陰キャなんで恋愛なんてしません (*白湯*)
しおりを挟む

陰キャなんで

どうも白湯です。
暇なんで1日1筆心掛けるようにしました。
続くかどうかは私次第です。



夏休みも過ぎ、蒸せ返るような暑さも無くなり、肌に染みるような寒さが出てくる九月、日本一の絶景である富士山を横目で見ながら、窓辺の席で本を読みながらふと考える。

陰キャとは何だろうかと。

俗に言う陰キャとはクラスの中のイケてるグループではなく、クラスカーストでも下層に位置する人間のことを指す言葉である。

しかし、誰がそんなことを決めたのだろか。

スクールカースト?ここはインドじゃねぇぞ、カースト制はインドだけにしとけよ、日本は身分制度なんてないのになぜスクールカーストなんてものがあるのだろうか。

それに対するスクールカースト上位であるとされる陽キャはサッカー、バスケなどの有名な部活の奴らが大半を占めるものであり、クラスの中でも目立つ部類に入る自称エンジョイ勢である。

てか、アイツら教室いてもバカ騒ぎしてるだけで、五月蝿いし、やかましいし、たまにアイツらぶつかってくるし、ストレッサーであることは間違いない。

てか、サッカーやってるだけで陽キャなら俺だって昔サッカーやってたから陽キャなはずだろう。

危ない、危ない、愚痴なんてこぼし始めたら、許容量越えて拭いきれないほどに溢れてしまう。

しかし、おかしい、基準が全く分からない。

てか、なんであいつらの周りには女子が集まるの?

アイツら五月蝿いだけでしょ?なんでそんなんでモテるの?

え?明るいからって?そんなんでモテるならハゲてる人はモテモテじゃねぇかよ。

それなら、生物の高橋大人気じゃねぇか。でも、あいつ授業面白いから普通に人気あったわ。

まぁ、俺が陰キャと呼ばれる理由もおおかた理解出来る。

窓際の席で休み時間はひたすら読書、メガネに天パでボサボサの髪の毛、誰がどう見ても陰キャと言われて仕方がない。

ふと、気がつくと陽キャ軍団の方に目をやってしまっていた。

しょうもない特技だが、盗み聞きや意味もないのに周りの様子を見るのをバレないのだけは得意である。

今回も出来るだけ本を読みながら視界の端に陽キャ軍団の姿を捉えていた。

視線の先には陽キャ軍団の中から帰ろうとして扉の前に並んでいる一組の男女があった。

「なんだよ、お前ら仲良く帰んのかよ」

「うるせ、お前らと違ってリア充なんで満喫すんだよ」

「うわ、うっぜ」

「爆発しろよ」

「リア充滅びろ」

そんなような罵倒が二人に飛び交うが、二人は陽キャ軍団へ別れの挨拶を済ませて仲良く扉の向こうへ消えていく。

リア充。

この言葉にも俺は因縁がある。

というか、この言葉と陽キャの奴らにだ。

お前らリア充爆ぜろとか言ってるけど、お前らもリア充だろうが、お前らのリアルは充実してないのかよ。

なんでカップルだったらリア充なんだよ、その基準教えてくれよ、カップルでリア充なら恋愛ゲームで彼女いる俺もリア充か?

てか、そもそもリアルが充実してる奴らの事をリア充と呼ぶべきなのか?

この基準もよく分からない。

誰が設定したかもよく分からないこの陽キャ、陰キャ、リア充という概念を空気のように読みあって会話すること自体俺には面倒にしか感じれない。

結論を言おう、リア充爆ぜろ。

目の前でイチャつくな、会話をするな、てか、付き合うな、羨ましいだろうが。

彼らの夢や希望に満ち活力のみなぎる若き青年時代が人生の春だと、青春(あおはる)だというのなら、夢や希望もなく活力もない若い青年時代である俺は人生の冬、つまり青冬(あおふゆ)だろか。

なんだろう、とても冷たそうな感じがする。

だがしかし、割と一人であること、ぼっちも悪くは無い。

彼らのようによく分からない概念を読みながら会話することも無い、というか会話する機会がない。

俺から会話することなど、何か本当に用事がある時だけだ、あ、逆も然りだな。

特に用がないなら喋らない、これこそ自分の時間が充実した学生生活。

これを俺はソロ充とでも名付けよう。

うん、とても悲しくなってきた、もうぼっちでいいや。

悲しくなったので窓から見える富士を一目仰いでから、また手元の文字列に視線を落とす。

そう言えば放課後になってからかなりの時間が経っているな、読み始めた時からだいぶページ数が進んでいる。

気づくと、もう陽キャ軍団はいなくなっていた。

居残り勉強をしてる数人の姿をを見渡してから、教室の時計を確認するとそれなりの時間になっていた。

何か用事があった気がしたが思い出せない。

とりあえず場所を移そう、面倒くさいが鍵を借りに職員室にでも行くか。

基本置き勉だが、申し訳程度に机の中から今日提出だった課題を取り出し、カバンと共に立ち上がろうとした時、教室に電話のコール音が鳴り響いた。

もちろんスマホから鳴っているはずもなく、すぐに一番近い席の女子生徒がその電話に答えるために立ち上がり、黒板横の電話の所へと向かう。

一大事でもないのでそのままカバンの中に課題やらを詰め込むのを続行し、席を離れようとした瞬間、視界の端に靴が見えたことに気づきそちらの方に視線をやった。

すると、先程電話に出ていた女子生徒が何か用があるらしく、こちらに向かって来る。

一応、陰キャ、陰キャと腐るほど言っているが話しかけられて少し会話するぐらいはできる。

こんなんで動揺していたらそれこそ気持ち悪いし、基本受け身で答えるだけで会話など済む。

いや、これは会話などではない。

これは会話と呼ぶに至らない。

一種の合言葉、もしくは決まり文句、テンプレというに過ぎない。

この場をやり過ごす為だけに行うただの偽物(ペテン)だろう。

「天草くん、町田先生が職員室に来て欲しいって」

「えーと…了解です」

心当たりのない人からの呼び出しに思わず返答に詰まってしまったが、鍵を借りいくのにどうせ行くのだから問題は無いだろう。

急いでということを言わなかったのだ、ゆっくり行っても問題はないのだろう、ということでもう少し教室で休んでいこう。

そうして、静かにカバンから今日出す予定だった課題を取りだした




読み終えていただきありがとうございます。
感想などいただけましたら今後の励みになりますのでぜひよろしくお願いします。
Twitterの方で作品更新の連絡も行っていますのでよければフォローよろしくお願いいたします。
https://twitter.com/sayu_syousetu


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

未婚なんで

どうにか1日1筆2日目まで続いた白湯です。
この調子で明日まで進んでくれるといいんですが、まぁ三日坊主かどうかは明後日になればわかるので。
とりあえず2話です。



取り出した課題を開くと、そこには文字がびっしりと埋められたページが沢山出てくる。

最初から最後まで全てのページが埋められている。

そういや今日今までのツケを払う時だとか言われてたなぁ、どうしよう、忘れてた。

「忘れてましたぁ、てへっ」とでもおどけて誤魔化してみるか。

いや、そうするとすぐに個別指導室に連れてかれ腹パンをぶち込まれる。

素直に鍵を取り行くついでに説教だけされに行くか。

覚悟を決めて、席から再び立ち上がりカバンを背負った。

基本的にこの時間帯なら前を通って教室から出ていっても注目されることは無い。

これが日中の時間帯となると、教室の黒板付近には自称陽キャ軍団が沢山屯しており、通るのに一苦労する羽目になる。

そういう時は素直に移動用のスペースが開けられている教室の後ろから抜けていくのが最適であったのは中学生までだった。

中学生の時は後ろにカバンを入れ込むロッカーがあり、授業の準備をする邪魔になるためそこに人が屯することは無かった。

しかし、ロッカーが廊下になった高校ではそんなことに気を使うことも無く前後両方に障害が生まれてしまう。

したがって、高校では真ん中を静かに、机にぶつかることなく通り抜けていくことが最適解である。

廊下に出ると綺麗に静まり返っていて、とても心地が良かった。

この適度な静かさを感じながら、ゆっくりと足を階段の方へと進め始めた。

廊下というのも日中は騒がしいものになっているので、このような静かな時間がとても心地よく感じる。

普段とは違うというこの特別感に浸りながら、階段を一段ずつ下っていく。

その階段を一番下へと下っていくと別館へと向かう廊下と、職員室へと向かう廊下に別れている。

もちろん、職員室に向かうため左へと足を進める。

町田先生の机は奥の扉から入った方が近いため、奥の扉の前に向かう。

職員室というのは基本的に入る必要が無いため、中学の時と高校入学時は緊張するものだった。

だが、今となっては慣れすぎて自宅のように入ることが出来る。

最初の方は入ると先生たちもチラチラとこちらを見てくるが、何回も入っていると「なんだ、いつものか」的な視線に変わってきた。

まぁ、いちいち見られるというのも好きではないので、そのような対応になっていくというのはとても助かることである。

「失礼しまーす」

この一言さえ言っておけば、テスト期間でない限りは遠慮なく入室を許可される。

まぁ、誰も入っていいよなんて言ってくれないけど。

職員室に入ると適度に暖房が効いていて、眠気を誘ってくる。

なんで、先生たちこんな環境で寝ないで作業出来んの?

眠気をこらえ職員室の奥へと進んでいく。

奥には小柄な女性が足を組み、机を指で叩いてリズムをとっていた。

耳にイヤホンをかけているところを見ると、おおかた好きなアイドルの曲でも聞いているのだろう。

こちらがある程度近づくとこちらに気づいたようで、イヤホンを外し回転式の椅子を回し、体をこちらへと向ける。

「まっちー、お呼びですか?」

「まっちー言うな、これでも先生だぞ?」

「これでもって、それ自分で言います?」

まっちーこと町田千代子(まちだちよこ)

身長154cm、御歳27、独身。

見た目は本当に幼く、身長もあってか制服を着たら生徒と間違えてしまう程である。

「呼ばれた理由は分かっているな?」

「心当たりはあります」

「なぜ、君はそれですぐに来ないんだ…」

まっちーはこめかみ辺りを抑えながら、呆れるように下を向いた。

「いえ、心当たりがあると言いましたが、それに気づいたのは電話をされてからです。今日職員室に来いと言われていたのはすっかり忘れていました。」

「なぜ、そこまで清々しく言えるんだ…うぅ…頭痛がする…」

さすがに可哀想なので本題に入ってあげようと思ったところ、まっちーの机にあるカレンダーを見つけた。

そのカレンダーには今日のところに赤いペンで、とても綺麗な丸が付けられていた。

「なんですか?わざわざこの事メモして置いたんですか?」

視線をカレンダーに向けて、先生に尋ねてみた。

「あ、あぁこれか、いや、そういう訳では…」

そう言うと少し顔を赤らめて、指で自分の頬をぽりぽりとかじっていた。

なにか、自分の想像とは違っていたらしい。

なんだよ優しい先生かと思って尊敬しちゃったじゃん、なんだよやっぱまっちーじゃん。

自分で聞いた手前聞かないでおくのもあれだが、まっちーの場合聞かないでおいてあげるのが優しい選択だろう。

よし、聞かないでおこう、俺優しいから。

「君との約束をメモしていた訳ではなくだな?今日その…婚活パーティーがあってだな…」

あーあ、大抵は予想出来てたけど自分で言っちゃったよこの人。

「いやぁ…この前も婚活パーティーに行ったんだがな?」

また、始まったよ、この人の話聞いてるとめっちゃ可哀想になるからまじでやめて欲しい。

というか途中から絶対愚痴になる。

「ほら、私年下からモテるというか好まれるじゃん」

じゃん、じゃないよ知らないよ。絶対見た目的にタメだと思われてるだけだよ。

「途中までいい感じになるんだけど、途中から世代の違う話が始まってだな…」

ほら、やっぱり。この人絶対勘違いされてるだけだって。

「だから、私27なんだけど…っていうとさっきまでタメ口だった男がえっ、みたいな表情になってちょっと引いてから言うんだよ。お、お若いですねって」

やめて、もうやめたげてよ。ほんとに可哀想だから。

絶対その男タメだと思ってたけど実は自分より年上だったとい事実に絶対驚いてるよ。

ダメだよ男ならそこでときめかないと、この人年にデリケートなんだから。

「そんなに、そんなに私はダメか?」

そう言って上目遣いでこっちに問いかけてくる。

やめろよ、そういうこと。可愛いだろうがこんちくしょう。

なんで、あんたそんな歳なのに、そんな可愛いこと出来んの?

なんで、椅子で内股になって上目遣いするかな、そんなんしたら男もイチコロだろうが。

あ、そういえばこの人酒癖悪いんだった。

「い、いやダメじゃないっすよ、てか先生。そろそろ周りの先生方からの視線も辛いので本題に」

「あ、そうだった。君、ちゃんと課題は提出したのか?」

「いいえ?」

「はぁ、君のことだからそうだろうと思ったよ」

先程までの可愛い仕草などなかったかのように、また頭を抱えてしまう。

「いや、いつも言っている通り課題は終わってますよ?でも、終わってるなら出さなくていいじゃないですか」

「なぜそうなる…その確認のために課題は出すのだろう…」

「いや、僕そんないちいち確認してもらうために課題をやっていないので、提出する必要はないと判断しました」

「たしかに、君はそうだろうが周りに合わせてだな…」

「だってあいつら絶対に答えみてますよ?提出するために答えを写してるだけですよ?そんなんやる意味ないじゃないですか、俺はあいつらと同じになるのは嫌です」

「まぁ、たしかに課題の確認していてそんなのは分かっている」

「え?流れ作業じゃないんですか?」

「馬鹿を言え、ちゃんと最初のうちは答えがあってるか確認している。その内に答えは全て覚えてしまうがな」

「知らなかったです」

「そりゃ、君は一回も出していないからな」

やはり、この人は違う、と思ったがまぁ普通ならそうか。大抵の先生はやっている。

おそらく、新任やまだ若い先生はだ。

おそらくある程度働いている先生は数回はチェックするがしばらく経つと人柄で大丈夫かを判断するような気がする。

まぁこの年でそれをしっかりしているというのは、やはり尊敬出来ることだと思う。

「む。君今なにか失礼なことを考えていたな?まぁ、いい。どうせ、君のその口ぶりだ、全て終わっているのだろう?」

「ええ、もちろん。」

俺は問題の課題を先生に手渡した。

先生はそれを受け取ると、ページを開きしばらくかけて全てのページを確認した。

「やはりな、どうせ君のことだ配られた時に面倒だとか言って予習も含め全て終わらせてしまったのだろう?」

「流石ですね」

「半年も君の担任をしていれば分かるよ」

なによりタチが悪いのがこの人が俺の担任であることだ。

全てを理解されているというのは、何かしらの時に逃げ道がないということに等しいのだから。

「君がここに来たのはこれだけが理由じゃあるまい。鍵を借りに来たのだろう?」

そう言うと先生は自分の机の横にかけてある鍵を俺に渡してくれた。

「他のメンバーはどうした?」

「いつも通り部活に行ってから来ますよ」

「そうか、よろしく頼むぞ」

先生はそう言いながら俺の課題の最後のページに確認したというスタンプを押して俺の突き出してきた。

「これでもうこの課題は提出しなくていいぞ」

「どうも」

課題を受け取り頭を下げると、先生はうむと返事をして自分の机を向いて作業を始めた。

それを見て俺は先生の元を後にして出口に向かった。

俺はあの先生と関わりが多すぎる気がする。あの先生は俺の得意教科の担当教師であり、この鍵を借りた理由でもある生徒会の顧問でもある。

ここまで関わりを持つと俺まで不幸な気分になる、てかあの人どれだけ俺の担当なの?何、先生の推しは俺ですか?

てか、誰担とかそういうアイドルの担当戦争とかで誰担とか俺嫌いだわ。

とにかく、先生は早く誰かと結婚して幸せになってください。

これはガチでマジで割と早く。

職員室を出ようと扉に手をかけた所、後ろから「くしゅん」ととても可愛らしいくしゃみが聞こえたが、後ろに目があるわけでもなく誰かは分からなかったのでそのまま出ることにした。

全く誰か分からないけど、早く結婚してくださいよ。




読み終えていただきありがとうございます。
感想などいただけましたら今後の励みになりますのでぜひよろしくお願いします。
Twitterの方で作品更新の連絡も行っていますのでよければフォローよろしくお願いいたします。
https://twitter.com/sayu_syousetu


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

生徒会なんで1

とりあえず三日目ですがちょっと今日は少なかったので、この後にキャラ紹介投稿しておきます。
今日は添削してくれるはずだった奴に裏切られたので一応確認済みですが変なところはがあるかもしれないので先に謝っておきます
すいませんでした




職員室から廊下へと出ると、廊下には電気が付いていた。

恐らく話をしている間に日が暮れてしまったのだろう。

誰か鍵を借りてくるのを部屋の前で待っていては困るので、急いで生徒会室に向かうことにした。

生徒会室は二階の一番奥にある。

一番奥というのもあれだが、本来一組がある所に生徒会室は位置している。

三階、四階はその位置に一組があるのだが、なぜか二階には生徒会室になっている。

中央階段を昇り、生徒会室へと向かうと、幸いにもそこに人の姿はなかった。

安心して胸を撫で下ろし、手に持っていた鍵を鍵穴に差し込んで右に回した。

ガチャという扉の鍵が開く音が静かな廊下に響いた。

すると、タッタッタッという誰かの足音がこちらに近づいてきた。

「やぁやぁ、ご苦労さまだよ」

そう言って手を振りながら茶髪パーマの女子生徒が歩いてきた。

「先輩、行くのが早いです」

その女子生徒の後を追うように黒髪ボブの女子生徒が歩いてきた。

天草(あまくさ)くんこんにちは」

「あ、(てん)ちゃんこんちゃ」

茶髪の生徒の後ろから顔を出すようにして黒髪の生徒が挨拶をすると、それに次ぐように、というか思い出したように挨拶をしてきた。

「どうも」

一応、生徒会では挨拶は強制的なのがあった気がしたから挨拶は返しておく。

茶髪パーマの人は一応、次期生徒会長である

小笠原七海(おがさわらななみ)

先輩ではあるがなんかちゃらんぽらんな見た目で、というかこの見た目通りどこか抜けている。

というか俺が生徒会にいるのもこの人がいけない。

入学当初、特に部活に入る気もなかった俺は下校時間までひたすら本を読むという放課後を続けていた。

静かな教室で、誰にも邪魔されずに読む本というのは本当に良い。

まぁ、帰ってアニメやゲームを見たいのは山々なんだが。

すると、いきなり教室に入ってきたのがこの人だった。

「君、暇だよね?てか、暇じゃん。着いてきて」

そう言って俺の了承も得ずに生徒会に入れさせられた。

もう一人の黒髪ボブは黒岩花音(くろいわはなね)

同級生であり、次期生徒会副会長だ。

この生徒会には二年一人と一年二人しかいないため一年のどちらかが確定で副会長になる。

俺は前に出ることは出来ても、目立ちすぎるのは嫌いだ。

なので、優しい花音さんが代わってくれた。

はい、嘘です。ジャンケン負けたけど土下座してジュース奢ってどうにかして代わってもらいました。

とりあえず、彼女らを先に入れるために扉を開けて、二人に中に入るように促した。

それに応えるように二人は部屋の中へと入っていったので、俺もあとを追うように部屋に入り、扉を閉めた。

部屋の中には沢山の資料が置かれている机の群れが六つほど分けられていた。

昔は沢山人がいたために、これだけのスペースがあるらしいが今となっては学祭の時に準備委員を呼んだ時にしか使わない机だ。

普段生徒会は教室の奥のいちばんストーブが近い机を使っている。

その一角は六つの机が綺麗な長方形に並べられており、全員が座ると三対三で向き合う形になっている。

俺は窓際の一席、それ以外はいつもバラバラで決まってあの二人が隣合った席に座る。

俺は決まった席に座り、二人が俺の反対の席に座り、それぞれの準備を始める。

俺はカバンから筆箱、そして机の中から今までの資料をぶち込んであるファイルを取り出した。

「とりあえず五時になったら会議を始めようか」

七海先輩が時計を確認してそう言い、どこかに用があるようでベランダに出て行ってしまった。

特に準備は終わってしまっていたのでカバンから本を取り出し、時間を潰そうとページを開いた。

すると、反対側の席から何回か咳払いが聞こえた。

「あ、あの」

頬を赤らめ少し恥ずかしそうに黒岩が何かを言おうとして話し出した。

「あの」としか言われていないので何故話しかけてかも分からない。

「ん、何?」

「いや、特にはないのだけど」

「お、おう」

なんだよ、どういう事だよ気まずいじゃねぇかよ。

この雰囲気どうするよ。てか、七海先輩どこいったんだ、早く戻ってきてくれよ。なんで呼ばれたか気になってまともに本読めないだろうが。

 

 




読み終えていただきありがとうございます。
感想などいただけましたら今後の励みになりますのでぜひよろしくお願いします。
Twitterの方で作品更新の連絡も行っていますのでよければフォローよろしくお願いいたします。
https://twitter.com/sayu_syousetu


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

紹介なんで

言った通り「生徒会なんで1」が少し短かったのでキャラ紹介を載せておきます。
2キャラほどまだ登場していないキャラが登場していますが今後出てくる予定のキャラです。
「生徒会なんで2」はもう少し長めで投稿できるように努力します。
とりあえず、四日目まで行けるように頑張りたいと思います。



天草 佑汰(あまくさゆうた)

主人公。高一。メガネ髪ボッサの自称陰キャ。

基本的にうちに帰ってすることはゲームかアニメ。

平均睡眠時間は4時間も満たないが上手く埋め合わせをして授業中には寝ないようにしているらしい。

ここだけの話、オタク的趣味は学校では隠しておきたいらしく、ラノベは家だけで読むようにしているらしい。

だがカバンに入れてある学校用の本のカバーを外すとラノベが現れる。

 

黒岩 花音(くろいわはなね)

次期生徒会副会長。天草の同級生でクラスは違う。ぺったん。

天草に似たような事情で小笠原(おがさわら)に生徒会に半強制的に入れられたらしい。

生徒会の他にテニス部に入っているがこちらも小笠原に半強制的に入れられたらしい。

ここだけの話、小笠原と関わりすぎて自分の胸囲に少し(かなり)コンプレックスを抱いて何か努力を始めたらしい。

 

小笠原 七海(おがさわらななみ)

次期生徒会会長。天草と黒岩の先輩であり、何がとは言わないが大きい。

生徒会内唯一の二年生で、噂によるとどうやら頭はよろしくない模様。

天草と黒岩をほぼ強制的に生徒会に入れさせた。

ここだけの話、つい最近甘いものを食べすぎて体重計とにらめっこしてるらしい。悩んだ結果、結局は食べてしまうらしい。

 

町田 千代子(まちだちよこ)

天草の担任であり、生徒会顧問。独身。悲しいほどに独身。

先生としてはとても評判が良く、生徒からもかなりの人気の教師である。

御歳27歳にして独身なために親から「もう大丈夫だから…」ととても悲しい電話があったらしい。

ここだけの話、まだ諦めずに週二のペースで婚活パーティーに行っているらしい。本当に幸せになって欲しい…

 

新藤 大輝(しんどうだいき)

現生徒会会長。一応任期は終わっているのだが引き継ぎなどがまだ出来ておらずにまだ生徒会長となっている。

人数的な問題もあるので12月までは生徒会を手伝うらしい。

だが、最近は彼女で副会長である清水とイチャイチャしているらしい。

ここだけの話、天草と食事に行った時にトイレに行く振りをして二人分の会計を済ましてしまうというイケメンぶりらしい。

 

清水 友梨香(しみずゆりか)

現生徒会副会長。新藤と同じく人気は終わっているが引き継ぎなどによってまだ副会長で、新藤と一緒に12月まで生徒会を手伝うらしい。

新藤とはとても仲が良く「だいちゃん」と呼んでいる。

ここだけの話、新藤が自分のことを清水という苗字で呼ぶことに不満を抱いている。本人曰く「ゆりちゃん」とかが良いらしい。

 




読み終えていただきありがとうございます。
感想などいただけましたら今後の励みになりますのでぜひよろしくお願いします。
Twitterの方で作品更新の連絡も行っていますのでよければフォローよろしくお願いいたします。
https://twitter.com/sayu_syousetu


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

生徒会なんで2

前回挨拶を忘れてました白湯です
三日目坊主とならずにどうにか四日目まで到達しました
今日確認したら初めてのお気に入り登録がされていてとても嬉しかったです
このお気に入り登録を励みに毎日頑張って投稿していこうと思います
明日はもしかしたらニ本投稿するかもしれないです


しばらく気まずい時間を過ごした後、机の上をおそらく今回行う会議の資料がすーっと静かに移動してきた。

その資料を動かした主を見ると、とても恥ずかしそうに指で資料を押している黒岩の姿があった。

何、呼んだのって資料渡すためだったの?

どこまで恥ずかしがり屋なのこの子、何そんなに恥ずかしい?

それとも俺と話すのがそんなに嫌だったの?

とりあえず資料をスライドさせて自分の机の見やすい位置に置いた。

「これ、今回の?」

「目を通しておいて欲しいのだけれど」

なに、話しかけるのがそんなに苦手?さっき廊下で会った時は挨拶出来てたじゃん。

二人だとそんなに話しかけずらい?

というか話しかけるのだけ済んだらすらすら喋れるのね。

黒岩の不器用ぶりは学年でも有名ではある。

表に出る時、もしくは生徒会などの公的な会話は問題なく出来るのだが、これが1対1となると全くと言っていいほど会話ができない。

基本的に挨拶や誰かに話しかけられればすらすらといつもの口調で話すことは出来るのだが、これが話しかけようとするといつもの調子を狂わせてしまう。

俺も基本会話は受け身だが、流石に話しかけられないということはない。

一応だが、嫌っているサッカー部でも話をすることは出来る。

黒岩の会話下手は本人にとっても周りにとっても筋金入りの問題だろう。

しばらく資料に目を通しているとベランダの扉が開き七海先輩が戻ってきた。

「よーし、そろそろ始めようか」

その一声で全員が会議へと意識を切り替える。

「明日は科学部主催で行われる科学祭りのお手伝いです。基本的に資料にある通り受付とその他の雑務がお仕事です」

資料を見ると先輩の言う通り小中学生向けに科学部が行うという科学祭りの内容、そして、生徒会の仕事内容が書かれていた。

だが、その仕事内容を見ると振り分けられている仕事量が現状の生徒会の人数とは合わないものだった。

「あの、先輩。これ仕事量に対して生徒会の人数が足りないのですが」

俺の疑問は黒岩が代弁して先輩に聞いてくれた。

その質問に対して先輩は、ぽかーんと思考が停止したように黙ってしまったが数秒後にはっと何かを思い出したように質問の答えをくれた。

「あー、明日はね。(だい)ちゃん先輩とゆかつんが来てくれるよ」

「あー、なるほどです」

え?それってなるほどで済むの?

あの人たち受験生でしょ?てか今任期続いてるのかどうかの凄い曖昧な立場じゃん。

まぁ、生徒会の人数不足はこちらとしても懸念している問題ではあるが、先輩たちに手伝わせるのは良いのか?

「先輩たち受験は大丈夫なんすか?」

「あの人たちは大丈夫だからそこは気にしなくていいよ」

自分の思っていることを率直に先輩に聞いてみたが、なんか大丈夫らしい。

「とりあえず振り分けだけど受付は私と花ちゃんとゆかつんでやるとして、それ以外は大ちゃん先輩と天ちゃんに任せる感じで大丈夫かな?」

「問題無いですね」

「まぁ、やってくれるなら」

俺なんかが受付やったら小中学生すぐ帰っちゃうよ。

適材適所という言葉の通り人には向き不向きがあり、それに従うのもまた社会の摂理である。

だが、雑用というのは一見面倒くさそうに見えて全ての基礎となる素晴らしい役目なのだ。

皆が嫌だと思うことを進んですること、これが出来ることにより周りとのアドバンテージが生まれる。

これは自分でも誇って良い事だと思える。

というか皆がやりたがらないからやらされてるだけなんだけどな。

まぁ正直言って雑用がいないと何事も回らない気がするから本当に大事だとは思う。

そこからはほぼ確認だったので流れるように会議が進んで行った。

どうやら俺の役目は何回か分けて行われる電気パンとやらの抽選係らしい。

これに関しては今年からの試みらしく、前例がないので大変かもしれないと先輩に言われた。

何より問題だと思えるのがそれに関しての詳しい説明を受けていないことだ。

これは七海先輩が悪いのではなく科学部の担当の教師の連絡不足だろう。

大人なんだから報連相ぐらいちゃんとしろよ。

「天ちゃん大変かもだけど大ちゃん先輩と頑張ってくれたまえ」

「はぁ、最善は尽くします」

そんなに簡単に言わないでくれよ…まぁ文句は先生に言うとしよう。

「では、今日の会議は終了で。私電車の時間あるからお先に」

そう言うと七海先輩はすぐにカバンを背負って生徒会室から出て行ってしまった。

外を見るともう既に日も暮れて空には大きな月が昇っていた。

「お前もう帰る?」

「いいえ、まだ帰らないけど 」

「そうか」

特に意味もないが一応会話をしようと試みたが、これが悪手だった。

先程のこともあり、余計気まずい空気になってしまった。

とりあえず何かしなければと読みかけだった本を取り出して読み始めた。

確認するために黒岩の方を見ると、資料に何か書き込みを始めていて変に気を回していたのは自分だけなのだと気付き少しほっとした。

恐らくこちらに用は何も無いだろうと思い、ゆっくり視線を黒岩からページへと落とした。

それから本当に何も無く、ひたすらページを進めているとまた向かいの席から咳払いが聞こえてきた。

「あの、帰らない?」

「お、おう」

黒岩からいきなり出てきたとんでもなく曖昧な提案に対して、俺は中途半端な返答をしてしまった。

え?どういう事なのそれ。

え?待ってどう意味でそれを聞いたんだ?

あの、そろそろ帰らない?の意味で聞いたの?

それとも、あの一緒に帰らない?の意味で聞いたの?

え、わかんない。とてつもなく分からない。

俺が心の中で動揺していると、先に黒岩が帰る支度を初めてしまったの

でそれに合わせて俺も支度を始めた。

俺はあまり物をカバンから出していないためすぐに支度は終わったが、黒岩は資料やら何やらをしまっていて時間がかかっていた。

先程の疑問が晴れない以上どちらか分からないので、先に出ては行かずに待つことにした。

しばらくすると黒岩は支度を終えて扉の方へと向かったので、俺もそれの後をついて行った。

最後に出るなら鍵を閉めようと入る時に自分で置いた場所に向かったが、そこに鍵の姿が無かったので黒岩が取ってくれたのだとすぐに分かった。

何もしないのは悪いので出る時に部屋の電気を全て消してから出ると、俺が出て直ぐにカチャンと鍵を閉める音が聞こえたので、鍵をよこせと黒岩に対して手を差し出した。

鍵を閉め終えて振り返った黒岩は俺の差し出された手に対して何これ的な視線を浮かべて小首を傾げていた。

黒岩は少し考えた後に何を考えたのか鍵を持っていない方の手を俺の手の平の上にポンと乗せてきた。

え?何この子お手だと思ったの?んなわけないやん、よく考えてよ…

てか、なんだよこいつ可愛いかよ…

「いや、鍵を…」

俺がそう言うと顔が火でもついたように真っ赤になり、すぐさま反対の手にある鍵を手の平に置いてきた。

まじで、ほんとに気まずすぎるんだけど。

黒岩も恥ずかしさからか足早に生徒会室の前を後にしたので、その後を俺も一定の速度で追いかけた。

玄関まで降りると文化部と思われる生徒がちらほらと下駄箱で会話をしていた。

黒岩の後をつけていた俺は下駄箱に曲がらずに職員室に向かおうとする黒岩に帰っていいと言おうとしたところ、職員室から町田先生が帰りの支度を済ませて出てきた。

「天草と黒岩か、会議は終わったのか?」

「えぇ、今鍵を返しに来たところで」

「なら、私が貰っておこう。わざわざ職員室に入るのも面倒だろう?」

「まぁ、助かりますが、先生この後婚活パーティーでは?」

俺のその質問に対して先生の膝がガクンと落ちたような気がしたが、とても動揺した口調で先生は堂々とシラを切った。

「あ、天草は、な、何を言ってるんだ?」

「いや、ほら先生も忙しいですし生徒に甘えてくださいよ。先生の幸せは僕らの幸せですよ?遠慮なんてしないでッ…!?」

俺の言葉は最後まで言わせて貰えなかった、それもまっちーが俺の胸ぐらを掴んで耳元で囁いてきたせいだ。

「天草ァ、いいか?私は鍵を返すと言っているんだ、先生のいうこと聞けるよな?あとは余計なことを言わずにすぐさま帰れ分かったな?」

「ひゃ、ひゃい」

怖い、年増の女性怖い。

いいな、いいな、若いっていいな。

僕は帰ろ、お家へ帰ろと心の中で歌いながら急いで下駄箱へと向かった。

下駄箱に向かうと既に黒岩が靴を履き替えており、扉の前で待っていた。

待っていてくれたのなら申し訳ないので急いで靴を履き替えた。

俺が靴を履き替えて歩き出すと同時に黒岩も体を外へと向けて歩き出した。

二人ともこの市に住んでいるのだが、正門まで進むと家の方向が違うので曲がる方向も自動的に変わってくる。

秋の乾いた冷たい夜風が体に刺さるように吹き、俺は冷静になった。

そもそも一緒に帰るわけがないのだ。

俺と黒岩は生徒会であるという関係でしかなく、それ以上の関係性はないのだ。

ここまで一緒であっても正門からは家の方向が違う。そこから別れてしまうのだから、一緒と言ってもここまでと考えるのが普通だ。

俺と黒岩がそれ以上の関係である必要もなく、ましてやそこまでの関係でもないのだ。

黒岩が正門を右に曲がるのならば、俺は左に曲がり自分の家に帰るのが普通のこと。

そうだ、俺は普通に正門を左に曲がればいいのだ。

俺にとって恋愛などはもう無縁のことだ。

そんなことにわざわざ近づいていく必要も無いのだ。

玄関から正門まではわずか数百メートルしかない。

ないはずなのだがこの数百メートルが俺にはとてつもなく長く感じてしまった。

黒岩は正門まで行くと彼女の家がある右の方へと曲って行った。

ならば、俺はこのまま左へと曲がるだけだ。

俺は夜風による寒さを凌ぐために両手をブレザーのポケットに突っ込んで、足早に正門を出て左へと曲がって行った。

正門の右など確認はしない。

黒岩がどうしているかなど気にしてはいけない。

いや、気にしているのは何故だ。

とにかく自分の家へと帰ろう。

俺は陰キャなんだ。

周りとは違う、どうせ俺の名前を覚えている奴などいないのだから。

そもそも、陰キャなのだから恋愛などするわけがないだろう。




読み終えていただきありがとうございます。
感想などいただけましたら今後の励みになりますのでぜひよろしくお願いします。
Twitterの方で作品更新の連絡も行っていますのでよければフォローよろしくお願いいたします。
https://twitter.com/sayu_syousetu


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

口下手なんで

どうも白湯です
五日目まで至ることが出来て本当にほっとしてます
昨日確認したらまたお気に入りが1件増えていました
本当にありがとうございます
今回は幕間という形で一話投稿させてもらいます
宣言通り今日はこれを含めた二話投稿しようと思うのでよろしくお願いいたします


いつからだっただろうか。

私が進んで人と話をすることが無くなったのは。

忘れたいのは確かだが、人間嫌な記憶というのはそう簡単に忘れられるものでは無い。

いつからだと自分でどれほどとぼけた所で、心の中のどこかではそれがいつからかをはっきりと覚えている。

本当に人間の心というものの作りは嫌になる。

踏み込みすぎても咎められ、引きすぎていても咎められる。

「空気読めよ」と皆からそう言われた。

なぜ読む必要があるのだろうか。

会話というものは言葉と言葉を交えることだろう。

いつから会話というものが周りの雰囲気を作るための行為になっていたのか、私には到底理解が出来ない。

歳を重ねるに連れ、空気を読むという風潮は皆が出来て当然、出来て当たり前となっていた。

なぜ周りを気にした会話をするのが常識のようになっているだろう。

そう思う度に周りの人に話しかけるのを躊躇ってきた。

いや違う、空気というものに敏感になっていった。

いつか誰かに言われた、ほんの一言。

この一言が私に話しかけるということをずっと躊躇わせてきた。

だから、私は話しても問題ないところ。

そう言われずに済むところをずっと探していた。

そうだ、話さなければいけないことなら、話しかけても流れは、空気は自然なのだと私は気づいた。

だから、必要以上は人とは喋らず、必要以上は人から話しかけられないという私が出来た。

これでも、私は今の状態を気に入っている。

周りから口下手だ、不器用だと言われようと関係ない。

これが今の私だ。

自分の最善を尽くしている。

この状況が私にとっては限界なんだ。

だけど…生徒会の人達は違った。

会長たちは「前で話すことは出来るんだ、それだけで周りとは良い意味で違うんだよ。何も出来ないより、何かできる人の方が色んな意味で強いよ」と私は口下手なんかじゃないと励ましてくれた。

七海先輩は「えー、私と話せてるからいいよ。というか花ちゃんは難しいこと考えすぎ」と言ってこの半年近くずっと関わってくれている。

天草くんもあまり喋らないけど、彼は何か待っていてくれるような安心感がある。

多分、口には出さないけど何か他の人とは違うことを考えている気がする。

彼ともっと喋ってみたい。

彼が何を考えているのかが気になるけど、やはり私は口下手で彼と話すのはまだ難しい。

今日も資料を渡すだけで大変だったけど最後は自然に話しかけられた。

彼と一緒に帰ることが出来れば彼と話すことも出来る。

これは私にとっても大きな一歩だと思う。

階段を降りた時、町田先生と彼がとても仲良く話していてとても羨ましかった。

彼も普通に話すのだと分かって嬉しかった。

その反面何故か悲しかった。

とりあえず彼を待とうと彼の下駄箱の外で待っていたら、すぐにとぼとぼと疲れた様子で歩いてきた。

何があったかは分からないけど、多分彼はついて来てくれる。

私は彼を背にして、玄関を後にした。

正門を右に行けば私の家の方角だ。

彼の家は反対だけど、一緒に帰ろうと誘ったから来てくれるはず。

そんなことを思っているとすぐに正門に着いてしまった。

どうして玄関から正門まではこんなに短いのだろう。

彼が着いてくることを信じて私は正門を右に曲がった。

足音が遠のいていくのも気づかずに進んで行った。

なぜ、正門で待たなかったのか。

私は後になって自分の行いを後悔した。

9月の冷たい夜風が私に寂しさを運んでくる。

もっとはっきりと言えばよかった。

ちゃんと彼に伝えるべきだった。

彼は黙って全てを理解していると勝手に期待していた。

やはり、私には何も出来ないのかもしれない。

私は口下手なのだから。

 




読み終えていただきありがとうございます。
感想などいただけましたら今後の励みになりますのでぜひよろしくお願いします。
Twitterの方で作品更新の連絡も行っていますのでよければフォローよろしくお願いいたします。
https://twitter.com/sayu_syousetu


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

自宅なんで

どうも白湯です
本日二本目の投稿どうにか間に合いました
本当に急いで書いているので誤字、脱字や駄文が多いかもしれませんが自分で気付き次第修正していこうと思いますので先に言っておきます
すいまそんでした
これはわざと誤字っているので、あの、洒落って説明するとすごく寒くなるんですよね
はい。
前書きと茶番も長くなりましたがこの次の話では科学祭りへと入ろうと思いますのでこの話も最後まで読んでいただけると幸いです



黒岩と正門で別れた後、俺は学校のすぐ近くにあるアパートへと向かった。

一階には居酒屋、二階、三階がアパートとなっており、その二階の一番奥が俺の家だ。

俺の家と言っていいのかは分からないが、これがとても複雑なのだ。

高校入学前、ほぼ中学の卒業式が終わったぐらいの時に、俺の両親は離婚した。

母親は父親の酒癖の悪さに、父親は母親の男癖の悪さにそれぞれ嫌気がさして別れたらしい。

まぁ、どちらにせよ俺はどちらにも着いて行く意思は無かったため、密かに家出を決意したがそこを姉の弟であるおじさんに拾われた。

おじさんは一人暮らしで、お金に余裕はあるからと言って自分の家とは別にこのアパートを俺の為だけに借りてくれた。

それ以外にも学費や家賃など全てを請け負ってくれており、実の父親よりも父親のような存在だ。

本当は明日もおじさんからキャンプに行かないかと誘いがあったのだが、生徒会の仕事を理由に断ってしまった。

父親のように思っていることもあり、断ってしまったことは本当に申し訳なく思っている。

家の玄関に着き、鍵を開けようとドアノブに手をかけたところドアノブがくるりと一回転してドアが開いてしまった。

俺は家を出る時にちゃんと鍵をかけた。

ならば、犯人は一人しかいない。

玄関で靴を脱ぐと、そこには自分以外の靴が一つあり、居間の方を見ると何故かもう電気がついている。

もちろん、このアパートに人を感知して電気がつくなどというハイテクな機能はない。

居間の方へと行くと何故か人の家で勝手に鍋を作っている男がいた。

「お、遅かったじゃないか」

「なんで、また人の家で飯食ってんの」

「お前の分もあるからいいだろ?」

「まぁ…」

この男は橋本和英(はしもとかずひで)

俺の二つ年上であり、いつからか普通に俺の家にいるようになってしまった。

まぁ、たまたまゲーセンで会って知り合った仲なんだが。

同じ中学に通っていたこともあり、何かと関わることが多かった。

今は大学入試に向けて勉強をしているが、諸事情により俺の家を勉強場所にしている。

部屋を貸す代わりに食事と勉強の指導をしてくれている。

「とりあえず手洗ってこいよ」

橋本の指示通りに俺は台所で手を洗い、鍋が置かれたコタツに入ることにした。

「いやぁ、お前は一年中コタツ出しっぱなしだからこういう寒い時は助かるな」

俺は静かに橋本の言うことを無視して、鍋から自分の分を取り分けた。

温といコタツから動きたくない俺は、できるだけ手を伸ばしながら鍋を取り分けていたので、手が震えていた。

それを見た橋本は俺が持っていた取り皿とおたまを取って代わりに装いながら聞いた。

「何?明日生徒会?」

「そうだよ」

橋本が装い終わった取り皿を差し出してきたので、それを受け取りお礼も兼ねて質問に答えた。

「なんか、大変そうだな」

「えらい、他人事だな」

俺は橋本の作った丁度良い味付けの鍋を食べながら言った。

「まぁ、俺の事ではないからな」

「だから俺明日は家にいないぞ」

「それでも俺は明日もここを使わせてもらうからな」

「まぁ、いいけどさ」

そんなような会話をしていると、みるみるうちに鍋の中身は空になっていく。

「締めにラーメンでも作るか?」

「流石に食いきれない。勘弁してくれ」

「だよな」

そう言いながら橋本は鍋のスープを金メッキの鍋へと移し変えていた。

移し終えるとそれを冷蔵庫に入れて、またコタツへと戻ってきた。

俺は制服から着替えようとしたがコタツという最強の暖房に足を掴まれたように動けなくなってしまった。

「制服着替えないのか?」

「動きたくない」

「そうか」

コタツという人を堕落させる禁断のアイテムに加えて、腹八分目という丁度良い食事量が眠気を誘う。

コタツに伏せるようにして目を瞑ると、全身の力がすっと抜けるようにして、自分の意識がどこか遠い場所へ飛んでいく。

基本的に睡眠時間が短いこともあり、自分は起きていたくても身体に強制的に眠らされることが多々ある。

学校に行っていて授業中にそのようになることは自分としては避けたいことなのだ。

自分で勝手に夜更かしをして睡眠時間を削ったのだ。

そこに責任を持たずに、授業を睡眠時間に利用するのは俺の心情的に許せないことだ。

だから、休み時間や空いている時間はどれだけ短くても仮眠をとることにしている。

だがしかし、睡眠に適した環境が出来てしまうとこれは仮眠ではすまなくなってしまう。

仮眠という意識があろうと寝不足の身体は意識とは裏腹に睡眠を欲してしまう。

そうなると仮眠のつもりがいつもより深い眠りについてしまう。

気が付くとご飯を食べ終わった時間から6時間も経っていた。

変な体勢で寝たせいか肩やら首やらの節々が痛い。

コタツから起き上がると部屋の電気も消えており、反対側から静かな寝息が聞こえた。

流石に寝ている奴を起こすのは気が引けるので静かに居間を後にして自分の部屋へと移動をした。

自分の部屋に入ると、すぐにブレザーを脱いで椅子にかけた。

首がまだ痛むが背もたれをギシギシ鳴らしながら、だらーんとした格好をした。

今日は珍しく目が覚めない。

いつになっても全然意識が覚醒しない。

しばらくすると自分の意識に関係なく瞼が下がってくるようになってきて、このままだと気を抜いたらすぐ椅子の上で寝てしまう。

仕方が無いので制服のままベッドに飛び込み全身を預けた。

バスンとベッドのバネが軋む音と一緒に、ベッドに勢いよく倒れた反動が全身に響く。

全身の形に少し沈んだベッドに体が包まれ、今度こそ意識が持っていかれる。

何故だろうか。

こんなはっきりとしない消えていく意識の中で黒岩のことを思い出したのは。

俺の選択は間違っていなかったのか。

本当は曲がった後に黒岩が待っていたのではないか。

そんな疑念が頭にぽつりと浮かんではすぐにどこかへと消えていく。

一度浮かんだ疑念を少しでも晴らしたく、頭をフル回転させようとするが段々と意識が遠のいていきそれも叶わない。

こんな所で寝ている場合ではないのに。

最後に覚えているのはそんな覚悟のない口先だけの言葉だった。

 




読み終えていただきありがとうございます。
感想などいただけましたら今後の励みになりますのでぜひよろしくお願いします。
Twitterの方で作品更新の連絡も行っていますのでよければフォローよろしくお願いいたします。
https://twitter.com/sayu_syousetu


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

祭りなんで1

どうも白湯です
毎日投稿昨日で途切れてしまいましたがここからできるだけ沢山投稿しようも思うので許してください
ここから科学祭りが始まります


意識が覚醒すると窓からは心地が良い朝日が差し込んでいた。

時計を見ると今の時間は約8時。

そして、昨日言われた集合時間は8時だ。

やばい、完璧な遅刻だ。

幸いにも昨日は制服のまま寝てしまったので、このまま直行で行ける。

昨日脱いだブレザーを羽織って、洗面所へと向かった。

とりあえず急いで顔を洗い、化粧水を顔にぺちぺちと叩き込み気合いを入れた。

そして、つい最近便利だと思って買ったドライシャンプーというやつを手に取り頭を洗う。

身支度が終わったら、居間にあるカバンを取りに行く。

すると、既に起きていた橋本が勉強をしていた。

「何?寝坊?間に合うの?」

「うるせ、間に合うかどうかじゃなくて間に合わせるんだよ」

「そうか、気をつけてな」

俺がいつも朝食を取らないことを分かっている橋本は自分の分の朝食だけ準備していた。

気が利くんだか、なんなのか。

これは逆に図々しいのでは?と思いつつも急いでいるため、カバンだけをとり居間を出て行く。

玄関は橋本を信頼しているため鍵は閉めずに扉を開けると同時に駆け始めた。

走れば2〜3分程で着く距離にある学校で本当に助かった。

時計を確認するとまだギリギリ8時には回っておらず、全力疾走で集合場所である玄関へと向かった。

玄関に着くと既に生徒会の面々は集まっていた。

「お、久しぶりに見たと思ったら遅刻か?天草」

「お、お久しぶりです…会長」

俺は走ってきた反動で息を切らしながらも会長に答える。

この人は昨日七海先輩が言っていた大ちゃん先輩もとい進藤大輝(しんどうだいき)会長だ。

この人が一応、生徒会会長なのだが引き続きの関係で今は任期が終わってるのか分からなくて結局は手伝ってくれている。

「5分前行動は大事だよ?天草くん」

咎めるわけでもなく、諭すような優しい声で話しかけてきたのは生徒会副会長であり、会長の彼女であり、何故か七海先輩からゆかつんと呼ばれている清水友梨香(しみずゆりか)先輩だ。

どういう経緯でゆかつんとなったのかは分からない。

まぁ、察するに友梨香ちゃんとかから変わった様な感じだろう。

それにしてもそんな変貌する?

名前が友梨香じゃなくて友香だと勘違いされちゃいそうだけど。

「すいません…寝坊しました…」

「まぁ、そんぐらいならいいってことよ」

二人の後ろからにょきっと出てくる様に七海先輩が許しの一言をくれた。

「さて、とりあえず先生から説明聞こうか」

そう言うと七海先輩は近くで準備をしていたおそらく今回の代表だと思われる先生を呼びに行った。

七海先輩がその人を呼びに行くと何やら準備中らしく、七海先輩の呼びかけには聞く耳を持っていないようだった。

「なんか忙しいみたいだからもう少し待とうか…」

しかし、いくら経っても先生がこちらに来る様子はない。

その状況を見て痺れを切らしたのか、会長が今までの経験から指示を出し始めた。

「とりあえず女子組は受付の机の準備と今回来る予定の小中学生の名簿一覧を職員室で印刷してそれぞれバインダーに。天草は俺と駐車場の交通整理に行こう。時間を無視してくる保護者の方が居るからその方への注意と先生方の車の移動があるからその誘導を」

全員が静かに会長の指示に対して首を縦に振り行動に移した。

それにしてもあの先生の態度がどうにも気に食わない。

今回の電気パンの抽選のやり方の説明を未だに受けていないこともあるが、それより何よりこちらはあくまでボランティアという形でこの祭りの補助を行っている。

手伝う以上はそちらの情報を少しでも分けてもらわないと、こちらとしても動けるものも動けなくなってしまう。

現に今がそうだった。

半になったら教師たちの車の移動があるのは知らされていたことだが、それ以前に先生から今日の内容説明があるはずだった。

会長の指示がなければ今頃どうなっていただろうか。

どうもこちらが手伝うということを当たり前であり、内容も全て把握していて自分たちで動けるものだと思っている様だ。

そんなはずがないだろう。

なぜ生徒会をこの企画を知っている科学部と同じ扱いで大丈夫と思っているのか。

それならば生徒会が全てを知っている、科学部と同じであるという期待自体が間違っている。

先生であるなら尚更そこを理解すべきだ。

そもそも生徒会というのは生徒、先生の中間というとても面倒臭い位置にあるのだ。

時に生徒からのヘイトを買い、時に先生からもヘイトを買う。

この両殴りの位置にある以上、生徒会というのは情報を共有し、皆の共通認識に近いものを完璧に近い状態にするというのをぶっつけ本番でやっているのだ。

生徒会にとっては情報が一番の武器であり、一般生徒との差が生まれる唯一の点である。

今回この武器を与えられていない以上、俺は先輩を頼るか、自分で考えて行動するかしかない。

これには失敗するリスクが高い割合で含まれている。

そこをどうするかが今回の問題になっていく点だろう。

玄関から外に出ると駐車場には数台の車、ほとんどは教師の車なのだろう。

しかし、その内の数台を見てみると、本来ならありえない人が乗っている車がある。

おそらく、これが会長の言っていた時間を守らない保護者だろう。

「会長、なんでこんな早くに来る保護者がいるんでしょうか」

率直な疑問を過去の経験がある会長にぶつけてみた。

「まぁ今回は電気パンが抽選になったけど、これ以前は先着順で配ってたから早く来て電気パンを狙う人がいるんだよね」

「なるほどです」

「これまた問題なのが電気パンが抽選に変わったっていう連絡がされてない事なんだよな」

「え?まじですか?」

「まじまじ」

会長は悪戯な笑みを浮かべながらどこか落胆的に玄関の方を見ていた。

「大変なことにならなきゃいいんだけどね」

駐車場に止まっている保護者の車を見ながら会長がぼそっと呟いた。

会長…それフラグだから…

 




読み終えていただきありがとうございます。
感想などいただけましたら今後の励みになりますのでぜひよろしくお願いします。
Twitterの方で作品更新の連絡も行っていますのでよければフォローよろしくお願いいたします。
https://twitter.com/sayu_syousetu


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

祭りなんで2

どうも白湯です
スマホの画面割れてPCで作業してるので毎日投稿が難しい形になってきましたが出来るだけ毎日執筆はしようと頑張ってます
今回は前回の続きとなっていますので前回の話を見ていない方はそちらの方も見ていただけると幸いです


俺は会長と一緒に時間を守らない保護者の車に注意に行っていた。

駐車場には銀色の大型の車が止まっていた。

もちろん運転席には保護者と思われる女性の姿が見えるが、よく見ると後部座席には数人の子どもが乗っているのが見えた。

「かなり乗ってますね…」

まずったな…こんなに乗ってるとなると注意するのは気が引けるな…

保護者一人につき子ども一人ぐらいなら注意しても心は痛まないが、流石に保護者一人につきこんなに子どもがいるとなると…

別に子ども達が悪いわけではない。

悪いのは保護者であって子ども達に罪があるわけではないのだ。

それを一緒に注意するのはなんとも心が痛むのだ。

連帯責任。

この言葉、この行為は俺はどうも好きではない。

集団の一人の失敗、愚行がその集団の失敗、愚行とみなされる。

それに伴う、責任、然るべき制裁も全員が受けることになる。

これの特徴、狙いとしては一人の失敗、その責任を全員に受けさせることにより戦犯が誰かをハッキリさせ、外部からではなく内部からそれを正そうとするものだろう。

しかし、その行為自体には危険性を孕んでいるということを誰も理解していない。

例えば一人で責任を負う場合と連帯責任の場合では失敗した当人の失われる社会的信用度、その人が迫害された場合の規模は断然に違う。

連帯責任には失敗の規模の大小関係なく人の心を壊す仕組みが出来てしまっている。

まぁしかし、この場合そんな罪の意識が強い訳では無い子どもに注意をしても母親にそれほどダメージがいくこともないだろう。

それなのに子どもをガッカリさせてしまうのは裂けたいところではある。

俺がそんな葛藤をしていると横に立っていた会長が車に向かって歩いていった。

運転席側のドアに立ち、窓ガラスを軽くコンコンとノックすると窓が開き保護者と会話出来る状況になる。

「申し訳ないのですが今から教師の車の移動も含め、一度この駐車場を空にしたいのですがお車の移動をお願いしてもよろしいでしょうか?」

ドアを閉めたままだが会長のお願いに保護者と思われる女性が口を開いた。

「でもね…早く来ちゃったからね…どこかで待てればいいんだけどね…」

少し困ったように話しているが、意図的に早く来ているはずだ。

シラを切るにも程がある、とぼけ方がわざとらしい。

「もしでしたら、教師が移動する駐車場がそちらの別館の駐車場になりますので、よろしければそちらの方に空きの場所がありますから時間になるまでお待ちいただければ」

「でも…ちょっと車に酔っちゃってる子がいるから動きたくはないんだけど…」

だめだ、イライラしてきた。

嘘をつくなよ…見る限り後ろに乗ってる子どもたち全員元気だろうが。

こんなことで時間稼ぎをされても困る。

この後に教師の車移動の誘導やらこちらも準備があるんだ。

それにあの先生からの説明も受けていない。

やることが山積みでこんなとこで無駄な時間を食っていたくはない。

この保護者の狙いは会長の話から読むに電気パンのはずだ。

ならば言っても構わないはずだ。

どんな印象を受けようと、どんな顔をされようと、誰かしらが言わないとこの停滞した無駄な時間は終わらない。

「大変申し訳ないのですが、電気パンなら先着順じゃ有りませんよ?」

「は?」

先程まで穏やかな口調だった保護者の口からアホらしい声が出た。

「ですから、今回は先着順じゃなくて抽選になったんですよ」

「え?はい?」

「だから、早く来ても電気パンは貰えないですよ」

「え、それなら…」

「そうですよ。早く来ても無駄です」

俺は淡々と事実を女性に対して率直に述べた。

確かに女性の方としては先着順だと思って来ていたのである意味被害者の様に思えるが、そもそもの話この人は時間を守るというこちらが提示したルールを破っている。

どちらかと言ったらこっちがその被害者だ。

そこは勘違いしないで欲しいところではある。

少し苦々しい表情をした会長が一度こちらを見たが、すぐに保護者の方の方へと顔を向けてしまった。

「申し訳なないのですが。この様な事情でしてお車の移動をお願いしたいのですがよろしいでしょうか?」

ここまでの状況になっては諦めない訳にはいかないだろう。

これで諦めて移動してくれるとこちらの方でも助かるのだが。

「分かりました…移動しましょう」

良かったこれでこの無意味な時間が終わるなら他のことに手が回せるようになる。

「なら抽選を当たりやすくしてくれるのかしら?」

「はい?」

女性の口から出てきたとんでもない発言に流石に会長も俺も度肝を抜かれた。

いや、それはおかしいだろ。

そもそも子の人は根本的な約束を守ることが出来ていない。

何故、その状況でその様な提案をできるのだろうか。

どうにも理解ができない。

「えーと…それには対応致しかねます…」

「何故かしら?こちらはここまで待っていたのだけれど」

女性のこの発言には流石に会長も言葉を返せなくなってしまう。

そもそもこちらが配布しいている紙には9時以前の駐車場への駐車は控えるようにと注意書きがされている。

「どうして?こちらはそちらの不手際でこちらは待たされているのだけれど」

女性の発言に対して流石に俺も耐えきれなくなり少し尖った口調で返してしまった。

「だからそもそもこちらとしては9時以前の駐車をお控え願ってるんですよ。それも守れてないのによくそんなことが言えますね」

こちらとしてはそんなに強い口調で言ったつもりは無かったのだが、後部座席を見ると子どもたちが驚いた顔でこちらを見ていた。

君たちを怒ったつもりは無かったんだけど…

「だとしてもこちらはそんな情報を教えられてないのだけれど?」

「それは…こちらとしても同じ状況です。その情報を聞いたのも当日になってです」

「それは…そちらの連絡不足ではなくて?」

そこを突かれると何とも言えない。

確かにその通りだ。

その通りなのだが、そもそも論なのだ。

そもそもこの女性はルールを守るという最低限のことが出来ていない。

確かにそちらも聞いていた状況と違って文句を言いたいだろうが、その点に置いて被害者面をしていい身分では無いのだ。

これに関しては本当に返答に困ってしまう。

どうすればいい…どこかにこれを解決する糸口があれば良いのだが。

やはりどうしても情報不足が否めない。

「あれ?まだ車の移動始めてないの?」

会長と俺の後方から聞き覚えのない声が聞こえた。

誰か分からないので会長も俺もその声の主の方へと顔を向けると、そこには先程俺らに話をするはずだった先生が立っていた。

「もしかして先生でしょうか?生徒さんじゃお話にならなくて…」

迷惑そうに俺を見ながら女性が先生へと文句を垂らした。

「あ、本当ですか。生徒会でしょ?こんなんも出来なきゃ困るよ〜」

なんだろう…この先生の話し方…すごいイライラする。

そもそもアンタがこちらに何も説明しなかったこと、資料の不備が原因でこうなってんだろうが。

なんでこっちに文句を言うんだ。

何が困るよだ、困ってるのはこっちだ。

「でどうされました?」

「いやね…私は電気パンが先着順だと思って早く来ていたのだけど…今聞かされた話だと抽選に変わったっていうじゃないですか。そんなの私は聞いていないし子どもたちもこんなに待っていたのに可哀想だと思って…この子達に抽選を当たりやすくして欲しいと頼んだんですけれども…どうもこの子達自分達の失敗を認めたくないようで…」

「あ、そうでしたか。うちの生徒が本当に申し訳ありません。また、抽選の時にご申し付け下さりましたらこちらの方で対応させていただきますので」

「あら、本当ですか?それは良かった…では車の方を移動しないと」

「あ、お車の方もこちらに停めていて結構ですよ。お時間になったらこちらから出てきていただければ」

「あら、ではここで待たせてもらいますね」

そう言って女性は窓ガラスをスライドさせて閉めてしまった。

こうやって先生の都合で好きに振り回されるのは好きではない。

だが、生徒会というのは立ち位置的にもこれが避けられない。

なんとも難儀な役柄だ。

 

 




読み終えていただきありがとうございます。
感想などいただけましたら今後の励みになりますのでぜひよろしくお願いします。
Twitterの方で作品更新の連絡も行っていますのでよければフォローよろしくお願いいたします。
https://twitter.com/sayu_syousetu


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

祭りなんで3

どうも、お久しぶりの白湯です
久しぶりの投稿となりましたが、はい。
課題に追われてます。
志村けんさんの訃報にもかなりのショックを受けました。
まじで惜しい人を無くしたな…
皆さんもコロナだけは気をつけてください。
課題と共に頑張って投稿しようと思います。


静まり返った駐車場で代表の先生は俺と会長に説教を始めた。

「こっちは忙しいんだからあれぐらい対応してくれないと困るよ〜」

先程の一件に関してはこちらに非は全く無いはずだ。

どこにも怒られるいわれはない。

というかその言い方をやめて欲しい。

理由は単にウザイ。

その説教に対して会長がごく当たり前の反論を始めた。

「確かに僕らの対応が遅かったかもしれません。しかし、あの保護者の方は参加応募用紙にある注意書きの九時以前の駐車のお断りを破っています。それは僕らの対応の遅さのお詫びで許されるようなものでは無いと思うのですが」

「けどさ…そこは…しょうがないよね…」

「対応の遅さに関してですが、僕は聞いただけなので細かいこともそちらの事情も把握はしていませんが先生は生徒会への前日説明をされなかったそうですね。詳しいことを知らされていない新入生に対してそれで大丈夫だと思っていたのですか?」

「そこは君の仕事だよね?」

「はい?」

先生のその一言に会長は少し苛立った様子で疑問の声を上げた。

確かに今日は会長が居たから助かった面もある。

だがしかし、会長はほぼ任期が終了している身であり、本来ならばこの手伝いもいなかったのだ。

つまり、こればかりは会長の仕事だとは言えない。

なにより、問題なのはそこでは無い…おそらく会長もそこに対して疑問を持っているのだろう。

「確かに過去のことなら僕は教えることが出来ます。けど、今回は電気パンを先着順から抽選に変えたそうじゃないですか。その説明を僕がしろと先生は仰ってるんですか?」

「そこは…生徒会なんだからさ…」

「申し訳ないんですが生徒会は何でも屋ではないんですよ。情報を教えられなくても何でもできるなんて言うのを期待しているのならうちはこの仕事を次から断らせて貰うように町田先生に話を通しておきます」

会長のその言葉を聞くと流石に先生も困ったようで何も言わずに玄関へと身体の向きを変えて準備に戻って行った。

駐車場に残された会長と俺はしばらくの間何も喋らずにその場に立っていた。

何も無い空白の時間が過ぎていき、気づくと車を移動する為に出てきた先生方がちらほらと見え始めた。

すると会長が誘導をする為に移動を始めたので、俺も自分の仕事をするために場所を移した。

先生方の移動は別館の駐車場に移動するだけなので、駐車場で会長が誘導、正門を出てから別館までの道を俺が誘導するという形で行われた。

なので会長と話すことも無く移動の誘導は終わってしまった。

誘導を終えて校舎の方に戻ろうと身体の向きを変えると正門の前に会長が立っていた。

会長は穏やかな顔でこちらに手招きしており、俺も足早に正門へと向かった。

会長の所へ着くと会長は校舎の方へと向きを変えて歩き出したので、俺はその後を追うように着いて行った。

ここまで会話がないと気まずくなってくるのも当たり前だろう。

このまま喋らずに玄関に行ってしまっても良かったのだが、先程の時に俺がでしゃばってしまったことに対して申し訳ない気持ちがあったのでとりあえず謝るだけはすることにした。

「さっきはすいませんでした。その、でしゃばって迷惑かけたっていうか、余計なことしたかなって…」

「いや、そうでもないさ。確かにあの時は俺もイライラしてたけど、天草の判断は間違ってないよ」

その声はとても穏やかで、全てを言い終わったあとにこちらに向けた爽やかな笑みは本当にイケメンだった。

だが、すぐに落胆したような表情に変わって立ち止まった。

「大変な仕事柄なのは承知だけどさ…明らかにあれは教師の仕事だし…俺らもなんでも出来る訳ではないしさ。ああいう風に先生の都合で振り回されんのはな…」

「会長…あの…」

「まぁ、臨機応変に対応すんのが大事ってことだ。戻ろうか」

「…はい」

確かに会長の言う通りだ。

生徒会は生徒でもあるが、一般生徒とは違って教師と同じような仕事をしなければいけない。

生徒と教師の間というこの微妙な立ち位置というのが、時に特権にも凶器にもなりうるのだ。

それ故にほんの少しの準備不足、情報不足が命取りになりかねない。

今回はあの先生の連絡不足が命取りになった。

それに加えてあの先生の勝手な判断にも納得はいかない。

本当に今回はあの先生に振り回されていると思う。

玄関に戻ると会長と俺以外の生徒会メンバーが全員集まってあの先生の話を聞いていた。

「君たち遅いよ…早く入って入って」

こっちは仕事してたんだが?

しかも遅くなったのはあんたのせいでもあるだろ。

色々積もった不満を堪えながらも二人は謝罪をしながらその輪の中へと入った。

「僕は今回の祭りの代表やらせてもらってる成嶋(なるしま)です。今日君たちにお手伝いしてもらうのは受付とくじ引きだね。それ以外は今回の祭りを楽しんでもらって構わないから」

「くじ引きというのは抽選のことですか?」

聞きなれない言葉を使われたので推測で頭に浮かんだ物と同じかを確かめると、成嶋は雑に答えた。

「そうそう」

だから、その内容の説明がないとこっちも動けないんだよ。

少し苛立ちながらもそれを抑えて内容を聞くためにまた口を開いた。

「と言ってもどういう風にやれば…」

「そこは…生徒会にお任せしちゃおうかな」

「え?」

流石にこの発言には疑問を抱かずにはいられなかった。

どんなものか分からないのに全任する?

馬鹿を言うなよ、そんなことできるわけがないだろう。

出来ないと言っても仕事が出来ないと言う意味ではなく、この場合は責任を負えないという意味で出来ないと言った。

今回の生徒会の仕事は科学祭りの補助であり、下請け業者の様な形で仕事を受けている。

ならこればかりは条件に出さなければ。

「全任するのはいいんですが、失敗した場合の責任はとっていただけるんですか?」

成嶋ははて?といったような表情を浮かべ、首を傾げてそれに答えた。

「全任するんだから責任も持つに決まってるでしょ?何を言ってるんだよ全く」

納得がいかない。

過去にやったことと同じことをやるならばまだ理解は出来た。

だが成嶋が言っていることはどうも納得がいかない。

初めてのことをやるならしっかり考えてからやらないと失敗するリスクは高いはずだ。

なぜ、そんなものをこちらに丸投げしてくるのだろうか。

明らかにこれは時間が足りない。

あと一時間という短い時間で全ての準備を終えてそれを完璧にこなすなど不可能に近い。

例えそれに近いものができたとしても俺はそれに満足出来る気がしない。

それに失敗が怖いのは誰だって同じはずだ。

しかも、生徒会の一人の失敗は生徒会全体の失敗とされてしまう。

なによりこれに俺は怯えているのだろう。

だとしてもこいつにこれ以上振り回されるのだけはもう勘弁だ。

やってやるよ。

生徒会の意地を見せてやるよ。

 




読み終えていただきありがとうございます。
感想などいただけましたら今後の励みになりますのでぜひよろしくお願いします。
Twitterの方で作品更新の連絡も行っていますのでよければフォローよろしくお願いいたします。
https://twitter.com/sayu_syousetu


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

祭りなんで4

どうも課題に潰されたお久しぶりの白湯です
毎日投稿?そんな子知らないですね
はい…投稿ペース戻るように頑張ります
ちょっとリアルの方で今生徒会のお仕事が立て込んでて課題と二方向で潰されてます
皆さんもコロナに負けずに頑張りましょう
久しぶりなので前の話を忘れてしまってる方、この話から見始めた方はぜひ一話から見て貰えると助かります



「とは言ったものの全く思いつかん…」

とりあえず9時の受付開始までには何かを考えておきたいと玄関の前を不審者のようにうろうろとしていた。

というかどこからどう見ても不審者だった。

「天ちゃんそんなに思い詰めずにさ気楽にしなよ」

キモイほどにうろうろしてる俺に落ち着くように七海先輩が言う。

いやいやできるわけが無いでしょ、何言ってんのこの人。まぁ、でも確かに先輩の言う通りたかが抽選だ。

そう思うと確かに余裕な気がしてきた。

だが、それ以上に問題なのは時間だ。

あと20分で受付開始になってしまう。

とりあえず電気パンの担当の生徒に話を聞いた方いいかもしれない。

あの教師は役に立たん。

「先輩。俺電気パンの担当に話聞いてきます」

すると、向こうで話をしていたカップルのうちの片方、会長が話を聞いていたのかこちらに反応した。

「天草。何かあったら困るし俺も着いてくよ」

「すいません」

「何が?いいってことよ」

いや、今のすいませんはイチャついてるところ邪魔してすいませんの意味だったんだが。

まぁ、会長の善意を踏みにじることはしたくないのでスルーさせてもらおう。

マジ会長優しいよ。ほんとに。まじでリア充じゃなかったら何も思わなかったんだけどな…別に悔しくねぇし…

俺は優しい会長と共に別館にある化学講義室に向かうことにした。

行先である化学講義室は別館1階の最も奥にある。

何故かうちの高校の別館は1階から4階までが理科専用になっている。

4階は地学講義室、3階は生物講義室、2階は…地学講義室だっけ?

ダメだ、あんまり覚えてないからこんがらがってきた。

とにかくうちの別館は分かりにくい。

化学が1階なのは授業を受けているから覚えていたがあとはさっぱりだ。

本館から渡り廊下を通り別館に向かうと、本館の影に建物があるせいか一段と冷え込んだ空気が身に染みた。

ここまで無言なのも妙な感じがしてならなかったので会長に話しかけることにした。

「冷えますね」

「そうか?」

クソ。さっきまで彼女とイチャついてたから心も身体もぬくぬくですってか。

これだかれリア充は。

と思っていたがどうやら会長はブレザーの下に着ている紺色のセーターのお陰で寒さが軽減されてるようだ。

うちの学校では9月に入ると衣替え期間に入り、長袖と半袖どちらを着ても良いという期間が二週間ほどある。

長袖になればセーターの着用なども許可されるが、俺は締め付けられるような感じがして着るつもりは無い。

渡り廊下を過ぎてしばらく廊下を歩くと奥に化学講義室が見えて来る。

その入口には担当と思われる白衣を着ている生徒が5、6人ほど立っていて、歩いてくるこちらに気づいたようで全員がこちらを見ていた。

「生徒会の方ですか?」

その中の女子が1人こちらに駆け寄ってきて会長に尋ねた。

いや、担当俺だから俺に話しかけ欲しかったんだけど。

まぁ、こればかりは会長の知名度と話しかけやすい見た目の前ではしょうがないだろう。

「電気パンの担当の方ですか?」

「はい、良かったです…ちょうどこちらも呼びに行こうかとしていた所だったので」

「何か?あったんですか?」

「それが…」

どうやら先程の女子は2年生でリーダーを任されている中村さんという人らしい。

話を聞いたところこの人たちも成島に生徒会と話を

しろと説明もなく丸投げされてしまったらしい。

まじであいつ大丈夫なのか?

聞くところによるとこの人たちも今年が初で去年何をやっていたかも説明されてなく、手つかずの状況で困っていたらしい。

「あの、自分が電気パンの抽選とやらの担当なんですが、こちらも今の状況だと何も出来なくて何かそちらの方で案があったりとかしますか?」

俺のその問いかけに対して、お前喋れたんか、誰こいつ?的な視線を向けられたが、揃って誰一人その問に答えることはなかった。

恐らくこうなるだろうという予想はできていた。

奇跡的な確率にかけて聞いてみたが、やはり何も考えはなかったのだろう。

こうなるとこちらとしても困ったことになった。

いや、元々困ってたんだけど、まぁさらに。

とりあえず情報を得るところから始めた方が良さそうだな。

「電気パンってどんなことやるんすか?」

すると、リーダーの中村さんではなく後ろのオタクっぽいメガネをかけた男子が説明を始めた。

「それがですね、今回僕達がやり始めたのはリサイクルも兼ねて要らない牛乳パックを集めてそれを再利用して電気パンを作るんですけどね。あ、ちなみに電気パンて意外と家でも出来るんですよだから、これを覚えてもらえば…」

と早口で、というかめっちゃ気持ち悪い感じでずっと語っている所に割って入るように中村さんが説明を代わってくれた。

「基本的にはここで子どもと一緒に電気パンを作るだけなんだけどね、準備に時間かかるから他みたいにどんどん入れられないんだよ」

「そのために抽選で時間と人数の調整をしていた感じだったってことですね」

「そうなるね…」

てか、さっきから後ろで語り続けてる人うるさいよ。これがオタク特有の早口というやつだな。

もう、いいよ。俺聞きたかったのそういう情報じゃないからさ。

全く、これだからオタクとか陰キャはキモイって言われるんだよ。

特にアニオタ、鉄オタ、ミリオタ、ドルオタとかな、あれ、全部俺の事じゃん。

やっぱりオタクはキモイよな。

あ、勿論俺もキモイぞ。

これは自らキモイと言うことによって自分もオタクで陰キャでキモイんだぞと戒める為に言っている。

陰キャはキモイ。よって俺キモイ。

キモキモうるせぇよ。

それにしても、あん肝食いたくなってきなぁ。

兼好法師並、恐らくはそれ以下の価値しかない心にうつりゆくよしなしごとを考えていると。

「あの、君の名前聞いてもいい?」

知らぬ間に自分の目の前に中村さんが立っていた。

「天草です」

あまりにも自分と中村さんとの距離が近すぎたのでおもわず距離を離そうと一歩後ろへと下がったが、すかさず中村さんが距離を詰めてくる。

「何か考えはないのかな?さっきからずっと何か考えてるみたいだけど」

確かに、この人の言う通り何かないかとは考えていた。

だが、後ろの人が鬱陶し過ぎて途中からそれどころじゃなくなってるんだよな。

この状況を打開できる案など直ぐに出るわけが無い。

中村さんの質問にも直ぐに答えられるはずはない。

成島が全任したという以上こちらがどう動こうと文句はないだろう。

というか文句があるのはこっちの方だ。

もしあいつが何か文句言ったら文句のお釣り渡してやる。

どうやっても時間が足りない案しか浮かばない。

せめて昨日、一昨日に全任するから考えておけと言われていたらまた何か違っただろうに。

「新入生説明会の補助も大変だったなぁ」

ボソッと中村さんがため息混じりに過去のことを思い返していた。

「そういえば中村さんは誘導を手伝ってくれたね」

「覚えてくれていらっしゃったんですか?!」

コロッと会長の口から出てきた女子的にポイントが高そうなひと言が中村さんのテンションをどんどんと上げていく。

てか、ボランティアで参加してくれる一般生徒の仕事までちゃんと覚えてるとかかなり気持ち悪い。

クソ、彼女持ちのくせに。

ほんとにこういうイケメンになりたい…

そういえば、確かにあの説明会の時に会長に体育館まで誘導されたな。

ならば、これで充分なのでは無いのか?

「中村さん。電気パンの準備って一人いなくても出来ますか?」

「ちょっと今の状況厳しくて時間決めてるから…」

俺の提案を聞いた中村さんの様子を見たところ、この案は現実味はなさそうだな。

何か他に思いつかないかと考え始めたところ、自分の右耳に何か違和感があった。

すると右耳に会長の甘い声色の囁きが心地よく響いた。

「天草。なんか面白そうなこと思いついたみたいだね」

なるほど、こりゃASMRよりいいな。

そんなことより、とりあえず会長だけにも話はしておいた方が良さそうだ。

「会長実はですね…」

 




読み終えていただきありがとうございます。
感想などいただけましたら今後の励みになりますのでぜひよろしくお願いします。
Twitterの方で作品更新の連絡も行っていますのでよければフォローよろしくお願いいたします。
https://twitter.com/sayu_syousetu


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

現実なんで

どうも白湯です。
とりあえず思いついた話があったのでショートストーリーとして2本まっちーと七海先輩で書いてみました。
今回はまっちーです。
今回はかなりの書きなぐりなんで駄文なので、つまらないかもしれないですが2本とも読んでいただければありがたいです。


学園祭明けの振替休日、本来ならば休みになり学園祭の疲労を回復に使う休日であるはずだが、俺は学校に登校していた。

今日は振替休日を利用した模試の試験日で何故か丸一日テストで潰される。

まじ、なんで振替休日にテストいれてんだよ家の教師は。

流石に学祭で疲れたんだからシンプルに休ませてくれよ。

そんなことを教師が聞く訳もなく学校に行く以外生徒に残された選択肢はない。

こんな時期にテストをしたって学園祭で勉強できているはずがない。

そんな愚痴を思いながら家から学校まで歩いていると、駅方面から歩いてくる男女の組を見つけた。

「ひろくん」

「なんだよ」

「呼んでみただけ」

「なんだよ」

黙れよ。

なんだ、その会話は。

女の方もデレデレしながら呼びやがって、公衆の面前だぞ?

よくも恥ずかしげもなくそんなことが言えるな。

恐らくこの時期のカップルは学祭マジックとやらで学祭期間に付き合った付き合いたてホヤホヤの出来たてカップルだろう。

てかなんだよ学祭マジックって。

そんなんで付き合ったってどうせすぐにこいつら別れるに決まってる。

こういうのはその時の気分で盛り上がって付き合ったはいいものの結局はどちらもなんか違う気がするとか意味のわからん理由で別れるんだろ?

意味のわからん理由で付き合い、意味のわからん理由で別れる。

やっぱ学祭マジックはわからねぇ。

カップルが俺の通学路を進んでいくので仕方なく俺もその後をつけていくと、学校に着くまでも意味のわからん会話を続けていた。

正門に着くと周りの様子も普段よりも浮かれた様子で男女で並んで歩いている数も心做しか多いように見えた。

そんな空気に耐えきれる訳もなく、早足で玄関へと向かうと馴染んだ顔が職員室へと歩いていくのが見えた。

「ったく、これだから学生は。学園祭にどんなものを期待してるんだ。そんなことより勉強をしろ、勉強を」

恐らくあの人が怒ってる理由は理解出来た。

わかるよ、その気持ち、だけどあんたは洒落になってないからほんとに誰か男見つけてよ。

「お、天草か、おはよう」

まっちーがこちらに気づいたのでこちらも仕方なく挨拶をすることにした。

恐らく今日のまっちーとは話したまずい気がするから話したくないんだよなぁ。

まぁ可哀想だから話くらいは聞いてあげるか。

「おはようございます」

「昨日はお疲れ様」

「まぁ、昨日よりも今日の方が疲れてますけど」

「そういうことを言ってやるな。労いというのは受けておくものだ」

冗談のつもりだったんだが、まぁ昨日は本当に疲れた。

何より学園祭期間のこの1ヶ月近くは本当に毎日仕事だらけで毎日疲れていた。

昨日の夜も打ち上げは禁止とか学校が言ってる癖にこっそりなとか言ってこの人に連れられて打ち上げしに行ったし。

何が疲れたかってこの人が酔ってから愚痴しか言わなかったことなんだよなぁ。

恐らくさっきもブツブツ言ってたのは昨日と同じように学祭マジックがなんたらでという話だろう。

そういえば俺がさっきのカップルに言っていたのもほぼこの人が言っていたことだったな。

分かる、その気持ちはよく分かるんだけど、歳を考えて。

俺が言うのとあなたが言うのだと色んな意味で違ってくるものがあるから。

結局昨日はうちの近くの居酒屋で深夜近くまで飲むの付き合う羽目になるし。

まぁ、そういうのも嫌いではないから楽しかったが。

「昨日は大丈夫だったか?」

「何がですか?」

どういう意味の大丈夫?睡眠時間?それ以外は全く心当たりがない。

すると先生は背伸びをして顔を俺の耳へと近付け耳打ちをした。

やば、めっちゃいい匂いするけど、身長ちっさ。

まぁ、可愛いから問題はないな。

「いや、ほらな昨日飲み行ったときの記憶がなくて

帰りとかは大丈夫だったかなと」

「あぁ」

なんだ、そういうことか、帰りは一応家まで送ってもらったから大丈夫だけど、飲んでる時に出てきた愚痴の量と質は大丈夫じゃなかったんだよなぁ。

「まぁ、大丈夫ですよ」

「まぁってなんだ、なんか言いたいことがあるのか?」

え、これ言ったら絶対殴られるよね?朝っぱらから職員室へと直行だよね?

こういう時はどう言うのが正解なんだ?

困った時は友達に聞こうかな。その前に俺まともな友達居なかったわ…

思ったことを率直に言えば問題は無さそうだ。

そうだよ、素直なのは大事。

嘘とかつくから後々痛い目見るんだよ。

素直は日本に必要なことなんだ。

「いや…先生も大変っすね…」

「へ?」

下手なことになっては困るのでそれだけ言って教室へと向かった。

階段に登る前に玄関の方を確認すると、まっちーはぽかんとさっきのままフリーズしていた。

登校してくる他の生徒はまっちーを疫病神かのようにに避けて通っていた。

まぁ、明らかにやべぇやつだもんな。

時に現実とは自分に悲しいものを見せる。

自分が逃げていたもの、自分が逃げたいものそういうものから逃げられなくなった時、俺はよく現実を見せられる。

いつかは対面しなければ行けないもの、それが現実。

ずっと、逃げていようなど思うことは出来ても、それが叶う日など来るはずはない。

人は現実と向き合って成長していくのだと。

とりあえず先生も現実に向き合って頑張りましょう

よ、あと朝礼には遅れないでくださいね…

これが現実なんで…




読み終えていただきありがとうございます。
感想などいただけましたら今後の励みになりますのでぜひよろしくお願いします。
Twitterの方で作品更新の連絡も行っていますのでよければフォローよろしくお願いいたします。
https://twitter.com/sayu_syousetu


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

天才なんで

どうも白湯です。
今回はショートストーリーの七海先輩サイドです。
かなりの思い付きで書き始めた感じなので駄文だとはおもいますが、ぜひ読み切っていただけるとありがたいです。
私事ですが、つい最近オンライン授業を受け始めましたが、その授業のアンケートがあることを知らず、早速担任からの連絡があって怒られました。


テストというのも些かめんどくさいものではある。

個人的にめんどくさいのは早く終わった時、分からない問題が多い時に起こる解答時間が余ることだ。

こういう時にやるのは決まっている。

問題を解いている振りをして寝るに決まっている。

そんなこんなやっているとテストというのも気づいたら直ぐに終わってしまう。

まぁ、ある意味終わったのはテストの日程だけじゃないけどな。

勉強時間が確保されないテストなどやる気が出るはずがない。

最後のテストが回収されたクラスの中はテストという重荷から開放された生徒たちの歓談が響いていた。

こんな所にいるよりは静かな所で本でも読んでいた方が自分としてはストレスも貯まらないはずだ。

今日はほとんど荷物を持っていなかったため直ぐに教室を出て職員室へと向かった。

生徒会室がある2階まで降りるとちょうど鍵を借りてきていた七海先輩と黒岩に会った。

(てん)ちゃんこんちゃこんちゃ」

「どうも 」

七海先輩はいつも通りの調子で挨拶をしてきたが、黒岩はこちらに頭を下げただけだった。

とりあえず、先輩が鍵を借りたのなら俺が職員室へと行く必要はなくなった。

二人が生徒会室へと足を運んで行ったので、俺もその後を追って生徒会へと向かった。

三年生の教室はまだ残っている人がいるようで、廊下を通っていくと教室の中からは話声が聞こえてきた。

てか、三年生なんだから受験に向けて勉強しろよ。

俺のその意見に適応されそうな人がもう一人目の前にいることを忘れていた。

そういえばこの人はどうなんだろうか。

二年生といえば受験一年前となり、割と先生たちもピリピリとし始める時期だろう。

今回の模試も受験の判断材料となる大事な模試のひとつのはずだがどうなのだろうか。

そんなこんなで生徒会へと着くと、三人はいつも通りの席順で座った。

俺以外の二人はいつも通り会話を始めたので、俺もいつも通りカバンから本を取り出し読み始めた。

普段本を読んでいれば人が話していることなど気にはしないのだが。

明らかに前で話している会話がツッコミどころしかなくて先程から本の内容が入ってこない。

「ほら、アレあるじゃん日本史のあれ」

「先輩、どれですか」

先輩の指示語ばかりで全く分からない会話に対して黒岩が笑いながら対応していた。

「あの、いい国作った人が国会」

なんだ、それ。

国会?は?日本史だよな?いや、近代史なら国会はあるはずだが、いい国作った人?

生まれてこの方十数年、歴史を学んできたがいい国を作ったやつなどいなかったな。

誰だと思ったがその謎は直ぐに黒岩が解いてくれた。

「恐らくそれ幕府では?」

「あ、それそれ、それのね問題が今日出たんだけど全く分かんなかったの、あははは」

あの、笑いながら言ってるけど幕府が分からない時点で大方分かってたよ?

「あの、先輩。先輩進路大丈夫なんですか?」

流石に気になったことを先輩に聞いてみることにした。

「いやぁ、数学とかは出来るんだけどね。文系の教科はね…」

え、その次元の話?それ以上にやばい話だと思うんだが。

「でもね、うちの中じゃ一番頭いいんだよ」

それ、誇っていい事なのか?え?やっぱ血は裏切らないの?

やっぱり頭脳って遺伝するのか…

「お父さんも良く言ってるんだよ、あれ、あれだよ。トンビ、タカ、オウムって」

え、何それ。トンビ、タカ、オウム?え?それもしかして。

「会長…それもしかしてトンビはタカを産むって言いたいんですか?」

「あ、それだ!」

嘘だろ?おい。お父さん安心してください。トンビはちゃんとトンビを産んだようですよ。いやそれが言える時点でお父さんの方がタカなのでは?

「いやぁ、苦手なものはさっぱりだね」

「そ、そうですか…」

この人は本当に大丈夫なのか…

「天草くん、先輩はこう見えて化学と英語は全国でも負けないほどの実力があるのよ?」

「え、まじ?」

嘘だろ?俺こんなこと言ってる人より理科の点数低いのかよ。

得意不得意っていうのは、分からんもんだ。

やはり、現実とは時に悲しいものを見せつける。

俺もずっと理科から逃げてきたが、こんな些細なことで現実を見せつけられるとは思ってもいなかった。

これを機に俺も不得意教科を平均ぐらいにはする方がいいだろう。

これ以下と言われるのは仕方ないが、天と地ほどの差があるのは納得がいかない。

やはり人間とは、現実と向き合って成長していくものなのだ。

まぁ、それでも俺は理科は苦手なんで。




読み終えていただきありがとうございます。
感想などいただけましたら今後の励みになりますのでぜひよろしくお願いします。
Twitterの方で作品更新の連絡も行っていますのでよければフォローよろしくお願いいたします。
https://twitter.com/sayu_syousetu


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。