まどか☆マギカ交差伝 宇宙一馬鹿な侍 (二道 無限)
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プロローグ
プロローグ01 坂田銀時


 
 まどかマギカの映画『新編 叛逆の物語』を見たときに怒りの似た憤りを感じたときにエレファント投稿サイトでまどマギと銀魂のコラボを読んだときに心の憤りが消えた感覚が生まれたので、僕の独自解釈交じりの小説です。

 つたない投稿ですが長い目でよろしくお願いします。


 侍の国......かつて、 そう呼ばれていたのは、今は昔の話。

 

 かつて侍たちが仰ぎ夢をはせた青い空には異郷の船が飛び交い、 肩で風を切り歩いた街には異人がふんぞり返り歩く。

 

 それが今の侍の世界......侍の国‘‘江戸(えど)‘‘である。

 

 侍たちが剣も誇りも失った世界の中で、己の侍魂を堅持し生き続け、己の武士道を貫く男が一人......その男の名は‘‘坂田銀時(さかたぎんとき)‘‘

 

 

 

 

 

 

                    ※※※

 

 

    かぶき町

 

 

 

 周辺のビルや民家が立ち並ぶ繁華街。ターミナルと呼ばれる銀色の機械の塔は異郷の船が行き来する重要な宇宙基地であり、江戸の象徴である。

 その町並みの中で二階建ての建物の一つ、一階にはスナック『お登勢』、 その二階には小さな何でも屋が部屋を借りている。

 その会社の名は万に事と書き‘‘よろず‘‘と読み、 会社の社長の名の一文字が書かれていた。

 

 

 万事屋(よろずや)(ぎん)ちゃん』と。

 

 

  その事務所に三人の人影が、机を中心にソファとデスクに腰を掛けていた。 

 デスクから左側のソファには、メガネをかけた少年が、右側にはチャイナ服の少女が座っていた。

 少年の名は志村新八(しむらしんぱち)。万事屋のアシスタントにしてツッコミ担当(ブレーキ役)、剣術道場の跡取りである。

 少女の名は神楽(かぐら)。 万事屋のバイトにして毒舌家、外見は人間と同じだが、異星出身の戦闘民族の一人である。

 そして、デスクに座っている白髪の天然パーマの男が万事屋の中心人物ーー坂田銀時である。

 

 

 三人がテーブルを囲みながら見ていたのはDVD-boxだった。

 

 

「魔法少女まどか......マギカ? 何これ、読みにくいんだけど」

 

 

 銀時はDVD-boxの題名を読みあげて少し難しそうな顔して新八のほうを見た。

 

 

「これ、タカチンからまた預かるよう頼まれたんです。 前にも話しましたけどタカチンの家こういうのに厳しいから、隠す所が見つかるまで預かってほしいって」

 

 

 新八も困った顔をしていた。

 

 

 タカチンとは新八の幼馴染である事件で疎遠になっていたが数年後に再会。紆余曲折の末に和解した。

 現在は新八が結成したアイドルファンクラブの一員になっている。

 タカチン(幼馴染)の預かりものの話をした時、神楽は口を開いた。

 

 

「お通ちゃん以外のものを認めるなんて変わったアルな、ラブチョリスに一時期ハマって丸くなるもんだな」

 

 

 ラブチョリスとは江戸ではやっていたギャルゲーのひとつで、新八は仮想と現実がつかないくらいドハマりしていた時期があったのだ。

 その時期の話を持ち出された新八はうろたえていた。

 

 

「ち、 違うから! これは寺門通親衛隊隊長として預かっているだけだから!」

 

 

 寺門通とはこの江戸(世界)の人気沸騰中のアイドルで、今もなお愛されている。

 寺門通親衛隊(ファンクラブ)の掟は厳しく、 破る者は鼻フックの刑シリーズのひとつが待っている。

 掟のひとつに「決してお通ちゃん以外のものを信奉するなかれ」が存在するのだが、新八が体験していることに起因して多少なりとも軟化している様子が見られている。

 

 

 それに、と新八は付け加えて。

 

 

「幼馴染の頼みは流石に断りずらいし、タカチンは親衛隊の掟をちゃんと守ってるし、無視するわけにはいかないから預かったんです」

 

 

 銀時はわーった、わーったと軽く言いながらうなずき。

 

 

「隠すためにここに持ってきたってわけだろ、 でもだからってここに持ってくることはねぇんじゃねーの?」

 

 

 その時新八は怒り交じりの大きな声で、

 

 

「前に預かった時、部屋を滅茶苦茶にしただけじゃなくことを大きくしたのはあんただろーが!」 

 

 

 と新八はツッコんだ。

 そう、前にタカチンの預かり物を隠そうとして、銀時が預かり物に合わせようと新八の部屋を、いやらしいリフォームをしたため新八の姉にこってりと叱られたのだった。

 

 

 すると神楽は、別の話を持ち出した。

 

 

「新八このタイトルの真ん中の星何アルか? つのだひろのパクリアルか?」 

「パクリやったの僕らだから! ファンクラブ会員決定戦でやったから!! というか、それ今と関係ねーだろーが!!」

 

 

 などと騒がしい日々が常に始まっている。

 これが彼ら、万事屋の日常である。

 

 

 

 

                      ※※※

 

 

 

 

 

    深夜 万事屋

 

 

「あァー、疲れた~今日の仕事、なんなんだよたくよォ」

 

 銀時は眠たそうな顔で、今回の仕事ーー大工の手伝いで大きなトラブル(神楽が力加減を間違えて木材を壊したり、銀時が依頼人を怒らせたりなど)があったものの仕事はこなしていた、 

 文句を言いながら寝支度をしていた。

 いつもなら、酒屋で酒を飲んでいるのだが。

 今回は行く気にもなれず、神楽と夕食を食べ、眠ることにしたのだった。

 銀時は布団に横になろうとした時、ふと、何かを思い出していた。

 

 

「新八の預かってたDVD--デスクの中に入れっぱにしてたの忘れてた」

 

 

 銀時は急に来た大工の依頼人からDVDを隠すためデスクの引き出しの中に入れて、それ以降そのままにしていたのを思い出していた。

 

 

「まぁいっか......明日、新八に渡せばいいんだし、早く寝てえしな」

 

 

 そう思いながら、銀時は改めて布団の中に潜るようにして眠りについた。

 

 

「クー......クヵ、クー......」

 

 

 

 

 ーー......き......せ......。

 ーーん?

 

 銀時は誰かの声を聞いた気がした。

 だが、よく聞き取れなかったので気のせいだと思い眠りに入っていた。

 

 ーーお......さ......い......。

 

 なおも聞こえる声、それでも聞きとれない、眠っている時の幻聴だろうと思い、眠りについた時。

 体が揺れていた。 ゆさゆさ、ゆさゆさと、体が揺れていた。

 いや正確には揺らされていた。両肩から、触れられている感覚があった

 

 

 ーー誰だァ~、俺を起こそうとしているのは?

 

 

 銀時は何者かが自分の睡眠を妨げようとしていることに気付いた。

 

 ーー俺は眠み~んだよ、まだ深夜なんだよ!

 ーーこちとら大工の仕事で体が動かねぇんだよ!

 

 銀時はそう心の中で叫んでいた。

 それでも体を揺さぶってい者は起こそうとすることをやめなかった。

 

 

 ーーそうか、よ~く分かった。

 ーー俺を起こしてぇんなら、ぶん殴られる覚悟しやがれ!

 

 

 そう、銀時が起こそうとした何者かを殴る決意を固めた時、その決意は起こそうとしていた何者かのーー

「起きてください、いつまで眠っているんですか! 坂田先生!!」

 ーーは?

 

 

「先生ぇ!?」

 

 

 目を見開いて、飛び起きるとともに、 何者かの一言によって、殴るという決意は消え去ってしまった。

 

 

 

 




 銀魂は2019年で連載が終了するまで投稿は避けてましたがようやく投稿できそうなので出させてもらいました。

 これからもよろしくお願いします。


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プロローグ02 暁美ほむら

 まず最初に魔法少女の世界と暁美ほむらと言う人物のおさらいと些細な変化及び、銀時との出会いまでの時間を出来るだけ書かせてもらいました。

 
 後書きで参考にした小説と漫画を書かせてもらいます。


 

 ーー繰り返す・・・・・・

 

 ーー私は何度でも繰り返す・・・・・・

 

 

 空には青いドレスをまとった人形の姿をした巨大な存在・・・・・・

 

 人形には足はついておらず、代わりに巨大な歯車・・・・・・

 

 地上に頭を向けた逆さの状態で浮遊している『絶望』の象徴・・・・・・

 

 普通の人間には視認できない・・・・・・

 

 自然災害としか認識されない力を持つ形ある災厄の力を持つモノ・・・・・・

 

 ーー『魔女』と呼ばれる絶望と災厄を振りまき、人間に『死』をもたらすモノの中でも最も恐ろしく力を持つモノの名は『ワルプルギスの夜』と呼ばれた。

 

 

 『ワルプルギスの夜』が降り立った町の状況は、立ち並んでいた高層ビルが破壊されて、残骸は宙を舞い、異様な景色の空間を創り出していた。

 

 破壊されたビル群の中で黒い影が『ワルプルギスの夜』に立ち向かっていた。

 黒い影は少女だった、黒い髪に制服のような黒と紫、白に彩られた装いに左腕に円形状の盾のようなものを装着していた。

 少女の名はーー暁美ほむら、地球外の存在から『願い』を叶えるのと引き換えに魔女と戦い続ける運命を背負ってしまった『魔法少女』である。

 ほむらは、願いを叶えて魔法少女になり、ある『目的』のためにワルプルギスの夜に立ち向かっていた。

 ーーたった一人の『親友』を救うために。

 

 ほむらはワルプルギスの夜に何度も攻撃を仕掛け続けた、何度も、何度も、親友を魔法少女にさせないために入念に準備をしながら、最大級の魔女を倒すために、魔法と魔力を帯びさせた重火器を惜しみなく使い続けた。

 

 だが、倒れない、何度も魔法と重火器の嵐で攻撃しても、何度も繰り返しても、かすり傷一つもつかなかった。

 ワルプルギスの夜もただ攻撃を受けたままではなく、大きな火球で応戦していきながら、ほむらを防戦一方にしていき、ついにーー

 「ぐっ」

 攻撃を食らい、魔法少女は大樹の枝に激突してしまう。

 ほむらは、何とか体勢を立て直そうとするも体に激痛が奔ったためにたてなおせないでいた。

 

 「そんな・・・・・・あんまりだよ! こんなのってないよ!」

 

 声が聞こえた、魔法少女になった最大の『理由』、が戦場に来ていた、来てしまった、願いによって魔法少女になったほむらが避けたかった運命の始まりの存在にして、掛け替えのない親友。

 少女の名はーー鹿目まどか、『魔法少女になる前』のほむらが親しく話してくれた初めての友達、ほむらが魔法少女になる決意をした少女が魔女と魔法少女の戦場に来てしまった。

 

 ほむらは少女の声がする方向に顔を向けると、まどかは誰かと話していた、いや『何か』と話していたといった方が言い、普通の少女を魔法少女にする『者』にして地球外の存在が少女に語り掛ける。

 ほむらが少女に叫んだ

 「まどか! そいつの言葉に・・・・・・耳を貸しちゃ駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 叫んでも声は届かなかった、少女は地球外の存在に傾けてしまう。

 

 「諦めたらそれまでだ、でも君なら運命を変えられる」

 「避けようのない滅びも嘆きもすべて覆せばいい、そのための力が君に備わっているんだから」

 「・・・・・・本当なの?」

 

 ほむらは親友が地球外の存在の言葉に耳を傾け始めてしまっていることに気付き止めようとしていた。

 魔法少女(ほむら)は知っていた、魔法少女になったときに知った『残酷な真実』をーー

 どんなことをしても親友(まどか)を魔法少女にさせない最大の理由でもあった。

 ほむらは何としても親友の少女に嘆願する。

 

 「騙されないで! そいつの思う壺よ!」

 しかしその嘆願は届かない。

 「私なんかでも本当に何かできるの? こんな結末を変えられるの?」

少女の問いに答える地球外の存在。

 「もちろんさ」

 続けざまに少女に促すように、ほかの少女と同じように運命をいざなう言葉を言い放つ。

 「だから・・・・・・僕と契約して魔法少女になってよ!」

 「駄目ぇぇぇッ!!」

 ほむらは地上に落下しながらまどかを止めようとしたが声は届かなかった、契約の証拠として桃色の光が輝いてまどかを包んでしまった。

 

 

                       ***

 

 「本当にものすごかったね、変身したまどかは」

 地球外の存在は魔法少女になったまどかの力を評価していた。

 「彼女なら最強の魔法少女になるだろうと予測していたけれど、まさかあのワルプルギスの夜を一撃で倒すとはね・・・・・・」

 ワルプルギスの夜は魔法少女になったまどかの手によって一撃のもとに倒されていたーー

 魔法少女が対所に厳しい魔女は鹿目まどかによって倒された、倒されてしまった、ほむらは何としてもこの結末だけは避けたかったーー

 いや、変えたかったのだ、彼女は『鹿目まどかが魔法少女になる運命の回避』が最大の目的だった。

 でも、変えられなかった、膝を床に落として顔を伏せてしまうほむらは地球外の存在に問う。

 「・・・・・・その結果どうなるのかも見越した上だったの?」

 地球外の存在は口をひらく。

 「遅かれ早かれ結果は一緒だよ」

 ほむらがたった一人の親友(鹿目まどか)を魔法少女の運命に巻き込ませたくなかった残酷な真実(絶望)の正体は、魔法少女の証にして魔力を生み出す力の源たるたる宝石『ソウルジェム』が魔女の卵『グリーフシードに変化して新たな魔女を産み落とすことになることにーー

 魔法少女の契約の際の前払い(願い)に比例して魔法少女の証(ソウルジェム)魔法少女(所有者)の心に抱えてしまった『呪い』(絶望)が宝石を黒く染まりきったとき、宝石は砕け魔女の卵(グリーフシード)に変化する、魔法少女の命と引き換えにしてーー

 その結果がワルプルギスの魔女を倒したことでまどかはより強力な魔女を生み出してしまったのだ。

 地球外の存在は言葉を続けた。

 「彼女は最強の魔法少女として最大の敵を倒してしまったんだ、もちろん後は最悪の魔女になるしかない」

 ほむらは親友の魔女化を見たことを思い出していた、それをきっかけに魔法少女と魔女の間の真実と地球外の存在の目的を知ってしまったのだーー

 「今のまどかは恐らく十日かそこいらでこの星を壊滅させてしまうんじゃないかな」

 「--まぁ、あとは君たち人間の問題だ、僕らのエネルギー回収ノルマは概ね達成できたしね」

 地球外の存在の言う『エネルギー』がその目的だった、祈りに比例した呪いに満たされ、魔法少女が魔女になる際に生じるエネルギーが狙いだった、しかしーー

 ほむらは地球外の存在の話など聞く暇はなかった、まだ手段があったのだ『祈りを形にした力』(ほむらの固有魔法)を使うことだった。

 ほむらは立ち上がり、魔法を使うことにした、『たった一人の友達』(鹿目まどか)を救うために。

 地球外の存在はほむらの反応を振り替えずに待っていた。

 「・・・・・・」

 地球外の存在はほむらに投げかけた。

 「・・・・・・戦わないのかい?」

 「いいえ、私の戦場はここじゃない」

 その瞬間、左腕に装着されていた盾はムーブメント部分と上下の球体が開いた

 中央は時計のギア部分らしき大証のギア、上下の球体は砂時計のパーツと砂が見えていた。

 「・・・・・・!」

 それを見た地球外の存在は『彼女の固有魔法』(暁美ほむらの力)に気付いた。

 「暁美ほむら・・・・・・君は・・・・・・」

 その瞬間、暁美ほむらは『仕切り直した』(始まりの時間に戻った)

 

 

                    ***

 

 

 ほむらは『病室』のベッドで目覚めていた。『退院日』(始まりの日)に戻ったほむらは自分の眉間にソウルジェムを当てた。『本来の彼女』は眼鏡を掛けていたが、魔法で『始まりの日』に何度も戻ったため、視力を魔法で矯正するようになった。

 

 暁美ほむらの固有魔法ーー『時間逆行』それが彼女の『祈りが形になった力』だった。

 

 --同じ時間を何度も巡り、たった一つの出口を探る、あなたを絶望の運命から救い出す道を・・・・・・

 

 --まどか・・・・・・たったひとりの私の友達・・・・・・

 

 --あなたの・・・・・・あなたのためなら・・・・・・私は永遠の迷路に閉じ込められても構わない。

 

 そう心の中に呟いたほむらは自分の通う中学校に通う準備を進めていた、鹿目まどかが在籍している『見滝原中学校』へ、今度こそ『ワルプルギスの夜』を倒すために。

  

 

       見滝原中学校 廊下

 

 

 ほむらは『自分のクラス』の担任の教師、早乙女和子と共に教室を案内してもらっていた。

 時間を繰り返しているほむらは自分の教室を知っていたが、転校生であるためにそれは出来ない、それは変わることがなかった。

 ーー早乙女和子(担任教師)のある一言が出るまでは。

 「そうそう、暁美さん、今日からうちのクラスで教育実習に来る先生が来ますので、その先生と一緒に教室に入ってきてください」

 

 ほむらは一瞬驚いていた。

 (・・・・・・どういうことかしら? 今まで一度もそんなことは無かった)

 ほむらは早乙女に尋ねた。

「私が入るクラスに教育実習の・・・・・・先生、ですか?」

 

 「私も急に知ったばかりなの、職員室でのあいさつで教頭先生から私にお願いされちゃって『そちらのクラスに教育実習に来た先生が来ますのでどうか指導してあげてください』って、丁度転校生の暁美さんと一緒に紹介しようかなって」

 

 「・・・・・・そうですか、わかりました」

 

 ほむらは心の中で少し驚いていた、何度も『時間遡行』(やり直し)を繰り返すとき、鹿目まどかの出会いには『ズレ』が生じていく、それが『祈りのが形となった力』(時を操る力)の代償。

 

 --その『ズレ』は周囲にも及んだ、まどか以外に『3人の魔法少女』(ほむらが知っている人)の出会い方もその一つだった。

 

 ほむらは、この学校にも『ズレ』が起こったのだと納得することにした、そう思案するうちにーー

 「暁美さん、教室につきましたよ」

 早乙女の声で思考の海からもどったほむらはいつも通りすることにした、したのだがーー

 「あれ、坂田先生まだ来ていないのかしら? 暁美さんちょっと待っててね、教育実習の先生探してくるから教室のドアで待ってください」

 そう伝えて、担任の先生は教育実習の先生を探しに向かっていった。

 

 

                        数分後

 

 

 早乙女はほむらの待っている教室に戻って来ていた、 教育実習の先生をようやく見つけたらしい。

 

 「坂田先生、時間がないので今回はそのままで結構ですが、今度から身だしなみには気を付けてくださいね」

 担任教師は教育実習に来た教員に注意を促した。

  

 (名前からして、男なのだろうか?)

 ほむらは教育実習に来たという人物の顔を見ることにした、ほむらの目に映っていたのはーー

 

 顔は白髪の天然パーマで死んだ目をしていた如何にもだらしがなさそうな顔で、服装は白衣姿でネクタイはきちんと絞めていない男だった。

 そしてーー腰には木刀をさしていてひときわ目立っていた。

 

 (何で木刀なんかさしているのかしら? 取りあえず不審がられないようにーー)

 

 「初めまして、ここに転校してきた、暁美ほむらと言います」

 ほむらは天然パーマの男(教育実習の先生)に自己紹介をすることにした。

 対して相手はと言うとーー

 

 「は、初めまして・・・・・・坂田、銀八です」

 

 少し歯切れの悪い自己紹介で返していた。

 

 ーーその時の私はまだ知らなかった。

 

 ーー白髪の天然パーマの教師との出会いですでに変わり始めたことに。

 

 --『見滝原3人の魔法少女』(私が把握している魔法少女)の運命を破壊していくことに。

 

 --腰に差した木刀で『魔女』を切り裂くことに。

 

 --まどかの『願いが変化』し、他の魔法少女達が違う形で救われていくことに。

 

 --私の『永遠の迷路』の壁をことごとく破壊していくことを。

 

 --そして、私たちに『希望』(笑顔)を取り戻してくれることに。

 

 それはまだ、数時間後の未来の話だった。 




 
 参考にした小説は、エレファント速報と言うサイトでした。

 タイトルは銀時「魔法少女まどかマギカ?」
 
 でした、銀時と見滝原の魔法少女のセリフのやり取りだけの小説でした、僕は『叛逆の物語』の結末を見たときに心の中の納得のいかなさを心の中に抱えたときに、『まどかマギカ×銀魂』と検索したら偶然、そのコラボ小説を見つけてました。
 
 試しに読んでみると『銀さんならやりかねなさそう』と思ったぐらいに爽快な内容でした、そのたびに何度も、何度も、何度も、読み返していました。

 その時にセリフだけの小説はイメージは出来るけど少し寂しく感じたので、書いてみたいと、ハーメルン小説投稿サイトに書こうと思ったのですが、銀魂の漫画はどんな終わり方をするのか分からなかったので連載が終わるのを待っていました。

 その間に、劇場版まどかマギカの公式ガイドブックを買ったり、叛逆の物語の漫画版を買ったり、Tv版のフィルムメモリーを買ったりのどして準備を進めていました。

 そのあとは銀魂のジャンプリミックスを買い集めて、ようやく書くことが出来ました。
 
 出来うる限りオリジナル(自分の書ける場所)を書きましたが、場合によっては、買いまくった漫画(参考書)のセリフが出てくるかもしれませんので、よろしくお願いします。


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夢の中で逢った、ような・・・・・・編
契約書にサインするときは注意事項を確認しろ Aパート


 本編がようやく始まります、魔法少女と侍の出会いによって運命が砕かれるその物語を括目してください。
 
 ちなみにまず砕かれるのは銀時からです。


 「先生ぇ!?」

 

 目を見開いて、飛び起きるとともに、何者かの一言によって殴るという決意は消え去った。

 

 

 「わっ!」

 

 

 飛び起きた拍子で尻もちをついた何者か。銀時は起こそうとした声の主の方向を見ると、目の前にいたのは眼鏡を掛けた女だった。

 「もう、しっかりしてください!恰好がだらしない上に初日から学校で立ちながら眠るなんて聞いたことありません!!」

 眼鏡を掛けた女は銀時に向かって、注意を促したのだが、注意された男(銀時)の耳には注意に言葉など聞こえていなかった。

 

 --ど、どうなってんだぁぁぁぁぁぁぁ!!

 --俺、確か部屋で眠ってたよな! 布団で寝てたよな!?

 

 銀時は自分の部屋の寝室で眠っていた記憶と眠る前の行動を思い出しながら、状況整理をしようとしていた。                  

 銀時は混乱しながらも周囲の様子と状況把握のために確認することにした、天井と廊下はまるで外国に来たと錯覚してしまうぐらいのシンプルさに驚いていた。

 (やっぱここ、俺の部屋じゃねぇどころか俺の家ですらねェェェェェェ!)

 そして、ひときわ目立ったのはーー

 

 ーーか・・・・・・壁がガラスばりなんですけどォォォォォォォォ!

 ーーとゆうか寺小屋かァァァァァァァァァァァァァ!

 寺小屋の備品と思われる机と黒板らしきもの以外は教室の壁とみられるガラスでいっぱいだということに。

 その机と黒板に至っては高度な技術で作られた機械(からくり)らしき物で出来ていた。

 自分の世界でも機械(からくり)はあったがここまでの物は見たこともなかった。

 ーー俺の家どころか江戸でもねェェェェェェェェェ!

 

 自分がいる場所も自分が住んでいた『世界』(江戸)でもないとはっきりさせるには十分だった。

 

 銀時は状況把握が追いついていないでーー

 「聞いてますか!? 坂田先生!」

 眼鏡を掛けた女性の声によって現実に引き戻されていた。

 「あ、はい! スンマセン・・・・・・まだ寝ぼけていて頭に入ってこないんすけど」

 あまりにも情報量の多さに混乱が起こっていて、話が全く入っていなかったため、ごまかすことにした。

 ところで、と銀時は尋ねた。

 「ここはどこで・・・・・・どこの寺小屋ですか? そして、あなたは誰なんですか?」

 目の前の女はため息をつきーー

 「自己紹介はとっくにしたことを忘れただけでなく、学校のことまで忘れているとは・・・・・・と言うよりも寺小屋って江戸時代でもありませんよ」

 突っ込みを交えて、仕方ありませんねと続けた。

 「私の名前は早乙女和子です、ここは見滝原市です、そしてここは見滝原中学校です」

 銀時は自分が何処に居るのかを把握するために聞いた情報は江戸ですらなかった。

 

 

 ーー江戸ですらねェェェェェェェ! と言うか、何でその中学校にいるんだ!?

 

 内心戸惑いながら、もう少し情報を聞き出すことにした。

 「ど、どうして俺・・・・・・じゃなくて僕はどうして見滝原にいてその中学校にいるんすか、ハイテクすぎて違うところに来た感じで戸惑ってるんですが、ってゆうか先生て一体?」

 早乙女はあきれたと言わんばかりのため息をつき。

 「それも忘れちゃったんですか? まず見滝原は近年急速に開発が進んだ地方都市です、見滝原中学校もその流れで改装されたんです、教室の黒板は電子黒板に、生徒達の机は床に収納できる仕組みなんですよ」

 早乙女は見滝原市とその中学校のハイテクの理由を軽く説明した後、ちなみにと付け加えた。

 

 「正確にはあなたはこの学校の正式な教員ではなく教育実習に来た臨時の先生みたいなものなんです、私の仕事を見て学んだり、時にはあなたが生徒たちに勉強を教えたりするなどの過程を経て違う学校の正式な教員になってもらいます」

 

 銀時は今まさに自分がどういう状況にいるのか、そしてどういう立場にいるのかを知った。

 銀時の内心はと言うとーー

 ーー無理だぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!、俺教員になった覚えもねェェェェェェェェ!

 戸惑いの絶叫を上げていた、銀時の心の叫びを知らずに早乙女は銀時の名を呼んだ。

 「頑張って教員を目指しましょう、坂田銀八先生」

 「あ、はいそうですね」

 銀時は早乙女に返事を返したがーー

 

 ーー銀八ってなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? 3年z組じゃねぇェェェェェ!?

 

 と心の叫びを連続で上げていた。

 

ちなみに3年z組とは銀魂のスピンオフ作品である。

 

 「坂田先生、それよりも早く私が担当するクラスに向かいます、あなたのほかにもそこに転校生を教室の前に待たせていますので付いてきてください」

 そう言って、早乙女は担当の教室に向かうために歩を進めた、銀時も早乙女を追いかけていくことにした。

 「・・・・・・ところで、坂田先生」

 早乙女は歩を進めながら、銀時に何かを聞きたがっていた。

 「何ですか?」

 「目玉焼きは・・・・・・固焼きですか? 半熟ですか?」

 ーー何言ってんの?

 と一瞬戸惑ったが適当に答えることにした。

 「どっちでもいいのでは?」

 「その通りですよね! たかが卵の焼き加減で女の魅力が決まると思ったら大間違いですよね! 坂田先生、くれぐれも卵の焼き加減にケチを付けないでくださいね!」

 早乙女は銀時に対して卵の焼き加減に念を入れたかのように言ったのだが。

 銀時自身はーー

 ーーホント、どうでもいいわぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 と、また心の中で叫んでいた。

 などとそうこうしているうちにーー

 

 「坂田先生もうすぐ私の担当クラスの教室に着きますよ」

 

 銀時の内心は穏やかではない、いきなり見知らぬ地で教師をやることになったのだからどうにかして帰る方法を見つけたかったのだが、腹をくくるしかなかった。

 

 「坂田先生、時間が無いのでそのままの格好で結構ですが、今度から身だしなみには気を付けてくださいね」

  

 銀時は早乙女にそう注意されたので軽くうなずいた。

 そのあとに違う女の声がした。

 「初めまして、ここに転校してきた暁美ほむらと言います」

 銀時はその声のする方に顔を向けた。目のまえにいた転校生の特徴はーー

 黒髪のロングヘアーに凛とした佇まいで人を寄せ付けない雰囲気が漂う少女だった。

 普通の人から見たら美少女と言っても過言ではないが、銀時自身は何かを感じ取っていた。

 ーーなんだこいつ、ただ(モン)じゃねぇな。

 

 銀時はほむらの目からは修羅場をくぐり抜いたような気配ともう一つ、何かただならぬ悲しみを秘めた気配が渦巻いてる目をしていた。

 ーー取りあえず不審がられないようにしねぇとな。

 と考えを後回しにすることにした。

 「は、初めまして・・・・・・坂田、銀八です」

 歯切れ悪くも自己紹介をすることにした。

 

 「暁美さん、坂田先生、これから私はクラスのホームルームをしますので呼ばれたら来てください」

 「あ、はい」

 銀時は早乙女にそう返事をして転校生(暁美ほむら)と待つことにした。

 ーーこのまま教師をするしかねーの? 無理だぁぁぁぁぁぁ!

 銀時は絶体絶命の淵に立たされていた、『寺小屋』に通っていたとはいえ、不真面目に聞いていたため、教え導いてくれた、『師匠』のようにはいかなかった。

 キーンコーンカーンコーン

 そう悩んでいる間に、ホームルームのチャイムが鳴った後に早乙女の声がした。

 「今日は皆さんに大事なお話があります、心して聞くように!!」

 銀時は少し耳を傾けるとーー

 「目玉焼きとは・・・・・・固焼きですか? それとも半熟ですか?」

 ーー生徒にも聞くんかい!

 銀時は心の中で突っ込んだ。

 「ハイ!中沢君」

 「えと・・・・・・どっちでもいいんじゃないかと」

 ーー生徒の一人を巻き込んでんじゃねーよ! 中沢君困ってんじゃねーか!

 銀時は中沢と言う生徒に少し同情した。

 早乙女はそのとおりと! 言った後、続けざまにーー

 「たかが卵の焼き加減で女の魅力が決まると思ったら大間違いです、女子の皆さんは半熟じゃなきゃ食べられないとか抜かす男とは交際しないように! そして男子の皆さんは卵の焼き加減にケチをつけないこと!」

 ーーただ単純に交際が失敗しただけじゃねぇ―か! 生徒巻き込んでんじゃねーよ!

 銀時は早乙女に対して心の中に突っ込み続けた。

 すべてを吐き出し終わったのか早乙女は切り替えたかのようにーー

 「はい、あとそれから今日は皆さんに転校生と教育実習の先生を紹介します」

 ーーおいィィィィィィィィィィ、俺たちは序でかよ!

 と突っ込んでいる間に

 「暁美さーん、坂田先生いらっしゃーい」

 暁美ほむらと銀時がが呼ばれた。

 

 ーー・・・・・・どうすんだよこれ

 

 銀時は、ほむらの後ろに続いていった、銀時の足取りは心境的に重かった。 

 まるで、社会的な公開処刑が執り行われるかのような心境だった。

 教室に入ったほむらと銀時は早乙女に促されてーー

 「それじゃ自己紹介いってみよー」

 「暁美ほむらです、よろしくお願いします」

 ほむらは自己紹介を完結に終わらせた。

 「・・・・・・それだけ?」

 早乙女は聞き返したがそれだけのようだった。

 「さ、坂田・・・・・・銀八です」

 銀時はやはり歯切れの悪い自己紹介になっていた。

 「坂田先生、もう少し頑張りましょ・・・・・・」

 早乙女は少し落ち込んだかのようにそう、励ましの言葉を送った。

 

 銀時の教育実習生活はこうしてスタートを切った。

 銀時が意味不明の状況に引きずられている間に ほむらは魔法少女の使命(自分に課した使命)の人物をただじっと見ていた。

 

  その時、銀時はこの瞬間、魔法少女の運命に巻き込まれることになる。

 

  祈りが絶望に代わってしまう魔法少女の世界を己の魂をかけてぶっ壊すことに。

 

  それは、数時間後の未来から始まる。




 
 本当は、一本の話にしたかったんですが。
 書き疲れと文字制限がかかるかもしれないのでAパート、Bパートに分けることにしましたので、これからもよろしくお願いします。

 


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契約書にサインするときは注意事項を確認しろ Bパート

 一本にできなくてすみません、次は、魔法少女(ほむらとマミ)が砕ける回です。

 今回、長く書きすぎましたごめんなさい。


 銀時は、ホームルームから授業の終わりまで早乙女および、担当科目の教員の

授業を見ていた(授業参観)

 

 「今後、坂田先生も授業を実践してもらいますので、仕事の流れを見てくださいね」

 早乙女から、そう言われたので銀時の頭に痛みが奔った。

 

 ーー出来るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 教育実習に来たんじゃねーよ!

 ーー俺はこの世界の人間じゃねーよ! この地球の人間じゃねーよ!

 

 銀時の科目は国語の教諭のため、教材研究だの教科指導だのと早乙女と話していた内容に頭を抱えていた。

 その前段階として、学級活動とホームルーム活動を明日から始めることになったことなどのダブルパンチを受けていた。

 

 ーー全然頭入ってこねーよ! どうすんだよこれぇェェェェェ!

 ーー第一レポート書けなんてできるかぁぁぁぁぁぁ! 五時間分書けなんて拷問じゃねーか!

 見滝原中学校の生徒たちはすでに帰宅したため、残りの時間は教育実習のレポートを書く時の話、教室内の仕事などで銀時に疲労が蓄積していった。

 早乙女からーー

 「少しの間だけ休憩しましょうか」

 と声をかけられたため、その時間の間だけ、休憩時間を設けられていた。

 

 銀時は、その時間の間だけ、見滝原を見回ることにした。

 

 ーーとにかく、元の世界に帰る手掛かりを探さねーと、先ずはこの『見滝原』のことを調べねーと!

 

 すべては、元の世界に戻るために。

 

                       ***

 

 ーー全然見つからねぇぇぇぇぇぇ!

 

 銀時は見滝原の街を回ってみた結果、手掛かりが見つからなかった。

 見滝原で見回って分かったことは、見滝原中学校はガラスが多く使われ、鏡のような外見になっていることや、通学路は緑豊かなうえ水路があること、通学路を抜けたところに風力発電機がある土手、中学校付近を先ず把握していった。

 

 次に町並みはビルが建ち並んでいたことや、店の外見がきれいに完備されたくらいのことだった。

 しかし、銀時にとって、最も重要な事実が発覚してしまったことだった、江戸()の街にあって見滝原にない物、それはーー

 

 ーージャンプがねぇぇぇぇぇぇ!!! この世界に神も仏もねえぇぇぇぇぇぇ!!!

 

                      数十分前

 

 見滝原の街を見回った際に休憩のためコンビニに甘いものを買うついでにジャンプを買おうとした際に、雑誌の棚で探していたら際ーー

 

 「あれ、ジャンプがない? いやいやいやいやいやいやいやいやそれはねーよ、どの世界でもジャンプのない世界なんてありえねーよ」

 

 銀時は、悪夢を見ているかのような感覚に襲われていた、元の世界では当たり前にあった愛読漫画雑誌(週刊少年ジャンプ)がないこと、それは銀時にとっては最大の悪夢だった。

 銀時はコンビニ店員に聞くことにした。

 ーーきっと置き忘れたか、売り切れたに決まっているよな、ジャンプがもし届いてなかったとしても張り紙で知らせるぐらいはするよな。

 言いようのない不安がよぎった、少年ジャンプがない世界があるのか、とーー

 銀時はこれは悪夢だあってほしいと期待を込めて、尋ねた。

 「あのー、すみません、週刊少年ジャンプって売り切れてますか? 雑誌の棚にないんすけど・・・・・・?」

 「少年ジャンプ? 有りませんけど? とゆうより聞いたことありませんよ? そんな漫画雑誌」

 ーー・・・・・・え?

 

 「き、聞いたことない? そ、そんな、冗談じゃ・・・・・・、無いっすよね?」

 「はい、ありませんよ・・・・・・そんな漫画雑誌扱ったことないし、 聞いたこともありませんよ」

  コンビニ内は言いようのない沈黙が流れた。

 「・・・・・・失礼しました」

 銀時はコンビニ店員にそう言って、コンビニから出た。

 

 そのあとも、数件のコンビニと本屋に行ってもジャンプは見つからなかった。

 そして、ショッピングモールのある本屋でーー

 

 「週刊少年ジャンプ? 扱ったどころか、聞いたことありませんよ? 出版社はどこですか?」

 「しゅ・・・・・・集英社っす」

 本屋の店員から、出版社の話を聞かれたとき、銀時は真っ先にその名前を出した。

 一時期、銀時は江戸(元の世界)のジャンプ漫画の漫画家と接点を少し持ったため、確かめてもらうことにした。

 その結果はーー

 「お客様、 集英社と言う出版社は存在しておりません」

 ーーまじかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 銀時は雷が落ち書かのような衝撃をうけ、白目をむいて、また心の叫びをあげた。

  

 銀時はゾンビの如くショッピングモールのをさ迷い歩いた。

 そして、地面に手をつき、失意と絶望のどん底に沈み現在に至る。

 

 ーーどうすんだよこれ、帰る手掛かりどころか、ジャンプが存在しねえなんて。

 ーー俺はこれから如何すりゃ良いんだぁぁぁぁぁぁ!

 

 

                      数分後

 

 

 銀時は少し落ち着いた後、パフェでも食べて中学校に戻ることにした。

 中学校の仕事が山積もりのため、戻らなければならなかった。

 

 ーー切り替えるしかねぇな、江戸(元の世界)に戻るために。

 

 銀時はパフェが食べられる喫茶店を探している途中、見覚えのある人物を見かけた。

 ピンクの髪をリボンで左右に束ねている少女がショッピングモールの階で走っていた。

 「あいつぁ・・・・・・」

 少女の服装は女子中学生の制服を着ていたので、見滝原中の女子中学生であることに気付いた。

 銀時は少女が何処に向かっているのか気になっていた。

 ーーまぁ、今の俺ぁ『中学校の先生』だしな・・・・・・。

 

 銀時は少女の後を追うことにした。

 

                       ***

 

 

 銀時が少女の後を追った先は、店内改装の看板が出されていたフロアにたどり着いていた。

 「一体ここに何が・・・・・・?」

 銀時は改装フロアの中に入っていくことにした。

 中は看板通り、天井は鉄のチューブがむき出しで、鉄の柱が立ち並び、床にタイルの上に分厚い鉄板が置かれていた。

 

 すると、白い煙が立ち込めている場所があったので向かってみると、ピンクの髪の少女の次に水色の髪をした少女がいた。

 二人の少女は何かに追い立てられているかのように走っていた。

 ーー次から次に、どうなってやがるんだ? 休む暇もねぇな・・・・・・

 銀時はすぐに二人の少女の後を追うことにした。

 

 追い立てている存在が、転校してきた少女であることは、まだ銀時は知る由もなかった。

 

 銀時は、少女たちの後を追ううちに、ある変化に気が付いていた。

 周辺の景色が変容していくことに、まるでこの世のものとは思えない異界へ来てしまったかのように。

 

 異界は鉄の柵に花のような模様、蝶の札が立てかけられているようなものがあり、花壇に見間違うような場所だった。

 

 ーーまた、変なことに巻き込まれてんのか俺ぁ・・・・・・?

 銀時は異界の道を突き進みながら、二人の少女を探し続けることにした。

 しかし、進めども進めども、異界の道は変化し続けていた。

 ーー一体どこまで進めばいいんだ?

 そう思い始めた瞬間、綿毛のような生き物が何かを囲っていた、その中心にいるのは、銀時が見かけたことのある影、2人の少女だった。

 銀時は少女に声をかけていた。

 「おいお前ら、そこで何してんだ? それに、この白い毛玉はなんだ? どうしてこんなことになってんだ?」

 するとーー

 

 「た、助けて! あたしたち、転校生に追われて逃げていたら、いつの間にかここにいて、この変なのに取り囲まれて・・・・・・」

 

 青い髪の少女が助けを求めてきた、話し方からして恐怖でおびえていた。

 「転校生に追われてるかなんだかわからねぇが・・・・・・」

 毛玉の生き物は言葉がわかるような気がした、何よりその生き物には殺意が出ていた。

 ーーこいつら、天人(あまんと)じゃねぇ、ようだな。

 銀時がいた世界では、天人と言う異星の民がいたが、ほとんどが人間を見下していても意思疎通が出来ないわけじゃなかった。

 すると、毛玉の生き物が銀時に気付いて、殺意を向けていた。

 ーー殺る気・・・・・・みてぇだな。

 銀時は腰の木刀に手をかけたとたんーー

 少女の周りに黄色い光が包み込んだ。

 

 「危なかったわね」

 

 銀時と二人の少女の前に黄色の立てロールの少女が現れた。

 二人の少女に安心させるように話しかけていた。

 

 「でももう大丈夫、 キュゥべぇを助けてくれたのね、ありがとう」

 「その子は私の大切な友達なの」

 

 二人の少女に安心感を与えていた、少女は銀時の存在に気付いた。

 「あなたも、大丈夫ですか? ってーー」

 少女は銀時の木刀を見て驚いていた。

 「もしかして、木刀(それ)で戦おうとしていたの!? 待っててすぐに使い魔を倒しますから!」

 と銀時に言葉をかけた瞬間、少女は卵のような宝石を取り出して黄色い光に包まれた。

 少女の服装はブラウスとスカートにベレー帽やコルセットの組み合わせの格好に変わっていた。いわゆる『変身』だった。

 それだけに終わらず、少女の手からライフル状の銃を無数に出現させて毛玉の生き物に一斉掃射した。

 ーーな、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁ!

 銀時は変身した少女の無双と状況に混乱していた。

 そのとたん異様の空間が揺らいで、元の改装フロアの景色の戻っていた。

 

 「も・・・・・・戻った」

 

 蒼髪の少女が安堵のつぶやきの後、変身した少女は別の方を睨み付けていた。

 何者かが近づく気配を感じ取っていたため警戒をしていたからだ。

 「魔女は逃げたわ、すぐに仕留めたいならすぐ追いかけなさい、今回はあなたに譲ってあげる」

 現れたのは黒の長髪の少女だった、銀時は顔を見てすぐに何者かの正体に気付いていた。

 ーー! あいつぁ、確か・・・・・・暁美ほむらだったか?

 銀時は服装は違えど見滝原中に転校してきた暁美ほむらだと気づいた。

 服装は黒と白、紫の色合いの制服に似ていて、左腕の円盤状の物体が目立っていた。

 「私が用があるのは・・・・・・」

 「飲み込みが悪いわね、見逃してあげるって言ってるの」

 ほむらは、自分の狙いを告げようとしても黄色髪の少女が笑顔で牽制していた。

 だがしかし、さすがの急展開の状況に置いてけぼりの銀時がとうとう爆発した。

 

 「ちょっとまてぇぇぇぇ!! 俺らを置いてけぼりにして話進めんじゃねぇぇぇぇ!!」

 

 その声に四人の少女らが驚いていた。

 「お前らの格好が何で、あの空間が何で、あの生き物が何なのか、そしてーー」

 銀時が吐き出すかのように質問攻めにしたと、最後にーー

 「そいつが抱えている生き物が何なのか説明しやがれ!! 猫か兎かわかんねぇ―ぞコノヤロー!!」

 その言葉を聞いた瞬間、ほむらと黄色髪の少女が驚いた顔をした。

 

 「あ、あなたキュゥべえが見えるの!?」

 「あぁ、なんか見えちゃいけねぇのか?」

 銀時が吐いた言葉に黄色髪の少女が驚愕交じり質問をした。

 「ふつうは、私と彼女、魔法少女の素質のある子にしか見えないはずなんだけど!?」

 「キュゥべえ? 魔法少女・・・・・・?よくわかんねぇから20字以内にまとめろ」

 銀時は黄色髪の魔法少女に簡潔な説明を求めたがーー

 「いや、20字なんかでまとめられないから! 簡潔な説明を求めても無理だから!」

 銀時の質問に黄色髪の魔法少女が突っ込んだ。

 「んじゃ取りあえず、俺たちに説明しやがれ、こいつと一緒にな」

 銀時は黄色の魔法少女だけでなく、ほむらにも状況説明を求めた。

 「わ、わかったわ、でもまずキュゥべえを治療させてもらえないかしら?」

 銀時に説明をせかされた黄色の魔法少女はほむらを目で牽制しながらキュゥべえの治療を要求した。

 「じゃあ、早くやんな、魔法少女だっけか? その転校生とそっちの二人は俺の生徒・・・・・・なんでな」

 「え? 先生なの!?」

  キュゥベえを治療しながら魔法少女は驚愕した、確認のためここにいる残りの人に顔を向けたら、ほむらはもちろん、ほかの二人もうなずき。

 「坂田銀八先生、あたしらのクラスに入った先生なんだ」

 「あ、でも正確には教育実習に来た先生ですから」

 二人の少女が説明を補足した。

 「そ、そう」

 黄色の魔法少女は少し驚きながらも桃色髪の少女の説明に納得しているうちにキュゥベえの治療は終わっていた。

 「ありがとうマミ、助かったよ」

 キュゥベえは黄色の魔法少女、マミに礼を言っていた。

 「お礼はこの子たちに、私は通りがかっただけだから」

 マミは自分ではなく二人の少女に礼を言うように促した。

 「どうもありがとう、僕の名前はキュゥべえ」

 「あなたが私を呼んだの?」

 「そうだよ、鹿目まどか、美樹さやか」

 「!」

 「なんで私たちの名前を?」

 キュゥべえは二人の少女の名前を言い当ててーー

 「僕、君たちのお願いがあって来たんだ」

 「お、お願い?」

 

 「僕と契約して、魔法少女になってほしいんだ」

 キュゥベえは、二人に魔法少女になる契約を持ちかけてきた、その時ーー

 「ちょっとまてぇぇぇぇぇ!! 何話を進めてんだぁぁぁぁぁぁ!!」

 キュゥべえは大きな声の方に振り向いたら、その声の主を見た。

 「君は、僕が見えるのかい!?」

 白髪の天然パーマの男に驚いていた。

 「またこのパターンかよ! 説明してもらうためにテメーの治療を待ってたんだ!! どんだけ尺取ってんだコノヤロー!!」

 銀時は苛立っていた、治療が済んだら説明してもらう約束どころか、ほかの少女に契約の話を持ち掛けていたのでキレてしまっていた。

 「キュゥべえ、実は私も聞きたかったのよ? 私たち魔法少女と魔法少女の素養がある子にしか見えないはずのあなたが見えるなんてどうなってるの?」

 「僕も正直、訳が分からないよ、こんな事一度もなかったんだ」

 「なんだよそれ、てめーが見えてるってことは俺も魔法少女になれるってか? 魔法オカマ銀さんになれってか?」

 「い、いや、その、人間の男に魔法少女の契約は出来ないから、第二次性徴期を迎えた少女にしか契約しかできないから」

 キュゥベえは銀時の質問に少し混乱した様子を見せながらも契約の説明をした。しかしーー

 「なんだそのピンポイントの契約対象は? いかがわしくない? 明らかによからぬことを企んでいるだろうが」

 銀時はキュゥべえの話が余計に怪しくなっていた、可愛いマスコットのようなこの世界のものでない生き物なのにその顔に表情が読み取れない。

 銀時は元の世界で万事屋を営んでいる時、様々な依頼をこなしていたが、中には命の危険が伴う『ヤバい事件』

に係わることがあったが、その経験上、魔法少女の話がその部類に入る気がしたからだ。

 

 「少なくとも、僕は人間に危害を加える気がないから安心してくれ」

 「そ、そうよ、キュゥべえは私の大切な友達なの! 魔法少女の説明だったわよね、私が説明するからこれ以上事態をややこしくしないで!!」

 マミの顔には今にも泣きそうな顔をしていたが、少し間を置いてーー

 「私は巴マミ、あなたたちと同じ見滝原中の三年生、そしてーーキュゥべえと契約した魔法少女よ」

 そう自分の自己紹介をしたあとに落ち着きを取り戻していった。

 「キュゥべえが言ったように契約を交わせば魔法少女になるわ、契約する際キュゥべえに一つだけ願いを叶えてもらって初めて魔法少女になれるの」

 マミは銀時たち魔法少女の契約の話をした、魔法少女の変身を解き、掌にある卵状の宝石をまどかとさやか、銀時の目の前に見せた。

 「これがソウルジェム、キュゥべえに選ばれた女の子が契約によって生み出す宝石よ」

 「わあ、きれい」

 一人の少女から宝石(ソウルジェム)への感想が出た。

 「魔力の源であり、魔法少女であることの証でもあるの」 

 銀時はすぐに疑問を投げかけた。

 「契約の前払いが『願い』だっけか? それって何でもなのか?」

 「そう、何だって構わない、どんな奇跡だって起こしてあげられるよ」

 銀時の質問にキュゥベえが途中で入って答えた、そのままキュゥベえは説明を続けた。

 「でもそれと引き換えに、出来上がるのがソウルジェム、この石を手にした者は魔女と戦う使命を課されるんだ」

 「・・・・・・魔女?」

 「ーー魔女って何なの? 魔法少女とは違うの?」

 まどかは『魔女』と言う単語に疑問を持ちさやかは質問をした。

 「願いから生まれるのが魔法少女だとすれば、魔女は呪いから生まれる存在なんだ」

 銀時、まどかとほむらはキュゥベえの話を集中して聞いた。

 「魔法少女が希望を振りまくように、魔女は絶望をまき散らす、しかもその姿は普通の人間には見えないからたちが悪い」

 「理由のはっきりしない自殺や殺人現場はかなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ。形のない悪意となって人間を内側から蝕んでいくの」

 「そんなヤバい奴らがいるのにどうして誰も気づかないの?」

 「魔女は常に結界の奥に隠れ潜んで決して人前には姿を現さないからね、さっき君たちが迷い込んだ迷路のような場所がそうだよ」

 まどかとさやかの質問にキュゥべえとマミが答え続けた、今の話の流れで、銀時はあの時の空間がそうなのだと理解した。

 「結構危ないところだったのよ、あれに飲み込まれた人間は普通は生きて帰れないから」

 「マミさんはそんな怖い物と戦ってるんですか?」

 「そう、命がけよ」

 まどかの質問にマミは重い言葉で答えた。

 「だからあなたたちも慎重に選んだ方がいい、あなたたちにはどんな願いでも叶えられるチャンスがある、でもそれは死と隣り合わせなの」

 まどかはマミの言葉に唾をのんだ、その言葉に重さを感じていた。

 「うわぁ、悩むなぁ・・・・・・」

 さやかはマミの魔法少女の契約の話に悩んだ。するとーー

 

 「そこで提案なんだけど、二人ともしばらく私の魔女退治に付き合ってみない?」

 「ええっ!?」

 

 マミの提案にまどかとさやかは驚き、ほむらと銀時は驚愕した。

 

 「魔女との戦いがどういうものかその目で見て確かめてみればいいわ、その上で危険を冒してまで叶えたい願いがあるのかどうか考えてみるべきだと思うの」

 マミはまどかとさやかに、選択肢を与えるために魔法少女と魔女の戦いを見せると提案したのだが、当然ーー

 「分かっているの? あなたは無関係な一般人を危険に巻き込んでいる」

 ほむらが黙っていなかった。

 マミは少し間を置いてーー

 「彼女たちはキュゥべえに選ばれたのよ、もう無関係じゃないわ」

 「あなたは二人を魔法少女に誘導している」

 「それが面白くないわけ?」

 「ええ迷惑よ・・・・・・特に鹿目まどか」

 「え?」

 マミとほむらのやり取りに、まどかとさやかは置いてけぼりだった。

 「ふうん・・・・・・」

 「そう、あなたも気づいてたのね、鹿目さんの素質に」

 「私の、素質?」(まどかの素質?)

  まどかとさやかは、何を言ってるのか分からなかった、ただ分かっていたのは、いつ一触即発になってもおかしくないと言うことだけだった。

 「自分より強い子は邪魔者ってわけ? いじめられっ子の発想ね」

 

 「ま、マミさん、落ち着いて・・・・・・」

 「ほむらちゃん、もうやめよ・・・・・・」

 

 まどかとさやかは2人を止めに入ろうとするが、すぐさま止めに入ったのはーー

 

 「おいお前ら、ここで『殺し合い』(喧嘩)はやめろ、騒ぎがでかくなるぞ・・・・・・」

 ーー銀時だった。

 

 「邪魔しないでください、これは鹿目さんと美樹さんのこれからの問題なんです」

 「一般人の先生はさがってて、私は鹿目まどかを魔法少女にするわけにはいかないの」

 

 マミは魔法少女へと変身し、ほむらはすぐに臨戦態勢を整えていた、いつ戦いが始まってもおかしくはなかった。

 ーークソ、すぐに止めに入るしかねぇ。

  銀時は腰の木刀に手をかけた、すぐに止められるように準備をしていた。

 「ふたりともやめてぇぇぇぇぇ!!」

 まどかが止めに声をかけた直後マミとほむらが動いた。

 銀時は2人の戦いの間に割って入ろうとした瞬間。

 銀時の足がもつれて、盛大にすっころんだ、その直後に銀時が持っていた木刀が勢いよく飛んで、そしてーー

 「え?」

 キュゥべえの頭部に勢い良く突き刺さった。

 『キュゥべえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』

 さやかの悲鳴を聞いた後、2人の魔法少女は一瞬何があったとさやかの声の方に顔を向けたら、キュゥべえの頭部に木刀が貫通していた。

 

 「いやああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 さすがのマミも状況が分かったのかキュゥべえの無残な姿に悲鳴を上げた。

 「せ、先生ぇぇぇぇぇぇ!? 何てことを!!」

 まどかは銀時に状況の無残さに説明を求めようとしたがーー

 「さささ騒ぐんじゃねーよ、ととと取りあえず、たたたタイムマシンを探せ」 

 「先生!! 落ち着いてぇぇぇぇぇぇ!! どこにもタイムマシンは見つからないから、とゆうかタイムマシンなんて無いから!!」

 引き起こした本人は、かなりの状況に混乱していた。

 まどかは銀時を現実に引き戻そうと努めた。

 どうにか戻ってきた銀時はキュゥべえの生死を確かめるべく様子を見ることにした。

 「落ち着け、これはきっと実は貫通してませんでしたってオチだよ、俺、お目覚めテレビで今週の俺の運勢最高だった、きっと奇跡的に無傷に間違いねェ」

 そう言い聞かせてキュゥべえに突き刺さった木刀を引き抜くとーー

 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

 キュゥべえの頭部はフロアの床が見えるぐらいに貫通して風穴が吹いていた。

 マミは悲しみに暮れ、まどかとさやかは呆然としていた。

 銀時は崩れるように床に両ひざをついた。

 「さ、殺ベえ事件が起こったーー!!」

 さすがに落ち込んだ、教師生活をいきなり始められたばかりでなく、ジャンプがない上に元の世界に帰る方法が分からずじまい、挙句の果てに魔法少女の戦いに巻き込まれて、その果てが未知の生き物が事故で木刀に突き刺さって死んだなんて、どん底なんだと。

 

 落ち込んだ銀時の前に左肩を叩くものがいた、たたく方向に首を向けると暁美ほむらの姿があった。

 「・・・・・・」

 ほむらは無言で左手を突き出してそしてーー

 「ありがとう、キュゥべえを殺してくれて、おかげで手間が省けたわ」

 左手でサムズアップを決めて銀時に礼を言った。

 「ふざけろ! 俺は望んでやったんじゃねー、俺はお前らを止めたかっただけだ!」

 銀時がほむらに反論するがーー

 「いいえ、それでも感謝を言わせて、なぜならキュゥべえの真実の一つを彼女たちに見せることが出来るから」

 「え?」

 ほむらの言わんとしたことが銀時にはわからなかった。 その時ーー

 「代わりはいくらでもいるけど潰されるのは困るんだよね、もったいないじゃないか」

 その瞬間、聞き覚えのある声が聞こえた。

 銀時は声の方に顔を向けると、見覚えのある生き物がそこにいた。

 「き、キュゥべえ? ど・・・・・・どうして?」

 マミは喜んでいいのか、驚いていいのか混乱していた、むろんまどかとさやかも同様だった。

 「心配させてごめんよマミ、暁美ほむらが言った通り、死んでも代わりが出てくるんだ、僕は君たちを魔法少女にする存在なんだ、これくらいじゃ僕は死なないよ」 

 「そ、そうなの? キュゥべえ?」

 まどかはキュゥべえに質問を投げかけようとした時に、とんでもない物を見ることになった。

 キュゥべえはかつての自分の体を食べたのだった。

 ーーと、共食いしやがったぁぁぁぁぁぁ!!

 銀時達はグロテスクな光景を目にした。

 「きゅっぷい」

 キュゥべえは自分の死体を食いきってげっぷした。

 「キュゥべえ、あ、貴方・・・・・・?」

 「大丈夫だよマミ、体のどこにも問題は無いよ?」

 マミはそのことじゃ、と言いたげだったがーー

 「と、取りあえず、解散ってことで・・・・・・」

 銀時は言い知れぬ空気に耐えられなかったので四人に解散を促していた。

 

 その言葉を聞いて四人はうなずいた、流石にこの場の空気は耐えられなかった。

 

 まどか達はフロアの入り口に戻ることにした。

 

 まるで何もなかったかのようにしようとしたかったのだった。

 

 その時、銀時の脳裏には、いくつかの疑問が生まれた。

 

 ーー何故、キュゥべえはまどかに助けを求めたのか? 代わりが出るなら助けを求める必要がないはずだ。

 

 ーー次に暁美ほむらは、なぜ鹿目まどかをああまでして魔法少女にしないようにしたのか?

 そして最後にーー

 

 ーーなぜ、暁美ほむらはキュゥべえに代わりが居るのを知っていたのか?

 

 また謎は深まった。

 

 そして、銀時は、魔法少女の『絶望』を砕く運命に巻き込まれたことをまだ知る由もなかった。

 

 




 どうも、文章長くなっってすみません、出来るだけ短くしたかったのですがいろいろとたくさん書きたいことが頭に沢山浮かんだ挙句、原作漫画(参考書)のセリフを使わせてもらいました。
 
 エレファント速報のセリフ小説を原作にする難しさが伝わりました。
 
 出来ればこれからも応援よろしくお願いします。
 
 そして、感想よろしくお願いします。


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それはっとっても嬉しいなって 編
社会見学するときは静かに Aパート


 先ず、銀時はどこに暮らしているのかを書こうかと思います。

 その次にまどマギ本編二話の流れが始まります。

 Aパートは銀時とほむらの会話ルートになっております。
 ほむらは銀時が何者かよく分からないので少し警戒していますので銀時とのつながりは、どこに向かうのか括目してください。

 ちなみに銀時はボケる暇がないと思いますのでボケが出せるのか頑張ってみます。


 銀時の見滝原中学校に戻る足取りはまだ重かった、改装フロアでの出来事にまだ混乱していた。

 

 この世界には魔法少女が存在して、魔女と呼ばれる存在が人間を殺しまくっていたこと。

 そして、一番強烈に印象に残っていたのは、ウサギか猫が混ざった生き物(キュゥべえ)が死んで、また新しいキュゥべえが出てきて死体を食べたことだった。

 

 銀時はあれがさすがに夢であってほしい。そう願って見滝原中学校に戻っていた。

 外は夕方だった、改装フロアから元のショッピングモールに戻ったが、喫茶店で甘い物を食べて頭を切り替えようとしたのに、キュゥべえのグロテスクシーンを見たせいで、食べる気力さえ失っていた。

 

 何よりもキュゥべえって名前は江戸(元の世界)の男装の麗人と同じ名前なのが気に食わなかった。

 ーーあいつは天人(あまんと)・・・・・・じゃねーよな? 

 銀時が知っている限りでは、天人は獣人型と人型に近い種族がいる、種族が違えども言葉の意思疎通ができる上に表情が豊かなのは万国共通のため、まだ分かり易い。

 

 だがキュゥべえはマスコット、と呼んでもおかしくないのに、表情に変化が見られなかった。

 まるで表情のない機械(からくり)を相手をしているようだった。

 

 と、思案しているうちにーー

 「坂田先生!! 一体どこに行ってたんですか!?」

 早乙女の声がした、いつの間にか見滝原中に戻っていたらしい。

 「休憩時間とっくに終わっていますよ! いろいろ話さなければならないことがありますから早く中へ入ってきてください!」

 銀時は早乙女の少し怒鳴った声を聞いてーー

 ーーやべぇ、忘れてた。

 自分が教育実習生であることを忘れるくらい長い一日目となった。

 すぐさま早乙女の方へ駆け寄っていくことにした。

 

 そのあと、早乙女にこってりと怒られたのは言うまでもない。

 

 

                        

                         ***

 

 

 

 銀時はこの世界での住居を探すことにした。

 いつの間にか見滝原で目覚めた銀時は、自分の住居はどこになってるのか気になっていた。

 銀時は早乙女に寝ぼけていたのを理由に確認してもらい、住所を知ることが出来たため、住居先に向かっている最中のため。

 途中で人に聞きながら向かっていった。

 ーーなんで俺、この世界の住居に苦労しなきゃいけねーんだよ。

 銀時は、見滝原(この世界)に来た理由が分からない上に教師をやる羽目になり、そのうえ魔法少女が出てくるなんて思ってもいなかったため、イライラと不安が募っていた。

 ーーあぁ、パフェ食いてぇなチキショウ。

 そうこう考えているうちに目的地に到着していた。

 三叉路に建てられたアパートだった。

 ーーここが、俺の住居か?

 銀時は三叉路のアパートに入ろうとした瞬間、アパート入り口で少女に『再会』することになる。

 「え?」

 「・・・・・・あなた、は」

 銀時は魔法少女にして転校生、暁美ほむらとばったり会ってしまったことである。

 お互い、またばったり会うことになるとは思わなかったが、話が見つからなかった。

 

 

                       数分後

 

 

 銀時は、ほむらから部屋に招かれていた。

 

 「おめーよ、むやみに男を自分の部屋に招くなよ、下手したらお互い気まずいうわさが流れるぞ」

 銀時はほむらに一人暮らしの年端もいかない女の子が見ず知らずの男を招くことに注意したのだがーー

 「・・・・・・あなたは、魔法少女(私達)の存在を知ってしまった以上、もう無関係ではないから、この際知ってもらおうかと思っての選択よ」

 ほむらはそう理由づけをして銀時の忠告を突っぱねた。

 「知ってもらう? 魔法少女のことをか?」

 「えぇ・・・・・・、あなたもキュゥべえや巴マミから聞いたように私たちは祈りと引き換えに魔女と戦う宿命を背負うことに」

 ほむらは確認のように銀時に夕刻に起こった出来事のことを話そうとしていたがーー

 「なんで俺に話そうと思った? 俺の素性はろくに知らねーだろ」

 「えぇ、 確かに得体の知れないあなたを信用したわけじゃない、だから、魔法少女の知識を少しずつ話すことにしたの」

 「少しずつ?」

 「あなたは、教育実習に来た人間だから鹿目まどかと美樹さやか、巴マミと接する機会がありそうな気がしたからよ」

 「あんまり、関わる機会がない気がすんぞ? 特に、巴マミっつったか? あの得体のしれない生き物とダチ公みてぇだったから、警戒すんじゃねーか?」

 

 銀時は、改装フロアのキュゥべえの事故が起こったばかりのため、マミは警戒するに違いない上、共食いの瞬間を見ているため銀時に対して敵意を向けていそうな気がしてならなかった。

 「その時は、私が止めるわ」

 身の安全は保証するといわんばかりのほむらの言葉に複雑な感情を抱く銀時、やはり今まとっている空気を換えるために、魔法少女の話(本題)に入ることにした。

 「で、先ずは何を話してくれるんだ?」

 「まず、私たちの使う魔力について、あなたは魔力をどう回復させると思う?」

 「そりゃ、宿屋に休んだり、飯食ったりして回復させんのか?」

銀時は魔力の回復のさせ方をRPGゲームに出てくる『お約束』を例に挙げたが、ほむらは首を横に振って否定した。

 「違うわ、魔女を倒すとき『グリーフシード』と呼ばれる魔女の卵を落とすことがあるの、最もこれは当たりはずれと同じように持っているか持っていないのかの運次第なものよ」

 「まるで博打だな、下手したらそのグリーフシード? ってもんを巡って魔法少女どうし奪い合いになるんじゃねーのか?」

 「えぇ、グリーフシードの奪い合いは必ず起こると考えてもいいわ、場合によっては殺し合いに発展しかねないのよ」

 だんだん雲行きが怪しい話の一端を垣間見た気がした。

 銀時はグリーフシードについて質問した。

 「グリーフシードって、半永久的のものなのか? それとも消耗品なのか?」

 「前者と後者で答えるなら答えは後者ね、ソウルジェムは魔力を使うと穢れて色がくすむの、それをグリーフシードに穢れを移すことで魔力を使えるようにするといってもいいわ、グリーフシードが穢れをため込みすぎれば魔女が生まれてしまうの」

 「おいおい、何か怪しくなってきたんだけど、グリーフシードってやつにその穢れ? ってやつを移すほど魔女が生まれちまうのか?」

 銀時はグリーフシードについても危うさを感じていた。

 「穢れきったグリーフシードを浄化するのが、キュゥべえの役目なのだけれど・・・・・・」

 「キュゥべえってのは、何者(ナニモン)だ? それに、てめーはまどかのやろーを魔法少女にはさせねーってどうゆう意味なんだ?」

 「今はそのことは話せないわ、時が来れば話すと約束するわ」

 銀時はまどかを魔法少女にさせない理由を質問しようとしたが、ほむらは言いたくなさそうに断った。

 「そうかい、まぁ今は今日起こった出来事で疲れたし、教えないわけじゃなさそうだしな、それに無理に聞くほど野暮でもねーよ」

 銀時はソファーから立ち上がり、自分の部屋に向かうためにほむらの部屋から出ようとしたのだがーー

 「その前に、一つだけ聞かせてほしいの」

 ほむらに呼び止められた。

 「なんだ? 俺、部屋探さなきゃいけねーんだけど」

 「あなたは、何で私の話を聞いてくれたの? 普通なら、聞きたくないどころか関わりたがらないと思っていたから」

 「なんだよ、てめーが俺に話を聞いてほしいって言ったからだろーが」

 「答えて」

 銀時ははぐらかす様にほむらに答えたがほむらは納得していなかった。

 「まぁ、見ちまった以上、何が起こったか分からねえーし、どうころぶかわからねぇが、まぁ一応『先生』だからな、聞くことぐらいは出来らぁ」

 「そう」

 銀時はほむらにそう答えた、ほむらは少し納得はいかなくとも銀時の答えに納得することにした。

 

 銀時はほむらの部屋から出たあと、ほむらの隣の部屋が銀時の部屋だったのはまた違った意味で驚いていた。

 「俺の部屋はほむら(あいつ)の隣かよ」

 銀時は少しげんなりとした顔で自分の『部屋』に入ることにした。

 

 部屋は万事屋の部屋と同じようにはソファーとテーブルがあったぐらいである。

 「取りあえず飯はどうすっかな? 冷蔵庫に何かあったか?」

 銀時は冷蔵庫の中を確認することにした、中には卵や苺牛乳のパック、その他普通の食材があった。

 「取りあえず何とかなるな」

 銀時は冷蔵庫の食材を確認した後に、食器棚、調理棚のチェックで一通りにあることを確認したあと。

 「今日は遅せーし、なんか食べる気もねえ、取りあえず寝るか」

 銀時はソファーで寝ることにした。

 布団を探すのがめんどくさいという理由で、そのままソファーに沈んだ。

 

 ーーこのまま眠ったら、元の部屋に戻ったりしてな。

 

 銀時は、そんな願いともとれる期待を胸に、ソファーに沈んだ。




 取りあえずは、銀時が見滝原の町での住居はほむらのアパートにしました。

 銀時は見滝原市での住居はどこになるのか? 

 『エレファント速報』ではセリフでの小説だけだったので、思いつくのは中学校で泊まると考えたのですが、見滝原中学校の構造は教室と通路、屋上以外よく分からなかったので、思いついたのが、ほむらのアパートしかありませんでした。

 下手でごめんなさい、銀時のキャラがうまく再現できなくてすみません。

 ですが、出来ればこのままこのまま見届けてほしい、それが僕の願いです。
 
 


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社会見学するときは静かに Bパート

 今度はまどかの視点で書かせてもらいます。

 まどかから見た銀時の印象、と本編の改変をお楽しみください。


 銀時とほむらの二人と別れたまどかとさやか、マミとキュゥべえはショッピングモールから出ることにした。

 空気を入れ替えたかったのか、マミは自分が住んでいるマンションにまどかとさやか(二人)を招待することにした。

 「うわぁ」

 「素敵なお部屋」

 「一人暮らしだから遠慮しないで、ろくにおもてなしの準備もないんだけど」

 さやかは驚きの声で、まどかは部屋の感想が洩れた。

 マミの部屋はかなりの広さで、家具にはソファーや硝子の三角テーブルなどおしゃれと言える家具の配置が綺麗と言って差支えがなかった。

 

 マミは三人分の紅茶菓子を用意し、ティータイムをしながら二人に改装フロアで話したことをお浚いを兼ねて確認していた。

 「あの時、キュゥべえが言ってたように私は願いと引き換えに魔法少女になったの」

 そう二人に言いながら、マミはソウルジェムを見せた。

 「ソウルジェムはキュゥべえに選ばれた女の子が契約によって生み出す宝石よ」

 「あぁ、ショッピングモールで見せてくれた宝石ですね」

 ソウルジェムを見てさやかが思いだしたように確認した。

 さやかはあることを思い出してマミに尋ねた。

 「あの転校生も魔法少女ですよね? マミさんと同じ・・・・・・」

 さやかの問いにマミも肯定した。

 「そうね、間違いないわ、かなり強い力を持っているみたい」

 「でもそれなら魔女をやっつける正義の味方なんだよね? それがなんで急にまどかを襲ったわけ?」

 「彼女が狙ってたのは僕だよ、新しい魔法少女が生まれることを阻止しようとしていたんだろうね」

 さやかの疑問にキュゥべえが答えた。

 「なんで? 同じ敵と戦っているなら仲間は多い方がいいんじゃないの?」

 「それがそうでもないの、むしろ競争になることの方が多いのよね」

 「そんな・・・・・・どうして・・・・・・」 

 「魔女を倒せばそれなりの見返りがあるの、だから手柄の取り合いになってぶつかることもあるのよね」

 さやかの疑問に答えたマミの魔法少女の「手柄の取り合い」と言う内容にまどかは戸惑った。

 「つまりあいつはキュゥべえがまどかに声をかけるって目を付けてて、それで朝からあんなに絡んできたわけ?」

 「・・・・・・」

 まどかはさやかがほむらの行動への推測を立てたとき、ほむらの印象を思い返していた。

 

 

                      ***

 

 

 朝のホームルームのほむらが短い自己紹介を終えた時、まどかを見つめたことを思い出していた。

 まどかはほむらが向けてきた視線に戸惑っていた。

 不思議な雰囲気をまとった女の子として見ていたとき。

 

 「ごめんなさい、なんだか緊張しすぎたみたいで気分が・・・・・・保健室に行かせてもらえるかしら」

 「じゃあ、あたしが案内してあげる」

 「いえ、おかまいなく係の人にお願いしますわ」

 ほむらの周りに集まっていたクラスメイトの女子をそういって遠ざけた後にまどかの席に一直線に向かってきた時ーー

 「鹿目まどかさん、あなたがこのクラスの保健係よね」

 「えっ・・・・・・えっと、あの」

 「連れて行ってもらえる? 保健室」

 ほむらはまどかに保健室の案内を頼んできたことにまどか本人も戸惑っていた。

 そのあと、保健室に向かう通路で、ほむらと軽い話をしていた。

 「私が保険係ってどうして?」 

 「・・・・・・早乙女先生から聞いたのよ」

 「そっそうなんだ」

 まどかはなぜほむらは自分が保健係なのだと知ってるのかという問いに、自分の担任である早乙女和子の名前が出てきたので納得したのだがーー

 「えっと、保健室は・・・・・・」

 まどかは保健室の場所を話そうとした時にほむらは左に曲がっていた。

 「こっちよね」

 「えっ! う、うん。 そうなんだけど」

 「いや、だからその、・・・・・・もしかして場所、知ってるのかなって」

 ほむらが保健室の場所を知ってるような足取りにまどかは驚いていた。

 「・・・・・・」

 ほむらはその問いに沈黙していた。

 「あ・・・・・・、暁美さん?」

 「ほむらでいいわ」

 まどかはほむらを名字で呼ぼうとしたがほむら本人から下の名前で呼んでいいと言われたのには驚いていた。

 「あの、その、か、変わった名前だよね」

 「・・・・・・」

 「いや、だから、変な意味じゃなくて、その・・・・・・かっこいいなぁって思ったりして」

 ほむらの名前にいい印象を感じていると伝えようとしたまどかだったが、突然ほむらがまどかの方に後ろに方向転換してまどかの顔を見つめていた。

 まどかは、ほむらの視線に戸惑っていた。

 「鹿目まどか、あなたはーー」

 ほむらはまどかの名前を呼んだあとーー

 

 「自分の人生が尊いと思う? 家族や友達を大切にしてる?」

 

 ほむらはまどかに人生と家族、友人への質問を投げかけた。

 

 「わっ、私は大切だよ。 家族も友達のみんなも大好きでとても大事な人たちだよ」

 「本当に?」

 「本当だよ嘘なわけないよ」

 ほむらの質問にまどかは嘘偽りのない答えを返した。

 「そう・・・・・・もしそれが本当なら、今とは違う自分になろうだなんて絶対に思わないことね。さもなければすべてを失うことになる」

 「えっ!」

 ほむらは脅しとも、意味深ともとれる警告めいた言葉を告げていた。

 まどか自身、ほむらの言葉に困惑していた。

 「あなたは鹿目まどかのままでいればいい、今まで通りにこれからも」

 ほむらはそうまどかに警告めいた言葉を残して保健室に向かっていった。

 「・・・・・・」

 ほむらが言っていた言葉の意味にまどかはわからないまま立ち尽くしていた。

 そのあとはほむらの優等生っぷりを見ていた、数学の授業ですべての問題に答えたり、体育の授業で走り高跳びで県内記録バリの活躍を見せていた。

 

 ーーまどかへの視線を除けば。

 

 ショッピングモールでそのことを友人の美樹さやかと志筑仁美に話した後思いだしたことも話した。

 

 まどかは不思議な「夢」を見ていた、内容は覚えていないがどういうことなのかほむらが出てきたことも話していた、結果は友人の二人には笑われたが。

  

 そのあとにさやかからCD屋による話をしてまどかも付き合った後ーー

 キュゥべえの助けを求める声が聞こえてきて改装フロアにたどり着いて、傷ついたキュゥべえと魔法少女姿のほむらと出会ったり、そのあとにさやかが駆け付けた後に魔女の結界に迷い込み、巴マミに出会って今に至っていた。

 

 「まどか」 

 「あっ・・・・・・さやかちゃん」

 「なんかぼーっとしてたけど、大丈夫?」

 「ごめん、なんだっけ? 何か・・・・・・話してた?」

 「鹿目さん、坂田先生について聞きたいのだけど・・・・・・いいかしら?」

 まどかはほむらのことを考えふけったあまり坂田銀八の話をしていたのには気づいていなかった。

 

 「坂田先生・・・・・・か、ほむらちゃんと同時に来た教育実習に来た先生ぐらいしかわからなかったんです」

 「でも、転校生とマミさんが言い争いどころか、戦いに発展しそうになった時、キュゥべえに木刀が突き刺さっちゃったんですよね」

 「あの時は、鹿目さんの素質の話になった後であの状況になるなんて思いもみなかったわ」

 キュゥべえが木刀に貫かれてしまった事故のことを思い出したマミは口に出してあることを思い出していた。

 「そういえばキュゥべえが死んだとき、違うキュゥべえが出てきたのはどうして?」

 マミはキュゥべえの死体を食べたもう一体のキュゥべえが出てきた後のことを、そして思いだしたくない(グロテスクな)出来事を思い出していた。

 「あなたは、一人じゃないの?」

 「僕は、魔法少女の素養のある君たちを魔法少女にする存在だからね。僕一人でほかの女の子を魔法少女にはできないさ、僕たちはそういう風にできてるからね」

 キュゥべえのことを友達として接しているマミは「何も知らない」と実感させられてしまう。

 「キュゥベえは・・・・・・どうしてもう一人のその・・・・・・」 

 まどかはキュゥべえの処理(共食い)じみたあの行動を聞こうとしたが、いざ聞くとあの時の出来事に恐怖を覚えていた。

 「さっきも言ったように、僕は君たちと契約して魔法少女にする存在だ、僕が死んでも代わりの僕が君たちのような少女を魔法少女にするから僕のことは問題ないよ。ただ、代わりが居るといってももったいないからできれば・・・・・・」

 「お願い! それは聞きたくないし、思いだしたくもないから!!」

 キュゥべえの言わんとしていることをマミは察したためこれ以上聞こうとはしない判断を下していた。

 

 無意識に直感がささやいていた、これ以上聞けば自分の中の根幹にかかわる『何か』が壊れると告げていた。

 

 「は・・・・・・話がそれちゃったけど、ホント坂田先生は何者なんだろうね、キュゥべえが見えるなんて」

 さやかは話を戻すために坂田銀八のことを話すことにした。

 「キュゥべえ・・・・・・魔法少女の素養がある女の子以外にあなたが見えるって事はあるの?」

 まどかは銀八がキュゥべえが見えていたという話をキュゥべえ本人に聞くことにした。

 「それは、ありえないんだ・・・・・・何度も言うけど、僕の存在が見えるのはマミや暁美ほむらと言った魔法少女。そしてまどかとさやかと言った素養のある少女だけなんだ、男どころか成人に見えるなんてありえないんだ」

 「そ・・・・・・そうなんだ」

 まどかはキュゥべえでもわからないことだと納得することにした。

 教育実習に来た先生が何者なのかまだ分からないことだということが解っただけだった。

 

 「二人とも、私が提案していた魔女退治に付き合うって話覚えてるかしら?」

 マミは二人に魔女退治に付き合う話を思い出していた。

 「覚えてますよ、マミさん」

 「私も、あの時は転校生とマミさんが戦いを始めてしまいそうでおかしくなかったからどうしようかと思ってたから・・・・・・」

 まどかとさやか(二人)はマミの提案を思い出していた。

 改装フロア(あの場所)でのあの魔法少女同士の殺伐とした空気と銀八が起こしたハプニングで忘れていた。

 二人は熟考の末、マミの提案に乗ることにした。

 

 

                     翌日 鹿目宅

 

 

 まどかは母、鹿目詢子と洗面台で身だしなみなどを整えてるときに巴マミ(先輩)の家に呼ばれたことを軽めに話していた。母親にも一報入れるように注意されていた時、キュゥベえは桶の湯に浸かっていた、姿は母親には見えていなかった。

 

 (本当に人には見えないんだ)

 

 まどかは母親がキュゥべえの姿が見えていなかったことを確認していた。

 

 まどかは母親に『もしも魔法でどんな願い事でも叶えられたら?』と聞いたときに、母親が働いている会社の人間の人事の話をしていた、社長の隠居と役員二人の異動などの願いだった。

 

 まどかは「いっそママが社長さんになっちゃったら?」と話したら、詢子は野心の目を煌めかせていた、その時の目がまどかには怖かったのは言う間でもない。

 

 

                        通学路

 

 

 

 まどかは、さやかと仁美と一緒に登校していた。

 

 まどかは、仁美もキュゥべえの姿は見えていなかったのを確認していた。

 さやかも仁美がキュゥべえの姿が見えていないのをすぐに理解していた。

 

 仁美に至っては友人二人が内緒話をしていたため二人の関係が禁断の恋と勘違いして学校へと走り去っていた。

 まどかとさやか(友人二人)はキュゥべえを介してテレパシーで会話していただけであった。

 

 

                   見滝原中学校  教室 

 

 

 

 まどかとさやかはキュゥべえを連れてきた時にほむらに命を狙われていたためについてきてよかったのかとテレパシーで会話していたときマミがキュゥべえのテレパシー圏内にいたために、安心してほしいとの話をしていた。

 

 登校してきたほむらは変わらずまどかを見ていた。

 

 ちなみにホームルームで銀八が担当してきたとき、生徒達に『お前ら、一番有名な漫画の会社はなんだ?』と聞いていた、生徒たちは満場一致で『芳文社です』と答えた後、銀八はなぜかショックを受けていた。

 

 まどかは英語の授業で、自分が魔法少女になったときのイラストをノートに描いていた。

 

 

                   見滝原中学校  屋上

 

 

 「ねーまどか、願い事何か考えた?」

 「ううん、さやかちゃんは?」

 「あたしも全然」

 まどかとさやかは、魔法少女になる際での願い事の話をしていた。二人はまだ願い事は見つかっていなかった。

 「欲しいものもやりたいこともいっぱいあるけどさ、命がけってところでやっぱ引っかかっちゃうよね。そうするほどのもんじゃねーよなーって」

 「うん・・・・・・」

 さやかは二つの例を挙げつつも、命がかかってるために迷いを口にしていた。

 まどかもさやかの言葉に同意していた。

 

 「意外だなぁ、たいていの子は二つ返事なんだけど」

 キュゥべえに至っては願い事に迷いを感じていることに意外と感想を述べていた。

 

 「まあきっとあたしたちがバカなんだよ」

 「え~そうかな」

 「そう、幸せバカ。 別に珍しくなんかないはずだよ、命と引き換えにしてでも叶えたい望みってそういうの抱えてる人は世の中には大勢いるんじゃないのかな」

 「・・・・・・」

 「だからそれが見つからないあたしたちって、その程度の不幸しか知らないってことじゃん」

 

 さやかは、命がけでの願いの権利は自分たち以外ではたくさんいるだけでなく自分たちの知っている不幸を考えに入れていた。

 まどかはさやかの話に耳を傾けていた。

 「恵まれすぎちゃってバカになっちゃってるんだよ・・・・・・何であたしたちなのかな・・・・・・」

 さやかは願いの権利はなぜ自分たちなのかと疑問を感じていた。さやか自身は『幼馴染』(大切な人)のことを思い浮かべていたことはまどかはまだ知らなかった。

 「不公平だと思わない? こういうチャンス本当に欲しいと思っている人は他にもいるはずなのにね」

 「さやかちゃん・・・・・・」

 さやかの願いを叶える権利に疑問の話を聞いたまどかは言葉をなくしていた。

 

 すると二人に向かってくる足音がした、ほむらだった。

 「あっ」

 「・・・・・・」

 二人はキュゥベえを護るようにほむらの前に立った。

 

 (大丈夫)

 

 マミは屋上の塔から見ていたためテレパシーで二人を安心させていた。

 

 「昨日の続きかよ」

 

 「いいえ、そのつもりはないわ。 そいつが鹿目まどかと接触する前にケリを付けたかったけれど、それも手遅れだし」

 「で、どうするの? あなたも魔法少女になるつもり?」

 「私は・・・・・・」

 ほむらの問いかけに言葉を詰まらせるまどか、それを遮るようにさやかはーー

 「あんたなんかにとやかく言われる筋合いはないわよ」

 ほむらに言葉で切り返していた。

 「昨日の話憶えてる?」

 ほむらが廊下で言っていた昨日の話は魔法少女のことを指していたのなら、魔女の結界にとらわれたまどかには納得していた。

 「うん・・・・・・」

 ほむらに対してはそう返事するしかなかった。

 

 「ならいいわ、忠告が無駄にならないように祈ってる」

 ほむらは『昨日の話』のことをまどかに確かめた後、そう言って踵を返し学校の中へ戻ろうとしていた。

 「ほ、ほむらちゃん! あなたはどんな願い事をして魔法少女になったの?」

 ほむらはまどかに投げかけられた後、まどかを無言で見つめた。見つめたのは一瞬で再び校舎の中へと戻っていった。

 

 ほむらが屋上のドアを開けようとしたその時ーー

 

 「ここが、この学校の屋上か? ずいぶん広いなーオイ」

 

 先にドアを開けた人物がいた、教育実習に来た仮教師でなぜかキュゥベえが見える正体不明の男ーー

 

 「あ、お前ら・・・・・・何でここに居るんだ?」

 

 坂田銀八が学校の屋上に来ていたことに、まどかとさやかはもちろん、ほむらと屋上に待機していたマミにも予想外だった。

 




 今回長くなってすみません。

 次回からは予定変更でⅭパートを作らせてもらいます。

 まどかから見た銀八(銀時)の第一印象を少し書いた後に魔女退治の流れに持っていきたいと思います。

 今回の話は、たくさん書きたい話の流れがありすぎて文章が変な方向になってしまいました。
 
 投稿するときは、必ず短めに読みやすく書かせてもらいます。


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社会見学するときは静かに Ⅽパート

 最初は銀時のプチ視点です。

 そのあとで、まどかの視点へ戻って遂に本編パートの流れに入ります。


 

 銀時は珍しく早く起きていた、目が覚めると見知らぬ天井だった。

 

 「やっぱ、夢じゃねーのかよ」

 

 銀時は落胆の声でそうつぶやいた、昨日の夜眠気に誘われそのままソファーに眠っていた。

 今いる世界が夢で、元の自分の家(万事屋銀ちゃん)に戻ってるかもしれないと心の中で期待していた。

 でも、現実は今いる部屋が元の世界(江戸)ではなく違う世界の地球の見滝原の町で、三叉路のアパートで借りている教育実習生『坂田銀八』の部屋だった。

 

 「中学校行きたかねーよ、俺は教師じゃねーよコノヤロー」

 そうぶつくさ言いながら、銀時はソファーから起き上がった。

 

 銀時は食事の準備のため卵一個と皿を取り出しフライパンを温めた、今日の朝食は目玉焼きにすることにした。

 

 朝食を取り終えた後、銀時は学校へ向かう準備をするために着替えていた。

 その合間に寝室がどうなってるのか確認してみたら布団ではなくベッドだった。

 「余計に違う世界にいるって実感してきたよ・・・・・・」

 銀時はいつも布団で寝ていたために余計に自分の部屋が恋しく感じていた。

 一時期ある『呪い』で猫の姿へと変えられ、ボス猫とほかの野良猫とかかわっていったことがあった。 

 ほかにも『呪い』が原因で猫にされていたへっぽこテロリスト(ズラ)と警察責任者でありながらストーカー(ゴリラ)がマジモンのゴリラに変えられたことを知ったのにはかなりショックを受けていたことを思い出していた。

 そのあと、ボス猫とそのボス猫に恨みを持つ野良猫集団が猫型の天人にとらわれた後、紆余曲折の末にボス猫と野良猫たちを助け出した後に元の人間の姿へと戻ることが出来た。

 

 そんな事件を思い出すなんて銀時は自分らしくないと頭を横に振った。

 「新八ぃ、神楽ぁ、今頃どうしてっかなぁ~」

 また銀時は猫だったころ公園でつぶやいたセリフをまた吐いていた。

 

 銀時は無理やり中学校に行くことにした。元の世界に戻る為の手がかりが見つかるまで、『教師』をするしかなかった。

 

 

               見滝原中学校 教室 

 

 

 銀時は早乙女の指示でホームルームの担当をしていた、そのあとに信じられないものを見て一瞬ギクッと驚いていた。

 

 鹿目まどかの席に謎の生き物『キュゥベえ』がいたからだ。

 

 ーー何でここにテメーが居んのオオオォォォォォォォ!?

 

 銀時は昨日の出来事で事故でキュゥベえを死なせて(殺して)しまったため、思い出したくもなかった。

 

 ーーつーか、何で連れてきてんだテメェェェェェ!! テメーもこいつのグロイとこ見てんだろーが!! 

 

 銀時はまどかの方を見ていたがまどかは目を逸らしていた。

 

 ーーほかの連中は見えてねーのか!? 昨日の連中以外で俺だけが見えんのかよ!?

なんでだ!?

 

 銀時は教室の生徒達がキュゥベえの姿を見えていないどころか認識していないことに気付いていた。

 昨日の出来事でキュゥべえが見えるのは魔法少女と其の素質を持った少女たちであると思いだしていた。

 

 ーー俺が一時期オカマになってたからか!? ウイルスで性別変わって女になったからか!? ラブチョリスで頭いかれたからなのか!? 訳分かンネェェェェェェェ!?

 

 元の世界で巻き込まれた一連の騒動を思い出していたがどれも的外れなのだった。

 

 「あの・・・・・・坂田先生? 大丈夫ですか?」

 前列席の左側から三番目の席にいた中沢が心配になって声をかけていた。

 

 「あぁワリーな、今日朝礼は初めてなんでな。 折角だからてめーらに聞きたいことがあんだけど・・・・・・」

 

 生徒たちは一瞬ざわついた、聞きたいことって? と困惑していたのだが銀時が確かめたかったのは単純なものだった。

 

 「なあ、一番有名な出版社って何なのか教えてくんねーか? 漫画雑誌読んでるからてめーらがどんな出版社の漫画を読んでんのか気になってな」

 

 生徒たちは銀時の問いかけに一層困惑していたが、生徒たちはまるで常識でもあるかのように満場一致で出版社名を答えたーー

 

 『芳文社です』

 

 銀時は生徒たちの満場一致の答えにかなりのショックを受けていた。この世界に小学館や講談社、そして集英社は存在していなかった。

 

 銀時が担当したホームルームはそれで終わっていた。

 

 そのあとに早乙女からは銀時の生徒たちへの言葉遣いにかなり注意されていた。

 

 そのあとに銀時は昼食を食べるためにいい場所がないか下見に行くことにした。気分転換がてら校内を回ってみようとしていたからだ。

 

 「そういえば屋上は開放されてたって言ってたな、取りあえず行ってみっか」

 そうして、銀時は屋上へ向かう道へと向かっていった。銀時は、屋上の扉のドアノブに手をかけひねった。

 扉を開けて銀時は学校屋上に出てみたら、宗教的な造りをしていて据え置きのベンチがあった。そして何よりーー

 

 「ここが、この学校の屋上か? ずいぶん広いな―おい」

 銀時は屋上に関して感想を述べていた。しかし、その屋上には先客がいた。

 「あ、お前ら・・・・・・何でここに居るんだ?」

 先客は今教室に戻ろうとしていたほむらと、ベンチの前にいたまどかとさやか、そしてベンチにはキュゥべえがいた。

 

 

 

                       ***

 

 

 まどかは学校の屋上で銀八と出会うなんて思ってもみなかった。

 「せ、先生・・・・・・どうして屋上(ここ)に?」

 「あぁ、あんまり学校(ここ)の構造知らねぇからちょっと探検ってとこだが・・・・・・てめーらこそ何で屋上(ここ)に?」

 まどかは屋上で願い事の話をしていたことを伝えようとしていたがーー

 

 「坂田先生、私教室に戻りたいのだけれどいいかしら?」

 銀時はほむらが教室に戻ろうとして扉の前で立ち尽くしていたことに気が付いていた。

 「あぁ、ワリぃな邪魔しちまって・・・・・・」

 

 銀時はほむらの左側によけることにした。ほむらは銀時がよけたことを確認してそのまま屋上の扉に進み、教室へと戻っていった。

 「あいつとなんか話してたのか?」

 「あぁ、私たちが願い事の話をしていた時に、ほむらちゃんが来て魔法少女になるかならないかって聞かれた後でーー」

 「俺が来て今の状況になったってわけか・・・・・・」

 まどかの事情を説明して銀八は納得していた、まどか自身も銀八に聞きたいことがあったのを思い出していた。

 

 「坂田先生は願い事が叶うなら何を願いますか?」

 「願い事だぁ~? そりゃ金持ちになりたいし、女にもててぇし、甘い物たらふく食いてぇなんだけど・・・・・・」

 「あの、先生はキュゥべえが見えるのはどうしてですか?」

 「そこは俺も知らねーよ。教室でその生きモンがいるなんて思ってもみなかったし生徒じゃてめーら以外見えていなかったしな」

 銀八はまどかの質問に答えた後、さやかの質問にはよくわかっていないとしか答えるしかなかった。

 銀八が分かってることはほかの生徒達には謎の生き物(キュゥベえ)が見えていないことだけだった。

 「それより、俺ぁその猫ウサギに聞きてぇことがあんだけどよ・・・・・・」

 「なんだい、坂田銀八? 君の質問にも答えるよ」

 キュゥべえも銀八の質問に興味がある様子だった。

 「魔法少女って、辞めることは出来んのか?」

 銀時の質問は意外にも魔法少女を辞めることが出来るのかと言う至極まっとうな質問だった。

 「せ、先生・・・・・・それってどう言う意味?」

 さやかは銀八の質問の意味がよくわからなかった、何故魔法少女を辞める話をしたのかと、さやかは銀八に質問で返していた。

 

 「魔法少女ってやつは、俺が知っている限り敵の親玉をぶっ潰すまでが魔法少女の仕事だろ? でもよ、願い事を叶える代わりに魔法少女になって魔女ってやつと戦うんだろ? 魔女を多く倒せば願いが叶うのはわかるが、願いと引き換えに魔女と戦えっていうのが怪しくてな・・・・・・」

 

 まどかは銀八の質問にハッとしていた。 

 マミが言ってたことを思い出していた、「魔女との戦いは命がけだと」銀八は魔女を取りまとめる存在がいるのかどうかを質問していた。

 銀八はキュゥべえに対して契約を解除できるのかどうかを聞こうとしていた。

 まどかは銀八の言葉に耳を傾けたが銀八は的外れの話をした。

 「それによ、魔法少女が成長したら魔女になんじゃん。 下手したら魔法熟女になってしまうんじゃね?」

 銀八の的外れな話にまどかとさやかは屋上で、そしてマミは屋上より高い塔でずっこけていた。

 「ちょ、ちょっと先生何言ってんの!? 魔法少女が何で魔女になるって話になんのさ!! ってゆうか魔法熟女って何!?」

 さやかは銀八の的外れの話に突っ込みを入れた、流石に今の話は希望どころか夢を破壊しかねない気がしたからだった。

 「いやだってお前ら、魔法少女が大人になるって言ったら、呼び名が変わって魔女になんじゃん。その魔女が年取ったら熟女かばあさんじゃん、いつまでたってもお前らは魔法少女って名乗れんのかよ?」

 銀八の話は魔法少女に憧れる女の子の夢を文字通り砕きにかかっているように思えたからだ。

 「やめてくんない、その話!! 夢が砕けるから!! 魔法少女に憧れる女の子の夢を砕きに掛からないでくれない!?」

 さやかは銀八のボケか本気か分からない話に突っ込みを入れていた。

 まどかは空気を換えるためにキュゥベえに質問の答えを聞くことにした。

 

 「ど、どうなの? 今の話?」

 キュゥベえの結論はーー

 「先ずは魔法少女は契約した時点で辞めるどころか契約を解くことはできない、一生魔女と戦い続けることになるからね。次に魔女には統括する存在はいないよ、ただ呪いを振りまく存在だからだ。そして最後に、魔法少女は成長して魔女になることは無いよ、魔法少女が成長すれば魔力も弱くなってしまうだけだからね」

 

 銀八の質問はあながち間違いではなかった。

 まどかとさやかはキュゥべえの話にかなり動揺していた。

 なぜか、キュゥベえの受け答えが機械的に感じたのはどういうことなのか分からなかった。

 

 「おいおい、魔法少女になってくれって頼んどいて、契約を解除できねーってどういうわけだ? 一方通行にもほどがあんろーが」 

 「一生契約を解除することは出来ない、それは願いを叶えるか叶えないかの二つだけだよ。訳が分からないよ」

 

 「先生、先生が私たちのことを案じて聞いてくれたのはありがたいけど、願いに関しては私たちの問題だから・・・・・・」

 さやかは変な方向に向かおうとしている話に耐えられず銀八に感謝をしつつも願いに関しては本人の選択だからと言って終わらせる言葉を告げていた。

 

 まどかとさやかはキュゥべえを連れて教室へと戻っていった。

 

 銀八は二人と一匹の後ろ姿を見送ってなぜか胸騒ぎを覚えていた、このまままどか達をキュゥべえと関わらせない方がいいのではないのではと、『元の世界』(江戸)で『世界規模の大事件』に関わったことがある一種の直感が働いていた。

 

 ちなみに放課後は仁美は友人二人がなにか内緒にしていることを知ったため、また勘違いをしてそのまま走り去っていった。

 

 

 

                       ***

 

 

 

 まどかとさやかはマミと一緒にショッピングモールの喫茶店で魔法少女体験コースを受ける話でマミから準備のほどを聞かれていた。

 さやかは金属バットを準備していた。

 まどかは授業中、自分を含めた魔法少女の衣装のイラストを二人に見せたら二人は大笑いしていた。

 

 

 ショッピングモールの駐車場でマミは、魔女の探し方を二人に教えていた。

 

 「基本的に魔女捜しは足頼みよ。こうしてソウルジェムが捉える魔女の気配をたどっていくわけ」

 「意外と地味ですね・・・・・・」

 さやかは魔女の探し方をそう溢した。 

 

 公園から橋まで歩き続けた三人は魔女の気配を追い続けていた。

 魔女の反応はそうそう見つからなかった。

 「光、全然変わらないっすね」

 「取り逃がしてから一晩経っちゃったからね、足跡も薄くなってるわ」

 「あのときすぐ追いかけていたら・・・・・・」

  まどかは昨日のマミが魔女を追いかけていたらとマミに話したがーー

 「仕留められたかもしれないけれどあなたたちを放っておいてまで優先することじゃなかったわ」

 マミ本人は否定していた、二人の安全を優先しての行動だった。

 

 「・・・・・・ごめんなさい」

 「いいのよ」

 まどかはマミに謝罪したがマミ自身気にしていなかったためすんなり許していた。

 「やっぱりマミさんは正義の味方だ! それに引き換えあの転校生、ホンットむかつくな~」

 さやかはマミを称賛したが、その一方でほむらのことをよく思わない発言をしていた。

 (本当に悪い子なのかな・・・・・・)

 まどか自身はほむらを悪く思えなかった。

 

 「ねえマミさん、魔女がいそうな場所せめて目星ぐらい付けられないの?」

 さやかはマミに魔女がいそうな場所を特定できないか尋ねていた。

 マミはさやかの質問に具体的に多い場所(魔女が人を殺しやすい場所)を例を挙げていた。

 「魔女の影響で割と多いのは交通事故や傷害事件よね。だから大きな道路や喧嘩が起きそうな歓楽街は優先的にチェックしないと、あとは自殺に向いていそうな人気のない場所、それから病院とかに取りつかれると最悪よ。ただでさえ弱っている人たちから生命力が吸い上げられるから、目も当てられないことになる」

 マミは魔女が結界を張り易そうな場所を大まかに上げた後ソウルジェムが強い輝きを放っていた。

 魔女の気配に近づいていた証拠だった。

 

 「・・・・・・かなり強い魔力の波動だわ」

 「「・・・・・・」」

 マミの言葉に二人には緊張が走っていた。

 

 反応を辿ると廃墟にたどり着いていたその時ーー

 

 「間違いないここよ」

 マミが魔女を発見したときさやかが声と荒げて叫んでいた。

 「マミさんあれ!!」

 「はあっ!」

 廃墟の屋上から人が飛び降りていた、すぐさまマミは魔法少女に変身して魔法で生み出したリボンで飛び降りた女性を救出した。

 

 マミは救出した女性の首元を確認したところある印を確認していた。

 「魔女の口づけ・・・・・・やっぱりね」 

 「この人は・・・・・・」

 まどかは女性の安否をマミに尋ねた。

 「大丈夫、気を失ってるだけ。 行くわよ!」

 

 魔女がいる廃墟に足を踏み入れた三人は慎重に歩を進めていた。マミのソウルジェムが魔女の魔力をとらえた時に、魔女の結界の入り口にたどり着いていた。

 「!」

 

 「今日こそ逃さないわよ」

 マミは結界の中に入る前にさやかのバットに魔力を送ったため変形して魔力を帯びた魔法のバットへと変わっていた。

 「すごい」

 「わっ」

 二人は魔法の応用でバットの変形に驚いていた。

 「気休めだけどこれで身を護れる程度の役に立つわ、絶対に私のそばを離れないでね」

 「はい!」

 マミは魔女の結界に突入する前に二人に声掛けした後まどかは返事を返していた。

 三人はそのまま魔女の結界に突入していった。 

 

 その様子を一人の少女が見つめていることに三人はまだ気付いていなかった。

 

 

 

                      ***

 

 

 

 結界内には使い魔達が大量にいた、進むにつれ違うタイプの使い魔が小鳥のさえずりの警戒音を発していた。

 「わっ来んな!」

 進めば進むほど使い魔の襲撃は徐々に増えていった、さやかは魔法のバットで襲撃してきた使い魔たちを返り討ちにしていた。

 

 「どう恐い? 二人とも」

 「なっ何てことねーって!」

  

 マミは二人の恐怖心を確認していたがさやかは強がりで答えた。

 

 結界内に進み続けて三人は一度立ち止まった。マミは使い魔を目視していたためマスケット銃を召喚、狙撃したあと次の使い魔をマスケット銃でスウィングしていた、マスケット銃の構造上一発しか打てない制約があるために接近戦では銃身を打撃武器の代用にしていた。

 「うわっ!」

 二人の背後から大量の使い魔が襲ってきたがマミが救援のため蹴散らしていった。

 二人の無事を確認したマミは笑顔で安心させていた。

 「恐いけど、でも・・・・・・」

 まどかはマミがかっこよく戦っている姿に見とれていた。

 

 「がんばって、もうすぐ結界の最深部だ」

 キュゥべえの警告に気を引き締める三人、最深部目前に使い魔の群れが最深部に到達させまいと立ちふさがるも、マミがマスケット銃を6丁召喚して一斉掃射していた。

 使い魔を倒した瞬間、最深部の入り口が開かれていた。

 

 最深部にたどり着いたマミは二人に魔女の姿を見せた。

 

 「見て、あれが魔女よ」

 

 魔女は人間の女の姿をした存在かと思われていたが、実際、目の前の魔女は解け落ちたコケの頭部に薔薇がちりばめられ、背中に蝶の羽が生えている異形の怪物の姿だった。

 

 「うわっ、グロい・・・・・・」

 「あんなのと・・・・・・戦うんですか?」

 

 さやかは初めて見る魔女の姿に嫌悪感を溢していた、まどかはマミに目の前の怪物と戦うのかと質問していた。

 マミ本人は余裕の表情と安心させる言葉を投げかけた。

 

 「大丈夫、負けるもんですか」

 

 マミは魔女に目を見据えて魔女の庭に飛び降りた。

 

 「下がってて」

 

 マミはスカートからマスケット銃を落とす様に召喚したが、魔女は強大なソファーをマミ目がけて投げつけた。

 マミは巨大な凶器(ソファー)にマスケット銃を掃射して破壊した。

 

 続けざまにマミは帽子を脱いで数丁のマスケット銃を召喚して魔女を狙撃していたが、魔女の横にそれて背後の壁に当たっていた。

 「ん?」

 マミは次のマスケット銃で狙撃しようとしたのだが、足元に小型の使い魔がいつの間にか現れて足を押さえつけられていた。

 「あ!」

 その隙を魔女が見逃すはずもなく触手でマミをとらえ壁にたたきつけた。

 

 「ううっ・・・・・・」

 

 マミが痛みで声をもらしていた、その様子にさやかがたまらずに声を上げた。

 

 「マミさぁあん」

 魔女はもう一度マミを叩きつけようとするがーー

 

 「大丈夫、未来の後輩にあんまり格好悪いとこ見せられないものねっ!」

 そういった瞬間、魔法のリボンが地面に突き刺さり魔女を絡めとって拘束した。

 「惜しかったわね」

 

 マミは首に縛っていたリボンを取り外して魔女の触手を切り、大型のリボンを生み出し、リボンを大型大砲型のマスケット銃を作り出して魔女に一撃を打ち込んだ。

 

 「ティロ・フィナーレ!」

 「ギィィー」

 止めの一撃のもと魔女は断末魔を挙げた。

 

 マミは華麗に地面に着地して紅茶を飲んで一息つけた後に二人の方に振り向いて笑みを浮かべた。

 

 「すごい・・・・・・」

 「か、勝ったの?」

 マミの勝利に二人は歓喜した後、結界がゆがんでいき元の現実空間に戻っていた。

 「あっ」

 「! わっ戻った」

  

 マミは変身を解いた後、数歩進んで床にしゃがんだ後何かを拾い上げ二人に見せた。

 

 「これがクリーフシード、魔女の卵よ」

 

 魔女の卵の外観は下部は針状になっておりそれが下になって直立しており、本体は球状、上部は何かの紋章になっていた。

 

 「た、卵・・・・・・」

 「ときどき魔女が持ち歩いていることがあるの」

 まどかは『魔女の卵』と聞いておびえていたがキュゥべえがある補足をした。

 「大丈夫、その状態では安全だよ、むしろ役に立つ貴重なものだ」

 

 マミは持っていたグリーフシードと一緒にソウルジェムを取り出していた。

 「私のソウルジェム、ゆうべよりちょっと色が濁ってるでしょ?」

 マミはソウルジェムの輝きを二人に見せた。

 「そういえば・・・・・・」

 さやかはマミのソウルジェムの色が輝く黄色だったのを思い出しながら、現在の色を見比べたら確かに黄色が深い色の黄色い輝きになっていた。

 「でもグリーフシードを使えば」

 「あっきれいになった」

 グリーフシードにソウルジェムの濁った色が移ったために魔法少女の証が輝きを取り戻していた。

 マミはグリーフシードの説明を続けた。

 「これで消耗した私の魔力は元通り、前に話した魔女退治の見返りっていうのがこれ」

 マミの説明で二人は『魔法少女の見返り』に納得していた。

 すると、マミは暗がりの場所でグリーフシードを投げた、その時手でキャッチする音が響いた。

 グリーフシードを受け取った主はほむらだった。

 「あと一度ぐらいは使えるはずよ、あなたにあげるわ暁美ほむらさん」

 「あっ!?」

 さやかはほむらの姿を見て驚いていた。

 「あなたの獲物よ、あなただけの獲物にすればいい」

 ほむらはそう言ってグリーフシードをマミに投げ返した。

 「そう・・・・・・それがあなたの答えね」

 マミはグリーフシードを返したほむらの答えを『なれ合うつもりはない』と解釈した。

 ほむらそのままその場に去っていった。

 「く~っやっぱり感じ悪いヤツ!」

 「仲良くできればいいのに・・・・・・」

 「お互いにそう思えればね」

 三人はほむらの印象と態度をそれぞれ話していた。 

 

 その後魔女に操られていた女性の安否を確認ししていた。

 「ここは・・・・・・あれ?私は・・・・・・」

 「大丈夫、もう大丈夫です」

 女性は混乱していたがマミが安心するよう言葉をかけていた。

 「一件落着って感じかな」

 「うん」 

 まどかとさやかはその様子を見て安堵感に包まれていた。

 

 

                 深夜    まどか宅

 

 

 まどかは自室の机でノートに描いた魔法少女の衣装に色を付けていた、その間に今日の出来事に思い馳せていた。

 

 (叶えたい願いとか私には難しすぎてすぐには決められないけれど、でも人助けのためにがんばるマミさんの姿がとても素敵で、こんな私でもあんな風に誰かの役に立てるとしたら、それはとっても嬉しいなって思ってしまうのでした)

 

 まどかはノートに描いた衣装のイラストに色付けを終えた後に満足感に浸っていた、だがまどかはふと、あることを思い出したいた。

 

 (でも、あの時のほむらちゃん、何かを聞きたがっていた気がしていたのは気のせいなのかな?)

 思い出していたのは魔女を倒したあとに、現れたほむらは立ち去る前に一瞬何か聞きたがっていた様子だった。

 

 このときまどかはある運命の分岐点が破壊される瞬間を目撃するなんて、このときはまだ知る由もなかった。

 

 

 




 ようやく書き終えましたが、また文章が長くなりました。

 読みにくく感じるかもしれませんがお付き合のほどお願いします。
 
 これでようやく第三話にすすむことが出来ます。

 さあ、マミの運命が砕かれることが出来るのか?
 
 括目してください。


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もう何も怖くない 編
仕事の確認は最後まで Aパート


 運命の分岐点の一つマミ死亡ルート、銀時は運命を変えることが出来るのか?

 必見です。

 Aパートはさやか視点で、その次にまどか視点、その最後にマミとほむらの会話シーンの中に銀時が現れる流れになっております。


                

 

 

                     病院   病室

 

 「・・・・・・」

 美樹さやかは病室前で心臓を高鳴らせていた。

 自分の想い人が入院している病室に入る前に気持ちを落ち着かせるために少し間を置いて深呼吸しーー

 「よしっ」

 

 病室に入るとベッドで休んでいる幼馴染の少年がいた。

 少年の名は上條恭介、さやかの幼馴染で見滝原中の男子生徒でヴァイオリニスト志望ーーなのだが、今年の春に交通事故に遭ってしまい、それ以来入院している。

 

 「わぁ・・・・・・!」

 

 さやかは恭介にcgショップで見つけたヴァイオリニスト奏者「ダヴィット・オイストラフ」が演奏しているCDを渡していた。

 

 「いつも本当にありがとう、さやかはレアなⅭⅮを見つけてくる天才だね」

 「えっ、そんな運がいいだけだよ」

 恭介にCDのお礼を述べるとともにさやかをほめていたのだが、さやは本人は謙遜していた。

 「この人の演奏は本当にすごいんだ、さやかも聞いてみる?」

 (ええ~っ)

 恭介の誘いにさやかは戸惑いつつも誘われるがままにCDの演奏を聞くことにした。

 CDに収録されているヴァイオリンの演奏に耳を傾けながら、さやかはある思い出に浸っていた。

 その思いでは、幼稚園の時、恭介がヴァイオリンの全国大会に出ていた時の演奏がきれいだったのと、その姿がかっこよく、目を奪われていた。

 

 さやかがその思い出に浸っていたときーー

 

 「・・・・・・っく、うっ・・・・・・」

 

 すすり泣く声がした、その声の主に気が付いたさやかは声の主の方へ顔を向けるとーー

 

 「・・・・・・・・・っ」

 「・・・・・・」

 恭介の頬に涙が伝っていた、さやかは恭介の姿を見て何も言えなかった。

 

 

                      ***

 

 

 

 マミは大型マスケット銃を召喚した後必殺技を使い魔にはなった。

 「ティロ・フィナーレ!!」

 

 砲撃が命中した後、使い魔の体は複雑な方向へ回転し続けて消滅していった。

 それにつられて、結界も消滅したのを確認したあとマミはマスケット砲を消した。

 

 まどかとさやかはマミの戦いぶりに目を奪われていた。

 「いやー、マミさんはかっこいいねえ!」

 

 変身を解いていたマミはさやかに注意を促していた。

 「もう見世物じゃないのよ、危ないことをしているって意識は忘れないでおいてほしいわね」

 「いえ~すっ」

 さやかは調子よさそうに返事をしていた、そのあとまどかはあることに気付いていた。

 「あっ、グリーフシード落とさなかったね」

 まどかの疑問にキュゥべえが答えた。

 「今のは魔女から分裂した使い魔でしかないからね、グリーフシードは持ってないよ」

 「魔女じゃなかったんだ・・・・・・」

 「なんかここんところハズレだよね・・・・・・」

 二人は、使い魔と知って安堵めいた話をしていたがーー

 「使い魔だって放っておけないのよ、成長すれば分裂元と同じ魔女になるから」

 マミはそう否定して二人を諭した。

 

 「二人とも何か願い事見つかった?」

 

 「う~~ん・・・・・・まどかは?」

 「・・・・・・う~~ん」

 さやかは見つかっていない様子の素振りの後、まどかに尋ねた、マミは微笑みながらまどかの方を見ていた。

 

 「まぁ、そういうものよねいざ考えろって言われたら」

 マミは急かしていることに少し反省していた。

 「マミさんはどんな願い事をしたんですか?」

 まどかはマミにどんな願い事をしたのかと聞いた後、マミは立ち止まった。

 「・・・・・・」

 長い沈黙が流れた、質問をしたまどかは聞いてはいけないことを聞いたと感じた。

 「いやあの、どうしても聞きたいってわけじゃなくて・・・・・・」

 「私の場合は・・・・・・考えている余裕さえなかったってだけ」

 まどかは今聞いたことを取り消そうとしたがマミ自身、自分の過去を思い出していた。

 家族でドライブ中に起こった事故(世界の終わり)を思い返してマミはまどかに言葉を投げかけた。

 「・・・・・・後悔しているわけじゃないのよ、今の生き方もあそこで死んじゃうよりはよほどよかったと思ってる」

 マミの言葉に『死』の言葉が出た時、二人は命の危機に瀕していたことを理解した。

 二人はマミの言葉を静かに聞いた。

 「でもね。ちゃんと選択の余地がある子には、きちんと考えた上で決めてほしいの、私にできなかったことだからこそね」

 マミの話を聞き終えた二人、そのあとにさやかはある質問をした。

 

 「ねぇマミさん・・・・・・願い事って自分のための事柄じゃなきゃ駄目なのかな?」

 「え?」

 「たとえばーーたとえばの話なんだけどさ、あたしなんかよりよほど困っている人がいて、その人のために願い事をするのはーー」

 さやかの願い事を他人にために願うことを聞いてまどかは思い当たる人物を浮かべて質問した。

 「それって上條君のこと?」

 「た、たとえ話だって言ってるじゃんか!」

 さやかのたとえ話を聞いてキュゥベえが前例の話を持ち出して答えを告げた。

 「べつに契約者自身が願いの対象になる必然性は無いけどね、前例もないわけじゃないし・・・・・・」

 キュゥべえの前例の話を聞いて、マミは即座に否定した。

 「・・・・・・でも、あまり感心できた話じゃないわ、他人の願いをかなえるのなら、なおのこと自分の望みをはっきりさせておかないと」

 マミはそこで言葉を区切りーー

 

 「ーー美樹さん。あなたは彼に夢を叶えてほしいの? それとも彼の夢を叶えた恩人になりたいの? 同じようでも全然違うことよこれ」

 マミはさやかに忠告を交えて諫めた。

 「・・・・・・」

 さやかは言葉に詰まっていた、そのあとに出てきた言葉はーー

 「・・・・・・その言い方は、ちょっとひどいと思う」

 小さな怒りと悲しみが混じった、反発の言葉だった。

 「ごめんね、でも今のうちに言っておかないと、そこをはき違えたまま先に進んだら、あなたきっと後悔するから」

 さやかの言葉を聞いて、マミは言い過ぎたと反省交じりにさやかを優しく諭した、さやかはマミの言葉の真意を少し思考し、自分にために厳しめの口調で話したと気づいた。

 「・・・・・・そうだね、あたしの判断が甘かった。ごめん」

 マミはさやかの言葉を聞いて安心した後に、願い事の話に戻っていた。

 「やっぱり難しい事柄よね、焦って決めるべきじゃないわ」

 「僕としては早ければ早いほどいいんだけど」

 キュゥべえはぼやくように急かした。

 「駄目よ、女の子を急かす男は嫌われるぞ」

 マミはキュゥベえに笑いながら諫めた。

 まどかは、その光景にほっと胸をなでおろすかのようにほほ笑んだ。

 

                       

                         ***

 

 

 まどかは部屋のベッドに寝転がって願い事について悩んでいた。

 「・・・・・・やっぱり簡単なことじゃないんだよね・・・・・・」

 キュゥべえに願いについてそう話していた。

 「僕の立場でせかすわけにはいかないしね、助言するのもルール違反だし」

 キュゥべえも契約を結ぶ立場としては中立を貫いている姿勢のため多くは言わなかった。

 「ただなりたいってだけじゃ駄目なのかなぁ・・・・・・」

 「まどかは力そのものに憧れているのかい?」

 「そんなんじゃなくて・・・・・・そうなのかな?」

 キュゥべえの方を向いてそう語ったまどかは言葉を続けた。

 「私ってどんくさいし、何の取り柄もないし、だからマミさんみたいにかっこよくて素敵な人になれたら、それだけでもう十分に幸せなんだけど・・・・・・」

 まどかの話を聞いてキュゥべえはあることを告げた。

 「まどかが魔法少女になれば、マミよりずっと強くなれるよ」

 「え・・・・・・?」

 まどかはキュゥべえの言葉に耳を疑っていたが、キュゥべえは言葉をさらに続けた。

 「もちろんどんな願い事で契約するかにもよるけれど・・・・・・まどかが生み出すかもしれないソウルジェムの大きさは僕にも測定しきれない、これだけの素質を持つ子と出会ったのは初めてだ」

 

 まどかはキュゥべえが語った自身の素質の話で、あることを思い出していた。

 改装エリアで魔法少女のほむらと遭遇、魔女の結界の中でさやかとともに迷い込んでマミに助け出された後、ほむらとマミが『殺し合い』に発展しかねない空気を作り出したきっかけ、まどか自身の『魔法少女の素質』であることを、まどかはキュゥべえに質問しようとした。

 

 「ねぇ、それって・・・・・・」

 

 キュゥベえに素質の話を聞こうとした時ーー

 

 「まどか起きてるのか?」

 まどかの父、鹿目知久がまどかを呼ぶ声で質問が言えなかった。

 「うん? どうしたの?」

  まどかは知久を探して玄関に向かうと、まどかの母、鹿目詢子が玄関でお酒で酔っ払って帰ってきたため玄関でダウンしていた。

 「あーまたか・・・・・・まったくもう」

 「み、水・・・・・・」

 詢子は時折酔って帰ってくるため、まどかには見慣れていた。

 詢子本人に至っては水を求めていた。

 

 

 

 

                         ***

 

 

 

 

 まどかは詢子を寝室に知久と共に運んだあとダイニングで二人はくつろいでいた。

 「なんでママはあんなに仕事が好きなのかな、昔からあの会社で働くのが夢だったーーなんて、ないよね?」

 まどかは知久に自分の母親がなぜ仕事が好きなのか尋ねた。

 しかし、知久は違う答えをまどかに話した。

 「ママは仕事が好きなんじゃなくてがんばるのが好きなのさ、嫌なことも辛いこともいっぱいあるだろうけど、それを乗り越えた時の満足感がママにとっては最高の宝物なのさ」

 まどかは静かに父の話を聞いていた。

 知久は話を続けたーー

 「そりゃ会社勤めが夢だったわけじゃないだろうけどさ、それでもママは自分の理想の生き方を通している、そんな風にして叶える夢もあるんだよ」

 「・・・・・・生き方そのものを夢にするの?」

 まどかは知久にそう尋ねた、知久は詢子のことを話し続けた。

 「どう思うかは人それぞれだろうけどーー僕はねママのそうゆうところが大好きだ、素晴らしい人だってね」

 「・・・・・・うん」

 まどかは父の母の長所と生き方が好きだと言ったことに同意していた。

 

 

 

                       

                    ***

 

 

 

 深夜、マミは魔女捜しで公園に足を運んでいたが、ソウルジェムに魔女の反応がなかったためソウルジェムを指輪に戻した後、周りを見渡していた。

 

 「分かっているの? あなたは無関係な一般人を危険に巻き込んでいる」

 マミは背後から聞こえる声の方に向けると、暁美ほむらともう一人。

 「おいおい、中学生が夜遊びしてていいのか? 先公に見つかったら補導もんだぞコノヤロー」

 坂田銀八がいた。

 「前にも言ったけど彼女たちはキュゥべえに選ばれたのよ、もう無関係じゃないわーーってゆうより何で坂田先生がいるんですか!? あなたこそ、一般人巻き込んでるじゃない!!」

 マミはほむらに最初はまどかとさやかを巻き込むことに反対していたがそのあとに銀八がそばにいたので思わずツッコんでいた。

 

 「彼もキュゥべえが見えていたから、私が魔法少女のことを話したのよ。彼もあなたの言うように巻き込んでるのは確かよ、でも・・・・・・」

 

 「こいつから、おめーがまどかとさやか(あの二人)を危ネー魔女退治見学させてると聞いてつい来たんだ、仮にも俺ぁ~『先生』・・・・・・何でな」 

 「そ、そう・・・・・・」 

 マミは最初はほむらが銀八を連れてきたと思ったが、銀八自身の意思と聞いたので戸惑っていたがマミは銀八を少し警戒していた。

 改装フロアのキュゥべえ(お友達)を事故で死んでしまっていこう、銀八に対してはどうしても警戒態勢に入っていた。

 

 「あなたは二人を魔法少女に誘導している、何よりもあなたはキュゥベえが死んだ時ーー」 

 ほむらはキュゥべえが死んだあとに寸分たがわないもう一匹のキュゥべえのことを話そうとしたがーー

 「キュゥベえからはそのことを聞いたけど、あまり思い出したくないの! たとえまた代わりが出てきたとしてもキュゥべえを私は友達として接し続けられると思ってるわ!」

 マミはキュゥべえが死んだ後に出てきたキュゥべえの話を理解していても、あの共食い(グロテスクシーン)を思い出したくないと言わんばかりの態度であった。

 

 「私は彼女を・・・・・・鹿目まどかを契約させるわけにはいかない、そのためだったら私は何度もキュゥべえを殺しつくすわ」

 ほむらはどんなことをしてもまどかを契約させない覚悟だった。

 

 「キュゥベえは殺させない、私からはあなたの言葉は自分より強い相手は邪魔者と考えるいじめられっ子の発想にしか聞こえないわ」

 マミ自身キュゥべえを殺させないと一歩も引かなかった。

 マミはその気になれば何時でも臨戦態勢を取ろうした時ーー

 

 「おいおい、何ですかこれは? バトル漫画の空気になってんだけど?」

 坂田銀八の声にさえぎられた。

       

 「坂田先生邪魔しないでください、これは私と彼女の問題です、ですから先生はーー」 

 「引っ込んでろ・・・・・・ってか? 俺だってそうしてーが、お前らこの空気じゃ殺し合いしかねねーだろ?それに、俺ぁテメーに聞きてぇことがある」

 銀八はマミに聞こうとしたことがあった。

 「なんですか?」

 マミは銀八の話を聞くことにした、ほむらも何を聞くのかと耳を傾けていた。

 「なんでおめ~は魔女退治の見学を考えた?」

 「それは魔法少女と魔女の戦いとはどういうことなのかを教えるために、私が考えたものです。私は考える余裕が無かった状況での契約でした。でも、あの二人にはまだ選択肢があります、だから・・・・・・」

 マミの話を聞いて銀八は大かた理解していたが、ある確認をしようとした。

 「そうかい、おめーも相当苦労したってわけか。だがもし、あの二人が魔法少女に成った時、おめー背負えんのか?」

 「え?」

 「あの二人を背負えんのか?」   

 マミは銀八の『二人を背負う』と言う言葉の意味が分からなった。  

 「“人の一生は重き荷を負うて遠き道を行くが如し”昔なぁ徳川田信秀っていうおっさんが言ってた言葉でな・・・・・」

 

 「誰よ、そのミックス大名!徳川家康よね家康!」

 

 ほむらが銀八のミックス大名に突っ込みを入れたが、銀八は構わずに続けた。

 「最初に聞いた時は何を辛気くせーことをなんて思ったが、なかなかどーして年寄りの言うこたぁバカにできねー、荷物ってんじゃねーが誰でも両手に大事に何か抱えてるもんだ、だがかついでる時にゃ気づきゃしねー」

 マミとほむらは銀八が何を言おうとしてるのかまだ分からなかったが次の言葉にを聞いた時、銀八の真意を知った。

 

 「その重さに気づくのは手元から滑り落ちた時だ、おめーその二人(荷物)を背負えんのか?」

 マミは銀八の言いたいことを理解した、もしまどかとさやかが魔法少女に成るということは二人の命を背負うだけじゃない、二人の人生と未来と繋がりをも背負うことを意味していた。

 

 荷を落とすと言うことは、二人の命と繋がりを永遠に失う言うことと同じだった。

 ほむらはマミにあることを告げて話を終わらせようとしていた。

 「巴マミ、私はあなたとは戦いたくはないのだけれど」

 「なら二度と会うことがないよう努力してって言いたいけれど、あなたとは長い付き合いになりそうな気がするわね」

 マミは少しだけほむらに警戒しながら長い付き合いになると感じたのか、そう告げた後、銀八の方に顔を向けーー

 

 「坂田先生、私はあの二人に魔法少女に成るように誘導してるつもりはありません。あくまであの二人の自主性に任せています。ですが、もう少しだけ先生の言葉を考えてみます」

 

 そう告げてマミは二人の前から去っていった。

 

 銀八はアパートに帰ろうとしたがーー

 「待って」

 ほむらに呼び止められた。

 「んだよ、俺帰りてーんだけど」

 「帰る方向も場所も同じでしょ? 私はあなたに聞きたいことがあるの」

 「聞きたいこと?」

 「あなたは屋上で鹿目まどかと美樹さやか、そしてキュゥべえと何の話をしたの? 本当は鹿目まどかから聞きたかったのだけれど・・・・・・」

 

  銀八はほむらの聞きたいことが何なのかは察していた。

 「その口ぶりだとその時からおめーの言ってた魔女退治の見学は始まってたみてーだな、俺が質問してたのは何でキュゥべえが学校に来ているのに他の生徒は見えないのかとか、魔法少女はやめることが出来るのか、あとは魔女に親玉がいるのか、最後に魔法少女は魔女になるのか、なんてことぐらいだな」

 銀時が話した内容にほむらは驚いていた。

 

 「あ、あなたキュゥべえにそんな質問してたの!?」

 「あぁ、キュゥベえがほかの生徒に見えないのは魔法少女とその素質を持ったガキでほかのやつらには見えないってことと、魔法少女は契約を結ぶとやめることが出来ない、魔女を束ねる親玉がいないこと、そして最後に魔法少女は成長して魔女にはならない上に成長すれば魔力は弱くなるって話だった」

 キュゥべえに対して銀八はそんな的外れ半分の質問をしたのかとほむらは驚いていたが、ほむらはすぐに冷静さを取り戻した。

 

 「キュゥべえの言葉に嘘はないわ、魔法少女は誰のためでもない自分自身の祈りのために戦い続けるの、魔女に親玉はいないし契約は解除できない、魔法少女は成長しても魔力は弱くなる、でも一つだけキュゥベエの情報に誤りがあるわ」

 「誤り?」

 ほむらは銀時が得た情報に誤りが一つだけあることを話した。

 

 「魔法少女は魔女を『生む』のよ」

 

 「生むぅ~? どうゆうこった? 使い魔が『えいりあん』みたいに魔法少女の口に入って出てくるってか?」

 銀八は『元の世界の経験』での的外れ半分の質問をしたが、ほむらは突っ込みを交えつつ否定したーー

 「違うわ!? そもそも『えいりあん』って何なの!? 少なくともそんな生々しい物ではないわ!!」

 

 「じゃあどういう意味だよ? 魔法少女が魔女を生むって?」

 「今は言えないわ、でも必ず話すと約束するわ・・・・・・」

 銀八はほむらの暗い顔を見てこれ以上聞くのはやめることにした。

 「そうかい、今の話はこれ以上聞くのは野暮の部類みたいだな、これ以上は聞かないでおいてやらぁ~」

 ほむらにはそう告げて、銀八はアパートに戻ることにした。

 

 ほむらは銀八の背中を見て小声でつぶやいた。

 

 「あなたは私たちの運命を聞いてどう思うのかしら? 坂田銀八・・・・・・」

 

 そして運命の分岐点の一つに差し掛かることになる。

  

 

 




 また話が長くなって申し訳ありませんでした。

 公園でのほむらとマミの会話のシーンで銀時を入れると結局長くなってしましました。
 
 この後は運命の分岐点の一つのマミvsお菓子の魔女の対決です。

 銀時はこの運命にどうかかわるのか、括目してください。


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仕事の確認は最後まで Bパート

 運命の分岐点の一つであるマミvsお菓子の魔女との戦い、銀時はどうかかわっていくのか、括目です。


 さやかパート、銀時・さやかパート、マミ・まどかパートの流れになりますのでよろしくお願いします。


 

 


                   病院内

 

 「よ、お待たせー」

 さやかは病院内で待っていたまどかに声をかけていた。

 するとまどかは上條恭介の面会に行ってたさやかが早く戻ってきた様子に疑問を持っていた。

 「あれ?・・・・・・上條くん会えなかったの?」

 「何か今日は都合悪いみたいでさ」

 さやかは幼馴染との面会が出来なかったことをまどかに軽く説明した。

 

 その後、二人は自宅に帰ろうと歩を進めていた。

 「わざわざ来てやったのに失礼しちゃうわよね~」

 さやかはそうぼやきながら帰路につこうとした時、まどかが病院の駐輪場の壁に何か違和感を見つけていた。

 「あっ・・・・・・」

 「ん? どうしたの?」

 「あそこ、何か・・・・・・」

 まどかの肩に乗っていたキュゥべえが確認すると壁には“有ってはならないもの”が『突き刺さっていた』

 

 「グリーフシードだ! 孵化しかかってる!」

 キュゥベエの言葉に二人は動揺していた。

 「嘘・・・・・・何で、こんなところに・・・・・・」

 「まずいよ、早く逃げないと。この辺りはもうこいつの魔力に浸食され始めてる、もうすぐ結界が出来上がる!」

 キュゥべえは結界がもうすぐ出来上がることを二人に警告するがさやかの考えは違っていた。

 「またあの迷路が・・・・・・」

 さやかはまどかの方に顔を向けて、ある確認をしていた。

 「まどか、マミさんの携帯きいてる?」

 さやかはマミの連絡先を知っているのかをまどかに確かめていた。

 「ううん」

 「そっか、まずったなぁ・・・・・・」

 さやかはマミに連絡できないと知ったとき、危険な手段を取ることをまどかに話した。

 「まどか、先行ってマミさんを呼んできて。あたしはこいつを見張ってる」

 「そんな!」

 「無茶だよ、中の魔女が出てくるまでにはまだ時間があるけど、結界が閉じたら君は外に出られなくなる。マミの助けが間に合うかどうか」

 まどかとキュゥべえはさやかを止めようとした。魔女が生まれる時間がまるで時限爆弾のタイムリミットと同意義でいつ出てくる(爆発する)か分からない魔女(爆弾)を一緒にさせるわけにはいかなかった。

 「・・・・・・」

 さやかは言葉を続けようとした時ーー

 「何やってんだ? てめーら」

 二人は聞き覚えのある声の方に向いたら予想通りの男がいた。

 「「坂田先生!?」」

 「おめーら何処でたむろってんだ?」

 

 

 

                         ***

 

 

 

 二人は銀八に簡単な説明をしたあと、まどかはすぐにマミを呼びに行った。

 

 「おめーも無茶するなー、魔女の結界に乗り込むたぁ~、マミに大目玉喰らうぞこれ・・・・・・」

 銀八はさやかにマミを呼びに行くためとはいえ無茶にもほどがあったが、さやか自身はーー

 「言ったはずだよ先生、あの迷路ができ上がったらこいつの居所も分からなくなっちゃうんでしょ?」

 さやかは幼馴染の顔を思い浮かべてーー

 「放っておけないよ、こんなところで・・・・・・」

 

 すると、グリーフシードが強い光を放った、結界ができ上がってしまったのだった。

 「・・・・・・うっ」

 「まぶしっ!!」 

 

 さやかとキュゥべえ、そして銀八は結界にひきづりこまれた、病院の駐輪場には誰もいなくなった。ただあるのは学校のバックが道路に置いていただけであった。

 

 

 

 

                   結界内  通路

 

 

  

 キュゥべえを抱えたさやかと銀八は結界内の魔女がグリーフシードから孵化するまで、最深部まで進んでいた。

 

 「恐いかい? さやか」

 「そりゃあまあ・・・・・・当然でしょ」

 「願い事さえ決めてくれれば今この場で君を魔法少女にしてあげることもできるんだけど」

 キュゥべえはさやかにいつでも契約できると話したが当の本人はうなずいたがキュゥべえにあることを伝えたがそうこう話しをしているうちに最深部にたどり着いていた。

 「・・・・・・うん、いざとなったら頼むかも・・・・・・でも今はやめとく。あたしにとっても大事なことだから、できることならいい加減な気持ちで決めたくない」

 契約はひとまず保留するとキュゥべえに話した、さやかは次に銀八の方へ話を振った。

 「ところで先生、どうして病院に?」

 さやかは銀八が病院に来たのかどうしても気になっていた。

 

 「あぁ、いつも欠席している生徒(やつ)がいたから早乙女先生から聞いたんだよ、あの病院に入院してんだってな。それで先生からおめーがいつもそいつの見舞いに行ってるって聞いたからどんな奴なのか顔を拝みに来たってわけだ」

 さやかはハッとしていた、教育実習の先生のことを恭介に話していなかったことを思い出していた。

 

 「あたし・・・・・・先生のこと伝えんの忘れてた」

 さやかは手を額に当てていた。

 銀八はさやかの反応を見てニヤリと笑った。

 「にしてもおめーいつもそいつの見舞いに行ってるって聞いたが、おめーそいつに惚れてんのか?」

 「な、なに言ってんの! 恭介とは幼稚園からの腐れ縁で・・・・・・」

 「へ~幼馴染か! ラブコメにはお約束だなオイ」

 「先生、まさかクラスのみんなにあることないこと言いふらすんじゃないよね!?」

 さやかは銀八にそう問い詰めたが、銀八のニヤついた顔のままでーー

 「安心しろ、おめーが惚れた男には一途だって言わねーから」

 そう、さやかに言ったがさやか本人は顔を赤くして銀八に言い放った。

 「もし、言いふらしたタダじゃ置かないよ・・・・・・先生」

 さやかの目は銀八を睨んでいた。

 

 

                       

 

 

                        ***

 

 

 

 まどかはさやかの約束通りマミを病院に連れてきた後、グリーフシードがあった駐輪場まで案内した後マミは魔女の痕跡を見つけた。 

 「ここね・・・・・・」

 壁に刺さっていたグリーフシードは消えていたが代わりに亀裂のような空間の裂け目を見つけた。

 マミは亀裂に手をかざして結界に突入の準備をした後、キュゥべえにテレパシーを送っていた。

 (キュゥべえ状況は?)

 キュゥべえに応答を求めたマミ、するとキュゥベえの応答が帰ってきた。

 (まだ大丈夫すぐ孵化する様子はないよ)

次にまどかがさやかにテレパシーを送った。

 (さやかちゃん大丈夫?)

 (坂田先生のおかげで、退屈しなかったよ。・・・・・・悪い意味で)

 まどかはテレパシーで何があったのか聞こうと思ったが、緊急事態なので聞かなかった。

 そのあとで、キュゥべえのテレパシーが飛び交った。

 (むしろうかつに大きな魔力を使って卵を刺激する方がまずい。急がなくていいからなるべく静かに来てくれるかい?)

 (分かったわ)

 マミはキュゥべえの助言に従って変身せずに結界内に入った。

 

 

 

                        ***

 

 

 

 

 マミとまどかは結界内で慎重に進んでいた。 

 キュゥベえの助言に従ってマミは変身せずに結界の最深部に進んでいた。

 「間に合ってよかった・・・・・・無茶しすぎ・・・・・・って怒りたいところだけれど、今回に限っては冴えた手だったわ」

 マミはさやかの無謀な手段(機転)を今回だけほめていた。

 魔女は結界を張る場所を変え続けるため、痕跡は時間がたって消えてしまうために厄介な存在であったためであった。

 魔女が孵化していなかったのは運が良かったに他ならなかった。

 「これなら魔女を取り逃がす心配はーー」

 マミはまどかの方に向きながら言葉を投げかけたが、ある人物を発見したため言葉を続けなかった。

 「え?」

 まどかも後ろを振り向くと見覚えのある少女ーー暁美ほむらがその場にいたからだ。 

 「・・・・・・できれば、会いたくなかったわ」

 「今回の獲物は私が狩る、あなたたちは手を退いて」

 マミは牽制の言葉に意を返さず、ほむらは退かなかった。

 マミもほむらの言葉を聞いても退かなかった。

 「そうもいかないわ、美樹さんとキュゥべえ、それに坂田先生を迎えに行かないと」

 「その三人の安全は保障するわ」

 「ごめんなさい、時間が無いの」

 そういってマミはほむらの方に手をかざして拘束魔法をかけた。 

 「!?」

 拘束されたほむらは苦しそうに声をあげながらマミに言葉を投げかけた。

 「・・・・・・っ、ば、バカッ・・・・・・こんなことやってる場合じゃ・・・・・・!・・・・・・っ」

 「もちろんケガさせるつもりはないけど、あんまり暴れると保証しかねるわ」

 ほむらの言葉にマミは耳を傾けず結界の最深部に歩を進めようとしていた。

 マミはまどかに呼びかけた。

 「ーー行きましょう鹿目さん」

 ほむらはいかせまいと声を上げたが、拘束魔法で締め付けられた。

 「待って!! ううっ!」

 まどかは拘束されたほむらの方を一瞬だけ見ながらマミに続いた。

 

 

 

 

 

                       ***

 

 

 

 まどかとマミは結界の最深部付近まで進んでいた。

 そんな時まどかはマミに話しかけていた。

 「あの・・・・・・マミさん」

 「なに?」

 「願い事、私なりに色々考えてみたんですけど・・・・・・」

 まどかは願い事の話をマミに不明瞭ながら話そうとした。

 マミはまどかの話に耳を傾けた。

 「決まりそうなの?」

 「はい・・・・・・でもあの、もしかしたらマミさんには考え方が甘いって怒られそうで・・・・・・」

 マミは優しい口調でまどかに言葉を促した。

 「どんな夢を叶えるつもり?」

 「私って昔から得意な学科とか人に自慢できるような才能とか何もなくて、きっとこれから先ずっと誰の役にも立てないまま迷惑ばかりかけていくのかなって・・・・・・それが嫌でしょうがなかったんです。でもマミさんと会って・・・・・・誰かを助けるために戦っているの見せてもらって、同じことが出来るかもしれないって言われて・・・・・・何よりも嬉しかったのはそのことで・・・・・・」

 まどかの言葉に静かに耳を傾けるマミは無言だった。

 まどかは言葉を続けた。

 「だから私、魔法少女になれたなら、それで願い事は叶っちゃうんです。こんな自分でも誰かの役に立てるんだって、胸を張って生きていけたら・・・・・・それが一番の夢だから・・・・・・・」

 「・・・・・・」

 マミは最後までまどかの話を聞き終え、しばらくの間無言だった。

 「・・・・・・」  

 その後にマミの口は静かに開いた。

 「・・・・・・大変だよ? ケガもするし恋したり遊んだりしている暇もなくなっちゃうよ?」

 マミの口調は少し震えた声でまどかに『普通の生活』を送れないことを話した。

 まどかはそれでも話を続けた。

 「でもそれでもがんばってるマミさんに・・・・・・私憧れてるんです」

まどかの言葉を聞いた時、マミは歩を止めた。

 「憧れるほどのもんじゃないわよ私」

 「え?」

 マミの口から出たのは、否定の言葉だった。

 続いて出たのは、孤独を抱えた少女の言葉だった。

 「無理してカッコつけてるだけで恐ろしくても辛くても、誰にも相談できないし、独りぼっちで泣いてばかり・・・・・・いいものじゃないわよ魔法少女なんて」

 マミの言葉を聞いてまどかは優しく語りかけた。

 「マミさんはもう独りぼっちじゃないです」

 まどかの言葉を聞いて、マミはまどかの方に振り返った。

 「そうね・・・・・・そうなんだよね、本当にこれから・・・・・・私と一緒に戦ってくれるの? 側にいてくれるの?」

 マミの目は涙ぐんでまどかに語り掛けた。

 「はい・・・・・・私なんかで良かったら」

 「まいったなぁ・・・・・・まだまだ先輩ぶってなきゃいけないのになぁ・・・・・・やっぱり私駄目な子だ・・・・・・」

 マミはうれし涙をぬぐいながら安堵交じりの言葉を溢した。

 「マミさん・・・・・・」 

 マミの様子にまどかも安堵の表情で見ていた。

 「・・・・・・でもさ折角なんだし願い事は何か考えておきなよ」

 「折角ーーですかねやっぱり」

 「契約は契約なんだからさものはついでと思っておこうよ、億万長者とか素敵な彼氏とかなんだっていいじゃない」

 マミの言葉にまどかは困惑していた。

 続いてマミはある提案をまどかに持ちかけていた。

 「じゃあこうしましょ、この魔女をやっつけるまでに願い事が決まらなかったら・・・・・・その時はキュゥべえにごちそうとケーキを頼みましょ」 

 「ケ、ケーキ?」

 「それでみんなでパーティーするの私と鹿目さんの魔法少女コンビ結成記念よ」

 「わ、私ケーキで魔法少女に?」 

 マミの提案にまどかはさらに困惑した。

 まどかの様子を見てマミは決断を促す言葉を投げかけた。

 「嫌ならちゃんと自分で考える!」

 「ふえぇ・・・・・・」

 まどかの困惑する様子を見てマミはクスっと笑った。

 するとキュゥべえからのテレパシーが届いた。

 (マミ! グリーフシードが動き始めた! 孵化が始まる! 急いで!)

 「オッケー分かったわ」

 キュゥべえからのテレパシーで状況を把握したマミは、強気と余裕の表情で結界の最深部に向かうことにした。

 「今日という今日は速攻で片づけるわよ!」

 「わわ、そんなーー」

 まどかの動揺とは裏腹にマミは魔法少女に変身した。

 結界最深部に近づくにつれ使い魔がマミに襲撃しようとしたが、マスケット銃を数丁召喚したマミの銃撃によって一掃された。

 マミは内心あることを思っていた。

 〈身体が軽いーーこんな幸せな気持ちで戦うなんて初めて、もう何も怖くない、私ーー独りぼっちじゃないもの!〉

マミの心は希望に満ち溢れ、微笑みながら戦った。

 

 その戦い方が『先生』の言葉の意味を忘れさせ、命取りになるなんて思いもしなかった。

 

 そして、命を落としかけた時、『先生』を名乗っている男に助けられることをまだ知らない。

 

 

 

 




 
 皆さま、今回もⅭパートを書くことになりました。
 
 
 マミはお菓子の魔女と戦う流れまで来ました、そして銀時の『言葉の意味』を一時忘れてしまっています。
 
 これ以上長く書きすぎると読みつかれる可能性がありましたので、ここから先は3パートの流れになる可能性が出てきました。
 
 お菓子の魔女ではマミは原作通りに死んでしまうのか? それとも運命は変わるのか?
 
 括目してください。


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仕事の確認は最後まで Ⅽパート

 マミvsお菓子の魔女戦まで来ました。

 括目してください。

 話の流れはマミ死亡ルートブレイクした後、ほむら視点に入ります。


 

 

                結界 最深部

 

 

 マミとまどかは、結界最深部の扉を開けてさやかたちを探していた。

 周りはお菓子の形をした障害物ともオブジェともとれるものであふれていた。

 

 辺りを見渡すとさやかと銀八、キュゥべえの姿を見つけた。

 

 「間に合ったぁ・・・・・・」

 まどかはさやかと銀八(友と先生)を見つけて安堵の声を出していた。

 「お待たせ!」

 マミはさやかと銀八に声をかけた後、キュゥべえが叫んだ。

 

 「気をつけて、出てくるよ!」

その後、クリーム状のおドロドロしい爆発が起きた後、ぬいぐるみかマスコット人形のようなものが出てきた。

 

 「人形・・・・・・?」

 銀八は出てきた『モノ』の印象を言葉に表した。

 

 その人形のようなものこそ魔女、マミが倒すべき敵だった。

 魔女は脚が異様に長い椅子に降り立つとともに腰を下ろした。

 

 が、そのあとに椅子が傾いた。

 

 魔女を引きずり下ろすために椅子の脚を壊したマミの仕業だった。

 

 

 「折角のところ悪いけれど、一気に決めさせてもらうわよ!」

 

 マスケット銃のストック部分を鈍器代わりに魔女を高く殴りあげた後に銃を乱射した。

 

 

 地に付した魔女の後頭部をマミの銃が撃ち抜き、魔力で生み出されたリボンで魔女を拘束する。

 「やった!」

 巨大なドーナツの後ろに隠れたまどかとさやかはマミの応援に熱が入った。

 

 「ティロ・フィナーレ!」

 上空に上げ、拘束された魔女の中心に止めの一撃を放つマミ。

 

 これですべてが終わるはずだった。

 その場にいた誰もが巴マミの勝利を確信していた。

 

 ーーただ一人、『坂田銀時』(歴戦の侍)を除いては。

 

 「目ェ逸らすな! まだ終わってねーぞ!」

 

 「「「え?」」」

 

 まどかやさやか、そしてマミも銀八が何故そう言ったか分からなかった。

 魔女は倒したはずなのになぜ終わっていないと言ったのか理解できなかった。

 その時、魔女に変化が起こった。

 人形の体のごとき魔女の口から何かが飛び出てきた。

 

 ピエロの顔が付いた芋虫としか形容の出来ないそれは一瞬でマミの間合いに入り、牙をむき出しにーー首を食いちぎった、はずだった。

 

 芋虫の体の魔女はマミの頭を食いちぎらずに別の何かをかみ砕いていた。

 

 まどかとさやかはマミが魔女に食い殺されると一瞬体が硬直していた後だった。

 しかし、当のマミは五体満足に無事だった。

 それでも何が起こったのか分からないでいた。 

 

 「・・・・・・?」

 マミは自分の置かれた状況を全く分かっていなかった。

 「「え? え?」」

 まどかもさやかも同じく、マミに起こった状況に追いついていなかった。

 

 

 「惚けてねーでとっとと逃げろ! そいつが食われている間に!」

 

 銀八の声で我に返ったマミはまどか達の方へ走っていた。

 (な、なにが起こったの・・・・・・?)

 

 

 

                    遡ること数分前 

 

  

 

 

 銀時は魔女の孵化を見たときに出てきた人形としか形容できない何か。

 

 それが、銀時にとって初めての魔女との遭遇だった。

 

 「人形・・・・・・?」

 銀時が魔女を見て不意の漏らした一言、初めて見る『魔女』は人形としか言いようがなかった。

 

 マミが魔女に先制攻撃として異様に長い椅子の脚をへし折った後、魔法銃(マスケット銃)を鈍器代わりに魔女を殴った後に後頭部に発砲後、魔女をリボンで拘束していた。

 まどかやさやかはマミの戦いぶりに興奮していたために魔女の姿に疑問を持っていなかった。

 ほむらが言っていた魔女退治の見学のため魔女を見ていたこともあったために驚いていなかったのだろう。

 

 銀時が考えているうちにマミが、魔女に止めの大砲を撃ち込み沈んだ。

 まどかとさやかはマミの勝利に大喜びしていた。

 

 しかし、銀時の考えは違っていた。

 

 ーーいくらなんでも、あっさりしすぎじゃねーか?

 

 銀時にはある種の予感があった。

 かつて、『元の世界』で参加した『異星の住人』と『地球人類』との『大戦争』で培った戦闘思考と生存本能、そして生き残った後で『万事屋』での人生の経験が一つの結論を導き出させた。

 

 魔女は死んでいない、人形のような見てくれは偽物だと言うことに。

 

 「目ェ逸らすな! まだ終わってねーぞ!」 

 銀時はマミに魔女がまだ倒されていないと気づかせようと魔女に視線を戻させようとしたが、気づいた時には魔女に変化が起きていた。

 

 ーーくそっ、案の定やられちゃいねェじゃねーか!

 

 人形の魔女の口から別の頭とともに芋虫か蛇のような胴体を持っていた。

 マミは状況が飲み込めていない上に回避行動どころか、その場で佇んでいた。

 

 ーーやべぇ! あれは自力じゃ逃げ切れねーぞ! 何かねーか!? 何か・・・・・・あ。

 銀時はマミに迫る魔女の咢(死の宣告)から逃れる手立てを探しているうちにあることを思いついていた。

 銀時は『地球外生物』=キュゥべえに視線を向けてーー

 

 「お前・・・・・・無限残機だったよな?」

 「え?」

 キュゥべえが頭を斜めにかしげているうちに銀時はキュゥべえをつかみあげーー

 「マミを助けに行ってこいキュゥべえええええぇぇぇぇぇ!!」

 「ええええええええ!?」

 魔女の口内目がけてキュゥべえをぶん投げた。

 キュゥべえ本人は、訳が分からずに呆然と魔女の口内に入っていった。

 マミを喰らうはずだった魔女はいきなり口内に入った異物を舌で転がしてかみ砕いていた。

 

 銀時はその一瞬を見逃さなかった。

 マミは何が起こったかまだ把握しきれていなかったのか、まだ呆然としていた。

 銀時はマミに大声で呼びかけた。

 「惚けてねーで逃げろ! そいつが食われている間に!」

 マミがようやく反応して銀時たちの方に向かってきていた。

 

 

 

 

                        ***

  

 

 

 

 「よう、無事で何よりだったな」

 銀時は生還したマミに話しかけたがマミはーー

 「ちょっとあなた!! キュゥべえを・・・・・・キュゥべえを・・・・・・!」

 マミは涙目で銀八の白衣を両腕でつかんでキュゥべえを犠牲にしたことを問いただそうとしていた。

 「いやアレ無限残機だったろ、お前も見てたじゃねーか」

 「それでもあの子は私の友達だったのよ!! それを・・・・・・」

 マミは銀八がキュゥべえを犠牲にしたことが許せなかったが、銀八はーー

 「おめーが惚けて魔女の生死を確認していなかったからだろーが!!」

 マミの注意散漫を指摘していたため、さすがのマミも黙り込むしかなかった。

 

 「「マミさん!」」

 マミは自分を呼ぶ声の方に向けると、まどかとさやかが今まさに泣きそうな顔でマミを見つめていた。

 「マミさん!大丈夫ですか!?」

 「か、間一髪でしたけど・・・・・・怪我とかもしてないですか!?」

 マミは二人の顔を見て驚いていた。

 マミは何か言いだそうとしたがーー

 「オイ、あの芋虫俺たち探してっぞ」

 銀八の声を聞いた三人は魔女の様子を見た。

 キュゥベえを喰い終った魔女は芋虫状の体を最大限に活かす様に獲物を探していた。

 

 「このままじゃ見つかるのも時間の問題だなこりゃ・・・・・・仕方ねぇ・・・・・・」

 銀八は魔女の『餌探し』で見つかるのも時間の問題だと悟ったため、ある決断を下す。

 「ったく、甘いモンで埋め尽くされた天国みてーな場所だってのに何で芋虫の相手をしなきゃならねーんだ」

 銀八の発言に三人は耳を疑った、先生()はなんて言った? あの魔女と戦うと言ったような発言をしたかのようだった。

 マミは念のため銀八の発言を確認するために質問を投げかけた。

 「あ、あなた・・・・・・まさか、魔女と戦うつもりなの?」

 「まあ・・・・・・そうなるな」

 銀八の受け答えにマミは反対した。

 「む、無茶よ!! 魔力のないあなたじゃ死んでしまうわ!! っていうより無謀よ!!」

 マミは銀八をみすみす死なせるものだと言わんばかりに反対したのだが銀八はマミの変化を見逃さなかった。

 

 「やるしかねーだろ、少なくとも今のテメーじゃ荷が重いんじゃねーか?」

 「そんなこと・・・・・・!」

 銀八の発言に反感を覚えたのかマミは魔女に立ち向かおうとするのだが、銀八が言っていた『変化』を自覚する結果になった。

 

 マミは前に進めなかった。

 マミ本人何が起こったのか分からずじまいだった。

 恐る恐る自分の脚を見るとーー

 (どうして・・・・・・足が・・・・・・震えてる?)

 銀八はマミの『変化』がとうとう表に出てきてしまったことに目を伏せて。

 「・・・・・・今は下がっとけ、ほむらのヤローは結界内にもう来てんだろ? ここに呼んでくんねー?」

 銀八はマミにそう言って、マミたちに魔女の毒牙に及ばないよう走り出した。

 

 当のマミは自分の脚が震えている原因はすでに分かっていた。

 (さっき私・・・・・・本当に死ぬところだったんだ・・・・・・だから体がこんなに・・・・・・!)

 たった今自分が魔女に喰い殺されそうになっていたことに、魔女の咢から逃れられたことで死の恐怖が今まさに体を襲っていた。

 「マミさん!」

 マミは自分を呼ぶ声で我に返り声の主に顔を向けていた。

 まどかのまっすぐな目に当の目的を思い出していた。

 「・・・・・・分かったわ、暁美さんの拘束を解いて最深部(ここ)に導くわ」

 マミ自身背に腹は代えられなかった。

 自分にできることは銀八の時間稼ぎを無駄にしないことだった。

 銀八はすでに魔女との戦闘に移っていた。

 三人は思った、勝てるわけがないと・・・・・・もう逃げるしか道は残されていないと。

 不意を突かれたとはいえ、敵は戦闘経験が豊富なマミが殺されかけたほどの強さを持っている。

 だが、三人は知らなかった、そして最深部(この場)にはいないほむらも知らなかった。

 魔女と相対している教師()のことを。

 「ウオオオオオオオオッ!!」

 ーー「地球外生命体」(天人)との戦争を戦い抜き、白夜叉と呼ばれた()のことを。

 

 

 

                        ***

 

 

 ほむらは結界の通路でマミの拘束魔法で身動きが取れなかったがなぜか拘束が解かれていた。

 

 「これは一体どういうこと?」

 ほむらはマミの拘束魔法が光を放って消滅したことに疑問を持っていた。

 それはつまりマミ自身の意思で拘束が解かれたと言うことだった。

 「一体どういう風の吹き回しなのかしら・・・・・・?」

 マミがなぜ拘束を解いたのかが分からなかった。

 今までの揉め事から拘束されるまで、マミとの関係は最悪だった。

 しかし、拘束を解くなんて何か裏があるのか疑っていた。

 すると突然、マミからのテレパシーが突然届いてきた。

 (暁美さん、聞こえる!?)

 「巴マミ! これはどういうことなの!?」

 ほむらは叫びながら、マミになぜ拘束を解いたのか問いただそうとしたがーー

 (お願い、力を貸して! 坂田先生が・・・・・・)

 (坂田銀八が、どうかしたの!?)

 (・・・・・・魔女と戦っているの)

 マミの連絡にほむらは唖然としていた。

 (坂田銀八が魔女と戦っている!? それは一体どういうことなの!!)

 (詳しく説明してる時間が無いの! 誘導するから来てもらえる!?)

 ほむらは何がどうなっているのか分からなかった。

 魔女と戦っているはずのマミがいて(生きていて)なぜ銀八が魔女と戦っている事態になっているのか?

 

 ほむらは変身してすぐにマミの誘導に従って結界最深部に向かうことにした。

 

 

 

 

 

                       ***

 

 

 「ずあっ!」

 

 「!」

 

 

 銀八の作戦は至って単純、魔女の攻撃を回避しつつ小回りの利く木刀で反撃する、ただそれだけだった。

 だが、行うのは簡単ではない。敵は大柄で素早いだけではない、一度でも攻撃を食らえば致命的になるのだ。

 加えて、リーチの短い木刀で反撃することを考えれば大きく距離を取って躱すことも不可能である。

 つまるところ、銀八の策では致命の攻撃を紙一重で回避し続けなければならない。

 ーーそれだけリスクの高い策でも銀八は一歩も退かなかった。 

 ーー僅かの怯えも見せることなく、木刀を片手に鬼神の如く戦いを続けた。

 『・・・・・・』

 少女たちは立ち尽くしていた、木刀一本で魔女と戦い続けている銀八(教師)を前に言葉一つ発せられなかった。

 

 (あれが・・・・・・坂田先生・・・・・・?)

 (す、すごい・・・・・・あの先生・・・・・・何者なの?)

 (どうして・・・・・・あんな無茶な戦い方を恐れず実行できるの・・・・・・!)

 銀八の戦いに目を奪われているのは三人だけではなかった。

 

 「本当に、どうなっているの・・・・・・これは・・・・・・?」

 

 三人は背後から聞き覚えのある声を聞いた。三人は同時に背後を振り返った。

 「ほむらちゃん!」

 暁美ほむらが結界最深部に到着して、三人に声を掛けていた。

 まどかとさやかはほむらの到着に驚いていた。

 「来て・・・・・・くれたのね、暁美さん」

 「最深部の誘導は途中までで十分だったから、あとはあなたたちを探すだけだからそんなに手間じゃなかったわ」

 「よし、早く坂田先生を助けよ! このままじゃ先生がいつ食べられちゃうかわかんないよ!」

 「それよりもまず、何で彼が魔女と戦っている状況なのか理由を話してくれないかしら? 状況が飲み込めないのだけど?」

 ほむらの質問は至極真っ当だったため、三人は手短に説明をした。

 

マミが魔女がまだ生きていたことに気付かなかったことで命の危機に陥ったこと、魔女に喰われていてもおかしくなかった状況を銀八がキュゥべえを投げた(犠牲にした)ことで命拾いしたこと、マミが恐怖で動けなかったことで銀八が戦っている流れにほむらは驚いていた。

 

 (キュゥべえをためらいなく投げるなんて・・・・・・私には多分無理かもしれないわね)

 

 ほむらは『ある事情』でキュゥべえの『正体』を知っているためキュゥベエに対しては冷淡な態度なのだが、まどかの手前・・・・・・キュゥべえを身代わり(投げる)なんてできなかった。

 それを銀八はためらいなく実行したことにほむらは驚愕した。

 

 「そう、事情は大体わかったわ・・・・・・命があって良かったわね、巴マミ」

 ほむらの口から出たのはマミに対して、攻め立てるような安否の言葉だった。

 「ほ、ほむらちゃん・・・・・・その言い方は・・・・・・・」

 まどかはほむらをなだめるように止めようとしたがーー

 「・・・・・・ごめんなさい、あなたを拘束しなければ・・・・・・あなたの忠告を聞いていれば、こんな状況にならなかったわ」

 マミはほむらに謝罪していた。マミもこの状況になるまで浮かれていた(油断した)ことで招いた失態を反省していた。

 「謝罪なんて求めていないわ、私も人のことは言えないけど・・・・・・きちんと自覚することね。あなたは自分のせいで一般人を巻き添えにして命の危険にさらしたことを」

 ほむらはマミに対してきつめに苦言を呈していた。ほむら自身銀八を『巻き込んだ』ため自分に対しての自戒の意味も含んでいた。

 「巻き添えって・・・・・・そもそも原因は私が・・・・・・」

 さやかは自分の無茶が招いたことを話そうとしてマミを庇おうとしたがマミが手で制した。

 「・・・・・・暁美さんの言っている通りよ、すべて私の責任だわ」

 マミは自分の非をほむらたちに詫びていた。ほむらは本題に切り替えることにした。

 「・・・・・・取りあえず、今は魔女を倒すことを考えて・・・・・・!?」

 

 その先をほむらは紡げなかった。

 

 ほむらは魔女と戦っている銀八の援護に入ろうと考えていた、魔女と戦わせるのは危険すぎると判断してほむらが魔女の戦いを引き継ごうとしていた矢先・・・・・・

  

 

 

 

  銀八は魔女に飲み込まれていた。

 

 

 

 「さ、さ・・・・・・坂田センセぇぇぇぇぇぇ!!??」

 

 まどかの絶叫が結界内に木霊した。ほむらが銀八を助けようとした矢先に魔女に喰われてしまったことにまどか達は絶望していた。

 

 ほむらはショックを隠せなかったがすぐに切り替えた、魔女を倒すために盾から爆弾を『取り出し』た。

 (・・・・・・仇ぐらいは討ってあげるわ)

 ほむらは銀八に対して心に呟いていた・・・・・自分が来るまでの時間稼ぎのために魔女と戦ったことに謝罪を含めていた。

 

 その時、有り得ないことが起こった。

 

 芋虫状の魔女の様子がおかしかった。魔女の頭部には『棘状の何かが』生えていた・・・・・・いや、生えていたのではない。

 刺さっていたのだ。魔女の上顎に棘状のものが刺さっていたのだった。

 その棘は魔女の頭部から背にかけて進んでいた、しかし、魔女は棘が進むたびに苦しんでいた。棘が背に進んだ瞬間魔女が苦しみだしていた。

 

 ほむらはその棘を注視してみると棘の正体が分かった。棘の正体は木刀の刃だった。木刀が魔女を引き裂こうとしていたのだった。

 その木刀を見た瞬間、ほむらはありえない結論に達していた。

 

 「ま・・・・・・まさか、有り得ないわ……そんなまさか、坂田銀八は・・・・・・」

 

 ほむらが魔女に向かおうとした矢先に起こった魔女の異変は突拍子のない推測だった。

  

 「暁美さんどうしたの!? 魔女を倒しに行かないの!?」

 マミはほむらに駆け寄って話しかけたが、ほむらはマミに話した。

 「巴マミ、あの魔女の頭部を見て。魔女の上顎を木刀が貫いてるの・・・・・・そして魔女の背に沿って木刀が切り裂かれているわ・・・・・・つまり・・・・・・」

 「嘘・・・・・・でしょ・・・・・・!?」

 マミはほむらが何を伝えようとしているのかが分かった。いや、分かってしまったのだ。

 木刀が魔女を切り裂いている、それはつまり・・・・・・その答えはすぐに出ていた。

 「うおおおぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 魔女の最後尾に出ていた木刀の主・・・・・・坂田銀八のものだった。

 「「ええええええええ!?」」 

 まどかとさやかは盛大に絶叫した。魔女の頭部から背中にかけて木刀で切り裂いて出てきた教師の男の生還に四人の少女は驚きを隠せなかった。

 

 銀八は地上に降りて息を切らしていた。

 「はぁはぁはぁはぁ・・・・・・あー死ぬかと思ったわ」

 でも魔女はまだ生きていた。魔女の口から新しい魔女の体が出てきて銀八に襲い掛かろうとしていた。

 「まだ生きてんのかよ、クソ・・・・・・」

 銀八は立ち上がって木刀を構えなおしていた。その時ーー

 「その必要はないわ、坂田先生」

 銀八の目の前にほむらがたっていた。

 「こいつをしとめるのは、私・・・・・・!」

 そう言いながらほむらは盾から爆弾を取り出し、魔女目がけて投げた。魔女の目の前で爆発した爆弾の主を探して魔女は右往左往探し回っていた時、足音がした。

 

 いつの間にかほむらは足の長いテーブルの上に立っていた。魔女はほむらの姿を確認した瞬間喰らいついた。

 しかしほむらは瞬間移動の如くほかのテーブルに移動していた。

 魔女はほむらを喰らおうと躍起になってテーブルの上のほむらに喰らいつくも何度も、何度もほかのテーブルにほむらが立っていた。

 その瞬間魔女の口内で爆発が起こった。ほむらが爆弾を口内に仕込んで爆発させていたからだ。 

 魔女は脱皮しようとするも爆弾の爆発が炸裂して最後に盛大に魔女は爆発した。

 そして、その爆破を最後に魔女は倒された。

 

 

                       ***

 

 

 魔女が倒されたことで結界が解けた後、銀八はほむらに駆け寄っていた。

 

 「よう・・・・・・お前来るのおせーぞ、もうちっと早く来いや」

 銀八はほむらに文句たらたらに話しかけたが、ほむらは銀八の方に向いて銀八を見つめていた。

 「あなた、なんであんな無茶なことをしたの!? 下手したら命は無かったのにどうして・・・・・・!?」

 ほむらは銀八に詰め寄った。まどか達の説明で事情は理解できたが、ほむらは何故魔女に戦いに挑んだのか分からなかった。

 

 「一応仮にも先生だからな、生徒を護んのが先生ってもんじゃねー?」

 「・・・・・・答えになってないわよ」

 ほむらは呆れたように銀八の答えに納得していなかった。

 

 「あーあー、ごちゃごちゃ言うなめんどくせーな・・・・・・全員無事でめでたしめでたしでいいだろ」

 「それは・・・・・・そうかもしれないですけど・・・・・・」

 まどかは納得しようとしたが納得していない人物がまだいた。

 「どうして、魔女に立ち向かえたんですか!? 死ぬかもしれないのにどうして!?」

 マミは銀八に何故魔女に立ち向かったのか分からなかった。銀八はマミに向けて逆に質問した。

 「おめー、昨日の夜に話したこと覚えてるか?」

 銀八はマミに昨日の夜に話したことを聞いてきていた。マミはキョトンとした顔でーー

 「は、はい覚えています」

 「二人を背負えるのか? あれはお前だけじゃねー、おめーに憧れている二人がお前を背負うことにもなるんだ」

 「え?」

 マミは何を言っているのか分からなかった。まどかとさやかもそしてほむらも何を言っているのか分からなったが、銀八は構わずに話を続けた。

 

 「マミ、おめーは二人が魔法少女になったとき、ある苦しみを背負うことになる」

 「苦しみ?」

 「背負う苦しみと背負われる苦しみだ」

 「背負う苦しみと、背負われる苦しみ?」

 「あの二人が仮に魔法少女になっておめーはそいつらの師匠になった時、師は弟子を背負い、弟子は師を背負っていくもんだ。その時、背負う苦しみと背負われる苦しみから逃げられなくなるんだ」

 「もし、逃げてしまったら?」

 銀時の話す二つの苦しみについて、マミがそう質問した、銀八は寂しさと悲しみを含んだ表情で答えた。

 「そいつは臆病者になる、モット質が悪いのは弟子をも自分と同じ道に引きずりこもうとする、自分勝手なヘタレ野郎だ」

 銀八の答えにマミは顔を伏せていた。

 マミ自身思い当たることがあったみたいだった。まどかとさやかも魔法少女について考え直した方が良いかもしれないと話し合っていた。 

 

 

 

 

 銀八は頭を掻きながらお開きにしようとした。その第一声としてほむらに向かって 

 

 

 「ところでほむら・・・・・・気になっていたことが二つあってな」

 

 「な、何かしら?」

 ほむらは銀八の質問に驚いていた。

 

 「グリーフシードは回収したのか?」

 

 「回収したわ、処でもう一つは何?」

 ほむらは銀八のもう一つ質問が気になっていた。

 

 「あの結界内でのお菓子はテイクアウトできんのか?」

 「出来ないわ・・・・・・っていうか食べるつもりだったの?」

 ほむらは銀八の質問に答えたとたん意図が分かってしまったため質問を返した。

 

 「ばれたか」

 

 銀八の答えにまどかとさやかは噴き出して笑った。

 「「ぷっあはははははあははははははは」」

 

 それにつられてかマミも笑っていた。

 「ふ、ふふふふふふふうふふふふ」

 

 銀八はまどか達の笑った顔を見て銀八も自然とほほ笑んだ

 

 

 

 

 銀八たちの様子を見てほむらは心なしか口元が緩んでいた。

 

 

 




 
 時間がかかりましたがようやくⅭパート書き終わりました。

 どうにか巴マミ生存ルートを書くことが出来ました。

 中にはエレファント速報と参考書のとして使っている漫画類の文章とセリフを使わせてもらいました。
 
 その結果、文章がまた長くなってしましました、すんまっせ~ん。

 もう一つ告白するすれば僕はバトルパートを文章で表すのが苦手です。
 
 誤字脱字があると思いますが、これからもこの作品をよろしくお願いします。

 誤字指摘と感想お待ちしております。


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奇跡も、魔法も、あるんだよ 編
魔法少女の業の中に孤独の影は付きもの。


 マミ生存の後、まどかとさやかは銀八(銀時)の言った言葉が心に残っている話になります。

 魔法少女のことを知らないことを突き付けられた二人の動向を見守ってください。

 先ずはまどか視点からでございます。


 「あら、上條君のお見舞い?」

 

 さやかは幼馴染の上條恭介の病室に入ろうとした時、女性看護師に呼び止められていた。

 「ええ・・・・・・」

 「ごめんなさいね、診察の予定が繰り上がって、今ちょうどリハビリ室なの」

 恭介の近況を聞いたさやかは出直すことにした。

 

 「ああそうでしたか・・・・・・どうも」

 

 さやかは病室を後にして、自宅に帰ることにした。

 

 「よく来てくれるわよね、あの子」

 

 「助かるわ。難しい患者さんだしね。励ましになってくれてるといいんだけど」

 

 病院の看護師同士の会話が帰路に向かっているさやかの耳に入っていた。

 

「事故に遭う前は天才少年だったんでしょ? ヴァイオリンの」

 「歩けるようになったとしても指の方はねぇ・・・・・・」

 

 「もう二度と楽器を弾くなんて無理でしょうね」

  

 看護師同士の会話を聞く限り恭介の指は二度と動かないかもしれない。

 会話に耳を立ててさやかは表情を暗くしていった。

 

 エレベータ内でさやかは恭介の指について考えていた。

 

 (・・・・・・何で恭介なのよ? あたしの指なんていくら動いたって何の役にも立たないのに。なんであたしじゃなくて恭介なの?)

 

 「・・・・・・」

 

 (もしもあたしの願い事で恭介の体が治ったとして・・・・・・それを恭介はどう思うの? ありがとうって言われて、それだけ? それともそれ以上のことを言ってほしいの?)

 

 願いの力で恭介の体を治すのは簡単にかなう。しかし、恭介本人の意思がさやかには気がかりだった。

 

 「・・・・・・」 

 

 (あたしって嫌な子だ)

  さやかは自分の下心に嫌気がさしていた。

 

 

 

 

                       ***

 

 

 

 

                   まどか邸   ダイニング

 

 

 

 まどかは家族と朝食を取っていた。 朝食の目玉焼きを見て、まどかは銀八のことを考えていた。

 

 (坂田先生は、なんで魔女と戦えたんだろう? 私は足がすくんで動けなかった。 魔法少女でしか倒せないはずの魔女に立ち向かって・・・・・・マミさんを助けていた・・・・・・それに、坂田先生が言ってた『背負う苦しみと背負われる苦しみ』の意味も分からない・・・・・・私は・・・・・・)

 

 

 まどかは銀八の言っていた『背負う苦しみと背負われる苦しみ』の意味が気になっていた。

 マミがお菓子の魔女に殺されそうにしていたときキュゥべえを魔女の口に投げたことでマミは助かっていた。

 そのあとにほむらが助けに来て魔女を倒した後、銀八がマミに投げかけた言葉の意味が全く分からなかった。

 

 (マミさんは坂田先生になんて言われたんだろう?)

 

 「まどかーー」

 

 まどかは詢子に呼ばれてハッとしていた。

 

 「さっさと食べないと遅刻だぞ」

 「う、うん・・・・・・」

 

 詢子に促され食事を口にするまどかはその後に涙が流れていた。

 「ま、まずかったかな?」

 「ねーちゃ、どったの?」

 「?」

 

 知久とタツヤ、詢子はまどかが突然涙を流したため心配した。

 

 「ううん、おいしいのすごく。生きてるとパパのごはんがこんなにおいしい・・・・・・」

 

 まどかは何故涙を流したのか分からなかった・・・・・・ただ分かってるのは、生の実感が込みあがった感覚だった。

 

 

 

                        ***

 

 

 

 

 通学路でさやかと仁美と共に中学校に向かうまどかはテレパシーで昨日のことをさやかと話そうとしたがーー

 

 (ごめん、また後で)

 

 と断られてしまった。

 

 さやかは仁美と会話を続けていた。

 

 学校で早乙女先生の英語の授業でもまどかは違う思考に入っていて授業に集中できなかった。

 

 

 

                        

 

                     放課後 屋上

 

 

 

 まどかとさやかは屋上のベンチでキュゥべえと共に佇んでいた。

 二人は沈黙していた。キュゥべえは二人の様子を見ていた。

 最初に沈黙を破ったのはまどかだった。

 

 「なんか、違う国に来ちゃったみたいだね。学校も仁美ちゃんも昨日までと全然変わってないはずなのに・・・・・・何だかまるで知らない人たちの中にいるみたい」

 

 まどかの話を聞いてさやかは見ている世界の違いを話した。

 

 「知らないんだよ誰も。魔女のこと、マミさんのこと、あたしたちは知っててほかの人はみんな知らない、それってもう違う世界で違うものを見て暮らしているようなもんじゃない。とっくの昔に代わってたんだ、もっと早くに気づくべきだったんだよ、あたしたちも」

 

 さやかはまどかにある質問を投げかけた。

 「まどかはさ、今でも魔法少女になりたいと思ってる?」

 キュゥべえもさやかの質問の返答に興味があるようにまどかの顔を見ていた。

 

 「最初は魔法少女のマミさんに助けられて、魔法少女と魔女の話を聞いてマミさんの魔女退治を見学して・・・・・・、マミさんが魔女をかっこよく倒している姿に目を奪われてた。でも・・・・・・」

  

 さやかはまどかの話に耳を傾けていたが、まどかが言葉を詰まらせていた。

 「・・・・・・まどか?」

 さやかはまどかの顔を見て一瞬落ち込んだような表情を見て不安を覚えた。

 まどかは言葉を続けた。

 「マミさんは魔法少女として戦っている時の不安を話してくれの。私は魔法少女になればマミさんの手伝いが出来て、皆を護れたら幸せだって話したの・・・・・・マミさん喜んでた。でもその話が原因でがマミさんが死にかかったと思うと・・・・・・」

 

 「まどか・・・・・・」

 

 さやかはまどかの肩に手を置いた。

 

 「ずるいって分かってるの、今更虫が良すぎるよね・・・・・・でも、坂田先生のあの言葉が耳から離れないの」

 

 まどかが思い出していたのは銀八がマミに言った言葉ーー

 

 「背負う苦しみと背負われる苦しみ?」 

 

 さやかはまどかが銀八の名前が出た時点で思い当たるのはそれしかなかった。

 まどかはうなずいて言葉を続けた。

 

 「それに、マミさん坂田先生の言葉を聞いて落ち込んでたから・・・・・・」

 

 まどか達はマミの様子も気になっていた。学校でマミの姿を見ていなかったからだ。

 

 「ねえキュゥべえ、マミさんは?」

 さやかはマミの近況をキュゥべえに尋ねた。

 「マミは生きてるよ、ただ丸一日部屋に籠ってた様子だった」

 マミの様子を聞いてさやかは胸をなでおろした。

 しかし、キュゥべえの話には続きがあった。

 「でも、魔女退治に行けるかどうか・・・・・・長らくここはマミの縄張りだけど、このままだと他の魔法少女が黙っていないよ。すぐ他の子が魔女狩りのためにやって来る」

 キュゥべえの話でさやかはハッとした。

 「でもそれって、グリーフシードだけが目当てのヤツなんでしょ? あの転校生みたいに」

 さやかの質問にキュゥべえは即答した。

 「・・・・・・確かにマミみたいなタイプは珍しかった、普通はちゃんと損得を考えるよ。誰だって報酬は欲しいさ」

 「ーーじゃあ」

 「でもそれを非難できるとしたらそれは同じ魔法少女としての運命を背負った子だけじゃないかな」

 「・・・・・・」

 キュゥべえの言葉に言葉を失うさやか、キュゥべえは二人に背を向けてーー

 「君たちの気持ちはわかった。残念だけど僕だって無理強いはできない。お別れだね、僕はまた僕との契約を必要としている子を探しに行かないと」

 そういってキュゥベえは立ち上がり二人の方に顔を向けて別れを告げた。

 「短い間だったけどありがとう、一緒にいて楽しかったよまどか」

 「ごめんねキュゥべえ・・・・・・」 

 

 

                         

 

                        巴マミ宅

  

  

 

                        

 「鹿目さん、お見舞いに来てくれてありがとう」

 まどかは下校の途中マミのマンションに向かった。マミのお見舞いのためマミの部屋に上がっていた。

 「マミさん、体大丈夫ですか?」

 「えぇ、大丈夫よ、明日には登校出来るわ」

 マミの様子は落ち着いていた。まどかは胸をなでおろしていた。

 

 まどかはマミの様子を見て、銀八の話をすることにした。

 

 「あの・・・・・・マミさん」

 「なに? 鹿目さん」

 いざ話すとなると聞きづらくなっていたが、まどかは昨日のことを聞くことにした。

 

 「坂田先生が言っていた、背負う苦しみと背負われる苦しみの話をする前に坂田先生と話をしていたことが気になっていたんです」

 マミはまどかが訪ねた理由に概ね察しがついていた。

 

 「そう・・・・・・昨日、坂田先生が言ってたことを・・・・・・」

 「はい魔女退治が終わった後、背負う苦しみと背負われる苦しみの前にマミさんは坂田先生と何か話してたんですか?」

 「美樹さんに願い事の話をした日に鹿目さん達と別れた後、暁美さんと会ったの」

 「ほむらちゃんと?」

 「えぇ、ただ暁美さん一人だけじゃなかったの」

 「坂田先生・・・・・・ですか?」

 「そう、暁美さんから魔法少女(私達)のことを聞いてたみたいで・・・・・・」

 まどかはほむらが銀八と一緒に来たことに心の中で驚きつつも、マミの話に耳を傾けた。

 

 「暁美さんは鹿目さんを魔法少女にするのを阻止したかったみたいだったの」

 「ほむらちゃんが・・・・・・」

 まどかはほむらがどうあってもまどかを魔法少女にさせないためにマミと会っていたことに驚いていた。

 

 「最初は暁美さんの目的を聞いて『いじめられっ子の発想』と思ってたし、場合によっては事を構えようと思っていたの、でも・・・・・・」

 「坂田先生が止めたんですね?」

 マミの話の流れでまどかは話の流れで銀八が止めたことに気付いた。マミもまどかの推察に肯きーー

 「えぇ、でも単純に止めに来ただけじゃなかったの」

 「それってどうゆうことですか?」

 「坂田先生は鹿目さん達を背負えるか? って、尋ねたの」

 「私たちを・・・・・・背負う?」

 「そう、『人の一生は重き荷を背負うて遠き道を往くが如し』坂田先生が徳川家康の名言を使ってまで、私に鹿目さんと美樹さんを背負えるのかって聞いたの」

 「え・・・・・・どうして、坂田先生はそんなことを?」

 「私は鹿目さん達が魔法少女になった後、二人の命はもちろん人生を背負えるのかって聞かれたんだと思う」

 「私たちの・・・・・・命と人生・・・・・・」

 まどかはもし自分が魔法少女になった後のことを想像した、マミから魔法少女の戦い方の教えと魔女との戦闘の指揮などマミ本人の負担が大きくなるのは目に見えていた。

 

 しかし、まどかとさやかの命を背負うことはかなりの重責で人生ならなおさらだった。

  

 「私、坂田先生が鹿目さん達を荷と例えたのはあなたたちの命は軽くない上に失えば二度と取り戻せないからだと思う。失ってしまえば私は自分を責め続けていたわ、きっと」

  マミの言葉にまどかは顔を伏せた。

 「ごめんなさい、私が結界内で魔法少女になるって約束したせいでマミさんが危険な目に・・・・・・」

 まどかの言葉にマミは首を振った。

 「いいえ、鹿目さんのせいじゃないわ。悪いのは浮かれてしまった私なの、鹿目さんの言葉で孤独がなくなったのは事実でも、それを理由で鹿目さんを責めるのは筋違いよ」

 

 「でも・・・・・・」

 まどかはそれでも何かを言おうととした。それでもマミは首を振った。

 「私は、孤独になるのが怖かった・・・・・・両親を亡くした時に」

 「え・・・・・・」

 まどかはマミの両親が亡くなったことに絶句した。

 「鹿目さん美樹さんに契約の話の時に『私の場合は考えてる余裕さえ無かった』ていったのは覚えてるかしら?」

 まどかはマミがキュゥべえが居なかったら死んでいたと話していたことを思い出していた。

 「はい・・・・・・」

 まどかはマミに返事をした。

 「私の両親は・・・・・・車の事故で亡くしたの・・・・・・」

 マミの発言でまどかは言葉を失った。マミの抱えているつらい過去が明らかになり始めた。

 

 「私は両親と一緒に車に乗って外食に行く予定だった・・・・・・でも、反対車線の車が横転して、両親を亡くしたの」

 「そんな・・・・・・」

 マミの話にまどかの顔は悲壮な表情だった。魔法少女としてのマミしか知らなかったまどかは話を聞くことしかできなかった。

 「私は何が起こったか分からなかった。両親に呼びかけても、返事が来なかった。その時に両親の死を実感したの、私は助けを求めた、その時にキュゥべえが現れて・・・・・・」

 「契約したんですね・・・・・・」

 まどかは話の流れでキュゥべえがマミと契約して命を取り留めたことを悟った。

 マミは頷きながら話を続けた。

 「事故が起こった周辺は混乱していて、救急車の到着には時間がかかるほどの惨事だったわ。その時に願ったのがーー」

 

 『助けて!! 私死にたくない・・・・・・!』

 

 まどかは今にも泣きそうなくらいに顔を伏せた。マミは契約の経緯を語るのを一旦止めた。

 

 「ごめんなさい、こんな話をして・・・・・・」

 「マミさん、私・・・・・・全然知らなくて・・・・・・なのに魔法少女のマミさんに憧れて、マミさんの抱えてるものも知らなくてーー」

 マミの謝罪を聞いてまどかは涙をぽろぽろ流した。

 マミはまどかの肩に触れて首を振った。

 「違うわ、鹿目さん。私は魔法少女になった後、友達付き合いが悪くなって、助けられなかった人もいて、・・・・・・必死にすがって生きてきて良いことがなくて・・・・・・臆病で独りが耐えられなかったから、鹿目さんの優しさに付け込んだ結果があの状況なの、私の自業自得なの・・・・・・」

 

 まどかはマミの顔を見た、マミの顔は涙でぬれていた。

 

 「マミさん・・・・・・ごめんなさい、私・・・・・・弱い子でごめんなさい・・・・・・」

 まどかは涙を流しながら、マミに謝罪した。

 「鹿目さんは悪くないの・・・・・・私は一人で死んでしまうのが怖かったの・・・・・・怖かったのよ」

 マミも涙を流しながらまどかに謝罪した。

 

 

 

                       ***  

 

 

 まどかはマンションから出た後、まどかの前に見覚えのある長髪の少女が立っていた。暁美ほむらだった。

 

 「ほむらちゃん・・・・・・」

 まどかはほむらの名を呼んだ、しばらく沈黙だったほむらは口を開いた。

 

 「あなたは自分を責めすぎてるわ、鹿目まどか」

 「え・・・・・・」

 「あなたを非難できる者は誰もいない、いたら私が許さない」

 「・・・・・・」

 まどかはほむらの言葉にキョトンと驚いていた。

 

 




 はい、話の流れはYouTubeのまどマギポータブル参考に取り入れました。

 銀八(銀時)の言葉に何か感じるものがあったまどかが、マミの話を聞いて魔法少女の憧れを違う意味で決別する流れを書きたかったので、大体はこんな感じに書かせてもらいました。

 ラストにほむらを登場させるのは、味が出そうな気がしたので入れてみました。

 パートABCは飽きる気がしたので、今回は違うタイトルにさせてもらう予定ですので楽しみにしてください。

 ご意見、ご感想お待ちしております。


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願いと依頼も内容は計画的に

 最初はマミの後にほむらとまどかの会話パートです。

 その後がさやかルートです。

 そして最後にほむらと銀八(銀時)のパートが入ります。
 注目のシーンですのでよろしく!


                数分前 マミ宅

 

 

 「マミさん、このノートを・・・・・・」

 まどかは一冊のノートをマミに渡した。

 「・・・・・・このノートは」

 マミはそのノートに見覚えがあった。

 魔女退治の見学の話の時にまどかが魔法少女になったときの衣装が描かれていたノートだった。

 

 「私は最初、誰かを助けるために戦う魔法少女になることで誰かの役に立てるんだって胸を張れる自分になりたかった・・・・・・。でもそれは何も見えていなかったのと同じでした。魔法少女のマミさんを見ていただけで、人間のマミさんを見ていませんでした」

 まどかの言葉にマミは静かに聞いていた。

 「私は、そういう魔法少女の憧れと決別します、でも絶対にならないというわけじゃないんです。自分ではどうしようもできないとき、多分キュゥべえと契約するかもしれません」

 マミはまどかがノートを渡した理由に察しがついた。

 これは、まどかなりの『けじめ』だったのだ。魔法少女としてのマミしか見ていなかった少女の戒めだった。

 マミはまどかの考えを汲み取るために出来ることを悟った。

 「分かったわ、このノートは私が預かっておくわ。でも困ったときには私を呼んで頂戴。私の話を聞いてくれたあなたを助けられるように・・・・・・」

 マミは、スマホを取り出し、電話番号を送信した。

 「マミさん・・・・・・でも、いいんですか? 私はマミさんを裏切るようなことを・・・・・・」

 まどかはマミの電話番号を受け取るのを躊躇していたが、マミは首を振った。

 「私、坂田先生に言ったの、あなたたちの自主性を尊重するって、でもあの戦いで自分の言った言葉を忘れてしまったの、困ったときに助けに行けなくなったら私は今の私を否定するのと同じなの、これは私の『けじめ』なの」

 まどかはマミの目には強い決意を感じ取っていた。

 まどかはマミの電話番号を受け取り、まどかも自分の電話番号をマミに送信した。

 「鹿目さん・・・・・・」

 「マミさん、いろいろ話を聞かせてください。辛いこと、哀しいことを聞かせてください、今の私は話を聞くことしかできないから」

 マミはまどかの優しさを感じ取っていた。

 「ありがとう、鹿目さん」

 

 まどかはマミの部屋を後にした。そしていま、まどかはマンションの玄関前にほむらと出会うことになる。

 

 

 

 

 

                        ***

 

 

 

 夕暮れの河川敷に、まどかとほむらは帰路につくために歩いていた。

 「ーー私がもっと早くに、ほむらちゃんの言うことを聞いてたら・・・・・・」

 まどかはほむらにお菓子の魔女の件での謝罪をしたが、ほむらは気にすることもなくーー

 「それで巴マミの運命は変わったわけじゃないわ。そもそも、私の言葉なんかじゃ説得なんてできはしなかった。でもあなたの運命は変えられた、あなたが救われただけでも私は嬉しい」

 ほむらはそう、まどかに答えた。

 まどかはほむらにある質問をした。

 「ほむらちゃんはさ、なんだかマミさんとは違う意味でベテランって感じだよね」

 ほむらは静かに答えた。

 「そうかもね、否定はしない」

 まどかは次にある質問をした。

 「・・・・・・マミさんは助かったけど、昨日のような出来事で誰かが死ぬとこ何度も見てきたの?」

 「そうよ」

 「・・・・・・何人ぐらい」

 「数えるのを諦めるほどに」

 二人の間に沈黙が流れ歩きながらまどかはある確認をした。

 「魔女の結界の中で魔法少女と普通の人が死んじゃったらこっちの世界はどうなるのかな?」

 「向こう側(結界内)で死ねば死体だって残らない、巴マミには遠い親戚しか身寄りが居ないわ。あの世界で死んでしまったら失踪届が出るのはまだ当分先になっていたわ」

 「・・・・・・誰も、魔法少女として戦った女の子が死んだこと気づかないの?」

 「仕方ないわ。向こう側で魔法少女が死ねば死体だって残らない、こちらの世界では魔法少女(私達)は永久に行方不明者のまま、魔法少女の最後なんてそういうものよ」

 ほむらの答えにまどかは涙ぐむ、ほむらはまどかの顔を見て歩を止めた。

 「・・・・・・」

 ほむらはまどかの顔を見ていた。まどかはやっと絞り出した言葉が出た。

 「ひどいよ・・・・・・」

 「・・・・・・」

 まどかは魔法少女の最後に悲しみを抱いた。ほむらは静かにまどかの言葉を待った。

 「みんなのために、ずっと独りぼっちで戦ってきた人なのに、誰にも気づいてもらえないなんて、そんなの寂しすぎるよ」

 ほむらはまどかの方を見合って言葉を告げた。

 「そういう契約で私たちはこの力を手に入れたの、誰のためでもない自分自身の祈りのために戦い続けるのよ。誰にも気づかれなくても、忘れ去られてもそれは仕方のないことだわ」

 その言葉にまどかは否定した。

 「私は覚えてる、魔法少女(あなた達)のこと忘れない、絶対に!」

 まどかの言葉にほむらは静かに告げる。

 「そう・・・・・・そう言ってもらえるだけ幸せよ」

 ほむらの言葉を聞いてまどかは言葉を続ける。

 「ほむらちゃんだって! ほむらちゃんのことだって忘れないもん! 昨日助けてくれたこと、絶対忘れたりしないもんっ!」

 まどかの言葉を聞いてほむらは表情を変えないまま静かに拳を握っていた。

 

 まどかはほむらの様子の変化に気づいた。

 「・・・・・・ほむらちゃん?」

 ほむらに呼びかけるまどか、その呼びかけにほむらはある答えを告げた。

 「・・・・・・私が間に合ったのは、坂田先生が無謀と取れる行動のおかげで間に合っただけ。それとこれは警告よーー」

 ほむらは告げる

 「あなたは優しすぎる、忘れないで、その優しさがもっと大きな悲しみを呼び寄せることもあるのよ」

 「・・・・・・」

 まどかはほむらの警告に言葉を失った。しかし、ほむらは別のことを考えていた。

 今しがた、話題にした人物(銀八)にある『頼み事』をしたのを思い出していた。

 

                         

 

 

 

 

                        ***

 

 

 

 

                     見滝原病院  病室

 

 

 ベッドに横たわっている上條恭介と向かい合ってる美樹さやかは、彼が聞いている曲の質問をした。

 「何を聞いてるの?」

 「・・・・・・亜麻色の髪の乙女」

 曲名を聞いたさやかは作曲している人を当てた。

 「ああドビュッシー? 素敵な曲だよね」

 さやかは頭を掻きながら恭介に話す。

 「あたしってほら、こんなんだからさぁ、クラシックなんて聞くなんてがらじゃないだろってみんなが思うみたいでさ、たまに曲名とか言い当てたらすっごい驚かれるんだよね」

 「・・・・・・」

 恭介は曲に聞き入ってるのか、無言だった。

 さやかは話し続けた。

 「恭介が教えてくれたから。でなきゃあたし、ちゃんと聞こうと思うきっかけなんてたぶん一生無かっただろうし・・・・・・」

 さやかは話を続けようとした後に恭介が口を開いた。

 「・・・・・・さやかはさ」

 「なあに?」

 さやかは恭介に聞き返したが、思いもよらない言葉が返ってきた。

 「さやかは僕をいじめてるのかい? 何で今でもまだ僕に音楽なんか聞かせるんだ? 嫌がらせのつもりなのか?」

 「!」

 さやかは一瞬驚いたが言葉を紡ごうとした。

 「だって恭介は音楽好きだから・・・・・・」

 その瞬間、恭介は思いもよらない行動に出た。

 「もう聞きたくなんてないんだよ! 自分で弾けもしない曲をただ聴いてるだけなんて僕は、僕は・・・・・・」

 そう叫びながら恭介はCDプレイヤーを左手でたたき割った。

 ベッドのシーツには恭介の血が飛び散った。 

 さやかはその光景に驚愕した。

 「ああ! やめて!」

 さやかは恭介を抑えるが恭介本人が叫ぶ。

 「もう動かないんだ、もういた痛みさえ感じないこんな手なんて・・・・・・」

 恭介を落ち着かせる意味合いでさやかは励ます。

 「大丈夫だよきっと何とかなるよ、諦めなかったらいつかきっとーー」

 その続きを、話すことが出来なくなった。恭介からある真実を聞かされてーー

 「諦めろって言われたのさ! もう演奏なんて諦めろって先生から直々に言われたよ。今の医学じゃ無理だって、僕の手はもう二度と動かない奇跡か魔法でもない限り治らない・・・・・・」

 恭介の言葉を聞いてさやかは決意が固まった。いや、固まってしまった。

 「あるよ!」

 「え?」

 「奇跡も魔法もあるんだよ」

 

                       ***

  

 

 恭介の病室を後にしたさやかはキュゥべえと契約をするために病院の屋上に向かうことにした。

 病室の窓にキュゥべえがいたため、さやかがテレパシーで契約する場所を指定したからだ。

 「・・・・・・」

 (私が恭介の腕を治してあげられるんだったら・・・・・・そのためなら・・・・・・)

 「自分が命がけの戦いを背負っても構わねェってか」

 「!」

 さやかは聞き覚えのある声に驚いて声の主を探すと廊下の窓側にいた。

 「・・・・・・坂田先生・・・・・・何で」

 「魔女の騒ぎの時にテメーの幼馴染の面拝めなかったからな、改めて顔を拝もうとしたら病室からテメーが出てきたわけだ。その様子じゃ・・・・・・」

 銀八は、さやかの様子を見て察しがついた。

 さやかは首を傾げた。

 「先生から宣告されたみたいで、今の医学じゃ治せないって」

 「今のお前の顔を見りゃ大体の想像はつくわ。何をする気なのかこちとら事情も知ってるしな」

 さやかは自分が契約を結ぼうとしてるのを見抜かれていたことを悟った。

 さやかは銀八に白状することにした。

 「・・・・・・はぁ、分かってるんじゃ嘘ついたって仕方ないよね。多分、先生の予想は間違えてないよ・・・・・・私は先生の予想通りのことをしようとしてる」

 「・・・・・・」 

 

 銀八は、少し息を吐いた後、頭を抱えた。

 ほむらから聞いていたからだ、さやかが契約しようとしている、とーー

 できれば思いとどまらせるようにと頼まれていたからだ。

 

 「いろいろ考えてみたんだけど・・・・・・これが私にとってベストな選択だと思うんだよね。魔法少女になって魔女と戦うってちょっとカッコいいし・・・・・・この街の人を護れるしね・・・・・・それに・・・・・・自分の運命に絶望している人も一人、救うことが出来る」

 「・・・・・・」

 銀八はさやかの話を口を挟まずに静かに聞いていた、さやかは銀八に自分の選択を話したことに恐る恐る質問をした。

 「なにか間違ってる? 私の選択」

 「・・・・・・間違ってはいねぇんじゃねーか?」

 銀八の答えにさやかは安堵していた。

 「・・・・・・そうだよね・・・・・・やっぱり・・・・・・」

 さやかは自分の選択は間違っていないと受け取ったが、銀八は自分の言葉を話したーー

 「ただ・・・・・・俺ァ気に喰わねェな」

 さやかは驚いていた、自分の選択を擁護してくれるんじゃないかと、さやかは銀八に聞き返した。

 「・・・・・・どうして?」

 銀八はさやかの疑問に答えた。

 「確かに、テメーの言う通りにすりゃ周りの連中は助かるだろうよ、そこは否定するつもりはねェ、ただ、・・・・・・それじゃ結局『テメー自身』は救われねェじゃねーか」

 「!」 

 さやかは驚いていた、銀八はさやかの身を案じていたことに契約した後の自分の今後を心配してくれたことに、銀八は話を続けた。

 「お前の願いが叶ってダチ公の腕が治ったとして・・・・・・その後はどうなるよ」

 「・・・・・・」

 さやかは言葉が出なかった、その後のことを考えていなかったことに、銀八はさやかの顔を見ながら言葉を続けた。

 「てめーは生きるか死ぬかの戦いを一生続けなくちゃならねーんだぞ? その上、もしテメーが魔女との戦いで死んだら、残された奴はダチ公が居ない世界で生きていくことになるんだぞ・・・・・・ダチ公を助けてェ気持ちは分からなくねーが・・・・・・ちっとばっか考えがずれてんだろうが」

 「・・・・・・」

 さやかは銀八の言葉に考えを巡らせていた。さやかは自分が居なくなった後、自分の周りにいる人間の顔を浮かべてみた。

 まどかを含む学校の友達や家族、尊敬できる魔法少女の先輩(巴マミ)と大切な幼馴染の顔が悲しみにくれながら過ごす世界を想像した後、銀八に自分の考えを伝えた。

 

 「・・・・・・もう少しだけ考えてみる、けれど・・・・・・最後に決めるのは私だから」

 さやかの言葉を聞いた後、銀八は最後にさやかにあることを伝えた。

 「そうかい・・・・・・ま、後悔だけはしねーように気を付けろよ・・・・・・間違っても俺みてーな後悔しか残らねェ道は選ぶんじゃねーぞ」

 「・・・・・・え?」 

 銀八はそうさやかに伝えて病院のエレベーターへと向かった、

 さやかは、銀八の最後に言った言葉に困惑していた。

 その言葉には銀八(銀時)の世界で起きた『ある戦争』の経験者()としての言葉だった。

 

 

 銀八はさやかの契約を思いとどまらせるように依頼をした魔法少女(ほむら)のもとに向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

                       ***

 

 

 

 夜の公園で二人の人影があった、一人は女子中学生(暁美ほむら)、もう一人は天然パーマの青年(坂田銀八)だった。

 彼らが公園に来たのほむらからの指示で依頼(さやかの契約阻止)の近況報告の指定場所を選んでいたからだ。 

 「・・・・・・」

 ほむらは銀八を見ていた。銀八に出した契約阻止の件についてやってくれたのかを聞くためだ。

 「こんな時間に何の用ですかいお嬢さん、パフェでもおごってくれんのか?」

 銀八はほむらに冗談交じりの言動で反応を見ていた。

 「私が頼んだこと・・・・・・やってくれたかしら?」

 ほむらは銀八の言動にぶれず、依頼の件の報告を求めた。

 「取りあえずはな・・・・・・ただ、あれはどう転ぶか分からねーな。あいつの幼馴染、今の医学じゃ治んねーくらい指が・・・・・・」

 銀八はさやかの様子を話しながら依頼をこなしたことをほむらに話した。

 「・・・・・・そう」

 ほむらは目を伏せながら、銀八が依頼をこなしてくれたことに納得していた。

 銀八はほむらにある質問をしていた。

 「で・・・・・・お前は何でさやかの奴がダチ公のために契約しようとしてるなんて知ってんだ?」

 ほむらは銀八のもっともな質問に、含みのある答えを告げた。

 「過去の経験から推測した・・・・・・ただそれだけよ」

 「経験?」 

 銀八はほむらの答えに困惑したが、ほむらからある質問を投げかけられていた。

 「それより・・・・・・私からあなたに聞きたいことがあるの」

 「聞きてェことがあるのはお互い同じらしいな、腹据えて話すとしようじゃねーか」

 ほむらと銀八は今まで聞きたかったことを、今聞く時だと言わんばかりに真剣な顔でお互いに見合った。

 

 「一番根本から聞かせてもらうわ・・・・・・あなた、いったい何者なの?」

 

 先に質問したのはほむらだった、銀八はからかい交じりの答えをつぶやいた。

 

 「甘いモンが好きな遊び人とでも答えりゃいいのか?」

 ほむらは銀八の答えに一瞬不機嫌になったが気を取り直して、別の質問に変えることにした。

 「・・・・・・質問の仕方を変えるわ、あなたは『この世界』の人間なのかしら?」

 

 銀八はほむらの質問に一瞬緊張が走った。

 いつか来ると思った、違う世界を目の前の魔法少女(暁美ほむら)が信じるかどうか。

 銀八は冗談交じりの確認をほむらに返した。

 「・・・・・・・・・・・・仮に俺が『いやー実は異世界から来まして―』って言えばお前は信じるのか?」

 ほむらは困惑したが、少し思案した後で何か思い当たる節があったのか、銀八に返した。

 「・・・・・・信じるわ、だってあなたはここに現れるはずのない人間だもの」

 

 「・・・・・・? オイ、そいつはどういう・・・・・・」 

 銀八はほむらの答えの意味を問いかけようとするがーー

 「待って・・・・・・魔女が現れたわ」

 ほむらの発言で、銀八の質問がさえぎられてしまったからだ。

  

 「こんな時に・・・・・・」

 銀八は魔女の出現に苛立ちを覚えたが、ほむらが魔女の方に向かおうとしているために中断した。

 「ここからかなり近いみたいね、それもかなりの人が巻き込まれてる」

 「マジか!?」

 銀八は魔女が巻き込んだ人間の数に驚いているが、そんな暇は無かった。

 「行きましょう、早くしないと犠牲者が出かねないわ」

 ほむらはそう言って現場に向かった。

 

 「・・・・・・後で聞かせろよ」

 

 そう言いながら銀八はほむらの後を追った。

 

 

 




 はい、取りあえずはここまで書かせてもらいました。
  
 良いところで魔女の出現はハラハラしそうな気がしましたのでここまでとさせてもらいました。

 一昨日参考になるまどマギシリーズの漫画を買いました。
 
 その漫画を参考に少しは面白くできるかどうか不安ですが、これからも当作品をよろしくお願いします。


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魔法少女と侍

 さて、そろそろさやかのデビュー会ですが、杏子が登場します。

 そしてラストがほむらと銀八のはお互いのことを話す流れが出てきます。

 ほむらの驚く顔はご想像にお任せします。


                  数時間前

 

 まどかは夜の街の中を歩きながら、帰路に着こうとしていた。

 まどかは歩を進めながら、あることを考えていた。

 

 「ほむらちゃん・・・・・・ちゃんと話せばお友達になれそうなのに、・・・・・・どうして一人でいようとしてるんだろう・・・・・・」

 

 マミのマンションを後にした時、ほむらとばったり会ったことを思い出していた。

 マミ以上のベテランぶりの経験とそれに裏打ちされた戦いの技術をどこで得たのか、そしてまどかの契約阻止の理由が気になっていた。

 

 (私を魔法少女にしない理由は、グリーフシードが取れなくなるとかそんな単純なものじゃない気がする・・・・・・何かーー)

 

 まどかはほむらとの会話での警告のことを思い出してみた。

 

 『あなたは優しすぎる。忘れないで、その優しさがもっと大きな悲しみを呼び寄せることもあるのよ』

 

 まどかは少し、自分のクラスメイトや家族の顔を浮かべてみた。

 自分自身が『居ない世界』はきっと、心の中に自分自身の存在が居ただけで、後は何も残らないーー

 その事実が自分と関わりのある周りの人間が『自分が居ない事実』を抱え続けることを指すのか、まどかにはまだ分からなかった。

  

 そう、考えているうちに見覚えのある人影を見かけた。

 「あれ? 仁美ちゃん?」

 志筑仁美の姿を目撃したまどかは彼女の首には有ってはならない印が付いていた。

 

 (あれ・・・・・・あの時の人と同じ!?)

 

 魔女の口づけが仁美の首に付けられているということは、魔女に魅入られているということを思い出していた。

 待っているのは、魔女によって自殺としか捉えられない理不尽な死が齎されると意味していた。

 まどかはすぐさま仁美のもとに駆け寄った。

 「仁美ちゃん! ねぇ仁美ちゃんってば!」

 まどかの呼びかけに気づいた仁美はまどかの方に顔を向けて返事をしていた。

 「ーーあら、鹿目さんごきげんよう♪」

 「ど、どうしちゃったの? ねえどこに行こうとしてたの?」

 まどかは仁美に質問を投げかけていた。

 「どこってそれはーーここよりもずっといい場所ですわ♪」

 「仁美ちゃん・・・・・・」

 仁美への質問の答えが普通じゃないとまどかは悟った。

 仁美の歩幅がふらつき、それと同じように言動がおかしくなっていった。

 「ああ、そうだ鹿目さんもぜひご一緒に、ええそうですわそれが素晴らしいですわ♪」

 

 

                        ***

 

 

 しばらくして、魔女の口づけを受けた仁美についていくと周りには他の人々が集まっていた。

 「どうしよう、これってまさか・・・・・・」

 よく見ると、周りの人間の首元に魔女の口づけがついていた。

 仁美も含めほかに人間たちもある一点の場所に向かっていた。

 向かっていたのは小さな工場だった。

 「マミさんに連絡したいけど、周りの人達が怪しむかもしれない・・・・・・」

 魔女に操られた人間は連絡を取ろうとするまどかに気づいて何をするか分からない。

 まどかは注意深く周りの人間がどんな行動を取るか、今は様子見をするしかなかった。

 

 

                       ***

 

 

 「・・・・・・そうだよ、俺ぁ駄目なんだ・・・・・・こんな小さな工場一つ満足に切り盛りできなかった。今みたいな時代にさ俺に居場所なんてあるわけねえんだよな・・・・・・」

 小さな工場内にいる男性がそうつぶやいていた、どうやら工場の責任者のようだった。

 周りにいる人々はうめき声をあげながら、幽鬼さながらの足取りで工場の中心へと集まっていった。

 「んっ」

 女性がバケツを床に置いて、液体の入った二つのプラスチックの容器のふたを開けた後、女性は容器の中に入っていた液体をバケツの中に入れていった。

 

 「!」

 

 まどかはその容器の中身を見た瞬間、母から薬品の取り扱いについて聞かされたことがあった。

 

 『いいか、まどか。このてのものには扱いを間違えるととんでもないことになるものもある、あたしら家族全員あの世行きだ、絶対に間違えるなよ』

 

 容器の中にあるのは明らかに塩素系と酸性の液体が入っていた液体、つまり有害ガスによる集団自殺に間違いなかった。

 

 「だ、駄目。 それは駄目っ!」

 まどかはどうにかして集団自殺を阻止しようとするも、仁美に腹部を殴打され防がれてしまう。 

 「うっ」

 「邪魔してはいけません、あれは神聖な儀式ですのよ」

 仁美はまどかに言い聞かせるように、自殺を儀式を捉えているような節のごとき言動を話した。

 その言葉にまどかは即座に否定した。

 「だってあれ危ないんだよっ、ここに居る人たちみんな死んじゃうんだよ!」

 しかし仁美は演説をするが如く、今の儀式(自殺)を肯定するかのような発言をした。

 「そう、私たちこれからみんなですばらしい世界へ旅に出ますの♪ 生きている体なんて邪魔なだけですわ、鹿目さんあなたもすぐにわかりますから」

 「・・・・・・」

 まどかは仁美の演説の言葉に戸惑い、周りの人間は称賛するかの如く拍手をしていた。

 「は、離してっ!」

 「あっ」

 まどかは意を決して仁美の腕を振り払った。

そして、有害ガスが出る液体化合物をガラス窓へと投げたバケツは窓を割って、中身の液体は外へと流れ出た。

 

 その直後、集団自殺を阻止された人々は、生ける屍の如くまどかに向かった。

 その目は正気を失っているために、不気味な足取りが異様で恐怖が襲った。

 まどかは後ずさり、背後の壁に逃げ道をふさがれた。

 まどかは背後の壁に窓があることに気付いて、脱出を図ろうとするも、窓には鍵が掛かって開けられなかった。

 「ど、どうしよう・・・・・・はっ」

 まどかは壁に背を付けた時にあるものが手に当たった。

 ドアノブだった。

 まどかはすかさずドアノブをひねりドアを開けた瞬間、物置へと逃げ込んだ。

 ドアを閉めた後、脱出経路を確保した後にマミと連絡することにした。

 

 しかし、あまり時間は残されていなかった。

 操られた人々が今にもドアを破ろうとしていた。

 まどかは身を隠せる場所を探すもーー

 どこからか不気味な音楽が流れていた。

 

 不気味な音色に驚き壁に背を当てた瞬間、背後が光った。

 壁と思われていたのはテレビだったが、最悪の問題がまどかに襲い掛かった。

 

 

 笑い声と共に天使と形容しがたい人形が、まどかの腕をつかんだ。

 「あっ! や、やだ・・・・・・そんなっ」

 両腕、脚、肩、頭部に人形もとい魔女の使い魔がいてまどかの自由を奪っていた。

 

 「いやだ・・・・・・助けて、誰かぁ!」 

 まどかの叫びは虚しく、水中に沈めるかのように魔女の結界にひきずりこまれた。

 

 

 

                    ***

 

 

 結界内は水中とフィルムテープの空間が広まっていた。

 その空間ではまどかの体の輪郭があやふやな状態になっていた。

 

 その状態で結界内の周りを時計回りに漂っていると、テレビのような魔女がまどかの目の前に現れた。

 魔女のテレビモニター状の体から、まどかの心の後悔が映し出された。

 

マミに憧れた時の気持ち、魔法少女になろうとした時の決意が映し出され、最後に死の恐怖に屈してしまった映像が流れた。

 

 (ーー罰なのかなこれって、きっと私が弱虫で嘘つきだったから、バチが当たっちゃったんだ・・・・・・)

 

 まどかが魔女の精神攻撃を食らっていたとき、使い魔がまどかの体をつかみ上げ体をゴムのように伸ばした。

 

 「ああっ、ああーー」

 

 体を伸ばされた苦痛に顔を歪ませるまどか、その時ーー

 

 蒼い一筋の線がまどかの体を伸ばした使い魔を切り裂いていった。

 

 「うわ!」

 

 まどかは蒼の閃光の一筋に触れて、体が元に戻っていった。

 「あ・・・・・・」

 まどかは蒼の線の主を目で確認すると、白いマントを羽織っていたが見覚えのある蒼髪の少女だった。

 

 「さやか・・・・・・ちゃん?」

 青い髪の少女はまどかの声に反応して微笑んだ。

 美樹さやか本人だった。

 魔法少女さやかは目の前の魔女に向かい合って臨戦態勢に入った。

 

 テレビ画面状の体から使い魔を召喚して応戦するも、さやかは手元に剣を構えて使い魔を切り裂いていった。

 

 何体もの使い魔を切り裂いたさやかは魔女に向かって突きを繰り出すがただの突きではなく、剣にはトリガーがあったため突きを繰り出す際、剣のトリガーを引いての突きだったため、剣先が打ち出された突きの破壊力は高く、魔女を貫くのは容易だった。

 

 魔女はさやかの剣の一撃によって倒された。

 

 

 

                       ***

 

 

 

 工場の外を塔の飾りの上で見ていた少女が見ていた。

 「・・・・・・」

 暁美ほむらだった。

 ほむらはすぐに工場へ向かうことにした、塔の下にいる協力者(銀八)に状況を簡潔に説明しながら・・・・・・

 

                       ***

 

 

 

 仁美を含めた魔女の口づけに捕らわれた人々は全員気絶していた。

 

 「いやーごめんごめん」

 

 さやかは笑いながらまどかに遅れたことを謝罪していた。

 まどかに至ってはさやかが魔法少女になっていたことに驚いていた。

 「さやかちゃん、その恰好・・・・・・」

 まどかに尋ねられたさやかは照れながら答えた。

 「ん? いや、まあ、心境の変化っていうのかな、大丈夫だって! 初めてにしちゃ上手くやったでしょ?」

 「でも・・・・・・」

 まどかはさやかに何か言おうとしたが、足音がしたので話を中断した。

 二人は足音のする方に振り向くと、ほむらが工場に現れていた。

 「あなたはーー」

 ほむらがさやかに何か言おうとするもーー

 「ふんっ! 遅かったじゃない転校生!!」

 さやかはほむらに睨み付けていた。

 

 

 そして、もう一つの足音が工場に向かっていた。

 「ほむら、脚早えェーよ見失うとこだったぞオイ」

 さやかはその聞き覚えのある声に、ほむらを睨むのをやめた。

  

 さやかは白髪の天然パーマの男、坂田銀八の姿に驚いていた。

 銀八はほむらの方に顔を向けようとするもーー

 「・・・・・・」

 魔法少女姿のさやかを見て言葉を失っていた。

 

 さやかは申し訳なさげで困った笑顔で銀八の顔を見ていた。

 「・・・・・・やっちまったのか、お前」

 銀八はさやかに、質問を投げかけていた。

 さやかは、柔らかめな声で銀八に答えた。

 「ごめん、先生・・・・・・でも先生の話しで、私なりにちゃんと考えた結果だから。後悔なんてしない、するはずがないよ・・・・・・絶対ね」

 「・・・・・・」

 銀八はさやかの言葉に黙って聞くことしかできなかった。

 

 

                        ***

 

 

 見滝原病院の一角の病室のベッドで、上條恭介は『動かなくなった左腕』にある違和感を覚えた。

 「ん・・・・・・?」

  

 左腕を動かそうとした時、恭介は自分の腕の変化に戸惑っていた。

 動かなくなっていた左腕が、指がーー

 

 「・・・・・・!」

 

 『動いた』

 

                       ***

 

 

 

 「まさか君が来るとはねえ」

 鉄塔から見滝原を眺める一人の少女がキュゥべえと話していた。

 「・・・・・・マミの奴が魔女と戦えなくなってるって聞いたからさぁ、わざわざ出向いてやったってのに、ちょっと話が違うんじゃない?」

 赤毛のポニーテールの少女はクレープを食べながらキュゥべえに尋ねた。

 見滝原に新しい魔法少女が居ることに不満を漏らしていた。

 「悪いけど、この土地にはもう一人の魔法少女がいるんだ。つい最近契約したばかりだけどね」

 「何それ? 超ムカツク・・・・・・」

 少女はクレープを咀嚼しながら毒づいた。

 しかし、少女は合理的な判断力を持っていた。

 「でもさあこんな絶好の縄張り、みすみすマミとルーキーのヒヨッコにくれてやるってのもシャクだよねぇ」

 「どうするつもりだい? 杏子」

 キュゥべえはポニーテールの少女、佐倉杏子に尋ねた。

 杏子は笑みを浮かべて宣言する。

 「決まってんじゃん、ブッ潰しちゃえばいいんでしょ? ・・・・・・その子」

 そう言って杏子は八重歯が見える獰猛な笑みを浮かべた。

 

 

                       ***

 

 

 

                三叉路のアパート ほむらの部屋

 

 

 

 工場に現れた魔女を美樹さやかが倒した後、ほむらと銀八はアパートに戻っていた。

 銀八がほむらの部屋にいるのは、ほむらが公園での話の続きを落ち着いてするために自分の部屋に招いていた。

 

 「・・・・・・ワリーな、アイツのこと止められなくてよ」

 銀八はほむらに謝罪した。

 ほむらは首を振って否定した。

 「あなたが謝ることじゃないわ・・・・・・あなたは私の頼みを聞いてくれただけ。私が美樹さやかへの注意を向けておくのを怠ったからよ、だからあなたに落ち度はないわ」

 ほむらは銀八にそう話した。

 銀八は本題を切り出した。

 「・・・・・・聞かせな、テメーは一体何を目的に動いていやがる?」

 「・・・・・・あなたには、言っておくべきかもしれないわね。 私のことも・・・・・・目的も・・・・・・そして、この世界のことも」

 ほむらは真剣な目で銀八にそう言った。

 「・・・・・・?」

 

                        ***

 

 

 

 銀八はほむらの目的を聞いていた。

 ほむらとまどかの関係と契約の経緯、マミと手を組まなかった理由、さやかが契約することを何故知っていたのか、キュゥべえの正体と魔法少女と魔女との残酷な秘密、そして、見滝原に現れる『最強の魔女』の存在のことをーー

 

 ほむらは一通りの話を銀八に話し終えていた。

 「・・・・・・理解できたかしら?」

 ほむらは銀八に話の内容が理解できたのか聞き返した。

 銀八の返答はーー

 「・・・・・・つまり、お前は『まどかちゃん親衛隊隊長』ってことでファイナルアンサー?」

 ふざけで返された。

 

 その瞬間、ほむらの鉄拳が銀時の顔にクリーンヒットした。

 「真面目に答えて、って言うか『まどかちゃん親衛隊隊長』って何!? アイドルの追っかけじゃないから!!」

 

 クールな表情でのセリフから一転、ほむらの口から突っ込みが炸裂した。

 

 「いや、あの、うん・・・・・・なんか取りあえず頑張ってることは分かったわ」

 「・・・・・・」

 

 銀八はこれ以上、ほむらの怒りに油をくべないようにそういった。

 ほむらは気を取り直して話を続けた。

 「もうすぐこの街には『ワルプルギスの夜』がやって来る、具現化すれば何千人もの犠牲者が出るわ。何としてもそれを止めなくてはならないの・・・・・・そして、あの子を・・・・・・まどかのことも守らないと・・・・・・!」

 

 ほむらが自分の目的と決意を吐き出していた。

 その時、銀八はあることを問いかけた。

 「そのバケモンと正面からかち合って勝てんのか?」

 「・・・・・・」

 銀八の問いにほむらが黙り込んだ。

 銀八はほむらの様子に大体の予想がついていた。

 「・・・・・・ま、簡単に勝てたら苦労しねェだろうな、でなきゃ同じ時間を繰り返しちゃいねえもんな」

 銀八はほむらが同じ時間を繰り返してワルプルギスの夜に挑んでいたことを聞いていた。

 でも同じ時間を繰り返していると言うことは・・・・・・そういうことなのだろう。

 「勝つわ・・・・・・一人でも戦って次こそ・・・・・・!」

 ほむらが銀八にそう話した。その時ーー

 「一人じゃねーよ」

 「え・・・・・・?」

 銀八の言葉にほむらが一瞬驚いた。

 「安心しな、テメーは一人でそのバケモンと戦うことなんてことはねーよ。女に背中預けて逃げるよか、一緒に戦った方がましってもんだしな」

 

 「・・・・・・」

 ほむらは銀八の言葉に面食らっていた。

 ほむらから出た言葉はーー

 「気持ちは受け取っておくわ・・・・・・」

 ほむら自身戸惑っていたのか、そう銀八にそう返すことしかできなかった。

 

 ほむらは気を取り直す様に銀八にある質問をすることにした。

 

 「私からの質問は、あなたはどこから来たの?」

 ほむらの質問に銀時は思い出したかのように言った。

 「そういや、腹割って話そうって言ってたもんな・・・・・・良いぜ俺が何処から来たのか聞いてみな」

 

 

 

                      ***

 

 

 

 銀八の話の内容に流石のほむらも驚いていた。

 当然だった、銀八の世界は黒船の代わりに『天人』と呼ばれる宇宙人に地球を襲撃された『江戸』から来た侍だということに、驚かないと言えば無理な話だった。

 

 銀八のいた江戸の幕府は天人の傀儡政権になっていること、天人と侍が戦争をしていたことに驚いていた。

 

 「・・・・・・坂田銀八、あなたに聞きたいことがあるのだけれど・・・・・・」

 「なんだ?」

 「あなたは教師じゃないのでしょ? ならあなた、どんな仕事をしているの?」

 それは純粋な疑問だった、話の流れからして侍は廃刀令で刀を捨てている、なのに銀八はどうやって生きているのか気になっていた。

 むろん銀八(この男)はまともな定職につけるとは思えなかった。

 

 「・・・・・・万事屋(よろずや)だ」

 「万事屋?」

 銀時の職業にほむらが困惑した。

 

 銀八はほむらに「書くもんあるか?」と聞いてきたのでほむらはメモとペンを銀八に手渡した。

 銀八はメモにある文字を書いた。

 万に事と書いて『万事』(よろず)と書いた。

 

 「これで万事って読むんだ。俺は『万事屋銀ちゃん』って名前でやってんだ」

 「万事屋・・・・・・銀ちゃん」

 

 ほむらは銀八の言葉を繰り返した。

 

 「ああ、俺は犬の散歩から地球の平和を守るまで何でもやるのが万事屋なんでな」

 銀八はそう言ってほむらの部屋を後にしようとした時。

 

 「待って」

 ほむらに呼び止められていた。

 「なんだよ、俺眠みーんだけど・・・・・・」

 「最後に一つだけ、あなたの本当の名前はなんて言うの?」

 ほむらは銀八の本当の名前を訪ねていた。

 それが最後の質問だった。

 

 「銀時・・・・・・坂田銀時だ」

 

 そう自分の名前を告げて、銀八もとい銀時は自分の部屋へと戻っていった。

 

 一人になったほむらはぽつりと言った。

 「坂田・・・・・・銀時、金時だったら金太郎の名前になってしまいそうね」

 ほむらは無自覚に口元が緩んでいた。

 まるで、笑っているかのようだった。

 

 

 

 




 はい、どうにか書ききりました。
 
 長く待たせてすみません。
 
 とうとう、杏子登場しました。

 取りあえず、ほむらと銀八はお互いの事情を説明する流れが出来たと思います。

 ほむらに銀八の本名を知る流れは面白い気がしたので入れてみました。

 ご意見、感想お待ちしております。

 次回をお楽しみに!!


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後悔なんて、あるわけない 編
魔法少女だって人間


 とうとう、さやか&杏子編に突入しました。

 運命が変わる瞬間に立ち会ってください。


               見滝原病院 屋上

 

 病院の屋上には花壇が彩られていた。

 

 その花壇の中心に二つの影があった。

 花壇の中心にオブジェに腰かけているのはキュゥベエとその向かいにいるのは美樹さやかだった。

 

 「本当にどんな願いでもかなうんだね・・・・・・」

 さやかはキュゥべえにそう尋ねた。

 「大丈夫、君の祈りは間違いなく遂げられる」

 キュゥべえはさやかの問いに肯定した。

 

 「じゃあいいんだね?」

 「うん、やって」

 キュゥベえは逆にさやかにそう尋ねると、さやかは契約の了承をキュゥべえに告げた。

 

 キュゥべえは猫とウサギの耳が合わさっている方の中でウサギの耳が、腕を広げるかのような動きをした。

 すると、キュゥベえはさやかの胸に耳が腕の代わりをするように触れた。いや、『何か』を取り出した。

 

 「・・・・・・ッ!」

 さやかは苦痛に歪んだ、それでもキュゥべえはやめなかった。

 

 「ああっ!」

 さやかは苦痛に声を上げた直後、胸から青い光が出ていた。

 その光は卵状の形へと変えていった。

 「さあ受け取るといい、それが君の運命だ」

 キュゥべえはさやかに青い光のを帯びた宝石、「ソウルジェム」を掴むように促した。

 さやかはその言葉に従って、ソウルジェムを掴んだ。

 

 

 

                       ***

 

 

                    見滝原中学校 教室

 「ふぁぁ・・・・・・」

 

 志筑仁美は朝から欠伸が出ていた。

 「どうしたのよ仁美? 寝不足?」

 さやかは仁美を心配して尋ねた。

 

「ええ、ゆうべは病院やら警察やらで夜遅くまで・・・・・・」

 「え~? 何かあったの?」

 「なんだか私、夢遊病っていうのか・・・・・・それも同じような症状の人が大勢いて、気がついたらみんなで同じ場所に倒れていたんですの」

 「はぁ? 何それ?」

 「お医者様には集団幻覚だとか何とか・・・・・・今日も放課後に精密検査に行かなくてはなりませんの、ああ、面倒臭いわ・・・・・・」

 仁美は昨日あったことをさやかに話した後にぼやいた。

 「そんなことなら学校休んじゃえばいいのに」

 さやかはそう、仁美に話すがーー

 「駄目ですわ、それではまるで本当に病気みたいで家の者がますます心配してしまいますもの」

 仁美の優等生としての誇りがそれを許さなかった。

 「さっすが優等生、偉いわぁ」

 さやかは仁美の優等生っぷりに笑っていた。

 

 しかしまどかとほむらは知っていた。

 昨日仁美を含む人々が集団幻覚にかかったのではなく、魔女による集団自殺(虐殺)だと言うことにーー

 魔法少女になったさやかが集団自殺を阻止したことにーー

 親友であるまどかと、まどかを気に掛けるほむらは、明るくふるまうさやかを複雑な心境で見ていた。

 

 

  

                      ***

 

 

 

 通学路の土手、後ろには大量の風力発電機が見えていた。

 「んーっ、久々に気分いいわぁ、爽快爽快ッ!」

 そう言ってさやかは土手に寝転がった。

 「・・・・・・・・・・・・」

 土手に腰を掛けたまどかは、さやかの方を見ていた。

 「さやかちゃんはさ・・・・・・怖くはないの?」

 まどかはさやかに尋ねた。

 「ん? そりゃッちょっとは怖いけど、まぁ昨日のヤツにはあっさり勝てたし、もしかしたらまどかと仁美、友達二人を同時になくしてたかもしれないって、そっちの方がよっぽど怖いよね」

 「・・・・・・・・・・・・」

 さやかの言葉にまどかは静かに聞いた。

 「だーかーらっ、何つうかな、自信? 安心感? ちょっと自分を褒めちゃいたい気分つうかね、まー舞い上がっちゃってますねーあたし、これからも見滝原市の平和は、この魔法少女さやかちゃんがガンガン護りまくっちゃいますからねー、なんてね・・・・・・マミさんと一緒に魔女退治するから無茶はしないよ、まどか」

 さやかは最後に少し声を落とした。

 まどかのためにも無茶は出来なかった、さやか自身の自戒だった。

 「後悔とか全然ないの?」

 まどかはさやかにそう尋ねた。 

「そうね・・・・・・後悔っていえば・・・・・・迷っていたことが後悔かな」

 さやかはまどかにそう告白した。

 「どうせだったらもうちょっと早く心を決めるべきだったなって、あのときの魔女、坂田先生と転校生のおかげで何とかなったけど・・・・・・あたしと二人がかりで戦ってたらマミさん、あんな目に合わずに済んだかもしれない」

 さやかはそうまどかに告げた。

 その後にさやかは思い出したかのように気になっていたことをまどかに聞いた。

 

 「そういえば、マミさんの様子はどうだったの?」

 さやかは自分で話していたマミの様子が気になっていた。

 「マミさんだけど、元気そうだったよ・・・・・・それとーー」 

 まどかはマミの様子、そして、銀八の話をした。 

 

 

 

 

                     ***

 

 

 「そっか、マミさんも先生に・・・・・・」

 さやかは自分と同じくマミが銀八の話を考えていなかったことで命を落としかかったことに落ち込んだことに、自分とまどかを魔法少女の戦いに巻き込んでしまったことに責任を感じていたことを把握した。

 

 まどかも銀八がさやかのもとに訪れたことに驚いていた。

 

 まどかがマミの過去を話さなかったのは、まどか自身軽々しく話すべきでなかったし、重すぎた。

 

 「私・・・・・・」

 まどかはマミの顔を思い出していた、マンションで契約の経緯を聞いた時に、銀八が言っていた『背負う苦しみと背負われる苦しみ』と自分が居ない世界について考えていた。

 しかし、自分の頭の中に堂々巡りの渦を抱え込んでいた。

 「・・・・・・」

 まどかは渦が堂々巡りの思考の渦に落ちていたとき、頬をつつく感触を感じていた。

 「さては、何か変なことを考えてるな?」

 

 「・・・・・・私・・・・・・私だって・・・・・・」

 「なっちゃった後だから言えるのこーゆーことは、『どうせなら』っていうのがミソなのよ」

 さやかはまどかの顔を見て励ますように言った。

 

 「あたしはさ、先生の話で『自分のいない世界』はどんなだろうって考えたの、恭介はもちろんまどかや家族、学校の友達がいきなり私が居なくなったら、『私が居なくなった』って事実がほかの皆に刻まれてしまうって・・・・・・」

 さやかはつぶやくような声で、まどかに話した。

 「さやかちゃん・・・・・・」

 まどかも何か話しかけようとするも、言葉が出なかった。

 

 「願い事、見つけたんだもの命がけで戦う羽目になったって構わないって・・・・・・そう思えるだけの理由があったの、そう気づくのが遅すぎたっていうのがちょっと悔しいだけでさ・・・・・・だから引け目なんて感じなくていいんだよ、まどかは魔法少女にならずにすんだっていうただそれだけのことなんだから」

 

 「・・・・・・」

 さやかの言葉にまどかは聞くしかなかった。

 さやかは「それに」と付け加えてーー

 「まどかだって、家族がいるでしょ? その家族がまどかが突然いなくなったり、事故とかが原因で死んじゃったら、家族の笑顔はなくなっちゃうんじゃない? あたしも、出来るだけ無茶はしないからさ・・・・・・」

 まどかは、これ以上さやかにかける言葉が見つからなかった。

 

 

 

 

                         ***

 

                      見滝原病院 病室

 

 「そっか、退院はまだなんだ・・・・・・」

 「足のリハビリはまだ済んでないしね、ちゃんと歩けるようになってからでないと、手の方もどうして急に治ったのか理由が分からないんだってさ、だからもうしばらく精密検査がいるんだって」

 

 病室で恭介から聞いたさやかは納得していた。

 さやかは恭介自身の様子を聞いた。

 「恭介自身はどうなの? どこか身体におかしいところある?」

 

 「いや・・・・・・なさすぎて恐いっていうか・・・・・・事故に遭ったのさえ悪い夢だったみたいに思えてくる、・・・・・・さやかの言う通り奇跡だよね・・・・・・これ」

 恭介は自分自身に起こった奇跡(出来事)に戸惑っていた後に、言葉が続かなかった。

 「・・・・・・」

 「ん? どうしたの?」

 

 さやかは恭介の様子が気になっていた。

 恭介はあることを話した。

 「さやかにはひどいこと言っちゃったよね、いくら気が滅入ってたとはいえ・・・・・・」

 恭介の口から出たのは謝罪だった。

 左腕が動かなくなった時にさやかに八つ当たりしたことへの罪悪感が今になって出てきていた。

 しかしーー

 「変なこと思い出さなくてもいーの、今の恭介は大喜びしてて当然なんだから、そんな顔してちゃ駄目だよ」

 さやか自身そんなことを気にしてはいなかった。

 その後に、左腕を顔の方に寄せた。

 さやかは腕時計を見ていた。

 「うん、そろそろかな」

 時間を見計らったように、さやかは恭介に声を掛けた。

 「恭介! ちょっと外の空気吸いに行こ」

 

 

 

 

                        ***

 

 

 

 

 さやかは車椅子に乗った恭介をエレベーターで病院の屋上に向かった。

 

 「・・・・・・屋上なんかに何の用?」

 恭介は何故屋上に連れてこられたか分からなかった。

 「いいから、いいから」

 さやかは微笑みながら恭介に急かさないように言いなだめた。

 

 病院の屋上には花々が生い茂る円形状の庭園、その手前である人物たちが拍手をして恭介を待っていた。

 バイオリンの師である恭介の父とその妻である恭介の母、そして恭介の担当病院スタッフの人達だった。

 

 さやかが腕が回復した恭介のために用意した回復祝いのサプライズだった。

 「みんなーー」

 恭介は待っていた人たちに驚いていた。

 「本当のお祝いは退院してからなんだけど・・・・・・足なんかより先に手が治っちゃったしね」

 恭介の父から、あるケースが手渡された。

 「・・・・・・!」

 恭介はケースの中身を見て驚いていた。

 ケースの中身はかつて恭介が使っていたヴァイオリンだった。

 「それはーー」

 恭介は何故捨てたはずのヴァイオリンがあるのか驚いていた。

 その理由は恭介の父から説明された。

 「お前からは処分しろと言われていたが・・・・・・どうしても捨てられなかったんだ、私は」

 父から理由を聞いた恭介は驚きのあまり言葉が出なかった。

 

 「さあ、試してごらん、恐がらなくていい」

 

 父の言葉に促された恭介はヴァイオリンを手にした。

 さやかは恭介の両親と病院スタッフのそばに行った。

 全員、恭介の演奏を聞く観客、病院の屋上はたった今、恭介の回復祝いの演奏会場だった。

 恭介は父の言葉に肯き、ヴァイオリンを弾いた。

 

 恭介のヴァイオリン演奏は怪我をする前と変わらずに演奏されていた。

 恭介の両親も静かに見守っていた。

 

 さやかは恭介の様子と演奏を感慨深く聞いて、魔法少女になったことを誇らしげにしながら心の中に呟いた。

 (マミさん、ごめん、願い事、恭介に使っちゃった・・・・・・先生、先生の話まだ考えきれてない・・・・・・まどか、あたしの願い叶ったよ、後悔なんてあるわけない・・・・・・あたし、最高に幸せだよ・・・・・・)

 

 さやかは思い更けながら夕暮れの空を見上げた。

 

 

                       ***

 

 

 

 そのころ、見滝原の展望台からさやかを見定めていた赤毛のポニーテールの少女が居た。

 「・・・・・・・・・・・・ふーん」

 

 少女、佐倉杏子が見滝原の魔法少女であるさやかを見ていた。

 「あれがこの街の新しい魔法少女ね・・・・・・」

 そうつぶやきながら、ウエハースを食べる杏子、ただし展望台には杏子ひとりではなかった。

 

 「本当に彼女と事を構える気かい?」

 杏子にそう聞いたのは、キュゥベえだった。

 「だってちょろそうじゃん、瞬殺っしょあんなヤツ、それとも何?」

 キュゥベえの問いに答えながら振り向いた杏子、魔力付加した双眼鏡を戻して、ソウルジェムを掴んだ。

 

 「文句あるっての? アンタ」

 

 挑発的に笑いながらキュゥべえに問いかける杏子、しかし、キュゥベえは至って冷静にあることを伝えた。

 「すべて君の思い通りにいくとは限らないよ、確かに君は美樹さやかよりは経験も豊富だし、実力では上回ってるよ、でも、この街にはもう一人魔法少女が居るからね」

 キュゥべえの意味深な話に杏子は反応した。

 

 「へぇ? 美樹さやかとマミ以外にいるのか? 何者なのそいつ」

 杏子はキュゥべえに問いかけるが、でてきた言葉がーー

 「僕にもよくわからない」

 だった。

 「ハァ? どういうことさ、そいつだってアンタと契約して魔法少女になったんでしょ?」

 杏子はキュゥベえに再度質問した。

 「そうとも言えるし・・・・・・そうとも言えないといえるね、あの子は極めつけのイレギュラーだ、どういう行動に出るか僕にも予想できない」

 

 「ハン・・・・・・上等じゃないの、退屈すぎてもなんだしさ、ちったぁ面白みもないとねぇ」

 残りのウエハースを食べ終えながらそう話を区切ろうとした杏子だったがーー

 

 「そしてもう一人・・・・・・君にとっての障害がこの街にいるよ」

 呼び止められるかのような形で杏子はキュゥべえの言葉に反応した。

 「ハァ? まだいるのかよ? 誰よそいつ・・・・・・?」

 杏子はキュゥベえに問いかけた。

 「坂田銀八と言う人間の男さ」

 

 「誰だよそれ、 男? どういうことさ?」

 杏子は訳も分からなかった、人間の男が何故邪魔になるのか、皆目見当がつかなかった。

 「彼については僕もまるで分からない、普通の人間のはずなのに僕が見えるなんて訳が分からないよ・・・・・・」

 その言葉で杏子は驚いていた。

   

 「キュゥべえが見える!? どういうことさ、あんたが見えるって言ったら、あんたと契約してるあたしら魔法少女と魔法少女の素養がある女しかいないはずだろ?」

 杏子はキュゥベエに問いただしたがーー

 「分からないのはそれだけじゃない、彼は巴マミが魔女に殺されそうになった時、彼は巴マミを救出しただけでなく、魔女に戦いを挑んだんだ」

 キュゥベえのに聞かされた話の内容に杏子はまた驚いた。

 

 「なんだよそれ!? 魔法少女を助けたのはおろか、魔法少女じゃないどころか普通の人間が魔女に戦いを挑むって、イカれてんのかそいつ!?」

 

 「僕にも訳が分からないよ・・・・・・詳しいことはその時が来なければわからない、ただ、本当にこの街を君の思うようにしたいのなら、その二人の存在は邪魔になるだろうね」

 

 キュゥベえの話の内容に驚きっぱなしの杏子は叫んだ分、少し冷静になった。

 

 「はーん、つまり・・・・・・邪魔者は全員消しちゃえばいいんだろ?」

 

 冷静さを取り戻した杏子はキュゥベえにそう聞いた。

 「君にとってはそれが最善の策かもしれないね」

 

 杏子は展望台の階段に向かっていった。

 

 すべては、見滝原市を自分の縄張りにするために、魔法少女を倒すためにーー

 

 そんな杏子はまだ知る由もなかった。

 

 戦いに挑もうとしたイレギュラーな男『坂田銀八』に出会った時、彼女の運命が変わることを・・・・・・

 

 かつて自分が犯した罪と向き合うことにーー

 

 かつて失った物をもう一度背負うことにーー

 

 そして、かつての師との和解と友と呼べる存在、そしてもう一人の師と呼んでも差し支えのない存在に巡り合うことに彼女はまだ知る由もなかった。

 

 

 

 

 




 今回、些細なハプニングが起こったので投稿が遅れました。


 ようやくさやか&杏子編に突入です。
 
 括目してください。

 ご意見とご感想お待ちしております。


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時間は過ちと善行とともに流れるもの

 さやかvs杏子編に入ります。

 若干違うところがあるのは、マミが生存しているところです。

 この違いは大きな転換期の一つになります。

 では刮目してください。


           見滝原市 ショッピングモール

 

 

 ショッピングモールのファーストフード店で二人の少女が店内で会話していた。

 

 暁美ほむらと鹿目まどかだった。

 まどかはファーストフードのセット、ほむらは単品のコーヒーを頼んでいた。

 

 「話って何?」

 ほむらはまどかに話があるといわれ、ファーストフード店を話の場に選んだ。

 話の内容はーー。

 「あのね、さやかちゃんの事・・・・・・なんだけど・・・・・・」

 「・・・・・・」

 美樹さやかが魔法少女になった件のことだった。

 「あ、あの子はね、思い込みが激しくて意地っ張りで、けっこうすぐに人とケンカしちゃったり・・・・・・でもね、すごくいい子なの、やさしくて勇気があって・・・・・・誰かのためと思ったら、がんばりすぎちゃって・・・・・・」

 ほむらは、話の内容で大体の内容が分かっていた。

 しかしーー。

 「魔法少女としては、致命的ね」

 「そう・・・・・・なの?」

 ほむらの答えにまどかはたじろいだ。

 ほむらはまどかにある確認をする形で話を進めた。

 「前に話したこと、覚えてるかしら? あなたの優しさがもっと、大きな悲しみを呼び寄せることもあるって」

 「うん、覚えてるよ・・・・・・」

 ほむらの問いにまどかは頷いた。

 「度を越した優しさは甘さにも繋がるし、蛮勇は油断になる、そしてどんな献身にも見返りなんてない・・・・・・、それを弁えていなければ、魔法少女は務まらない、だから、巴マミは命を落としかかった」 

 

 「そんな言い方やめてよ!」

 

 ほむらの言い分にまどかは溜まらず大声で叫んだ。

 「・・・・・・」

 そのあと、まどかはすぐに冷静さを取り戻し、話を続けた。

 「・・・・・・そう、さやかちゃん自分では平気だって言ってるけど・・・・・・でももしマミさんのときと同じようなことになったらって思うと・・・・・・私どうしたらいいのか・・・・・・先生とほむらちゃんが居なかったら、マミさんは・・・・・・」

 「美樹さやかのことが心配なのね」

 「私じゃさやかちゃんの力になってあげられないから・・・・・・だからほむらちゃんにお願いしたいの、さやかちゃんと仲良くしてあげて、マミさんのときみたいにケンカしないで、魔女をやっつけるときもみんなで協力して戦えばずっと安全なはずだよね?」

 

まどかはほむらに、さやかの助けになってほしいと頼み込んでいた。

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 しかし、お互いに流れる沈黙は続く、ほむらは今流れる沈黙を破る。

 

 「私は嘘をつきたくないし、できもしない約束もしない」

 「・・・・・・」

 ほむらはそう、まどかに前置きを話した後に、残酷な宣告を告げる。

 「だから、美樹さやかのことはあきらめて」

 まどかはほむらの言葉に打ちひしがれて一筋の涙を流した。

 「・・・・・・う・・・・・・・・・・・・どうしてなの?」

 

 「あの子は契約すべきじゃなかった」

 「なら・・・・・・!」

 ほむらの言葉に、まどかは何か言おうとしたがーー

 

 「坂田先生に頼んだとはいえ確かに私のミスよ、あなただけでなく彼女もきちんと監視しておくべきだった、でも責任を認めた上で言わせてもらうわ、今となってはどうやっても償いきれないミスなの、死んでしまった人が帰ってこないのと同じこと、一度魔法少女になってしまったらもう救われる望みなんてない、あの契約はひとつの奇跡と引き換えに、すべてを諦めてるってことだから」

 ほむらの話の内容でまどかは衝撃だった。

 それでもまどかは言葉を紡いだ。

 「・・・・・・だから、ほむらちゃんも諦めちゃってるの? 自分のことも他人のことも全部・・・・・・」

 「ええ、罪滅ぼしなんて言い訳はしないわ、私はどんな罪を背負おうと私の戦いを続けなきゃならない」

 ほむらはそう言って席を立った。

 まどかは辛そうなな顔でほむらの顔を見た。

 「時間を無駄にさせたわね、ごめんなさい」

 そう、立ち去ろうとした時。

 

 「ほむらちゃん、最後に一つだけ・・・・・・」

 まどかは、ほむらを呼び止めていた。

 ほむらは一瞬立ち止まって、まどかの方を向いた。

 「坂田先生に頼みごとをしたのはどうして?」

 ほむらは、一瞬言葉を詰まらせてが、ある話をした。

 

 「私から、魔法少女の話をしたからよ、彼はあの日に巻き込まれた後、私の借りてるアパートの部屋の隣だったの、魔法少女ことを教えた後に、彼は私に協力してくれたから・・・・・・」

 ほむらの話に、まどかは驚いていた。

 その時、まどかはあることを思い出していた。

 「坂田先生が、マミさんやさやかちゃんのところに来たのは」

 

 「私は、坂田先生に事情を話してあなた達の契約を止めるために力を貸してくれたの、ただし話の内容は彼自身の言葉で話してくれたわ」

 

 そう言って、ほむらはまどかと話を終え、ファーストフード店から出た。

 

 

                      *** 

 

 

 

                  さやか宅  さやかの部屋

 

 さやかは部屋の鏡で自分自身の姿を見て自分の両頬を叩いて気合を入れていた。

 「・・・・・・」

 キュゥべえはクッションからさやかの様子を見ていた。

 『緊張してるのかい?』

 『まあね、ひとつ間違えたらお陀仏なわけだし』

 

 

 さやかはマンションの出入り口から出てきた後、二つの影がさやかを待っていた。

 

 「!・・・・・・まどか? マミさん?」

 

 「さやかちゃん、これからその・・・・・・」

 「そ、悪い魔女捜してパトロール、これも正義の味方の務めだからねー」「・・・・・・」

 「へーきへーき、マミさんだってそうしてきたんだし、後輩としてはそれぐらいはねー」

 「・・・・・・美樹さん」

 マミはさやかの言葉に、愁いを帯びた表情で聞いていた。

 「あ、あのねっ、私、何もできないし、足手まといにしかならないって、分かってるんだけど、でも・・・・・・」

 まどかは拳を握りながら、決意を話す。

 「邪魔にならないところまででいいの、行けるところまで一緒に・・・・・・連れてってもらえたらって・・・・・・」

 「・・・・・・」

 さやかはまどかの言葉の中に、申し訳なさの感情を感じ取った。

 さやかは、まどかの方を向いて微笑んだ。

 「がんばりすぎじゃない?」

 「ご、ごめん・・・・・・駄目だよね、迷惑だってのは分かってたの・・・・・・」

 まどかはさやかに謝罪したが、さやかはまどかの手を握って違う形で返事した。

 「ううん、すっごく嬉しい、ね・・・・・・分かる? 手が震えちゃってさ、さっきから止まらないの、情けないよね、魔法少女だってのにひとりだと心細いなんてさ・・・・・・」

 「さやかちゃん・・・・・・」

 まどかはさやかの不安を理解した。

 「邪魔なんかじゃない、すごく嬉しい誰かが一緒にいてくれるだけで、すっごく心強いよ、それこそ百人力って感じ」

 「私・・・・・・」

 まどかは何か言おうとしたが、うまく言葉に出なかった。

 「必ず守るよ、だから安心してあたしの後についてきて、マミさんと一緒に今までみたいに一緒に魔女をやっつけよ」

 「・・・・・・うん」

 まどかは頷くことしかできなかった。

 その時ーー。

 「美樹さん」

 マミはさやかを呼んだ。

 「マミさん・・・・・・」

 さやかはマミの方に向いた。

 

 「あなたに、私の過去を話しておこうと思ってここに来たの」

 「マミさんの過去?」

 さやかは最初困惑したが、マミの辛そうな表情でさやかを見ていた。

 

 このとき、さやかは直感で感じた。

 ーーマミさんの話を聞かなければならない、と。

 

 

 

 

                      ***

                                                                                                                                                                                                             さやかはマミの過去を聞いた後に、「私も魔法少女のマミさんしか見てなかった・・・・・・」と深く反省していた。

 その言葉を聞いた後、マミは「あのときの私は、後輩が出来たのと自分が孤独ではなくなったことに頭がいっぱいだった」と話し合った。

 

 その後、三人は改めて魔女捜しを始めた。

 

 

 「危険は承知の上なんだね?」

 

 キュゥベえはさやかに魔女捜しにまどかを同行させることを確認した。

 「あたしはバカだから、ひとりだと無茶な出鱈目やらかしかねないし、まどかもいるんだって肝に銘じておけば、それだけ慎重になれると思う、それにマミさんはまだ本調子じゃないし猶更、ね」

 さやかの言葉から出てきたマミの調子とは、お菓子の魔女以来、魔女相手だとあの時の恐怖がよみがえるらしくまともに戦えるか怪しいとのことだった。

 

 マミの過去と共に把握した憧れの『魔法少女』(先輩)の現状を聞いた後、さやかは自分自身の慎重さのタガとするためにマミに同行を頼んでいた。

 

 『いざとなったら、私も魔法少女になって鹿目さんを護るわ』

 

 そう、マミ自身がそういったようだが、さやか自身無茶はさせたくなかった。

 

 「そうか・・・・・・うん、考えがあってのことならいいんだ」

 さやかの決意を聞いたキュゥべえは、それ以上何も言わなかった。

 その後にキュゥベえはまどかの方に顔を向けた。

 

 (君にも君の考えがあるんだろう? まどか、 さやかを守りたい君の気持ちは分かる、実際、君が隣にいてくれるだけで、最悪の事態に備えた切り札をひとつだけ用意できるしね)

 キュゥべえはまどかがさやかと魔女捜しに同行したもう一つの理由を確認するようにまどかに聞いていた。

 

 (私は・・・・・・)

 

 まどかは言葉を詰まらせていた。

 キュゥべえはまどかが迷っている様子を見て。

 

 (今は何も言わなくていい、さやかやマミもきっと反対するだろうし、ただ、もし君の心を決めるときが来たら、僕の準備はいつでも整ってるからね)

 

 キュゥベえはそう契約の準備に関してまどかに告げた。

 (・・・・・・うん)

 まどかもキュゥベえの提案に同意した。

 

 

 

 

                        ***

 

 

 

 三人は魔女捜しでショッピングモールから裏路地まで足を運んでいた。

 

 すると、さやかのソウルジェムが光った。

 結界の反応だった。

 

 「ここだ・・・・・・」

 さやかはソウルジェムの反応を追って、結界を見つけた。

 キュゥべえは裏路地に張られた結界を見た。

 「この結界はたぶん魔女じゃなくて、使い魔のものだね」

 キュゥベえの言葉に従ったさやかは歩を進めた。

 

 「楽に越したことはないよ、こちとらまだ初心者なんだし」

 「油断は禁物だよ」

 「分かってる」

 

 さやかはキュゥベえの忠告に肯きながら歩を進めた。                                              

すると、笑い声とも叫び声ともつかない声が何処からともなく聞こえていた。

 声の主は子供の落書きの姿をした使い魔だった。

 

 使い魔は、さやかたちの姿を見たとたん逃走した。

 

 「逃げるよ!」

 「任せて!」

 キュゥべえは使い魔が逃げることに気付くと、さやかはソウルジェムを握って魔法少女に変身した。

 

 

 魔法少女に変身したさやかの姿はマントを着用した剣士で、左側に斜めのスカート、肩だしスタイルの姿だった。

 

 さやかはマントを翻して、数本の剣を召喚して、使い魔目がけて剣を投擲した・・・・・・はずだった。

 

 投擲して剣を弾くものがあった。

 

 明らかに、何者かの妨害だった。

 「ちょっと、ちょっと!」

 

 投擲した剣の上に乗る少女が居た。

 「何やってんのさアンタたち」

 少女の姿はどこかしらの修道女のような赤い服装、ノースリーブの上着で前側が開いた形状だった。

 赤い髪を黒いリボンでポニーテール状にまとめた、八重歯が特徴の少女だった。

 

 すると、使い魔の結界が解けていった。

 使い魔が逃げ切るということを指していた。

 「あ・・・・・・! 逃がしちゃう!」

 まどかの声に反応してさやかはすぐさま使い魔を追いかけようとするもーー。

 

 「うっ・・・・・・!?」

 

 さやかの喉元に鋭利な刃物が突き付けられていた。

 赤髪の魔法少女の武器は槍だった。

 「美樹さん!」

 

 「見てわかんないの? あれ魔女じゃなくて使い魔だよ、グリーフシードを持ってるわけないじゃん、っていうかいたんだ・・・・・・マミ先輩(・・・・)?」

 

 その少女がマミの名を呼んだときさやかとまどかはマミの方に振り向いた。

 赤髪の魔法少女が何故マミを知っているのかと聞きたそうな表情だった。

 「彼女は佐倉杏子、かつて私と一緒に魔女を倒してきた・・・・・・私のかつての後輩よ」

 

 マミは暗く愁いの表情で赤髪の魔法少女、佐倉杏子の名を口にした。

 さやかとまどかは驚きの表情で杏子の顔を見やった。

 杏子に至っては詰まらなそうな顔で三人を見た。

 

 「まあ、マミとはしばらくコンビを組んだ程度で、そのまま喧嘩別れしたから、あんたら新米に話してないのは当然かぁ・・・・・・」

 

 さやかは少し呆けた表情だったが、事態をようやく飲み込めたため杏子に顔を戻した。

 

 「あんたがマミさんと組んでたのは分かったけど・・・・・・だからってあれ放っといたら誰かが殺されるのよ!」

 

 さやかは杏子に喰ってかかったが、杏子本人はたい焼きを食べながら自分の考えを主張した。

 「だぁからさ、四、五人ばかり喰って魔女になるまで待てっての、そうすりゃちゃんとグリーフシードも孕むんだからさ」

 杏子はさやかに向けた槍の矛先を逸らしながら、自分の答えを口にした。

 「アンタ、タマゴ産む前のニワトリ絞め殺してどうすんのさ」

 「な・・・・・・魔女に襲われる人たちを・・・・・・見殺しにするっていうの!?」

 さやかの発言に杏子は呆れた表情で話を続けた。

 「アンタさ、なんか大元から勘違いしてんじゃない? 食物連鎖って知ってる? ガッコ―で習ったよねぇ?」

 杏子はさやかに向かって歩を進みながら言葉を続けた。

 「弱い人間を魔女が喰う、その魔女をあたしたちが喰う」

 杏子はたい焼きを食べながらさやかの前に近づきながら最後にこう告げる。

 「それが当たり前のルールでしょ、そういう強さの順番だからさ」

 

 そう言いながらさやかの前に近づく杏子の歩は止まらなかった。

 「うっ・・・・・・」

 後退るさやか。

 「そんな・・・・・・」

 「あんたは・・・・・・」

 まどかは杏子の考えに絶句していた、さやかに至っては敵意を向けていた。

 「あっ!」

 その直後、まどかとマミの前に鎖状の結界が張られた、杏子の仕業だった。

 杏子はさやかに向かってニヤリと笑いながらーー

 「まさかとは思うけどーーやれ人助けだの正義だの・・・・・・その手のおちゃらけた冗談かますために、アイツと契約したわけじゃないよね? アンタ」

 

 その言葉に激情したさやかは杏子に剣を振り下ろした。

 「だったら・・・・・・何だってのよ!」

 しかし、杏子の槍によってさやかの剣は止められた。

 「ぐ・・・・・・・・・・・・っ」

 

 「・・・・・・ちょっとさぁやめてくれない?」

 杏子は余裕の表情で、さやかの剣を止め続けた。

 「・・・・・・うぐぐ、うう・・・・・・」

 杏子はたい焼きを食べながらさやかの様子を観察しながら、表情を変えた。

 「遊び半分で首突っ込まれるのってさぁ・・・・・・ホントムカつくんだわ」

 杏子はさやかの剣を受け止めた槍をそのままさやかに押し返した。

 「ああっ!」

 

 杏子の攻撃はそのまま終わらなかった、魔法少女としての得物である槍を多節棍状に変形させて、バランスを崩したさやかに一撃を与えた。

 「あぐ・・・・・・ッ! うぅ・・・・・・」

 

 手から剣が離れ倒れるさやか。

 「さやかちゃん!」

 まどかはさやかに呼びかけた。

 杏子はさやかに目もくれず、そのまま立ち去ろうとした。

 「トーシロが、ちったぁ頭冷やせっての・・・・・・!?」

 しかし、杏子は立ちそろうとする歩を止めた。

 さやかがすぐに立ち上がったことに気付いて、後ろを振り返ったのだ。

 「・・・・・・おっかしいなぁ、全治三か月ってぐらいにはかましてやったはずなんだけど」

 

 杏子の疑問も当然、戦いを見ていたまどかとマミも抱いていた。

 

 「さやかちゃん、平気なの・・・・・・」

 「彼女は癒しの祈りを契約にして魔法少女になったからね、ダメージの回復は人一倍だ」

 まどかとキュゥベえのやり取りを聞いた時、マミはある心当たりがあった。

 「美樹さん・・・・・・まさかッ!」

 マミは契約の力を何に使ったのか、さやかの魔法とまどかとキュゥべえのやり取りで確信した。

 

 

 

 しかし、もう戦いは止まらなかった。

 

 さやかと杏子の戦いは、もう切って落とされてしまった。

 止められるのは、同じ魔法少女しかいないほどに、戦いは苛烈していった。 

 

 

  

 




 はい、とうとうこの場面に来ました。

 遅れてすみません。

 まどマギの必然的運命の戦いの先に何が待っているのか。
 
 そして、杏子は銀時に出会った時、どんなリアクションを取るのか、お楽しみ!!

 ご意見ご感想、お待ちしております。
 


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不良魔法少女と駄目教育実習生

 前回のさやかvs杏子の流れ+第六話の前半の後に銀時が登場する予定です。

 杏子と銀時の会話に括目してください。


 さやかは、祈りの契約で得た癒しによる回復で杏子から与えられた、全治三か月のダメージから即座に立ち上がった。

 

 さやかはそのまま杏子に睨み返した。

 

 「誰が・・・・・・あんたなんかに・・・・・・あんたみたいなヤツがいるから、マミさんは・・・・・・」

 「・・・・・・」

 杏子はさやかの姿を見た後、たい焼きを食べきった後、戦闘態勢に入った。

 

 「うぜぇ・・・・・・チョーうぜー! つーか何? そもそも口の利き方がなってないよねぇ 先輩に向かってさぁ」

 杏子は槍を構えて、さやかに向かっていった。

 「黙れぇッ!」

 さやかも杏子に向かっていき、互いの得物でつばぜり合いを起こした。

 

  杏子は槍を多節棍に変化させ変則的な攻撃でさやかに一撃を加えようとするも、さやかは剣で防いでいた。

 

 「チャラチャラ踊ってんじゃねーぞ、ウスノロ!」

 

 状況は防戦一方の状況だったその様子を、まどか達は見ていることしかできなかった。

 「さやかちゃん!」

 「まどか、近づいたら危険だ!」

 まどかはさやかに呼びかけると同時に駆け寄ろうとしたが、キュゥべえに止められた。

 防戦一方の状況は長くは続かなかい。

 「あぐっ!」

 杏子が繰り出す変則攻撃にさやかはとうとう捌き切れなくなり、一撃を喰らい体勢を崩してしまった。

 

 「言って聞かせてわからねー、殴っても分からねーバカとなりゃ・・・・・・あとは殺しちまうしか・・・・・・ないよねぇ!」

 体制を崩したさやかを見逃さず、攻撃を仕掛けようとする杏子、しかし、さやかの目はあきらめていなかった。

 

 「ぐっ! あああっ!」

 

 杏子の槍の切っ先にさやかは剣の切っ先で受け止め、つばぜり合いが起きた。

 「!」

 「負けない・・・・・・! 負けるもんかッ・・・・・・!」

 杏子は戦術を変更して、槍の切っ先を地面に差し、柄を伸縮自在に伸ばして、棒高跳びの要領で空中に移動して高所から槍を突き出した。

 「うぁっ!」

 その一撃に、壁がえぐれるほどの破壊力に続いて壁の残骸片と埃がさやかに降りかかった。

 さやかはそれでもひるまずに杏子に立ち向かい続ける。

 再び、槍と剣の拮抗が続いた。

 

 二人の魔法少女同士の戦い(さやかと杏子の戦い)にまどかは心を痛めていた。

 「どうして・・・・・・? ねぇどうして? 魔女じゃないのに・・・・・・どうして味方同士で戦わなきゃならないの!?」

 まどかはキュゥベえに問いかける。

 キュゥべえはまどかの問いに答えと『最終手段』を提案した。

 「どうしようもない・・・・・・お互い譲る気なんてまるでないよ、でも、方法がないわけじゃないよ、あの戦いに割り込むには同じ魔法少女でなきゃ駄目だ。でも君にはその資格がある、本当にそれを望むならね」

 

まどかがキュゥベえと話してるうちに、戦いに決着が訪れようとしていた。

 「うぐっ!」

 さやかの脚に多節槍が絡みついて直接手を下そうとする杏子。

 「!」

 さやかの危険な状況にまどかは目を見開いた。

 「終わりだよ!」

 槍を構えた杏子はさやかに串刺し体勢で止めを刺そうとする。

 「わ・・・・・・私っ・・・・・・!」

 まどかはキュゥベえに契約しようと決意したとき。

 

 「それには及ばないわ」

 それは、聞き覚えのある声ーー

 「・・・・・・え!?」 

 

 その後に、さやかに止めを刺そうとした杏子と、身動きの出来ないさやかの立ち位置が・・・・・・変わった。

 「!」

 「!?」

 立ち位置の変わった魔法少女の間に、第三者(別の魔法少女)が髪をたびかせながら、立っていたーー

 

 「ほむらちゃん・・・・・・」

 

 佐倉杏子は困惑した、一体・・・・・・何が起こったというのだろうか。

 自分は確かに美樹さやかを串刺しにすべく槍を構え、そして攻撃を仕掛けたはずだ。

 躱すことのできない一撃だったはずだ、なのに・・・・・・なぜ自分の攻撃は空を切った。

 

 混乱していたのは美樹さやかも同じだった、武器を弾かれ体勢を崩された絶望的状態。

 自分にできたのはせめて、急所は守ろうと身を屈めることだけ。

 なのに・・・・・・何故自分に傷一つついていないのだろうか?

 

 ただ、二人が共通して分かったこと・・・・・・それは、この暁美ほむらが何か仕掛けたという事実だけだった。

 

 「おまえ・・・・・・な、何しやがったテメェ!」

 突然現れた魔法少女は得体が知れないが、何かを持っていることは間違いないだろう。

 杏子はそう思いつつ槍を構え、最速の攻撃の体勢を作り上げる。

 だが・・・・・・その矛先にはほむらの姿はない。

 それどころが、気が付けば自分の背後をとられていた。

 「--!? なーー」

 消えた、そうとしか表現できない現象が起こっている。

 催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなものでは断じてない、もっと恐ろしいものの片鱗を杏子は味わっていた。

 ふと、杏子はキュゥベえが言っていた忠告を思い出していた。

 今戦った新米の他にキュゥベえでも把握できないイレギュラーの魔法少女が居ることを聞かされていたことを思い出していた。

 

 「そうかアンタが噂のイレギュラーってヤツか・・・・・・妙な技を使いやがる・・・・・・」

 杏子はほむらから目を離さずに槍を構えていた。

 

 しかし、戦いを中断されて怒りをあらわにしているのは杏子だけでは無かった。

 

 「邪魔をするなッ!」

 さやかはほむらに敵意をむき出しにして叫ぶ、何だったらこの魔法少女(転校生)も一緒に打倒してやろうか・・・・・・

 ・・・・・・そんな考えがさやかの頭によぎったとき、ひとりの人物がさやかの手を優しく握りしめた。

 「美樹さん、もう止めなさい」

 それは最初に自分が魔法少女としての生き方に憧れを抱いた先輩ーー巴マミであった。

 

 「ま、マミさん」

 

 魔法少女に変身していたマミはさやかを止めていた。

 「落ち着いて、私たちのすべきことはこんなことじゃないでしょう?」

 マミはさやかを優しく、冷静に諭していた。

 それでも、さやかは杏子に喰ってかかろうとしていた。

 「でも・・・・・・あいつは!」

 

 「はっ、今更そいつを止めに来たのかよマミ・・・・・・そのヒヨッコに教えとけよ、上には上がいるってな」

 

 「私は、この殺し合いじみた戦いを止めに来たの、見ていられなかっただけよ」

 杏子はマミを訝しんで侮蔑めいたセリフを吐いた。

 「聞いた話じゃ・・・・・・アンタ、最近は全然魔女と戦っていないらしいじゃないか。魔女に殺されかけて戦うのが怖くなったんじゃないのかよ?・・・・・・私達が殺し合いを始めたのに止めなかったのはそういうことなんだろ?」

 「・・・・・・」

 マミは杏子の言葉に反論しなかった、いや・・・・・・出来なかった。

 「アンタいい加減に・・・・・・」

 さやかはマミへの侮辱は撤回させようと杏子に反論しようとした。ーーしかし

 「間違ってはいないわ、その子の言う通りよ」

 「!」

 マミの言葉にさやかも流石に黙るしかなかった。

 さやか自身、マミの過去と現状を聞いたばかりーーこれ以上は、何も言えなかった。

 

 「後輩にカッコ悪いところなんか見せたくないけど・・・・・・これは事実なの、あなた達が戦うたびに足が震えちゃってるの、今・・・・・・私がこうして生きていられるのはたまたま運が良かったから、味方が居たからでしょ? 一人であの魔女と戦っていたら・・・・・・間違いなくあそこで殺されていたでしょうね、それからは・・・・・・一人で魔女を倒そうと思うたびに・・・・・・足が震えちゃってるの・・・・・・!」

 

 「そんな・・・・・・!」

 さやかはマミの現状がここまでになっているとは思っていなかった。

 しかし、杏子はマミの話に興味を持たず、傷に塩を塗った。

 

 「正直さ、魔女に怯えている今のアンタに横から口を出されたくないんだよね」

 「・・・・・・その言い方には少し語弊があるわね」

 「何・・・・・・?」

 杏子の言葉にマミは少し訂正するように、ある真実を告げた。

 「私、魔女が怖くなかった事なんて一度もない・・・・・・でもね」

 「?」

 杏子は困惑した顔のままだったが、マミは言葉を続けた。

 「私が戦うことで誰かが救われるなら・・・・・・そんなに素晴らしいことってないでしょう? だったら私は戦うわ、足が震えようと・・・・・・涙を流そうと・・・・・・私を信じてくれた美樹さんや鹿目さんのために、最後までね」

 

 杏子は呆れ顔でマミから顔を逸らした。その視線の先は、ほむらに向けられた。

 

 「それでアンタ? いったい誰の味方だ?」

 杏子は、ほむらにそう問いかけた。

 「私は冷静な人の味方で、無駄な争いをするバカの敵ーーあなたはどっちなの? 佐倉杏子」

 「!?」

 ほむらは、杏子の質問に答えた後に質問を投げかけた本人の名前を呼んだ。

 杏子は驚いた顔をした。自分のことを把握している目の前の魔法少女(イレギュラー)の得体の知れなさに拍車がかかった。

 

 「ーーどこかであったか?」

 「さあどうかしら」

 

 杏子は再度ほむらに質問したが、ほむら自身まともに答えなかった。

 「・・・・・・・」

 杏子は少し考え込んだ後、ある選択をした。

 「・・・・・・手札がまるで見えないとあっちゃね、今日のところは降りさせてもらうよ」

 仕切りなおす、それが杏子の選択だった。

 「賢明ね」

 ほむらは杏子の選択を肯定した。

 

 杏子は脚に力を込めて、上空に跳躍した。

 

 ほむらは杏子の姿が見えなくなるまで空を見つめていた。

 

 「助けて・・・・・・くれたの?」

 まどかは恐る恐る、ほむらに話しかけていた。

 

 「巴マミに免じて、これ以上言うつもりはないけど・・・・・・あなたは関わり会いを持つべきじゃないともうさんざん言って聞かせたわよね」

 

 「私は・・・・・・」

 まどかは何か言いたげだったが、ほむらはこれ以上聞かないと言わんばかりにーー 

 「愚か者が相手なら私は手段を選ばない」

 そう、まどかに告げて三人の前から去っていった。

 

 「あの・・・・・・マミさん・・・・・・」

 ほむらが去ったのを見計らって、さやかはマミに話しかけた。

 「失望したかしら・・・・・・美樹さん」

 マミの口から自分の不甲斐なさに対する問いをさやかに投げかけた。

 「そんな・・・・・・そんなことないです・・・・・・!」 

 さやかは首を振って、マミの言葉を全力で否定した。

 

 マミは悲しそうな笑みでさやかにある言葉を告げた。

 

 「・・・・・・あなたが魔法少女になったことについては私からは何も言わない。あなたが自分で考えて・・・・・・自分で決めたことなんだからね・・・・・・でも、ひとつだけ覚えておいて」

 「?」

 マミは真剣な表情に変えて、さやかを諭した。

 「あなたの願いで選んだ道は決して平らな道じゃない・・・・・・いばらの道だということをね、その道を進む途中で・・・・・・決して折れたりしちゃ駄目よ」

 

 さやかは、自分が恭介の腕を治すために契約をしたことを見抜かれていたことに気付いた。

 

 「・・・・・・はい」  

 さやかはマミの言葉を重く受け止め返事を返した。

 

 

 

 

                  ***

 

 

 

 「なんなんだよアイツ・・・・・・まるで能力がわからないじゃねぇかよ・・・・・・!」

 

 暁美ほむら、仮にあいつと戦うことになったら自分は勝てるのだろうか?

 しかも・・・・・・どういうわけか、すでにこっちの情報もある程度は調べてあるらしい。

 「くそっ・・・・・・」

 イラつく・・・・・・なぜこんなに気分が悪いのだろうか、ひよっことの戦いに水を差されたからか?

 ・・・・・・違う。

 『私が戦うことで誰かが救われるなら・・・・・・そんなに素晴らしいことってないでしょう?』

 

 マミが口にしたその言葉は常に自分のためだけに戦ってきた杏子の心を大きく揺るがしていた。

 

 (甘いんだよ・・・・・・どいつもこいつも・・・・・・!!)

 「何でもいいからどっかで適当に食糧調達しに行くか・・・・・・」

  杏子は気分転換がてら食料を探そうとした時だった。

 

 ドンガラガッシャァァァァン

 

 どこからか、大きな物音がした。

 「・・・・・・何だ? なぁんか、嫌な予感がする・・・・・・」

 路地裏で誰かが揉めているのか? 

 (面倒事に巻き込まれるのは勘弁なんだけど)

 杏子は人間同士のいざこざに巻き込まれるのは本意ではなかったがーー

 「・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・」

 

 結局、関わることにした。かつての性分が杏子に残っていたからだ。

 物音がした裏路地の奥に向かうとーー

 「ぐぼでろぼしゃあああ!!」

 (ちっ、イヤなものを見せてくれるもんだねぇ・・・・・・・・・・・・・どうせなら、魔女もこーゆー奴らを喰えよな・・・・・・・)

 杏子が見たものは不良とみられる三人組の男に白髪頭の男が絡まれている場面だった。

 「な、何だこいつ・・・・・・いきなりぶっ飛んだぞ!?」

 ただ違っていたのは、不良の方がうろたえているという点だった。

 

 (は?)

 杏子は状況が全く飲み込めなかった。

 分かっていたのは、白髪頭の男が変な体勢で体を震わせて倒れているということだけだった。

 

 「テメェ、なにしてんだ!?」

 不良の一人が白髪頭の男に話しかけた。

 「お・・・・・・折れごふっっ!! い・・・・・・今・・・・・・肩を・・・・・・叩いたアレで全身の骨が・・・・・・粉々に・・・・・・」

 

 (なんだ、当たり屋かよ・・・・・・)

 杏子は不良が当たり屋に絡まれている現場を見ただけと判断して立ち去ろうとした瞬間だった。

 

 「ふざけんな!! 肩を叩いたアレでって何だよ!! テメーに肩叩いた覚えなんてねーぞ!! ただ金よこせって言っただけだ!! そもそも、それで全身の骨が折れる訳ねーだろーが!!」

   

 杏子は足を止めた。

 (なんだ? 妙な事になってんなぁ)

 杏子は不良と当たり屋のやり取りが気になり始めた。

 「きょ・・・・・・今日は全身骨折してるんで・・・・・・勘弁してください」

 

 「あぁ~、なんか萎えた、オイ行こうぜ」

 痙攣した上に吐血した白髪頭の男の姿に、不良の二人は不気味がって去ろうとした。

 (あたしもいくか・・・・・・)

 その時、杏子は立ち去ろうとした後、些細な物音を立ててしまった。

 (しまった・・・・・・)

 

 不良二人組は物音に気付いていくと赤髪のポニーテールの少女を見つけた。

 「なんだお前? 俺たちに何の用だよ?」

 不良の一人が杏子に話しかけた。

 「別に・・・・・・ただ通りかかっただけだよ」

 杏子は関わらり会わないようはぐらかすがーー

 「おーい、お嬢ちゃん。相手みてからそういう態度取った方が良いぜ?」

 「痛い目みたくねぇだろ?」

 不良の方が杏子に絡んできた。

 「はぁ・・・・・・。で、どうすんの? 帰るの? それとも・・・・・・ここで、あたしにぶっ飛ばされたい?」

 

 「「ぎゃはははははははははは!」」

 不良は大笑いして杏子を見つめていた。

 何言ってんだこいつという空気だった。

 「誰が、誰をぶっ飛ばすって?」

 「やめとけって! せっかくの可愛い顔がズタボロになっちまうぜ?」

 「面白い冗談、言うじゃねぇか?」

 不良たちが杏子を見下し、大笑いした。

 「マジで救えねぇな、あんたら」

 対する、杏子は不良を侮蔑の目でその言葉を吐き捨てた。

 

 「このクソガキがぁぁぁっ!」

 

 不良たちが杏子の言葉に激怒して、殴りかかろうとした。

 杏子はすぐに反撃しようとしたーー

 はずだったーー

 

 ズシャァァァァァ

 

 

 突如、杏子に振るわれるはずだった拳を止めるものが居た。

 

 不良と杏子は驚いた表情でその人物を見ていた。

 それは、たった今、当たり屋めいた行動をしたーー白髪の天然パーマの男だった。

 

 「・・・・・・へ? ぜ・・・・・・全身骨折は・・・・・・どうした?」

 不良が白髪の天然パーマの男に問いかけるとーー

 「腕は、どうしたのコレ、大変なことになってんじゃ~~ん」

 不良の腕が白髪の天然パーマの男の握力によって折られていった。

 

 そう言った瞬間、不良は白髪の男の拳にぶっ飛ばされ、沈んでいった。

 最初は状況が飲み込めない不良は徐々に冷静さを取り戻し白髪の男を睨んだ。

 「もう許さねぇっ! ぶっ殺すっっ!」

 不良の一人が白髪の男に殴りかかろうとした瞬間ーー

 「・・・・・・おっと」

 「ぐあっ!」

 杏子が白髪の男に加勢して、不良に蹴りを入れた。

 「テメェ・・・・・・。調子の乗ってんじゃねーぞ!」

 そう言って、不良は服の中にしまい込んだ得物を取り出した。

 それを見た杏子は挑発した。

 「はんっ! 武器があればあたしに勝てるとでも?」

 「うをぉぉぉぉ!!」

 

 不良は手に持った得物で杏子に襲い掛かった。

 その瞬間、白髪の男が棒切れのようなもで不良の得物を叩き落とした。

 杏子はその隙を見逃さず不良に手刀を喰らわせた。

 

 「んじゃ、オヤスミッ!」

 そう言って杏子は不良に一撃を与えた。

 不良たちは、全員気絶していた。

 

 

                         ***

 

 

 

 杏子は不良との喧嘩で共闘した男に興味を覚えた。

 

 「アンタ、やるじゃん。あんな当て屋まがいの行動しないでノしちゃえばいいのにさ」

 杏子が白髪の天然パーマの男にそう問いかける。

 対して白髪の天然パーマの男が反論するかのように答えた。

 「仕方ねぇだろ、仮にも教師やってる身なんでな、トラブル起こしたかねぇんだよ」

 

 杏子が男の言葉に驚いていた。

 「きょ、教師!? アンタが!?」

 「正確には教育実習に来た学生だけどな」

 白髪の男の姿を見ると白衣を確かに着ていた。

 ただ、腰に差した木刀が目に入っていた。

 杏子は、不良の得物を叩き落としたのを思い出していた、その時の男の得物だった。

 

 「テメーこそ、ガキにしてはいい動きしてんじゃねーか? 喧嘩慣れしてるようだが・・・・・・」

 「まぁ、いろんな場所を転々としてたんで、その時に・・・・・・ってね、そういえば、アンタ・・・・・・名前は?」

 杏子は興味ついでに、男の名前を聞いてみた。

 「坂田・・・・・・銀八、金じゃなくて銀だからな」

 「坂田銀八・・・・・・?」

 

 男の名前を聞いたとたん、杏子は思い出していた。

 キュゥベえが言っていたもう一人のイレギュラーの名を、魔法少女ではないイレギュラーのことを聞かされていた。

 (ま、まさか・・・・・・こいつがキュゥベえが言っていたもう一人のイレギュラー!?)

 

 銀八は、目の前の少女が驚いた表情に変わったことを見逃さなかった。

 「で、テメーはどこの悪ガキだ?」

 

 銀八は杏子の目を見据えて問いかけた。

 「・・・・・・」

 杏子は考え込んでいた。目の前の男は暁美ほむらと異なり、こちらの情報は持っていないのだろうか?

 仮にこの男が自分の障害となるのならば、むやみにこちらの情報を教えるのは得策ではない。

 だが・・・・・・

 

 「・・・・・・佐倉杏子」

 

 なぜか分からなかった、名乗るべきではないのに自分の名を名乗っていた。

 自分らしくないのは分かっていた、なのに不確定でありながら、ある直感が杏子には有った。

 

 この男が、自分の敵だとはどうしても思えなかった。

 

 

 




 はい、もう少し物語はまだまだ続きます。
 
 エレファント(原作)参考書(フィルムメモリアルとジャンプリミックス)、そして、YouTubeのポータブルの動画のセリフを合わせました。

 中々銀時と杏子の絡みがなかなか思いつかなかったので、時間がかかりました。

 ここから6話の話となりますが、ご意見とご感想よろしくお願いします。 
 


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こんなの絶対おかしいよ 編
二人の魔法少女から見た侍


 さやかvs杏子の話で話数の流れがぶった切りました。しかし、話は書く所存です。

 さやかとキュゥベえの話から始まります。

 よろしくお願いします。 


              さやか宅  さやかの部屋

 

 さやかは寝室の明かりを暗くしていた。

 これからしようとしていることを家族に見られないようにするためである。

 

 さやかは色がくすんだソウルジェムをグリーフシードに移していた。

 「これでまた、しばらくは大丈夫だ」

 「うわぁ真っ黒・・・・・・」

 

 穢れを移したグリーフシードは真っ黒に染まっていた。

 それを見たさやかは驚きながらつぶやいた。

 

 「もう危険だね、これ以上の穢れを吸ったら魔女が孵化するかもしれない」

 「ええっ?」

 キュゥベエの言葉に驚いていた。

 グリーフシードは魔女の卵、穢れをためればためるほど魔女の孵化が早まる仕組みなのを思いだしていた。

 「大丈夫、貸して」

 キュゥベえは念力らしき力でグリーフシードを浮かせ、背中の穴で食べた(・・・)

 

 「・・・・・・きゅっぷい」

 キュゥベえは特殊なげっぷをした。

 

 「これでもう安全だ」

 「・・・・・・食べちゃったの?」

 「これもまた役目の一つだからね」

 キュゥべえがグリーフシードを『食べた』のは、グリーフシードから魔女が生まれないようにするためである。

 

 さやかは寝室の明かりをつけた。

 

 「でもまた次にソウルジェムを浄化するためには早く新しいグリーフシードを手に入れないと」

 「これをきれいにしておくのってそんなに大切なことなの?」

 キュゥベえの話でソウルジェムの輝きを保つことに意味があるのかさやかには疑問だったが、キュゥベえはある理由を説明した。

 「佐倉杏子は強かっただろう? 余分なグリーフシードがあれば魔法を出し惜しみせずに無駄使いすることだってできる、それが杏子の強みだ」

 

 「だからって、グリーフシードのために他の人を犠牲にするなんて・・・・・・」

 「魔力を使えば使うほど穢れが溜まるんだ、さやか、君がグリーフシードを集めない限り・・・・・・杏子と戦っても勝ち目はないと思っていい」

 さやかはグリーフシードのために犠牲を厭わない杏子のやり方に不満を漏らすも、キュゥべえは杏子の実力、強さの源をさやかに伝えた。

 「何だかなぁ・・・・・・マミさんだって十分なグリーフシードを持ってたわけじゃないんでしょ? でもちゃんと戦えてたよね・・・・・・やっぱあれ? 才能の違いとかあるの?」

 さやかは悩んだ後、マミの戦い方を思い出してマミ本人の才能が関係しているのかキュゥベえに聞いた。

 「確かにそれは事実だね」

 「ずーるーいーっ! 不公平だーっ!」

 キュゥべえの回答にさやかは不満を漏らした。

 「こればっかりは仕方ないよ杏子はマミと同じように素質がある上にベテランだし、逆に全く経験がなくても才能だけで杏子とマミ以上の魔法少女になれる天才だっている」

 

 キュゥベえの会話に二人の魔法少女の才能と経験(一例)を挙げた後、天才的な素養を持った人物を例に挙げた。

 「誰よそれ」

 さやかはキュゥべえが言っていた人物について聞いた。

 「鹿目まどかさ」

 「・・・・・・!」

 

 さやかはキュゥべえが出した名前に驚いていた。 

 魔法少女の天才的才能の持ち主が自分の親友の名前が出たことに驚かずにはいられなかった。

 ふと、驚いた直後に初めてマミと出会ったときのことを思い出していた。

 

 『鹿目さんの素質』

 

 その言葉を思い出させるにはキュゥベえの会話は十分だった。

 

 「・・・・・・まどかが? それ本当?」 

 さやかは念のためとキュゥベえに聞き返した。

 「ああ、だからどうしても杏子に対抗する戦力が欲しいならいっそまどかに頼んでみるのも手だよ、彼女が僕と契約すればーー」

 「ううん、駄目! これはあたしの戦いなんだ、あの子を巻き込むわけにはいかない・・・・・・」

 

 さやかはキュゥべえの話に真実味を感じた後にキュゥベえの提案であるまどかの契約を断った、まどかを巻き込まない選択をした。

 

 まどかの性格を知っていたさやかは、杏子との決着は自分で着ける決心した。

 

 

 

 

                       ***

 

  

 

 

 

              見滝原市    ゲームセンター

 

 

 

 

 リズミカルな音楽に合わせてダンスゲームに興じている少女が居た。

 佐倉杏子である。

 杏子はゲームセンター内のお願いである『プレイ中の飲食はご遠慮ください』におかまいなくお菓子を食べながらプレイをしていた。

 ただ、ゲームセンターに来ている少女は杏子だけでなかった。

 「よぉ・・・・・・今度は何さ?」

  

 杏子は振り返らず気配で訪ねてきた人物に気づいた。

 暁美ほむらだった。

 杏子はほむらの要件を聞いた。

 「この街をあなたに預けたい」

 「・・・・・・!?」

 杏子はほむら持ち出した話に驚いていた。

 

 杏子は警戒しながらほむらの話を聞くことにした。

 「どういう風の吹き回しよ?」

 「魔法少女にはあなたみたいな子が相応しいわ、美樹さやかでは務まらない」

 「フン、元よりそのつもりだけどさ・・・・・・そのさやかってヤツはどうする? 放っときゃまたつっかかって来るよ?」

 「なるべく穏便に済ませたい。あなたは手を出さないで、私が対処する」

 

 杏子は踊りながら、ある疑問が二つあった。

 

 「ーーまだ肝心なところを聞いていない」

 

 杏子はステップを踏みながら、ほむらの方に振り向いた。

 

 「まず(・・)アンタ何者だ? いったい何が狙いなのさ?」

 「・・・・・・」

 ほむらは少し考えななら、ある情報を杏子に話した。

 「・・・・・・二週間後、この街にワルプルギスの夜が来る」

 杏子はほむらの話で顔が曇った。

 「・・・・・・・・・・・・なぜ分かる?」

 魔法少女の間では最強の魔女と知っていたため、杏子も知っていた。

 なのにほむらは、見滝原市にワルプルギスの夜が来ると言いだしたから、当然訝しんだ。

 「それは秘密、ともかくそいつさえ倒せたら私はこの街から出ていく。あとはあなたの好きにすればいい」

 「ふぅん・・・・・・」

 杏子はほむらの目的、ワルプルギスの夜さえ倒せれば、見滝原市(縄張り)を譲ると言った言葉に嘘はないと感じて少し考えた後に、結論を出した。

 

 「ワルプルギスの夜ね・・・・・・確かにひとりじゃ手強いが・・・・・・二人がかりなら勝てるかもな」

 杏子は共闘を選択した後、ダンスゲームはパーフェクトを記録した。

 「それで、もう一つの話は何?」

  

 ほむらは杏子に尋ねた。

 「まず(・・)アンタ何者だ?」

 とは、もう一つ話があると言うこと。

 まだあると踏んでいた。

 杏子は口にくわえている菓子と同じ菓子をほむらに差し出しながら聞いた。

 「食いながらで良いから聞きたかったんだけど、『坂田銀八』って男について知ってること話してくんない?」

 

 「!?」

 

 杏子の問いにほむらは驚いていた。

 まさか彼女の口から銀八(銀時)の名前が出るとは想定していなかった。

 ほむらは杏子に尋ねることにした。

 「どうして・・・・・・彼の名が?」

 「キュゥべえが言ったんだよ、あんたのほかにイレギュラーが居るって・・・・・・」

 「そう・・・・・・」

 「あたしは昨日、美樹さやかとの戦いをアンタに止められた後かな・・・・・・そいつに会ったの」

 杏子はほむらに銀八に会った時のことを話した。

 

 

 

                       ***

 

 

 

                      先日 裏路地

 

 

 

 

 杏子は美樹さやかとの戦いを中断された後、不良が教師らしき人物を襲撃したところを目撃した後、教師らしき男は当たり屋まがいのオーバーリアクションで不良が不気味がった後、一部始終を見ていた杏子が絡まれたところをその男が止めに入って、二人は不良を撃退した。

 杏子はその男こそがキュゥベえの言っていたイレギュラー、坂田銀八だと知ったときは驚いていた。

 

 「ねぇちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 「あん?」

 「美樹さやかって・・・・・・知ってる?」

 杏子の言葉に銀八は訝しんだ、しばらく考え込んでいたが杏子の問いかけに答えていた。

 「・・・・・・知らなくはねーけどよ、それが何だってんだ?」

 (知っているってことは・・・・・・魔法少女に関係のある奴だってことは間違いないな)

 杏子は少し考え込んだが、本題のきっかけを作ることにした。

 「私もそいつと同じ・・・・・・魔法少女なんだよな」

 「!」

 杏子の言葉に銀八は驚いていた、杏子はそのリアクションで魔法少女のことを知っているとはっきり認識した。

 杏子は指輪状にしたソウルジェムを宝石に戻して、銀八に見せた。

 「ほら、こいつが私のソウルジェム」

 杏子が見せた赤い宝石を見て、銀八はあからさまに嫌そうな顔をしてため息をつきーー

 「・・・・・・まーためんどくせーことになりやがったな」

 そう、ぼやいていた。

 「私は回りくどいことが嫌いなんだ、だから一番最初に直球で聞くけどさ、アンタ・・・・・・魔法少女についてどこまで知ってるんだい?」

 杏子は銀八に一つ目の質問をした。

 対する銀八はーー

 「詳しくは知らねーが、まず魔女と戦っているとか、グリーフシードを巡っては争ったり、魔女には黒幕的な存在が居ないってことぐらいか?」

 杏子は銀八が答えたことに半分当たったが、さっそく疑問が出た。

 「半分当たってけど、黒幕的存在ってなんだよ?」

 「だって、魔法少女っていえば黒幕倒して普通の少女に戻るっ的なイメージだったからな」

 「何だよそのアイドル引退的な流れ!? いねーよそんな黒幕(モン)

 杏子は銀八に突っ込みを入れた。

 突っ込んだ後に気を取り直した後、次の質問に入った。

 「気を取り直して聞くけど・・・・・・キュゥベえのことは?」

 「ああ、あのウサギか猫か分からねぇ無限残機だろ?」

 杏子は銀八の返答に少し困惑した。

 (無限残機ってのはよくわからねぇけど・・・・・・取りあえずキュゥべえは見えてるんだな)

 杏子は少なくともキュゥベえの存在を目の前の男(銀八)は見えていることを知っただけで十分だった。

 

 「・・・・・・そうだ、ちょっと聞きたいことがあってさ」

 「?」

 この男が仮に暁美ほむらたちとつながってるならば、聞きたいことが山ほどあった。

 アイツの能力について何か聞き出せればそれだけで十分な収穫になる。

 それが最も聞くべきことであるはずなのは分かってる、だが彼女の口から出た問いはーー

 「美樹さやかってやつが何を願って魔法少女になったか・・・・・・知ってるかい?」

 

 

                       ***

 

 

 

           現在    見滝原市   ゲームセンター

 

 

 

 「・・・・・・きょ・・・・・・こ、きょ・・・・・・うこ・・・・・・佐倉杏子」

 

 「は!」

 

 杏子はほむらに何度も呼びかけられていた。

 「あたし・・・・・・一体?」

 杏子はほむらに呼ばれている状況になっていることに困惑していた。

 

 「あなた、坂田銀八の話をしていた途中、考え込んでそのまま黙りこんでたわよ」

 「!」

 ほむらの言葉で、杏子は今の状況に理解していた。

 銀八の話を途中で中断するほど思考の海におぼれていたらしい。

 

 「それで、話の続きは?」

 「あ、ああ、アンタから見て坂田銀八はどうなの?」

 「それは、どういう意味?」

 杏子の問いにほむらは困惑していた。

 杏子は最初に感じた印象をほむらに話した。

 「キュゥべえからは、あんたの次に厄介な存在だって聞いたんだけど・・・・・・初めて会った時、分からなくなったんだ」

 杏子の話にほむらは黙って聞くことにした。

 「初めて会った時は、不良相手に当たり屋まがいのことをやってたんだけど、あたしが不良に見つかって・・・・・・殴られそうになった時なんだけど、あの男はあたしを庇ったんだ・・・・・・」

 

 杏子の話を聞いたほむらは、ひとつの推測を立てた、多分魔法少女だと知らずに庇ったんだろうと。

 

 「あの銀八って男と一緒に不良をとっちめた後は、少し魔法少女のことを話した・・・・・・まあ、大体がイレギュラー断定されたあの男は変な話・・・・・・敵には見えなかったんだ」

 杏子の話を聞いたほむらは少し考え込んだ後、杏子に質問をした。

 

 「どうして、あなたはその話を私に?」

 「最初はその男を倒そうかなって思ったけど、なんか毒気が抜けちまってさ・・・・・・あいつと同じイレギュラーのアンタから見て、あの男は何者だと思う?」

 ほむらは杏子から聞いた問いに少し困惑しながら推測を立てた、まずその推測を杏子から聞くことにした。

 

 「あなた、私がその坂田銀八(イレギュラー)と手を組んでるとは思わないの?」

 「なんとなく、あんたが銀八と手を組んでるなとは思ってたさ・・・・・・あたしの推測は当たってるみたいだな」

 杏子の推理にほむらはうっかりしたという感じで、驚いていた。

 「どうして、そう思ったの?」

 「魔法少女と魔女の知識について誰かから聞いてんだろうなとは思ったけど、マミかアンタな気がしたから・・・・・・か?」

 杏子はまず、銀八が魔法少女の知識を誰から聞いたのかを考えていた、思い当たるのはマミあたりと踏んでいたからだ。

 ほむらは杏子の推察を聞いた後、少しだけ銀八に関することを教えた。

 

 「彼は、鹿目まどかと美樹さやかと一緒に魔女の結界に捕らわれ、巴マミと会って・・・・・・その後に彼女から、魔法少女の話を聞いたの、その後に私のアパートで会ったのよ。その後に私が魔法少女の話をしたのよ・・・・・・」

 「なるほどな・・・・・・で、アンタ個人の銀八(アイツ)の印象は、どうなんだい?」

 杏子の問いにほむらは少し考え込んだ後、率直な感想を伝えた。

 

 「正直言って、私も図りかねているわ・・・・・・確かにあなたの言う通り彼とは組んではいるけど、私自身彼の行動は予測不能なのよ・・・・・・単独で魔女と戦ったくらいしか・・・・・・」

 ほむらの話を聞いて杏子は驚いていた。

 「やっぱ、キュゥベえが言ってたことは本当だったんだな・・・・・・普通の人間なのに魔女に戦いを挑んだってのは・・・・・・」

 「ええ、その動機が・・・・・・巴マミを助けるために私の到着を間に合わせるために挑んだみたいなのよ」

 ほむらの話を聞いて、杏子は唖然としていた。

 「バカ通り越してイカれてるな、その男・・・・・・普通逃げるだろ?」

 杏子の言葉にほむらは最もだと肯定していた。

 「そうね、普通は逃げるでしょうけど・・・・・・彼は私の学校の教育実習生なのよ、美樹さやかと巴マミと同じ見滝原中のね」

 ほむらの衝撃的な話に杏子は驚愕していた。

 「教育実習生って・・・・・・教師じゃねえのかよ・・・・・・」

 「その疑問は正しいわ、私も混乱してるから・・・・・・」

 銀八の話をしていた二人は、話題にしている人物で堂々巡りに陥っていた。

 

 「この話題やめにしようか・・・・・・あたしはワルプルギスの夜を倒すためにアンタと組むってことでいいか?」

 「ええ、構わないわ」

 ほむらと杏子はワルプルギスの夜を倒すために手を組むことをお互いに了承して、会話を切り上げた。

 

 

 

 

 

 ほむら自身、目的である杏子との同盟をこぎつけただけでも良しとした。

 

 

 

  

 

   

 

  




 はい、取りあえずはゲームセンターでの杏子とほむらの会話にさせてもらいました。

 杏子視点での銀八の印象はどうでしょうか?
 ほむら自身、銀八(銀時)のことを知ってるから説明しづらいと踏んでの会話の流れでした。

 やっぱ杏子だって普通は驚きますよね。

 ご意見、ご感想をお待ちしております。


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判断基準は本人の常識次第

 前回は、杏子とほむら視点からた銀八の話でしたが、本編に少しづつ向かっていきます。


                   裏路地

 

 

 さやかは杏子と激闘を繰り広げた、裏路地にいた。

 壁や床のえぐれた破壊痕はまだ新しい。

 さやかが裏路地にいるのは激闘のきっかけだった使い魔を探し出すためだ。

 

 キュゥベえはさやかの頼みで使い魔の痕跡を探したが、結果はーー。

 「駄目だ、時間が経ちすぎてる、ゆうべの使い魔を追う手がかりはなさそうだ」

 「そう・・・・・・」

 激闘から一日経ったため、使い魔の痕跡は見つからなかった。

 

 「ねえ、さやかちゃん・・・・・・このまま魔女退治を続けてたら、また昨日の子に会うんじゃないの?」

 

 裏路地にいるのはさやかだけでなく、まどかとマミが居た。

 まどかはさやかに喧嘩(戦い)になるのではないのかと心配でついてきていた、マミはその付き添いとさやかの様子が気になったため、まどかと同行していた。

 

 まどかの問いにさやかは肯定していた。

 「・・・・・・? まぁ当然そうなるだろうね」

 「だったらさ、先にあの子ともう一度会ってちゃんと話をしておくべきじゃないかな・・・・・・でないとまた、いきなりケンカの続きになっちゃうよ」

 「・・・・・・」

 まどかは、さやかに杏子とのいざこざが起こらないように話し合いの解決を提案したのだが、さやかはまどかの方を見てーー。

 「ケンカね・・・・・・ゆうべのアレがまどかにはただのケンカに見えたの?」

 さやかはまどかにきつめの言動でゆうべの戦いをケンカと言ったことに苛立ちを覚えていた。

 「あれはね、正真正銘殺し合いだったよ」

 「・・・・・・」

 「お互いなめてかかってたのは最初だけ、途中からはあいつもあたしも本気で相手を終わらせようとしていた」

 

 「そんなの・・・・・・なおさら駄目だよ・・・・・・」

  まどかはさやかを止めようとしたが目の前の少女の剣幕が強かった。

 「だから話し会えって? バカ言わないで! 相手はグリーフシードのために人間を餌にしようってやつなんだよ、どうやって折り合い付けろっていうの?」

 「さやかちゃんは・・・・・・魔女をやっつけるために魔法少女になったんでしょ?」

 「・・・・・・」

 まどかの言葉を聞いてさやかは少し間を置いた、さやかは少しまどかの話に耳を傾けた。

 「・・・・・・あの子は魔女じゃない同じ魔法少女なんだよ、探せばきっと仲良くする方法だってあると思うの、やり方は違っても魔女を退治したいと思う気持ちは同じでしょ? 昨日の子も・・・・・・あとほむらちゃんも」

 まどかの話の中でほむらの名を聞いた時、さやかは苦虫をかみ砕くような顔をした。

 「マミさんだってほむらちゃんとケンカしてなかったら・・・・・・」

 まどかはマミの方に顔を向けていた。

 マミはまどかの話を肯定するように首を傾げた。

 「鹿目さんの言うとおり、私が暁美さんを拘束しなければ・・・・・・」

 マミは続きを話そうとするもーー。

 「そんなわけない! まどかも見たでしょ、あのときマミさんがやられるのを待ってから魔女を倒しに来た。坂田先生が居なかったら、あいつはグリーフシード欲しさにマミさんを見殺しにしようとしたんだ!」

 さやかは自分で生み出した剣幕でマミの言葉が聞こえていなかった。

 その時ーー

 「美樹さん!!」

 「・・・・・・はっ!?」

 マミは大声でさやかを呼び止めていた。

 さやかもその声に驚いてマミの方に向いていた。

 

「美樹さん、聞いて・・・・・・私を信じてくれてるのは嬉しいわ、でも私の話を聞いて。あなたがあの魔女、お菓子の魔女の結界最深部で魔女の孵化の見張りをしている間に私と鹿目さんは暁美さんと会ったの・・・・・・。最初は、魔女退治の手柄の取り合いと思っていた・・・・・・それに、魔法少女の素質のあるあなた達二人が邪魔者とみていたともその時の私は思ってたわ、でも・・・・・・」

 

 マミはさやかの方を向いて、自分の心の内にあるモノ(・・)を打ち明けた。

 

 「これは、鹿目さんにも打ち明けてある話なんだけど、本心では私は一人になることが怖かったの・・・・・・」

 

 さやかは、マミの言葉を聞いて思い出していたーー。

 マミの過去、魔法少女に契約をーー。

 

 「私は、あなた達や佐倉さんに会う前に、他の魔法少女に一緒に魔女退治しないかって、誘っていたことがあったの・・・・・・でも」

 

 マミはこれまで出会った、魔法少女達のことを思い出しながら二人に話した。

 

 

                     ***

 

 

 『どうして・・・・・・解ってくれないの? 人々を襲うのは魔女だけじゃないのよ、使い魔だって・・・・・・』

 最初に誘った魔法少女に言われたことーー。

 『うーん・・・・・・ちょっと待ってよ、それなら逆に言わせてもらうけど、あなたの言う通りにしたとして、万が一グリーフシードが手に入らなくなったら、あなたのせいにしてもいいの?』

 

 その次に誘った魔法少女からはーー。

 『使い魔が成長するから魔女が生まれるんだし、多少の犠牲には目をつぶらないと駄目だと思う、魔女だってそうそう見つかるものじゃ・・・・・・』

 

 ある魔法少女からはーー。

 『一人でも多くの人々を守りたいという気持ちは、確かに立派だと思いますよ、ですが・・・・・・』

 

 そして、マミが助けた魔法少女の姉妹からはーー。

 

 『あの・・・・・・これ、あなた達も使ってください、一緒に戦った魔女のものですし』

 

 マミは一時的とはいえ、一緒に戦った魔法少女にグリーフシードを渡そうとした、しかしーー。

 『キミ新人さん?』

 『? はい』

 『そういうのやめといた方が良いよー? それはあなたの手柄なんだから他の人に譲る必要ないんだよ?』

 『そうそう、命掛けて手に入れたものなんだから大事にしないと、私達だって善意で戦ってるわけじゃないんだし』

 『魔法少女同士はみんなライバルみたいなものだから』

 『誰彼構わず親切にしてると、いつか利用されて足元すくわれちゃうかもよ?』

 『そ、そうですか・・・・・・』

 そう言って魔法少女の姉妹はマミの手柄(グリーフシード)の譲渡を丁重に断った。

 そして、その姉妹は、マミに警告めいたことを残して去っていった。

 『まーこれからも、気を付けることだね』

 『あんまり無茶しないで自分の命大事にね』

 

 

                       ***

 

 

 

 マミの話を聞いた二人は少し鎮痛な顔をしていた。

 

 「これが、私が出会った魔法少女の考えだった・・・・・・でも、今なら解るわ、彼女たちは無意識に気付いていたのかもしれない、魔法少女はすべての人々を救えるわけじゃないし、自分のことで手一杯だってことなんだと思う、そして魔法少女が徒党を組むのが少ないのは他人のせいにすることを避けるためなんじゃないかって・・・・・・」

 

 

マミの話を聞いたまどかは、魔法少女の契約について今一度認識を改めていた。

 ほむらがまどか達を契約させない理由の一つにこの出来事が入っているのではないかと考えていた。

 ーーしかし。

 

 「マミさん・・・・・・今なら分かるよ、マミさんだけが特別だったんだ、マミさんが出会った魔法少女は手を組まなかったけど、考えは理解してたんでしょ・・・・・・」

 

 さやかは最初はマミの話を理解があるような言動を言っていたが、しかしーー。

 

 「でも! それ以外の魔法少女なんてあんな奴らばっかりなんだよ、ゆうべ逃がした使い魔は小物だったけどそれでも人を殺すんですよ! 次にあいつが狙うのはまどかのパパやママかもしれない! たっくんかもしれないんですよ!?」

 

 さやかの言動は魔法少女と戦いかねない、そんな勢いのような強い発言だった。

 

 「わたしは、ただ魔女と戦うためじゃなくて、大切な人を護るためにこの力を望んだの、だからーーもし魔女より悪い人間がいれば、あたしは戦うよ、たとえそれが魔法少女でも」

 

 「美樹さん!?」

 「さやかちゃん・・・・・・」

 

 さやかの発言に二人は驚愕していた。

 魔法少女だけでなく、悪意のある人間にも魔法少女の力を行使すると、言っているようなものだった。

 さやかはそのまま、二人に目もくれず路地裏に進んでいった。

 

 「キュゥべえも何とか言ってよ・・・・・・」

 まどかはキュゥベえに話しかけた、今の話の流れで解決策を聞こうとしたのだろう。

 

 「僕から言わせてもらえるのは無謀すぎるってことだけだ、今のさやかじゃあ暁美ほむらにも佐倉杏子にも勝ち目はない、でもねさやかは聞き届けてくれないよ」

 「・・・・・・」

 キュゥベえから出た言葉は、さやかの様子から読み取っていた言動での発言だった。

 つまり、解決策がないと言うことだった。

 

 すると、マミはまどかの肩に手を置いてある決意を話した。

 

 「鹿目さん、魔法少女としてあなた達を引き込んでしまったのは私の責任、だから魔法少女としての私が美樹さんの無茶を止めてみせる。だから、あなたは日常面での彼女をお願いしていいかしら?」

 

 マミの言葉は力強く優しい言葉だった。

 まどかは目を潤わせてマミの言葉に肯いた。

 

 

                        *** 

   

 

 

 

                 三叉路 アパート ほむらの部屋

 

 

 

 ほむらは銀八(銀時)を自分の部屋に呼んでいた。

 

 佐倉杏子との接触についてのことだった。

 

 「銀時、あなたは夕べ佐倉杏子に会ったそうね?」

 「ああ、あの魔法少女か? 見かけねぇ顔なのにテメーが知ってるってことは・・・・・・」

 銀時はほむらの言葉で察しがついた。

 ほむらは頷いて答えた。

 

 「・・・・・・何度目かの時間逆行で彼女に会っているわ、そして・・・・・・巴マミのかつての弟子よ」

 「マジか、マミの野郎は弟子取ってたのか・・・・・・」

 銀時は流石に驚いていた、マミと杏子に意外な接点があったのは思ってもみなかったからだ。

 

 「彼女はあなたと会う前に美樹さやかと戦ってたの、使い魔の扱いを巡って殺し合いに発展してたわ」

 「魔法少女同士がやり会えば、当然そうなるわな・・・・・・それに、さやかの野郎なんだってそいつと使い魔を巡って戦ったんだ?」

 銀時は魔法少女がなぜ身体能力が高いのかほむらから『契約』(秘密)を聞いていたから納得していたが、使い魔の扱いをめぐっての対立が起こったのか分からなかった。

 

 ほむらは使い魔の特徴について説明した。

 「使い魔は魔女の手下、その使い魔が人間を結界に閉じ込め何人かの人間を殺せば・・・・・・」

 ほむらはこれ以上続けなかった。

 銀時の表情で、大体の情報は察したかのような表情だった。

 「つまりは、人間を殺し続けた使い魔は魔女になってグリーフシードを生むってか・・・・・・」

 銀時はほむらの説明の続きを話した。

 

 「ええ、佐倉杏子は使い魔を逃して魔女化させてから倒すつもりだったらしいけど、美樹さやかはそのやり方に反発して・・・・・・」

 「殺し合った、ってわけか・・・・・・」

 「ええ、魔法少女の経験は天地の差、だったわ」

 「それで、さやかはどうなんだ?」

 銀時はほむらにさやかの様子を気にしていた。

 言動から考えてさやかは死んではいないと言うことだった。

 

 ほむらはさやかの様子を話した。

 「死んではいないわ、彼女は癒しの契約で回復力と身体能力は高いわ」

 「そうかい、でもよその話から察するとよ、さやかはそいつと戦うってことになんだろうな」

 銀時の言葉にほむらは頷いていた。

 そこで、銀時は思い出したかのようにほむらに尋ねた。

 「思い出したんだけどよ、佐倉杏子・・・・・・だったか? アイツ俺のこと知ってたみたいだったぜ?」

 ほむらは少し驚いたかのような表情で、銀時の言葉に反応したが、考え込んだ後すぐに理由が見つかった。

 「おそらくはキュゥべえからあなたのことを聞いたんでしょう、イレギュラーとして私の後にあなたの名前と情報を把握した上であなたに接触したんでしょう」

 

「なるほど、それであの態度が・・・・・・」

 銀時は杏子のリアクションを思い出していた。

 『坂田銀八』の名を聞いた時、佐倉杏子の様子がおかしかった。

 だが、キュゥべえから事前に名前と情報を聞いたのならあの驚いた表情には納得が出来ていた。

 

 なんせ、『イレギュラー』断定されたほむらとセットで銀八と出会ったんだ、驚かないのも無理な話だった。

 

 ほむらは、あることを思い出して銀時に話した。

 「佐倉杏子のことで私から伝えたいことがあるのだけど・・・・・・」

 「なんだ?」

 銀時はほむらの方に顔を向けた、ほむらの表情は真剣な表情だった。

 

 「ワルプルギスの夜を倒すために彼女と組むことにしたの、彼女に見滝原市(ここ)を任せるとの条件付きで交渉をしたの」

 銀時はほむらから『ワルプルギスの夜』の名前を聞いた時は本気(マジ)の話と踏んだ、今話した佐倉杏子はほむらにとっては信頼のおける実力があると言うことだった。

 

 だが、銀時はあることに気が付いた。

 「さやかとの衝突は避けられなさそうだな・・・・・・」

 ほむらは銀時に懸念に肯いた。

 「ええ、美樹さやかは出来るだけ私が対処するとは話を付けたわ、でも・・・・・・」

 「さやか(あいつ)の性格上、杏子だけじゃなくやっぱテメーとも衝突しそうだな」

 「それは仕方がないことよ、美樹さやかは私にも不信感を抱いてるからその流れは必然よ」

 

 ほむらは表情は変えなかったが、その目には覚悟があった。

 ーーたとえ、周りから理解されなくても・・・・・・『ワルプルギスの夜』を倒す。

 そんな目をしていた。

 

 その目を見た銀時はある提案をした。

 「なら、その時は俺が付いてってやらあ」

 「え?」

 ほむらはあっけにとられていた。

 「どうして? これは一応、『魔法少女同士』(わたし達)の問題なのに、あなたがかかわるの?」

  

 ほむらには分からなかった、佐倉杏子も疑問に思ったように、巻き込まれたとはいえ『坂田銀八』(坂田銀時)と言う男はどんな考えで魔法少女(私たち)に関わろうと思ったのかが、考えが読めなかった。

 

 「俺ぁこの世界の住人じゃねえが、一応『先生』だからな・・・・・・中坊同士のケンカは止めなきゃ後々問題になりそうだしな・・・・・・」

 

 そう言って、この世界の『役目』(先生)としての自分自身の仕事を出したと共に、銀時は腰に差した木刀に触れながら話を続けた。

 

 「魔法少女だろうが何だろうがどうだって良い、だが俺のこの剣、こいつが届く範囲は俺の国だ、無粋に入ってきて、俺のモンに触れる奴ぁ、魔女だろうがキュゥべえ(無限残機)だろうが、隕石だろうがブッタ斬る!!」

 

 銀時はほむらにそう話した。

 ほむらは唖然としていた。

 

 (彼はとんでもない馬鹿だ、信じられないくらいにこの世界の常識に捕らわれないとんでもない馬鹿だ)

 

 ほむらは銀時の発言に心の中でつぶやいた。

 異世界から来たとはいえ、銀時は普通の人間、いくら何でも無茶があるし、たとえ嘘でもこんな大口は叩かないはずだ。

 

 それなのに目の前の銀時()の言葉は力強く聞こえた。

 

 「ん? どうした?」

 

 銀時はほむらの唖然顔を見て、呼びかけた。

 ほむらは我に返って、銀時の方に顔を向けた後に、無表情に言った。

 

 「気持ちは受け取っておくわ、でも魔法少女同士の問題に一般人は巻き込めないわ、それにあなたはこの世界では『教師』じゃなくて『教育実習生』でしょ?」

 

 「そうだったな」

 

 ほむらの発言に銀時は思い出したかのようにつぶやいた。

 

 ふと、ほむらは銀時の元の世界での仕事の話に興味があった。

 銀時がお菓子の魔女に食べられたときに何故木刀を突き立てられたのかが気になていた。

 

 そのことを銀時に話したら、ある答えが返ってきた。

 

 「俺の世界である天人の馬鹿皇子が変なペット連れて暴れまわって俺の仲間を喰われかかったり、ほかにも天使とやくざが同居しているかのようなペットに埋められ保存食にされたりとかあってな、それで慣れてる。後は「えいりあん」に喰われた時もあったからそんなもんか?」

 

 「一体、どんな生き物!? 百歩譲って異星人がペットにしている生き物が普通じゃないのは分かるけど、天使とやくざが同居している生き物って何!? そもそも『えいりあん』って何!? 少なくともよく生きているわねあなた!!」

 

 流石のほむらも盛大に突っ込んだ、やっぱり脳内の情報処理が追いつかなかった。

 

 

 

  

 




 今回遅れて申し訳ありませんでした、体調不良があったのと猛暑の影響で投稿が届こうってしまいました。

 さやかパートの話で『ザ・ディファレント・ストーリー』のマミの経験とセリフを入れて、さやかの状況理解は半々の状況にして見ました。
 
 ドラマ的イメージが出せているといいのですが、いかがでしょうか?
 
 ラストはほむらが突っ込みを入れる感じで話を占めてみました。

 ハタ皇子のペットと海坊主と神楽の話で出てきたパンダだ寄生型えいりあんの話は信じられないと思ったので話の流れは大体の流れで書かせてもらいました。

 何より、癖の強い世界だから魔法少女達のリアクションを思い浮かべたら大体こんなもんだろうなとイメージしました。

 ご意見ご感想お待ちしております。


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見える魂、見えない心

 はい、第二ラウンドが入りそうで入らない杏子とさやかの物語と魔法少女の秘密の一つに触れる流れになりました。

 最初はまどか親子の話から始まります。


              深夜 まどか宅 寝室

 

 

 まどかは寝室で眠りについていたが、裏路地のさやかの話が頭から離れず、妙に時計の針の音が聞こえて眠れずにいた。

 

 すると、冷蔵庫の閉まる音がしてまどかは目を覚ました。 

 

 寝室からリビングに移動すると、まどかの母、詢子が風呂上がりの一杯でウイスキーを飲んでいた。

 「・・・・・・ん」

 詢子は寝室からまどかが降りてきたことに気が付いた。

 「眠れないのかい?」

 「うん・・・・・・ちょっといい?」

 

 まどかは、詢子と一緒にウイスキーとオレンジジュースで、お互いに一杯飲むことにした。

 眠ることが出来なかったまどかは詢子に魔法少女の話を伏せながらさやか()の抱えている問題を話した。

 「友達がね・・・・・・大変なの、やっていることも言っていることもたぶん間違ってなくて・・・・・・なのに正しいことをがんばろうとすればするほどどんどんひどいことになってくの・・・・・・」

 

 「よくあることさ、悔しいけどね正しいことだけ積み上げていけばハッピーエンドが手に入るってわけじゃない、むしろみんながみんな自分の正しさを信じ込んで意固地になればなるほどに幸せって遠ざかっていくもんだよ」

 「・・・・・・間違ってないのに幸せになれないなんて・・・・・・ひどいよ」

 「・・・・・・うん」

 

 詢子の話を聞いてまどかは少し顔を暗くした、正しさを貫き通せば通すとするほど願った幸せが遠のく事実に心を痛めていた。

 

 「私どうしたらいいんだろう?」

 「・・・・・・そいつばっかりは他人が口を突っ込んでもきれいな解決はつかないねぇ」

 「・・・・・・」

 まどかの様子を見た詢子少し思案した後、ある解決法の一つを話すことにした。

 「たとえきれいじゃない方法だとしても解決したいかい?」

 詢子はその解決方法を話すためにまどかの意思を確認した。

 「・・・・・・うん」

 まどかはそう詢子に返事をした。

 

 「ならーー間違えればいいさ」

 「え・・・・・・」

 

 詢子の言葉にまどかは困惑した。

 それでも詢子の話は続いた。

 「正しすぎるその子のぶんまで誰かが間違えてあげればいい」

 「間違える・・・・・・?」

 

 「ずるい嘘をついたり恐いものから逃げ出したり、でもそれが後になってみたら正解だったって分かることがある。本当に他にどうしようもないほどどん詰まりになったらいっそ思い切って間違っちゃうのも手なんだよ」

 詢子の言葉にまどかはさやか()のためになるのかを聞いた。

 

 「それがその子のためになるって・・・・・・分かってもらえるかな?」

 まどかは不安そうに詢子に聞いた。

 「分かってもらえないときもある、特にすぐにはね」

 「・・・・・・」

 まどかは少し黙り込んでいた。

 詢子はまどかの様子を見て言葉を続けた。

 「言ったろ?きれいな解決じゃないって・・・・・・その子のことを諦めるか誤解されるかどっちがマシだい?」

 「・・・・・・」

 まどかは詢子の話を静かに聞いた。

 「まどか、あんたはいい子に育った。嘘もつかないし、悪いこともしない。いつだって正しくあろうとしてがんばってる、子供としてはもう合格だ・・・・・・だからさ、大人になる前に今度は間違え方もちゃんと勉強しておきな」

 

 「勉強・・・・・・なの?」 

 まどかは詢子の言葉に困惑していた。

 何故、間違え方を勉強と言ったのか分からなかった。

 詢子はその言葉の意味をまどかに語った。

 「若いうちはケガの治りも早い、今のうちに上手な転び方を覚えといたら後々きっと役に立つよ・・・・・・大人になっちゃうとね、どんどん間違うのが難しくなっちゃうんだ。背負ったモノが増えるほど下手を打てなくなっていく」

 

 まどかは詢子の話を聞いた時、マミやほむらの顔を思い浮かべていた。

 二人は、ベテランの魔法少女で魔女と戦ってきた。

 魔法少女になることは、大人になるまでの時間を捨てると言うことだった。

 

 マミとほむらはどんな思いで願いを背負い、戦っているのかと思い浮かべた時、気になったことを詢子に聞いた。

 「それって辛くない?」

 「大人は誰だって辛いのさ、だから酒飲んでもいいってことになってんの」 

 詢子の言葉を聞いてまどかはくすっと微笑んだ。

 「私も早くママとお酒飲んでみたいなぁ」

 「ささっと大きくなっちゃいな、辛いぶんだけ楽しいぞぉ大人は」

 まどかは詢子に悩みを話した後へのお酒の話をした後に心は穏やかになった。

 

 その時、ふと詢子にある人物の話をして見た。

 

 「そうだ、ママに聞いてほしい人の話があるの」

 「へぇ、まどかがそんな話をするなんて、さては男だな?」

  

 詢子はまどかが聞いてほしい人の話に興味を持った。

 「男」であるのは間違いないのだが、詢子が思っているような人物ではなかった。

 

 「男の人ではあるけど、ママが思い描いている人じゃないよ。教育実習に来た先生だよ」

 「教育実習の先生? ・・・・・・あぁ、和子から聞いてるよ、何でも木刀を差した変わり者だって」

 まどかの話で「教育実習の先生」と聞いたときに詢子は思い出したかのようにつぶやいた。

 

 「早乙女先生から聞いてるんなら話は早いね、坂田銀八先生っていうんだけど、授業は・・・・・・からっきしなんだけど、面白い先生なの・・・・・・」

 

 詢子はまどかの話を微笑みながら静かに聞いた。

 まどかの声は明るさと力強さが伝わっていた。

 

 

                       ***

 

 

 

 

                      見滝原市病院 

 

 

 

 美樹さやかは病院の廊下に軽い足取りで上條恭介の病室に向かっていた。

 

 恭介の病室について病室の扉を勢いよく開けた。

 「恭・・・・・・!?」

 

 病室には恭介はいなかった。

 「・・・・・・え」

 さやかは恭介の姿が居なかったことに戸惑っていた。

 するとさやかの後ろから担当の看護師が声を掛けてきた。

 「あら? 上條さんなら昨日退院したわよ、リハビリの経過も順調だったから予定が前倒しになって・・・・・・」

 それ以上はさやかの耳に入ってこなかった。

 恭介の退院が急に決まったことにショックが隠せなかった。

 

                       ***

 

 

                       恭介宅

 

 

 さやかは恭介の自宅の玄関前に立っていた。

 「・・・・・・!?」

 

 自宅前から聞こえてきたのは・・・・・・ヴァイオリンの音色だった。

 

 家の中のヴァイオリンの主は恭介だった。

 「・・・・・・・・・・・・」

 さやかは恭介のヴァイオリンの練習の邪魔にならないよう立ち去ることにした。

 演奏(それ)を中断させてまで家に上がりこむのは幼馴染でも流石に気が引ける。

 いや、気心の知れた幼馴染だからこそ遠慮したかもしれない。

 

 「・・・・・・フフッ」

 

 ほんの少し微笑みを浮かべて上條邸を後にしようとした直後。

 「!?」

 「会いもしないで帰るのかい? 今日一日追いかけまわしていたくせに」

 

 彼女にとっては最も会いたくない相手、佐倉杏子が現れてしまった。

 「お前は・・・・・・」

 「知ってるよ、この家の坊やなんだろ? アンタが契約した理由って」

 杏子は心の底から呆れたような表情を浮かべていた、溜め息交じりに言葉を続ける。

 「まったく・・・・・・たった一度の奇跡のチャンスをくっだらねぇことに使い潰しやがって」

 あからさまな挑発、だがその挑発に耐えられるほどさやかは大人ではなかった。

 何より挑発だろうと今の杏子の言葉はさやかにとっては許しがたいものだった。

 「お前なんかに何が!」

 言い返すさやかの姿を見て一瞬、数日前の記憶が蘇る。

 あの天然パーマ、坂田銀八から聞いたさやかの願いを聞いた時の記憶をーー。

 

                     ***

 

 

「美樹さやかは・・・・・・そんなことのために願いを使っちまったってのか・・・・・・!」

 他人のために願いを使う、それがどれだけ誤った行為であるか、杏子はすでに知っていた。

 自分がそれで取り返しのつかない失敗()を犯している経験があるだけに、さやかがこの上なくおろかに思えてしまう。

 杏子の心情を知ってか知らずか、銀八は杏子に話した。

 「俺ァ一応止めたんだけどな・・・・・・あいつがテメーで決めたことだ、これ以上とやかく言うことは出来ねーよ」

 杏子は銀八の言葉に反応しても、苛立ちは消えなかった。

 「どんだけアイツは頭が悪くて・・・・・・馬鹿なんだ!」

 「・・・・・・」

 苛立ちを吐き出す杏子を見て、他人のために願いを使った結果がいい結果とは限らないと銀八は悟った。

 それでも、銀八は杏子にある言葉を伝えた。

 「あいつの選択が正しいと思え・・・・・・とは言わねぇ、ただ・・・・・・分かってやってくれや」

 「・・・・・・?」

 杏子は銀八の言葉に反応して銀八の方に顔を向けた。 

 「自分の身を犠牲にしてまで他人を助けるのは素晴らしいとは言わねーが・・・・・・今のアイツにとっちゃ、そんだけ譲れねぇモンがあったってことだ」

 「・・・・・・」

 その言葉を聞いて杏子の苛立ちは落ち着きだした。 

 譲れないもの、その言葉を聞いた時に思ったことは、自分が何故魔法少女になったかだった。

 「ま、その辺はテメーに任せるとするぜ」

 「な、何で私がアイツのことを!」

 杏子は驚いていた、目の前の男(坂田銀八)は何と言った?

 まるで美樹さやかことを託すかのような発言に戸惑っていた。

 「テメーなら、アイツの力になってやれんだろ、ダチ公」

 「ダチ・・・・・・公?」

 ダチ公・・・・・・友達と言う意味の言葉に杏子は戸惑った。

 

 

 

                       ***

 

 

 

 (友達、自分と同じ始まりをしたアイツなら・・・・・・もしかしたら・・・・・・)

 

 しかし、再び美樹さやかと相対すると、どうしても怒りが込みあがっていった。 

 

 

 (銀八の野郎から美樹さやかの願い()を聞いた時、確かにそう思っていた・・・・・・だが、やはり今のコイツを見ているとどうしてもイラつくのだ、まるで過去の自分を見ているようで・・・・・・)

 

 知らず知らずのうちに感情的になり、口調が厳しいものになっていく。

 

 「分かってねぇのはそっちだバカ、魔法ってのは徹頭徹尾、自分の願いを叶えるためのモンなんだよ。他人のために使ったからって碌なことにはならないのさ。巴マミはその程度のことを教えてくれなかったのかい?」

 「・・・・・・っ!」

 

 つい挑発的な言葉になってしまう、本当はこんな口調で語り掛けるつもりはなかったのに。その上、かつての師の名を出しての挑発だった。

 美樹さやかの顔を見る限り忠告は受けてはいる様子だった。

 

 「惚れた男をモノにするならもっと冴えた手があるじゃない? せっかく手に入れた魔法でさあ」

 「・・・・・・何?」

 

 だがやはり先日に激しく刃を交えてる(殺し合っている)こともあり思うように言葉を紡ぐことが出来なかった。

 その上、こいつの心をえぐるような言葉を今、吐き出そうとしていた。

 「今すぐ乗り込んでいって、坊やの手も足も二度と使えないぐらいに潰してやりな」

 「・・・・・・!」 

 「アンタなしでは何もできない体にしてやるんだよ、そうすれば今度こそ坊やはアンタのモンだ身も心も全部ね」

 「・・・・・・っ」

 

 挑発がとうとう宣戦布告になってしまった。

 何よりも、今まで杏子自身ずっと一人で生きてきた自分が急に素直になるなんて・・・・・・出来っこなかった。

 

 だが、相対している少女(美樹さやか)はそんな杏子の心まで読み取ることは出来ない。

 

 「気が退けるってんならあたしが代わりに引き受けてもいいんだよ? 同じ魔法少女のよしみだ、お安い御用さ」

 さやかは杏子が発した言葉をそのまま受け取ってしまった。

 「・・・・・・絶対に・・・・・・お前だけは絶対に許さない・・・・・・今度こそ必ず・・・・・・」

 さやかの反応を見た杏子もさらに気分が悪くなる。

 (なんだよその目は・・・・・・自分がどれだけ間違ってずれたことをしてるのか本当に気付いてないのかよ。だったら・・・・・・)

 「場所変えようか、ここじゃ人目につきそうだ」

 (言って分からないなら・・・・・・ぶん殴ってでもわからせてやるしかない)

 杏子はさやかを人気のない場所に向かうことにした。

 

 自分の中の憤慨に決着をつけるために。

 

 

                       ***

 

 

                      まどか宅 

 

 

  

 まどかは、パソコンのレーザーキーボードで「マザー・グース」の一節の課題に取り組んでいた。

 「・・・・・・」

 

 しかし、詢子の相談で出てきた言葉がまどかの頭によぎっていた。

 

 ーー正しすぎるその子のぶんまで、誰かが間違えてあげればいい。

 「・・・・・・」

 今でもその答えは、まだ見えていなかった。

 

 さやかのためにどう『間違えられるのか』分からずじまいだった。

 そんな時だった。

 (まどか・・・・・・! まどか!)

 

 「?」

 

 まどかは自分を呼ぶ声の主の方に顔を向けた。

 声の主は窓にいるキュゥべえだった。

 (急いで! さやかが危ない!)

 「え!?」

 キュゥべえの言葉にまどかは驚愕した。

 さやかが危ないと聞いた時、頭によぎったのは先日の魔法少女のことだと悟った。

 (マミも呼んでおいたからついてきて!)

 

 

 

                     ***

 

 

                     跨道橋 

 

 さやかと杏子が戦いの場に選んだのは高速道路上の跨道橋だった。

 下の道路では車が激しく行き交ってるが、橋の上は人が訪れず、かえって死角になっていた。

 

 「ここなら遠慮なくやれるよね、いっちょ派手に行こうじゃない?」

 杏子のソウルジェムが赤く輝くと、以前に見た多節槍を使う魔法少女の姿になった。

 「・・・・・・・・・・・・・!」

 対抗してさやかも魔法少女に変身しようとソウルジェムを取り出す。

 その時ーー

 

 「待って、さやかちゃん!」

 「待ちなさい、美樹さん!」

 自分の名を呼ぶ友人と先輩の声が聞こえた。

 「まどか、マミさん・・・・・・どうして・・・・・・?」

 「キュゥべえにさやかちゃんが危ないって言われて・・・・・・」

 「やめなさい美樹さん、あなたはこんなことをするために魔法少女になったの?」

 まどかとマミはさやかを引き留めようとした。

 しかしーー

 「邪魔しないで、マミさんはともかく、まどかには関係ないんだから」

 「駄目だよ、こんなの絶対におかしいよ!」

 「美樹さん!! 鹿目さんの言う通りよ、佐倉さんと争うのはやめなさい!!」

 さやかを説得するまどかとマミ、それでも戦意があるさやかに止まる気配がなかった。 

   

 

 その様子を見ていた杏子はまどかの様子を見ていた。

 (あれは美樹さやかの友人なのだろうか、考えてみれば前にも一緒にいた気がする。魔法少女ではないようだが・・・・・・それでも、さやかとはある程度の信頼関係はるのだろう)

 「フン、ウザいヤツにはウザい仲間がいるもんだねぇ」

 もう槍を抜いてしまったからには退くわけにはいかない・・・・・・そう自分に言い聞かせ、攻撃を仕掛けようとしたときーー

 「じゃあ、あなたの仲間はどうなのかしら?」 

 すると、杏子の背後からほむらが現れた。

 「!」

 杏子は背後にいたほむらを確認した後にあることに気付いた。

 この橋に来たのは、暁美ほむらだけではなかったと言うことに。

 「なんでテメーらこんなところで乳繰り合ってんだ?」

 キュゥべえからほむら以外のイレギュラーと呼ばれた男、坂田銀八の姿があった。

 「ほむらのヤツに呼ばれたから来てみりゃ・・・・・・何やってんだお前ら、つーか女子二人が鉄橋の上で決闘ってどんな構図? なにこれバトル漫画だったっけ?」

 銀八は呑気にそう言いながらも跨道橋にまで来ていた。

 杏子は銀八が言ってた「ほむらのヤツに呼ばれて」ていうことは暁美ほむらから事情は聴いてたと推察できていた。

 

 「話が違うわ。美樹さやかに手を出すなと言ったはずよ」

 ほむらは杏子に忠告していたが杏子自身止まる気配がなかった。

 「アンタのやり方じゃ手ぬるすぎるんだよ! どのみち向こうはやる気だぜ」 

 そう言って杏子は臨戦態勢を解かなかった。

 「なら私が相手をする、手出ししないで」

 そう言ってほむらは杏子の前に出た直後だった。

 「待てほむら、お前が出るとややこしくなんだろうが」

 

 ほむらに対して銀八がそう言いながら静止した。

 

 「坂田・・・・・・先生」

 さやかは目の前に現れた銀八に戸惑っていた。

 「さやか・・・・・・ほむらから聞いたぜ。おめーの怒りは分かるが、やっぱりずれてるぜ」

 銀八はさやかの目を見てそう語った。

 「確かに魔女を増やすのは気に入らねーが、結局は魔女は生まれんじゃねーのか? どんなに助けても、落ちた水が収まるとは限らないのと同じように、どうしても零れ落ちちまうことだってあらぁ」

 銀八の口からそんな言葉が出るとはさやかはもちろん、マミやまどか、杏子とほむらは驚いていた。

  

 銀八(銀時)のいた世界(江戸)でもそれは変わらなかった。

 銀時は、元の世界ではそういう経験をしていた。

 

 仙望郷(スタンド温泉)の女将、お岩が言った言葉があった。

 

 『死んだ奴はあの世に行くのが自然の摂理!? ああそうさ! その通りさ、だが落ちる水が全て盆に収まるとは限らない、どうしても零れ落ちちまう奴らだっているんだ、どうしたって未練の断ち切れない奴がいる!! どうしたって言えない傷をもつ奴がいる!!』

 

 極道の魔死呂威組(ましろいぐみ)若頭、中村京次郎は組長の息子の死を隠し通し、死んでいった。

 銀時は泥をかぶって護り抜いた京二郎をどうにか助けようとしたが、助けられなかった。

 

 そして、恒道館道場の塾頭、尾美 一(おび はじめ)を新八とその姉、お妙のもとに帰すために泥をかぶってでもメカに魂を奪われた二人に兄貴を救おうとしたが、メカ改造した毘夷夢星人(びいむせいじん)の一部の戦争組織『火種屋』の仕掛けのせいで連れ帰れなかった(助けられなかった)

 

 銀八(銀時)は少なくとも、目の前の少女(美樹さやか)には真っ直ぐにいてほしかったからだ。

 心配している仲間がいる場所で殺し合いをさせたくなかった。

 

 「お前のその願い()は、こんなことをするために使うのか?」

 銀八はさやかにそう尋ねた。

 さやかは黙り込んだが、それでも納得はいかなかった。

 「それでも!! 私はーー」

 さやかはソウルジェムを手に平に掲げ魔法少女に変身しようとするがーー。

 

 「さやかちゃん! ごめん!」

 まどかはさやかのソウルジェムを取り上げ、そしてーー

 「・・・・・・っえい!」

 鉄橋の手すり近くまで近づきソウルジェムを鉄橋から道路に投げ捨てた。

 ソウルジェムはトラックの荷台に落ちていった。

 「!!」

 それを見たほむらが一瞬驚愕の表情を浮かべ直後に忽然と姿を消した。

 

 「まどか・・・・・・あんた何てことを!」

 「だってこうしないと・・・・・・」

 戦うすべを奪い取ったまどかに食ってかかるが、まどかは理由を話そうとした直後のことだった。

 

 「・・・・・・!?」

 紐の切れた操り人形の如くさやかの体から力が抜け、まどかの胸へと倒れ込んだ。

 「さ、さやかちゃん・・・・・・?」  

 

 まどかはさやかに呼びかけるが、返事どころか反応もなかった。

 

 

 「今のはまずかったよまどか、よりにもよって友達を放り投げるなんてどうかしてるよ」

 「キュゥべえ・・・・・・今、何てーー」

 

 キュゥべえが言った意味がまどかには分らなかった。

 マミも何が何だかわからなかった。

 さやかが突然倒れたことと関係があるのか、まどかは呆然としていた。

 「何・・・・・・何なの?」

 

 まどかは事態がまだ飲み込めていなかった。

 するとまどかの背後から走り近づく足音がした。

 佐倉杏子だった。

 杏子はさやかの首を持ち上げた。

 「あ・・・・・・!や、やめて!」

 「佐倉さん!?」

 「・・・・・・・・・・・・!!」

 杏子はさやかを持ち上げた時、戦慄する事実を知った。

 「・・・・・・・・・・・・どういうことだ・・・・・・おい、こいつ死んでるじゃねーかよ!」

 「!」

 杏子の言葉にまどかとマミは絶句した。

 

 「さやかちゃん! ねぇさやかちゃん! 起きて! ねぇ!? ねぇちょっと・・・・・・! どうしたの! 嫌だよこんなの・・・・・・さやかちゃん!!」

   

 まどかは何度も何度もさやかに呼びかけたが、返事が無かった。

 「・・・・・・! 何がどうなってやがんだ! おい!」

 杏子はキュゥべえに怒声で投げかけた。

 「君たち魔法少女が体をコントロールできるのはせいぜい100メートル圏内が限度だからね」

 「100メートル? 何のことだ? どういう意味だ!?」

 杏子はキュゥべえが言った言葉に理解が及ばなかった。

 それでも、キュゥベえは言葉を続けた。 

 

 「普段は当然肌身離さず持ち歩いてるんだから、こういう事故は滅多にあることじゃないんだけど・・・・・・」

 

 「肌身・・・・・・離さず・・・・・・!!」

 キュゥべえの言葉を繰り返したマミはキュゥベえの言葉の意味に気づいた、気づいてしまった。

 

 「何を言ってるのよキュゥベえ! 助けてよ! さやかちゃんを死なせないで!」

 まどかは倒れたさやかさやかにしがみついて懇願するまどかを一瞥すると、キュゥべえ呆れてため息を交えながら淡々と言い放った。

 「まどか、そっちはさやかじゃなくてただの抜け殻なんだって」

 「え・・・・・・」

 「さやかはさっき君が投げ捨てちゃったじゃないか」

 「な・・・・・・何・・・・・・だと?」

 杏子はキュゥべえの言葉の意味に気づき始めた、いや、気付いてしまった。

 

 「ただの人間と同じ壊れやすい身体のままで、魔女と戦ってくれなんてとてもお願いできないよ。君たち魔法少女にとってもとの身体なんていうのは外付けのハードウェアでしかないんだ。君たちの本体としての魂には魔力をより効率よく運用できるコンパクトで安全な姿が与えられる」

 そういうと一呼吸を置き、すべての確信となる部分を口にする。

 いつものと変わらぬ、無表情のままで。

 

 「魔法少女との契約を取り結ぶ僕の役目はね、君たちの魂を抜き取ってソウルジェムに変えることなのさ」

 「・・・・・・」

 まどかは言葉を失い、マミは膝を落とした。

 「てめえは・・・・・・なんてことを・・・・・・ふざけるんじゃねぇ! それじゃあたしたちゾンビにされたようなもんじゃないか!」

 怒りを爆発させてキュゥベえに掴みあげる、キュゥべえはそれでも全く動じることなく言葉を続けていた。

 

 「むしろ便利だろう? 心臓が破れてもありったけの血を抜かれても、ソウルジェムさえ砕かれない限り君たちは無敵だよ。弱点だらけの人体よりもよほど戦いでは有利じゃないか」

 機械のような声だった、いや、機械と言うのは少々誤りがあるかもしれない。

 だが。機械と思わせるほど、感情のかけらも感じ取れない無機質な声であったのは間違いないだろう。

 「・・・・・・ひどいよ・・・・・・そんなのあんまりだよ・・・・・・」

 指一本動かないさやかに縋り付いてむせび泣く、絶望の涙がさやかの制服を濡らしていた。

 「君たち人間はいつもそうだ、事実をありのままに伝えると決まって同じ反応をする、訳が分からないよ。どうして人間はそんなに魂のありかにこだわるんだい?」

 「・・・・・・ッ」

 杏子がキュゥベえを睨んだその時だった。

 

 絶望で覆い尽くされた空気を打ち破る裏声(・・)を出すものが一人

 

 「バッター・・・・・・坂田銀八」

 「え?」

 裏声の主、銀八はすかさず杏子からキュゥベえを奪い取り、自分の顔の前に顔を合わせた。

 「ほむらから聞いてた(・・・・・・・・・)とはいえ、言いてえことは腐るほどあるけどな・・・・・・取りあえず今は・・・・・・」

 銀八(銀時)はそう言いながらキュゥべえを上空に投げた後は大きく息を吸い込んで振りかぶった木刀を力いっぱい握りしめーー

 

 「そんなクソ大事なこと説明しなかった責任とってソウル何とかはテメーで取ってこいやァァァァァァ!」

 フルスイングした木刀に当たって、キュゥベえは輝く星空にのように打っ飛んでいった。

 

 「その必要はないわ」

 直後から、ほむらの声が聞こえていた。

 その手にはさやかのソウルジェムが握られていた。

 「お前・・・・・・そいつは・・・・・・!」

 銀八はほむらに気づいた後、握られているものに気が付いてた。

 ほむらは何も言わずにソウルジェムをさやかの手を握らせた。

 「・・・・・・・・・・・・!?」

 「ん・・・・・・?」

 「「!」」

 「・・・・・・何? 何なの?」

 「美樹さん!」

 意識を取り戻したさやかは周りの状況が理解できなかった。

 マミはさやかに抱き着いた、抱き着くことしかできなかった。

 

 

  そしてこの日、この時、魔法少女の運命(絶望)をこの世界にやってきた『宇宙一馬鹿な侍』(坂田銀時)が砕く時が刻一刻と近づいていた。

   

 

   

  

 

   

  




 
 どうにか、書き終えました。

 とうとうこのこの場面に来ました。
 
 ジャンプリミックスと、エレファント速報、フィルムメモリーズを総動員して書かせてもらいました。

 まどか親子の会話の最後に銀八の話を入れてみました。(銀時は教えるの下手です)

 いくつかエレファント速報の小説内容と本編を混ぜた結果、かなり長い文章になってしまいました、申し訳ありません。

 ジャンプリミックスを入れたのは、銀時が助けたかった人達を入れてみてこの小説の内容になるかどうか試してみたかったからです。

 『見える魂、見えない心』と言う題名の通りに書けたか不安ですが、少なくともエレファント速報に出てきた場面、キュゥべえを野球ボールに見立てた銀時のホームランを入れたかったからです。

 ご意見、ご感想をお待ちしております。


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本当の気持ちと向き合えますか? 編
感謝と責任は混同しやすいが、何もしない理由にはならない


 第七話まで来ました。

 ここからは未知の領域です。

 銀時は絶望の物語をぶっ壊すことが出来るのか?

 括目してください。


             さやか宅 寝室

 

 

 「・・・・・・」

 さやかは自室のドアを閉めた後、ソウルジェム(物質化した魂)を机の上に置いた。

 

 「騙してたのね、あたしたちを・・・・・・」

 さやかは机のそばの椅子の上にいたキュゥベえに問いかけていた。

 「僕は魔法少女になってくれってきちんとお願いしたはずだよ、実際の姿がどういうものか説明は省いたけれど」

 「・・・・・・!」

 さやかはキュゥべえの言葉にたまらず、椅子を倒してキュゥベえに顔を向けた。

 「なんで教えてくれなかったのよ!?」

 さやかはキュゥベえに睨みながらそう厳しく詰め寄った。

 「聞かれなかったからさ、知らなければ知らないままで何の不都合もないからね、事実、マミでさえ最後まで気づかなかった」

 さやかはキュゥベえを睨みながら黙って聞いていた。

 キュゥベえはそのまま話し続けた。

 「そもそも君たち人間は魂の存在なんて最初から自覚してないんだろう?」

 キュゥべえはさやかの顔と胸を見て機械的に人間の仕組みを語った。

 「そこは神経細胞の集まりでしかないしーーーーそこは循環器系の中枢があるわけだ、その生命が維持できなくなると人間は精神まで消滅してしまう、そうならないよう僕は君たちの魂を実体化し手に取ってきちんと守れる形にしてあげた、少しでも安全に魔女と戦えるようにね」

 魔法少女の身体の利点を言いながら椅子の上から降りるキュゥべえ、さやかはキュゥベえを睨みながら言った。

 「大きなお世話よ! そんな余計な事・・・・・・!」

 キュゥベえに反論するさやかの言葉を遮るように、キュゥベえはある事実を突きつけた。

 「君は戦いというものを甘く考えすぎだよ、例えばお腹に槍が刺さった場合・・・・・・」

 そう言いながらキュゥべえはさやかの机の上に飛び上がり、さやかのソウルジェムの前に立った。

 「肉体の痛覚がどれだけの刺激を受けるかっていうとね・・・・・・」

 

 キュゥべえはさやかのソウルジェムに触れると青く輝きーー

 

 「うっ・・・・・・ッ! うぁぁ・・・・・・・・・・・・!! ぐっ」・・・・・・あああ・・・・・・ぐ・・・・・・」

 

 さやかは突如として腹部の痛みが奔り、その痛みにたまらずさやかは蹲った。

 「これが本来の『痛み』だよ」

 「あ・・・・・・う・・・・・・うっ」

 

 さやかはあまりもの痛みに立てなかった。

 

 「ただの一発でも動けやしないだろう? 君が杏子との戦いで最後まで立っていられたのは、強すぎる苦痛がセーブされているからさ、君の意識が肉体と直結していないからこそ可能なことだ、おかげで君はあの戦闘を生き延びることができた」

 

 さやかは腹部の苦痛とキュゥベえの話で「全治三か月」のダメージが直接伝わったことを文字通り体で思い知ってしまった。

 

 キュゥべえはさやかの様子を見た後にソウルジェムから手を離すと、さやかの「全治三か月」の苦痛は終わった。

 その様子を見たキュゥべえは、まるで魔法少女の身体の応用があるかのようなそぶりで話した。

 

 「慣れてくれば完全に痛みを遮断することもできるよ、もっともそれはそれで動きが鈍るからあまりお勧めはしないけど」

 

 「・・・・・・なんでよ・・・・・・どうしてあたしたちをこんな目に・・・・・・」

 

 さやかはキュゥベえにそう投げかけた、当のキュゥべえは淡々と事実を述べた。

 「戦いの運命を受け入れてまで君には叶えたい望みはあったんだろう? それは間違いなく実現したじゃないか」

その時、さやかは悟った・・・・・・確かにキュゥベえの言葉の通りに契約は果たされたと言うことに。

 

 ただ、引き換えに人間としての時間を永遠に失ったと言うことに、気付くには時間はかからなかった。

 

                       ***

 

 

                     見滝原中学校

 

 

 「きりーつ、礼!」

 

 

 生徒全員が、朝礼を済ませた後、まどかはある席を見ていた。

 「・・・・・・」

 

 

 さやかは体調不良を理由に欠席していた。

 昨日の深夜に『ソウルジェムの秘密』を知ってしまったために、学校に行ける精神ではないことに、まどかは知っていた。

 

 

 

 

                       ***

 

 

                     放課後  屋上   

 

 

 屋上でまどかはマミと共にほむらと銀八を呼んでいた。

 「ほむらちゃんと坂田先生は・・・・・・知ってたの?」

 

 「「・・・・・・」」

 ほむらと銀八は沈黙していた。 

 「どうして教えてくれなかったの?」

 まどかは、ほむらに問い詰める。

 「前もって話しても信じてくれた人は今まで一人もいなかったわ」

 「俺ぁ、さやかが魔法少女になった件でほむらから聞いたんだ」

  

 「美樹さんが魔法少女になった後から?」

 

 マミは困惑するようにほむらから聞いた。

 「ええ、彼に説明したのは、キュゥべえへの疑問がしっかりとあったからなの」

 ほむらはマミにそう答えた。

 

 その後にまどかがある疑問をほむらに質問した。

 「キュゥベえはどうしてこんなひどいことをするの?」

 「あいつはひどいとさえ思ってさえいない。 人間の価値観が通用しない生き物だから、何もかも奇跡の正当な対価だとそう言い張るだけよ」

 

 そう、ほむらは冷静に答えた。

 しかし、まどかに至ってはーー

 

 「全然釣り合ってないよ! あんな身体にされちゃうなんて・・・・・・さやかちゃんはただ好きな人のけがを治してあげたかっただけなのに・・・・・・」

 

 まどかはほむらに叫んだあと、顔を伏せながら心の叫びを出した。

 「奇跡であることに違いはないわ、不可能を可能にしたんだから。美樹さやかが一生を費やして介護しても、あの少年が再び演奏できるようになる日は来なかった。奇跡はね、本当なら人の命でさえあがなえるものじゃないのよ、それを売って歩いているのが、あいつ」

 

 ほむらは、キュゥべえの本質の一部をまどかに告げた。

 

 「さやかちゃんは・・・・・・もとの暮らしには戻れないの?」

 まどかはほむらにそう、問いかけた。

 しかし、ほむらの答えはーー

 「前にも言ったわよね、美樹さやかのことはあきらめてって」

 「さやかちゃんは私を助けてくれたの、さやかちゃんが魔法少女じゃなかったら、あのとき私も仁美ちゃんも死んでたの・・・・・・」

 

 まどかは自分を責めるような口調で、さやかを助けようとするような口調でほむらに話した。

 「感謝と責任を混同しては駄目よ、あなたが彼女を救う手立てなんてない、引け目を感じたくないからって、借りを返そうだなんて、そんな出過ぎた考えは捨てなさい」

 

 「暁美さん!!」

 

 マミはたまらず、ほむらに叫んだ。

 

 「私も、昨日の出来事で混乱してるわ、でも、今のは言い過ぎよ・・・・・・」

 さすがのマミも言葉を詰まらせていた。  

 昨日の出来事で、混乱しているのはさやかだけでなくマミもそうだった。

 

 マミはキュゥベえと長い付き合いだった。 

 

 お菓子の魔女の件で生き延びた後に、ようやく立ち直りかかった矢先での昨日の出来事。

 キュゥべえの契約は人間の魂を物質化しての魔法少女ーー

 

 その、事実にマミはショックを引きずっていた。

 しかしーー

 

 「私が美樹さんを魔法少女の道に引き込んでしまった以上、魔法少女側として彼女を支えて見せる、それが、『死にたくない』と契約してしまった私の贖罪よ」

 

 マミの目は強い意志が宿り始めていた。

 

 「そう・・・・・・」

 マミの目を見たほむらは、そのまま立ち去ろうとするがーー

 

 「・・・・・・ほむらちゃんどうしていつも冷たいの?」

 まどかはほむらにそう問いかけた。

 「そうね・・・・・・きっと人間じゃないから・・・・・・かもね」

 ほむらは自分の手のひらを見ながらそうまどかに答えた後にそのまま立ち去った。

 

 「さてと・・・・・・」

 

 銀八も立ち去ろうするがーー

 

 「坂田先生」

 

 マミに呼び止められていた。

 

 「なんだ?」

 銀八はマミの方に首を振り向いた。

 

 「坂田先生は、その・・・・・・暁美さんからソウルジェムの秘密を知ったうえでどうして・・・・・・、私達が怖くないんですか?」

 まどかはマミの疑問がもっともな気がした。

 坂田銀八は普通の人間、怯えないのはおかしい気がした。

 

 「何って、お前らはまだ『人間(・・)』だろ?」

 

 マミはキョトンとした顔で銀八の顔を見た。

 まどかも同じ顔で銀八を見た。

 

 「確かに、魔法少女(テメーら)はキュゥべえに肉体と魂を別個にされたけどよ、感情があるってことァ、まだてめーらは人間だ、感情をなくしたら、本当に人間じゃなくなっちまうだろうが」

 

  

 マミとまどかは驚いていた、普通なら逃げ出してもおかしくない話なのに、目の前の男(坂田銀八)は真っ直ぐな目と力強い言葉でそう告げた。

 

 銀八は思い出したかのようにあることを告げた。

 

 「ほむらから聞いたんだけどよ、魔法少女の身体は痛覚を遮断できるって話だ」

 まどかとマミは驚いていた。

 魔法少女の身体の仕組みとして痛覚遮断が出来るなんて恐ろしく感じた。

 しかしーー銀八の話は終わってなかった。

 

 「それやるって事ァそれこそ人間を捨てるってこった」

 

 「「え?」」

 

 「俺ぁ何処にもいる普通の人間だ、金に汚くただダラダラしているマダオだ。 でもな、痛みをなくせる機能があったらそれァ、今まで生きてきた時間が作り物に感じて目から背けるってことだ」

 

 銀八は何を伝えようとしているのか、二人には理解できなかった。

 

 

 「てめーらは、肉体と魂が離れ、テメーを覚える周りに居る連中が作り物と感じちまうし、人の形をした『何か』だと錯覚しちまうだろうよ・・・・・・」

 

 二人は銀八の話を聞くことしかできなかった、銀八の言葉は暗く重く感じた。  

 

 銀八自身は『元の世界』(江戸)機械家政婦(からくりかせいふ)、たまと初めて会ったことを思い出していた。

 そして、その『生みの親』である機械技師、林 流山(はやしりゅうざん)のことも。

 

 機械家政婦、たまは林流山の娘の人格データ(種子)を移植した特別な存在だった。

 

 流山は人間の人格をデータ化し機械(からくり)にコピーする技術、それが事の始まりだった。

 

 種子の目的は流山の娘芙蓉(ふよう)を甦らせることだった。

 

 そして、流山自身を実験台に機械(からくり)に人格をデータ化していた。

 

 しかし、最初は器にしていた機械(からくり)と同調していた人格も拒絶反応に依る人格崩壊してしまい暴走した。

 

 その結果、江戸の町を機械家政婦によるクーデターが引き起こされていた。

 

 流山の願い、『娘に笑顔を』最初は母親を亡くした娘のために話し相手におもちゃを作ったのが始まりだった。

 

 だが、人間のような機械をつくり始めたのが、病弱だった娘が長くないと察したために永遠の命を与えるために、無茶な実験を繰り返し娘を亡くしたーー

 

 その果てに、流山(自分)を「私は機械になりたい」と言うほどに、孤独だった。

 

 

 なぜか、銀八(銀時)はそのことを思い出したのかはわからなかったが、言えることは一つだった。

 

 「痛覚の遮断なんて、テメーを機械(からくり)に見立ててブレーカーを落とすってことと同じだ。でもな心の苦しみってなぁ痛覚遮断しても消えねぇ、それは魔法少女になっても消えねェ・・・・・・何でか分かるか?」

  

 銀八は、まどかとマミにそう投げかけていた。

 

 まどかはともかくマミは困惑していた。

 それでも銀八は言葉を続けた。

 

 「妊婦は鼻の穴からスイカ出すような苦しみに耐えてガキを産むもんだ、芸術家はケツの穴から宇宙ひねり出すような苦しみに耐えて作品産み出すんだ。誰にだって壁にぶつかって全部投げ出して逃げてー時もある、だが苦しいときってのは、テメーの中の機械《からくり》が壁ぶち破るために何かを産み出そうとしてる時だってのを忘れちゃいけねー」

 

 銀八は『元の世界』(江戸)でたまと同じ言葉で話したあとに、一言付け加えた。

 

 「その苦しみの中に大事なもんがある事を忘れちゃいけねェ みんなめんどくせー機械背負ってのたうち回って生きてんだ。魔法少女でも涙なんて好きなだけたれ流せばいい、そんでも止まんねェ時は俺が涙を拭いてやらァ」

 

 銀八の言葉に、二人は不安が取り除かれていることに気が付いていた。

 

 「坂田先生・・・・・・私は・・・・・・」

 まどかは何かを言おうとしていた。

 

 「私は、ほむらちゃんが言ってたように、感謝と責任を混同しています・・・・・・今でもそうです。それでも私は・・・・・・」

 まどかは自分の中にあるものを認めた上で、それ以上何も言えなかった。

 イヤ、言葉が見つからなかった。

 

 「だったら、テメーはさやかのために帰る場所になればいい、魔法少女になっちまったら、誰がアイツを待ってやるんだ?」

 

 「帰る・・・・・・場所?」

 

 まどかは銀八の言葉に困惑気味に聞いた。

 「テメーに家族がいるように、アイツが・・・・・・さやかにも帰る場所が必要だろ? 魔法少女になれば一緒に戦うことが出来るかもしれねェ、でもよほむらのことを考えてみな、アイツがどうして契約を反対したのか、それを入れた上で、テメーでしか出来ねーことを探しな」

 

 そう言って、銀八は屋上を後にした。

 

                         ***

 

 

 

 銀八の背中を見送った後に、まどかとマミは『銀八の話』を考えながら話した。

 

 「坂田先生の話は最初は分からなかったですけど、私にできることは小さいかもしれない、でもさやかちゃんを見捨てたくありません」

 まどかの話を聞いたマミは自分に合っ不安を話した。

 「私は、長く魔法少女になった時からキュゥベえと長い付き合いだけど、キュゥべえのことを知った気になってたわ、でも長くいたからこそ見抜けなかったのかもね・・・・・・」

 

 マミはキュゥべえに対する考えを改めていた。

 

 「鹿目さん、なにがあっても、キュゥベえの言葉には気をつけてね」

 

 「はい」

 

 まどか自身、キュゥベえに警戒を持つようになった。

 

 

 それが、魔法少女の運命を変えるきっかけになっていくなんて、このときはまだ知る由もなかった。

 

 

 




 今回は、文章が短くてすみません。

 なかなかいいアイディアが出なくて、参考資料とジャンプリミックスのセリフと機械家政婦《からくりかせいふ》編を入れさせてもらいました。

 まどかとほむらの会話にマミと銀八を入れました。

 少しでも運命が変わるように願いながら書かせてもらってます。

 次回でも参考資料の話を混ぜながら、書く予定です。

 ご意見ご感想をお待ちしております。


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人生、壁が立ちふさがるのはいつも突然で

 今回は杏子とさやかの教会パートです。

 前回と同じように、『ザ・ディファレント・ストーリー』の杏子の話と参考資料のフィルムメモリーとエレファント速報、そしてジャンプリミックスの銀魂を使っております。

 杏子とさやかの会話パートの後に銀八(銀時)が出てきます。
 杏子と銀八の会話パートを入れてみました。

 それでは括目してください。


                    さやか宅 寝室

 

 

 さやかはベッドに潜りながら悩んでいた。

 

 「こんな体になっちゃって・・・・・・あたし、どんな顔して恭介に会えばいいのかな・・・・・・」

 

 さやかは『魔法少女の身体』と『ソウルジェムの仕組み』を知って以来、激変してしまった環境に戸惑っていた。

 自分は人間でなくなってしまったことの事実が大き過ぎた。

 

 そんな時だった。

 

 (いつまでもしょぼくれてんじゃねーぞ、ボンクラ)

 

 聞き覚えのある声がテレパシーでさやかに呼びかけていた。

 「!」

 

 すかさず、さやかは寝室のカーテンを開け、外を見るとーー

 外には思った通りの人物、佐倉杏子がリンゴを食べながらさやかを待っていた。

 

 (ちょいと面貸しな、話がある)

  

                      *** 

 

 

 

 左右に木々の生い茂った道をさやかと杏子は歩いていた。

 万物を明るく照らす太陽の光も今日はどことなく物悲しげに感じられた。

 杏子に呼ばれたさやかは彼女に黙って着いていった。

 

 「アンタさぁ、やっぱり後悔してるの? こんな身体にされちゃったこと。あたしはさ、まぁいいかって思ってるんだ、なんだかんだでこの力を手に入れたから好き勝手できるわけだし、後悔するほどのことでもないってね」

 

 杏子はさやかにそう問いかけながら、魔法少女の身体(自分の身体)のことを割り切ってるような話をしていた。

 昨日の出来事で、ソウルジェムと魔法少女の身体の仕組みをキュゥべえから聞かされたためにまいっている感じではなかった。

 「あんたは・・・・・・自業自得なだけでしょ」

 さやかは杏子への敵対心があるのかそう答えた。

 

 さやかは杏子の真意を推し量ていた、一体何が言いたいのだろうか?

 ひとつ分かるのは・・・・・・佐倉杏子は自分が思っていた以上に過酷な日々を送ってきたという事実だった。 

 

 「そうだよ、自業自得にしちまえばいいのさ。 自分のためにだけ生きてれば何もかも自分のせいだ、誰も恨むこともないし、後悔なんてあるわけがない、そう思えば大抵のことは背負えるのさ」

 

 杏子はあっけらかんとした声でそう答えた。

 それが、杏子の背負うと決めたことだった。

 

 「・・・・・・」

 さやかは黙ったままだった。

 

                      ***

 

 

                      廃教会

 

 

 杏子に連れてこられたさやかが付いた場所は街外れの丘の上にある、廃墟と化した教会だった。

 

 さやかは杏子の真意が読み取れなかった。

 「・・・・・・こんな所まで連れてきて何なのよ?」

 さやかはそう杏子に警戒しながら聞いた。

 「ちょっとばかり長い話になる」

 そう言いながら杏子は紙袋に入っていたリンゴを投げ渡した。

 「!?」

 さやかは投げ渡されたリンゴをキャッチした。

 「食うかい?」

 「・・・・・・」

 杏子からそう聞かれたさやかはリンゴを見た後ーー。

 リンゴを床に投げ捨てた。

 「!」

 それを見た杏子は怒りの形相でさやかの襟元を掴みかかった。

 「食い物を粗末にすんじゃねぇ・・・・・・殺すぞ?」

 そう言った後、杏子はさやかの首元を離した。

 「げほっ、げほげほっ・・・・・・」

 さやかは咳をしながら呼吸を整えた。

 「・・・・・・」

 その様子を見た杏子はさやかが投げ捨てたリンゴを拾い上げ、リンゴを服で葺いた後に紙袋に入れた後に一呼吸を置いた。

 

 「・・・・・・ここはね、あたしの親父の教会だった」

 

 杏子はさやかに自分の過去を語り始めた。

 さやかは杏子の姿を追うようにして見ていた。

 

 「正直すぎて優しすぎる人だった。毎朝新聞を読むたびに涙浮かべて真剣に悩んでいるような人でさ、新しい時代を救うには新しい宗教が必要だって、それが親父の言い分だった。だからあるとき教義にないことまで信者に説教するようになった。もちろん信者の足はぱったり途絶えたよ、本部からも破門された。 誰も親父の話を聞こうとしなかった。当然だよね。はたから見ればうさんくさい新興宗教さ、どんなに正しいことを話そうとしても世間じゃただの鼻つまみ者さ、あたしたちは一家そろって食うモノにも事欠く有様だった」

 

 杏子は過去を語りながら契約前の状況を思い出していた。

 

 正直で心優しい牧師の父の背中を妹と見て育った杏子は「正しさと当たり前の話」を聞いてもらえないことが悔しかった。

 

 その結果が、信者たちの足が途絶えてしまった。

 

 それだけでなく、家族がまともな食事が出来ないことにもつながってしまっていた。

 

 「納得できなかったよ、親父は間違ったことなんて言ってなった。ただ人と違うことを話しただけだ、5分でもいいちゃんと耳を傾けてくれれば、正しいことを言ってるって、誰にでも分かったはずなんだ」

 

 杏子は妹と共に父の布教に付いて行っていた。

 

 それでも、信者は父の話に耳を傾けず追い払っていた。

 

 「なのに・・・・・・誰も相手をしてくれなかった。・・・・・・悔しかった、許せなかった、誰もあの人を分かってくれないのが、あたしには我慢できなかった」

 

 杏子は父が正しさを貫くために話しただけに、背中を見ていただけに悔しさが積もっていった。

 そしてある時にーー。

 

 「だからキュゥべえに頼んだんだよ、みんなが親父の話を真面目に聞いてくれますようにって」

 

 リンゴに移った自分の顔を見ながら杏子は話した、キュゥベえに願ってしまった過ちの願いをーー。  

 

「翌朝には親父の教会は押しかける人でごった返してた、毎日おっかなくなるほどの勢いで信者は増えていった。あたしはあたしで魔法少女の仲間入りさ、いくら親父の説法が正しくたってそれが魔女が退治できるわけじゃない、だからそこはあたしの出番だってバカみたいに意気込んでたよ、あたしと親父で表と裏からこの世界を救うんだって」

 

 祈りの力で成し遂げ、魔法少女として父の説法を表に、魔法少女として魔女を、裏側から世界を護ろうとしたのは純粋に他の人達が幸せな世界で生きてほしい、それが杏子の本心だった。

 

 しかし、それが取り返しのつかない過ちだとは気づけなかった。

 

 「でもね、あるときカラクリが親父にばれた」

 

 

                       *** 

 

 

 杏子は思い出す、あの出来事のことをーー。

 

 

 ある夜、教会の寝室で妹の佐倉モモと寝てた時、ソウルジェムで魔女の反応を察知したときだった。

 

 教会で調査したとき、教会内で異臭に気付き、教会内に入るとーー。

 

 教会の信者が魔女の呪いを受け焼身自殺を図ろうとしていたことだった。

 

 杏子は魔法で自殺道具を『お菓子』に見せてそのスキに自殺を阻止していた。

 

 その後に、大元の魔女が結界内から出てきて魔女と交戦して倒すことが出来た。

 

 そこまではよかった、ただ集団自殺未遂の現場の片づけをしようとした後に、父親に偶然見られたこと以外はーー。

 

 「大勢の信者がただの信仰のためじゃなく、魔法の力で集まって来たんだと知ったとき、親父はブチ切れたよ、娘のあたしを人の心を惑わす魔女だって罵った」

 

 

 その時の父の姿は今でも覚えているーー。

 

 

 真実を知ったとき、神父の父は酒に溺れていた。

 

 『・・・・・・聞いて、父さんーー今日もねあたしは魔女を倒したんだよ、自殺しそうになってた人を一人救ったんだ、父さんがなくしたかった、世の中の不幸や悲しみの芽を、あたし達魔法少女は着実に摘んでるんだ。これって悪いことじゃないよね?』

 

 杏子は父に話した、魔法少女の自分が魔女によって不幸と悲しみまき散らすのを阻止していることを話した。

 

 『あたしはね、父さんの話今でも好きだよ、だからみんなが父さんに耳を傾けてくれた時、すごく嬉しかった。なによりさ、世の中の不幸に悲しみ続けてた父さんの幸せそうな顔が見られたからあたしは・・・・・・』

 

 父をどうにか引き留めたかった、父が世界の不幸に悲しんだ顔を幸福の顔を見れたことが嬉しかった、父の話を聞いてくれた人が集まってくれたのが嬉しかった。

 

 でも、父親は耳を傾けるどころかーー。

 

 『全部お前が生み出した幻じゃないか、私の下に訪れた者達はみな信仰のためなどではなく、ただ魔女の力に惑わされ惹きつけられただけの、哀れな人々だ。そうして惑わした人々をお前は手にかけるつもりだったんだろう?

 あれは悪魔と交わした契約の生贄だったのか? 教会の娘があろうことか悪魔に魂を売るなどと・・・・・・』

 

 『・・・・・・っ!』

 

 杏子が悪魔に魂を売ったと罵ったことだった。

 

 『だから・・・・・・ッ! 何度も言ってるじゃないか! 魔女と魔法少女は違うんだ! あたしは誰の命も奪ったりなんかしない!! お願いだからあたしの話を信じてよ! あたしは魔女なんかじゃ・・・・・・』

 

 杏子は何度も説明しようとした。

 魔法少女と魔女が違うと、自分は誰の命も奪わないとーー。

 それでもーー。

 『・・・・・・お前は最初から、私の話など聞く耳を持たれなくて当然の、誰の救いにもならないただの世迷言だと、そう思っていたんだろう?』

 

 父の言葉に杏子は絶句した。

 

 『ああ、全くその通りだ私に世の中を救う力がないから、悪魔などに付け入る隙を与えてしまったんだ。お前が悪いんじゃない、全ては私の責任なんだ・・・・・・』

 

 父は自分を責め始めていた、杏子はどうにかして父を止めたかった。

 このままだと父は壊れてしまうと言うことに、本能的に気付いたかだ。

 

 『・・・・・・なに言ってるの、違うよ・・・・・・父さ・・・・・・違・・・・・・』

 

 父は杏子の方を振り向いて告げた。

 

 『何が違うんだ? お前の力さえあれば、世の中の不幸のや苦しみを着実に摘める? そんな当て付けがましい言い訳を聞かせるくらいなら、いっそ無力な父親だと罵ってしまえばいい! 今のお前がやってることは何だ? 父親がいなくとも世の中は救えるのだと、信者を踏みにじり、人を惑わし、あざ笑う悪魔の所業ではないか、それすらの自覚もなく嬉々として語るお前の姿を・・・・・・魔女と呼ばずに何と呼ぶんだ』

 

 大好きな父の侮蔑の言葉だった。

 

 杏子はたまらずに父の部屋から立ち去った。

 

 

                      ***

 

 

 「笑っちゃうよね、あたしは毎晩本物の魔女と戦い続けたってのに、それで親父は壊れちまった」

 

 

 その話を聞いたさやかは黙って聞くことしかできなかった。

 

 

 「最後は惨めだったよ、酒に溺れて頭がイカレてとうとう家族を道連れに無理心中さ、あたしひとりを置き去りにしてね」

 

 

 そして、家族の最後を話した。

 

 『はい、杏子の分』

 

 母から切り分けられた林檎が杏子に差し出された。

 

 『? これ全部だよね、みんなで分けようよ、あたし一人で食べられないよ』

 

 杏子は母にみんなで食べようと、離したがーー。

 

 『いいんだよそれはお前が貰った物なんだから、私たちはいらないんだ』

 

 父が遠慮するように林檎を食べなかった。

 

 『お父さん、お帰り』

 

 妹は父か帰ってきたことに気付いて喜んでいた。

 

 その姿を見た父はーー。

 

 『それじゃあ母さん、モモ、行こうか』

 

 『うん!』

 

 『ええ』

 

 父の言葉を聞いた、妹と母は返事をした。

 

 『ねえ、お父さん、お母さん、モモ、おいて行かないでよ、みんなどこに行くの?』

 

 『・・・・・・それはもちろん』

 

 杏子は、その後自分を残して一家は無理心中をした。

 

 

                        *** 

 

 

 

 「あたしの祈りが家族を壊しちまったんだ。他人の都合を知りもせず、勝手な願い事をしたせいで、結局誰もが不幸になった。 そのとき心に誓ったんだよ、もう二度と他人のために魔法を使ったりはしない、この力はすべて自分のためだけに使いきるって」

 

 それが、家族を壊してしまった杏子の結論だった。

 

 他人の都合を無視して魔法を使った結果が不幸なら、自分のために使えば不幸は起こらない。

 

 それが、他の魔法少女(美樹さやか)との対立となって今に至った。

 

 「奇跡ってのはタダじゃないんだ。 希望を祈ればその分同じぶんだけの絶望が撒き散らされる、そうやって差し引きをゼロにして世の中のバランスは成り立ってるんだよ」

 

 家族を失った杏子が至った答えだった。

 

 希望への祈りがその分、絶望が撒き散らされてしまう、それが杏子が自分ために魔法を使う理由だった。

 

 自分のために使えば自業自得として、周りが不幸にならずに済むとそう考えた。

 

 

 「・・・・・・何でそんな話をあたしに?」

 

 「・・・・・・」

 驚いた、まさか自分がこの上なく憎たらしいと思っていたこの少女の背負った過去にーー。

 父のこと、家族のこと、魔法少女になった理由、そして魔法を自分のためだけに使うという誓い。

 それでも、さやか自身は何故杏子が自分の過去を話そうとしたのか分からなかった。

 

 

 

 知らなかったとはいえ、対立した目の前の魔法少女にそんな過去を抱えていたなんて思いもよらなかったからだ。

 

 

 「アンタも開き直って好き勝手やればいい自業自得の人生をさ」

 杏子はさやかに自分の生き方をやってみたらどうかと勧めた。

 

 「・・・・・・それって変じゃない? あんたは自分のことだけ考えて生きているはずなのに、あたしの心配なんかしてくれるわけ?」

 「・・・・・・アンタもあたしと同じ間違いから始まった。これ以上後悔するような生き方を続けるべきじゃない、あんたはもう対価としては高すぎるモンを支払っちまってるんだ。だからさこれからは釣り銭を取り戻すことを考えなよ」

 

 「・・・・・・あんたみたいに?」

 さやかはそう杏子に聞いた。

 「そうさ・・・・・・あたしはそれを弁えてるがアンタは今も間違え続けてる見てられないんだよそいつが」

 「・・・・・・」

 さやかは考えを改めていた。

 --どうやら佐倉杏子と言う人間の評価を誤っていたらしい。

 彼女は強く、孤高でありーー。

 

 そして、他人を思いやれることのできる優しい少女だったのだ。

 

 「アンタのこと色々誤解してた、そのことはごめん謝るよ」

 さやかはそう素直に、杏子に謝罪した。

 杏子は静かにその謝罪を聞いた。

 

 ーーしかし、それでも。

 

 「でもね、あたしは人のために祈ったことを後悔してない、その気持ちを嘘にしないために後悔だけはしないって決めたの、これからも」

 さやか自身の祈りを嘘にしないためにも、譲れないものがあった。

 杏子は驚いていた、過去を話して、間違いと知った上で前に進むさやかの言葉に戸惑っていた。

 「なんでアンタは・・・・・・」

 杏子はさやかに聞いた。

 「あたしはね高すぎるものを支払ったなんて思ってない、この力は使い方次第でいくらでも素晴らしいモノにできるはずだから」

 

 さやかかの決意は固かった、マミから言われていた。

 『あなたの選んだ道は決して平じゃない・・・・・・いばらの道だと言うことをね、その道を歩む途中で・・・・・・決して折れちたりしちゃダメよ』

 祈ったのは恭介(好きになった男の子)の怪我を治すために、その先の魔法少女の道から遠ざかるのは、決して折れてはならない道なのだと。

 

 「それからさーーあんたはその林檎はどうやって手に入れたの?」

 「・・・・・・」

 

 さやかは、杏子が持っていた林檎の紙袋を見て疑問に思っていた。

 杏子の過去の話を聞く限り、お金は持っていなかった。

 

 答えはーー一つしかなかった。

 「お店で払ったお金はどうしたの?」

 さやかの問いに杏子は黙ったままだった。

 

 「・・・・・・言えないんだね。 ならあたしその林檎は食べられない、もらっても嬉しくない」

 「・・・・・・・・・・・・・っ!」

 杏子は、心の中にグサリと来たが林檎のことより違うことを叫んだ。

 ーー叫ばずにいられなかった。

 

 「バカヤロウ! あたしたちは魔法少女なんだぞ! ほかに同類なんていないんだぞ!」

 さやかは杏子の叫びを背にして聞いていた。

 それでも、さやかの決意は固かった。

 「あたしはあたしのやり方で戦い続けるよ、それがあんたの邪魔になるなら前みたいに殺しに来ればいい、あたしは負けないしもう恨んだりしないよ」

 杏子の気遣いは素直に嬉しかった、だがさやかも生半可な思いで契約をしたわけじゃない。

 

 ここで自分のために魔法を使うことを認めては、他者のために魔法を使うというあの時の誓いを裏切ることなってしまう。

 それがさやかの選択だった。

 

 さやかの言葉に杏子は立ち尽くした。

 立ち去るさやかの背を睨みながら林檎をかじり続けた。

 

 

 ーーその姿を一人の男が見ていた。

 「・・・・・・」

 

 外から二人の様子を見ていた侍、坂田銀八(坂田銀時)の胸中は一体いかなるものだったのか。

 

 さやかが立ち去った後そのまま、静かに教会から去ろうとした時だった。

 

 「何こそこそしてんだ! 出て来いよ!」

 

 突然、杏子が叫んだ。

 

 不意に、銀八は足を止めた。

 

 振り向くと、あきれ顔で見ていた杏子が銀八を見ていた。

 「途中で、アンタがあたしらの後をつけていたのは気がついてたよ」

 

 何故、銀八が廃教会にいるのか、それは少し遡るーー。

 

 

                       ***

 

 

 銀八は、見滝原中学校から三叉路のアパートに戻ろうとしたが、昨日の件でさやかが登校していなかったのを機に、さやかのマンションに向かうことにした。

 「キュゥべえからソウルジェムの話を聞いたんだろうな、学校に来てなかったし・・・・・・様子ぐらい見に行くか」

 

 銀八自身、ほむらからこの世界の事情を聞いたとはいえ、肉体と魂を分離して魔法少女にするなんて最初は戸惑っていたが元の世界(江戸)で万事屋で仕事をしていたため、すぐに冷静に受け止めていた。

 が、十代半ばの少女達には酷な話である事には変わりなかった。

 

 さやかのマンションに向かう途中、見覚えのある影が二つあった。

 赤い髪のポニーテールの少女と青髪ショートヘアの少女ーー杏子とさやかだった。

 

 「アイツ等・・・・・・」

 

 銀八は何故あの二人が一緒に歩いているのか分からなかった。

 考えても埒が明かないといたり様子見がてら後をつけ、杏子の過去が語られ、今に至るわけだった。

 

                       ***

 

 

 「悪りィな、テメーの過去を立ち聞きしちまって・・・・・・」

 銀八は杏子にそう謝罪したが杏子本人はため息を出しながら気にしてない様子でーー。

 「いいよ、あんたには借りが出来ちまったからな」

 「借り?」

 銀八は何のことかはわからなかった。

 「キュゥベえの野郎をぶっ飛ばしてくれただろ?」

 杏子の言葉に銀八は「あぁ~」と思い出したかのように言った。

 

 「俺ァあの無限残機が胸糞わりぃ事ほざいたから、アイツを野球ボールの代わりにしただけだぜ? 礼を言われるほどじゃねーだろ?」

 「それでも、ありがとな」

 杏子はそう礼を言った。

 その後、紙袋から林檎を取り出して、銀八に投げ渡した。

 「食うかい?」

 そう言った杏子はさやかのひと悶着を思い出していた。

 「それとも・・・・・その林檎は・・・・・・」

 ーー食べられないのか?

 そう杏子は銀八に聞こうとした時だった。

 

 シャリ。

 

 銀八は林檎を齧っていた。

 「今回だけ共犯になってやらァ、粗末にしたらキレんだろ?」

 そう言いながら林檎を食べていた 

 杏子は驚きながらもある事を訪ねた。

 「一応、教師・・・・・・? なんだろ? あたしは食うために、林檎(それ)を・・・・・・」

 ーー万引きした。

 そう杏子はそう告げようとした時だった。

 「テメーは何も魔法で誰かを傷つけてまで林檎を奪ってんじゃねーんだろ」

 銀八はそう言いながら林檎を食べていた。

 

 銀八は一旦林檎を齧るのをやめ、ある子どものことを話した。

 「まぁ、スリで生計を立てていたガキを相手にしたことが在るんだ、この程度で引くかよ」

 銀八はそう杏子に話した。

 

 「スリ?」

 

 杏子何を言っているのか分からなかったが、銀八は構わずに話を続けた。

 「あぁ、そいつ孤児で女を買うためにスリを始めたガキでな、その理由がその買おうとしていた女が自分の母親かもしれないってな」

 「え?」

 杏子はいきなりスリの少年の話を戸惑いながら黙って聞くことにした。

 「ただ、金を受け取っていた男がガキの稼いだ金を、黙って使い込んでたんで少しボコってやったんだが、その買おうとしてた女が上客専門の女でな、その上オーナーがやべーやつでな死ぬとこだったぜ」

 

 杏子は分からなかった、なぜ銀八(目の前の男)はその子供の話を突然したのか、分からなかった。

 

 「あんた、なんで私にそんな話を?」

 杏子は銀八にそう聞いた。

 「てめーは自分の過去を話してまでさやか(あいつ)を気にかけただろ、アイツのこと頼んでおいて、俺ァ投げ出す気はさらさらねぇよ」

 杏子は目の前の男の眼を見ていた、銀八の目は普段死んだ魚の目をしていたが、いまの目は真っすぐで強い目をしていた。

 杏子はどうしてそんな目をしていたのかわからなったが、今は話の続きが気になっていた。

 「なぁ、その母親かもしれない女とその・・・・・・会えたのか?」

 杏子は話の続きが気になっていた。

 「会えたには会えたが、その女とガキは血はつながってなかったよ」

 「え・・・・・・?」

 杏子はその言葉に絶句した。

 母親と思っていた女とは血はつながっていなかったことに言葉が出なった。

 「でもな、そのガキはなその血のつながっていない女を母親といったんだぜ?」

 「どうしてだ? その女とガキは血がつながってなかったんだろ?」

 杏子はますますわからなった、どうしてその子供は血のつながっていなかった女を母親と呼んだのかわからなかった。

 「女のオーナーがヤベー奴だって言っただろ、本当の母親はそのガキを産んで亡くなってな、その本当の母親の仲間とその血のつながってない女が、オーナーから匿ってガキを育てながら守ってたのさ」

ーーただな。

 銀八は思いだしながら、その『母親』と呼んだ女が払った代償を話した。

 

 「その母親は両足の腱を切られてな、歩くどころか立つこともままならなくなっちまったんだ」

 杏子は分からなくなった、血のつながらない子供のためにどうしてそこまで出来るのか。

 

 「皮肉な話、血はつながっていても家族同士で殺し合うやつもいれば、母子よりも強い絆で繋がっている連中もいる、どっちが本物の家族かなんて知りゃしねーがな」

 

 杏子は、その話を聞いて自分の父のことを考えていた。

 神父の父は自分が壊してしまうまで、優しく正直な人だった。

 でも、杏子は銀八の話を聞いて、自分は本当に父を見ていたのか、分からなくなった。

 杏子はそう思考の渦に入りかけていた。

 

 銀八は、杏子の様子を見て親子の結末を話した

 

 「そうそう、その母親とガキは今は親子になって暮らしてるよ」

 銀八は杏子にそうつぶやいた。

 

 杏子は思考の渦から引き戻されていた。

 銀八は食いかけの林檎を芯になるまで食べきり教会を後にしようとした。

 

 「お、おい」

 杏子は銀八を呼び止めようとしたが、銀八は去り際にある言葉を伝えた。

 「どんな場所だろうと、どんな境遇だろうと、太陽(おひさん)はあるんだぜ」

 ーー林檎ごっそさん。

 

 そう伝えて、銀八は廃教会を後にした。 

   

 銀八自身、どうして杏子に吉原で出会った、日輪と晴太のこと(名の伏せておいた親子のこと)を話したのか分からなかった。

 

 しかし、杏子の父は杏子を魔法少女になるまで無自覚に追い詰めたことへの怒りがあったのかもしれかった。

 

 ただ、言えるのは杏子がさやかを無自覚に背負ったっていうことだけだった。

 

                       ***

 

 杏子は銀八の背中を見送りながら、なぜ『血のつながらない親子』の話をしたのか考えていたが、分からずじまいだったが、ひとつわかったことはーー。

 

 さやかを見送ったときの苛立ちが収まったと言うことだけだった。

 

 

 ーーだが、運命の歯車は少女達に休息の暇を与えることはなかった。

  

 

 

 

   

  





 参考資料とエレファント速報、ジャンプリミックスをふんだんに入れてみました。

 杏子と銀時の会話で吉原の日輪と晴太の話を入れてみました。
 
 杏子は確かに願いで家族を壊したかもしれません、ですが杏子の父は杏子をそこまで追い詰めてしまったことに気付くべきなのではないのでしょうか?
 と、自分の中の不満を書いてしまいました。

 正直言って、吉原の話か銀時自身の過去にするか迷いました。

 文面が長くなって変な話になって申し訳ありません。
 
 ご意見、ご感想お待ちしております。


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中坊同士の恋愛は昼ドラの如く

 さやかと仁美の恭介を巡る話まで来ました。

 運命の分岐点まで迫っております。

 括目です。


                翌朝 通学路

 

 さやかはいつも利用している水路の遊歩道で見滝原中学校まで登校することにした。

 

 昨日の杏子の話で自分の契約の理由を思い出してどうにか前を向いていたが、それでも心の中に宿った靄は晴れなかった。

 

 するとーー。

 

 「さやかちゃん、おはよ!」

「おはようございます、さやかさん」

 

 まどかと仁美がさやかに挨拶していた。

 「あ・・・・・・ああ、あはよっ」

 さやかは二人の姿に驚きながらも、返事した。

 「昨日はどうかしたんですの?」

 仁美が昨日の無断休学の理由を尋ねた。

 「ん~ちょっとばかり風邪っぽくってね」

 さやかは昨日の理由(・・)をそう説明した。

 「・・・・・・」

 まどかはさやかを心配そうに見ていた。

 昨日の無断休学の理由は、一昨日の夜が事の発端だったため、学校にこれなかったのはまどかも想像できていた。

 その後にーー。

 (大丈夫だよ、もう平気、心配ないから)

 さやかはテレパシーでまどかにそう伝えた。

 「さーて今日も張り切ってーー」

 さやかは二人に向けて気合を入れようとしたとたんだった。

 「!」

 さやかはある人物の姿を目撃した。

 恭介が松葉杖を駆使しながら登校していた。

 「・・・・・・」

 さやかは恭介のその姿に言葉を失っていた。 

 恭介のリハビリ状況を把握していなかったから来る、衝撃だった。

 仁美はさやかの様子を見た後に、恭介の姿を確認した。

 「あら上條くん退院なさったんですの?」

 さやかは恭介を見てきただけでなく退院するまでお見舞いをしていた。

 しかし、さやかは心の底で嬉しいはずなのに、気まずさを感じていた。

 

                       ***

 

                    見滝原中学校 教室

 

 

 「上條・・・・・・もうケガはいいのかよ?」

 クラスメイトの一人が久しぶりの登校した恭介にそう質問した。

 「ああ、家に籠ってたんじゃリハビリにならないしね、来週までに松葉杖なしで歩くのが目標なんだ」

 恭介はそうクラスメイトに話していた。

 その姿をさやかは遠巻きに見ていた。

 「・・・・・・」

 「良かったね上條くん」

 「うん・・・・・・」

 まどかの喜ぶ言葉にさやかはそう返事をした。

 「さやかちゃんも行ってきなよ、まだ声かけてないんでしょ?」

 まどかは恭介との会話にさやかも加わることを進めたがーー。

 「あたしは・・・・・・いいよ」

 さやかは恭介の周りの空気に気おくれしたのか、断っていた。

 「・・・・・・」

 まどかはその言葉を聞いてさやかの顔を見ることしかできなかった。

  

 「・・・・・・」

 さやかの姿に、仁美は横目で見ていた。

 

 仁美は、ある秘め事をさやかに伝えることにした。

 

 それが、さやかの運命に関わることになるとは、さやかもまどかも思いもよらなかった。

 

 

                     ***

 

 

                  放課後 ファストフード店

 

 

 「・・・・・・それで話って何?」

 さやかは仁美に学校で話があると言われ、ファストフード店で話すことになった。

 仁美の目は真剣さがあった。 

 「恋の相談ですわ」

 「・・・・・・」

 仁美の一言で一瞬だけ沈黙が流れたが、その後に仁美から言葉が続いた。

 

 「私ね、前からさやかさんやまどかさんに秘密にしてきたことがあるんです」

 改まって話の内容を伝えた仁美の言葉にさやかは息をのんだ。

 「え? うん・・・・・・」

 仁美は誰に恋をしているのか、さやかは聞き入ろうとした。

 そして、仁美はその相手の名を告げた。

 「ずっと前から・・・・・・私、上條恭介くんのことお慕いしてましたの」

 

 仁美の告白にさやかは言葉を失い騒然とした。

 しかし、仁美の目は真剣だった。

 「そ、そうなんだ・・・・・・」

 さやかは仁美の言葉に驚きつつもーー。

 「あ、ハハ・・・・・・まさか仁美がねぇ、な~んだ恭介のヤツ隅に置けないなぁ」

 おどけた態度でさやかはそう言ったがーー。

 「さやかさんは上條くんとは幼なじみでしたわね」

 仁美の態度は真剣のままだった。

 「んんまぁその・・・・・・腐れ縁っていうかなんていうか・・・・・・」

 「本当にそれだけ?」

 さやかは恭介への好意をはぐらかそうとしたが、仁美は見逃さなかった。

 「・・・・・・」

 さすがのさやかも誤魔化せなかった。

 「私、決めたんですの。 もう自分に嘘はつかないって、あなたはどうですか? さやかさんあなた自身の本当の気持ちと向き合えますか?」

 「な・・・・・・何の話をしてるのさ・・・・・・」

 さやかは仁美の真剣な態度にたじろいだ。

 「あなたは大切なお友達ですわ・・・・・・だから抜け駆けも横取りするようなこともしたくないんですの、上條くんのことを見つめていた時間は私よりさやかさんの方が上ですわ、だからあなたには私の先を越す権利があるべきです」

 「仁美・・・・・・」

 仁美の恭介に対する思いをさやかに告白したうえで、「友人」として正々堂々としていたいという強い言葉にさやか本人は言葉が出なかった。

 「私、明日の放課後に上條君に告白します、丸一日だけお待ちしますわ、さやかさんは後悔なさらないよう決めて下さい、上條君に気持ちを伝えるべきかどうか」

 「あ、あたしは・・・・・・」

 仁美の真剣な態度にさやかは置いてけぼりだった。

 仁美はさやかにお辞儀してファストフード店を後にした。

 さやかは仁美の後ろ姿を見ているしかなかった。

 

 

                      ***

 

 

 

                   夜  マンション

 

 

 さやかは魔女退治のためマンションから出てきたら、まどかとマミ、そして銀八が待っていた。

 「・・・・・・! まどか、マミさん・・・・・・先生」

 「ついてっていいかな?」

 まどかはさやかにそう優しく動向を求めた。

 「さやかちゃんに独りぼっちになってほしくないの、だから・・・・・・」

 その理由をさやかにそう伝えた。

 

 「あんた・・・・・・なんで・・・・・・そんなに優しいのかなぁ・・・・・・あたしにはそんな価値なんてないのに・・・・・・」

 

 「そんな・・・・・・!」

 まどかは「そんなことない」と伝えようとしたが、さやかの言葉に戸惑うことになった。

 「あたしね今日後悔しそうになっちゃった」

 「・・・・・・!」

 さやかの中にあった後悔の言葉にまどかは一瞬戸惑った。

 「美樹さん何があったの?」

 マミはさやかに後悔の理由を聞こうとした。

 「あの時仁美を助けなければって・・・・・・ほんの一瞬だけ思っちゃった・・・・・・正義の味方失格だよ・・・・・・マミさんの弟子も・・・・・・」

 その言葉を聞いたマミはさやかの契約のことを思い出していた。

 他人のために契約するのは自分の願いをはっきりした方がいいと言ったことをーー。

 それが恋愛模様の上、助けた友達が契約の切っ掛けとなった男の子に思いを寄せてるなんて思わなかった。

 まどかはさやかに駆け寄り抱きしめた。

 その瞬間、気丈に振る舞い続けていたさやかの仮面が外れる、同時に大粒の涙が零れ落ちた。

 「仁美に恭介を取られちゃうよ・・・・・・でもあたし何もできない・・・・・・! だってあたしもう死んでるんだもん! ゾンビだもん! こんな身体で抱きしめてなんて言えない! キスしてなんて言えないよ・・・・・・!! うううっうぐっ・・・・・・!」

 さやかは涙を流しながら自分の思いを吐露した、まどかも涙を流しながらさやかの言葉を聞き続けた。

 「美樹さん・・・・・・」

 マミもさやかの吐露を聞いて涙が流れた。

 ーーそんな時だった。

 

 「他人の惚れた晴れたに口出しすんのもお門違いだけどよ、これだけははっきり言ってやる」

 さやかの吐露を黙って聞いていた銀八が口を開いた。

 「「「・・・・・・?」」」

 涙を流した三人は銀八に注視し、何を言おうとしたのか耳を傾けた。

 「今のテメーは誰かに惚れる権利も、惚れた相手に思いを伝える権利も持ってらァ、そんなにテメーを卑下するもんじゃねーよ」

 その言葉に三人は驚いていた。

 銀八から恋愛の言葉が出てくるなんて思ってもみなかったからだ。

 「なんなら、手紙で思いを伝えんのはどうだ? まずは相手をフォローしつつ・・・・・・」

 銀八はさやかに手紙でフォローを入れつつも告白を進めたがーー

 「いえ、これ以上は聞きません」

 「はぁ!? 俺今、話してる途中ーー」

 さやかにいきなり話を中断させられた。

 「だって坂田先生、何かーー」

 まどかは本能的に銀八が何か卑猥なことを言いそうな気がしていたと言い淀んでいたがーー

 「先生、あなたはなぜか碌な恋愛をしていない気がしたので・・・・・・これ以上は良いかなと」

 マミは薄々、銀八が卑猥なことを言いそうな予感がしたのか、結論を言った。

 

 「なんで俺、励まそうとしてんのにこんな断言されんだよ・・・・・・」

 銀八は少し落ち込んだ。

 

 「だって先生、魔法少女のことをあれこれ聞いたときに卑猥すれすれなことを聞いたじゃないですか?」

 そう言ったのはマミだった。

 「「うんうん」」

 まどかとさやかもマミの言葉に同意するように同時に肯いた。

 

 「なんだよ、俺せっかくたまに先生らしいことをだなーー」

 銀八はぶうたれながら、文句を言ったがーー。

 その様子を見た三人は少し笑った。

 さやかはまどかとマミに面を向かって礼を言った。

 「・・・・・・ありがと、ごめんね」

 「さやかちゃん・・・・・・」

 「美樹さん、もういいの?」

 まどかとマミは、心配そうにさやかに聞いたが、さやか本人の表情は柔らかかった。

 「もう大丈夫、すっきりしたから」

 さやかは二人に向かってそう話した。

 次に銀八に向かってーー

 「先生も、ありがとね、なんか卑猥なことを言って私に突っ込みを入れさせようとしたんでしょ?」

 銀八は「はてなんのことやら」と言ったような態度でごまかした。

 さやかは気を取り直して魔女退治にに乗り出した。

 「さあ行こ、魔女をやっつけないと」

 「・・・・・・うん」

 さやかの言葉にまどかは同意した、マミも優しい表情でうなずいた。

 

 

 

                      ***

 

 

                       工場

 

 

 

 杏子は魔女の結界が張られている様子を窺っていた。

 「・・・・・・」

 いつもなら、すぐさま魔女を狩りに行っている杏子が結界に侵入せずに様子見に徹していたのは先客がいたからだ。

 すると背後から誰かが降り立った気配がした。

 「黙ってみてるだけだなんて意外だわ」

 声の主は、ほむらだった。

 杏子は驚きもせずにほむらの問いに答えた。

 「・・・・・・今日のアイツは使い魔じゃなくて魔女と戦ってる、ちゃんとしたグリーフシードも落とすだろ。無駄な狩りじゃないよ」

 「そんな理由であなたが獲物を譲るなんてね」

 ほむらは意外そうにそうつぶやいた。

 「・・・・・・」

 杏子はしばらく様子見をしたが中の状況に変化が起こった。

 中にいる先客、さやかが結界の魔女に苦戦していた。

 「チッ・・・・・・あのバカ、手こずりやがって」

 杏子は悪態をつきながらもさやかの援護をする決心をした。

 

 

 

                      ***

 

 

 

                     魔女結界内 

 

 

 結界内ではさやかが剣を振るい魔女と交戦している最中だった、お互いに致命打を与えられない緊迫した戦闘が続く。

 マミはまどかの護衛のためにその場を動かずにいた、場合によってはさやかの援護をするつもりだ。

 銀八も魔女に攻撃を仕掛けようとするも、魔女の影が四方八方から攻撃してくるために捌き切るのが精いっぱいだった。

 「やああああああああ! ハッ!」

 さやかは魔女に攻撃を仕掛けようとするも、四方八方からくる影が襲い掛かりさやかの進撃を許さない。

 

 「おおお・・・・・・!」

 

 本来ならば魔女本体を叩くのが定石で、銀八もそうするつもりだったが魔女の攻撃で手も足も出ない状況だった。

 さやかは再度魔女に突撃した。

 「おおおおおおお!」

 今度は上空から攻撃を仕掛けることにしたのだがーー。

 「だああああぁぁぁぁぁ!」

 魔女は影が樹の枝のような形でさやかの攻撃を防いだ。

 そしてそのままさやかを押し返した。

 樹の枝はマミやまどかのところまで向かっていた。

 それを見た銀八はすぐにまどか達の元に向かった。

 次に瞬間だった。

 影の枝が二人に向かう瞬間に何者かがその進撃を断ち切った。

 その後にさやかを抱えて着地したのは杏子だった。

 

 「まったく・・・・・・見てらんねーっつーの」

 杏子はさやかを下ろした後に魔女の方に狙いを定めた。

 「いいからすっこんでなよ、手本を見せてやるからさ」

 そう言いながら杏子はさやかに手を貸すことをえらんだが、さやかはーー。

 「邪魔しないで」

 「おい・・・・・・!」

 「ひとりでやれるわ」

 さやかは杏子の助太刀を拒否して単独で魔女に突撃した。

 あまりに直線的で単純な攻撃。

 「やあああああああ!」

 祈りをささげている姿をした女の姿をした魔女の首をはねたが、魔女は倒されておらず反撃をその身を受けた。

 「さやかちゃん!?」 

 「美樹さん!」

 「・・・・・・!」

 「あの馬鹿!」

 まどかとマミはさやかの名前を叫び、杏子は言葉を失い、銀八は罵倒しながらも助けに入ろうした。

 しかしーー。

 「・・・・・・あはは」

 さやかは笑った、杏子はその様子を見て嫌な予感がした。

 「アンタ、まさか・・・・・・」

 その様子を見て銀八も即座に理解してしまった、今のさやかは立てるはずのない魔女の攻撃をもろに受けて、本来なら動けるはずのないダメージを負っているはずだった。

 なのになぜ立ち上がれたのか、それはさやかの笑い声がそれを証明した。

 「あはははははは! あはははは・・・・・・あっはははは」

 さやかは魔女の攻撃を食らいながら笑っていた。

 体から、頭から、いたるところから血を流しても笑っていた。

 そしてそのまま魔女に止めを刺してた。

 それでも、さやかは魔女を斬り続けた。

 ・・・・・・さやかの浮かべている笑みは少女のそれと言うには余りにも邪悪だった。

 「ははははははは、本当だぁ・・・・・・その気になれば痛みなんて・・・・・・あははははははははははははははははははは、完全に消しちゃえるんだぁ・・・・・・!」

 そう、さやかがダメージを負っているにもかかわらずに立ち上がった上に、反撃を喰らいながら魔女を倒すことが出来たのか、それはーー。

 キュゥベえが言っていた「完全に痛みを遮断することができる」と聞かされたため、さやかはそれを実行してしまったのだ。

 

 「ははははははは」

 さやかは笑い続けたその姿にマミと杏子は言葉を失った。

 そしてまどかは悲痛な声で言った。

 「やめて・・・・・・もう・・・・・・やめて」

 

 そして銀八はさやかの姿を見て怒りが込みあがった、キュゥベえに対する怒りが徐々に沸き上がっていった。

 

 

  

 

 

 




 どうにか、ここまで書きあがりました。
  
 いつも通り、参考書をフルに使いました。

 その中に新八の文通編を少し入れてみました。

 さすがのまどか達も銀時をまじかに見て女のカンが働いた流れにして見ました。

 そして、運命の時が近づいていきます。

 ご意見ご感想、お待ちしております。


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あたしって、ほんとバカ編
友情は儚さと鋼の間に


 第八話まで来ました。

 さやかの残酷の運命は広告と迫っています。
 
 銀時はその運命を叩き切ることが出来るのか!?

 括目して下さい。


 結界は魔女を倒したことで崩壊していった。

 

 結界の魔女は倒したのはさやかは笑いながら魔女の死骸を笑いながら滅多切りにした。

 

 「ていっていっ・・・・・・!」

 

 その時、魔女の死骸の滅多切りを続けるさやかの腕を掴み上げ止めた。

 銀八だった。

 

 「もう止めろ・・・・・・このままじゃテメー、本当に戻れなくなっちまうぞ」

 銀八はさやかにやめるように伝えた。

 さやかもその言葉を聞いて手に持ってた剣を落とした。

 「・・・・・・・・・・・・」

 さやかは掴んでいる腕を振り払って銀八の顔を見てーー。

 自虐的な笑みを浮かべながら。

 「戻る場所なんて私にはもうないよ・・・・・・」

 

魔女の落としたグリーフシードを蛍光灯が明るく照らしている、さやかはそれを拾い上げると杏子に投げ渡した。

 

 「あげるよ、そいつが目当てなんでしょ?」

 「おい・・・・・・」

 杏子はグリーフシードを受け取りながらもさやかの戦いに戸惑っていた。

 「あんたには借りは作らないからこれでチャラ、いいわね」

 杏子にそう言いながらさやかはまどかとマミの方に向かっていった。 

 「さあ帰ろうまどか、マミさん」

 杏子は去っていくさやかを振り返りながらーー。

 「さやかちゃん・・・・・・」 

 まどかはさやかの名を呼びながら、心配することしかできなかった。

 すると、さやかはふらつきながら魔法少女の姿から普段の姿に戻っていった。

 足元がおぼつかず、今にも倒れそうな様子に気が付いたのか、まどかとマミはすぐさまさやかを抱き止めた。

 「あーごめん、ちょっと疲れちゃった・・・・・・」

 「さやかちゃん・・・・・・」

 「美樹さん・・・・・・」

 二人はさやかを様子に不安を覚えていた。

 影の魔女との戦闘で見せた「痛覚の遮断」での戦闘によるダメージがたった今見せた足のおぼつかなさがそう物語っていた。

 「・・・・・・無理しないでつかまって」

 そう言いながら、まどかとマミはさやかの身体を支えて左右に肩に抱え運んでいった。

 

 杏子は、グリーフシードを握りながら、さやかの姿を見て悔やんだ。

 「あのバカ・・・・・・」

 そう呟くことしかできなかった。

 しかし、銀八の姿を見て何かを思いついたのかーー

 「おい」

 杏子は銀八にそう声を掛けて、グリーフシードを投げ渡した。

 銀八は杏子が呼ぶ声に振り返った後にグリーフシードをつかんだ 

 

 「お前・・・・・・」

 「それは、アイツが倒して手に入れたもんだ、あたしのもんじゃない」

 ・・・・・・それじゃあな、そう言って杏子は去っていった。

 銀八は掴んだグリーフシードを見て杏子の真意がわかっていた。

 

 ーーさやかの浄化を銀八に任せる。

 銀八はすぐにまどか達の後を追うことにした。 

 

 

                        ***

 

 

                        バス停

 

 見滝原の町に大雨が降っていた。

 深夜のバス停にバスは来ない、バス会社の営業は終了していたがーー。

 まどか達は、バス停で雨宿りをすることにした。

 

 「さやかちゃん、あんな戦い方ないよ・・・・・・」

 「・・・・・・」

 まどかは影の魔女の戦いでさやかが使った手段「痛覚遮断」での戦闘続行のことを話していた。

 「痛くないなんて嘘だよ、見てるだけで痛かったもん、感じてないから傷ついてもいいなんて、そんなの駄目だよ・・・・・・」

 まどかはそうさやかの戦い方に感じたことを告げた。

 「・・・・・・ああでもしなきゃ勝てないんだよ、あたし才能ないからさ」

 さやかは自虐めいたことを言った。

 それを聞いたマミは否定した。

 「才能があるなしの問題じゃないわ、私も鹿目さんと同じようにあの戦い方は褒められたもんじゃい、自分で自分を殺し続けるよなものよ」

 マミはまどかを護りながら、さやかの戦い方を見ていた。

 第三者から見たら、さやかの取った手段は自滅を招きかねないものだった。

 「あんなやり方で戦ってたら、勝てたとしてもさやかちゃんのためにならないよ・・・・・・」

 まどかの言葉を聞いてさやかは自分の中の何かが切れた。

 「・・・・・・あたしのためって何よ?」

 「えっ」

 まどかの戸惑いをよそにさやかはまどかの前に向かって、掌のソウルジェムをまどかの前に見せつけた。

 「こんな姿にされた後で何があたしのためになるっていうの?」

 「さやかちゃん・・・・・・」

 「今のあたしはね魔女を殺すただそれだけしか意味のない石ころなのよ。 死んだ身体を動かして生きているふりをしてるだけ、そんなあたしのために誰が何をしてくれるっていうの?」

 「でも私はどうすればさやかちゃんが幸せになれるかって・・・・・・」

 まどかの言葉は本心から出か言葉だった。

 ただ、現状のさやかの心境からして見れば当然ーー。

 「だったらあんたが戦ってよ!」

 「ええっ」

 「美樹さん!! 何をーー」

 

 聞く耳を持ってなかった。

 それどころか苛立ちが大きくなり、逆上のあまり普段のさやかが言わないことを言ったからだ。

 まどかとマミも騒然としていた。

 

 「キュゥべえから聞いたわよ、あんた誰よりも才能あるんでしょ? あたしみたいに苦労しなくても簡単に魔女をやっつけられるんでしょ!?」

 

 「私は・・・・・・そんな」

 「あたしのために何かしようっていうんなら、まずあたしと同じ立場になってみなさいよ!」

 「美樹さん!! それ以上は言っては駄目!!」

 逆上したさやかの言葉にまどかは騒然としていた、マミはどうにかさやかをなだめようとしたが、怒りは止まらない。

 

 「ただの同情で人間やめられるわけないもんね!」

 「同情なんてそんな・・・・・・」

 「美樹さん!!」

 

 まどかがさやかの言葉に騒然とした時にマミはさやかに対してーー

 

 バチンーー

 

 さやかの頬にビンタした。

 

 「それ以上言ったら駄目!! もしその先の言葉を言ったら、違う意味で戻れなくなるわよ!!」

 マミはさやかにそう強く叱った。

 

 さやかはビンタのショックもあったが、その影響もあってか正気に戻っていた。

 そして、勢いのあまり何か取り返しのつかないことを言おうとしたことに気が付いた。

 

 その時、さやかはバス停から飛び出した。

 

 「さやかちゃん・・・・・・」

 まどかはさやかに呼びながら駆け寄ろうとするがーー。

 「ついてこないで!」

 さやかはそう叫んだ。

 「・・・・・・え・・・・・・」

 まどかとマミはギクンと身動きできなかった。

 そして、さやかは雨の中を走り去っていった。

 

 まどかとマミは呆然と見送ることしかできなかった。

 

 

                        ***

 

 

 

 

 雨に打たれながら走り去るさやかは後悔していた。

 

 「バカだよあたし、何てこと言おうとしたのよ」

 さやかはマミのビンタのおかげで正気に戻った時、頭によぎった言葉に悪寒を覚えていた。

 

 『何でもできるくせに何もしないあんたの代わりに、あたしがこんな目に遭ってるの、それを棚に上げて知ったようなことを言わないで』

 それがまどかに言おうとしたさやかの言葉の続きだった。 

 

 「自分のことを棚上げして、まどかの棚上げなんて・・・・・・もう救いようがないよ・・・・・・」

 

 さやかは自分を責め続けていた。

 

 そして、さやかのソウルジェムは徐々に穢れが溜まっていった。

 

 

 

                      ***

 

 

 

 銀八は雨の中、走っていた。

 

 さやかを抱えたまどか達を探すためだ。

 

 杏子から受け取ったグリ―フシードを手に銀八はまどか達を探していた。

 しかし、深夜に大雨が降ってきたので探すのに時間がかかっていた。

 

 そして、バス停で土砂降りの雨を浴びていたまどか達を見つけたころにはさやかの姿が見当たらなかった。

 

 「お前ら、さやかはどうした?」

 

 銀八はまどかに呼びかける。

 まどかは、銀八の声に反応して、振り返った。

 

 「せ、先生ぇ~」

 

 まどかの顔は今にも泣きそうな声で銀八の方を見ていた。

 

銀八はマミにさやかと何があったのかを聞いた。

 マミから聞いたことは、さやかが戦い方のことを指摘する流れで、自暴自棄な精神状態でのまどかの意見を聞いての逆上、その後にマミがさやかにビンタをしてまどかに言おうとした『取り返しのつかない言葉』を強引に止めたこと。

 

 その後に、さやかは二人の前から走り去って行ったことだった。

 

 「坂田先生、私は美樹さんが鹿目さんにひどいことを言おうとして強引に止めました。でも、余計に美樹さんを追い詰めてしまったのでしょうか?」

 

 マミは、さやかの精神状態が危険と感じて勢いのあまり、まどかに酷いことを言おうとしたためにさやかを引っ叩いたことに胸を痛めていた。

 

 「あの時、美樹さんを引っ叩いてしまった・・・・・・でも、それ以外の方法が有ったんじゃないかって・・・・・・」

 

 マミは顔を曇らせながら右手を見つめていた。

 さやかを引っ叩いた時の感覚がまだ手に残っていたからだ。

 

 銀八はマミの頭を撫でた。

 「間違ってるかどうかは俺には分からねぇ・・・・・・ただ少なくとも、おめーはさやかを止めようとしたんだろ? まどか(ダチ公)に対して取り返しのつかないことを言おうとしたあいつを止めようとした。ただそれだけだろ?」

 

 マミの姿で、元の世界(江戸)真選組(へっぽこ警察)の面々が目に浮かんだ。

 何度か、下らないことで張り合っている、問題だらけの武装警察の三バカのことが頭によぎった。

 

 その中で、三バカの大将(ゴリラ)こと近藤勲とマヨラー、土方十四朗とドSこと沖田総悟を知る女のことをーー。

 

 

                         ***

 

 

 

 沖田総悟の姉ミツバの出会いと別れの間に起きた出来事。

 

 『イテテ・・・・・・随分と俺には手厳しいな近藤さんは』

 

 『そりゃお前がガキだからだ、トシがお前と同じことを言ったら俺ァ奴も殴ったよ、俺達ゃそういう仲だろう、誰かがねじ曲がれば他の二人がぶん殴ってまっすぐに戻す、昔からそうだった。だから俺たちは永遠に曲がらねェずっと、まっすぐ生きていける。てめーが勝手に掘った小せェ溝なんて俺達はしらねぇよそんなもん、何度でも飛び越えてって、何度でもてめーをブン殴りに行ってやる、そんな連中長ェ人生でもそうそう会えるもんじゃねェんだよ、俺達ゃ幸せもんだぜ。そんな悪友を人生で二人も得たんだ』

 

 『総悟、もし俺が曲がっちまった時は、今度はお前が俺を殴ってくれよな』

 

 

 ミツバが容体が急変したときに総悟(ドS)が自暴自棄になった際、(ゴリラ)が殴って止めた際に言ったセリフ、銀八(銀時)は寝たふりをしながら聞いていた。

 

 

 「少なくとも、お前は曲がってしまいそうなさやか(アイツ)を真っ直ぐにしようとしただけだよ」

 

 「先生」

 

 銀八はそうマミに言った。

 思い浮かんだことと言えばそれだけだった。

 

 銀八は次にまどかの方に顔を向けて。

 

 「お前(おめー)もアイツのダチなんだからよ、取りあえず見守ってな・・・・・・人間でも出来ねぇことがあれば、魔法少女じゃ出来ねぇこともあら」

 

 まどかは目に流れた涙を拭いてーー。

 

 「はい」

 

 そう銀八に返事をした後に銀八達はそのまま解散した。

 

 

 銀八は二人の姿が見えなくなったことを背後から確認した後。

 「さてと、このことほむらのヤローに話しとくか」

 

 そう言いながら三叉路のアパートへと向かって行った。 

 

 

 

                        ***

 

                      三叉路 アパート

 

 銀八は三叉路アパートのほむらの部屋でさやかの様子を話した。

 

 「そう・・・・・・そんなことがね」

 ほむらは予想していたのと同時に納得した表情をしていた。

 その顔を見た銀八はほむらに投げかけた。

 「その様子じゃ・・・・・・やっぱ・・・・・・」

 銀八の問いにほむらは頷いた。

 「ええ、貴方の考えの通りよ。何度目かの時間逆行の時に美樹さやかが魔法少女として契約をした後・・・・・・」

 ほむらはそれ以上は言わなかった、それが銀八の予想が真実だと言うことだった。

 ほむらはしばらく沈黙したが・・・・・・しばらくしてほむらがつぶやいた。

 「私は美樹さやかが、契約した時点でもうある程度の諦めはしていたわ」

 ほむらは、そう言いながら魔法少女として契約したさやかのことを思い出していた。

 

                     ***

 

 『ーーあのさぁ、キュゥベえがそんな嘘をついていったい何の得があるわけ?』

 

 ほむらが魔法少女の秘密を、キュゥべえの企みに気付いて、魔法少女として戦っていたまどか達に話した時。

 さやかは信じようとしなかった。

 

 『あたしたちに妙なこと吹き込んで仲間割れさせたいの? まさかあんた本当は杏子とかいうヤツとグルなんじゃないでしょうね』

 

 まだ、杏子と会っていないさやかは不信感を募っていた。

 

 『どっちにしろ・・・・・・あたしこの子とチーム組むのは反対だわ、いきなり目の前で爆発とかちょっと勘弁してほしいんだよね』

 

 その上、ほむらのミスが重なってさやかの不信感が増していた。

 

 

 

                       ***  

 

 

 

 「契約した人間を救うことなんて・・・・・・絶対に出来るはずがないんだから」

 ほむらは何度も時間逆行の際、何度もワルプルギスの夜に挑んだ・・・・・・。

 

 その間に起こった魔法少女(まどか達)の死を、そして絶望に暮れる魔法少女達(まどか達)の顔を・・・・・・。

 

 そして、ほむらは一人で戦うことを選んでいった。

 

 ほむらが真顔ながらも暗さを帯びた声が今までの重さを物語っていた。

 ーーその時だった。

 

 「二人なら持ち上がる石でも、一人が手を抜いたんじゃ持ち上がるわけがねぇ・・・・・・」

 「?」

 銀八がつぶやいた一言にほむらは首を傾げた。

 

 「テメーが何度この世界をやり直してきたかはしらねーが・・・・・・それで全部を諦めんのは早いんじゃねーか?」

 「!」

 ほむらは驚いていた、目の前の男はまだ魔法少女を救うことを諦めていなかった。

 

 「契約した人間だろうが何だろうが・・・・・・目の前にあるモンなら掬い取ってやる、まだ間に合うんならな」

 「・・・・・・」

 銀八の言葉にほむらは驚いていた。

 

 (巴マミの時もそうだったけど・・・・・・何故彼は、銀時は命を張ってまで私たちを救おうとするのだろう?)

 

 ほむらは銀時(銀八)が異世界から来たと知る前、普通の人間なら逃げる魔女と戦うなんて信じられなかった、はっきり言って自殺行為だと間違いなく断言していた。

 

 そして、銀八が異世界・・・・・・違う歴史を歩んだ《江戸》から来たなんて聞いたときは信じられなかった。

 時間逆行を行っていたほむらはまだしも、目の前の男が異世界から来たと聞いたら、誰も信じなかった。

 

 ほむらが銀時をある程度信頼したのは、何度も時間逆行の経験からしてもこの世界の人間ではないということ、なによりも魔法少女どころか普通の人間にもかかわらず戦闘能力が凄まじかったこと、そして時折見せる普段の怠惰さを感じない静かな怒りとその目の奥の悲しみだった。

 

 (少なくとも魔法少女を人間として扱ってるのは・・・・・・彼の世界では異星人、『天人』が存在してると言うこと、彼はその天人に何かを奪われたのだろうか?)

 

 ほむらがそう思い浮かんだのはさやかのソウルジェムの紛失の際の魔法少女の秘密の一旦まどか達がを知ったときに見せたキュゥべえに対する怒りだった。

 まどか達がソウルジェムの秘密を知った際の悲しみと嘆きをキュゥベえを野球ボールのごとく木刀をバットのようにフルスイングしたことだった。

 

 「おい、ほむら?」

 

 「はっ」

 

 銀八に呼ばれたほむらは思考の渦に戻ってきた。

 

 「どうした、オメーらしくもねぇ」

 「ごめんなさい、それで何かしら?」

 「さやかは俺が様子を見るから、オメーはまどかに着いてってやんな、さやかの説得はオメーじゃ無理だろ?

今のさやかにオメーの言葉だと冷静になれねーだろ?」

 

 銀八の提案にほむらは驚いていた。

 「それは構わないけど、どうして? 美樹さやかの説得なら、私が・・・・・・」

 「さやかの今の状態でお前の言葉なんて聞くか? 何よりテメーはまどかのためなら何でもするだろ(・・・・・・・)?」

 「!」

 

 ほむらの目的はまどかを守るためにキュゥべえの契約を阻止すること、さやかの破滅する姿をまどかに見せるわけにはいかなかった。

 そのためなら、手段は択ばない(・・・・・・・)

 それを銀八に見抜かれたのだろう。

 

 

 銀八はそれを知った上でほむらを止める意味でもーー。 

 「俺ァ見捨てるつもりはねーよ、さやか(アイツ)も・・・・・・てめーもな」

 さやかを『最悪の手段』に移さないためにもーー。

 

 銀八はほむらの前でそう言った。

 

 ほむらは目を見開いて驚いていた。

 (やっぱり、私のことも救おうとしてるの?)

 目の前の男、坂田銀時はほむらのことを助けようとしていた様だった。

 

 一瞬戸惑ったが、冷静さを取り戻してーー。

 「・・・・・・あなたは面白いわね、本当に」

 銀八にそう言った。

 

 しかし、言葉とは裏腹にほむらの心は心なしか軽くなっていた。

 

 

 

 

 そして、魔法少女達に待っている残酷な運命の時が刻々と迫っていく。

 

 侍、坂田銀時が運命を叩き切る時もまた刻々と迫っていた。 

 

 

 

     

  

 

 

 

 

 

 

 

 





 相も変わらす原作二次小説と参考書のミックスにオリジナルを入れています。

 ですが少なくともほむらの心持は少し軽くなってると思います。

 銀魂リミックスではミツバ編を、まどかマギカでは10話の『もうだれにも頼らない』の魔法少女として契約したさやかのセリフを入れました。

 ご意見ご感想をお待ちしております。


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人の根幹は人それぞれ

 ほむらと杏子のワルプルギス会議から始まります。

 徐々に徐々に運命の時へと向かって行きます。


            三叉路 アパート ほむらの部屋

 

 

 ほむらは杏子を自らの部屋に招いて『ワルプルギスの夜』の対策を立てていた。

 

 杏子はカップ麺を食べながらほむらの話を聞いていた。

 「ワルプルギスの夜の出現予測はこの範囲」

 ほむらは見滝原の全体地図にワルプルギスの夜の出現場所を指で指示した。

 「根拠は何だい?」

 「統計よ」

「統計?」

 杏子は訝しんだ、何故ほむらはワルプルギスの夜の出現場所を知っているのか?

 「以前にもこの街にワルプルギスが来たなんて話は聞いてないよ、一体何をどう統計したってのさ?」

 「・・・・・・」

 杏子は疑問に思っていた。

 ワルプルギスの夜に関しては魔法少女の間では語り継がれるほどの強力な魔女だ、それの対策を立てる同盟相手(暁美ほむら)は迷いもなくその出現場所を指示した。

 

 「お互い信用しろだなんて言えるがらでもないけどさ、もうちょっと手の内を見せてくれたっていいんじゃない? 坂田銀八みたいにさ」

 

 杏子はほむらから情報を引き出すためにある一定の信頼を置いていた、その引き合いに銀八の名前を出すことで、何かつかめるのではないかとそう思っての発言だった。

 しかし、ここで招かれざる客がやってきた。

 「それはぜひ僕からもお願いしたいね、暁美ほむら」

 キュゥべえだった。

 「・・・・・・」 

 ほむらは沈黙を保ったままだった。

 杏子は手元にソウルジェムを掲げ、槍を突き付けた。

 「どの面下げて出てきやがったテメェ・・・・・・」

 「やれやれ招かれざる客ってわけかい? 今夜は君たちにとっても重要なはずの情報を知らせに来たんだけどね」

 「あぁ?」

 キュゥベえの言葉に杏子は怪しんだ。

 キュゥベえの言葉を耳に傾けたくないと言わんばかりに警戒していた。

 そんなこともおかまいなくキュゥベえは話続けた。

 「美樹さやかの消耗が予想以上に早い彼女自身が呪いを生み始めた」

 「誰のせいだと思ってんさ・・・・・・」

 杏子はキュゥベエを睨んでそう言った。

 しかし、キュゥベえはおかまいなくある事実を告げた。

 「このままだとワルプルギスの夜が来るより先に、厄介なことになるかもしれない」

 「何だそりゃ? どういう意味だ?」

 杏子はキュゥべえの言っている意味が解らなかった。

 キュゥべえは杏子の疑問に答えずにほむらの方に向いて言った。

 「僕じゃなくて彼女に訊いてみたらどうだい? 君ならすでに知っているんじゃないかな? 暁美ほむら」

 「・・・・・・」

 ほむらは答えなかった。

 「・・・・・・」

 キュゥベえは一度思案してある結論に至った。

 

 それをキュゥベえは確信したのか意味深なことを言った。

 「やっぱりね、どこでその知識を手に入れたのか僕はとても興味深い、君はーー」

 キュゥべえは言葉の続きを言おうとしたが。

 「聞くだけのことは聞いたわ、消えなさい」

 ほむらにさえぎられ、キュゥべえに出ていくこと告げた。

 「・・・・・・」

 キュゥべえも聞くだけ無駄だと悟ったのかほむらの言葉に従って部屋から出て行った。

 「放っとくのかよ? あいつ」

 「あれを殺したところで、何の解決にもならないわ」

 「それよりも美樹さやかだ、あいつの言ってた厄介事ってのは何なんだ?」

 杏子はキュゥべえの質問の後に、さやかの件について質問した。

 杏子にとってはそれが気がかりだった。 

 ほむらは少し間を置いて、ある真実の一端を話した。

 「彼女のソウルジェムは穢れをため込み過ぎたのよ、早く浄化しないと取り返しのつかないことになる・・・・・・」

 

 「それは・・・・・・ソウルジェムの秘密よりもやばいのか?」

 杏子の質問にほむらは一瞬驚いた顔をしたがすぐに納得した。 

 今までの流れでソウルジェムの秘密まで来たのだから何かあると考えるのが妥当だと思うのは当然だった。

 ほむらは杏子の質問に首をかしげて肯定した。

 

 杏子はほむらの首をかしげるしぐさに納得したのかこれ以上質問しなかった。

 「要は、美樹さやかのソウルジェムの浄化はひとまず最重要なのは確かだな」

 杏子はそう言いながら歩き、ほむらの部屋を後にしようとした。

 しかしーー。

 「待って」

 ほむらが杏子を呼び止めた。

 「何だよ?」

 「あなた、手の内を見せてほしいって言ってたわよね?」

 「ああ、言ったけど?」

 杏子はほむらに「手の内を見せる」と言う言葉を聞いて何かを隠しているのかと期待していたがーー。

 「坂田銀八の居所よ」

 大した情報ではなかった。

 「何だ、そんなことかよ? この部屋の隣だろ?」

 杏子も、ほむらの部屋に上がる前に隣の部屋の名札を偶然見たため銀八がこのアパートに住んでることが解っていた。

 

 「確かに、『手の内』って情報ではないけれど・・・・・・少なくとも美樹さやかの現状を把握するには打って付けよ」

 ほむらの提案は杏子も納得した。

 「確かに、美樹さやかが今どんな状態か知った方がいいか・・・・・・」

 杏子は納得して銀八の下へ訪ねることにした。

 

 

 

 

                      *** 

  

                     銀八の部屋

 

 

 

 杏子はさっそく銀八の部屋のドアまで向かいインターホンを鳴らした。

 ーーピンポーン

 インターホンを鳴らした後に、ドアのカギが開く音がした。

 

 「んだよ、こんな夜中に誰だ!?」

 「銀八」

 銀八はインターホンを鳴らした主、杏子が目の前にいたことに驚いていた。

 

 「杏子、テメーなんでここに?」

 「ワルプルギスの夜の対策を練る際にほむらに部屋に招かれてな、部屋に招かれる際アンタの部屋の名札を見た訳」

 杏子の説明を聞いて銀八は納得した。

 

 ーー確かに、ほむらと関わってる繋がりで俺の名前の名札を見つけたら、当然の流れか・・・・・・。

  

 銀八が一瞬そう考えた後に、ある疑問が浮かんだ。

 「それで、俺を尋ねに来たのは遊びにって、訳じゃねェーよな」

 「美樹さやかの様子について聞きたいことがある」

 杏子はすぐ、銀八に本題(さやかの話)を切り出した。

 「なんでさやかっ・・・・・・キュゥベえの野郎が何か言ってやがったのか?」

 銀八は、杏子が何故さやかの様子を気にしたのは、すぐにキュゥべえが何かを話した流れだと言うことが解った。

 「ワルプルギスの夜の対策を練っていた最中に現れてな・・・・・・キュゥベエの野郎、美樹さやかが厄介なことになるって言いやがった」

 

 杏子の話を聞いていた銀八は、ほむらから聞いていた魔法少女の最大にして残酷な秘密を思い出していた。

 

 ーーおいおい、よりによってさやかのことかよ。

 「悪いな、さやかにグリーフシードを返そうとしたんだが、そん時はもう」

 「そうか・・・・・・」

 銀八から聞いた話はあまり芳しくないことが杏子にはすぐにわかった。

 杏子は、次に気になることがあった。

 「マミと美樹さやかの友達、の様子は?」

 杏子はさやかがマミとまどかがさやかを抱えながら帰っていったのを思い出していた。

 

 「あぁ、バス停でさやかが逆上して心にもないことを言ってそのまま・・・・・・ってマミのヤローから聞いてな」

 

 「あのバカ、そこまで参ってんのか?」

 杏子は悪態をつきながら、さやかが内心疲弊してることを理解していた。

 ふと、杏子はさやかが魔法少女になった切っ掛けの少年のことを思い出していた。

 「なあ、アンタさアイツが・・・・・・美樹さやかが参ってる切っ掛けって・・・・・・腕を治した坊やとなんか有ったのかい?」

 

 銀八は、杏子の質問に一瞬間を置いた後に、うなずいた。

 「言っておくが、さやかとそいつがケンカして荒んだんじゃねーよ、さやかが治した奴に惚れてた女が居てな、しかもそいつはさやかとまどかのダチだったわけだ」

 

 銀八の補足に、杏子はさやかが疲弊した根本的な理由を理解した。

 

 

 杏子は自分のために魔法を使う、そう決めたのは自分の仕出かしたツケ()が自分に返ってくる自己責任の現れだった。

 

 さやかは自分の大切の幼馴染のために契約した。

 しかし、現実では男女間の問題(恋愛事に発展)になるなんて思ってもみなかったからだ。

 

 その上、魔法少女とソウルジェムの仕組みを知ったために、恋愛なんてできない体になってしまっている。

 

 杏子は自分の体のことは割り切っていた、しかしさやかは自分の身体のことに強い喪失感を感じていてもおかしくはなかった。

 その上、さやかが魔女との戦い方を思い返したら、根本的な理由を考えれば納得していた。

 「あいつに残ってるのは魔女を倒すことだけしか、自分にはないって思ってんのかよ・・・・・・バカヤロウ」

 

 痛覚を遮断してまでの戦い方はもはや、ヤケ以外に言いようがなかった。

 「あたしは・・・・・・魔法少女がどんなことを願ったなんて知らないし、興味もなかった・・・・・・でも、結局は関わっちまう星の下に生まれたのかねぇ」

 杏子はそうぼやきながら自分の罪の始まりと今に至ることを振り返った。

 

 杏子は、自分が父のためと良かれと思って契約した結果、家族を壊してしまった。

 それ以降、魔法は自分のために使う(今の自分の方針)と決めていた。

 

 しかし、かつての自分と同じ契約をした魔法少女、美樹さやかと出会ってしまってからだ。

 それ以降、さやかと衝突するたびに、いつの間にか気にかかっていた。

 さやかに対して何がしたいのか? 

 自分自身何がそうさせるのか?

 

 杏子が堂々巡りの思考に入りかかったその時だった。

 

 「なら、またぶつかっていきゃあいい・・・・・・そうでもしなきゃ見えねえ答えもあらァ」

 突然、銀八の言葉に杏子がハッとなった。

 何故、そんなことを言ったのか、杏子は分からなかったが、銀八は続けた。

 「てめーもさやかもどっちも譲れねーもんがあんなら、ぶつかっていくしかあるめーよ、ただテメーはもう知ってるはずだぜアイツのしぶとさぐらいは」

 

 銀八の言葉に杏子は思い出していた。

 最初に殺し合いをした時の際に見せたしぶとさを、何度もたたきのめしても立ち上がってきた魔法少女(さやか)の姿をーー。

 

 さやかはいわば『かつての自分自身』だった。

 杏子はかつての自分に戻りたいわけではない。

 しかし、だからと言ってほっといても目覚めが悪い、それだけは確かだった。

 そんな杏子の心情を知ってかしらずか、銀八は告げた。

 

 「俺ァ一応教師なんでな、あいつが出席してもらった方が少なくともつまらなくはならねーよ」

 「アンタは教師じゃなくて、教育実習生だろうが」

 銀八の発言に杏子は突っ込みを入れた。

 その後に何か吹っ切れたのか、杏子は銀八の部屋を後にしようとした。

 「取りあえず、美樹さやかの現状は理解したよ、じゃあな」

 その時だった。

 「待て」

 銀八が杏子を呼び止めた。

 「何だよ」

 杏子は銀八の方を見やった。

 すると銀八は自分の財布から千円札を出した。

 「これで、なんか菓子でも買いな、少なくとも万引きした食いもんよりはマシだろ?」

 そう言って、杏子に千円札を渡した。

 

 その時だった。

 

 「あ、アンタが金渡すなんて、ワルプルギスの夜よりも隕石が降ってきそうだな」

 杏子は銀八がお金を渡すなんて悪い前兆だと感じた。

 「テメーは俺を何だと思ってんだオイ!」

 銀八は心外と言わんばかりの突っ込みを入れた。

 

 

                      ***

   

    

                  見滝原中学校 教室

 

 

 

 「mustという助動詞には、これこれしなければならないと言った義務の意味があるのですがーー」

  

 「・・・・・・」 

 

 早乙女の英語の授業のさなか、まどかは集中できなかった。

 仁美の前の席、さやかが欠席していたからだ。

 昨日の魔女の一軒以降、学校には来ていなかった。

 

 まどかは、バス停でのさやかの後ろ姿を思い出していた。

 

 (あのとき、追いかけなきゃ駄目だったのに・・・・・・)

 その後悔がまどかの中に渦巻いていた。

 

                      ***

 

 

 

                    放課後 公園

  

 

 

 仁美と恭介は帰路に向かっていたが、恭介本人はある疑問があったからだ。

 公園の道は恭介がいつも使っている学校の帰り道だったが、普段見かけない人物が仁美だった。

 疑問に思った恭介は仁美に聞くことにした。

 

 「志筑さんって帰る方向はこっちなんだっけ?今まで帰り道に見かけたことってないような・・・・・・」

 「ええ本当は全然逆方向ですわ」

 仁美の返答に恭介は驚いていた。

 「え?・・・・・・じゃあ今日はどうして?」

 「上條君にーーー」

 「・・・・・・」

 「お話ししたいことがありますの」

 

 仁美は自分の想いを恭介に打ち明けることにした。

 

                      ***

 

                   さやかのマンション

 

 

 まどかはさやかのマンションによってみることにした。

 学校の欠席に関してさやかの家族に聞くことにしたからだ。

 

 しかし、返答はーー

 「え?・・・・・・帰ってないんですか? 昨日から? そんな・・・・・・」

 

 さやかは、マンションには帰ってきてはいなかった。

 「はい、えっと・・・・・・分かりました、はい、失礼します・・・・・・」

 さやかはやはり昨日の件から、マンションに帰ってきてはいなかった。

 「・・・・・・」

 まどかは少し思案した後、マミに連絡した。

 

 《もしもし、鹿目さん? 美樹さん学校に来ていなかったみたいだったけど、そっちはどうだったかしら?》

 「さやかちゃん昨日から帰ってきてはいないみたいで・・・・・・」

 《そう、やっぱり・・・・・・私も一回合流して一緒に探しましょう》

 「はい、それでは」

 そう言ってまどかはマミへの連絡を終えた。

 

 (さやかちゃん・・・・・・探さなきゃ!)

  

 まどかはさやかを一行も早く見つけなければならない、そんな予感がよぎっていた。

 

 

 

                      ***   

 

 

 ある場所で二人の男女が楽しそうに談笑していた。

 仁美と恭介だった。

 

 その様子を影で見ていた少女がいた。

 さやかだった。

 

 片や親友、片や想い続けた幼馴染、その二人が付き合う瞬間を見てしまっていた。

 仁美と恭介は笑いあっていた。

 

 その様子を、さやかは見ていた。

 

 妬みと悲しみ、呪いを心の中にため込んで。

 

 

                     ***

 

 

 

 「うああああああ」

 さやかは、使い魔と戦っていた。

 

 まるで八つ当たりするかのように、使い魔を倒していた。

 「ううっ」

 使い魔が全滅した後、結界は解かれた。

 「はあはあはあはあはあ・・・・・・はあ・・・・・・」

 さやかはその後に魔法少女の変身が解かれた。

 ソウルジェムの穢れは、溜まっていた。

 

 「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」

 

 そこに、誰かが近づく足音がした。

 さやかは、近づく人物を睨んだがーー。

 

 「オイ、見つけたぞ・・・・・・家出娘」

 

 その声を聴いてさやかは一瞬だけ驚いていた。

 「坂田・・・・・・先生」

 さやかに近づいてきた人物、銀八だった。

 

 「お前、学校さぼってどこほっつき歩いてんだ? まどかのヤローが心配してたぜ」

 「うるさい、大きなお世話よ・・・・・・」

 さやかは、苛立っていた。

 「学校さぼってまで、魔女退治ってか? 精が入ってるな・・・・・・て言うと思ってるのかよ」

 銀八はそう言いながらポケットからグリーフシードをとり出した。

 

 「魔女退治続けんなら、まずテメーのソウル何たらを浄化する方が先決じゃねーのか?」

 銀八はそう言いながら、グリーフシードをさやかに投げ渡した。

 しかし、さやかはグリーフシードを受け取らなかった。それどころかそのグリーフシードを後ろに蹴とばした。

 

 「オイ、何やって・・・・・・」

 銀八はさやかの行動に驚愕した。そしてーー。

 

 「先生は、何か知ってるんでしょ?」

 さやかの言葉に銀八は困惑した。

 

 その言葉は氷のように冷たい、声色だった。

 

 

 

  

   

 




 今現在、運命の時は確実に向かっています。

 さやかはぐれまくっています。
 
 文章短くてすみません。

 第三章あたりが少し、長くなる予定です。

 ご意見ご感想お待ちしております。


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真実は希望と絶望のはざまに

 とうとうこの時が来ました。

 ほむらの場面だったシーンは銀八に代わってます。

 ホストの流れはお楽しみに。

 それでは本編をどうぞ。


 さやかは、銀八に対して冷たい声で問いかけた。

 「先生は、何か知ってるんでしょ? 転校生は何もかも諦めた目をしてる。いつも空っぽの言葉をしゃべってる、本当は全然別のことを考えてる・・・・・・」

 

 銀八はさやかの荒んだ状態での洞察力に少し背筋を凍らせた。

 

 確かに、銀八はほむらの目的を知っている。

 契約した目的も、その際の魔法少女の真実を知った経緯も、全てほむら本人から聞いていた。

 

 ふと、銀八はさやかにある問いかけをした。

 「仮に、俺がほむらのことをテメーに話したとしてお前はどうするんだ?」

 銀八の質問にさやかは一瞬間を置いた後、ポツリポツリと今までのことを話していった。

 「あたしは転校生たちとは違う魔法少女になる、あたしは決めたんだ・・・・・・誰かを見捨てるのも利用するのも、そんなことをするヤツらとつるむのも嫌だ。見返りなんていらない、あたしだけは絶対に自分のために魔法を使ったりしない、でも転校生は何を考えているのか分からない。最初の出会いから・・・・・・お菓子の魔女の戦いの時も、杏子(あの子)との戦いの時も、あの転校生は違うものを、違うことを考えてる」

 

 さやかは今までのほむらとの出会いから今日までの動向をつぶさに話していた。

 その様子を見た銀八は話を遮るかのように声を掛けた。

 

 「お前、このまま続けたら死ぬぞ」

 「あたしが死ぬとしたらそれは魔女を殺せなくなったときだけだよ、それって用済みってことじゃん。魔女に勝てないあたしなんて、この世界に入らないよ」

 

 さやかの発言で銀八はーー。

 ゴンッ。

 さやかの頭に拳骨を喰らわせた。

 

 「生意気言ってんじゃねーぞ小娘、テメーはそれで満足かもしれねーけどな、残された奴らを考えてみろ」

 銀八は頭を押さえるさやかにそう説教した。

 

                       ***

 

 元の世界の銀八(銀時)はある依頼で妖刀を探してほしいと頼まれ足取りを追う中で、江戸で辻斬り事件とヘッポッコテロリスト(幼馴染)の失踪が同時に重なった上に妖刀を盗んだ犯人が銀時に因縁のある人斬りと過激派の首領(もう一人の幼馴染)が関わっていた。 

 

 その上、妖刀と称された機械兵器(カラクリ)を造り出したのが依頼人の刀鍛冶と言うオチが待っていた。

 

 事の真相を刀鍛冶の妹から聞いた銀時は人斬りと刀鍛冶を止めるために戦った。

 しかし、暴走した妖刀に体を奪われた人斬りが刀鍛冶の妹を兄が庇って斬られたという何とも言えない結末を思い出していた。

 

 

                       ***

 

 

 「願いは刀だ、心の中にあった願いって名の芯を思い出してみな。 そのためにはまずテメーのソウル何たらの浄化をしな、話はそれからだ」

 銀八は、元の世界のことを思い出しながらさやかにソウルジェムの浄化を促したがーー。

 

 「無理だよ、先生・・・・・・私にあった願いは、心の底でほしかったものは手には・・・・・・」

 そう言いながら、さやかは銀八の下に去っていった。

 その足取りはゆっくりで、今でも追いかけられるが・・・・・・追いかけづらかった。 

  

                      ***

 

 

 

 さやかは、当てもなく電車に乗っていた。

 そんな時、男二人の話声がした。

 

 「言い訳とかさせちゃ駄目っしょ、稼いだぶんはきっちり貢がせないと。ちょっと金持たせとくとすぐクッダラネェことに使っちまうからね」

 「ほんと女は人間扱いしちゃ駄目っすね。犬か何かだと思ってしつけないとね、あいつもそれで喜んでるわけだし、顔殴るぞって脅せばまず大抵は黙りますもんね」

 

 さやかは男二人がホストだと推察できていた。

 ホストの話があまりにも聞くに堪えない話だった。

 さやかは、そのホストのために貢いだお金を払った女のことを犬と言ったことに、怒りが込み上がった。

 同じ人間を犬扱いする言動は、さやかの中の黒い炎に油を注ぐ結果となっていた。

 

 

 「ちょっと油断するとすぐつけ上がって、籍入れたいとか言い出すからさぁ、甘やかすの禁物よ? テメェみてぇなキャバ嬢が十年後も同じ額稼げるかってぇの」

 「捨てる時がさぁ、ほんとウザイっすよね。そのへんショウさん上手いから羨ましいっすよ、俺も見習わないとーーん?」

 先輩ホストの会話の最中、後輩ホストは人影に気が付いた。

 少女、さやかはホスト二人組の前に立っていた。 

 「ねぇその人のことを聞かせてよ」

 「はい?」

 後輩ホストは少女の言っていることが解らなかった。

 いったい何を言っているんだ? とも言いたげな顔でさやかを見ていた。

 

 「いまあんたたちが話していた女の人のこと、もっとよく聞かせてよ」

 ホスト二人は今の話を聞かれたことに気付いて誤魔化そうとした。

 「・・・・・・お嬢ちゃん中学生? 夜遊びは良くないぞ」

 後輩ホストは注意交じりにさやかにそう言ったがーー。

 「そのあんたのことが大事で、喜ばせたくてがんばったんでしょ? あんたにもそれが分かってたんでしょ? なのに犬と同じなの? ありがとうって言わないの? 役に立たなきゃ捨てちゃうの?」

 さやかは聞く耳も持たず問い詰め続けた。

 「何コイツ知り合い?」 

 「いや・・・・・・」

 二人のホストはさやかの様子を見て気味悪がっていた。

 

 当のさやかは唯一の心の支えで有った『人を護る』決意が二人のホストの会話で崩れ去っていた。

 「ねぇこの世界って守る価値あるの? あたし何のために戦ってたの? 教えてよ今すぐあんたが教えてよ・・・・・・でないとあたし・・・・・・」

 

 ホスト二人組を前にそう言いながらさやかの指輪(ソウルジェム)から穢れがあふれ出していた。 

 

                    ***

 

                  深夜 公園

 

 「さやかちゃん・・・・・・どこ?」

 

 夜遅く、まどかはさやかを探すために方々歩き回っていた。

 マンションでさやかの両親から、昨日から戻ってきていないことを知ったため、探し回っていた。

 

 「君も僕のことを恨んでいるのかな?」

 電灯の影から話しかける声がした、まどかは目を凝らして見覚えのある影があった。

 キュゥべえだった。

 「あなたを恨んだら、さやかちゃんを元に戻してくれる?」

 まどかはキュゥベえにそう語りかけた。

 むろん、まどかはキュゥベえに怒りを覚えてはいたが、悲しみが大きかった。

 「無理だ、それは僕の力の及ぶことじゃない」

 

 キュゥべえに対する問いかけに対する答えを聞いたまどかはベンチに座った。

 キュゥベえも、まどかの座ったベンチに飛び上がりまどかの隣に伏せた。

 まどかはキュゥベえに対して自分自身のある疑問をぶつけた。

 「ねぇ・・・・・・いつか言ってた、私がすごい魔法少女になるって話、あれは本当なの?」

 「すごいなんて言うのは控えめな表現だ、君は途方もない魔法少女になるよ、おそらくこの世界で最強の」

 

 キュゥベえの返答にまどかは戸惑いながらも、キュゥベえに聞き続けた。

 「私が引き受けてたら、さやかちゃんは魔法少女にならずに済んだのかな」

 「さやかは彼女の願いを遂げた、その点についてまどかは何の関係もない」

 

 まどかは、さやかの代わりに契約すればこんなことにならずに済んだと内心考えていたが、さやかは自分自身の願いを叶えただけで、まどか自身関係ないのは紛れもない事実だったが、まどかはそれでも疑問が深まっていた。

 

 「・・・・・・どうして私なんかが?」

 今までの経緯でマミから魔法少女の素質があると聞いた時から最初は驚いていた。

 しかし、マミが魔女との戦いで死にかかったときから、魔女の結界で死を迎えたら、現実世界では失踪扱い。

 さやかと杏子の戦いにおいては、ソウルジェムが魔法少女になった人間の魂が物質化したことなどだ。

 今のまどかは魔法少女(自分自身)の素質に疑問を抱き始めていた。

 「僕にもわからない、はっきり言って君が秘めている潜在能力は理論的には有り得ない規模のものだ。誰かに説明してほしいのは僕だって一緒さ、君が力を開放すれば奇跡を起こすどころか、宇宙の法則をねじ曲げることだって可能だろう、なぜ君ひとりだけがそれほどの素質を備えているのか・・・・・・理由はいまだに分からない」

 キュゥべえも同じ疑問を持っていた。

 まどかの潜在能力は宇宙の法則をねじ曲げるほどと言わしめていた。

 

 それでも、まどかは余計に疑問を深まりそのまま吐き出していった。

 「私は・・・・・・自分なんて何の取り柄のない人間だと思っていた。ずっとこのまま誰のためになることも何の役に立つこともできずに、最後まで何となく生きていくだけなのかなって、それは悔しいし寂しいことだけど、でも仕方ないよねって思ってたの」

  

 まどかの疑問を聞いたキュゥべえは淡々と答えた。

 「現実は随分と違ったね、まどか、君が望むなら万能の神にだってなれるかもしれないよ」

 

 キュゥべえの話に耳を傾け続けていたまどかは、ある考えが浮かんでいた。

 いや、考え付いてしまった。

 「私なら・・・・・・キュゥべえにできないことでも私ならできるのかな」

 「というと?」

 キュゥべえはまどかの言葉に耳を傾けた。

 まどかが思いついたことに興味を示していた。

 「私があなたと契約したら、さやかちゃんの体を元に戻せる?」

 それが、まどかの思いついたことだった。

 「その程度きっと造作もないだろうね、その願いは君にとって、魂を差し出すに足るものかい?」

 キュゥべえにそう聞かれ、まどかは戸惑っていた。

 「・・・・・・」

 まどかは考えていた。

 キュゥべえと契約するということは人間をやめることに他ならない。

 魔法少女になるということは、死人になることと同意義のことだった。

 

 しかし、まどかはさやかを見捨てることなど、できるはずがなかった。

 

 「さやかちゃんのためなら・・・・・・いいよ、私魔法少女にーー」

 なる。まどかはキュゥべえにそう言おうとした時だった。

 

 一瞬の出来事だった。

 

 目の前のキュゥべえが穴だらけの肉塊に変わったことにーー。

 そのまま、キュゥべえは死体と成り果てた。

 まどかは何が起こったのかわからなかった。

 「・・・・・・・・・・・・!」

 すると、何か金属の塊を落とした音がした。

 「・・・・・・・・・・・・!」

 振り向くと、見覚えのある少女がそこにいた。

 

 神出気没に現れる魔法少女、ほむらの姿がそこにいた。

 ほむらの足元には拳銃があった。

 おそらく、キュゥべえを撃ったのが足元の拳銃だということはまどかにも理解できていた。

 しかし、まどかはついさっき生きていたキュゥべえをどうやって射殺したのか困惑していた。

 

 まどかはキュゥべえを殺しても『代わり』が現れるのをマミとの出会いの時点ですでに知っていた。

 

 それでも、確かなことがあった。

 「どうして・・・・・・? どうしてほむらちゃんは私を魔法少女にさせたくないの?」

 少なからず、ほむらはどうあってもまどかを魔法少女にはさせたくないという意思は確かだった。

 そんなまどかの疑問にほむらは答えなかった。

 それどころかーー。

 「あなたはーー。なんであなたは・・・・・・いつだってそうやって自分を犠牲にして・・・・・・役に立たないとか意味がないとか・・・・・・勝手に自分を粗末にしないで、あなたを大切に思う人のことも考えて!」

 ほむらはまどかが狼狽えるほどに感情むき出しにして叫んだ。

 「いい加減にしてよ! あなたを失えば、それで悲しむ人がいるってどうしてそれに気づかないの?」

 続けざまに叫んだほむらの顔を見たまどかは言葉を失った。

 「あなたを守ろうとしていた人はどうなるの!?」

 ほむらは、涙を流しながら悲痛な感情むき出しに叫んだあと、膝を落とした。

 「・・・・・・ほむらちゃん・・・・・・?」

 「う・・・・・・っ・・・・・・うっ・・・・・・」

 まどかはほむらに呼びかけたが、ほむらはそのまま泣いていた。

 

 その瞬間、まどかの脳裏に一瞬何かが蘇るような感覚が走った。

 「私たちはどこかで・・・・・・」

 「・・・・・・」

 まどかの言葉にほむらは一瞬反応した。

 「どこかで会ったことがあるの? 私と」

 「・・・・・・それは・・・・・・」

 

 まどかの疑問に、ほむらは答えられなかった。

 

 「・・・・・・ごめん、私さやかちゃんを探さないと」

 まどかはさやかの捜索を優先するとほむらに告げた後に踵を返した。」

 ほむらは立ち去るまどかに気づいてーー。

 「待って・・・・・・美樹さやかはもう・・・・・・」

 「ごめんね」

 「待って! まどか!」

 ほむらはまどかを引き留めようとしても、まどかは止められなかった。

 

 「無駄なことだって知ってるくせに・・・・・・懲りないんだなあ君も」

 ほむらは振り返ると代わりのキュゥべえが現れた。

 

 「代わりはいくらでもいるけど、無意味に潰されるのは困るんだよね。 もったいないじゃないか」

 キュゥべえはそうほむらに言った後、ベンチにあるキュゥべえの死体まで歩いていき、死体を喰らった。

 「きゅっぷい」

 キュゥべえはげっぷを出しながらほむらがいるほうに顔を向けた。

 

 ほむらは、ゆっくりと立ち上がりながら髪をかき分けた。

 

 「君に殺されたのはこれで二度目だけれど、おかげで攻撃の特性も見えてきた。時間操作の魔術だろう? さっきのは」

 「・・・・・・」

 キュゥべえの問いかけにほむらは黙っていた。

 「やっぱりね」

 キュゥべえはほむらの沈黙から予想が当たったと確信した。

 「何となく察しはついていたけれど・・・・・・君はこの時間軸の人間じゃないよね?」

 「・・・・・・お前の正体も企みも私はすべて知ってるわ」

 ほむらの言葉でキュゥべえの仮説は当たっていたことを指していた。

 「なるほどね、だからこんなにしつこく僕の邪魔をするわけだ。そうまでして鹿目まどかの運命を変えたいのかい?」

 キュゥべえはほむらの正体を看破した後にまどかの運命に関しての問いかけをした。

 

 「ええ、絶対にお前の思い通りにはさせないキュゥべえーーいいえ、インキュベーター」 

 

 ほむらはキュゥべえの真の名を呼びながらそう宣言した。

 

 

 

                        ***

 

 

                      駅 ホーム

 

 

 深夜の駅ベンチに座る二つの影があった。

 一人は女子中学生美樹さやか、そしてもう一人は白髪の天然パーマの男坂田銀八だった。

 

 するとそこに、一人の少女が二人に近づいてきた。

 「やっと見つけた」

 「杏子」

 「・・・・・・」

 杏子は銀八の姿を見つけて、さやかの様子が明らかに変だと気が付いた。

 

 銀八は近づいてくる杏子のもとに向かった。

 「お前、よく見つけられたな」

 「あっちこっち探し回ったけどな、魔女に比べればだいぶましさ」

 杏子は銀八にそう話しながらさやかを見やった。

 「ところであいつ、なんかあったのか? それにあんたもなんでこんなところに?」

 「ああ、それな・・・・・・」

 

 銀八はなぜさやかと一緒にいるのかを話した。  

 

                        ***

 

 

 

 遡ること数時間前。

 

 

 「でないとあたし・・・・・・」

 電車の中で二人のホストが自分たちに貢いだホステスの女をけなす話をした時のこと。

 偶然にもさやかがホスト二人の話を聞いてしまったためにキレていた。

 

 さやかの精神は幼馴染(恭介)親友(仁美)が楽しく会話する様子を見てぶつけようのない感情を抱えていた。

 その八つ当たりと取れるような使い魔退治をしていた上に抱えて精神的にも疲労がたまっていた。

 そのためホスト二人の不愉快な会話が聞こえたら今までの黒い感情が今まさに爆発していた。

 

 指輪上のソウルジェムに黒い光、穢れがあふれ出した時だった。

 「おい、見つけたぞ・・・・・・何してんだこんなところで」

 さやかがはっとして、自分を呼ぶ声の主を探した、すると見覚えのある男がいた。

 

 「中坊が夜遊びなんて十年早えーぞ、この野郎」

 銀八だった。

 

 「さぁ、途中の駅で降りるぞ」

 「邪魔しないで、先生私はーー」

 説得に来た銀八にさやかが反論しようとした時だった。

 「いたたたたたたたたた!」

 銀八はさやかの頭部にアイアンクローを喰らわせた。

 「黙れ小娘、深夜は大人の時間だ、子供は家帰って寝な」

 そういいながら、銀八はアイアンクローを喰らわせながら、ホスト二人に顔向けた。

 「スミマセンネ、こいつが迷惑をかけたみたいで」

 銀八はそう言いながら、ホスト二人に向かってそういった。

 

 「い、いや迷惑はかけてないっすよ・・・・・・」

 「あ、ああそうだなそんなには、な・・・・・・」

 銀八のアイアンクローの姿を見たホスト二人はそう言った。

 いや、言うしかなかった。

 特殊な状況下にあるホスト二人はある直感が働いた。

 ーー少女に対して何か言ったら目の前の男は黙っていない、っと。

 

 「そうですか、失礼させてもらいますね・・・・・・」

 銀八はホスト二人にそう言いながらさやかをアイアンクローを喰らわせたまま立ち去ろうとした。

 

 ホスト二人は二人の様子を見ながら胸をなでおろした。

 しかし、銀八はホスト二人にあることを告げた。

 

 「あ、そうそう・・・・・・こんなことテメーらに通じるかわからねーが言っておくぞ」

 ホスト二人はなんだと云わんばかりに体をびくつかせた。

 「俺の知っているホストは、女性を喜ばせるのが仕事だ。そのホストの仕事に誇りを持っている奴もいるんだ、あんまりゲスな会話すると、俺プッツンするからな」

 

 銀八がホスト二人組に何故そう言ったのかがわからなかったが、元の世界(江戸)銀八(銀時)が知ってるホストは顔を捨ててまでももがき、女を喜ばせるという信念を貫き通した(ナンバーワンホスト)のことを、そしてそのナンバーワンホストの母親がその息子を自慢にしていることにーー。

 

 銀八の言動にホスト二人はなにも言わなかった。

 いや、言えなかった。

 

 なぜなら銀八の目が「これ以上何か言えばぶっ潰す」と言わんばかりの目をしていたため、何も言えなかった。

 

 

 

                       *** 

 

 そして、現在、駅ホーム

 

 「話の流れは分かったけど、流石にアイアンクローはないよ」

  杏子は銀八からの事情を聴き及んだが、アイアンクローの流れはさすがにツッコミを入れた。

 それでも、杏子はさやかの精神面の状況が理解できていた。

 「ああでもしないと、人としての根本的なものが壊れちまいそうだったからな、それで俺があいつと一緒にこの駅に降りたってわけだ」

 杏子はベンチに座っているさやかの様子を見ていた。

 「とりあえず、ちょっと話してくるよ。 どこまで出来るかわかんないけど」

 そう言いながら杏子はさやかのもとに向かい、隣に座った。

 

 「アンタさ、いつまで強情張ってるわけ? って言いたいけど、銀八(あいつ)から聞いたよ」

 杏子は銀八から事情を聴いたことをさやかに伝えながらポテトチップの筒状の容器を開けた。

 「・・・・・・悪いね、手間かけさせちゃって」

 杏子はポテトチップス一枚を食べながら、さやかの謝罪を聞いた。

 「・・・・・・なんだよ、そんなこと言うなんてらしくないじゃんかよ」

 杏子はバツが悪そうにそう言った。

 しかし、さやかのこの先の言葉で驚愕することになる。

 

 「別にどうでもよくなっちゃったからね。結局私はいったい何が大切で何を守ろうとしていたのか、もう何もかもわからなくなっちゃった・・・・・・」

 「あっ」

 杏子はさやかの手にあったもの、輝きを失ったソウルジェムがあった。

 しかも、ただ輝きを失たのではなく深い闇の色のようだった。

 

 さやかは杏子に自分の心に抱えたことを吐き出した。

 

 「希望と絶望のバランスは差し引きゼロだって、いつかあんたが言ってたよね・・・・・・今ならそれよく分かるよ、確かにあたしは何人か救いもしたけどさ、だけどそのぶん心には恨みや妬みがたまって・・・・・・憧れていた先輩の信念を真似することもできないし・・・・・・一番大切な友達さえ傷つけて・・・・・・先生の忠告も聞かないで・・・・・・差し出されていた手を振り払って・・・・・・」

 

 「さやかアンタまさかーー」

 穢れをため込んでいる状況を見て、杏子はその先のことは言えなかった。 

 「誰かの幸せを祈ったぶん、他の誰かを呪わずにはいられない。あたしたち魔法少女って、そういう仕組みだったんだね」

 さやかはそう言いながら涙が流れ落ちた。

 「あたしってほんとバカ」  

 その瞬間、さやかの脳裏に過去の憧憬と呪いが渦巻いていた。

 

 零れ落ちた涙がソウルジェムに当たると、とてつもない魔力の本流と衝撃が駅中心で広まった。

 「うわっ!」

 「うおっ!」

 

 杏子と銀八はさやかの中心から発生した衝撃に吹き飛ばされた。

 

 その瞬間、さやかのソウルジェムが粉々に砕け散りグリーフシードに変化した。

 グリーフシードが孵化して魔女が現れる勢いで魂が抜けたさやかの体も吹き飛ばされてしまう。

 

 「う・・・・・・ぐ・・・・・・さ・・・・・・さやかぁぁッ!!」

 杏子は駅の手すりにしがみつきながらもさやかの名を叫んだ。

 銀八も同じく駅の手すりをつかみながらもその様子を見ることしかできなかった。

 

                      ***

 

 

 町の一角で、キュゥべえは駅の様子を観測していた。

 「この国では成長途中の女性のことを少女って呼ぶんだろう? だったらやがて魔女になる君たちのことは、魔法少女って呼ぶべきだよね」

 

 そう言いながら、キュゥべえは駅ホームを監察していた。

 

 

  

 




 はい、第八話まで書かせてもらいました。

 ここから先は原作破壊のが始まります。

 投稿が遅れて申し訳ありません。

 さて、銀時は魔法少女たちを救うことができるのか?

 運命のときは刻一刻と迫ります。


 ご意見、ご感想おお待ちしております。 


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そんなのあたしが許さない編
諦めの悪さは大木の根のごとく


 とうとう、運命の九話まで来ました。

 マミはソウルジェムの秘密を知って心の堤防が爆発しますが、銀八が何とかします。

 では、お楽しみください。


 刹那、魔女の結界が杏子を包み込んだ。

 

 「・・・・・・、これは・・・・・・!?」

 

 杏子は結界内の周りを見ていた。

 結界内は、楽譜のような天井にチェッカーフラックのような床、そして線路状のものが床中に走り、天井を支えていた。

 

 そして、その結界の主である魔女は、甲冑をまとった人魚の姿をしていた。

 「!」

 辺りを見渡していた杏子の目はあることに気付き、一点に集中した。

 「さやか!」

 ソウルジェムを失ったさやかの体が宙を浮いていた。

 しかし、それは何時までも浮いているものではなく、一定のスピードで落下していた。

 しかも、魔女の目の前に落ちながら。

 杏子は瞬時に魔法少女の姿に変身し、魔女に警戒しつつさやかのもとに向かいながら獲物の槍を召喚し急ブレーキをかけた。

 「やっ!」

 その反動を利用してさやかの体を抱きとめた。

 そのあとに、杏子は魔女に向かって叫んだ。

 「何なんだよ・・・・・・テメェいったい何なんだ!? さやかに何しやがったッ!?」

 

 答えが返ってこないと知りつつも、突如その場に現れた魔女に対して叫んだ。

 その瞬間、魔女の攻撃が飛び交った。

 「うっ!」

 杏子が魔女の攻撃に怯んだ時だった。

 「退がって」

 響き渡る声とともに見覚えのある魔法少女が居た。

 ほむらとーー。

 「今のうちに退くぞ、さやかの奴はしっかりと背負っとけ!」

 さやかのソウルジェムがグリーフシードに変化した際に吹き飛んでいた男、銀八だった。

 その瞬間、ほむらの姿が消えた。

 ただそれだけでなく魔女の目の前で手榴弾がさく裂した。

 「な・・・・・・!?」

 杏子は突如として、魔女が爆発したことに驚いていたが、魔女はその一撃で怯んだ程度だが、攻撃を仕掛けようとはしない。

 「お前ら・・・・・・!」

 杏子の前に銀八が駆け寄った。

 「つかまって」

 その後に、またほむらが目の間に現れ、背を向けながら杏子に手を伸ばした。

 「何をーー」

 「いいから!」

 杏子の疑問に答える余裕もなく、ほむらは大きな声で叫んだ。

 「・・・・・・っ!」

 杏子も納得はいかなくとも、言われるがままにほむらの手を掴んだ。

 続いて銀八もほむらの手を掴んだ。

 

 その瞬間、盾の魔道具が発動した。 

 

 すると、時計の針が止まったかのように周りの物が動かなくなった。

 

 「・・・・・・!? こいつは・・・・・・」

 「気を付けて、私の手を放したらあなた達の時間も止まってしまう」

 「時間操作系の魔法かよ・・・・・・いや、今はそんなことどうでもいい! どうなってるんだよ? あの魔女は何なんだよ!?」

 杏子は、ほむらの魔法よりも、杏子が目の前で起こったことの説明をほむらに求めたがーー。

 ほむらは、冷静に告げる。

 「かつて美樹さやかだったモノよ、あなたも見届けたでしょう?」

 ほむらの言葉に杏子はぐうの音も出なかったが、杏子は続けて聞いた。

 「・・・・・・逃げるのか?」

 「イヤなら、その余計な荷物を捨てて、戦うならあの魔女を殺しましょう、できる?」

 「ふざけるなッ!」

 ほむらの案に杏子は反発した。

 「今のあなたは足手まといにしかならない・・・・・・今は逃げることだけを考えなさい」

 「・・・・・・ッ」

 「・・・・・・」

 ほむらは冷酷さを装いながら杏子のことを気遣っていたことに銀八は黙って見ていた。

 

 

 止まることなく走り続け、結界を抜けた。

 

 

 

                        ***

 

 

 

                      見滝原市 路線

  

 

 

 まどかは、マミと合流した後に二人でさやかを捜索していた。

 

 そしていつの間にか電車の路線まで足を進めていた。

 「鹿目さん、大丈夫?」

 マミはまどかに声をかけた。

 マミは別方向でさやかの捜索をして、まどかの連絡を受け取った後に、合流した際まどかの表情は暗いままだった。

 

 「マミさん、ありがとう。 でも大丈夫です、このままさやかちゃんを探しましょう」

 まどかはマミの心遣いに感謝しながら、さやかを探し続けた。

 

 

 

 しかし、残酷な事実が二人に襲い掛かる。

 

 

 二人の目の前に見覚えのある三つの影に気が付いていた。

 

 一人は白髪の天然パーマの男、坂田銀八。

 もう一人いは黒髪のロングヘアーの少女、暁美ほむら。

 そして、赤髪のポニーテールの少女、佐倉杏子だった。

 

 しかし、二人が気が付いたことはそれだけでなかった。

 杏子が抱きかかえている少女の存在に目が釘付けになっていた。

 二人が探していた青髪のショートヘアーの少女、美樹さやかだった。

 

 「さやかちゃん・・・・・・」

 「美樹さん!」

 

 二人は、さやかに呼びかけたが返事がなかった、それどころか反応もなかった。

 

 「さやかちゃん! どうしたの? ねぇッ、ソウルジェムは? さやかちゃんはどうしたの!?」

 「せ、説明してくれないかしら・・・・・・いったい何があったのか・・・・・・」

 まどかはさやかの身に何が起こったのか、三人に説明を求めた。

 むろん、マミも同じだったがうすうす気づいたのか、口がおぼつかなかった。

 

 杏子は二人の顔を背けながら何も言わなかった。

 

 ほむらは少し目を細めた後、マミの顔を見て考えていた。

 ほむらは知っていた。 自分自身に課した使命の際に、マミが何をやったか忘れたわけではなかったーー。

 ソウルジェムの秘密、魔法少女の逃れられない運命(事実)を知った時、マミは錯乱して魔法少女(杏子)を撃ち殺していることをーー。 

 

 だが・・・・・・ここで嘘をついてもいずれは分かることだった。

 

 ほむらは杏子の代わりに真実を告げた。

 

 

 「彼女のソウルジェムはグリーフシードに変化した後、魔女を生んで消滅したわ」

 「「・・・・・・」」

 二人は言葉を失った。

 

 まどかに至っては足を崩してへたり込んだ。

 「・・・・・・嘘だよね?」

 「ちょっと待って・・・・・・美樹さんのソウルジェムが魔女を生み出したって・・・・・・それって・・・・・・つまり美樹さんが・・・・・・魔女になったって・・・・・・!!」

 マミがほむらの言葉を復唱するかのように言葉をつぶやいたとたん、ある真実にたどり着いた。

 いや、たどり着いてしまった。

 「いいえ、美樹さんだけじゃない・・・・・・つまり私たちも・・・・・・!」

 ほむらは、マミが至った真実にうなずいた。

 「ええ、巴マミの考えてることは事実よ、それがソウルジェムの最後の秘密、この宝石が濁りきって黒く染まるとき、私たちはグリーフシードになり魔女として生まれ変わる・・・・・・それが魔法少女になった者の逃れられない運命」

 マミはほむらの言葉に言葉を失った。

 杏子も二人の顔を背けた。

 それがかえって事実だという結果になった。

 

 電車がまどかたちの横に通り過ぎて行った。

 

 「・・・・・・そんな、嘘よ・・・・・・嘘よね? ねえ!?」

 まどかの叫びに二人の少女は何も答えなかった。

 

 「そんな・・・・・・どうして? さやかちゃん魔女から人を守りたいって、正義の味方になりたいって、そう思って魔法少女になったんだよ? なのに・・・・・・」

 まどかはさやかの末路に嘆きうずくまった、しかしほむらは淡々と冷酷に告げた。

 「その祈りに、見合うだけの呪いを背負い込こんだまでのこと、あの子はだれかを救った分だけこれからは誰かを祟りながら生きていく」

 「・・・・・・」

 ほむらがまどかに対して冷酷に告げた時ーー。

 杏子は抱きかかえたさやかの体をまどかのそばに下した。

 「・・・・・・っうっう・・・・・・」

 まどかのすすり泣く姿を見て杏子はほむらに向かい合い胸倉を掴んだ。

 

 「テメェは何様のつもりだ! 事情通ですって自慢したいのか!?」

 杏子はほむらに憤りをぶつけた。

 ほむらは至って冷静に杏子を見ていた。

 その顔を見て杏子の憤りの炎はさらに燃え上がった。

 

 「なんでそう得意げに喋ってられるんだ!? こいつはさやかの・・・・・・! さやかの・・・・・・! 親友なんだぞ・・・・・・!」

  

 杏子は悲しみを帯びた叫びををほむらにぶつけた。

 

 その時、金属音が聞こえた。

 言い争っている二人はもちろん、さやかの体にしがみ付きながら泣くまどかも聞こえていた。

 

 

 

 三人が金属音がする方に首を向けると魔法少女になったマミがほむらと杏子にマスケット銃を向けていた。

 マミは歯をカチカチ鳴らし、マスケット銃の銃身を震わせながらほむらと杏子に言った。

 

 「魔法少女が魔女になるのなら・・・・・・みんな死ぬしかないじゃない! あなたも私も!」

  

 マミは今までの出来事を総合してたった今突き付けられた真実でとうとう心の均衡が崩れ、錯乱した。

 杏子はマミの行動に身動きが取れなかった。

 まどかも同じく、体が動けずじまいだった。

 

 ほむらは、衝撃に事実にマミが混乱することは今までの経験で予期していた。

 ほむらはすぐに魔法少女に変身して、マミを鎮圧する準備に入ろうとした。

 

 その時だったーー。

 

 マミの前に一瞬の隙に現れた白い影がマミのマスケット銃を叩き落とした。

 

 

 「落ち着けや黄色の縦ロール、もっと適当に考えろ」

 マミを止める準備をしたほむらは自分の代わりに止めた影に驚いていた。

 

 「もうちょっと適当に考えろ。 選択肢ならあるじゃねーか・・・・・・」

 杏子はマミの凶行を止めた男の姿に目を離せなかった。

 

 「誰も死ぬ必要のねェ簡単な選択肢がもう一つ」

 まどかは白髪の天然パーマの男の背中を追いながら、男の言葉に耳を傾けた。

 

 「さやかの奴を助けるって選択肢がよ」

 坂田銀八が発した言葉だった。

 

 「た、助けるって・・・・・・!」

 マミは銀八の言葉に耳を疑った。

 目の前の男は、今までに起こった出来事を前に何を言ったのか。

 

 魔法少女の契約が人間を放棄するという秘密を知ってもなおーー。

 

 ソウルジェムが魔法少女の魂が物質化した物だという残酷な秘密を知ってもなおーー。

 

 魔法少女の末路がソウルジェムが穢れをためた果てに呪いを振りまくのが逃れられない運命だったとしてもーー。

 

 白髪の天然パーマ(坂田銀八)は、諦めていなかった。

 

 「そんなことできるのかよ・・・・・・何かあてがあるのか?」

 杏子は銀八に尋ねた、さやかを助ける算段ああるのか。 

 しかし、銀八はーー。

 「んなもんねーよ」

 手段なんか考えていなかった。

 

 「方法もわからないのに無責任なこと・・・・・・」

 ーー言わないで!!

 マミは銀八にそう怒りの言葉の続きを言おうしたがーー。

 「だから落ち着けってキイロール」

 「いやキイロールって何!?」

 マミは銀八に即興のあだ名の突っ込みをすることになった。

 

 「本気なの・・・・・・どう考えても絶望的よ?」

 ほむらは銀八に尋ねた。

 ほむらの経験上、それはあり得ないことだと知っていたからだ。

 しかし、銀八の提案に乗った少女が居た。

 

 「いや・・・・・・希望を捨てるはまだ早いってのは私も同意だ、やれることやらねぇと後悔する、今のあいつは魔女化して間もない、 こっちから呼びかければ人間だった時のことを思い出すかもしれない!」

 杏子は銀八の不確かな希望に僅かな可能性を考え、決意を固めていた。

 

 「だったら・・・・・・いるじゃねーか、とっておきの適任者がよ」

 銀八はその可能性のある少女の顔を見た。

 まどかだった。

 「わ、私・・・・・・?」

 「アンタだけだ、あいつを助けられる可能性があるとすれば」

 杏子はさやかの親友であるまどかに可能性に賭けていた。

 「でも・・・・・・呼びかけるなんて方法で・・・・・・」

 「うだうだ言ってねーでテメーも手伝うんだよキンチョール」

 「キンチョールって何!? 何なのその殺虫剤みたいな名前!? もはや黄色ですらなくなってるわよね!?」

 未だに絶望を引きずっているマミに銀八は元の世界(江戸)のノリでマミにあだ名をつけた。

 当然マミはあだ名をつけられて突っ込んだ。

 

 「・・・・・・」

 

 ほむらは、まどか達を見ていた。

 この流れはあまりにも分が悪すぎていた。

 しかしーー。

 ほむらはこの分の悪い賭けに乗るしかなかった。

 

 (どうせ自分が止めたところで佐倉杏子は美樹さやかを助けようと動くだろう、そして親友であるまどかも動かないはずがない、どちら同じことだ。それに今は巴マミもいる、若干の混乱があるとはいえ彼女もかなりの実力者だ) 

 

 ほむらはまどか達に希望の灯をつけた男、坂田銀八(坂田銀時)の顔を見ていた。

 

 (そして・・・・・・この世界の常識を破るために(絶望を砕くために)存在しているかのごときイレギュラーの坂田銀時の存在、・・・・・・賭けてみる価値はあるのではないのだろうか?)

 

 ほむらは銀八のもとに近づき尋ねた。

 

 「・・・・・・やるのね」

 ほむらの言葉に銀八は頷いた。

 「あいつにこれ以上欠席されて給料引かれても困るんでな、明日には笑って学校へ来てもらうとしようじゃねーか」 

 「いやあなた、教育実習生でしょ?」

 ほむらは銀八の決意を聞きながらも突っ込みを入れた。

  

 

  

 




 二道無限です。

 僕は令和二年10月26日~11月18日まで腸閉塞のため病院に入院してました。

 掲載が遅れてすみません。

 エレファント速報とまどマギフィルムメモリーのちゃんぽん、オリジナルを少々入れました。

 退院したばかりですが、なにとぞ応援よろしくお願いします。

 ご意見ご感想、お待ちしております。


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人を鼓舞するは石ころをけるがごとく

 ついに始まった、さやかの救助、銀時は運命を変えることができるのか?
 
 そして、マミは恐怖を乗り越えることができるのか?

 注目の物語です。


 魔法少女三人と、まどかと銀八は早速、魔女化したさやかを探した。

 

 むろんさやかの体を銀八が背負いながらだった。

 さやかの体の維持は杏子が魔力をかけていた。

 

 魔女を探す方法はいつもと変わらない。地道に足で、結界の反応を探っていた。

 キュゥべえに方法を聞こうと考えたが、今までの出来事とさやかの魔女化の件で聞く気にもならなかった。

 

 マミとほむらは二手に分かれて結界を探すことにした。

 銀八とまどかは杏子と一緒に探すことになった。

 

 そして、魔女の結界は建設中の建物内で反応があった。

 魔力のパターンで魔女化したさやかの物だと杏子が判断した。

 

 魔女化したさやかの反応を見つける前に杏子はまどかに自分の原点を話していた。

 

                  ***

 

 「もしかして、あの魔女を真っ二つにしてやったらさ、中からグリーフシードの代わりに、さやかのソウルジェムがボロッと落ちてくるとかさ・・・・・・そういうもんじゃん、最後に愛と勇気が勝つストーリーってのは、あたしだって・・・・・・考えてみたらそういうのに憧れて魔法少女になったんだよね。 すっかり忘れてたけど、さやかはそれを思い出させてくれた」

 

 杏子は自分の原点を話す際、まどかは真剣な顔で聞いていた。

 杏子は照れて少しそっぽ向きながら話を続けた。

 

 「付き合いきれねぇってんなら無理強いはしない、結構危ない橋わたるわけだしね。

あたしも絶対何があっても守ってやるなんて約束はできねーし」

 「ううん手伝う、手伝わせてほしい」

 杏子の言っていることを理解したうえでまどかはそう答え、手を伸ばした。

 「・・・・・・・・・・・・?」

 杏子はなぜまどかが手を伸ばしたのかわからなかったがーー。

 「私、鹿目まどか」

 「・・・・・・」

 まどかの自己紹介だと理解して、杏子は噴き出して笑った。

 「ぷっ、ったくもう調子くるうよなホント」

 「・・・・・・え?」

 まどかはきょとんとした顔で杏子の顔をみた後、杏子は麩菓子を取り出しながらまどかに手渡しながら自己紹介した。

 

 「佐倉杏子だ、よろしくね」

 まどかは受け取った麩菓子を見ていた。

 「ちなみに、それは万引きした品物じゃないからな、お金払って買ったもんだからな」

 杏子はそうまどかに補足の説明をした。

 その後に銀八がやってきてーー。

 「何してんだ、お前ら行くぞ」

 杏子とまどかはそのまま銀八の後を追った。

 ちなみに、ほむらとの関係を少し聞いていた。

 「友達じゃないの?」とまどかは聞いたがーー。

 

 「違うね・・・・・・まぁ利害の一致っていうか・・・・・・お互い一人じゃ倒せないヤツと戦うためにつるんでるだけさ、あと何日かしたらワルプルギスの夜が来る」

 「ワルプルギス・・・・・・?」

 「超弩級の大型魔女だ、あたしもアイツもたぶんひとりじゃ倒せない、だから共同戦線っていうか・・・・・・まあ要するにそういう仲なのさ」

 まどかが杏子とほむらの関係とワルプルギスの夜のことを聞いた後、結界の反応を見つけ、マミとほむらにテレパシーで連絡した。

 

                   ***

  

 

 さやかとマミ、ほむらは結界前で魔法少女に変身、結界内に突入した。

 

 杏子は後ろにいたまどかに覚悟のほどを聞いた。

 「改めて聞くけど・・・・・・本当に覚悟はいいんだね?」

 「何かもう慣れっこだし、私いつもついてくばっかりで役に立ったこと一度もないけど・・・・・・でもお願い、連れて行って」

 まどかの決意の顔を見て、杏子は少し笑った。

 「・・・・・・ほんと変なヤツだなアンタ」

 「お喋りはそこまでよ、結界に入るわ」

 ほむらは杏子とまどかにそう言って結界に突入することを告げた。

 そして杏子が結界を槍で切り開き入ることになった。

 

 

                   ***

 

 

                  魔女結界内

 

 

 魔女の結界内(さやかが作り出した結界)は左右に何枚ものポスターが張られた通路だった。

 

 通路を歩きながら、まどかは杏子にあることを聞いた。

 「ねぇ、杏子ちゃん・・・・・・」

 「あん?」

 「誰かにばっかり戦わせて自分で何もしない私って・・・・・・やっぱり卑怯なのかな・・・・・・」

 「なんでアンタが魔法少女になるわけさ?」

 「なんでって・・・・・・」

 「まどかあなた、まだ感謝と責任をまだ混同してるの?」

 ほむらはまどかを少し睨みながら口調キツメに聞くがーー。

 「おいほむら、まどかはアタシに聞いてんだ。 アタシが答える」

 杏子はほむらにそう言った後、まどかに向かって答えた。

 「結論から言わせてもらうけど、なめんなよ。 この仕事はね誰にだって務まるもんじゃない」

 「でも・・・・・・」

 杏子はまどかに対して一喝した。

 杏子の言葉にまどかは何かを言おうとしたがーー。

 「毎日美味いモン喰って、幸せ家族に囲まれて、そんな何不自由ない暮らしをしているヤツがさただの気まぐれで魔法少女になろうとするんなら、そんなのあたしが許さない。いの一番にぶっ潰してやるさ」

 「・・・・・・」

 「命を危険に晒すってのはな、そうするしか他に仕方ないヤツだけがやることさ、そうじゃないヤツが首を突っ込むのはただのお遊びだ、おふざけだ」

 「そうなのかな・・・・・・」

 まどかは困惑気味のに杏子にそう尋ねた。

 「アンタだっていつかは否が応でも命懸けで戦わなきゃならない時が来るかもしれない、その時に考えればいいんだよ」

 「・・・・・・うん」

 杏子はそうまどかを肯定して励ましていた。

 すると、銀八は杏子に近づいてーー。

 「おめー存外、いい母ちゃんになるんじゃね?」

 とからかい交じりに、杏子に言った。

 「いや、母ちゃんて何?」

 と困惑気味に杏子は突っ込んだ。

 

 そんなやり取りをしているうちに結界最深部の扉にたどり着いた。

 扉を開くと、左右が水槽のようになったレッドカーペットの廊下の空間だった。

 「・・・・・・」

 杏子とほむらはあたりを警戒しながら結界内を見渡していった。

 「杏子ちゃんはどうして・・・・・・」

 まどかは杏子に何か聞こうとしたがーー。

 「!! 気づかれた! 来るぞ!」 

 「・・・・・・!」

 杏子の言葉にマミとほむら、そして銀時はまどかの前にさやかの体を託して戦闘準備に入った。

  

魔女化したさやかの姿は三つ目に甲冑をまとった人魚の姿をしていた。

 まどかは魔法少女の慣れの果てである魔女の姿に言葉が出なかった。

 マミは魔女の姿を見てーー。

 「これが・・・・・・これが美樹さん・・・・・・?」

 ただ、そうつぶやくことしかできなかった。

 

 「・・・・・・行くぞ、作戦通りにな・・・・・・みんな!」

 「あぁ、ほむら、まどかのこと任せるぜ」

 「ええ、言われなくてもわかってるわ。 そして勝ち取りましょう、美樹さやかを取り戻すという勝利をね」

 

 「いいな、打ち合わせ通りに」

 「う、うん」

 杏子の掛け声でまどかは深呼吸した。 

 

 「さやかちゃん・・・・・・私だよ・・・・・・まどかだよ! ねぇ聞こえてる!? 私の声が分かる!?」

 まどかはさやかを呼びかけた。

 それでも魔女は叫び聞き取れないような咆哮を叫びながら得物の剣を指揮棒のように掲げ、車輪を召喚した。 

 

 最初、魔女の結界の印象は左右水槽のレッドカーペットの廊下の空間だが、よく目を凝らしてみたらいうなればコンサートホールのようなものだった。

 多くの観客席、悲劇的な曲を奏でるバイオリニスト、それらをまとめる指揮者。

 まさに、美樹さやかの根底にあった思いが反映されているというべき空間だった。

 

 それをかき消す、親友を救いたいと願いを込められた呼びかけが響き渡る。

 だが、魔女は聞く耳を持たないかの如く、演奏を声で遮るまどかに対して攻撃を仕掛けた。

 「怯むな! 叫び続けろ!」

 杏子はまどかの前に鎖状の結界を展開した。

 「安心しな、テメーにゃ指一本触れさせやしねぇ」

 銀八はそう言いながら杏子とともにまどかの前に迫る車輪(攻撃)を迎撃した。

 攻撃を迎撃された魔女はさらに数を増やして攻撃を仕掛ける、二人はそれを懸命に受け切っていた。

 「やめて・・・・・・お願い思い出して! こんなことさやかちゃんだって嫌だったはずだよ! さやかちゃん正義の味方になるんでしょ! ねえお願い・・・・・・もとのさやかちゃんに戻って!」

 

 「・・・・・・」

 まどかが魔女(さやか)に呼びかけている中でマミはあまり攻撃していなかった。

 マミの様子に気付いたほむらは呼びかけた。

 「何をしてるの、巴マミ・・・・・・戦いが始まっていることがわからないの?」

 「わ、私は・・・・・・」

 マミの様子を見てほむらは察しがついた。

 「まだ迷っているのね、本当に美樹さやかを助けられるのかどうか・・・・・・」

 「・・・・・・」

 ほむらに聞かれたことにマミは答えなかった。

 いや、その沈黙こそが答えだった。

 「戦う気がないのなら今すぐにここから逃げるべきよ、足手まといになるだけだわ」

 ほむらはマミに対してそう言葉を吐き捨てた。

 事実、マミの前に魔女の攻撃は届いてなかった。

 本能的に魔女はマミを敵認定していないのか目もくれず杏子と銀八、まどかに攻撃が集中していた。

 

 「ぐっ!」

 杏子が魔女の攻撃を喰らい一瞬動きが鈍った。

 まどかの前に展開していた結界も解けていた。

 「杏子ちゃん!?」

 「大丈夫・・・・・・この程度屁でもねぇ・・・・・・」

 しかし、杏子の疲労から、車輪によるダメージは相当なものだった。

 「立ち止まるな! 一発でも通したらやべェぞ!」

 銀八がマミとほむらに叫びながら、車輪の攻撃を防いでいた。

 

 戦い慣れた二人が目に見えて苦戦していた、その要因は魔女の攻撃はまどかに集中していること。

 攻撃事態は木でできた車輪のようなものを作り出し投げつけるという単純なものだった。

 

 だがまどかは何の力もない、ただの一般市民だ。

 一撃でも食らえばひとたまりもない。

 ゆえに二人(杏子と銀八)は魔女の攻撃を『回避』せずにすべて撃ち落とさなければならないのだ。

 さらにあの魔女が美樹さやかである以上、下手な攻撃を仕掛けることもできない。

 どちらが有利か誰の目にも明らかだった。

 

 「やめてッ、もうやめて! さやかちゃん私たちに気付いて!」

 

 まどかは魔女(さやか)に叫び続けた、親友を救うために、何度も、何度も。

 それでも魔女の攻撃がやむこともなく、車輪がまどかを守っている結界に集中してきたときのことだった。

 

 「まどか、下がって」

 不意に爆発が起こり、車輪がすべて撃ち落とされる。

 「スゲーなオイ、どんなチート攻撃だ?」

 銀八はほむらの攻撃に驚きながら感想が出た。

 「いいえ・・・・・・私の攻撃には限度がある、このままのペースで打ち続けたら十分も持たないわ」

 ほむらの魔法は自分以外の時間を止める特性上、魔力量に比例して限度が限られていた。

 ほむらの奥の手を知っていた杏子と銀八は互いの顔を見ながら頷きーー。

 

 「だったらアンタはまだ下がってろ・・・・・・今は私たちで何とかする」

 「本当にヤバくなるまで温存しとけ、いざって時がいつ来るかわからねーぞ」

 ほむらは二人の言葉を聞いて頷き、前線から一歩下がり、まどかのそばに寄り添った。

 「叫び続けて、あなたの言葉が私たちの希望よ」

 「う、うん・・・・・・!」

 ほむらの言葉でまどかは気力を振り絞りながら叫び続けた。

 

 車輪の攻撃を銀八と杏子がさばき続けていた。

 

 「くそ! いい加減しんどくなってきたな・・・・・・!」 

 「動き続けろ! 二秒で切り返せ!」

 「んなことできるわけないだろ! 大体なんだよ二秒って!」

 杏子は銀八の無茶ぶりにツッコミを入れながら車輪をさばき続けていた。

 「うっせーな! とにかく死神の頭蓋骨を野球ボールのようにホームランかますようにやりゃあいんだよ!!」

 「こんな時までわけわかんねぇこと言ってんなよ馬鹿! そもそも死神の頭蓋骨ホームランなんてイメージできるか!!」

 そんなやり取りをしながら、車輪をさばききっていた。

 

 「もうやめてさやかちゃん! こんなのさやかちゃんが望んだことじゃないよ!」

 声が枯れるほど叫んだ、数えきれないほど叫び続けた。

 親友(さやか)に届けと思いを込めて。

 それでも魔女は一向に攻撃の手を休めようとしない、むしろ攻撃は激しさを増しているようにさえ思える。

 「うあっ!」

 「ぐっ!」

 さすがの二人でも追い詰められつつあった、受け切れなかった攻撃がダメージとして蓄積されていく。

 そして疲労がたまればその分動きも衰え、さらに多くの攻撃を受けてしまう・・・・・・最悪の悪循環だった。

 

 「・・・・・・!」

 ほむらは銀八と杏子の状態を見て最終手段を考慮に入れ始める、魔女を爆殺するという最終手段・・・・・・それはさやかを見捨てることを意味していた。

 

 (でも、ここで全滅するくらいなら・・・・・・!)

 ほむらは盾に収納されていた爆弾を取り出し、魔法で時を止めようとしたーー。

 そう思った瞬間だった。

 

 「どうしたよ、そんなモンじゃ俺ァ止められねぇぞ・・・・・・!」

 ほむらは銀八の声を聴いて銀八の方に見やるとーー。

 満身創痍の出血だらけ傷だらけの姿でもなお立っていた。

 しかし、ほむらはが驚いたのはそれだけではなかった。

 

                       ***

 

 

 「あぐっ!」

 杏子は車輪の攻撃を連続でくらい続けていた。

 (はっ・・・・・・いつぞやのお返しかい?)

 「ぐあぁっ!」

 (そういえばあたしたち最初は殺し合う仲だったっけねぇ・・・・・・)

 「うぐッ!」

 杏子はさやかとの最初の関係を想起していながら攻撃を喰らっていた。

 (生温いって・・・・・・あのときあたしがもっとぶちのめしても、あんたは立ち上がってきたじゃんかよ・・・・・・・・・・・・怒ってんだろ? 何もかも許せないんだろ? 分かるよ・・・・・・それで気が済んだら・・・・・・)

 「目ェ覚ましなよ・・・・・・な?」

 さやかに向かってささやかな思いを言った時だった。

 「寝ぼけてる暇があるんなら、結界張ることに専念してテメーも叫び続けてな」

 「え?」

   

 杏子がその声で意識を取り戻した時だった。

 杏子が目にしたものに驚愕した、いや、杏子だけでなかった。

  

 まどかもほむらも、そしてマミも銀八の姿に言葉が出なかった。

 

 なぜなら、杏子に襲い掛かっていた攻撃を身を挺して防いでいた。

 常人ならとっくに倒れていてもおかしくない状態、それでも立ち続ける男にその場にいた全員が驚愕していた。

 

 「あ、アンタ・・・・・・!」

 

                       *** 

 

 

 「銀時・・・・・・あなた・・・・・・!!」

 「ほむらちゃん? 今・・・・・・」

 まどかはほむらが銀八のことを違う名前で呼んだことに困惑したが、ほむら本人は答える余裕がなかった。

 

 マミは溜まらずに銀八に問いかけた。

 「なぜ・・・・・・立ってられるの・・・・・・どうしてそんな傷で・・・・・・!」

 マミから投げかけられた問いに銀八は即答する。

 「気に食わねぇんだよ・・・・・・ダチ公の魂を弄んで食い物にしやがったあの野郎(キュゥべえ)がな」

 

 かつて白夜叉と呼ばれた男の怒り、それは自分にとって大切なものを穢されたことに対するもの。

 

 元の世界(江戸)で万事屋で働いていたツッコミ担当(志村新八)とその姉、お妙が実家の道場で兄貴分と慕った男、尾美 一(おび はじめ)銀河剣星(ビーム兵器)に改造されて戻ってきたこと、半分の魂を奪われ、改造した毘夷夢星人(張本人)によって操られ志村姉弟に永遠の別れをすることになっただけでなく地球を危機にまで追い込んだ時の事を思い出していた。

 

 そして、この世界で同じことが常識として組み込まれことをほむらから聞き、今までの出来事とそしてさやかの魔女化で、怒りが爆発した。

 

 許せなかったのだ、あの明るかった少女の運命がこんな形で掻き回されていることが。

 戦いの日々しかなかった自分とは違う、正しい道を歩んでいた少女の日常が壊されたということが。

 

 「どっかで見てんだろ無限残機、俺たちが無駄な努力をしてるとでも思ってんだろうがな・・・・・・一つ言っとくぜ」

 

 (銀時)は一呼吸おいて真っ直ぐに木刀を構え直し、流れる血を拭いもせずに言い放った。

 「人間の魂を甘く見るんじゃねーぞコノヤロー」

  

 

 

 

 

 

 

 

 

  

   

 

 

  

 

 

  

 

 

 

 

 




 はい、エレファント速報とフィルムメモリーのちゃんぽん、そしてオリジナルを少々混ぜました。

 エレファント速報を原作にしたかった理由が、銀時の後悔とさやかを救うことを諦めないセリフだったのです。

 少し話は変になってしまったかもしれませんが長い目でよろしくお願いします。

 さて、とりあえずは、ラストスパートまで書ききっていきたいです。
 入院した分だけ遅れましたからできる限る早く投稿していきます。
 
 まどかの叫びは届くのか!? マミは立ち直ることができるのか!? 

 杏子と銀時はさやかを救うことができるのか!?

 ご意見ご感想お待ちしております。
 


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奇跡は木の年輪のごとく

 さやか&杏子の物語とうとう佳境へと至りました。
 
 銀時は運命を砕くことができるのか!?

 注目の運命の分岐点です。


 「人間の魂を甘く見るんじゃねーぞコノヤロー」

 

 銀八は血を拭わず木刀をまっすぐ構え直してそういった時のことだった。

 

 「・・・・・・」

 マミは、ボロボロになりながら血を拭わずに立ち続け諦めない男の姿に驚愕しながら、今までのことを思い返していた。

 

 自分の始まりは死にたくないという思いで魔法少女の契約を交わし、孤独の恐怖に怯え、涙を流しながら戦っていた。

 

 そして、魔法少女(同業者)に徒党を組んで戦おうと誘っては断られ、徒党を組めたとしても、途中で上手くいかなかったことが常だった。

 

 それは孤独から抜け出したかった言い訳でしか無かった。

 

 --自分はいったい何をやっているのだろうか? 魔法少女でもない普通の人間の教師()があれ程までに戦っているというのに。

 

 --自分は何が出来たのだろうか? 絶望を抱えこんで魔女になってしまった美樹さん(後輩)を救うために。

 

 --少なくともそれは怯えたり、最初から諦めて勝負を放棄することじゃない。

 

 --ましてや自分を含めた魔法少女全員を道連れに死ぬことなどでは決してない。

 

 --心は決まった。

 

 「・・・・・・私も戦うわ」

 

「!」

 ほむらはマミが戦意を取り戻したことに驚いた。

 「へっ・・・・・・ようやく重い腰を上げやがったか重鎮さん」

 銀時はからかい交じりにマミの復活を喜んだ。

 「ごめんなさい・・・・・・それに」

 

 ――ようやくわかったのだ、今の私に出来ること・・・・・・自分がすべきことが。

 「後輩を助けてあげるのは・・・・・・先輩の役目だもの!」

 ――今度こそ言える、浮かれた気分から発する言葉ではなく、本当の意味で・・・・・・。

 ――もう何も怖くない。

 

 マミが復帰ののち前線に加わってからは戦況は大きく変わった。

 彼女は得意の魔法銃(マスケット銃)を使った遠距離からの連射銃撃で魔女の攻撃をすべて撃ち落とせる。

 加えて、魔法銃も魔力が続く限りは弾切れすることなく無限に具現化することも可能だ。

 魔女の仕掛ける車輪での攻撃をさばくのに、これほど適した存在はほかにいないだろう。

 

 攻撃が防がれる状況を見て魔女は断末魔のような咆哮を上げながら、遠距離の攻撃を完全に無力化されていると悟ったらしく、今度は手にしている巨大な剣で切りかかってきた。

 「!」

 

 マミが魔女が振り下ろした剣を回避しようとした時、二つの影が受け止める。

 

 「・・・・・・残念だったな」

 「得物を使って俺たちと戦おうなんざ百年早ェぞ」

 「二人とも・・・・・・!」

 マミに振り下ろされた剣は銀八の木刀と杏子の槍に防がれた。

 「やるじゃねーかキンチョール、やればできる子じゃねーか」

 「フフ・・・・・・これでも戦いの経験はそこそこあるの、あとキンチョールは止めて」

 マミは自分の経験を自慢気に言いながら銀八に突っ込みを入れた。

 

 

 魔女の戦いが始まってからマミの復活による戦況が変わるまでかなりの時間がたっていた。

 だが一向に魔女の様子に変化はない。

 「さ、さやかちゃん・・・・・・ケホッ・・・・・・!」

 何度も叫んでいたせいでまどかの喉は潰れかけていた、それでもさやかの名前を叫び続ける。

 何度も、何度も、魔女になった今でもまどかは親友である美樹さやかのことを心から信頼していた。

 必ず自分たちに気が付いてくれるはずだと。

 

 そしてーー。

 

 「聞き分けがないにもほどがあるぜ・・・・・・さやか! アンタ・・・・・・信じてるって言ってたじゃないか! この力で人を幸せにできるって! 自分の選んだ道に後悔なんかしないって!」

 

 「美樹さん! 私たちの声が聞こえないの!?」

 

 「美樹さやか、あなたの願いは何だったのか・・・・・・忘れたわけじゃないでしょう!」

 

 まどかだけではない、今となってはその場にいる全員が声を張り上げて呼びかけている。

 それでも・・・・・・魔女の攻撃がやむ気配はない。

 

 (頼むよ神様・・・・・・こんな人生だったんだせめて一度ぐらい幸せな夢を見させてよ・・・・・・)

 

 杏子が心の中で呟いたそれは、過酷な運命と背負った彼女にしてはあまりにもささやかな願いだった。

 そんな中だったーー。

 「・・・・・・分かってんだよ、テメーがそう簡単に戻って来やしねェことなんざ」

 

 息を切らしつつ、言葉を紡ぐ銀八を全員で見つめる、一体何を言っているのか分からず聞き耳を立てた。

 「テメーは前におかしなことを抜かしやがったからな、自分にはもう戻る場所がねェだのなんだのと、だから俺たちがどんだけテメーの名前を叫ぼうが聞く耳も持たねェわけだ・・・・・・」

 銀時は笑いながら言葉を紡いだ。

 只可笑しかったのだ、単純なことに気が付いて

いなかったさやかのことが。

 銀八は魔女に向かって真っ直ぐな目を向けながら、言葉を続けた。

 「さやか、テメーが何を勘違いしているかは知らねーが・・・・・・戻る場所があるじゃねーか、笑っちまうほど近くに、手を伸ばせば簡単に届く距離によ・・・・・・」

 それが銀八(銀時)なりの答え、後悔と悲しみで行き場を失ったさやかを救うための答えだった。

 

 「今は俺たちがテメーの居場所だ・・・・・・戻ってきやがれ! さやかァァァァァァァ!」

 

 

 

                     ***

 

 

 

 さやかは自分の意識や距離感そして体も把握できない暗い場所にいた。

 

 ――ここはどこだろう、私は何をやっているんだろう?

 

 さやかは周りを見渡そうとするがどこまでも辺りが暗い空間だった。

 只あるのは、後悔と輝きだけしか思い出せなかった。

 

 そしてかつて思いを寄せた幼馴染対する恋慕、在りし感動を夢見ていた、それ以外何も感じなかった。

 

 ――暗い、何も見えない、何も聞こえない、何も感じない。

 

 自分が今いる空間がさやかの存在を消していた。

 そんな時、かすかに自分を呼ぶ声がした。

 

 それは少しずつはっきりと聞こえてきた。

 

 ――声が聞こえた気がする、暗闇を照らす明るい光りを秘めた声が。

 

 『さやかちゃん!』

 

 ――最初に聞こえたのは・・・・・・親友の声だった。

 

 ――でも、名前が思い出せない。

   

 『あなたの願いはなんだったか・・・・・・忘れたわけではないでしょう!』

 

 ――次に聞こえたのは・・・・・・転校生?・・・・・・だったかな? 

 

 ――顔がぼやけて思い出せない。

 

 『美樹さん! 私たちの声が聞こえないの!?』

 

 ――今のは・・・・・・私が憧れた先輩の声・・・・・・。

 

 顔と声ははっきりと思い出せた、でも名前が浮かばなかった。

 

 『アンタ・・・・・・信じてるって言ってたじゃないか! この力で人を幸せにできるって! 自分の選んだ道に後悔はしないって!』

 

 ――これは・・・・・・最初は私といがみ合ってたあの子だよね。 

 

 ――顔がハッキリと覚えていた。

 

 さやかは自分を呼ぶ声の主たちを思い出していた。

 

 ――・・・・・・そっか、みんな来てくれたんだね、ありがとう。

 ――でも・・・・・・ごめん、私・・・・・・もう戻れないよ・・・・・・あんなに迷惑かけて・・・・・・自分勝手で・・・・・・もう私に居場所なんて・・・・・・。

 

 さやかは自分の名を呼んでくれる声の主たちに感謝しつつも、後悔と申し訳なさから、暗闇に消えようとした。

 

 ――その時だった。

 

 

 『今は俺たちがテメーの居場所だ』

 その声はハッキリと響き渡り、銀色の光が見えたような気がした。

 

 ――――っ!

 

 ――――今の声は・・・・・・。

 

 『戻ってきやがれ! さやかァァァァァァァァ!!』

 

 ――――先生。

 

 声の主は先生と呼ぶ男の声、白髪の天然パーマで死んだ魚の目をしただらしなさが印象深い男の顔を思い出した時だった。

 

 刹那、鈍い銀色の光が現れ、さやかの意識を包み込んだ。

 そして、美樹さやかだったころの思い、それが次第に広がって、過ぎ去りし日々が記憶のひもで貫かれていき。

 

 親友と憧れの先輩、転校生と最初にいがみ合ったけど気にかけてくれた少女の顔をはっきりと思い出した。

 『せめて、さやかちゃんのそばにいられたらって・・・・・・私・・・・・・何もできないから』

 ――親友(まどか)の声。

 『そんなことをしてもあなたの得になることなんて一つもないわ』

 ―ー転校生の声

 『あんたも私と同じ間違いから始まった、そして今も苦しみ続けてる・・・・・・見てられないんだよ、そんなの』

 ―ー気にかけてくれたあの子。

 『その道を歩む途中で・・・・・・決して折れたりしちゃダメよ』

 ――憧れの先輩(マミさん)の声

 『そんなにテメーを卑下するもんじゃねーよ』

 ――坂田先生の声。

 

 さやかは自分の名を呼んでくれる声の主の顔を思い出した時悟った。

 ――どうして今まで気が付かなかったんだろう、今までの私は・・・・・・みんなからずっと守られていたことに。

 

 そして、さやかを包み込んだ闇の空間から銀色の光が包み込み、意識と体の輪郭を取り戻した。

 

 

                      ***

 

 

  

 ふと、あれだけ激しかった魔女の攻撃が止まった。

 突然のことに全員があっけにとられる。

 「何だアイツ・・・・・・腹でも壊しやがったのか? ん?」

 銀八は見当違いの見解をした時だった。

 『撃って・・・・・・!』

 銀八達の頭に声が響いた、それは聞き覚えのある少女の声だった。

 「さやかちゃん!」

 『これ以上みんなを傷つけるなんて私にはできない、だから・・・・・・!』

 魔法少女たちは驚愕した。

 キュゥべえが干渉していない純然たる奇跡が今まさに起こったのだ。

 その声を聴いたとき杏子の口からは喜びの声でなくーー。

 「ふざけんな! そんなことしたらアンタがどうなるか分かってんのかよ!」

 危険性の指摘と焦りの声だった。

 ただでさえ、魔女がさやかの意識を取り戻したこと自体があり得ない状況、それだけでも奇跡としか呼びようのないことだった。

 しかし、杏子の言った通り、万に一つの可能性で魔女を元の魔法少女に戻せるのか判らない上、最悪さやかの意識は消滅してしまう上に魔女として死んでしまうかもしれない。

 一か八かの最終手段だった。

 

 杏子自身諦めきれないで挑んださやかを元に戻すこと手前で緊張が走った。

 それでもーー。

 『危険なのは分かってる・・・・・・でも、最期はみんなに賭けてみたいの』

 意識を取り戻したさやかは覚悟を固めた上に確かめたかったのだ。

 

 ――本当に私はただの魔女になってしまったのか・・・・・・その答えを知るために。

 

 『散々迷惑をかけちゃったけど、あと一度だけ・・・・・・私のわがままを聞いてくれないかな?』

 「・・・・・・」

 さやかのテレパシーを受けて銀八は少し思案した後、銀八はさやかにあることを聞いた。

 「一つだけ確認するぜ、明日学校休みやがったら今学期の評定は全部二だからな」

 『・・・・・・約束する・・・・・・必ず・・・・・・学校行くから!』

 

 これでどうなるかは想像できなくなった。

 だが、少なくともその力強い言葉からさやかの決意を感じ取れる。

 「上等じゃねーか・・・・・・俺もテメーの魂に賭けるぜ」

 次の瞬間、銀八は木刀を片手に魔女へと飛び掛かり、光のごとき一閃を魔女の顔面に食らわせた。

 かつてない断末魔を上げながら魔女は倒れこんだ。

 

 それと同時に周りを構成する結界も崩壊し始める。

 「結界が消えてるということは・・・・・・魔女は・・・・・・!」

 ほむらは結界の崩壊を確認したと魔女の死体に目を向けた。

 「さ、さやかちゃんは・・・・・・さやかちゃんはどうなったの!?」

 「わからねぇ・・・・・・けど、今の私たちには信じることしか出来ないだろ」

 「美樹さん・・・・・・!」

 まどかはうろたえながら心配し、杏子とマミは祈るしかなかった。

 「・・・・・・」

 銀八は魔女の死体を見ながら消滅を見守っていた。

 すると、魔女の体からグリーフシードが放出される、結界が完全に消え去ったのはそれと同時だ。

 「グリーフ・・・・・・シード・・・・・・!」

 ほむらはグリーフシードを見て言葉が出なかった。

 期待していた、心を取り戻したさやかの魂が再びソウルジェムとなって現れるのではないかと。

 だが、現実に現れたのは何の変哲もない・・・・・・ただ一つのグリーフシード。

 「嘘だろ・・・・・・こんなのって・・・・・・!」

 すべての望みが絶たれる・・・・・・まさに絶望の空気が辺りに満ちた瞬間ーー魔女が落としたグリーフシードが青く輝いた。

 「!?」

 「こ、これは・・・・・・!」

 グリーフシードが光を放つなど、数多くの経験がある彼女たちでも初めて見る光景だった。

 徐々に強さを増していく光、目もあけていられないほどの閃光が走り全員が一瞬目をそらす。

 再び開けたその時、グリーフシードは、粉々に砕け散ったはずのソウルジェムへと変化していた。

 ほむらはすぐさまソウルジェムを拾い上げて確かめた。

 

 「オイ、どうなんだ!? それは・・・・・・さやかの・・・・・・」

 「ええ、間違いなく、美樹さやかのソウルジェムよ」

 杏子の問いにほむらは頷き肯定した。

 ほむらはさやかのソウルジェムをすぐにまどかに手渡した。

 

 まどかはさやかの体の前に近づき傍までしゃがみ込んだ。

 「ソウルジェムを持たせれば・・・・・・いいんだよね、ほむらちゃん」

 まどかはほむらにそう聞いた。

 「通常ならね・・・・・・でも今回ばかりは分からないわ」

 ほむらは頷きながらも、困惑していた。

 「な、なんでだよ・・・・・・鉄橋の時はちゃんと意識を取り戻したじゃないか!」

 杏子は跨道橋でさやかと二度目の戦いの時、ソウルジェムの真実の際、さやかがソウルジェム喪失の際ほむらが回収してさやかの手に触れさせ、息を吹き返したのを思い出していたがーー。

 「あれは肉体的に彼女が死んでまもなかったから・・・・・・でも今回は少し時間がたっているでしょう?」

 ほむらが言ったようにさやかが息を吹き返したのは戻ってこれる距離だったことと、全走力で戻ってこれたことだった。

 「・・・・・・」

 「さやかちゃん・・・・・・!」

 マミは祈るように見つめた。

 目を覚ましてと願いを込めて、まどかはソウルジェムをさやかの手を握らせた。

 「・・・・・・・・・・・・んっ」

 ピクリと指が動き、閉じられていた瞼が徐々にあけられていく。

 「あ・・・・・・あ・・・・・!」

 まどかは息を吹き返したさやかを見て涙を流してた。 

 「・・・・・・まどか」

 「さやかちゃん!!」 

 まどかはさやかに抱き着いた。

 それは短いようで、果てしなく長い道のりだった、少女たちの再会。

 「今の今まで眠りこけやがったのかオイ、どんだけ爆睡してんだテメーは」

 「・・・・・・先生」

 あきれ気味な声ながら笑った顔で迎えた銀八、さやかは銀八の顔を見た後ーー。

 「よう、無事で何よりじゃないか」

 杏子の勝気さとうれしさが混ざった笑みがーー。

 「美樹さん・・・・・・あなたが無事で・・・・・・本当に良かった!」

 マミの今にも泣きそうな、喜びが満ちた笑みがーー。

 「ええ、私も二人と同じ気持ちよ」

 一見無表情に感じる顔のほむらの声は少し温かみのある声でさやかを迎えた。

 「・・・・・・」

 さやかはなんと言えば良いか分からなかった、自分のせいであれだけ迷惑をかけ続けたのだ。

 命の恩人と叫んでも差し支えない、それだけ大きな貸しを作ってしまった。

 「・・・・・・・・・・・・みんな、その・・・・・ごめ・・・・・・」

 ――・・・・・・とりあえず謝ろう。 

 そう思い、謝罪の言葉を口にしようとした瞬間ーー。

 「さーて、さやかの奴が休んでた理由も分かったことだし・・・・・・帰ーるぞ、お前ら」

 「!」

 さやかは困惑した、さやかの顔を見た銀八はあっけらかんとした顔で事もなく告げた。

 「何言ってんだ、テメーは少し疲れてたせいで今の今まで寝込んでいた・・・・・・それを俺たち全員でたたき起こしに来た、ただそんだけだろうが」

 さやかは驚いた顔で銀八を見ていた。

 銀八の言葉を聞いたほむらは銀八の意図に気付いた。

 「・・・・・・そうね、ただそれだけのこと・・・・・・迷惑なんてかけられてないわ」

 「フフ・・・・・・そうですね」

 「でも良かった、これでさやかちゃんも明日から学校に来れるね!」

 ほむらに続いてマミとまどかは優しく告げた。

 さやかはなにも言うことができなかった。

 ――この仲間たちは私を助けるために必死で戦っただけじゃなく私を助けた後でさえ気を使ってくれている。

 今感じている感謝の意を伝えるにふさわしい日本語をさやかは知らなかった。

 「・・・・・・・・・・・・」

 「?」

 気が付けば、杏子はすぐそばに立っていた、何か自分に言い含めるつもりだろうか?

 さやかはそんな想像をしていたのだが、杏子の口から出た言葉はーー

 「そういえば・・・・・・私、アンタにちゃんと自己紹介ってしてなかったよな?」

 そういいながら、杏子は麩菓子をポケットから取り出し、さやかに差し出した。

 「私は佐倉杏子、よろしくね」

 さやかは差し出された麩菓子に驚いていた、杏子は次のことを告げた。

 「ちなみに菓子はあの白髪から受け取った金で買ったやつだよ、万引きで手に入れた奴じゃないからな」 

 さやかにそう補足説明した杏子。

 その杏子の様子を見たさやかは嬉し涙を流しながらーー。

 「私は・・・・・・み・・・・・・美樹さやか!」

 今までは一人で笑いながら照れ臭そうに、もう一人は泣きながら感謝の意を込めてーー。

 さやかは杏子に差し出された麩菓子を受け取った。

 

 「・・・・・・ひとまずは、めでたしめでたしってか・・・・・・」

 その様子を見ると銀八()は口元を笑みで浮かべながらその場を後にしようとした。

 

 その時、だった。

 「おいアンタ」

 杏子に呼び止められた。

 銀八は後ろに振り返らず、足を止めた。  

  

 「アンタのおかげで、さやかを助け出せた、ありがとな」

 杏子は照れ臭そうにそう言った。

 

 銀八は振り返らずに右手を後ろに捻りながら手を振って後にした。

 

 杏子は銀八の背中を見て本当に伝えたかったことを心の中に告げた。

 (坂田銀八、アンタのおかげで、かつて失った大切なもの、拾えたよ)

 

 杏子たちに続いてさやかとまどか、マミも銀八の背中を見送った。

 「私は坂田先生に付き添って行くわ、彼一番重傷だから」

 

 そう言って、ほむらは銀八の後を追った。

 

 残った四人は話し合った末マミのマンションに泊まることにした。

 

 夜遅くに帰ってきたまどかとさやかの家族に心配をかけないためと、余計な詮索を避けるための手段だった。

 

 まどかとさやかはスマホで連絡した後、それぞれの家族から雷が落ちたのは言うまでもなかった。

 

 

 

 




 取り合えず、さやかを救いだせました。
 
 ほとんど原作元のエレファント速報をベースにオリジナルをちょくちょく入れました。

 出来る限り辻褄合わせが出来たか不安ですが、ラストまで書かせてもらいました。

 次に掲載は何故さやかを助け出せたのかを説明掲載を書く予定です。

 ご意見ご感想、お待ちしています。


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特別篇 プチ設定
三年z組銀八先生特別編 in 見滝原 



 前回、さやかを元に戻した流れの中で、どうやって元に戻したのか、その補足説明を書かせてもらいます。

 少なくとも、多少強引でもこんな理由であれば、少しは納得できるのではないのかと思いますし、最終章のカギになると思います。

 それでは、特別編をお楽しみください。


 

 

 銀八は見滝原中学校の電子黒板の前に立っていた。

 「はーい、まどか☆マギカ交差伝 宇宙一馬鹿な侍で江戸から見知らぬ間に見滝原に転移してしまい魔法少女に関わった教師坂田銀八こと坂田銀時です」

 銀八はけだるそうにそう自己紹介したあと、どこからかはがきを取り出した。

 

 「え~ペンネーム『まどマギハッピーエンドが良い』さんからのお手紙です」

 銀八ははがきに贈られたペンネーム名を読み上げながら、裏面に記載された手紙の内容を読み上げた。

 

 「いつもまどか☆マギカ交差伝 宇宙一馬鹿な侍を読ませてもらっています、そこで最新話での疑問なのですが、何故さやかは魔女から魔法少女に元に戻ることが出来たのでしょうか? ご都合主義にもさすがに限界があるのでは無いかという意見です」

 銀八ははがきの内容を読み上げ『まどマギの世界』で起こるはずのないさやかの魔女から魔法少女へのもとに戻す流れの仕組みが気になっていたとペンネームの質問が送られていた。

 

 「えーその質問に関してはまず坂田銀時という存在がまず一つ目です。 銀時は元の世界『江戸』で万事屋を営んで依頼で仕事をこなしたり事件に巻き込まれたりしていた中で依頼人と事件の中心人物を救っています、しかしそれは銀時一人だけの力ではなく周りの人物が銀時という人間の背中を見て醜さも美しさを見たり突っ込んだりして付き合っていく中で変わってきたので依頼人を救う力に変えていっています」

 

 銀八はどこからか取り出した設定資料の紙の束を読み上げた。

 

 「二つ目が銀時がいることでのまどマギ世界の影響です。まどマギ本編を見たことがあるならご存じだと思いますが、まどマギの世界はキュゥべえの契約で魔法少女になった少女たちが絶望によって魔女になってしまう仕組みで、その際の希望から絶望への相転移による膨大なエネルギーで宇宙の寿命を延ばしている世界です」

 

 銀八は資料を目で追いながら読み続けた。

 その際、電子黒板が説明補足のための図が表示された。

 

 「その際、ソウルジェムはグリーフシードに変わり魔法少女は死んでしまいます、ですが、銀時のいる世界は天人襲来の際、侍衰退と引き換えに齎された技術で急速に発展した世界でアルタナが根幹の世界、宇宙の寿命なんてわからない世界です」

 

 銀八の説明に続くようにまどマギの本来の時間軸の図と銀魂の世界の図が表示された。

 

 「まどマギの世界に違う歴史(時間)と価値観、そしてその世界の人間を護り抜いた上に救い出した銀時が魔法少女たちと出会ったら少なくともまどか達は内面の変化の影響で生存率が上がったり運命が変わったりしています、つまり銀時の存在が因果律を変質しているわけです」

 

 

 銀八は次の資料をめくりだした。

 

 

 「そして三つ目に、銀八の存在自体が因果律を変質させた決定的な証拠は銀八(銀時)が持っている木刀『妖刀星砕き』こと洞爺湖を使っているということです」

 

 銀八は腰に差していた木刀を抜き出しカメラ前に見せた。

 

 「洞爺湖こと星砕きは通販で買うことができる金剛樹という樹齢一万年の大木で作られた木刀という点です。通販で買えるのは銀時の世界でありふれた意味での木刀ですが、まどマギ世界においては存在しない植物であるため、まどマギの宇宙時間さえ銀時が持っているだけで変質しています。何より銀時は木刀が壊れても買い替えるぐらい愛用していますから、いわば、銀時が存在するだけで因果律の変質をもたらす力を発揮しているということです」

 

 「最後に、その因果律の変質を可能にしたのがこの世界の感情エネルギーです」

 

 銀八が次のページをめくり、電子黒板もその図を表示した。

 

 「銀時自身、お天気戦争編で暗転丸を倒した際、結野衆と巴厘野衆が総力を結集して受け取った力をその身に受けた影響がまどマギの世界で銀時自身の因果律が引き寄せられ、魔法少女三人とまどかの感情エネルギーの片鱗がさやかへの呼びかけの際銀時の因果の率変質の力に作用され、魔女内でのさやかの精神が鈍い銀色に光に包まれた形で現れたというのが最大の理由です」

 

 銀時は資料のページをめくりながら最後を締めくくった。

 

 「皆様、さやかを魔女から魔法少女に戻した事でまどマギの世界は因果律の変革が起こります、ほむら自身が課した『使命』によって繰り返された因果の集約が大きなカギへと変わります、そしてまどかの内面的な変化も世界の変化に関わっていきます、これからもまどか☆マギカ交差伝 宇宙一馬鹿な侍をよろしくお願いします」

 

 

 銀八は最後にあるツッコミを入れた。

 

 「おい作者、これ小説じゃねェかァァァァァァ! 電子黒板の説明なんて見れるわけねーだろうがァァァァァァ!!」

 

 といつものように、作者に突っ込みで終わった。

 

 

 

 





 どうでしたでしょか、今回一風変わった回ですが、前回さやかが如何やって魔女から魔法少女に戻ったのかの一連の説明が必要だと判断したため書かせてもらいました。

 原作物とのエレファント速報を読んで、さやかを救う流れがご都合主義すぎるのが作品に飽きるのでは無いかと判断したため書かせてもらいました。

 ちなみに教えて銀八先生の流れで書かせてもらいましたが、オリジナルほどでは無いかもしれませんがこれが精いっぱいです。

 これからも、よろしくお願いします。

 さて次回は、ほむらの過去編+ほむらから見た銀時の背中を書きます。

 今回は大長編かもしれませんのでよろしくお願いします。

 ご意見ご感想お待ちしております。 


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もう誰にも頼らない編
友と呼べる人は奇麗な花を見つけるがごとく


 前回、さやかの運命が変わった話ですが、最終章の目にほむらの物語にプラスしてほむらから見た銀八(銀時)の話を入れ、長編になるともいますのでよろしくお願いします。


 それでは、本編である暁美ほむらのジェネシスからよろしく。


 見滝原中学校に一人の転校生がやってきた。

 

 「はーい、それじゃ自己紹介行ってみよー」

 早乙女和子は転校生にそう促されーー。

 「あ、あの、あ、あ・・・・・・暁美ほ、ほむら・・・・・・です、その・・・・・・どうか、よよよろしくお願いします」

 眼鏡に三つ編みの少女、暁美ほむらが緊張のあまり気弱そうに自己紹介した。

 

 「暁美さんは心臓の病気でずっと入院していたの、久しぶりの学校だから色々と戸惑うことも多いでしょう、みんな助けてあげてね」

 早乙女はほむらの事情を概ね生徒たちに話した後ホームルールを終えた。

 

 

 

 

                      ***

 

 

 休み時間、転校生定番の質問攻めがほむらに降りかかった。

 

 「暁美さんって前はどんな学校だったの?」

 「部活とかやってた? 運動系? 文科系?」

 「すごい長い髪だよね~毎朝編むの大変じゃない?」

 

 ほむらはすっかりと気圧されていた。

 「あの・・・・・・わ、私、その・・・・・・」

 ほむらは質問に答えようにも困惑していた。

 

 そんな時助け船を出したのはーー

 「暁美さん、保健室行かなきゃいけないんでしょ? 場所分かる?」

 桃色の髪を両側で束ねた少女だった。

 「え、いいえ・・・・・・」

 「じゃあ、案内してあげる、私保健委員なんだ」

 そうほむらに言った少女はほむらの周りに集まったクラスメイトにーー。

 「みんなごめんね、暁美さんって休み時間には保健室でお薬飲まないといけないの」

 そうクラスメイトに謝罪しながらほむらの質問攻めを止めた。

 

 「・・・・・・」

 ほむらは質問攻めから解放され胸をなでおろした。

 

 

 

                      ***

 

 

 助け船を出してくれた上、保健室に案内してくれる少女に緊張しながらついていくほむら。

 そんなほむらに少女は気さくに話しかけた。

 「ごめんね、みんな悪気はないんだけど・・・・・・転校生なんて珍しいからはしゃいじゃって」

 「いえその・・・・・・ありがとうございます」

 ほむらはクラスメイトの少女に礼を言った。

 「そんな緊張しなくていいよ、クラスメイトなんだから」

 少女は微笑みながらほむらの方に振り向きながら自己紹介をした。 

 「私、鹿目まどか、まどかって呼んで」

 ほむらは自己紹介の上呼び捨てでいいと言う少女(まどか)に戸惑う。

 「え、そんな・・・・・・」

 「いいって、だからみんなも私もほむらちゃんて呼んでいいかな?」

 「・・・・・・私、その、あんまり名前で呼ばれたことなくて・・・・・・すごく変な名前だし・・・・・・」

 ほむらは戸惑いながら名前が変であることをこぼした。

 「え~? そんなことないよ、なんかさ燃え上がれ~って感じでカッコいいと思うな」

 まどかはほむらの名前の響きを気に入っていた。

 「・・・・・・名前負け・・・・・・してます」

 そう自信なさげにまどかに話したほむら、しかしーー。

 「そんなのもったいないよぉ、せっかく素敵な名前なんだからほむらちゃんもカッコよくなっちゃえばいいんだよ」

 まどかは無邪気に笑いながらほむらを励ました。

 「・・・・・・」

 ほむらはまどかの笑顔を見て、元気を出した。

 

 只、その道のりは険しかった。

 

 

 長期間休学したため、勉強がほかのクラスメイトより遅れ、体育においては準備体操で貧血を起こしていた。

 

                       ***

 

 

 帰り道、ほむらは今日の出来事で自分自身に嫌気がさしていた。

 『ほむらちゃんもカッコよくなっちゃえばいいんだよ』

 励ましてくれたまどかの声が頭の中にこだました。

 「無理だよ・・・・・・何にもできない・・・・・・」

 ほむらは落ち込みながらそうつぶやいた。

 (人に迷惑ばっかりかけて恥かいて・・・・・・どうしてなの? 私これからもずっとこのままなの?)

 ほむらは内心の不安が頭によぎった。

 

 『だったらいっそ死んだほうがいいよね』

 不意にどこからか声が聞こえた、ほむらはその言葉に誘導させられるように聞き入ってしまう。

 (死んだほうがいいのかな)

 『そう死んじゃえばいいんだよ』

 (死んでしまえば・・・・・・)

 ほむらは声に気付いた瞬間、辺りを見渡すと見たこのない景色の場所にいた。

 「・・・・・・・・・・・・え?」

 明らかに異常だった。

 「ど、どこなのここ・・・・・・」

 辺りの景色を見渡した瞬間背後から凱旋門らしきものが地面から生えるように現れた。

 「あ・・・・・・! な・・・・・・何? 何なの・・・・・・!?」

 背後に現れた凱旋門を見たほむらは門を見ると門から異形の存在が現れた。

 「! いやっ・・・・・・! あっ!」

 ほむらは本能的に逃げようとするも足がつまずいて転んでしまった。

 後ろを振り返れば異形の存在がほむらに迫っていた。

 「いっ・・・・・・いやあああっ!」

 ほむらの状況は絶体絶命だった。

 

 その時だった。

 

 異形の存在が突如爆発した。

 しかしそれだけにとどまらず、異形の群れが黄色い糸状のもので拘束されていった。

 

 「・・・・・・!」

 何が起こっているのかわからない、しかしほむらの前に二人組の少女が現れた。

 

 「間一髪ってところね」

 「もう大丈夫だよほむらちゃん!」

 

 黄色い髪の少女は知らなかったが、もう一人の少女はほむらはすぐに気づいた。

 名前のことで励ましてくれた少女、まどかだった。

 「あ、あなたたちは・・・・・・」

 呆然としていたほむらは背後から声が聞こえた。

 「彼女たちは魔法少女、魔女を狩る物さ」

 「いきなり秘密がばれちゃったね・・・・・・クラスのみんなには内緒だよっ」

 まどかはほむらにそう言いながら、マミとの同時攻撃で異形の群れは沈んだ。

 魔法少女二人が異形を倒す勇姿(非日常的な光景と正反対の少女の姿)をほむらは心を奪われていた。

 

 

 

                       ***

 

 

 

 

 ほむらはその後、まどかの魔法少女の先輩、巴マミの部屋に招待され、お茶会を開いた。

 

 「鹿目さん・・・・・・いつもあんなのと戦ってるんですか?」

 ほむらはまどかにそう尋ねた。

 「ん―いつもって・・・・・・そりゃマミさんはベテランだけど私なんて先週キュゥべえと契約したばっかりだし・・・・・・」

 ほむらの質問にそう答えたまどか、その後にマミがーー。

 「でも今日の戦い方、以前よりずっと上手かったわよ、鹿目さん」

 「えへへへ」

 まどかをほめた後ほめられた本人は照れた。

 その様子を見てほむらはある疑問をぶつけた。

 「・・・・・・平気なんですか? 怖くないんですか?」 

 「平気ってことはないし怖かったりするけれど、魔女をやっつければそれだけ大勢の人が助けるわけだし、やり甲斐はあるよね」

 ほむらの質問にそう答えたまどか、ほむらはまどかに憧れを抱いた。

 そんなまどかにマミはある期待を抱いていた。

 「鹿目さんにはワルプルギスの夜が来る前に、がんばって一人前になっておいてもらわないとね」

 

 ワルプルギスの夜、それがほむらを魔法少女の運命へと誘うことになるとはこの時、ほむら本人は気付かなかった。

 

                       ***

 

 

 

 ワルプルギスの夜が見滝原に襲来した後は、街は暗黒の世界へと変わり果ててしまった。

 「・・・・・・じゃあ、行ってくるね」

 まどかは決意を固めてワルプルギスの夜に立ち向かおうとしていた。

 「そんな・・・・・・巴さん死んじゃったのに・・・・・・」

 ほむらの言った通りまどかの足元にはマミの体が横たわっていた。

 ワルプルギスの夜に戦いを挑み、散っていった。

 「だからだよ、もうワルプルギスの夜を止められるのは私だけしかいないから」

 たったひとり残されて、それでもなお戦い続けようとするまどか。

 「無理よ! ひとりだけであんなのに勝てっこない! 鹿目さんまで死んじゃうよ!」 

 ほむらはまどかを引き留めようと叫ぶ。

 「それでも私は魔法少女だから、みんなのこと守らなきゃいけないから」

 まどかは、ワルプルギスの夜に立ち向かう覚悟を固めていた。

 「・・・・・・ねぇ逃げようよ・・・・・・だって仕方ないよ、誰も鹿目さんを恨んだりしないよ・・・・・・」

 「・・・・・・」

 ほむらはそう言いながらまどかを思い留まらせようとした。

 ほむらの思いを聞いたまどかは後ろにいたほむらに振り向きーー。

 「ほむらちゃん私ね・・・・・・あなたと友達になれて嬉しかった、あなたが魔女に襲われたとき間に合って・・・・・・今でもそれが自慢なの、だから魔法少女になって本当に良かったって、そう思うんだ」

 そうほむらに思いを伝えた。

 「・・・・・・鹿目さん・・・・・・」

 ほむらはまどかの言葉に聞くことしかできなかった。

 「さよならほむらちゃん、元気でね」

 まどかはほむらに別れを告げワルプルギスに立ち向かっていった。

 「・・・・・・嫌ぁ! 行かないで! 鹿目さぁぁぁぁぁぁん!」

 まどかの後ろ姿を見ながら、ほむらは泣き叫んだ。

 

 結果、まどかはワルプルギスに敗れ、散った。

 ほむらは、膝をついたまま、泣き崩れた。

 「どうして・・・・・・死んじゃうって分かってたのに・・・・・・私なんか助けるよりも・・・・・・あなたには生きててほしかったのに・・・・・・」

 ほむらは、まどかが生きることを望んだ、その言葉にキュゥベえは問いかけた。

 「その言葉は本当かい? 暁美ほむら、君はその祈りのために魂を懸けられるかい? 戦いのさだめを受け入れてまで、叶えたい望みがあるのなら、僕が力になってあげられるよ」

 「・・・・・・あなたと契約すれば、どんな願いもかなえられるの?」

 ほむらはキュゥべえに問いかけた。

 「そうとも、君にはその資格がありそうだ。教えてごらん、君はその祈りでソウルジェムを輝かせるのかい?」

 キュゥべえはほむらの問いの答え、ほむらの祈りに問いかけた。

 「・・・・・・私はーー」

 ほむらは一瞬言葉を止め、涙を拭った後、力強くーー。

 「鹿目さんとの出会いをやり直したい! 彼女に守られる私じゃなくて・・・・・・彼女を守る私になりたい!」

 キュゥべえに願いを伝えた後、ほむらの胸に痛みが走った。

 「うっ! あぅぅっ!」

 ほむらの体からソウルジェムが生まれた。

 「契約は成立だ、君の祈りはエントロピーを凌駕した、さあ解き放ってごらん、その新しい力を」

 キュゥベえに促され、ほむらはソウルジェムをつかみ取った瞬間、ほむらの祈りから生まれた魔法が発動した。

 

                       ***

 

 

 

 目を見開くと、ほむらは病院のベッドに横たわっていた。

 「・・・・・・ここは・・・・・・」

 ほむらは起き上がると、病院のカレンダーを確認した。

 「・・・・・・? 私、まだ・・・・・・・・・・・・退院していない?」

 カレンダーを確認した後、まだ退院前であること、であることを把握した。

 「!」

 そして、ほむらは手に平にある確たる証拠を確認した。

 「・・・・・・夢じゃ・・・・・・ない・・・・・・!?」

 手に平には、祈りで生まれた宝石(魔法少女になった証)、ソウルジェムが輝いていた。

 

 

                      ***

 

 

                     見滝原中学校

 

 「はーいそれじゃ、自己紹介いってみよー」

 早乙女に自己紹介をう促されたほむらはーー。

 「暁美ほむらですっ! よろしくお願いします!」

 明るい声で自己紹介した。

 「暁美さんは心臓の病気でずっと・・・・・・」

 早乙女がほむらの事情を説明を話そうとした途端、ほむらはまどかの存在を確認した後。

 「鹿目さん! 私も魔法少女になったんだよ! これからも一緒にがんばろうね!」

 まどかの手を握りそう大胆発言するほむら、周りのクラスメイトはどよめきながら、まどかはどう反応していいか分からなかった。

 

                      ***

 

 

 放課後、ほむらはまどかとマミとともに自分の魔法を把握してもらうことにした。

 発動した魔法は『時間停止』の魔法だということが分かり、マミも強力だが使い方の問題を指摘、ほむらは攻撃手段が最初の課題だった。

 

 その夜、ほむらはインターネットで「腹腹時計オンライン」という爆弾づくりのサイトで爆弾を作り上げた。

 

                      ***

 

 

 ほむらは、マミとまどかとともに魔女退治していた。

 魔女はセーラー服と六本腕の魔女で結界内は洗濯物に使う紐が蜘蛛の糸状に張り巡らされた空間だった。

 「マミさん! 今だよ!」

 「オッケー! やっ! はっ!」

 魔女が召喚した使い魔をまどかが迎撃し、マミが魔法で生み出したリボンを編み上げ、橋を造り上げた。

 「暁美さん、お願い!」

 「はい!」

 マミはほむらに合図を送り、時間停止の魔法が発動した。

 「はぁっはぁっ・・・・・・はぁっはぁっ・・・・・・」

 リボンの橋を走りながらほむらは爆弾のスイッチを押しーー。

 「えいっ!」 

 魔女に投げた。

 そのあと、魔女はほむらの爆弾によって爆発四散した。

 「やったぁ!」

 ほむらは初めて魔女を倒したことに喜んだ。

 「すごいよほむらちゃん!」

 まどかはほむらに駆け寄り、抱き着きながら喜びを分かち合った。

 「お見事ね」

 マミはほむらの戦果を褒めた。

 ほむらは、今の時間を大事にかみしめていた。

 

 しかし、運命の歯車は残酷な事実へとほむらを誘う

 

                    ***

 

 

 ワルプルギスの夜との戦いに勝利した後、まどかは一命をとりとめた。

 ほむらの願いは叶ったはずだった。

 ワルプルギスの夜との戦いで生き延びたまどかがもがき苦しむ姿を見るまではーー。

 「うぅぅ・・・・・・ぅぅぅっ・・・・・・!」 

 「どうしたの!? ねぇ鹿目さんしっかりして!」

 苦しむまどかにほむらは呼びかけ続けた。

 「ど・・・・・・どうして・・・・・・! うっ! ・・・・・・ああああああっ!!」

 

 まどかの手の平に握られていたソウルジェムはグリーフシードに変化していた、そしてーー。

 「何・・・・・・?」

 グリーフシードから黒い靄があふれ、形を成して魔女が生まれた。

 「! どうして・・・・・・なんで・・・・・・こんな・・・・・・!」

 ほむらは困惑した、魔女の正体が魔法少女の慣れの果てであることを未だ呑み込めずにいた。 

 

 そして、時間がまた巻き戻った。

 

                     ***

 

 

 ほむらは、時間を巻き戻した、そして病院に目覚めた。

 

 「伝えなきゃ・・・・・・みんなキュゥべえに騙されてる!」

 

 ほむらは悲劇の連鎖を断ち切ろうと決意した。

 

 そして、それがほむらの長い長い、過酷な戦いへと向かっていく。

 

 

 




 今回はここまでです、ひとまずはほむらの戦いの始まりをいか省略で書きました。
 この後も、ほむらの心境の変化と銀時の出会いの第一印象を書かせてもらいますので、こうご期待。


 ご意見、ご感想をお待ちしております。


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真実は当事者しか分からない

 今回もテレビ本編+オリジナルが入ります。

 ほむらのプロローグに戻り、ほむら視点で銀八(銀時)という人間がどう映って見えたか、書きまくります。


 「伝えなきゃ・・・・・・みんなキュゥべえに騙されてる!」

 

 ほむらは悲劇の連鎖を断ち切るために自分の知ってる魔法少女(まどかとマミ)に自分が見たことを伝える決意を固めた。

 

 しかし、ほむらが見聞きした物を、他人が信じるなど、無理な話だった。

 

                 ***

 

 

 工場内で、マミたちに魔法少女の真実を伝えたほむら、だがーー。

 「・・・・・・あのさぁ、キュゥべえがそんな嘘ついていったい何の得があるわけ?」

 青髪のショートカットの少女、美樹さやかが食って掛かった。

 「それは・・・・・・」

 ほむらは言いよどんだが、さやかは懐疑的に言った。

 「あたしたちに妙なこと吹き込んで仲間割れでもさせたいの? まさかあんた本当はあの杏子とかいうヤツとグルなんじゃないでしょうね」

 「ち、違うわ!」

 ほむらは仲間割れの意図はないと否定した。

 「さやかちゃん・・・・・・それこそ仲間割れだよ」

 まどかはさやかを宥めた、しかしさやかはほむらにある魔女退治でほむらが犯したミスを咎めた。

 「どっちにしろ・・・・・・あたしはこの子とチームくむの反対だわ、いきなり目の前で爆発とかちょっと勘弁してほしいんだよね」

 「暁美さんには爆弾以外の武器ってないのかしら?」

 マミはさやかの指摘に一理あるとしてほむらに尋ねた。

 ここで、戦う手段に関しての課題が今の状況で見つかった。

 

 「・・・・・・ちょっと考えてみます・・・・・・」

 ほむらもひとまず新しい手段を見つけることに同意した。

 この空気では反論するわけにはいかないという二重の判断がほむらの望むところではなかった。

 

 そのあと、ほむらは暴力団事務所から銃火器を盗み出す形で調達した。

 

 

 それでも、残酷な真実が牙を向くのは避けられなかった。

 

 

 

                  ***

 

 

 

 さやかが魔女化してまどか達に襲い掛かった。

 ほむらが恐れた事態が現実になってしまった。

 「テメェいったい何なんだ!? さやかに何をしやがったッ!?」

 「さやかちゃんやめて! こんなことさやかちゃんだって嫌だったはずだよ!」

 魔女化したさやかに呼びかけ、訴える杏子とまどか。

 しかし、声は届かなかった。

 「あッ!」

 魔女が繰り出した車輪を喰らったまどかは倒れた、それでも使い魔を巻き込むほどの攻撃がまどかに襲い掛かった。

 ほむらは時間停止の魔法を発動させ、まどかに迫った車輪をベレッタ92で撃ち落とすために弾丸を撃ちだし、時間固定で弾丸を設置した。

 そして最後に、爆弾を起動させーー。

 「・・・・・・ごめん美樹さん」

 魔女はほむらの爆弾で吹き飛んだ。

 

 魔女の結界は元の空間に戻ったが、さやかが魔女化した状況に絶望の空気が包み込んだ。

 

 「さやか・・・・・・! ・・・・・・チクショウ・・・・・・こんなことって!」

 「酷いよ・・・・・・こんなのあんまりだよ・・・・・・」

 「・・・・・・っ!」

 三人の魔法少女はやり切れなさと、悲しみを抱いていた時、最悪な状況が起こった。

 

 「? えっ!?」

 突如ほむらがマミのリボンによって拘束された。

 

 それに驚く間もなく杏子のソウルジェムは砕かれ絶命した。

 

 杏子の亡骸を見たほむらはマミの方を見ていた、マミはマスケット銃をほむらに向けていた。

 「巴さん!?」

 「ソウルジェムが魔女を生むなら・・・・・・みんな死ぬしかないじゃない! あなたも私も!」

 

 マミはほむらたちのソウルジェムを砕いた後、自害するつもりだった。

 

 しかし、マミの凶行を止めるためにーー。

 

 「――――!」

 「・・・・・・・・・・・・」

 

 まどかがマミのソウルジェムを撃ち抜いた。

 「・・・・・・嫌だ・・・・・・もう嫌だよ・・・・・・こんなの・・・・・・」

 まどかはあまりの出来事に泣き崩れた。

 「・・・・・・大丈夫だよ・・・・・・二人でがんばろう、一緒にワルプルギスの夜を倒そう」

 ほむらは絶望の淵にいるまどかに寄り添そった。

 「・・・・・・うん・・・・・・」

 まどかは気を持ち直して頷いた、ほむらは涙を浮かべながらも微笑み頷いた。

 

 そのあと、二人はワルプルギスの夜を撃退した、しかし力尽き二人のソウルジェムに穢れがたまり、今にも魔女化してもおかしくなかった。

 

 

 ほむらは二人で魔女になろうかとまどかに語ったが、まどかは隠し持っていたグリーフシードをほむらのソウルジェムにかざした。

 

 そして、ほむらはまどかにある願いを託された。

 

 「キュゥべえに騙される前のバカな私を・・・・・・助けてあげてくれないかな」

 「約束するわ! 絶対にあなたを救ってみせる! 何度繰り返すことになっても必ずあなたを守ってみせる!」

 

 ほむらはまどかにそう誓った。

 

 まどかは安堵するが、運命(魔女化)はそれを許さなかった。

 

 「・・・・・・っ・・・・・・もうひとつ頼んでいい?」

 まどかのもう一つの頼み、ほむらは状況判断で悟った。

 「私、魔女にはなりたくない・・・・・・嫌なことも悲しいこともあったけど、守りたいものだってたくさんこの世界にはあったから・・・・・・」

 「まどかぁっ!」

 ほむらは大切な友達の名を叫んだ。

 「ほむらちゃん・・・・・・やっと名前で呼んでくれたね・・・・・・嬉しいな・・・・・・」

 

 「ううっ・・・・・・っ・・・・・・っ・・・・・・ぐ・・・・・・うう・・・・・」

 

 まどかの最後の笑みを見て最後の頼み(介錯)を引き受けたほむらは魔法少女に変身し盾から銃を取り出し、まどかのソウルジェムを撃ち砕いた。

 

 

 

                      ***

 

 

 

 時間を巻き戻したほむらは、強い決意が険しい表情になって表れ始めた。

 魔法で、自分の視力を矯正した。

 

 (誰も未来を信じない、誰も未来を受け止められない)

 

 ほむらは、さやかが魔法少女の真実を信じられず、マミが絶望のあまりに起こした凶行で導き出した結論。

 

 (だったら私はーー)

 

 ほむらは一人で戦う決意のもと、三つ編みのリボンをほどきロングヘアーに変えた。

 

 

 

                      ***

 

 

 

 ほむらは、キュゥベえを始末した後。

 

 「・・・・・・だ、誰?」

 

 まどかは自室の窓が突然開き、戸惑った。

 「まどか・・・・・・あなたに奇跡を約束して取り入ろうとするものが現れても・・・・・・決して言いなりになっては駄目」

 

 ほむらに出会う前のまどかにそう警告した。

 「・・・・・・え? あの・・・・・・」

 まどかは何者かの警告にただ呆然とするばかりだった。

 

 そのあと、ほむらは軍基地から強力な銃火器を調達した(盗み出した)

 

 (もう誰にも頼らない、誰にもわかってもらう必要もない、もうまどかには戦わせない、すべての魔女は私一人で片付ける、そして今度こそワルプルギスの夜をこの手で・・・・・・)

 

 

 

                      ***

 

 

 

 ほむらは見滝原に潜む魔女たちを一人で一掃し続けた。

 

 そしてワルプルギスの夜が降臨した日、単身ワルプルギスに挑むも歯が立たなかった。

 

 そして、まどかはキュゥべえと契約してしまった。

 

 ほむらの叫びはまどかには届かなかった。

 

 まどかはワルプルギスの夜を一撃で倒してしまい、最期に最悪の魔女になってしまった。

 

 そしてまた、ほむらは時間逆行の魔法を使い、運命に挑む。

 

 

                      ***

 

 

 

 ほむらはまた退院した後、見滝原中学校に転校してきた。

 

 ほむらは変わらずに自己紹介してまどかの姿を確認したら、変わらずにまどかを魔法少女の運命から遠ざけようとした。

 

 変わらずに繰り返す転校と日常、しかしーー。

 

 ほむらにも予測のつかないことがこれから起こり始めた。

 

 最初の変化は、ある男の出会いだった。

 

 早乙女からあることを聞いた。

 

 教育実習の教師が早乙女の受け持つ教室に来ることだった。

 

 ほむらは内心驚いていたが、不審がられずに対応しようとした。

 

 ほむらは教育実習の教師の顔を見た、特徴は白髪の天然パーマに死んだ魚のような眼をした二十代後半の男だった、服装は白衣を身にまといネクタイはきちんと締めていなかった。

 そして、一番目に留まったのは腰に木刀を差していたことだった。

 

 (なんで木刀なんかさしてるのかしら? 取りあえず不審がられないように)

 

 「初めまして、ここに転校してきた、暁美ほむらといいます」

 ほむらは教育実習の教師に自己紹介した。

 

 「は、初めまして・・・・・・坂田、銀八です」

 

 (歯切れが悪いわね)

 それが、ほむらが抱いた目の前の男(白髪の天然パーマの男)の第一印象だった。

 

 そして、早乙女に促され教室に入っていき、いつものように自己紹介をした。

 まどかの顔を確認しながらーー。

 

 

                      ***

 

 

 休み時間、ほむらは最初の時と同じように、質問攻めにあっていた。

 

 「ごめんなさい、なんだか緊張しすぎたみたいで気分が・・・・・・保健室に行かせてもらえるかしら」

 

 ただ違っていたのは、当たり障りのない言葉で質問攻めをかわせるようになっていた。

 

 「じゃああたしが案内してあげる」

 「いえ、おかまいなく、係の人にお願いしますわ」

 

 ほむらはクラスメイトの厚意を丁寧に断りながらまどかの席に向かった。

 「鹿目まどかさん、あなたがこのクラスの保険係よね」

 「えっ・・・・・・えっとあの・・・・・・」

 まどかは戸惑っていた。

 「連れて行ってもらえる? 保健室」

 ほむらは、まどかと話す口実で教室から離れた。

 

 

 保健室に向かう中でまどかが質問した。

 「私が保険係ってどうして?」

 「・・・・・・早乙女先生に聞いたの」

 「そっそうなんだ、えっと保健室は・・・・・・」

 まどかが保健室の場所を言い切る前にほむらは左側の通路に曲がった。

 「こっちよね」

 「えっ! う、うんそうなんだけど、いや、だからその・・・・・・もしかして、場所知ってるのかなって」

 「・・・・・・」

 ほむらは最初の時間軸で場所は把握していたため、不自然に感じたのだろうと考えた。

 それでも、まどかに警告とあることを確かめるために、二人きりになりたかった。

 「あ・・・・・・暁美さん?」

 「ほむらでいいわ」

 「あの、その、か、変わった名前だよね」

 「・・・・・・」

 ほむらはまどかの話を聞きながら自覚していく。

 「いや、だから変な意味じゃなくて、その・・・・・・かっこいいなぁって思ってたりして」

 「・・・・・・」

 時間逆行の影響で過ごした時間、気持ちもずれていく自覚を噛みしめる結果にーー。

 

 ほむらは背後にいたまどかに向きを変えた。

 まどかは、向きを変えたほむらに一瞬驚いていた。

 「鹿目まどか、あなたはーー自分の人生が貴いと思う? 友達や家族を大切にしてる?」

 「わっ私は大切だよ、家族や友達もみんな大好きでとても大事な人たちだよ」

 ほむらはもう一つ自覚する、目の前のまどかと、今までのまどかの心優しい性格をーー。

 

 「本当に?」 

 「本当だよ。嘘なわけないよ」

 ほむらはもう一度確認するようにまどかに問いかけた、まどか本人は断言した。

 

 「そう・・・・・・それがもし本当なら、今とは違う自分になろうだなんて絶対に思わないことね、さもなければすべてを失うことになる」

 「えっ!」

 

 ほむらは何度もまどかの運命を変えようとした結果、魔女化を何度も見ていた。

 そして、まどかのソウルジェムを砕いたこともあったため、訳も分からない言い回しになろうとも、言わずにいられなかった。

 

 「あなたは鹿目まどかのままでいればいい、今まで通りにこれからも」

 

 そう言いながらほむらは、まどかに背を向けて保健室に向かった。

 

 「・・・・・・」 

 ほむらの背を見ながらまどかは困惑して、立ち尽くしていた。 

 

 

 

                      *** 

 

 

 

 

 そして放課後、ほむらはキュゥベえを狩り続けた。

 狩り続けても、違うキュゥベえは現れ続けた。

 

 そして、キュゥべえはまどかに助けを求め、まどかはキュゥベえに出会ってしまった。

 

 ほむらは、まどかに警告した。

 

 「そいつから離れて」

 「ほむら・・・・・・ちゃん」

 まどかはほむらの様子に戸惑いながらも、自分の意見を伝えた。

 

 「だってこの子ケガしてる、だ、だめだよひどいことしないで」

 「あなたには関係ない」

 「だってこの子私を呼んでた、聞こえたもん『助けて』って」

 「・・・・・・そう」

 「・・・・・・」

 ほむらはまどかとのやり取りですぐにキュゥべえがまどかにテレパシーを飛ばしたことを把握した。

 

 ほむらはどうにかしてまどかをキュゥべえから引きはがすか考えていた時だったーー。

 「!」

 突如として煙幕がまどかとほむらを包んだ。

 

 「まどかこっち」

 「さやかちゃん」

 

 声の主はさやかでその手には消火器が握られていた。

 どうやら消火器の中の消火剤を煙幕代わりにしたようだった。

 

 「いくよ!」

 「!」

 

 さやかはまどかの手を掴み、その場から立ち去ろうとしていた。

 ほむらは、煙幕を魔力で散らした。

 「・・・・・・」

 そのころには二人の姿はその場にはなかった。

 「!!」

 そのあと、魔女の結界がショッピングモールの改装中のフロアの辺りを包んでいた。

 「!」

 徐々に異界化していく景色はほむら自身痛手だった。

 「・・・・・・こんな時に」

 

                      ***

 

 

 それからしばらくして、魔女の結界は解けていた。

 ほむらは、まどかとさやかを捜索した後、ある魔法少女の姿を見た。

 巴マミだった。

 どうやら、ほむらの気配に気付いていた。

 「魔女は逃げたわ、仕留めたいなら、すぐに追いかけなさい、今回はあなたに譲ってあげる」

 マミは穏やかな口調でほむらに向かって言い放った。

 「私が用があるのは・・・・・・」

 ほむらは、魔女に用などなくキュゥベえを始末しようとしたのだがーー。

 「飲み込みが悪いのね、見逃してあげるって言ってるの」

 キュゥべえを信じているマミは笑みを浮かべてもほむらを牽制していた。

 

 その時だったーー。

 

 「ちょっとまてぇぇぇぇ!! 俺らを置いてけぼりにして話進めんじゃねぇぇぇぇ!!」

 

 ほむらはまだ気付いていなかった、結界に巻き込まれたのはまどかとさやかだけではなかったということをーー。

 

 「お前らの格好が何で、あの空間が何で、あの生き物が何なのか、そしてーー」

 

 今日、見滝原の転校の際、教育実習の教師がこの場にいることにーー。

 

 「そいつが抱えている生き物が何なのか説明しやがれ!! 猫か兎かわかんねーぞコノヤロー!!」

 

 そして、白髪の天然パーマの男(坂田銀八)がまどかが抱えているキュゥベえが見えていることに、驚愕することになるとは思いもよらなかった。

 

 

 

 

 

 





 今回は、ここまでです、ここから先は、ほむらから見た銀八の印象を書きます。

 原作まどマギでほむらの過去(前半)を最初に書いた後、銀八の登場までが今回の物語でした。

 今度は、自分が書いた小説(作品)を読み返しながら、ほむらのリアクションをお楽しみください。

 ご意見、ご感想をお待ちしております。


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ありえない出会いは天変地異のごとく

 この話は、原作一話から三話までの間にほむらと銀八がマミの説得の話の流れを書こうと思ったので書かせてもらいました。


 ほむらは驚いていた、キュゥベえが見える男なんて聞いたことがなかった。

 

 (どういうことなの!? キュゥベえが見えるなんてありえないわ!!)

 

 ほむらは困惑していた、キュゥべえが見えるのは今この場にいる自分自身とマミ、そして魔法少女の素質のあるまどかとさやかだけのはずだった。

 

 「あ、あなたキュゥべえが見えるの!?」

 「あぁ、なんか見えちゃいけねえのか?」

 

 マミの質問に銀八は疑問があるように聞き返していた。

 (本当に見えているの!? 普通の人間、ましてや男がキュゥべえが見えるなんてありえないわ・・・・・・)

 

そうこうしてるうちに、話が進んでいった。

 

 銀八は今の状況を説明してもらうために、ほむらの同席を求めた。

 マミは銀八がほむらのクラスで教育実習に来ていることに驚いていた。

 

 (巴マミ、あなたのリアクションは間違っていないわ)

 

 ほむらは内心そうつぶやいていた。

 

 しばらくして、キュゥべえの治療はマミの手によって完了していた。

 

 気が付いたキュゥべえは真っ先にまどかとさやかに契約を持ち掛けていた。

 そこでもーー。

 

 「ちょっとまてぇぇぇぇぇ!! 何話進めてんだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 銀八の叫びがまた響いた。

 

 キュゥべえも銀八が見えていることに、驚愕していた。

 

 マミもキュゥべえが見えている状況に困惑していることを話したのだが、キュゥベえ本人も想定してなかった状況だった。

 

 その後、銀八はキュゥベえに魔法少女の契約に関して聞いた中で銀八の表情は疑いの顔を表していた。

 (この男、キュゥべえの契約条件に変な質問を交えたわねってか魔法オカマって・・・・・・)

 

 銀八の言った『魔法オカマ』の単語に困惑したほむら。

 

 それでも、キュゥべえを排除する考えは変わらなかった。

 

 しかし、考えは今は実行せず、銀八の会話に聞き入っていた。

 

 マミが自己紹介を終えた後、魔法少女のことをまどかとさやかが聞き入った中で、魔女退治の見学を提案した。

 

 ほむらは、それを許さずーー。

 

 「分かってるの? あなたは無関係な一般人を危険に巻き込んでる」

 マミの提案を阻止しようとした。

 しかし、マミはキュゥべえに選ばれたことを理由に考えを変えなかった。

 

 その後に、まどかの『魔法少女の素質」の話へと変わってしまい、一触即発の流れになってしまう。

 

 そんな時だったーー。

 

 「おいお前ら、『殺し合い』(喧嘩)はやめろ、騒ぎがでかくなるぞ・・・・・・」

 

 白髪の天然パーマが止めに入っていた。

 

 それでもほむらとマミは臨戦態勢(魔法少女に変身)を整えてしまっていた。

 

 今でも一触即発の中でまどかが止めようと叫んだ時、ほむらとマミが動いたーー。

 

 だがしかし、そこで思いのよらない出来事が起こった。

 

 『キュゥべえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』

 

 さやかの叫び声が響いた、マミと共に何が起こったのか声の主であるさやかの方に顔を向けるとーー。

 

 キュゥベえの頭に木刀が刺さっているというありえない出来事だった。

 

 (え・・・・・・なんなの? この状況!? キュゥベえの頭に木刀が刺さってる!? 一体どんな状況でそんな・・・・・・!?)

 

 ほむらは困惑した中で木刀を見ているとそれは銀八が腰に差していたものだと分かった。

 ほむらは銀八の顔を見た、すぐにキュゥべえに駆け寄っている様子で、表情はかなり焦っていた。

 

 それもーー。

 「さささ騒ぐんじゃねーよ、ととと取りあえず、たたたタイムマシン探せ」

 などとかなり困惑した様子だった。

 

 そのあと、銀八はキュゥべえの生死を確かめようとした後、銀八の表情はただ無事であってほしいと願うような顔だった。

 

 しかし、キュゥべえの頭部はフロアの床が見えるぐらいに貫通して風穴が吹いていた。

 

 マミは悲しみに暮れ、まどかとさやかは呆然とした様子だった。

 

 この事態を引き起こした、本人(銀八)は言うとーー。

 

 「さ、殺べえ事件が起こったーー!!」

 

 などと叫びながら崩れるように床に両ひざをついた。

 

 しかし、ほむらにとっては好都合だったーー。

 (なんにせよ始末の手間も省けたし、何よりキュゥべえがどんな存在か見てもらう必要があるわね)

 

 キュゥベえを狩りつくしてきたほむらはキュゥべえが別個体として現れることを知っていたためまどか達にも知ってもらう必要があった。

 

 そう思い立った、ほむらは銀八を励ます(立役者の心のケアをする)ことにした。

 

 ほむらは落ち込んでいる銀八の左肩を叩き、無言で左手を突き出してーー。

 「ありがとう、キュゥベえを殺してくれて、おかげで手間が省けたわ」

 サムズアップのサインを銀八に見せお礼を言った。

 銀八は即座に否定したが、ほむらはキュゥベえの真実を知っていたため銀八に再度礼を言った。

 「いいえ、それでも感謝を言わせて、なぜならキュゥベえの真実の一つを彼女たちに見せることが出来るから」

 

 そう、ほむらが言ってた真実、それはーー。

 「代わりはいくらでもいるけど潰されたら困るんだよね、もったいないじゃないか」

 

 キュゥべえは潰しても(殺しても)別の個体が現れるため狩っても意味がないことだった。

 何より、キュゥべえの死骸をキュゥべえが食べるからなおさらだった。

 

 マミとまどかとさやか、そして銀八はキュゥべえの共食い(グロテスクシーン)を見たため言い知れぬ空気に耐えられず、その場で解散となった。

 

 それからしばらくして、ほむらは銀八に諮らずとも会うことになる、ほむらの拠点(三叉路のアパート)に銀八も住んでいたことに内心驚くことになった。

 

 

 銀八に関しては未知数すぎて信用できるかどうか疑問だった。

 

 ほむらは銀八を自分の部屋に招待した。

 「おめーよ、むやみに男を自分の部屋に招くなよ、下手したらお互い気まずいうわさが流れるぞ」

 などと、言った。意外に良識がある部分があった。

 

 ほむらは様子見の意味で魔法少女の知識を銀八に少しずつ話すことにした。

 

 銀八は取りあえず思いつく限りの質問をほむらにした。

 ほむらは少しづつ魔法少女の情報を銀時に与えていった。

 

 そんな中で、ほむらはある疑問があった。

 (彼は・・・・・・どうして私の話を聞こうと思ったのかしら? キュゥべえが見えるのは分からないとはいえ、私たちとは関わり合いたがらないはず・・・・・・)

 

 普通の人間なら、恐怖のあまり関わりあいたがらない、それが普通だとほむらはそう感じていた。

 それを目の前の男(坂田銀八)に問いかけてみた。

 

 「その前に、一つだけ聞かせてほしいの」

 銀八はめんどくさそうにほむらに振り向いた。

 「なんだ? 俺、部屋探さなきゃいけねーんだけど」

 と、呆れ交じりに聞き返した、よっぽど疲れている様子にも見えたが、今でなければ聞けない気がした。

 

 「あなたは、何で私の話を聞いてくれたの? 普通なら、聞きたくないどころか関わりたがらないと思っていたから」

 「なんだよ、てめーが話を聞いてほしいって言ったからだろーが」

 気だるそうに答えていたが、ほむらはそんな答えに納得していなかった。

 「答えて」

 「まぁ、見ちまった以上、何が起こったか分からねーし、どうころぶかわからねぇが、まぁ一応『先生』だからな、聞くことぐらい出来らぁ」

 「そう」

 ほむらは一先ず銀八の答えに納得するしかなかった。

 目の前の男は、巻き込まれたを通り越して、キュゥべえが見えるのは、あまりにもイレギュラーすぎるので、目が離せなかった。

 

 少なくとも、キュゥべえを疑っているのは確かで、どう動くかにかかっていた。

 

 そうこう考えているうちに銀八は部屋から出ていた。

 

 ほむらは明日に備えて体を休めることにした。

 

 

                      ***

 

 

 

                   見滝原中学校 屋上

 

 

 放課後、ほむらは学校の屋上でまどか達に接触していた。

 

 まどかが魔法少女の契約をするかどうかを確認するためだった。

 まどか自身、まだ迷っている様子だった。

 

 そのことを確認した後、まどかから何故魔法少女になったのかを聞かれたが、話すと理解されないと判断したため、ぐっとこらえた。

 

 そして、まどか達と別れて教室に戻ろうとした後ーー。

 

 「あ、お前ら・・・・・・何でここにいるんだ?」

 

 坂田銀八が、学校の屋上にやってきていた。

 

 

 

                      ***

 

 

 

 

 ほむらは放課後、まどか達の動向を監察していた。

 

 マミがまどかとさやかを連れて、魔法少女の戦いを見せる様子だった。

 マミたちが結界内に入った後、結界前を監視していた、マミ達が出てくるのを待つことにした。

 

 暫くしてマミ達が結界内に出てきた。マミは魔女を倒した報酬のグリーフシードの使い方をまどか達に見せていた。

 

 マミはすでに気付いていたのか、ほむらのいる方角にグリーフシードを投げ渡した。

 

 当然、ほむらは距離を取る意味でマミにグリーフシードを投げ返し、その場から去った。

 

 

 

                      ***

 

 

 

 ほむらが三叉路のアパートに戻ったところーー。

 

 「よう」

 

 背後からほむらを呼んでいた。

 

 「坂田先生」

 

 ほむらは振り返りながらほむらを呼び止めた男の顔を見た。

 「夜遅くに魔女と戦ってんのか? 担任に見つかって、補導されたらどうすんだコノヤロー?」

 銀八はほむらにそう言いながら、アパートの入り口に向かっていた。

 

 「先生、部屋は?」

 ほむらは銀八がどこに住んでるのか疑問だったため、どこに住んでるのか把握しておく算段だったがーー。

 

 「おめーの部屋の隣だよ」

 意外な答えにほむらは唖然とした、ほむらは早速自分の部屋に向かいがてら、確かめると確かにほむらの隣の部屋に銀八のネームプレートがあった。

 

 「確かに、私の隣ね・・・・・・」

 内心驚いたが、好都合でもあった。

 

 「キュゥべえが見えるとはいえ、一般人を巻き込むのは・・・・・・」

 ほむらは内心気が引けていたが背に腹は代えられなかった。

 銀八を巻き込んででも、まどかを魔法少女にさせない決意を固めた。

 

 「いったろ、お前の隣だって・・・・・・」

 銀八はほむらに近づきながら、隣の部屋だと告げた。

 すると、ほむらはーー。

 「坂田銀八」

 銀八のことをフルネームで呼んだ。

 「何だよ、人のことをフルネームで呼びやがって・・・・・・」

 銀八は困惑しながらもだらしがない口調でほむらに問いただした。

 「また、私の部屋に来てくれないかしら? 大事な話があるの」

 「またかよ・・・・・・、何度も言うけどな、女が自分の部屋に見ず知らずの男をーー」

 銀八が大人としての良識をほむらに話そうとした瞬間・・・・・・。

 「魔法少女のことで話があるの、特に昨日出会った巴マミのことで・・・・・・」

 ほむらに遮られた上、問答無用に魔法少女に関する話を銀八に振ってきた。

 

 銀八は、死んだ魚の目から真剣な目へと変わった。

 

 「どういうことだ? 魔法少女に関してはお前が止めた方がいんじゃね? 何でオレにそんな話を・・・・・・」

 

 銀八はほむらにそう問いかけていた、ほむらとしては確かに銀八の質問はもっともだと思った。

 魔法少女の問題に、一般人を巻き込むのは最低限避けている。

 

 ほむらとしては尚のこと、まどかを助け出すことを優先にする上で、普通の人間である銀八を巻き込むのはリスクが高すぎる行為だった。

 

 しかしーー。

 

 「詳しいことは私の部屋で話すわ、だから・・・・・・」

 ほむらは、ある確信があった、巴マミの説得に銀八を連れていった方が都合いいとーー。

 

 ほむらは、自分の部屋に銀八を招き、巴マミがまどかとさやかを連れて、魔女退治に同行させていることを銀八に話した。

 

 「まどかとさやかって・・・・・・あの屋上にいたあいつ等か? マミって奴が魔法少女の現場を社会見学みたいなことをやっててそれを止めたいって・・・・・・」

 

 「ええ、大雑把に言えば、あの二人に素質があるとはいえ、まだ一般人である二人を巻き込むのは、流石に・・・・・・」

 

 銀八が、ほむらの話を確認した、ほむらは基本まどかを巻き込まない理由を持たせるために、さやかを含めた。

 

 そう考えながらも、銀八が確認の話をしたのでほむらは頷いた。

 

 「確かに、中坊に火遊びは早過ぎだな、ここは説教しねーとな」

 「いいの? 私が言うのもなんだけど、これは魔法少女が解決すべきことなのに、私が説得できればこんなことには」

 

 ほむらは、まどかを魔法少女にさせないためとはいえ、目の前の男を巻き込むのはやはり、引けていた。

 「テメーで巻き込んでおいて、怖気づいたのか? オメーはまだガキだろ、我儘ぐらいまだ言いやがれコノヤロー」

 「な!?」

 銀八の発言に二重の意味で驚いていた。

 一つは、ガキ扱い(怒り)の意味で、もう一つは力を貸すことに了承したことにーー。

 

 「といっても、俺はキュゥべえ殺しちまってるからな? 説得できるとは限らねーぞ?」

 「安心して、説得の時は私も一緒だから、あなたが責められるより、私に警戒が行くから」

 銀八の問いにほむらはそう答えた。

 銀八は少し考えてーー。

 「わーったよ、そのマミって奴を説得してやるよ」

 「お願いするわ」

 

 銀八はほむらの頼みを了承した。ほむらは内心驚きつつも銀八がマミの説得を依頼した。

 

 

 その時、ほむらは思いもしなかった、その選択がマミの運命を変えることを、まだ知る由もなかった。




 暫くの間、ほむらの部分的な回想交じりの会話になります。

 退屈かもしれませんが、退屈な分最終章に向かって走る予定ですので、その分楽しんでください。

 ご意見ご感想お待ちしております。


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人生は常に山谷深海の連続

 今回は小説三章から四章までのお話です。

 引き続き、ほむらから見た銀時の背中の話です。


 深夜の公園で巴マミを説得に来ていたほむらは、銀八を連れてきていた。

 

 当然、マミは一般人を巻き込むのは反対していたが、事故とはいえキュゥべえを殺してしまった銀八に警戒心を持っていたのは仕方がなかった。

 

 しかし、銀八はマミが魔女退治にまどかとさやかを連れて行ってることをほむらから聞いていたため、マミにあることを問いかけていた。

 

 「なんでおめーは魔女退治の見学を考えた?」

 ほむらは銀時の顔を横で見ながら魔法少女の見学など考えたマミにそう問いかけていた。

 

 「それは魔法少女と魔女との戦いがどういうことなのかを教えるために、私が考えたものです。私は考える余裕がなかった状況での契約でした。でも、あの二人にはまだ選択肢があります、だから・・・・・・」

 

 マミがまどか達に魔女退治の見学をさせた理由を銀八に話した後、銀八はマミの中にある何かに気付いたのか、違う質問をマミにぶつけていた。

 

 「そうかい、おめーも相当苦労したってわけか。 だがもし、あの二人が魔法少女に成った時、おめー背負えんのか?」

 「え?」

 「あの二人を背負えんのか?」

 

 マミに対して投げかけた銀八の質問にほむらも少し困惑していた。

 (銀八、あなたは・・・・・・何が言いたいの? いえ、何を聞きたいの(・・・・・・)?)

 その理由は、銀八の言葉に続きがあった。

 「“人の一生は重き荷を負うては遠き道を行くが如し”昔なぁ徳川田信秀っていうおっさんが言ってた言葉でな・・・・・・」

 

 「誰よ、そのミックス大名!? 徳川家康よね家康!」

 

 ほむらは銀八のミックス大名に突っ込みを入れながらも銀八の話が続いていた。

 「最初に聞いた時は何辛気くせーことをなんて思ったが、なかなかどうして年寄りの言うこたぁバカにはできねー、荷物ってんじゃねーが誰でも両手に大事な何かを抱えてるもんだ、だがかついでる時に気づきゃしねー」

 

 ほむらは銀八が言わんとしていることがまだ分からなかったが次の言葉を聞いた時に真意を知った。

 「その重さに気づくのは手元から滑り落とした時だ、オメーその二人(荷物)を背負えんのか?」

 

 ほむらは、銀八の言葉を聞いて思い返していた、時間逆行の際に何度もまどかの命を滑り落としたのか・・・・・・と。

 それでも挑み続けたのはまどかを救う未来を掴むためだった。

 

 そして、銀八が話し終えると、ほむらはマミに対して敵対行動を避ける趣旨を伝えた。

 マミはいまだにほむらに対して警戒心を解かなかったが、銀八に対してはある程度の理解を示していた。

 

 マミは銀八が言った言葉を考えると伝えた後、公園から去っていった。

 

 そのあとでほむらは銀八に学校の屋上でまどか達と何を話したのか聞いていた、銀八の話ではキュゥべえに的外れな質問で情報を集めていたことだった。

 (な、なんて無茶苦茶な、魔女を束ねる親玉って・・・・・・テレビ番組じゃないのよ)

 ほむらは、そう突っ込みながら銀八の行動力に驚かされていた、その後にほむらは魔法少女の秘密の一端を少し伝える決心をした。

 

 「魔法少女は魔女を『生む』のよ」

 

 銀八は困惑してがまた変な質問をほむらに投げかけた。

 

 「生むぅ~? どうゆうこった? 使い魔が『えいりあん』みたいに魔法少女の口に入って出てくるってか?」

 「違うわ!? そもそも『えいりあん』って何なの!? 少なくともそんな生々しい物ではないわ!!」

 銀八のぶっ飛んだボケかどうかわからない問いかけにほむらは突っ込んでいた。

 

 銀八はどういう意味なんだと問いかけたがほむらは今の段階では伝えられないと判断したため、またの機会に話すと約束して帰途に向かうことにした。

 

 

 ほむらは銀八の背中を見てつぶやいていた。

 「あなたは私たちの運命を聞いてどう思うのかしら? 坂田銀八・・・・・・」

 

 ほむらは魔法少女(自分たち)の運命である絶望を振りまく存在(魔女)に成り果てることを知った時、銀八がどんな行動をするのかを考えていた。

 

 さやかが魔女化した時間軸でマミが絶望のあまり杏子を殺した後、まどかと自分を殺した後に自殺するように、銀八は魔法少女を殺すのか、などと考えていた。

 

 (私としては、普通の人間は堪えられる話ではないわね、何より普通の反応な気がするわ)

 

 ほむらはそう考えていたが同時に、疑問が浮かんでいた。

 

 (彼はどうして、私の頼みを聞いてくれたのだろう・・・・・・、普通なら関わり合いになりたくないと考えるのでは・・・・・・)

 

 などと、坂田銀八という人間に疑問を抱き始めていた。

 

 そして、マミが病院に現れた魔女を倒すために結界に入った後、ほむらが止めようとするも拘束魔法で身動きが封じられた時、運命の歯車が破壊される場面に立ち会うことになるなんて思いもよらなかった。

 

 

 

 

                     ***

 

 

 

 ほむらが魔女の結界内の通路で、マミの拘束魔法で身動きを封じられた後のことだった。

 突如、マミの拘束魔法が光となって消えたのだった。

 「これは一体どういうこと?」

 拘束魔法は使用者の遺志により解かれるのと、使用者が死亡した場合に解かれることがある。

 ほむらから見た拘束魔法の解除は明らかに前者だった。

 

 「一体どういう風の吹きまわしかしら・・・・・・」

 拘束されるまでの間から考えて、マミとの関係は険悪だったことは間違いなかった。

 しかし、何故手の平を返すかのような魔法解除をしたのか(判断をしたのか)が分からなかった。

 

 ほむらの疑問は拘束魔法をかけた張本人のテレパシーで知ることになった。

 (暁美さん、聞こえる!?)

 「巴マミ! これはどう言うことなの!?」

 ほむらは何故拘束魔法を解いたのか理由を問い詰めようとした、時間逆行(今までの経験)からマミは強がって無理しすぎの上、杏子のソウルジェムを砕き自分とまどかを含め殺そうとした後に自害するほどの繊細な心の持ち主、であることを知っていた。

 

 そのマミがほむらの拘束を解くなんて、あり得なかった。

 ほむらがそう考えてマミに問いただそうとした時、マミのテレパシーでその理由が明らかになった。

 (お願い、力を貸して! 坂田先生が・・・・・・)

 (坂田銀八が、どうかしたの!?)

 (・・・・・・魔女と戦ってるの)

 ほむらはマミが拘束を解いた理由が銀八が魔女と戦っていることだということだった。

 マミのテレパシーで、ほむらは唖然とした。

 (坂田銀八が魔女と戦ってる!? それは一体如何いうことなの!!)

 ほむらは何故普通の人間である銀八がマミの代わりに戦ってるのか状況説明を求めたがーー。

 (詳しく説明してる時間が無いの! 誘導するから来てもらえる!?)

 マミのテレパシーからして、緊急の状況だった。

 ほむらは魔法少女に変身してマミの誘導に従うことにした。

 

 (坂田銀八、あなた一体何を考えてるの!?)

 

 ほむらは内心銀八の無謀に怒り心頭だった、普通の人間が魔女に立ち向かうなんて自殺行為以外何でもなかった。

 

 ほむらはマミの誘導に従って結界最深部に向かった。

 

                       

 

                      ***

 

 

 

 ほむらが結界最深部に到着した後、マミたちの姿を見つけ合流しようとした途中のこと、三人の視点がある戦いに釘付けになっていた。

 

 ほむらが視点を合わせると、あまりにも信じられない光景だった。

 

 芋虫のような体で伸縮自在にくねらせ獲物を噛み殺そうとしている魔女、対して致命傷どころか即死は免れない魔女の顎(死の宣告)を躱す、自分の獲物である木刀で反撃している男、坂田銀八の姿だった。

 

 銀八は魔女の攻撃を躱しつつも木刀で反撃、単純だが行動に移すのは簡単ではない、目の前の魔女の特徴を考えれば、反撃に移すには大きく距離を取って回避しなければならなかったが、銀八はただの人間、そんな行動は不可能だった。

 

 それでも、銀八は一歩も退かないどころか、僅かな怯えも見せることなく木刀で反撃していた。

 

 「本当に、どうなってるの・・・・・・これは・・・・・・?」

 

 ほむらはそうつぶやいていた。

 あまりにも理解できない状況に頭が追い付かなかった。

 

 そのつぶやきに三人がほむらの存在に気が付いていた。

 そのあとでまどか達から事情を聴いて驚愕していた。

 マミを救うために銀八がためらいなくキュゥべえを投げるなんて思ってもみなかったからだ。

 

 その後、ほむらはマミに苦言を露呈した後、銀八を助けようとした直後、銀八は魔女に呑み込まれていた。

 

 その状況を見ていたまどかは絶叫した。

 

 (・・・・・・敵ぐらいは討ってあげるわ)

 ほむらは自分が来るまでに時間稼ぎに徹していたことをまどか達に聞いていたためせめて魔女を倒そうとした途端、あり得ないものを目の当たりにした。

 

 魔女の頭部に棘が刺さっていた。

 ほむらは注視してみると、その棘は魔女を背に沿って切り裂いていた。

 その棘が木刀であることに気が付くには時間がかかった。

 

 「ま・・・・・・まさか、有り得ないわ・・・・・・そんなまさか、坂田銀八は・・・・・・」

 ――生きている、しかも魔女を切り裂いてる!?

 

 突拍子もない推測が目の前の現実となっていることに驚愕していた。

 マミは駆け寄り呼びかけてきたが、ほむらは自分が見ている状況を説明した。

 

 その間に、その棘は魔女を切り裂いていた。

 「うおおおぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁ!」

 棘の正体、木刀で魔女を切り裂いて出てきた坂田銀八だった。

 

 まどかとさやかは驚愕の絶叫を上げていた。

 (い、生きてたの!? それどころか呑み込まれてもなお戦ってたの!?)

 

 銀八は地上に降り立ち息を切らしていた。

 

 しかし魔女は生きていた、魔女の口から新しい魔女の体が出てきたからだ。

 銀八はもう一度魔女と戦おうとしていたがーー。

 

 「その必要はないわ、坂田先生」

 ほむらは銀八の前に立ち、目の前の魔女との戦いを引き継ぐことにした。

 「こいつをしとめるのは、私・・・・・・!」

 

 ほむらの宣言どおり爆弾と時間停止を利用した瞬間移動もどきのオンパレードで魔女をしとめた。

 

 そのあとほむらとマミが銀八に質問攻めしたがほむらの質問に対してははぐらかし半分の答え、マミに対しては、公園のやり取りの続きととれる答えだった。

 

 銀八は途中でお開きと言わんばかりのボケを入れてほむらも含めた四人を笑わせていた。

 

 それでもなお、ほむらの疑問はさらに深まった。

 

 (坂田銀八、あなたを突き動かすものは一体何なの?)

 

 ほむらが抱いた疑問は見滝原にやってきた魔法少女の登場で徐々に知ることになる。

 

 

 

                      ***

 

 

 

 ほむらがお菓子の魔女を倒した後のこと、銀八を自分の部屋に招いた。

 

 「おいほむら、何度も言ってんだろうが、女が簡単に男を部屋にあげんじゃ・・・・・・」

 銀八がほむらに一人暮らし女の注意をしようとした時だったーー。

 

 「あなたに、お願いがあるの・・・・・・」

 

 銀八は説教をやめた、いややめさえられたのだ。

 ほむらの表情が、声とともに真剣さを帯びていたことでーー。

 

 「美樹さやかの魔法少女の契約を阻止してほしいの」

 

 ほむら自身、何故銀八にそう頼み込んだか分からなかった。

 漠然としないながらも、確信じみた直感がほむらにはあった。

 

 マミの死の運命を壊して見せた目の前の男(坂田銀八)に何かを感じ取っていた。

 

 「さやかを魔法少女にさせないってどういうことだ?」

 銀八はほむらの頼みごとに首をひねった。

 まるでさやかが契約することを知っているかのような様子に疑問を持った。

 

 「今日、美樹さやかが病院に来ていたのは知ってるわよね」

 「ああ、確かうちのクラスに欠席していた奴が入院してる病院だったけか?」

 ほむらの質問に銀八は思い出したかのようにつぶやいた。

 さやかが病院で惚れている男に面会にきてることを最近知ったばかりだった。

 ほむらは銀八の言葉に頷き内容を話したーー。

 

 「ええ、入院している彼の名は上條恭介、ヴァイオリンの全国大会に何度も出場するほどの腕前だけど今年の春、交通事故にあって・・・・・・」

 ほむらはそれ以上言わなかった。

 銀八は今の会話の内容で大体把握出来た様子だった。

 

 「つまり、芳しくないからキュゥべえ(無限残機)と契約ってことか?」

 銀八の言葉にほむらは頷いた。

 銀八自身、魔女と対峙したときに感じた脅威。

 魔女と魔法少女の生死を分けた戦いに銀八自身憤りを感じていた。

 

 「なんで、俺なんだ? お前の口からじゃできないのか?」

 銀八はそうほむらに問いかけた。

 ほむらは首を横に振りながらーー。

 「無理でしょうね、美樹さやかは私に疑念を抱いてるから」

 「それで俺に説得を頼んだわけか・・・・・・わーった、オメーの依頼受けてやるよ」

 銀八はほむらの依頼を引き受けることにした。

 

 ほむらは驚きながらも銀八の返事に満足したが、それでも問いかけずにはいられなかった。

 「どうして、あなたは・・・・・・私の頼みを聞いてくれたの?」

 ほむらは知りたかった、何故魔女に立ち向かったのかそして、自分の依頼を引き受けてくれたのかーー。

 

 しかし、銀八の答えは決まっていた。

 

 「俺ァ一応、先生だからな、生徒守んのが仕事じゃねーの?」

 「答えになってないわよ」

 

 ほむらはあきれながらそう突っ込んだ。

 そんな中でほむらはある決意を固めた。自分のことを、魔法少女の秘密(魔法少女の運命)をキュゥべえの目的を、銀八に打ち明ける決意を固めた。

 




 即興で書きましたが、ほむらがさやかの契約阻止の依頼を銀八に依頼する流れを大体こんな感じで書かせてもらいました。

 物足りないかもしれませんが、これからもよろしくお願いします。

 ご意見ご感想、お待ちしております。


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我儘は時として世界を動かす

 今回は四章から六章までの内容です。


 ほむらは、マミの見舞いに向かっていたまどかの後を追っていた。

 それからしばらくして、マミのマンションからまどかが出てきたところで、ほむらは自分の経験と忠告をまどかに話した後、銀八との約束であるほむら自身のことと魔法少女と魔女の間にある秘密、そしてキュゥべえの目的を話すため、まどかと別れた。

 

 

 しかし、公園で銀八に魔法少女のことを話そうとした途端、魔女の気配を察知して会話は中断、銀八と共に結界が張られてる現場に向かうも、結界を張った魔女はその場に現れた魔法少女によって倒されていた。

 

 その場に現れた魔法少女の正体は美樹さやかだった。

 

 

                     ***

 

 

 

 「・・・・・・ワリーな、アイツのこと止められなくてよ」

 銀八はそうほむらに謝罪した。

 ほむらは首を振って否定した。

 「あなたが謝ることじゃないわ・・・・・・あなたは私の頼みを聞いてくれただけ。私が美樹さやかに注意を向けておくのを怠ったからよ、だからあなたに落ち度はないわ」

 

 

 (そう、坂田銀八に落ち度はない、美樹さやかの契約は決定された運命(もの)なのかもしれない。 私の言葉では通じないし、坂田銀八の言葉なら聞いてくれると判断したのは私だ、それをうまくいかなかったのは彼の所為と責めるのは筋違い、結果的に美樹さやかが坂田銀八の話に耳を傾けたのはいい兆候だと考えるべきね)

 

 

 ほむらは『時間逆行』で導き出した経験上さやかの契約は避けられないと判断したが、銀八という第三者の言葉なら、さやかを少なくとも破滅(魔女化)を防げるかもしれないと考えていた。

 

 ほむらはそう思考の海に潜っていた中で、銀八が呼びかけていた。

 

 「・・・・・・聞かせな、テメーは一体何を目的に動いてやがる?」

 「・・・・・・あなたには、言っておくべきかもしれないわね。 私のことも・・・・・・目的も・・・・・・そして、この世界のことも」

 (少なくとも、魔法少女(私たち)の末路を知ったらあなたはどうするのかしらね? この絶望の歯車が世界を動かしてるなんて・・・・・・違う世界から来たあなたは、私たちを見る目が変わるのかしら?)

 

 内心、ほむらは銀八の目が嫌悪感で見るのか、怪物として見るのかと考えながら口を開いた。

 

 「まず私は、この世界の・・・・・・いえ、この時間軸の人間ではないわ」

 ほむらは、自分がどこから来た人間なのかを話すところから始めた。

 「時間軸? どういうこった?」

 銀八は困惑したが、ほむらは相手の反応も想定したうえで話を続けた。

 

 「私の魔法少女の契約で、魔法として私が同じ時間を繰り返しているからよ」

 「同じ時間を・・・・・・ってオメーがそうまでしたい目的はなんだ? オメーみたいなガキが魔法少女になってまで契約したのはなんなんだ?」

 ほむらの話を聞きながら銀八は険しい顔をしながらそう尋ねた。

 銀八の問いほむらはゆっくりと契約内容を、動機を話した。

 

 「まどかの出会いをやり直したい、まどかに守られる私じゃなく守る私になりたい、それがキュゥべえに願った私の契約、そして私が・・・・・・魔法少女に成った動機よ」

 ほむらの魔法少女としての動機を聞いた銀八はある疑問を口にした。

 「その口ぶりじゃ、まどかはおめーが魔法少女に成る前から、魔法少女に成っていたのか?」

 銀八の質問にほむらは頷いた。

 「そうね、まずは私とまどかの出会いから話した方がいいわね」

 

 ほむらは少し間を置きながら、まどかの出会いから話した。

 

 「今の私になる前は気弱の上、病院生活の方が長かったため勉強も遅れた上に準備運動の際に貧血を起こしてたわ、そんな私に手を差し伸べてくれたのがまどかだったの、一つ目は今話した通り、二つ目は転校初日の下校の際、前日の内容の通りに落ち込んだ上に死にたいって思ってたわ」

 銀八は少し驚いた顔をしながら、ほむらに尋ねた。

 「死にたいって・・・・・・ガキの世界シビアだなオイ、ってか何で二つ目がそんな内容なんだ?」

 「その時に魔女の結界に捕らわれたのよ、それで助けてくれたのが魔法少女のまどかと巴マミよ」

 「おいおい、おめーまどかはともかく、マミも一緒だったのかよ」

 銀八はほむらの口からマミのことを知っているような口ぶりのそんな背景があったことに驚いていた。

 ほむらは軽く頷き、話を続けた。

 「その後で魔法少女のことを二人から聞いたわ、そしてある魔女に備えていたの・・・・・・」

 「ある魔女?」

 「『ワルプルギスの夜』それが二人が倒そうとしていた、超弩級の魔女の総称よ」

 ほむらの説明で、超弩級という言葉が出てきたことに銀八は首を傾げた。

 「超弩級って、どういうこった? 普通の魔女とは違うのか?」

 「ワルプルギスは結界に隠れて澪守る必要がない上に、ただ一度具現化しただけでも何千人という人が犠牲になるわ。相変わらず普通の人が見えないから被害は地震とか竜巻とかそういった大災害として誤解されるだけ、魔法少女たちの間で語られている強力な魔女よ、そして見滝原(ここ)にその魔女が現れるわ」

 ほむらの説明で唖然とした銀八はどうにか話には追い付いていた。

 銀八の世界の経験上、陰陽師の二大流派が倒した悪鬼が例にあったためどうにかほむらの説明に追い付いていた。

 銀八が内容をどうにか理解していた。

 ほむらは銀八の顔を見ながら訪ねた。

 「ここまでの説明は追い付いてるかしら?」

 「ま、まあな」

 ほむらは銀八の顔が心なしかげんなりしていたが、話に追いついている様子を確認して話を続けた。

 

 「そして、ワルプルギスの夜に立ち向かった二人は、敗れて命を落としたわ」

「その後で、契約したのか? まどかを救うために・・・・・・」

 銀八はほむらにそう尋ねた。

 その問いに、ほむらは頷いた。

 「そう、キュゥべえに契約した直後に『時間逆行』が発動して、まどかに出会う前の時間軸に戻ったのよ、そのあとはまどかと巴マミのもとで私の魔法を把握して、魔女に立ち向かったわ」

 「おい、時間逆行って・・・・・・タイムスリップって奴か!?」

 銀八はほむらの魔法について驚いていた。

 「確かに、私の魔法の本質はタイムスリップだけど、まどかと出会う前の時間にしか戻れないの、他に出来ることと言ったら私以外の人間や周囲の時間を止めることができるだけよ」

 ほむらの説明に銀八は驚愕したが、あることに気が付いていた。

 「もしかして、お前の優等生っぷりは・・・・・・」

 「同じ時間で同じ授業内容だったから覚えていたのよ」

 銀八の疑問にほむらはそう答えた。

 質問の内容に銀八は納得していた。

 ほむらは、本題に戻すように話を続けた。

 「話がそれたわね、その時間軸でワルプルギスの夜を倒すことは出来たわ・・・・・・でも、同時に魔法少女の残酷な秘密を知ったの・・・・・・魔女と魔法少女の間にある残酷な秘密を・・・・・・」

 ほむらは一瞬つらそうな表情だったが、普段の冷静な表情に戻っていた。

 銀八はほむらの話を聴きながら、ほむらの顔を見て一見普段通りの表情だったが目は怒りで満ちていることを見逃さなかった。

 そんな中で、ほむらは銀八にあることを尋ねた。

 「坂田銀八、あなたは『魔法少女は魔女を生む』って話したのは覚えてるかしら?」

 「ああ、初めて魔法少女に関することを聞いたのはソウルジェムを浄化しないと魔法は使えないって事ぐらいだったか?」

 銀八はうろ覚えにそう話したが、ほむらは頷いて魔法少女の秘密(根本的な内容)を話した。

 「そう・・・・・・でも、根本的に的を得てるわ、ソウルジェムを浄化しないと確かに魔法は使えなくなるわ、でも本当は・・・・・・」

 ほむらは言葉をそこで止め、自分のソウルジェムを取り出し、銀八の前に見せた。

 「魔法少女が絶望でソウルジェムに穢れがたまり、グリーフシードに変化して魔女を生み出し、魔法少女は死ぬわ」

 ほむらの言葉に銀八は驚愕した。

 銀八はほむらに問い詰めた。

 「どういうこった!? ソウルジェムが穢れてグリーフシードになって魔法少女が死ぬって・・・・・・」

 「それは、このソウルジェムの正体がキュゥべえと魔法少女として契約した私たちの魂が物質化した物だからよ」

 「魂の物質化!? オイオイ冗談でも笑えねーぞ!! つか何で魔法少女が魔女になんだよ!? 無限残機(キュゥべえ)のやろーは一体何が目的なんだ!!」

 銀八は困惑しながらも、ほむらに問いかけた。

 ほむらは、銀八を宥めた。

 「落ち着いてちょうだい、まずは何故魔女の正体が魔法少女なのかを知ったところから、本題の続きを話すから」

 ほむらの言葉に少し落ち着きを取り戻した銀八、その様子を確認したほむらは話を続けた。

 「ワルプルギスを倒した私とまどかは、そのあとに・・・・・・まどかが突如苦しみだして、彼女が持っていたソウルジェムがグリーフシードに変化して・・・・・・私の目の前で魔女が生まれたのを見たわ・・・・・・まどかの死と共に」

 ほむらの最初の時間逆行の際に知った事実に銀八は言葉を詰まらせた。

 

 「二度目の時間逆行の時、魔法少女の真実を知った私はまどか達に話したわ、でもその時間軸では美樹さやかが魔法少女に成っていたわ、当然みんなには信じてもらえなかったわ、でも美樹さやかが魔女化して、私がとどめを刺したわ・・・・・・だけど、巴マミが私と協力関係だった魔法少女を殺して私とまどかを道連れに自殺しようとしたの」

 「マジかよ、マミのやろーそこまでしちまったのか? つーかお前がマミと対立してんのは、そんな理由だったのか?」

 銀八は二度目の時間逆行でのほむらの経験で、マミの行動に驚愕した。

 「ええ、でもまどかが・・・・・・巴マミのソウルジェムを砕いて私を助けてくれたわ・・・・・・その後、私とまどかの二人でワルプルギスを倒したの、でも私たちのソウルジェムに限界がきて、いつ魔女になってもおかしくなかったわ、でもまどかの持っていたグリーフシードのおかげで私のソウルジェムは浄化されたわ・・・・・・そして、まどかと約束したのよ・・・・・・何度同じ時間を繰り返すことになっても必ずまどかを守る、それが私の目的よ」

ほむらの目的に銀八はしばらく沈黙していたが、もう一つの謎について尋ねた。

 

 「キュゥべえは、おめーらを魔法少女に変えてまで何が狙いなんだ? そんな仕組みにしてまで何がしてーんだ?」

 「キュゥべえの・・・・・・いえ、本当の名はインキュベーター、アイツらの目的は私たち魔法少女が絶望によって魔女化する際のエネルギーが狙い、そして宇宙の寿命を延ばすのが奴らの目的よ」

 

 ほむらから聞かされたキュゥべえの目的に銀八は顔をひきつらせた。

 「宇宙の寿命だぁ~? あの無限残機、そんな訳のわからねーモンのために魔法少女達(おめーら)を消耗品にしてんのか?」

 「ええ、奴らはほとんど感情なんて持ち合わせていないわ、だから人間(私たち)願い(奇跡)を餌に契約を迫るわ、奴らは枯れ果てた宇宙を引き渡す際の長い目で見れば得になる取引にしか見てないわ」

 ほむらはキュゥべえの目的を話しながら銀八の表情を監察した。

 その表情は普段通りの間延びした表情だったが、一瞬気のせいだったのか? と思うぐらい目の奥に怒りを感じた。

 それでも、ほむらは話を続けた。

 

 「そのあとは、一人ですべての魔女を・・・・・・ワルプルギスの夜を倒すことにしたわ、誰も未来を信じないし受け止められない、誰にも頼らないし分かってもらう必要もない、まどかを戦わせないために・・・・・・まどかと出会う前にキュゥべえを殺しつくした、でもまどかは魔法少女の契約をキュゥべえと交わして、そして魔女になってしまったわ、そして今でも同じ時間を繰り返してるわ。 まどかを救うために、何度も」

 

 ほむらは語りながら思い返した、今の時間軸に来る(戻る)前のまどかの契約を、そしてその反動での魔女化をーー。

 

 一通り、語り終えたほむらは銀八に尋ねた。

 「・・・・・・理解できたかしら?」

 ほむらは、一通り話したものの、銀八がどんな目で魔法少女(私たち)を見るのか、化け物とみて蔑むのか、それとも恐怖から怯えた目で見るのか、心なしか気になっていた。

 しかし、銀八から出た言葉はーー。

 「・・・・・・つまり、お前は『まどかちゃん親衛隊隊長』ってことでファイナルアンサー?」

 というふざけた言葉だった。

 

 即座にほむらは銀八の顔面に鉄拳を繰り出した。

 「真面目に答えて、っていうか『まどかちゃん親衛隊隊長』って何!? アイドルの追っかけじゃないから!!」

 (今までの話の流れでアイドルの追っかけのような流れになってるし、あり得ないわ!!)

 

 内心、銀八の言葉にキレてしまった。

 銀八は察したのかーー。

 「いや、あの、うん・・・・・・なんか取り合えず頑張ってることは分かったわ」

 「・・・・・・」

 ほむらは、銀八を睨んでいたが少し怒りを収め話を続けた。

 

 「もうすぐこの街に『ワルプルギスの夜』がやってくる、具現化すれば何千人もの犠牲者が出るわ。何としてもそれを止めなくてはならないの・・・・・・そして、あの子を・・・・・・まどかのことを守らないと・・・・・・!」

 

 ほむらは改めて自分の目的と決意を吐き出した。

 その時だった。

 「そのバケモンと正面からかち合って勝てんのか?」

 銀八に勝算があるのかを尋ねられた。

 「・・・・・・」

 ほむらは思考の海に一瞬潜っていた。

 

 「・・・・・・ま、簡単に勝てたら苦労はしねェだろうな、でなきゃ同じ時間を繰り返しちゃいねえもんな」

 

 銀八の言ったとおり今までの結果から、単独で『ワルプルギスの夜』に挑んだ結果、まどかの契約、そして魔女化の悪循環だった。

 それでもーー。

 

 「勝つわ・・・・・・一人でも戦って次こそ・・・・・・」

 

 ほむらには戦いから降りる選択肢などなかった。

 (まどかを、たった一人の友達を救うのがほむらの目的である以上投げ出すわけにはいかないわ)

 そう、ほむらが自分を奮い立たせた時だった。

 「一人じゃねーよ」

 「え・・・・・・?」

 ほむらは銀八の顔を見て、驚いていた。

 (彼は何を言ってるの? それじゃまるで・・・・・・)

 一緒に戦うと言ってるようなものだった。

 しかしバカげていると思ったほむらの予想はーー

 「安心しな、テメーは一人でそのバケモンと戦うことはねーよ。女に背中預けて逃げるよか、一緒に戦った方がましってもんだ」

 当たっていた。

 

 「・・・・・・」

 さすがのほむらも面を喰らっていた。

 (坂田銀八、あなたは魔法少女(私達)のいきつく運命()を知ってもなお、真っ直ぐに私を見れるの? 魔法少女でもない所か、普通の人間なのに・・・・・・)

 

 そう思いながらも、ひねり出した言葉がーー。

 

 「気持ちは受け取っておくわ・・・・・・」

 ほむら自身まだ戸惑ってるのかひねり出した言葉がそれだけだった。

 

 暫く沈黙が流れたが、空気を換える意味で、そしてーー。

 「私からの質問は、あなたはどこから来たの?」

 坂田銀八(目の前の男)が何者かを知る意味でも。

 

 「そういや、腹割って話そうっていってたもんな・・・・・・良いぜ俺がどこから来たのか聞いてみな」

 

 

 銀八にそう言われ、ほむらは改めて尋ねることにした。

 

 「あなたは、この世界の人間ではないけど、あなたのいた世界は一体・・・・・・」

 「そうだな、魔法少女のおめーにも信じることが出来るかわかんねーが・・・・・・」

 銀八はもったいぶるかのような仕草でほむらに言うのを迷っていた。

 

 「もったいぶらないで話してもらえる?」

 ほむらは銀八にそう急かした。

 「わーったよ、・・・・・・俺は江戸から来た」

 銀八の言葉にほむらは耳を疑がった。

 (彼は今、なんて言ったの? 江戸?)

 「冗談で言ってるわけじゃないわよね? 江戸って四百年前の街よね? あなたはタイムスリップしてこの世界来たの? だってあなたは異世界から来たのでしょ?」

 さすがのほむらも困惑し始めた。

 銀八が何を言っているのかさっぱりわからなくなっていた。

 「おいまて、この世界の江戸って・・・・・・いや、四百年ってどういうこった?」

 逆に、銀八が訪ねた。

 ほむらは、自分の知っている限りの江戸の知識を話した、江戸幕府、徳川十五代将軍のことを、二百年以上続いた鎖国政策のことを、そしてペリーの黒船来航のことを銀八に聞いた。

 しかし、ここで銀八が江戸から来たという理由を知ることになる。

 

 「どうやら、マジで俺は異世界の存在らしいな、おめーの話じゃ将軍家は十五代までみて―だし、しかも天人じゃなくてペリーっていうやろーが江戸を開国したらしいな」

 銀八はほむらの話を整理するようにつぶやいた、その中でほむらはある単語に反応した。

 「『天人』? 何で仏教の六欲天の神々の総称のはずでしょ? あなたの世界は神か仏が存在するの?」

 ほむらは銀八に『天人』の言葉を尋ねた。

 しかし、銀八の言う『天人』の言葉の意味が違っていた。

 「確かに、天から来たって意味は間違っちゃいねーだろうが、おめーの言う神様(天人)とは違うぜ、俺たちの世界の天人って奴らは、宇宙から来た異星の民のことを指す言葉だ」

 

 

 「異星の民って・・・・・・宇宙人!? 黒舟飛び越えて宇宙船が江戸時代の地球に来たの!? 江戸に人々・・・・・・侍はどうしたの!!」

 銀八の話がぶっ飛びすぎて、ほむらは困惑的した。

 「天人が来訪したのは、たぶんおめーが言った鎖国辺りだろうな。そいつらの力で幕府は弱腰になってな、今じゃ江戸幕府、征夷大将軍はお飾りの傀儡政権になっちまった」

 

 ほむらは、銀八の世界の現状を聞いてーー。

 (ある意味、私たちに似ているかもしれない、魔法少女の名はまさにキュゥべえ(あいつら)の傀儡の総称ね、でも・・・・・・)

 

 ふと、疑問がほむらの中で沸き上がった。

 「あなたの世界の侍たちは、納得はしてなかったんでしょ? 天人の強引なやり方に」

 ほむらはそう銀八に尋ねた。

 「おめーの言うとおり、侍たちは最初幕府軍と()りあった。 『攘夷戦争』それが俺の世界で起こった戦いだ」

 

 ほむらは、言葉を失った。

 自分の世界と銀八の世界はある意味似ていた。

 銀八の世界の天人、そしてこの世界のキュゥべえ(インキュベーター)、地球外生命体の来訪は地球にどんな影響を及ぼすのかを考えると。

 

 どちらも文明の水準が上がるが、あまりいい世界とは言えなかった。

 侍に至っては刀を奪われ、魔法少女は契約で人間をやめさせられてる。

 意味は違っても、誇りは奪われていた。

 

 ほむらは気を取り直して、銀八は元の世界で何の仕事をしているのか聞くことにした。

 「・・・・・・坂田銀八、あなたに聞きたいことがあるのだけれど・・・・・・」

 「なんだ?」

 「あなたは教師じゃないのでしょ? ならあなた、どんな仕事をしてるの?」

 ほむらは、銀時が元居た世界(江戸)の話を統合して、侍は廃刀令で刀を捨てていたことは予想した。

 (今までの銀八の仕事ぶりを考えて、教師って感じではないわね)

 ほむらが思い出していたのは、早乙女をはじめとした教師の授業の見学の際、居眠りするか、授業内容に追いついていない様子だった。

 銀八(目の前の男)に至ってはまともな定職に就けるとは思えなかった。

 

 すると、銀八が自分の職業を話した。

 「・・・・・・万事屋(よろずや)だ」

 「万事屋?」

 ほむらは銀八が言った『万事屋』の単語に困惑した。

 

 「書くもんあるか?」

 銀八はほむらにそう尋ねられ、ほむらはメモとペンを銀八に渡した。

 すると、銀八はある文字を書いた。

 『万』と『事』の二文字をメモに書いた。

 

 「これで万事(よろず)って読むんだ。俺は『万事屋銀ちゃん』って名前でやってんだ」

 「万事屋・・・・・・銀ちゃん」

 ほむらは銀八の言葉を繰り返した。

 (一体、どういう仕事なの? 普通の職業ではなさそうね、坂田銀八(目の前の男)はあからさまに適当感を感じるわ)

 

 そうほむらは考えている間に、銀八が万事屋の仕事内容を話した。

 ほむらは思考に回した意識を現実に戻した。

 「ああ、俺は犬の散歩から地球の平和を守るまで何でもやるのが万事屋なんでな」

 (要するに、何でも屋なのね・・・・・・)

 

 ほむらは銀八(この男)らしいと考えていた。

 銀八はほむらの部屋を出ようとしていた。

 あからさまに眠たそうな顔をしていたからだ。

 

 ほむらは銀八を呼び止めた。

 「待って」

 「何だよ、俺眠みーんだけど・・・・・・」

 銀八は本当に眠たそうな顔をしていた。

 それでも、ほむらは聞きたいことがあった。

 「最後に一つだけ、あなたの本当の名前はなんて言うの?」

 それが、ほむらの知りたいことだった。

 

 銀八は頭を掻きながら、本名を告げた。

 「銀時・・・・・・坂田銀時だ」

 

 そう自分の名を告げた後、銀八もとい銀時はほむらの部屋から出て自分の部屋に戻っていった。

 

 

 一人になったほむらはぽつりと銀八の本名をつぶやいた。

 「坂田・・・・・・銀時、金時だったら金太郎の名前になってしまいそうね」

 ほむらはそう言いながら、無自覚に口元が緩んだ。

 まるで、笑っているかのようだった。

 

 

                      ***  

 

 

 それから暫くして、ほむらはファーストフード店でまどかとマミに呼ばれ、美樹さやかに関することを相談されたが、立場上断ることしかできなかった。

 

 そして、風見野市の魔法少女、佐倉杏子とさやかの戦いを阻止した後、杏子と接触することした。

 

 ワルプルギスの夜を倒すために、まどかを救うためにーー。

 

                      ***

 

 

 ゲームセンターで杏子と接触したほむらは、見滝原を杏子の縄張りにしてもいい条件として、共闘を持ち掛けた。

 

 無論、杏子はほむらの正体に興味を持っていた。

 しかし、杏子自身、見滝原は絶好の魔女の狩場だったため、共闘の話にこぎつけた。

 

 そのさなか、杏子は銀八のことを尋ねていた。

 ほむらはなぜ、杏子が銀八のことを知ったのか、情報源はキュゥべえだと聞いた後、銀八が不良に絡まれた話を聴いた。

 

 なんでも銀八は当り屋まがいで不良をやり過ごそうとした中で、一部始終を見ていた杏子が不良の標的にされたとき、銀八が杏子を庇い、そのまま共闘の流れになっていた。

 

 そんな中で、杏子はほむら視点での銀八について聞かれた。

 

 銀八の正体を知っていたが、ほむら自身予測不能だということを杏子に伝えた。

 

 

                      

 

 そして、銀八がこの世界に関わって、魔法少女の絶望の運命が砕かれ、変わり始める時が刻一刻と迫っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 はい、ほむら視点から見た銀八の視点はまだまだ続きます。

 暫くは退屈かもしれませんが、これかもお付き合いよろしくお願いします。

 それと、ほむらと銀八が腹を割って話す流れは四章三話の『魔法少女と侍』で話の流れが省略されていましたが、この小説を交互に読んでいただいたら、より面白く感じてもらえたらいいなと願ってやみません。

 まだ、この話は終わりませんがご意とご感想、お待ちしております。


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運命が変わる時は石ころをけるがごとく

 ようやく、七章~九章の流れです。

 そのあとほむら視点で幕を下ろします。

 それと、八章の後日談がまどか視点から始まります。


 

 

 ほむらは杏子とさやかが恭介の自宅で口論しているところを目撃した。

 二人の顔を見て、明らかな剣幕と裏路地の続きが行われると感じたほむらは銀八を呼ぶことにした。

 

 そして、跨道橋で杏子とまどか、そしてマミはさやかのソウルジェムを一時期失う事態を通して、魔法少女の秘密を知ることになった。

 

 そのあとほむらは、銀八にソウルジェム()と肉体に分かれた際、痛覚の遮断が出来ることを拠点である自分の部屋で話した。

 

 痛覚遮断の話の際、銀八の表情はいつも通り普段のやる気のない表情に見えたが、眼は静かに怒りを燃やしていた。

 

 ほむらは銀八のその瞳は頭の中に焼き付いた。

 

 

                      ***

 

 

 そして、運命の歯車が回り始める。

 

 一つ目の歯車はさやかの親友が幼馴染に思いを寄せていること。

 親友(仁美)に告げられた際、さやかは魔法少女であることを後悔して、魔女退治の際に痛覚遮断を使用したこと、そしてまどかとマミに暴言を吐いてしまったことが、さやか自身の心に黒い影が差しこんだ。

 

 二つ目の歯車が、幼馴染と親友が両想いになったことだった。

 さやかは魔女の使い魔に八つ当たり半分で退治していた。

 銀八の手を跳ねのけるぐらい、精神的に参っていた。

 

 そして、最期の歯車がさやかが当てもなく見滝原を彷徨い、電車に乗り合わせた二人のホストの会話だった。

 そのホストは、今回担当したホステスを金ズル兼ペット扱いの会話にさやかがキレていた。

 

 その結果、杏子と銀八の奮闘むなしくさやかは魔女化した。

 

 

 この事態の際ほむらと銀八を除く少女たちは、魔法少女はいずれ魔女になる事実に耐えられず、マミは心中を図ろうとしたが、銀八がこれを阻止した。

 

 マミを鎮圧しようとしたほむらは驚いていた。

 銀八の動きにーー。

 「誰も死ぬ必要のねェ簡単な選択肢がもう一つ」

 あきらめの悪さにーー。

 「さやかの奴を助けるって選択肢がよ」

 覚悟をーー。

 

 

 冷静を装っていたほむらはもちろん、まどかとマミは当然戸惑っていた。

 杏子は銀八の案に乗っていた。

 

 その後、銀八達は魔女化したさやかが張った結界の反応を探した。

 

 そして、運命に挑む戦いが始まった。

 

 

 

                     ***

  

 

 魔女化したさやかが展開した結界内は彼女の心情を表しているかのようだった。

 

 いつも魔法少女たちは魔女を倒しているが、今回は魔女を人間に戻す試みに挑んでいるため苦戦は免れなかった。

 

 銀八と杏子は魔女が繰り出す車輪攻撃を防ぎ、ほむらは後方支援兼まどかの護衛に集中していた。

 

 

 魔法少女ではないまどかはさやかに呼びかけることに専念した。

 いや、することしかできなかった。

 

 しかし、マミは魔法少女の秘密を知ったため、さやかを魔女から魔法少女に戻せるか困惑していた。

 

 それでも、マミ以外はさやかを元に戻すことをあきらめなかった。

 

 しかし、防戦に徹した戦いは長期化すれば雲行きが怪しくなっていった。

 

 魔女化したさやかが繰り出す車輪をさばききれなくなった。

 銀八と杏子は身体に直撃していき、まどかは大声で呼びかけても魔女は(さやかは)答えなかった。

 

 身体的ダメージと疲労を蓄積していった銀八と杏子はだんだん動きが鈍くなるばかりだった。

 

 そして、連続で魔女の車輪が杏子の身体を打ちのめしていった。

 

 「・・・・・・!」

 ほむらは盾に収納した爆弾を取り出し、時間停止(固有魔法)を発動させ魔女をーーさやかを爆殺しようと決意した時だった。

 

 「どうしたよ、そんなモンじゃ俺ァ止められねーぞ・・・・・・!」

 

 ほむらは聞こえた声を探していくと、そこにはーー。

 魔女が繰り出した車輪を身体に受けてもなお、腕と体、そして頭部に流れる血を拭いもせずに、立ち上がる銀八の姿があった。

 

 (あの車輪(攻撃)を喰らってるのに・・・・・・! 普通の人間が喰らったら間違いなく死んでるのに、満身創痍の状態なのに立ってるなんて!?)

 

 ほむらは、信じられない驚愕の光景に唖然としていた。

 

 しかし、銀八の行動はそれで終わらなかった。

 

 銀八は、魔女の攻撃が杏子に集中し始めた時にためらわず、体を盾に杏子を庇っていった。

 

 満身創痍(血だらけ)の身体で虫の息のはずなのに、最悪命を落としてもおかしくないはずなのに、杏子に集中していた攻撃を喰らってもなお銀八は立っていた。

 

 「銀時・・・・・・あなた・・・・・・!!」

 

 銀八(銀時)が杏子を庇い続ける姿にことばを失い、ようやく絞り出したほむらの声は銀八の本名()を呼んでいた。

 

 そんな時、戦意喪失のうえ傍観状態のマミがたまらずに銀八に叫んだ。

 

 「なぜ・・・・・・立ってられるの・・・・・・どうしてそんな傷で・・・・・・!」

 

 マミの問いかけはほむらからしたら至極当然だった。

 

 何故銀八は魔女の攻撃を喰らってもなお立ち上がり、その上倒れた杏子を庇うために体を盾にしてもなお立ち上がっていた。

 

 そんな銀八の答えはーー。

 

 「気に食わねぇんだよ・・・・・・ダチ公の魂を弄んで食い物にしやがったあの野郎(キュゥべえ)がな」

 

 銀八の言葉にほむらは、お菓子の魔女の結界最深部に至るまでの銀八の行動を思い出していた。

 

 (銀八(銀時)あなたは、あの時の魔女(お菓子の魔女)に戦いを挑んだのは、巴マミを救うためだったわね)

 

 満身創痍の状態でもなお立ち上がる()の背中を見てほむらは銀八の行動理念を考えていた。

 

 (最初は魔法少女(私達)と魔女の戦いに巻き込まれたのにもかかわらずに彼は魔法少女(私たち)の秘密を知ってもなお、私たちを救おうとしていた・・・・・・)

 

 ほむらは銀八に魔法少女のことを少しづつ話して、魔法少女の秘密と自分の正体と目的を打ち明けて拒絶するどころか、自分から頸を突っ込んで自分たちに関わっていったのだ。

 

 そして、銀八はどこかで見ているであろうキュゥべえに向けて言い放った。

 

 「どっかで見てんだろ無限残機、俺たちが無駄な努力をしてるとでも思ってんだろうがな・・・・・・一つ言っておくぜ」

 

 ほむらは一呼吸を置いて真っ直ぐに、ながれる血を拭わず木刀を構え直した(銀時)の姿が目から離れなかった。

 

 「人間の魂を甘く見るんじゃねーぞコノヤロー」

 

 キュゥべえに対する宣戦布告のごとき言葉にほむらの体に力が流れるような感覚に内心震えた。

 

 そう、これは単純にさやかを魔女から魔法少女に戻す戦いではない、キュゥべえが生み出した運命(絶望)に抗う戦いだった。

 

 

 銀八の言葉にほむらは魔女の爆殺(諦めの手段)を撤回した。

 

 そして・・・・・・銀八の言葉を聞いてマミはーー。

 

 「・・・・・・私も戦うわ」

 

 ほむらはマミの顔を見て、顔つきが変わったことに驚いていた。

 

 諦めと戦意喪失を含めた顔から決意と戦意を取り戻した顔へと変わっていった。

 

 

 その時、戦況とほむら達の空気が変わった。

 

 

 魔女の車輪(遠距離攻撃)をマミのマスケット銃で捌ききられた魔女は自分の得物である剣できりかかろうとした時、銀八と杏子がそれぞれの得物で魔女の剣を受け止めた。

 

 「・・・・・・残念だったな」

 「得物を使って俺たちと戦おうなんざ百年早ェぞ」

 

 満身創痍の二人はそれぞれの得物で魔女の剣を力ずくではじき返した。

 

 

 そして、まどかは何度も何度も叫んでも魔女には届かなかった、その結果まどかの喉は潰れかかっていた。

 

 

 だがしかし、 まどかに代わってさやかに呼びかける者が今ーー。

 

 

 「聞き分けがないにもほどがあるぜ・・・・・・さやか! アンタ・・・・・・信じてるって言ってたじゃないか! この力で人を幸せにできるって! 自分の選んだ道に後悔なんかしないって!」

 

 「美樹さん! 私たちの声が聞こえないの!」

 

 「美樹さやか、あなたの願いは何だったのか・・・・・・忘れたわけじゃないでしょう!」

 

 杏子とマミ、そしてほむらがさやかに声を張り上げながら呼びかけていた。

 

 それでも、魔女(さやか)には届かなかった。

 

 

 そんな中で、銀八はーー。

 

 「・・・・・・分かってんだよ、テメーがそう簡単に戻って来やしねェてことなんざ」

 

 ほむらは息を切らしつつ言葉を紡ぐ侍を見つめた。

 

 ほかの三人も同じく銀八を見つめた。

 

 銀八は魔女(さやか)に真っ直ぐな目を向けながら言葉を続けた。

 

 その様子に四人は目が離せなかった。

 

 銀八が紡ぐ言葉を一言一句聞き逃してはならないと直感じみたものが四人に働いていた。

 

 「さやか、テメーが何を勘違いしているかは知らねーが・・・・・・戻る場所があるじゃねーか、笑っちまうほど近くに、手を伸ばせば簡単に届く距離によ・・・・・・」

 

 そう銀八は少し間を置き、一呼吸して叫んだ。

 

 「今は俺たちがテメーの居場所だ・・・・・・・戻ってきやがれ! さやかァァァァァァァ!」

 

 

 銀八の叫びに反応して、魔女の攻撃が激しさを増していった。

 

 魔女が繰り出す車輪はほむら達めがけて繰り出された。

 

 それでもなおーー。

 

 銀八と杏子、戦線復帰したマミが魔女が繰り出した車輪(攻撃)をさばき続けた時だった。

 急に魔女の動きが止まった。

 

 突然のことに全員があっけにとられていた。

 

 「何だアイツ・・・・・・腹でも壊しやがったのか? ん?」

 

 (そんなわけないでしょ! でも、確かに・・・・・・こんなこと今まで一度もなかった)

 

 銀八の見当違いの見解にほむらは内心ツッコミを入れながら魔女が突然勢いを止めたことに困惑した。

 

 その時だった。

 

 『撃って・・・・・・!』

 

 突如、ほむら達の頭に声が響いた。

 

 (・・・・・・まさか!)

 

 ほむらは声の主に騒然とした。

 

 「さやかちゃん!」

 

 まどかが声の主、さやかの声だと確信して叫んだ。

 『これ以上みんなを傷つけるなんて私にはできない、だから・・・・・・!』

 

 ほむらは驚愕した。

 (こんなことって・・・・・・! 魔女になっているのに、人間だったころの意思が戻ったっていうの!? でも、確かにこの後のことを考えてなかった)

 

 ほむらは今、心を取り戻した魔女(さやか)の言う通り、人間の意識を取り戻したこと自体、本当の“奇跡”なのだ、いつ心を失うのかわからない。

 何よりもーー。

 「ふざけんな! そんなことしたらアンタがどうなるのか分かってんのかよ!」

 

 (杏子の言う通り、魔女を倒したら美樹さやかの意識は消えてグリーフシードを残して消えてしまうかもしれない、その結果、待ち受けるのは杏子と巴マミのどちらかが魔女化(絶望)してしまう可能性だってある)

 

 ほむらはこの状況が危険な綱渡り(ハイリスク)によって、希望から絶望への相転移の二次災害になりかねなかった。

 今の状況が今まさにその分岐点に立っていることを肌で、経験で感じていた。

 

 『危険なのは分かってる・・・・・・でも、最期はみんなに賭けてみたいの』

 しかし、心を取り戻した魔女(さやか)は諦めていなかった。

 『散々迷惑を懸けちゃったけど、あと一度だけ・・・・・・私のわがままを聞いてくれないかな?』

 ほむらは内心緊張が走っていた。

 (私だけじゃない、杏子も巴マミ、そしてまどかも今の状況に戸惑ってる、魔女を倒せば・・・・・・美樹さやかに戻るか、もし戻らなかったら美樹さやかを殺した事実を今この場にいる私たちが背負う結果に・・・・・・)

 ほむら達は、未知の領域(ありえない奇跡)に内心足がすくんでいた。

 

 

 しかし、一人だけ違う質問を魔女(さやか)に投げかけていた。

 「一つだけ確認するぜ、明日学校休みやがったら今学期の評定は全部二だからな」

 「!」

 (銀時・・・・・・あなた!)

 ほむらは銀八(銀時)の顔を見た。

 その顔は、諦めでも投げやりでも、ましてや自信に満ちた顔ではない。

 只、目の前の魔女(さやか)の覚悟に応えて、真っ直ぐに見据えた。

 侍の目だったーー。

 『・・・・・・約束する・・・・・・必ず・・・・・・学校行くから!』

 

 さやかは約束(覚悟)を銀八の宣言した。

 「上等じゃねーか・・・・・・俺もテメーの魂に賭けるぜ」

 

 その瞬間、銀八は木刀を片手に光のごとき一閃を魔女の顔面に食らわせた。

 

 かつてない断末魔を上げながら魔女は倒れ、結界が崩壊していった。

 

 「結界が消えているということは・・・・・・魔女は・・・・・・!」

 結界の崩壊は魔女が倒されたということ、ほむらは魔女の死体を確認した。

 まどかとマミ、杏子はうろたえながらも祈ることしかできなかった。

 

 

 そして、何の変哲のないグリーフシードが放出された。

 「グリーフ・・・・・・シード・・・・・・」

 (そんな・・・・・・美樹さやかは、心を取り戻したのに・・・・・・・避けられないとでも言うの?)

 

 ほむらは、ついさっき起こった魔女が心を取り戻す奇跡にある種の期待があった。

 心を取り戻したらグリーフシードではなく、ソウルジェムとなって現れるのではないかと。

 しかし、目の前のグリーフシードが残酷な現実を突きつける。

 魔女になった魔法少女は決して元に戻らないという絶望(現実)を・・・・・・。

 

 しかし、奇跡は終わらなかった。

 

 突如、グリーフシードが青く輝きだした。

 (これは・・・・・・一体!?)

 ほむらは時間逆行(今までの経験)でグリーフシードが輝く事態に困惑した。

 

 

 

 徐々に輝きが強くなり魔法少女の三人とまどかと銀八は目もあけていられない閃光となって目をそらした。

 

 そして、閃光が収まり全員が目を開くとグリーフシードはーー。

 (これは、美樹さやかのソウルジェム!? )

 ほむらはすぐさま、ソウルジェムを拾い上げ確かめた。

 (この魔力のパターンは間違いなく、美樹さやかのソウルジェム、元に戻ったの!?)

 

 魔力と青く輝く宝石を確かめ、ソウルジェムだと確認した。

 

 「おい、どうなんだ!? それは・・・・・・さやかの・・・・・・」

 「ええ、間違いなく、美樹さやかのソウルジェムよ」

 ほむらは、杏子の言葉に本物のソウルジェムだと答え、まどかに渡した。

 

 

 まどかはほむらにソウルジェムをさやかに持たせれば息を吹き返すのかと確かめた。

 ほむらは頷いたが、困惑していた。

 杏子は声を上げながらもほむらに聞いた。

 杏子は跨道橋の前例を上げたがほむらは戻ってこれる距離と全速力で戻ったことでできたことだと話した。

 

 そして、まどかはさやかにソウルジェムを握らせた。

 

 さやかの身体はーー。

 まず指がピクリと動き、瞼を徐々にあけていき、息を吹きかえした。

 

 まどかは息を吹き返したさやかに抱き着き、杏子は勝気に、マミは泣きそうな顔で喜びの笑みでさやかを迎えた。

 

 ほむらは無表情でもさやかにことばを懸けた。

 内心、安堵に満ちていた。

 

 そしてそのあと、深夜の時間帯であるためか銀八は魔法少女の喜びの表情を見た後、立ち去ろうとしていた。

 

 その後、杏子に呼び止められ銀八に感謝の言葉を伝え、銀八はそのまま立ち去って行った。

 

 (銀時・・・・・・あの体で、戻れるの?)

 ほむらは銀八(銀時)の様子が気になりだした。

 さやかを助けるために魔女の攻撃をさばき続けた際、深手と疲労が蓄積していたので気になっていた。

 

 「私は坂田先生に付き添っていくわ、彼一番重傷だから」

 

 そうまどか達に伝え、銀八(銀時)の後を追った。

 

 

 

 ほむらの予感通り、侍は道端で倒れかかっていた。

 

                      ***

 

 

 ほむらは銀時の肩を支え、自分の部屋に入った。

 

 銀時の治療をするためだった。

 

 「銀時、ソファーに座れる?」

 「あぁ」

 「まってて、今救急箱持ってくるから」

 

 ほむらは銀時を円形のソファーに座らせ、救急箱を取りに行った。

 その後、銀時の身体、腕、太もも、頭部に包帯を巻いた。

 

 「ホントあなたは無茶をするわね。命が惜しくないの?」

 「死ぬつもりもないし、投げ出すつもりもねーよ」

 ほむらは包帯まみれの銀時にそう投げかけた。

 銀時は相変らず、あっけらかんと答えた。

 

 だが、ほむらはそう聞き流せるほど冷静ではなかった。

 

 「ふざけないで!! 今まで黙っていたけど、あなたは普通の人間なのよ!? 魔女に立ち向かうなんて自殺行為以外のなにものでもないわ!!」

 

 ほむらは柄にもなく声を荒げた。

 今までの魔法少女たち(ほむらたち)の関わりの中での疑問が爆発した。

 

 ほむらは自分がまきこんだとはいえ、魔法少女と魔女の戦いに銀八(ただの人間)が関わるのはおかしすぎた。

 (銀時、あなたは私たちと関わらずに逃げる選択肢だってあった筈なのに、それどころか、自分から巻き込まれていって、私たちを助けようと行動している)

 

 ほむらは今まで、銀時に協力関係を結んだ際、銀時の行動、只ひたすら魔法少女たちを救おうとする行動に疑問があった。

 

 (まるで、何にでも首を突っ込んで身体を張って、他人の大切なものを護るような行動は償いの様に、自分自身に罰を与えているような行為、そう感じるのはどうして? あなたを突き動かすのはなんなの?)

 

 そして、キュゥべえに対しての怒りがほむらが抱いていた銀時への疑問が大きくなっていく結果へとなっていた。

 

 銀時は髪を掻きながらため息をついた。

 まるで観念したかのように、ほむらの問いに答えた。

 「関わらなくても、俺ァ死ぬんだよ」

 「え?」

 「俺にはなァ、心臓より大事な器官があるんだよ、そいつァ見えねえが確かに俺のどタマから股間をまっすぐぶち抜いて俺の中に存在する。そいつがあるから俺ァ真っ直ぐ立っていられる。フラフラしてもまっすぐ歩いていける。ここで立ち止まったら、そいつが折れちまうのさ。 魂が、折れちまうんだよ」

 (これ、酔狂を通り越してバカよ)

 銀時の話を聴いてほむらは心の中で呟きながらも何かが心の中で染み渡ったような感覚を感じた。

 

 「心臓が止まるなんてことより、俺にしたらそっちの方が大事でね。こいつァ老いぼれて腰が曲がってもまっすぐじゃいけねー」

 

 銀時はそう言いながら眠ってしまった。

 

 ほむらは銀時に毛布を掛けた。

 

 

 「あなたはとんでもない、ロマンチストね。 それで死んだらあなたの帰りを待ってる人だって悲しむわよ?」

 

 

 ほむらはそう言いながら銀時の手を握った。

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 





 「もう誰にも頼らない」編の長編はこれで、終了とさせてもらいます。

 最後に、ジャンプリミックスの銀時のセリフを、お登勢のセリフはほむらの心の中で思った言葉で使わせてもらいました。

 今まで、退屈な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。

 それと、次の話は幕間の物語が入りますのでもう少しお待ちください。

 ご意見ご感想お待ちしております。


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幕間の物語
鹿目まどか編 


 第十一話に入る前に起こった幕間の物語、さやかを助け出した後にマミのマンションに泊まることになったまどかと杏子、そしてさやかはマミの部屋に現れたキュゥべえが現れたシーンから始まります。


 魔女から魔法少女に戻すことができたまどか達、その後銀八とほむらはそのまま現地解散となった。

 

 残りの四人は、マミのマンションに泊まることになった。

 

 

                       ***

 

 

 「ごめんなさい、サイズは合わないかもしれないけど寝間着は渡しておくわね」

 マミは三人に寝室にしまってある寝間着を渡した。

 「ありがとうございます。マミさん」

 まどかはマミに礼を言って寝間着を受け取った。

 「ごめんなさい、マミさん。 あたしを助けてくれた上に、部屋に泊めてもらっちゃって」

 「いいのよ、美樹さんが助かったのは私達には嬉しいことなの」 

 「しっかし、この部屋に入るのはあたしがへましてマミに助けられて以来かな」

 さやかとマミが会話している間に、杏子はそうつぶやいた。

 マミの部屋に入るのは冬の季節に魔女と戦いボロボロに倒れて、マミに拾ってもらって以来だった。

 さやかは、杏子のつぶやきを耳にしてあることを思い出していた。

 「そっか、杏子はマミさんの弟子だったんだっけ・・・・・・」

 「元な・・・・・・」

 さやかの言葉に杏子はそう答えた。

 

 「そういえば、杏子ちゃんは何時からマミさんと組んでたの?」

 まどかは杏子とマミが組んでた時期を聞いていた。

 「あぁ、そっかアンタには話してなかったな。 アンタたちと出会う前にマミと組んでたことと、別れたことを・・・・・・」

 杏子はまどかに自分とマミの間にあったことを話していなかったことを思い出していた。

 

 「そうだな、アンタにも話しておくか・・・・・・あたしがキュゥべえに契約したこととコンビを解消しちまった経緯も・・・・・・」

 杏子は目を伏せながら、話す決心をした。

 「杏子っ、いいの? その話をしても・・・・・・」

 さやかは杏子にそう聞いた。

 杏子の契約の経緯とその契約によってもたらされた結果を知ってたため、さやかは心配した。

 「いいさ、あんたのほかにマミも知ってるから」

 「え?」

 杏子の言葉に驚き、さやかはマミの顔を見た。

 マミは、さやかの顔を見て頷いた。

 「えぇ、というよりニュースで知ったの・・・・・・佐倉さんのご家族の・・・・・・」

 それ以上マミは言えなかった。

 その様子を見て、まどかは後悔した。

 「ごめん杏子ちゃん、私・・・・・・」

 まどかは杏子の心に踏み入ったことに謝った。

 「いいさ、この話は坂田銀八も知ってるから」

 「「「坂田先生も?」」」

 杏子の言葉に三人は驚いていた。

 「その話をする前に、まどかにあたしのことを話させてくれない? その後に銀八の話をするから」

 そう言ってさやかとマミを宥め、杏子は自分の過去をまどかに話した。

 

 魔法少女に成った経緯とマミとの関わり、そして契約の結果(家族の末路)とマミの別れをまどかに話した。

 

 「ごめん杏子ちゃん、私・・・・・・」

 「いいさ、それに今は不思議と心持が軽いんだ。 さやかを助けることができたからかな? 今は前を向いて歩けてるような気がするんだ」

 まどかの謝罪に杏子は落ち着きのある声で話した。

 「ちなみに、銀八があたしの過去を知ってるのはさやかに聞かせた廃教会の外で立ち聞きしちまった流れで・・・・・・」

 

 「ちょっと待って、何で坂田先生は立ち聞きしたの?」

 杏子の会話の流れでさやかが待ったをかけた。

 さやかは何故銀八が立ち聞きした流れになったのか分からなかった。

 しかし、疑問を口にしたことで思い当たることを思い出したかのようにさやかは頭を抱えた。

 「あたしが、休んだ時か・・・・・・」

 さやかは廃教会での杏子の過去を聞いた流れで、思い当たることはさやかが魔法少女の秘密の一つを知った時以降だったこと、そして杏子が様子を見に来た時の流れで銀八はそれを目撃して後を追ったのだと悟った。

 

 「あたしは気にしちゃいないよ、むしろある親子の話を聴いたんだ。 その後で考えたよ、本当にあたしは、親父・・・・・・父さんを見ていたのかなって・・・・・・」

 「ある親子?」

 さやかは杏子の話の流れで出てきた『ある親子の話』に食いついていた。

 「あたしは銀八(あいつ)から聞いただけで詳しいわけじゃないけどーー」

 そう言いながら杏子は銀八から聞かされた話を三人に語った。

 

 

 

                       ***

 

 

 

 「そっか、坂田先生がそんなことを・・・・・・」

 杏子から聞かされた『ある親子の話』を聞き終えたさやかは感慨深くつぶやいた。

 「血がつながっていても殺しあう親子がいるってどういうことなんだろう?」

 まどかは話の中に出てきた『血がつながっていても殺しあう親子』に困惑していた。

 

 「まぁ、最期に坂田先生が言ってた『どんな場所だろうと、どんな境遇だろうと、太陽(おひさん)はある』って話は只の前向きの言葉じゃないって今は思える話ね」

 

 マミは杏子に言った言葉に共感していた。

 残酷な真実を知り、乗り越えたマミにしか言えない言葉だった。

 

 「そうですね」

 まどかもマミの話には賛成していた。

 さやかも杏子も静かに頷いた。

 

 そんな時だった。

 

 「入っていいかい? 話があるんだ」

 聞き覚えのある声に四人は振り返った。

 ハッキリ言ってもいいくらいに顔も合わせたくもない存在がーー。

 

 部屋の窓の外にキュゥべえがいた。

 

 「キュゥべえ・・・・・・」

 

 四人は顔を合わせながらキュゥべえを入れるべきか入れないべきかを話し合っていた中で結局入れることにした。

 たとえ追い出したとしても、また話しかけてくると踏んでいたからだ。

 

 「ほむらちゃんが言っていたこと本当なの?」

 まどかはキュゥべえにそう尋ねた。

 「訂正するほど間違ってはいないね」

 「じゃああなたは、みんなを魔女にするために魔法少女に?」

 まどかの問いかけにほかの三人は緊張が走った。

 「勘違いしないでほしいんだが、僕らは何も人類に対して悪意を持っているわけじゃない、すべてはこの宇宙の寿命を延ばすためなんだ」

 

 「宇宙の寿命?」

 マミは困惑しながらキュゥべえの話を聴いていた。

 「君たちはエントロピーという言葉をしってるかい?」

 「エントロピー?」

 さやかがキュゥべえの言葉を復唱するようにつぶやいた。

 何を言っているのか分からないようだった。

 その様子にかまわずキュゥべえは話を続けた。

 

 「簡単にたとえると焚き火で得られる熱エネルギーは木を育てる労力と釣り合わないってことさ、エネルギーは形を交換するごとにロスが生じる。 宇宙全体のエネルギーは目減りしていく一方なんだ」

 いきなり宇宙全体と言われて四人は話が追い付かなくなっていた。

 それでも、キュゥべえはかまわずに話を続けた。

 「だから僕たちは、熱力学の法則に縛られないエネルギーを探し求めてきた、そうして見つけたのが魔法少女の魔力だよ」

 「テメェはいったい・・・・・・」

 杏子が怒りを込めてそうつぶやいた。

 「僕たちの文明は知的生命体の感情をエネルギーに変換するテクノロジーを発明した。 ところがあいにく当の僕らが感情というものを持ち合わせていなかった」

 キュゥべえは自分たちの星の技術を説明した。

 まるで、自分たちの発明が宇宙に貢献していると云わんばかりにーー。

 

 「そこでこの宇宙の様々な異種族を調査し君たち人類を見出したんだ。 人類の個体数と繁殖力を鑑みればーー一人の人間が生み出す感情エネルギーはその個体が誕生し成長するまでに要したエネルギーを凌駕する、君たちの魂はエントロピーを凌駕するエネルギー源たり得るんだよ」

 

 四人は黙ってキュゥべえの話を聴いていた。

 いや、理解できない上にしたくもなかった。

 それでもキュゥべえの話は終わらなかった。

 

 「とりわけ最も効率がいいのは第二次性徴期の少女の希望と絶望の相転移だ、ソウルジェムになった君たちの魂は燃え尽きてグリーフシードへと変わるその瞬間に膨大なエネルギーを発生させる、それを回収するのが僕たちインキュベーターの役割だ」

 

 そう話し終えたキュゥべえ。

 今の話において、宇宙規模の話の流れで追いついていなかったが、分かっていることがあった。

 「・・・・・・私たち消耗品なの? あなたたちのために死ねっていうの?」

 まどかは今までの経緯で魔法少女の戦い、その過程での秘密を知っていき、その末路も目の当たりにした。

 そして、まどかの中に怒りの炎が燃え上がっていた。

 その怒りはーー。

 「この宇宙にどれだけに文明がひしめき合い、どれほどのエネルギーを消耗しているか分かるかい? 君たち人類だっていずれはこの星を離れて僕たちの仲間入りをするだろう、その時になって枯れ果てた宇宙を引き渡されても困るよね? 長い目で見ればこれは君たちにとっても得になる取引のはずだよ」

 キュゥべえの発言によって爆発した。

 「バカ言わないで・・・・・・そんな訳の分からない理由で、マミさんやさやかちゃん、杏子ちゃんがあんな目にあって・・・・・・坂田先生が居なかったら死んでたかもしれないのに、あんまりだよ、酷すぎるよ」

 まどかは静かな声で怒りをあらわにした。

 

 「僕たちはあくまで君たちの合意を前提で契約してるんだよ、それだけでも十分に良心的なはずなんだが・・・・・・」

 「みんな騙されただけじゃない!」

 まどかの怒号で三人はソウルジェムを取り出しーー

 マミはハンドガン型のマスケット銃、さやかは短刀型のサーベル、杏子は小型の短槍に変形させキュゥべえに突き出した。

 

 「あなたは私たちの命を何だと思ってるの」

 マミはそうキュゥべえに問い詰めた。

 「騙す、という行為自体僕たちには理解できない、認識の相違から生じた判断ミスを後悔するとき、なぜか人間は他者を憎悪するんだよね」

 「確かに取り返しのつかない判断ミスなのは認めるさ、でも少なくともテメーの行為は結果的にだましてるのと同じなんだよ!」

 「そのうえまどかに契約を持ち込み続けるなんて、これ以上まどかに近づけさせるわけにはいかないよ」

 「・・・・・・あなたの言ってることついていけない、全然納得できない」

 さやかとまどかはそれぞれの心情を口にした。

 しかし、キュゥべえはーー。

 「君たち人類の価値基準こそ僕らは理解に苦しむなぁ、今現在で69億人、しかも4秒に10人ずつ増え続けてる君たちが、どうして単一個体の生き死ににそこまで大騒ぎするんだい?」

 とまどか達に告げていった。

 まどか達はこうまで来ると、人類と相容れない存在だと悟った。

 

 「そんな風に思ってるならやっぱりあなた、私たちの敵なんだね」

 まどかはキュゥべえの言葉を受け入れないと云わんばかりにそう告げた。

 「これでも弁解に来たつもりだったんだよ、君たちの犠牲がどれだけ素晴らしいものをもたらすのか理解してもらいたかったんだが・・・・・・どうやら無理みたいだね」

 

 「・・・・・・当たり前でしょ」

 まどかはキュゥべえの言葉に関心示さず拒絶した。

 キュゥべえは切り替えるようにあることを告げた。

 「まどか、いつか君は最高の魔法少女になり、そして最悪の魔女になるだろう、そのとき僕らはかつてないほど大量のエネルギーを手に入れるはずだーー」

 

 キュゥべえはいったん区切りもう一つの要件を告げた。

 

 「美樹さやかが、魔女から魔法少女に戻ったこと自体は本来不可能なはずだけど坂田銀八の存在は興味深い、それについても僕らにとっても有益だ」

 「!?」

 「何、だと!」

 

 さやかは驚愕し、杏子も同じ心情のためそうつぶやいた。

 

 「この宇宙のために死んでくれる気になったら、いつでも声をかけて、待ってるからね」

 そう言ってキュゥべえはマミの部屋から去っていった。

 

 「ふっざけんな!! あたしらをこんな目にしたのにも飽き足らず、まどかを魔法少女にすることを諦めてねーなんてタチ悪すぎだろ!!」

 杏子はキュゥべえの話を統合して、怒りが込みあがっていた。

 その時さやかはあることに気付いていた。

 「もしかして、私の契約をきっかけにまどかの契約を誘発させるつもりだったんじゃ・・・・・・!」

 さやかの推測を聞いたとたん、まどかはキュゥべえの行動を振り返っていた。

 

 マミとお菓子の魔女の戦い、さやかと杏子の殺し合い、そしてさやかを元に戻そうとした時にさえキュゥべえは言葉巧みに契約を迫っていた。

 

 「でも、今回は鹿目さんを契約するだけではなさそうね、さっき言った美樹さんを元に戻せたことはキュゥべえにはありえなかったことだって」

 マミは今までの話と今回のさやかの魔法少女に戻せる事は本来ありえないことだと言っていた、つまりーー。

 

 「坂田先生を・・・・・・利用しようとしてる?」

 まどかはふとそうつぶやいた。

 

 「明日転校生に、いや・・・・・・ほむらに今回あったことを話そう」

 さやかは今回来たキュゥべえの話を明日の学校でほむらに話すことを三人に提案した。

 その提案に全員が頷いた。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 




 今回の話は最終決戦前の話をまどか視点から始まりました。

 フィルムブックとザ・ディファレントストーリーを総動員して書かせてもらいます。

 次は暁美ほむら編が味まります。

 ご意見ご感想をお待ちしております。


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暁美ほむら編

 次に、ほむらが銀時の看病を終えたところから始まります。
 お楽しみに.


 ほむらは銀時の治療を終えた後に明日に備えて休むことにした。

 

 その時だった。

 

 「やあ」

 

 「!?」

 

 ほむらの部屋に、キュゥべえがいつの間にか侵入していた。

 「まさか、美樹さやかが魔女から魔法少女に戻るなんて興味深いものを見させてもらったよ」

 キュゥべえがそう述べた後、ほむらはあることを確認した。

 

 「・・・・・・魔法少女達(私達)には美樹さやかを救える望みがあったの?」

 

 「まさか、本来は不可能だよ。 魔女が魔法少女に戻るどころか、魔女が人間の心を取り戻すことなんてね」

 

 キュゥべえの言葉にほむらは確信した。

 

 (やっぱり、美樹さやかが元の魔法少女に戻ることは本来、不可能だったのね)

 

 今までの『時間逆行』(繰り返し)の経験を経てありとあらゆる可能性をワルプルギスの夜に費やした際、作戦を立て、武装も暴力団や軍事基地から調達していた。

 

 場合によっては魔女を魔法少女に戻すなんていざとなれば試していたかもしれない。

 

 しかし、目の前のキュゥべえ(インキュベータ―)は感情は存在せず、魔法少女(人間)から見たら残酷な合理性で行動している。

 

 ゆえに『嘘』をつくという非合理なことはしない。

 

 何故確かめたのかというと、キュゥべえが言ったように不可能なことを『可能』にした存在(人物)が居たからだ。

 

 坂田銀時、この世界の日本の歴史ではない、異なる歴史を歩んだ日本に居た侍が起こした奇跡だからだ。

 

 しかし、ほむらが銀時のことを考えている間に、キュゥべえはほむらの秘密に気づいていた。

 

 「時間逆行者、暁美ほむらーー、過去の可能性を切り替えることで幾多の平行世界を横断し君が望む結果を求めてこの一カ月間を繰り返してきたんだね。 君の存在が一つの疑問に答えを出してくれた、なぜ鹿目まどかが魔法少女としてあれほど破格の素質を備えていたのか・・・・・・」

 

 「・・・・・・」

 ほむらは分からなかった、なぜまどかの素質についての話になったのか?

 しかしその答えはすぐにすぐ知ることになる。

 

 「今なら納得のいく仮説が立てられる。 魔法少女としての潜在力はね、背負い込んだ因果の量で決まってくる、一国の女王や救世主ならともかく、ごく平凡な人生を与えられてきたまどかにどうしてあれほど膨大な因果の糸が集中してしまったのか不可解だった。 だが・・・・・・ねぇほむら、ひょっとしてまどかは君が同じ時間を繰り返すごとに強力な魔法少女に行ったんじゃないのかい?」

 

 「・・・・・・」

 

 キュゥべえの言葉にほむらは時間逆行の中で、まどかの力が初めて会った時よりも力が上がっていった事を思い出した。

 

 「・・・・・・やっぱりね、原因は君にあったんだ、正しくは君の魔法の副作用というべきかな」

 「・・・・・・どういうことよ?」

 ほむらは、まどかの潜在能力が、何故自分の魔法の副作用なのか理解できなかった。

 しかし、キュゥべえの仮説にーー。

 

 「君が時間を巻き戻してきた理由はただひとつ、鹿目まどかの安否だ。 同じ理由と目的で何度も時間を遡るうちに君はいくつもの平行世界を螺旋状に束ねてしまったんだろう、鹿目まどかの存在を中心軸にしてね。 その結果、決して絡まるはずのなかった平行世界の因果律がすべての時間軸のまどかに連結されてしまったとしたら・・・・・・彼女の途方もない魔力係数にも納得がいく、君が繰り返してきた時間その中で循環した因果のすべてが巡り巡って鹿目まどかにつながってしまったんだ。 あらゆる出来事の元凶としてね」

 

 背筋を凍らせた。

 

 「お手柄だよほむら、君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」

 

 キュゥべえの言葉を聞いてほむらは裾を握りしめ悔しさに押しつぶされそうになっていた。

 

 その時だった。

 

 「オイ」

 

 ほむらはその声にとっさに反応して振り返ると包帯だらけ男がソファーに居なかった。

 

 その男は今ーー。

 

 「おちおち眠れねーじゃねーか」

 

 キュゥべえの頭を鷲掴みしていた。

 

 

 「テメーの仮説だの、元凶だの、うるせー声で話しやがって、市長演説ですかコノヤロー」

 

 「僕は安眠妨害してるつもりはないけど、話声がうるさかったのなら謝罪するよ、ただ・・・・・・」

 無表情のまま謝罪されても説得力のないキュゥべえは話を続けた。

 

 「ほむらの正体は魔法とまどかの存在で分かったけど、君は全くの謎だ? 最初は何故か僕のことが見えているのに驚いていた、でも君は直ぐに順応していた。 そして、君の非合理的な行動があり得ない事象を引き起こしていた、そして普通の人間が魔女に戦いを挑む行動は自殺行為にほかない」

 

 キュゥべえからしても理解できなかった。

 

 「そして、君は魔女になった美樹さやかを魔法少女に戻した、あり得ないことを君はやってのけた。 君は一体何者なんだい?」

 

 そんなキュゥべえの問いに、銀時はーー。

 

 「そんなに知りたいなら教えてやらー、俺はーー」

 

 少し間を置き、告げた。

 

 「宇宙一馬鹿な侍だコノヤロー」

 

 

 そう言って、キュゥべえ連れて外に出た。

 

 

                     ***

 

 

 

 それからしばらくして、銀時は部屋に戻ってきた。

 

 「銀時、キュゥべえは・・・・・・」

 

 ほむらの問いかけに銀時はーー。

 

 「あぁ、思いっきりぶっ飛ばしてきた」

 

 

                     ***

 

 

 

 

                     回 想

 

 

 

 

 「君は何をする気だい? 僕を殺してもまた新しい僕が出てくるだけだよ? わけがわからないよ?」

 キュゥべえはたとえひき肉のごとく潰しても新しいキュゥべえは出てくる、そんなのは銀八も承知のはずだと考えていた。

 

 しかし、銀時(銀八)は現段階の手を使うことにした。

 

 「てめーを外にぶっ飛ばすだけだ、ついでに冥土の土産に教えてやらー」

 そう言いながらキュゥべえを天高く投げ、木刀をバットの様に構え、そしてーー。

 

 「バッター、坂田銀時(・・)・・・・・・」

 

 「!?」

 

 キュゥべえは天高く放り投げられながら、銀八の本名を知ることになる。

 

 「ぶっ飛べ無限残機(キュゥべえ)ェェェェぇェェ!!」

 

 その名を聞いたとたん、キュゥべえは木刀のフルスィングでぶっ飛んだ。

 

                   

 

                     ***

 

 

 話の流れを理解したほむらは少し暗い顔をした。

 

 (私が、まどかを・・・・・・)

 

 キュゥべえの仮説を聞いてこれ以上後がないと知ってしまったのか、あまりにも苦悩の表情をしていた。

 

 その時だった。

 

 

 「オイほむら」

 

 

 ほむらは銀時の呼び声に顔を上げた。

 

 「まどか以外の奴らに、もうそろそろてめーのこと話しな、少なくとも、デカブツを倒すことにゃ事欠かねーだろ今回」

 その言葉に、ほむらは頷いた。

 

 (それに、銀時のことを話さなければならないかもしれない・・・・・・)

 

 

 そう予感しながらも、ほむらは明日に備えて休むことにした。

 そんな時だった。

 

 「ほむら」

 銀時の呼び声に、ほむらは振り返った。

 

 「ケガの治療、ありがとな。それじゃ、自分の部屋に戻ってらぁ」

 そうほむらに礼を言って、銀時は自分の部屋に戻った。

 

 「礼を言うのは・・・・・・私よ」

 ほむらはそう言いながら、自分の部屋に戻った。

 

 自分の顔の頬を淡い朱色に染めながら・・・・・・。

  

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

  

 




 以上が、魔法少女の幕間の物語の内容です。

 文面が短くてすみません。

 今回は第11話『最後の道しるべ』の冒頭シーンの話を無理やりオリジナル展開に仕立てただけです。


 次回はようやく本編始まります。


 運命が変わり始めた魔法少女達、そして最後の戦いが始まる。

 ご意見、ご感想 よろしくお願いします。

 


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最期に残った道しるべ編
他人の過去は場合によって超新星爆発


 はい、ようやく11話に入りました。

 原作ではマミとさやか、杏子が死亡してましたが、ほむらの予想を超えた物語へと進みました。

 今回はとうとうまどか達は銀八(銀時)の正体を知る話です。

 まどか達のリアクションをお楽しみに!


 「銀時、そんな体で学校に? 今日は休んでも・・・・・・」

 ほむらは銀時のケガの具合を見てそう心配した。

 「あー、どうにかなんだろ? エスカレーターからズッコケたって言えばいいし」

 対して銀時はそうほむらに言った。

 

 「いや無理よ、坂田先生・・・・・・早乙女先生にそんな言い訳は通じないと思うから」

 そうほむらは、銀時に説明ツッコミを入れた。

 「そん時はそん時だ、学校に遅れるぜ・・・・・・」

 

 そう言いながら、銀時はアパートの扉を開くが・・・・・・。

 「待って、今日は雨が降るわ傘の準備、した方がいいわ」

 そう、ほむらは今日の天気について銀時に話した。

 

 

 その後、早乙女先生やクラスメイトの全員が銀時の怪我の様子を見たリアクションは騒然としていたのは過言ではない。

 

 「うーし、じゃあ出席取るぞー・・・・・・」

 

 しかし、銀時はそんなことは構わず、クラスメイトに出欠を取り続けた。

 

 「・・・・・・次ィ、美樹さやか―」

 銀時がさやかの名前を呼んでいた。

 しかし、当のさやかはーー。

 

 「すぅー・・・・・・すぅー・・・・・・」

 寝息を立てて眠っていた。

 「お、起きてさやかちゃん!」

 さやかを起こそうとするまどかは体をゆすった。

 「あー、寝かせとけ寝かせとけ」

 銀時はそうまどかに言った。

 まどかはさすがに戸惑った。

 「むにゃむにゃ・・・・・・」

 銀時の言葉に甘えてるかのように、さやかは居眠りし続けた。

 その様子を見た銀時はお灸をすえることにした。

 「えー・・・・・・美樹さやかは感心・意欲・態度が非常に悪いため落第・・・・・・っと」

 そう銀時は告げるとーー。

 「嘘です、寝てません。起きてます!」

 飛び上がるような勢いで起きたさやか。

 「いやいいよ寝てろって、そのままもう一年この教室で寝てていいから」

 そう、冗談には聞こえない発言でさやかは首を横に振った。

 「それだけは勘弁して! やる気その気大好きだから! 意欲だけはだれにも負けませんから!」

 さやかの必死の弁明と銀時の掛け合い、クラスが朝から暖かい笑いに包まれた。

 

 三日間の無断欠席が嘘のような空気にほむらは浸っていた。

 

 (今までの出来事が嘘のような光景ね、でも・・・・・・ここからが正念場ね)

 

 外の天気とは裏腹の暖かな光景を、嵐の前の静けさにしないために。

 ほむらは魔法少女に自分の正体と、目的を話すことを視野に入れていた。

 

 

                     ***

 

 

 放課後、ほむら達はほむらのアパートに集まっていた。

 

 「みんな、集まったようね」

 ほむらは集まった面子を見ていた。

 マミ、杏子、さやか、そして銀時の五人だった。

 

 その時、マミはほむらにある質問をした。

 「鹿目さん、呼ばなくてよかったの?」

 「えぇ、あの子は今までの出来事で魔法少女の真実を知ったわ。 でも・・・・・・」

 マミの質問にそう答えたほむら、しかしその表情は一瞬暗くなった。

 その表情を見て杏子は察しがついていた。 

 「あいつの性格上、分かっていても契約する可能性があるんだろ?」

 そう杏子はほむらに聞いた。

 その質問に、ほむらは沈黙しながら首を縦に振り頷いた。

 「暁美さん、あなたは何故私たちを知ってるの? これからワルプルギスの夜の対策の前に知っておきたいの・・・・・・」

 マミはそう、ほむらに聞いた。

 「分かってるわ、何故私が、あなた達のことを知っているのかをこれから話すわ」

 

 そうして、ほむらは自分がキュゥべえに契約した経緯とまどか達の関係を話していった。 

 その中で何故マミと衝突していたことや、さやかとは険悪関係になったのか、そして杏子と組んでいたのかを話していった。

 

 「そんなことが・・・・・・あなたが二度目の時間逆行の世界での私は佐倉さんを・・・・・・そして鹿目さんと暁美さんを道ずれにしようとーー」

 ほむらに聞かされた時間逆行の中で自分が仲間を殺して心中しようとしたことに驚愕した。

 事実、さやかを救おうと銀八が言い出すまでの自分の行いに今になって身震いした。

 

 さやかに至ってはーー。

 「ほむらの話を聞く限り、あたしの失恋って、やっぱり決まってたのかな? 結果私、魔女に・・・・・・」

 

 やはり、驚愕していた。

 しかも、ほむらに不信感を抱いていたのも同じだったためなおさらだった。

 

 「確かに、ほむらの話を聴く限り信じらんねーって前は言ってただろうけど、今までのことを踏まえて考えてみたら、納得できちまうな」

 杏子は今までの出来事を振り返りながら、ほむらの話が事実だと納得していた。

 そしてーー。

 

 「でも、この世界()のあたしは生きてるし、マミはあたしを殺さなかった。 それにさやかは魔法少女に戻れたからな、 今のあたしらはこうやってアンタの話に付いていけるわけだしね、概ね納得出来るよ」

 

 そう、杏子は全員に言った。

 さやかとマミは驚きながらも頷いた。

 

 ほむらは杏子の言葉に驚いた。

 「杏子、あなた・・・・・・」

 杏子が理性的に物事をはっきり言った上にマミを許したこと、そしてさやかを元に戻せたことを素直に言ったことに三人は驚いていた。

 

 杏子は三人の表情を見て不服そうに言った。

 「何だよ!? そのリアクションは!!」

 

 「私が、ワルプルギスの夜を倒すときに見滝原をあなたに任せるって言ったのは、あなたの攻撃的な性格を踏まえた上での同盟を結んだんだけど。 まさかの性格の変化に、つい・・・・・・」

 ほむらが杏子の性格の変化に戸惑ったことを話すと、杏子は心外だと云わんばかりに睨んだ。

 「何だよ、あたしが素直になっちゃ変ってか!」

 そうほむら達に抗議した杏子。

 その様子に銀八は宥めた。

 「まあまあ、落ち着け今回はなんかデカい魔女を倒すって話だろ、そのための集まりだろ」

 そう、杏子に宥めるように言った銀八。

 杏子は一旦落ち着くが、銀八の顔を見て思い出したこのように目の前の男に問い詰めた。

 

 「そいえばさ、この中でアンタは普通の人間なのに昨日重傷だったのに動けるぐらい、回復するのはさすがに変じゃない? て言うか、魔女に立ち向かった上に生還してるのはおかしいぞ!」

 息をつかせずに質問しまくる杏子に同調して、マミとさやかも参加した。

 「そうよ、私がお菓子の魔女に殺されそうになった時、坂田先生は私を助けた後にお菓子の魔女に食べられたのよね・・・・・・」

 マミの発言に杏子は驚愕した。

 「はぁ!? 喰われた!?」

 「本当に驚くのはその後だよ。 お菓子の魔女の上あごに木刀を突き刺してそのまま背中に沿って切り開くように出てきたんだから」

 さやかはその時の状況を思い出し、頭を抱えて話した。

 その話を聞いた後、杏子は昨日の戦いを振り返ってみると、思い当たる節があった。

 

 人魚の魔女(魔女化したさやか)が繰り出した車輪攻撃をさばききった動きに木刀を刀と変わらないように扱う太刀筋。

 そして魔女を相手にしているにも関わらず立ち向かっていたあの気迫は、まるで人外の存在を相手に戦いなれているかのような動きだった。

 

 杏子はそのことを振り返った後に面を向って白髪の天然パーマに尋ねた。

 「坂田銀八、アンタは一体何者なんだ?」

 

 その言葉に反応してか、ほむらが説明しようとした。

 「それに関してはーー」

 しかし、銀八が手で制した。

 「それは俺が話すよ、でねーと話が進まねーからな」

 

 そして、銀八は語る。

 自分が何者で、どこから来たのか、ついでにその世界と自分自身の職業をほむら以外の三人に話した。

 

 

                      ***

 

 

 

 「せ、先生が・・・・・・異世界から来た人間で、侍!?」

 「しかも、江戸から来たって・・・・・・!?」

 「そのうえ、その江戸が・・・・・・天人って奴が異星人が支配してるなんて・・・・・・」

 

 さやかとマミ、杏子がそれぞれの感想を言いながら驚愕した。

 ほむらは、各々の顔を見て三人の反応に納得していた。

 「三人の反応は正しいわ、私もそうだったから・・・・・・」

 ほむらは三人にそう話した。

 

 「しかも、本当は先生じゃなくて・・・・・・万事屋って言ったっけ、何でも屋の名前」

 さやかは話を整理するように『万事屋』の名を出した。

 「あぁ、俺は『犬の散歩から地球の平和を護るまで何でもやる』のが万事屋でな」

 銀時はそう決め台詞の様に話すがーー。

 「何だよ、ほぼほぼニートじゃねーか。 アンタの性格考えたら、依頼人が大損しそうだな」

 杏子は初めて銀時に会った時のことを思い出していた。

 「確かに、先生の日常面を考えてみたら、ね・・・・・・」

 マミは放課後の校舎の屋上の下ネタのことを踏まえて思い出していた。

 

 「てめーら、好き放題言いやがって」

 三人にボロクソいわれ銀時は顔をひきつらせた。

 だけど、三人の銀時に対する評価は悪いことばかりではなかった。

 「でも、そんなアンタだからあたしたちは生きてる」

 杏子はそう銀時に言った。

 「そうだね、先生はあたしたちを護ろうとしただけじゃない、先生なりにあたしたちを真っ直ぐに陽のあたる日に歩ませようとしてくれた」

 さやかは銀時が魔法少女の契約を考えなおさせようとしたことを思い出していた。

 恭介(幼馴染)の指がヴァイオリンを弾くことができないと知った時に真っ先に契約しようとした際に銀時が契約した後のことについて聞いてきたとき。

 『自分自身が救われねぇ』って指摘された際に契約について考えようとした。

 

 「えぇ、私は美樹さんと鹿目さんがもし契約した後に背負う責任について考えさせられたわ」

 マミは深夜の公園でほむらと一緒に現れた際に、歴史上の偉人の名言を用いてまどかとさやかの命を背負えるのかと問われたことを、お菓子の魔女で生き延びた後に、もし後輩二人(まどかとさやか)が契約した後に師匠を背負うという事を考えさせてくれこと。

 

 「あたしも、背負わないと決めたモンをもう一度背負えたからな」

 杏子もソウルジェムが契約した魔法少女の魂を物質化した物だと知った時にふさぎ込んださやかの説得が失敗した後、偶然立ち聞きしていた銀時からある親子の話を聞いて際、さやかを見守りながら手段を考えられたことなどだった。

 

 「――だから」

 杏子は一度間をおいて銀時の前に立ってーー。

 「これからもよろしく頼むよ、銀時先生」 

 そう勝気な笑みを浮かべながらそう言った。

 本名を呼ばれた銀時は笑みを浮かべた。

 

 その時、さやかはあることを思い出していた。

 「そうだ・・・・・・ほむら、実はさーー」

 さやかは昨日の深夜、キュゥべえがマミの部屋に現れて、まどか達にキュゥべえの目的を聞いたことを話した。

 「まどか達の前に現れたたのね・・・・・・」

 「現れたって・・・・・・もしかしてそっちも」

 ほむらのつぶやきに、さやかはキュゥべえがほむらのところにも来たという事を今の流れで知った。

 

 「えぇ、まずはワルプルギスの夜の前に、キュゥべえの対策を考えた方がいいわね」

 ほむらの話に杏子たちは頷いた。

 すると、銀時はーー。

 「それじゃあ、一発やっとくしかねーか」

 そう宣言した。

 四人は首を傾げた。

 その答えはすぐに分かった。

 「第一回、何かデカい感じの魔女&無限残機(キュゥべえ)を頑張って何とかしましょうね会議―」

 

 その時、魔法少女達(四人)は一瞬ぽかんと口が開いた。

 

 

 

 

 

   

 

  

 




 今回はほむら以外の魔法少女が銀時の正体を知る流れを書きました。
 原作二次小説を少量、あとは僕のオリジナルです。

 そろそろ、さやか達も銀時のことを知った方が良いかもしれないと考えていました。

 まどかは最後に知る流れです。

 そして、次回は原作十一話のまどかがインキュベーター(キュゥべえ)と地球のかかわりの話、そしてまどかの母と早乙女先生のバーの話を入れますのでよろしくお願いします。

 ご意見ご感想、お待ちしております。


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親子、互いの心分からず

 今回は、ワルプルギスの夜およびキュゥべえ対策会議から早乙女先生とまどかの母詢子のバーの話になります。

 原作ではさやかの葬式後の話しからまどかの悩みを話す流れですが、さやか生存で違う流れになっておりますので、お楽しみに。

 


 

 「第一回、何かデカい感じの魔女&無限残機を頑張って何とかしましょうね会議―」

 

 そう銀時が会議を始める叫びの中、四人の魔法少女は一瞬口が開いていた。

 が、すぐに我に返っていた。

 

 「なんなんだよその適当な感じ、全然やる気でねぇぞ」

 そう杏子がぼやくと、さやかが耳打ちした。

 「まあ・・・・・・いつものことだし気にしたら負けじゃない?」

 二人のやり取りに気付いた銀時は。二人に向かってーー。

 「いーんだよこのぐらい適当なほうが、背伸びして無理してても途中で足攣っちまうだろ」

 

 「・・・・・・」

 そんなやり取りをほむらは呆れながら見ていた。

 マミは、話を進めるためにーー。

 「これはワルプルギスの夜の会議よね! こんな空気じゃ話進まないわよ」

 そう全員に呼びかけた。

 そんな中で、さやかはマミにある質問をした。

 「ところでさ、ワルプルギス・・・・・・って?」

 マミははっとしていた、さやかには『ワルプルギスの夜』に関して説明していなかったことに気付いていたからだ。

 「簡単に行っちまえば・・・・・・超弩級の大型魔女だ、普通の魔女とは比べものにはならねぇ」

 すると杏子が、マミに代わってかいつまんで説明した。

 「そして、一度具現化すれば、それだけで何千人もの人が犠牲になる」

 その後、ほむらが捕捉するようにさやかに説明した。

 「そんな・・・・・・滅茶苦茶ヤバい奴じゃない!」

 二人(ベテランの魔法少女)の説明は、さやかが危険だと感じ取るには十分だった。

 

 「それで暁美さんは、佐倉さんと一緒にいたのね?」

 マミは跨道橋で、杏子と一緒にほむらが一緒にいた理由に納得していた。

 「えぇ、見滝原を任せるって取引で共同戦線って流れで」

 ほむらはマミの言葉に頷きながら答えた。

 

 ふと、さやかはほむらにあることを話そうとした。

 「ねぇ、ほむら・・・・・・もう一つだけ確かめておきたいことがあったんだけど、キュゥべえがあたしたちを魔法少女にする目的について・・・・・・」

 

 

 

                     ***

 

 

 

 話を聞き終えたほむらは頷き、時間逆行の経験を総動員して話した。

 「えぇ、その話は本当よ、インキュベーター(奴ら)は宇宙の寿命を延ばすのが目的で、私達の魂が希望から絶望への相転移によるエネルギーを回収しているの、奴らは感情なんてないから」

 改めて、ほむらからの確認を聞かされた三人は暗い表情になっていた。

 

 ふと、杏子がつぶやいた。

 「それで、まどかの契約を阻止をどうするかが問題だよな」

 すると、ほむらも三人に話した。

 

 「実は、そのことで話さなければならない事があるの、それは私の祈り(魔法)に原因が・・・・・・」

 その口調は重く、悲しみと悔しさが込められていた。

 『時間逆行』の副作用が原因でまどかの素質(因果の糸)が集約してしまい最悪の魔女にしてしまったことを、三人に話した。

 「そんなの、分かるわけないじゃない・・・・・・あんたはただ、まどかを助けようとしただけなのに」

 

 さやかはほむらを責めず、励ました。

 「なら尚更・・・・・・キュゥべえをどうにかしないとな」

 杏子は決意を新たにしてつぶやいた。

 「ええ・・・・・・これ以上キュゥべえの思い通りにさせないために」

 マミも杏子の言葉に頷き同意した。

 

 その後、ほむらはキュゥべえ対策の話を進めることにした。

 銀時は何か案があるか? 三人の魔法少女に投げかけた。

 「はい」

 真っ先に手を挙げたのは杏子だった。

 「はーい、佐倉杏子ー」

 「あのキュゥべえの野郎を残機がなくなるまで叩き潰す!」

 杏子が提案したキュゥべえを潰す案をだした、しかしーー。 

 「その案は、まず無理ね・・・・・・。 私が三度目の時間逆行の際にキュゥべえを殺したけどまた現れたわ、この世界でもまどかに出会う前に始末したけど、すぐにまた違うキュゥべえ(個体)が現れたわ」

 そうほむらは、経験による苦言を杏子に話した。

 「あぁ、それでショッピングモールの時になるのか・・・・・・」 

 さやかは思い出すように話した。

 「私は鹿目さんと美樹さんを助けた後に・・・・・・あの場面を見ることになるなんて」

 マミはほむらと一色触発の時にキュゥべえが木刀に貫かれた場面に立ち会ったことだった。

 

 銀時は『ほかに案があるか―』と投げかけた。

 「はい」

 次に手を挙げたのはさやかだった。

 「はい、美樹さやか―」

 「逆に、まどかを何とかしてみるってのはどうかな?」

 さやかはまどかによる逆アプローチだった。

 「例えば?」

 「うーん・・・・・・すっごい強引だけど、どっかに閉じ込めておくとか・・・・・・」

 銀時の質問にさやかがそう答えると、ほむらは反論した。

 「あなた・・・・・・まどかを監禁するつもり?」

 「いや、だからたとえばの話で・・・・・・」

 そう言いながらさやかはほむらを宥めた。

 「例えばでも・・・・・・ダメ、絶対」

 ほむらはそう断言して、さやかの案を却下した。

 

 そして銀時はーー。

 「じゃあ最後、巴マミ(アースジェットくん)

 殺虫剤のあだ名でマミを指名した。

 「いや、どうして最後は私で落とそうとするの!? せめてキイロールにしてくれないの!?」

 銀時に対して抗議するマミ、そんな事はどうでもいいと云わんばかりに話を進めた。

 「グダグダ言ってねーでなんかあんだろ、言え面倒くせーな」

 そう銀時が急かすと、マミは呆れながらほむらに確認した。

 「ワルプルギスの夜を圧倒して倒せば・・・・・・鹿目さんが契約することもない、そうね?」

 「・・・・・・何が言いたいのかしら?」

 ほむらがそうマミに質問した。

 「ワルプルギスの強さは聞いてるわ・・・・・・でも今はこれだけ戦える魔法少女が揃ってる、みんなで力を合わせればきっと・・・・・・」

 そうマミが話すが、ほむらが首を振りながら否定した。

 「無理よ」

 「なんで!?」

 マミがほむらにそう尋ねた。

 「昨日の戦いでソウルジェムは恐らく半分に行くか行かないかの穢れが蓄積されてるわ。もしワルプルギスと戦うとするならソウルジェムが全快でも・・・・・・必ず誰かが魔女化してしまうわ」

 

 杏子とマミはソウルジェムを確認すると、ほむらの言った通りソウルジェムの消耗(穢れ)の蓄積は肉体の維持に使う魔力と、昨日の美樹さやかの救出の際に使った魔力を合わせれば魔力量が怪しかった。

 その時、さやかがほむらに投げかけた。

 「なら、あたしは・・・・・・魔女から元に戻ったばっかりだけど、あたしなら戦力になれないかな?」

 そうほむらに進言したが、当のほむらは首を横に振った。

 「あなたの魔法(祈り)は治癒の力、肉体のダメージに比例して魔力の消耗は著しいわ、間違いなく・・・・・・」

 

 その後、ほむらはこれ以上言えなかった。

 当のさやかはもちろん、杏子とマミも理解していた。

 今の状態でワルプルギスの夜に戦いを挑めば、確実に魔女化してしまうことになる。

 

 そしてーー。

 「あなたもよ、銀時」

 「あぁ?」

 ほむらは銀時に向けてそう言った。

 「あなたも、ワルプルギスに挑もうとしたら間違いなく死ぬわよ・・・・・・」

 「おい、ほむーー」

 銀時はほむらに何か言おうとしたがーー。

 

 「あなたの体の傷を考えたら、間違いなく死ぬわよ」

 ほむらの声は冷静でも表情がつらそうな顔になっていた。

 銀時の身体に蓄積されたダメージと体力の消耗を考えて、ワルプルギスに戦いを挑んだら間違いなく死んでしまう。

 ほむらは、そう何度も頭によぎっていた。

 

 「つまりどういうこと?」

 さやかは空を掴むように質問するとーー。

 「まともに使えるのは結局ほむら・・・・・・しかいないってことだ・・・・・・ちきしょう・・・・・・!」

 杏子が答え、悔しさをにじませながらそう吐き出した。

 ほかの二人もその様子を見て悔しさをにじませた。

 

 

 その様子を見て、ほむらは嘘でも何かを言おうとした。

 (勝てる保証があるわけではない、それでもみんなを心配させるわけにはいかなかない)

 ほむらがその場にいる者を安心させようと言葉を発した瞬間ーー。

 「これは一体何の集まりだい?」

 『!』

 ほむら達と銀時が振り返ると、招かねざる客(キュゥべえ)が現れた。

 「今さらどの面下げてのこのこ現れやがった、テメー!」

 杏子はキュゥべえを睨んでそう言った。

 「たった今、やるべきことが済んで外に出てきてみればーー」

 キュゥべえはそのばにいる人数の顔を見回してーー。

 「何やら魔法少女が一か所に集まっているのを感じたから顔を出してみた、というわけさ」

 そう、ほむら達に告げた。

 

 「昨日ぶっ飛ばしたばっかりだってーのに、やるべきことだと? てめー、今までどこにいてやがった?」

 銀時が睨みながらキュゥべえに聞いた。

 キュゥべえがほむらの家に向かう前に言った場所、それはーー。

 「まどかの家さ」

 「!?」

 ほむらは驚愕した。

 (迂闊だった、当事者のまどかにこの話(ワルプルギスの夜と私について)は聞かせるべきではないとこの場に呼ばなかったことが裏目に出てしまった!!)

 ほむらは内心、そう後悔した。

 「まどかの家って・・・・・・まさか・・・・・・!」

 さやかは最悪の事態(まどかの契約)を想像した。

 しかし、キュゥべえの答えは違っていた。

 「安心していいよさやか、君が今心配しているような事態にはなっていないからね。 ほんの少し話をしただけさ、共存関係や・・・・・・過去の魔法少女のことをね」

  

 

                     ***

 

 

 

                     まどか宅 

 

 

 ほむら達と銀時がワルプルギスの夜の対策会議を始める少し前。

 

 「みんな、大丈夫かな・・・・・・」

 自室のベッドで寝ころびながら、まどかはそうつぶやいた。

 さやかを助け出した戦いでほむらはもちろん、マミと杏子はかなり消耗していた。

 そして、その戦いに参加していた銀八も身体に相当な攻撃を受けて瀕死の重傷のはずなのに回復が早く動いていることには驚いていたが、やはり心配だった。

 

 

 ほむらからはーー。

 『大丈夫よまどか、あなたが契約しなくてもワルプルギスの夜は必ず倒して見せる』

 とそう言いながら、急いで帰宅していた。

 

 「予測不可能な展開だったよ、まさかさやかが元に戻るなんて思いもよらなかった」

 ぬいぐるみが飾られている棚の上にキュゥべえが現れ、冷淡な口調でそう告げていた。

 

 まどかはキュゥべえの発言に反応し、ベッドから起き上がり睨みつけた。

 「今までの事態はあなたが招いたことでしょ? 本当ならみんな死んでもおかしくなかった」

 そう、キュゥべえに怒りを見せるまどか。

 「・・・・・・」

 

 しかし、キュゥべえは呆れたようなそぶりを見せ、言葉を紡いだ。

 「たとえば君は家畜に対して引け目を感じたりするのかい? 彼らがどういうプロセスで君たちの食卓に並ぶのかーー」

 キュゥべえはそう話しながら、まどかに牛、豚、鶏(家畜)達が食肉に加工されていくイメージを見せた。

 「やめてよッ!」

 

 まどかはその光景に耐えられず、拒絶した。

 「その反応は理不尽だ、この光景を残酷と思うのなら、君には本質が全く見えていない。 彼らは人間の糧になることを前提に生存競争から保護され淘汰されることなく、繁殖している。 牛も豚も鶏もほかの野生動物に比べれば種としての繁殖ぶりは圧倒的だ、君たちはみな、理想的な共栄関係あるじゃないか」

 キュゥべえはまどかの拒絶の様子を否定しながら家畜の話をした。

 人間と家畜の関係性をインキュベータ―と人間の関係性を表しているかと言わんばかりだった。

 「・・・・・・同じだって言いたいの?」

 そう感じたのかまどかはキュゥべえに尋ねた。

 まどかの質問に心外だと云わんばかりにキュゥべえは答えた。

 「むしろ僕らは人類が家畜を扱うよりもずっと君たちに対して譲歩しているよ、まがりなりにも、知的生命体と認めた上で交渉しているんだしね」

 「・・・・・・」

 キュゥべえの話を信じる気になれないまどか。

 まどかの顔を見て、キュゥべえは淡々と告げながらーー。

 「信じられないのかい? それなら見せてあげようか、インキュベーターと人類が共に歩んだ歴史をーー」

 キュゥべえの目が光りながら、まどかの脳に直接、インキュベーターと人間の歴史を映像の様に見せた。 

 

 『僕たちはね、有史以前から君たちの文明に干渉してきた』

 そう言いながらキュゥべえに見せられたのは、霊長類から原人、文明を手にするまでに進化した古代人の歴史だった。

 インキュベータ―(キュゥべえ)干渉(契約)によって人類へと進化していた。

 「数えきれないほどの大勢の少女がインキュベーターと契約し希望をかなえそして、絶望に身をゆだねていった、祈りから始まり呪いで終わるーーこれまで数多くの魔法少女たちが繰り返してきたサイクルだ。 中には歴史に転機をもたらし社会を新しいステージへと導いた子もいた」

 そんな人類が歴史と呼ぶ中で現れた、女性たち、クレオパトラや卑弥呼、ジャンヌ・ダルクといった女傑や才女の姿があった。

 「もうやめてッ!」

 まどかは歴史上の魔法少女たち(クレオパトラ、卑弥呼、ジャンヌ・ダルク)の最期を見て叫んだ。

 あまりにも耐えられなかったからだ。

 「みんな・・・・・・みんな信じてたの? 信じてたのに裏切られたの?」 

 まどかの心は悲しさにあふれ、たまらなくなった。

 歴代の魔法少女たちが悲劇的な最期を迎えたことに、悲劇の連鎖に耐えられなかった。

 「彼女たちを裏切ったのは僕たちではなくむしろ、自分自身の祈りだよ。 どんな希望もそれが条理にそぐわないものである限り必ず何らかの歪みを生み出すことになる」

 「うぅ・・・・・・」

 まどかは顔を手で覆いながら、何も見たくも聞きたくなかった。

 しかし、キュゥべえは告げるーー。

 

 「やがてそこから災厄が生じるのは当然の摂理だ、そんな当たり前の結末を裏切りだというのなら、そもそも願い事なんてすること自体が間違いなのさーーでも愚かだとは言わないよ」

 「ううっ・・・・・・!」

 まどかは呻き続ける、それでもキュゥべえは話し続ける。  

 「彼女たちの犠牲によって人の歴史が紡がれてきたこともまた事実だしーー」

 その途中、キュゥべえのイメージ空間から帰還したまどか。

 「そうやって過去に流されたすべての涙を礎にして今の君たちの暮らしは成り立っているんだよ」

 「・・・・・・」

 「それを正しく認識するなら、どうして今さら数人の運命だけを特別視できるんだい?」

 そう、キュゥべえはまどかに返した。

 

 すると、まどかは顔をうつむきながらキュゥべえに言う。

 「・・・・・・ずっとあの子たちを見守りながらあなたは何も感じなかったの? みんながどんなに辛かったか分かってあげようとしなかったの?」

 「それが僕たちに理解出来たならわざわざこんな星まで来なくても済んだんだけどね」

 まどかの質問にキュゥべえはそう答え、話を続けた。

 「僕たちの文明では感情という現象は極めて稀な精神疾患でしかなかった。 だから君たち人類を発見した時は驚いたよ、すべての個体が別個に感情を持ちながら共存している世界なんて、想像だにしなかったからね」

 キュゥべえはそう人類を監察した結果を告げるようにまどかに言った。

 するとまどかは、あることを聞いた。

 「・・・・・・もしも・・・・・・あなたたちがこの星に来てなかったら・・・・・・」

 「君たちは今でも洞穴に住んでいたんじゃないかな」

 

 まどかの質問にキュゥべえはそう答え、ある不確定な存在を例に挙げた。

 「ただ、坂田銀時という存在が起こした因果律の変質は予想外だったけどね」

 「え?」

 まどかは一瞬困惑した。

 (坂田、銀時・・・・・・? それって、坂田・・・・・・先生のこと?)

 そして、ほむらのが銀八のことをーー。

 『銀時・・・・・・あなた・・・・・・!!』

 銀八のことを銀時と、違う名前で呼んだことを思い出していた。

 

 「キュゥべえ、坂田先生を・・・・・・どうするつもり!?」

 まどかはそうキュゥべえにそう質問した。

 「決まってるじゃないか、僕の目的はエネルギーの回収・・・・・・最も効率的に回収する方法を模索するだけだよ」

 キュゥべえはそう答えて、さまどかの部屋から去っていった。

 

 

 

                      *** 

 

 

 

 そして、キュゥべえはほむら達の前に現れた。

 

 どんなことを話したかは分からない、だがそれがほむらたちにとって良い話ではないことは明らかだった。

 

 ほむら達の睨んだ視線に意を返さず、キュゥべえは思い出したことがあるという流れで全員に告げた。

 「そうそう、君たちに言っておこうと思っていたことがあったんだ。 美樹さやかの件ではなかなか面白いものを見させてもらったよ、実に興味深い現象だった」

 それはまるで他人事のような口ぶり、面白そうなおもちゃを手に入れた子供の声を沸騰とさせた。

 そう続けざまに、キュゥべえはほむら達に投げかけた。

 

 「君たちはもう気が付いているんだろう? 僕の目的も・・・・・・この後に何かが起こるのかも」

 キュゥべえからそう聞かれたとたん、ほむらはもちろんのこと、さやかと杏子、マミは警戒心をあらわにした。

 エネルギー回収と、ワルプルギスの夜のことを・・・・・・。

 「だったら何だっていうのよ・・・・・・?」

 さやかは警戒心でそうキュゥべえに投げかけた。

 「君たちにお願いしようと思ってね」

 「お願い・・・・・・?」

 キュゥべえの言葉にマミは困惑した。

 

 様々な少女たちの願いを叶え続けてきたキュゥべえの願い、それはーー。

 「鹿目まどかが魔女になったら何とか元に戻してあげてほしいんだ」

 「・・・・・・!?」

 全員が予想だにしなかった、いったい何を言っているのだろうか?

 「どういうつもりだ・・・・・・お前の目的はあいつを魔女にしてエネルギーを・・・・・・」

 「そう、でも・・・・・・もしそうなれば彼女は一生を魔女として過ごすことになる」

 杏子の疑問にキュゥべえはそう答えた。

 しかし、キュゥべえの話はまだ終わらなかった。

 「感情のない僕にはわからないけど・・・・・・君たち人間を基準にすれば、それは『可哀想』と形容される部類になるだろう? だから・・・・・・彼女がもし魔女になったら、美樹さやかの様に助けてあげてよ」 

 「アンタ・・・・・・一体何を考えて・・・・・・!」 

 キュゥべえはさやかの前例を持ち出して、まどかが魔女になった時に元に戻してほしいと頼みこむ。 

 しかし、さやかは警戒心を解く気にはなれなかった。

 「これは僕の本心だ、まどかが魔女になったら魔法少女に戻してあげてほしい、嘘じゃないと誓っていえるよ」

 「・・・・・・」

 (明らかに何か裏があるはず、だけど今回はそれが見えてこない・・・・・・)

 ほむらはキュゥべえの真意を探っていたが、分からずじまいだった。

 

 

 しかしーー。

 「外道の考えは・・・・・・外道にしか理解出来ねェらしいな」

 看破していたのは、やはりこの男一人(坂田銀時)だった。

 「どういうことだ・・・・・・何かわかったのかよ?」

 杏子は何かを掴んだ銀時にそう尋ねた。

 「茶番は終わりにしようや無限残機・・・・・・回りくどいこと言ってんじゃねーぞ」

 銀時は真っ直ぐキュゥべえに目をさらさずに見ていた。

 「・・・・・・」

 「今回はどこに嘘が・・・・・・」

 「いや、こいつは嘘なんか言っちゃいねーよ」

 「え・・・・・・ま、まさか本当にまどかを助けたいって・・・・・・?」

 さやかはキュゥべえの言葉を疑ったが、銀時が否定した。

 その言葉に、さやかは困惑した。

 しかし、銀時はキュゥべえの目的を徐々に説明した。

 「・・・・・・テメーの目的はエネルギーの回収とか言ってやがったな、無限残機。で、そのエネルギーってのは『魔法少女が魔女になるとき』に出るんだったか?」

 「それが一体・・・・・・!!」

 回りくどい説明にしびれを切らしたほむらは結論を急かすような口調で言ったとたん、背中に嫌な汗がにじんでくる、銀時がキュゥべえの目的を確認するかのような流れで、気付いた。

 気付いてしまったのだ。

 (まさか、キュゥべえの狙いは・・・・・・!!)

 

 「平たく言えば・・・・・・リサイクルしてーんだろ、まどかの奴をエネルギー源として」

 銀時がキュゥべえの狙いを、目的を指摘した。

 「我が社は環境に優しいリサイクル運動を推進してますってか・・・・・・笑えねーな」

 キュゥべえを睨む銀時。

 「やれやれ、これは君たちにとっても素晴らしい取引だと思うんだけど・・・・・・」

 キュゥべえの返答の中に、銀時の発言に対する否定の言葉はなかった。

 

 「あなたは・・・・・・そこまでして・・・・・・!」

 ほむらはキュゥべえを睨んだ。

 「それだけ鹿目まどかの持っている力は魅力的なのさ、エネルギー回収を鹿目まどか一人で賄えるならこれ以上魔法少女が増えることもない。 回収した莫大なエネルギーを使って宇宙の寿命を効率よく伸ばすことができる」

 キュゥべえはまどかの力に取りつかれたかのような口調を感じさせた。

 「そう、たった一人の犠牲だけでこの宇宙全体に対して多大な利益が出るんだ。 こんな素晴らしいことは他にない・・・・・・君だってそう思うだろう、坂田銀時」

 「・・・・・・」

 キュゥべえは銀時の顔を見つめながら話を続けた。

 「君の存在はあまりにもイレギュラーだった。 まさか僕たちとは違う知的生命体が地球に来訪して発展していたなんて思ってもみなかったよ。 君の世界で僕たちは『天人』と呼ばれる部類の存在だろうね」

 キュゥべえの口調は間違いなく、銀時の世界の話だった。

 おそらくは、ワルプルギスの夜の会議の途中でほむらの部屋にすでに入っていたのだろう。

 ほむら達がそう推察した後のことだった。

 

 「君の言う通り、僕は君たち人類の魂を甘く見ていたかもしれない。 君がこの世界に現れたことで美樹さやかは魔女から魔法少女(にんげん)に戻れた事には驚いた。 でも、そのおかげでエネルギー回収に新しい道が開かれた。 無理に魔法少女を増やすことなく・・・・・・エネルギー回収を出来る道の可能性がね」

 

 全力を尽くして魔女化した美樹さやかを救い出した・・・・・・普通ではありえないはずの奇跡。

 その奇跡でさえキュゥべえは自分の目的のために利用価値を見出していた。

 

 「テメーは・・・・・・なんてことを・・・・・・!!」

 怒りに我を忘れてキュゥべえに掴みかかろうとする杏子を銀時は静止する。

 キュゥべえ(こいつ)を叩き潰しても意味はないことを知っていたからだ。

 「放せよ! こいつはもう百回ぶっ飛ばしたぐらいじゃ気がすまねぇ!」

 

 怒り心頭の杏子をそれでも止めた銀時。

 「いったん落ち着け、もう少し冷静に考えてみろ。 こいつを潰してもすぐに第二第三のキュゥべえが現れちまう、そうなったら何の意味もねえ」

 その言葉に杏子は怒りをこらえていた。

 そしてーー。

 「だったら・・・・・・ほむら、ロープあるか? あるんなら出してくんね?」

 『?』

 キュゥべえが発した言葉に、キュゥべえはもちろん四人の魔法少女たちは困惑した。

 「えぇ、わかったわ」

 取りあえず、ほむらはロープを用意することにした。

 

 

 

 

                     ***

 

 

 

                    十数分後

 

 

 

 「・・・・・・!・・・・・・!」

 「これでよし」

 キュゥべえはふん縛られて簀巻きにされて、歯車が密集された天井にロープを括り付けの上、吊るされて蝋燭にあぶられていた。

 「ドSだ・・・・・・この先生・・・・・・」

 「ドSだな」

 「ドSね」

 

 さやか、杏子、マミの順で銀時の本性を知ってそれぞれ感想を述べていた。

 只一人を除いて・・・・・・。

 

 「その手があったか・・・・・・」

 「「「オイ」」」

 ほむらの反応に、三人は突っ込んだ。

 

                     ***

 

 

 深夜のバーのカウンターで二つの影がウイスキーを飲んでいた。

 鹿目まどかの母、鹿目詢子とまどかの担任、早乙女和子だった。

 

 二人は古くからの友人で、時々酒を飲みかわしながらお互いに相談事を持ち掛けていた。

 「さやかちゃん見つかってよかったわ、最悪の場合は・・・・・・」

 そう早乙女は詢子に話した。

 「そうだな、まどかも夜遅くになってまで探していたらしいからな。 でもさすがに今回は叱っておいたよ」

 詢子も夜遅くまで親友を探し続けたまどかの心情を理解しつつも、親として叱らなければならなかった。

 「さやかちゃんはね友達と恋愛がらみでちょっと色々あったらしいの・・・・・・その子もかなりダメージ背負っちゃってね・・・・・・普通なら甘酸っぱい思い出で済むところなんだけど、三日も学校に来なかったから心配だったの」

 そう早乙女は告白した。

 その後で、早乙女はーー。

 「まどかちゃんはどう?」

 まどかの様子を詢子に尋ねた。

 

 「・・・・・・分かんねぇ、あたしの勘じゃ何か知ってる様子ではあるんだ・・・・・・でも嘘をついてるようにも見えねぇ・・・・・・初めてなんだよ・・・・・・あいつの本音を見抜けないなんて、情けねぇよな・・・・・・自分の娘だってのに」

 詢子はそう弱音を吐いた。

 「詢子が弱音を吐くなんてね・・・・・・」

 「近頃妙だとは思ってたんだ、なんかひとりで背負い込んでるって察してはいたけど、いつまで経ってもあたしに相談してこねぇ・・・・・・ちったぁ頼りにされてるって思ってたのにさぁ・・・・・・」

 そう、詢子はまどかが抱えてるる物に気付いていても、相談してもらえないことにもどかしさを感じていた。

 「あの年頃の子供はね・・・・・・ある日いきなり大人になっちゃったりするものよ、親にとってはショックだろうけど」

 早乙女はそう詢子に諭した。

 「そういうもんか・・・・・・」

 「信じてあげるしかないわね・・・・・・今まどかちゃんに必要なのは気持ちを整理する時間だろうから、しばらく待ってあげないと」

 早乙女は教師の経験で、詢子にそう諭した。

 「・・・・・・キツイな、何もできねぇのって」

 「そういうところで要領悪いの相変らずよねぇ詢子は」

 

 そう詢子の要領に関して話す早乙女は、話題を変えようとある人物を持ち出した。

 「そういえば内の教育実習にきた先生がさあんまりやる気がなくて困ってるのよね」

 「あぁ、まどかから聞いてるよ。 和子もとんでもない奴引き受けたみたいだなぁ」

 早乙女の話の流れで、『木刀を差してる教育実習に来た先生』だと気づいた詢子。

 深いため息をつきながら、早乙女は銀八のことを話した。

 

 「そうなのよ、教科書の内容とは違うことをやるし、途中で眠りこけるし、出勤時間に遅れるわで散々よ」

 早乙女の不満に、詢子は口をひきつらせた。

 「まどかから聞いてたけど、滅茶苦茶なヤツだね」

 「えぇ、でも・・・・・・どういうわけかクラスのみんなにはなんだかんだで慕われてるわ」

 「へぇ、具体的には?」

 授業内容は散々でもクラスの子供には慕われてるみたいだった。

 「ただ、その人は、授業を進める立場にもかかわらず、わざとやってるのかクラス全員を巻き込んでのボケをやって、クラスのみんながツッコミを入れてるって流れね」

 「教育実習の職員(そいつ)大丈夫なのか? 実習期間もうすぐで終わりだろ」

 「そうね、まぁでも・・・・・・どういうわけか悪い人間でないのは確かでけど」

 そう言いながら、苦笑いする早乙女。

 

 「確かに会って見たくなったな、教育実習に来た、坂田銀八先生とやらに・・・・・・」

 

 詢子は教育実習に来た男、坂田銀八に興味を持った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 今回は長く書き過ぎました。
 二次創作原作とメモリーフィルムをベースに、オリジナルを加えました。

 オリジナルを長く書き過ぎて、疲れるかもしれませんが、お付き合いよろしくお願いします。

 刻一刻と迫る最終決戦に出来るだけ目が離せなくなるような話にして見せます。
 
 ご意見ご感想、お待ちしております。

 それでは、次回をお楽しみに。


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親と師は柱を支えるもの、弟子と子は背負う者

 はい前回の話はあまりにも長すぎました。
 
 いっぱい書きたいシーンが今回あったので多めに書いてしましました。

 今回の話は、またほむらの部屋から始まります。

 話の辺りは会議の終わり辺りから始まります。

 それではお楽しみください。


 マミたちは一旦自宅に戻ることになった。

 

 「あたしらは一旦家に戻るよ、昨日家に戻ったばっかりだからこれ以上心配かけさせるわけにはいかないからさ」

 「そうね、私も一人暮らしとはいえこれ以上長居するわけにはいかないわね、佐倉さんも一緒にどう?」

 「そうだな、暫くはマミんところに厄介になろうかな」

 

 三人はそれぞれの家に戻ることになった。

 「気を付けてね」

 ほむらはそう三人に言った。

 「・・・・・・」

 銀時は黙ってその様子を見守っていた。

 

                      ***

 

 

 三人はアパートの出入り口前まで向かっている最中、さやかは浮かない顔をしていた。

 その様子に、マミと杏子は気付いたため、声をかけていた。

 「おいさやか、いつまでも暗い顔すんなよ、あたしらのソウルジェムが半分近くになったのをあんたのせいにする気はないよ」

 「そうよ、あなたが元に戻すために自分で選んだことだから、後悔はないわ」

 そう杏子とマミはさやかに罪の意識を抱いてほしくなくそう言った。

 

 二人の言葉にはっとしたさやかは顔を上げた。

 「ありがとう杏子、マミさん。 でもそれだけじゃないんだ、あたしが気にしているのは」

 さやかは二人が励ましているのだと気づいたの同時に、気にしていることを話す決心をした。

 「確かに二人の言ってたことも入ってたんだけど、あたしが気にしていたのは坂田先生のことだよ」

 「え?」

 「坂田先生?」

 銀時の名前が出た時、杏子とマミは困惑した。

 すると、さやかは理由を話した。

 「あたしが、キュゥべえに契約する前に坂田先生に止められたことがあってさ・・・・・・」

 さやかは契約する前、銀時との話を二人に話した。

 契約した後に自分自身は救われない、契約した後は魔女と戦い続けなければならないと・・・・・・・。

 自分の考えはずれてるのでないかと言われたことなどだった。

 

 そして――。

 「最後に、先生が言ってた言葉が今になって気になったんだ」

 「最後の言葉?」

 「なんて言ったんだよ?」

 さやかの言葉に、二人は困惑しながらも銀時が言っていた言葉を気になっていた。

 

 『間違っても俺みてーな後悔しか残らねェ道は選ぶんじゃねーぞ』

 

 さやかは、銀時が言っていた言葉をそのまま二人に話した後、話を続けた。

 「最初はどうしてあんなことが言ってたのか分からなかったけど、先生がいた世界の話で、あたしが契約する前のことを思い出したんだ」

 「まぁ確かに、異世界の江戸から来たって言ったら・・・・・・なぁ?」

 「ソウルジェムの秘密よりもある意味、信じられないわよね」

 さやかの話を聞いて、杏子とマミは顔を合わせながら銀時の話を思い出していた。

 天人と呼ばれている異星人が江戸に降り立ったことや、侍と二十年戦争していたこと、幕府が傀儡政権になっていたことを聞かされると、以前の自分たちなら信じてもいなかったと、三人は銀時が言ってた異世界の話をそう断じてたと思い返していた。

 

 その後に、さやかは銀時んの言葉の意味をある結論を二人に告げた。

 「もしかしたら、坂田先生は・・・・・・『攘夷戦争』に参加してたんじゃないかって思ってさ」

 「あのちゃらんぽらんが?」

 「美樹さん、その根拠は?」

 さやかの言葉に困惑した二人は説明を求めた。

 「病院での別れ際で、契約の話を終えた後の先生の目が、悲しい目だったから」

 

 そう、さやかは病院での会話の見せた、銀時の目をさやかは見ていたことを二人の話した。

 杏子とマミは、ふとさやかを元に戻す戦いの際に見せた銀時の怒りを思い出していた。

 

 その怒りは間違いなく、大切なものを奪われたことに対する怒りであることだと、さやかの話で魔女化したさやかの戦いで見せた姿に、最初は驚きと畏怖を覚えていた。

 しかし、さやかの話を聞いて二人は同じことを思っていた。

 

 ――あの怒りが、大切なものを穢されたときに見せる時の物だと。

 

 

 

                   ***

 

 

 それからしばらくして、インターホンを押すものが玄関前に現れた。

 

 ほむらがドアを開けると、まどかが目の前にいた。

 「・・・・・・入っていいかな?」

 

                   ***

 

 

 

  

 まどかは、ほむらの部屋の壁を見て、額縁上のボードを見ていた。

 「これが・・・・・・ワルプルギスの夜?」

 無数のボード上の資料は、『ワルプルギスの夜』に関する資料だった。

 それを見て、まどかはあることを尋ねた。

 

 「杏子ちゃんが言ってた・・・・・・ひとりで倒せないほど強い魔女をやっつけるためにほむらちゃんと二人で戦うんだって・・・・・・ずっとここで準備してたのね」

 ほむらはその問いに答えることはなかった。

 いや、沈黙こそ答えであることに気付いたまどかは話を続けた。

 「・・・・・・街中が危ないの?」

 「・・・・・・ええ、具現化するだけで何千人もの被害者が出るわね」

 ほむらは重苦しそうな口でまどかに答えた。

 

 「じゃあ絶対に倒さなきゃね・・・・・・でも、現状で戦えそうなのはほむらちゃんだけなんでしょ・・・・・・・だったら・・・・・・」

 まどかは昨日の戦いでマミや杏子が消耗していることを知っていた。

 そして、さやかも魔女から魔法少女に戻すことが出来たばかりで、何が起こるか分からなかった。

 

 それなら、自分も魔法少女に契約と考えていたがーー。

 

 「一人で十分よ」

 「!」

 「強いといっても私はそれなりに準備はしてきたわ。 私一人でも十分に撃退できるわ」

 ほむらは言い切った、自分で勝てると。

 友達(ほむら)を信じてるならばそれで安心しなければいけないはずなのにーー。

 

 「なんでだろう・・・・・・私はほむらちゃんを信じたいのに・・・・・・嘘つきだなんて思いたくないのに・・・・・・全然大丈夫だって気持ちになれない・・・・・・ほむらちゃんの言ってることが本当だって思えない・・・・・・」

 

 まどかは今までの出来事での経験、『ワルプルギスの夜』が本来共闘しなければ倒せない魔女だと杏子から聞いたことと、たった今聞いた被害の甚大さから導き出された結論。

 

 その結論で、ほむらの言葉を信じきれない自分が嫌だった、その思いは涙となってまどかの目から零れ落ちる。

 「・・・・・・」

 まどかの涙を見てほむらを突き動かす。

 「・・・・・・本当の気持ちなんて伝えられるわけないのよ」

 「ほむらちゃん・・・・・・?」

 ほむらの言葉にまどかは困惑した。

 

 そしてーー。

 

 「だってーー私は、私は・・・・・・まどかとは違う時間を生きてるんだもの!」

 まどかの優しさを受け入れるわけにはいかず、それでも感極まり、ほむらはまどかを抱きしめていた。

 「――――」

 「・・・・・・!」

 「・・・・・・私ね未来から来たんだよ。 何度も何度もまどかと出会って、それと同じ回数だけあなたが死ぬところを見てきたの・・・・・・」

 ほむらは、自分が抑えていた内心をーー。

 「どうすればあなたが助かるのか・・・・・・どうすれば運命を変えられるのか・・・・・・その答えを探して何度もはじめからやり直して・・・・・・」

 自分が同じ時間を繰り返してきたことを、まどかを守りたい気持ちを打ち明けた。

 「それって・・・・・・え・・・・・・?」

 まどかはほむらが言っていることを理解できずにいた。

 只わかっているのは、ほむらも同じく泣いていた。

 冷静なはずの彼女には似合わない涙。

 ・・・・・・それは語弊があるかもしれない。 

 魔法少女であるとはいえ、幾何の時を越えてるとはいっても、彼女は自分と同じで、本来感情豊かな普通女子中学生なのだから。

 「ごめんね・・・・・・訳分かんないよね・・・・・・気持ち悪いよね・・・・・・まどかにとっての私は出会ってからまだ一か月も経ってない転校生でしかないものね・・・・・・だけど私は・・・・・・私にとってのあなたは・・・・・・」

 

 ほむらは少し言葉を詰まらせながら、まどかに話した。

 

 「・・・・・・繰り返せば繰り返すほどあなたと私が過ごした時間がずれていく、気持ちもずれて言葉も通じなくなっていく・・・・・・たぶん私はもうとっくに迷子になっちゃってたんだと思う」

 「ほむらちゃん・・・・・・」

 「・・・・・・あなたを救う・・・・・・それが私の最初の気持ち・・・・・・今となってはたったひとつだけ最後に残った道しるべ」

 

 ほむらは抱きしめたまどかの肩に自分の手に置き、面と向かって告げた。

 「分からなくてもいい・・・・・・何も伝わらなくてもいい」

 「・・・・・・」

 「あなたを私に守らせて」

 

 

 ほむらの言葉に、まどかはなにを言えばいいか・・・・・・分からなかった。

 

 

 ――そして、 決戦の時が訪れる。

 

 

                      ***

 

 

 「雷雲がとんでもない勢いで分裂と回転を起こしています・・・・・・!」

 見滝原の気象観測所の職員が雷雲と気流の流れを観測していた。

 しかし、それは只の雷雲ではなかった。

 「明らかにスーパーセルの前兆です!」

 

 スーパーセル、街に被害を引き起こす雷雨をもたらす積乱雲の一種。

 「直ちに避難指示の発令を!」

 観測員が指示を出した。

 

 普通(‘‘)の人間ならそう認識するのだが、そうではなかった。

 

 これは『ワルプルギスの夜』が現れる前兆であることだった。

 

 

                      ***

 

 

 【本日午前七時突発的異常気象に伴い避難指示が発令されました。 付近にお住いの皆様は速やかに最寄りの避難場所への移動をお願いします】

 

 「・・・・・・」

 

 避難アナウンスを呼びかける車が見滝原市を巡回している中で、ほむらはワルプルギスの夜の襲来に備えていた。

 

 「・・・・・・来る」

 

                      ***

 

 

                    見滝原体育館

 

 

 スーパーセルの接近に伴い、見滝原市民全員が避難していた。

 市民全員が毛布や水、食料を配布していた。

 

 その市民の中である一家がいた。

 

 鹿目家、まどかの家族が体育館に避難していた。

 「きょーはおとまり? きゃーんぷなの?」

 そうはしゃぎながら父、智久に聞くまどかの弟タツヤ。

 「ああそうだよ、今日はみんなで一緒にキャンプだ」

 そう微笑みながら話す智久、その妻詢子も安堵の表情でタツヤを見つめていた。

 「わーいきゃんぷ―」

 タツヤは智久の言葉で元気にはしゃいでいた。

 そんな中で、タツヤの姉である少女、まどかは暗い表情であった。

 「・・・・・・」

 それは、スーパーセルの正体である魔女に戦いを挑む魔法少女(しょうじょ)で頭がいっぱいだった。

 

 「ほむらちゃん・・・・・・」

 

 

 

                     ***

 

 

 

 一方、ほむらはワルプルギスの夜の迎撃準備に入っていた。

 

 街全体を覆うほどの霧が立ち込めた後、ほむらの足元に何かがすり抜けていた。

 ほむらは気にせずに前に進んでいった。

 

 その時、ほむらの隣を横切る緑色の象や大型犬に乗るピエロなどのパレードに参加するような一団が現れていたが、実際は魔女が見せている幻影だった。

 

 ほむらは上空の積乱雲を見つめていた。

 普通の人間が見えない存在にして、スーパーセルの正体である存在。

 『ワルプルギスの夜』が出現した。

 

 パレードの幻影はその前兆であった。

 その幻影を潜り抜けたほむらは巨大な異形の影の魔女を視認した。

 

 一言では形容しがたい・・・・・・今までの魔女とは明らかに生物らしさはあまり見受けられず、機械的であり、何よりも強大な力を感じさせる。

 只の人間がまともに戦って勝ち目があるとは到底思えない相手だった。

 

 ほむらは魔法少女に変身して大量の重火器を盾から取り出した。

 

 「今度こそ、決着をつけてやる!」

 

 暁美ほむらの戦いは通常の魔法少女のそれとは大きく異なっている。

 ほむらの願いによって生まれたのは時間操作の魔法であるため、攻撃手段が一切ないのだ、ゆえに攻撃には近代化学兵器を使用している。

 

 自らの攻撃で時を止め、その間に重火器で攻撃を仕掛ける。

 それがほむらの戦い方だった。

 

 この戦いのために膨大な量の武器を蓄えてきた、そのすべてをぶつけなければワルプルギスの夜を倒すことは不可能だろう。

 時間停止の発動中に数えきれないほどのAT4とRPG7の砲撃の後に時間停止の解除でワルプルギスの夜に帖激させた後に、時間停止の魔法を発動して迫撃砲による連続発射した後に魔法解除による連続爆撃、続けて魔力で操ったタンクローリーによる打撃攻撃、88式地対艦誘導弾とトマホークの爆撃の嵐だった。

 爆撃によってワルプルギスに建物を倒して特定の位置に押し込み、そこに仕掛けられた大量の爆弾をほむらは起爆した。

 

 数々の攻撃はまともに食らえば一個の軍隊が壊滅するほどの攻撃。

 ほむらはそれらすべてを的確に命中させた。

 

 それらの攻撃を食らい、大爆発に巻き込まれ炎上するワルプルギス、とうとう倒すことが出来たかと、立ち上がる炎を見つめるほむら。

 

 しかしーー。

 

 「!」

 

 爆炎の中から黒い触手がほむら目掛けて襲い掛かった。

 「うっ!」

 触手の攻撃を食らい倒れるほむら、思いがけない奇襲で反撃することも時間停止の魔法を使うことができなかった。

 「あぐ・・・・・・ッ」

 すぐさまほむらは体勢を立て直していた

 その時だった、爆炎の中から巨大な影から笑い声がした。

 ワルプルギスの夜はまだ健在だった。

 

 

                      ***

 

 

 

 避難所に使われている体育館の屋根が揺れていた。

 「・・・・・・」

 そんな中でうずくまっていたまどかが立ち上がった

 「・・・・・・ん? どうしたまどか?」

 詢子が突然立ち上がったまどかの様子に気付いた。

 その後に智久とタツヤが詢子に続いてまどかを見ていた。

 「ちょっとトイレ・・・・・・」

 まどかはそう言って抜け出した。

 

                      ***

 

 

 

 

                     体育館階段

 

 

 

 「・・・・・・ほむらちゃんが一人で戦ってるっていうのは本当?」

 まどかは階段近くのガラスの仕切りの上の手すりの上に乗っているキュゥべえに聞いた。

 「それを否定したとして君は僕の言葉を信じるのかい? 今さら言葉にして説くまでもない、その目で見届けてあげるといい、ワルプルギスを前にして暁美ほむらがどこまでやれるか」

 まどかの質問にキュゥべえはそう結論を告げた後、ワルプルギスの夜とほむらの戦いに関してそう答えた。

 

 「どうしてそこまで戦うの?」

 まどかはそうキュゥべえに投げかけた。

 昨日ほむらが話した『違う時間を生きている』に関することが頭の中で引っかかっていた。

 「彼女がまだ希望を求めているからさ。 いざとなればこの時間軸もまた無為にしてほむらは戦い続けるだろう、何度でも性懲りもなくこの無意味な連鎖を繰り返すだろうね、もはや今の彼女にとって立ち止まることと諦めることは同義だ」

 

 「・・・・・・・・・・・・・」

 

 キュゥべえはほむらの戦う理由(希望を求めていること)立ち止まる(諦める)ことが出来ないと告げた。

 

 まどかはふとほむらの泣き顔が脳裏によぎった。

 それでも、キュゥべえの話は終わらなかった。

 「何もかもが無駄だったと決してまどかの運命を変えられないと確信した瞬間に、暁美ほむらは絶望に負けて魔女に変わるだろう。 彼女自身も分かってるんだ、だから選択肢なんてない。勝ち目のあるなしに関わらずほむらは戦うしかないんだよ」

 ほむらの戦いはの果てを聞いたまどかはキュゥべえに次のことを聞いた。

 「・・・・・・希望を持つ限り救われないっていうの?」

 「そうさ、過去のすべての魔法少女たちと同じだよ」

 「・・・・・・!」

 「まどか、君だって一緒に見ただろう?」

 キュゥべえの話でまどかは思い出していた、キュゥべに見せられた過去の魔法少女たちの最期の姿をーー。

 過去の魔法少女たちを思い、まどかの目に涙が流れた。

 「ううっ・・・・・・っ・・・・・・うっ・・・・・・う・・・・・・」

 まどかは声を殺して泣き続けた。

 

 「最も、坂田銀時が暁美ほむらを助けに向かってるなんて、訳が分からないよ」

 

 「え?」

 キュゥべえのとっさの発言にまどかの涙が止まった。

 それもそのはずだった、魔法少女の関係者の中で唯一の人間が最も危険な戦場に向かっていることにまどかは驚愕した。

 

 

 

                     ***

 

 

 

 ワルプルギスは破壊した周辺のビルの残骸を無重力空間で漂わせていた。

 

 あれだけの攻撃を仕掛けたにもかかわらず魔女には傷ひとつ付いていなかった。

 それどころかほむらの決死の攻撃をあざ笑ってるかのような声さえ聞こえてくる。

  

 ほむらはビルの残骸に飛び移りながら、ワルプルギスに応戦していた。

 黒い触手は人型の使い魔へと変化していた。

 まるでその姿は魔法少女の様にーー。

 

 「これ以上先に進まれたら・・・・・・避難所が襲われる! どうにかしてここで食い止めないと・・・・・・!」 

 

 ほむらは使い魔を一掃するために89式小銃を盾から取りだし掃射した。

 

 しかし、ワルプルギスはそのすきを見逃さなかった。

 ビルの残骸をほむら目掛けて叩き付けた。

 

 ほむらはとっさに時間を停止して攻撃を回避しようとする、魔力で肉体が強化されているとはいえあれを受けてはひとたまりもない。

 「!?」

 だが、時間停止魔法が発動しなかった。

 「そんな!?」

 一度の戦闘で使える魔力の限界、それが最悪のタイミングで訪れてしまったらしい。

 「うぐっ・・・・・・!!」

 叩き付けられたビルは勢いを弱めることなく、無防備なほむらの身体に直撃した。

 「く・・・・・・」

 

 先の一撃を受けてもほむらは死んでいなかった。

 魔力によって強化された肉体によって即死は免れ、意識もはっきりとしている。

 だが、ダメージまでゼロにすることは当然不可能だった。

 

 ほむらは体を動かそうとすると足に激痛が走った。

 「・・・・・・・・・・・・・つ・・・・・・!」

 足元を見ると右足が瓦礫に挟まれた上、出血もしていた。

 これでは動くこともままならない。

 

 

 「どうして・・・・・・どうしてなの・・・・・・何度やっても・・・・・・あいつに勝てない・・・・・・」

 ほむらはワルプルギスに最大の火力を叩きこんでも、倒せないことに悔しさがにじみ出た。

 最後に残しておいた魔力、再び世界をやり直すためにとっておいた最後の手段。

 時間逆行の魔法を使おうとしたが、思い留まるように使うのを止めた。

 いや、使えなかった。

 

 「繰り返せば・・・・・・それだけまどかの因果が増える・・・・・・」

 キュゥべえから聞かされたまどかの魔法少女としての資質が高かった理由が時間逆行の副作用であることをほむらは思い出していた。

 ほむらは左腕の盾を下ろした。

 

 「・・・・・・私がやってきたことは、結局・・・・・・」

 絶望の涙がほむらの頬に流れていた。

 足掻くだけ足掻いた、最後まで全力で戦い抜いた、努力もした、準備もしてきた、ましてや慢心などあるはずがなかった。

 それでも・・・・・・訪れる最後の魔女を止めることができない。

 

 「――――つ!」

 

 負の思いにとらわれたほむらの心を反映するかの如く、彼女のソウルジェムを黒い濁りが支配されていく。

 希望などあるはずがなかった。

 

 その時だった。

 「下向いてんじゃねーよ・・・・・・前を向きな」

 「!」

 ほむらは聞こえるはずのない声に驚愕した。

 「テメーの魂はこんぐらいじゃ染められやしねェだろうが」

 ほむらは信じられない思いで声の聞こえるほうに目を向ける。

 そこにあったのはーー

 ――共に戦いを切り抜けてきた、自分を助けると言ってくれた。

 ――白髪の侍(坂田銀時)の姿だった。

 

 

 

                       ***

 

                     同時刻 体育館

 

 「坂田先生が!?」

 まどかはキュゥべえから銀時がほむらを助けに向かったことを知り、助けに向かおうと飛び出そうとした時だった。

 

 まどかの手を掴み制したのは、母詢子だった。

 「どこ行こうってんだおい?」

 「・・・・・・ママ」

 まどかは一瞬戸惑ったが、理由を話すことにした、反対されるのを承知の上でーー。

 

 「私・・・・・・友達と先生を助けに行かないと」

 「消防署に任せろ、素人が動くな」

 当然、詢子は反対した。

 それでも、退くわけにはいかなかった。

 

 「私でなきゃ駄目なの!」

 詢子はまどかの頬にビンタした。

 「テメェ一人の命じゃねぇんだ! あのなそうゆう勝手やらかして周りが・・・・・・!」

 「分かってる」

 「分かってねえ!!」

 

 まどかは詢子が言おうとしていることを理解していた上で二人(銀時とほむら)のもとに向かおうとしたが、詢子が阻止し続けた。

 「ママ!?」

 その反応にまどかは驚いていた。

 「いいかまどか、私らがあんたを大切にしてるのと同じように、あんたが私らを大切にしてるのはよくわかってる、でもな・・・・・・」

 

 詢子はまどかを引き留めようとしながら思い出していた。

 

 『自分を思ってくれる親がいて、他に何がいるよ』

 

 「世の中には私らのような親がいなくて、大事なもの()をもてなかった奴がいるってことを・・・・・・」

 

 初めて会った白髪頭の男の言葉をーー。

 

 『俺ァほしかったよ、アンタみてーな家族が・・・・・・』

 

 「大切なもんを持っていなかった奴から見たアタシらの姿を、気持ちを、無視すんじゃねーよ・・・・・・」

 詢子は涙を流しながら思い出していた。

 

 教育実習に来た教師、坂田銀八の言葉をーー。

 

 

 

 

 

 

 




 今回はエレファント速報とフィルムメモリー、ジャンプリミックスを骨組みにオリジナルを練りこみました。

 pixiv百科事典を駆使しながら、書き上げました。

 さて今回の題名である『親と師は柱を支えるもの、子と弟子は背負う者』の題名の由来は、まどかは自分の命は自分一人の物ではないと分かっているのですが心のどこかで分かっていないのではないかと思い、この題名にしました。

 ほむらの流れはエレファントの原作部分を出来る限り分かりやすい解釈で書かせてもらいました。

 今回、投稿が遅れて申し訳ありませんでした。

 ご意見ご感想お待ちしております。


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他人から言われた回り道は本人にとって真っ直ぐな道

 前回、詢子が言っていたセリフの中に銀魂の海坊主編で言っていたセリフを思い出しているシーンで終わりましたが、どこで聞いたのかから始まります。

 その後は、ほむらと銀時の共闘へとはじまりますのでよろしくお願いします。


             数時間前 見滝原体育館

 

 

 「ここか? 避難場所の体育館は・・・・・・」

 銀時は巡回車のアナウンスに従って避難場所である体育館に来ていた。

 

 辺りを見渡すと、見滝原市民があちこちにいた。

 「スーパーセルって、ドラゴンボールのセルのパワーアップしたのかと思ったが・・・・・・」

 そう言いながら、現実を確認するように周りを見渡した。

 ここは、自分のいた騒がしい世界ではない、ジャンプネタを繰り出したたり、不祥事ネタをしていた世界(江戸)ではないと認識させられる世界だった。

 

 そんな中だった。

 

 「ちょっとあんた、何きょろきょろしてんだい?」

 

 銀時に呼びかける女性の声がした。

 振り返ると、ショートヘアーの女が目の前に立っていた。

 「きょろきょろしてないで、毛布を出す手伝いでもしてくれない? いまみんな避難してんだ・・・・・・」

 

 目の前の女はいかにも仕事勤めで優秀そうな顔だった。

 銀時は元の世界(今まで)の経験から逆らったらボコボコに占められているため、今は従う事にした。

 その時だった。

 

 ショートヘアーの女は銀時の顔をじっと見てきた。

 「アンタの顔、もしかして・・・・・・」

 

 (なんだこの女? 人の顔をじろじろと・・・・・・)

 銀時は独り言をぶつぶつ言っている女を怪訝に見つめた。

 その後、ショートヘアーの女は意を決してーー。

 

 「アンタの名前、もしかして・・・・・・坂田銀八って名前じゃないかい?」

 銀時がこの世界で名乗っている名を尋ねてきた。

 

 一瞬驚いた銀時は、とりあえず返事をした。

 「は、はい・・・・・・僕が坂田銀八ですが、どちら様ですか?」

 銀八は自分が名乗っている名を知っている女に尋ねた。

 

 「そうだったね、あたしの名前は鹿目詢子、まどかの母です」

 

 銀時は驚いた。

 「えええええ!? まどかの母ちゃん!?」

 そのリアクションに詢子は笑った。

 「アッハハハハハハ、 まさかそんなリアクションで来るとは・・・・・・しかも母ちゃんって」

 

 その後、銀時と詢子は少し話をした。

 まどかと早乙女から聞いた『坂田銀八』の人間に興味を持ったこと、学校の授業は散々であるが、生徒たちからはなんだかんだで慕われていると聞かされた。

 

 銀時からしたら、散々だった。

 

 しかし、詢子の話したかったことは他にあった。

 「銀八君、うちの娘の悩みについて何か知ってるかい?」

 詢子の問いに銀時は差し障りのないようにはぐらかそうとした。

 「もし仮に、俺がまどかの悩みを知っていたとしても、話してところで解決とは程遠いんじゃねーか?」

 「アンタの言う通りさ、 まどかの悩みをあんたから聞いてもそれで解決する手段は思いつかないかもしれない。 それでもあたしは・・・・・・」

 詢子がまどかの思いを銀八(銀時)に話した時だった。

 「親が出来んのは、引き留めることと、背中を押すことだけさ」

 「え?」

 銀時の言ったことに詢子はきょとんとした。

 「アンタの娘は確かに真っ直ぐに育ってるさ、ほかの誰でもみりゃわかる。 でも、その分一人で抱えやすい、ダチ公にも、親にもな・・・・・・」

 銀時は銀八としてまどかを見た時の印象を詢子に話した。

 詢子は銀時の話を静かに聞いた。

 「だが、むしろアイツは迷惑をかけずに済ませようとしちまうぶん、身動きが取れなくなっちまう。 だから、一緒に迷ってくれる奴が現れたら道って奴は見つかるもしれないさ、弱くもなければ強くもねェからこそさーー」

 

 そしてーー。

 

 「細けーことはよくわからねーや、 けど自分を想ってくれる親がいて、他に何がいるよ。 俺ァほしかったよ、アンタみてーな家族が・・・・・・」

 「・・・・・・っ」

 銀時の言葉に詢子は言葉が出なかった。

 只、銀時の言葉はまだ続いていた。

 

 「皮肉なもんだな、ホントに大事なモンってのは、もっている奴より、もってねー奴の方がしってるもんさ。 それでもーー」

 

 

 

                      ***

 

 

 

                   見滝原体育館 階段 

 

 

 

 まどかは詢子が銀八(銀時)に会っていたことに驚いていた。

 詢子は涙をぬぐった後ーー。

 

 「テメェが良い子に育ったのも、自分を粗末にしているわけじゃねぇってのも一番長く見てきたアタシらが知ってる。 でもな、坂田先生みたいに大事な親を持ってない人から見たら、結局粗末にしてるのと一緒なんだよ」

 

 詢子が銀時とそんな話をしていたことに、まどかは驚いていた。

 しかしーー。

 「私にもよく分かる、私だってママのことパパのこと大好きだから。 どんなに大切にしてもらってるか知ってるから、自分を粗末にしちゃいけないのわかる、だから違うのみんな大事で絶対に守らなきゃいけないからーー、 そのためにも私今すぐ行かなきゃいけない所があるの」

 まどかの決意は固かった。

 

 「・・・・・・理由は説明できねぇってか? ならあたしも連れていけ」

 詢子はまどかが心配と決意の理由を確かめる意味で、付いていこうとしたがーー。

 「駄目、ママはパパやタツヤの側にいて二人を安心させてあげて・・・・・・ママはさ私が良い子に育ったって言ってこれたよね、嘘もつかない、悪いこともしないって、今でも信じてくれる? 私が正しいと思ってくれる?」

 

 詢子がついてくることを、知久とタツヤから()がいなくなることを恐れたまどかは断りながらも、自分を信じてくれているかと問いかけた。

 

 その姿に詢子は白髪の天然パーマ(坂田銀八)の言葉を思い出していた。

 

 『それでも、アンタの娘が譲れない何かが出来たんなら、まどか(あいつ)のことは信じてやってくれよ』

 

 

 「・・・・・・」

 詢子は、まどかの瞳に強い決意が宿っているのを感じた詢子は引き留める手を引っ込めた後、確かめるように問いかけた。

 

 「・・・・・・絶対に下手打ったりしないな? 誰かの嘘に踊らされてねぇな?」

 「うん」

 

 窓はの返事を聞いて、詢子はまどかの背中を押した。

 「あっ・・・・・・」

 まどかは押された衝撃で少し階段を数歩下った後、詢子の方に振り返った。

 「・・・・・・ありがとう、ママ!」

 

 詢子に感謝したまどかはそのまま階段を駆け下りた。

 その後ろ姿に詢子は見守っていた。

 

 そんな中で、まどかはある決意を胸に秘めながらほむらがいる戦場へと向かっていった。

 

 

                      ***

 

 

 

 満身創痍のほむらは駆け付けてきた銀時に驚きながらも問いかけた。

 「・・・・・・何故来てしまったの」

 ほむらは美樹さやか救出の際の銀時の身体のダメージを考えていた。

 そのために、ワルプルギスとの戦いから引いてもらうために戦力外だとほかの魔法少女に含めて言ったからだ。

 それでも、銀時は戦場(ここ)に来ていた。

 

 「こっちだってとっとと逃げ出してーよ、俺ァ何でこんなとこにきちまったかね」

 ほむらの言いたいことは分かっているとでも言いたげに銀時は言葉を返す。

 「ま・・・・・・こういうのを女に全部丸投げするわけにもいかねーしよ、男ってのは見え張って生きてくモンだしな」

 

 銀時はお気楽な口調で言っていたが、ほむらはその裏にある覚悟を感じ取っていた。

 

 「あなたは・・・・・・そのまま戦ったらどんなことになるのか分かってるの・・・・・・?」

 ほむらは銀時が関わった戦いの中で命を落としかねないことを予測していた。

 それでも白髪の天然パーマはほむらの前に駆けつけていた。

 ほむらはそう思いながらも銀時に問いかけた。

 

 いや、問いかけられずにはいられなかった。

 

 ほむらの心配が含まれた問いかけに銀時はーー。

 

 「どうなるか? んなモン、最初っから分かってるに決まってんだろ」

 何の恐れもないかの如く、 少女の不安を根こそぎ吹き飛ばすかの如くーー。

 「てめー自身の手でコイツをぶっ倒す未来を創るんだからよ」

 「!」

 

 銀時の言葉にほむらの目が涙で潤った。

 「・・・・・・どうして」

 

 ほむらは涙を流しながら銀時に問いかけた。

 人前で涙を流すのは、三度目の時間逆行でまどかの介錯をした時以来だった。

 

 「どうしてあなたはそうやって・・・・・・魔女と戦う能力なんか持ってないくせに・・・・・・最初に魔女と戦った時も・・・・・・美樹さやかを助けた時も・・・・・・そして今でさえ・・・・・・!」

 

 ほむらは泣きながら、銀時が魔女に立ち向かった時のことを、さやかを助けた時に満身創痍になりながらも立ち上がったことを思い返しながら、今の状況になっていることに戸惑っていた。

 

 「私は・・・・・・ワルプルギスを倒すために命を捨てる覚悟があったのに・・・・・・!」

 時間逆行で何度もまどかが魔女になって命を落とす場面を見てきた。

 ほむらは何度も時間逆行しながらもまどかが命を落とさないために戦っていた。

 そのためなら、自分の命を引き換えにしてもワルプルギスを倒すことにためらいがなかった。

 

 しかし、銀時はその決意を切り裂くがごとくに反論した。

 「命を捨てる覚悟なんざ邪魔なだけだ、不燃ごみと一緒にその辺に出しとけ。 代わりにどんなことがあっても必ず生き抜く覚悟を持ってろ」

 

 「・・・・・・」

 

 ほむらは、はっと思い出していた。

 銀時が蛮勇で戦ってるわけではなく、生きるのを諦めずに立ち向かっていたことを、魔法少女(誰一人)も見捨てずに拾い上げながらも、自分の命を投げ捨てずに戦っていたことをーー。

 

 ほむらは涙をぬぐいながら足の瓦礫をどかした。

 

 (片足が動かなくなったってまだ戦えないわけじゃない、まだ諦めるには早すぎる)

 

 ほむらはさやかを助けだしたときの銀時の姿を思い出していた。

 あの時、諦めずに戦い続けることの意味を知ったことをーー。

 

 「私は死なないわ・・・・・・そしてあなたも死なせない・・・・・・その覚悟があればいいのかしら?」

 

 ほむらの表情は絶望に暮れた者でも、自暴自棄になった者のそれではない、最後まで戦い抜く決意に満ちていた。

 

 その姿を見た銀時は、ポケットからあるものを取り出し、ほむらに投げ渡した。

 ほむらは、投げ渡されたものを見て驚いていた。

 「これは、グリーフシード!? どうしてあなたが!」

 「それな、杏子から預かってたやつなんだけど、返しそびれたのを忘れてた」

 

 銀時の言葉にほむらは半笑いした。

 そして、自分のソウルジェムにあてて浄化した。

 

 「これならまだ戦えるわ、行きましょう銀時」

 

 ほむらの言葉に銀時は半笑いで返しながらーー。

 「・・・・・・行くぜ、 こっから仕切り直しと行こうじゃねーか」

 

 ほむらからワルプルギスの方に顔を向けて木刀を前に掲げた。

 

 こうして、ワルプルギスとの運命の最終決戦が幕を開けた。

 

 

 




 はい、今回はオリジナルの話を前半に入れて、エレファント速報とフィルムメモリーズ、ジャンプリミックスを混ぜ合わせました。

 原作では詢子との会話の後にまどかは概念化してしまったので家族のもとには帰れなくなり、ほむらの願いもかなわなくなってしましました。

 本作で、まどかが新たに秘めた決意が鍵ですので、目が離せなくなります。
 
 銀時はほむらを救い、まどかの運命を変えることが出来るのか!!

 物語はついに最終話ですので、応援よろしくお願いします。

 ご意見ご感想、お待ちしております。


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わたしの、最高の友達編
援軍が遅れてやってくる場面は決まって一際輝く


 はい、前回ではほむらの救援に銀時が来た際の会話でほむらの絶望が取り払った所で話が終わりました。

 さて、最終決戦が始まったので、銀時は魔法少女たちの運命を砕くことができるのか!?

 それでは、お楽しみください。


 ほむらは浄化されたソウルジェムの輝きを確認をした後、ワルプルギスに向かい合った。

 

 銀時の参戦はほむら自身予想していなかった。

 美樹さやかの救出の際に負ったケガを考え、戦力外として銀時本人に話したが、それを知ったうえで駆けつけてきた。

 

 時間逆行していても、基本的には魔法少女が存在する世界において、異世界(違う時間を歩んだ江戸)から来た、侍の存在はハッキリ言って出鱈目だった。

 

 それによって今の状況に変化が現れるかと思われた。

 

 だが、依然として不利の状況は変わっていない。

 

 ほむらは、瓦礫に飛び移りながらワルプルギスに攻撃を仕掛け、時には襲い掛かる使い魔に応戦していたが、其の最中あることに気付いた。

 

 ほむらは、辺りを見渡して白髪の天然パーマの姿を探していた。

 

 そして、見つけた場所はーー。

 

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 

 銀時がほむらを奮い立たせた場所だった。

 ほむらは睨みながら、銀時のいる場所へと戻っていった。

 「あなた・・・・・・私を助けに来てくれたのよね?」

 ジト目で銀時を見ながらほむらは問い詰めた。

 「ああ・・・・・・そうだな・・・・・・」

 銀時もほむらにジト目で返した。

 「あれだけかっこよく登場したんだからもう少し真面目に戦っ・・・・・・」

 ほむらが続きを紡ごうとした途端ーー。

 

 「・・・・・・飛べねェんだよ・・・・・・俺ァ・・・・・・」

 「・・・・・・」

 銀時が動かなかったのではなく(・・・・・・・・・・)動けなかったのだ(・・・・・・・・)

 ようやく理由に気が付いたほむらは気まずそうな顔をした。

 

 「・・・・・・ご、ごめんなさい・・・・・・」

 

 ほむらは、今までの戦いで奇跡を起こした侍が普通の人間であることを忘れていたことを内心反省していた。

 

 ほむらは銀時の側に近づいた後、手を握った。

 その後に、銀時の身体が淡い紫色の光に包まれた。

 そして、ほむらはそのまま銀時の手を握りながら上空へと跳躍した。

 

 すると、銀時の身体は宙へと浮いていた。

 

 「飛ぶってのはあんまり良い気分じゃねーな、何この浮遊感気持ち悪っ!」

 銀時が浮いているのはほむらの魔法によるものだった。

 ほむらは自らの魔法(能力)の応用でトラックを操ったのを人間の身体でやってのけた。

 そのため、銀時の体を浮かせていた。

 

 只、能動的に飛行しているわけではない銀時にとっては大きな違和感を感じさせるものだったらしい。

 「我慢して・・・・・・来るわ」

 銀時を牽引しながらほむらはワルプルギスを見つめながらそう言った。

 

 「キャハハハハハハ! キィャハハハハハハハハ!」

 奇妙な笑い方をあげたかと思ったとき、魔女の力によって使い魔が現れた。

 召喚された使い魔たちは真っ直ぐに銀時たちに向かって攻撃を仕掛けてくる。

 強力な魔女(ワルプルギスの夜)の使い魔だけはあって動きは早い、これを相手にしつつ攻撃を仕掛けるのは厄介だろう。

 銀時は使い魔を直感的にそう観察してーー。

 「こいつらの相手は俺がしてやらァ・・・・・・テメーは本元をぶっ叩け!」

 使い魔の相手を引き受けることにした。

 「ええ、使い魔は任せるわ・・・・・・!」

 銀時の言葉に頷きほむらはワルプルギスに専念することにした。

 ほむらの用意した攻撃はすべて使い尽くされてはいない、まだ十分な量の武器が手元に残されている。

 使い魔は銀時が引き受けている為、ほむらはワルプルギスに攻撃を仕掛け続けた。

 

 使い魔を相手取っている銀時は、数匹の使い魔の一匹の頭部を鷲掴み、他の使い魔に投げつけ、蹴り付け、斬り伏せた。

 銀時の隙のない連続攻撃、そのおかげで使い魔の数は減っていった。

 

 しかし、銀時に頼ってはいられないとほむらはワルプルギスに攻撃しながら考えていた。

 今は邪魔されずに攻撃を仕掛けられているが、銀時の参戦まで、単純な攻撃ならば先に嫌というほど試していた。

 それも計算されつくした連続爆撃によって。

 それでも最強の魔女(ワルプルギスの夜)を止めるどころか怯ませることさえ叶わなかった。

 

 ほむらは銀時の戦況を確認すると、使い魔との戦いは遠目で見て、拮抗している様に見えるが若干息を切らしている場面が目で見て取れた。

 

 「・・・・・・・・・・・・!」

 

 ほむらは銀時の状態を考慮しなければならないと内心焦っていた。

 何か策を考えなければならない、ワルプルギスを倒せるだけの破壊力を秘めた一撃を生み出す策をーー。

 そうして考えている間にも使い魔との戦闘を繰り広げる銀時は大きな負担がかかってしまう。

 銀時が倒し続けて一体となった使い魔も、ワルプルギスの触手が新たな使い魔を生み出していた。

 

 「ぐっ・・・・・・!」

 「!」

 

 使い魔の攻撃が銀時を掠める、やはり体のダメージが蓄積していて思う通りに動けないでいた。

 その状態でワルプルギスが生み出した強力な使い魔の攻撃を捌いているのはさすがというべきだろう。

 だが、このままでは体力の低下と共に追い詰められるであろうことも明らかだった。

 「・・・・・・!」

 

 (マズイ・・・・・・私が何とかしなければ銀時の身が・・・・・・!)

 

 そうして焦れば焦るほど頭からは冷静さが失われていく。

 

 (どうすればいいの・・・・・・どうすれば・・・・・・!)

 

 焦燥にかられ正常な思考力を失っている最中のことーー。

 

 「間に合ったみたいね、良かったわ」

 ほむらは聞き覚えのある師の声が聞こえた。

 「待たせちゃってごめん! 二人とも!」

 次に聞こえたのは助け出したばかりの少女の声ーー。

 「なーに遊んでんだよ、とっとと本気だしやがれ!」

 そして、縄張りを譲るという条件で共闘を依頼した少女の声だった。

 

 ほむらは振り返ると見覚えのある三人の姿が戦場(ここ)に現れた。

 黄色の縦ロールの紙の少女と青髪のショートヘアーの少女、赤髪のポニーテールの少女が戦場に駆けつけた。

 「あ、あなたたち・・・・・・!」

 ほむらは驚きの表情で三人を見ていた。

 

 「ごめんなさいね、来るのが遅れて・・・・・・」

 マミはほむらにそう謝罪していた。

 「とりあえず私、先生の手伝いに行ってくる!」

 さやかは直ぐに銀時の加勢に向かおうとしたがーー。

 「かっこつけんなよ馬鹿、肝心要のお前が言ったらダメに決まってるだろ」

 さやかは呆れながらも、さやかを制した。

 「うっ・・・・・・確かに」

 さやかは杏子に反論しそうになるも何かの役目を思い出したのか、堪えた様子だった。

 

 銀時に続く援軍として現れた三人にほむらは戸惑っていた。

 

 ――一体なぜ?

 

 「あなたたち、分かっているの!? 自分たちのソウルジェムの穢れが半分近くになっていることに!」

 ほむらはマミと杏子に向かいながら、そう尋ねた。

 さやかを救い出す過程でのソウルジェムの穢れの具合が半分に行くか行かないかの状態であることに、そしてーー。

 

 「美樹さやか、あなたもよ!!」

 次にほむらはさやかの方に顔を向けた。

 魔女から魔法少女に戻したとはいえ、何が起こるか分からない状態のさやかが戦場に来るのは危険な不確定さと、彼女を案じる心が入り混じっていた。

 

 すると、マミがほむらの疑問に答えた。

 「大丈夫よ暁美さん、 ソウルジェムの穢れを計算して魔法を使えばいいだけの話だし・・・・・・」

 「それに、ばらばらだったアタシらの魔法を組み合わせれば、何とかなるだろ!!」

 マミに続いて杏子がそうほむらに告げた。

 

 その言葉にほむらが困惑した。

 「まあ、見ればわかるさ、さやか!!」

 「うん、マミさん!」

 杏子の言葉に頷いたさやかはマミに声掛けして合槌をうった。

 マミは頷きさやかと共に銀時のもとに走った。

 

 二人は手をつなぎマミは手のひらからリボンを召喚して銀時の体に巻きつけた後、さやかの治癒魔法を発動させた。

 

 「巴マミ、美樹さやか! 何を・・・・・・」

 マミが銀時の体にリボンを巻き付けたことに驚いた後にさやかがほむらを宥めるよう言った。

 「まあ見てて、これが、マミさんと杏子と一緒に考えた編み出した魔法だよ!」

 そう言った後、銀時の体の傷がみるみると癒えていった。

 魔法をかけながらほむらの疑問にさやかが答えた。

 「知っているかもしれないけど、私は魔法少女になるときに癒しの祈りで契約しているんだよね」

 さやかが契約内容を話した後にマミが続けてさやかの話を補正するように告げた。

 「そこに、私のリボンで坂田先生の傷に巻きつけて、美樹さんの魔法に方向性を示せば、魔力の消耗も抑えられると思ったの、ぶっつけ本番なんだけどーー」

 

 マミは自分のリボンをさやかの魔法の伝導体代わりに流すことで、致命傷と多少の傷でも動けるぐらいには回復するではないかと考えていたことをほむらに伝えた。

 思い付きで編み出した魔法であったがーー。

 

 「あぁ、てめーらの思いつき、当たりだったみてーだぜ」

 そう言いながら、銀時は立ち上がっていた。

 どうやら、マミたちの考えは当たっていた。

 

 「ごめん先生、本当はもう少し魔法を懸けたかったんだけど・・・・・・」

 さやかがそう銀時に謝ったがーー。

 「別にいいさ、動ければこっちで何とかするし、もしもの時に取っておきな」

 銀時はマミとさやかに感謝の言葉を言いながら準備運動をしていた。

 「!」

 ほむらは目の前の光景に驚いていた。

 

 ――魔法少女と魔法少女の力を組み合わせる・・・・・・?

 

 幾度もの世界の中でも経験したことのないことだった。

 

 ――巴マミがワルプルギスの夜と戦って命を落とした世界でも、美樹さやかが魔女と化してしまった世界でも、そんなことを試みたものは誰一人としていなかった。

 

 ――それは巴マミが錯乱(絶望)せずに生存しており、美樹さやかが健在であり、杏子がほかの魔法少女と協力し合ったからこその結果。

 

 ――魔女となった美樹さやかを全員で救い出すという奇跡が達成できたからこそ実現したことだった。

 

 「ボロボロのアンタは一旦下がってろ、 ここはあたしがあ食い止める・・・・・・その間に少しでも体力を回復させてな」

 杏子は乱暴な口調ながら銀時を気遣っていた。

 

 「やれんのか? あいつら相当厄介だぞ?」

 銀時がワルプルギスが生み出した使い魔を見て杏子に覚悟のほどを尋ねた。

 

 「見くびんじゃねえよ馬鹿、あたしを誰だと思ってんのさ」

 鼻で笑いながら杏子が銀時の問いにそう返した。

 

 「・・・・・・死ぬなよ、ベ〇ータ」

 「フン、 大きなお世話・・・・・・ていうかベ〇ータって誰?」

 銀時が元の世界の出身でのジャ〇プ(愛読漫画雑誌)の有名キャラを杏子に当てはめたようにして、杏子を某有名のバトル漫画に出てくるライバルキャラを当てはめて呼んだが、杏子は銀時が呼んだ名前に

困惑していた。

 

 

 ほむらはそのやり取りを呆れながらも心の何処かで安堵していた。

 

 ほむらは銀時の初めての出会いから今日までの出来事が、キュゥべえが叶えた奇跡よりも貴く感じていた。

 

 マミの生存、杏子との共闘、さやかの救出がこの緊急時において、マミたちと呆れたやり取りをしている白髪の天然パーマの侍がもたらした奇跡に他ならないことをほむらは心で感じていた。

 

 

 そして今、ワルプルギスが瓦礫を魔法少女たちに投げ出した。

 

 瞬時に、銀時と魔法少女たちは回避行動をした。

 

 

 ワルプルギスの夜との戦いはまだ劣勢であるものの、少しであるが確実に、戦場の風が変わり始めていた。

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 今回の小説はここまでとさせてもらいます。

 エレファント速報の文面をベースにオリジナルを着色してみました。

 鳥山明先生のドラゴンボールの流れもエレファント速報で抜粋させてもらいました。

 銀時に続いてマミたち魔法少女達がほむらのもとに駆けつけた流れは胸を熱くさせます。

 さて、エレファント速報とこの小説で書かれたマミとさやかの合体魔法はマギアレコードのコネクトに近いことがわかりました(pixivで抜粋させてもらいました)

 ご意見ご感想、よろしくお願いします。

 


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救いたい子の心の変化は今まで出会った人の背中で決まる

 さてと、前回銀時に続いて、マミとさやか、杏子の参戦&新魔法によって流れが変わります。

 そして、ほむらが最も救いたい親友まどかも戦場に向かう流れです。

 原作では魔法少女を救うために概念となったまどかですが、今作品ではどうなるでしょうね?

 それでは、どうぞ!!


 ほむら達はワルプルギスが浮かせていたビルの残骸を全力で回避した。

 

 その後に銀時と魔法少女たちはワルプルギスが投擲した残骸を足場にしてワルプルギスに一目散に目指していった。

 

 ほむらはワルプルギスが召喚した使い魔を銃撃で一掃しながら銀時と自分以外の魔法少女の動きを見ながら情報を整理していった。

 

 今まで(時間逆行)ワルプルギスの戦闘(戦闘経験)をまずマミにテレパシーで伝えた。

 

 (巴マミ、ワルプルギス()の攻撃手段は黒い触手とそれが変化して使い魔にしたり、炎で出来た槍を飛ばしたり、みんなが見たように破壊されたビルを浮遊させて叩き付けてくるから気を付けて)

 

 (了解よ、他のみんなは私から伝えるわ)

 

 その後マミはほむらが持っている情報をさやかと杏子に伝えていった。

 

 (了解、マミさん)

 

 (あぁ、分かった!)

 

 さやかと杏子はテレパシーでマミに頷いた。

 

 そこで魔法少女たちは自分の特性(魔法)を考えてそれぞれテレパシーで伝えてながら使い魔の掃討をしながら、作戦を組み立てていった。

 

 

 マミは使い魔をマスケット銃で掃討しながら作戦は開始された。

 

 「・・・・・・よし、これでさしあたっては大丈夫かしら」

 

 使い魔を掃討しながら、マミは少し一息ついていた。

 「やるじゃねーかアー〇ジェット、やっぱパーティー回復と遠距離攻撃キャラは一人は必要だわ」

 銀時がマミの戦い方を見て、某有名殺虫剤にたとえた。

 「だ、だからそのアー〇ジェットは・・・・・・」

 マミは戸惑いながらも、銀時がつけたあだ名に反論していた。

 「わーったよ、じゃあ巴マミとアー〇ジェットの間を取ってノー〇ットで」

 しかし、銀時はマミへのあだ名いじりで違うあだ名で付け返した。

 しかも、今度は某有名な蚊取り線香の名だった。

 「何で中間をとってノー〇ット!? 何なのそのスイッチ一つで蚊を落としそうな呼び名!」

 この世界では銀時(自分)漫画の世界(江戸の世界)の住人だと自覚している分、某殺虫剤シリーズの名前を知っていたが、この世界の住人には当然知る由もなかった。

 

 只、マミは何故か今つけられたあだ名がボタン一つで蚊を落とす物だと理解していた。

 「顔と同じ感じでワルプルギスの夜を撃ち落としてほしいという願いを込めました、マル」

 「いや作文じゃないんだから・・・・・・」

 銀時のあだ名の由来を作文の発表感で話したため、マミが冷ややかに突っ込みを入れた。

 そのやり取りに飽き飽きしたのかほむらはーー。

 「今は気にしてる場合じゃないわノー〇ット、ワルプルギス打倒に全力を尽くしましょう」

 マミに向かって告げた、しかしーー。

 

 「ちょっと待って、さらっとあなたまでノー〇ットって言わなかった?」

 ほむらが銀時とマミの不毛なやり取りを止める際に言った際に、咄嗟に出てきたあだ名が入っていることをマミは聞き逃さずに突っ込みを入れた。

 

 ――移っちゃった・・・・・・。

 ほむら本人は口を押えながら、反省した。

 

 そんな些細なやり取りをしながらもワルプルギスの攻撃の手を緩めない銀時たち。

 それでもなおワルプルギスにはビクともしなかった。

 

 ワルプルギスがビルを浮遊させて全員に叩き付けてきた際は、マミのリボンとーー。

 

 「ロッソ・ファンタズマ!!」

 

 杏子の魔法を組み合わせて銀時たちの分身を作り合わせて、攻撃を回避していった。

 

 「おい杏子、さっきの魔法はなんだ?」

 杏子の魔法に驚きながらも銀時は尋ねた。

 「あたしの魔法は幻惑の魔法なんだ。 あたしの家族が死んで以降、使えなくなっちまっていたんだけど・・・・・・」

 

 魔法を使った杏子も出せるかどうか半信半疑だった。

 杏子の家族が一家心中して以降、固有魔法が使えなかったからだ。

 

 しかし、銀時との出会いと、さやかの救出、マミとの和解で出せるようになっていた。

 ただしーーーー。

 

 「この魔法を使うのは久しぶりな上、魔力の残量を考えれば・・・・・・回数は決まっちまうからな、ヤバい時しか使えないよ!」

 そう杏子は銀時たちの警告した。

 

 「「「了解!!」」」

 魔法少女三人は杏子の言葉を理解して了承した。

 

 後は、攻撃と回避行動に専念したがーー。

 やはり、ワルプルギス本体は健在の上、頑丈だった。

 「チッ・・・・・・コイツ、頑丈にもほどがあるぜ・・・・・・!」

 「頑丈ってレベルじゃないでしょコレ・・・・・・明らかにチートじゃない・・・・・・」

 杏子の強烈な槍撃を与えても魔女の頑丈さに毒づきに対して、全力な斬撃を与えたさやかがそう答えた。

 

 「ティロ・フィナーレ!」

 マミは出し惜しみしている余裕もないと判断して、自分の切り札(必殺技)を序盤から撃ち放った。

 しかし、ワルプルギスには効果が薄かった。

 

 「・・・・・・」

 マミは目を凝らしながら、自覚した。

 ワルプルギスの伝説をーー。

 最強の魔女の絶対的な力、結界不要の圧倒的なまでの最凶の存在を肌で感じ取っていた。

 

 マミの『ティロ・フィナーレ』(必殺技)を食らってもビクともしなかったからだ。 

 

 

 「これだけ頭数そろっていても・・・・・・まるで歯が立たないなんて・・・・・・」

 ほむらは魔法少女が協力しての攻撃を繰り出してもピンピンしているワルプルギスの耐久力を嫌々ながら実感していた。

 「・・・・・・!」

 その時、銀時の頭に電流が流れた。

 「だったら、あれをやるしかねーな・・・・・・」

 ほむらは銀時の側にいたために今発した言葉に疑問を持った。

 「・・・・・・・・・・・・あれ?」

 ほむら一旦ほかの魔法少女(みんな)にテレパシーを送り、銀時のもとに集まっていった。

 そして、ほむらは銀時の作戦を尋ねた。

 「銀時、何か思いついたの・・・・・・?」

 すると銀時はある行動を見せることにした。

 「まず二人がある程度の距離を置いて立つ・・・・・・腕の角度に気を受けろ」

 「・・・・・・え?」

 ほむらは銀時の行動に困惑していた。

 なぜなら、四人の魔法少女たちの前に謎の動きを見せようとしていたからだ。

 「フュー・・・・・・腕を反対にしながら二人が近づく、このとき動かす足は三歩分だ」

 「・・・・・・」

 さやかは困惑のあまり、口が開いてしまった。

 「ジョン、手はグーに変える! やはり足の角度に気を付けろ!」

 「・・・・・・」

 杏子は取りあえず、銀時の動きに集中してみることにした。

 「はっ! こうして二人の指を合わせーー」

 その瞬間、銀時は全てを言い終わる前にほむらの鉄拳が顔面に炸裂した。

 ほむらは銀時を殴った後、指を鳴らしながら問い詰めた。

 「こんな時くらいは真面目にやったらどうかしら・・・・・・」

 銀時は顔面を押さえながら今までの行動の理由を告げた。

 「あの超特大のブウを倒すにはこれしかねーぞお前、もうホムラマミとキョウコヤカになるしかねーよ」

 「超特大のブウって何!? いつからそんなのが目標になっていたの!? ていうかホムラマミとキョウコヤカって何なの!? ただくっつけただけじゃない!」

 さやかは銀時の一連の行動に突っ込みを入れていた。

 しかしーー。

 「・・・・・・」

 杏子は銀時のやっていた動きをおさらいする様に動きをマネした。

 「佐倉さん・・・・・・あなた、どうして腕を伸ばして立っているの?」

 マミは杏子の動きに力なく見ていた。

 

 「ま・・・・・・冗談は置いといてだ、あのラピュタ撃ち落とすのは簡単じゃねぇ、流石に俺もあんなデカい戦艦みてーな野郎と戦うのは初めてだしな」

 

 「戦艦って、いやっ・・・・・・何か考えがあるの?」

 ほむらが銀時が戦艦とやり合った話に気になったが、今はワルプルギスを倒すことに集中したかった。

 

 無論、銀時の世界では、紅桜と呼ばれる妖刀という名の『生きた兵器』とその使い手である人斬りと、蓮蓬と呼ばれる幻の傭兵部族を陰で操っていた『星の頭脳』が最終兵器として星そのものと戦ったことは魔法少女たちは知る由もなかった。

 

 「とりあえず、あの化け物をこれ以上先へ進ませるわけにゃいかねェだろ。上手くすりゃ怯ませるこたァできるかもしれねぇ」

 

 そう銀時はほむら達にワルプルギスを怯ませる作戦を伝えることにした。

 ――ズラほどじゃねーが、何とかなんだろ。

 銀時は攘夷戦争で『逃げの小太郎』と呼ばれた幼馴染(朋友)のことを思い出しながら策を伝えた。

 

 

 

 

                      ***

 

 

 

 作戦行動は単純明快だった。

 それは最大の火力攻撃を休むことなく浴びせ続けること。

 ほむらが単身ワルプルギスに挑んだ際に行った()だった。

 しかし、違う作戦だというのならばーー。

 「巴マミ、 準備はできているかしら?」 

 「ええ・・・・・・いつでも問題ないわ」

 マミが火力を担当するからだ。

 ほむらはマミの返事を受け、時間を止めた。

 今までと異なるのはマミの体にほむらが触れているため、動けることだった。

 

 「やれるだけやるしかないわね・・・・・・行くわよ!」

 具現化された大量の大型魔法銃をワルプルギスに向かって撃ち放たれていった。

 「ティロ・フィナーレ!」

 加減した一撃ではない、全力の一撃が時を止められている間に蓄積されていく。

 すでに十発を優に超える魔法攻撃が溜められていた。

 「・・・・・・そろそろ時が動き出すわ」

 「ここからはあの三人ね・・・・・・!」

 マミの言葉にほむらが頷いた。

 魔道具がカチリと音を立てるのと同時に、止められていた時が動き出した。

 溜められていたマミの魔法攻撃が一気に魔女へと炸裂した。

 

 ワルプルギスが爆発し、動きを止めたのを見た銀時、杏子、さやかの三人は奇襲の準備をした。

 「よしっ! マミさんたちは成功したみたいだね!」

 「次はあたしらの番だよ、ここで一気に片付けちまおうぜ」

 「行くぜてめーら・・・・・・!」

 遠距離魔法による攻撃が終わると同時に、接近戦を得意とする三人は同時にワルプルギス目掛けて追撃をして畳み掛ける。

 

 共闘するのは初めてであったにも関わらず、互いが互いの邪魔をすることはなかった。

 

 作戦の直前、銀時が杏子とさやかの二人に言い含めておいたこと。

 それはーー。

 

 『決して立ち止まるな、攻撃の手を休めるな、呼吸を乱すな』

 

 この三つだった。

 

 杏子の槍による刺突とさやかの剣による斬撃をワルプルギスに与えていき、銀時の木刀による連撃をワルプルギスに無駄なく当てていった。

 

 「十分よ! もう一度時を止められるわ!」

 「分かったわ!」

 

 ほむらは魔法発動のインターバルが終わったことをマミに伝えた後、テレパシーで近距離攻撃を仕掛けているさやかと杏子に伝えた。

 

 《了解!!》

 さやかと杏子がテレパシーで了承した後、さやかは銀時に呼びかけた。

 「先生!!」

 「離れろテメーら!」

 

 そう銀時が合図した後、すぐさまワルプルギスから少し距離を置く三人、そして時が止められる。

 時が止まった世界の中でマミは銀時が立てた作戦に驚いていた。

 「時を止めている間に私たちが遠距離から火力の高い攻撃を仕掛けて・・・・・・」

 マミは最大火力(ティロ・フィナーレ)を撃ちながら銀時の作戦を整理していた。

 「暁美さんの時間停止が解けたら、次に発動できるまで三人が追撃する・・・・・・か、単純だけど思いのほか上手くいくものね」

 

 「・・・・・・」

 

 マミの言葉に沈黙で頷きながらもほむらは驚いていた。

 確かに単純と言ってしまえばそれまでだった。 

 だが、 単純ゆえに効率よく動いている策でもある。

 ほむらの『時間停止』とマミの『ティロ・フィナーレ』の複合によって生み出された高火力による遠距離攻撃であるため、近接戦を得意とする三人を巻き添えにする可能性があった。

 しかし、ここまで極端に役割分担すれば、ほむら達の攻撃が三人を巻き添えにすることもない。

 そして、巻き添えになる危険性がなければ三人も周りを気にせずに全力で魔女を叩くことができる。

 この戦場()にいる五人にとっては最も効率がいいと思われる戦いだった。

 

 遠距離、近距離の攻撃を何度繰り返したかは分からない。

 どれほどダメージが通ってるのかも分からない。

 だが、一つはっきりとした変化としてーー。

 「・・・・・・」

 魔女が奇妙な笑い声をあげることがなくなり、進行自体が止まっていた。

 

 ーーーーワルプルギスが先に進めていない・・・・・・!

 ほむらは過去の世界で足止めすらできていなかった。

 まどかが倒したどの時間軸でも、自分自身の目的も遂げられず、時間を巻き戻しても、ワルプルギスの笑い声が嫌というほどほむらの耳に残っていた。

 

 だが今回は今までとは明らかに違う変化が表れている。

 ほむらにとっては良い意味で信じがたいことだったが。

 ・・・・・・だがーー。

 

 

 ーーーーコイツの動きを止められようが・・・・・・コイツを完全にぶっ壊せねーと意味がねェ!

 

 銀時はワルプルギスを見ながら、そう考えた。

 

 銀時が魔法少女たちに話した役割分担でも、『ワルプルギスの夜を倒す』という根幹の目的を達成するまでには至らなかった。

 

 

                     ***

 

 

 

 「何・・・・・・これ・・・・・・!」

 

 壮絶な戦いを繰り広げる五人から少し離れた場にまどかは立っていた。

 

 自分に何が出来るか分からない、それでも何もせずにじっとしていることはできなかった。

 「あれが・・・・・・ワルプルギスの夜・・・・・・!」

 逆さまに宙を浮かぶ巨大な魔女、戦いの経験が無くても一目でその強さが伝わってきた。

 

 ワルプルギスと相対するほむらたち魔法少女と銀時だったが、苦しい戦いを強いられているのが見て取れる。

 

 「こんな・・・・・・こんなのって・・・・・・!」

 ワルプルギスの強大な力を肌で感じ取っていたまどかは体を震わせていた。

 そのまどかの声に反応したかのようにその場へ現れたのはーー。

 「このままだと彼らは勝てないね」

 「キュゥべえ・・・・・・?」

 目の前に現れた、地球外生命体(キュゥべえ)は銀時と魔法少女たちの戦いを分析した。

 「暁美ほむらとマミの遠距離魔法の後に、坂田銀時とさやか、杏子の三人で近距離での追撃か・・・・・・彼らなりに工夫して戦ってはいるみたいだけど、それでも相手は舞台装置の魔女・・・・・・現時点では最強の魔女だ、このままジリ貧状態に陥ればまず間違いなく全滅するだろうね」

 

 「!」

 

 キュゥべえの言葉は簡単に信じるべきではないことはこれまでの経験からも十分に理解している。

 

 マミの疑問、ほむらの警告、そして魔法少女と魔女の関係をーー。

 

 だが・・・・・・今回ばかりはキュゥべえの言葉には一寸のまやかしもないように思える。

 「どうすれば・・・・・・どうすればいいの・・・・・・?」

 

 まどかはワルプルギスと戦っているほむら達の身を案じるとともに、無力さを苦虫をかじる様に見ていた。

 

 「どうしようもないさ、逃げろと言ったところで彼らが戦いから引くことは無いだろうね・・・・・・かといってこのまま戦いを続ければ彼らの敗北は目に見えている」

 

 「・・・・・・!」

 

 その時、キュゥべえはまどかが返す言葉に詰まったのを見逃さなかった。

 「でも・・・・・・この最悪な状況でも手は残されてるよ、まどか」

 キュゥべえの言葉に耳を傾けたまどか、いや、傾けてしまった。

 「君の力さえあれば彼ら全員を助けることが出来る、ワルプルギスから人々を救うことが出来る。 君に秘められている力はそれだけとてつもないものなんだ!」

 キュゥべえはそうまどかに秘められた力を説明するとともに、キュゥべえは魔法少女の素質がある少女たちと同じように、言った。

 

 「だから・・・・・・僕と契約して魔法少女になってよ!」

 「・・・・・・・・・・・・・・!」

 まどかはキュゥべえを睨んだ。

 

 卑怯な誘い掛けだった。

 あたかも自らの勧める提案が最善の策であるかの様に見せかける物言い。

 今までまどかはキュゥべえが持ちかける契約に何度もしそうになっていた。

 五人が追い詰められて選択肢が狭まったこの状況を見計らっての言葉だった。

 

 そのたびにほむらが阻止していたことに、守られていたことを思い出していた。

 

 「・・・・・・そうやって私を契約しなきゃならない状況に追い込むつもりなんだね」

 キュゥべえを睨みながら、まどかはそう問い詰めた。

 「ひどい言い方をするね、 これでも君にとっては最もいい選択肢だと思って提言してあげたんだよ?」

 

 キュゥべえに至っては、悪びれもなくただ無表情でそう告げた。

 「・・・・・・・・・・・・」

 まどかは、少し思案した後に決意した。

 「分かった・・・・・・私、魔法少女になる・・・・・・でも、 その前に少しだけ・・・・・・!」

 

 まどかはキュゥべえに契約をすることに決めたが、少しだけ猶予を貰うことにした。

 

 ほむらの願いの内容によってはまどかの願いも変わっていき、場合によってはーー。

 

 ――過去、現代、未来の魔法少女たちを救うことになるかもしれないと・・・・・・。

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 はい、今回遅れましたが最新話を書かせてもらいました。

 ほとんどが、エレファント速報の原作とジャンプリミックスを少々加えさせてもらいました。

 ほむらの願いを聞いてまどかはどんな選択(願い)をするのか・・・・・・目が離せません。

 役割分担の流れの前の殺虫剤とドラ〇ンボールのやり取りは面白いので入れさせてもらいました。

 さあ、次の話が最終局面の足音がだんだんと近づいてきました。

 皆様、この結末に目が離せませんので楽しみにしてください。

 ご意見ご感想、お待ちしております。


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希望という鋼は絶望という名の槌を撃った先にある

 はい、前回はまどかがワルプルギスと戦っている銀時たちのもとに向かっている場面で終わりましたが、ついに銀時たちと合流します。

 原作ではまどかは概念になってほかの魔法少女を助けて消えてしまいましたが、この世界ではどうなるのでしょうか?

 目が離せないこと間違いないので、最後まで見届けて下さい!

 それでは、どうぞ!!


 ワルプルギスに遠距離攻撃を仕掛けたマミは驚愕した。

 「これだけ撃っても倒せないなんて・・・・・・!」

 ほむらの時間停止の魔法の蓄積による『ティロ・フィナーレ』の連続狙撃でもワルプルギスを倒すには至らなかった。

 「諦めるには早すぎるわ、進行を止めることはできているのよ」

 ほむらは、ワルプルギスが銀時の立てた作戦の成果で進行出来ないことを大きな成果として、マミを励ましたがーー。

 

 「けど・・・・・・このままジリ貧状態が続いたら・・・・・・!」

 「・・・・・・・・・・・・・!」

 さやかが言っていたことは間違いではないのも事実だった。

 その証拠に杏子の息も上がっていた。

 

 さやかの力を借りたマミの回復魔法は傷の治癒、致命傷の回復に特化しているが、体力の回復は出来ず、魔力はもちろん、精神力も消耗しやすいものだった。

 そして何より、魔力を消耗すればするほど彼女たちのソウルジェムには穢れが溜まっていく。

 これ以上の持久戦などできるはずもなかった。

 

 そんな時だった。

 

 (みんな、聞こえる?)

 「!」

 聞こえてきたのは、守るべき大切な者(たった一人の友達)の声だった。

 まどかがキュゥべえを中継点にテレパシーでほむらに呼びかけていた。

 

 「まどか・・・・・・まさか、あんたどこかにいるの!?」

 (うん・・・・・・みんなの戦い、ずっと見てたよ)

 さやかがまどかに呼びかけたところ、今までの戦いを見ていたことをまどかは告白した。

 

 「早くここから離れて! でないと・・・・・・」

 (・・・・・・ありがとうほむらちゃん、そしてごめんね)

 ほむらはまどかに逃げるよう促すがまどかはほむらの気遣いに感謝しながらも謝罪した。

 まどかが伝えたかったこと、それは今まで自分のために戦ってくれていたほむらへの心からの感謝。

 そして、これから自分がとる行動に対しての謝罪だった。

 

 (私・・・・・・魔法少女になる)

 「!?」

 まどかの言葉にほむらは驚愕した。

 「ば、馬鹿か! お前がそれをやっちまったら元も子もないんだよ!」

 それは、テレパシーで聞いていた杏子も猛烈に反対していた。

 今までの出来事とほむらが杏子を含む魔法少女の事情に詳しかった流れで、本当の目的を知ったために杏子も強く反対していた。

 

 「止めてまどか! あなた、キュゥべえに騙されて――」

 ほむらは続きを話そうとしたがーー。

 (ううん、 これは私が自分で考えて決めたこと・・・・・・)

 まどかの意志は固かった。

 それも自分の意志で魔法少女に成ると言い切るほどの強い覚悟だった。

 

 「まどか・・・・・・あんた一体なにを考えて・・・・・・!」

 さやかはまどかの真意を確かめようとした。

 (・・・・・・お願いみんな、 私を信じて・・・・・・必ずみんなを救って見せるから!)

 「・・・・・・・・・・・・」

 

 銀時はほむら達がテレパシーでまどかと話していることを全員のリアクションで把握していた。

 銀時もほむらと同じでまどかを魔法少女にはさせたくなかった。

 しかし、現状はワルプルギスを倒せないでいたことも事実だった。

 

 決断しなければならなかった、無理にでも契約をやめさせるか・・・・・・はたまた・・・・・・。

 そう銀時は、選択を迫られていた。

 

 「や、やめてまどか! お願いだから・・・・・・魔法少女にだけはならないで! 約束したの! 『キュゥべえに騙されたあなたを助けるって!」

 

 言葉と共にテレパシーでまどかに伝えたほむら、その訴えは必死さが強かった。

 すると銀時はほむらを諭した。

 「・・・・・・今のあいつはキュゥべえに騙されているわけじゃねェ、てめーの頭で考えて悩み抜いて答えを捻りだしたんだ」

 「!」

 ほむらは銀時の言葉に大きな悲しみと僅かな怒りが込みあがっていた。

 「暁美さん・・・・・・」

 マミはほむらの心情を痛感した。

 「ここまで来たら・・・・・・私らにはアイツを信じてやることしかできないのかもな」

 「私は信じるよ・・・・・・魔女になった私を最後まで信じてくれたまどかだったら!」

 杏子はまどかに賭けることに、そしてさやかはまどかを信じることにした。

 

 「・・・・・・・・・・・・」

 ほむらもほかの魔法少女たちの反応を見て、自分もまどかを信じるべきだと悟った。

 

 それが、魔法少女(彼女)たちの結論だった。

 

 

 

                     ***

 

 

 

 「ありがとうみんな、私を信じてくれて・・・・・・」

 まどかは、ほむら達が自分を信じてくれていると聞いたため、感謝の言葉を告げた。

 

 「もう心は決まったようだね、じゃあ改めて聞くよ・・・・・・君の願いは何だい?」

 キュゥべえはそう、まどかに尋ねた。

 まどかはキュゥべえに向かい合った。

 ここで願いを言えばもう引き返すことは出来ない、戦いから逃げ出すことは出来なくなる。

 だが、不思議とまどかに恐怖はなかった。

 そして、必死に考えて出した自らの結論を言葉にする。

 「私の願いはーー」

 次の言葉に間を置き、願いを口にした。

 

 「全宇宙の過去から未来において・・・・・・魔法少女を含めた全部の人が過ごすはずだった、一つの平和な日々をあの魔女を救うことで取り戻すこと」

 

 「そ、その願いは・・・・・・まさか君はそこまでの・・・・・・!」

 キュゥべえはもちろん、魔法少女達も驚愕した。

 それは本来、あり得ない願いだった。

 過去に凄惨な戦いのない日々を送るには魔女、 もしくはそれに類似するものの存在があってはならない。

 つまり、本来あるはずだった魔女という存在を無に帰すことに等しかった。

 魔法少女の成れの果てが魔女なら、魔法少女を絶望させない手段が、まどかの願いだった。

 すべての時間軸と場所の概念を超越する神のごとき願い。

 願いにこたえるかのように輝くソウルジェムが具現化され、光とともにまどかの体は魔法少女の姿となる。

 それはまさにまどかが魔法少女となった証明であり、彼女の願いがかなえられたことを意味していた。

 

 「ま、まどか・・・・・・!」

 まどかが魔法少女になった際に放たれた強い光を見て、ほむら達と銀時がまどかのもとに集まった。

 ほむらは、まどかの魔法少女になることを阻止することが出来なかったことに悲しみに満ちた目でまどかを見ていた。

 まどかは、ほむらの顔を見て慈しむ様に言った。

 「そんな顔しないで・・・・・・ほむらちゃん、私なら大丈夫だから」

 そんな様子を苦い顔をしながら杏子は告げる。

 「考えるのはあとからだ・・・・・・今はワルプルギス(アイツ)を倒すことだけを、・・・・・・いや、救うことだけを考えろ」

 

 杏子もまどかの願いの意味を理解していた。

 今までの出来事で魔女の正体が魔法少女が絶望した果ての姿だという事を知ったことで、まどかの性格を考えた結果、行きついた結論だという事にーー。

 そして、何より自分を犠牲にしないだけでなく、生き残るという意味も含まれているのだという事にーー。

 

 

                       ***

 

 

 

 

 そのころキュゥべえは遠くからまどか達を観測していた。

 

 「やれやれ、まさかこの宇宙の因果そのものをひっくり返すような願いをするとはね・・・・・・」

 離れたところからキュゥべえッは事の成り行きに興味深そうに伺っていた。

 もはやどちらが勝とうが問題ではないらしい。

 魔法少女の相転移エネルギーを利用して宇宙の延命をすること・・・・・・それがインキュベーター()の役割だった。

 

 ――だが、まどかの願いで魔女という存在自体が否定されてしまえば一体どうなるのだろうか?

 キュゥべえはまどかの願いの先に興味があった。

 ――それは考えても分かることではない、ならば今は目の前の戦いを監察している方が有意義といえる。

 キュゥべえは魔法少女のソウルジェムの蓄積された穢れをグリーフシードに移した際に穢れたグリーフシードを回収する役目も担っていた。

 

 その魔女そのものを消し去る願いがもたらされたら宇宙はどうなるのかも含め結果を見届けることにしていた。

 しかし、キュゥべえは聞こえない場所でまどかに語り掛けるように言った。

 「でもねまどか・・・・・・君は一つ失敗してしまったようだ、君の願いが本当に叶うとは限らないよ、 ワルプルギスの夜の本当の力を君たちはまるで分っていいない」

 

 そう、キュゥべえの言った通り、まどか達は『ワルプルギスの夜』の本来の力をまだ知る由もなかった。

 

 

                       ***

 

 

 

 

 この戦いを終わらせて魔法少女達(みんな)を救い、ほむら達と一緒に見滝原に帰る。

 

 その思いを胸にまどかは魔力によって生み出された自身の弓を上空に構えた。

 そこから繰り出される絶大な威力を持った一撃によって悪夢に終止符を打つ、その思いを胸にーー。

 

 そんな中でワルプルギスに変化が起こった。

 「・・・・・・!?」

 最初にワルプルギスの異変に気付いたのは銀時だった。

 敵である魔女が先ほどとは若干変わっている様に思える。

 それは『姿』が変わっているわけではない・・・・・・『体制』が変化しているのだ。

 そう・・・・・・先ほどから奇妙な感覚があった、敵対している魔女は明らかに不格好というべきだった。

 

 まるで『本来あるべき頭が下に来ている』かのような外観・・・・・・それが今、元に戻ろうとしているかのような・・・・・・。

 

 

 その時だった、銀時が白夜叉と呼ばれた攘夷戦争時代の戦いの勘が告げていた。

 

 「ちょっと待てオイ・・・・・・まさか・・・・・・!」

 ――まさか・・・・・・あの野郎は今まで『逆さ』になった(本気になってない)状態で俺たちと戦ってやがったのか?

 

 それはあの魔女にとってはまるで子供の遊び、そう考えればあの笑い声をあげていたことも得心がいく。

 だが・・・・・・銀時たちによる決死の攻撃によってあの魔女の何かを刺激してしまった。

 

 そしてその頭が本来の位置の戻った時・・・・・・魔女にとってのお遊びは終わりを告げる。

 「離れろてめーらァァァァ!!」

 「・・・・・・・・・・・・!」

 銀時の叫びを聞いた途端、本能的に危機を感じたまどかは反射的に上空からワルプルギスに向けてはなったのと、ワルプルギスが動きを見せたのはほぼ同時。

 その瞬間、暴風が吹きすさびその場にいるもの全体を吹き飛ばした。

 「み、みんな・・・・・・?」

 吹き飛ばされた魔法少女達。

 

 さやかは、すぐに辺りを見渡した。

 風によって巻き上げられた粉塵は完全に視界を遮り、状況を確認するのは困難だった。

 今は聴覚でしか互いの居場所を知ることしかできない。

 「わ、分からないわ・・・・・・でも・・・・・・私たちは無事みたいね」

 「くそっ・・・・・・何がどうなったってんだ!」

 マミは自分たちが無事であることを確信したが、杏子はワルプルギスの攻撃力が変化したことと、なぜ自分たちは無事なのか状況が呑み込めないでいた。

 

 時がたつにつれ徐々に視界が回復してくる、そしてその時に見えた光景がーー。

 

 「うぅ・・・・・・!」

 まどかのうめき声と共に両腕が血で染まっていた、まどかの姿だった。

 「ま、まどか!!」

 ほむらはすぐさま、まどかのもとに駆け寄った。

 マミたちは不思議に思っていた。

 なぜ街を吹き飛ばさんほどの衝撃があったにも関わらず自分たちが無傷だったのかが。

 

 「大丈夫・・・・・・みんな・・・・・・?」

 まどかが自分の体が重傷にもかかわらずほむら達の無事を確かめた。

 ほむら達が無事な理由をまどかの状態が物語っていた。

 それはすべてまどかがその身と魔力を犠牲にして仲間を守ったからに他ならない。

  

 だが、仲間を守った代償は大きかった。

 そのことに気付いたのは、最初にまどかに駆け寄ったほむらだった。

 「まどか・・・・・・その腕・・・・・・!」

 血にまみれたまどかの両腕はだらりと垂れ下がっていた。

 両腕の指は僅かずつしか動かない、既に全く力が入っていないと言っても過言ではない。

 戦闘においては致命的だった。

 

 「ま、マミさん! 早くまどかの腕にリボンを!! マミさんと私の治癒魔法で治さないと!!」

 必死に叫びながらさやかはマミと共に、まどかに駆け寄り治癒魔法を使おうとしたがーー。

 「・・・・・・ダメだよさやかちゃん、マミさん、今の私を治す魔力があるんだったら・・・・・・それは残しておかないと・・・・・・」

 「何言ってるの鹿目さん! そんなことを言ってる場合じゃ・・・・・・」

 まどかの治療拒否にマミは反論した。

 しかし、まどかから驚愕の事実を聞くことになる。

 「今の私は・・・・・・あの魔女を一撃で倒せるだけの魔力が残ってないんです」

 ほむら達は驚愕した。

 

 そう、 まどかは地球の文明すべてをひっくり返すような魔女(ワルプルギスの夜)『本来の力』(攻撃)をその身一つで力技で押さえ込んだのだ。

 それも防御魔法ではない、ただ己の膨大な魔力を咄嗟に利用して無理矢理抑え込んだのだ。

 そんな無茶をしたまどかにワルプルギスを仕留められるだけの力が残っているはずもなかった。

 

 「嘘だろ・・・・・・それじゃ・・・・・・!」

 杏子の脳裏に最悪のイメージが浮かぶ、だがまどかの目からは未だに希望の光は失われていない。

 

 まだ手は残されていた。

 

 「私ね・・・・・・どうして私に魔法少女の素質が飛び抜けているのか、ずっと疑問だったの・・・・・・でも、ほむらちゃんの家で違う時間を生きているって言ったことに関係があるんじゃないかって、 そしてほむらちゃんが言ってた『キュゥべえに騙された――』って言葉で私はほむらちゃんに『キュゥべえに騙された私を助けて』ってほむらちゃんは違う時間の私と約束したんじゃないかって・・・・・・」

 

 「!」

 

 まどかの言葉にほむらは唖然とした。

 

 自分の部屋で話した心情を溜まらずにまどかに吐き出した際に、まどかは何を言っていたのか分からなかったはずだと、ほむらはそう考えていた。

 

 しかし、まどかが言った言葉に、あながち間違ってはいなかった。

 

 『キュゥべえに騙される前のバカな私を・・・・・・助けてあげてくれないかな』

 

 何度目かの時間逆行する前にその時間軸のまどかと約束したことを心に刻んでいた。

 

 この戦場にまどかが来た際、思わずに約束のことを口にしたことをーー。

 

 その時にまどかはほむらが自分を救うために戦い続けていることに、アパートで言った意味もようやく理解したのだ。

 

 まどかはほむらの顔を見て、願いに至った理由を話した。

 

 「私が、魔法少女の願いの理由は、キュゥべえに過去の魔法少女の希望(願い)が裏切られて、最期を迎えたことと、そしてマミさんたちを含める過去と未来の魔法少女を救うため、そして・・・・・・」

 

 まどかはほむらに顔を向けてーー。

 

 「ほむらちゃんと一緒にこの世界で笑い会う未来を手にするために!」

 

 強い決意を伝えた。

 

 「まどか・・・・・・」

 

 ほむらの瞳は潤んでいた。

 

 時間逆行で、まどかとの出会いを繰り返し心がすれ違ったこと、その分だけほむらの心は擦り切れていたことを、まどかは戦場(ここ)に向かう間に何があったかは見当がつかなかった。

 しかし、まどかはほむらの『本当の願い』に気付いたのだという事は確かだった。

 

 

 「それでさ、まどかはどうするの? ワルプルギスを一撃で倒せなくなったら、一体どんな手で・・・・・・」

 

 

 さやかはワルプルギスを倒す手段をまどかに尋ねた。

 両腕の怪我を心配しながらもワルプルギスを倒さないことには始まらなかった。

 まどかは、ほむら達に具体的な説明をした。

 「私の願い、 過去や未来、全宇宙の法則を越えて、一つの平和を取り戻すという願いをしたの・・・・・・」

 

 さやかは癒しの祈りで契約したことで、圧倒的な回復力を手に入れた。

 そして、まどかはーー。

 

 「・・・・・・私の魔力の本質は分裂している多くの運命()を一つにすること」

 

 バラバラになっていた運命を一つにまとめ上げる、結束と集約の力を手にしていた。

 「・・・・・・!」

 ほむらは、その意味に驚愕していた。

 普通、魔法少女の素質はその少女の因果律の大きさで決まる、普通の魔法少女の願いでは身の丈に合わない願いでその分、絶望の強さに負けて魔女になる確率が高い。

 

 しかし、まどかはほむらの時間逆行の繰り返しによる、平行世界の因果線の連結による途方もない魔力係数によって可能となっていた。

 

 「つまり・・・・・・私ら全員の力を文字通り一つにすれば・・・・・・ワルプルギス(あいつ)に勝てるってことか?」

 まどかの力について、杏子は直感でまどかがやろうとしてることを推測した。

 それはつまり、さやか、杏子、マミの運命を束ねるというとんでもない事だった。

 「それが多分・・・・・・私たちに残された最後の望みだと思う」

 杏子の問いに、まどかは頷きながら答えた。

 それが、魔法少女(彼女)達に残された最後の手段だった。

 

 「ここまで来たらやるしかねェ・・・・・・足掻くだけ足掻いてみようじゃねーか。 それに・・・・・・」

 銀時はまどかの策に賭けるのと同時に、ある方角を見ていた。

 

 それはほむらが、大量の爆弾を設置先とした場所にうごめくものがあった。

 ほむらは目を凝らしてみるとーー。

 「!! ワルプルギス・・・・・・!」

 

 うごめいていたのはワルプルギスだった。

 まどかの力とワルプルギスの力の相殺の影響なのか、まどかの両腕の負傷と引き換えにワルプルギスも特定の位置まで吹き飛んでいた。

 

 ただし、すぐに動き出すのも時間の問題だった。

 

 「そんなに時間も無ェーだろ・・・・・・」

 銀時が言ったようにワルプルギスが動くのに時間が残されていなかった。

 「でも・・・・・・あの魔女を救う(倒す)にはみんなの力を限界まで借りなきゃいけない、そうなったら・・・・・・」

 

 「魔力を使い果たして、下手したら私たちは動くことが出来なくなる(魔女になってしまう)・・・・・・そういう事ね」

 マミはまどかの最後の手段のリスクを理解し、全員に話した。

 全員が理解した後、さやかはあることに気付いた。

 

 「じゃ、じゃあ誰が攻撃を・・・・・・!」 

 そう、ワルプルギスに対して攻撃が出来ないと行うことだった。

 「・・・・・・・・・・・・」

 銀時はまどかが提示した手段を聞いて、少し思案した後ーー。

 「・・・・・・俺がやるしかねーな」

 

 ワルプルギスに一人で立ち向かうことを全員に言った。

 当然ながらーーーー。

 

 「死ぬかもしれねェぞ・・・・・・アンタ・・・・・・!」

 杏子は銀時がやろうとしたことを止めようとした。

 それはつまり、ワルプルギスを倒す時間を稼ぐために戦うという事だった。

 もともと、魔法少女でも倒せなかったワルプルギスに立ち向かう事自体、自殺行為に等しかった。

 

 魔法少女でもなければ、少女でもない、普通の人間の男である銀時は魔力自体を扱えるような存在ではない。

 ましてや複数の魔法少女の運命を束ねた魔力を扱えば、その身がどうなるかの保証もできない、最悪命を落としかねない力なのだ。

 

 だが銀時は・・・・・・。

 「生憎と俺ァしぶといのが取柄でな、そう簡単にくたばりはしねーよ」

 

 銀時は己の覚悟と信念を強く心に抱いているからこそ発せられる言葉だった。

 

 「なら、私の盾を触媒にしましょう・・・・・・元はと言えば、私の時間逆行の魔法で始まったのだから」

 

 そう言いながらほむらは自分の腕に装着している盾をまどかに渡した。

 「この盾は私が時間を操る際に使っていたものなの、だからこれに私たちの運命が刻まれているから、もしかしたら・・・・・・」

 そう。盾の力で同じ時間を繰り返しているとしても、マミたちが違う運命を歩んでいる為、その運命を集めるのを早めるかもしれないと考えていた。

 

 すると、銀時はーー。

 

 「なら、俺の洞爺湖も渡しておくぜ」

 『!?』

 

 全員が驚愕した、銀時は持っていた木刀をまどか達に託してきたからだ。

 「先生!! でも・・・・・・」

 さやかは時間稼ぎに向かうのに必要な得物(木刀)を掴むことが出来なかった。

 「少なくとも、攻撃に必要な最終兵器は必要じゃね?」

 そう、ワルプルギスを倒すには力を集約する触媒が必要だった。

 

 より攻撃的な得物がーー。

 

 そう聞いたさやかは銀時の木刀を受け取り、代わりに二振りのサーベルを渡した。

 「心もとないかもしれないけど、とりあえずこれを・・・・・・」

 銀時はさやかが作り出したサーベルを受け取りーー。

 

 「ありがたく使わせてもらうぜ」

 

 そう言って、銀時はワルプルギスのいる場所へと体を向け、走っていった。

 

 そして、まどか達はーー。

 

 「みんな、銀時先生の気持ちを無駄にしないように・・・・・・!」

 まどかの言葉にほむら達は頷き、運命を束ねる儀式の準備に取り掛かった。

 

 

 

 これが正真正銘の、時間との闘い、運命の賽は投げられた。

 

 

  

 

 

 

 

 

 




 はい、今回は時間がかかりました。
 そして長文になりました、すみません。

 今回はエレファント速報ベース書かせてもらいました。
 ここから先は本当の未知の領域、まどマギ原作には存在しない領域のため予測できません。

 エレファント速報にも、書かれていますが、魔法少女(まどか)達の魔力を銀時が受け止める流れですが、流石に銀時がどうなるか見当がつかないので、ほむらの盾と、銀時の洞爺湖(木刀)をまどか達の魔力の触媒に使う流れにしました。

 その結果、かなりの日数と、長文になりました。

 待たせてしまい申し訳ございません、これからもこの小説の最後にお付き合いしてもらえると嬉しいです。

 ご意見ご感想、お待ちしております。


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魔法は魔法少女の誇り、刀は侍の誇り

 前回、魔法少女の運命を束ね結束と集約の魔力で逆転の手を考え付いたまどか達に、銀時は木刀『洞爺湖』を託し、ワルプルギス相手に時間稼ぎに向かうあたりで話は終わりましたがーー。

 まどか達は運命を集約させ、ワルプルギスを倒す(浄化)することが出来るのか!

 そして、銀時は元の世界に戻ることが出来るのか!!

 皆様、お見逃しなく!!


 さやかは五本のサーベルを作り出し五角形になるような位置になるように地面に突き刺した。

 

 続いて、マミは柄にリボンを輪になる様に通していき、一本ずつ結んでいった。

 その後ほむらは自らの盾に銀時から託された木刀を柄の部分まで収め、五本のサーベルの中心に置いた。

 

 そして最後に、杏子の結界魔法に使われる鎖を五連出し、サーベルと盾に一本ずつつないでいった。

 

 そして最後に五芒星のような位置に突き刺さっているサーベルの前まで、魔法少女五人それぞれに向かい合った。

 

 「みんな、準備は良い? ハッキリ言って、これは危険な手段だから」

 まどかは、他の四人にそう伝えた。

 この手段には運命を束ねて、結束と集約して強大な魔力にする方法は強力だが、デメリットも大きい。

 

 ギリギリまで魔力を集約させ集めるこの儀式は、魔女化するかしないかの境界まで集中させるだけでなく、『自分たちの人生の中で死んでしまった』運命を認識して魔女化を早める可能性も大きかった。

 

 その理由は、その運命で『絶望した』理由と『悲しみ』と『憎しみ』の感情に意識を引き摺り込まれるため、まどかは危険だと四人に前もって伝えていた。

 

 しかしーー。

 

 「何を今さら言ってんだよ、ワルプルギスに正攻法で勝てないからこの手段を考えたんだろ?」

 

 「そうよまどか、契約の力を考えたらだいぶましだよ」

 

 「鹿目さん、あなたは私たちだけじゃない、他の魔法少女たちまで救うことまで考えたのなら、私達も力を貸すしかないじゃない」

 

 「まどか、私はあなたを守るために魔法少女になった。 でもその私と一緒に生きる未来に歩くなら、私も自分自身を懸けないといけないわ、あなた一人に背負わせないわ」

 

 杏子、さやか、マミ、ほむらの順でまどかを信じ励ました。

 

 まどかは四人に頷いた後で微笑みーー。

 

 「絶対に、生き残って帰ろう、私達の街に・・・・・・私たちの日常に!!」

 

 そうまどかは思いを強く言葉に伝えた。

 

 四人も全員頷き、サーベルの柄を両腕に握りしめた。

 

 杏子はリボンをほどき、立ち膝になって祈りを捧げる様な姿勢で柄を握りしめた。

 

 ほかの四人も杏子と同じ姿勢で柄を握った。

 

 まどかは両腕に走る苦痛を一時的な痛覚遮断を使って動かし、柄を握った。

 その後に痛覚遮断を解除したまどかの顔は苦痛に歪みながらも、柄を握りしめた。

 

 「まどか!」

 さやかは思わず駆け寄りそうになるも、まどかはさやかの顔の方に向けて、額に汗を流しながらも微笑んだ。

 「さやかちゃん、腕は痛いけど大丈夫だよ。この祈りに・・・・・・魔力を流すには、私の意識を保つためには必要なの」

 

 苦痛に耐えながら微笑むまどかの顔にさやかは何も言えなかった。

 さやかは駆け寄りたい気持ちを押さえながらサーベルのを強く握りしめた。

 

 「いいよ、私はアンタたち二人に望みを託せるよ・・・・・・まどか、坂田銀時・・・・・・」

 

 「私も一回は先生に助けられた命だからね・・・・・・信じてるから、まどかと先生のこと」

 「・・・・・・私も鹿目さんと先生に感謝してる。私を本当の先輩でいさせてくれた鹿目さんに・・・・・・美樹さんの時・・・・・・本当に弱い自分から立ち直らせてくれたからね」

 

 他の二人も杏子と同じくサーベルの柄を祈る様に握り締めた。

 恐怖に焼き付いた表情ではない、さやかとマミはまどかの優しさと勇気を、銀時の不器用な優しさと不屈の魂を胸に抱きながら穏やかな笑顔を浮かべながら魔力を盾に流し込んだ。

 

 「・・・・・・最後の最後で先生に任せちゃってごめんね・・・・・・でも、先生なら安心して魂を預けられるよ」

 

 「・・・・・・・・・・・・」

 ほむらに残された最後の魔力、それは時間逆行のために温存しておいた最後の魔力。

 それを木刀に注ぎ込むことは・・・・・・『過去』へ戻る扉を自らの手で閉ざすことを意味していた。

 しかしーー。

 

 「・・・・・・不思議ね、どうしてこんな気持ちになっているのかしら」

 少女(ほむら)は決心した。

 『過去』へ戻る扉にはもう未練はない。

 

 『過去』(同じ時間)を繰り返した結果が、まどかを魔法少女(最強の魔女)に導く結果になってしまったのをキュゥべえから聞かされた時は命と引き換えにしてでもまどかを救う(魔法少女にはさせない)決心をした。

 しかし、自分が命の危険に瀕したとき、坂田銀時(白髪の天然パーマの侍)が命を懸けて駆けつけてきたときに言われたことを思い出した。

 

 『どうなるか? んなモン、 最初っから分かってるに決まってんだろ。 てめー自身の手でコイツをぶっ倒す未来を創るんだからよ』

 

 その言葉はーーほむらを救っただけでなく、奮い立たせ心を生き返らせてくれたこと。

 そして、自分が一番欲しかった『物』を掴むという覚悟を持てたことだった。

 

 それは、自分が進まなければならないのはーー。

 「私たちの『未来』はあなたに託すわ・・・・・・銀時」

 

 全員(魔法少女達)の魂を信じられる『先生』()に託し、希望に満ちた『未来』に進まなければならないのだからーー。

 

 魔法少女(まどか達)は全魔力を盾を鞘として納めた木刀に注ぎ込んだ。

 

 今、魔法少女たちは魂を懸けた勝負に挑んだ。

 

 

                       ***

 

 

 一方、銀時は本気を出したワルプルギスの攻撃を搔い潜りながら、接近していた。

 

 「あのデカブツ、馬鹿スカ瓦礫を落としてきやがって・・・・・・赤ん坊かよ・・・・・・」

 

 銀時は瓦礫の投下を回避していった。

 

 次に繰り出した、使い魔をあまり相手せずに接近していった。

 

 それでも、使い魔が上空から襲い掛かった時はーー。

 

 「オラァァァ!!」

 

 銀時は飛び掛ってきた使い魔を踏み台にして高く飛び、真横に襲い掛かってきた使い魔の頭を鷲掴んで地面に叩きつけた。

 

 その後、銀時が着地した瞬間に襲い掛かった使い魔にはーー。

 

 「ゼアァァァァァ!!」

 腰に差していさやかのサーベル二刀で切り裂いていった。

 

 「あのデカブツ、まさに巨大戦艦だな・・・・・・」

 

 銀時はワルプルギスの戦力を分析しながら着実に接近していた。

 口から吐き出す(大砲)、無重力による瓦礫の投擲(無限弾倉)、触手から変化する使い魔(兵隊)そして、台風という名の『大量破壊兵器』だった。

 

 なぜ、確認するかのように分析するのかというとーー。

 

 銀時は魔法少女ではなく異世界から来た侍、身体能力の高いだけの成人男性だからだ。

 ほむら達魔法少女の様に、魔法も使えない、つまりテレパシーも使えない。

 

 この世界の魔法少女の様に魂の分離と引き換えに、けた外れの身体能力を持っているわけではない。

 誰かが召喚してチート能力を与えられたわけではない。

 

 ただ、元の世界で異星人(天人)との戦争で戦い、仲間も失い、救いたかった師を救えなかった。

 それでもなお、生き延びて戦争が終わっても、今もなお己を探し続けていた。

 

 そして、ほむらは同じ時間を繰り返し、魂が擦り切れるほどにまどか()を救おうとしていた。

 たとえ、まどかを救うために自分の命を引き換え(自分自身を犠牲に)してでも戦いに挑んでいたからだ。

 

 ほむらの目的を聞いた銀時はーー。

 

 ーーもし時間が戻ったとしても、師を救えるのか?

 

 ふと一瞬思っていた。

 しかし、銀時は心の何処かで知っていた。

 同じ時間を繰り返しても、あの頃の『時』は戻らないことをーー。

 

 実際、ほむらは違う出会い方をしても、過ごした時間と気持ちがずれ、言葉も通じなくなることを聞いていた。

 

 それを承知の上で、ほむらはまどかを救おうとしていた。

 

 銀時は今もなお戦い続けているほむらを見捨てる気にはならなかった。

 

 なぜなら、元の世界で『万事屋』を開いたからだ。

 

 大まかな理由は、万事屋として間借りしている部屋の大家への恩義と、その亡き旦那への一方的な約束をしたこと。

 そして、『何もやる事がなかった、何もやる気がしなかったから何でもやる事に決めた』というふざけた理由から万事屋を始めた理由だった。

 

 そんな動機で、ふざけた連中(仲間)と奇妙な縁を結んでいったが、捨てる気にはならなかった。

 

 その縁に賭けて、銀時はその万の糸をつなぎ続け護り続けていった。

 

 たとえ、巻き込まれようとも、勝手に結ばれた約束でも、身命を賭してでも守り抜き、掬い上げていった。

 

 すべてを掬い上げられることは出来ないことはあった。

 それでもなお、彼はそのことから逃げるつもりはなかった。

 

 そして今も、ワルプルギスに迫りながらも、使い魔を引きつけほむら達に近寄らせないようにしていた。

 

 たった一人で戦い続けた少女(ほむら)希望(青空)に連れ出すためにーー。

 

 

                     ***

 

 

 

 

 『あ、ああ・・・・・・ッ! いやああああ! どうして!? どうして邪魔したの! なんで死なせてくれなかったのよ!?』

 

 まどか達は、歩んでもおかしくなかった結末の一つを見ていた。

 

 『え、で、でも・・・・・・』

 

 責め立てられている少女は戸惑っていた。

 

 『生きてたってしょうがないのよ! 苦しいだけよ! あの子がいない世界で私だけ生きてたって何にもならない! あの子が消えたこの場所で死ねばきっと、あの子のところに行ける・・・・・・。 そう思ったのに・・・・・・!』

 

 『ッ あ、あなたは・・・・・・』

 

 女性の言動で少女は心当たりがあった。

 女性は息子が消えた場所で死のうとしていたのだ。

 しかも少女、マミが二度目の魔女との戦いで倒せなかっただけでなく、小さな男の子がその魔女の結界に取り込まれからだ。

 

 『コウちゃんッ! どこにいるの!? 返事をして! コウちゃん!!』

 

 『あなたは・・・・・・あの時の・・・・・・』

 

 『もう放っておいて・・・・・・! コウちゃんはいない・・・・・・。 もう、私には何も無い・・・・・・』

 

 マミが救えなかった男の子の母親は、嘆きながら去っていった。

 『あ・・・・・・・・・・・・』

 マミは母親の後ろ姿を見ながら騒然とした。

 『・・・・・・私、今まで、何をやってきたんだろう・・・・・・? 誰かのために戦うなんて・・・・・・』

  

 マミは自分の行動を振り返っていった。

 

 『そんなこと、よく言えたわね。 今さら何をしたって、 私が不幸にした人が救われるわけもないのに。 罪滅ぼしにも、ならないのに』

 

 自分の過ちを償えないことに苦しみーー。

 

 『それでも必死にしがみついてみんなんを守るってことにすがって・・・・・・。 私は魔法少女でいることで現実から逃げていただけだ・・・・・・』

 

 自分が現実逃避していることを自覚した途端ーー。

 

 『あ・・・・・・』

 

 ある二人の少女の姿を見つけた。

 まどかとほむらだった。

   

 『鹿目さんと暁美さん・・・・・・。 遊びに来ていたんだ』

 

 マミは遠目で二人の少女の様子を眺めていた。

 『何を話しているのかな? 楽しそう・・・・・・。 本当に仲がいいのね・・・・・・』

 

 楽しそうに話している二人の姿を羨ましく見ていた。

 『声をかけないのかい?』

 キュゥべえがそう尋ねるとマミはーー。

 『・・・・・・いいのよ、もう、いいの』

 声をかけないことをキュゥべえに伝えその場を去った。

 

 その後マミは公園で一人たたずんでいた。

 『・・・・・・・・・・・・・』

 

 『! ・・・・・・あそこにいるのマミさんだ! マミさーん!』 

 

 するとマミを呼ぶ少女の声が聞こえた。

 

 マミは自分を呼ぶ少女の方に振り向いた。

 声の主はまどかだった。

 そして一緒にいたのはほむらだった。

 『鹿目さん・・・・・・美樹さん・・・・・・』

 

 『今日はどうしたんですか? 学校で巴さん探したんですけど、どこにもいなかったですし・・・・・・』

 『そう。 探してくれたのね。 ・・・・・・二人で。 ごめんね・・・・・・迷惑かけて』

 ほむらが自分を探していたことを聞いたマミは申し訳なさそう謝った。

 『あ、そんな・・・・・・迷惑だなんて。 ごめんなさい。 変な意味じゃないんです。 ただ、ホッしたら、つい』

 マミの謝罪に対して、まどかは訂正と同時に、マミの安否に安堵したことを伝えたがーー。

 『全部私が悪いの・・・・・・』

 『マミさん・・・・・・・?』

 急に自分自身を責める言動に、まどかは困惑した。

 『あの、どうかしたんですか? 顔色が・・・・・・』

 ほむらはマミの顔色が悪いことに気が付き、心配で聞いてみた。

 すると、マミはーー。

 『鹿目さんと暁美さんは優しいわね。 私なんかのために来てくれるなんて』

 自分自身を成しるような言動を繰り出した。

 『そんな、当たり前です。 だってわたし達、仲間なんだし』

 『いいのよ、もう・・・・・・。 私ね、鹿目さんに仲間だなんて言ってもらうほどの人間じゃないの』

 『え?』

 

 まどかは困惑した。

 なぜマミは自分を責めるような言動をしているのか・・・・・・。

 その理由はーー。

 

 『ねえ、知ってる? 数年前、この街の公園であった子どもの行方不明事件』

 マミから語られる事件と関係があった。

 『・・・・・・ちょっとだけですけど』

 『一人の小さな男の子が消えて、 そして一人のお母さんが不幸になった・・・・・・』

 『・・・・・・・・・・・・・』

 マミの悲しみも含んだ口調で話を聞いたまどかは、辛そうに聞いていた。

 

 するとーー。

 

 『それね、私のせいなの』

 『え・・・・・・』

 まどかはマミの突然の言葉に言葉を失った。

 

 『魔女が出たの。 男の子がさらわれて・・・・・・私、助けに行ったくせに勝てなかったのよ。 魔法少女なのに、負けて逃げたの。 私の目の前でその子は魔女に取り込まれた・・・・・・・・・・・・私が死なせたのよ』

 

 『そっ・・・・・・そんな! それ、違います。 マミさんは悪くないです。 失敗することはあります。 そんなの、当たり前じゃないですか。 誰にも攻めることなんて・・・・・・』

 まどかは、マミの告白に戸惑いながらも、マミを悪くないと伝えたがーー。

 『鹿目さんは優しいわね。 でもね、失敗が当たり前じゃないの。 だって私は・・・・・・魔法少女だから』

 マミは自分を責める続けた。

 『私だけは負けちゃいけなかったの。 私の弱さが、その子を死なせた。 周りの人を不幸にしてしまった。 そのことから逃げたくて・・・・・・必死で強くなろうとしたわ。 それが、罪滅ぼしだと思ってた・・・・・・でもね、それもほんとは違うの』

 

 そして、マミは心の中で渦巻いたものを告白した。

 

 『私・・・・・・ただ、寂しかったの。 私はいつも独りぼっちだったもの。 寂しくて、寂しくて仕方なかった・・・・・・』

 

 『マ、マミさん・・・・・・』

 

 まどかはマミの中の心の中に渦巻いていたものを聞いて騒然とした。

 『それを忘れたくて、 戦いに逃げてたの。 誰かのために戦うなんて、嘘。 私はいつだって自分のことばっかり・・・・・・』

 

  マミは自分を責め続けた。

 

 『私、どうしてこうなのかな? お父さんとお母さんが死んだとき、どうして一人だけ助かろうとしたのかな。 どうしてあの時、二人を生き返らせてって言わなかったんだろう』

 

 それは、だんだん止まらなくなっていきーー。

 

 『自分だけ・・・・・・そう、自分だけが死にたくないって、卑怯で、我儘な願い・・・・・・あの時、私も二人と一緒に死ねば、魔法少女にならなければこんな寂しい思いなんて・・・・・・そんなことを考えてたんだもん。 私、魔法少女失格だよね・・・・・・』

 

 自分の心を傷つけ続けていた。

 

 『そんな・・・・・・そんなことありません。 マミさんは、立派な魔法少女です。 わたしの、憧れの先輩です!』

 

 まどかは、マミが自分を責め続けるのを止めるために本心でそう伝えた。

 しかしーー。

 

 『・・・・・・ありがとう、鹿目さん。 私もそうでありたかった。 でも・・・・・・もう、駄目なのよ、だって・・・・・・ほらね?』

 マミが手の平に持っていたものを見てーー。

 『ッ!!』

 まどかとほむらは目を疑った。

 

 マミが持っていたのは魔法少女の証(ソウルジェム)ではなく、魔女の卵(グリーフシード)だった。

 

 『こ、これ・・・・・・ソウルジェムじゃなくて・・・・・・グリーフシード!?』

 『え、え? でもこれ、マミさんの・・・・・・』

 

 ほむらとまどかは混乱していた。

 なぜマミのソウルジェムがグリーフシードになっているのかーー。

 『もう私は、 魔法少女なんかじゃない・・・・・・。 こんなことに・・・・・・なっちゃうのね 』

 マミは自分が何になるのかを絶望しながら悟った。

 

 『マミさんッ!!』

 『鹿目さん! 危ない!』

 

 ほむらはマミに駆け寄ろうとしたまどかを止めた。

 

 しかし、マミの元ソウルジェム(グリーフシード)から生まれた『モノ』にまどかは突き飛ばされた。

 『きゃあああああッ!』

 『鹿目さん!』

 

 その後、まどか達は魔女の結界に捕らわれてしまった。

 

 『なに・・・・・・? なにが起きたの?』

 『鹿目さん、魔女が! 逃げなきゃ・・・・・・っ!』

 『でもマミさんが・・・・・・っ、 マミさん、起きて! ・・・・・・ど、どうしよう。 ほむらちゃん。 マミさんが、 息してないよぉ・・・・・・!』

 『そんな!? 巴さんしっかりして!』

 

 まどか達は混乱していた。

 突然魔女の結界に取り込まれ、目の前に魔女が現れ、その上マミは息をしていなかった。

 まどかはマミが目を覚まさないことに戸惑い、ほむらもマミに呼びかけたが、目を覚まさなかった。

 

 『それはただの抜け殻だ。 マミはあそこにいるよ』

 

 まどか達の混乱をよそに、キュゥべえは冷静なまでに淡々と言った。

 マミの体を抜け殻と吐き捨て、魔女をマミの名前で呼んだ。

 

 『キュゥべえ! それ、 どういうことなの? まさか・・・・・・』

 

 まどかはキュゥべえの言葉で気付いた。

 いや、気付いてしまったのだ。

 『そのまさかだよ。 マミのソウルジェムがグリーフシードに変わるのを見ただろう。 ソウルジェムは君たちの魂を物質化した物だ。 そしてそれが黒く染まった瞬間、君たちは魔女として生まれ変わる。

 それが魔法少女。 やがて魔女になる少女。 君達の、逃れられない運命さ』

 キュゥべえの言葉はまどか達が見たものを照らし合わせて真実だと知り、残酷な運命の宣告だという事を知った。

 

 『嘘・・・・・・じゃあ、巴さんも鹿目さんも騙されていたってこと?』

 『そんな・・・・・・そんなのって・・・・・・』

 

 二人は深い悲しみのあまり立ち尽くしていた。

 『それより、早くあれを倒した方が良い。 もう君達の声も聞こえないだろうしね』

 キュゥべえは淡々と、魔女(マミ)を倒すことをまどかに伝えた。

 『マミさん! やめて! 正気に戻って!』

 まどかは諦めきれなかった、しかしーー。

 『無駄だよ、まどか』

 キュゥべえはまどかの行いを止めた。

 『鹿目さん、逃げよう!』

 『でも、マミさんの身体が! ここに置いていけない・・・・・・!』

 まどかはマミの身体を抱えようとしたがーー。

 

 『きゃあ!』

 『ほむらちゃん! マミさん駄目ええ!!』

 魔女化したマミが、ほむらに危害を加えたため、まどかは止めようとした結果、魔女を倒してしまう結果となった。

 

 『わたしが、マミさんを・・・・・・。 こんなの嫌だよ・・・・・・酷すぎるよ!』

 『鹿目さんっ! しっかりして・・・・・・!』

 『マミさん、戻ってきてよぉ! 誰か嘘だと言って・・・・・・』

 『仕方なかった・・・・・・他にどうすることもできなかったよ。 鹿目さんは何も悪くない・・・・・・っ!』

 

 『ほむらちゃん、 わたし・・・・・・わたし魔女になんか、なりたくないよ・・・・・・!』

 まどかはいずれ迎えてしまう運命に嘆いた。

 『ならないよ。 鹿目さんは絶対にならない。 だから・・・・・・泣かないで・・・・・・』

 『う、うう・・・・・・うああーー!!』

 ほむらは精一杯励ますが、まどかは大泣きした。

 

 

 「これが、マミが魔女化に至る運命かよ・・・・・・」

 杏子はマミが魔女に至る時間軸に驚愕した。

 「私達みんながいる世界でも、私は間違いなく、魔女に成ってもおかしくなかった。 銀時先生が私を諭してくれなったら、鹿目さんに自分の過去を話すことなんてできなかったわ、 私達が見ているのは、『いずれ、歩んでもおかしくなかった時間軸』なのよ、頭ではわかってはいても、同じ自分なだけに、穢れが流れ込んでくるわね・・・・・・」

 

 マミはうつむきながらも、杏子にそう告げた。

 まどかの『運命を束ね、結束する』魔法は絶望の運命をも集めるため、現実世界のまどか達のソウルジェムは穢れが蓄積されているからだ。

 

 そう、まどか達はそれぞれの『いずれ、歩んでもおかしくなかった時間軸』を見ているのはその副作用だった。

 その時間軸を見ている五人は精神を飛ばしているような状態だった。

 

 今見ている、時間軸でキュゥべえとは決別しているという事だった。

 何よりきっかけが違うとはいえまどかはワルプルギスに立ち向かったこと。

 ほむらが魔法少女になる流れは変わらなかった。

 

 しかし、さやかはあることをに気が付いていたーー。

 

 「ほむら、魔法少女になる前のあんたって・・・・・・」

 さやかはほむらの三つ編み眼鏡のギャップに戸惑っていた。

 何より性格も、気弱だった。

 そのあたりは、自分と違う時間軸を見ているマミも、杏子、まどかも驚いていた。

 

 

 「そんな事よりも、違う時間軸の力も集めないと。銀時が時間を稼いでいる内に」

 

 ほむらは、さやかの指摘には何も言わなかった。

 何より、銀時が危険な役目を引き受けている為、時間はかけていられなかった。

 さやかもそれ以上は聞かなかった。

 

 そして、次の時間軸で見たのはーー。 

 

 マミがお菓子の魔女での戦いで命を落とし、さやかのソウルジェムの発見が遅れた時間軸だ。

 

 その時間軸のさやかは、体のダルさと他の人がさやかの様子を怪訝そうに見ていた。

 さやかはお構いなしに、自分の家に戻った後、恭介がさやかの帰りを待っていた。

 恭介はさやかのために自分で弾いたヴァイオリンの演奏をCDに録音していたのを渡すためにマンションの玄関前で迎えに来ていたのだ。

 

 しかし、恭介はCDを受け取ろうとしたさやかの手を見た途端ーー。

 

 『えっ?? さやか、その手・・・・・・』

 『ど、どうしたの? 何か、変??』

 

 恭介の表情にさやかは困惑した後ーー。 

 

 『うあああっ!! そ、その顔!!』

 『ど、どうしたの!?』

 『うぁ・・・・・・あ・・・・・・』

 『えっ??』

 恭介はさやかの顔を見た途端、恐怖で声を上げた。

 さやかはガラスで自分の顔を見た。

 そしてーー。

 『イヤアァァァァアアア!!!!』

 自分の顔が半分腐り落ちていたことに驚愕して悲鳴を上げた。

 

 『く、来るな! 化け物!!』

 『ば、化け物・・・・・・』

 『おまえは誰だ?? お前はさやかなんかじゃない! う、うああああ!!』

 さやかの姿を見た恭介は『さやかの姿をした化け物』として拒絶し、逃げ去った。

 『きょ、恭介・・・・・・。 行かないで・・・・・・なんで・・・・・・なんでそんなこと言うの・・・・・・恭介・・・・・・あたしに感謝してくれるって言ったのに・・・・・・どうして、どうして逃げるの・・・・・・あたしよ・・・・・・あたしがさやかだよ・・・・・・行かないで・・・・・・待って・・・・・・恭介・・・・・・』

 逃げた恭介の背に手を伸ばそうしたさやかは悲しみの声で自分の名前を呼んでいた。

 

 『なんで、あたしこんなことになってるの・・・・・・これじゃあ、化け物じゃない・・・・・・』

 その後に駆けつけたまどか達は、さやかの身体を見て言葉を失った。

 さやかは杏子とまどかに助けを求めてた。

 

 しかも、さやかは自分の意志でソウルジェムを投げ捨てた時間軸であることだった。

 

 その話を聞いた、さやかはーー。

 

 「何やってんのよっ!・・・・・・この世界のあたしは!!・・・・・・この世界のあたしの魔法少女の覚悟って・・・・・・!!」

 

 さやかは自分自身に憤慨でいっぱいだった。

 「さやか、たぶんこの世界のあたしら、 あの橋でソウルジェムと魔法少女の身体の仕組みを知った後に、多分・・・・・・」

 杏子はさやかを優しく宥めた。

 「分かってる、杏子・・・・・・でも、違う時間軸とはいえマミさんやあんたの警告を無視した結果が・・・・・・」

 さやかは杏子の言葉で少しだけ冷静さを取り戻していたが、自分自身への憤慨はまだぬぐえそうにはなかった。

 

 そして、さやかはまどか達に謝罪した。

 まどか達はさやかを宥めたが・・・・・・。

 さやかのソウルジェムはグリーフシードに変化、絶望して魔女化した。

 

 そして、当然の様にキュゥべえから魔法少女の真実と目的を聞かされーー。

 杏子はさやかを救おうとしたが、それもかなわずさやかと一緒にーー。

 

 その結末を見たさやかはーー。

 

 「ごめん、杏子・・・・・・あたし・・・・・・」

 「あれはこの時間軸のあたしらの結末で、情報でしかないよっとは言え・・・・・・納得しきれないのは無理もないか・・・・・・」

 

 さやかは魔女化した自分とさやかの戦いの結末を見て、自責の念に駆られたが、杏子は今の自分たちと時間軸の自分たちは、同一だが違うと言いたかったが、上手く言葉に出来なかった。

 

 「美樹さやか、あなたが魔女から魔法少女に戻ったのは銀時が起こした奇跡だから・・・・・・私ですら理解できない事象なの・・・・・・、自分を責めるなとは言わない。でも責めてる時間なんてないわ」

 

 ほむらは、さやかを必要以上に責めることはせず、厳しくも優しく諭した。

 

 さやかは、ほむらの言葉に頷き、自分を責めるのをやめることにした。

 「そうね、今は私自身を責めてる場合じゃない、責める時間ですら惜しいよね」

 さやかは自分の頬を叩き、気持ちを切り替えた。

 そして、さやかが魔女になった時間軸で、どうにか立ち直ったまどかとそんな彼女を支えようとしたほむらは・・・・・・ワルプルギスに立ち向かうも、倒せなかった・・・・・・。

 

 そして、まどかのソウルジェムは限界を迎えていた。

 まどかはほむらに介錯を頼んでーー。

 そのあと、ほむらは時間逆行の魔法で違う時間軸へと飛んだ。

 

 「ほむらちゃん・・・・・・私・・・・・・」

 「大丈夫よ、まどか・・・・・・今の私は死ぬつもりはないから」

 

 まどかのつらそうな顔を見て、ほむらは少しだけ微笑みながらそう告げた。

 

 そして、次の時間軸へと飛んでいきーー。

 

 その時間軸は、ほむらが魔女化したさやかを倒してしまった時間軸ーー。

 

 『あたしのためを思ってってか!? 冗談は大概にしろ!! てめーにあたしの何がわかる!! 許さねえ・・・・・・あたしは絶対に許さねぇ!!』

 

 『杏子ちゃん!』

 

 『やめなさい、無駄な戦いは。 あなたのソウルジェムが穢れるだけ』

 

 『うるさい! 黙れ!! さやかは、さやかはあたしに残された最後の希望だったんだ・・・・・・なのに・・・・・・なのに・・・・・・! てめーは!!』

 

 杏子は、魔女化したさやかを倒したほむらに怒りをぶつけた。

 

 『誰にも理解されない辛さがわかるか? 望んでいた結末が望まれていなかった現実がわかるか? さやかは、そんなあたしでも光り輝いて見えていた希望だった。 何もかも放棄したあたしが羨ましくなる奴だった。 それを・・・・・・それを・・・・・・ほむら!! あんたは殺したんだ!!』

 

 杏子は、さやかの思いと共に、怒りは止まらなかった。

 

 『美樹さやかを殺したんじゃないわ。 美樹さやかだった魔女よ。 勘違いしないことね。 もし、魔女をそのままにしておけば、人々を襲うことになる。 それを放置するのは、美樹さやかが一番嫌がったことよ』

 

 ほむらは、合理的かつさやかの気持ちを汲んでの行為だった。

 その主張に、杏子の怒りの炎が燃えあがった。

 『お前、それでもクラスメイトか! もし、魔女から、さやかを取り戻す方法があったらどうする!!』

 

 『・・・・・・あるわけないわ』

 

 杏子の主張にほむらは否定した。

 

 それを見た杏子はーー。

 

 「ほむら、今のあたしらは・・・・・・こんなにうまくはいかなかったよな」

 「ええ、銀時がつないでくれた糸よ・・・・・・」

 杏子の言葉に、ほむらは頷いた。

 

 「それにしても、あんた・・・・・・あたしのこと、そうゆう風に見ていたんだね・・・・・・」

 さやかは恥ずかしそうにつぶやいた。

 杏子は頭を掻きながらーー。

 

 「う、うるせえな・・・・・・」

 

 そう恥ずかしさと、照れ隠しにそう言った。

 この時間軸で、さやかに対する杏子の思いは確かに強かった。

 

 『・・・・・・それも・・・・・・知ってるってことか?』

 『・・・・・・ええ。前にも言ったでしょ。美樹さやかのことは諦めろって』

 『お前は・・・・・・お前は・・・・・・それでも・・・・・・それでも・・・・・・』

 ほむらの言葉に杏子はやり切れない感情になって、まどかの方に顔を受けた。

 『すまない・・・・・・まどか、あたしはさやかを救えなかった。 見殺しにしちまった。 あれだけ偉そうなこと言って。 愛と正義のストーリーなんてこの世界にはなかったんだ』

 

 そして、杏子はーー。

 

 『ハ・・・・・・ハハハハハハハハハハッ!! そうだよね、それでよかったんだよ。ガラにも無くさ、人のこと考えちまったねぇ。 それがこの結果じゃんか!! あたしの希望が消えちゃった・・・・・・まどか・・・・・・さやかがくたばっちまったよ・・・・・・。魔法少女はさ、魔女になって、新しい魔法少女の餌になるのさ。 食物連鎖ってやつだ。 食う側の奴だって、いつかは食われる側に回る。 ハハハッ・・・・・・この・・・・・・あたしも同じさ・・・・・・。 希望が潰えて、絶望に抗えなくなればもう堕ちていくしかない。 食われる側に回るしかないんだ・・・・・・』

 

 杏子は狂ったように笑い、自暴自棄になり、絶望が心を支配していく。

 

 『さやか・・・・・・。 あんたが言ってたことわかったよ。 これが・・・・・・本当の・・・・・・絶望・・・・・・』

 

 『杏子ちゃん!!』

 

 『うっ、あ・・・・・・!! ああああああああああああっっ!!!』

 杏子は突然苦しみだした。

 

 

 (・・・・・・やっぱり・・・・・・こうなってしまうの・・・・・・? どうしても・・・・・・?)

 

 『杏子ちゃん!? ねぇ、ほむらちゃん! いったい何が起きたの!?』

 『ソウルジェムが呪いをため込み過ぎて、佐倉杏子は魔女になろうとしているわ』

 まどかの問いに、ほむらはそう答えた。

 『えっ!? そんなのって・・・・・・! ねぇ、杏子ちゃん! お願い、自分を取り戻して!』

 まどかは、魔女にならないよう杏子を呼び続けた。

 しかし、杏子の絶望は止まらなかった。

 

 『もういい・・・・・・あたしは一番大切だった家族を救えなかった・・・・・・巴マミも死んじまった・・・・・・そしてこの上、さやかまで・・・・・・あたしにはもう、何もない! 何もないんだ!!』

 『杏子ちゃん!』

 

 まどかは杏子に駆け寄ろうとしたが、時すでに遅くーー。

 『呪ってやる! あたしはこの世界のすべてを呪ってやる! バッカヤロォオオオオッッ!!!!』

 『いやぁぁぁぁぁ!!』

 怨嗟の声を上げ杏子は魔女になった。

 

 そして、魔女化した杏子は、ほむらに倒された。

 

 「杏子・・・・・・私は・・・・・・」

 ほむらは、杏子に何か言おうとしたが、言葉が出なかった。

 

 元はと言えば、ほむらがさやかを倒した結果で起きたことだった。

 しかし、杏子はーー。

 

 「この世界のあたしの結末を見て、変なことを言う気分だけど、あえて言わせてもらうよ。 ほむら、テメーのせいじゃない・・・・・・それだけは確かだ」

  

 杏子も、ほむらのことを責めなかった。

 ワルプルギスの対策会議の際に、ほむらの目的も事情も聞いていたため、責めるのは筋違いだと判断した。

 

 その後はほむらは、まどかを脅し半分で自分の部屋に追い出した。

 しかし、まどかはほむらの真意に気付いてしまったため、キュゥべえと契約してしまった。

 そして、ソウルジェムは一気に穢れ、まどかは魔女になってしまった。

 

 「ごめんね、ほむらちゃん・・・・・・わたし、ほむらちゃんを辛い目に何度も合わせちゃって・・・・・・」

 

 まどかは今にも泣きそうな声で自分を責めていた。

 今までの時間軸での自分の結末を見て、ほむらに自分の様々な死を見せつけてしまったことに自責の念を抱いてしまっていた。

 

 「まどか!! しっかりして!! まだあたしたちは死んでないわ!!」

 

 ほむらは、まどかを宥めた。

 「あなたはなにも悪くない!! 悪いのは、同じ時間を繰り返して・・・・・・あなたを・・・・・・」

 何度も時間逆行したせいで、まどかの因果を集めてしまったことに、ほむらは責任を感じていた。

 

 そしてまどか達は、次の時間軸へと向かっていきーー。

 

 『まどか。あなたを救えなかった・・・・・・』

 ほむらが、ワルプルギスに敗れ、魔女化してしまった時間軸に飛んだ後、またすぐに違う時間軸へと飛んでいった。

 この事態にまどか達は困惑した。

 「あたしら、どこに向かっているんだ!?」

 杏子はそうつぶやいた後、その時間軸はーー。

 

 『やっと勝てた、あなたを救えた。 うっ・・・・・・ごほっ・・・・・・』

 まどかは、ほむらを救うため誰かを呼ぼうとした。

 『いいの、行かないで!』

 『・・・・・・ほむらちゃん』

 『お願いだから・・・・・・傍に・・・・・・。私ね・・・・・・・・・・・・今、、すごく幸せよ。 何度も何度も・・・・・・同じ時間を繰り返し・・・・・・何度も何度もやり直して・・・・・・私はついに、願いをかなえたの。 まどか・・・・・・あなたの運命を・・・・・・変えることが出来た』

 

 ほむらがワルプルギスと刺し違えて倒した時間軸だった。

 

 まどかはほむらが自分を守ってくれたことに気付き、ほむらには側にいてほしいと伝えたが、ほむらはまどかの周りに、大切の想ってくれる人たちがいると伝えていた。

 まどかに何故ほむらが一生懸命になって救おうとした理由を話した。

 自分が、頑張ってこれたのがまどかがそばにいてくれたおかげであること、まどかを救うことが、ほむら自身を救うことにつながっていたことを伝えた。

 

 そして、自分が救われたと、伝えた。

 

 (そう・・・・・・これこそが、私が望んだ結末・・・・・・私は、まどかを人間のままで居させることができた・・・・・・もう何も・・・・・・・・・・・・・思い残すことは無い)

 

 まどかの腕に抱かれ、ほむらは息を引き取った。

 

 

 その結末を見て、まどかはーー。

 

 「ッ・・・・・・私は・・・・・・ほむらちゃんの思いに気付かなくて・・・・・・」

 今にも泣きそうな顔で時間軸にいたほむらの最期を見ていた。

 「まどか・・・・・・私は・・・・・・」

 ほむらは、まどかに何かを言おうとした。

 

 

 その時だったーー。

 

 突然、銀色の光が、まどか達を包み込んだ。

 

 「な、何!? 何が起こってるの!!」

 「この銀色の光は!! 一体!?」

 

 杏子とマミは体を包み込む光に戸惑っていた。

 しかし、さやかには銀色の光がある感覚に似ていた。

 「この感覚、私が・・・・・・魔女の中で、まどか達の声と先生の声が聞こえた時に似てる!!」

 『え!?』

 まどかとほむらは驚いていた、さやかが魔女から魔法少女に戻った時に聞こえた声だとーー。

 それが本当なら、なぜ今になって銀色の光がまどか達を包んだのか分からなかった。

 その後、周囲が銀色の光で辺りが見えなくなった。

 

 そして、周囲の光が収まった後、身に覚えのない世界に来ていた。

 その世界は異形の人型と、侍が戦争をしている世界だった。

 「何、この世界?」

 さやかは自分たちとは違う常識の世界に戸惑っていた。

 ほかの四人も同様だった。

 しかも、周りには異形の人型が二人の男を取り囲んでいた。

 五人は、その男二人の側にいた。

 その男の一人が、弱音を吐いた。

 

 『・・・・・・これまでか、敵の手に掛かるより、最後まで武士らしく、潔く腹を切ろう』

 鎧を着た、長髪の男だったしかも手には刀を持っていた。

 明らかに侍だという事は確かだった。

 

 その時、ほむらはもう一人の男に気付いた。

 「ま、まさか!?」

 ほむらの反応を見た四人は言葉を失った。

 「嘘!」

 「な、何で・・・・・・」

 「でも間違いないよ・・・・・・」

 「見間違うはずがないわ・・・・・・」

 まどか、杏子、さやか、マミの順で驚いていった。

 

 その男は血はついていたが白髪の天然パーマに白装束に鎧を身にまとっていた上に刀を持っていたが間違いなかった。

 白髪の男は、長髪の男にいった。

 『バカ言ってんじゃねーよ、立て』

 そう言いながら立ち上がり、異形の人型に向かいながらーー。

 『美しく最後を飾り付ける暇があるなら、最後まで美しく生きようじゃねーか』

 決して怯むことは無かった。

 

 『行くぜ、ヅラ』

 『ヅラじゃない、桂だ』

 

 そう、長髪の男に背中を任せ前方の敵に立ち向かっていた。

 

 その男は、夜叉と呼んでもおかしくなかった。

 

 そう、まどか達が驚いたのは戦いぶりではなく、その男の顔だった。

 

 見間違うはずがなかった。何故ならその男は、魔法少女(まどか)達の教師であり、戦友である侍ーー。

 

 ーーー坂田銀時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 はい、今回はまどか達が、『運命を束ね結束する魔法』で精神集中している為、まどか達は戦闘に参加できない状況になっております。

 銀時は、時間稼ぎのため、ワルプルギスと単身たたきに挑んでいます。

 ちなみに、他の時間軸のまどか達の魔女化の時間軸を見ているのは、『運命を束ね結束する魔法』の副作用で魔法を注ぐ際に、絶望の時間軸を見ている為です。
 運命を束ねる魔法はそれほど危険な魔法であることを表現するため、長文になりました。
 ちなみにこの力は、まどかの因果律が飛び抜けているからこそ出来ることであるため、普通の魔法少女がやれば、絶望の時間軸の情報に負け、魔女化してしまします。
 
 YouTubeでの掲載されたまどマギポータブルのシナリオとかセリフをふんだんに使わせてもらいました。

 そのため、かなりの長文になりっました。

 いろいろと申し訳ありません。

 そして最後に、いろんな時間軸に飛んでいたまどかは、何故攘夷戦争時代の世界に飛ばされたのか、そして、かつて白夜叉と呼ばれた銀時の姿を見ることになったのか!!


 本当に長文になってしまいました。

 ごめんなさい。

 出来れば、最後までお付き合いくださると助かります。
 ご意見ご感想、お待ちしております。


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宇宙一馬鹿な魔法少女だコノヤロー!!

 さて前回、ほむら達が銀時の世界に迷い込んだ所で話が終わりました。

 ほむら達は、銀時の姿を見て、どう去来するのか・・・・・・。

 刮目です。


 ほむら達が、銀時の木刀にまどかの集約と結束の魔力を込めているころ。

 

 銀時は息を切らせながらも、戦っていた。

 「あのデカブツ、どんだけ使い魔ポンポン出しやがって・・・・・・ガシャポンですかコノヤロー」

 そう、悪態をつきながらも少しずつだが、確実にワルプルギスに近づいていた。

 

 しかし、ワルプルギスの周りに風が集中してきていた。

 

 それだけでなく、雨も激しく降っていた。

 

 それはつまりーー。

 「あのデカブツ、動くつもりか!!」

 

 銀時はすぐさま、ワルプルギスに接近しようと試みるが、風の勢いが強すぎて今にも吹き飛びそうだった。

 

 それでも、銀時は諦めなかった。

 なぜなら、まどか達魔法少女が諦めていなかったからだ。

 ここで諦めたら、銀時の中の魂は折れてしまう、そのことは銀時自身が知っていた。

 銀時は、二本のサーベルを地面に突き刺し吹き飛ばされないようにしながらも進んでいった。

 

 

 

                       ***

 

 また異形の人型に取り囲まれていた。

 しかも、また二人の男を取り囲んでいた。

 一人は坂田銀時であることは、まどか達にも知っていた。

 しかし、背中を預けている男は違っていた。 

 

 『こいつが最後かもしれねぇ』

 

 その男は、異形の人型に取り囲まれた状況で絶体絶命の中でありながらも戦う意思は諦めていなかった。

 

 そんな中で男は、銀時に話しかけた。

 『一度ききたかったんだ、銀時。 お前は一体何のために、この戦いに参加した。 この国を天人(やつら)から守るためか、それとも武士として名を残すためか』

 

 『さあな、少なくともそんなもんのために死ぬ程、行儀が良い男じゃネェのは確かだ。 俺もお前も』

 

 背中を預けた男の問いに銀時はそう答えた。

 

 『確かに俺達ゃ(ズラ)辰馬(たつま)ほどデキがよくねェ、武士道なんぞ解さんろくでなしの武士だからな』

 

 まどか達はその男が言っていた名前に反応していた。

 「ズラって、今の状況みたいな時に銀時が呼んでいたあの髪の長い兄ちゃんだったよな」

 

 杏子は今の場面に移る前に出てきた男を思い出し呟いていた。

 

 「ええ、少なくとも、彼は他の男の名前も言っていたわね」

 

 ほむらも、男が言っていた『辰馬』という名前を思い出していた。

 

 『だが、ろくでなしにしか通じねえ話もあらぁ』

 すると、そのとその男は、銀時に何かを頼んでいた。

 まるで託すかのようにーー。

 

 『銀時、もし俺がおっ死んだら、先生を頼む。 俺と同じ、ろくでなしにしか頼めねェ』

 

 『・・・・・・じゃあ俺も、ろくでなしに頼む』

 

 すると、銀時はその男の頼みを頼みで返すようにーー。

 まるで願うようにーー。

 

 『死ぬな』

 

 そう言った後、二人の侍は、お互いの前方の敵に向かっていった。

 

 その後、今見ていた光景が消えていった。

 

 「先生、あんな大群に立ち向かっていくなんて」

 

 さやかは異形の大群に立ち向かう銀時()の姿に畏怖を覚えていた。

 「銀時の背中を預けている彼もすごいわ」

 

 ほむらも、銀時の背中を預けている男にも注目していた。

 『時間逆行』で魔女たちと戦い続けたほむらも、戦闘経験から男の実力を肌で感じていた。

 

 「それにしても、あの二人が言ってた『先生』って誰なんだろう」

 さやかは、銀時の会話で出てきた『先生』が誰なのか気になっていた。

 「それに、あの異形の連中・・・・・・あっ」

 杏子は周りに取り囲んでいる異形の連中にふと。脳裏に浮かんだ名前があった。

 

 「もしかして、アイツらが『天人(あまんと)』なんじゃねーか?」

 「天人?」

 

 まどかは杏子が言っていた名前に困惑していた。

 

 「鹿目さんは、知らなかったわね・・・・・・天人はーー」

 

 マミはまどかに銀時は違う世界から来たこと、天人(異星人)のことやその事柄を大まかに説明した。

 

 「先生、そんな世界で何でも屋をしてたんだね・・・・・・それに、私もみんなに話さなきゃいけないことがあるの」

 

 まどかはマミから聞いた内容を理解した後、まどかは意を決してキュゥべえから聞いた、歴史上の偉人の中に魔法少女が居たことを、キュゥべえが有史以前から地球に来訪していたことなどを話した。

 

 「そんな前から、人類(私達)に干渉してたなんて・・・・・・」

 「ある意味、人類はインキュベーターに支配されてたんだな・・・・・・」

 さやかと杏子は、まどかから聞いた歴代魔法少女の最後、その犠牲の上で成り立った今の世界のことを知った後、それぞれの思いを口にした。

 

 「インキュベーター(あいつら)は、エネルギーを回収できれば人類の支配なんてする必要なんてないわ。 なぜなら『奇跡』の大安売りしているぐらい、人類なんてそれだけで御しやすいと思うわ」

 

 ほむらは、今までの『時間逆行』の経験と、銀時の交流を経て、魔法少女が存在する世界程、願いの数は多いのではないのか?

 

 魔法少女の犠牲の上で成り立っている世界程、人間の欲望は存外果てしない上に、キュゥべえの契約に存外乗りやすいのかもしれない。

 

 現にほむら自身もその一人だと思っていた。

 

 そのあとほむら達は、突如周りの暗い景色が、銀色の光に包まれたとたん、まぶしさに目を閉じた。

 

 その後まどか達は、違う場面に飛んだことに気が付いた。

 

 なぜなら、天人に囲まれた場面ではなく、担架に運ばれた侍を取り囲んだ侍たちの場面だった。

 担架に運ばれた男は、右腕を負傷していた。

 

 その怪我は恐らく、刀を握れなくなるほどの怪我だった。

 

 『坂本さん!!』

 『しっかりしてください坂本さん』

 

 負傷者の尚を取り囲む侍たち。

 男の名は『坂本』というらしい。

 まどか達は侍たちのやり取りを見ていることにした。

 

 『騒ぐな、提督にしかられるぞ』

 『『!!』』

 

 侍たちと同じく、まどか達も侍の背後に立っていた男に驚いていた。

 よく見れば、まどか達にとってはついさっき、銀時の背中を預けながら話していた男だった。

 

 『叱られんのはお前だ。 『桂浜の龍』ともあろうものがこっぴどくやられやがって』

 その男は、担架に運ばれた男、坂本に対して呆れていた様子を見せながらも、心配しているように見えていた。

 『何があった』

 『・・・・・・』

 

 男は、坂本と同行していた侍から事情を聴いた。

 話によると、坂本は敵味方関係なく負傷兵事助けようとしていた所に不意打ちの爆撃の後、負傷兵を背負っていた坂本を天人の兵に負傷兵事斬られたとのことだった。

 

 『・・・・・・どうやら本当に説教が必要らしい』

 『勘弁してくれ、折角生き残ったのにとどめをさすつもりか』

 

 事情を聴いた男は坂本に呆れていたらしい、坂本は勘弁してほしいという表情で苦言を言った。

 『侍としてのお前は、もう死んだよ』

 『やっぱり? もう剣でリンゴの皮もむけんとは不憫じゃのう』

 『元々侍の風上にもおけねェ野郎だったな。 戦場で敵に情けをかけて、きき手を持ってかれるなんざ、てめぇらしいマヌケな最期じゃねェか』

 

 男は坂本に皮肉を言いちぎっていた。

 そんな中だったーー。

 『死んじゃいねェよ』

 岩壁に背にもたれながら、銀時は男と侍たちに言った。

 『剣を振り回すばかりが侍じゃねェ、敵を斬るばかりが戦じゃねェ、坂本辰馬の戦は剣一本(ぼうきれいっぽん)で片づくせこい戦じゃねェのさ』

 『・・・・・・』

 銀時の言葉を聞いて、男は思案したあとに後ろをちらりと見るように後ろを振り向き、坂本に尋ねた。

 

 『敵のツラ、覚えてるか』

 『お(まん)ら・・・・・・』

 男と銀時は、坂本の腕を斬った敵に落とし前を付けることにした。

 

 『生憎その・・・・・・せこい戦とやらが好きでな』

 『お前は、お前の戦をすればいい、俺達ゃ俺たちの戦をするだけだ』

 

 そう言って、二人は坂本を斬った敵を探しに行った。

 その後、銀時は自分と同じ格好をした男と戦っている天人()が坂本の腕を斬った相手だと気づき、殺気を飛ばして自分と同じ格好をした男を助け出した。

 

 「あの天人、両眼を糸でふさいでいたわね、しかも・・・・・・」

 「額に目がついていたわね・・・・・・」

 

 マミは銀時が探していた天人の剣士を見て、顔を青ざめていた。

 その天人は、ビームサーベルと呼んでもおかしくない武器を振り回していた。

 しかし、問題はそこではなくーー。

 

 その天人は、人間と同じ姿でありながら、両目を塞いでいた上に、額に大きな瞳を持っていた。

 ほむらも、その異様な存在に悪寒が走っていた。

 

 その後、また場面が変わりーー。

 

 

 まどか達は、宙を浮いていた。

 その上空から地上を見下ろしたら、無数の侍たちの屍が倒れていた。

 

 そして、その屍達を崖から見下ろす笠をかぶった集団のもとに五人は降り立った。

 

 『哀れなものだ。 国を憂う心を持った若者たちが、このような運命をたどろうとは』

 崖から見下ろした笠をかぶった男は嘲りともとれる言葉を、長髪の男が縛られた上に立ち膝の状態に聞こえる様に告げた。

 

 『これがお前のやりたかった事か、松陽』

 笠をかぶった僧のような男達に拘束された男、松陽にそう言った。

 

 『お前の教え子はお前の教えの通り、犬死していったぞ』 

 

 まどか達は縛られた松陽は何者なのかと思ったとき、その答えは直ぐに知ることになるーー。

 

 『そんな教えを説いた覚えはない、そう言いたげだな』

 笠の男たちの首魁は松陽にそう言った後、まるで合図を送ったかのように笠の男たちは二人の縛られた男二人を地に付けた。

 さやかはその男二人の顔を見て驚いた。

 「あ・・・・・・あの二人は」

 さやかの反応で、他の四人もその二人の顔を見て驚いた。

 その二人は、今まで銀時の背中を預けながらも話していた、(ズラ)と提督と呼ばれた男だった。

 

 「ま、まさか・・・・・・あの二人と銀時は・・・・・・」

 ほむらは、気付いた。

 魔法少女(自分)達を助けた銀時()と笠の集団に拘束された二人の男は、松陽の弟子だという事に驚愕した。

 『ならば、試してみるか。 お前の弟子達が、お前と共に犬死していく道を選ぶか』

 笠の男の首魁は松陽を試すか、苦しめるかを楽しむ様に二人と共に死ぬかをーー。

 

 『それとも』 

 

 ーーそして、魔法少女たちは・・・・・・笠の男の首魁の残酷な行為を目撃した。

 

 『その手で、師を殺めてでも生き残る道を選ぶか』

 

 笠の男が、白髪の天然パーマの侍を連行するかのように、突き出された。

 その侍の手には、刀が握られていた。

 「ぎ、銀・・・・・・時・・・・・・」

 

 それはキュゥべえの契約よりも、あまりにも残酷な光景だった。

 

 『教育者たるお前に、ふさわしい処刑方法だろう。 師か仲間か、どちらでも好きな方を選べ』

 

 銀時に松陽()か仲間をどちらかを選び、殺すかを強いらせたのだ。

 

 その時だったーー。

 『つぅ!?』

 

 まどか達の頭に急に頭痛が襲い、何かの光景を見た。

 

 それは、満月が異様に大きく見えた夜の景色にーー。

 笠の男たちに、松陽が連行されていく光景だった。

 それを、笠の男達に拘束されて見ているしか出来ない少年の目で見ていた。

 

 『銀時、あとの事は頼みましたよ』

 

 松陽は、笠の男たちに連れて行かれながらもーー。

 

 『なァに心配はないよ、私はきっとスグにみんなの元へ戻りますから』

 

 銀時のことを心配しながらもーー。

 

 『だから・・・・・・それまで、仲間を、みんなを、護ってあげてくださいね。 約束・・・・・・ですよ』

 ほかの弟子(仲間)達を案じ、銀時に託して、連れて行かれた。

 

 銀時の目に、両腕を後ろに縛られた松陽の左手に、小指を立てて、指切りの仕草を見せ、連行されていった。

 

 その瞬間、まどか達は元の風景に戻っていた。

 そしてーー。

 

 銀時は松陽の背後に立っていた。

 

 『銀時、やっ・・・・・・やめろ、頼む、やめてくれェェェェェェェェ!!』

 提督は、銀時のやろうとしていることに知り、止めようとした。

 

 しかし、等の銀時は松陽は笑いながら、ある言葉を聞いていた。

 

 『ありがとう』

 

 銀時は微笑み返し、その言葉を聞いた後に、握った刀で・・・・・・松陽の首を切り落とした。

 

 『銀時ィィィィィ』

 提督は拘束されながらも、銀時に襲い掛かろうとした。

 しかし、提督に向かって投げつけた刃が左目に突き刺さった。

 

 刃を投げたのは笠の男の一人だった。

 『師に拾ってもらった命、無駄にするものではない』

 まどか達は、刃を投げた男の顔を見た。

 男の顔は顔の上から右斜めの傷があった。

 『本気でこの者共を生きて返すと? 松陽(あのおとこ)に情けでもかけているのか、朧』

 『・・・・・・・・・・・・』

 笠の男の首魁は傷のある男、朧にそう尋ねた。

 『この者共には最早護るものなどありませぬ。 それは侍にとって死したも同じ、何よりこ奴等はそれを、自らの弱さゆえ自らで壊したのです』

 朧は、そう笠の男の首魁に銀時たちが招いたこと告げた。

 『殺す価値なし、もう二度と剣を握る事もできぬでしょう』

 朧は、銀時たちの戦いに対しての『死刑宣告』を笠の男の首魁にそう伝えた。

 

 その光景はまた、銀色の光に包まれてしまう。

 

 「こんなの、あんまり過ぎるだろ・・・・・・」

 「銀時が、攘夷戦争に参加しているとは思ってたけど・・・・・・その理由がーー」

 杏子は銀時の過去を知り、悲しみと怒りが入り混じるやるせない感情が渦巻いていた。

 ほむらも、杏子と同じ心境の上、銀時の目に宿る悲しみの理由を垣間見て、自分と同じように、大切な師を助け出そうとしたことを知り、言葉が重くなっていった。

 「あの時、先生が・・・・・・私に言ってた理由を考えると、つじつまが合うね」

 さやかも、キュゥべえに契約する前の病院内で、銀時が言ってた理由も今見た過去にあったと重く受け止めていた。

 

 「私、坂田先生に鹿目さんと美樹さんをさんを背負えるかって聞かれたことがあったの・・・・・・坂田先生はあの松陽って人の背中を見てきたから、だから私にーー」

 マミも、まどかとさやか(二人)を背負う覚悟について聞かれたことを思い出していた。

 ほむらも、マミが話した時のことを思い出し、納得していた。

 

 「それに・・・・・・先生は、泣いてたよ」

 まどかは、銀時が松陽の首を跳ねた直後、銀時は涙を流したのに気付いていた。

 ほかの四人も、銀時の涙に気付いていた。

 ほむら自身、違う時間軸のまどかを介錯したことがあったため、銀時の心の痛みを理解できてしまった。

 

 魔法少女達は、銀色の光がまた収まり、違う光景を目にした。 

 

 『約束が違うじゃねーか!!』

 肥満の男は明らかに城勤めの三人の侍に声を荒げた。

 ほむらは三人の侍が羽織を着ていたためどこかの役人ではないかと推察した。

 『たっ・・・・・・頼む、命だけは助けてくれ。 オ・・・・・・俺はもう志士じゃねェ、幕府(あんたたち)に忠誠を誓った犬だよ』

 どうやら、肥満の男は城勤めの侍に命乞いをしていた。

 

 『そ・・・・・・そうだ、忠誠の証に俺の娘をくれてやるよ。 こうなったら家族でも何でも差し出してやるよ、どうせ戦前、どっかのアバズレが勝手に産んで捨ててった穀潰しだ、待ってろ、今首搔っ切ってもってく・・・・・・』

 それ以上は紡がれなかった。

 

 あまりにも見苦しい命乞いだけでなく、自分の命惜しさに自分の娘を殺そうとする男に魔法少女(五人)は怒り心頭な時だった。

 

 見苦しい命乞いをする男に木刀で一撃を喰らわせた男がいた。

 

 まどか達は侍三人と同様に乱入した男に驚いた。

 

 『どうも、なんだツミはってかそーです。 わたすがこのボンクラの娘です』

 

 「銀時・・・・・・」

 

 『一橋となんざケンカした覚えもねーがそんなにほしいなら、この白夜叉の首とこのクズの首くれてやらぁ』

 

 まどか達は驚愕した。

 銀時は自分の首と銀時が殴ったボンクラの首でーー。

 『だから、これ以上・・・・・・他の連中に手を出すんじゃねェ』

 ボンクラの娘を救おうとした。

 

 

 

 その後、牢屋敷に連れて行かれた銀時は牢の役人に激しい尋問に晒されたが、その役人より上の立場の人が、銀時に対しての尋問を止めていた。

 

 どれだけ時がたったのか、銀時は牢に入れられていたある日のことだった。

 

 『ねェねェ、お兄ちゃんはどうしてこんな所に入れられてるの、何か悪い事でもしたの』

 ある少女が、銀時の牢の前に現れそう尋ねてきたからだ。

 『・・・・・・ああ、オメーが小便ちびるような悪い事いっぱいやった。 だから

首切られなきゃいけねーんだ』

 『ホントに? 父ちゃんみたく私を殴るの?』

 『・・・・・・オリがなかったら殴ってるよ、やかましいからどっかいけクソガキ』

 銀時は、牢の外にいる少女を脅してでも遠ざけようとした。

 しかしーー。

 

 『でも首切りのおじさんが言ってたよ、お兄ちゃんはホントは悪い奴じゃないんだって。 かわいそうな女の子を護ってあげただけなんだって』

 

 少女は、銀時が捕まった理由を知っていた。

 まどか達は少女の話から、銀時が捕まった場面を見ていたのが、少女の言っていた『首切りのおじさん』だという事に気付いた。

 

 『なのにかわいそうだね・・・・・・そうだ!! お兄ちゃん、私・・・・・・いつか立派な処刑人になったら、お兄ちゃんの首を斬ってあげる』

 『『斬っちゃうの?』』

 まどか達は、記憶の中の銀時と一緒にハモッた。

 とんでもないことを言い出す少女に驚愕したからだ。

 しかし、少女の言葉にはある意味が込められていた。

 

 『うんうん、上手に斬るから全然痛くないよ。 らく~~に天国に送ってあげるよ』

 それは、まどか達の知っている処刑人とは違う意味での処刑人の言葉だった。

 まどか達が知っている侍とは違うのと同じようにーー。

 

 『だから約束。お兄ちゃん、私が立派な処刑人になるまで絶対に死んじゃダメだよ』

 少女は微笑みながら、銀時に約束した。

 銀時は少女の言葉に笑い返してーー。

 『そうかいらく~~にかい、そいつはいいや、約束だぜ』

 少女に約束した。

 

 そしてその後、銀時の拷問を止めた役人が現れた。

 その役人は銀時に言った。

 

 『罪を犯し鬼と成り果てた人間を人へと還すことができるのは、人だけだ。 だから俺にお前を斬る資格はない』

 その役人の言葉を聞いて、まどか達は驚いた。

 

 「まさか、あの子が言ってた首切りのおじさんって・・・・・・」

 「あの時に、銀時の拷問を止めた男だったんだな」

 まどかと杏子はそれぞれの場面を思い出していた。

 銀時があのボンクラの娘を助けた場面を、あの役人が見ていたことに気付いた。

 

 その役人は処刑人の教示を銀時に話した最後にーー。

 『鬼に、鬼を斬る資格はない。 約束したんだろう』

 

 そういって、牢のカギを外して、銀時を救った。

 

 「先生の行いを見て・・・・・・助ける決心をしたんだね」

 「でも、処刑人が・・・・・・罪人を逃がすってことは・・・・・・」

 さやかはあの(自分の首を差し出した)瞬間を見ていたため助けることにしたことに驚いた。

 しかしマミは、処刑人の立場を考えた時、自分の立場を危険にする行為の先の結末に、悲しみを覚えた。

 

 その後、銀時は牢屋敷から、体を引き摺りながらも脱出した。

 

 少女との約束を胸にーー。

 

 そして、落ち延びたのは墓地だった。

 そこに墓参りに来た中年の女性が墓にお供えをして帰ろうとした時に銀時はその女性に声をかけた。

 

 『オーイババ―、それまんじゅうか? 食べていい? 腹減って死にそうなんだ』

 『こりゃ私の旦那のもんだ、旦那に聞きな』

 中年の女性は銀時の問いにそう答えた。

 銀時は、間髪入れずお供えされたまんじゅうを食べた。

 『なんつってた? 私の旦那』

 そう女性は銀時聞いた。

 するとーー。

 『しらねェ、死人が口きくか』

 『バチあたりな奴だね、たたられてもしらんよ』

 『死人は口もきかねーし団子も食わねェ、だから勝手に約束してきた』

 そう女性に言ったあと、一方的な約束を告げた。

 『この恩は忘れねェ、あんたのバーさん老い先短い命だろうが、この先は・・・・・・アンタの代わりに俺が護ってやるってよ』

 

 そう言って、銀時はその女性の亡き旦那に約束した。

 

 その後、銀時は万事屋を開き、数々の厄介ごとを起こしたり巻き込まれたりしながらもそこで巡り合った仲間たちと乗り越えながら、関わった人達の願いを大切なものを護っていったーー。

 

 

                     ***

 

 

 銀時はワルプルギスを追いながら、使い魔を蹴散らしていった。

 

 それでも、ワルプルギスの進行は止まらなかった。

 

 「待ちやがれ、デカブツ~!!」

 

 銀時は宙を浮く瓦礫に飛び移り、宙を駆けながらも追っていたが使い魔の軍勢の追跡は止まらなかった。

 

 そのうえ、銀時の体力も限界に近づいていた。

 使い魔の迎撃とワルプルギスの攻撃の回避に全力を尽くしたが、今では気力で動きを維持している状態だった。

 

 その時だった。

 

 虹色の光を帯びた銀色の光柱が立ち昇った。

 「あの方角は!!」

 

 銀時は光の柱が昇っている方角を見て気付いた。

 あの方角は、まどか達が魔力を束ねている儀式をしている方角だった。

 そして、その光の柱が消えた後、音速を越える様に五つの影が銀時に迫っていた。

 

 その影は、使い魔をことごとく蹴散らしていった。

 すると、その影は銀時目掛けて着地し、土煙を上げた。

 

 土煙の埃が引いた後、銀時が見たのはーー。

 「てめーら!!」

 

 それは、儀式を終えた魔法少女五人組だった。

 

 「銀時、時間稼いでくれてありがとう」

 「体ボロボロじゃねーか、銀時」

 「先生、大丈夫!?」

 「待たせてごめんなさい、坂田先生」

 「わたしたちを信じてくれて、ありがとう先生」

 ほむら、杏子、さやか、マミ、まどかの順で銀時の身を案じていた。

 

 「終わったのか?」

 銀時はまどかが行った儀式の現状を聞いた。

 

 するとほむらは銀時から託された木刀を見せた。

 それは柄の洞爺湖は変わらなかったが、木刀を収めた盾は変化していた。

 

 それはまるで、砂時計の装飾に脇差を収めるような鞘へと変化していた。

 

 すると、銀時は魔法少女達のソウルジェムが黒く濁っていることに気付いた。

 「テメーら!! ソウルジェムがーー」

 銀時の驚いた様子に、ほむらは自分のソウルジェムの状態を見ての反応だと気が付きーー。

 「私たちのソウルジェムは大丈夫よ、銀時」

 銀時に微笑みながらほむらは告げた。

 

 そして、使い魔が銀時たちに襲い掛かろうとした時、マミとまどかが使い魔を一斉掃射で倒しまくっていた。

 

 続いて、さやかと杏子は使い魔目掛けて接近戦を仕掛けた。

 

 杏子とさやかは使い魔の攻撃を受けたが、それで終わりではなかった。

 

 

 使い魔は、杏子の身体を通り抜けていき、さやかの身体の傷は瞬時に治癒していった。

 

 しかし、驚くべきと事はそこではなかった。

 

 魔力を消費して穢れているソウルジェムがグリーフシードに変化していないどころか、ヒビ一つ出ていなかった。

 

                      ***

 

 

 

 「どういうことだ!! ありえないよ!!」

 遠くからまどか達の戦いを見ていたキュゥべえが驚愕していた。

 

 「穢れと呪いに染まったソウルジェムは、グリーフシードに変化して魔女を産み落とすのに何の兆候がない!! それどころか、ソウルジェムを浄化していないのに魔法を使えるなんて、訳が分からないよ!!」

 

 本来魔法少女は、魔法を使うときソウルジェムに穢れが溜まっていき、呪いをためてしまう。

 魔法が弱くなるどころか、グリーフシードに変化して、魔女を生み出し、命を落とすはずだった。

 それは、キュゥべえが構築した『魔法少女システム』の絶対の理だった。

 

 しかし、まどか達のソウルジェムは穢れと呪いで満たされているはずなのに、魔女化するどころかグリーフシードに変化していない。

 

 『君たちは一体、何なんだ!? ソウルジェムが砕けてグリーフシードに変化して魔女を産み落として命を落とすはずなのになぜ生きているんだい!? それどころか魔法の威力が衰えないのはどういう事なんだい!! 君たちは一体何になったんだ!?』

 

 キュゥべえがまどか達にテレパシーを飛ばして問いかけた。

 

 すると、まどか達はニヤリと笑いながらキュゥべえにテレパシーで告げた。

 

 『『『『『宇宙一馬鹿な魔法少女だコノヤロー!!』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 はい、今回はジャンプリミックスで銀時の過去をかき集めて書かせてもらいました。
 
 長すぎてしまえば、また疲れて今うと思うし、私自身疲れると思ったのでほどほどの文面にしました。

 まどか達は、攘夷戦争時代の銀時の姿を見てどう思ったのか?
 そして、まどかの知っている万事屋()の銀時の背中を見てどう思ったのか?
 
 そんな感じで、書かせてもらいました。

 そして、戦場に戻ったまどか達のソウルジェムが穢れ切っているにもかかわらず、魔女化していないどころか魔法を使うことが出来るのか!?

 それは次回の楽しみです。

 ちなみに、最後にまどか達がテレパシーでそろえた『宇宙一馬鹿な魔法少女だコノヤロー!!』は、銀時の背中を見て、過去を知って、銀時のいた世界で何を護っていたのかを、雲を掴むような心境なのでしょうが、何かを掴んだというイメージで、このタイトルと同じようなセリフをラストに書かせてもらいました。


 それでは、次回はようやく、ワルプルギスの夜との決戦もクライマックスに差し掛かりますので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

 ご意見ご感想、お待ちしております。


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魂の刃


 はい、前回『宇宙一馬鹿な魔法少女だコノヤロー』といった時点で終わりましたが、その言葉が出今明かされてきます。

 魔法少女五人娘が見た銀時の万事屋の日々ーー。

 それを見てどう感じたのかを想像しました。

 それでは、お楽しみください。


            数分前 浮遊する瓦礫

 

 まどか達が、様々な時間軸の自分たちの結果を見る旅から戻った時点での話しだった。

 

 「まどか、あたしたち・・・・・・」

 「うん、戻ってこれたみたいだね」

 さやかとまどかは自分たちが、時間軸の集約と自分たちの様々な結末(最期)を見て、そのエネルギーを集約するたびに戻ってこれたことを実感した。

 

 「お、おいあれ!!」

 「!! ワルプルギスがもう・・・・・・!!」

 

 杏子とマミは、ワルプルギスが動き出していることを遠目で気付いていた。

 

 「銀時!」

 

 ほむらは、今でも飛び出してしまいそうな勢いだがそこは我慢していた。

 自分の盾と銀時から預かった木刀がどうなったのかを確認しようとしていた。

 魔力を集約させた盾と木刀の状態を見たほむらは驚愕した。

 

 「これは・・・・・・!」

 

 それは、ありとあらゆる時間軸から自分たちの結末と魔力を集約させ、ワルプルギス浄化(救済)の切り札はーー。

 

 銀時から預かった木刀『洞爺湖』事態に変化はなかった。

 しかし、ほむらが左腕に装着していた盾は、その木刀を収める鞘へと形を変えた。

 

 ただ、その鞘の形状はまるで脇差を収める形状の鞘だった。

 ほむらがいつも爆弾から大型火器まで収納していたため、木刀の長い刀身を異空間に収めた形状としては理解できていた。

 しかしどうして脇差を収めるような鞘なのか理解できなかった。

 ほむらは木刀を収めている鞘に触れようとした。

 

 その時だった、ほむらが鞘に触れた時、膨大な魔力が鞘と木刀から感じ取れていた。

 (まさか・・・・・・私たちが自分自身の結末を見たことで集めた魔力を圧縮させた経緯でこの形になったの!?)

 「ほむら! どうした!?」

 杏子は、ほむらの様子が気になり駆け寄ってきた。

 「杏子・・・・・・私たちが込めた希望の形に驚いただけよ」

 ほむらはそう言いながら、杏子に木刀を収めた鞘に変形した盾を見せた。

 すると、杏子はその形を見て確かに驚き、鞘に触れた。

 その後杏子は、ほむらの言っていたことを理解したのか、それ以上は何も言わなかった。

 

 すると、まどかはあることに気が付いた。

 「みんなのソウルジェムが・・・・・・」

 そう、まどかも含め、他の魔法少女たちのソウルジェムが穢れをためて黒く変質していた。

 すると、マミはあることに気が付いた。

 

 「おかしいわね、魔力を使い切ったら・・・・・・」

 

 その発言に、全員が気が付いた。

 魔法少女は、魔力を使えば穢れが蓄積していき、魔女になるはずだとーー。

 しかし、ソウルジェムが呪いをため込んでいるはずなのに、グリーフシードへの変化どころかヒビ一つ付いていなかった。

 

 その時、使い魔数体がまどか達を見つけ襲い掛かろうとしていた。

 

 まどかとマミは、使い魔を撃ち落とそうとしていた。

 これが最後の攻撃になるかもしれない、そう覚悟して撃った時だった。 

 

 まどかが放った矢とマミの銃弾が、使い魔を一撃で葬った。

 「え・・・・・・?」

 「なに、この威力・・・・・・?」

 まどかとマミは自分たちの放った矢と銃弾の威力に驚愕した。

 ソウルジェムは穢れているはずなのに、魔法を使えば穢れが進み、威力が落ちているはずがーー。

 ーー落ちるどころか、むしろ威力が上がっていた。

 

 念のため、ほむら達に自分たちのソウルジェムを見てもらうことにした。

 「どういうこと!? あんな威力はなった筈なのにソウルジェムが一向にひびが入らないなんて!!」

 さやかは、まどかとマミのソウルジェムを確認するとヒビは入っていなかった。

 

 「もしかして、銀時の過去を見たから・・・・・・?」

 

 ほむらは、まどかの魔力の特性であるバラバラの運命の収束と結束の儀式の際に見た、銀時の過去を見たことに関係があるのではないかーー。

 

 ほむらが呟いた際、まどか達もはっとなって思い返していた。

 銀時が万事屋を始めた日々を見た影響しているのではないかとーー。

 

 

                      ***

 

 

 

 ほむらは、儀式の際中に自分たちの様々な最期(結末)を見た際に銀時の過去と万事屋の日々を見たこと、自分達のソウルジェムの状況と魔法の威力が上がったことを銀時に話した。

 そしてーー。

 

 「ごめんなさい、銀時・・・・・・私たちは、あなたの過去を覗き見てしまって・・・・・・」

 ほむらはそう銀時に謝罪した。

 

 ほむら達は、銀時と合流する際、銀時の過去を見てしまったことを謝ろうと決めていたのだ。

 きっと、触れられたくないあの過去をーー。

 

 すると、銀時はほむらの髪をくしゃくしゃに乱れるまで撫でた。

 「何気にしてんだ? テメーらが、故意に俺の過去を覗き見たわけでもあるめェ・・・・・・俺がキレるとでも思ってるのか?」

 「でも、私は・・・・・・私たちはーー」

 「ガキが気を使ってんじゃねーよ」

 銀時はほむらにデコピンしながらそう告げた。

 

 「オメーは確かに、同じ時間を繰り返してきて他の魔法少女(連中)と違う経験で精神的にも大人顔負けだ・・・・・・でもな、それは同じ経験をしただけで、テメー自身が成長してねーだろ? 俺から見たらまだガキだ」

 

 銀時は、ほむらにそう言いながら、話しを続けた。

 ほむらが、銀時の過去を見て罪悪感を感じてるのなら、それは違うーー。

 目の前の勘違いに、銀時はあることを伝えた。

 

 「今まで、ガキらしいこと我慢してきたんだろ? なら、答えは一つだーー」

 銀時は目の前の魔法少女(子供)に対して誰しもある、『当たり前』を解き放つ言葉を告げた。

 

 「ほむら、テメーの『我儘』はなんだ?」

 そう銀時に尋ねられ、ほむらはハッとした。

 

 (私の『我儘』は・・・・・・)

 

 ほむらは銀時の『万事屋の日々』を思い出していきーー。

 その中に、答えはあった。

 

 「私の『我儘』は――」

 

 それはーー。

 初めてまどかと出会い、魔法少女のことを知り、ワルプルギスの戦いでたった一人の友達(まどか)を目の前で失った。

 その際に願った。

 『鹿目さんとの出会いをやり直したい! 彼女に守られる私じゃなくて・・・・・・彼女を守る私になりたい!』

 

 その願いにある、自分の心にある根幹をーー。

 

 「まどかと一緒に学校に通って、みんなと一緒に出掛けて、街を回って買い物してる未来に行きたい!!」

 

 今までのほむらから考えられない、平凡な少女の『我儘』だった。

 

 すると銀時は、ニヤリと笑いながらーー。

 

 「その依頼、引き受けたぜ」

 

 そう、ほむらに告げた。

 

 

 ほかの四人も、ニヤリと笑いながら、使い魔掃討に力を入れた。

 

 「わたしも、ほむらちゃんと一緒に見滝原を回っていきたい!」

 「あたしも、あんたがどんなCDが好きなのか興味あるかな?」

 「あたしも、あんたと一緒に食べ歩きしてみるのも悪くねーかな?」

 「私も、あなたと一緒に紅茶を飲んでみたいわね♪」

 

 まどか達はそれぞれの『我儘』を言いながら戦った。

 魔法少女たちは、銀時の過去と万事屋としての日々を見て知ったのだ。

 

 迷い足掻きながらも前に進み、大切なものを一緒に護っていくことをーー。

 それに答えて支えていく存在が身近に現れることをーー。

 

 そして、それを生きて貫き通す遺志(こころ)が大事なのだという事にーー。

 

 「ったく、それはほむらへの我儘だろーが」

 そう言いながら、ほむらの方に顔を向ける銀時はーー。

 「どうする、ほむら? あいつらの『我儘(依頼)』付き合えるか?」

 そう聞かれたほむらは、微笑みながらーー。

 「ええ、何度も同じ時間を繰り返してきたことに比べれば、安いものよ」

 そう銀時に言った。

 

 ほむらの言葉に納得したのか、銀時は不敵に笑った。

 「じゃあ行くぜ、てめーら」

 銀時の言葉にまどか達は頷いた。

 

 そして、マミ、さやか、杏子、まどかは使い魔の掃討に乗り出した。

 

 「不思議ね、ソウルジェムが穢れているのに、魔法の威力が衰えていないなんて」

 そうマミは呟きながら使い魔を掃討していた。

 銀時が万事屋としてして過ごしていた日々を見た中で、自分自身印象が残っている記憶を思い浮かべながらーー。

 

 その記憶は、銀時の世界の警察『真選組』の騒乱事件を起こした、主犯が言った言葉だった。

 

 

                      ***

 

 『白夜叉ァァ!! 貴様は何がために戦う! 何がために命を懸ける!!』

 怒り狂ったように銀時に問いかける三味線を背負った剣士ーー。

 『最早侍の世界の崩壊は免れぬ、晋助が手を下さずとも、この国はいずれ腐り落ちる。 ぬしが一人あがいたところで止まりはせん!!』

 マミはその剣士が言っていた『晋助』の名に反応した。

 その名前で銀時の関係で思い当たる男は、攘夷戦争で『ズラ』と呼んでいた長髪の侍と『辰馬』と呼んでいた方言が特徴の侍だった。

 そしてーー『提督』と呼ばれていた、男の名前が恐らくそうではないかと、マミ達は気付いていた。

 『この国に護る価値など最早ない! 天人に食いつくされ醜く腐る国に潔く引導を渡してやるが侍の役目、この国は腹を切らねばならぬ!!』

 『死にて―なら一人で練炭自殺でも何でもしやがれ』

 銀時は自分の肩を刀で刺した剣士にそう返した。

 『・・・・・・坂田銀時、貴様は亡霊でござる、かつて侍の国を護ろうと晋助らと共に戦った思い・・・・・・それすら捨てられず妄執しとらわれる、生きた亡霊だ。 ぬしの護るべきものなどもうありはしない――』

 そう言いながら、剣士は銀時の肩を貫きーー。

 『亡霊は、帰るべきところへ帰れェェェェ!!』

 切り裂き、空から落下する銀時を見下ろしながらーー。

 『鎮魂歌(レクイエム)をくれてやるでござる』

 三味線を弾こうとした時だった。

 

 突如、ヘリコプターに弦がいつの間にか巻き付けられていた。

 明らかに、その玄は三味線の剣士が使っていたものだった。

 『弦が!!』

 いつの間に自分の弦がヘリコプターに巻き付きついていたのか見当がつかなかった。

 しかし、その理由は、目の前にあった。

 

 『オイ・・・・・・兄ちゃん』

 ヘリコプターを木刀に巻き付いた弦で引っ張る侍によって引き起こされたものだった。

 『ヘッドホンをとれコノヤロー』

 『撃てぇェェ!!』

 剣士は手下に銀時へマシンガンの乱射を命じた。

 それでも、銀時は引かなかった。

 『耳の穴かっぽじってよぉくきけ、俺ァ安い国なんぞのために戦った事は一度たりともねェ。 国が滅ぼうが、侍が滅ぼうがどうでもいいんだよ俺ァ昔っからよ』

 

 銀時はそう言いながら木刀に巻き付いた弦でヘリコプターを振り落とそうとした。

 『今も昔も、俺の護るもんは何一つ――』

 銀時の脳裏に、真選組との日々が脳裏にあった。

 

 マミはその記憶の中で、万事屋と真選組はいがみ合っている関係であることを知っていた。

 それでも、いざってときは助けている不思議な関係でもあったことを理解していた。

 

 そして、そんな真選組ともう一つ、かぶき町との日々を胸に秘めながらーー。

 『変わっちゃいねェェ!!』

 叫びながらーー。

 一本背負いさながらに弦に巻き付いた木刀を振り下ろしてヘリコプターを落とした。

 

 そして、真選組側の首謀者が、副長に粛清されるのを見守った。

 

 その後、真選組と対を成す『見廻組』が関わってる事件に巻き込まれ逮捕されたりしたけど結局手を組んで解決したりした。

 

 銀時の過去に出てきた公儀処刑人になった少女に言った言葉があった。

 

 『お前の剣は汚れてなんかねーよ、罪を斬り人を救う立派な公儀処刑人の剣だった。 オメーの親父を殺したのはお前じゃねェ夜右衛門と俺だ、それでもお前はまだその剣を抜かねーのか、斬らなきゃならねェ「罪」を前にしてもまだそうして、てめー自身に刃を向け続けるのか』

 

 銀時は自分達を消しに来た役人たちと戦いながら、公儀処刑人になった少女に問いかけ続けた。

 

 『んなもんに剣を使ってる暇があんなら、腹に刃が突き立とうが腸がぶら下がろうがその剣を杖にしてでも前に進んでみやがれ!! 夜右衛門の首でも俺の首でもいい!! 眼前の(てき)をその剣で斬り伏せてみやがれ!! それがてめーらが本当に護るべき公儀処刑人の矜持じゃねーのか!!』

 

 その少女に自分の首を差し出しても救いたかったのだ。

 

 マミはその出来事の中で、自分は自分自身を護っていたことを自覚していた。

 そして、銀時に出会って後輩との職務関係に近いつながりと、弟子との絆などを考えながら、それをどう護っていくのかを考えていた。

 

 それはきっと、この戦いで全員生還した先にあると確信していた。

 

 

 

                      ***

 

 

 

 マミ同様に杏子も銀時の記憶の中で、心に残ったものがあった。

 それは、万事屋で働いている天人の少女とその父親の出来事ーー。

 最初銀時は、少女を突き放して父親の元に帰した。

 その時の杏子は内心怒っていた。

 しかし、その少女が地球外生命体(えいりあん)に襲われていることを知った銀時は助けに向かって、少女の父親と共闘して助け出すことができた。

 

 そして、その少女を突き放した理由が、父親の心情への配慮からくるものだった。

 銀時は娘が書いた父親あての手紙を渡して、父娘(親子)を羨んだ言葉を告げていた。

 『俺ァほしかったよ、アンタみてーな家族が・・・・・・』

 

 次に見たのは、『妖刀』という名の兵器にまつわる兄妹(ケイマイ)の鍛冶職人の事件だった。

 銀時は、最初に刀鍛冶の兄から『妖刀』と呼ばれた父の刀を探してほしいと依頼されたのが始まりだった。

 同時期に辻斬り事件が起こっていた時期でもあった。

 その中に、銀時のかつての仲間『ズラ』が巻き込まれていた。

 

 その事件を引き起こしたのは、『提督』と呼ばれた男が率いる『鬼兵隊』と呼ばれる過激組織のメンバーの一人で『妖刀』を持ち出した犯人で、銀時に恨みを持っていた。

 

 その犯人に重傷を負わされた後、刀鍛冶の妹が真相を聞いた。

 『妖刀』と呼ばれた刀を元に、『生きた刀(兵器)』を創り出した兄であることをーー。

 

 そのあと銀時は、刀鍛冶の妹と共に『妖刀(兵器)』と兄の暴走を止めるべく動き出した。

 その後、『妖刀』は使い手である辻斬り犯を取り込み銀時を追い詰めていた。

 その時、刀鍛冶の妹と万事屋で働いている眼鏡の少年と天人の少女が銀時を救おうとして動いた。

 暴走した辻斬り犯は刀鍛冶の妹に襲い掛かったが、『妖刀』の生みの親である兄が庇ったために救われていたが、庇った兄は重傷だった。

 その兄は、余計なものを捨てて剣を造るために生きるつもりだったが、肉親()は捨てられなかったと口惜しそうに言ったのに対して、銀時はそれに反論していた。

 

 いろんなモン背負って頭を抱えて生き、余計なものが生み出す力が生み出し、魂を込めて打ち込んだ妹の刀で証明した。

 

 続いて見たのは、機械(からくり)メイドが起こした反乱事件だった。

 機械メイドの頭部を偶然拾ってしまった銀時が、陰謀に巻き込まれたのだが、その後機械メイドの創造主である男の人格データを移植した機械(からくり)が暴走して、反乱事件が起こった。

 その発端が愛娘の喪失に端を発していたことに、杏子は複雑な心境だった。

 そして、頭部になった機械メイドが新しい体を得て、暴走した生みの親の暴走を銀時と共に阻止に成功したが、メイドにあった『愛娘の人格(こころ)』の悲しみに、機械メイドは戸惑っていた。

 その様子に、銀時は言葉をかけた。

 

 妊婦が子供を産むときと芸術家が作品を産みだすときは必ず苦しむ、時には逃げ出してしまいたい時もあるが、その苦しみの中に大事なものがあることを忘れてはならないことをーー。

  

 ーーそれでも、涙が止まらない時は止めてくれる仲間がそばにいることを、銀時は伝えた。

 

 

 そして、次に見たのは、教会で銀時から聞かされた話に出てきた『血のつながらない母子(親子)』の元となった事件だった。

 そこは、空が見えない鉄の空に閉ざされた地下遊郭『吉原桃源郷』を『ヤバい店長』が支配していた。

 その後で、万事屋で働いている天人の少女と同じ種族と兄が来ていたことには言葉を失っていた。

 それでも、銀時たち『万事屋』は引かなかった。

 協力者として、『血のつながらない母』を護り続けた『女傑』が銀時と行動を共にした。

 

 『ヤバい店長』と銀時の戦いは熾烈を極めていた。 

 しかし、銀時に力を貸した『女傑』の『部下』との協力で『ヤバい店長』を倒して『吉原桃源郷』を日の当たる街にしたのには驚いていた。

 

 その後で見たのが、『かぶき町』で、町を取り仕切る四人のうち三人が覇権争いを起こった事件ーー。

 その発端は銀時のことを聞きつけ、巻き込もうとした『極道の娘』との出会いから始まったーー。

 『極道の娘(彼女)』の声が自分(杏子)とそっくりなことに本人はもちろん、仲間も驚いていた。

 その目的が、四人のうちの一人で『親分(自分の父親)』が『かぶき町』を収めることで自分の所に帰ってくると信じての行動だった。

 たとえ、周りの人間の『大切なもの』を奪い、巻き込んででもーー。

 

 杏子は『極道の娘』の行動に背筋を凍らせた。

 自分のいる世界で、やり方は違っても大切なものを護ろうとした気持ちを理解してしまった。

 しかし、銀時が『親分』の過去と『約束』を知ったうえで戦い、覇権争いを起こした『黒幕』を退かせた。

 その後、銀時は『親分』との決着をつけ、計らいで『親分』と『極道の娘』(親子)と和解させた。

 

 杏子が銀時を通して見た、『親子の様々な形』

 ワルプルギスの戦い(この戦い)を乗り越えた後、その繋がりをどう護り貫いていくのかを探す決意を固めた。

 

 

 

                      ***

 

   

  

 そして、さやかも銀時が万事屋の出来事の中で、『愛のカタチ』を銀時の目線で見ていた。

 

 その中で自分が心の中で考えさせられる出来事があった。

 まずは、真選組で一番隊を指揮している『ドS』に関することだった。

 その『ドS』は銀時自身『ドS』とは一緒にボケをするぐらいの腐れ縁だ。

 しかし、『ドS』には病弱な姉がいた。

 『ドS』は銀時を親友と偽り、付き合わせていた。

 

 その後、その『ドS』の姉が近々結婚することを、そして真選組『副長』に昔想いを寄せていたことを知った時は『副長』をいじっていたーー。

 

 『ドS』の姉の結婚相手がたちが悪いと知るまではーー。

 銀時は『ジミー』と呼ばれる密偵から途中で聞かされていた。

 その事実を知った後、『ドS』の姉の容体が急変し、『ドS』と『ゴリラ』が『副長』との関係で言い争っていた。

 

 そして、『ジミー』から『副長』が一人で決着をつけるつもりだったことを知った。

 

 『ドS』の姉は『副長』が自分を拒絶していた理由を知っていた。

 『ドS』も知っていたことを銀時に話していた。

 

 銀時は途中で、真選組に手を貸して、最低婚約者を『ドS』が引導を渡した。

 

 次に見たのは、『お天気アナ』と『陰陽師』の事件だった。

 万事屋に尋ねた『お天気アナ』は銀時のファンの女性だった。

 その正体が『陰陽師』であることを知ったのはさやか達も衝撃的だった。

 

 そして、その『お天気アナ』が使役している『式神(友人)』を護身用として託されていた。

 銀時自身、『お天気アナ』のファンとして、天気予報を陰陽の力で妨害する『陰陽師』の対決に乗り出した。

 

 そこで知ったのは、『お天気アナ』の『実家』と『お隣の陰陽師』の家が『お天気戦争』を繰り広げていたことだった。

 

 『お天気アナ』の兄は政略結婚で妹を、『お隣の陰陽師』に嫁がせたことを、『お隣の陰陽師』から自分勝手に『お天気アナ』を奪ったことに負い目を感じていた。

 

 その原因が千年にもわたる二大『陰陽師』の因縁に端を発し、今日に至っていたことを知った。

 

 その後、『因縁』に決着をつけるべく『お隣の陰陽師』が提案した勝負に『お天気アナ』の兄と銀時がタッグを組んで激闘を繰り広げていた。

 

 そんな中で、『お隣の陰陽師』が邪神を取り込んで力を行使していたが、その邪神が『お隣の陰陽師』の身体を依り代に復活して、二大『陰陽師』を根絶やしにしようとした中で、『式神』が銀時を信じていたため、二大陰陽師に連なる者たちが力を合わせ、『お隣の陰陽師』が心を取り戻し、『お天気アナ』の兄と共に邪神を調伏した。

 

 ーー二人が愛した『お天気アナ』の笑顔のために。

 

 その結果、二大陰陽師の家は和解した。

 

 

 さやかは、自分のいる世界で自分で身を引く『愛』と大切な人の笑顔を護る『愛』を知らなかったことを痛感した。

 

 思い人の手を治したかった思いの根本はその人の『愛』がほしかったことだと悟ったーー。

 

 魔法少女に契約する前、マミの忠告がまた違った意味に聞こえた気がした。

 

 さやかは自分の戦いを乗り越えた後、幼馴染のバイオリンの演奏が聴きたいのと、親友の恋を優しく見守る決意を固めた。

 

 

 

                    ***

 

 

 

 そして、まどかとほむらは銀時の万事屋の日々を銀時の目を通して、知ったことがあった。

 

 まどかは『名門』と万事屋で働いている眼鏡の少年の姉、伝説の花魁の思い人探し、『ズラ』のペットの行方探しーー。

 ほむらは『吉原桃源郷』を護っていた『女傑』と銀時の小さな世界が奪われた事件、そして『万事屋』で働いている眼鏡の少年とその姉が兄と慕っている者の記憶を見ていた。

 

 そのどちらも自己犠牲だった。

 

 『名門』出身の男装の麗人が、万事屋で働いている眼鏡の少年の姉を愛していたことを、

 

 『ズラ』と友情を育んだ伝説の『傭兵部族』

 

 伝説の花魁が政治に利用されている花魁を想い続ける『片腕の忠臣』の出来事をーー。

 

 『女傑』が信頼していた『師』の悲しき暴走を、『銀時』の記憶を奪い、成り代わって居座った『機械』から世界を取り戻そうとした戦いを、サイボーグとして故郷に帰ってきた、姉弟の『兄』を救うための戦いがあったことをーー。

 

 そのどちらも、大切な人の傍に居たい、しかし傷つけるのが怖い、失うのが恐ろしいという共通点があった。

 

 その結果、身勝手が浮き彫りになったり、約束が重い鎖に変わってしまい、結局周りを巻き込む結果になってしまうことをーー。

 それでも周りが身近にいたから気付いたり、気付かされたりを繰り返し、巻き込んだり巻き込まれたりを繰り返しても、銀時は救い、護っていった。

 

 しかし、必ずしもすべてを救えるとは限らないことを、まどかとほむらは今までの、そしてそれぞれの経験で知った。

 

 自己犠牲は自己満足に近しいものかもしれないと二人は悟った。

 

 その二人が、銀時が関わった事件を通して分かったことは、自己犠牲をしても周りは許さないことを、 大きな悲しみを産み落とすことを、そしてーー。

 

 それをぶっ壊す銀時(ヒト)に出会い、背中を見て生きて帰るという掛け替えのないことを真っ直ぐに受け止めていた。

 

 

  それぞれが見た、銀時の記憶の中でそれぞれが目を奪われた中で、銀時は諦めず護り救いとり、仲間と一緒に迷いながら、進む意味を知った。

 

  

 それこそ、銀時から学んだものがあった。

 

 侍の魂はソウルジェムの魂ではなく『志』を差し護り抜くことにあることをーー。

 

 自分たちが憧れた魔法少女は存外侍に似ているかもしれないと五人は思い、ワルプルギスに戦いを挑むーー。

 

 銀時から学び、自分達自身で掴んだ『魂の刃』をソウルジェムと見えない魂の奥底に秘めてーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 前回、感想をいただいた中でネタとなる文章があったので使わせてもらいました。
 
 リミックスを総動員してオリジナルで書かせてもらいました。
 と言っても、リミックスの内容を書いたら文章が多すぎて僕も読者もつかれる可能性があったので、出来事を銀時目線で見た感じで書かせてもらいました。

 かかわった事件の中で、銀魂の登場人物をあだ名的な感じで書かせてもらったのは、名前は銀時の記憶で知ったけど、まどか達が江戸の人たちの行いと、癖、見た目で分かりやすく、心の名で呼んでいるイメージです。

 そして、銀時が万事屋の日々を通して、護ってきたものを見て、まどか達が魔女に勝って生き残る覚悟を強く持てた心境を書きたかったのもあります。

 これからも最後まで見守っていいただけると幸いです。

 ご意見ご感想お待ちしております。


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魔法少女の役目が終わるのとアイドルの卒業は似ている

 さて、まどか達は銀時が万事屋として過ごしている日々を見たことで自分を奮い立たせ、キュゥべえのが構築した魔法少女システムの枠を超えることになりました。

 そして、今まで銀時と共に過ごし、背中を見たことでまどか達は大きく成長していると思います。

 それでは、ワルプルギスとの最終決戦、最高潮です。

 最後までお付き合いよろしくお願いします。


 まどか、杏子、さやか、マミは使い魔を掃討し続けていたころ、ほむらは銀時と共にワルプルギスに接近していた。

 

 ワルプルギスを追い越し、回り込めばほむら達の魔力を込めた木刀の範囲に届くからだ。

 

 「銀時」

 ほむらは魔道具の盾が変形した鞘に納めた『洞爺湖』を銀時に渡した。

 銀時は脇差を収めるような鞘に納められた木刀に触れると銀時の体に膨大な力が流れ込んだ。

 (この『洞爺湖』に込められたこいつらの魔力・・・・・・とんでもねえモンじゃねぇか)

 まどか達が込めた魔力に銀時の体がきしむような感覚に襲われた。

 

 しかし、銀時は木刀を手放さなかった。

 触れた時、まどか達の魔力だけでなく、魂も込められているのを感じた。

 

 「まるであの時みてーだな・・・・・・」

 頭によぎったのは、闇天丸に戦いを挑んだ時に、いつぞやの陰陽師家で銀時が振るった刀を彷彿とさせる。

 「テメーらの魂・・・・・・確かに預かったぜ・・・・・・!」

 銀時は鞘を腰に差し、まどか達が鍛え上げた『刀』を抜く準備をした。

 宙を浮かびこちらの様子を窺っているかのような魔女を真っ直ぐ見据えてーー。

 

 「舞台装置の魔女っつったか・・・・・・テメーの作った下らねェ脚本の舞台なんざ俺たちは踊るつもりはねーよ」

 

 かつて、自らの師が教えてくれた言葉を頭に思い浮かべながら、魔女に向かって言った。

 

 「明けねェ夜なんざ存在しねーんだ・・・・・・そろそろお天道さんの顔拝ませてもらうとしようじゃねーか」

 

 銀時の頭に嘗ての師、吉田松陽の声が聞こえた。

 

 それは、子供のころに教えてくれた言葉ーー。

 

 ――敵を斬るのではない、弱き己を斬るために。

 

 ――己を護るのではない、己の魂を護るために。

 

 「ウオオオオオオォォォォォォォォォォォォ!!」

 

 鞘から抜いた木刀は、刀と寸分違わぬ輝きを発していた。

 ただ、その輝きは鈍く光る銀色の刃独特のものではなくーー。

 

 まどか達のソウルジェムの輝きがまざった、銀色の輝きだった。

 

 持てる力のすべてを使い、最後の斬撃を放った。

 

 その途方もない力を秘めた一刀は、銀時の斬撃によって空を覆っていた厚い雲が切り払われ、隙間から太陽の輝きが零れ出し、吹きすさぶ嵐を止ませた。

 

 「これで・・・・・・シメーだァァァァァァァァァァァァァ!!」

 まどか達が鍛え上げた木刀に銀時が振るう一撃をワルプルギスに与えようとした。

 

 しかし、伝説の魔女はただ斬られるままでは無かったらしい。

 

 ワルプルギスは、浮遊する瓦礫を操り何重にも重ねていき壁にしたのだが、それでも銀時の斬撃を止めるには至らなかった。

 

 そして、ワルプルギスは炎の槍を飛ばし斬撃を受け止めた。

 

 ワルプルギスは本能的に銀時が振るっている刀の力に気付いたのかーー。

 力は拮抗していた。

 

 ほむらは、まどか達にテレパシーを送った。

 

 (みんな!! 私たちの魔力を木刀に・・・・・・!)

 

 ((((了解!))))

 

 ほむら達は体に装着されているソウルジェムを取り外し、魔力を送り込んだ。

 

 すると、黒く濁ったソウルジェムの輝きから銀色の光があふれ出した。

 ソウルジェムの輝きは、それぞれの色に、銀色の輝きが宿っていた。

 

 銀色を帯びた魔力を木刀に集中させていき木刀は、真剣さながらの輝きが宿った。

 

 六人が結束して生み出した一撃を魔女は炎の槍を砕かれ、躱すことなくその身に受けた。

 

 あの笑い声をあげる暇もなかったらしい。

 

 宙に浮かぶ魔女の身体は真っ二つに二分され、銀色の光があふれだすかのように爆発する様に輝きが増し、そしてーー。

 

 銀色の光は、見滝原だけでなく天空へとのびていった。

 

 ワルプルギスを切り裂いた途端、空を割るその銀色の光の帯は、やがて拡散し、見滝原を、世界を覆いつくしてーー。

 

 

 

 

                      ***

  

 

 

 ある国の地ーー。

 

 ある集落の片隅に、倒れ伏している少女が居た。

 

 その少女は、息絶え絶えと呼吸をしていた。

 

 「はあっはあっ・・・・・・」

 

 少女の左手には、黒く染まった卵上の宝石が手のひらにあった。

 

 その宝石、ソウルジェムには呪いが蓄積され、ヒビが入っていた。

 

 魔法少女として戦い、心に絶望が支配され、魔女が生まれそうになっていた。

 

 「・・・・・・っ!」

 

 少女は自分が魔女になることを悟って、瞳から涙が流れた。

 自分はもうすぐ、呪いを振りまく魔女(存在)へと変わってしまう事への恐怖、そして悲しみがあふれていた。

 

 そんな時だった。

 

 突如、呪いで満たされたソウルジェムから、銀色の輝きがあふれ出していた。

 

 少女は何が起こったのか分からず、自分のソウルジェムから出た銀色の光を見たーー。

 

 すると、この国とは違うかの地で自分と同じ魔法少女と、白髪の天然パーマの男と過ごしている映像(ヴィジョン)が見えた。

 

 少女は、その侍が自分と同じ魔法少女達と魔女との戦いに巻き込まれながらも、魔女に立ち向かっている光景に戸惑っていた。

 

 その男は、魔法少女を救うために、自分に契約を持ち掛けた存在をぶん投げ、魔女の顎に放り込み、戦った映像に、少女の涙が引っ込むほど唖然とした。

 

 その後、信じられない映像の連続だった。

 

 魔法少女ではない普通の人間の男と、魔法少女達との変なやり取り、バカバカしい日々ーー。

 

 魔女を生み出して命を落とした魔法少女を救うために諦めずに立ち上がり続けた姿にことばを失った。

 

 そして、魔女のグリーフシードがソウルジェムに戻り、魔法少女は息を吹き返したことに驚愕した。

 

 その後に、今まで以上に強大な魔女と戦っている孤軍奮闘の魔法少女のもとにその男は重傷にもかかわらず、その魔法少女のために駆けつけた姿に、少女の瞳にまた涙が流れた。

 

 それだけではなく、他の魔法少女達が天然パーマの男のもとに駆けつけ、立ち向かっている姿に少女の心に暖かいものがあふれていた。

 

 そして最後に、魔法少女達の間で語り継がれた魔女を、魔力の束で集めた木刀の一振りで倒されたーー。

 

 しかし、少女に訪れた奇跡はこれからだった。

 

 銀色の光は、少女のソウルジェムを包み込み、穢れと呪いで満たされた魂が、浄化されていった。

 

 次に起こったのは、銀色の光の柱が天に立ち昇り、そこからある人物たちが現れた。

 

 それは、ワルプルギスと戦っていた五人の魔法少女と、白髪の天然パーマの男だった。

 

 魔法少女達と男は、驚いてみている少女を見つけると、自分の状況を確認していた。

 

 『オメー、魔法少女か?』

 

 男は少女に尋ねた。

 

 少女は、外国の言葉が分からなかったが、意味は理解していた。

 

 男の言葉に、少女は頷いた。

 

 すると、男は魔法少女達と共に、少女の前に駆け寄った。

 

 魔法少女達は少女を取り囲むよう立ち、男は円の中心になっている少女の前に立っていた。

 すると、腰に差していた木刀を抜き、少女のソウルジェムに掲げた。

 

 魔法少女達は祈る様に、魔力を男が持っていた木刀に注ぎ込んだ。

 木刀から、銀色の光が流れこみ、ソウルジェムを包み込んだ。

 

 少女は、何が起こったのか分からずじまいだったが、直ぐに分かったーー。

 ソウルジェムは、宙に浮きあがり、仰向けになった少女の胸の前に止まり、ソウルジェムは光となって、少女の胸の中に吸い込まれるかのように体の中に入っていった。

 

 それだけでなく、銀色の光に包まれ、体の傷も癒えていっていることに、少女は驚いていた。

 

 まるで、体から病が取り除かれているような感覚だった。

 

 『これで、オメーは普通の人間だ』

 

 少女は自分が魔法少女ではなく、普通の人間に戻ったことに驚いていた。

 

 『オメーは、魔法少女として人を救って、ボロボロになって戦って、その分、人間の嫌な部分や、自分(てめー)自身の醜さを知っちまったわけだけどよ、人間だれしも難儀なモン抱えてるもんだ。 自分じゃどうしようもない事や、ずっと続くかと思った日常がいきなり壊れるなんてごまんとあらァ』

 

 男の言葉に、少女は聞くことしかできなかった。

 

 言っていることは分からなかった。

 

 しかし、思いは伝わっていた。

 

 『それでも、どんな世界だろうとよ、どんな場所だろうとよ、どんな境遇だろうとよ、太陽(おひさん)はあるんだぜ。 神様でもねェ、キュゥべえでもねェてめーの太陽(おひさん)がよ、 雲に隠れて見えなくなっちまうこともよくあるがよ、それでも空を見上げれてりゃ必ず雲の隙間から、面を出す時がやってくる、だからよォ、人間(俺達)も、魔法少女達(オメーら)もそいつを見失わねーように、空を仰ぎ見ることをやめちゃいけねーんだ』

 

 少女は、ただ自分を、いや・・・・・・。

 

 ・・・・・・魔法少女達を助けている訳ではないことをーー。

 

 『背筋しゃんとのばして、お天道様まっすぐ見て生きていかにゃならねーんだ』

 

 人間として生きていくために、前を向けるようにーー。

 

 そして、少女を包み込んだ銀色の光は、徐々に薄れるのと共に、魔法少女達と天然パーマの男は消えていった。

 

 それぞれの、微笑みを見せてーー。

 

 少女は、魔法少女と天然パーマの男が消えるまで見届けた後、空を見上げていた。

 

 魔法少女だった時は、空は青空なのに、ただの風景でしか感じられなかった。

 

 だけど、自分を、魔法少女達を救ってくれた男に言われた通りに空を見ると、空はまた違ったように見えた。

 

 そして、少女は決意する、助けてくれた魔法少女達(あの子たち)天然パーマの男(あの人)の様に空を見失わないように、生きていこうと。

 

 そう少女は、青空を見上げていた。

 

 少女を助けたのは、まどか、さやか、マミ、杏子、ほむらの五人の魔法少女と、天然パーマの男、銀時は、今助けた少女と同じように、過去、現代、未来の魔法少女を助けていた。

 

 そして、キュゥべえに願わざるを得なかった出来事を消滅させて、普通の人間として生きていくように時間軸と因果律を少しづつ変質させながらーー。

 

 歴史上、名を遺した魔法少女達はその結果を見て、希望が絶望に染まらず、呪いもまき散らさず、祟らず、人間として、最後まで生き抜いた結果へと変質していった。

 

 キュゥべえの干渉を必要とせず、人間自身で歴史を紡ぎ、未来へと歩んでいった世界へとーー。

 

 

 

                      ***  

 

 

 「テメーも、自分の人生って名の舞台で踊り続けな、自分(てめー)自身のためにな」 

 銀時は、真っ二つに断ち切られたワルプルギスにそう言葉を送った。

 ワルプルギスは不気味な笑い声をあげなかった。

 むしろ、穏やかな笑い声をこだまさせ、光の粒子となって消滅した。

 

 ーー今、この瞬間を持って。

 

 ーー決戦は終わったのだ。

 

 「・・・・・・・・・・・・・」

 

 銀時は消えゆくワルプルギスを見届けていた。

 

 その時、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

 「まさかそんな方法でワルプルギスの夜を倒せるとは思わなかったよ」

 キュゥべえだった。

 

 「個人的にはワルプルギスを倒せずに、まどか達全員が絶望して魔女化してくれたほうがよかったんだけど・・・・・・僕たちの『魔法少女システム』を破壊するだけでなく、僕たちが干渉し続けた歴史を君たち人類の力で切り開いた世界にするなんて、訳が分からないよ」

 

 キュゥべえは、まどか達が魔女化する際のエネルギーを期待していたような口ぶりでワルプルギスの戦いの結果を、キュゥべえ(インキュベーター)の『魔法少女システム』を破壊したことに困惑していた。 

 

 「失せろコノヤロー・・・・・・テメーの面なんざ見たかねーよ」

 銀時はキュゥべえの方に木刀の切っ先を突きつけた。

 

 「・・・・・・じゃあ、君の望み通り僕はこの場から立ち去ることにするよ、僕の目的である『エネルギー回収』の意味もなくなったからね・・・・・・それに今のではっきりしたよ、僕たちは君たち人類の『感情エネルギー』は利用するには危険すぎることがね」

 

 キュゥべえは、まどか達と銀時が行った世界と時間の干渉に驚愕していた。

 まどかの力の方が恐らく決めてであろうとは思っていた。

 まどかの因果律の集中は、ほむらの魔法に関係していたことに気付き、まどかの魔女化によるエネルギーを目論んでいた。

 

 事実、まどかのソウルジェムのエネルギーは祈りに比例して、ひとつの宇宙を作り出すに等しい希望が遂げられる、それはすなわちひとつの宇宙を終わらせるほどの絶望をもたらすことを意味していた。

 それから生じる、相転移のエネルギーを回収することで宇宙の寿命を延ばそうとしていたからだ。

 

 しかし、それはキュゥべえ(インキュベーター)に制御できるのかという疑問も生まれた。

 キュゥべえがそう思った理由が、銀時の存在だった。

 

 さやかを魔女から魔法少女に戻した力を解明すれば、無駄に魔法少女を増やさずに、魔女を魔法少女に戻せば、宇宙を延命し続ける事ができると踏んでいた。

 

 だが、その考えもワルプルギスの戦いの結果で考えが変わっていた。

 

 まどか達のソウルジェムが、穢れと呪いで満たされているのにグリーフシードに変化せず、穢れと呪いは浄化され、まどか達は魔法少女ではなく人間に戻ることによって、できなくなってしまった。

 

 その上、過去、現在、未来の魔法少女達の運命を変えたことによって、『魔法少女システム』は否定されていた。

 

 事実上、魔法少女の犠牲にせず宇宙の寿命は途方もないぐらいに伸びていた。

 

 つまりは、下手をすれば簡単に寿命を減らすことが出来ることなのだ。

 キュゥべえは途方もない結果をたたき出した目の前の銀時(存在)に危機を覚えたのだ。

 

 無縁の可能性と危険性を目の当たりにしたキュゥべえは、この宇宙からの撤退を視野に入れていた。

 

 「・・・・・・でもね、一つだけ言っておくよ」

 「・・・・・・?」

 ただ、キュゥべえは銀時が行なった改変に代償があると確信していた。

 

 「確かに君たちはワルプルギスの夜を倒してこの世界を救った、魔女という存在自体を消滅させた、それによって過去と未来の魔法少女達の運命を変えられたわけだけど・・・・・・」

 

 キュゥべえはそのまま銀時の方に顔を向けて告げた。

 

 「君たちの行なった改変がすべて正しかったと思うのは大きな間違いだ」

 

 「・・・・・・」

 

 それだけ言うと、キュゥべえはどこへともなく立ち去っていく。

 言葉の意味するところを問いただしてもよかったがそれはしなかった。

 多分、仮に契約したきっかけが消えたとしても、必ずどこかで起こるかもしれないという事も入っているのだろう。

 最も、銀時は訊かずとも大体の意味は分かっていたからだ。

 

 「せ、先生」

 すると、銀時の背後からまどかの声がした。

 「よう、気が付いたか」

 銀時は振り返ると、体を起き上がらせたまどかがいた。

 魔力の使いすぎで、まどか達は気を失っていたのだ。

 そのため、まどか達は魔法少女の姿ではなく、杏子の私服以外、制服の姿に戻っていた。

 「あれ・・・・・・私たち・・・・・・?」

 「魔力を使い過ぎて・・・・・・意識を失っていたみたいね・・・・・・」

 さやかとマミも後で気が付き起き上がっていた。

 

 「そんなことより、あの魔女は・・・・・・!」

 杏子は気が付いて早々、ワルプルギスの姿を捜していた、気を失っていた後どうなったのかが気がかりだったのだがーー。

 「ああ、何とかなったわ、うん」

 「いや・・・・・・あれだけ苦労させられて何とかなったわ、の一言かよ・・・・・・」

 銀時の言葉で、脱力気味で答える杏子。

 「つーかこれ銀さん英雄だよホント、王様から表彰とかされたりしねーの?」

 銀時は、ワルプルギスを倒した手柄の話をしていた。

 「あはは、それはないんじゃないかな・・・・・・」

 「ていうか全部自分の手柄みたいに言ってんなよ!」 

 まどかは苦笑い、杏子は怒りながらも苦言した。

 「ま、まあまあ・・・・・・」

 さやかは杏子を宥めた。

 

 「・・・・・・・・・・・・」

 そんな中、ほむらは銀時たちのやり取りを見ていた。

 何でもないような言い合い、くだらないことで笑いあう仲間たち。

 それは代えがたく尊いもので・・・・・・戦いの日々が終わりを迎えたことを、まどかを救う旅が終わった事を意味していた。

 

 「うっ・・・・・・うう・・・・・・」

 ほむらの目から零れ落ちた涙、それは決して悲しみのものでも、絶望のものでもなく・・・・・・。

 まぎれもない、喜びの涙だった。

 杏子はそんなほむらの姿を見て気付きーー。

 「ったく・・・・・・ボロボロ泣いてんじゃねーぞ」

 「私・・・・・・私はやっと・・・・・・!」

 杏子は茶化すように笑いながら、ほむらの涙を止めようとしたが、それは無理な話だった。

 「だから・・・・・・泣くなって言ってんだろ・・・・・・馬鹿・・・・・・・」

 ほむらの涙につられて杏子ももらい泣きしてしまった。

 「ほむらちゃん」

 

 すると、まどかがほむらに話しかけていた。

 「私ね、最初は全ての魔女を生まれる前に消し去りたい、すべての宇宙の過去と未来のすべての魔女を私自身の手で消そうって願おうとしたの」

 まどかの言葉に、ほむら達は言葉を失った。

 「鹿目さん・・・・・・その願いは」

 「はい、未来と過去とすべての時間で戦い続けるつもりでした」

 その言葉の意味をマミは悟った。

 「そうなればきっとあなたという存在は個体を保てなくなる、死ぬなんて生やさしいものじゃない、未来永劫に終わりなく魔女を滅ぼす概念としてこの宇宙に固定されてしまうわ」

 マミの説明に、ほむらと杏子とさやかは背筋を凍らせた。

 それはつまり、まどかの人生に終わりも始まりもないこの世界に生きた証もその記憶からもどこにも残さない概念に成り果て、誰にも認識されず、まどか本人も干渉できない存在になってしまうという事だった。

 

 しかしーー。

 

 「でも、私のママが、坂田先生とあっていたんです」

 「まどかのママが?」

 まどかがとんでもない願いの話をした途端、突如自分の母親の話をし始めたことに驚いた。

 「先生、ご両親いないんですよね、ママから聞きました」

 まどかの言葉に四人は驚愕し銀時の方を向いた。

 銀時に至ってはバツが悪そうな顔だった。

 「ママが言ってました。 両親がいるわたしが大事にしているつもりが、結局は気付いていなかったって、そして、その話で、今までのことを思い返せたんです」

 まどかは魔法少女のことを知ってから今日までに至るまでのことを思い返していた。

 

 銀時が魔法少女と出会ってからの日々、マミを救い、魔法少女の秘密を知りながらも人間として扱って、さやかを魔法少女に戻した時のことを、杏子が利害関係なく純粋に力を貸していた奇跡を起こしていった。

 それは、生きて足掻いた銀時の行いからだった。

 

 それは、絶対にあきらめずに立ち向かい、約束を護り抜き、希望をつなぐという事をーー。

 

 その意味を、考え直した結果。

 

 「だから、今までの願いを変えることができたんです。 そして、違う願いで魔法少女になって、坂田先生がワルプルギスの夜を斬った時に、光の帯に包まれた際に、ほむらちゃんの記憶が流れたんです」

 

 そう言ってまどかは、ほむらの方を向いた。

 

 「いくつもの時間でほむらちゃんが私のために頑張ってくれたこと、何もかも・・・・・・何度も泣いて傷だらけになりながら、それでも私のために・・・・・・ずっと気づけなくてごめん、ごめんね」

 その言葉で、ほむらは気付いた。

 「まどか、もしかして・・・・・・」

 

 「うん、ほむらちゃんの家で言っていた意味が、願いを変えたことで今の私になったから本当のあなたを知ることができた、私にはこんなにも大切な友達がいてくれたんだって・・・・・・」

 その言葉にほみらの涙はまたあふれていた。

 「だから嬉しいよ、ほむらちゃんありがとう、あなたはわたしの最高の友達だったんだね・・・・・・」

 そう言いながら、まどかはほむらを抱きしめた。

 「私を、助けようとしてくれて、ありがとう」

 その言葉を聞いて、ほむらは号泣した。

 「うううううううぅぅぅぅ」

 それにつられて、マミもさやかももらい泣きした。

 「・・・・・・・・・・・・・」

 その様子を静かに見守った銀時はこの空気を換えるように言った。

 「ま、とりあえずは世界の危機ってのも終わったみてーだし、ひとまずはよかったんじゃねーか」

 その言葉を聞いて、涙を流しながら微笑み銀時のほうに向く一同。

 

 「うん・・・・・・みんな先生のおかげだよね」

 喜びの涙を流しながらまどかはそう言った。

 

 「それじゃあ、避難所に帰ろう、みんな待ってる」

 「ああ・・・・・・そうだな・・・・・・」

 さやかの提案に全員が同意した。

 ただーー。

 

 ――一人を除いて。

 

 「じゃあな、てめーら」

 「・・・・・・え?」

 銀時の言葉に全員が耳を疑った。

 今一体何を言っているのか?

 そんな表情で、まどか達は銀時を見ていた。

 「な・・・・・・何を言っているの・・・・・・?」

 ほむらは銀時が何を言ってるのか分からなかった。

 「何って・・・・・・言葉そのままの意味に決まってんだろ、俺とお前らはここでお別れだ」

 「お、オイ・・・・・・それってどういう・・・・・・!」

 杏子は銀時に問い詰める様に近づこうとしたが、その意味を目の当たりにすることになる。

 

 「・・・・・・説明している時間もほとんど残ってねェらしいな」

 「せ、先生!?」

  

 目を疑う光景だった、目の前に銀時の足の先から光の様に消えていってることにーー。

 

  

 全員、一瞬頭の中が真っ白になっていたが、銀時が何者であるかを思い出すことになる。

 

 銀時がどこから来たのかをーー。

 

 ワルプルギスを倒した時、銀時の別れが近づいていることをーー。

 

 

  

 

 

 

 

  

 




 はい、今回はフィルムメモリーズ少々、エレファント速報とオリジナルをマシマシに添えました。

 ようやく、ここまで来ました、最後に銀時の別れが来ました。

 僕は、エレファント速報でのワルプルギスの夜の最後の決戦を自分の解釈で同架空の悩みなました。

 より分かりやすく、尚且つ納得のいく決戦の流れを悩みなした。

 その答えが、まどかの原作の願いとエレファント速報でのまどかの願いをどう引き立たせるのかという結果に注目して書きました。


 その流れで、他の魔法少女をどうやって救うのかをーー。

 ただ、救われて終わりでいいのかと思い書きました。

 人間は感情と思考が割り切れない生き物ですので、悩み、苦しみ、妬みなどいろいろありますので、魔法少女が戦った時と人間に戻った時はまた違ったように見えるかもしれません。

 それでは、次回は銀時とまどか達の別れの話を書かせてもらいます。

 最後まで、お付き合いいただいてありがとうございます。

 ご意見ご感想お待ちしております。

 


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中学生はいつの間にか大人の階段を駆け上がっている

 はい、前回でようやくワルプルギスの夜を倒して、世界と魔法少女を救い、宇宙の寿命をキュゥべえが把握できないくらいになりました。

 そして、銀時との別れの時がーー。

 それでは、銀時と魔法少女達の別れを・・・・・・。


 銀時の足元が光となって消えている事態に、まどか達は理解できなかった。

 

 

 「ぎ、銀時! これはいったいどういうこと!?」

 

 叫ぶかのような大声を出してほむらが銀時に問いかける。

 

 対する、銀時は至って冷静だった。

 「まどかが言ったのは・・・・・・『全員が過ごすはずだった平和な日々を取り戻す』ってことだっただろ? まあアレだよ・・・・・・・元々テメーらが過ごすはずだった世界には俺は存在しねェってわけだ」

 「!」

 銀時の言葉でほむらはハッと思い出した。

 (忘れていた、彼自身言っていた・・・・・異世界から来た人間であるということ)

 「まどかの願いが叶って魔女がいなくなったってんなら・・・・・・俺もこっから消えることになるんだろうよ」

 「そ・・・・・・そんな・・・・・・!」

 ほむらはまどかの祈りによって、魔法少女、魔女、願いのきっかけだけが消えると思っていた。

 しかし、それは異世界の人間である銀時の存在も消えることになる。

 そんなの、予測できなかった。

 「ちょっと待てよ・・・・・・それじゃアンタが消えちまうだけじゃない・・・・・・!」

 そして、杏子はハッとしてあることに気付いた。

 「アンタの存在自体がこの世界じゃありえなかったことになる・・・・・・ってことは、アタシらとこうして出会ったことも・・・・・・この世界で過ごした日々も、全部が無かったことになるじゃねぇか!」

 「そ、それって・・・・・・!」

 「先生のことも・・・・・・あたしたちは忘れちゃうってこと・・・・・・!?」

 杏子の看破に、まどかとさやかは驚愕した。

 

 「・・・・・・・・・・・・」

 

 キュゥべえの言っていた言葉・・・・・・それはつまり、こういうことだったのだ。

 

 マミを救い、さやかを魔女から魔法少女に戻すために戦った記憶も、馬鹿をやって騒いだことも、魂を預けてワルプルギスの夜と戦って、喜びを分かち合った今すらもーーすべてが無かったことになる。

 

 「ま、大したことじゃねぇだろ。 俺ァ元の世界に帰れればなんだっていいし、テメーらが気にすることじゃねぇ」

 銀時は笑いながらそう言ったが、ほむらは納得していなかった。

 

 「でも・・・・・・でもあなたは! 私たちのために命を懸けて戦って! 何度も何度も死にそうな目にあって! それなのに・・・・・・この世界の誰からも忘れられて・・・・・・あなたが世界を救ったこともなかったことにされて・・・・・・!」

 

 ほむらは涙を流しながら、たまらずに叫んだ。

 

 それは、幾度もわたって時をさかのぼってきたほむらだからこそわかる痛み。

 誰かから忘れられる痛みを誰よりも知っている彼女だからこそ分かる痛みだった。

 

 ほむらは、永遠に続く迷路を終わらせてくれた、自分の願いを叶え、護り抜き、救ってくれた侍のことを忘れるのは、あまりにも辛かった。

 

 「・・・・・・・・・・・・・・」

 泣きながらも叫ぶうほむらの姿を見ながら銀時は、頭を掻きながらーー。

 

 「俺ァ誰かの記憶に残りたくてこんな面倒くせーことやったわけじゃねェ・・・・・・」

 自らの身体が光となって消え行く中、銀時は目を閉じて口元で静かに笑った。

 

 「今回は目の前の大切なモンをこぼさずに掬い取れた・・・・・・俺ァそれで十分だ」

 「銀時・・・・・・!」

 銀時の言葉に、ほむらは言葉を詰まらせた。

 

 「でも・・・・・・こんな終わり方なんて・・・・・・こんな別れ方なんて・・・・・・!」

 さやかは涙を流しながら、銀時の別れを惜しんだ。

  

 「止めろ馬鹿、俺ァ湿っぽいのは好きじゃねェ・・・・・・なら、もうやるしかねーな」

 さやかの顔を見た銀時は空気を換えるために、深呼吸をしてーー。

 

 「全員並べェ! 出席を取るぞォォォォォ!」

 

 そう叫びながら宣言した。

 

 「!」

 「は・・・・・・はぁ・・・・・・?」

 「しゅ、出席・・・・・・?」

 

 まどか、杏子、さやか順で驚きながら、銀時の顔を見ていた。

 

 「アレだよ、こっちじゃ一応教師ってことになってるし? やる事はやっとかねーとな、めんどくせーからアイウエオ順にな、じゃあ最初・・・・・・暁美ほむらーー!」

 「は、はい・・・・・・?」

 

 突然の点呼にほむらは返事をした。

 

 「・・・・・・今までよくやったじゃねーか、中学のガキとは思えねーよ、ただ・・・・・・これからはてめーを作らねェで正直に生きな、泣きてぇ時に泣いて、笑いたきゃ笑え、いいな」

 

 銀時がほむらに送った言葉は、今までまどかを救うために戦い抜いて、諦めずに成し遂げたことを褒めつつも、自分の感情を殺さずに生きてほしいと願っての言葉だった。

 

 「・・・・・・そうね、検討してみ・・・・・・」

 ほむらはいつもの調子で受け答えしようとしたがーー。

 「それだそれ、もうそういう冷静キャラなの作らなくていいだろ?」

 銀時に指摘され口元を押さえたほむら。

 「・・・・・・フフ、確かにね」

 ほむらはその後微笑んでーー。

 「・・・・・・ありがとう、銀時先生」

 そう静かに、銀時に感謝の言葉を告げた。

 

 「じゃあ次は・・・・・・鹿目まどかー」

 「は、はい」

 次に呼ばれたのはまどかだった。

 まどかは緊張気味に返事をした。

 

 「悪かったな、最後の最後に契約させちまってよ」

 「ううん・・・・・・あれはわたしが自分で考えて決めたことだから・・・・・・!」

 銀時からの謝罪にまどかは首を横に振った。

 「お前に言いてェのはアレだな・・・・・・もう少し適当になれってことだな」

 「て、適当・・・・・・?」

 銀時に贈られた言葉に、まどかは困惑した。

 「何でもかんでも真面目に一人で背負いこみすぎなんだよお前は、たまには他人に迷惑かけてもいいんじゃねーか、お前には迷惑かけられるダチ公がたくさんいるだろ?」

 銀時から贈られた言葉を聞いて、まどかは周りの仲間を見ていた。

 ほむら、杏子、マミ、さやかの笑顔を見ながら、表情が柔らかくなっていた。

 「・・・・・・そうだね、わたし・・・・・・もっと気楽に生活してみるよ! ありがとうね、先生・・・・・・!」

 まどかは柔らかい表情で、銀時に感謝を告げた。

 

 「じゃあ次・・・・・・佐倉杏子ー」

 「あ、アタシはアンタの教え子ってわけじゃ・・・・・・」

 次に呼ばれた杏子は、少し照れながらそう言った。

 「とある母ちゃんが言ってたぞ、田舎じゃ誰かの家の母ちゃんはみんなの母ちゃんだ、みてーな?」

 「・・・・・・??」

 杏子はいきなり変な言葉を贈られ困惑したが、あることを思い出した。

 

 「それって、ホストのーー」

 「知ってんなら、話は早ぇな、とにかくはそういう事だ」

 杏子に贈られた言葉は、銀時の記憶で息子の顔を一目見たい理由で上京してきた『母親』のことを思い出していた。

 「いや、アンタの記憶を知らなきゃ意味わかんねーよ、でも、アタシがその『母ちゃん』みたいにはなれるとは限らねーぞ?」

 銀時に突っ込みながら、杏子はそう疑問をぶつけた。

 「少なくとも、利害だけで動いたわけじゃねーだろ? 何はともあれお疲れさんだったな・・・・・・さやかを元に戻せたのもお前が必死こいて戦ったからだしよ」

 銀時の感謝の言葉に、杏子はそっぽ向きながら照れた。

 

 「・・・・・・別に感謝されるようなことはしてねェよ馬鹿、調子狂うんだよ」

 杏子は少し悪態をつきながら照れていたままだった。

 「・・・・・・ありがとな、色々と」

 それが精いっぱいの銀時への感謝を告げた。

 

 「・・・・・・あ、言い忘れてたわ・・・・・・お前間違ってもチンピラになるんじゃねーぞ、椿平子とかそんな感じの」

 「いや、アンタの記憶を知らなきゃ分からねーこと言ってんじゃねーよ」

 銀時の言葉にそう反論交じりのツッコミを入れる杏子だった。

 

 「えー次は・・・・・・巴マミ(ノー〇ット)

 「どうしてあなたは巴マミと書いてノー〇ットと読むの・・・・・・? しかもまた殺虫剤っぽい名前よね?」

 銀時の点呼で、自分の名前に突っ込みを入れたマミ。

 「本気と書いてマジと読むのと同じ理屈です、ありがとうございました、はいじゃあ次―」

 対する銀時はマミをぞんざいに扱った。

 「終わり!? 私、まだ何の言葉も受け取ってなんだけれど!?」

 さすがのマミも、反論した。

 

 「心配すんな、一割冗談だから」

 「九割は本気ってことよね、それ」

 銀時の対応にげんなりの表情をするマミ。

 

 「冗談は置いといてだ・・・・・・えー・・・・・・」

 銀時は考え込む仕草をしていた。

 「・・・・・・・・・・・・?」

 マミは銀時に贈られる言葉を期待していたがーー。

 「・・・・・・特にないんでパス」

 「何で私だけそんな感じ!?」

 最後の最後で、ぞんざいな扱いを受けるマミ。

 しかしーー。

 「まあアレだ、お前の場合はもう少し汚れてもいいんじゃねーか?」

 最後の最後で、マミに言葉を送る銀時だった。

 「よ、汚れて・・・・・・?」

 銀時に贈られた言葉にマミは困惑した。

 

 「綺麗なやり方ばっかじゃ見えねえこともあんだろ、泥臭ェやり方でもいいじゃねーか。 どんなことでも最後までやり抜いてみな、そうすりゃ新しい道だって見えてくんだろ」

 マミは、自分の生き方が脳裏に過った、そしてーー。

 「諦めない心・・・・・・ね、先生・・・・・・ありがとう」

 マミは、銀時から受け取った言葉を胸に感謝を告げた。

 

 「最後・・・・・・美樹さやか―」

 「はい!」

 銀時の点呼に、さやかはハッキリと返事をした。

 「お前はいろいろ引っ掻き回きまわしやがって・・・・・・こっちの身にもなれってんだ」

 銀時の苦言に、さやかはたじたじになっていた。

 「ご、ごめん・・・・・・あの時のあたし、どうかしてて・・・・・・」

 さやかはバツが悪そうに、銀時に謝罪した。

 「あんだけのことがあったんだ、もう進んでいく方向を間違えはしねぇだろ」

 「え・・・・・・うん、多分」

 さやかは少し自信なさそうに、そう返事をした。

 「心配いらねぇよ、テメーはもう大切なモンを持ってる・・・・・・俺が保証してやらァ」

 銀時はそうさやかを励ました。

 「ありがと・・・・・・先生」

 さやかはそう、銀時に感謝の言葉を告げた。

 

 すると、銀時の体が光りながら半透明へとなっていた。

 「さて・・・・・・ともういよいよ時間がねーな・・・・・・」

 「・・・・・・行かないでよ、先生」

 さやかはたまらず、そうつぶやいた。

 「そればっかは無理だな、俺にもどうにもならねーしよ」

 「・・・・・・・・・・・・」

 銀時の言葉を聞いて、杏子も寂しさの表情が浮かんでいた。

 

 そんな中、銀時はまどか達に微笑みながら、最初で最後の教えを告げた。

 

 「テメーらが俺を忘れようがそれでつながりが切れるわけじゃねェ・・・・・・魂がつながってるなら・・・・・・俺とテメーらはずっとダチ公なんだからよ」

 そんな言葉に触発されてか、全員が銀時に言った。

 「・・・・・・あたし、絶対忘れないから! 先生のこと、絶対に!」

 「アタシも・・・・・・絶対に!」

 「また・・・・・・いつか必ず!」

 「必ずまた一緒に・・・・・・先生!」

 「・・・・・・これが永遠の別れだなんて言わせない、また会う日を楽しみに待ってるわ」

 さやか、杏子、マミ、まどか、ほむらと次々と再会の約束を銀時に告げた。

 

 「・・・・・・ああ、いつか・・・・・・な」

 

  

  

 

 ーーそして、次の瞬間

 

   

 

 ーー坂田銀時という名の存在は・・・・・・まどかたちの世界から完全に消え失せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 はい、前回のワルプルギスの夜との最終決戦後のまどか達の別れのシーンです。

 エレファント速報をベースにしております。
 
 銀時がまどか達に送った言葉が、『魔法少女システム』から解放された世界でどう生きていくのか、それは彼女次第だという事になります。

 ここからは私事になりますが、このシーンを書いているとき、エレファント速報の原作を読み返すうちに、涙が出ました。

 この小説を書いているときも、涙が出ました。

 さて、前回、まどマギ本編の話はこの章で終わりですが。

 次回は、銀八先生の説明と、エピローグを二話を掲載させてもらいます。

 ご意見、ご感想お待ちしております。


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特別編 プチ設定2
三年z組銀八先生特別編 in 見滝原2



 はい、前回では銀時と魔法少女達の別れの物語で本編は終わりました。

 その中での、結末に至るまで、まどか達が経験した銀時の過去がなぜ見えたのか、その謎を解き明かす会でございます。

 それでは、どうぞ。


 

 

 銀八は見滝原中学校の電子黒板の前に立っていた。

 「はーい、まどか☆マギカ交差伝 宇宙一馬鹿な侍で江戸から見知らぬ間に見滝原に転移してしまい魔法少女に関わった坂田銀八こと坂田銀時です」

 銀八はけだるげそうに自己紹介したあと、どこからかはがきを取り出した。

 

 「え~ペンネーム『ほむらちゃん報われて』さんからのお手紙です」

 銀八ははがきに贈られたペンネームを読み上げながら、裏面に記載された手紙の内容を読み上げた。

 

 「いつもまどか☆マギカ交差伝 宇宙一馬鹿な侍を読ませてもらっています、そこでワルプルギスの夜での最終局面に関しての疑問なんですが、何でまどか達は銀時の過去および、万事屋の日々を見たのでしょうか? 銀時のことを知るのは普通に言って、まどか達は自分の違う可能性(時間軸)を見ていたはずなのにという意見です」

 

 銀八は、『ワルプルギスの夜』との戦いでなぜ銀時の木刀に魔力を注ぐために行った『儀式』で起こった現象がなぜ起こったのかとペンネームの質問が送られていた。

 

 「えーその質問に関しては、前回このコーナーで銀時の存在が細かく説明されています。 その上で起こりうる影響の一つですね」

 

 銀八はどこからか取り出した設定資料の束を取り出した。

 

 「最初の特別編で紹介しての通り、銀時という存在が魔法少女達への影響のカギの一つはほむらの『時間逆行』を発動する際に使っている盾形の魔道具です」

 

 銀八は設定資料を目で追いながら読み続けた。

 その際、電子黒板が説明補足のための図が表示された。

 

 「原作ファンの皆様もご存じの通り、ほむらの固有魔法『時間逆行』の際に使われる盾はある意味ほむらの体の一部です。 同じ時間を繰り返しているのは分、ほむら自身の経験が蓄積されています、ですのでまどか以外魔法少女、さやか、マミ、杏子の時間が刻まれてもおかしくないとのことです」

 

 銀八は設定資料集を読み上げながら、事の発端の現象を説明した。

 その説明に続くように、電子黒板にまどマギの時間軸を表示した。

 

 表示されたのは、杏子、さやか、マミの様々な時間軸だった。

 

 「まず、この三人が絶望の際、魔女化した情報の把握が起こったのはほむらと接触したことがあるという点です。 何度もほむらは自分が知りえたことを自分が知っている魔法少女に話しますが、そこはその世界で生きている三人、ほむらの話を呑み込めないのは仕方ない部分があります。 ですのである意味この三人も因果の集約が起こったようなものです」

 

 銀時が設定資料を読み上げながら説明した。

 それに伴って、マミ、さやか、杏子が魔女化した経緯の説明が表示された。

 

 「いわば、ほむらの盾を通して、まどかと同じように因果の集約が起こった状況に限りなく近いという事です。 そして銀時の木刀に刻まれた記憶を見ることになったのは、まどかの願いにより手に入れた魔法の副産物です」

 

 電子黒板で表示されたのは銀時の木刀を収めたほむらの盾の形状だった。

 

 「まどかの願いで手に入れた『因果の集約と結束』とほむらの『時間逆行』が合わさった影響で、銀時の木刀に刻まれた記憶が繋がり、過去の映像を見た際に銀時という男を知りながら、銀時の繋がりを考えながら、まどか達の心が無自覚に鞘の形思い描いたというわけです」

 

 銀八は設定資料を読みながら鞘に変化したほむらの盾に関するページを読み上げた。

 

 「銀時の過去を見た影響でまどか達は魔法少女(自分自身)のあり方を見つめていき、銀時が抱えた後悔と悲しみの『攘夷戦争(過去)』の後で『万事屋()』の生き方と周りにいる様々な『腐れ縁』を見て、自分自身にはない生き方を知ることで変わっていったため、ソウルジェムにも変化が起こり、木刀に宿った魔力が収められている鞘の形を無意識に思い描いたわけです」

 

 銀時は設定資料のページをめくると目で追いながら読み進めた。

 

 「銀時の過去を見た際、まどか達のソウルジェムにも変化が起こりました」

 

 それに伴い、電子黒板でまどか達のソウルジェムの状態が写された。

 

 「これもやはり、銀時の過去を見た影響ですね、ソウルジェムが穢れていてもグリーフシードへの変化どころか、ヒビ一つ入っていないのは、銀時に助けられ、過ごし、背中を見てきた日々を魂に刻まれた際、まどか達の魂が強くなった影響とのこと。その際まどか達の魔力がそれに比例して、普段以上の威力へと変わったとのことです」

 

 電子黒板にまどか達のソウルジェムが銀色上に輝いている状態が移された。

 

 

 「銀時がワルプルギスの夜を一刀に屠った時、まどか達のソウルジェムが銀色に輝いたのは、穢れを乗り越えた証と言っても過言ではありません」

 

 続いて移されたのは、ワルプルギスの夜を一刀の際に現れた光の帯が映された。

 

 「ちなみに銀色の光が世界を包んだのは、ワルプルギスの夜が、『見滝原』に出現しているというのが最大の共通点ですね、ほむらが時間逆行で何度も挑んだという事が、ワルプルギスの夜という最もかかわりのある魔女なのが最大のカギと言っても過言でもありません、同じ時間軸を繰り返している為いわば爆弾の導火線のようなものとのことです、原作ファンでもご存じの通り、ワルプルギスの夜は魔法少女の間出方あり継がれている災厄の魔女、つまり同じ時間軸の見滝原が特別な因縁の地と言っても過言ではありません」

 

 銀時が設定資料を説明した後、次のページをめくった。

 

 次に電子黒板が映し出されたのは、銀色の光の帯が起こした影響だった。

 

 「ワルプルギスの夜は魔女の集合体の設定のため、木の年輪のごとくその時代につながっていると考えてもおかしくないため、魔力が集中された『洞爺湖』も持ち手の記憶が刻まれた木刀、その影響でワルプルギスの夜の存在した時間を触媒に過去と未来の魔法少女の時間に干渉、および変質が起こったとのこと、 その結果まどか達のソウルジェムと銀時の『洞爺湖』そして、ワルプルギスの夜が衝突した影響で、キュゥべえが感情エネルギーの危険性を認識して撤退を選んだわけです」

 

 そして、電子黒板に写されたのは銀時が光に包まれて消える場面だった。

 

 「その結果、キュゥべえの『魔法少女システム』が破城した代償として銀時はまどマギの世界から存在と時間が無かったことになります、要するに、まどか達の生存、魔女と魔法少女の救済がかなったために時間から消えてしまい、元の世界に戻るわけです」

 

 銀時は設定資料を読み終えた。

 

 それに伴い電子黒板の表示も消えていた。

 

 

 「これがワルプルギスの夜とまどか達の最終決戦の流れだ、ちなみにまどか達も元の人間に戻るため安心しな、以上」

 

 

 そう言い終えると、銀時のツッコミを入れた。

 

 「おい作者、これ小説じゃねェかァァァァァァァ! 電子黒板の説明なんて見えるわけねェのは前と同じだろーがァァァァァァ! 何べん同じ事やってんの!?  読者はなれっぞいつか!」

 

 

 といつものように、作者に突っ込みを入れた。

 

 前回と同じようにーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 いかがでしたでしょうか、ワルプルギス戦の結末の流れをできるだけわかりやすく書かせてもらいました。

 今まで、まどかマギカ交差伝 宇宙一馬鹿な侍にお付き合いいただいてありがとうございます。

 そして、最後にエピローグを二話書く予定ですので、もうしばらくお付き合いよろしく願いします。


 ご意見、ご感想、お待ちしております。


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エピローグ
エピローグ1 暁美ほむら


 はい、今回は魔法少女達のその後を書かせてもらいます。

 ようやく魔法少女の宿命から解き放たれたまどか達の日々を少し見て生きましょう。

 それでは、どうぞ。


 ワルプルギスの夜との戦いから一か月が過ぎた。

 

 見滝原市は、ワルプルギスとの戦いでかなりの被害が出ていたため、見滝原中学校はその間休校していた。

 

 ビルの瓦礫とか、道路の破壊の跡、爆発した場所があったため、見滝原市がそれぞれ対処していたため、学校どころではなかった。

 

 

 見滝原がワルプルギス(スーパーセル)の被害から復興まで、一か月の時を要したのはそのためだった。

 

 

 

                      ***

 

               

 

                   見滝原 通学路

 

 

 「ほむらちゃん! おはよう!」

 「まどか! おはよう!」

 

 背後から来たまどかの挨拶に、ほむらは明るい声で返事した。

 一か月明けの登校に少し会話が弾む二人の足取りは軽かった。

 

 すると、二人の前に見覚えのある後ろ姿があった。

 「あっさやかちゃんたちだ!」

 まどかが一緒に登校しているさやかと杏子そしてマミに駆け寄った。

 「よっ! まどかにほむらじゃん! 今日も仲がよさそうで・・・・・・妬けちゃうなー」

 「おはよう、二人とも」

 「しっかしいい天気だなー、あの白い雲とかのんびり浮かんでさぞかしいい気分だろうな」

 「もう杏子ちゃんったら」

 

 そんな四人のやり取りを見ていたほむらは、自分の左手を見ていた。

 

 指輪(ソウルジェム)がはめられていた中指を見ていた。

 

 (あの戦いから一か月、みんなのソウルジェムは私を含めて元の体の中に戻ったのは夢なんかじゃない)

 

 ほむらはワルプルギスの戦いが終わってから、今日まで平和を謳歌していた。

 

 (その証拠に、魔女とキュゥべえの姿は見えない、私たちは人間に戻れたのね)

 

 何度も、この光景が夢ではないかとほむらは何度も過ることがあった。

 

 でも確かに、自分も含め、まどかとさやか、杏子とマミはこの世界にいた。

 その四人も同じように、左中指にソウルジェムはなかった。

 

 あの時、全世界の魔法少女を人間に戻したのと同じように、ソウルジェム()は元の身体に戻ったという事に他ならなかった。

 

 本来、願いがかなった代償として、その分の絶望によってまどかは魔女になっているはずだった。

 それすらもないという事は、全世界の魔法少女はまどか自身も含め、人間に戻ったという事だった。

 

 それを現実にしたのは銀時がまどかの意識を変え、自分自身も生きることを放棄しなかったお陰だった。

 

 ーーしかし。

 

 

 (おそらく、みんなは銀時(あの人)のことを忘れていると思う・・・・・・)

 

 そう、ほむら以外、銀時のことを忘れていると考えていた。

 

 

 

 

                      ***

 

 

 

                一か月前      見滝原体育館 

 

 

 まどか達は、避難所の見滝原体育館に戻っていた。

 

 まどかの両親たちはてんやわんやの大騒ぎだった。

 

 当然、説教はされた。

 

 それからしばらく、三日間は避難所に待機していた。

 

 その間にほむらは早乙女を探していた。

 

 あることを確認するためだった。

 

 「あの、早乙女先生」

 体育館の階段で早乙女の姿を見つけたほむらはあることを確かめるために尋ねた。

 

 「何ですか? 暁美さん?」

 「あの、うちのクラスで、坂田銀八っていう教育実習に来た先生をご存じですか?」

 そう、ほむらはこの世界で『先生(銀八)』としての名前で銀時のことが記憶から消えているのかを確かめたかった。

 

 出来れば、覚えていてほしいと内心思っていた。

 

 だがーー。

 

 「あの、暁美さん、うちのクラスに坂田銀八っていう先生はいませんよ? というか教育実習の先生を入れる予定なんてありませんよ?」

 

 一瞬、ほむらの表情は固まったが、気をもちなおした。

 「すみません、勘違いしてしまって」

 ほむらは早乙女に不審がられずに、そう答えた。

 「暁美さん、三日後には自宅に戻れますが、無理はしないでくださいね、心臓の手術から三週間たったとはいえ体調には気を付けてくださいね」

 

 そう早乙女に言われて、ほむらは早乙女に礼を言って後にした。

 

 (やっぱり銀時のことは、みんな、いやこの世界から消えたのね)

 

 早乙女とのやり取りの後から三日後、ほむらは三叉路のアパートに戻り、自分の隣の部屋を確認した際

に、『坂田銀八』の名札はなかった。

 

 大家から話を聞いたところ、隣の部屋は誰も住んでいなかった。

 

 その夜、ほむらの頭にある記憶が書き加えられていた。

 

 魔法少女が居ない世界で過ごした記憶ーー。

 

 それが夢見と走馬灯が混ざったようにふと、思い出すかのような感覚で見ていた。

 

 魔法少女として出会ったマミとの出会いも違うものとなっていた。

 

 ーーマミとの出会いは、まどかと一緒に見滝原を歩いているときに両親と一緒に買い物をしていたマミと、紅茶の専門店で知り合っていたこと、一人暮らしは高校の受験を見据えて、家族会議で決めていたという事。

 

 

 魔女がきっかけとなった杏子とさやかの出会いも違ったものとなっていた。

 

 ーー二人はゲームセンターでダンスゲームを一緒に対戦していたことがきっかけで知り合いになっているらしい。

 

 ちなみに、杏子が見滝原中学校に登校していたのはさすがに驚いていた。

 

 ただそれでも、ほむらは魔法少女として戦った記憶と銀時のことを覚えていた。

 

 

                    ***

 

 

 ほむらは四人の会話を見ながら、銀時のことをなぜ覚えているのかを考えていた。

 

 (なぜ私だけが、魔女の記憶を持っているのか分からない・・・・・・時間逆行の能力を持っていたことが関係しているのだろうか?)

 

 ほむら自身、仮説を立てたのは、記憶があるのと他に自分の視力を魔力で矯正していたからだ。矯正が消えていないのは、証拠としてはまだ不十分だった。

 

 (・・・・・・もっとも、今はそんなことはどうでもいい)

 ほむらは魔法少女としての記憶は重大ではなかった。

 

 (そう、魔女の存在を忘れているという事は・・・・・・一緒に戦った銀時(あの人)のことを忘れているのだ)

 

 ほむらは、四人から銀時のことを聞くのが怖かった。

 

 銀時と過ごした日々がまどか達の中から消えていることを確かめるのをためらっていた。

 

 (仕方ないこととは思っていても、やはり心のどこかでは割り切ることができない)

 

 ほむらはそう思いにふけっている中ーー。

 

 「ほむらちゃん?」

 

 ふと、まどかがほむらを呼んでいた。

 

 「なに、まどか?」

 

 思いがけず、ほむらはまどか達の方に向いていた。

 

 「みんながさ、あの雲を見てのんびり浮かんで気持ちよさそうって話してて・・・・・・ほら、あそこ!」

 

 まどかはほむらに見せたかった雲を人差し指でさしていた。

 ほむらは、まどかがさしていた雲を見つけた。

 

 ――それはまるで、白髪の天然パーマのような雲だった。

 

 (銀時、あなたは元の世界に戻れたの? その世界であなたを待っている人に会えたの?)

 

 ほむらは銀時が元の世界に戻れたのかが気がかりだった。

 

 そんな時だった。

 

 「アタシさ、ああいう雲見てると・・・・・・思い出しちゃうんだよな」

 「!」

 「そうね、元気でやっているといいんだけれど・・・・・・」

 「大丈夫だって! またいつかひょこっと顔を出したりするんじゃない?」

 「・・・・・・!?」

 

 三人のやり取りにほむらは驚いていた。

 

 (まさか・・・・・・覚えている・・・・・・? 魔女たちのことを完全に忘れているんじゃ・・・・・・?)

 

 

 そう思いながらも、ほむらは四人に尋ねた。

 

 「みんな・・・・・・もしかして・・・・・・」

 「ほむらちゃん、それ以上は・・・・・・ね?」

 

 見れば、まどかは笑いながら口元に指を当てて、それ以上の言葉は言うべきではないとのしぐさをした。

 

 「ま・・・・・・まどか・・・・・・?」

 まどかの笑顔に少し戸惑ったほむらは言葉を失った。

 すると、周りを見渡すと、さやかと杏子、マミも微笑んでいた。

 

 その後に、空気を換えるかのようにーー。  

 

 「・・・・・・さあ、学校に行こう! みんなも遅刻しちゃうよ!」

 

 まどかは、四人にそう言って学校に向かうことを伝え駆け足で学校に向かった。

 

 「そうだな、遅刻したら早乙女先生に雷を落とされそうだしね」  

 「そうだった、早乙女先生のこと忘れてた」

 「私も早く学校に向かわなきゃ」

 

 三人は笑いながらも、まどかと共に駆け足で学校に向かった。

 「・・・・・・」

 四人の後ろ姿を見ながら、ほむらの口元が緩みーー。

 

 「フフ・・・・・・」

 

 笑いながら、銀時の言っていた言葉を思い出していた。

 

 

 『テメーらが俺を忘れようがそれでつながりが切れるわけじゃねェ・・・・・・魂でつながってるなら・・・・・・俺とテメーらはずっとダチ公なんだからよ』

 

 銀時の言葉が頭に過ったほむらは四人の後を追いながら、心の中で銀時に対して呟いた。

 

 (銀時、私たちは忘れないわ。 いつでも、どこでも、私たちのために戦ってくれていたあなたがいてくれたことを・・・・・・)

 

 四人の元に駆け寄りながら、ほむらは足を踏みしめていく、今度は自分自身の未来に進むためにーー。

 

 (私たちが生きている限り、私たちとあなたのつながりは・・・・・・永遠に途切れたりしないわ)

 

 ほむらは四人の元に追いついた後に、全員それぞれの歩幅でそれぞれの未来に歩んでいくように進む。

 

 (あなたのおかげ・・・・・・私は・・・・・・私たちは・・・・・・)

 

 そして、ほむらは心の中でーー。

 

 (だから、もう一度だけ言わせて?)

 

 ほむらは満面の笑みで、感謝の言葉を銀時に通じていると信じてーー。

 

 (ありがとう)

 

 そう、感謝の言葉を伝えた。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 はい、エレファント速報で、最後のシーンをオリジナル混ぜ混ぜで書かせてもらいました。

 まぁ、銀時の記憶がほむらだけという設定をそのままにしつつも、まどか達には無いかもしれない、っていう流れを書き戦ったのでーー。

 それに、まどか達が銀時のことを忘れていなかった流れを、そして、ほむらが笑いながら、仲間と未来を進んでいく流れにしたかったので、この文面になりました。

 それでは、プロローグ2 坂田銀時を乞うご期待。

 ご意見ご感想、お待ちしております。


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プロローグ2 坂田銀時

 はい、前回はまどマギサイドのエピローグでした。

 そして、銀魂サイドのエピローグをお楽しみに!

 


             万事屋銀ちゃん 寝室  

 

 

 

 ふと、銀時は天井を見上げていた。

 

 「・・・・・・・・・・・」

 

 その天井は久々に感じている感覚に見舞われていた。

 

 その時、けたたましい目覚まし時計が鳴っていた。

 そして、柄にもなくそのけたたましい目覚まし時計を静かに止めていた。

 いつもなら、ぶっ壊すような勢いで止めていたのに、柄にもなかった。

 

 するとふすまを開ける音がした。

 

 「銀さーん、ってあれ?」

 ふすまを開けたのは眼鏡をかけた少年、志村新八だった。

 新八は、怪訝な表情で銀時を見ていた。

 

 「めずらしいですね、銀さんが早起きなんて」

 新八のリアクションは銀時にとっても、正しい反応だった。

 

 「あぁ・・・・・・そうだな」

 銀時にとっても、どうして早く目覚めたのか、分からなかった。

 

 ただーー。

 

 「なあぱっつぁん、もしお前魔法が使えたらどうするよ?」

 ふと、新八にそう尋ねていた。

 「何ですか魔法って・・・・・・でも・・・・・・そうだな、多分最初はありきたりなことからやると思いますよ? 空を飛んだりとか」

 新八の平凡な答えに銀時はーー。

 「だったらアレだ、あと二十年後彼女作らねェでムラムラしながら過ごせば魔法使いになれるから、頑張れよ」

 そうぞんざいな言葉を新八に投げかけた。

 「しばき倒しますよアンタ」

 新八はそう銀時にキレ気味で突っ込んだ。

 

 

                 ***

 

 

 

 それからしばらくして、新八の幼馴染、タカチンこと高屋八兵衛が万事屋に尋ねてきていた。

 

 新八にあずかっていた、DVDーboxの隠し場所が見つかったため、取りに来ていた。

 

 「悪いな新ちゃん、DVD預けっぱなしにして」

 「タカチンも、僕の所も厳しいから隠し場所には気を付けてね」

 そう言って、タカチンは新八からDVDーboxを受け取った。

 

 そんな時、銀時はDVDの表紙に描かれているキャラクターに驚いていた。

 

 「オイ、その拍子に描かれている魔法少女・・・・・・」

 銀時のリアクションに、タカチンと新八は驚いていた。

 

 「ど、どうしたんすか?」

 「まどマギに興味があるんですか?」

 

 二人は銀時に対して、それぞれの質問をした。

 

 「誰が、魔法少女に興味あるっつった。 そんなことより、まどマギって何?」

 銀時ははぐらかしつつも、まどマギに関して質問していた。

 

 タカチンは銀時がどうしてそんな質問をしたのかは聞かなかった。

 新八も、どういうわけか聞きづらい空気を感じたのか、それ以上は聞かなかった。

 

 「じゃあ、まどマギに関してなんすけどーー」

 

 タカチンから聞いた、まどマギの物語は希望と絶望を繰り返す物語だった。

 

 ーー主人公の少女は、ある日自分が通う学校に転校生が来たところから始まったこと。

 

 ーー不思議な声に導かれ、魔法少女の世界に踏み込んだこと、転校生も魔法少女であったこと。

 

 ーー憧れた魔法少女が戦死したこと、その後で親友が魔法少女になったこと。

 

 ーーその魔法少女は、いずれ人間の敵に変わってしまう事や、転校生が主人公を救うために戦っていたこと。

 

 ーーそして、主人公は世界と魔法少女を救うために神となってしまい、転校生は主人公が作り替えた世界で戦い続けるという結末だった。

 

 銀時はまどマギの話の流れを聞き終えた後にーー。

 

 「おいおい、魔法少女思いっきりツミってんじゃん、東映世代や五歳児の少女が泣くぞ・・・・・・」

 

 そう感想を述べた。

 

 「なに言ってんですか銀さん、まどマギの話題なんてこの漫画の第三百六十一訓に出てますからね」

 

 そう言って、新八は銀時に漫画版銀魂を手渡した。

 

 ーーあ、ホントだ。

 

 内容を確認すると、確かにゴリラ原作者の回で『まどマギ』の単語が出ているコマがあった。

 

  

 そのコマを確認し終えたあとにーー。

 

 「悪りーな変なこと聞いてよ、あー甘いもん食いて―」

 

 そう言いながら銀時ははぐらかすように玄関に向かった。

 

 「あ、ちょっと銀さんどこに?」

 

 「甘いモン喰ってくる」

 

 新八にそう単発的に答えて、銀時は外に出た。

 

 

 

                  ***

 

 

 

 

 銀時は甘味処でパフェを食べ終えたと、かぶき町をふらついていた。

 

 不思議と、かぶき町から離れていた気分を感じていたため、ふらりと、コンビ二に立ち寄って、愛読書である週刊少年ジャンプを立ち読みしていた。

 

 この行為ですら、懐かしく感じていた。

 

 

 そう、銀時はまどマギの世界の記憶があったからだ。

 

 だが、もしそうなら、DVDの内要なんて変わっているはずだ。

 

 タカチンから聞いた限り、おそらくはーー。

 

 「まぁ、少なくともジャンプがない世界はこりごりだな」

 

 夢見気分での体験だと思いながら、そう言いながらふらついていた時だった。

 

 『ありがとう』

 

 銀時は後ろを振り返り、声の主を探した。

 

 確かに、聞き覚えのある少女の声がした。

 

 銀時はあたりを見渡しても声の主は見つからなかった。

 

 「何で、ほむらの声が・・・・・・」

 

 銀時は何故、ここにいないはずの少女(ほむら)の声が聞こえたのか分からなかった。

 

 ただ分かっていたのはーー。

 

 ほむらの声が明るく穏やかな声であったことは、たしかだった。

 

 そう悟って、銀時は万事屋へと帰っていった。

 

 少し、微笑みながら見えない明日へと向かって。

 

 それがたとえ、長い夜明け前の夜の時代だったとしてもーー。

 

 

                  ***

 

 

 

        まどか☆マギカ交差伝 宇宙一馬鹿な侍  終

 

                

 




 はい、まどか☆マギカ交差伝 宇宙一馬鹿な侍がようやく終わりました。

 皆様、銀魂とまどマギの三次コラボ小説にお付き合いいただきありがとうございました。

 最後の最後まで、エレファント速報に自己解釈で書いただけですが。

 出来るだけ、銀時とまどか達の長い日々を書けたと感じました。

 またいつか、銀魂とまどマギのコラボを書くならーー。

 なんて、考えていますが、いつかまたお会いしましょう。

 それでは、ご意見ご感想お待ちしております。


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