地上の風と白き魔女と (長靴伯爵)
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プロローグ
ナウシカのアニメ見てからの漫画って相当衝撃くるよね
俺は覚えている。
行商人だった父に連れられて訪れたトルメキア王国王都トラス。そこで俺はパレードを見た。父に肩車された俺の目に写ったのは装甲騎兵の行進だった。全身を甲冑で覆いマントをはためかせる騎士と同じく全身を甲冑で覆ったトリウマ。
壮健な彼らの姿は幼い俺を魅了した。
だが直後に俺はさらに強烈な者を見た。
装甲騎兵の後に現れた豪華な馬車。
そこに彼女はいた。
俺より少し大人びて、なのにまるで全てを悟ったかのような目をする少女。俺は彼女に釘付けになった。
そしてフッと目が合った。
俺と目が合うと彼女は口元を弛め、寂しそうに微笑んだ。
俺はあの時の彼女の顔が忘れられなかった。
時が経ち、俺は装甲騎兵となった。トルメキア王国第三軍親衛隊。
第三軍の長たる彼女を守る為に剣を捧げる部隊。
そう、トルメキアの白い魔女と共に戦場を駆ける部隊。
俺は彼女にこの剣を捧げよう。
「我が身は殿下と共に」
兜を脇に抱え跪く。
「私と共に来い、ナギ」
そう言って殿下、トルメキア王国第四皇女クシャナはマントを翻して進んでいく。
俺も進んで行こう。地上を舞う風として白い魔女について行こう。
どこまでも・・・
俺はコルベットの窓から腐海を眺めていた。地表に小さく点々と見えるのは羽蟲の類いだろう。
・・・見慣れた景色だ。本当に・・・。
俺はトリウマでよくこの地を駆けた。蟲を怒らせて必死に逃げ回ったこともあった。
その時はあいつがよく助けてくれたっけ・・・
「どうした、ナギ?望郷の風に吹かれたか?」
俺をからかうのを楽しむような声が聞こえた。
このお方は・・・
「ご冗談を、殿下」
俺は頭を下げながら殿下、我が主であるトルメキア第四皇女クシャナに向き直った。船室の中央に設けられた玉座に座る彼女はからかうような目で俺を見ていた。
「嘘を言うな。風の谷がお前の故郷であることは知ってるのだ」
兜の下の俺の表情は苦笑しているだろう。全く殿下、あなたは分かって言っているだろ・・・
「ですが、今の私は殿下が全てです」
「ふん」
殿下は満足そうに鼻で笑って視線を俺から外した。俺も一礼して殿下から視線を外すと、同じ部隊の同僚達が兜の下から羨ましがる視線と嫉妬の視線が突き刺さった。
お前らどんだけ殿下が好きなんだよ・・・。俺もだけどさ。殿下の為に大陸をトリウマで横断してきましたけどなにか?トリウマと船を乗り継いで半年かかりましたけどなにか?
隣の奴が気持ち悪いような目で見てきたけど、気にしない気にしない。
「風の谷を視認した。およそ15分で到着する予定です」
観測員の報告が聞こえた。もうそんなに近づいていたのか・・・。
「ナギ。『蟲使い』共に準備をさせろ」
「はい」
早速の殿下の命令だ。俺は踵を返して操縦席から出ると、着ている装甲をガシャガシャと音をたててコルベットの後部へと向かった。そこには今回、コマンドとして雇った蟲使い達が待機しているのだ。
やれやれ、ろくなことにはならなさそうだ。
トルメキア王国第三軍親衛隊隊長、ナギ
とんだ帰郷になりそうで怖い。
どうも三笠と申します。
今回、見切り発車ですが始めさせていただきました
何故書こうかと思ったというと・・・
装甲騎兵(ボトムズじゃないよ)かっこいい!
と、思ったからです!それだけです!
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なんでこうなったかというと・・・
服装はどこか東洋の雰囲気があり、白兵戦が強いらしい(クシャナ殿下も認めてるよ!)
個人的に好きです
てなわけで、どうぞ!
時は遡って数日前
クシャナ殿下率いる我ら親衛隊はペジテ市外縁部に駐留していた。
なぜかって?
そりゃ、ペジテ市を攻める為だ。
「しかし、正直・・・」
「やってられねーな・・・」
誰だ!?俺の台詞をとった奴は!?
「やってられなねーな」
「何故二回言った」
「そりゃ、やってられないことを強調する為だよ。あ、三回目だな」
「よし、ちょっと黙ろうか?」
俺は同僚の頭をはたいた。こいつ名前はカタリ。訓練生来の同僚である。今は兜をつけていないので、俺の籠手がもろに当たり悶絶している。
「というか、隊長には敬意を払え」
「ハハハ。ナギも冗談言うようになったんだな」
「・・・今度は脚甲がいいか?」
「どうもすみませんでした」
俺の蹴りは本気でやると骨が折れる。もちろん、装甲の上からでもだ。伊達に隊長してるわけじゃない。すぐさま土下座したカタリの判断は正しかっただろう。
俺はカタリを見下ろすと、そのまま視線を移して再びペジテ市の方を向いた。今は、大慌てで防衛ないし脱出の準備をしているのだろう。
「しかし、ヴ王も・・・」
「酷な命令だすよな」
「だから俺の台詞をとるな。というか立ち直り早いな」
「伊達にお前との付き合い長くない」
ぬかしおる
ちなみに、このやり取りも訓練生の時から続いており、もはや天丼である。
そんなことは置いておいて、今回の命令はさすがに酷いと思う。今まさに土鬼との戦争が始まろうとしているのに、何が悲しくて同盟国を滅ぼさなければならないのか。
「しかし、惜しいですね。ペジテ市は有数の工房都市なのですが・・・」
「まったくだ・・・、てお前も来たのか」
「ええ。武装点検は済みましたよ」
「ご苦労だった」
この丁寧な言葉遣いの奴はネイル。親衛隊の副隊長だ。俺やカタリとは違い、貴族出身のお坊ちゃんだ。しかし、お坊ちゃんと侮るなかれ。優しい顔して容赦のない攻撃が売りのバーサーカーだ。
「戦闘狂は言い過ぎかと」
「いや、お前は戦闘狂だ。だって俺模擬戦で肋骨折られたもん」
ああ、あれは酷かった。木刀でのネイルの横薙ぎがカタリの胸に直撃したのだが、音が酷かった。周りで見ていた奴ら血の気が引いていたしな。しかも、あの時のネイルは笑っていたからな。これを戦闘狂と言わずしてなんと言おうか。ちなみに俺はネイルよりも強い。というか強くなければこの年で隊長など勤められない。風の谷にいた頃にユパ様から鍛えられた俺に死角はなかった。
「そんなことはどうでもいいですよ。問題はこれからです」
「だよな~。今回の命令は流石に感じ悪いよな。女子供まで容赦なしだろ?」
「確かに」
隊長としてはそんなことを言ってはいけないんだろうが。
「でもまぁ・・・」
「クシャナ殿下の決定だしな」
「そうですね」
「そうだな。・・・だから俺の台詞を取るな!」
今一度、カタリの頭を叩いておいた。
さて、もうそろそろで動くだろうから、指揮所の方に戻っておくか。
「では、ここは私達が」
「頼んだ」
再び頭を押さえて悶えるカタリを放置して、俺は指揮所に向かって歩く。
命令に不満はある。納得もできない。だが、全てはクシャナ殿下が決めたことだ。ならば俺たちは殿下についていくだけ。それが親衛隊、もとい第三軍なのだ。
さてと・・・。
「総員!突撃準備!!」
俺の号令を受けて、200の装甲騎兵が陣形を整え、ズラリと並び立った。重厚な装甲騎兵が並ぶ様相はトリウマの高さと相まって、物言えぬ重圧感を放っていた。
工兵部隊も動き始めた。装甲騎兵の前進を援護するロケット砲の照準を付けながら今か今かと突撃の合図が出るのを待っていた。
俺は周りを見渡して準備が完了したことを確認すると、陣形の戦闘に立つ
「戦闘準備、完了しました」
「ご苦労」
ペジテ市を眺めていた殿下は、静かに告げた。
「ナギ。今回の戦、お前はどう思う?」
黄金の甲冑と白いマントを付けたクシャナ殿下。今は兜を被っておらず、頭に付けた髪飾りが目に入った。その真剣な横顔は・・・見惚れてもしょうがないよね?
「・・・はっ」
「何か言ったからとて罰する訳ではないぞ?」
「・・納得はしかねます」
「ふん。正直だな」
そんな風に笑わないで欲しい。心臓が持たない。
「ですが、我々は殿下についていくだけです」
「・・・そうか」
殿下はそう言うと兜を被ると面頬を下ろした。
さぁ、戦闘開始だ。
うん、まぁ・・・こうなるよね。
奇襲まがいの侵攻にペジテ市が、神速と謳われる第三軍の騎兵突撃をまともに防衛できる訳もなく、瞬く間に決着がついた。なけなしの敵戦力はロケット砲で吹き飛ばされるは、俺たち装甲騎兵に蹂躙されるはで壊滅。小銃などの銃弾などは分厚い装甲の前には大して効かないのでこちらの損害は軽微だった。
その後、殲滅戦へ以降。一隻船を逃したが、それ以外はほぼ完遂された。
胸が痛いな・・・。なぜ、ここまでしなければならないのか・・・。
俺は今、殿下に付き従ってペジテ市の地下工房を進んでいる。殿下と二人きり。いつもなら泣いて喜ぶ状況だが、流石に殲滅戦の後ではしゃぐ程の図太い神経は持ち合わせていない。
「どうした?今日は暗いな?」
「いつも明るいつもりはないのですが・・・」
兜で表情は見えないはずだし、声音も平静を保っていたはずだが、殿下は鋭いな。
「理由が聞きたいのだろう?なぜ、このようなことをしたのかのな?」
「・・・。・・・はっ」
今回の戦闘はいくら殿下に忠誠を誓う部下達でも疑問を生むのに足るものだった。それでも、親衛隊の中から殿下に歯向かうが出るとは思えないが・・・。
「そう思うのも最もだ。だから見せよう、これが理由だ」
殿下は工房全体を照らす灯りをともすと、『それ』が現れた。
「こ、これは・・・!?」
目の前の光景に思わず声を失った。
『それ』は骨格のような物に筋肉、そして心臓のようなものがあった。そして、あろう事かピクピクと動いている『それ』。
「巨神兵・・・!?」
巨神兵。1000年前に産業文明を崩壊させた「火の七日間」で世界を焼き払ったといわれる化物。
なぜこれがペジテ市の地下に・・・?いやそんなことより、だからヴ王は・・・。
「ペジテ市の奴らにこれを使わせるわけにはいかなかった、というわけだ。今回の作戦は巨神兵の確保だったが・・・」
殿下は近くに設置されている黒い箱のような物を顎で指した。
「こいつが巨神兵の胎盤らしいが、復活させる為の鍵のようなモノ、『秘石』がない。蟲使い共に探させてはいるが、おそらく逃げた船にあるのだろう」
蟲使いは、その名の通り蟲を使って探索すことを生業としている者たちだ。モノ探しに関しては彼らの右に出るものはいない。(ちなみに鼻が曲がるほど臭い)それでも見つからないということはそういうことなのだろう。つまり・・・。
「すぐに逃げ出した船を追うぞ。親衛隊の中から何人か選びコルベットに乗せろ。蟲使い共もだ」
「はっ」
殿下はマントを翻して元来た道を歩いて行くが、俺は一度振り返って巨神兵を見た。
こいつを見ても嫌な感じしかしないのだが・・・。まぁ、今はいいか。隊員の選抜とコルベットへの移譲、待機組への指示などやることは色々ある。
「ナギ、早く来い」
「只今」
殿下の呼ぶ声に返事しながら、俺は地下工房を後にした。
コルベットへの搭乗組は俺を含めた7人、待機組の指揮はネイルに任せた。カタリも待機組だ。
ペジテから逃げた船は、腐海に墜落していた。すぐさま蟲使いに探索させるが、秘石の匂いはあるがそれ自体はないということ。匂いで探すとか、本当に便利なことができる人たちだよね・・・。
捜索は打ち切りになるかと思いきや、一人の蟲使いが、ガンシップの着陸跡を見つけた。まだ新しいらしく、それに乗っていた奴らが秘石を持ち帰った可能性が高いということ。で、この付近でガンシップといえば、地理的に考えて風の谷の物であるのは間違いない。
そういうわけで、俺の碌でもない里帰りが決定したのであった。
何もなければいいが・・・
王蟲のオムライス食べたい~
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幼馴染みとの再会(序盤戦)
最後に投稿したのは何時なのか分からなくなるぐらい投稿してませんでした(笑)
でも、感想を書いてくれた人がいたので続きを書いてみました。
やぁ・・・楽しんでってください
腐海から800リーグ離れ、酸の海から吹く風によって胞子から守られる辺境の小国、風の谷。
周辺小国を含め我がトルメキア王国との同盟国でもある。そして何より俺の故郷だ。帰るのは6、7年振りぐらいになるのか?谷の皆はとても驚くだろう。なんたって・・・
胞子をべったり付けたトルメキアのコルベットで、谷の畑に強行着陸したんだから☆
おまけに蟲使い達も一緒にね☆☆
・・・。
いや、いやいやいや!?☆とか付けたけど、これ相当無茶苦茶なことしてるよね!?普通に侵略行為だし、下手すりゃ谷が腐海に飲まれちまうよ!?
しかし、殿下もこんな凄まじいことを躊躇なくやってのける。さすが殿下。そこに痺れる!憧れる!(ヤケクソ)
あぁ、ホントにとんだ里帰りになったよ・・・。でも、自分の仕事はしっかりこなさなきゃな。殿下の為にも!
「後部ハッチ開け!蟲使い達を出すぞ!」
なんかもうヤケクソ気味になってるけど、体の方はしっかり動いてくれた。悪臭を振り撒いて外に飛び出した蟲使いに続いて、俺もマントを翻して飛び出す。だが、罪悪感を覚えつつ畑を踏みしめた後で、つい目を奪われてしまった。俺が旅立った頃と何も変わっていない谷の風景に。本当に・・・変わらない。俺は面頬の下でしばし目を細めてしまった。
白い鳥が飛んでくるまでは。
その鳥は風と一体となって飛び、一度大きく上昇すると地面スレスレまで急降下してこちらに飛んできた。そして・・・撃てきたぁ!?というか鳥じゃねぇし!?メーヴェじゃん!ということはあいつ!?
「散開!!」
とっさに指示を飛ばすも、放たれた弾丸は蟲使いが持つ虫籠に命中した。中に入っていた蟲がボトボトと地面に落ちる。楕円のような体をうねうねと動かしてのた打ち回る姿は正直気持ち悪い。口らしき部分にある無数の触手は特に。え?なんで、こんな細部まで見ているのかって?あいつが俺たちの頭上ギリギリを通過していったからだよ!身を屈めるしかないだろう!?てかこっち来るな、ムシィ!!!
「クソッ!叩き落してやる!」
って、俺より遅れて出てきた部下達が機関銃撃とうとしてるし!?独断行動するなよ!?しかも、なんかキィーンという音が近づいて・・・
「撃つな!ガンシップだ!」
とっさに部下の持つ機関銃の銃口を払う。もし、ここで撃ってしまったら報復として撃ちかえされかねない。そんな殿下に危険が及ぶことなどさせられるか!
「私のことは気にしなくていい、ナギ」
そんなこんなしていたら殿下がコルベットからお降りになっていた。いつの間に・・・。
「しかし、殿下・・・」
「風の谷もこちらの出方を見ているのだろう。トルメキアと戦争を起こす訳にはいかないとな」
「しかし、もしものことがあれば・・・。っ!?」
風を感じた。
刺すような熱い風。
怒り。強い怒り。
俺は無意識のうちに飛び出し、殿下を背に立ち塞がった。俺が動いたことで、部下達も殿下を守るように位置を変える。その直後、再びメーヴェがこちらに向かって来た。
そして一つの影が舞い降りた。空色の飛行服に同じ色の飛行頭巾。手には身の丈ほどもある剣。6、7年振りでも、俺は人目で誰かが分かった
そいつは、器用に地面に着地すると地面に剣を突き立て叫んだ。
「我はジルの子、ナウシカ!不浄な蟲使い共を連れ込んで、トルメキアがこの地に何をしに来た!この剣より先には一歩も通さんぞ!!」
・・・。
俺と幼馴染、ナウシカとの再会は波乱の幕開けだった。
続きは期待せずに待て!!!
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隊長職には胃薬が不可欠
まさかこんなに早く投稿できるとは思いませんでしたw
楽しんでってください!
うわぁ・・・。
ナウシカ、相当キレてるよ。強い怒りをヒシヒシと感じる。あいつが怒ると手を着けられないんだけど・・・。
だとしても、こっちも退く訳にはいかないんだよなぁ・・・。
そんな風に心の中で鬱々としていたら、殿下が言った。
「われらは偉大なるヴ王の命によりペジテの謀反人を追ってきた。蟲使いはコマンドとしてわが軍に編入された兵である。この谷の捜索を認めよ!!」
あれ?俺たちが探していたのって謀反人だったっけ?まぁ、いいや・・・
「ことわる!!この谷に謀反人など居らぬ!即刻立ち去れ!!」
一言で断られたよ。俺があいつの立場だったらそうするんだろうけれどもさ・・・。つか、後ろで蟲使いが勝手に動き始めてるんだけど?
「動くな!ナウシカとやら!どうやら蟲使い共が目的の物を見つけたようだ」
俺の背後の殿下がどうやら指示を出していたらしい。
蟲達がズリズリと地面を這ってナウシカへと進む。なんかあいつの肩にいる小さな動物・・・キツネリスって言ったっけ?・・・がギャーギャー騒いでいるけど、気持ちは分からんでもない。いやだって気持ち悪いし・・・。
ついに蟲がナウシカの足元へと辿り着き、あろう事か足からヌメリヌメリと登り始めた。ナウシカは剣を地面に突き立てた姿勢のままピクリとも動かない。俺だったら発狂しているかも・・・。が。蟲達が腰部分まで登りつめた時、事態が急変した。蟲やキツネリス、そして被っていた飛行頭巾がいきなりあいつの体から弾け飛ばされたのだ。
皆、いきなりのことに驚いているが、俺は飛行頭巾が取れて顕になったナウシカの顔から目を離せなかった。6,7年前の面影が残っているが、成長した幼馴染。栗色の肩までかかる髪は綺麗な艶を放ち、今でこそ怒りで燃えている瞳は透き通るな光を持っていた。一言で言うと、めちゃくちゃ綺麗になっていた。クシャナ殿下がいなければ惚れてたわ、多分。今悠長にこんなことを考えている暇はないけどな!
強かった怒りが殊更に強くなり、肌にビリビリと感じる。まるで暴風を受け止めているみたいだ。
ナウシカは突き立てていた剣を抜き取るとこっちにその切先を向けた。
「トルメキアの男どもめ。よくも我が身を忌わしき蟲ではずかしめてくれたな。許さん・・・!」
やばい、これは本当にやばいやつだ。ここは慎重に・・・。
「面白い!受けてたとうぞ、小娘!!」
って、おおい!?!?誰だ!?俺が慎重にいこうと思った矢先に!?
後ろを振り返れば、部下の一人がマントを翻して前に進み出ていた。あいつは・・・確か貴族出の奴だな。親衛隊は皆残念に思えるくらい殿下大好きな奴らだが、一枚岩という訳ではない。俺みたいな庶民しかも辺境国出身の奴が隊長している現状に納得していない奴らも確実にいる。こいつはそんな奴らの内の一人だ。名前は確か・・・まぁ、今はいいや。
俺は舌打ちした。殿下には申し訳ないが、皆ナウシカのことを過小評価しているな。このままじゃ・・・。
って、風の谷の方が慌しくなってきたな。トリウマに乗った誰かを先頭に胞子除去用の火炎放射器を携えた一団がやって来た。うわ、よく見ればトリウマに乗っている人はユパ様だよ・・・。また、一波乱ありそうな・・・。
「双方、剣を引けぇ!!」
ユパ様が呼びかけるがナウシカの耳にはまったく入ってないようだ。ちらりと殿下を見ると、こちらも引く気はないらしい。
俺は心の中で溜息を吐くと、何が起こってもいいようにと静かに腰の剣に手を添えた。その瞬間、ナウシカが動いた。剣を両手で支えて突き出しながら走り出す。それに対し、部下の・・・あ~・・・何某は十分に引きつけてから右手の戦斧で剣ごとナウシカを叩き折るつもりのようだ。事実、何某はナウシカが自分の間合いに入った瞬間、戦斧を振りかぶり力一杯振り下ろした。ナウシカは地面に剣を突き立てて戦斧を防ごうとする。恐らく何某は面頬の下でほくそ笑んだことだろう。しかし、ここで予想外の事が二つ起こった。
一つは戦斧を叩きつけたナウシカの剣が折れなかったこと。もう一つは、ナウシカが剣を地面に突き立てた時の反動を利用して高く飛び上がったことだ。さすがにこれには皆仰天した。とっさに左手の爪付きの盾で突き刺そうとしたのは、何某を褒めていいかもしれない。だが、ナウシカはその盾をも踏み台にすると更に高く飛び、まるで猛禽類のように何某の上に飛び乗った。そしてナウシカの右手にはいつの間にか短刀が・・・。
あぁ、こりゃ終わったな・・・。
ガツンッ!!という鈍い音が響く。ナウシカが兜と甲冑の隙間に短刀を突き立てたんだ。風の谷の一団がワッと沸き、こちら側は息を呑む。殿下も驚いているようだ。だから言わんこっちゃない。さて、ここらが潮時かな。ナウシカが暴れる何某から飛び降りると地面に突き刺してあった剣を取った。とどめを刺すつもりだな。
「・・・殿下」
「許そう」
以心伝心だ。涙がでるほど嬉しいね。
俺は動いた。風の谷の方もユパ様が動いたようだけど、俺の方が先に着きそうだ。部下の前に躍り出てナウシカの剣の前に立ち塞がる。面頬を通してみる驚愕の表情のナウシカ。うわぁ、近くで見たらマジで綺麗じゃん。ま、すぐに剣が迫ってきてますけどね!
腰を回転させる要領で剣を抜き、そのまま振り上げる。つまりは居合だ。ガインッと鈍い音と共にナウシカの剣を何とか弾き上げた。するとナウシカはあっさりと剣を手放し、一足飛びに後ろに下がった。困惑した表情で俺を見てくる。周りも一気に静かになった。
「こちらの数々の非礼謹んでお詫びする。どうか剣を引いて欲しい」
俺が剣を鞘に戻しながら言った。いきなり出てきて何言ってんの、あいつ?とか思われてないよね?
「ナウシカ、彼の言う通りだ。ここは剣を引け。さもなければ、トルメキアと戦争になる。ペジテのように滅ぼされるぞ」
少し遅れて俺とナウシカの間に入ったユパ様がいい感じで取り成してくれた。これでナウシカが少しでも怒りを収めてくれたら・・・。
ドサッ!!!
ん?だれか倒れたのか?
チラリと目を向けると何某が膝を付いていた。しかも兜の隙間から尋常じゃない量の血が出ている。大方予想はしていたが・・・。殿下の傍に控えていた部下数名が慌てて何某を支えコルベットに運び込む。
「見事な剣技だった、ナウシカとやら」
突如、殿下が前に進み出て面頬をあげた。顔を見せたということは・・・どうやらここで手打ちにするらしいな。顔を見せたことで皇女クシュナだということが分かると風の谷の人達が一斉にざわめいた。
殿下はナウシカの前に立つと強引な谷への侵入を謝罪し、彼女の剣技を褒めた。俺は殿下の後ろで待機して、周りに目を光らせていた。誰が何するか分からないし?殿下の会話が滞りなく・・・最後の方でナウシカの剣を叩き折っていたけど・・・終わり、マントを翻してコルベットに足を向けた。俺も着いていこうとすると、殿下はチラリと俺に向いた。
「10分だ。それまでに戻って来い」
「・・・はっ」
殿下、この空気の中で俺に何をしろと?しかし、殿下のご厚意を無下にはできないし・・・。足を止めて後ろを振り返る。風の谷の人々がナウシカを囲んで彼女の健闘を喜んでいるようだ。
・・・。
ここで俺を行かせるとかおかしくね?殿下は一体何時からSに目覚めたのか・・・。そういった気配は無きにしも非ずだったけど・・・。いやでも、俺はそれでも受け入れるけどね!
「そこの騎士、まだ何か用があるのかね?」
頭の中で現実逃避していたら、俺に気付いたユパ様が話しかけてきた。何か分かっているよ的な目をしているけど、さっきの剣筋で俺のことを気付いたのかもしれない。もしそうだとしたら素直に尊敬するね。
ユパ様の言葉に反応して他の人達も俺を見てきた。もちろんナウシカもだ。
「いえ、大したことではないのですが・・・」
そう言いながら、兜をゆっくりと脱いだ。顕になった顔に懐かしい風を浴びながら、俺は驚愕の表情を浮かべている人達へ、ユパ様へ、そしてナウシカへ言った。
「6、7年振りかな。ナギです。え~・・・ただいま?」
胃に穴が開きそうだ・・・。
余談ですが、ナウシカの剣は王蟲の皮で出来ていて、トルメキア組みの剣はセラミック製です
かち合うと普通にセラミックの方が折れます
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里帰りってこんな辛かったっけ?
恐るべき進行速度の遅さ(笑)
「・・・ナギ?」
これはナウシカの台詞。目を丸くしてるし、状況が理解出来ていないみたいだな。
「ナギじゃと?5年前に谷を出ていった?」
これはナウシカの後ろにいる城ジイ達の台詞。こっちは何かいぶかしんでいる感じ。まぁ、これが普通の反応だよな。むしろおかしいのは・・・。
「ふむ、ナギ。剣の腕が随分と上がったようだな」
と、言って穏やかな目でこっちを見てくるユパ様の方だ。やっぱさっきナウシカの剣を防いだ時に気付いたかな・・・。
「ユパ様もお変わりなく」
「年は取ったがまだまだ若い者には負けんよ」
ユパ様は口にたくわえた髭を揺らして愉快そうに笑った。俺も思わず頬を緩めてしまうと、他の人達も警戒を解いてザワザワし始めた。ただ、一人を除いて・・・。
「ナギ・・・?本当にナギなの・・・?」
いまだ呆けたような表情で呟くナウシカ。どうやら、色々ありすぎて混乱極まったみたいだな。ま、しょうがないか。俺は小さく溜息を吐くと、右手の手甲を取りながらゆっくりと大股で彼女の前に向かった。そして、おもむろにデコピンを一発。
パチンッ!
思いの外、いい音がなったな。
「痛い!?」
ナウシカは額を押さえて短く悲鳴をあげた。俺はニヤニヤしながら彼女の話しかける。
「いつまでも呆けてるなよ。久しぶりだな、ナウシカ」
「ナギ・・・、本当にナギだ・・・」
「ああ、5年振りだな」
「本当に・・・久しぶりね」
こうやって話していると、昔のことを思い出す。俺の親父は行商人でほとんど谷に帰ってこなかった。その間は、親父に商品納入の依頼を多くしていた谷の城に預けられ、城ジイ達の世話になっていた。そんな中で、谷のお姫さまであるナウシカと出会って、年が近いこともあってかすぐに仲良くなり、沢山遊んでまわった。メーヴェで飛んだり、トリウマを乗り回したり、二人で勝手に腐海に行ったりした。・・・バレたときは大目玉だったけど。
城ジイ達は二人をゆくゆくは・・・みたいなことを考えてたみたいだけど俺は13歳を境に、丁度親父が旅先の事故で死んでしまった時だが、谷を出た。トルメキアの装甲騎兵になるためにな。俺はこの自分の選択に後悔はしていない。
だから・・・ナウシカの表情が喜びに彩られた直後、一転して険しいものになっても、俺は平然は顔をして受け止めた。
「あなたがいながら・・・なんでこんなことを!?」
「こんなこと?とはいったい?」
「あんなに胞子を付着させた状態で谷に進入してきて!!汚染されてしまうわ!!」
そのぐらい百も承知だ。俺も谷に住んでいたからこれが谷の死活問題に直結するかもしれないということも十分に理解している。だけど、いや、だからこそ俺は周りから突き刺さる視線を物ともせずに言った。
「これは殿下のご意向だ。今の俺はトルメキア王国第三王女、クシャナ殿下の親衛隊隊長。殿下の意志は俺の意志でもある。・・・恨んでもらってもかまわない」
ナウシカは黙って俺を睨む。その目には怒りと戸惑いとが入り混じっている。俺はその視線を平然と、少なくとも表面上はそのように見えるように、受け止めた。
どのくらい経ったか、背後のコルベットからパシュッと発煙弾が撃ち上げられた。どうやら時間切れみたいだな・・・。
「時間だな・・・。それじゃあな、ナウシカ」
「・・・」
返事はない。俺は肩をすくめて背を向けた。その途中でユパ様には目線で挨拶しておく。少し歩いた時、後ろからナウシカの小さな声が・・・。
「だけど・・・、ナギが元気でよかったわ」
これは幼なじみとしての言葉かな?まぁ・・・その言葉はうれしいけどさ。俺は振り返らずに手を振ってコルベットへ歩いた。俺が後部から乗り込むとコルベットはすぐに発進した。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・死ぬかと思ったぁあ!!!
俺は「蟲使い」達が居るのにも関わらず、壁に手を突いてゼイゼイと荒い呼吸を繰り返した。蟲使いから漂いくる悪臭が半端ないが、そんなことを気にしている余裕もない。鎧の下は冷や汗でビショビショだ。
ったく、ナウシカの奴、あんな目で睨んできやがって・・・。ずっと剣を突きつけられているかと思った・・・。
「あの・・・大丈夫ですか」
ずいぶんと長いこと息を荒げていたからか、蟲使いの一人が声をかけてきた。うん、心配してくれるのは素直にありがたいけど、さすがに臭いがキツイ。できれば、近寄ってくるのは遠慮してもらいたい。
「気にしなくていい。・・・気遣いは感謝する」
「は、はい!」
ま、今更だが、ちゃんと親衛隊隊長として振る舞うことにしよう。額に滲んだ汗を甲冑に挟んでいたハンカチで拭い、コルベットの前方部分のコックピットへと向かった。中に入った瞬間に感じる重苦しい空気。
「戻ったか」
「・・・はい」
殿下の言葉に頭を下げつつ、俺はコックピットの中央に安置されたこの空気の原因を見下ろした。台座に横たえられた部下何某の遺体。
やはり助けられなかったか。俺に反抗していたとはいえ部下は部下だ。部下を死なせるのには堪えるものがある。俺は静かに何某へ瞑目した。
「あれがナウシカか?」
「はい」
殿下の声を聞いて、俺は目を開いた。
「おそらく、次の戦では彼女が戦列に加わるでしょう」
「なら、存分に使わせてもらおう」
そういう殿下の表情はどこか不機嫌だった。俺は頭を下げると殿下の斜め後ろに控える。
「一度ペジテに戻るぞ。進路を北へ」
コルベットがゆっくりと旋回した時、窓からチラリと風の谷が見えた。・・・できればもっと穏やかに帰りたかったな。
三日後、トルメキア王国は土鬼へ宣戦布告。戦争状況へ突入した。
所々修正入るかもです
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やっぱり殿下の方がいいんじゃないかな?
前置き回みたいな感じです
では、どーぞ
旧ペジテ市 郊外
土鬼との戦争が始まったが、トルメキア王国はそれなりに優勢らしい。クシャナ殿下の兄上等(美しい殿下とは似てもに似つかない、ぶくぶくと太った肉団子のような奴。なお、この言葉を聞かれたら俺の首は飛ぶ、職的な意味でも身体的な意味でも)が率いる各軍団は着々と侵攻を進めていて、捕虜やら奴隷やらが何万と手に入って荘園がウハウハだとか・・・え?なんでそんなことを知っているかって?それはな・・・。
「クロトワという奴・・・少しは使えるようだな」
「そのようです。殿下」
王族専用の天幕。その中の豪奢なソファに殿下は寝そべっている。俺は殿下の側に立って、話し相手をしていた。そう、何で俺が戦争の状態を知っているのかいうと、ついさっきここに着任してきた参謀クロトワっつう奴が得意げ言っていたからだ。軍学校出で平民出身だということで、俺と少し似てるな。さっき一人でペジテ市に行って、巨神兵を見てきたらしいけど、蟲使いによる暗殺もとい試験的な力試しもクリアしたみたいだし、見所はあるかもしれない。
「腹に何を抱えているかは知らんが、使えるなら存分に使ってやろう」
「はい、殿下」
俺は話し相手になりつつも、殿下には目を向けないようにしている。今の殿下のお姿は非常に軽装である。いつも身につけている黄金の甲冑と純白のマントは天幕の脇に置いてある。滑らかな白い布で出来た動き易そうな長袖の服を着ているだけで、腰に申し訳程度の短剣で武装しているだけ。
つまり・・・心臓が持たないんだよぉお!!!何、その格好!?殿下、体つきいいし、そんなんだと体の線とか普通に分かるんだよ!?わざとか!?殿下、わざとやってんのか!?だが、その熱いたぎりを一切おくびにも出さず、俺はクールに、あくまでクールに言った。そうでもしないと親衛隊隊長などやってられない。
「殿下、我々の出陣ですが・・・」
本当の所は、心臓が持ちそうになくて早く話しを進めたかっただけですけどね。
「む・・・そうだったな」
俺の態度に少し気を悪くしたのか、僅かに眉をしかめる殿下。あぁ。そんなお顔もまたお美しいやいや、早く話を進めないと。ここからは真面目だ。
「我々の戦力は親衛隊の300のみ。たったこれだけ進軍するというのはあまりにも無謀です」
「だが、その代わりに辺境国の戦力は我々が使っていいことになっているぞ?」
俺の雰囲気を感じ取ったのか、殿下の雰囲気も変わった。俺を試すような、そんな表情を浮かべている。じゃあ、答えようか。
「正直、あてになるとは考え辛いです。使えるものはいれど、統率力に欠ける。反乱の可能性も。」
風の谷のガンシップはいい性能してるけど、他の国の戦力だとスクラップ間際の船とかが平然と混じっている。しかも、自分の国の兵力は残したいから参加するのも老兵ばっかだし。これは風の谷も言えるのか?多分、城ジイ達が出張ると思うんだけど。
「私が育て上げた第3軍は今は兄上の指揮下だ。その烏合の衆を頼らざるを得まい」
ペジテ市侵攻を含めた今回の出撃で殿下が直接指揮出来るのは俺ら親衛隊のみ。俺らと辺境国の連合軍だけで土鬼に侵攻とは、どうもキナ臭い。なら、どうするか・・・俺ならこうする。
「・・・私を含め、親衛隊、そして第3軍は殿下の手足です。殿下のご命令とあればどんなことでも完遂して見せましょう。・・・膿を出すことも厭いません。むしろ、そうした方がトルメキアの為です」
殿下の目がスッと細くなる。暗に滲ませただけだったけど、どうやら意味は伝わったらしい。
「第3軍を率い、兄上等を殺して全軍を掌握しろと?・・・王族である私を前にしてよくそのようなことが言えるな」
しっかりと伝わっていて何よりです、殿下。そして、あなただからこそ、このようなことが言える。俺は無言を貫いた。
「・・・今後、王族への不敬を禁ずる。分かったな?」
「御意に」
結局、殿下も思うことがあったのか小さな溜息だけで済んだ。
天幕から出た俺は、歩哨からの嫉妬の視線を悠然と受け止めつつ、親衛隊の指揮所へと向かった。さて、今から人員掌握して部下に出動準備の命令をだしてと・・・やることはたくさん「お~い、ナギ!」なんだ、この忙しくなりそうな時に。声の方向を見ると、朗らかな笑顔でカタリが来た。なんかムカついたので、間合いに入った瞬間、蹴りをかましておいた。
「痛ッ!?なんだよ、いきなり」
「うるさい。で、どうした?」
結構バチンといういい音が鳴ったのだが、あまり効いていないようで、最初は痛がっていたが、すぐにケロリとして話し始めた。
「親衛隊は総員異常なしで、今は出撃準備中であります!隊長殿!」
「お、おう・・・。って、まだ命令だして無いし!?」
一体全体どうなってるんだよ!?カタリはわざとらしい敬礼をして
言って、
「ネイルの奴がさっさと済ませておきましょうって、やっぱり仕事出来る奴は違うな」
いや、指揮系統をしっかり踏まえて・・・もういいや、確かに楽だし。
「じゃあ、さっさと・・・」
戻ろう・・・と続けようしたところで風が地面を舐めた。途端に胸が嫌にざわめく。思わず、口を閉じ風が吹いた方向に視線を向けた。ざわつきは止まない。
「どうした、ナギ?」
「いや、戻ろう、カタリ」
キョトンとしたカタリを置いて、先に足を進める。さぁ、これから一体どうなることやら・・・。
次は戦闘回かと
なんちゅう脆い船はこの話では生き残ることができるのか!?
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旅は道連れ、カラスって馬鹿にするなよ?(なお、活躍は無い模様)
バカガラスには固有名詞がないのでしょうか?むしろ、バカガラスという名が船の正式な名前?そんな馬鹿な
「なるほど・・・古代都市とはよい目印だ」
コルベットの船窓から地上を眺めたクロトワは感心したように呟いた。巨大な建物が腐海に呑まれている姿はどこか人類の現状を暗示しているようにも見える。第3王女クシャナが率いる親衛隊は、ここで辺境国から徴兵した戦力と合流することになっていた。
「おっと、マスクを付け忘れていた」
腐海の上空を飛んでいるのだ。いつ瘴気がやってくるか分からない。クロトワは慌ててマスクを着けようとするが、ブリッジの中央に座るクシャナは着けようともしない。
「あれ?殿下はマスクをお着けにならないんですか?」
「この高度へは瘴気は届かぬはずだ。その鳥が生きているうちはマスクはいらぬ」
ナギは嫌う考え方だがな・・・とクシャナは船体に取り付けてある小さな鳥籠に視線を向けて言った。
「ハハハ・・・。マスクなしとはありがたい」
それを聞いたクロトワは嬉々としてマスクを取って言った。
「ところで集合完了後はどこかに降りなければなりませんが?」
「着陸などせぬ。このまま一気に腐海を南進する」
この一言にクロトワは地図に伸ばしていた指を止めた。
「このまま・・・!?しかし、陣立てもせずに腐海を抜けるのは・・・」
「辺境諸国が動揺するというのか。だからこそ、彼らのガンシップがバージをひいて身重なまま進撃するのだ。わが軍の船は機動力でガンシップに遥かに劣る。いま作戦を教えては反乱が生じかねまい」
『5時の方向に船団を発見!!』
まるでタイミングを計ったかのように見張りの兵が発見の報をあげた。クワトロは彼女の考えを聞いてニヤリと唇を歪めた。
(で、足枷を付けてガンシップを連れて行くわけか・・・。顔もイイが頭もイイ。カワイイぜ、クシャナ・・・)
その瞬間、ゾクリと彼の背中に強烈な悪寒が走った。
(な、なんだ!?)
思わず辺りをキョロキョロと見渡すと、船窓からコルベットに続いて飛んでいる戦列艦がチラリと見えた。
(なんだったんだ・・・?)
クロトワは首を傾げるが、結局何なのか分からなかった。
「あの野郎!絶対、殿下に色目使ってやがる!おい!一番射手、あんの腐れ参謀撃ち殺せ!」
『了解!下種な目で殿下を見た奴は生きては返しませんぜ!』
「落ち着いてください、ナギ。そんなことをすれば、殿下も死んでしまいますよ」
「おい、射手!1発でも撃ったら、手前ェをぶっ殺すからな!」
『まだ、撃ってないから大丈夫です!』
あ~、なんか疲れた。ま、殿下に色目使ったとしても、あの参謀が痛い目見るだけだろう。
「なんで俺が殿下のお傍に居られないんだ!?」
「うるさいですよ、ナギ。ちゃんと指揮を執ってください」
俺の嘆きをネイルは簡単に一蹴してくれる。悲しいね。これでも、俺は親衛隊隊長なんだけど?
「だから、あなたをここに置いたんでしょう。如何せん、この戦列艦はバカガラスと呼ばれる脆いですからね。あなたがしっかりと指揮をとらないと親衛隊は全滅してしまうのですから」
「分かってる。けどな?殿下と見れないのは辛いんだよ?」
「分かってますよ。そして、それは私達全員に言えることです」
ですよね~、じゃなきゃ親衛隊に入ってないよね~。
なんか辺境諸国の戦力も来たみたいだし、そろそろ移動か。はやく宿営地に着かないかね
「ん?」
そんなこんな考えながらブリッジの椅子に座っていると、辺境諸国に船団が見えた。揃いも揃って、ガンシップとバージの組み合わせ。重そうだな~とか思っていると、見たことのあるガンシップが接近してきた。ていうかあれは・・・。
「風の谷のガンシップ。・・・ナウシカか」
ガンシップのコックピットに座るナウシカは、この前の蒼い飛行服と飛行頭巾に戦仕立てで各所に鎧を付けていた。
ブリッジ越しでもこっちを見ているのが分かる。やっぱり気付くよな。
何気なく手を振ってみると、あっちも控えめだが手を降り返してくれた。無視されなくてよかった・・・。
「辺境諸国の戦力も集まったので移動ですね」
「そうだな」
ゆっくりと移動し始めた前方の戦列艦を見た。つか、やっぱこの船めちゃくちゃ遅ぇ・・・。こんなんで、宿営地までどのくらいかかることやら・・・。
次の更新までどのくらいかかることやら・・・
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こんな船を正式採用した奴は誰だ!?(ブチギレ)
明けましておめでとうございます
どうも不定期すぎますが、気長に待っていただけると幸いです
感想の返事もボチボチ書いていきたいと思います
ではどーぞ
けたたましく鳴り響くサイレン音が煩わしい。
今がヤバイ状況だってのは分かってんだから、いい加減止めてしまえ。
「2番艦から通信!『ワレ、操舵不能』」
「敵機は太陽の中に隠れました!」
「船団の隊列を密集隊形に。弾幕を張りなさい!」
飛び交う報告に、適時指示を出すネイル。あいつにしては声張ってるな。結構焦ってんんな・・・。まぁ、俺も普通の状態じゃないけど。だた妙に冷静になってしまっただけだ。
予定通りに進んでいた進軍だったが、突如の現れた敵の奇襲により非常に拙い状況になってしまった。誰だよ。フラグ立てた奴・・・。既に1機の戦列艦落とされている。そして今しがた更に1機落ちた。
俺はチラリと太陽に入った敵機の影を見た。
「ペジテのガンシップか・・・。こりゃ俺らはただの的だな」
「ええ。この弾幕もどれだけ効果があるか・・・」
ネイルが俺の言葉に反応した直後、艦の窓がビリビリと振動した。次いで爆発音と共に艦全体が激しく揺れる。
「4番艦がやられました!」
見張りの声が伝声管を通して艦橋に響き渡った。立ち上がって窓から艦の後ろを見れば、炎を上げて墜落していく戦列艦の無残な姿が。
「チッ・・・」
思わず舌打ちして視線を戻す。如何せん状況が悪すぎる。こんな時こそ、殿下がお乗りになっているコルベット必要何だが・・・。悲しいかな。機動力が高いガンシップに追随できる腕利きのパイロットは居ない。というか、殿下はご無事なのだろうか?そう思ってコルベットに視線を向けると・・・。
何か加速して戦列から離れたし!?
離脱したのかと思ったがどうも違う。というか、殿下は部下を置いて逃げるとかそんなこと絶対にしない。ということは・・・?
「あの新参者の参謀ですか?」
「クロトワって奴だ。庶民出だとは聞いていたが、まさかコルベット乗りだったとは・・・」
この部隊にいる人員の情報は大体把握している。唯一把握し切れてないのはクロトワ。殿下に色目使ってたのは万死に値するが、まぁ許してやろう。あっちが敵機を何とかしてくれるのならこっちにもやりようがある。
「乱れた隊列を整えるか。再度、密集隊形でこの空域を周回。敵機を牽制する弾幕を張り続けろ」
「離脱はしないんですか?」
「お前は殿下を置いていくつもりか?」
「ですよね。辺境国のガンシップに援護させては?」
「奴等はパージを切り離せないから無理だろう。しかもさっきの戦闘で何機か巻き込まれているみたいだしな」
さっき近くを飛んでいた風の谷のガンシップも見当たらない。ナウシカの事だから大丈夫だとは思うが・・・。
船団は俺が指示した通りにゆっくりと隊列の穴を塞いでいく。しかも弾幕はさっきよりも更に激しく。皆、殺す気マンマンらしい。よし、これで何とか・・・と思ったらまたもや見張りから報告が・・・。
「敵機がコルベットの背後に回りました!」
「何!?」
窓に張り付いてコルベットを見れば、敵機がしこたまコルベットに銃撃を加えていた。ヤバイヤバイ!殿下が危ない!?
「弾幕をあいつの鼻っ柱に集中させろ!こっちに引き付けろ!殿下を守るぞ!」
「了解!」
俺が指示を出すと艦の弾幕が一点に集中し始めた。後続の艦に指示を出す暇がなく、弾幕も薄かったが、果たして敵機は狙いをこっちに変えてきた。やったぜ。
さって、こっから何とかしないとな。まずはともかく・・・。
「総員、衝撃に備えろ!!!」
伝声管に向かって叫んだ直後、艦橋の窓が砕け散り、多数の衝撃が襲い掛かってきた。弾け飛ぶ破片、飛び散る血肉、響き渡る悲鳴と絶叫の中、俺は視線を揺るがすことなく迫り来る敵機を見据えた。
1秒にも満たない刹那の間にも敵は刻一刻と接近してくる。その距離は敵のパイロットの姿を捉えるまで縮まった。俺の視線とパイロットの視線が繋がる。
その瞬間、頭に鮮烈なイメージが流れ込み、五感が何かに埋め尽くされていった。
何も無い暗い空間。ただ1つある光。それは1人の少女・・・。蹲って泣き、そして走っていく・・・。あれは・・・ナウシカ?それだけじゃない。もう1人泣いている人が居る。誰だ?あの女性は・・・もしや・・・。
「・・・ギ。・・・ギ!ナギ!!」
・・・うるさッ!?耳元で叫ぶな!!
一瞬にして五感が戻ってきた。若干ふらつく頭を振って周りを見れば・・・ひでぇ有様だ。瘴気が届かない高度で助かったな。完全に外気に晒されたボロボロっぷり。しかも所々に血が飛び散っている。これでよく操舵できてるな。
「ナギ!大丈夫ですか!?」
そして血相を変えたネイル。何をそんなに焦っているのかと思えば左目から液体が垂れてきた。ボロボロになったマントで拭ってみるとベットリと血が・・・。飛んできた破片で切ったか。
俺は取りあえずマントで傷口を押さえた。
「大丈夫だ。状況は?」
「敵機はコルベットが撃墜しました。このまま宿営地まで前進すると殿下からご命令が」
「分かった。取りあえず、全員に瘴気マスクを付けさせとけ。万が一に備えてな」
「はい」
ネイルが指示を出しにいったのを見届けて、俺はホゥと溜息を吐いた。
結構やばかったが、最悪の結末だけは逃れたな。
ボロボロの窓から外を見ると、辺境国のガンシップたちが合流してきていた。だが、その中に、やはり風の谷のガンシップがいない。
「とんだ戦争だよ、まったく・・・」
知らず知らずの内にまた溜息が出ていた。
戦列艦1機に何人乗ってるんでしょうね(白目)
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予想可能実行不可能
はい
亀更新です
それでも楽しみにしてくださる方々がいて嬉しいです
感想、アドバイス、ミスの指摘などよろしくお願いします
親衛隊の損害は部隊全体の3割を超えていた。
同行している他部隊も同程度の損害を被ったらしい。あんな船を正式採用した奴等、いつか絶対にぶっ殺してやる。そいつ等の頭は絶対にバカガラス並だ。殺しても問題ない。むしろ殺した方がいい。
そんな物騒なことを考えるぐらい俺の心は荒んでいる。
「・・・皆、殿下のために今までよく戦った。・・・馬鹿野郎どもが。俺が殿下を独占しても知らねぇからな」
その呟きは嫌にひりつく風の中へと消えていった。この言葉が彼らの下に届くかどうか・・・。
俺が1人で立っているのは宿営地から少し離れた丘。そこで、俺達は宿営地の設置作業もそこそこに戦死者の埋葬を行った。
墜落した戦列艦に乗っていた奴らの遺体は回収できない。せめてもの変わりにと墓標に人数分の剣を突き立てた。
コルベットでの戦死者は弔うことが出できた。彼らは戦闘の最中、ペジテのガンシップから放たれた弾丸をその身で受け止め、殿下を守ったのだ。ある意味、奴らは幸福だったかもしれない。親衛隊として我等が殿下を守りきることができたのだから。
兜を脱いで、直に地上の風を感じると心が落ち着く。怒りも、悲しみも、虚無感も、消えはしないが少しずつ治まってきた。風がざわついているのが気になるが・・・。
「ナギ、貴様が居たか」
「・・・!殿下・・・」
「顔を上げたままでよい」
「ハッ・・・」
慌てて跪こうとしたが、先んじて殿下が制した。
まさか殿下がこのタイミングでいらっしゃるとは・・・。殿下の気配に気付かないなんて・・・俺も相当参っているようだ。
「貴様も負傷したのか」
「かすり傷程度です。ご心配には及びません」
殿下が俺の頭に巻かれた包帯を見る。既に止血されているが、大事を取ってと巻かれた物だ。心配させるのなら取ってしまおうかと考えていると、こちらを見る殿下の顔を見てあることに気付いた。殿下の頬に僅かな筋が・・・涙が流れた跡が残っていたのだ。
「殿下・・・」
「私は彼らの忠義を忘れない」
俺の一言で察したのか、殿下は俺から顔を背けて墓を見た。その仕草に、俺は言いようのない悲しみを抱いた。
「だが、私にできるのはお前達を死地に連れて行くことだけだ」
殿下の言葉は普段からは考えられない程に儚く脆い。抱きしめてしまいたい程に。だが、それはできない。あまりにも畏れ多すぎるから。
「それだけで十分です。殿下」
そう言って俺は殿下の前に跪いた。貴女だから俺達は身を盾にする。部下のために涙を流す貴女だから、俺達は喜んで共に死地へ赴ける。
「・・・阿呆が」
貴女に涙は似合わない。だからそうやって呆れたように微笑んで下さい。
「首尾は?」
「よくないですね」
宿営地のほぼ中心位置に設置された幕舎は指揮所として機能していた。俺が居ない間、ネイルが指揮を取っていたが、どうやら現状はあまり良いものではないらしい。
「人員があまりに減りすぎました。3割超えの損害なんて、普通なら壊滅と判断されてもおかしくありません。物資の喪失も無視できません」
「殿下が無事なら問題ない」
「勿論そうです」
苦言を呈しつつも、殿下の事には手放しで賛同するあたり、こいつも流石親衛隊である。とりあえず、そのあまり良くない現状を聞くことにした。
「カタリが陣頭指揮をとって宿営地の首尾を固めています。ただ、武器と弾薬の喪失で防衛用の火器が不足しています」
「駐機している戦列艦からある程度引っぺがせ。銃座の重機関銃があるだろ?」
「それと、周囲に偵察隊を派遣したところ、どうも人が居た痕跡がある、と」
「見張りを増やして警戒を強めろ。少し離れた所に蟲使いを置いてるだろ。報酬増やすから警戒に加わらせろ」
「分かりました。それで・・・もう1つ。少々面倒なことに・・・?」
「何だ?」
ネイルが溜息混じり話した内容に、俺も頭を押さえて溜息を吐くことになった。
原作で殿下がコルベットで泣くシーンがとても感動的で好きです
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うわぁ・・・楽しみだなぁ・・・(白目)
何故こんなに早く投稿できたかは私自身分かりません(キリッ)
感想、アドバイス、ミスの指摘などよろしくお願いします
部下1人を連れて、ガチャガチャと鎧を鳴らして走っていくと既に事が始まってしまったようだ。怒鳴り声が聞こえてくるあたり、どうにも状況はよくないらしい。俺がネイルから聞いたのは、辺境諸国の連中が何かの要求をしているということ。そう言えば、ついさっき入った報告でまだしっかりと把握していなかったな。
「あぁあぁ。面倒なことになりそうだ」
「隊長。どうも辺境諸国の連中はうちの奴と揉めてるみたいです」
「みたいだな。兜を持っててくれ」
「はい」
素顔を晒して行った方が少しは落ち着くかもしれない。部下に兜を託し、喧騒の中へと足を踏み入れた。
「ちょっと通してくれ」
騒ぎ立てる辺境諸国の人々の中に分け入り、喧騒の中心へと進む。すると、親衛隊員の2人と胡散臭い参謀クロトワと辺境諸国の何人かが口論していた。
「お前ら、これはいったいどういう状況だ?」
「風の谷の者が行方不明になった姫の捜索をしたいと」
「・・・ナウシカが行方不明?」
親衛隊員と揉めていたミトじぃに目を向けると苦い表情でこっちを見てきた。やっぱり俺の印象悪いよなぁ。どうも谷の裏切り者みたいな雰囲気だし・・・。
「・・・そうじゃ。姫様は、先程の戦闘で墜落しそうになったパージを腐海の湖に誘導し、不時着させたのじゃが・・・」
と、そこでミトじぃガ口を噤ませた。何か言い辛そうなことでもあったのか?
「蟲の大群が近づいてきての・・・。その最中に姫様は行方不明に・・・」
「蟲に食われたに決まっています。捜索にかこつけて脱走するかもしれません」
「辺境だからといって馬鹿にしとるのか!?辺境とはいえ王族を侮辱するなど、ふざけるのも大概にせい!!」
「なるほど。状況は分かった」
まぁ、どっちの言い分も分かる。ただ少し疑問なのは、なぜナウシカが行方不明になったかだ。蟲に食われることは万に一つ無いと思うが・・・。
「それを取り成す為に、俺が殿下にお伺いを立てようと提案したところだ」
クロトワが何かドヤ顔で言っているが、何勝手に殿下に会おうとしているんだよ。俺はお前が殿下に色目使ったのを忘れてないからな。一応表情には出さないが。
「・・・殿下に伺いますか。ミトじぃ付いて来てくれ」
「おいおい。俺が行けばいいだけの話だろう?隊長様の手を煩わせる気はねぇよ」
またクロトワ何か言っているが、お前は殿下のことを全く理解してないな。まぁ、面倒くさいし好きにやらせるか。
「では、参謀殿、お願いできますか?」
「おう!まぁ、少しまってろよ」
意気揚々と歩いて行ったクロトワの背に軽く殺気を送ってから、ミトじぃに視線を向けた。
「殿下はミトじぃを直接お呼びになると思うから付いて来てくれ」
「・・・分かった」
俺が歩き始めると、周りの奴らは道を開けてくれた。また面倒事がおきないように願いつつ、その道を歩いて行った。
殿下の幕舎へ向かう間、特に会話も何も無かった。幕舎を守っている担当の親衛隊員が見えてくると、ちょうどクロトワが向こうから歩いてきた。何か驚いた表情でこっちを見ているが・・・?
「どうかされましたか?」
「い、いや。殿下が風の谷の者を連れて来いと・・・」
フハハ、ザマァwwwお前ごときに殿下のお考えが分かるわけないだろう!
唇が歪むのを抑えるのに苦労した。
「そうですか。じゃあ、ミトじぃ、中へ」
「・・・ああ」
神妙な面持ちになったミトじぃを連れて幕舎に入る。豪奢な造りの内装の中で、殿下はトルメキアの旗の下に設置された大きなソファに気だるげに横になっていた。鎧を脱ぎ捨たあの俺の心臓が持たない薄着姿で。
一礼すると、殿下はニヤリと笑ってみせた。やっぱりな・・・と言いたげなその表情。そのお姿と相まって・・・ヤベ、鼻血出そう。
「風の谷の者を連れて参りました」
「ご苦労。お前は下がっておけ」
「はい」
ミトじぃだけを残して幕舎から出ると、まだクロトワが残っていた。どうも中の様子が気になるみたいだな。
「殿下のご様子は?」
「分かりません。中に入ろうとしないで下さいね」
中に入ろうとした瞬間、斬り捨ててやる。少しだけ視線に殺気に篭めるとクロトワの表情が若干引きつっていた。
「おいおい、おっかねぇな。隊長様は気にならないのかよ?」
ヒラヒラと両手をあげるクロトワにはどうにも危機感はない。腹に何を隠しているんだか・・・。
「私を幕舎から出したということは、相当の機密ということです」
「殿下を信頼なさっている訳ね。はいはい・・・」
皮肉のつもりなのか分からないが、そんな言葉を残してクロトワは立ち去った。俺はミトじぃが出てくるまで待機しておくまで。
手持ち無沙汰になってしまったので周りの風景に目を向ける。何も異常は無い。だが、吹いている風に先程までにはなかった
ややあって、幕舎がミトじぃが出てきた。
「クシャナ皇女がお前を呼んでおる」
「分かった。1人で戻れるよな?」
「当たり前だ」
敵意が消え切らない微妙な表情でミトじぃは去っていった。それを見送ってから幕舎の中へ入ると、俺の心臓に悪い格好で殿下はソファに寝そべっていた。殿下は仰向けのまま話し始めた。
「奴は秘石の在り処を知らなかった。ナウシカとやらが持っていると踏んでいたが、確証が持てないな」
「はい」
失礼にあたらない程度に殿下を視界から外しつつ静かに頷く。
「風の谷の者には捜索を許可した。だが、条件を出した」
秘石をナウシカが持っていることを確認しなければならない。状況を確実に把握する者が必要だ。それは秘石のことを知っていて、殿下が信頼している者でなければ・・・つまり・・・
「ナギ。貴様もナウシカの捜索に加われ。それが奴らに出した条件だ」
「了解しました」
・・・・・・・・殿下のご命令だ。喜んで従おう。
たとえ、針の筵に突撃することになってもな!!!
ナギ「今日は風が騒がしいな」
隊員1「隊長が厨二になったったwww」
クシャナ「でも少し・・・この風・・・泣いています」
隊員2「ファ!?」
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空でのランデブー(なお、相手は・・・)
最近、アニメ版を見て、気が向いて投稿
時々感想がきていて嬉しいです
出発まで時間が無い中、俺は着替えつつネイルに指示を出す。
「防衛線にはできるだけ兵を置いておけ。
「あるんですか」
「ああ。それと蟲使い達はできるだけ宿営地の近くに移しとけ」
「苦情がきますよ?」
「だとしても、だ。離れすぎてたらいつの間にか殺されてる」
「
そう言って口を噤ませたネイルを俺は軽く睨んだ。
「・・・んだよ」
「よくそんな服を持ってましたね。まさかこうなることを予想していたんですか?」
その言葉に俺は上着のボタンを留める手を止めた。
まぁ、ネイルの疑問も尤もだ。なんせ今の俺は装甲騎兵自慢の甲冑を脱ぎ捨て、風の谷の服に着替えているからだ。ご丁寧に頭巾や頭巾に装着する額当て、ブーツや手袋まで揃ってる。この格好も随分と久しぶりだ。勿論、俺が持ってきた物じゃないがな。
「風の谷から借りたんだよ。流石にあの甲冑じゃガンシップに乗れないからな」
「まぁ、そうでしょうね。慌しい出発ですが、こっちは私がなんとかしますよ」
実のところ、親衛隊を残すことにそこまで不安を感じてない。ある程度指示を出しておけばネイルのことだから後はちゃんとしてくれるだろうし、サポートにカタリもいる。信頼できる同僚がいると安心だね。
「しかし、殿下は何をお考えでこんな命令を出したのでしょうか?」
「さぁな。ま、俺は殿下に従うだけだ」
本当は知ってるけどね。残念ながら秘石についてはネイルにも話せない。こいつのことだからそれとなく察しているかもしれないが。
甲冑は全て諦めたが剣だけは持っていこうか。後は拳銃と・・・自動小銃もか。そこまで荷物は持てないが、そんな時間はかからないだろう。あ~今からミトじぃと2人きりかよ。気が重い・・・。
何人かの親衛隊員と不機嫌な風の谷の者達に見送られて離陸したガンシップは概ね問題なく飛行している。そう、機体には全く問題ない。だが・・・。
「・・・」
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
だから言ったじゃないか!針の筵だって!空気が死んでるんだよ!!どうしろっていうんだ!?
こうなるのは当たり前だ。ミトじぃにしてみれば、俺は風の谷の裏切り者。いくら小さい時に面倒をみていたとはいえ、すぐに打ち解ける訳にはいかないだろう。やっぱり、この前風の谷に強行着陸したのが悪かったんだ。でも、殿下の命令だったからな。しょうがない。
「・・・・・・どうやってトルメキアまで行ったんじゃ?」
って、いきなりかよ!?ま、まぁ、確かに気になるよな。
「あ、ああ。トリウマと途中途中で輸送船で・・・」
「ああ。やはりお前が乗っていったのか。城のトリウマが1匹いなくなってたからの」
「う・・・。よく覚えてるな」
「当たり前じゃ。じゃが・・・、その方法だとどれ程の時間がかかったのか・・・」
「半年ぐらいだったか・・・」
「馬鹿なことしおって・・・」
ぎこちなくではあるが少しずつ会話をしていく。ミトじぃはやはり俺が風の谷を出た後のことを聞きたがり、俺も俺が出た後の風の谷について聞いた。やっぱり、ナウシカはしばらくは元気が無かったと言う。しかも理由が俺がいなくなったことよりも俺が無事なのかを心配してだったらしい。
なんか申し訳ないね。でも、殿下のためだったし、シカタナイネ。
「しかし、なぜ風の谷を出ようと思ったのか・・・」
「親父が死んじまったし・・・殿下を忘れられなかったから」
「なんじゃ、女の尻を追って谷を出たのか?」
「その言い方はないんじゃないか?」
まぁ、事実なんだけどね?
殿下の尻・・・。
・・・・・・・。あ、これ以上はヤバイ。色々とヤバイ。
「はぁ・・・。姫様も気の毒なものじゃ・・・」
「・・・ナウシカには悪いと思っているが、後悔はない」
「・・・。それがせめてもの救いかの・・・」
雲海を眼下に収めつつ、ガンシップは風を切る。
当たる風にはどこか懐かしさを感じた。
某シーン
ク)腐ってやがる。遅すぎたんだ。
ん?何か違う・・・
あ、早すぎたのか。
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あれ?これ同じことを誰かがしていた気がする
こんなニッチな2次小説を読んでくれて感謝感謝
ガンシップで風を切り続けること数時間。
ミトじぃとの昔話も悪くわないが、もうそろそろ何か変化があってもいいはずだが・・・。
「・・・む?」
「どうした?」
ミトじぃが何かに気付いたようなので声をかけてみた。後席は前が全然見えないから全く状況が分からない。ちなみに後方の警戒はちゃんとしている。まぁ、このガンシップに追いつける程の高速で飛ぶ機体なんて無いと思うけども。
「雲の切れ間に何か見えたのじゃが・・・」
「何だって?」
なんとか身を乗り出して前方を見ようとするがやっぱり無理だ。ミトじぃを信じるか・・・けど、どうも風に変な違和感が・・・。
「なんじゃと!?」
「え?今度は何が・・・ってのわッ!?」
何があったか聞く暇も無かった。いきなりの急機動に危うく舌を噛みそうになるものの、おかげで前方への視界が開けた。と、いうか視界が開けた途端に弾丸が飛んできたんだけど!?
「避けるぞ!掴まれぇえ!!」
「・・・ッ!?」
ガンシップが縦軸に回転しながら砲艦スレスレを通り抜けるふざけた機動のせいで、返事をする余裕も無い。こんな機動して馬鹿じゃないか!?ミトじぃも自分の体を考えろよ!?
けれど、ここで不幸中の幸いが起こった。
砲艦スレスレを飛行した時に艦橋の中をはっきりと見ることができたのだ。そう、
「見つけた!ナウシカはあの船に乗っている!!」
「何じゃと!?
ミトじぃが慌てふためく中、俺はこれからどうするか考えた。もし、ナウシカが行動を起こすならこのまま待機するのが吉だ。ナウシカを助けるためだったらそれが最善だろう。
だが、俺の目的はあくまでナウシカが持っているであろう秘石だ。もし、ここでナウシカが
やるならこのタイミングしかない。
「ミトじぃ、聞いてくれ。ナウシカを救出する」
「どうするつもりじゃ?」
「それは・・・」
正直、こんなこと思いつく俺ってそうとう変だと思う。けど、このくらいのことを考え付かないと殿下の親衛隊なんてやってられないね。
「本当にいいのか!?」
「いいから!今は死角だ!進路そのまま!!」
当たり前だ。今、俺はガンシップの底に手をかけて宙釣り状態なのだから。そう今から
・・・馬鹿だね。ああ、馬鹿だ。こんなんが本当に親衛隊隊長してていいのかよ。だれか代わって。いやだめだ。絶対代わらない(錯乱中)
持っていく武器は長さの異なる2本と自動小銃だけだ。ここまでくればやるしかない。
目算で手を離すタイミングを計る。ミトじぃはできるだけ速度を抑えてくれているから、後は俺の度胸だけ。
まだだ。まだだ。まだ。まだ。まだ・・・。
「今!!」
手を離したのは、ガンシップが砲艦の火線に晒される寸前だった。空気の塊が全身に当たり、体を平衡に保つことが一気に困難になる。
だが、ここで風が味方してくれた。
ガンシップの急制動により生じた乱気流がうまい具合に砲艦へと体を誘導したのだ。
着地したのは砲艦の甲板部。回転して衝撃を緩和しつつ、短刀を突き立てて体勢を保持する。
「ふぅ・・・。さて、ここからか」
甲板にへばりついてなんとも格好がついていないが、まぁ結果が重要だ。
しかし、なぜだろう。ユパ様だったらもっと格好良く乗り込んでいた気がする。
ユパ様やミトじぃ、ジル様が若いときの物語の同人誌を見つけました
凄かった
ジル様めっちゃイケメンやん
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言葉って大切だね いや本当に・・・
さて、無事(?)に
「どうやって入ろうか・・・」
飛行中の船なら普通きっちり閉められている。短刀を突き立てつつ、えっちらおっちらと辿り着いた甲板上の足元にあるハッチで確認したから間違いない。
けれど、この砲艦は
「という訳で・・・派手にいきますかね」
そう呟いた俺は、持って来た自動小銃をハッチに向かって乱射した。
するとどうだろう。ハッチには面白いように穴が穿たれ、1弾倉分撃ちこめばボロボロになってしまった。
なんちゅう脆い船じゃ(ミトじぃ感)
「さすが木造。バカガラスでも小銃弾は耐えるぞ」
まぁそんな事は置いといて・・・。
自動小銃の弾倉を代えて左手に持ち、右手には短刀を握る。準備万端。
「1人で乗り込むのは嫌だが・・・しかたないか」
愚痴を言っても始まらない。
ボロボロになったハッチを2,3回踏みつければぽっかり穴が開いたので、意を決して飛び込んだ。
両手が塞がってバランスが取りづらいものだから、膝をしっかり曲げて着地。思いの他上手くできたと安心したのも束の間、視線を上げたみて思わず顔を引きつらせてしまった。
目の前にこれでもかとひしめく臨戦態勢の
・・・。
・・・・・・。
いやぁ
・・・。
・・・・・・。
よし、現実逃避はやめよう。俺はなんでここに来た?ナウシカを救出するためだ。ならまずはあいつと合流しないと・・・。
・・・ここにいる奴ら全員と戦うのは骨だしな。とりあえず話しかけてみよう。大丈夫、
『死ね!クソ野郎ども!』
『ぶっ殺せ!!!』
ここは穏便いくために鞘付きでやるか。
砲艦の艦橋。
多数の
そこには、
2人がここに至るまでには様々な出来事があった。
長くなるので簡単にまとめると・・・。
ペジテのガンシップの襲撃
あぁ、ガンシップのワイヤーが切れてバージが!?
マスク取った笑顔を見せればバージの皆は落ち着くはず!ちょっと肺に瘴気が・・・!?
なんとか着水できた・・・え!?ここって王蟲の巣!?
ランランララランランラン♪(王蟲と心を通わせ中)
なんとか分かってもらえて・・・蟲達が怒っている!?近くに蟲を殺した人がいるの!?探さなきゃ!!メーヴェでビューン・・・
アスベル確保。しかし運悪く、王蟲と遭遇し接触。ナウシカ気絶。アスベル、王蟲に立ち向かうも一瞬で鎮圧される。
アスベル、ナウシカのお陰で王蟲に殺されず。王蟲、ナウシカにメッセージ
腐海の底は案外快適。ナウシカ復活
王蟲のメッセージを頼りに出発
途中、
アスベル は はなしかけてみた
しかし殆ど通じない!?しかもよく分からん
ナウシカ、ブチ切れ。乱闘開始!!
そういえば、貴方たちは何をするつもりなの?え?王蟲でトルメキア軍を壊滅させる!?そこには辺境の小国の人達もいるのに・・・。そんなことさせない!!!
今ここ。
ナウシカは本意で高僧に短剣を突きつけている訳ではない。だが、こうでもしないと
焦るナウシカの気持ちに反して、
もう1つ。何かもう1つのこの状況を打開できるきっかけがあれば・・・。
唇を噛み締めたナウシカの願いは程なくして叶えられた。
最初は小さな物音。
そこから少しずつ大きくなり、振動が加わり、物音が怒号、怒号に剣戟、そして最後に衝撃となって到達した。
ドガシャア!!!!
艦橋のピリピリとした緊張感をぶち壊す衝撃音と共に扉が壊され、甲冑を所々凹まされた
艦橋にいた全員の視線が飛んできた戦士に集中し、そして壊された扉、その先の通路に向けられる。
そこから現れたのは・・・。
「もっと穏便に行きたかったが・・・。いや、誰も殺してないからまだ穏便な方か?」
鞘から抜いていないトルメキアの短刀と長剣を両手に携え、背後に死屍累々と言っていい程の人数の戦士たちが倒した風の谷の衣装を纏った男。
誰もが衝撃を隠せない中で、ナウシカだけがその男の名前を口にした。
「・・・ナギ?」
「ああ。一応・・・助けに来た」
ナウシカの呼びかけに、ナギは長剣を肩に担いで疲れたように言うのだった。
はい、相当久しぶりですが更新です
亀更新ってレベルじゃねぇ!?
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敵の敵は・・・敵ですね おや、王蟲達の様子が・・・
亀投稿ってタグがあるから問題ない
問題ないったらない
こんなこと言ってますけど、読んでくれて本当に嬉しいです
状況を説明しよう。
押し寄せる
・・・なんというか、改めて見てみると結構無茶なことしてるよね。さながらハイジャック。え・・・俺の幼馴染、殺意高すぎ・・・。
しかも、ナウシカの隣には拳銃を構えた男が・・・って、あの服装ってペジテ市の?ということはあいつが・・・。
「どうして、ここに?」
「ナウシカ、知り合いなのか?」
・・・ペジテ市の奴がナウシカに気安く話しかけているのを見ると何かムカつくな。ムカついたので、後ろから忍び寄ってきた奴を鞘付き剣でフルスイングで殴り飛ばした。その飛び様に少しだけすっきりしつつ、ナウシカに呼びかける。
「ナウシカ。ガンシップでミトじぃと助けに来たんだが・・・」
「なんで、ナギが?」
「殿下のご命令だ。・・・まぁ、俺も心配だったからな」
「え・・・!?」
俺の言葉の何に驚いているのか?
まぁいいや。取り合えず、場所移動。左右の剣で牽制しつつ、ナウシカの隣に立つ。何かナウシカの反対側に立っているペジテ市の野郎がすごい形相で睨みつけているけど気にしない。殿下って言ったからばれたか。まぁ、それは置いておいて・・・。殺気立つ
「敵の指揮官を脅迫してたんだ。当然、脱出手段はあるんだよな?」
僧侶を盾にして艦橋から移動し、今は格納庫。
途中、ペジテ市の野郎(アスベルという名だというのをナウシカから聞いた)が絡んできて敵陣の中で内紛という頭の悪い状況に陥りかけたりもしたが、何とか到着はした。
しかもこの間に、ナウシカの口から
格納庫に到達して判明したのが、脱出方法はなんとメーヴェだということだ。
しかも、このメーヴェ壊れてないか?体を預ける部分がごっそりとなくなって、縄になっているんだが・・・。というか、そもそも3人でどう脱出するのか?
格納庫の入り口は
「いけよ、ナウシカ。ここは俺が残る」
なのでそう言ってくれたアスベルは渡りに船だった。正直、自分もそう考えていたところ。
「そんな、アスベル」
「誰かがここを抑えないと誰も脱出できないだろ?それに・・・」
ナウシカには笑顔を見せ、俺には睨み付けてくる。まぁ、俺も睨むけどね。
「ナウシカの幼馴染とはいえ、そいつはトルメキアで俺の敵だ。一緒には居られない」
「奇遇だな。俺もだよ」
戦争とはいえバカガラスに搭乗していた部下は皆、こいつに殺されたのだ。ナウシカが居なければ即刻剣を抜いていた。視線を外し、先にメーヴェに乗ってみる。ナウシカとアスベルが別れの言葉を交わしているのを無視して、操縦桿の役目を担っている紐を持ってメーヴェの操縦方法を思い出す。
まぁ、何とかなりそうかな。
風の谷にいた時もメーヴェよりトリウマの方が好きだったから触るのは7年振りぐらいだが、いけるだろ(慢心)
そんなこんなしていたら、急にナウシカが飛び込んできて二人羽織状態になり紐を握ってしまった。しかも、いきなりエンジンを吹かして離陸するおまけ付き。
「ちょ、、、ナウシ・・・!?!?!?」
混乱したまま何とか紐だけは掴み、一気に
ダイナミック突入からのこのカオスな脱出。しかも、王蟲が急襲を知らせなければならないという最大級の時限爆弾付き。
もう思考停止して、ミトじぃと合流に集中しよう。
目に風ではためくナウシカの髪が入ってきてメチャクチャ痛いけど。
時間はナギがガンシップで離陸するまで遡る。
戦場で状況が急変することはよくあることだ。
それが、朝でも昼でも夜でも。食事時でも、就寝時でも。その合図が、銃声でも、爆発でも、警報音でも。
今回はそれが空に打ち上げられた発煙弾だったということ。
発砲音はガンシップのエンジン音で掻き消され聞こえなかったが、発射地点が宿営地に近かったために何人かの兵士がそれに気付いた。
気付いたという事実こそが重要だった。
幸か不幸か、トルメキア王国第三軍親衛隊の運命が大きく動き始めることになるのだから。
感想書いてくださりありがとうございます!
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