デビル・オブ・アベンジャーズ (minmin)
しおりを挟む

ストロベリー・サンデー

そういやこういうの見たことないなあ、と思って勢いで書いちゃいました。笑


 

 ――チタウリは外宇宙のヒューマノイド型種族……まあわかりやすく言うと遠い所からやって来たサイボーグだ。動力源の炉心を移植した上に、クスリで身体を強化して、その上神経に電気まで通してるらしい。武器はビームの出る銃だの爆弾だの。灰色っぽい見た目の割には意外とハイテクな奴ら。

 

 1人1人はそう対して強くない。殴っても蹴ってもいいし、鉛玉を撃ちこんでやってもいい。鍛えた兵士なら、超人じゃなくても倒せるだろうさ。だが、こいつらの厄介の所はその数と戦術にある。集合意識を共有し、いくら仲間がやられようが目的を達成するまで只管攻撃を繰り返してくる。サイボーグっつーよりは、ロボットか昆虫みたいだよな。つまり対策も昆虫と同じ、巣(母艦)から潰すのが一番だ。あのいかしたタヌキの解説を聞いてたアンタたちなら、当然知ってるよな?

 

 

 ニューヨークのオープンテラス席に座るその男は明らかに周囲から浮いていた。特に犯罪を犯しているわけでも、公序良俗に反しているわけでもない。男は只々真っ当に営業している人気のカフェに入店し、料金を払い、注文した品を受け取って満面の笑みでそれを食べているだけだ。

 

 男の見目は悪くない。というより寧ろ美男子と手放しで称賛していいだろう。陽光に煌めく銀髪は風にさらさらと流れ、涼し気な目元。羽織る真っ赤なコートはそれに野性味を加え、並の女なら魅了されること間違いなし――なのだが。如何せん、そんな男の風貌と、彼が口に運んでいるストロベリー・サンデーがマッチしていなかった。

 

 ワイルドな美男子が、昼下がりに笑顔でストロベリー・サンデーを頬張る。人によっては可愛いとも受け取れるのかもしれないが、周囲のニューヨーカーたちはお気に召さなかったようだ。通りを行く人の誰もが男に一瞬目を奪われ、そして苦笑いしながら去っていく。最も、当の男は周囲の反応などまるで気にしてはいないようだが。味には満足しているようで、鼻歌を歌いながら次の一匙を口に運ぶべく持ち上げたところで。

 

 

 ――ストロベリー・サンデーが、テーブルごと吹き飛ばされた。

 

 

 直後に閃光、轟音。空からの砲撃に、次々と襲来する灰色の何か。逃げ惑う人々は、我先にと店舗やビルの中に駆け込んでいく。そんな中、男と同じくテラス席にいた女が1人逃げ遅れていた。恐怖に固まったのか、それともどこか怪我をしたのか。迫りくる灰色に、震えたまま地面に座り込んで動けないでいる。そんな女に向けて、灰色は躊躇なく銃らしき何かを構え。同時に、横っ面に弾丸を受けて吹き飛んだ。

 

 

「女には優しくしろってママに教わらなかったのか?」

 

 

 元はコルト・ガバメントなのだろうか。懐から取り出した、極度に大型に改造された黒い拳銃から煙を立ち昇らせながら口を開く男。

 

 

「ついでだ、もう2つ教えてやる」

 

 

 振り向きざまにもう片方の手でグレーの銃を取り出し連射。凡そ常識を超えた速度の連射で、背後に迫っていた灰色たちが吹き飛ばされていく。

 

 

「食事は静かに取りましょうと――食い物の恨みは恐ろしい、ってなぁ!」

 

 

 

 

 

 ……クリント・バートンは忙しい。

 

 

「なんだかブダペストを思い出すわね」

 

 

「俺と君とじゃ、違う思い出だけどな!」

 

 

 隣で戦うナターシャの軽口に答えつつも手は止めない。いや、止められない。敵の強さはそこそこだ。先程別れたキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースのような超人でなくとも、なんとか戦える。持ちこたえられる。ただ、余裕がないのも事実だ。自分たちだけならばどうとでもなるが、バスやビルに閉じ込められた人たちを救助しながらとなると手が足りない。

 

 

「(スタークやソーのような火力役がいれば多少は違うんだが……)」

 

 

 思考しつつも動き続ける。キャプテンに望むところだと言ってしまった以上、ここで押されるわけにはいかないのだ。それに、ロキを1発ぶん殴ってやらないと気がすまない。

 背後に気配。振り返らないままに弓を放とうとして、正面から飛んできた弾丸に吹き飛ばされて気配が消えた。撃ったのは――空中から大げさにアクションしながら飛び降りてきた、赤いコートの男だった。

 

 

「よおロビン・フッド。いつからニューヨークはエイリアンの巣になったんだ?アンタ何か知ってる?」

 

 

 やたらとゴツい2丁拳銃を、やたらと早く連射しながら軽口を叩く銀髪の男。取り敢えず、敵ではなさそうだ。ナターシャは……何故かやたらと警戒しているようだが。

 

 

「ついさっきさ。避難するなら今のうちだぜ」

 

 

「そいつはごめんだ。ストロベリー・サンデーの恨みは恐ろしいって奴らにわからせてやらないとな。それに、デートなら俺も混ぜてくれよ。美女の1人占めはよくないだろ?」

 

 

 ストロベリー・サンデー?

 

 

「生憎と女房も子どももいるんでね。同意はできないな」

 

 

「おいおいマジかよ……アンタ、名前は?」

 

 

「クリント・バートン。そういうアンタは?」

 

 

「……トニー。トニー・レッドグレイブだ」

 

 

 

 




需要はある……のか?気が向いたら更新します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。