日番谷(偽)でFGO (あたらんて)
しおりを挟む

プロローグ
召喚





そう、我々に運命などない

無知と恐怖にのまれ

足を踏み外したものたちだけが

運命と呼ばれる濁流の中へと

堕ちてゆくのだ


        ――浦原喜助


 

目が、覚めた。

 

 

「や…やったわ!ねえ、ロマニ!私も、ついにマスターよ!」

 

 

「あ、ああ!良かったね、マリー!何で適性の無い君に召喚が成功したのかは知らないけどとにかく喜ばしいよ!えっと…4号、じゃなくて、君の名前を教えてもらえるかな?ボクはロマニ・アーキマン、こちらは…」

 

 

「オルガマリー・アニムスフィアよ、よろしく。あなたが私のサーヴァント…でいいのよね?」

 

 

そう自分に心配げに聞いてきた女性―オルガマリーと名乗った―と自分の繋がりを感じる。

何が何だかわからないが言うべき言葉だけはわかっていた。

 

 

「そうだ。俺がアンタのサーヴァント。セイバー、日番谷冬獅郎だ。これからよろしく頼む」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ…。流石セイバーだけあってステータスは高いわね。筋力A、耐久C、敏捷A、魔力C、幸運C、宝具A+…。クラススキルは対魔力Bに騎乗Dね…。ちょっと、優秀じゃない!」

 

 

オルガマリーが俺の能力について何か言っているが、今は少し考えさせてほしい。

俺はBLEACHという作品に出てくる日番谷冬獅郎というキャラクターになっている…らしい。

細かいことはわからん。

そして何より重要なのが()()()()()()()ということだ。いや、正確に言えば知識はあるが思い出は無い。BLEACHという作品の作者も内容も知っているがBLEACHを読んだ記憶が無い。

日本国憲法の3大原則は言えるが学校で何をやったかは覚えていない。

そして、サーヴァントというものに関する知識がある。これといくつかの知識だけ、異質な感じがする。まるでついさっき教えてもらったかのような…。

 

 

まあそこら辺は置いといて、俺はどうも日番谷冬獅郎として英霊の座というものに何故か登録されてしまったらしい。そしてこの女性、オルガマリーにサーヴァントとして召喚されたわけだ。

 

 

「ああ、そうだわセイバー。申し訳ないのだけれど、あなたのことについて私は知らないの。データベースにも日番谷冬獅郎という英雄は存在しなくって…。あなたはどんな英雄なのかしら?」

 

 

さて、なんと答えるべきだろうか。悩んだ末、俺はBLEACHの世界について少し話すことにした。

 

 

「死後の世界―尸魂界(ソウル・ソサエティ)―にある組織、護廷十三隊で十番隊隊長を務めていた。死者を成仏させたり(ホロウ)という死者が凶暴化したものを倒したりするのが仕事だったな」

 

 

「へぇ…。死後の世界で働く死神かあ…。どこの神話形態だろう?名前は日本人らしいし、芥さんなら何か知っているかもなあ」

 

 

「そうね。ちょっと色々な人に聞いてみるわ。勿論あなたも私に話を聞かせてね。

そうだ、みんなとまずは顔合わせをしなくちゃ。ちょっと待っていてね、セイバー!」

 

 

そう言ってオルガマリーは部屋を出ていった。

すると、ロマニが口を開く。

 

 

「彼女はちょっと色々あってね…。今非常に落ち込んでいたんだ。それでちょっと錯乱して無理な筈だった英霊召喚に挑んだんだけど…。君が召喚できて、非常に喜んでいるんだよ。できればちょっと優しくしてあげてくれないかな?」

 

 

「…わかった」

 

 

俺も大変な状況なのだが…美少女にあんなに嬉しそうにされてはこちらも張り切るというものだ。

俺はサーヴァント(奴隷)だ。マスター(主人)のために動くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロマニにこの施設―カルデアというらしい―について聞いているとオルガマリーが帰ってきた。

 

 

「セイバー!とりあえずダ・ヴィンチととAチームをシミュレーションルームに集めたわ。顔合わせと同時にあなたの力も見せてちょうだい?」

 

 

どうやらいきなり戦うことになるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その部屋には8人の人がいた。

モナ・リザと見事に一致する超美人な人、金髪ロングのイケメン、目が鋭いイケメン、なんか渋い黒髪、髪型というかなんかもう色々ヤバい人、メガネツインテール、眼帯さん、白髪の人…

色々濃いわ。

 

 

「それじゃあ本日私が召喚したサーヴァントを紹介するわ。クラスはセイバー。真名は日番谷冬獅郎。出典は不明だけれど、ステータスを見るに戦闘力は十分よ。じゃあ実際に戦ってもらおうかしら」

 

 

「ああ」

 

 

実際にシミュレーションが開始された。なんかみんなこっちをめっちゃ見てる。

しかし…この姿になってから霊圧を感じ取れるようになったが、金髪ロングと目が鋭いやつ、それにモナリザとツインテールがずば抜けている。

 

 

そんなことを考えていると、突如1体のゴーレムが前方に現れた。

 

 

『準備はいい?セイバー。いくわよ』

 

 

「ああ。いつでも構わねえ」

 

 

そう言うと、ゴーレムが襲い掛かってきた。

右腕を上げて大振りの一撃を叩き込もうとしてくる。

 

 

 

 

 

 

 

遅い。斬魄刀を抜くまでもない。白打で対応する。

 

 

ゴーレムが腕を振り下ろす前に拳で一撃。逆の手で振り下ろされる腕を掴みそのまま振り返って一本背負いで床に叩き付けて粉砕する。

 

 

『…やるじゃない、セイバー!次、いくわよ!』

 

 

…不思議だ。俺は記憶がないためハッキリ言って戦いができるのかどうかわからなかったが…。どうも、この体は日番谷冬獅郎の技術をも身につけているらしい。最年少で隊長に至った天才なら、この程度できて当然だろう。

 

 

そして、顔をあげるとライオンから山羊と蛇が生えてるとかいう意味の分からない生物がいた。

 

 

『次はキメラね。ちょっと強いわよ!』

 

 

案外素早い動きでこちらに迫ってきた。3つの頭が同時に襲い掛かってくる。

 

 

 

が、遅い。瞬歩で後ろに回り、鬼道を放つ。

 

 

破道の三十三 蒼火墜

 

 

放たれた一撃で、大きくキメラがのけぞる。

 

 

『え、セイバーって魔術も使えたの!?』

 

 

天才ですから(ドヤ顔)。描写は無かったけど日番谷なら多分斬拳走鬼全部できる。てかできてる。

それよりこの感じだと詠唱破棄じゃ威力が足りない。ちょっと浦原さんを真似させてもらおう。

 

 

縛道の六十一 六杖光牢

 

 

六つの光がキメラに刺さり、動きを止める。

そして今度は完全詠唱を始める。

 

 

君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ!

 

 

段々と高まる霊圧に危機を悟ったか、キメラが暴れ始める。

が、六十番台の縛道をそう簡単に破れはしない。詠唱は続いていく。

 

真理と節制 罪知らぬ夢の壁に僅かに爪を立てよ!! 破道の三十三 蒼火墜!!

 

 

完全詠唱の蒼火墜が放たれた。青い炎がキメラを燃やし尽くす。

 

 

『やるわね…。じゃあ今度は英霊の再現体を出すわ。これに勝てたら本物よ』

 

 

その言葉と共に現れたのは鎧をまとった金髪の女性であった。手に何か持っているが見えない。

そして明らかに先程までとは強さの格が違う。そっと背中の斬魄刀に手をかける。

 

 

その瞬間、物凄い勢いで目の前の女性から霊圧が放出され、こちらに突っ込んできた。

 

 

こちらも斬魄刀を抜き斬りかかる。

すると相手も合わせてきて鍔迫り合いの形になる。どうも透明な武器を持っているようだ。恐らくは剣。

そのまま何合か刃を交えて、相手は霊圧の放出によって力を得ていることがわかった。

剣の技術はそう変わらないが、力で負ける。

宝具の解放を、決意する。

 

 

一度斬りかかると同時に瞬歩で後ろへ下がって距離をとる。

 

 

そして、口を開く。

 

 

霜天に坐せ!『氷輪丸』!!

 

 

氷の竜が、目覚める。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

始解




剣を握らなければ おまえを守れない

剣を握ったままでは おまえを抱き締められない


                ――茶渡泰虎


始解―それは死神が斬魄刀より名前を聞き出すことによって可能となる斬魄刀の能力の解放である。

そしてこの俺、日番谷冬獅郎の斬魄刀である氷輪丸は氷雪系最強。

 

 

俺を中心として氷でできた竜が渦巻く。

相手の剣士は警戒しているのかこちらをじっと見ている。

 

 

「来ないのか?なら…こちらから行かせてもらうぞ…群鳥氷柱

 

 

無数の氷柱が浮かび上がり、鳥の群れのように敵へと襲い掛かる。

剣士は遠距離戦は不利と見たかまた霊圧を噴き出して襲い掛かってきた。

 

 

「そりゃ悪手だぜ…」

 

 

確かに日番谷は中・遠距離戦も得意とすることは間違いないが、決して近距離戦が不得手という訳ではない。むしろ近距離主体の剣士だ。

 

 

先程までとは圧倒的に手数の違う攻撃が敵を襲う。

氷の竜が上方から襲い掛かり、全方位から氷の礫が飛んできて、受ける刀からも冷気が発せられ、敵の動きはどんどん鈍っていく。

劣勢と見たか相手は距離を取った。そして透明な剣を構える。何をする気かわからない。

考えを巡らせていると、相手が口を開いた。

 

 

風王鉄槌(ストライク・エア)!!」

 

 

その瞬間、暴風が襲い掛かる。敵の剣が纏っていた風が解放されたのだ。

初めて見えた敵の剣は華美な装飾はされていないが、その剣の力を表すかのような荘厳さがあった。

 

 

「ぐ、あっ…」

 

 

そして、解き放たれた暴風はかなりの破壊力を持っており、咄嗟に氷で防御したものの、手傷を負ってしまった。先程の剣戟で負わせた傷も考えると五分といったところだろうか。

この隙を逃さないと言わんばかりに剣士は襲い掛かってきた。

 

 

今度は相手の剣がハッキリ見える分ずっとやりやすくなったがどうも先程まであった風は封印の意味もあったのか剣の切れ味が鋭くなっている。氷が一瞬で切り裂かれる。

ただ手数ではやはりこちらが圧倒的に上回っており相手は中々攻め込めない。

しばらくの間膠着状態が続く。

 

 

 

 

だが、もう十分だろう。一度距離を取る。

 

 

「やるな、お前…。名を、訊いておくぜ」

 

 

「…アーサー。アーサー・ペンドラゴンだ」

 

 

「そうか…。俺は日番谷冬獅郎だ。そして、もう十分に水気が満ちた。そろそろ終わりにするぞ」

 

 

これならあの技も繰り出せる。最も水気が満ちるのを待たずとももう一つ技を使えば繰り出せるのだが…始解での効果はどの程度なのか把握していないため今回は見送った。

 

 

何かすると悟ったのだろう。相手も剣を上段に構えて何かの準備を始めている。

が、もう遅い。

 

 

 

氷天百華葬

 

 

雪が一粒、落ちてきた。

 

 

約束された(エクス)…」

 

 

それが敵の剣に触れると同時に華の形となって凍りつく。

 

 

「な……」

 

 

そのまま落ちてくる無数の雪が敵に触れるたび華となって凍りつく。

 

 

「何だこれは………!!」

 

 

「『氷天百華葬』 その雪に触れたものは瞬時に華のように凍りつく」

 

 

もう既にほとんど剣士の体は氷の華で覆われている。

 

 

「百輪の華が咲き終える頃には」

 

 

凍っていないところが顔だけとなった剣士は戦いに満足したかのように笑っていた。

 

 

「あんたの命は消えている」

 

 

氷の華が、咲き誇った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やるじゃない、セイバー!再現体とはいえあのアーサー王を倒すなんて!流石私のサーヴァントよ!」

 

 

シミュレーションが終わった俺にオルガマリーが満面の笑みを浮かべて近づいてきた。

 

 

「ああ、そりゃあ良かった。ところでそっちの奴らも気になるんだが…」

 

 

「アラ、そうね。まずは自己紹介をしなくっちゃ!私はスカンジナビア・ペペロンチーノ。ペペって呼んでちょうだい?」

 

 

ヤバいやつが急に寄ってきた。こいつ思ってたよりまともかもしんねえ。

 

 

「あ、ああよろしく…ペペ?」

 

 

「ええ!」

 

 

「さて、私の名前はレオナルド・ダ・ヴィンチだ。君のことは知らないからこれから色々と教えてくれると嬉しいね。とりあえず君の宝具についてちょっと聞きたいものだ」

 

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ…知識にある。中世に活躍した万能の天才だ。

さっきの敵もかのアーサー王だったらしいしこの人もサーヴァントなのか?

というかなぜモナ・リザなんだ。あれは自画像だったのか…?

 

 

「お、おう。また今度な」

 

 

「私はキリシュタリア・ヴォーダイム。このAチームのリーダーを務めている。これからよろしく頼むよ」

 

 

金髪ロングのイケメンさんは物腰もイケメンっぽい。

まあ日番谷隊長もイケメンなんですけどネ!

 

 

「ああ、よろしく」

 

 

「よろしくなあヒツガヤさん!オレはベリル・ガット。カルデアでわかんないことがあったらどんどん聞いてくれ!」

 

 

ベリル・ガット…なんか胡散臭いな。

 

 

「ああ、頼らせてもらおう」

 

 

「僕はカドック・ゼムルプスだ…。まあ、よろしく頼むよ」

 

 

白髪の人だ。なんか色々と苦労してそうな感じが出てる。

 

 

「よろしくな」

 

 

「私はオフェリア・ファムルソローネ。これからよろしくお願いね」

 

 

眼帯の子だ。あの更木のように霊圧を無限に喰らう化物だったりするのだろうか…。

 

 

「ああ、よろしく」

 

 

「芥ヒナコよ」

 

 

本を片手に持ったツインテが早く帰りたいオーラを出しながら喋った。

霊圧から見るに只者じゃないことは確かだが…

 

 

「おう、よろしく」

 

 

「デイビット・ゼム・ヴォイドだ」

 

 

コイツも中々ヤバい雰囲気を出してる。なんとなくの勘だがこの中で一番注意すべきはコイツのような気がする。

 

 

「よろしく…」

 

 

「これで一通り自己紹介は終わったわね!じゃあ解散とするわ。自由にしてちょうだい。セイバーは部屋を案内するわ。着いてきて」

 

 

オルガマリーがそう言って締めくくるとみんな自由に動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてオルガマリーの後ろを歩いていると、1人の人に出会った。

 

 

「あら、レフ!ねえ見てちょうだい!私がサーヴァントの召喚に成功したのよ!」

 

 

「おや、マリー。ふむ、それはすごいね。こんにちは。私はレフ・ライノールだ。お名前を伺っても?」

 

 

目の前のレフと名乗った人物からものすごい霊圧を感じる。コイツもまた、只者じゃない。

 

 

「日番谷冬獅郎だ。よろしく頼む」

 

 

「ああ、これから一緒に頑張ろう」

 

 

「それじゃあレフ、私は部屋を案内してくるから」

 

 

「ああ、いってらっしゃい」

 

 

そうしてまたレフとも別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがあなたの部屋よ」

 

 

そういって通されたのは殺風景ではあるものの清潔で広い部屋だった。

自分の新たな部屋に満足していると、オルガマリーが暗い表情で口を開いた。

 

 

「ちょっと聞いて欲しい話があるの」

 

 

 

 




マリスビリーが死んだ直後なのでまだこの時のレフはいい人です。

そして所長がレフに依存した時期ですが、フラウロスは所長のことを鬱陶しがっていましたからフラウロスになる以前で、丁度所長のメンタルが削られるこの時期なんじゃないかなと判断したのでまだ所長はレフに依存していません。
なので主人公が召喚されたことによって…?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

告白




我々は涙を流すべきではない

それは心に対する肉体の敗北であり

我々が心というものを

持て余す存在であるということの

証明にほかならないからだ


          ――朽木白哉


 

オルガマリーが話し始める。

 

 

「その…私は、アニムスフィア家というところの当主なんだけど…。

ここ、カルデアの前所長が私の父だったの。それで、1月前に父が亡くなって、私が所長に就任したの。それで…」

 

 

そこでオルガマリーは一度言葉を切ってまた話し始めた。

 

 

「その、仕事の引継ぎをしているときに父のやっていたことを知って…。

かなり非人道的なことをやっていたの。その中の1つなんだけれど、人間を作り出してあなたのような英霊を召喚して、融合させて強い人間を作り出すのが目的なんだけれど、その結果、その子の寿命はとても短くなってしまったの」

 

 

そこまで話すと、オルガマリーは震え始めた。

 

 

「それで、私、怖くなって…。その子が、マシュが、私に復讐に来ると思って、それで、怖くなって…」

 

 

何故だろうか。繋がりを感じるからだろうか。俺がこの子のサーヴァント(奴隷)だからだろうか。

俺はオルガマリーを抱きかかえて言葉をかけていた。

 

 

「大丈夫だ。俺がいる。それにその子も復讐しようなんて思っちゃあいない。君は大丈夫だ」

 

 

抱きかかえたオルガマリーの体は、とても細かった。

 

 

「ええ。ありがとう…。もうしばらく、このままで…」

 

 

しばらくすると、オルガマリーの震えは止まった。

 

 

「ありがとう。それでね、私にマスター適性が無いことも発覚して、ご飯も喉を通らなくなっていたんだけど…。ヤケになって、召喚を試してみたの。心の中では無理だろうと思ってて、実際一度は失敗したのだけど…というか、小さな石のような、宝石のようなものが出てきたの。

その後、あなたの召喚に成功して本当に、嬉しかったわ。私の召喚に答えてくれて、ありがとう。

そういえば、あなたを召喚した後あの石は見てないけれど…。何だったのかしら」

 

 

1つ、心当たりがあった。

天才、浦原喜助が生み出し、天才、藍染惣右介と融合を果たした「周囲に在るものの心を取り込み具現化する」、つまりは願いを叶えるという能力をもつ意思をもった道具。

 

 

崩玉だ。

 

 

俺の状況の全ての鍵になるかもしれない。見つけ出さなければ――

 

 

「な、なあマスター。その石を探しに行ってみないか?俺の召喚と多分深い関係がある」

 

 

「え?そうなの?じゃあ、行ってみましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、その日崩玉が見つかることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はマイルームで崩玉について一人考えていた。

オルガマリーも不審に思ったのか調査はしてくれるとは言ったが…。

崩玉が不完全ですぐに消滅してしまったのか、またどこかに召喚されたのか、そもそも崩玉ではないのか、それはわからない。

おそらくオルガマリーが俺の召喚に成功したのは崩玉によるものだと思うが…。

 

 

ダメだ。一人で考えていても何も始まらない。

そう思い、俺はやろうと思っていたことの1つ、「刃禅」を始める。

 

 

刀を膝に置いて座禅を組む。

 

 

刀一つに心を絞る。

 

 

何千年とかけて編み出された斬魄刀との対話方法である。

 

 

次第に心が落ち着いて、意識が飛んでゆく――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                   声が聞こえる                      

 

 

                   こだましている                  

 

 

 

     圧し潰すような                     包み込むような    

 

 

 

           この掌に落ちる          雷鳴のような     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷の竜が、目の前にいた。

 

 

小僧!!貴様が我の使い手だ!!我が名は氷輪丸!!

 

 

氷輪丸との対話に成功したらしい。

 

 

「お前は…俺が日番谷じゃないってわかってるのか?」

 

 

否!!貴様は確かに貴様の知っている日番谷冬獅郎とは違うが今の貴様は日番谷冬獅郎である!!そして我も貴様の知っている氷輪丸とは別物だ!!

 

 

「ど…どういうことだよ!?」

 

 

我は貴様の斬魄刀だということだ!!我に貴様が持っているような主との記憶はない!!我はまだ貴様を主と認めていない!!卍解を使いたくば我を屈服させてみろ!!

 

 

「な…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唖然としていると、目が覚めていた。追い出されたのだろう。

氷輪丸の言っていたことを整理すると、どうも俺の持っている氷輪丸はBLEACHの氷輪丸とは別物のようで、まだ日番谷と出会う前のようだ。

 

 

第一サーヴァントは全盛期の姿で呼ばれるらしいが日番谷の全盛期は俺の知ってる限りでは少し老けた状態だ。それで呼ばれていないということでまず齟齬が発生している。これもまた崩玉によるものだろうか。召喚に不具合が起きてもおかしくない。

 

 

そして…まだ氷輪丸は俺のことを主と認めていないといっていた。まだ卍解は使えないらしい。

この先戦いになることも多いだろう。修行を積まなければいけない。

 

 

そう思って部屋を出てオルガマリーにシミュレーションを頼もうとした矢先、誰かがオルガマリーについて話しているのが聞こえた。

あまり良くないと思ったが、気になったので霊体化して聞いてみた。

 

 

「それにしてもこの先新所長の元でやっていく思うと不安だよなー」

 

 

「ええ、そうね。どうも今日はサーヴァントの召喚に手を出したらしいし。実験とか言って魔術協会への言い訳はできるでしょうけど…もしかしたらしばらく資金援助とかが減るかもしれないわね。協会に対して隠蔽する気もあまり無いようだし…」

 

 

「どうもサーヴァントの能力は高いらしいからそこだけは救いだよな。これで低級なサーヴァントが召喚されてたらなあ…」

 

 

「まあそこは流石にアニムスフィアの当主といったところね。ただ…あのキリシュタリア・ヴォーダイムと比べると片手落ちはするけどね」

 

 

「まあ色々と心配だよ。昨日とか相当癇癪がひどかったんだぜ?この召喚でちっとは収まってくれると良いけどなあ」

 

 

「そうね」

 

 

どうもオルガマリーの愚痴だったらしい。評判は中々悪いようだ。

俺の召喚もその要因の1つとなっているのならどうにかしてオルガマリーの評判を上げなければいけないな…。

 

 

そんなことも考えつつオルガマリーを探していると、ロマニを見つけた。

霊体化を解いて話しかける。

 

 

「おう、ロマニ」

 

 

「あ、日番谷くん。そうだ、ちょっと時間あるかい?」

 

 

「ん?ああ、別に構わないけど…」

 

 

「ああ、じゃあ僕が担当している患者というか…まあそんな子がいるんだけどさ、ちょっと会って欲しいなって。その子にはちょっと複雑な事情があって…マシュっていうんだけど」

 

 

マシュ…先程オルガマリーが言っていた子か。

 

 

「ああ。先程オルガマリーから聞いた」

 

 

「!そっか…。それでも、カルデアに残ってくれるんだね」

 

 

「ああ。俺はマスターのサーヴァントだからな」

 

 

「じゃあ、この先の部屋にいるんだけれど…」

 

 

「ああ。行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その部屋はかなり厳重に閉められていた。というより清潔さを保とうとしていた。

 

 

「ここは無菌室でね…。君はサーヴァントだから問題ないけれど、僕は色々やらなきゃ入れないんだ。やあマシュ、こんにちは。元気にしてたかい?レコーダーは止めてあるよ」

 

 

「はい。こんにちは、ドクター・ロマン。そちらの方は?」

 

 

そう言ったのは、薄紫の髪を持つ少女だった。

霊圧が安定していない。永くはないだろう。

 

 

「俺は日番谷冬獅郎。セイバーのサーヴァントだ。よろしく」

 

 

「はい、私はマシュ・キリエライトです。よろしくお願いします。日番谷さん」

 

 

その少女は、無垢なだけで想像してたより普通の、女の子だった。

それは、きっと残酷なことだ。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

始まり




一歩踏み出す 二度と戻れぬ

三千世界の 血の海へ   


     ――ユーハバッハ


 

俺が召喚されてから、2年程が過ぎた。

その間、トリスメギストスなんていう機械が入ってきたりあのマシュがマスター候補となりそのままAチームの首席に至るなんてこともあったりした。

ただ、色々あった中で一際大きかったのが疑似地球環境モデル・カルデアスから火が消えたことだ。

あの時のオルガマリーのヒステリーはいつもに増してひどかった。

ただ励まして慰めた後1週間は俺の傍を離れようとせず、とても可愛かった。

 

 

まあそれは置いといて、カルデアスから火が消えるということはどういうことを表すのか。

それを説明するにはまずカルデアスが何かというところから始まる。

カルデアスとは、ざっくり言えば地球のコピーである。そして、このカルデアスは様々な年代の地球をコピーできる。ただ人間では観測できないため表層の光のみを専用の観測レンズ・シバによって読み取っている。

そして今まで、カルデアスは100年先を観測し続けていた。

そのカルデアスが光を灯している限り、都市に人が暮らし、文明が継続していることを示している。

 

 

その光が今から半年前、消えた。調べた結果、2016年をもって人類が絶滅することが証明されてしまった。

 

 

当然必死に原因を探した。未来は過去より生まれる。過去の地球を観測したのだ。すると、2004年、日本のある地方都市に今までは無かった観測できない領域を見つけたのだ。

それをカルデアは空間特異点Fと名付け、レイシフト―過去へと移動し、人類絶滅を回避しようとしたのだ。

ただ、このレイシフトは適性が必要なものだった。そのため世界各国から合計48名の人員を集めた。

 

 

そしてもうすぐ俺のマスター、オルガマリーが集められた新人たちへの現在の状況の説明会を行おうとしているところであった。

 

 

オルガマリーには俺も傍で聞いてくれと言われている。そろそろ向かうとしよう。

 

 

そう考えて、俺は()()()()()での特訓を取りやめ、中に入った。…いや、なに。寒い方が好きなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……遅刻したかな」

 

 

開始まで10分を切った説明会に霊体化して中に入ることを検討しながら歩いていると、フラフラとかなり危なそうな感じで歩いている赤髪の女の子を見つけた。

 

 

「…おい。大丈夫か?」

 

 

「むにゃ…ううー」

 

 

「って、お前!?」

 

 

遂に意識が途切れたのか倒れ掛かってきた。

霊圧は安定しているため問題はないと思うが…。

 

 

俺が対応に困っていると、時たまマシュと一緒にいるのを見かけたことがある不思議な生物―マシュいわくフォウ―と、その後ろからマシュがやってきた。

 

 

「フォウ、フォーウ!」

 

 

フォウが女の子に飛びついて頬を舐めている。

 

 

「待ってください、フォウさん…って、日番谷さん?それは…犯罪、というものでは?いえ、確かにサーヴァントに法律が適用されるのかと言われればそれも疑問ではありますが…」

 

 

「いや、違うからな!?妙な誤解を…」

 

 

「ん…。なにかに頬を、舐められて…?」

 

 

抱きかかえていた女の子が目を覚める。

 

 

ひゃあああああ!!??イケメンだああああああ!!!!

 

 

うおおおおお!!??急に叫ぶなあああああ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやあ、これは失礼しました。どうも眠っちゃってたみたいでして…」

 

 

そう言って赤髪の女の子―藤丸立香と名乗った―は照れ臭そうに頬を掻いた。

 

 

「こんなところで寝ようとするなんて…不思議ですね。先輩は硬い床でないと眠れない性質なのですか?」

 

 

「うん。畳じゃないとちょっとね」

 

 

「ジャパニーズカーペットですね。噂には聞いていました。なるほど…」

 

 

何を言っているのだろうか。無垢であるが故の弊害である。

 

 

「フォウ!キュー、キャーウ!」

 

 

「これは失念していました。あなたの紹介がまだでしたね、フォウさん。

こちらのリスっぽい方はフォウ。カルデアを自由に散歩する特権生物です。私はフォウさんにここまで誘導されたのです」

 

 

「フォウ。ンキュ、フォーウ!」

 

 

そう最後に一鳴きして、フォウはどこかへ去っていった。

本当にあれは何の動物なのだろうか…。霊圧を読み取ってみて驚いた生物の一体だ。

可愛い見た目をして馬鹿みたいに霊圧を溜め込んでいる。量だけで見るなら今のところあの生物がダントツだ。

 

 

「見たことない生き物だね」

 

 

「はい、わたし以外で懐いた人を見たのは初めてです。おめでとうございます。カルデアで二人目の、フォウのお世話係の誕生です」

 

 

そんなことを言っていると、誰かが近づいてきた。

 

 

「ああ、そこにいたのかマシュ。だめだぞ、断りもなく移動するのはよくないと…おや?日番谷くんに…今日から配属された新人さんだね。

私はレフ・ライノール。ここで働かせてもらっている技師の一人だ。

君の名前は?」

 

 

レフだ。この2年間何度も世話になった。保証しよう、コイツは良い奴だ。

 

 

「藤丸立香です!」

 

 

「ふむ。招集された48人の最後の一人か。歓迎しよう。それで、ここで何を?」

 

 

「いや、何。コイツがここでフラフラ歩いてたと思ったら急に倒れて眠りだしたんだよ」

 

 

「はい。それで、日番谷さんが犯罪行為に手を出してしまわれて…」

 

 

「いや、だから誤解だからな!?」

 

 

「ふむ。その件については後で詳しく聞くとして…」

 

 

「おい!?」

 

 

誠に遺憾である。

 

 

「眠った、とは…ああ、さては入館時にシミュレートを受けたね?

霊子ダイブは慣れてないと脳にくる。表層意識が覚醒しないままここまで歩いてきたんだろう。

万が一を考えて医務室まで送ってあげたいところだが…。

すまないね、もう少しの我慢だ。5分後に所長の説明会が始まる。挨拶のようなものだ」

 

 

「オルガマリー…所長は些細なミスも許容できないタイプだからな。遅刻でもしたらかなり睨まれるぞ。…5分じゃもう無理だと思うが」

 

 

「この通路を真っすぐ行った先の中央管制室で行われます。レフ教授、私も着いていっていいですか?」

 

 

「うん?まあ隅っこで立ってるくらいなら大丈夫だろうけど…なんでだい?」

 

 

「途中で先輩がまた熟睡されると困りますから…」

 

 

「いや、流石に私ももう寝ないと思うけど…」

 

 

怪しいな。

 

 

「ふむ…君をひとりにすると所長に叱られるからなあ…私も同席するか」

 

 

「なんだ、それなら俺もオルガマリーに呼ばれてるから皆で行くことになるな」

 

 

「よし、じゃあ急いで行こっか。ところで…何でこの子は私を先輩と呼ぶの?」

 

 

藤丸が疑問を挟む。

 

 

「それは…藤丸さんは、今まで出会ってきた人の中でいちばん人間らしいです。まったく脅威を感じません。敵対する理由が皆無です」

 

 

「なるほど!カルデアの人間は曲者揃いだからね!」

 

 

「人間らしい…ねえ…。そういうモンか」

 

 

そんなことを話しながら管制室へ進んでいった。

…このカルデアは広過ぎる。もう間に合わないだろう。何事も過ぎれば欠点となるものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管制室に着くと、、やはりもう集合時刻は過ぎていた。

オルガマリーに睨まれた。手を振った。そっぽを向かれた。かわいい。

そのまま藤丸は最前列へ、マシュとレフと俺は隅っこで話を聞いていた。

 

 

……もう既に知っている話を聞いていると、眠くなってくる。

まあただ、久々に威厳のあるオルガマリーの姿を見るというのもいいものだ。きっと内心ではみんな従ってくれるか不安なのだろう。かわいい。

 

 

…ん?藤丸、寝てないか?

あ、平手打ち喰らった。最前列で寝るなんて度胸あるなあ…。

 

 

またそれからしばらくして、今度は別件で藤丸が怒られている。

もう話がどうでもよさ過ぎてずっとオルガマリーの顔を眺めてて聞いてなかった。

…どうやら訓練をするために追い出されることになったらしい。南無三。

まあこのあとレイシフトするのはAチームだけだし妥当っちゃあ妥当な指示だ。

ただこれからのレイシフトにオルガマリーは何故か適正がなく参加できないらしいから俺は保険としてカルデアに待機だから俺も暇だ。ピンチになったときにカルデアから魔力供給を受けて動く、という感じだ。

俺も訓練に参加してこようかな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またしばらくして、遂にレイシフトが始まることになった。

集められた48人がコフィンの中へと入り始める。

 

 

「アラ、日番谷くん。これでしばらくお別れね。ピンチの時は頼むわよ?」

 

 

「ああ。任せとけ」

 

 

そんな風に何人かに声をかけているとオルガマリーの声が響く。

 

 

「それでは1分後にレイシフトを開始します。候補者たちは速やかにコフィンの中へ入りなさい。

いいですか。これは人類の未来を取り戻す大切な任務です。絶対に失敗は許されません。心してかかりなさい。それではカウントダウンを始めます」

 

 

どうも遂に始まるらしい。なんとなくそんなに関係してない自分はいない方が良い様な気がして霊体化しながらカウントダウンを聞いていたとき、それは起こった。

 

 

 

 

 

 

 

部屋の中心から走る閃光。それから遅れて熱風と爆音が襲ってきて―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「な…何がっ!起きたんだよっ!!」

 

 

霊体化をすぐさま解き、オルガマリーの元へ走る。

 

 

「…ぁ……せい、ばー…?」

 

 

「オルガマリーッ!!!!」

 

 

不味い。一目でわかる。致命傷だ。俺の回道の腕じゃあ治せない。

 

 

「日番谷…」

 

 

オルガマリーが喋りだす。

 

 

「わたし…あなた、に…あえ、て…よかっ…」

 

 

そこでオルガマリーの言葉は止まった。

 

 

「あ…そん、な…」

 

 

どうして、こんなことが…?あの爆弾の威力は凄まじいものだった。俺も霊体化していなければやられていただろう。俺でさえそうなら普通の人なんて…いや、絶望している場合じゃない。まだ息はある。俺は斬魄刀を抜き解号を省略して始解しオルガマリーを凍結させる。

これでひとまず息は保つはずだ。

辺りを見渡すと、どこも酷い様だった。とりあえず、コフィンには緊急時の凍結機能がある筈だ。本人の承諾が本来必要だが起動させなければいけないと思って立ち上がると無機質な音声が響いた。

 

 

システム レイシフト最終段階に移行します。

 座標 西暦2004年 1月 30日 日本 冬木

 

 

唖然とした。まさかこの状況でレイシフトが行われるのか…!? 

 

 

するとすぐに、カルデアスが燃え盛った。

 

 

カルデアスの状態が変化しました。近未来百年までの地球において

 人類の痕跡は発見できません

 人類の生存は確認できません

 人類の未来は保証できません

 

 

追い打ちのような言葉に絶望感が広がる。

 

 

レイシフト 定員に 達していません。

 該当マスターを検索中・・・発見しました。

 適応番号48 藤丸 立香 を マスターとして 再設定 します

 

 

その言葉を受けて辺りを見渡すとマシュと藤丸がいた。

気が動転して二人の霊圧にも気づいていなかった。

 

 

アンサモンプログラム スタート。

 霊子変換を開始します。

 

 レイシフト開始まで あと3

 

 

藤丸は死にかけのマシュの手を握っている。

 

 

 

 

それはなんだか、ひどく尊くて、

 

 

 

 

ひどく羨ましい光景のように、思われた。

 

 

その光景を最後に、意識は途絶えた。

 

 




一つ補足として「原作と今作のオルガマリーの違い」について説明しておきます。
オルガマリーは今作ではレフではなく主人公を頼っています。そのためレフからのヘイトは集めていません。よって、足元に爆弾を設置されることは回避しています。
そのため原作では遺体も残っていませんでしたが今作では辛うじて体を残せた訳ですね。とはいえ冷凍された状態なのでオルガマリーは今仮死状態。死んでます。主人公が何もしていなかったらそのまま死んでました。
体が残っているかないかが原作との差ですね。

それと前書きと後書きを全話変更しました。これからこの方式でやって行こうと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

序章 炎上汚染都市 冬木
戦場




人が希望を持ちえるのは

死が目に見えぬものであるからだ


        ――朽木ルキア


目に入ってきた光景は、地獄だった。

街は燃え盛り、建物は崩れ落ちている。ましてや生き残っている人など誰も見当たらない。

 

 

――そして、骨が、動いている。

 

 

「なんなんだよこりゃあ…」

 

 

そんなことをぼやいていると、急に骨がこちらを向いて襲ってきた。

 

 

「はぁ!?」

 

 

敵なのか。ならば戦闘するしかない。そう考えていつものように使える霊圧はどの程度かとオルガマリーとのパスを確認して――

 

 

「オルガマリーが…生きてる…!?」

 

 

骨をガン無視してオルガマリーの元へ走り出す。

幸いすぐ近くにいた。まだ目覚めていない。

 

 

「良かっ…たっ…!」

 

 

安心したのも束の間。どうも先程の骨が追ってきたようだ。

 

 

「俺は今気分が良いんだ…邪魔すんじゃねえよ」

 

 

言葉と同時に霊圧を出して威嚇する。

少し怯んだようだが、やはり意思はないのかすぐに襲ってきた。

 

 

一瞬で両断したが、どうもまだお仲間がいるみたいだ。

霊圧を見ると3、4…5匹。軽く、切り伏せてくれる…!!

 

 

…と、その時。重大なことに気が付いた。

オルガマリーの状態が、幽霊と同じ状態なのだ。

つまり、それは…

 

 

骨の一撃が入る。

どうでもいい。

剣で切られる。

どうでもいい。

5匹で囲まれて殴られる。

どうでもいい。

 

 

オルガマリーが、死んでいる。確かに俺は凍結させたはずだ…。あの程度の炎で溶けるなんてことはない。

…いや。仮死状態でレイシフトが行われたのか?

今、オルガマリーは魂魄の体になっている。ただ、因果の鎖――肉体と魂魄を繋げる鎖――が、見当たらない。

 

 

仮死とはいえ死んだのだから因果の鎖が消えたのか、レイシフトで無理矢理千切られたのか…。俺は考え込んだ。

ただ、そろそろ、骨が鬱陶しくなってきた。頭から多少血が出ている。一旦殺そう。

 

 

一匹、殴りかかってきていた骨を掴み身代わりとして真ん中に置き、瞬歩で外に出る。

混乱で動きが止まる。このまま一網打尽にする。

 

 

破道の三十二 黄火閃

 

黄色の炎が解き放たれ、まとめて骨たちを滅ぼす。

 

 

「ちょっと、油断っつーか考え事し過ぎたな…」

 

 

オルガマリーの死が衝撃的過ぎた。流石にダメージがある。少し休もう。

そう思ってオルガマリーの隣に腰掛けると、オルガマリーが目覚めた。

 

 

「ん…。あ、れ…?私、死んだん、じゃ…」

 

 

「よう、マスター」

 

 

「セ、セイバー!?って、あなたその傷どうしたの!?」

 

 

オルガマリーが起きぬけに心配してくる。

浅い傷だ。別に大丈夫である。

 

 

「ん?いや、大したことねえよ」

 

 

「そんな訳ないでしょ!ほら、ちょっと見せなさい。治癒魔術、かけてあげるから…」

 

 

そう言ってオルガマリーは俺に魔術をかけ始めた。

大した傷じゃないんだが…。まあ、心配してくれるっていうのは良いもんだ。

そう思って、為されるがままにしていると、急にオルガマリーが泣き始めた。

 

 

「マスター!?どうしたんだ急に…」

 

 

「うっ…グスン、だって、わたし、死んだと思って…あなたと別れるのが、こんなに辛いって…知らなくって…あなたに傷付いて欲しくない。あなたに、死んで欲しくないの…!」

 

 

ああ、これは甘えん坊モードだ。辛いことがあった反動でたまに起こる。

ただ今回は事が事だから結構重症化している。

 

 

「ああ、安心しろマスター。俺は死なねえしマスターも死なせねえ」

 

 

そう言って泣き止むまで抱き締める。

そして、泣き止んだタイミングで俺は口を開けた。

 

 

「そこの覗き、早く出てこい」

 

 

そう言って出てきたのは藤丸と、…なんか、すごい衣装の、マシュだった。

 

 

「あ、バレてたー?」

 

 

そんなことを言って舌を出す藤丸。ウザカワイイ。

 

 

「えっ。……あなたたち、いつから…?」

 

 

オルガマリーが震えながら聞く。

 

 

「その…泣き始めた辺りからです、所長」

 

 

「可愛かったです~」

 

 

「わ…」

 

 

「「「わ?」」」

 

 

「忘れなさいー!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

状況確認をすると、どうもマシュが元々召喚されていた英霊から能力を譲り受け、デミ・サーヴァント―半サーヴァントみたいなもの―になって藤丸と契約したというのだ。

そしてここは霊脈―大地に流れる魔力の流れ―が通る場所であったらしく、マシュの盾を使いカルデアにいるロマニとも通信が繋がった。

 

 

そこでまあ色々と話をしたが纏めると、「コフィンに入っていない者のみがレイシフトに成功しているためマスターはこの2人のみ」、「47人のマスターを凍結保存すること」、「カルデアがその機能の8割を失っていること」…などがわかったり決まったりした。

 

 

 

「わかりました。これより藤丸立香、マシュ・キリエライト両名を探索員として特異点Fの調査を開始します」

 

 

『ええ!?所長、そんなところ怖くないんですか!?チキンのくせに!?』

 

 

「うるさいわね!!」

 

 

俺も正直意外だった。嗜める必要があると思っていたが…オルガマリーも成長しているんだな…。

 

 

「とはいえ、人員も不足しているので主目的は原因の発見までとしておきます。解析・排除は可能であれば、という形でいきます。それでいいですね?」

 

 

『了解です。これからは短時間ですが通信もできますよ。緊急事態には助けを求めてください』

 

 

「……ふん。SOS を送ったところでセイバー以外だれも助けてくれないくせに」

 

 

『所長?』

 

 

「なんでもありません。通信を切ります。そちらはそちらの仕事をこなすように」

 

 

その言葉を最後にロマニとの通信は切れた。

 

 

「所長、よろしいのですか?ここで救助を待つという手もありますが」

 

 

マシュが疑問を口にする。

 

 

「そういう訳にはいかないのよ。次のチームを出すまでにかなり時間がかかるわ。その間魔術協会を黙らせる成果を出さなきゃいけないの。最悪の場合カルデアを取り上げられるわ。マシュ、藤丸。悪いけど付き合ってもらうわよ。とにかくこの街を調べましょう」

 

 

そして、この燃え盛った街の探索が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大橋、港跡と調べているうちに藤丸にカルデアについて一通りの説明をロマニとマシュがしていた。

その間何度も骨――スケルトンと言うらしい――が襲ってきたがマシュも中々の戦闘力があり、問題なく対処できた。

そして、そのまま教会跡を調べていた―そんな時だった。

 

 

『不味い!そこに…サーヴァントの反応がある!クラスはライダー!』

 

 

そこに現れたのは、影を纏った長身の女性だった。

 

 

「…!セイバー、やれる!?」

 

 

「おう、もちろんだ!」

 

 

「マシュ、お願い!」

 

 

「はい。マシュ・キリエライト、いきます!」

 

 

その女性は、鎖鎌のようなものを操って飛び掛かってきた。中々俊敏でトリッキーな動きをするが…別にそこまでの脅威は感じない。

軽く防いで、一撃を入れる。

すると、実力差を感じたか、マシュを狙い始めた。

…ここは、マシュに戦闘経験を積ませるのもありかもしれない。

 

 

「マスター。ちょっとこの戦闘はマシュの援護をしてくれ。俺も援護に回る」

 

 

「…!わかったわ」

 

 

そう言ってオルガマリーは支援魔術をマシュにかける。

 

 

トリッキーな動きにマシュは手玉にとられている。

一撃敵に加えてマシュに声をかける。

 

 

「…マシュ、落ち着け。戦闘訓練を思い出せ!お前の盾を破る力は敵にはない」

 

 

「…!はい!」

 

 

するとマシュが盾で敵の鎌の一撃を上手くいなし、そのままカウンターを加えるという流れができた。

筋が良い。経験を積ませるとどんどん強くなるだろう。

どうも敵はうまく力を出せていないようだ。あの影が原因か…?

 

 

そんなことを考えながら援護していると、相手の動きも衰えていた。このまま勝利かと思っていると急にロマニから通信が入る。

 

 

『不味い!!サーヴァント反応が2騎、近づいている!!アサシンと、ランサーだ!』

 

 

驚いている俺たちの前に奇妙な程腕が長い者と、槍を構えた武士が現れた。

 

 

「コレデ3対2ダ…!」

 

 

これは少し、不味いかもしれない。




シャドウサーヴァントの正体は出た順にメドゥーサ、呪腕、弁慶です。
FGO本編と同じです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

会敵




失くしたものを

奪い取る

血と肉と骨と

あとひとつ


――ヤミー・リヤルゴ


 

――さて。前方にアサシンとランサー、後方にライダー。中心に俺たち。

綺麗に囲まれてしまった。少々不味い。

 

 

『そうか…聖杯戦争だ!その街では聖杯戦争が行われていた。そこは今、何かが狂った聖杯戦争が行われている!

マスターがいないのも不思議じゃない。そして、サーヴァントの敵はサーヴァントだ!』

 

 

ロマニの言葉に合点がいく。それで俺たちを狙ってきてたのか…。

 

 

「ククク…ソノ通リダ。聖杯ヲ、我ガ手ニ!」

 

 

アサシンがそう言って襲い掛かってくる。

斬魄刀を抜いて対応する。予想通りランサーもこちらに来た。

 

 

「マシュ!そっちのライダーはお前に任せた!別れるぞ!」

 

 

「はい!」

 

 

そう言二つに戦場が分かれる。俺はAチームの訓練に参加していないためマシュとは連携が取れない。それならば個々で戦うべきだろう。

 

 

「驕ッタカ貴様!2人ナラバ勝テルトデモ!?」

 

 

ランサーが激昂して槍を振るう。

それを瞬歩で躱し、後ろから斬りかかる。

アサシンが止めに入ったが、そのまま押し切って二人ともにダメージを入れる。

 

 

「驕った…?事実だろ?」

 

 

恐らくこのサーヴァントたちは本来の実力を出せていない。宝具も温存できそうだ。

宝具はなるべく温存しておきたい。オルガマリーは一流故に別に魔力には困らないが聖杯戦争に呼ばれるサーヴァントは7騎。まだ敵は残っている。

 

 

そのまま斬魄刀で斬りかかる。2対1であるからあまり攻めきれないが、そもそもアサシンは近接戦闘に向いていない。何故前線に出てきたのか…。まともな判断もできていないのであろう。

 

 

マシュも苦戦はしているものの互角といったところだ。一度アサシンを押し飛ばし、ランサーから仕留めることにした。

 

 

縛道の八 斥

 

 

アサシンとランサーが鬼道の力で押し飛ばされる。無論1桁の鬼道では大した隙もできまいが、一瞬虚をつけば十分。

瞬歩でランサーに近づき、蹴りを入れて崩れかけの建物に激突させる。ガードされたが別に構わない。

 

 

縛道の三十 嘴突三閃

 

 

霊力が3つの嘴を形作り、ランサーの体を刺し壁に固定する。

そして身動きの取れないランサーをそのまま一太刀で仕留める。

 

 

「ナ…!」

 

 

驚愕するアサシンに向かい合う。

 

 

「ほら、言っただろ?別に2対1でも負けねえよ」

 

 

そのまま斬りかかる。アサシンは苦無で対応するが、当然こちらに分がある。あと3合で終わると思った矢先、アサシンが捨て身の行動にでた。

 

 

「クッ、コウナッタラ…!」

 

 

俺の一撃を受け入れて苦無を投げたのだ。反射的に躱したが後ろにマシュがいることに思い当たった。

マシュもライダーに優勢だったらしく、傷つきながらももうすぐ勝利を収めるところであった。

 

 

「しまっ…!」

 

 

間に合わない。そう思ったとき、何者かの霊圧を感じ取った。

 

 

「アンサズ!」

 

 

言葉と共に放たれた炎の玉が苦無を止める。

 

 

「クッ…無念…」

 

 

そのままアサシンも消滅していった。

 

 

「てやああーっ!!」

 

 

そしてマシュもライダーへとどめの一撃を入れる。

 

 

「はあーっ、はあー、勝てました…!」

 

 

「おう、やるな嬢ちゃん!」

 

 

そう言って現れたのは、青髪のサーヴァントであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんじゃ、自己紹介から始めますか。俺はキャスターのサーヴァント。そこの嬢ちゃんが健気に戦ってるところに横槍が入ったもんだからつい助太刀しちまった」

 

 

「あの、ありがとうございました…!」

 

 

「俺からも礼を言う。ありがとう。そしてすまなかった。あれは俺が防いでおくべき一撃だった」

 

 

あの一撃が入っていたら死、とまではいかなくても気をとられたマシュにライダーの反撃も入ることも間違い無かっただろう。

 

 

「いやいやなんの、いいってことよ!それより嬢ちゃんの体の心配をした方が良いんじゃねえの?ほら、ココとか大丈夫か?」

 

 

 

「ひゃん!」

 

 

そういってキャスターはマシュの尻を撫でた。

…先程までは感謝の念を抱いていたというのに、何だろうかこれは。

 

 

「ちょっと、藤丸。アレ、どう思う?」

 

 

「まごう事なきセクハラオヤジかと…」

 

 

何か藤丸とオルガマリーが話しているとロマニから通信が入った。

 

 

『ともかく事情を聞こう。どうやら彼はまともな英霊のようだ』

 

 

「おっ、話が早いな。それは魔術による連絡手段か?」

 

 

『はじめましてキャスターのサーヴァント。御身がどこの英霊かは存じませんが、我々は尊敬と畏怖をもって、』

 

 

「ああ、そういうのはいい。てっとり早く用件だけ話せよ軟弱男」

 

 

『うっ…そうですか、では早速。……軟弱とかまた初対面で言われちゃったぞ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…以上が我々、カルデアの事情です』

 

 

ロマニが俺たちの事情を話し終わる。

 

 

『確認しますが、貴方はこの街で起きた聖杯戦争のサーヴァントであり、唯一の生存者なのですね?』

 

 

「負けてない、という意味ならな。何故か街は一夜で炎に覆われて人間はいなくなり、残ったのはサーヴァントだけだった。

真っ先に聖杯戦争を再開したのはセイバーのヤツだ。奴の手で他の5騎は倒された」

 

 

「七騎のサーヴァントによるサバイバルがこの聖杯戦争のルールだったわね」

 

 

オルガマリーが確認する。

 

 

「ああ。そしてセイバーに倒されたサーヴァントはさっきの奴らみたいに真っ黒い泥に汚染された。そして湧いてきた怪物どもと一緒に何かを探し始めた。

それで、その探し物にオレも含まれている。オレを仕留めないと、聖杯戦争は終わらないからな」

 

 

『それなら貴方がセイバーを倒せば、この聖杯戦争は終わる…?』

 

 

「多分な。この状況が元に戻るかは知らねえが」

 

 

「なんだ。助けてくれたけど、結局一人じゃ勝てないからって味方を増やすためだったのね。違って?」

 

 

オルガマリーが棘のある言葉を吐く。

 

 

「その通りだが悪くないと思うぜ?なにせ――」

 

 

「GuOOOO!!!」

 

 

言葉の途中でスケルトンが現れる。

 

 

「ひぃ……!」

 

 

オルガマリーが俺にしがみ付いてくる。かわいい。

 

 

「コイツらは無尽蔵に湧いてきやがる。味方は多いにこした事はねえってこった!そこの嬢ちゃん、マスターだろ?俺と仮契約してくれ!」

 

 

「はーい!わかりましたー!」

 

 

藤丸とキャスターの間で契約が結ばれる。

頼もしい戦力が増えたものだ。

 

 

「よっし、じゃあまずはコイツらをぶっ飛ばすか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘が終わった。それにしてもこのキャスター、中々強い。魔術師というよりは戦士のような動き方をしていたが…。

 

 

「いやあやっぱキャスターは合わないわ。ランサーが一番良かったんだけどな」

 

 

「…?」

 

 

藤丸が不思議そうな顔をしている。

ちょっと説明してやるか。

 

 

「英霊の中にはいくつかクラスを持つ奴にもいる。こいつは槍も使えるし魔術師でもあるっていうことだろ。…多分かなり高レベルな英霊だ」

 

 

「へー」

 

 

「ま、そういうことだ。と、いうことで目的の確認だな。アンタらが探しているのは間違いなく大聖杯だ」

 

 

『聞いたことがないけど、それは?』

 

 

「この土地の心臓だ。特異点とやらはそこだろう。ただ、その周りには残りのサーヴァントが居座っている」

 

 

「残りはアーチャーとバーサーカー?その二体は強いの?」

 

 

オルガマリーが聞く。

 

 

「アーチャーはまあ、なんとかなるが…問題はバーサーカーだ。アレは怪物だ。近寄らなきゃ襲ってこねえから無視するのも手だ」

 

 

『わかりました。それなら我々はMr.キャスターの案内に従って大聖杯を目指します。それでよろしいですか、Mr.キャスター?』

 

 

「ミスターはいらねえよ。まあ、それでいい。そんじゃ、行きますか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中々長い道を歩いた。途中敵が何度も現れたが、特に問題なく倒せている。

そんなことより何よりも、

 

 

「暑い…」

 

 

「日番谷さん、大丈夫ー?もーちょっとだから、頑張ろー」

 

 

「ああ、藤丸お前、この暑さ平気なのか…?」

 

 

「セイバーが暑さに弱いのよ…。いつもカルデアの外にいる位なんだから…。確かに暑いけれど、もうちょっと頑張りなさい。

…って、マシュも?なんか辛そうじゃない」

 

 

「あ、いえ…私は、その…」

 

 

マシュが言葉を濁す。

 

 

「やっぱり…アレ?」

 

 

藤丸は何かわかっているようだ。ただそろそろ限界が来た。宝具の解放も視野に入れる。俺は暑くてもう何も考えられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……よし、お嬢ちゃんがそう言うならちょっと寄り道していくか」

 

 

何だか暑さにぼーっとしている内にマシュの宝具解放の特訓をすることになったらしい。

 

 

「まずは、ちょいと。厄寄せのルーンを刻んで、と」

 

 

何だか俺の羽織をいじくっている。これ、高いんだぞ…。

 

 

「お前さんなら狙われても自分でなんとかできるだろ。ほら、来たぜ」

 

 

「Grrrr…Zuaaaaa…!」

 

 

何かまたスケルトンが現れた。

 

 

「…は?」

 

 

「ひ、日番谷さん、わたしの後ろに!先輩も、戦闘準備お願いします…!」

 

 

「よし、こんだけいりゃ十分だ。まずは嬢ちゃんに精根尽きてもらうってことよ!冴えてるな、オレ!」

 

 

「もしかしてバカなんですかー!?」

 

 

藤丸の叫びに同意する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしやはりサーヴァントと融合したことでマシュは十分な強さを得ているらしく、次々と敵を打破していった。

ただ、やはり数が多すぎた。一通り一掃したところでマシュが膝をつく。

 

 

「限界、です…これ以上、は…。こういった根性論ではなく、きちんと理屈による教授を…」

 

 

「――分かってねえなあ。まあいいや、次の相手はオレだ。味方だからって遠慮しなくていいぞ。オレも遠慮なく藤丸を殺すからよ」

 

 

「っ…!?」

 

 

「なに言ってるのアナタ、正気!?藤丸は関係ないでしょう!?」

 

 

オルガマリーが叫ぶ、が…。俺はなんとなくキャスターのやりたい事、言いたい事はわかる。

 

 

「サーヴァントとマスターは運命共同体だ。藤丸、お嬢ちゃんが立てなくなったときがお前の死だ」

 

 

「っ…!」

 

 

「下がってください、マスター!私は先輩の足手まといにはなりません――!!」

 

 

「いいねえ、そうこなくっちゃ!」

 

 

まずキャスターが仕掛ける。ルーン?というものを刻んで魔術の弾を放つ。

マシュはそれを防ぐが、近距離でないとマシュには攻撃の手段が無い。当然キャスターもそれを知っており、突進してくるマシュから距離を取って魔術を放ち続けるかと思えば、急に近づいて杖を槍のように振るい、一撃加えてまた距離を取る。

 

 

「オラオラオラ!どうしたあ!?」

 

 

「が、はっ…」

 

 

…完全に手玉に取られている。その攻防が繰り返され、マシュも何とか反撃しようとするが、戦闘の技術で完全に上回られているキャスターにはそれも叶わず、ダメージが一方的に蓄積していく。

 

 

「ハァ――ハァ――ハッ――!」

 

 

「おう、そろそろ仕上げだ!主もろとも燃え尽きな!」

 

 

そう言ってキャスターは詠唱を始める。

 

 

我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める杜――

 

 

霊圧がどんどんと高まっていく。これは――宝具!

 

 

倒壊するはウィッカー・マン!オラ、善悪問わず土に還りな――!!

 

 

辺りの火を優に超える勢いで燃え盛る炎と共に、召喚された巨人が歩を進める。その破壊力は凄まじく、今にもマシュに襲い掛からんとする――

 

 

「ぁ――あ」

 

 

マシュの顔が絶望に染まる。

 

 

「あああああああ―――!!!」

 

 

しかしすぐに覚悟を決め、その宝具が展開される――!!!

 

 

 

 

 

 

正面に現れた障壁と、炎の巨人がぶつかり合う。

 

 

 

「はあああ―――!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

展開された盾は、炎の巨人の一撃を完全に防ぎ切った。

 

 

「――ヒュウ。まさかマスターともども無傷とはね。喜べ…いや、褒めてやれよ、藤丸。アンタのサーヴァントは間違いなく一線級の英霊だ」

 

 

「うん、すごいよ、マシュ!おめでとう!」

 

 

「っ……!ありがとう、ございます…!」

 

 

「フォウ、フォーーウ!」

 

 

お祝いムードだ。非常に喜ばしい。実際、これでかなり戦力は増しただろう。

 

 

「ただ…真名をものにはできなかったか」

 

 

「はい…宝具の真名も、英霊の真名も分かりません…」

 

 

マシュが落ち込んだ顔で言う。

 

 

「…そう。ただ真名無しじゃあ宝具を使うのは不便でしょ。いい呪文(スペル)を考えてあげる。

宝具の疑似展開なんだから……そうね、ロード・カルデアスと名付けなさい。

カルデアはあなたにも意味のある名前よ。零基を起動させるには通りのいい呪文でしょう?」

 

 

「は、はい……!ありがとうございます、所長!」

 

 

『うん、いい名前だ!』

 

 

「それじゃあ憂いも無くなったことだし行きますかあ!」

 

 

そしてまた歩き始めた。……まだこの暑い中を歩くのか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいな、ここ!涼しいぞ!」

 

 

俺たちが着いたのは洞窟だった。

 

 

「急に元気になりやがったな…。この奥に大聖杯はあるぜ」

 

 

「所長ー、ここ天然の洞窟ですかー?」

 

 

藤丸が疑問を口に出す。

 

 

「半分はね。恐らく魔術師が長い年月をかけて広げた地下工房でしょう。

それよりキャスター。大事なことだけれど、この聖杯戦争のセイバーの真名は知っているの?」

 

 

「ああ、知っている。ヤツの宝具を食らえば誰だって真名がわかる。他のサーヴァントが倒されたのもその宝具があまりにも強力だったからだ」

 

 

「強力な宝具…ですか。それはどういう?」

 

 

マシュが緊張しながら聞く。

 

 

「王を選定する岩の剣の二振り目。この時代において最も有名な聖剣。

その名は、」

 

 

言葉を遮るかのように飛んできた剣を弾く。霊圧で敵がいるのは分かっていた。

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)。騎士王、アーサー王の持つ聖剣だ」

 

 

影を纏った、アーチャーのサーヴァントが現れた。

 

 

 

 

 




今回はほぼ原作と同じ流れになってしまいました。

早く独自展開にしていきたい…!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

門番




犠牲無き世界など ありはしない

気付かないのか

我々は

血の海に灰を浮かべた地獄の名を

仮に世界と

呼んでいるのだ


     ――ティア・ハリベル



 

影を纏ったアーチャーを睨みつけていると、キャスターが口を開いた。

 

 

「相変わらず聖剣使いを護ってんのかオマエは。しかし…たった一人じゃあオレたちには勝てないぜ?」

 

 

確かにその通りである。キャスターの言によるとキャスター一人でも打倒できるかのような口ぶりであった。だというのに今は3対1だ。何か秘策があるのか…?

 

 

「…フン。それ位わかっているとも。今は多少曇っているとはいえそこそこの眼は持っているのでね。君たちの戦いは見ていた。だから…」

 

 

「気を付けろッ!何かが来る!」

 

 

言葉の途中で、莫大な霊圧の持ち主がこちらへ駆け寄ってくるのが感じ取れた。

 

 

■■■■■―――――!!!!!!!

 

 

「なんだ…コイツは…!」

 

 

壁をぶち破りながら現れたのは身長が2mを軽く越す超巨漢であった。

 

 

「少々危険であったが…バーサーカーをここに呼ばせてもらったよ。これでもまだ勝てるとでも?」

 

 

「やりやがったなヤロウ…!」

 

 

今までの敵とは格が違う。即座に宝具を解放する。

 

 

霜天に座せ!! 氷輪丸!!

 

 

瞬間、殴りかかってきたバーサーカーを氷壁で受け止めようとするがまるで意味がない。即座に粉砕され、一撃を喰らってしまう。

 

 

「ガハッ…!」

 

 

「チッ…!アンサズ!!」

 

 

「てやあーーっ!」

 

 

キャスターとマシュも応戦する。

が、敵はバーサーカーだけではない。

 

 

「フッ!」

 

 

アーチャーの放つ一撃をマシュが咄嗟に防ぐ。そしてできた隙にバーサーカーが大暴れする。キャスターはアーチャーを抑えに行ったがアーチャーも中々どうして戦いが上手い。俺たちへ的確なところで邪魔を入れてくる。

不味い。防戦一方だ。一手打たねばなるまい。

 

 

「マシュ!悪い、ちょっと俺を守ってくれ!」

 

 

「…は、はい!」

 

 

マシュの後ろに入り、氷竜を操り敵を攻撃しつつ、詠唱を始める。

 

 

雷鳴の馬車 糸車の間隙…

 

 

■■■――!■■■■■―――――!!!!!

 

 

「くっ、あっ…!」

 

 

バーサーカーの連撃にマシュが苦しむ。頼む、あと少し持ってくれ…!

 

 

光もて此を六に別つ!! 縛道の六十一 六杖光牢!!!

 

 

■■――?■■■■■―――――!!!

 

 

六つの光がバーサーカーに刺さり動きが完全に止まる。この隙を逃してはいけない…!!

 

 

破道の五十七 大地転踊!!!

 

 

洞窟の天井、壁などが崩れ落ちていく。本来はこの岩石を用い攻撃する鬼道だが――

 

 

「キャスター!」

 

 

「…!オウ、わかった!嬢ちゃんたち、こっち来い!」

 

 

俺の意図を汲み取ってくれたかキャスターは杖を交えながらアーチャーをバーサーカーから引き離す。

 

 

「まさか…!」

 

 

アーチャーが気付いたようだが、もう遅い。一部分だが本格的に洞窟が崩れ始める。

アーチャーとバーサーカーを分断した。アーチャーにはマシュとキャスターとマスターたちがついている。直に片付くだろう。

 

 

「…さて。1対1だな、バーサーカーさんよ」

 

 

■■■■■■■――――――――――!!!!!

 

 

もう六杖光牢を破ったか…。わかっていたとはいえ馬鹿げた怪力だ。

 

 

そして一瞬で距離をつめ襲い掛かってくる。

攻撃を受けれるだけの力は俺にはない。瞬歩を交えて回避しつつ攻撃をしていく。

バーサーカーだからなのか影のせいなのかはわからないが攻撃が単調だ。当たったら不味いとはいえ何とか対処できる。

 

 

段々と、段々と相手の動きが鈍くなっていく。冷気で周囲の温度もどんどん下がってきている。…そろそろ仕掛けるか。

 

 

縛道の二十六 曲光

 

 

俺の姿を見えなくさせて、一気に斬りかかると同時に凍結させる。

 

 

■■■――――!?

 

 

正面から右腕、後ろに回って背面、振り返ったところを上に飛びつつ顔面、また後ろに回って左足。

 

 

■■■■■■■――――!!!!!

 

 

すぐに氷は砕かれてしまうとはいえここまでやったら動きは少しの間止まる。

その隙に大技を打つ――!

 

 

氷竜旋尾!!!

 

 

現れた氷の竜はその狙いを眼前の敵に定めその口を開き、一直線にその身を唸らせてバーサーカーへ襲い掛かる―――!

 

 

■■■―――!

 

 

氷の竜がバーサーカーを喰らうと同時、バーサーカーの体が竜と共に凍りついていく。

氷の竜が消えた頃には、バーサーカーは透き通った氷の中に閉じ込められていた。

 

 

「ふう…。強かったな、お前」

 

 

かなり苦戦した。最初に食らった一撃はかなり響いている。その後の戦いでも一撃食らってしまうとまた状況は違っていただろう。

 

 

苦戦していただけに満足感があったのだろう。確かに油断していた。

何せ、バーサーカーの霊圧は完全に消えたのだから――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■―――――――――!!!!!!!!!!

 

 

一撃、パンチをモロに食らって吹き飛ばされた。

 

 

「ガッ――馬鹿な!有り得ねえ、お前の霊圧は――!」

 

 

そこには、完全に傷の癒えたバーサーカーが立っていた。

 

 

■■…■■■―――

 

 

しかし、どこか様子がおかしい。

傷は癒えている筈なのにフラついている。

 

 

■■■―――!!!

 

 

「っ…!来るか…!」

 

 

痛む体を起こし、構える。

 

 

 

 

 

 

しかし、バーサーカーのパンチは届かなかった。こちらに駆けてくる途中で脚が崩れ落ちたのだ。

 

 

「なっ…」

 

 

どんどんとバーサーカーの体が崩れていく。

 

 

バーサーカーはなんとか立ち上がろうと藻掻いているが、もはや消えてない部分は顔と少しばかりの体のみとなった。

 

 

「■■■―――」

 

 

最期に、愛おしそうに、悔やむようになにか一言呟いて消えていった。

 

 

「どういう、ことだ…?蘇生するような能力の宝具が、不完全な形で発動したのか…?」

 

 

何が起きたのか俺には分からなかったが、なんとか勝利を収めたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛みを堪えながらキャスターたちのところへ戻ると、あっちの戦闘ももう終わるところであった。

 

 

「考えたな花の魔術師……!その宝具に、そんな使い途があったとは…!」

 

 

マシュの盾を見ながらそう言葉を残し、アーチャーは消えていった。

 

 

「おう、お前…バーサーカーのヤロウを倒したのか!これから急いで援護に向かおうと思ってたんだが…」

 

 

キャスターが本当に驚いたような表情でこちらを見つめてくる。

 

 

「ああ、強敵だった。そしてかなりの傷を負ってしまった。次の戦いではあまり良い動きはできない」

 

 

「ああ、そりゃあ大丈夫だ。なんせ俺の見立てじゃあこの嬢ちゃんの宝具はあの聖剣には相性バツグンだからな」

 

 

「そうなのですか…?はっきり言って、私は次の戦いが、怖いのですが…」

 

 

マシュが震えるのも無理はないだろう。聖剣エクスカリバー…その威力はあの影を纏う前のバーサーカーすら屠るものであるのだから。

 

 

「ああ、大丈夫だ。あの聖剣に勝とうなんて思わず、マスターを守ることだけ考えてりゃいい。そうしたら防げるさ」

 

 

「うん、マシュなら大丈夫だよ!だって、私のサーヴァントなんだもん!」

 

 

「…はい!」

 

 

マシュは気合いが入ったようで覚悟の決まった顔つきになる。

 

 

「それにしてもセイバー、傷って大丈夫なの?ほら、ちょっと見せてみなさい…って、本当にひどいじゃない!」

 

 

俺の体を調べたオルガマリーが慌てて俺の体に治癒魔術をかけ始める。

 

 

「ちょっと、これは一旦休憩としましょう。これじゃあ戦えないわ。

それに…藤丸、顔色悪いわよ。ドクター、バイタルチェックしてる?」

 

 

『え!?あ…うん、これはちょっとまずいね。突然のサーヴァント契約だったから使われてなかった魔術回路がフル稼働して脳に負担をかけている。マシュ、キャンプの準備を』

 

 

「了解しました。ティータイムとしましょう」

 

 

「お、決戦前の腹ごしらえか?んじゃオレはイノシシでも狩ってくるか」

 

 

「いないでしょ。そもそも肉はやめて。どうせなら果物にしなさい、こんな風に」

 

 

そう言ってオルガマリーは懐からドライフルーツを取り出した。

そうして、突然のティータイムが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

オルガマリーが藤丸を難しそうな顔で見つめている。

 

 

「……おかわりですか、所長?」

 

 

「一杯で十分よ!それに私は紅茶より珈琲派だわ!……あ、いえ、そうじゃなくって…ああもう!」

 

 

オルガマリーが興奮した顔で声を荒げる。

 

 

「こ、ここまでの働きは及第点です。カルデア所長として、あなたの功績を認めます」

 

 

……驚いた。オルガマリーがそんなことを言えるなんて。

 

 

「ちょっと、何よみんなしてその顔は!

…まぐれだったとしても、あなたがいなければこの特異点の突破は難しかったでしょう。今は私の他にはあなたしかいないのよ。あなたの働きは認めます。

三流でも一人前の仕事はできるって分かりました」

 

 

『なんと。藤丸君を一人前と認めてくれるなんて、何か甘いものでも食べました?』

 

 

「ロマニ。無駄口を叩く余裕があるなら、藤丸に補給物資の一つでも送りなさい。

本人が頑張っているのに、装備不足で失敗するなんて可哀想じゃない」

 

 

『おや、可哀想とは…ついに所長の心にも雪解けが?』

 

 

「バ…!哀れでみじめって意味よ!ちょっと、キャスターとマシュにセイバーまで!何笑ってるのよ!」

 

 

『いやあ、少年少女の交流というのはいつ見てもいいですね。少女というには所長はちょっとアレですが』

 

 

「そうでしょうか。所長は確かに年上ですが、趣味嗜好はたいへん近しいものを感じて、親愛を覚えます」

 

 

「なに言ってるのよマシュ!?あなたたちなんてわたしの道具だって言ってるでしょう!?」

 

 

戦場の中で、こんなにも平和な会話が繰り広げられているこの状況に、俺は確かに幸せを感じていた。

 

 

戦いなど、無いに越したことはないのだ―――




何か千年血戦篇アニメ化するらしいですね。
少し老けた日番谷がTVで見れますよ…!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決戦




王は駆ける


影を振り切り
鎧を鳴らし
骨を蹴散らし
血肉を啜り
軋みを上げる
心を潰し


独り踏み入る
遥か彼方へ


――グリムジョー・ジャガージャック


 

――さて。楽しかったティータイムも終わり、とうとう大聖杯も目前となったわけだが。

 

 

「これが大聖杯…超弩級の魔術炉心じゃない…」

 

 

オルガマリーが凄まじい霊力を保有している聖杯に唖然としている。俺もハッキリ言って滅茶苦茶驚いている。周囲の霊圧知覚が疎かになるほど霊力が溢れ出しているのだ。

ただ…

 

 

「おしゃべりはそこまでだ。奴さんがこっちを見てるぜ」

 

 

そう言ったキャスターの目線の先にはその聖杯の霊力をそのまま吸い上げているかのような莫大な霊圧を出し続ける女剣士の姿があった。真黒の鎧と真白の肌が対照的だ。

多少違うものの姿に覚えがある。シミュレーションで一度戦った。

 

 

「コイツがアーサー王か…」

 

 

「―――――」

 

 

『そうだ。何かが変質しているようだけど、彼女はブリテンの王、アーサーだ。

伝説とは性別が違うけど、何か理由があって男装をしていたんだろう。王には男じゃないとなれないからね。多分宮廷魔術師の悪知恵だろう。マーリンはほんと趣味が悪い』

 

 

まるで実際に知っているかのような口ぶりでロマニが喋る。

 

 

「え…?あ、ホントです。女性なんですね、あの方。男性だと思いました」

 

 

…?いくら人生経験の少ないなマシュとはいえ流石にあれを男性だとは思わないだろう。

融合した英霊の影響か……?

 

 

「―――ほう。面白いサーヴァントがいるな」

 

 

急に漆黒の剣士は口を開いた。

 

 

「なぬ!?テメエ、喋れたのか!?」

 

 

キャスターが驚きの声をあげる。今までも一度も喋ったことが無かったのだろうか…

 

 

「ああ。何を語っても見られている故、黙っていた。

しかし――面白い。その宝具は面白い。構えるがいい、名も知れぬ娘。その守りが真実かどうか、この剣で確かめてやろう!」

 

 

そう言ってマシュに向けてアーサーは剣を構える。

 

 

「来ます――マスター!」

 

 

「うん、戦おう!」

 

 

突っ込んできたアーサーの動きは確かに昔戦ったものであった。

しかし、あの時とはパワーもスピードも段違いである。

受け止めようとしたマシュが一瞬で吹き飛ばされる。

咄嗟に剣を合わせるが、まだバーサーカーとの戦いにおける傷も回復しておらず、パワーで負けているため一瞬で押し切られる。

 

 

「チッ…霜天に座せ 氷輪丸!

 

 

使()()()()()

体に傷がある以上力は温存できればできるだけ良いのだが…

 

 

「オレのことも忘れんなよっ!」

 

 

キャスターが杖でアーサーに立ち向かうと同時、俺に強化のルーンをかけてくれる。

俺も氷輪丸の能力でアーサーに攻撃する。

 

 

群鳥氷柱!!

 

 

無数の氷柱がアーサー目がけて飛んでいく。

 

 

「フンッ!」

 

 

しかしそれも霊圧を纏った剣でまとめて切り裂かれる。

ただ後ろから復帰したマシュが突進する。

 

 

「てやあっ!」

 

 

アーサーはキャスターを跳ね除けると同時、後ろに振り返りマシュに猛攻を仕掛ける。

しかし今度はマシュもしっかりと踏ん張ってその猛攻を凌ぐ。

そして俺もアーサーへ近接戦を仕掛けに行く。アーサーは咄嗟に氷輪丸をその聖剣で防ぐが、二人を相手に1本の剣では務まらない。

不利と見たか一度俺たちから距離を取ろうとする。

 

 

しかし、そこはまさにキャスターの射線である。

 

 

焼き尽くせ、木々の巨人――灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)!!!

 

 

かつてマシュに放った時は手加減していたのだろう。あの時とは比較にならぬほど強力になった巨人の一撃がアーサーを襲う―――!

 

 

「やった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約束された(エクスカリバー)

 

 

笑っていた。あの巨人を目の前にして漆黒の剣士は笑っていた。それと同時にキャスターの巨人以上の霊圧の高まりを感じる――あの大聖杯からアーサーへと霊力が流れていく――!!

 

 

「マシュ!」

 

 

マシュの名前を叫ぶ。間に合うか――

 

 

勝利の剣(モルガン)―――――!!!!!

 

 

「宝具、展開しますっ!」

 

 

馬鹿げた威力の一撃が闇に染まった聖剣から放たれる。その一撃は周りの光を呑みながら、周囲を破壊しながらマシュの盾目掛けて突き進んでゆく。

それに対してマシュは仮の名前の宝具で立ち向かう。

 

 

人理の礎(ロード・カルデアス)――!!!

 

 

展開された障壁に漆黒の一撃が喰らいつく。

 

 

「くっ……ああっ…!」

 

 

マシュは今にも吹き飛ばされそうになる。しかしその背に、もう一人立ち上がる。

 

 

「マシュ、頑張って――!」

 

 

「せん、ぱい――」

 

 

たったその言葉だけで、後ろに立って背を支えるだけで、マシュの体に力が漲る。

しかし、大聖杯から霊力の供給を受けているアーサーの一撃に終わりはない。このままでは、というところで藤丸が決定的な一打を入れる。

 

 

令呪を以って命ずる――マシュ、防いで!

 

 

「――!はい、せんぱい――!!!」

 

 

藤丸の右手の甲の令呪が光り、一画消えて展開された障壁がより一層輝きを増す。

そして段々と聖剣の一撃を押しのけていき――遂には弾き返した。

 

 

「なっ!バカな…!」

 

 

アーサーは呆然としている。

 

 

「――隙だらけだぜ」

 

 

氷輪丸をその鎧へ深く差し込む。

 

 

竜霰架

 

 

敵の身を中心とし、十字架を形作りながら氷結していく。

 

 

「クッ…この程度……!!」

 

 

「マスターッ!」

 

 

「ええ!令呪を以って命じます!とどめを刺しなさい、セイバー!

 

 

力が湧き出てくる。氷を破りだしたアーサーへ向かって最後の一撃を加える――!

 

 

「おおおおお―――っ!!!」

 

 

「私たちも!マシュ、キャスターお願い――!」

 

 

「はい!てやああ――っ!!!」

 

 

「行くぜえ!オラよおっ!!」

 

 

3者の一撃が一点に襲い掛かる。

 

 

「ガ、ハ―――ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煙が晴れるたそこには、鎧が砕かれ、血を流して消滅しかけているアーサー王がいた。

 

 

「――フ。手加減したつもりは無かったが――敗北してしまったな。

結局、どう運命が変わろうと、私ひとりでは同じ末路を迎えるという事か」

 

 

「あ?どういう意味だそりゃあ。テメエ、何を知っていやがる?」

 

 

キャスターの言葉に内心同意する。一体、何を知っている――?

 

 

「いずれ貴方も知るとも、アイルランドの光の御子よ。

グランドオーダー――聖杯を巡る戦いは、まだ始まったばかりだという事をな」

 

 

そう言ってアーサーは消滅した。

 

 

「オイ、それはどういう――って、ここで強制帰還かよ!?」

 

 

キャスターの体も消え始める。特異点が消えつつあるのか。

 

 

「チッ、納得いかねえがしょうがねえ!嬢ちゃん、あとは任せたぜ!

次があんなら、そん時はランサーとして喚んでくれ!」

 

 

「うん、またねー!」

 

 

そしてキャスターも消えていった。

 

 

 

 

「…セイバー、キャスター共に消滅を確認しました。わたしたちの勝利…でしょうか?」

 

 

『うん、よくやってくれたよ。所長もさぞ喜んで…って、所長?』

 

 

「……冠位指定(グランドオーダー)……その呼称をどこで…」

 

 

何か呟いている。

 

 

「どうかしたか?」

 

 

「え……?あ、そうね、みんなよくやったわ。不明な点は多いですが、ミッションは終了とします。

まずあの水晶体――聖杯を回収しましょうか」

 

 

「はい、至急回収――な!?」

 

 

マシュが声を上げると同時、唐突に見知った霊圧が現れた。これは――!

 

 

「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。見込みがない子供だからと、善意で見逃した私の失態だ。そしてまさか君が来るとも思っていなかったよ」

 

 

「レフ…!?」

 

 

『レフ――!?レフ教授だって!?』

 

 

「うん?その声はロマニ君かな?君も生き残ってしまったのか」

 

 

通信先のロマニの生存に興味を示す。これは――これでは――

 

 

「すぐに管制室に来てほしいと言ったのに、私の指示を聞かなかったんだね。まったく――」

 

 

そこで言葉を切ると、レフは今まで見たこともないほど嫌悪感に満ちた表情を浮かべた。

 

 

「どいつもこいつも統制のとれてないクズばかりで吐き気が止まらないな」

 

 

「――!マスター、下がってください。あれは、私たちの知っているレフ教授ではありません!」

 

 

「レフ、あなた、どういうこと――?」

 

 

「やあオルガ。元気そうでなによりだ。君も元気そうでなによりだ」

 

 

一転、またいつものように朗らかな笑顔で話し始める。――しかし違う。目の奥が笑っていない。

 

 

「え、ええ…。たくさん予想外のことが起きたけれど…」

 

 

オルガマリーもそれを感じ取っているのか一歩後ろへ下がる。

 

 

「そうだね。本当に予想外のことばかりで頭にくる。

その中で最も予想外なのが君だよ、オルガ。わざわざあの後殺したというのに」

 

 

「―――、え?……レ、レフ?あの、それ、どういう、意味?」

 

 

「まず最初に誤算だったのが仮死状態でも精神体のみでレイシフトが行われるということ。トリスメギストスがご丁寧にも仕事をしてくれたおかげだね。そこで私は少し焦った。何せ日番谷君は実力をちゃんと測った訳ではないが、強力なサーヴァントであることは知っていたからね」

 

 

何を――、何を言っている――?

 

 

「そしてわざわざ凍結された君を私は二度手間だったが殺したんだ。これで繋がりは切れて特異点のキミは消滅するかと思ったが…どうもそうはいかないようだ。キミは生前レイシフトの適性が無かっただろう?どうも肉体を失うことで適性を得るようだ。肉体があったままでは転移できないようだね。だからカルデアにも戻れない。戻った時点で君のその意識は消滅する」

 

 

「え…?消滅って、ちょっと、それ、どういうこと……?」

 

 

「そうだとも。だがそれではあまりにも哀れだ。生涯をカルデアに捧げた君のために、せめて今のカルデアがどうなっているか見せてあげよう」

 

 

そう言うとレフの後ろに真っ赤になったカルデアスが現れた。

 

 

「君のために時空を繋げてあげたよ。聖杯の力だね」

 

 

「そん…な、真っ赤に…」

 

 

オルガマリーが絶望した表情でカルデアスを見つめる。

 

 

「さあ、よく見たまえアニムスフィアの末裔。あれがお前たちの愚行の末路だ。さあ、最期に君の望みを叶えてあげよう」

 

 

そう言うと、オルガマリーの体がに宙浮き始めた。

 

 

「君の宝物に触れるといい。私からの慈悲だ」

 

 

「ちょ―――なに言ってるの、レフ?や、止めて。お願い。だってカルデアスよ?高密度の情報体よ?次元が異なる領域、なのよ?」

 

 

「そうだね。ブラックホールか太陽か――まあどちらにせよ、人間が触れればそこは地獄だ。生きたまま無限の死を味わいたまえ」

 

 

「いや――いや、いやよ。わたしを、認めてくれる、セイバーが、日番谷がいて――、!セイバー、助けて!」

 

 

「了解だ」

 

 

瞬歩で駆け寄り、オルガマリーを抱きかかえて大気中の霊子を足場にしてそのまま宙を駆け上がる。

 

 

「――無駄な事を。どうせカルデアに帰れば死ぬというのに。君の凍結も私が打ち砕いた。

……まあいい。改めて自己紹介をしようか。私はレフ・ライノール・フラウロス。貴様たち人間を処理する2015年の担当者だ。

ドクター・ロマニ。学友として最後の忠告をしてやろう。カルデアは用済みになった。おまえたち人類は既に滅んでいる」

 

 

『…レフ教授。いや、レフ・ライノール。それはどういう意味ですか。2017年が見えないことに関係があると?』

 

 

「関係ではない。もう終わってしまったという事実だ。カルデアスが深紅に染まった時点で結末は確定した。貴様たちの時代はもう存在しない。カルデアスの磁場でカルデアは守られているだろうが、外はこの冬木と同じように燃え盛っている」

 

 

『…そうでしたか。外部と連絡が取れないのは通信の故障ではなくそもそも受け取る相手がいなかったのですね』

 

 

「ふん、やはり貴様は賢しいな。真っ先に殺しておけなかったのは悔やまれるよ。だがそのカルデアも2016年を過ぎればこの宇宙から消滅する。

もはや誰にもこの結末は変えられない。なぜならこれは人類史による人類の否定だからだ。おまえたちは進化の行き止まりで衰退するのでも、異種族との交戦の末に滅びるのではない」

 

 

そこでレフは言葉を切って、今度は目を大きく剥き出しにして手を震わせ演説するかのように話した。

 

 

「自らの無意味さに!自らの無能さ故に!我らが王の寵愛を失ったが故に!何の価値もない紙クズのように、跡形もなく燃え尽きるのさ!」

 

 

そう言ったところで、地面が大きく揺れ始める。

 

 

「おっと。この特異点もそろそろ限界か。……セイバーめ。おとなしく従っていれば生き残らせてやったものを。聖杯を与えられながらこの時代を維持しようなどと、余計な手間を取らせてくれた。では、さらばだロマニ、マシュ、48人目の適性者、オルガマリーに…日番谷君」

 

 

そう言ってレフは姿を消した。

 

 

「空間が安定していません…!ドクター!至急レイシフトを!…あ、その、所長は――」

 

 

「大丈夫だ、問題ない。やってくれ。オルガマリー、俺の言う事を聞いてくれ。そうすりゃ助かる」

 

 

「え――うん、でも、どうやって――」

 

 

『今急いでレイシフトを行っている!でもゴメン、そっちの崩壊の方が早いかもだ!その時は強く意識を持ってくれ!そうすれば何とか助かる!』

 

 

「オルガマリー、これをこうして――」

 

 

オルガマリーの状況についてはずっと考えていた。まさか凍結させた後に殺されたとは思っていなかったが恐らくこれでいける――俺の予測が正しければ、成功するはずだ。

 

 

「強く、願うんだ――生きたいって。じゃあ、やるぞ――」

 

 

「先輩、手を――」

 

 

「日番谷、手を――」

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、今度は俺も手を握れる―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フォウの鳴き声を最後に、意識が暗転した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

間章
幕間の物語 その1



章の間でこういう短めの話をやっていこうと思います。


 

――懐かしい記憶が、掘り起こされる。

 

 

「悪いな、カドック。訓練に付き合わせちまってよ。マスターが付いたサーヴァントの力ってやつを見たかったんだ。まあ再現体だけどな」

 

 

訓練を終えた俺は、カドックと話しながら歩いていた。

 

 

「いや、なに。構わない。僕も良い訓練になった。とはいえ、サーヴァント同士の戦闘にマスターが介入できることなどたかが知れてるが…」

 

 

「いやいや、途中飛んできた妨害とか気を取られたぜ?」

 

 

「そうか、良い訓練になったなら良いんだ。それじゃあ今日も君の世界の話をしてくれ。前回は滅却師の話の始めまでだったかな」

 

 

カドックは神話マニアのようでよく俺にBLEACHの話をせがんでくる。

 

 

「よし、それじゃあ何で滅却師と死神が対立したかだったな。それは…」

 

 

俺も大分ここ、カルデアに馴染んできた。記憶が無かったりと、色々苦労していたが、周りのみんな、特にAチームがよくしてくれた。

このカドックからもおすすめのロックミュージシャンを紹介してもらったりした。あまりロックは俺の肌に合わなさそうだが…

 

 

「…それで、総隊長である山本元柳斎重國が…って、オフェリア?マシュの部屋の前で何やってんだ?」

 

 

オフェリアがマシュの部屋の前で何度も行ったり来たりを繰り返したり何か決意したように頷いてドアを開けようとした直後に手を引っ込めたりしている。

 

 

「あら、日番谷にカドック。いえ、これはその…」

 

 

「ああ、言わなくてもわかるさ。あれだろ、マシュをお茶会かなにかに誘おうとしているけど踏ん切りがつかないんだろう。君、何回目だ?」

 

 

カドックが呆れたように言う。

 

 

「何だ、そんなことか。さっさとマシュを呼べばいいだろう。マシュ、ちょっといいか?」

 

 

「え、ちょっと…まっ」

 

 

「はい。どうかされましたか?」

 

 

マシュが部屋から出てくる。

 

 

「あっ…その…い、今からペペとヒナコとお茶会を開くんだけど…マシュも一緒にどうかしら?」

 

 

「…そうですか。それは楽しそうですね。私も参加させていただきます」

 

 

「!…そう。それは良かったわ。それじゃあ食堂に行きましょう?」

 

 

オフェリアは心配そうな顔から一転、満面の笑みを浮かべてマシュの手を取る。

そして、俺たちの方に振り返る。

 

 

「あ、その…ありがとう」

 

 

そう言って、マシュとオフェリアは食堂の方へ歩いていった。

 

 

「…全く。世話の焼けるやつだ」

 

 

カドックが溜息をつきながら言う。

 

 

「そう言ってなんだかんだ心配してただろ」

 

 

「…もうこの話は良い。続きを頼むよ」

 

 

「ああ、そうだな。えーっと、総隊長が…」

 

 

 

 

 

今日もまた、思い出が無かった俺に良い思い出ができた。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

帰還




我々は皆
生まれながらにして死んでいる
終焉は常に
始まりの前から そこに在るのだ

生きることが
何かを知り続けることならば
我々が最後に知るものこそが終焉であり
終焉をついに見出し
完全に知ることこそが
即ち死なのだ

我々は何かを知ろうとしてはならない
死を超越できぬ者は
何ものも知ろうとしてはならないのだ


              ――斬月


 

目が覚めると、カルデアにある自分の部屋のベッドの上だった。

 

 

「おや、起きたかい?」

 

 

ロマニがいる。そして、オルガマリーは…

 

 

「すー…すー…」

 

 

…床で寝ている。ただ、まあ、成功して良かった。

俺は()()()に身を包むオルガマリーを見てそう思った。

 

 

「ああ。ありがとう、ロマニ。それで、マスターのことだが…」

 

 

「ああ。それは、その…残念だったね」

 

 

ロマニは辛そうな表情でそう呟く。

 

 

「ああ、違う。安心しろよ。マスターは生きてる…いや、やっぱ生きてないけど大丈夫だ。ちょっとダ・ヴィンチに働いてもらえれば何とかなる」

 

 

「へ?」

 

 

「ほら、俺は今魔力をカルデアから供給されてないけど現界してるだろ?とりあえずダ・ヴィンチのところへ行こうぜ」

 

 

「え?…あ、ホントだ…。あ、うん。ダ・ヴィンチは今藤丸君を見ている。管制室に集合するよう言っておこう」

 

 

そして俺はオルガマリーをおぶって管制室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、おはようございまーす!マシュ、大丈夫だった?」

 

 

「はい。おはようございます」

 

 

マシュも合流して待っていると、フォウと一緒に藤丸とダ・ヴィンチが来た。

 

 

「うん、おはよう。コホン、じゃあまずは生還おめでとう藤丸君。

なし崩し的にミッションに参加させてしまったけど、君は勇敢に挑み、乗り越えてくれた。君のおかげでカルデアは救われた。所長は…日番谷君いわく大丈夫だそうだけど…」

 

 

「ああ。ダ・ヴィンチ、あとでちょっと手伝ってくれ」

 

 

「わかったよ」

 

 

「それで、話を戻すと、現状を見るとレフの言葉はおそらく真実だ。外は死の世界。

そして、その原因をシバで調べてみると…これを見てくれ」

 

 

そう言ってロマニが機器を操作すると、カルデアスの状態が変化した。

そこに写っていたのは、七つのポイントが光っている世界地図だった。

 

 

「これは過去の地球だ。よく過去を変えれば未来が変わるというけど、歴史の修正力によって大きな流れは変わらないようになっている。でも、この特異点たちは違う。

“この戦争が終わらなかったら”  “この航海が成功しなかったら”

という風に、現在の人類を決定づける歴史の一点が崩されてしまって、未来は決定した。人類に2017年はやってこない。

――けど、ボクらだけは違う。カルデアは今通常の時間軸にない。ボクらだけが崩れている特異点を元に戻せる」

 

 

そこまで言って、ロマニは一息つく。そして、決意に満ちた表情で口を開く。

 

 

「結論を言おう。この七つの特異点にレイシフトし、歴史を元に戻す。それが人類を救う唯一の手段だ。

そして、マスター適性者は君とオルガマリーのみ。この状況では強制に近いと理解している。それでもボクはこう言うしかない。

マスター適性者48番、藤丸立香。君に、人類を救うために、未来を取り戻すために、戦う覚悟はあるか?未来を背負う力はあるか?」

 

 

「…自分に、できることなら」

 

 

「――ありがとう。その言葉でボクたちの運命は決定した。今はいない所長に代わって言わせてもらおう。

これよりカルデアは人理継続の尊命を全うする。目的は人類史の保護、および奪還。探索対象は各年代と、原因と思われる聖遺物―聖杯。

我々が戦うのは歴史そのものだ。たとえどのような結末が待っていようと、生き残るには人類の過去に打ち勝つしかない。

以上の決意を以って、作戦名はファーストオーダーから改める。

これはカルデア最後にして原初の使命。人理守護指定―(グランド).(オーダー)

魔術世界における最高位の使命を以って、我々は未来を取り戻す!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ダ・ヴィンチ。頼みたい事っていうのは他でもねえ。マスターのことだ」

 

 

「ふむ…私のできることにも限界はあるが…できるって確信してる顔だね?」

 

 

その通りだ。そして、それをやってもらうためにはオルガマリーの今の状況を説明しなきゃいけない。

実は割と前から起きていて、藤丸が来たときには念話で状況の説明は終わっていた。人に聞こえないのをいいことに自分の役目を取ったロマニに文句を垂れ流していた。

今はダ・ヴィンチの工房を興味深そうに眺めている。

 

 

まあそれはさておき、今のオルガマリーだが、結論から言うと()()()している。

帰還の直前、かつて朽木ルキアが黒崎一護に行ったように、死神の力の譲渡を行った。死神は体というものが無く、魂だけで存在している。これならば生存できると特異点の探索中に考えていた。成功するかどうかは賭けだったが…成功するであろう根拠はあった。

まあ結果から見れば成功して、シバは死神と化したオルガマリーを見逃さず、しっかりと帰還させてくれたという訳だ。

しかし、オルガマリーの体はレフに処分されていた。このままでは、オルガマリーを認識できるのが俺しかいなくなってしまう。まあオルガマリーはそれでもあまり構わないという感じだったが…。

ともかく、死神は人には見えない。俺が見えているのは召喚の際こちらのルールに合わせられたのであろう。サーヴァントを認識できなかったら話にならない。

そこで、俺が考えたのは義骸を作ることだ。義骸とは、死神が現世に行く際などに用いる魂の無い体であり、これに入ることで死神も生きている人間に認識されるようになる。

ダ・ヴィンチならば恐らく作れるだろう。というかそんな感じのことをやっていた記憶がある。

 

 

「…と、言うわけだ。やってくれるか?」

 

「ふむ。わかった、良いだろう!なんとか作ってみせよう。でも君にも協力してもらうよ?死神の体というものについて少々調べなければいけないからね」

 

 

「ああ、もちろん」

 

 

余計なことまでされそうだが――まあ、必要経費だろう。

何とかなりそうで、助かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、やっと喋れるわね…感謝するわ」

 

 

本当に仕事が早い。まさか今日中に終わるとは…。ダ・ヴィンチを見る目がかなり変わった。

 

 

「いやあ、なんの。このダ・ヴィンチちゃんにかかればこの程度だとも!ただこの先メンテナンスは周期的に行っていくからね。とりあえず不都合はあるかい?」

 

 

「いえ、大丈夫よ。ただ…この剣は何なのかしら?」

 

 

そう言って腰の刀を持ち上げる。

 

 

「それは斬魄刀だ。死神なら誰もが持つ人格を持った刀…それぞれ固有の能力を持つから、鍛えたらマスターでも十分戦力になるだろう」

 

 

「あら、そうなの…」

 

 

嬉しそうにオルガマリーが斬魄刀を撫でていると、ロマニから通信が入った。

 

 

『所長、反応が出ました!本当に生きてたんですね!』

 

 

「ちょっと、それどういう意味よ」

 

 

『いやあ…まあそれは置いといて、サーヴァントの召喚を行いますから召喚室に来てくれますか?』

 

 

「ええ、今向かうわ。行きましょう、セイバー。ダ・ヴィンチも世話になったわね」

 

 

「いってらっしゃい。また、新しいサーヴァントの話を聞かせておくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、かつて俺も召喚された部屋に着いた。

 

 

「やあ、待ってたよ。まずは藤丸君からだ。今のカルデアの状況から鑑みて、召喚できるサーヴァントの数はそれぞれ一騎ずつといったところかな。まあ数が多くても特異点に連れていける数には限りがあるし、一騎でも戦力が増えるに越したことはないからね」

 

 

「はい、じゃあお願いしまーす」

 

 

「頑張ってください、先輩…!」

 

 

カンペを持ちながら召喚サークルの前に藤丸が立つ。

 

 

――告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に

 

 

召喚サークルが光を灯す。

 

 

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 

 

光の輪が浮かび上がり、回転を始める。

 

 

誓いを此処に。

 我は常世全ての善と成る者、

 我は常世全ての悪を敷く者

 

 

霊圧の高まりと共に輪の回転の速度も上がっていく。

 

 

汝三大の言霊を纏う七天、

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!

 

 

輪は3本に増え、大きく広がり、そして収束すると共に一際大きな光を放つ。

 

 

「……召喚に応じ参上した。貴様が私のマスターというヤツか?」

 

 

「え゛っ…」

 

 

光の中から現れたのは、つい先ほど戦っていたアーサー王であった。

 

 

「む?何だその顔は…ああ、召喚された私に会ったことがあるのか。

良いか、基本的にサーヴァントの記憶は次の召喚には持ち越されない。かつては敵だったとしても、今はお前のサーヴァントだ。

我が名はアルトリア・ペンドラゴン。契約は為された。貴様の盾となり、剣となり、人理を取り戻そう」

 

 

「あ、はい…よろしくお願いします…」

 

 

「そして、そこの娘だが…いや、やはりいい。これからよろしく頼む」

 

 

「あ、はい…」

 

 

何だか不思議な空気のままだが次は、オルガマリーの番だ。

 

 

「…別にセイバーだけで良いのだけれど…」

 

 

何かブツブツと言っている。

 

 

「…コホン。それでは――」

 

 

オルガマリーも詠唱を始める。

 

 

――抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――!

 

 

また光で部屋が満たされる。

 

 

「やあ。オケアノスのキャスターだ。悪いけど真名は隠させてもらうよ。でも安心してくれ。この鷹の魔女の実力は折り紙つきさ!」

 

 

「オケアノス…鷹の魔女…まさか大魔女キルケー!?」

 

 

「ゲエーッ!何でわかったんだい!?」

 

 

…何となくコイツのキャラは把握した。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1章 邪竜百年戦争 オルレアン
次なる戦場





愆つは、人

殺すは、魔


――アヨン


 

藤丸立香は、夢を見る。

 

 

召喚陣を囲むのは黒い鎧に身を包む白肌の女に、どこか冒涜的な姿をしている男。

 

 

――告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄る辺に従い、この意この理に従うならば応えよ

 

 

女が詠唱をしている。

 

 

誓いを此処に。

 我は常世総ての悪を敷く者

 

 

――?少し、違和感を覚えた。

 

 

されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――!

 

 

自分の知っている詠唱とは違うもので光と共に5騎のサーヴァントが呼び出される。

彼らはやはり尋常ではない風格を醸し出している。そして、その主人であろう女からは彼らを超える力を感じる。

ああ、なのにどうして、彼らよりも彼女の方がずっと恐ろしくあるべきなのに――どこか、憐れに感じた。

 

 

夢はまだ、続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう…ありがとうな、アーサー。もうそろそろブリーフィングの時間だ」

 

 

「フム…もうそんな時間か。やはり貴様は強いな。押し切れると思ったところで上手く躱され逆転される。また今度訓練を頼みたいものだ」

 

 

そう言葉を交わすのは俺とアーサー。今は朝だが睡眠の必要ないサーヴァントにとって夜は暇なのでこうしてシミュレーションルームで訓練を行っていた。

そして今から遂に次なる特異点の攻略に向けたブリーフィングが始まる。目的地に向かう途中、アーサーが口を開く。

 

 

「ところでお前がこの前作っていた『かき氷』…というやつ。また食いたくなったのだが…」

 

 

「ああ。あれか…」

 

 

この前藤丸が歓迎会とか言って呼び出したサーヴァント――アーサーとキルケー――に対してパーティーを開いたのだ。

その中で俺が作れるものといったら氷なので知識の中からかき氷を引き出して作ってみたのだが…案外気に入ったらしい。

それより俺はあのキルケーが作ったキュケオーンとかいう粥の方が気に入ったのだが…その旨を伝えるとキルケーはえらい嬉しそうにしていた。

 

 

「いいぜ。この作戦が終わったらいくらでも作ってやるよ」

 

 

「ああ。それは嬉しい…ただ、あの頭が痛くなるのはどうにかならんものか…」

 

 

「そりゃあもうセットってモンだ。諦めろ…って、着いたぞ」

 

 

そんなことを言っている内に目的地に辿り着いた。ロマニ、オルガマリー、ダ・ヴィンチ、キルケーが待っていた。

 

 

「おはよう、日番谷君、アーサー王。あとは藤丸君とマシュだけだね」

 

 

「おはよう、ヒツガヤ!なあ、聞いてくれよ。マスターがキュケオーンをもう要らないって言うんだ!」

 

 

「そうなのか?あんなに美味しいのに…」

 

 

「セイバーがおかしいのよ!私今日もうさっき1杯食べたのよ!?アナタよく毎日何杯も食べれるわね…」

 

 

美味しいものは何杯でもイケると思うんだが…そんなことを思いながらオルガマリーが手を付けてないキュケオーンを食べ始める。

 

 

「あ、アーサーはこれいるか?」

 

 

あの歓迎会でアーサーが見た目を遥かに超える大喰らいだということはわかった。

 

 

「いや、そのどこか健康的な味はあまり好みに合わなくてな…」

 

 

「そっか…」

 

 

ロマニとダ・ヴィンチにも目を向けると、首を振られた。

どうもこれが好きなのはこの場では俺だけらしい…藤丸とマシュはどうだろうか?マシュは全ての料理を少しずつ食べていたし、藤丸は俺のかき氷を一気に食って早々にダウンしてそれ以降あまり食事には手を付けていなかった。

まだわからないな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございまーす!」

 

 

「おはようございます、皆さん。マシュ・キリエライトただいま参りました」

 

 

「おはよう、藤丸君。よく眠れたかな?それではブリーフィングを開始しよう」

 

 

そう言って始まったロマニの説明を纏めると…これから向かう特異点には聖杯が関わっているとのこと。特異点の調査と同時にこの聖杯に関しても調べるということ。

そしてまず始めに行うことは霊脈に召喚サークルを設置することだ。これを行わないとせっかく召喚した2騎以降のサーヴァントも意味をなさない。とはいえ魔力供給の問題からあまり簡単に呼べるものでもないのだが…。まあカルデアの電力を用いた魔力供給を使うなら次のことを考えなければなんとかなる。

とりあえず今は初めに連れて行くのは1騎のみ、サークルを設置次第2騎以降を呼ぶということにする。

 

 

「あー、そして紹介するよ。彼…いや、彼女…いや…ええい、ともかくそこにいるのは我がカルデアの技術部のトップ、レオナルド氏だ。この人は――」

 

 

「はい、ここからは私から。カルデア技術局特別名誉顧問のレオナルドとは仮の名前。

私こそルネサンスに誉れ高い万能の発明家、ダ・ヴィンチその人だ!」

 

 

「え…?おかしいです。だって、そ、その…」

 

 

うん、やっぱり皆混乱している。ダ・ヴィンチは男だもんな。そして俺も混乱してきた。何かうやむやにしてきたけどやっぱりおかしいよな…?

 

 

「――私は美を追求する。そして私の理想の美とはモナ・リザだ――ほら?」

 

 

なにを言っているのかよくわからなかったがそうらしい。

まあともかくこのダ・ヴィンチはオルガマリーとも藤丸とも契約を結んでいないため、バックアップが主な仕事となる。

そんな話をすると、ダ・ヴィンチは立ち去って行った。

 

 

「よし、じゃあもうすぐにレイシフトを始める。今回は安全に行える筈だ。所長も…よくわかんないんですけど、行えるんですよね?」

 

 

「ええ。実験も行いました。死神という存在になり、体も新しくしたことで私の基盤そのものが変わったようです。今の私はレイシフト適性を得ています」

 

 

「そうですか、それなら良いんですが…。ではこれからレイシフトの準備を開始します。藤丸君が連れていくサーヴァントはマシュの盾をサークルの基盤にするから確定として…所長は、まあわかっていますが…」

 

 

「ええ。当然セイバーを連れて行くわ。どうせすぐにどちらも呼べるようになる以上、緊急時の戦闘力が高い方を連れて行くに決まっているわ」

 

 

「ああ。ここは大魔女の力を見せてあげたいところだが…まあ私は後輩だ。そこのところは弁えよう」

 

 

別にキルケーでも構わないと思うが…まあオルガマリーが俺を選ぶのはわかっていることだ。

 

 

「それじゃあコフィンに入ってくれ。レイシフトを開始しよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンサモンプログラム スタート。

 霊子変換を開始 します。

 レイシフト開始まで あと3、2、1…

 全工程 完了。

 グランドオーダー 実証を 開始 します。

 

 

そして波が来て意識が攫われる。この感覚は、慣れそうにない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず最初に周りを確認した。オルガマリーは傍で寝ている。藤丸とマシュは――見つからない。どうもはぐれたようだ。まあカルデアとの通信が繋がればすぐに合流できるだろう。

そして次に目に入って来たのは空に浮かぶ光の輪だった。そこで初めて恐怖と戸惑いを覚える。おかしい。()()()()()()()。あれは、明らかに莫大な力の塊だと理解しているのに…何も感じない。

わかっている。頭では理解している。これは――かつて、崩玉と融合した藍染の力を誰も理解できなかったように、斬月と融合した一護の力を藍染が理解できなかったように。

あの輪が、今の俺とは比べもののならない位の力を有しているというだけだ。

 

 

その事実に戦慄していると、一つの霊圧がこちらへ寄ってくるのを感じた。

 

 

「あら――あなたは、本来のサーヴァントですか、それともおかしい方のサーヴァントですか?あなたは一体、誰でしょうか?」

 

 

着物に身を包んだ角を生やした少女が歩いてきた。

 

 

「カルデアから来たセイバー、日番谷冬獅郎だ。…話がしたい。アンタが…敵か味方かも含めてな」

 

 

「ええ。私は本来のバーサーカー、清姫ですが…どうもお互いに事情の説明から必要なようですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらまあ、そんなことが…」

 

 

どうも、結構大変なことになっているらしい。あの有名な聖女ジャンヌ・ダルクが蘇ってワイバーンを操りフランスを、火の海と変えているとのこと。そしてその彼女に召喚されたサーヴァントは狂化をかけられており、他の――本来のサーヴァントと戦っているらしい。

 

 

「それじゃあ俺たちに協力してくれるか?こちらもフランスを守るために全力を尽くそう」

 

 

「ええ。それでは約束をしましょう?」

 

 

そう言って小指を差し出してきた。なんかこの少女、先程からどんどんと距離が近づいて来ているような…。

 

 

「ああ。指切りか?」

 

 

「ええ。ゆーびきーりげーんまーん、うーそつーいたらはーりせんぼんのーます…。

それでは約束は絶対なので以降わたくしに嘘をついた場合、針を千本呑んでもらいます。

よろしいですね?それではよろしくお願いします、あなた様」

 

 

…かなりの不思議ちゃんのようだ。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔女の軍勢




誇りを一つ捨てるたび

我等は獣に一歩近付く

心を一つ殺すたび

我等は獣から一歩遠退く


    ――更木剣八


 

――さて。これから何をすべきか、という話だ。

 

 

「…。ロマニと通信が繋がったわ」

 

 

起きたオルガマリーに一通りの説明を終えると、丁度良いタイミングでロマニから通信が来た。

 

 

『あっ、やっと繋がった!藤丸君たちも無事レイシフトできているよ。

そっちの状況は?』

 

 

「こっちでは一人のサーヴァントと接触して、とりあえず味方になってくれた。この特異点の現状も把握できた」

 

 

『なるほど、じゃあ情報交換といこうか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藤丸たちは俺たちとかなり離れていて、ジャンヌ・ダルクと接触したらしい。

いきなりラスボス戦かと思えばどうも事情があるようで、今フランスを攻めているのは偽物のジャンヌ・ダルクらしく、そいつが俺たちの倒すべき敵というわけだ。

そんな感じの情報交換でロマニとの通信は一旦切れた。

 

 

「戦力を集めなければいけないのですね。それならわたくし、一つ心当たりがあります」

 

 

「そうなのか?」

 

 

「ええ。そんなに時間も経っていないことですが、ゲオルギウス、と名乗る方と出会いました。西の方に向かっていったのですが…」

 

 

「ゲオルギウス…聖ジョージの名で有名な聖人ね。我々に協力してくれる

ことでしょう。藤丸たちとは離れますが…どうしましょうか」

 

 

オルガマリーが悩んでいる。

 

 

「…いえ。今は合流を優先させます。その後聖ジョージの所へ向かい、仲間になってくれるよう頼みましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロマニに合流する旨を伝え、とりあえず外も暗いので野宿の場所を探そうということになった。

 

 

「しかし、本当に魔物がたくさんいるな…これで何匹目だ?」

 

 

「あなた様はお強いのですね」

 

 

「清姫だってマスターと仮契約を結んでからみるみる調子が良くなったじゃないか。もう何匹も焼き殺している」

 

 

最初にこの少女が火を吹いたときはとても驚いた。

 

 

「まあ…すみません、はしたない姿をお見せしました…」

 

「いや、戦力が増えるのはとてもありがたいのだが…よし。じゃあここで野宿にしよう」

 

 

 

そうしてオルガマリーを寝かせて俺は辺りを見張っていた。

 

 

「あら…あなた様は、お眠りにならないのですね…残念です…」

 

 

清姫の言葉の意味はよくわからなかったが、サーヴァントに睡眠が必要なくて助かった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。また東に向かって歩いていると、なんだかかなり大きな声が響いてきた。

 

 

「…あちらの町からね。ちょっと寄ってみましょうか」

 

 

そこにいたのは、これまた角を生やした可愛らしい少女だった。

 

 

「何っ、なの、よ!!あの醜い私は!」

 

 

「あら…何だか紛い物がゴチャゴチャと騒いでいますね」

 

 

「…………は?」

 

 

なんか清姫が初っ端から喧嘩を売っていった。

 

 

「醜い私も何も元から醜いのではよくわかりませんわ。とりあえずその醜いどころでないその口を閉じて頂いて?」

 

 

「……このエリマキトカゲが、上等じゃない。その喧嘩、買ってあげるわ―――!!!」

 

 

そう言ってその少女は清姫に槍を向けて突っ込んでくる。

 

 

「きゃあ!助けてください、あなた様!」

 

 

「えっ」

 

 

「えっ」

 

 

「えっ…縛道の六十一 六杖光牢

 

 

鬼道によって少女はその場に縫いとめられる。

 

 

はああああああああああああ!!??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、今どんな気持ちですか?これが愛の力というものですよ?」

 

 

「このストーカーがよくそんなことを言えたものね…」

 

 

「あら、血液拷問フェチのド変態に言われたくありませんね。どうせ貴方のことです。アレしながらナニしてたんでしょう…?」

 

 

「アレって何よ!?ナニって何よ!?わ、訳のわからないこと言わないで頂戴!!」

 

 

「……え?エリザベート、貴方まさか――」

 

 

「ああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

どうも知り合いのようだ。動けない少女に対して煽り散らかしている。

 

 

「まあ、その辺にしておいて…お前は俺たちの敵じゃあないんだな?」

 

 

「ええ…悪かったわね。あの女以外に攻撃するつもりはないわ」

 

 

俺たち(一人除いて)への敵意は無いみたいなので縛道を解く。

 

 

「じゃあ自己紹介からだな。俺は日番谷冬獅郎、そしてこっちがマスターのオルガマリーだ。俺たちはカルデアというところから…」

 

 

ざっと自分たちの状況について説明した。

 

 

「なるほど。アタシはエリザベート・バートリー。まあ色んな事情があって…その敵さんの中に一人倒さなきゃいけないやつがいるわ。敵の敵は味方っていうし、アナタたちと一緒に行動してあげるわ」

 

 

順調に戦力が増えていくことに喜んでいると、複数の霊圧がこちらに来るのを感じた。

 

 

『ちょっと良いかい!?そっちに先程までこちらで戦っていたサーヴァントが向かっている!数は4騎だ!』

 

 

「あら…こんにちは、皆さん。そして、さよならね」

 

 

黒い鎧に身を包んだ女が現れた。

 

 

「…!ちょっと、いきなり親玉とか聞いてないわよ!セイバー、相手は今までのシャドウサーヴァントなんかとは違うわ。数で負けてる以上撤退よ!」

 

 

「アハハハハ!撤退なんてさせると思って?ワイバーン、退路を塞ぎなさい!」

 

 

完全に彼女の支配下にあるのか、続々とワイバーンが集まってくる。

 

 

「…ちょっと、アイツ。アタシじゃない…」

 

 

エリザベートの狙いがいるようだ。でも、今は戦う時じゃない。

 

 

「エリザベート、今はダメだ。まともに戦えない。一旦退路を切り開いて逃げるぞ。俺が殿を務める」

 

 

「…っ。わかったわ。隙を作りなさい。アタシの宝具でワイバーンなんか蹴散らしてやるわ」

 

 

「相手は連携なんか取れていない集団です。こちらが動きを合わせればなんとかなるでしょう」

 

 

「よし。防御することを考えろ、マスター援護頼んだ!」

 

 

「ああもうっ、何でこんないきなりピンチに…!」

 

 

まず無言で氷輪丸の能力を発動させ、近くのワイバーンを一掃し、とりあえずの安全圏を作る。

最初に突っ込んできたのは、槍を持つ中年の男だ。武器を合わせると他に手が回らなくなる。氷を使って近寄らせないように立ち回る。

横から切り込んでくるのは中性的な顔立ちの剣士。エリザベートと槍を合わせているので少し氷を回して援護をする。

エリザベート曰く醜いアタシは、手に持つ杖のようなものから光弾を発射してくる。これは清姫の炎と俺の氷でガードする。

最後の一人、ジャンヌ・ダルクはこちらのことを舐めているのかあまり積極的には戦闘に参加していない。たまに放たれる炎を同じく清姫の炎で相殺する。

 

 

膠着状態に、持ち込めた。どうも相手のサーヴァントは全体的にやる気が無いように見える。話によると狂化を付与されて無理やり戦わせられているのだからそれもそうか。

ただし、こちらには不利な状況で膠着している。時間がかかればかかるほどワイバーンは増えていくし、防戦で膠着しているのは良くない。

 

令呪を切るか…?

そんなことも考え始めたとき、清姫が言葉を発する。

 

 

「エリザベートっ、いきますわよ!準備なさい!」

 

 

清姫の霊圧が爆発的に高まっていく――これは、宝具――!?

 

 

転身火生三昧!!」

 

 

その宝具は思いのみで幻想種の頂点、竜種へと至るもの――その炎は全てを焦がし、その身はワイバーンなぞとは比べものにならない力を有する――!!

 

 

「っ、まず…」

 

 

ジャンヌ・ダルクが焦ったように声をあげる。

竜と化した清姫は近接戦を行っていた敵を全て吹き飛ばす。

 

 

「ナイスよ清姫!それじゃ行くわよー!鮮血魔嬢(バートリ・エルジェーベト)!!」

 

 

その隙を突き、エリザベートも宝具を解放する。かつて彼女が君臨した城が顕現し、エリザベートが大きく息を吸う。

 

 

Ahhhhhh――――――――――!!!!!!!!!!!

 

 

その声はその場にいたあらゆる敵を吹き飛ばす。消し飛ばされたワイバーンによって退路が生まれる。

 

 

「が、あっ…!」

 

 

「よし、今だ。逃げるぞ!縛道の二十一 赤煙遁!

 

 

煙幕を発生させる。そしてマスターとエリザベートを担ぎ、瞬歩で逃げる。清姫は竜になっていられる時間の内だけ自分で逃げてもらう。

どうもあのジャンヌダルクはルーラーとしての力で普通のサーヴァントよりもサーヴァントを探知できる範囲が広いそうだ。今は全力で逃げる。

 

 

今回の特異点はもっと戦力を集めないと一筋縄ではいかなそうだ…。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

合流




ぼくたちは ひかれあう

水滴のように 惑星のように

ぼくたちは 反発しあう

磁石のように 肌の色のように


        ――石田雨竜


 

…もうとっくに偽ジャンヌの霊圧は感じ取れないところまで来た。

しかしこれまで瞬歩を長時間にわたって使用してきたのは体にかなりの負担を強いる。夜通し走っていたので一度休みたい。

 

 

「藤丸たちが霊脈を陣取ってサーヴァントも1体撃退したみたいね。私たちも合流しましょう。ここから東に少しよ」

 

 

丁度良い。なんとなく藤丸と合流できるように逃げてきたがハッキリと方向を定めて歩き出す。

ただ、まだサーヴァントがいたということに驚く。聖杯があちらにある以上戦力に関しては絶対に勝てないと思っておいた方が良いかもしれない。決戦のときまでに戦力を削って、作戦で勝つしかないだろう。

幸い、今までの動きから見るに相手はこちらのことを大して脅威だと思っていない。突く隙はそこだろう。

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、幾度か魔獣との戦闘を繰り返しながら霊脈へ辿り着いた。

 

 

「あっ、日番谷、所長ー!こっちですよー!」

 

 

藤丸が手を振ってこちらを呼ぶ。周りには知らないサーヴァントが3騎。

一人は見覚えがある。恐らく彼女が本来のジャンヌ・ダルクであろう。

そして長身で細身の男とどこか高貴な女性がいて、その後ろにはもう召喚を済ませたのであろう、アーサーが佇んでいる。

 

 

「よし、じゃあ自己紹介からするか。俺は日番谷冬獅郎。クラスはセイバー。カルデアから来てるサーヴァントだ」

 

 

「私はオルガマリー・アニムスフィア。もう伝わっているでしょうけど人理を守るための機関、カルデアというところから来ました。そこの所長を務めているわ」

 

 

「わたくしは清姫と申します。クラスはこう見えてバーサーカーですのよ?」

 

 

何となくバーサーカーの片鱗は見えているが確かにバーサーカーらしくない。狂化のランクが低いのだろうか…?

 

 

「私はエリザベート・バートリー。クラスはランサーよ。敵の一人に因縁があって協力してるわ」

 

 

その名を聞くと、マシュが眉を顰める。まあ、彼女の生前の行為からして受け入れるのは中々難しいだろう。

血の伯爵夫人、吸血鬼カーミラのモデル。かつて貴族であった彼女は領民たちの血を浴びて美を保っていたという。彼女の悪名はかなり有名だ。

ただ、一緒に行動している時にそのような気配は見せていない。敵の敵は味方とも言うし、ひとまずは信頼して良いんじゃないかと思う。

 

 

「私は藤丸立香って言います。一応カルデアに所属しているマスターです」

 

 

「何よ、もっと自信を持って言いなさい」

 

 

「あ…は、はい!」

 

 

オルガマリーの言葉に藤丸が背筋を正す。なんだかんだで藤丸のことを認めているようだ。藤丸も少し笑みを浮かべている。

 

 

「私はマシュ・キリエライトです。先輩と契約しているデミ・サーヴァントです」

 

 

「アーサー・ペンドラゴン。セイバーだ」

 

 

「わたしはマリー・アントワネット。クラスはライダー。どんな人間なのかは、どうか皆さんの目と耳でじっくり吟味していただければ幸いです」

 

 

マリー・アントワネット。『パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない』の言葉で有名な革命にて処刑されたフランスの王女だ。高貴な雰囲気を纏っていたのも納得だろう。なにせ王族なのだから。

まあその言葉については実際は言ってないなど諸説あるようで、本人の言った通り前情報とは切り離して人柄を判断するべきだろう。

 

 

「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。僕も、彼女と右に同じ」

 

 

モーツァルト。とんでもなく有名な作曲家である。この姿になる前の自分にはあまりクラシックの趣味は無かったようで曲についてはあまり知らないがそれでも偉大だということはわかる。

ただ、どこかクズな予感がするのは俺だけだろうか…。

 

 

「私は、ジャンヌ・ダルクです。その、一応クラスはルーラーなのですが、サーヴァントとしての自覚が薄いというか…ルーラーとしての力は発揮できません」

 

 

ジャンヌ・ダルク。言わずと知れたフランスの聖女である。

そして、今回の特異点の鍵ともなる人物であろう。

 

 

「それじゃあ、キルケーを召喚した後今後の方針について話しましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず、先程戦ったサーヴァントについて。偽ジャンヌ以外の3騎だが、真名がわかった。

槍を扱う男はランサー、ブラド三世。吸血鬼ドラキュラのモデル、串刺し公の異名で有名だろう。ルーマニアの英雄だ。

エリザベート曰く醜いアタシはアサシン、カーミラ。エリザベートをモデルとした吸血鬼だ。確かに醜いアタシというのも納得だ。

そして、中性的な剣士はシュヴァリエ・デオン。この人物については正直知らないが、かつてフランスで活動していたスパイらしい。そして性別もハッキリとしないとのこと。一体どういうことなんだ…?

 

更には、ジャンヌが見破ったそうなのだが敵のサーヴァントたちには狂化がかけられているという。恐らく聖杯の力によって。

 

そして、そこから更に読み取ると、マスター無しでサーヴァントが召喚された理由も明らかになってくる。恐らく聖杯戦争が起きていないのに聖杯が獲得されているというバグのような状況に対して聖杯が対抗してサーヴァントを召喚した、ということではないかとのことだ。

 

次にこれからやるべきことについてだが、どうも先程藤丸は聖女マルタと交戦の末撃退、彼女から助言をもらったらしい。その内容は、リヨンという都市に向かって竜殺しを仲間にしろとのことだ。

 

 

「そう。それで所長たちと合流したらすぐに向かおうとしてたんだ」

 

 

「なるほど…」

 

 

それは全く構わないが、心配なのは藤丸だ。彼女は元気そうに振舞っているが、恐らくさっきまでも敵襲などで眠れていないのだろう。疲れが見える。

俺たちサーヴァントは睡眠が必要ないし、オルガマリーもなんだかんだで優秀な魔術師で、大人だ。1日や2日、眠らなくとも大丈夫だし、覚悟もできている。俺が言うのもなんだが心の支えとして俺という存在もある。

しかし、藤丸は一般人だ。まだまだ世界を背負う覚悟もできていないだろうし1日歩いて戦闘もこなし、睡眠も十分に取れていないのでは疲れがたまるのも当然だろう。

 

 

「よし。それじゃあ藤丸は俺がおんぶしよう。その間寝てろ」

 

 

「…へ?」

 

 

「いや、何を言ってるのセイバー」

 

 

周りの皆が驚いた顔をする。

 

 

「疲れが溜まっているだろう?そして俺は両手がふさがっていても多少の戦闘はこなせる。ほら、当然の帰結だろ?」

 

 

「安珍様、浮気ですか…?」

 

 

「いや、確かにボクも男だから君の気持ちはわかるけど手を出すのは…」

 

 

「日番谷さん、やっぱり先輩のことを…」

 

 

散々な言われようだ。護廷十三隊の誇りに誓ってそんな邪な感情は抱いていないと宣言しよう。というか安珍様って誰だ。

しかし、そこまで言われると俺もムキになるというものだ。

アーサーが獣を狩りに行ってマンガ肉を食い切る間ずっと話し合った結果、女性に背負わせるのは申し訳ないということをごり押してアマデウスはそもそも背負うのを嫌がった結果俺が背負うことになった。勝った…!

 

 

 

「へへ…自分よりちっちゃい男の子に背負ってもらうのって不思議な感じ…」

 

 

「黙れよ」

 

 

身長のことは禁句である。

 

 

「それじゃ、失礼して…」

 

 

藤丸をおんぶすると、先程言われた言葉もあって変な気分になる。

そしてそれは藤丸も同じなようで、一向に眠りにつく気配が無い。どことなく藤丸の体温も高く感じる。

 

 

「……全然眠れないですわー」

 

 

「よし、キルケー。魔術で眠らせてやってくれ」

 

 

「良かった…!この話、全く出番が無いまま終わるのかと思ってたよ!」

 

 

何を言っているのだろうかこの魔女は。

 

 

 

 




自分、なんだかアポクリファコラボのガチャでの運が良い気がします。
前のコラボの時は呼符で天草、今回は呼符でジャックが出ました。
テンション爆上がりです。
キルケーで狩っていたジャックがウチに来るとは…!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。