諏訪の兄は狙撃手 (塩田貝)
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設定

颯太郎の設定をメインで書きます。

諏訪隊の他のメンバーは、後日載せるかもです

追記
颯太郎の設定を少し変えました


《諏訪隊》

 ボーダー本部所属 B級暫定10位

 

 隊長/諏訪洸太郎(GU)

 隊員/諏訪颯太郎(SN)

    笹森日佐人(AT)

    堤大地(GU)

    小佐野瑠衣(OP)

 

 

〔UNIFORM〕

 

 ・濃い緑に白と黒のライン。胸にはポケット、首にヘッドホンのような器具を着用している。

 

 

 

〔FORMATION AND TACTICS 〕

 

・密集陣形、銃手2人で散弾戦法

 

 アタッカーの日佐人が盾となり、颯太郎が遠距離で援護、諏訪と堤が威力重視の散弾銃をぶっ放す豪快な攻め。

 

 転送位置が悪かったり、相手の作戦により合流に時間がかかってしまう場合は、颯太郎が援護しながら合流を目指す。

   

・陽動作戦、諏訪隊最大の特徴をおとりに

 

 諏訪と堤の高火力攻撃が基本だが、それを囮にして、颯太郎がスナイプしたり、日佐人がカメレオンで奇襲を仕掛ける。

   

 

 

[諏訪颯太郎]

 ポジション/スナイパー

 年齢/22歳

  身長/172cm

 誕生日/6月2日

 血液型/O型

 職業/大学生

 好きなもの/家族、コメディ、麻雀、スポーツ観戦体を動かすこと、ランク戦

 

 

 

〔PARAMETER〕

トリオン:6

攻撃:8

防御・援護:9

機動:4

技術:8

射程:8

指揮:9

特殊戦術:2

TOTAL:54

 

 

〔TRIGGER SET〕

 

 

MAIN TRIGGER

 

・イーグレット

・アイビス

・シールド

・ライトニング

 

SUB TRIGGER

 

・バッグワーム

・シールド

・(スコーピオン)

〔SIDE EFFECT 〕

 

【強化嗅覚】

 

常人の約10倍の嗅覚を持つ。

 

人並み外れた嗅覚で、臭いから敵の位置を大まかに特定することができる。

 

臭いは試合中常に嗅いでいて、得た情報を隊員と共有することによって、奇襲を防げたり、まだ合流出来ていない敵を狙うなど、様々な用途で使われている。

 

また、敵の接近にも素早く気付くことができ、逃げ足が早いため、生存率が高い。

 

 

 

 

    

 

 

 

東の一番弟子。

 

アタッカーとして正隊員になったが、太刀川や迅等との才能の差を感じスナイパーに転向。

今でもたまにスコーピオンでランク戦をしている。

スコーピオンはチーム戦では接近された時にたまに使う程度で、基本はスナイパー一本。

 

東に弟子入りすることで戦術、技術両面で急成長し、既に東も認めるほどのスナイパーになっている。

 

常に冷静沈着で、物事を様々な角度で見ることが出来る。

 

他の隊員であってもアドバイスをしたりと、弟と同じく後輩の面倒見が良い。

 

一人称は俺、隊員のことはそれぞれ、洸太郎、大地、日佐人、瑠衣と呼ぶ。

 

実戦になると、オペレーターの小佐野と共に動きを指揮し、諏訪隊を支える。

 

弟の洸太郎とは違い、風間さんの母校に通っていた。

 

颯太郎が19歳の時に海外留学が決まり、留学が終わるまで活動を休んでいた。

 

日佐人が入隊する少し前に留学したため、颯太郎を直接知っている人はそう多くない。

 

諏訪隊はB級上位をも喰らう底力があるため、B級上位、また、その先のA級も狙っている。

 

颯太郎の武器は、サイドエフェクトとそれを利用した隠密性の高さである。

 

3人以上に囲まれると流石に落とされるが、サイドエフェクトで囲まれる前に逃げるため、落とされることが非常に少ない。




今回この小説を書くために、B級ランク戦ラウンド2を読み返してたら、諏訪さんをもっと活躍させたくなってしまった。


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復帰

修の会見のことがニュースになり、それを見た後の作戦室の様子

堤と笹森口調がほぼ一緒だから、書き分けが難しい


ー諏訪隊作戦室ー

 

「かー玉狛のメガネかっこいいことしてんじゃねーか!」

 

「たとえ自分が同じ立場だったとしても俺には出来ないですね」

 

近界遠征のことがトップニュースになっている中、作戦室で諏訪と堤が麻雀卓を囲むように設置されている椅子に座りながら、談笑をしていた。

 

諏訪隊の作戦室は麻雀卓があり、太刀川さん、東さん、冬島さんなどが夜な夜な訪れてはわいわいしている。

私物の小説や漫画本が大量に持ち込まれており、だらだら過ごすには快適な空間になっている

 

 

「にしても遠征に行けんのはA級の奴らとかB級の中でも東さんくらいじゃないと無理だよなー」

 

「費用とか事情を考えると次のランク戦後に編成とかになりそうですね」

 

「てこたー俺らがB級の一位になったら遠征に行けるってことか!」

 

「A級部隊に挑戦して勝たないといけないですけどね」

 

「あ、つつみんとすわさんじゃーん」

 

「諏訪さん、堤さん、こんにちは」

 

 

話をしているとオペレーターの小佐野瑠衣とアタッカーの笹森日佐人が入ってきた。

 

 

「なんのはなししてたの?」

 

「大まかに言うと、次のランク戦も頑張ろうって話だよ」

 

「よっしゃ、次のランク戦でB級1位取ってそのままA級に上がって遠征に行くぞ!」

 

「えーつぎのランク戦でいきなりB級1位とるのー?」

 

「今回は何位からスタートでしたっけ?」

 

「10位からだよ、日佐人」

 

「何位からだって1位にはなれるわ!」

 

 

諏訪が立ち上がり、宣言するかのように叫んだ。

 

 

「1位を目指すとなると、荒船隊みたいなスナイパーが強みの部隊と当たっても、なんとか勝たないといけませんね」

 

「つつみんの言う通り、対荒船隊戦は勝率めっちゃひくいぞー」

 

「うるせー!俺も分かってんだよ!」

 

「何か良い手はありませんかね」

 

 

日佐人の発言を最後に、全員がうーんと考え込んでいたその時、

 

 

 

 

「おー、この作戦室もだいぶ久しぶりだな。全然変わってないな。前よりも物は増えているが」

 

 

 

 

作戦室の入り口から声が聞こえた。

 

「あ?誰だ急に...」

 

「諏訪さんどうしたんですか?」

 

 

諏訪と堤が驚愕の顔を浮かべているのに対し、日佐人と小佐野が疑問に思っていると

 

 

「お、洸太郎に大地じゃないか。久しぶりだな。俺が休んでからそんなに経ってないとはいえ、ノーリアクションはひどくないか?」

 

「ん?この人誰?」

 

「隊を休んで1年ってことは、まさかこの人が諏訪さんと堤さんが言ってた...!」

 

 

小佐野と日佐人がそう言った瞬間

 

 

 

 

 

 

「兄貴⁉︎」「颯太郎さん⁉︎」

 

諏訪と堤が叫んだ。

 

「そっちの2人ははじめましてだな。俺は諏訪颯太郎。お前らの隊長の兄で、お前らが入隊する前に留学したんだ。ポジションはスナイパーだ。呼び方は、もうお前らは弟を諏訪さんって呼んでるだろうから、颯太郎の方でいい。これからはチームメイトだからよろしくな。」

 

 

 

 

 

諏訪隊が、約1年ぶりに揃った瞬間だった。

 

 

 

 

 




感想や誤字脱字があれば教えて欲しいです

次回はもう少し文章量増えると思います


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作戦会議

「何で兄貴が日本にいんだ⁉︎」

 

「いやーかなりびっくりさせられましたね」

 

「折角だし、驚かせようと思ってな。ちゃんと父さんと母さんには予め帰ることは言ってるから安心しろ」

 

 

 

3人が話に花を咲かせようとしている時に、日佐人と小佐野がおそるおそる声をかけた。

 

 

 

「は、初めまして!アタッカーの笹森日佐人です!」

 

「初めまして。諏訪隊のオペレーターのおサノでーす」

 

「こっちこそよろしくな」

 

 

 

お互いに自己紹介を済ませると、日佐人は颯太郎に気になっていたことを聞いた。

 

 

 

「俺が諏訪隊に入る前は、諏訪隊はどんな部隊だったんですか?」

 

「諏訪隊結成当初は、俺と洸太郎と大地とオペレーターの4人で戦っていたんだ。で、途中で俺の留学が決まったから新規隊員募集をかけたってわけだ。流石に戦闘員2人だと戦えないしな。」

 

「そうだったんですね。あれ、でも今のオペレーターはおサノ先輩だから、前のオペレーターの方も留学してたんですか?」

 

「いや、あいつは辞めたよ。三門市から出て行くって親が決めたらしくてな。」

 

「そういう人結構いっからしゃーねーけどな」

 

 

 

日佐人は、なるほど、と言い納得していると小佐野が

 

 

 

「みんなー、おしゃべりも良いけど、次のランク戦の作戦立てないとだよー」

 

 

 

 

というと同時に、作戦室の雰囲気が変わった。

 

 

 

 

「兄貴はランク戦に復帰すんのか?」

 

「ああ、もちろんだ。」

 

「となると颯太郎さんが復帰したことは他の隊には隠した方がいいですね」

 

「じゃあ、メンバーの追加申請はギリギリに出しておくねー」

 

「因みに次の対戦相手は、鈴鳴第一と早川隊ですね」

 

 

 

ここまで話した所で颯太郎が尋ねた。

 

 

 

「俺はその2部隊とも初めてなんだが、どんな部隊なんだ?」

 

「そうか、兄貴が留学に行ってから結成されたから知らねーのか。おサノ説明してやれ」

 

「言われなくてもするしー。まず鈴鳴第一はアタッカーランク4位の村上鋼さんをエースに、ガンナーの来馬隊長、スナイパーの別役くんがサポートする、合流してエース中心の中央突破が得意のチームだね」

 

「アタッカーランク4位か、かなり強いな。弱点があればそこを攻めれるんだが、そこまでのレベルだとあまり期待しない方がいいな」

 

「しかも村上先輩は、強化睡眠記憶っていうサイドエフェクトを持ってるから、一対一で落とすのは厳しいよ」

 

「そうなると、日佐人がシールドで前衛をやって、やっぱり俺と堤が中距離で攻めるってのが一番だな!」

 

「それができれば理想的だが、向こうもそれは分かってるはずだ。簡単にその形に持っていかせてはくれないだろう。」

 

「じゃあどうすりゃいいんだ!」

 

 

 

諏訪がそういうと、意見が出ないことを見計らって、颯太郎はメンバーに問いかけた。

 

 

 

「村上が持ってるサイドエフェクトとそれを突破するために俺らができることを考えてみるんだ。ヒントを言うならば、自分の得意をどうやって相手に押し付けるかだな」

 

「うーん。やっぱり難しいですね...」

 

 

 

日佐人がそう言うと、小佐野が別の話題に変えることを提案する。

 

 

 

「なら一回早川隊について考えてみる?」

 

「そうだな。早川隊はどんな部隊なんだ?」

 

「早川隊は、オールラウンダーの早川隊長、ガンナーの船橋、丸井隊員の3人チームで、合流を最優先するのは鈴鳴第一と似てるかもね」

 

「なるほどな。あと、順位が一番低い早川隊にはステージの選択権があるからそこも注意だな」

 

「だー!考えること多すぎだろ!」

 

「まあ、ランク戦本番まであと3日あるから、じっくりと作戦を練るぞ」

 

「「「「おー!」」」」




早川隊のメンバーはBBFに載ってるデータを基にしてます

次は鈴鳴第一の作戦室での様子を書きます


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鈴鳴第一

今話からランク戦に入るつもりだったんですが、鈴鳴についても書いた方がいいかなっと思ったので、予定を変更しました。

それに伴って、前話の終わり方も変更しています。

急になってしまって申し訳ないです。

早川隊は掘り下げる予定はないので、次回からランク戦に入れると思います。


1月30日(木)

 

 

ー鈴鳴第一作戦室ー

 

 

 

「今回の対戦相手は諏訪隊と早川隊だね」

 

 

そう話を切り出したのは、鈴鳴第一隊長の来馬辰也。

大海のような広い心を持ち、温和で思いやりに満ちた性格のため、彼の周りのは自然と仲間が集う。

 

 

「諏訪隊は中距離からの高火力攻撃が強みなので合流する前に落としたいですね」

 

「てことは今回は俺が敵が合流する前に狙撃すれば良いってことっすね!」

 

「太一!もっと考えてから喋りなさいよ!」

 

 

来馬の発言に答えたのは、チームメイトの3人

 

 

今回のランク戦の大まかな目標を提示したのが、鈴鳴第一のエース、村上鋼。

強化睡眠記憶というサイドエフェクトを持っており、現在アタッカーランク4位の実力者で、右手に弧月、左手にレイガストを持ち、攻撃と守備両面において高いレベルのアタッカーである。

 

 

そしてそれを聞いて意気揚々と発言したのが、スナイパーの別役太一とオペレーターの今結花。

 

 

太一はチームのムードメーカー的存在で、未熟な部分も多いが、常に前向きな姿勢で隊員に活力を与えている。

今は面倒見がよくしっかり者ゆえに、いつも騒がしい太一には口うるさくなってしまう。

 

 

「まあまあ、今ちゃんこのくらい良いよ。それに太一の言ってることには一理あるからね」

 

「そうですね。スナイパーなので大勢を倒すことは難しいですけど、太一が敵を落としてくれるなら、俺や来馬先輩の負担が減りますから。

 

「お!やっぱり俺の意見は合ってたんですね!」

 

「あんまり調子に乗んないでよ!あんたはすぐ油断するんだから、調子に乗ってるとすぐ落ちるわよ」

 

「大丈夫っすよ!...多分」

 

「多分をつけるな!」

 

「「はっはっは」」

 

 

 

調子に乗った太一を今が叱り、それを見た2人が笑う。いつもの鈴鳴第一の日常である

 

 

 

「さあ、話を戻すよ。まず初動だけど、なるべく合流を目指そう。なるべく諏訪隊は合流させたくないから全員合流じゃなくて、僕と綱が合流して太一は一人で行動しよう。」

 

「俺は敵を見つけたらすぐ撃っちゃってもいいんすか?」

 

「そこは状況によるね。撃った後の逃走ルートとか他の隊の初期位置にも寄るから、太一は見た情報を今ちゃんに伝えて判断を仰いで欲しい。今ちゃん、お願いしてもいいかな?」

 

「任せて。太一、しっかり情報教えなさいよ」

 

「任せてください!」

 

「じゃあ俺と来馬先輩は合流して近くにいる敵を倒す感じですね。」

 

「そうだね。僕がシールドとかアステロイドで援護するから綱は思う存分戦って来て良いよ」

 

「了解です。しっかりおさらいしておきます。」

 

 

 

 

初動が決まった所で、次は早川隊について話し合うため、今が説明する。

 

 

 

「早川隊はオールラウンダーの早川隊長を中心にガンナー二人の部隊で、早川隊長が前衛をやるときと射撃に回る2パターンを状況に合わせて変えて戦っているわね」

 

「スナイパーがいない所とガンナーメインな所は、諏訪隊と似ているね」

 

「そうですね。となると唯一のスナイパーの太一が鍵になって来ますね」

 

「おー!やる気出て来たっすよ!俺頑張ります!」

 

「ははは、頼るになるね。」

 

「じゃあやっぱり俺と来馬先輩は、太一が作った隙を攻めるって形が1番良さそうですね。」

 

「そうだね。後はその場で考えて変更していこう。」

 

「私もそれが一番だと思うよ」

 

 

 

 

来馬と今が村上に同意したことで、大まかな作戦が決まった。

それを確認した所で隊長の来馬が声をかける

 

 

 

 

「僕らは今中位のトップだから次の試合に勝てば上位入りが見えて来る。でもその分狙われるし、地形も僕らが不利なものになるだろうから、厳しい戦いになると思うけど、僕らが力を合わせれば勝てるはずだ。綱にはまた負担をかけると思うし、太一と今ちゃんにも頑張ってもらうことになるけど、僕も頑張るから、次の試合も勝ちに行くよ!」

 

「絶対勝ちましょう!」

 

「オペレートは任せて」

 

「もちろんです。全員で勝ちにいきましょう。」

 

 

 

尊敬する来馬の熱い言葉にメンバーがそれぞれ応える。

 

 

 

 

 

そして...

 

2月1日(土) B級ランク戦ROUND1

 

 

 



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B級ランク戦ROUND 1
B級ランク戦開幕


「ボーダーの皆さんこんばんは!本日の実況を担当します、海老名隊オペレーターの武富桜子です!」

 

 

場所はB級ランク戦の試合会場。多くの隊員が観戦席に座っている中、海老名オペレーターの武富桜子が、実況席から挨拶をした。

 

彼女はC級の頃から実況の必要性をボーダー上層部と技術者に提言し続け、今のシステムを作り上げたランク戦実況の先駆者である。

 

 

「B級ランク戦新シーズン開幕!初日・昼の部を実況していきます!今回の解説者は、東隊の東隊長と、嵐山隊の時枝先輩にお越しいただいています!」

 

「どうぞよろしく」「よろしくお願いします」

 

 

東はボーダー初のスナイパーとなった人物で、ランク戦解説における緻密で鋭い分析には定評があるため、A級の隊員も多くいる。

 

 

「今回の試合は諏訪隊、鈴鳴第一、早川隊ですが、東隊長はどう見ますか?」

 

「まずは、諏訪隊が1人増えていることですね。」

 

「あ!本当ですね!諏訪颯太郎隊員が追加されています。あれ、諏訪ってことは...」

 

「お察しの通り、あいつは諏訪の1つ上の兄です」

 

 

東がそう言うと、一気に観戦席がざわつき始めた。

 

 

 

「東さんは諏訪さんのお兄さんのことを知ってるんですか?」

 

 

ここで話を聞いていた全員が思った疑問を尋ねたのが、嵐山隊の時枝充。

嵐山隊はA級5位ながら、テレビ出演などの広報活動も行なっている部隊で、時枝はオールラウンダーで、味方を援護して敵を討たせる名サポーターとして有名である。

 

 

「あいつは3年前くらいに入隊していて、初期の諏訪隊のスナイパーでした」

 

「てことは、諏訪隊にスナイパーが入ったことで今まで苦手だった遠距離戦も出来るようになったってことですね」

 

「早川隊からしたら、場合によってはステージも変えなきゃならないかもしれないですし、鈴鳴第一も対スナイパーの作戦も練っていないはずなので、たまったもんじゃないですね」

 

「なるほどー...さあここでステージが決定されました!今回のステージは、市街地A!」

 

 

桜子がそう言うと、スクリーンにマップが表示され、続けてステージの説明をし、時枝に話を振った

 

 

「市街地Aは広い場所や狭い場所もある、1番ノーマルなステージです!これを見て、時枝先輩はどう思われますか?」

 

「市街地Aは高い建物が少なく、道路上や屋根上での戦闘が多くなります。今回の対戦はスナイパーが太一君しかいないことを前提として各隊作戦を練っているはずなので、早川隊と鈴鳴第一は対応力が、諏訪隊は颯太郎さんの使い方が鍵になってくると思います。」

 

「なるほどー。さあここで全部隊が転送されました!各隊員は一定以上の距離をおいて、ランダムな地点からのスタートになります!」

 

 

全員が転送されたのを確認して、桜子が各隊の初動を実況していく。

 

 

「まず颯太郎隊員と別役隊員がバッグワームを起動!鈴鳴第一は来間隊長と村上隊員が合流を目指す!続いて諏訪隊はスナイパー抜きの3人で合流を目指す模様!早川隊は早川隊長と丸井隊員が合流した!船橋隊員も向かっているぞ!」

 

「転送直後は1番無防備ですからね。合流を優先するのが定石です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

颯太郎は転送開始と同時に屋根に登り、サイドエフェクトを使いながらスコープを覗いて敵の位置を探り始める

 

 

 

「近くに敵が2人か。味方はかなり遠いし、俺は合流は厳しそうだから、俺はこのまま狙撃ポイントに向かうよ。小佐野、案内と敵の位置を頼む。」

 

 

「おっけー」

 

「じゃあ俺ら3人は先に合流するぞ!」

 

「「了解!」」

 

「さあ、作戦開始だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずは合流を優先したいけど、颯太郎さんがいるから迂闊には動けない。だからまず僕と綱が合流するから、太一はそのまま狙撃ポイントに向かって欲しい。今ちゃん!敵の位置を!」

 

「了解!」「了解です」「了解っす!」

 

「太一!もし近くに誰かいても、まだ撃っちゃダメだよ!」

 

「え、何でですか?笹森先輩の姿ならちょっと遠いですけど、いつでも撃てますよ?」

 

「確かに今なら当たるかもしれないけど、日佐人君の近くにいる人が諏訪隊の誰かだったら、太一が落とされるかもしれない」

 

「今回太一は落とされるわけにはいきませんからね」

 

「そう言うことなら了解です!」

 

 

 

作戦を立てていると、今が全員に声をかけた

 

 

 

「鋼君!北側から1人接近中!」

 

「分かりました。来間先輩、先に一勝負してきます」

 

「わかった!頼んだよ!」

 

 

 

 

 

 

「さあ村上隊員と船橋隊員が当たりそうだ!諏訪隊の3人と早川隊の2人は合流!ここまでの流れをどう思いますか?」

 

 

初動も終わり、現時点での批評を解説の2人に求める。

 

 

「諏訪隊も早川隊も火力が武器の部隊ですから、合流できたのは大きいですね。鈴鳴第一は村上と来間が合流する前に諏訪隊と当たる可能性もあるので、少し不利に感じます」

 

「太一君と颯太郎がどこで誰を撃つのか、が大事になってくると思います」

 

「つまりスナイパーの働きが大事になってくると言うことですね!」

 

 

 

 

 

 

 

「よし、洸太郎たちが合流出来たなら、南西の方角に早川と丸井がいるからまとめてぶっ放してこい。お前ら3人が揃ってるなら負ける事はないと思うが、鈴鳴のスナイパーに気をつけろよ」

 

「よっしゃー!いつものやつで行くぞ!」

 

「「了解!」」

 

「俺は予定通り移動するから、そっちは頼んだぞ」

 

「兄貴も油断して落ちんじゃねーぞ!」

 

「気をつけるよ」

 

 

そう言うと颯太郎は、脇道を通ってある場所へ向かった。

 



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ROUND 1 ①

これと同じ内容のを二回上げてしまいました。

あと所々誤字があって申し訳ありません


「くそ...!やっぱり中々落とせないな...!」

 

 

その頃、村上と船橋の戦闘が始まっており、船橋はアステロイドやハウンドで攻めるが、村上の堅い守りを崩せないでいた。

 

 

「ハウンド!」

 

 

船橋が村上に向けてアステロイドを放ったその時、

 

 

「スラスターON」

 

 

そう言ってシールドを展開したまま、船橋との距離を一気に詰めると、ハウンドをレイガストの盾モードで全て防ぎ、そのまま孤月で船橋の首を切り落とした。

 

 

 

『戦闘体活動限界 緊急脱出』

 

 

 

最初のポイントは鈴鳴第一に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーっと!最初の得点は鈴鳴第一に入ったー!

 

「レイガストの強みをしっかりと活かしましたね」

 

 

レイガストは、ブレード変形を変形させて盾にする守備的トリガーで、『スラスター』を使えばブレードを瞬時に加速させることが出来る。

 

 

「村上の強みは孤月の腕もそうですが、レイガストの使い方ですね」

 

「レイガストの使い方が上手いとはどう言うことなんでしょうか?」

 

 

東の発言に桜子が疑問に思ったことを尋ね、時枝と東が答える

 

 

「まずレイガストは孤月やスコーピオンに比べて攻撃力が低く、少し重いと言うデメリットがあるので、人気があるトリガーとは言えません。しかし、どのトリガーよりも耐久力が高いという特徴があります。」

 

「そこで村上はレイガストを盾としてのみ使うことによって、中距離戦に持ち込まれてもああいう風に対処出来る様になりました。」

 

「なるほどー!おーっとその場に来馬隊長も到着!鈴鳴第一も合流しました!」

 

「サポーターが入ると鋼は攻撃に専念できますからね。この二人を落とすのは難しいですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鋼!大丈夫かい!」

 

ガンナーと一対一で戦っていたことを心配していると、鋼は優しく答えた。

 

「はい。ダメージは食らってないので大丈夫です。」

 

「それなら良かった。今ちゃん、今の状況を教えてほしい」

 

「了解。今南西部で諏訪隊の3人と早川隊の2人が戦闘中で、太一曰く、早川隊が押されてる感じらしいよ。」

 

「その状況なら諏訪隊の背後から奇襲するのがいいですかね?」

 

 

鋼の問いかけに来馬は同意を示した。

 

 

「そうだね、バッグワームで奇襲しよう。太一は僕らが参戦して、敵の意識がこっちに向いたところを諏訪さんか堤さんを狙うんだ。撃ったら今ちゃんの指示に従ってすぐに狙撃ポイントを変えるんだ。」

 

「了解っす!」

 

「よし、攻めに行くよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃諏訪隊は、早川隊の2人と戦闘を行っていた。

 

 

「来馬隊の2人がレーダーから消えてるから気をつけなよー」

 

「てことは、鈴鳴第一は俺らが戦ってる背後からの奇襲狙いですかね?」

 

 

 

小佐野の警告を聞いて鈴鳴の動きを予想した堤の意見に颯太郎も同意する。

 

 

「そうだろうな。現に今お前たちの戦いをスコープ越しに見てるからその可能性が高いな」

 

「てことはこいつらをまとめてぶっ飛ばしたら、鈴鳴の方から近づいてきてくれるってわけか!」

 

「油断してると早川隊の2人に落とされるぞ」

 

 

早川隊は全員が中距離の武器を持っており、丸井はメテオラを持っているため、最悪まとめて吹っ飛ばせれる可能性があった。

 

 

「にしても撃ちながら引かれちゃ攻め手にかけますね」

 

「よし日佐人、お前一回シールド使わずに突っ込め」

 

「え、俺を犠牲にして2点取るってことですか?」

 

 

ランク戦に於いては失点より得点の方が大事なのだが、失点しないに越したことはない。日佐人はここで自分が落ちたら、鈴鳴第一戦で不利になることを心配していた。

 

 

「ちげーよ!俺と堤を信じて行ってこい!」

 

「分かりました!」

 

 

そう言うと、シールドを解除し、孤月を片手に突っ込んで行った。

 

 

「シールドもなしに突っ込んできた⁉︎」

 

「落ちつけ!鈴鳴を警戒して焦っただけだ!まずは一点取るぞ!」

 

 

早川と丸井はそれぞれアステロイドとハウンドで日佐人に集中砲火を浴びせた。

 

 

 

しかし、そこには三枚のシールドに守られている日佐人の姿があった。

 

 

 

 

 

 

「おーっと!笹森隊員が落とされたかと思いきや、三枚のシールドで完璧に防いだ!」

 

 

桜子の解説に東と時枝が解説を入れる。

 

 

「諏訪隊の3人が固まっていると、早川隊の2人は接近させないためにも玉を分散させなくてはいけません。そこで諏訪隊は、笹森隊員が特攻すると見せかけて、3人全員が笹森隊員を守ることによって接近することが出来ましたね。」

 

「しかし、諏訪さんと堤さんが狙われる可能性もあったので、少しギャンブルでしたね」

 

「なるほどー!諏訪隊は流石の胆力ですね!」

 

 

 

 

 

 

「マジかよ...!丸井!メテオラだ!」

 

「了解!」

 

 

メテオラは、着弾するとその場で爆発し広範囲を攻撃できる炸裂弾で、トリオン量を調節することで爆発の規模を設定出来る。

 

 

「メテオ」

 

「旋空弧月!」

 

 

丸井がメテオラを打とうとした瞬間、日佐人は旋空弧月で丸井の胴と早川の左腕を切り落とした。

 

 

 

『戦闘体活動限界 緊急脱出』

 

 

 

日佐人が一点を取り返し、諏訪隊と鈴鳴第一が一点で並んだ。



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ROUND 1②

「おーっと!笹森隊員の旋空弧月が早川隊長の左腕と丸井隊員の胴を切り落とした!」

 

「旋空弧月は起動に少し時間がかかりますが、その分射程が伸びます。早川はサブトリガーに射撃トリガーがあるので、咄嗟に旋空弧月を選んだのはいい判断でしたね。」

 

「これで早川隊は未だ0ポイントで2人落とされてしまいましたし、早川くんも左腕を落とされたことによって射撃トリガーが使えなくなったのでかなり厳しくなりましたね。」

 

 

東と時枝がそう解説をしていると、桜子が再び実況に戻る

 

 

「さあこれで早川隊は絶体絶命!早川隊長は意地を見せれるか!」

 

 

 

 

 

 

 

「くっそ...!旋空...」

 

 

丸井と自分の左腕を落とされ動揺した早川だったが、接近してきた笹森目掛けて旋空弧月を打とうとしたその時

 

 

 

『ドンッ』

 

 

早川の心臓を一筋の光が貫いた。

 

 

 

『戦闘体活動限界 緊急脱出』

 

 

 

 

 

 

 

「おーっと!ここで早川隊長が緊急脱出!得点は....颯太郎隊員です!」

 

 

桜子がそう言うと、東は少し驚いた様子だった。

 

 

「今のは少し驚きましたね。早川は片手を失っていましたし、颯太郎がわざわざ撃たなくても十分落とせました。なのにわざわざ撃ったと言うことは、何か別の狙いがあるのかもしれませんね。」

 

「僕は万が一でも日佐人くんが落とされるのを恐れたからだと思います。諏訪さんと堤さんは散弾銃しか持っていないので、日佐人くんを援護することは出来ませんから」

 

 

「なるほどー!早川隊は残念ながら0点のまま全滅!しかしこれで颯太郎先輩の位置が割れた!鈴鳴第一はどう動くか!」

 

 

 

 

 

 

 

「太一!颯太郎先輩の位置は分かるかい!」

 

「はい!かなり遠いですけど、アイビスが見えてるので間違いないです!」

 

 

早川の緊急脱出を知った鈴鳴は、この後の動きを立てていた。

 

 

「今太一が狙撃すると、僕たちは太一の援護に行くことが出来ない。だから、太一は僕らが諏訪隊と戦ってる最中に狙撃するんだ!」

 

「了解っす!」

 

「鋼、僕らは颯太郎先輩を狙うよ。今から行けばそう遠くまでは逃げられないはずだ。しかも太一が颯太郎先輩の位置を抑えてるから、きっと僕らが諏訪さんたちを狙うと思っているはずだ。」

 

「了解です。スナイパーさえ落とせればこっちが有利になりますから、すぐ行きましょう。」

 

「今ちゃん!颯太郎先輩の位置までのオペレート頼んだよ!」

 

「了解!」

 

(一体なんだ...この不安は...?まるで手の上で踊らされているみたいだ...)

 

 

来馬は拭うことの出来ない得体のしれない不安を感じながら、今は点を取ることに集中するために、足を動かした。

 

 

 

 

 

 

 

「鈴鳴第一はスナイパーの颯太郎隊員に狙いを定め、諏訪隊長たちを避けるように南下していきます!」

 

「諏訪は飽くまで自分たちが攻めてくるのを待っているという読みだと思います」

 

 

時枝がそう言うと、東が補足を入れる。

 

 

「諏訪隊の3人と正面から戦うとなると、笹森のシールドや諏訪たちの散弾銃があるので不利になってしまいます。なので、スナイパーの援護を受けるのを自分たちだけにする狙いですね」

 

「鈴鳴第一は全員がバッグワームを起動しているため諏訪隊は鈴鳴第一の動きがわかりません!諏訪隊はどう動くのか!」

 

 

 

 

 

 

 

「鈴鳴はこっちにきませんね」

 

 

堤がそう言うと、颯太郎から通信が入る

 

 

「と言うことは、俺が仕掛けた罠にかかったわけだな。じゃあお前たちも頃合いを見て行動に移ってくれ」

 

「了解だ兄貴!こっちの指揮は俺が取るから、兄貴は自分の仕事ミスんじゃねーぞ!」

 

「了解だ隊長」

 

「お前ら、しっかり演技しろよ!」

 

「諏訪さんが1番下手そうだけどねー」

 

「ほっとけ!」

 

 

諏訪が堤と笹森に指示を飛ばすが、小佐野にいじられていた。

 

 

 

「...お前らミスんなよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「諏訪隊の3人がバッグワームを起動した!注意して!」

 

 

鈴鳴第一のオペレーターの今が、通信で来馬と村上に注意を促す。

 

 

「僕たちがスナイパー狙いだって気づいたみたいだね。」

 

「でもこの距離だと追いつかれないので、まずはスナイパーを落とすことに集中しましょう」

 

 

村上が言う通り、来馬と村上はもう目的の家に着いていた。しかし奇妙なことがわかった。

 

 

「でも諏訪先輩たち、バッグワーム起動しただけで、まだ動いてないですけどね。」

 

 

普通ならバッグワーム起動したなら、すぐ移動を開始するのだが、諏訪隊は何故か移動をしていなかった。

 

 

「俺らを探すでも太一を探すでもないなら、一体何が狙いなんでしょうか。」

 

「わからない...太一、もう少し諏訪隊の動きを見張って欲しい。僕らが颯太郎先輩を倒したら、こっちに移動し始めるんだ!」

 

「了解っす!」

 

「鋼、僕らは2点目を取りに行くよ!」

 

「了解です」

 

 

そう言い、来馬と村上が颯太郎がいるであろう建物の屋根に立った時だった。

 

 

 

 

 

 

 

『ドンッ』

 

 

 

 

 

 

『戦闘体活動限界 緊急脱出』

 

 

 

 

 

 

 

 

一発の銃声と緊急脱出を告げるアナウンスが流れた。



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ROUND 1 ③

「おーっと!一体何が起きたのか!」

 

 

桜子がそう言うように、観戦席にいる隊員も何が起きたのか分かっていなかった。

 

 

「ここで落とされたのは鈴鳴の別役隊員!得点は颯太郎隊員!しかし、あれだけ距離が離れていて、どうやって狙撃したんでしょうか?」

 

 

桜子が言うように、颯太郎と太一の距離はかなり離れているため、本来なら届かないはずなのである。

 

 

「それは、この後を見ていれば分かりますよ」

 

 

 

 

 

 

 

「これは...アイビスが消えた⁉︎」

 

 

颯太郎がいるはずの建物の屋根に着いた2人だったが、そこで見たのは、だんだん消えて行くアイビスだった。

 

 

「太一が緊急脱出したってことは、アイビスを置いて太一の近くに移動していたってことか!」

 

「これはやられましたね」

 

「ごめん太一、僕の指示ミスだ」

 

「全然大丈夫っす!むしろ役に立てなくて申し訳ないっす」

 

 

来馬が作戦室に戻った太一に謝り、太一もそれを聞いて謝ると、村上が声をかける。

 

 

「来馬先輩、この後どう動きますか?」

 

「颯太郎さんは僕たちが屋根に登ったのを見てから太一を撃ったから、もう僕たちの居場所はバレてる。諏訪隊の三人がここに来るのも時間の問題だ。」

 

「となると、奇襲でまずは1人落として、颯太郎先輩の射程に入る前に接近戦で決めたいですね」

 

「そうだね。でも今は諏訪隊はバッグワームを起動しているから場所が分からない。奇襲して、その後そのまま正面戦闘しか道はないみたいだね」

 

「了解です。一点でも多く点をとりましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんと!アイビスを設置して本人だけが密かに移動していた!」

 

 

桜子がそう言うと、時枝と東が颯太郎の動きを説明する。

 

 

「颯太郎先輩は早川くんを撃ったあと、太一くんに狙撃した場所が割れるのを予測して作戦を立てていたと思います。結果として、来馬先輩と村上先輩をおびき寄せることが出来ました。」

 

「あそこで敢えて自分の居場所を相手に伝えて、あたかも自分はそこにいると思わせるのが狙いだったんでしょう。あそこで笹森隊員が早川を落としていれば、来馬と村上は諏訪たちを奇襲していたでしょうから。」

 

「なるほどー!おっとー!来馬隊長と村上隊員は諏訪隊がいた場所まで戻るようです!諏訪隊はどう動く!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鈴鳴の2人がこっちに向かってきてるぞ。」

 

サイドエフェクトを使い敵の接近を知らせると、隊長の諏訪が指示を出す。

 

 

「よし、俺らはバッグワームを解除して行くぞ」

 

「バッグワームを解除せずに、奇襲した方が良くないですか?」

 

 

笹森がそう言うと、諏訪と堤が答える。

 

 

「俺らが敢えてレーダーに映りゃ敵は攻めてくるしかねー。あいつらは接近しねーと点が取れねーからな。」

 

「そこを俺らの得意の中距離で攻めるってことさ。」

 

「なるほど」

 

「兄貴はサイドエフェクトで敵の位置を随時探ってくれ。」

 

「了解だ。精度を上げるために少し近づくよ。」

 

「さあ、もう2点取りに行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「諏訪隊がバッグワームを解除してる!」

 

 

オペレーターの今がそう言うと、来馬は相手の狙いを予測し始めた。

 

 

 

「僕らが奇襲で接近戦を仕掛けるしかないって分かってておびき寄せようとしてるね。」

 

「でも俺らは接近するしかないので、誘いに乗るしかないと思います。」

 

「そうだね。相手も奇襲されることが分かっててバッグワームを解除してるはずだから、何か作戦があるのかもしれない。スピード勝負になるよ。」

 

「了解です。レイガストのスラスターで一気に距離を詰めるので、援護お願いします。」

 

「分かった。頼んだよ、鋼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜子の実況に対し、時枝、東の順に解説する。

 

 

「諏訪隊のすぐそばまで鈴鳴が近づいている!鈴鳴はここで決めに行ったか!」

 

「時間が掛かれば掛かるほど不利になるのは鈴鳴です。それをお互い分かっているはずなのですが、諏訪隊は敢えて短期決戦を挑もうとしているのが不思議ですね。」

 

「最後は自分たちの得意分野で正面から倒す。諏訪らしい考え方ですね。鈴鳴は最初の一撃でどれだけダメージを負わせることができるか、諏訪隊はどれだけ落とされないかが鍵となってきますね。」

 

 

「なるほどー!さあB級ランク戦ROUND 1もいよいよ大詰め!果たして勝つのはどの部隊か!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決着の時は近い




今回はキリが良かったので少し短いですけど、終わらせました。


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ROUND 1④

指摘があった部分を修正しました。


「さあいよいよB級ランク戦ROUND 1昼の部もいよいよ大詰め!解説のお二人は今回の試合をどう見ましたか?」

 

 

桜子が東と時枝に話を振る。

 

 

「今回は終始諏訪隊有利で進んでいますね。敵にバレていなかった颯太郎を上手く動かすことによって、相手の意表を突き続けることが出来ました。」

 

「鈴鳴は太一くんが落とされたのが痛いですね。彼がまだ残ってたら取れる作戦が大分変わってきますから。」

 

 

時枝がそう言ったのを聞いた桜子は、疑問に思ったことがあった。

 

 

「別役隊員が残っていた場合は、どのような展開になっていと思いますか?」

 

「太一はシールドを持っていますから、来馬と2人で村上の援護が出来ます。またスナイパーの射程を活かして遠、中距離で戦うこともできました。しかし、諏訪隊が全員揃っている今回の状況だと厳しいので、最終的には接近戦に持ち込んでいたと思います。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴鳴は今、建物の間の細道に村上を前に待機していた。

 

 

「今ちゃん!諏訪隊が鋼の射程に入ったら合図をお願い!鋼はそれを聞いたらすぐに飛び出して攻撃するんだ。僕も一緒に飛び出すから、シールドやアステロイドで援護する。」

 

「了解です」

 

「諏訪隊が射程に入るまで、3、2、1、0!」

 

「出るよ、鋼!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鈴鳴が右手側の脇道から出てくるぞ!」

 

 

サイドエフェクトで行動をいち早く察知した颯太郎が諏訪隊のメンバーに警告を出す。

 

 

「場所さえ分かってりゃこっちのもんだぜ!ぶっ放すぞ堤!」

 

「了解!」

 

 

洸太郎と堤がそう言うと、脇道から鈴鳴が出てきた。

 

 

「今だ!」

 

 

洸太郎の声を合図に、洸太郎と堤が散弾銃を撃った。

 

 

「やりましたかね?」

 

堤がそう言うと、颯太郎が焦った口調で叫んだ。

 

 

「まだ落ちてない!反撃くるぞ!」

 

「え?」

 

「スラスターON」

 

「堤先輩!」

 

 

颯太郎の警告への反応が遅れてしまった堤に、レイガストのスラスターを起動した村上が肉薄していた。しかし笹森が堤を押し飛ばし、代わりに笹森が吹き飛ばされてしまった。体勢が崩れた笹森の首を村上が孤月で突き刺した。

 

 

 

『伝達系切断 緊急脱出」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーっと!ここで鈴鳴第一が一点取り返した!しかし、村上隊員はどうやって2人のショットガンを防いだのでしょうか?」

 

 

笹森が落ちたことを伝え、その解説を求める。

 

 

「諏訪さんと堤さんが使うショットガンは威力は高いですが、来馬と村上が2人でフルガードすれば防ぐことができます。」

 

 

ショットガンは、近距離から大きめのアステロイドをぶっ放す銃型トリガーで、威力が高い分スキが大きいのが弱点である。現在は諏訪と堤しか使っている正隊員いない。

 

 

「諏訪と堤が同時に攻撃したので、そこで生まれたスキを攻められました。颯太郎が狙撃しても良かったですが、笹森と村上が密着していたので撃つに撃てませんでしたね。」

 

「さあ一点を取り返した鈴鳴はこのまま逆転するのか、それとも諏訪隊が逃げ切るのか!」

 

 

 

 

 

 

 

「くそったれ!堤は来馬を抑えろ!」

 

「了解!」

 

 

日佐人は落とされてしまったが、分断した村上と来馬を狙うことが出来る様になった。しかしそれは諏訪隊もそうで、一対一にさせられていた。

 

 

(諏訪さんのショットガンを防ぎ切ったら、スラスターで一気に近づいて決める。)

 

「くっそ!攻めきれねーな」

 

「!スラスターON」

 

 

村上は、諏訪の射撃が止んだその一瞬を狙っていた。スラスターで一気に接近したその時、

 

 

 

 

「ドンッ」

 

 

 

と音が鳴ると、村上の左手をレイガストを貫通して吹き飛ばしていた。

 

 

「ナイスタイミングだぜ、兄貴!」

 

「鋼!」

 

「撃たせないよ!」

 

 

来馬が諏訪にアステロイドを撃とうとするが、フルガードを解いてしまい、堤のショットガンをもろにくらってしまった。

 

 

「「吹っ飛べ!」」

 

 

諏訪と堤が揃ってそう言うと、ショットガンで2人の体に無数穴を開けた。

 

 

 

 

 

『『戦闘体活動限界 緊急脱出』』

 

 

 

 

 

 

「ここで試合終了!B級ランク戦ROUND1昼の部は、生存点を入れて、7対2対0!諏訪隊の勝利です!」



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総評

「最終スコア7対2対0で諏訪隊の勝利で幕をおろしました!」

 

「終始諏訪隊が意表を相手の意表を突いていましたね」

 

 

桜子が試合結果を発表し、東と時枝は今回の戦い総評に入る。

 

 

「今回の諏訪隊は、情報がバレていない颯太郎を上手く使えていました。相手が予想していないことをする。自分たちの得意を押し付ける。この2点を上手く出来たことが、高得点に繋がったと思います。」

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃー!お前らよくやった!」

 

 

諏訪隊の作戦室で、諏訪が隊員を労っていた。

 

 

「こんなに点を取れたのは初めてかもですね」

 

「俺が落ちてなかったら、もっと余裕を持って勝ててました。すいません...」

 

 

堤がランク戦で滅多に見ない高得点を喜んでいると、日佐人は自分が落ちてしまったことを謝罪した。

 

 

「あほ抜かせ。お前お前は俺や堤を守ってくれたんだ、謝るこたーねーよ。」

 

「でも...」

 

「助けてくれてありがとな、日佐人」

 

「颯太郎さんも入れてみんなポイントゲットしたからいいじゃーん」

 

「諏訪さん、堤さん、おサノ先輩...はい!ありがとうございます!」

 

 

日佐人が力強く返事をすると、諏訪が颯太郎に声をかけた。

 

 

「俺らが今回勝てたのは、兄貴の協力があったからだ。ありがとな」

 

「いや、お前らの頑張りだよ。でも、これだけで満足はしないだろう?」

 

 

颯太郎がニヤッとしながら言うと、諏訪はそれに答えるように大きな声で返事をした。

 

 

「あたりめーだ!もっと勝ってA級に行くぞ!」

 

「「「おー!」」」

 

「なんだ、思ったよりちゃんと隊長してるじゃないか。これなら安心だな」

 

 

 

新生諏訪隊の躍進は、まだまだ始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 

「早川隊は今回は運がありませんでしたね。アタッカー4位の村上と一対一で当たったり、全員が揃っている諏訪隊と当たったりと、本来の火力を活かせませんでした。」

 

 

それだけ早川隊の火力を警戒していたってことです。と東が言う。

 

実際早川隊は、早川と船橋がアステロイドとハウンド、丸井がメテオラとハウンドを持っており、三人が揃えばかなりの効果力を発揮する。

 

 

「鈴鳴は最後に一点を取ったのは流石ですね。堤先輩を狙ったのは、最初から日佐人くんを狙っていたら避けられる可能性が高かったからでしょう。」

 

「強いて言うなら、別役隊員が一発も撃たなかったのは少しもったいなかったですね。早川を落としたのが鈴鳴だったら、もう少し結果が違っていたかもしれません。」

 

 

 

「鈴鳴の作戦室では、太一が泣きながら謝り、来馬が慰めていた。

 

 

「1人も倒せなくて...すいません...」

 

「太一が謝ることないよ。あそこで指示をミスした僕の責任だ。太一は十分働いてくれたよ。」

 

「でも、一発も撃ってないっす...」

 

 

そう言う太一に、来馬はいいかい、と話しかける。

 

 

「何も狙撃して敵を倒すだけがスナイパーの役目じゃない。相手の位置を探って、情報を手に入れてきてくれる。それだけでも僕らはすごい助かるんだ。これからも頼んだよ、太一。」

 

 

そこで東の総評が聞こえてきた。

 

 

「別役隊員は今回は点を取れませんでしたが、それ以外の面ではしっかり隊の役にたっているので、めげずに頑張って欲しいですね。」

 

「来馬先輩、東さん...!」

 

「ごめんね鋼。鋼を活かしきれなかった。」

 

 

来馬が村上にそう謝罪するが、村上はいいえ、と言いながら

 

 

「最後スナイパーの動きを頭に入れていなかった自分のミスです。俺らは来馬隊なんですから、来馬先輩が言ったことを全力でやります。先輩の作戦が正解だって思わせるため、に俺も太一も今も一生懸命やるので、もっと自分に自信を持ってください。」

 

 

村上がそう言うと、今と太一も頷いた。

 

 

「みんな...ありがとう。僕はいい仲間を持ったな」

 

 

このチームはもっと上に行ける。僕が必ずこのチームを上まで連れて行く。来馬はそう決心した。

 

 

 

 

 

 

 

「今回諏訪隊は、颯太郎を上手く使ったことによって7点という大量得点でしたが、次からはそうはいきません。」

 

 

東がそう言うと、時枝が話を続ける。

 

 

「次の対戦相手はもちろん警戒してきますし、ポイント的にも狙われる立場になります。上位に上がる可能性もありますが、上位だと他に比べて落としやすいコマ、中位だと優先的に狙われるので、諏訪隊はどちらでも次の戦いが正念場になりそうです。

 

 

現在7位の香取隊は初期ポイントが9点のため、香取隊の結果次第では諏訪隊が上位に入る可能性もある。

 

 

「以上でB級ランク戦ROUND 1昼の部を終わります。今回の解説は、東先輩と時枝先輩でした。お二人ともありがとう御座いました。」

 

「「ありがとうございました。」」

 

「では、皆さんお疲れさまでした!」

 

 

桜子がそう言い、新生諏訪隊の初戦は大勝利で幕を下ろした。




諏訪隊を上位に上げるか、中位のトップにして原作通り修達と戦わせるかすごい悩んでます。意見、感想、誤字脱字が有ればお願いします。


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戦いが終わり...

「よっしゃあー!大勝利だぜ!」

 

 

現在諏訪隊のメンバーは作戦室を出て、ボーダー本部の通路を歩いていた。

 

 

「じゃあ今日は俺が奢ってやるか」

 

「やったー。私焼きうどんがいいー。」

 

「おサノ先輩ちょっとは遠慮しないと...」

 

 

颯太郎がそう言って小佐野が喜んでいると

 

 

「颯太郎さん、お久しぶりです!」

 

「颯太郎さーん。帰って来てるなら教えてくださいよー」

 

 

そう言って嵐山隊の5人がやって来た。

 

まず声をかけたのが、隊長の嵐山准。裏表のない穏やかな性格と爽やかな風貌で、市民からの人気が高い。隊長としての能力も高く、ボーダーの広報部隊でありながらA級5位のチームを率いる。

 

次に声をかけたのは、スナイパーの佐鳥賢。ボーダーの新人研修教官も務めるスナイパーで、狙撃銃2丁を使う『ツイン狙撃』を唯一使う。

 

 

「おーお前ら久しぶりだなー。時枝は俺らの試合の解説もしてくれたんだろ?ありがとな。」

 

「いえ、東先輩ほど上手くは出来ないので。」

 

「そんなことないだろうに。綾辻も久しぶりだなー。元気だったか?」

 

「お久しぶりです。親戚の叔父さん感がすごいですよ?」

 

「久しぶりだから多少は許してくれ。で、そっちの子は...」

 

「初めまして。木虎藍です。」

 

 

次に挨拶したのがオペレーターの綾辻遥。隊員4人を難なくサポートする優等生で、その容姿からボーダー内にもファンが多い。

 

最後はオールラウンダーの木虎藍。ボーダー入隊時は、トリオン量が平均値を下回っていたが、技を磨き戦術を工夫することで、A級隊員にまでなった努力家である。

 

 

「こちらこそ初めまして。諏訪隊スナイパーの諏訪颯太郎だ。洸太郎の一個上の兄で、今シーズンから復帰になった。よろしくな。」

 

木虎も返事をすると、嵐山が話を振る。

 

 

「次の対戦相手がまだ分からないですし、夜の部見て行きませんか?」

 

「そうっすよー。俺らにも飯奢ってくださいよー。」

 

「話聞いてたのかよ佐鳥...。まあ確かに時間もあるし、見て行くのもいいかもな。お前らはどうする?」

 

 

そう言い諏訪達に声をかけると、全員がOKだったので、夜の部までは各々過ごして、試合を観戦してから飯に行くことになった。

 

 

「じゃあそういうことで。またな」

 

 

そう言って諏訪隊が去って行くと、木虎が嵐山に尋ねた。

 

 

「颯太郎先輩ってどんな人なんですか?」

 

「あの人は色々と抜け目ないよ。なんたって東さんの弟子っていうのもそうだけど、サイドエフェクトもあるから。」

 

「抜け目ない、ですか...」

 

「一試合だけじゃあの人の凄さは中々分からないさ。」

 

 

そういうものですか。と言うと、嵐山がよしっと声を出した。

 

 

「さあ俺らは書類の整理をしようか。」

 

「「了解です」」

 

 

 

 

 

 

その夜...

 

 

 

 

 

「悪い、挨拶に回ってたら遅れちまった。」

 

 

そう言いながら、颯太郎は観戦席にいる嵐山達に声をかけた。

 

 

「まだ始まったばかりなので大丈夫ですよ。」

 

それなら良かったと言っていると、佐鳥がいないことに気付いた。

 

 

「あれ、佐鳥はいないのか?」

 

「佐鳥先輩なら下位の解説に行ってますよ。」

 

「そうなのか。ありがとな木虎」

 

いえ、と木虎が言うと、そういえば、と颯太郎が質問した。

 

 

「今回の試合はどの隊なんだ?」

 

「夜の部は、上位が影浦隊、弓場隊、王子隊、香取隊ですね。」

 

「この戦いに俺らが上位に上がれるかがかかってるから気になるな。」

 

 

ランク戦ではポイントが同じ場合は、前期の順位の高さで決まる。B級7位の香取隊は初期点で9点を持っているため、諏訪隊が上位に上がるためには、香取隊が4点、王子隊が2点、弓場隊が1点未満のいずれかをクリアすれば良いのである。

 

 

「上位は基本どの隊も2、3点くらいは取ってくるから、やっぱり上がるのは厳しいかもですね」

 

「あほ抜かせ!仮に今回上がれなくても、次で上がるわ!」

 

 

堤がうーんと唸り、諏訪がそれを一蹴していると、佐鳥が急いだ様子で帰って来た。

 

 

「あれ、解説に行ってたんじゃないのか?」

 

「もうこっちの試合終わったんで、急いでこっち来たんすよ」

 

「もう終わったのか?」

 

 

嵐山が疑問に思っていると、佐鳥が結果を報告する。

 

 

「そうなんすよー。玉狛が8点で勝ちまして。」

 

「8点ってすごいっすね」

 

 

日佐人がそう言うと、時枝があることに気づいた。

 

 

「てことは、もう中位だね」

 

「そうなるな。てことは俺らと当たる可能性もあるわけか。」

 

 

そこまで話し、目の前の試合に集中する。

 

 

 

 

 

そして暫くして、実況の声が響いた。

 

 

「ここで決着!B級ランク戦ROUND 1夜の部の結果は、4対4対3対2で、影浦隊と香取隊の勝利です!」

 

「こっちも終わったな。王子も足を落とされながらよくやったな」

 

 

颯太郎がそう言うと、諏訪が悔しそうに声を出し、堤が宥めていた。

 

 

「クッソー!ギリギリ中位じゃねーか!」

 

「まあまあ諏訪さん。次勝ったら上がるのはほぼ確定なんで、頑張りましょう。」

 

「これで次の相手が決まるな。お、早速連絡が来たぞ。洸太郎、見てみてくれ。」

 

 

諏訪がおう、と言いながら確認をする。

 

 

 

 

 

「次の相手は、11位の荒船隊と12位の玉狛第二だな。」

 

 

「玉狛か...久しぶりに顔でも出してみるか。」

 

 

 

 

諏訪がそう言うと、颯太郎がどこか楽しげな口調でそう呟いた。




玉狛と戦わせたかったので、こっちにしました。
更新が遅くなり申し訳ないです。これから遅くなることがあると思いますが、ご了承ください。


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玉狛と颯太郎

ー玉狛支部ー

 

 

「諏訪隊と荒船隊か...」

 

「どんな相手でも、まずは相手の事を調べんとな」

 

「もっとデータ持ってくるね」

 

 

話を切り出したのは、玉狛第二隊長でシューターの三雲修。三雲は他のボーダー隊員と比べて秀でた才能があるわけではないが、発想力があり、戦力差があってもその発想力で切り抜けられる力をもっている。

 

それに答えたのがアタッカーの空閑遊馬。ネイバーフッドから来たネイバーで、嘘を見抜くと言うサイドエフェクトをもっている。幼年時代から戦争を経験している空閑は、若干15歳ながら歴戦の兵並の戦闘経験を持つ。

 

スナイパーの雨取千佳は敵感知・気配を消す、と言うサイドエフェクトを持っていて、接近するネイバーの気配を感じとることが出来る。小さな体に眠る潜在能力は凄まじく、トリオン量の多さから、ネイバーに狙われている。

 

そうだな。と修が言うと、奥からオペレーターの宇佐美栞が入って来た。

 

 

オペレーターの宇佐美は、玉狛所属部隊を補佐する名オペレーターで、戦闘に於いては精密な情報解析、的確な行動指示を出す。

 

 

「おーがんばっとるかね?諸君」

 

「はい。今諏訪隊と荒船隊についてデータを見てた所です。」

 

「相手の戦い方は掴めた?」

 

 

宇佐美がそう聞くと、修がはい、と言ったので宇佐美は眼鏡をクイっと上げて見解を聞いた。

 

 

「荒船隊はスナイパー3人で、射程を活かした三方位から狙い撃ってきます。どうにかして近くしかないですね。諏訪隊の動き次第ですが...」

 

「うんうん。大体あってるね。じゃあ今度は諏訪隊は?」

 

「諏訪隊はアタッカーが1人、ガンナー2人の3人だったんですが...」

 

 

修がそこまで言うと、空閑が続きを言う。

 

 

「スナイパーが1人増えちゃったからな。」

 

「アタッカーがシールドで2人を援護して、ガンナーの2人が近いてドカドカ撃つ戦法がメインなのは変わらないと思うんですが、スナイパーが新しく加わったことで、近づくことが難しくなりました。

 

「スナイパーさえどうにか出来れば、近づいて来る相手だからやりやすいんだけどな」

 

「なるほどねー。でも颯太郎さんをどうにかするのは中々難しいね。」

 

 

それを聞いて修は頷いた。

 

 

「前回の試合でも一回も姿を見せずに2得点します。しかも今シーズンからなのでデータも少なくて...」

 

「それも踏まえてステージも選ばないとね」

 

 

そう言うと、入り口からある人物が入ってきた。

 

 

「おーうお前らしっかりやってるかー?」

 

「林藤支部長」

 

 

入ってきた人物は林藤匠。ネイバーとの協調を望む玉狛支部の支部長で、旧ボーダー創立時からの古株である。

 

 

「ボスがこの時間に帰って来るなんて珍しいね。」

 

「ああ。今日はお前らに会わせたい奴がいてな。おーい、入ってきていいぞ」

 

 

林藤がそう言うと、もう1人入ってきた。

 

 

「留学行く前もあんまり来れてなかったし、玉狛にくるのはかなり久しぶりだな。」

 

「あれ、この人って...」

 

「お、玉狛第二じゃないか。初めまして、俺は諏訪颯太郎。次の試合の相手だからよろしくな。」

 

 

颯太郎が挨拶すると、玉狛のメンツも揃って挨拶をした。

 

 

「颯太郎さんじゃーん!留学から帰って来ると時もそうだけど、来るなら一言言ってよー!」

 

「悪い悪い」

 

 

宇佐美が颯太郎に話しかけてるのを見て、修が宇佐美に尋ねた。

 

 

「宇佐美先輩は颯太郎先輩と面識があるんですか?」

 

「あるよー。颯太郎さんは私より早くボーダーに入ってるんだけど、私は本部所属だったから話す機会も多かったんだよね」

 

 

なるほど、と修が言うと、空閑は林藤に質問した。

 

 

「ボスがそうたろう先輩と俺らを会わせたいっていう理由は?」

 

「ああそのことか。何、深い意味はない。。お前らも今後防衛任務やらで一緒になることがあるかもだから、面識くらいは持っとけよってことさ。」

 

「そういえば、颯太郎先輩はどうしてスナイパーになったんですか?」

 

「俺か?狙撃が好きってのと、洸太郎がガンナーをやるって言ったからだな。今の洸太郎はしっかり隊長してるが、昔は危なっかしかったし、兄弟だし俺が支えてやらないとなって。」

 

 

空閑が、これが兄弟愛って奴だな。とキリッとしながら言っていると、颯太郎が林藤に声をかける。

 

 

「では林藤支部長、俺はこの辺で。」

 

「なんだもう行くのか。少しゆっくりしていきゃいいのに。」

 

「お心遣いありがたいんですが、この後作戦会議があるので失礼します。」

 

「そうか。たまにはうちの千佳のことも面倒見てやってくれ。」

 

「構いませんよ。じゃあ失礼します。」

 

 

そう言うと、颯太郎は玉狛支部を出て行った。

それを見送り中に戻ると、千佳は修がボーッとしていることに気づいた。

 

 

「どうしたの?修くん」

 

「いや...なんでもない。」

 

 

(なんだか不思議な雰囲気の人だったな...あれが東さんの1番弟子の颯太郎先輩か。油断出来ない人だ)

 

 

「修ー作戦立てるぞー。」

 

「ああ、今行く!」

 

 

そう言うと、空閑達の元へ急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのメガネの子、いい作戦を考えそうだったな。さあどんな作戦で来るのかな、今から楽しみだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、颯太郎と玉狛第二の出会いである。



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諏訪隊①

 

ーボーダー本部基地ラウンジー

 

 

 

「お、やっと来たか兄貴」

 

 

諏訪がそう言うと、颯太郎は悪い悪いと言いながら席に着いた。

 

 

「玉狛に挨拶に行ってたんだ」

 

「玉狛って次の対戦相手じゃーん」

 

「あの白いチビとメガネがいるとこか」

 

「諏訪さん達昨日の試合見てないんですか!?スナイパーの子がやばいんですよ!」

 

 

日佐人が驚きながらそう言うと、颯太郎が日佐人に尋ねた。

 

 

「一試合で8点取ったのは佐鳥から聞いたが、スナイパーがどうかしたのか?」

 

「見たほうがわかりやすいと思うんでこれ見てください!」

 

 

日佐人はそう言いながらスマホを取り出すと、試合映像を見せた。

 

 

「なんだこりゃ大砲じゃねーか!」

 

「白い子もやっぱり動きがいいですね」

 

「スナイパーのおちびちゃんは木崎の弟子らしいな」

 

 

颯太郎がそう言うと、諏訪が顔をしかめながら話した。

 

 

「緑川に8ー2のアタッカーと筋肉ゴリラの弟子の大砲と風間と引き分けたメガネか...どうすっかなー」

 

「この時はメガネくんはいなかったみたいだけど、やっぱり空閑くん中心で来ますかね?」

 

「大砲を連射なんかされたらたまったもんじゃないですね」

 

 

颯太郎は、そうだな、と言いながら声をかける。

 

 

「もし玉狛がそう言う展開に持ち込むなら、俺らは荒船と共闘しないとかもな」

 

「そうですね。今回は荒船くんもいるから俺らはなかなか厳しそうだ。」

 

「でも玉狛は大砲を温存するんじゃねーか?」

 

「どうしてそう思うんだ?」

 

 

颯太郎がそう返すと、諏訪はだってよーと続けた。

 

 

「大砲って一発撃つと敵に場所がバレバレになるだろ?スナイパーが4人も敵にいんのにそんなまねしねーだろ。」

 

「諏訪さんがこんなにまともなこと言うなんて珍しい。」

 

「おいこら堤どういうことだ!」

 

「いいぞーいけいけー」

 

「おサノ先輩煽っちゃダメですよ」

 

「まあ確かに珍しいかもだが、その意見は合ってると思うぞ。大砲はここぞって場面にとっておくはずだ。」

 

「今は玉狛のエースと荒船隊をどうするかですね」

 

「玉狛のメガネも忘れんなよ」

 

 

颯太郎がそう言うと、日佐人が疑問を呈した。

 

 

「メガネくんはそこまで警戒しなくてもいいんじゃないですか?トリオン量も多いとは言えませんし、他の2人と違って何か強みもあるわけでもないですし」

 

「確かにそうだが、メガネくんは決して甘く見ていい相手じゃないと思うぞ」

 

「どういうことだよ」

 

「メガネくんが活きるのは戦略面ってことさ。あんな個性強い2人を率いてるんだ、前回みたいに簡単な作戦ではないだろうな。例えば、相手の勝ち筋を限定する、とかな」

 

「勝ち筋を限定する...?」

 

 

日佐人が頭を悩ませていると、颯太郎が助け舟を出す。

 

 

「例えば、玉狛が市街地Cを選んできたとする。そうなると、うちと荒船隊はどう動くと思う?」

 

「市街地Cなんで、まずは全力で上を取りに行きます。俺らには颯太郎さんがいるから尚更。」

 

 

市街地Cは坂道と高低差のある住宅地で、スナイパーが高い位置を取ると有利なマップである。

 

 

「そうだな。しかし、玉狛からしたら俺らの動きが読めるってことだ。」

 

「あ...!そういうことか!」

 

「そういうことだ。玉狛に挨拶に行った時見えたんだが、俺らの個々のデータやランク戦のステージの書類で机が埋まってた。あの感じは相当作戦を練ってくるぞ。」

 

 

颯太郎が玉狛を訪れたのは挨拶が主な目的だったが、敵情視察も兼ねていた。

 

 

「わざと見せてきたってのも考えたが、初めてのランク戦だからそこまで気は回らないだろ。」

 

 

颯太郎がそう言うと、諏訪は笑顔を引きつらせながら言った。

 

 

「兄貴は仕事がはえーな...。敵じゃなくてほんと良かったぜ」

 

「勝負するからにはやっぱり勝たないとな。情報戦も大事だってことだ。」

 

「まあ、この話の続きは作戦室に戻ってからだな。」

 

「そうですね」

 

 

堤が諏訪の意見に同意すると、諏訪がもう一度声をかける。

 

 

 

 

「次勝ったら上位入りだ。やるぞ!」

 

「「「おー!」」」

 

 

 

 

 

ラウンジで大きな声を出してしまった4人を見て、颯太郎はめちゃくちゃ焦った。




更新遅れてしまいました。すいません。


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荒船隊①

誤字修正しました。


ー荒船隊作戦室ー

 

 

「諏訪隊と玉狛か...」

 

 

そう言い出したのは荒船隊隊長の荒船哲次。荒船隊は隊員全員がスナイパーで構成されており、抜群のコンビネーションで敵を仕留めていく。荒船は孤月で8000点を超える元アタッカーの異色のスナイパーで、将来的にはガンナーでもマスタークラスになり、パーフェクトオールラウンダーを量産するという大いなる野望を持っている。

 

 

「あの白いチビがいるところだな、玉狛って」

 

「訓練の時に見た大砲の女の子もいるすね」

 

 

それに応えたのは同じくスナイパーの穂刈篤と半崎義人。穂刈は隊ではサポート役を担うことが多く、敵への牽制や味方の援護など、自身の活躍よりもチームの為に最善を尽くして戦う。話し方が倒置法になることで有名である。

半崎は普段はダルさを隠さないが、狙撃の精密の精密さの評価は高い。戦場ではピンポイントで敵を射抜く腕利きである。

 

 

「しかし諏訪さんにお兄さんがいたとはな」

 

「しかもスナイパーなのも驚きすね。大砲の子もそうですし、最近スナイパー関係の情報が多くなってきてますし」

 

「来たか?スナイプ界に新しい波が」

 

 

穂刈がそう言うと、半崎がそう言えば、と言いながら話し始める。

 

 

「しかし、大砲で射線潰されまくられたらダルいすね」

 

「いや、大丈夫だろ」

 

 

荒船が答えると、半崎はどうしてですか?と尋ねた。

 

 

「射線が潰れて困るのは向こうも一緒だ。それに、1発撃ったら位置がバレバレだからな」

 

「颯太郎さんもいるからな、今回からは」

 

 

荒船と穂刈がそう言うと、そうすね、と半崎が同意を示した所で、オペレーターの加賀美が入ってきた。加賀美は狙撃特化部隊を的確な状況報告で支え、美大へ進学予定で、試合の勝敗に応じて奇怪な人形を創作する。

 

 

「玉駒の三雲くんが風間さんと戦ってるデータ持ってきたよ」

 

「玉駒はデータが少ないから助かるな」

 

「空閑は緑川と8ー2で勝ったらしいすね」

 

「仕留めないとな、接近される前に」

 

 

ここで荒船がだが、と1度会話を切り諏訪隊の話をする。

 

 

「颯太郎さんのデータもあまりないが、まだ昔のランク戦の映像が残っていうだけマシな。」

 

「前回のランク戦の映像とかも見ると、技術が凄いすね」

 

「東さんの弟子らしいから中々の強敵だな。加賀美、あるデータは全部出しといてくれ。」

 

「了解」

 

 

加賀美が返事をすると、荒船は、顎に手を当てながら呟いた。

 

 

「あとは、玉狛がどこを選んでくるかだな。」

 

「やることは変わらないな、どこを選ばれても。」

 

「念のため颯太郎さんだけじゃなくて、玉狛のスナイパーにも注意しろよ。」

 

 

そこで荒船が隊員に声をかける。

 

 

「諏訪隊はスナイパーが入ったことで戦略の幅が大いに広がった。だが無理に颯太郎さんを狙わなくていい。」

 

「颯太郎先輩をフリーにさせたらまずくないすか?」

 

 

半崎がそう尋ねると、荒船が答えた。

 

 

「確かに自由に動かれちゃたまったもんじゃないが、それは玉狛も同じだ。今回ステージは玉狛が選んでくるから颯太郎さんの対策はしてくるだろう。俺らはその中で三雲みたいな浮いたコマを狙えばいい。」

 

「なるほど、確かにそうすね」

 

 

半崎がそう言った所で、荒船が帽子を深く被り直し、広角を上げて言った。

 

 

「敵のスナイパーには注意しろ。後はいつも通りだ。」

 

「「「了解」」」




更新遅れました。週一投稿くらいになるかもです。


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笹森日佐人①

諏訪颯太郎①

 

 

作戦会議を終えた颯太郎と洸太郎は、笹森ソロランク戦を見学しにきていた。

 

 

「やっぱり緑川相手に中々勝てないな...」

 

 

ブースから出てきた日佐人は、ふぅっと息を吐きながら出てきた。

 

 

「だが三本は取れてたじゃないか」

 

「でも玉狛の空閑は緑川に8ー2してるのに、三本しか取れないんじゃ...!」

 

 

颯太郎がそう言いながら声をかけると、日佐人は焦りを露わにした。

 

 

「そんな焦んなくてもいいじゃねーか。緑川なんであの年でA級のアタッカーやってんだ、負けて悔しがるのはいいことだが、あんま気負いすぎんなよ。」

 

「はい...」

 

「確かに空閑や緑川に真正面から挑んだら厳しいかもしれないが、相手の裏をかけれ勝てない相手じゃないぞ。」

 

「相手の裏をかく、ですか?」

 

 

そうだ。と言いながら颯太郎は頷き、話を続けた。

 

 

「日佐人は確かまだトリガーに余裕があったよな?」

 

「メインとサブに1つずつ空きがありますけど、俺はトリオン少ない方なんで新しいトリガーを入れるのは厳しいです。」

 

「そうだぜ兄貴。今のまま挑んでいいんじゃねーか?」

 

「いや、今のままだと厳しくなるだろうな。今回は勝てるかもしれないが、Round3以降が難しくなる。」

 

 

どうゆうことですか?と日佐人が聞いた時、1人の少年が声をかけてきた。

 

 

「あ、諏訪さんだ!やっほー」

 

「てめーもっと先輩を敬いやがれ!」

 

 

諏訪がそう言い、軽く首を絞める。

 

 

「うちの日佐人の相手してくれてありがとな。おっと挨拶が遅れたな、俺は諏訪颯太郎だ。よろしくな」

 

「全然大丈夫だよー。今更だけど、緑川駿だよ。こっちこそよろしくね!」

 

 

緑川は中学生ながらもA級4位の草壁隊のアタッカーで、両手にスコーピオンを持ち、複雑な動きに対応できる技術とセンスをもつ。グラスホッパーを張り巡らし、空中を飛び回るトリッキーな動きで相手を翻弄する。

 

 

「そういえば、なんで急に俺とランク戦やろうと思ったの?」

 

「それは緑川が空閑と戦い方が似てるなって思ったからだよ。緑川から見て、俺はどうだった?」

 

「うーん、攻撃も防御も出来るし、機動力もそれなりにあるんだけど、突出したところがないからそこをどうにかしたほうがいいかもね。」

 

 

日佐人はなるほど、と言いながら考えている間に、緑川は総太郎に声をかけた。

 

 

「颯太郎さんはどうして隊長やってないの?諏訪さんのお兄ちゃんなんだし、普通なら颯太郎さんがやると思うけど。」

 

「隊長なら洸太郎のほうが向いてるさ。確かに戦術を組み立てるのは俺の仕事だが、あいつには俺が持ってない人望がたくさんある。それに、影から支えるってほうがかっこいいだろ?」

 

 

そう言い、颯太郎はにかっと笑うと、諏訪が声をかけた。

 

 

「おい、なんの話してんだよ。」

 

「いや、なんでもないさ。」

 

「諏訪さんの弱点について話してたんだよー。」

 

「まじか!教えろよ!」

 

 

緑川が悪戯っぽく言うと、諏訪が緑川に詰め寄った。

 

 

「えーどうしよっかなー。」

 

「クソ!兄貴、教えてくれよ!」

 

「まあまあ落ち着けよ。因みに緑川が話す前にお前がきたから俺は聞いてないぞ。」

 

「え、颯太郎さんちょ...」

 

「緑川ー!さっさと吐けー!」

 

「ちょ痛い痛い痛い!日佐人くんも考えこんでないで助けて!」

 

 

日佐人は考えこんでいて、諏訪達の様子に気づいていなかった。

 

 

「え?諏訪さんあんまり強くしちゃダメですよ。」

 

「わーってらい!」

 

「え、もっと強く止めてよ!ぎゃーーーー!」

 

 

諏訪達が騒いでいるのを颯太郎は少し離れて見守っていた。

 

 

 

(頑張れ日佐人。次の戦いはお前が鍵を握ってるぞ。)

 

 

 

そう心で言いながら、颯太郎は諏訪達の元へ近づいていった。

 

 

 

 

 

そして...

 

 

 

 

2月5日(水)

 

 

B級ランク戦Round2 開幕




次回からランク戦RAUNNDO 2です。


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ROUND 2
B級ランク戦RAUNNDO2①


 

「さあB級ランク戦Round2もまもなく開幕!実況は本日もスケジュールが上手いこと空いた私、武富桜子が務めさせて頂きます!」

 

 

解説席で実況の桜子が挨拶をすると、解説の2人を紹介する。

 

 

「今回の解説は、二宮隊の犬飼隊員と前回に引き続き東隊長にお越しいただきました!」

 

「「どうぞよろしく」」

 

 

2人が返事をした所で、桜子はさて、と話し始めた。

 

 

「今回はB級8位の諏訪隊、11位の荒船隊、13位の玉狛第二の試合ですが、お二人はこの試合をどう見ますか?」

 

「そうだなー。やっぱり玉狛が気になるな。前の試合も完封で8点取ってるし、なんせ大砲と空閑がいるからな。」

 

 

そう話すのは二宮隊のガンナーの犬飼澄晴。マスタークラスのガンナーで、二宮隊のバランサーを担っている。

 

 

「諏訪隊も侮れませんよ。前回の試合で玉狛には及びませんが7点取っています。勢いは負けていません。」

 

「そうなってくると荒船隊は今回は厳しい戦いになりますか?」

 

「そうとは限りません。荒船隊は全員がスナイパーなのでハマればかなり強力です。玉狛が選ぶマップにもよりますが、勝つ可能性は十分あると思います。」

 

 

東がそう言った所で、スクリーンにマップが映し出される。

 

 

「さあステージが決定されました!玉狛第二が選んだステージは...市街地C!坂道と高低差のある住宅地ですね!」

 

 

桜子がそう言うと、東と犬飼は驚いた、表情をした。

 

 

「これはスナイパー有利なステージに見えますが、お二人はどう思いますか?」

 

「...スナイパー有利ですね。道路を挟んで階段状の宅地が斜面に沿って続く地形です。登るにはどこかで道路を横切る必要があるので、スナイパーが高い位置を取るとかなり有利です。今回は荒船隊がいるのでこのステージは避けると思っていたのですが...」

 

「下からは建物が邪魔で身を隠しながら相手を狙うのが難しいんだよね。射程がないならなおさら。」

 

「玉狛にも超強力なスナイパーがいます。高台を取れればあるいは...という作戦でしょうか?」

 

 

桜子がそう聞くと、東は唸りながら答えた。

 

 

「うーんどうだろう...スナイパーの熟練度が違いますから、普通にやれば分は悪いと思いますね。」

 

「となると荒船隊有利で進んで行くと思いますか?」

 

「そうとも限らないよ。玉狛は敢えてこのステージを選んでるだろうし、何か作戦があるだろうけど、諏訪隊はしんどいかなー。颯太郎さんが合流してまだ2試合目だし。」

 

 

 

 

ー諏訪隊作戦室ー

 

 

「はあ⁉︎市街地C⁉︎クソマップじゃねーか!大人しくAかBにしとけよ!」

 

「こりゃ中々きつい...」

 

「颯太郎さんもいるから大丈夫じゃないですか?」

 

 

日佐人がそう言うと、颯太郎がいや、と言いながら答えた。

 

 

「今回は荒船隊がいるから油断できないぞ。それに相手も俺への対策はしてきてる筈だ。前回みたいに上手くいくとは思はないほうが良いな。」

 

「てことは日佐人の新技が決まりやすいじゃーん」

 

「そうだぜ日佐人、お前の新技がありゃ今回も楽勝だぜ!」

 

「諏訪さん...はい!しっかり決めます!」

 

 

日佐人がやる気に満ち溢れた声でそう言うと、諏訪が話し始める。

 

 

「よしその調子だ!ここで勝ちゃ今度こそ上位入りだ!お前らやるぞ!」

 

「「「おー!」」」

 

 

 

 

ー荒船隊作戦室ー

 

 

「市街地C...⁉︎」

 

 

荒船が驚きを隠せないでいると、オペレーターの加賀美が声をかける。

 

 

「スナイパー有利マップじゃん。なんでここ選んだんだろ?」

 

「スナイパー初めてなんじゃないすか?」

 

「助かるな、俺たちにとっては。」

 

 

半崎と穂刈がそう言い、荒船がそうだな、と言い同意を示す。

 

 

「前にも言ったが、一応玉狛のスナイパーと颯太郎さんには注意しろよ。あとはいつも通りだ。」

 

 

 

 

ー玉狛第二作戦室ー

 

 

作戦室では、RAUNNDO1の時には間に合わなかった隊服をメンバーが着たのを見て、オペレーターの宇佐美が修に声をかけていた。

 

 

「修くん、チーム戦デビューの準備はOK?」

 

 

宇佐美の問いかけに修は緊張した様子で答えると、空閑と千佳がそんな修に話しかける。

 

 

「あれこれ考えすぎて逆に混乱してきましたよ。」

 

「いっぱい調べて作戦立てたもん。きっと大丈夫だよ。」

 

「心配するなって。」

 

 

そうだな、と答えた所で宇佐美が全員を集めた。

 

 

「負けても死ぬわけじゃないから、自分たちが考えたことをしっかりやっといで。」

 

「「はい!」」「任せて栞ちゃん」

 

「よし...行こう!」

 

 

 

 

『B級ランク戦転送開始』

 

 

 

「さあ転送完了!各隊員は一定以上の距離をおいて、ランダムな地点からのスタートになります!さあ、B級ランク戦Round2スタートです!」

 

 

桜子がそう叫び、Round2が始まった。



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ROUND2②

「さあ各部隊が転送されました!各隊員は一定の距離をとってランダムに転送されます!まずは荒船隊の3人と諏訪隊の颯太郎先輩、そして玉狛の雨鳥隊員がバッグワームを起動!レーダー上から姿を消しました!半崎隊員が良い位置に転送されたか!」

 

「このステージは高台をスナイパーが取れればかなり有利なので、は積極的に上を狙っていきたいですね。」

 

「パッと見た感じ、荒船隊が良い感じに転送されてるなー。穂刈はかなり遠いけど、半崎が高台に1番近いし、荒船もまあまあ近いからスナイパー2人が上を取れればかなり有利に進められる。」

 

 

桜子が初動を伝えて、東と犬飼が補足を入れて行く。

 

 

「お二人が仰ったように、半崎隊員と荒船隊長は真っ直ぐ高台を目指します!穂刈隊員は敵を警戒して動かない!諏訪隊は合流を優先してから。上を目指します!」

 

 

東の言う通りスナイパーは一斉に上を目指して行くが、上に行かない者もいた。

 

 

「おや、玉狛は合流を優先させるようですね。颯太郎隊員も合流に向かっていないように見えますが...」

 

「何か狙いがあるのかもしれないね」

 

 

犬飼がそう言っている時、東は1人考え事をしていた。

 

 

(颯太郎、留学で腕が鈍ってないって所を見せてくれよ)

 

 

 

 

「諏訪さん、この後どうしますか?」

 

 

集合を目指す諏訪隊は、日佐人の発言を皮切りに作戦を確認する。

 

 

「まずは敵の位置だな。兄貴、敵は今どんな感じだ?」

 

「お前の南側にポカリがいるな。その奥に玉狛の空閑がいるぞ。後は分からないが、大地の北東方向に写ってるのが三雲だな。」

 

「じゃあ、俺は三雲くんを狙いますかね。」

 

「つつみん、あんまり突っ込み過ぎないでよー」

 

「了解」

 

 

堤の言う通り、修はこの中で1番狙いやすい駒なので、既に合流している日佐人と諏訪との合流より、修を狙うことになった。

 

 

「よし日佐人、俺らはスナイパーを狙うぞ」

 

「了解です」

 

「兄貴はどうする?」

 

「俺は隠密に徹する。サイドエフェクトで敵の位置を探しつつ、狙える時は狙うよ。」

 

「わかった。よし、いくぞ!」

 

 

 

 

「くそ、転送位置が悪すぎる...!」

 

 

修はそう言いながら、歯を食いしめ物陰に隠れていた。

 

 

「空閑!合流は出来そうか?」

 

「グラスホッパーを使えば行けなくもないけど、もうすぐスナイパーは上を取るだろうから、ダメージは受けるかもな。」

 

(空閑と合流が厳しいなら、僕1人で戦わなくちゃいけない...どうする...)

 

修は少し考え、指示を出す。

 

 

「空閑!お前は敵が高台をとる前にバックワームを使ってなるべくこっちに向かってくれ!ただし、無茶はダメだ。」

 

「了解」

 

「千佳は僕が合図を出したら、指示した場所を撃ってくれ!」

 

「うん、わかった」

 

(転送位置は最低。だけど、まだやれることは沢山ある。僕は落とされても、チームか勝てればそれでいい。やるしかない...!)

 

 

修は覚悟を決めると、移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

「高台は取りました。」

 

「よくやった。俺も今狙撃ポイントに着いた。穂刈は厳しいか?」

 

 

荒船は穂刈に聞くと、穂刈はハア、とため息をつき答えた。

 

 

「悪すぎたな、転送位置が。鉢合わせするな、上を目指したら。」

 

「そうか、分かった。2人高台を取れたなら合格点だな。穂刈は隙を見て、登れそうならこっちに来い。」

 

「了解」

 

 

そう穂刈が答えると、半崎が焦った様子で声を上げた。

 

 

「玉狛の三雲が出てきました!」

 

「なに?何か狙いがあるのか...?いや、あいつ1人じゃなにもないか。よし、2人で狙うぞ」

 

「了解」

 

 

 

 

 

「おーっとー!玉狛の三雲隊長が出てきました!犬飼先輩はどう見ますか?」

 

 

そうだなー、と言いながら犬飼はニコニコしながら答えた。

 

 

「これは多分釣りじゃないかな。」

 

「釣り、ですか?」

 

 

そ、と言い話を続ける。

 

 

「玉狛は合流が難しいし、メガネ君1人じゃ点を点を取りにくい。だから敢えて荒船隊に撃たせることで、少しでも隊の勝率を上げようとしてるんだと思うな。」

 

「なるほどー!犬飼先輩の言う通り、荒船隊は三雲隊長狙いか!」

 

 

 

 

「く...!」

 

 

荒船隊2人の攻撃を受け、右腕が飛ばされてしまっていた。

 

 

「宇佐美先輩!敵の位置は分かりましたか?」

 

「バッチリだよ、修くん。千佳ちゃんに位置情報を送るね。」

 

「千佳、その場所を撃つんだ!」

 

「了解!」

 

 

千佳はそう言うと、アイビスを構え、荒船と半崎がいる地形めがけて発砲した。

 

凄まじい音を立てながら、千佳の砲撃は荒船達目掛けて途中の建物を破壊しながら進んでいった。

 

 

「!半崎跳び降りろ!」

 

「え、まじか...!」

 

 

荒船と半崎は砲撃にいち早く気付き、建物から飛び降りることで、なんとか回避することが出来た。

 

 

「くそ、馬鹿みたいな威力しやがって...。仕方ない、狙撃ポイントを変えるぞ。」

 

「了解」

 

 

 

 

「よし、荒船隊が移動した。空閑!今のうちにこっちに来い!」

 

「OK修」

 

 

 

 

 

 

「諏訪さん、大砲が!」

 

 

堤は修に攻撃するために近づいていたが、千佳の砲撃で動きが止められていた。

 

 

「落ち着け堤。メガネは見えてるか?」

 

 

堤が慌てて諏訪に報告するが、諏訪は落ち着いた様子で状況を確認する。

 

 

「はい、でもレーダーに写ってる俺を警戒してるのか、あんまり動いてません。」

 

 

堤がそう言うと、今度は颯太郎が入ってきた。

 

 

「空閑は今堤の方に向かって来てるぞ。レーダーに写ってないからバッグワームを起動してるな。」

 

「え、颯太郎さんって玉狛の空閑くんにあったことありましたっけ?」

 

 

颯太郎のサイドエフェクト『強化嗅覚』は匂いで相手の動きが分かるが、相手の匂い自体を知らないと判断できないのである。

 

 

「前玉狛に挨拶に行った時にな。あの時に3人とも覚えた。」

 

 

まさか...と諏訪が言うと、颯太郎はああ、もちろんそのために行った、と笑いながら言う。

 

「あと、日佐人達の崖の下にポカリがいるから気をつけろよ。さて洸太郎、どうする?」

 

 

颯太郎がそう言うと、諏訪は少し考え、隊員に指示を出す。

 

 

「堤は空閑が着く前に三雲を片付けろ。荒船の狙撃が復活したら無理せず引け。」

 

「了解」

 

「日佐人は玉狛のチビをやれ。相手はお前の新技を知らない。しっかり決めてこいよ。兄貴、援護してやってくれ。俺はポカリを倒すまでは日佐人と一緒に行って、その後荒船たちを狙いに行く。」

 

「了解!」「分かった。」

 

 

大砲には全員注意しろよ、最後にいい、諏訪が合図を出す。

 

 

「よし、作戦開始だ!」

 

 

諏訪の合図を皮切りに、一斉に動き出す諏訪隊。その中で日佐人は、自分に言い聞かせた。

 

 

(サシでやったら勝てないけど、俺には新技がある。絶対勝つんだ...!)

 

 

日佐人はそう自分に言い聞かせて、諏訪と一緒に走って行った。




犬飼の口調が分からなくなってしまった。


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ROUND2 ③

誤字報告ありがとうございます。修正しました。


「さあB級ランク戦RAUNNDO2も序盤が終了!各部隊態勢を整えていよいよ戦闘が始まるか!解説の犬飼先輩と東先輩、改めてよろしくお願いします!」

 

「「どうぞよろしく」」

 

 

さて、と桜子が現在の状況を説明する。

 

 

「未だベイルアウトした隊員は0ですが、戦闘が起きそうな展開です!転送位置的には玉狛が不利かと思いきや、砲撃で荒船隊を崩すことで三雲隊長と空閑隊員が合流を目指す!荒船隊は砲撃を警戒して移動開始!諏訪隊は分断して敵を狙う!ここまでの動きを解説のお二人はどう見ますか?」

 

「そうですね。荒船隊は荒船と半崎が高台を取れたのでそのまま荒船隊有利で進むと思いましたが、玉狛の雨取隊員が横から砲撃で荒船隊を高台から下ろせたのが大きいですね。」

 

 

東がそう言うと、犬飼もそれに続くように話し始めた。

 

 

「これで玉狛はメガネくんと空閑くんが合流しやすくなった。それに今なら荒船隊が浮いてるから点も取りやすい。合流出来れば玉狛有利で進むと思うよ。」

 

「なるほどー!諏訪隊はどうですか?」

 

「諏訪隊には今の所大きな動きはないですね。何か狙いがあるのか、今後の動きに注目です」

 

 

東達の解説を聞いた所で、桜子は再び実況を始める。

 

 

「さあここから各部隊どのように動いていくのか、注目です!」

 

 

 

 

 

 

「空閑、あとどのくらいで合流出来そうだ?」

 

 

修はスナイパーの斜線を切りつつ、ゆっくり合流ポイントに向かっていた。

 

 

「もうそんなかからんな。このまま何もなければだけど。あ...」

 

「どうした?」

 

 

優真はバッグワームを付けて移動している穂刈を発見した。

 

 

「荒船隊の穂刈先輩を見っけた。合流する前に仕掛けていい?」

 

 

優真もバッグワームを起動しているため、穂刈は気づいていなかった。

 

 

(お互いにバッグワームを起動してるから気づいているのは空閑だけ...)

 

 

「よし、穂刈先輩を倒してから合流だ!」

 

「了解」

 

 

そう言うと、優真はバッグワームを解除して高速で接近して行った。

 

 

 

「穂刈くん!東側から誰か来てる!」

 

「おいおい、まじかよ」

 

 

優真がバッグワームを解除したため、接近に気づいた加賀美が穂刈に知らせる。

 

 

「やっぱりきついか、スナイパーが上を取れないのは。」

 

 

穂刈がそう言いライトニングに切り替えると、後ろに下がりながら構える。

 

 

(でも何でバッグワームを解除したんだ?)

 

 

通常奇襲する時はバッグワームを解除せずに接近して、気づかれる前に攻撃するのだか、優真は敢えてバッグワームを解除した。

 

 

「何かサブトリガーに仕掛けがあんだろうな」

 

 

しかしそれが分かった所で穂刈には出来る事はなかった。こりゃ俺死んだな、と心の内で思うと、穂刈はライトニングを優真に向けた。

 

 

「少しでも削ってから落ちねーとな、流石に。」

 

 

穂刈は弾速の早いライトニングを連射するが、優真の反応速度があればシールドが間に合う。そのまま穂刈の懐めがけて一気に肉薄した。

 

 

入った、と思ったその瞬間、優真は何か悪い予感がした。幼い頃から本物の戦争をしてきた優真は、戦闘において勘が良かった。これはまずいと直感的に感じ取った優真は、左手でグラスホッパーを出し、そのまま触ることで横に回避しようとした。

 

 

 

 

その瞬間

 

 

 

 

『ドンッ、』と大きな音がすると共に、穂刈の胸を貫き、優真の右手に掠った。

 

 

 

『戦闘体活動限界、ベイルアウト』

 

 

 

穂刈のベイルアウトを見送った優真は、先程狙撃が来た方向を見ると、そこにはイーグレットを肩に担ぎ、ニヤっと不敵に笑っている颯太郎の姿が見えた。

 

 

 

 

「ここで荒船隊の穂刈隊員がベイルアウト!空閑隊員が1点を取るかと思ったら、諏訪隊のスナイパー諏訪颯太郎隊員が横取り!先制点は諏訪隊に入ります!」

 

「今のは穂刈、空閑両隊員を狙っていましたね。」

 

 

東がそう言うと、犬飼が感嘆したような声を出して続いた。

 

 

「今のは狙撃も上手かったけど、避けた玉狛の空閑くんも凄いね。もうすぐ獲物を仕留めるって時にすぐ回避に移れるってのは難しいから。」

 

 

2人の解説を聞いた桜子は、では、と言い、質問をする。

 

 

「1点取った諏訪隊が有利に進むと思いますか?」

 

「そうとも限りません。諏訪隊は4人全員生き残っているとはいえ、スナイパーの位置が割れました。スナイパーさえ落とせたら、3部隊均衡に持って行くことが出来ると思います。」

 

 

 

 

「修、すまん点取れなかった。」

 

「そんな気にしなくて良い。でも誰に横取りされたんだ?」

 

「諏訪隊の颯太郎先輩だな。」

 

「...!そうか...仕方ない。空閑は颯太郎先輩の位置が分かっているうちに狙ってくれ。」

 

「オサムはどうするんだ?」

 

「僕は空閑が来るまで何とか持ちこたえる。」

 

 

(諏訪隊は4人編成、スナイパーを落とせれば主導権を握れる。後は、合流してる諏訪先輩と笹森先輩をどうにか分散出来れば...)

 

 

修が考えていると、宇佐美が敵の接近を知らせる。

 

 

「修くん、後ろから敵が近づいてる!」

 

「な...」

 

 

修は咄嗟にレイガストのシールドモードを起動したが、その瞬間レイガストが大きく削られた。

 

 

「こちら堤、メガネくんを捕捉しました!」

 

「く...アステロイド!」

 

 

修は堤のショットガンを受けきると、アステロイドで牽制する。しかし堤はそれを避けると、再びショットガンで修を追い込む。

 

いくらシールドモードがあると言っても、修はトリオン量も少なく、ショットガンの高威力の攻撃もあり、かなり押されていた。

 

 

(このままだといずれレイガストが破られる。どうにか空閑が来るまで堪えないと...)

 

 

 

 

 

 

「兄貴、そっちはどうだ?」

 

「今空閑から全力で逃げてる所だ。かなり距離があったけど逃げ切るのは難しいかもな。」

 

 

諏訪隊は、颯太郎が穂刈と空閑を両方倒して、諏訪と日佐人を援護するはずだったのだが、空閑が狙撃を交わしたことによって作戦の変更を余儀なくされていた。

 

 

「どうする?洸太郎」

 

「...兄貴は堤のとこまで空閑を引っ張っていけるか?」

 

「お前のとこまでならなんとかいけるが、堤のとこってなると厳しいな。」

 

 

現在諏訪隊は、マップ中央よりやや上の位置に諏訪と日佐人。颯太郎はマップ左下で、堤はマップ右上にいる。空閑はグラスホッパーも持っているため、堤の所まで逃げ切るのはかなりかなり厳しい。

 

 

「よし、日佐人。お前は兄貴の援護に行ってやれ。堤はメガネを倒したらこっちに合流だ。」

 

「了解!」

 

「小佐野!兄貴の道案内頼んだぜ。」

 

「おっけー。颯太郎さん迷子になんないでねー。」

 

「そうならないために頼んだよ...」

 

「日佐人はこのまま俺と荒船狙うぞ。」

 

「了解です!」

 

「匂いで大まかな場所は分かったから位置データ送るよ。」

 

 

颯太郎のサイドエフェクトの『強化嗅覚』は、主にバッグワームやカメレオンを使っている敵を見つけるの優れている。全員がスナイパーの荒船隊には、その面ではかなり有利を取れる。

 

 

「さあ、行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

荒船隊の2人は、千佳に足場を崩されたため高台から下ろされてしまった。

 

 

「これからどうします?」

 

 

半崎が荒船に尋ねると、荒船は直ぐに答えた。

 

 

「お前はもう1回上に行って、援護してくれ。恐らくもう颯太郎さんのサイドエフェクトで俺らの位置さバレてるだろうが、颯太郎さんは今空閑から逃げるのに手一杯のはずだ。堤はメガネと戦ってるからこっちには来れない。となると来るのは諏訪さんか日佐人だ。どっちかは颯太郎さんの援護に行くだろうから、俺らはこっちに来た方を倒すぞ。」

 

「了解」

 

「さあ行くぞ。」

 

 

 

 

 

各部隊が激突する。




遅くなり申し訳ないです。戦闘を書くのはやっぱり難しい。


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ROUND2④

現在颯太郎は、空閑から逃げつつ堤と合流すべく、高台を登っていた。

走りながらレーダーを確認すると、あることに気付いた。

 

 

「ん?思ったより近づかれてる...グラスホッパーか。」

 

 

颯太郎の考えた通り、空閑はグラスホッパーを使い急激に距離を詰めていた。

 

 

「洸太郎、空閑はグラスホッパーを持ってるぞ。」

 

「グラスホッパー⁉︎新しいトリガー持ってきやがったか...。日佐人は後どのくらいで合流出来そうだ?」

 

「あと少しで着きます。でも、空閑にグラスホッパーがあるなら、空閑の方が数秒早いと思います。」

 

 

そうか...と諏訪は言うと、考えこんでしまった。スナイパーは寄られてはほぼ何も出来ない。颯太郎のサイドエフェクトは逃げや索敵には使えるが、寄られたらただのスナイパーだ。接近戦で空閑を倒すのは、不可能に近かった。

 

 

「大丈夫だ洸太郎。俺もなるべく抵抗するし、日佐人と空閑が来る誤差の数秒は耐えてみせるさ。

 

「...わかったぜ。俺は今から荒船を抑える。堤はメガネに何もさせんなよ。」

 

「了解です。このままいけばもう直ぐ倒せますよ。」

 

「大砲には注意しろよ。」

 

「了解です。」

 

 

堤がそう言うと、諏訪は道路を横切って階段に向かっている荒船を見つけた。諏訪はすぐに荒船の前方目掛けてショットガンを打つ。

 

 

「よー荒船!上には行かさねーよ!」

 

 

荒船はち、と舌打ちをするとイーグレットから孤月に持ち替えた。

 

 

「まずは一点取るぞ、半崎。」

 

「了解っす」

 

 

 

 

 

 

 

「おっとー!荒船隊の荒船隊長と諏訪隊の諏訪隊長がここで合間見える!」

 

「普通この展開なら諏訪が有利ですが、荒船には半崎の援護射撃があるのでこれで五分ですね。今の距離で荒船1人だと諏訪に勝つのは厳しいので半崎は動けません。諏訪もそれを分かっていて、足止め目当てかと思います。」

 

東がそう言うと、犬飼があっと何かに気付いた。

 

「空閑くんが颯太郎さんにもう追いつくよ。」

 

画面には、屋根の上から颯太郎を見下ろす空閑の姿があった。

 

 

 

 

(もう追いつかれたか。思ったより早かったな。)

 

 

颯太郎がそう考えていると、空閑が颯太郎に襲いかかる。空閑はグラスホッパを足元に出すとそれを踏み、スコーピオン片手に颯太郎の懐目掛けて一気に接近した。それを颯太郎はバッグワームを解除しながら横に動き、ギリギリで避けると、空閑はすぐに地面を蹴り方向転換しもう一度斬りかかる。颯太郎は今度は避けずシールドで間一髪でガードすると、動きの止まった空閑を蹴り飛ばそうとするが、空閑がそれを後ろに下がり避ける。空閑は一旦距離を取ると、構えを崩さないまま颯太郎に声をかけた。

 

 

「中々やるね、颯太郎先輩。スナイパーの身のこなしじゃないんだけど?」

 

「これでもアタッカーとしてB級に上がってるからな。」

 

「なるほど、荒船さんみたいな感じか。」

 

「俺はアタッカーでマスタークラスになる前に転向したから、あいつの方がすげーよ。」

 

 

颯太郎が言い終わると、空閑がもう一度接近する。颯太郎は横に避けようとするが、空閑が読んでいた。空閑は仕留めようと右腕を振りかぶった瞬間、颯太郎は手に持っていたイーグレットをポイッと放った。颯太郎の予想外の行動に空閑は反応出来ずに当たった、その瞬間、家と家の間から日佐人が飛び出してきた。日佐人はバッグワームを解除すると、一気に接近。空閑の着地隙を見逃さなかった。孤月で空閑の右腕を落とした。

 

 

 

 

「おーっと!ここで諏訪隊の笹森隊員の奇襲!空閑隊員の右腕を切り落とした!」

 

「どんな人間でも着地は隙があります。その上で敢えて右腕を狙うことで確実に戦力を削りました。連携の取れた良い奇襲でしたね。」

 

東がそう解説すると、桜子が颯太郎のさっき見せた動きの話を振る。

 

「颯太郎先輩は先程イーグレットを投げるという、驚きの行動をしましたが、これについてはどうですか?」

 

「まさか投げるとは思わなかったなー。当たり前だけど武器を投げたら丸腰になるわけだからね。しかもタイミングが早いと普通にイーグレットを切られて自分も切られるし、遅いとイーグレットごと切られる。だからスナイパーは接近されたらガンナーみたいに戦って少しでもダメージを与えようとするんだけど、今回の颯太郎先輩の目的は一瞬でも隙を作ること。相手の頭にない動きで動きを止めたのは流石だね。」

 

 

 

 

 

空閑は腕を切られたが、すぐにグラスホッパーで距離を取る。その状況で修に連絡する。

 

「すまんオサム。腕一本落とされたし、もう少し時間がかかりそうだ。」

 

「そうか...わかった。」

 

修は今堤のフルアタックをなんとか凌いでいるが、レイガストもそろそろ限界で、修自体所々トリオンが漏れていた。

 

(どうする...空閑は片腕を失った上に合流も出来そうにない。しかも僕もあとどれだけ凌げるか分からない。なら...)

 

修はある作戦を閃いた。この作戦が最善手だと信じ指示を出す。

 

「空閑、今から言う作戦を聞いてくれ。」

 

 

 

 

「良い奇襲だ日佐人。」

 

「ありがとうございます、颯太郎さん。」

 

空閑が距離を取ってから、颯太郎と日佐人は無闇に追撃せず距離を保っていた。

 

「このまま空閑を抑えますか?」

 

「そうだな。なにも無ければだが、メガネ君は何かやってくるだろうからな。さて、どんな一手で来るか。」

 

 

 

 

 

「くそったれ、攻めきれねーな。」

 

同じ頃諏訪は、最初こそ壁に沿っていたため有利に進んでいたが、荒船に狭い階段に入られると、半崎の援護もあり中々攻められずにいた。

 

 

(まあ2人抑えられてると思えばいい方か。)

 

諏訪がショットガンを片手に構えながら考ええていると、急に爆音が響いた。荒船や諏訪がその方を向くと、自分たちの頭上をバカでかい光線が颯太郎達がいる方へ向かってとんで行っていた。それに驚いていると、もう1発今度は修と堤がいる方へ飛んで行った。そして、2発の大砲は、諏訪隊の3人がいる近くで大爆発を起こした。

 

 

「兄貴!日佐人!堤!」

 

 

諏訪隊のメンバーを玉狛の大砲が襲う。諏訪隊の運命は。



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ROUND2 ⑤

「くそったれ、やっぱりそう来るか」

 

千佳の砲撃の威力に弟と同じように悪態をつきながら、颯太郎と日佐人は何とか建物を壁にして生き残った。しかし、その隙を生むことが玉狛の狙いだった。空閑は砲撃をギリギリで避けると、すぐにグラスホッパーで戦場を離脱し、修と堤の場所へ飛んでいく。颯太郎がすぐにイーグレットを構えるも、既に建物の向こうへ消えていってしまった。いくら颯太郎でも、この状況で壁抜きショットを決めることは難しい。故に、颯太郎は銃口を下げた。

 

「あのメガネ中々やるじゃねーか」

 

颯太郎は不適に笑っていた。今度はこっちの番だ。と言っているかのように。

 

 

 

 

 

 

堤はショットガンを両手に構え、修に銃口を向けていた。

 

レイガストはもうヒビが入っており、修自身も被弾した所からトリオンが漏れ、あともう一回フルアタックすれば倒すことができるだろう。

 

堤はそう思って引き金に指をかけたその瞬間、砲撃が飛んできた。

 

砲撃は自分たちがいる場所とは少し離れた所に落ちたが、その衝撃は近くの建物を吹き飛ばしそうなくらいの威力で、堤は思わずそっちを見てしまった。

 

それが、修の狙いだと気付かずに。

 

 

(よし、今だ!)

 

修は大砲が飛んできて驚いている堤を見ると、すぐに堤の銃口から外れようとする。

 

しかし、堤もそれに気づき再び引き金を引こうとしたする。

 

すると修はスラスターを起動して、堤が打つ前に懐に入りそのまま突撃した。

 

突き飛ばされた堤に向かって、細かくしたアステロイドを放つ。

 

堤はフルアタックをしていたためガードが出来ない。

 

しかしこれで落ちるほど堤は弱くない。

 

堤は右手のショットガンでアステロイドの一部を打ち落とすと、そのまま横に倒れ込むように避ける。

 

しかし落としきれなかったアステロイドが諏訪の脇腹を抉る。

 

 

『警告、トリオン漏出甚大』

 

 

それを見た修はすかさずアステロイドをもう一度放つ。

 

しかし、堤は倒れ込んだ姿勢で左手のショットガンを修に向ける。

 

まさか相打ち覚悟か。そう思った修はアステロイドを撃ったあとすぐにレイガストを構える。

 

堤はそのままショットガンを放つと、堤の体にアステロイドが刺さった。

 

『戦闘体活動限界、ベイルアウト』

 

堤の体が光になって飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

「あーっとー!ここで諏訪隊の堤隊員がベイルアウト!玉狛第二の三雲隊長が劣勢から逆転勝利!これで諏訪隊と並びました!」

 

解説席では、桜子が興奮した様子で伝える。

 

「玉狛は雨鳥隊員の使い方が上手いですね。荒船隊に上を取られたときや、今みたいに追い込まれた状況で使うことで、相手に流れを持っていかせません。」

 

「さっきの場面で大砲を撃たなかったら、玉狛は空閑くんとメガネ君二人とも落とされる可能性が大きかった。その状況から空閑くんは離脱できて、メガネくんは一点取ったわけだから、良い判断だったね。」

 

東と犬飼がそう解説すると、桜子はなるほどーと言い、今度はこの後の戦いについて聞く。

 

「堤隊員が落とされたことによって三雲隊長と空閑隊員が合流しましたが、今後はどのような展開になると思いますか?」

「玉狛の雨取隊員の位置がバレてしまったので、近くにいる荒船隊の2人か諏訪のどちらかが取りに行きたいですが、諏訪は荒船達が邪魔で動けなく、荒船も半崎の援護射撃がなくなると諏訪に落とされます。もしかしたらこれも狙いだったのかもしれませんね。」

 

 

 

 

 

 

「くそ...!」

 

諏訪隊の作戦室に戻ってきた堤は悔しさをあらわにしていた。

 

普段堤は感情をあまり表に出すタイプではないが、今回は違った。

 

あと一歩の所まで追い詰めておきながら自分の反応が遅れたせいで逆に落とされてしまった。

 

自分の不甲斐なさに腹が立つ。

 

みくびっていたわけではないと思っていたが、心のどこかで油断していたのかもしれない。

 

しかし、終わってしまったことをいつまでも引きずるわけにはいかない。

 

自分は負けてもチームはまだ戦っているのだから。

 

 

堤は急いで起き上がり小佐野の元へ向かった。

 

「小佐野、あれを頼む!」

「おっけー」

 

小佐野がそう言うと、画面の一部をタッチし、あるものを起動した。

 

 

「スターマーカー起動!」

 

 

 

 

 

 

「お、スターマーカーが起動したぞ。堤が最後つけたか。」

 

「これで三雲の奇襲に対応出来ますね。」

 

日佐人の言うように、スターマーカーとはいわば発信器のようなもので、つけた相手の位置がバッグワームを起動していても分かるトリガーである。

 

「玉狛は洸太郎の方に向かってるな。乱戦に持ち込みつもりか...」

 

乱戦に持ち込まれると、玉狛には砲撃がある。

 

それに加え乱戦で無類の強さを発揮する空閑が揃えばかなり厄介になる。

 

「日佐人、ここからは別行動だ。お前は洸太郎の方へ向かってくれ。」

「了解です。」

 

そう言うと、日佐人はバッグワームを起動して諏訪の元へ走っていった。

 

「さて、俺もやるべきことをやりに行くか。」

 

颯太郎は日佐人とは違う方向に走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「玉狛のスナイパーの子取りに行きますか?」

「いや、このまま諏訪さんを狙うぞ。」

 

今半崎に千佳を狙わせに行くと、自分がすぐ落ちてしまう。

 

そうなったら仮に千佳を落とせたとしても、居場所がバレた半崎が落とされて一点止まりだ。それなら、敵がが近くにいることや、半崎の援護射撃も効きやすいというメリットがある乱戦に持ち込まれた方が良いと言う判断だった。

 

「了解です」

 

荒船は何とか階段の上を取ったことで、半崎の援護射撃が効きやすくなる。それがわかっているから諏訪も攻めることができず、壁を背に膠着状態が続いていた。

 

「くそったれー、めんどくさい展開だぜ!」

 

こちらも兄貴と同じようなセリフを吐いていると、小佐野から連絡が入った。

 

「諏訪さーん、もうすぐ日佐人と玉狛が来るよー。」

 

 

玉狛がここに参戦したら、事態は一気に動く。

 

諏訪は一度深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。

 

ここで決める。

 

そう心に決めた時、再び小佐野から通信が入る。

 

 

「諏訪さん左からくる!」

 

言われた方を見ると、修がアステロイドを撃って来ていた。

 

それを横に避けると諏訪は少し下がり、荒船目掛けてショットガンを発射。

荒船がそれをガードすると、隙を見逃さずに半崎が諏訪を狙撃する。

諏訪の顔面にイーグレットの弾丸が突き刺さった。

 

しかし

 

 

「大当たりだぜ」

 

 

諏訪は顔の前に集中シールドを貼ることによって半崎の狙撃を防いで見せたのだ。

 

「え、まじ?」

 

半崎が驚くのも無理はない。

 

普通シールド単品でイーグレットは防げないが、狙いを読んでシールドを集中させれば防御が可能である。

 

しかし読みが外れていれば一撃でベイルアウトしていたため、諏訪の胆力の凄さが垣間見える。

 

諏訪は階段の方へ走り修の斜線を切ると、階段で待ち伏せしている荒船にショットガンを撃つ。

 

それをシールドで防御するが、腕や足に擦り僅かにトリオンが漏れ始める。

 

荒船はすぐに孤月を抜くと、諏訪に斬りかかるが、後ろに下がり避ける。

 

諏訪は再び修たちがいる道路に出ると、荒船も階段から降りてきた。

 

つまり、今三部隊の隊長が睨み合っている。

 

誰かが動けば乱戦になる。

 

それがわかっているからこそ、睨み合いが続いているのだ。

 

この乱戦を制するのはどの部隊か。




諏訪好きとして、あのシーンをどうしても入れたかった。

原作でも諏訪隊頑張ってほしいですねー

スターマーカーってつけられた方は気付かないんですかね。

分かる人いたら教えてください。


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ROUND2⑥

 

「さあ試合もいよいよ佳境を迎えようとしています!果たしてどの部隊が勝利するのか!解説のお二人はどう思いますか?」

 

桜子の問いに東と犬飼が答える。

 

「玉狛と諏訪隊が少し有利ですね。玉狛は砲撃でいつでも戦況を変えることが出来ます。一方諏訪隊は、スナイパーの颯太郎隊員は当然ですが、笹森隊員も姿を眩ませています。この2人の動きにかかっているでしょう。」

 

「荒船隊はちょっとしんどいかなー。人数が1人少ないし、中距離が得意の諏訪さんとメガネくんが近くにいる。半崎の援護射撃でうまく立ち回って漁夫の利を狙う感じかな?」

 

荒船隊の基本戦法は、3人の狙撃による多角的な攻撃だ。

 

穂刈が開始早々落とされてしまったため、荒船が前を張り、半崎が援護射撃をするという形を取るしかなかった。

 

もし3人揃っていたら、わざわざ敵の前に姿を見せることはせず、全員が狙撃を狙っただろう。

 

荒船隊は序盤に穂刈を落とされた影響が出ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今一ヶ所に集まって3部隊は睨み合いが続いている。

 

各々が自分の武器を握りしめ、ピンと緊張感が漂っていた。

 

 

 

しかし、その静寂がとうとう破られた。

 

 

修が荒船に向かってアステロイドを発射。

 

と同時に空閑が荒船に斬りかかる。

 

荒船はバッグワームを解除してシールドで修の攻撃を防ぐと、右手に握っている孤月で空閑を迎え撃つ。

 

鍔迫り合いをしていると横から諏訪がショットガンでまとめて吹っ飛ばそうとするが、2人とも後ろに飛び、避けると、今度は修がレイガストで諏訪に斬りかかる。

 

しかし、諏訪は瞬時に左手のショットガンをシールドに切り替え、攻撃を受け流すと、右手のショットガンを撃つ。

 

修は何とかレイガストをシールドモードにするが、あまりに近距離からの攻撃だったので崖の下まで吹っ飛ばされた。

 

 

「ユウマくん、日佐人くんが右後ろからカメレオンで来てる。すぐくるよ!」

 

(それさえ分かってれば姿をみせた時に、殺せる。」

 

カメレオンは姿を消すという一見無敵にも見えるトリガーだが、カメレオンを起動したままだと攻撃が出来ないと言う欠点がある。

 

それを知っている遊真は、諏訪を狙うと見せて姿を見せた笹森を殺ろうと考えた。

 

追撃しようとする諏訪に斬りかかろうとする。

 

 

 

しかし、動こうとした遊真の体が急に止まった。

 

 

試合を見ているC級隊員や解説席、その場にいる荒船も含めて何が起きたのか分からなかった。

 

遊真はすぐに背中からスコーピオンを出すと、そこには、ガッチリと遊真をホールドしている日佐人の姿があった。

 

「諏訪さん、止めました!」

 

「よくやった、日佐人!」

 

諏訪は振り返ると、遊真達に向かってショットガンを撃とうとしたその時、

 

 

 

 

「千佳!」

 

「うん!」

 

 

諏訪達がいる真ん中に砲撃が落ちた。

 

千佳は撃った後移動を始めるが、半崎がそれを逃さない。

 

 

『戦闘体活動限界、ベイルアウト』

 

 

道路や建物が崩れ落ちる中、遊真はすぐに拘束から抜け出すと、笹森の体を斜めに叩き切った。

 

『警告、トリオン漏出甚大』

 

日佐人の体から大量のトリオンが漏れ、それを確認した遊真は諏訪の所に向かおうとする。

 

ダメージもデカく、射撃トリガーを装備していない笹森は反撃してこないだろう。

 

なら、体勢を崩しているかつ、中距離戦を得意としている諏訪を狙った方がのちに楽になるだろうと考えた。

 

 

しかし

 

 

 

 

 

「...アステロイド」

 

 

 

遊真の肩を無数の弾丸が貫通していった。

 

 

 

遊真は一瞬何が起きたかわからなかったが、そこにはニヤッと不気味に微笑んでいる日佐人の姿があった。

 

 

笹森の姿をはっきりと捉えて反撃しようとするが、遊真の体が横に真っ二つになった。

 

 

『戦闘体活動限界、ベイルアウト』

 

 

アナウンスが流れると、日佐人と空閑が光となって飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

「ここで雨取隊員、空閑隊員、そして笹森隊員がベイルアウト!玉狛が笹森隊員を落として一点、荒船隊が空閑隊員と雨取隊員を落として2点を獲得しました!」

 

桜子が説明すると、東と犬飼が続く。

 

「笹森隊員のアステロイドには驚きましたね。空閑は緑川に8ー2で勝つ程の腕前なので、真正面から挑んでは厳しいですが、今まで使ったことのないアステロイドを使うことで完璧に不意をつきました。」

 

「なのに咄嗟に急所を外せる空閑くんはすごいね。」

 

実際日佐人は空閑の心臓部を狙っていた。

 

しかし、空閑はかわして見せた。

 

それは本物の戦争を体験してきたため反応できたのだ。

 

その空閑に致命傷を負わすことが出来たということは、かなり上手く行ったと言えよう。

 

「しかし、荒船隊長が孤月一閃、空閑隊員にとどめを刺したことで荒船隊の得点となりました。それに半崎隊員が雨取隊員を落として一気に2点を取りました。」

 

「荒船隊は上手く相手の隙を突きましたね。荒船は笹森に集中している空閑隊員を、半崎は狙撃直後の雨取隊員を狙う事で、無駄なダメージをくらう事なく得点出来ました。」

 

「なるほどー!ここで得点のおさらいをしておきますと、玉狛第二2得点2アウト、荒船隊2得点1アウト、諏訪隊1得点2アウトとなっております!さあここからどうなっていくのか!」

 

 

 

「くっそーここで大砲かよ!射線も何もお構いなしじゃねーか!」

 

諏訪は崩れた建物を背にしゃがみ込み、状況を確認していた。

 

「小佐野、今どうなってる?」

 

「荒船くんは近くにいるよ。メガネくんはいなくなってるけど。」

 

 

 

 

 

(なんとか隠れれた。ここから荒船先輩を一撃で倒す...!)

 

修は砲撃の混乱に乗じてバッグワームを起動し、荒船の近くの物陰に隠れていた。

 

今の自分の実力で正面から挑んでも勝ち目はない。

 

それがわかっているからこそ、奇襲を選んだ。

 

諏訪と荒船は今睨み合っている今なら、上手く隙をつけば1人は倒せる。

 

それにアステロイドで倒せなくても、躱して体勢を崩した所を攻めれば良い。

 

そうふんだ修は、まさに攻撃しようとしている荒船の横からアステロイドを放った。

 

荒船はすぐに気づくと、後ろに下がり避ける。

 

それを見た修はすぐにスラスターを起動して一気に荒船に迫る。

 

 

 

しかし、荒船は落ち着いていた。

 

 

 

勢いよく迫ってくるレイガストを見据え、孤月を構える。

 

荒船は迫ってくる修に対して、自分から近づいてきた。

 

スラスターを使っている時は急には止まれない。

 

レイガストを振りかぶっていた修の懐に入り込んだ荒船は、そのまま孤月で腹を切断した。

 

 

 

『戦闘体活動限界、ベイルアウト』

 

 

 

 

修のベイルアウトを知らせるアナウンスが流れ、光となって飛んでいった。

 

 

 

 

しかしまだ終わっていない。

 

 

諏訪がフルアタックでショットガンを乱発してきた。

 

「半崎、諏訪さんを狙え。今ならガード出来ない。」

 

荒船の言う通りフルアタックをしている時は一切ガードが出来ない。

 

そして今荒船の目の前で諏訪がフルアタックを仕掛けてきた。

 

それを狙撃で狙うのは至極真っ当な事である。

 

「了解です。」

 

そう言ってイーグレットを構えスコープを覗く。

 

諏訪の心臓部に狙いを定めると、半崎は引き金を引く指に力を込める。

 

 

 

ドンッと一発の銃声が響くと同時に、アナウンスの音がなり、一筋の光が飛んで行った。

 

 

 

 

「やれやれ、半崎のやつ結構遠くから撃ってたな。おかげで隠れながらこっちの射程に入るまでだいぶ時間がかかっちまったよ。」

 

 

そう言ってスコープから目を外したのは、颯太郎だった。

 

 

「何⁉︎」

 

半崎がベイルアウトしたのを確認した荒船は驚愕していた。

 

颯太郎は自分を狙う、もしくは狙撃後の半崎を狙うと思っていたからだ。

 

諏訪にフルアタックをさせる事で注意を諏訪に引きつけ、自分が諏訪目掛けて旋空弧月を放とうとしたら自分を、半崎が狙撃で狙うなら半崎を、と言う風に、その隙を突いてくるのかと思っていたが、実際は狙撃前の半崎を狙っていた。

 

完全に虚をつかれた。

 

 

「よそ見してていいのか!」

 

衝撃を受けている間にも諏訪のフルアタックショットガンがダメージを与えてくる。

 

完全にガンナーの間合いでフルアタックを受け続けたシールドが割れると、荒船の全身に弾丸が突き刺さった。

 

 

 

『戦闘体活動限界、ベイルアウト』

 

 

 

荒船のベイルアウトを確認した桜子が、試合終了を伝える。

 

「試合終了!生存点を含めまして、5:3:2で、諏訪隊の勝利です!」



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総評

 

「B級ランク戦中位は、5:3:2で諏訪隊が勝利しました!」

 

「今回はかなり接戦でしたね。」

 

 

興奮冷めやらぬ雰囲気が閲覧席に漂っている中、東と犬飼が解説に入る。

 

「転送位置はかなり荒船隊有利でしたね。このマップはスナイパーが上を取れれば強いですから。」

 

東の言う通り、市街地Cは、上を取れればかなりスナイパーが有利になる。

 

2人が上を取れた荒船隊が試合を有利に進めるかと思われた。

 

「しかし、玉狛の三雲隊長が自ら囮になることで相手の場所を掴み、そこを雨取隊員が砲撃で足場を崩したことにより荒船隊長と半崎隊員は狙撃ポイントを変えなくてはいけなくなりましたね。」

 

「メガネくんはそれで腕が一本になっちゃったけど、スナイパーの位置がわからないと砲撃も出来ないし、空閑くんと合流出来ないから出ざるを得なかった。苦肉の策だったね。」

 

犬飼の発言を聞いた後、桜子は次の場面に移る。

 

「そして、荒船隊が崩れた事で一気に他の部隊が動きます!玉狛は空閑隊員が三雲隊長との合流を目指す途中で偶然穂刈隊員と対敵します。お互いバッグワームを起動していて気付かなかった!穂刈隊員がライトニングで迎撃するも、空閑隊員がグラスホッパーで一気に接近!このまま空閑隊員の得点かと思いきや、颯太郎隊員が横取りしてこの試合初めての得点となりました!」

 

「2人が重なるギリギリまで待ってから撃っていたので、ダブルキルを狙ってましたが、空閑はよく避けました。」

 

「しかし、何故空閑隊員は避けれたのでしょうか?」

 

「穂刈の背後からの狙撃だったので空閑から見たら正面から飛んできました。それでなんとか反応出来たんだと思います。」

 

犬飼は、普通気付くかー?と苦笑いしていた。

 

攻撃が決まったと思う瞬間は先頭に置いて1番油断してしまう時である。

 

なのに空閑は攻撃を止めて、しかも回避したのである。

 

そうなるのも無理はない。

 

「颯太郎隊員はすぐに移動を始めますが空閑隊員がすぐに追跡しましたが、三雲隊長とに合流を優先しませんでしたが、それについてはどう思われますか?」

 

「颯太郎はサイドエフェクトの効果もあり、他のスナイパーより隠密性が高いので見失う前に捕捉したかったのでしょう。」

 

 

東がそう言うと、会場がざわついた。

 

昔からボーダーにいた人間は知っているが、今のボーダーの中では知っている人の方が少ない。

 

それは桜子も例外ではなく、口を大きく開けて驚愕を隠せないでいた。

 

「さ、サイドエフェクトですか!?」

 

「はい。因みに、この場であいつのサイドエフェクトの話をするのは事前に本人に許可を得ていますからご心配なく。あいつのサイドエフェクトは、強化嗅覚。その名前の通り、常人より嗅覚がかなり発達しているというものです。玉狛には木崎や小南がいるので事前に聞いていたのでしょう。」

 

「遠距離戦が苦手な諏訪隊に颯太郎先輩が入ったから一気に弱点が消えた。そりゃ強くなるね。」

 

なるほどー!と言うと、早速を進める。

 

「そして空閑隊員が颯太郎隊員を追いかける中、三雲隊長に堤隊員のショットガンが襲いかかります!その後は空閑隊員と颯太郎隊員が、荒船隊長と諏訪隊長が対敵し、各地で戦闘が始まりましたね。」

 

「颯太郎先輩と日佐人くんの連携と、堤先輩のフルアタックで空閑くんとメガネ君がピンチになったから、大砲で形勢を変えた。メガネくんは大勢を崩した堤先輩を倒せたし空閑くんと合流できたから、玉狛にとっては良い結果になったね。」

 

「堤はやられる間際に三雲にスタアメーカーをつけていました。今回は直接得点には結びつきませんでしたが、自分が落ちてもチームのために行動できたのは素晴らしかったですね。」

 

 

 

 

 

 

ー諏訪隊作戦室ー

 

「点取れてないのに褒められるのもなんだか複雑ですね。」

 

 

作戦室で堤が複雑そうな表情をしていた。

 

「そんな気にしてんじゃねーぞ、堤!お前はしっかりやったんだからよ。」

 

「洸太郎の言う通りだ。確かに点は取れてないが、お前はチームのために出来ることをやった。ありがとな。」

 

「そうすよ!堤先輩がスタアメーカーをつけてくれたおかげで敵の動きがわかったんですから。」

 

「つつみんはよくやったよー。」

 

 

そうだ、だからこのチームが好きなんだ。

 

 

堤は微笑みながら、ありがとう、と言った。

 

 

 

 

 

 

 

「そして諏訪隊、荒船隊、そして三雲隊全ての部隊が一堂に会しました!簡単に纏めますと、乱戦の中で笹森隊員が空閑隊員を奇襲し、それを返り打った空閑隊員がアステロイドを食らったため、雨取隊員の大砲で援護するも、荒船、半崎両隊員がそれぞれ空閑隊員と雨取隊員を倒して得点しました!」

 

桜子が大まかな流れを振り返り、犬飼が解説する。

 

「荒船隊は上手くこの乱戦を利用したね。諏訪隊と玉狛がやり合ってる間にしっかり浮いた駒を狙ってた。」

 

「そして3人がベイルアウトした後は、三雲隊長が荒船隊長を奇襲するも返り討ちにあってしまいましたが...」

 

「荒船は元アタッカーですからね。しかし、かと言って諏訪を狙うのも出来ません。スタアメーカーを付けられた時点で諏訪への奇襲は出来なくなっていたので、それが分かっていた諏訪は、最初から荒船狙いでしたね。」

 

スタアメーカーは赤いポイントがつくため付けられた側も分かるが、今回修は足に付けられたため外すことが出来なかった。

 

実際修は荒船を狙い、諏訪は修が荒船に仕掛けた時点で既に動き出していた。

 

 

 

 

 

 

ー玉狛第二作戦室ー

 

「すまない、僕の作戦が甘かったみたいだ...」

 

「そんなことないぞ修。お前はよくやった。謝るならあそこで落とされた俺だ。」

 

「私もすぐ落とされちゃったし、ごめんね。」

 

修の謝罪に2人が答える。

 

しっかり作戦を立てれば、中位でもやれると思っていた。

 

しかし、その壁はやはり高かった。

 

試合は常に有利に進められ、なんとか2点取ったものの、満足のいく結果ではない。

 

だからと言って、止まるわけにはいかない。

 

「この負けは確かに痛いが、試合はまだある。次こそ勝つぞ!」

 

おー!と全員が返事をする。

 

今回もただで負けたわけではない。

 

次こそは。と全員が意気込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

ー荒船隊作戦室ー

 

「みんなお疲れ様。」

 

加賀美が作戦室に集まっている3人を労う。

 

「まあまあだな、今回は。」

 

「3点取れましたしね。」

 

穂刈と半崎の言う通り、荒船隊は振り回される展開が多かった。

 

その中でやれることをやり、3点を取った。

 

それは素晴らしいことだが、負けは負け。

 

これで満足するわけにはいかない。

 

 

「次は勝つぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして、三雲隊長を落とした荒船隊長でしたが、ここで諏訪隊長のフルアタックショットガンで一気に追い込まれてしまいました。」

 

「荒船はここで半崎の狙撃を狙っていましたが、ここまで静かにしていた颯太郎が半崎を落としましたね。」

 

もしかして、と犬飼が何か気づいたように言った。

 

「半崎の狙撃を諏訪さんが防いだ時にもうマークしてたのかな?」

 

「かもしれませんね。半崎も狙撃の度に移動していましたが、颯太郎にはサイドエフェクトがあります。匂いの濃い方を辿っていけばいずれ追いつきます。」

 

半崎が思っていたより遠かったですが。と最後に付け加えると、桜子がそれを確認し、話を続ける。

 

「半崎隊員が落とされたことで援護がなくなった荒船隊長もそのままベイルアウトして試合終了!諏訪隊の勝利で幕を下ろしました!」

 

「各部隊自分の出来ることをやろうという強い意気込みが感じられました。勝った諏訪隊も、今回は負けてしまった2部隊も今後の試合に活かせる所は多いと思います。」

 

「さて、ROUND2の結果を受けまして、順位の方を確認しましょう!」

 

桜子がそう言うと、スクリーンに順位と得点が映し出される。

 

 

 

1位 二宮隊:23P

2位 影浦隊:22P

3位 生駒隊:19P

4位 東隊 :18P

5位 諏訪隊:18P

6位 王子隊:16P

7位 弓場隊:15P

 

8位 香取隊:15P

9位 来馬隊:13P

10位 那須隊:13P

11位 荒船隊:10P

12位 三雲隊:10P

13位 漆間隊:9P

14位 柿崎隊:9P

 

 

 

「ROUND 2 が終了し、次の対戦の組み合わせも決定しました!今回上位入りを果たした諏訪隊の相手はこちら!」

 

そう言うと、画面に4部隊の名前が浮かぶ。

 

 

「暫定1位の二宮隊、3位の生駒隊、5位の諏訪隊、そして6位の王子隊です!」

 

その後、他の対戦も発表し、ランク戦は終わった。




やっとROUND 2が終わりましたね。次の四つ巴はネーム考えるのがより楽しい。

颯太郎掘り下げ回とか諏訪全体的に日常を書きたいなー。


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各隊の様子

今回は短めです。


 

ー諏訪隊作戦室ー

 

「よっしゃあー!上位入りだぜ!」

 

作戦室では、勝利したことと上位入りが決まったことで諏訪が喜びを隠せないでいた。

 

「しかもいきなり5位ですもんね。」

「この2試合で12点はやばいすね!」

 

堤達も喜びを隠せない。

 

それもそうだ。今回全員が初の上位入りで喜ばない方が可笑しい。

 

小佐野もいえーいといつもの調子で言っているが、表情は晴れやかだった。

 

 

「今回も何とか上手いこといったな。」

 

颯太郎はふうっと一息ついた。今回も決して楽に勝てたと言うわけでもない。颯太郎の予想通りに動いてくれたから良かったが、上位はそんなに甘くない。それを言おうとしたが、今日くらいはいいかと椅子に腰掛けながら喜ぶ仲間達を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

「いやーやっぱり颯太郎先輩はつよいなー。」

「当たり前だ。颯太郎さんが中位で負けるわけがない。」

 

犬飼が作戦室に戻り、先程の試合の率直な感想を言っていると、足を組んで座っている二宮がそれに答えた。

 

「次はうちの隊と当たりますね。」

「生駒達と王子隊は散々やってるけど、諏訪隊は初めてだからね。どうします?隊長。」

「颯太郎さんは確かに手強いが、他は所詮中位レベルだ。俺らの敵じゃない。」

 

それもそうですね。と辻と犬飼が同意する。

 

油断はしない。颯太郎がいる以上そんなことをしたら足元をすくわれてしまう。

 

だからこそ正面から叩き潰しやると、心の内に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次は諏訪さんとか...」

 

王子隊の隊長王子一彰は作戦室で隊員と話し合っていた。

 

王子は普段独特すぎるあだ名を人につけるが、東や弓場、諏訪のように年上はきちんとさん付けで呼んでいる。

 

「それに二宮さんと生駒隊もいるから順位的にも厳しい戦いになりそうだ。」

「だが僕たちにはマップ選択権がある。いくらでもやりようはあるさ。」

「今回はどのステージで行きますか?」

 

樫尾が質問をすると、王子が笑顔で答える。

 

「僕たちの強みの機動力を活かせる市街地でもいいけど、今回は別の案で行こうと思ってるんだ。」

「別、ですか?」

 

ああ。と言うと作戦を隊員に伝える。

 

「確かにそれならいけそうだな。」

「はい!凄い良い作戦だと思います!」

 

2人が同意し、オペレーターの橘高も頷いている。

 

「よしここからは細かい動きを決めていこう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、指の先っちょの皮がめくれるやつなんて言う?」

「さかむけじゃないんですか?」

「あれ関西だけらしいで。」

 

生駒隊の作戦室では、今度の試合ではなく何故かさかむけの話になっていた。

 

生駒が話を脱線させるが誰も戻そうとしないのである。

 

「ほな普通は何て言うんですか?」

「関東だとささくれって言うらしいで。」

 

隠岐がそう尋ねると、生駒がドヤ顔をしながら答えた。

 

「次の試合の話せんでいいん?」

 

オペレーターの真織が痺れを切らしてそう声をかけると、やっと試合の方に話が進んだ。

 

「諏訪さんいきなり五位ってめっちゃ速ない?」

「俺らも油断してるとあっと言う間に抜かされてまうかもなー」

「俺が颯太郎先輩倒すから大丈夫ですよ!」

 

水上がぼやいていると、南沢が高らかに宣言した。

 

「海が突っ込んでジョットガンでボコられる未来が見えた。俺のサイドエフェクトがそう言うとったで。」

「何でサイドエフェクトが他人行儀やねん。」

 

生駒がそう言うと突っ込んだ水上以外のメンバーも、俺も見えましたわ。と続いた。

 

生駒隊はいつも通りだった。



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諏訪颯太郎①

「あ、颯太郎さんじゃないっすか」

「米屋か。ソロランク戦か?」

「もちろん。颯太郎さんもですか?」

「俺はスコーピオンの練習にな。最近は起動すらしてないからな。」

 

場所はソロランク戦の会場。

颯太郎がそう言うと、米屋は少し驚きながら聞いてきた。

 

「てことは次のランク戦で使うってことか。」

「まあそうだな。今ちょうど相手を探していたんだが、今暇か?」

「俺もバトりにきたんで全然大丈夫ですよ。早速やりましょうよ!」

「よしやるか」

 

2人は話がつくと、ブースに入っていった。

 

 

 

 

2人が市街地Aに転送されるとランク戦の開始を知らせるアナウンスが流れた。

 

「手加減なしで行きますよ!」

 

米屋はそういうといきなり顔目掛けて槍孤月を突き刺す。

 

それをギリギリかわすと、右手でスコーピオンを構えて距離を詰める。

 

斬りかかるが戻した槍でガード。鍔迫り合いになるが、米屋が颯太郎を弾き飛ばす。

 

その隙を逃さない。

 

再び槍孤月を突き刺しにきたのを確認し、さっきと同じように避けた。

 

 

しかし

 

 

 

「なに...!」

「ここ最近は顔じゃなくて足にハマってるんですよね。」

 

米屋の攻撃は颯太郎の左下を切り落としていた。

 

先程と同じところを攻撃されると思っていた颯太郎は完全に虚をつかれた。

 

スコーピオンで反撃するも後ろに避けられてしまい再び距離を取られる。

 

 

米屋が使っている槍孤月はリーチの長さこそ最大の武器である。

 

それに刃の部分がスコーピオンになっており、変形が可能なためさっきのように避けたと思っている相手に当てることもできる。

 

しかし、その分攻撃後の隙が多く扱いが難しいのだが、米屋は完璧に使いこなしていた。

 

 

スコーピオンでどうするかと考えていると再び連続で攻められる。

 

なんとか受け太刀で耐えているが、耐久力がないスコーピオンではいずれおられてしまう。

 

スコーピオンヒビが入ってきたその時、米屋はここぞとばかりに槍孤月を振るう。

 

颯太郎がスコーピオンで受け太刀をして折れたところをと止めをさせば良い。

 

そう思っていた。

 

 

颯太郎は受け太刀をすることなく攻撃を受け、槍孤月は左肩に刺さった。

 

「やっと近づいてきてくれたな。」

 

颯太郎は目の前にいる米屋の首にスコーピオンを突き刺した。

 

「うわーまさかスナイパーにそれやられるとは思わなかったなー。」

 

 

米屋は悔しそうな顔をしながら光となって飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

「いやー颯太郎さんはつえーなー」

「それは最初の一本しか取れてない俺への嫌味か?」

 

試合は十本で行ったのだが、颯太郎は最初以外一本も取れていなかった。

颯太郎は冗談でそう言ったが、米屋もそれを理解し、まさか、とおどけて見せた。

 

「アタッカーならまだしも、あの時腕を犠牲にするって判断ができるスナイパー何て颯太郎さんと荒船くらいですよ。」

「ある程度は自分の身は自分で守らないとな。」

 

颯太郎がそう答えると、米屋がそう言えばと話を変えた。

 

「颯太郎さん次二宮さんとイコさんと王子ですよね?そん時用のスコーピオンですか?」

「そうだな。スコーピオンはまだ感覚が戻ってきてないからあんまり使いたくないんだが、今回は上位戦だからな。それにあの三部隊にスナイパーなしで挑むのは厳しい。だからなるべく生き残っておかないと。」

 

なるほどねーと言って頷いている米屋に、今度は颯太郎から話を振る。

 

「俺はもう帰るが、この後飯でもどうだ?」

「お、良いっすねー。奢りですか?」

「行くかどうかを奢りで決めるな。まあ今日は練習に付き合ってもらったからいいか。」

「まじか!そういうことなら早速行きますよ!」

 

そう言うと米屋は勢いよく飛び出して行った。

 

 

「...全く忙しないやつだ。」

 

そう言うと、颯太郎は米屋が走って行った方に歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

無事に追いついた颯太郎は、2人で焼肉屋に入っていった。

 

席に案内され座ると、隣から聞き覚えのある声が聞こえた。

 

ふと隣を見ると、そこには小南と玉狛第二のメンバーがいた。

 

 

「あー!陽介なんであんたこんな所にいんのよ!」

「別に焼肉屋くらいくるだろ。それよりこんな所で会うなんて奇遇だな。」

「今日の試合で負けちゃったから小南が心配して焼肉にいくぞー!って連れてきてくれたんだよ。」

 

そう言うことか。と2人で頷いていると、いきなり小南に声をかけられた。

 

「颯太郎さん!今回は負けたけど、次はギッタンギッタンにしてやるんだから!」

「実際にそうなりそうだから怖いな。戦ってみて正直負ける可能性も高かった。今回勝てたのはまだ経験の差があったからだろう。」

 

仲間を褒められて喜びを隠せないでいる小南を他所に、今度は修が声をかけてきた。

 

「この前の試合で、颯太郎さんの目には僕たちはどう映りましたか?」

 

 

玉狛のメンバーが真剣な眼差しでこちらを見ている。

 

何かに向けて努力する若者の姿勢を見ていると、応援したくなるのは歳だろうか。

 

俺もおっさんだな、と一人で考えていると再び声をかけられたので慌てて返す。

 

「あ、ああ。お前らがどう映ったかだろ?三雲は作戦を立てるのが上手くて、雨取には莫大なトリオンが、そして空閑には類稀な戦闘のセンスがある。チームワークも良いしこれだけ揃ってりゃ上位もいけると思う。ただ、個人として使えるのが空閑しかいないのはしんどいな。実際空閑があそこで落とされてなかったらお前らが勝ってた可能性が高い。それだけ個々の力は大事ってことだ。」

 

颯太郎の意見を聞き、やはり自分が足手まといになっていると感じた修は明らかにテンションが下がってしまった。

 

 

 

「ただ、だからと言って三雲が空閑レベルまで上がる必要はない。」

 

驚愕と困惑の表情の修に向けて、颯太郎は話続ける。

 

「お前らの得点方法は三雲と雨取が崩して空閑が取ることだ。なら、それを極めるのもありだ。」

「それはどういう...」

「こっから先は自分で考えろ。直ぐに答えを出そうとしなくて良い。お前のペースで考えるんだ。」

「...!はい!」

 

修の目にはもう迷いなどない。

 

絶対に見つけて次は勝つ。

 

その気持ちを理解した颯太郎はニヤっとする。

 

 

「良い目になったな。ほら肉が焼けてるぞ。考えるのも良いがまずは腹ごしらえしないとな。」

 

 

颯太郎がそう言い、修たちは自分たちの網を見ると肉が少し焦げ始めていた。

 

慌てて肉を食い喉に詰まらせた小南に修が水を差し出しなんとか事なきをえた。

 

それを見て米屋が笑っていると、小南が起こりながら首を絞めにいっていた。

 

やっぱこいつは鳥丸じゃねーと無理だな。と思いながら米屋の分の肉を食った。



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ランク戦ROUND3
ROUND3 ①


「お待たせしました!B級ランク戦上位夜の部の実況、綾辻です。」

 

ここはランク戦の観戦室。

 

多くのC級隊員や非番の正隊員もちらほらいることから、注目の高さがうかがえる。

そして解説の綾辻と解説の二人が実況席に座っている。

 

「今回の解説は太刀川隊長と迅隊員です。よろしくお願いします。」

「「どうぞよろしく。」」

「さて今回の試合は、暫定一位の二宮隊、三位の生駒隊、五位の諏訪隊、そして六位の王子隊の対戦ですが、お二人はこの試合をどう見ますか?」

 

絢辻の問いに太刀川が、真面目に?と聞いて真面目に、と返される。

太刀川はそういうことなら、と話し始めた。

 

「この組み合わせは個人的にかなり楽しみだ。まず王子隊にマップ選択権があること。王子は上位の中でも地形戦を仕掛けるのが上手いからな。それに今回は初めて上位でやる諏訪隊もいる。それも含めてどういう仕掛け方をするのかが楽しみだな。」

 

太刀川がそう言うと、迅も続けて話す。

 

「それに今回は二宮隊と生駒隊もいます。2チームとも安定して上位にいるので、諏訪隊の快進撃が続くのかも見所ですね。」

 

実際諏訪隊は今まで一度も上位入りをしたことがない。

爆発力こそ上位を喰らうほどの力があるが、スナイパーがいなかったため遠距離に弱く、最高でも8位止まりだった。

 

しかし、今は颯太郎がいる。

 

相手は颯太郎に集中すると諏訪隊本来の火力に圧倒され、逆に諏訪や堤、日佐人を狙い過ぎれば颯太郎に狙撃される。

 

颯太郎の加入により諏訪隊が大幅にパワーアップしたのは事実である。

 

 

「さあここでステージが決定しました。今回選ばれたステージは・・・」

 

綾辻がそう言うと、スクリーンにステージが映し出される。

 

「市街地Dです!」

 

それを聞いた太刀川はなるほどな、と呟いた。

「市街地Dはマップのど真ん中にショッピングモールがあって、その中で戦闘が起きやすい。ずっと外にいるとスナイパーに狙われるからな。パパッと中に入った方がいい。」

「そうなるとスナイパーも中に入らないといけませんからね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「市街地Dか・・・」

「完璧に兄貴対策だな。」

 

そうだろうな。と颯太郎は答えた。

 

しかし何か引っかかる。

 

(スナイパー対策のためだけなのか?今回は二人しかスナイパーがいない。それに二宮だっている。二宮対策も兼ねて市街地Bでくるかと踏んでいたが・・・)

 

颯太郎考え込んでいると、諏訪が話し始めた。

 

「市街地Dなら俺らは中に入るが、兄貴はどうする?」

「・・・俺は最初は外にいる。王子が何か企んでるだろうからな。』

 

 

(王子の狙いはなんだ・・・?)

 

 

 

 

 

 

 

「ただ颯太郎さんと隠岐が中に入らない可能性もある。」

 

太刀川の言う通り、中に入らない可能性もある。

実際颯太郎は外にいることを選択した。

 

そこに迅が待ったをかけた。

 

「そうとも限らないよ。」

「お前何か見えてるな?教えろよ。」

「見てればわかるよ。」

 

迅がそう言った時、綾辻が話し始めた。

 

「さあまもなく転送開始!各隊員は一定以上の距離をおいてランダムな地点からの転送になります!」

 

綾辻がそう言った瞬間、ステージに各隊員が転送される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マップ、市街地D。気候、暴風雨!」

 

 

 

ステージには凄まじい風と雨が降り注いでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「めっちゃ天気悪いやん。」

『濡れたないから早いとこ中入るで。』

 

隠岐がぼやいていると、生駒から通信が入る。

 

「一回モールの中入ってから海達と合流しよか。」

 

ショッピングモールの中に入る理由は可笑しいが、生駒は水上と南沢と合流し、室内戦を選んだ。

 

「俺と海は最初から中にいたんでまず合流しますわ」

「了解。俺もなるべく早く行くわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、暴風雨か。ここなら狙撃がよりしにくくなったから、スナイパーも中に入らざるを得ないな。」

 

綾辻は太刀川の解説を聞いて終わったことを確認すると、転送位置について話し始めた。

 

「ショッピングモールの中に転送されたのは生駒隊の水上、南沢隊員と諏訪隊の諏訪隊長、王子隊の樫尾隊員です。外にいる隊員もショッピングモールを目指します。そしてスナイパーの颯太郎隊員と隠岐隊員、そして王子隊全員がバッグワームを起動しました。」

「もうかなりの隊員がモールに入っています。そうなったらいよいよ戦闘が始まりますよ。」

 

 

 

 

 

 

 

「すみません諏訪さん、日佐人とは合流出来ましたが、諏訪さんと合流するのもう少しかかります。」

 

諏訪はモール3階に転送されたが、颯太郎達は外からのスタートだった。それに今回は四つ巴のため敵に見つかる可能性も高く、慎重にならざるを得ない。

 

「分かった。兄貴はどうだ?」

「俺は今モールに入った。このままお前を援護できる場所まで行くが、今回は敵が多いから中々時間がかかりそうだ。」

 

颯太郎からの連絡を聞いた諏訪は、一呼吸置いてから指示を出す。

 

「日佐人と堤は俺との合流優先だ。兄貴はいつも通り頼んだぜ。」

「「「了解!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「二宮さん、どうします?やっぱり合流ですか?」

 

二宮隊は二宮だけモールから少し離れており、辻と犬飼は比較的近くに転送された。

加えて二人の位置も近く、すぐに合流出来たこともあり、既にモールに入っている。

凛とした表情を浮かべ周囲を警戒する辻とは対照的に、不敵な笑みを浮かべながら話す犬飼に二宮はいつものように答えた。

 

「辻と犬飼は浮いた駒を狙え」

「「了解」」

 

 

「俺もすぐ行く。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまでは順調だね。」

 

そう話すのは王子隊隊長王子一彰。

この仕掛けをした張本人である。

 

今王子は蔵内と共にショッピングモールの近くにあるビルの屋上にいた。

 

「カシオ、もう移動できたかい?」

『もうすぐ着きます!』

 

樫尾の報告を聞き、そうかと頷いた。

 

この戦いでは自分たちが1番格下だ。

 

しかしそれがなんだというのか。

 

たとえ個人の力で及ばなくとも、連携と戦術で勝てばいい。

 

 

 

「どこかで戦闘が始まったら僕らも動く。最大限利用させてもらうよ。全員ね。」



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ROUND3 ②

「多くの隊員が既にモールに入りました。」

「今回は4つ巴な上に室内戦になる可能性が高いです。なので乱戦になると思います。」

 

迅がそう言うと、太刀川がそれに同意する。

 

「基本は人数が集まってくると戦い辛いからな。集まってくる前に誰かしらが仕掛けるな。」

 

 

 

 

 

 

 

「諏訪さん、そっちに2人行ってるよー」

「2人?誰だ?」

 

小佐野からの報告を受けた諏訪は、今三階の通路の柱に身を隠していた。諏訪はまだ誰とも合流出来ていない。大敵すれば苦戦を強いられるのは目に見えていた。

 

「わかんないけど、もう颯太郎さんが近くまで来てるから大丈夫じゃない?」

「・・・そうだな。兄貴!」

 

諏訪の急な呼びかけに若干驚きながらも、どうした?と聞き返した。

それを聞いた諏訪は、不敵な笑みを浮かべた。

 

「早く来ないと全員倒しちまうぜ?」

 

 

それに颯太郎も同じように笑みを浮かべた。

 

まるで、やれるもんならやってみやがれ。と言うかのように。

 

 

「ああ、すぐいってやるよ。ちゃんと俺の分も残しとけよ?」

 

 

そう言い終わった瞬間、小佐野から敵がきたという通信が入った。

 

「じゃあまた後で会おうぜ!」

そう言い通信を切った瞬間、諏訪の頭目掛けて斬撃が飛んできた。それをしゃがんで避け、前を見るとそれを放った張本人がいた。

 

「おいおいいきなり旋空かよ、辻。」

「流石にあの程度でやられはしないか。」

「犬飼はどこいった?」

「答えると思いますか?」

 

そう言い剣を構えると、再び旋空を放った。それを上に跳んで避けると、一気に辻が間合いを詰めてくる。それに対し、右手でショットガンを放つもサイドステップで避けられる。辻はすぐさま再び颯太郎に斬りかかる。それをシールドで間一髪で防ぐと、弾いてショットガンを構えるがシールドで防がれて距離を取られた。

 

 

 

 

「ここで諏訪隊長と辻隊員が戦闘開始!射程の有利がある諏訪隊長が有利でしょうか?」

 

綾辻が二人に話をふる。

 

「そうとも言い切れません。通常はそうですが、辻隊員には犬飼隊員がついています。犬飼隊員との連携はかなり完成度が高く、一人で崩すのは簡単ではありませんからね。」

「それに加え、犬飼はまだ姿を眩ませてる。いつ出てくるかわからない以上諏訪さんはフルアタック出来ない。犬飼がいなかったらさっきの辻が横に避けたところをもう片方のショットガンで撃てたからな。」

 

 

 

 

 

 

「くっそーこのままじゃジリ貧だぜ」

 

諏訪が本来の火力を出せたのなら倒すことは可能だが、犬飼の姿が見えず、辻も深く踏み込んでこなくなった。

 

(こりゃ時間稼ぎか罠か...。どちらにしろ犬飼が見えねー以上こっちから攻めに行くわけには行かねー。兄貴たちを待つのが1番か...)

 

撃ちながら考えている時

 

諏訪の背後から攻撃が来た。

 

なんとか身をよじり避けたが、大きな隙が出来てしまう。そんな隙を辻が逃すはずもない。素早く諏訪に向かって旋空弧月を放とうとしたその時

 

 

 

 

辻の頭に一筋の弾丸が突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

「ここで背後から水上隊員と南沢隊員の奇襲!水上隊員のハウンドが諏訪隊長を襲う!崩れた諏訪隊長を狙おうとした辻隊員に颯太郎隊員が狙撃しました!」

「生駒隊としては諏訪さんを倒してから2人で辻を倒すつもりだったんだろうが、上手く避けられちまったな。」

「そして颯太郎隊員は四階から下を見ていました。誰でも攻撃するときが1番隙が生じますからね。そこを狙うのは当然です。」

 

迅がそう言うと、太刀川がただ、と続いた。

 

「それは相手も一緒のことだ。前回の諏訪さんが半崎の狙撃を防いだ時みたいにな。」

 

前回、諏訪は半崎の狙撃を予想して、フルガードで防いだことがある。

 

「ここで辻を倒さなきゃ自分たちのリーダーがやられる。そうなったら颯太郎さんも撃つしかなくなるからな。それが二宮隊の狙い通りだとしてもな。」

 

 

 

 

 

「やっぱり狙うなら頭ですよね。」

「くっそやられたな。」

 

颯太郎はその場から離脱すると思われたが、その場から動かなかった。ただ、どこか諦めたかのような表情で振り返る。

 

「やっぱりお前だよな、二宮。」

 

そこにはポケットに手を突っ込み、表情を崩さないで仁王立ちしている二宮の姿があった。

 

「諏訪隊はあんたを落としたら終わったも同然だ。」

「それはどうかな。あいつらだって成長してる。もうお前らの知ってる諏訪隊じゃないぞ。」

「・・・まあ良い。勝つのは俺たちだからな。」

 

言い終わると、二宮はバッグワームを解除し、細かく分割したアステロイドを発射した。

 

颯太郎はすぐさま振り返り再び三階に向けて構えると一瞬の無駄なく狙撃。

 

しかし撃ち終わった瞬間、颯太郎は二宮のアステロイドを全身に食らった。

 

 

『戦闘体活動限界 ベイルアウト」

 

 

機械的な音声が響くと、颯太郎は光となって飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

「ここで颯太郎隊員がベイルアウト!最初の得点は二宮隊に入ります!」

「颯太郎さんは二宮が近くにいるって気付いてたな。それでも動かなかったのは、諏訪がピンチだったからだ。」

 

颯太郎はサイドエフェクトがある。その効果より基本は接近される前に移動できるのだが、今回はしなかった。それは諏訪が危機に陥っていたからである。笹森と堤との合流が暫く見込めない状況で、諏訪を見捨てて自分が生き残るよりも、辻を倒し、諏訪を助けることを選んだ。

 

「ということは、颯太郎隊員は二宮隊員と対敵する前に移動するのが正解だったのでしょうか?」

「そうとも限りません。実際あそこで辻隊員を倒せていたら、諏訪隊長は逃げ切る可能性が高くなっていましたからね。結果論ですが、二宮隊の方が一枚上手だったということですね。」

 

 

 

 

 

 

「くっそ・・・!」

 

諏訪は、颯太郎がベイルアウトしたことに焦りを隠すことができないでいた。辻が一気に決めようと動き出そうとしたとき、辻の右足が吹き飛んだ。

 

辻が動揺している隙をついて諏訪がショットガンを放とうとするも、横から弾丸が飛んでくる。すぐさま攻撃を中止しシールドで防御。防ぎ切ると、犬飼が辻と合流していた。

 

「全く、今回展開早すぎでしょ。奇襲仕掛ける前に辻ちゃんが落ちちゃうよ。辻ちゃん大丈夫?」

「ありがとうございます。片足とばされましたが、まだやれます。」

 

今諏訪は吹き抜け部分のガラスの壁まで生駒隊と二宮隊の2人に追い込まれている。

 

(日佐人と堤はまだ少しかかる。どうする・・・)

 

諏訪がそう思ったその時

 

 

 

 

 

 

 

 

水上の左腕が切り落とされた。

 

 

 

全員がその方を見ると、孤月を片手にした樫尾の姿があった。

 

「よし、やってやる・・・!」

 

決意を固めた顔だが、その瞳は冷静に敵を見ていた。




暫くお待たせしてすみません。これからも不定期にはなると思いますが、少しずつでも進めていきます。


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ROUND3 ③

「ここで樫尾隊員の奇襲!水上隊員の左腕を奪った!」

「ギリギリまでバッグワームで近づき、解除してグラスホッパーで一気に行きましたね。」

「しかし妙だな・・・。」

 

太刀川がぼやくと、綾辻がすかさず拾う。

 

「何か気になりましたか?」

「いや、ここで樫尾が奇襲しても王子隊にはさほどメリットはない。むしろ1番得してるのは二宮隊だ。それなのにここに一人で出てきたってことは、何か狙いがあるんだろうな。」

「それに王子隊の2人はまだモールに入っていません。王子隊の動きに注目ですね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今は諏訪さん狙う流れやったやん。」

 

そう言いつつも素早くアステロイドを放つ。それを横に避けると、南沢が追撃する。

 

「海!勝手に行くなや!」

「2人なら大丈夫ですよ!」

 

そう言い樫尾と鍔迫り合いをする南沢を、水上は援護に向かう。樫尾はそれを確認すると、一度距離を取り、水上たちの方を見ながら後退を始めた。樫尾を追撃しようとするが、諏訪も樫尾を追いかけつつ水上たちにショットガンを放つ。

 

「こっちくんのかい・・・!」

 

水上はそれをシールドでなんとか防ぎ、今度は諏訪に向かってハウンドを放つ。

それを生駒は吹き抜けを挟んだ反対側から見ていた。

 

「おーおーめっちゃ戦っとるなー」

「ちょイコさん!見えてるんやったらはよきてくださいよ。」

『まかしとき。全員ぶった斬・・・あ、あかんわ。堤たち来おった。』

 

生駒は生駒旋空を放とうとするが、それを中止しショットガンをシールドで防ぐ。

 

「俺はお前らを信じてるで。なんとかしてくれるってな。」

「諦めんの早!」

 

水上のツッコミも虚しく、現状は拮抗していた。

 

 

 

 

 

 

 

「樫尾隊員を全員で追う形となりました。」

「諏訪さんはダブルショットガンがあるからな。相打ち覚悟フルアタックされたら落とされる可能性が高い。そしたらその分樫尾が狙われるだろうな。」

 

太刀川の解説を聞いた綾辻は、では、と質問をする。

 

「諏訪隊長が生駒隊を狙った理由はなんでしょうか?」

「諏訪隊長からしたら樫尾隊員達を追いかけないと二宮隊の2人を一人で相手しなければいけなくなります。そうなる前に水上隊員に攻撃を仕掛けることで意識を分散させ、自分が生き残ることが狙いだと思います。」

 

 

 

 

 

 

「俺らはこのまま付いてこう。二宮さんはこっちに来ないから、俺らで崩して。まずは諏訪さんからかな。」

「了解です。」

 

今辻と犬飼は、4人を後ろから牽制しつつ、気を伺っていた。

 

「しかし、樫尾くんの狙いはなんでしょうか。」

 

辻がそう犬飼に尋ねると、犬飼は突撃銃を放ちながら答えた。

 

「多分逃げてる途中に王子隊の二人が隠れてて奇襲じゃないかな。でもこんだけ逃げるってことは違うかもしれない。奇襲ならもっと近くにいて樫尾が余計なダメージを喰らう前に仕留めたいだろうし。あまり踏み込みすぎないように気をつけよう。

 

犬飼の言う通り、樫尾は後退し続け、一階のモール出入口付近まで来ていた。そんな中で樫尾は、もうそろそろか。と一人呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくやったカシオ。さあ、始めようか、蔵内。」

 

王子からの通信での言葉を皮切りに、蔵内は両手にハウンドとメテオラを出現させる。そしてそれを合体させた。

 

「ハウンド+メテオラ・・・サラマンダー。」

 

蔵内は合成弾を作り終えると、モールの入り口に向かってそれを発射した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「固定シールド!」

 

モール入り口付近では、樫尾が急に固定シールドを使ったことに全員が驚きを隠せないでいた。しかし、犬飼だけは違った。

 

「辻ちゃん!サラマ・・・」

 

そこまでいった瞬間、全員の目の前にサラマンダーが爆散する。誰も直撃はしていないが、凄まじい衝撃でバランスを崩してしまう。あたりを爆煙が包み、視界が悪くなった。樫尾は素早く固定シールドを解除して水上に接近。水上もハウンドを放つがシールドで防がれる。樫尾はそのまま水上の心臓部分を貫いた。

 

そんな中でサラマンダーに気付いていた犬飼もまた、素早く攻撃に移る。アサルトライフルを構えると、諏訪にむかって発射。

 

「くっそ・・・!こりゃ死んだな、俺!」

 

諏訪はそう言うと両手にショットガンを構え犬飼に向けて発泡。高威力の散弾が犬飼を襲う。撃った直後、諏訪の体は犬飼の射撃により貫通された。犬飼も体に無数の穴が空いているかに思われたが、

 

 

「ナイス辻ちゃん。」

 

 

辻の集中シールドにより諏訪の最後の攻撃は防がれてしまった。諏訪はそれを見届けながらベイルアウトして行った。

 

ベイルアウトして行った諏訪と水上を横目に、南沢は樫尾へと剣を振るう。すんでのところで致命傷を避けたが、右肩に大きな亀裂が入る。止めを刺そうともう一度剣を振るおうとした時

 

 

「よくやったカシオ。」

 

 

煙の中から隊長である王子一彰が現れた、南沢の首を掻っ切った。

 

「え?まじで?」

 

あまりに急なことに動揺しながらも、南沢の体は崩れ始め、脱落を告げる機械音を残しながら飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで屋外から蔵内隊員のサラマンダーでの奇襲!王子隊が生駒隊の二人を沈めて2得点、二宮隊もすぐに反応して諏訪隊長を倒して1得点をあげました!」

「サラマンダーはハウンドとメテオラの合成弾です。追尾性能を持った炸裂弾で、大きな破壊力が特徴です。」

「気候を暴風雨にしたのは、自分たちが中に入っていると無意識に思わせるためだな。そんな時に外からいきなりあんなん食らったらそりゃ驚く。」

 

迅と太刀川の解説を聞き、綾辻は頷きながら話を展開する。

 

「樫尾隊員が水上隊員を、犬飼隊員が諏訪隊長を、そして王子隊長が南沢隊員を撃破しましたが、お二人はどう見ますか?」

「王子隊の作戦の成功と言っていいでしょう。樫尾隊員がダメージを負ってしまいましたが、2得点出来ました。それに犬飼隊員は蔵内隊員のサラマンダーにいち早く気付いていました。そのおかげですぐに攻撃に移れました。」

「逆に生駒隊と諏訪隊、特に諏訪隊は結構しんどいぞ。イコさんは今1対2だし、近くに二宮もいる。隠岐の居場所がまだ割れてない分それをどう活かすかだな。」

 

太刀川の発言に迅は同意を示し、続く。

 

「諏訪隊は指揮を取っている諏訪兄弟が2人ともベイルアウトしてしまいました。それに2人とも位置がバレている。諏訪隊は少ないチャンスをモノにできるかが鍵になりそうです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「日佐人、諏訪さん達の分も俺らがやるぞ。」

「はい・・・!」

 

点を取れずに散っていった仲間のためにも、簡単に帰るわけにはいかない。まずは、目の前の敵に集中する。そこへ、

 

 

 

「お前らは王子達をそのままやれ。隠岐には注意しろ。」

「辻、了解。」

「犬飼了解ー。」

 

 

 

絶対的エースが登場した

 

 

 

 

「こっちは俺がやる。」




凄く久しぶりに連日投稿出来ました。そして、UAが2万いきました!ありがとうございます!初めて小説を書いてみて、最初はこんなにも読んでもらえるとは思っていなかったので素直に嬉しいです。

これからもこの作品を読んでくださっている方々が面白いと思えるような物を作ることが出来るよう頑張りますので、これからもこの作品をよろしくお願いします!

感想もお待ちしております。


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ROUND3 ④

 

「B級ランク戦ROUND3夜の部も中盤戦に突入しようかという所。これまでの得点を振り返ると、王子隊、二宮隊が2得点0アウト、諏訪隊と生駒隊は無得点2アウトとなっています。」

「今回マップ選択権があった王子隊の作戦が上手くハマっていますね。気候を暴風雨にしたり、屋内戦になる可能性が高い市街地Dを選ぶことによって敵を上手く屋内に誘導しました。」

「二宮隊はサラマンダーにも対応出来てたし、そん中でもしっかり得点している辺り流石だな。」

 

2人が言うように、地形戦を仕掛けた王子隊、不測の事態に素早く対応したB級一位の二宮隊が戦況を有利に進めていた。

 

「諏訪隊と生駒隊についてはどう思いますか?」

「この2部隊は本来数的有利を活かして戦う事が多いですが、半分落とされ、諏訪隊に至っては主軸メンバーが落とされてしまったのが痛いですね。それに生き残っている堤、笹森両隊員も生駒隊員と二宮隊長に挟まれているのでかなり厳しいと思います。」

「隠岐の居場所がわれてない分、生駒隊はまだマシだな。不利なことに変わりはないが。」

「隠岐隊員の場所が分からないと二宮隊長は迂闊にフルアタック出来ませんからね。」

 

綾辻は迅と太刀川の解説を聞き終えると、再びモニターに目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

「アステロイド」

 

二宮はそう言うと堤にアステロイドを放つ。すかさずシールドでガードするが背後から生駒も斬りかかってくるのを日佐人が間一髪で受け止めた。堤はシールドを解除し二宮にショットガンを放つ。しかし横に回避しながらハウンドを放たれシールドでガードでするが、その一部が鍔迫り合いをしていた日佐人にも襲いかかる。堤は日佐人の背後にもシールドを出しなんとか防御する。攻撃を何とか防ぎ切ると日佐人はなんとか生駒を押し返し、屈む。その奥から堤が生駒にショットガンを放ち、日佐人もしゃがんだままアステロイドを放った。ガードするが防ぎきれず体に少し傷が入った。

 

 

 

「諏訪隊は生駒隊長を2人で落としてなんとか一点を、といった所でしょうか。でも、B級上位はそんな簡単にはいきません。」

 

 

 

二宮は3人に向けフルアタックの構えを見せる。

 

「堤先輩、二宮先輩がフルアタックを!」

「なに...!スナイパーの居場所がまだ分かってないのに...」

 

そう堤が考えていたその瞬間

 

 

 

 

堤の心臓が貫かれていた。

 

「堤先輩!」

 

日佐人の叫びも虚しく、堤の体は崩れ始める。そこに二宮のフルアタックが3人を襲い、日佐人に無数の穴を開けた。生駒は二宮のフルアタックを見た瞬間生駒旋空を放ち、3人の体を真っ二つにしてギリギリシールドで防いだ。

 

 

「あっぶなかったー。でもこれこそ漁夫のr」

 

 

そう言っている途中で上からのハウンドに体を貫かれた。

 

「二宮あいつ人が喋っとんのに...」

 

 

悲しそうに呟きながら4人はベイルアウトしていった。

 

 

 

 

 

 

 

「ここで一気に4人がベイルアウト!隠岐隊員が堤隊員を、二宮隊長が笹森隊員を、生駒隊長と二宮隊長が相打ちという結果になりました。」

「生駒旋空は3人を倒したかのように見えますが、笹森隊員は二宮隊長のフルアタックで既にやられていたので、結果的には1得点でしたね。」

「ここで諏訪隊は無得点のまま全滅ということのなりましたが、太刀川さんはどう思われますか?」

 

そうだなーと顎を触りながら太刀川は答えた。

 

「諏訪隊は終始後手に回ってたな。初期位置が悪かったのもあるが、各々まだやれることはあった。しっかり出来てたら何点かは取れてたと思う。ま、詳しい話は試合が終わってからだな。」

 

 

 

 

 

 

「すみません、俺が不甲斐ないばっかりに...」

 

諏訪隊の作戦で堤が頭を下げていた。

 

 

「お前だけの責任じゃない。これはうちの隊全体の責任だ。」

「いや、隊長のくせに何も出来ずに終わっちまった俺の責任だ。」

 

 

諏訪は歯を食いしばるように声を絞り出した。

 

 

今回の敗戦で1番足を引っ張ったのは自分だと各々が考える。

 

オペレーターの小佐野も自分が上手くオペレート出来なかったと、いつもの明るさも影を潜めていた。

 

 

 

初めての上位で浮かれていたか?いや、そんな気持ちの問題ではないと言うことは分かっていた。

 

 

単純な力量不足

 

 

B級上位はそれなりに戦えるだけでは、得点することすら難しい。

 

 

 

全員がそれを分かっているからこそ現状が歯痒かった。

 

 

そんな中、諏訪が声を上げる。

 

 

「今俺たちにできることは、少しでも早く強くなることだ。そのためにもまず何が足りないのかと何が俺たちの強みなのかを形にしねーとだな。」

 

 

諏訪の発言に全員が頷く。

 

悔しいことに変わりがないが、悔しいままで終われない。

 

 

それぞれが決意を新たにし、作戦室にあるモニターで試合の続きを見入っていた。




投稿が暫くあいてしまいすみませんでした。私用で数ヶ月投稿できなかったのですが、本日から再開します。
久しぶりに執筆すると、こんなにも難しかったのかと衝撃を受けました。
上手く言葉にできなかったり表現できなかったり、行の開け方も忘れたりと悪戦苦闘しましたが、なんとか書く事が出来ました。
これから練習して読みやすい物を書けるように精進しますので、よろしくお願いいたします。

次話から少しずつ文字数も増やしていきます。


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