?」と笑顔のまま固まり、ついで「見間違いか?」というようにプレートをコツコツ叩いたり、光にかざしたりする。そして、ジッと凝視した後、もの凄く微妙そうな表情でプレートをハジメに返した。

 

 

 

「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」

 

 

 

 歯切れ悪くハジメの天職を説明するメルド団長。

 

 

 

 その様子にハジメを目の敵かたきにしている男子達が食いつかないはずがない。鍛治職ということは明らかに非戦系天職だ。クラスメイト達全員が戦闘系天職を持ち、これから戦いが待っている状況では役立たずの可能性が大きい。

 

檜山大介が、ニヤニヤとしながら声を張り上げる。

 

 

 

「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」

 

「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」

 

「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」

 

 

 

 檜山が、実にウザイ感じでハジメと肩を組む。見渡せば、周りの生徒達――特に男子はニヤニヤと嗤わらっている。

 

 

 

「さぁ、やってみないと分からないかな」

 

「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ~?」

 

 

 

 メルド団長の表情から内容を察しているだろうに、わざわざ執拗しつように聞く檜山。本当に嫌な性格をしている。取り巻きの三人もはやし立てる。強い者には媚び、弱い者には強く出る典型的な小物の行いだ。

 

 

 

 香織に惚れているくせに、なぜそれに気がつかないのか。そんなことを考えながら、ハジメは投げやり気味にプレートを渡す。

 

 

 

 ハジメのプレートの内容を見て、檜山は爆笑した。そして、斎藤達取り巻きに投げ渡し内容を見た他の連中も爆笑なり失笑なりをしていく。

 

 

 

「ぶっはははっ~、なんだこれ! 完全に一般人じゃねぇか!」

 

「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」

 

「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」

その言葉に霊夢達や雫達などは嫌悪感を露わにしている。

そこで静かに、しかし超絶切れた者が居た

「は?てめえ等は何を言ってんだァ?肉壁になるのは軽戦士やらのてめぇ等だろうが?ハジメは、後方支援に決まってるだろうが」

「十五夜!何を言っているんだ!皆が頑張ってi「うるせぇよ、殺すぞ、いやてめぇはそんなに死にてぇのか?それなら焼き殺してやるよォ」ッ!何時までも勝てると思うなぁー」←(自意識過剰)

「日の呼吸、拾弐の型、炎舞」ザザンッ

直後、ゴミが倒れた

「がハッ」(#・∀・)チーン

「十五夜君!何をしているのですか!って天野川君怪我酷いじゃないですか!十五夜君、謝りなs「ァ?るせぇぞ、それに謝るわきゃねぇだろうが。」良いから誤りなさい!「何が良いんだァ?俺に取っちゃそいつなんてどうでも良い、そう言えばまだプレート出して無かったなァ、おいメルド、やるよ」メルドさんを呼び捨てにしない!」

「うるせぇなァ!さっきからピーギャーピーギャーウルセェんだよ!何なんだてめえはよォ、今ハジメがいじめられそうになってたのがわかってんのかァ?それに地球でも、ハジメに対するいじめを無くそうともしない、挙げ句の果てにイジメ主導犯に謝れだとォ?いい加減にしろや!」

 

それから一時間ようやく先生と輪廻の言い合いが終わり。皆が部屋に戻った頃、輪廻はメルドに呼ばれていた。

「何か用かァ?メルド」

「ああ、今度オルクス大迷宮に訓練に行こうと思うんだが、お前にハジメを連れて行って欲しいんだ。」

「別にいいが、その代わり俺は常にハジメのそばに居る、それで良いか?」

「ああ、それで充分だ、お前が居るだけで良いからな」

 

と言う訳で二週間後、僕達はオルクス大迷宮に来ていた。

 

 




一応なぜ帰れなかったか説明すると、現在トータスに居る東方組は、霊夢、魔理沙、妖夢、レミリア、フラン、咲夜、アリス、さとり、です。それ以外は紫含めて全員帰りました。それで霊夢達には世界を通しての通信は出来ない為、紫を呼べませんでした。

感想、高評価よろしくぅ↑


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第三話 訓練

こんちわ湯たんぽです。
やっぱり最初の方はほぼ原作通りになってしまいますねぇ。
そして作者の方で残った東方組を全て、輪廻君のヨメ〜ズに加える事に決定しました。い、異論はみ、認めません!
今回は六時間程掛けて書いたので今は非常に眠いです。


それじゃあ、何時もの注意書き言ってみよー
作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
オリが何言ってるか解らなくても気にしないで 。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十二人ぐらいになりそう!
輪廻君むっちゃちーと。




 

ハジメが自分の最弱ぶりと役立たず具合を突きつけられた日から二週間が経った。何時も輪廻が守ってくれるが。

 

 

 現在、ハジメは訓練の一時間程の休憩時間を利用して王立図書館にて調べ物をしている。その手には〝北大陸魔物大図鑑〟というなんの捻りもないタイトル通りの巨大な図鑑があった。

 

 なぜ、そんな本を読んでいるのか。それは、この二週間の訓練で、成長するどころか役立たずぶりがより明らかになっただけだったからだ。力がない分、知識と知恵でカバーできないかと訓練の合間に勉強しているのである。

 

 

 

 そんなわけで、ハジメは、しばらく図鑑を眺めていたのだが……突如、「はぁ~」と溜息を吐いて机の上に図鑑を放り投げた。ドスンッという重い音が響き、偶然通りかかった司書が物凄い形相でハジメを睨む。鬼かな?

 

 

 

 ビクッとなりつつ、ハジメは急いで謝罪した。「次はねぇぞ、ゴラァッ!」という無言の睨みを頂いてなんとか見逃してもらう。自分で自分に「何やってんだ」とツッコミ、再び溜息を吐いた。溜息は今日で53回目である。

 

 

 

 ハジメはおもむろにステータスプレートを取り出し、頬杖をつきながら眺める。

 

 

 

==================================

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:2

 

天職:錬成師

 

筋力:12

 

体力:12

 

耐性:12

 

敏捷:12

 

魔力:12

 

魔耐:12

 

技能:錬成、言語理解

 

==================================

 

 

 

 これが、二週間みっちり訓練したハジメの成果である。「何やて!レベルもステータスも全然上がってないやないかい!」と、内心ツッコミをいれたのは言うまでもない。ちなみにあのゴミ(輪廻命名)はというと、

 

 

 

==================================

 

天之河光輝 17歳 男 レベル:10

 

天職:勇者

 

筋力:200

 

体力:200

 

耐性:200

 

敏捷:200

 

魔力:200

 

魔耐:200

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読

 

高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

 

==================================

 

 

 

 ざっとハジメの五倍の成長率である。、ちなみに輪廻のステータスは、

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

十五夜輪廻 17歳(534歳) 男 レベル10

 

転職:死神·剣豪·学園第一位·魔神

 

筋力:2700000

 

 

体力:1500000

 

 

耐性:3400000

 

 

 

敏捷:1000000

 

 

 

魔力:2000000

 

 

 

魔耐:1200000

 

 

霊圧:2300000

 

技能:無から有を創造する程度の能力·運命を決定する程度の能力·創造·浅打創造·超剣技·超剣術·日の呼吸+[爍刀]·斬魄刀+[始解]+[卍解]·鬼道+[縛道]+[破道]·ベクトル操作+[反射]·魔人化+[魔神化]·自己再生·不老不死·魔剣ロストベイン・霊槍シャスティホル·魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・纏雷[+雷耐性][+出力増大]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛[+部分強化][+集中強化][+付与強化]・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復[+魔素集束]・魔力変換[+体力変換][+治癒力変換][+衝撃変換]・限界突破+[覇潰]·錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成][+高速錬成][+自動錬成][+イメージ補強力上昇][+消費魔力減少][+鉱物分解]·言語理解

 

 

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

と、技能はほぼ変わって無いが、数値が跳ね上がっており、何か一つ項目が増えていた。

 

 

 しかも、ハジメには魔法の適性がないこともわかった。

 

 

 

 魔法適性がないとはどういうことか。この世界における魔法の概念を少し説明しよう。

 

 

 

 トータスにおける魔法は、体内の魔力を詠唱により魔法陣に注ぎ込み、魔法陣に組み込まれた式通りの魔法が発動するというプロセスを経る。魔力を直接操作することはできず、どのような効果の魔法を使うかによって正しく魔法陣を構築しなければならない。

 そして、詠唱の長さに比例して流し込める魔力は多くなり、魔力量に比例して威力や効果も上がっていく。また、効果の複雑さや規模に比例して魔法陣に書き込む式も多くなる。それは必然的に魔法陣自体も大きくなるということに繋がる。

 例えば、RPG等で定番の〝火球〟を直進で放つだけでも、一般に直径十センチほどの魔法陣が必要になる。基本は、属性・威力・射程・範囲・魔力吸収(体内から魔力を吸い取る)の式が必要で、後は誘導性や持続時間等付加要素が付く度に式を加えていき魔法陣が大きくなるということだ。

 しかし、この原則にも例外がある。それが適性だ。

 適性とは、言ってみれば体質によりどれくらい式を省略できるかという問題である。例えば、火属性の適性があれば、式に属性を書き込む必要はなく、その分式を小さくできると言った具合だ。

 この省略はイメージによって補完される。式を書き込む必要がない代わりに、詠唱時に火をイメージすることで魔法に火属性が付加されるのである。

 大抵の人間はなんらかの適性を持っているため、上記の直径十センチ以下が平均であるのだが、ハジメの場合、全く適性がないことから、基本五式に加え速度や弾道・拡散率・収束率等事細かに式を書かなければならなかった。

 そのため、〝火球〟一発放つのに直径二メートル近い魔法陣を必要としてしまい、実戦では全く使える代物ではなかったのだ。

 ちなみに、魔法陣は一般には特殊な紙を使った使い捨てタイプか、鉱物に刻むタイプの二つがある。前者は、バリエーションは豊かになるが一回の使い捨てで威力も落ちる。後者は嵩張るので種類は持てないが、何度でも使えて威力も十全というメリット・デメリットがある。イシュタル達神官が持っていた錫杖は後者だ。やはり教会はかなり儲かってるらしい(輪廻には遠く及ばないが)

 

 

 そんなわけで近接戦闘はステータス的に無理、魔法は適性がなくて無理、頼みの天職・技能の〝錬成〟は鉱物の形を変えたりくっつけたり、加工できるだけで役に立たない。錬成に役立つアーティファクトもないと言われ、錬成の魔法陣を刻んだ手袋をもらっただけ。それと、輪廻から刀を貰ったが、使い方がよくわからない。

 

 

 

 一応、頑張って落とし穴? とか、蛸壺?みたいのを地面に作ることはできるようになったし、その規模も少しずつ大きくはなっているが……

 

 

 

 対象には直接手を触れなければ効果を発揮しない術である以上、敵の眼前でしゃがみ込み、地面に手を突くという自殺行為をしなければならず、結局のところ戦闘では役立たずであることに変わりはない。

 

 

 

 この二週間ですっかりクラスメイト達から無能のレッテルを貼られたハジメ。仕方なく知識を溜め込んでいるのであるが……なんとも先行きが見えず、ここ最近すっかり溜息が増えた。

 

 

 

 いっそ、旅にでも出てしまおうかと、図書館の窓から見える青空をボーと眺めながら思う。大分末期である。

だかそんな事を思っても今は変わらない。

 

 

魔人族は、全員が高い魔法適性を持っており、人間族より遥かに短い詠唱と小さな魔法陣で強力な魔法を繰り出すらしい。数は少ないが、南大陸中央にある魔人の王国ガーランドでは、子供まで相当強力な攻撃魔法を放てるようで、ある意味、国民総戦士の国と言えるかもしれない。

 

 

 

 人間族は、崇める神の違いから魔人族を仇敵と定め(聖教教会の教え)、神に愛されていないと亜人族を差別する。魔人族も同じだ。亜人族は、もう放っておいてくれといった感じだろうか? どの種族も実に排他的である。

 

 

 

(う~ん、西の海に出ようか? 確か、エリセンという海上の町があるらしいし。なによりマーメイドは見たい。男のロマンだよ。あと海鮮料理が食べたい、輪廻に食材渡して作って貰おうかな)(輪廻は料理が趣味だが、普通にプロ並みの腕を持っている。)

 

 

 

 【海上の町エリセン】は海人族と言われる亜人族の町で西の海の沖合にある。亜人族の中で唯一、王国が公で保護している種族だ。

 

 

 

 その理由は、北大陸に出回る魚介素材の八割が、この町から供給されているからである。全くもって身も蓋もない理由だ。「壮大な差別理由はどこにいったんや!?」と、この話を聞いたときハジメは内心盛大にツッコミを入れたものだ。(実は声に出ており、輪廻に聞かれた事に気づいていない。)

 

 

 

 ちなみに、西の海に出るには、その手前にある【グリューエン大砂漠】を超えなければならない。この大砂漠には輸送の中継点として重要なオアシス【アンカジ公国】や【グリューエン大火山】がある。この【グリューエン大火山】は七大迷宮の一つだ。

 

 

 

 七大迷宮とは、この世界における有数の危険地帯をいう。反逆者が作ったとも言われている。

 

 ハイリヒ王国の南西、グリューエン大砂漠の間にある【オルクス大迷宮】と先程の【ハルツェナ樹海】もこれに含まれる。

 

 

 

 七大迷宮でありながらなぜ三つかというと、他は古い文献などからその存在は信じられているのだが詳しい場所が不明で未だ確認はされていないからだ。

 一応の目星は付けられていて、大陸を南北に分断する【ライセン大峡谷】や、南大陸の【シュネー雪原】の奥地にある【氷雪洞窟】がそうではないかと言われている。

 

 

(はぁ~、結局、帰りたいなら逃げる訳にはいかないんだよね。ってヤバイ、訓練の時間だ!)

 

 

 

 結局、ただの現実逃避でしかないと頭を振り、訓練の時間が迫っていることに気がついて慌てて図書館を出るハジメ。王宮までの道のりは短く目と鼻の先ではあるが、その道程にも王都の喧騒が聞こえてくる。露店の店主の呼び込みや遊ぶ子供の声、はしゃぎ過ぎた子供を叱る声、実に日常的で平和だ。あとなんか聞き覚えのある声がする。

 

 

 

(やっぱり、戦争なさそうだからって帰してくれないかなぁ~、と言うか輪廻達が居なかったら失踪してる自身がある)

 

 

 

 ハジメは、そんな有り得ないことを夢想した。これから始まる憂鬱な時間からの現実逃避である。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 訓練施設に到着すると既に何人もの生徒達がやって来て談笑したり自主練したりしていた。どうやら案外早く着いたようである。ハジメは、自主練でもして待つかと、支給された西洋風の細身の剣を取り出した。

輪廻達はまだ来てないなぁーとか想いつつ、剣を振っていた。

しかしその時、唐突に後ろから衝撃を受けてハジメはたたらを踏んだ。なんとか転倒は免れたものの抜き身の剣を目の前にして冷や汗が噴き出る。顔をしかめながら背後を振り返ったハジメは予想通りの面子に心底うんざりした表情をした。

 そこにいたのは、檜山大介率いる小悪党四人組(ハジメ命名、輪廻は馬鹿の集まりと読んでいる)である。訓練が始まってからというもの、ことあるごとにハジメにちょっかいをかけてくるのだ。ハジメが訓練を憂鬱に感じる半分の理由である。もう半分は自分の無能っぷり、後輪廻はチートすぎや。

 

「よぉ、南雲。なにしてんの? お前が剣持っても意味ないだろが。マジ無能なんだしよ~」

 

「ちょっ、檜山言い過ぎ! いくら本当だからってさ~、ギャハハハ」

 

「なんで毎回訓練に出てくるわけ? 俺なら恥ずかしくて無理だわ! ヒヒヒ」

 

「なぁ、大介。こいつさぁ、なんかもう哀れだから、俺らで稽古つけてやんね?」

 

 一体なにがそんなに面白いのかニヤニヤ、ゲラゲラと笑う檜山達。

 

「あぁ? おいおい、信治、お前マジ優し過ぎじゃね? まぁ、俺も優しいし? 稽古つけてやってもいいけどさぁ~」

 

「おお、いいじゃん。俺ら超優しいじゃん。無能のために時間使ってやるとかさ~。南雲~感謝しろよ?」

 

 そんなことを言いながら馴れ馴れしく肩を組み人目につかない方へ連行していく檜山達。それにクラスメイト達は気がついたようだが見て見ぬふりをする。

 

「いや、一人でするから大丈夫だって。僕のことは放っておいてくれていいからさ」(は?てめぇ等なんぞに訓練なんかしてもらいたくねえわ!)

 

 一応、やんわりと断ってみるハジメ。(心の中では憤っている)

 

「はぁ? 俺らがわざわざ無能のお前を鍛えてやろうってのに何言ってんの? マジ有り得ないんだけど。お前はただ、ありがとうございますって言ってればいいんだよ!」

 

 そう言って、脇腹を殴る檜山。

 

 檜山達も段々暴力にためらいを覚えなくなってきているようだ。思春期男子がいきなり大きな力を得れば溺れるのは仕方ないこととはいえ、その矛先を向けられては堪ったものではない。かと言って反抗できるほどの力もない。ハジメは歯を食いしばるしかなかった。演技だが。

 

 

 

 やがて、訓練施設からは死角になっている人気のない場所に来ると、檜山はハジメを吹き飛ばした。

 

 

 

「ほら、さっさと立てよ。楽しい訓練の時間だぞ?」

 

 

 

 檜山、中野、斎藤、近藤の四人がハジメを取り囲む。ハジメは悔しさに唇を噛み締めながら立ち上がった。もう一度言おう、演技だ

 

 

 

「ぐぁ!?」

 

 

 

 その瞬間、背後から背中を強打された。近藤が剣の鞘で殴ったのだ。前のめりに倒れるハジメに、更に追撃が加わる。

 

 

 

「ほら、なに寝てんだよ? 焦げるぞ~。ここに焼撃を望む――〝火球〟」

 

 

 

 中野が火属性魔法〝火球〟を放つ。倒れた直後であることと背中の痛みで直ぐに起き上がることができないハジメは、ゴロゴロと必死に(何度でも言おう、演技だ。)転がりなんとか避ける。だがそれを見計らったように、今度は斎藤が魔法を放った。

 

 

 

「ここに風撃を望む――〝風球〟」

 

 

 

 風の塊が立ち上がりかけたハジメの腹部に直撃し、ハジメは仰向けに吹き飛ばされた。対してダメージ無さそうだけど。

 

 

 魔法自体は一小節の下級魔法だ。それでもプロボクサーに殴られるくらいの威力はある。それは、彼等の適性の高さと魔法陣が刻まれた媒介が国から支給されたアーティファクトであることが原因だ。.....多分やけど。

 

 

 

「ちょ、マジ弱すぎ。南雲さぁ~、マジやる気あんの?」

 

 

 

 そう言って、蹲うずくまるハジメの腹に蹴りを入れる檜山。(こいつ等輪廻に締めて貰おう。)

そんな時。

「てめぇ等ァ、死ぬ覚悟はちゃんと出来たかァ?そうか、なら死ね!日の呼吸、壱の型改·円舞一閃」ザンっ

 

「熱い!いてえよぉ!誰か助けてくれー!」

そこへ雫達、東方組、+ゴミ&腰巾着が来た

霊「何してんの!って輪廻、またそいつ等の事殺ろうとしてるの!?殺すのは駄目って言ったじゃない!」

アリス「ハジメくん大丈夫?」

心配するアリスの言葉しかし、そこで水を差すのが勇者クオリティー。

 

 

 

「そうだ!十五夜、なぜお前は'何もしていない'彼等を殺そうとするんだ!それに!南雲自身ももっと努力すべきだ。弱さを言い訳にしていては強くなれないだろう? 聞けば、訓練のないときは図書館で読書に耽っているそうじゃないか。俺なら少しでも強くなるために空いている時間も鍛錬にあてるよ。南雲も、もう少し真面目になった方がいい。檜山達も、南雲の不真面目さをどうにかしようとしたのかもしれないだろ?」

 

 

 

 何をどう解釈すればそうなるのか。ハジメは半ば呆然としながら、ああ確かに天之河は基本的に性善説で人の行動を解釈する奴だったと、あれを馬鹿にした目で見ていた。

 

 

 

 天之河の思考パターンは、基本的に人間はそう悪いことはしない。そう見える何かをしたのなら相応の理由があるはず。もしかしたら相手の方に原因があるのかもしれない! という過程を経るのである。(全く理屈になってねぇ)

 

 

 

 しかも、光輝の言葉には本気で悪意がない。(多分)真剣にハジメを思って忠告しているのだ。ハジメは既に誤解を解く気力が萎なええている。ここまで自分の思考というか正義感に疑問を抱かない人間には何を言っても無駄だろうと。

しかしそれを看破出来ぬ者が居た、輪廻だ

「てめぇはハジメの何を知ってその言葉を言ってるんだア?人の事を知らねぇくせによくもまぁあーだこーだ、言って人の努力を否定するんだなァ、人の過去を知りもしねぇくせによォ」

その言葉に対してゴミは

「そう言えば十五夜!お前も訓練と言って霊夢達と(何勝手に輪廻君の嫁(予定)達の事呼び捨てにしとんじゃゴラァ!(作者、心の声))一緒に何処かに行ってるそうじゃないか、そうやって努力をしないから、親に捨てられるんだ!」

アリス(あれはとうとう輪廻の逆鱗に触れてしまったようね、きっともうあれは助からないわね)

その言葉に輪廻は幽鬼のようになり、小声で何か言っていた。

「あ……か……す、」

「何だ!何かあるならハッキリと言え!」

「てめぇもアイツとおなじかよ!お前等の用な存在するだけで、害を及ぼすゴミ共は俺が絶対に殺す!ザ・ワールド!」カチッ時が止まり動けるのは咲夜と輪廻だけだ。

「日の呼吸、

円舞(えんぶ)

碧羅の天(へきらのてん)

烈日紅鏡(れつじつこうきょう)

灼骨炎陽(しゃっこつえんよう)

陽華突(ようかとつ)

日暈の龍 頭舞い(にちうんのりゅう かぶりまい)

斜陽転身(しゃようてんしん)

飛輪陽炎(ひりんかげろう)

輝輝恩光(ききおんこう)

火車(かしゃ)

幻日虹(げんにちこう)

炎舞(えんぶ)

縛道の九十九、禁

破道の八十八飛龍撃属振天雷砲

破道の九十黒棺

破道の九十一 千手皎天汰炮

破道の九十九五竜天滅」

ザザンッザンっザシュザシュザクザクザスザス、キーン業ドカドカドコーン、ドカーン!ズサァァァドドドンドカーン!

世界でも滅ぼすのかな?と言う程の攻撃を加えたが、一応生きている。

そして時は動き出す。

「ごっはっぁ、」

「てめぇ等は何時も何時もうぜぇんだよ!自分のやってる事全部が全部正しい事だと思いやがって!そうやって人の心に土足で踏みにじる!そんなことしてたらなァ、誰もが嫌になって来るに決まってんだろうがァ!ゴミが!」

と言い輪廻は、自分の部屋へと帰っていったが、あのゴミはまだ分かってないようです。

「なぜ彼は俺にこんな事をするんだ!おい南雲!お前のせいだろう!」←(意味不明)

これには流石にイラッとしたハジメだが、冷静にこう返した。

「はぁ?何でもかんでも人のせいにするのやめてくれない?それになぜこんな事を、するのかって?そんなの自分の胸に手を当てて考えて見れば?後、そんな事をまた言ってると、今度こそ輪廻に殺されるよ?ほら、輪廻が部屋から出て来てお前に手を向けてるよ?霊夢達が必死になって抑えてるけど。」

 

輪廻「千手の涯 届かざる闇の御手 映らざる天の射手 光を落とす道 火種を煽る風 集いて惑うな我が指を見よ 光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔 弓引く彼方 皎皎とし...」

妖「ちょ、輪廻さんもう駄目ですって!これ以上やると、あれ、死んじゃいますって!」

「チッ!しゃァねぇなァ!」

 

とまぁそんな感じで、夕食後。

何時もなら直ぐに解散して寝るのだが、今日はメルド団長から伝えることがあると引き止められた。何事かと注目する生徒達に、メルド団長は野太い声で告げる。

 

 

 

「明日から、輪廻から合った要請で実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! では、解散!」

 

 

 

 そう言って伝えることだけ伝えるとさっさと行ってしまった。

ハジメは明日何も無いといいなぁ、と思いながら自分の部屋へと戻った。

 

 

 

 

 

 

その夜、輪廻は、メルドにある物を渡す為に部屋を訪れていた。

「メルド、居るかァ?」

「ああ、どうしたんだ?」

「一つ渡したいものがあってなァ、これだ。」

 

輪廻はそう言うと一本の刀を取り出した。

 

「これは?刀か?」

「あぁ、これはちょっと特別な刀でな、見た目は唯の刀だが、凄まじい力が宿っている。刀の方から呼ばれたら力が使えるようになるが、意思が弱けりゃ食われる、だからお前とハジメと雫だけに渡したんだ、

他の奴らは渡しても使えなさそうだからなァ。まァそんな感じだ、持ってりゃいつかは役に立つはずだ。多分。」

 

「そうか、ありがとう。」

「あぁ、そんじゃあな。」

 

 

 

 

輪廻は部屋から出たあと、独り言を言っていた。

 

「さて、明日から奈落生活かァ、めんどくさそうだなァ」

その言葉の意味を理解できるのは、本人と作者と勘のいい読者だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想と高評価よろしくぅ↑



眠い、おやすみなさい。


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第四話 トラップとベヒモス

こんちわ湯たんぽです。
今回は、半分位原作通りです。
今回、ほぼ全て書いた。
ようやく次回から奈落編だわ〜、疲れた。

それでは何時もの注意書き言ってみよー
作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
オリが何言ってるか解らなくても気にしないで。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十二人ぐらいになりそう!
輪廻君むっちゃちーと。


 

 

 

現在、ハジメ達は【オルクス大迷宮】の正面入口がある広場に集まって来ていた。

そしてとうとう中に入る。

迷宮の中は、外の賑やかさとは無縁だった。

 

 縦横五メートル以上ある通路は明かりもないのに薄ぼんやり発光しており、松明や明かりの魔法具がなくてもある程度視認が可能だ。緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているらしく、【オルクス大迷宮】は、この巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているらしい。

 

 一行は隊列を組みながらゾロゾロと進む。しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートル位ありそうだ。

 

と、その時壁の隙間から灰色の物体が飛び出てきた。

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

灰色の体毛に赤黒い目が不気味に光る。ラットマンという名称に相応しく外見はねずみっぽいが、二足歩行で上半身がムキムキだった。八つに割れた腹筋と膨れあがった胸筋の部分だけ毛がない。まるで見せびらかすように。

 

 正面に立つ光輝達、特に前衛である雫の頬が引き攣っている。やはり、キモいらしい。

 

光輝、雫、龍太郎の三人で迎撃する。その間に、香織と特に親しい女子二人、メガネっ娘の中村恵里とロリ元気っ子の谷口鈴が詠唱を開始。魔法を発動する準備に入る。訓練通りの堅実なフォーメーションだ。

 

 光輝は純白に輝くバスタードソードを視認も難しい程の速度で振るって数体をまとめて葬っている。

 

 彼の持つその剣はハイリヒ王国が管理するアーティファクトの一つで、お約束に漏れず名称は〝聖剣〟である。光属性の性質が付与されており、光源に入る敵を弱体化させると同時に自身の身体能力を自動で強化してくれるという、むしろ魔剣のような性能である。。

 

 龍太郎は、空手部らしく天職が〝拳士〟であることから籠手と脛当てを付けている。これもアーティファクトで衝撃波を出すことができ、また決して壊れないのだという。龍太郎はどっしりと構え、見事な拳撃と脚撃で敵を後ろに通さない。無手でありながら、その姿は盾役の重戦士のようだ。(盾もって無いけどね。)

 

 雫は、サムライガールらしく〝剣士〟の天職持ちで輪廻から貰った刀を、抜刀術の要領で抜き放ち、敵を掻っ捌いていく。その動きは洗練されていて、騎士団員をして「流石だな!」と言わせていた。

 

気がつけば、広間のラットマンは全滅していた。他の生徒の出番はなしである。どうやら、光輝達召喚組の戦力では一階層の敵は弱すぎるらしい。当たり前だけど。

 

「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

ここまで、他の生徒や、輪廻達の出番は全くなかった。と言うか輪廻は前線に出るのを面倒臭そうにしていた。

 

そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調よく階層を下げて行った。

 

そして、少し時間が掛かりつつも、二十階層にたどり着いた。

 

 現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしいが、それは百年以上前の冒険者がなした偉業であり、今では超一流で四十階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いという。

 

しかし、迷宮で一番恐いのはトラップである。場合によっては致死性のトラップも数多くあるのだ。

 

この点、トラップ対策として〝フェアスコープ〟というものがある。これは魔力の流れを感知してトラップを発見することができるという優れものだ。迷宮のトラップはほとんどが魔法を用いたものであるから八割以上はフェアスコープで発見できる。ただし、索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば使用者の経験による索敵範囲の選別が必要だ。

 

「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」

 

メルド団長の声がよく響く。

 

ここまでハジメ達は特に何もしていない、と言うか出る幕が全くないのだ。輪廻達のグループに居る為何処にも属してない訳ではないが。

(ただ、これじゃあ完全に寄生プレイヤー感が満載だなぁ、はぁ~)

 

そんな事を思っていたら、騎士団員が弱った魔物をハジメの方へ弾き飛ばしてきたので、溜息を吐きながら接近し、手を突いて地面を錬成。万一にも動けないようにして、魔物の腹部めがけて剣を突き出し串刺しにした。

 

(まぁ、なんか錬成の精度が徐々に上がっているし、地道に頑張ろう)

 

魔力回復薬を口に含みながら、額の汗を拭うハジメ。騎士団員達が感心したようにハジメを見ていることには気がついていない。

 

実を言うと、騎士団員達もハジメには全く期待していなかった。ただ、戦闘に余裕があるので所在無げに立ち尽くすハジメを構ってやるかと魔物をけしかけてみたのだ。もちろん、弱らせて。

 

騎士団員達としては、ハジメが碌に使えもしない剣か、刀(輪廻から貰った)で戦うと思っていた。ところが実際は、錬成を利用して確実に動きを封じてから、止めを刺すという騎士団員達も見たことがない戦法で確実に倒していくのだ。錬成師は鍛冶職とイコールに考えられている。故に、錬成師が実戦で錬成を利用することなどあり得なかった。

 

ハジメとしては、輪廻達に寄生しているだけの、自分の唯一の武器は錬成しかないと考えていたので、鉱物を操れるなら地面も操れるだろうと鍛錬した結果なのだが、周りが派手に強いので一匹相手にするので精一杯の自分はやはり無能だと思い込んでいた。

 

小休止に入り、ふと前方を見ると香織と目が合った。彼女はハジメの方を見て微笑んでいる。

 

「香織、なに南雲君と見つめ合っているのよ?迷宮の中でラブコメなんて随分と余裕じゃない?」

 

 からかうような口調に思わず顔を赤らめる香織。怒ったように雫に反論する。

 

「もう、雫ちゃん!変なこと言わないで!それに雫ちゃんだって、十五夜君の事を!ムゴムゴ」

 

「ちょっと黙りましょうか?香織。」

 

そんなこんなで一行は二十階層を探索する。

迷宮の各階層は数キロ四方に及び、未知の階層では全てを探索しマッピングするのに数十人規模で半月から一ヶ月はかかるというのが普通だ。

 

現在、四十七階層までは確実なマッピングがなされているので迷うことはない。トラップに引っかかる心配もないはずだった。

 

二十階層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと二十一階層への階段があるらしい。

 

そこまで行けば今日の実戦訓練は終わりらしい。神代の転移魔法の様な便利なものは現代にはないので、また地道に帰らなければならない。一行は、若干、弛緩した空気の中、せり出す壁のせいで横列を組めないので縦列で進む。

 

そんな中で先頭を行く光輝達やメルド団長が立ち止まった。訝しそうなクラスメイトを尻目に戦闘態勢に入る。どうやら魔物のようだ。

「擬態しているぞ!周りをよ~く注意しておけ!」

 

メルド団長の忠告が飛ぶ。

 

その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物のようだ。

 

「ロックマウントだ!二本の腕に注意しろ!怪力だぞ!」

 

メルド団長の声が響く。光輝達が相手をするようだ。飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で弾き返す。光輝と雫が取り囲もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。

龍太郎の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った直後。

「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」

部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。

 

「ぐっ!?」

 

「うわっ!?」

 

「きゃあ!?」

 

体にビリビリと衝撃が走り、ダメージはないものの硬直してしまう。ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。

 

まんまと食らってしまった前衛組が一瞬硬直してしまった。

ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ香織達後衛組に向かって投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで! 咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、

岩が魔球とでも言うかのような速度で、香織達へと迫る。

 

香織達が、準備していた魔法で迎撃せんと魔法陣が施された杖を向けた。避けるスペースが心もとないからだ。

しかし、発動しようとした瞬間、香織達は衝撃的光景に思わず硬直してしまう。

 

 

 

 なんと、投げられた岩もロックマウントだったのだ。空中で見事な一回転を決めると両腕をいっぱいに広げて香織達へと迫る。その姿は、言葉で表すなら、ル○ンダイブだ。「ふ〜じこちゃ~ん!」という声が聞こえてきそうである。しかも、妙に目が血走り鼻息が荒い。香織も恵里も鈴も「ヒィ!」と思わず悲鳴を上げて魔法の発動を中断してしまった。そこへ、

「破道の一、衝。」

ドキャーンと、明らかに一番弱い呪文と思えないほどの威力の、光線が輪廻の指から飛んできた。

「てめぇ等、戦闘中だぞ、油断すんじゃねェ」

香織達は、「ご、ごめん!」と謝るが、相当キモかったらしく、まだ顔が青褪めていた。

そんな様子を見てキレる馬鹿が一人。正義感(?)と思い込みの塊、我らが勇者(笑)天野川光輝である。

「貴様よくも香織達を!許さない!」

どうやら気持ち悪さで青褪めているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたらしい。彼女達を怯えさせるなんて! と、クソどうでも良い点で怒りをあらわにするゴミ。それに呼応してか彼の聖剣が輝き出す。

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ――〝天翔閃〟!」

「アイツ馬鹿じゃねえの」

「あっ、こら、馬鹿者!」

メルド団長と輪廻の声を無視して、光輝は大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り下ろした。

その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていた聖剣から、その光自体が斬撃となって放たれた。逃げ場などない。曲線を描く極太の輝く斬撃が僅かな抵抗も許さずロックマウントを縦に両断し、更に奥の壁を破壊し尽くしてようやく止まった。

パラパラと部屋の壁から破片が落ちる。「ふぅ~」と息を吐きイケメンスマイルで香織達へ振り返った大馬鹿。香織達を怯えさせた魔物は自分が倒した。もう大丈夫だ! と声を掛けようとして、

「衝」

輪廻の攻撃を喰らい、さらに輪廻に文句を言う前に、で迫っていたメルド団長の拳骨を食らった。

「へぶぅ!?」

「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうすんだ!」

二回怒られる馬鹿、ザマァ!w

 

その時、ふと香織が崩れた壁の方に視線を向けた。

 

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。

そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。

 

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入るとか。

 

「素敵……」

 

香織が、メルドの簡単な説明を聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。そして、誰にも気づかれない程度にチラリとハジメに視線を向けた。もっとも、雫と輪廻達ともう一人だけは気がついていたが……

 

そんな時。

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

そう言って唐突に動き出したのは馬鹿2だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに慌てたのはメルド団長だ。

 

「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

しかし、馬鹿は聞こえないふりをして、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。

メルド団長は、止めようと檜山を追いかける。しかも、輪廻の声を聞き一気に青褪めた。

「メルド!トラップだ!」

 

「ッ!?」

しかし、メルド団長も、輪廻の警告も一歩遅かった。

馬鹿がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。

グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。美味しい話には裏がある。世の中の常識である。

 

魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。それはまるで、召喚されたあの日の再現だ。

 

部屋の中に光が満ち、ハジメ達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

ハジメ達は空気が変わったのを感じた。次いで、ドスンという音と共に地面に叩きつけられた。

尻の痛みに呻き声を上げながら、ハジメは周囲を見渡す。クラスメイトのほとんどはハジメと同じように尻餅をついていたが、メルド団長や騎士団員達、輪廻達、光輝達など一部の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。

 

それを確認したメルド団長が、険しい表情をしながら指示を飛ばした。

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出す生徒達。

しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現したからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そこからは一体の巨大な魔物が、

 

その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の酷く驚いた用な声がやけに明瞭に響いた。

 

「まさか、、ベヒモス、、なのか?」

 

 

 

 

メルド団長が呟いた〝ベヒモス〟という魔物は、大きく息を吸うと凄まじい咆哮を上げた。

「グルァァァァァアアアアア!!」

 

「ッ!?」

 

その咆哮で正気に戻ったのか、メルド団長が矢継ぎ早に指示を飛ばす。

「アラン! 生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ! カイル、イヴァン、ベイル! 全力で障壁を張れ! ヤツを食い止めるぞ! 光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」

「待って下さい、メルドさん! 俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達も「馬鹿野郎! あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ! ヤツは六十五階層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ! さっさと行け! 私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」

 

メルド団長の鬼気迫る表情に一瞬怯むも、「見捨ててなど行けない!」と踏み止まる光輝。

 

どうにか撤退させようと、再度メルドが馬鹿にに話そうとした瞬間、ベヒモスが咆哮を上げながら突進してきた。このままでは、撤退中の生徒達を全員轢殺してしまうだろう。

 

しかしそこへ、

「おいメルドォ、刀から呼びかけはあったかァ?」

と、言いながらベヒモスを片手で抑えている輪廻が居た、

「輪廻!いや、まだだが、」

 

「チッしゃあねぇ、おいメルド、一つ貸しだぞ?

ハァ〜やるか、おい霊夢達、」

 

霊「なに!?」

 

「後ろの奴等を退避させてろ、てめぇらでもそれぐらいは出来んだろ?」

 

妖「わ、解りました。」

 

「じゃぁやるか、ハジメ、来い」

 

「?う、うん、何をするの?」

「それがだな.........」

 

一分後

「分かったよ、あの時の約束を果たすときが来たね。」

「アァ、俺との約束も忘れんなよ。っとそろそろ行くぜぇ、」

 

「万象一切灰燼となせ、『流刃若火』」

業ッ、と刀が炎を纒い、周りが日の海になる。

「ハジメ、直ぐに終わらせるぞ。」

「うん!」

「行くぜぇ、

日の呼吸、円舞(えんぶ)

碧羅の天(へきらのてん)

烈日紅鏡(れつじつこうきょう)

灼骨炎陽(しゃっこつえんよう)

陽華突(ようかとつ)

日暈の龍 頭舞い(にちうんのりゅう かぶりまい)

斜陽転身(しゃようてんしん)

飛輪陽炎(ひりんかげろう)

輝輝恩光(ききおんこう)

火車(かしゃ)

幻日虹(げんにちこう)

炎舞(えんぶ)」

ズシャァァァ、バキバキ、ドゴッ

ベヒモスは倒せたが、威力が高すぎて橋が一瞬で壊れ、その衝撃でハジメと輪廻は橋の外へと投げ出された。

「「「「「「「「輪廻(さん)!ハジメ(君)!」」」」」」」」

霊夢や魔理沙など空を飛べる者は直ぐに行こうとするが。

「来んじゃねぇ!大結界!」

「何よこの壁!」

「何なのぜ!この壁みたいなのは!」

輪廻の大結界により阻まれる。

じゃァなァ、また会いに来るぜぇという言葉を残して、輪廻はハジメを脇に抱え奈落へ消えていった。





次回から、奈落編です。後、咲夜とさとりの天職を考え中です。

感想と高評価よろしくぅ↑

では、さようなら(@^^)/~~~


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第五話 奈落終了のお知らせ

こんちくわの天ぷら、どうも、湯たんぽです、
いやね?今回頑張って奈落回やろうと思ったんだけどね?何かスピーディーに進みすぎて、、、、、、
奈落編が今回で終わっちゃったZOY☆
と言う訳で奈落編を期待してた皆様は、ごめんなさい。
すっごく反省してます。但し後悔はあんまりして無い!


それでは何時もの注意書き言ってみよー

それでは何時もの注意書き言ってみよー
作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
オリが何言ってるか解らなくても気にしないで。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十二人ぐらいになりそう!
輪廻君むっちゃちーと。

何処かに新要素が入ってるよ!探してみてね!。





ハジメside

 

「あいつ等が、まさか俺達がわざと落ちたなんて気付きやしないだろうな。と、そろそろあの階層から数えて五十階か、そろそろ主も追ってきてるだろう。」

え、?喋り方が違うだろって?それは、

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ハジメ」

「何?」

「今から俺があの犬っころを倒す、そのどさくさに紛れて橋を壊す。橋を壊したら俺の近くによって来い、下に落ちる。」

「ああ、このパーティーから離れるんだね。分かったよ。」

「それから、下に落ちたら、この肉と、水を一緒に食べろ。そして、最初の一階層から数えて、五十階下に降りろ。そこまで行くのに手段を選ぶな。自分の錬成で銃を作るなり、魔物を食って強くなるなり。」

「分かった。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

とまぁそんな感じの事があって、言われたとおりに五十階まで来たが、この扉の先には何かあるんだろうな?

人がいても助けねえがな。

 

ちなみにハジメの現在のステータス。

 

=====================================

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:49

 

天職:錬成師

 

筋力:880

 

体力:970

 

耐性:860

 

敏捷:1040

 

魔力:760

 

魔耐:760

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性·斬魄刀・言語理解

 

=====================================

となっている。

 

 

「さながらパンドラの箱だな。……さて、どんな希望が入っているんだろうな?」

 

 自分の今持てる武技と武器、そして技能。それらを一つ一つ確認し、コンディションを万全に整えていく。全ての準備を整え、ハジメはゆっくりドンナーを抜いた。

 

そして、そっと額に押し当て目を閉じる。覚悟ならとっくに決めている。しかし、重ねることは無駄ではないはずだ。ハジメは、己の内へと潜り願いを口に出して宣誓する。

 

「俺は、生き延びて故郷に帰る。そして、主に仕える。邪魔するものは敵。敵は全て殺す!」

 

 目を開けたハジメの口元にはいつも通りニヤリと不敵な笑みが浮かんでいた。

 

ウォぉぉぉァァ」

ドパンッドパンッ

制作した銃、ドンナーでサイクロプスっぽい奴を撃ち殺し、扉の前に立った。

 

「まぁ、いいか。肉は後で取るとして……」

 

 

 

 ハジメは、チラリと扉を見て少し思案する。

 

 

 

 そして、〝風爪〟でサイクロプスを切り裂き体内から魔石を取り出した。血濡れを気にするでもなく二つの拳大の魔石を扉まで持って行き、それを窪みに合わせてみる。

 

 

 

 ピッタリとはまり込んだ。直後、魔石から赤黒い魔力光が迸ほとばしり魔法陣に魔力が注ぎ込まれていく。そして、パキャンという何かが割れるような音が響き、光が収まった。同時に部屋全体に魔力が行き渡っているのか周囲の壁が発光し、久しく見なかった程の明かりに満たされる。

 

 

 

 ハジメは少し目を瞬かせ、警戒しながら、そっと扉を開いた。

 

 扉の奥は光一つなく真っ暗闇で、大きな空間が広がっているようだ。ハジメの〝夜目〟と手前の部屋の明りに照らされて少しずつ全容がわかってくる。

 

 中は、聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている。

 

 その立方体を注視していたハジメは、何か光るものが立方体の前面の中央辺りから生えているのに気がついた。

 

 近くで確認しようと扉を大きく開け固定しようとする。いざと言う時、ホラー映画のように、入った途端バタンと閉められたら困るからだ。

 

 しかし、ハジメが扉を開けっ放しで固定する前に、それは動いた。

 

「……だれ?」

 

 かすれた、弱々しい女の子の声だ。ビクリッとしてハジメは慌てて部屋の中央を凝視する。すると、先程の〝生えている何か〟がユラユラと動き出した。差し込んだ光がその正体を暴く。

 

「人……なのか?」

 

〝生えていた何か〟は人だった。

 

 上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪が某ホラー映画の女幽霊のように垂れ下がっていた。そして、その髪の隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳が覗のぞいている。年の頃は十二、三歳くらいだろう。随分やつれているし垂れ下がった髪でわかりづらいが、それでも美しい容姿をしていることがよくわかる。

 

 流石に予想外だったハジメは硬直し、紅の瞳の女の子もハジメをジッと見つめていた。やがて、ハジメはゆっくり深呼吸し決然とした表情で告げた。

 

「すまんなぁ、ちょっと入る部屋間違えたみたいや。」←(誰?)

 

そう言ってそっと扉を閉めようとするハジメ。それを金髪紅眼の女の子が慌てたように引き止める。もっとも、その声はもう何年も出していなかったように掠かすれて呟つぶやきのようだったが……

 

 

 

 ただ、必死さは伝わった。

 

 

 

「ま、待って! ……お願い! ……助けて……」

 

「嫌です」

 

 

 

 そう言って、やはり扉を閉めようとするハジメ。鬼である。

 

 

 

「ど、どうして……なんでもする……だから……」

 

 

 

 女の子は必死だ。首から上しか動かないが、それでも必死に顔を上げ懇願こんがんする。

 

 

 

 しかし、ハジメは鬱陶うっとうしそうに言い返した。

 

 

 

「あのな、こんな奈落の底の更に底で、明らかに封印されているような奴を解放するわけないだろう? 絶対ヤバイって。見たところ封印以外何もないみたいだし……脱出には役立ちそうもない。それに、主から自分が生きるのに必死なときは、助けられても見捨てろと、言われてるんでね。という訳で……」

 

全くもって正論だった。

 

 だがしかし、普通、囚われた女の子の助けを求める声をここまで躊躇ためらいなく切り捨てられる人間はそうはいないだろう。元の優しかったハジメは確かに永遠にピチュンしてしまったようだ。

 

 すげなく断られた女の子だが、もう泣きそうな表情で必死に声を張り上げる。

 

「ちがう! ケホッ……私、悪くない! ……待って! 私……」

 

 知らんとばかりに扉を閉めていき、もうわずかで完全に閉じるという時、ハジメは歯噛みした。もう少し早く閉めていれば聞かずに済んだのにと。

 

「裏切られただけ!」

 

 もう僅かしか開いていない扉。

 

 しかし、女の子の叫びに、閉じられていく扉は止まった。ほんの僅かな光だけが細く暗い部屋に差し込む。

 

 十秒、二十秒と過ぎ、やがて扉は再び開いた。そこには、苦虫を百匹くらい噛み潰した表情のハジメが扉を全開にして立っていた。

 

ハジメとしては、何を言われようが助けるつもりなどなかった。こんな場所に封印されている以上相応の理由があるに決まっているのだ。それが危険な理由でない証拠がどこにあるというのか。邪悪な存在が騙そうとしているだけという可能性の方がむしろ高い。見捨てて然るべきだ。

 

(なにやってんだかな俺は、今自分でも、主の言葉を言ってたじゃないか、取りあえず話だけ聞くか。)

 

 内心溜息を吐くハジメ。

 

〝裏切られた〟――その言葉に心揺さぶられてしまうとは。

 

ハジメは頭をカリカリと掻きながら、女の子に歩み寄る。もちろん油断はしない。

 

 

 

「裏切られたと言ったな? だがそれは、お前が封印された理由になっていない。その話が本当だとして、裏切った奴はどうしてお前をここに封印したんだ?」

 

 

 

 ハジメが戻って来たことに半ば呆然としている女の子。

 

 

 

 ジッと、豊かだが薄汚れた金髪の間から除く紅眼でハジメを見つめる。何も答えない女の子にハジメがイラつき「おい。聞いてるのか? 話さないなら帰るぞ」と言って踵きびすを返しそうになる。それに、ハッと我を取り戻し、女の子は慌てて封印された理由を語り始めた。

 

 

 

「私、先祖返りの吸血鬼……すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」

 

 

 

 枯れた喉で必死にポツリポツリと語る女の子。話を聞きながらハジメは呻いた。なんとまぁ波乱万丈な境遇か。しかし、ところどころ気になるワードがあるので、湧き上がるなんとも言えない複雑な気持ちを抑えながら、ハジメは尋ねた。

 

 

 

「お前、どっかの国の王族だったのか?」

 

「……(コクコク)」

 

「殺せないってなんだ?」

 

「……勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」

 

「……そいつは凄まじいな。……すごい力ってそれか?」

 

「これもだけど……魔力、直接操れる……陣もいらない」

 

 ハジメは「そうかいなぁー」と一人納得した。

 

 ハジメも魔物を喰ってから、魔力操作が使えるようになった。身体強化に関しては詠唱も魔法陣も必要ない。他の錬成などに関しても詠唱は不要だ。

 

 

 

 ただ、ハジメの場合、魔法適性がゼロなので魔力を直接操れても巨大な魔法陣は当然必要となり、碌に魔法が使えないことに変わりはない。

 

 

 

 だが、この女の子のように魔法適性があれば反則的な力を発揮できるのだろう。何せ、周りがチンタラと詠唱やら魔法陣やら準備している間にバカスカ魔法を撃てるのだから、正直、勝負にならない。しかも、不死身。おそらく絶対的なものではないだろうが、それでも勇者すら凌駕りょうがしそうなチートである。

 

 

 

「……たすけて……」

 

 

 

 ハジメが一人で思索に耽ふけり一人で納得しているのをジッと眺めながら、ポツリと女の子が懇願する。

 

「……………………やっぱり無理だな、」

 

「どうして!…お願い…助けてよぉ……何でも…ケホッ…するからぁ…!」

 

さらに女の子が、ハジメに懇願するも。

バタンッ

非情に扉は閉まる。

「ぁッ……なんで…グスッ……何で助けてくれないのぉ……グスッ…」

そうして何日泣いていたことか、一度ここから助けてくれる光が見えたと思ったら、その光に拒絶された、そんな彼女の心は、もう折れそうだった。

 

 

 

 

ガチャッ

 

「……今度は……何?……」

 

そこに現れたのは。ハジメでもなく、正義の味方でもなく。

 

「なぁおメェ、ちょっと前に白髪で赤目の奴は来なかったかァ?」

一人の悪だった。

「ぇ……ちょっとまえにきた…けど…」

そこまで言って少女はこの人なら助けてくれるのでは?と思い。

 

「助けてください……何でも……するから…」

「いいぜェ、」

「え?」

「え?ってたすけてほしいのか、欲しくないのか、はっきりしやがれェ、」

「助けて……」

「アァ。」

輪廻は煙草を取り出し、火をつけて、口に加えると。

「ちょっと痛くても我慢しゃがれェ。散在する獣の骨 尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪 動けば風 止まれば空 槍打つ音色が虚城に満ちる

破道の六十三、雷吼炮。」

輪廻は封印解除(物理)を行い、少女を助けた。

「ありがとう。」

「アァ、これを飲んで、後これも羽織っとけ、見え見えだぜェ?」

「……エッチ…」

「俺は十五夜輪廻だァ、おめェ名前は?」

「…前の名前いらない、輪廻が付けて。」

「ならユエなんてどうだァ?」

「ん、今から私はユエ。」

「アァ、ちょっとどいてろ。」

「?わかった」

「破道の七十三、双蓮蒼火墜」

ドゴォッ

「グギャ、」

 

輪廻はサソリみたいなのを瞬殺すると、ツカツカとあるき出した。

 

「行くぞユエ、ハジメが苦戦してやがる。」

「ん…。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「チッ何だこいつは!使うしかねえな、穿て『厳霊丸』」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「何処だここは?俺は確か」

「ハジメ気がついたかァ、ここは反逆者の住処だァ。

ほら、生成魔法を取ってこい。」

 

「え?はい。」

 

そんな訳で一ヶ月後〜

 

まずは新装備紹介。

 

まず、ハジメは〝宝物庫〟という便利道具を手に入れた

 

 これはオスカーが保管していた指輪型アーティファクトで、指輪に取り付けられている一センチ程の紅い宝石の中に創られた空間に物を保管して置けるというものだ。要は、勇者の道具袋みたいなものである。空間の大きさは、正確には分からないが相当なものだと推測している。あらゆる装備や道具、素材を片っ端から詰め込んでも、まだまだ余裕がありそうだからだ。そして、この指輪に刻まれた魔法陣に魔力を流し込むだけで物の出し入れが可能だ。半径一メートル以内なら任意の場所に出すことができる。

 

 

 

 物凄く便利なアーティファクトなのだが、ハジメにとっては特に、武装の一つとして非常に役に立っている。というのも、任意の場所に任意の物を転送してくれるという点から、ハジメはリロードに使えないかと思案したのだ。結果としては半分成功といったところだ。流石に、直接弾丸を弾倉に転送するほど精密な操作は出来なかった。弾丸の向きを揃えて一定範囲に規則的に転送するので限界だった。もっと転送の扱いに習熟すれば、あるいは出来るようになるかもしれないが。

 

 なので、ハジメは、空中に転送した弾丸を己の技術によって弾倉に装填出来るように鍛錬することにした。要は、空中リロードを行おうとしたのだ。ドンナーはスイングアウト式(シリンダーが左に外れるタイプ)のリボルバーである。当然、中折式のリボルバーに比べてシリンダーの露出は少なくなるので、空中リロードは神業的な技術が必要だ。まして、大道芸ではなく実戦で使えなければならないので、更に困難を極める。最初は、中折式に改造しようかとも思ったハジメだが、試しに改造したところ大幅に強度が下がってしまったため断念した。

 

 結論から言うと一ヶ月間の猛特訓で見事、ハジメは空中リロードを会得した。たった一ヶ月の特訓でなぜ神業を会得できたのか。その秘密は〝瞬光〟である。〝瞬光〟は、使用者の知覚能力を引き上げる固有魔法だ。これにより、遅くなった世界で空中リロードが可能になったのである。〝瞬光〟は、体への負担が大きいので長時間使用は出来ないが、リロードに瞬間的に使用する分には問題なかった。

 

 次に、ハジメは〝魔力駆動二輪と四輪〟を製造した。

 

 これは文字通り、魔力を動力とする二輪と四輪である。二輪の方はアメリカンタイプ、四輪は軍用車両のハマータイプを意識してデザインした。車輪には弾力性抜群のタールザメの革を用い、各パーツはタウル鉱石を基礎に、工房に保管されていたアザンチウム鉱石というオスカーの書物曰く、この世界最高硬度の鉱石で表面をコーティングしてある。おそらくドンナーの最大出力でも貫けないだろう耐久性だ。エンジンのような複雑な構造のものは一切なく、ハジメ自身の魔力か神結晶の欠片に蓄えられた魔力を直接操作して駆動する。速度は魔力量に比例する。

 

 更に、この二つの魔力駆動車は車底に仕掛けがしてあり、魔力を注いで魔法を起動すると地面を錬成し整地することで、ほとんどの悪路を走破することもできる。また、どこぞのスパイのように武装が満載されている。ハジメと輪廻も男の子。ミリタリーにはつい熱が入ってしまうのだ。夢中になり過ぎてユエが拗ねてしまい、機嫌を直すのに色々と搾り取られることになったが……(輪廻が、と言うか途中からは攻守交代してた。) 

 

〝魔眼石〟というものも開発した。

 

 ハジメはヒュドラとの戦いで右目を失っている。極光の熱で眼球の水分が蒸発していまい、神水を使う前に〝欠損〟してしまっていたので治癒しなかったのだ。それを気にした輪廻が考案し、創られたのが〝魔眼石〟だ。

 

 いくら生成魔法でも、流石に通常の〝眼球〟を創る事はできなかった。しかし、生成魔法を使い、神結晶に、〝魔力感知〟〝先読〟を付与することで通常とは異なる特殊な視界を得ることができる魔眼を創ることに成功した。

 

 これに義手に使われていた擬似神経の仕組みを取り込むことで、魔眼が捉えた映像を脳に送ることができるようになったのだ。魔眼では、通常の視界を得ることはできない。その代わりに、魔力の流れや強弱、属性を色で認識できるようになった上、発動した魔法の核が見えるようにもなった。

 

 魔法の核とは、魔法の発動を維持・操作するためのもの……のようだ。発動した後の魔法の操作は魔法陣の式によるということは知っていたが、では、その式は遠隔の魔法とどうやってリンクしているのかは考えたこともなかった。実際、ハジメが利用した書物や教官の教えに、その辺りの話しは一切出てきていない。おそらく、新発見なのではないだろうか。魔法のエキスパートたるユエも知らなかったことから、その可能性が高い。

 

 通常の〝魔力感知〟では、〝気配感知〟などと同じく、漠然とどれくらいの位置に何体いるかという事しかわからなかった。気配を隠せる魔物に有効といった程度のものだ。しかし、この魔眼により、相手がどんな魔法を、どれくらいの威力で放つかを事前に知ることができる上、発動されても核を撃ち抜くことで魔法を破壊することができるようになった。ただし、核を狙い撃つのは針の穴を通すような精密射撃が必要ではあるが。

 

 神結晶を使用したのは、複数付与が神結晶以外の鉱物では出来なかったからだ。莫大な魔力を内包できるという性質が原因だと、ハジメは推測している。未だ、生成魔法の扱いには未熟の域を出ないので、三つ以上の同時付与は出来なかったが、習熟すれば、神結晶のポテンシャルならもっと多くの同時付与が可能となるかもしれない、とハジメは期待している。

 

 ちなみに、この魔眼、神結晶を使用しているだけあって常に薄ぼんやりとではあるが青白い光を放っている。ハジメの右目は常に光るのである。こればっかりはどうしようもなかったので、仕方なく、ハジメは薄い黒布を使った眼帯を着けている。

 

 白髪、義手、眼帯、ハジメは完全に厨二キャラとなった。その内、鎮まれ俺の左腕! とか言いそうな姿だ。鏡で自分の姿を見たハジメが絶望して膝から崩れ落ち四つん這い状態になった挙句、丸一日寝込むことになり、ユエに笑われるのだが、それはまた別のお話し。

 

 

 

 新兵器について、ヒュドラの極光で破壊された対物ライフル:シュラーゲンも復活した。アザンチム鉱石を使い強度を増し、バレルの長さも持ち運びの心配がなくなったので三メートルに改良した。〝遠見〟の固有魔法を付加させた鉱石を生成し創作したスコープも取り付けられ、最大射程は十キロメートルとなっている。

 

 また、ラプトルの大群に追われた際、手数の足りなさに苦戦したことを思い出し、電磁加速式機関砲:メツェライを開発した。口径三十ミリ、回転式六砲身で毎分一万二千発という化物だ。銃身の素材には生成魔法で創作した冷却効果のある鉱石を使っているが、それでも連続で五分しか使用できない。再度使うには十分の冷却期間が必要になる。

 

 さらに、面制圧とハジメの純粋な趣味からロケット&ミサイルランチャー:オルカンも開発した。長方形の砲身を持ち、後方に十二連式回転弾倉が付いており連射可能。ロケット弾にも様々な種類がある。

 

 あと、ドンナーの対となるリボルバー式電磁加速銃:シュラークも開発された。ハジメに義手ができたことで両手が使えるようになったからである。ハジメの基本戦術はドンナー・シュラークの二丁の電磁加速銃によるガン=カタ(銃による近接格闘術のようなもの)に落ち着いた。典型的な後衛であるユエとの連携を考慮して接近戦が効率的と考えたからだ。もっとも、ハジメは武装すればオールラウンドで動けるのだが

しかし、神結晶を捨てるには勿体無い。そこでユエに魔法のサポートの為魔晶石などに使った。

 

最後にハジメ達のステータス(ユエを除く)

 

====================================

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???

 

天職:錬成師

 

筋力:10950

 

体力:13190

 

耐性:10670

 

敏捷:13450

 

魔力:14780

 

魔耐:14780

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成]•斬魄刀+[始解]+[卍解]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・言語理解

 

====================================

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

 

十五夜輪廻 17歳(534歳) 男 レベル50

 

 

 

転職:死神·剣豪·学園第一位·魔神

 

 

 

筋力:67800000

 

 

 

 

 

体力:49000000

 

 

 

 

 

耐性:70000000

 

 

 

 

 

 

 

敏捷:30000000

 

 

 

 

 

 

 

魔力:45000000

 

 

 

 

 

 

 

魔耐:27000000

 

 

 

 

 

霊圧:53000000

 

 

 

 

 

技能:無から有を創造する程度の能力·運命を決定する程度の能力·創造·浅打創造·超剣技·超剣術·日の呼吸+[爍刀]·斬魄刀+[始解]+[卍解]+[卍解ニ式]·鬼道+[縛道]+[破道]·ベクトル操作+[反射]·魔人化+[魔神化]·自己再生·不老不死·霊槍シャスティホル·魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・纏雷[+雷耐性][+出力増大]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛[+部分強化][+集中強化][+付与強化]・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復[+魔素集束]・魔力変換[+体力変換][+治癒力変換][+衝撃変換]・限界突破+[覇潰][+上限突破]·錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成][+高速錬成][+自動錬成][+イメージ補強力上昇][+消費魔力減少][+鉱物分解]·言語理解

 

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

 

ハジメ「…………………………………………………………………………………………………………………………………、チートやろこんなん!チートや!チーターや!」

 

次行こ

 

三階の魔法陣を起動させながら、ハジメは輪廻に静かな声で告げる。

 

 

 

「主……俺の武器や俺達の力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないと思われます。」

 

「アァ、」

 

「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きいです。」

 

「そうだなァ」

 

「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれません。」

 

「ヤハハハッ、そんな俺達の邪魔して来るような奴は殺せばいいんだよ。」

 

「ユエ、お前にも聞くぞ、世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいな」

 

「今更……」 

 

「俺達は全員含めて最強だ!」

 

「アァ。」

 

「ん。」

 

 

「行くぞ。」

 

 

ピカーン

 

 

 




感想と高評価よろしくぅ↑

なんとなく次回予告してみる。

次回!残念ウサギと変わるハウリア。(予定)

明日もまた見てくださいね?ジャンケンポン(✊)


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第二章
第6話 残念ウサギ


こんちわ、湯たんぽです。
今回は長くなりそうだったので、分けました。
アンケートあるから答えといて下さいね〜

注意書き

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
輪廻君が何言ってるか解らなくても気にしないで。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十二人ぐらいになりそう!
輪廻君むっちゃちーと。


魔法陣の光に満たされた視界、何も見えなくとも空気が変わったことは実感した。奈落の底の澱よどんだ空気とは明らかに異なる、どこか新鮮さを感じる空気にハジメの頬が緩む。

 

 

 

 やがて光が収まり目を開けたハジメの視界に写ったものは……

 

 

 

 洞窟だった。

 

 

 

「なんでやねん」

 

 

 

 魔法陣の向こうは地上だと無条件に信じていたハジメは、代わり映えしない光景に思わず半眼になってツッコミを入れてしまった。正直、めちゃくちゃガッカリだった。

 

 

「まァ、流石に魔法陣を出たら外って言うのは可笑しいだろ」

 

「それもそうですね。」

 

 

緑光石の輝きもなく、真っ暗な洞窟ではあるが、輪廻達は暗闇を問題としないので道なりに進むことにした。

 

 途中、幾つか封印が施された扉やトラップがあったが、オルクスの指輪が反応して尽く勝手に解除されていった。3人は、一応警戒していたのだが、拍子抜けするほど何事もなく洞窟内を進み、遂に光を見つけた。外の光だ。ハジメはこの数ヶ月、ユエに至っては三百年間、求めてやまなかった光。

 

 

ハジメとユエは、それを見つけた瞬間、思わず立ち止まりお互いに顔を見合わせた。それから互いにニッと笑みを浮かべ、同時に求めた光に向かって駆け出した。

 

 

 

 近づくにつれ徐々に大きくなる光。外から風も吹き込んでくる。奈落のような澱んだ空気ではない。ずっと清涼で新鮮な風だ。ハジメは、〝空気が旨い〟という感覚を、この時ほど実感したことはなかった。

 

 

 

 そして、ハジメとユエは同時に光に飛び込み……待望の地上へ出た。

 

 

 

 地上の人間にとって、そこは地獄にして処刑場だ。断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息する。深さの平均は一・二キロメートル、幅は九百メートルから最大八キロメートル、西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断するその大地の傷跡を、人々はこう呼ぶ。

 

 

 

 【ライセン大峡谷】と。

 

 

 

 ハジメ達は、そのライセン大峡谷の谷底にある洞窟の入口にいた。地の底とはいえ頭上の太陽は燦々さんさんと暖かな光を降り注ぎ、大地の匂いが混じった風が鼻腔をくすぐる。

 

 

 

 たとえどんな場所だろうと、確かにそこは地上だった。呆然と頭上の太陽を仰ぎ見ていたハジメとユエの表情が次第に笑みを作る。無表情がデフォルトのユエでさえ誰が見てもわかるほど頬がほころんでいる。

 

 

 

「……戻って来たんだな……」

 

「……んっ」

 

 

 

 二人は、ようやく実感が湧いたのか、太陽から視線を逸らすとお互い見つめ合い、手を握った。

 

 

 

「よっしゃぁああーー!! 戻ってきたぞ、この野郎ぉおー!」

 

「んっーー!!」

 

 

「あんまり騒ぐなよォ。」

 

 ハジメはくるくると廻る。しばらくの間、人々が地獄と呼ぶ場所には似つかわしくない笑い声が響き渡っていた。途中、地面の出っ張りに躓つまずき転到するも、そんな失敗でさえ無性に可笑しく、二人してケラケラ、クスクスと笑い合う。

 

 ようやく二人の笑いが収まった頃には、すっかり……魔物が死んでいた。

 

「「え?」」

 

「ったく、外に出れたからって安心すんじゃねェ、こうやって、魔物もいるんだからよォ。」

そこには、自作した大型リボルバー、アルベルトとシュタインを持った輪廻が立っていた。

 

「ごめん……」

「すいません。」

 

「まア良いがなァ、さてこの絶壁、登ろうと思えば登れるだろうが……どうする? ライセン大峡谷と言えば、七大迷宮があると考えられている場所だ。せっかくだし、樹海側に向けて探索でもしながら進むかァ?」

 

「……なぜ、樹海側?」

 

「いや、峡谷抜けて、いきなり砂漠横断とか嫌だろ? 樹海側なら、町にも近そうだしなァ。」

 

「……確かに」

 

 

 

 輪廻の提案に、ユエとハジメも頷いた。魔物の弱さから考えても、この峡谷自体が迷宮というわけではなさそうだ。ならば、別に迷宮への入口が存在する可能性はある。ハジメの〝空力〟やユエの風系魔法を使えば、絶壁を超えることは可能だろうが、どちらにしろライセン大峡谷は探索の必要があったので、特に反対する理由もない。

 

 

 

 ハジメは、右手の中指にはまっている〝宝物庫〟に魔力を注ぎ、魔力駆動二輪を取り出す。

 

 

 

 地球のガソリンタイプと違って燃焼を利用しているわけではなく、魔力の直接操作によって直接車輪関係の機構を動かしているので、駆動音は電気自動車のように静かである。ハジメとしてはエンジン音がある方がロマンがあると思ったのだが、エンジン構造などごく単純な仕組みしか知らないので再現できなかった。ちなみに速度調整は魔力量次第である。まぁ、ただでさえ、ライセン大峡谷では魔力効率が最悪に悪いので、あまり長時間は使えないだろうが。(輪廻を除く)

 

 

 

 ライセン大峡谷は基本的に東西に真っ直ぐ伸びた断崖だ。そのため脇道などはほとんどなく道なりに進めば迷うことなく樹海に到着する。ハジメもユエも、迷う心配が無いので、迷宮への入口らしき場所がないか注意しつつ、軽快に魔力駆動二輪を走らせていく。車体底部の錬成機構が谷底の悪路を整地しながら進むので実に快適だ。

 

 

 

 もっとも、その間もハジメの手だけは忙しなく動き続け、一発も外すことなく襲い来る魔物の群れを蹴散らせているのだが。(輪廻はユエと相乗りで、キックで魔物を瞬殺してた。)

 

 

 

 しばらく魔力駆動二輪を走らせていると、それほど遠くない場所で魔物の咆哮が聞こえてきた。中々の威圧である。少なくとも今まで相対した谷底の魔物とは一線を画すようだ。もう三十秒もしない内に会敵するだろう。

 

 

 

 魔力駆動二輪を走らせ突き出した崖を回り込むと、その向こう側に大型の魔物が現れた。かつて見たティラノモドキに似ているが頭が二つある。双頭のティラノサウルスモドキだ。

 

 だが、真に注目すべきは双頭ティラノではなく、その足元をぴょんぴょんと跳ね回りながら半泣きで逃げ惑うウサミミを生やした少女だろう。

 

 ハジメは魔力駆動二輪を止めて胡乱な眼差しで今にも喰われそうなウサミミ少女を見やる。

 

 

 

「……何だあれ?」

 

「……兎人族?」

 

「なんでこんなとこに? 兎人族って谷底が住処なのか?」

 

「……聞いたことない」

 

「じゃあ、あれか? 犯罪者として落とされたとか? 処刑の方法としてあったよな?」

 

「……悪ウサギ?」

 

 

 

 ハジメとユエは首を傾げながら、逃げ惑うウサミミ少女を尻目に呑気にお喋りに興じる。助けるという発想はないらしい。別に、ライセン大峡谷が処刑方法の一つとして使用されていることからウサミミ少女が犯罪者であることを考慮したわけではない。赤の他人である以上、単純に面倒だし興味がなかっただけである。

 

 

 

 相変わらずの変心ぶり、鬼畜ぶりだった。ユエの時とは訳が違え。ウサミミ少女にシンパシーなど感じていないし、メリットが見当たらない以上ハジメの心には届かない。助けを求める声に毎度反応などしていたらキリがないのである。ハジメは既に、この世界自体見捨てているのだから今更だ。

 

 

 

 しかし、そんな呑気なハジメとユエ(輪廻)をウサミミ少女の方が発見したらしい。双頭ティラノに吹き飛ばされ岩陰に落ちたあと、四つん這いになりながらほうほうのていで逃げ出し、その格好のままハジメ達を凝視している。

 

 そして、再び双頭ティラノが爪を振い隠れた岩ごと吹き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がると、その勢いを殺さず猛然と逃げ出した。……ハジメ達の方へ。

 

 

 

 それなりの距離があるのだが、ウサミミ少女の必死の叫びが峡谷に木霊しハジメ達に届く。

 

 

 

「だずげでぐだざ~い! ひっーー、死んじゃう! 死んじゃうよぉ! だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」

 

 

 

 滂沱の涙を流し顔をぐしゃぐしゃにして必死に駆けてくる。そのすぐ後ろには双頭ティラノが迫っていて今にもウサミミ少女に食らいつこうとしていた。このままでは、ハジメ達の下にたどり着く前にウサミミ少女は喰われてしまうだろう。

 

 

 

 流石に、ここまで直接助けを求められたらハジメや輪廻も……

 

 

 

「うわ、モンスタートレインだよ。勘弁しろよな」

 

「……迷惑」

 

「おめぇら容赦ねぇなァ。」

 

 やはり助ける気はないらしい。必死の叫びにもまるで動じていなかった。むしろ、物凄く迷惑そうだった。ハジメ達を必死の形相で見つめてくるウサミミ少女から視線を逸らすと、ハジメに助ける気がないことを悟ったのか、少女の目から、ぶわっと更に涙が溢れ出した。一体どこから出ているのかと目を見張るほどの泣きっぷりだ。

 

 

 

「まっでぇ~、みすでないでぐだざ~い! おねがいですぅ~!!」

 

 

 

 ウサミミ少女が更に声を張り上げる。

 

 

 

 それでも、ハジメは、全く助ける気がないので、このまま行けばウサミミ少女は間違いなく喰われていたはずだった。そう、双頭ティラノがウサミミ少女の向こう側に見えた輪廻 達に殺意を向けさえしなければ。

 

 

 

 双頭ティラノが逃げるウサミミ少女の向かう先にハジメ達を見つけ、殺意と共に咆哮を上げた。

 

 

 

「「グゥルァアアアア!!」」

 

 

 

 それに敏感に反応するハジメ。

 

 

 

「アァ?」

 

「ハジメ、殺れ」

 

「承知」

 双頭ティラノが、ウサミミ少女に追いつき、片方の頭がガパッと顎門を開く。ウサミミ少女はその気配にチラリと後ろを見て目前に鋭い無数の牙が迫っているのを認識し、「ああ、ここで終わりなのかな……」とその瞳に絶望を写した。

 

 

 

 が、次の瞬間、

 

 

 

ドパンッ!!

 

 

 

 聞いたことのない乾いた破裂音が峡谷に響き渡り、恐怖にピンと立った二本のウサミミの間を一条の閃光が通り抜けた。そして、目前に迫っていた双頭ティラノの口内を突き破り後頭部を粉砕しながら貫通した。

 

 

 

 力を失った片方の頭が地面に激突、慣性の法則に従い地を滑る。双頭ティラノはバランスを崩して地響きを立てながらその場にひっくり返った。

 

 

 

 その衝撃で、ウサミミ少女は再び吹き飛ぶ。狙いすましたようにハジメの下へ。

 

 

 

「きゃぁああああー! た、助けてくださ~い!」

 

 

 

 眼下のハジメに向かって手を伸ばすウサミミ少女。その格好はボロボロで女の子としては見えてはいけない場所が盛大に見えてしまっている。たとえ酷い泣き顔でも男なら迷いなく受け止める場面だ。

 

 

 

「アホか、図々しい」

 

 

 

 しかし、そこはハジメクオリティー。一瞬で魔力駆動二輪を後退させると華麗にウサミミ少女を避けた。

 

「えぇぇぇぇー!?」

 

ウサミミ少女は驚愕の悲鳴を上げながらハジメの眼前の地面に、落ちる寸前。

 

「っと!危ねぇなァ、おいウサギ大丈夫か?」

トスンッ

何か誰かが墜ちたような音がした気がするが、私の気のせいだろう。

「おいウサギ、てめえの名前は?」

輪廻が名前を聞くも、このうさぎは…………

 

 

「はっ、助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの一人、シアといいますです! 取り敢えず私の仲間も助けてください!」

 

 

…………ものすごく図太かった

 

 

 

 

 





感想と高評価よろしくぅ↑


そしてお休みなさい。


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第7話 ハウリアの事情

こんちわ湯たんぽです。

何か清水君のアンケート、めっちゃ白熱してますねぇ(他人事じゃねぇ)まぁ多分、アンケート結果によって決めると思います。と言うわけで、投票よろしくお願いします。


注意書き。

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
輪廻君が何言ってるか解らなくても気にしないで。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十二人ぐらいになりそう!
輪廻君むっちゃちーと。

それでもいいよと言う方のみご覧下さい。


 

 

「私の家族も助けて下さい!」

 

 峡谷にウサミミ少女改めシア・ハウリアの声が響く。どうやら、このウサギ一人ではないらしい。仲間も同じ様な窮地にあるようだ。よほど必死なのか、先程から相当強くユエに蹴りを食らっているのだが、頬に靴をめり込ませながらも離す気配がない。

 

あまりに必死に懇願するので、ハジメは仕方なく……〝纏雷〟をしてやった。

 

 

 

「アババババババババババアバババ!?」

 

 電圧と電流は調整してあるので死にはしないが、しばらく動けなくなるくらいの威力はある。シアのウサミミがピンッと立ちウサ毛がゾワッと逆だっている。〝纏雷〟を解除してやると、ビクンッビクンッと痙攣しながらズルズルと崩れ落ちた。

 

「そろそろ行くぞォ」

 

「はい、全く非常識なウザウサギだ。

ユエも行くぞ?」

 

「ん……」

 

 ハジメと輪廻は何事もなかったように再びバイクに魔力を注ぎ込み発進させようとした。

 

 

 

 しかし……

 

 

 

「に、にがじませんよ~」

 

 

 

 ゾンビの如く起き上がり輪廻の脚にしがみつくシア。流石に驚愕したハジメと輪廻は思わず魔力注入を止めてしまう。

 

 

 

「お、お前、ゾンビみたいな奴だな。それなりの威力出したんだが……何で動けるんだよ? つーか、ちょっと怖ぇんだけど……」

 

「……不気味」

 

「うぅ~何ですか! その物言いは! さっきから、肘鉄とか足蹴とか、ちょっと酷すぎると思います! 断固抗議しますよ! お詫びに家族を助けて下さい!」

 

 

 

 ぷんすかと怒りながら、さらりと要求を突きつけるシア。案外余裕そうである。このまま引き摺っていこうかとも考えたハジメだが、何か執念で何処までもしがみついてきそうだと思い直す。血まみれで引きずられたまま決して離さないウサミミ少女……完全にホラーである。

 

 

 

「ったく、何なんだよ。取り敢えず話聞いてやるから離せやァ。そしてさり気なく俺の外套で顔を拭くんじゃねェ!」

 

 

 

 話を聞いてやると言われパアァと笑顔になったシアは、これまたさり気なく輪廻の外套で汚れた顔を綺麗に拭った。本当にいい性格をしている。イラッと来たハジメが再び肘鉄を食らわせると「はぎゅん!」と奇怪な悲鳴を上げ蹲った。

 

 

 

「ま、また殴りましたね! 父様にも殴られたことないのに! よく私のような美少女を、そうポンポンと……もしや殿方同士の恋愛にご興味が……だから先も私の誘惑をあっさりと拒否したんですね! そうでッあふんッ!?」

 

 

 

 なにやら不穏当な発言が聞こえたので蹲うずくまるシアの脳天目掛けて踵落としをするハジメ。その額には青筋が浮かんでいる。

 

 

 

「誰がホモだ、ウザウサギ。主には敬意は抱いているが、恋愛では断じてない!っていうか何でそのネタ知ってんだよ。ユエと言いお前と言い、どっから仕入れてくるんだ…? まぁ、それは取り敢えず置いておくとして、主がお前の誘惑だがギャグだが知らんが、誘いに乗らないのは、お前より遥かにレベルの高い美少女がすぐ隣にいるからだ。ユエを見て堂々と誘惑できるお前の神経がわからん」

 

そう言ってハジメはチラリと隣のユエを見る。ユエはハジメの言葉に赤く染まった頬を両手で挟み、体をくねらせてイヤンイヤンしていた。腰辺りまで伸びたゆるふわの金髪が太陽の光に反射してキラキラと輝き、ビスクドールの様に整った容姿が今は照れでほんのり赤く染まっていて、見る者を例外なく虜にする魅力を放っている。

 

 

 

 格好も、ハジメと出会ったばかりの頃の様なみすぼらしい物ではない。前面にフリルのあしらわれた純白のドレスシャツに、これまたフリル付きの黒色ミニスカート、その上から純白に青のラインが入ったロングコートを羽織っている。足元はショートブーツにニーソだ。どれも、オスカーの衣服に魔物の素材を合わせて、輪廻が仕立て直した逸品だ。高い耐久力を有する防具としても役立つ衣服である。

 

 

 

 ちなみに、ハジメは黒に赤のラインが入ったコートと下に同じように黒と赤で構成された衣服を纏っている。これはユエ作だ。当初、ユエはハジメにも白を基調とした衣服を着せてペアルック気味にしたがったのだが、流石に恥ずかしいのと、自身の髪が白色になっているので全身白は嫌だとハジメが懇願した結果、今のスタイルに落ち着いた。

 

 

 

 そんな可憐なユエを見て、「うっ」と僅かに怯むシア。しかし、ハジメには身内(主の嫁)補正が掛かっていることもあり、二人の容姿に関しては多分に主観的要素が入り込んでいる。つまり、客観的に見ればシアも負けず劣らずの美少女ということだ。

 

 

 

 少し青みがかったロングストレートの白髪に、蒼穹の瞳。眉やまつ毛まで白く、肌の白さとも相まって黙っていれば神秘的な容姿とも言えるだろう。手足もスラリと長く、ウサミミやウサ尻尾がふりふりと揺れる様は何とも愛らしい。ケモナー達が見れば感動して思わず滂沱の涙を流すに違いない。

 

 

 

 何より……ユエにはないものがある。そう、シアは大変な巨乳の持ち主だった。ボロボロの布切れのような物を纏っているだけなので殊更強調されてしまっているそれ凶器は、固定もされていないのだろう。彼女が動くたびにぶるんぶるんと揺れ、激しく自己を主張している。ぷるんぷるんではなくぶるんぶるんだ。念の為。

 

 

 

 要するに、彼女が自分の容姿やスタイルに自信を持っていても何らおかしくないのである。むしろ、普通にウザそうにしているハジメが異常なのだ。変心前なら「ウサミミー!!」とル○ンダイブを決めたかもしれないが……

 

 それ故に、矜持を傷つけられたシアは言ってしまった。言ってはならない言葉を……

「で、でも! 胸なら私が勝ってます! そっち女の子はペッタンコじゃないですか!」

 

 

 

〝ペッタンコじゃないですか〟〝ペッタンコじゃないですか〟〝ペッタンコじゃないですか〟

 

 

 

 峡谷に命知らずなウサミミ少女の叫びが木霊こだまする。恥ずかしげに身をくねらせていたユエがピタリと止まり、前髪で表情を隠したままユラリと二輪から降りた。

 

 

 

 ハジメは「あ~あ、馬鹿なウサギだ。」と天を仰ぎ、無言で合掌する。ウサミミよ、安らかに眠れ……。

 

 ちなみに、ユエは着痩せするが、それなりにある。断じてライセン大峡谷の如く絶壁ではない。

 

 震えるシアのウサミミに、囁ささやくようなユエの声がやけに明瞭に響いた。

 

 

 

―――― ……お祈りは済ませた? 

 

―――― ……謝ったら許してくれたり

 

―――― ………… 

 

―――― 死にたくなぁい! 死にたくなぁい! 

 

 

 

「〝嵐帝〟」

 

 

 

―――― アッーーーー!! 

 

 

 

 突如発生した竜巻に巻き上げられ錐揉みしながら天に打ち上げられるシア。彼女の悲鳴が峡谷に木霊し、きっかり十秒後、グシャ! という音と共にハジメ達の眼前に墜落した。

 

 頭部を地面に埋もれさせビクンッビクンッと痙攣している。完全にギャグだった。その神秘的な容姿とは相反する途轍もなく残念な少女である。ただでさえボロボロの衣服? が更にダメージを受けて、もはやただのゴミのようだ。逆さまなので見えてはいけないものも丸見えである。百年の恋も覚める姿とはこの事だろう。

 

 

 

 ユエは「いい仕事した!」と言う様に、掻いてもいない汗を拭うフリをするとトコトコと輪廻の下へ戻り、二輪に腰掛ける輪廻を下からジッと見上げた。

 

「……おっきい方が好き?」

 

「俺かァ?俺は別にどっちでも良いがなァ、強いて言うなら、お前が好きだなァ。」

 

その言葉にユエは顔を赤らめ

 

「……その言葉はずるい……」

 

と、言い、輪廻の後ろに座り、背中に顔を埋めた、その直後痙攣していたシアの両手がガッと地面を掴み、ぷるぷると震えながら懸命に頭を引き抜こうとしている姿を捉たハジメは。

 

 

 

「アイツ動いてるぞ……本気でゾンビみたいな奴だな。頑丈とかそう言うレベルを超えている気がするんだが……」

 

「…ん」

 

 

 

ズボッという音と共にシアが泥だらけの顔を抜き出した。

「うぅ~ひどい目に遭いました。こんな場面見えてなかったのに……」

 

 涙目で、しょぼしょぼとボロ布を直すシアは、意味不明なことを言いながらハジメ達の下へ這い寄って来た。既にホラーだった。

 

 

 

「はぁ~、お前の耐久力は一体どうなってんだ? 尋常じゃないぞ……何者なんだ?」

 

 

 

 ハジメの胡乱な眼差しに、ようやく本題に入れると居住まいを正すシア。バイクの座席に腰掛けるハジメ達の前で座り込み真面目な表情を作った。もう既に色々遅いが……

 

「改めまして、私は兎人族ハウリアの長の娘シア・ハウリアと言います。実は……」

 

 語り始めたシアの話を要約するとこうだ。

 

 シア達、ハウリアと名乗る兎人族達は【ハルツィナ樹海】にて数百人規模の集落を作りひっそりと暮らしていた。兎人族は、聴覚や隠密行動に優れているものの、他の亜人族に比べればスペックは低いらしく、突出したものがないので亜人族の中でも格下と見られる傾向が強いらしい。性格は総じて温厚で争いを嫌い、一つの集落全体を家族として扱う仲間同士の絆が深い種族だ。また、総じて容姿に優れており、エルフのような美しさとは異なった、可愛らしさがあるので、帝国などに捕まり奴隷にされたときは愛玩用として人気の商品となる。

 

 

 

 そんな兎人族の一つ、ハウリア族に、ある日異常な女の子が生まれた。兎人族は基本的に濃紺の髪をしているのだが、その子の髪は青みがかった白髪だったのだ。しかも、亜人族には無いはずの魔力まで有しており、直接魔力を操るすべと、とある固有魔法まで使えたのだ。

 

 

 

 当然、一族は大いに困惑した。兎人族として、いや、亜人族として有り得ない子が生まれたのだ。魔物と同様の力を持っているなど、普通なら迫害の対象となるだろう。しかし、彼女が生まれたのは亜人族一、家族の情が深い種族である兎人族だ。百数十人全員を一つの家族と称する種族なのだ。ハウリア族は女の子を見捨てるという選択肢を持たなかった。

 

 

 

 しかし、樹海深部に存在する亜人族の国【フェアベルゲン】に女の子の存在がばれれば間違いなく処刑される。魔物とはそれだけ忌み嫌われており、不倶戴天の敵なのである。国の規律にも魔物を見つけ次第、できる限り殲滅しなければならないと有り、過去にわざと魔物を逃がした人物が追放処分を受けたという記録もある。また、被差別種族ということもあり、魔法を振りかざして自分達亜人族を迫害する人間族や魔人族に対してもいい感情など持っていない。樹海に侵入した魔力を持つ他種族は、総じて即殺が暗黙の了解となっているほどだ。

 

 

 

 故に、ハウリア族は女の子を隠し、十六年もの間ひっそりと育ててきた。だが、先日とうとう彼女の存在がばれてしまった。その為、ハウリア族はフェアベルゲンに捕まる前に一族ごと樹海を出たのだ。

 

 

 

 行く宛もない彼等は、一先ず北の山脈地帯を目指すことにした。山の幸があれば生きていけるかもしれないと考えたからだ。未開地ではあるが、帝国や奴隷商に捕まり奴隷に堕とされてしまうよりはマシだ。

 

 

 

 しかし、彼等の試みは、その帝国により潰えた。樹海を出て直ぐに運悪く帝国兵に見つかってしまったのだ。巡回中だったのか訓練だったのかは分からないが、一個中隊規模と出くわしたハウリア族は南に逃げるしかなかった。

 

 

 

 女子供を逃がすため男達が追っ手の妨害を試みるが、元々温厚で平和的な兎人族と魔法を使える訓練された帝国兵では比べるまでもない歴然とした戦力差があり、気がつけば半数以上が捕らわれてしまった。

 

 

 

 全滅を避けるために必死に逃げ続け、ライセン大峡谷にたどり着いた彼等は、苦肉の策として峡谷へと逃げ込んだ。流石に、魔法の使えない峡谷にまで帝国兵も追って来ないだろうし、ほとぼりが冷めていなくなるのを待とうとしたのである。魔物に襲われるのと帝国兵がいなくなるのとどちらが早いかという賭けだった。

 

 

 

 しかし、予測に反して帝国兵は一向に撤退しようとはしなかった。小隊が峡谷の出入り口である階段状に加工された崖の入口に陣取り、兎人族が魔物に襲われ出てくるのを待つことにしたのだ。

 

 

 

 そうこうしている内に、案の定、魔物が襲来した。もう無理だと帝国に投降しようとしたが、峡谷から逃がすものかと魔物が回り込み、ハウリア族は峡谷の奥へと逃げるしかなかった。そうやって、追い立てられるように峡谷を逃げ惑い……

 

 

 

「……気がつけば、六十人はいた家族も、今は四十人程しかいません。このままでは全滅です。どうか助けて下さい!」

 

 

 

 最初の残念な感じとは打って変わって悲痛な表情で懇願するシア。どうやら、シアは、輪廻やユエやハジメ、東方組等と同じ、この世界の例外というヤツらしい。特に、ユエと同じ、先祖返りと言うやつなのかもしれない。

 話を聞き終った輪廻達は特に表情を変えることもなく端的に答えた。

 

「めんどくせェ」

 

「断る」

 

 

ハジメと輪廻の端的な言葉が静寂をもたらした。何を言われたのか分からない、といった表情のシアは、ポカンと口を開けた間抜けな姿で輪廻をマジマジと見つめた。そして、輪廻とハジメが話は終わったと魔力駆動二輪に跨ろうとしてようやく我を取り戻し、物凄い勢いで抗議の声を張り上げた。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと! 何故です! 今の流れはどう考えても『何て可哀想なんだ! 安心しろ!! 俺が何とかしてやる!』とか言って爽やかに微笑むところですよ! 流石の私もコロっといっちゃうところですよ! 何、いきなり美少女との出会いをフイにしているのですか! って、あっ、無視して行こうとしないで下さい! 逃しませんよぉ!」

 

 

 シアの抗議の声をさらりと無視して出発しようとする輪廻の脚に再びシアが飛びつく。さっきまでの真面目で静謐な感じは微塵もなく、形振り構わない残念ウサギが戻ってきた。

 

 

 

 輪廻が足を振っても微塵も離れる気配がないシアに、ハジメは溜息を吐きながらジロリと睨む。

 

 

 

「あのなぁ~、お前等助けて、俺に何のメリットがあるんだよ」

 

「メ、メリット?」

 

「帝国から追われているわ、樹海から追放されているわ、お前さんは厄介のタネだわ、デメリットしかねぇじゃねぇか。仮に峡谷から脱出出来たとして、その後どうすんだよ? また帝国に捕まるのが関の山だろうが。で、それ避けたきゃ、また俺を頼るんだろ? 今度は、帝国兵から守りながら北の山脈地帯まで連れて行けってな」

 

「うっ、そ、それは……で、でも!」

 

「俺達にだって旅の目的はあるんだ。そんな厄介なもん抱えていられないんだよ」

 

「そんな……でも、守ってくれるって見えましたのに!」

 

「……さっきも言ってたな、それ。どういう意味だ? ……お前の固有魔法と関係あるのか?」

 

 

 

 一向に折れない輪廻とハジメに涙目で意味不明なことを口走るシア。そう言えば、何故シアが仲間と離れて単独行動をしていたのかという点も疑問である。その辺りのことも関係あるのかとハジメは尋ねた。

 

 

 

「え? あ、はい。〝未来視〟といいまして、仮定した未来が見えます。もしこれを選択したら、その先どうなるか? みたいな……あと、危険が迫っているときは勝手に見えたりします。まぁ、見えた未来が絶対というわけではないですけど……そ、そうです。私、役に立ちますよ! 〝未来視〟があれば危険とかも分かりやすいですし! 少し前に見たんです! 貴方が私達を助けてくれている姿が! 実際、ちゃんと貴方に会えて助けられました!」

 

 

 

 シアの説明する〝未来視〟は、彼女の説明通り、任意で発動する場合は、仮定した選択の結果としての未来が見えるというものだ。これには莫大な魔力を消費する。一回で枯渇寸前になるほどである。また、自動で発動する場合もあり、これは直接・間接を問わず、シアにとって危険と思える状況が急迫している場合に発動する。これも多大な魔力を消費するが、任意発動程ではなく三分の一程消費するらしい。

 

 

 

 どうやら、シアは、元いた場所で、輪廻達がいる方へ行けばどうなるか? という仮定選択をし、結果、自分と家族を守るハジメの姿が見えたようだ。そして、ハジメを探すために飛び出してきた。こんな危険な場所で単独行動とは、よほど興奮していたのだろう。

 

 

 

「そんなすごい固有魔法持ってて、何でバレたんだよ。危険を察知できるならフェアベルゲンの連中にもバレなかったんじゃないか?」

 

 

 

 ハジメの指摘に「うっ」と唸った後、シアは目を泳がせてポツリと零した。

 

 

 

「じ、自分で使った場合はしばらく使えなくて……」

 

「バレた時、既に使った後だったと……何に使ったんだよ?」

 

「ちょ~とですね、友人の恋路が気になりまして……」

 

「ただの出歯亀じゃねぇか! 貴重な魔法何に使ってんだよ」

 

「うぅ~猛省しておりますぅ~」

 

「やっぱ、ダメだな。何がダメって、お前がダメだわ。この残念ウサギが」

 

「馬鹿としか言いようがねェ。」

 

 

 呆れたようにそっぽを向く輪廻にシアが泣きながら縋り付く。輪廻が、いい加減引きずっても出発しようとすると、何とも意外な所からシアの援護が来た。

 

 

 

「……、連れて行こう」

 

「ユエ?」

 

「ユエ?どうしたァ、頭の病気にでも掛かったかァ?」

 

「!? 最初から貴女のこといい人だと思ってました! ペッタンコって言ってゴメンなッあふんっ!」

 

ユエの言葉にハジメは訝しそうに輪廻はとうとう頭が飛んでったか?と心配するように、シアは興奮して目をキラキラして調子のいい事を言う。次いでに余計な事も言い、ユエにビンタを食らって頬を抑えながら崩れ落ちた。

 

 

 

「……樹海の案内に丁度いい」

 

「あ~」

 

「そういう事かァ、とうとう頭に病原体が住み着いたのかと思ったぜェ。」

 

 

 確かに、樹海は亜人族以外では必ず迷うと言われているため、兎人族の案内があれば心強い。樹海を迷わず進むための対策も一応考えていたのだが、若干、乱暴なやり方であるし確実ではない。最悪、現地で亜人族を捕虜にして道を聞き出そうと考えていたので、自ら進んで案内してくれる亜人がいるのは正直言って有り難い。ただ、シア達はあまりに多くの厄介事を抱えているため逡巡するハジメ。

 

 

 

 そんなハジメに、輪廻は逡巡を断ち切るように告げた。

 

 

 

「俺達は最強なんだろォ?ならちょっとした厄介事なんて、大した事ねえだろォ。」

 

 

 それは、奈落を出た時のハジメの言葉。この世界に対して遠慮しない。3人が居れば最強であると。ハジメは自分の言った言葉自分の主に返されて苦笑いするしかない。

 

 兎人族の協力があれば断然、樹海の探索は楽になるのだ。それを帝国兵や亜人達と揉めるかもしれないから避けるべき等と〝舌の根も乾かぬうちに〟である。もちろん、好き好んで厄介事に首を突っ込むつもり等さらさらないが、ベストな道が目の前にあるのに敵の存在を理由に避けるなど有り得ない。道を阻む敵は〝殺してでも〟と決めたのだ。

 

 

 

「そうですね。おい、喜べ残念ウサギ。主がお前達を樹海の案内に雇わせてもらう事を許可して下さった。報酬はお前等の命だ」

 

 確かに言っていることは間違いではないが、セリフが完全にヤの着く人であるである、それも幹部級の。しかし、それでも、峡谷において強力な魔物を片手間に屠れる強者が生存を約束したことに変わりはなく、シアは飛び上がらんばかりに喜びを表にした。

 

 

 

「あ、ありがとうございます! うぅ~、よがっだよぉ~、ほんどによがったよぉ~」

 

 

 

 ぐしぐしと嬉し泣きするシア。しかし、仲間のためにもグズグズしていられないと直ぐに立ち上がる。

 

 

 

「あ、あの、宜しくお願いします! そ、それでお二人のことは何と呼べば……」

 

「ん? そう言えば名乗ってなかったか……俺はハジメ。南雲ハジメだ」

 

「十五夜輪廻だァ。」

 

「……ユエ」

 

「輪廻さんにハジメさんとユエちゃんですね」

 

 

 

 3人の名前を何度か反芻し覚えるシア。しかし、ユエが不満顔で抗議する。

 

 

 

「……さんを付けろ。残念ウサギ」

 

「ふぇ!?」

 

 ユエらしからぬ命令口調に戸惑うシアは、ユエの外見から年下と思っているらしく、ユエが吸血鬼族で遥に年上と知ると土下座する勢いで謝罪した。どうもユエは、シアが気に食わないらしい。何故かは分からないが……。例え、ユエの視線がシアの体の一部を憎々しげに睨んでいたとしても、理由は定かではないのだ!

 

「取り敢えずウサギは俺んとこに後ろに乗れェ」

 

そうしてシアが輪廻の後ろに乗り、爆走すること十数分。

「!輪廻さん! もう直ぐ皆がいる場所です! あの魔物の声……ち、近いです! 父様達がいる場所に近いです!」

 

「うるせェ聞こえとるわァ! 飛ばすからしっかり掴まってろやァ!」

 

輪廻とハジメは、魔力を更に注ぎ、二輪を一気に加速させた。壁や地面が物凄い勢いで後ろへ流れていく。

 

 そうして走ること二分。ドリフトしながら最後の大岩を破壊した先には、今まさに襲われようとしている数十人の兎人族達がいた。

 

 

 

 

 

 





ハウリア合流まで行けなんだ。

と言う訳で次回はきっとハウリア合流編

感想と高評価よろしくぅー

お休みなさい。



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第8話 長老達とハウリアの訓練

こんちわ湯たんぽです。

やっぱりほぼ原作通りになっちゃうねぇ。


注意書き。

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
輪廻君が何言ってるか解らなくても気にしないで。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十二人ぐらいになりそう!
輪廻君むっちゃちーと。

それでもいいよと言う方のみご覧下さい。


ウサミミ四十二人をぞろぞろ引き連れて峡谷を行く。

 

 

 

 当然、数多の魔物が絶好の獲物だとこぞって襲ってくるのだが、ただの一匹もそれが成功したものはいなかった。例外なく、兎人族に触れることすら叶わず、接近した時点で閃光が飛び頭部を粉砕されるからである。

 

 

 

 乾いた破裂音と共に閃光が走り、気がつけばライセン大峡谷の凶悪な魔物が為すすべなく絶命していく光景に、兎人族達は唖然として、次いで、それを成し遂げている人物である輪廻とハジメに対して畏敬の念を向けていた。

 

 

 

 もっとも、小さな子供達は総じて、そのつぶらな瞳をキラキラさせて圧倒的な力を振るう輪廻やハジメをヒーローだとでも言うように見つめている。

 

 

 

「ふふふ、輪廻さん。チビッコ達が見つめていますよ~手でも振ってあげたらどうですか?」

 

 

 

 子供に純粋な眼差しを向けられて面倒くさそうな輪廻に、シアが実にウザイ表情で「うりうり~」とちょっかいを掛ける。

 

 

 

 額に青筋を浮かべたハジメは、取り敢えず無言で発砲した。

 

 

 

ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!

 

 

 

「あわわわわわわわっ!?」

 

 

 

 ゴム弾が足元を連続して通過し、奇怪なタップダンスのようにワタワタと回避するシア。道中何度も見られた光景に、シアの父カムは苦笑いを、ユエは呆れを乗せた眼差しを向ける。

 

 

 

「はっはっは、シアは随分と輪廻殿を気に入ったのだな。そんなに懐いて……シアももうそんな年頃か。父様は少し寂しいよ。だが、輪廻殿なら安心か……」

 

 

 

 すぐ傍で娘が未だに銃撃されているのに、気にした様子もなく目尻に涙を貯めて娘の門出を祝う父親のような表情をしているカム。周りの兎人族達も「たすけてぇ~」と悲鳴を上げるシアに生暖かい眼差しを向けている。

 

 

 

「いや、お前等。この状況見て出てくる感想がそれか?」

「巫山戯てるとしか思えねェ」

 

「……ズレてる」

 

 

 

 ユエの言う通り、どうやら兎人族は少し常識的にズレているというか、天然が入っている種族らしい。それが兎人族全体なのかハウリアの一族だけなのかは分からないが。

 

 

 

 そうこうしている内に、一行は遂にライセン大峡谷から脱出できる場所にたどり着いた。ハジメが〝遠見〟で見る限り、中々に立派な階段がある。岸壁に沿って壁を削って作ったのであろう階段は、五十メートルほど進む度に反対側に折り返すタイプのようだ。階段のある岸壁の先には樹海も薄らと見える。ライセン大峡谷の出口から、徒歩で半日くらいの場所が樹海になっているようだ。

 

 

 

 ハジメが何となしに遠くを見ていると、シアが不安そうに話しかけてきた。

 

 

 

「帝国兵はまだいるでしょか?」

 

「ん? どうだろうな。もう全滅したと諦めて帰ってる可能性も高いが……」

 

「そ、その、もし、まだ帝国兵がいたら……輪廻さんとハジメさん……どうするのですか?」

 

「? どうするって何が?」

 

「どういう意図の質問だァ?」

 

 質問の意図がわからず首を傾げるハジメと輪廻に、意を決したようにシアが尋ねる。周囲の兎人族も聞きウサミミを立てているようだ。

 

 

 

「今まで倒した魔物と違って、相手は帝国兵……人間族です。ハジメさんや輪廻さんと同じ。……敵対できますか?」

 

「残念ウサギ、お前、未来が見えていたんじゃないのか?」

 

「はい、見ました。帝国兵と相対するハジメさんを……後帝国兵を笑いながら殺していく輪廻さんも」

 

「だったら……何が疑問なんだ?」

 

「疑問というより確認です。帝国兵から私達を守るということは、人間族と敵対することと言っても過言じゃありません。同族と敵対しても本当にいいのかと……」

 

 

 

 シアの言葉に周りの兎人族達も神妙な顔付きでハジメを見ている。小さな子供達はよく分からないとった顔をしながらも不穏な空気を察してか大人達とハジメと輪廻を交互に忙しなく見ている。

 

 

 

 しかし、ハジメは、そんなシリアスな雰囲気などまるで気にした様子もなくあっさり言ってのけた。

 

 

 

「それがどうかしたのか?」

 

「どうでもいいなァ」

 

「えっ?」

 

 

 疑問顔を浮かべるシアにハジメは特に気負った様子もなく世間話でもするように話を続けた。

 

 

 

「だから、人間族と敵対することが何か問題なのかって言ってるんだ」

 

「そ、それは、だって同族じゃないですか……」

 

「お前らだって、同族に追い出されてるじゃねぇか」

 

「それは、まぁ、そうなんですが……」

 

「大体、根本が間違っている」

 

「根本?」

 

 

 

 さらに首を捻るシア。周りの兎人族も疑問顔だ。

 

 

 

「いいか? 俺は、お前等が樹海探索に便利だから雇った。んで、それまで死なれちゃ困るから守っているだけ。断じて、お前等に同情してとか、義侠心に駆られて助けているわけじゃない。まして、今後ずっと守ってやるつもりなんて毛頭ない。忘れたわけじゃないだろう?」

 

「うっ、はい……覚えてます……」

 

「だから、樹海案内の仕事が終わるまでは守る。自分のためにな。それを邪魔するヤツは魔物だろうが人間族だろうが関係ない。道を阻むものは敵、敵は殺す。それだけのことだ」

 

「な、なるほど……」

 

 

 

 何ともハジメらしい考えに、苦笑いしながら納得するシア。〝未来視〟で帝国と相対するハジメを見たといっても、未来というものは絶対ではないから実際はどうなるか分からない。見えた未来の確度は高いが、万一、帝国側につかれては今度こそ死より辛い奴隷生活が待っている。表には出さないが〝自分のせいで〟という負い目があるシアは、どうしても確認せずにはいられなかったのだ。

 

 

 

「はっはっは、分かりやすくていいですな。樹海の案内はお任せくだされ」

 

 

 

 カムが快活に笑う。下手に正義感を持ち出されるよりもギブ&テイクな関係の方が信用に値したのだろう。その表情に含むところは全くなかった。

 

 

 

 一行は、階段に差し掛かった。ハジメや輪廻を先頭に順調に登っていく。帝国兵からの逃亡を含めて、ほとんど飲まず食わずだったはずの兎人族だが、その足取りは軽かった。亜人族が魔力を持たない代わりに身体能力が高いというのは嘘ではないようだ。

 

 

 

 そして、遂に階段を上りきり、ハジメ達はライセン大峡谷からの脱出を果たす。

 

 

 

 登りきった崖の上、そこには……

 

 

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」

 

 

 

 三十人の帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員がカーキ色の軍服らしき衣服を纏っており、剣や槍、盾を携えており、ハジメ達を見るなり驚いた表情を見せた。

 

 

 

 だが、それも一瞬のこと。直ぐに喜色を浮かべ、品定めでもするように兎人族を見渡した。

 

 

 

「小隊長! 白髪の兎人もいますよ! 隊長が欲しがってましたよね?」

 

「おお、ますますツイテルな。年寄りは別にいいが、あれは絶対殺すなよ?」

 

「小隊長ぉ~、女も結構いますし、ちょっとくらい味見してもいいっすよねぇ? こちとら、何もないとこで三日も待たされたんだ。役得の一つや二つ大目に見てくださいよぉ~」

 

「ったく。全部はやめとけ。二、三人なら好きにしろ」

 

「ひゃっほ~、流石、小隊長! 話がわかる!」

 

 

 

 帝国兵は、兎人族達を完全に獲物としてしか見ていないのか戦闘態勢をとる事もなく、下卑た笑みを浮かべ舐めるような視線を兎人族の女性達に向けている。兎人族は、その視線にただ怯えて震えるばかりだ。

 

 

 

 帝国兵達が好き勝手に騒いでいると、兎人族にニヤついた笑みを浮かべていた小隊長と呼ばれた男が、ようやくハジメの存在に気がついた。

 

 

 

「あぁ? お前誰だ? 兎人族……じゃあねぇよな?」

 

 

 

 ハジメは、帝国兵の態度から素通りは無理だろうなと思いながら、一応会話に応じる。

 

 

 

「ああ、人間だ」

 

「はぁ~? なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ? しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か? 情報掴んで追っかけたとか? そいつぁまた商売魂がたくましいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、国で引き取るから置いていけ」

 

 

 

 勝手に推測し、勝手に結論づけた小隊長は、さも自分の言う事を聞いて当たり前、断られることなど有り得ないと信じきった様子で、そうハジメに命令した。

 

 

 

 当然、ハジメや輪廻が従うはずもない。

 

 

 

「断る」

 

「誰が置いてくか、ボケェ」

 

「……今、何て言った?」

 

「断ると言ったんだ。こいつらは今は俺達のもの。あんたらには一人として渡すつもりはない。諦めてさっさと国に帰ることをオススメする」

 

 

 

 

 聞き間違いかと問い返し、返って来たのは不遜な物言い。小隊長の額に青筋が浮かぶ。

 

「……小僧、口の利き方には気をつけろ。俺達が誰かわからないほど頭が悪いのか?」

 

「十全に理解している。あんたらに頭が悪いとは誰も言われたくないだろうな」

 

「後さっさと死ねェ。」

ハジメの言葉にスっと表情を消す小隊長。周囲の兵士達も剣呑な雰囲気でハジメを睨んでいる。その時、小隊長が、剣呑な雰囲気に背中を押されたのか、輪廻の後ろから出てきたユエに気がついた。幼い容姿でありながら纏う雰囲気に艶があり、そのギャップからか、えもいわれぬ魅力を放っている美貌の少女に一瞬呆けるものの、輪廻の服の裾をギュッと握っていることからよほど近しい存在なのだろうと当たりをつけ、再び下碑た笑みを浮かべた。

 

 

 

「あぁ~なるほど、よぉ~くわかった。てめぇが唯の世間知らず糞ガキだってことがな。ちょいと世の中の厳しさってヤツを教えてやる。くっくっく、そっちの嬢ちゃんえらい別嬪じゃねぇか。てめぇの四肢を切り落とした後、目の前で犯して、奴隷商に売っぱらってやるよ」

 

 

 

 その言葉にハジメは眉をピクリと動かし、ユエは無表情でありながら誰でも分かるほど嫌悪感を丸出しにしている。目の前の男が存在すること自体が許せないと言わんばかり、ユエが右手を掲げようとした。

 

 

 

 だが、それを制止するハジメ。訝しそうなユエを尻目にハジメが最後の言葉をかける。

 

 

 

「つまり敵ってことでいいよな?」

 

「あぁ!? まだ状況が理解できてねぇのか! てめぇは、震えながら許しをこッ!?」

 

 

 

ドパンッ!!

 

 

 

 想像した通りにハジメと輪廻が怯えないことに苛立ちを表にして怒鳴る小隊長だったが、その言葉が最後まで言い切られることはなかった。なぜなら、一発の破裂音と共に、その頭部が砕け散ったからだ。眉間に大穴を開けながら後頭部から脳髄を飛び散らせ、そのまま後ろに弾かれる様に倒れる。

 

「流石にユエに対するその態度は看破出来ねえなァ。なァハジメェ、こいつら殺していいよなァ!」

 

「言う前に殺してるじゃないですか。」

 

「そりゃァすまねぇなァ、だが俺は自分が好きな奴を侮辱するような奴を生かす趣味はねェんでなァ!」

 

その言葉にユエは顔を紅くする

「……輪廻、カッコイイ…」

 

そこからは虐殺ショーだね。

 

輪廻が笑いながら、アルベルトとシュタインを超高速連射して、残りは1人になった所で1度止めた

 

「た、頼む! 殺さないでくれ! な、何でもするから! 頼む!」

 

「そうか? なら、他の兎人族がどうなったか教えてもらおうか。結構な数が居たはずなんだがなァ……全部、帝国に移送済みかァ?」

 

 

 

 ハジメが質問したのは、百人以上居たはずの兎人族の移送にはそれなりに時間がかかるだろうから、まだ近くにいて道中でかち合うようなら序でに助けてもいいと思ったからだ。帝国まで移送済みなら、わざわざ助けに行くつもりは毛頭なかったが。

 

 

 

「……は、話せば殺さないか?」

 

「てめぇ、自分が条件を付けられる立場にあると思ってんのかァ? 別に、どうしても欲しい情報じゃあないんだ。今すぐ逝くかァ?」

 

「ま、待ってくれ! 話す! 話すから! ……多分、全部移送済みだと思う。人数は絞ったから……」

 

 

 

 〝人数を絞った〟それは、つまり老人など売れそうにない兎人族は殺したということだろう。兵士の言葉に、悲痛な表情を浮かべる兎人族達。輪廻は、その様子をチラッとだけ見やる。直ぐに視線を兵士に戻すともう用はないと瞳に殺意を宿した。

 

 

 

「待て! 待ってくれ! 他にも何でも話すから! 帝国のでも何でも! だから!」

 

 

 

 輪廻の殺意に気がついた兵士が再び必死に命乞いする。しかし、その返答は……

 

 

 

ドパンッ!

 

 

 

 一発の銃弾だった。

 

 

 

 息を呑む兎人族達。あまりに容赦のない輪廻の行動に完全に引いているようである。その瞳には若干の恐怖が宿っていた。それはシアも同じだったのか、おずおずと輪廻に尋ねた。

 

 

 

「あ、あのさっきの人は見逃してあげても良かったのでは……」

 

 

 

 はぁ? という呆れを多分に含んだ視線を向ける輪廻に「うっ」と唸るシア。自分達の同胞を殺し、奴隷にしようとした相手にも慈悲を持つようで、兎人族とはとことん温厚というか平和主義らしい。輪廻が言葉を発しようとしたが、その機先を制するようにユエが反論した。

 

 

 

「……一度、剣を抜いた者が、結果、相手の方が強かったからと言って見逃してもらおうなんて都合が良すぎ」

 

「そ、それは……」

 

「……そもそも、守られているだけのあなた達がそんな目を輪廻 に向けるのはお門違い」

 

「……」

 

 

 

 ユエは静かに怒っているようだ。守られておきながら、輪廻に向ける視線に負の感情を宿すなど許さないと言わんばかりである。当然といえば当然なので、兎人族達もバツが悪そうな表情をしている。

 

「ふむ、輪廻殿、申し訳ない。別に、貴方に含むところがあるわけではないのだ。ただ、こういう争いに我らは慣れておらんのでな……少々、驚いただけなのだ」

 

「輪廻さん、すみません」

 

「別にいいぜェ、」

 

それから数時間して、遂に一行は【ハルツィナ樹海】と平原の境界に到着した。樹海の外から見る限り、ただの鬱蒼とした森にしか見えないのだが、一度中に入ると直ぐさま霧に覆われるらしい。

 

 

 

「それでは、輪廻殿、ハジメ殿、ユエ殿。中に入ったら決して我らから離れないで下さい。お二人を中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。それと、行き先は森の深部、大樹の下で宜しいのですな?」

 

「ああ、聞いた限りじゃあ、そこが本当の迷宮と関係してそうだからな」

 

 

 

 カムが、ハジメに対して樹海での注意と行き先の確認をする。カムが言った〝大樹〟とは、【ハルツィナ樹海】の最深部にある巨大な一本樹木で、亜人達には〝大樹ウーア・アルト〟と呼ばれており、神聖な場所として滅多に近づくものはいないらしい。峡谷脱出時にカムから聞いた話だ。

 

 

 

 当初、ハジメは【ハルツィナ樹海】そのものが大迷宮かと思っていたのだが、よく考えれば、それなら奈落の底の魔物と同レベルの魔物が彷徨いている魔境ということになり、とても亜人達が住める場所ではなくなってしまう。なので、【オルクス大迷宮】のように真の迷宮の入口が何処かにあるのだろうと推測した。そして、カムから聞いた〝大樹〟が怪しいと踏んだのである。

 

 

 

 カムは、ハジメの言葉に頷くと、周囲の兎人族に合図をしてハジメ達の周りを固めた。

 

 

 

「ハジメ殿、できる限り気配は消してもらえますかな。大樹は、神聖な場所とされておりますから、あまり近づくものはおりませんが、特別禁止されているわけでもないので、フェアベルゲンや、他の集落の者達と遭遇してしまうかもしれません。我々は、お尋ね者なので見つかると厄介です」

 

「ああ、承知している。主よ俺もユエも、ある程度、隠密行動はできるから大丈夫だ」

 

 

 

 ハジメは、そう言うと〝気配遮断〟を使う。ユエも、奈落で培った方法で気配を薄くした。輪廻は幻想郷にいた頃の方法で気配消した結果

 

 

 

「ッ!? これは、また……ハジメ殿、できればユエ殿くらいにしてもらえますかな?」

 

「ん? ……こんなもんか?」

 

「はい、結構です。さっきのレベルで気配を殺されては、我々でも見失いかねませんからな。いや、全く、流石ですな!」

 

「……輪廻は?」

 

「ここだぜェ」

 

と言う事が有りつつも、進んだ先には。

 

「お前達……何故人間といる! 種族と族名を名乗れ!」

 虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人がいた。

 

樹海の中で人間族と亜人族が共に歩いている。

 

 

 

 その有り得ない光景に、目の前の虎の亜人と思しき人物はカム達に裏切り者を見るような眼差しを向けた。その手には両刃の剣が抜身の状態で握られている。周囲にも数十人の亜人が殺気を滾らせながら包囲網を敷いているようだ。

 

 

 

「あ、あの私達は……」

 

 

 

 カムが何とか誤魔化そうと額に冷汗を流しながら弁明を試みるが、その前に虎の亜人の視線がシアを捉え、その眼が大きく見開かれる。

 

「白い髪の兎人族…だと? ……貴様ら……報告のあったハウリア族か……亜人族の面汚し共め! 長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは! 反逆罪だ! もはや弁明など聞く必要もない! 全員この場で処刑する! 総員かッ!?」

 

 

ドパンッ!!

虎の亜人が問答無用で攻撃命令を下そうとしたその瞬間、ハジメの腕が跳ね上がり、銃声と共に一条の閃光が彼の頬を掠めて背後の樹を抉り飛ばし樹海の奥へと消えていった。

 

 

 

 理解不能な攻撃に凍りつく虎の亜人の頬に擦過傷が出来る。もし人間のように耳が横についていれば、確実に弾け飛んでいただろう。聞いたこともない炸裂音と反応を許さない超速の攻撃に誰もが硬直している。

 

 

 

 そこに、気負った様子もないのに途轍もない圧力を伴ったハジメの声が響いた。〝威圧〟という魔力を直接放出することで相手に物理的な圧力を加える固有魔法である。

 

 

 

「今の攻撃は、刹那の間に数十発単位で連射出来る。周囲を囲んでいるヤツらも全て把握している。お前等がいる場所は、既に俺のキルゾーンだ」

 

「な、なっ……詠唱がっ……」

 

「主の御前だ、失せろ。」

 

そして何やかんや有り

 

 

「……なるほど。試練に神代魔法、それに神の盤上か……」

 

 

 

 現在、輪廻とハジメとユエは、アルフレリックと向かい合って話をしていた。内容は、ハジメがオスカー・オルクスに聞いた〝解放者〟のことや神代魔法のこと、自分が異世界の人間であり七大迷宮を攻略すれば故郷へ帰るための神代魔法が手に入るかもしれないこと等だ。

 

 

 

 アルフレリックは、この世界の神の話を聞いても顔色を変えたりはしなかった。不思議に思ってハジメが尋ねると、「この世界は亜人族に優しくはない、今更だ」という答えが返ってきた。神が狂っていようがいまいが、亜人族の現状は変わらないということらしい。聖教教会の権威もないこの場所では信仰心もないようだ。あるとすれば自然への感謝の念だという。

 

 

 

 ハジメ達の話を聞いたアルフレリックは、フェアベルゲンの長老の座に就いた者に伝えられる掟を話した。それは、この樹海の地に七大迷宮を示す紋章を持つ者が現れたらそれがどのような者であれ敵対しないこと、そして、その者を気に入ったのなら望む場所に連れて行くことという何とも抽象的な口伝だった。

 

 

 

 【ハルツィナ樹海】の大迷宮の創始者リューティリス・ハルツィナが、自分が〝解放者〟という存在である事(解放者が何者かは伝えなかった)と、仲間の名前と共に伝えたものなのだという。フェアベルゲンという国ができる前からこの地に住んでいた一族が延々と伝えてきたのだとか。最初の敵対せずというのは、大迷宮の試練を越えた者の実力が途轍もないことを知っているからこその忠告だ。

 

 

 

 そして、オルクスの指輪の紋章にアルフレリックが反応したのは、大樹の根元に七つの紋章が刻まれた石碑があり、その内の一つと同じだったからだそうだ。

 

 

 

「それで、俺達は資格を持っているというわけか……」

 

 

 

 アルフレリックの説明により、人間を亜人族の本拠地に招き入れた理由がわかった。しかし、全ての亜人族がそんな事情を知っているわけではないはずなので、今後の話をする必要がある。

 

 

 

 ハジメとアルフレリックが、話を詰めようとしたその時、何やら階下が騒がしくなった。ハジメ達のいる場所は、最上階にあたり、階下にはシア達ハウリア族が待機している。どうやら、彼女達が誰かと争っているようだ。ハジメとアルフレリックは顔を見合わせ、同時に立ち上がった。

 

 

 

 階下では、大柄な熊の亜人族や虎の亜人族、狐の亜人族、背中から羽を生やした亜人族、小さく毛むくじゃらのドワーフらしき亜人族が剣呑な眼差しで、ハウリア族を睨みつけていた。部屋の隅で縮こまり、カムが必死にシアを庇っている。シアもカムも頬が腫れている事から既に殴られた後のようだ。

 

 

 

 ハジメとユエが階段から降りてくると、彼等は一斉に鋭い視線を送った。熊の亜人が剣呑さを声に乗せて発言する。

 

 

 

「アルフレリック……貴様、どういうつもりだ。なぜ人間を招き入れた? こいつら兎人族もだ。忌み子にこの地を踏ませるなど……返答によっては、長老会議にて貴様に処分を下すことになるぞ」

 

 

 

 必死に激情を抑えているのだろう。拳を握りわなわなと震えている。やはり、亜人族にとって人間族は不倶戴天の敵なのだ。しかも、忌み子と彼女を匿った罪があるハウリア族まで招き入れた。熊の亜人だけでなく他の亜人達もアルフレリックを睨んでいる。

 

 

 

 しかし、アルフレリックはどこ吹く風といった様子だ。

 

 

 

「なに、口伝に従ったまでだ。お前達も各種族の長老の座にあるのだ。事情は理解できるはずだが?」

 

「何が口伝だ! そんなもの眉唾物ではないか! フェアベルゲン建国以来一度も実行されたことなどないではないか!」

 

「だから、今回が最初になるのだろう。それだけのことだ。お前達も長老なら口伝には従え。それが掟だ。我ら長老の座にあるものが掟を軽視してどうする」

 

「なら、こんな人間族の小僧達が資格者だとでも言うのか! 敵対してはならない強者だと!」

 

「そうだ」

 

 

 

 あくまで淡々と返すアルフレリック。熊の亜人は信じられないという表情でアルフレリックを、そしてハジメ達を睨む。

 

 

 

フェアベルゲンには、種族的に能力の高い幾つかの各種族を代表する者が長老となり、長老会議という合議制の集会で国の方針などを決めるらしい。裁判的な判断も長老衆が行う。今、この場に集まっている亜人達が、どうやら当代の長老達らしい。だが、口伝に対する認識には差があるようだ。

 

 

 

 アルフレリックは、口伝を含む掟を重要視するタイプのようだが、他の長老達は少し違うのだろう。アルフレリックは森人族であり、亜人族の中でも特に長命種だ。二百年くらいが平均寿命だったとハジメは記憶している。だとすると、眼前の長老達とアルフレリックでは年齢が大分異なり、その分、価値観にも差があるのかもしれない。ちなみに、亜人族の平均寿命は百年くらいだ。

 

 

 

 そんなわけで、アルフレリック以外の長老衆は、この場に人間族や罪人がいることに我慢ならないようだ。

 

 

 

「……ならば、今、この場で試してやろう!」

 

 

 

 いきり立った熊の亜人が突如、ハジメに向かって突進した。あまりに突然のことで周囲は反応できていない。アルフレリックも、まさかいきなり襲いかかるとは思っていなかったのか、驚愕に目を見開いている。

 

 

 

 そして、一瞬で間合いを詰め、身長二メートル半はある脂肪と筋肉の塊の様な男の豪腕が、ハジメに向かって振り下ろされた。

 

 

 

 亜人の中でも、熊人族は特に耐久力と腕力に優れた種族だ。その豪腕は、一撃で野太い樹をへし折る程で、種族代表ともなれば他と一線を画す破壊力を持っている。シア達ハウリア族と傍らのユエ以外の亜人達は、皆一様に、肉塊となったハジメを幻視した。

 

 

 

 しかし、次の瞬間には、有り得ない光景に凍りついた。

 

 

 

ズドンッ!

 

 

 

 衝撃音と共に振り下ろされた拳は、あっさりとハジメの左腕に掴み止められていたからだ。

 

 

 

「……温い拳だな。主よ殺っても良いですか?」

 

「殺れ。」

 

その後

 

ハジメが熊の亜人を吹き飛ばした後、アルフレリックが何とか執り成し、ハジメ達による蹂躙劇は回避された。熊の亜人は内臓破裂、ほぼ全身の骨が粉砕骨折という危険な状態であったが、何とか一命は取り留めたらしい。高価な回復薬を湯水の如く使ったようだ。もっとも、もう二度と戦士として戦うことはできないようだが……

 

 

 

 現在、当代の長老衆である虎人族のゼル、翼人族のマオ、狐人族のルア、土人族(俗に言うドワーフ)のグゼ、そして森人族のアルフレリックが、ハジメと向かい合って座っていた。輪廻の傍らにはユエとカム、シアが座り、その後ろにハウリア族が固まって座っている。

 

 

 

 長老衆の表情は、アルフレリックを除いて緊張感で強ばっていた。戦闘力では一,二を争う程の手練だった熊の亜人(名前はジン)が、文字通り手も足も出ず瞬殺されたのであるから無理もない。

 

 

 

「で? あんた達は俺等をどうしたいんだ? 俺は大樹の下へ行きたいだけで、邪魔しなければ敵対することもないんだが……亜人族・・・としての意思を統一してくれないと、いざって時、何処までやっていいかわからないのは不味いだろう? あんた達的に。殺し合いの最中、敵味方の区別に配慮する程、俺はお人好しじゃないぞ」

 

 

 

 ハジメの言葉に、身を強ばらせる長老衆。言外に、亜人族全体との戦争も辞さないという意志が込められていることに気がついたのだろう。

 

 

 

「こちらの仲間を再起不能にしておいて、第一声がそれか……それで友好的になれるとでも?」

 

 

 

 グゼが苦虫を噛み潰したような表情で呻くように呟いた。

 

 

 

「は? 何言ってるんだ? 先に殺意を向けてきたのは、あの熊野郎だろ? 俺は返り討ちにしただけだ。再起不能になったのは自業自得ってやつだよ」

 

「き、貴様! ジンはな! ジンは、いつも国のことを思って!」

 

「それが、初対面の相手を問答無用に殺していい理由になるとでも?」

 

「そ、それは! しかし!」

 

「勘違いするなよ? 俺が被害者で、あの熊野郎が加害者。長老ってのは罪科の判断も下すんだろ? なら、そこのところ、長老のあんたがはき違えるなよ?」

 

 

 

 おそらくグゼはジンと仲が良かったのではないだろうか。その為、頭ではハジメの言う通りだと分かっていても心が納得しないのだろう。だが、そんな心情を汲み取ってやるほど、ハジメはお人好しではない。

 

 

 

「グゼ、気持ちはわかるが、そのくらいにしておけ。彼の言い分は正論だ」

 

 

 

 アルフレリックの諌めの言葉に、立ち上がりかけたグゼは表情を歪めてドスンッと音を立てながら座り込んだ。そのまま、むっつりと黙り込む。

 

 

 

「確かに、この少年は、紋章の一つを所持しているし、その実力も大迷宮を突破したと言うだけのことはあるね。僕は、彼を口伝の資格者と認めるよ」

 

 

 

 そう言ったのは狐人族の長老ルアだ。糸のように細めた目でハジメと輪廻を見た後、他の長老はどうするのかと周囲を見渡す。

 

 

 

 その視線を受けて、翼人族のマオ、虎人族のゼルも相当思うところはあるようだが、同意を示した。代表して、アルフレリックが輪廻とハジメに伝える。

 

 

 

「十五夜輪廻、南雲ハジメ。我らフェアベルゲンの長老衆は、お前さんを口伝の資格者として認める。故に、お前さんと敵対はしないというのが総意だ……可能な限り、末端の者にも手を出さないように伝える。……しかし……」

 

「絶対じゃねぇ…か?」

 

「ああ。知っての通り、亜人族は人間族をよく思っていない。正直、憎んでいるとも言える。血気盛んな者達は、長老会議の通達を無視する可能性を否定できない。特に、今回再起不能にされたジンの種族、熊人族の怒りは抑えきれない可能性が高い。アイツは人望があったからな……」

 

「そんで?」

 

 

 

 アルフレリックの話しを聞いても輪廻の顔色は変わらない。すべきことをしただけであり、すべきことをするだけだという意志が、その瞳から見て取れる。アルフレリックは、その意志を理解した上で、長老として同じく意志の宿った瞳を向ける。

 

 

 

「お前さんを襲った者達を殺さないで欲しい」

 

「……殺意を向けてくる相手に手加減しろとォ?」

 

「そうだ。お前さんの実力なら可能だろう?」

 

「あの熊野郎が手練だというなら、可能か否かで言えば可能だろうな。だが、殺し合いで手加減をするつもりはない。あんたの気持ちはわかるけどなァ?そっちの事情は俺にとって関係のないものだ。同胞を死なせたくないなら死ぬ気で止めてやれやァ」

 

 

 

殺し合いでは何が起こるかわからないのだ。手加減などして、窮鼠猫を噛むように致命傷を喰らわないとは限らない。その為、ハジメがアルフレリックの頼みを聞くことはなかった。

 

 

 

 しかし、そこで虎人族のゼルが口を挟んだ。

 

 

 

「ならば、我々は、大樹の下への案内を拒否させてもらう。口伝にも気に入らない相手を案内する必要はないとあるからな」

 

 

 

 その言葉に、輪廻とハジメは訝しそうな表情をした。もとより、案内はハウリア族に任せるつもりで、フェアベルゲンの者の手を借りるつもりはなかった。そのことは、彼等も知っているはずである。だが、ゼルの次の言葉で彼の真意が明らかになった。

 

 

 

「ハウリア族に案内してもらえるとは思わないことだ。そいつらは罪人。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。何があって同道していたのか知らんが、ここでお別れだ。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている」

 

 

 

 ゼルの言葉に、シアは泣きそうな表情で震え、カム達は一様に諦めたような表情をしている。この期に及んで、誰もシアを責めないのだから情の深さは折紙付きだ。

 

 

 

「長老様方! どうか、どうか一族だけはご寛恕を! どうか!」

 

「シア! 止めなさい! 皆、覚悟は出来ている。お前には何の落ち度もないのだ。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わない。ハウリア族の皆で何度も何度も話し合って決めたことなのだ。お前が気に病む必要はない」

 

「でも、父様!」

 

 

 

 土下座しながら必死に寛恕を請うシアだったが、ゼルの言葉に容赦はなかった。

 

 

 

「既に決定したことだ。ハウリア族は全員処刑する。フェアベルゲンを謀らなければ忌み子の追放だけで済んだかもしれんのにな」

 

 

 

 ワッと泣き出すシア。それをカム達は優しく慰めた。長老会議で決定したというのは本当なのだろう。他の長老達も何も言わなかった。おそらく、忌み子であるということよりも、そのような危険因子をフェアベルゲンの傍に隠し続けたという事実が罪を重くしたのだろう。ハウリア族の家族を想う気持ちが事態の悪化を招いたとも言える。何とも皮肉な話だ。

 

 

 

「そういうわけだ。これで、貴様が大樹に行く方法は途絶えたわけだが? どうする? 運良くたどり着く可能性に賭けてみるか?」

 

 

 

 それが嫌なら、こちらの要求を飲めと言外に伝えてくるゼル。他の長老衆も異論はないようだ。しかし、輪廻は特に焦りを浮かべることも苦い表情を見せることもなく、何でもない様に軽く返した。

 

 

 

「お前ら、頭大丈夫かァ?」

 

「な、なんだと!」

 

 

 

輪廻の物言いに、目を釣り上げるゼル。シア達も思わずと言った風にハジメを見る。ユエは輪廻の考えがわかっているのかすまし顔だ。

 

 

 

「俺達は、お前らの事情なんて関係ないって言ったんだ。俺からこいつらを奪うってことは、結局、俺の行く道を阻んでいるのと変わらないだろうがァ」

 

 

 

輪廻は長老衆を睥睨しながら、スっと伸ばした手を泣き崩れているシアの頭に乗せた。ピクッと体を震わせ、輪廻を見上げるシア。

 

 

 

「俺から、そんなにこいつらを奪いたいならなァ、……戦争でもおっぱじめっかァ?」

 

「輪廻さん……」

 

 

 

 輪廻にとって今の言葉は単純に自分の邪魔をすることは許さないという意味で、それ以上ではないだろう。しかし、それでも、ハウリア族を死なせないために亜人族の本拠地フェアベルゲンとの戦争も辞さないという言葉は、その意志は、絶望に沈むシアの心を真っ直ぐに貫いた。

 

 

 

「本気かね?」

 

 

 

 アルフレリックが誤魔化しは許さないとばかりに鋭い眼光で輪廻を射貫く。

 

 

 

「あたりめぇだろうが、今更嘘なんて着かねぇ」

 

 

 

 しかし、全く揺るがない輪廻。そこに不退転の決意が見て取れる。この世界に対して自重しない、邪魔するものには妥協も容赦もしない。

 

 

 

「フェアベルゲンから案内を出すと言っても?」

 

 

 

 ハウリア族の処刑は、長老会議で決定したことだ。それを、言ってみれば脅しに屈して覆すことは国の威信に関わる。今後、輪廻達を襲うかもしれない者達の助命を引き出すための交渉材料である案内人というカードを切ってでも、長老会議の決定を覆すわけにはいかない。故に、アルフレリックは提案した。しかし、輪廻は交渉の余地などないと言わんばかりにはっきりと告げる。

 

 

 

「何回も言わせんじゃねぇ。俺達の案内人はハウリアだァ」

 

「なぜ、彼等にこだわる。大樹に行きたいだけなら案内人は誰でもよかろう」

 

 

 

 アルフレリックの言葉に輪廻は面倒そうな表情を浮かべつつ、シアをチラリと見た。先程から、ずっと輪廻を見ていたシアはその視線に気がつき、一瞬目が合う。すると僅かに心臓が跳ねたのを感じた。視線は直ぐに逸れたが、シアの鼓動だけは高まり続ける。

 

 

 

「案内と引き換えに助けてやるって、言ったからなァ。」

 

「……約束か。それならもう果たしたと考えてもいいのではないか? 峡谷の魔物からも、帝国兵からも守ったのだろう? なら、あとは報酬として案内を受けるだけだ。報酬を渡す者が変わるだけで問題なかろう。」

 

「問題大ありだ。案内するまで身の安全を確保するってのが約束なんだよ。俺は1回言ったことは絶対に曲げねぇんだよォ。それに、途中でいい条件が出てきたからって、ポイ捨てして鞍替えなんざ……」

 

 

 

 輪廻は一度、言葉を切って今度はユエを見た。ユエも輪廻を見ており目が合うと僅かに微笑む。それに苦笑いしながら肩を竦めた輪廻はアルフレリックに向き合い告げた。

 

 

 

「カッコ悪りぃだろォ?」

 

 

 

 闇討ち、不意打ち、騙し討ち、卑怯、卑劣に嘘、ハッタリ。殺し合いにおいて、輪廻はこれらを悪いとは思わない。生き残るために必要なら何の躊躇いもなく実行して見せるだろう。

 

 

 

 しかし、だからこそ、殺し合い以外では守るべき仁義くらいは守りたい。それすら出来なければ本当に唯の外道である。輪廻も男だ。あの世界ではそれになりかけた。今度はなりたくない。

 

 

 

 輪廻に引く気がないと悟ったのか、アルフレリックが深々と溜息を吐く。他の長老衆がどうするんだと顔を見合わせた。しばらく、静寂が辺りを包み、やがてアルフレリックがどこか疲れた表情で提案した。

 

 

 

「ならば、お前さんの奴隷ということにでもしておこう。フェアベルゲンの掟では、樹海の外に出て帰ってこなかった者、奴隷として捕まったことが確定した者は、死んだものとして扱う。樹海の深い霧の中なら我らにも勝機はあるが、外では魔法を扱う者に勝機はほぼない。故に、無闇に後を追って被害が拡大せぬように死亡と見なして後追いを禁じているのだ。……既に死亡と見なしたものを処刑はできまい」

 

「アルフレリック! それでは!」

 

 

 

 完全に屁理屈である。当然、他の長老衆がギョッとした表情を向ける。ゼルに到っては思わず身を乗り出して抗議の声を上げた。

 

 

 

「ゼル。わかっているだろう。この少年が引かないことも、その力の大きさも。ハウリア族を処刑すれば、確実に敵対することになる。その場合、どれだけの犠牲が出るか……長老の一人として、そのような危険は断じて犯せん」

 

「しかし、それでは示しがつかん! 力に屈して、化物の子やそれに与するものを野放しにしたと噂が広まれば、長老会議の威信は地に落ちるぞ!」

 

「だが……」

 

「さっきから、少年少年てうるせえなァ、てめぇらは俺より歳下だろうがァ?」

 

「は?」

 

「あのなァ、俺はこれでも五百年生きてんだぞォ?」

 

「「「「え?」」」」

 

その場が凍り付いた

 

少年説明後。めんどいし長いから少し飛ばすわ。(後この後少しの間輪廻君が、出てこないかも。)

 

「さて、お前等には戦闘訓練を受けてもらおうと思う」

 

 

 

 フェアベルゲンを追い出されたハジメ達が、一先ず大樹の近くに拠点を作って一息ついた時の、ハジメの第一声がこれだった。拠点といっても、ハジメがさり気なく盗ん……貰ってきたフェアドレン水晶を使って結界を張っただけのものだ。その中で切り株などに腰掛けながら、ウサミミ達はポカンとした表情を浮かべた。

 

 

 

「え、えっと……ハジメさん。戦闘訓練というのは……」

 

 

 

 困惑する一族を代表してシアが尋ねる。

 

 

 

「そのままの意味だ。どうせ、これから十日間は大樹へはたどり着けないんだろ? ならその間の時間を有効活用して、軟弱で脆弱で負け犬根性が染み付いたお前等を一端の戦闘技能者に育て上げようと思ってな」

 

「な、なぜ、そのようなことを……」

 

 

 

 ハジメの据わった目と全身から迸る威圧感にぷるぷると震えるウサミミ達。シアが、あまりに唐突なハジメの宣言に当然の如く疑問を投げかける。

 

 

 

「なぜ? なぜと聞いたか? 残念ウサギ」

 

「あぅ、まだ名前で呼んでもらえない……」

 

 

 

 落ち込むシアを尻目にハジメが語る。

 

 

 

「いいか、俺がお前達と交わした約束は、案内が終わるまで守るというものだ。じゃあ、案内が終わった後はどうするのか、それをお前等は考えているのか?」

 

 

 

 ハウリア族達が互いに顔を見合わせ、ふるふると首を振る。カムも難しい表情だ。漠然と不安は感じていたが、激動に次ぐ激動で頭の隅に追いやられていたようだ。あるいは、考えないようにしていたのか。

 

 

 

「まぁ、考えていないだろうな。考えたところで答えなどないしな。お前達は弱く、悪意や害意に対しては逃げるか隠れることしかできない。そんなお前等は、遂にフェアベルゲンという隠れ家すら失った。つまり、俺の庇護を失った瞬間、再び窮地に陥るというわけだ」

 

「「「「「「……」」」」」」

 

 

 

 全くその通りなので、ハウリア族達は皆一様に暗い表情で俯く。そんな、彼等にハジメの言葉が響く。

 

 

 

「お前等に逃げ場はない。隠れ家も庇護もない。だが、魔物も人も容赦なく弱いお前達を狙ってくる。このままではどちらにしろ全滅は必定だ……それでいいのか? 弱さを理由に淘汰されることを許容するか? 幸運にも拾った命を無駄に散らすか? どうなんだ?」

 

 

 

 誰も言葉を発さず重苦しい空気が辺りを満たす。そして、ポツリと誰かが零した。

 

 

 

「そんなものいいわけがない」

 

 

 

 その言葉に触発されたようにハウリア族が顔を上げ始める。シアは既に決然とした表情だ。

 

 

 

「そうだ。いいわけがない。ならば、どうするか。答えは簡単だ。強くなればいい。襲い来るあらゆる障碍を打ち破り、自らの手で生存の権利を獲得すればいい」

 

「……ですが、私達は兎人族です。虎人族や熊人族のような強靭な肉体も翼人族や土人族のように特殊な技能も持っていません……とても、そのような……」

 

 

 

 兎人族は弱いという常識がハジメの言葉に否定的な気持ちを生む。自分達は弱い、戦うことなどできない。どんなに足掻いてもハジメの言う様に強くなど成れるものか、と。

 

 

 

 ハジメはそんなハウリア族を鼻で笑う。

 

 

 

「俺はかつての仲間から〝無能〟と呼ばれていたぞ?」

 

「え?」

 

「〝無能〟だ〝無能〟。ステータスも技能も平凡極まりない一般人。仲間内の最弱。戦闘では足でまとい以外の何者でもない。故に、かつての仲間達は俺を〝無能〟と呼んでいたんだよ。実際、その通りだった」

 

 

 

 ハジメの告白にハウリア族は例外なく驚愕を表にする。ライセン大峡谷の凶悪な魔物も、戦闘能力に優れた熊人族の長老も、苦もなく一蹴したハジメが〝無能〟で〝最弱〟など誰が信じられるというのか。

 

 

 

「だが、奈落の底に落ちて俺は強くなるために行動した。出来るか出来ないかなんて頭になかった。出来なければ死ぬ、その瀬戸際で自分の全てをかけて戦った。……気がつけばこの有様さ」

 

 

 

 淡々と語られる内容に、しかし、あまりに壮絶な内容にハウリア族達の全身を悪寒が走る。一般人並のステータスということは、兎人族よりも低スペックだったということだ。その状態で、自分達が手も足も出なかったライセン大峡谷の魔物より遥かに強力な化物達を相手にして来たというのだ。実力云々よりも、実際生き残ったという事実よりも、最弱でありながら、そんな化け物共に挑もうとしたその精神の異様さにハウリア族は戦慄した。自分達なら絶望に押しつぶされ、諦観と共に死を受け入れるだろう。長老会議の決定を受け入れたように。

 

 

 

「お前達の状況は、かつての俺と似ている。約束の内にある今なら、絶望を打ち砕く手助けくらいはしよう。自分達には無理だと言うのなら、それでも構わない。その時は今度こそ全滅するだけだ。約束が果たされた後は助けるつもりは毛頭ないからな。残り僅かな生を負け犬同士で傷を舐め合ってすごせばいいさ」

 

 

 

 それでどうする? と目で問うハジメ。ハウリア族達は直ぐには答えない。いや、答えられなかったというべきか。自分達が強くなる以外に生存の道がないことは分かる。ハジメは、正義感からハウリア族を守ってきたわけではない。故に、約束が果たされれば容赦なく見捨てられるだろう。だが、そうは分かっていても、温厚で平和的、心根が優しく争いが何より苦手な兎人族にとって、ハジメの提案は、まさに未知の領域に踏み込むに等しい決断だった。ハジメの様な特殊な状況にでも陥らない限り、心のあり方を変えるのは至難なのだ。

 

 

 

 黙り込み顔を見合わせるハウリア族。しかし、そんな彼等を尻目に、先程からずっと決然とした表情を浮かべていたシアが立ち上がった。

 

 

 

「やります。私に戦い方を教えてください! もう、弱いままは嫌です!」

 

 

 

 樹海の全てに響けと言わんばかりの叫び。これ以上ない程思いを込めた宣言。シアとて争いは嫌いだ。怖いし痛いし、何より傷つくのも傷つけるのも悲しい。しかし、一族を窮地に追い込んだのは紛れもなく自分が原因であり、このまま何も出来ずに滅ぶなど絶対に許容できない。とあるもう一つの目的のためにも、シアは兎人族としての本質に逆らってでも強くなりたかった。

 

 

 

 不退転の決意を瞳に宿し、真っ直ぐハジメを見つめるシア。その様子を唖然として見ていたカム達ハウリア族は、次第にその表情を決然としたものに変えて、一人、また一人と立ち上がっていく。そして、男だけでなく、女子供も含めて全てのハウリア族が立ち上がったのを確認するとカムが代表して一歩前へ進み出た。

 

 

 

「ハジメ殿……宜しく頼みます」

 

 

 

 言葉は少ない。だが、その短い言葉には確かに意志が宿っていた。襲い来る理不尽と戦う意志が。

 

 

 

「わかった。覚悟しろよ? あくまでお前等自身の意志で強くなるんだ。俺は唯の手伝い。途中で投げ出したやつを優しく諭してやるなんてことしないからな。おまけに期間は僅か十日だ……死に物狂いになれ。待っているのは生か死の二択なんだから」

 

 

 

 ハジメの言葉に、ハウリア族は皆、覚悟を宿した表情で頷いた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 ハジメは、ハウリア族を訓練するにあたって、まず、〝宝物庫〟から取り出した錬成の練習用に作った装備を彼等に渡した。先に渡していたナイフの他に反りの入った片刃の小剣、日本で言うところの小太刀だ。これらの刃物は、ハジメが精密錬成を鍛えるために、その刃を極薄にする練習の過程で作り出されたもので切れ味は抜群だ。タウル鉱石製なので衝撃にも強い。その細身に反してかなりの強度を誇っている。

 

 

 

 そして、その武器を持たせた上で基本的な動きを教える。もちろん、ハジメに武術の心得などない。あってもそれは漫画やゲームなどのにわか知識に過ぎず他者に教えられるようなものではない。教えられるのは、奈落の底で数多の魔物と戦い磨き上げた〝合理的な動き〟だけだ。それを叩き込みながら、適当に魔物をけしかけて実戦経験を積ませる。ハウリア族の強みは、その索敵能力と隠密能力だ。いずれは、奇襲と連携に特化した集団戦法を身につければいいと思っていた。

 

 

 

 ちなみに、シアに関してはユエが専属で魔法の訓練をしている。亜人でありながら魔力があり、その直接操作も可能なシアは、知識さえあれば魔法陣を構築して無詠唱の魔法が使えるはずだからだ。時折、霧の向こうからシアの悲鳴が聞こえるので特訓は順調のようだ。

 

 

 

 だが、訓練開始から二日目。ハジメは額に青筋を浮かべながらイライラした様にハウリア族の訓練風景を見ていた。確かに、ハウリア族達は、自分達の性質に逆らいながら、言われた通り真面目に訓練に励んでいる。魔物だって、幾つもの傷を負いながらも何とか倒している。

 

 

 

 しかし……

 

 

 

グサッ!

 

 

 

 魔物の一体に、ハジメ特製の小太刀が突き刺さり絶命させる。

 

 

 

「ああ、どうか罪深い私を許しくれぇ~」

 

 

 

 それをなしたハウリア族の男が魔物に縋り付く。まるで互いに譲れぬ信念の果て親友を殺した男のようだ。

 

 

 

ブシュ!

 

 

 

 また一体魔物が切り裂かれて倒れ伏す。

 

 

 

「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! それでも私はやるしかないのぉ!」

 

 

 

 首を裂いた小太刀を両手で握り、わなわな震えるハウリア族の女。まるで狂愛の果て、愛した人をその手で殺めた女のようだ。

 

 

 

バキッ!

 

 

 

 瀕死の魔物が、最後の力で己を殺した相手に一矢報いる。体当たりによって吹き飛ばされたカムが、倒れながら自嘲気味に呟く。

 

 

 

「ふっ、これが刃を向けた私への罰というわけか……当然の結果だな……」

 

 

 

 その言葉に周囲のハウリア族が瞳に涙を浮かべ、悲痛な表情でカムへと叫ぶ。

 

 

 

「族長! そんなこと言わないで下さい! 罪深いのは皆一緒です!」

 

「そうです! いつか裁かれるとき来るとしても、それは今じゃない! 立って下さい! 族長!」

 

「僕達は、もう戻れぬ道に踏み込んでしまったんだ。族長、行けるところまで一緒に逝きましょうよ」

 

「お、お前達……そうだな。こんな所で立ち止まっている訳にはいかない。死んでしまった彼(小さなネズミっぽい魔物)のためにも、この死を乗り越えて私達は進もう!」

 

「「「「「「「「族長!」」」」」」」」

 

 

 

 いい雰囲気のカム達。そして我慢できずに突っ込むハジメ。

 

 

 

「だぁーーー! やかましいわ、ボケッ! 魔物一体殺すたびに、いちいち大げさなんだよ! なんなの? ホント何なんですか? その三文芝居! 何でドラマチックな感じになってんの? 黙って殺れよ! 即殺しろよ! 魔物に向かって〝彼〟とか言うな! キモイわ!」

 

 

 

 そう、ハウリア族達が頑張っているのは分かるのだが、その性質故か、魔物を殺すたびに訳のわからないドラマが生まれるのだ。この二日、何度も見られた光景であり、ハジメもまた何度も指摘しているのだが一向に直らない事から、いい加減、堪忍袋の緒が切れそうなのである。

 

 

 

 ハジメの怒りを多分に含んだ声にビクッと体を震わせながらも、「そうは言っても……」とか「だっていくら魔物でも可哀想で……」とかブツブツと呟くハウリア族達。

 

 

 

 更にハジメの額に青筋が量産される。

 

 

 

 見かねたハウリア族の少年が、ハジメを宥めようと近づく。この少年、ライセン大峡谷でハイベリアに喰われそうになっていたところを間一髪ハジメに助けられ、特に懐いている子だ。

 

 

 

 しかし、進み出た少年はハジメに何か言おうとして、突如、その場を飛び退いた。

 

 

 

 訝しそうなハジメが少年に尋ねる。

 

 

 

「? どうした?」

 

 

 

 少年は、そっと足元のそれに手を這わせながらハジメに答えた。

 

 

 

「あ、うん。このお花さんを踏みそうになって……よかった。気がつかなかったら、潰しちゃうところだったよ。こんなに綺麗なのに、踏んじゃったら可愛そうだもんね」

 

 

 

 ハジメの頬が引き攣る。

 

 

 

「お、お花さん?」

 

「うん! ハジメ兄ちゃん! 僕、お花さんが大好きなんだ! この辺は、綺麗なお花さんが多いから訓練中も潰さないようにするのが大変なんだ~」

 

 

 

 ニコニコと微笑むウサミミ少年。周囲のハウリア族達も微笑ましそうに少年を見つめている。

 

 

 

 ハジメは、ゆっくり顔を俯かせた。白髪が垂れ下がりハジメの表情を隠す。そして、ポツリと囁くような声で質問をする。

 

 

 

「……時々、お前等が妙なタイミングで跳ねたり移動したりするのは……その〝お花さん〟とやらが原因か?」

 

 

 

 ハジメの言う通り、訓練中、ハウリア族は妙なタイミングで歩幅を変えたり、移動したりするのだ。気にはなっていたのだが、次の動作に繋がっていたので、それが殺りやすい位置取りなのかと様子を見ていたのだが。

 

 

 

「いえいえ、まさか。そんな事ありませんよ」

 

「はは、そうだよな?」

 

 

 

 苦笑いしながらそう言うカムに少し頬が緩むハジメ。しかし……

 

 

 

「ええ、花だけでなく、虫達にも気を遣いますな。突然出てきたときは焦りますよ。何とか踏まないように避けますがね」

 

 

 

 カムのその言葉にハジメの表情が抜け落ちる。幽鬼のようにゆら~りゆら~りと揺れ始めるハジメに、何か悪いことを言ったかとハウリア族達がオロオロと顔を見合わせた。ハジメは、そのままゆっくり少年のもとに歩み寄ると、一転してにっこりと笑顔を見せる。少年もにっこりと微笑む。

 

 

 

 そしてハジメは……笑顔のまま眼前の花を踏み潰した。ご丁寧に、踏んだ後、グリグリと踏みにじる。

 

 

 

 呆然とした表情で手元を見る少年。ようやくハジメの足が退けられた後には、無残にも原型すら留めていない〝お花さん〟の残骸が横たわっていた。

 

 

 

「お、お花さぁーん!」

 

 

 

 少年の悲痛な声が樹海に木霊する。「一体何を!」と驚愕の表情でハジメを見やるハウリア族達に、ハジメは額に青筋を浮かべたままにっこりと微笑みを向ける。

 

 

 

「ああ、よくわかった。よ~くわかりましたともさ。俺が甘かった。俺の責任だ。お前等という種族を見誤った俺の落ち度だ。ハハ、まさか生死がかかった瀬戸際で〝お花さん〟だの〝虫達〟だのに気を遣うとは……てめぇらは戦闘技術とか実戦経験とかそれ以前の問題だ。もっと早くに気がつくべきだったよ。自分の未熟に腹が立つ……フフフ」

 

「ハ、ハジメ殿?」

 

 

 

 不気味に笑い始めたハジメに、ドン引きしながら恐る恐る話かけるカム。その返答は……

 

 

 

ドパンッ!

 

 

 

 ドンナーによる銃撃だった。カムが仰け反るように後ろに吹き飛び、少し宙を舞った後ドサッと地面に落ちる。次いで、カムの額を撃ち抜いた非致死性のゴム弾がポテッと地面に落ちた。

 

 

 

 辺りをヒューと風が吹き、静寂が支配する。ハジメは、気絶したのか白目を向いて倒れるカムに近寄り、今度はその腹を目掛けてゴム弾を撃ち込んだ。

 

 

 

「はうぅ!」

 

 

 

 悲鳴を上げ咳き込みながら目を覚ましたカムは、涙目でハジメを見る。ウサミミ生やしたおっさんが女座りで涙目という何ともシュールな光景をよそに、ハジメは宣言した。

 

 

 

「貴様らは薄汚い〝ピッー〟共だ。この先、〝ピッー〟されたくなかったら死に物狂いで魔物を殺せ! 今後、花だの虫だのに僅かでも気を逸らしてみろ! 貴様ら全員〝ピッー〟してやる! わかったら、さっさと魔物を狩りに行け! この〝ピッー〟共が!」

 

 

 

 ハジメのあまりに汚い暴言に硬直するハウリア族。そんな彼等にハジメは容赦なく発砲した。

 

 

 

ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!

 

 

 

 わっーと蜘蛛の子を散らすように樹海へと散っていくハウリア族。足元で震える少年がハジメに必死で縋り付く。

 

 

 

「ハジメ兄ちゃん! 一体どうしたの!? 何でこんなことするの!?」

 

 

 

 ハジメはギラリッと眼を光らせて少年を睨むと、周囲を見渡し、あちこちに咲いている花を確認する。そして無言で再度発砲した。

 

 

 

 次々と散っていく花々。少年が悲鳴を上げる。

 

 

 

「何だよぉ~、何すんだよぉ~、止めろよぉハジメ兄ちゃん!」

 

「黙れ、クソガキ。いいか? お前が無駄口を叩く度に周囲の花を散らしていく。花に気を遣っても、花を愛でても散らしてく。何もしなくても散らしていく。嫌なら、一体でも多くの魔物を殺してこい!」

 

 

 

 そう言いつつ、再び花を撃ち抜いてくハジメ。少年はうわ~んと泣きながら樹海へと消えていった。

 

 

 

 それ以降、樹海の中に〝ピッー〟を入れないといけない用語とハウリア達の悲鳴と怒号が飛び交い続けた。

 

 

 

 種族の性質的にどうしても戦闘が苦手な兎人族達を変えるために取った訓練方法。戦闘技術よりも、その精神性を変えるために行われたこの方法を、地球ではハー○マン式と言うとか言わないとか……

 

 

 





感想と高評価よろしくー

アンケートは次回までとします。


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第9話 ブルックの街とライセン大迷宮。

こんちわ湯たんぽです。
今回は眠いので注意書きだけして帰ります。
あ、何か途中に書いてあるけど無視して良いですよ。

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
輪廻君が何言ってるか解らなくても気にしないで。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十五人ぐらいになりそう!(現時点)
輪廻君むっちゃちーと。

それでもいいよと言う方のみご覧下さい。



「えへへ、うへへへ、くふふふ~」

 

 

 

 同行を許されて上機嫌のシアは、奇怪な笑い声を発しながら緩みっぱなしの頬に両手を当ててクネクネと身を捩らせてた。それは、輪廻と問答した時の真剣な表情が嘘のように残念な姿だった。

 

 

 

「……キモイ」

 

 

 

 見かねたユエがボソリと呟く。シアの優秀なウサミミは、その呟きをしっかりと捉えた。

 

 

 

「……ちょっ、キモイって何ですか! キモイって! 嬉しいんだからしょうがないじゃないですかぁ。何せ、輪廻さんの初デレですよ? 見ました? 最後の表情。私、思わず胸がキュンとなりましたよ~、これは私にメロメロになる日も遠くないですねぇ~」

 

 

 

 シアは調子に乗っている。それはもう乗りに乗っている。そんなシアに向かってハジメとユエは声を揃えてうんざりしながら呟いた。

 

 

 

「「……ウザウサギ」」

 

「んなっ!? 何ですかウザウサギって! いい加減名前で呼んでくださいよぉ~、旅の仲間ですよぉ~、まさか、この先もまともに名前を呼ぶつもりがないとかじゃあないですよね? ねっ?」

 

「「……」」

 

「何で黙るんですかっ? ちょっと、目を逸らさないで下さいぃ~。ほらほらっ、シアですよ、シ・ア。Repeatahuta-mi-、シ・ア」

 

 

 

 必死に名前を呼ばせようと奮闘するシアを尻目に今後の予定について話し合いを始める輪廻とハジメとユエ。それに「無視しないでぇ~、仲間はずれは嫌ですぅ~」と涙目で縋り付くシア。旅の仲間となっても扱いの雑さは変わらないようだった。

 

 

 

 そんな風に騒いでいると(シアだけ)、霧をかき分けて数人のハウリア族が、ハジメに課された課題をクリアしたようで魔物の討伐を証明する部位を片手に戻ってきた。よく見れば、その内の一人はカムだ。

 

 

 

 シアは久しぶりに再会した家族に頬を綻ばせる。本格的に修行が始まる前、気持ちを打ち明けたときを最後として会っていなかったのだ。たった十日間とはいえ、文字通り死に物狂いで行った修行は、日々の密度を途轍もなく濃いものとした。そのため、シアの体感的には、もう何ヶ月も会っていないような気がしたのだ。

 

 

 

 早速、父親であるカムに話しかけようとするシア。報告したいことが山ほどあるのだ。しかし、シアは話しかける寸前で、発しようとした言葉を呑み込んだ。カム達が発する雰囲気が何だかおかしいことに気がついたからだ。

 

 

 

 歩み寄ってきたカムはシアを一瞥すると僅かに笑みを浮かべただけで、直ぐに視線をハジメに戻した。そして……

 

 

 

「ボス。お題の魔物、きっちり狩って来やしたぜ?」

 

「ボ、ボス?と、父様? 何だか口調が……というか雰囲気が……」

 

 

 

 父親の言動に戸惑いの声を発するシアをさらりと無視して、カム達は、この樹海に生息する魔物の中でも上位に位置する魔物の牙やら爪やらをバラバラと取り出した。

 

 

 

「……俺は一体でいいと言ったと思うんだが……」

 

 

 

 ハジメの課した訓練卒業の課題は上位の魔物を一チーム一体狩ってくることだ。しかし、眼前の剥ぎ取られた魔物の部位を見る限り、優に十体分はある。ハジメの疑問に対し、カム達は不敵な笑みを持って答えた。

 

 

 

「ええ、そうなんですがね? 殺っている途中でお仲間がわらわら出てきやして……生意気にも殺意を向けてきやがったので丁重にお出迎えしてやったんですよ。なぁ? みんな?」

 

「そうなんですよ、ボス。こいつら魔物の分際で生意気な奴らでした」

 

「きっちり落とし前はつけましたよ。一体たりとも逃してませんぜ?」

 

「ウザイ奴らだったけど……いい声で鳴いたわね、ふふ」

 

「見せしめに晒しとけばよかったか……」

 

「まぁ、バラバラに刻んでやったんだ、それで良しとしとこうぜ?」

 

「ハジメェ、これ完全にやりすぎだろォ、俺がいない間に何やってんだよォ。」

 

不穏な発言のオンパレードだった。全員、元の温和で平和的な兎人族の面影が微塵もない。ギラついた目と不敵な笑みを浮かべたままハジメに物騒な戦闘報告をする。

 

 それを呆然と見ていたシアは一言、

 

「……誰?」

 

 

その後大樹に向かった、輪廻とハジメ達。

 

 

雑談しながら進むこと十五分。一行は遂に大樹の下へたどり着いた。

 

 

 

 大樹を見た輪廻の第一声は、

 

 

 

「……なんだこりゃァ」

 

 

 

 という驚き半分、疑問半分といった感じのものだった。ユエも、予想が外れたのか微妙な表情だ。三人は、大樹についてフェアベルゲンで見た木々のスケールが大きいバージョンを想像していたのである。

 

 

 

 しかし、実際の大樹は……見事に枯れていたのだ。

 

 

 

 大きさに関しては想像通り途轍もない。直径は目算では測りづらいほど大きいが直径五十メートルはあるのではないだろうか。明らかに周囲の木々とは異なる異様だ。周りの木々が青々とした葉を盛大に広げているのにもかかわらず、大樹だけが枯れ木となっているのである。

 

 

 

「大樹は、フェアベルゲン建国前から枯れているそうです。しかし、朽ちることはない。枯れたまま変化なく、ずっとあるそうです。周囲の霧の性質と大樹の枯れながらも朽ちないという点からいつしか神聖視されるようになりました。まぁ、それだけなので、言ってみれば観光名所みたいなものですが……」

 

 

 

 輪廻やハジメとユエの疑問顔にカムが解説を入れる。それを聞きながらハジメは大樹の根元まで歩み寄った。そこには、アルフレリックが言っていた通り石板が建てられていた。

 

 

 

「これは……オルクスの扉の……」

 

「……ん、同じ文様」

 

 

 

 

 石版には七角形とその頂点の位置に七つの文様が刻まれていた。オルクスの部屋の扉に刻まれていたものと全く同じものだ。ハジメは確認のため、オルクスの指輪を取り出す。指輪の文様と石版に刻まれた文様の一つはやはり同じものだった。

 

 

 

「やっぱり、ここが大迷宮の入口みたいだな……だが……こっからどうすりゃいいんだ?」

 

 

 

 ハジメは大樹に近寄ってその幹をペシペシと叩いてみたりするが、当然変化などあるはずもなく、カム達に何か知らないか聞くが返答はNOだ。アルフレリックにも口伝は聞いているが、入口に関する口伝はなかった。隠していた可能性もないわけではないから、これは早速貸しを取り立てるべきか? と悩み始めるハジメ。

 

 

 

 その時、石板を観察していた輪廻とユエが声を上げる。

 

 

 

「ハジメ……これ見て」

 

「ん? 何かあったか?」

 

「ここだァ」

 

 ユエと輪廻が注目していたのは石板の裏側だった。そこには、表の七つの文様に対応する様に小さな窪みが開いていた。

 

 

 

「これは……」

 

 

 

 ハジメが、手に持っているオルクスの指輪を表のオルクスの文様に対応している窪みに嵌めてみる。

 

 

 

 すると……石板が淡く輝きだした。

 

 

 

 何事かと、周囲を見張っていたハウリア族も集まってきた。しばらく、輝く石板を見ていると、次第に光が収まり、代わりに何やら文字が浮き出始める。そこにはこう書かれていた。

 

 

 

〝四つの証〟

 

〝再生の力〟

 

〝紡がれた絆の道標〟

 

〝全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう〟

 

 

 

「……どういう意味だ?」

 

「……四つの証は……たぶん、他の迷宮の証?」

 

「……再生の力と紡がれた絆の道標は?」

 

 

 

 頭を捻るハジメにシアが答える。

 

 

 

「う~ん、紡がれた絆の道標は、あれじゃないですか? 亜人の案内人を得られるかどうか。亜人は基本的に樹海から出ませんし、ハジメさん達みたいに、亜人に樹海を案内して貰える事なんて例外中の例外ですし」

 

「……なるほど。それっぽいな」

 

「……あとは再生……私?」

 

 ユエが自分の固有魔法〝自動再生〟を連想し自分を指差す。試しにと、薄く指を切って〝自動再生〟を発動しながら石板や大樹に触ってみるが……特に変化はない。

 

「いやァ、恐らくは神代魔法の中に、再生に関するものがあるんだろうよォ。」

 

「なるほど、そういう事ですか。」

 

その後何やかんや有り、樹海の境界でカム達の見送りを受けた輪廻、ハジメ、ユエ、シアは再び魔力駆動二輪に乗り込んで平原を疾走していた。位置取りは、ユエ、ハ輪廻、シア、一人でハジメの順番である。以前、ライセン大峡谷の谷底で乗せた時よりシアの密着度が増している気がするが、全く気にしない、輪廻。反応でもしようものなら前に座っているユエに即バレである。

 

 

 

 肩越しにシアが質問する。

 

 

 

「輪廻さん。そう言えば聞いていませんでしたが目的地は何処ですか?」

 

「あ? 言ってなかったかァ?」

 

「聞いてませんよ!」

 

「……私は知っている」

 

 

 

 得意気なユエに、むっと唸り抗議の声を上げるシア。

 

 

 

「わ、私だって仲間なんですから、そういうことは教えて下さいよ! コミュニケーションは大事ですよ!」

 

「次の目的地はライセン大峡谷だァ」

 

「ライセン大峡谷?」

 

 

 

 輪廻の告げた目的地に疑問の表情を浮かべるシア。現在、確認されている七大迷宮は、【ハルツィナ樹海】を除けば、【グリューエン大砂漠の大火山】と【シュネー雪原の氷雪洞窟】である。確実を期すなら、次の目的地はそのどちらかにするべきでは? と思ったのだ。その疑問を察したのか輪廻が意図を話す。

 

 

 

「一応、ライセンも七大迷宮があると言われているからなァ。シュネー雪原は魔人国の領土だから面倒な事になりそうだしなァ、取り敢えず大火山を目指すのがベターなんだが、どうせ西大陸に行くなら東西に伸びるライセンを通りながら行けば、途中で迷宮が見つかるかもしれないだろォ?」

 

「つ、ついででライセン大峡谷を渡るのですか……」

 

 

 

 思わず、頬が引き攣るシア。ライセン大峡谷は地獄にして処刑場というのが一般的な認識であり、つい最近、一族が全滅しかけた場所でもあるため、そんな場所を唯の街道と一緒くたに考えている事に内心動揺する。

 

 

 

 輪廻は、密着しているせいかシアの動揺が手に取るようにわかり、呆れた表情をした。

 

 

 

「お前なァ、少しは自分の力を自覚しろよ。今のお前なら谷底の魔物もその辺の魔物も変わらねぇよ。ライセンは、放出された魔力を分解する場所だぞ? 身体強化に特化したお前なら何の影響も受けずに十全に動けるんだ。むしろ俺と同じで独壇場だろうが」

 

「……師として情けない」

 

「うぅ~、面目ないですぅ」

 

 

 

 ユエにも呆れた視線を向けられ目を泳がせるシア。話題を逸らそうとする。

 

 

 

「で、では、ライセン大峡谷に行くとして、今日は野営ですか? それともこのまま、近場の村か町に行きますか?」

 

「出来れば、食料とか調味料関係を揃えたいし、今後のためにも素材を換金しておきたいから町がいいな。前に見た地図通りなら、この方角に町があったと思うんだがなァ。」

 

 

 

 輪廻やハジメとしてはいい加減、まともな料理・・を食べたいと思っていたところだ。それに、今後、町で買い物なり宿泊なりするなら金銭が必要になる。素材だけなら腐る程持っているので換金してお金に替えておきたかった。それにもう一つ、ライセン大峡谷に入る前に落ち着いた場所で、やっておきたいこともあったのだ。

 

 

 

「はぁ~そうですか……よかったです」

 

 

 

 輪廻の言葉に、何故か安堵の表情を見せるシア。ハジメが訝しそうに「どうした?」と聞き返す。

 

 

 

「いやぁ~、輪廻さんやハジメさんのことだから、ライセン大峡谷でも魔物の肉をバリボリ食べて満足しちゃうんじゃないかと思ってまして……ユエさんは輪廻さんの血があれば問題ありませんし……どうやって私用の食料を調達してもらえるように説得するか考えていたんですよぉ~、杞憂でよかったです。ハジメさんもまともな料理食べるんですね!」

 

「当たり前だろ! 誰が好き好んで魔物なんか喰うか! ……お前、俺達を何だと思ってるんだ……」

 

「プレデターという名の新種の魔物?」

 

「OK、ハジメ、そいつを縛り上げて首輪をつけとけ。

街まで引きづってやる」

 

「了解しました。おい残念ウサギ、今からお前にこれを付けるから大人しくしてろよ。」

 

「ちょ、やめぇ、どっから出したんですかっ、その首輪! ホントやめてぇ~そんなの付けないでぇ~、ユエさん見てないで助けてぇ!」

 

「……自業自得」

 

 

 

 ある意味、非常に仲の良い様子で騒ぎながら草原を進む4人。

 

 

 

 数時間ほど走り、そろそろ日が暮れるという頃、前方に町が見えてきた。ハジメの頬が綻ぶ、奈落から出て空を見上げた時のような、〝戻ってきた〟という気持ちが湧き出したからだ。ユエもどこかワクワクした様子。きっと、ハジメと同じ気持ちなのだろう。横にいたユエと目が合い、お互いに微笑みを浮かべた。

 

 

 

「あのぉ~、いい雰囲気のところ申し訳ないですが、この首輪、取ってくれませんか? 何故か、自分では外せないのですが……あの、聞いてます?輪廻さん? ハジメさん? ユエさん? ちょっと、無視しないで下さいよぉ~、泣きますよ! それは、もう鬱陶しいくらい泣きますよぉ!」

 

 

 

輪廻とユエは微笑みあった。

 

 

街に入った輪廻達は。

 

シアの怒鳴ることもなく、ただジッと涙目で見てくるので、流石に気になって溜息を吐くハジメ。楽しい気分に水を差しやがって、と内心文句を言いながらシアに視線を合わせる。

 

「どうしたんだ? せっかくの町なのに、そんな上から超重量の岩盤を落とされて必死に支えるゴリラ型の魔物みたいな顔して」

 

「誰がゴリラですかっ! ていうかどんな倒し方しているんですか! 輪廻さんやハジメさんなら一撃でしょうに! 何か想像するだけで可哀想じゃないですか!」

 

「……脇とかツンツンしてやったら涙目になってた」

 

「まさかの追い討ち!? 酷すぎる! ってそうじゃないですぅ!」

 

「これです! この首輪! これのせいで奴隷と勘違いされたじゃないですか! 輪廻さん、わかっていて付けたんですね! うぅ、酷いですよぉ~、私達、仲間じゃなかったんですかぁ~」

 

 シアが怒っているのは、そういうことらしい。旅の仲間だと思っていたのに、意図して奴隷扱いを受けさせられたことが相当ショックだったようだ。もちろん、輪廻とハジメが付けた首輪は本来の奴隷用の首輪ではなく、シアを拘束するような力はない。それは、シアもわかっている。だが、だとしても、やはりショックなものはショックなのだ。

 

それに対して輪廻は面倒くさそうに

 

「あのなぁ、奴隷でもない亜人族、それも愛玩用として人気の高い兎人族が普通に町を歩けるわけないだろォ? まして、お前は白髪の兎人族で物珍しい上、容姿もスタイルも抜群。断言するが、誰かの奴隷だと示してなかったら、町に入って十分も経たず目をつけられるぞォ。後は、絶え間無い人攫いの嵐だろうよ。面倒……ってなにクネクネしてるんだァ?」

 

 言い訳あるなら言ってみろやゴラァ! という感じで輪廻を睨んでいたシアだが、話を聞いている内に照れたように頬を赤らめイヤンイヤンし始めた。ユエが冷めた表情でシアを見ている。

 

 

 

「も、もう、輪廻さん。こんな公衆の面前で、いきなり何言い出すんですかぁ。そんな、容姿もスタイルも性格も抜群で、世界一可愛くて魅力的だなんてぇ、もうっ! 恥かしいでっぶげら!?」

 

 調子に乗って話を盛るシアの頬に、ユエの黄金の右ストレートが突き刺さる。可愛げの欠片もない悲鳴を上げて倒れるシア。身体強化していなかったので、別の意味で赤くなった頬をさすりながら起き上がる。

 

「……調子に乗っちゃだめ」

 

「……ずびばぜん、ユエざん」

 

「後、その首輪、きっちり特定量の魔力を流すことで、ちゃんと外せるからなァ?」

 

「なるほどぉ~、つまりこれは……いつでも私の声が聞きたい、居場所が知りたいという輪廻さんの気持ちというわけですね? もうっ、そんなに私の事が好きなんですかぁ? 流石にぃ、ちょっと気持ちが重いっていうかぁ、あっ、でも別に嫌ってわけじゃなくッバベルンッ!?」

 

「……調子にのるな」

 

「ぐすっ、ずみまぜん」

 

そんな風に仲良く? メインストリートを歩いていき、一本の大剣が描かれた看板を発見する。かつてホルアドの町でも見た冒険者ギルドの看板だ。規模は、ホルアドに比べて二回りほど小さい。

 

 ハジメは看板を確認すると重厚そうな扉を開き中に踏み込んだ。

 

ギルドは荒くれ者達の場所というイメージから、ハジメは、勝手に薄汚れた場所と考えていのだが、意外に清潔さが保たれた場所だった。入口正面にカウンターがあり、左手は飲食店になっているようだ。何人かの冒険者らしい者達が食事を取ったり雑談したりしている。誰ひとり酒を注文していないことからすると、元々、酒は置いていないのかもしれない。酔っ払いたいなら酒場に行けということだろう。

 

 

 ハジメ達がギルドに入ると、冒険者達が当然のように注目してくる。最初こそ、見慣れない四人組ということでささやかな注意を引いたに過ぎなかったが、彼等の視線がユエとシアに向くと、途端に瞳の奥の好奇心が増した。中には「ほぅ」と感心の声を上げる者や、門番同様、ボーと見惚れている者、恋人なのか女冒険者に殴られている者もいる。平手打ちでないところが冒険者らしい。

 

「さて、冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。ご用件は何かしら?」

 

「ああ、素材の買取をお願いしたい」

 

「素材の買取だね。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

 

「ん? 買取にステータスプレートの提示が必要なのか?」

 

 

 

 ハジメの疑問に「おや?」という表情をするオバチャン。

 

 

 

「あんた冒険者じゃなかったのかい? 確かに、買取にステータスプレートは不要だけどね、冒険者と確認できれば一割増で売れるんだよ」

 

「そうだったのか」

 

 

 

 オバチャンの言う通り、冒険者になれば様々な特典も付いてくる。生活に必要な魔石や回復薬を始めとした薬関係の素材は冒険者が取ってくるものがほとんどだ。町の外はいつ魔物に襲われるかわからない以上、素人が自分で採取しに行くことはほとんどない。危険に見合った特典がついてくるのは当然だった。

 

 

 

「他にも、ギルドと提携している宿や店は一~二割程度は割り引いてくれるし、移動馬車を利用するときも高ランクなら無料で使えたりするね。どうする? 登録しておくかい? 登録には千ルタ必要だよ」

 

 

 

 ルタとは、この世界トータスの北大陸共通の通貨だ。ザガルタ鉱石という特殊な鉱石に他の鉱物を混ぜることで異なった色の鉱石ができ、それに特殊な方法で刻印したものが使われている。青、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金の種類があり、左から一、五、十、五十、百、五百、千、五千、一万ルタとなっている。驚いたことに貨幣価値は日本と同じだ。

 

「う~ん、そうか。ならせっかくだし登録しておくかな。悪いんだが、持ち合わせが全くないんだ。買取金額から差っ引くってことにしてくれないか? もちろん、最初の買取額はそのままでいい」

 

「可愛い子二人もいるのに文無しなんて何やってんだい。ちゃんと上乗せしといてあげるから、不自由させんじゃないよ?」

 

「一応俺の連れだァ。」

 

「…ん、私はハジメじゃなくて、輪廻の物」

 

「ちょ、一応って何ですか!」

 

「騒がしくてすまんなァ。」

 

「いやいや、いいんだよ。」

 

「ところで、門番の彼に、この町の簡易な地図を貰えると聞いたんだが……」

 

「ああ、ちょっと待っといで……ほら、これだよ。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」

 

 

 

 手渡された地図は、中々に精巧で有用な情報が簡潔に記載された素晴らしい出来だった。これが無料とは、ちょっと信じられないくらいの出来である。

 

 

 

「おいおい、いいのか? こんな立派な地図を無料で。十分金が取れるレベルだと思うんだが……」

 

「構わないよ、あたしが趣味で書いてるだけだからね。書士の天職を持ってるから、それくらい落書きみたいなもんだよ」

 

 

 

 オバチャンの優秀さがやばかった。この人何でこんな辺境のギルドで受付とかやってんの? とツッコミを入れたくなるレベルである。きっと壮絶なドラマがあるに違いない。

 

 

 

「そうか。まぁ、助かるよ」

 

「いいってことさ。それより、金はあるんだから、少しはいいところに泊りなよ。治安が悪いわけじゃあないけど、その二人ならそんなの関係なく暴走する男連中が出そうだからね」

 

「アァ、そうするぜェ。」

 

 

 オバチャンは最後までいい人で気配り上手だった、入口に向かって踵を返した。ユエとシアも頭を下げて追従する。食事処の冒険者の何人かがコソコソと話し合いながら、最後までユエとシアの二人を目で追っていた。

 

 

 

「ふむ、いろんな意味で面白そうな連中だね……」

 

 

 

 後には、そんなオバチャンの楽しげな呟きが残された。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ハジメ達が、もはや地図というよりガイドブックと称すべきそれを見て決めたのは〝マサカの宿〟という宿屋だ。紹介文によれば、料理が美味く防犯もしっかりしており、何より風呂に入れるという。最後が決め手だ。その分少し割高だが、金はあるので問題ない。若干、何が〝まさか〟なのか気になったというのもあるが……

 

 

 

 宿の中は一階が食堂になっているようで複数の人間が食事をとっていた。ハジメ達が入ると、お約束のようにユエとシアに視線が集まる。それらを無視して、カウンターらしき場所に行くと、十五歳くらい女の子が元気よく挨拶しながら現れた。

 

 

 

「いらっしゃいませー、ようこそ〝マサカの宿〟へ! 本日はお泊りですか? それともお食事だけですか?」

 

「宿泊だァ。このガイドブック見て来たんだが、記載されている通りでいいかァ?」

 

 

 

 輪廻が見せたオバチャン特製地図を見て合点がいったように頷く女の子。

 

 

 

「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。はい、書いてある通りですよ。何泊のご予定ですか?」

 

「アァ、一泊でいい。食事付きで、あと風呂も頼むわァ」

 

「はい。お風呂は十五分百ルタです。今のところ、この時間帯が空いてますが」

 

 

 

 女の子が時間帯表を見せる。なるべくゆっくり入りたいので、男女で分けるとして二時間は確保したい。その旨を伝えると「えっ、二時間も!?」と驚かれたが、日本人たる輪廻やハジメとしては譲れないところだ。

 

 

 

「え、え~と、それでお部屋はどうされますか? 一人部屋から四人部屋が空いてますが……」

 

 

 

 ちょっと好奇心が含まれた目で輪廻達を見る女の子。そういうのが気になるお年頃だ。だが、周囲の食堂にいる客達まで聞き耳を立てるのは勘弁してもらいたいと思うハジメ。ユエもシアも美人とは思っていたが、想像以上に二人の容姿は目立つようだ。出会い方が出会い方だったので若干輪廻の感覚が麻痺しているのだろう。

 

 

 

「アァ、一人部屋二つと2人部屋1つで頼むわァ。」

 

 

輪廻が躊躇いなく答える。周囲がザワッとなった。女の子も少し頬を赤らめている。だが、そんなハジメの言葉に待ったをかけた人物がいた。

 

 

 

「……ダメ。二人部屋二つで」

 

 

 

 ユエだ。周囲の客達、特に男連中が輪廻に向かって「ざまぁ!」という表情をしている。ユエの言葉を男女で分けろという意味で解釈したのだろう。だが、そんな表情は、次のユエの言葉で絶望に変わる。

 

「……私と輪廻で2人部屋。シアとハジメは別室」

 

「あぁ、俺はそれでいいぞ、主とユエの邪魔はしたくないからな。」

 

「ちょっ、何でですか! 私も輪廻さんと同じがいいですよ! 三人部屋でいいじゃないですかっ!」

 

 

 

 猛然と抗議するシアに、ユエはさらりと言ってのけた。

 

 

 

「……シアがいると気が散る」

 

「気が散るって……何かするつもりなんですか?」

 

「……何って……ナニ?」

 

「ぶっ!? ちょっ、こんなとこで何言ってるんですか! お下品ですよ!」

 

ユエの言葉に、絶望の表情を浮かべた男連中が、次第に輪廻に対して嫉妬の炎が宿った眼を向け始める。宿の女の子は既に顔を赤くしてチラチラと輪廻とユエを交互に見ていた。ハジメが、これ以上主が怒る前に、止めに入ろうとするが、その目論見は少し遅かった。

 

「だ、だったら、ユエさんこそ別室に行って下さい! 輪廻さんと私で一部屋です!」

 

「……ほぅ、それで?」

 

 

 

 指先を突きつけてくるシアに、冷気を漂わせた眼光で睨みつけるユエ。あまりの迫力に、シアは訓練を思い出したのかプルプルと震えだすが、「ええい、女は度胸!」と言わんばかりにキッと睨み返すと大声で宣言した。

 

 

 

「そ、それで、輪廻さんに私の処女を貰ってもらいますぅ!」

 

 静寂が舞い降りた。誰一人、言葉を発することなく、物音一つ立てない。今や、宿の全員がハジメ達に注目、もとい凝視していた。厨房の奥から、女の子の両親と思しき女性と男性まで出てきて「あらあら、まあまあ」「若いっていいね」と言った感じで注目している。

 

 ユエが瞳に絶対零度を宿してゆらりと動いた。

 

「……今日がお前の命日」

 

「うっ、ま、負けません! 今日こそユエさんを倒して正ヒロインの座を奪ってみせますぅ!」

 

「……師匠より強い弟子などいないことを教えてあげる」

 

「下克上ですぅ!」

 

 ユエから尋常でないプレッシャーが迸り、震えながらもシアが背中に背負った大槌に手をかける。まさに修羅場、一触即発の雰囲気に誰もがゴクリと生唾を飲み込み緊張に身を強ばらせる。

 

次の瞬間。

「おぃてめぇら、そんなに戦いたかったら俺が相手になってやらァ、それでもここで騒ぐってのかァ?アァ!?。」

と言う言葉と共にユエとシアに雷(怒り的な意味で)が落ちた。

 

ゴンッゴンッ

「ひぅ!?」

 

「はきゅ!?」

 

 鉄拳が叩き込まれる音と二人の少女の悲鳴が響き渡った。ユエもシアも、涙目になって蹲り両手で頭を抱えている。二人にゲンコツを叩き込んだのは、もちろん輪廻である。

 

「さっさと寝るぞ、それから2人部屋2つで頼むわ。」

 

翌朝

 

朝食を食べた後、輪廻は、ユエとシアに金を渡し、旅に必要なものの買い出しを頼んだ。チェックアウトは昼なのでまだ数時間は部屋を使える。なので、ユエ達に買出しに行ってもらっている間に、部屋で済ませておきたい用事があったのだ。

 

 

 

「用事ってなんですか?」

 

 

 

 シアが疑問を素直に口にする。しかし、輪廻は、

 

 

 

「アァ、ハジメがちょっと作っておきたいものがあるらしいんだよォ。構想は出来ているし、数時間もあれば出来るはずだ。ホントは昨夜やろうと思っていたんだが……何故か妙に疲れて出来なかったんだとよ。」

 

 

 

「……そ、そうだ。ユエさん。私、服も見ておきたいんですけどいいですか?」

 

「……ん、問題ない。私は、露店も見てみたい」

 

「あっ、いいですね! 昨日は見ているだけでしたし、買い物しながら何か食べましょう」

 

 

 

 サッと視線を逸らし、きゃいきゃいと買い物の話をし始めるユエとシア。自分達が原因だと分かってはいるが、心情的に非を認めたくないので、阿吽の呼吸で話題も逸らす。

 

「……お前等、実は結構仲良いだろう」

 

 そんなハジメの呟きも虚しくスルーされるのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

色々あったが、ライセン大渓谷に出発した輪廻達。

 

死屍累々。

 

 

 

 そんな言葉がピッタリな光景がライセン大峡谷の谷底に広がっていた。ある魔物はひしゃげた頭部を地面にめり込ませ、またある魔物は頭部を粉砕されて横たわり、更には全身を炭化させた魔物や、魔物だった灰のような物、死に方は様々だが一様に一撃で絶命しているようだ。

 

 

 

 当然、この世の地獄、処刑場と人々に恐れられるこの場所で、こんなことが出来るのは……

 

 

 

「一撃必殺ですぅ!」

 

 

 

ズガンッ!!

 

 

 

「……邪魔」

 

 

 

ゴバッ!!

 

 

 

「うぜぇ」

 

 

 

ドパンッ!!

 

 

「双蓮蒼火墜」

 

ドゴォン

 

 

 輪廻、ハジメ、ユエ、シアの三人である。ハジメ達はブルックの町を出た後、魔力駆動二輪を走らせて、かつて通った【ライセン大峡谷】の入口にたどり着いた。そして現在は、そこから更に進み、野営もしつつ、【オルクス大迷宮】の転移陣が隠されている洞窟も通り過ぎて、更に二日ほど進んだあたりだ。

 

 

 

 【ライセン大峡谷】では、相変わらず懲りもしない魔物達がこぞって襲ってくる。

 

 

 

シアの大槌が、その絶大な膂力をもって振るわれ文字通り一撃必殺となって魔物を叩き潰す。攻撃を受けた魔物は自身の耐久力を遥かに超えた衝撃に為す術なく潰され絶命する。餅つきウサギも真っ青な破壊力である。

 

 

 

 ユエは、至近距離まで迫った魔物を、魔力に物を言わせて強引に発動した魔法で屠っていく。ユエ自身の魔力が膨大であることもあるが、魔晶石シリーズに蓄えられた魔力が莫大であることから、まるで弾切れのない爆撃だ。谷底の魔力分解作用のせいで発動時間・飛距離共に短くとも、超高温の炎がノータイムで発動するので魔物達は一体の例外もなく炭化して絶命する。

 

 

 

 ハジメは、言うまでもない。魔力駆動二輪を走らせながらドンナーで頭部を狙い撃ちにしていく。魔力駆動二輪を走らせながら〝纏雷〟をも発動させ続けるのは相当魔力を消費する行為なのだが、やはり魔力切れを起こす様子はない。

 

輪廻は、言わなくても分かると思うが、バイク(○ルダの○説の○レワイの○スターバイ○見たいなの。)に乗りながら、破道で魔物を灰にしていく。

 

谷底に跋扈する地獄の猛獣達が完全に雑魚扱いだった。大迷宮を示す何かがないかを探索しながら片手間で皆殺しにして行く。道中には魔物の死体が溢れかえっていた。

 

 

 

「はぁ~、ライセンの何処かにあるってだけじゃあ、やっぱ大雑把過ぎるよなぁ」

 

 

 

 洞窟などがあれば調べようと、注意深く観察はしているのだが、それらしき場所は一向に見つからない。ついつい愚痴をこぼしてしまうハジメ。

 

 

 

「まぁ、大火山に行くついでなんですし、見つかれば儲けものくらいでいいじゃないですか。大火山の迷宮を攻略すれば手がかりも見つかるかもしれませんし」

 

「ま、そうなんだけどな……」

 

「まァ、しゃァねぇわなぁァ」

 

「ん……でも魔物が鬱陶しい」

 

「あ~、ユエさんには好ましくない場所ですものね~」

 

 

 

 そんな風に愚痴をこぼし、魔物の多さに辟易しつつも、更に走り続けること三日。その日も収穫なく日が暮れて、谷底から見上げる空に上弦の月が美しく輝く頃、ハジメ達はその日の野営の準備をしていた。野営テントを取り出し、夕食の準備をする。町で揃えた食材と調味料と共に、調理器具も取り出す。この野営テントと調理器具、実は全てハジメ謹製のアーティファクトだったりする。

 

 

 

 野営テントは、生成魔法により創り出した〝暖房石〟と〝冷房石〟が取り付けられており、常に快適な温度を保ってくれる。また、冷房石を利用して〝冷蔵庫〟や〝冷凍庫〟も完備されている。さらに、金属製の骨組みには〝気配遮断〟が付加された〝気断石〟を組み込んであるので敵に見つかりにくい。

 

 

 

 調理器具には、流し込む魔力量に比例して熱量を調整できる火要らずのフライパンや鍋、魔力を流し込むことで〝風爪〟が付与された切れ味鋭い包丁などがある。スチームクリーナーモドキなんかもある。どれも旅の食事を豊かにしてくれるハジメの愛し子達だ。しかも、魔力の直接操作が出来ないと扱えないという、ある意味防犯性もある。

 

 

 

 〝神代魔法超便利〟

 

 

 

 調理器具型アーティファクトや冷暖房完備式野営テントを作った時のハジメの言葉だ。まさに無駄に洗練された無駄のない無駄な技術力である。

 

 

 

 ちなみに、その日の夕食はクルルー鳥のトマトハヤシである。クルルー鳥とは、空飛ぶ鶏のことだ。肉の質や味はまんま鶏である。この世界でもポピュラーな鳥肉だ。

 

それでは、ここで鶏肉を使ったハヤシライスの作り方を、乗せて置きます。(輪廻君独自の作り方なので余り真似はしない方が良いですが、試して見たい方は、近くのスーパーで買ってこよう。)

用意する物は、デミグラスソース(ルーで代用可能)、トマト、鶏ムネ肉、人参、じゃがいも、玉ねぎ、です。

 

まず、トマトを4分の一のサイズに切り、デミグラスソースと一緒に煮込みます。

煮込んでいる間に、鶏ムネ肉を1口サイズに切り、他の野菜も切ります。ソースが沸騰したら、まずは人参と鶏肉を入れます。その後蓋をして五分ほど煮たら、じゃがいも、玉ねぎを入れ、十数分ほど煮たら完成です。

ご飯と一緒に、入れましょう、失敗して居なければ、きっと美味しいはずです。

 

大満足の夕食を終えて、その余韻に浸りながら、いつも通り食後の雑談をするハジメ達。テントの中にいれば、それなりに気断石が活躍し魔物が寄ってこないので比較的ゆっくりできる。たまに寄ってくる魔物は、テントに取り付けられた窓からハジメや輪廻が手だけを突き出し発砲して処理する。そして、就寝時間が来れば、四人で見張りを交代しながら朝を迎えるのだ。

 

 その日も、そろそろ就寝時間だと寝る準備に入るハジメとユエとシア。最初の見張りは輪廻だ。テントの中にはふかふかの布団があるので、野営にもかかわらず快適な睡眠が取れる。と、布団に入る前にシアがテントの外へと出ていこうとした。

 

 

 

 訝しそうなと輪廻に、シアがすまし顔で言う。

 

 

 

「ちょっと、お花摘みに」

 

「谷底に花はねぇぞォ?」

 

「り・ん・ね・さ~ん!」

 

デリカシーのない発言にシアがすまし顔を崩しキッとハジメを睨みつける。輪廻はもちろん意味がわかっているので「悪りぃ悪りぃ」と全く悪く思ってなさそうな顔で苦笑いする。ぷんすかと怒りながらテントの外に出て行き、しばらくすると……

 

 

 

「り、輪廻さ〜ん、ハジメさ~ん! ユエさ~ん! 大変ですぅ! こっちに来てくださぁ~い!」

 

 

 

 と、シアが、魔物を呼び寄せる可能性も忘れたかのように大声を上げた。何事かと、輪廻とハジメとユエは顔を見合わせ同時にテントを飛び出す。

 

シアの声がした方へ行くと、そこには、巨大な一枚岩が谷の壁面にもたれ掛かるように倒れおり、壁面と一枚岩との間に隙間が空いている場所があった。シアは、その隙間の前で、ブンブンと腕を振っている。その表情は、信じられないものを見た! というように興奮に彩られていた。

 

 

 

「こっち、こっちですぅ! 見つけたんですよぉ!」

 

「わかったから、取り敢えず引っ張るな。身体強化全開じゃねぇか。興奮しすぎだろ」

 

「……うるさい」

 

 

 

 はしゃぎながらハジメとユエの手を引っ張るシアに、ハジメは少し引き気味に、ユエは鬱陶しそうに顔をしかめる。シアに導かれて岩の隙間に入ると、壁面側が奥へと窪んでおり、意外なほど広い空間が存在した。そして、その空間の中程まで来ると、シアが無言で、しかし得意気な表情でビシッと壁の一部に向けて指をさした。

 

 

 

 その指先をたどって視線を転じるハジメとユエは、そこにあるものを見て「は?」と思わず呆けた声を出し目を瞬かせた。

 

 

 

 二人の視線の先、其処には、壁を直接削って作ったのであろう見事な装飾の長方形型の看板があり、それに反して妙に女の子らしい丸っこい字でこう掘られていた。

 

 

 

〝おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪〟

 

 

 

〝!〟や〝♪〟のマークが妙に凝っている所が何とも腹立たしい。

 

 

 

「……なんじゃこりゃ」

 

「……なにこれ」

 

 

 

 ハジメとユエの声が重なる。その表情は、まさに〝信じられないものを見た!〟という表現がぴったり当てはまるものだ。二人共、呆然と地獄の谷底には似つかわしくない看板を見つめている。

 

 

 

「何って、入口ですよ! 大迷宮の! おトイ……ゴホッン、お花を摘みに来たら偶然見つけちゃいまして。いや~、ホントにあったんですねぇ、ライセン大峡谷に大迷宮って」

 

 

 

 能天気なシアの声が響く中、ハジメとシアはようやく硬直が解けたのか、何とも言えない表情になり、困惑しながらお互いを見た。

 

 

 

「……ハジメ、ユエ。マジだと思うかァ?」

 

「…………………………ん」

 

「…………………………はい。」

 

「長ぇ間だな。根拠はァ?」

 

「「……ミレディ・・・・」」

 

「やっぱそこだよなァ……」

 

 

 

 〝ミレディ〟その名は、オスカーの手記に出て来たライセンのファーストネームだ。ライセンの名は世間にも伝わっており有名ではあるがファーストネームの方は知られていない。故に、その名が記されているこの場所がライセンの大迷宮である可能性は非常に高かった。

 

 

 

 だがしかし、はいそうですかと素直に信じられないのは……

 

 

 

「何でこんなチャラいんだよ……」

 

 

 

 そう言う理由である。ハジメとしては、オルクス大迷宮の内での数々の死闘を思い返し、きっと他の迷宮も一筋縄では行かないだろうと想像していただけに、この軽さは否応なくハジメを脱力させるものだった。ユエも、大迷宮の過酷さを骨身に染みて理解しているだけに、若干、まだ誰かのいたずらではないかと疑わしそうな表情をしている。

 

 

 

「でも、入口らしい場所は見当たりませんね? 奥も行き止まりですし……」

 

 

 

 そんな輪廻とハジメとユエの微妙な心理に気づくこともなく、シアは、入口はどこでしょう? と辺りをキョロキョロ見渡したり、壁の窪みの奥の壁をペシペシと叩いたりしている。

 

 

 

「おい、シア。あんまり……」

 

 

 

ガコンッ!

 

 

 

「ふきゃ!?」

 

 

 

 〝あんまり不用意に動き回るな〟そう言おうとしたハジメの眼前で、シアの触っていた窪みの奥の壁が突如グルンッと回転し、巻き込まれたシアはそのまま壁の向こう側へ姿を消した。さながら忍者屋敷の仕掛け扉だ。

 

 

 

「「「……」」」

 

 

 

 奇しくも大迷宮への入口も発見したことで看板の信憑性が増した。やはり、ライセンの大迷宮はここにあるようだ。まるで遊園地の誘い文句の様な入口に、「これでいいのか大迷宮」とか「オルクスでのシリアスを返せ」とか言いたいことは山ほどあるが、無言でシアが消えた回転扉を見つめていた輪廻とハジメとユエは、一度、顔を見合わせて溜息を吐くと、シアと同じように回転扉に手をかけた。

 

 

 

 扉の仕掛けが作用して、輪廻とハジメとユエを同時に扉の向こう側へと送る。中は真っ暗だった。扉がグルリと回転し元の位置にピタリと止まる。と、その瞬間、

 

 

 

ヒュヒュヒュ!

 

 

 

 無数の風切り音が響いいたかと思うと暗闇の中をハジメ達目掛けて何かが飛来した。ハジメ達の〝夜目〟はその正体を直ぐさま暴く。それは矢だ。全く光を反射しない漆黒の矢が侵入者を排除せんと無数に飛んできているのだ、が。

 

「破道の五十八、闐嵐」

 

輪廻の竜巻によって飛ばされた。

 

周囲の壁がぼんやりと光りだし辺りを照らし出す。ハジメ達のいる場所は、十メートル四方の部屋で、奥へと真っ直ぐに整備された通路が伸びていた。そして部屋の中央には石版があり、看板と同じ丸っこい女の子文字でとある言葉が掘られていた。

 

 

 

〝ビビった? ねぇ、ビビっちゃった? チビってたりして、ニヤニヤ〟

 

〝それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった? ……ぶふっ〟

 

 

 

「「「……」」」

 

 

 

 ハジメとユエの内心はかつてないほど一致している。すなわち「うぜぇ~」と。わざわざ、〝ニヤニヤ〟と〝ぶふっ〟の部分だけ彫りが深く強調されているのが余計腹立たしい。特に、パーティーで踏み込んで誰か死んでいたら、間違いなく生き残りは怒髪天を衝くだろう。

ちなみに輪廻は無表情だ。

 

 

 ハジメもユエも、額に青筋を浮かべてイラッとした表情をしている。そして、ふと、ユエが思い出したように呟いた。

 

 

 

「……シアは?」

 

「「あ」」

 

 

 

 ユエの呟きでハジメと輪廻も思い出したようで、慌てて背後の回転扉を振り返る。扉は、一度作動する事に半回転するので、この部屋にいないということは、ハジメ達が入ったのと同時に再び外に出た可能性が高い。結構な時間が経っているのに未だ入ってこない事に嫌な予感がして、輪廻は直ぐに回転扉を作動させに行った。

 

 

 

果たしてシアは……いた。回転扉に縫い付けられた姿で。

 

 

 

「うぅ、ぐすっ、輪廻ざん……見ないで下さいぃ~、でも、これは取って欲しいでずぅ。ひっく、見ないで降ろじて下さいぃ~」

 

 

 

 何というか実に哀れを誘う姿だった。シアは、おそらく矢が飛来する風切り音に気がつき見えないながらも天性の索敵能力で何とか躱したのだろう。だが、本当にギリギリだったらしく、衣服のあちこちを射抜かれて非常口のピクトグラムに描かれている人型の様な格好で固定されていた。ウサミミが稲妻形に折れ曲がって矢を避けており、明らかに無理をしているようでビクビクと痙攣している。もっとも、シアが泣いているのは死にかけた恐怖などではないようだ。なぜなら……足元が盛大に濡れていたからである。

 

 

 

「そう言えば花を摘みに行っている途中だったなァ……まぁ、何だ。よくあることだって……」

 

「ありまぜんよぉ! うぅ~、どうして先に済ませておかなかったのですかぁ、過去のわたじぃ~!!」

 

 

 

 女として絶対に見られたくない姿を、よりにもよって惚れた男の前で晒してしまったことに滂沱の涙を流すシア。ウサミミもペタリと垂れ下がってしまっている。もっとも、出会いの時点で百年の恋も覚めるような醜態を見ているので、輪廻としては今更だった。なので、特に目を逸らすこともなく呆れた表情を向けている。それがシアの心を更に抉る。

 

 

 

「……動かないで」

 

 

 

 流石に同じ女として思うところがあったのか、ユエが無表情の中に同情を含ませてシアを磔から解放する。

 

 

 

「……あれくらい何とかする。未熟者」

 

「面目ないですぅ~。ぐすっ」

 

「……ハジメ、着替え出して」

 

「あいよ」

 

 

 

 〝宝物庫〟からシアの着替えを出してやり、シアは顔を真っ赤にしながら手早く着替えた。

 

 

 

 そして、シアの準備も整い、いざ迷宮攻略へ! と意気込み奥へ進もうとして、シアが石版に気がついた。

 

 

 

 顔を俯かせ垂れ下がった髪が表情を隠す。しばらく無言だったシアは、おもむろにドリュッケンを取り出すと一瞬で展開し、渾身の一撃を石板に叩き込んだ。ゴギャ! という破壊音を響かせて粉砕される石板。

 

 

 

 よほど腹に据えかねたのか、親の仇と言わんばかりの勢いでドリュッケンを何度も何度も振り下ろした。

 

 

 

 すると、砕けた石板の跡、地面の部分に何やら文字が彫ってあり、そこには……

 

 

 

〝ざんね~ん♪ この石板は一定時間経つと自動修復するよぉ~プークスクス!!〟

 

 

 

「ムキィーー!!」

 

 

 

 シアが遂にマジギレして更に激しくドリュッケンを振い始めた。部屋全体が小規模な地震が発生したかのように揺れ、途轍もない衝撃音が何度も響き渡る。

 

 

 

 発狂するシアを尻目にハジメはポツリと呟いた。

 

 

 

「ミレディ・ライセンだけは〝解放者〟云々関係なく、人類の敵で問題ないな」

 

「……激しく同意」

 

「ここ、壊すかァ?」

 

 

 

 どうやらライセンの大迷宮は、オルクス大迷宮とは別の意味で一筋縄ではいかない場所のようだった。

 

 

 

 





清水君のアンケートは明日の9時頃に締め切りです。

感想と高評価よろしくお願いします。

次回、ライセン大迷宮の崩壊。


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第10話 ライセン大迷宮の崩壊


こんちわ湯たんぽです。
清水君のアンケート締め切りです。

結果は、、、、、、、。、、、、、、じゃん、清水君には、輪廻君に仕えて貰うことにしました。
結構直ぐに出ると思います。

それでは本編。

注意書き。

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
輪廻君が何言ってるか解らなくても気にしないで。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十五人ぐらいになりそう!(現時点、後に更に増える。)
輪廻君むっちゃちーと。

それでもいいよと言う方のみご覧下さい。



 

輪廻が怒ってるよー、え?どれぐらいかって?

ユエとシアが抱き合ってへたり込んで、ハジメが倒れそうになるほど。

 

で、輪廻は怒りすぎて、ライセン大迷宮を破壊しようとしてるよー、え?破壊できないんじゃないかって?

多分大丈夫じゃない?違う世界の魔法使ってるし。

 

「《我は神を斬獲せし者・我は始原の祖と終を知る者・其は摂理の円環へと帰還せよ・五素より成りし物は五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離すべし・いざ森羅の万象は須く此処に散滅せよ・遥かな虚無の果てに》黒魔改、イクスティンクション・レイ、八連。」

ドゴォォォォォォォォン

 

「行くぞォ」

 

「はい」

 

「……ん…」

 

空いた穴を通った、ハジメ達の目の前に現れたのは、宙に浮く超巨大なゴーレム騎士だった。全身甲冑はそのままだが、全長が二十メートル弱はある。右手はヒートナックルとでも言うのか赤熱化しており、先ほどブロックを爆砕したのはこれが原因かもしれない。左手には鎖がジャラジャラと巻きついていて、フレイル型のモーニングスターを装備している。

 

 

 

 ハジメ達が、巨体ゴーレムに身構えていると、周囲のゴーレム騎士達がヒュンヒュンと音を立てながら飛来し、ハジメ達の周囲を囲むように並びだした。整列したゴーレム騎士達は胸の前で大剣を立てて構える。まるで王を前にして敬礼しているようだ。

だがしかし……その王らしき者は…

 

 

「ちょっとちょっとぉ、何してくれてんの!壊れちゃったじゃないの!」

 

「「「……は?…」」」

めっちゃ巫山戯てる奴だった。

 

「うるせぇぞミレディ・ライセン。それ以上ゴタゴタ喋ってると、消すぞ。」

 

「ん〜?ここ壊したのは君かな?、でもここを壊しただけでいい気にならない事だね、」

 

「じゃァ試してみっかァ?」

 

 

「はぁ〜これだから最近の若者は、何でそんなに喧嘩腰なのかねぇ。」

 

実にイラっとする話し方である。しかも、巨体ゴーレムは、燃え盛る右手と刺付き鉄球を付けた左手を肩まで待ち上げると、やたらと人間臭い動きで「やれやれだぜ」と言う様に肩を竦める仕草までした。普通にイラっとするハジメ達。道中散々見てきたウザイ文を彷彿とさせる。〝ミレディ・ライセン〟と名乗っていることから本人である可能性もあるが、彼女は既に死んでいるはずであるし、人間だったはずだ。

 

輪廻は取り敢えず、その辺りのことを探ってみる事にした。

 

 

 

「そいつは悪かったなァ。だが、ミレディ・ライセンは人間で故人のはずだろォ? まして、自我を持つゴーレム何て聞いたことないんでなァ……目論見通り驚いてやったんだから許せやァ。そして、お前が何者か説明しろ。簡潔になァ」

 

「あれぇ~、こんな状況なのに物凄く偉そうなんですけど、こいつぅ」

 

 

 

 全く探りになってなかった。むしろド直球だった。流石に、この反応は予想外だったのかミレディを名乗る巨体ゴーレムは若干戸惑ったような様子を見せる。が、直ぐに持ち直して、人間なら絶対にニヤニヤしているであろうと容易に想像付くような声音で輪廻達に話しかけた。

 

「ん~? ミレディさんは初めからゴーレムさんですよぉ~何を持って人間だなんて……」

 

「オスカーの手記にお前のことも少し書いてあったぜェ。きちんと人間の女として出てきてたぞ? というか阿呆な問答をする気はないでなァ。簡潔にと言っただろう。どうせ立ち塞がる気なんだろうから、やることは変わらん。お前をスクラップにして先に進む。だから、その前にガタガタ騒いでないで、吐くもん吐けやァ」

 

「お、おおう。久しぶりの会話に内心、狂喜乱舞している私に何たる言い様。っていうかオスカーって言った? もしかして、オーちゃんの迷宮の攻略者?」

 

「ああ、オスカー・オルクスの迷宮なら攻略済みだァ。というか質問しているのはこっちだァ。答える気がないなら、消すぞォ? 別にどうしても知りたい事ってわけじゃなねェ。俺達の目的は神代魔法だけだからなァ」

 

 

 

 輪廻がアルベルトを巨体ゴーレムに向ける。ユエはすまし顔だが、シアの方は「うわ~、ブレないなぁ~」と感心半分呆れ半分でハジメを見ていた。

 

 

 

「……神代魔法ねぇ、それってやっぱり、神殺しのためかな? あのクソ野郎共を滅殺してくれるのかな? オーちゃんの迷宮攻略者なら事情は理解してるよね?」

 

「質問しているのはこっちだァ。答えて欲しけりゃ、先にこちらの質問に答えろやァ」

 

「こいつぅ~ホントに偉そうだなぁ~、まぁ、いいけどぉ~、えっと何だっけ……ああ、私の正体だったね。うぅ~ん」

 

「簡潔になしろォ、オスカーみたいにダラダラした説明はいらねェ。」

 

「あはは、確かに、オーちゃんは話が長かったねぇ~、理屈屋だったしねぇ~」

 

 

 

 巨体ゴーレムは懐かしんでいるのか遠い目をするかのように天を仰いだ。本当に人間臭い動きをするゴーレムである。ユエは相変わらず無表情で巨体ゴーレムを眺め、シアは周囲のゴーレム騎士達に気が気でないのかそわそわしている。

 

 

 

「うん、要望通りに簡潔に言うとね。

 

 私は、確かにミレディ・ライセンだよ

 

 ゴーレムの不思議は全て神代魔法で解決!

 

 もっと詳しく知りたければ見事、私を倒してみよ! って感じかな」

 

「結局、説明になってねェ……」

 

「ははは、そりゃ、攻略する前に情報なんて貰えるわけないじゃん? 迷宮の意味ないでしょ?」

 

 

 

 今度は巨大なゴーレムの指でメッ! をするミレディ・ゴーレム。中身がミレディ・ライセンというのは頂けないが、それを除けば愛嬌があるように思えてきた。ユエが、「……中身だけが問題」とボソリと呟いていることから輪廻と同じ感想のようだ。

 

 

 

 そして、その中身について、結局ほとんど何もわからなかったに等しいが、ミレディ本人だというなら、残留思念などを定着させたものなのかもしれないと推測する輪廻。輪廻は、確か中村が降霊術という残留思念を扱う天職をだったなと、記憶を掘り起こす。しかし、彼女の降霊術は、こんなにはっきりと意思を持った残留思念を残せるようなものではなかったはずだ。つまり、その辺と、その故人の意思? なんかをゴーレムに定着させたのが神代魔法ということだろう。

 

 

 

 ハジメは自分が探す世界を超える魔法ではなさそうだと、少し落胆した様子で巨体ゴーレム改めミレディ・ゴーレムに問い掛けた。

 

 

 

「お前の神代魔法は、残留思念に関わるものなのか? だとしたら、ここには用がないんだがなぁ」

 

「ん~? その様子じゃ、何か目当ての神代魔法があるのかな? ちなみに、私の神代魔法は別物だよぉ~、魂の定着の方はラーくんに手伝ってもらっただけだしぃ~」

 

 

 

 ハジメの目当てはあくまで世界を超えて故郷に帰ること。魂だか思念だか知らないが、それを操れる神代魔法を手に入れても意味はない。そう思って質問したのだが、返ってきたミレディの答えはハジメの推測とは異なるものだった。ラーくんというのが誰かは分からないが、おそらく〝解放者〟の一人なのだろう。その人物が、ミレディ・ゴーレムに死んだはずの本人の意思を持たせ、ゴーレムに定着させたようだ。

 

 

 

「じゃあ、お前の神代魔法は何なんだ? 返答次第では、このまま帰ることになるが……」

 

「ん~ん~、知りたい? そんなに知りたいのかなぁ?」

 

 

 

 再びニヤついた声音で話しかけるミレディに、イラっとしつつ返答を待つハジメ。

 

 

 

「知りたいならぁ~、その前に今度はこっちの質問に答えなよ」

 

 

 

 最後の言葉だけ、いきなり声音が変わった。今までの軽薄な雰囲気がなりを潜め真剣さを帯びる。その雰囲気の変化に少し驚く輪廻達。表情には出さずに輪廻が問い返す。

 

 

 

「なんだ?」

 

「目的は何? 何のために神代魔法を求める?」

 

 

 

 嘘偽りは許さないという意思が込められた声音で、ふざけた雰囲気など微塵もなく問いかけるミレディ。もしかすると、本来の彼女はこちらの方なのかもしれない。思えば、彼女も大衆のために神に挑んだ者。自らが託した魔法で何を為す気なのか知らないわけにはいかないのだろう。オスカーが記録映像を遺言として残したのと違い、何百年もの間、意思を持った状態で迷宮の奥深くで挑戦者を待ち続けるというのは、ある意味拷問ではないだろうか。軽薄な態度はブラフで、本当の彼女は凄まじい程の忍耐と意志、そして責任感を持っている人なのかもしれない。

 

 

 

 ユエも同じことを思ったのか、先程までとは違う眼差しでミレディ・ゴーレムを見ている。深い闇の底でたった一人という苦しみはユエもよく知っている。だからこそ、ミレディが意思を残したまま闇の底に留まったという決断に、共感以上の何かを感じたようだ。

 

 

 

 輪廻は、ミレディ・ゴーレムの眼光を真っ直ぐに見返しながら嘘偽りない言葉を返した。

 

「ゴミを掃除して、こいつらと家に帰ることだァ。」

 

「そのゴミって言うのは?」

 

「当然、帰るのを邪魔してきそうな、てめぇらの言うクソ野郎共に決まってんだろォ?」

 

「そっか、いやー長年の目的がようやく果たせそうだねーはァよかっ「お前は、なぜそのクソ野郎共を滅殺したいと思うんだ? 」え?」

 

「もう一度聞くぜェ?何故お前は神を殺したいと思う。民を守るためか?それとも仲間の想いからか?それとも…」

 

「復讐心かァ?」

 

「ッ!」

 

「復讐心からなら辞めといた方がいいぜェ」

 

「なんでそう言えるの?」

 

「俺が経験した事だァ、あいつに復讐したい、って思いはなァ、絶対に消えねェ、そいつを何度殺しても、別の世界線のそいつを殺しても、殺しても殺しても殺しても、何度でも甦る。復讐心ってのはそういうもんだァ。俺はそれを五百年繰り返してたがなァ、今でもその心は消えねぇ。」

 

「ご、五百年?五百年もずっとそれをしてたの?。」

 

「アァ。お前にはまだ分かんねぇだろうけどなァ、復讐心で憎んでる相手を殺すな。絶対に後悔するぜェ。」

 

「何で、憎んでる相手を殺して後悔するの?」

 

「さっきも言っただろォ?殺したら、またそいつを殺したくなる時が来るんだよォ。それが生きてる間はずっと続く。だから辞めておけって言ったんだ。」

 

「それでも、それでもあいつは殺さなくちゃいけない、民を守「それにお前は甘い。」え?」

 

「甘いんだよ、覚悟がなァ。だいたい何だ、守るべき奴らに敵対された程度で、やられたって、冗談にもならねェ。そんなに変えたいなら、そいつらを殺してでも、進め。」

 

「そんな事出来るわけ無いよ!」

「そうかァ、なら俺が代わりにして殺る。」

 

「なんでそこまでして、殺ってくれるのさ。」

「俺はお前を気に入った、それだけだ。俺は自分の気に入った奴に対して、協力は惜しまねェ、その方がおもしれェからだ。」

「だからお前も来い、」

「え?」

「だから、協力してやるから、お前も来いって言ってんだ。」

「でも私は、こんなんだし。」

ミレディはそう言って自分を指す。

「だったら、身体を作れば良いだけだろォ?」

ボトッ

「えぇぇぇ?私?」

「そして、魂をこっちの身体に移せば、着いてこられるだろォ?」(本当の笑み)

ストンッ

あれ?何かまたこの前聞いた事の有る、誰かが墜ちたような音がした気がするなぁ?。

「うん!そうだね。」

 

その後、ミレディを墜した、輪廻達は街に戻り、フェーレンに行くための依頼を受けに来た。

 

カラン、カラン

 

 

 

 そんな音を立てて冒険者ギルド:ブルック支部の扉は開いた。入ってきたのは三人の人影、ここ数日ですっかり有名人となった輪廻、ハジメ、ユエ、シア+ミレディである。ギルド内のカフェには、何時もの如く何組かの冒険者達が思い思いの時を過ごしており、輪廻達の姿に気がつくと片手を上げて挨拶してくる者もいる。男は相変わらずユエとシアに見蕩れ、ついで輪廻に羨望と嫉妬の視線を向けるが、そこに陰湿なものはない。

 

 

 

 ブルックに滞在して一週間、その間にユエかシアを手に入れようと決闘騒ぎを起こした者は数知れず。かつて、〝股間スマッシュ〟という世にも恐ろしい所業をなしたユエ本人を直接口説く事は出来ないが、外堀を埋めるように輪廻から攻略してやろうという輩がそれなりにいたのである。

 

 

 

 もちろん、輪廻がそんな面倒事をまともに受けるわけがない。最終的には、決闘しろ! というセリフの〝け〟の部分で既に発砲、非致死性のゴム弾が哀れな挑戦者の頭部に炸裂し三回転ひねりを披露して地面とキスするというのが常だった。

 

 

 

 そんなわけで、この町では、〝股間スマッシャー〟たるユエと、そんな彼女が心底惚れており、決闘が始まる前に相手を瞬殺する〝決闘スマッシャー〟たる輪廻のコンビは有名であり一目置かれる存在なのである。ギルドでパーティー名の申請等していないのに〝スマッシュ・ラヴァーズ〟というパーティー名が浸透しており、自分の二つ名と共にそれを知ったハジメがしばらく遠い目をしていたのは記憶に新しい。

 

 

 

 ちなみに、自分の存在感が薄いとシアが涙したのは余談である。

 

 

 

「おや、今日は四人一緒……また増えてるじゃないか?」

 

 

「アァ、ちょっと事情があってなァ、それより明日にでも町を出るんでなァ。あんたには色々世話になったし、一応挨拶をとな。ついでに、目的地関連で依頼があれば受けておこうと思ってなァ」

 

 

 

 世話になったというのは、輪廻がギルドの一室を無償で借りていたことだ。せっかくの重力魔法なので生成魔法と組み合わせを試行錯誤するのに、それなりに広い部屋が欲しかったのである。キャサリンに心当たりを聞いたところ、それならギルドの部屋を使っていいと無償で提供してくれたのだ。

 

 

 

 なお、輪廻とユエとシアとミレディは郊外で重力魔法の鍛錬である。

 

 

 

「そうかい。行っちまうのかい。そりゃあ、寂しくなるねぇ。あんた達が戻ってから賑やかで良かったんだけどねぇ~」

 

「勘弁してくれやァ、宿屋の変態といい、服飾店の変態といい、ユエとシアに踏まれたいとか言って町中で突然土下座してくる変態どもといい、〝お姉さま〟とか連呼しながら二人をストーキングする変態どもといい、決闘を申し込んでくる阿呆共といい……碌なヤツいねぇじゃねぇか。出会ったヤツの七割が変態で二割が阿呆とか……どうなってんだよこの町わァ。」

 

 

 

 苦々しい表情の輪廻が愚痴をこぼすように語った内容は全て事実だ。ソーナは言わずもがな、クリスタベルは会う度に輪廻に肉食獣の如き視線を向け舌なめずりをしてくるので、何度寒気を感じたかわからない。

 

 

 

 また、ブルックの町には三大派閥が出来ており、日々しのぎを削っている。一つは「ユエちゃんに踏まれ隊」、もう一つは「シアちゃんの奴隷になり隊」最後が「お姉さまと姉妹になり隊」である。それぞれ、文字通りの願望を抱え、実現を果たした隊員数で優劣を競っているらしい。

 

 

 

 あまりにぶっ飛んだネーミングと思考の集団にドン引きのハジメ達。町中でいきなり土下座するとユエに向かって「踏んで下さい!」とか絶叫するのだ。もはや恐怖である。シアに至ってはどういう思考過程を経てそんな結論に至ったのか理解不能だ。亜人族は被差別種族じゃなかったのかとか、お前らが奴隷になってどうするとかツッコミどころは満載だが、深く考えるのが嫌だったので出会えば即刻排除している。最後は女性のみで結成された集団で、ユエとシアに付き纏うか、ハジメの排除行動が主だ。一度は、「お姉さまに寄生する害虫が! 玉取ったらぁああーー!!」とか叫びながらナイフを片手に突っ込んで来た少女もいる。

 

 

 

 流石に町中で少女を殺害したとなると色々面倒そうなので、輪廻は、その少女を裸にひん剥いた後、亀甲縛りモドキ(知識がないので)をして一番高い建物に吊るし上げた挙句、〝次は消す〟と書かれた張り紙を貼って放置した。あまりの所業と淡々と書かれた張り紙の内容に、少女達の過激な行動がなりを潜めたのはいい事である。

 

 

 

 そんな出来事を思い出し顔をしかめる輪廻に、キャサリンは苦笑いだ。

 

 

 

「まぁまぁ、何だかんで活気があったのは事実さね」

 

「巫山戯た活気だなァ」

 

「で、何処に行くんだい?」

 

「フューレンだ」

 

 

 

 そんな風に雑談しながらも、仕事はきっちりこなすキャサリン。早速、フューレン関連の依頼がないかを探し始める。

 

 

 

 フューレンとは、中立商業都市のことだ。ハジメ達の次の目的地は【グリューエン大砂漠】にある七大迷宮の一つ【グリューエン大火山】である。その為、大陸の西に向かわなければならないのだが、その途中に【中立商業都市フューレン】があるので、大陸一の商業都市に一度は寄ってみようという話になったのである。なお、【グリューエン大火山】の次は、大砂漠を超えた更に西にある海底に沈む大迷宮【メルジーネ海底遺跡】が目的地だ。

 

 

 

「う~ん、おや。ちょうどいいのがあるよ。商隊の護衛依頼だね。ちょうど空きが後2人分あるよ……どうだい? 受けるかい?」

 

 

 

 キャサリンにより差し出された依頼書を受け取り内容を確認するハジメ。確かに、依頼内容は、商隊の護衛依頼のようだ。中規模な商隊のようで、十五人程の護衛を求めているらしい。ユエとミレディとシアは冒険者登録をしていないので、輪廻とハジメの分でちょうどだ。

 

 

 

「連れを同伴するのはいいのかァ?」

 

「ああ、問題ないよ。あんまり大人数だと苦情も出るだろうけど、荷物持ちを個人で雇ったり、奴隷を連れている冒険者もいるからね。まして、ユエちゃん、シアちゃんも結構な実力者だ。一人分の料金でもう二人優秀な冒険者を雇えるようなもんだ。断る理由もないさね」

 

「そうかァ、んで、おめぇらはどうする?」

 

 

 

 輪廻は少し逡巡し、意見を求めるようにハジメ達の方を振り返った。正直な話、配達系の任務でもあればと思っていたのだ。というのも、輪廻達だけなら魔力駆動車があるので、馬車の何倍も早くフューレンに着くことができる。わざわざ、護衛任務で他の者と足並みを揃えるのは手間と言えた。

 

 

 

「……急ぐ旅じゃない」

 

「そうですねぇ~、たまには他の冒険者方と一緒というのもいいかもしれません。ベテラン冒険者のノウハウというのもあるかもしれませんよ?」

 

「私も外は見てみたいなぁ〜」

 

「……そうですね、急いでも仕方有りませんし、たまにはいいんじゃ無いですか?」

 

 

 輪廻は四人の意見に「アァ」と頷くとキャサリンに依頼を受けることを伝える。ユエの言う通り、七大迷宮の攻略にはまだまだ時間がかかるだろう。急いて事を仕損じては元も子もないというし、シアの言うように冒険者独自のノウハウがあれば今後の旅でも何か役に立つことがあるかもしれない、ミレディの言うようにたまにはゆっくり外を見てみるのもいいかもしれない。

 

「あいよ。先方には伝えとくから、明日の朝一で正面門に行っとくれ」

 

「わかったぜェ。」

 

 

 輪廻が依頼書を受け取るのを確認すると、キャサリンが輪廻の後ろのユエとシアとミレディに目を向けた。

 

「あんた達も体に気をつけて元気でおやりよ? この子に泣かされたら何時でも家においで。あたしがぶん殴ってやるからね」

 

「……ん、お世話になった。ありがとう」

 

「はい、キャサリンさん。良くしてくれて有難うございました!」

 

「ありがとね〜、」

 

「あんたも、こんないい子達泣かせんじゃないよ? 精一杯大事にしないと罰が当たるからね?」

 

「んなこたァ、分かってるよォ。」

 

 

 

 キャサリンの言葉に苦笑いで返す輪廻。そんな輪廻に、キャサリンが一通の手紙を差し出す。疑問顔で、それを受け取る輪廻。

 

「これはァ?」

 

「あんた達、色々厄介なもの抱えてそうだからね。町の連中が迷惑かけた詫びのようなものだよ。他の町でギルドと揉めた時は、その手紙をお偉いさんに見せな。少しは役に立つかもしれないからね」

 

 

 

 バッチリとウインクするキャサリンに、思わず頬が引き攣る輪廻。手紙一つでお偉いさんに影響を及ぼせるアンタは一体何者だ? という疑問がありありと表情に浮かんでいる。

 

 

 

「おや、詮索はなしだよ? いい女に秘密はつきものさね」

 

「……アァ、ありがとなァ。」

 

「素直でよろしい! 色々あるだろうけど、死なないようにね」

 

 

 

 謎多き、片田舎の町のギルド職員キャサリン。輪廻達は、そんな彼女の愛嬌のある魅力的な笑みと共に送り出された。

 

 

 

 その後、輪廻達は、クリスタベルの場所にも寄った。ハジメは断固拒否したが、ユエとシアとミレディがどうしてもというので仕方なく付き添った……だが、町を出ると聞いた瞬間、クリスタベルは最後のチャンスとばかりにハジメに襲いかかる巨漢の化物と化し、恐怖のあまり振動破砕を使って葬ろうとするハジメを、ユエ達が必死に止めるという衝撃的な出来事があったが……詳しい話は割愛だ。

 

 

 

 最後の晩と聞き、遂には堂々と風呂場に乱入、そして部屋に突撃を敢行したソーナちゃんが、ブチギレた母親に本物の亀甲縛りをされて一晩中、宿の正面に吊るされるという事件の話も割愛だ。なぜ、母親が亀甲縛りを知っていたのかという話も割愛である。

 

 

 

 

 

 そして翌日早朝。

 

 

 

 そんな愉快? なブルックの町民達を思い出にしながら、正面門にやって来た輪廻達を迎えたのは商隊のまとめ役と他の護衛依頼を受けた冒険者達だった。どうやらハジメ達が最後のようで、まとめ役らしき人物と十四人の冒険者が、やって来た輪廻達を見て一斉にざわついた。

 

 

 

「お、おい、まさか残りの5人って〝スマ・ラヴ〟なのか!?」

 

「マジかよ! 嬉しさと恐怖が一緒くたに襲ってくるんですけど!」

 

「見ろよ、俺の手。さっきから震えが止まらないんだぜ?」

 

「いや、それはお前がアル中だからだろ?」

 

 

 

 ユエとシアとミレディの登場に喜びを表にする者、股間を両手で隠し涙目になる者、手の震えを輪廻達のせいにして仲間にツッコミを入れられる者など様々な反応だ。輪廻が、嫌そうな表情をしながら近寄ると、商隊のまとめ役らしき人物が声をかけた。

 

 

 

「君達が最後の護衛かね?」

 

「アァ、これが依頼書だ」

 

 

 

輪廻は、懐から取り出した依頼書を見せる。それを確認して、まとめ役の男は納得したように頷き、自己紹介を始めた。

 

 

 

「私の名はモットー・ユンケル。この商隊のリーダーをしている。君達のランクは未だ青だそうだが、キャサリンさんからは大変優秀な冒険者と聞いている。道中の護衛は期待させてもらうよ」

 

「……もっとユンケル? ……商隊のリーダーって大変なんだな……」

 

 

 

 日本のとある栄養ドリンクを思い出させる名前に、ハジメの眼が同情を帯びる。なぜ、そんな眼を向けられるのか分からないモットーは首を傾げながら、「まぁ、大変だが慣れたものだよ」と苦笑い気味に返した。

 

 

 

「まァ、期待は裏切らないと思うぜェ。俺は輪廻だァ。こっちはハジメとユエとシアとミレディ」

 

「それは頼もしいな……ところで、この兎人族……売るつもりはないかね? それなりの値段を付けさせてもらうが」

 

 

 

 モットーの視線が値踏みするようにシアを見た。兎人族で青みがかった白髪の超がつく美少女だ。商人の性として、珍しい商品に口を出さずにはいられないということか。首輪から奴隷と判断し、即行で所有者たる輪廻に売買交渉を持ちかけるあたり、きっと優秀な商人なのだろう。

 

 

 

 その視線を受けて、シアが「うっ」と嫌そうに唸りハジメの背後にそそっと隠れる。ユエとミレディのモットーを見る視線が厳しい。だが、一般的な認識として樹海の外にいる亜人族とは、すなわち奴隷であり、珍しい奴隷の売買交渉を申し出るのは商人として当たり前のことだ。モットーが責められるいわれはない。

 

 

 

「ほぉ、随分と懐かれていますな…中々、大事にされているようだ。ならば、私の方もそれなりに勉強させてもらいますが、いかがです?」

 

「まァ、あんたはそこそこ優秀な商人のようだしなァ……答えはわかるだろォ?」

 

 

 

 シアの様子を興味深そうに見ていたモットーが更に輪廻に交渉を持ちかけるが、輪廻の対応はあっさりしたものである。モットーも、実は輪廻が手放さないだろうとは感じていたが、それでもシアが生み出すであろう利益は魅力的だったので、何か交渉材料はないかと会話を引き伸ばそうとする。

 

 

 

 だが、そんな意図も輪廻は読んでいたのだろう。やはりあっさりしているが、揺るぎない意志を込めた言葉をモットーに告げる。

 

 

 

「例え、どこぞの神が欲しても俺はその神を殺すぜェ……理解してもらえたかァ?」

 

片手でシアを抱き寄せもう片方の手で斬魄刀を突き付ける。

 

「…………えぇ、それはもう。仕方ありませんな。ここは引き下がりましょう。ですが、その気になったときは是非、我がユンケル商会をご贔屓に願いますよ。それと、もう間も無く出発です。護衛の詳細は、そちらのリーダーとお願いします」

 

 

 

 輪廻の発言は相当危険なものだった。下手をすれば聖教教会から異端の烙印を押されかねない発言だ。一応、魔人族は違う神を信仰しているし、歴史的に最高神たる〝エヒト〟以外にも崇められた神は存在するので、直接、聖教教会にケンカを売る言葉ではない。だが、それでもギリギリの発言であることに変わりはなく、それ故に、モットーは輪廻 がシアを手放すことはないと心底理解させられた。

 

 

 

輪廻とが、すごすごと商隊の方へ戻るモットーを見ていると、周囲が再びざわついている事に気がついた。

 

 

 

「すげぇ……女一人のために、あそこまで言うか……痺れるぜ!」

 

「流石、決闘スマッシャーと言ったところか。自分の女に手を出すやつには容赦しない……ふっ、漢だぜ」

 

「いいわねぇ~、私も一度くらい言われてみたいわ」

 

「いや、お前、男だろ? 誰が、そんなことッあ、すまん、謝るからっやめっアッーー!!」

 

 

 

 輪廻は、愉快? な護衛仲間の愉快な発言に頭痛を感じたように手で頭を抑えた。やっぱりブルックの町の奴らは阿呆ばっかりだと。そんな事を思っていると、背中に何やら〝むにゅう〟と柔らかい感触を感じ、更に腕が背後から回され輪廻 を抱きしめてくる。

 

 

 

 輪廻が肩越しに振り返ると、肩に顎を乗せたシアの顔が至近距離に見えた。その顔は真っ赤に染まっており、実に嬉しそうに緩んでいる。

 

 

 

「……いいか? 特別な意味はないからな? 勘違いするなよ?」

 

「うふふふ、わかってますよぉ~、うふふふ~」

 

 

 

 あくまで身内を捨てるような真似はしないという意味であって、周りで騒いでいるヤツ等のように〝自分の女〟だからという意味ではないとはっきり告げる輪廻だったが、シアには、まるで伝わっていなかった。惚れた男から〝神に渡す位なら神を殺す〟と宣言されたのだ。どのような意図で為された発言であれ、嬉しいものは嬉しいのだろう。

 

 

 

 手っ取り早く交渉を打ち切るための発言が、いろんな意味で〝やりすぎ〟だった。ユエとミレディは、トコトコと傍に寄って行くと、そんな輪廻の袖をクイクイと引っぱった。

 

 

 

「何だァユエ?ミレディ?」

 

「ん……カッコよかったから大丈夫」

 

「そうそう、カッコよかったし大丈夫だよぉ」

 

「……慰めありがとよォ」

 

 

 

 輪廻の心情を察し、慰めるユエとミレディに、輪廻は感謝の言葉を告げながら優しく頬を撫でた。気持ちよさそうに目を細めるユエとミレディ。

 

 

 

 早朝の正門前、多数の人間がいる中で、背後に、白髪紅眼の部下を待機させ、背中に幸せそうなウサミミ美少女をはりつけ、両手には金髪紅眼と金髪蒼眼のこれまた美少女を纏わりつかせる男、十五夜輪廻。

 

商隊の女性陣は生暖かい眼差しで、男性陣は死んだ魚のような眼差しでその光景を見つめる。輪廻に突き刺さる煩わしい視線や言葉は、きっと自業自得である。

 

 




感想と高評価お願いします。

次回、フェーレンとウルと黒竜。


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第三章
第11話 フェーレンと再開


こんちわ湯たんぽです。
今回はサクサクッと行きますよー

最近感想が減ってきて、ちょっと寂しさを感じる今日この頃。

注意書き

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
輪廻君が何言ってるか解らなくても気にしないで。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十五人ぐらいになりそう!(現時点、後に更に増える。)
輪廻君むっちゃちーと。
輪廻君の愛子への当たりが結構強いよ。

それでもいいよと言う方のみご覧下さい。


中立商業都市フューレン

 

 

 高さ二十メートル、長さ二百キロメートルの外壁で囲まれた大陸一の商業都市だ。あらゆる業種が、この都市で日々しのぎを削り合っており、夢を叶え成功を収める者もいれば、あっさり無一文となって悄然と出て行く者も多くいる。観光で訪れる者や取引に訪れる者など出入りの激しさでも大陸一と言えるだろう。

 

 その巨大さからフューレンは四つのエリアに分かれている。この都市における様々な手続関係の施設が集まっている中央区、娯楽施設が集まった観光区、武器防具はもちろん家具類などを生産、直販している職人区、あらゆる業種の店が並ぶ商業区がそれだ。東西南北にそれぞれ中央区に続くメインストリートがあり、中心部に近いほど信用のある店が多いというのが常識らしい。メインストリートからも中央区からも遠い場所は、かなりアコギでブラックな商売、言い換えれば闇市的な店が多い。その分、時々とんでもない掘り出し物が出たりするので、冒険者や傭兵のような荒事に慣れている者達が、よく出入りしているようだ。

 

 

 

 そんな話を、中央区の一角にある冒険者ギルド:フューレン支部内にあるカフェで軽食を食べながら聞くハジメ達。話しているのは案内人と呼ばれる職業の女性だ。都市が巨大であるため需要が多く、案内人というのはそれになりに社会的地位のある職業らしい。多くの案内屋が日々客の獲得のためサービスの向上に努めているので信用度も高い。

 

 

 

 輪廻達はモットー率いる商隊と別れると証印を受けた依頼書を持って冒険者ギルドにやって来た。そして、宿を取ろうにも何処にどんな店があるのかさっぱりなので、冒険者ギルドでガイドブックを貰おうとしたところ、案内人の存在を教えられたのだ。

 

 

 

 そして、現在、案内人の女性、リシーと名乗った女性に料金を支払い、軽食を共にしながら都市の基本事項を聞いていたのである。

 

 

 

「そういうわけなので、一先ず宿をお取りになりたいのでしたら観光区へ行くことをオススメしますわ。中央区にも宿はありますが、やはり中央区で働く方々の仮眠場所という傾向が強いので、サービスは観光区のそれとは比べ物になりませんから」

 

「なるほどな、なら素直に観光区の宿にしとくか。どこがオススメなんだ?」

 

「お客様のご要望次第ですわ。様々な種類の宿が数多くございますから」

 

「そりゃそうか。そうだな、飯が上手くて、あと風呂があれば文句はない。立地とかは考慮しなくていい。あと責任の所在が明確な場所がいいな」

 

 

 

 リシーは、にこやかにハジメの要望を聞く。最初の二つはよく出される要望なのだろう「うんうん」と頷き、早速、脳内でオススメの宿をリストアップしたようだ。しかし、続くハジメの言葉で「ん?」と首を傾げた。

 

 

 

「あの~、責任の所在ですか?」

 

「ああ、例えば、何らかの争いごとに巻き込まれたとして、こちらが完全に被害者だった時に、宿内での損害について誰が責任を持つのかということだな。どうせならいい宿に泊りたいが、そうすると備品なんか高そうだし、あとで賠償額をふっかけられても面倒だろ」

 

「え~と、そうそう巻き込まれることはないと思いますが……」

 

 

 

 困惑するリシーにハジメは苦笑いする。

 

 

 

「まぁ、普通はそうなんだろうが、うちの主の連れが目立つんでな。観光区なんてハメ外すヤツも多そうだし、商人根性逞しいヤツなんか強行に出ないとも限らないしな。まぁ、あくまで〝出来れば〟だ。難しければ考慮しなくていい」

 

 

 

 ハジメの言葉に、リシーは、輪廻の周りに座りうまうまと軽食を食べるユエとシアとミレディに視線をやる。そして、納得したように頷いた。確かに、この美少女三人は目立つ。現に今も、周囲の視線をかなり集めている。特に、シアの方は兎人族だ。他人の奴隷に手を出すのは犯罪だが、しつこい交渉を持ちかける商人やハメを外して暴走する輩がいないとは言えない。

 

 

 

「しかし、それなら警備が厳重な宿でいいのでは? そういうことに気を使う方も多いですし、いい宿をご紹介できますが……」

 

「ああ、それでもいい。ただ、欲望に目が眩んだヤツってのは、時々とんでもないことをするからな。警備も絶対でない以上は最初から物理的説得を考慮した方が早い」

 

「ぶ、物理的説得ですか……なるほど、それで責任の所在なわけですか」

 

 

 

 完全にハジメの意図を理解したリシーは、あくまで〝出来れば〟でいいと言うハジメに、案内人根性が疼いたようだ、やる気に満ちた表情で「お任せ下さい」と了承する。そして、ユエとシアとミレディの方に視線を転じ、三人にも要望がないかを聞いた。出来るだけ客のニーズに応えようとする点、リシーも彼女の所属する案内屋も、きっと当たりなのだろう。

 

 

 

「……お風呂があればいい、但し混浴、貸切が必須」

 

「あ〜、ミレディちゃんも、お風呂は欲しいかなぁ〜、勿論混浴貸切で、あ、ハジメンはダメだよ?」

 

「えっと、大きなベッドがいいです」

 

 

 

 少し考えて、それぞれの要望を伝えるユエとミレディとシア。なんてことない要望だが、ユエとミレディが付け足した条件と、シアの要望を組み合わせると、自然ととある意図が透けて見える。リシーも察したようで、「承知しましたわ、お任せ下さい」とすまし顔で了承するが、頬が僅かに赤くなっている。そして、チラッチラッと輪廻とユエ達を交互に見ると更に頬を染めた。

 

 

 

 ちなみに、すぐ近くのテーブルでたむろしていた男連中が「視線で人が殺せたら!」と云わんばかりに輪廻を睨んでいたが、どうでもよかったので、輪廻は普通にスルーした。

 

 

 

 それから、他の区について話を聞いていると、輪廻達は不意に強い視線を感じた。特に、シアとユエとミレディに対しては、今までで一番不躾で、ねっとりとした粘着質な視線が向けられている。視線など既に気にしないユエとシアとミレディだが、あまりに気持ち悪い視線に僅かに眉を顰める。

 

 

 

 ハジメがチラリとその視線の先を辿ると……ブタがいた。体重が軽く百キロは超えていそうな肥えた体に、脂ぎった顔、豚鼻と頭部にちょこんと乗っているベットリした金髪。身なりだけは良いようで、遠目にもわかるいい服を着ている。そのブタ男がユエとシアとミレディを欲望に濁った瞳で凝視していた。

 

 

 

 ハジメが、「面倒な」と思うと同時に、そのブタ男は重そうな体をゆっさゆっさと揺すりながら真っ直ぐハジメ達の方へ近寄ってくる。どうやら逃げる暇もないようだ。輪廻やハジメが逃げる事などないだろうが。

 

 

 

 リシーも不穏な気配に気が付いたのか、それともブタ男が目立つのか、傲慢な態度でやって来るブタ男に営業スマイルも忘れて「げっ!」と何ともはしたない声を上げた。

 

 

 

 ブタ男は、輪廻達のテーブルのすぐ傍までやって来ると、ニヤついた目でユエとシアとミレディをジロジロと見やり、シアの首輪を見て不快そうに目を細めた。そして、今まで一度も目を向けなかった輪廻とハジメに、さも今気がついたような素振りを見せると、これまた随分と傲慢な態度で一方的な要求をした。

 

 

 

「お、おい、ガキ。ひゃ、百万ルタやる。この兎を、わ、渡せ。それとそっちの金髪2人はわ、私の妾にしてやる。い、一緒に来い」

 

ドモリ気味のきぃきぃ声でそう告げて、ブタ男はユエに触れようとする。彼の中では既にユエとミレディは自分のものになっているようだ。その瞬間、その場に凄絶な殺意威圧が降り注いだ。周囲のテーブルにいた者達ですら顔を青ざめさせて椅子からひっくり返り、後退りしながら必死に輪廻とハジメから距離をとり始めた。

 

 

 

 ならば、直接その殺気を受けたブタ男はというと……「ひぃ!?」と情けない悲鳴を上げると尻餅をつき、後退ることも出来ずにその場で股間を濡らし始めた。

 

 

 

 ハジメが本気の殺気をぶつければ、おそらく瞬時に意識を刈り取っただろうが、それでは意味がないので十分に手加減している。輪廻の場合は、本気の殺気を出したら多分死にます。殺気が盛れ出してるだけです。

 

 

 

「ハジメ、ユエ、ミレディ、シア、場所を変えるぜェ、」

 

 

 

 汚い液体が漏れ出しているので、輪廻はハジメ達に声をかけて席を立つ。本当は、即殺したかったのだが、流石に声を掛けただけで殺されたとあっては、輪廻の方が加害者だ。殺人犯を放置するほど都市の警備は甘くないだろう。基本的に、正当防衛という言い訳が通りそうにない限り、都市内においては半殺し程度を限度にしようと輪廻は考えていた。別に殺してもいいんだけどね。

 

 

 

 席を立つ輪廻達に、リシーが「えっ? えっ?」と混乱気味に目を瞬かせた。リシーがハジメの殺気の効果範囲にいても平気そうなのは、単純にリシーだけ〝威圧〟の対象外にしたからだ。周囲に気づかせずにモットーにだけピンポイントで〝威圧〟した時の逆バージョンである。鍛錬のたまものだ。リシーからすれば、ブタ男が勝手なことを言い出したと思ったら、いきなり尻餅をついて股間を漏らし始めたのだから混乱するのは当然だろう。

 

 

 

 ちなみに、周囲にまで〝威圧〟の効果が出ているのはわざとである。周囲の連中もそれなりに鬱陶しい視線を向けていたので、序でに理解させておいたのだ。〝手を出すなよ?消すぞ?〟と。周囲の男連中の青ざめた表情から判断するに、これ以上ないほど伝わったようだ。

 

 

 

 だが、〝威圧〟を解きギルドを出ようとした直後、大男がハジメ達の進路を塞ぐような位置取りに移動し仁王立ちした。ブタ男とは違う意味で百キロはありそうな巨体である。全身筋肉の塊で腰に長剣を差しており、歴戦の戦士といった風貌だ。

 

 

 

 その巨体が目に入ったのか、ブタ男が再びキィキィ声で喚きだした。

 

 

 

「そ、そうだ、レガニド! そのクソガキを殺せ! わ、私を殺そうとしたのだ! 嬲り殺せぇ!」

 

「坊ちゃん、流石に殺すのはヤバイですぜ。半殺し位にしときましょうや」

 

「やれぇ! い、いいからやれぇ! お、女は、傷つけるな! 私のだぁ!」

 

「了解ですぜ。報酬は弾んで下さいよ」

 

「い、いくらでもやる! さっさとやれぇ!」

 

 

 

 どうやら、レガニドと呼ばれた巨漢は、ブタ男の雇われ護衛らしい。輪廻から目を逸らさずにブタ男と話、報酬の約束をするとニンマリと笑った。珍しい事にユエ達は眼中にないらしい。見向きもせずに貰える報酬にニヤついているようだ。

 

 

 

「おう、坊主。わりぃな。俺の金のためにちょっと半殺しになってくれや。なに、殺しはしねぇよ。まぁ、嬢ちゃん達の方は……諦めてくれ」

 

 

 

 レガニドはそう言うと、拳を構えた。長剣の方は、流石に場所が場所だけに使わないようだ。周囲がレガニドの名を聞いてざわめく。

 

 

 

「お、おい、レガニドって〝黒〟のレガニドか?」

 

「〝暴風〟のレガニド!? 何で、あんなヤツの護衛なんて……」

 

「金払じゃないか?〝金好き〟のレガニドだろ?」

 

 

 

 周囲のヒソヒソ声で大体目の前の男の素性を察したハジメ。天職持ちなのかどうかは分からないが冒険者ランクが〝黒〟ということは、上から三番目のランクということであり、相当な実力者ということだ。だが、輪廻にそんなのは関係ない。

 

「ォイ!ハジメェ、また糞餓鬼共が喚いてるぜェ、殺していいよなァ」

 

「えぇ、いいんじゃ無いでしょうか?あっちから攻撃してくるんですから、正当防衛が通じますよ。」

 

「じゃァ早速殺すとするかァ。」

 

レガニドから闘気が噴き上がる。輪廻が、これなら正当防衛を理由に半殺しにしても問題ないだろうと、刀を振るおうとした瞬間、意外な場所から制止の声がかかった。

 

 

 

「……輪廻、待って」

 

「どうしたユエ?」

 

 

 

 ユエは、隣のシアを引っ張ると、輪廻の疑問に答える前に、輪廻とレガニドの間に割って入った。訝しそうな輪廻とレガニドに、ユエは背を向けたまま答える。

 

 

 

「……私達が相手をする」

 

「えっ? ユエさん、私もですか?」

 

「えー、でもミレディちゃんがあれ使えば直ぐ終わっちゃうよー?」

 

「……それでいい。」

 

 シアの質問はさらり無視するユエ。ユエの言葉に、輪廻が返答するよりも、レガニドが爆笑する方が早かった。

 

 

 

「ガッハハハハ、嬢ちゃん達が相手をするだって? 中々笑わせてくれるじゃねぇの。何だ? 夜の相手でもして許してもらおうって『……黙れ、ゴミクズ』ッ!?」

 

 

 

 下品な言葉を口走ろうとしたレガニドに、辛辣な言葉と共に、神速の風刃が襲い掛かりその頬を切り裂いた。プシュと小さな音を立てて、血がだらだらと滴り落ちる。かなり深く切れたようだ。レガニドは、ユエの言葉通り黙り込む。ユエの魔法が速すぎて、全く反応できなかったのだ。心中では「いつ詠唱した? 陣はどこだ?」と冷や汗を掻きながら必死に分析している。

 

 

 

 ユエは何事もなかったように、輪廻と、未だ、ユエの意図が分かっていないシアに向けて話を続ける。

 

 

 

「……私達が守られるだけのお姫様じゃないことを周知させる」

 

「ああ、なるほど。私達自身が手痛いしっぺ返し出来ることを示すんですね」

 

「……そう。せっかくだから、これを利用する」

 

 

 そう言ってユエは、先程とは異なり厳しい目を向けているレガニドを指差した。が、輪廻から制止が掛かった。

 

「おいユエェ、お前らは黙って守られとけェ、それに試して見たい事も有るしなァ。」

 

ユエも輪廻にそこまで言われては反論出来ない。と言うか後ろの3人は、揃って顔を紅潮させている。

 

「……ん、輪廻がそこまで言うなら。…」

 

「仕方ないなー、ミレディちゃんも殺りたかったけど、輪廻がそう言うなら仕方ない。」

 

「し、仕方無いですぅ、輪廻さんがそこまで言うなら仕方ないですぅ!」

 

「お前ら、表情隠すのに必死じゃねぇか。」

 

ユエ達は、輪廻に守る宣言されて嬉しそうだが、必死にそれを隠している。

 

「話し合いは終わったかい?坊主達。」

 

「アァ、てめぇらから来いよォ。」

 

「なら、行かせて貰うぞ。竜巻剣!」

 

ガキィン、

 

「ちっ、ならこれだ!来風剣!」

 

かれこれ5分、全ての技を出し切った、何とかコンとか。

 

「はぁ、はぁ、」

 

「おいィ、ちまちました小ネタはもう品切れかァ?」

「ひっ」

「何だよその面はよォ、こっちのテンションが下がっちまうだろうがァ。なァ!」

ドゴォォォォォォォォン

「喜べよォ、いいベットが見つかったぜェ!」

ドガァァァァァン

「がハッ」

輪廻はレガニドの胸に手を置いたままこう言った。

「人間の身体の中に生体電気ってのが流れてるの知ってるかァ?ちょっとばかし、弄ってやったから楽しめよォ!」

ビリビリビリビリ

「がァァァァァァァァァァごフッ。」

「ちっとは楽しそうな顔しろよォ、まァ無理かァ、このベットは寝心地悪そうだもんなァ。」

 

苛烈にして凶悪な攻撃に、後ろで様子を伺っていたハジメ達をして「おぅ」と悲痛な震え声を上げさせたほどだ。

 

 

 

 あり得べからざる光景の二連発。そして容赦のなさにギルド内が静寂に包まれる。誰も彼もが身動き一つせず、輪廻達を凝視していた。よく見れば、ギルド職員らしき者達が、争いを止めようとしたのか、カフェに来る途中で輪廻の方へ手を伸ばしたまま硬直している。様々な冒険者達を見てきた彼等にとっても衝撃の光景だったようだ。

 

 

 

 誰もが硬直していると、おもむろに静寂が破られた。輪廻が、ツカツカと歩き出したのだ。ギルド内にいる全員の視線が輪廻に集まる。ハジメの行き先は……ブタ男のもとだった。

 

 

 

「ひぃ! く、来るなぁ! わ、私を誰だと思っている! プーム・ミンだぞ! ミン男爵家に逆らう気かぁ!」

 

「……地球の全ゆるキャラファンに土下座して謝れェ、ブタがァ」

 

 

 

 輪廻は、ブタ男の名前に地球の代表的なゆるキャラを思い浮かべ、盛大に顔をしかめると、尻餅を付いたままのブタ男の顔面を勢いよく踏みつけた。

 

 

 

「プギャ!?」

 

 

 

 文字通り豚のような悲鳴を上げて顔面を靴底と床にサンドイッチされたプームはミシミシとなる自身の頭蓋骨に恐怖し悲鳴を上げた。すると、その声がうるさいとでも言うように、鳴けば鳴くほど圧力が増していく。顔は醜く潰れ、目や鼻が頬の肉で隠れてしまっている。やがて、声を上げるほど痛みが増す事に気が付いたのか、大人しくなり始めた。単に体力が尽きただけかもしれないが。

 

 

 

「おい、ブタ。二度と視界に入るな。直接・間接問わず関わるな……次は消す。」

 

 

 

 プームは輪廻の靴底に押しつぶされながらも、必死に頷こうとしているのか小刻みに震える。既に、虚勢を張る力も残っていないようだ。完全に心が折れている。しかし、その程度で、あっさり許すほど輪廻は甘くはない。〝喉元過ぎれば熱さを忘れる〟というように、一時的な恐怖だけでは全然足りない。殺しの選択が得策でない以上、代わりに、その恐怖を忘れないように刻まねばならない。

 

 

 

 なので、少し足を浮かせると、輪廻は錬成により靴底からスパイクを出し、再度勢いよく踏みつけた。

 

 

 

「ぎゃぁああああああ!!」

 

 

 

 スパイクが、プームの顔面に突き刺さり無数の穴を開ける。更に、片目にも突き刺ささったようで大量の血を流し始めた。プーム本人は、痛みで直ぐに気を失う。ハジメが足をどけると見るも無残な……いや、元々無残な顔だったので、あまり変わらないが、取り敢えず血まみれのプームの顔が晒された。

 

 

 

 輪廻は、どこか清々しい表情でユエ達の方へ歩み寄る。ユエとシアとミレディも、微笑みで輪廻を迎えた。そして、ハジメは、すぐ傍で呆然としている案内人リシーにも笑いかけた。

 

 

 

「じゃあ、案内人さん。場所移して続きを頼むよ」

 

「はひっ! い、いえ、その、私、何といいますか……」

 

 

 

 ハジメの笑顔に恐怖を覚えたのか、しどろもどろになるリシー。その表情は、明らかに関わりたくないと物語っていた。それくらい、ハジメ達は異常だったのだ。ハジメも何となく察しているが、また新たな案内人をこの騒ぎの後に探すのは面倒なので、リシーを逃がすつもりはなかった。ハジメの意図を悟って、ユエとシアがリシーの両脇を固め、ミレディが後ろに付く。「ひぃぃん!」と情けない悲鳴を上げるリシー。

 

 

 

 と、そこへ彼女にとっての救世主、ギルド職員が今更ながらにやって来た。

 

 

 

「あの、申し訳ありませんが、あちらで事情聴取にご協力願います」

 

 

 

 そうハジメに告げた男性職員の他、三人の職員が輪廻達を囲むように近寄った。もっとも、全員腰が引けていたが。もう数人は、プームとレガニドの容態を見に行っている。

 

 

 

「そうは言ってもな、あのブタが俺の主の連れを奪おうとして、それを断ったら逆上して襲ってきたから主が返り討ちにしただけだ。それ以上、説明する事がない。そこの案内人とか、その辺の男連中も証人になるぞ。特に、近くのテーブルにいた奴等は随分と聞き耳を立てていたようだしな?」

 

 

 

 ハジメがそう言いながら、周囲の男連中を睥睨すると、目があった彼等はこぞって首がもげるのでは? と言いたくなるほど激しく何度も頷いた。

 

 

 

「それは分かっていますが、ギルド内で起こされた問題は、当事者双方の言い分を聞いて公正に判断することになっていますので……規則ですから冒険者なら従って頂かないと……」

 

「当事者双方……ね」

 

 

 

 ハジメはチラリとプームとレガニドの二人を見る。当分目を覚ましそうになかった。ギルド職員が治癒師を手配しているようだが、おそらく二、三日は目を覚まさないのではないだろうか。

 

 

 

「あれが目を覚ますまで、ずっと待機してろって? 被害者の俺達が? ……いっそ都市外に拉致って殺っちまうか?」

 

 

 

 ハジメが非難がましい視線をギルド職員に向ける。典型的なクレーマーのような物言いにギルド職員の男性が、「そんな目で睨むなよぉ、仕事なんだから仕方ないだろぉ」という自棄糞気味な表情になった。そして、ぼそりと呟かれたハジメの最後のセリフが耳に入り、慌てて止めに入る。

 

 

 

 ハジメが、仕方なく、プームとレガニドの二人に対して激痛を以て強制的に意識を取り戻させるかと歩み寄ろうとし、それを職員が止めようと押し問答していると、突如、凛とした声が掛けられた。

 

 

 

「何をしているのです? これは一体、何事ですか?」

 

 

 

 そちらを見てみれば、メガネを掛けた理知的な雰囲気を漂わせる細身の男性が厳しい目でハジメ達を見ていた。

 

 

 

「ドット秘書長! いいところに! これはですね……」

 

 

 

 職員達がこれ幸いとドット秘書長と呼ばれた男のもとへ群がる。ドットは、職員達から話を聞き終わると、輪廻達に鋭い視線を向けた。

 

 

 

 どうやら、まだまだ解放はされないようだ。

 

その後、あの時のギルドのおばちゃんの手紙が、有効過ぎて騒いだりして、何やかんや有り、輪廻達が応接室に案内されてから、きっかり十分後、遂に、扉がノックされた。輪廻の返事から一拍置いて扉が開かれる。そこから現れたのは、金髪をオールバックにした鋭い目付きの三十代後半くらいの男性と先ほどのドットだった。

 

 

 

「初めまして、冒険者ギルド、フューレン支部支部長イルワ・チャングだ。輪廻君、ハジメ君、ユエ君、シア君、ミレディ君、……でいいかな?」

 

 

 

 簡潔な自己紹介の後、輪廻達の名を確認がてらに呼び握手を求める支部長イルワ。輪廻も握手を返しながら返事をする。

 

 

 

「アァ、構わねぇ。名前は手紙かァ?」

 

「その通りだ。先生からの手紙に書いてあったよ。随分と目をかけられている……というより注目されているようだね。将来有望、ただしトラブル体質なので、出来れば目をかけてやって欲しいという旨の内容だったよ」

 

「トラブル体質……ね。確かにブルックじゃあトラブル続きだったな。まぁ、それはいい。肝心の身分証明の方はどうなんだ? それで問題ないのか?」

 

「ああ、先生が問題のある人物ではないと書いているからね。あの人の人を見る目は確かだ。わざわざ手紙を持たせるほどだし、この手紙を以て君達の身分証明とさせてもらうよ」

 

 

 

 どうやらキャサリンの手紙は本当にギルドのお偉いさん相手に役立に立ったようだ。随分と信用がある。キャサリンを〝先生〟と呼んでいることからかなり濃い付き合いがあるように思える。ユエのの隣に座っているシアは、キャサリンに特に懐いていたことから、その辺りの話が気になるようでおずおずとイルワに訪ねた。

 

 

 

「あの~、キャサリンさんって何者なのでしょう?」

 

「ん? 本人から聞いてないのかい? 彼女は、王都のギルド本部でギルドマスターの秘書長をしていたんだよ。その後、ギルド運営に関する教育係になってね。今、各町に派遣されている支部長の五、六割は先生の教え子なんだ。私もその一人で、彼女には頭が上がらなくてね。その美しさと人柄の良さから、当時は、僕らのマドンナ的存在、あるいは憧れのお姉さんのような存在だった。その後、結婚してブルックの町のギルド支部に転勤したんだよ。子供を育てるにも田舎の方がいいって言ってね。彼女の結婚発表は青天の霹靂でね。荒れたよ。ギルドどころか、王都が」

 

「はぁ~そんなにすごい人だったんですね~」

 

「……キャサリンすごい」

 

「すごいねぇ。」

 

「只者じゃないとは思っていたが……思いっきり中枢の人間だったとはな。ていうか、そんなにモテたのに……今は……いや、止めておこう」

 

「アァ、それ以上触れるのは辞めておけェ。」

 

 聞かされたキャサリンの正体に感心するハジメ達。想像していたよりずっと大物だったらしい。もっとも、ハジメは若干、時間の残酷さに遠い目をしていたが。

 

 

 

「まぁ、それはそれとして、問題ないならもう行っていいよなァ?」

 

 

 

 元々、身分証明のためだけに来たわけなので、用が終わった以上長居は無用だと輪廻がイルワに確認する。しかし、イルワは、瞳の奥を光らせると「少し待ってくれるかい?」と輪廻達を留まらせる。何となく嫌な予感がするハジメ。

 

 

 

 イルワは、隣に立っていたドットを促して一枚の依頼書を輪廻達の前に差し出した。

 

 

 

「実は、君達の腕を見込んで、一つ依頼を受けて欲しいと思っている」

「受けてやってもいいぜェ。」

「本当かい?それなら「但し条件着きだァ」……なんだい?」

「アァ、そんなに難しいことじゃねェ。ユエとシアとミレディにステータスプレートを作って欲しい。そして、そこに表記された内容について他言無用を確約すること、更に、ギルド関連に関わらず、アンタの持つコネクションの全てを使って、俺達の要望に応え便宜を図ることォ。この二つだなァ」

 

「それはあまりに……」

 

「出来ねぇなら、この話はなしだァ。もう行かせてもらう。」

 

 

 席を立とうとする輪廻とハジメに、イルワもドットも焦りと苦悩に表情を歪めた。一つ目の条件は特に問題ないが、二つ目に関しては、実質、フューレンのギルド支部長が二人の冒険者の手足になるようなものだ。責任ある立場として、おいそれと許容することはできない。

 

 

 

「何を要求する気かな?」

 

「そんなに気負わないでくれ。無茶な要求はしないぞ? ただ俺達は少々特異な存在なんで、教会あたりに目をつけられると……いや、これから先、ほぼ確実に目をつけられると思うが、その時、伝手があった方が便利だなっとそう思っただけだ。面倒事が起きた時に味方になってくれればいい。ほら、指名手配とかされても施設の利用を拒まないとか……」

 

「指名手配されるのが確実なのかい? ふむ、個人的にも君達の秘密が気になって来たな。キャサリン先生が気に入っているくらいだから悪い人間ではないと思うが……そう言えば、そちらのシア君は怪力、ユエ君とミレディ君は見たこともない魔法を使ったと報告があったな……その辺りが君達の秘密か…そして、それがいずれ教会に目を付けられる代物だと…大して隠していないことからすれば、最初から事を構えるのは覚悟の上ということか……そうなれば確かにどの町でも動きにくい……故に便宜をと……」

 

 

 

 流石、大都市のギルド支部長。頭の回転は早い。イルワは、しばらく考え込んだあと、意を決したように輪廻とハジメに視線を合わせた。

 

 

 

「犯罪に加担するような倫理にもとる行為・要望には絶対に応えられない。君達が要望を伝える度に詳細を聞かせてもらい、私自身が判断する。だが、できる限り君達の味方になることは約束しよう……これ以上は譲歩できない。どうかな」

 

「まぁ、そんなところだろうな……それでいい。あと報酬は依頼が達成されてからでいい。お坊ちゃん自身か遺品あたりでも持って帰ればいいだろう?」

 

 

 

 輪廻やハジメとしては、ユエ達のステータスプレートを手に入れるのが一番の目的だ。この世界では何かと提示を求められるステータスプレートは持っていない方が不自然であり、この先、町による度に言い訳するのは面倒なことこの上ない。

 

 

 

 問題は、最初にステータスプレートを作成した者に騒がれないようにするにはどうすればいいかという事だったのだが、イルワの存在がその問題を解決した。ただ、条件として口約束をしても、やはり密告の疑いはある。いずれ、輪廻達の特異性はばれるだろうが、積極的に手を回されるのは好ましくない。なので、輪廻は、ステータスプレートの作成を依頼完了後にした。どんな形であれ、心を苛む出来事に答えをもたらしたハジメを、イルワも悪いようにはしないだろうという打算だ。

 

 

 

 イルワもハジメの意図は察しているのだろう。苦笑いしながら、それでも捜索依頼の引き受け手が見つかったことに安堵しているようだ。

 

 

 

「本当に、君達の秘密が気になってきたが……それは、依頼達成後の楽しみにしておこう。ハジメ君の言う通り、どんな形であれ、ウィル達の痕跡を見つけてもらいたい……輪廻君、ハジメ君、ユエ君、ミレディ君、シア君……宜しく頼む」

 

 

 

 イルワは最後に真剣な眼差しで輪廻達を見つめた後、ゆっくり頭を下げた。大都市のギルド支部長が一冒険者に頭を下げる。そうそう出来ることではない。キャサリンの教え子というだけあって、人の良さがにじみ出ている。

 

 

 

 そんなイルワの様子を見て、輪廻達は立ち上がると気負いなく実に軽い調子で答えた。

 

 

「さっさと行くぜェ。」

 

「あいよ」

 

「……ん」

 

「はいはーい。」

 

「はいっ」

 

ウルの街に向かって居るのだが………

 

「行くぞハジメェ!米じゃ! 米じゃ!戦争じゃァ!」

 

「おう!かっ飛ばすぜえ!」

 

これ絶対、両方ともバイクのスピード時速三百キロ超えてるわ。

 

「……こんなハジメと輪廻見たことない。」

 

「おう、ミレディちゃんもそう思うぞい。」

 

「これ絶対テンション可笑しくなっちゃってる奴ですぅ!」

 

 

 

「はぁ、今日も手掛かりはなしですか……清水君、一体どこに行ってしまったんですか……」

 

 

 

 悄然と肩を落とし、ウルの町の表通りをトボトボと歩くのは召喚組の一人にして教師、畑山愛子だ。普段の快活な様子がなりを潜め、今は、不安と心配に苛まれて陰鬱な雰囲気を漂わせている。心なしか、表通りを彩る街灯の灯りすら、いつもより薄暗い気がする。

 

 

 

「愛子、あまり気を落とすな。まだ、何も分かっていないんだ。無事という可能性は十分にある。お前が信じなくてどうするんだ」

 

「そうですよ、愛ちゃん先生。清水君の部屋だって荒らされた様子はなかったんです。自分で何処かに行った可能性だって高いんですよ? 悪い方にばかり考えないでください」

 

 

 

 元気のない愛子に、そう声をかけたのは愛子専属護衛隊隊長のデビッドと生徒の園部優花だ。周りには他にも、毎度お馴染みに騎士達と生徒達がいる。彼等も口々に愛子を気遣うような言葉をかけた。

 

 

 

 クラスメイトの一人、清水幸利が失踪してから既に二週間と少し。愛子達は、八方手を尽くして清水を探したが、その行方はようとして知れなかった。町中に目撃情報はなく、近隣の町や村にも使いを出して目撃情報を求めたが、全て空振りだった。

 

 

 

 当初は事件に巻き込まれたのではと騒然となったのだが、清水の部屋が荒らされていなかったこと、清水自身が〝闇術師〟という闇系魔法に特別才能を持つ天職を所持しており、他の系統魔法についても高い適性を持っていたことから、そうそう、その辺のゴロツキにやられるとは思えず、今では自発的な失踪と考える者が多かった。

 

 

 

 元々、清水は、大人しいインドアタイプの人間で社交性もあまり高くなかった。クラスメイトとも、特別親しい友人はおらず、愛ちゃん護衛隊に参加したことも驚かれたぐらいだ。そんなわけで、既に愛子以外の生徒は、清水の安否より、それを憂いて日に日に元気がなくなっていく愛子の方が心配だった。護衛隊の騎士達に至っては言わずもがなである。

 

 

 

 ちなみに、王国と教会には報告済みであり、捜索隊を編成して応援に来るようだ。清水も、魔法の才能に関しては召喚された者らしく極めて優秀なので、ハジメの時のように、上層部は楽観視していない。捜索隊が到着するまで、あと二、三日といったところだ。

 

 

 

 次々とかけられる気遣いの言葉に、愛子は内心で自分を殴りつけた。事件に巻き込まれようが、自発的な失踪であろうが心配であることに変わりはない。しかし、それを表に出して、今、傍にいる生徒達を不安にさせるどころか、気遣わせてどうするのだと。それでも、自分はこの子達の教師なのか! と。愛子は、一度深呼吸するとペシッと両手で頬を叩き気持ちを立て直した。

 

 

 

「皆さん、心配かけてごめんなさい。そうですよね。悩んでばかりいても解決しません。清水君は優秀な魔法使いです。きっと大丈夫。今は、無事を信じて出来ることをしましょう。取り敢えずは、本日の晩御飯です! お腹いっぱい食べて、明日に備えましょう!」

 

 

 

 無理しているのは丸分かりだが、気合の入った掛け声に生徒達も「は~い」と素直に返事をする。騎士達は、その様子を微笑ましげに眺めた。

 

 

 

カランッカランッ

 

 

 

 そんな音を立てて、愛子達は、自分達が宿泊している宿の扉を開いた。ウルの町で一番の高級宿だ。名を〝水妖精の宿〟という。昔、ウルディア湖から現れた妖精を一組の夫婦が泊めたことが由来だそうだ。ウルディア湖は、ウルの町の近郊にある大陸一の大きさを誇る湖だ。大きさは日本の琵琶湖の四倍程である。

 

 

 

 〝水妖精の宿〟は、一階部分がレストランになっており、ウルの町の名物である米料理が数多く揃えられている。内装は、落ち着きがあって、目立ちはしないが細部までこだわりが見て取れる装飾の施された重厚なテーブルやバーカウンターがある。また、天井には派手すぎないシャンデリアがあり、落ち着いた空気に花を添えていた。〝老舗〟そんな言葉が自然と湧き上がる、歴史を感じさせる宿だった。

 

 

 

 当初、愛子達は、高級すぎては落ち着かないと他の宿を希望したのだが、〝神の使徒〟あるいは〝豊穣の女神〟とまで呼ばれ始めている愛子や生徒達を普通の宿に止めるのは外聞的に有り得ないので、騎士達の説得の末、ウルの町における滞在場所として目出度く確定した。

 

 

 

 元々、王宮の一室で過ごしていたこともあり、愛子も生徒達も次第に慣れ、今では、すっかりリラックス出来る場所になっていた。農地改善や清水の捜索に東奔西走し疲れた体で帰って来る愛子達にとって、この宿でとる米料理は毎日の楽しみになっていた。

 

 

 

 全員が一番奥の専用となりつつあるVIP席に座り、その日の夕食に舌鼓を打つ。

 

 

 

「ああ、相変わらず美味しいぃ~異世界に来てカレーが食べれるとは思わなかったよ」

 

「まぁ、見た目はシチューなんだけどな……いや、ホワイトカレーってあったけ?」

 

「いや、それよりも天丼だろ? このタレとか絶品だぞ? 日本負けてんじゃない?」

 

「それは、玉井君がちゃんとした天丼食べたことないからでしょ? ホカ弁の天丼と比べちゃだめだよ」

 

「いや、チャーハンモドキ一択で。これやめられないよ」

 

 

 

 極めて地球の料理に近い米料理に毎晩生徒達のテンションは上がりっぱなしだ。見た目や微妙な味の違いはあるのだが、料理の発想自体はとても似通っている。素材が豊富というのも、ウルの町の料理の質を押し上げている理由の一つだろう。米は言うに及ばず、ウルディア湖で取れる魚、山脈地帯の山菜や香辛料などもある。

 

 

 

 美味しい料理で一時の幸せを噛み締めている愛子達のもとへ、六十代くらいの口ひげが見事な男性がにこやかに近寄ってきた。

 

 

 

「皆様、本日のお食事はいかがですか? 何かございましたら、どうぞ、遠慮なくお申し付けください」

 

「あ、オーナーさん」

 

 

 

 愛子達に話しかけたのは、この〝水妖精の宿〟のオーナーであるフォス・セルオである。スっと伸びた背筋に、穏やかに細められた瞳、白髪交じりの髪をオールバックにしている。宿の落ち着いた雰囲気がよく似合う男性だ。

 

 

 

「いえ、今日もとてもおいしいですよ。毎日、癒されてます」

 

 

 

 愛子が代表してニッコリ笑いながら答えると、フォスも嬉しそうに「それはようございました」と微笑んだ。しかし、次の瞬間には、その表情を申し訳なさそうに曇らせた。何時も穏やかに微笑んでいるフォスには似つかわしくない表情だ。何事かと、食事の手を止めて皆がフォスに注目した。

 

 

 

「実は、大変申し訳ないのですが……香辛料を使った料理は今日限りとなります」

 

「えっ!? それって、もうこのニルシッシル(異世界版カレー)食べれないってことですか?」

 

 

 

 カレーが大好物の園部優花がショックを受けたように問い返した。

 

 

 

「はい、申し訳ございません。何分、材料が切れまして……いつもならこのような事がないように在庫を確保しているのですが……ここ一ヶ月ほど北山脈が不穏ということで採取に行くものが激減しております。つい先日も、調査に来た高ランク冒険者の一行が行方不明となりまして、ますます採取に行く者がいなくなりました。当店にも次にいつ入荷するかわかりかねる状況なのです」

 

「あの……不穏っていうのは具体的には?」

 

「何でも魔物の群れを見たとか……北山脈は山を越えなければ比較的安全な場所です。山を一つ越えるごとに強力な魔物がいるようですが、わざわざ山を越えてまでこちらには来ません。ですが、何人かの者がいるはずのない山向こうの魔物の群れを見たのだとか」

 

「それは、心配ですね……」

 

 

 

 愛子が眉をしかめる。他の皆も若干沈んだ様子で互いに顔を見合わせた。フォスは、「食事中にする話ではありませんでしたね」と申し訳なさそうな表情をすると、場の雰囲気を盛り返すように明るい口調で話を続けた。

 

 

 

「しかし、その異変ももしかするともう直ぐ収まるかもしれませんよ」

 

「どういうことですか?」

 

「実は、今日のちょうど日の入り位に新規のお客様が宿泊にいらしたのですが、何でも先の冒険者方の捜索のため北山脈へ行かれるらしいのです。フューレンのギルド支部長様の指名依頼らしく、相当な実力者のようですね。もしかしたら、異変の原因も突き止めてくれるやもしれません」

 

 

 

 愛子達はピンと来ないようだが、食事を共にしていたデビッド達護衛の騎士は一様に「ほぅ」と感心半分興味半分の声を上げた。フューレンの支部長と言えばギルド全体でも最上級クラスの幹部職員である。その支部長に指名依頼されるというのは、相当どころではない実力者のはずだ。同じ戦闘に通じる者としては好奇心をそそられるのである。騎士達の頭には、有名な〝金〟クラスの冒険者がリストアップされていた。

 

 

 

 愛子達が、デビッド達騎士のざわめきに不思議そうな顔をしていると、二階へ通じる階段の方から声が聞こえ始めた。男2人の声と少女三人の声だ。何やら少女の一人が男の1人に文句を言っているらしい。それに反応したのはフォスだ。

 

 

 

「おや、噂をすれば。彼等ですよ。騎士様、彼等は明朝にはここを出るそうなので、もしお話になるのでしたら、今のうちがよろしいかと」

 

「そうか、わかった。しかし、随分と若い声だ。〝金〟に、こんな若い者がいたか?」

 

そうこうしている内に、5人の男女は話ながら近づいてくる。

 

 

 

 愛子達のいる席は、三方を壁に囲まれた一番奥の席であり、店全体を見渡せる場所でもある。一応、カーテンを引くことで個室にすることもできる席だ。唯でさえ目立つ愛子達一行は、愛子が〝豊穣の女神〟と呼ばれるようになって更に目立つようになったため、食事の時はカーテンを閉めることが多い。今日も、例に漏れずカーテンは閉めてある。

 

 そのカーテン越しに若い男女の騒がしめの会話の内容が聞こえてきた。

 

「もう!だから私を放置しないでください!そうやって直ぐにユエさんやミレディさんと、三人の世界を作らないで下さい!"ハジメさん”達も何か言ってくださいよ!」

 

「主よ、少しはシアの事を見てあげるべきでは?。」

「そーだよ〜少しはシアちゃんの事も見てあげなよ〜”輪廻”。」

 

「チッ、めんどくせえなァ、」

「輪廻、メッ」

「シャアねぇなァ。」

その会話の内容に、そして少女の声が呼ぶ名前に、愛子の心臓が一瞬にして飛び跳ねる。彼女達は今何といった? 少年を何と呼んだ? 少年の声は、〝あの少年達〟の声に似てはいないか? 愛子の脳内を一瞬で疑問が埋め尽くし、金縛りにあったように硬直しながら、カーテンを視線だけで貫こうとでも言うように凝視する。

 

 

 

 それは、傍らの園部優花や他の生徒達も同じだった。彼らの脳裏に、およそ四ヶ月前に奈落の底へと消えていった、とある少年達が浮かび上がる。クラスメイト達に〝異世界での死〟というものを強く認識させた少年達、消したい記憶の根幹となっている少年、良くも悪くも目立っていた少年達。

 

 

 

 尋常でない様子の愛子と生徒達に、フォスや騎士達が訝しげな視線と共に声をかけるが、誰一人として反応しない。騎士達が、一体何事だと顔を見合わせていると、愛子がポツリとその名を零した。

 

 

 

「……南雲君?十五夜?」

 

 

 

 無意識に出した自分の声で、有り得ない事態に硬直していた体が自由を取り戻す。愛子は、椅子を蹴倒しながら立ち上がり、転びそうになりながらカーテンを引きちぎる勢いで開け放った。

 

 

 

シャァァァ!!

 

 

 

 存外に大きく響いたカーテンの引かれる音に、ギョッとして思わず立ち止まる5人の少年少女。

 

 

 

 愛子は、相手を確認する余裕もなく叫んだ。大切な教え子達の名前を。

 

 

 

「南雲君!」

 

「あぁ? ……………………………………………先生?」

 

「誰だテメェ?」

愛子の目の前にいたのは、片目を大きく見開き驚愕をあらわにする、眼帯をした白髪の少年と、紅眼の白髪の少年(実際は自分より歳上。)

記憶の中にある南雲ハジメとは大きく異なった外見だ。外見だけでなく、雰囲気も大きく異なっている。愛子の知る南雲ハジメは、何時もどこかボーとした、穏やかな性格の大人しい少年だった。実は、苦笑いが一番似合う子と認識していたのは愛子の秘密である。だが、目の前の少年は鷹のように鋭い目と、どこか近寄りがたい鋭い雰囲気を纏っている。あまりに記憶と異なっており、普通に町ですれ違っただけなら、きっと目の前の少年を南雲ハジメだとは思わなかっただろう。

 

 

 

 だが、よくよく見れば顔立ちや声は記憶のものと一致する。そして何より……目の前の少年は自分を何と呼んだのか。そう、〝先生〟だ。愛子は確信した。外見も雰囲気も大きく変わってしまっているが、目の前の少年は、確かに自分の教え子である〝南雲ハジメ〟であると!

 

 

 

「南雲君…十五夜君…やっぱり南雲君なんですね? 生きて……本当に生きて…」

 

「いえ、人違いです。では」

 

「人違いだなァ。」

 

「へ?」

 

 

 死んだと思っていた教え子達と奇跡のような再会。感動して、涙腺が緩んだのか、涙目になる愛子。今まで何処にいたのか、一体何があったのか、本当に無事でよかった、と言いたいことは山ほどあるのに言葉にならない。それでも必死に言葉を紡ごうとする愛子に返ってきたのは、全くもって予想外の言葉だった。

 

思わず間抜けな声を上げて、涙も引っ込む愛子。スタスタと宿の出口に向かって歩き始めたハジメ達を呆然と見ると、ハッと正気を取り戻し、慌てて追いかけ袖口を掴んだ。

 

 

 

「ちょっと待って下さい! 南雲君ですよね? 先生のこと先生と呼びましたよね? なぜ、人違いだなんて」

 

「いや、聞き間違いだ。あれは……そう、方言で〝チッコイ〟て意味だ。うん」

 

「流石にそれは無理だなァ。」

 

「それはそれで、物凄く失礼ですよ! ていうかそんな方言あるわけないでしょう。どうして誤魔化すんですか? それにその格好……何があったんですか? こんなところで何をしているんですか? 何故、直ぐに皆のところへ戻らなかったんですか? 南雲君! 答えなさい! 先生は誤魔化されませんよ!」

 

 

 

 愛子の怒声がレストランに響き渡る。幾人かいた客達も噂の〝豊穣の女神〟が男に掴みかかって怒鳴っている姿に、「すわっ、女神に男が!?」と愉快な勘違いと共に好奇心に目を輝かせている。生徒や護衛騎士達もぞろぞろと奥からやって来た。

 

 

 

 生徒達はハジメと輪廻の姿を見て、信じられないと驚愕の表情を浮かべている。それは、生きていたこと自体が半分、ハジメの外見と雰囲気の変貌が半分といったところだろう。だが、どうすればいいのか分からず、ただ呆然と愛子と輪廻とハジメを見つめるに止どまっていた。

 

 

 

 一方で、ハジメはというと見た目冷静なように見えるが、内心ではプチパニックに襲われていた。まさか偶然知り合ったギルド支部長から持ち込まれた依頼で来た町で、偶然愛子やクラスメイトと再会するなどとは夢にも思っていなかったのだ。

 

 

 

 あまりに突発的な出来事だったため、つい〝先生〟などと呟いてしまい、挙句自分でも「ないわぁ~」と思うような誤魔化しをしてしまった。愛子の怒涛の質問攻めに内心でライフカードを探るが、〝逃げる〟〝人違いで押し通す〟〝怪しげな外国人になる〟〝愛ちゃんを攫っていく〟という碌でもないカードしか出てこない。特に最後のは意味不明だった。

 

 

 

 と、そこでハジメを救ったのは、自分が全幅の信頼を置いており、忠誠を誓っている、主だった、輪廻はハジメに近づくと、ハジメの腕を掴む愛子の手を叩き払った払った。その際、護衛騎士達が僅かに殺気立つ。

 

「でだァ、結局てめぇは誰だ。」

 

「だ、誰って、先生ですよ?まさか覚えて無いんですか?」

 

「アァ、覚えてねぇ。」

 

「即答!?」

 

「「それよりオーナー、ニルシッシル(異世界版カレー)5人前だ。」」

 

「えぇ、わかりました、ですが、今日は1杯限りとさせていただきます。」

 

「アァ、出来るだけ早くしてくれ。」

 

輪廻達は困った笑みで寄って来たフォスに注文を始めた。

 

 だが、当然、そこで待ったがかかる。輪廻とハジメがあまりにも自然にテーブルにつき何事もなかったように注文を始めたので再び呆然としていた愛子が息を吹き返し、ツカツカとハジメのテーブルに近寄ると「先生、怒ってます!」と実にわかりやすい表情でテーブルをペシッと叩いた。

 

 

 

「十五夜、南雲君、まだ話は終わっていませんよ。なに、物凄く自然に注文しているんですか。大体、こちらの女性達はどちら様ですか?」

 

 

 

 愛子の言い分は、その場の全員の気持ちを代弁していたので、ようやく輪廻とハジメが四ヶ月前に亡くなったと聞いた愛子の教え子であると察した騎士達や、愛子の背後に控える生徒達も、皆一様に「うんうん」と頷き、輪廻とハジメの回答を待った。

 

 

 

 ハジメは少し面倒そうに眉をしかめるが、どうせ答えない限り愛子が持ち前の行動力を発揮して喰い下がり、落ち着いて食事も出来ないだろうと想い、仕方なさそうに視線を愛子に戻した。

 

 

 

「依頼のせいで一日以上ノンストップでここまで来たんだ。腹減ってるんだから、飯くらいじっくり食わせてくれ。それと、こいつらは……」

 

 

 

 ハジメが視線をユエとシアに向けると、二人は、ハジメが話す前に、愛子達にとって衝撃的な自己紹介した。

 

 

 

「……ユエ」

 

「シアです」

 

「ミレディたんだよぉ〜」

 

「輪廻の女」「輪廻さんの女ですぅ!」「輪廻君の女だよ〜。」

 

「お、女?」

 

 愛子が若干どもりながら「えっ? えっ?」と輪廻と三人の美少女を交互に見る。上手く情報を処理出来ていないらしい。後ろの生徒達も困惑したように顔を見合わせている。いや、男子生徒は「まさか!」と言った表情でユエとシアとミレディを忙しなく見ている。徐々に、その美貌に見蕩れ顔を赤く染めながら。

 

「おい、ユエとミレディはともかく、シア。てめぇは違うだろうがァ?」

 

「そんなっ! 酷いですよ輪廻さん。私のファーストキスを奪っておいて!」

 

「いや、何時まで引っ張んだァ。あれはきゅ『十五夜君?』……何だチビ?」

 

 シアの〝ファーストキスを奪った〟という発言で、遂に情報処理が追いついたらしく、愛子の声が一段低くなる。愛子の頭の中では、輪廻が三人の美少女を両手に侍らして高笑いしている光景が再生されているようだった。表情がそれを物語っている。

 

 顔を真っ赤にして、輪廻の言葉を遮る愛子。その顔は、非行に走る生徒を何としても正道に戻してみせるという決意に満ちていた。そして、〝先生の怒り〟という特大の雷が、ウルの町一番の高級宿に落ちる。

 

 

 

「女の子のファーストキスを奪った挙句、さ、三股なんて! 直ぐに帰ってこなかったのは、遊び歩いていたからなんですか! もしそうなら……許しません! ええ、先生は絶対許しませんよ! お説教です! そこに直りなさい、十五夜君!」

 

しかし、輪廻には効果が無かった。

「おいハジメェ、このさっきからクソうるせぇガキは誰だァ?」

 

「な、が、ガキじゃ有りません!いくら恍けるためと言ったって、言って良いことと、悪いことぐらい分かるでしょう!?」

 

「うるせぇっつってんだろうが、"クソ餓鬼”」

 

「お前!愛子になんと言う口の利き方だ!」

 

「うるせぇ、人が飯食ってんだ、黙れやァ、行儀悪りぃぞォ?」

「この!」

「デビットさん、待ってください、まだ聞きたい事が有るんです!。」

 

輪廻とハジメは、目の前の今日限りというニルシッシル(異世界版カレー)。に夢中で端折りに端折った答えをおざなりに返していく。

 

 

 

Q、橋から落ちた後、どうしたのか?

 

A、超頑張った

 

Q、なぜ白髪なのか

 

A、超頑張った結果

 

Q、その目はどうしたのか

 

A、超超頑張った結果

 

Q、なぜ、直ぐに戻らなかったのか

 

A、戻る理由がない

 

A、そう言えばハジメ、煙草の使い心地はどうだ

 

A、良いですね。非常に。

 

 

 そこまで聞いて愛子が、「真面目に答えなさい!」と頬を膨らませて怒る。全く、迫力がないのが物悲しい。案の定、輪廻とハジメには柳に風といった様子だ。目を合わせることもなく、美味そうに、時折ユエやシアやミレディと感想を言い合いながらニルシッシルに舌鼓を打つ。表情は非常に満足そうである。

 

 

 

 その様子にキレたのは、愛子専属護衛隊隊長のデビッドだ。愛する女性が蔑ろにされていることに耐えられなかったのだろう。拳をテーブルに叩きつけながら大声を上げた。

 

 

 

「おい、お前! 愛子が質問しているのだぞ! 真面目に答えろ!」

 

 

 

 輪廻は、チラリとデビッドを見ると、はぁと溜息を吐いた。

 

 

 

「さっきも言ったがなァ、食事中だぞ? 行儀よくしろやァ。」

 

 

 

 全く相手にされていないことが丸分かりの物言いに、元々、神殿騎士にして重要人物の護衛隊長を任されているということから自然とプライドも高くなっているデビッドは、我慢ならないと顔を真っ赤にした。そして、何を言ってものらりくらりとして明確な答えを返さない輪廻から矛先を変え、その視線がシアに向く。

 

 

 

「ふん、行儀だと? その言葉、そっくりそのまま返してやる。薄汚い獣風情を人間と同じテーブルに着かせるなど、お前の方が礼儀がなってないな。せめてその醜い耳を切り落としたらどうだ? 少しは人間らしくなるだろう」

 

 

 

 侮蔑をたっぷりと含んだ眼で睨まれたシアはビクッと体を震わせた。ブルックの町では、宿屋での第一印象や、キャサリンと親しくしていたこと、輪廻の存在もあって、むしろ友好的な人達が多かったし、フューレンでも蔑む目は多かったが、奴隷と認識されていたからか直接的な言葉を浴びせかけられる事はなかった。

 

 

 

 つまり、輪廻達と旅に出てから初めて、亜人族に対する直接的な差別的言葉の暴力を受けたのである。有象無象の事など気にしないと割り切ったはずだったが、少し、外の世界に慣れてきていたところへの不意打ちだったので、思いの他ダメージがあった。シュンと顔を俯かせるシア。

 

 

 

 よく見れば、デビッドだけでなく、チェイス達他の騎士達も同じような目でシアを見ている。彼等がいくら愛子達と親しくなろうと、神殿騎士と近衛騎士である。聖教教会や国の中枢に近い人間であり、それは取りも直さず、亜人族に対する差別意識が強いということでもある。何せ、差別的価値観の発信源は、その聖教教会と国なのだから。デビッド達が愛子と関わるようになって、それなりに柔軟な思考が出来るようになったといっても、ほんの数ヶ月程度で変わる程、根の浅い価値観ではないのである。

 

 

 

 あんまりと言えばあんまりな物言いに、思わず愛子が注意をしようとするが、その前に俯くシアの手を握ったユエとミレディが絶対零度の視線をデビッドに向ける。最高級ビスクドールのような美貌の少女に体の芯まで凍りつきそうな冷ややかな眼を向けられて、デビッドは一瞬たじろぐも、見た目幼さを残す少女達に気圧されたことに逆上する。普段ならここまでキレやすい人間ではないのだが、思わず言ってしまった言葉に、愛しい愛子からも非難がましい視線を向けられて軽く我を失っているようだった。

 

 

 

「何だ、その眼は? 無礼だぞ! 神の使徒でもないのに、神殿騎士に逆らうのか!」

 

 

 

 思わず立ち上がるデビッドを、副隊長のチェイスは諌めようとするが、それよりも早く、ユエとミレディの言葉が騒然とする場にやけに明瞭に響き渡った。

 

 

 

「……小さい男」

 

「相変わらず、あれの信者はクソだねぇ。」

 

 それは嘲りの言葉。たかが種族の違い如きで喚き立て、少女達の視線一つに逆上する器の小ささを嗤う言葉だ。唯でさえ、怒りで冷静さを失っていたデビッドは、よりによって愛子の前で男としての器の小ささを嗤われ完全にキレた。

 

 

 

「……異教徒め。そこの獣風情と一緒に地獄へ送ってやる」

 

 

 

 無表情で静かに呟き、傍らの剣に手をかけるデビッド。突如現れた修羅場に、生徒達はオロオロし、愛子やチェイス達は止めようとする。だが、デビッドは周りの声も聞こえない様子で、遂に鞘から剣を僅かに引き抜いた。

 

その瞬間。

 

ガシッ

 

「これを言うのは2度目なんだかなァ、人間の身体の中に生体電気ってのが有るのを知ってるかァ?今回はちょっとじゃなくて、だいぶいじらせてもらったぜェ、せいぜい楽しめよォ!」

ビリィ!

「がァァァァァァァァァァぐふっ。」

ゴトッ

「デビットさん!?十五夜君!何をしたんですか!?」

 

「ァ?うるせぇんだよォ!クソ餓鬼が!チッ、これでも吸わないとやってけねぇぜ、」

そう言って輪廻は煙草を加え火をつけた。(湯○婆みたいな付け方。指に火を灯して、煙草に付けた。)

「ハジメも一緒にどうだァ?食い終わっただろォ?」

「えぇ。ご一緒させていただきます。」

そう言って輪廻達は煙草に火を付けたまま、外に出ようとする。これが何時ものご飯の後の一服だ。しかし、今回はそれを邪魔するものがいた。

「こらー!何で煙草なんて、吸ってるんですか!ダメですよ!」

愛子はそう言うと、輪廻とハジメが吸っている煙草を取り上げた。

「てめぇ、何時まで俺たちの邪魔をすんだァ!人が何しようが勝手だろうが!このクソ餓鬼が!次に邪魔したら殺すぞ!」

輪廻はそう言うともう一本取り出し火を付けた。

「だから辞めなさいって!」

愛子は輪廻の煙草を取ろうとするが、今度は輪廻は座りながらでは無く、立って吸っているので、どう足掻いても愛子は、身長194cmの輪廻には届かない。

 

そして、輪廻が吸い終わったら、

「そろそろ寝るぞォ。」

と、2階に上がって行った。

 

ーー

 

夜明け。

 

 

 

 月が輝きを薄れさせ、東の空がしらみ始めた頃、輪廻、ハジメ、ユエ、ミレディ、シアの5人はすっかり旅支度を終えて、〝水妖精の宿〟の直ぐ外にいた。手には、移動しながら食べられるようにと握り飯が入った包みを持っている。極めて早い時間でありながら、嫌な顔一つせず、朝食にとフォスが用意してくれたものだ。流石は高級宿、粋な計らいだと感心しながら輪廻達は遠慮なく感謝と共に受け取った。

 

 

 

 朝靄が立ち込める中、ハジメ達はウルの町の北門に向かう。そこから北の山脈地帯に続く街道が伸びているのだ。馬で丸一日くらいだというから、魔力駆動二輪で飛ばせば三、四時間くらいで着くだろう。

 

 

 

 ウィル・クデタ達が、北の山脈地帯に調査に入り消息を絶ってから既に五日。生存は絶望的だ。輪廻とハジメも、ウィル達が生きている可能性は低いと考えているが、万一ということもある。生きて帰せば、イルワのハジメ達に対する心象は限りなく良くなるだろうから、出来るだけ急いで捜索するつもりだ。幸いなことに天気は快晴。搜索にはもってこいの日だ。

 

 

 

 幾つかの建物から人が活動し始める音が響く中、表通りを北に進み、やがて北門が見えてきた。と、ハジメはその北門の傍に複数の人の気配を感じ目を細める。特に動くわけでもなくたむろしているようだ。

 

 

 

 朝靄をかきわけ見えたその姿は……愛子と生徒六人の姿だった。

 

 

 

「……何となく想像つくけど一応聞こう……何してんの?」

 

 

 

 ハジメ達が半眼になって愛子に視線を向ける。一瞬、気圧されたようにビクッとする愛子だったが、毅然とした態度を取るとハジメと正面から向き合った。ばらけて駄弁っていた生徒達、園部優花、菅原妙子、宮崎奈々、玉井淳史、相川昇、仁村明人も愛子の傍に寄ってくる。

 

 

 

「私達も行きます。行方不明者の捜索ですよね? 人数は多いほうがいいです」

 

「却下だ。行きたきゃ勝手に行けばいい。が、一緒は断る」

 

「な、なぜですか?」

 

「単純に足の速さが違う。先生達に合わせてチンタラ進んでなんていられないんだ」

 

 

 

 見れば、愛子達の背後には馬が人数分用意されていた。一瞬、こいつ等乗馬出来るのか? と疑問に思ったハジメだが、至極どうでもいいことなのでスルーする。乗れようが乗れまいが、どちらにしろ魔力駆動車の速度に敵うはずがないのだ。だが、ハジメの物言いにカチンと来たのか愛ちゃん大好き娘、親衛隊の実質的リーダー園部優花が食ってかかる。どうやら、昨日のハジメの威圧感や負い目を一時的に忘れるくらい愛ちゃん愛が強いらしい。

 

 

 

「ちょっと、そんな言い方ないでしょ? 南雲が私達のことよく思ってないからって、愛ちゃん先生にまで当たらないでよ」

 

 

 

 何とも的外れな物言いに、ハジメは「はぁ?」と呆れた表情になった。ハジメは説明するのも面倒くさいと、無言で〝宝物庫〟から魔力駆動二輪を取り出す。輪廻も能力を使い、超大型バイクを出す。

 

 

 

 突然、虚空から2台のバイクが出現し、ギョッとなる愛子達。

 

 

 

「理解したか? お前等の事は昨日も言ったが心底どうでもいい。だから、八つ当たりをする理由もない。そのままの意味で、移動速度が違うと言っているんだ」

「ハジメ、俺達は先に行く。そいつらは出来るだけ連れてくんな。そのクソ餓鬼うるせぇから。」

「分かりました、直ぐに俺も追いかけます。」

「アァ。」そう言うと輪廻は前にユエを乗せ、後ろにミレディ、その後ろにシアを乗せて、走り去って言った。

 

「と、言うわけだ、じゃあな、」

 

「待ってください南雲君、先生は先生として、どうしても南雲君からもっと詳しい話を聞かなければなりません。だから、きちんと話す時間を貰えるまでは離れませんし、逃げれば追いかけます。南雲君にとって、それは面倒なことではないですか? 移動時間とか捜索の合間の時間で構いませんから、時間を貰えませんか? そうすれば、南雲君の言う通り、この町でお別れできますよ……一先ずは」

しかし、輪廻によって鍛えられた精神力は凄い。

「そんなのは知らねぇよ、そんな事は今俺にとってどうでもいい、今俺が1番に成すべきことは、主の後を追い掛けて、依頼を達成する事。じゃあな、」ブルルルルン

そう言って走り去って行った。

 

 




そして、着いていけなかった、愛子達。

ティオの所まで行けなかったww
冒頭でも書いたけど最近感想が減って来た。みんな忙しいのかしら?
と言うわけで、感想と高評価お願いします。
次回、多分清水君所まで行くと思う。


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第12話 黒竜と偽善

こんばんは湯たんぽです。
今回は1番長いよ。
優花ちゃんには、チョロインになってもらった!ごめんなさいこれぐらいしか思い付かなかったんです。

輪廻君のちーとにさらに磨きがかかった。

あと今アンケートやってまぁす。魔人族襲来は霊夢達視点でやりますけど、その他はまだ未定ですので。見たい方が多ければやります。

注意書き

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
輪廻君が何言ってるか解らなくても気にしないで。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十五人ぐらいになりそう!(現時点、後に更に増える。)
輪廻君むっちゃちーと。
輪廻君の愛子への当たりが結構強いよ。

それでもいいよと言う方のみご覧下さい。



 

 

 

 

「はっ、皆さん南雲くん達を追いかけますよ!」

 

北の山脈地帯

 

 

 標高千メートルから八千メートル級の山々が連なるそこは、どういうわけか生えている木々や植物、環境がバラバラという不思議な場所だ。日本の秋の山のような色彩が見られたかと思ったら、次のエリアでは真夏の木のように青々とした葉を広げていたり、逆に枯れ木ばかりという場所もある。

 

 

 

 また、普段見えている山脈を越えても、その向こう側には更に山脈が広がっており、北へ北へと幾重にも重なっている。現在確認されているのは四つ目の山脈までで、その向こうは完全に未知の領域である。何処まで続いているのかと、とある冒険者が五つ目の山脈越えを狙ったことがあるそうだが、山を一つ越えるたびに生息する魔物が強力になっていくので、結局、成功はしなかった。

 

 

 ちなみに、第一の山脈で最も標高が高いのは、かの【神山】である。今回、ハジメ達が訪れた場所は、神山から東に千六百キロメートルほど離れた場所だ。紅や黄といった色鮮やかな葉をつけた木々が目を楽しませ、知識あるものが目を凝らせば、そこかしこに香辛料の素材や山菜を発見することができる。ウルの町が潤うはずで、実に実りの多い山である。

 

ハジメは輪廻たちと合流した。

 

ハジメ達は、冒険者達も通ったであろう山道を進む。魔物の目撃情報があったのは、山道の中腹より少し上、六合目から七号目の辺りだ。ならば、ウィル達冒険者パーティーも、その辺りを調査したはずである。そう考えて、ハジメは無人偵察機をその辺りに先行させながら、ハイペースで山道を進んだ。

 

 

 

 おおよそ一時間と少しくらいで六合目に到着したハジメ達は、一度そこで立ち止まった。理由は、そろそろ辺りに痕跡がないか調べる必要があったのだ。

 

輪廻は、ハジメとユエとミレディとシアを連れて山道から逸れて山の中を進む。シャクシャクと落ち葉が立てる音を何げに楽しみつつ木々の間を歩いていると、やがて川のせせらぎが聞こえてきた。耳に心地良い音だ。シアの耳が嬉しそうにピッコピッコと跳ねている。

 

 

 

 そうしてハジメ達がたどり着いた川は、小川と呼ぶには少し大きい規模のものだった。索敵能力が一番高い輪廻とシアが周囲を探り、ハジメも念のため無人偵察機で周囲を探るが魔物の気配はしない。取り敢えず息を抜いて、輪廻達は川岸の岩に腰掛けつつ、今後の捜索方針を話し合った。途中、ユエが、「少しだけ」と靴を脱いで川に足を浸けて楽しむというわがままをしたが、大目に見る。どこまでもユエ達には甘い男である。ついでにシアも便乗した。

 

 

 

 川沿いに上流へと移動した可能性も考えて、ハジメは無人偵察機を上流沿いに飛ばしつつ、ユエがパシャパシャと素足で川の水を弄ぶ姿を眺めている、自分の主を見ていた。シアも素足となっているが、水につけているだけだ。川の流れに攫われる感触に擽ったそうにしている。ミレディは「やっぱり久しぶりの水遊びはいいねぇ。」等と言いながら、手で水を掬ったり、足でパシャパシャとしている。

 

そんな中で、

 

「ん?これは…」

 

「何か見つけたかァ?」

 

「ええ、川の上流に……これは盾か? それに、鞄も……まだ新しいみたいだ。当たりかもしれません、行きましょう。」

 

「アァ、ユエ、シア、ミレディ、行くぞ。」

 

「ん……」

 

「はいです!」

 

「分かったよぉ〜」

 

 ハジメ達が、阿吽の呼吸で立ち上がり出発の準備を始めた。ハジメ達が到着した場所には、ハジメが無人偵察機で確認した通り、小ぶりな金属製のラウンドシールドと鞄が散乱していた。ただし、ラウンドシールドは、ひしゃげて曲がっており、鞄の紐は半ばで引きちぎられた状態で、だ。

 

 

 

 ハジメ達は、注意深く周囲を見渡す。すると、近くの木の皮が禿げているのを発見した。高さは大体二メートル位の位置だ。何かが擦れた拍子に皮が剥がれた、そんな風に見える。高さからして人間の仕業ではないだろう。輪廻は、シアに全力の探知を指示しながら、自らも感知系の能力を全開にして、傷のある木の向こう側へと踏み込んでいった。

 

 

 

 先へ進むと、次々と争いの形跡が発見できた。半ばで立ち折れた木や枝。踏みしめられた草木、更には、折れた剣や血が飛び散った痕もあった。しばらく、争いの形跡を追っていくと、シアが前方に何か光るものを発見した。

 

 

 

「輪廻さん、これ、ペンダントでしょうか?」

 

「遺留品かもな。確かめよう」

 

 

 

 シアからペンダントを受け取り汚れを落とすと、どうやら唯のペンダントではなくロケットのようだと気がつく。留め金を外して中を見ると、女性の写真が入っていた。おそらく、誰かの恋人か妻と言ったところか。大した手がかりではないが、古びた様子はないので最近のもの……冒険者一行の誰かのものかもしれない。なので、一応回収しておく。

 

 

 

 その後も、遺品と呼ぶべきものが散見され、身元特定に繋がりそうなものだけは回収していく。どれくらい探索したのか、既に日はだいぶ傾き、そろそろ野営の準備に入らねばならない時間に差し掛かっていた。

 

 

 

 未だ、野生の動物以外で生命反応はない。ウィル達を襲った魔物との遭遇も警戒していたのだが、それ以外の魔物すら感知されなかった。位置的には八合目と九合目の間と言ったところ。山は越えていないとは言え、普通なら、弱い魔物の一匹や二匹出てもおかしくないはずで、ハジメ達は逆に不気味さを感じていた。

 

 

 

 しばらくすると、再び、無人偵察機が異常のあった場所を探し当てた。東に三百メートル程いったところに大規模な破壊の後があったのだ。輪廻は全員を促してその場所に急行した。

 

 

 

 そこは大きな川だった。上流に小さい滝が見え、水量が多く流れもそれなりに激しい。本来は真っ直ぐ麓に向かって流れていたのであろうが、現在、その川は途中で大きく抉れており、小さな支流が出来ていた。まるで、横合いからレーザーか何かに抉り飛ばされたようだ。

 

 

 

 そのような印象を持ったのは、抉れた部分が直線的であったとのと、周囲の木々や地面が焦げていたからである。更に、何か大きな衝撃を受けたように、何本もの木が半ばからへし折られて、何十メートルも遠くに横倒しになっていた。川辺のぬかるんだ場所には、三十センチ以上ある大きな足跡も残されている。

 

 

 

「ここで本格的な戦闘があったようだな……この足跡、大型で二足歩行する魔物……確か、山二つ向こうにはブルタールって魔物がいたな。だが、この抉れた地面は……」

 

 

 

 ハジメの言うブルタールとは、RPGで言うところのオークやオーガの事だ。大した知能は持っていないが、群れで行動することと、〝金剛〟の劣化版〝剛壁〟の固有魔法を持っているため、中々の強敵と認識されている。普段は二つ目の山脈の向こう側におり、それより町側には来ないはずの魔物だ。それに、川に支流を作るような攻撃手段は持っていないはずである。

 

 

 

 輪廻は、しゃがみ込みブルタールのものと思しき足跡を見て少し考えた後、上流と下流のどちらに向かうか逡巡した。ここまで上流に向かってウィル達は追い立てられるように逃げてきたようだが、これだけの戦闘をした後に更に上流へと逃げたとは考えにくい。体力的にも、精神的にも町から遠ざかるという思考ができるか疑問である。

 

 

 

 ハジメは、無人偵察機を上流に飛ばしながら自分達は下流へ向かうことにした。ブルタールの足跡が川縁にあるということは、川の中にウィル達が逃げ込んだ可能性が高いということだ。ならば、きっと体力的に厳しい状況にあった彼等は流された可能性が高いと考えたのだ。

 

 

 

 ハジメの推測に他の者も賛同し、今度は下流へ向かって川辺を下っていった。

 

 

 

 すると、今度は、先ほどのものとは比べ物にならないくらい立派な滝に出くわした。ハジメ達は、軽快に滝横の崖をひょいひょいと降りていき滝壺付近に着地する。滝の傍特有の清涼な風が一日中行っていた探索に疲れた心身を優しく癒してくれる。と、そこで輪廻とハジメの〝気配感知〟に反応が出た。

 

「ハジメ、間違いじゃ無けりゃ、生きてるぜェ」

 

「! これは……」

 

「……輪廻?ハジメ?」

 

 

 

 ユエが直ぐ様反応し問いかける。輪廻とハジメはしばらく、目を閉じて集中した。そして、おもむろに目を開けると、驚いたような声を上げた。

 

 

 

「おいおい、マジかよ。気配感知に掛かった。感じから言って人間だと思う。場所は……あの滝壺の奥だ」

 

「生きてる人がいるってことですか!」

 

「アァ、」

 

 シアの驚きを含んだ確認の言葉に輪廻とハジメは頷いた。人数を問うユエに「一人だ」と答える。生存の可能性はゼロではないとは言え、実際には期待などしていなかった。ウィル達が消息を絶ってから五日は経っているのである。もし生きているのが彼等のうちの一人なら奇跡だ。

 

 

 

「ユエ。」

 

「……ん」

 

 

 

 輪廻は滝壺を見ながら、ユエに声をかける。ユエは、それだけで輪廻の意図を察し、魔法のトリガーと共に右手を振り払った。

 

 

 

「〝波城〟 〝風壁〟」

 

 

 

 すると、滝と滝壺の水が、紅海におけるモーセの伝説のように真っ二つに割れ始め、更に、飛び散る水滴は風の壁によって完璧に払われた。高圧縮した水の壁を作る水系魔法の〝波城〟と風系魔法の〝風壁〟である。

 

「行くかァ。」

 

滝壺から奥へ続く洞窟らしき場所へ踏み込んだ。洞窟は入って直ぐに上方へ曲がっており、そこを抜けるとそれなりの広さがある空洞が出来ていた。天井からは水と光が降り注いでおり、落ちた水は下方の水溜りに流れ込んでいる。溢れないことから、きっと奥へと続いているのだろう。

 

 

 

 その空間の一番奥に横倒しになっている男を発見した。傍に寄って確認すると、二十歳くらいの青年とわかった。端正で育ちが良さそうな顔立ちだが、今は青ざめて死人のような顔色をしている。だが、大きな怪我はないし、鞄の中には未だ少量の食料も残っているので、単純に眠っているだけのようだ。顔色が悪いのは、彼がここに一人でいることと関係があるのだろう。

 

 

 

唸り声を上げる青年だが、ハジメは手っ取り早く青年の正体を確認したいのでギリギリと力を込めた義手デコピンを眠る青年の額にぶち当てた。

 

 

 

バチコンッ!!

 

 

 

「ぐわっ!!」

 

 

 

 悲鳴を上げて目を覚まし、額を両手で抑えながらのたうつ青年。涙目になっている青年に近づくと端的に名前を確認する。

 

 

 

「お前が、ウィル・クデタか? クデタ伯爵家三男の」

 

「いっっ、えっ、君達は一体、どうしてここに……」

 

 

 

 状況を把握出来ていないようで目を白黒させる青年に、ハジメは再びデコピンの形を作って額にゆっくり照準を定めていく。

 

 

 

「質問に答えろ。答え以外の言葉を話す度に威力を二割増で上げていくからな」

 

「えっ、えっ!?」

 

「お前は、ウィル・クデタか?」

 

「えっと、うわっ、はい! そうです! 私がウィル・クデタです! はい!」

 

 

 

 一瞬、青年が答えに詰まると、ハジメの眼がギラリと剣呑な光を帯び、ぬっと左手が掲げられ、それに慌てた青年が自らの名を名乗った。どうやら、本当に本人のようだ。奇跡的に生きていたらしい。

 

 

 

「そうか。俺はハジメだ。南雲ハジメ。フューレンのギルド支部長イルワ・チャングからの依頼で捜索に来た。(俺の都合上)生きていてよかった」

 

「イルワさんが!? そうですか。あの人が……また借りができてしまったようだ……あの、あなたも有難うございます。イルワさんから依頼を受けるなんてよほどの凄腕なのですね」

 

 

 

 尊敬を含んだ眼差しと共に礼を言うウィル。先程、有り得ない威力のデコピンを受けたことは気にしていないらしい。もしかすると、案外大物なのかもしれない。いつかのブタとは大違いである。それから、各人の自己紹介と、何があったのかをウィルから聞いた。

 

 

 

 要約するとこうだ。

 

 

 

 ウィル達は五日前、ハジメ達と同じ山道に入り五合目の少し上辺りで、突然、十体のブルタールと遭遇したらしい。流石に、その数のブルタールと遭遇戦は勘弁だと、ウィル達は撤退に移ったらしいのだが、襲い来るブルタールを捌いているうちに数がどんどん増えていき、気がつけば六合目の例の川にいた。そこで、ブルタールの群れに囲まれ、包囲網を脱出するために、盾役と軽戦士の二人が犠牲になったのだという。それから、追い立てられながら大きな川に出たところで、前方に絶望が現れた。

 

 

 

 漆黒の竜だったらしい。その黒竜は、ウィル達が川沿いに出てくるや否や、特大のブレスを吐き、その攻撃でウィルは吹き飛ばされ川に転落。流されながら見た限りでは、そのブレスで一人が跡形もなく消え去り、残り二人も後門のブルタール、前門の竜に挟撃されていたという。

 

 

 

 ウィルは、流されるまま滝壺に落ち、偶然見つけた洞窟に進み空洞に身を隠していたらしい。

 

 

 

 何となく、誰かさんの境遇に少し似ていると思わなくもない。

 

 

 

 ウィルは、話している内に、感情が高ぶったようですすり泣きを始めた。無理を言って同行したのに、冒険者のノウハウを嫌な顔一つせず教えてくれた面倒見のいい先輩冒険者達、そんな彼等の安否を確認することもせず、恐怖に震えてただ助けが来るのを待つことしか出来なかった情けない自分、救助が来たことで仲間が死んだのに安堵している最低な自分、様々な思いが駆け巡り涙となって溢れ出す。

 

 

 

「わ、わだじはさいでいだ。うぅ、みんなじんでしまったのに、何のやぐにもただない、ひっく、わたじだけ生き残っで……それを、ぐす……よろごんでる……わたじはっ!」

 

 

 

 洞窟の中にウィルの慟哭が木霊する。誰も何も言えなかった。顔をぐしゃぐしゃにして、自分を責めるウィルに、どう声をかければいいのか見当がつかなかった。輪廻は既に違う方向見ながらその声を聞いており、ユエは何時もの無表情、シアは困ったような表情だ。ミレディも「どうしたもんかねぇ」と言っている。

 

 が、ウィルが言葉に詰まった瞬間、意外な人物が動いた。ハジメだ。ハジメは、ツカツカとウィルに歩み寄ると、その胸倉を掴み上げ人外の膂力で宙吊りにした。そして、息がつまり苦しそうなウィルに、意外なほど透き通った声で語りかけた。

 

 

 

「生きたいと願うことの何が悪い? 生き残ったことを喜んで何が悪い? その願いも感情も当然にして自然にして必然だ。お前は人間として、極めて正しい」

 

「だ、だが……私は……」

 

「それでも、死んだ奴らのことが気になるなら……生き続けろ。これから先も足掻いて足掻いて死ぬ気で生き続けろ。そうすりゃ、いつかは……今日、生き残った意味があったって、そう思える日が来るだろう」

 

「……生き続ける」

 

 

 

 涙を流しながらも、ハジメの言葉を呆然と繰り返すウィル。ハジメは、ウィルを乱暴に放り出し、自分に向けて「何やってんだ」とツッコミを入れる。先程のウィルへの言葉は、半分以上自分への言葉だった。少し似た境遇に置かれたウィルが、自らの生を卑下したことが、まるで「お前が生き残ったのは間違いだ」と言われているような気がして、つい熱くなってしまったのである。

 

 

 

 もちろん、完全なる被害妄想だ。半分以上八つ当たり、子供の癇癪と大差ない。色々達観したように見えて、ハジメもまだ十七歳の少年、学ぶべきことは多いということだ。その自覚があるハジメは軽く自己嫌悪に陥る。そんなハジメのもとにツカツカと傍に寄って来た、輪廻はハジメの肩に手を置いた。

 

 

 

「……大丈夫だァ、おめぇは間違ってねぇ、それにお前はまだ17年しか生きてねぇ、そう言う葛藤もあるだろうよォ。」

 

「……主…」

 

「……全力で生きて。生き続けろ。生き続けて俺に仕えるんだろォ?」

 

「……ははっ、当然です。何が何でも生き残って主に仕えますよ。」

 

「…アァ、それでいい、それが何時ものお前だァ。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

しばらくカオスな状況が続いたが(ハジメの暴走のせい)、何とか皆気を持ち直し、一行は早速下山することにした。日の入りまで、まだ一時間以上は残っているので、急げば、日が暮れるまでに麓に着けるだろう。

 

 

 

 ブルタールの群れや漆黒の竜の存在は気なるが、それはハジメ達の任務外だ。ウィルも、足手まといになると理解しているようで、撤退を了承した。黒竜やらブルタールの群れという危険性の高さから、結局下山することになった。

 

 

 

 だが、事はそう簡単には進まない。再度、ユエの魔法で滝壺から出てきた一行を熱烈に歓迎するものがいたからだ。

 

 

 

「グゥルルルル」

 

 低い唸り声を上げ、漆黒の鱗で全身を覆い、翼をはためかせながら空中より金の眼で睥睨する……それはまさしく〝竜〟だった。

 

 

 

 

「はあ、はぁ、はぁ、ようやく追いつきました。」

 

そんな時、愛子たちが勝手に着いてきたのだ。

 

「チッ、このクソ餓鬼が!だから来んなつっただろうがボケェェ!」

 

その竜の体長は七メートル程。漆黒の鱗に全身を覆われ、長い前足には五本の鋭い爪がある。背中からは大きな翼が生えており、薄らと輝いて見えることから魔力で纏われているようだ。

 

 

 

空中で翼をはためかせる度に、翼の大きさからは考えられない程の風が渦巻く。だが、何より印象的なのは、夜闇に浮かぶ月の如き黄金の瞳だろう。爬虫類らしく縦に割れた瞳孔は、剣呑に細められていながら、なお美しさを感じさせる光を放っている。

 

 

 

 その黄金の瞳が、空中よりハジメ達を睥睨していた。低い唸り声が、黒竜の喉から漏れ出している。

 

 

 

その圧倒的な迫力は、かつてライセン大峡谷の谷底で見たハイベリアの比ではない。ハイベリアも、一般的な認識では、厄介なことこの上ない高レベルの魔物であるが、目の前の黒竜に比べれば、まるで小鳥だ。その偉容は、まさに空の王者というに相応しい。

 

 

 

 蛇に睨まれた蛙のごとく、愛子達は硬直してしまっている。特に、ウィルは真っ青な顔でガタガタと震えて今にも崩れ落ちそうだ。脳裏に、襲われた時の事がフラッシュバックしているのだろう。

 

 

 

 輪廻とハジメも、川に一撃で支流を作ったという黒竜の残した爪痕を見ているので、それなりに強力な魔物だろうとは思っていたが、実際に目の前の黒竜から感じる魔力や威圧感は、想像の三段は上を行くと認識を改めた。奈落の魔物で言えば、ヒュドラには遠く及ばないが、九十層クラスの魔物と同等の力を持っていると感じるほどだ。

 

 

 

 その黒竜は、ウィルの姿を確認するとギロリとその鋭い視線を向けた。そして、硬直する人間達を前に、おもむろに頭部を持ち上げ仰け反ると、鋭い牙の並ぶ顎門をガパッと開けてそこに魔力を集束しだした。

 

 

 

キュゥワァアアア!!

 

 

 

 不思議な音色が夕焼けに染まり始めた山間に響き渡る。ハジメの脳裏に、川の一部と冒険者を消し飛ばしたというブレスが過ぎった。

 

 

 

「ッ! 退避しろ!」

 

 

 

 輪廻は警告を発し、自らもその場から一足飛びで退避した。ハジメは勿論、ユエ達も付いて来ている。だが、そんなハジメの警告に反応できない者が多数、いや、この場合ほぼ全員と言っていいだろう。

愛子や生徒達、そしてウィルもその場に硬直したまま動けていない。愛子達は、あまりに突然の事態に体がついてこず、ウィルは恐怖に縛られて視線すら逸らせていなかった。

 

 

「チッ!しゃあねぇ!ハジメ達!お前たちはガキ共のお守りをしてろォ!」

 

「チッィ、了解です。!!」

 

「ん、分かった!」

 

「了解ですぅ!」

 

「分かったよ〜」

 

〝念話〟で指示をされたハジメは〝縮地〟で一気に元いた場所に戻り、愛子達と黒竜の間に割り込む。本来なら放って置くところだが、見捨てられるほど愛子に対しては悪い感情を持っていないし、何より、奇跡的に生きていたウィルを見捨てては何のためにここまで来たのか分からない。生きていたら連れ戻すのが引き受けた〝仕事〟なのだ。投げ出すわけには行かない。

 

 

 

 ハジメは〝宝物庫〟から二メートル程の柩型の大盾を虚空に取り出し、左腕を突き出して接続、魔力を流して大盾の下部からガシュン! と杭を出現させる。そして、それを勢いよく地面に突き刺した。

 

 

 

 直後、竜からレーザーの如き黒色のブレスが一直線に放たれた。音すら置き去りにして一瞬でハジメの大盾に到達したブレスは、轟音と共に衝撃と熱波を撒き散らし大盾の周囲の地面を融解させていく。

 

 

 

「ぐぅ! おぉおおお!!」

 

 

 

 ハジメは、気迫を込めた雄叫びを上げてブレスの圧力に抗う。ハジメの体と一緒に、大盾はいつの間にか紅く光り輝いていた。ハジメの〝金剛〟である。だが、ブレスは余程の威力を持っているらしく、しばらく拮抗した後、その守りを突破して大盾に直撃した。

 

 

 

 大盾は、それでもブレスに耐えた。ハジメの〝金剛〟すら突破する威力と熱に徐々にその表面を融解させていくが、壊れそうになるたびに、ハジメが〝錬成〟で即座に修復し、その突破を許さない。

 

 

 

 固定のために地面に差し込んだ杭が圧力に負けて地面を抉りながら徐々に後退していく。ハジメは靴からスパイクを錬成し、再度、金剛を張り直してひたすら耐えた。大盾と連結した左腕を突き出し、更に右腕も添える。

 

 

 

 ハジメが取り出した大盾は、タウル鉱石を主材にシュタル鉱石を挟んでアザンチウムで外側をコーティングしたものだ。錬成師であるハジメならば、仮にアザンチウムの耐久力を超える攻撃をされても、数秒でも耐えられるなら直ちに修復することができる。仮に突破されても、二層目のシュタル鉱石は魔力を注いだ分だけ強度を増す性質を持つので、ハジメの魔力ならまず突破はされない。

 

 

 

 故に、アザンチウムの突破すら出来ていないブレスは大盾そのものを破壊する事は出来ないだろう。だが、その威力を持って大盾の使い手を吹き飛ばすことなら出来ないわけではないようだ。事実、人外の膂力を持つハジメですら徐々に押されている。地面には、差し込まれた大盾の杭とハジメの踏ん張る足で深々と抉られた痕がついていく。

 

 

 

 このままでは、ハジメ自体は大盾と〝金剛〟がある上、耐久力も人外の領域なので大したダメージを受けないだろうが、ハジメという盾をなくした愛子達は、為すすべなくブレスの餌食となりこの世から塵一つ残さず消滅することになるだろう。

 

 

 

 ハジメが、若干の焦りを覚えたとき、不意に背中に柔らかな感触が伝わった。チラリと肩越しに振り返れば、何と、愛子がハジメの背中に飛びついて必死に支えていた。どうやら、ハジメがブレスを防いでいる間に、正気を取り戻し、徐々に押されるハジメの支えになろうと飛び込んできたらしい。それを見て、生徒達やウィルもハジメを支えるため慌てて飛び出してきた。

 

 

 

 ブレスは未だに続いている。周囲にあった川の水は熱波で蒸発し、川原の土や石は衝撃で吹き飛びひどい有様だ。ブレスの直撃を受けて、どれほどの時間が経ったのか。ハジメは、永遠に等しいほど長い時間だと感じているが、実際には十秒経ったか否かといったところだろう。歯を食いしばりながら、そんな事を考えていると、遂に、待望の声が聞こえた。

 

 

 

「OKだ、ハジメ良くやった。」

 

「グゥルァアアア!」

 

「うるせぇぞ、クソトカゲ!永遠の眠りにつかせてやらァ!」

「卍解、『残火の太刀』」

 

そこには、全体が焦げたような刀を持った輪廻がいた。

 

「直ぐに終わらせるぜぇ、まァ弱めで行くがなァ、残火の太刀 東 旭日刃」

業ッ

 

ギャァァァァァァ、なんなのじゃこれは!?

 

「あん?てめぇ竜人族かァ?」

 

〝む? いかにも。妾は誇り高き竜人族の一人じゃ。偉いんじゃぞ? 凄いんじゃぞ?”だからそのお腹に刺さってるそれを抜いてたも

 

「……なぜ、こんなところに?」

 

 ユエが黒竜に質問をする。ユエにとっても竜人族は伝説の生き物だ。自分と同じ絶滅したはずの種族の生き残りとなれば、興味を惹かれるのだろう。瞳に好奇の光が宿っている。

 

そうすると、黒竜が話し始めた。

 

〝妾は、操られておったのじゃ。お主等を襲ったのも本意ではない。仮初の主、あの男にそこの青年と仲間達を見つけて殺せと命じられたのじゃ〟

 

 

 

 黒竜の視線がウィルに向けられる。ウィルは、一瞬ビクッと体を震わせるが気丈に黒竜を睨み返した。輪廻の戦いを見て、何か吹っ切れたのかもしれない。

 

 

 

「どういうことだ?」

 

 

 

〝うむ、順番に話す。妾は……〟

 

 

 

 黒竜の話を要約するとこうだ。

 

 

 

 この黒竜は、ある目的のために竜人族の隠れ里を飛び出して来たらしい。その目的とは、異世界からの来訪者について調べるというものだ。詳細は省かれたが、竜人族の中には魔力感知に優れた者がおり、数ヶ月前に大魔力の放出と何かがこの世界にやって来たことを感知したらしい。

 

 

 

 竜人族は表舞台には関わらないという種族の掟があるらしいのだが、流石に、この未知の来訪者の件を何も知らないまま放置するのは、自分達にとっても不味いのではないかと、議論の末、遂に調査の決定がなされたそうだ。

 

 

 

 目の前の黒竜は、その調査の目的で集落から出てきたらしい。本来なら、山脈を越えた後は人型で市井に紛れ込み、竜人族であることを秘匿して情報収集に励むつもりだったのだが、その前に一度しっかり休息をと思い、この一つ目の山脈と二つ目の山脈の中間辺りで休んでいたらしい。当然、周囲には魔物もいるので竜人族の代名詞たる固有魔法〝竜化〟により黒竜状態になって。

 

 

 

 と、睡眠状態に入った黒竜の前に一人の黒いローブを頭からすっぽりと被った男が現れた。その男は、眠る黒竜に洗脳や暗示などの闇系魔法を多用して徐々にその思考と精神を蝕んでいった。

 

 

 

 当然、そんな事をされれば起きて反撃するのが普通だ。だが、ここで竜人族の悪癖が出る。そう、例の諺の元にもなったように、竜化して睡眠状態に入った竜人族は、まず起きないのだ。それこそ尻を蹴り飛ばされでもしない限り。それでも、竜人族は精神力においても強靭なタフネスを誇るので、そう簡単に操られたりはしない。

 

 

 

 では、なぜ、ああも完璧に操られたのか。それは……

 

 

 

〝恐ろしい男じゃった。闇系統の魔法に関しては天才と言っていいレベルじゃろうな。そんな男に丸一日かけて間断なく魔法を行使されたのじゃ。いくら妾と言えど、流石に耐えられんかった……〟

 

 

 

 一生の不覚! と言った感じで悲痛そうな声を上げる黒竜。しかし、輪廻は冷めた目でツッコミを入れる。

 

「要するに、調査に来たのに丸一日、洗脳されているのにも気付かず寝てただけじゃねぇかァ。」

 

全員の目が、何となくバカを見る目になる。黒竜は視線を明後日の方向に向け、何事もなかったように話を続けた。ちなみに、なぜ丸一日かけたと知っているのかというと、洗脳が完了した後も意識自体はあるし記憶も残るところ、本人が「丸一日もかかるなんて……」と愚痴を零していたのを聞いていたからだ。

 

 

 

 その後、ローブの男に従い、二つ目の山脈以降で魔物の洗脳を手伝わされていたのだという。そして、ある日、一つ目の山脈に移動させていたブルタールの群れが、山に調査依頼で訪れていたウィル達と遭遇し、目撃者は消せという命令を受けていたため、これを追いかけた。うち一匹がローブの男に報告に向かい、万一、自分が魔物を洗脳して数を集めていると知られるのは不味いと万全を期して黒竜を差し向けたらしい。

 

 

 

 で、気がつけば輪廻にフルボッコにされており、このままでは死ぬと思いパニックを起した。それがあの魔力爆発だ。

 

 

 

 そして、洗脳された脳に強固に染み付いた命令に従って最後の特攻を仕掛けたところ、シアの一撃を脳天にくらって意識が飛び、次に、腹に物凄い衝撃と、熱がが走って一気に意識が覚醒したのである。正気に戻れた原因が、脳天への一撃か腹への一撃かはわからない。

 

 

 

「……ふざけるな」

 

 

 

 事情説明を終えた黒竜に、そんな激情を必死に押し殺したような震える声が発せられた。皆が、その人物に目を向ける。拳を握り締め、怒りを宿した瞳で黒竜を睨んでいるのはウィルだった。

 

 

 

「……操られていたから…ゲイルさんを、ナバルさんを、レントさんを、ワスリーさんをクルトさんを! 殺したのは仕方ないとでも言うつもりかっ!」

 

 

 

 どうやら、状況的に余裕が出来たせいか冒険者達を殺されたことへの怒りが湧き上がったらしい。激昂して黒竜へ怒声を上げる。

 

 

 

〝……〟

 

 

 

 対する黒竜は、反論の一切をしなかった。ただ、静かな瞳でウィルの言葉の全てを受け止めるよう真っ直ぐ見つめている。その態度がまた気に食わないのか

 

 

 

「大体、今の話だって、本当かどうかなんてわからないだろう! 大方、死にたくなくて適当にでっち上げたに決まってる!」

 

 

 

〝……今話したのは真実じゃ。竜人族の誇りにかけて嘘偽りではない〟

 

 

 

 なお、言い募ろうとするウィル。それに口を挟んだのは輪廻だ。

 

 

「うるせぇなァ、人間が四、五人死んだだけでピーピー喚いてんじゃねぇよ、ガキが。」

 

「ゲイルさんが、ナバルさんが、レントさんが、ワスリーさんが、クルトさんが!死んだんですよ!」

 

「知らねぇよ、大体なァ、冒険者に死っていうのは着きもんだァ、それはそいつらも分かってるはずだァ、そんな奴らの名前を出すのは、ただの死者への冒涜だァ、お前、冒険者向いてねぇな。」

 

「……それでも、殺した事に変わりないじゃないですか……どうしようもなかったってわかってはいますけど……それでもっ! ゲイルさんは、この仕事が終わったらプロポーズするんだって……彼らの無念はどうすれば……」

 

 頭では黒竜の言葉が嘘でないと分かっている。しかし、だからと言って責めずにはいられない。心が納得しない。ハジメは内心、「また、見事なフラグを立てたもんだな」と変に感心しながら、ふとここに来るまでに拾ったロケットペンダントを思い出す。

 

「ウィル、ゲイルってやつの持ち物か?」

 

 そう言って、取り出したロケットペンダントをウィルに放り投げた。ウィルはそれを受け取ると、マジマジと見つめ嬉しそうに相好を崩す。

 

「これ、僕のロケットじゃないですか! 失くしたと思ってたのに、拾ってくれてたんですね。ありがとうございます!」

 

「あれ? お前の?」

 

「はい、ママの写真が入っているので間違いありません!」

 

「マ、ママ?」

 

 予想が見事に外れた挙句、斜め上を行く答えが返ってきて思わず頬が引き攣るハジメ。

 

 写真の女性は二十代前半と言ったところなので、疑問に思いその旨を聞くと、「せっかくのママの写真なのですから若い頃の一番写りのいいものがいいじゃないですか」と、まるで自然の摂理を説くが如く素で答えられた。その場の全員が「ああ、マザコンか」と物凄く微妙な表情をした。輪廻と女性陣はドン引きしていたが……

 

 

 

 ちなみに、ゲイルとやらの相手は〝男〟らしい。そして、ゲイルのフルネームはゲイル・ホモルカというそうだ。名は体を表すとはよく言ったものである。

 

 

 

 母親の写真を取り戻したせいか、随分と落ち着いた様子のウィル。何が功を奏すのか本当にわからない。だが、落ち着いたとは言っても、恨み辛みが消えたわけではない。ウィルは、今度は冷静に、黒竜を殺すべきだと主張した。また、洗脳されたら脅威だというのが理由だが、建前なのは見え透いている。主な理由は復讐だろう。

 

 

 

 そんな中、黒竜が懺悔するように、声音に罪悪感を含ませながら己の言葉を紡ぐ。

 

 

 

〝操られていたとはいえ、妾が罪なき人々の尊き命を摘み取ってしまったのは事実。償えというなら、大人しく裁きを受けよう。だが、それには今しばらく猶予をくれまいか。せめて、あの危険な男を止めるまで。あの男は、魔物の大群を作ろうとしておる。竜人族は大陸の運命に干渉せぬと掟を立てたが、今回は妾の責任もある。放置はできんのじゃ……勝手は重々承知しておる。だが、どうかこの場は見逃してくれんか〟

 

 

 

 黒竜の言葉を聞き、その場の全員が魔物の大群という言葉に驚愕をあらわにする。自然と全員の視線が輪廻に集まる。このメンバーの中では、自然とリーダーとして見られているようだ。実際、黒竜に止めを刺そうとしたのは輪廻なので、決断を委ねるのは自然な流れと言えるだろう。

 

その輪廻の答えは、

 

「てめぇの都合なんて知らねぇ、以上、さっさと死ね。」

 

そう言って刀を振りかぶった。

 

〝待つのじゃー! お、お主、今の話の流れで問答無用に止めを刺すとかないじゃろ! 頼む! 詫びなら必ずする! 事が終われば好きにしてくれて構わん! だから、今しばらくの猶予を! 後生じゃ!〟

 

 

 

 輪廻は冷めた目で黒竜の言葉を無視し刀を振るおうとした。だが、それは叶わなかった。振るおうとした瞬間、ユエが輪廻の首筋にしがみついたからだ。驚いて、思わず抱きとめる輪廻の耳元でユエが呟く。

 

 

 

「……殺しちゃうの?」

 

「……アァ。」

 

「……でも、敵じゃない。殺意も悪意も、一度も向けなかった。意志を奪われてた」

 

 

 どうやら、ユエ的には黒竜を死なせたくないらしい。ユエにとっては、竜人族というのは憧れの強いものらしく、一定の敬意も払っているようだ。

 

 しかも、今回は殺し合いになったと言っても、終始、黒竜は殺意や悪意を輪廻達に向けなかった。今ならその理由もわかる。文字通り意志を奪われており、刷り込まれた命令を機械の如くこなしていたに過ぎない。それでも、殺しあった事に変わりはないが、そもそも黒竜はウィルしか眼中になく、輪廻と戦闘になったのは、輪廻が殺意を以て黒竜に挑んだからである。

 

 

 

 更に言えば、輪廻達の都合上ウィルに死なれては困るので、ウィルを狙ったという点では確かに敵と言えるかもしれないが、その意志は黒竜の背後にいる黒ローブの男だ。敵と言うなら、むしろこっちだろう。

 

 

 

 それに、止めた理由はもう一つある。

 

 

 

 ユエとて、輪廻のスタンスは知っている。しかし、ユエの眼には、かつて殺してきた〝敵〟と黒竜が同じには見えなかった。吸血鬼族の王であって、手痛い経験もあるユエの人を見る目は確かだ。そのユエの目は、己の心に黒竜の本質を 〝敵〟とは伝えていなかった。ユエは、輪廻には出来るだけ〝敵〟以外の者を殺して欲しくなかったのだ。

 

なぜなら、

 

「……自分に課した大切なルールに妥協すれば、人はそれだけ壊れていく。黒竜を殺すことは本当にルールに反しない?」

「……………………チッ今回だけだぞ。」

 

その……申し訳ないのじゃがな、取り敢えずお腹に刺さってるのだけでも抜いてくれんかの? このままでは妾、どっちにしろ死んでしまうのじゃ〟

 

 

 

「ん? どういうことだ?」

 

 

 

〝竜化状態で受けた外的要因は、元に戻ったとき、そのまま肉体に反映されるのじゃ。想像してみるのじゃ。人間の腹に炎を纏った刀が貫通しておるのじゃぞ?……妾が数分も生きていられると思うかの?〟

 

「……絶対に無理だね。」byミレディ

 

 

〝でじゃ、その竜化は魔力で維持しておるんじゃが、もう魔力が尽きる。あと一分ももたないのじゃ…流石にそんな方法で死ぬのは許して欲しいのじゃ。後生じゃから抜いてたもぉ〟

 

 その弱々しい声音に本当に限界が近いようで、どうやら輪廻が考えている時間はないらしい。

 

「チッ、抜くぞ。」

ズシャァァと言う音をたてながら輪廻は刀を抜いた

「ハァ、ハァ、本当にそれは痛いのじゃ。」

黒竜は、直後、その体を黒色の魔力で繭のように包み完全に体を覆うと、その大きさをスルスルと小さくしていく。そして、ちょうど人が一人入るくらいの大きさになると、一気に魔力が霧散した。

 

 黒き魔力が晴れたその場には、両足を揃えて崩れ落ち、片手で体を支えながら、もう片手でお腹を押さえて居る、黒髪金眼の美女がいた。腰まである長く艶やかなストレートの黒髪が薄らと青くなった頬に張り付き、ハァハァと荒い息を吐いて苦痛の表情を浮かべている。

 

 

 

 見た目は二十代前半くらいで、身長は百七十センチ近くあるだろう。見事なプロポーションを誇っており、息をする度に、乱れて肩口まで垂れ下がった衣服から覗く二つの双丘が激しく自己主張し、今にもこぼれ落ちそうになっている。シアがメロンなら、黒竜はスイカでry……

 

 黒竜の正体が、やたらと艶かしい美女だったことに特に男子が盛大に反応している。思春期真っ只中の男子生徒三人は、若干前屈みになってしまった。このまま行けば四つん這い状態になるかもしれない。女子生徒の彼等を見る目は既にGを見る目と大差がない。

 

黒竜は、気を取り直して座り直し背筋をまっすぐに伸ばすと凛とした雰囲気で自己紹介を始めた。まだ、若干、苦しそうにしていたが……

 

「面倒をかけた。本当に、申し訳ない。妾の名はティオ・クラルス。最後の竜人族クラルス族の一人じゃ」

 

 ティオ・クラルスと名乗った黒竜は、次いで、黒ローブの男が、魔物を洗脳して大群を作り出し町を襲う気であると語った。その数は、既に三千から四千に届く程の数だという。何でも、二つ目の山脈の向こう側から、魔物の群れの主にのみ洗脳を施すことで、効率よく群れを配下に置いているのだとか。

 

 魔物を操ると言えば、そもそもハジメ達がこの世界に呼ばれる建前となった魔人族の新たな力が思い浮かぶ。それは愛子達も一緒だったのか、黒ローブの男の正体は魔人族なのではと推測したようだ。

 

 しかし、その推測は、ティオによってあっさり否定される。何でも黒ローブの男は、黒髪黒目の人間族で、まだ少年くらいの年齢だったというのだ。それに、黒竜たるティオを配下にして浮かれていたのか、仕切りに「これで自分は勇者より上だ」等と口にし、随分と勇者に対して妬みがあるようだったという。

 

 

 

 黒髪黒目の人間族の少年で、闇系統魔法に天賦の才がある者。ここまでヒントが出れば、流石に脳裏にとある人物が浮かび上がる。愛子達は一様に「そんな、まさか……」と呟きながら困惑と疑惑が混ざった複雑な表情をした。限りなく黒に近いが、信じたくないと言ったところだろう。

 

 

 

 と、そこでハジメが突如、遠くを見る目をして「おお、これはまた……」などと呟きを漏らした。聞けば、ティオの話を聞いてから、無人探査機を回して魔物の群れや黒ローブの男を探していたらしい。

 

 

 

 そして、遂に無人探査機の一機がとある場所に集合する魔物の大群を発見した。その数は……

 

 

 

「こりゃあ、三、四千ってレベルじゃないぞ? 桁が一つ追加されるレベルだ」

 

 

 

 ハジメの報告に全員(輪廻達を除く)が目を見開く。しかも、どうやら既に進軍を開始しているようだ。方角は間違いなくウルの町がある方向。このまま行けば、半日もしない内に山を下り、一日あれば町に到達するだろう。

 

 

 

「は、早く町に知らせないと! 避難させて、王都から救援を呼んで……それから、それから……」

 

 

 

 事態の深刻さに、愛子が混乱しながらも必死にすべきことを言葉に出して整理しようとする。いくら何でも数万の魔物の群れが相手では、チートスペックとは言えトラウマ抱えた生徒達と戦闘経験がほとんどない愛子、駆け出し冒険者のウィルに、魔力が枯渇したティオでは相手どころか障害物にもならない。なので、愛子の言う通り、一刻も早く町に危急を知らせて、王都から救援が来るまで逃げ延びるのが最善だ。

 

 

 

 と、皆が動揺している中、ふとウィルが呟くように尋ねた。

 

 

 

「あの、輪廻殿達なら何とか出来るのでは……」

 

 

 

 その言葉で、全員が一斉に輪廻の方を見る。その瞳は、もしかしたらという期待の色に染まっていた。ハジメは、それらの視線を鬱陶しそうに手で振り払う素振りを見せると、投げやり気味に返答する。

 

 

 

「そんな目で見るなよ。俺達の仕事は、ウィルをフューレンまで連れて行く事なんだ。保護対象連れて戦争なんてしてられるか。いいからお前等も、さっさと町に戻って報告しとけって」

 

 

 

 ハジメ達のやる気なさげな態度に反感を覚えたような表情をする生徒達やウィル。そんな中、思いつめたような表情の愛子がハジメに問い掛けた。

 

 

 

「南雲君、黒いローブの男というのは見つかりませんか?」

 

「ん? いや、さっきから群れをチェックしているんだが、それらしき人影はないな」

 

 

 

 愛子は、ハジメの言葉に、また俯いてしまう。そして、ポツリと、ここに残って黒いローブの男が現在の行方不明の清水幸利なのかどうかを確かめたいと言い出した。生徒思いの愛子の事だ。このような事態を引き起こしたのが自分の生徒なら放って置くことなどできないのだろう。

 

 

 

 しかし、数万からなる魔物が群れている場所に愛子を置いていくことなど出来るわけがなく、園部達生徒は必死に愛子を説得する。しかし、愛子は逡巡したままだ。その内、じゃあ南雲が同行すれば…何て意見も出始めた。いい加減、この場に留まって戻る戻らないという話をするのも面倒になったハジメは、愛子に冷めた眼差しを向ける。

 

 

 

「残りたいなら勝手にしろ。俺達はウィルを連れて町に戻るから」

 

 

 

 そう言って、ウィルの肩口を掴み引きずるように下山し始めた。それに慌てて異議を唱えるウィルや愛子達。曰く、このまま大群を放置するのか、黒ローブの正体を確かめたい、ハジメ達なら大群も倒せるのではないか……

 

 輪廻が、溜息を吐き苛立たしげに愛子達を振り返った。

 

「いい加減にしろやァ、高々二十数年しか生きてねぇクソ餓鬼共がァ、んなこたァ知らねぇよ、大群をどうにかしたけりゃ自分達で殺れ、黒ローブの正体?んなもんどうでも良いわ、俺達なら倒せる?そんなもん当たり前だ、だけどやりたくないから無理、人任せにも程がある。」

 

「まぁ、ご主じ……コホンッ、彼の言う通りじゃな。妾も魔力が枯渇している以上、何とかしたくても何もできん。まずは町に危急を知らせるのが最優先じゃろ。妾も一日あれば、だいぶ回復するはずじゃしの」

 

 押し黙った一同へ、後押しするようにティオが言葉を投げかける。若干、輪廻に対して変な呼び方をしそうになっていた気がするが……気のせいだろう。愛子も、確かに、それが最善だと清水への心配は一時的に押さえ込んで、まずは町への知らせと、今、傍にいる生徒達の安全の確保を優先することにした。

 

 ティオが、魔力枯渇で動けないので輪廻がおんぶしている。実は、誰がティオを背負っていくかと言うことで男子達が壮絶な火花を散らしたのだが、それは女子生徒達によって却下され、ティオ本人の希望もあり、何故か輪廻が運ぶことになった。

 

一行は、背後に大群という暗雲を背負い、急ぎウルの町に戻る。

 

 

 

ウルの町に着くと、悠然と歩くハジメ達とは異なり愛子達は足をもつれさせる勢いで町長のいる場所へ駆けていった。ハジメとしては、愛子達とここで別れて、さっさとウィルを連れてフューレンに行ってしまおうと考えていたのだが、むしろ愛子達より先にウィルが飛び出していってしまったため仕方なく後を追いかけた。

 

 

 

 町の中は、活気に満ちている。料理が多彩で豊富、近くには湖もある町だ。自然と人も集う。まさか、一日後には、魔物の大群に蹂躙されるなどは夢にも思わないだろう。ハジメ達は、そんな町中を見ながら、そう言えば昨日から飯を喰っていなかったと、屋台の串焼きやら何やらに舌鼓を打ちながら町の役場へと向かった。

 

 

 

 ハジメ達が、ようやく町の役場に到着した頃には既に場は騒然としていた。ウルの町のギルド支部長や町の幹部、教会の司祭達が集まっており、喧々囂々たる有様である。皆一様に、信じられない、信じたくないといった様相で、その原因たる情報をもたらした愛子達やウィルに掴みかからんばかりの勢いで問い詰めている。

 

 

 

 普通なら、明日にも町は滅びますと言われても狂人の戯言と切って捨てられるのがオチだろうが、何せ〝神の使徒〟にして〝豊穣の女神〟たる愛子の言葉である。そして最近、魔人族が魔物を操るというのは公然の事実であることからも、無視などできようはずもなかった。

 

 

 

 ちなみに、車中での話し合いで、愛子達は、報告内容からティオの正体と黒幕が清水幸利である可能性については伏せることで一致していた。ティオに関しては、竜人族の存在が公になるのは好ましくないので黙っていて欲しいと本人から頼まれたため、黒幕に関しては愛子が、未だ可能性の段階に過ぎないので不用意なことを言いたくないと譲らなかったためだ。

 

 

 

 愛子の方は兎も角、竜人族は聖教教会にとっても半ばタブー扱いであることから、混乱に拍車をかけるだけということと、ばれれば討伐隊が組まれてもおかしくないので面倒なことこの上ないと秘匿が了承された。

 

 

 

 そんな喧騒の中に、ウィルを迎えに来たハジメがやって来る。周囲の混乱などどこ吹く風だ。

 

 

 

「おい、ウィル。勝手に突っ走るなよ。自分が保護対象だって自覚してくれ。報告が済んだなら、さっさとフューレンに向かうぞ」

 

 

 

 そのハジメの言葉に、ウィル他、愛子達も驚いたようにハジメを見た。他の、重鎮達は「誰だ、こいつ?」と、危急の話し合いに横槍を入れたハジメに不愉快そうな眼差しを向けた。

 

 

 

「な、何を言っているのですか? ハジメ殿。今は、危急の時なのですよ? まさか、この町を見捨てて行くつもりでは……」

 

 

 

 信じられないと言った表情でハジメに言い募るウィルにハジメは、やはり面倒そうな表情で軽く返す。

 

 

 

「見捨てるもなにも、どの道、町は放棄して救援が来るまで避難するしかないだろ? 観光の町の防備なんてたかが知れているんだから……どうせ避難するなら、目的地がフューレンでも別にいいだろうが。ちょっと、人より早く避難するだけの話だ」

 

「そ、それは……そうかもしれませんが……でも、こんな大変な時に、自分だけ先に逃げるなんて出来ません! 私にも、手伝えることが何かあるはず。ハジメ殿も……」

 

 

 

 〝ハジメ殿も協力して下さい〟そう続けようとしたウィルの言葉は、ハジメの冷めきった眼差しと凍てついた言葉に遮られた。

 

 

 

「……はっきり言わないと分からないのか? 俺の仕事はお前をフューレンに連れ帰ること。この町の事なんて知ったことじゃない。いいか? お前の意見なんぞ聞いてないんだ。どうしても付いて来ないというなら……手足を砕いて引き摺ってでも連れて行く」

 

「なっ、そ、そんな……」

 

 

 

 

 

 ハジメの醸し出す雰囲気から、その言葉が本気であると察したウィルが顔を青ざめさせて後退りする。その表情は信じられないといった様がありありと浮かんでいた。ウィルにとって、ゲイル達ベテラン冒険者を苦もなく全滅させた黒竜すら圧倒したハジメは、ちょっとしたヒーローのように見えていた。なので、容赦のない性格であっても、町の人々の危急とあれば、何だかんだで手助けをしてくれるものと無条件に信じていたのだ。なので、ハジメから投げつけられた冷たい言葉に、ウィルは裏切られたような気持ちになったのである。

 

 

 

 言葉を失い、ハジメから無意識に距離を取るウィルにハジメが決断を迫るように歩み寄ろうとする。一種異様な雰囲気に、周囲の者達がウィルとハジメを交互に見ながら動けないでいると、ふとハジメの前に立ちふさがるように進み出た者がいた。

 

 

 

 愛子だ。彼女は、決然とした表情でハジメを真っ直ぐな眼差しで見上げる。

 

 

 

「南雲君、十五夜君。君達なら……君達なら魔物の大群をどうにかできますか? いえ……できますよね?」

 

 

 

 愛子は、どこか確信しているような声音で、ハジメ達なら魔物の大群をどうにかできる、すなわち、町を救うことができると断じた。その言葉に、周囲で様子を伺っている町の重鎮達が一斉に騒めく。

 

 

 

 愛子達が報告した襲い来る脅威をそのまま信じるなら、敵は数万規模の魔物なのだ。それも、複数の山脈地帯を跨いで集められた。それは、もう戦争規模である。そして、一個人が戦争に及ぼせる影響など無いに等しい。それが常識だ。それを覆す非常識は、異世界から召喚された者達の中でも更に特別な者、そう勇者だけだ。それでも、本当の意味で一人では軍には勝てない。人間族を率いて仲間と共にあらねば、単純な物量にいずれ呑み込まれるだろう。なので、勇者ですらない目の前の少年が、この危急をどうにかできるという愛子の言葉は、たとえ〝豊穣の女神〟の言葉であってもにわかには信じられなかった。

 

 

 

 ハジメは、愛子の強い眼差しを鬱陶しげに手で払う素振りを見せると、誤魔化すように否定する。

 

 

 

「いやいや、先生。無理に決まっているだろ? 見た感じ四万は超えているんだぞ? とてもとても……」

 

「でも、山にいた時、ウィルさんの南雲君なら何とかできるのではという質問に〝できない〟とは答えませんでした。それに〝こんな起伏が激しい上に障害物だらけのところで殲滅戦なんてやりにくくてしょうがない〟とも言ってましたよね? それは平原なら殲滅戦が可能という事ですよね? 違いますか?」

 

「……よく覚えてんな」

 

 

 

 愛子の記憶力の良さに、下手なこと言っちまったと顔を歪めるハジメ。後悔先に立たずである。愛子は、顔を逸らしたハジメに更に真剣な表情のまま頼みを伝える。

 

 

 

「南雲君。どうか力を貸してもらえませんか? このままでは、きっとこの美しい町が壊されるだけでなく、多くの人々の命が失われることになります」

 

「……意外だな。あんたは生徒の事が最優先なのだと思っていた。色々活動しているのも、それが結局、少しでも早く帰還できる可能性に繋がっているからじゃなかったのか? なのに、見ず知らずの人々のために、その生徒に死地へ赴けと? その意志もないのに? まるで、戦争に駆り立てる教会の連中みたいな考えだな?」

 

 

 

 ハジメの揶揄するような言葉に、しかし、愛子は動じない。その表情は、ついさっきまでの悩みに沈んだ表情ではなく、決然とした〝先生〟の表情だった。近くで愛子とハジメの会話を聞いていたウルの町の教会司祭が、ハジメの言葉に含まれる教会を侮蔑するような言葉に眉をひそめているのを尻目に、愛子はハジメに一歩も引かない姿勢で向き直る。

 

 

 

「……元の世界に帰る方法があるなら、直ぐにでも生徒達を連れて帰りたい、その気持ちは今でも変わりません。でも、それは出来ないから……なら、今、この世界で生きている以上、この世界で出会い、言葉を交わし、笑顔を向け合った人々を、少なくとも出来る範囲では見捨てたくない。そう思うことは、人として当然のことだと思います。もちろん、先生は先生ですから、いざという時の優先順位は変わりませんが……」

 

 

 

 愛子が一つ一つ確かめるように言葉を紡いでいく。

 

 

 

「南雲君、あんなに穏やかだった君が、そんな風になるには、きっと想像を絶する経験をしてきたのだと思います。そこでは、誰かを慮る余裕などなかったのだと思います。君が一番苦しい時に傍にいて力になれなかった先生の言葉など…南雲君には軽いかもしれません。でも、どうか聞いて下さい」

 

 

 

 ハジメは黙ったまま、先を促すように愛子を見つめ返す。

 

 

 

「南雲君。君は昨夜、絶対日本に帰ると言いましたよね? では、南雲君、君は、日本に帰っても同じように大切な人達以外の一切を切り捨てて生きますか? 君の邪魔をする者は皆排除しますか? そんな生き方が日本で出来ますか? 日本に帰った途端、生き方を変えられますか? 先生が、生徒達に戦いへの積極性を持って欲しくないのは、帰ったとき日本で元の生活に戻れるのか心配だからです。殺すことに、力を振るうことに慣れて欲しくないのです」

 

「……」

 

「南雲君、君には君の価値観があり、君の未来への選択は常に君自身に委ねられています。それに、先生が口を出して強制するようなことはしません。ですが、君がどのような未来を選ぶにしろ、大切な人以外の一切を切り捨てるその生き方は……とても〝寂しい事〟だと、先生は思うのです。きっと、その生き方は、君にも君の大切な人にも幸せをもたらさない。幸せを望むなら、出来る範囲でいいから……他者を思い遣る気持ちを忘れないで下さい。元々、君が持っていた大切で尊いそれを……捨てないで下さい」

 

 

 

 一つ一つに思いを込めて紡がれた愛子の言葉が、向き合うハジメに余すことなく伝わってゆく。町の重鎮達や生徒達も、愛子の言葉を静かに聞いている。特に生徒達は、力を振るってはしゃいでいた事を叱られている様な気持ちになりバツの悪そうな表情で俯いている。それと同時に、愛子は今でも本気で自分達の帰還と、その後の生活まで考えてくれていたという事を改めて実感し、どこか嬉しそうな擽ったそうな表情も見せていた。

 

 

 

 ハジメは、例え世界を超えても、どんな状況であっても、生徒が変わり果てていても、全くブレずに〝先生〟であり続ける愛子に、内心苦笑いをせずにはいられなかった。それは、嘲りから来るものではない、感心から来るものだ。愛子が、その希少価値から特別待遇を受けており、ハジメの様な苦難を経験していない以上、「何も知らないくせに!」とか「知った風な口を!」と反論するのは簡単だ。あるいは、愛子自身が言ったように、〝軽い〟言葉だと切り捨ててしまってもいいだろう。

 

 

 

 だが、ハジメには、そんな事は出来そうになかった。今も、真っ直ぐ自分を見つめる〝先生〟に、それこそそんな〝軽い〟反論をすることは、あまりに見苦しい気がしたのだ。それに、愛子は一度も〝正しさ〟を押し付けなかった。その言葉の全ては、ただハジメの未来と幸せを願うものだ。

 

しかし、だ、その未来や幸せと言うのは愛子が勝手に想像したものだ。ハジメが何を本当に望んで居るかは分からない、だからこそ、正しさ、は押し付けていないが、自分が想う、未来、と、幸せ、を押し付けている。

それに、彼の正論も出てきた。

 

「分かったような口を聞くんじゃねぇ。クソ餓鬼。」

 

「何ですか十五夜君?」

 

「お前たちの様な奴が居るから、1部の人間は心の殻から出られなくなるんだよ。他人の未来に口出ししない?そんなのあたりめぇだ。お前の言う幸せってのはなァ、結局お前が望む幸せだ、自分が想う幸せが全て他人に共通すると思うな!日本に帰って何故生活を変える必要がある?どの人間だってそうだァ、他人に形振り構ってる暇はねぇ、結局はなァ、自分が1番大切に思ってるやつ以外は切り捨てるしかねぇんだよォ。邪魔をする奴は消す。それが当たり前だ。そう言う生き方が出来ないなら、出来るようにする。今更日本に帰って、元の生活に戻れるゥ?んなわけねぇだろうが、学校は慈善団体じゃねぇ、唯の教育所だァ。そんな所が、異世界に召喚されて、帰ってきました、って言う奴を置いとくわけがねぇだろうが。例え、学校に通えたとしても、特別教室か何かに決まってんだろ?それにこっちに来て出来た力もある。それを隠蔽しないで、元の生活なんて送れるわけねぇんだよォ。分かったらいい加減に現実を見ろォクソ餓鬼。お前の言ってることは全て偽善だ。お前が偽善って言われて何も思わなくてもなァ、周りに影響は確実に出る。それが今回は起こっただけだァ。アーアァー清水が可哀想だぜェ。」

「何故そこで清水君が出てくるのですか?」

「は?お前人の話を聞いてたかァ?今回の騒動の黒幕は清水で、その原因はお前達や、ゴミ共だァ。そう言ってるんだ、その現実を見ろって言ってんだ。チッこれだから餓鬼の子守りは嫌いなんだ。」

「十五夜君、前から思ってたんですが!何故私達の事を餓鬼と呼ぶのですか!?貴方は私より歳下でしょう!?年上には敬意をはらいなさいって、゛親御さん“に言われなかったんですか!?」

「…ァ?誰がてめぇより歳下だってェ?」

「十五夜君です!」

「ほう。じゃァてめぇは餓鬼じゃねぇな。」

「そうです!分かればいい…「餓鬼じゃ無くてババアだなァ。」……今何と?「だから、推定2500歳のババアだなって言ったんだよォ。」何ですってー!」

「だって、俺より歳上なんだォ?だったら少なくとも2535歳ってことになるんだかなァ。違ったかァ?」

「全然違います!25です!貴方は十七歳でしょう!?」

「てめぇこそ何言ってんだ?俺は歳で言うと五百三十四歳だ、生きた年数で言うと二千五百三十四年だ。」

「え?」

 

と言う騒動があったが、結局ウルは守る事になった、なぜかと言うと……

 

「ハジメ、ここの街守るぞォ。」

「………主よ、変な物でも食べましたか?」

「……んなわけねぇだろうが。俺も嫌だが、ここの街の米料理は守らなきゃ行けねぇ。」

「そういう事ですか、ならどうしますか?主1人でやった方が速いと思いますが?」

「アァ、俺もここに長居するつもりはねぇ、直ぐに終わらせる。」

「分かりました、では此方は避難させておきますね。」

「アァ!頼んだぜェ。」

「お任せを。」

 

と言うわけで米料理のオマケでウルの街を守る事になった。

ウルの町。北に山脈地帯、西にウルディア湖を持つ資源豊富なこの町は、現在、つい昨夜までは存在しなかった〝外壁〟に囲まれて、異様な雰囲気に包まれていた。

 

 

 

 この〝外壁〟はハジメが即行で作ったものだ。魔力駆動二輪で、整地ではなく〝外壁〟を錬成しながら町の外周を走行して作成したのである。

 

 

 

 もっとも、壁の高さは、ハジメの錬成範囲が半径四メートル位で限界なので、それほど高くはない。大型の魔物なら、よじ登ることは容易だろう。一応、万一に備えてないよりはマシだろう程度の気持ちで作成したので問題はない。そもそも、壁に取り付かせるつもりなどハジメにはないのだから。

 

 

 

 町の住人達には、既に数万単位の魔物の大群が迫っている事が伝えられている。魔物の移動速度を考えると、夕方になる前くらいには先陣が到着するだろうと。

 

 

 

 当然、住人はパニックになった。町長を始めとする町の顔役たちに罵詈雑言を浴びせる者、泣いて崩れ落ちる者、隣にいる者と抱きしめ合う者、我先にと逃げ出そうとした者同士でぶつかり、罵り合って喧嘩を始める者。明日には、故郷が滅び、留まれば自分達の命も奪われると知って冷静でいられるものなどそうはいない。彼等の行動も仕方のないことだ。

 

 

 

 だが、そんな彼等に心を取り戻させた者がいた。愛子だ。ようやく町に戻り、事情説明を受けた護衛騎士達を従えて、高台から声を張り上げる〝豊穣の女神〟。恐れるものなどないと言わんばかりの凛とした姿と、元から高かった知名度により、人々は一先ずの冷静さを取り戻した。畑山愛子、ある意味、勇者より勇者をしている。

 

 

 

 冷静さを取り戻した人々は、二つに分かれた。すなわち、故郷は捨てられない、場合によっては町と運命を共にするという居残り組と、当初の予定通り、救援が駆けつけるまで逃げ延びる避難組だ。

 

 

 

 居残り組の中でも女子供だけは避難させるというものも多くいる。愛子の魔物を撃退するという言葉を信じて、手伝えることは何かないだろうかと居残りを決意した男手と万一に備えて避難する妻子供などだ。深夜をとうに過ぎた時間にもかかわらず、町は煌々とした光に包まれ、いたる所で抱きしめ合い別れに涙する人々の姿が見られた。

 

 

 

 避難組は、夜が明ける前には荷物をまとめて町を出た。現在は、日も高く上がり、せっせと戦いの準備をしている者と仮眠をとっている者とに分かれている。居残り組の多くは、〝豊穣の女神〟一行が何とかしてくれると信じてはいるが、それでも、自分達の町は自分達で守るのだ! 出来ることをするのだ! という気概に満ちていた。

 

 

 

 ハジメは、すっかり人が少なくなり、それでもいつも以上の活気があるような気がする町を背後に即席の城壁に腰掛けて、どこを見るわけでもなくその眼差しを遠くに向けていた。その隣にはユエ達を周りに座らせている輪廻がいる。

 

 

 そこへ愛子と生徒達、ティオ、ウィル、デビッド達数人の護衛騎士がやって来た。愛子達の接近に気がついているだろうに、振り返らない輪廻達にデビッド達が眉を釣り上げるが、それより早く愛子が声をかける。

 

「南雲君、準備はどうですか? 何か、必要なものはありますか?」

 

「いや、問題ねぇよ、先生むしろ準備はいらねぇ。」

 

 やはり振り返らずに簡潔に答えるハジメ。その態度に我慢しきれなかったようでデビッドが食ってかかる。

 

「おい、貴様。愛子が…自分の恩師が声をかけているというのに何だその態度は。本来なら、貴様の持つアーティファクト類の事や、大群を撃退する方法についても詳細を聞かねばならんところを見逃してやっているのは、愛子が頼み込んできたからだぞ? 少しは……」

「は?何でてめぇらみたいな、脳味噌カッスカスのクソ餓鬼に言わなきゃなんねぇんだよ?お前らみたいな幼稚な奴に銃の設計図渡したって分かるわけねぇだろ?そんな事も分からねぇ何て、ただの馬鹿だろ?見逃してやるだとォ?何で関係ないてめぇらに見逃してもらう必要がある?もう1回言うぜェ?クソ餓鬼は黙ってろ。」

 

どーチャラこーちゃら、

 

話が終わったのを見計らって、今度は、ティオが前に進み出て輪廻に声をかけた。

 

「ふむ、よいかな。妾もご主……ゴホンッ! お主に話が……というより頼みがあるのじゃが、聞いてもらえるかの?」

 

「 …………………………………………………………ティオか」

 

「お、お主、まさか妾の存在を忘れておったんじゃ……。」

 

 聞き覚えのない声に、思わず肩越しに振り返った輪廻は、黒地にさりげなく金の刺繍が入っている着物に酷似した衣服を大きく着崩して、白く滑らかな肩と魅惑的な双丘の谷間、そして膝上まで捲れた裾から覗く脚線美を惜しげもなく晒した黒髪金眼の美女に、一瞬、訝しそうな目を向けて、「ああそういえば」と思い出したように名前を呼んだ。

 

「で?なんだァ?」

「んっ、んっ! えっとじゃな、お主は、この戦いが終わったらウィル坊を送り届けて、また旅に出るのじゃろ?」

 

「ああ、そうだ」

 

「うむ、頼みというのはそれでな……妾も同行させてほし…」

 

「断る」

 

「……よ、予想通りの即答。流石、ご主……コホンッ! もちろん、タダでとは言わん! これよりお主を〝ご主人様〟と呼び、妾の全てを捧げよう! 身も心も全てじゃ! どうzy」

 

「帰れ。むしろ土に還れ、それにお前、色々やる事あるだろ? その為に、里を出てきたって言ってたじゃねぇか」

 

〝竜人族の調査〟とやらはどうしたと返す輪廻。

 

「うむ。問題ない。ご主人様の傍にいる方が絶対効率いいからの。まさに、一石二鳥じゃ……では妾は、貴方を主様と呼び、一生仕えます。主様にとってもいい事じゃろ?」

「まァ、別にいいんだかなァ」

「ありがとうございます。」

「うわ、ユエさん、ミレディさん、もう敬語になってますよ?」

「……ん…流石輪廻、溢れ出るカリスマパワーが止まらない。」

「さっすがー輪廻君〜すごいねぇ〜。」

 

「……来たな」

「! ……来たか」

 

 輪廻とハジメが突然、北の山脈地帯の方角へ視線を向ける。眼を細めて遠くを見る素振りを見せた。肉眼で捉えられる位置にはまだ来ていない(輪廻を除く)が、ハジメの〝魔眼石〟には無人偵察機からの映像がはっきりと見えていた。輪廻は煙草を吸いながら遠くを見ていた。

 

 それは、大地を埋め尽くす魔物の群れだ。ブルタールのような人型の魔物の他に、体長三、四メートルはありそうな黒い狼型の魔物、足が六本生えているトカゲ型の魔物、背中に剣山を生やしたパイソン型の魔物、四本の鎌をもったカマキリ型の魔物、体のいたるところから無数の触手を生やした巨大な蜘蛛型の魔物、二本角を生やした真っ白な大蛇など実にバリエーション豊かな魔物が、大地を鳴動させ土埃を巻き上げながら猛烈な勢いで進軍している。その数は、山で確認した時よりも更に増えているようだ。五万あるいは六万に届こうかという大群である。

 

 

 

 更に、大群の上空には飛行型の魔物もいる。敢えて例えるならプテラノドンだろうか。何十体というプテラノドンモドキの中に一際大きな個体がいる、その個体の上には薄らと人影のようなものも見えた。おそらく、黒ローブの男。愛子は信じたくないという風だったが、十中八九、清水幸利だ。

 

「…主よ…」

 

「……輪廻」

 

「輪廻さん」

 

「…輪廻君…来たね…頼んだよ…」

 

 ハジメの雰囲気の変化から来るべき時が来たと悟るユエ達が、輪廻に呼びかける。輪廻は視線を後ろに戻すと一つ頷き、そして後ろで緊張に顔を強ばらせている愛子達に視線を向けた。

 

 

 

「来たぞ。予定よりかなり早いが、到達まで三十分ってところだ。数は五万強。複数の魔物の混成だ、死にたく無けりゃさっさと失せろ。俺1人で十分だァ。」

彼はそう言って、踏み込みダァァァァンと吹っ飛んで行った。

 

 

「チッ、そろそろアイツを殺しに行く周期かァ、さっさと終わらせるぜェ。」

 

「卍解・残火の太刀。」

 

「行くぜェ!残火の太刀 南 火火十万億死大葬陣」

 

(何だよ、これは……何なんだよ、これは!!)

 

 

 

 ウルの町を襲う数万規模の魔物の大群の遥か後方で、即席の塹壕を堀り、出来る限りの結界を張って必死に身を縮めている少年、清水幸利は、目の前の惨状に体を震わせながら言葉を失った様に口をパクパクさせていた。ありえない光景、信じたくない現実に、内心で言葉にもなっていない悪態を繰り返す。

 

 そう、魔物の大群をけし掛けたのは輪廻が行った通り、行方不明になっていた愛子の生徒、清水幸利だった。とある男との偶然の末に交わした契約により、ウルの町を愛子達ごと壊滅させようと企んだのだ。しかし、容易に捻り潰せると思っていた町や人は、全く予想しなかった凄絶な迎撃により未だ無傷であり、それどころか現在進行形で清水にとっての地獄絵図が生み出されていた。

 

ウァァァァァァァァ

 

黒い骸骨の様なナニカが、魔物を次々と葬っていくのだ。

既に、その数は一万を割り八千から九千と言ったところか。最初の大群を思えば、壊滅状態と言っていいほどの被害のはずだ。しかし、魔物達は依然、猪突猛進を繰り返している。正確には、一部の魔物がそう命令を出しているようだ。大抵の魔物は完全に及び腰になっており、命令を出している各種族のリーダー格の魔物に従って、戸惑ったように突進して来ている。

 

しかも、彼がとうとう動き出したのだ、今まで、骸骨に敵を倒させていたが、痺れを切らしたのだろう。

と、思っているうちにもうかなり近くまで来ている。

 

 

「チッ、相変わらずおせえなァ、もういいやァ、こっちから出るかァ。」

輪廻はそう言うと、超高速で魔物達がいる所まで接近してきた。

そして、南を解き今度は。

「残火の太刀 西 残日獄衣」

西だ。

「天地一閃」

ズジャァァァァァ

彼が斬魄刀を一振すると、魔物が跡形もなく全て消えた。

そして清水を確保し、街まで戻ってきた。

清水幸利にとって、異世界召喚とは、まさに憧れであり夢であった。ありえないと分かっていながら、その手の本、Web小説を読んでは夢想する毎日。夢の中で、何度世界を救い、ヒロインの女の子達とハッピーエンドを迎えたかわからない。清水の部屋は、壁が見えなくなるほどに美少女のポスターで埋め尽くされており、壁の一面にあるガラス製のラックには、お気に入りの美少女フュギュアがあられもない姿で所狭しと並べられている。本棚は、漫画やライトノベル、薄い本やエロゲーの類で埋め尽くされていて、入りきらない分が部屋のあちこちにタワーを築いていた。

 

 

 

 そう、清水幸利は真性のオタクである。但し、その事実を知る者は、クラスメイトの中にはいない。それは、清水自身が徹底的に隠したからだ。理由は、言わずもがなだろう。ハジメに対するクラスメイトの言動を間近で見て、なお、オタクであることをオープンにできるような者はそうはいない。

 

 

 

 クラスでの清水は、彼のよく知る言葉で表すなら、まさにモブだ。特別親しい友人もおらず、いつも自分の席で大人しく本を読む。話しかけられれば、モソモソと最低限の受け答えはするが自分から話すことはない。元々、性格的に控えめで大人しく、それが原因なのか中学時代はイジメに遭っていた。当然の流れか登校拒否となり自室に引きこもる毎日で、時間を潰すために本やゲームなど創作物の類に手を出すのは必然の流れだった。親はずっと心配していたが、日々、オタクグッズで埋め尽くされていく部屋に、兄や弟は煩わしかったようで、それを態度や言葉で表すようになると、清水自身、家の居心地が悪くなり居場所というものを失いつつあった。鬱屈した環境は、表には出さないが内心では他者を扱き下ろすという陰湿さを清水にもたらした。そして、ますます、創作物や妄想に傾倒していった。

 

 

 

 そんな清水であるから、異世界召喚の事実を理解したときの脳内は、まさに「キターー!!」という状態だった。愛子がイシュタルに猛然と抗議している時も、光輝が人間族の勝利と元の世界への帰還を決意し息巻いている時も、清水の頭の中は、何度も妄想した異世界で華々しく活躍する自分の姿一色だ。ありえないと思っていた妄想が現実化したことに舞い上がって、異世界召喚の後に主人公を理不尽が襲うパターンは頭から追いやられている。

 

 

 

 そして実際、清水が期待したものと、現実の異世界ライフには齟齬が生じていた。まず、清水は確かにチート的なスペックを秘めていたが、それは他のクラスメイトも同じであり、更に、〝勇者〟は自分ではなく光輝であること、その為か、女が寄って行くのは光輝ばかりで、自分は〝その他大勢の一人〟に過ぎなかった事だ。これでは、日本にいた時と何も変わらない。念願が叶ったにもかかわらず、望んだ通りではない現実に陰湿さを増す清水は、内心で不満を募らせていった。

 

 

 

 なぜ、自分が勇者ではないのか。なぜ、光輝ばかりが女に囲まれていい思いをするのか。なぜ、自分ではなく光輝ばかり特別扱いするのか。自分が勇者ならもっと上手くやるのに。自分に言い寄るなら全員受け入れてやるのに……そんな、都合の悪いことは全て他者のせい、自分だけは特別という自己中心的な考えが清水の心を蝕んでいった。

 

 

 

 そんな折だ。あの【オルクス大迷宮】への実戦訓練が催されたのは。清水は、チャンスだと思った。誰も気にしない。居ても居なくても同じ。そんな背景のような扱いをしてきたクラスメイト達も、遂には自分の有能さに気がつくだろうと、そんな何処までもご都合主義な清水は……しかし、ようやく気がつくことになる。

 

 

 

 自分が決して特別な存在などではなく、ましてご都合主義な展開などもなく、ふと気を抜けば次の瞬間には確かに〝死ぬ〟存在なのだと。トラウムソルジャーに殺されかけて、遠くでより凶悪な怪物と戦う〝勇者〟を見て、抱いていた異世界への幻想がガラガラと音を立てて崩れた。

 

 

 

 そして、奈落へと落ちて〝死んだ〟クラスメイトを目の当たりにし、心が折れた。自分に都合のいい解釈ばかりして、他者を内心で下に見ることで保ってきた心の耐久度は当然の如く強くはなかったのだ。

 

 

 

 清水は、王宮に戻ると再び自室に引き篭ることになった。だが、日本の部屋のように清水の心を慰めてくれる創作物は、ここにはない。当然の流れとして、清水は自分の天職〝闇術師〟に関する技能・魔法に関する本を読んで過ごすことになった。

 

 

 

 闇系統の魔法は、相手の精神や意識に作用する系統の魔法で、実戦などでは基本的に対象にバッドステータスを与える魔法と認識されている。清水の適性もそういったところにあり、相手の認識をズラしたり、幻覚を見せたり、魔法へのイメージ補完に干渉して行使しにくくしたり、更に極めれば、思い込みだけで身体に障害を発生させたりということができる。

 

 

 

 そして、浮かれた気分などすっかり吹き飛んだ陰鬱な心で読んだ本から、清水は、ふとあることを思いついた。闇系統魔法は、極めれば対象を洗脳支配できるのではないか? というものだ。清水は興奮した。自分の考えが正しければ、誰でも好きなように出来るのだ。そう、好きなように。清水の心に暗く澱んだものがはびこる。その日から一心不乱に修練に励んだ。

 

 

 

 しかし、そう簡単に行く訳もなかった。まず、人のように強い自我のある者には、十数時間という長時間に渡って術を施し続けなければ到底洗脳支配など出来ない。当然、無抵抗の場合の話だ。流石に、術をかけられて反応しないものなど普通はいない。それこそ強制的手段で眠らせるか何かする必要がある。人間相手に、隠れて洗脳支配するのは環境的にも時間的にも厳しく、ばれた時のことを考えると非常にリスクが高いと清水は断念せざるを得なかった。

 

 

 

 肩を落とす清水だったが、ふと召喚の原因である魔人族による魔物の使役を思い出す。人とは比べるべくもなく本能的で自我の薄い魔物ならば洗脳支配できるのではないか。清水は、それを確かめるために夜な夜な王都外に出て雑魚魔物相手に実験を繰り返した。その結果、人に比べて遥かに容易に洗脳支配できることが実証できた。もっとも、それは既に闇系統魔法に極めて高い才能を持っていたチートの一人である清水だから出来た事だ。以前、イシュタルの言ったように、この世界の者では長い時間をかけてせいぜい一、二匹程度を操るのが限度である。

 

 

 

 王都近郊での実験を終えた清水は、どうせ支配下に置くなら強い魔物がいいと考えた。ただ、光輝達について迷宮の最前線に行くのは気が引けた。そして、どうすべきかと悩んでいたとき、愛子の護衛隊の話を耳にしたのだ。それに付いて行き遠出をすれば、ちょうどいい魔物とも遭遇出来るだろうと考えて。

 

 

 

 結果、愛子達とウルの町に来ることになり、北の山脈地帯というちょうどいい魔物達がいる場所で配下の魔物を集めるため姿を眩ませたのだ。次に再会した時は、誰もが自分のなした偉業に畏怖と尊敬の念を抱いて、特別扱いすることを夢想して。

 

 

 

 本来なら、僅か二週間と少しという短い期間では、いくら清水が闇系統に特化した天才でも、そして群れのリーダーだけを洗脳するという効率的な方法をとったとしても精々千に届くか否かという群れを従えるので限界だっただろう。それも、おそらく二つ目の山脈にいるブルタールレベルを従えるのが精々だ。

 

 

 

 だが、ここでとある存在の助力と、偶然支配できたティオの存在が、効率的で四つ目の山脈の魔物まで従える力を清水に与えた。と、同時に、そのとある存在との契約と日々増強していく魔物の軍勢に、清水の心のタガは完全に外れてしまった。そして遂に、やはり自分は特別だったと悦に浸りながら、満を持して大群を町に差し向けたのだった。

 

 

 

 そして、その結果は……

 

 

 見るも無残な姿に成り果てて、愛子達の前に跪かされるというものだった。ちなみに、敗残兵の様な姿になっている理由は、輪廻に魔物の血肉や土埃の舞う大地を魔力駆動二輪で引き摺られて来たからである。白目を向いて意識を喪失している清水が、なお、頭をゴンゴンと地面に打ちつけながら眼前に連れて来られたのを見て、愛子達の表情が引き攣っていたのは仕様がないことだろう。

 

 

 

 ちなみに、場所は町外れに移しており、この場にいるのは、愛子と生徒達の他、護衛隊の騎士達と町の重鎮達が幾人か、それにウィルとハジメ達だけである。流石に、町中に今回の襲撃の首謀者を連れて行っては、騒ぎが大きくなり過ぎるだろうし、そうなれば対話も難しいだろうという理由だ。町の残った重鎮達が、現在、事後処理に東奔西走している。

 

 

 

 未だ白目を向いて倒れている清水に、愛子が歩み寄った。黒いローブを着ている姿が、そして何より戦場から直接連行して来られたという事実が、動かぬ証拠として彼を襲撃の犯人だと示している。信じたくなかった事実に、愛子は悲しそうに表情を歪めつつ、清水の目を覚まそうと揺り動かした。

 

 

 

 デビッド達が、危険だと止めようとするが愛子は首を振って拒否する。拘束も同様だ。それでは、きちんと清水と対話できないからと。愛子はあくまで先生と生徒として話をするつもりなのだろう。

 

 

 

 やがて、愛子の呼びかけに清水の意識が覚醒し始めた。ボーっとした目で周囲を見渡し、自分の置かれている状況を理解したのか、ハッとなって上体を起こす。咄嗟に、距離を取ろうして立ち上がりかけたのだが、まだ後頭部へのダメージが残っているのか、ふらついて尻餅をつき、そのままズリズリと後退りした。警戒心と卑屈さ、苛立ちがない交ぜになった表情で、目をギョロギョロと動かしている。

 

 

 

「清水君、落ち着いて下さい。誰もあなたに危害を加えるつもりはありません……先生は、清水君とお話がしたいのです。どうして、こんなことをしたのか……どんな事でも構いません。先生に、清水君の気持ちを聞かせてくれませんか?」

 

 

 

 膝立ちで清水に視線を合わせる愛子に、清水のギョロ目が動きを止める。そして、視線を逸らして顔を俯かせるとボソボソと聞き取りにくい声で話……というより悪態をつき始めた。

 

 

 

「なぜ? そんな事もわかんないのかよ。だから、どいつもこいつも無能だっつうんだよ。馬鹿にしやがって……勇者、勇者うるさいんだよ。俺の方がずっと上手く出来るのに……気付きもしないで、モブ扱いしやがって……ホント、馬鹿ばっかりだ……だから俺の価値を示してやろうと思っただけだろうが……」

 

「てめぇ……自分の立場わかってんのかよ! 危うく、町がめちゃくちゃになるところだったんだぞ!」

 

「そうよ! 馬鹿なのはアンタの方でしょ!」

 

「愛ちゃん先生がどんだけ心配してたと思ってるのよ!」

 

 

 

 反省どころか、周囲への罵倒と不満を口にする清水に、玉井や園部など生徒達が憤りをあらわにして次々と反論する。その勢いに押されたのか、ますます顔を俯かせ、だんまりを決め込む清水。

 

 

 

 愛子は、そんな清水が気に食わないのか更にヒートアップする生徒達を抑えると、なるべく声に温かみが宿るように意識しながら清水に質問する。

 

 

 

「そう、沢山不満があったのですね……でも、清水君。みんなを見返そうというのなら、なおさら、先生にはわかりません。どうして、町を襲おうとしたのですか? もし、あのまま町が襲われて……多くの人々が亡くなっていたら……多くの魔物を従えるだけならともかく、それでは君の〝価値〟を示せません」

 

 

 

 愛子のもっともな質問に、清水は少し顔を上げると薄汚れて垂れ下がった前髪の隙間から陰鬱で暗く澱んだ瞳を愛子に向け、薄らと笑みを浮かべた。

 

 

 

「……示せるさ……魔人族になら」

 

「なっ!?」

 

 

 

 清水の口から飛び出したまさかの言葉に愛子のみならず、ハジメ達を除いた、その場の全員が驚愕を表にする。清水は、その様子に満足気な表情となり、聞き取りにくさは相変わらずだが、先程までよりは力の篭った声で話し始めた。

 

 

 

「魔物を捕まえに、一人で北の山脈地帯に行ったんだ。その時、俺は一人の魔人族と出会った。最初は、もちろん警戒したけどな……その魔人族は、俺との話しを望んだ。そして、わかってくれたのさ。俺の本当の価値ってやつを。だから俺は、そいつと……魔人族側と契約したんだよ」

 

「契約……ですか? それは、どのような?」

 

 

 

 戦争の相手である魔人族とつながっていたという事実に愛子は動揺しながらも、きっとその魔人族が自分の生徒を誑かしたのだとフツフツと湧き上がる怒りを抑えながら聞き返す。

 

 

 

 そんな愛子に、一体何がおかしいのかニヤニヤしながら清水が衝撃の言葉を口にする。

 

 

 

「……畑山先生……あんたを殺す事だよ」 

 

「……え?」

 

 

 

 愛子は、一瞬何を言われたのかわからなかったようで思わず間抜けな声を漏らした。周囲の者達も同様で、一瞬ポカンとするものの、愛子よりは早く意味を理解し、激しい怒りを瞳に宿して清水を睨みつけた。

 

 

 

 清水は、生徒達や護衛隊の騎士達のあまりに強烈な怒りが宿った眼光に射抜かれて一瞬身を竦めるものの、半ばやけくそになっているのか視線を振り切るように話を続けた。

 

 

 

「何だよ、その間抜面。自分が魔人族から目を付けられていないとでも思ったのか? ある意味、勇者より厄介な存在を魔人族が放っておくわけないだろ……〝豊穣の女神〟……あんたを町の住人ごと殺せば、俺は、魔人族側の〝勇者〟として招かれる。そういう契約だった。俺の能力は素晴らしいってさ。勇者の下で燻っているのは勿体無いってさ。やっぱり、分かるやつには分かるんだよ。実際、超強い魔物も貸してくれたし、それで、想像以上の軍勢も作れたし……だから、だから絶対、あんたを殺せると思ったのに! 何だよ! 何なんだよっ! 何で、六万の軍勢が負けるんだよ!お前は、お前は一体何なんだよっ!」

 

 

 

 最初は嘲笑するように、生徒から放たれた〝殺す〟という言葉に呆然とする愛子を見ていた清水だったが、話している内に興奮してきたのか、輪廻の方に視線を転じ喚き立て始めた。その眼は、陰鬱さや卑屈さ以上に、思い通りにいかない現実への苛立ちと、邪魔した輪廻への憎しみ、そして、その力への嫉妬などがない交ぜになってドロドロとヘドロのように濁っており狂気を宿していた。

 

 

 

 どうやら、清水は目の前の少年をクラスメイトだとは気がついていないらしい。元々、話したこともない関係なので仕方ないと言えば仕方ないが……

 

 

 

 清水は、今にも襲いかからんばかりの形相で輪廻を睨み罵倒を続けるが、突然矛先を向けられた輪廻はと言うと、清水の罵倒の中に入っていた「厨二キャラのくせに」という言葉に、実は結構深いダメージをくらい現実逃避気味に遠くを見る目をしていたので、その態度が「俺、お前とか眼中にないし」という態度に見えてしまい、更に清水を激高させる原因になっていた。

 

 

 

 輪廻の心情を察して、後ろから背中をポンポンしてくれているユエ達の優しさがまた泣けてくる。

 

 

 

 シリアスな空気を無視して自分の世界に入っている輪廻のおかげ? で、衝撃から我を取り戻す時間が与えられた愛子は、一つ深呼吸をすると激昂しながらも立ち向かう勇気はないようでその場を動かない清水の片手を握り、静かに語りかけた。

 

 

 

「清水君。落ち着いて下さい」

 

「な、なんだよっ! 離せよっ!」

 

 

 

 突然触れられたことにビクッとして、咄嗟に振り払おうとする清水だったが、愛子は決して離さないと云わんばかりに更に力を込めてギュッと握り締める。清水は、愛子の真剣な眼差しと視線を合わせることが出来ないのか、徐々に落ち着きを取り戻しつつも再び俯き、前髪で表情を隠した。

 

 

 

「清水君……君の気持ちはよく分かりました。〝特別〟でありたい。そう思う君の気持ちは間違ってなどいません。人として自然な望みです。そして、君ならきっと〝特別〟になれます。だって、方法は間違えたけれど、これだけの事が実際にできるのですから……でも、魔人族側には行ってはいけません。君の話してくれたその魔人族の方は、そんな君の思いを利用したのです。そんな人に、先生は、大事な生徒を預けるつもりは一切ありません……清水君。もう一度やり直しましょう? みんなには戦って欲しくはありませんが、清水君が望むなら、先生は応援します。君なら絶対、天之河君達とも肩を並べて戦えます。そして、いつか、みんなで日本に帰る方法を見つけ出して、一緒に帰りましょう?」

 

 

 

 清水は、愛子の話しを黙って聞きながら、何時しか肩を震わせていた。生徒達も護衛隊の騎士達も、清水が愛子の言葉に心を震わせ泣いているのだと思った。実は、クラス一涙脆いと評判の園部優花が、既に涙ぐんで二人の様子を見つめている。

 

 が、そんなに簡単に行くほど甘くはなかった。肩を震わせ項垂れる清水の頭を優しい表情で撫でようと身を乗り出した愛子に対して、清水は突然、握られていた手を逆に握り返しグッと引き寄せ、愛子の首に腕を回してキツく締め上げたのだ。思わず呻き声を上げる愛子を後ろから羽交い絞めにし、何処に隠していたのか十センチ程の針を取り出すと、それを愛子の首筋に突きつけた。

 

 

 

「動くなぁ! ぶっ刺すぞぉ!」

 

 

 

 裏返ったヒステリックな声でそう叫ぶ清水。その表情は、ピクピクと痙攣しているように引き攣り、眼はハジメに向けていた時と同じ狂気を宿している。先程まで肩を震わせていたのは、どうやら嗤っていただけらしい。

 

 

 

 愛子が、苦しそうに自分の喉に食い込む清水の腕を掴んでいるが引き離せないようだ。周囲の者達が、清水の警告を受けて飛び出しそうな体を必死に押し止める。清水の様子から、やると言ったら本気で殺るということが分かったからだ。みな、口々に心配そうな、悔しそうな声音で愛子の名を呼び、清水を罵倒する。

 

 

 

 ちなみに、この時になってようやく、輪廻は現実に復帰した。今の今まで自分の見た目に対する現実逃避でトリップしていたので、いきなりの急展開に「ありゃ? いつの間に…」という顔をしている。

 

 

 

「いいかぁ、この針は北の山脈の魔物から採った毒針だっ! 刺せば数分も持たずに苦しんで死ぬぞ! わかったら、全員、武器を捨てて手を上げろ!」

 

 

 

 清水の狂気を宿した言葉に、周囲の者達が顔を青ざめさせる。完全に動きを止めた生徒達や護衛隊の騎士達にニヤニヤと笑う清水は、その視線を輪廻に向ける。

 

「おい、お前、厨二野郎、お前だ! 後ろじゃねぇよ! お前だっつってんだろっ! 馬鹿にしやがって、クソが! これ以上ふざけた態度とる気なら、マジで殺すからなっ! わかったら、さっきの刀を寄越せ!」

 

 清水の余りに酷い呼び掛けに、つい後ろを振り返って「自分じゃない」アピールをしてみるが無駄に終わり、嫌そうな顔をする輪廻。緊迫した状況にもかかわらず、全く変わらない態度で平然としていることに、またもや馬鹿にされたと思い清水は癇癪を起こす。そして、ヒステリックに、輪廻の持つ斬魄刀を渡せと要求した。

 

 

 

輪廻は、それを聞いて非常に冷めた眼で清水を見返した。

 

 

 

「いや、お前、殺されたくなかったらって……そもそも、そいつ殺さないと魔人族側行けないんだから、どっちにしろ殺すんだろ?しかもこれ、俺じゃねぇと使えねぇからなァ?結局、渡し損じゃねぇか」

 

「うるさい、うるさい、うるさい! いいから黙って全部渡しやがれ! お前らみたいな馬鹿どもは俺の言うこと聞いてればいいんだよぉ! そ、そうだ、へへ、おい、お前のその奴隷も貰ってやるよ。そいつに持ってこさせろ!」

 

 

 

 冷静に返されて、更に喚き散らす清水。追い詰められすぎて、既に正常な判断が出来なくなっているようだ。その清水に目を付けられたシアは、全身をブルリと震わせて嫌悪感丸出しの表情を見せた。

 

 

 

「お前が、うるさい三連発しても、ただひたすらキモイだけだろうに……ていうか、シア、気持ち悪いからって俺の後ろに隠れるなよ。アイツ凄い形相になってるだろうがァ」

 

「だって、ホントに気持ち悪くて……生理的に受け付けないというか……見て下さい、この鳥肌。有り得ない気持ち悪さですよぉ」

 

「まぁ、勇者願望あるのに、セリフが、最初期に出てきて主人公にあっさり殺られるゲスイ踏み台盗賊と同じだしなぁ」

 

 

 

 本人達は声を潜めているつもりなのかもしれないが、嫌悪感のせいで自然と声が大きくなり普通に全員に聞こえていた。清水は、口をパクパクさせながら次第に顔色を赤く染めていき、更に青色へと変化して、最後に白くなった。怒りが高くなり過ぎた場合の顔色変化がよくわかる例である。

 

 

 

 清水は、虚ろな目で「俺が勇者だ、俺が特別なんだ、どいつもこいつも馬鹿ばっかりだ、アイツ等が悪いんだ、問題ない、望んだ通り全部上手くいく、だって勇者だ、俺は特別だ」等とブツブツと呟き始め、そして、突然何かが振り切れたように奇声をあげて笑い出した。

 

 

 

「……し、清水君……どうか、話しを……大丈夫……ですから……」

 

 

 

 狂態を晒す清水に愛子は苦しそうにしながらも、なお言葉を投げかけるが、その声を聞いた瞬間、清水はピタリと笑いを止めて更に愛子を締め上げた。

 

 

 

「……うっさいよ。いい人ぶりやがって、この偽善者が。お前は黙って、ここから脱出するための道具になっていればいいんだ」

 

 

 

 暗く澱んだ声音でそう呟いた清水は、今度はハジメに視線を向けた。興奮も何もなく、負の感情を煮詰めたような眼でハジメを見て、次いで太もものホルスターに収められた銃を見る。言葉はなくても言いたいことは伝わった。ここで渋れば、自分の生死を度外視して、いや、都合のいい未来を夢想して愛子を害しかねない。

 

 ハジメは溜息をつき、銃を渡すならワイヤーを飛ばして愛子ごと〝纏雷〟でもしてやろうと考えつつ、清水を刺激しないようにゆっくりとドンナー・シュラークに手を伸ばした。愛子は体がちっこいので、ほとんど盾の役割を果たしておらず、ハジメの抜き撃ちの速度なら清水が認識する前にヒットさせることも出来るのだが、愛子も少し痛い目を見た方がいいだろうという意図だ。

 

 

 

 が、ハジメの手が下がり始めたその瞬間、事態は急変する。

 

「ハジメ!」

 

「ッ!? ダメです! 避けて!」

 

 

 

 そう叫びながら、シアは、一瞬で完了した全力の身体強化で縮地並みの高速移動をし、愛子に飛びかかった。

 

 

 

 突然の事態に、清水が咄嗟に針を愛子に突き刺そうとする。シアが無理やり愛子を引き剥がし何かから庇うように身を捻ったのと、蒼色の水流が、清水の胸を貫通して、ついさっきまで愛子の頭があった場所をレーザーの如く通過したのはほぼ同時だった。

 

 

 

 射線上にいたハジメが、ドンナーで水のレーザー、おそらく水系攻撃魔法〝破断〟を打ち払う。そして、シアの方は、愛子を抱きしめ突進の勢いそのままに肩から地面にダイブし地を滑った。もうもうと砂埃を上げながら、ようやく停止したシアは、「うぐっ」と苦しそうな呻き声を上げて横たわったままだ。

 

 

 

「シア!」

 

 

 

 突然の事態に誰もが硬直する中、ユエがシアの名を呼びながら全力で駆け寄る。そして、追撃に備えてシアと彼女が抱きしめる愛子を守るように陣取った。

 

「チッどカスがァ!五竜天滅!」

 

ドカドカドゴォォォォォォォォングシャァ

 

魔人族は乗っていた魔物ごと消滅したようだ。

 

「ハジメ!」

 

 

 

普段の落ち着た声音とは異なる焦りを含んだ声でハジメを呼ぶ。

 

 

 

 ハジメは、近くで倒れている清水には目もくれずシアのもとへ駆け寄る。シアは、ミレディに膝枕された状態で仰向けになり苦痛に顔を歪めていた。傍には愛子もおり同じく表情を歪めてユエに抱きしめられている。

 

 

 

「ハ、ハジメさん……うくっ……私は……大丈夫……です……は、早く、先生さんを……毒針が掠っていて……」

 

 

 

 シアの横腹には直径三センチ程の穴が空いていた。身体強化の応用によって出血自体は抑えられているようだが、顔を流れる脂汗に相当な激痛が走っている事がわかる。にもかかわらず、引き攣った微笑みを浮かべながら震える声で愛子を優先しろと言う。

 

 

 

 見れば、愛子の表情は真っ青になっており、手足が痙攣し始めている。愛子は、シアとハジメの会話が聞こえていたのか、必死で首を振り視線でシアを先にと訴えていた。言葉にしないのは、毒素が回っていて既に話せないのだろう。清水の言葉が正しければ、もって数分、いや、愛子の様子からすれば一分も持たないようだ。遅れれば遅れるほど障害も残るかもしれない。

 

 

 

 ハジメは、視線を愛子から逸らすと、躊躇うことなくシアに頷き〝宝物庫〟から試験管型の容器を取り出した。その頃になってようやくハジメ達の元に駆けつけた周囲の者達が焦燥にかられた表情で口々に喚き出す。特に、生徒達やデビッド達の動揺が激しく、半ばパニックになっている。ハジメ達に対して口々に安否を聞いたり、様子を見せろと退かせようとしたり、効きもしない治癒魔法を掛けようとしたり……だが、そんな彼等も、輪廻とハジメの押し殺したような「「黙れ」」の一言に、気圧されて一歩後退って押し黙った。

 

「ハジメ!シアは俺がする、ガキは任せた!」

 

「承知!」

 

輪廻はミレディに膝枕されているシアの元に向かうと、直ぐに神水を創造すると口に含みシアの中に口移しをした。

 

「シア!」

「輪廻…さん」

「チッ我慢しろやァ。」

チュッコクコクコク

「大丈夫か?シア?」(心配するような笑み)

シュトッ

待って、改めて墜ちたような音がしたわ

「…え、え?、だ、大丈夫ですぅ!」

「ならいいんだがなァ。」

「輪廻君〜その顔私にもしてよぉ〜」

「それより、今はあっちだ。」

 

 

 

 

ハジメは、ユエに支えられた愛子を受け取り、その口に試験管を咥えさせ、少しずつ神水を流し込んだ。愛子が、シアを優先しなかったことに咎めるような眼差しをハジメにぶつけるが、ハジメは無視する。今は、愛子の意思より、自分の意志より、シアの意志を優先してやりたかった。なので、問答無用で神水を流し込んでいく。しかし、愛子の体は全体が痙攣を始めており思った通りに体が動かないようで、自分では上手く飲み込めないようだ。しまいには、気管に入ったようで激しくむせて吐き出してしまう。

 

 

 

 ハジメは、愛子が自力で神水を飲み込むことは無理だと判断し、残りの神水を自分の口に含むと、何の躊躇いもなく愛子に口付けして直接流し込んだ。

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 愛子が大きく目を見開く。次いでに、ハジメの周囲で男女の悲鳴と怒声が上がった。しかし、ハジメは、その一切を無視して、愛子の口内に舌を侵入させるとその舌を絡めとり、無理やり神水を流し込んでいく。ハジメの表情には、羞恥や罪悪感の類は一切なく、ただすべきことをするという真剣さだけが浮かんでいた。

 

 

 

 やがて、愛子の喉がコクコクと動き、神水が体内に流れ込む。すると、体を襲っていた痛みや、生命が流れ出していくような倦怠感と寒気が吹き飛び、まるで体の中心に火を灯したような熱が全身を駆け巡った。愛子は、寒い冬場に冷え切った体で熱々の温泉にでも浸かった時のような快感を覚え、体を震わせる。流石、神水。魔物の血肉を摂取することによる肉体崩壊すら防ぐ奇跡の水だ。効果は抜群である。

 

 長いような、一瞬のような口付けが終わり、ハジメが愛子から口を離す。僅かに二人の間に銀色の糸が引かれた。ハジメは、愛子を観察するように見る。それは、確実に神水の効果で危機的状況を脱したのか見極めるためだ。一方、愛子の方は、未だボーとしたまま焦点の合わない瞳でハジメを見つめている。

 

 

 

「先生」

 

「……」

 

「先生?」

 

「……」

 

「おい! 先生!」

 

「ふぇ!?」

 

 ハジメは愛子に容態を聞くため呼びかけるが、ハジメを見つめたままボーとして動かない愛子。業を煮やしたハジメが、軽く頬を叩きながら強めに呼び掛けると何とも可愛らしい声を上げて正気を取り戻した。

 

「体に異変は? 違和感はないか?」

 

「へ? あ、えっと、その、あの、だだ、だ、大丈夫ですよ。違和感はありません、むしろ気持ちいいくらいで……って、い、今のは違います! 決して、その、あ、ああれが気持ち良かったということではなく、薬の効果がry」

 

「そうか。ならいい」

 

 ハジメは、非常にテンパった様子で、しどろもどろになりながら体調に異常はないことを伝える愛子に、実にあっさりした返事をすると、愛子を支えていた腕をこれまたあっさり外してシアの方へ向き直ってしまった。

 

「主よ!そっちは大丈夫でしたか!?」

そう聞くと輪廻達がこっちに来ながら答えた

「アァ、問題ねぇ。」

 

 

 

そして、一段落着いたと察した外野が再び騒ぎ始める前に、おそらく全員が忘却しているであろう哀れな存在を思い出させることにした。特に、愛子にとっては重要なことだ。おそらく、愛子は、突然の出来事だったので忘却しているわけではなく理解していないのだろう。

 

 

 

 ハジメは、一番清水に近い場所にいた護衛騎士の一人に声をかけた。

 

 

 

「……あんた、清水はまだ生きているか?」

 

 

 

 その言葉に全員が「あっ」と今思い出したような表情をして清水の倒れている場所を振り返った。愛子だけが、「えっ? えっ?」と困惑したように表情をしてキョロキョロするが、自分がシアに庇われた時の状況を思い出したのだろう。顔色を変え、慌てた様子で清水がいた場所に駆け寄る。

 

 

 

「清水君! ああ、こんな……ひどい」

 

 

 

 清水の胸にはシアと同じサイズの穴がポッカリと空いていた。出血が激しく、大きな血溜まりが出来ている……おそらく、もって数分だろう。

 

 

 

「し、死にだくない……だ、だずけ……こんなはずじゃ……ウソだ……ありえない……」

 

 

 

 傍らで自分の手を握る愛子に、話しかけているのか、唯の独り言なのかわからない言葉をブツブツと呟く清水。愛子は、周囲に助けを求めるような目を向けるが誰もがスっと目を逸らした。既に、どうしようもないということだろう。それに、助けたいと思っていないことが、ありありと表情に出ている。

 

 

 

 愛子は、藁にもすがる思いで振り返り、そこにいるハジメに叫んだ。

 

 

 

「南雲君!十五夜 さっきの薬を! 今ならまだ! お願いします!」

 

 

 

 ハジメ達は、愛子の言葉を予想していたようで「やっぱりか……」や「めんどくせぇ」と呟きながら溜息をつくと、愛子と清水の下へ向かった。そして、愛子に、どんな返答がなされるか分かっていながら質問する。

 

 

 

「助けたいのか、先生? 自分を殺そうとした相手だぞ? いくら何でも〝先生〟の域を超えていると思うけどな」

 

 

 

 自分を殺そうとした相手を、なお生徒だからと言う理由だけで庇うことのできる、必死になれる〝先生〟というものが、果たして何人いるのだろうか。それは、もう〝先生〟としても異常なレベルだと言えるのではないだろうか。そんな意味を含めて愛子にした質問の意図を愛子は正確に読み取ったようで、一瞬、瞳が揺らいだものの、毅然とした表情で答えた。

 

 

 

「確かに、そうかもしれません。いえ、きっとそうなのでしょう。でも、私がそういう先生でありたいのです。何があっても生徒の味方、そう誓って先生になったのです。だから、南雲君……」

 

「いい加減にしろやクソ餓鬼、今はてめぇの意志なんぞ関係ねえ、別にそいつを助けるのはいい、だがなァ、今回の件は確実にお前らのせいだ。」

 

輪廻はそう言うと、神水を持ち清水に向き直った。

 

「清水、お前を助けてやっても良いがなァ、一つ条件がある。」

「な、何だ?」

「一つ聞きてぇ事があるんだがなァ。」

「な、んだ」

「清水、お前は、勇者になって何がしたかった?」

「え?」

「だからなァ、今やあのゴミ勇者より優秀なお前が、勇者にまでなって、したかったことはなんだァ?」

「し、したかった事?」

「アァ。じゃァ質問を変えるかァ、お前がしたかった事はなんだァ?」

「お、俺は、俺は、認めて欲しかったんだ!誰かに!何でもいいから!それで、1番認めてくれそうなのが勇者だったから。」

承認欲求、それは誰もが持っているもの。そして、それは輪廻が貰えなかったもの。だから輪廻はよく分かる。

「そうかァ、そいつは辛かったなァ、誰にも認められないって言うのは、辛えだろォ?よく分かるぜぇ。清水、お前は誰かに認めて貰いてぇんだろォ?」

「あ、ああ。」

輪廻は清水に神水を飲ませるために近付きながらこう言った。

「それなら俺の下に付かねぇか?」

ゴクゴクゴク

「え?」

「俺の元に部下として付け、そしたら幾らでも褒めてやる、認めてやる。」

「なら!俺は、俺はアンタの下に着く!」

「アァ。よろしく頼むぜェ、清水。」

「 !あぁ!まかせろ!」

輪廻はそう言えばと、思いつつ優花の方に向かっていった。

「おい、園部、ハジメに言いてぇ事が有るなら言っとけよォ。」と小声で言った。

「え?う、うん。」

 

私は何年か前(中学三年生の時)に南雲と出会った、

それはある事件がきっかけだった。

 

ある日、いつものように学校から帰っていると、その当時流行っていた都市伝説の一つである、一方通行(アクセラレータ)を見かけたんだ。その時は一緒にいた友人と盛り上がったけど、すぐ隣に誰か一緒に歩いているのがみえたの。その時は特に気にしなかったんだ。

 

問題なのはこの次の日。

 

この日は一人で帰って居たんだけど、その時当時色んな意味で有名だった悪ガキ(檜山)が、私に襲って来たの

 

「ぐへへへへへ良いだろ!」(溢れ出る小物感)

「きゃぁ!何すんのよ!」

だけどその時、

「クソ!何で輪廻はこんな時に居ないんだ!」

と言いながら檜山を一瞬で投げ倒して意識を刈り取った、南雲(ハジメはこの段階で、空手、柔道、剣道で二段を持っています。普通に強い。)

「大丈夫?」

「えぇ、大丈夫よ、ありがとう」

「ううん、別になんて事ないよ。それより輪廻はどこに行ったんだ?」

「今戻ったぜェ。」

「あ、輪廻、どこ行ってたの?」

「そこにいる奴のお仲間を締めてきた。」

「あ、一方通行!」

「だからなんだよその、一方通行って」

「輪廻知らないの?輪廻の事だよ?」

 

 

 

「それで?結局あんた達は何してたの?」

「コンビニで珈琲と煙草を買いに」

「輪廻の付き添い」

もう飛ばすわ、何が言いたいかって言うと結局優花がハジメに、惚れる切っ掛け!

 

 

 

「ねぇ南雲、」

「ん?何だ園部」

「あん時助けてくれてありがとね。」

「まぁ普通の人間として当たり前の事をしただけだけどな。」

「それでもありがと。」

「まぁ、それでお前が助かったんならいいんじゃねぇか?」

はじめのほほえみ、効果はばつぐんだ。

ストンっ

優花ちゃんって結構チョロくね?

「そ、そうね、でも勘違いしないでね!あんたのことべ、別に好きじゃないから!」

そしてやっぱりツンデレ系。

「何ラブコメしてんだよォ、さっさと行くぞ。」

「ねぇ十五夜、私も連れてってくれない?」

「…………………俺んとこは定員オーバーだからハジメと一緒に行けよ。」

 

その後車内にて。

「なあ、我が君、」

「何だ?」

「園部さぁ、絶対に惚れてますよね?ハジメに」

「アァ、俺もそう思うぜェ。」

 

フェーレンにて。

 

現在、輪廻達は冒険者ギルドにある応接室に通されていた。

 

 出された如何にも高級そうなお茶と茶菓子をバリボリ、ゴクゴクと遠慮なく貪りながら待つこと五分。部屋の扉を蹴破らん勢いで開け放ち飛び込んできたのは、ハジメ達にウィル救出の依頼をしたイルワ・チャングだ。

 

 

 

「ウィル! 無事かい!? 怪我はないかい!?」

 

 

 

 以前の落ち着いた雰囲気などかなぐり捨てて、視界にウィルを収めると挨拶もなく安否を確認するイルワ。それだけ心配だったのだろう。

 

 

 

「イルワさん……すみません。私が無理を言ったせいで、色々迷惑を……」

 

「……何を言うんだ……私の方こそ、危険な依頼を紹介してしまった……本当によく無事で……ウィルに何かあったらグレイルやサリアに合わせる顔がなくなるところだよ……二人も随分心配していた。早く顔を見せて安心させてあげるといい。君の無事は既に連絡してある。数日前からフューレンに来ているんだ」

 

「父上とママが……わかりました。直ぐに会いに行きます」

 

 

 

 イルワは、ウィルに両親が滞在している場所を伝えると会いに行くよう促す。ウィルは、イルワに改めて捜索に骨を折ってもらったことを感謝し、ついで、輪廻達に改めて挨拶に行くと約束して部屋を出て行った。ハジメとしては、これっきりで良かったのだが、きちんと礼をしないと気が済まないらしい。

 

 

 

 ウィルが出て行った後、改めてイルワと輪廻達が向き合う。イルワは、穏やかな表情で微笑むと、深々と輪廻とハジメに頭を下げた。

 

 

 

「輪廻君達、今回は本当にありがとう。まさか、本当にウィルを生きて連れ戻してくれるとは思わなかった。感謝してもしきれないよ」

 

「まぁ、生き残っていたのはウィルの運が良かったからだろ」

 

「ふふ、そうかな? 確かに、それもあるだろうが……何万もの魔物の群れから守りきってくれたのは事実だろう?」

 

「それにしても、大変だったね。まさか、北の山脈地帯の異変が大惨事の予兆だったとは……二重の意味で君達に依頼して本当によかった。数万の大群を殲滅した力にも興味はあるのだけど……聞かせてくれるかい? 一体、何があったのか」

 

「ああ、構わねぇよ。だが、その前にユエとシアとミレディのステータスプレートを頼むよ……ティオは『うむ、三人が貰うなら妾の分も頼めるかの』……ということだ」

 

「ふむ、確かに、プレートを見たほうが信憑性も高まるか……わかったよ」

 

 

 

 そう言って、イルワは、職員を呼んで真新しいステータスプレートを四枚持ってこさせる。

 

 

 

 結果、ユエ達のステータスは以下の通りだった。

 

 

 

====================================

 

ユエ 323歳 女 レベル:75

 

天職:神子

 

自動再生[+痛覚操作]・全属性適性・複合魔法・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収]・想像構成[+イメージ補強力上昇][+複数同時構成][+遅延発動]・血力変換[+身体強化][+魔力変換][+体力変換][+魔力強化][+血盟契約]・高速魔力回復・生成魔法・重力魔法

 

====================================

 

 

 

====================================

 

シア・ハウリア 16歳 女 レベル:40

 

天職:占術師

 

筋力:60 [+最大6100]

 

体力:80 [+最大6120]

 

耐性:60 [+最大6100]

 

敏捷:85 [+最大6125]

 

魔力:3020

 

魔耐:3180

 

技能:未来視[+自動発動][+仮定未来]・魔力操作[+身体強化][+部分強化][+変換効率上昇Ⅱ] [+集中強化]・重力魔法

 

====================================

 

ミレディ・ライセン ?歳 女 レベル90

 

天職 ?

 

筋力:3000

 

体力:4000

 

耐性:5000

 

敏捷:3000

 

魔力:30000

 

魔耐:50000

 

技能:全属性適正・全属性耐性・魔力操作・複合魔法・神代魔法

 

====================================

 

ティオ・クラルス 563歳 女 レベル:89

 

天職:守護者

 

筋力:770  [+竜化状態4620]

 

体力:1100  [+竜化状態6600]

 

耐性:1100  [+竜化状態6600]

 

敏捷:580  [+竜化状態3480]

 

魔力:4590

 

魔耐:4220

 

技能:竜化[+竜鱗硬化][+魔力効率上昇][+身体能力上昇][+咆哮][+風纏][+痛覚変換]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・火属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・風属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・複合魔法

 

====================================

 

 

 

 ハジメには及ばないものの、召喚されたチート集団ですら少人数では相手にならないレベルのステータスだ。勇者が限界突破を使っても及ばないレベルである。

 

 

 

 流石に、イルワも口をあんぐりと開けて言葉も出ない様子だ。無理もない。ユエとティオは既に滅んだとされる種族固有のスキルである〝血力変換〟と〝竜化〟を持っている上に、ステータスが特異に過ぎる。シアは種族の常識を完全に無視している。驚くなという方がどうかしている。

 

 

 

「いやはや……なにかあるとは思っていましたが、これほどとは……」

 

 

 

 冷や汗を流しながら、何時もの微笑みが引き攣っているイルワに、ハジメはお構いなしに事の顛末を語って聞かせた。普通に聞いただけなら、そんな馬鹿なと一笑に付しそうな内容でも、先にステータスプレートで裏付けるような数値や技能を見てしまっているので信じざるを得ない。イルワは、すべての話を聞き終えると、一気に十歳くらい年をとったような疲れた表情でソファーに深く座り直した。

 

 

 

「……道理でキャサリン先生の目に留まるわけだ。ハジメ君が異世界人の一人だということは予想していたが……実際は、遥か斜め上をいったね……」

 

「……それで、支部長さんよ。あんたはどうするんだ? 危険分子だと教会にでも突き出すか?」

 

 

 

 イルワは、ハジメの質問に非難するような眼差しを向けると居住まいを正した。

 

 

 

「冗談がキツいよ。出来るわけないだろう? 君達を敵に回すようなこと、個人的にもギルド幹部としても有り得ない選択肢だよ……大体、見くびらないで欲しい。君達は私の恩人なんだ。そのことを私が忘れることは生涯ないよ」

 

「……そうか。そいつは良かった」

 

 

 

 ハジメは、肩を竦めて、試して悪かったと視線で謝意を示した。

 

 

 

「私としては、約束通り可能な限り君達の後ろ盾になろうと思う。ギルド幹部としても、個人としてもね。まぁ、あれだけの力を見せたんだ。当分は、上の方も議論が紛糾して君達に下手なことはしないと思うよ。一応、後ろ盾になりやすいように、君達の冒険者ランクを全員〝金〟にしておく。普通は、〝金〟を付けるには色々面倒な手続きがいるのだけど……事後承諾でも何とかなるよ。キャサリン先生と僕の推薦、それに〝女神の剣〟という名声があるからね」

 

 

 

 イルワの大盤振る舞いにより、他にもフューレンにいる間はギルド直営の宿のVIPルームを使わせてくれたり、イルワの家紋入り手紙を用意してくれたりした。何でも、今回のお礼もあるが、それ以上に、ハジメ達とは友好関係を作っておきたいということらしい。ぶっちゃけた話だが、隠しても意味がないだろうと開き直っているようだ。

 

最後のオマケの輪廻君のステータス

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

 

 

 

十五夜輪廻 17歳(534歳) 男 レベル70

 

 

 

 

 

 

 

転職:死神·剣豪·学園第一位·魔神

 

 

 

 

 

 

 

筋力:210000000

 

 

 

 

 

体力:150000000

 

 

 

 

 

 

耐性:210000000

 

 

 

 

 

 

 

敏捷:100000000

 

 

 

 

 

魔力:135000000

 

 

 

 

 

 

 

魔耐:100000000

 

 

 

 

 

  

霊圧:160000000

 

 

 

 

 

 

技能:無から有を創造する程度の能力·運命を決定する程度の能力·創造·浅打創造·超剣技·超剣術·日の呼吸+[爍刀]·斬魄刀+[始解]+[卍解]+[卍解ニ式]+[卍解三式]·鬼道+[縛道]+[破道]·ベクトル操作+[反射]·魔人化+[魔神化]·自己再生·不老不死·霊槍シャスティホル·魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・纏雷[+雷耐性][+出力増大]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛[+部分強化][+集中強化][+付与強化]・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復[+魔素集束]・魔力変換[+体力変換][+治癒力変換][+衝撃変換]・限界突破+[覇潰][+上限突破]·錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成][+高速錬成][+自動錬成][+イメージ補強力上昇][+消費魔力減少][+鉱物分解]·言語理解

 

 

 

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次回。輪廻○○になる。


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第13話 輪廻 パパになる。

こんばんわ湯たんぽです。
感想減ってきて悲しすぎるわ、みんな忙しいのかな?
評価は増えて来たけどねぇ。感想がないとその話反応が分からないんだよねぇ。
アンケートは見たい人と更新して欲しい人とラーメン食べたい人が多いです。
と言うかラーメン食べたいは完全にネタ枠何だけど、多いねぇ。

注意書き

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
輪廻君が何言ってるか解らなくても気にしないで。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十五人ぐらいになりそう!(現時点、後に更に増える。)
輪廻君むっちゃちーと。

それでもいいよと言う方のみご覧下さい。




「ハジメ、俺は今日ちょっと用事ある。だからユエ達に言っといてくれ。」

 

明朝輪廻に呼び出されたハジメは、用事があるとの事で輪廻から伝言を伝えるために、輪廻が行った後にユエ達を起こした。

 

「今日は主は用事が有るらしいから、伝えておく。

ユエ、シア、ミレディ、ティオは買い出しに行ってこい。俺は園部に街を案内してやれと、清水は念の為に主に着いて行った。」

「……分かった。」

「了解ですぅ!」

「はいは〜い。分かったよぉ〜。」

「分かったのじゃ。」

「分かったわ。」

 

 

輪廻〜

 

「清水、」

「何ですか我が君?」

「お前には、手を汚す覚悟があるかァ?」

「……やっぱり、これはそういう事ですよね?」

「…アァ。」

そこでは、輪廻と髪が白くなった清水が話し合っていた。

ーーー

 

輪廻は、清水と一緒に地下下水道を歩いていた。

そしてある所で止まった、子供が流されていたのだ。

 

「この子は……」

 

「まぁ、息はあるし……取り敢えずここから離れるぞ。臭いが酷い」

 

 引き上げられたその子供を見て、清水が驚きに目を見開く。輪廻も、その容姿を見て知識だけはあったので、内心では結構驚いていた。しかし、場所が場所だけに、肉体的にも精神的にも衛生上良くないと場所を移動する事にする。

 

 

 

 子供の素性的に唯の事故で流されたとは思えないので、そのまま天井を蹴破るとストリートに出ることが躊躇われた輪廻は、穴を錬成で塞ぎ、代わりに地上の建物の配置を思い出しながら下水通路に錬成で横穴を開けた。そして、能力で毛布を作り出すと小さな子供をくるみ、抱きかかえて移動を開始した。

 

 

 

 とある裏路地の突き当たりに突如紅いスパークが奔り地面にポッカリと穴が空く。そこからピョンと飛び出したのは、毛布に包まれた小さな子供を抱きかかえた輪廻と清水だ。輪廻は、錬成で穴を塞ぐと、改めて自らが抱きかかえる子供に視線を向けた。

 

 

 

 その子供は、見た目三、四歳といったところだ。エメラルドグリーンの長い髪と幼い上に汚れているにも関わずわかるくらい整った可愛らしい顔立ちをしている。女の子だろう。だが何より特徴的なのは、その耳だ。通常の人間の耳の代わりに扇状のヒレが付いているのである。しかも、毛布からちょこんと覗く紅葉のような小さな手には、指の股に折りたたまれるようにして薄い膜がついている。

 

 

 

「この子、海人族の子ですね……どうして、こんな所に……」

 

「まァ、まともな理由じゃないのは確かだろうなァ」

 

 

 

 海人族は、亜人族としてはかなり特殊な地位にある種族だ。西大陸の果、【グリューエン大砂漠】を超えた先の海、その沖合にある【海上の町エリセン】で生活している。彼等は、その種族の特性を生かして大陸に出回る海産物の八割を採って送り出しているのだ。そのため、亜人族でありながらハイリヒ王国から公に保護されている種族なのである。差別しておきながら使えるから保護するという何とも現金な話だ。

 

 

 

 そんな保護されているはずの海人族、それも子供が内陸にある大都市の下水を流れているなどありえない事だ。犯罪臭がぷんぷんしている。

 

 

 

 と、その時、海人族の幼女の鼻がピクピクと動いたかと思うと、パチクリと目を開いた。そして、その大きく真ん丸な瞳でジーと輪廻を見つめ始める。何となく目が合ったまま逸らさずジーと見つめ返した。意味不明な緊迫感が漂う中、清水が何をしているんだと呆れた表情で近づくと、海人族の幼女のお腹がクゥーと可愛らしい音を立てる。再び鼻をピクピクと動かし、輪廻から視線を逸らすと、その目が未だに持っていた清水の露店の包み(来る途中に買った)をロックオンした。

 

 

 

 清水がこれ? と首を傾げながら、串焼きの入った包み右に左にと動かすと、まるで磁石のように幼女の視線も左右に揺れる。どうやら、相当空腹のようだ。清水が、包から串焼きを取り出そうとするのを制止して、輪廻は幼女に話しかけながら錬成を始めた。

 

 

 

「で? お前の名前は?」

 

 

 

 女の子は、清水の持つ串焼きに目を奪われていたところ、突如、地面から紅いスパークが走り始め、四角い箱状のものがせり上がってくる光景に驚いたように身を竦めた。そして、再度、輪廻から名前を聞かれて、視線を彷徨わせた後、ポツリと囁くような声で自身の名前を告げた。

 

 

 

「……ミュウ」

 

「そうか。俺は輪廻で、そっちは清水だ。それでミュウ。あの串焼きが食べたいなら、まず、体の汚れを落とせェ」

 

 

 

 輪廻は、完成した簡易の浴槽に〝宝物庫〟から綺麗な水を取り出し浴槽に貯め、更にフラム鉱石を利用した温石で水温を調整し即席のお風呂を作った。下水で汚れた体のまま食事をとるのは非常に危険だ。幾分か飲んでしまっているだろうから、解毒作用や殺菌作用のある薬(市販品)も飲ませておく必要がある。

 

 

 

 返事をする間もなく、毛布と下水をたっぷり含んだ汚れた衣服を脱がされ浴槽に落とされたミュウは、「ひぅ!」と怯えたように身を縮めたものの、体を包む暖かさに次第に目を細めだした。輪廻は、薬やタオル、石鹸等を出しミュウの世話をして、清水にミュウの衣服を買いに袋小路を出て行かせた。(容赦なくパシリにされる清水君、しかしそれに気付いてない本人と輪廻。)

 

 

 しばらくして、清水が、ミュウの服を揃えて袋小路に戻ってくると、ミュウは既に湯船から上がっており、新しい毛布にくるまれて輪廻に抱っこされているところだった。抱っこされながら、輪廻が出した串焼きをはぐはぐと小さな口を一生懸命動かして食べている。薄汚れていた髪は、本来のエメラルドグリーンの輝きを取り戻し、光を反射して天使の輪を作っていた。

 

 

 

「帰ってきたかァ清水、こいつは問題ねぇみてぇだァ。」

 

 

 

 清水が帰ってきた事に気がついた輪廻が、清水にそういった。ミュウもそれで清水の存在に気がついたのか、はぐはぐと口を動かしながら、再びジーと清水を見つめ始めた。良い人か悪い人かの判断中なのだろう。

 

 

 

 清水は、輪廻の言葉に頷くと、買ってきた服を取り出した。シアの着ていた服に良く似た乳白色のフェミニンなワンピースだ。それに、グラディエーターサンダルっぽい履物、それと下着だ。子供用とは言え、店で買う時は店員の目が非常に気になった。

 

 

 

 清水は輪廻へこれらを渡した。

輪廻は毛布を剥ぎ取りポスッと上からワンピースを着せた。次いでに下着もさっさと履かせる。そして、ミュウの前に跪いて片方ずつ靴を履かせていった。更に、ドライヤーを作り、湿り気のあるミュウの髪を乾かしていく。ミュウはされるがままで、ジーと輪廻を見ているが、温風の気持ちよさに次第に目を細めていった。

 

 

 

「……何気に、我が君って面倒見いいですよね」

 

「何だァ、藪から棒に……」

 

めんどくさかったので、話題を逸らした

 

「で、今後の事だが……」

 

「この子をどうするかですね……」

 

 

 

 二人が自分の事を話していると分かっているようで、上目遣いで輪廻と清水を交互に見るミュウ。

 

 

 

 輪廻は取り敢えず、ミュウの事情を聞いてみることにした。

 

 

 

 結果、たどたどしいながらも話された内容は、輪廻が予想したものに近かった。すなわち、ある日、海岸線の近くを母親と泳いでいたらはぐれてしまい、彷徨っているところを人間族の男に捕らえられたらしいということだ。

 

 

 

 そして、幾日もの辛い道程を経てフューレンに連れて来られたミュウは、薄暗い牢屋のような場所に入れられたのだという。そこには、他にも人間族の幼子たちが多くいたのだとか。そこで幾日か過ごす内、一緒にいた子供達は、毎日数人ずつ連れ出され、戻ってくることはなかったという。少し年齢が上の少年が見世物になって客に値段をつけられて売られるのだと言っていたらしい。

 

 

 

 いよいよ、ミュウの番になったところで、その日たまたま下水施設の整備でもしていたのか、地下水路へと続く穴が開いており、懐かしき水音を聞いたミュウは咄嗟にそこへ飛び込んだ。三、四歳の幼女に何か出来るはずがないとタカをくくっていたのか、枷を付けられていなかったのは幸いだった。汚水への不快感を我慢して懸命に泳いだミュウ。幼いとは言え、海人族の子だ。通路をドタドタと走るしかない人間では流れに乗って逃げたミュウに追いつくことは出来なかった。

 

 

 

 だが、慣れない長旅に、誘拐されるという過度のストレス、慣れていない不味い食料しか与えられず、下水に長く浸かるという悪環境に、遂にミュウは肉体的にも精神的にも限界を迎え意識を喪失した。そして、身を包む暖かさに意識を薄ら取り戻し、気がつけば輪廻の腕の中だったというわけだ。

 

 

 

「客が値段をつける……かァ。オークションか。それも人間族の子や海人族の子を出すってんなら裏のオークションなんだろうなァ」

 

「……我が君、どうしますか?私としては、保安局に預けた方がいいと思いますが?」

 

清水がそう提案する。

「アァ、そうだなァ。いいか、ミュウ。これから、お前を守ってくれる人達の所へ連れて行く。時間は掛かるだろうが、いつか西の海にも帰れるだろう」

 

「……お兄ちゃん達は?」

 

 ミュウが、輪廻の言葉に不安そうな声音で二人はどうするのかと尋ねる。

 

 

「悪いが、そこでお別れだ」

 

「やっ!」

 

「いや、やっ! じゃなくてなァ……」

 

「お兄ちゃん達がいいの! 二人といるの!」

 

 

 

 思いのほか強い拒絶が返ってきて輪廻が若干たじろぐ。ミュウは、駄々っ子のように輪廻の膝の上でジタバタと暴れ始めた。今まで、割りかし大人しい感じの子だと思っていたが、どうやらそれは、輪廻達の人柄を確認中だったからであり、信頼できる相手と判断したのか中々の駄々っ子ぶりを発揮している。元々は、結構明るい子なのかもしれない。

 

 

 

 輪廻としても信頼してくれるのは悪い気はしないのだが、どっちにしろ公的機関への通報は必要であるし、途中で【大火山】という大迷宮の攻略にも行かなければならないのでミュウを連れて行くつもりはなかった。なので、「やっーー!!」と全力で不満を表にして、一向に納得しないミュウへの説得を諦めて、抱きかかえると強制的に保安署に連れて行くことにした。

 

 

 

 ミュウとしても、窮地を脱して奇跡的に見つけた信頼出来る相手から離れるのはどうしても嫌だったので、保安署への道中、輪廻の髪やら首やら頬やらを盛大に引っかき必死の抵抗を試みる。隣に愛想笑いを浮かべる清水がいなければ、輪廻こそ誘拐犯として通報されていたかもしれない。髪はボサボサ、首に傷、頬に引っかき傷を作って保安署に到着した輪廻は、目を丸くする保安員に事情を説明した。

 

 事情を聞いた保安員は、表情を険しくすると、今後の捜査やミュウの送還手続きに本人が必要との事で、ミュウを手厚く保護する事を約束しつつ署で預かる旨を申し出た。輪廻の予想通り、やはり大きな問題らしく、直ぐに本部からも応援が来るそうで、自分達はお役目御免だろうと引き下がろうとした。が……

 

「お兄ちゃん達は、ミュウが嫌いなの?」

 

 幼女にウルウルと潤んだ瞳で、しかも上目遣いでそんな事を言われて平常心を保てるヤツはそうはいない。清水も、「うっ」と唸り声を上げ、旅には連れて行けないこと、眼前の保安員のおっちゃんに任せておけば家に帰れる事を根気よく説明するが、ミュウの悲しそうな表情は一向に晴れなかった。

 

 

 

 見かねた保安員達が、ミュウを宥めつつ少し強引に輪廻達と引き離し、ミュウの悲しげな声に後ろ髪を引かれつつも、ようやく輪廻達は保安署を出たのだった。

 

やがて保安署も見えなくなり、かなり離れた場所に来たころ、清水に声をかけようとした。と、その瞬間、

 

 

 

ドォガァアアアン!!!!

 

 

 

 背後で爆発が起き、黒煙が上がっているのが見えた。その場所は、

 

 

 

「我が君!あそこって……」

 

「チッ、保安署か!」

 

 

 

 そう、黒煙の上がっている場所は、さっきまでハジメ達がいた保安署があった場所だった。二人は、互いに頷くと保安署へと駆け戻る。タイミング的に最悪の事態が脳裏をよぎった。すなわち、ミュウを誘拐していた組織が、情報漏えいを防ぐためにミュウごと保安署を爆破した等だ。

 

 

 

 焦る気持ちを抑えつけて保安署にたどり着くと、表通りに署の窓ガラスや扉が吹き飛んで散らばっている光景が目に入った。しかし、建物自体はさほどダメージを受けていないようで、倒壊の心配はなさそうだった。輪廻達が、中に踏み込むと、対応してくれたおっちゃんの保安員がうつ伏せに倒れているのを発見する。

 

 

 

 両腕が折れて、気を失っているようだ。他の職員も同じような感じだ。幸い、命に関わる怪我をしている者は見た感じではいなさそうである。輪廻が、職員達を見ている間、ほかの場所を調べに行った清水が、焦った表情で戻ってきた。

 

 

 

「我が君!あの子がいません! それにこんなものが!」

 

 

 

 清水が手渡してきたのは、一枚の紙。そこにはこう書かれていた。

 

 

 

〝海人族の子を死なせたくなければ、白髪の兎人族達を連れて○○に来い〟

 

「我が君、これは……」

 

「どうやら、あっちは相当死にたい様だなァ。……」

 

 輪廻は、メモ用紙をグシャと握り潰すと凶悪な笑みを浮かべた。おそらく、連中は保安署でのミュウと輪廻達のやり取りを何らかの方法で聞いていたのだろう。そして、ミュウが人質として役に立つと判断し、口封じに殺すよりも、どうせならレアな兎人族や美しい女達も手に入れてしまおうとでも考えたようだ。

 

そして話は冒頭に戻る。

 

「それでェ?手を汚す覚悟はあるかァ?」

「……はい、貴方に使えた時から覚悟は出来ています。」

「そうかァ、なら話は速い、組織潰してアイツをもらうぜぇ。」

 

 

商業区の中でも外壁に近く、観光区からも職人区からも離れた場所。公的機関の目が届かない完全な裏世界。大都市の闇。昼間だというのに何故か薄暗く、道行く人々もどこか陰気な雰囲気を放っている。

 

 

 

 そんな場所の一角にある七階建ての大きな建物、表向きは人材派遣を商いとしているが、裏では人身売買の総元締をしている裏組織〝フリートホーフ〟の本拠地である。いつもは、静かで不気味な雰囲気を放っているフリートホーフの本拠地だが、今は、騒然とした雰囲気で激しく人が出入りしていた。おそらく伝令などに使われている下っ端であろうチンピラ風の男達の表情は、訳のわからない事態に困惑と焦燥、そして恐怖に歪んでいた。

 

 

 

 そんな普段の数十倍の激しい出入りの中、どさくさに紛れるように頭までスッポリとローブを纏った者が一人、フリートホーフの本拠地に難なく侵入した。バタバタと慌ただしく走り回る人ごみをスイスイと避けながら進み、遂には最上階のとある部屋の前に立つ。その扉からは男の野太い怒鳴り声が廊下まで漏れ出していた。それを聞いて、ローブを纏った者が聞き耳を立てる。

 

「ふざんけてんじゃねぇぞ! アァ!? てめぇ、もう一度言ってみやがれ!」

 

「ひぃ! で、ですから、潰されたアジトは既に百五十軒を超えました。襲ってきてるのは二人組です!」

 

「じゃあ、何か? たった2人のクソ共にフリートホーフがいいように殺られてるってのか? あぁ?」

 

「そ、そうなりまッへぶ!?」

 

 

 

 室内で、怒鳴り声が止んだかと思うと、ドガッ! と何かがぶつかる音がして一瞬静かになる。どうやら報告していた男が、怒鳴っていた男に殴り倒されでもしたようだ。

 

 

 

「てめぇら、何としてでも、そのクソ共を生きて俺の前に連れて来い。生きてさえいれば状態は問わねぇ。このままじゃあ、フリートホーフのメンツは丸潰れだ。そいつらに生きたまま地獄を見せて、見せしめにする必要がある。連れてきたヤツには、報酬に五百万ルタを即金で出してやる! 一人につき、だ! 全ての構成員に伝えろ!」

 

 男の号令と共に、室内が慌ただしくなる。男の指示通り、組織の構成員全員に伝令するため部屋から出ていこうというのだろう。だがしかし。

 

「その必要は無い、本人が居るからな!全集中・月の呼吸漆ノ型 厄鏡・月映え!」

ズジャァァァァァ

「さて、粗方片付いたし、ミュウちゃんの事聞かせて貰おうか。 」

ミュウと言われて一瞬、訝しそうな表情を見せたハンセンだが、海人族の子と言われ思い至ったのか少しずつ刺さっていく刀に苦悶の表情を浮かべながら必死に答えた。どうやら、今日の夕方頃に行われる裏オークションの会場の地下に移送されたようだ。

 

 ちなみに、ハンセンは清水とミュウの関係を知らなかったようで、なぜ、海人族の子にこだわるのか疑問に思ったようだ。おそらく、清水達とミュウのやり取りを見ていたハンセンの部下が咄嗟に思いつきでシア達の誘拐計画を練って実行したのだろう。元々、シアはフリートホーフの誘拐リストの上位に載っていたわけであるから、自分で誘拐して組織内での株を上げようとでもしたに違いない。

 

 

 

 清水は、左の腕輪に手を触れて念話石を起動すると、輪廻に連絡をとった。

 

 

 

〝我が君。聞こえますか?俺です〟

 

〝…………清水。ああ、聞こえる。どうしたァ?今潰してる最中何だがァ〟

 

〝それはすみません、ですがあの子の居場所が分かりました。我が君は今、観光区ですよね? そちらの方が近いので先に向かって下さい〟

 

〝了解だァ〟

 

 

 

 清水は、輪廻に詳しい場所を伝えると念話を切った。既に腹に刀が貫通しているので呼吸もままならないのか、青紫っぽい顔色になっているハンセン。清水は、刀を抜くと、血を払い肩に担いだ。刀からは解放されたものの、既に出血多量で意識が朦朧とし始めているハンセンは、それでも必死に清水に手を伸ばし助けを求めた。

 

「た、助け……医者を……」

 

「子供の人生を食い物にしておいて、それは都合が良すぎる…それにお前のような人間を逃したりしたら、我が君や奥様方に怒られるんだ。というわけで、じゃあな。」

 

「や、やめ!」

ザシュッ

男を刺し着いた血を払い背中に直すと。

直ぐに主の元へ急行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

輪廻と合流した清水。

 

輪廻達は情報の場所に急行していた。ミュウがオークションに出される以上、命の心配はないだろうが精神的な負担は相当なもののはずだ。奪還は早いに越したことはない。

 

 

 

 目的の場所に到着すると、その入口には二人の黒服に身を包んだ巨漢が待ち構えていた。輪廻は、騒ぎを起こしてまたミュウが移送されては堪らないと思い、裏路地に移動すると錬成を使って地下へと侵入した。

 

 

 

 清水と共に、気配遮断を使いながら素早く移動していく。ダンボールが無いのは非常に残念だ。あれさえあれば、気配遮断のスキルすらいらないというのに……

 

 

 

 やがて、地下深くに無数の牢獄を見つけた。入口に監視が一人おり居眠りをしている。その監視の前を素通りして行くと、中には、人間の子供達が十人ほどいて、冷たい石畳の上で身を寄せ合って蹲っていた。十中八九、今日のオークションで売りに出される子供達だろう。

 

 

 

 基本的に、人間族のほとんどは聖教教会の信者であることから、そのような人間を奴隷や売り物にすることは禁じられている。人間族でもそのような売買の対象となるのは犯罪者だけだ。彼等は、神を裏切った者として、奴隷扱いや売り物とすることが許されるのである。そして、眼前で震えている子供達が、そろってそのような境遇に落とされべき犯罪者とは到底思えない。そもそも、正規の手続きで奴隷にされる人間は表のオークションに出されるのだ。ここにいる時点で、違法に捕らえられ、売り物にされていることは確定だろう。

 

 

 

 輪廻は、突然入ってきた人影に怯える子供達と鉄格子越しに屈んで視線を合わせると、静かな声音で尋ねた。

 

 

 

「ここに、海人族の女の子はこなかったかァ?」

 

 

 

 てっきり、自分達の順番だと怯えていた子供達は、予想外の質問に戸惑ったように顔を見合わせる。牢屋の中にはミュウの姿はなかった。そのため、輪廻は、他にも牢屋があるのか、それとも既に連れ出された後なのか、子供達に尋ねてみたのだ。

 

「えっと、海人族の子なら少し前に連れて行かれたよ……お兄さん達は誰なの?」

 

 やはり、既に連れて行かれたあとかと内心舌打ちした輪廻は、不安そうな少年に向かって簡潔に返した。

 

 

 

「助けに来たんだよ」

 

「えっ!? 助けてくれるの!」

 

 

 

 輪廻の言葉に、驚愕と喜色を浮かべて、つい大声を出してしまう少年。その声は薄暗い地下牢によく響き渡った。慌てて口を両手で抑える少年だったが、監視にはばっちり聞こえていたようで「何騒いでんだ!」と目を覚ましてドタドタと地下牢に入ってきた。

 

 

 

 そして、輪廻達を見つけて、一瞬硬直するものの「てめぇら何者だ!」と叫びながら短剣を抜いて襲いかかる。それを見て、子供達は、刺されて倒れる輪廻達の姿を幻視し悲鳴を上げた。

 

 

 

 だが、そんな事はありえない。輪廻は、突き出された刃物を左手で無造作に掴み取ると、そのまま力を込めて短剣の刃を粉々に砕いてしまった。輪廻が、手を広げるとバラバラとこぼれ落ちる刃の欠片。監視の男は、それが何なのか一瞬理解出来なかったようでキョトンとした表情をすると、手元の短剣に目を落とした。そして、柄だけになっている姿を見て、ようやく何が起こったのか理解し、「なっ、なっ」と言葉を詰まらせながら顔を青ざめさせて一歩後退った。

 

 

 

 輪廻は、問答無用で一歩詰めると男の頭を鷲掴みにし、そのまま地面に叩きつけた。

 

 

 

グシャ!

 

 そんな生々しい音共に、一瞬で男は絶命する。

 

「監視なら仕事しろ仕事ォ。」

 

 呆れた表情でそんな事を言いながら、文字通り監視を瞬殺した輪廻に、子供達は目を丸くして驚いている。そんな視線にもお構いなしに輪廻は、錬成で鉄格子を分解してしまう。子供達の目には、一瞬で鉄格子を消し去ってしまったように見えたため更に驚いてポカンと口を開いたまま硬直してしまった。

 

 

 

「清水、悪いが、こいつ等を頼めるか? 俺は、どうやらもうひと暴れしなきゃならないみたいだからなァ」

 

「分かりました。」

 

「おそらく、もうすぐ保安署の連中も駆けつけるだろうしな。そいつらに預ければいいだろう。イルワ支部長が色々手を回してくれるだろうし……こまけぇことは、あいつに丸投げしよう」

 

 

 

 清水が若干、同情するような眼差しで遠くを見た。それはギルド支部がある方角だった。実は、ここに来る前に、適当に捕まえた冒険者にイルワ宛の念話石を届けてもらい、事の次第をイルワに説明しておいたのだ。ステータスプレートの〝金〟はこういうとき非常に役に立つ。輪廻の色を見た瞬間の平冒険者のしゃちほこばった態度といったら……まるで日本人がハリウッドスターに街中で声を掛けられたようだった。敬礼までして快く頼みを聞いてくれたのだ。

 

 

 

 ちなみに、イルワの方から念話石を起動することは出来ないので、彼は一方的に輪廻から、巨大裏組織と喧嘩しているという報告と事後処理もろもろ宜しくという話を聞かされ、執務室で真っ白になっていたりする。

 

 

 

 輪廻は、再び、地下牢から錬成で上階への通路を作ると子供達を清水に任せてオークション会場へ急ごうとした。と、その時、先ほどの少年が輪廻を呼び止める。

 

 

 

「兄ちゃん! 助けてくれてありがとう! あの子も絶対助けてやってくれよ! すっげー怯えてたんだ。俺、なんも出来なくて……」

 

 

 

 どうやら、この少年、亜人族とか関係なく、ミュウを励まそうとしていたらしい。自分も捕まっていたというのに中々根性のある少年だ。自分の無力に悔しそうに俯く少年の頭を、輪廻はわしゃわしゃと撫で回した。

 

 

 

「わっ、な、なに?」

 

「悔しいなら強くなればいい。それしかねぇ。今回は俺がやっとくさァ。何、次があればお前がやればいいだろォ?」

 

そう言うとさっさと言ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オークション会場は、一種異様な雰囲気に包まれていた。

 

 

 

 会場の客はおよそ百人ほど。その誰もが奇妙な仮面をつけており、物音一つ立てずに、ただ目当ての商品が出てくるたびに番号札を静かに上げるのだ。素性をバラしたくないがために、声を出すことも躊躇われるのだろう。

 

 

 

 そんな細心の注意を払っているはずの彼等ですら、その商品が出てきた瞬間、思わず驚愕の声を漏らした。

 

 

 

 出てきたのは二メートル四方の水槽に入れられた海人族の幼女ミュウだ。衣服は剥ぎ取られ裸で入れられており、水槽の隅で膝を抱えて縮こまっている。海人族は水中でも呼吸出来るので、本物の海人族であると証明するために入れられているのだろう。一度逃げ出したせいか、今度は手足に金属製の枷をはめられている。小さな手足には酷く痛々しい光景だ。

 

 

 

 多くの視線に晒され怯えるミュウを尻目に競りは進んでいく。ものすごい勢いで値段が上がっていくようだ。一度は人目に付いたというのに、彼等は海人族を買って隠し通せると思っているのだろうか。もしかすると、昼間の騒ぎをまだ知らないのかもしれない。

 

 

 

 ざわつく会場に、ますます縮こまるミュウは、その手に持っていた黒い輪っかをギュッと握り締めた。それは、輪廻のチョーカー型バッテリーだ、(演算補佐を行う為のAIのバッテリー。)。ミュウと別れる際、ミュウを宥めることに忙しくてすっかりその存在を忘れていた輪廻は、後になって思い出し、現在は予備のバッテリーを着けている。

 

 

 

 その輪廻のチョーカーが、ミュウの小さな拠り所だった。母親と引き離され、辛く長い旅を強いられ、暗く澱んだ牢屋に入れられて、汚水に身を浸し、必死に逃げて、もうダメだと思ったその時、温かいものに包まれた。何だかいい匂いがすると目を覚ますと、目の前には首に黒い輪っかを付けた白髪の少年がいる。驚いてジッと見つめていると、何故か逸らしてなるものかとでも言うように、相手も見つめ返してきた。ミュウも、何だか意地になって同じように見つめ返していると、鼻腔をくすぐる美味しそうな匂いに気が逸れる。

 

 

 

 その後は聞かれるままに名前を答え、次に綺麗な紅い光が迸ったかと思うと、温かいお湯に入れられ、少年に体を丸洗いされた、温かなお風呂も優しく洗ってくれる感触もとても気持ちよくて気がつけば輪廻と名乗るお兄さんを〝お兄ちゃん〟と呼び完全に気を許していた。

 

 

 

 膝の上に抱っこされ、食べさせてもらった串焼きの美味しさを、ミュウは、きっと一生忘れないだろう。夢中になってあ~んされるままに食べていると、いつの間にかいなくなっていた清水と名乗る少年が帰ってきた。少し警戒心が湧き上がったが、可愛らしい服を取り出すとお兄ちゃんと一緒に丁寧に着せてくれて、温かい風を吹かせながら何度も髪を梳かれているうちに気持ちよくなってすっかり警戒心も消えてしまった。

 

 

 

 だから、保安署というところに預けられてお別れしなければならないと聞かされた時には、とてもとても悲しかった。母親と引き離され、ずっと孤独と恐怖に耐えてきたミュウにとって、遠く離れた場所で出会った優しいお兄ちゃん二人と離れ、再び一人になること耐え難かったのだ。

 

 

 

 故に、ミュウは全力で抗議した。輪廻の髪を引っ張ってやったし、頬を何度も叩いたし、首に付けた黒い輪っかだって取ってやったのだ。返して欲しくばミュウと一緒にいるがいい! と。しかし、ミュウが一緒にいたかったお兄ちゃん達は、結局、ミュウを置いて行ってしまった。

 

 

 

 ミュウは、身を縮こまらせながら考えた。やっぱり、痛いことしたから置いていかれたのだろうか? 黒い輪っかを取ったから怒らせてしまったのだろうか? 自分は、お兄ちゃん達に嫌われてしまったのだろうか? そう思うと、悲しくて悲しくて、ホロリと涙が出てくる。もう一度会えたら、痛くしたことをゴメンなさいするから、黒いやつも返すから、そうしたら今度こそ……どうか一緒にいて欲しい。

 

 

 

「お兄ちゃん……お兄ちゃん……」

 

 

 

 ミュウがそう呟いたとき、不意に大きな音と共に水槽に衝撃が走った。「ひぅ!」と怯えたように眉を八の字にして周囲を見渡すミュウ。すると、すぐ近くにタキシードを着て仮面をつけた男が、しきりに何か怒鳴りつけながら水槽を蹴っているようだと気が付く。どうやら更に値段を釣り上げるために泳ぐ姿でも客に見せたかったらしく、一向に動かないミュウに痺れを切らして水槽を蹴り飛ばしているらしい。

 

 

 

 しかし、ますます怯えるミュウは、むしろ更に縮こまり動かなくなる。輪廻のチョーカーを握り締めたままギュウと体を縮めて、襲い来る衝撃音と水槽の揺れにひたすら耐える。

 

 

 

 フリートホーフの構成員の一人で裏オークションの司会をしているこの男は、余りに動かないミュウに、もしや病気なのではと疑われて値段を下げられるのを恐れて、係りの人間に棒を持ってこさせた。それで直接突いて動かそうというのだろう。ざわつく客に焦りを浮かべて思わず悪態をつく。

 

 

 

「全く、辛気臭いガキですね。人間様の手を煩わせているんじゃありませんよ。半端者の能無しのごときが!」

 

 

 

 そう言って、司会の男が脚立に登り上から棒をミュウ目掛けて突き降ろそうとした。その光景にミュウはギュウと目を瞑り、衝撃に備える。

 

 

 

が、やってくるはずの衝撃の代わりに届いたのは……聞きたかった人の声だった。

 

 

 

「やっぱりこういう仕事をしてる方が慣れてていいぜェ、だけどこういう仕事は俺の様な悪党がやるに限るなァ。」

 

 

 

 次の瞬間、天井より舞い降りた人影が、司会の男の頭を踏みつけると、そのまま脚立ごと猛烈な勢いで床に押しつぶした。ビシャアア! と司会の男から破裂したように血が飛び散る。まさに圧殺という有様だった。

 

 

 

 衝撃的な登場をした人影、輪廻は、潰れて一瞬で絶命した男の事など目もくれず刀で水槽を斬りつけた。バシャン!という破砕音と共に水槽が壊され中の水が流れ出す。

 

 

 

「ひゃう!」

 

 

 

 流れの勢いで、ミュウも外へと放り出された。思わず悲鳴を上げるミュウだったが、直後ふわりと温かいものに受け止められて、瞑っていた目を恐る恐る開ける。そこには、会いたいと思っていた人が、声が聞こえた瞬間どうしようもなく期待し思い浮かべた人が……確かにいた。自分を抱きとめてくれていた。ミュウは目をパチクリとし、初めて会った時のようにジッーと輪廻を見つめる。

 

 

 

「よぉ、ミュウ。おめぇは、会うたびにびしょ濡れだなァ?」

 

 

 

 冗談めかしてそんな事を言う輪廻に、ミュウは、やはりジーと見つめたまま、ポツリと囁くように尋ねる。

 

 

 

「……お兄ちゃん?」

 

「お兄ちゃんかどうかは別として、お前に髪を引っ張られ、頬を引っ掻かれた挙句、チョーカーを取られて、ついでに首に傷もつけられた輪廻さんなら、確かに俺だ」

 

 

 

 輪廻が笑いながらそう返すと、ミュウはまん丸の瞳をジワッと潤ませる。そして……

 

 

 

「お兄ちゃん!!」

 

輪廻の首元にギュッウ~と抱きついてひっぐひっぐと嗚咽を漏らし始めた。輪廻は困った表情でミュウの背中をポンポンと叩く。そして、手早く毛布でくるんでやった。

 

 と、再会した二人に水を差すように、ドタドタと黒服を着た男達が輪廻とミュウを取り囲んだ。客席は、どうせ逃げられるはずがないとでも思っているのか、ざわついてはいるものの、未だ逃げ出す様子はない。

 

 

 

「クソガキ、フリートホーフに手を出すとは相当頭が悪いようだな。その商品を置いていくなら、苦しまずに殺してやるぞ?」

 

゛清水、そっちはどうだ?終わったかァ?“

゛はい、退避完了しました。゛

“OKだ、今から花火を打ち上げるからなァ、離れてろよォ。”

゛………我が君、それ絶対危ない方の花火ですよね?゛

゛八ハハッ、どうだかなァ!”

「クソ餓鬼はてめぇの方だ、ドチビィ!スペルカード発動!地獄『煉獄の焔』!」

ドゴォォォォォォォォンどがどがどがどがどがどがどがどがドッキャァァァァァァァァン

「ミュウ、覚えとけ、これが花火だァ!」

輪廻は重力魔法で空を飛びながら、ミュウに絶対に違う常識を教えこんでいる。

「これが花火!なの!」

ちょうどその時、ある2人組がいた。

 

「ねぇ南雲、」

「何だ園部、そんなに改まって?」

「私ねあんたに伝えたいことがあるの」

「何だ?」

「私、あんたの事が好きなの!」

「は?」

「だから、私と付き合って下さい!」

 

 

 

 

 

 

 

「ユエさんミレディさん、あの二人いい感じじゃないですか?」

「……ん、いい傾向。」

「だねだね〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、なら俺で良ければいいぜ。」

「! 本当に?!」

「ああ、よろしく頼むぜ。」

SO・NO・TO・KI☆

ドゴォォォォォォォォンどがどがどがどがどがどがどがどがドッキャァァァァァァァァン

「「…………………………」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォォォォォォォンどがどがどがどがどがどがどがどがドッキャァァァァァァァァン

「…………これって絶対輪廻さんですよね?」

「……………ん、こんなことできるのは輪廻だけ。」

「……うんうん。こんな事ができるのは輪廻君ぐらいだよねぇ〜。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後

 

待合室にて。

 

「…………リンネ?この子はドウシタノ?攫ってきたの?ソレトモ、ワタシタチイガイノコ?」

「輪廻君?この子はどこの子かなぁ?私達にはこんな子と面識はないんだけどなぁ、」

「輪廻さん、さすがにこれは私達もそっちだったらキレますよ?」

「待て待て誤解だァ、こいつは今さっき潰してきた組織が攫ってたやつだァ、それを助けてきただけだァ。」

「……………………………………………………………………ん、そういう事なら許す。」

 

「…なんだその無駄に長い間は」

「…秘密。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室にて。

 

「倒壊した建物二十二棟、半壊した建物四十四棟、消滅した建物百八十五棟、死亡が確認されたフリートホーフの構成員二百九十八名、再起不能四十四名、重傷二十八名、行方不明者三百十九名……で? 何か言い訳はあるかい?」

 

「カッとなったので計画的にやった。反省も後悔もねぇ」

 

「はぁ~~~~~~~~~」

 

 

 冒険者ギルドの応接室で、報告書片手にジト目で輪廻を睨むイルワだったが、出された茶菓子を膝に載せた海人族の幼女と分け合いながらモリモリ食べている姿と反省の欠片もない言葉に激しく脱力する。

 

「まさかと思うけど……メアシュタットの水槽やら壁やらを破壊してリーマンが空を飛んで逃げたという話…君達は関係ないよね?」

 

「……ミュウ、これも美味いぞ? 食ってみろ」

 

「あ~ん」

 

輪廻は平然とミュウにお菓子を食べさせているが、隣に座るハジメと優花の目が一瞬泳いだのをイルワは見逃さなかった。再び、深い、それはもうとても深い溜息を吐く。片手が自然と胃の辺りを撫でさすり、傍らの秘書長ドットが、さり気なく胃薬を渡した。

 

 

 

「まぁ、やりすぎ感は否めないけど、私達も裏組織に関しては手を焼いていたからね……今回の件は正直助かったといえば助かったとも言える。彼等は明確な証拠を残さず、表向きはまっとうな商売をしているし、仮に違法な現場を検挙してもトカゲの尻尾切りでね……はっきりいって彼等の根絶なんて夢物語というのが現状だった……ただ、これで裏世界の均衡が大きく崩れたからね……はぁ、保安局と連携して冒険者も色々大変になりそうだよ」

 

「まぁ、元々、其の辺はフューレンの行政が何とかするところだろ。今回は、たまたま身内にまで手を出されそうだったから、反撃したまでだし……」

 

「唯の反撃で、フューレンにおける裏世界三大組織の一つを半日で殲滅かい? ホント、洒落にならないね」

 

 

 

 苦笑いするイルワは、何だか十年くらい一気に年をとったようだ。流石に、ちょっと可哀想なので、輪廻に変わってハジメはイルワに提案してみる。

 

 

 

「一応、そういう犯罪者集団が二度と俺達に手を出さないように、見せしめを兼ねて盛大にやったんだ。支部長も、俺らの名前使ってくれていいんだぞ? 何なら、支部長お抱えの〝金〟だってことにすれば……相当抑止力になるんじゃないか?」

 

「おや、いいのかい? それは凄く助かるのだけど……そういう利用されるようなのは嫌うタイプだろう?」

 

 

 

 ハジメの言葉に、意外そうな表情を見せるイルワ。だが、その瞳は「えっ? マジで? 是非!」と雄弁に物語っている。ハジメは苦笑いしながら、肩を竦めた。

 

 

 

「まぁ、持ちつ持たれつってな。世話になるんだし、それくらいは構わねぇよ。支部長なら、そのへんの匙加減もわかるだろうし。俺らのせいで、フューレンで裏組織の戦争が起きました、一般人が巻き込まれましたってのは気分悪いしな」

 

「……ふむ。ハジメ君、少し変わったかい? 初めて会ったときの君は、仲間の事以外どうでもいいと考えているように見えたのだけど……ウルでいい事でもあったのかな?」

 

「……まぁ、俺的には悪いことばかりじゃなかったよ」

 

 

 

 流石は大都市のギルド支部長、相手のことをよく見ている。ハジメの微妙な変化も気がついたようだ。その変化はイルワからしても好ましいものだったので、ハジメからの提案を有り難く受け取る。

 

 

 

 ちなみに、その後、フリートホーフの崩壊に乗じて勢力を伸ばそうと画策した他二つの組織だったが、イルワの「なまはげが来るぞ~」と言わんばかりの効果的な輪廻達の名の使い方のおかげで大きな混乱が起こることはなかった。この件で、輪廻は〝フューレン支部長の懐刀〟とか〝白髪の爆炎使い〟とか〝幼女キラー〟とか色々二つ名が付くことになったが……輪廻の知ったことではない。ないったらないのだ。

 

 

 

 

大暴れした輪廻達(主に輪廻と清水)の処遇については、イルワが関係各所を奔走してくれたおかげと、意外にも治安を守るはずの保安局が、正当防衛的な理由で不問としてくれたので特に問題はなかった。どうやら、保安局としても、一度預かった子供を、保安署を爆破されて奪われたというのが相当頭に来ていたようだ。

 

 

 

 また、日頃自分達を馬鹿にするように違法行為を続ける裏組織は腹に据えかねていたようで、挨拶に来た還暦を超えているであろう局長は実に男臭い笑みを浮かべて輪廻達にサムズアップして帰っていった。心なし、足取りが「ランラン、ルンルン」といった感じに軽かったのがその心情を表している。

 

 

 

「それで、そのミュウ君についてだけど……」

 

 

 

 イルワがはむはむとクッキーを両手で持ってリスのように食べているミュウに視線を向ける。ミュウは、その視線にビクッとなると、また輪廻達と引き離されるのではないかと不安そうに輪廻やハジメやユエ、ミレディ、シアやティオに優花を見上げた。

 

 

 

「こちらで預かって、正規の手続きでエリセンに送還するか、君達に預けて依頼という形で送還してもらうか……二つの方法がある。君達はどっちがいいかな?」

 

 

 

 誘拐された海人族の子を、公的機関に預けなくていいのかと首を傾げるハジメに、イルワが説明するところによると、輪廻の〝金〟と今回の暴れっぷりの原因がミュウの保護だったという点から、任せてもいいということになったらしい。

 

「なら、こっちで預からせて貰うぜェ。まぁ、最初からそうするつもりで助けたからなァ……ここまで情を抱かせておいて、はいさよならなんて真似は流石にしねェ」

 

「お兄ちゃん!」

 

満面の笑みで喜びを表にするミュウ。【海上の都市エリセン】に行く前に【大火山】の大迷宮を攻略しなければならないが、輪廻は「まぁ、何とかするさ」と内心覚悟を決めてミュウの同行を許す。

 

「ただな、ミュウ。そのお兄ちゃんってのは止めてくれないかァ? 普通に輪廻でいい。何というかむず痒いんだよォ、その呼び方」

 

輪廻の要求に、ミュウはしばらく首をかしげると、やがて何かに納得したように頷き……ハジメどころかその場の全員の予想を斜め上に行く答えを出した。

 

 

 

「……パパ」

 

「………………なんつった? 悪い、ミュウ。よく聞こえなかったんだ。もう一度頼む」

 

「パパ」

 

「……そりゃあれか? 海人族の言葉で〝お兄ちゃん〟とか〝輪廻〟という意味か?」

 

「ううん。パパはパパなの」

 

「アァ、ちょっと待てやァ」

 

 

 

 輪廻が、目元を手で押さえ揉みほぐしている内に、シアがおずおずとミュウに何故〝パパ〟なのか聞いてみる。すると……

 

 

 

「ミュウね、パパいないの……ミュウが生まれる前に神様のところにいっちゃったの……キーちゃんにもルーちゃんにもミーちゃんにもいるのにミュウにはいないの……だからお兄ちゃんがパパなの」

 

「何となくわかったが、何が〝だから〟何だとツッコミたい。ミュウ。頼むからパパは勘弁してくれやァ。」

 

「やっ、パパなの!」

 

「わかった。もうお兄ちゃんでいい! 贅沢はいわないからパパは止めろォ!」

 

「やっーー!! パパはミュウのパパなのー!」

 

 

 

 その後、あの手この手でミュウの〝パパ〟を撤回させようと試みるが、ミュウ的にお兄ちゃんよりしっくり来たようで意外なほどの強情さを見せて、結局、撤回には至らなかった。

 

 イルワとの話し合いを終え宿に戻ってからは、誰がミュウに〝ママ〟と呼ばせるかで紛争が勃発したが、 結局〝ママ〟は本物のママしかダメらしく、ユエもミレディもシアもティオも一応優花も〝お姉ちゃん〟で落ち着いた。

 

そして夜、ミュウたっての希望で全員(輪廻ファミリー)で川の字になって眠る事になり、ミュウが輪廻と誰の間で寝るかで再び揉めて、精神的に疲れきったが強引輪廻が大の字になり、にミュウを間にしてユエとミレディを抱きしめ、そのことでシアとティオが不満をたらたらと流すという出来事があったが、なんとか眠りに付き激動の一日を終えることが出来た。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

オマケ

 

「………輪廻。」

「……なんだァ?ユエ。」

「…子供欲しい。」

「…………」

「輪廻君〜ミレディたんも欲しいよ〜」

「あ、あの〜出来れば私も…」

「わ、妾もして欲しいのじゃが。」

「……………疲れたし、ミュウも居るから今日は無理だァ。」

「…!ミレディ、言質は撮った、疲れて無くてミュウが居ない日ならOK。」

「そうだねぇ!言質は取ったからねぇ?ちゃんと相手してよぉ?」

「…………別にお前ら全員相手してやっても良いがなァ、その代わり直ぐに終わるなよォ?」

「「「「……」」」」

「…自分で言い出したのに恥ずかしくなったんならさっさと寝ろォ。」

 




とうとうハジメにも春が!

感想と高評価お願いします。

次回は未定です。どれにしようか迷ってます。アンケートは明日の朝かお昼位まで。


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第14話 言い争い


こんちわー湯たんぽです。

今回は別に読まなくても特に本編に関係ない話になっております。

アンケートはまだやります。


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天之河光輝 17歳 男 レベル:72

 

天職:勇者

 

筋力:880

 

体力:880

 

耐性:880

 

敏捷:880

 

魔力:880

 

魔耐:880

 

技能:全属性適正[+光属性効果上昇][+発動速度上昇]・全属性耐性[+光属性効果上昇]・物理耐性[+治癒力上昇][+衝撃緩和]・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

 

====================================

 

 

 

====================================

 

坂上龍太郎 17歳 男 レベル:72

 

天職:拳士

 

筋力:820

 

体力:820

 

耐性:680

 

敏捷:550

 

魔力:280

 

魔耐:280

 

技能:格闘術[+身体強化][+部分強化][+集中強化][+浸透破壊]・縮地・物理耐性[+金剛]・全属性耐性・言語理解

 

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====================================

 

八重樫雫 17歳 女 レベル:72

 

天職:剣士

 

筋力:450

 

体力:560

 

耐性:320

 

敏捷:1110

 

魔力:380

 

魔耐:380

 

技能:剣術[+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇]・縮地[+重縮地][+震脚][+無拍子]・先読・気配感知・隠業[+幻撃]・言語理解

 

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白崎香織 17歳 女 レベル:72

 

天職:治癒師

 

筋力:280

 

体力:460

 

耐性:360

 

敏捷:380

 

魔力:1380

 

魔耐:1380

 

技能:回復魔法[+効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少][+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]・高速魔力回復[+瞑想]・言語理解

 

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これが、勇者組4人の現在のステータス

 

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博霊霊夢 17歳 女 レベル???

 

 

 

転職:巫女

 

 

 

筋力:150000

 

 

 

体力:200000

 

 

 

耐性:100000

 

 

 

敏捷:80000

 

 

 

霊力:50000

 

 

 

魔耐:50000

 

 

 

技能:空を飛ぶ程度の能力·スペルカード·気配感知·魔力感知·先読み·高速霊力回復·言語理解

 

 

 

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霧雨魔理沙 十七歳 女 レベル???

 

 

 

転職:魔法使い

 

 

 

筋力:10000

 

 

 

体力:10000

 

 

 

敏捷:20000

 

 

 

耐性:5000

 

 

 

魔力:60000

 

 

 

魔耐:20000

 

 

 

技能:魔法を使う程度の能力·スペルカード·全属性適正·全属性耐性·高速魔力回復·ほうき·気配感知·魔力感知·言語理解

 

 

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

 

魂魄妖夢 17歳 女 レベル???

 

 

 

転職:剣豪

 

 

 

筋力:23000

 

 

 

体力:30000

 

 

 

耐性:17000

 

 

 

敏捷:50000

 

 

 

妖力:35000

 

 

 

魔耐:30000

 

 

 

技能:剣を操る程度の能力·スペルカード·超剣術·先読み·超縮地·超気配感知·魔力感知·高速妖力回復·言語理解

 

 

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

 

レミリア·スカーレット 500歳 レベル???

 

転職:吸血姫

 

 

 

筋力:20000

 

 

 

体力:30000

 

 

 

耐性:23000

 

 

 

敏捷:30000

 

 

 

魔力:50000

 

 

 

魔耐:50000

 

 

 

技能:運命を操る程度の能力·スペルカード·槍術·全属性適正·全属性耐性·先読み·高速魔力回復·気配感知·魔力感知·言語理解

 

 

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

 

フランドール·スカーレット 495歳女 レベル???

 

 

 

転職:吸血鬼

 

 

 

筋力:50000

 

 

 

体力:70000

 

 

 

耐性:60000

 

 

 

敏捷:40000

 

 

 

魔力:80000

 

 

 

魔耐:40000

 

 

 

技能:ありとあらゆる物を破壊する程度の能力·スペルカード·剣術·分身·高速魔力回復·気配感知·魔力感知·言語理解

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

 

アリス·マーガトロイド 17歳 女 レベル???

 

 

 

転職:人形使い

 

 

 

筋力:170000

 

 

 

体力:120000

 

 

 

耐性:30000

 

 

 

敏捷:20000

 

 

 

魔力:40000

 

 

 

魔耐:40000

 

 

 

技能:魔法を扱う人形を操る程度の能力·スペルカード·魔力感知·気配感知·高速魔力回復·全属性耐性·全属性適正·言語理解

 

 

 

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十六夜咲夜 17歳 女 レベル???

 

 

 

天職:時間操術者

 

 

 

筋力:25000

 

 

 

体力:50000

 

 

 

耐性:30000

 

 

 

敏捷:40000

 

 

 

魔力:50000

 

 

 

魔耐:50000

 

 

 

技能:時間を操る程度の能力·スペルカード·ナイフ投撃術·先読み·気配感知·魔力感知·高速魔力回復·言語理解

 

 

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

 

古明地さとり 17歳 女 レベル???

 

 

 

天職:心解読者

 

 

 

筋力:10000

 

 

 

体力:30000

 

 

 

耐性:25000

 

 

 

敏捷:30000

 

 

 

魔力:70000

 

 

 

魔耐:50000

 

 

 

技能:心を読む程度の能力·スペルカード·読心術·全属性適正·全属性耐性·先読み(強)·気配感知(強)·魔力感知·高速魔力感知·言語理解

 

 

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

 

これが東方組のステータス。

これを踏まえてご覧下さい。

 

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淡い緑色の光だけが頼りの薄暗い地下迷宮に、激しい剣戟と爆音が響く。

 

 

 

 その激しさは、苛烈と表現すべき程のもので、時折、姿が見えない遠方においても迷宮の壁が振動する程だ。銀色の剣線が、虚空に美しい曲線を無数に描き、炎弾や炎槍、風刃や水のレーザーが弾幕のごとく飛び交う。強靭な肉体どうしがぶつかる生々しい衝撃音や仲間への怒号、気合の声が本来静寂で満たされているはずの空間を戦場へと変えていた。

 

 

 

「万象切り裂く光 吹きすさぶ断絶の風 舞い散る百花の如く渦巻き 光嵐となりて敵を刻め! 〝天翔裂破〟!」

 

 

 

 聖剣を腕の振りと手首の返しで加速させながら、自分を中心に光の刃を無数に放つ光輝。今まさに襲いかかろうとしていた体長五十センチ程のコウモリ型の魔物は、十匹以上の数を一瞬で細切れにされて、碌な攻撃も出来ずに血肉を撒き散らしながら地に落ちた。

 

 

 

「前衛! カウント、十!」

 

「「「了解!」」」

 

 

 

 ギチギチと硬質な顎を動かす蟻型の魔物、空を飛び交うコウモリ型の魔物、そして無数の触手をうねらせるイソギンチャク型の魔物。それらが、直径三十メートル程の円形の部屋で無数に蠢いていた。部屋の周囲には八つの横穴があり、そこから魔物達が溢れ出しているのだ。

 

 

 

 場所は、【オルクス大迷宮】の八十九層。前衛を務める光輝、龍太郎、雫、永山、檜山、近藤に、後衛からタイミングを合わせた魔法による総攻撃の発動カウントが告げられる。何とか後衛に襲いかかろうとする魔物達を、光輝達は鍛え上げた武技をもって打倒し、弾き返していく。

 

 

 

 厄介な飛行型の魔物であるコウモリ型の魔物が、前衛組の隙を突いて後衛に突進するが、頼りになる〝結界師〟が城壁となってそれを阻む。

 

 

 

「刹那の嵐よ 見えざる盾よ 荒れ狂え 吹き抜けろ 渦巻いて 全てを阻め 〝爆嵐壁〟!」

 

 

 

 谷口鈴の攻勢防御魔法が発動する。呪文を詠唱する後衛達の一歩前に出て、突き出した両手の先にそよ風が生じた。見た目の変化はない。コウモリ型の魔物達も鈴の存在など気にせず、警鐘を鳴らす本能のままに大規模な攻撃魔法を仕掛けようとしている後衛組に向かって襲いかかった。

 

 

 

 しかし、その手前で、突如、魔物の突進に合わせて空気の壁とでもいうべきものが大きくたわむ姿が現れる。何十匹というコウモリモドキが次々と衝突していくが、空気の壁はたわむばかりでただの一匹も彼等を通しはしない。

 

 

 

 そして、突進してきたコウモリモドキ達が全て空気の壁に衝突した瞬間、たわみが限界に達したように凄絶な衝撃とともに爆発した。その発生した衝撃は凄まじく、それだけで肉体を粉砕されたものもいれば、一気に迷宮の壁まで吹き飛ばされてグシャ! という生々しい音と共にひしゃげて絶命するものいる程だ。

 

 

 

「ふふん! そう簡単には通さないんだからね!」

 

 

 

 クラスのムードメイカー的存在である鈴の得意気な声が、激しい戦闘音の狭間に響く。と、同時に、前衛組が一斉に大技を繰り出した。敵を倒すことよりも、衝撃を与えて足止めし、自分達が距離を取ることを重視した攻撃だ。

 

 

 

「後退!」

 

 

 

 光輝の号令と共に、前衛組が一気に魔物達から距離を取る。

 

 

 

 次の瞬間、完璧なタイミングで後衛六人の攻撃魔法が発動した。

 

 

 

 巨大な火球が着弾と同時に大爆発を起こし、真空刃を伴った竜巻が周囲の魔物を巻き上げ切り刻みながら戦場を蹂躙する。足元から猛烈な勢いで射出された石の槍が魔物達を下方から串刺しにし、同時に氷柱の豪雨が上方より魔物の肉体に穴を穿っていく。

 

 

 

 自然の猛威がそのまま牙を向いたかのような壮絶な空間では生物が生き残れる道理などありはしない。ほんの数十秒の攻撃。されど、その短い時間で魔物達の九割以上が絶命するか瀕死の重傷を負うことになった。

 

 

 

「よし! いいぞ! 残りを一気に片付ける!」

 

 

 

 光輝の掛け声で、前衛組が再び前に飛び出していき、魔法による総攻撃の衝撃から立ち直りきれていない魔物達を一匹一匹確実に各個撃破していった。全ての魔物が殲滅されるのに五分もかからなかった。

 

 

 

 

 

 戦闘の終了と共に、光輝達は油断なく周囲を索敵しつつ互いの健闘をたたえ合った。

 

 

 

「ふぅ、次で九十層か……この階層の魔物も難なく倒せるようになったし……迷宮での実戦訓練ももう直ぐ終わりだな」

 

「だからって、気を抜いちゃダメよ。この先にどんな魔物やトラップがあるかわかったものじゃないんだから」

 

「雫は心配しすぎってぇもんだろ? 俺等ぁ、今まで誰も到達したことのない階層で余裕持って戦えてんだぜ? 何が来たって蹴散らしてやんよ! それこそ魔人族が来てもな!」

 

 

 

 感慨深そうに呟く光輝に雫が注意をすると、脳筋の龍太郎が豪快に笑いながらそんな事を言う。そして、光輝と拳を付き合わせて不敵な笑みを浮かべ合った。その様子に溜息を吐きながら、雫は眉間の皺を揉みほぐした。これまでも、何かと二人の行き過ぎをフォローして来たので苦労人姿が板に付いてしまっている。まさか、皺が出来たりしてないわよね? と最近鏡を見る機会が微妙に増えてしまった雫。それでも、結局、光輝達に限らず周囲のフォローに動いてしまう辺り、真性のお人好しである。

 

 

 

「檜山君、近藤君、これで治ったと思うけど……どう?」

 

 

 

 周囲が先程の戦闘について話し合っている傍らで、香織は己の本分を全うしていた。すなわち、〝治癒師〟として、先程の戦闘で怪我をした人達を治癒しているのである。一応、迷宮での実戦訓練兼攻略に参加している十五名の中には、もう一人〝治癒師〟を天職に持つ女の子がいるので、今は、二人で手分けして治療中だ。

 

 

 

「……ああ、もう何ともない。サンキュ、白崎」

 

「お、おう、平気だぜ。あんがとな」

 

 

 

 香織に治療された檜山が、ボーと間近にいる香織の顔を見ながら上の空な感じで返答する。見蕩れているのが丸分かりだ。近藤の方も、耳を赤くしどもりながら礼を言った。前衛職であることから、度々、香織のヒーリングの世話になっている檜山達だが、未だに、香織と接するときは平常心ではいられないらしい。近藤の態度は、ある意味、思春期の子供といった風情だが……檜山の香織を見る目の奥には暗い澱みが溜まっていた。それは日々、色濃くなっているのだが……気がついている者はそう多くはない。

 

 

 

 二人にお礼を言われた香織は「どういたしまして」と微笑むと、スっと立ち上がり踵を返した。そして、周囲に治療が必要な人がいないことを確認すると、目立たないように溜息を吐き、奥へと続く薄暗い通路を憂いを帯びた瞳で見つめ始めた。

 

 

 

「……」

 

 

 

 その様子に気がついた雫には、親友の心情が手に取るように分かった。香織の心の内は今、不安でいっぱいなのだ。あと十層で迷宮の最下層(一般的な見解)にたどり着くというのに、未だ、ハジメの痕跡は僅かにも見つかっていない。

 

 

 

 それは希望でもあるが、遥かに強い絶望でもある。自分の目で確認するまでハジメの死を信じないと心に決めても、階層が一つ下がり、何一つ見つからない度に押し寄せてくるネガティブな思考は、そう簡単に割り切れるものではない。まして、ハジメが奈落に落ちた日から既に四ヶ月も経っている。強い決意であっても、暗い思考に侵食され始めるには十分な時間だ。

 

 

 

 自身のアーティファクトである白杖を、まるで縋り付くようにギュッと抱きしめる香織の姿を見て、雫はたまらず声をかけようとした。と、雫が行動をおこす前に、ちみっこいムードメイカーが、不安に揺れる香織の姿など知ったことかい! と言わんばかりに駆け寄ると、ピョンとジャンプし香織の背後からムギュッと抱きついた。

 

 

 

「カッオリ~ン!! そんな野郎共じゃなくて、鈴を癒して~! ぬっとりねっとりと癒して~」

 

「ひゃわ! 鈴ちゃん! どこ触ってるの! っていうか、鈴ちゃんは怪我してないでしょ!」

 

「してるよぉ! 鈴のガラスのハートが傷ついてるよぉ! だから甘やかして! 具体的には、そのカオリンのおっぱおで!」

 

「お、おっぱ……ダメだってば! あっ、こら! やんっ! 雫ちゃん、助けてぇ!」

 

「ハァハァ、ええのんか? ここがええのんか? お嬢ちゃん、中々にびんかッへぶ!?」

 

「……はぁ、いい加減にしなさい、鈴。男子共が立てなくなってるでしょが……たってるせいで……」

 

 

 

 ただのおっさんと化した鈴が、人様にはお見せできない表情でデヘデヘしながら香織の胸をまさぐり、雫から脳天チョップを食らって撃沈した。ついでに、鈴と香織の百合百合しい光景を見て一部男子達も撃チンした。頭にタンコブを作ってピクピクと痙攣している鈴を、何時ものように中村恵里が苦笑いしながら介抱する。

 

 

 

「うぅ~、ありがとう、雫ちゃん。恥ずかしかったよぉ……」

 

「よしよし、もう大丈夫。変態は私が退治したからね?」

 

 

 

 涙目で自分に縋り付く香織を、雫は優しくナデナデした。最近よく見る光景だったりする。雫は、香織の滑らかな髪を優しく撫でながらこっそり顔色を覗った。しかし、香織は、困った表情で、されど何処か楽しげな表情で恵里に介抱される鈴を見つめており、そこには先程の憂いに満ちた表情はなかった。どうやら、一時的にでも気分が紛れたようだ。ある意味、流石クラスのムードメイカー鈴おっさんバージョンと、雫は内心で感心する。

 

 

 

「あと十層よ。……頑張りましょう、香織」

 

 

 

 雫が、香織の肩に置いた手に少々力を込めながら、真っ直ぐな眼差しを香織に向ける。それは、親友が折れないように活を入れる意味合いを含んでいた。香織も、そんな雫の様子に、自分が少し弱気になっていたことを自覚し、両手で頬をパンッと叩くと、強い眼差しで雫を見つめ返した。

 

 

 

「うん。ありがとう、雫ちゃん」

 

 

 

 雫の気遣いが、どれだけ自分を支えてくれているか改めて実感し、瞳に込めた力をフッと抜くと目元を和らげて微笑み、感謝の意を伝える香織。雫もまた、目元を和らげると静かに頷いた。……傍から見ると百合の花が咲き誇っているのだが本人たちは気がつかない。光輝達が何だか気まずそうに視線を右往左往させているのも雫と香織は気がつかない。だって、二人の世界だから。

 

 

 

「今なら……守れるかな?」

 

「そうね……きっと守れるわ。あの頃とは違うもの……レベルだって既にメルド団長達を超えているし……でも、ふふ、もしかしたら彼の方が強くなっているかもしれないわね? あの時だって、結局、私達が助けてもらったのだし」

 

「ふふ、もう……雫ちゃんったら……」

 

 ハジメの生存を信じて、今度こそ守れるだろうかと今の自分を見下ろしながら何となく口にした香織に、雫は冗談めかしてそんな事をいう。実は、ずばり的を射ており、後に色んな意味で度肝を抜かれるのだが……そのことを知るのはもう少し先の話だ。

 

 ちなみに、この場にいるのは光輝、龍太郎、雫、香織、鈴、恵里の他、東方組と、永山重吾を含める五人及び檜山達四人の23人であり、メルド団長達は七十層で待機している。実は、七十層からのみ起動できる、三十層と七十層をつなぐ転移魔法陣が発見され、深層への行き来が楽になったのであるが、流石にメルド団長達でも七十層より下の階層は能力的に限界だった。もともと、六十層を越えたあたりで、光輝達に付き合える団員はメルドを含めて僅か数人だった。七十層に到達する頃には、彼等は既に光輝達の足を引っ張るようになっていたのである。

 

東方組〜

れ「………もうそろそろね、」

レ「…えぇ、」

ア「…結構近くね。」

「「「「「「「「魔人族が近くに来てる。」」」」」」」」

とは言え対して気にしてない様子の東方組。

 

ちなみに皆の心の中

(((((((あいつ(輪廻)(輪廻さん)(輪廻君)にどうやって告白しよう(かしら)(かな))))))))

(…皆さん同じこと考えてますね……まあ、そう言う私もそうなんですけどね。魔人族も直ぐに倒せるでしょうし。)

しかし、この時さとり達は知らなかった、魔人族が秘密兵器?を持ってる事を。

 

「そろそろ、出発したいんだけど……いいか?」

 

 

 

 光輝が、未だに見つめ合う香織と雫におずおずと声をかける。以前、香織の部屋で香織と雫が抱き合っている姿を目撃して以来、時々、挙動不審になる光輝の態度に、香織はキョトンとしているが、雫はその内心を正確に読み取っているのでジト目を送る。その目は如実に「いつまで妙な勘違いしてんの、このお馬鹿」と物語っていた。

 

 

 

 雫の視線に気づかないふりをしながら、光輝はメンバーに号令をかける。既に、八十九層のフロアは九割方探索を終えており、後は現在通っているルートが最後の探索場所だった。今までのフロアの広さから考えて、そろそろ階下への階段が見えてくるはずである。

 

 

 

 その予想は当たっており、出発してから十分程で一行は階段を発見した。トラップの有無を確かめながら慎重に薄暗い螺旋階段を降りていく。体感で十メートルほど降りた頃、遂に光輝達は九十層に到着した。

 

 

 

 一応、節目ではあるので何か起こるのではと警戒していた光輝達。しかし、見た目、今まで探索してきた八十層台と何ら変わらない作りのようだった。さっそく、マッピングしながら探索を開始する。迷宮の構造自体は変わらなくても、出現する魔物は強力になっているだろうから油断はしない。

 

 

 

 警戒しながら、変わらない構造の通路や部屋を探索してく光輝達。探索は順調だった。だったのだが、やがて、一人また一人と怪訝そうな表情になっていった。

 

 

 

「……どうなってる?」

 

 

 

 一行がかなり奥まで探索し大きな広間に出た頃、遂に不可解さが頂点に達し、表情を困惑に歪めて光輝が疑問の声を漏らした。他のメンバーも同じように困惑していたので、光輝の疑問に同調しつつ足を止める。

 

 

 

「……何で、これだけ探索しているのに唯の一体も魔物に遭遇しないんだ?」

 

 

 

 既に探索は、細かい分かれ道を除けば半分近く済んでしまっている。今までなら散々強力な魔物に襲われてそう簡単には前に進めなかった。ワンフロアを半分ほど探索するのに平均二日はかかるのが常であったのだ。にもかかわらず、光輝達がこの九十層に降りて探索を開始してから、まだ三時間ほどしか経っていないのに、この進み具合。それは単純な理由だ。未だ一度もこのフロアの魔物と遭遇していないからである。

 

 

 

 最初は、魔物達が光輝達の様子を物陰から観察でもしているのかと疑ったが、彼等の感知系スキルや魔法を用いても一切索敵にかからないのだ。魔物の気配すらないというのは、いくら何でもおかしい。明らかな異常事態である。

 

 

 

「………なんつぅか、不気味だな。最初からいなかったのか?」

 

 

 

 龍太郎と同じように、メンバーが口々に可能性を話し合うが答えが見つかるはずもない。困惑は深まるばかりだ。

 

 

 

「……光輝。一度、戻らない? 何だか嫌な予感がするわ。メルド団長達なら、こういう事態も何か知っているかもしれないし」

 

 

 

 雫が警戒心を強めながら、光輝にそう提案した。光輝も、何となく嫌な予感を感じていたので雫の提案に乗るべきかと考えたが、何らかの障碍があったとしてもいずれにしろ打ち破って進まなければならないし、八十九層でも割りかし余裕のあった自分達なら何が来ても大丈夫ではないかと考えて、答えを逡巡する。

 

 

 

 光輝が迷っていると、不意に、辺りを観察していたメンバーの何人かが何かを見つけたようで声を上げた。

 

 

 

「これ……血……だよな?」

 

「薄暗いし壁の色と同化してるから分かりづらいけど……あちこち付いているよ」

 

「おいおい……これ……結構な量なんじゃ……」

 

 

 

 表情を青ざめさせるメンバーの中から永山が進み出て、血と思しき液体に指を這わせる。そして、指に付着した血をすり合わせたり、臭いを嗅いだりして詳しく確認した。

 

 

 

「天之河……八重樫の提案に従った方がいい……これは魔物の血だ。それも真新しい」

 

「そりゃあ、魔物の血があるってことは、この辺りの魔物は全て殺されたって事だろうし、それだけ強力な魔物がいるって事だろうけど……いずれにしろ倒さなきゃ前に進めないだろ?」

 

 

 

 光輝の反論に、永山は首を振る。永山は、龍太郎と並ぶクラスの二大巨漢ではあるが、龍太郎と違って非常に思慮深い性格をしている。その永山が、臨戦態勢になりながら立ち上がると周囲を最大限に警戒しながら、光輝に自分の考えを告げた。

 

 

 

「天之河……魔物は、何もこの部屋だけに出るわけではないだろう。今まで通って来た通路や部屋にも出現したはずだ。にもかかわらず、俺達が発見した痕跡はこの部屋が初めて。それはつまり……」

 

「……何者かが魔物を襲った痕跡を隠蔽したってことね?」

 

 

 

 あとを継いだ雫の言葉に永山が頷く。光輝もその言葉にハッとした表情になると、永山と同じように険しい表情で警戒レベルを最大に引き上げた。

 

 

 

「それだけ知恵の回る魔物がいるという可能性もあるけど……人であると考えたほうが自然ってことか……そして、この部屋だけ痕跡があったのは、隠蔽が間に合わなかったか、あるいは……」

 

「ここが終着点という事さ」

 

 光輝の言葉を引き継ぎ、突如、聞いたことのない女の声が響き渡った。男口調のハスキーな声音だ。光輝達は、ギョッとなって、咄嗟に戦闘態勢に入りながら声のする方に視線を向けた。

 

 コツコツと足音を響かせながら、広い空間の奥の闇からゆらりと現れたのは燃えるような赤い髪をした妙齢の女。その女の耳は僅かに尖っており、肌は浅黒かった。

 

 光輝達が驚愕したように目を見開く。女のその特徴は、光輝達のよく知るものだったからだ。実際には見たことはないが、イシュタル達から叩き込まれた座学において、何度も出てきた種族の特徴。聖教教会の掲げる神敵にして、人間族の宿敵。そう……

 

「……魔人族」

 

 誰かの発した呟きに、魔人族の女は薄らと冷たい笑みを浮かべた。

 

 

開戦して間も無くピンチになった。

 

 

「だいぶ厳しいみたいだね。どうする? やっぱり、あたしらの側についとく? 今なら未だ考えてもいいけど?」

 

 光輝達の苦戦を、腕を組んで余裕の態度で見物していた魔人族の女が再び勧誘の言葉を光輝達にかけた。もっとも、答えなど分かっているとでも言うように、その表情は冷めたままだったが。そして、その予想は実に正しかった。

 

「ふざけるな! 俺達は脅しには屈しない! 俺達は絶対に負けはしない! それを証明してやる! 行くぞ〝限界突破〟!」

 

 魔人族の女の言葉と態度に憤怒の表情を浮かべた光輝は、再びメイスを振り下ろしてきたブルタールモドキの一撃を聖剣で弾き返すと、一瞬の隙をついて〝限界突破〟を使用した。

 

 神々しい光を纏った光輝は、これで終わらせると気合を入れ直し、魔人族の女に向かって突進した。

 

 

場所は変わって八十九層の最奥付近の部屋。

 

 その正八角形の大きな部屋には四つの入口があるのだが、実は今、そのうちの二つの入口の間にはもう一つ通路があり、奥には隠し部屋が存在している。入口は、上手くカモフラージュされて閉じられており、隠し部屋は十畳ほどの大きさだ。

 

そこではある言い合いが起きていた。

 

「何故だ!何故君たちは戦闘に参加しなかった!」

れ「何言ってんの?私達は撤退するって言ってたのに聞かなかったのはあなた達でしょ?」

「それでも!仲間が窮地に陥ってるんだ!普通は助けるだろう!」

よ「………貴方の普通と私達の普通は違います。勝手に貴方の普通を押し付けないでください。」

「だけど!」

さ「………そう言う事ですか、貴方は自分が負けた責任を戦闘に参加しなかった私たちに押し付けようとしてるのですか。なんとも滑稽で浅はかな考えですね。」

「ち、ちが!」

咲「違わないわ、さとりの能力は絶対よ。」

レ「…私も咲夜の言う通りだと思うわ。」

「レミリア!君まで!」シュパッ

ゴミがレミリアを呼び捨てにした瞬間ナイフが飛んできた。

咲「…次にお嬢様と妹様を呼び捨てにしたら殺す。」

咲夜はそう言って、ゴミにナイフを向ける。

 

れ「咲夜。その辺にしときなさい、こうなった以上撤退は難しいわ、そこのお荷物全員抱えて撤退は出来ない、だから魔人族を倒すしかないわ。皆もそれで良いわよね?」

 

 

一方、議題に上がらなかった遠藤君はただの一度も戦闘をせず全ての魔物をやり過ごしながらメルド団長達のいる七十層を目指して着実に歩みを進めていた。

 

 

 

 八十層台で、魔物に気づかれれば、一対一ならどうにかなるが複数体ならアウトだ。そのため、できる限り急ぎつつ、それでも細心の注意を払って進んでいた。そのおかげで、今も、魔物が眼前を通り過ぎていくのを見送ることができた。

 

 

 

 魔物が完全に見えなくなったあと、遠藤は張り付いていた天井からスタッと地に降り立った。〝隠形〟を最大限に生かすための全身黒装束姿は、まさに〝暗殺者〟だ。きっと、先程眼前を通り過ぎた魔物も、天井から奇襲をかければ気づかせることなく相当深いダメージを与えられただろう。内心、「……少しくらい気配を感じてくれても……」とか思っていない。全く気づかずに通り過ぎた魔物を見て、目の端に光るものが溢れたりもしていない。断じて。

 

 

 

「急がないと……」

 

 

 

 遠藤は、自分が課せられた役割を理解している。そして、光輝達が、情報の伝達以外にもそのまま生き延びろという意味合いを含めて送り出してくれたことも察していた。永山と野村の「戻ってくるなよ」という思いは言葉に出さずとも伝わっていたのだ。

 

 

 

 だが、それでも、役目を果たしたあと、遠藤は光輝達のもとに戻るつもりだった。なんと言われようと、このまま自分だけ安全圏に逃げて、のうのうとしていることなど出来なかったのだ。

 

 

 

 遠藤は、自分に気がつかない魔物に若干虚しさを覚えながらも、今は、それが最大の武器になっているのだと自分に言い聞かせつつ頭に叩き込んである帰還ルートをたどって、遂に七十層にたどり着いた。

 

 

 

 逸る気持ちを抑えながら、メルド団長達が拠点を構える転移陣のある部屋に向かう。しばらくすると、遠藤の気配感知に六人分の気配が感知された。間違いなくメルド団長達だ。距離的に、〝隠形〟を解いたので向こうも気づいたはずである。

 

 

 

 遠藤は、最後の角を曲がり、メルド団長達のいる転移部屋に出た。しかし、既に完全に姿を見せているのに、メルド団長達は特に気がつく気配がない。遠藤は、死んだ魚みたいな目をしながらメルドに近づき、声をかけた

 

 

 

「団長! 俺です! 気づいてください! 大変なんです!」

 

「うおっ!? 何だ!? 敵襲かっ!?」

 

 

 

 遠藤が声を張り上げた瞬間、メルド団長がそんな事を言いながら剣を抜いて飛び退り、警戒心たっぷりに周囲を見渡した。他の騎士達も、一様にビクッと体を震わせて、戦闘態勢に入っている。

 

 

 

「だから、俺ですって! マジそういうの勘弁して下さい!」

 

「えっ? って、浩介じゃないか。驚かせるなよ。ていうか他の連中はどうした? それに、何かお前ボロボロじゃないか?」

 

「ですから、大変なんです!」

 

 

 

 メルド団長達は相手が遠藤だとわかると、彼の影の薄さは知っていたのでフッと肩の力を抜いた。しかし、戻ってくるには少々予定より早いことと、遠藤が一人であること、そして、その遠藤が、満身創痍といってもいいくらいボロボロであることから、直ぐさま何かがあったと察して険しい表情になった。

 

 

 

 遠藤は、王国最精鋭の騎士達にすら、声をかけないとやっぱり気づかれないという事実に地味に傷つきながら、そんな場合ではないと思い直し、事の次第を早口で語り始めた。

 

 

 

 最初は、訝しげな表情をしていたメルド達だったが、遠藤の話が進むにつれて表情が険しさを増していく。そして、たった一人逃がされたことに、話しながら次第に心を締め付けられたのか、涙をこぼす遠藤の頭をグシャグシャと撫で回した。

 

 

 

「泣くな、浩介。お前は、お前にしか出来ないことをやり遂げんたんだ。他の誰が、そんな短時間で一度も戦わずに二十層も走破できる? お前はよくやった。よく伝えてくれた」

 

「団長……俺、俺はこのまま戻ります。あいつらは自力で戻るっていってたけど……今度は負けないっていってたけど……天之河が〝限界突破〟を使っても倒しきれなかったんだ。逃げるので精一杯だったんだ。みんな、かなり消耗してるし、傷が治っても……今度、襲われたら……あのクソったれな魔物だってあれで全部かはわからないし……だから、先に地上に戻って、このことを伝えて下さい」

 

 

 

 泣いたことを恥じるように、袖で目元をぐしぐしとこすると、遠藤は決然とした表情でメルドに告げた。

 

 

 

 メルド団長は、悔しそうに唇を噛むと、自分のもつ最高級の回復薬全てを、それの入った道具袋ごと遠藤に手渡した。他の団員達もメルドと同じく、悔しそうに表情を歪めて自らの道具袋を遠藤に託した。

 

 

 

「すまないな、浩介。一緒に、助けに行きたいのは山々だが……、私達は今すぐには動けない……」

 

「あ、いや、気にしないで下さいよ。大分、薬系も少なくなってるだろうし、これだけでも助かります」

 

 

 

 そう言って、回復薬の類が入った道具袋を振りながら苦笑いする遠藤だったが、メルド団長の表情は、むしろ険しさを増した。それは、助けに行けない悔しさだけでなく、苦渋の滲む表情だった。

 

突如

「浩介ッ!?」

 

「えっ!?」

 

 

 

 メルド団長が、突然、浩介を弾き飛ばすとギャリィイイ!! という金属同士が擦れ合うような音を響かせて、円を描くようにその手に持つ刀をを振るった。そして、そのままくるりと一回転すると遠心力をたっぷりのせた見事な回し蹴りを揺らめく空間に・・・・・・・放った。

 

 

 

ドガッ!

 

 

 

 そんな音を響かせて、揺らめく空間は後方へと吹き飛ばされる。そして、五メートルほど先で地面に無数の爪痕が刻み込まれた。爪を立てて減速したのだろう。

 

 

 

 それを見て、地面に尻餅を付いていた遠藤は、顔を青ざめさせて呟く。

 

 

 

「そ、そんな。もう追いついて……」

 

 

 

 その言葉がまるで合図となったかのように、ぞろぞろと遠藤達を追い詰めた魔物達が現れた。遠藤は、予想外に早く追いつかれたことに動揺して尻餅を付いたままだ。ここに来るまでの間、〝暗殺者〟の技能を使って気配や臭い、魔力残滓などの痕跡を消しながら移動してきた。魔人族の女が光輝達を探しながら移動する以上、一直線に駆け抜けた遠藤にこんなに早く追いつくはずがなかったのだ。

 

 

 

 そんな遠藤の疑問は、続いて現れた悪夢のような女によって解消されることになった。

 

 

 

「チッ。一人だけか……逃げるなら転移陣のあるこの部屋まで来るかと思ったんだけど……様子から見て、どこかに隠れたようだね」

 

 

 

 髪を苛立たしげにかきあげながら、四つ目狼の背に乗って現れた魔人族の女に、メルド団長達が臨戦態勢になる。彼女の言葉からすると、どうやら、光輝達が一目散に転移陣へと逃げ込むと考えて、捜索せずに一直線にやって来たらしい。予想が外れて、光輝達を探さねばならないことに苛立っているようだ。

 

 

 

 それは同時に、光輝達がまだ無事であるということでもある。遠藤もメルド団長達も僅かではあるがホッとしたように頬を緩めた。それに目ざとく気がついた魔人族の女が、遠藤達をハンッと鼻で笑う。

 

 

 

「まぁ、任務もあるし……さっさとあんたら殺して探し出すかね」

 

 

 

 直後、一斉に魔物が襲いかかった。キメラが空間を揺らめかせながら突進し、黒猫が疾風となって距離を詰める。ブルタールモドキが、メイスを振りかぶりながら迫り、四つ目狼が後方より隙を覗う。

 

 

 

「円陣を組め! 転移陣を死守する! 浩介ッ !いつまで無様を晒している気だ! さっさと立ち上がって……逃げろ! 地上へ!」

 

「えっ!?」

 

 

 

 流石、王国の最精鋭と思わず称賛したくなるほど迅速な陣組みと連携で襲い来る魔物の攻撃を凌ぐメルド団長達。事前に遠藤から魔物の話を聞いていた事から、自分達では攻撃力不足だと割り切り、徹底的に防御と受け流しを行っている。

 

 

 

 遠藤は、メルド団長の「地上へ逃げろ」という言葉に思わず疑問の声を上げた。逃げるなら一緒に逃げればいいし、どうせこの場を離脱するなら地上ではなく光輝達のもとへ戻って団長の言葉を伝える役目があると思ったからだ。

 

 

 

「ボサっとするな! 魔人族のことを地上に伝えろ!」

 

「で、でも、団長達は……」

 

「我らは……ここを死地とする! 浩介! 向こう側で転移陣を壊せ! なるべく時間は稼いでやる!」

 

「そ、そんな……」

 

 

 

 メルド団長の考えは明確だ。地上へ逃げるにしても、誰かが僅かでも時間を稼がねば直ぐに魔物達も転移してしまうだろう。そうなれば、追っ手を撒く方法がなくなってしまい、追いつかれて殺される可能性が高い。

 

 

 

 なので、一人を逃がして、残り全員で時間稼ぎをするのがベストなのだ。時間を稼げれば、対となる三十層の転移陣を一部破壊することで、完全に追っ手を撒ける。転移陣は、直接地面に掘り込んであるタイプなので、〝錬成〟で簡単に修復できる。逃げ切って、地上の駐屯部隊に事の顛末を伝えた後、再び、光輝達が使えるように修復すればいい。

 

 

 

 そして、その逃げる一人に選ばれたのが遠藤なのだ。遠藤は、先程、光輝以外の自分達を切り捨てるような発言をしたメルド団長が、今度は、自分達を犠牲にして遠藤一人を逃がそうとしていることに戸惑い、それ故に行動を起こせずにいた。

 

「行けぇぇぇ浩介ぇ!」

 

遠藤は、グッと唇を噛むと全力で踵を返し転移陣へと向かった。ここで、メルド団長の思いと覚悟に応えられなければ男ではないと思ったからだ。

 

 

 

「させないよ!」

 

 

 

 魔人族の女が、黒猫を差し向けつつ自らも魔法を放った。黒猫が、背中の触手を弾丸のように豪速で射出し、更に石の槍が殺意の風に乗って空を疾駆する。

 

 

 

 遠藤は、何とか触手をショートソードで切り払い、身を捻りながら躱すが、続く石の槍までは躱しきれそうになかった。あらかじめ触手の位置を計算したように絶妙なタイミングと方向から連続して飛来したからだ。遠藤は、歯を食いしばって衝撃に備えた。例え、攻撃を食らっても、走り続けてそのまま転移陣に飛び込んでやるという気概をもって。

 

 

 

 だが、予想した衝撃はやって来なかった。騎士団員の一人が円陣から飛び出し、その身を盾にして遠藤を庇ったからだ。

 

 

 

「ア、アランさん!」

 

「ぐふっ……いいから気にせず行け!」

 

 

 

 腹部に石の槍を突き刺したまま、剣を振るって襲い来る魔物の攻撃を逸していくアランと呼ばれた騎士は、ニッと実に男臭い笑みを浮かべて遠藤にそう言った。遠藤は、噛み切るほど唇を強く噛み締めて、転移陣へと駆ける。

 

 

 

「チッ! 雑魚のくせに粘る! お前達、あの少年を集中して狙え!」

 

 

 

 魔人族の女が、少し焦ったように改めてそう命じるが……既に遅かった。

 

 

 

「ハッ、私達の勝ちだ! ハイリヒ王国の騎士を舐めるな!」

 

 

 

 メルド団長が不敵な笑みを浮かべながら、そう叫ぶと同時に遠藤が転移陣を起動し終え、その姿を消した。魔人族の女は、メルド団長の言葉を無視して魔物を突っ込ませる。魔物は直接魔力を操れるので、面倒な起動詠唱をすることもなく転移陣を起動出来、それ故、今なら、まだ間に合うと考えたからだ。

 

 

 

 しかし、

 

「舐めるなと言っている!」

 

メルド団長達が光輝達にはない巧みな技と連携、そして経験からくる動きで魔物達を妨害する。多勢に無勢でありながら、その防御能力と粘り強さは賞賛に値するものだった。

 

 

 

 もっとも、メルド団長達がいくら死力を尽くしたところで相対する魔物の数と強さは異常。腹を石の槍で貫かれていたアランが、遂に力尽きて、魔物の攻撃に踏ん張りきれずバランスを崩し膝を突いた。その綻びから、キメラの一体が防衛線を突破し転移陣に到達する。

 

 

 

 キメラが消えるのと、魔法陣が輝きを失うのは同時だった。

 

 

 

「くっ、一体、送られてしまったか……浩介……死ぬなよ」

 

 

 

 メルド団長の呟きは魔物の咆哮にかき消された。遠藤を逃したことの腹いせに魔人族の女がメルド団長達に魔物達を一斉に差し向けたからだ。

 

 

 

「フッ、ここを死地と定めたのなら最後まで暴れるだけだ。お前達、ハイリヒ王国騎士団の意地を見せてやれ!」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

 

 

 メルド団長の号令に、部下の騎士達が威勢のいい雄叫びを以て応える。その雄叫びに込められた気迫は、一瞬とはいえ、周囲の魔物達を怯ませる程のものだった。

 

 

 

 ……その十分後

 

 

 

 転移陣のある七十層の部屋に再び静寂が戻った。

 







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第15話 魔人族と魔物

今回でハジメ達の無双シーンまで描きたいと思ってた時期が私にもありました。
取り敢えず合流まではたどり着けたんじゃ…

注意書き

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
輪廻君が何言ってるか解らなくても気にしないで。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十五人ぐらいになりそう!(現時点、後に更に増える。)
輪廻君むっちゃちーと。

それでもいいよと言う方のみご覧下さい。


輪廻達は現在、ホルアドに居た。

 

「支部長はいるか? フューレンのギルド支部長から手紙を預かっているんだが……本人に直接渡せと言われているんだ」

 

 

 

 ハジメは、そう言いながら自分のステータスプレートを受付嬢に差し出す。受付嬢は、緊張しながらもプロらしく居住まいを正してステータスプレートを受け取った。

 

 

 

「は、はい。お預かりします。え、えっと、フューレン支部のギルド支部長様からの依頼……ですか?」

 

 

 

 普通、一介の冒険者がギルド支部長から依頼を受けるなどということはありえないので、少し訝しそうな表情になる受付嬢。しかし、渡されたステータスプレートに表示されている情報を見て目を見開いた。

 

 

 

「き〝金〟ランク!?」

 

 

 

 冒険者において〝金〟のランクを持つ者は全体の一割に満たない。そして、〝金〟のランク認定を受けた者についてはギルド職員に対して伝えられるので、当然、この受付嬢も全ての〝金〟ランク冒険者を把握しており、ハジメのこと等知らなかったので思わず驚愕の声を漏らしてしまった。

 

 

 

 その声に、ギルド内の冒険者も職員も含めた全ての人が、受付嬢と同じように驚愕に目を見開いてハジメ達を凝視する。建物内がにわかに騒がしくなった。

 

 

 

 受付嬢は、自分が個人情報を大声で晒してしまったことに気がついてサッと表情を青ざめさせる。そして、ものすごい勢いで頭を下げ始めた。

 

 

 

「も、申し訳ありません! 本当に、申し訳ありません!」

 

「あ~、いや。別にいいから。取り敢えず、支部長に取り次ぎしてくれるか?」

 

「は、はい! 少々お待ちください!」

 

 

 

 放っておけばいつまでも謝り続けそうな受付嬢に、ハジメは苦笑いする。ウルで主が軽く戦争し、フューレンで裏組織を壊滅させるなど大暴れしてきた以上、身分の秘匿など今更だと思ったのだ。

 

 子連れで美女・美少女ハーレムを持つ、見た目少年達の〝金〟ランク冒険者に、ギルド内の注目がこれでもかと集まるが、注目されるのは何時ものことなので割り切って受付嬢を待つ輪廻達。注目されることに慣れていないミュウが、居心地悪そうなので全員であやす。

 

 やがて、と言っても五分も経たないうち、ギルドの奥からズダダダッ! と何者かが猛ダッシュしてくる音が聞こえだした。何事だと、輪廻達が音の方を注目していると、カウンター横の通路から全身黒装束の少年がズザザザザザーと床を滑りながら猛烈な勢いで飛び出てきて、誰かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡し始めた。

 

 輪廻とハジメと清水は、その人物に見覚えがあり、こんなところで再会するとは思わなかったので思わず目を丸くして呟いた。

 

 

「「「……遠藤?」」」

 

 

輪廻とハジメの呟きに〝!〟と某ダンボール好きな傭兵のゲームに出てくる敵兵のような反応をする黒装束の少年、遠藤浩介は、辺りをキョロキョロと見渡し、それでも目当ての人物が見つからないことに苛立ったように大声を出し始めた。

 

 

 

「南雲ぉ!十五夜ぁ! いるのか! お前達なのか! 何処なんだ! 南雲ぉ!十五夜ぁ! 生きてんなら出てきやがれぇ! 南雲ハジメェー!十五夜輪廻ェー」

 

 

 

 あまりの大声に、思わず耳に指で栓をする人達が続出する。その声は、単に死んだ筈のクラスメイトが生存しているかもしれず、それを確かめたいという気持ち以上の必死さが含まれているようだった。

 

 

 

 ユエ達の視線が一斉に輪廻達の方を向く。ハジメは、未だに自分達の名前を大声で連呼する遠藤に、頬をカリカリと掻くとあまり関わりたくないなぁという表情をしながらも声をかけた。

 

 

 

「あ~、遠藤? ちゃんと聞こえてるから大声で人の名前を連呼するのは止めてくれ」

 

「!? 南雲! どこだ!」

 

 

 

 ハジメの声に反応してグリンッと顔をハジメの方に向ける遠藤。余りに必死な形相に、ハジメは思わずドン引きする。

 

 

 

 一瞬、ハジメと視線があった遠藤だが、直ぐにハジメから目を逸らすと再び辺りをキョロキョロと見渡し始めた。

 

 

「くそっ! 声は聞こえるのに姿が見当たらねぇ! 幽霊か? やっぱり化けて出てきたのか!? 俺には姿が見えないってのか!?」

 

「いや、目の前にいるだろうが、ど阿呆。つか、いい加減落ち着けよ。影の薄さランキング生涯世界一位」

 

「!? また、声が!? ていうか、誰がコンビニの自動ドアすら反応してくれない影が薄いどころか存在自体が薄くて何時か消えそうな男だ! 自動ドアくらい三回に一回はちゃんと開くわ!」

 

「三回中二回は開かないのか……お前流石だな」

 

「そこまで言ってねえわ」

 

 そこまで言葉を交わしてようやく、目の前の白髪眼帯の男が会話している本人だと気がついたようで、遠藤は、ハジメの顔をマジマジと見つめ始める。男に見つめられて喜ぶ趣味はないので嫌そうな表情で顔を背けるハジメに、遠藤は、まさかという面持ちで声をかけた。

 

 

 

「お、お前……お前が南雲……なのか?」

 

「はぁ……ああ、そうだ。見た目こんなだが、正真正銘南雲ハジメだ」

 

 

 

 上から下までマジマジと観察し、それでも記憶にあるハジメとの余りの違いに半信半疑の遠藤だったが、顔の造形や自分の影の薄さを知っていた事からようやく信じることにしたようだ。

 

 

 

「お前……生きていたのか」

 

「今、目の前にいるんだから当たり前だろ」

 

「何か、えらく変わってるんだけど……見た目とか雰囲気とか口調とか……」

 

「奈落の底から自力で這い上がってきたんだぞ? そりゃ多少変わるだろ」

 

「そ、そういうものかな? いや、でも、そうか……ホントに生きて……」

 

 

 

 あっけらかんとしたハジメの態度に困惑する遠藤だったが、それでも死んだと思っていたクラスメイトが本当に生きていたと理解し、安堵したように目元を和らげた。いくら香織に構われていることに他の男と同じように嫉妬の念を抱いていたとしても、また檜山達のイジメを見て見ぬふりをしていたとしても、死んでもいいなんて恐ろしいことを思えるはずもない。ハジメの死は大きな衝撃であった。だからこそ、遠藤は、純粋にクラスメイトの生存が嬉しかったのだ。

 

 

 

「っていうかお前……冒険者してたのか? しかも〝金〟て……」

 

「ん~、まぁな」

 

 

 

 ハジメの返答に遠藤の表情がガラリと変わる。クラスメイトが生きていた事にホッとしたような表情から切羽詰ったような表情に。改めて、よく見てみると遠藤がボロボロであることに気がつくハジメ。一体、何があったんだと内心首を捻る。

 

 

 

「……つまり、迷宮の深層から自力で生還できる上に、冒険者の最高ランクを貰えるくらい強いってことだよな? 信じられねぇけど……」

 

「まぁ、そうだな」

 

遠藤の真剣な表情でなされた確認に肯定の意をハジメが示すと、遠藤はハジメに飛びかからんばかりの勢いで肩をつかみに掛かり、今まで以上に必死さの滲む声音で、表情を悲痛に歪めながら懇願を始めた。

 

 

 

「なら頼む! 一緒に迷宮に潜ってくれ! 早くしないと皆死んじまう! 一人でも多くの戦力が必要なんだ! 健太郎も重吾も死んじまうかもしれないんだ! 頼むよ、南雲!」

 

「ちょ、ちょっと待て。いきなりなんだ!? 状況が全くわからないんだが? 死んじまうって何だよ。天之河がいれば大抵何とかなるだろ? メルド団長がいれば、二度とベヒモスの時みたいな失敗もしないだろうし……」

 

 ハジメが、普段目立たない遠藤のあまりに切羽詰った尋常でない様子に、困惑しながら問い返す。すると、遠藤はメルド団長の名が出た瞬間、ひどく暗い表情になって膝から崩れ落ちた。そして、押し殺したような低く澱んだ声でポツリと呟く。

 

 

 

「……んだよ」

 

「は? 聞こえねぇよ。何だって?」

 

「……死んだって言ったんだ! メルド団長もアランさんも他の皆も! 迷宮に潜ってた騎士は皆死んだ! 俺を逃がすために! 俺のせいで! 死んだんだ! 死んだんだよぉ!」

 

「……そうか」

 

 

 

 癇癪を起こした子供のように、「死んだ」と繰り返す遠藤に、ハジメはただ一言そう返した。

 

 

 

 

「と言うか俺たちの存在を忘れるな」

 

「同じく」

 

「十五夜!?…はあんまり変わってないな、うん。それよりお前清水か!?めっちゃ変わったじゃないか!」

 

「うん、まぁ、なんか色々とあったんだよ色々と。」

 

「そ、そうか。」

 

という事が有りつつも

 

 

 

「で? 何があったんだ?」

 

「それは……」

 

 

 尋ねるハジメに、遠藤は膝を付きうなだれたまま事の次第を話そうとする。と、そこでしわがれた声による制止がかかった。

 

 

 

「話の続きは、奥でしてもらおうか。そっちは、俺の客らしいしな」

 

 

 

 声の主は、六十歳過ぎくらいのガタイのいい左目に大きな傷が入った迫力のある男だった。その眼からは、長い年月を経て磨かれたであろう深みが見て取れ、全身から覇気が溢れている。

 

 

 

 ハジメ達は、先程の受付嬢が傍にいることからも彼がギルド支部長だろうと当たりをつけた。そして、遠藤の慟哭じみた叫びに再びギルドに入ってきた時の不穏な雰囲気が満ち始めた事から、この場で話をするのは相応しくないだろうと判断し大人しく従う事にした。

 

 

 

 おそらく、遠藤は既にここで同じように騒いで、勇者組や騎士団に何かがあったことを晒してしまったのだろう。ギルドに入ったときの異様な雰囲気はそのせいだ。

 

 

 

 ギルド支部長と思しき男は、遠藤の腕を掴んで強引に立たせると有無を言わさずギルドの奥へと連れて行った。遠藤は、かなり情緒不安定なようで、今は、ぐったりと力を失っている。

 

 

 

 きっと、話の内容は碌な事じゃないんだろうなと嫌な予想をしながらハジメ達は後を付いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……魔人族……ね」

 

 

 

 冒険者ギルドホルアド支部の応接室にハジメの呟きが響く。対面のソファーにホルアド支部の支部長ロア・バワビスと遠藤浩介が座っており、遠藤の正面に輪廻が、その両サイドにユエとミレディが、ユエの隣にシアが、ミレディの隣にティオが座っている。ハジメ達輪廻の従者は優花以外立っている。ミュウは輪廻の膝の上だ。

 

 

 

 遠藤から事の次第を聞き終わったハジメの第一声が先程の呟きだった。魔人族の襲撃に遭い、勇者パーティーが窮地にあるというその話に遠藤もロアも深刻な表情をしており、室内は重苦しい雰囲気で満たされていた。

 

 

 

 ……のだが、輪廻の膝の上で幼女がモシャモシャと頬をリスのよう膨らませながらお菓子を頬張っているため、イマイチ深刻になりきれていなかった。ミュウには、輪廻達の話は少々難しかったようだが、それでも不穏な空気は感じ取っていたようで、不安そうにしているのを見かねて輪廻がお菓子を与えておいたのだ。

 

 

 

「つぅか! 何なんだよ! その子! 何で、菓子食わしてんの!? 状況理解してんの!? みんな、死ぬかもしれないんだぞ!」

 

「ひぅ!? パパぁ!」

 

 

 

 場の雰囲気を壊すようなミュウの存在に、ついに耐え切れなくなった遠藤がビシッと指を差しながら怒声を上げる。それに驚いてミュウが小さく悲鳴を上げながら輪廻に抱きついた。

 

 

 

 当然、輪廻から吹き出す人外レベルの1万倍程の殺気。パパは娘の敵を許さない。

 

 

 

「てめぇ……何、ミュウに八つ当たりしてんだァ?消すぞ!?」

 

「ひぅ!?」

 

 

 

 ミュウと同じような悲鳴を上げて浮かしていた腰を落とす遠藤。両隣から「……もう、すっかりパパ」とか「ちゃんとお父さんしてるねぇ〜。」とか「さっき、さり気なく〝家の子〟とか口走ってましたしね~」とか「果てさて、主様はエリセンで子離れ出来るのかのぉ~」とか聞こえてくるが、輪廻は無視する。そんな事より、怯えてしまったミュウを宥める方が重要だ。

 

 

 

 ソファーに倒れこみガクブルと震える遠藤を尻目にミュウを宥める輪廻に、ロアが呆れたような表情をしつつ、埒があかないと話に割り込んだ。

 

 

 

「さて、輪廻。イルワからの手紙でお前の事は大体分かっている。随分と大暴れしたようだな?」

 

「まァ、全部成り行きだがなァ。」

 

 

 

 成り行き程度の心構えで成し遂げられる事態では断じてなかったのだが、事も無げな様子で面倒くさそうな顔をする輪廻に、ロアは面白そうに唇の端を釣り上げた。

 

 

 

「手紙には、お前の〝金〟ランクへの昇格に対する賛同要請と、できる限り便宜を図ってやって欲しいという内容が書かれていた。一応、事の概要くらいは俺も掴んではいるんだがな……たった1人で六万近い魔物の殲滅、半日でフューレンに巣食う裏組織の壊滅……にわかには信じられんことばかりだが、イルワの奴が適当なことをわざわざ手紙まで寄越して伝えるとは思えん……もう、お前達が実は魔王だと言われても俺は不思議に思わんぞ」

 

 

 

 ロアの言葉に、遠藤が大きく目を見開いて驚愕をあらわにする。自力で【オルクス大迷宮】の深層から脱出したハジメ達の事を、それなりに強くなったのだろうとは思っていたが、それでも自分よりは弱いと考えていたのだ。

 

 

 

 何せハジメの天職は〝錬成師〟という非戦系職業であり、元は〝無能〟と呼ばれていた上、〝金〟ランクと言っても、それは異世界の冒険者の基準であるから自分達召喚された者とは比較対象にならない。なので、精々、破壊した転移陣の修復と、戦闘のサポートくらいなら出来るだろうくらいの認識だったのだ。

 

 

 

 元々、遠藤が冒険者ギルドにいたのは、高ランク冒険者に光輝達の救援を手伝ってもらうためだった。もちろん、深層まで連れて行くことは出来ないが、せめて転移陣の守護くらいは任せたかったのである。駐屯している騎士団員もいるにはいるが、彼等は王国への報告などやらなければならないことがあるし、何より、レベルが低すぎて精々三十層の転移陣を守護するのが精一杯だった。七十層の転移陣を守護するには、せめて〝銀〟ランク以上の冒険者の力が必要だったのである。

 

 

 

 そう考えて冒険者ギルドに飛び込んだ挙句、二階のフロアで自分達の現状を大暴露し、冒険者達に協力を要請したのだが、人間族の希望たる勇者が窮地である上に騎士団の精鋭は全滅、おまけに依頼内容は七十層で転移陣の警備というとんでもないもので、誰もが目を逸らし、同時に人間族はどうなるんだと不安が蔓延したのである。

 

 

 

 そして、騒動に気がついたロアが、遠藤の首根っこを掴んで奥の部屋に引きずり込み事情聴取をしているところで、ハジメ達のステータスプレートをもった受付嬢が駆け込んできたというわけだ。

 

 

 

 そんなわけで、遠藤は、自分がハジメの実力を過小評価していたことに気がつき、もしかすると自分以上の実力を持っているのかもしれないと、過去のハジメと比べて驚愕しているのである。

 

 

 

 遠藤が驚きのあまり硬直している間も、ロアと輪廻達の話は進んでいく。

 

 

「バカ言わないでくれ……魔王だなんて、そこまで弱くないつもりだぞ?」

 

「同感だ、そんなに弱いつもりは無い、何せ俺たちは…」

 

「「破壊神の右手と左腕だからな。」」

「おい待てェ、誰が破壊神やァ」

「主です。」「我が君です。」

「揃って言うなやァ。」

「ふっ、魔王を雑魚扱いか?それに破壊神か…随分な大言を吐くやつだ……だが、それが本当なら俺からの、冒険者ギルドホルアド支部長からの指名依頼を受けて欲しい」

 

「……勇者達の救出だろ?」

 

遠藤が、救出という言葉を聞いてハッと我を取り戻す。そして、身を乗り出しながら、ハジメに捲し立てた。

 

 

 

「そ、そうだ! 南雲! 一緒に助けに行こう! お前達がそんなに強いなら、きっとみんな助けられる!」

 

「……」

 

 

 

 見えてきた希望に瞳を輝かせる遠藤だったが、ハジメの反応は芳しくない。遠くを見て何かを考えているようだ。遠藤は、当然、ハジメが一緒に救出に向かうものだと考えていたので、即答しないことに困惑する。

 

 

 

「どうしたんだよ! 今、こうしている間にもアイツ等は死にかけているかもしれないんだぞ! 何を迷ってんだよ! 仲間だろ!」

 

「……仲間?」

 

 ハジメは、考え事のため逸らしていた視線を元に戻し、冷めた表情でヒートアップする遠藤を見つめ返した。その瞳に宿る余りの冷たさに思わず身を引く遠藤。先程の殺気を思い出し尻込みするが、それでも、ハジメという貴重な戦力を逃すわけにはいかないので半ば意地で言葉を返す。

 

 

 

「あ、ああ。仲間だろ! なら、助けに行くのはとうぜ……」

 

「勝手にお前等の仲間にするな。はっきり言うが、俺がお前等にもっている認識は一部を除いて唯の〝同郷〟の人間程度であって、それ以上でもそれ以下でもない。他人と何ら変わらない」

 

「なっ!? そんな……何を言って……」

 

 

 

 ハジメの予想外に冷たい言葉に狼狽する遠藤を尻目に、ハジメは、先程の考え事の続き、すなわち、光輝達を助けることのデメリットを考える。

 

 

 

 ハジメ自身が言った通り、ハジメにとってクラスメイトは既に顔見知り程度の認識だ。今更、過去のあれこれを持ち出して復讐してやりたいなどという思いもなければ、逆に出来る限り力になりたいなどという思いもない。本当に、関心のないどうでもいい相手だった。

自分が使えている主が言わなければ。

 

「………ロア支部長、」

「何だ?」

「…今回の奴だが、対外的には依頼の形にしといてくれ。」

「上の連中に無条件で助けてくれると思われたくないからだな?」

「アァ、それからミュウを見る為に一部屋貸してくれ。」

「ああ、それぐらい構わない、」

 

結局、ハジメが一緒に行ってくれるということに安堵して深く息を吐く遠藤を無視して、輪廻はロアとさくさく話を進めていった。

 

「…ハジメ、清水、今回は実践も兼ねてお前達に任せる。まァ要するにテストだ、合格かは俺が最後の方に言って決める。」

「「了解です、主(我が君)」」

「ユエとシアとミレディはハジメの現場指揮の元、戦え、終わったら褒美をくれてやる、何でもだ。」

「!分かった 」

「その言葉忘れちゃダメだよぉ?」

「!やったるですぅ!」

 

その輪廻の言葉にユエ達は今までにない程の殺る気(誤字ではない)(特にシア)を出した。

ハジメ達は遠藤の案内で出発することが出来た。

 

 

 

「おら、さっさと案内しやがれ、遠藤」

 

「早く案内しろ、遠藤」

 

「うわっ、ケツを蹴るなよ! っていうかお前いろいろ変わりすぎだろ!」

 

「やかましい。さくっと行って、一日……いや半日で終わらせるぞ。主からの指名ださっさと終わらせるぞ。」

 

「」

 

 

 

 

 

 迷宮深層に向かって疾走しながら、ハジメと清水の態度や環境についてブツブツと納得いかなさそうに呟く遠藤。強力な助っ人がいるという状況に、少し心の余裕を取り戻したようだ。しゃべる暇があるならもっと速く走れとつつかれ、敏捷値の高さに関して持っていた自信を粉微塵に砕かれつつ、遠藤は親友達の無事を祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

れ「…タイミングを見計らって殺るわよ。」

全員「「「「「…えぇ。」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うそ……だろ? 光輝が……負けた?」

 

「そ、そんな……」

 

「や、やだ……な、なんで……」

 

 

 

 隠し部屋から出てきた仲間達が、吊るされる光輝を見て呆然としながら、意味のない言葉をこぼす。流石の雫や香織、鈴も言葉が出ないようで立ち尽くしている。そんな、戦意を喪失している彼等に、魔人族の女が冷ややかな態度を崩さずに話しかけた。

 

 

 

「ふん、こんな単純な手に引っかかるとはね。色々と……舐めてるガキだと思ったけど、その通りだったようだ」

 

 

 

 雫が、青ざめた表情で、それでも気丈に声に力を乗せながら魔人族の女に問いかける。

 

 

 

「……何をしたの?」

 

「ん? これだよ、これ」

 

 

 

 そう言って、魔人族の女は、未だにブルタールモドキに掴まれているメルド団長へ視線を向ける。その視線をたどり、瀕死のメルド団長を見た瞬間、雫は理解した。メルド団長は、光輝の気を逸らすために使われたのだと。知り合いが、瀕死で捕まっていれば、光輝は必ず反応するだろう。それも、かなり冷静さを失って。

 

 

 

 おそらく、前回の戦いで光輝の直情的な性格を魔人族の女は把握したのだ。そして、キメラの固有能力でも使って、温存していた強力な魔物を潜ませて、光輝が激昂して飛びかかる瞬間を狙ったのだろう。

 

 

 

「……それで? 私達に何を望んでいるの? わざわざ生かして、こんな会話にまで応じている以上、何かあるんでしょう?」

 

「ああ、やっぱり、あんたが一番状況判断出来るようだね。なに、特別な話じゃない。前回のあんた達を見て、もう一度だけ勧誘しておこうかと思ってね。ほら、前回は、勇者君が勝手に全部決めていただろう? 中々、あんたらの中にも優秀な者はいるようだし、だから改めてもう一度ね。で? どうだい?」

 

 

 

 魔人族の女の言葉に何人かが反応する。それを尻目に、雫は、臆すことなく再度疑問をぶつけた。

 

 

 

「……光輝はどうするつもり?」

 

「ふふ、聡いね……悪いが、勇者君は生かしておけない。こちら側に来るとは思えないし、説得も無理だろう? 彼は、自己完結するタイプだろうからね。なら、こんな危険人物、生かしておく理由はない」

 

「……それは、私達も一緒でしょう?」

 

「もちろん。後顧の憂いになるってわかっているのに生かしておくわけないだろう?」

 

「今だけ迎合して、後で裏切るとは思わないのかしら?」

 

「それも、もちろん思っている。だから、首輪くらいは付けさせてもらうさ。ああ、安心していい。反逆できないようにするだけで、自律性まで奪うものじゃないから」

 

「自由度の高い、奴隷って感じかしら。自由意思は認められるけど、主人を害することは出来ないっていう」

 

「そうそう。理解が早くて助かるね。そして、勇者君と違って会話が成立するのがいい」

 

 

 

 雫と魔人族の女の会話を黙って聞いていたクラスメイト達が、不安と恐怖に揺れる瞳で互いに顔を見合わせる。魔人族の提案に乗らなければ、光輝すら歯が立たなかった魔物達に襲われ十中八九殺されることになるだろうし、だからといって、魔人族側につけば首輪をつけられ二度と魔人族とは戦えなくなる。

 

 

 

 それは、つまり、実質的に〝神の使徒〟ではなくなるということだ。そうなった時、果たして聖教教会は、何とかして帰ってきたものの役に立たなくなった自分達を保護してくるのか……そして、元の世界に帰ることは出来るのか……

 

 

 

 どちらに転んでも碌な未来が見えない。しかし……

 

 

 

「わ、私、あの人の誘いに乗るべきだと思う!」

 

 

 

 誰もが言葉を発せない中、意外なことに恵里が震えながら必死に言葉を紡いだ。それに、クラスメイト達は驚いたように目を見開き、彼女をマジマジと注目する。そんな恵里に、龍太郎が、顔を怒りに染めて怒鳴り返した。

 

 

 

「恵里、てめぇ! 光輝を見捨てる気か!」

 

「ひっ!?」

 

「龍太郎、落ち着きなさい! 恵里、どうしてそう思うの?」

 

 

 

 龍太郎の剣幕に、怯えたように後退る恵里だったが、雫が龍太郎を諌めたことで何とか踏みとどまった。そして、深呼吸するとグッと手を握りしめて心の内を語る。

 

 

 

「わ、私は、ただ……みんなに死んで欲しくなくて……光輝君のことは、私には……どうしたらいいか……うぅ、ぐすっ……」

 

 

 

 ポロポロと涙を零しながらも一生懸命言葉を紡ぐ恵里。そんな彼女を見て他のメンバーが心を揺らす。すると、一人、恵里に賛同する者が現れた。

 

 

 

「俺も、中村と同意見だ。もう、俺達の負けは決まったんだ。全滅するか、生き残るか。迷うこともないだろう?」

 

「檜山……それは、光輝はどうでもいいってことかぁ? あぁ?」

 

「じゃあ、坂上。お前は、もう戦えない天之河と心中しろっていうのか? 俺達全員?」

 

「そうじゃねぇ! そうじゃねぇが!」

 

「代案がないなら黙ってろよ。今は、どうすれば一人でも多く生き残れるかだろ」

 

 

 

 檜山の発言で、更に誘いに乗るべきだという雰囲気になる。檜山の言う通り、死にたくなければ提案を呑むしかないのだ。

 

 

 

 しかし、それでも素直にそれを選べないのは、光輝を見殺しにて、自分達だけ生き残っていいのか? という罪悪感が原因だ。まるで、自分達が光輝を差し出して生き残るようで踏み切れないのである。

 

 

 

 そんなクラスメイト達に、絶妙なタイミングで魔人族の女から再度、提案がなされた。

 

 

 

「ふむ、勇者君のことだけが気がかりというなら……生かしてあげようか? もちろん、あんた達にするものとは比べ物にならないほど強力な首輪を付けさせてもらうけどね。その代わり、全員魔人族側についてもらうけど」

 

 

 

 雫は、その提案を聞いて内心舌打ちする。魔人族の女は、最初からそう提案するつもりだったのだろうと察したからだ。光輝を殺すことが決定事項なら現時点で生きていることが既におかしい。問答無用に殺しておけばよかったのだ。

 

 

 

 それをせずに今も生かしているのは、まさにこの瞬間のためだ、おそらく、魔人族の女は前回の戦いを見て、光輝達が有用な人材であることを認めたのだろう。だが、会話すら成立しなかったことから光輝がなびくことはないと確信した。しかし、他の者はわからない。なので、光輝以外の者を魔人族側に引き込むため策を弄したのだ。

 

 

 

 一つが、光輝を現時点では殺さないことで反感を買わないこと、二つ目が、生きるか死ぬかの瀬戸際まで追い詰めて選択肢を狭めること、そして三つ目が〝それさえなければ〟という思考になるように誘導し、ここぞという時にその問題点を取り除いてやることだ。

 

 

 

 現に、光輝を生かすといわれて、それなら生き残れるしと、魔人族側に寝返ることをよしとする雰囲気になり始めている。本当に、光輝が生かされるかについては何の保証もないのに。殺された後に後悔しても、もう魔人族側には逆らえないというのに。

 

 

 

 雫は、そのことに気がついていたが、今、この時を生き残るには魔人族側に付くしかないのだと自分に言い聞かせて黙っていることにした。生き残りさえすれば、光輝を救う手立てもあるかもしれないと。

 

 

 

 魔人族の女としても、ここで雫達を手に入れることは大きなメリットがあった。一つは、言うまでもなく、人間族側にもたらすであろう衝撃だ。なにせ人間族の希望たる〝神の使徒〟が、そのまま魔人族側につくのだ。その衝撃……いや、絶望は余りに深いだろう。これは、魔人族側にとって極めて大きなアドバンテージだ。

 

 

 

 二つ目が、戦力の補充である。魔人族の女が【オルクス大迷宮】に来た本当の目的、それは迷宮攻略によってもたらされる大きな力だ。ここまでは、手持ちの魔物達で簡単に一掃できるレベルだったが、この先もそうとは限らない。幾分か、魔物の数も光輝達に殺られて減らしてしまったので戦力の補充という意味でも雫達を手に入れるのは都合がよかったということだ。

 

 

 

 このままいけば、雫達が手に入る。雰囲気でそれを悟った魔人族の女が微かな笑みを口元に浮かべた。

 

 

 

 しかし、それは突然響いた苦しそうな声によって直ぐに消されることになった。

 

 

 

「み、みんな……ダメだ……従うな……」

 

「光輝!」

 

「光輝くん!」

 

「天之河!」

 

 

 

 声の主は、宙吊りにされている光輝だった。仲間達の目が一斉に、光輝の方を向く。

 

 

 

「……騙されてる……アランさん達を……殺したんだぞ……信用……するな……人間と戦わされる……奴隷にされるぞ……逃げるんだ……俺はいい……から……一人でも多く……逃げ……」

 

 

 

 息も絶え絶えに、取引の危険性を訴え、そんな取引をするくらいなら自分を置いてイチかバチか死に物狂いで逃げろと主張する光輝に、クラスメイト達の心が再び揺れる。

 

 

 

「……こんな状況で、一体何人が生き残れると思ってんだ? いい加減、現実をみろよ! 俺達は、もう負けたんだ! 騎士達のことは……殺し合いなんだ! 仕方ないだろ! 一人でも多く生き残りたいなら、従うしかないだろうが!」

 

 

 

 檜山の怒声が響く。この期に及んでまだ引こうとしない光輝に怒りを含んだ眼差しを向ける。檜山は、とにかく確実に生き残りたいのだ。最悪、ほかの全員が死んでも香織と自分だけは生き残りたかった。イチかバチかの逃走劇では、その可能性は低いのだ。

 

 

 

 魔人族側についても、本気で自分の有用性を示せば重用してもらえる可能性は十分にあるし、そうなれば、香織を手に入れることだって出来るかもしれない。もちろん、首輪をつけて自由意思を制限した状態で。檜山としては、別に彼女に自由意思がなくても一向に構わなかった。とにかく、香織を自分の所有物に出来れば満足なのだ。

 

 

 

 檜山の怒声により、より近く確実な未来に心惹かれていく仲間達。

 

 

 

 と、その時、また一つ苦しげな、しかし力強い声が部屋に響き渡る。小さな声なのに、何故かよく響く低めの声音。戦場にあって、一体何度その声に励まされて支えられてきたか。どんな状況でも的確に判断し、力強く迷いなく発せられる言葉、大きな背中を見せて手本となる姿のなんと頼りになることか。みなが、兄のように、あるいは父のように慕った男。メルドの声が響き渡る。

 

 

 

「ぐっ……お前達……お前達は生き残る事だけ考えろ! ……信じた通りに進め! ……私達の戦争に……巻き込んで済まなかった……お前達と過ごす時間が長くなるほど……後悔が深くなった……だから、生きて故郷に帰れ……人間のことは気にするな……最初から…これは私達の戦争だったのだ!」

 

 

 

 メルドの言葉は、ハイリヒ王国騎士団団長としての言葉ではなかった。唯の一人の男、メルド・ロギンスの言葉、立場を捨てたメルドの本心。それを晒したのは、これが最後と悟ったからだ。

 

 

 

 光輝達が、メルドの名を呟きながらその言葉に目を見開くのと、メルドが全身から光を放ちながらブルタールモドキを振り払い、一気に踏み込んで魔人族の女に組み付いたのは同時だった。

 

 

 

「魔人族……一緒に逝ってもらうぞ!」

 

「……それは……へぇ、自爆かい? 潔いね。嫌いじゃないよ、そう言うの」

 

「抜かせ!」

 

 

 

 メルドを包む光、一見、光輝の〝限界突破〟のように体から魔力が噴き出しているようにも見えるが、正確には体からではなく、首から下げた宝石のようなものから噴き出しているようだった。

 

 

 

 それを見た魔人族の女が、知識にあったのか一瞬で正体を看破し、メルドの行動をいっそ小気味よいと称賛する。

 

 

 

 その宝石は、名を〝最後の忠誠〟といい、魔人族の女が言った通り自爆用の魔道具だ。国や聖教教会の上層の地位にいるものは、当然、それだけ重要な情報も持っている。闇系魔法の中には、ある程度の記憶を読み取るものがあるので、特に、そのような高い地位にあるものが前線に出る場合は、強制的に持たされるのだ。いざという時は、記憶を読み取られないように、敵を巻き込んで自爆しろという意図で。

 

 

 

 メルドの、まさに身命を賭した最後の攻撃に、光輝達は悲鳴じみた声音でメルドの名を呼ぶ。しかし、光輝達に反して、自爆に巻き込まれて死ぬかもしれないというのに、魔人族の女は一切余裕を失っていなかった。

 

 

 

 そして、メルドの持つ〝最後の忠誠〟が一層輝きを増し、まさに発動するという直前に、一言呟いた。

 

 

 

「喰らい尽くせ、アブソド」

 

 

 

 と、魔人族の女の声が響いた直後、臨界状態だった〝最後の忠誠〟から溢れ出していた光が猛烈な勢いでその輝きを失っていく。

 

 

 

「なっ!? 何が!」

 

 

 

 よく見れば、溢れ出す光はとある方向に次々と流れ込んでいるようだった。メルドが、必死に魔人族の女に組み付きながら視線だけをその方向にやると、そこには六本足の亀型の魔物がいて、大口を開けながらメルドを包む光を片っ端から吸い込んでいた。

 

 

 

 六足亀の魔物、名をアブソド。その固有魔法は〝魔力貯蔵〟。任意の魔力を取り込み、体内でストックする能力だ。同時に複数属性の魔力を取り込んだり、違う魔法に再利用することは出来ない。精々、圧縮して再び口から吐き出すだけの能力だ。だが、その貯蔵量は、上級魔法ですら余さず呑み込めるほど。魔法を主戦力とする者には天敵である。

 

 

 

 メルドを包む〝最後の忠誠〟の輝きが急速に失われ、遂に、ただの宝石となり果てた。最後のあがきを予想外の方法で阻止され呆然とするメルドに、突如、衝撃が襲う。それほど強くない衝撃だ。何だ? とメルドは衝撃が走った場所、自分の腹部を見下ろす。

 

 

 

 そこには、赤茶色でザラザラした見た目の刃が生えていた。正確には、メルドの腹部から背中にかけて砂塵で出来た刃が貫いているのだ。背から飛び出している刃にはべっとりと血が付いていて先端からはその雫も滴り落ちている。

 

 

 

「……メルドさん!」

 

 

 

 光輝が、血反吐を吐きながらも気にした素振りも見せず大声でメルドの名を呼ぶ。メルドが、その声に反応して、自分の腹部から光輝に目を転じ、眉を八の字にすると「すまない」と口だけを動かして悔しげな笑みを浮かべた。

 

 

 

 直後、砂塵の刃が横薙ぎに振るわれ、メルドが吹き飛ぶ。人形のように力を失ってドシャ! と地面に叩きつけられた。少しずつ血溜りが広がっていく。誰が見ても、致命傷だった。満身創痍の状態で、あれだけ動けただけでも驚異的であったのだが、今度こそ完全に終わりだと誰にでも理解できた。

 

 

 

 咄嗟に、間に合わないと分かっていても、香織が遠隔で回復魔法をメルドにかける。僅かに出血量が減ったように見えるが、香織自身、もうほとんど魔力が残っていないので傷口が一向に塞がらない。

 

 

 

「うぅ、お願い! 治って!」

 

 

 

 魔力が枯渇しかかっているために、ひどい倦怠感に襲われ膝を突きながらも、必死に回復魔法をかける香織。

 

 

 

「まさか、あの傷で立ち上がって組み付かれるとは思わなかった。流石は、王国の騎士団長。称賛に値するね。だが、今度こそ終わり……これが一つの末路だよ。あんたらはどうする?」

 

 

 

 魔人族の女が、赤く染まった砂塵の刃を軽く振りながら光輝達を睥睨する。再び、目の前で近しい人が死ぬ光景を見て、一部の者を除いて、皆が身を震わせた。魔人族の女の提案に乗らなければ、次は自分がああなるのだと嫌でも理解させられる。

 

 

 

 檜山が、代表して提案を呑もうと魔人族の女に声を発しかけた。が、その時、

 

「今よ!」

「「「「「「「「スペルカード発動!」」」」」」」」

「霊符『夢想封印』」

「恋符『マスタースパーク』!」

「剣技『桜花閃々』!」

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!」

「魔符『アーティフルサクリファイス』」

「メイド秘技『殺人ドール』」

「想起『百万鬼夜行』」

「禁忌「クランベリートラップ」

「禁忌「レーヴァテイン」

「禁忌「フォーオブアカインド」

「禁忌「カゴメカゴメ」

「禁忌「恋の迷路」

「禁弾「スターボウブレイク」

「禁弾「カタディオプトリック」

「禁弾「過去を刻む時計」

「秘弾「そして誰もいなくなるか?」

「QED「495年の波紋」

 

ドゴォォォォォォォォングシャァザシュッドギャァァァァァァァァァンドコドコドッカァァァァァァァァン

 

「チッ!これが例の能力持ちの人間かい!だけど私達が対策してないとでも思ったかい?『能力禁じノ結界』『弱体ノ結界』」

 

(なっ!一気にスペルが使えなくなったわ!それに能力が使えない!。チッ、スペルも霊力や魔力の残存量からして皆も打てるのは一回限り、それにフランは分身体を作ってまで打ったから恐らくもう打てないはず、私も夢想封印とかの大技は使えない、なら、私達が隙を作って比較的に妖力が多い妖夢にスペルを打って貰って本体を倒す。)と霊夢が考えてる内に。

 

「……るな」

 

 

 

 未だ、馬頭に宙吊りにされながら力なく脱力する光輝が、小さな声で何かを呟く。満身創痍で何の驚異にもならないはずなのに、何故か無視できない圧力を感じ、檜山は言葉を呑み込んだ。

 

 

 

「は? 何だって? 死にぞこない」

 

 

 

 魔人族の女も、光輝の呟きに気がついたようで、どうせまた喚くだけだろうと鼻で笑いながら問い返した。光輝は、俯かせていた顔を上げ、真っ直ぐに魔人族の女をその眼光で射抜く。

 

 

 

 魔人族の女は、光輝の眼光を見て思わず息を呑んだ。なぜなら、その瞳が白銀色に変わって輝いていたからだ。得体の知れないプレッシャーに思わず後退りながら、本能が鳴らす警鐘に従って、馬頭に命令を下す。雫達の取り込みに対する有利不利など、気にしている場合ではないと本能で悟ったのだ。

 

 

 

「アハトド! 殺れ!」

 

「ルゥオオオ!!」

 

 

 

 馬頭、改めアハトドは、魔人族の女の命令を忠実に実行し、〝魔衝波〟を発動させた拳二本で宙吊りにしている光輝を両サイドから押しつぶそうとした。

 

 

 

 が、その瞬間、

 

 

 

カッ!!

 

 

 

 光輝から凄まじい光が溢れ出し、それが奔流となって天井へと竜巻のごとく巻き上がった。そして、光輝が自分を掴むアハトドの腕に右手の拳を振るうと、ベギャ! という音を響かせて、いとも簡単に粉砕してしまった。

 

 

 

「ルゥオオオ!!」

 

 

 

 先程とは異なる絶叫を上げ、思わず光輝を取り落とすアハトドに、光輝は負傷を感じさせない動きで回し蹴りを叩き込む。

 

 

 

ズドォン!!

 

 

 

 そんな大砲のような衝撃音を響かせて直撃した蹴りは、アハトドの巨体をくの字に折り曲げて、後方の壁へと途轍もない勢いで吹き飛ばした。轟音と共に壁を粉砕しながらめり込んだアハトドは、衝撃で体が上手く動かないのか、必死に壁から抜け出ようとするが僅かに身動ぎすることしか出来ない。

 

 

 

 光輝は、ゆらりと体を揺らして、取り落としていた聖剣を拾い上げると、射殺さんばかりの眼光で魔人族の女を睨みつけた。同時に、竜巻のごとく巻き上がっていた光の奔流が光輝の体へと収束し始める。

 

 

 

 〝限界突破〟終の派生技能[+覇潰]。通常の〝限界突破〟が基本ステータスの三倍の力を制限時間内だけ発揮するものとすれば、〝覇潰〟はその上位の技能で、基本ステータスの五倍の力を得ることが出来る。ただし、唯でさえ限界突破しているのに、更に無理やり力を引きずり出すのだ。今の光輝では発動は三十秒が限界。効果が切れたあとの副作用も甚大。

 

 

 

 だが、そんな事を意識することもなく、光輝は怒りのままに魔人族の女に向かって突進する。今、光輝の頭にあるのはメルドの仇を討つことだけ。復讐の念だけだ。

 

 

 

 魔人族の女が焦った表情を浮かべ、周囲の魔物を光輝にけしかける。キメラが奇襲をかけ、黒猫が触手を射出し、ブルタールモドキがメイスを振るう。しかし、光輝は、そんな魔物達には目もくれない。聖剣のひと振りでなぎ払い、怒声を上げながら一瞬も立ち止まらず、魔人族の女のもとへ踏み込んだ。

 

 

 

「お前ぇー! よくもメルドさんをぉー!!」

 

「チィ!」

 

 

 

 大上段に振りかぶった聖剣を光輝は躊躇いなく振り下ろす。魔人族の女は舌打ちしながら、咄嗟に、砂塵の密度を高めて盾にするが……光の奔流を纏った聖剣はたやすく砂塵の盾を切り裂き、その奥にいる魔人族の女を袈裟斬りにした。

 

 

 

 砂塵の盾を作りながら後ろに下がっていたのが幸いして、両断されることこそなかったが、魔人族の女の体は深々と斜めに切り裂かれて、血飛沫を撒き散らしながら後方へと吹き飛んだ。

 

 

 

 背後の壁に背中から激突し、砕けた壁を背にズルズルと崩れ落ちた魔人族の女の下へ、光輝が聖剣を振り払いながら歩み寄る。

 

 

 

「まいったね……あの状況で逆転なんて……まるで、三文芝居でも見てる気分だ」

 

 

 

 ピンチになれば隠された力が覚醒して逆転するというテンプレな展開に、魔人族の女が諦観を漂わせた瞳で迫り来る光輝を見つめながら、皮肉気に口元を歪めた。

 

 

 

 傍にいる白鴉が固有魔法を発動するが、傷は深く直ぐには治らないし、光輝もそんな暇は与えないだろう。完全にチェックメイトだと、魔人族の女は激痛を堪えながら、右手を伸ばし、懐からロケットペンダントを取り出した。

 

 

 

 それを見た光輝が、まさかメルドと同じく自爆でもする気かと表情を険しくして、一気に踏み込んだ。魔人族の女だけが死ぬならともかく、その自爆が仲間をも巻き込まないとは限らない。なので、発動する前に倒す! と止めの一撃を振りかぶった。

 

 

 

 だが……

 

 

 

「ごめん……先に逝く……愛してるよ、ミハイル……」

 

 

 

 愛しそうな表情で、手に持つロケットペンダントを見つめながら、そんな呟きを漏らす魔人族の女に、光輝は思わず聖剣を止めてしまった。覚悟した衝撃が訪れないことに訝しそうに顔を上げて、自分の頭上数ミリの場所で停止している聖剣に気がつく魔人族の女。

 

 

 

 光輝の表情は愕然としており、目をこれでもかと見開いて魔人族の女を見下ろしている。その瞳には、何かに気がつき、それに対する恐怖と躊躇いが生まれていた。その光輝の瞳を見た魔人族の女は、何が光輝の剣を止めたのかを正確に悟り、侮蔑の眼差しを返した。その眼差しに光輝は更に動揺する。

 

 

 

「……呆れたね……まさか、今になってようやく気がついたのかい? 〝人〟を殺そうとしていることに」

 

「ッ!?」

 

 

 

 そう、光輝にとって、魔人族とはイシュタルに教えられた通り、残忍で卑劣な知恵の回る魔物の上位版、あるいは魔物が進化した存在くらいの認識だったのだ。実際、魔物と共にあり、魔物を使役していることが、その認識に拍車をかけた。自分達と同じように、誰かを愛し、誰かに愛され、何かの為に必死に生きている、そんな戦っている〝人〟だとは思っていなかったのである。あるいは、無意識にそう思わないようにしていたのか……

 

 

 

 その認識が、魔人族の女の愛しそうな表情で愛する人の名を呼ぶ声により覆された。否応なく、自分が今、手にかけようとした相手が魔物などでなく、紛れもなく自分達と同じ〝人〟だと気がついてしまった。自分のしようとしていることが〝人殺し〟であると認識してしまったのだ。

 

 

 

「まさか、あたし達を〝人〟とすら認めていなかったとは……随分と傲慢なことだね」

 

「ち、ちが……俺は、知らなくて……」

 

「ハッ、〝知ろうとしなかった〟の間違いだろ?」

 

「お、俺は……」

 

「ほら? どうした? 所詮は戦いですらなく唯の〝狩り〟なのだろ? 目の前に死に体の一匹がいるぞ? さっさと狩ったらどうだい?おまえが今までそうしてきたように……」

 

「……は、話し合おう……は、話せばきっと……」

しかし。

「妖夢!今よ!打ちなさい!」

「みょん!」

 

そう言って妖夢は魔人族の女に高速で近付き。

 

「獄神剣「業風神閃斬」!」

 

技を放った、がしかし馬鹿が邪魔をした。

「辞めるんだ!」ガキィィンガシッ

「な、触らないで下さい!」

「やめろ、話し合えばきっと!」

「!アハドド!剣士の女にトドメをさせ!」

「ルオオオオオオオオオ!」

 

壁から帰還してきていた魔物が妖夢の腹と肩あたりに拳をめり込ませた。

ドゴォォォォォォォォン

「ガハッ」

妖夢は片腕が折れ、流血し吐血しながら飛ばされて行った。

「あんた最低だね、自分を助けてくれた仲間を盾にするなんて。」

「ち、ちが!」

「今だ!全員殺しに行け!」

ウォォォォォォォォオ!

そして魔人族の女は「もちろんあたしも殺るからね」と言いながら魔法の詠唱を始めた。〝無拍子〟による予備動作のない急激な加速と減速を繰り返しながら魔物の波状攻撃を凌ぎつつ、何とか、魔人族の女の懐に踏み込む隙を狙う雫だったが、その表情は次第に絶望に染まっていく。

 

 

 

 なにより苦しいのは、アハトドが雫のスピードについて来ていることだ。その鈍重そうな巨体に反して、しっかり雫を眼で捉えており、隙を衝いて魔人族の女のもとへ飛び込もうとしても、一瞬で雫に並走して衝撃を伴った爆撃のような拳を振るってくるのである。

 

 

 

 雫はスピード特化の剣士職であり、防御力は極めて低い。回避か受け流しが防御の基本なのだ。それ故に、〝魔衝波〟の余波だけでも少しずつダメージが蓄積していく。完全な回避も、受け流しも出来ないからだ。

 

 

 

 そして、とうとう蓄積したダメージが、ほんの僅かに雫の動きを鈍らせた。それは、ギリギリの戦いにおいては致命の隙だ。

 

 

 

バギャァ!!

 

 

 

「あぐぅう!!」

 

 

 

 咄嗟に剣と鞘を盾にしたが、アハトドの拳は、雫の相棒を半ばから粉砕しそのまま雫の肩を捉えた。地面に対して水平に吹き飛び体を強かに打ち付けて地を滑ったあと、力なく横たわる雫。右肩が大きく下がって腕がありえない角度で曲がっている。完全に粉砕されてしまったようだ。体自体にも衝撃が通ったようで、ゲホッゲホッと咳き込むたびに血を吐いている。

 

 

 

「雫ちゃん!」

 

 

 

 香織が、焦燥を滲ませた声音で雫の名を呼ぶが、雫は折れた剣の柄を握りながらも、うずくまったまま動かない。

 

 

 

 その時、香織の頭からは、仲間との陣形とか魔力が尽きかけているとか、自分が傍に行っても意味はないとか、そんな理屈の一切は綺麗さっぱり消え去っていた。あるのはただ〝大切な親友の傍に行かなければ〟という思いだけ。

 

 

 

 香織は、衝動のままに駆け出す。魔力がほとんど残っていないため、体がフラつき足元がおぼつかない。背後から制止する声が上がるが、香織の耳には届いていなかった。ただ一心不乱に雫を目指して無謀な突貫を試みる。当然、無防備な香織を魔物達が見逃すはずもなく、情け容赦ない攻撃が殺到する。

 

 

 

 だが、それらの攻撃は全て光り輝くシールドが受け止めた。しかも、無数のシールドが通路のように並べ立てられ香織と雫を一本の道でつなぐ。

 

 

 

「えへへ。やっぱり、一人は嫌だもんね」

 

 

 

 それを成したのは鈴だ。青ざめた表情で右手を真っ直ぐ雫の方へと伸ばし、全てのシールドを香織と雫をつなぐために使う。その表情に淡い笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 鈴は、内心悟っていたのだ。自分達はもう助からないと。ならば、大好きな友人達を最後の瞬間まで一緒にいさせるために自分の魔法を使おうと、そう思ったのだ。当然、その分、他の仲間の防御が薄くなるわけだが……鈴は内心で「ごめんね」と謝り、それでも香織と雫のためにシールドを張り続けた。

 

 

 

 鈴のシールドにより、香織は、多少の手傷を負いつつも雫の下へたどり着いた。そして、うずくまる雫の体をそっと抱きしめ支える。

 

 

 

「か、香織……何をして……早く、戻って。ここにいちゃダメよ」

 

「ううん。どこでも同じだよ。それなら、雫ちゃんの傍がいいから」

 

「……ごめんなさい。勝てなかったわ」

 

「私こそ、これくらいしか出来なくてごめんね。もうほとんど魔力が残ってないの」

 

 

 

 雫を支えながら眉を八の字にして微笑む香織は、痛みを和らげる魔法を使う。雫も、無事な左手で自分を支える香織の手を握り締めると困ったような微笑みを返した。

 

 

 

 そんな二人の前に影が差す。アハトドだ。血走った眼で、寄り添う香織と雫を見下ろし、「ルゥオオオ!!」と独特の咆哮を上げながら、その極太の腕を振りかぶっていた。

 

 

 

 鈴のシールドが、いつの間にか接近を妨げるようにアハトドと香織達の間に張られているが、そんな障壁は気にもならないらしい。己の拳が一度振るわれれば、紙くずのように破壊し、その衝撃波だけで香織達を粉砕できると確信しているのだろう。

 

 

 

 今、まさに放たれようとしている死の鉄槌を目の前にして、香織の脳裏に様々な光景が過ぎっていく。「ああ、これが走馬灯なのかな?」と妙に落ち着いた気持ちで、思い出に浸っていた香織だが、最後に浮かんだ光景に心がざわついた。

 

 

 

 それは、月下のお茶会。二人っきりの語らいの思い出。自ら誓いを立てた夜のこと。困ったような笑みを浮かべる今はいない彼。いなくなって初めて〝好き〟だったのだと自覚した。生存を信じて追いかけた。

 

 

 

だが、それもここで終わる。「結局、また、誓いを破ってしまった」そんな思いが、気がつけば香織の頬に涙となって現れた。

 

 

 

 再会したら、まずは名前で呼び合いたいと思っていた。その想いのままに、せめて、最後に彼の名を……自然と紡ぐ。

 

 

 

「……ハジメくん」

 

 その瞬間だった。

 

 

 

ドォゴオオン!!

 

 轟音と共にアハトドの頭上にある天井が崩落し、同時に紅い雷を纏った巨大な漆黒の杭が凄絶な威力を以て飛び出したのは。

 

スパークする漆黒の杭は、そのまま眼下のアハトドを、まるで豆腐のように貫きひしゃげさせ、そのまま地面に突き刺さった。

 

 全長百二十センチのほとんどを地中に埋め紅いスパークを放っている巨杭と、それを中心に血肉を撒き散らして原型を留めていないほど破壊され尽くしたアハトドの残骸に、眼前にいた香織と雫はもちろんのこと、光輝達や彼等を襲っていた魔物達、そして魔人族の女までもが硬直する。

 

 

 

 戦場には似つかわしくない静寂が辺りを支配し、誰もが訳も分からず呆然と立ち尽くしていると、崩落した天井から人影が飛び降りてきた。その人物は、香織達に背を向ける形でスタッと軽やかにアハトドの残骸を踏みつけながら降り立つと、周囲を睥睨する。

 

 

 

 そして、肩越しに振り返り背後で寄り添い合う香織と雫を見やった。

 

 

 

 振り返るその人物と目が合った瞬間、香織の体に電撃が走る。悲しみと共に冷え切っていた心が、いや、もしかしたら大切な人が消えたあの日から凍てついていた心が、突如、火を入れられたように熱を放ち、ドクンッドクンッと激しく脈打ち始めた。

 

 

 

「……相変わらず仲がいいな、お前等」

 

 

 

 苦笑いしながら、そんな事をいう彼に、考えるよりも早く香織の心が歓喜で満たされていく。

 

 

 

 髪の色が違う、纏う雰囲気が違う、口調が違う、目つきが違う。だが、わかる。彼だ。生存を信じて探し続けた彼だ。

 

 そう、

 

「ハジメくん!」




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第16話 元無能と元敗者の無双

こんばんわ湯たんぽです。
今回は長く語りません、悲しいので。

注意書き

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
輪廻君が何言ってるか解らなくても気にしないで。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十五人ぐらいになりそう!(現時点、後に更に増える。)
輪廻君むっちゃちーと。

それでもいいよと言う方のみご覧下さい。



「へ? ハジメくん? って南雲くん? えっ? なに? どういうこと?」

 

 

 

 香織の歓喜に満ちた叫びに、隣の雫が混乱しながら香織とハジメを交互に見やる。どうやら、香織は一発で目の前の白髪眼帯黒コートの人物がハジメだと看破したようだが、雫にはまだ認識が及ばないらしい。

 

 

 

 しかし、それでも肩越しに振り返って自分達を苦笑い気味に見ている少年の顔立ちが、記憶にある南雲ハジメと重なりだすと、雫は大きく目を見開いて驚愕の声を上げた。

 

 

「えっ? えっ? ホントに? ホントに南雲くんなの? えっ? なに? ホントどういうこと?」

 

「いや、落ち着けよ八重樫。お前の売りは冷静沈着さだろ?」

 

 

 

 香織と同じく死を覚悟した直後の一連の出来事に、流石の雫も混乱が収まらないようで痛みも忘れて言葉をこぼす。そんな雫の名を呼びながら諌めるハジメは、ふと気配を感じて頭上を見上げた。そして、落下してきた金髪の女の子ユエをお姫様抱っこで受け止めると恭しく脇に降ろし、ついで飛び降りてきたウサミミ少女シアも同じように抱きとめて脇に降ろす。ミレディは自分で降り、清水は普通に着地した。

 

 

 最後に降り立ったのは全身黒装束の少年、遠藤浩介だ。

 

 

 

「な、南雲ぉ!おまっ! 余波でぶっ飛ばされただろ! ていうか今の何だよ! いきなり迷宮の地面ぶち抜くとか……」

 

 

 

 文句を言いながら周囲を見渡した遠藤は、そこに親友達と魔物の群れがいて、硬直しながら自分達を見ていることに気がつき「ぬおっ!」などと奇怪な悲鳴を上げた。そんな遠藤に、再会の喜びとなぜ戻ってきたのかという憤りを半分ずつ含めた声がかかる。

 

 

 

「「浩介!」」

 

「重吾! 健太郎! 助けを呼んできたぞ!」

 

 

 

 〝助けを呼んできた〟その言葉に反応して、光輝達も魔人族の女もようやく我を取り戻した。そして、改めてハジメ達を凝視する。だが、そんな周囲の者達の視線などはお構いなしといった様子で、ハジメは少し面倒臭そうな表情をしながら、全員に手早く指示を出した。

 

 

 

「ユエ 、、悪いがあそこで固まっている奴等の守りを頼む。シア、向こうで倒れている騎士甲冑の男、容態を見てやってくれ、ミレディはそこで倒れてる白髪の剣士を見てくれ。」

 

「ん……分かった」

 

「了解ですぅ!」

 

「はいはーい。」

 

 ユエは周囲の魔物をまるで気にした様子もなく悠然と歩みを進め、シアは驚異的な跳躍力で魔物の群れの頭上を一気に飛び越えて倒れ伏すメルドの傍に着地した。ミレディも普通に歩いていた。

 

「ハ、ハジメくん……」

 

 香織が、再度、ハジメの名を声を震わせながら呼んだ。その声音には、再会できた喜びを多分に含んではいたが、同じくらい悲痛さが含まれていた。それは、この死地にハジメが来てしまったが故だろう。どういう経緯か香織にはわからなかったが、それでも直ぐに逃げて欲しいという想いがその表情から有り有りと伝わる。

 

 ハジメは、チラリと香織を見返すと肩を竦めて「大丈夫だから、そこにいろ」と短く伝えた。そして、即座に〝瞬光〟を発動し知覚能力を爆発的に引き上げると、〝宝物庫〟からクロスビットを三機取り出し、それを香織と雫の周りに盾のように配置した。

 

 突然、虚空に現れた十字架型の浮遊する物体に、目を白黒させる香織と雫。そんな二人に背を向けると、ハジメは元凶たる魔人族の女に向かって傲慢とも言える提案をした。それは、魔人族の女が、まだハジメ達の敵ではないが故の慈悲であった。

 

 

 

「そこの赤毛の女。今すぐ去るなら追いはしない。死にたくなければ、さっさと消えろ」

 

「……何だって?」

 

 

 

 もっとも、魔物に囲まれた状態で、普通の人間のする発言ではない。なので、思わずそう聞き返す魔人族の女。それに対してハジメは、呆れた表情で繰り返した。

 

 

 

「戦場での判断は迅速にな。死にたくなければ消えろと言ったんだ。わかったか?」

 

 

 

 改めて、聞き間違いではないとわかり、魔人族の女はスっと表情を消すと「殺れ」とハジメを指差し魔物に命令を下した。

 

 

 

 この時、あまりに突然の事態――――特に虎の子のアハトドが正体不明の攻撃により一撃死したことで流石に冷静さを欠いていた魔人族の女は、致命的な間違いを犯してしまった。

 

 

 

 ハジメの物言いもあったのだろうが、敬愛する上司から賜ったアハトドは失いたくない魔物であり、それを現在進行形で踏みつけにしているハジメに怒りを抱いていたことが原因だろう。あとは、単純に迷宮の天井を崩落させて階下に降りてくるという、ありえない事態に混乱していたというのもある。とにかく、普段の彼女なら、もう少し慎重な判断が出来たはずだった。しかし、既にサイは投げられてしまった。

 

 

 

「なるほど。……〝敵〟って事でいいんだな?」

 

「てゆうか俺、存在忘れられてね?」

 

 ハジメがそう呟いたのとキメラが襲いかかったのは同時だった。ハジメの背後から「ハジメくん!」「南雲君!」と焦燥に満ちた警告を発する声が聞こえる。しかし、ハジメは左側から襲いかかってきたキメラを意にも介さず左手の義手で鷲掴みにすると苦もなく宙に持ち上げた。

 

 キメラが、驚愕しながらも拘束を逃れようと暴れているようで空間が激しく揺らめく。それを見て、ハジメが侮蔑するような眼差しになった。

 

「おいおい、何だ? この半端な固有魔法は。大道芸か?」

 

「いや、ハジメ、大道芸の方がよっぽどマシだ。」

 

「確かにそうだな。」

 

 気配や姿を消す固有魔法だろうに動いたら空間が揺らめいてしまうなど意味がないにも程があると、ハジメは、思わずツッコミを入れる。奈落の魔物にも、気配や姿を消せる魔物はいたが、どいつもこいつも厄介極まりない隠蔽能力だったのだ。それらに比べれば、動くだけで崩れる隠蔽など、ハジメからすれば余りに稚拙だった。

数百キロはある巨体を片手で持ち上げ、キメラ自身も空中で身を捻り大暴れしているというのに微動だにしないハジメに、魔人族の女や香織達が唖然とした表情をする。

 

 

 

 ハジメは、そんな彼等を尻目に、観察する価値もないと言わんばかりに〝豪腕〟を以てキメラを地面に叩きつけた。

 

 

 

ズバンッ!!

 

 

 

ドグシャ!

 

 

 

 そんな生々しい音を立てて、地面にクレーターを作りながらキメラの頭部が粉砕される。そして、ついでにとばかりにドンナーを抜いたハジメは、一見、何もない空間に向かってレールガンを続けざまに撃ち放った。

 

 

 

ドパンッ! ドパンッ!

「ハジメ、俺は長時間の接近戦は向いてねぇ、月の呼吸も最近習得したばっかだから、後ろで援護する。」

「りょーかいだ、さっさと終わらせるぞ! 」

乾いた破裂音を響かせながら、二条の閃光が空を切り裂き目標を違わず問答無用に貫く。すると、空間が一瞬揺ぎ、そこから頭部を爆散させたキメラと心臓を撃ち抜かれたブルタールモドキが現れ、僅かな停滞のあとぐらりと揺れて地面に崩れ落ちた。

 

 

 

 ハジメからすれば、例え動いていなくても、風の流れ、空気や地面の震動、視線、殺意、魔力の流れ、体温などがまるで隠蔽できていない彼等は、ただそこに佇むだけの的でしかなかったのである。

 

 

 

 瞬殺した魔物には目もくれず、ハジメが戦場へと、いや、処刑場へと一歩を踏み出す。これより始まるのは、殺し合いですらない。敵に回してはいけない化け物による、一方的な処刑だ。

 

 

 

 あまりにあっさり殺られた魔物を見て唖然とする魔人族の女や、この世界にあるはずのない兵器に度肝を抜かれて立ち尽くしているクラスメイト達。そんな硬直する者達をおいて、魔物達は、魔人族の女の命令を忠実に実行するべく次々にハジメへと襲いかかった。

 

 黒猫が背後より忍び寄り触手を伸ばそうとするが、

 

ドパンッ!ドパンッ!

「ほいほい!」

清水の援護射撃によって容易く撃ち落とされた。

 

弾けとんだ仲間の魔物には目もくれず、左右から同時に四つ目狼が飛びかかる。が、いつの間にか抜かれていたシュラークが左の敵を、ドンナーが右の敵をほぼゼロ距離から吹き飛ばす。

 

 

 

 その一瞬で、絶命した四つ目狼の真後ろに潜んでいた黒猫が、ハジメの背後から迫るキメラと連携して触手を射出するが、ハジメは、その場で数メートルも跳躍すると空中で反転し上下逆さとなった世界で、標的を見失い宙を泳ぐ黒猫二体とキメラ一体をレールガンの餌食とした。

 

 

 

 血肉が花吹雪のように舞い散る中で、着地の瞬間を狙おうとでも言うのか、踏み込んで来たブルタールモドキ二体がメイスを振りかぶる。しかし、そんな在り来りな未来予想が化け物たるハジメに通じるはずもなく、ハジメは、〝空力〟を使って空中で更に跳躍すると、独楽のように回りながら左右のドンナー・シュラークを連射した。

 

 

 

 解き放たれた殺意の風が、待ち構えていたブルタールモドキ二体だけでなく、その後ろから迫っていたキメラと四つ目狼の頭部を穿って爆砕させる。それぞれ血肉を撒き散らす魔物達が、慣性の法則に従いハジメの眼下で交差し、少し先で力を失って倒れこんだ。

 

 

 

 ハジメは、四方に死骸が横たわり血肉で彩られた交差点の真ん中に音もなく着地し、虚空に取り出した弾丸をガンスピンさせながらリロードする。

 

 

 

 と、その時、「キュワァアア!」という奇怪な音が突如発生した。ハジメがそちらを向くと、六足亀の魔物アブソドが口を大きく開いてハジメの方を向いており、その口の中には純白の光が輝きながら猛烈な勢いで圧縮されているところだった。

 

 

 

 それは、先程、メルド団長のもつ〝最後の忠誠〟に蓄えられていた膨大な魔力だ。周囲数メートルという限定範囲ではあるが、人一人消滅させるには十分以上の威力がある。

 

 

 

 その強大な魔力が限界まで圧縮され、次の瞬間、ハジメを標的に砲撃となって発射された。射線上の地面を抉り飛ばしながら迫る死の光に、しかし、ハジメは冷静に柩型の大盾を虚空に取り出すと左腕に装着、同時に〝金剛〟を発動しながらどっしりとかざした。地に根を生やした大樹の如く、不動の意志を示すハジメの瞳に焦燥の色は微塵もない。

 

 

 

 魔力の砲撃が直撃した瞬間、凄まじい轟音が響き渡り、空気がビリビリと震え、その威力の絶大さを物語る。しかし、直撃を受けた本人であるハジメは、その意志の示す通り一歩もその場を動いておらず、それどころか、いたずらっぽい笑みを口元に浮かべると盾に角度をつけて砲撃を受け流し始めた。逸らされた砲撃が向かう先は……

 

 

 

「ッ!? ちくしょう!」

 

 

 

 魔人族の女だ。ハジメがあっさり魔物を殺し始めた瞬間から、危機感に煽られて大威力の魔法を放つべく仰々しい詠唱を始めたのだが、それに気がついていたハジメが、アブソドの砲撃を指示したであろう魔人族の女に詠唱の邪魔ついでに砲撃を流したのだ。

 

 

 

 予想外の事態に、慌てて回避行動を取る魔人族の女に、ハジメは盾の角度を調整して追いかけるように砲撃を逸らしていく。壁を破壊しながら迫る光の奔流に、壁際を必死に走る魔人族の女。その表情に余裕は一切ない。

 

 

 

 しかし、いよいよ逸らされた砲撃が直ぐ背後まで迫り、魔人族の女が、自分の指示した攻撃に薙ぎ払われるのかと思われた直後、アブソドが蓄えた魔力が底を尽き砲撃が終ってしまった。

 

 

 

「チッ……」

 

 

 

 ハジメの舌打ちに反応する余裕もなく、冷や汗を流しながらホッと安堵の息を吐く魔人族の女だったが、次の瞬間には凍りついた。

 

 

 

ドパァンッ!

 

 

 

 炸裂音が轟くと同時に右頬を衝撃と熱波が通り過ぎ、パッと白い何かが飛び散ったからだ。

 

 

 

 その何かは、先程まで魔人族の女の肩に止まっていた白鴉の魔物の残骸だった。思惑通りにいかなかったハジメが、腹いせにドンナーをアブソドに、シュラークを白鴉に向けて発砲したのである。

 

 

 

 アブソドは、音すら軽く置き去りにする超速の弾丸を避けることも耐えることも、それどころか認識することもできずに、開けっ放しだった口内から蹂躙され、意識を永遠の闇に落とした。

 

 

 

 白鴉の方も、胴体を破裂させて一瞬で絶命し、その白い羽を血肉と共に撒き散らした。レールガンの余波を受けた魔人族の女は、衝撃にバランスを崩し尻餅を付きながら、茫然とした様子でそっと自分の頬を撫でる。そこには、白鴉の血肉がべっとりと付着しており、同時に、熱波によって酷い火傷が出来ていた。

 

 

 

 あと、数センチずれていたら……そんな事を考えて自然と体が身震いする魔人族の女。それはつまり、今も視線の先で、強力無比をうたった魔物の軍団をまるで戯れに虫を殺すがごとく駆逐しているハジメは、いつでも魔人族の女を殺すことが出来るということだ。今この瞬間も、彼女の命は握られているということだ。

 

 戦士たる強靭な精神をもっていると自負している魔人族の女だが、あり得べからざる化け物達の存在に体の震えが止まらない。あれは何だ? なぜあんなものが存在している? どうすればあの化け物達から生き残ることができる!? 魔人族の女の頭の中では、そんな思いがぐるぐると渦巻いていた。

 

 

 

 それは、光輝達も同じ気持ちだった。彼等は、白髪眼帯の少年達の正体を直ぐさまハジメと清水とは見抜けず、正体不明の何者かが突然、自分達を散々苦しめた魔物を歯牙にもかけず駆逐しているとしかわからなかったのだ。

 

 

 

「何なんだ……彼らは一体、何者なんだ!?」

光輝が動かない体を横たわらせながら、そんな事を呟く。今、周りにいる全員が思っていることだった。その答えをもたらしたのは、先に逃がし、けれど自らの意志で戻ってきた仲間、遠藤だった。

 

 

 

「はは、信じられないだろうけど……あいつは南雲と清水だよ」

 

「「「「「「は?」」」」」」

 

 

 

 遠藤の言葉に、光輝達が一斉に間の抜けた声を出す。遠藤を見て「頭大丈夫か、こいつ?」と思っているのが手に取るようにわかる。遠藤は、無理もないなぁ~と思いながらも、事実なんだから仕方ないと肩を竦めた。

 

 

 

「だから、南雲、南雲ハジメと清水清利だよ。あの日、橋から落ちた南雲だ。迷宮の底で生き延びて、自力で這い上がってきたらしいぜ。ここに来るまでも、迷宮の魔物が完全に雑魚扱いだった。マジ有り得ねぇ! って俺も思うけど……事実だよ」

 

「南雲って、え? 南雲が生きていたのか!?」

光輝が驚愕の声を漏らす。そして、他の皆も一斉に、現在進行形で殲滅戦を行っている化け物じみた強さの少年を見つめ直し……やはり一斉に否定した。「どこをどう見たら南雲なんだ?」と。そんな心情もやはり、手に取るようにわかる遠藤は、「いや、本当なんだって。めっちゃ変わってるけど、ステータスプレートも見たし」と乾いた笑みを浮かべながら、彼が南雲ハジメであることを再度伝える。

 

 

 

 皆が、信じられない思いで、ハジメの無双ぶりを茫然と眺めていると、ひどく狼狽した声で遠藤に喰ってかかる人物が現れた。

 

 

 

「う、うそだ。南雲は死んだんだ。そうだろ? みんな見てたじゃんか。生きてるわけない! 適当なこと言ってんじゃねぇよ!」

 

「うわっ、なんだよ! ステータスプレートも見たし、本人が認めてんだから間違いないだろ!」

 

「うそだ! 何か細工でもしたんだろ! それか、なりすまして何か企んでるんだ!」

 

「いや、何言ってんだよ? そんなことする意味、何にもないじゃないか」

 

 

 

 遠藤の胸ぐらを掴んで無茶苦茶なことを言うのは檜山だ。顔を青ざめさせ尋常ではない様子でハジメの生存を否定する。周りにいる近藤達も檜山の様子に何事かと若干引いてしまっているようだ。

 

 

 

 そんな錯乱気味の檜山に、比喩ではなくそのままの意味で冷水が浴びせかけられた。檜山の頭上に突如発生した大量の水が小規模な滝となって降り注いだのだ。呼吸のタイミングが悪かったようで若干溺れかける檜山。水浸しになりながらゲホッゲホッと咳き込む。一体何が!? と混乱する檜山に、冷水以上に冷ややかな声がかけられる。

 

 

「……大人しくして。鬱陶しいから」

その物言いに再び激高しそうになった檜山だったが、声のする方へ視線を向けた途端、思わず言葉を呑み込んだ。なぜなら、その声の主、ユエの檜山を見る眼差しが、まるで虫けらでも見るかのような余りに冷たいものだったからだ。同時に、その理想の少女を模した最高級のビスクドールの如き美貌に状況も忘れて見蕩れてしまったというのも少なからずある。

 

 

 

 それは、光輝達も同じだったようで、突然現れた美貌の少女に男女関係なく自然と視線が吸い寄せられた。鈴などは明からさまに見蕩れて「ほわ~」と変な声を上げている。単に、美しい容姿というだけでなく、どこか妖艶な雰囲気を纏っているのも、見た目の幼さに反して光輝達を見蕩れさせている要因だろう。

 

 

 

 と、その時、魔人族の女が指示を出したのか、魔物が数体、光輝達へ襲いかかった。メルドの時と同じく、人質にでもしようと考えたのだろう。普通に挑んでも、ハジメを攻略できる未来がまるで見えない以上、常套手段だ。

 

 

 

 鈴が、咄嗟にシールドを発動させようとする。度重なる魔法の行使に、唯でさえ絶不調の体が悲鳴を上げる。ブラックアウトしそうな意識を唇を噛んで堪えようとするが……そんな鈴をユエの優しい手つきが制止した。頭をそっと撫でたユエに、鈴が「ほぇ?」と思わず緩んだ声を漏らして詠唱を止めてしまう。

 

 

 

「……大丈夫」

 

 

 

 ただ一言そう呟いたユエに、鈴は、何の根拠もないというのに「ああ、もう大丈夫なんだ」と体から力を抜いた。自分でも、なぜそうも簡単にユエの言葉を受け入れたのかは分からなかったが、まるで頼りになる姉にでも守られているような気がしたのだ。

 

 

 

 ユエが、視線を鈴から外し、今まさにその爪牙を、触手を、メイスを振るわんとしている魔物達を睥睨する。そして、ただ一言、魔法のトリガーを引いた。

 

 

 

「〝蒼龍〟」

 

 

 

 その瞬間、ユエ達の頭上に直径一メートル程の青白い球体が発生した。それは、炎系の魔法を扱うものなら知っている最上級魔法の一つ、あらゆる物を焼滅させる蒼炎の魔法〝蒼天〟だ。それを詠唱もせずにノータイムで発動など尋常ではない。特に、後衛組は、何が起こったのか分からず呆然と頭上の蒼く燃え盛る太陽を仰ぎ見た。

 

 

 

 しかし、彼等が本当に驚くべきはここからだった。なぜなら、燦然と燃え盛る蒼炎が突如うねりながら形を蛇のように変えて、今まさにメイスを振り降ろそうとしていたブルタールモドキ達に襲いかかるとそのまま呑み込み、一瞬で灰も残さず滅殺したからだ。

 

 

 

 宙を泳ぐように形を変えていく蒼炎は、やがてその姿を明確にしていく。それは蒼く燃え盛る龍だ。全長三十メートル程の蒼龍はユエを中心に光輝達を守るようにとぐろを巻くと鎌首をもたげた。そして、全てを滅する蒼き灼滅の業火に阻まれて接近すら出来ずに立ち往生していた魔物達に向かって、その顎門をガバッっと開く。

 

 

 

ゴァアアアアア!!!

 

 

 

 爆ぜる咆哮が轟く。と、その直後、たじろぐ魔物達の体が突如重力を感じさせず宙に浮いたかと思うと、次々に蒼龍の顎門へと向けて飛び込んでいった。突然の事態にパニックになりながらも必死に空中でもがき逃げようとする様子から自殺ではないとわかるが、一直線に飛び込んで灰すら残さず焼滅していく姿は身投げのようで、タチの悪い冗談にしか見えない。

 

 

 

「なに、この魔法……」

 

 

 

 それは誰の呟きか。周囲の魔物を余さず引き寄せ勝手に焼滅させていく知識にない魔法に、もう光輝達は空いた口が塞がらない。それも仕方のないことだ。なにせ、この魔法は、〝雷龍〟と同じく、炎系最上級魔法〝蒼天〟と神代魔法の一つ重力魔法の複合魔法でユエのオリジナルなのだから。

 

 

 

 ちなみに、なぜ〝雷龍〟ではなく〝蒼龍〟なのかというと、単にユエの鍛錬を兼ねているからという理由だったりする。雷龍は、風系の上級である雷系と重力魔法の複合なので、難易度や単純な威力では〝蒼龍〟の方が上なのだ。最近、ようやく最上級の複合も出来るようになってきたのでお披露目してみたのである。

 

 

 

 当然、そんな事情を知らない光輝達は、術者であるユエに説明を求めようと〝蒼龍〟から視線を戻した。しかし、背筋を伸ばして悠然と佇み蒼き龍の炎に照らされる、いっそ神々しくすら見えるユエの姿に息を呑み、説明を求める言葉を発することが出来なかった。そんなユエに早くも心奪われている者が数人……特に鈴の中の小さなおっさんが歓喜の声を上げているようだ。

 

 一方、魔人族の女は、遠くから〝蒼龍〟 の異様を目にして、内心「化け物ばっかりか!」と悪態をついていた。そして、次々と駆逐されていく魔物達に焦燥感をあらわにして、先程致命傷を負わせたメルドの傍らにいる兎人族の少女と離れたところで寄り添っている二人の少女に狙いを変更することにした。

 

 しかし、魔人族の女は、これより更なる理不尽に晒されることになる。

 

 シアに襲いかかったブルタールモドキは、振り向きざまのドリュッケンの一撃で頭部をピンボールのように吹き飛ばされ、逆方向から襲いかかった四つ目狼も最初の一撃を放った勢いのまま体を独楽のように回転させた、遠心力のたっぷり乗った一撃を頭部に受けて頭蓋を粉砕されあっさり絶命した。

 

また、香織と雫を狙ってキメラや黒猫が襲いかかった。殺意を撒き散らしながら迫り来る魔物に歯噛みしながら半ばから折れた剣を構えようとする雫だったが、それを制止するように、近くで待機していたミレディが間に入った、

「ハイハイ、邪魔しないの〜”黒天窮”」

黒い球体が現れ魔物たちを飲み込んで行った。

 

「ホントに……なんなのさ」

 

 

 

 力なく、そんなことを呟いたのは魔人族の女だ。何をしようとも全てを力でねじ伏せられ粉砕される。そんな理不尽に、諦観の念が胸中を侵食していく。もはや、魔物の数もほとんど残っておらず、誰の目から見ても勝敗は明らかだ。

 

 魔人族の女は、最後の望み! と逃走のために温存しておいた魔法をハジメに向かって放ち、全力で四つある出口の一つに向かって走った。ハジメのいる場所に放たれたのは〝落牢〟だ。それが、ハジメの直ぐ傍で破裂し、石化の煙がハジメを包み込んだ。光輝達が息を飲み、香織と雫が悲鳴じみた声でハジメの名を呼ぶ。

 

「だから俺、存在忘れられてね?」by清水

 

 動揺する光輝達を尻目に、魔人族の女は、遂に出口の一つにたどり着いた。

 

 

 

 しかし……

 

「悪いなァ、ここから先は一方通行だァ」

「…主!」

「主?、はは……既に詰みだったわけだ」

「悪ぃが逃がす気はねェ。」

通路から輪廻が現れ、シュタインを向けていた。

乾いた笑いと共に、ずっと前、きっとハジメに攻撃を仕掛けてしまった時から既にチェックメイトをかけられていたことに今更ながらに気がつき、思わず乾いた笑い声を上げる魔人族の女。恐らくだが、ここでハジメ達を倒してもこの男がきっと逃がしはしないと、戦士としての本能でわかったのだ。

 

「……この化け物め。上級魔法が意味をなさないなんて、あんた、本当に人間?」

 

「実は、自分でも結構疑わしいんだ。だが、化け物というのも存外悪くないもんだぞ?」

 

「まァ、俺は既に人間やめてるがなァ、こいつらにも破壊神とか呼ばれるからなァ。」

 

 そんな軽口を叩きながら少し距離を置いて向かい合うハジメと魔人族の女。チラリと魔人族の女が部屋の中を見渡せば、いつの間にか本当に魔物が全滅しており、改めて、小さく「化け物め」と罵った。

 

 

 

 輪廻に首をクイッと向けられたハジメは、輪廻の言いたいことを理解した、すなわち、ここにいた理由を吐かせろと。ハジメはドンナーの銃口をスっと魔人族の女に照準する。眼前に突きつけられた死に対して、魔人族の女は死期を悟ったような澄んだ眼差しを向けた。

 

「さて、普通はこういう時、何か言い遺すことは? と聞くんだろうが……生憎、お前の遺言なんぞ聞く気はない。それより、魔人族がこんな場所で何をしていたのか……それと、あの魔物を何処で手に入れたのか……吐いてもらおうか?」

 

「あたしが話すと思うのかい? 人間族の有利になるかもしれないのに? バカにされたもんだね」

 

 

 

 嘲笑するように鼻を鳴らした魔人族の女に、ハジメは冷めた眼差しを返した。そして、何の躊躇いもなくドンナーを発砲し魔人族の女の両足を撃ち抜いた。

 

 

 

「あがぁあ!!」

 

 

 

 悲鳴を上げて崩れ落ちる魔人族の女。魔物が息絶え静寂が戻った部屋に悲鳴が響き渡る。情け容赦ないハジメの行為に、背後でクラスメイト達が息を呑むのがわかった。しかし、ハジメはそんな事は微塵も気にせず、ドンナーを魔人族の女に向けながら再度話しかけた。

 

 

 

「人間族だの魔人族だの、お前等の世界の事情なんざ知ったことか。俺は人間族として聞いているんじゃない。俺が知りたいから聞いているんだ。さっさと答えろ」

 

「……」

 

 

 

 痛みに歯を食いしばりながらも、ハジメを睨みつける魔人族の女。その瞳を見て、話すことはないだろうと悟ったハジメは、勝手に推測を話し始めた。

 

 

 

 「ま、大体の予想はつく。ここに来たのは、〝本当の大迷宮〟を攻略するためだろ?」

 

 

 

 魔人族の女が、ハジメの言葉に眉をピクリと動かした。その様子をつぶさに観察しながらハジメが言葉を続ける。

 

 

 

「あの魔物達は、神代魔法の産物……図星みたいだな。なるほど、魔人族側の変化は大迷宮攻略によって魔物の使役に関する神代魔法を手に入れたからか……とすると、魔人族側は勇者達の調査・勧誘と並行して大迷宮攻略に動いているわけか……」

 

「どうして……まさか……」

 

 

 

 ハジメが口にした推測の尽くが図星だったようで、悔しそうに表情を歪める魔人族の女は、どうしてそこまで分かるのかと疑問を抱き、そして一つの可能性に思い至る。その表情を見て、ハジメは、魔人族の女が、ハジメ達もまた大迷宮の攻略者であると推測した事に気がつき、視線で「正解」と伝えてやった。

 

 

 

「なるほどね。あの方と同じなら……化け物じみた強さも頷ける……もう、いいだろ? ひと思いに殺りなよ。あたしは、捕虜になるつもりはないからね……」

 

「あの方……ね。魔物は攻略者からの賜り物ってわけか……」

 

捕虜にされるくらいならば、どんな手を使っても自殺してやると魔人族の女の表情が物語っていた。そして、だからこそ、出来ることなら戦いの果てに死にたいとも。ハジメとしては神代魔法と攻略者が別にいるという情報を聞けただけで十分だったので、もう用済みだとその瞳に殺意を宿した。

 

 

 

 魔人族の女は、道半ばで逝くことの腹いせに、負け惜しみと分かりながらハジメ達に言葉をぶつけた。

 

 

 

「いつか、あたしの恋人があんたを殺すよ」

その言葉にチッ!と舌打ちしながら反応したのは輪廻だ。

ドンナーを向けて今にも発砲しそうなハジメに静止を掛ける。

「…チッ、ハジメちょっと待て、」

「何でしょうか?」

「あんまり俺もこういう事はしねぇんだがなァ、今日はちょっと気分が乗った、」

そう言うと輪廻はツカツカと魔人族の女に寄った。

「…てめぇ、恋人ってのは本当かァ?」

「あぁそうさ、あたしの恋人が殺すよ、あんた達をね」

「………そうかァ、しゃあねぇ、特別だァ、てめぇは無痛で送ってやる。」

「そうかい…さあ、一思いにやりな。」

「…………アァ。」

互いにもう話すことはないと口を閉じ、輪廻は、刀を女の首元に向かって構えた。

 

しかし、刀を抜くという瞬間、大声で制止がかかる。

 

 

 

「待て! 待つんだ、十五夜! 彼女はもう戦えないんだぞ! 殺す必要はないだろ!」

 

「………………?」

 

輪廻は刀を構えながら、「アイツ、絶対精神内科と脳外科に行った方がいい。」と訝しそうな表情をして肩越しに振り返った。光輝は、フラフラしながらも少し回復したようで何とか立ち上がると、更に声を張り上げた。

 

「捕虜に、そうだ、捕虜にすればいい。無抵抗の人を殺すなんて、絶対ダメだ。俺は勇者だ。十五夜も仲間なんだから、ここは俺に免じて引いてくれ」

 

 

 

 余りにツッコミどころ満載の言い分に、輪廻は音として耳に入れる価値すらないと即行で切って捨てた。そして、無言のまま…ある技を放った。

 

 

「……全集中・水の呼吸・伍の型、干天の慈雨。」

輪廻の刀は女の首に吸い込まれるように首を斬り飛ばした。

そして、

ドパンッ!

1発の弾丸が斬れると同時に女の心臓を穿った。

静寂が辺りを包む。クラスメイト達は、今更だと頭では分かっていても同じクラスメイトが目の前で躊躇いなく人を殺した光景に息を呑み戸惑ったようにただ佇む。そんな彼等の中でも一番ショックを受けていたのは香織のようだった。

 

 

 

 人を殺したことにではない。それは、香織自身覚悟していたことだ。この世界で、戦いに身を投じるというのはそういうことなのだ。迷宮で魔物を相手にしていたのは、あくまで実戦訓練・・なのだから。

 

 

 

 だから、殺し合いになった時、敵対した人を殺さなければならない日は必ず来ると覚悟していた。自分が後衛職で治癒師である以上、直接手にかけるのは雫や光輝達だと思っていたから、その時は、手を血で汚した友人達を例え僅かでも、一瞬であっても忌避したりしないようにと心に決めていた。

 

 

 

 香織がショックを受けたのは、ハジメに、人殺しに対する忌避感や嫌悪感、躊躇いというものが一切なかったからである。息をするように自然に人を殺した。香織の知るハジメは、弱く抵抗する手段がなくとも、他人の為に渦中へ飛び込めるような優しく強い人だった。

 

 

 

 その〝強さ〟とは、決して暴力的な強さをいうのではない。どんな時でも、どんな状況でも〝他人を思いやれる〟という強さだ。だから、無抵抗で戦意を喪失している相手を何の躊躇いも感慨もなく殺せることが、自分の知るハジメと余りに異なり衝撃だったのだ。

 

 

 

 雫は、親友だからこそ、香織が強いショックを受けていることが手に取るようにわかった。そして、日本にいるとき、普段から散々聞かされてきたハジメの話しから、香織が何にショックを受けているのかも察していた。

 

 

 

 雫は、涼しい顔をしているハジメを見て、確かに変わりすぎだと思ったが、何も知らない自分がそんな文句を言うのはお門違いもいいところだということもわかっていた。なので、結局、何をすることも出来ず、ただ香織に寄り添うだけに止めた。

 

 

 

 だが、当然、正義感の塊たる勇者の方は黙っているはずがなく、静寂の満ちる空間に押し殺したような光輝の声が響いた。

 

「なぜ、なぜ殺したんだ。殺す必要があったのか……」

 

 ハジメは、シアの方へ歩みを進めながら、自分達を鋭い眼光で睨みつける光輝を視界の端に捉え、一瞬、どう答えようかと迷ったが、次の瞬間には、そもそも答える必要ないな! と考え、さらりと無視することにした。

 

輪廻の視界にはそもそも光輝は写ってないので、さっさと、シアとミレディがいる場所に一直線に行った。

 

必死に感情を押し殺した光輝の声が響く中、その言葉を向けられている当人はというと、まるでその言葉が聞こえていないかのように、スタスタと倒れ伏すメルドの傍に寄り添うシアのもとへ歩みを進めた。

 

 ユエの方も、光輝達の護衛はもういいだろうと、ハジメ達の方へ向かう。背後で「あぁ、お姉さまぁ!」と心の中に小さなおっさんを飼う鈴が叫んでいたがスルーだ。

 

「シア、メルドの容態はどうだ?」

 

「危なかったです。あと少し遅ければ助かりませんでした。……指示通り〝神水〟を使っておきましたけど……良かったのですか?」

 

「ああ、この人には、それなりに世話になったんだ。それに、メルドが抜ける穴は、色んな意味で大きすぎる。特に、勇者パーティーの教育係に変なのがついても困るしな。まぁ、あの様子を見る限り、メルドもきちんと教育しきれていないようだが……人格者であることに違いはない。死なせるにはいろんな意味で惜しい人だ」

 

 ハジメは、龍太郎に支えられつつクラスメイト達と共に歩み寄ってくる光輝が、未だハジメを睨みつけているのをチラリと見ながら、シアに、メルドへの神水の使用許可を出した理由を話した。ちなみに、〝変なの〟とは、例えば、聖教教会のイシュタルのような人物のことである。

 

「どうだミレディ、そいつは大丈夫かァ?」

「うん、凄く危ない状態だったよ、もう少し遅ければ助からなかったかも。」

「………確かにやべぇな、右腕が粉砕骨折、折れた骨は、左脚、肋骨七本、肋5本、両鎖骨、右肩甲骨、ヒビが入ったのが左腕、右足、右足首、背骨、尾骶骨、左の肩甲骨、直接衝撃を食らった腹の周辺の3個の内蔵が破裂、……よく生きてんなこいつ。つうか、無意識に刀で守って無かったら内蔵が全部ぐちゃぐちゃになってたぞ。そもそもなんでこんなことになってんだァ?こいつらの実力なら、直ぐに倒せただろうに、誰かが意図的に邪魔したか、盾にしやがったなァ、そうでも無いとこいつらみたいな手練(輪廻達は例外)がそう簡単にこんな傷を負うわけがねェ。」

 

合流後

 

「おい、南雲。なぜ、彼女を……」

 

「ハジメくん……いろいろ聞きたい事はあるんだけど、取り敢えずメルドさんはどうなったの? 見た感じ、傷が塞がっているみたいだし呼吸も安定してる。致命傷だったはずなのに……」

 

 

 

 ハジメを問い詰めようとした光輝の言葉を遮って、香織が、真剣な表情でメルドの傍に膝を突き、詳しく容態を確かめながらハジメに尋ねた。

 

 

 

 ハジメは、一瞬、自分に向けられた香織の視線に肝が冷えるような感覚を味わったが、気のせいだと思うことにして、香織の疑問に答えることにした。

 

 

 

「ああ、それな……ちょっと特別な薬を使ったんだよ。飲めば瀕死でも一瞬で完全治癒するって代物だ」

 

「そ、そんな薬、聞いたことないよ?」

 

「そりゃ、伝説になってるくらいだしな……普通は手に入らない。だから、八重樫は、治癒魔法でもかけてもらえ。魔力回復薬はやるから」

 

「え、ええ……ありがとう」

 

 

 

 ハジメに声をかけられ、未だに記憶にあるハジメとのギャップに少しどもりながら薬を受け取り礼をいう雫。ハジメは、そんな雫の反応を特に気にするでもなく、香織にも魔力回復薬を投げ渡した。あわあわと言いながらも、きっちり薬瓶をキャッチした香織も、ハジメに一言礼を言って中身を飲み干す。リポビ○ンな味が広がり、少しずつ活力が戻ってくる。香織さえ回復すれば、クラスメイト達も直ぐに治癒されるだろう。

 

 

 

 取り敢えず、メルドは心配ないとわかり安堵の息を吐く香織達。そこで、光輝が再び口を開く。

 

 

 

「おい、南雲、十五夜、メルドさんの事は礼を言うが、なぜ、かの……」

 

「ハジメくん。メルドさんを助けてくれてありがとう。私達のことも……助けてくれてありがとう」

 

 

 

 そして、再び、香織によって遮られた。光輝が、物凄く微妙な表情になっている。しかし、香織は、そんな光輝のことは全く気にせず真っ直ぐにハジメだけを見ていた。ハジメの変わりように激しいショックを受けはしたが、それでも、どうしても伝えたい事があったのだ。メルドの事と、自分達を救ってくれたことのお礼を言いつつハジメの目の前まで歩み寄る。

 

 

 

 そして、グッと込み上げてくる何かを堪えるように服の裾を両の手で握り締め、しかし、堪えきれずにホロホロと涙をこぼし始めた。嗚咽を漏らしながら、それでも目の前のハジメの存在が夢幻でないことを確かめるように片時も目を離さない。ハジメは、そんな香織を静かに見返した。

 

 

 

「ハジメぐん……生きででくれで、ぐすっ、ありがどうっ。あの時、守れなぐて……ひっく……ゴメンねっ……ぐすっ」

 

 

 

 クラスメイトのうち、女子は香織の気持ちを察していたので生暖かい眼差しを向けており、男子の中でも何となく察していた者は同じような眼差しを、近藤達は苦虫を噛み潰したような目を、光輝と龍太郎は香織が誰を想っていたのか分かっていないのでキョトンとした表情をしている。鈍感主人公を地で行く光輝と脳筋の龍太郎、雫の苦労が目に浮かぶ。

 

 

 

 シア達は「もしや優花さんの新たなライバル?」「……そうかもしれない」「恋っていいねぇ〜」と言う女子トークをしていた。

 

 

 

 ハジメは、目の前で顔をくしゃくしゃにして泣く香織が、遠藤に聞いていた通り、あの日からずっと自分の事を気にしていたのだと悟り、何とも言えない表情をした。

 

 

 ハジメは、困ったような迷うような表情をした後、苦笑いしながら香織に言葉を返した。

 

「……何つーか、心配かけたようだな。直ぐに連絡しなくて悪かったよ。まぁ、この通り、しっかり生きてっから……謝る必要はないし……その、何だ、泣かないでくれ」

 

 

 

 そう言って香織を見るハジメの眼差しは、いつか見た「守ってくれ」と言った時と同じ香織を気遣う優しさが宿っていた。その眼差しに、あの約束を交わした夜を思い出し、胸がいっぱいになる香織。思わずワッと泣き出し、そのままハジメの胸に飛び込んでしまった。

 

 

 

 胸元に縋り付いて泣く香織に、どうしたものかと両手をホールドアップしたまま途方に暮れるハジメ。他のクラスメイトだったら、問答無用に鬱陶しいと投げ飛ばすか、ヤクザキックで意識を刈り取るかするのだが、ここまで純粋に変わらない好意を向けられると、奈落に落ちる前のこともあり、邪険にしづらい。

 

 

 

 ただ、上に優花を待たせており、ここのことを言うかもしれないユエの手前、ほかの女を抱きしめるのははばかられたので、銃口を突きつけられた人のように両手をホールドアップさせたまま、香織の泣くに任せるという中途半端な対応になってしまった。実に、ハジメらしくない。

 

 

 

 傍らにいる雫から「私の親友が泣いているのよ! 抱きしめてあげてよぉ!」という視線が叩きつけられているが、無言で監察するように見つめてくるユエの視線もあるので身動きが取りづらい。仕方なく間をとって、ポンポンと軽く頭を撫でるに止めてみた。本当に、いつになくヘタレているハジメだった。

 

「……ふぅ、香織は本当に優しいな。クラスメイトが生きていた事を泣いて喜ぶなんて……でも、南雲達は無抵抗の人を殺した十五夜と一緒にいるんだ。話し合う必要がある。もうそれくらいにして、南雲から離れた方がいい」

 

「……………………なァ、こいつ今すぐ殺していいか?」

「ちょ、待って待って。」

輪廻がガチで殺すためのスペルや破道を唱えそうになっているのを東方組と雫が必死に宥める。

しかも輪廻君怒りすぎて最早無表情。

 

クラスメイトの一部から「お前、空気読めよ!」という非難の眼差しが光輝に飛んだ。この期に及んで、この男は、まだ香織の気持ちに気がつかないらしい。何処かハジメを責めるように睨みながら、ハジメに寄り添う香織を引き離そうとしている。単に、香織と触れ合っている事が気に食わないのか、それとも人殺しの傍にいることに危機感を抱いているのか……あるいはその両方かもしれない。

 

 

 

「ちょっと、光輝! 南雲君は、私達を助けてくれたのよ? そんな言い方はないでしょう?」

 

「だが、雫。彼女は既に戦意を喪失していたんだ。殺す必要はなかった。南雲がしたことは許されることじゃない」

 

「あのね、光輝、いい加減にしなさいよ? 大体……」

 

「……そう言えばなァ、こいつを盾にしたのは誰だァ?」

「何を言ってるんだ十五夜、彼女を盾になんか誰もしてないぞ?」

「…こいつはこう言ってるが、本当はどうなんだ、お前ら。」

 

れ「……そいつよ」

 

「は?」

輪廻は何言ってんだこいつという顔をしている。

 

ア「…そこの馬鹿みたいにキラキラしてる奴の事よ。」

 

「は?」





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第十七話 勇者(笑)

注意書き

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。
輪廻君が何言ってるか解らなくても気にしないで。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十五人ぐらいになりそう!(現時点、後に更に増える。)
輪廻君むっちゃちーと。

それでもいいよと言う方のみご覧下さい。


「………………今何つった?」

 

ア「…だ、だからそこのキラキラしてる奴が妖夢を盾にしたのよ。」

「……………………………」

 

無表情の輪廻君恐いわー((´д`)) ブルブル…

 

「……主よ、恐らくは妖夢がトドメを刺そうとしたのを、邪魔して、さっきの魔人族の女に殺られそうになったから咄嗟に捕まえていた妖夢を盾にしたのでしょう。」

 

レ「…そんな感じよ」

 

「………………」

 

「…なぁハジメ、これ、さっきから我が君が黙りこくってるけど…確実に逃げた方が良いよな?」

 

「…ああ、今すぐに白崎と八重樫と、霊夢達を連れて下がれ。死ぬぞ。」

 

「……分かった。」

 

「…………………………」

 

ハジメと清水が喋ってる間も輪廻は黙っていた。

 

ハ「……八重樫、白崎と霊夢達を連れて今すぐに下がれ、」

 

「わ、分かったわ。行きましょう香織。ここに居たら死ぬわ。」

 

「え?う、うん。」

 

れ「…さっさと行くわよあんた達。」

 

東方組「「「「「「う、うん。」」」」」」

 

ハジメが下がれと言ったもの達は妖夢を連れて下がった。

そこで何かキラキラしたやつ(最早存在があやふや)が喚き出した。

 

「ち、違う!俺は盾になんかしていない!止めを刺そうとしていたから止めただけだ!そうしたら魔物が攻撃してきたんだ!」

 

ハ「……何故お前は邪魔をした、お前が何もしなければ、そもそもこんなことになっていなかったはずだ、お前のせいで一人が超重傷だったんだぞ?それなのにお前の口から一番最初に出てきたのは、謝罪でもなく、心配でもなく、自分の保身の為の言い訳か、本当に大した勇者(笑)もいたもんだな。」

 

輪「……………………………」

 

アホ「違う!言い訳じゃない!彼女が殺そうとしていたから止めただけだ!」

 

「…生き残るために敵を殺す、それの何が悪い?」

 

「人殺しだぞ!悪いに決まってる!」

 

「…(´Д`)ハァ…それは日本の法律だろうが、こっちの世界に来た時点で日本の法律は今は通用しない、そんな事を言っていたら自分が死ぬからだ。」

 

「だけど!」

 

そこでついに黙っていた輪廻が動き出した。

 

「……………………ハジメ、そこを退け。」

 

「了解です。」

 

「……………………」

 

そうするとハジメは直ぐに後ろへ下がり、バカの後ろにいたもの達もそそくさと移動した(檜山たちは動けなかった)

 

 

「……………………テメェ、人が黙って聞いてりゃペチャクチャペチャクチャ言い訳ばっか囀ってんじゃねえぞクソボケが!てめぇが彼奴の邪魔をしたから結果的に彼奴が大怪我したんだろうが!…テメェがどんな理由でそんな事をしたのかはだいたい想像が付くが、」

 

「何を言ってるんだ!彼女が怪我をしたのは事故だ!」

 

「……………それが最後の言葉でいいな? 」

 

「俺は!」

 

 

 

 

「『???????』」

 

ドゴォォォォォォォォン

 

「…まずは片腕な、」

 

「…輪廻さん、もうやらなくて良いですよ…」

 

「ァ?」

 

「やはり君は優し「うるせえもうお前しゃべんな黙ってろ。(ハジメ)」

 

「………理由は?」

 

「そんな人私はどうでもいいので。」

 

「………そうか、なら別にいい」

 

「…輪廻、くだらない連中に構ってる暇はない、早く行こう?」

 

「アァ、さっさとこいつら連れて行くか。」

 

天の河とかどうでもいいしと言いながら、出口に向かっていく。

しかしそんな輪廻達に、やっぱり光輝が待ったをかけた。

 

「待ってくれ。こっちの話は終わっていない。十五夜の本音を聞かないと仲間として認められない。それに、君は誰なんだ? 助けてくれた事には感謝するけど、初対面の相手にくだらないなんて……失礼だろ? 一体、何がくだらないって言うんだい?」(懲りねぇなぁこいつも)

 

「……」

 

「てめぇ何様のつもりだァ?何が仲間として認められないだ、何でてめぇ何かに認めて貰う必要が有るんだ、自惚れんじゃねぇぞ雑魚が。助けくれたことに感謝するけど?当たり前だろ、てめぇ馬鹿か?、初対面で下らないって言われるくらい愚かな奴なんだろうが。何が下らないって?てめぇの存在自体がくだらねぇんだよ、分かったらさっさと失せろカスが。

次に俺たちの邪魔をしたら、」

 

「ぶち殺すぞ?」

 

 

れ「妖夢、良かったじゃない、あいつあんたのために怒ってくれたじゃない。」

よ「そ、そうですね。」

フ「妖夢、照れてる」

よ 「て、照れてなんか無いです!」

妖夢以外の全員(((((((実に分かりやすい)))))))

輪廻達は【オルクス大迷宮】の入場ゲートにやって来た。

 

 

 

「あっ! パパぁー!!」

 

「ァ?ミュウか」

 

輪廻をパパと呼ぶ幼女の登場であーる

 

 

「パパぁー!! おかえりなのー!!」

 

 【オルクス大迷宮】の入場ゲートがある広場に、そんな幼女の元気な声が響き渡る。

 

 各種の屋台が所狭しと並び立ち、迷宮に潜る冒険者や傭兵相手に商魂を唸らせて呼び込みをする商人達の喧騒。そんな彼等にも負けない声を張り上げるミュウに、周囲にいる戦闘のプロ達も微笑ましいものを見るように目元を和らげていた。

 

 

 

 ステテテテー! と可愛らしい足音を立てながら、輪廻一直線に駆け寄ってきたミュウは、そのままの勢いで輪廻へと飛びつく。輪廻が受け損なうなど夢にも思っていないようだ。

 

 

 

 テンプレだと、ロケットのように突っ込んで来た幼女の頭突きを腹部に受けて身悶えするところだが、生憎、輪廻の肉体はそんなにやわじゃない。むしろ、ミュウが怪我をしないように衝撃を完全に受け流しつつ、しっかり受け止めた

 

 

 

「ミュウ、迎えに来たのかァ?ティオと園部はどうした?」

 

「うん。お姉ちゃん達が、そろそろパパが帰ってくるかもって。だから迎えに来たの。お姉ちゃん達は……」

 

「妾は、ここです。」

 

「ここだよー」

 

 人混みをかき分けて、妙齢の黒髪金眼と赤茶色と白髪の混じった翠眼の美女が現れる。言うまでもなくティオと優花だ。輪廻は、いつはぐれてもおかしくない人混みの中で、ミュウから離れたことを非難する。

 

 

 

「おいおい、お前ら。こんな場所でミュウから離れるなやァ、」

 

「いや、目に届くところにはいたんだけど…」

 

「さすがに不埒な輩の始末をミュウに見せる訳にも行きませんのじゃ。」

 

「そういう事かァ、……で? その自殺志願者は何処だァ?」

 

「いや、主様よ。妾がきっちり締めておいたから落ち着くのじゃ」

 

「そうそう、」

 

「……チッ、ストレス発散出来ないがまぁいいかァ。」

 

「……ホントに子離れ出来るのかの?」

 

「……無理だと思う」

 

 

 どうやら、ミュウを誘拐でもしようとした阿呆がいるらしい。ミュウは、海人族の子なので、目立たないようにこういう公の場所では念のためフードをかぶっている。そのため、王国に保護されている海人族の子とわからないので、不埒な事を考える者もいるのだ。フードから覗く顔は幼くとも整っており、非常に可愛らしい顔立ちであることも原因の一つだろう。目的が身代金かミュウ自体かはわからないが。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

場所は変わって、輪廻達は現在、入場ゲートを離れて、町の出入り口付近の広場に来ていた。、輪廻達は、ロア支部長の下へ依頼達成報告をし、二、三話してから、いろいろ騒がしてしまったので早々に町を出ることにしたのだ。元々、ロアにイルワからの手紙を届ける為だけに寄った様なものなので、旅用品で補充すべきものもなく、直ぐに出ても問題はなかった。

 

 

 光輝達がぞろぞろと、出ていこうとする輪廻達の後について来たのは、香織達がついて行ったからだ。香織は、頭の中は必死にどうすべきか考えていた。このままハジメとお別れするのか、それともついて行くのか。心情としては付いて行きたいと思っている。やっと再会出来た想い人と離れたいわけがない。

 

しかし、ハジメには既に恋人がいた、優花だ。

そのことでずっと悩んでいた。

 

そしてそんな事を思ってる内に、いよいよハジメ達が出て行ってしまうというその時、何やら不穏な空気が流れた。それに気がついて顔を上げた香織の目に、十人ほどの男が進路を塞ぐように立ちはだかっているのが見えた。

 

「おいおい、どこ行こうってんだ? 俺らの仲間、ボロ雑巾みたいにしておいて、詫びの一つもないってのか? ア゛ァ゛!?」

 

 薄汚い格好の武装した男が、いやらしく頬を歪めながらティオ達を見て、そんな事をいう。どうやら、先程、ミュウを誘拐しようとした連中のお仲間らしい。ティオ達に返り討ちにあったことの報復に来たようだ。もっとも、その下卑た視線からは、ただの報復ではなく別のものを求めているのが丸分かりだ。

 

 

 

 この町で、冒険者ならばギルドの騒動は知っているはずなので、ハジメ達に喧嘩を売るような真似をするはずがない。なので、おそらく彼等は、賊紛いの傭兵と言ったところなのだろう。

 

「……………ハジメ、こいつらなら殺していいよな?」

「いいと思いますが?」

「…ちょうどいい、あいつに掛けられたストレスが溜まってんだァ、こいつらで発散させてもらうぜェ。

 

斬り失せろ『夜叉』」

 

輪廻がその言葉を紡いだ瞬間、彼の持つ刀が刃渡り1m半から4m程に変わり、鍔の辺りから黒と紫の入り交じった様な色に染まった。

 

 

 

「……第壱剣『紫炎』」

 

その長い刀をいとも簡単に片手で振った、

 

その瞬間

 

 

紫の炎が彼が斬った所をなぞるように燃え盛り、前に居た者達を灰すら残さず、存在自体を消してしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして輪廻達がもうすぐ行く、という所で何人かが動き出した。

 

「…どうしたァ?お前ら」

 

「輪廻、私達も貴方について行って良いかしら?」

 

「同じく。」

 

そう言ったのは雫と恵理だった。そして

 

れ「私達もあんたについて行くわよ?あんた達もそうでしょ?」

 

ま「ああ!」

よ「はい、」

レ「ええ、」

フ「うん!」

咲「はい。」

ア「勿論」

さ「はい、当然」

 

「……別にいいけどなァ、お前たちは俺にバスでも作らせる気かァ?」

 

と言うことで取り敢えず、雫、恵理、霊夢、魔理沙、妖夢、レミリア、フラン、咲夜、さとり、アリスが輪廻の旅について行くことになりました。

 

「ハジメくん、私もハジメくんに付いて行かせてくれないかな? ……ううん、絶対、付いて行くから、よろしくね?」

 

「………………は?」

 

 

 

 第一声から、前振りなく挨拶でも願望でもなく、ただ決定事項を伝えるという展開にハジメの目が点になる。思わず、間抜けな声で問い返してしまった。直ぐに理解が及ばずポカンとするハジメに代わって、ユエが進み出た。

 

 

 

「……お前にそんな資格はない」

 

「資格って何かな? ハジメくんをどれだけ想っているかってこと? だったら、誰にも負けないよ?」

 

 ユエの言葉に、さも当たり前さも当たり前のように返した香織。しかし、ユエの眼は残念な物を見るような目になっていた。

 

「……お前、頭大丈夫?」

「な、なんで?」

 

ユエの眼がさらに残念な物を見るような目になっていた

 

「………お前に私達の旅に着いて行けるような力が無いと言ってる。輪廻達の旅に着いて行ける程の力、それが資格。ハジメをどれだけ思ってるかなんて関係ない、着いてきた後に強くなればいい何て思ってるなら辞めておいた方がいい。」

 

「で、でも私、回復魔法使えるし!」

 

「…回復なら神水が有る。」

 

「でも希少なんでしょ?」

 

「輪廻はいくらでも生み出せる。」

 

「う、で、でも優花ちゃんは後から強くなってるんだよね?」

 

「…優花は戦闘職だし、伸び代はまだ有る。」

 

「わ、私だって光魔法とか使えるし!まだ伸びるし!」

 

「お前が光魔法を伸ばした所で私には到底追いつけない。それに魔法なら他にも要員がいる。」

 

「何でユエさんが基準なの!」

 

「このチームの最低ラインは魔法ならティオ。肉弾戦ならシア、援護なら私とミレディ。銃か剣を使うなら清水、戦力としては優花。」

 

「そんなの無理でしょ!それなら雫ちゃん達もダメじゃないの!?」

 

「…雫は強化(魔物肉を食べさせる)すれば直ぐに強くなる。恵理は元々適性も高いし、あの執念深さならいくらでもできる。」

 

「ううぅ!」

 

「…だけどそんなに行きたいなら輪廻とハジメに直接相談すればいい、結局私がどうこう言っても最終的に判断するのは輪廻。」

 

「なら、行ってくる!」

 

 

 

 

 

 

isハジメの前

 

「貴方が好きです」

 

「……白崎」

 

 

 

 香織の表情には、羞恥とハジメの答えを予想しているからこその不安と想いを告げることが出来た喜びの全てが詰まっていた。そして、その全てをひっくるめた上で、一歩も引かないという不退転の決意が宿っていた。

 

 

 

 覚悟と誠意の込められた眼差しに、ハジメもまた真剣さを瞳に宿して答える。

 

 

 

「俺には惚れている女がいる。白崎の想いには応えられない。だから、連れては行かない」

 

「ハジメ、取り敢えずそれはいいからさっさとトンズラすんぞ!あのクソガキがまたうるせぇ!」

 

「…了解です、おい白崎、今はとりあえず逃げるぞ!」

 

「え?う、うん。」

 

しかし、

 

「ま、待て! 待ってくれ! 意味がわからない。香織が南雲を好き? 付いていく? えっ? どういう事なんだ? なんで、いきなりそんな話しになる? 南雲! お前、いったい香織に何をしたんだ!」

 

「チッ!遅かったか。」

 

「……何でやねん」

 

 

 

 どうやら、光輝は、香織がハジメに惚れているという現実を認めないらしい。いきなりではなく、単に光輝が気がついていなかっただけなのだが、光輝の目には、突然、香織が奇行に走り、その原因はハジメにあるという風に見えたようだ。本当に、どこまでご都合主義な頭をしているのだと思わず関西弁でツッコミを入れてしまうハジメ。

 

 

 

 完全に、ハジメが香織に何かをしたのだと思い込み、半ば聖剣に手をかけながら憤然と歩み寄ってくる光輝に、雫が頭痛を堪えるような仕草をしながら光輝を諌めにかかった。

 

 

 

「光輝。南雲君が何かするわけないでしょ? 冷静に考えなさい。あんたは気がついてなかったみたいだけど、香織は、もうずっと前から彼を想っているのよ。それこそ、日本にいるときからね。どうして香織が、あんなに頻繁に話しかけていたと思うのよ」

 

「雫……何を言っているんだ……あれは、香織が優しいから、南雲が一人でいるのを可哀想に思ってしてたことだろ? 協調性もやる気もない、オタクな南雲を香織が好きになるわけないじゃないか」

 

 

 

 光輝と雫の会話を聞きながら、事実だが面と向かって言われると意外に腹が立つと頬をピクピクさせるハジメ。

 

そして無表情で斬魄刀を抜き始める輪廻。

 

それを止める雫。

 

そこへ、光輝達の騒動に気がついた香織と雫が自らケジメを付けるべく光輝とその後ろのクラスメイト達に語りかけた。

 

 

 

「光輝くん、みんな、ごめんね。自分勝手だってわかってるけど……私、どうしてもハジメくんと行きたいの。だから、パーティーは抜ける。本当にごめんなさい」

 

「光輝、私はどうしても輪廻たちと行きたいの、だからパーティを抜けるわ。」

 

 そう言って頭を下げる香織と、すぐに行くという雫に、鈴や綾子や真央など女性陣はキャーキャーと騒ぎながらエールを贈った。永山、遠藤、野村の三人も、香織達の心情は察していたので、気にするなと苦笑いしながら手を振った。

 

 

 

 しかし、当然、光輝は香織達の言葉に納得出来ない。

 

 

 

「嘘だろ? だって、おかしいじゃないか。香織と雫は、ずっと俺の傍にいたし……これからも同じだろ? 香織達は、俺の幼馴染で……だから……俺と一緒にいるのが当然だ。そうだろ、香織、雫」

 

「えっと……光輝くん。確かに私達は幼馴染だけど……だからってずっと一緒にいるわけじゃないよ? それこそ、当然だと思うのだけど……」

 

「そうよ、光輝。私達は、別にあんたのものじゃないんだから、何をどうしようと決めるのは私達自身よ。いい加減にしなさい」

 

幼馴染の二人にそう言われ、呆然とする光輝。その視線が、スッと輪廻とハジメへと向く。ハジメは、我関せずと言った感じで遠くを見ていた。そのハジメの隣では、優花がハジメの手を握っていた。輪廻はそんな事どうでもいいのか、煙草を吸っている。その輪廻の周りには美女、美少女が侍っている。その光景を見て、光輝の目が次第に吊り上がり始めた。あの中に、自分の香織や雫が入ると思うと、今まで感じたことのない黒い感情が湧き上がってきたのだ。そして、衝動のままに、ご都合解釈もフル稼働する。

 

「香織、雫。行ってはダメだ。これは、香織達のために言っているんだ。見てくれ、十五夜を。女の子を何人も侍らして、あんな小さな子まで……しかも兎人族の女の子は奴隷の首輪まで付けさせられている。黒髪の女性もさっき十五夜の事を『主様』って呼んでいた。きっと、そう呼ぶように強制されたんだ。十五夜は、女性をコレクションか何かと勘違いしている。最低だ。人だって簡単に殺せるし、強力な武器を持っているのに、仲間である俺達に協力しようともしない。香織、雫、あいつ等に付いて行っても不幸になるだけだ。だから、ここに残った方がいい。いや、残るんだ。例え恨まれても、君のために俺は君達を止めるぞ。絶対に行かせはしない!」

 

「「テメェ、人の主を愚弄するのは喧嘩売ってんのと同じたぞ」」

 

 光輝の余りに突飛な物言いに、香織達が唖然とし、ハジメと清水がこんなバカに自分の主を愚弄されて溜まるかと怒る。しかし、ヒートアップしている光輝はもう止まらない。説得のために向けられていた香織達への視線は、何を思ったのか輪廻の傍らのユエ達に転じられる。

 

 

 

「君達もだ。これ以上、その男の元にいるべきじゃない。俺と一緒に行こう! 君達ほどの実力なら歓迎するよ。共に、人々を救うんだ。シア、だったかな? 安心してくれ。俺と共に来てくれるなら直ぐに奴隷から解放する。ティオも、もう主様なんて呼ばなくていいんだ」

 

 

 

 そんな事を言って爽やかな笑顔を浮かべながら、ユエ達に手を差し伸べる光輝。雫は顔を手で覆いながら天を仰ぎ、香織は開いた口が塞がらない。

 

 

 

 そして、光輝に笑顔と共に誘いを受けたユエ達はというと……

 

 

 

 「「「……」」」

「キモッ」

 

 

 もう、言葉もなかった。光輝から視線を逸らし、両手で腕を摩っている。よく見れば、ユエ達の素肌に鳥肌が立っていた。ある意味、結構なダメージだったらしい。ミレディは台所などによく出没するアレを見るような目をしている。

 

 そんなユエ達の様子に、手を差し出したまま笑顔が引き攣る光輝。視線を合わせてもらえないどころか、気持ち悪そうに輪廻の影にそそくさと退避する姿に、若干のショックを受ける。

 

 そして、そのショックは怒りへと転化され行動で示された。無謀にも輪廻を睨みながら聖剣を引き抜いたのだ。光輝は、もう止まらないと言わんばかりに聖剣を地面に突き立てると輪廻に向けてビシッと指を差し宣言した。

 

「十五夜輪廻! 俺と決闘しろ! 武器を捨てて素手で勝負だ! 俺が勝ったら、二度と香織達には近寄らないでもらう! そして、そこの彼女達も全員解放してもらう!」

 

「…清水、お前今まであんなのに憧れてたのか?」

 

「………………あんまり俺の古傷を抉らないでください、我が君。」

 

 聖剣を地面に突き立てて素手の勝負にしたのは、きっと剣を抜いた後で、同じように輪廻が武器を使ったら敵わないと考え直したからに違いない。意識的にか無意識的にかはわからないが……ユエ達も香織達も霊夢達も、流石に光輝の言動にドン引きしていた。

 

 

 

 しかし、光輝は完全に自分の正義を信じ込んでおり、輪廻に不幸にされている女の子達や幼馴染を救ってみせると息巻き、周囲の空気に気がついていない。元々の思い込みの強さと猪突猛進さ、それに初めて感じた〝嫉妬〟が合わさり、完全に暴走しているようだ。

しかしそこに冷淡な声が掛かる。

 

「ァ?何が素手だボケェ、お前の攻撃なんか剣を使っても全く聞かねぇわ、てめぇ剣でも勝てねぇのにどうやって素手で勝つつもりなんだ?何?自分が1番強いとでも思ってんの?調子乗んじゃねぇぞ、たかが十数年しか生きてないような童が俺に勝てるとでも?1億年後に出直してこい雑魚が。」

 

しかしそんな声は猿人類より知能が下のど阿呆には聞こえなかったらしい。馬鹿は聖剣を持ち輪廻に斬りかかった。

 

輪廻は避ける価値すら無いと思ったのか普通に歩いている。

 

「行くぞおめぇら。」

「舐めるな!!!」

 

聖剣を振り上げ輪廻の背中に振るった、が、

 

ガキィィン、パキンっ

「え?」

聖剣は半ばから折れているのに輪廻は全くの無傷。

 

「だから言っただろうが、てめぇじゃ俺にかすり傷すら負わす事が出来ねぇってなァ。つか、今なんかしたかァ?」

 

「ウォォォォォォォォオー」

 

馬鹿は馬鹿らしく馬鹿みたいに一直線に殴りかかって来たので、輪廻は

 

 

ドギャッ!!

 

「へぶらっ!!!」

 

 

殴った、それは見事なまでに綺麗なストレートで。(明らかに人を殴った音ではないが)

 

 

 

 

「行くぞ」

 

輪廻はそう言うとキャンピングカーを2つ合体させた様なものを出した。

 

「…時間がねぇから全員これに乗れ。」

 

ハジメと清水を除いた全員「「「「「「「「「「でっか!」」」」」」」」」」

 

「……20人も乗るにはこんだけでかくないと乗れねえんだよ。一応分類的にはキャンピングカーだから料理も出来るし、ベットもあるし、シャワーもあるぜェ、ぶっちゃけこれで生活出来る。ほら、はよ乗れや。」

 

全員乗員完了

 

席順、前の席に輪廻、ユエ、ハジメ、清水。

後ろのソファーの左側に東方組、右側のソファーにありふれ組、。

 

そして現在。

 

トントントントン

ポイッ

グツグツ、グツグツ

タンタンタンタン

ぐーるぐるぐーるぐる

混ぜ混ぜ混ぜ混ぜ混ぜ

ジュー

「何で俺が運転しながら飯作ってんだ?」

輪廻は運転(魔力を流し込むことで動かすように改造済み。)しながら何故か晩御飯を作っていた。

メニュー、鶏肉で作ったカレー、マカロニサラダである。

 

ハ「…………….うめぇ。」

清「………同じ感想しか出ねぇ」

ミュウ「パパのご飯美味しいの!」(子供用に甘めのをあげてる)

ユ「……ん、美味しい」

ミ「…美味しいねぇ」

シ「美味しいですぅ!」

テ「これはなんとも美味しいのぉ、」

雫「……やっぱり輪廻の作ったのは美味しいわね。」

恵「………」←(作って貰ったご飯を食べたのが初めてで嬉し泣きしながら食べてる)

優「………腕に自信が有ったけど、ことごとく粉砕されたわ、自信と女のプライドが。」

霊「………、何これめっちゃ美味しいんだけど。」

魔「…これは上手いのぜ!」

妖 「……確実に私より腕いいですよこれ。」

フ「美味しいね、お姉様!」

レ「…えぇ、そうね」(何これ、下手したら咲夜のより美味しいわよ!?)

ア「……美味しいわね」

さ「……私も結構料理はするのですが、負けましたね。凄く美味しいです。」

咲「……………これは……輪廻さんこのカレーは粉からですか?」

「アァ、香辛料とかはあんまりないからな、市販のカレールーは俺の記憶の中にねぇしな、」

咲「……ちなみにカレー粉の材料は?」

 

「アァ、辛味 はカイエンペッパー、胡椒、ニンニク、ショウガ、味と香りは クミン、コリアンダー、クローブ、シナモン、カルダモン、ナツメグ、オールスパイス、キャラウェイ、フェンネル、フェヌグリークとか、色はターメリック、サフラン、パプリカとかだな。」

 

咲「……結構オードソックス何ですね。」

「アァ、特に珍しいもんとかは入れてねぇ、強いて言うなら、辛さのために唐辛子位は入れてんなァ。つか、そろそろ寝ろォ。」

 

少女たち就寝

 

輪廻、ハジメ、清水はまだ起きていた、寝るスペースが無かったと言うのもあるが、今後について話し合っていた。

「次はどうする?やっぱりグリューエン火山か?」

「まぁ、そんな所が妥当でしょうね、」

「というかもう向かってるじゃないですか?」

「まァ、確認見てえな物だ。じゃァ、そろそろ俺たちも寝るかァ。」

 

翌朝AM:5:00

一番最初に起きたのはユエだった。

「……ん、いい匂いがする。」

トントントントントン

ジュー

グツグツ、グツグツ

サクサクサクサク

「……誰かがご飯を作ってる?」

トコトコ、とユエはキッチンまで歩いてきた、そこには

「…ユエ、起きたかァ」

朝食を作っている輪廻の姿があった。

「……輪廻、何作ってるの?」

「ん?今日は卵焼き5本と焼き魚(鮭)と豆腐とワカメの味噌汁、あとは酢の物と白米だな。」

「…すごい量」

「アァ、人口がアホみたい増えたからなァ、そうだ、ユエそろそろそいつらを起こして来てくれ、ついでに飯は早い者勝ちで無くなるまでに来なかったら飯はねぇぞってな。」

「……ん、私の分も装っといて。」

「アァ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベットルーム

「皆…朝ごはんいらないの?」

「「「「「「もう少しだけ…寝かせて… 」」」」」」

「………ん、分かった、輪廻にみんな寝てるからいらないって言っとく。」

 

ユエがそう言った瞬間に全員の意識が覚醒し、即座に否定の言葉を口に出す。

 

「「「「「「「「「「「「「「それは嫌!!」」」」」」」」」」」」」」

「……うるさい!」

 

しかし流石は後の神の正妻(予定)、一言だけでピシャリと黙らせるとさっさとリビング(仮)に戻って行ったのであった。

 

おーいユエ〜そいつら起きたか〜

「……ん、今行く」

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「「「「「頂きます!」」」」」」」」」」」」」

 

 

 

ハ「こっちに来ても日本食が食えるのは主のお陰だ。うめぇ」

清「俺もっと我が君の役に立とう。美味ぇ」

 

ミュウ「美味しいの!」

ユエ「…ん、美味しい」

以下同文です。

 

妖夢「……これでわかりました、輪廻さんの料理の腕はプロ並みだと。」

咲夜「…えぇ、本当に、同じ材料を使っても同じ味を出せる自信が全く無いわね。」

さ「……何処かに弟子入りでもしていたんですか?」

「いや、趣味だ」

「「「嘘だ! 」」」

「嘘ついてどうすんだよ。」

「「「という訳で弟子にしてください!」」」

「無理」

「「「即答!?」」」

「そもそもどういう訳だよ。」

「「「単に料理の腕を上げたいからです。」」」

「頑張れ、俺は運転するから無理。つうか、さっさと出るぞ、【グリューエン大火山】ヘ出発だ。」

 

 

 

 

 

 




飯テロに会うがいい!


感想、待ってま〜す

卵焼きって美味しいよね。


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第十八話 グリューエン火山終了のお知らせ。

こんちわ湯たんぽです。

更新に時間がかかってすみません。謎にデータが消えたり、書いてて訳わかんなくなっちゃったり、学校が始まったりしたので、遅くなりました。

来週からまた臨時休校らしいですね。

そして早く終わらせようと思ったら一話で終わってしまったシリーズ第2弾。
いや、早く終わらせようとしたら直ぐに終わってしまうんですよねー。


そして天之河、貴様にはあと15回ほど死んでもらう!(尚、最後は死ぬまでこき使われる模様)
アンケートの結果を最大限に汲み取った結果でござる。

注意書き


今回は内容がペラペラ。
作者の過度な妄想、願望で出来てる。
作者の好きな物ばかり入ってる。
オリ主二重人格になるかも。
天野河、檜山に対するオリ主の態度がすごいから気をつけて。
天野河、檜山に対するアンチ、ヘイトがスゴいよ。
天の河、檜山が好きな物好きな方は閲覧をお控え下さい。
そろそろ天ノ川がオリ主に殺されそう。むしろ1回殺された。多分また死ぬ。
輪廻君が何言ってるか解らなくても気にしないで。
東方要素が出てきたぞ!。
呼吸が出てきたぞ!
何か輪廻君のヒロイン十五人ぐらいになりそう!(現時点、後に更5人+一人増える。)
輪廻君むっちゃちーと。

それでもいいよと言う方のみご覧下さい。



 

「そうだ、グリューエン火山に行こう。」

「は?」

 

と言う輪廻の謎の、そうだ京都に行こう。と言うテンションでグリューエン火山内部に侵入した輪廻達。

 

道中、何かぶっ倒れてた何かがあったが。

 

「返事がない、ただの屍のようだ」

「それでいいんですか?」

「うん。」

 

当然、香織からは抗議が有ったが。

 

「死体の相手をしたけりゃ今すぐ降りろ。」

 

と言うので終わった。

 

ちなみに。

 

「むー、パパ!ミュウも行きたいの!。」

「ダメだ」

「ダメ、なの?」

「……………………」

「ミュウも行きたいの。」

「…俺の近くにいろよ。」

「ハイなの!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

【グリューエン大火山】の内部は、【オルクス大迷宮】や【ライセン大迷宮】以上に、とんでもない場所だった。

 

 

 

 難易度の話ではなく、内部の構造が、だ。

 

 

 

 まず、マグマが宙を流れている。亜人族の国フェアベルゲンのように空中に水路を作って水を流しているのではなく、マグマが宙に浮いて、そのまま川のような流れを作っているのだ。空中をうねりながら真っ赤に赤熱化したマグマが流れていく様は、まるで巨大な龍が飛び交っているようだ。

 

 

 また、当然、通路や広間のいたるところにマグマが流れており、迷宮に挑む者は地面のマグマと、頭上のマグマの両方に注意する必要があった。

 

 

 しかも、

 

「うきゃ!」

 

「おっと、大丈夫か?」

 

「はい、有難うございます、ハジメさん。いきなりマグマが噴き出してくるなんて……察知できませんでした」

 

 

 と、シアが言うように、壁のいたるところから唐突にマグマが噴き出してくるのである。本当に突然な上に、事前の兆候もないので察知が難しい。まさに天然のブービートラップだった。ハジメ達が〝熱源感知〟を持っていたのは幸いだ。それが無ければ、警戒のため慎重に進まざるを得ず攻略スピードが相当落ちているところだった。

 

 そして、なにより厳しいのが、茹だるような暑さ――もとい熱さだ。通路や広間のいたるところにマグマが流れているのだから当たり前ではあるのだが、まるでサウナの中にでもいるような、あるいは熱したフライパンの上にでもいるような気分である。【グリューエン大火山】の最大限に厄介な要素だった。

 

さらに、輪廻達は元々多くても7、八人位で来るつもりだったのだが、ホルアドにて東方組と雫、恵理が来たことによって人口が爆発的に上がった為に、余計に熱くなったのだ。

 

 

しかし…

「お前らそんなに熱いかァ?」

ただその中で一人、涼しそうな顔をしている者がいた、

 

「…主、何でそんなに涼しそうな顔してるんですか?」

「……我が君だけずるくないですか?」

そう、お察しの通り輪廻だ。

 

「…そりゃ、操作してるからな。」

そう、輪廻は単純に『熱量の移動』と言うベクトルを操作しているだけである。

 

「じゃあ私達の方も操作してよ」

「無理、能力的にも労力的にも。」

「即答!?」

「………たくよォ、暑さ位で音を上げてんじゃねぇよォ、なァミュウ?」

「全然暑くないの!」

 

熱い人代表ハジメ君「そりゃそうですけどね!熱いんですよ!て言うかミュウの周りだけ操作してるの分かってんですからね!」

「そんなに熱いか?」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「YES!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

「…たく、しゃあねぇなァ、今回だけだぞ?次はちゃんと熱さに耐性つけとけよ?」

輪廻はそう言うとツカツカと通路の真ん中まで歩いていった。そして

「スペルカード発動 地獄『氷獄の雪』」

ズットオオオオオオオオオオオオオン

輪廻の頭上から氷の塊の様なものが現れ、輪廻の前に落ち、地面に穴を開けた。

「ほら、行くぞ」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「……………………………………いやいやいやいや!何それ!?と言うかそれでいいの!?」」」」」」」」」」」」」」

 

「ア?別に熱いままでいいなら戻すが?」

「結構です!」

「ならさっさと行くぞ、これ以上駄々こねたらマグマに叩き込むからな。」

「了解です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が殺っても意味ねえし、ミュウの面倒見てるから、お前たちで殺れ」

 

 

 

という訳で大迷宮の最終試練を輪廻抜きでやる事になったハジメ達だが。

 

 

最早チートの域に達しているハジメ達(一名を除く)では最終試練も楽々突破出来る様だ。

 

そして遂に最後の一体となったマグマ蛇が、直下のマグマの海から奇襲をかけた。ハジメは、そのまま直上に〝空力〟で飛び上がると、真下からガバッと顎門を開いて迫るマグマ蛇の口内に向けてシュラークを発砲した。

 

 

 

 着弾と同時に紅い衝撃波が撒き散らされ飛び散るマグマ。その隙間から僅かに魔石が姿を現す。ハジメは、右のドンナーを構えた。ユエ達は満足気な眼差しで、清水や霊夢達はようやく終わりか、と言った顔でハジメが最後の一撃を放つところを見ている。

 

 

 

「これで、終わりだ」

 

 

 

 それを視界の端に捉えながら、ハジメは【グリューエン大火山】攻略のための最後の一発を放った。

 

 

 

――その瞬間

 

 

 

ズドォオオオオオオオオ!!!!

 

 

 

 頭上より、極光が降り注いだ。

 

 

 

 まるで天より放たれた神罰の如きそれは、ハジメがかつて瀕死の重傷を負った光。いや、それより遥かに強力かも知れない。大気すら悲鳴を上げるその一撃は、攻撃の瞬間という戦闘においてもっとも無防備な一瞬を狙って放たれ――ハジメを、最後のマグマ蛇もろとも呑み込む、寸前。

 

「スペルカード発動、結界『悪魔の護り』」

 

ここに居る全員を覆う程の結界が張られた。

 

「ったく、世話の焼ける奴らだなァ。」

当然、それ程の結界を張れる者は…

「主!」

「すみません、我が君!」

「「「「「「「「「「「「「「「「輪廻!(さん)(君)(主様!)」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

「パパ、すごいの!」

そう、輪廻しか居ない。

 

 

「でェ?そこに居る魔人族はどちら様でしょうかねェ、」

「驚いたな、私に気付けるとは。」

「アァそうかい、お前ら魔人族ってのは俺が気付いたくれぇで驚くような低脳なのかァ。」

「………そこの男程の殺気を出せない様な奴が吠えるな。」

「……冥土の土産にひとつ教えてやる。」

輪廻はそう言うと刀に手を掛け。

「殺気ってのはなァ、ただ出すもんじゃねぇ、操るもんだ。」

ドンッ

と言う音が聞こえそうな程の殺意が迸った。

 

「卍解・残火の太刀、」

「残火の太刀 北 『天地灰尽』」

シュッ

竜約50匹が融けた

 

「何だお前は!?何故わたしの竜が居なくなっている!?」

「そんなもん消したからに決まってんだろうがァ。」

「あ、有り得ない!」

「有り得たからこそこんな状況になってんだろうが。」

 

「くっ!この手は使いたくはなかったのだがな……貴様等ほどの強敵を殺せるなら必要な対価だったと割り切ろう」

 

「なに言ってんだてめえ?」

 

 

 

 フリードは、輪廻の質問には応えず、いつの間にか肩に止まっていた小鳥の魔物に何かを伝えた。

 

その直後、

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!! ゴバッ!!! ズドォン!!

 

 

 

 空間全体、いや、【グリューエン大火山】全体に激震が走り、凄まじい轟音と共にマグマの海が荒れ狂い始めた。

 

 

「てめぇ、何をした。」

 

「要石を破壊しただけだ」

 

「要石……だと?」

 

「そうだ。このマグマを見て、おかしいとは思わなかったのか? 【グリューエン大火山】は明らかに活火山だ。にもかかわらず、今まで一度も噴火したという記録がない。それはつまり、地下のマグマ溜まりからの噴出をコントロールしている要因があるということ」

 

「それが〝要石〟か……まさかっ!?」

 

「そうだ。マグマ溜まりを鎮めている巨大な要石を破壊させてもらった。間も無く、この大迷宮は破壊される。神代魔法を同胞にも授けられないのは痛恨だが……貴様等をここで仕留められるなら惜しくない対価だ。大迷宮もろとも果てるがいい」

 

フリードは、冷たく輪廻達を見下ろすと、首に下げたペンダントを天井に掲げた。すると、天井に亀裂が走り、左右に開き始める。円形に開かれた天井の穴は、そのまま頂上までいくつかの扉を開いて直通した。

 

 

 

 どうやら、【グリューエン大火山】の攻略の証で地上までのショートカットを開いたようだ。フリードは最後にもう一度、輪廻達を睥睨すると、踵を返して1匹だけ残っていた白竜と共に天井の通路へと消えていった。

 

 

「さて、さっさと神代魔法手に入れるぞ。」

「「「「「「え?」」」」」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「次は脱出してエリセンの町まで行くぞ。」

「え?エリセンまで行くんですか?」

「アァ、近いからな。」

「パパ、ママに会えるの?」

「アァ、会えるぜェ。」

「やったなの!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうしてこうなった。と思ったけど、ぶっちゃけ輪廻君ちーと、だから良いよね!(誤字ではない。)
チートでは無くちーと。これが意味することを感の鋭い君なら分かるはずだ。

感想ください。(切実)

次回、俺より弱いが世界ではそこそこ強いやつに逢いに行く。(尚、このタイトルは永久に使われることはありません。後話し手と世界で分かると思います。ついでに輪廻君が何故あの技(第十話参照)を使えたかを説明する回です。ぶっちゃけ過去編。)



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ちょこっと過去編(的な何か)
ロクアカ編


こんちわ、最近あんまりネタが思いつかない湯たんぽです。

という訳で輪廻君の過去編パート1です。
ま、まぁ、過去編って言ったって、セリカ救ったりリィエル救ったりグレンを育てたり、シズさん救ったり、ミカサ救ったり、エルヴィン団長ぉぉぉぉぉぉぉお!を救ったり、リヴァイ兵長ぉぉぉお!の過去にいたり、何処ぞのVRゲームで遊んだり、遊びすぎて何処ぞの光の巫女を巡る戦いに巻き込まれたりするだけですよ!?

注意書き

作者の過度な妄想、願望で出来てる。
この世界でも輪廻君は相変わらずちーと。
ツッコミは心の中だけでお願いします。
疑問は感想にて。

以上が見過ごせる方のみ閲覧ください。


とある学園の一室にて、

 

「グレン君、君、クビね。」

「「え?」」

不意に突き付けられた、リック学園長の最後通告。

 

「………え?えええええええええええええー!?」

「ど、どういう事ですか学園長!?私の知る限りでは、グレン君がクビになるようなことはしてないですよ!?」

「そうっすよ!セラ(・・)の言う通り、俺、クビになるようなことは────……た、多分何一つやってないっすよ!?」

「……グレン君?」

「どうして、そこで言葉を詰まらせたかは…まぁ、後日、論じるとして……」

 

好々爺然とし面持ちで、リック学園長は言った。

 

「さて、先程の物言いには少々語弊があったのう。訂正しよう。」

「……語弊?」

「語弊ですか?。」

「うむ。より正確には『君、このままだとクビになるぞ』の方が正しい。」

「「ど、どういうことですか?」」

 

と、その時である。

 

「……ったく。馬鹿だ、馬鹿だとは思ってたけど、まさかここまで馬鹿だとは思わなかったぞ、グレン。ん?お前はあいつに何を習ってたのか言ってみろ。」

 

「せ、セリカ。」

「セリカさん…」

 

「なあ、グレン、アイツがここで教授をしてた時に家で書いてたものはなんだ?」

「はぁ?あの人の書いてた物ぉ?んなもん魔術論文に決まって…」

 

そこまで言って、グレンは血の気が引いた、それは何故か。

 

「そうだ、魔術論文だ、グレン…お前その論文の提出はどうした?……あぁ?………今期の提出期限はとっくに過ぎてるぞ?」

「……グレンくん?私昨日聞いたよね?論文の提出はしたのかって。そしたらグレン君は、「……あー?出したーー?」って言ったよね、まさか出してないなんて事ないよね?」

セリカとセラ(母親 同僚)に睨まれるグレン。

 

可哀想に……と思ったけど、自業自得ですね。

 

「じゃが、グレン君、君は運がいいのぉ、」

「へ?どういうことっすか学園長。」

「実はのぉ…………」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「タウムの天文神殿の調査〜?」

 

「そうじゃ、と言う訳ではよろしく。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

馬車の中、 行き先は、『タウムの天文神殿』だ。

 

 

その中で、セリカはシスティーナにあることを聞かれてた、

 

「なに?あいつの事が聞きたいのか?」

 

「はい!あの魔術師の中で知らない人は居ない、伝説の第八階梯(デスペラード)が、最近まで教授と一緒に居たという噂も有りますし、邪神を一緒に殺したとか言う伝説も有りますから!」

 

その言葉にセリカはまぁ、知ってるだけのことならいいか、とシスティーナに向き合った

 

「…そうか、私が知っている限りなら答えれるが、それでいいのか?」

「はい!ぜひ聞かせてください!」

 

 

 

 

「相変わらず魔術が絡むと別人に豹変するな、白猫。」

 

「それだけ魔術に夢中って事だよ、グレン君。」

 

「そうですよグレン先生、システィはそれだけあの人の事が気になるんですよ。私もあの人に一度だけ会ったこと有るんですけど、すごい特徴的な容姿をしてますよね?」

「ああ、あの人は1度あったら忘れねぇ。なんてったって、セリカより美味い飯を作ってくれるからな!」

 

その言葉に、ルミアは苦笑するしかない

 

「伝説の第八階梯(デスペラード)にご飯を作って貰うって、どういう状況なんですか?」

「ああ、確か初めて作って貰ったのは、10年くらい前だな、確かその日セリカに飯を作って貰ってたんだがな 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12年程前

 

「ど、どうだ?料理なんて初めて作ったんだが?」

 

セリカがそう聞くと、グレン(当時七歳位のはず)は目尻に涙を浮かべながらこういった。

 

「…美味しくない…と言うか、むしろ不味い」

「グッ」

 

分かっていた、セリカは料理などこれまでした事も無い、せいぜい彼の作る姿を想像して見様見真似で作ってみただけだ。

分かっているが、改めてこう言われると心に来るものがある。

そんな時彼が帰ってきたのだ。

 

「ただいま〜…………お前とうとう誘拐したのか?さすがにイライラしてるからってそれはダメじゃねぇか?」

「ち、違う、ちよっと色々あって拾ってきたんだよ!」

「まァいいかァ、そんで?今はお前が面倒見てるから、自分で試行錯誤しながら作った飯を食べさせた結果があこで飯食ってるガキか。」

 

グサグサッ

セリカに1000のダメージ

「そんで?そいつの名前は?」

「………私が付けたんだが、グレンだ。」

「……そうかァ、おいグレン、」

「な、なに?」

「腹減ったか?」

「うん!」

「そうか…しゃあねぇ、こいつにセリカの今の腕で作った飯を食わせる拷問をする訳にも行かねぇ、すぐ作るから待ってろ。 」

「ご、拷問って何だよ!私も初めてだったんだから!」

「じゃぁ取り敢えず食えるようなもんを作れるように練習しとけ。」

「くっ…。」

絶対に料理出来るようになってやる!と誓ったセリカだったが。

 

彼の調理している姿を見て

 

(やっぱり料理作ってる時はカッコイイな。)

と真顔でそんなことを思っていた。

 

「……出来たぞ、」

コト、コト、と置かれる料理の数々

「…これ全部作ったのか?」

「アァ、パン以外はな、メニューは地鶏の香草焼き、揚げ芋添え。ラルゴ羊のチーズとエリシャの新芽サラダ。キルア豆のトマトソース炒め。ポタージュスープ。ライ麦パン。後牛乳。」

これが後に、グレンの昼食になるのだが……今は割愛しよう。

「う、美味そう。兄ちゃん食べていいの?」

「アァ、食えるだけ食え。」

「やったー!」

 

ガツガツ、モグモグ、そんな擬音を響かせながらグレンは大量に食べた。

 

「美味かったー、でもお姉さんは何で料理できないの?」

 

ドスッ!

セリカに1万のダメージ。(精神的に。)

 

「そ、それはだな、」

「作るのが面倒臭い、自分より俺の方が上手いから、何かやる気が出ない。」

「うぐっ」

「これが今までに料理をしないのかと聞いた時の言い訳だ、流石に食えるもんぐらいは作れるようにならないとなァ。子供にも言われてるし。」

 

ドシュッ

輪廻君!辞めてあげて!セリカのライフはもうゼロよ!

 

( ´ ཫ ` )チ───(´-ω-`)───ン

「………ちょっとこいつ運んで来るわ。グレン、お前はそこの部屋を使え。そして寝ろ。」

「うん。」

 

「……………すう、すう、」

「ようやく寝やがったか、グレンは。」

 

 

寝室にて。

「で?お前は誘ってんのか?」

そこには着替え途中のセリカが居た。抜群のプロポーションと、風呂上がりの湿った肌と言う姿が妖艶さを醸し出している。その姿は誘ってるようにしか見えない。

「ち、違う、これは誘ってるんじゃない、風呂上がりなだけだ。」

「ほう、それで?さっさと着替えなくてもいいのかァ?」

「い、いや、最近仕事続きだしなーと思って。」

「…………そうかァ、ならお前のお望み通り襲ってやるよォ。」

「え?ち、ちが、ちょ、ちょっとま、ヤァーー」

 

 

 

後にはベットの軋む音と、女の嬌声が聴こえるだけだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?何処から話そうか?」

「あ、じゃぁ、アルフォネア教授と第八階梯(デスペラード)の出会いからお願いします。」

「ああ、あれは確か、200年前の『魔導大戦』の時だった。」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「おい姫!姫!おいエリエーテ!聞こえるか!?」

「…せ…リ…か、僕の事は良いから…ケホッケホッ…邪神を…殺して?…」

見れば彼女の身体はボロボロだ、左腕はちぎれ掛け、脚は両方とも折れかけている、だが、右手だけは唯一無事だ、だがそれも、無数に傷が走り、血が流れ吐血もしている。……………恐らくは助からないだろう、セリカがちゃんと治療をすれば治るかもしれないが、今は邪神と殺し合っている所なのだ、残っている魔力もそこまでない。

「くそっ!なんでこんな時なんだよ!他の奴らは!?」

「……他の4人は……死んだ……ケホッケホッ……ううん、死んだと言うより…殺された。」

「え?」

 

私は彼女…エリエーテの言葉が一瞬わからなかった。死んだだけならまだ分かる、いや、それでも分からないが、戦って死んだと言うならまだわかる、だが、彼女の言い方からすると、邪神と戦って殺された訳ではなさそうだった。

 

そして、私がその事を聞こうとした瞬間。

 

「!いいいいいいいやあぁぁぁぁぁぁ!」

ガキィィン!

「チッ、これを防ぐたぁ、なかなかやるなァ、さっすが邪神とか言うやつと戦ってる奴らだぜェ、」

後に人間がいたのだ。

「!?お前は誰だ!」

 

エリエーテはその男が降ってくる剣を防ぐ為に、折かけた両足で地面を踏み抜き、剣で弾いたのだ。

しかし、

 

「…ゴハッ!ゲホッゲホッ!かフッ!…うぐぅ。」

その代償に、折れかけていた両足は完全に折れ、大量に吐血した。

「エリエーテ!クソっ!」

「なんだァ、そいつ負傷者かよォ。つまんねえなァ、」

「…お前!…ケホッケホッ……セリカ…そいつがラザール達を殺したやつだよ!…」

「なに!?」

「ラザール?アァ、あの何か騎士みたいなやつか?何かこっちに向かって叫びながら突っ込んで来たから切り飛ばしたが?」

「お前!!!」

 

セリカの手のひらに魔力が集まっていく。そして詠唱するのは神殺しの技。

 

「《我は神を斬獲せし者・我は始原の祖と終を知る者・其は摂理の円環へと帰還せよ・五素より成りし物は五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離すべし・いざ森羅の万象は須く此処に散滅せよ・遥かな虚無の果てに》!黒魔改・イクティンクション・レイ!」

「だめ!セリカ!そいつは攻撃を全部反射するんだ!」

 

咄嗟に放ったエリエーテその忠告は遅かった、彼に向かった極光は直撃したかと思われたが、当たった所から徐々に右に九十度曲がって行った。

 

「は?」

「久しぶりだなァ、こんな攻撃力を持った物を喰らうのは。それよりお前、そこの剣士を助けなくていいのか?」

「はっ!エリエーテ、大丈夫か!」

「……ううん、もう僕駄目っぽい……」

「やめろ!そんなこと言うな!」

「……そいつ、治してやろうか?」

「え?」

「俺は一度そいつと戦って見てえんだよ。だから治す。」

「な、治してくれるはいいんだが、邪神を倒さなきゃ…」

「ん?邪神ならさっき俺の進路妨害してきたから眷属諸共消したけど?」

「は?」

「まァ、んなこたァ今はどうでもいい、ほら、()()()》後、()()()()()()()()()()()()》》》」

その瞬間、エリエーテの傷が全快し、残っていた眷属を消し飛ばした。

「治っただろ?」

「あ、ああ、治ったが、」

「…何でラザール達を殺したんだ!…」

「ァ?そんなもんアイツらがこっちに突撃してきたからに決まってんだろ、たく、何と勘違いしたんだかなァ。」

「……、多分邪神の眷属か何かと勘違いしたのか、それとも、君が嘘を言ってるのか。…僕には分からない……、でも、助けてくれてありがとう。」

「よし、無駄口叩ける程の元気があるなら戦うぞ、」

「え、えええー、まあ、良いけど、」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「と言うのがあいつとの出会いだな。」

「す、凄いですね、……あれ?そう言えば話して貰った中だと、六英雄の中で4人は第八階梯(デスペラード)に殺されちゃったんですか?。」

「ああ、その事だが、後の調査であいつは殺したんじゃなく、邪神に操られてアイツに攻撃したのを倒しただけだったんだ。」

「へえー、そうなんですね!、そう言えば一緒に邪神倒したと言う噂についてはどうなんですか?」

「ん?ああ、その話は多分デマだな、……あの邪神は私がイクスティンクション・レイを使っても殺し切れなかったんだ。そんな化け物をあいつは一瞬で倒したのさ。」

「や、やっぱり第八階梯(デスペラード)の名は伊達じゃないですね。と言うかセリカさんと第八階梯(デスペラード)の関係ってどういう物なんですか!?」

その質問にセリカは少したじろいだが、直ぐに何時もの顔に戻った。

「関係か…」

「はい!」

「アイツと私の関係……まあ、恋人みたいなもんさ。」

セリカの少し照れたような言葉に、ウィンディ等の、お年頃女子グループがキャーキャー騒ぎ出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

キャーキャーキャーキャー

「……何か上が騒がしいな。」

「アルフォネア教授との話が盛り上がってるんじゃないですか?。」

「グレン君、そろそろ着くよ〜」

「へ〜い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリセンにて、

 

「!チッ」

「どうしたんですか?主」

「…何か会ったんですか?我が君。」

「いや、ちょっとトイレに行ってくる。」

(…ちょっと緊急事態が起きた、ユエ達とミュウは

絶対に外に出すな。)

「ミュウもいますから早くしてくださいね。」

(頼んだぞ)

((了解です。))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど。元《世界》のセリカ=アルフォネア……この学院には彼女が居ましたね。」

「情報によれば、度重なる無理が祟って弱体化……長期戦が不可能とありますが、短期戦に限ればまだ恐るべき力を発揮出来るでしょう。」

長いからカットで

 

「……………それがこの取引に際し、こちらが提示する絶対条件です。」

その言葉にグレンは目を見開いた。

「……多分、この辺りが潮時だわ。これ以上押したら交渉そのものが…」

その時。

「…オイオイ、何時からこの学院の医務室は騒いで良くなったんだァ?俺がいた頃はもっと静かだったぜェ?」

ガバッと言う音と共に医務室の壁の一部が割れた、その中から出てきたのは…

「で、第八階梯(デスペラード)!?」

「「「「輪廻!((さん))(師匠)」」」」

「随分腕が鈍ったかァ?セリカ。魔力量は低下し、エーテル体はズタボロ。何やってんだよ。」

「な、何で第八階梯(デスペラード)がこんな所に!?」

「さて、見るからにエーテル乖離症のそいつは返して貰おうか?」

そう言うと彼はリィエルを一瞬で奪い去った。

「ほう、こんな霊魂は初めて見たな。これじゃないと治せないか。《神の三手よ・我が腕に宿れ・かの者に魂の癒しを》」

「……ん、みんな集まってどうしたの?」

「な、治った!?」

「せ、霊域図版(セフィラ・マップ)が無ければ治せないんじゃ!?」

「無かったら作れば良いだけの話だろうが、俺が教授時代、何度その手の魔術論文を書いたと思ってんだ?さァ、次はセリカだ。」

そう言うとツカツカとセリカに近づき、左肩に手を置いた。

「《欠けし霊魂・再度この手に・集まれ」

「な、治った?。」

「さて、用事が済んだから帰るか。」

ガバッ

「じゃーな〜こっちの用事終わったら迎えに来るからな〜。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……相変わらずアイツは規格外だな、」

「……なんか規格外と言うか自分勝手と言うか、すごいセリカさんに似てますね。」

「…それに迎えに来るって言ってたけど、今度は何時になるんだろうな、セリカ。」

「…今年中だと良いな。」

 

 

セリカの言葉通り、セリカを輪廻が迎えに来たのは今年中だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




疑問や矛盾点が有りましたら、感想でお願いします。


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転スラ編



注意書き
作者の好きな物の詰め合セット
グロいかもしれぬ?
お食事中の人や、グロい表現が苦手な人は閲覧をお控えください。
感想下さい。
自分の知ってる原作と違うからって低評価押さないこと。
覇道神さん、何時も誤字脱字報告ありがとうございます。助かってます。






感想数100とか目指してみたい。


ある村。

 

「…スライムさん達に少し話があるの。」

そこには、たって歩いているシズエ(・・・・・・・・・・・)

「何だ?シズさん。」

シズエと似た顔の美少年(・・・・・・・・・・・)、鬼人と牙狼が居た。

「…あのね…今私は延命の薬を飲んでようやく生きてるの、だけどあと1年もすれば寿命を迎えるし、戦えば戦うほど寿命を削るの。」

「うん、それは聞いた、それがどうしたの?」

「…それでね、魔王に気をつけるのは当然何だけど……もし私が死んだ後にあの人が来たら直ぐに逃げて。」

「あの人?」

その場にいる全員が気になったこと。

「…多分スライムさんや、鬼人さんも1度は聞いたことがあるんじゃないかな?」

「それって…」

それにリムルは一つだけ心当たりがあった、それは暴風竜ヴェルドラと会った時に一度だけ聞いた、この世界に意図的にきた、人間?なのかは分からないがそんなのが居るらしいと、

「…そう、数々の世界を渡り、4体の竜種や覚醒魔王、かつての勇者やSSランク厄災級(ナトゥーアカタストローフェ)の魔物の力を持ってしても、瞬殺された(尚、殺されたのは厄災級だけの模様)と言われている者。」

ふう、とシズエは1泊置き、こういった。

「特SSランク、地獄級(ゲヘナ)、実際は魔物じゃないけど、それくらいの強さを持ってる。」

「あ、あれって本当だったの!?」←(ヴェルドラの冗談だと思ってた人)

「うん、本当だよ、私が当事者だからね、」

(しかもまさかのシズさんが当事者かよ!!)

「と、当事者と言うのはどういう事でしょうか?」

 

朱奈が、おずおずと言ったような雰囲気でシズエに質問する。

 

「…うん、数十年前の事なんだけど…」

 

そうするとシズエはゆっくりと自分の過去を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覚えている光景は、降り注ぐ炎。

 

 掴んでいた母親の手は、余りにも軽く。

 

 その先を見るのが、怖かった。

 

 近くで焼夷弾が炸裂し、辺りを火の海に変えている。

 

 どこへ逃げればいいのか?

 

 周囲を炎に囲まれて・・・。

 

 井沢静江は、絶望と共に途方に暮れる。

 

 その時、強烈な光が自分を包むのを感じた。

 

 

 

 ああ・・・、自分はここで死ぬのか・・・・・・。

 

 

 

 幼い彼女でも、理解出来た。

 

 当時、4歳。

 

 頼るべき親戚も無く、母親と二人暮らし。

 

 父親は戦争へ駆り出され、顔も覚えていなかった。

 

 幸せだとも、不幸だとも感じない。日々それが日常であり、そういうモノと受け止めるしか無かったのだから・・・。

 

 炎に包まれ死にゆく運命であった彼女に・・・、

 

 

 

"生きたいか? 生を望むならば、我が声に応えよ!"

 

 

 

 頭に声が響いた。

 

 生きたいか? だって? そんなの判らない。

 

 その問に応えるには、彼女は幼すぎた。

 

 だが、それでも・・・、自分を庇って手だけになってしまった母親を見て・・・・・・、生きたい! そう、思った。

 

 

 

《確認しました。召喚者の求めに応えます・・・成功しました》

 

 

 

 そして、炎に怯える事なく、生きたい!

 

 

 

《確認しました。エクストラスキル『炎熱操作』を獲得・・・成功しました》

 

 

 

 

 

 次に目覚めたのは、魔物の巣窟。

 

 目の前には、美しき"魔王"。

 

 長い金髪プラチナブロンドに、青い瞳。整った顔立ちに、切れ長の眼。

 

 透き通るように白い肌。

 

 それは、女性と見紛うばかりに美しい、美丈夫。

 

 レオン・クロムウェル。

 

 それは、人間の"魔王"。その二つ名は、"金髪の悪魔"。

 

 

 

「ああ・・・、また、失敗だ。」

 

 

 

 彼は、そう呟き、彼女への興味を失った。

 

 だからこそ、全身に大火傷を負い死にかけている彼女を殺す事はしなかった。

 

 どうでもいい存在であったから。

 

 彼女は、それが悔しかった。

 

 今でも思い出す。あの美しい、顔。そして、興味無さげに、見下された絶望を。

 

 あの時の彼女には、彼に縋るしか生きる術は無かったというのに。

 

 

 

 結局、彼女を助けたのは、魔王の気まぐれ。

 

それが、彼の気に食わなかったらしい。

 

「てめぇ、何してんだ?」

「な!?何でこんな所に覇王(リベリオン)が!?」

「そんなことはどうでもいい、何が失敗なんだと聞いてるんだ。」

「………」

「まァ、言えねぇならそれでもいい、だが、失敗したんだろ?ならそいつは貰ってもいいか?」

「……好きにすればいい。」

「助かるぜェ、」

 

「た、助けて…」

「アァ、…まてよ、こいつ炎に適性があるな、おい、何かねぇのか?」

「一応あるが…使えばいいのか?」

「ああ、ただのお荷物抱えるだけじゃ意味ねえからな。」

「……分かった」

 

そう言って、召喚術式"炎の巨人イフリート"を起動する。詠唱も行わず、容易く。

 

 召喚した炎の巨人イフリートに、無造作に命じる。

 

 

「お前に、肉体を授けよう。使いこなせ」

「いや逆だよ、そいつに肉体与えるんじゃなくて、アイツにそいつの力を与えろよ。」

「そうか、だがそれならそっちで対応出来るんじゃないか?」

「チッ、まァいいか、創造『抗魔の仮面』」

 

「……貸しだ、1度だけなら助けてやる。」

「……そうか、」

 

その日から私はこの仮面をつけて過ごすことになった。

 

その日から私はその人に育てられた。

そして、この人はやる事全てが規格外だった。

 

ある日には、

 

「そうだ、竜を倒しに行こう。」

「…え?」

 

 

「お前が暴風竜ヴェルドラか?」

(そうだ、人間如きが我に何の用だ?)

「そこから出してやろうか?どうせ勇者の『無限牢獄』だろ?」

(ほう?面白いことを抜かすな、人間?)

「ただし、そこを出たら俺と戦えや。」

(良いだろう。)

「じゃ、早速。」

ドゴォォォォォオォォォォォォォォオン

バリィィィィィィィィィィイン

 

ぶん殴ったら割れた。

 

それぐらいの表現しか出来ないほどの威力。

 

「 」

「ほらやるぞ、………………またワンパンで終わった」

 

ヴェルドラは、彼のパンチの余波で気絶したらしい。

 

「もういいや、めんどくさいからもう一回無限牢獄貼っとこ。」

 

 

 

厄災級(ナトゥーアカタストローフェ)が現れて、人類が決戦をしている時にも。

 

 

 

「てめぇ、人の進路の邪魔してんじゃねぇよ。」

そう言って1発で厄災級を殴り殺した。

ドゴォォォォォオォォォォォォォォオン

 

「ったく、通行の邪魔っだっつーの。」

 

 

魔王ミリムが噂を聞きつけてやってきた時も。

 

 

「お前が覇王(リベリオン)だな!?強そうだから挨拶に来たのだ!」

「必殺じゃないけど必殺、デコピン。」

バチコォオォォォォオオォン。

ミリムは放物線を描きながら元いた場所へ飛んで行く、

「ぎゃーー」

流石に気になったので聞いてみた。

「あの、これでいいの?」

「アァ、めんどい奴はぶっ飛ばすに限る、」

 

そうやって言って吹き飛ばした。

 

「ところで話変わるんですけど剣の稽古付けてくれませんか?」

「いいぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…と言うような事があったの。」

「マジか、やばいな。でもそれだけ聞くとめっちゃいい人に聞こえるんだけど、何か悪いことでもしたの?」

「………あの人はね、簡単に殺すの。」

「…え?」

「…邪魔になるものなら殺す。魔物も、人間も……………それを私が怯えちやったからあの人は離れていったんだよ。」

「……詳しく聞かせてもらえるか?」

「……いいよ、でも話すのは嫌だから直接私の記憶を見て?」

「……分かった、ベニマルやシオン達にも見せてもいいか?」

「……良いけど、やておいた方がいいよ?」

 

「いえ、リムル様が見ると言うなら、俺達も見ます。」

「……そう…でも覚悟しておいてね?」

「…ああ、分かった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私があの人から離れることになった原因は、魔王レオンの救援に行った時。

 

 

 

 

 既に魔王は逃げている。この城は放棄されたのだ。

 

コツンコツンコツン・・・。

 

城に、静かな音が木霊した。

 

 やって来たのは、"勇者"。

 

 長い黒髪を後頭部で一纏めにし、身を包むのは、濃黒に統一された軽装備。

 

 魔王に劣らぬ、美しい美貌。違う点は、"勇者"が少女であった事。

 

 私は見た瞬間に、直感した。

 

 

 

 勝てない! と。

 

「…お前が"勇者"か。」

「…貴方が魔王?」

「いや、何か周りからは覇王とか言われてんだけど………まァ、それは別にどうでもいい。じゃァ、おっぱじめっか!」

 

戦闘は直ぐに終わった。

 

ドガッ

「アガッ」

彼が勇者の後頭部を殴り、戦闘不能にしたのだ。

 

「終わったし帰るか…」

「………うぅん。」

「お?今のを食らって意識を保てるとは、さすがは勇者様と言ったところか。」

しかし、流石は勇者、戦闘不能になっても意識は保ってる様だ……それが惨状を作り上げるとも知らずに。

 

「「「勇者様!」」」

「き、来てはダメ!」

下の階で待機していた冒険者や騎士達が上がってきたのだ。

「ほう、面白そうじゃねえか。勇者の意識もある事だしもっと面白い物を見せてやるよォ。」

 

「お前が勇者様を!お前ら、やるぞ!」

「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」

「だ…ダメ…そいつと戦っちゃ…ダメ。」

「もう大丈夫ですぜ!勇者様!」

そう言って勇者に近づいたのは今回の魔王討伐に協力を要請した国の騎士団長である。

「ダメ…直ぐに逃げて!…」

「安心してください、これでも腕の経つものを連れてきま

グシャッ

そこまで言ったところでどこかの国の騎士団長の頭は潰れた。

「え?」

早く撤退させようと伸ばした手は、彼の血と脳髄で濡れていた。

「どうだ?目の前で人が死ぬ光景はよォ、特に、敵に自分の仲間を殺されるのは慣れてねえんじゃねぇか?お前は勇者だから仲間が殺されるのも中々なかったようだしな。」

「…あ…あ…あ…」

「カクテキ団長ぉぉぉぉお!」

そんな中、彼、カクテキ団長(3秒で作った名前)の名前を叫びながらあの人に突撃しているのは、同じ騎士団の副団長の様だ。

「お、ちょうどいいな、おい勇者様よォ、今度はちゃんとゆっくり見せてやるから、さっきみたいに惚けてないで目に刻めよ?さっきは砕いただけだが、今度は四肢も潰してやるよォ、なかなか動揺しねえからな、それぐらしねえと、なァ?勇者サマ?」

あの人はそう言って突撃してきた副団長(名前不明)を片手で捕まえると、まず右腕を握った。

「ここをこう持って回すと」

ブチブチブチブチブチ

「嫌ァァァァァァァァァァァァ」

ブチリ!

「腕がねじ切れる。」

ボトッ

そんな音を立てながら勇者の前に落ちる副団長の右腕。

「え?…あ…え?」

勇者の眼は既に焦点が合ってなく、顔を蒼白の色に変えている。

「…シズエ、ここからは出来ればみるな。」

「え?…は、はい。」

見ていた所だけ。

「次はどこがいいよ勇者サマ?俺のオススメは右の肺から、左の肺にかけて内蔵を掻き回すか、脳髄を混ぜるのもオススメだぜ?」

そこからは眼を離そうにも離せなかった。

グチャッゴキっバキッグチャグチャッ

脚を握り潰し、腕を複雑骨折させ、足の関節を外し、右の肺を背中から刀で刺し、wを描くかのように刺したまま掻き回し、最後には心臓を…

 

 

「オェェェェェェェェェ」

リムルが吐き出した。

「リムル様!」

ベニマルやシオンは即座に袋を用意した。

「オェェェェェェェェェ」

朝食べたものが全て逆流した。

「ハァッ!ハァッ!ハァッ!」

「リムル様!大丈夫ですか!?」

「よ、予想と全然違った、ただ殺すのかと思ったら、並の拷問より100倍くらいやばい殺し方だった。うっ、思い出したらまた吐き気が。」

「袋はここに御座います、リムル様!」

「ありがと、シオン、……オェェェェェェェェェ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

三十分後

 

 

「…それにしても酷かったですね。」

べ「…あれは人間がやる事じゃない、あれで人間だとしたら、確実に狂ってるか、イカれてる。」

シオン「……シズエ様、続きを見てもよろしいでしょうか?」

「……いいよ、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勇者クロノアの精神は相当に追い込まれていた。HPで表すと、20000分の1位まで。

「…終わったか、」

ツカツカ。

「…シズエ、」

「!?」

この時のあの人の顔は忘れられない、血塗れで、狂人の様な笑みを浮かべていたのだから、

「…シズエ、」

「 」

「今の俺は……怖いか?」

「こ、怖くない…です。」

そう答えたら、あの人は、何か分かったような顔をした。

「……やはりお前にはこの(殺しと悪)の道は似合ってねえ、お前は多くの人間の英雄(正義)になるべきだな。」

「…嫌!私を置いていかないで!連れて行ってよぉ!」

「分かった!分かったから騒ぐな、別に置いていくわけじゃねぇ、これを渡しておく。」

そう言って手渡してきたものは、巾着のような小袋だった。

「…これは?」

「寿命を伸ばす薬だ、と言っても二、三年程度だけどな。」

「…そんなものをなぜ私に?」

「俺はこれからちよっと用事があるんだよ、こっちの世界だと100年くらいだけどな、だから其れをやる。それを飲めば2週間以内に迎えに来てやる。」

「…分かり、ました。絶対に迎えに来てくださいね?」

「あぁ、約束してやる。」

 

 

 

それから、彼女は勇者(メンタル完全復活まで1年かかった)に保護される事となった。

 

 "抗魔の仮面"で炎の巨人イフリートを押さえ込み、同時に、火傷の跡を隠す。

 

 全身をローブで隠し、勇者に付き従う。

 

 いつしか、"爆炎の支配者"の二つ名で呼ばれるようになっていた。

 

 だが、勇者は旅立った。彼女を残して・・・。

 

 その理由は判らない。おそらくは、勇者には勇者の、譲れぬ思いがあったのだろう。

 

 彼女にある、ソレと同様の。いつかは、彼女も旅立つつもりだ。

 

 

あの人についていける強さを手に入れるために。

 

 

 

 

 

「これだけ見ると、なんでシズさんがついて行こうとしたか全くわかんないんだけど?」

「……スライムさん、記憶っていうのは、全部消せないんだよ。」

「どういうことだ?」

「…いい思い出も、忘れたいほどに嫌な記憶も、全部消せないの、ベニマルさん達なら分かるんじゃないかな?」

「どういうことか全くわかんないだけど、ベニマルは心当たりあるの?」

「…ありますよ…里で騒いでいた頃の楽しい記憶もあります、ですが、その里がオーク達によって壊された、そんな忘れたい記憶もあります。そういうことでしょう?シズエさん。」

「…うん、そういう事だね……確かに今スライムさん達に見せた記憶はとても辛い……でもね?あの人と一緒に遊んだり、一緒にご飯を食べたり、稽古を付けてもらったり、笑いあったり。そんな記憶もあるの。……私はその記憶が全然忘れられない、だからきっと、ついて行こうとしたんだと思う。 」

「そういう事か…」

 

シュナ「…所でリムル様、お話は変わるんですが、シズさんが延命の薬を飲んだのはいつ頃なのですか?」

「ん?えーと確か、オークロードを倒したのが1週間前だろ?で、シュナ達に出会ったのが2週間前、シズさんが延命の薬を飲んだのは、シュナ達と会う少し前だから、だいたい二週間前になるな。」

「…という事は、薬を飲んでから2週間以内に来ると言っていた、薬を飲んで今日で2週間、と言う事は…来るのは今日!?」

「ご名答だな。」

「!?、誰だ!」

「今話題のあの人だよ、なァシズエ?迎えに来たぜ?」

「!!!! 輪廻さん!」

輪廻の登場によって、(,,◜ ω◝,,)と言う顔になったシズエであった。

 

 

 




描きたいこと特になし。

強いて言うなら感想が全くなくて、1人で「感想くれる人が……消えた?」とかやってる始末なので感想ください。

低評価は何処がダメか分からないのでちゃんと書いてください。

後更新だいぶ遅れてすいませぬ。

ちなみに次回は進撃の巨人編です。


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進撃の巨人編


こんばんわー

新しいのを書いてみましたー良かったら見てみてくださいねー


注意

眠い
もはや巨人が可哀想
砕け散り始める原作(進撃の巨人)
筆が進まなくて気付いたら別の作品に手を出してた。
チート要素有り。
色々と捏造
原キャラ一部死亡回避。


 

俺には分からなかった、ずっとそうだ…自分の力を信じても…信頼に足る仲間の力を信じても…結果は…やつを除いて誰にも分からなかった。

 

 

そう、やつを除いては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それにしても、アイツは勝手すぎると思う。

何が「用事あるからエルヴィンを団長にして壁外調査しとけ。」だ、て言うかそもそもあいつが同じ人間なのかすら怪しいと思うんだが。

 

そんなことを部屋で考えていると。

 

ガチャリ

「リヴァイ、どうしたんだ?最近はずっと何か考えてるじゃないか。」

「そうだぜ!最近の兄貴はずっと何かに思い悩んでるな。」

「……イザベル、ファーラン。」

「なんだ?またジュウゴヤ団長のことでも考えてたのか?」

「……まぁ、そんな所だ。」

「それより兄貴!エルヴィンが1週間後にまた壁外調査やるってよ!」

「…ああ、分かった。」

 

 

奴が居なければ、こうしてイザベルやファーランと喋ることすら出来なかったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

調査兵団執務室。

 

 

 

 

「…ふぅ、今回はエレンを連れての壁外調査だ、いくらリヴァイ達精鋭に任せていると言っても絶対では無い、あの人が入ればまた違ったのだろうが…」

そう私が愚痴っていると。

「なんだァ?今回はそこまで危険か?エルヴィン副団長兼団長代理」

「団長!?」

「二年ぶりだな。まぁ、俺にとっちゃ1日か二日位しかたってないようなもんだけどな。」

「…相変わらずの神出鬼没さですね…ですが丁度いい所に来られました。」

「どうした?壁外調査位なら久しぶりに指揮でも撮るが?」

 

指揮とか言ってるが、確実に私に任せて巨人を殺しに行くのだろう。

 

「ええ、それで今回は…」

 

 

 

 

「…なるほど、トロスト区崩壊に奪還に、知性を持つ巨人、そいつの監視のための特別作戦班の結成…か…俺がいない間にだいぶ変わったな。それで今回の作戦が組み込まれたわけか、」

「ええ、ぜひ団長には戦場で猛威を振るって貰いたいのです。」

「…猛威ってお前な…まァいい、それで?日程はいつだ」

「1週間後に出発します。」

 

「1週間か…リヴァイ達に会っておくか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兵長、団長に関する情報とかないんですか?私たちは1度もあったことがないんですが?」

「…………討伐数2583体、討伐補佐3体。剣1本のみで約400体の巨人を討伐。50年前までは分隊長、三十年前までは兵士長、それ以降は現在まで調査兵団団長。

……これがあいつの今までの経歴だ。」

聞いてきたペトラに俺がそう返してやると、

「 」

固まっていた。

 

まぁ、無理もないだろう。

何せ、並の兵士では一体討伐するのにも必ず犠牲が出ると言われている巨人を四桁も倒しているからな。

それにしても、ヤツは絶対に頭おかしいと思う。

今の人類最強と言われている俺ですら、巨人の討伐数は3桁だ、いい意味出だが絶対に頭おかしいと、俺は思う。

 

「…へ、兵長、う、後ろ」

「…後ろがどうかしたのか?」

ペトラが指を振るわせながらそういった。

そこにたっていたのは…

「誰が頭おかしいって?ァ?言ってみろ身長が160cmから一向に伸びねえヤツ。」

「ッ!」

その声が聞こえた瞬間に、俺は常に隠し持っているナイフを懐から取りだし、後ろの何者かに刺そうとした、が。

 

シュトッ

「相変わらず物騒な挨拶だな?リヴァイ。まぁ、元はと言えば俺がアイツに教えたことだが…」

そう言って軽々と俺のナイフを2つの指で挟んだのは、

「…来てなら言え、リンネ」

「オイオイ、こう言う対外的な時は団長と言えといつも言ってるだろうが。」

調査兵団現団長、ジュウゴヤ・リンネだ、

「…それよりリンネ、ここに来たのはエレンの偵察のためか?」

「まァ、そんな所だ……で?問題の巨人とそのお仲間さんは?」

「…仲間は今は居ないが、エレンなら地下にいるぞ。巨人化されても大丈夫なようにな。」

「会いに行ってみっか。」

シュンっ

「………色々と規格外すぎます。」

「………巨人を殺してる時はもっとやべえぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……リヴァイ、仲間から信頼されているなら、その信頼に答えろ、そして、悔いのない答えを掴め、選ばせるな、掴め。」

 

 

この助言が無ければ、俺はイザベルやファーラン、ペトラ達を死なせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在公開可能な情報

 

輪廻が調査兵団団長になって追加された規則がある。

 

・原則として就寝時以外は常に立体機動装置を装備し、就寝時でも個人の保管庫に置いておくこと。

・班長クラス以上はガス、刃の予備は必ず持っていくこと。

・上官命令に背いたものは1週間地下牢で鎖に繋げて置くこと。

 

 

現在公開可能な情報終わり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして?どうして私の体は動かないの?傷の痛み?いいえ違う、あの人に傷を誤魔化して戦うことも教えて貰った。ならばなぜ?何故?何故

「ハンネスさぁぁぁん!」

何故ハンネスさんが巨人に食われそうになっているのに私の体は動かないの?何故?何故?

「うっ、頭が!………」

また、まただ、また、始めないと(・・・・・)

「ハンネスぁぁぁぁん!!」

ああ、ハンネスさんが食われる、もう、始めないと(・・・・・)

「ボケっとすんな!ミカサ!俺の教えも忘れたか!」

「リンネさん?」

「ええい!邪魔くせえなァ!て、オメエ、ハンネス、食われかけてんじゃねえかよ!退けくそ巨人野郎が!」

 

あの人…調査兵団団長、リンネさんが立体機動装置を使い、巨人の顔付近まで来ると、

 

ドゴォォォォォオォォォォォォォォオン

巨人の顔を殴り飛ばした。

 

「リンネさん!」

「ミカサ、ハンネスを頼む、俺は巨人共(奴ら)を殺しに行ってくる。」

「了解しました。」

「頼んだぞ。」

ズッダァァァァァァァァァァァン

リンネさんが踏み抜いた所から半径50メートル程のクレーターが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「躊躇うな!迷わず殺せ!」

「殺すのを躊躇したら自分が死ぬぞ!」

「ファーラン分隊長とイザベル分隊長!」

「兄貴か団長が来るまで持ちこたえなければ死ぬぞ!」

「ッ!ハイッ!」

「ミカサ!?」

「イライラするぜェ、なんだ?このゴミ共はこれでもケニーの隊なのかァ?」ドゥルウィンガシャンカシューズッシャァァ

 

ズバズハズハズバ

 

容赦なく敵の体を切り刻んでいく団長には最早恐怖するしか無かった。

 

 

 

「ようケニー、久しぶりだなァ?」

「おーっとこれはいきなり詰んだなお前が相手じゃどう足掻いても勝てるわけねえな、なぁ?師匠?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






感想くだせえ。

Twitterも始めてみた
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第四章
第十九話 争いの始まり


湯たんぽです。遅くなってすんませんです。
あまり時間が取れなかったのと、他のやつ書いてました。(白状)

良かったら見てみてくださいね。

神の業を継ぎし者
https://syosetu.org/novel/222038
神の業を継いだ(継がされた)者の物語。

鬼の頂点に立つもの(予告編)
https://syosetu.org/novel/223638

もし、鬼の頂点が無惨では無かったら。
そう言う、もしも、の物語の前のお話。

Twitter
https://syosetu.org/?mode=url_jump&url=https%3A%2F%2Ftwitter.com%2Fn28e4GrACABKckD
気軽にフォローしてください。(ツイートに作品の伏線が貼られることもあるかもです。)




 

 

 

 

 

 

エリセンと言う街は海の町である。

何せ大陸に回る海鮮の八割から九割がこのエリセンの街から出ているのだ。

それに大変とても美しい街でもある。

 

「じゃぁそろそろ決着を付けようじゃないか!」

 

……美しい街なのである。

 

「…望むところ」

 

……………美しい街なのである

 

「むしろ倒す。」

 

…………………………美しい、街なのである

 

「「「殺す!」」」

 

………………………………先程から鳴り響く怒声等が聞こえなければの話であるが…………

 

 

「……私は輪廻と沢山 愛し(意味深)あった、だから正妻は私」

「……ん?私は輪廻と二百年一緒にいたが?ん?」

バチバチバチバチ

「な、何おう!!ミレディたんだってちゃんと輪廻君に愛されてるもんね!ねえシアちゃん!」

「わ、私だって!!輪廻さんに処女を貰ってもらいました!!」

ヒュルルルルル

シアが胸を張って言い張った言葉にその場が凍り付く。

聴こえるのは……

 

「あばよ、残念ウサギ」

 

天を拝むハジメの声と

 

「短い間だったけど残念だった。南無阿弥陀仏」

手を合わせる清水のお経

 

「…カップ焼きそばって意外と美味ぇんだよな……。」

 

何故かカップ焼きそばを食べる輪廻の賞賛の声であった。

 

 

「ん?」

「ん?」

「あ?」

 

ビリビリと空間が揺れるような錯覚を受ける妖夢達。既に人外の域に達しているのにもかかわらず、ガクブル状態である。

 

ハジメのため息が増える。

 

 

「……はぁ〜…どうすんだよこれ、そもそも主は主で何カップ焼きそば食ってんだよ、いや別に焼きそば食うのがだめな訳じゃないが、今の惨状をどうにかしてから焼きそば食って欲しかった………まぁ、従者である俺が主人に逆らえるわけが無いんだがな…………はぁ」

 

ハジメの溜息は増えるばかりである。

 

「ハジメ、大丈夫?何なら膝枕して上げようか?て言うか本当に何でも焼きそば食べてんの……?」

「……優花〜!」

 

ハジメは優花を抱き締めた。

 

「ちょ、ハジメ!さすがに恥ずかしいって!」

「あぁ…恥ずかしがる優花も可愛い……もう俺の癒しはお前だけだ。」

「ちょっ、ハジメ〜!?」

 

……ハジメ………お前も相当疲れてるんだな……だが、彼女持ちは許さん!!リア充撲滅委員会精神汚染係係長の私の必殺技を喰らえ!!( ゚Д゚)オラァァァァァァァァァァァァァ!!(っ'-')╮=͟͟͞͞ =͟͟͞͞( ・O・)ノ⌒●~* ポイ!(汚染爆弾)  (๑❛ᴗ❛๑)♡(๑•᎑•๑)

 

え?清水?わー我が君凄いなー俺も彼女欲しいなー、と思ってます。

 

ドカーン   

 

 

ホワンホワンホワン

 

 

はい、回想入りまーす。

 

 

 

そもそも、この騒ぎの発端は輪廻が二人人の女性を連れてきた事だ。

輪廻は、連れて行くと言った(過去編参照)者達を迎えに行こうとしたのだが…

 

 

 

「やー!パパもママに会いに行くの!」

「俺もそうしたい所なんだが……用事があるんだよ。」

「むぅ…」

 

ミュウがママに会うのは一緒じゃないと嫌!と、駄々をこねていたので、輪廻も行くに行けない状況となってしまったのだった。

 

「な?ミュウ、頼む。」

「…むぅ…」

 

双方の睨み合いが続く

 

「………」

「………」

 

無言の睨み合いが続く

 

「……ぶっちゃけ主止められるのはミュウだけだよな。」

 

今更すぎてポン酢出るわ

 

「………」

「………」

 

無言の睨(略

 

「…………はぁ……しゃあねぇ、先に会いに行ってからにするか……少し遅れそうだが……全力で飛べば問題ないか………」

 

しかし、とうとう輪廻が根負けしたようだ。

 

「パパ、ママに会いに行くの?」

「……あァ、長くは居られないが取り敢えず会いに行くぞ。」

「やった、なの!」

 

 

 

 

 

 

そして一悶着合ったものの、ミュウが家に案内している時だった。

 

通りの先で騒ぎが聞こえだした。若い女の声と、数人の男女の声だ。

 

「レミア、落ち着くんだ! その足じゃ無理だ!」

 

「そうだよ、レミアちゃん。ミュウちゃんならちゃんと連れてくるから!」

 

「いやよ! ミュウが帰ってきたのでしょう!? なら、私が行かないと! 迎えに行ってあげないと!」

 

 

 

 どうやら、家を飛び出そうとしている女性を数人の男女が抑えているようである。おそらくは、知り合いがミュウの帰還を母親に伝えたのだろう。

 

 

 

 そのレミアと呼ばれた女性の必死な声が響くと、ミュウが顔をパァア.*・゚(*º∀º*).゚・*.! と輝かせた。そして、玄関口で倒れ込んでいる二十代半ば程の女性に向かって、精一杯大きな声で呼びかけながら駆け出した。

 

「ママーー!!」

 

「ッ!?ミュウ!?ミュウ!!」

 

 

 

 ミュウは、ステテテテー! と勢いよく走り、玄関先で両足を揃えて投げ出し崩れ落ちている女性――母親であるレミアの胸元へ満面の笑顔で飛び込んだ。

 

 

 

 もう二度と離れないというように固く抱きしめ合う母娘の姿に、周囲の人々が温かな眼差しを向けている。

 

 

 

 レミアは、何度も何度もミュウに「ごめんなさい」と繰り返していた。それは、目を離してしまったことか、それとも迎えに行ってあげられなかったことか、あるいはその両方か。

 

 

 

 娘が無事だった事に対する安堵と守れなかった事に対する不甲斐なさにポロポロと涙をこぼすレミアに、ミュウは心配そうな眼差しを向けながら、その頭を優しく撫でた。

 

 

 

「大丈夫なの。ママ、ミュウはここにいるの。だから、大丈夫なの」

 

「ミュウ……」

 

 

 

 まさか、まだ四歳の娘に慰められるとは思わず、レミアは涙で滲む瞳をまん丸に見開いて、ミュウを見つめた。

 

 

 

 ミュウは、真っ直ぐレミアを見つめており、その瞳には確かに、レミアを気遣う気持ちが宿っていた。攫われる前は、人一倍甘えん坊で寂しがり屋だった娘が、自分の方が遥かに辛い思いをしたはずなのに、再会して直ぐに自分のことより母親に心を砕いている。

 

 

 

 驚いて思わずマジマジとミュウを見つめるレミアに、ミュウは、ニッコリと笑うと、今度は自分からレミアを抱きしめた。体に、あるいは心に酷い傷でも負っているのではないかと眠れぬ夜を過ごしながら、自分は心配の余り心を病みかけていたというのに、娘はむしろ成長して帰って来たように見える。

 

 

 

 その事実に、レミアは、つい苦笑いをこぼした。肩の力が抜け、涙も止まり、その瞳には、ただただ娘への愛おしさが宿っている。

 

 

 

 再び抱きしめ合ったミュウとレミアだったが、突如、ミュウが悲鳴じみた声を上げた。

 

 

 

「ママ!あし!どうしたの!けがしたの!?いたいの!?」

 

 

 

 どうやら、肩越しにレミアの足の状態に気がついたらしい。彼女のロングスカートから覗いている両足は、包帯でぐるぐる巻きにされており、痛々しい有様だった。

 

 

 

 ミュウは、レミアとはぐれた際に攫われたと言っていたが、海人族側からすれば目撃者がいないなら誘拐とは断定できないはずであり、彼等がそう断言していたのは、レミアが実際に犯人と遭遇したからなのだ。

 

 

 

 レミアは、はぐれたミュウを探している時に、海岸の近くで砂浜の足跡を消している怪しげな男達を発見した。嫌な予感がしたものの、取り敢えず娘を知らないか尋ねようと近付いたところ……男は「しまった」という表情をして、いきなり詠唱を始めたらしい。

 

 

 

 レミアは、ミュウがいなくなったことに彼等が関与していると確信し、何とかミュウを取り返そうと、足跡の続いている方向へ走り出そうとした。

 

 

 

 しかし、もう一人の男に殴りつけられ転倒し、そこへ追い打ちを掛けるように炎弾が放たれた。幸い、何とか上半身への直撃は避けたものの足に被弾し、そのまま衝撃で吹き飛ばされ海へと落ちた。レミアは、痛みと衝撃で気を失い、気が付けば帰りの遅いレミア達を捜索しに来た自警団の人達に助けられていたのだ。

 

 

 

 一命は取り留めたものの、時間が経っていたこともあり、レミアの足は神経をやられていて、もう歩くことも今までのように泳ぐことも出来ない状態になってしまった。当然、娘を探しに行こうとしたレミアだが、そんな足では捜索など出来るはずもなく、結局、自警団と王国に任せるしかなかった。

 

 

 

 そんな事情があり、レミアは現在、立っていることもままならない状態なのである。

 

 

 

 レミアは、これ以上、娘に心配ばかりかけられないと笑顔を見せて、ミュウと同じように「大丈夫」と伝えようとした。しかし、それより早く、ミュウは、この世でもっとも頼りにしている〝パパ〟に助けを求めた。

 

 

 

「パパぁ! ママを助けて! ママの足が痛いの!」

 

「えっ!? ミ、ミュウ? いま、なんて……」

 

「パパ! はやくぅ!」

 

「あら? あらら? やっぱり、パパって言ったの? ミュウ、パパって?」

 

 

 

 混乱し頭上に大量の〝?〟を浮かべるレミア。周囲の人々もザワザワと騒ぎ出した。あちこちから「なん、だと」「レミアが……再婚?そんなBANANA」「レミアちゃんにも、ようやく次の春が来たのね! おめでたいわ!」「ウソだろ? 誰か、嘘だと言ってくれ……俺のレミアさんが……」「パパ…だと!!俺のことか!?」「違う」「きっとクッ○ングパパみたいな芸名とかそんな感じのやつだよ、うん、そうに違いない」「おい、緊急集会だ! レミアさんとミュウちゃんを温かく見守る会のメンバー全員に通達しろ! こりゃあ、荒れるぞ!」など、色々危ない発言が飛び交っている。

 

 

 

 どうやら、レミアとミュウはかなり人気のある母娘のようだ。レミアはまだ二十代半ばと若く、今はかなりやつれてしまっているが、ミュウによく似た整った顔立ちをしている。復調すればおっとり系の美人として人目を惹くだろうことは容易く想像できるので、人気があるのも頷ける。

 

 

 

刻一刻と大きくなる喧騒に、輪廻は「行きたくないでござる、絶対に行きたくないでござる!」

と、某どっかの抜刀斎(コラ)みたいになっていた。

 

とは言え、レミアも怪我が酷いし、何よりミュウにも呼ばれているため行くしかないのだ。

 

「……失礼するぜ。」

「え? ッ!? あらら?」

 

 

 

 輪廻は、ヒョイと全く重さを感じさせずにレミアをお姫様抱っこすると、ミュウに先導してもらってレミアを家の中に運び入れた。レミアを抱き上げたことに、背後で悲鳴と怒号が上がっていたが、無視ですよ無視!。当のレミアは、突然、抱き上げられたことに目を白黒させている。

 

家の中に入ると、リビングのソファーが目に入ったので、そこへレミアをそっと下ろした。そして、ソファーに座り輪廻のことを目をぱちくりさせながら見つめるレミアの前にかしずき、診察をした。(透き通る世界)

 

 

「……………」

「…あの…」

「……………」

「……どうなんでしょう?……」

「…右の骨軟骨損傷とアキレス腱断裂、左足首の捻挫、神経の異常だな、以上だ。」

 

そう淡々と告げるが、何言ってるか分からないですね、はい。

 

「パパ、ママの足は治らないの?」

ミュウが心配そうにレミアの足の怪我が治るのかを聞くと…

「…神水でも使えばすぐに治る。」

「じゃあ!」

「…だがそれとは別に手術をしなければならないな。」

「なんでなの?」

「ミュウにはまだ早い話だ。」

「じゃあどういう事ですか?」

 

ミュウには分からないと言うので、清水が代表として聞いたのだが。

 

「…簡単に言えば神経異常だ。」

「神経異常、ですか?」

「あぁ、今は神水でも飲ませればすぐに回復するだろうが、後になって足に重い障害が出てくる。それを無くすための手術だ。」

「…主の力で治すことは出来ないんですか?」

「……出来ることにはできるんだが、何しろこんな怪我は能力で治したことがないからな……確証がない…確実に治すならあいつが居た方が良いんだがな……今はなんか用事有るみたいだが……まァ、そんなのは関係ねェ……実際に呼ぶことは出来ないが、運命があるか…」

 

何やら輪廻がブツブツ言い出したので、見かねたユエがこっちの世界へ引き戻す。

 

「…えいっ」

 

なんと、ユエは輪廻の体に抱きついたのだ!

 

「…ん?どうしたユエ。」

「…輪廻がまたブツブツ言い出したから、抱きついた。」

「…理屈になっとらんが、すまんな。」

「…ん、夫を支えるのも妻の役目!」

 

むん!と小さめの胸を張って、支えるのは自分だ!と暗に言っているのだ。

だが、輪廻の顔色は優れない

「………やはり精神体が安定しない、この身体も相当ガタが来てやがる、そろそろ一度死ぬか乗り換えるかしなきゃ、存在が無くなるな……だからと言って自分で殺るのは確証がない……それにアレ()も暫くやってねぇ……そろそろやばいな

「…?どうしたの?輪廻?」

 

………アイツを呼ぶしかないか……一回死ぬことになるが、どうせ不老不死だ。1度この肉体から霊魂を離さなければならない……どちらにしろ一度死ぬしかないか……

「ねえ、輪廻!一度死ぬってどういう事!?」

とうとう輪廻の声が聞こえたユエ焦った様にどういう事なのかと聞くが、輪廻はそれすらも聴こえていない様子だ。

 

「……運命決定、死亡。」

「輪廻!?どういう事なの!?」

「……そこに居ろ。」

輪廻はそう言うと、ユエをポイッとシアの方へ投げたのだ。咄嗟にシアがユエを受け取った為に、ユエに怪我は無いが、恐らくは。

 

「…神の呼吸…」

 

この瞬間に起きる出来事には

 

「…ようやくお出ましか…」

「…三式…」

 

干渉することは

 

「…久しぶりだな…」

「…(終わり)ノ型」

「…蓮夜…」

 

「……伊邪那岐……」

 

出来ない。

 

 




感想、どしどしくだせえ。

おねげえしますだ。

あと評価も。


※超重要なお知らせ→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=239594&uid=294968


(2020/07/26 22:30:39)今更読み返して思ったけど、私って何書いてるんですか?(困惑)


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第二十話 どうしてこうなった………

メインタイトルからも分かる通り一時的に更新を休止させて頂きます。

詳しい理由などはこちらに書いてありますので、一度お目を通してください。→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=239594&uid=294968




本編に関してですが、中途半端に終わったために、おそらく書き直すと思われます。





闘技場のような所で爆音が響き渡る。

 

「蒼龍・雷龍・五天龍!蒼天・緋蒼・禍天!」

 

「黒魔改、イクスティンクション・レイ!」

 

「業火・爆炎ノ太刀・零式!」

 

「でりゃぁぁぁぁあああ!!」(ハンマーをぶん回す音と共に)

 

「黒天球!!」

 

「竜化!」

 

「死霊術・死海文書・海淵」

 

「八重樫流抜刀術・奥義 円骨!」

 

「スペルカード発動 彼岸剣「地獄極楽滅多斬り」」

 

「スペルカード発動 神槍『スピア・ザ・グングニル』」

 

「スペルカード発動

禁忌「クランベリートラップ」

禁忌「レーヴァテイン」

禁忌「フォーオブアカインド」

禁忌「カゴメカゴメ」

禁忌「恋の迷路」

禁弾「スターボウブレイク」

禁弾「カタディオプトリック」

禁弾「過去を刻む時計」

秘弾「そして誰もいなくなるか?」

QED「495年の波紋」 」

 

「スペルカード発動 咒符「上海人形」」

 

「スペルカード発動 符の壱「連続殺人ドール」」

 

「スペルカード発動 想起「二重黒死蝶」」

 

ドコドコドッカーンドシャーンドキャーンドッカーン

 

 

 

「ハジメ、清水、今日の飯は何がいい?」

「そうですね…今日は和食の気分なので寿司と天ぷらとすき焼きなんてどうでしょうか?」

「同じく」

「それで行くか。」

 

ここに現実逃避している者が2名、普通に会話としてやっているのが一名。

 

「いや、逃げたいのはわかるけど現実逃避しないで!?」

「何を言ってるんだ優花?現実逃避する必要なんてないじゃないか、ハハハ」

「そうだぞ園部ー何で現実逃避なんてする必要があるんだよー?」

 

(´▽`*)アハハハハ〜と言う感じで笑う二人に優花は「ダメだこりゃ」という諦めモードに入っていた。

 

「…何でこうなったんだっけ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前回のあらすじ

 

輪廻君が死んだ。

 

 

 

 

「…蓮夜…」

そういった直後には既に胴体と泣き別れしていた。

「はぁ〜いきなり呼び出されたと思ったら殺せってなんだよ…パワハラにも程があんだろ。」

「輪…廻」

それだけ言ってガックリと項垂れるユエにその男は声を掛ける。

「………?……輪廻とは一体誰だ?」

 

「…お前が殺した相手!」

 

「そうか…また改名した様だな兄さん(・・・)は……。」

 

「…兄…さん…?」

「……………その様子だとまだ本名すら知らされていないのか…まぁ、その程度ってことじゃないのか?」

「ッ!黙れ!」

「とうとう年下にも見下され始めたか…」

「お前は私より年下のはず。」

「と言う事はお前は吸血鬼か何かか…隣に顔見知りもいる事だしな。だが、お前が何百歳だろうと関係はない、俺が何万歳だと思ってるんだ。」

 

「万!?」

 

男が言ったその数字に一同は驚く。

 

「それって…輪廻より歳上じゃないの?」

 

ユエが放った質問に男は笑った

 

「……俺が兄さんより年上等冗談でも面白くないぞ、吸血鬼。……あの人は約300000000(3億)年生きている。」

「え?だって輪廻は2500年だって…」

「あぁ、それはその肉体の年齢だ。あの人は何度も変えているからな…本来はそう何度も変えなくてもいいんだが、煙草やら何やらしてるからな…まぁ、俺はそろそろ帰る。」

 

唐突に帰ると宣言した男に、ユエは

 

「待て!!」

 

と引き止めたが、全く効果はなく。

 

「待てと言われて待つやつが何処にいる?後、兄さんはそろそろ復活するから、見た目変わってるけど中身は同じだからな、」

 

そう言って空間を裂き、何処かに行ってしまった。

 

「行った…」

 

 

 

「…結局アイツは誰だったんだ?」

 

その疑問の答えは予想外の所から聞こえた。

 

「…部下であり友人だった者だ。」

「主!?」

「我が君!!」

「誰!?」

 

その声は輪廻が死んだ場所だった。そして、そこに立っていたのは…

 

「誰って…俺に決まっているだろう。」

 

蒼く腰まで届きそうな長い髪、紅と金のオッドアイ、190cmはありそうな身長、クールで冷静な声音、鷹のような鋭い目付き。と姿はだいぶ変わっているが、ハジメと清水にはこれが自分の主だと言うことが分かった、雰囲気、気配、佇まい、そして話し方。これらの事からハジメ達は分かっていた。

 

 

「もしかして、輪廻!?」

「…そうだが?」

 

やはりユエ達は外見や喋り方が違い過ぎて分からなかったらしい。

 

「ず、随分変わりましたね輪廻さん。」

「そ、そうだね、かなり変わったね輪廻君。」

 

変わりすぎて最初に見抜けなかった事に対して動揺しているとは口が裂けても言えないシアとミレディだった。

 

 

「じゃが纏う雰囲気や殺気、魔力は変わっておらぬ、何よりあの鋭い眼光、アレは主様にしか出来ない目付きじゃの。」

 

しかしティオは違った様で、輪廻の気配などで察していた様だ。

 

 

 

 

そして、これがきっかけで二つの戦争が起きるとは誰もつゆ知らぬ事であった。

 

 

 

きっかけは、霊夢と魔理沙の一言であった。

 

「「あんた(お前)……なんで生きてるの(んだ)!?」」

 

 

その質問は、この場では正しかったが、霊夢達には別の意図がある様だった。

 

 

 

「…なんでと言いますと?この人なら死んでも蘇えってくるでしょう?。」

 

 

と、怪訝そうに聞くさとりだが、

 

 

「そんなの当然じゃない、そいつ不老不死何だから、ってそう言う事じゃなくて、なんで殺して封印までしてたのに生きてんの?って話。」

 

 

その言葉はさとり達に大きな衝撃を与えた。

 

 

「こ、殺して封印した?…どういうことですか霊夢さん!私達はそんなこと知りませんよ(・・・・・・)!?」

 

 

そして今度は霊夢と魔理沙が驚く番だった。

 

 

「え?知らない?ちょ、ちょっと待って、知らないってコイツは幻想郷を二千年にも渡って破壊しようとした、厄災なのよ!?どうしてあんた達、覚えてないのよ!?」

 

 

 

 

 

 

 




お休みなさい。( ˘ᵕ‪˘ )⋆。˚✩



メインで書くことになった小説→https://syosetu.org/?mode=write_novel_submit_view&nid=217194


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第二十一話 鏡花水月


(」・ω・)オッス(」・ω・)オッスゲームの周回死ぬほどしてる合間にこの小説書いてた湯たんぽどす。


他のやつも書いてたけど、アンケートだとこっちを更新しろとの声が大きかったので、とりまこの話を投下した次第でござるよ。



でも死ぬ程周回して優勝回数二百八十五回ってどうなんだ?


取り敢えず本編度ぞ



あ、本編に関してですがあと二三話したら話をさすがに進めたいと思っておりますが、八月上旬から中旬は、一二回更新があれば良い程度にでも思っておいてください

(取り敢えず今後は一月に全作品一回更新を目指します。)





 

 

街に響き渡るは二人の少女の声。

 

 

「さとりやレミリア達が覚えてないってどういう事なのか説明しなさいよ!!」

 

一人は巫女の少女

 

 

「アリス達がお前に対して何の疑問も持たずにそっちに居るのかも教えてもらうんだぜ!!」

 

一人は魔法使いの少女

 

 

 

「ほぅ……やはり貴様らは自らの意思のみで脱したか……」

 

対するは、嘗てその地に名を馳せた大妖怪と呼ばれしもの達すらも葬り去り、今と成りしは世の全てを司りし男。

 

 

 

 

 

しかし、彼等のぶつかり合いはまだまだ先の事であろう。

 

 

 

 

 

 

「「さあ!教えてもらうわよ!(だぜ!)」」

 

 

二人はそれぞれの得物を男に向ける。が、対する男は全く動じず、訳の分からない事を言い始めた(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

「お前達は、俺を殺しても良いのか?(・・・・・・・・・・)

 

 

 

二人はその言葉に違和感を感じたが、それを誤魔化すかのように声を上げた。

 

 

 

「ッ!行くわよ魔理沙!合わせなさい!」

 

「ああ!!言われなくても分かってるんだぜ!」

 

 

そして、空を覆うかのような弾幕が展開され、宙に浮いていた男の元へ音速と見間違う様な速度で打ち出されていった。

 

 

しかし、対する男はそれらの弾幕全てを手に持つ一振の日本刀を使い、洗礼された無駄のない動きで切り伏せてゆく。

 

 

それを見て埒が明かないと判断した2人は、スペルカードと呼ばれる、この世界でそれを振るえば敵を殺せるほどの威力を持つ 正に秘技と呼ばれるものを男に向かって打ち込み始めた。

 

 

「霊符『夢想封印』!」

 

「恋符『マスタースパーク』!!!」

 

 

七色の弾幕が、金色の熱線が、彼の元へと飛来する。

 

 

が、彼は来るそれらに対して刀を収め、何やら言葉を紡ぎ始めた。

 

 

 

「……千手の涯 届かざる闇の御手 映らざる天の射手 光を落とす道 火種を煽る風 集いて惑うな我が指を見よ 光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔 弓引く彼方 空を塗り潰し皎皎として消ゆ」

 

そして、彼が言葉を紡ぎ終わる頃には、彼の周りに数える事すらも躊躇ってしまうような数の弾幕が敷き詰められていた。

 

 

「破道の九十一 改 『千手皎天汰炮・空』」

 

彼の解放の言葉と共に解き放たれた弾幕達は、彼女らの所へ狙い狂わず向かって行く。

 

 

それを見た彼女…博麗霊夢の行動は早かった。迫り来る弾幕の余りの数の多さに惚けている親友(霊夢は認めないが)である霧雨魔理沙と自分に対し、今かけることが出来る最高の結界を張り巡らせ、迎え撃つ様に自分も弾幕を打ち始めたのだ。

 

 

「チッ!霊符『二重結界・双』!

霊符「夢想封印 散」

霊符「夢想封印 集」

夢符「二重結界」

霊符「夢想妙珠」

神霊「夢想封印」!魔理沙!何ぼさっとしてんのよ!さっさと撃ちまくりなさい!」

 

 

霊夢のその言葉にはっと我に帰った魔理沙は彼女に言われた通りに弾幕達を打ちまくった。

 

 

「クソッ!魔空「アステロイドベルト」

黒魔「イベントホライズン」

恋風「スターライトタイフーン」

恋心「ダブルスパーク」

光符「アースライトレイ」

光撃「シュート・ザ・ムーン」!!」

 

 

しばらく拮抗したかと思った弾幕は徐々に彼の弾幕が押され始めた。

 

 

「チッ!」

 

 

 

「今よ魔理沙!決めるわ!」

 

「ああ!!このまりちゃんに任しとくんだぜ!」

 

 

二人はそれを好機とみたのか、全力で霊力と魔力を貯めてスペルを唱えた。

 

 

 

 

「夢想転生!!」

 

「ファイナルスパーク!!!!」

 

 

 

 

 

…………余談だが、今の彼女達の全力のスペル。夢想転生とファイナルスパークが、直撃で決まれば、彼すらも倒せるかもしれない。

 

そんな神のごとき力を持つものさえも倒せるとしたら。

 

 

「がハッ!」

 

 

そんな物が神にすら到達できていない唯の大妖怪止まりの妖怪に当たったら。

 

 

「!決まったわ!」

 

「よっしゃ!」

 

 

………そんな者の末路の想像など意図も簡単だろう。

 

 

「さあ、キリキリと吐いてもらうわよアンタの目的を」

 

 

しかし、彼には自分の死すらも覆すことが出来る。そんな事をどうやってするのか?

 

 

「そうだぜ、そのチカラは一体何なのかも、な」

 

 

簡単な事だ、彼にとっては、ただ、その名を紡ぐだけ(・・・・・・・・)

 

 

「ククッ、ハハハ、ハハハハハハッ!」

 

突如として男が狂ったかのように笑い始めた。

 

「…何がおかしいのよ、あんた、死にかけでとち狂ったんじゃないでしょうね。」

 

 

霊夢の冷ややかな言葉が刺さる。が男は急に笑いを止めこちらを見てきた。

 

 

「…いやァ?こんなに面白れェ茶番はねェと思ってなァ。久しぶりに楽しめたぜェ。」

 

 

霊夢はその男が言っている言葉に違和感を覚えない事に違和感を覚えた

 

 

「何の話よ、茶番って。」

 

 

霊夢は聞いた。…その言葉がトリガーになると知らずに

 

 

「そんなに見たいかァ?なら見せてやるよ。俺にとっての茶番を…お前達にとっての悲劇を。」

 

 

そして彼は…その()を紡いだ。

 

 

その名は_________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砕けろ、鏡花水月(・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、世界が割れ、霊夢が見た光景は___

 

 

 

 

燃え盛る森と

 

 

 

血濡れになって自分と、己の親友、そして。

 

 

 

先程迄男が倒れていた筈の場所に倒れている、

亡くなった母にとっては親友であり、母亡き後の己にとっては親代わりだった。

 

 

 

 

「ゆ、か、りィィィイイイイ」

 

 

 

幻想郷の賢者___八雲紫が光を失った目をし、血塗れの亡骸となっていただけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





皆さん忘れてたんじゃないですか?鏡花水月ちゃんのこと。前にちょろっと感想欄で言ってました。


覚えてた方居たら感想で呟いてみてください。



今度の更新はるろ剣×鬼滅やで(多分)


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第二十二話 神と呼ばれた男

皆さんお久し振りです。最近寒くなってきましたが元気にお過ごしでしょうか。 作者は暫くの間やる気欠乏症になってしまいました(言い訳)。で、でも次の話長くなるし頑張るから許してクレメンス(懇願)。

と、取り敢えずほんへどうぞ


多分ツッコミどころ満載だと思いますがし、最初の方は意味わかんないと思うけど、感想でツッコンでくださり。


燃え盛る炎、倒れる自分、息絶え絶えの友人、事切れた母代わりの妖怪。

 

それらを見た少女__博麗霊夢は何故か冷静だった。

 

何故こんなことになっているかを考え、そして、全ての元凶へと視線と疑問をぶつけた。

 

 

「……何故こんなことを続けるの?こんなことをしてなんの意味があるの?」

 

 

彼女がそう問うと、彼はゆっくりと口を開いた。

 

 

「…原初の五人…とだけ言っておきましょうか。」

 

 

しかし、それは傍からしたら意味のわからない答えであり、霊夢にとっても分からないものであった。

 

 

「原初の五人って…あの童話の?」

 

「そうだ。」

 

 

 

原初の五人___それは、幻想郷に伝わる童話で幻想郷の住人ならば知らない者は居ない。

 

 

童話に拠れば原初の五人とは、幻想郷を作り出した五人の、神、妖怪、人間の事である。

 

 

 

「…そこで何で原初の五人何てのが出て来るのかしら?」

 

「…後は自分達で考えろ、そして、一年後まで待っていろ、俺は必ず幻想郷を粉々に破壊してやる。」

 

 

そう言うと彼はどこかに去っていってしまった。

 

 

「…どういう事なのよ___紫。」

 

 

そう呟いた彼女の後ろには、事切れたはずの妖怪、八雲紫が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わりエリセン

 

 

「…で?どういう事なんですか主。」

 

そこでは輪廻への質問コーナー(主催ハジメ&ユエ)が開催されていた。

 

「…何処からだ?」

 

「最初っからです、俺にも教えて貰ってない主の本当の過去(・・・・・)から。」

 

そう、ハジメの言った通り霊夢達に聞かせた彼の過去は、完全な嘘である。

 

 

そして、ハジメが放った言葉で、辺りが緊張に包まれる。なぜ緊張に包まれたかと言うと、輪廻がやばいオーラを出しているからである。

 

「………何故俺が言った過去が嘘だと思った?……答えによっては……消すぞ?(・・・)

 

その『消す』は決して記憶を消すとかではない、存在(・・)を消すと言っているのだ。

 

ハジメはその視線と声だけで人をいとも容易く殺せそうな人物に『消す』と言われて、足がくすみそうではあったが、それでも言った。

 

 

「いえ、先程主の兄弟を名乗る人物が現れましたが、俺の聞いた主の過去にはそんな人物は出て来なかったので嘘かと思いまして。」

 

 

ハジメのその言葉を聞いた途端、輪廻の纏っていたやばいオーラが消え去り、辺りに走った緊張は消え去った。

 

 

「そういう事か……」

 

輪廻はそう言うと周りを少し見渡し、なにか考えるような仕草をしたあと、一度溜息をつき話し始めた。

 

因みにだが、今輪廻達の周りに居るメンバーは、ハジメ、清水、ユエ、シア、ミレディ、ティオ、雫、恵理、残った東方組(妖夢、レミリア、フラン、アリス、咲夜、さとり。)である。

 

 

「………まずはミュウの母親の治療が先だ。」

 

輪廻のその言葉にハジメが「あっ…」と声を漏らした。

…色々ありすぎて忘れていたらしい。

 

 

パチンッ

 

そして輪廻が指を鳴らすと、ハジメ達が瞬き一つをした間にミュウの家の前まで来ていたのだ。流石にこれにはハジメ達も驚いて………

 

 

「…まぁ、主ならこれくらいの事は出来るわな…」

 

「…ま、我が君だしな。」

 

「…ん、輪廻ならこれくらい出来る。」

 

………無かったみたいですね、ハイ。

 

 

ガチャッ

 

「あれ?パパ達どこ行ってたの?」

 

ここで登場したのは、現環境で輪廻君を止める事が出来ると言う、ある意味最強(チーター)であるミュウちゃんです。ここで説明しよう、何故ミュウが困惑しているかと言うと、ミュウにはいきなり自分の父親が消えたように見えたのであるが、一分もかからず戻ってきたのである。

 

 

「…いや、ハジメ達と少しお話してきただけだ。」

 

輪廻は淡々とそう返すが、ミュウやハジメ達もある事に気が付く。

 

そしてミュウは輪廻に対してこんな事を言ったのだ。

 

「パパ?パパは本当にミュウのパパなの?」

 

………これだけ聞くと完全に地獄絵図の修羅場セットだが、ミュウの言葉の意味はそのままの意味では当然無い。

 

「……ミュウ、それはどういう意味だ?」

 

輪廻が困惑していると言うまさに貴重なシーンではあるが、そこに関してはどうでもいいので無視する。ちょ〜簡単に説明すると、輪廻は以前の体を捨て別の身体に転生したのである、その為人格が3つに分かれている。当然人格が違えば、中身は同じとはいえ喋り方や癖など中々に変わるものである。長々と説明したが、結局何が言いたいかと言うと。

 

 

「……パパ、いつもの感じと違うの、髪も違うし目も違う、身長もおっきくなってるし、喋り方が全然違うの。」

 

……という事である。

 

子供と言うのは案外親のことを細かく見てるものである。

 

 

対する輪廻だが、悩んでいる様に見えるが実は脳内会議で三つの人格と話しているだけである。

 

 

 

「…ふむ……やはりお前達にはこちらの方が馴染んでいるか……」

 

パチンッ

 

そして、輪廻がそう言って指を鳴らすと、ハジメ達が瞬きを一度する間に、前の姿へと戻ったのだ。

 

「…ミュウ達はこっちの方が慣れてるからなァ…ま、仕方ねっちゃ仕方ねえよ…」

 

…どうやら入れ替わった人格と何やら話をしているようだが、それよりもハジメ達には聴きたい事があった。

それ即ち……

 

「「「死んだじゃなかったんですか(の)!?」」」

 

「…いや、確かに死んだ事には死んだぞ?前の姿をしているだけで中身は変わってねえから。んで、何で喋り方が違うかはレミアの治療をしてから話す。こっちに着いてこい。」

 

ハジメ達の問いにそう返すと輪廻はスタスタとミュウ親子の家へと入って行き、レミアの前へ行くと、またもや指を鳴らした。

 

パチンッ

 

そうするとあら不思議、治療された当のレミアすらも「あら?…あら?」と見事に困惑しているが、一瞬で怪我が治ったのである。

 

これは単純に輪廻がレミアの傷を無かった事(・・・・・)にしただけであるが、そんな事とはつゆも知らぬハジメやユエ達は当然「(゚Д゜)ファッ!?」状態である。

 

そして、流石に気になったハジメが、周りを代表して質問を開始したのであった。

 

 

「…主は………何なんですか?」

 

……今までは、『主』だからとスルーしていたが、思い返してみれば、明らかにただの強い『人間』が放てるような技や使える武器では無かった。それこそ『妖怪』や『神』でも無いと……

 

「…まさか主…貴方は…」

 

そして、何かを察したハジメは驚きで目を見開いていた。

 

驚くハジメに輪廻は淡々と告げる。

 

 

「…よく気付いたな……そう、俺は人では無い……神だ(・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Q.厨二ですか?

A.確かに見た目は厨二ですが違います、ちゃんと理由があるんです聞いてくださ コンコンッ おっと誰か来たようだ



その後彼を見た者は居なかったと言う……












と言う茶番は置いといて、アンケート投票してくれると嬉しいです。



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第二十三話 愚者の一刺し

どうも…………大ッ……………………………変!お待たせしました!(全裸土下座)

遅くなってしまってほんっとに申し訳ありません!

本編投稿すると言ってからもう2ヶ月……本当にお待たせ致しました。

お詫びと言っては何ですが、普段より長いので御容赦くださいませ!

という訳で無駄話はこの辺にしてそろそろ本編行きましょう!

え?何で投稿遅くなったのかって?…………単純にやる気が出ませんでしたァ!


ではどうぞ!



前回のあらすじ

 

「私が天に立つ(意訳)」バァァアアン

 

神になったと申告するイッチ、困惑する2ちゃんねらーに示された答えとは!?

 

 

 

 

※このあらすじは大嘘です。

 

 

 

───

 

 

 

「…取り敢えずハジメ、驚いた振りはしなくていいぞ。」

 

溜息をつきながらそういった輪廻に、ハジメは「バレてましたか…」と返す。

 

驚いてたんじゃないのか?、と思っているかもしれないが、普通に考えて十二話位で.

 

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

 

 

十五夜輪廻 17歳(534歳) 男 レベル70

 

天職:死神·剣豪·学園第一位·魔神

 

筋力:210000000

 

体力:150000000

 

耐性:210000000

 

敏捷:100000000

 

魔力:135000000

 

魔耐:100000000

 

霊圧:160000000

 

技能:無から有を創造する程度の能力·運命を決定する程度の能力·創造·浅打創造·超剣技·超剣術·日の呼吸+[爍刀]·斬魄刀+[始解]+[卍解]+[卍解ニ式]+[卍解三式]·鬼道+[縛道]+[破道]·ベクトル操作+[反射]·魔人化+[魔神化]·自己再生·不老不死·霊槍シャスティホル·魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・纏雷[+雷耐性][+出力増大]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛[+部分強化][+集中強化][+付与強化]・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復[+魔素集束]・魔力変換[+体力変換][+治癒力変換][+衝撃変換]・限界突破+[覇潰][+上限突破]·錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成][+高速錬成][+自動錬成][+イメージ補強力上昇][+消費魔力減少][+鉱物分解]·言語理解

 

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

 

こんなステータスしてる奴が人間な訳ないでしょ。そもそも天職に魔人と死神って書いてあるし()

 

「まっ、そういう事だ、レミアの傷も治したし、さっさと次の所攻略すっぞー………ハジメ達が。」

 

めっちゃ適当にそう返した輪廻君に、ため息ひとつで「…分かりましたよ、じゃあさっさと行きましょうか…。」と返すハジメ君。

 

そんなやり取りに清水や雫、妖夢達は苦笑いし、ユエ達は微笑んでいた。

 

そんな和やかな空気の中、輪廻はある事を思い出した。あ、そういやアイツらの迎え忘れてた……やべえ…と、それを思い出した輪廻の顔は、珍しく引き攣っていた。

 

「…ハジメ」

 

「……なんでしょう。」

 

「…やっぱ攻略ちょっと待て、アイツら迎えに行くの忘れてたわ。」

 

それを聞いたハジメは、先程よりも大きな溜息を吐いた。

 

「……さっさと迎えに行ってあげて下さいよ……」

 

そんな諦めの境地に達したようなハジメの返しを背に、輪廻は「なるだけ早く帰ってくるわ」と言う言葉を残し消えた。

 

輪廻を見送ったハジメは、物凄く嫌な予感を憶えながらも、それを紛らわす為に清水やユエとの会話に勤しんだ。

 

 

しかしてその予感は見事的中する事となる。

 

 

 

 

10分後────┰┰──────────────@──

 

フワッ

 

輪廻は突如として現れた、二人の女性と共に!

 

そして、着くなり彼女達はほぼ同時に呟いた

 

「……ここが輪廻の住んでる世界か……」

「……ようやく…輪廻さんと一緒に居られる…」

 

前者は日本人離れした風貌を持つ金髪の妙齢でナイスバディで美人な女性、後者は昔……昭和位だろうか?その頃の日本に居そうな風貌の綺麗な長い黒髪を持つ、まさに日本の絶滅危惧種、大和撫子と言う言葉がが似合う様な美しい女性である。

 

そんな女性達を連れて来たものだから、ユエの後ろにス○ンドの様なオーラが立っている。

 

それを見たハジメは、あぁ、また始まった……と手で顔を覆った。 何せ、以前にもこのような事があったからだ。 その時と言うのが、妖夢達が輪廻達に着いてくると言って、何だかんだで有耶無耶になりそうだったダブルキャンピングカー(第十七話参照)で移動している時だ。その時は輪廻によって制されたが、流石に今回は我慢出来なかったらしい。

 

ユエは輪廻の元へ幽鬼の様にフラフラとうなだれながら近づいてった。

 

「……輪廻…その女達は……誰?

 

ゾアッ

 

そう言いながら俯いた面を上げた、目からハイライトが消え、無表情でこちらを見上げるユエの形相は、輪廻の隣に居た彼女達を思わず身構えさせる程の物だったが、対する輪廻は怒る訳でも無く、睨み返すでもなく、ただ1歩前へと進み、伸ばした手でユエを抱きしめ、頭を撫で声を掛けた。

 

「…昔の知り合いだ、用事があったから迎えに行って連れてきただけだ。」

 

そんな輪廻の行動に、ユエの目にハイライトが戻り、少し恥ずかしそうに頬を薄く紅に染めて、しかし表情は少し不安そうに言葉を紡いだ。

 

「……ただの知り合い…には見えない……けど……」

 

「……」

 

その質問に黙りながら抱きしめ、頭を撫で続ける輪廻に、ユエはさらに不安げに言葉を繋げる。

 

「……また…新しい女の子?……もう…私は…い、いら…ない?……」

 

涙すらも浮かべそうになりながら、輪廻にそう聞くユエ。……先ほど輪廻が死んで復活した後、何も無かったように喜んで見えたユエだが、実際は輪廻が死んだ時は自分の世界から全ての色が消え、心臓が痛いくらい跳ね上がった後、動きが全て止まったような感覚に陥ったのだ。

 

そんな事が有ったからこそ、ユエはこんなにも不安になっているのだ。 もしかしたら自分は捨てられるんじゃないのか?自分はもう要らないのではないか?…そんな有り得ないこと(もしかしたら)が頭の中を何度も過り、その度に自分で否定した、そんなことがあるわけがない!彼が自分を捨てる事など有り得ない!と何度も自問自答した。 だけど彼女は知っている、捨てられる悲しみを…見捨てられる恐怖を知っている。

誰もいない寂しさを…孤独という病の恐ろしさを…行き場の無い怒りを…その全てを知っている。

 

知っているからこそ恐怖する、訪れて欲しくない未来に……。 だから否定して欲しかったのだ、そんな事は無い、お前が必要だと…彼に…自分の存在意義である十五夜輪廻に言って欲しかったのだ……。

 

そんな考えをしていたユエに、そんなことを言ったユエに彼は答えた、彼女の欲する言葉を…彼自身の本音を…。

 

「…そんな訳ねえだろ?俺は神や他人じゃなく、俺自身(・・・)に誓って言うぜ?…俺はお前が必要だし、誰にもやる気もねえ…そして俺は、お前の能力や力が欲しい訳でもないし、容姿が綺麗だから欲しい訳じゃない……ただ俺は、ユエというお前の存在(・・)に惹かれたからこそ、お前が欲しいんだ。

……勿論それはユエだけじゃない、ハジメも、清水も、シアも、ミレディも、ティオも、雫も、恵理も、そして、妖夢も、レミリア、フラン、アリス、咲夜、さとりも、そして、今日連れて来たこの二人も……今まで俺が仲間にして来た奴全員がそうだ、俺は力や能力持っていたり、容姿が優れているからお前達を仲間にしたんじゃない。」

 

輪廻は一度そこで言葉を切ると、ハジメ達がいる方を見渡し、後ろの彼女達を一瞥した後、ユエの頭を撫でていた手を使い、ユエの頭を少し見上げるように傾け視線を合わせると…。

 

…チュッ

 

 

彼女の唇に口付けを零した。

 

ユエの目は驚いたように見開いている、何せ彼から人前でキスをされた事は無かったからだ。

彼女の見開いた目は次いで一筋の涙を流した……それから時間にすれば10秒ほどであっただろうか?だが、ユエはその時間が永遠にも思える様な至福を感じていた。

その時間は、彼女の中に燻っていた不安や恐れを全て消し飛ばす程の効果を発揮した。

 

そんな至福の時間が終わり、彼の口が彼女の唇から離れると、輪廻は再び言葉を紡ぎ始めた。

 

 

「…俺は唯単純にお前たち自身(・・・・・・)が欲しいんだ、他でもないお前たちが……例えお前達と同じ力や能力、容姿をしていたとしても、俺は必ず俺が選んだお前たちを選ぶ。」

 

そんな輪廻の力強い言葉にユエもまた頷き、彼に認められた喜びを噛み締める。 後ろに居るハジメ達もまたそうであった。

そんな彼等彼女等を見渡した後、輪廻は最後に言葉を綴った。

 

 

「…俺は前の仲間が要らなくなるから新しい仲間を連れて来るんじゃない、前の仲間を守る為、前の仲間が必要だからこそ新しい仲間を連れて居る……故に俺がお前を捨てる事など有り得ん、寧ろお前が嫌と言っても俺はお前を離さんぞ?……だからそう心配するな。」

 

輪廻のそんな言葉に、ようやく落ち着きを取り戻したユエが言葉を発した。

 

「……ん…分かった……でも…今度からは…一言言って欲しい……のと…その女達を……私達全員を認める為に条件が一つ欲しい……。」

 

「…何だ?なんでも言ってみろ、お前達が望む事なら何でもしてやる。」

 

ユエの言葉にそんな言葉を返す輪廻、そのやり取りに、先程まで空気で有ったハジメがさっきと同じ嫌な予感に苛まれる。

 

そしてその予感は………

 

 

「……誰が輪廻の正妻なのかを決める……正妻争奪戦をしたい……。」

 

 

…見事に的中した

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

〜回想終了〜

 

 

「ってな事があって今に至る訳だが………」(第十九話参照)

 

ドキャンボキャンドカドカドカドカーンガギィンギャリィ

 

輪廻が生み出した闘技場の様な場所では、幾重もの魔法や魔術、剣戟の音、ハンマーで地面を抉った様な音等が鳴り響いている。

 

そんな音が鳴り響く場所では観戦しているハジメはこう嘆いた、

 

「あの流れからどうしてこうなったんだよ……」

 

と。

 

 

……最初は普通だった、料理対決や家事スキル対決、輪廻のいい所言い合い対決など、まだマシだった。

 

だが、途中から夜の営み対決や輪廻の愛してる所対決、私の方が愛してる愛されてるやらの言い合いが始まったり、最終的に売り言葉に買い言葉で、殴り合いに魔法(魔術)の打ち合い、武器同士のぶつかり合い等、泥沼の最終正妻戦争(ラグナロク)が勃発してしまったのだ……。(こ‪wれ‪wは‪wひ‪wど‪wい‪w)

 

こんな感じで。(十九話参照)

 

「じゃぁそろそろ決着を付けようじゃないか!」

 

 

 

……美しい街なのである。

 

 

 

「…望むところ」

 

 

 

……………美しい街なのである

 

 

 

「むしろ倒す。」

 

 

 

…………………………美しい、街なのである

 

 

 

「「「殺す!」」」

 

 

 

………………………………先程から鳴り響く怒声等が聞こえなければの話であるが…………

 

 

 

 

 

「……私は輪廻と沢山 愛し(意味深)あった、だから正妻は私」

 

「……ん?私は輪廻と二百年一緒にいたが?ん?」

 

バチバチバチバチ

 

「な、何おう!!ミレディたんだってちゃんと輪廻君に愛されてるもんね!ねえシアちゃん!」

 

「わ、私だって!!輪廻さんに処女を貰ってもらいました!!」

 

ヒュルルルルル

 

シアが胸を張って言い張った言葉にその場が凍り付く。

 

聴こえるのは……

 

 

 

「あばよ、残念ウサギ」

 

 

 

天を拝むハジメの声と

 

 

 

「短い間だったけど残念だった。南無阿弥陀仏」

 

手を合わせる清水のお経

 

 

 

「…カップ焼きそばって意外と美味ぇんだよな……。」

 

 

 

何故かカップ焼きそばを食べる輪廻の賞賛の声であった。

 

 

そして睨み合いは続く

 

 

 

「ん?」

 

「ん?」

 

「あ?」

 

 

 

ビリビリと空間が揺れるような錯覚を受ける妖夢達。既に人外の域に達しているのにもかかわらず、ガクブル状態である。

 

 

 

ハジメのため息が増える。

 

 

 

 

 

「……はぁ〜…どうすんだよこれ、そもそも主は主で何カップ焼きそば食ってんだよ、いや別に焼きそば食うのがだめな訳じゃないが、今の惨状をどうにかしてから焼きそば食って欲しかった………まぁ、従者である俺が主人に逆らえるわけが無いんだがな…………はぁ」

 

 

 

ハジメの溜息は増えるばかりである。

 

 

 

「ハジメ、大丈夫?何なら膝枕して上げようか?て言うか本当に何でも焼きそば食べてんの……?」

 

「……優花〜!」

 

 

 

ハジメは優花を抱き締めた。

 

 

 

「ちょ、ハジメ!さすがに恥ずかしいって!」

 

「あぁ…恥ずかしがる優花も可愛い……もう俺の癒しはお前だけだ。」

 

「ちょっ、ハジメ〜!?」

 

 

色々と疲れたハジメが逃げた先は、やはり輪廻と同じく自分の女であった。

 

「…もう…仕方ないなぁハジメは……うん、頑張ってる頑張ってる!ハジメはよく頑張ってるよ………疲れた何時でもこうして上げるよ、幾らでも……。」

 

仕方ないと言いつつも、頬が少し緩んだ状態でハジメの頭を撫でながら、ちゃんと慰める優花。

………結局何だかんだ言うても皆惚れた相手には甘いのである。

 

……そんな心優しき優花だからこそ、ハジメは優花に惚れたのだ。

 

「…あぁ…愛してる…優花…」

 

「…もう!だから恥ずいって!……でも私もハジメのこと…大好きだよ……」

 

そんな甘々な空気の中、唯一恋人が居ない清水は逃げ場を失い半ば発狂に近いブチ切れをかますが、ハジメ達は完全に自分達の世界に入っているため、余計に甘々な空気が重くなり、ユエ達の闘争の音は更に激しさをまして、輪廻は寿が○やのラーメンを食べ、そして清水は完全に発狂した。

 

「だァァァァァァ!!!!何ラブコメしてんだハジメ!当て付けか!?この中で唯一恋人が居ねぇ俺への当て付けか!?おい!?」

 

「……優花…大好きだ……愛してる。俺と、ずっと一緒にいて欲しい。」

 

「……うん……私も大好きだよ…愛しているわ……」

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!!!!!」

 

 

 

闘技場(的なとこ)

 

↓↓↓↓↓↓↓↓ 

 

「蒼龍・雷龍・五天龍!蒼天・緋蒼・禍天!」

 

 

 

「黒魔改、イクスティンクション・レイ!」

 

 

 

「業火・爆炎ノ太刀・零式!」

 

 

 

「でりゃぁぁぁぁあああ!!」(ハンマーをぶん回す音と共に)

 

 

 

「黒天球!!」

 

 

 

「竜化!」

 

 

 

「死霊術・死海文書・海淵」

 

 

 

「八重樫流抜刀術・奥義 円骨!」

 

 

 

「スペルカード発動 彼岸剣「地獄極楽滅多斬り」」

 

 

 

「スペルカード発動 神槍『スピア・ザ・グングニル』」

 

 

 

「スペルカード発動

 

禁忌「クランベリートラップ」

 

禁忌「レーヴァテイン」

 

禁忌「フォーオブアカインド」

 

禁忌「カゴメカゴメ」

 

禁忌「恋の迷路」

 

禁弾「スターボウブレイク」

 

禁弾「カタディオプトリック」

 

禁弾「過去を刻む時計」

 

秘弾「そして誰もいなくなるか?」

 

QED「495年の波紋」 」

 

 

 

「スペルカード発動 咒符「上海人形」」

 

 

 

「スペルカード発動 符の壱「連続殺人ドール」」

 

 

 

「スペルカード発動 想起「二重黒死蝶」」

 

 

 

ドコドコドッカーンドシャーンドキャーンドッカーン

 

 

 

最終的に、それぞれの必殺技の撃ち合いで決着は着き、生き残ったのは…………

 

 

「……ハァ……ハァ……ゼーハー……ゼーヒュー……認める……貴女達には……資格がある…正妻になった私が認める。」

 

やはりと言うべきか、ユエで有ったが、彼女ですらも全身で呼吸をし、疲労困憊になっていた。

 

 

「チッ……悔しいが、負けてしまったものは仕方ない、私もお前を認めるさ……」

 

「…元から私は輪廻さんと一緒に居いられればそれで良かったから……。」

 

…地に伏しながらも声を上げれたのは輪廻が連れて来た二人で、その他の少女達は意識が有っても喋れないのが半数、完全に意識を手放しているのが残り半分である。

そして、ラーメンを食べ終わった輪廻がようやく動き出した。(いやなんで食ってんだよ…)

 

「…よし、終わったみてぇだな。……いやァまさに死屍累々だな。…流石に回復はさせとくか…。」

 

パチンッ

 

「…んじゃ、何が起きてたか正直よーわからんが、なんか俺の正妻?が決まったらしいから……よし、攻略行くぞ〜。」

 

「…いや、めっちゃ適当ッスね。」

 

少女達の傷を完全に回復させたと思ったら、自分の正妻が決まった宣言をした後、急に京都に行こうのノリで攻略に行くと言い出した。(?)

 

そりゃハジメ君もそんな返しになるわ。

 

だが、ユエが返事をすると同時にある質問を投げ掛けた。

 

「…ん…分かったけど…このメンバーで行く意味ある?」

 

確かに。こんな化け物みたいな奴らばっかりが攻略しに来たら、もはや攻略される方が可哀想だわ。

 

輪廻もそう思ったのか、少し黙って周りを見渡した後にその言葉に肯定を返す。

 

「……確かにな…最早俺が直々に鍛えた方が強くなりそうだ。」

 

しかしどうしようかなぁと輪廻が考えていると、なんとレミアといはたハズのミュウが現れたのである。

「パパー」そう呼ぶミュウの声と、姿を認識した瞬間に輪廻は結論を出した。

 

「よし、この辺を拠点に暫くお前らの修行を実施する。」

 

「パパ、暫くここに居るの?」

 

「あぁ、数ヶ月程は居る予定だ。」

 

「やったなの!パパと一緒に遊べるの!」

 

そんな輪廻とミュウのやり取りをポカーンと見ていたハジメは、人生の中で一番大きなため息をついたあとで苦笑した。ウチの主はいつもこうだからな、という意味を込めて。

 

 

 

 

 

そんな時にそれ(・・)は起きた。

 

 

 

 

それ(・・)が起きたのは

 

ミュウが「先におうちで待ってるの!」と言って走り去り、輪廻とユエが視線を合わせ、ユエが輪廻へと声を掛けようとした時だ。

 

 

「……じゃあ輪廻…そろそろ行こu「ユエッ!」ギャリィン!

 

ザシュッ!

 

 

 

 

 

 

 




感想ください(切実)高評価なんて高望みはしません!、一言でもいいんです!感想くださいお願いします何でしますから!(なんでもするとは言ってない)

感想来ないと……やる気が出ないんれす。お願いします。

アンケートで、私こそが良い案を持ってるゾ!!って方はぜひ此方の活動報告にてコメントしてくださいませ。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=268539&uid=294968


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幕間 地獄


ども(。・ω・)ノ湯タンポです。今回はちょっとシリアス風味の前菜です。

次回がちょっと鬱?と言うかシリアスっぽくなりそうなので鳴らす為の前菜みたいな感じな立ち位置です。よって文字数も極端に少ないので内容を理解すると言うよりは考察して見てくださいまし!実は今回何気に初(例外を除く)の輪廻君視点なんですよ!

所々輪廻君の過去や今後の展開に関することが散りばめられてたりするので、頑張って考察してください。


ちなみに次回の更新は今月中に更新できたらいいな〜程度なのであまり期待しないでください。今回が前に比べて速かったのは感想があったからなのです。(まぁ、中身も短いし)

後第四章はこれで終わりです。次回から最終章ですよ!


ではどうぞ!


 

 

 

地獄という言葉を知っているだろうか?…いや、可笑しな事を聞いたな…勿論知っている人間が大半だろう、悪いことをしたら地獄に落ちる。善いことをすれば天国にけるようになる……そう教えられた者が普通だと思うが、考えたことは無いだろうか?そもそも地獄とは何か?天国とは何か?…………………成程…確かにそう言う考えも有るか……だが、残念ながら結論から話せば君達が想像する地獄や天国など存在しない。

 

しかし、あくまで『君達が想像するような』地獄や天国等は無いと言うだけであり、本当の地獄は存在する。…天国は無いがな…。

 

そして、本当の地獄はすぐ側にある…君達や僕達が生きるこの世界(・・・・)そのものが地獄だよ。

 

え?そんなに辛くない?結構幸せ?寧ろ楽しい?……そっか………でもさ、楽しい事や幸せな事があったとしても、それは本当に地獄じゃないと言える?…そもそも地獄の定義ってなんだろうね?死んだ後に行く辛い世界?じゃあ何で生きている間に地獄何て言葉が有るんだろうね?…人間は経験の想像でしか言葉で表せないんだよ……例えば病気による症状で刃物に刺された様な激痛が走ったという人が居たとする、だとしたらその人は何故刃物で刺された様な痛みと言ったんだろう?だって痛みの原因は病気のはずでしょ?なのに刃物で刺されたって言う表現は少し可笑しくないかい?それはつまりその人が『刃物で刺されたらこんな感じの痛みなんだろうな』って言う想像で物を言っているわけだ。

 

だけど勿論その人が刃物で刺された訳じゃないから、その人間はその痛みは観測出来ないはずだ、なのにその人間はそれを言い表している、つまり他の人間が『刃物で刺された』という経験をして、その経験をその人間が知っていたからこそそんな表現になった、という訳だ。

 

長くなったが、つまりは経験したことが無いのに言葉で表せるのは可笑しいよね(つまり雨が降った事がないのに雨が降るって言う言葉を知っていたらおかしいよね?)→地獄って言う言葉の意味を知っているなら経験したことがある筈だよね?→なら地獄はこの世界の人間が経験出来る事だよね?→でも何が地獄かは分からないよね?→じゃあこの世界が地獄だよね(極論)

 

 

流石に少し暴論だとは自分でも思うが、この世が地獄なのは間違い無い、だって…君達は生まれたかったから生まれているのかい?少なくとも僕はそんな事頼んじゃいない、誰が生んで欲しいと言った?誰が生きさせろと言った?誰も望んじゃ居ない、生まれたから生きているんだよ、望んでもいないのに作り出され、やりたくもない勉強を刺せられて、やりたくも無い仕事をして……何が楽しいのだろうか?

この世界で裕福で充実した人生を送れる人間は最初から裕福で充実している。この世界の大抵の人間は凡人だ、なんの才能も無い、大した学力もない、持っている金が多い訳じゃない、一生天才と呼ばれるような人間には凡人がどれだけ努力しようがなんの意味も無い。

 

そんな世界が楽しいだろうか?

 

否!

 

そんな世界が天国だろうか?

 

否!

 

一生搾取され続ける、そんな人生が幸福に満ちていると言えるだろうか?

 

否!

 

否!

 

否!

 

この世界は地獄だ、だから僕は……いや、()はこの地獄を俺の天国(・・)に作り替えてやる!

 

 

 

だって言うのに…

 

 

 

 

 

「十五夜輪廻、君はもう要らない(・・・・)、この娘達は俺が貰ってあげるよ(・・・・・・・)、君の部下も一緒にね、光栄に思うといいよ、俺の……天之河光輝の踏み台(・・・)に慣れたことをね。」

 

 

 

地獄は何時も自分から近づいてきやがる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






感想や評価をくれると執筆スピードがバカみたいに跳ね上がります。て言うか感想とか高評価とかくださいお願いします何でもしますから!


ちなみにアンケートもhttps://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=268539&uid=294968これもまだまだやってます!同士の皆さん!天之河を○す方法を考えましょう!


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最終章
第二十四話 奇襲


こんちゎっす湯タンポっす。今回からもう最終章っす。いやー早いっすね〜〜……え?突然過ぎるって?そ、そんな事無いっすよー!

べ、別にラストをどうしようかと最近まで割と悩んでて、結論が出たのがついこの間で、最終話までの構成考えてたら割とすぐ終わりそうとかじゃ無いんだからね!(白状)

って言うのは冗談でも何でもなく、ガチで最後はどうしよ………と悩んでました。

この間、ようやく自分なりのこの作品の最後を思い描けたので、これにて最終章となります。……とは言ってもまだ最終話まではまだ暫く掛かりそうですが(汗)。


最後まで自分らしさ全開の作品で行くつもりですので、どうぞお付き合い下さい。


今回ん?って思う所もあると思いますので、感想次いでに質問でもして下さい。



それでは


追記:通算8万UAありがとナス!


 

 

 

 

それ(・・)が起きたのは

 

ミュウが「先におうちで待ってるの!」と言って走り去り、輪廻とユエが視線を合わせ、ユエが輪廻へと声を掛けようとした時だ。

 

 

「……じゃあ輪廻…そろそろ行こu「ユエッ!

 

 

その時、ユエの真後ろから迫り来る剣に、輪廻は気づいた、だからこそ間に合った…彼女を狙った剣の初撃(・・)を防ぎ剣を弾き飛ばすことに。

 

 

ギャリィン!

 

 

(あっぶねェ…ここまで接近を許すたァ…やっぱり元の体(・・・)じゃねェと思った様以上に身体が動かねェ……当面の課題はこの身体でも前の様に動ける様にする事だなァ………いや、それよか今はユエの怪我の確認とハジメ達の安全確認だ。)

 

 

 

しかし、彼は気付かなかった……いや、それ(・・)に気付くには余りにも身内思いで、余りに自分の身を案じ無さすぎた(・・・・・・・・・・・・)のだ。…そう、|彼の体の直線上にいたユエに再び迫る二撃目の攻撃に。

 

(だが少し妙だな……攻撃してきた奴の気配がねェ(・・・・・・・・・・・・・)…幾ら俺がこの身体に慣れてない(・・・・・・・・・・)とは言え、流石にここまで近付いて攻撃して来た奴の気配ぐらいは察知出来る……なのに俺が察知出来なかった(・・・・・・・・)……まさか…奴の助けを得た奴がッ!(・・・・・・・・・)

 

「主ッ!!!!!!!!」

 

ザシュッ!

 

「……カハッ……遅かっ…た…か…!」

 

彼がそこまで考えを巡らせた時には、既に剣が血華を咲かせながら彼の胸を貫いていた。

 

そして、剣が刺さったまま鮮血を撒き散らしながら地面へと倒れ込む。

 

 

「主!大丈夫ですか!?」

 

 

そこで、ようやく事態を呑み込んだハジメ達が彼を呼び掛けながら全速力で彼の元へ走るが、時既に遅く、彼の体に次々と魔法陣が現れ彼の周りを囲む様に魔力のような物が迸っていた。

 

 

ハジメが彼の元へと駆け付けると、彼は吐血しながらも時を止めて言葉を紡いだ。

 

「ハジ…メ…よく聞け…今俺に刺さっているこの剣は封印の剣つって、対象を封印する事だけに能力値を全振りしてる、…対象を封印する事以外に使い道が全くねぇが、逆に言えば対象を設定すれば誰でも封印出来る代物だ、しかも発動条件は無機物有機物に限らず、対象の核となる物を貫くだけで封印が発動する。さらに発動に霊力や魔力とかの特別な力を使った代償は要らない…つまり一般人でも俺なんかを封印出来るオマケ付きだ。」

 

 

その話を聞いたハジメは驚愕した。

 

なんせ、何の力を持たない人間でも、自分や清水たち所か、チートの塊みたいな輪廻すらも刺すだけで軽々と封印出来てしまうのだから。

 

そんな思いを頭の隅に置きながらも、彼は話の続きに耳を傾けた。

 

 

「…勿論、俺ぐらいの力を持つ奴は完全に封印出来る訳じゃないが、それでも力の大半を封印される。…今俺に残っている力は多くねぇ……だが、今から来る奴の相手をする事ぐらいは出来る……だから…」

 

 

 

…その言葉の続きを、彼の友であり、従者としても彼と共に過ごしたハジメは、その言葉の続きを察した。………彼は今から来る奴の相手をする事(・・・・・・)ぐらいはできると言った、…倒せるとは言っていないのだ…。つまり、ハジメ達では敵わないから、彼女達を連れて逃げろ。…という事である。

 

だからハジメは憤った、無論輪廻にでは無く、自分の弱さに、不甲斐なさに、自分の主が危機的状況に陥っているにも関わらず、自分達は足でまといにならぬ様逃げることしか出来ないと言う屈辱に。

 

 

「…だから…彼奴らを連れて逃げろってんですかッ!?」

 

そんなハジメにしては珍しい感情丸出しの言葉に、輪廻は冷静に、それでいて有無を言わせぬ声色で言葉を返した。

 

「…あぁ、お前はユエ達を連れて逃げろ。お前達を逃すぐらいの能力は残ってる。……言いたくは無いが、これは命令だ。」

 

 

流石に、自分の主に命令されてしまえば従う他無いハジメは、自分への怒りで血が出る程強く拳を握り締めながらも、彼に対し傅き頷いた。

 

 

「…はっ!…御命令…承りました。」

 

 

そんなハジメに少々満足気に笑みを浮かべると、輪廻はハジメに近寄りある事を耳打ちした。

 

 

「…ハジメ、最後に1つ言う事がある。」

 

「何なりと」

 

「……………………………………………………って言う事だ、お前達をただ逃がす訳じゃねぇよ。……頼んだぜ、ハジメ。」

 

「はっ!お任せ下さい。」

 

 

そんな輪廻達の会話が終わると再び時は動き出した。

 

 

「輪廻ッ!」

 

時が動き出した瞬間、そんな声と共にこちらへと駆けてくるユエ達。そんな彼女達に向かって腕を振るうと、彼女達の足元に突如としてスキマの様な空間が広がり、吸われるかの様にその空間へと落ちていった。

 

輪廻……と、彼の名を呼ぶ声を残して……。

 

 

 

 

 

それを見送った輪廻は、未だ自分の胸に刺さっている剣を引き抜くと、またしても生み出したスキマのような空間へとぶん投げた。

 

 

そして、手をパッパッとはたくと、誰も居ない空間へと言葉を投げかけた。

 

 

「……いい加減に出て来たらどうだ?気取ってんじゃねェぞこのカス共が。」

 

 

彼が吐き捨てる様にそんな言葉を零すと、誰も居なかった空間に突如としてスキマが開き、そこから人?が三人程出て来た。その中の一人は扇子で口元を隠しながら、彼の言葉に対しての反論の様な事を話しながら、こちらへと少し歩みを進めた。

 

 

「…つれないですわね、かつては共に肩を並べて戦った事もある()でしたと言うのに…。それに別に気取っている訳では有りませんわ…先程まで実際にあなたの張った領域(・・)に入り込めませんでしたもの。それに貴方のお友達も連れてきてあげましたのよ?」

 

 

そんな言葉を零しながら輪廻から5m程の距離で立ち止まる三人。その中から特に見覚えのあるような無いような奴が前へと出て来た。

 

 

「久しぶりだな十五夜。南雲やあの娘達は居ないのか?」

 

 

その名は、かつて魔人族にすら「アホみたいにキラキラしたやつ」とまで言われた、史上最低最悪のクソゴミカスゲロボケクズ勇者(爆笑)ことナイル川ゴリラ(天之河光輝)である。

 

 

 

無論そんな奴とお友達呼ばわりされた輪廻は、額に青筋を浮かべながら言葉を放った。

 

「誰がお友達だボケェ!そんなアホみたいキラキラした仲間を盾にしそうな奴知らねぇよ!巫山戯た事抜かしてっと殺すぞ、紫。」

 

 

まさかのテメェなんて知らねえよ発言に、アホ草勇者(爆藁)が雄叫びを上げ、件を携えながら此方へと向かって走って来た。

 

 

「巫山戯るな!覚えていない訳が無いだろう!それに俺はあの時とは違う!もっと強くなったんだ!それを今からお前に見せ付けて倒してやる!覚悟しろ十五夜!」

 

 

そんな風に叫びながら技を繰り出そうとする天之河。後ろでは扇子で口元を隠しながら喋っていた少女…八雲紫とその式神、八雲藍が、天之河の援護をしようと構えている。

 

そんな状況を力を制限されている中で、ここからどのようにして勝つかを輪廻は思考を巡らせた。

 

 

(…この状態の身体で、あのバカはともかく彼奴らに勝てるかどうか……俺に今残っているのは、この身体の基礎スペックと残火の太刀、それから呼吸とある程度の武器、術式に領域、使いたくはねぇが、夜叉と叢雲。後は魔術や術式、身体強化の為の魔力や呪力と霊力、後は拳闘ぐらいだが………これで行くか。)

 

 

輪廻がそんな風に思考を巡らせている間に天の川が近付き、技を放つと同時に、輪廻は己が持つ武器を召喚した。

 

 

「覇潰!喰らえ!雷吼剣!」

 

 

「来い!我が神器達よ!」

 

 

その瞬間天之河の攻撃に合わせるかのように、天から巨大な両手剣が飛来し、天之河の攻撃を弾き飛ばしたあと、その剣に付随するかのように、天から彼が所持する神器が雨あられと降ってきた。

 

 

「来たか…覇剣アレキサンダー」

 

 

彼が呼んだ名に応じるかの様に彼の前に鎮座する覇剣アレキサンダーが鈍く光る。

 

周りを見渡せば、神話で出てくる様な神器達が並んでいる。

 

覇剣と言われる神器だけでも…アレキサンダー、デュランダル、ガラディーン、ミーティア、ゴライアス、バラガン、ハンニバル、ハデス、ダイアレス、ルシファー、アジダハーカ、バルドル、グリモワール等etc……

 

 

刀でも祢々切丸、布都御魂剣、髭切、雷切、十拳剣、草薙剣、神戸劒、天之尾羽張、天羽々斬、骨食、血吸、岩切、長曽祢虎徹、月詠や九尾、伊邪那美や閻魔、鳴神等etc…

 

 

その他にも魔剣や神剣、霊刀や妖刀、滅剣に神槍、魔槍に霊槍等の伝説の武具達が地面に突き刺さっている。

 

 

それを確認した輪廻は、本来両手で握って振る覇剣アレキサンダーを軽々と右手で持ち上げ、さらに左手で覇剣ダイアレスをも振り上げると、アレキサンダーを方に乗せ、ダイアレスを前へと突き出す形で剣技の構えを取ると、天之河達に向けて煽り文句を謳った。

 

 

「さァ……俺の神器達がテメェらを殺す前に、俺の首を取れると取れるといいなァ?」

 

 

そんな輪廻の煽り文句を受けて、天之河は激情に身を任せ剣を構えたまま輪廻へと向かって斬り込んだ。

 

 

「舐めるなァ!今の俺はお前よりも強い!女の子を洗脳して言う事を聞かせてる奴なんかに俺は負けない!絶対に倒してやる(・・・・・)!」

 

 

間合いを一瞬で詰めた両者の剣が激突する………

 

 

 

 

ガギィン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

ギャリィン!カキンッ!ガギィン!

 

 

 

「……ハァ……ハァ……チッ!……もうガタが来てやがるッ……」

 

 

あれから三時間程がたっただろうか?先に息が切れたのは、まさかの輪廻だった。

 

 

(……流石にこの身体のスペックじゃこれぐらいが限界か……にしても彼奴強化され過ぎだろ…神器の耐久力の消耗の方が早え……。)

 

 

そう、輪廻の息が上がっている理由は天之河に有った。以前に戦った(?)時よりも遥かに強くなっているのだ。

天之河の剣技自体はそれ程に脅威ではない。問題は、天之河の持つ剣だ。スペックで言えば、明らかに輪廻の持つ神器達の方が高いのだが、何故か一撃一撃を返され攻め切れていないのだ。

 

……いや、原因は分かっている。天之河の後ろで援護に徹している八雲紫と、その式神八雲藍の存在だ。

 

天之河が前方から剣でひたすら輪廻に斬り込みを続け、その背後から多彩な妖術が飛んでくる。

 

その組み合わせが地味に効くのだ。無論輪廻はその攻撃全てを弾き飛ばすが、その中に武器の耐久力を減らす効果でもあるのか、武器がすぐに消耗するのだ。

 

 

現にあれだけ合った神器の中で残っているのは、覇剣アレキサンダーと霊刀祢々切丸、魔剣グラムに神槍グングニルの四本だけだ。

 

 

(…チッ、残り4本の神器での一斉攻撃……もうそんなもんしか浮かばねぇたァ、俺もヤキがまわったなァ……だがこれで仕留めれなければアレを使うしかねぇ……もしアレで仕留められなければ………いや、今はこれで倒すことだけを考えろ。)

 

 

そんな思考をめぐらせる輪廻に一番耳障りな声が聞える。

 

 

「どうしたんだ十五夜、もう息が上がってるじゃないか。…しかしお前は俺が想像していたより弱かったな。……次で倒す!」

 

そんな人を舐め切った言葉に、輪廻は軽口で返す。

 

「ハッ!俺に封印の剣を刺した上で、他人に強くして貰って、更にドーピングして援護までしてもらって漸く渡り合えてる雑魚が何抜かしてんだクソボケが。」

 

 

そんな輪廻の言葉にイラついたのか、天之河は巫山戯た事を抜かしながら逆上して斬りかかった。

 

 

 

「うるさい!お前が押されている事は確かだ!十五夜、君はもう要らないんだよ。あの娘達は俺が貰ってあげるからさ、君の部下も一緒にね……光栄に思うといいよ、俺の……天之河光輝の踏み台に成れることをね!。」

 

 

天之河がそんな事をペチャクチャ喋っている間に、輪廻は既に行動していた。グングニルに霊力を込めて天之河に向かってぶん投げて、天之河の後ろからは魔剣グラムが浮遊して斬りかかり、自分はアレキサンダーと祢々切丸を握り締めて、天之河の強さの源である八雲紫達に向かって駆け抜けていた。

 

 

 

 

しかし、天之河は身体の捻りと遠心力を乗せた、回転する一撃でいとも簡単にその攻撃を弾き返した。

 

 

「八重樫流奥義 円骨!」

 

 

ガギィン!

 

 

 

(チッ!やっぱ無理か……仕方ねぇ、次だ!)

 

 

それを認識した輪廻は、直ぐに次の手へと移行するため、持っていたアレキサンダーと祢々切丸を紫達の方へとぶん投げ、地面を靴底削りながら次の手である言葉を紡いだ。

 

 

 

「……テメェなんかに使うのは勿体ねぇぐらいだが…仕方ねぇ……布瑠部…由良由良……」

 

 

その言葉を紡ぐと同時に、彼の纏う力が変わった。

先程までの力は霊力や魔力と言った正の気で、今輪廻が纏っている力は、呪力と言う負の気だ。

 

 

その負の気は、紫達の背筋をゾワリと冷たい物が這い上がるような感覚に陥らせる程の物で、彼女達は無意識の内に各々が取れる最大限の構えを取っていた。

 

 

…そんな事は気にもとめず、言葉を紡ぎ終えた彼の傍らには、目に当たる部分から翼のようなものが生え、背中には方陣らしき物が浮かんでいる、まさに異形の者と読んで差し支えない化け物が、彼の影から這い出てきいた。

 

 

その名は………

 

 

 

 

 

 

 

「───八握剣異戒神将摩虎羅(やつかのつるぎいかいしんしょうまこら)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の本気の戦いが今…幕を開けた。

 




感想くれないとアレキサンダーくんがあなたの元へとGOshoot!

高評価とか言わないからぁ!感想だけでも下さいぃぃ!!無いとやる気がバルスするんですぅ!(支離滅裂な言動)

ちなみにまだまだ勇者(笑)ぶっ殺そうのコーナーでは案を募集中でございます。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=268539&uid=294968

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第二十五話 最凶


こんちわ〜最終章に入った宣言したのに書く意欲あんまりわかなくて新しい作品を生み出してしまった湯タンポです。

という訳で、漸くハジメ強化タグが効果を発揮します。長かったですねー、最初のプロットでは輪廻と合流した後すぐに強化予定だったんですが、輪廻くんが滅茶苦茶するので予定が大分狂いましたよ。


そんな事はさておき、今回はハジメくんや清水君は勿論、ユエを筆頭とするありふれ組や妖夢達幻想郷組、優花ちゃん達も強化するので、習得して欲しい技など有りましたらこちらにコメントお願いします。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=242486&uid=294968


勿論この作品に地球破壊爆弾を持ってこられても困るので、出来るだけ人がやれそうな物でお願いします。


それでは長くなりましたがどうぞ。


ひゅーん

 

シュタッシュタッ

 

 

 

輪廻の突然のワープによって下へと落ち、一時は混乱を極めた一行だったが、落ち着きを取り戻し当然の如くそれぞれが落ちた場所へと着地を決める。

 

 

 

一番前方にいるのは、あの時輪廻に近かったハジメだ。ハジメはまず周りを見渡し、情報の収集を行うと同時に脳をフル回転させ、状況を客観的に見るために思考を巡らせる。

 

 

 

(…地面は小石が混じった砂利と土…この小川の波の音……そして目の前に有る建物は……どう見ても御立派な日本庭園ですねありがとうございます。……とまぁ冗談はこのぐらいにして…混乱は脱したとは言え、流石に清水やユエ達も困惑しているな……やはりあの事の説明ぐらいはしておくか。)

 

 

 

そんな考えに行き着いたハジメが、事態を説明するためユエ達に振り向こうとした瞬間、彼ら一行に少し落ち着いた声音のテノールの声が掛けられた。

 

 

「─やぁ、こんにちは。」

 

 

その声に反応し、その場に居た者達全てが声の方へと視線を向けた先には、肩ほどまで伸ばされ一本に纏められた血を被ったような紅髪が特徴的な、見た目十代後半の狩衣を着た身長百六十センチ後半の青年であった。

 

 

そして彼は続けてこう告げた。

 

 

「…君達が輪廻君(・・・)の言っていた子達かな?」

 

 

 

その言葉を皮切りに、ハジメを除く全員が感じていた困惑が警戒心へと切り替わる。

 

 

そもそも、輪廻を君付けで呼べる者はほぼ居ない。

せいぜいミレディや恵理が、呼び捨ては何か恥ずかしいから…、という理由で君付けしている位であり、それ以外で輪廻を君付け出来るのは輪廻と同等かそれ以上の存在と推測できる。故に彼女らは困惑から警戒へと気持ちを切り替えていた。

 

 

 

しかしそんな彼女らを他所に、唯一状況を理解しているハジメが、確認を取るかのように声を掛けた。

 

 

 

「…じゃあお前が主が言っていた変態野郎(・・・・)って奴か?」

 

 

そしてハジメのそんな言葉に、ヽ(・ω・)/  ズコー と言う風にコケた青年は「…いや変態野郎って……まぁ間違ってはないと思うけど……流石に酷くない?……僕どんなイメージ持たれてんの……?」と供述した。

 

しかし青年は、自分に集まる視線が変態(犯罪者)を見る目になっている事を理解すると、1つ咳払いをし、ハジメ達へと向き直すと、ハジメの問に答え始めた。

 

 

「…ゴホン……あーうん、そうだよ。変態野郎では無いけどね……じゃあまず一応確認何だけど、僕の事を知っているって事は、君は輪廻の従者ってとこかな?………だとすれば君が輪廻から一番信頼されている(・・・・・・・・・)様だね。…勿論此処で何をするか、何故ここに転移させられたか…知っているんだろう?」

 

 

 

「………」

 

 

青年のそんな言葉に、その場のものたちの視線がハジメへと向くがハジメは顔を逸らし応えようとしなかった。

 

 

しかしそんなハジメを他所に、青年は言葉を更に続けた。

 

 

 

「…まぁいいか……そんな事より、君達にはまだ情報が伝わってないみたいだね。…………まぁ簡単に言うとだね、君達には強くなって貰う。……そこの君も輪廻から聞いているだろう?」

 

 

「………」

 

 

 

 

『お前達を今から転移させる。その転移した先に居るやつには話を通してあるから、そいつに修行を付けてもらって強くなって来い。……俺の封印を解くにはそれしかねェ。……アイツは変態野郎だが強さは本物だ、ちゃんと戻って来いよ。』

 

 

青年のそんな言葉に、ハジメは輪廻からの言葉を思い出し、続けて彼に肯定の意を示し言葉を紡いだ。

 

 

 

「…あぁ、確かに俺はそう聞いている。本当ならさっさと始めろ変態野郎、時間の無駄だ。」

 

 

「君口悪いって言われない?僕はいまその言葉で絶望的に傷付いたよ?……まぁいいか……それより、そろそろ始めようか……と、言いたい所なんだけどねー、流石に人数が多過ぎるのよ。時間の事を考えると、半分ぐらいしか鍛え切れないと思うんだよねぇ……。」

 

 

ハジメの鋭利な言葉の刃物で傷付きながらも、最もな正論をぶっぱなす青年。確かに流石に鍛えるにしても人数が些か多過ぎる。

 

ハジメ、清水。

 

ユエ、シア、ミレディ、ティオ、雫、恵理、妖夢、レミリア、フラン、アリス、咲夜、さとり、セリカ、シズエ。

 

おまけに優花と香織。

 

 

 

なんと計二十人の大世帯である。

 

 

因みに余談だが…、流石に輪廻もここまでの人数になるとは思って居らず、当初の予定が大分狂っているのだが、それはまた別のお話。

 

 

 

…ともあれ、流石に多過ぎる修行対象に、彼も少し難色を示す。が、しかし、そこはちゃんと対応策を聞かされていたハジメ、その対応策とは…

 

 

「『狐はやるから最強に仕上げろ、地盤は固めてある。』…って言えと言われたんだが……心当たりはあるか?」

 

そんな意味不明過ぎる言葉だった。 しかし、青年にはなにやら心当たりが有ったようで、先程の言葉をくるりと見事な手のひら返しをした。

 

 

「なん…だと…!?………さあ、さっさと始めようか!修行は早いに越したことはない!残り二十日で君達を最強に仕上げてあげよう!ほら、何してんの早く着いてきなって!」

 

 

そんな余りにも早い変わり身に思わずハジメが大声で突っ込んだ。

 

「テメェは手のひらくるくるランドでも開園してんのか!? ……一体なんなんだコイツは……」

 

 

変態である。

 

 

「…まぁいい、時間も無いから急ごう。…行くぞお前ら。」

 

 

 

そんなハジメの言葉に、総勢19名が頷いた。

 

 

 

 

 

 

「キッツネ♪キッツネ♪狐のお姉さん♪漸くお姉さんが手に入る〜♪お姉さんは僕のもの〜♪」

 

 

 

 

……そして、1人の変態ははしゃいでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして彼らの修行は始まった。

 




今回は短かったけど許してくれよな!あくまで今回は導入の部分だからね、仕方ないね。


これして欲しい!って人はこっちhttps://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=242486&uid=294968

勇者(笑)殺す方法浮かんだよ!って方はこっちですhttps://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=268539&uid=294968

それではサラダバー、オマケだけここに置いときますね!



オマケ 次回予告


嘗ての戦友であり怨敵である八雲紫と対峙する輪廻!

しかし、最低の勇者(笑)天之河との協力によって嵌められ、輪廻は弱体化を余儀なくされる。

そして、輪廻は残された力を振り絞り、彼ら相手に奮闘するが、徐々に劣勢になりとうとう切り札の1つを解放する。


だが、彼自身もまた己の心と対峙する。


入り乱れる戦局、炙り出される裏切り、暴かれる過去、果たしてハジメ達は間に合うのか!?


次回 第二十六話 心の在処


※これは現在の情報であり、次回予告通りの話が投稿されるとは限りません。あと感想くれたら投稿ペースが上がります。
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第二十六話 魂のルフラン

気付いたら1ヶ月立ってた湯タンポです。いや遅くなってしまって本当に申し訳ない。

今回は多くは語りません、強いて言うなら感想くださり。


では











後悔は行動の証という。しかしそれは意味無くそれが悔い





 

 

「八握剣異戒神将摩虎羅」

 

 

 

そう言って輪廻の影から這い出てきた異形の者は、本来なら一家相伝の十種影法術と言う術式で召喚できる式神であり、血筋ではない輪廻が使用できるはずもないが、彼の底無しの膨大な呪力、そして、『十体の内魔虚羅以外を顕現出来ない』『術式による顕現は一度きりしか出来ず、破壊されると二度と顕現出来ない。』『魔虚羅と主従契約等は結ぶ事が出来ない』『この術式による領域展開は出来ない』と言う特殊な縛りを多数自身に課す事でその無茶を通し、魔虚羅を本来の強さより性能を底上げした状態で召喚した。

 

 

「…これは不味いですわね…!」

 

 

 

そして、輪廻がそこまで不利な縛りを多数課してまで魔虚羅を召喚した理由は、魔虚羅が持つ『あらゆる事象へ適応する』と言う能力にある。

 

あらゆる事象への適応とは、つまるところ一度食らった攻撃に対する耐性を獲得し、相手の状態・性質に合わせて、より有効な攻撃を見舞えるように変化するという事であり、要は『最強の後出しジャンケン』である。

 

 

 

「行け、摩虎羅」

 

「────────!」

 

 

宙に浮いた輪廻が、摩虎羅の肩を叩きながらそう言うと、それに答えるかのように咆哮を上げると、退魔の剣を携え天之河へと迫った。

 

 

 

「ツ!…天翔閃・改!」

 

 

そして、天之河は迫る摩虎羅に対し、驚きながらもそう叫んで剣を振り、光の刃を幾重にも生み出し摩虎羅へと近づく。

 

 

しかし、幾ら自分の力で天之河が元の何百倍まで強化されてるとは言え、あんなモノに自ら進んで行くものなど余程の馬鹿であり、戦況が見えていない。そう判断した紫が天之河を止めようとするが……。

 

 

「…ま、待ちなさい!アレはあなた一人で対処出来るものでは…!」

 

 

「遅せぇよ」

 

 

 

時すでに遅く、目の前には力の大半を失おうとも、最強(絶望)の烙印を押され続ける輪廻(破壊神)が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────

 

 

不味い─そう思う暇もなく、紫は輪廻の放った回し蹴りに対処出来ず、百メートルほど地面を転がりながらボールの様に吹き飛んで行った。

 

藍が紫の元へと駆けていく。

 

 

その瞬間、突如として輪廻が胸を押さえて倒れ込み、片膝を付いて血を吐いた。

 

 

「………チッ…やっぱ慣れねぇ事はするもんじゃねぇな…。」

 

 

彼がそう吐き捨てるのも至極当然のこと、何せ彼は力の大半…実数にして八割程を封印されているのだ。

 

幾ら膨大な呪力を持っていると言えど、たった二割では乙骨憂太並の呪力しかない(いやそれでも充分多いが…)ので、普通に考えて一家相伝でしか使えない生得術式を、一部と言えど使えるはずも無い。

 

そこでそんな無茶を通すための物が、彼の所有する呪物…特級呪物、両面宿儺の指二十本、そして特級呪物、呪胎九相図一番から九番、それら全てを取り込み元の半分近くまで呪力を増やし、摩虎羅を召喚したのだが……。

 

「………チッ!あんまり残ってねぇな……」

 

 

当然、そんな強大な力の行使に代償が無いわけがなく、輪廻は自分の魂を削って術式等を行使している。

 

魂が削り切った後に待って居るのは、死など甘いものでは無い、魂の完全消滅…つまり、宇宙の塵となってしまうだけなのだ。

 

それ故に、輪廻はこのままでは残り三時間ほどしか戦えない。

 

 

「チッ……やるしかねえか。」

 

だからこそ輪廻は短期決戦を選んだ。故に斬魄刀を携え、その名を紡いだ。

 

 

 

 

卍解 残火の太刀

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

卍解 弐式 残火 天叢雲

 

 

その名を紡いだ時、輪廻の持つ刀が赤く、紅く、赫く、赫刀よりもなお紅く染まっていく。

 

「旭日獄衣」

 

そして、輪廻の周りに何処までも赫い炎が纏われる。

同時に輪廻の白髪が肩元まで伸び、所々に紅髪が混じっている。

 

 

その炎剣で織り成すのは最強の剣技。

 

 

「日の呼吸 始ノ型 曙光の瞳 」

 

 

額から目元にかけて紅の痣が広がる。

 

 

日の呼吸 一ノ型 改 円舞一閃

 

 

その瞬間、輪廻の姿がブレる。

 

 

 

そして向かった先は…今まさに此方へ攻撃をしようと手を向けている紫と…その式神だ。

 

 

 

既に刃は紫のすぐ側に迫っていた。

……消えたと見間違う程の速度だ、無理もない。

そして迫り来る刃が秘める力はとんでもないものだった、まぁそれもそうだろう、タダでさえ呪力で最大まで強化した肉体に、日の呼吸を掛け合わせ、更に日の呼吸の中でも強化に特化した新しい型でバフをかけ、その上で卍解弐式の解放で、全ての基礎パラメーターはその状態から三乗されている。(もっとも、それでも封印される前の千分の一程度だが…)

 

…まぁつまるところ…そんなものを喰らえば、紫はスコップで掘られた砂場の様に一瞬で消えてしまう。

 

 

「死ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________

 

 

 

 

死を感じた身体がその死を回避しようと、今まで感じてきた全ての記憶、経験、その全てを漁り始め、その影響か視界がとてもゆっくりになって行く。

 

すぐ側で私の事を身を呈して守ろうとしている藍も、知覚できない程速いはずの輪廻の動きすらも、全てがスローモーションに見える。

 

もう間に合う訳ないじゃない…藍ったら。

 

 

永遠にも感じられる一瞬が終わろうとしており、記憶が強制的にフラッシュバックする。

 

 

嗚呼、これが走馬灯か……こうやって改めて見てみると案外悪くない人生だったかも知れないわね……フフっ…元々この戦いだって勝てるとは思って居なかったけれど…こうやって死ぬなら間違いでは無かったかもね。

 

 

 

瞼を閉じる前、最後に見えたのは大嫌い(大好き)な男の顔。

 

 

 

…貴方の顔を見て死ぬなんて最悪(最高)じゃない。

 

 

 

 

 

 

……もし、もしもあの時(・・・)、私が最低で身勝手な女になって居なければ、こうはならなかったかも知れない。

 

 

…貴方が隣に居てくれれば良かった……あの人(・・・)の次だとしても、例え█奴隷に成り下がったとしても、貴方の側に居られればそれで良かった筈なのに……あの日、あの時、私が欲を掻かなければ……。

 

…でももう後の祭り、過去を変えることは誰であっても出来ない、たとえ貴方だろうと。

 

 

 

 

だから、最後にこれだけは言わせて下さい

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方が大好きでした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

輪廻さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






















きっと俺はお前が大嫌いだ。









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第二十七話 テスト


皆様お久しぶりです。湯たんぽでそ。


いや、本当に月日が流れるのは早いですねぇ。気付いたら5ヶ月ほど経っていました。

久しぶり過ぎて前書き何書けばいいか忘れました(笑)

さて、今回めちゃ遅かった分何時もより長いです。なので時間がある時にでもお読み下さい。

そして報告なのですが、現在最終話の執筆をしております。なので早ければ今月で今作は終わりとなるかもです。まぁ遅くても年内には終わる予定です。

それでは長くなりましたがどうぞ




 

 

 

 

「じゃんけんぽん、あっち向いてほーい!」

 

そんな声と共に俺の体は地面に叩き付けられる。クソッ!巫山戯た掛け声とは裏腹に、動きは完璧に達人レベルだ!

 

 

ドガッバキッベキッ

 

「がっ!?」

 

「ほらほら〜もっと早く動かないと僕の攻撃は避けられないよーん。」

 

 

奴の攻撃は腹立たしい事に俺がほぼ知覚出来ねぇ速度だ。気付いたら地面とキスしてる。

 

その上奴の攻撃は、一つ一つが喉や鳩尾、脇腹等の急所を的確に捉えてくる。

 

 

 

「ほいほいほいほい、(=͟͟͞͞꜆꜄・ω・)=͟͟͞͞꜆꜄꜆ソイヤソイヤ」

 

 

 

しかも奴の攻撃はただ殴るだけじゃ無ぇ、ジャブ、裏拳、ロシアンフック、掌底、ラリアットとかを打ってきたと思えば、回し蹴りや膝蹴り、かかと落としとかの蹴り技を撃ってくる。

 

正直、素人に毛が生えた程度の俺にはその程度しか技の種類は分からんが、実際はもっと多くの技を打ってきてる。

 

 

『変幻自在』まさにその言葉を体現するような攻撃―――正直言って勝てる道筋が全く見えねぇ……。

 

 

だがな…

 

 

「その程度じゃ…諦める理由にはならねぇんだよ…!!」

 

 

ドパンッ!

 

 

 

「ワッ(´⊙ω⊙`≡´⊙ω⊙`)アブネッ」

 

 

 

「何が危ねぇだよこんちくしょうが!掠ってもねぇじゃねぇかっ!」

 

 

 

そう言いながら俺は態勢を起こし距離を離した、がやはりその隙を奴が見逃す筈がねぇ!

 

俺が態勢を起こした時にはもう踏み込んでやがった!

 

 

「やっぱり君が一番見込み有りそうだよねッ!」

 

ドスッ!

 

 

やつはそう言って短刀…いわゆるドスを抜いて俺の腹を突き刺した。

 

その衝撃は凄まじく、俺の体が一瞬浮く程だった。

畜生が、見込があるって言いながら刺してんじゃねぇよ!

 

 

実力はこいつが確実に上だッ!このままうだうだやってもジリ貧……ならこれっきゃねぇだろ!

 

 

「ガアッ!」

 

 

ガシッ!

 

俺は血を吐きながらも奴の腕をつかみ、腹にドンナーを押し当てこう言った。

 

「捕まえたぜぇ!」

 

 

「ウッソだろお前」

 

 

 

ドパパパンッ!

 

 

 

ほぼ同時の三連射だ、これを避けられたら勝ち目はねぇと思っていたが……

 

 

 

「グッ!……やりますねぇ!」

 

 

まだ行けるじゃねぇか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___________________________

 

 

 

 

話は少し前に遡る。

 

 

あの後(二十五話参照)、奴に案内された俺達は、奴から事の説明等を聞かされる事になった。

 

 

 

「とりあえず、自己紹介がまだだったね。僕の名前は荒神朱雀、輪廻の……まぁ友人みたいなもんさ。気軽に朱雀とでも読んでちょ。」

 

 

 

みんな「……」(最後の語尾どうにかならんかったんか)

 

ハジメ「説明あくしろよ(やっぱこいつまともに話す気ないんか?)」

 

 

 

「……ゴホン、えー、じゃあ三行で纏めるね。」

 

 

 

今までで1番強い敵現れて輪廻まぢやばい。

 

輪廻くんぱわー封印されて勝てんかもしれんから君達をここに送ったじゃろ?

 

ようこそ 死ぬかも!?地獄のスパルタ修練場☆←今ココ

 

 

 

「馬鹿かお前は、そんなんで分かるわけないだろ、もう少し詳しく説明しろ。」

 

 

ハジメの罵倒が飛ぶ。

 

 

「えぇ....(困惑) しゃーないなァ、ほならボクがよう教えたるわ。」

 

奴は巫山戯た口調でそう言ったあと、こう語り始めた。

 

 

 

「君らがここに送られた理由は、まぁさっきも話したけど強くなってもらう為さ。

 

そんで今から君達には僕と戦ってもらう、あ、勿論僕は人数に対応するために分身して戦うけどね。

 

…とりあえず先ずはテストだ、君達が僕が直々に鍛えるに値するかを確かめさせてもらう。

 

じゃ、よーいドン。」

 

 

『は?』と 奴を除く全員がそう思っただろう、しかしそんな事を思えた内はまだ良かった、奴は本当に幾つかに分かれ、本気で俺達を殺しにかかって来た。

 

 

 

 

 

そして話は最初に戻る。

 

 

 

 

_

 

 

 

 

 

 

相打ちで当てたは良いがこっからどうする…?なんて考える暇すらねぇ!手を動かしながら考えねぇと殺られるッ!

 

 

本当に奴は隙がない!俺と奴では根本的なスピードが違う。

 

 

「随分と悠長に考え事してるみたいだね!」

 

 

チッ!不味い!

 

ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!

 

そう思いながらドンナーを連射するが全くあたらねぇっ!どんな反射神経してやがる!? 初速10kmはあんだぞ!?

 

「ここまで近づかれると二丁拳銃って邪魔だよね〜!」

 

クソッ後ろを取られたッ!?拳じゃ間に合わねぇ!!

 

俺が後ろを向く頃には目の前に冷酷無比な刃が迫っていた。

 

 

「じゃ、目に別れの挨拶しときや。」

 

 

奴がそう言って振るった閃光のような斬撃。

 

それが俺の右眼が見た最後の光景だった。

 

 

そして一瞬が経ち、右目があった所に灼熱が走った。右目は義眼だが、無駄な技術力によって擬似神経が組み込まれており、痛覚も感じるというわけだ。

 

 

「がァァァァァァッッ!!!」

 

俺は叫んだ、余りの痛みに。ヒュドラモドキに目を蒸発させられた時だってここまで痛みは酷くなかった。だがある意味当然だろう、俺は斬られる痛み、焼かれる痛み、神経毒に侵される痛み、溶かされる痛みを同時に味わったのだから。

 

 

「…秘剣 陽炎・髑斬……なんちゃって♪」

 

 

やつはそう言ってバックステップで一度離れようとするが…逃さねぇ!

 

俺は再び痛みによって叫び出したくなる気持ちを抑え、今の俺が出せる最高速度で駆け抜ける。

 

 

手に宝物庫から出した一振の日本刀を構えて。

 

 

 

「お返しだ!もう一発ぐらい貰っとけや!」

 

 

 

今の俺が出せる最大火力。主から預かった御業。

 

其れを全部奴にぶつける!

 

 

 

 

「これが俺の取っておきだ。」

 

 

 

空間そのものを破壊し、斬り伏せた全てのものを無へと帰す、神の一撃。

 

 

 

『斬無一閃』

 

 

「死んどけ!!」

 

 

 

その言葉を最後に、俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが俺のとっておきだ。」

 

 

 

ちょちょ、あの刀はまさか!? なんてものこの子に持たせてんだあの馬鹿! この子死ぬぞ!?

 

 

 

「ちょ!ちょっとタンマタンマ!それ使ったらキミ死ぬって!」

 

 

 

流石にこんな所で死なせる訳には行かないので、僕はこの子を止めたのだが………。

 

 

「ハッ! この位で死ぬ様な柔な鍛え方してねぇっつうの! それに俺が死ぬより早くテメェを殺せば良いだけだろうが!」

 

 

うんこの子見た目を裏切らない凶暴さだよコレ!? てか考え方めっちゃ脳筋じゃん!?

 

 

 

「死んどけや!!」

 

 

 

でも……

 

 

 

「まだ甘いね!」

 

 

 

その瞬間、朱雀の姿がブレ、気付いた時にはハジメの顎を打ち抜いていた。

 

 

 

「がぁっ!」

 

 

 

顎を打ち抜かれたハジメは脳震盪を起こし、視界がぐらついた後に意識を手放した。

 

 

 

「あやっべ、調整ミスって意識刈り取っちゃった☆」

 

 

 

 

「まぁいいや、取り敢えず家の中持ってこ。」

 

 

 

朱雀はそう言ってハジメの襟を掴み、そのままズルズルと屋敷まで引きずって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー

ーーー

ーーーー

 

 

 

 

「…………知らない天井だ…」

 

 

 

 

人生で1度は言ってみたいランキング17位を言った俺は、ベッドから上体を起こして足を降ろした。 その瞬間、耳障りな声が部屋に響く。

 

 

「アハハハ!起きて最初の一言がそれかい? やっぱ君面白いね。」

 

 

そう言って果物の乗った盆を持ちながら奴は現れた。

 

 

 

「……結局、お前が言ってたテストってのに合格したのか?」

 

ショリショリ

 

 

「うん、君は合格だ。 …って言っても君以外まだ合格者居ないんだけどねw 未だにみんな僕と戦ってるよw」

 

 

…どうしてコイツは人の神経を逆撫でする様な口調なんだろうか?普通に腹立つ。

 

 

ショリショリ

 

 

「……てか、お前さっきから何してんだ?」

 

「気になる?」

 

「気になる木になる。」

 

あれ?今ちょっと誤字ったような__

 

「ジャーン!兎の林檎〜!!」

 

「あぁ、あの病室で良くある………」

 

そこまで言って俺はやつの手元を見た。よく見るとそれはあの有名な皮が耳になっているタイプの兎では無く………

 

 

「何でてめぇそんなにクオリティ高ぇんだよ!!」

 

ガチのタイプの兎型だった。

 

 

「ま、食べてみなよ♪ ……そんな顔しなくたって毒なんて入ってないよw」

 

…怪しすぎるが、少し腹も減ったし食うか。 …こう言うのって食べる時微妙に勿体ない気がするよな。

 

 

シャクッ

 

 

 

「……こんな奴に出されたものを美味いと思ってしまった自分が憎い。」

 

「それはどういう事かな? ……まぁいいや、皆のテスト内容気になっちゃうでしょ〜? ので、モニターでバン!」

 

 

奴がそう言った途端、唐突にモニターが現れやがった。しかも妙に近未来感漂うオマケ付きで。

 

 

「絶対これ今の技術じゃ無理だろ。」

 

「(´・3・)bシー もう始まるよー(小声)」

 

 

殴りたいこの笑顔。 …まぁそんな事はさておき、林檎食べながら観戦するか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___________________________

 

 

 

 

ユエside

 

 

 

 

 

「 あははははは!!君が輪廻の嫁とかウソでしょw‪w‪w(ヾノ・∀・`)ナイナイw腹筋死ぬ‪w‪w‪w‪w‪w‪」

 

 

この男ッ!

 

 

「一度死んで……!【蒼天・散】」

 

 

空中に直径3メートル程の蒼き火球が幾つも生み出される。その数は三十は下らないであろう。

 

 

「あは☆そっちが魔法ならこっちも対抗しよーっと。

召喚(サモン)!【村雨】」

 

 

一体何に対抗しているのかは分からないが、彼は召喚魔法と呼ばれるもので二振りの日本刀を携えた蒼い髪の美少女を呼び出した。

 

 

「村雨、御身の前に見参致しました。如何様にもお命じくださいませ、我が主。」

 

 

「んじゃ、彼女を痛めつけてきてちょーらい☆」

 

 

「承りました。 …全ては我が主の為に。」

 

 

 

彼女はそう言うと刀をひと振りし、会話を待つ訳もなく近付いてくる火球を一刀両断して見せた。

 

 

そして、目を見開くユエに対しこう続けた。

 

 

 

「我が主に降りかかる火の粉は、全てこの村雨が斬り伏せます!

双刃村雨(ムラサメ)、いざ参る!」

 

 

(彼女は恐らく接近型。その上スピード重視のスタイルと見た。であれば回避しながらの魔法の連発は有効打になり得ない! ………なら仕方ない、此方も接近で打ってでるしかない! 接近戦は苦手だけど、輪廻にある程度は教わった。だからできる筈……!)

 

 

対するユエはそこまで思考を巡らせ、一振りの燃えさかる剣を手に生み出した。

 

 

その名は……

 

 

「魔剣【レーヴァテイン】」

 

 

全てを焼き滅ぼし、破壊し尽くす炎帝の魔剣。等と長々と語りたい所だが……

 

しかして、そんな説明をする暇もなく、村雨と呼ばれた少女はユエの懐へと潜り込む。

 

 

次の瞬間には彼女の刃がユエの首筋にまで肉薄し、薄皮一枚の所でそれを回避する。

 

 

(危なかったッ!あとほんの一瞬回避が遅れていれば細切れになってた!……でも、次は私の番!)

 

 

瞬間、ユエが炎剣を振り抜き、1秒前まで村雨がいた場所を焼き尽くす。

 

 

「……なかなかどうしてやりますね。……ですがこれは避けれますか!?」

 

 

勿論そんな攻撃で村雨を倒せる訳がなく、彼女は一瞬にしてユエへと迫る。無論ユエも魔法で迎撃するが、何分距離が近すぎて有効打には未だなり得ていない。

 

 

蒼海双裂閃 蒼淵(そうかいそうれつせん そうえん)!」

 

しかし、対する村雨はゴリゴリのインファイターであり、どれだけ距離があろうと詰めて細切れにする。それが彼女のプレイスタイル。…つまり、最初から村雨が圧倒的に有利なのだ、最初から。

 

 

だが……

 

 

「くっ!蒼龍斬!」

 

 

その程度で諦めて倒される女であれば、輪廻に認められるわけも無いし、ましてや魑魅魍魎の巣窟である輪廻の嫁達を纏め上げられる訳もあるまい。

 

彼女もまた、最強の一角を担っているのである。

 

 

 

そして、暫くは村雨が踏み込み、ユエがカウンターを仕掛ける。と言うパターンを幾らか繰り返し、体力の面で徐々にユエが優勢になっていた。

 

 

 

「……ハァッ…ハァッ……っく!……体力の消耗が激し過ぎる…!やはりお師匠様のようには行きませんか…。」

 

 

だがその程度では彼女は挫けない、もっと大きな挫折を何度も味わっている。 何度防がれようが幾らでも踏み込む。それが彼女の強さなのだ。

 

 

 

そうして彼女達は拮抗していた、が、彼女達にとって不幸な事に、ここには奴がいた。『最凶』と称される男が。

 

 

 

彼女達は睨み合っていたが、ほんの一瞬ユエの身体が硬直した。無論村雨がその隙を逃すはずも無く、刹那の時間で距離を詰め、その刀を振るう。 が、朱雀の声が響き首の皮一枚の所で止まる。

 

 

「村雨、もういいよ、後は僕がやる。」

 

 

「分かりました。」

 

鶴の一声の如く、その声が届いた瞬間に刀を鞘に戻し、朱雀の後ろへと控える。

 

 

 

さあ、『最凶』の真髄をみよ。

 

 

 

___________________________

 

 

 

 

 

 

「聞こえますか?今あなたの脳内に直接語りかけていますぺろぺろぺろぺろロリババア。」

 

「お前は殺す!」

 

 

「えなにこっわ。運転すると人格が豹変するタイプかしら…?ま、それは置いておいて………君さぁ、ぶっちゃけ弱いのになんで輪廻の正妻とか言っちゃってんの?」

 

 

(此奴っ!死ね!)

 

 

「蒼天!」

 

 

ユエが突発的に放った魔法を、朱雀は素手(・・)で掴み取り、そのまま消し去ってしまった。 此方を睨み付けるユエを傍らに朱雀は話し始める。

 

 

「そう、まさにこれ。中途半端に強いからこうなる。僕だったらこの火球に対応するルートは480通りあるし、君がせっせここの弱っちいマッチみたいな火を当てるまでに、僕は君を殺す方法を80通り以上持ってる。……さぁ、どうやって僕に勝つんだい?」

 

 

無理に決まっている。ユエはそう思った。何故なら、この男に自分が持てる力全てを放っても、かすり傷すら付けられないと先程の攻撃で悟ったから。

 

 

 

ユエがそんな事を考えた次の瞬間、朱雀が急に後ろを向いたかと思うと、背後に控えていた村雨に近づいて首を絞め上げ、そのまま持ち上げてこう言った。

 

 

 

「なぁ村雨、僕はさっき痛めつけろって言ったはずなのに、修行中でもない彼女との戦いで接戦してるの?中途半端に自分と実力が近い相手には初撃で決めろって彼奴にも教わったはずだろ?何やってんの?」

 

 

 

「あっぐぅ゛…゛っ申゛し訳゛!ごおっ!さ゛゛いま゛せ…ぇ…゛ぇんん゛゛全…゛゛…て……え!私……゛っの!失……゛゛…゛態…゛…゛…っで…す」

 

 

 

ドゴッ

 

 

 

理不尽過ぎる朱雀の怒りに対し、村雨は声にならない声を上げて必死に謝るが、朱雀はそれを無視して彼女の鳩尾に膝蹴りを叩き込んだ。

 

 

「がっ…ひゅ……か…ひゅ…」

 

 

そのあまりの衝撃に、村雨は横隔膜を刺激され呼吸困難に陥ってしまった。 その上朱雀は彼女の細い首をへし折る勢いで締め上げているため、呼吸など出来ようはずも無く、声を上げるどころか脳に充分な酸素を送ることすら出来無い。

 

 

「んな事分かってんだよ、てめぇ本当に何で怒られてるのか分かってんのか? ……良いか?お前の代わりは幾らでも居るんだ、てめぇを殺しても何も痛くねぇ。……散々お前も見てきただろ?僕の命令に応えられない無能が何十人も死んでいく所をさ。」

 

 

ミシミシ ギリギリ と、村雨から明らかに人体が出しては行けない音が出ており、白目を剥きかけているが、そんな事を気にした様子も無く(・・・・・・・・・・・・・・)-顔を近づけて睨み付けてそう言った彼は、先程ユエに向かって爆笑していた人物とは最早別人の様であった。

 

 

 

「あがっ……あ……ぅ…」

 

「返事すら出来ねぇ様なら今殺してやんよ!」

 

 

業ッ! ダッ!

 

 

そんな理不尽過ぎる事を言いながら、マジで息の根を止める寸前、村雨の首を絞めていた朱雀の手首から先が焼け落ち、同時に彼女の姿も消えた。

 

 

 

 

 

「……どういうつもりだい?何故先程まで殺し合っていた相手を助ける?」

 

 

そう、何故かユエが村雨を助けたのである。

 

 

 

「一応君さっきまで村雨と殺し合いしてたよね?いつの間にそんな助ける仲になったの?ていうかなんで助けたん?」

 

 

「うるさい!」

 

 

朱雀がユエに彼女を助けた理由を問おうとしたが、そんな言葉で一蹴されてしまった。

 

そしてユエはなおもペラペラと喋り出そうとする朱雀を遮ってこう続けた。

 

 

「なんで助けたなんて決まってる。私が助けたいと思ったから、助けた方がいいと感じたから!……もっと言えばその方が輪廻のためになると思ったから。そう思ったから私は自分の直感に従っただけ!」

 

 

そう叫ぶユエに朱雀は冷たく言葉を放つ。

 

 

「エゴだね。面倒臭いタイプのエゴイストだ。」

 

 

そんな冷淡な言葉に対しユエはこう語った。

 

 

「…確かに私は輪廻とその身内以外がどうなろうとどうでもいいし、それがエゴだと言うのもわかってる。……でも私は輪廻が好き、大好き、狂わしいほどに大好き。

 

…その大好きな輪廻が望むことなら何でもする。 誰が相手でも殺せと言われれば殺すし、足を舐めろと言うなら舐めるし、四つん這いで犬になれと言うなら犬になる。

 

殴りたい気分だと言うならサンドバックになるし、ヤリたいと言うなら幾らでもヤるし、どんな趣味だって合わせてみせる。 そして、死ねと言われれば死ぬ。

 

…その私のエゴを否定して邪魔する者は必ず殺して、私のエゴを突き通す!それが私の全てだから!」

 

 

ユエがそう言い切った瞬間、彼女の不死鳥が如き炎の翼が生え、手には片手剣であるレーヴァテインとは異なり、ユエの身の丈程ある両手剣を握っていた。

 

 

「【神剣 グラム】……その力を私に貸して。」

 

 

ユエのそんな姿に対し、朱雀は何やら納得したかのような顔をしてこう言った。

 

 

 

「………、………、そうか、そういう事か!……

お前がこいつらを育てろってのはそういう事か!」

 

 

クハハハ!と高らかに笑い始めた朱雀に、ユエが困惑しながらこう問うた。

 

 

「何……笑ってるの……。」

 

 

そんなユエの問いに対し、朱雀はこう続けた。

 

 

「いやなに、こっちの話さ。…それより、さっき君に弱いなんて言ったのは撤回するよ。あと、君も合格だ、ハジメ君の所に言ってご飯でも食べて待ってると良い。」

 

 

そして、ユエの困惑は解決されぬまま終わったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー

ーーー

ーーーー

 

 

病室にて。

 

 

トコトコトコ

 

 

「おう、ユエも終わったか。」(モグモグ)

 

何かを口にしながらそう話すハジメにユエがひとつ疑問を投げかけた。

 

 

「ハジメも終わった?それに、何食べてる?」

 

「麻婆豆腐定食。」

 

「まーぼー?」

 

「ああ、そう言ってもわかんねぇか。俺や主の故郷の料理だ。」

 

 

と、ハジメ達が話していると……

 

 

「やぁやぁ元気かい?僕は元気が有り余って村雨で10回ヤッてきたよ。」

 

 

……ヤバいやつが来た

 

 

「やっぱお前変態じゃねぇか」

 

「…セクハラ。」

 

「猿かよお前」

 

「……ん、発情した犬」

 

 

そして、登場数秒でボロクソである。

 

 

「ふ、ふふふ、そこまで言うならこれを見せてやる!」

 

逆ギレした朱雀がそう言って指を鳴らした瞬間、ハジメとユエの身体が宙に浮き、そのまま椅子に拘束されてしまったのである。

 

そして、先程までハジメがユエの試合を見ていたモニターで何かが映り始めた。しかも2人の位置はそのモニターがガッツリ見えるところである。

 

 

「おいてめぇ何しやがる!さっさとこの拘束を解きやがれ!」

 

「……何をする気!……もし私に手を出せば輪廻が必ず殺す!」

 

 

嫌な予感を感じ取った2人がそう騒ぐが、その程度で『最凶』と呼ばれた男は止まらない。

 

 

「有ったかもしれないifストーリーのビデオさ!120分あるからじっくり見なよー。 じゃ!僕は村雨の相手とテストの監督で忙しいから!バイビー!」

 

朱雀はそれだけを言い放って慌ただしく部屋を出ていった。

 

 

「クソ!行っちまった。 … …ユエ、何が始まると思う?」

 

「…分からない、でもろくでもないものなのは確か。」

 

「……だな。」

 

 

そしてふたりがそうこう言ってる間にビデオは始まりを迎えたのであった。

 

タイトルは………

 

 

 

 

『ifストーリー!もしユエを助けたのがハジメだったら!♂♀編!』

 

 

 

「ふざけんなぁぁ!おどれは何見せようとしてくれとんじゃボケがァ!」

 

「嫌ァァァァ!!誰かとめてぇぇ!!」

 

 

全てを察した2人がそう叫ぶが誰も反応するものは居なく、無情にも映像は進むばかりである。

 

 

 

『…ん、ハジメ、ここ気持ちいい?』

 

 

『ああ、良いぞ…ユエ。』

 

 

「「ああああああああぁぁぁ!!!!!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう修行は始まってるよん、頑張って乗り越えたまえ若人達よ。……べ、別にあのビデオ見せたのは嫌がせだけじゃないんだからね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___________________________

 

 

 

 

さて、ユエとハジメが死んだ顔でビデオを見ている頃、

清水、シズエ、セリカの三人組は何をしているかと言うと………

 

 

 

 

「さあこれもお食べ。あ、清水君、桜餅とあんころ餅食べるかい?シズちゃんにはみたらし団子と水まんじゅうとどら焼き、あとはエクレアとシュークリームとなごやんと三色団子あげる。セリカちゃんはパンの耳でいいよね。」

 

「あ、ああ。」

 

「そ、そんなに食べられません。」

 

「なんで私だけパンの耳!?」

 

 

 

何故かお茶会をしていた。

 

 

いや、最初はこんな風にテストと言う名の死合をしていたのだが……。

 

 

 

『月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮 弐ノ型 珠華ノ弄月 参ノ型 厭忌月・銷り』

 

『業火 爆炎ノ太刀 二式!』

 

 

『援護してやる! 紫電十七連!ブレイズバースト!アイスブリザード!イクティンクション・レイ!』

 

 

 

『はーい、3人とも合格でおっけーよー』

 

 

((無傷………))

 

 

『じゃお茶会でもしよっか!』

 

 

『『え?』』

 

 

という訳で始まったのである。いや、何でそれで始まったのか意味がわからないが、まぁとにかくそんな感じで始まったのである。

 

 

 

「……あの。」

 

 

そうしてお茶会が始まって暫くすると、シズエが声を上げた。

 

 

「ん?どうしたんだい?あ、まだ菓子いるかい?」

 

 

「あ、いえ、そうじゃなくて……私たちこんな事してていいんですか? 他の人達は皆もう鍛錬に入ったりしてるんですよね? ……私は他の人に比べて弱いから、強くなれるなら早く鍛錬して輪廻さんの力になりたいんです!」

 

 

それを聞いた朱雀は流石にふざけるのはやめて、真剣な顔で煙草を蒸してこう言った。

 

 

「……まぁそーなんだけどさ、ぶっちゃけ君達3人に教える事って殆ど無いのよねぇ。

 

ハジメ君だったら新しい武器作るのとか立ち回りがどうこうで教えれるし、ユエちゃんなら新しい力の使い方だったりで教える事も出来るんだけど……。」

 

 

朱雀はそこで一度言葉を切り、再び煙草を吹かす。そして、続けてこう言った。

 

 

「……君たち三人は良く言えば完成されてるし、悪く言えば伸び代がない、そういう状態なのよ。自分達でも薄々気付いてるんじゃない?

 

……才能ってパンみたいな物なの。才能っていう生地を伸ばして延ばして、ある一時を過ぎると伸びなくなってきて挫折する、でもまだ何度か捏ねる、つまり才能の方向性を変えることでまだ生地は伸びる。ここまでは勝手になるんだ、才能って。だけど、ここからパンが出来るまでの工程って面倒臭いんだよ。才能で言えばそれが努力。

 

 

で、パンってここから二回発酵させるんだ、これは自分でできる努力を始めた時と極めた時。同じように膨らみ続ける。でもそれじゃ膨らみに限界があるし、何より食べれない。

そこで焼く、つまりは誰かに師事したり、誰かに教わって努力をし続けた段階だ。

 

んで、君達は絶賛その焼き上がった状態な訳。」

 

 

朱雀はそこまで言うと、新しい煙草を取り出してもう一度ふかした。

 

 

それを聞いた彼女達は暫く考え込むように黙りこくった後、代表してシズエが質問をひとつ投げかけた。

 

 

「……つまり、私達はもう強くなれないって事ですか?」

 

「……ん〜〜、強くなる手段が無いわけでもないんだけどねぇ。」

 

シズエのそんな質問に対し、朱雀はそう返して、続けてこう言った

 

 

「……どうしてもっていうんなら鍛えてあげてもいいよ?ただ、弱音吐いたら即叩き出すし、死ぬ程キツイけど……それでもやるかい?」

 

 

彼の言葉に、彼彼女達は当然の如くこう答えた。

 

 

「ああ、勿論だぜ!」

 

「強くなれるなら…!」

 

「当然だ。輪廻の隣に立つ女としてもっと強くならなきゃ行けないからな」

 

 

と。

 

そんな彼等に対し、朱雀はマカロンを食べて満足気にこう言った。

 

 

「よし!よく言ったね!いい子達だ、気に入った!良いだろう、君達を今の10倍の強さにして見せよう!」

 

 

そうして、彼らのテストは終わりを告げ、地獄の如き鍛錬が始まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもやっぱりもうちょっとお菓子食べてからにしない?」

 

「「「もういい(です)!」」」

 

 

 

……やっぱりもう少し掛かりそうかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「いやァ、君たち強いねぇー才能と伸び代の塊だわァ〜。」

 

そう言って高らかに笑う朱雀の周りにはボロボロになった少女たちが転がっていた

 

 

「くっ………強すぎる。」

 

「い、異常な程攻撃が速かったですぅ。」

 

「連携を組んでも妾達がかすり傷1つ付けることすら出来んとはの……。」

 

「あはは……これ余裕であのクソ野郎なんかより断然強いじゃん、いくらミレディちゃんでも無理ゲーかなー?」

 

「…僕達の連携がなんの意味もなさなかったね。」

 

「銃弾より速いナイフを避けるって身体能力どうなってんのよ……。」

 

「……皆を回復する暇すら無かったよ。」

 

 

彼女達は、いわゆるありふれ組である。念の為補足しておくが、上から雫、シア、ティオ、ミレディ、恵理、優花、香織である。

 

その彼女達がボロボロで転がっている理由は、まあ見ての通り戦った後なのである。

 

 

勿論彼女達は無策でただ突っ込んだ訳ではなく、雫 シア 優花の3人が前衛、ティオとミレディが中衛、恵理と香織が後衛に分かれ、連携を取って戦ったのだが、結果は秒殺。一通りの連携が終わった瞬間に後衛を潰され、中衛と前衛も一瞬でのされてしまったである。

 

 

 

そうして彼女達が横たわっていると、再び朱雀の声が響く。

 

 

 

「いやー弱かったねぇ〜君達。でも落ち込むことは無い、君達全員合格さ。 実際君達伸び代の塊なんだよ、だから鍛錬すれば問題なく強くできる。」

 

 

その言葉に安堵した彼女達だったが、次の言葉で驚愕する事になる。

 

 

「じゃ、今から始めるからね!さ、たって準備して、ホラホラ早く!」

 

 

 

「「「えっ!?」」」(全員)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___________________________

 

 

 

 

 

「ねぇ君達お喋りしようよ〜。僕割とお喋りだから話し相手が欲しいのよ。」

 

そんなふざけ度100%の朱雀の言葉に対し、銀髪の少女がピシャリと冷たい言葉を放つ。

 

 

「黙れ!貴方と話す事など何一つありません!さっさと死んで下さい!」

 

 

その銀髪の少女は、何を隠そう魂魄妖夢であり、その周りに居るのはレミリア達幻想郷組であった。

 

 

そして、何故初対面であるはずの彼女達と朱雀が何故こんなに険悪な状態なのか、それは時間を少し遡るとわかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話はハジメが病室で林檎を食ってた頃に戻る。

 

 

 

最初に彼と相対した彼女達は普通だった。

 

 

「やぁやぁ君たち久しぶりだね。あれから少しは強くなったかい?」

 

 

「え、えぇっと、私たち初対面ですよね?私は魂魄妖夢と言います。」

 

「私はレミリア・スカーレットよ」

 

「私はフランドール・スカーレット」

 

「その従者の十六夜咲夜と言います。」

 

「アリス・マーガトロイド、人形使いよ」

 

「私は古明地さとりと言います、所で貴方の心が読めないのですが……」

 

 

初対面のはずなのに、妙にフレンドリーで馴れ馴れしい朱雀に困惑しつつも自己紹介をするくらいには。

 

 

 

「……成程、敵の記憶を改竄して仲間にするとは、アイツもなかなかエグい事するなぁ〜。……でも面白そうだから弄っちゃお〜っと。」

 

 

しかし、朱雀がそう言って指を鳴らした途端、彼女達は豹変した。

 

 

「…貴方が全部仕組んだんですね!許せません、貴方は私達が今ここで殺します!行きましょう皆さん!」

 

 

「「了解!」」(全員)

 

 

そう言った彼女たちは、体制を組んで連携をとって朱雀を殺そうと踏んだが、無論それを易々とさせる訳もなく、彼女達は殆ど何も抵抗出来ぬままただ蹂躙されて行った。

 

 

「せやぁ!スペルカードはつ…」

 

「えい!……踏み込んでから技を打つまでが遅すぎる、これならカブトムシの方が強いんじゃない(笑)」

 

「カハッ!」

 

妖夢の剣を軽々と躱し、そんな事を言いながら蹴りを入れる。それを見たレミリアとフランは、同時に弾幕を放って攻撃するも、それも軽く避けられてしまう。

そこに咲夜のナイフによる投擲が入るが、それも難なく回避される。

 

「この程度かぁ、やっぱり弱いなぁ〜。もっと楽しませてくれないかな〜」

 

「クッ、舐めるなァ!!」

 

怒り狂ったレミリアが神槍を投げる。それは音速を超えて飛翔するが、朱雀はそれを片手で受け止める。

「うわっ!?危な!!流石にこれはちょっとビックリしたぞ……。」

「まだだぁ!!」

更に追撃で魔槍を投げて、それに追従する形で紅符『スカーレットシュート』を発動して放ち、逃げ道を塞いで行く。

だが、それでもなお朱雀の余裕は崩れなかった。

 

「まぁいいけどさぁ〜。僕に勝てると思ってんの?」

 

そう言いつつ彼は、両手から炎を生み出して、それを槍の形にして投げ返した。

 

「ぐあああああ!!!」

 

それはレミリアの両肩に深々と刺さり、彼女はそのまま地に伏した。

 

「お姉様!!」

 

「次は君の番だよ♪」

 

そう言って朱雀は今度は手から火球を作り出し、それをまるで野球ボールのようにフランに向けて放った。

 

「きゃあ!」

 

「妹様に何するんですか!」

 

咲夜はその時間を止めて何とか助けようとするも、「無駄だってば〜。」と言う声と共に、時は再び動き出した。そして次の瞬間、朱雀の手からは先程の火球とは比べ物にならない大きさの炎の塊が生まれていた。

それはまるで太陽のような輝きを放ち、熱波だけで周りの空気を揺らしていた。

 

それを見たアリスとさとりは、思わず奇襲の手を止めてしまった。

 

その上さとりはようやく読めるようになった朱雀の心を読み、朱雀がこれから何をする気かを悟ってしまい、完全に戦意喪失してしまった。

 

「ふむ、君たちはどうやらもう終わりみたいだね。じゃあそろそろトドメ刺すよ。」

その言葉を聞いて、全員が死を覚悟した。そんな中、唯一戦う意志を見せていたのは妖夢だった。

彼女は最後まで諦めずに刀を構えていたが、それは全く意味の無い行動だった。何故なら……

 

「まだやる気なのかい?でも僕はもう飽きたから終わらせちゃうね〜。」

 

朱雀はそう言って一瞬で距離を詰めると、妖夢の首筋に手を当てた。その瞬間、妖夢はその場に倒れ伏した。

その光景を見て、レミリア達は絶望した。

 

「君たちの記憶を消させてもらうよ?……あぁ、安心してくれて良いよ。多分明日には元通りになってるからさ。」

 

その言葉を最後に、彼女達の意識は途切れた。

 

〜 現在に戻る 〜

 

 

 

 

 

「はぁ、全く。君達も弱すぎだよね〜。こんなんで僕に挑んできたのかと思うと悲しくなってくるよ……。」

 

「黙れ……黙れ黙れ黙れェ!よくも私の妹と従者を……そして友人をもてあそんでくれたなァ!お前だけは絶対に許さない!私が必ず殺す!」

 

レミリアは憎悪に満ちた顔で叫ぶ。しかしその表情は、すぐに驚愕のモノへと変わる事になる。

 

「……へぇ、君は面白いね。僕の能力が効かないなんて。」

 

「……貴方の能力は、人の精神を操る事。……つまり貴方に操られた人は、貴方の思い通りに動く人形となる。……違う?」

 

「ざ〜んね〜ん☆全然違いま〜す。て言うか万が一それを当てられたとしてもなんの意味があるの?」

 

そう、例えレミリアが能力を知っていたとして、だからなんだというのだ。

レミリア以外が朱雀の能力によって倒された時点で、最早打つ手など無い。

 

「確かにそうかもしれないわね……。でも私には一つだけ、この状況を打破する方法がある。」

 

「……何それ?教えてくれるかな?」

 

するとレミリアはニヤリと笑いながら、こう言った。

 

「貴方を殺すことよ!」

 

彼女はそう宣言すると同時に、吸血鬼の真祖たる力を解放し、翼を広げて飛び立った。そしてそれと同時に、周囲に血色の霧を展開していく。

それはどんどん広がっていき、ついには辺り一帯が紅く染まる程になった。

 

「これで準備は整った。後は貴方を倒すだけだわ。」

 

「……それが君の切り札って訳か。なら僕もそれに応えようかな。」

 

朱雀はそう言って、手に巨大な炎を生み出す。その炎は次第に形を変えていき、やがてそれは龍の姿へと変化していった。

「これが僕の技の1つ、『紅蓮の業火』だ。この技を受けた者は、魂すら残さずに焼き尽くされる。さぁ、受けてみなよ。」

朱雀はそう言い放つと、炎の龍を解き放った。

それは真っ直ぐにレミリアに向かって飛んでいく。しかしレミリアはそれを冷静に見据え、右手を前に突き出した。

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」

 

放たれたのは、今まで彼女が使っていたものよりも遥かに大きな槍だった。それは朱雀の攻撃を軽々と飲み込み、そのまま突き進んでいく。

だがそれでも、炎の龍は止まらない。次第に大きくなっていくその姿を見ても、レミリアの余裕は一切崩れない。

「残念だけど、私の勝ちよ!」

そして炎の龍は遂に朱雀に到達し、彼を呑み込んだ。

炎の熱量により周囲の気温は一気に上昇し、炎の勢いは更に増していく。

「どう、やったかしら……。」

レミリアの額からは汗が流れ落ち、その表情にも疲労の色が見える。

炎の熱気に当てられ、新たな力をも使ったのだ、相当体力を消耗しているようだ。

暫くして、炎は徐々に収まって行く。そして完全に消えた時、そこには無傷の朱雀が立っていた。

 

「……まさかここまでやるとは思わなかったよ。正直予想外だった。」

 

「どうして無事なの!?あれだけの攻撃を受ければ、流石に無傷ではいられないはずなのに!」

 

レミリアはその光景を見て驚愕した。

あの攻撃を食らえば、普通の妖怪ならば間違いなく灰すら残さず消し飛ぶであろう。仮に大妖怪であっても、そのダメージは計り知れないはずだ。下手をしたら殺せる程である

それにも関わらず、目の前にいる朱雀は傷どころか服さえも焦げていなかったのだ。

「ま、この程度で殺られるようじゃ幻想郷に全面戦争なんて出来ないさ。……じゃあ、そろそろ終わらせようか、僕もいい加減に飽きてきた。」

 

朱雀はそう言うと、今度は自分の番だと言わんばかりにレミリアに襲いかかった。

「くっ、来るな!」

レミリアは必死に弾幕を放つも、全て避けられてしまう。そしてついに、彼女の前まで辿り着いてしまった。

 

「さぁて、君はどんな声で鳴いてくれるかな?楽しみだな〜♪」

 

「う、あぁ……!」

 

レミリアは恐怖で動けず、ただ立ち尽くす事しか出来なかった。

そして朱雀が拳を振り上げ、彼女目掛けて振り下ろそうとした瞬間……「そこまでです!」

突然、その場に第三者の声が響いた。

 

「お姉様!大丈夫!?」

 

「……全く、手間をかけさせないでください。」

 

「もう、咲夜さんたら酷いですよ、レミリアさんは私達が復帰するまでの間耐えてくれたんですから」

 

「すいません、戦意喪失したフリをするのがなかなか難しくて……復帰するまで時間が掛かってしまいました。」

 

「まぁ、私は息をずっと潜めてたんだけどね、人形遣いの根気を舐めちゃダメよ。」

 

上から順にフラン、咲夜、妖夢、さとり、アリスである。

 

何故倒された筈の五人が此処に居るのか、レミリアは驚きで顔を染めながら質問した。

 

 

「貴女達!倒された筈なのにどうして!?」

 

 

 

「えっと、簡単に言えば『時間稼ぎ』ですね。私達の能力を応用して、皆が復活するまでの時間を稼いでいました。」

 

「本当はもう少し早く来たかったのですが、中々上手く行かなくて……」

 

「でもなんとか間に合ったみたいね。」

 

「後は任せて下さい、お嬢様。」

 

「この人は私達が倒すわ。だから安心して、お姉様!」

 

五人はそう言いながら、朱雀と対峙する。

その様子を見た朱雀は笑い声を上げ始めた。

 

「アハハっ!君達はホントにすごいねぇ、特に覚り妖怪の子。あれは戦意喪失したように見えて、どう反撃するか練ってたとはねぇ……いやはや、本当に君達の友情と信頼関係には脱帽だよね。」

 

朱雀は心底感嘆した様子でそう言った後、真剣な顔つきになりこう続けた。

 

 

「信頼し合えるなんて本当に………虫唾が走る!」

 

「「……ッ!」」

 

その言葉を聞いた途端、レミリアとフランの顔色が変わる。そして二人は同時に叫んだ。

「「私達から離れなさい!!」」

 

その叫びと同時に朱雀は二人に向かって突進してきた。

それを見ていたさとりとアリスは、すぐに迎撃態勢を取る。妖夢と咲夜は何かあった時の為に待機だ。

 

「さっきまでのお返しをさせて貰いますよ!」

「喰らいなさい!」

 

まずは二人がかりで弾幕を放つ。しかし朱雀はそれを難なく避け、逆に攻撃を仕掛けてきた。

 

「邪魔だよ、どいてくれないかい?」

 

「そう言われて退くわけ無いでしょう!」

「いいからさっさと倒れなさい!」

 

二人の放った攻撃が朱雀に迫る。だがその直前、彼は突如姿を消した。そして次の瞬間、さとりの背後に姿を現した。

 

「へぇ、今のを避けるんだ。やっぱり強いね。」

 

「くっ、速い!」

「……どうやら貴方はスピードに特化しているようですね。」

 

「うん、そうだよ。僕は速さに特化した妖怪なんだ。だからパワーはそこまで強くない。まぁ、それでも並の妖怪よりはよっぽどあるけど……やっぱりそろそろ使わせてもらおうかな!」

 

そう言った朱雀は、懐から全長45cm、刃渡り30センチ程のドスを出して抜き、軽く構えた。

 

「さぁ、始めようか!殺し合いを!」

「……来ます!」

朱雀はそう叫ぶと、今度は先程よりも速く動き出した。

「うわっ!?」

「ちょ、速すぎじゃないの!?」

「何なのよあれ!」

「くっ、これじゃあ狙い撃てない!」

「流石にこの速度は厳しいですね……」

あまりの速度に、他の者達も攻撃する事が出来ずにいた。

そんな中、レミリアは冷静に状況を分析していた。

(確かに奴の動きは凄まじい……だけど、所詮は直線的な動きしか出来ないはず。それなら見切れる!)

そして彼女は、朱雀の攻撃を避け続ける事を決めた。

 

「あらら?君は僕と同じでスピードタイプなのかな?」

 

「……だとしたら何だと言うのかしら?」

 

「別に、ただ同じタイプの相手と戦う機会ってそんな無いからさ……ちょっと楽しみになってきちゃった♪」

 

「ふん、私は全然楽しくなんて無いわね。」

 

「あー、つれないな〜。でもまぁ良いか!君が楽しめなくても僕さえ楽しんでいれば問題は無いからね!」

 

「……狂ってるわね。」

 

「その言葉は僕にとっちゃ褒め言葉さ♪」

 

レミリアはそう呟いた後、朱雀の猛攻を紙一重でかわし続ける。

その様子を見て、さとり達は驚きの声を上げた。

咲夜だけはレミリアの実力を見抜いている為、驚かなかったが……それでも驚いてはいた。

レミリアの回避能力は、咲夜のそれとほぼ互角だったからである。

彼女の能力、運命を操る程度の能力。それを応用して相手が次にどのような攻撃をしてくるのかをある程度事前に予測し、避けているのだ。

つまり彼女にとって戦闘とは、読み合いである。

しかし朱雀は違った。彼は、完全に直感だけで動いているように見えた。

 

「なんですかあの人!あんな滅茶苦茶な戦い方してるなんて信じられません!」

「えぇ、それにお嬢様とここまで戦える妖怪がいるなんて……」

 

さとりと咲夜がそう話す中、妖夢は一人疑問を感じていた。

 

(何故だろう……どうしてこんなにも胸騒ぎがするんだろう?)

 

その答えはすぐに分かった。それは、彼の狂気に当てられているからだ。

しかし本人は気づいていない様子で、ずっと悩み続けていた。

 

「う~ん……やっぱりおかしいなぁ。」

「……どうしたんですか、妹様。」

「いや、なんか違和感があってさ……何か変な感じがしない?」

「……いえ、特に何も。」

「そっか、私の勘違いかな。」

 

フランは首を傾げながら、再び朱雀の方を見た。すると、ちょうど彼がレミリアに向かってドスを突き刺そうとしている場面が目に入った。

 

「お姉さま危ない!」

 

フランは思わず叫んでしまった。しかしそれが逆に朱雀を調子付かせる結果となってしまった。

 

「アハハッ!これで終わりだ!」

「しまッ―――!」

 

レミリアは刺される直前、思わずフランがいる方向を向いた。

 

そちらを見ると、フランと咲夜が此方へ駆けつけようとしており、アリスとさとりは弾幕を準備していたが、両方とも僅かに遅かった、あと1秒反応するのが速ければ間に合っただろうが……。

 

 

レミリアは心の中で舌打ちをした。そして、もう駄目だと思い目を閉じた。

ドスッという音が聞こえたが、不思議と痛みは無かった。

恐る恐る目を開けると、そこには背中に刀を生やしている朱雀の姿があった。

 

「えっ……?」

 

レミリアは自分の身に起こった事が理解出来なかった。

ドスが体に突き刺さっているにも関わらず、何故か血が流れていなかった。

「あっ……あぁ……!体が……僕の体が無くなっていく!?」

朱雀は突如苦しみだし、その場に倒れ込んだ。

「一体……どういう事なの……?」

 

「ふぅ、何とか間に合いましたね。」

「全くよ、いきなり走り出すんだもの。驚いたわよ。」

「ごめんなさい……でも、何だか嫌な予感がしたもので。」

「う〜ん、私には分からなかったけどなぁ。」

そこに現れたのは、そういえば先程の面子の中に居なかった妖夢と、此方へ駆け付けていたフランと咲夜だった。

 

「一体何があったの?」

 

未だ混乱しているレミリアがそう問うと、体に刺さったドスを抜きながら妖夢が答えた。

 

「あの時、皆さんより早く気付いたんです、レミリアさんが刺されそうになっている事に。本当にギリギリでしたけど、間に合って良かったです!」

 

という事らしいが……まだ疑問は尽きない。

 

「じゃあ私が刺されても何も起こらなかったことと、彼奴がぶっ倒れた原因は?」

 

その疑問には少し遅れて来たさとりたちが答えた

 

「レミリアさんが無事だったのは、妖夢さんのお陰で威力が弱まったことと、私が防御術式を掛けておいたからです。彼が何故倒れたかは分かりませんが……備えあれば憂いなしって奴です。」

 

「そして、あの人が刺された瞬間に咲夜とフランが助けに行ったから……そういう事でしょう。」

 

「成程ね、それで妖夢はどうやって気付いたのかしら?」

 

「それは……その……勘……としか言いようがないですね。」

 

「……まぁ良いわ、助かった事は事実なのだし。感謝しておくわ。ありがとう。」

 

「い、いえそんな!当然のことをしたまでですよ!友達……ですから!」

 

顔を真っ赤にして答える妖夢を見て、レミリアはクスリと笑みを浮かべた後、朱雀の元へ歩み寄っていった。

 

「貴方、大丈夫かしら?生きてる?」

 

そう問いかけると、朱雀は顔を上げ、苦しそうな表情をしながら口を開いた。

 

「はぁ……はぁ……君は……いや、君達は…変な奴だね、敵の心配をするなんて……それにさっきまで殺意マシマシだったじゃん。」

 

「あら、それは誤解よ。私は別に最初から殺す気なんか無かったわ。ただちょっと痛い目を見てもらいたかっただけ。」

 

「それ……同じ意味じゃない?」

 

「いいえ、全然違うわ。だって、今から貴方を殺すつもりなんだもの。」

 

「へぇ……僕を……殺せるのかい?」

 

「勿論よ。さて、遺言はあるかしら?」

 

「そうだねぇ……うん、あるよ。」

 

「そう、なら聞かせてくれる?」

 

朱雀はニヤリと笑うと彼女……いや、彼女達全員に向けてこう言った。

 

 

 

「ああ…………そう。……僕ね………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

分身の1つとして、君達とやるお芝居は結構楽しかったよ」

 

グシャッ!

 

そう言った彼は、何処からか飛んできた岩の下敷きになり、物言わぬ肉の塊へと変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「……………え?」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






そう言えば朱雀君イメージ図です

普通

【挿絵表示】

怒怒バージョン

【挿絵表示】

Picrewの「いろんなタイプの男の子」でつくったよ! https://picrew.me/share?cd=GsXOuIdq4A #Picrew #いろんなタイプの男の子

あと村雨ちゃん

【挿絵表示】

Picrewの「妙子式2」でつくったよ! https://picrew.me/share?cd=eYzslRREYo #Picrew #妙子式2


という訳で、ここまで読んだ皆さん、まずはお疲れ様です。今回初めてAIをちょこちょこ使いながら書いてみましたが如何でしょうか、そもそもAI使って良いんですかね?そんなにガッツリ使った訳じゃないんですが……まぁ、それはおいときまして、前書きでも言った通り、遅くとも今年でこの作品はおわります。


ですが、私自身まだまだ駆け出しで、作品をまだまだ生み出したいという欲がございます。

少しづつでは有りますが、自分でもやはり始めた頃よりは上手くなってるんじゃねえかという気がしなくも無いです。将来的にはゆっくり茶番劇とかで自分の作品を元にした奴とか作ったりしたいので、まだまだこんな所で挫けて居られません!少なくともあと十年はネット小説家(笑)として活動するつもりですし、まだまだしたい事は沢山あります。執筆活動もその内の一つです。

最後に、これからももっと創作活動を活発にするつもりですが、無論自分の作品が人を選ぶこともわかってますし、どんな批評でも受け付けるつもりです(でも人としての常識は持ってね)
ですから、少ないとは思いますが、この作品、私の作品が好きな方は応援いただけると幸いです。更新頻度はカスですが生暖かい目で見守ってやってください。


あと感想くれると嬉しいので更新頻度が上がります。「仕方ねぇなぁ!」って思った方はぜひ感想、評価ポチだけでもいいのでお願いしますm(_ _)m

では。



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第二十八話 クソ野郎は何があってもクソ野郎。



BLEACHで一番好きなキャラは藍染惣右介、どうも湯たんぽです。

超久しぶりに連日更新でござる。

最終話までは連日更新の予定です。

もう話すこと無くなってきたんですけど……あ、そだ、一年ほど前からわたくしお風呂にハマっていまして、何処か良いお風呂があったら教えて下さい!


ではどうぞ!


因みに輪廻君のテーマ曲は前前前世です。私も好きな曲です。








 

 

 

「オラァ!死ねェ!」

 

ドゴッ!

 

「ガハッ!……それくらいで俺は死な無い!喰らえ!」

 

ドシュッ!

 

「ガッ!…死んどけクソ之河がァ!」

 

ドスッ!

 

「クソ!いい加減に倒れろ!トドメだ十五夜!」

 

ザシュッ!

 

 

「ガぁッ!……クソ野郎……が」

 

そう言って地面に倒れ込んだ輪廻に、天之河が追撃を下す。

 

 

ザクッザクッザクッザシュッドシュッグサッ。

 

 

何度か剣を振り下ろすと輪廻の目から光が失われた。

 

 

その傍らには涙を流し立ち尽くす紫の姿があった。

 

 

「ごめんなさい……輪廻さん……ごめんなさい」

 

 

紫はそう言いながら彼の亡骸を凍らせ、封印の術式を付与した。

 

 

そして輪廻は幾度目かの封印をされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

話を少し戻そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

あの時、輪廻の技を受ける寸前、紫が一筋の涙を流した。

 

 

それに気付いた輪廻の刀の加速がほんの一瞬、刹那にも満たぬ時間鈍る。

 

 

その一瞬が明暗を分けた。

 

 

彼の刃がそのまま紫を切り裂く瞬間、何処からか人影が現れ、その刃を止める。

 

 

「…流石イレギュラー、と言った所でしょうか、凄まじい威力ですね。」

 

その人影は美しい女だが、その美しさが逆に人形の様な印象を持つ。

 

「チッ!木偶人形(ノイント)がよ」

 

 

そして、その女はクソ野郎……つまりエヒト(ラスボス())の兵隊の1人だ。

 

 

よく周りを見ると、一人の男を囲うように、ノイントと同じ容姿を持つ女達が重装備で数万人並んでいた。

 

 

「で?何でてめぇがその真ん中に居るんだよ、天之河(・・・)。摩虎羅はどうした。」

 

輪廻がそう言うと真ん中にいた男……天之河が前に出て来てこう言った。

 

「何だ?俺の事がそんなに気になるのか?まぁ仕方ないな、俺は彼女達に慕われるような男だからな。ちなみにさっきの化け物ならもう倒したぞ。」(天之河)

 

「何かお前すっげぇキモくなったな、エヒトでも乗り移ってんのか?」(輪廻)

 

「え!?あ、ああ、よくわかったな!」

 

「なんでお前が驚いてんだよ!!」

 

輪廻が全力でツッコんだ後、紫の方を見て言った。

 

「おい、あいつらを殺ったら次はお前だ。覚悟しておけよ?」

 

「あら、それは怖いですわね……。では私もあなたを殺す準備をしておきますわ。」

 

そして輪廻と天之河は同時に動き出す。

輪廻は無数の斬撃を放ち、周りの使徒達が死傷者を出しつつもそれを全て受けきると、今度は天之河が突っ込んで来る。

 

「チッ!時間切れか!もうあんま力も残ってねぇな!」

 

卍解が解けたことに愚痴りながらも、輪廻はそのまま刀を構えた。

 

「せやァァ!!!!」

 

対する天之河は聖剣を振り上げ、輪廻に斬り掛かる。

 

「フンッ!」

 

しかし輪廻はその攻撃を避けるどころか、逆に掴み取り、そのまま背負投げをする。

 

「ガハッ……」

 

地面に叩きつけられた天之河だったが、すぐに起き上がり再び斬りかかる。

そこから二人はお互いに傷付きながらも戦い続ける。

 

「いい加減死んどけや!この雑魚がァァ!!!」

「貴様こそさっさと倒れろ!!このクズ野郎ォォ!!」

 

そして遂に決着の時が訪れる。

輪廻は、最後の一撃を放つため大きく振りかぶる。

対する天之河は、全身全霊の力を込めて迎え撃つ。

 

「これで終わりだァァァ!!!」

「負けるかァァァァ!!!」

 

輪廻の最後の一閃により、天之河の首が落ち、それと同時に輪廻自身も倒れる。

 

「……ハァ……漸くめんどせえのが死んだか。」

 

輪廻はそう呟くが、まだ終わりでは無い、と言うかこれは前哨戦みたいな物だ。

 

 

「あら、もう終わったんですの?まだ掛かると思ったんですけれど……。まぁいいですわ。」

 

何せまだ数百万の使徒と、面倒臭い大妖怪が待ち構えているのだから。

 

 

「クソが!そう言えばまだまだ残ってやがったなぁ!……まぁいい、まとめて皆殺しゃあいいか。」

 

勢い良く起き上がった輪廻はそう言うと大量の使徒に刀一本で突っ込んで行った。

 

「死ねオラァ!てめぇら全員バラバラ死体だァ!」

 

 

今の輪廻はまさに鬼神と呼んで差し支えない、敵の血飛沫を浴びながらも使徒達斬り殺していく。

 

無論彼女達とて弱い訳では無い。紫と藍の援護の中、接近して何とか戦おうとしているのだが、近づいた瞬間に切り殺されるので戦闘にすらなっておらず、ただの蹂躙と何ら変わらない。

 

 

そして漸く半分程の使徒を倒し終えた輪廻は、ゆっくりと紫と藍の方に歩いていく。

 

「やっと終わっ……」

 

その時、突如として輪廻の体が500メートル程吹き飛んだ。

 

「あ"?一体何が起きやがった……?」

 

輪廻は体を起こしながらそう言い、先程まで自分が立っていた場所に目を向ける。

 

そこには、先程輪廻が殺した筈の天之河が立っており、此方へと聖剣を向けている。

 

そして、天之河は輪廻を睨むとこう言った。

 

「先程は良くもやってくれおったな!

……だが同時に感謝するぞ、何せ我はこの肉体を手にする事が出来たのだからな!」

 

そう言って天之河(エヒト)は輪廻に向かって駆け出した。

 

「おいおいマジかよ、首が落ちて生きてるとかどこの不死身主人公だよ……まぁ俺が言えた事じゃねえが……しかもあの感じだと完全に乗っ取られた感じか?まぁ元々どっちもそんなに変わんねぇが……。」

 

そう言いつつ、輪廻も天之河(もうそのままでいいか)を迎え撃とうとする。

 

「だがお前は脅威となる、全知全能は我だけで良いのだ!死ねェェ!!」

 

天之河がそう叫びながら聖剣を振るうが、輪廻はそれを難なく避ける。

 

「オイオイ、お前そんなんじゃ当たらねぇぞ?もっと本気で来いよ。剣振り始めたての餓鬼か?」

 

輪廻が煽るが、天之河は聞こえていないのか、それとも無視しているのか、ひたすらに聖剣を振り続ける。

 

「ッチ、つまんねぇな。」

 

輪廻はそう言うと、天之河の攻撃を避けながらその腕を切り落とした。

しかし、切られた箇所からは直ぐに新しい手が生えてくる。

 

「再生持ちとかチートだろ、でも俺もそんなに言えないんだよなぁ……。」

 

そう呟きながらも輪廻は次々と天之河の腕や足を斬り落としていく。

 

「無駄だ!!貴様ごときに我が負ける事など無い!!」

 

そう叫ぶ天之河を無視し、今度は心臓を貫く。

 

「その言葉そっくりそのまま返すぜ。」

 

輪廻はそれだけ言うと、天之河の頭を踏み潰す。

 

そして、オマケとばかりに指を鳴らし、魂ごと焼却したのであった。

 

「さて、次はてめえらだ。さっさと死にやがれ。」

 

輪廻はそう言い、残った使徒達に斬りかかって行く。

 

「「「ギャァァァァ!!」」」

「煩えんだよ雑魚共が!」

 

そう言いながら、もはや人の言葉を失って向かってくる使徒達の首を跳ねる。

 

「「「アァァァァァ!!!」」」

「黙れってのが分かんねえのかァァ!!」

 

そしてまた一人、使徒の首が飛ぶ。

 

「チィ!数が多過ぎるな……個々の強さは大したもんじゃねぇが、このまま一匹ずつ狩ってたら時間が足りねェ。……使いたくなかったが仕方ない、解放するか。」

 

彼はそう言うと、刀を携えたまま動かなくなった。

 

勿論その隙を逃すまいと、いく千もの敵が輪廻の周りに群がる。

 

そして、彼女達の刃が彼を捉える寸前、輪廻はその名を紡いだ。

 

 

 

「卍解 三式 夜叉の残火」

 

 

その瞬間、輪廻の周りに群がっていた半径数十メートルに居た使徒は蒸発した。

 

 

「さァ、とっとと終わらすぜェ!」

 

 

そうして輪廻は殺戮を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、紫と藍はとある準備を進めていた。

 

「……藍、貴女は良いの?こんな事をして。」

 

紫のそんな問いに対し、藍は思わず準備の手を止めて答えた。

 

「……私だって本当はこんな事したくありませんよ!……でも、私は紫様の従者です、紫様がやれと言うのであれば私は何でも致します。……たとえかつての恩師である輪廻様を殺すことでも。」

 

己の従者のその叫びに、紫は目を背け、言い訳がましい言葉を重ねる事しか出来なかった。

 

「ごめんなさい、貴女にこんな事を手伝わせて……勿論嫌よね、たとえ一時でも好きになった人を殺せなんて言ってるんだがら………」

 

そして、紫も準備の手を止め、こう呟いた。

 

「………最低ね、私って。」

 

「いえ、紫様だけが悪いわけではありません。悪いとすれば、全てはあの男のせいですから。」

 

藍は紫を慰めるようにそう言った。

 

「ありがとう藍、じゃあ、そろそろ始めましょうか。輪廻が来る前に終わらせないと。」

 

紫は覚悟を決めた表情でそう言い、再び作業を始めた。

 

「はい……これで私も最低な女の仲間入りですね…。」

 

そして、二人は輪廻が使徒達を殺し終えるまでに、必死に準備を進めていった。

 

 

「オラァ!これで終わりだクソ共がァ!!」

 

そう言いながら、輪廻は最後の一人の頭を斬り飛ばした。

 

「ったく、雑魚過ぎて途中で飽きたわ。……さて、残る2人は何処に……」

 

そして、血を払った刀を鞘に収めながらそう呟いた瞬間だった。

 

ザシュッ

 

「あ"あ"?」

 

輪廻が背後から突き刺されたのは。

 

「なんで…テメェがいやがる…天之河。魂ごと焼却した筈だ…。」

 

輪廻は信じられないものを見たような目をしながらそう呟いた。

 

「フハハッ、残念ながら我はまだ死んでおらんぞ?それにしてもまさか我がここまで追い詰められるとはなぁ……。だが、それも此処までだ。お前を殺すまで我は死ねん様だ。」

 

そう言うと、天之河は突き刺さったままの剣を抜くと同時に輪廻を全力で蹴り飛ばした。

 

輪廻はバウンドボールの様に跳ねながら弾け飛び、壁に激突した。

 

軽く300メートルは飛んだ輪廻は、頭から血を流し、ふらつきながらも何とか立ち上がったが、そこで自分の違和感に気付いた。

 

(傷が再生しねぇな……運動能力も落ちてる上に軽度の脳震盪、能力が殆ど発動できねぇ……こりゃあいよいよ持ってやべぇな……)

 

そして、周りをよく見渡して見ると、そう遠く無いところに紫と藍の姿があった。先程から妙に力が出ないのも2人が関係してるであろう。恐らく特殊な結界でも張っているのだろう。

 

そう考えていると、耳障りな奴の声が辺りに響いた、どうやら近づいて来たことに気付かぬ程この体はポンコツになった様だ。

 

「どうだ?これが我が力、この世界では『ちーと』と言うらしい。そして、我の能力は『不死』ではなく、『不滅』、つまり、永遠に死ぬ事はないということだ!」

 

そう高笑いする天之河を見て、輪廻は心底うんざりした顔を浮かべてこう言った。

 

「ああそうかよ……それで?その内生物と鉱物の間の存在になって考えることでもやめる気か?」

 

すると、天之河は再び馬鹿にした様な笑みを浮かべながらこう返した。

 

「ククッ……いずれはそれも良いかも知れんな?……まぁそれはともかくとして、まずは貴様に引導を渡してやる。覚悟しろよ?我を侮辱し、殺した罪は重いぞ?……さぁ、今度こそ死ね!」

そう叫ぶなり、天之河は輪廻に向かって一直線に走り出した。

それに対し、輪廻はため息を吐きながらこう言った。

 

「俺を殺したきゃ殺すが良いさ、殺せるもんならな、こちとらテメェより強い奴なんざ何度も戦って来てんだよ!!……それに俺は死ぬ時は好きな女の膝の上って決めてんだ、こんなとこで死ねるかよ!」

 

そう言い放つと、輪廻は刀を構え、迎撃態勢に入った。

 

そして、遂に両者の距離がゼロになり、両者は互いの刃をぶつけ合った。

ガキンッ!という金属音が鳴り響き、次の瞬間、輪廻は天之河の背後に回り込み、その首に刀を突き立てた。

しかし、輪廻の攻撃は天之河の首に届く前に何かによって防がれていた。

 

「チィッ!!めんどくせぇ術式かかってんな!!」

 

そう言いながら、輪廻は一度天之河から離れ、体勢を整えようとした。

だが、それがいけなかった。

 

なんとバックステップ回避での着地ミスで、足を捻ったのだ。

 

普段の輪廻なら絶対に起こさないミス、だがこの時、輪廻は脳震盪を起こして居たのだ、そもそも動けること自体奇跡に近かったのだ。

 

「フハハハッ!馬鹿め!貰ったぞ!」

 

無論そんな特大の隙を逃す訳もなく、輪廻の腹を刺して、そのまま勢いよく壁に叩き付けた。

 

「ゴホッ……クソッ……油断したぜ……。」

 

そう言いながら、血を吐き出す輪廻に対し、天之河はニヤリと口角を上げながらこう言った。

 

「ククッ……ようやく敗者らしくなってきたじゃないか?もっと楽しませてくれよ!」

 

そして、天之河は更に追撃を加えようと、輪廻の胸倉を掴み上げ、拳を振り上げた。

 

「フンッ!」

 

ドゴッ!

 

その瞬間、天之河の腹に凄まじい衝撃が走り、テニスボールの様に吹き飛んだのである。

 

 

「ぐっ!?何が……」

 

天之河はそう言って立ち上がると、自分の腹部に視線を落とした。そこには、輪廻が放った蹴りの跡が残っていた。

 

「テメェの相手はもう飽きたわ。」

 

そう言って、輪廻はゆっくりと立ち上がり、刀を構えた。

それを見た天之河は怒りの形相を浮かべながら叫んだ。

 

「貴様ァア!!!」

 

そして、今度は天之河が輪廻に向かって駆け出し、剣を振るった。

しかし、その攻撃も輪廻は難なく受け止め、逆に蹴り飛ばした。

 

そして、距離を離した瞬間、輪廻が刀を解放しようと構える。

 

その瞬間天之河が叫び、その内容に輪廻は舌打ちしながら刀を鞘に戻すしか無かった。

 

「卍解 四式……」

 

「待て!この娘達がどうなっても良いのか?」

 

「……チッ!」

 

 

そう言って天之河が指差す先には、なんと縛られたレミアとミュウが紫達に連れられていた。

 

「パパ!」

 

「輪廻さん……」

 

ミュウとレミアが彼を呼ぶ間に、彼女達は天之河のすぐ側へと連れて来られていた。

 

 

「さあ、この娘達を助けたくば、持っている武器を全て捨てろ、今すぐにだ。」

 

 

 

 

天之河の言葉を聞き、輪廻は内心かなり焦っていた。

 

(クソッ!あそこまで近いと助けることは不可能だ……チッ!)

 

「早くしろ!」

 

 

そう怒鳴り付ける天之河に輪廻は全力で脳を働かせて思考する。だが結果はこのまま武器を捨てる事が最善だと出る。

 

そうして輪廻が悩む中、ミュウが声を上げた。

 

「パパッ!ミュウの事なんて気にする事ないの!だからこの変な人たちを倒して!」

 

「黙れ!貴様はただ黙って人質になっておれば良いのだ!」

 

バチンッ!

 

その声に苛立った天之河がミュウを叩くが、ミュウは痛さに声を上げる訳でもなく、ただ目尻に涙を浮かべながら天之河を睨み付けた。

 

 

「なんだその目は?お前も死にたいのか?」

 

そう言いながら、天之河は手に持った剣をミュウの首に突き付けた瞬間、輪廻は迷うこと無く刀を後ろに放り投げた。

 

「……これでいいンだろ。」

 

「パパ……ッ!」

 

それと同時に輪廻はそう言って両手を挙げた。

 

「ククッ!最初から素直にしていれば良かったものを……。おい!」

 

そう言うなり、天之河は輪廻の腕を掴みあげ、無理矢理引き摺って行った。

 

「テメェ、何をするつもりだ?」

 

「決まっているだろう?殺し合いだよ。」

 

そんな事を吐かした天之河に、輪廻は呆れた様な顔でこう言った。

 

「ハッ!素直にリンチって言えよ。」

 

「…まだ口の聞き方がなってない様だな…」

 

それを聞いた天之河は、苛立ったようにそう言ったが、突如天啓を得たかのようにニヤリと笑った。

 

「いい事を思い付いたぞ、十五夜輪廻、貴様自分の娘を殺せ。」

 

 

 

それは普通の人間ならとても思い付きそうも無いことであった。

 

 

「……どういうつもりだ?」

 

「クハハハッ!簡単な話だ。貴様の娘が死んだら解放してやる。ソイツの母親も一緒にな」

 

そんな言葉にたいして、輪廻は即答した

 

「ふざけんじゃねェ、んな事する訳ねぇだろうが。」

 

しかし、天之河はその答えを予想していたようで、続けておぞましい事を言った。

 

 

「で、あろうな。ならばお前が刺されろ。その娘の母親にな!」

 

 

それを聞いたレミアはビクッと身体を震わせ、こう言った。

 

 

「わ、私ですか…?」

 

「ああ、そうだ。彼奴が死ぬ寸前迄刺してもらう、無論奴は頑丈だからそう簡単には死なんだろうがな。安心しろ、トドメは我が刺す。」

 

「そ、そんな事出来るわけが……」

 

レミアのそんな拒絶の言葉に対し、天之河は何も無いかのようにこう言った。

 

 

「ならば貴様の娘を犯し尽くした上でバラバラにして殺す。貴様の目の前でな。」

 

「……ッ!?」

 

その余りにも酷い内容に、レミアは恐怖のあまり言葉を詰まらせた。

 

「テメェ、自分が何言ってるか分かってンのか?」

「当然であろう?娘が犯され殺されるよりはマシではないか?」

「……チッ!もういい。」

 

そう言って輪廻は諦めた様に歩き出した。

そしてその先にある物を見て、天之河はニヤリと笑った。

 

何故なら輪廻が歩き出した先にはレミアが居たのだから。

 

レミアの前に着いた輪廻は、恐怖のあまり座り込むレミアの手にナイフを握らせてこう言った。

 

 

「すまねぇなレミア、頼む。」

 

「…嫌…嫌です、貴方を殺したくなんてありません!ようやくミュウを一緒に育てられる人と出会ったと思ったのに……!そんな人を殺したくありません!」

 

 

しかし、尚も拒否を示すレミアにイラついた天之河は、ミュウの近くへと寄ってこう言った。

 

 

 

「さあどうするんだ、男を殺して娘を守るのか、それとも男を殺さず娘を見殺しにするのか!早く選ばないとどちらも殺すぞ!」

 

それに焦った輪廻が早くしろと叫び、ミュウは自分が全て受けるとレミアを止めるために叫ぶ。

 

 

「レミア!」

 

「ママ、辞めてなの!」

 

 

「うるさい!黙れぇい!!」

バチンッ!

「キャウッ!」

 

その音と共に、ミュウが悲鳴を上げ、レミアは涙を堪えながら、覚悟を決めた目で天乃河を睨み付けた。

 

「……分かりました、やります。」

 

そうして天之河は満足げに笑うと、ミュウに向かってこう言い放った。

 

「さあ、見逃すなよ、お前の母親が父親を殺す所をな!」

 

「い、嫌なの!」

 

 

「……やってくれ、レミア。」

 

「……いきます!」

 

そうして、レミアは輪廻に言われた通り、その手に持つナイフで輪廻を刺し貫いた。

 

「グッ!ガァッ!……そうだ……それで良い……ッ!」

 

涙を流しながら輪廻を何度も何度も刺す。

 

ザシュッ!ザクッ!ドシュッ!グサッ!ドチュッ!グチャッ!

 

「パパぁっ!!!」

 

「ハハッ!素晴らしいぞ貴様ら!さあ娘よ、お前は何も出来ぬまま父親を見殺しにするのだ!これ程愉快な事もそう無いぞ!?」

 

 

 

余りの惨状に、ミュウは思わず目を背けた。するとその先に紫と藍が立ち尽くしていた。

 

「お姉さん達助けて!お姉さん達もきっとパパがあんな事になってるのは嫌なはずなの!」

 

二人がこの光景を望んでない事を悟ったミュウは、二人に必死に助けを求めた。

 

 

「……ごめんなさい、ミュウちゃん、確かに私達もあんな事は嫌だけど……あれは私達が望んだ事なの。」

 

しかし、紫はそんな事を言いながら立ち尽くすだけだった。

それを見たミュウは絶望し、遂には泣き出してしまった。

 

「うわあああん!!どうして誰もパパを助けようとしないのぉ!みんな嫌いなの、大っきらいぃ!!!もう嫌なの!何も見たくない!何も聞きたくないの!」

 

そんなミュウに対して、天之河は嘲笑うかの様に言った。

 

「クハハッ!愚か者共め!これが奴らの選んだ結末だ!かつて暴虐の限りを尽くした男ですらも、過去の仲間からこんな形で裏切りを受けて死ぬのだ!やはり仲間や家族など要らぬ存在だったという訳だ!」

 

 

 

その言葉を聞き、ミュウの中で何かが崩れた音が聞こえた気がした。そしてそれと同時に、今まで感じていた恐怖心すら消えてしまった。

 

(……もう嫌なの……何も感じたくないの……)

 

そして、天之河の言葉を聞いた輪廻はこう呟いた。

 

「…そんなひねくれてっから…仲間が居ねぇんだろ……仲間がいようが家族がいようが裏切られるのが人間だ。」

 

「フンッ、負け犬が何を言おうが最早意味はない!さあレミアよ、最後の仕上げをしろ!」

 

そしてレミアは涙を流しながらも輪廻の首筋にナイフを当てた。

 

「輪廻さん……」

「気にすんな、これで良かったんだよ。そもそも自分でまいた種だ、お前らが無事なら俺はそれでいい。」

「ごめん……なさい……ありがとうございます……。」

「ああ、じゃあ……またな。」

「ええ……さようなら、輪廻さん。」

 

そう言ってレミアは輪廻を刺し貫いた。

 

しかし、輪廻は何故か笑っていた。

 

それは確信しているからだ、もう少しで最強の部下と嫁が来ると。

 

 

そして、まだ輪廻は死なない、いや、致命傷だが、まだ身体を動かせる。

 

輪廻はそこまで思考するとゆっくりと立ち上がり、天之河へこう言った。

 

「…なぁ天之河、いやエヒトか?まぁどっちでも良いが……最後に男同士どつき合おうぜ。」

 

「ほう、面白い。良かろう、死に損ないの戯言に付き合ってやる。」

 

そうして二人は拳を構え、互いの顔目掛けて同時に放った。

 

バキッ!ドゴォン!! 二人の拳がぶつかり合い、凄まじい衝撃波が辺りを襲った。

 

「チィッ!しぶといな!」

 

「そりゃこちとら死に損ないだがな、生きてるうちは幾らでも戦えんだよ!」

 

そうして何度も殴り合う二人。その度に衝撃と轟音が巻き起こり、やがて天之河の顔に焦燥感が見え始めた。

 

「何故だ!?私は完璧なはずだ!なのに貴様らは何時まで経っても倒せん!」

 

「ハッ!その程度で完璧なんて、烏滸がましいんだよ、死ねオラァ!」

 

ザシュッ!

 

「ふん!付き合いきれんわ!」

 

だが天之河は殴り合うことを承諾したにも関わらず、途中でそう言って剣で斬り伏せたのだ。

 

「…がぁッ!……どおりで…快く承諾してくれた訳だ…」

 

そして、輪廻はそう言って今度こそ倒れて動けなくなった。

 

「フハハハッ!これでトドメだ!!」

 

天之河はそう言って動けない輪廻を何度か突き刺す。

 

ザシュッ!ドシュッ!

 

「……ガハッ!……クソ野郎は…最後までクソ野郎だったな……、ユエ……ハジメ…あとは頼ん――」

 

グシャッ!

 

 

……その言葉を最後まで言うこと無く、輪廻の目からは光が喪われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在に戻る。

 

 

 

紫が涙を流しながら輪廻の死体の処理を始めようとした時、天之河は高らかに笑い始めた。

 

 

「クハッ、クハハハ!遂にやったぞ!!この世界で唯一我より上位の存在を殺す事が出来た!……これも偏に貴女のお陰だよ、八雲紫。」

 

「………そうですか。それは良かったですわね。」

 

紫の返事には覇気がなく、まるで抜け殻のようであった。

そんな様子を嘲笑うかのように、天之河は言葉を続けた。

 

「さて、邪魔者は消えた事だし、早速貴女の力を貰おうかな。」

「……好きにして下さい。もうどうでもいいんですもの。」

「では遠慮なく頂こう。」

 

天之河はそう言って紫の胸に手を置いた瞬間、その手が弾かれた。

 

「……なんのつもりだ、八雲紫。今お前は好きにしろと言った筈だが。」

 

 

「私好きにしろとは言いましたが…抵抗しないとは言っておりませんわ。……そしてどうでもいいと言ったのは貴方との契約の事です。」

 

「ほぅ、ならば抵抗すれば良いではないか。別に死ぬ訳でもないしな。」

 

「いえ、そんな事は関係ありません。ただ単に私が嫌なだけですから。」

 

「……そうか、なら仕方がない。少し痛めつけてやるとしよう。」

 

そう言って天之河が何かの魔法を発動しようとした時だった。

 

 

 

「おい!これはどういう状況だ…!」

 

「何で……輪廻が倒れてるの?」

 

 

最強の援軍が到着したのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 







今月のなかば位にありふれのくじの景品が届く予定なんすよねぇ、いや楽しみだわァ。

この作品が終わったら暫く休もうかな〜って思ってます。一二ヶ月ストック貯めてから書こうかなって。


まぁアフターは普通に書くつもりですけどね。




あ、そう言えばアンケート答えて下さると、次に書く作品の順番を決める参考になりますので是非お願い致します。


後優しい方感想くだちい。


3


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第二十九話 地獄の鍛錬



おっすおっす、先日くじ引き堂から届いたありふれグッズをみてニマニマしてた湯たんぽです。

注文してから約3ヶ月、ようやく届きました。それだけ待った甲斐はあり、素晴らしい完成度ですね。


そして、3日ほど更新が空いてしまって申し訳有りません、この話の最終調整をしていたんですが、リアルで色々あって遅れました。


まぁその分もとよりよく出来たんで勘弁してください。

あ、あと前話の誤字脱字報告してくれた方、本当にありがとうございます。


ではそろそろ、前書きにも飽きたと思うので本編どうぞ。






 

 

第二十八話最後の行から続けてお読みください。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

「「「「「……………え?」」」」」

 

 

 

 

 

 

そう、彼女達の声が重なった。それも無理は無いだろう、訳の分からないことを言い出したと思ったら、突如として飛んできた岩によって潰れて肉片となったのだ……。

 

しかし目の前にある死体は紛れもなく、あの憎き男の死体であった。

 

 

「お姉さま……」

 

 

フランがそう呟くと、彼女はハッとしたように振り向いた。

 

「あ、ああ……そうよね、取り敢えず彼は倒す事ができたのだし、ハジメ達と合流しようかしら。」

 

 

「そ、そうですね!急ぎましょう!」

 

 

咲夜が同意し、皆が足早にその場を後にしようと振り向いた時。

 

 

 

「やっほー♪さっきぶりだね、キミ達ィ!。分身やられちゃったんで本体来ました☆」

 

 

 

そんな声が響いた。

 

 

 

 

 

「「「なッ――!?」」」

 

 

そこに居たのは、先程死んだはずの朱雀だった。

 

 

「アハハッ!驚いたかな?驚いたでしょ?驚いたよねェ?」

 

「うっさいわね、何回も聞かなくても分かるから黙りなさい。」

 

「アッハイ……。」

 

 

レミリアがそう言うと、朱雀は大人しくなって口を閉じた。

 

 

 

「……で、ホントの所はどうなの〜?やっぱり驚いたんでしょ?君達♪」

 

 

 

……かに思えたがやはりお喋りは健在のようである。

 

 

 

 

「そうですよ!何で死んだはずなのに貴方生きてるんですか!?」

 

 

 

それに対し妖夢はそう疑問を投げかける。

 

 

そんな妖夢に朱雀は相変わらず巫山戯た口調でこう答えた。

 

 

 

「あハッ!そうそう、そういうリアクションを求めてたんだよ! ………で、何だっけ?なんで僕が生きてるか?そりゃさっきから言ってる通り、君達が相手にしてぶっ殺しちゃったのは僕の分身のうちのひとつ。最初にも言った筈なんだけどねぇ……。」

 

 

 

何処までも人を小馬鹿にした様な態度でそう答える朱雀に、割と感情的な妖夢が怒った様子でこう言った。

 

 

 

「そんなの誰が信じるんですか!仮にそれが本当だとして、分身一つがあんなに強い筈がありません!」

 

 

妖夢がそう言いきった瞬間、ゴリっと言う音と共に冷たい感触がこめかみに走った。

 

 

「……じゃあ君は僕の今の動きが一瞬でも察知出来たかい?」

 

 

いつの間にか背後にいた朱雀は、妖夢の頭に拳銃を突きつけてそう言い放った。

 

 

「……いえ、出来ませんでした。」

 

 

悔しげに俯いてそう答える妖夢に対し、朱雀は満足したような笑みを浮かべながら話を続けた。

 

 

 

「そ、つまりこれが本来の僕と君たちの差、これでも手加減してるんだよ〜?

 

…… 君達がさっきまで戦ってたのは……う〜んそうだね〜、最大時で0.01パーセント位の力って所かなぁ。」

 

 

 

 

「成程……少しは分かりました。要するに貴方が私達の想像を軽く超える程に強かったという事ですね?」

 

 

咲夜が苦虫を噛み潰したような顔でそう尋ねると、朱雀は「ま、ざっくり言っちゃえばそうかもね〜」と答えた。

 

 

「ところで貴方、一体どれ程の力を秘めているのかしら?」

 

 

レミリアは興味深そうにそう尋ねた。

 

その質問に対して朱雀は不敵な笑みを浮かべると、「いいよ〜、教えてあげる。」と言って話し出した。

 

 

「まぁ、取り敢えず腕を思いっきり振りあげれば都市ひとつは壊滅するかな?後はやろうと思えば素手で大陸ひとつはぶっ壊せるかな。」

 

 

 

「「……は?」」

 

「だから、やろうと思えば出来るよ?大陸1つくらいなら。」

 

「いやいやいや、それは流石に嘘でしょう?」

 

「え〜、本当だよぉ〜。ほらっ!」

 

そう言った朱雀はいきなり地面を踏みつけた。するとそこから半径5mほどの亀裂が走り、大地を揺らした。

 

そしてそれを見ていた全員が思った。コイツはマジだと。

 

 

「と、とにかく分かったわ……。貴方が桁違いの強さを持っていることは十分理解できた。……それで、これからどうするつもりなのかしら?」

 

 

「うん?どうするって何が?」

 

 

 

「決まってるじゃない、貴方と敵対した私達をどうする気なのか。」

 

 

「え?敵対?なんのことだい?……ああ、もしかしてさっきのテストの事を言ってるのかい?あんなの敵対してる内に入らないよw、お遊びみたいなもんでしょ?」

 

 

「……は?」

 

 

「それに僕達は一応今協力関係にあるんだから、仲良くしようぜ!っていう意味も込めてさっき戦ったの!ほら、友好の証として握手しとこ?ね?ね?」

 

 

「……何を言っているのかしら?私はさっき貴方を本気で殺しに行ったのだけど。」

 

「ん〜、まぁ確かに殺すつもりだったのかもしれないけど、それはあくまで『僕が全力を出した時の実力』を見たかっただけだろう?違うかい?」

 

「…………。」

 

 

図星だったようで、レミリアは押し黙ってしまった。

 

 

「まぁ、そういう訳で僕と君たちは今協力関係にあるわけだ!よろしく頼むよ?あははははッ!!…てかさっきのなんて君達を強くする前のテストみたいな物なんだ、それが終わった今君たちを強くしなきゃ行けないからねん、さっさと彼らと合流しなよ。」

 

 

そう言うと朱雀は笑いながら何処かへ行ってしまった。

 

その後ろ姿を呆然と見つめていたレミリア達だったが、やがて咲夜がボソっと呟いた。

 

 

「……行きましょうお嬢様、こんな所で突っ立って居ても、意味がありません。早くハジメさん達と合流しましょう。」

 

 

「……そうね。今は言われた通りにするしかないみたいだし……。」

 

 

そう言った後、一行はハジメ達の気配がする場所へと急いだ。

 

 

 

ーーーーーー その頃、ハジメ達は……。

 

 

 

 

 

『ッ!良いぞユエ!もうイキそうだ!』

 

 

『……ん、あん♡…私も♡』

 

 

『ッ!行くぞユエ!』

 

 

『…ん♡来て、ハジメ♡』

 

 

 

「「…………………」」

 

 

 

「……何2人揃ってFXで有り金全部溶かした人の顔してるんだよ。」

 

 

「……返事がないわ、ただの屍のようね。」

 

 

 

あのビデオを死んだ顔で見ている姿を、部屋にやってきた清水や雫達に目撃されると言う醜態を晒していた。

 

 

 

 

 

それから暫くして……

 

 

 

 

ガラガラガラ!

 

 

 

 

「はーい皆さんお揃いですね♪

 

じゃーん、最後のメンバーを紹介しまーす☆」

 

 

 

諸悪の根源が帰還した。

 

 

 

ドゴッ!

 

 

 

その姿を認識した瞬間、彼の頬にハジメの拳とユエの蹴りが同時に炸裂した。

 

 

「ぐえー!」

 

 

 

吹っ飛んだ朱雀はそのまま壁に激突し、床に崩れ落ちた。

 

 

「ふぅ〜、スッキリした。」

 

「……ん、これで安心。」

 

「ちょっとちょっと!?いきなり何してくれてんの!」

 

「うるせぇ!元はと言えばテメーが悪いんだろうが!!」

 

「ん!自業自得、因果応報!!」

 

「うわ〜ん!みんなが虐めるよぉ〜!」

 

朱雀は泣き真似をしながら部屋の隅に逃げた。

 

「……それで?最後のメンバーって誰のことだよ。」

 

 

「ああ、彼女達だよ。て言うか君達仲間でしょ?もしかして忘れてたの?」

 

 

そう言って朱雀が指さした先には、笑みを浮かべながらも会話の流れから絶対に怒っていると分かるレミリア達が立っていた。

 

 

 

「……えっと、それはだな……。」

 

「……どういうことなのか説明してくれるかしら?」

 

「………すまんかった。」

 

この後、6人に3時間ほど説教をされた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「さて、落ち着いたところで本題に入ろうか、まぁ修行パートという訳なんだけど、まずはこれを見てくれ。」

 

朱雀はそう言って全員に1枚の紙を渡した。

 

その内容は……

 

 

「なんだこれ……なになに、二十二時から0時まで睡眠、起床後7時まで基礎トレーニングに励み、20分ずつ食事と休憩を挟む。それを朝昼夜と繰り返し、夕食後八時から指導……二十二時就寝……。」

 

 

「おい待て、この朝食と昼食の間に挟まってる謎の空白は何だ?」

「ん?えっとねぇ〜、これはお昼ご飯のメニューを書く欄かなw」

「ふざけんな!俺らに死ねと言ってるのか!?」

「大丈夫だって!ちゃんと睡眠時間は2時間取るし、ご飯はしっかり食べる!ほら、健康的じゃん?…本当は睡眠無しで行きたい位なんだよ?」

 

「それダメだろ!?お前鬼畜過ぎだぞ!!」

「あははッ!冗談だよじょ〜だん、でもそんな感じだからよろしくね☆」

 

「「嘘だろ(でしょ)(ですよね)……?」」(全員)

 

こうして地獄の特訓が始まった。

 

 

ーーーーー 深夜23時、ハジメ達総勢20人は布団の中で疲れで眠れず震えていた。

 

「なぁ、そろそろ起きないとヤバくないか?もう訓練始まるまで1時間しかないぞ」(ハジメ)

「で、でも寝ないと全然体が休まらないわ」(アリス)

「……眠い。」(ユエ)

 

ハジメ達は必死に睡魔と戦いながら何とか身体を休めようとしていた。

しかし、その努力も虚しく、30分ほど経過した頃、ついにユエが脱落した。

「……無理、もう寝る。」

そう言うとユエは布団の中に潜り込んで行った。

「おいこらユエ!起きてないとダメだろ!……はぁ、仕方ない。レミリア達ももう限界だろうし俺らも寝るか……。」

ハジメ達はそう言うと目を閉じた。……それから数十分後、ハジメ達の部屋に誰かが近づいてくる気配があった。

(……誰だ?)

ハジメはゆっくりと目を開き、辺りを見渡した。

すると、隣ではユエが静かに寝息を立てていた。

 

(…気のせいか)

 

ハジメはそう思いもう一度寝た。

 

「……寝てるみたいだし、今のうちに……。」

 

そう言って侵入者は音もなく部屋に侵入し、そのままハジメの布団に近寄った。そして次の瞬間、彼は勢いよく掛け布団を引き剥がすと、凄まじい音を鳴らした。

 

 

カンカンカンカン!

 

「はーい!皆さんおはようございま〜す!0時になりましたぁ!訓練の時間です!」

 

侵入者はそう言って鍋の蓋をお玉で叩き、爆音を鳴らしていた。その正体は言うまでもなく朱雀である。

 

「ふざっけんな!なんつー起こし方してんだテメーは!!」

「うるさいな〜、いい加減慣れようよ。これが一番効率がいいんだから。」

「ふざけんな!心臓止まるかと思ったわ!!」

「はいはい、文句はあとで聞くからさ、今は早く支度をして食堂に来てよ、じゃあまた後でね♪」

朱雀はそう言うと部屋を出ていった。

「クソッ!なんて奴だ!」

「……仕方ないわ、とりあえず着替えましょう。」

「そうだな……。」

ハジメは怒りを堪えつつ、渋々服を着替え始めた。

 

〜10分後〜

 

ハジメ達が食堂に着くと、そこには既に朱雀の姿があった。

「やあやあ、みんなやっと来たね。あまりに遅かったから僕もう先に食べ始めちゃってるよ」

「テメーのせいでこんなに遅くなったんだよ……。」

「まぁまぁ、それより今日のメニューはいつもよりキツくなるから楽しみにしといてね?」

「……マジかよ。」

 

「ささ、時間は有限!さっさと食べちゃって!」

 

 

「……分かったよ。いただきます……。」

 

「「いただきます……」」(みんな)

 

こうして地獄のような1ヶ月が始まった。

ーーーーー

 

「はい!今日はこれで終わり!お疲れ様〜」

「ゼェ……ゼェ……。」(ハジメ)

「お、終わったの?」(レミリア)

「よ、ようやく休めます」(妖夢)

 

 

「き、気持ち悪い……。」

 

ハジメ達は寝室に駆け込むとベットに倒れ込み、死んだように動かなかった。

(……もう二度とやりたくねぇ……。というか俺らこの訓練意味あるのか?ただの体力作りになってるような気がするんだけど。)

 

「お〜い!ハジメ君いる?」

「ん?なんだ?」

「ちょっと話があるから来てくれないかな?」

「ああ良いぞ。……それじゃあ俺は少し出かけてくる。お前らはゆっくり休んでてくれ。」

「分かったですぅ……。」(シア)

 

ハジメはそう言い残すと部屋から出て行った。

 

「それで、何の話だ?また何かあったのか?」

「いやいや!別に大したことじゃないよ。それに寝る時間が無くなるだけだから!」

 

その言葉に思わずハジメは聞き返した

 

「は?どういうことだ?」

「実は明日の予定なんだけど、明日から3日間は不眠不休で訓練してもらいます☆」

 

 

「……は?冗談だよな?」

「うん?、本当だけど?」

 

(コイツ正気か!?ただでさえキツすぎて睡眠時間ですら、ほとんど寝れずに身体を休めるだけの時間になってるってのに!その時間すらねぇだと!?)

 

あまりの無茶ぶりにハジメは唖然としていた。

 

「まぁ安心してよ。ちゃんとご飯も出るし、お風呂もあるからさ♪」

「そういう問題じゃねえよ!いくらなんでも死ぬわ!」

「大丈夫だって!ハジメ君達は強いんだからそれぐらい耐えれる耐えれる!……多分。」

「今、小さい声で多分とか言わなかったか?」

「いやいや!そんなことないよ!とにかく頑張ろう!じゃあ僕は仕事に戻るから!」

そう言うと朱雀は足早に去っていった。

 

(クソッ!どうすればいいんだ!?このままじゃ俺や人外連中はともかく、半分以上人間の奴らはマジで過労死するぞ!?)

 

ーーーーー その後、なんとか説得を試みたが結局、朱雀は折れず、仕方なくハジメ達も訓練を行うことになった。

そして次の日(と言っても一二時間後)、ついに訓練が始まってしまった。

ハジメ達が訓練を始めて2日目、時刻は深夜の0時を過ぎていた。

しかし、訓練は未だに続いていた。

だが、流石に限界がきたようでハジメ達の疲労はピークに達していた。

 

「よしっ!これでラストォ!」

 

カン!カァン!

 

(やっと終わった……。)

 

ハジメは安堵した表情を浮かべながら、その場に座り込んだ。するとそこへ朱雀が現れてこう言った。

 

「おっつかれ〜!いやぁみんな凄いね!まさかここまで頑張ってくれるとは思わなかったよ〜。じゃ、あと24時間頑張ろうね!」

 

「ん?聞き間違いだよな?いま明日も頑張ろうって言ったんだよな?」

 

「え?言ってないけど?」

 

「……は?」

 

「だから〜、今日を含めてあと24時間、頑張ってください!」

 

「え?…う、嘘ですよね?」(さとり)

 

「私は頭がおかしくなって幻聴が聴こえたみたいね……。」(雫)

 

「なんのことかな?」

 

「ふざけんな!テメーそれでも人間か!!」

 

「失礼な!れっきとした妖怪だよ!それにさっきまでのは準備体操みたいな物さ!今日からは君達それぞれの能力を伸ばすんだから!」

 

こうしてあと24時間修行が続くことが決定した。

 

 

 

ちなみにこれからやる事はそれぞれこうである。

 

 

 

ハジメ:基礎トレーニングをしながら新たな武器制作、CQC及び立ち回りの矯正。

 

ユエ:新たな力を使いこなす為の訓練と、魔力、体力の大幅強化、そして近接戦闘及び近接格闘術を習得し、唯一の近接魔法アタッカーになる予定。

 

清水:既存の技の練度を上げ、CQCを叩き込む。後は基礎トレーニングで体力の強化を目指す。

 

セリカ:近接戦闘は断念し、魔力の底上げと、魔術による援護及び範囲殲滅に力を入れる。

 

 

シズエ:必然的に近接戦闘になるので、体力、魔素の増量を行い、近接格闘術や技のバリエーションを増やして、ひたすら火力の増加を目指す。

 

 

シア:フィジカルお化けなので、ひたすらに物理火力を上げるために基礎トレーニングさせ、近接格闘術を仕込む、あとオマケでハンマーの使い方も、目指せフィジカルゴリラ。

 

 

雫:有り体に言えば清水の下位互換なので、少なくとも彼らと肩を並べる位には強化する為に基礎トレーニングと剣術に力を入れる為、剣技の達人である村雨が直々に鍛えることになった。

 

 

恵理、ミレディ:セリカとほぼ同じ。

 

 

ティオ:能力的に唯一のタンクなので防御力を上げるために基礎トレーニングと肉体強度を上げる。そして火力も割とあるので、アタッカータンクとして鍛え上げる。何気にこの人が一番死にかけなきゃ行けないので1番きついと思われる。

 

 

優花:ナイフ投擲が主なので中衛向きだが、それ以外に特殊な能力があまり無いので、前衛フィジカルゴリラを目指す事になった。なお、本人は不本意の様である。

 

 

香織:ゴリゴリの後衛だが、攻撃魔法が他に比べるとカス同然なので、回復系とバフ系魔法に極振りする事になった。

 

 

 

 

妖夢、レミリア、フラン、アリス、咲夜:全員が前衛要員なので特に語ることは無い、強いて言うなら彼女達はスペカがあるのでそれをひたすら強化する感じである。

 

 

さとり:中衛で唯一の能力持ちで、相手の心を読む事が出来るので、恐らくハジメと共に全体の指揮官として動く事になる。

なのでさとりにはひたすら戦術と戦略を覚えてもらい、基礎トレーニングとスペカの強化に力を入れてもらう。

 

 

「って言うのが今後の方針かな〜」

 

「お前……鬼だろ……。」

 

「何を言ってるんだい?僕は君達の事を心配しているだけじゃないか♪じゃあとりあえず一人ずつ呼んでいくから、呼ばれた人は訓練場に来てね〜!」

 

そう言い残すと朱雀は去っていった。

そして数時間後、流石に全員の体力が尽きてぶっ倒れていた。

 

「はぁ……はぁ……。マジできっついわこれ……。」

 

「あははっ……。でも、前より強くなった気がします!」(妖夢)

 

「私も!なんかこう、体が軽く感じる!」(フラン)

 

「はしゃぐ元気があるのはいいけど〜、まだまだ終わってないからね〜」

 

そこへ朱雀が現れて言った。

そしてまた数時間後、今度はハジメとユエ以外が死にかけていた。

 

「……これマジで死ねる……」

 

「…ね、眠すぎて死にそう」

 

ちなみに二人だけは基礎トレーニングとCQC、立ち回りの矯正を行っていた。

 

「はーい、ぶっ倒れてる暇なんて無いよ〜!時間は有限よん♪」

 

 

「せ、せめて休憩を……」(咲夜)

 

 

「ダ〜メ♡」

 

 

「…あはは……これミレディちゃん数千年越しに死を間近に感じてるよ。」

 

 

 

そしてさらに数時間が経ち、ようやく訓練が終わった。

 

 

「お疲れサマンサ〜☆」

 

「「「「「「「……..。」」」」」」」(←声を出す気力すらない皆さん。)

 

「ま、今日はこれくらいにしといてあげるからゆっくり休んどいでね〜!明日もあるんだし、寝坊したら許さないかんね?」

 

「「二時間の睡眠でどうゆっくり休めと!?」」(皆)

 

 

彼等のそんな嘆きに神は微笑んだのだろうか。

 

「んも〜仕方ないなぁ〜……ま、三日間休み無しで頑張ったんだし、半日ほど寝てもいいよ〜」

 

朱雀がそんな言葉を洩らした。

 

「……マジ?」(ハジメ)

 

「マジマジ☆」

 

その言葉から1泊置いて、彼らから歓声が湧き上がった。

 

「「よっしゃあああ!!!」」(ハジメ&清水)

 

「「「やったぁぁ!」」」(女の子組)

 

 

 

そんな歓声とともに、地獄の三日が終わりを告げた。

 

 

そして翌日、ぐっすり寝て元気いっぱいになったハジメ達一行は、再び地獄へと叩き落される事になるのであった。

次の日、目を覚ましたハジメ達が見たものは、昨日まで無かったはずの巨大な建造物だった。

 

「なんだこりゃ……?」

 

「あ、起きたんだね〜」

 

「朱雀さん?これは一体……」(妖夢)

 

「これはねぇ〜、僕が作った新しい訓練施設だよ♪」

 

「……はい?」(さとり)

 

「ほら、君たちって今まで基礎トレーニングばっかりで退屈でしょ〜?だからちょっと趣向を変えて、実戦形式の訓練もしようと思ってさ〜。という訳で、今から模擬戦を始めます!」

 

「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」」(一同)

 

「君達をふたつのグループに分けて戦ってもらうよ〜。」

 

 

「おい待て!いきなり過ぎだろ!」(清水)

「えぇ〜、でもそうしないと訓練にならないじゃんか〜。それにもう作っちゃったもんはしょうがないしさ〜。」

 

「くそっ……。なんでこんな事に……」

「あ、ちなみに制限時間付きで、負けた方は罰ゲームね♪」

 

「「はぁぁ!!?」」(皆)

 

「いや、だってそうじゃないと面白くないし〜。んじゃ頑張れ〜♪ちなみに罰ゲームの内容は一週間睡眠無しね☆」

 

朱雀がそう言った瞬間ハジメ達の態度が豹変した。

 

「「おらかかって来いぶっ殺してやらぁ!」」(ハジメ&清水)

 

 

「あはは……まあそうなるわよね。」(アリス)

 

こうして、ハジメ達の地獄が始まった。

まずはチーム分けだが、それはくじ引きで決める事になった。

 

「では、これから第一回模擬戦の対戦相手を決めるクジを引いてもらいま〜す。赤色と青色のくじがそれぞれ9枚ずつ入ってるから、その色を引いた人同士でチーム組んでねー♪」

 

 

以下がくじを引いた結果である。

 

 

赤色:ハジメ、シズエ、セリカ、シア、雫、優花、ミレディ、フラン、アリス。

 

青色:ユエ、清水、ティオ、恵理、香織、妖夢、レミリア、咲夜、さとり。

 

 

「お〜、割とバランスよく揃ったんじゃない?」

 

「いや、こっちタンクも回復役も居ないんだが?」(ハジメ)

 

「ん〜……じゃあハジメ君がタンクやればいいんじゃない?」

 

「はぁ?俺がタンクとか無理に決まってんだろ!第一ヒーラーどうすんだよ!?」

 

「そこはまぁ……回復なくても、気合と根性で耐えればいいじゃん……」

 

 

「いや死ぬわ!?」

 

 

 

そんな事を話している間に、赤チーム皆の視線がハジメに集まっていた。

 

「な……なんだお前等その目は!わかったよやりゃいいんだろ!」

 

そして数分後、訓練場にアナウンスが流れた。

 

『それでは第一回戦を開始します!』

 

 

「なんでアナウンスまで付いてんだよ、しかもアナウンサーお前かい。」

 

 

『まあまあ、気にしないで始めようよ〜☆』(朱雀)

 

『それじゃぁ、試合、開始!!』

 

試合開始の合図と共に、一斉に駆け出した両チームのメンバー達。

 

「相手の前衛は俺が引きつける!後は会敵したやつから各個撃破して行け!なるべく早く後衛を見つけて倒せ!長期戦になるとヒーラーの居ないこちらが不利になる、一気に片をつけるぞ!」(ハジメ)

 

 

「ユエさん、ティオさん、清水さんは前線でハジメさんを押さえて下さい!咲夜さんと恵理さんは香織さんの護衛を!妖夢さんとレミリアさんは遊撃手として暴れ回ってください!長期戦に持ち込みます!」(さとり)

 

それと同時に両チームの指揮官から指示が飛び、両メンバーはそれぞれの指示に従って動く。

 

 

その指示から数十秒が経ち、ハジメは敵と会敵した。

 

 

「おいおい、いきなり最高火力と会敵とはな。本気で潰しにかかって来てるじゃねぇか。」

 

 

その相手は…

 

「……ん、模擬戦とは言え、勝負は勝負。全力で行く。」

 

「うむ、と言うか全力で行かんと妾達が一瞬でやられるからのう。」

 

 

「ハジメェ……あの時は良くも俺の前でイチャついてくれやがったな……ぶっ殺してやる!」

 

 

さとりが言った通り、ユエ、ティオ、清水の3人であった。

 

 

一見すると3対1で勝ち目が無いように見えるが……

 

ドバンっ!ドバンっ!

 

「じゃあこっちも手加減要らねぇな、本気で潰すぜ?」

 

そう言うとハジメはドンナーとシュラークによる全弾掃射をかました。

 

そう、彼女達3人で漸くハジメ1人と勝負になるのだ。 仮にチーム関係なく、ハジメ対全員で戦ったとしても、下手をするとハジメが勝つ。それぐらい戦力差があるのだ。

 

 

「……ん、私達の連携を見せてあげる。」

 

「ふっ、妾達の力を思い知るが良い!」

 

「テメェだけは絶対に許さねえぇ!…月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮」

 

3人は同時に攻撃を仕掛けた。

まずは清水が刀を振りかざしてハジメに斬りかかる。

 

「……遅い。」

 

しかし、その攻撃は既に見切られており、ハジメは難無くその攻撃をかわした。

そしてその隙を狙ってユエが魔法を放つ。

「雷球、蒼天、凍雨!」

 

だがそれもまた、あっさりと避けられてしまった。

更にそこに清水の斬撃が加わり、2人のコンビネーションによってハジメを追い込んでいく。

 

「へぇ、結構息合ってんじゃねーか。」

「余裕かましてんじゃねぇぞクソ野郎!」

「ん、清水、一旦離れて!」

 

ユエの言葉に従い、清水は大きく距離をとった。

 

「これで終わりだぁ!月の呼吸 伍ノ型 月魄災渦!」

「ん、今なら……レーヴァーテイン」

 

2人の攻撃がハジメに襲い掛かる瞬間、

 

「……だから遅せぇよ。」

 

ハジメは地面に向かってドンナーを発砲した。

その衝撃により、辺り一面に土煙が舞う。

「なにぃ!?」

「ん、これは……」

 

そして次の瞬間、ユエと清水の目の前には既にハジメが居て……

 

「一発で沈めてやるよっ!オラァ!」

 

ガギィン!

 

攻撃を受け止めたティオが居なければ、二人は持っていた銃で殴って来たハジメに一発でやられていただろう。

 

「くっ!やはりお主の攻撃は重いのう!腕が砕けるかと思ったのじゃ。」

 

「チッ!」

 

 

そしてティオが受け止めている間に、ユエは魔法を放った。

 

「ん!……水刃、乱舞、水流、氷柱、飛礫!」

 

5つの水の刃が、弾丸のようにハジメに襲いかかる。

 

「はっ!こんなもん当たる訳が……」

「……知ってる、だからこれを選んだ。」

 

ユエの放った魔法がハジメの視界を遮り、その間に清水は体勢を整えていた。

 

「これでも喰らいやがれ!月の呼吸弐ノ型 珠華ノ弄月」

「チィッ!鬱陶しいんだよぉ!!」

 

ハジメは清水を蹴り飛ばしてユエの水刃を捌き、ティオを蹴飛ばした。

 

「ぐぅ!この馬鹿力が!」

「……やっぱり強い。」

「ふむ……やはりハジメ相手ではそう長く持たんか。」

 

「当たり前だろ?俺もお前らもあの地獄の鍛錬をしてんだ、ちったぁ強くもなる。」

そう言いながら、ハジメは再びドンナーとシュラークを構えた。

 

「今度はこっちから行くぜ?」

 

 

 

 

ーー 一方その頃

 

 

「くっ!これは不味いです!」

 

青チーム指揮官のさとりは苦戦を強いられていた。

 

まぁそれも当然と言えば当然だ。なんせ青チームには自由に動かせる戦力が二人しかいないのに、対する赤チームは前線を敷いているハジメ以外の八人全員が自由に動かせるのだ。

 

 

現に妖夢とレミリアの足止めをしているシズエとシア以外の六人を、たいして攻撃力のないさとりと香織、中衛の咲夜と恵理の計四人で食い止めているのだから。

 

「さとりさん!これ大丈夫なんですか!?」

「えぇ、なんとか。しかしこうも数が多いと私達だけではどうにも出来ませんね……」

 

(せめてハジメさんの所に行った誰か一人でもこっちに回せれば……)

 

そんな時だ

 

 

「ごめんなさいさとり!もう彼女を抑えきれないわ!フィジカルが違いすぎる!何よこのバグウサギは!」

 

「こっちもちょっと無理っぽいです!剣術の練度と身体能力に差があり過ぎます!」

 

 

レミリアと妖夢がこちらへと撤退して来たのは。

 

(くっ!余計状況が悪化したッ!こちらにも前衛が二人戻ったとはいえ、シズエさんとシアさんはハジメさんに次ぐ相手チームの火力要員!完全に連携を組まれたら一瞬で壊滅する!)

 

さとりは心の中で焦燥感を募らせた。

 

だがその時、思わぬところから助け舟が入った。

 

「ん、私達が来た。」

「ふふん!妾達の力を魅せてやるのじゃ!」

 

それは、ユエとティオだった。

 

「ユエさん!ティオさん!」

 

「ん、ここは任せて。」

「うむ!攻撃は妾達が引き受けるのじゃ!」

「ありがとうございます!」

 

そしてこれで、さとり達は一気に有利になった。

相手の攻撃を防げる壁役と、こちらの最高火力が戻ってきたからだ。

これで攻撃に専念出来る。

 

しかし、そこでひとつ疑問があった。

 

 

「そういえばハジメさんの方はどうしたんですか!?あの人を野放しにしたらそれこそ一瞬で壊滅しますよ!?」

 

それは、先程までユエ達が相手をしていたハジメはどうしたのかという事だった。

 

「……ん、それなら大丈夫。清水が頑張ってる。」

 

 

しかし、それは心配要らなかった。

 

 

何故ならハジメに彼女作れよと言われた清水が、ブチギレて修羅と化し、血涙を流しながらハジメを押えているからだ。

 

 

『オラァァァァ!!!リア充なんざ俺が全員ぶっ殺してやらァ!!死ねぇぇぇハジメェェエエ工!!!』

 

『うおっ!急にバカ強くなりやがった!怒りで強くなるとかジャンプじゃねぇんだからよ。』

 

『黙れェェエエェェエエエェ!!!!!ジャンプ主人公みたいなのはお前だろうがァァァ!!』

 

 

『ユエ、ティオ!今のうちに援護に行けェ!!俺はこのジャンプ主人公をぶっ殺す!!』

 

 

 

 

 

 

「……だって。」

「は、はぁ……」

 

ユエの言葉を聞いて、さとりは苦笑いを浮かべるしか無かった。

 

「ま、まさか清水さんがここまで成長しているとは……驚きました。」(妖夢)

 

 

「……ま、まぁ、何はともあれ漸く体勢を立て直せそうです。」

 

 

(さて……ここからが本番ですね……頑張りましょう!)

 

そう、まだ戦いは終わっていないのだから。

 

ーーーーーー1時間後〜

 

 

赤チーム、ハジメを残し全滅。

 

 

青チーム、恵理と香織が脱落したものの健在。

 

 

そして現在、ハジメの前に青チームの生き残りが合流した。

 

 

「…時間……かかりすぎだ……」

 

そして清水は瀕死だった。

 

「まぁ、なんだ……よくやったぞ?」

 

ハジメは清水を彼女たちの前に投げてそう言った

 

「うるせぇ……お前のせいでこんな目にあってんだよ。」

「まぁそう言うなって、俺もまさかそこまで強いとは思わなかったんだよ。」

 

 

そう言いながらハジメは彼女達に向けて再びドンナーとシュラークを構えた。

 

 

「……で?どうすんだ?降参するか?」(ハジメ)

 

「あー……一応聞くけど、アンタはどうしたいの?」(レミリア)

 

「そりゃもちろん……いい加減に決着つけてやるよ!」(ハジメ)

 

その言葉と同時に、彼女達もまた戦闘態勢に入った。

(ふぅ……流石に疲れたな……)

ハジメは肩で息をしながらそう思った。

(そろそろ終わらせないと不味いかもな……清水との戦いで思ったより体力削られた。)

 

 

「…仕方ねぇ……これを使うか。」

 

ハジメはそう言うと、ドンナーと、シュラークを宝物庫に片付け、代わりにどデカい機関銃とパイルバンカーを出した。

 

その機関銃の名は、メツェライ改2。

 

 

何時ぞやに作ったまま放置されていた、メツェライを一つの砲身に見立てて改造したメツェライ・デザストルを軽量化し、その軽量化したメツェライ・デザストルを更に一つの砲身に見立て改造したものがこのメツェライ改2ある。 結局砲身の数はと言うと、初代の砲身を6つとすると、6の3乗で216門である。 その魔改造されたメツェライは秒間約4万3200発、分間約259万2000発とか言う頭おかしい兵器になってしまった。

 

ちなみにオマケで出されたパイルバンカーは同時に五本発射できるように改造されており、それを装備しながら飛び回ると完全に進撃の雷槍である。

 

 

そして、ハジメは右手にメツェライ改2、左手にパイルバンカーを装備してこう言った。

 

 

「……ああ、一つだけ忠告しておく……避け無きゃ死ぬぞ?」

 

 

そう言った瞬間、メツェライ改2が火を噴いた。

 

その寸前、さとりが声を上げる

 

「散開!回避行動を取ってください!」

 

 

ダァァァァァァァァ!!!

 

 

その一瞬後、銃の音とは思えない轟音が鳴り響く。

 

 

「ほらっ!これもくれてやるよ!」

 

キュィィィン ドギャァァァン!!!

 

 

そして、ついでとばかりにハジメは5連発のパイルバンカーをぶち込む。

 

 

 

 

すると、その地面は大きく陥没し、半径20m程のクレーターが出来上がる。

 

しかし、それでもなおハジメの攻撃は終わらない。

 

「オラァ!まだまだ行くぜ!!」

 

そう言って、更にメツェライで弾幕を張っていく。

 

「ちょ、ちょっと待って!いくらなんでも強すぎるわよ!?」

「……確かに……これは予想外。」

 

レミリアとユエはそう言いながらも、何とか攻撃を回避していく。

 

 

5分後〜

 

 

「…まだやるのか?」

 

 

そう言うハジメの視線の先には、致命傷では無いものの、銃弾を手足に食らって蹲る青チームの面々が居た。

 

 

「……いえ、もう降参します。」

 

そして、青チームを代表し、さとりがそう言葉を放った。

 

その瞬間、バカうるさいアナウンスがなった。

 

『おお!第一回模擬戦は赤チームの勝利〜!!』

 

こうして第一回地獄の模擬戦は終了した。

 

だか、模擬戦終え、病室で彼女たちに今回の試合はどうだったか聞いたところ、全員が『二度とやりたくない』と答えたらしい。だが悲しきかな、これを主催してる奴はそんなことを聞くはずもなく、これから普段の訓練内容に加えて一日一回この模擬戦をする事になるのであった。

 

 

ちなみに罰ゲームはマジで実施された。それによって青チームの面々は全員死んだような顔になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな日々がひと月続き、遂に修行パート最終日となった。

 

 

 

「いやはや、月日が流れるのは早いねぇ〜。もう今日で最終日だよ。長いようで短かったね〜。」

 

その日の朝、朱雀は皆が死んだ顔で朝ごはんを食べる中そう言った。

 

 

「そうだなぁ……俺は結構楽しかったけどな。睡眠以外は」(ハジメ)

「うんうん、僕も結構楽しんでやったよ?まあ訓練内容は鬼畜だったと思うけど……」

「……ん、訓練より睡眠時間無いのがキツかった。」

(まぁ実際俺も最初はキツく感じたけど、慣れればそれなりに楽しくなってきたからな……睡眠以外は。)

ハジメはそう思いながら、最後の朝食を口に運んだ。

 

「さてと、じゃあそろそろ行こうか。」

 

「「「…………(コクッ)」」」(皆)

 

そして、ハジメ達は朱雀と共に部屋を出た。

その道中、ふとハジメがこんなことを言った。

 

「そう言えば……お前の能力って結局何だったんだ?」

 

「んー?僕の能力?そんな強くないよ〜?……それにどっちにしろもうすぐ分かるさ。」

 

 

「……そうか。」

 

そして、ハジメ達一行は遂に目的地に着いた。

 

「さぁ、着いたよ、薄々わかってると思うけど、最後は僕と君達で本気で殺しあって貰うよ。」

 

 

「やっぱりそうなるか。」

(まぁ分かってた事だけど……でもこれでやっとこの修行ともおさらばだ!)

 

ハジメはそう思うと、心の中でガッツポーズをした。

そして、ハジメは宝物庫からドンナーとシュラークを取り出し、二丁拳銃スタイルで構えると、背後の彼女たちに向かってこう言った。

 

「……行くぞ!」

 

その言葉に頷くように彼女達もそれぞれの得物を構えた

 

 

「いいかい?ルールは簡単、どちらかが戦闘不能になるまで戦うだけだ!」

 

「分かった。」

 

そして、朱雀は初めからドスを構えてこう言った。

 

「じゃあ、いつでも来なさい!」

 

その言葉と同時にハジメが動いた。

ダァン!!

乾いた音と共に弾丸が全弾掃射される。しかし、それを朱雀はあっさりと避ける。

そして、一歩遅れて前衛組(ユエ、清水、シズエ、シア、雫、ティオ、優花、妖夢、レミリア、フラン、咲夜)が一斉に朱雀に仕掛ける。

 

「……レーヴァテイン顕現、蒼龍斬ッ!」

 

「月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮!」

 

「業火 爆炎ノ太刀 三式!」

 

「うおりゃぁぁぁ!!!喰らいやがれですぅ!!」

 

「飛天御剣流 龍槌閃! 」

 

「手から出せるようになったブレスじゃ!食らっておけ!」

 

「ナイフを投げつつ斬り掛かる!……何で私こんな脳筋戦法なのよ!」

 

「スペルカード発動 剣技『桜花閃々』!そんなこと言ってる暇は無いみたいですよっ!」

 

「スペルカード発動 神槍『スピア・ザ・グングニル』!」

 

「スペルカード発動 禁忌『クランベリートラップ』 」

 

「援護します!スペルカード発動 幻符『殺人ドール』!」

 

 

 

 

だが、その攻撃は避けられるか朱雀のドスによって全て弾き返された。

 

「フム、なかなか良い連携が取れているね。でもまだまだ甘いかな!」

 

ドガァン! 朱雀はそう言うと、ドスを持ってない方の拳を地面に叩きつけた。すると、そこから凄まじい衝撃波が発生し、彼女らを吹き飛ばした。

 

「みぎゃあああぁ!!!」(シア)

「うわっ!?」(フラン)

「くっ……強い。」(シズエ)

「これが……災厄ですか……」(咲夜)

「チィ……厄介ね。」(レミリア)

「い、痛いです……」(妖夢)

「なんちゅう威力じゃ……」(ティオ)

「……強すぎ」(ユエ)

「うへぇ……あれ直接当たったら死ぬんじゃね?」(清水)

「当たらねぇよう気を付けろよ。」(ハジメ)

「気をつけたぐらいで当たらなければいいわね……」(雫)

「強くない?ねぇ強過ぎない?」(優花、)

 

その光景を見てハジメ達がそう呟くと、それを聞いた朱雀は笑みを浮かべながらこう言った。

 

「まぁね〜。ほらほらーまだまだ始まったばかりだよん、早く立ち上がってきなって。」

 

「……言われなくても。」

「……うん。」

「……ええ。」

ハジメの言葉に他の皆も立ち上がる。

 

その瞬間、彼等に回復とバフが掛かり、同時に後方から朱雀に向けて魔法や弾幕が飛んできた。

 

「一応私達も居ますからね!?……まぁいいです、ハジメさん達前衛はそのまま暴れ回って下さい!こちらで随時援護と回復を行います!」(さとり)

 

同時に全体指揮官からの指示が下った。

 

「「了解!」」(前衛組)

 

ハジメ達はそう返事をすると、再び朱雀へと攻撃を仕掛けた。

 

「……はぁ、全く、まだ話してる途中だったんだけどな。まぁ、しょうがない。続きを始めようか!」

 

そして、ハジメ達と朱雀の戦いは更に激しさを増していった。

 

 

 

 

ーーーー三十分後

 

 

 

 

「……ふぅ、もうそろそろ終わりにしようかな。」

「……そうだな、俺もそろそろ限界だし。」

(やっぱりコイツは強え……。でも、あと少しだ!)

ハジメはそう思うと、ドンナーの残弾を確認した。

 

 

そして、ハジメは最後の攻撃の為の準備を始めた。

 

「……ん、多分私達も皆次ぐらいが最後の一撃。」

 

「「「……(コクッ)」」」

 

 

彼女達もそう言って得物を構えた。

 

 

「さて、僕もそろそろ本気出そうかな。」

 

一方朱雀の方は、ドスを構えてそう言った。

 

 

「行くぞ!」

 

「行くよ〜、」

 

 

そして、両者はほぼ同時に動いた。

 

ダァン!!×2

 

乾いた音が辺りに響くと同時に、ユエ達前衛が突っ込み、後衛からは最大限の魔法や弾幕などを放ち、全員で総攻撃を仕掛けた。

 

 

「神剣グラム!『インフェルノバースト』!」

 

「業火 爆炎ノ太刀 終式『退魔滅却』!」

 

「チィッ!もうあんま魔力残ってないんだけどな……持ってけ!『イクスティンクション・レイ・フルバースト』!」

 

 

「月の呼吸 奥義 日月星辰!」

 

 

「どりゃぁぁぁぁああ!!!!技なんてクソ喰らえですぅ!力のままに殴り付けるのが1番強いですぅ!」

 

 

「飛天御剣流 九頭龍閃!」

 

 

「魔力を全て注ぎ込んだブレスじゃ!焼き尽くしてやろう!」

 

 

「全てを呑み滅ぼして灰すら残すな『炎龍』!」

 

 

「全部飲み込んじゃえ!『刻天窮』」

 

 

「悔しいけどシアと同じことしか言えない……!!ぶっ飛ばす!」

 

 

「えっと、攻撃魔法弱いから取り敢えず皆に強化魔法!」

 

「スペルカード発動 人符『現世斬』!」

 

「もう一回食らっときなさい!スペルカード発動 神槍『スピア・ザ・グングニル』!」

 

「合わせるわ、お姉様!スペルカード発動 禁忌『レーヴァテイン』!」

 

 

「援護致します!スペルカード発動 幻符『ザ・ワールド』、幻葬『夜霧の幻影殺人鬼』!」

 

 

「ああもう!何であなた達はそう勝手に突っ込むのよ!仕方ないわね…咒詛『首吊り蓬莱人形』!」

 

 

「くっ!もうこうなりゃヤケクソです!想起『ストロードールカミカゼ』!」

 

 

 

「良い連携だ!だが……」

 

ドガァアアン!!!!

 

……凄まじい轟音と共に朱雀と彼女たちの攻撃が炸裂した。

 

「まだちょっと詰めが甘いね。」

 

しかし……そこにはダメージを受けつつもピンピンしている朱雀と、攻撃の合間を縫って斬られた傷で倒れ伏すユエたちが居た。

 

 

「う〜ん、やっぱりもうちょっと訓練は厳しくするべきだったかな〜?」

 

 

余裕をかましてそう言う朱雀に対し、さとりは思わず笑みを零しながらこう言った。

 

「ふふっ……詰めが甘いのは貴方ですよ!」

 

さとりがそう言った瞬間、朱雀の背後から声が響いた。

 

 

「備えあれば………」

 

「何っ!?」

 

その声の正体は、5連装のパイルバンカー(爆装仕様)を両手に構え、今まさに攻撃体勢に入っているハジメだった。

 

「……嬉しいなッ!!!!」

 

(不味い!この距離だと避けられない!……中々やるじゃないか!)

 

朱雀はそう考えて迎撃体勢に入ろうとするが、ハジメが一歩速かった。

 

キュィィィン ドゴォォォォ!!!!!

 

 

そして、朱雀はハジメの一撃を食らい、そのまま地面に倒れ伏した。

 

 

「ゴフッ!や、やるじゃない……いいよ、これで本当に終わりだ。……それに急いだ方がいいと思うよ、輪廻結構やばそうだから。」

 

朱雀は立ち上がりながらそう言うと、腕を伸ばしてワームホールを繋げた。

 

 

「じゃあね、また会える時を楽しみにしてるよ。」

 

 

「ああ、世話になったな。」

 

「…ん、きっと何時かまた会える。」

 

「だな、そん時は全力を出したコイツに抗える程度には強くなっとかないとな。」

 

「はい、私達の技はあまり効きませんでしたからね……悔しいです。」

 

「ま、さっきの連携で大した傷を受けなかったこいつもどうかと思うけどな。」

 

「もっと強くなってボッコボコにしてやるですぅ!」

 

「シア、いい加減脳筋状態から帰って来なさい。」

 

「うむ、やはり妾達はまだまだ強くならんといけんのう……。」

 

「技がほとんど効かなかった時は、ミレディちゃんもはや笑っちゃったもん。」

 

「まぁ、それだけ僕達には伸びしろがあるって言われたけど……。」

 

「私なんて皆に魔法かけただけだから、特に何もしてないんだけど……」

 

 

「それが有ると無いとじゃ、全然違いますよ。……朱雀さん、貴方がどうしてあんな事をしたのかは分かりませんが……強くしてくれてありがとうございます。」

 

 

「そうよ!今度会った時には洗いざらい話して貰うんだから!」

 

 

「……今は時間が無いから殺すのはまた今度にしてあげる。」

 

 

「……今回は勉強になりました、ですが貴方が私たちにした事は忘れませんから。」

 

「そうね……でもただ暴れた訳じゃないのは今回でわかったわ。」

 

 

「ええ、次回会った時に全て教えて貰いましょう。」

 

 

そう彼女たちは語った。

 

 

「うん、次会うのが怖くなって来たけど、すぐにまた会えるさ。じゃ、行ってらっしゃい!強くならなかったら怒るからね〜!」

 

 

「「「ああ(はい)(うん)!」」」(全員)

 

そしてハジメ達は一瞬躊躇したが、意を決して飛び込んだ。

 

 

 

 

そうして彼等の鍛錬生活は終わりを告げた。

 

 

 

そして………

 

 

 

 

彼らが悲劇を知るまで……あと数分。

 

 

 

 

 

 

 







ちなみに三日ほど前にフランの腕時計を注文しました。時計一本3万は初めての買い物です。


そう言えば所用で北海道に行った家族達が明日帰ってくるんですが、昨日お土産は何がいいと聞かれたので、喜久水庵の喜久福って冗談で言ったら、電話先の妹に仙台通んねぇよハゲタコって言われましたが、さっきかかってきた電話で母親と話したところマジで買ってきてくれたらしいです、妹ツンデレか。

母親には白い恋人でいいよって出発の日に言ったし、喜久福の下りは妹と電話した時に言ったんで、多分妹が言ってくれたんだと思います、やっばり妹ツンデレじゃん……。


とか言ってたら、電話でテメェぶち〇すぞって言われたんで今から恐怖で震えながら寝ます。


ではおやすみなさい( ˘ω˘ )zzz



感想くだちい(小声)






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第三十話 共同戦線



待たせたな!(猛省)


今モンストで一番好きなキャラは ちはや。

どうも湯タンポでそ。


なんでこんなに期間が空いたかって?それは全部月島さんのおかげじゃないか!

でも今日投稿したからヨシ!

今回は短いぞ。

後10万UAありがとうございます!


それじゃー









 

 

 

 

 

「おい…!これはどういう状況だ……!」

 

 

「なんで……輪廻が倒れてるの?」

 

 

 

ワームホールから抜け出し、輪廻のいる場所に着いたはずのハジメとユエは、思わずそんな声を出して呆けていた。

 

 

 

しかし、その二人の疑問に答えられる者などこの場には誰もいなかった。

 

 

「…………」

 

 

そして、少し視界を動かすと、死んだ魚のような目をしたミュウを、泣きながら抱きしめるレミアがいた。

 

 

「……ごめんなさい………ミュウ……!私は貴女を守りたかったの……でも、輪廻さんを殺したかった訳じゃないの……!」

 

 

 

「ママ……泣かないで………ミュウはもう何も悲しくないの…。」

 

 

そんな親子の様子を見て、断片的ながらも何があったかを推察した二人……いや、援軍に来た、清水 ユエ シア ティオ ミレディ 恵理 雫 優花 香織 セリカ シズエ 妖夢 レミリア フラン 咲夜 アリス さとり、そしてハジメの全員が、凄まじい怒りを浮かべて天之河を睨みつけた。

 

しかし当の本人はどこ吹く風といった感じである。

 

 

「ほう、やっと来たか。随分と遅かったじゃないか。」

 

 

そんな言葉を聞いて黙って居られるハジメでは無かった。

 

 

「テメェ、自分が何してるか分かってんだろうな?あぁ!?てめぇだけは絶対に許さねぇ!必ず地獄に叩き落としてやる……!!」

 

 

「まぁ落ち着け(笑)、これから貴様らは俺に殺されるというのだから。」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、全員の頭に血が上った。

 

 

 

「殺す……!必ず殺してグチャグチャに引き裂いてやる……輪廻は私の存在する意味だった…!!その意味を奪ったお前は絶対殺す!」(ユエ)

 

 

「輪廻さんを殺した奴に容赦なんかしません、必ず叩き潰してやるですぅ!!それが私の返せるたった一つの事です!」(シア)

 

 

「……妾は同族を皆殺しにされた時でさえ報復はせんかった……じゃが、主様を殺したお前だけは許してはおけぬ……!!死を持って貴様の罪を償わせてやろうぞ」(ティオ)

 

 

「……2度も私の大切な物を奪ったお前には絶望のがお似合いだ、クソ野郎、お前は必ず私達が殺す!」(ミレディ)

 

 

「僕の生きる意味を奪ったな……!?僕の大切な人を奪ったな…!?僕の……僕の全てを奪ったな……!?絶対に、絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に許さない!!!!」(恵里)

 

 

「……私は今まで、貴方が幼なじみだったから、貴方の尻拭いをしてきた………でもそれも今日でおしまい。貴方は絶対に許されない事をした……だから……せめて私が貴方を殺してあげる。」(雫)

 

 

「もう貴方は私の幼なじみ何かじゃない、ハジメ君の為にも死んで。」(香織)

 

 

 

「……十五夜とそこまで中が良かった訳でも無いし、ユエたちみたいにそう言う感情で怒ってる訳じゃないけど………惚れた男が慕う人を殺られちゃ、私だって黙ってられないわよ!」(優花)

 

 

 

「人の旦那を殺しておいて無傷で帰れると思ってんのか?お前は。だとしたらそれは大間違いだ、お前は絶対にしちゃ行けないことをしたんだ………死んで償えよ!」(セリカ)

 

 

 

 

「よくも……よくも輪廻さんを殺してくれたね……私は貴方に初めてあったけど、貴方は今ここで殺すって決めた。」(シズエ)

 

 

 

「貴様が誰であろうが、何の目的で輪廻を殺したのであろうがどうでもいい。……ただ一つだけ明確な事がある……貴様は万死に値するという事だ。……慈悲などくれてやらん。貴様はただ永遠をさまよい続け、煉獄の焔をその身に受け、このグングニルの礎となるがいい!それが貴様に唯一許された事だ!!」(レミリア)

 

 

 

「よくも私のお兄様を……!!この恨み、晴らさずにおくものですかっ!!!……オマエハカナラズコロシテグチャグチャノ肉片ニシテヤル!!」(フラン)

 

 

 

「……貴方が輪廻さんを殺した罪はどれだけ時が経とうと許されませんよ、時の番人である私が保証します。……そして、貴方は永久に生き続け、死に続けることになります。これも私が保証します。………ですから、さっさと死ね!」(咲夜)

 

 

 

 

「……輪廻さんは、私が心を読めると知っても受け入れてくれました………それがどれだけ嬉しかったか、貴方には分からないでしょうね。……勿論輪廻さんの事を色々知り、複雑な気持ちではあります。…ですが、それでもあの人は私の恩人であり、そして仲間です。……私の大切な人を奪ったこと、後悔させてあげましょう。」(さとり)

 

 

 

 

「……私の夢は、完全に自立した人形を作ることだった。でもそんなの作れるわけないって言われて来た……だけど輪廻は違った!数少ない私の夢の話を本気で聞いてくれた人だった!……そして、それを実現させようと努力してくれた……。なのに……っ……私は今まで復讐なんて考えたことも無かった。でも今は違う。貴方だけは許すことができない!貴方だけは……絶対に殺す!輪廻の仇を取らせて貰うわ!!」(アリス)

 

 

 

「……私は輪廻さんに剣を教えて貰ってました。そして、色々輪廻さんの事を聞いて、色々考えたし、疑ったりもしました。……作られた感情なのかもしれないし、そう思うよう誘導されただけなのかもしれない。……でも!教えて貰った剣が!一緒に笑った笑顔が!全部嘘だったとは思わない!!だから、私は……輪廻さんを好きになった自分を信じたい!!!……でも、それを確かめる事さえ出来なくした貴方は絶対に許しません……!!!」(妖夢)

 

「俺が今ここに居るのは我が君のお陰だ……その御方を手にかけた貴様を許すことは断じて無い!!貴様だけはこの手で殺す!」(清水)

 

「…俺の主を……!…いや、親友を…ッ!!……貴様はただ殺すだけでは済まさん……!!地獄の苦しみを与えながら殺してくれる……!」(ハジメ)

 

 

 

 

全員が全員、激しい怒りに身を震わせていた。

……中には泣いている者もいる。

それは当然だろう。

大切な人を失った悲しみが消えることなど決してない。

理不尽に奪われたものを取り返すために。

彼らの意思は1つだった。

 

「「「「……殺す!!」」」」

 

「ふはははは!!!かかって来い!雑魚どもが!」

 

その言葉と共に、戦争が始まろうとしていた……

 

 

 

 

 

だが……

 

 

 

 

「お待ちなさい!」

 

 

 

「「!?」」

 

突然響いた声に、皆驚きの声を上げ、一斉にそちらを見た。

 

そこには、紫がいつも通り胡散臭い笑みを浮かべていた。

 

「これ以上の戦いは無意味ですわ。争いは何も生み出しませんわよ?」

 

そういった紫に、ハジメがブチギレながらこう言った。

 

「あ"ぁ"?ふざけんなよテメェ!何が無駄だってんだ、ぶち殺すぞゴラァ!!」

 

 

 

すると、紫は微笑みながらこんなことを言い出した。

 

「あら、私は至って真面目ですわよ?……それに、貴方達が争っても意味は無いと言っているのです。だって、貴方達に彼が倒せるとは思いませんもの。」

 

「……どういうことだ……?」(清水)

 

「貴方達は、十五夜輪廻と同じ強さを持つ相手を倒せるのかしら??」

 

「「「「「……っ!?」」

 

その問いに、誰も答えることが出来なかった。

 

「……恐らく天乃河光輝は輪廻の力を手にしていますわ、ですから貴方達ではまず勝てないでしょう。」

 

「……それがどうした? 俺らは死んでも奴を殺すだけだ。」(ハジメ)

 

「ええ、そうでしょうね。……でも、貴方達だけでは勝てない。」

 

「言い方が回りくどいんだよ……!つまり何が言いてぇ。」

 

イラついたようにそう言うハジメに、紫は少し困ったような顔をして答えた。

 

「ですから私も手を貸すと言っているのです。共同戦線と行きましょう?」

 

「ハッ、寝言は寝てから言いやがれ。お前が俺たちに協力するわけねぇだろ。」

 

「あら、どうしてそう思うんですか?」

 

「アイツを殺すことに加担した奴が良くもまぁぬけぬけと……!!んな言葉信用出来るかってんだ!」

 

「……それもそうですね。確かに貴方の言っている事は正しい。ですが何度も言っているように貴方達だけでは勝てませんわ……使えるものは何でも使えと教わらなかったかしら?」

 

 

「…………。」

 

(こいつの言ってる事は事実だ。だが、こいつを信じることは出来ん……。何か裏があるはずだ……)

 

 

 

ハジメは、目の前の胡散臭そうな笑みを浮かべている女を見つめる。

すると、そんなハジメの思考を読んだかのように、紫はまた口を開いた。

 

「ああ、貴方の考えていることは分かりますわ。私は敵なのか味方なのか分からない怪しい存在。……それどころか自分の主を嵌めたやつを信じれるはずがない……そう考えてるんでしょう?」

 

「……。」

 

ハジメは無言で紫の言葉を聞く。

 

「でも、安心してください。私は貴方達の邪魔をする気はありません。ただ、あの人に償いをしたいだけ……。」

 

そう言った紫の瞳には悔恨の念が込められていた。

 

 

それを聞いたハジメは、十秒ほど悩んだ後にこう決断した。

 

 

「…………………分かった。だがもし少しでも変なことをしてみろ……殺すぞ。」

 

「ええ……それで構いませんわ。」

 

こうして、ハジメ達と紫の奇妙な協力関係が生まれた。

 

 







次の投稿は多分11月入ってからになると思いますわ。

年内までには絶対終わらせます。

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第三十一話 決戦


やあ、2ヶ月ぶりだね、湯タンポです☆

今日うちの加賀さんが大破したので思わず叫び散らかしました☆

ではどぅぞ(遅くなってサーセン♡)


 

 

 

 

 

 

 

 

「……しっかしどうする?馬鹿正直に突っ込んでも、俺とお前とユエ以外即全滅なんて事も有り得るぞ。」

 

ハジメは目の前でこちらを馬鹿にしたような笑みを浮かべて居る天之河から目を離すこと無く、隣の紫に向かってそう話す。

 

 

「そうですわね……なかなか厳しい戦いになると思いますわ。アレ1人に対して私達全員が常に最適解を打ち続ければ、何とかジリ貧に持っていける……という状況でしょうか。」

 

紫は冷や汗を一筋流しながらそう言った。

 

「そんな事は分かってんだよ……問題は誰がアイツと戦うかって事だろ?本当に輪廻の力を持ってるとしたら、俺らでも15分持てば良い方、他のやつなら5分持てば国民栄誉賞並だ。」

 

「まぁそうなりますわね……」

 

二人は苦笑いを浮かべながら会話を続ける。

すると、紫の隣に居るユエが口を開いた。

 

「私がやる。それが一番いいと思う。」

 

ユエの言葉を聞いて、紫が慌てて言葉を返す。

 

「それはなりません!確かに貴女ならば、あの者とも互角以上に戦えるでしょうが、それは本当に最後の手段です!もし貴女が最初に殺られてしまえば、私達にもう勝ち目はありません!」

 

「ん、大丈夫。全力は出さない。」

 

しかしユエは全く聞く耳を持たない。

そしてそのまま天之河に向けて歩みを進め始める。

 

「おい、ちょっと待てって!」

 

ハジメがそれを止めようとする。

だが……

 

ズダンッ!! という音と共に、ユエの姿が消える。

 

一瞬にして間合いを詰めたのだ。

天之河は目を見開き、急いでその場を離れるべく足に力を入れるが、既に遅かった。

天之河は吹き飛ばされる。

空中で受け身を取り、体勢を立て直す天之河だったが、既に目の前にはユエが迫っていた。

 

「シッ!!」

 

気合の声とともに振り下ろされた神速の剣閃を、辛うじて天之河は受け止めた。

ガキン!という音が響き渡る。

 

いつの間に解放したのか、ユエの手には、魔剣レーヴァーテインが握られていたのだ。

しかし、天之河はまだ押し負けてはいない。

天之河も本気を出してはいなかったのだろう。

ギリギリと鍔迫り合いをしながらユエと睨み合う天之河は余裕の表情だった。

 

「チィっ……貴様……少しくらい手加減してやったんだから感謝しろよ?」

「手加減?弱い犬ほどよく吠える。」

「……殺す。」

 

次の瞬間二人の姿が消えた。

そして凄まじい金属音が響く。

どうやら高速で移動しつつ剣をぶつけ合っているようだ。

恐らく目にも止まらぬ速さなのだろう。

紫はその動きを追う事が出来ずにいた。

そして、更に

二人の動きは速くなっていき、その速度は音速を軽く超えているように見える。

 

「……凄まじい速さと膂力。でもそれだけ。そこに輪廻のような絶技は存在しない。」

 

ユエがそう呟く。

 

「……死ね!」

 

その言葉と同時に、今までより一層激しい音が鳴り響いた。

見ると、ユエは片手で魔剣を振り下ろしており、対する天之河は両手で持った聖剣でそれを防いでいた。

 

 

一見するとユエが押しているように見える。

 

 

だが、それを見たハジメは焦っていた。

 

(ユエが押しているのは良い、だが、天之河が持っているあの剣……何時ぞやの聖剣(笑)じゃねぇ。 ……恐らくマジモンの聖剣……それも神器クラスだ。……だとすると相当不味い……!)

 

そう考えている間にも戦いは進んでいく。

 

今度はユエが連続で斬撃を放ち始めた。

 

まるで嵐のように降り注ぐ攻撃を、天之河はどうにか捌いている。

しかし徐々にダメージは蓄積されていく。

 

ユエの攻撃は一撃で相手を戦闘不能にする威力を持っているが、それで簡単に倒れてくれる様なら、こんなに苦戦はしていない。

 

この膠着状態のままでは、ユエにいずれ体力の限界が訪れる。

 

そう考えたハジメは、天之河に悟られぬよう、紫にハンドサインを送った。

 

内容は『奇襲しろ』というものだ。

 

紫はハジメの考えを読み取ると、作戦内容を後ろに控える清水やシア、妖夢達に通達する。天之河にバレないように、慎重に、且つ迅速に……

 

 

一方、その頃ユエの方も、少しずつ追い詰められ始めていた。

 

「……っ……やっぱり消耗が激しい。」

 

そう、先程から全力に近い攻撃を続けているユエであったが、既にその体は限界を迎えようとしていた。

 

「終わりか?ならばトドメを刺してくれるわ!」

 

そう言った瞬間、ユエに剣閃が走る。

 

ユエはそれを魔剣で受け流そうとするが、流石にそれは無理があった。

遂にユエの体に傷がつく。一瞬で治る様な傷ではあったが、その一瞬は明確な隙を生んだ。

 

そして、ユエの一瞬出来た隙を逃す天之河ではなかった。

ユエに向かって一気に踏み込むと、手に持っていた聖剣を全霊の力で振り下ろす。

 

「死ねい!」

「ッ!」

 

ユエは咄嵯に反応して回避しようとするが、反応が遅れてしまう。

 

そしてその攻撃はユエを捉え、肩口から胸にかけて、大きく切り裂いた。

 

「……うぐッ!?」

 

「雑魚が!!」

 

だが、ユエとてただ斬られた訳ではない。

 

その時、天之河の背後には、六連装パイルバンカーを両手に装備したハジメ、そして、技を放つ直前の清水、シズエ、セリカ、シア、ミレディ、雫、優花、妖夢、咲夜、レミリア、フラン、アリス達が無音で迫って来ていた。

 

「…シッ!!」

 

 

天之河が振り返った時にはもう遅い。

全員が放った必殺の一撃は、容赦なく天之河を襲った。

 

「ガァァア!!!?」

 

全身がボロボロになりながら吹き飛ぶ天之河。

 

 

しかし………

 

「クハッ!雑魚にしてはやるではないか。 ……だが、その程度ではかすり傷にもならんなぁ。」

 

先程の傷はなんだったのか、天之河の身体からは血が流れるどころか、服すら破れていない。

 

「……クソゲーじゃねえか」

 

ハジメが悪態をつく。

 

「さあ、まだまだ楽しませてくれよ?」

 

天之河がニヤリと笑う。

 

 

だが、帰ってきたのは凄まじい誹謗中傷だった。

 

「うるせえ死ね」

「死んじゃえ」

「死んでください」

「死になさい」

「死ねや」

「死んでくださいぃ」

「……死ね」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

「Fuck you!」

 

 

……いやどちらかと言うとただ死んで欲しいだけかも。

 

 

…ハジメに続いて、ユエ達も口々に天之河へ罵倒の言葉を浴びせる。

 

「黙れぇ!!雑魚の分際で調子に乗るな!!!このクソカス共が!!」

 

天之河はキレた。

ハジメ達の態度を見て、自分が舐められていると判断したのだ。(まぁ実際舐められているが)

 

因みにこれはハジメ作戦だったりする。「物理的に攻撃するより、口撃した方があいつにとってはダメージでかいんじゃね?」との事。

 

まあ、効果は抜群だ。

 

その証拠に天之河の顔には怒りが滲み出ている。今にも血管がプッチンプリンしそうだ。

 

「お前ら全員を挽肉にしてやる!!!」

 

天之河はハジメ達の方向へ手をかざすと、そこに膨大な魔力が集中し始めた。どうやら魔法で応戦するつもりらしい。

 

「させると思うか?今度は俺が相手だ、この沸点ミジンコ野郎。」

 

ハジメがドンナーで狙い撃つ。

音速の30倍近い速度で撃ち出された銃弾は、天之河の腕に命中し、バシュッという音と共に破裂させた。

 

「ぐっ!また腕がぁ!!」

 

「次は何処を破壊して欲しいんだ?リクエストに応えちゃうぞぉ〜♪」

 

「貴様ァ………!!!許さんぞ!!」

 

「うっせぇバーカ!」

 

再び発砲するハジメ。今度は顔面に向かって。

だが、それを察知した天之河は咄嵯に身をかわす。

 

「くそ、ちょこまかと鬱陶しい。」

 

天之河の動きは速く、ハジメの銃撃は全て回避されてしまう。

 

「チィ……めんどくせえな……八雲!」

 

「分かりましたわ!」

 

八雲紫が扇子を開くと、その扇子の先に大きなスキマが出現した。

その中はグニャグニャと歪んでおり、空間がねじ曲がっているように見える。

 

「これでどうかしら!」

 

そう言って扇子を薙ぎ払うように振ると、そこから天之河目掛けて幾つもの裂け目が飛び出してきた。

それはまるで触手のように、ウネウネと動きながら、天之河へと向かっていく。

 

「そんな攻撃効かんなぁ!!」

 

しかし、天之河は余裕そうな表情で、襲ってくる無数の攻撃をヒョイヒョイと避けていた。

それを見た八雲紫はニヤリと笑った。

 

「あら、そうかしら?」

 

次の瞬間、天之河の身体を凄まじい衝撃が走った。

そしてそのまま壁まで吹き飛ばされてしまう。

 

「ガハッ……!」

 

口から血を吐きながらも、自分の身に何が起きたのか理解できない様子の天之河。

 

だが、そんな事は誰も気に止めるはずが無く、シアや妖夢達による追撃が加えられる。天之河は防御することもままならず、ただ一方的に攻撃を受け続けた。

 

シアのハンマーが天之河の頭を捉えたと思えば、その反対から咲夜と優花の息のあった回し蹴りが鼻骨を潰し、次いでとばかりに投げナイフが披露される。

 

その衝撃で後ろに倒れようものなら、雫に脊髄を切り飛ばされ、前にふらつこうものなら、妖夢とシズエの十文字斬りが待っている。

 

倒れ込むと再生した瞬間に清水によって四肢を切り飛ばされる。更にレミリアとフランのグングニルとレーヴァテインによって串刺しにされ、ユエやミレディ、セリカとアリス達による魔法(魔術)火力が火を噴く。

 

そして、仕上げとばかりにハジメの六連装パイルバンカー(爆装仕様)ⅹ2と、紫の二両編成の電車x3を叩き込んだ。

 

 

「グォア!?あば、ぼべ、ごぇ……!」

 

あまりの威力に、既に天之河の意識は刈り取られていたが、ハジメ達はそれでも容赦無く追撃を加えた。

 

「や、やめ」

 

ゴシャッ! 天之河の懇願も虚しく、最後の一撃として、八雲紫の全力全開の結界により押しつぶされた。

 

それは最早、攻撃ではなく処刑に近い。

圧倒的な暴力の嵐の前に、天之河は為す術もなく崩れ落ちた。

 

これで死な無いのであれば最早為す術はほとんど無い。これを耐えられるとしたら、何処かの変態か輪廻位なものだろう。

 

天之河は、白目を剥いて泡を吹き、完全に事切れているよう……に見えた。

 

 

 

しかし、次の瞬間にはビクンと痙攣すると、まるで時間が巻き戻るかのように傷が修復されていった。

 

天之河はゆらりと立ち上がると、ニィと口元を歪ませた。

 

「クフフ……なかなかやるでは無いか。まさかこの我がここまで追い詰められるとは。流石と言っておこう。だが、もう遊びは終わりだ……」

 

「……くそったれが」

 

天之河の言葉に、ハジメは小さく悪態をついた。

どうやら天之河はまだやる気らしい。ハジメ達の猛攻を受けて尚、その戦意は微塵も衰えていないようだ。

 

「……いい加減しつこいですぅ。これでも喰」

 

「随分と動きが遅いな?」

 

シアがドリュッケンを振り上げたところで、天之河は一瞬で加速した。

そして、シアに掌底を食らわせると、そのまま吹き飛ばした。

 

「ぐっ!」

 

シアは何とか着地をしたが、かなりのダメージを負ってしまったようで、苦悶の表情を浮かべている。

 

それを見たハジメたちの表情は驚愕で満ちていた。

 

「嘘だろおい………シアの攻撃を避けるどころかそれより先に攻撃しやがった。」

 

「……あの時の比じゃないくらいに速い」

 

その速度は正に神の領域に達していた。

 

先程までの天之河はかなり速い動きではあったが、今のは間違いなくそれ以上の速さだ。

 

「クフフフ、今更後悔しても手遅れだぞ!さぁ、今度はこちらから行くぞぉ!!!」

 

天之河はそう言うと、今度は目にも止まらぬ速度でハジメ達に迫ってきた。

 

 

 

「……クソが!」

 

ハジメは咄嵯にドンナーを抜き発砲するが、やはりと言うべきか天之河はその弾丸を片手で受け止めた。

 

「ふん、そんなもので我を倒すなど片腹痛いわ!」

 

天之河は余裕綽々といった様子でハジメに向かってくる。

 

 

ハジメは舌打ちをしながら迎撃態勢をとった。

 

「フハハハ!!やはり奴の力は凄まじい!力が漲ってくる所の話では無いな!」

 

「チィッ!」

 

ハジメは迫り来る天之河を迎撃しながら思わず悪態をつく。

 

(何とか迎撃は出来ているが……均衡が崩れるのも時間の問題だな…)

 

ハジメは既に三回ほど天之河の攻撃が被弾していた。

 

「先程の威勢はどうした!防戦一方では無いか!」

 

天之河の攻撃を捌きながら、ハジメが打開策を考えようとするが、その隙をついて更に二発の拳が飛んできた。

 

「ごァッ!」

 

その拳はハジメの腹と左肋を抉り、ハジメを後方にふっとばした。

ハジメはそのまま壁まで吹き飛び、ズルリと床に倒れ伏してしまった。

 

(クソッ……肋が折れて内蔵に刺さりやがった……)

 

激痛に耐えながらもハジメは必死に立ち上がろうとする。

しかし、身体に上手く力を入れる事が出来ない。

 

ハジメの口から血が零れた。

 

「ハジメさん!」

「ハジメ!」

 

妖夢やユエ達がそう叫びながらこちらへ駆けつけようとする。

 

だが、それを邪魔するように天之河が立ち塞がった。

 

「クハハハハハハハハッ!!貴様らに残されているのは雑魚らしく無様に死に晒すことだけだぁ!」

 

「良いからさっさと退けェ!」

 

一気に先頭に躍り出たレミリアが激情に任せてそう叫び、天之河へと全速力で駆ける。

 

しかし、天之河はそれを難なく受け流し、逆にカウンターを仕掛ける。

 

「随分と遅いなぁ!!」

「グゥアッ!?」

 

めり込んだ拳は、なんとそのままレミリアの腹を貫通した。

 

「かは………っ!……だが、貴様も…この距離なら…避けられないだろう…神槍『スピア・ザ・グングニル』…!」

 

そう言って、レミリアは天之河にゼロ距離で紅の神槍を放とうとした。

 

しかし、天之河はそれを読んでいたのか、レミリアの腕を掴んで引き寄せると、彼女の首元に手刀を突き立てた。

 

「ガフッ……!」

 

「ゼロ距離になった時点でその程度予測しておるわ!」

 

そう言った瞬間、天之河の手には先程までレミリアが持っていた神槍があった。

 

「これはお前の妹に返しておいてやろう。」

 

天之河はそう言うと、こちらへ向かっていたフランへと槍を投げつけた。

 

その槍は音速を優に超えた速度で飛来し、フランの右胸へと突き刺さった。

 

「……っ…………え……?」

 

フランは突然の出来事に一瞬呆然とする。

そして、自分に槍が刺さったことに気が付くと、まるで糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。

 

同時に、天之河がレミリアの腹から手を引き抜くと、そのまま倒れ伏した。

 

 

「お嬢様ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!妹様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!……貴様ァァァァアアア!!!!!!!」

 

その瞬間、咲夜が絶叫し、天之河へと最高速力で駆け出した。

 

「何度言えば分かる!遅いんだよ!」

 

天之河はそう叫ぶと、超高速で突っ込んできた咲夜の顔面にカウンターで拳を叩きつけた。

 

「ガッ……!?」

「お前らは何もできない無能なんだよ!」

 

天之河は更に追撃を加えるべく、仰け反っている状態の咲夜に蹴りを放つ。

 

しかし、それは突如現れた何者かによって止められてしまう。

 

「……させない……!」

 

追いついたユエだった。

 

「チッ!小賢しい真似を!」

 

「うるさい…!さっさとくたばれ……!……その力を私に貸して【神剣グラム】!」

 

ユエがそう言い放つと、彼女の背中から不死鳥の如き炎の翼が生え、身の丈ほどある両手剣が出現した。

 

「ユエ!」

「ユエさん!」

 

同時に、セリカやシズエ達がユエに追い付き、清水と香織がハジメの元へ駆け付けた。

 

「ハジメ、大丈夫か?」

 

「大丈夫だ、問題ない…………とかネタに走りたいところだが……結構痛ぇ。」

 

「ネタに走ってる場合じゃないよハジメくん!!早く回復するから傷を見せて!」

 

ハジメが冗談を言うと、香織が慌てた様子でそう言ってきた。

 

「いや、良い……それより、あいつらを援護しろ……バフがあるのと無いのとじゃ……全然違う」

 

ハジメはそう言って、痛む体で立ち上がる。

 

「ハジメ、無理すんな。動いて良い状態じゃねぇのは自分が一番わかってるだろ?大人しく回復してろ。」

 

清水がそう言ってハジメの肩を抑えた。

 

「……ッ……分かった、だが治ったら俺も直ぐに参戦する。」

「おう!任せとけ!」

 

 

そうしている間にも天之河との戦闘は続いている。

 

「死ね【デッドリーレイド・カストタロフィ】」

「輪廻さんを殺した貴方を私は許さない……爆炎ノ太刀、一式!」

「力のままにぶん殴るですぅ!」

「貴方の尻拭いもこれで最後よ!八重樫流改、三式 出雲!」

「お主を見ると虫唾が走るんじゃ……滅びよ!ブレスバースト!」

「アンタの事割と嫌いだったのよね……吹き飛びなさい!」

「貴方を殺してもう一度輪廻さんとお話するんです! 剣技『桜花閃々』!」

 

上からユエ、シズエ、シア、雫、ティオ、優花、妖夢。……動ける前衛達が天之河を囲んで攻撃を仕掛けた。

 

 

「……クソカス共が!死ぬのは貴様らの方だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そんな彼女たちに対して、天之河は激昂し、彼女達の攻撃を掻い潜りながら反撃した。

 

何度か攻撃を受けつつも、天之河は彼女達を数十秒で戦闘不能状態に陥らせた。

 

ユエは脳を揺らされて脳震盪を起こし、シズエは横隔膜を突き刺されて呼吸困難に、シアは肺を二つとも突き刺された上に後頭部を殴られて意識を失い、雫は手足の健を斬られた上に心臓を一突きにされ、ティオは全身複雑骨折して気絶させられ、優香は左腕を切り飛ばされた上に両膝が壊れ、妖夢は背骨を半分に斬られ、彼女が持っていた刀が突き刺されており、うつ伏せで倒れている。

 

まだ死んではいないが全員瀕死の重症だ。

 

そして、天之河は当然の如く無傷である。

 

 

「ッ!クソが!死ねや天之河ぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

それを見た清水が天之河に突っ込み、後衛たちも火力技をぶっぱなして応戦する。

 

 

 

 

同時刻、八雲紫は賢者とすら称えられるその頭脳を全力で動かしていた。

 

 

(どうする!?このままじゃ勝てる見込みは無い!かと言って撤退すれば奴は更に力をつけて、本当に手がつけられなくなる……!!今の奴の力は全力の輪廻さんの約二割弱、封印の剣のストックは一本だけで、外してしまえば新しく作るのには材料が足りない!……一か八かの賭けに出る……?……いや、余りにもリスクが高すぎる!)

 

そこまで考えた瞬間、紫の足元に何が転がってきた。

 

「……え…?」

 

それは天之河と剣を交えている筈の清水の腕だった。

 

思わず清水達が居る方向へ目をやると……そこには信じられない光景が広がっていた。

 

ハジメと紫以外の全員が血溜まりの中で倒れていたのだ。

 

そんな中、天之河はこう言った。

 

 

「雑魚共が粋がりやがって……」

 

 

天之河のその言葉を聞いた瞬間、ハジメはまだ怪我が完治していないにも関わらず、ゆっくりと立ち上がった。

 

「………おい……テメェ、自分が何したか分かってんのか……?」

 

ハジメの声は低く、まるで地の底から響いて来るような声だった。

 

目の周りの血管や神経が浮いており、凄まじい怒りを滲ませているのが伺える。

 

「ああ?虫けらをはたいただけであろう?なんの問題がある?」

 

ハジメの怒りなど意に介さず、寧ろハジメを見下すように嘲笑う天之河。

 

「……八雲」

 

ハジメの呟きに、八雲紫はハッとなって顔を上げた。

 

「な、なんですの!?」

 

焦った表情で問い返す紫に、ハジメは冷徹な声で答えた。

 

「……"アレ"を使う、お前の能力で俺の身体能力を上げれるだけ上げろ、命が危ないとかは考慮しなくていい」

 

「なっ!?それだけはダメですわ!!アレは輪廻さんが使うから制御出来るのであって、貴方が使えば……!!」

 

紫は慌てて止めようとするが、ハジメはそれを遮るように言う。

 

「んな事分かってる。だがそんな事を話し合ってる時間すらねぇよ」

「でも……!!」

「良いから早くしろ!!」

 

ハジメの強い口調の言葉に、紫は沈痛な面持ちで了承の意を示した。

 

「……分かり、ました………ごめんなさい……貴方にこんな事を背負わせて……っ……」

 

涙を流す紫にハジメは、ただ一言。

 

「……別にお前の為じゃない、輪廻や優花……俺の大事な物の為だ」

 

そう言ったハジメは、宝物庫から一本の刀を取り出した。

 

それはかつて、このトータスの世界に来た時に渡された刀である。

 

その銘は……

 

 

 

 

「滅ぼせ『"夜叉之叢雲"』」

 

ハジメは静かにその名を呼びながら、叢雲を鞘から抜き放った。

 

その瞬間、ハジメの気配が凄まじく禍々しい物に変わった。

 

その気配は最早人間の物では無く、悪魔や魔王と言った方が近いだろう。

 

そして、それは見た目にも現れる。

 

髪色は深紅に変色し、瞳は赤黒く染まり、額から血の紋様が浮かび上がる。

 

その姿はまるで、鬼神や羅刹といった類のものだ。

 

だが、その姿を見ても天之河は余裕な態度を崩さない。

 

「ふん、それがどうしたというのだ?

たかが化け物に成り下がった程度で神である我と対等になったつもりか?」

 

そう言って、再び聖剣を構え直そうとする天之河だったが……その腕が途中で止まる。

 

否、止められたのだ。

 

「……は?」

 

天之河は自分の手を見る。

その腕は肘辺りまで斬られていた。

 

「敵の前でベラベラ喋ってんじゃねえよ、隙だらけだ」

 

いつの間にか天之河の背後に居たハジメが、無感情な声音で言い放つ。

 

「チッ!」

 

舌打ちをしながら背後を振り向く天之河。

しかし、その瞬間には天之河の体は切り裂かれて居た。

 

「ぐあっ!?」

 

天之河は一瞬にして体中に傷を負い、その苦痛により顔を歪める。

だが、天之河はすぐに反撃に移った。

 

「『天翔閃』!!」

 

その言葉と共に、天之河の持つ剣から光の奔流が放たれた。

 

が、ハジメは避ける素振りさえ見せない、それどころかその魔法ごと天之河を再び切り裂いた。

 

「ガアァ!?」

 

(馬鹿な!!有り得ない!神たる我の加護を受けた一撃なのだぞ!?それを事もなげに……)

 

天之河は驚愕の表情を浮かべるが、次の瞬間には胸元を切り刻まれていた。

 

「グッ!!」

 

天之河はバックステップで距離を取り、体勢を立て直しを図ったが……

 

「わざわざ距離を取ってくれてありがとよ」

 

ハジメはそう言うと同時に、天之河の目の前まで既に踏み込んでいた。

 

「なっ!?」

 

 

「さあ死んでくれ!テメェには地獄がお似合いだ! 【斬無一閃】!」

 

ハジメは、そのまま天之河の魂に目掛けて叢雲を一文字に振るった。

 

「がぁぁぁあああぁぁぁあぁ!!!!!!!!!!!」

 

 

斬り飛ばされた天之河の絶叫が響き渡る。

 

 

「い、嫌だ!我が!全知全能たる我がァァァァアアア!!!こんな所で死にたく無い!死にたく無いィィィィ!」

 

 

 

 

そして、そんな叫び声だけを残し、天之河は光となって消え去った。

 

 

 

 

「……これで……終わりか……」

 

 

そう呟いたハジメは、思わず倒れそうな体を抑え、ユエ達の方へ声を掛けた。

 

「お前ら………大丈夫か……」

 

「全然大丈夫じゃない……まだ脳が揺れてる……」

 

ユエはフラつきながらも立ち上がろうとするが、すぐにバランスを崩して転けそうになる。

 

そんなユエを抱きとめながら、宝物庫から神水を取り出し、重傷者達にぶっかけた。すると、見る間に傷口が塞がり、顔色も良くなっていく。

 

 

だが……………

 

 

「ハジメっ!痛いよ、左腕が痛い!な、なんで?傷は塞がってるのに……!」

 

 

優花がそう叫びながら、痛みを堪えるように左腕を押さえている。

 

……『幻肢痛』だ。

 

神水はあらゆる傷を治せるが、部位の欠損だけはどうにも出来ないのだ。

 

「……っ、八雲!何とかしろ!」

 

残った右腕でハジメに抱きつき、痛い痛いとうわ言のように呟く優花に、ハジメは紫に向かってそう叫んだ。

 

「無茶言わないで頂戴……私の能力は万能ではあっても全能では無いの。……それに、その子の幻肢痛は恐らくただの幻肢痛じゃ無いわ」

 

「くそっ!」

 

ハジメは悪態を吐きながら、神水を更に取り出し、今度は自分の口に流し込んだ。

 

そして、そのまま優花の唇に自身の口を押し付け、無理矢理飲ませた。

 

「んぐぅ!?」

 

突然の事に目を白黒させつつも、優花は喉を鳴らして神水を飲み干した。

 

すると一時的に幻肢痛が止み、優花は倦怠感からか眠ってしまった。

 

「……それで?ただの幻肢痛じゃないってのはどういう事だよ?」

 

ハジメは紫に尋ねる。

 

「……恐らくは『夜叉之叢雲』の反動だと思いますわ」

 

 

 

「……は?」

 

俺が代償を払うんじゃなかったのかよ!とハジメは紫にそうまくし立てあげる。

 

 

 

…………妖刀『"夜叉之叢雲"』

 

 

輪廻の所有していた武器の中で最も強く、最も代償が大きい刀。

 

神すら簡単に屠る力の代償、それは……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『夜叉之叢雲』の代償は……ランダムです。」

 

 

 







さあ、この作品で残してきた謎を全て回収し切れるのか?



……次回、最終話です。
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