謎の世界で生き残るために傭兵団作った (全力執奏)
しおりを挟む

捏造設定とか色々。

日本国召喚は政治家や外交官の話し合い、現代兵器の無双が大好きですが、私には書くことが出来ず、こんな形になりました。

ファンの方はお逃げ下さい。


細かいことはスルーで




・暁古城(憑依)

 

能力

 

前世で読んだ、見た、遊んだ。漫画、ラノベ、アニメ、ゲームの能力や物(人物)を使ったり、生み出す、呼び出すことが出来る。

 

一部の能力やモノは使用不能。古城は女神によるバランス調整だと考えることにした。

 

一日に産み出せるモノの量に制限はあるが、かなりの量を産み出せる。

 

ただし、この世界でも手に入る資源などは、生み出せない。貴金属や原油(艦これ・アズレンなの物)など。(ナノマテリアルなどの特殊資源は可能)

 

ただし、ゲームなどで手にいれた金貨などは、所持していた分を取り出せる。

 

古城は第二次世界大戦のゲームなどを遊び倒していたので、石油などはかなりの量を保有しているが、無限ではない。

 

 

 

・呼び出されていない登場キャラ(一部だけ)

 

蒼き鋼のアルペジオ

 

 

ヤマト

 

従ってくれそうだけど、何しでかすか分からない怖さがあるので、産み出すか悩んでいる。

 

ムサシ

 

歳上趣味のファザコン趣味だと、古城が思っているので、現状は産み出すことを考えていない

 

401とクルー

 

呼び出すとどっか行きそう。敵に回すと厄介すぎる為に産み出せず。

 

タカオ

 

千早群像に着いていきそうなので産み出せず。

 

ヒューガ

 

メカニック要員て是非とも欲しい人材だが、イオナ・ラブなので産み出せず。

 

 

艦これ、アズレン勢に比べて、霧の艦隊は数少ないが武装が現代兵器を遥かに上回り霧の生徒会メンバーなどももいるので、十分だと思っている。

 

 

・アドミラリティ・コード

 

メンタルモデル達は、古城(憑依)が、アドミラリティ・コードではない。と分かっているが、この世界に自分達を産み出すことの出来る、アドミラリティ・コードと同じ上位存在だと認識している。

 

 

ちなみに、霧の艦隊は漫画版。

 

 

 

・ホワイトベースクルー

 

自分には、ホワイトにのクルーを制御は出来ないと判断して産み出すのは諦めた。

 

 

・アトリエ主人公達

 

何を作り出すか分からないので、断念。

特にアーランド系には恐怖を感じている。

 

・ストライク・ザ・ブラッドのヒロイン達

 

何故か呼び出せず。出来ないなら仕方がないと使用出来ない能力と同じく諦めている。

 

ただ、姫柊のことを思い出そうとしたら少し頭痛に襲われた。

 

 

 

・現在の主な人員

 

 

ホムンクルス(アトリエ)

 

妖精さん、饅頭、アイルーではやりづらい仕事を行う人材として、作られた。

 

性能はそれぞれの仕事に合わせて作られているので、ある程度訓練を積めば問題ない。

 

クローンのようにそっくりだが、目の色髪の色。身長など実は個性がしっかりとある。

 

 

・妖精さん

 

艦隊これくしょんに登場する可愛い妖精。

 

古城と古城が産み出した者にだけ見えるが、見える者にも個人差があるもよう。キリシマ(蒼き鋼)は全く見えない。

 

実は全体的に、かなりの戦闘狂であり、マッドサイエンティスト。

 

 

・饅頭

 

この物語では、妖精系。ただし、一般人にも見える存在。

 

妖精さんと共にサイズを変えて、戦艦の乗組員や艦載機やMSのパイロットをしている。

 

常識的。

 

 

・アイルー

 

農業や鉱山、後は護衛の兵士、ニャンターも居るので、獣や魔獣を狩っている。

 

単純な機械操作は出来るが、パイロットなどは無理。

 

ゲーム仕様なので、不死の存在。

妖精さん、饅頭に並ぶチートな存在。

 

 

・シン マツナガ

 

悩んだ末に古城がMSパイロットの教官として呼び出した方。

本編にはあまり出てこない。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

原作前

 

 

 俺は元フリーターの三十路のオッサンだった。

 

 けど、ひき逃げに合い死亡した。で、女神を名乗る光の球から、異世界へ送るからどんなチート能力が欲しい? と聞かれたので少し迷ったが、俺は「俺が今まで視聴、遊んだゲームやアニメ、漫画、ラノベの力や物を自由に使ったり、生み出せる力が欲しい」と。

 

 

 

 で、気が付いたら、俺は半径五百メートルくらい無人島で横たわっていた。

 

 無人島に生えていた大型冷蔵庫サイズの花が、とても地球の植物には見えないので、ここが異世界だと納得し、俺は色々と能力を使おうとして気づいた。

 

 なんか、身体が死ぬ前の俺では無い。

 

 慌てて、鏡系のアイテムを取り出して自分の顔を確認すると、ストライク・ザ・ブラッドの暁古城になっていた。

 

 

 

 なんで!? と思ったが、男キャラで一番好きなのが暁古城であり。俺の身体は事故でぐちゃぐちゃになったらしいから、代わりとしてこの形になったのか? と一応は納得しておいた。

 

 

 

 もちろん、暁古城が使えた十ニの眷獣は使えた。試し撃ちとして海に【獅子の黄金】を使ってみたけれど、三巻で魚を取ろうとした古城みたいに、海水でびしょ濡れになった。

 

 それから、俺は自分の能力を確認した。

 

 

 

 魔法はあらかた使える。魔法少女まどかマギカのソウルジェムまで有った時は驚いたが、どうやらこれはレプリカらしい。試しに使ってみたら、変身できた。ソウルジェムは濁らず、俺の魔力で魔法を使える。

 

 

 

 誰も居ないから、使ってみたけれど、誰かに見られたらマミりたくなるので即座に解除した。

 

 

 

 それとザオリクやリザレクションなどの蘇生魔法。スタンドのゴールド・エクスペリエンス・レクイレムなどの強力な能力などは使えなかった。

 

 流石に何かしらの問題があると判断したのだろう。

 

 

 

 ぶっちゃけ、目の前に鎮座しているガンダムを見て、世界の文明レベルによってはこれだけでも凄まじい物になる。ってか、第四真祖の力だけでもこの世界では十分チートかもしれない。

 

 

 

 けれど、やはり不安に思うのだ。

 

 一部の俺の知っている最強能力や道具が使えない。

 

 と言う訳で、まずは拠点を作る為に海を移動できる仲間……と言うか、嫁を呼びだすことにした。

 

 

 

「これからよろしく頼むな。大和(艦隊これくしょん)、長門(アズールレーン)コンゴウ(蒼き鋼のアルペジオ)」

 

 

 

「はい、任せてください。提督」

 

「うむ、この長門に任せるが良い。指揮官」

 

「了解した。アドミラル」

 

 

 

 こうして、俺は周辺海域を探索。結果、大小複数の小さな大陸と島を発見。

 

 広さ的には日本より一回り大きいと分かった。

 

 

 

 それからしばらくして。

 

 新しく見つけた小さな大陸。名前が決まらなかったので暁の大陸と命名。その東の沿岸部に作られた基地の会議室で俺は唸る。

 

 

 

「うーん、妖精さん達のお陰で、家などは何とかなったけれど、やはり不安だ」

 

 

 

 戦艦を実体化させた大和(艦これ)の自室で、俺は悩んでいた。

 

 既に大勢の艦娘、KAN‐SEN、メンタルモデル。を呼びだし、暁の大陸を開発中だ。

 

 大陸と周辺の島の調査を行い、皆の意見を取り入れて、開発と都市計画を考える。

 

 現在それを実行中である。妖精さんと饅頭とアイルーの能力がマジチート。

 

 

 

「提督、現状の戦力でもまだ不安なのですか?」

 

「流石に心配が過ぎるのではないか、指揮官。この世界にはセイレーンもおらぬぞ」

 

 

 

会議に参加している大淀(艦これ)と長門(アズレン)の言葉に頷くが。

 

 

 

「そもそも、メンタルモデル。霧の艦隊が呼びだせた時点で、正直不安しかない」

 

「ぬ、それは、まあ。確かに」

 

「そうですねぇ……」

 

「…………」

 

 

 

 長門(アズレン)と大淀(艦これ)の言葉に、会議に参加しているコンゴウ(蒼き鋼)が、無言になる。

 

 既に、艦これ勢。アズレン勢。蒼き鋼勢は合同演習などでお互いの力を認め合っている。

 

 

 

 と言うか、艦これ勢とアズレン勢が、蒼き鋼勢に「いくらなんでもあのバリアは卑怯!」と叫んだのは記憶に新しい。

 

 

 

 ただ、模擬戦は結果的に勝っているし、クラインフィールドも実のところ、力ずくで破られている。

 

 

 

 強制波動装甲は流石に実弾でどうなるかは、試していないが、コンゴウなどは「クラインフィールドなしで、集中砲火を食らえばタダでは済まないと」計算したようだ。

 

 

 

 と言うか、この世界に呼び出した三者はぶっ飛んだ力を持っているのが分かった。

 

 

 

 大和(艦これ)曰く「恐らく本来の性能+錬度(レベル)、搭載兵器が強化されているので、艦娘になる前の、私(大和)の砲撃よりも今の方が更に強くなっています」とのこと。

 

 

 

 アズレン勢も同じようで、ハッキリ言って錬度によって差はあるが、大和(艦これ)の場合、史実の45口径46センチ砲の威力がトンデモナイことになっている。

 

 

 

「アドミラル、ではどうするのだ?」

 

「うん、いざという時にこの星から逃げる為に、アレを呼びだそうと思う」

 

「アレ? とはなんじゃ、指揮官よ」

 

「ふふ、それは見てからのお楽しみ。ああ、それと新しい仲間も追加するかもしれないからよろしく」

 

「分かったぞ」

 

「はい、皆にも通達しておきます」

 

「今、連絡した」

 

「よろしい、では。会議を始めようか」

 

 

 

 こうして、暁の大陸の開発の話し合いが進んでいく。

 

 幸い日本に近い気候なので、牧場物語の能力と種が大活躍した。

 

 食事を必要としないメンタルモデル達も、これには喜び。

 

 更に艦娘やKAN‐SEN達も暇な時は畑の仕事手伝ってくれた。

 

 

 

 

 

「こ、これは、なんじゃ……指揮官」

 

「ん、ああ、これがアレだよ。置く場所が無いから生み出せなかったけれど。妖精さん達と饅頭、アイルー達に頼んで着陸できるところを作ってもらったんだ」

 

「ど、道理で、強大な滑走路を造ると思いましたが、この大きさなら納得できます」

 

「流石はアドミラルだ」

 

 

 

俺達の目の前にある超巨大な人工物の名前は、マクロス。

 

全長は1210メートル。全幅465メートル。全高335メートル。

 

五万八千人が暮らすことのできた、航空母艦である。

 

 

 

「で、ですが、これを運用するとなると、人員が」

 

「それについては問題ない。なんか知らないけれど、これ俺の指示で細かい動きは無理だけど、ある程度動かせる。更にオートでも動くぞ」

 

「え?」

 

「ぬ?」

 

「ほぉ」

 

 

 

 正直なところ、アニメ原作のキャラ達を呼びだすと、多かれ少なかれ衝突する可能性がある。だから、俺はガンダムなどの兵器は物だけ取り出して、動かせる確認をした。

 

 幸いガンダムなどのMSや他のロボットは動かし方が自然と分かった。

 

 問題なのはホワイトベースやマクロスなどの動かすには複数の人間が必要な乗り物だ。

 

 嬉しいことに、これもオートで動かせた。と言うか、恐らくギレンの野望というゲームの影響があるのではないか? と考えている。

 

 

 

 実はMSから降りた時に、俺の目の前にウインドウが現れてこう聞かれたのだ。

 

 オートモードに設定しますか?

 

 

 

 五秒くらい俺は固まってしまった。

 

 ビックリしたよ、マジで!

 

 

 

 で、試しにザクをオートに設定していたら、獣と言うには大きいから、便宜上魔獣と呼んでいる生物。この時はワゴン車サイズの猪が現れた時は、素早くザクマシンガンを構えて発砲した。

 

 

 

 建設中の建物の近くで発砲されて、薬莢が建設中の建物に直撃したので、妖精さんと饅頭達、アイルー達にしこたま怒られてしまい。俺はザクに乗って少し離れた場所にザクを置いたのだが、ザクは勝手に歩きだし、建築中の建物の近くで待機した。

 

 

 

 それから、ある程度実験をしてみると拠点を守ることを優先しながらも、敵を発見した時は攻撃するようだ。味方が数機いる場合は、待機している者と倒しに行く機体があることが分かったので、魔獣狩りの手が足りなかったアイルー達は仕事が楽になったと喜んだが、威力が高過ぎて勿体ないと言われて、結局MSは今現在俺のアイテムボックスに入ったままだ。

 

 

 

「まあ、オートだと全力で攻撃するのが普通みたいだから、正直怖いので、無闇にオートにはしないが」

 

「そんなに恐ろしいのですか?」

 

「艦首砲撃システムは、超重力砲より上だ。範囲が広いから恐らくミラーリングシステムごと撃ち抜くぞ」

 

「ほぉっ」

 

 

 

 大淀の言葉に俺はそう答えると、流石に三人の表情が変わる。特にコンゴウは面白い。と微かに表情を変えた。

 

 

 

「あの提督。マクロスは本当に要りますか?」

 

「ピンポイントバリアと言う防御システムがある。更にマクロスシティなら、外からの侵入を防げるから、外に建てた建物より安全だ。未だにこの世界の人間と会えていないけれど、用心したい」

 

「それは仕方無かろう。この周辺の探索と開発で精一杯じゃ。やはり人手が足らん」

 

「増やしたくても増やせないんだよな」

 

 

 

 原作キャラは大半が良い子ちゃんだ。絶対喧嘩する未来が見える。それに俺はカップリングを大事にする。なので、主人公を呼びだしたらヒロイン達も呼びだすことになる。

 

 

 

 下手に呼び出せば、対立する可能性もある。

 

 正直、何人か会いたいな。呼び出したいな。という人物はいるけれど……。俺だと統率や協力してもらえるか分からないし。

 

 

 

「人手と言う意味なら、トルーパーとかかな?」

 

「とるーぱー? それはどんな人物じゃ、指揮官」

 

「クローン兵士だよ」

 

 

 

 即座に艦これ勢とアズレン勢に滅茶苦茶怒られた。流石にクローン兵士は倫理的に駄目だった。まあ、トルーパーはクローンだけど、個人差があり脱走とかしてるから、出さない方が良いかな。でも、人手が足りない。何か他に良い方法は……。

 

 

 

色々考えること三日後。

 

 

 

 

 

「初めまして、ホムンクルスのホム(♂)です」

 

「初めまして、ホムンクルスのホム(♀)です」

 

「ちむ(♂)」

 

「ちむ(♀)」

 

 

 

「「「「「…………」」」」」

 

 

 

 視線が痛いです。艦これ勢とアズレン勢の。また女の子ですか?みたいな。いや、男の子もいるからね!?

 

 

 

「はぁ、妖精さん達もどこからか増えていますが、今後のことを考えれば彼、彼女達は必要でしょう」

 

「まあ、この辺が落としところかの」

 

「アドミラル、もしかして男もイケるのか?」

 

「くまは黙ってろ!」

 

「くまじゃねぇよっ!!」

 

 

 

 キリシマ(蒼き鋼)を無視して、俺は皆に説明した。

 

 一応、妖精さんや饅頭も戦艦(ホワイトベースやマクロス)を操作・操縦が出来ることが分かった。

 

 もちろん、要訓練だが。

 

 

 

 その際、問題が発生した。それは身体の大きさだ。

 

 妖精さんは手のひらサイズ。饅頭はぬいぐるみサイズ。

 

 

 

 お前等、もう少し大きくなれない? と聞いたところ。妖精さんは「消耗が激しい」と言われ、饅頭は「同じく疲れる」と言われた。

 

 なので少数ではあるが、ホムンクルスを作った。アトリエシリーズの力でな!!

 

 後はちむちゃん達は、偶然二人だけ生まれた。他にもアトリエのオートマータも作っている途中だ。ニーアオートマータのB2なども呼ぼうかと思ったが、仮に人間との争いになった場合、心を病む可能性が高いので、本拠地だけで、運用することを視野にいれている。

 

 

 

「じゃ、この大陸の探索もある程度終わったし、建設も終わった。そろそろ西と東へ調査しに行こうか」

 

 

 

 この二週間後、妖精さんや饅頭、アイルー(陸戦要員)とホム達の訓練を終えたマクロスは西へ。新しく生み出したホワイトベース三隻は東へと向かった。

 

 

 

 もっと強い戦艦に乗せようか迷ったが、仮に調査隊が被害を受けるのであれば、この世界の脅威度が分かる。

 

 ちなみに、東の調査隊は戦闘を目的としていないので、妖精さんと饅頭。メンタルモデルの伊400と伊402が載っている。

 

 

 

 現在の調査で、海には巨大生物は確認されていない。

 

 妖精さんと饅頭達とアイルーは不死の存在で、一定のダメージを受けると消えて俺の所に戻ってくるらしい。と本人達が言っていた。アイルーは海でも地中に潜るという、訳の分からない能力持ち。

 

 なので、ある意味で安心して派遣できる。

 

 

 

 問題はホムンクルスと伊400と伊401だ。だから、キメラのつばさを全員に持たせた。大魔王でも現れない限りは帰ってこれるはずだ。

 

 

 

 もちろん、戦力はしっかりと確保している。

 

 偵察機にディッシュ。対潜にドンエスカルゴ。爆撃機はデプロック。

 

 

 

 水中MSはズゴックEとハイゴック。空中は可変型MSを乗せるか迷った。

 

 今回は見送ることにして、Gファイターとガンダムにした。いざというときは、分離しろと。

 

 

 

 とは言え、妖精さん達や饅頭はMSよりも戦闘機の方が好きらしいのでGファイター。ホム達はガンダムとズゴックE、ハイゴックにした。量産型ホム達はまだMSに乗り始めたばかりで、可変型のMSの操作はまだ難しいそうだ。訓練時はなかなかの動きだったけど。

 

 

 

「人は、人類は居るのだろうか? かなり不安になってきた」

 

「そんなに構えるな、指揮官。何があろうと。この長門が守ってやろう」

 

「うん、その時は頼むよ」

 

 

 

 不安は大きい、けれど、それと同じくらい。ドキドキワクワクしている。

 

 この世界はどんな世界なのだろうか、と。

 

 

 

「提督、御指示を」

 

「我々は、これより西へ向いこの世界の探索を開始する。マクロス。発進!」

 

「了解しました。マクロス。発進します!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「し、指示出すのって、結構気恥かしいね」

 

「ははは、そのうち慣れるぞ」

 

 

 

 マクロスが発進して、六時間後。休憩の為に俺は艦長室へ戻ったのだが、冷静になると急に気恥かしくなって、長門に膝枕で慰めてもらった。

 

 

 

 気持ちが分からない人は部屋で、試しに艦長ごっこをしてみると良い。

 

 なんか知らないけど、恥ずかしくなるから。

 

 

 

 いや、元々俺と言う人間が人の上に立つ側の人間じゃないから、気恥かしくなるのかもしれないな。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

初めまして、こんにちは!

・クワ・トイネ公国軍第六飛龍隊 

 

 

 その日は快晴な空が広がっていた。ワイバーンと呼ばれる飛龍を操り、竜騎士であるマールパティマは、公国北東方向の警戒任務についていた。

 

 

 

 公国北東方向には、国は何もない。東に行っても、海が広がるばかりであり、幾多の冒険者が東方向へ新天地を求めて進行していったが、今まで帰ってきた者はいない。

 

 

 

 哨戒勤務の必要性、それは最近ロウリア王国と緊張状態が続いているため、軍船による迂回、奇襲が行われた場合に早期に探知、対策をとるため、彼は相棒を公国北東の空へ飛ばしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――!?」

 

 

 

 

 

 

 

 彼は何かを見つけた。

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ!あれは」

 

 

 

 

 

 

 

 自分以外にいるはずの無い空に、何かが見える。かなりの距離があるのにも関わらず、それは巨大だった

 

 

 

「な、何だ!? あれは?!」

 

 

 

 

 

 彼は、すぐに通信用魔法具を用いて司令部に報告する。

 

 

 

 

 

 

 

「わ、我、ひ、飛行物体を確認!! きょ、巨大な、とにかく、巨大な何かが接近してくる!!!」

 

 

 

 

 

 あまりの非現実に彼は暫し呆然とした。そして、自分が見ている物が幻ではないことを確信した

 

 

 

 驚愕、ただひたすら驚愕するしかない。徐々に近づいてくる巨大な飛行物体。

 

 

 

「司令部!!司令部!!!! お、応援を!!!!!」

 

 

 

そして、要請を受けて、十二騎のワイバーンが合流。

 

 

 

「あ、あれは、一体なんだ!?」

 

 

 

彼等が到着した時には巨大な何かは動きを止めていた。

不気味なほど、静かに空に浮かんでいた。

 

 

「だ、団長! な、何かが飛んできます!?」

 

「なに?」

 

 

 

叫んだのは、部隊で飛び抜けて眼が良い団員だった。

 

そして、団長のイーネが目を凝らすと、確かに何かを此方に飛んできた。

 

 

 

だが、それは彼等にとって、あり得ない光景だった。

 

 

 

「ひ、人が空を飛んでいるぅっ!?」

 

 

 

遠くから声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

――~ぃ。

 

 

 

「な、何だ?」

 

 

 

――ぉ~……お~ぃっ。

 

 

 

そして、それはワイバーンの速度を軽く越えてこちらに飛んできた。

 

 

 

「ぜ、全員警戒!」

 

 

 

団長イーネは反射的そう命令した直後。

 

 

 

――初めまして!

 

 

 

「はっ?」

 

 

 

――俺は暁古城! 初めまして!!

 

 

 

と、ハッキリと声が聞こえた。

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

 

 

ファンタジーは凄いね。中世くらいの文明に領空侵犯という概念があるとは!

 

 

 

まあ、ワイバーンと言う飛行ユニットがあるから、生まれたのだろう。

 

 

 

さて、俺は無事? クワ・トイネ公国の御偉いさんと会うことが出来た。

 

 

 

流石にマクロスのインパクトが大きかったらしい。

 

 

 

俺が「マクロス、後ろから近づいている空母ね。あれをどこかに着陸させたいのだけど、許可をもらえませんか? 後、入国許可と商売などの話をしたいのですが」とワイバーンに乗っていた隊長に伝えると、即座に御偉いさんに会わせてくれた。ありがたいねぇ。

 

 

 

ワイバーンも巨大な飛行物体に不用意に攻撃することはなかったので、ホッとした。

 

 

 

まあ、後でワイバーンに乗っていた騎士と話したら、「デカ過ぎて攻撃しても意味がない」と感じたらしい。

 

 

 

まあ、ワイバーン部隊の団長は「後、もう少し近づいてきたら、国防の為に駄目もとで攻撃した」と言われて、俺はさっさと舞空術を使って、ワイバーン部隊に挨拶しに行って正解だったと安堵した。攻撃されたら話し合いどころではないしね。

 

 

 

 

 

それと、俺が安堵してると大淀が「コイツ、仕方がないな」みたいな顔をしていたけど、俺、何かしたかな?

 

 

 

 

 

 

 

で、事前に決めていた設定を御偉いさんに話したら、マクロスのお陰で信じてもらえた。

 

 

 

簡単に言うと、俺達は別の世界から転移してきた。

 

で、誰も住んでいない大陸を見つけて、住み始めた。

 

この周辺に人はいるのか調べるためにここへ来た。

 

 

 

ちなみに国と名乗るのではなく。暁の傭兵団と名乗った。

 

 

 

文明レベルが現代なら、小さな国。とでも言って、外交とか頑張ったかもしれないが。

 

 

 

武力方面では確実に此方が上? だと思う。

 

なので外交とか国の面子が掛かった話し合いなどを回避するために傭兵団と名乗ったのだが。

 

 

 

なんか、すげぇ食いつかれた。

 

 

 

詳しい話を聞くと、この大陸にはクワ・トイネ公国、クイラ王国、ロウリア王国があるのだが。

 

 

 

ロウリア王国が、亜人差別主義らしくかなり険悪なヤバイ感じらしい。

 

 

 

なので、味方になってほしいと言われた。

 

 

 

俺はとりあえず、この国とロウリア王国の話を聞いてみて、ロウリア王国は今後、俺達が平和な時を過ごすために倒さないと不味い勢力だと断定した。

 

 

 

まず俺、吸血鬼だし、命狙ってくるのは分かりきっている。

 

 

 

その後、この国の貨幣の価値(金貨や銀貨だったなで)や物の相場を確認して、一度マクロスに戻った。

 

 

 

マクロスシティの会議室で、皆に事情を説明。

 

 

 

大淀や明石(アズレン)、不知火(アズレン)などを交えて、傭兵団の料金表を作り、大戦艦コンゴウ(蒼き鋼)に乗って(実はマクロスの上に乗っていた)、マクロスの上からホバーのように飛んで、滑空しながら海に着水。

 

 

 

パフォーマンスではないけど、コンゴウがマクロスから滑空して、かなりのスピードで海を移動するのを見ていたクワ・トイネ公国の御偉いさんと兵士。野次馬が港で出迎えてくれて、大興奮していた。

 

 

 

その後、料金説明を大淀と明石(アズレン)がしたのだけど、顔色が悪かったね。

 

 

 

まあ、MSではデカイし、大戦艦も雇うのに馬鹿みたいな費用が掛かる。

 

 

 

一応、金銭ではなく物や情報でも問題ないと伝えたところ、クイラ王国に油田らしき物があることが分かり、俺達をクイラ王国に紹介することも料金のうちにした。

 

 

 

そして、あれやこれや支払い方法を考えて、その日は終わり。

 

 

 

寝る前に俺はあるゲームのことを思い出した。

 

 

 

 

 

「あっ! そうだよ。アッシュアームズのあの子達なら、安めに料金設定ができるかな?」

 

 

 

早速、俺はアッシュアームズの女の子達、DOLLSを産み出した。

 

 

 

「エージェント、ここは?」

 

 

 

まず、産み出したのは、零戦をモデルにした擬人化美少女のDOLLSだ。

 

 

 

少女には不釣り合いな金属の翼とパーツ、二振りの日本刀。

 

 

 

そして、彼女達は設定上、生産される人形。

 

 

 

「ゼロ、頼みたいことがある」

 

「はい、了解です」

 

 

 

翌日、零戦の彼女達は異世界の空を舞った。

 

 

 

御偉いさん方に彼女達を紹介すると、半信半疑だったので、まずは彼女達同士で模擬戦闘機。

 

 

 

ワイバーンよりも早い速度で空を舞う彼女達に御偉いさん方とワイバーンの部隊員は、唖然としていた。

 

 

 

そのあと、ワイバーン部隊の団長が是非とも戦ってみたいと言うので、ワイバーンとの模擬戦闘を行い、零戦達が完勝。

 

 

 

雇うための費用もMSよりも安いので、カナタ首相達はかなりホッとしているようだ。

 

 

 

ゲームでは生産ストックは30体くらいまでが上限だったが、この世界では制限がない。

 

 

 

こうして、大量のDOLLSが生産された。

 

 

 

ちなみに、

 

 

 

「か、彼女達は随分と外見が似ているが……?」

 

 

 

零戦とティーガー、ワイルドキャットを百人単位で紹介したら、滅茶苦茶驚いていたので。

 

 

 

「そう言う種族です」

 

「種族?」

 

「はい、DOLLSと言う私の居た世界の特殊な種族です」

 

 

 

俺の説明に、異世界ならそう言う種族もいるか。と納得したようだ。

 

 

 

もちろん、内心は分からないが。

 

 

 

こうして、俺達暁の傭兵団はクワ・トイネ公国に雇われたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

▼△▼△

 

 

 

 

 

・暁の大陸 第一基地 食堂

 

 

 

暁の大陸にある暁の傭兵団の基地の食堂で、赤城(艦これ)は、何時ものようにどんぶり飯をモグモグと食べていた。

 

 

 

「むむっ、今日のお昼のオカズは、クワ・トイネ産の物ですね」

 

「貴女、相変わらずね」

 

 

 

トレーに昼食を乗せた赤城(アズレン)が、赤城(艦これ)のトレーの上に乗っている昼食の量に呆れながら、赤城(艦これ)にそう言い、赤城(艦これ)の向かい側に座る。

 

 

 

赤城(アズレン)と赤城 (艦これ)は最初こそ、同じ男性を愛するがゆえ、かなり険悪だったが、今では仲良くしている。

 

 

まあ、古城をめぐって水面下でバトってはいるが。

 

 

 

「はい、提督が作った作物と比べると、ここまで味が違うと困ってしまいますね」

 

 

 

赤城 (艦これ)の言葉を聞きながら、最近この食堂で食事をしていなかった赤城(アズレン)は、そんなに違うのか? と思いながら、一口食べてみると。

 

 

 

「……なるほど、これは確かに違いが分かりますわね。悪くはないのですが、比べてしまうと。やはり、指揮官様は凄いですわね!」

 

 

 

指揮官(古城)至上主義な、赤城(アズレン)がうっとりとする。

 

ちなみに古城の作る作物は、牧場物語にて品質を最大クラスに上げた物で、この世界の上質な物とは比べ物にならない作物だったりする。

 

 

 

「でも、食料が足りているのに、どうしてこんなに食料をもらったんでしょうか?」

 

 

 

声を上げたのは、ちょうど昼食を食べにきた吹雪(艦これ)だ。

 

彼女はトレーを持って、赤城(アズレン)の隣の席に座り、昼食を食べ始める。最初こそアズレン勢と距離があったが、今ではそれもない。

 

 

 

「支払いの関係ですわ。指揮官様達と調べたのですが、此方の所持している兵器の性能が高すぎて、依頼料金も上がってしまいましたの」

 

「あー、確かに聞いてる限りこの世界の技術力は低いようですし、それを考慮すると値段も相応になりますね」

 

 

 

大変だなぁ、吹雪は思う。

 

実のところ、クワ・トイネ公国は依頼料金は既にかなりの額を支払い済みである。

 

 

 

と言うのも、自給自足が出来ていること。この世界で初めての依頼。ロウリア王国の危険性などを考慮して、特別(割引)料金プラン、松竹梅を提案。

 

 

 

此方の兵器の性能を知っている上に、どうやらクワ・トイネのスパイが何かを掴んだらしく、一番高いがお得な料金の松プランで依頼してきた。

 

 

 

「あ、やっぱり味は美味しいけど、足りないですね」

 

「そうね。……西の第三基地(ユニオン勢が担当)の補給はクワ・トイネ産を送りましょう」

 

「あははは、怒られますよ」

 

 

 

雪風の言葉に赤城(アズレン)がそう言うと、赤城(艦これ)と吹雪(艦これ)は苦笑いした。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

暁市とギムの町での話し合い。

クワ・トイネ公国

 

 

 

 

 

 クワ・トイネ公国の御偉いさん達との詳しい話は大淀(艦これ)達に任せて、俺は明石(アズレン)の提案された商売の話をクワ・トイネ公国の別の御偉いさんと話をする。

 

 

 

 日本で言う経済産業省だったけか。まあ、財務に関わる御偉いさんに此方の計画を話す。

 

 

 

「イベントですか?」

 

「はい、暁の傭兵団が販売できる品物の一部を一般にも販売し、我々暁の傭兵団が傭兵以外にもこういう物を売っていることを知ってもらおうかと思いまして」

 

「なるほど、それはこちらとしても問題はありません」

 

 

 

 こちらが保有している兵器の実演はすでに終わっている。

 

 

 

 クワ・トイネ公国が此方を雇う為に必要な費用は、貨幣だけでは払いきれないので、食糧や商売の許可、一部の税金の免除。土地租借(戦争の為の滑走路建設、補給基地建設)など色々な形で支払ってもらった。

 

 

 

 この後、販売禁止の物。麻薬などは製造していないが、念の為に宗教的に販売すると駄目なヤツなどが無い確認を取り、クワ・トイネ公国と遭遇して一カ月後。

 

 クワ・トイネ公国の首都の直ぐ近くで、暁市と言う朝一を開催することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――これより、暁市を開催します。警備員の指示に従い、列に並んでゆっくりと移動を開始して下さい。

 

 

 

 

 

 

 

「こちら、間宮の甘味処出張店でーす! あんみつ特別価格です!」「ユニオンの名物の各種バーガー! お一つどうですかー!」『こちらは霧の生徒会です。会場内は走らないでください』「第一警備班、迷子のようです」「こちらは、錬金術で作られた特別なネックレスでして」「はい、ビールおまちどう!!」「凄い、宝石みたいなデザート!」「お帰りなさいませ、御主人様。こちらはロイヤル・喫茶でございます」「重桜の串団子お一つどうですか、食べ歩きにもってこいですよ」「MSザクの展示は―――」「そこの騎士のお兄さん。これは暁の傭兵団仕様の特別な強化がされた鎧で」「花鳥風月!」「カーニバル! だよ!」「これよりDOLLS零戦によるエアショーを」「列にお並びください! ここは最後尾ではございません!!」「ママー! どこー!!」「ねぇ、お姉さんこの後お茶でも」「上手にこんがり焼けました!」

 

 

 

 

 ここは、コミックマーケットか! いや、うん。簡単に会場地を整備、列整理して。イベント当日になったけど、大変な賑わい。警備スタッフが注意事項を大声で叫ぶ。

 

 

 

 うーん、盛り上がっているね。こちらの予想を遥かに上回る人出だ。今まで極少数しか出回らなかった、暁の傭兵団の品物が購入できると分かり、大勢の人間が集まって来ている。これは、明日人員増やさないとな。どこでもドアで、皆を呼んでこないと。

 

 

 

 マクロスはクワ・トイネ公国の首都から丸見えだったので、沢山来るだろうな。と思っていた。その辺は明石(アズレン)達に任せ、開催地はクワ・トイネ公国の近くで開催させてもらった。

 

 

 

 三日間開催する予定で、色々と出しものを考えてもらったのだが、かなり受けているようだ。

 

 特に兵器の展示(MSなどの目立ちのだけ)は、多くの人達が詰めかけている。

 

 

 

 やっぱり、ロウリア王国との戦争が近いので、心配なのだろう。軍艦関係者だけではなく一般人も展示を見て、驚きながらも安堵している。一部恐怖を感じているが。

 

 

 

 最初、兵器の展示は自分で提案しておいてなんだけど、スパイとか大丈夫かな? と心配したが、大淀や赤城(アズレン)に「この世界の兵器の性能の調べた限りでは、見られても相手は対処することは出来ません。ですので、まったく問題ないかと。それに報告されても、敵上層部は信じないかと」「展示のMSには常にパイロットが乗り込み、有事の際は即座に動けるように致しますわ。もちろん、周囲には護衛のDOLLSも配備しております」とのこと、優秀な部下が居ると助かるね。

 

 

 

聞いた話だと列強のムーと言う国は、金属製の戦艦があるらしいが、ロウリア王国は帆船レベルだ、「金属製の巨人に人が乗って戦える」とスパイから報告があっても、本国の御偉いさんは「何言ってんだ、コイツ?」となるだろう。

 

 

 

正直、今の所この世界で、俺達の兵器を撃破するのはかなり難しい。列強の1つ、ムー国の戦艦の艦砲射撃なら、当たれば暁の傭兵団のザクなら倒せるかもしれないが。それとちょっとだけ期待している。

 

 

 

 いや、敵としてでは無くて、ロマンとして。

 

 まあ、一応、どこかに超巨大古代兵器とか埋まってそうな世界だから、警戒はしているが。いざとなったら、ヤバイ感じの兵器を二三個取り出して、蹴散らすつもり。

 

 

 

 それまでは、抑え目の兵器でがんばろう。世界の支配とか興味無いし。

 

 

 

「うん、このツナサラダ・クレープも美味しいな」

 

「指揮官は邪道なのです」

 

「酷い! ってか、綾波(アズレン)、そう言いながら、美味しそうに食べていているじゃないか」

 

「美味しいことは美味しいですが、指揮官が作った物に比べると」

 

「あー、それはな」

 

 

 

 俺は牧場物語などの料理スキルのお陰で、一流のシェフを並みの料理の腕だ。

 

 料理を作っているのは、暁の傭兵団のメンバーやクワ・トイネ公国で雇った従業員。

 

 差が出てしまうのは当然だろうな。

 

 

 

「あ、このエリアでも大分人が増えてきたな。綾波、はぐれないように手を繋ごう」

 

「は、はいです」

 

 

 

 少しだけ、頬を紅く染めて手を差し出す綾波。ああ、俺の嫁かわいなぁ!! とか思っていると。

 

 

 

「あーっ! 綾波ちゃんズルイ!」

 

 

 

 俺が綾波と手を繋いで歩き始めると、後ろから聞き覚えのある声がして、俺達は後ろを振り返ると、警備員の腕章を付けたジャベリン(アズレン)と吹雪(艦これ)が居た。

 

 二人は警備班だったな。

 

 

 

「お、二人ともお勤め御苦労さま」

 

「はい、ありがとうございます提督。……じー」

 

「ジト目で睨まないでくれ、吹雪」

 

「うぅ、ズルイよ、綾波ちゃん。わたしも指揮官と手を繋いで食べ歩きしたい」

 

 

 

 ああ、最近忙しかったからなぁ。ロイヤル勢だけではなく、皆と出来るだけ平等に時間を作っているけれど、人数が多いからな。

 

 

 

「ご、ごめんです。ジャベリン」

 

「いや、ジャベリン、偶々休みが被っただけだからな」

 

 

 

 俺はさっきまで、御偉いさんと話をしていたし、綾波は重桜の露店で調理をしていた。

 

 で、偶然俺が露店巡りをしていると、休憩に入った綾波と遭遇。一緒に行動をすることにしただけだ。

 

 

 

「はぁ、仕方が無い。ジャベリン、警備ルートは?」

 

「え?」

 

 

 

 俺がジャベリンに警備ルートを聞くと、少し驚いた顔をするジャベリンと吹雪(艦これ)。

 

 

 

「綾波、すまないが」

 

「大丈夫なのです。一緒の方が楽しいです」

 

 

 

俺の考えていることを察して、頷く綾波。

 

 

 

「じゃあ、そう言うことだ。四人で」

 

「あら、寂しいこと言わないでください。指揮官様」

 

 

 

 やや、ねっとりとした声でいきなり俺の背後から耳元でささやく声に、若干ぞくぞくしながら、俺は苦笑いを浮かべる。

 

 

 

「分かった。赤城(アズレン)も一緒に」

 

 

 

と言いかけたところで、知っている気配が二つ。

 

 

 

「指揮官、我々も一緒に行こう」

 

「主のお傍に控えるのが、メイドの本分かと」

 

 

 

 エンタープライズとベルファストも合流。その後、徐々に人数が増えていき、流石に通行の邪魔だと、見回りしていた霧の生徒会に怒られた。

 

 

 

 暁市は色々と問題も多かったが、結果だけ言えば大が付くほど成功した。

 

 

 

 クワ・トイネ公国の御偉いさんも、俺達が販売していた物、作った見たことのない料理に驚き、今後も販売をお願いされた。

 

 

 

 露店で販売した料理はクワ・トイネ公国産の食材を使っていたので、自国の食材で新しい料理を知れて嬉しいと、知り合った御偉いさんの料理人をしている人に話が聞けて良かった。

 

 

 

 こうして、暁の傭兵団とクワ・トイネ公国とクワ・トイネ公国民の友好度はかなり上がった。

 

 

 

 

 

△▼△▼

 

 

 

 

 

クイラ王国には資源があった。ロウリア王国の脅威が迫っているので、色々と売ってくれ! と頼んだ。

 

舞空術で行くのが面倒なので、ホワイトベースに乗っていったら、滅茶苦茶怯えられた。

 

知らないうちに砲艦外交になっていたようだ。気をつけねば。

 

 

 

「にゃふふ、良い契約だったにゃ~」

 

「良くやった、明石(アズレン)。ギリギリのラインで契約できたな」

 

「指揮官は心配し過ぎなのにゃ、インフラ整備は此方が全部するにゃ、そのことを伝えたら、尻尾振っていたにゃ」

 

 

 

 まあ、大淀やハルナ(蒼き鋼)も話し合いに参加していた。変なことにはならないだろう。

 

 

 

「モビルワーカーが大活躍にゃ、あれ思ったより凄いにゃ」

 

「ああ、ナノマテリアルのお陰でかなり改造し易い」

 

 

 

 ザクタンクをベースに作業用のモビルワーカーを作ってみたら、思った以上に暁の大陸の開発に役に立ったので、これも今後は商品としてレンタルなどが出来るかもしれない。

 

 まあ、エンジンの誘爆が怖いけど、この世界では滅多に起きないだろう。

 

 ちなみに販売はしない。技術流失が怖い。レンタルする時は監視役も派遣する。

 

 

 

「でも、輸送はどうするにゃ?」

 

「輸送艦(提督の決断Ⅳ)があるから大丈夫だよ」

 

「指揮官、本当に何でもありだにゃ!」

 

「でも、これで艦娘が行動し易くなった。特に大和などの大型艦は不用意に動かせなかったからな。大分助かるよ」

 

「にゃ~、遠征で海から小さなドラム缶を釣り上げる艦娘の姿には度肝を抜かれにゃけど、量は少なかったにゃからにゃぁ~、交渉が上手くいって良かったにゃ~」

 

 

 

 ウチの家計を色々とやりくしている一人なので、ちょっとずつだけど減っていく資源に不安を感じていたらしい。

 

 ま、守銭奴でがめついが、良くやってくれている。

 

 

 

「今日は沢山可愛がってやろう」

 

「にゃっ?! それは指揮官がしたいだけじゃにゃいかにゃ?!」

 

 

 

 顔を真っ赤にする明石に俺は首を傾げる。

 

 

 

「え、ああ、夜じゃなくて、今の可愛がるって意味だったんけど……?」

 

「え」

 

「「…………」」

 

 

 

 しーん、と静まり返る空気。

 

 

 

「夜の方「にゃーっ!!」――ぶふっ」

 

 

 

 俺が言う前に、明石は俺の頬を引っぱたいて、叫びながらどっか行った。

 

 

 

「痛い……」

 

 

 

 戦闘艦ではないが、流石は船。首が千切れるかと思った。

 

 

 

「はぁ、まだまだ駄目だなぁ。俺」

 

 

 

 俺は叩かれた頬を撫でながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

△▼△▼

 

 

 

・クワ・トイネ公国 西部の町ギム 騎士団会議室

 

 

 

 

 

今日、俺は西部方面騎士団団長モイジ殿に会いに来た。

 

ギムの町に配備する部隊の配置について、相談しに来たのだが。

 

 

 

「こ、この映像に映っているもびるすーつと言う、鉄の巨人が援軍として派遣されるのですか?」

 

「はい、いつでもこの町の防衛に参加できますよ」

 

「……信じられませんな」

 

「ええ、後ほど、大型トレーラー。馬を必要としない大型の鉄の馬車と思って下さい。それに乗せたMSを見てもらいます」

 

「おおっ、実物を見せてもらえるのですね?」

 

「はい、こちらの作戦上。まだMSをギムの町で展開するつもりはありません。先日行われた暁市でMSの展示をしましたが、ロウリア王国のスパイの報告をロウリア王国の上層部は恐らく信じないでしょう」

 

「確かに、この映像を見ても信じられません」

 

「はい、仮にMSの報告が行われていても、実物を見るまでは半信半疑のはずです。そして無防備に突撃して来てくれれば、まとめて蹴散らせます」

 

「なるほど、油断をさせるわけですな」

 

「ええ、ワイバーンが高級な兵器で、ロウリア王国はかなりの数を揃えています。それ故に慢心しているはずです。それと此方で貸し出すポーションなどは足りていますか?」

 

「ええ、貴方方が送ってくれた魔法薬のお陰で、訓練も安心して行えております」

 

「それは良かった。ああ、申請した地下トンネルですが」

 

「はい、騒音については、まあ、苦情は来ておりますが、問題の無い範囲です」

 

「そうですか、少々音が大きいので不安でしたが、この戦争が終わり次第埋めますのでご安心を」

 

 

 

話し合いが終わり、マクロスに帰還して、自室で改めて防衛計画を読んでみる。

 

 

 

 今回、ギムの町に派遣するMSは雇われた分だけにするはずだった。

 

 だが、ロウリア王国へスパイ(アイルーと透明マント装備)を送ったところ。

 

 四十万の兵力を送ることが分かった。更にワイバーンも500騎。

 

 追い返すだけなら、雇われた分だけでも十分だが、今後のことを考えると徹底的に倒した方が良い。平和な異世界生活を目指している俺は、希望者を募った。

 

 結果。

 

 

 

「これ、イジメだよな」

 

 

 

 以下、今回のギムの町と周辺に展開する主なMS部隊のリストだ。

 

 

 

MSロロナ中隊 パイロット ホムンクルス 装備機 陸戦型ガンダム 十二機

 

MSトトリ中隊 パイロット ホムンクルス 装備機 量産型ガンキャノン 十二機

 

MSメルル中隊 パイロット ホムンクルス 装備機 量産型ガンタンク 十二機

 

MSルルア中隊 パイロット ホムンクルス 装備機 ジムスナイパー 十二機

 

 

 

 合計 48機、ロウリア王国の兵士にとっては涙目だろう。と言うか、罰ゲームだ。

 

 

 

更にギムの町以外の村などを守るために小規模の部隊派遣も行う。雷(艦これ)やラフィー(アズレン)などの駆逐艦だ。地上でも戦えるので、少数でもちょうど良いだろう。美少女でも身体は駆逐艦。

 

 

 

 本来はこれに、ギムの町を攻撃している間に、南から回り込んで敵主力に攻撃する別動隊も検討されたが、過剰戦力もとい流石にサービスが多いのでは? と、言うことになり、没になった。

 

 

 

「後は、海か。しかし、4000とか数だけはすごいなぁ」

 

 

 

 当初の予定では、雇われた空母四隻の艦載機とDOLLSによる攻撃だけにするつもりだったが、いささか数が多い。と言う訳で、こちらも希望者を募った結果。

 

 

 

 人間サイズになった妖精さん達がパイロットとして、VF-1バルキリーで出撃することになった。

 

 ちなみに、VF-1バルキリーには、オーバーキルすぎるので、大型対艦反応弾は装備させない。ってか、そもそも使おうとするなよ!

 

 

 

 実は割と戦闘狂な妖精さん達が、書類にしれっと装備許可を求めてきて、危うくサインするところだった。

 

 ホーミングミサイルで我慢しろ!

 

 

 

 で、結果的にこちらの海上での戦力は、最終的に空母八隻(その上にDOLLSを百ずつ配置。それ+本来空母が装備している艦載機)とマッドアングラー1隻と水中MS、ズゴックEとハイゴシックを搭載、VF-1バルキリー二十機は直前まで、スモールライトで旗艦となる赤城(蒼き鋼)で預かることになった。

 

 

 

 スパイが手に入れた情報で、亜人への差別が凄まじいことが分かり、みんなはロウリア王国が危険な国家だと認識。

 

 クワ・トイネ公国とクイラ王国の戦争が終わった後、個別でロウリア王国と戦うことも想定している。国家でもない傭兵が国を襲撃しても良いのかは置いておく、最悪、ロウリア軍に喧嘩を売らせて、そのまま王宮突撃する。

 

 

 

 ま、この戦争に勝った後、クワ・トイネ公国に働きかけて、ロウリア王国に差別などの撤廃などを要請するつもりだ。大人しくさせられれば、問題ない。

 

 

 

 大人しくならないなら、本当に王宮に乗りこむ。

 

 美人なエルフやモフモフな獣人、合法ロリなドワーフを迫害するなんて、もっての外である!!

 

と、言う訳で、情報収集しながら、その時を待った。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

運が悪かった、ロウリア王国 大王ハーク・ロウリア34世さん

 ロウリア王国の王都 ジン・ハーク ハーク城の御前会議

 

 

 

月の綺麗な夜、薄暗い部屋の中、王の御前でこの国の行く末を決める会議が行われていた。

 

 

 

 「ロウリア王、準備はすべて整いました」

 

 

 

 白銀の鎧に身を包み、筋肉が鎧の上からでも確認出来るほどのマッチョで黒髭を生やした30代くらいの男が王に跪き、報告するのは将軍パタジン。

 

 

 

 

 

「本当に2国を同時に敵に回して、勝てるか?」

 

 

 

 

 

 やや不安そうに34代ロウリア王国、大王ハーク・ロウリア34世はその男に尋ねる。

 

 

 

「はい。一国は農民の集まりであり、もう一国は不毛の地に住まう者、どちらも亜人比率が多い国などに、負けることはありませぬ」

 

「宰相よ、最近暁の傭兵団と言う傭兵団が騒がれているが、情報はあるか? 何でも巨人を配下に入れているとか、もしや彼奴等は文明圏から流れてきた者達ではあるまいな」

 

 

 

スパイからの報告を聞いて、文明圏から来た連中ではないか? と大王ハーク・ロウリア34世は考えた。距離的にあり得ないが、失敗が出来ない戦いだ。大王は慎重になっていたが。

 

 

 

「いえ、どうやら、文明圏から流れてきたわけではないようです。調べましたところ、ロデニウス大陸のクワ・トイネ公国から北東に約1500kmの所にある。小さな大陸から来たようです。1500kmも離れていることから、軍事的に影響があるとは考えられません。

 

 

 

また、奴らはクワ・トイネ公国のワイバーンを見て、初めて見たと驚き、欲しいと叫んだそうです。竜騎士の存在しない蛮族の国の出身だと思われます。そのような国の出身の傭兵団が列強も保有していない巨人を保有していることはありえません」

 

「ふむ、だがスパイの報告では、傭兵には空を飛ぶことの出来る凄腕の魔導師がいるとか、それはどうだ?」

 

「はい、どうやら、事実のようですが、そのような凄腕の魔導師は数人でしょう。それに彼奴は傭兵、危なくなれば直ぐに逃げます。いくら腕が良いとはいえ、傭兵の性質は、盗賊と殆んど代わりありません。仮にワイバーンを落とされても十にも満たないでしょう」

 

「そうか・・・。しかし、ついにこのロデニウス大陸が統一され、忌々しい亜人どもが、根絶やしにされると思うと、私は嬉しいぞ」

 

「大王様、統一の暁には、あの約束も、お忘れ無く、 クックック」

 

 

 

真っ黒のローブをかぶった男が王に向かってささやく。気持ちの悪い声だ。

 

 

 

「解っておるわ!!」

 

 

 

大王は怒気をはらんだ声で、言い返す。

 

 

「将軍、今回の概要を説明せよ」

 

「はっ!説明致します。今回の作戦用総兵力は50万人、本作戦では、クワ・トイネ公国に差し向ける兵力は、40万、残りは本土防衛用兵力となります。クワ・トイネについては、国境から近い人口10万人の都市、ギムを強襲制圧します。兵站については、ご存じの通り豊かな畑と家畜がおり、国現地調達いたします。

 

ギム制圧後は、東方250kmの位置にある首都クワ・トイネを物量をもって制圧します。

 

かの国は、我が国のような、町ごと壁で覆うといった城壁を持ちません。航空兵力は、我が方のワイバーンで数的にも十分対応可能です。

 

平行して、海から艦船4400隻の大艦隊にて、北方向を迂回、マイハーク北岸に上陸し、経済都市を制圧します。

 

食料を完全に輸入に頼っているクイラ王国は、クワ・トイネからの輸出を止めるだけで、干上がります。」

 

「クワ・トイネの兵力ですが、彼らは全部で5万人程度しか兵力がありません。即応兵力は1万にも満たないと考えられます。今回準備してきた我が方の兵力を一気にぶつけると、小賢しい作戦も、圧倒的物量の前では意味をなしません。

 

6年間の準備が実を結ぶことでしょう。」

 

「そうか・・・ふっふっふ・はっはっはっはあーっはっはっは!!!今宵は我が人生で一番良い日だ!!世は、クワ・トイネ、クイラに対する戦争を許可する!!!」

 

 

 

こうして、イレギュラーが原因で、ロウリア王国は滅びの道を進み始めた。

 

 

まあ、仮に戦争を仕掛けなくとも、亜人差別を行う危険な国家であるロウリア王国は、古城によってどの道メタメタにされただろうが。

 

 

▼△▼△

 

 

 

 

 

クワトイネ公国、西部の町、ギム

 

 

 西部方面騎士団団長モイジは、古城のギムの町の部隊布陣を聞いて、凍りついた。

 

 

 

「じ、自主参戦ですか」

 

「はい、ロウリア王国は亜人差別が激しい国家。それ故に希望者を募ったところ、この数が参加することになりました」

 

「こ、これは凄いですな。MSが48機、61式戦車20両、ホバートラック5両、DOLLSは零戦80人、F4Fが80人、戦車のM4シャーマン80人とは」

 

既にMSの実機と演習動画を見ているモイジは、自分の頬が引きつるのが分かった。

 

「はい、みんな、殺やる気満々です」

 

 

 

古城の言葉を聞いて、字が違う気がしたが、ロウリア王国が攻めてくるので、気にしないことにした。

 

 

 

「誤射が怖いので、打ち合わせ通り、町の周辺の防衛のみにしてください」

 

「あ、ああ、零戦とF4Fとの模擬で、竜騎士達は暁の傭兵団の実力を認めているから問題ない」

 

「ありがとうございます。モイジ団長は、我々の攻撃を突破してきた敵の処理をお願いします」

 

「ああ、情けない話だが、よろしく頼む。疎開まで手伝ってくれて」

 

「いえ、余裕がありましたから、女子供を逃がすのは当然です」

 

 

 

念のために、ギャロップなどを使って疎開に協力したのだ。

 

 

 

「妻と娘の件、本当にありがとう」

 

「いえ、お気になさらずに、責任者の家族を人質にするのは、古今東西良くあることです。優先して安全な場所に避難させるべきです。ところで、ロウリア王国はやはり通信には?」

 

「ああ、応じない」

 

 

 

現在のロウリア王国とクワ・トイネ公国の国境沿いに張り付いているロウリア王国の兵力がクワ・トイネ公国の兵力を遥かに凌駕していが、俺達の戦力を合わせると力関係は逆転する。

 

 

 

そして、ロウリア王国側は、クワ・トイネ公国の通信を一切無視しつづけている。

 

 

 

「そろそろ、向こうは仕掛けてくるようですし、私は前線へ行きます」

 

「出来れば、此方の分も残しておいてもらいたいな」

 

 

 

冗談めかしに言うモイジ団長の言葉に俺は、ふむと考え。

 

 

 

「確か、此方のワイバーンは24騎でしたね」

 

「ん? ああ、そうだ」

 

「敵の練度は高いようですし、10騎くらいそちらに通しますか?」

 

「ん、ああ、いや、気を使わないで良いぞ。倒せるなら倒してしまって」

 

「分かりました」

 

「いや、此方こそ、気を使わせた」

 

 

 

こうして、俺達は前線へと向かった。

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

 翌日、突如として、ギムの西側国境から、赤い煙が上がる。と、同時に通信用魔法から、緊迫した通信が入る。

 

 

 

『ロウリアのワイバーン多数がギム方向へ侵攻、同時に歩兵……数万が国境を越え、侵攻を開始した。繰り返す! え、何だ? は?』

 

 

 

魔法通信が突然黙り混む。

 

 

 

『ロウリアのワイバーンが多数撃墜されている!! 更に敵歩兵が多数吹き飛ばされているっ!?』

 

「報告はしっかりと詳細に行え!」

 

『はっ、もびるすーつが、ロウリア王国のワイバーンと歩兵を蹴散らしています!!』

 

 

 

前線の報告を聞いた、団長のモイジは暁の傭兵団の力を見ているので、内心「そうなるだろうよ」とちょっとなげやりになった。だが、このまま何もするわけには行かない。

 

 

 

「各員! 手はず通りに動け! いくら暁の傭兵団が強力でも、ロウリア王国軍が浸透してくるはずだ!」

 

「「「「了解!!!」」」」

 

 

 

戦争が始まった。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

国境の戦い

時は少しだけ巻き戻る。

 

 

 

ロウリア王国 ワイバーン部隊 本陣 竜騎士 待機室

 

 

 

出撃が迫った時、新人のひとりが不安からか、クワ・トイネ公国の噂を話し始めた。

 

 

 

「鉄の巨人ねぇ、よくそんなデマを信じられるな」

 

「いや、行商人の叔父さんが言ってたんだよ。興奮しながら、それに買ってきた日本刀とか時計とかす

 

げぇ高品質だったんだって!」

 

「だからって、鉄の巨人はねぇよ。巨人じゃなくて、人が動かす鉄の巨人って」

 

「お前等、いつまでもくっちゃべってる。いくぞ」

 

「「「はっ」」」

 

「それと、貴様もあり得ないことを言いふらすな。次は処分しないといけないからな」

 

「は、はっ、申し訳ありません!」

 

「うむ、ではいくぞ!」

 

 

 

この時、俺は隊長として正しい態度だった。

 

だが、あんな化け物がいると分かっていたら、家族を連れて、クワ・トイネ公国に亡命していた。

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

Bクラス将軍パンドールは、ギムに攻め込む先遣隊約3万の指揮官の任を与えられていた。

 

 

 

歩兵2万、重装歩兵5千、騎兵2千、特化兵(攻城兵器や、投射機等、特殊任務に特化した兵)1500、遊撃兵1000、魔獣使い250、魔導師100、そして、竜騎兵150。

 

 

 

数の上では歩兵が多いが、竜騎兵は1部隊(10騎)いれば、1万の歩兵を足止め出来る空の覇者である。それが150騎もいる。

 

 

 

パンドールは、満面の笑みを浮かべ、部隊を見つめていた。

 

 

 

ワイバーンは高価な兵器である。ロウリア王国の国力であれば、本来国全てをかき集めても、200騎そろえるのがやっとである。しかし、今回は、対クワトイネ公国戦に、500騎のワイバーンが参加している。

 

 

 

先遣隊に150騎のワイバーン、この明らかに過剰な戦力に、パンドールは、満足だった。

 

 

 

「ギムでの戦利品はいかがしましょうか?」

 

 

 

副将のアデムが話しかける。彼は、冷酷な騎士であり、ロウリア王国が、領地拡大のために、他の小国を統合した時代、占領地での残虐性は語るに耐えない。

 

 

 

「副将アデムよ、お前に任せる。」

 

「了解いたしました。」

 

 

 

アデムは、将軍に一礼すると、後ろを振り返り、すぐさま部下に命じる。

 

 

 

「ギムでは、略奪を咎めない、好きにしていい。女は嬲ってもいいが、使い終わったらすべて処分するように。一人も生きて町を出すな。全軍に知らせよ」

 

「はっ!!!」

 

 

 

アデムの部下は、すぐさま天幕を出ようとする。

 

 

 

「いや、待て!!!」

 

 

 

アデムに呼び止められる。

 

 

 

「やはり、嬲ってもいいが、100人ばかり、生かして解き放て、恐怖を伝染させるのだ。それと・・・、敵騎士団の家族がギムにいた場合は、なるべく残虐に処分すること」

 

 

 

 

 

アデムはこの時、すぐ近くで姿を消して、潜んでいる者がいることに気づかなかった。

 

 

 

更に、アデムの恐怖の命令を録音していることにも、当然気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

「進軍せよ!!」

 

 

 

 

 

号令とともに、74騎のワイバーンが空へと上がり、高度を上げる。

 

 

 

同時に歩兵も、進軍を開始。

 

 

 

ロウリア王国軍が国境を越えて、しばらくして。

 

 

「楽しみだな」

 

「ああ!」

 

 

 

歩兵の中でも、悪名高く精鋭の彼等は今回の戦いでも、何時ものように、色々と楽しめると思っていた。

 

 

 

だが、そうはならなかった。

 

 

 

「あん?」

「どうした?」

「いや、先行しているワイバーン、何か様子がおかしく」

 

 

声を上げた彼は山育ちのためか、目が良い。だからこそ、先行した多少距離のあるワイバーンの異変に気づいた。

 

 

 

「様子が?」

 

 

 

と、隣にいた仲間が呟いた瞬間だった。

 

 

 

ピンク色の光が空を切り裂いた。

 

 

 

「「「は?」」」

 

 

 

そして、ピンク色の光りが次々と空を切り切り裂き、ワイバーンを消し去っていく。

 

 

 

「なんだぁ!?」

 

 

 

部隊長の叫びと共に、遠くから甲高いひゅるるるという音が聞こえてきた。

 

 

 

「逃げろ!」

 

 

 

それは、今まで修羅場を潜ってきた経験からの本能的な叫びだった。

 

 

 

しかし、叫びは無意味だった。前方を進軍していた味方の歩兵達は爆音

 

真っ赤な花に変わった。

 

 

 

降り注ぐ人間だったもの。

 

 

 

地獄が始まった。

 

 

 

 

 

▼△▼△

 

 

 

 

 

「ロウリア王国軍のワイバーンが国境を越えたにゃ!」

 

「コンゴウより各部隊へ。手はず通りにやれ」

 

 

 

『『『『『了解』』』』』

 

 

 

『DOLLS第一部隊、零戦04が、手はず通りにロウリア王国のワイバーン部隊へ警告! 攻撃されました。これより戦闘を開始します!』

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

『味方への攻撃を確認。ルルア・マムより、 ルルア中隊、全機起動してください』

 

 

 

カモフラージュされていたMS用の大型トレーラーから、12機のジムスナイパーが立ち上がる。

 

 

 

『ルルア・マムより、各機、防衛目標に接近している敵、ワイバーン部隊を排除してください』

 

『ルルア01より、ルルア中隊各機へ。初仕事です。グランドマスターに誉めてもらうために奮励努力せよ』

 

『根絶やしにします』

 

『07、物騒ですよ。気持ちは分かりますが』

 

『ネコミミを虐げる者は死んで良いのです』

 

『05、07。私語をって、どこの部隊ですか? アニソンかけているのは!』

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

『警告! こちら、クワ・トイネ公国。貴軍は我が国の国境を、越えてって、危なっ! DOLLS第一部隊! 敵の攻撃を受けました』

 

『了解した、私!! いくぞ私達!! DOLLSと私達の実力を見せてやる!』

 

『零戦に負けるな、此方も出るぞ!!』

 

 

 

国境近くに秘密裏に作られた即席の二つの滑走路に並ぶ、合計80人の少女達。

 

だが、その顔は複製したかのようにそっくりであった。

 

 

 

DOLLSの零戦とF4Fの二人、製造された少女達は全力で空へ上がる。

 

 

 

『予定通り、対地攻撃を行いながら、後方にいるはずの、敵将を探し出せ! ワイバーンはロロナ中隊とルルア中隊が倒す!』

 

『零戦に遅れるなよ、あたし!』

 

『『『『『了解!』』』』』

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

『ロロナ・マムより、ロロナ中隊各機へ。敵ワイバーン部隊が、国境を越え警告を無視して味方を攻撃しました。ロロナ中隊、全機起動。まずは、敵ワイバーンを攻撃してください、その後、ルルア中隊と連携して、地上戦力を殲滅せよ』

 

『『『『『了解!』』』』』

 

 

 

先にギムの町周辺の地面を掘り、その時がくるまで交代していたとはいえ、カモフラージュをして、地下でじっと待っていたかいがあった。敵ワイバーン部隊は突然土砂を巻き上げながら、地中から出てきた陸戦型ガンダムに驚いている。だが、致命的な隙だ。

 

 

 

『ロロナ01より、各機へ。今夜は手羽先です。胸肉は美味しくないので、胴体を狙ってください』

 

『06より01へ。ワイバーンは美味しくないそうですよ。グランドマスターがそう言ってました』

 

『……残念です』

 

 

 

本当に残念そうに、呟く。

 

だが、淡々とワイバーンをビームライフルで、撃ち落としていた。

 

 

 

敵、ワイバーンは必死で飛び回り、果敢にもMSに突撃、その内の一騎が、ロロナ10に火球を吐き出すが。

 

 

 

「馬鹿な! 効いていないなんて!!」と驚愕しながら、陸戦型ガンダムのバルカンで、撃ち落とされていく。

 

 

 

 

 

『10、油断し過ぎです』

 

『いいえ、実践におけるワイバーンからの攻撃によるデータ収集を目的とした行動です。問題ありません』

 

 

 

この日、ロロナ中隊長とルルア中隊はワイバーンを5騎以上撃墜して、エースが沢山誕生した。

 

 

 

『ロロナ・マムより、各機へ、敵ワイバーンは全滅。これより敵歩兵の掃討を開始します。武装は180㎜キャノンに交換してください』

 

『了解』

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

『トトリ・マムより各機へ』

 

『メルル・マムより各機へ』

 

 

 

『『敵、陸戦兵力が国境を越えました。作戦通りに砲撃を開始してください』』

 

 

 

『『『『『『『『了解』』』』』』』』

 

 

 

迷彩柄のシートを括り付けるだけの、簡単なカモフラージュだったが、敵は此方に気づかず、攻撃をしてきたことに、トトリ・マムは静かに安堵した。

 

 

 

ロウリア王国の兵器では、MSを撃破するのは難しい。だが、腕の良い魔法使いはかなり強いと聞く。それを警戒していたが、杞憂だったようだ。

 

 

 

『トトリ01、砲撃開始』

 

『メルル01、砲撃開始』

 

 

 

▼△▼△

 

 

 

 

 

「いったい何が起こっている!?」

 

 

 

進軍を開始したとたん、クワ・トイネ公国側から、先遣隊のワイバーンと陸戦部隊が激しい攻撃に晒され、魔通信からは、悲鳴と怒号が聞こえたかと思えば通信が途切れた。

 

 

 

「くそっ、全軍に――」

 

 

 

彼が伝令兵に指示を出そうとした瞬間、彼は違和感を覚えた。

 

 

 

伝令兵が直立不動で、項垂れながら立っていたのだ。そして、ゆっくりと前のめりに倒れ。

 

 

 

パシュッと言う音が自分の首筋から聞こえ、咄嗟に動こうとするが、全身から力が抜け、彼はその場に倒れ込んでしまう。

 

 

 

何が起こった?! と何とか目線を上にあげると、そこには、誰も居ない。だが、声だけは聞こえてきた。

 

 

 

「アドミラル、敵将を捕らえました」

 

「迎えをお願いします」

 

 

そして、彼の視界にピンク色のドアが現れると、「まだ、意識がありますか」と声が聞こえ、彼は意識を失った。

 

 

 

 

▼△▼△

 

 

 

 

 

国境を越えたロウリア王国軍へ対し、暁の傭兵団は量産型ガンキャノンは240㎜キャノンで、量産型ガンタンクは120低反動キャノンで、容赦なくロウリア王国軍を挽き肉に変えていく。

 

 

 

宣戦布告無し、事前の戦争のルール決めも無い。

 

なので、徹底的に叩き潰すことが決められていた。

 

 

 

『メルル・マムより、各機へ。国境を越えていないロウリア王国軍への砲撃も許可が出ています。撤退する敵にもたっぷりと砲弾をプレゼントに上げてください。宣戦布告も無しに襲ってくる奴等は野盗です。野盗はモンスターです。やっちゃって下さい』

 

 

 

『撃ちますよ』

 

『楽な任務ですね』

 

『コンゴウから、全部隊へ。伊400と伊401が敵将、敵副将を捕らえた。後は烏合の集だ蹴散らせ』

 

 

 

『『『『『『『『了解』』』』』』』』

 

 

 

 

 

こうして、ロウリア王国の先遣隊は、指揮官級が多数無傷で捕らえられ、ほぼ壊滅状態となった。

 

 

 

▼△▼△

 

 

 

 

 

 

 

空の覇者と言えばワイバーンだ。

 

ワイバーン一騎でも、乗り手と戦い方次第で、歩兵一万は足止めできるだろう。

 

 

 

だから、手段は問わないが生身の人間がワイバーンに勝つのは世界に誇れることだ。

 

 

 

そう、普通ならば。

 

 

 

 

 

「チェエエエェァァエエッッッッストオォォッッ!!!!!!!!」

 

 

 

空を白い髪の少女達が空を舞っていた。

 

 

 

ピンク色の光りが最初のワイバーンを消し飛ばして、直ぐに彼女達はやって来た。

 

 

 

金属の翼を持つ彼女達は、偶然が重なりピンク色の光りから逃げられたワイバーンを、持っていた剣で首を両断した。

 

 

 

「零、女の子なんだから、叫ばない!」

 

 

 

少し遅れて、褐色の肌金属の翼を持つ彼女達が合流した、白い金属の翼を持つ少女を注意しながら、金属の棒を俺達に向けて、

 

 

 

「敵だよ! さぁ、私達、掃射開始!!」

 

 

 

 

 

ガガガガガガガガガガという甲高い音が鳴り響き、仲間達が赤く染まった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ロデニウス沖海戦

ロウリア王国は宣戦布告無しに、クワ・トイネ公国の国境を越えて、ギムの町へ進軍した。

 

だが、それは暁の傭兵団の協力もあり。ロウリア王国軍はほぼ全滅した。

 

そう、ほぼ全滅なのだ。どうやら、独自に動いていたロウリア王国軍の一部の部隊が、小さな村などを襲ったらしく、ギムの町の防衛から回された部隊に被害が出てしまった。

 

幸いなことに、非戦闘員に死者は居ないが、敵の浸透を警戒して、哨戒していたDOLLS小隊が合流しなければ、虐殺が起こる寸前だったということで、古城にとっては苦い経験となった。

 

 

ギムの町を攻略する戦いに敗れたロウリア王国軍は撤退するも、追撃してきた量産型ガンキャノンと量産型ガンタンクの砲撃に襲われ、運良く生き残ったとしても、残党狩りのDOLLS部隊に徹底的に倒された。

 

クワ・トイネ公国に傭兵として雇われたところに、伊400(蒼き鋼)と伊402(蒼き鋼)の2人を忍者(スパイ)として、ロウリア王国へ派遣。秘密道具を駆使して、ロウリア王国内の内情は筒抜けになっていた。

 

 

開戦と同時に、古城はどこでもドアを使い、伊400と伊402と共に将軍級数人を拉致してクワ・トイネ公国に引き渡した。過去の悪行もありアデムみたいなヤベェ奴は即座に斬首となった。

 

 

 

ギムの町の防衛戦が終わった翌日。

 

ロウリア王国が国境を越え、クワ・トイネ公国に襲いかかったことに対してクワ・トイネ公国はロウリア王国に対して批難声明を発表。同時にロウリア王国へ宣戦布告。

 

古城達はクワ・トイネ公国の宣戦布告と同時に、ロウリア王国国内の主要な街に、どこでもドアを活用してロウリア王国軍が敗北した証拠の写真(顔がハッキリ写っている捕虜となった将軍達)とロウリア王国は降伏しろと書かれたビラを大量に街にばら蒔いたのだった。

 

 

▼△▼△▼△

 

ロウリア王国の王都 ジン・ハーク ハーク城の御前会議

 

「こ、これはっ、どういうことだっ!!」

 

緊急の会議は、大王ハーク・ロウリア34世の怒号から始まった。集められた宰相と武将達は冷や汗を流しながら、大王の叱責を黙って受ける。

 

「ぜぇ、ぜぇ、兎に角だ。宰相! パダジン! 我が国の武将が捕虜になったのは事実か?!」

「は、はい、外交筋でも間違いないかと」

「余の不安が的中したな、いつの間にか街に大量のビラまでばら蒔かれおって! 兵は何をしていた!! 暁の傭兵団は、やはり手練れが多い上に、全滅のことを考えるなら、鉄の巨人とやらがいるようだな!」

「だ、大王、流石に巨人などは」

「宰相よ、では、先遣隊はどうやって全滅したのだ!! 」

「そ、それは」

 

宰相が答えに困り、黙り混むと大王はパダジンに問い掛けた。

 

「パダジン! 先遣隊の全滅の原因は分かっているのか!?」

「げ、現在調査中でございます。何分、調査するには、時間がありませんでした。

 

ですが、御安心くだされ。現在の情報から、考えますとまだ問題ありません。確かに先遣隊の全滅と一部の将軍が捕虜になったのは、痛手ですが。兵数は此方が上でございます。

 

まずは調査と平行して、陸は守りを固め、次は海から攻めまする。仮に強力な巨人。鉄の巨人なるモノが存在していたとしても、その巨体から海には入ることはできない筈です! 仮に入れたとしても、巨人は重たい鎧兜を着けることは不可能なはず! 仮に海に入ったとしても、そこを物量で叩けば問題ありません。此方には4000隻以上をございます。先遣隊の全滅を考えますと、敵には巨人以外にも歩兵に有効な広域攻撃魔法が使える魔導師がおるようです。ですが、居ると分かれば対処できます。海ならば、数キロ離れた船に届くことはありません。ですので、今度は海からクワ・トイネ公国の首都を強襲します!」

「海、か。確かに巨人がいるなら、陸よりも海に引きずり込めば、巨人は上手くは動けぬか」

 

 

鉄の巨人。実物を見ても彼等は機械で出来ていると信じるには、時間が掛かっただろう。

彼等が巨人、MSを生物だと思い込んだのは仕方がないことだった。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

ギムの町防衛戦が終わり、次は海から来るかな?と思っていると、ロウリア王国が4000隻以上の大艦隊を出向させたという情報を手に入れた。

 

マイハーク港に基地を置く、クワトイネ公国海軍第2艦隊は艦船を終結させている。

 

艦船の数はおよそ50隻。

 

 

「本来ならば、我が艦隊だけでも、壮観な風景なのだが」

 

ちょっと苦い顔をしているパンカーレ提督の言葉に、俺はすみませんと軽くではあるが、頭を下げる。

 

パンカーレ提督が見つめる先にあるのは、港から少し離れた位置で待機している、今回の海戦に参加する暁の傭兵団の空母8隻だ。

 

旗艦はアカギ(蒼き鋼)、ズイカク(蒼き鋼)、加賀(艦これ)、鳳翔(艦これ)、瑞鶴(艦これ)、イラストリアス(アズレン)、ユニコーン(アズレン)、ホーネット(アズレン)

 

 

「巨大な船の力を宿した女性達、ですか。心強い反面男としては情けなく思います」

「そう思うことが、大事かと。クワ・トイネ公国は暁の傭兵団から、技術を購入したいと聞いています。ロウリア王国との戦争の後は、パーパルディア皇国のこともあります。強くなる必要があります」

「そうですな。下を向いている暇はありません。それに水中モビルスーツでしたか、実はアレだけで一度、心が折れましてな」

 

はははと笑うパンカーレ提督。うん、目が死んでる。

 

インパクトが大事かと思って、ズゴックEとハイゴッグ合計12機をクワ・トイネ公国の御偉いさんと海軍の御偉いさんの前でお披露目したんだよね。

 

結果、海軍関係者に失神者が出た。やっぱり威力を見せるために、鉄板を的にしたビーム兵器の破壊力は刺激が強すぎたかな。

 

「あ、そう言えば、観戦武官を派遣したいと伺いましたが、いかがしますか?」

「はい、派遣する者は、既に決まっています。中々決めるのが大変でしたよ。只でさえ希望者が多かったのですが」

 

チラリと沖に浮かぶ空母を見て、パンカーレ提督はしょうがないな。と言う表情でこう言った。

 

「美人とお近づきになりたいと、不届きなことを考える輩が多くて」

 

と、可笑しそうに笑っていた。なるほど、と俺も思う。全員が美女、美少女だ。

 

「残念ですが、既婚者もおりますので、口説かれるのは困りますね」

「ははは、部下も残念がりますな。ああ、観戦武官は真面目な者を選んでおりますので、御安心を」

「御配慮したありがとうございます」

 

こうして、戦いの前なのに、穏やかな時間が過ぎていく。

 

後日、ふと思い付いて、露出度は控えめの衣装で、アカギ達のブロマイドを販売したら、男女関係なく飛ぶように売れた。

 

結果、暁の傭兵団の新しい収入源になった。

 

▼△▼△▼△

 

 

「では、ブルーアイさん。行きましょう」

「はい、暁団長。ところで、それは?」

「これはスキッパーと言います。海上救助などに使われる、海を走る。そうですね……機械の馬みたいな物ですね」

「なんと、そんな物まであるのですか」

「はい、では後ろのこのシートに座って下さい」

「ここですか?」

「はい、ベルトは、はいそうです。では行きますよ!」

 

 

暁の傭兵団は、ブルーアイ、彼の常識を叩き壊す集団だった。傭兵団の海の力を見せると浜辺に集められ、そこで見たの物は。海の中から現れた青い鉄の巨人だった。

 

青い鉄の巨人がノッシノッシと砂浜を歩く姿に海軍関係(政府関係はザクを見ていたので何とか堪えた)者が全員が唖然とした。

 

更に全長200メートルを軽く越える空母(アカギ)が、海の中から現れた。

 

他にもワイバーンを楽に倒せる、同じ顔をした金属の翼を装備した空を飛べる少女達。

 

マクロスと呼ばれる空を浮かぶ空母は残念ながら、見られなかったが、それでも暁の傭兵団が強力な傭兵団だと分かった。

 

しかも、彼等は普通の傭兵団と違って、仕事熱心だ。

まあ、自分達な力を正しく理解しているからこそなのかもしれないが。

 

「そろそろ着きます。船に上がる時はこれを頭に着けて下さい」

「これは?」

「タケコプターです。俺が補助しますから安心してください」

 

この日、ブルーアイはクワ・トイネ公国で始めて魔法を使わないで空を飛んだ人間になった。

 

ちなみに、ブルーアイは器用だったので、古城の補助がありだって、ぎこちないが飛びかただったが、無事に甲板へ降り立つことができた。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

「クワトイネ公国第二海軍観戦武官のブルーアイです」

「はいはい、旗艦のアカギだよ。早速で悪いけど本題だ。我々はロウリア王国の艦隊の位置をすでに把握している。ここから西側に約500kmの位置。船足は、5ノット程度だ。出来るだけ陸地から離れた場所で目撃者を少なくしたいから、我々は明日の朝に出航するよ。それと、一応は降伏勧告をしてから攻撃するよ。あ、時間はあるから、明日まではゆっくりと艦内の見学をしていくと良い」

「よろしいのですか?!」

「はい、事前に話し合い。許可できる場所までですが」

「なんと、ありがたい」

「いえ、戦後を考えると、クワ・トイネ公国にも強くなっていただきたく」

 

 

大事な協力関係を築いている国ですから。と古城は答えた。

 

 

 

 

翌日早朝。目を覚ましたブルーアイは、考える。

 

一度、見ているが、やはり速いな。

 

彼がそう考えている間に、西へ向かう空母艦隊はロウリア王国軍の艦隊を補足した。

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 ロウリア王国 海将 シャークン

 

 

「いい景色だ。美しい」

 

大海原を美しい帆船が風をいっぱいに受け、進む。

その数4400隻、大量の水夫と、揚陸軍を乗せて、彼らはクワトイネ公国経済都市マイハークに向かっていた。

 

周囲は見渡す限り船ばかり。海が見えない。そう表現したほうが正しいのかもしれない。

 

6年をかけた準備期間、パーパルディア皇国からの軍事援助を経て、ようやく完成した大艦隊。これだけの大艦隊を防ぐ手立ては、ロデニウス大陸には無い。

 

もしかしたら、パーパルディア皇国でさえ制圧できそうな気がする。

 

だがと、彼は思いとどまる。パーパルディア皇国には、砲艦という船ごと破壊可能な兵器があるらしい。

 

彼は、一瞬出てきた野心の炎を理性で打ち消す。第3文明圏の列強国に挑むのは、やはり危険が大きい。

 

 

彼は心を落ち着かせる為に、東の海を見据えた。

 

「なんだ?」

 

 

何かがこちらに飛んでくる。まさか、飛龍か?・・・いや、違う。小さい!あれは!?

 

人だ! 人が、少女が空を飛んでいる!?

 

 

「我々はクワ・トイネ公国に雇われた暁の傭兵団である! 武器を捨てて降伏しろ!繰り返す、武器を捨てて降伏しろ!」

 

 

突然のことに驚いたが、ベテランの水兵達は、直ぐに冷静になり、空を飛ぶ魔導師に向かって、弓矢が射られる。

 

だが、矢はアッサリと避けられ。少女が叫んだ。

 

「ロウリア王国からの攻撃を確認!」

 

 

空飛ぶ少女が叫んだ瞬間、海面が突然盛り上がり、ザパァッ! と大量の水飛沫が舞う。

 

「な、何だ!?」

 

彼が叫び、水飛沫の中から、現れたのは巨大な一つ目の青い巨人が空へ向かって飛び出してきた。

 

「きょ、巨人だぁっ!!!」

「こ、攻撃しろぉ!!!」

 

 

部下の叫びに我に返り、海将シャークンは叫ぶように攻撃を命じた。

 

それを合図にしたかのように、海面から複数の青い巨人達が飛び出してくる。

 

「撃て、撃て撃て!!」

 

それは意味の無い命令だった。

 

青い巨人、MSにはバリスタや弓矢が効く訳がない。

 

「こっちにも、きたぁがぁっ!!」

「ひぃ、あっ、あっちにもっ!?」

 

海面から飛び出した巨人達は、細長い青い手をロウリア王国の艦隊に向けると。

 

 

パシュン、と言う軽い音と共に黄色い閃光が発射され、ロウリア王国の船は一撃で大穴が空き、次々と沈められていく。

 

 

「い、一撃!? な、なんだ!!あの威力は!?」

 

経験したことの無い威力に、それを見ていた船団全員が驚愕する。

 

「こ、このままでは、まずいっ!! 通信士ぃっ!!ワイバーン部隊を、援軍を要請しろぉっ!!!」

 

 

 

ロウリア王国 ワイバーン本陣

 

 

 

「ロウリア王国東方討伐海軍より魔伝入りました。敵主力、青い巨人現在交戦中!! 至急航空支援を要請するとのことです!!」

「何!? 青い巨人だと!? 巨人が海に現れたのか!! だが、海ならば動きは鈍ろう。ワイバーン350騎全騎を差し向けよ!!」

「し……しかし、本隊からワイバーンがいなくなりますが……」

「聞こえなかったか?全騎だ! 噂の巨人ならここで倒さなければマズイことになる! 万全を期すのだ!」

「了解しました!」

 

ワイバーンは、次々と、大空に飛び上がった。

 

 

 

 

旗艦アカギは、自身のレーダーにて、すでに「それ」を捕らえていた。

 

「あらら、来ちゃったか。ワイバーンには可愛そうだけど、仕方がないね。みんな、聞こえてる? 全艦、DOLLS及び艦載機全機発進! それと、DOLLS発進後にビックライトで元の大きさにVF-1をガウォーク形態で戻して発進。各員、作戦通り敵を殲滅せよ!」

 

 

▼△

 

 

「提督、ワイバーンです!」

「来たか、もう少し耐えろ! ワイバーン部隊がこの海域に到達する!! そうすれば、ワイバーンの炎で!!」

 

だが、ワイバーン部隊には、悲劇が襲いかかった。

VF-1のホーミングミサイルである。

 

いきなり仲間20騎以上が爆散、黒い塊となって海に落ちていく。何が起こったのか、全く解らないまま、次々と落ちていくワイバーン部隊。

 

こんなことは、歴史上1度もなかった。

 

一通りの嵐が去ると、ワイバーンは数を350騎から200騎まで減らし、艦隊もワイバーン部隊もパニック状態になった。

 

そこに敵の増援がやって来た。

 

「女の子!?」

 

それは、最初に現れた、空飛ぶ少女達の部隊だった。

 

 

ワイバーンの部隊は何故、少女達が空を飛んでいるのかは分からない。

 

だがアレは敵だと、認識しワイバーン部隊は攻撃しようとして、一人の竜騎士は、黒い鉄の棒が目に入り、彼は本能的に回避を選んだ。それが、彼の生存へ導いた。

 

甲高い連続した音がしたと思ったら、隣を飛んでいた味方のワイバーンが挽き肉に変わった。

 

そこからは、一方的だった。800人のDOLLSは、手早くワイバーンを駆逐すると、ロウリア王国艦隊にズゴックEとハイゴッグと共に襲いかかった。

 

空母艦隊はロウリア王国艦隊から見えない距離で待機している。VF-1バルキリーもロウリア王国艦隊から、見えない距離からロウリア王国の後方の艦隊にホーミングミサイルで攻撃した。

 

 

DOLLSが制空権を奪取、ハイゴッグ、ズゴックEが敵の旗艦と思われる特徴のある船を沈めるていらと、空母の艦載機が合流。

 

DOLLSが制空権を取ることが出来ると予想していたので、旗艦のアカギ以下、空母の搭載しているのは艦上爆撃機と艦載機攻撃機のみ。

 

 

制空権を完全に取られたロウリア王国軍は一方的な航空攻撃を受けることになった。

 

帆船の移動速度では止まった的と同じ。次から次へと、味方が轟沈されていくロウリア王国軍。

 

ロウリア王国の艦隊の不幸なことは、祖国が宣戦布告無しで開戦。

 

降伏するときの合図を決めていなかったことだ。

 

結果として、海戦後に救助されたロウリア王国軍人は極僅かだった。

 

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国の観戦武官ヴァルハルは激しく震えていた。

 

 

ロウリアの4400隻の艦隊がどのようにクワトイネ公国を滅ぼすのか、それを記録することが自分の任務だった。

 

蛮族にふさわしいバリスタと、切り込みといった原始的戦法でこれだけの数をそろえたらどうなるのか、個人的興味もあり、彼はこの任務が楽しかった。

 

しかし、最初に現れた敵は、降伏を促す使者だったが、常識外れの存在だった。

 

現れた使者は、ブゥーンッという甲高い音をさせる金属製の翼を身に付けて空を飛ぶ少女だった。

 

「ば、馬鹿な!! あれは、飛行機械なのか!? まさかムーが人が着れるサイズの機械を作りあげたのか!? いや、待て。そんな筈は無い! 文明圏外にムーが飛行機械を売るわけがない!!」

 

見てる限り少女は生身、原理は分からないが、機械を装備して空を飛んでいる。

 

 

空飛ぶ少女の次は青い巨人が海から飛び出てきて、空中で船に両手を向けると、船を一撃で沈める魔法を放ちロウリア王国軍の艦隊を次々と沈めていった。

 

その光景を唖然としていると、ロウリア王国が送り出したワイバーン350騎が現れた。ロウリア王国のワイバーンの援軍にホッとしたが、直ぐに無駄だと彼は考えた。その考えは正しかった。

 

ワイバーン部隊が突然爆発、消し飛んだ。

 

 

 

何が起こっている!? ワイバーンが100騎ほど落とされると、攻撃が止んだ。

 

だが、次が来た。

 

ブーンという思い音がオーケストラのように戦場に鳴り響く。

 

「な、まさか! あの黒い点、全てなのか!?」

 

空を埋め尽くすほどの、小さな黒い点。

それは、空飛ぶ金属の翼を持つ少女達だった。

 

「は、速い!? しかも、何だ!?あの魔法はぁっ!?」

 

ガガガガガッと激しい音が聞こえ、空を飛ぶ少女達の翼に着いている長い黒い棒が爆発すると、狙われたワイバーンは挽き肉に変わる。

 

更に一部の少女達は剣で、ワイバーンを一刀両断する凄まじい技量を見せた。

 

「な、何が起こっているんだ!?」

 

彼が唖然としながら、叫んでいる間に、ロウリア王国のワイバーンはあっという間、駆逐された。

 

「そ、そんな、こんなことが」

 

彼が唖然としていると、遠くから、沢山のブーンと言いう音が聞こえてきた。

 

「まだ増えるのか!?」

 

彼が叫んだ瞬間。視界に細長い青い物が見えた。

 

「なんだっ?!」

 

それはハイゴッグの腕だった。そのままハイゴッグの腕が彼の乗る帆船に振り下ろされた。

 

 

青い巨人の腕が迫ってくる。それが、パーパルディア皇国の観戦武官ヴァルハルの最後の光景だった。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ロデニウス沖海戦後

クワトイネ公国 政治部会 

 

 

「以上が、ロデニウス大陸沖大海戦の、戦果報告になります」

 

 

参考人招致された観戦武官ブルーアイは疲れきった表情で、政治部会において報告する。

 

政治部会のメンバーの手元には、戦果の記載された印刷物が配布してある。

 

それを読んだ政治部会に重い沈黙が流れる。

自分達がどれだけ強大な力を持つ者達と契約しているのか、再認識したからだ。

 

 

「ふぅー、……勝つのは分かっていた。これは予想以上だがな」

 

首相カナタの言葉に、暁の傭兵団の兵器を見せてもらった者は同じ思いだった。

 

暁の傭兵団の力を知っている観戦武官のブルーアイでさえ、信じられない戦果だった。

 

 

首相カナタが発言する。

 

「今回の海からの侵攻は防げた。たった8隻に艦隊が全滅させられれば、海はもう大丈夫だろう。まあ、念のために警戒はするが、陸の方はどうなっている?軍務卿?」

 

「現在ロウリア王国は、ギムの町攻略に失敗、暁の傭兵団に将軍級を数名を拉致され捕虜になりました。更に海からの進撃が失敗に終わったため、調査と再編成の為、迂闊には動かないでしょう。何より暁の傭兵団が新しく撒いた海戦のロウリア王国の敗戦のビラの効果で、前線の砦や街では士気が目に見えて落ちています」

 

「そうか、では暁の傭兵団から、提案があるのだが、皆の意見が聞きたい」

 

「何でしょうか?」

 

「我等と同じくロウリア王国と宣戦布告したクイラ王国と合同でロウリア王国へ進攻だ」

 

その言葉に、政治部会はざわめく。

 

「まあ、実際に進攻するのは、我が国とクイラ王国合わせて百人だが」

「なんと!? 流石にそれは少なくありませんか?!」

「話は聞いてますが、流石に少なくありませんか? クイラ王国と合わせるとなると、我が国から出す兵力は五十人と聞いていますが?」

 

元竜騎士の政治部メンバーが発言する。暁の傭兵団が強力な傭兵団なのは分かる。だが、彼には国を守ってきたプライドがあった。

 

「いや、勘違いするな。この合わせて百人と言う数値は、我が国とクイラ王国が暁の傭兵団から購入する兵器を試験的運用する人数だ」

 

「兵器ですか?」

 

「うむ、兵器の名前は、M3中戦車だ」

 

写真と模型もあるぞ。と首相カナタは告げる。

 

「他にも、一部の陸戦兵器を販売が可能だと。その装備を正しく使えれば、五十人でも高い戦果を上げることが出来ると言っているな。ああ、MSに比べれば、遥かに地味な兵器だ。使っても気絶することはないだろう」

 

最後の首相カナタの冗談に、思わず政治部メンバーは笑ってしまった。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

日常

・武器販売

 

 

 

「パーパルディア皇国ね」

 

「はい、パーパルディア皇国が、ロウリア王国に支援していました。パーパルディア皇国をできる範囲で調べましたが、拡張主義国家で、差別も多いようです」

 

 

 

空母アカギの中に作られた自室で、俺は伊400と伊402から、ロウリア王国を支援していたパーパルディア皇国の調査報告を聞く。

 

 

 

ロウリア王国のアデムという武将が色々知っていたみたいなので、クワ・トイネ公国からも調べてもらったが、敵対する可能性が高い国家だと分かった。

 

 

 

「やはり、武器は最低限販売するか。ロデニウス大陸は平和であった方が助かるし」

 

 

 

「では、予定通り話を進めます」

 

「クイラ王国も同じく」

 

 

 

「教官は各兵器のDOLLSを、銃器についてはあきつ丸(艦これ)に」

 

 

 

「了解です。アドミラル」

 

「戦闘機はどうしますか?」

 

「うーん、両国にはワイバーンがあるからな。一度に売ると向こうの財布もある。両国には幾つか提案だけしておいて、あまり売り込むな」

 

「「了解」」

 

 

 

「それじゃあ、話は終わりだ。俺は風呂に入るから、二人も休め」

 

 

 

「「はい」」

 

 

 

そうして、俺はアカギの中にある小さな浴室へ向かったのだが。

 

 

 

「なあ、休めって言ったのに何故着いてくる?」

 

「入浴、魂の洗濯」

 

「休むにはちょうどよいかと」

 

「……そうか」

 

 

 

じっと俺を見上げてくる二人の美少女。

 

 

 

「「「…………」」」

 

 

 

 

 

メンタルモデルも身体は柔らかかった! とだけ。

 

 

 

 

 

・陳情

 

 

 

 

 

 

 

暁の大陸の第一基地にどこでもドアで帰宅。現地に住む皆の陳情を聞くために来たんだけど。

 

 

 

執務室に入ってきた、一人のホムンクルス(♀)が無表情で、こう言った。

 

 

 

「開発部より、新兵器開発プランが提案されました。開発部の提案をご覧になりますか?」

 

 

 

「いいえ」

 

 

 

嫌な予感がしたので、俺はホムンクルスが持って来た陳情を不許可の箱に入れた。

 

 

 

するとドアの外で、様子を伺っていたホムンクルス達と妖精さん達が騒ぎ始める。

 

 

 

「おにー、あくまー!」

 

「酷いですグランドマスター!」

 

「人でなし!」

 

「ろりこん!」

 

「ぺど!」

 

「変態! 色魔!」

 

 

 

「そこまで、言うなら見てやるが、前回みたいな、ふざけた物なら覚悟しろよ。」

 

 

 

呪力を滲ませると、全員が逃げた。

 

やはり、ロクデモナイ物だったか。

 

 

 

娯楽の為にゲームやアニメを取り出したのだが、ホムンクルス達は、感情豊かになったが、妖精さんの影響もあり、色々と無茶をしようとしたり、大変だった。

 

 

 

最初の陳情はまともだったが、娯楽解禁後は酷かった。

 

 

 

真ゲッターがほしいとか、マジンカイザー作ってほしいとか、アルティメットガンダム製造許可とか。

 

 

 

お前等は何と戦うつもりだと……。

 

 

 

 

 

「グランドマスター、ホムの提案は真面目です」

 

「ほぉ、どれだ?」

 

「これです」

 

 

 

俺が不許可の箱から取り出された書類をホムンクルスから受けとると、

 

 

 

「立体機動装置の研究・開発です」

 

「却下」

 

「な、何故ですか? あればホム達の歩兵としての能力は上昇します」

 

「訓練で何人死ぬか分からないし、生身での運用だ。死亡率が高くなる上に鹵獲が怖い。更に歩兵ならDOLLS達がいるだろう」

 

「そ、そんな……」

 

 

 

ガックリと肩を落とすホムンクルス。

 

 

 

とりあえず、さっき出された陳情を確認する。

 

 

 

「ダンバインが欲しい。オーラ力無いだろうお前等。えっと、バスター軍団、だから何と戦うつもりだ。マジンガーZか、戦闘力的にギリかな? でも、光子力が怖いから却下だ。ゲッターロボ、だから前にもゲッター線が怖いって言っただろう! 次、砂糖の増産か、これは許可だ。ええっと……」

 

 

 

幾つか許可を出すと、ホムンクルスが立ち上がって、俺に言った。

 

 

 

「グランドマスターは」

 

「ん?」

 

「グランドマスターは筋肉もお好きだと聞きました」

 

「……まあ、女戦士系もいけるけどさ」

 

 

 

誤解を招きそうだ。特に長門(艦これ)が暴走しそうだから、発言する気をつけて。

 

 

 

「グランドマスターは見たくありませんか?」

 

「何を?」

 

 

 

「裸立体機動装置姿を!」

 

 

 

俺はホムンクルスと見つめ合う。

 

 

 

「なあ、ホム確かに、俺は裸エプロンとか好きだよ」

 

「内緒で見せてあげます」

 

 

 

「「…………」」

 

 

 

 

 

後日、立体機動装置は少数、スポーツ用に生産された。

 

結果、立体機動装置を使ったオリジナルスポーツは、ロデニウス大陸でメジャーなスポーツの一つとなった。

 

 

 

 

 

後、ナノマテリアルなどの異世界技術を使い。

 

 

 

ダンバイン(レプリカ)、マジンガーZ(レプリカ)、ゲッターロボ(レプリカ)、光武(レプリカ)など、あくまでも暁の大陸防衛用として多数のロボットが開発、生産された。

 

 

 

これを切っ掛けに暁の大陸の防衛部隊が作られるようになり、後日この防衛部隊は大暴れすることになった。

 

 

 

 

 

 

 

・お願い! 蒔絵ちゃん!!

 

 

 

 

 

「お願いです。人工衛星を作って下さい」

 

「団長さん……」

 

「アドミラル、土下座はどうかと思うぞ」

 

 

 

 

 

呼び出したハルナの願いで、友達の蒔絵ちゃんを呼び出した。

 

 

 

で、思い出したけど、蒔絵ちゃんはデザインチャイルドだ。

 

 

 

天才だ。ヒューガの代わりに色々と研究開発をしてもらうために、手土産を持って、お願いした。

 

 

 

ちなみに、蒔絵は薬が必要なので、それも、頑張って大量に産み出す。

 

 

 

 

 

「団長さん、人工衛星以外にも、他にも何か作る?」

 

「打ち上げ施設とか、後はこれかな」

 

「どれ?」

 

「これを見てほしい」

 

 

 

俺は計画書を蒔絵に見せた。すると、

 

 

 

「……子供の落書き?」

 

「子供に馬鹿にされた!!」

 

「いや、大雑把すぎるからさ、でも、これは本当に必要なの?」

 

「ま、念のためだよ」

 

 

 

 

 

この世界には、どんな爆弾があるか分からない。

 

第四真祖の力があれば、問題はないと思うけど、残念ながら、不完全な状態だ。

 

 

 

もちろん、最強系の能力を使えば、とも思うけど。

 

一部の力は制限されてる。

 

 

 

もしかしたら、俺はこの世界の主人公的な奴等を手助けするために来たのでは? とか考えたが、答えなんて出ないので、備えることにした。

 

 

 

「あ、そう言えば、他の皆のとは、どうだい?」

 

「うん、ユニコーンやジャベリン、皆と友達になれたよ」

 

「それは、良かった。無理しない程度に進めてくれ。それと助手につけたホムンクルス達とも仲良くな」

 

「大丈夫だよ、団長さん。あ、そう言えば、レプリカ作るってきいたけど」

 

「ん? ああ、本物は危ないからな、エンジンや他のパーツは別な物で代用しようかなと」

 

「ふむふむ、手伝っても良い?」

 

「ん? 助かるけど、いいのか?」

 

「もちろん、ハルハルも手伝って」

 

 

 

ハルナが俺を見るのでOKを出す。

 

 

 

「よーし、色々作るぞ!」

 

「あ、その前に発電機とか蓄電器作って」

 

「え?」

 

「いや、電力が足りないから、アカギには身軽でいてほしいしから、発電所を作らないと」

 

「あー、うん、分かった」

 

 

 

 

 

こうして、いつの間にか、蒔絵は暁の傭兵団の技術開発部の所長になっていった。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ロウリア王国の終わり

どこでもドア、やはり凶悪すぎる。

 

「て、敵襲!!」

「なにぃ!? いつの間に!? 門は閉まったままだぞ!?」

「どこから、こんな数が!!」

「ぎゃああああああっ」

 

「撃て撃てえぇっ!!」

「一人も逃がすな!」

「切り捨て、ごめん!!」

 

敵の街の内部や砦、陣地の近くにどこでもドアで近づいて、DOLLSを大量に移動させる。

 

戦車のDOLLSなら、後は素手でも街、砦や陣地を制圧出来るわけだ。

 

こうして、陥落させた街や砦はクワ・トイネ公国とクイラ王国の合同部隊で守ってもらう。

 

 

ロウリア王国軍が取り戻しに来るが、近づく前に量産型ガンタンクの餌食になった。

 

ゆっくりと、確実にクワ・トイネ公国とクイラ王国のことを考えながら、街や砦を占領していく。

 

ロウリア王国が降伏するなら、それでも問題はないが。

クワ・トイネ公国とクイラ王国の降伏条件+俺の条件が重いので、結果的に向こうは降伏してこなかった。

 

 

そして、クワ・トイネ公国とクイラ王国の合同試験部隊が、一応は戦える練度になったので、一気にロウリア王国の首都を陥落させることにした。

 

 

▼△▼△▼

 

 

ロウリア王国の王都 ジン・ハーク

 

MS部隊とDOLLS部隊で、ロウリア王国の王国まで道を切り開き。

 

DOLLS部隊が、ジン・ハークを包囲。

 

ロウリア王国軍はここに来るまでの間に、逃亡兵が急増。

 

実はそれの取り締まりで時間を取られた。

 

だが、ようやくロウリア王国の王都だ。

 

「いよいよ、本番ですな」

「モイジ団長、調子はどうですか?」

 

双眼鏡で、ジン・ハークの様子を見ていると声をかけてきたのはモイジさんだった。

 

彼は新しい兵器のクワ・トイネ公国の試験部隊に志願して、現在は隊長になっている。

 

「ああ、万全だ。古城団長、貴方のお陰でここまでこれた」

「いえ、亜人差別されると困るのは此方も同じです。折角仲良くなれた国が滅ぼされるのも嫌でしたから」

「例え、そうでも、お礼を言わせてほしい。ありがとう」

 

その時だった、タイマーが時間を知らせる。

 

 

「どういたしまして、おっと、そろそろですね」

「では、また後で」

「はい」

 

 

ロウリア王国、王都の戦いが始まった。

 

DOLLS部隊による攻撃。それと、クワ・トイネ公国とクイラ王国の試験部隊による激しい戦砲撃にさらされ、あっという間ジン・ハークは陥落した。

 

 

ビラを撒いた効果もあり、兵士の士気は最悪。武器を捨てて降伏する者が続出した。

 

殆んど戦わずに終わって、クワ・トイネ公国とクイラ王国の試験部隊の部隊員は拍子抜けした顔だった。

 

 

 

 

▼△▼△

 

 

 

ロウリア王国首都 ジン・ハーク ハーク城

 

 

 

6年もの歳月をかけ、列強の支援と、服従と言っていいほどの屈辱的なまでの条件を飲み、ようやく実現したロデニウス大陸を統一するための軍隊、錬度も列強式兵隊教育により上げてきた。

 

資材も国力のギリギリまで投じ、数十年先まで借金をしてようやく作った軍、念には念を入れ、石橋を叩いて渡るかのごとく軍事力に差をつけた。

 

圧倒的勝利で勝つはずだった。

 

これが、暁の傭兵団とかいうデタラメな強さを持つ者達がクワ・トイネ公国に雇われたことにより、保有している軍事力の殆んどを失った。

 

巨人が居ると聞いて、何故か嫌な予感がした。だが、巨人なんてモノは聞いたことがない。

だが、兵士達は大騒ぎした。本当に白い巨人が現れたと。

 

ワイバーンを見て、はしゃいでいた?

 

とんでもない。ワイバーンが可愛く見えるくらい、彼等は強いのだ。彼等的にはワイバーンはペット感覚だったのだろう。

 

六年かけて作り上げた船団は全滅、陸上戦力も大半が蹴散らされた。

 

 

こちらの軍は壊滅的被害を受けているのに、相手は、暁の傭兵団は1人も死んでいないと聞く。

 

とてつもないキルレシオ、文明圏の列強国を相手にしても、ここまで酷い結果にはならないだろう。

 

最初にしっかりと調べるべきだった。その上で雇い主を変えるように、莫大な報酬を用意すべきだった。

そうすれば、こちらの勝ちは揺るぎなかったはずだ。

 

くやんでも、くやんでも、くやみきれない。

 

敵は、もうそこまで来ている。

 

首都は包囲されている。ワイバーン部隊も全滅した。

 

もう、どうしようもない……。

 

 

バダダダダ…………、バダダダダ…………。

 

連続した聞きなれない音が王城の中で聞こえる。

 

近衛兵の悲鳴が聞こえる。

 

 

ドン!

 

王の謁見の間に、十人ほどの白い髪の同じ顔の少女達が入ってくる。その中に、一人だけ紺色の見たことのない清潔感のある服を着ている少年がいた。

 

金属製の翼を持つ少女は翼に付いた黒い棒のようなモノをこちらに向け、両手には美しい剣を二本抜いて構えている。

 

あの黒い棒は杖か? もしや、彼女達は魔法と剣、両方使いこなせる手練れなのか?!

 

更に王は気づく、全員返り血を少しも受けていない。

剣にはうっすらと血の跡があると言うのに、なんという手練れ!!

 

王の脳裏に、古の魔法帝国軍、魔帝軍のおとぎ話が浮かぶ。

 

 

「ま、まさか……貴殿等は魔帝軍か!?」

 

 

ハーク・ロウリアは恐怖に慄き、尋ねる。

 

少年が、王に迫る。

 

「魔帝軍……ね。これは調べないといけないことが増えたな。ま、兎に角だ。王よ、戦争吹っ掛けたんだ。ただで済むと思うなよ」

 

ハーク・ロウリアは捕らえられた。

 

 

▼△▼△

 

 

ロウリア王国の国王が捕らえられたことで、戦争は終わった。

 

ただ、その後で魔帝軍のことを調べた。

 

「やっぱり、変なのが居やがったな、こんちきしょうっ!!!」

「提督、テーブルが壊れちゃいます! 止めてください」

「落ち着いて下さい、アドミラル」

 

テーブルをぶっ叩いて、荒く息を吐く。

 

雪風(艦これ)とユキカゼ(蒼き鋼)に宥められる。

雪風の淹れてくれた御茶を一口飲んで、深呼吸する。

 

マクロスシティの自宅。

 

ロウリア国王を捕らえて、ロウリア国王に話を聞くと誰でも知っている神話だと聞いて、クワ・トイネ公国の御偉いさんや歴史家に魔帝軍について聞き回ったら、アッサリとラヴァーナル帝国と言う国が過去にあったことが分かった。

 

昔、ラヴァーナル帝国は世界を支配していた。

そして、他種族を虐げ、神を怒らせる何かをしたらしい。

 

最終的には、神が隕石を落として、防げないから未来にワープしたようだ。

 

「提督は、その魔帝が復活すると思うのですか?」

「俺みたいな出鱈目な奴が居るんだ。居ても不思議ではない」

「うっ、確かにそうですけど。神話の帝国ですか」

 

雪風は半信半疑なのだろう。正直、俺もだ。

 

だが、俺はチート能力をくれた、神様にも会ってるからな。

 

「アドミラル、ではどうしますか?」

「直ぐに作れる訳ではないけど、魔帝が現れた時に即座に叩き潰すか、制圧出来るように、宇宙基地の建設。それと大気圏を降下出来る戦艦の増産だな。ウェイブライダーも必要か」

「アドミラルの見せてくれたガンダムのコロニー落としみたいなことは?」

「基本的には避けたいけど、魔帝の国民性によっては、隕石は落とす。正直、神が落としてくれれば良いけど、神がやる場合は俺達が逃げる時間をくれるか分からない。ああ、そうなると、宇宙移民船団がコロニーを作らないといけないのか?」

 

ユキカゼの問いにそう答える。

残念なことにアクシズやルナツーは産み出せない。

やはり大きすぎるからか? それとも拠点だからか?

 

「あの、今私達、とんでもない話をしてませんか?」

「アドミラルは、やはり規格外ですね」

「まあ、本当に復活する。存在するとは限らない。準備だけはしておこう。とりあえず、ダイナミックゼネラルガーディアンとか、あった方がいいよな?」

「名前からして、過剰戦力のような気がします」

「面白そうなので、後でデータ下さい、アドミラル」

 

こうして、うんうん考えながら、ラヴァーナル帝国への備える為の防衛プランを皆に提案して、「どんだけ、時間が掛かると思ってるの? 馬鹿じゃないの?」って顔をされた。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

後始末

ロウリア王国は、クワ・トイネ公国とクイラ王国の連合軍に破れた。

 

殆んど、暁の傭兵団が戦ったけど、気にしては駄目だ。

 

結果、ロウリア王国は国土の半分をクワ・トイネ公国とクイラ王国に割譲。

 

国名をローリア王国に名前を変える。

 

次の国王は、斬首される前国王の息子(二歳)になり。副国王はクワ・トイネ公国とクイラ王国から二十年派遣される。

 

まあ、亜人差別主義は邪魔なので、ローリア国王が変な風にならないようにするためのものだ。

 

後、人種差別撤廃と奴隷解放も行った。

 

ただ、文明レベルと言うか、教育などのことを考えて、解放された亜人は、クワ・トイネ公国とクイラ王国、暁の傭兵団が職場を斡旋したりすることになった。

 

無一文で放り出されるのが目に見えていたので、そのフォローだ。

 

ただ、亜人差別はローリア王国人全てが持っている訳ではない。

 

奴隷から解放された後で、再雇用された元奴隷もいる。

 

それと、人権もクソもなかったローリア王国の奴隷制度を出来るだけ人権を付与させた。

 

まあ、主人の奴隷への暴行禁止。強姦禁止。殺人禁止。むち打ち禁止とか。

 

見つけ次第、重い罰金が化せられるように法律を変えさせた。

 

人種差別撤廃は、法律に明記することに意義がある。

 

まあ、今はどこまで効果があるか。

そもそも、差別は無くなるものではないので、気長に待つしかない。

 

▼△▼△

 

 

「では、戦争が終わりましたので、教官業務と割譲した地域の治安維持以外の仕事は契約を打ち切るという形で」

「はい、暁の傭兵団の皆様にはどれだけ感謝しても足りません」

「こちらも、色々と口を出させてもらいました。お気になさらずに、それにまだ商売があります。これからもよろしくお願いいたします」

「はい、こちらこそ」

 

 

こうして、初の暁の傭兵団の仕事は終わった。

 

「次は第三文明圏を見に行くか」

 

 

そう思って、グッと背を伸ばして、マクロスシティを歩いていると。

 

「何処へ行くつもりですか?」

 

ぞわっとする感覚に襲われて、後ろを振り替えると黒いオーラを纏ったベルファストが立っていた。

 

「え、な、何?」

「暁の大陸に移住してもらった元奴隷の方達、新しい開拓地の陳情が溜まってます」

「はい? 事前に色々用意していたはずだけと?!」

「はい、ですが、予想より遥かに多かったのです」

「え?」

「クワ・トイネ公国もクイラ王国も頑張っていますが、暁の傭兵団と支援の規模が違います。それに暁の傭兵団は派手に暴れましたから、暁の傭兵団の人気は凄いですから。お陰で暁の傭兵団の名を語る輩まで現れています」

 

「良し、八つ裂きにしろ」

 

俺の宣言に、ベルファストは淡々と答えた。

 

「問題ありません。クワ・トイネ公国とクイラ王国が怒ってましたから、少なくても二カ国では、取り締まりがしっかりと行われています。それにローリア王国にはDOLLSの治安維持部隊がいるので、問題ないです」

 

「そうか、あーと、とにかく書類仕事があると?」

「はい」

「魔帝の調査は……」

「既に第三文明圏の各国に誰を送るか、決まっています。とは言え近い場所からですが」

「大丈夫か?」

「はい、問題ありません。一例を挙げますと、フェン王国には、瑞鶴(アズレン)様、高雄(アズレン)様、綾波(アズレン)様、零戦(DOLLS)様五人。移動は伊400様にお願いします」

「うーん、それなら、何かあっても大丈夫かな?」

「緊急時には、伊400様がコンゴウ様へ御連絡を入れます」

「分かった。なら、俺は仕事をしようかな」

 

▼△▼△▼△

 

第三文明圏 列強国 パーパルディア皇国 

 

 

 

 

 

 

 

 薄暗い部屋、男達は国の行く末に関わる話をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「これだけ、待っても連絡が来ないか。やはり、死んだようだな。しかし、暁の傭兵団?聞いたことの無い名前の傭兵団だな」

 

 

 

「どうやら、ロデニウス大陸の東方向にある小さな大陸から来たそうです」

 

 

 

「いや、それは報告書を見れば解るが、今までこのような国はあったか?大体、ロデニウスから1500km程はなれた場所にあるなら、我々が今までの歴史で一度もその大陸に気づかないことなんてあり得るか?」

 

 

 

 

 

「あの付近は、海流も風も乱れておりますので、船の難所となっております。なるべく近寄らなかったので、解らなかっただけではないでしょうか?」

 

 

 

「しかし、文明圏から離れた蛮地であり、海戦の方法も、きわめて野蛮なロウリア王国とはいえ、たった8隻に4400隻も撃沈されるとは、現実離れしているな?」

 

 

 

「噂では鉄の巨人が現れたと」

 

 

 

「巨人、巨人か。蛮地になら、そんなモノがいるかも知れないな。だが、現実的なことを考えると大砲を造り上げたのだろう」

 

 

 

「大砲ですか、確かにそれなら、巨人より現実的ですね」

 

 

 

「だが、ロウリアが負けたとなると、我々の資源獲得の国家戦略に支障をきたすな」

 

 

 

「ええ、それと他の噂では、王都で鉄の竜も現れたとか」

 

 

 

「ふむ、クワ・トイネ公国が殺したのか。それとも暁の傭兵団が殺したのか。もう少し、確認をしてから報復するか」

 

「文明圏外では、移動中に死ぬことは希にありますからね」

 

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

グラ・バルカス帝国(通称第8帝国)情報局

 

並べられた電気式受信機に、電子音が連続して鳴り響く。現代の者がそれを聞いたのであれば、信号形式は違えど、モールス信号と間違う事だろう。

 

「閣下、ロデニウス大陸の情報について、現地から報告が届きました」

 

きらびやかではあるが、スッキリとした黒い制服の男が報告を始める。

 

「概要は?」

 

「はっ!ロウリア王国のクワ・トイネ公国並びにクイラ王国への侵攻は、暁の傭兵団と名乗る者達をクワ・トイネ公国とクイラ王国が雇い、失敗に終わり、国王は斬首、国名をローリア王国へ改名、新たな国王は前国王の幼い息子だそうで、領土の半数を失ったようです!」

 

「何!?」

 

いつもは概要を聞くだけで納得し、仕事は部下に任せ、責任は自分がとる閣下と呼ばれた男の片眉がつり上がる。

 

「たかが、傭兵団一つで、ロウリア王国が敗北? 我々の分析では、ロウリア王国の圧勝で、ロデニウス全域が、ロウリアになるはずだったが……詳細は?」

 

「暁の傭兵団はかなり強力な傭兵団らしく、陸戦でも、海戦でも4400隻の大艦隊は、ロウリア王国軍は全滅。戦争を通して、暁の傭兵団は損害無しだそう」

 

報告は続く

 

「なお、暁の傭兵団の兵装ですが、船舶に付いてはまだ情報がありません。鉄の巨人と呼ばれる者達と金属の翼を持つ空を飛べる少女達、王都では銃と戦車が目撃されています」

 

「待て、銃や戦車は分かる。だが、巨人? 空飛ぶ少女達? 何だそれは?」

 

「不明です」

「……そうか、航空戦力には固定翼機の確認は?」

「固定翼機の目撃情報はありません」

 

 

 

「ふぅむ、巨人と空飛ぶ少女、銃と戦車。謎が多すぎるな。ロウリア王国を無傷で倒している。そのことから、巨人は恐らくバリスタが効かないのだろう。空飛ぶ少女もワイバーン以上の力だろう。銃と戦車の数は分かるか?」

 

「銃は兵士全員に、戦車は4台ほどだと聞いています」

 

「ふむ、航空支援をしっかりお行わないと、歩兵に多少の被害が出るかもしれん。ま、大局に影響は無いだろう」

 

 

 男はその話題に興味を無くす。

 

 

「そういえば、レイフォル国艦隊とは、どうなっている」

 

「国家監査軍が、すでにレイフォル艦隊を補足しています。間もなく戦闘に入る予定ですが、提督は遊び心が過ぎるようで、蛮族に空母はまだ使わず、戦艦1隻のみを差し向けるそうです」

 

 

「1隻か、戦場伝説を作るには丁度良いな」

 

 

▼△▼△

 

 

「駆逐艦ですか?」

 

書類仕事は早く終わった。仕事量は少ない。

俺はベルファスト(アズレン)に紅茶を入れてもらい。

次の仕事の前にちょっと一息入れる。

 

「ああ、ローリア王国。クワ・トイネ公国、クイラ王国向けの海賊対策に、と思って。あ、魚雷とかは外すけど。まだ、魚雷は使えないと思うしね」

「なるほど、しかし、彼等に駆逐艦が使いこなせますか?」

「うーん、覚えられないなら、何かあった時には滅ぶだけだから、別に良いんじゃないかな。それに、移民してきた人達にも雇用が出来る」

「技術流失や防諜のことを」

「あ、移民は全員白だよ。鑑定したから」

「…………」

 

ベルファストがジト目で俺を見る。

早く言ってほしかった。という顔だ。

 

「分かりました。販売する駆逐艦の選定に入ります」

「あ、対空攻撃が得意なのをまずは、優先でワイバーンはやはり怖いから」

「畏まりました」

 

 

少しずつ、売る船の大きさをデカくすればいい。

半年後に軽巡洋艦を打診するか。

後は妖精さん達に借りている土地と港の改造をしてもらわないと。

 

やることが、多いな。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

フェン王国で大暴れ

暁の大陸 暁の鎮守府 暁古城の自室

 

「ごめん、もう一度言ってくれる? 電(艦これ)」

 

缶詰になって仕事をする日々。今日の書類仕事が終わり、畑仕事も終えてようやく休めると自宅のソファに横になった瞬間、電が俺の家に報告があると、突撃してきた。

 

「は、はい、なのです! ユキカゼさんからの報告で、お祭りで、暁の傭兵団の力を見せることになったそうです」

「……え。なんで?」

「その、女性が一塊で剣を腰に吊るして歩くのは、剣の国のフェン王国でも珍しかったらしく、絡まれてしまい。絡んできた男の人を叩きのめしたらしいのです。それで、偶然居合わせた剣豪の方が戦いたいと瑞鶴さんに持ちかけて、その方を瑞鶴さんが倒してしまい。それから、話を聞き付けた腕自慢と連日戦うことになってしまい。皆さんが強いことが分かって、フェン王国の国王陛下が、暁の傭兵団の力を見たいと。どうやら、フェン王国はパーパルディア皇国と外交トラブルを起こしているようです」

「外交トラブル?」

「はい、使っていない土地を明け渡せ。その代わりに属国にしてやる。と」

 

おいおい、いくら使っていない土地とはいえ、独立国にそう言うことを言うのは……いや、まだ精神的にみじゅくだからこそ、なのか?

 

まあ、二千年代の地球の全ての国家と人類が精神的に成熟しているとは口が裂けても言えないが。

 

 

「うーん、パーパルディア皇国は、ローリア王国へ怒っているみたいだし、暁の傭兵団が流した噂話にも食いついて、観戦武官殺しやがって!と騒いでるし、雇われるなら、ちょうど良いかな? 祭りに派遣するのは重巡洋艦は1隻と駆逐艦を3隻だな。それとマヤも派遣しておいて、ただし船体は海中で待機」

「はいなのです。瑞鶴さん達は、艦船形態にはしないのですね?」

「ああ、瑞鶴達にはそう伝えてくれ」

「分かったのです。後は大淀さんや大和さんと話を進めますね」

「頼むな」

「あ、それと、提督、明日も仕事はありますか、逃げちゃ駄目なのですよ」

「……はぃはぃ」

 

 

俺は電が家から出るのを確認すると、アイテムボックスから、どこでもドアを出して、クワ・トイネ公国の誰もいない草原に移動した。

 

「流石に缶詰で仕事し続けるのも疲れたし、ちょっと観光にも行きたいなぁ。と言うわけで、うーん。高速で長距離を移動出来る乗り物」

 

神話の事を考えると、光の翼目立つしアレはこの世界だと誤解を招きそう。

 

うーん。あ、アレが、あったか。

 

俺は能力を使って、あるものを産み出した。

オリジナルよりも、2割ほど弱体化してしまっている上に誰にでも乗れるようになっている、この世界でも恐らく最速の機体。

 

「行こうか、魔装機神サイバスター!」

 

 

こうして、俺はこっそりと、風の向くまま観光に出掛けた。

 

衝動的な行動だったが、結果的に吉と出た。

 

ま、後で皆にしこたま怒られたが。

 

▼△▼△▼△

 

 

ちょっと時間は巻き戻る。

 

フェン王国

 

 

「ほう、暁の傭兵団とやらの剣士は、そこまでの腕か」

 

パーパルディア皇国からの領土の献上を断り、パーパルディアとの戦争は確実になり、剣王は国防の為に頭を悩ませていると、部下からの報告が聞き目を見開く。

 

ここ数日、城下街が騒がしいとは思ったが、フェン王国でも上位に入る強者達が連戦連敗していると言う。

 

「よし、暁の傭兵団に会ってみるか」

 

 

 

 

 

 

「なんというか……、改めて身が引き締まるな」

「そうですね、高雄」

 

 

 

この国に訪れてから、高雄達はフェン王国の雰囲気に驚いていた。

 

国中が厳しく、厳格な雰囲気が漂っている。武士の治める国……、高雄達のフェン王国へのイメージだった。

 

ただ、生活レベルは低い、国民は貧しい。だが精神レベルは高く、誰もが礼儀正しい。

 

古城がこの国を訪れれば、日本が忘れた真の武士道のようなモノを持っている国と感じただろう。

 

「しかし、国王に呼ばれるとは」

「やはり、流石にやり過ぎたのでは?」

「むぅ」

 

高雄と瑞鶴が囁きあっていると。

 

 

「剣王が入られます」

 

声があがる。外務省職員は立ち上がって礼をする。

 

「そなた達が、暁の傭兵団の……者か?」

 

 

剣王は高雄達を見て、動揺しかけたが、直ぐに気を取り直した。

 

 

 

高雄と瑞鶴は剣王が、達人の域を大きく超えていると感じた。

 

「はい、暁の傭兵団、重桜か、んんっ、第三部隊指揮官瑞鶴です」

「補佐の高雄です」

 

「ほぉ、その若さで部隊指揮官か」

 

「はい、ありがたくも」

 

「ふむ、私は暁の傭兵団という傭兵は今まで聞いたこと後ない。どのような傭兵で、どれだけの武功があるのか教えてもらえないか?」

 

剣王の言葉に、瑞鶴は暁の大陸での会議を思い出した。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

「パーパルディア皇国とは、間違いなく争いになることが分かりました」

「どういうことかしら? 大淀」

 

赤城(アズレン)の質問に、長門(艦これ)が答える。

 

「旧ロウリア王国の国王を捕らえて、尋問した時にパーパルディア皇国のことも質問したのだが、どうやらロデニウス沖海戦時に、パーパルディア皇国の観戦武官が、乗っていたらしい」

「あら、困ったことになったわね」

 

プリンツ・オイゲン(アズレン)が、全然困ってない表情で言う。

 

「それで、指揮官様は何と?」

 

イラストリアス(アズレン)が大淀に問いかける。

 

「パーパルディア皇国の気質を考え、クワ・トイネ公国に難癖付けられられる前に、ロデニウス海戦沖のことを噂に流します。矛先をこちらにしっかりと向けます。そして、パーパルディア皇国と戦争になりそうな国へ向かい、雇われます」

「都合よく、そんな国があるのか? 聞く限り、パーパルディア皇国は列強に入っている国だろう。逆らう国があるのか?」

 

加賀(アズレン)の疑問に、長門(アズレン)が答える。

 

「だからこそ、逆らう国はあるさ、パーパルディア皇国は横暴すぎる。探せば一国くらいは出てくる」

「今から名前を呼ばれた方は、お渡しするマニュアルを参考に行動してください。情報は少ないので向かう国では、報連相と柔軟に対応してください」

 

 

△▼△▼△▼

 

 

「ふははははは、巨人に空飛ぶ少女か。更に4400隻の大艦隊を全滅させたと」

「はい、嘘はもうしておりません」

 

瑞鶴の言葉に、剣王は笑った。流石に盛りすぎだと。

 

だが、予想された反応だ。

故に高雄は、剣王に提案した。

 

「我々が保有する戦闘艦を見ていただきたい」

 

「ほぉ、傭兵が我が国に見せ付けるだけの船を持つと」

 

「はい、見ていただければ分かります」

 

「面白い、ならばその船を持ってくるが良い。今年我が国の水軍船から廃船が4隻出る。それを敵に見立てて攻撃し、力を見せてみろ」

 

「はっ、分かりました」

 

 

こうして、フェン王国の首都アマノキの沖に、追加の駆逐艦が派遣されることになった。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

軍祭でのトラブル

フェン王国 港

 

「綾波ちゃん!」

「ジャベリン、ラフィー、ニーミ、愛宕(艦これ)さん、マヤさん、お久しぶり、です」

「綾波、ひさしぶり……Zzz」

「寝ないで下さい! 久しぶりですね」

「ふふ、久しぶりね、綾波ちゃん。元気だった?」

「はい」

「綾波、カーニバルなんだって? 楽しみ!」

 

はしゃぐマヤを眺めながら、高雄は少し困った顔で呟く。

 

「いや、マヤ殿が考えているような祭りではないのだが」

「ねぇ、400、何て伝えたの?」

「はい、瑞鶴さん、そのまま、教えましたが。どうやら、伝達ミスがあったようです」

「「「「「またですか」」」」」

 

DOLLSの零戦の声がユニゾンする。

 

「しかし、愛宕殿も含めて4隻か。やはり我々も船を出すべきでは?」

「いえ、協力関係を築いてない国には、非常時以外は艦船形態と武装形態は見せないようにって、指揮官に言われてますし」

「はい、瑞鶴さんの言う通りです。明日行われる軍祭のことは、パーパルディア皇国にも情報が入ります。暁の傭兵団の戦力が多いと、パーパルディア皇国がビビってフェン王国を襲わない可能性があります」

 

伊400の言葉に高雄が考える。

 

「ビビる、のか? 話を聞く限り、パーパルディア皇国はプライドが高そうだが」

「可能性の問題です。傭兵団ですから、雇われたのに戦争にならないのは、困るのです。傭兵団ですから、国に宣戦布告する訳にもいきません。まあ、名指しで襲われたら、アドミラルは殺っちゃうでしょうが」

 

無表情の伊400に同意するように、瑞鶴が言う。

 

「魔帝のことがありますから、派手に暴れているパーパルディア皇国は邪魔になる可能性が高いので、今のうちに黙らせたいと思っているようですよ、高雄」

「ふむ、おや」

 

高雄が考え込もうとしたとき、フェン王国の高官と護衛達が慌てたやって来た。

 

用事はもちろん、恐らく沖居合いに浮かぶ4隻の艦船だろう。

 

船員として、完全装備のホムンクルス達が各艦に乗っている上に、海中にはマヤの船体が待機しているし。中を見せろと言われても断れと言われているから、揉めても問題はない。

 

そもそも、力を見せろと言ったのはフェン王国だ。こちらは傭兵。機嫌を損ねて帰られても困るだろうから、求められるのは説明だけだろう。

 

「だが、明日、何事も無く終われば良いが……」

 

何故か、面倒な事が起こりそうな予感がする高雄だった。

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

剣王シハン

 

「あれが暁の傭兵団の戦船か……まるで城だな」

 

正直な感想を洩らす。

 

 

「どんな戦船が来るかと思ったが、これほどの大きさの金属で出来た船が海に浮かんでいるとは……」

 

騎士長マグレブが同意する。

 

「私も数回、パーパルディア皇国に行った事がありますが、これほどの大きさの船は見た事がありません」

 

彼らの視線の先には、暁の傭兵団の4隻の船が並んでいた。

 

「剣王、そろそろ我が国の廃船に対する暁の傭兵団の艦からの攻撃が始まります」

 

 

重巡洋艦の愛宕、駆逐艦のラフィー、ジャベリン、ニーミが並び、沖合いにフェン王国の廃船が4隻、標的船として浮かんでいた。

 

 距離は愛宕達から2km離れている。剣王シハンは望遠鏡を覗き込む。

 

 愛宕から、順番に主砲を発砲した。暁の傭兵団の船の大砲から火と煙が吹き出る、僅かな時間の後、音が聞こえる。

 

「おや、珍しい。ラフィーが初弾命中させましたね」

「ラフィーは、やる気を出せば、凄く強いのです」

 

伊400の言葉に、綾波が答える。

 

剣王は二人の話している姿を見て、昨日の夕食時に顔を合わせた少女達を思い出す。

 

彼女達が艦長だと聞いて驚き、冗談だろう。と告げると。

 

彼女達は、自分達の乗る艦船の具体的な運用方法を説明した。

 

王は専門知識がないので、知識がある者を呼び。確認させると、家臣はいくつか質問をし、答えをもらうと少し悔しそうに「剣王よ。この者達は間違いないかと」と告げた。

 

「そんなに強いのか?」

「はい、駆逐艦では、五指にはいりますです」

 

剣王の言葉に綾波はそう答えた。

 

 

直後、最後の標的船が猛烈な爆発を起こし、水飛沫をあげて、船の残骸が空を舞った。

 

標的船4隻は、轟沈した。

 

 

「…………なんとも凄まじい」

 

剣王シハン以下フェン王国の中枢は、自分たちの攻撃概念とかけ離れた威力を目の当たりにし、唖然としていた。

 

 

たった一発の攻撃で、あっさりと沈める。

更に、パーパルディアの戦列艦の攻撃ではダメージを受けないとまで言っている。

 

 

 

「すぐにでも、暁の傭兵団を雇いたいと思う」

 

剣王は満面の笑みで宣言した。

 

 

 

 

 

 

愛宕達のレーダーは、西側から近づく飛行物体に気がついていた。

時速にして約350kmで、20機ほどが近づいてくる。

 

 

「愛宕さん、何か近づいてくます」

「えぇ、此方も確認しているわ。みんな、フェン王国からは事前に何も聞いていないから、警戒を」

 

ジャベリンの通信に、愛宕は全艦に通達する。

 

「高雄さん? 聞こえる」

「ああ、聞こえている。何か来るな」

「王国に確認を」

「分かった」

 

愛宕の通信に、高雄は猛烈に嫌な予感がした。

 

「剣王、こちらに飛行物体が20機ほど近づいてきますが、フェン王国のパフォーマンスか何かでしょうか?」

「なんだと!?」

 

 

▼△▼△▼△

 

 

パーパルディア皇国の皇国監査軍東洋艦隊所属のワイバーンロード部隊20騎は、フェン王国に懲罰的攻撃を加えるために、首都アマノキ上空に来ていた。

 

軍祭には文明圏外の各国武官がいる。その目前で、皇国に逆らった愚か者の国の末路はどうなるか知らしめるため、祭りに合わせて攻撃の日が決定されていた。

 

この攻撃で、各国は皇国の力と恐ろしさを再認識することだろう。そして逆らう者の末路、逆らった国に関わっただけでも被害が出ることを知らしめる。

 

 

ガハラ神国の風竜3騎も首都上空を飛行している。

 

風竜が皇国ワイバーンロードを見ると、ワイバーンロードは、不良に睨まれた気の弱い男のように、風竜から目を逸らす。

 

 

 

「ガハラの民には、構うな。フェン王城と、――なっ、何だ、あのデカイ船は!?」

「た、隊長、ど、どうしますか?!」

「うーむ、列強が軍祭に参加している情報はない。ムーなどの列強の船ではないな! 攻撃しろ!!」

 

 

ワイバーンロードは上空で散開した。

 

 

 

西側から飛行してきた、ワイバーンは、隊を2つに分けフェン王国王城に向け、急降下を始めた。

 

「なんだ!? デモンストレーションか!?」

 

誰もが疑問に思った時、急降下していた竜が口を開け、口内に火球が形成され始める。

 

「!!!!!!!!!!!」

 

次の瞬間、10騎のワイバーンから放たれた火球は、王城の最上階に着弾し、木製の王城は炎上を始める。

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

「敵襲!?」

 

瑞鶴が声を上げると、

 

「愛宕さん達の方にも、向かっているのです!」

「ちぃっ、零!!」

「ひぃ、緊急事態なのは分かりますが、せめて道で発進を」

「市民がパニックを起こしている。使えないから諦めろ!」

 

高雄は一番近くにいたDOLLSの零戦の首根っこをむんず!と掴むと、零戦は悲鳴を上げる。

 

戦闘機のDOLLSは滑走路無しでも、飛ぼうと思えば飛べるが、飛行が安定するまで時間が掛かる。

 

そこで色々考え、偶然見つかった方法が、怪力でDOLLSを斜め上に投げ飛ばす方法だ。

 

実は仕事で缶詰になり、魔帝と言う未知の存在に不安が募り、ストレスで深酒した古城が勢い余って、止めに入った零戦を力加減を間違えて投げ飛ばして、安定して飛べたことで、生まれた緊急時の発進方法だ。

 

体格や力がないと出来ない方法で、練習もしないと出来ないし失敗したら、えらいことになるので、滅多に使うことがないと言われていた方法だ。

 

「いっけええええええええぇぇぇっっっ!!!」

「ひぃやあぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 

突然、ワイバーンが現れて、城を攻撃したと思ったら、次は女の子が空に投げ飛ばされ、投げ飛ばされた女の子が一瞬白く光り、次の瞬間には金属の翼で、空を飛びもの凄い勢いでワイバーンへ突撃した。

 

突然の出来事に、暁の傭兵団以外はついていけなかった。

 

「ワイバーンの攻撃力は分かっている! 愛宕達は心配するな! まずは城を襲ったワイバーンを! 瑞鶴、手伝ってくれ!」

「え、またですか?! 空は私一人十分――ひぃぃぃぃやあぁぁぁぁっっ!!!!!」

 

 

また、投げ飛ばされた零戦を見ながら、瑞鶴は申し訳ない気持ちになりながらも、腰が引けている一人子零戦の肩に手を置いた。

 

「ごめんね」

「あ、うん、はい」

 

 

こうして、緊急発進した五人のDOLLSは、全力で城を焼いたワイバーンを血祭りに上げた。

 

彼女達は、憎きワイバーンを真っ二つにし、機銃でミンチにして溜飲を下げたのだった。

 

彼女達の気迫に目撃した、フェン王国の住人は余計なことをしたワイバーンへの苛烈な攻撃に畏怖をした。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

事前情報の無い未確認機が多数接近中、愛宕達は何時でも動けるようにしながら、上空の監視を怠ってはいなかった。

 

「ワイバーン、愛宕へ発砲! 愛宕さん!?」

「愛宕さん!!」

「っ!!」

 

ニーミとジャベリンが聴こえる。

 

ドーンと爆音が鳴り響く。

 

「あちゃー、船体後部に被弾!火災発生したけど、大丈夫よ!!」

「こちら、ニーミ! 攻撃の許可を!」

「分かっているわ。全艦、所属不明騎を敵と認定、迎撃開始!!」

 

 

▼△▼△▼△

 

 

「何!!あのタイミングで、ほとんどかわされただとぉ!!?」

 

急降下から、水平飛行に移行したワイバーンロード10騎は、必中タイミングで撃ったにもかかわらず、そのほとんどをかわされた事に唖然としていた。

 

 

 

 

 

「くっ、なかなか火が消えません!」

 

 

乗員として、愛宕に乗り込んでいたホムンクルス達が必死に消火活動を行うが、導力火炎弾が命中したことによる火災は、炎が粘性を持っているらしく、消火活動に手間取る。

 

「当たれぇっ!!」

「ラフィー、やる気十分っ」

「当たって!!」

 

愛宕、ニーミ、ラフィー、ジャベリンは一斉に、対空迎撃を開始。

 

4隻の対空迎撃の弾幕は飛行物体、ワイバーンの改良種、ワイバーンロードを捉え、あっと言う間に紅く染める、ワイバーンロードは、上空でのたうちまわり、竜騎士は振り落とされ、海中へ落下した。

 

「墜ちちゃいなさ~い!」

「墜ちろ!」

「撃つ」

「いっけぇっ!!」

 

愛宕達は、ワイバーンロードの動きを先読みし、的確にワイバーンロードを全て、叩き墜とした。

 

「まったく、酷い目にあったわ。提督に慰めてもらわないと」

「え、エロはいけませんよ! 愛宕さん!!」

「えぇ~、ジャベリンちゃんも」

「ああ~!! 言わないで下さい!!」

 

「二人とも! 真面目にやってください!」

「ラフィー、頑張った。ねむ……ぃ」

「ラフィーは、寝ないで下さい!!」

 

▼△▼△▼△

 

 

剣王シハン及びその側近たちは、開いた口が塞がらなかった。

 

飛行物体。ワイバーンロードは、間違いなくパーパルディア皇国のものだろう。

 

フェン王国が、ワイバーンロードを追い払おうと思ったら、至難の技だ。

1騎に対して一個武士団でも不足している。そもそも、奴らは鱗が硬く、弓を通さない。

 

バリスタを不意打ちで直撃させるか、我が国に伝わる伝説の剛弓を使うしか無いが、剛弓は硬すぎて、国に3名しか使える者はいない。

 

 戦闘態勢にあるワイバーンロードを仕留めるのは、事実上不可能に近い。

 

文明圏外の国で、1騎でもワイバーンロードを落とすことが出来れば、国として世界に誇れる。

 

我が国は、ワイバーンロードを叩き落すことが出来るほど精強であると……。

 

それを、暁の傭兵団は、いともあっさりと空を飛ぶハエを叩き潰すかのように、自分は殆んど怪我を負わず、列強の精鋭、ワイバーンロード竜騎士隊を20騎も叩き落してしまった。

 

しかも半数は、五人の空を飛べる金属の翼を装備する少女零姉妹達による魔法と剣による一刀両断。

 

 

 

暁の傭兵団は、文明圏外の武官が集まっている軍祭で、各国武官の目の前で、各国が恐れる。列強パーパルディア皇国の精鋭ワイバーンロード部隊を赤子の手をひねるように、叩き落とした。

 

歴史が動く、世界が変わる予感がする。

 

ワイバーンロードは、おそらく自分たち、フェン王国への懲罰的攻撃に来ていたのだろう。

 

暁の傭兵団が、この国に来たのは、天運ではなかろうか……。

 

剣王シハンは、笑いながら燃え盛る自分の城を眺めていた。

 

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

『すごいものだな・・・あの船は・・・』

 

 風竜は感嘆の声をあげる。

 

『ああ、見た目以上の技術の塊だな』

 

「そ……そうなのか?そんなにすごいのか!?」

 

『ああ、特に海の中に潜んでいる2隻はとんでもないな!!』

 

「え!? 海の中?! どこ!?」

 

『人間には見えないさ。私でも辛うじて分かったくらいだ。水上の4隻も凄いが、海の中にいる2隻は私でも、理解出来ない』

 

「おいおい、帰ったら報告書が大変だな」

 

上空では、ガハラ神国の風竜騎士団長スサノウと風竜の間で、そんな会話が行われていた。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

パーパルディア皇国、皇国監査軍東洋艦隊竜騎士レクマイア

 

フェン王国懲罰の命、簡単な仕事だと思っていた。栄えある列強パーパルディア皇国のワイバーンロード部隊にかかれば、フェンのような蛮族の国など、自分1騎で、1個騎士団を相手にしても余裕で倒せる。

 

軍祭などという、各国武官や船まで招いての祭りが行われているのであれば、蛮族どもにパーパルディアの力を再認識させる機会だ。

 

フェン国などという、パーパルディアに反目する国の祭りに参加していると、痛い目を見るということを解らせるために、目立つ大きな船を狙った。

 

しかし、その船は必中距離で放った導力火炎弾のほとんどを、信じられない加速でかわし、猛烈な光弾を放ってきた。

 

その光は弓をも跳ね返すワイバーンロードの硬い鱗を引き裂き、相棒に大きな傷を負わせた。

 

自分は海へ落下し、海上から上空を見上げたところ、仲間たちはさらなる悲劇にみまわれていた。

 

仲間たちは、他の巨大船から放たれた光弾に、ズタズタにされてしまった。

 

彼と運良く生き残った竜騎士は、この後愛宕達に救助され、暁の大陸に送られ。

 

 

 

 

サキュバス(このすば勢)達による、睡眠ガスも使用した永遠とも言える、快楽尋問によって、彼等が知っているパーパルディア皇国の情報を洗いざらい吐き出した。

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

「竜騎士隊との通信が途絶しました」

 

 

 

!!!!!!!!!

 

通信師の言葉に、艦隊に衝撃が走る。

 

「いったい何があった・・・。」

 

提督ポクトアールは嘆きたくなった。いやな予感がする。しかし、これは第3外務局長カイオスの命である。

 

国家の威信をかけた命である。

 

実行しない訳にはいかなかった。

 

皇国監査軍東洋艦隊22隻は、フェン王国へ懲罰を加え、今回ワイバーンロードを倒した皇国にたてつく者を、各国武官の前で滅するために、風神の涙を使用し、帆をいっぱいに張り、東へ向かった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

契約

 

「さて、このような場所で申し訳ないが」

「いえ、問題ありません」

 

場所を移動して、瑞鶴と高雄、伊400の三人は、フェン王国の国王達と今後について、話し合いを行うことにした。

 

「まず、フェン王国にはこちらを御覧いただきたい」

 

事前に用意していた、暁の傭兵団の料金表を伊400がフェン王国側に手渡す。

 

「これは……」

「まず、最初は仕事に合わせた料金プランです。小規模なモノは、個人の護衛や村の護衛などですね。そこから徐々に規模が大きくなります」

「ふむ、ん? このMS。もびるーつとは?」

 

剣王の問いに高雄が答えた。

 

「高さは約18メートルほどの鉄で出来た人形のような兵器です。人間以上の動きで、陸上と水中どちらでも戦えます」

「…………」

 

剣王と家臣達は、高雄が何を言ってるのか、全く理解出来なかった。

 

「う、うむ、出来れば、ここに乗っている兵器は是非見てみたいな」

「ええ、構いません。しかし、ここへ持ってくるには少し時間が掛かりますね」

 

瑞鶴の言葉には裏はなかった。

だが、フェン王国の剣王と家臣達は、タダでは見せない。と言う意味にとった。

 

剣王と家臣達が、小声で相談する。

 

「ふむ、では、先にあの4隻を雇おうか」

「え、あの、料金的に高くなりますよ? 駆逐艦も高いですか、重巡洋艦は」

「構わぬ、パーパルディア皇国に負ければ全てを失う。ならば、暁の傭兵団に支払った方が国としては正しい使い方だ」

「は、はぁ」

「では、雇用期間などの書類を」

「それは、時間がかかるか?」

「多少、お時間をいただきます」

「ふむ、払えるだけの料金を今支払う。先にあの4隻を動かしてもらえないか?」

 

剣王の言葉に、瑞鶴と愛宕が驚く。

 

「え?」

「剣王、それはどういう意味でしょうか?」

「先ほどの城と暁の傭兵団を襲ったワイバーンロードは、パーパルディア皇国の監査軍と言って」

 

説明を聞いた瑞鶴が質問をする。

 

「つまり、艦隊が近づいていると?」

「うむ、我が国の水軍が戦っている筈だ。援軍に」

「その必要はありません」

 

言葉を遮ったのは、伊400だった。

 

「なに?」

「400?」

「400殿、どういうことか?」

「はい、アドミラルの命令です。パーパルディア皇国と戦う場合、此方の情報を持ち帰らせるな。現在、マヤがパーパルディア皇国の艦隊と戦闘中です」

「馬鹿な、何故そんなことが分かる!」

 

驚く剣王と家臣達。

 

「剣王、驚かせて申し訳ない。彼女は超遠距離通信魔法の使い手なのです」

「嘘ではありません。フェン王国の水軍が帰還したら話を聞いて見てください。別行動をしていた仲間の船がパーパルディア皇国の艦隊と戦ったと証言してもらえる筈です」

 

瑞鶴と高雄の補足説明に落ち着く剣王。

 

「いや、大きな声を上げてすまなかった。我が水軍への増援は問題ないのだな?」

「はい」

「分かった。では、そうだな。パーパルディア皇国と身を守るために、この防衛プランにしようか」

 

暁の傭兵の強さは知っている。

水軍にも被害は出たのだろう。だが、パーパルディア皇国の艦隊は全滅しているはずだ。

 

まずは、暁の傭兵団のことを知ろう。

剣王は、瑞鶴と高雄に色々と質問をし、伊400が補足説明をした。

 

瑞鶴と高雄は内心「商人じゃないのに!!」とか「営業スマイルが辛い!!」と、半泣き状態だった。

 

こうして、契約が結ばれると、直ぐに明石と不知火がやって来て、フェン王国に様々な物を売りつけ、買い付け、フェン王国は豊かになり始めるが、フェン王国上層部は、暁の傭兵団への支払いについて悩むことになった。

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

フェン王国 水軍

 

 

 

フェン王国、王宮直轄水軍13隻はパーパルディア皇国との戦争の可能性があったことから王国西側約150km付近を警戒していた。

 

警戒にあたる水軍は、フェン王国の中では精鋭をそろえており、比較的経験の浅い者は、今回警戒の任にはつかず、軍祭に参加している。

 

水軍は木製の船に、効率の悪そうな帆を張り、進む。

 

機動戦闘が必要な場合は、船から突き出たオールで全力で漕ぐ。

 

船には、火矢を防ぐための木製盾が等間隔に整然と置かれ、敵船体を傷つけるためのバリスタが横方向へ向かい、3機づつ設置されていた。

 

13隻の水軍を束ねる旗艦は、他の船に比べひとまわり大きく、船首には1門だけ大砲が設置されている。

 

水軍長 クシラ は西方向の水平線を睨んでいた。

 

「軍長、パーパルディア皇国は来ますかね・・・。」

 

「先ほどワイバーンロードが我が国に向かい飛んでいった。必ず来る!」

 

「……勝てますか?」

 

「ふ、列強国相手とはいえ、タダではやられんよ。うちはかなりの精鋭揃いだからな。それに……」

 

軍長は艦首にある大砲を見る。

 

「あれを見よ!文明圏でのみ使用されていると言われる魔道兵器だ!球形の鉄の弾を1km近くも飛ばして、船にぶつけ、その運動エネルギーをもって破壊する。これほどの兵器を船に積んだんだ!」

 

軍長は艦長に話す。

 

部下の前で不安は口に出来ない。しかし、軍長は知っていた。列強には、砲艦と呼ばれる船ごと破壊出来る超兵器が存在することを。

 

おそらく砲艦は、このフェン王国最強の船、旗艦剣神のように、文明圏に存在する大砲と呼ばれる魔道兵器を船に積んだものだろう。

 

しかも、その最強クラスの船が、列強では普通に存在するのだろう。

 

水軍長クシラの頭の中は、来るべき列強パーパルディア皇国との戦闘に備え、フル回転を始める。

 

(どうすれば・・・勝てる?)

 

「艦影確認!!!!艦数22!!!」

 

マストの上で見張りをしていた見張り員が大声で報告する。

 

ついに、来たか! 水平線に艦影が見える。

 

望遠鏡と通して見えるその艦は、フェン王国王宮直轄水軍の船に比べ、遥かに大きく、先進的である。

 

デザインと機能性を兼ね備えたマストに風の魔法で吹き付けられる風を受け、フェン王国式船より速い速度で船は進む。

 

水平線から徐々に大きくなっていく敵艦隊は、フェン王国水軍長クシラの目を持ってしても優雅であり、美しく、力強い。

 

各艦の乱れない動きから、錬度の高さが伺える。

 

「総員、戦闘配備!!!!」

 

船員が慌しく動きまわる。

 

「……思ったより接近が早い」

 

彼の想定する船速よりも速く艦隊は近づいてくる。

 

「くっっっ……初弾だ!最初に一番威力のある攻撃を行ない、その後魔導砲を放ちながら最大船速で敵に突っ込むぞ!!!!」

 

「各自、戦の準備を!!!旗艦剣神を最前列とし、縦1列で敵に突っ込むぞ!!!」

 

……頼むぞ!

 

水軍長クシラは旗艦剣神の船首に1門だけ設置された魔導砲に願いを込めた。

 

▼△▼△

 

 

「艦影確認、あの旗は……フェン王国水軍です」

 

パーパルディア皇国 皇国監査軍東洋艦隊の提督、ポクトアールは報告を受ける。

 

 

 

「フェン王国か、ワイバーンロード部隊の通信が途絶している。新兵器を持っているのかもしれないな」

 

ポクトアールは声を張り上げる。

 

「相手を蛮族と侮ってはいかん!列強艦隊を相手にする意気込みで、全力で叩き潰すぞ!!」

 

艦隊は速力を上げ、フェン王国水軍へ向かって行った。

 

▼△▼△▼△

 

 

フェン王国水軍

 

 

「間もなく敵との距離が2kmに接近します」

 

報告があがる。

 

「あと1kmで敵の砲艦の射程に入るか・・・。」

 

 

水軍長クシラの額に汗が滲む。

 

「最大船速!!!オールを漕げ!!!」

 

 

各船からオールが突き出る。

 

太鼓のリズムに合わせ、一定のリズムでオールが漕がれ始める。

 

フェン王国水軍13隻は、速度を上げ、進む。

 

!!!!!!

 

「敵船が旋回しました!」

 

敵の艦隊が一斉に横を向く。

 

「何をする気だ!?」

 

水軍長クシラは、敵船の動きの理解に苦しむ。

 

 

 

 パパパパパパッ……敵船が多数の煙に包まれる。

 

 ドドドドドドーン……少し遅れて炸裂音が海上に鳴り響く。

 

 

 

「ま、まさか!!!魔導砲!?」

 

 

 

 そんな馬鹿な!文明圏で使用されている魔導砲は、射程距離が1km、現在の敵との距離は2km、まだ倍もの距離がある。

 

しかも、こちらは艦首に1門だけ魔導砲を設置しているが、敵は・・・1艦あたりに比較にならないほどの数の魔導砲がある。

 

シュボンシュボンシュボンシュボン……

 

砲撃の落ちた場所に水柱があがり始める。

 

く……当たるなよ!!

 

水軍長クシラは神に祈る。

 

ドーーン……シュバーーーーーン!!!!!

 

旗艦剣神の後方を航行していた船に、敵の魔導砲が着弾する。

 

砲弾は炸裂し、船上に設置してある火矢を放つための油壺をなぎ倒し、撒き散らされた油に引火、船は爆発炎上を初める。

 

フェン王国の精鋭部隊が、鍛え抜かれた肉体、練習に練習を重ね、地獄のような訓練の後に得られた剣術が発揮される事無く船上で焼かれ、転げまわる船員

 

「なんということだ!!!」

 

このまま、ではまずい。

 

水軍長クシラが叫んだ瞬間だった!

 

 

 

――ざぁっぱぁっっっっ!!!

 

 

突然のフェン王国水軍とパーパルディア皇国 皇国監査軍東洋艦隊の間の海面が爆発して巨大な何か現れた。

 

 

「な、なんだあぁっ!!??」

 

大量の水飛沫、更に突然の発生した高波で水軍長クシラと船員が転げ回る。

 

しかし、水軍長クシラは何とか体勢を立て直して、現れたと謎の物体を見て、叫んだ。

 

「ふ、船だと!?」

 

それは、恐ろしいほどに巨大な船だった。

今、自分達が戦ってパーパルディア皇国 皇国監査軍東洋艦隊以上の巨体、更にパーパルディア皇国 皇国監査軍東洋艦隊の砲撃は、見えない壁で全て、無効化をしていた。

 

「「「「……………………」」」」

 

唖然とするフェン王国水軍の船員達。

 

さして、水軍長クシラは船の艦首に人が立っていることに気づいた。

 

「女の子……?!」

 

そこ居たのは、美しい少女だった。

 

「カーニバルッ! だよっ!!」

 

少女が愛らしい声で叫んだ。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

カーニバルッ! だよっ!!

パーパルディア皇国 皇国監査軍東洋艦隊

 

 

 

フェン王国 水軍と戦闘中。突然海面が爆発し、フェン王国水軍の壁になるように現れた物体は、城のように巨大な船だった。

 

しかも、現れた巨大船は、此方のフェン王国を狙った砲撃を、見えない壁で軽々全て防いでしまった。

 

「なっ、何なんだ、アレは!?」

 

も、もしや、あの巨船は列強のモノなのか!?

 

 

ポクトアールは、咄嗟に頭の中にある記憶を手繰り寄せるが、直ぐに思い直す。

 

いくら列強の船でも、海に潜るなど聞いたことがない!

 

更に我が国の22隻の砲撃を防ぐ見えない壁、恐らく魔導だろう。だが、そんな魔法聞いたこともない!!

 

仮に隠していたとしても、そんな凄い船ならば、噂くらいある筈だ。

 

 

だが、目の前に存在する、アレは何だ!?

 

とにかく、情報を! ポクトアールは望遠鏡で、必死に巨大な船を観察する。

 

「馬鹿なっ、やはりあれは列強の船なのか!?」

 

巨大船の艦前方には、話には聞いたことのある列強が装備しているような、巨砲が備え付けられていた。

 

 

そして、その巨砲は、こちらに向けられ。

 

 

「避けろっ!!」

 

 

咄嗟の意味のない叫びだった。閃光が視界を埋めつくし、ポクトアール提督は閃光に包まれた。

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

突然海中から現れた、城のように巨大な船は、自分達が手も足も出なかった、パーパルディア皇国の皇国監査軍艦隊をあっと言う間に蹴散らしてしまった。

 

 

 

 

 

巨砲から撃ち出される光の砲弾。

 

 

 

光の砲弾が敵船に当たると、その部分がくり貫いたかのように穴が開いて燃え盛る。

 

 

 

しかも、連続で発射され、22隻の列強国艦隊は、あっという間に海の藻屑となった。

 

 

 

皇国監査軍艦隊は、我が水軍の射程より長かった。

 

 

 

巨船が現れたからこそ、余裕が出来、慌てて望遠鏡でパーパルディア皇国の艦隊を改めて確認したが、30門以上の大砲があり、中には倍以上の大砲を搭載している船もあった。

 

 

 

それなのに、一方的列強パーパルディアの艦隊が、あっという間全滅。

 

 

 

か、勝てない! パーパルディア皇国の艦隊にも勝てないのに、目の前に存在する船には、どう足掻いても勝てない!

 

 

 

 

 

水軍長クシラは、目の前に現れたら謎の巨船に強い畏怖の念を持ち。世界の広さを知った。

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

フェン王国 首都アマノキ

 

 

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国のワイバーンロード部隊をあっさりと片付けた暁の傭兵団の活躍を見て、文明圏に属さず、軍祭に参加した各国武官は放心状態となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだ!!!あの凄まじい魔導船は!!!」

 

 

 

「なんという恐ろしい力だ!!常軌を逸しているぞ!!」

 

 

 

「あの列強ワイバーンロードをあっさりと叩き落とした!!いったい・・・何なのだ!あの船たちは!!」

 

 

 

 

 

 

 

「暁の傭兵団と言うらしいぞ」

 

「傭兵団だと!? 馬鹿な!!」

 

「まさか、古の魔帝の流れを汲む者たちでは!?」

 

 

 

海岸から海を眺めていた文明圏外の国々の武官たちは、自分たちの常識とかけ離れた力を持つ巨大船に恐怖を覚えると共に、味方に引き入れる事は出来ないかを考え始めていた。

 

 

 

パーパルディア皇国を遥かに超える力を……もしかしたら、あの船の国は持っているのかもしれない。

 

 

 

フェン王国の軍際に参加していると言うことは、フェンとは契約を結んでいる可能性がある。

 

 

 

フェン王国と良好な関係を築き、あの船のを持っている傭兵とも仲良くなれば、もしかしたらパーパルディア皇国の属国化を防げるかもしれない。

 

 

 

奴隷としての国民の差出や、領土の献上等、もしかしたら……。

 

 

 

フェン王国がパーパルディアの領土租借案を蹴った時は、フェンが焼き尽くされるのではないかとも思ったが、あの船を保有する傭兵団と契約をしたのであれば、フェンが強気に出るのも理解できる。

 

 

 

「なんとしてでも、暁の傭兵団と契約を結ばねば!!」

 

 

 

各国が動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国 第3外務局

 

 

 

 

 

 

 

局長カイオスは、その報告を聞き、脳の血管が切れるのではないかと思われるほど激怒していた。

 

 

 

事の始まりは、フェン王国が皇国の領土献上案を拒否した事からはじまる。

 

 

 

498年間の租借案という「慈悲」も、双方に利があるにも関わらず、拒否される。

 

 

 

「フェン王国は、皇国をなめている」

 

 

 

 

 

このような意見が第3外務局内で主流になった。

 

 

 

数多の国々が存在するこの世界において、文明圏5カ国、文明圏外67カ国、国の大小はあるが、計72カ国もの属国を持つ列強パーパルディア皇国にとって、文明圏外の蛮国からなめられた態度をとられる事は、とても許容出来るものではない。

 

 

 

他の国々の恐怖の楔が外れては困る。

 

 

 

このような事情もあって、パーパルディア皇国第3外務局所属の皇国監査軍東洋艦隊22隻と、2個ワイバーンロード部隊が派遣されたのであった。

 

 

 

ワイバーンロード部隊により、フェン王国首都 アマノキ に攻撃を行い、フェン人に恐怖を植え付け、軍祭に参加している文明圏外の蛮国武官に力を見せつける。

 

 

 

艦隊による無慈悲な攻撃により、フェン王国首都 アマノキ を焼き払い、パーパルディア皇国に逆らったらどうなるのかを他国に見せつける計画だった。

 

 

 

しかし、皇国監査軍東洋艦隊は戻って来なかった。

 

ワイバーンロード部隊も同様に、

 

 

 

更にある噂が聞こえてきた。

 

 

 

皇国監査軍東洋艦隊は暁の傭兵団によって、全滅した。

 

ワイバーンロード部隊も、暁の傭兵団の空を飛べる少女達によって、真っ二つにされた、と。

 

 

 

馬鹿げた噂だと、誰もが言った。

 

だが、いつまで待っても、皇国監査軍東洋艦隊は戻って来なかった。

 

 

 

 

 

「まだ、見つからんのかっ!! 連絡が途絶えてから、どれだけの時間がたったと思っている!!」

 

「や、やはり、全滅したので?」

 

「残骸すら見つからないとは」

 

「本当に全滅したのか?」

 

「まさか、列強にでも亡命したのでは?」

 

「家族を置いてか? 調べた限り、亡命する理由がないぞ」

 

 

第3外務局が騒がしくなったとこで、フェン王国から使者が来た。

 

 

 

内容は、

 

 

 

「ほ、捕虜の身代金、だとぉっ!?」

 

 

我が国で雇っている暁の傭兵団が捕らえた、捕虜を返してほしければ、金を払えと言ってきたのだ。

 

 

 

蛮国風情が上から目線で、あまりの煽るような言い方に、担当者は怒りのあまりに「無礼者を捕らえろ!」と命じたが、警備の者達は銀髪の幼い少女にボコボコに返り討ちに合い、彼等が外へ逃げると、見たことのない翼を掲げ、そのまま空を飛んで逃げてしまったと言う。

 

 

 

 

この話を聞いた、局長のカイオスは激昂した。

 

 

 

神聖な外交の場で暴言を吐き(フェン王国の使者は、鼻で笑っていたが、オブラートに包んで発言)、更に暴力を振るい(武器を持って襲ってきたのはパーパルディア皇国の警備)、警備の者に怪我をさせるとは(無抵抗だったら、フェン王国側は怪我ではすまない)、とんでもない野蛮な国家だ!!

 

 

 

 

 

「奴等を絶対に許すな、仕事に取り掛かれ!!」

 

 

 

「「「「はい!!」」」」

 

 

 

 

 

皇国に泥を塗った敵がいるのは事実だ。

 

ふざけた敵を殲滅する必要がある。

 

 

 

だが、その前に、敵が何者なのか調べるのが先だ。

 

 

 

暁の傭兵団め! ギリギリと歯を食い縛る局長カイオス。

 

 

 

 

 

今回は負けている。皇帝の耳にも入るだろう。次は監査軍ではなく、最新鋭の本国艦隊が動くこととなろう。

 

 

 

 

 

だが、たかが傭兵団に皇国監査軍の艦隊を倒せるだろうか?

 

 

 

不可能だ。

 

 

 

ならば、どこかの列強がバックについている可能性も高い。

 

 

 

第3外務局は、暁の傭兵団と傭兵の後ろに居る者達を知るため、情報収集を開始した。

 

 

 

 

 

しかし、手に入った情報は、鉄の巨人を多数保有している。

 

 

 

巨大な船を大量に保有している。

 

 

 

空を飛べるワイバーンロードを一刀両断出来る少女達が、千人近く居る。

 

 

 

鉄の竜の攻撃は要塞の壁をぶち抜く。

 

 

 

団長は不老不死で、街を粉砕出来る魔法が使える。

 

 

 

空を飛べる飛行戦艦がある。

 

 

 

本拠地は空を飛んでいる巨大な街、などだった。

 

 

 

 

 

「ふざけてるのか、貴様等は!!」

 

「ちょ、調査員は信頼出来る者達で……」

 

「文明圏外に、こんなモノが存在するするわけがないだろうがっ!! 百歩譲って、こんなものがあるなら、とうの昔に列強が使っておるわ!!」

 

 

 

暁の傭兵団の宣伝を見た商人などが、暁の傭兵団の狙い通りに、噂を広めた結果、パーパルディア皇国の常識から、かけ離れた情報が集まった。

 

 

 

「もう一度、調べ直せ!!」

 

 

 

こうして、調査員達は、必死で調べ直すのだが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェン王国

 

 

 

「あ、あの、少し良いでしょうか?」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「その、貴女達は十人姉妹とかでしょうか?」

 

「いいえ、違いますよ」

 

「DOLLSと言う、種族(と言うことにしている)です」

 

「そ、そうですか。ところで、貴女達の種族は、どれくらいの人数が……」

 

「ああ、よく聞かれます。零、私達は二千人くらいですよ」

 

「あそこで、串焼き買ってる娘も同じくらいです」

 

「え、あ、はい、いきなりすみません」

 

「いえいえ、良く質問されるんですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ」

 

「なんだ?」

 

「調査って、もっとこう、こそこそするんじゃないのか?」

 

「……だって、周りが滅茶苦茶話しかけてたし、いけるかなって」

 

「つーか、これどう報告する? どう考えても信じては――『ワ・タ・シ・はNo.1!』」

 

 

 

「「ゲリラライブだとっ!?」」

 

 

 

「くそぉっ、行くぞ! 仕事なんてやってられるか!!」

 

「まったくだっ!!」

 

 

 

 

 

パーパルディアの調査員は優秀だったが、フェン王国で大暴れする、暁の傭兵団の非常識な事実を見て、「あ、報告しても信じてもらえない」と悟った。

 

 

報告書を送っても怒られる。

 

それでも、頑張って配布されている暁の傭兵団のパンフレットなどを添えても駄目だった。

 

 

 

 

やる気失う日々で、彼等を癒したのはフェン王国に入ってきた、暁の傭兵団発祥の美味しい屋台や聞いたことのない軽快な音楽。

 

 

彼等を不真面目に誘う要素は多かった。

 

 

「やべぇ、キンキンに冷えたビールと枝豆うめぇっ」

 

「安いのにこんなに旨いなんて、フェン王国は良いなぁ」

 

「お、あんたら、商人か?」

 

「え、ああ、そうです」

 

「なら、最近入ってきたコレも旨いぞ」

 

「「ほほぉっ」」

 

 

 

これは【調査】せねば!

 

段々やる気が失くなっていくパーパルディア皇国の調査員。

 

 

実は怪しい奴を古城が鑑定し、フェン王国との連携で、フェン王国に入ってやる気の失った調査員達は、サキュバス(このすば勢)店へ誘導。

 

 

結果的にサキュバス店にどっぷりハマって、パーパルディア皇国の情報を洗いざらい吐き出すことになった。

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

ちなみに、工場建設入などで、フェン王国は、発展はするが、

 

 

 

「びた一文まからにゃいにゃっ!!」

 

「そ、そこを何とか!」

 

「先行投資と言う言葉を知らんにゃか!?」

 

 

 

同時に財務関係者は、最初の数年、毎日枕を涙で濡らすことになった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

噂話と情報分析

神聖ミリシアル帝国

 

港町 カルトアルパス とある酒場

 

 

 

中央世界にある誰もが認める世界最強の国、神聖ミリシアル帝国。

 

交易の流通拠点となっている町、港町 カルトアルパス ここは、各国の商人たちが集う町であり、商人たちの生の声は、各国の事情を現す生の声として、情報源としても、非常に価値があるため、商人の姿に紛れ、各国のスパイたちの集まる町でもある。

 

神聖ミリシアル帝国は、文明圏の中で、魔導技術が特に優れており、光魔法を使った街灯等、町並みにも高い魔導技術が見受けられる。

 

とある酒場では、今日も酔っ払った商人たちが、自分たちの情報を交換していた。

 

ビア樽のような体をして白い髭を生やした男が豪快に話し始める。

 

「しかし、最近の衝撃的なニュースは、やはり第2文明圏の列強レイフォルが、新興国の第八帝国とやらに敗れたニュースだよな。誰か、第八帝国について知っている者いないか?」

 

ローブをかぶった男が話し始める。

 

 

「第八帝国は通称であり、本当はグラ・バルカス帝国というらしいな。

 

俺は、レイフォルの首都、レイフォリアで香辛料の商売をしていたが、あの恐ろしい日は今でも忘れない。

 

ある日、突然首都近辺の警備が厳しくなって、いつもはちょっとしか配置されていない首都防衛用の魔導砲が設置された台場に、大量の人員と、予備の魔導砲までたったの数時間で設置された。

 

さらに、首都近辺にある竜騎士の基地に大量のワイバーンロードが全国から飛来してきたよ。

 

何が起こるのかと、商人たちでも噂になったよ。

 

兵隊に聞いても、「今は話せない」の一転張り、第八帝国が責めてくるのでは?といった声もあったが、皆列強レイフォルの勝利は疑っていなかったし、不安になる者もいなかった。

 

そして、それは変化のあった翌日の夕方やってきた。

 

昼頃から、ワイバーンロードが何度も編隊を組んで海の方へ飛び立っていったが……

 

帰っては来なかった。今思えばこの時点でおかしいと気がつくべきだった。

 

デカイ戦艦だったよ。小山のような戦艦、そして陸地からでもはっきりと見えるほどの、とてつもなくデカイ砲を積んでいた。

 

あんなデカイ船は、生まれて初めて見たよ。

 

戦艦は、レイフォリアの沖合6kmくらいに停船した。台場の魔導砲の完全な射程圏外だ。

 

そして、それは砲撃を放った。

 

一隻の砲撃など、たかが知れていると思ったが、その威力は火神でも作り出せないのでは無いかと思うほどの威力があった。

 

台場の魔導砲は一発で消滅した。

 

レイフォリアに対する無差別砲撃は、それはそれは怖かった。

 

逃げて逃げて逃げたよ。やつらは、とてつもなく強い。たった一隻で、列強の首都を消滅させたのだ!!列強ムーもあれには負けるぞ。世界はグラ・バルカス帝国に支配されると思う」

 

 

「まてまて、レイフォルに勝つとは確かに強いが、魔導超文明を持つ神聖ミリシアル帝国に勝てる訳が無いだろう。格が違いすぎる。」

 

 

「機械文明のムーも、ミリシアル帝国に順ずる強さがあるからなぁ。ムーにも勝てないだろう。なんだかんだ言っても、文明圏外の蛮国にムーは負けんよ」

 

「その蛮国にレイフォルは負けたんだよ」

 

「レイフォルなんて、列強といっても、言っちゃ悪いが、最弱の列強だろう?

 

一般国に比べれば遥かに強いが、他の列強にくらべると、実力は遥かに弱い」

 

「お前らはグラ・バルカス帝国の恐ろしさを知らないから、そんなことが言えるんだ」

 

酔っ払いどもの話は続く。

 

「そういえば、ロウリア王国ってあっただろ?」

 

「東の蛮国か?あの、人口だけは超列強な国だろう?」

 

「ああ、俺が交易にいった時期に、隣のクワ・トイネ公国に喧嘩を売ったんだよ。亜人の殲滅を訴えてな」

 

「亜人の殲滅?無理に決まってるだろう。さすが蛮族の国!」

 

「で、暁の傭兵団ってのがクワ・トイネ公国に雇われていたおかげで、ロウリア王国は負けたよ。暁の傭兵団は圧倒的に強かったぜ。ロウリア王国は暁の傭兵団を1人も倒すことが出来なかった。4400隻の大艦隊も、陸は鉄の巨人、海は8隻船によって全滅させられた。奴等は世界に名を轟かせる国になるぞ!」

 

「鉄の巨人って、なんだよ! それもたった8隻に4400隻が全滅とか、どう考えても情報操作だろう。ありえなさすぎる」

 

「ロウリア王国が負けた?列強や、文明圏なら理解できるが、文明圏外の蛮族に!?信じられんな。」

 

「まあ、グラ・バルカス帝国がいくら強くても、神聖ミリシアル帝国とは、格が違うさ。絶対に勝てないよ。結局、中央世界はいつまでたっても安泰さ!古の魔帝が復活でもしない限りな」

 

酔っ払いどもの楽しい夜は更けてった。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

第2文明圏最強の国 列強国 ムー 統括軍所属 情報通信部 情報分析課

 

 

ここは、国の諜報機関であり、情報を分析する部署である。

 

様々な国の情報が集まり、分析する。

 

軍人からは、

 

・何をやっているのか解らない部署

 

・無意味な事をしている部署

 

として、忌み嫌われていおり、情報技術に対する理解は乏しい。

 

情報分析官であり、技術士官のマイラスはレイフォリア襲撃の際に魔写された、グラ・バルカス帝国の超弩級戦艦グレードアトラスターの写真を分析して、冷や汗をかいていた。

 

「まずいな……」

 

ムー帝国は世界で主流の魔導文明の中、科学に有用性を見出し、機械や科学に力を入れている。

 

なので、私のような技術仕官が存在するが……、グラ・バルカス帝国は不幸な事に、我が国よりも科学文明が進んでいるかもしれない。

 

軍人や政治家は頭が固いから信じないだろうし、臆病風に吹かれたとか言われるのだろうなぁ。分析も報告も胃が痛いなぁ。

 

我が国の最新式の戦艦 ラ・カサミ これは、戦列艦に搭載する砲の大きさの限界を突破するため、回転砲塔といった最新式の機構を採用した。

 

これにより、30.5cmといった超巨大砲を搭載するに至り、いままでの戦列艦とは比べ物にならないほどの砲撃力を身につけた。

 

砲身も従来の戦列艦に搭載する砲よりも遥かに長くなり、命中率が劇的に向上した。

 

風神の涙による帆船方式も廃止し、重油を燃やして動力を得る。

 

○排水量15140トン

 

○全長131.7m

 

○全幅23.2m

 

○機関15000馬力

 

○最大速力18ノット

 

 兵装 主砲30.5センチ連装砲2基4門 

 

    副砲15.2センチ単装砲14門 他

 

このスペックは、中央世界の神聖ミリシアル帝国の魔導船とも渡り合える可能性を秘めている装備である。

 

レイフォルや、パーパルディア皇国の帆船に圧勝するのは言うまでもない。機械文明最先進国ムーは、彼らの国とは別格であり、神聖ミリシアル帝国に迫る可能性を持った国である。

 

しかし……。と、マイラスは頭を掻き毟る。

 

グラ・バルカス帝国の超弩級戦艦グレードアトラスターは、情報によれば、30ノットくらい速度が出ていたらしい。

 

あの大きさだと、おそらく排水量は7万トンくらいあり、砲も38センチか、もしかしたら40センチくらいあるのではなかろうか?

 

そんなデカイ船を、30ノットもの高速で移動させるなど、いったいどれほどの出力が必要になるのか・・・。概算で、7万馬力くらい必要なのではないか?

 

しかも砲数も格段に多い。

 

砲撃の威力は、口径の3乗に比例する。

 

この戦艦と、ムーの最新鋭戦艦ラ・カサミが打ち合えば、ほぼ確実に負ける。奇跡でも起きない限り、叩き潰される。

 

このような、高度な艦は、もしかしたら、砲撃精度も我が方よりも上の可能性がある。

 

「写真を見ただけで負ける事が解るとは。これは、技術レベルが50年くらい開いていないか!?」

 

技術士官マイラスは、ムーの行く末を案じていた。

 

 

そして、ムーとは離れているため、直接影響は無いであろう国の艦の写真が数枚ある。

 

東の文明圏外国家 ロウリア王国と、クワ・トイネ公国の戦争、誰もがロウリア王国の圧勝と分析していたが、それを覆した鉄の巨人ことMSとDOLLSという種族らしい。

 

 

魔写した者の情報によれば、これは暁の傭兵団の兵器と団員らしいが。

 

「全く解らん! 何だこれは!!」

 

海面から、腕を振り上げている一つ目の巨人、この巨人は両手から強力な魔導砲を撃つらしい。

 

「ここに書かれていることが、本当なら、どうやってこの巨体を動かしてるんだ!? 何で水の中で動ける!? それにこれ」

 

距離があるため、1人1人は、小さく写って、かなり分かりづらいが、空を埋め尽くす空飛ぶ少女、DOLLS。

 

彼女達は、機械の翼を装着している。

 

「ワイバーンよりずっと、速く飛ぶらしいが、どういう仕組みだ!? 分からん!! どうやったら、人が装着するサイズの道具で空を飛ぶことが出来るんだ!?」

 

残念ながら、連続撮影の故障で撮影は出来なかったが、どうやら飛行機械も保有しているらしい。本当か分からないが、単葉機だと言う。

 

 

暁の傭兵団の船は、残念ながら姿が見えず、艦載機のことを考えると、恐らく八隻は空母とその護衛艦と思われるが。

 

更に未確認だが、白い巨人と緑の巨人、鉄竜もいたらしい。

 

 

「どう考えても、傭兵団が持つ戦力じゃないだろっ!!」

 

思わず、机を叩くマイラス。

 

「…………もしかして、この傭兵団。グラ・バルカス帝国が作った組織か?」

 

呟いて、違うな。とマイラスは溜め息をつく。

わざわざ、そんなことをする必要はない。

グラ・バルカス帝国は強い。

 

 

駄目だ、少し、休もう。

 

 

しばらくして、フェン王国の軍祭で、愛宕達の魔写を見て再び頭を悩ませることになった。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

出会い

アルタラス王国 王都ル・ブリアス

 

フィルアデス大陸の西側に位置する文明圏から少し外れた王国、アルタラス。人口1500万人を抱え、文明圏外の国としては、国力も人口も大国である。

 

温暖な気候であり、王都にある建設物は円を基調としており、建物が全般的に丸い。

 

魔石鉱山のあるこの国は、資源輸出国であり、国は富み、人口50万人を抱える王都ル・ブリアスは人々の活気にあふれている。

 

その人々の活気とは裏腹に、王城において頭をかかえる人物が1人。

 

国王ターラ14世は苦渋に満ちた表情をしていた。

 

 

 

「これは……正気か?」

 

目を通す外交文章には、とんでもない事が書かれている。

 

パーパルディア皇国からの要請文、毎年皇国から送られてくる要請文であるが、「要請」とは名ばかりであり、事実は命令書である。

 

何度も目を通す。

 

「ありえないな……」

 

パーパルディア皇国は前皇帝が崩御した後、現皇帝ルディアスが即位した。

 

皇帝ルディアスは国土の拡大、国力増強を掲げ、各国に領土の献上を迫っていると聞く。しかし、そこは無難な場所であったり、双方に利がある場合が多い。

 

しかし、今回はどうだ!!我が国に全く利が無いではないか。

 

 

 

○アルタラス王国は魔石鉱山シルウトラスをパーパルディア皇国に献上すること。

 

○アルタラス王国王女ルミエスを奴隷としてパーパルディア皇国へ差し出すこと。

 

 

 

以上2点を2週間以内に実行することを要請する。

 

そして、最後に記載された一文

 

「出来れば武力を使用したくないものだ」

 

魔石鉱山シルウトラスはアルタラス王国最大の魔石鉱山であり、国の経済を支える中核であり、世界でも5本の指に入るほどの大鉱山である。

 

これを失うと、アルタラス王国の国力は大きく落ちる。

 

さらに、王女の奴隷化。これはパーパルディア皇国に全く利の無いものであり、明らかにアルタラス王国を怒らせるためだけにある。

 

初めから戦争に持ち込もうとしているようにしか見えない。

 

しかし何故だ!!今まで屈辱的とも言えるパーパルディア皇国からの要請を飲んでいたのに、いきなり手の平をかえしてきたかのようなこの要求。全く持って不明である。

 

国王は、王都ル・ブリアスにあるパーパルディア皇国第3外務局アルタラス出張所に出向き、事の真相を確かめる事とした。

 

パーパルディア皇国第3外務局アルタラス出張所

 

 

 

「待っていたぞ、アルタラス国王!」

 

 

パーパルディア皇国第3外務局アルタラス担当大使ブリガスは椅子に座り、足を組んだまま1国の王を呼びつける。

 

王は立ったままであり、大使の他に椅子は無い。

 

 

 

(なんと無礼な……)

 

 

国王ターラ14世は話を始める。

 

 

 

「あの文章の真意を伺いに参りました」

 

 

「その内容のとおりだが?」

 

 

「魔石鉱山シルウトラスは我が国最大の鉱山です」

 

 

「それが何か?他に鉱山はあるだろう。それとも何か?え?皇帝ルディアス様の意思に逆らうというのか?」

 

 

「とんでもございません。逆らうなど……しかし、これは何とかなりませんか?」

 

「ならん!!!!」

 

「では、我が娘、王女の事ですが、何故このような事を?」

 

「ああ、あれか。王女ルミエスはなかなかの上玉だろう?俺が味見をするためだ」

 

「は?」

 

「俺が味を見てやろうというのだ。まあ飽きたら、淫所に売り払うがな」

 

「・・・・それも、ルディアス様の御意思なのですか?」

 

「ああ!!!なんだ!!!?その反抗的な態度は!皇国の大使である俺の意思は即ちルディアス様の御意思だろう!!蛮族風情が!誰に向かって話をしていると思っているのだ!」

 

ターラ14世は無言で後ろを向く。

 

 

「おい!話は終わってないぞ!!」

 

 

 無視して立ち去る。

 

 

「俺様を無視するなよ、蛮族の王様よ」

 

 

国王は立ち去った。

 

 

王城―――

 

 

 

「あの馬鹿国の馬鹿大使をパーパルディア皇国へ送り返せ!!要請文も断る、国交を断ずるとはっきり書くと共に、パーパルディア皇国の我が国での資産を凍結しろ!」

 

国王は吼える。

 

 

「軍を召集し、王都の守りを固めろ!予備役も全員招集だ!!監査軍が来るぞ!!パーパルディア皇国に我が国の誇りを」

 

国王がそこまで、言いかけた時だった。

 

遠くからゴーッ、と爆音が聞こえてきた。

 

「何の音だ……?」

 

臣下も首を傾げ、

 

 

ドゴーン!!!!! と爆発のような音と共に城が揺れた!!

 

 

「な、何事だ!?」

 

地面が揺れたことで、同様する国王達。

 

「え、衛兵!!」

「は、ははっ」

 

国王は直ぐに、衛兵に調べるように命じる。

 

まさか、もうパーパルディア皇国軍が来たのか?

 

と、考えていたのだが、

 

「ほ、報告します!!」

「うむ」

「先程の音と揺れは、……銀色の鉄の巨人が誤って庭園に墜ちてしまったことで、起きたようです!!!」

「……巨人だと?」

「は、はい、現在、銀色の鉄の巨人に乗っていた暁の傭兵団の団長、暁古城と名乗る者が現れ、その場に居合わせたルミエス様が、対応なされてます」

「な、何!? 何故、下がらせぬ!! どのような危険があるか分からぬのだぞ!!!」

「も、申しわけ」

「もうよい! その巨人とやらを見に行く」

「へ、陛下! 危険でございます!!」

 

暁の傭兵団、噂には聞いていた鉄の巨人。

 

旧ロウリア王国軍を壊滅させた精鋭部隊。

 

事実ならば、巨人の力によっては、娘とこの国を守れる!!!

 

王はチャンスとばかりに、急いで巨人の元へ向かった。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

な、なんと、巨大な。

 

庭園に向かうために外に出た国王達は、銀色の巨大が両膝をついた状態で座っていた。

 

「おおっ」

「なんと言う大きさだ!」

 

銀色の巨大よ大きさに、国王達は度肝を抜かれた。

 

自分達と庭園の距離は、かなりあるにも関わらず、銀色の巨大を大きいと感じる。

 

「ゆ、行くぞ!」

 

あのような、巨人の元に娘が居ると思うと、心配心臓が止まりそうだ

 

そして、国王達は巨人の元へ急ぐ。

 

▼△▼△▼△

 

 

 

その日、私は日課の広い庭園の散歩をしていると、突然空の向こうからゴーッと言う重い音が聞こえてきました。

 

「何かしら?」

「ええ、なんの音でございましょうか?」

 

突然の音にわたくしや侍女達は不思議がり、護衛者達は警戒し始めました。

 

 

その音は段々と近づいていき。

私は何気なく、空を見上げ、

 

「っ!! 人? いえ、大きい!!!」

 

 

空から、巨人が空から降り――、

 

 

「墜ちてくるぞ!!」

 

 

ドゴーンッッッ!!!!!

 

 

私達から五百メートルほどの離れた庭園に、巨人は墜ちました。

 

音と衝撃、地面の揺れは凄いもので、ございますはなんとか立っていましたが、私と侍女は立っていられず、その場に倒れ込んでしまいました。

 

 

「あ、あれは?」

「お、王女殿下、お怪我は?!」

「え、ええ、大丈夫。けれど、あれは……、なんて巨大なの?!」

 

城塞のように巨大なの銀色の巨人は、ゆっくりと立ち上がり、周囲を見渡すと私達の方を見て、

 

『すまーん!!!』そこに居る人達! 怪我は無いか!?』

「え?!」

『あっちゃー、何か、庭園? 壊してしまった』

 

男の人の困った声が聞こえ。

 

『あ、兎も角そっちへ行く。謝らせてくれ』

「え? ええ?!」

 

 

巨人がゆっくりと両膝を着くと胸元が光り。

巨人は動かなくなったところ、巨人の方から、

 

「と、飛んでいる!?」

 

綺麗な白に近い髪の見たことのない、動きやすそうな服を着た男の人が、飛んで私達の所まで飛んできた。

 

「あー、貴女がここの責任者?」

 

 

ものすごく困ったという、表情をしている彼を見て、私は何故か心がざわついた。

 

 

▼△▼△▼△

 

「改めて、申し訳ありませんでした。破壊した庭園については、弁償しますので、それとこれは御詫びの品の一つとして、お納め下さい」

「は、はい」

 

俺は贈答用の高級苺が納められた木箱をアイテムボックスから取り出し、侍女さんに手渡すと、突然の木箱が現れたことに驚くルミエス王女。

 

いやぁ、サイバスターとサイバードの最高速度と加速力をなめてたわ。流石は地球を数週出来るスパロボでも最速候補の機体。

 

で、俺は高高度を自由に飛び回り空の散歩を楽しんでいたのだが。加速力と速度を見誤って、地表に激突した。

 

ま、墜落だな。

 

何とか、機体小破に納める速度まで減速したけど、危うく人を巻き込むところだった。

 

で、俺が墜落した近くに居た人達は、やたら豪華な服を着ているから、嫌な予感がしたけど。護衛が「この方を何方と心得る!」と怒り、一番偉い感じの女性がルミエスと名乗り侍女がこの国の王女だと補足した。

 

アルタラス王国の王都ル・ブリアスの王城の庭園が墜落地点だ。

 

やべぇ、と思っていると、護衛がルミエス王女を連れて逃げようとしてが、何故か護衛を待ちなさいと命令をして、ルミエス王女は俺に近づいてきた。

 

「あ、あの巨人は、貴方のですか?」

「え、あ、はい、ああっ、紹介が遅れました。私は暁の傭兵団の団長をしています。暁古城と申します。そして、あそこに両膝をついて座らせたのは、魔装機神サイバスターです」

 

俺がそう言うと、ルミエスは俺とサイバスターを見る。

 

「……あの銀色の巨人は、とても綺麗ね」

「は、ありがとうございます」

 

そして、ルミエス王女は、場所を移そうと言い出し、護衛と侍女が慌てる。すると、何事か護衛と侍女と話すと、俺は庭園の近くにある小さめの屋敷へ招かれた。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

上の者が直ぐに来る。と言うので、俺は庭園の修理費と御詫び、暁の傭兵団の売込みをどうしようか考えながら、ルミエス王女の質問に答えた。

 

暁の傭兵と暁の大陸。

 

ロデニウス大陸での戦いなどもざっくりと教えていると。

 

「国王陛下が参られました」

 

その言葉で、俺は気を引き締める。

 

入り口のドアが開かれ、国王と重臣達が入ってくる。

 

そして、自己紹介をし合い。

 

 

 

 

「以上がサイバスターの墜落原因です。改めてアルタラス王国の皆様にはご迷惑をお掛けしました」

 

俺はオブラートに包んで、サイバスターが墜落して、庭園の一部を破壊を謝罪した。

 

「ふむ、謝罪を受け取ろう。今回は不慮の事故であるようだ。破壊した庭園の修繕費の見積もりは、数日掛かるだろう」

 

数日? と首を傾げるが、庭園は石像みたいな物もあった。どこに何が配置され、どれがサイバスターの下敷きになったのか、確認する為には多少時間が掛かるか。

 

幸い、落ちる前に確認したが、落下地点に生命反応は無かった。

 

王国側でも怪我人などが居ないか、確認したようだ。

庭師は仕事を終えていたし。あの庭園は許可が無いと誰も入れないよう、普段は門と警備も居たらしい。

 

「分かりました。宿を探し、待ちましょう」

「いや、それには及ばぬ」

 

その言葉に、俺だけではなく、重臣も驚く。

 

「それは?」

「暁殿は傭兵団の団長だったな」

「ええ、そうですが?」

「仕事を頼みたい」

 

驚く重臣。まあ、サイバスターを見たんだ。驚くだろうけど、未知の物を即座に雇うと決めた国王は凄いな。

 

「仕事内容にもよります。なんの理由もない。戦争に参加するのはお断りしますよ? 例えば隣国の王妃が美人だから奪いたいとか、隣国の金山がほしいとか」

「「「「「………………」」」」」

 

俺の言葉に国王と重臣は黙りこんだ。

え、何? ルミエス王女も国王達の反応に戸惑っている?

そして、数秒。国王は、俺に告げた。

 

 

「実はな……」

 

 

国王の話を聞き終えた後、ルミエス王女と侍女、護衛達は信じられないという表情をしていた。

 

「話は分かりました」

 

国王の話を聞いて、俺はアイテムボックスから、暁の傭兵団のパンフレットを取り出した。

 

「美しい庭園を破壊しましたし、今回は二割引で仕事を引き受けましょう!」

 

 

パーパルディア皇国の外交官と皇帝の馬鹿さ加減に、俺も頭にきた。

 

流石に国家として問題があると思うぞ? パーパルディア皇国!!

 

▼△▼△▼△

 

 

「美しい庭園を破壊しましたし、今回は二割引で仕事を引き受けましょう!」

 

古城の滲み出る圧力に、国王ターラ14世は冷や汗をかいた。

 

第一印象は穏やかで、腰の低く、礼儀正しい青年だった。

 

本当に傭兵団の団長なのかと、疑ったほどだ。

 

だが、パーパルディア皇国からの要請を教えたところで、古城の雰囲気がガラリと変わり、獰猛な笑みを浮かべる古城に若干引いてもいる。

 

だが、渡されたパンフレットを見て、国王は信じられないと何度もパンフレットの中身を確認。

 

タブレットを古城が取り出し、映像付きで兵器の説明をした。

 

「ありがとう! これで、我が国は救われる!」

「では、直ぐに部下を呼びます」

 

古城は、この後部室に案内され。

隙を見て、どこでもドアで、ユキカゼと大淀と会い、事情を説明。大淀にしこたま怒られた後、援軍として、アルタラス王国に、霧の生徒会メンバーにDOLLSとMSパイロットを乗せた艦隊が高速で移動を開始した。

 

「パーパルディア皇国の艦隊は魔導による強化がされてると……。ユキカゼ、敵の装甲は?」

「監察軍は我々の攻撃で撃破可能です。ただ、アドミラルの魔法のように、非常識な物があるかも知れません。可能性として、敵の正規軍の艦隊の装甲版は我々の想像を越えた性能があるかもしれません。ですが、今回は生徒会メンバーです。万が一敵の主力艦隊の装甲が我々の想像を上回っていた場合は、超重力砲を試してみるべきかと」

 

 

確かに、この世界の魔法は未知のものだ。どんなものがあるか分からない。念には念を入れた方がいいな。

 

「ユキカゼさんの意見はやりすぎだと思いますが、警戒は必要かと」

「分かった。こっちは派遣されてくる霧の生徒会とDOLLS、MSでどうにかしよう」

「ズイカクはフェン王国に派遣。アカギは暁の大陸ほ発電所の建設で動けない」

「どこでもドアの移動は怪しまれるので、DOLLSとホムンクルス達は、生徒会に乗せてもらえれば、高速で移動は可能です」

「分かった。それと飛龍(艦これ)と蒼龍(艦これ)、ユニコーンとレンジャーの4人、アルタラス王国の沖合いで4人は艦船形態に」

「分かりました」

 

 

後日、沖合いに現れた霧の生徒会の艦隊と4隻の空母を見て、アルタラス王国の国王ターラ14世は「勝った! 勝ったぞ!!」と叫んだ。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

待ち時間

援軍を要請して、待っている間。

 

サイバスターをアイテムボックスにしまうのは、まずいので(小さい物ならともく巨大なものも魔法で仕舞えるとバレるのは、ヤバイ)、サイバスターでの訓練を行うことにした。

 

 

近くの土地を借りた、飛行訓練とディスカッター乗せてきたで素振り行い、ハイファミリア(無人機)の調子を確める。

 

「ふぅ」

「お疲れ様です。古城さん」

 

サイバスターから、降りるとルミエス王女達がやって来た。

 

「ああ、これはルミエス王女」

 

パーパルディアとの戦争になるので、国王ターラ14世は忙しいので、代わりに娘で外交官でもあるルミエス王女が、俺の連絡役を担当することになった。

 

「サイバスター、凄い速さですね。あっという間に空を駆け抜けて」

「ええ、風の魔装機神の名前は伊達ではありません」

「風の……ということは、他にも?」

 

ルミエス王女の質問に、答えるか迷ったが、教えても問題ないので、答えることにした。

 

「ええ、他にも。火・水・地の魔装機神があります」

 

すると、少女のように目を輝かせるルミエス王女。

外見年齢は俺より歳上に見えるが、可愛らしい人物だ。

教えてほしそうにしていたので、教えることにした。

 

「時間があるのでしたら、話すことができますが?」

「ええ、是非」

 

こうして、援軍が来るまでの間。毎日、様子を見に来てくれる、ルミエス王女に色々な話をし、お茶請けとして、出したお菓子にルミエス王女以下、侍女や甘党の騎士や兵士達に大人気になり、教えてくれと料理人に頼まれ、お菓子のレシピを販売したら、高額にも関わらず、飛ぶように売れた。

 

そして、ルミエス王女、

 

「お、美味しいですっ」

「そ、そうですか……」

「お、お顔が、 ルミエス様、お顔が大変なことになっておりますわ!!」

 

俺が試しに作ったイチゴパフェを食べてヘブン状態になった。

 

料理スキルやべぇ。

 

パフェがトドメになったらしく、俺とルミエス王女は仲良くなった。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

アルタラス王国 国王ターラ14世の私室

 

 

「ほぉ、暁殿の出したお菓子に夢中になり、暁殿より食欲が勝るのではないかと、少々不安だったが、ルミエスは暁殿と仲良くなったか」

 

幼き頃より自身に仕えている二人の騎士と侍女の報告に、国王は満足気に頷く。

 

「しかし、陛下、よろしいのですか? 強力な傭兵団の段とは言え、傭兵団の男にルミエス様を」

「パーパルディア皇国に渡すより張るかに良い」

 

騎士の言葉に国王はそう答える。

 

「それにな、奴等が本当に傭兵団かと言うのも怪しい」

「そ、それは確かにそうですが」

 

立ち居振舞いは、貴族ほどではないが、教育を受けた者の雰囲気がある。

 

傭兵団の力はまだ未確認だが、サイバスターだけでも、十分強力だ。

 

「仮面を被っているかと思って、ルミエスが居ない時に、侍女を何人か近づけたが、女に興味はあれど、色々と理由をつけて、断っておる。何より、女に恥をかかせてすまないと深く頭を下げている。女好きではありそうだが、女には優しく理性的だ」

 

少なくとも、馬鹿国の馬鹿な外交官より万倍マシだ。とターラ14世は考えた。

 

「それに暁の傭兵団は突然現れた。彼等は魔帝の流れを組む者達かもしれない。ならば、強さは列強のミリシアルを越える可能性がある」

「へ、陛下、流石にそれは、確かに銀色の巨人、サイバスターなる物は、凄まじい戦闘力ですが」

「パンフレットを見る限り、質と量。二つを持っているぞ?」

「確かに…………」

「色々な問題はある。だが、まずはパーパルディア皇国を退けなければ」

 

 

この翌日、暁の傭兵団の増援がアルタラス王国に到着。

 

古城が、ターラ14世に、艦隊を紹介したいと言われて、見に行くと。

 

「あれが、艦隊の旗艦、大戦艦ヒエイです」

 

合計9隻の巨大な船の艦隊を見て、ターラ14世は、この戦いに勝つことを確信した。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

「すげぇな、暁の傭兵団って」

「ああ、あんなにデカイ船だけじゃなく、巨人も沢山乗せてきたみたいだしな」

「ああ、これはパーパルディア皇国も、今回の戦争は負けるかも知れないな」

 

酒場で商人達が話をする。パーパルディア皇国の要請をアルタラス王国が拒否した話が広まるとパーパルディア皇国軍が来る前に、大半の商人は逃げたが、空を飛ぶ銀色の巨人を見た一部の商人は、暁の傭兵団の増援を確認してから逃げると言う博打を打つことにした。

 

その増援も巨大な艦隊で、即座に送り込まれ。商人達は驚いたが。

 

「でも、銀色の巨人よりは小さいんだな。やっぱり銀色の巨人は団長が乗るからなのか?」

「さぁ?」

 

この後、アルタラス王国から脱出した、商人達の話は世界へ流れていく。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アルタラス王国にて

「では、改めて暁の傭兵団の増援部隊の戦力をご紹介します」

 

 

アルタラス王国の王城、会議室。

 

国王ターラ14世とルミエス王女。重臣、それと軍関係者が参加している。

 

「頼む」

 

ターラ14世の言葉に、俺は資料をリストを読み上げる。

 

「艦隊の旗艦、大戦艦ヒエイ。重巡洋艦ミョウコウ、ハグロ、ナチ、アシガラ。空母は蒼龍、飛龍、レンジャー、ユニコーン。

 

空母の艦載機数ですが、DOLLSも運用しておりますので、合計で650以上となります」

 

俺の言葉に、会議室は大きくざわつく。

 

 

「続けます。MS、陸戦型48機。水中型24機。支援車両のホバートラック6台。61式戦車12両。DOLLS陸戦部が、500名です。何か質問はありますか?」

 

「か、かなりの大部隊だが、補給は大丈夫かね?」

 

ほぉ、俺は素人だけど、この世界軍隊は食料は現地調達なんて、危ないことを言うのに、しっかりと、その辺を考えている人も居るんだな。

 

「問題ありません。物資に関しては私のように」

 

アイテムボックスから、水や食料を取り出す。

 

まあ、実際は俺がどこでもドアで移動して、物資コンテナをアイテムボックスに入れて持ってくるだけだが。

 

「特殊な空間魔法を使う者が数多くおります」

「そ、そうか……」

 

ただ、パーパルディア皇国の船の装甲が信じられないほど硬い場合、長期戦になる可能性がある。

 

まあ、その前に超重力砲を。それが効果がなかったら、ネオ・グランゾン(スパロボEX)の縮退砲をぶっぱ放すつもりだ。

 

「では、暁の傭兵団の兵器のスペックと運用方法を簡単にご説明します」

 

そこから、各兵器の大まかなスペックと運用を説明すると、何故か、ルミエス王女以外は、皆引きつ笑いをしていた。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

パーパルディア皇国 皇都エストシラント

 

 

 

第3文明圏において、唯一の列強国、パーパルディア皇国、皇帝ルディアスの住まう皇宮は、その威を示すため、柱の1本1本まで繊細な彫刻で作られており、見る者を圧倒する。

 

 

 

この世の天国を思わせる鮮やかであるが、繊細に整備された庭。

 

 

 

宮殿の内装は、豪華絢爛であり、この世の富を集めたかのようだ。

 

 

 

この皇宮を訪れた各国の大使や国王は思うだろう。

 

 

 

柱を造るための気の遠くなるほどの人的資源。

 

 

 

天国を思わせるほどの美を追求した庭、そしてそれを維持する能力。

 

 

 

この世の富を集めたかのような宮殿の内装、そしてその規模。なんと凄まじい国力だろうか、と。

 

 

 

皇都エストシラントは間違いなく東の文明圏、第3文明圏で最も繁栄した都市だろう。

 

 

 

皇宮において、跪く姿の男が1名

 

 

 

 

 

 

 

「おもてをあげよ」

 

 

 

 

 

 

 

第3外務局局長カイオスは、冷汗をかきながら顔をあげる。

 

 

 

その先には27歳といった若さからは想像も出来ないほどの威厳を保つ若き皇帝ルディアスの姿があった。

 

 

 

 

 

「フェン王国への懲罰の監査軍の派遣、予への報告はどうした」

 

 

 

 

 

「ははっ!!監査軍派遣の報告を行わず、真に申し訳ございま……」

 

 

 

 

 

「たわけがっ!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「っっっ……!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「予へ派遣の報告を行わなかった事はどうでも良い。それは予が認めた第3外務局の権限だからだ。一々蛮国への侵攻報告なぞうけたら、朝から晩まで終わってしまう。そこは良いのだが、問題は……敗北した事だ。」

 

 

 

 

 

カイオスの顔から滝のように汗が吹き出る。

 

 

 

 

 

「何処にやられた?まさかフェン王国か?」

 

 

 

「ははっ!!目下全力で対象国の割り出しを行っておりますが、現在までの調査結果では、文明圏外の国と思われます結果がはっきりしないため、まだご報告する段階にありませぬ」

 

 

 

フェン王国は、暁の傭兵団がパーパルディア皇国の艦隊を全滅させた。と嘘偽りなく教えたが、やはりたかが傭兵団にそんなことは、出来る訳がない。と言う結論になった。

 

 

 

もちろん、ロウリア王国との戦いで、パーパルディア皇国の観戦武官を殺害した可能性が高いのは傭兵団だろうと考えており、注意はしても。脅威とは思っていない

 

 

 

暁の傭兵団が艦隊を滅ぼせるほど強いとは、夢にも思って居なかった。

 

 

 

 

 

「まだ解らぬというのか……」

 

 

 

皇帝の顔が怒に満ちる。

 

 

 

「旧式艦とはいえ、我が国に土をつける文明圏外の国がいるとは……その国には必ず責任を取らせるように。皇国に逆らうという事がどういうことか、きっちり教養を行え」

 

 

 

 

 

「ははっ!!!!」

 

 

 

カイオスは、さらに深く頭を下げる。

 

 

 

 

 

「各国は、皇国がフェン王国ごときに敗れたと見るだろう。我が国に逆らった国が判明したならば、本国艦隊がフェン王国もろとも叩き潰す。解ったな。」

 

 

 

「ははっ!!!!」

 

 

 

カイオスはおそるおそる話始める。

 

 

 

 

 

「皇帝陛下、もう一つ報告したいことがございます」

 

 

 

 

 

「何だ!!!」

 

 

 

 

 

「アルタラス王国の件ですが、予定どおり、魔石鉱山シルウトラスの献上を断ってきました」

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ……」

 

 

 

皇帝ルディアスの顔に笑みが浮かぶ。

 

 

 

 

 

「さらに、アルタラス王国は、国内での皇国の資産凍結と、国交断絶を伝えてきました」

 

 

 

「ほう、ここまであからさまに反逆を開始するとは……予定どおりではあるが、いささか頭にくるな、なめられたものよ」

 

 

 

話は続く。

 

 

 

「アルタラス王国は、監査軍ではなく、本国の軍で叩き潰す。皇軍の準備は出来ているな?」

 

 

 

皇帝は傍らに立つ軍の礼服を着た男に問う。

 

 

 

「皇帝の命があれば、いつでも出撃できる準備は整っております。陛下の御言葉一つで、すぐにでも出陣し、アルタラス王国を滅し、すべての魔石鉱山を皇帝陛下に献上いたします」

 

 

 

「そうか、では任せた。アルタラス王国人の取り扱いについては、好きにいたせ」

 

 

 

「ははっ!!!!」

 

 

 

 この日、列強パーパルディア皇国はアルタラス王国に対し、宣戦を布告した。

 

 

この時、既に第四真祖の身体になった臆病で心配性な男が、ターラ14世に土地を借りて、妖精さんに防衛拠点を建設させ。

 

 

 

やる気満々で待ち構えていた。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

呆気ない戦い

アルタラス王国の王城の会議室。

 

 

 

出席者は、最近フレンドリーに接してくれる国王。アルタラス王国の宰相、軍関係者。

 

 

 

暁の傭兵団からは、俺と蒼龍だ。

 

 

 

「以上のことから、アルタラス王国軍のみで戦った場合長くても5日で敗北します」

 

 

 

現在、分かっているパーパルディア皇国の兵器の性能をアルタラス王国側に伝え、今回の戦いは暁の傭兵団が前衛。

 

 

 

アルタラス王国軍は、暁の傭兵団が敗北した時の王族と国民を逃がすための時間を稼ぎをしてもらうことを提案した。

 

 

 

ま、当然、反発が出たが。DOLLSの零戦とF4Fにお願いして、パーパルディア皇国のワイバーンロードと同じ速度で、ワイバーン部隊と模擬戦をしてもらった。

 

 

 

模擬戦は散々な結果に終わった。

 

 

 

 

 

更にアルタラス王国の艦隊、こちらの艦隊の船足が違いすぎるため、ターラ14世は俺達が単独で行動する許可をくれた。

 

 

 

まあ、傭兵団だから、連携は出来るとは思わないし。自由に戦えた方が楽だ。

 

 

 

そして、数日。ついにパーパルディア皇国の艦隊が現れた。

 

 

 

 

 

「アドミラル、来ました!」

 

 

 

ナチの言葉に、俺は暁の傭兵団に指示を出す。

 

 

 

「ナチ、ヒエイ達は手筈通りに?」

 

「はい、海中に潜み、敵に気づかれた様子はないとのこと」

 

「わかった。DOLLS航空部隊に出撃要請、空母4隻も艦載機の出撃準備を」

 

 

 

直ぐにDOLLS、配備されている零戦とF4F全機が4隻の空母から飛び立ち。パーパルディア皇国の艦隊へ向かった。

 

 

 

フェン王国で、パーパルディア皇国のワイバーンロードと戦い、撃墜出来たのは朗報だった。

 

 

 

問題はパーパルディア皇国の艦隊の攻撃と防御力だが。

 

 

 

「監察軍は旧式の装備、正規軍がどれだけの攻撃力と防御力を持っているのか」

 

 

 

懸念材料はそれだけだ。

 

 

 

ファンタジーだから、オリハルコン製で、アホみたいに固くて、魔法で更に強化されてる。とかだったら、どうしよう。

 

 

 

 

 

だが、戦いの結果を聞いて、俺はほっとした。

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

 

 

アルタラス王国北東方向約500km沖合い 洋上

 

 

 

 

 

晴れた空、暖かく、南国を思わせる積乱雲が広がり、風はほとんど無い。海は凪であり、海鳥たちは海に浮かび、のんびりと浮かんでいる。

 

 

 

そんな平和な海を、多数の船が白い航跡を引き、南西方向に向かっている。

 

 

 

その数324隻。

 

 

 

パーパルディア皇国 皇軍 

 

 

 

100門級戦列艦を含む砲艦211隻、竜母12隻、地竜、馬、陸軍を運ぶ揚陸艦101隻。

 

 

 

中央世界を基準とすると、東側に位置する第3文明圏において、他の追従を許さないほどの圧倒的戦力。

 

 

 

皇軍はアルタラス王国を滅するため、南西方向へ向かっていた。

 

 

 

将軍シウスはじっと海を眺めていた。戦略家であり、冷血、無慈悲な将軍、それが部下たちのシウスに対する評価だった。

 

 

 

 

 

だが、優秀な人物でも、兵器の性能の差はどうしようもなかった。

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、突然海を突き破り現れた。

 

 

 

 

 

「な、何いぃ!?」

 

 

 

 

 

城塞のように巨大で、自分達の船とは比べようのない、威風堂々した姿。

 

 

 

大戦艦ヒエイ。

 

 

 

 

 

そして、海を突き破り、現れたのは1隻ではない。

 

 

 

 

 

ミョウコウ、ハグロ、アシガラ、3隻の重巡洋艦。

 

 

 

彼女三人の攻撃目標は、竜母12隻。

 

魔導による船の強化。ファンタジーならではのとんでも技術を持っている可能性がある。

 

それ故に彼女達3人は、最初から竜母へ。

 

全力全開で攻撃を開始した。 

 

▼△▼△▼△

 

 

全ては、

 

「アドミラルの為に!!!」

 

ヒエイは前方にいるパーパルディア皇国の艦隊旗艦シラントを睨み付け、ロックオンフィールドを展開する。

 

 

――出力は最大、加減せずに!!!!

 

「超重力砲!」

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

 

 

大戦艦ヒエイは、この世界ではじめての実戦による、

 

 

 

 

 

「な、なっ、艦首が開いただとっ!? 」

 

 

 

ガクンッと激しい揺れが起こる。

船が縦にひっくり返りそうになり、船員が転げ回る。

 

 

「こ、今度はなんだぁっ!?」

 

 

「将軍! う、海が割れましたぁあああああああっっっっ!!!!!」

 

 

「ば、馬鹿なっ!!!!」

 

 

「ひ、光が、巨船からひかりがぁっ!!!」

 

 

「ひいぃっ!!」

 

 

閃光が海を駆け抜けた。

 

 

旗艦シラントは、ヒエイの超重力砲により、跡形もなく消し飛び、近くを航行していたパーパルディアの艦船も超重力砲の余波で轟沈。

 

 

竜母は古城が懸念していたような、「列強と言うくらいだし、魔導による強化でとんでもない防御力を持っているかも」と言う懸念は外れ。

 

ミョウコウ、ハグロ、アシガラの3隻の餌食となった。

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

「呆気ないですね」

 

 

空にはDOLLSの航空部隊。4隻は空母の艦載機、更にマッドアングラーとU型潜水艦から出撃した、ズゴックEとハイゴッグが、逃げ惑うパーパルディア皇国の艦隊を沈めている。

 

 

 

『アシガラ、竜母を沈めたのだから、他は譲りなさい』

 

『ええー、いいじゃん、ナチ!』

 

『パーパルディア皇国軍の正規軍の艦船の防御力が分かったから、私達はもう攻撃しなくて良いの、武功は分けられるなら、分けないと只でさえ、陸戦部隊から、活躍の場がないとぼやかれてるのに』

 

『ええー』

 

「アシガラ。命令よ、待機していなさい。それとパーパルディア皇国艦隊の最後の1隻が沈んだら、アドミラルの御指示通りに、人命救助を行います」

 

『はーい……』

 

『『了解』』

 

「ナチ、そちらはどう?」

 

『アドミラルはホッとしています。魔法の非常識さは、我々は知識もアドミラルを通して知っているので、良かったです』

 

「アドミラルの魔法ほど、この世界の技術は進んでないようですね」

 

『そうですね。――あ、アドミラルから伝言です。超重力砲の発射データは、観測が終わったら、大戦艦ハルナへ送るように、と』

 

「ええ、救助が完了するまでは、ここで超重力砲の影響を調べます」

 

 

 

 

パーパルディア皇国の艦隊、324隻は全滅した。

 

 

この事実は、霧の生徒会の撮影したデータをナノマテリアルで作ったプリンターで大量に印刷され、周辺諸国にばら蒔かれた。

 

 

数は少ないが、幹部級捕虜の画像もあり。

 

列強のパーパルディア皇国は、この事実に絶句。

 

怒りを滾らせるのだった。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

日常 天龍と散歩×コスプレライブ×シンさんとイーネ

暁の体は順調に開発が進んでいる。

 

農場は十文広くなり、兵器工場も稼働し始めた。

 

各グループが作った街も、出来てきた。

 

移民の人達の生活も順調。

 

クワ・トイネ公国とクイラ王国、そして、ローリア王国との貿易も始まった。

 

職人ホムンクルス達の増えてきたので、貿易赤字は徐々に問題なくなる……といいな。

 

で、今の俺の問題は、

 

「沢山嫁さんが居るから仕方がねぇけどさ、もう少しどうにか、なんねぇのか?」

「すまない。天龍」

 

久し振りに、天龍と二人きりなった。なので、二人で手を繋ぎながらゆっくりと散歩する。

 

「しかし、地球とは違う世界か」

「すまないな、巻き込んで」

「あー、違う。嫌だという訳じゃないさ。ただ、小説みたいな状況だからな。しかも、KAN-SENとか言うオレ達みたいな奴等もいる上に」

 

ぐぅーと繋いでいる手を強く握られる。

天龍の目には嫉妬が浮かんでいる。

 

「沢山嫁さんが出来て良かったな!!!」

「ごめんなさい、許して下さい!」

「まあ、色々苦労してるから、仕方がないと思うが。放ったらかしは嫌だぞ」

「うん、分かっている」

「じゃあ、まだ一緒に居たいから」

 

ぐっと俺の腕に抱きついて来る天龍。頬が少し紅くしながら二人きりで人気のない小道を……。

 

「天龍」

「なんだよ」

「そっちは、開発を後回しにした区画で、人気のない道と場所なんだが?」

「……」

「……」

 

そして、天龍は俺に寄りかかりながら、俺の耳元で呟いた。

 

「なぁ、ダメか……?」

「…………」

 

 

OKです!!!

 

 

 

その後、こっそり隠れながら基地に帰ったが、途中で見つかり、匂いでバレた。

 

 

龍田の笑みが、久し振りに怖かった。

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

クワ・トイネ公国 暁の傭兵団 租借地 暁の広場

 

 

 

クワ・トイネ公国とクイラ王国は、主に妖精さん達のチートな建設能力で、かなり道などのインフラが近代的になった。

 

俺が産み出した家電製品をメンタルモデルが解析。

 

部品を俺(暇な時に錬金術釜で)と錬金術が使えるホムンクルス達。妖精さんと饅頭が製造。妖精さん、饅頭、ホムンクルスで製造する。

 

で、クワ・トイネ公国とクイラ王国。ちょっとずつローリア王国にも輸出され始めた。

 

建築技術は、3カ国から建築技術を教えてほしいと頼まれたので、色々と教えている。

 

で、今日は3カ国で、建築関係の研究と今後についての話し合いが行われた。

 

専門的な話し合いだけかと、思ったら建築資材の取引交渉まで、行われていた。

 

俺は建築担当の妖精さんに達の護衛とアドバイザー? みたいなモノだった。

 

で、やっと終わってのんびりするためにここにきたけど。

 

 

「大分賑やかになったな。ここも」

「普段、何もない時でも広場に人が集まり、歌ったり踊ったりしていますよ。元々の民謡だけではなく、私が広めた歌も歌っています」

「好みがあるから、心配したけど。受け入れてもらえて良かったよ」

 

KAN-SENの一部が、暁の市でライブしたいと要望を出したとき、この世界の人達に合うか心配だったが、種族問わず、気に入って貰えたようだ。

 

 

今、広場のステージでは、まど◯マ◯カのOPをコスプレしながら、大鳳(やたらセクシーなま◯か)と太原(可愛らしい◯ミ)、足柄(ホ◯ラ、コスプレが1番似合ってる)、加賀(顔を真っ赤にして恥ずかしがってる、◯子コスプレ)、比叡(楽しんでる、さ◯かのコスプレ)の五人が歌ってる。

 

ちなみに、歌って踊って、暁の傭兵団の宣伝をするとお給料が発生するので、みんなはかなり頑張る。

 

 

「「「「「目覚◯た~♪心◯~♪」」」」」

 

うん、かなり上手くなった。最初は凄かったからな。

 

観客も楽しんでいるようだな。

 

「うん、娯楽が増えるのは良いことだ」

「ご主人様」

「どうした、ベルファスト」

「あのコスプレ衣装、各々に合わせて、多少デザインが違いますが? ご主人様がお作りに?」

「ああ、そのまま着せると、大鳳とかは胸が危なかったからな」

「ご主人様は、相変わらず何でも出来てしまうのですね」

 

それでも、大鳳はかなり際どいけどね。

クワ・トイネ公国やクイラ王国の人達から、最初は水商売の女性の衣装と勘違いされていたが。いまでは、払拭された。

 

理由? サキュバス(このすば勢)達が街を歩いて、ロデニウス大陸人の度肝を抜いたのだ。

 

なので、サキュバスの衣装を除く、暁の傭兵団の衣装は良く見ればお洒落と言われるようになり、女性達にも人気が出てきた。

 

明石がファッション雑誌を作るから、ホムンクルスを増やせと言われてからそれなりに時間が経ち、暁の傭兵団の衣料店はなかなか儲かっている。

 

「いや、出来るのと極めるのは違う」

 

俺はベルファストに近づき、

 

「私生活では、ベルが居ないとしっくり来ないんだ。一流のメイドが側に居てくれないとな」

「ご主人様……」

 

ベルファストが、俺を見上げ、俺はベルファストの腰に腕を伸ばして自分の側に引き寄せ、

 

「こ、困ります。メイドに、それに、ここは人通りが」

「みんなライブを見てる」

 

だから大丈夫。と言おうとしたら、鋭い視線を感じて、その方を見てみると。

 

「「「「「もう~♪ なに◯あっても~♪ 挫~♪ け~◯~い♪♪」」」」」

 

 

めっちゃ笑顔で歌っている5人が、こちらを見ていた。

ただ、目は笑ってなかった。

 

「ご主人様」

 

俺がやべぇ、と思っているとベルファストから声がかかる。

 

「な、何だ?」

「メイド艦隊を手配いたしましょうか?」

「喧嘩は御法度だ」

 

後日、重桜の街へ行ったら、凄かったよ、色々。

死ぬかと思った……。

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

クワ・トイネ公国 経済都市マイハーク

 

 

 

インフラ整備が進んでいるとは言え、何でもかんでも導入するわけではない。

 

街の景観もあるので、クワ・トイネ公国と話し合いながら、インフラ整備をしている。

 

で、今日は仕事が早くに終わったので、ブラブラ歩いていると、

 

 

「あれ、シンさん?」

「おや、団長殿」

「え、あっ! 暁殿、お久しぶりです!!」

 

何か、ウチのMS教導隊の隊長が、知り合いのクワ・トイネ公国 マイハーク防衛騎士団団長のイーネさんと腕組んで歩いていた。

 

無粋なので、絶対に触れないが。

 

「お久し振りです。イーネさん。シンさんも」

「はい、実は道に迷ってしまい、案内してくれると」

「成る程、ではイーネさん。シンさんのこと頼みます。では私は用事があるので、これにて」

「え、あっ、はい!! 分かりましたぁ!」

 

ちょっと上擦った声で返事をするイーネさん。

 

デートしているところ見られて恥ずかし……い? いや、待てよ。シンさん、初対面っぽくなかったか?

 

シンさん、ちょっと戸惑っているようにも見えた。

 

「…………」

 

一瞬、出歯亀しようかとも、思ったが。シンさんには冗談は通じなさそうだし、止めておいた。

 

 

 

後日、夜会で招待され、先方がMSを純粋に好きらしいので、シンさんを連れていき、「MS教導隊の隊長をしている男です」と教えると、俺と共にシンさんは引っ張りだこになった。

 

ちなみにイーネさんは、シンさんをただの団員と思っていたらしい。

 

夜会で、シンさんは専用の白いザクまで使っていると聞いて、顔色を青くさせていた。後日話を聞きに行くと、「そんな重要幹部だとは、知らずに逆ナンパをしてしまい、申し訳ありません……」

 

顔を真っ赤にして、両手で顔を覆い項垂れるイーネ。

 

一緒に来たイラストリアスが、イーネを慰めた。

 

とりあえず、気にしないで。と告げて、終わったんだけど。

 

 

 

 

ただ、相性が良かったのか、シンさんとイーネは仲良くなっていった。

 

 

ちなみに、かなり仲良くなってから、イーネがシンさんの年齢を聞いて、両膝から崩れ落ちることになったが、些細なことだ。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

日常 ザクにやっと出番が

アルタラス王国の沖合いでのパーパルディア皇国の艦隊全滅させた後、パーパルディア皇国に殴り込みに行くには、やはり頭数が足りないと、MSの増産を決定した。

 

 

暁の大陸 第一基地。第三会議室。

 

 

「会議を始めます。今回の進行役はホムンクルス(♂)・48です。議題はグランドマスターから発表されたMSの生産です。候補はザクJ型、ザクキャノン、グフ・カスタム、ハイゴッグ、ズゴックEです」

 

「ホムンクルス(♀)・1762です。ドムがリストに入っていないのは何故でしょうか?」

「ホムンクルス・48です。グランドマスターは兎も角、ホム達のMSの製造と整備は技術はまだまだです。現状、ドムの整備はまだ完璧ではありません。前線での整備の環境を考えてのことです」

「ホムンクルス(♀)・276です。連邦製のMSがリストに入ってませんが?」

「ホムンクルス・48です。陸戦型ガンダム、量産型ガンキャノン、量産型ガンタンクは増産しません。特に陸戦型は、新たに産み出すのは割りに合わないとのことです」

「ホムンクルス・276です。ジム系ならばコストは問題ないのでは?」

「ホムンクルス・48です。陸戦でビーム兵器の必要性が少ないので、少数生産で技術蓄積だけにするそうです。後日連邦製のMS研究部隊が発足します」

「ホムンクルス(♀)・58です。パーパルディア皇国戦の為でしょうか? ドムが使えないなら、移動の為の輸送機とドダイがほしいです。そちらは?」

「ホムンクルス・48です。輸送機とドダイもしっかりとした数を揃えると」

「ホムンクルス(♀)・46です。パーパルディア皇国の港を襲撃するには、現状のズゴックEとハイゴッグだけでは、守りが不足しています。フェン王国とアルタラス王国の防衛の為に一個小隊ずつ増産した方が良いのでは?」

「ホムンクルス・1762です。防衛戦力的に必要でしょうか?」

「ホムンクルス・46です。暁の艦隊だけで、問題ないでしょうが、今後のために経験値と宣伝は必要かと」

「ホムンクルス・48です。ズゴックEとハイゴッグの少数、候補にしましょう」

 

後日、フェン王国国王が新しく作られたパンフレットで紹介されたヒートソードを持つグフ・カスタムを見て、是非見てみたいと言われて、訓練部隊が慌てて呼び寄せられて大変だった。

 

「ホムンクルス・48です。やはりザクJ型を中心にザクキャノンは控えて、DOLLSの皆さんにお願いする形で」

「ホムンクルス・1762です。現状でも強いライバル心を持たれているので、良いのではないでしょうか? 主力は彼女達ですし」

 

『『『『意義なし!!』』』』

 

こうして、増産されたザクとザクキャノンを見て、シン・マツナガは教導隊メンバーと気合いを入れた。

 

 

▼△▼△▼△

 

「フラム中隊出撃します」

「注意事項が追加されました。ドダイは頑丈ですが繊細です。ドダイの上でダンスを踊らないで下さい」

「誰ですか? そんな馬鹿なことをしたのは……」

「グランドマスターです。試しにドダイの上で戦う時にどれくらい動けるかと言い出して、ドダイの上で激しいステップを踏みました。そのドダイは修理に回されました」

「……フラム中隊各機へ。ドダイの上ではダンスは禁止、以上」

「「「「「了解」」」」」

 

こうして、ザクとドダイはパーパルディア皇国との戦争で、一つ目の巨人と呼ばれ、恐怖の代名詞となる。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

日常 パイロットを目指す移民の少年達

暁の大陸 第一開拓街

 

 

 

俺の名前はミロード、幼い時にロウリア王国の奴隷となった。

 

その時に兵士だった父が戦死、奴隷として売られたのだが、幸運にも俺を買ってくれた騎士家は、亜人差別は無く、家来も厳しいが亜人を理由に殴られたりはしなかった。

 

だが、ロウリア王国が戦争に負け、御当主様と次期当主様戦死。その後、親族が騎士家を乗っ取り、途方に暮れた奥様と幼いお嬢様を見て、御当主様の世話役として付いていき運良く生き残った従者が提案したのが、暁の大陸への移民だった。

 

ただ、条件が元奴隷のみだったので、偽装とは言え奴隷と名乗るのに躊躇していた奥様だったが、新しい御当主様が幼いお嬢様を変態で有名な貴族に嫁入りさせると言い出して覚悟を決めた。

 

まあ、何故か移民確認作業に、暁の傭兵団の団長が居て、即座に奥様とお嬢様の正体が露見したが、「何故、こんなことを?」と団長、いや暁様が聞いてきたので、正直に話すと、「そう言う理由ならば」と哀れんで移民の許可をくれた。

 

その後、没落して売り飛ばされそうになった貴族女性や平民の女性も多くが移民として、暁の大陸にやって来たと聞いた。俺が思っていた以上に懐が深いな。と思った。

 

 

「おーい、ミロード」

「ん? ああ、ガダ」

 

家の庭でトレーニングをしていると、隣の家のガダ。

友達になったエルフの少年が声をかけてきた。

 

「もうすぐだな。マクロスに行くの」

「あぁ、そうだな」

 

ガダと俺は暁の大陸守備隊に入隊した。

 

元々農民として働いていた人達は、大規模農場で雇われている。

 

だが、読み書きが出来る俺やガダは、武官や文官の職に志願できる。

 

もちろん、読み書き出来なくても、志願出来るが。必ず三年間学生として勉学に励む必要がある。

 

ちなみ、学校は無料で入れる。

 

寧ろ、暁の傭兵団は入学を推奨している。

 

「ガダはオーラバトラーのパイロット希望だっけ?」

「ああ、ワイバーンも好きだけど、空を舞うダンバイン(レプリカ)に一目惚れしたよ。ミロードは確かファフナー(レプリカ)、パイロットだったよな。なぜファフナーにしたんだ?」

「俺も一目惚れ……、というか、実はさ」

「うん、なんだ?」

「声が聞こえたんだ。ファフナーの写真を見たときに」

「声?」

「ああ、確かに聞こえたんだよ」

 

 

――あなたはそこにいますか?って。

 

 

この二人は後にエースとなる。

 

それこそ、暁の傭兵団の予想を越える技量を持つパイロットになった。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

暁の大陸 特別研究所 地下

 

 

「だああああああっっっ!!!! 逃げろ! 逃げろ! 逃げろぉ!! ファフナーから離れろぉっ!!!」

 

 

わーっ、わーっ、言いながら全力で逃げ出す妖精さん達と饅頭達とホムンクルス達。

 

『提督!早くファフナーをアイテムボックスに!!』

 

無線で大淀が叫ぶが無理だ。

直接触らないとアイテムボックスには入れられない。

 

 

「全身を結晶で包んでるから無理だ! 引きずり込まれたら、帰ってこれるとは思うが、何時帰ってこれるか分からない!!」

 

『全スタッフ緊急退避!! 隔壁閉鎖!!!』

 

 

後に落ち着いたファフナーをアイテムボックスに封印された。

 

封印されるまでの間に、ファフナーと波長の合う一人の少年が、ファフナーに問いかけられていたことに、古城は生涯気づかなかった。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大東洋諸国会議

・大東洋諸国会議

 

 

 

大きな出来事が起きた場合に臨時的に開かれる会議である。参加国は文明圏外の国々で構成される。

 

元々会議の提唱国が文明圏外の国であったため、列強のパーパルディア皇国や、第3文明圏の国々は「会議は必要が無く、無意味」として不参加となった。

 

会議に文明圏の国々はいないため、過去に開かれた会議では、国同士の会議としては珍しく、比較的に本音を交わすオープンな会議が行われてきた。

 

今まで行われた会議では、パーパルディア皇国の動向等が会議の主題となることが多かったが、今回は違う。

 

今回の大東洋諸国会議の目玉は急遽現れた謎の武装集団。暁の傭兵団についてである。

 

 

 

「これより大東洋諸国会議を開催します」

 

 

 

各国の代表には、いままでに暁の傭兵団が起こした代表的な出来事が記されている。

 

要約すると下記のとおりになる。

 

 

 

暁の傭兵団は大東洋に突如として現れた武装集団である。本人たちの言い分では、この世界に突如として転移してきたと申し立てる。しかし、少数とはいえ転移は神話以外に歴史上の実例は無い。

 

最初の接触はロデニウス大陸の農業立国、クワ・トイネ公国の竜騎士が、暁の傭兵団の本拠地、超大型空中空母マクロスを発見する事による。

 

暁の傭兵団の力を知った、クワ・トイネ公国が暁の傭兵団を雇う。クワ・トイネ公国の現状を知った暁の傭兵団はクワ・トイネ公国に大量の食糧を求め、インフラをクワ・トイネ公国に輸出してくる。

 

ロデニウス大陸最強の国、ロウリア王国とクワ・トイネ公国が戦争状態となる。

 

ロデニウス沖大海戦にて、暁の傭兵団は8隻で、ロウリア王国海軍4400隻全滅させ、ワイバーン部隊までも全滅させる。

 

陸戦においては、ギムの町にて、ロウリア王国軍を全滅させている。なお、この戦いを目撃した多数のクワトイネ国民によると、火山が爆発したかのような猛烈な爆裂魔法が使用されたようである。

 

フェン王国の軍祭参加の際、パーパルディア皇国 皇国監査軍東洋艦隊のワイバーンロード部隊を各国武官の前において、短時間で叩き落とす。

 

ここにおいて、ロデニウス大陸での暁の傭兵団のありえないほどの武勇伝が誇張でないということを、諸々の国が認識し始める。

 

 

 

「今回の参加国は暁の傭兵団の団員が訪れている国が多くを占めるが、共通認識としては、暁の傭兵団がとてつもない力を持った集団だということじゃ」

 

 

 

「各国の認識をお願いしたい」

 

 

マオ王国の代表が挙手し、話始める。

 

 

 

「我が国は暁の傭兵団とは関わりは無いが、かの傭兵団はとても危険な存在とみなしている。何故ならば、気に食わないロウリア王国を滅した。しかも、圧倒的な戦力で、たったの1回の戦いでロウリア王国ほどの大国の陸軍主力が叩き潰されている。いつこの力が自分達に降りかかってくるかが不明である。この国はとても危険だ。」

 

 

次に、トーパ王国が話し始める。

 

 

「トーパ王国です。我々は、暁の傭兵団を危険とは思っていない。調べた限り、彼等は自分に対して危害が加えられない限り、暁の傭兵団は襲ってこない。何より、彼等は今、魔帝の復活を危惧し、我が国に協力を求めてきた。何より、彼等の技術は明らかにパーパルディア皇国を越えているが、パーパルディア皇国のように他者を見下さず礼儀正しく対応する人格もある」

 

 

「シオス王国です。我々も、トーパ王国と同じ考えです。こちらから攻撃しない限り、彼等は何もしてこない。パーパルディア皇国のように貿易、技術供与のために奴隷の差し出しを言ってくる訳でもない。ロウリア王国の案件は、亜人差別による自分達の身を守る為に行ったものだ」

 

話は続く

 

「それに……はっきり言って、列強のワイバーンロードをあっさりと真っ二つにも出来る彼等が、もし攻めてきたら、はっきり言って手のうちようが無い。我々全てが集まっても、ロウリア王国の全軍よりも弱く、そしてそのロウリア王国は暁の傭兵団を1人も倒せなかった。暁の傭兵団とどう付き合うかを考えたほうが良い」  

 

「クワ・トイネ公国です。我々は彼等から様々なインフラを輸入し、生活水準が劇的に向上しつつあります。我々も彼等とは仲良くするべきです」

 

「アワン王国です。我々大東洋諸国は、暁の傭兵団をうまく活用し、パーパルディア皇国の脅威と暴走をいかに避けるのかに力を注ぐべきです。ここ10年くらい、皇国はやりすぎだ。」

 

 

 

会議は、暁の傭兵団とは敵対しない

パーパルディア皇国に対しては、事態の推移を慎重に見守る

 

方向で声明を出す事となった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 トーパ王国の大使は、大東洋諸国会議の後、先月行われた王の御前会議での武官の報告を思い出

 

していた。

 

 

 

「ホホホ……今思い出しても笑ってしまうのう」

 

先月の出来事~

 

「以上が戦況報告です。パーパルディア皇国 皇国監査軍東洋艦隊所属のワイバーンロードはフェン王国の首都アマノキ上空で暁の傭兵団の魔船に滅せられました!!!!」

 

「この報告書を信じろと!?列強のワイバーンロードを一騎討ち取るのにどれだけ大変なのか、君は理解しているのか?国軍を投入して、1騎落とせば大戦果だ。それを、無名の傭兵団が竜騎士部隊22騎をすべて滅しただと?……ははは、君は物語の読みすぎのようだな。疲れているんだろう?今度休みをやろう」

 

 

王の御前会議での武官の報告は、誰も信じなかった。

 

結局、この報告内容は、他国に確認をとる事によって裏づけが取れ、驚愕の出来事として認識されるようになった。

 

他国でも、最初の報告は、誰も信じなかったようだ。

 

それほど、列強の一部隊を押し返すという事は衝撃的な出来事だった。

 

暁の傭兵団の技術は進んでいるが、軍事規模がどの程度あるのか解らない。

 

攻撃的な国、パーパルディア皇国が本気になった時、それを跳ね返す力があるのか見極める必要がある。

 

と、トーパ王国の上層部は、思っていたのだが、

 

 

「DOLLSという、少女達の力は凄まじいものだったな」

 

先日、突然沖合いに現れた国籍不明の巨大船が、2隻現れた。

 

調べた結果、暁の傭兵団の船だと分かった。

 

その後、国王陛下に挨拶に来た、ウェールズとイラストリアスと名乗る二人の美女に思わず見惚れてしまったが、冷静に観察すれば、彼女達の立ち振舞いは品格があった。

 

高貴な家の生まれの可能性は高い。立ち振舞いは日々の積み重ねが必要なのだ。

 

そして、保有している兵器紹介を載せてあるパンフレット。持ってきた兵器の実演。

 

国王は直ぐにでも、契約をしたがったが、パーパルディアがアルタラス王国に宣戦布告した為に彼女達は即座に国を出る羽目になってしまった。

 

パーパルディア皇国め、余計なことを。

 

 

彼女達の技術を見て、素直に思った。

 

「世界が変わる」

 

 

トーパ王国大使は世界の行く末に思い耽るのだった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

マイラスさん

第2文明圏 列強国 ム―

 

 

 

 

 

晴天、雲は遠くに少し浮かんでいるのが見えるのみであり、視界は極めて良好である。

 

 

 

気候はあたたかくなってきており、鳥たちはのんびりと歌い、蝶の舞う季節。

 

 

 

技術士官マイラスは軍を通じて伝えられた外務省からの急な呼び出しに困惑していた。

 

 

 

外務省からの呼び出しは、空軍のアイナンク空港だった。

 

 

 

列強ムーには、民間空港が存在する。まだ富裕層でしか飛行機の使用は無く、晴天の昼間しか飛ぶ事は出来ないが、民間航空会社が成り立っている。

 

 

 

民間の航空輸送は私の知りうる限り、神聖ミリシアル帝国とムーでのみ成り立つ列強上位国の証である。

 

 

 

機械超文明ムーの発明した車と呼ばれる内燃機関に乗り、技術士官マイラスは空軍基地アイナンク空港に到着した。

 

 

 

しかし、わざわざ急遽空軍基地に呼び出すとは、いったい何だろうか?

 

 

 

控え室で待つこと20分、

 

 

 

軍服を着た者と、外交用礼服を着た者2名が部屋に入ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

「彼が技術士官のマイラス君です」

 

 

 

 

 

 

 

軍服を着た者が外交用の礼服を着た者に紹介する。

 

 

 

 

 

 

 

「我が軍1の、技術士官であり、この若さにして第1種総合技将の資格を持っています」

 

 

 

 

 

 

 

「技術士官のマイラスです」

 

 

 

 

 

 

 

マイラスはニッコリと笑い、外交官に答える。

 

 

 

 

 

 

 

「かけたまえ」

 

 

 

 

 

 

 

一同は椅子に腰掛け、話が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

「何と説明したら良いのか……」

 

 

 

深刻な表情をしながら、外交官がゆっくりと口を開く

 

 

 

 

 

「今回君を呼び出したのは、正体不明の武装集団の技術レベルを探ってほしいのだよ」

 

 

 

 

 

マイラスは一瞬、第八帝国の事かと思い、武装集団? と思い直して首をかしげる。まさか、と考える。

 

 

 

 

 

「暁の傭兵団、ですか?」

 

 

 

マイラスの言葉に、外交官は頷いた。

 

 

 

 

 

「本日ムーの東側海上に船が2隻現れた。海軍が臨検すると、暁の傭兵団の特使を名乗る者が乗っており、アルタラス王国とフェン王国はパーパルディア皇国との戦争をする。だから、我が国の国民がパーパルディアに住んでいるのなら、住んでいる場所を教えてほしい、可能や限り配慮する、と言ってきた。それと、パーパルディア皇国から、ムー国人を避難させるように、とね。

 

 

 

普通なら、何を言っているんだ。と一蹴するのだが。

 

 

 

彼等が乗ってきた船が問題だった」

 

 

 

「まさか……」

 

 

 

「彼女達の船は2隻とも魔力感知器にも反応が無いので、魔導船でもない。機械による動力船であると思われる」

 

 

 

「やはり、そうですか……」

 

 

 

 

 

一つ目の鉄の巨人を思いだすマイラス。

 

 

 

 

 

「更に問題なのは、彼等の船は……ラ・カサミ級を越える大きさだ」

 

 

 

 

 

「ば、馬鹿な!?」

 

 

 

 

 

「本当だ。これがその写真だ。急いで現像させた」

 

 

 

外交官が提示した、数枚の写真。

 

そこに写っている船は隣に写っている自国の船と比較して、計算するとラ・カサミを越える大きさ。主砲もラ・カサミ級を越えた戦艦だった。

 

 

 

もう1隻は空母だった。一緒に写っている我が国の船と比較すると、いかに巨大かが分かる。

 

 

 

 

 

「私は軍事技術に疎い、だが傭兵団にムーが外交的に負けるわけにはいかない。故に会談場所をアイナンク空港に指定した。相手には空母がある、分かってはいたが飛行許可を願い出て来たよ。

 

 

 

正直、嫌な予感がしていたよ。船は負けている。素人目でも分かる。だが、飛行機械なら負けぬ。飛行許可を出してみたら、飛行機械を使用して飛んで来たのだよ。

 

 

 

 

 

彩雲という名前の使者を乗せた単葉機と護衛のDOLLSという種族の少女達身に付けていた人間サイズの飛行機械は、我が国のマリンを越える速度で飛んだのだ」

 

 

 

 

 

「DOLLSですって!?」

 

「知っているのかね?」

 

「あ、はい。その報告書は出したはずですが……?」

 

 

 

マイラスの言葉に、外交官は眉を潜める。

 

 

 

「……後で確認しよう。

 

 

 

それで、先導した空軍機によれば、最初は向こうに合わせるつもりだったらしい。だが、向こうが速度を上げ始め。あっという間に加速し、マリンを越える速度になったそうだ。

 

 

 

部下が試しに彼女達と空戦したら、勝てそうか聞いてみたが、彩雲は追い付けず。DOLLSと呼ばれる少女達は文字通り、空中で剣を使う格闘戦が出来るようで、勝つのは難しいと。空軍パイロットは答えておったよ。更に着陸後に新たな事実も分かった」

 

 

 

「な、何でしょうか」

 

 

 

「DOLLS達の飛行機械も魔力感知器に反応しなかった」

 

「え……?」

 

「プロペラが、DOLLSの飛行機械には付いていない。なので、魔力感知器を使ったのだが、反応しなかったのだ。つまり、暁の傭兵団は、科学的な飛行機械においても我が国の技術を上回っている。という可能性がある」

 

 

 

外交官はそっと、彩雲とDOLLSの三人の零戦、ワイルドキャット、ハリケーンの写真を見せた。

 

 

 

ロデニウス沖海戦の写真では小さくて、分かり難かったが、この写真ならハッキリと分かる。

 

 

 

DOLLSの少女達の飛行機械には、プロペラがない。なのに、魔力感知器は反応しない。

 

 

 

何だ、これは!?

 

 

 

 

 

マイラスは写真を見ながら、絶句した。

 

 

 

ちなみに、何故か彩雲のパイロットのホムンクルスと、DOLLSの少女達は笑顔でピースサインをしている。

 

 

 

「……撮影許可をもらえたのですか?」

 

「ああ、何でもロデニウス大陸には、暁の傭兵団の艦隊司令官や艦長のブロマイドもあるらしい、撮影されても問題ないとのことだ」

 

 

 

外交官の言葉に、ブロマイドを販売? なんじゃそりゃ。と思ったが聞き捨てならない単語があった。

 

 

 

「艦隊司令官?」

 

「私も思わず聞き返してしまったよ。2隻の写真を見る前なら、どれだけの艦隊かと、上から目線で聞いただろう。まあ、流石に詳しくは教えてもらえなかったが、……暁の傭兵団はあのサイズの戦艦を複数持っている可能性がある」

 

 

 

目眩がしてきたマイラスだったが、ふと思い付く。

 

 

 

「あの、DOLLSという種族の飛行機械は、撮影は問題ないのですよね?」

 

「ああ、そうだ。だが、身に付けているのは少女達だ。記念になら一枚二枚問題はないが、変な場所を撮らないようにと、代表が言っていたが……」

 

 

 

 

 

外交官は、ニヤリと笑う。

 

 

 

 

 

「だが、見ることは許可をされた。暁の傭兵団の人間サイズの飛行機械、是非とも見せてもらおうではないか、マイラス君」

 

「は、はい、もちろんです!」

 

「暁の傭兵団の技術力は、ハッキリ言えばパーパルディア皇国を越えている可能性が高い。そして、この国を訪れた目的を考えれば早急に会談したいが、そうもいかない。幸い、一週間はパーパルディア皇国には攻撃しないと言ってきた。

 

 

 

そんなことを他国に教えても良いのかと思ったが、彼女達の態度を見ている限り、問題ないのだろう。

 

 

 

マイラス君は、彼女達を待たせてしまっている間に、この観光案内し、暁の傭兵団の技術レベルを探ってほしい」

 

 

 

「解りました。……ところで、1つ気になったのですが」

 

「なんだね?」

 

「彼女達は、MSに乗って来なかったのですか?」

 

 

 

マイラスの言葉に、外交官は眉を潜める。その表情はまだ何かあるのか、という顔だった。

 

 

 

「……なんだね、その……もびるすーつ、とやらは」

 

 

 

声のトーンが低くなった外交官に、マイラスは迷ったが、MSについて教えることにした。

 

 

 

「報告書は上げたのですが、高さ17メートル近い大きさの水中を動き回れる鉄の人型兵器です。強力な魔導砲を両手に装備しています」

 

 

 

「……………………」

 

 

 

外交官が、能面のように表情が抜け落ちた。

 

 

 

「マイラス君、それは何か証拠があるのかね?」

 

「しゃ、写真があります。そ、それをお持ちしましょうか……?」

 

「是非頼む、出来れば複数枚、新しく現像をしてほしい。それと欺瞞情報ではないのだね?」

 

 

 

「は、はい、写りは悪いですが、小さくDOLLSも一緒に写っていますから、MSは存在している可能性があります。写真はロウリア王国とクワ・トイネ公国が戦争した時の、ロデニウス沖海戦で撮られた物です」

 

 

 

「分かった。それと今度からは、君が重要な報告書を出す時は手間をかけさせるが、私にも是非教えてほしい。……外交官はね。無知では駄目なのだよ。外交官の一言で国益を損ねる」

 

 

 

そして、足を引っ張る馬鹿は要らん。と外交官は出て行こうとして、

 

 

 

「ああ、暁の傭兵団が使用した飛行機械は、今空港東側に駐機してあるから、まずは見ておいてくれたまえ」

 

「分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、DOLLSの飛行機械の実物を見られるとは」

 

 

 

 

 

技術士官のマイラスは、久々に技術者魂の震えを感じた。未知の飛行機械、どのような原理だろうか?

 

 

 

 

 

5分後――

 

 

 

「初めまして、零です」

 

「ワイルドキャットです」

 

「ハリケーンです」

 

「「「ホムです」」」

 

「マイラスと、申します。……その皆さんは姉妹でしょうか?」

 

 

 

DOLLSは4人ずつ、彩雲は3機で来たので、ホムンクルス3人なのだが、並ぶと姉妹にしか見えない。

 

 

 

「いいえ、違いますよ」

 

「そ、そうですか」

 

 

 

マイラスは、戸惑いながらも、プロペラ機の白い機体を見て、DOLLSとホム達に見学の許可を求める。

 

 

 

「あの、彩雲でしたか? 見せてもらっても?」

 

「触れるのは駄目ですが、見るなら大丈夫です」

 

 

 

それから、マイラスはざっとだが、彩雲を見て。

 

 

 

単座ではなく3人ほど乗れる。それに爆弾を積めそうにない。武装も貧弱だが、機体細身ということは、彩雲は偵察機か?

 

 

 

「やはり気になりますか?」

 

「え、あ、すみません」

 

 

 

声をかけたのは、ワイルドキャットだった。

 

 

 

「あ、気にしないで下さい。見られても本当に問題ないのですから」

 

 

 

マイラスは、見られても解析出来ない。と捉えたが。ワイルドキャットの表情を見て、挑発などでは無いと察した。

 

 

 

「あの、ところで、皆さんが付けていた飛行機械は?」

 

「ん? ああ、武装形態のことか」

 

 

 

DOLLSと紹介された少女達は、全員飛行機械を身に付けていなかった。

 

 

 

どこに置いたのかと思い、マイラスは周りを見渡すが飛行機械はどこにも無い。

 

 

 

「ここにありますよっと、武装形態」

 

「うわっ!」

 

 

 

突然、ワイルドキャットが光ったと思ったら、一瞬で飛行機械を身に付けていた。

 

 

 

「そ、それはっ!?」

 

「DOLLS特有の種族特性です。科学的でも魔法でもなく、種族の……魂によって使える技(偽装の説明)です」

 

「えっ!?」

 

 

 

魂!? 何だそれは、とマイラスは唖然とする。

 

 

 

「だから、いくら調べても問題はないですよ? 魂に触れる技術がなければ、私達のコレは真似出来ませんから」

 

「そ、そうなのですか?」

 

「ええ、ですので、参考にするなら、彩雲の方が良いかと。ただ、そろそろ」

 

「ああ、確かに」

 

 

 

ワイルドキャットの指摘に、マイラスは彩雲をチラリと見て後ろ髪を引かれる思いで、その場を後にした。

 

 

 

移動中、マイラスは彩雲の方は問題ない。だが、DOLLSの方は何て報告すれば良いのか頭を抱えることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マイラスは暁の傭兵団の使者が滞在する部屋の扉をノックした。

 

 

 

――コンコン

 

 

 

 

 

「どうぞ」

 

 

 

 

 

幼いが威厳のある声がドアの向こうから聞こえ、マイラスは嫌な予感がしながらも、扉をゆっくりと開ける。

 

 

 

部屋の中には威厳と気品のあるケモノミミの黒髪の美少女がソファーに座り。

 

 

 

その少女の背後には、白い異国の衣類を纏うクールな雰囲気の白髪の美少女と、ケモノミミの黒髪で白い軍服に似た服を着ている美女が立っていた。

 

 

 

どうやら、ソファに座っていない2人は、ソファに座る少女の護衛らしい。

 

 

 

「こんにちは、マイラスと申します。私が一週間ムーの事をご紹介させていただきます」

 

 

 

 

 

 

 

ソファに座っていた、黒髪の美少女は立ち上がり挨拶をする。

 

 

 

マイラスは思う。何だろう、迫力のある少女だと感じた。

 

 

 

それと、少女の護衛の2人の眼力が凄い。

 

目の前の少女も後ろの2人も雰囲気がただ者ではない気がする。

 

と言うか、この子物凄く自然体だ。まったく緊張していない?

 

お飾りではないらしい。

 

 

 

 

 

「暁の傭兵団 重桜連合艦隊、司令官の長門。今回ムー国をご紹介いただけるとのことで、感謝いたします。

 

 

 

後ろにいる2人、右側にいるのが江風。左側が愛宕」

 

 

 

マイラスは思った。今この子とんでもないことを言わなかったか?

 

 

 

「江風です」

 

「愛宕です」

 

 

 

と、兎も角、後にしよう。暁の傭兵団の使者は、すでに出発準備を整えていた。

 

 

 

 

 

「では、具体的にご案内するのは、明日からとします。長旅でお疲れでしょうから、今日はこの空港のご案内の後に、都内のホテルにお連れします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マイラスは、空港出口へ行く前に、空港格納庫内に使者を連れて行く。

 

 

 

格納庫に入ると、白く塗られた機体に青のストライプが入り、前部にプロペラが付き、その横に機銃が2機配置され、車輪は固定式であるが、空気抵抗を減らすためにカバーが付いている複葉機が1機、駐機してあった。

 

 

 

ピカピカに磨かれており、整備が行き届いた機体だと推測される。

 

 

 

マイラスは彩雲を見ている。

 

 

 

高い技術を持っている暁の傭兵団が、マリンを見てどのような感想を持つのか聞いてみたくなった。

 

 

 

 

 

「この鉄龍は、我が国では航空機と呼んでいる飛行機械です。

 

 

 

これは我が国の戦闘機「マリン」です。最大速度は、ワイバーンロードよりも速い380km/h、前部に機銃を装備、1人で操縦出来ます。メリットとしては、ワイバーンロードみたいに、ストレスで飛べなくなる事も無く、大量の糞の処理や未稼働時に食料をとらせ続ける必要も事もありません。空戦能力もワイバーンロードよりも上です。」

 

 

 

少し、不安げに説明すると。

 

 

 

 

「ほぉ」

 

 

 

長門が面白そうにマリンを眺める。

 

 

 

「九五式艦上戦闘機よりも速いな」

 

「九五式艦上戦闘機?」

 

「うむ、重桜で使われていた最後の二葉機の艦上戦闘機だ。最高速度は352km/hだったか」

 

「はい、それくらいだったかと」

 

 

 

長門の言葉に江風が肯定する。

 

 

 

2人のやり取りを見ながら、マイラスは長門との「最後の」と言う言葉を聞いて、やはり二葉機の発展性は限界なのだろう。

 

単葉機を作らなければ、と考えた。

 

 

 

「……暁の傭兵団の航空機はどのくらいで飛べるのですか?」

 

 

 

それ故に、マイラスのこの質問は暁の傭兵団を目標にしながらも、追い抜いてやる。というマイラスの技術官のプライドが混じった質問だった。

 

 

 

「航空機か……ふむ、バルキリーも含めるか?」

 

 

 

長門の頭の中に暁の傭兵団が保有するこの世界ではトンでも兵器が思い浮かび、何気なく呟いた言葉に護衛のモードの愛宕が反応した。

 

 

 

「長門様!」

 

 

 

その鋭い声と圧にマイラスは背中から汗が吹き出る。

 

 

 

「む、すまぬ、愛宕。マイラス殿、今のは聞かなかったことにしてくれ」

 

「い、いえ」

 

「まあ、驚かせた詫びとして、教えておこう。我が重桜艦隊の空母が運用する戦闘機は最高速度は500km/hを越えるぞ」

 

「!!!!!」

 

 

 

驚きくマイラスを、長門は子を見守る母のように見つめ、

 

 

 

「そろそろ、ホテルへ案内してくれぬか?」

 

「あ、も、申し訳ありません。ご案内します」

 

 

 

そう告げて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ムー国が異世界から飛ばされてきた。という話を聞いて、長門達も驚いたが、簡単な資料を貰うだけにとどまった。

 

 

 

後日、長門から話を聞いた古城は「……もしかして、ムー国が主人公勢力?」と頭を悩ませることになった。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

パーパルディア皇国さんの勘違い

パーパルディア皇国 皇都エストシラント

 

 

 

 

 

第1外務局は混乱の極みにあった。

 

 

 

原因は皇国よりも西の中央世界、そしてそれより更に西の第2文明圏に2つ存在する列強国、その一つ、レイフォルが、正体不明の国家、グラ・バルカス帝国に敗れた事にある。

 

 

 

 列強レイフォルとパーパルディア皇国は、規模で言えば皇国の方が遥かに上だが、海軍の武器の性能は良く似ていた。(帆船加速のための風神の涙の質は皇国の方が上)

 

 

 

しかも信じられない事に、列強レイフォルは、グラ・バルカス帝国のグレードアトラスターと呼ばれる超巨大戦艦たった1隻に艦隊を全滅させられ、ワイバーンロードの波状攻撃を防がれ、さらに首都レイフォリアを攻撃され、首都は灰燼に帰したという。

 

 

 

超列強国が西の果てに突如として現れた。

 

 

 

第1外務局長 エルト の脳裏に嫌な予感が駆け巡る。

 

 

 

第3外務局所属の皇国監査軍が東のフェン王国に対し、懲罰的行為を行った際、敗戦している。

 

 

 

 もしも……グラ・バルカス帝国の息がかかっていればとんでもない事に……。

 

 

 

 

 

「とにかく情報を集めよ!!!」

 

 

 

 

 

第1外務局長 エルト は部下に強く指示するのだった。

 

 

 

そんな中、一つの情報が彼の元に入る。

 

 

 

 

 

 

 

「なにぃっ!? そんな馬鹿なことがあるか!!」

 

 

 

 

 

アルタラス王国を攻め滅ぼす為に送った、栄光あるパーパルディア皇国軍の艦隊、324隻が全滅!?

 

 

 

「間違いありません! 暁の傭兵団が写真付きのビラを周辺諸国に大量にばら蒔いています。写真には捕虜には、我が国の幹部も確認されました!! 」

 

 

 

「あ、あり得ない! いったいどうやって!?」

 

 

 

「大変です! アルタラス王国に向かった艦隊の捜索に向かったワイバーンロードが戻ってきません!」

 

 

 

「……今すぐ、暁の傭兵団のことを調べろ!徹底的にだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

後日、集まった情報が凄まじく、現実離れしていて、

 

 

 

第一外務局はふざけるなと怒号が響き渡るが、艦隊は全滅した可能性が高く。頭を抱えることになる。

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

パーパルディア皇国 皇都エストシラント 第1外務局

 

 

 

 

 

第1外務局長エルトの指示により、暁の傭兵団の新たな情報がかなり集まってきていた。

 

 

 

 

 

 

 

皇国監査軍を退けたのは、複数の国家から暁の傭兵団が単独で退けたことは間違いは無いと思われる。

 

 

 

監査軍のワイバーンロード部隊が全て未帰還となっているが、どうやったのかは詳しいことは不明。

 

 

 

少女達が空を飛んで、剣でワイバーンロードを一刀両断したと言う信憑性の低い情報しか手に入らなかった。

 

 

 

また、敵の主力艦はムー国の船よりも巨大という話もあるが、文明圏外の傭兵団にそのような物を建造出来る訳がない。

 

 

 

だが、グラ・バルカス帝国のこともあり、我が国に匹敵する船を所持している可能性があるとして、警戒はすることになった。

 

 

 

監察軍、アルタラス王国へ送った艦隊を撃破したことから、質は高いのだろうが、文明圏外から現れた傭兵団がそれほどまでに強力な船を持っているとは考えにくい。

 

 

 

この事から、未確認の風竜のような種族、または生物を保有するしているのでは? という意見が出た。

 

 

 

 

 

グラ・バルカス帝国のグレードアトラスターと呼ばれる魔艦は、たった1隻でレイフォルを滅ぼすに至ったというが、列強の力を考えれば、この情報はやはり何かの間違いだったのではないかと思えてくる。

 

 

 

どう考えても盛りすぎである。ただし、グラ・バルカス帝国がレイフォルを滅する力があるのは事実であるため、今後帝国には気をつけなければならない。

 

 

 

 

 

それと、第3国経由で情報が入った。

 

 

 

暁の傭兵団の本拠地のある大陸は小さく、その小さな大陸の8割以上が未開拓だという(代わりにクイラ王国を開発中)。

 

 

 

暁の傭兵団は質は高いが、少数の可能性がある。

 

 

 

二度も皇国を退けたが力は称賛にあたいするものだが、フェン国王とアルタラス王国の支援があるとはいえ、戦力はかなり落ちていると可能性が高い。

 

 

 

「恐らく、歴史に名を残すほどの将と軍師が複数いるのだろう」

 

 

 

暁の傭兵団と我が国の二度の敗北の話を聞いた軍人達のこの言葉に、第1外務局は成る程と納得した。

 

 

 

少数の軍で、名将と名軍師が大軍を退ける。

 

歴史を振り返れば幾つもある。

 

 

 

される側からしてみれば、堪ったものではないが。

 

 

 

 

 

暁の傭兵団には、優秀な人材が多くいる。

 

 

 

保有している兵器または生物は、我が国に匹敵する可能性がある。

 

 

 

二度の戦いで暁の傭兵団は戦力が低下している可能性が高い。

 

次は勝てる。

 

 

第1外務局はこのように結論付けた。

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国 皇都エストシラント 皇城

 

 

 

 

 

 

 

国の重臣たちが平伏し、重苦しい空気が張り詰める。

 

 

 

皇帝ルディアスが出席する最高会議が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、これより帝前会議を始めます」

 

 

 

 

 

議長があいさつし、その後皇帝が話し始める。

 

 

 

 

 

 

「アルタラス王国の一件は聞いた」

 

 

 

 

 

地獄のそこから聞こえてきそうな、怒気が混じった声に重臣達は大量の冷や汗を流す。

 

 

 

 

 

「どういうことだあぁっっ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

ビリビリと空気を震わせる怒号。

 

 

 

荒い息を吐き出す皇帝ルディアス。

 

 

 

ギロリと軍の最高司令官アルデを睨む。

 

アルデは震えながらも、皇帝ルディアスに答える。

 

 

 

 

「あ、暁の傭兵団は我が国が保有する兵器の性能を越えるようです」

 

 

 

その言葉に、皇帝ルディアの怒りが膨れ上がり爆発する直前で、アルデが発した言葉に皇帝ルディアスは固まる。

 

 

 

「詳しくスパイに調べさせたところ、暁の傭兵団の船には兵器には魔力感知器は反応しませんでした」

 

 

 

「なんだと……」

 

 

 

「はい、優秀な部下達はフェン王国に雇われた暁の傭兵団の部隊に近づくことに成功。欺瞞情報も多くありましたが、暁の傭兵団が文明圏外から来た話などを考慮しまして、この度の二度に渡る我が国の敗北は……」

 

 

「暁の傭兵団の背後には、列強ムー国が関わっている可能性があります」

 

 

 

アルデの言葉に、重臣達が騒ぎだす。

 

 

 

「馬鹿な!」

 

 

 

「何を言い出す!」

 

 

 

「ムー国との関係は良好の筈だ」

 

 

 

 

 

「静まれぃっ!!!」

 

 

 

皇帝ルディアスの一喝に、誰もが黙り混む。

 

 

 

「アルデよ……、何故その様な考えになった?」

 

 

 

「はっ、我が国はここ十年で、飛躍的に領土を手にし発展いたしました。

 

 

 

ですが、かの国は、それを面白く思わないなかった可能性があります」

 

 

 

「仮にそうだとして、何故新兵器を所持した傭兵団をわざわざ作った? 我が国の邪魔をするのであれば、ムー国ならば、宣戦布告は無理だとしても、外交ルートでの抗議。フェン王国やアルタラス王国に直接な支援を……、そう言えば永久中立だったな」

 

 

「はい、それ故に、傭兵団を結成し、我が国への妨害工作を行っているのでは、と。更に新型であろうと、船ならば、最悪海に沈めれば証拠は残りません」

 

 

「むぅ……、フェン王国の軍祭に参加した理由はなんだと思う?」

 

 

 

「文明圏外の国への新型戦艦の宣伝、それと我が国の懲罰は偶然が重なった為かと、監察軍のワイバーンロードが、傭兵団の船を攻撃したようですので」

 

 

 

「……では、アルタラス王国の一件は?」

 

 

 

「アルタラス王国の魔石鉱山シルウトラスを含む資源です。鉱山を我が国の物になれば、更に我が国は発展させられます。それと、先のフェン王国での一件で、新型戦艦の性能を確認出来、傭兵団で我が国の戦力を削り、弱体化させる意図があるのでは? と考えております」

 

 

 

アルデの言葉を聞いて、皇帝ルディアスは腸が煮え繰り返しそうになるのを必死に堪えながら、考えを巡らせる。

 

 

 

まず、文明圏外から現れた傭兵団が、我が国の艦隊を全滅させられるか?

 

 

 

軍事知識は習ってはいるが、軍人より劣るルディアスでも、無理だと断言する。

 

 

 

文明圏外の船は大砲すらない無い場合もある。

 

 

 

それ故に、アルデの説明にルディアスは納得した。

 

 

 

流石に、異世界からチート能力を持った男がこの世界に降り立ち無双の傭兵団を率いるなど、想像出来る訳がない。

 

 

 

「分かった。では、これからどうするつもりだ?」

 

 

 

 

「はっ、海戦では、勝てたとしても、多くの犠牲が出ます。ですので精鋭を送り込み。アルタラス王国の国王を含む王家人間を狙います。雇い主が居なくなれば、契約を打ち切るしかなくなります。何より補給を考えればそろそろ苦しい筈」

 

 

アルデは重臣から、傭兵団と戦わないことを批判されたが、皇帝ルディアスが一喝して黙らせた。

 

これ以上ムーの息がかかった集団と戦い、無駄な被害を出すわけにはいかない。

 

 

 

「出来るのか?」

 

 

 

「はい」

 

 

 

自信のある表情を見て、皇帝ルディアスは頷いた。

 

 

 

「ムー国相手なら、正面からぶつかるのは確かに下策。これ以上は、負ける訳にはいかぬ。やってみるが良い。」

 

 

「ははっ!!」

 

 

 

「――エルトよ」

 

 

 

「ははっ!」

 

 

 

「ムー国に、探りを入れよ。恐らくシラを切るだろうが、落とし所を探れ。腹立たしいが、今はまだムー国には勝てん」

 

 

 

「ははっ!!」

 

 

 

「皆の者……」

 

 

 

皇帝ルディアスは、深く息を吸い、怒りを爆発させるように、重臣達へ告げた。

 

 

 

 

 

「余は、この屈辱は決して忘れん!!!」

 

 

 

「「「「「ははっ!!!!」」」」」

 

 

 

 

 

こうして、勘違いが生まれた。

 

 

 

この後、外交ルートにて、ムー国の外交官は、身に覚えの無いことを言われ、パーパルディア皇国の外交官達からの当たりがキツくなったことで、少なからずムー国とパーパルディア皇国との関係は徐々に悪化。

 

 

 

 

しばらくして、ムー国の外交官は本国からムー国人の撤収準備の指示が送られてきて、困惑するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

 

 

アカギ 艦内 食堂

 

 

モグモグとコックアイルーが作ったオムライスを食べるアカギ。

 

メンタルモデル達も最初は誘われなければ食事をしなかったが、最近では自分から食事をするようになった。

 

そんなアカギがコンゴウにネットワークを使い話しかける。

 

 

『で? コンゴウ、売り込みの方はどうだった? 今日は砲撃を見せたのでしょう?』

 

 

 

『長門達の話では、かなり驚いていたようだ。それと女艦長と女の船員は珍しいようだ』

 

 

 

『へー、それで?』

 

 

 

『永久中立だから、雇われることは無いだろうが、と長門がパンフレットを手渡し、中身を読んで絶句していたらしい』

 

 

 

『まあ、この国の兵器の性能では、驚くだろうね』

 

 

『どうでも良い。必要な情報は、粗方集まった。そろそろ帰還準備を』

 

『了解、コンゴウ』

 

 

 

 

 

翌日、ムー国上層部はマイラスの報告書、コンゴウの実弾砲撃を見て、危機感を持ち。

 

 

 

情報を得るために、マリンとDOLLS達の模擬戦を提案。

 

 

 

運が悪いと言うか、たまたまと言うか、模擬戦の前にマリンのパイロットの下品な挑発に零戦は激昂。

 

 

模擬戦はマリンの完敗で終わった。

 

 

これにより、ムー国はパーパルディア皇国とアルタラス王国の戦争が激化する前に、ムー国人の引き揚げを決定する。

 

 

これが、更なるパーパルディア皇国の勘違いを生んだ。

 

 




軍、第1外務局、第3外務局は連携が取れていません。

仮に取れても、情報は信じられなかったかと。


感想ありがとうございます(^_^ゞ

誤字指摘、助かります!


返信については、控えさせていただきます。すみません( ノ;_ _)ノ



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

殴・り・込・み

・特務部隊の驚愕

 

 

パーパルディア皇国は列強と呼ばれる国家である。

軍事力も高い。そんな国家でもやはり裏の部隊が存在している。

 

 彼等は今まで、敵国の重要人物の暗殺や誘拐などの非合法な仕事をしてきた。

 パーパルディア皇国の名を傷つけぬように失敗が許されない作戦ばかりのため、精鋭が選ばれ、錬度がとても高い。

 仮にムー国や神聖ミリシアル帝国相手でも良い働きをしただろう(成功するとは言っていない)。

 

 そんな精鋭で、錬度が高い彼等は、無事にアルタラス王国へ侵入することが出来た。

 複数のルートで、アルタラス王国に侵入した彼等だったが。

 アルタラス王国で、文字通り目玉が飛び出そうなモノを目撃する。

 それは、すっかりアルタラス王国の新しい名物風景となった……。

 

 

『ファイトー!!』

『『『『『ファイトー!』』』』』

 

『声が小さい!! そーれっ、ファイトー!』

 

『『『『『ファイトー!! ファイトー!!』』』』』

 

 アルタラス王国の王都ル・ブリアスの近郊で行われている。

 

『しっかり走れぇっ!! ザクを転倒させたら生身でMSグラウンドを走らせるからなぁ!!』

『『『『『はい、教官!!!』』』』』

 

 ザクⅡ(訓練仕様機)の走り込み訓練である。

 当初、アルタラス王国国民は突然現れた、一つ目の巨人にパニックになったが、人が乗る巨大な人型兵器だと聞いて、唖然とし。

 

 しばらくすると、訓練終わり、もしくは休日に王都ル・ブリアスに買い物に来る女性パイロット候補生達が、綺麗で白いおしゃれな訓練制服(丈が短め)を着て、街で買い物をする華やかな彼女達の姿(石鹸、シャンプー、食事で美を磨かれた子が多い)は、アルタラス王国の国民(特に少女達)の憧れとなった。

 

 ザクⅡ(訓練仕様機)に乗っているのは、旧ロウリア王国で奴隷だった女性達だ。

 数は少ないが、読み書きなどの最低限の教養をもっている女性も居たので、古城は「人材不足だから、新しく移住してきてくれた人達に声をかけよう。まずは後方支援とMSパイロット候補生を募集だな」と軽い気持ちで募集を掛けたらとんでもない数の募集になり。

 結果として、MSパイロット養成学校を急ピッチで建設することになった。

 で、成績優秀者の彼女達は、ちょうど良いからマゼラトップ砲での支援砲撃任務の為に呼ばれた。

 

 

 

 

「「「「……………………」」」」(←アルタラス王国に着いたその日に、十体の一つ目の巨人が走りまわっている姿を目撃した、パーパルディア皇国の特務部隊の皆さん)

 

 

「た、……ダーマさん(隊長の偽名)。あ、あれは何ですか?」

「……分からん」

 

 

 

 その場に居た特務部隊の隊員達が唖然としていると、他の見学者達に混じっていた、小太りの四十台くらいの身なりの良い男が話しかけてきた。

 

「おや、皆さんは、ここの光景は初めてですかな?」

「え、ああ、そうだが。貴方は?」

「おおっと、これは失礼しました。私は王都のしがない商人ですよ」

 

 ほっほっほ上機嫌に笑う商人に、隊員達は警戒するが。

 長年の感から、この商人は白だと判断した。部隊長は少しでも、情報を引き出しにかかる。

 

「シオス王国から来ましたが、あの噂が本当だとは思いませんでしたよ」

「そうでしょうなぁ。我々も最初は驚きましたよ。魔帝が復活したのだ! なんて、うわさも飛び交いました。直ぐに王家からの発表で暁の傭兵団の鉄の巨人だと分かりましたが」

「暁の傭兵団ですか、やはり強いのですか?」

「ええ、最近は盛んに訓練しております。まあ、流石に騒音問題があるので、王都周辺で訓練しているのは、あそこにいる女学生たちだけですが」

「女学生?」

「はい、どうやらパーパルディア皇国との戦いは実戦訓練相手にはちょうど良い。と言うことで、成績上位者達が呼ばれたそうですよ」

「パ、パーパルディア皇国が、ちょうど良い実戦訓練相手?」

 

 隊員が、唖然とした表情でそう呟いた。列強の栄光ある我がパーパルディア皇国軍がちょうど良い実践訓練相手!? 特務部隊員は、自分達の常識がガラガラと大きな音を立てて崩れ去っていく。

 

「ええ、彼女達が使うマゼラトップ砲という細長くて巨大な大砲があるのですがね。それが凄まじい威力なんですよ。ここから五十キロほど離れた場所で、実弾演習がありまして。それが一般公開された時は私もそうですが見学者達はもの凄い興奮でした」

 

 その時のことを思い出しているのか、商人はやや興奮気味に語る。

 

「よろしければ、詳しい御話を聞かせてもらえませんか?」

「ええ、構いませんよ」

 

 こうして彼等は、噂に聞いていた暁の傭兵団の馬鹿げた噂が本当だと知る。

 直ぐに部隊長は、報告のためにパーパルディア皇国に部下を数名戻らせたが報告はやはり信じてもらえなかった。

 

 鉄の巨人。実物を見なければ実在するとは誰も思わなかった。

 

 

 

 

 

△▼△▼

 

 

 アルタラス王国 暁の傭兵団 第一防衛基地 古城の私室

 

 アルタラス王国から借りた土地に作った防衛基地の私室で、俺は紅茶を飲みながら一息ついていた。

 そんなところ、扉がノックされて「どうぞ」と言うと、ドアを開けて中に入って来たのはユキカゼ(蒼き鋼)だった。

 俺の傍に侍ることが多いので、最近は和風メイド服を着るようになった。

 メイド隊、優秀だねぇ。

 ちなみに、俺その場にいることが多いのは、ユキカゼ。ベルファスト。サフォークとケントだ。

 

「アドミラル。報告です」

「どうかしたのか、ユキカゼ」

「王都にて、見慣れない人物達が居たので、調べてみたらパーパルディア皇国のスパイでした」

「あらら、捕まえたと言うことはスパイ以外もするつもりだったのか?」

「はい、どうやらアルタラス王族を殺害し、契約を破棄させようとしたらしいです」

「はい?」

 

 何だと? それは、どういうことだ?

 

「雇い主が居なくなれば、我々はアルタラス王国から出ていくと考えたようです」

「なるほど、悪くない手だな」

 

 普通の傭兵団ならばな!! 国王が最近は更に俺にフレンドリーになった理由も察している。

 仮に国王が殺されたら。多分俺は全力でパーパルディア皇国人を根絶やしにしていたな。

 

「で?」

「近くにいた妙高さん達と共に、全て捕縛しました。アルタラス王国側へ連絡を入れてはいかがでしょうか?」

「分かった。それとM3(DOLLS)をアルタラス王家の護衛にする。一人当たり二人を付ける」

「分かりました。ここで死なれてはこちらも困ります」

 

 こうして、特務部隊の隊員達は運悪く即座に捕まった。

 

 ユキカゼに見つからなければ、彼等は暗殺を成功させていた可能性があった。

 

 仮にそうなった場合、パーパルディア皇国はタダでは済まなかっただろう。

 

 そう言う意味では、彼等が捕まったことはパーパルディア皇国にとって良い結果となった。

 

 パーパルディア皇国上層部にとっては、残念な結果だったかもしれないが。

 

「そう言えば、動きがあった敵艦隊は?」

「出撃準備はしていますが、動きがありません」

「そうか、このまま睨み合っていても始まらないよな」

「はい、そろそろ此方から攻めるべきかと」

「そうだな。なら、行くか」

 

 既に準備は整っている。

 

「明日はルミエス様にお茶に誘われていたな」

「ええ、モテますね」

「止めてくれ、刺されないのが不思議なんだから」

「まあ、元々複数の方と結婚していましたし、今更感があったので問題ないでしょう。長門様(アズレン)は、歓迎しておりますよ。それと大和様(艦これ)も」

「何で?」

「ルミエス様の人徳ですね。それとそろそろ暁の傭兵団は政治的な後ろ盾が必要かと」

「あー、前に言っていた。国を支援して後ろ盾になってもらう話だな。個人的にはムー国にしようかと思ったんだが」

「あそこは中立国らしいですから、それよりもアルタラス王国やフェン王国。ロデニウス大陸を発展させた方がよろしいかと」

 

 地元が近いですから。とユキカゼの言葉に苦笑いを浮かべる古城。

 正直、この世界の各国の文明圏外への差別発言にうんざりしている。

 

まあ、この世界では、中央世界から離れるほど文明レベルが低いので、仕方がないが。

正直かなり頭にきている。ケンカを売る国には、それなりの対処をしているけどな。

 

「まあ、攻勢をかける前に、今回のことも含めて、ちょっと挨拶しに行こうかな」

「挨拶?」

「ちょっと行ってくる」

「アドミラル?」

 

 俺はユキカゼにそう言うと、どこでもドアを取り出して、俺はパーパルディア皇国の皇都エストシラントへ、移動した。慌てた様子のユキカゼも俺の後を追ってきたので、一緒に行くことにする。

 

「アドミラル、何をするつもりですか?」

「さて、行こうか」

「あの此処は何処ですか?」

 

 ユキカゼの言葉を背に受け。俺は答える。

 

「皇帝ルディアスの家(宮殿)」

「……何をするつもりですか?」

「いや、傭兵団の団長なのにあまり目立ってないだろう? 移民してきてくれた子達にも団長らしくないって言われていたし。そろそろ、派手に暴れた方がいいかなって」

 

 もの凄く、嫌そうな表情をするユキカゼ。

 俺は宮殿の壁の近くへと歩いて近づき、

 

 

「それじゃあ、やろうか!」

 

 

 

 俺は右手に念を集中し。

 

 

 

 

「最初はグーッ!!! ジャンケンッ!!」 

 

 

 

 

 

 

 

 ――グーッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

壁の向こう側に人が居ないことを確認したうえで、パーパルディア皇国 皇都エストシラントの宮殿の壁を思いきりぶち抜いた。

 

 

 

 

△▼△▼

 

 

 

 ――ズゴンッ!! と言う突然の大きな破壊音に、皇帝ルディアスは驚愕した。

 

「な、何事だ!?」

「か、確認してまいります!」

 

 玉座の間で、謁見を行っている最中の出来事だった。

 次の謁見を求める者を呼び込もうとした直後に、断続的に破壊音が鳴り。

 そして、今も断続的に破壊音が近づいてきている。

 更に徐々に悲鳴も聞こえてきた。

 

 

「な、何だ! 何が起こっている!?」

「陛下、万が一に備えて避難を!!」

「避難だと!? 何に対して避難をしろと言うのだ!! そもそも、何が起こっている」

 

 

 護衛の近衛兵の言葉に怒りを露にする皇帝ルディアス。時間にして、一分ほど。ついに破壊音が近づいてきた。

 

「き、来た!」

 

 謁見に参加していた者達が悲鳴を上げた。

 一瞬の静寂の後。

 

――ビシリと皇帝ルディアスの右手側の壁がまるで蜘蛛の巣の様に放射状に大きなヒビが入る。

 

「な、何だっ!?」

 

 壁の近くに居た者達が一斉に避難する。それを見計らったかのように、分厚い石材の壁が木端微塵に吹き飛ばされ、もうもうと煙が立ち込める。

 

「陛下を避難させろ!」

「良い! なんだか分らんが、余が住む皇宮で騒ぎを起こしおって、思い知らせてくれるわっ!!」

 

 恐らく敵なのだろう。この時、皇帝ルディアスの頭の中は怒りで満たされていた。

 一体どこから、どのような者が皇宮へ乗り込んできた!?

 恐らく、敵は少数。壁を破壊できるほどの魔導師であろう。ここまで来るのに、相当魔力を消費したはずだ。十分返り討ちにできる。冷静に自分の中にある知識を手繰り寄せ考える皇帝ルディアス

 

 身を守る近衛も大勢控えている。列強のパーパルディア皇国の皇帝が、慌ててはいけない。

 寧ろ、この皇宮に侵入し余の所まで辿り着いたことを褒めてやらねばな。

 

 皇帝ルディアスは、余裕を持って壁を破壊した魔導師達を迎えるつもりだった。

 

――バン、バババン! バンッ! バンッ!

 

 皇帝ルディアスの考えは、乾いた破裂音と自分を守る為に壁の様に立ちふさがる。近衛兵達の頭から血が吹き出たことで、霧散した。

 

 

「……なん……、……だと…………」

 

 

 更に乾いた破裂音が鳴り響き、近くに居た近衛兵達は何が何だか分からぬうちに、全員呆気なくドサドサと倒れていく。

 

 

「ふぅ、やっと辿り着いた」

 

 

破壊された壁によって、立ち込めた煙が晴れる。

 そこに立っていたのはグレーの髪の色の十七、八歳の少年と。異国風の侍女の様な白い少女だった。少年はニコニコしながら、自己紹介をした。

 

 

「き、貴様は」

「ああ、自己紹介をしよう。俺の名前は暁古城。暁の傭兵団の団長だ」

 

 

「「「「「「「「な、なにイイイイイイィィィィッッ!!!!」」」」」」」」

 

 

 

 玉座の間に悲鳴が上がる。

 

 

 

「いやぁ、驚いたよ。まさか、アルタラス王国の国王を暗殺しに来るとは」

「――っ」

 

 

 

 皇帝ルディアスの表情が驚愕に変わる。古城の言葉で、暗殺が失敗したことを悟る。

 

 

 

「暁の傭兵団の団長。コジョウと言ったな」

「ああ、そうだ」

「栄光ある。パーパルディア皇国の皇都の皇宮で、このような騒ぎを起こしてタダで済むと思って――」

 

 

 

 ――パンッ! と乾いた音共に皇帝ルディアスの直ぐ右側にビシッという硬い物が壊れる音がする。

 皇帝ルディウスの背中に冷たい汗がぶわっと吹き出る。

 恐る恐る、皇帝ルディアスが右側を確認すると、玉座の右側に丸い小さな穴とヒビが入っていた。古城が持っていたデザートイーグル(拳銃)で、皇帝ルディアスの座っている玉座の背もたれに穴を開けた。

 

 

「まさか、国王暗殺をしようとしておいて。自分が暗殺されないと本気で考えていたのか?」

 

 

 突然、感情が消え失せたまるで人形の様な表情で、古城は皇帝ルディウスに告げた。その変わりように皇帝ルディアスは恐怖を感じ、猛烈に嫌な予感がした。

 

 

「ま、待て! 余はパーパルディア皇国の「そう言うのはどうでもいい」」

 

「な、ななっ!?!?!?」

 

 突然のことに軽いパニックになる皇帝ルディアス。

 皇帝ルディアスと古城の間にはそれなりの距離があった。

 お互いに大声で叫ぶ必要があるほどの距離だ。

 それが瞬きほどの時間で、古城がルディウスの目の前に移動していた。

 何が起こった?! 皇帝ルディアスは、理解不能の現状に叫びたくなった。

 

「お前の身分なんぞ、どうでもいい。それよりも、パーパルディア皇国の情報集めたんだが、最初の頃はともかく。後半は特に酷い。お前は人の痛みを知った方が良い」

「な、なにをするきさぁっ!?!?!?」

 

 突然、古城に胸倉を掴まれて持ちあげられる皇帝ルディウス。

 

「陛下! 御無事ですか!!!」

 

 そこに玉座の間に流れ込んで来た近衛兵達。

 

「安心しろ、皇帝ルディアス。お前は殺さない。だが、痛い目にはあってもらう」

「ぐうっ、は、はなっ」

「ああ、いいぜ。だがその前に防御力を上げてやろう。スカラ、スカラ、スカラ、スカラ。ついでにバイキルト」

「な、何おおおおおおおおおおおおおっっ!!!!!!」

 

 

「へ、陛下ああああああああああああああっっっっ!!!!!!!!」

 

 

 騒ぎを聞きつけて、慌てて駆けつけてきた近衛達が見たものは、グレーの髪の少年に胸倉を掴まれて、グルングルンとタオルの様に振り回され、

 

「日輪? の力を借りて、今、必殺の! ルディアス、アターーーーーーッッッッッッッッック!!!!!!」

 

 

 疾風のような速度で自分達へ飛んでくる皇帝ルディアスの姿だった。

 

 

 

△▼

 

 

 

 

「き、貴様卑怯だぞ!! 皇帝陛下を解放しろ」

 

「分かった! いけ、ルディアス(ファンネル風)」

 

 

「「「「「「ぎゃあああああああ」」」」」」

 

 

「今だ! お助けしろ!!」

「アポーツ!!」

「駄目です! 奴の魔法で、直ぐに奪われてしまいます!」

 

「今だあああああぁぉぁぁぁぁっっっ!!!!」

「やった! 後ろからの奇襲が成功です!!」

 

「甘い、ルディアス・バリアー!!!」

 

 

「「「「「「「ぎゃああああああああああああああああっっっ!!!!」」」」」」

 

「「「「「「「へ、陛下ああああああああああああああっっっ!!!!」」」」」」

 

 

パーパルディア皇国の皆さん、阿鼻叫喚。

 

 

「ふっ、安心しろ。峰打ちだ」

 

「真剣だよ!!! 思いっきり、真剣だよ!!! ふざけんなっ!!!!」

「あわわわわわわわわわわっっっ!!!!」

 

 

近衛隊長が叫び、切りつけた兵士が慌てふためく。

 

 

「大丈夫、大丈夫!! しっかりと防御力アップの魔法をかけているから、怪我はしない!! ……滅茶苦茶痛いけど」

 

「ヒイイイィィィィィッッ」

 

 

 ルディアスを斬りつけた騎士は顔色が土気色になっている。

 

 

「ルディアス、まあ、今のは不可抗力だから許してやれ」

「ぎ、ぎざ、まぁ……、ぜ、ぜったいに……」

 

 息絶え絶えになりながら、古城へ怒りを滲ませるルディアスに古城は微笑み。

 

そろそろ、「終わらせるかな?」と呟き、ルディアスを掴んだまま中腰になり、近衛兵士とパーパルディア皇国軍人が一番固まっている所に向き、力を放出する。

 

 

「ル~ディ~」

 

 

「や、止めろ! 貴様、陛下に今度は何をするつもりだ!!!」

 

 

「ア~ス~」

 

 

 近衛と集まったパーパルディア皇国軍兵士が、古城が何かをする前に慌てて、全力で阻止する為に古城のもとへと走り出した。

 

 

「波ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!!」

 

 

気と共に砲弾として、兵士達へ放出されるルディアス。

 

 

 最後は精神コマンド【てかげん】を使ったかめはめ波を御見舞した。

 

 

「じゃあ、今日はもう帰るが……、二度と暗殺なんか考えるなよ! 分かったか?!」

 

 

 古城は、瀕死の重傷になったルディアスと死傷者多数の近衛とパーパルディア皇国軍人達へ、そう吐き捨てて、家に帰った。

 

 

 ついでに、ユキカゼが騒ぎに乗じて皇宮の壊してはいけない柱などに爆弾をしかけ爆破。結果、パーパルディア皇国が誇る、皇宮は半壊した。

 

 

 

 

△▼△▼△

 

 

 

――数日後

 

 

 

 アルタラス王国 王都 ル・ブリアス 玉座の間

 

 

「古城殿」

「はい」

「貴殿は一体何をしたんだね?」

 

 ターラ国王14世は、困惑しながら古城を呼びだして問いかけた。

 

「え?」

「実はな、パーパルディア皇国から、我が国と暁の傭兵団に対して、殲滅宣言がなされた」

「殲滅宣言?」

「ああ、いきなりで、こちらも、よくは分からないのだが、陛下に対する無礼千万、許すまじ! と使者が来てな」

「はぁ……」

「で、何をしたんだ?」

「いえ、大したことはしてませんよ?」

「ほぉ」

 

 古城の言葉に、ターラ14世は流石にアルタラス王国とパーパルディア皇国とでは距離がある。古城が無礼なことを出来る距離と時間では無い。と納得しかけ、

 

 

「移動魔法を使って、パーパルディアの皇宮に殴りこみをかけて、ルディアスを武器兼盾にして、近衛とパーパル皇国軍人を殴り倒しただけですよ」

 

 

 

「「「「「「「「「「…………………………」」」」」」」」」」

 

 

 

 古城の言葉に、謁見の間に居た全ての人間の時が止まった。

 

 その後、謁見の間は、ユキカゼの記録映像を見て驚愕と爆笑に包まれた。

 

 この時、パーパルディア皇国の実権を、結果的に握ってしまったのは、一人の皇族の女性だった。

 

 




パーパルディア皇国との戦争が本格的始まります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

パーパルディア皇国との戦争前夜① レミールさん

お久し振りです。

更新が止まっていた理由ですが、買ったばかりの原作本が入ったリュックを電車に忘れ、その後リュックが見つからず、買い直すのに迷っていたことと。


レミールさんの処遇です。

なんというか、ざまぁ! させないと駄目な気がして、頭抱えてました(^_^;)

ただ、この作品だとレミールさん酷い目に逢わせられないのです。虐殺起こしてないので。

ヒステリックを起こしても、その瞬間に古城に黙らせられるので……

なので、閣下や処刑などを期待している方はご免なさい。




パーパルディア皇国が誇る荘厳な世界に誇れる宮殿は、爆破され半壊した。

 

それを実行したのは暁の傭兵団の団長と部下一名。この二人に多くの兵士が返り討ちに合い。皇帝ルディアスが玩具のように振り回され重症を負った事実は、即座にパーパルディア皇国と支配している属領へ広まった。

 

まあ、古城が大規模にビラをばら蒔いたせいもあるのだが、その結果。

 

各地で動揺が広まっている。一部の地域では反乱寸前だった。

 

だが、反乱は起らない。まだ、パーパルディア皇国軍の戦力は残っているからだ。もし、それが無くなった時、恐ろしいことになるだろう。

 

現在、そういった事情もあって、パーパルディア皇国に滞在している外国人は慌てて脱出し始めている。

 

原因は前から古城達ががばら蒔いたビラだ。そのビラには鉄の巨人。ザクの写真も掲載されており、この兵器をもってパーパルディア皇国を滅ぼすと書かれていた。

 

最初は「馬鹿な」とザクを作り物だと一蹴していたが、宮殿の爆破とムー国人が全力で逃げ出していること、逃げ出すムー国人(に変装したホムンクルス)から「ザクは実在している」と言う話を聞いて慌てて逃げ出した。

 

とは言え、この時点では逃げている大半の外国は、半信半疑だった。

 

確かに宮殿を半壊させたが、皇帝ルディアスを殺さなかったことから、襲撃者側の暁の傭兵団は辛うじて逃げ出したのではないか? と考える者も多かった。

 

まさか、皇帝ルディアスを振り回して、兵士に投げつけ、なんか飽きたから悠々と家に帰ったとは誰も思わなかった。

 

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

ーー皇帝ルディアスの離宮 ルディアスの寝室

 

 

ーーうーんっ、うーーんんっっ

 

 

皇帝ルディアスは、皇帝ルディアス武器兼盾にされた後、医師達の懸命な治療のお陰で一命を取り留めた。

 

全身を部位ごとに包帯でぐるぐる薪にされて、意識がまだ戻っていない。

 

そして、パーパルディア皇国の不幸は始まった。

 

「お、おいたわしや、陛下……」

 

皇帝ルディアスは古城への怒りのあまり、意識を失う瞬間に「奴らを皆殺しにしろっ!!」と叫んだことだろう。

 

そして、古城の襲撃時、かなり早い段階でレミールという名の皇族の女性は移動中に、古城の壁壊しの余波に巻き込まれて気絶。

 

目を覚まして近くで控えていた者達らと状況を把握、皇帝ルディアスの元へかけつけたのが、古城が皇帝ルディアスをかめはめ波っぽく打ち出した後。

 

ボロボロになったルディアスを目撃することになった。

 

皇帝ルディアスが気を失う最後の叫びを聞いた彼女は怒り狂った。

 

そして、皇帝ルディアスの叫びもあり、即座に殲滅宣言をアルタラス王国と暁の傭兵団に通達させた。

 

パーパルディア皇国はここでも、不幸が重なった。

 

古城が暴れた余波と宮殿爆破の影響で、国を動かす官僚達にも被害が出たことだ。

 

古城とユキカゼの避難の呼び掛け(パーパルディア皇国兵士も行っていた)のお陰である程度、被害は減ったが。

 

運がない者は、流れ弾(皇帝ルディアス)や瓦礫の下敷きとなった。

 

 

その結果、皇帝ルディアスが明確に殲滅宣言を出す許可を出していないのにも関わらず、レミールを諫め、止められる者が少なくなり、殲滅宣言を出すことになってしまった。

 

 

「か、必ずや陛下に無礼を働いた者達を皆殺しに!!」

「綺麗な顔して、随分怖いこと言うな」

 

心に強い決意を宿したレミールの背後から何処かで聞いたような、声が聞こえたが。

 

侍女達に誰も部屋に入れるな。と告げたのに勝手に入るとは。レミールは一気に不機嫌になりながら、後ろを振り振り返ると、

 

「誰だ?! 部屋には誰も入るなと言ってーーっ?!」

「こんちゃっ!」

 

「キャアアアアアアアアアアァァッッ!!!」

 

憎き暁古城が黒いスーツ姿で立っていた。

 

「き、ききき、貴様!? どうやってここに!?」

「え? 普通に正面から、気配を消しながら、見張りとかを眠らせて、誰にも見つからないようにして、ここまで来たけど?」

「それは普通とは言わん!! 衛兵! 衛兵!!」

 

レミールは即座に叫んだ。皇帝ルディアスを守りきれなかった近衛や衛兵達ではあったが、皇帝ルディアスが意識不明で、処罰は保留となっている。

 

処分保留の理由は、古城の襲撃で多数の死亡&再起不能者が出たからだ。

 

処分を叫んだレミール達に「あんな化け物との戦いは想定していない」「今、ここで衛兵の数が減ってしまえば、只でさえ替えの効かない警備の任務に支障が出る」などの発言力のある者達の意見ありレミール達は渋々頷いた。

 

「あ、衛兵なら全員寝てるぞ」

「な、なぬぃっ!?」

「後ろから、口に眠り魚(生)を捩じ込んだから! 今頃グッスリ寝てるぞ」

 

古城の言葉にレミールは魚? と困惑しながらも驚き、彼女は反射的に叫んだ。

 

「き、ききき、貴様の、貴様の目的はなんだ!?」

 

彼女の言葉に、古城はにこやかに言った。

 

「はい、これアルタラス王国からの宣戦布告文ね。それと暁の傭兵団からも、お前等の売られたケンカを買ってやるぞ。って言いに来たんだよ」

「なん……だと……」

 

古城の言葉に固まるレミール。

 

では、目の前の男は宣戦布告文を届けるためだけに……死ぬかもしれないことをしでかしたのか?

 

「は、ははは!! 正気か?! わ、わざわざ、その為だけに、ここまで侵入してきたのか?!」

「うん!」

 

笑みを浮かべる古城にレミールは恐怖が涌き出る。

 

コレはなんだ? 列強パーパルディア皇国から殲滅宣言をされたにも関わらず、何故こんなにも平然としていられる?

 

「あ、それとこっちもダラダラ戦争を長引かせるつもりはないからね?」

「は?」

「というか、パーパルディア皇国全土を制圧するのは面倒だから、サクッと主力を倒して、終わらせるからね」

「……っ、ーーな、何を馬鹿なことを!? 出来るわけがない!!」

 

列強のパーパルディア皇国軍をサクッと倒すと宣言されて、激昂するレミールに古城はあっけらかんと答えた。

 

「出来るよ? だって、皇帝はまだ生きてるじゃん」

「どういう意味だ……?」

「俺達が正面からパーパルディア皇国と戦って負けるなら、先日の襲撃でパーパルディア皇国の皇帝以下、主要メンバーを可能な限り殺していたぞ? けど、俺は皇帝を半殺しにしたあとは、宮殿爆破して半壊にしただけだ」

 

 

古城はだけ。と言うが世間的に、周辺諸国に恐れられている国の宮殿に、二人で乗り込んで大暴れしたあと、宮殿を爆破して半壊させるのはとんでもないことしでかしているが、古城はチート能力に慣れているので、感覚が麻痺している。

 

「もし、正面から戦って負けるなら、あの時点で宮殿内は血の海になっていたぞ?」

「……っ」

 

古城の言葉に凍りつくレミール。確かにそのとおりだ。目の前の男なら可能だった筈だ。

 

「じゃあ、数日中には攻撃するから、覚悟しててね」

 

ニッコリと笑い、部屋を出ていく古城。

 

レミールは古城の気配が遠退くまで動けず、気配がなくなると、その場に経垂れ込んでしまった。

 

それから異常に気付いた兵士達が駆け付け、事態を納めたが、古城の侵入による死者と怪我人は0。

 

だが、二度も警備をすり抜けて古城の進入を防げなかったことで、警備兵と近衛騎士の信頼はマイナスになり。

 

動けるレミール以下、国の上層部は自分達が敵に回した暁の傭兵団への対応策を必死で考えるのだった。

 

 

 

 




レミールさんは、別な形で酷い目に逢わせることにします。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

パーパルディア皇国との戦争前夜② 雑談1

「以上が現時点で分かっているラヴァーナル帝国伝説です」

 

暁の傭兵団の定例会議。

 

だが、既にパーパルディア皇国との戦争についての話し合いと細かい調整は終わっているので、今回は現時点で重要度の低い話が中心だった。

 

「やっぱり、コア魔法ってのは核兵器系だと?」

「はい、その可能性が高いです。ですので、御主人様が前に提案していた迎撃ユニットの配備をお願いします」

 

司会進行役のロイヤル所属のベルファストの言葉に、古城は溜め息をついた。

 

 

ちなみに参加者は少ない。

 

団長の古城。艦娘から代表の長門。重桜からは天城(戦艦)。ユニオンはヨークタウン。ロイヤルからはイラストリアスとベルファスト。鉄血からはZ23。霧の艦隊からはキリシマ。DOLLS達はじゃんけんで負けた零戦が参加。後は妖精さん。饅頭。ホムンクルスもいる。

 

暁の大陸に移住してきた住人達の代表各地域のまとめ役も参加させるつもりだったが、参加予定者達の知識不足で断念している。

 

ベルファストの言葉に、古城だけではなくほぼ全員が苦い表情になる。

 

古城のチート能力で、対ラヴァーナル帝国。通称魔帝への備えで、既に強力な兵器やアイテムを取り出しているが、ベルファストの言う迎撃ユニットは比較的低コストで沢山取り出せるのだが、見た目がアレで。始めてみた者達は阿鼻叫喚になった。特に駆逐艦の娘達の一部は号泣するほどだった。

 

「ロイヤルなのに良くアレを使う気になったな」

「そうですね。予想外です」

 

キリシマとZ23の言葉に答えたのはイラストリアスだった。

 

「現在、我々暁の傭兵団は人員不足です。そのことからも、アレを暁の大陸中央に配備することは、防衛面でも良い陛下は判断しました」

 

イラストリアスの言葉に全員がうなづく。

 

妖精さん、饅頭、ホムンクルス(アトリエ)。さらに歩兵として、チートなDOLLS達。

 

正直、現在この世界の兵器の性能を考えると、ある程度はそこまで強い兵器は必要ない。

 

だが、魔帝は未知の敵。なにより、空間と時間を越えて来る可能性がある。

 

故に最大限の警戒は必要だ。ということで、

 

「機動兵器は問題ないと思われますが、通常兵器を充実させた方がよろしいかと」

「アレを通常兵器と呼ぶには少し無理があるのでは?」

「うむ、私もアレをはじめて見た時は思わず全力砲撃をしそうになったからな」

「余も駆逐艦の娘達が泣いておるから何事かと思ったぞ」

 

ヨークタウン、長門(艦)長門(アズレン)がはじめてアレを見た時のことを思い出して微妙な表情をする。

 

「ま、研究開発や大型艦に人員を取られているし、本当の切り札を移住してきた団員に見せるわけにはいかないからな」

 

ザクなどのMSやレプリカ機動兵器のパイロットや整備、後方支援なら移住組にやらせても問題ない。

 

仮に反乱起こされてもどうにでもできる。

 

だが、本当の切り札。エクセリオンやスーパーロボット系はホムンクルスで固める必要がある。

 

「はぁ、アレだけじゃなく。ほぼ全種を取り出して防衛に回そう。場合によっては、攻勢にも使えるしな」

「指揮官よ、アレ達はあまり、人目に触れないようにせねばならぬぞ」

「分かってる。大陸ほぼ中央部のまだ開拓されていない場所に。それとまあ、見馴れればアレもアレで愛嬌があるから、皆も早めに慣れてくれよ」

 

意思はなくても、生きているものなんだから。と言うと全員が嫌そうな顔をした。

 

うん、今はまだ無理そうだな。

 

 

▲▽▲▽▲

 

 

「あー、暁の研究開発部から、アドミラルに報告がある」

 

ベルファストの提案が終わり、キリシマが手を上げてそう言った。

 

「なんだ?」

「まあ、今回使う兵器はパーパルディア皇国の戦いには間に合わなかったから、少しの改修などに留めて、報告を今にしたわけだが」

「うん」

 

なんだ? 何があった? と思っていると。

 

 

「ーーガウ攻撃空母とファットアンクルとドダイYS作った奴出てこい!!」

 

ーーバンッ! とつくえを叩くキリシマに驚く俺。

 

「って、蒔絵がキレてたぞ」

「あー、うん。何となく理由は分かるけど。何で?」

「ここに、蒔絵が書きなぐった意見書があるけど」

「うん、見せてくれないか」

 

コピーされた蒔絵の意見書(と言う名の愚痴)を皆に回して少し読んでみると皆もうわって顔をした。

 

まあ、専門的な部分は割愛。とりあえず、兵器としての目立つ問題点は……。

 

「まあ、航空力学ガン無視のデザインだしな」

「提督……この、ガウ攻撃空母はなんで、前面部に開口ハッチがついているんだ?」

「亀みたいじゃの……」

「MSを乗せられるのは良いですが、速度も遅く脆弱な装甲。制空権が取れていないとMSが降下したあと全滅するのでは?」

 

ガウ攻撃空母は、力業で空を飛び。MSを降下する時は低空でかなり速度を落としてMSを降下させる。

 

パーパルディア皇国なら問題ないだろうが、ムー国辺りの対空兵器なら、素(改修していない)のガウなら撃墜される可能性がある。

 

ファットアンクルとドダイも蒔絵は、「設計者を出せ」と怒ったとか。

 

 

「とんでも兵器ですわね」

「ええ、よくこれで戦いましたね」

 

イラストリアスは心底驚き、ベルファストが呆れている。

 

「ちなみに、この三種類はザク作った国の兵器だからな」

 

俺の言葉に、それを知っていたキリシマ以外は全員驚いていた。

 

少なくても彼女達から見ても、ザクは良い機体として認識されていたのだった。

 

 

 

 

※雑談2へ




暫く、前夜話が続きます。

雑談2へ。



それと誤字指摘ありがとうございます( ノ;_ _)ノ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

パーパルディア皇国との戦争前夜② 雑談2

「で、やはり。今回の戦い以降は、ガウなどは改修して生産するか、まったく別の物を作るしかないか」

「そもそも、リオンやガーリオンも解析しているのだから、MSとドダイは不要じゃないか? 後、ガウもペガサス級…ファットアンクルはミデア輸送機の方が使いやすい気がするぞ」

 

まあ、ガウとペガサスを考えるとコスト面でガウの方が良いけどね。でも、輸送だけを見るとガウよりミデア何だよね。MSを降下させることを考えるとミデアかな。今のところ陸戦型ガンダムと陸戦型ジムなどの連邦製MSにしか降下装備は装備出来ないけど、半年もあればハードとソフト両方でザクでもミデアから新しい降下装備で、降下作戦は可能だ。

 

「色々作らせたりしているのは、半分は下積みみたいなところがあったかな」

 

下積み? とキリシマは首を傾げる。

 

「うん、今のまま強い兵器、例えばZガンダムとかを取り出しても、ホムンクルス達は整備できない。だから自力生産させるために色々やらせているんだ。自力生産と自力整備できないとやはり困るだろ」

「ま、確かにな。使ったけど壊れて直せない、では話にならないしな」

 

俺の言葉にキリシマは納得する。

ラヴァーナル、もとい魔帝の現時点での戦力が推定でしかなく。

 

どこぞのスーパーなロボット達が、どったんばったん大騒ぎするようなゲームのラスボスみたいに、トンデモ巨大兵器が出てきた場合、最終的には俺は勝てるかもしれないが、この世界がどうなるかわからない。

 

だから俺以外の戦力もアップさせるために、技術の蓄積を行っている最中だ。

 

チート能力で取り出したガンバスターなどの主人公機は、俺では本来の性能を引き出せない。

機は、俺では本来の性能を引き出せない。

 

努力と根性、その他諸々が足りないみたいだ。

 

ちなみに、マジンガー系はZEROが怖いので、取り出していない。

 

ゲッターもゲッターロボを出したら、宇宙からゲッター線が降ってきてそうで怖い。

 

というか、マジンガーとかゲッターのレプリカ作ったが怖くなって封印したけど、かなり不安だ。

 

それにファフナーを取り出したのも失敗だったかもしれない。

 

この世界にいるかわからないが、宇宙からミールが襲来したら目も当てられない。

 

なので、現在傭兵団の兵器は比較的安全そうなリアル系ロボットが中心だ。

 

スパロボOG系と機動戦士ガンダム系。警備用にパトレイバー。

 

「最近はドムの製造と整備がだいぶ形になりはじめた。このままいけば、ゲルググもそのうち生産出来るだろう」

 

チート能力のお陰だな。ホムンクルスがかなり有能だ。

 

それと宇宙に人工衛星を打ち上げ、更に小規模でも宇宙ステーションを作ろうとしたところで、無限航路というゲームを遊んだことを思いだし、現在そのゲームに出てくるモジュールを使って、小規模だが宇宙艦隊を編成。

 

魔帝への宇宙からの偵察と攻撃の準備を始めている。

ありがたいことに、コストは高いのだが、無限航路の宇宙戦闘艦は小さいモノでも単独で大気圏離脱と大気圏突入能力がある。更に種類によっては陸戦隊を降下させるコムサイみたいなものもある。

 

ま、陸戦隊を降下させるなら、素直にペガサス級やそのまま無限航路の戦闘艦を降下させたほうが良いけど。

 

最初はガンダムに登場したHLVを安いから使おうと思ったのだが、大気圏突入と離脱どちらでもその後がかなり無防備なので、少数を試しに使ってみるだけにする。

 

「ホムンクルスの生産、教育と訓練生。インフラ整備。各産業の発展的。やることが終わらないなぁ」

「ま、仕方がないな。こればかりは」

 

諦めろとキリシマの言葉に俺は溜め息をつく。ま、俺は判子押すだけだから、まだマシだろう。

たまにチート能力の各兵器知識などでホムンクルスや移住団員の指導をするくらいだし。

 

「それと、蒔絵がな」

「ん?」

「バルキリー部隊が使う装備の反応弾の量産数はどうするかって、聞いていたぞ」

 

俺はその言葉を聞いて、罪悪感が思い切り涌き出てきた。

 

まあ、蒔絵なら精神的にそういうのが必要だと分かるから、聞いてきたのだろうけど。

 

「兵器作らせておいて、今更かもしれないが、反応弾は俺とホムンクルスでやるから」

「蒔絵、怒ると思うぞ」

「流石に反応弾は、通常兵器とは違うからな」

 

反応弾なぁ。

強いけど、使いどころが。ああ、そうだ。弾道ミサイルの研究は必要だよな。

 

魔帝も持っていそうだしな。

 

「後、他に何かあるか?」

「んー、ああ、そうだ。頼まれていたモビルドールシステム。それとフラッシュシステム解析だけどな。モビルドールは何とかなりそうだけど、フラッシュシステムは駄目だったぞ。と言うか、ニュータイプ? ってのが居ないから実験しようがないって」

「そうか、予想通りか」

 

どちらもガンダムのゲームジージェネレーションから、取り出した強化パーツみたいなモノだ。

 

人手が足りない。ギレンの野望を遊んでいた影響で、ザクなどMSに関してはオートでも動くが、模擬戦闘で分かったが、あまりにもオートだと動きが機械的すぎるので、今後のために優秀な無人で動くMSがほしいので蒔絵達に頼んでいた。

 

蒔絵、ハルナ、キリシマには本当に頭が上がらない。

 

今度差し入れ待っていこう。

 

 

「ま、こっちは以上かな」

「分かった、じゃあ次は」

「この長門(艦これ)の番だな」

「ああ、頼むな」

 

長門の案件と言うと確か。

 

「先日、ロデニウス大陸のクワ・トイネ公国、クイラ王国、ローリア王国の三ヶ国の対魔帝協定が無事に結ばれた」

「そうか、これで面倒が減るな」

 

この協定は対魔帝を想定したもので、簡単には言うと魔帝が現れる可能性があるので、三ヶ国は魔帝から世界を守るために一致団結する。

 

その為に、技術交換を行いながら、発展していきましょう。と言うもの。

 

まあ、実のところ。対魔帝も理由の一つだけど、単純に三ヶ国が弱すぎるから、強くするために三ヶ国にお願いしたのだ。

 

『三ヶ国にそれぞれ教官と技術指導員を送るには数が足りない。なので、三ヶ国を一つに纏めて色々教えよう』

 

と言うのが本音。

 

ま、金がなくて。三ヶ国それぞれが、傭兵団から兵器を購入するのが難しく、かといって運が悪ければ早い段階で魔帝が復活する可能性がある。

 

もちろん、取り越し苦労の可能性もあるが。パーパルディア皇国のような国家もあるので、強くなってくれた方がこちらにとっては都合が良い。

 

「外交面で遅れをとっていたローリア王国は特にやる気だな。こちらの人種差別より団結を! という言葉に気持ち悪いくらい頷いていたよ。まあ、その上層部は元々亜人差別をしていない人ではあるが」

「三ヶ国で金を出しあって、二次大戦の駆逐艦や戦闘機のノウハウが手に入る。他にも多くの技術が手に入るんだ。やる気は十分だろう」

「まあ、我々が本気で魔帝への対策を始めたのも大きいがな」

「そうなのか?」

「ああ、特に三ヶ国に住むエルフには、即座に伝わったぞ。あれだけの強さを誇った暁の傭兵団が、三ヶ国に対魔帝戦の為に、協定を結ぶよう働きかけているとな」

 

どちらにしても、真剣に受け取ってもらえるなら助かるな。

 

来ないかもしれないが、準備は必要だ。

 

「というわけで、対魔帝戦闘協定は結ばれたぞ」

「分かったが、教材用の駆逐艦や戦闘機は」

「もう既に準備を終えておるぞ指揮官」

 

長門(アズレン)の言葉に礼を言う。

 

「じゃあ、大体終わったかな?」

「そうですね。それでは」

 

ヨークタウンが言いかけたときだった。

 

廊下から誰か走ってくる音が聞こえた。

 

バンっと激しくドアを開け放ったのは、大和(艦これ)だ。大和に少し遅れてハルナも続いて部屋に入ってきた。

 

「大変です! グラメウス大陸にて魔王ノスグーラが復活! 現在修学旅行組が城塞都市トルメスにて、自衛戦闘を開始しました! 」

 

「至急、人を集めろ!! 集まり次第修学旅行組を救助に向かう!!」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

 

 

 

「ところで、指揮官よ」

「何だ?」

 

 

基地の廊下を足早に移動していると、長門(アズレン)が声をかけてきた。

 

「修学旅行組の主なメンバーは誰か分かるか?」

「確か交流目的でクジで決めて、最初の組だと教えてくれたのは、吹雪(艦これ)や時雨 (アズレン)、それと幼稚園組の陸月、如月、卯月とか。確か十五人? くらいだよな」

「引率は?」

「 プリンツ・オイゲンと蒼龍(艦これ)と飛龍(アズレン)」

「それとホーネット様と勝手に着いていったアーク・ロイヤル様ですね」

 

いつの間にか後ろにいたベルファストの言葉に、アイツまた仕事をサボったのかと心の中で呟く。

 

「歩く駆逐艦が十五人とズイカク。他にも引率もおる、直ぐにどうこうなるわけではない。ズイカクとの連絡を密にして、焦らずしっかりと準備をした方が良いぞ」

 

「……分かった」

 

俺は深呼吸をして、気をとりなして問題解決するために、歩き出した。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。