その男の名はパワプロ (よつば。)
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決別、そして挑戦

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「本当にあかつきに来ないのか?」

2017年、3月。

あかつき大附属中学校の卒業式後、そのグランドで二人の男が向き合う。

「ああ、行かない。」

「なぜ...なぜなんだ!?ボクとキミのバッテリーで高校野球界の頂点に立とうと約束したじゃないか!?」

「ああ、したな。」

あれは中学三年の夏。最後の中学大会決勝でノーヒットノーランを達成し、優勝した後だったか。

「ならばなぜ....」

「思っちまったんだよ、猪狩。」

猪狩、と呼ばれた少年は、その端正な顔を怒りと寂しさの混ざったような表情で目の前の少年を見る。

「確かにお前と組んだら甲子園のてっぺん獲れるだろーよ。"高校四強時代"何て言われてる今の状態も覆すことができる。けど、それ以上に俺の心が望んじまったんだ。世代最強のエースと戦うことを。」

それを聞いて、猪狩は驚いたような表情をしてから....不敵に笑った。

確かに同じチームに居ては対戦することは叶わない。

最高のパートナーだった目の前の男が最高のライバルとして自分の前に立ちはだかるのを想像して、普段冷静な猪狩も興奮が止まらない。

「フフ、フハハハハ。それは思い付かなかったよ。しかし、キミが敵か。厄介なことこの上ないな。」

「俺が作り上げたチームとお前が作り上げたチーム、それで最高の試合、しようぜ」

二人は不敵に笑い合い、拳を合わせる。

「次に会うのはグランドで、だな」

「ああ、そうだな」

「その時勝つのは....」

「「俺(ボク)だ!!」」

猪狩世代の物語はここから始まる

それは筋書きのないドラマだ

時代は高校四強時代。竜王学院、一流大附属、帝国学園、アンドロメダ高校が直近の十年間たったの一度を除いて甲子園のベスト4を独占している。

しかし、猪狩世代の登場によってこの時代は大きく揺らぐ。

その中の一人であるこの男ーーーパワプロは静かに闘志を燃やした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー4月。

桜が満開に咲くこの季節。

俺は、恋恋高校の入学式に出席していた。

高校での目標はもちろん、甲子園で頂点を獲ること。

しかし、その前にこの学校で野球部を作らなければならない。

「にしても、男子生徒の数少ねぇな。今年から共学って聞いたけど、まさかここまでとは....困ったな....」

まあけど、何人か中学野球の時に見かけたやつがいたしな。なんとかなるだろ。

俺が今年から共学になるようなこの高校を選んだ理由は三つ。

一つ目は、家から近いこと。

俺には弟と妹がいる。両親を亡くしてしまった今、家を空けることはできるだけしたくない。

二つ目は、設備。

ここ恋恋高校は、今年から共学というわりにはかなりの設備か整っている。男子生徒を呼び込むためにそうしたのか、真意は分からないが俺にとっては好都合だった。

三つ目はおいおい説明していくとして....って誰にだ。

「にしても長いな。あくびが出るぜ。」

「....ちょっと君、うるさいよ。」

「ああ、すまんすまん。」

隣に座る緑色のおさげ髪が特徴的な女の子に注意される。

ふわり、と柑橘系のシャンプーの匂いがする。

....この子、かわいいな。ちょっとめんどくさそうだけど。

あまり面倒事は増やしたくない。まずは野球部創部に全力を注ぐんだ。

 

そうこう考えているうちに、入学式は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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野球部始動へ

「ってな訳で、野球部入ってくれない?」

「なにがってな訳でなんでやんすかー!?」

入学式の後、ホームルームが終わって俺は早速部員集めを始めていた。

「お前、パワフル中の矢部だろ?センター守ってた」

瓶底メガネが特徴的なこいつの事は覚えてる。地区大会決勝戦で戦ったパワフル中学にいた一番センターだ。

俊足巧打で守備範囲の広さもなかなかだったからな。

恋恋で捕まえられるなんてラッキーだぜ!

「おいら、野球はやめたでやんす!野球から離れるために恋恋高校に来たんでやんすよ!女の子にモテモテライフを送るんでやんすーーーー!!」

なるほど。確かに元女子校だけあって女子の割合多いしな。制服も可愛いし見た感じ可愛い子多い。

「なんでその実力があるのに野球やめたんだ?」

「中学最後の大会でエラーしたでやんす。そのエラーで負けてしまったでやんすよ...もう野球なんでやりたくないでやんす。」

あー、覚えてるぞ。確かに俊足巧打で守備範囲広いけど、最後こいつが暴投してサヨナラになったんだっけ。

ってか、エラーなんてプロでもするしぶっちゃけ仕方ないんだけどなぁ。そのあとどーするかが大事なのであって。

「それでも、恋恋を選んだってことは野球を諦めきれなかったんじゃねーのか?設備の整ったここを無意識に選んだんだよ」

「それは...でやんす...」

「んじゃま、とりあえず入部ってことでー。名前書いとくからな!」

「ちょ、ちょっと待つでやんす!!誰もやるとはいってないでやんすよ!おーぼーでやんすーーー!!」

 

 

さてと、とりあえず俺を含めて二人。部活動を始動するためには最低でも部員五人と顧問が必要って聞いたから...顧問はアテがあるし、まずはやっぱ部員探しだよな。

とりあえず、入学式で見かけた"あいつ"に声かけてみるか。

と、そんなことを考えていると、足元にボールが転がってきた

硬式野球ボール?ここには野球部無かったはずなのにな...

「すみませーん!...ってキミは入学式のときの!」

「お、おう。これお前の?」

「そうだよ。」

「ふーん...なぁ、野球部に入る気ないか??」

「...今、女だからって言う理由で誘うのやめようとしなかった?」

す、鋭い...

「そんなにバカにするってことはボクの球ぐらいとれるよね?取ってみせてよ」

「...あぁ、いいぜ。ちょっと待ってろよ?」

そう言って俺はカバンの中からキャッチャーミットを取り出す。

「君キャッチャーなんだね。ボクはピッチャーだから、是非座って取ってみてよ」

「座るっつっても防具はいまないぜ?」

「大丈夫。コントロールは自信あるから」

すごく強気だな。ピッチャー向きだ。

けど、俺そこまで怒らせるようなことしたかな?

わかんねぇ...けどピッチャーなら丁度いい。しっかり捕球して勧誘するぞ!

「ウォーミングアップは?」

「いらない。いつでもいけるよ」

ま、そりゃそうか。さっきまで投げてたっぽいしな。

俺はホームベースの後ろに座る。...やっぱり、ここに来ると落ち着くな。

マウンド(お手製かな?)の方を見てみると、手慣れた感じで土をならすあの子。

しばらくして、プレートに足をかけ、こっちを見据えてマウンドに立った。

「...行くよ」

「よし。こい!」

ノーワインドアップから、ゆったりと足を上げて、

ーーーそこから深く沈み込んだ!

(アンダースローっ!!)

深く沈み込み、体に隠れた腕が肘からしなって、地面スレスレからのリリース。

(アンダースローに驚かされたけど、全然許容範囲だぜ!)

地面スレスレから浮かび上がってくる球には、強いスピンがかかっていた。

ーーー斜めに。

(っ!?カーブか!この回転数ならワンバンになるぞ!?)

俺は素早く体をスライドさせて、ショートバウンドで捕球する。

「っ...と。あぶねぇあぶねぇ」

「っ!?う、上手い」

「そりゃどーも。それよりさ、もっと投げてくれよ!」

「え?で、でも」

「いいからいいから!」

さっきのカーブ、メチャクチャキレイな球だった。

通常、アンダースローでカーブを投げるのは難しい。

引っ掻けて高めに浮いてしまったり、スピンが弱くて曲がらなかったりする。

しかし、今も投げ続けている目の前の少女は素晴らしくキレイで回転数の多いカーブを、低めにきっちり決めて見せた。

それに、今受けてる感じだとストレートは105キロ程度だが九割構えたところに来る。カーブは少し落ちて七割と言ったところか。それでもすごい精度だ。

さらに、出どころが見えにくく、女性特有の柔らかさをいかしたしなやかで、しっかりとしたフォーム。

リリースは安定していて、地面スレスレから肘をしならせている。

....すごい。ここまで至るのにどれだけの努力ををしてきたんだろうか。きっと、辛く険しい道だっただろう。

女であるハンデに屈することなく、必死に努力して得たのであろう力。

エースになってもらうしかねぇなこれは。

「....ふぅ、こんなもんだろ」

「あ、ありがとう!キミ、すっごくキャッチング上手いし、構えも投げやすいよ」

「そりゃどーも。まあ、お前に比べたら全然すごかねーよ。」

「ありがとう。...けど、その"お前"っていうのやめてくれない?ボクは早川あおい。さっきクラスで自己紹介してたでしょ??」

すみません、爆睡してて全く聞いてませんでしたごめんなさい。

「んじゃ早川、改めて言うぞ。俺と一緒に野球やってくれねぇか?」

彼女はうつむいて、少し怯えるように尋ねてくる。

「...本当にいいの、?ボク、女の子だし、全然ダメだし...」

さっきまであんなに自信満々で投げてたのになんでこんなに怖がってるんだ?その球とフォーム、そして努力ができるなら名門校とだって渡り合える選手になれるだろーに。

過去になんかあったのか...?

でも、こんなんじゃ困る。エースには自信もって胸はってマウンドに上がってもらわねーとな!

そして、俺は早川の手を握った。

「えっ!?ちょ、ちょっとパワプロくん!?」

「....いい手だ。」

「そ、そんなことないよっ!女の子っぽくないし、ゴツゴツしてるし....」

「それがいいんだろ。どんだけ練習すればこんなタコ出来るんだよ」

"アイツ"でもここまでタコができているのは見たことがない。負けず嫌いだからメチャクチャ練習してたのになアイツ。

「いいか早川。お前には名門校と渡り合える投手になれる素質がある!それに努力家ときたら、もうエースになってもらうしかない!だから、俺と一緒に甲子園目指そうぜ!!」

「わ、わわ、わかったから!て、手を離して....?」

「おっと、悪い悪い。つい熱くなっちまったな」

なんせ、これほどの投手と出会えると思ってなかったからな。

過去になんかあったっぽいけど、それを払拭してバンバン投げてもらわねーと!

「こんなボクでいいなら、入部、したい。」

「いいなら、じゃなくて、お前が良いんだよ早川!」

「は、はぅっ///わ、わかったよぅ」

どうしたんだこいつ、顔真っ赤だぞ。

熱でもあんのか?

「とりあえず、これで三人!!あと二人で部活はじめれるぞ!!」

「あ、それならボク二人アテがあるんだけど誘ってみようか?」

「まじか!是非誘ってくれ!俺もちょっとアテがあるんだ、また後で合流しようぜ!」

「うん、わかった!」

そういって、彼は立ち去っていく。

それと同時に、心がドクドクと激しく揺らいだ。

「ボク、どうしちゃったんだろう....」

今まで感じたことのない感情に、ボクは戸惑いながら一緒に野球をやっていた二人に声をかけにいった。

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし、見つからないなぁ」

すでに探し始めて30分。もう見つかってもいいころなんだけど....帰っちまったかな?

うろちょろしながら歩いていると、一人の生徒が話しかけてきた。

金髪でポニーテール、一見女子のように見えるけど男子の制服を着ている。あれ、もしかして....

「もしかして、パワプロくん?」

「おう、もしかして、雅ちゃん?」

「うんっ!久しぶりだね!小学生で引っ越ししたとき以来かな??元気にしてた?」

うおー!雅ちゃんだ!まじで久しぶり!

小学生の頃、家が隣同士でよく遊んだ、いわば幼なじみ。

にしても、いつ見ても可愛いよなぁ。男だけど。男なのが残念なぐらいだぜ。

「パワプロくんは見ないうちにカッコよくなったなぁ。なんか、たくましいって感じで!」

「おお、雅ちゃんもかわい....コホン。か、カッコよくなったな!」

「そう?ありがとう!!」

あっぶねぇ。ついつい可愛いって言ってしまうとこだったぜ。

話を聞いてみると、中学卒業後親の転勤でこっちに戻ってきていたらしい。おとなりさんなのに気づかなかったな。

「それはそうと、なにしてたの?」

「あー、今野球部を作ろうとしてるんだけど、部員が足りなくてさ....」

「ボク、入ろうか?向こうでも野球続けてたんだよ!プレーを見せてあげたいぐらい!」

「ほんとか!?是非是非入ってくれ!」

よっしゃー!探してたやつとは違うけどこれは大収穫。

雅ちゃんの中学時代のプレーは見てないけど、自信ありそうだし頼りになるな。

「んじゃ、今からもう入ってくれてるやつたちと合流するからついてきてくれ!」

「おっけ~!」

よし、これで四人!!早川が二人連れてきてくれるって言ってたから六人か!ついに野球部が始動できるぞ....!

 

 

 

 

 

「ってな訳で、自己紹介しようぜ!」

雅ちゃんを連れて戻ってくると早川が二人の女子と一緒に待っていた。

「そうだね。じゃーまずはボクから!早川あおい、希望ポジションはピッチャーです!」

「うし、じゃーつぎは俺。覇羽楓郎だ。ポジションはキャッチャー。あかつき大附属中出身だ。」

「あかつき大附属中でやんすか!?あの中学全国2連覇を成し遂げたところでやんすよね!?入部ってテストがある上に一軍から三軍まであって一軍の選手は全員が名門校からスカウトが来るところでやんすよ!?」

「あぁ、そうだな。」

「「「えええー!?!?」」」

おいおい、そんなビックリするところか?

「ち、ちなみにパワプロくんはどこら辺にいたの??二軍とか?」

「いや?一軍の正捕手だったけど」

「ええええ!?だ、だからあのキャッチングかぁ。納得....」

「なんでここに来たのよ。ほんとに」

「えっと、君は....」

「私は速水雪歩(はやみゆきほ)。ポジションはセカンドよ。それで?どうしてそんなエリート君が野球部もないこの恋恋高校に来たの?」

勝ち気な目をしたショートカットの美少女。

その目同様に性格もなんかきつそうな....

「グフッ!い、いきなりなにすんだよ!」

「今失礼なこと考えたでしょ?」

鋭いやつめ....顔は可愛いのにもったいないぜ。

「で、なんでここへ?」

「あ、あぁそれはな、最強と呼ばれた仲間たちと戦いたくなっちまったんだ。それで、強豪いって強豪倒してもつまんねえだろ?だから一から全部作り上げれる設備·環境が整ったここにしたんだよ。理事長にツテもあるしな」

そう、理事長へのツテが三つ目の理由。

まあ、実際に直接話したことは数えるほどしかないんだけど。なんとかなるだろ。

「なるほどね....確かに君なら中学のときみたいにならなくて済みそうだしいいかな。元々野球は好きだし」

「んじゃ、入部ってことでこれからもよろしく!じゃー残るは....君だね」

「は、はい。美園千花です。ポジションはファーストです。よ、よろしくおねがいしますっ!」

すごくおっとりしてて優しそうな子だなぁ。

顔も可愛いし、モテそうだ

ってか、みんな可愛いな。すごいぜ恋恋野球部。

「じゃー最後に雅ちゃん!」

「はい!小山雅です!ポジションはショート希望です!よろしくおねがいしますっ!」

「あ、じゃあ私とコンビだね、よろしく!」

「うん!よろしくね!」

みんな仲良くできそうで良かったぜ

意外と揉めることってあるあるだしなぁ....

ってか、なんか忘れてるような....ま、いっか。

「それにしても女子の割合多いなぁ。男子が俺と雅ちゃんだけって肩身が狭いぜ!な、雅ちゃん」

「そそ、そ、そうだね!?い、いやー、過ごしにくいなーなんて、」

(え?どうみても女の子だよね?気づいてないのかな?)

(どうみても女よ。あの男は相当鈍感みたいだね。)

(女の子....ですよね?パワプロさんって、意外と鈍感なのかな....?)

(やっぱり、まだ気づいてもらえて無かったか....)

「だよなー!ま、男子はまだ増える予定だけど。あと一人絶対引き入れたいやつがいるんだ。」

「へー、誰なの?」

「ああ、友沢亮ってやつなんだ。金髪でサングラスを頭にのせてる」

「なるほど、見かけたら声かけて見ますね~」

「ありがとう。とりあえず今日はもう遅いし解散にしようぜ。明日から活動できるように手続きだけやってくるわ!」

「「「「了解!」」」」

「んじゃまた明日で!」

そういって、四人を帰したあと、俺はある人物と会った。

 

 

 

 

「久しぶり!はるかちゃん」

「ぱ、パワプロくん!?わぁ、久しぶりーっ!元気にしてた?」

「おう!はるかちゃんも元気してた?」

「うん!それで今日はどうしたの?こんな時間まで残って」

「実はお願いがあって来たんだ。七瀬理事長と話がしたい。」

「お、おとうさんと!?ど、どうして??」

「野球部のためにいろいろ協力してもらいたいんだ。話せるかな?」

「今??たぶん話せると思うよ」

七瀬はるか。こいつと友達になったことで理事長と関係を持つことができた。

出会ったのは病院で、俺が中三の夏怪我して入院したときに同じ病院で入院してた。

元々からだが弱いらしく、よく入院すると聞いていたが高校入学が近づくにつれ状態が良くなったらしく、今となっては同じ高校に通う同級生だ。

はるかちゃんの家は七瀬グループっていう大きな財閥で、あの猪狩コンツェルンと並んで立つぐらいの存在らしい。家なんかでかすぎて野球が出来るんじゃないかと思ったしな。

「んじゃ、一緒に来てくれねーか?」

「もちろん!一緒にいこう♪」

透明感のある白い肌、整った優しい顔立ち、茶色の髪の毛からはとてもいいシャンプーの香りがして....彼女の一挙一動に思わずドキッとする。

おっと、いかんいかん。今から大事な話をしに行くんだ。緊張感持たないとな。

 

そうこう考えているうちに、理事長の部屋についた。

 

 

「それで、話とはなにかね?パワプロくん。」

「理事長までパワプロって呼ぶんですか?」

「いけなかったかな?みんながそう呼んでるものだから」

「いや、構いませんよ。それで話なんですけど、恋恋高校に野球部を作ろうと思ってるんです。甲子園を目指すチームにしようと思ってるので、グラウンドの使用許可と道具や設備への投資をお願いしに来ました。」

「ふむ....なるほど。詳しく説明してくれ」

「まずグラウンドを毎日使えるようにして頂きたいのと、ナイター設備の利用、そしてピッチングマシン等の機材の導入、ボール等の交換などもお願いしたいです」

「となると、相当なお金がかかるようだね。それにグラウンドの方は、過去十年で七度全国大会に出場しているソフトボール部が使っているから利用するのは厳しいだろう。となると、レンタル球場を借りることになるだろうね。そうなると莫大な費用がかかる....なんの実績のない部にそれだけの費用をつぎ込む事がどうゆうことか充分理解した上でのお願いなのかな?」

そう簡単にはいかないか。

確かに発足したての試合する人数すら集まっていない部活動にそれだけの投資をすることは難しい。贔屓問題にもなりかねないしな。

けど....ここで引き下がるわけにはいかないんだ。

なんとしても承諾してもらって、アイツらと戦うために!

「甲子園に....甲子園に必ず行って見せます。」

「ほう?確かに甲子園に行けば宣伝効果もあるし費用の方はなんとかなるだろう。しかし、そう簡単に甲子園にはいけないと言うことは君自信が一番分かっているんじゃないかい?」

「行けます。必ず。俺の....いや、俺たちの力で必ず甲子園に行って見せます!もし行けなかったとしても俺がプロになって契約金で返します!!」

無謀であろうその挑戦。

けど彼には"なにか"を感じる。

自信のこもった挑戦的な彼の目を見て....七瀬は決断した。

「わかった。その代わり条件を達成出来なかった場合....うちの養子になってもらおうか。」

「ちょ、ちょっとお父さん!?」

「ええ、構いませんよ。ですが理事長、その心配はありません。必ず甲子園に行って見せますので」

「ふふ、はははは!面白い....その言葉が口だけにならないことを祈ってるよ!」

「はい、ありがとうございます!それでは、失礼します」

ガチャンと理事長室のドアを閉め、外に出た。

「フワァー!緊張したぜー!」

「そ、そうだね....///」

「ん?どうした?そんなに顔赤くして」

「ななな、なんでもないよっ!?」

「おぅ、そうか?ならいいけど」

とりあえず、これで第一関門は突破した!

ここからが勝負だ。待ってろよ猪狩!ぜってーおまえを倒して甲子園行ってやるからな!!

「じゃーはるかちゃん、またな!」

「うん、またね♪」

元気よく立ち去る彼を見つめながら、はるかは思う。

(やっぱり私、パワプロ君の事が....どうしよう、心臓のドクドクがおさまらないよ....)

彼と出会った日からずっと抱き続けている感情。

改めてその気持ちは本物だったと認識させられる。

(そういえば、野球部って言ってたよね....マネージャー、しようかな....)

はるかもまた、決断をしたのであった。

 

 

 

 

 

 

「おいらを忘れるなでやんすーーーー!!!」

その声(夢)で飛び起きた俺は、時計を確認する。

7時。今日からついに野球部始動だ!

「よっしゃ、気合い入れていきますか!」

 

 

彼らの物語は今、始まる。

高校第一学年編スタート!!



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