蛇王龍が白兎に憑依転生するなんて間違っているだろうか!? (XIII世)
しおりを挟む

プロローグ

(オレ)の名はダラ・アマデュラ、某超大人気狩猟ゲームの看板モンスターの一体だ。

驚くかもしれんが、(オレ)は前世は人間で、無職だった。

交通事故で死んでしまった(オレ)は転生神を名乗る存在から強制的に転生させられてしまうのだが、その世界がこのモンスターハンターの世界であり転生先がダラ・アマデュラであった。

その転生した日から大変であった、移動する度に地形が崩れるし、(オレ)を討伐しに来る狩人(ハンター)達を返り討ちにしたりしていた。

千を越える狩人(ハンター)を返り討ちにし続けた結果、(オレ)狩人(ハンター)共に畏怖されるほどの存在となり、平穏な日々を送るようになっていた。

そんなある日、(オレ)が古龍渡りをするクシャルダオラを絞殺して丸呑みをしていた時、頭の中で聞き覚えのある声が響いてくる。

『へぇ、結構経験を積んであるみてぇじゃねぇか。』

その声が響いてきた瞬間、(オレ)の機嫌は氷点下まで落ちる。何故なら、その声の主は転生神のものだからだ。

「シュルルルルルルル・・・!!」

『おいおい、そんなに気を荒立ててんじゃねぇよ。』

(巫山戯るな、今更何をしに来た)

『ケケケッ、そう邪険にするなよ。俺様はお前を迎えに来てやったんだぜ』

(どういう意味だ、何千年も放置しておいて今更迎えに来たというのはどういう了見だ)

『簡単な話だ、お前を別の世界に転生(・・)させるんだよ。』

その言葉を聞いた瞬間、(オレ)は口を最大まで開いて転生神を呑み込もうと襲いかかる。

しかし、それは叶わず(オレ)は意識を失った。

 

 

 

『ケケッ、あの野郎初めて会った頃は礼儀正しかったのに尊大になりやがったな。まぁ、その位が丁度良いがな。』

そう言いながら俺様はあいつの転生先を設定する。

『ケケケッ、蛇から白兎になるってのはどんな気分だろうな・・・。』

 

 

 

「おのれっ!!」

意識を失っていた(オレ)が目を覚ますと、そこはどこかの人間の街にいた。

その事から転生させられたことを察するが、(オレ)は身体の違和感に気付いた。

その違和感というのが、視界の低さなどからしてまるで子供になったような感覚があった。

(オレ)はゆっくりと呼吸を整えてから自分の身体を確認する。

すると、そこには白兎を彷彿とさせる少年の姿があった。

その顔を見た瞬間、この世界がどういう世界なのかを理解する。

今転生させられた世界は【ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか】だ。

そして、俺の姿は主人公であるベル・クラネルだ。

「これは一体・・・。いや、考えるまでもないな。」

(オレ)主人公(ベル・クラネル)に憑依転生させた諸悪の根源である転生神に激しい怒りの感情を抱くもぶつけようのない怒りを抱いていても仕方がないと判断し、一先ずは現状を確認するところから始めることにした。

改めて自分の服装を確認すると、ダンジョンに潜るような格好をしておらず日常を過ごすような服装だった。

「ふむ、とりあえずは神ヘスティアを探すとするか。」

そう言いながら(オレ)はベル・クラネルの主神となる神ヘスティアを探すことにした。

すると、案外簡単に見つけることが出来た。

白妖精(エルフ)の男に勧誘を断られ、うなだれる神ヘスティアに近付きこう言った。

「すまない、少し話を良いか女神様。」

そう言って(オレ)が声を掛けると、神ヘスティアは俯いていた顔を勢いよく上げてこう言ってくる。

「そこのヒューマンの君、僕の眷族(ファミリア)になってくれないかい!?」

手を差し出しながらそう言ってくる神ヘスティアに対して(オレ)はこう思った。

「{必死すぎるだろ・・・。}」

その言葉を言うのをグッと堪えてこう言うのだった。

「あぁ、むしろこっちは願ったり叶ったりだ。」

そう言って(オレ)は神ヘスティアの手を手に取った。

こうして迷宮都市(オラリオ)に新興派閥【ヘスティア・ファミリア】が結成され、元蛇王龍であり白兎である(オレ)の【眷族の物語(ファミリア・ミィス)】が始まるのだった。




感想・指摘などお待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1

あの後、(オレ)とヘスティアは互いに自己紹介を済ませた後、とある書店へと入った。

 

店内には老齢のヒューマンが居て、ヘスティアが二階にある書庫を借りるというと、それを了承した。

 

どうやら、馴染みの店のような感じだなと思った。

 

書庫の中に入ると、ヘスティアがこう言ってくる。

 

「それじゃあ、ベル君。神の恩恵(ファルナ)を刻むから上着を脱いでくれ。」

 

「分かった。」

 

ヘスティアの言葉に(オレ)は二つ返事で上着を脱いだ。

 

「わぁ、ベル君の身体結構鍛えてあるんだね!!」

 

そう言ってくるヘスティアに対して疑問に思い、(オレ)も確認するとそこには鍛え抜かれた肉体があった。

 

「{これは・・・、ダラ・アマデュラだった頃の(オレ)に反映されているのか?}」

 

そんな疑問を抱いていると、ヘスティアが声を掛けてくる。

 

「ベル君、どうかしたのかい?」

 

「いや、気にしないでくれ。」

 

(オレ)はそう言ってヘスティアの前に背中を向ける、

 

「それじゃあ、恩恵を刻むぜ!」

 

「あぁ、頼む。」

 

その言葉と共にヘスティアは背中に神の恩恵(ファルナ)を刻んでいく。

 

「なっ、なんなんだ~~~!?」

 

突然、ヘスティアは大声を上げて叫びだした。

 

「どうした、ヘスティア。」

 

(オレ)が問いかけるとヘスティアはこう言ってくる。

 

「ベル君、君は一体何者なんだい?」

 

「どういう意味だ?」

 

ヘスティアの言葉に(オレ)はそう返した。

 

「とりあえず、君の【ステイタス】を確認してくれ。」

 

そう言ってヘスティアは(オレ)の【ステイタス】を書き写した羊皮紙を手渡してくる。

 

そして、その羊皮紙に書かれていた(オレ)の【ステイタス】は・・・。

 

ベル・クラネル

 

G級

 

力EX 耐久EX 器用EX 敏捷EX 魔力EX

 

古龍EX 蛇王龍EX 耐異常SSS 狩人SSS 拳打SSS 破砕SSS 剛身SSS 幸運SSS 採掘SSS

 

蛇王龍(ダラ・アマデュラ)

・早熟する

蛇王龍(ほこり)が続く限り効果持続

蛇王龍(ほこり)の丈により効果向上

 

蛇王龍の肉体(ボディ・ダラ・アマデュラ)

・力、耐久、器用、敏捷のアビリティ常時超高補正

・状態異常無効

蛇王龍(ほこり)が続く限り効果持続

蛇王龍(ほこり)の丈により効果向上

 

蛇王龍の剣鱗(ソードスケイル・ダラ・アマデュラ)

・防御力超補正

 

蛇王龍の扇刃(ファンブレード・ダラ・アマデュラ)

・力のアビリティ超高補正

・武器装備時、効果向上

蛇王龍(ほこり)が続く限り効果持続

蛇王龍(ほこり)の丈により効果向上

 

蛇王龍の素材(マテリアル・ダラ・アマデュラ)

・睡眠時、蛇王龍の素材が自動的に採取される。

蛇王龍(ほこり)が続く限り効果持続

蛇王龍(ほこり)の丈により効果向上

 

蛇王龍の鋼皮(イエロ・ダラ・アマデュラ)

・耐久のアビリティ超高補正

・防具装備時、効果向上

蛇王龍(ほこり)が続く限り効果持続

蛇王龍(ほこり)の丈により効果向上

 

 

 

【ステイタス】を見て(オレ)はダラ・アマデュラだった頃の事が反映されている事が分かる物だった。

 

「ベル君、君は一体何者なんだい?」

 

その言葉に対して(オレ)はこう言った。

 

「その事については後で話そう。ここでは誰に聞かれているか分からないからな。」

 

そう言って(オレ)は上着を着て立ち上がる。

 

「それもそうだね、それじゃあ行こうか僕達の本拠(ホーム)へ!!」

 

「あぁ。」

 

書店を出て俺達は【ヘスティア・ファミリア】の本拠(ホーム)である廃教会の隠し部屋へと帰ってきた。

 

すると、ヘスティアがこう言ってくる。

 

「ごめんよ、ベル君。本拠(ホーム)がこんな所で・・・。」

 

そう言ってくるヘスティアに対して(オレ)はこう言った。

 

「いや、ここから成り上がっていくと思えば悪くないだろう。」

 

そう言って(オレ)はソファに腰掛けて言葉を続ける。

 

「それでは、(オレ)の事を話すとするか。」

 

「!! そうだね、聞かせてくれベル君。」

 

(オレ)は自分の身に起こった事全てを話した。

 

元々別の世界の人間だったという事

 

転生神と呼ばれる存在に無理矢理転生させられ、蛇王龍ダラ・アマデュラとして異世界で転生させられた事。

 

何千年も放置されながらも生きていると転生神がまたも現れ、この世界に転生させられた事。

 

全てを話し終えると、ヘスティアは立ち上がり大声を上げる。

 

子供を無理矢理転生させるだって!?何処の馬鹿だ、そんなことをしでかすのは!!

 

憤慨するヘスティアに(オレ)は嬉しく思いながらもこう言った。

 

「ヘスティア、落ち着け。」

 

「これが落ち着いていられるか!!」

 

(オレ)の言葉を聞いてヘスティアは声を荒げる。

 

(オレ)の為に怒ってくれるのは感謝するが、あいつはそれすら楽しむのではないかと思っている。だから、そんなに荒ぶる事はないさ。」

 

そう言うと、ヘスティアは椅子に座り直しながらこう言ってくる。

 

「君がそれでいいならボクは構わないけど・・・。」

 

「よし、それならこの話は終わりだ。」

 

ヘスティアの言葉に(オレ)はそう言って話を終わらせるのだった。

 

 

 

その話が終わると、俺はソファから立ち上がりこう言った。

 

「ヘスティア、(オレ)はギルドに行って冒険者登録をしてくる。」

 

「うん、分かったよベル君。」

 

そう言ってから(オレ)本拠(ホーム)を出て、ギルドへと向かうのだった。

 

ギルドに着くと、ダンジョンから戻ってきた冒険者で溢れていた。

 

その中を進んでいき、受付に辿り着いた(オレ)は目の前にいるギルドの女性職員へと声を掛ける。

 

「すまない、冒険者登録をしたいんだが・・・。」

 

(オレ)がそう言うと、ギルドの女性職員がこう言って来る。

 

「それでは、こちらの書類に名前などを記入して提出してください。」

 

「分かった。」

 

女性職員の言う事に従って手渡された紙に詰まる事無く書き終える。

 

「書き終わった、確認を頼む。」

 

「はい、かしこまりました。」

 

だが、俺のレベルの所はG級と表記されている為余計な騒ぎを避ける為に偽装はしているがな。

 

全て記入し終えた紙を確認していく女性職員がこう言って来る。

 

「【ヘスティア・ファミリア】というのは新興派閥ということですね。」

 

「あぁ。」

 

女性職員の言葉に同意する。

 

そうやって話が進んでいき、(オレ)の冒険者登録が完了した。

 

すると、女性職員がこう言ってくる。

 

「あの、よろしければ新人冒険者のためのダンジョン講義を実施させていただいているのですが如何されますか?」

 

そう言ってくる女性職員に対して俺はこう言った。

 

「なら、頼む」

 

「解りました、それではこちらの通路に別室でお待ち下さい。ダンジョンに関する資料をお持ち致しますので」

 

「解った」

 

こうして、(オレ)の九千年振りの講義を受けるのだった。

 

三時間の講義を終えて(オレ)は懐かしさを感じる気怠さを感じていた。

 

「{まぁ、結構面白かったし}」

 

そう思いながら正面の女性職員がこう言って来る。

 

「それでは、クラネル氏はダンジョンにおけるアドバイザーはどうされますか?」

 

「アドバイザー?」

 

「はい、冒険者の方には専属のアドバイザーを務めるのも我々ギルド職員の役目でもありますので」

 

「なら、君で良い。少しでも顔を知っている人物の方が安心できるのでな」

 

「分かりました、それでは私エイナ・チュールがクラネル氏の専属アドバイザーとなります」

 

「あぁ、よろしく頼むエイナ」

 

「はい」

 

こうして、(オレ)の冒険者登録は無事に終了するのだった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



冒険者登録を済ませた(オレ)は新規冒険者に貸し出しているという武器と防具を受け取ると、早速ダンジョンへと潜るのだった。

 

まず最初にダンジョンの一階層に足を踏み入れると、早速ゴブリンが三体襲い掛かって来るのに対して手に握るナイフで切り捨てる。

 

『グギャアアアアッ!?』

 

ゴブリンは断末魔と共に灰となり魔石だけが残る、そしてその瞬間バキリッと音を立ててナイフが砕け散るのだった。

 

「ふむ、ナイフ自体が(オレ)の力に耐えられなかったか」

 

砕けたナイフに視線を落としながらそう言ってナイフを収納してから先へと進んでいく。

 

ナイフが壊れてからは襲って来るモンスターに拳と蹴りで対応している。

 

「フッ!!」

 

『グギャアアアアアアアアッ!!』

 

ゴブリンの顔面を潰し、コボルトの顎を蹴り上げ、ダンジョン・リザードを叩き落として魔石と怪物素材(ドロップアイテム)を回収していく。

 

「これでようやく身体の感覚が理解出来たぞ」

 

そう言いながら手を握ったり開いたりしていると、(オレ)はある物を発見する。

 

それは下層に繋がる階段だった。

 

「よし、身体の感覚が戻って来た所だしな。もう少しだけ降りてみるか」

 

そう言って(オレ)は一階層から二階層へと足を踏み入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「正直、はしゃぎすぎたという自覚はあるがまさか深層まで降りて来てしまうとはな…」

 

あの後、二階層に降りた(オレ)だったが物足りなさを感じた為この際だから行ける所まで行ってしまえという安易な考えに至り、到達階層をどんどん増やしていった。

 

その結果が、短時間で深層五十階層まで降りて来てしまった。

 

「数時間前の自分を殴りたい…」

 

そう言いながらもそのまま立ち止まっている訳にも行かない為、俺はどこかで腰を下ろせる場所を探し始めるも、数分で見つける事が出来た。

 

「ふぅ、魔石と怪物素材(ドロップアイテム)もかなり集まったな」

 

休息を取るにあたって(オレ)は各階層で集めた魔石と怪物素材(ドロップアイテム)を確認していく。

 

「これで良し、戻ると…」

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

「!? さっきの悲鳴は向こうからだな」

 

整理を終えて地上に帰還しようとした矢先、悲痛な叫び声が響き渡るのを聞いた(オレ)はその声が響いてきた場所にへと走る。

 

すると、声の響いてきた場所に着くと目に飛び込んできたのは極彩色の芋虫がどこかの派閥(ファミリア)野営地(キャンプ)を襲っている光景だった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



どこぞの派閥(ファミリア)野営地(キャンプ)が襲われている、と言ったが俺は襲われている派閥(ファミリア)の事を知っている。

 

野営地(キャンプ)の至る所に滑稽な笑みを浮かべた道化師(ピエロ)紋章(エンブレム)派閥(ファミリア)を俺は一つしか知らない。

 

【ロキ・ファミリア】、原作でも外伝でもその強さは本物であり二大派閥の一角である事を証明している。

 

そして、今の状況はもしかしなくても外伝でもあった事態である事を理解した。

 

そうこうしている内に別行動をしていた【ロキ・ファミリア】の幹部達も戻って来て形勢が逆転し芋虫は全て焼き払われるのだった。

 

更に言えば後から現れた巨大モンスターも剣姫ことアイズ・ヴァレンシュタインによって倒されるのだった。

 

何事も無く終わった事を確認した俺は地上に戻ろうと動き始める。

 

「さて、(オレ)は帰ると…」

 

「ウホォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

俺がそう言い掛けた瞬間、()()()()()()()()()()()()に帰り道に向いていた足を止める。

 

「まさか、奴もこの世界に来ているのか…!?」

 

(オレ)はその咆哮を聞いて驚きを隠せずにいた、自分以外にも送られていたとは思いもよらなかったからだ。

 

「不味いな、【ロキ・ファミリア】は乗り切ったとはいえ疲弊している。そんな状態でラージャンは仕留めるのは出来るのかが疑問だな、もしもの時は(オレ)が介入すればいいだろう」

 

そう言いながら(オレ)は咆哮の聞こえた場所へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「総員、警戒!!」

 

私達は今、目の前に現れた新種のモンスターと対峙している。

 

突然現れたモンスターは黒い毛並みに一対の巨大な角、発達した腕が特徴のモンスター。

 

でも、このモンスターは普通じゃない感じがする…。

 

それは他の皆も感じている…、油断すれば殺される…!!

 

「なんなのよ、コイツ」

 

「分かんないけど、モンスターなら倒さないとね」

 

「サッサと片付けんぞ」

 

ティオネ、ティオナ、ベートさんがそう言っていると、フィンから指示が飛んで来る。

 

「僕、アイズ、ベートはモンスターの気を引いて隙を作りつつ削って行く!ガレス、ティオネ、ティオナは二人が作った隙を付いて攻撃するんだ!それを交互に続けて疲弊させてからリヴェリアとレフィーヤの魔法で止めを刺す!!ラウルとアナキティは他の団員を連れて退避!!」

 

「はい、団長!!」

 

「オッケー!!」

 

「任せておけっ!!」

 

「了解した!!」

 

「わ、わかりました!!」

 

「ぶっ殺してやる!!」

 

「うん!!」

 

「はいっす!!」

 

「はい!!」

 

こうして、私達は未知のモンスターへと挑むのだった。

 

 

 

 

「不味いな、これは」

 

そう言いながら(オレ)はラージャンと戦闘を繰り広げる【ロキ・ファミリア】の様子を見ていた。

 

敏捷の高い三人がラージャンの隙を作っても、ラージャン自体の動きを抑制していないから簡単に躱されてしまう。

 

更に、ラージャンの攻撃は破壊力があるから躱す他ないが動きが読み辛いのか攻撃を受ける形を取らざるを得ないようだ。

 

魔法で対応しようにも動きが早過ぎて一歩でも間違えば味方に被弾してしまうから撃とうにも撃てない状態が続いている。

 

更に攻撃が当たったとしても一番硬い腕である為か、決定打には至っておらず苦戦している。

 

しかも、ラージャンは金獅子の由来でもある激昂状態にまだなってない。

 

もし、現状を打開できないまま激昂状態になられたら全滅する。

 

そう判断した(オレ)はこの戦いに介入する事にした。

 

 

 

 

「あーもー、攻撃あったんないよーっ!!」

 

ティオナがそう言いながらも拳を放つけど空を切ってしまう。

 

「チョロチョロしてんじゃねぇーぞ猿野郎!!」

 

ティオネも激怒しながら拳を放つけどさっきのティオナと同じで空を切る。

 

「くそったれがぁっ!!」

 

ベートさんが蹴りを放つと腕に当たるも全く効いた様子が無い。

 

「これでどうじゃ!!」

 

ガレスの戦斧の一撃も腕に弾かれてしまう。

 

「フッ!!」

 

ガレスの攻撃の隙間を埋めるようにフィンの槍が攻撃するけど腕の薙ぎ払いで弾かれてしまう。

 

「やぁっ!!」

 

私の攻撃も反応して躱されてしまう。

 

それに動きが速すぎてリヴェリアも、レフィーヤも魔法を撃てないでいる。

 

「がはっ!?」「「「ティオナ(さん)ッ!!」」」

 

このままだとジリ貧だと思っていると、ティオナがモンスターの攻撃をまともに当たってしまい壁に叩きつけられてしまった。

 

叫ぶ私達を尻目にモンスターはティオナに襲い掛かった。

 

間に合わない、そう思った瞬間ティオナに襲い掛かったと思っていたモンスターが逆方向に飛んで行き壁に叩きつけられていた。

 

一瞬、何が起こったのか理解できなかった私達だったけど吹き飛んだ理由は解った。

 

拳を突きだした格好をしてティオナの目の前に立っている白髪の少年(あの子)がモンスターを殴り飛ばしたんだという事を…。

 

「えっ…、誰?」

 

ティオナの声で意識を覚醒した私達は少年の言葉に耳を傾ける。

 

「それは後にするとしよう。まずは、ラージャンを止めるとしよう」

 

ラージャン、あのモンスターの事を言っているのかな?

 

「ウホォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

そう考えていると、後ろから咆哮が聞こえて来て警戒する私達の横を通って少年はこう言った。

 

「さぁ、一狩り行こうぜ!!」

 

 

 

戦闘場所に向かっていると、【ロキ・ファミリア】の【大切断(アマゾン)】ティオナ・ヒリュテがラージャンに殴り飛ばされた光景が目に入り、追撃を仕掛けるラージャンとティオナ・ヒリュテとの間に入ると同時にラージャンの顔面に拳を叩き込むと飛んで行った。

 

「えっ…、誰?」

 

ティオナ・ヒリュテの言葉に(オレ)はこう言った。

 

「自己紹介は後だ。まずは、ラージャンを止めるとしよう」

 

「ウホォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

そう言った後、ラージャンの咆哮が聞こえて来る。

 

(オレ)は【ロキ・ファミリア】を横切ってこう言った。

 

「さぁ、一狩り行こうぜ!!」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

久々の投稿で文面はおかしくなっていないことを願うばかりです。



(オレ)がお決まりの台詞を言った所で凶狼(ヴァナルガンド)が噛み付いてくる。

 

「何が一狩り行こうぜ、だ!!勝手に出てきて人の獲物を横取りしようとしてんじゃねぇぞ、兎野郎!!」

 

そう言ってくる凶狼(ヴァナルガンド)に対して(オレ)はこう言い返した。

 

「文句なら後にしろ、凶狼(ヴァナルガンド)。暢気に話をしていられるほどラージャン()は大人しくない」

 

(オレ)の言葉に対して今度は勇者(ブレイバー)が反応する。

 

「もしかして、君はあのモンスターのことを知っているのかい?」

 

「あぁ、まぁな。(オレ)の(前世の世界で)住んでいた場所に居たからな」

 

『!?』

 

(オレ)の言葉に衝撃を受ける【ロキ・ファミリア】の面々は驚愕の表情を浮かべる。

 

しかし、今はそんな悠長に構えていられない。

 

「ウホォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

咆哮と共にラージャンは自分に痛手を負わせた(オレ)に向かって右拳を打ち下ろして襲ってくる。

 

それに対して(オレ)はがら空きになった右脇腹に向かって本気の蹴りを叩き込むと骨の砕ける感触が伝わってくる。

 

そして、蹴りを喰らったラージャンは先程殴り飛ばされた時と同様に宙を舞い、壁に激突し地面に倒れてのたうち回るもその命を落とすのだった。

 

早急に討伐できたことに関しては幸運と言いたいところだが、ラージャンを知っている(オレ)としては違和感でしかない。

 

「ふぅ、こんな所か」

 

そう言いながら(オレ)は体を伸ばしていると、大切断(アマゾン)が話しかけて来る。

 

「ねぇねぇ、あのモンスター倒したんだよね?」

 

「あぁ、それがどうかしたか」

 

「なんで灰にならないのかなって思ってさ」

 

「簡単な話だ、ラージャンはダンジョンで生まれたのではなく自然界で生物として生まれているからだ」

 

『は!?』

 

(オレ)の言葉に【ロキ・ファミリア】の面々はキョトンとした顔をする。

 

「フザけたこと抜かしてんじゃねぇぞ、兎野郎!第一級冒険者が苦戦するような生物がモンスターじゃねぇ訳ねぇだろ!!」

 

「だが、今お前達の目の前に居るラージャンは正真正銘自然界で生まれた生物だ。むしろ、なんでコイツがダンジョンにいるのかが謎だ」

 

凶狼(ヴァナルガンド)の言葉に(オレ)は間髪入れずに答える。

 

「それってどういう事?」

 

「ラージャンは「超攻撃的生物」と呼ばれるほど好戦的で獰猛な生物なんだ。眠らせて運び込んだとしても今の今まで騒ぎになっていないことがおかしい」

 

大切断(アマゾン)の問いに答えていると、怒蛇(ヨルムガンド)が話しかけて来る。

 

「つまり、こんな凶暴な奴がいたら騒ぎになることは確実って事ね」

 

「あぁ、それにラージャンは()()()()()()()()()()

 

「はぁ?それどういう意味よ」

 

その言葉に対して剣呑とした空気が漂う。

 

もしかしなくても、自分たちが弱いと言われていると思っているのだろう。

 

結果としてはそうかもしれないが、違う。

 

「本来ラージャンはあそこまで打たれ弱くない、(オレ)の蹴り一発で仕留めることは出来ない。つまり、ラージャンは他に戦っていた

存在が居ると言うことだ」

 

「なるほど、僕達と交戦した時から瀕死だったという事か・・・」

 

「チッ!!」

 

『・・・・・・・・・』

 

険しい顔をする【ロキ・ファミリア】の面々に対して(オレ)はかける言葉などなかった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5

あの後、(オレ)は【ロキ・ファミリア】と別れて更に深層へと向かうことにした。

 

理由はラージャンをあそこまで弱らせた存在の確認をしておきたいからだ。

 

ラージャンは「古龍級生物」に位置づけられている牙獣種モンスター、それを瀕死状態にまで追い込むモンスターの存在は看過できない。

 

「ブモォオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

すると、ブラックライノスの大群が押し寄せてくる。

 

「邪魔だ」

 

押し寄せてくるモンスターの大群に対して(オレ)は拳と蹴りで薙ぎ払い、ダンジョンの奥へと進んでいくのだった。

 

そうして辿り着いたのは五十二階層。

 

ここからは階層無視の砲撃があるんだったか・・・。

 

そう頭の中で思考を巡らせた後、(オレ)は躊躇なく走り抜けていく。ぐれ

 

すると、すぐさま地面が爆ぜた。

 

「もう捕捉されたのか・・・!?」

 

意外にも速い捕捉に驚いている暇などなく通路を進んでいく。

 

突き上がる轟炎、紅蓮の衝撃波が(オレ)の背中を真っ赤に染め上げる。

 

確かにこれは地獄だな、下層からの狙撃を躱しながらそう頭の中で愚痴ると腕を太糸の束に絡め取られる。

 

「キシャアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

糸の先に居たのはデフォルミス・スパイダー。

 

しかし、その巨大蜘蛛は爆炎に焼き尽くされ消滅する。

 

そして、太糸の拘束を逃れた(オレ)は痺れを切らし狙撃によって空いた穴に飛び込んだ。

 

飛び込んだ大穴から見た光景は地獄と言うに相応しいものだった。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

 

大穴の底から打ち上がってくる砲竜(ヴァルガング・ドラゴン)の咆哮に(オレ)は眉一つ動かさずに見下ろしている。

 

すると、一匹の砲竜(ヴァルガング・ドラゴン)が顎を開く。

 

今まさに階層を貫く大炎塊が装填された口が直上にいる(オレ)に標準を定められた。

 

「チッ、めんどくせぇな」

 

そう言っている間にも竜の口から火球が発射されるも、降下中ということ忘れてしまうほどの敏捷(はやさ)で岩盤を蹴り抜き、火球を回避し底へと向かう。

 

しかし、飲み込まれたとしても蛇王龍(オレ)からすればこんな火なんぞ無意味に等しいんだよ。

 

だが、まぁ爆破耐性が低いから厄介だとは思った。

 

大火球を回避で乗りきった(オレ)は大穴の底に到着したのだった。

 

「さて、ここにラージャンを瀕死にさせた奴がいるのか?」

 

そんなことを言っていると、紫紺の飛竜が襲いかかってくるも一蹴するのだった。

 

「探すにしてもこいつらは邪魔だよな・・・。ブッ潰す」

 

その言葉通りに襲いかかってくる大紅竜と紫紺の飛竜をその身一つで蹂躙していく。

 

火球を吐こうとするならば下顎を蹴りあげ、拳と蹴りで一撃で粉砕していく。

 

そうして、全てのモンスターを倒した後大量の魔石と怪物素材(ドロップアイテム)が転がっていた。

 

「これは・・・持って帰るのが骨だな・・・」

 

そう愚痴りながらも回収し(オレ)は早速原因を探るために動き始める。

 

ラージャンをあそこまで弱らせれるとすれば古龍級生物(同格)古龍(格上)の奴等か、狩人(ハンター)だ。

 

もしかすれば、あの世界の狩人(ハンター)が来ているのであれば早く接触しなくちゃならなくなる。

 

そうやって歩き回っていると、そこであることに気がつく。

 

それは火の粉が舞っているということだ、これは明らかに戦闘が行われているということだと判断した。

 

今この五十九階層にいる冒険者は(オレ)だけのはずだが、もし戦闘が行われているなら間違いなく狩人(ハンター)がこの世界に来ているということになる!!

 

その考えに至った(オレ)は駆け出した。一刻も早く狩人(ハンター)と接触するためにだ。

 

しかし、この時(オレ)は失念していた。

 

戦闘時でなくても火の粉塵を振り撒く爆炎の古龍のことを・・・。

 

「まさか、ラージャンの他にこいつまで来ているとはな・・・」

 

そう、今(オレ)の目の前にいるのは古龍の一角である・・・。

 

「炎王龍テオ・テスカトル」

 

『グルゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

こうして、(オレ)の初古龍討伐が始まるのだった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6

炎王龍(テオ・テスカトル)・・・、前世では古龍渡りをしている個体を捕食したことは何度かあるがあの振り撒いている粉塵が一番面倒臭いんだよな。

あれのせいで(オレ)の住処が何度も地形変化したことか・・・。

過去の記憶を振り返っていると最初に炎王龍(テオ・テスカトル)が動きを見せる。

突貫してくると同時に飛びかかってくる炎王龍(テオ・テスカトル)に対して大きく後ろに跳んだ。

そして、炎王龍(テオ・テスカトル)が着地した瞬間爆発が起きる。

「やはりな」

粉塵を起爆させた炎王龍(テオ・テスカトル)に隙が生じる。

その瞬間を逃すこと無く、炎王龍(テオ・テスカトル)の懐に潜り込みガラ空きになっている胴体に右拳による一撃を食らわせる。

「グォオオオッ!?」

それによって呻き声を上げるが、我は追撃として浮き上がった炎王龍(テオ・テスカトル)の尾を掴み戦鎚(ハンマー)投げの要領で投げ飛ばして見せた。

ダンジョンの壁に激突した炎王龍(テオ・テスカトル)は起き上がると同時に駆け始めたかと思えば突然空を飛び始める。

それに伴って橙色の粉塵も周囲に散布されていくのを見て我は奴のしようとしている事が解った。

「拙い・・・」

そう言葉を続けようとしたが時既に遅し、その瞬間炎王龍(テオ・テスカトル)は火花を起こした瞬間我は爆炎に飲み込まれた。

【スーパーノヴァ】

自身の周囲に広範囲を巻き込むド迫力の大爆発を巻き起こす大技を使ってくるって事は奴もラージャンとの戦闘で弱っていることの証明だ。

「げほっげほっ・・・!!本当に面倒だ・・・」

そう言いながらも我は自分の状態も確認する。

全身は煤に塗れ防御した腕は重度の火傷を負い所々に軽度の火傷を負っている。

「グゥオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

すると、炎王龍(テオ・テスカトル)が此方を見て勝利を確信したかのように雄叫びを上げたのだった。

その瞬間、我の中の何かがキレた。

「オイ、何を勝ち誇ってやがる・・・。今もお前の敵(オレ)は生きてるぞ、それなのに勝ち鬨を上げるたぁ調子に乗ってんじゃねぇぞ!!!」

その怒号と共に地面を蹴り砕くと同時に炎王龍(テオ・テスカトル)の懐に入り込み顎目掛けて右拳を叩き込むと顎の骨が砕ける音が響く。

「グルゥオッ!?」

当然の衝撃に勝ち誇っていた炎王龍(テオ・テスカトル)が動揺する。

右拳を喰らわせた後一度地面に降り、今度が喉に右の貫手を放つと喉の肉を抉りそのまま声帯をも潰した。

「がっ・・・がっ・・・!?」

喉を潰され顎も砕かれた炎王龍(テオ・テスカトル)は自身の巨体をふらつかせるほど足下が覚束ない様子だった。

「これで終わりだ」

我はその一言と共に炎王龍(テオ・テスカトル)頭蓋(あたま)を踏み砕いたのだった。

「ふぅ、この身体での戦闘はまだ慣れる必要があるな」

そう言って我は炎王龍(テオ・テスカトル)の死体と他の怪物素材(ドロップアイテム)を持って地上へと帰還するのだった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7

(オレ)が五十階層に戻ってくると、早速炎王龍(テオテスカトル)金獅子(ラージャン)の解体へ取りかかる。

 

そして、解体して手に入れた素材は・・・。

 

テオ・テスカトルからは獄炎の龍鱗・炎王龍の堅殻・炎龍の宝玉

 

ラージャンからは金獅子の剛角・金獅子の重牙・牢固な重骨

 

それをバッグパックに無理矢理押し込んでから我は地上に戻ることにした。

 

ちなみに解体で残った肉は根性で完食した。

 

そうして、地上に戻ってくるとテオとラージャンの素材以外の魔石と怪物素材(ドロップアイテム)を換金するためにギルドに向かうのだった。

 

「換金を頼む」

 

「はい、畏まりました」

 

換金を済ませると、総額八千万ヴァリスとなって俺の手に帰ってきた。

 

「初のダンジョンにしてはまぁまぁか」

 

そう言って我はギルドを後にするのだった。

 

そうして帰宅途中に夕食の素材を買ってから本拠(ホーム)に戻っていると明らかに我の事を尾行している奴らがいる。

 

この感じから我の稼いだヴァリスが目的か・・・、相手は恐らく【ソーマ・ファミリア】だな。

 

尾行者の正体に当たりを付けて我は迎撃するために路地裏へ入り込む。

 

そうして、路地裏の奥まで行くと行き止まりに行き着いた。

 

「ここなら誰にも見られないだろう」

 

そう言っていると、尾行してきた冒険者達が姿を現す。

 

「観念しろ、ガキ。大人しく金を渡すんなら無傷で・・・ぶぎゃっ!?」

 

最初にやってきた男に対して我は不意打ちで蹴りを叩き込んだ。

 

「てめぇこのクソガキ舐めた真似しやがってもう泣いて謝っても許さねぇぞ!!」

 

蹴りを入れられた男が得物である剣を抜きながら

怒声を上げてくる。

 

「ふん、酒に溺れ子供を食い物にする外道にはこれくらい優しいくらいだろう」

 

嘲笑混じりにそう言ってやると冒険者達の顔が一気に血が上り顔が赤くなっていた。

 

「もう謝ったって許さねぇからな、クソガキィ!!テメェは変態の玩具として売りつけてやる!!」

 

「やってみろ」

 

我の言葉を皮切りに冒険者達が襲いかかってくるが、数の多さでは勝ってはいたが蛇王龍(ダラ・アマデュラ)の力を受け継いでいる我の相手にはならず全員地面を舐めることになった。

 

その後の事は【ガネーシャ・ファミリア】の引き取って貰い【ソーマ・ファミリア】から賠償金を支払わせる事で決着とした。

 

その日の夜、ヘスティアに今日のことを話すと憤慨していた。

 

「全く、ソーマの奴は子供の躾をちゃんとしているのか!!」

 

「あぁ、そうだな」

 

そう言いながらヘスティアがじゃが丸君にかぶりつき、我はそれに相槌を打つ。

 

「まぁ、向こうにはきっちり賠償金を支払わせたから今回は見逃してやろう」

 

「ベル君がそう言うならボクも構わないけどさぁ・・・」

 

不貞腐れた様子でそう言ってくるヘスティアに我はこう言った。

 

「恐らくだが【ソーマ・ファミリア】の内側が問題なのだろう。それも酒関連でだ」

 

「ベル君、どういう事だい?」

 

俺の言葉に食いついたヘスティアが問いかけてくる。

 

「我の専属アドバイザーから聞いた話だがギルドでも換金のことで揉めているそうだ、それも日常茶飯事と言った具合にな」

 

「それがソーマのお酒と何の関係があるんだい」

 

「答えは簡単だ、大金を納めた者だけが神酒の本物を飲むことが出来るからだ」

 

「一度でも神酒を口にすれば虜となりもう一度口にしたくばそれに見合うだけの金を持ってこいといった具合にな」

 

「ソーマの奴、子供達を使ってそんなことを・・・」

 

怒りを滲ませる声でそう言いながら顔を顰めるヘスティアに訂正を入れる。

 

「だが、其処の仕組みを考えたのは神ソーマじゃない」

 

「じゃあ、誰がそんなことをしているんだい」

 

「派閥内で主神を除いて最も力を持つとしたら?」

 

「【ソーマ・ファミリア】の団長か!!」

 

俺が問題風に問いかけるとヘスティアはハッとして答えを導き出す。

 

「そうだ、しかもその団長様はヤバい奴等とも連んでいるらしいな」

 

「そうなのか・・・所でベル君?どうして君は其処までのことを知っているんだい?」

 

「知っているからだ」

 

「嘘は付いてないな・・・、じゃあ質問を変えるよ。()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「教えない」

 

ヘスティアの質問に我自身の言葉でハッキリと拒否の意思を見せる。

 

「・・・・・・」

 

我の対応に訝しんだ顔をするヘスティア、だがこうするしかない。

 

「すまないが、これら全てに関しては話すことはない」

 

「そうか、君が其処までするのには理由があるんだろう。ならボクはもう何も聞かないよ」

 

「済まない」

 

「いいよ、別に謝らなくたって。君は君の決めた道を歩いて行けば良いんだから」

 

「あぁ」

 

こうして、夜も更けてきたこともあって我達は眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

ここは【ロキ・ファミリア】本拠(ホーム)である黄昏の館にある会議室。

 

そこでは【ロキ・ファミリア】の主神と首脳陣と幹部そしてラージャンとの戦闘を経験したレフィーヤが揃っていた。

 

「皆、集まったね」

 

最初に口を開いたのは団長であるフィンが早速本題に入る。

 

「今回集まって貰ったのは五十階層で遭遇したラージャンという生物についてだ」

 

ラージャン、その名前を聞いた主神を除く全員は顔を顰める。

 

そこへ【ロキ・ファミリア】主神のロキが全員に問いかける。

 

「なぁ、うちはそのラージャンてのを見てへんから分かれへんのやけどそんなにヤバい奴なんか?つーか、フィンらが苦戦するくらいやったら更に深層から来たんとちゃうんかいな」

 

「いや、それはない」

 

主神の言葉にフィンがそれを否定する。

 

「フィン、何でそんなこと断言出来るんや?」

 

「僕もだけど、ラージャンがモンスターでないことはここに居る全員が聞いている」

 

「誰からや」

 

「【ヘスティア・ファミリア】のベル・クラネルからだよ」

 

「って、誰やねん!!つか、ドチビの所の眷族(こども)かいな!?」

 

「神ヘスティアを知っているのか、ロキ?」

 

フィンから情報提供者の名前を聞きツッコミを入れるが、その主神の名前に反応したことをリヴェリアに指摘される。

 

「あぁ、うちとドチビ・・・ヘスティアは犬猿の仲でな。ドチビの癖に実らせよってからに・・・」

 

主神の説明から仲が悪いと言うことしか解らなかったが、まぁロキの嫉妬から来るものだとも。

 

「まぁ、それは置いといてやそのベル・クラネルっちゅー眷族(こども)のおかげっちゅー事やな」

 

「そうだね」

 

ロキの言葉にフィンが同意する。

 

「それにしてもそんな生物がおるとはなぁ・・・.

しかし、そんなら何でダンジョンに居ったんや?」

 

「それについてはベル・クラネルも疑問に思っていたよ。ラージャンは「超攻撃的生物」らしいからね」

 

「・・・まぁ、皆が生きとるから良しとしようか」

 

そうして、ロキのその一言で会議は終わりを迎えるのだった。

 

「・・・もっと強くなりたい」

 

自室に戻ったアイズは一人そう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8

(オレ)が目を覚ますと蛇王龍(ダラ・アマデュラ)の素材が転がっていた。

 

これに関しては驚くことはない、【蛇王龍の素材(マテリアル・ダラ・アマデュラ)】の効果だからだ。

 

蛇王龍の扇刃×2、蛇王龍の剣鱗×4、古龍の血×6

 

それが今回スキルで出現した素材だ。

 

「これなら大剣が・・・無理だな。獄炎石がねぇ」

 

素材を見て思いついた考えを言おうとしたが素地が一つ足りないことに気付いた。

 

獄炎石、それは蛇王龍(ダラ・アマデュラ)の大剣を作成するためには必要な素材だがこの世界に存在していないことは明白。

 

それをどう補えばいいのか思考を巡らせてみると、あることを思いだした。

 

それは火炎石の事だ、闇派閥(イヴィルス)の自爆装置の要となっている火炎石ならば代わりなるのでは?

 

その考えに至った我は早速火炎石を求めてダンジョンの深層・四十四階層に向かうのだった。

 

 

 

 

 

場所は移動し、四十四階層。

 

ここはまるで火山の腹の中に入り込んだと錯覚させるほどの熱量を発する階層で冒険者の思考と体力を奪っていく。

 

「最初の探索ではさっさと通過していったからあまり覚えていないんだよな」

 

そう言いながら歩いていると、左右の炭色の壁面と地面に亀裂が走る。

 

そこから現れるのは岩石のモンスターであるフレイムロックの大群。

 

怪物の宴(モンスター・パーティ)か・・・、今の我にとっては有り難い!!」

 

火炎石を求めている我からすれば幸運でしかなく猛然と襲いかかる。

 

「うらぁっ!!」

 

最初のフレイムロックの顔面を粉砕したことを皮切りにそのままの勢いで粉砕していく。

 

大群を全滅させると魔石と火炎石(ドロップアイテム)を回収しているとあるものを発見する。

 

「これは・・・炎龍の粉塵か?しかし何で四十四階層にあるんだ?」

 

見つけたのは炎王龍(テオ・テスカトル)の素材だが・・・、我が炎王龍発見したのは『竜の坩堝』である五十八階層だった。だが、ここに素材があると言うことはここにいたという事になる確固たる証拠だ。

 

つまり、炎王龍は最初から五十八階層にいたのではなくこの四十四階層にいて五十八階層まで降りていたと言うことになる。

 

「これはあのクソ転生神の仕業なのか?いや、ここまで過剰に手を加えていると言うことはあまりにも行動が派手過ぎる」

 

転生神の仕業と勘繰ってはみるも動きが活発すぎる。

 

それだけ派手に動いていれば他の神も気付きそうなものなのだが・・・。

 

「まぁ、今はそんなことを考えていても仕方がないか」

 

そう言いながら我は再び魔石と火炎石(ドロップアイテム)回収を始めると衝撃が走った。

 

それは火炎石に混じって獄炎石があったからだ。

 

「本当に驚いた、獄炎石がダンジョンにあるなんて・・・まさか!?」

 

俺は獄炎石に驚きながらある可能性が頭を過った。

 

それは・・・ダンジョンの改変。

 

我をこの世界に転生させた転生神が介入しダンジョンそのものを改変した可能性、これが頭の中から抜け落ちていたことに気付いた。

 

「いやいや、幾ら神とは言えそんな介入が許される訳がない。明らかに逸脱しすぎている。しかし、本来ありもしない生物や鉱物が出てきているとなると否定も出来ないか」

 

頭の中で色々な可能性を巡らせるが、確信に至るものは無い。

 

「これはまだ可能性の話で済めば良いんだがなぁ・・・」

 

そう愚痴を溢しながら我は魔石と火炎石(ドロップアイテム)と獄炎石を回収し地上にも戻るのだった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9

ダンジョン探索二日目にして獄炎石(ありえないもの)の登場にダンジョンの改変が行われているかも知れないという疑問を抱きながら(オレ)は地上に戻ってくると魔石と獄炎石を除く怪物素材(ドロップアイテム)を換金し、足早に本拠(ホーム)へと帰還する。

 

「今、戻ったぞ」

 

「お帰りベル君、たくさん稼げたかい?まぁ、君の【ステイタス】だとダンジョンのある程度深くまで進めるだろうからね」

 

「まぁ、そうなんだがダンジョンで不味いことが起こっているかも知れない」

 

「どういうことだい?」

 

我の言葉にヘスティアは顔を顰め、真面目な声音でそう聞いてくる。

 

「実は我の元いた世界にしかなかった獄炎石(もの)がモンスターから怪物素材(ドロップアイテム)として発掘された。モンスターといい、獄炎石といいこうまで我の元いた世界と関連している

ものが出てくるというのも何者かの作為を感じている」

 

「つまり、その君の言っている何者かの作為って言うのは・・・」

 

「「ダンジョンの根本的な改変」」

 

我とヘスティアの絞り出した言葉が完全に一致する。

 

「まさかそんな・・・あり得ない。いや、神々なら・・・いやそれでも・・・」

 

あまりの衝撃の強さにヘスティアは自問自答を始めてしまう。

 

我も事の大きさに戦慄しながら考えを巡らせてはみるものの妙案は浮かばなかった。

 

「ヘスティア、今現状把握が一番の手でしかないようだ」

 

「うん、ボクも考えてはみたけどダンジョンのことはベル君に任せっきりになってしまうしね」

 

こうして、俺達は話し合いを終えて眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

話し合った日の翌日、眠りから覚めると寝ぼけた状態で蛇王龍(オレ)の素材を片付けた後ヘスティアを起こしたが起きず朝食を食べ今日の目的を実行するために荷物を持って本拠(ホーム)を出るのだった。

 

ちなみにヘスティアは今も眠りこけている。※あと一時間後でバイトの時間

 

まぁ、困るのはヘスティアなので反省という意味でも学んで貰おう。

 

そうして我は目的の場所に辿り着く。

 

その場所というのが原作での仲間の一人であるヴェルフ・クロッゾの鍛冶工房、今日の目的は蛇王龍の素材を使ってヴェルフに武器を打って貰うことだ。

 

「誰だ、お前」

 

工房の扉の向こうから声を掛けようとしたとき、後ろから声が掛けられる。

 

「ここに何の用だ?」

 

「実は・・・」

 

「魔剣なら打たねぇぞ」

 

警戒心でそう言ってくるのは原作での仲間で鍛治師のヴェルフ・クロッゾ。

 

我が要件を伝えようとした矢先、ヴェルフがそう言ってくる。

 

「お前の言いたいことは解ってる、他の連中と同じで【クロッゾの魔剣】が欲しいんだろ」

 

「要らん」

 

「いいか、武器ってのは使い手の半身だ!!武器ってのは使い手の命を守るもんなんだよ!!」

 

「いや、話聞けよ」

 

「それに比べて魔剣は限界が来れば砕けちまう、使い手を見捨てて砕けちまうそんなの俺は武器としては認めねぇ!!」

 

「おい」

 

「俺は魔剣を打たない、解ったら帰れ!!」

 

「いい加減にしろ」

 

「ぶべらっ!?」

 

我は思わずヴェルフに平手打ちを喰らわせる、こうでもしないと互いに話せないからな。

 

「てめぇ、何しやがる!!」

 

殴られたヴェルフは我の胸倉を掴んでくる。

 

「お前は人の話を聞け、魔剣を求める奴等ばかり相手にしているからとはいえやたらめったらに魔剣目的の客と決めつけていると本当に終わるぞ」

 

「なんだと?」

 

我の言葉に少し冷静さを取り戻したヴェルフに更に言葉続ける。

 

「我はお前にこの素材全てを使って大剣を打って欲しい」

 

そう言って我は素材の入った袋を目の前に出した。

 

「なんだこりゃ、どの素材も見たことがねぇ・・・」

 

ヴェルフは袋に入っている蛇王龍の素材を手に取り戦慄する。

 

「どうする、鍛治師(ヴェルフ・クロッゾ)

 

「上等だ、やってやる!!」

 

挑発混じりにそう言うとヴェルフはやる気に満ちた声でそう返してくる。

 

「じゃあ、頼んだぜ」

 

「おう、任せろ!!・・・っと、そういえば名前なんて言うんだ?」

 

「あぁ、名乗れてなかったな。我は【ヘスティア・ファミリア】のベル・クラネルだ」

 

「そうか、ベル俺が最高の大剣に仕上げてやるぜ!!」

 

「あぁ、頼む」

 

そうして、我はヴェルフに武器制作をした後ダンジョンに向かうのだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

10

ヴェルフに仕事の依頼をした後(オレ)はダンジョンに来ていた。

 

「さて、他に影響を受けている場所がないか探すとするか」

 

俺の前世に存在した獄炎石(もの)がこの世界のモンスターから採取された。

それは何者かによるダンジョンの根本的改変、それが起こっている可能性が高い。

 

「全く、面倒なことをしてくれるな」

 

その改変を行っている可能性があるとすれば我をこの世界に転生させたあのクソッタレだ。

 

あの快楽主義者が考えそうなことではあるが・・・。

 

「まずは上層からだな」

 

そうして我の異変調査が始まるのだった。

 

調査を始めて数時間が経過したがこれといって決定的なものは無かった。

 

「ふむ、これだけ探してもそれらしいものが一切見つからなかったと言うことは我の思い過ごしな訳がないか・・・、実際に見つかっているのだから何らかの変化は起こっているはずだ」

 

そうして、今日の調査もといダンジョン探索を終了した。

 

本拠(ホーム)に帰ると夕食を済ませると今日の調査報告をヘスティアにする。

 

「上層にはこれといって変化は見受けられなかった」

 

「そっか、それならひとまずは安心かな」

 

我の報告を受けヘスティアはそう判断した。

 

「しかし、油断は出来ん。改変が何処で成されているのか解っていない現状ではどれほどの被害を生むのかも計り知れん」

 

「そうだね、これからも警戒を頼むよ」

 

「あぁ」

 

そうやって話し合った後、我達は眠りについたのだった。

 

 

 

翌日、目を覚ますと蛇王龍の素材があった。

 

蛇王龍の剣鱗×6、蛇王龍の胸殻×2、蛇王龍の鋼皮×4、渦巻骨×8、古龍の血×2

 

これが昨日今日の獲得した素材の合計だ。

 

「これなら太刀が鍛造(つく)れるがまた今度にしよう」

 

そう言いながら我はダンジョンに向かうべく準備を整えるのだった。

 

ヘスティアの朝食を用意した後、自分の朝食と準備を終えた我はすぐにダンジョンに向かった。

 

その途中、奇妙な視線を感じ取るとその方向へ身体を向けるとその先には摩天楼施設(バベル)があった。

 

「なるほど、今のは神フレイヤか・・・」

 

原作同様にベル・クラネル(オレ)は目を付けられたと言うことだ。

 

「ダンジョンの事といい、面倒だ」

 

そう言いながら我はダンジョンに向かうのだった。

 

 

 

 

 

その頃、ダンジョン二十四階層の西に位置する通路に一体の(モンスター)が出現する。

 

その竜はくすんだ桃色の鱗に背中から尻尾にかけて黒い体毛が生えている。

 

すると、竜が突然背中から翼を展開し、鼻先からも何やら骨らしきものを展開し周囲の匂いを探っている様子を見せる。

 

そして、竜は何かを嗅ぎつけそれに目掛けて走り出す。

 

その方向に居たのは負傷し血を流す冒険者数名。

 

「ブラッドサウルス!?」

 

「違う、別の奴だ!!」

 

「くそっ、こんな時に!!」

 

「たすけ・・・」

 

冒険者達が悲痛な声を上げるも竜は構うこと無く巨大な顎を開け冒険者に食らい付く。

 

「「「ぎゃぁああああああああああああああっ!!!」」」

 

冒険者達はその竜に為す術もなく食い殺されてしまった。

 

冒険者を襲った竜の正体・・・それは

・・・。

 

【蛮顎竜】アンジャナフ

 

「グゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

二十四階層にアンジャナフの咆哮が響き渡った。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11

ダンジョンに入った(オレ)は上層を駆け下り中層に到達すると早速モンスター共が襲ってくる。

 

「邪魔だ」

 

火を吐こうとするヘルハウンドを蹴り飛ばし、アルミラージを踏み潰し、バットバットはアルミラージの石斧で打ち落とし、ハード・アーマードは拳を叩き込んでいく。

 

そうしてモンスター共を片付けていき、我は十八階層にやって来るとならず者の街(リヴィラ)が騒がしいことに気付く。

 

その事が気になり立ち寄ってみると、其処には一人の血塗れの冒険者とそれを取り囲むリヴィラの住人。

 

「おい、これは一体何があったんだ?」

 

俺が一人の住人に話しかけると、驚きの内容を聞かされる。

 

「あぁ、なんでも二十四階層でブラッドサウルスらしきモンスターに襲われて逃げてきたらしいんだがそいつに仲間を喰われちまったらしい」

 

「そうか」

 

冒険者という危険なものに身を置いていればやって来る出来事、最初はそう思っていた。

 

次の言葉を聞くまでは・・・。

 

「しかも気でも可笑しくなったのかそのブラッドサウルスは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って言い出す始末だからな」

 

「!!」

 

俺の反応に気付かずその住人は話を続ける。

 

「しかも、それだけでもあり得ねぇのに跳躍したり炎まで吐きやがると言いやがるんだから相当狂ちまってんな」

 

「そうか、だが命あっての物種だからな」

 

「全くだ」

 

そうして、我はリヴィラを出るとそのまま二十四階層に向かうのだった。

 

十九階層を踏破した我は二十階層に入ると其処にはアイズとレフィーヤがいた。

 

「剣姫に千の妖精(サウザンド)か」

 

「貴方は」

 

「ベル・・・」

 

「!?」

 

アイズが我の事を名前で呼んだことに対してよほど衝撃的だったのかレフィーヤが驚き顔をしながら固まっている。

 

「何かあったの?」

 

「あぁ、まぁな」

 

それを無視して我達は話を進める。

 

「ラージャンと同じように我の(前世の世界)で生息していたモンスターが冒険者を襲ったらしい」

 

「「!?」」

 

我の言葉にアイズとレフィーヤはその話を聞いて驚愕し目を見開く。

 

「そのモンスターってどんなの?ラージャンみたいに強いの?」

 

そう言ってくるアイズの問い。

 

「名前は【蛮顎竜】アンジャナフ、強さ的にはラージャンと比べれば下だが油断すればLv.3ですら死ぬ可能性は高い」

 

「!!」

 

我の言葉にレフィーヤが顔を青ざめている。

 

まぁ、無理もないか。

 

死ぬと言われて動揺するのは正常な判断な方だからな。

 

 

「そのモンスターの居場所は解ってるの?」

 

「さっきアンジャナフに襲われたという冒険者が十八階層のリヴィラで治療を受けていてな、二十四階層で遭遇したと言っていたが当てには出来ん」

 

「何故ですか、モンスターなら階層に留まっているものですし」

 

そう言ってくるレフィーヤに対して我はこう返す。

 

「それはダンジョン産まれのモンスターの話だ、アンジャナフは歴とした生物だから階層に留まることは考えにくい上に奴の習性からも留まっている可能性は低い」

 

「習性?」

 

「あぁ、アンジャナフは一度獲物と定めた物に執着する。恐らくだがリヴィラに逃げ込んだ冒険者のことを追いかけてくるかも知れないと言うことだ」

 

「だったら、戻ってその冒険者を守らないと!!」

 

レフィーヤがその話を聞き、声を荒げる。

 

千の妖精(サウザンド)、我が可笑しいと思った所はそこだ」

 

「え?」

 

我の言葉にレフィーヤは疑問符を浮かべる。

 

「アンジャナフが重傷の冒険者にまんまと逃げられていることがだ」

 

「他のモンスターに邪魔されているからでは?」

 

「それなら・・・って、剣姫はどこだ?」

 

「アイズさんならさっきまでそこに・・・」

 

「グゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

レフィーヤと話し込んでいる内にアイズが居なくなり、西の方角からアンジャナフの咆哮と思わしきものが響いてくる。

 

「まさか・・・」

 

「そのまさかだろ」

 

レフィーヤの言葉に同意しながら我達は走り出す。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

しかし、蛇王龍(ダラ・アマデュラ)の規格外性能(スペック)を持つ我に着いていけずレフィーヤは息絶え絶えになっている。

 

千の妖精(サウザンド)、今は事態が事態だから許せ」

 

「はぁはぁ・・・っ、えっ!?」

 

我はレフィーヤを抱え全力でアンジャナフの居る方角へと駆け出した。

 

「きゃぁああああああああああああああっ!?」

 

駆け出した瞬間、地面は抉れ踏み割れる。

 

そして、あまりの敏捷(はやさ)に絶叫するレフィーヤだが早く目的地に辿り着かなくてはいけないため我慢して貰うしかない。

 

そうして、目的の場所に着くと其処には切り刻まれ息絶えたアンジャナフとその上に佇むアイズがいた。

 

「全く・・・、流石と言うべきかなんというか・・・」

 

その光景を見ながら言葉を漏らすとアイズが此方に気付く。

 

「あっ、ベルにレフィーヤ、遅かったね・・・」

 

この発言に対して我はちょっとイラッとしたので反省させると言う意味でこう言った。

 

「今の事は九魔姫(ナイン・ヘル)に伝えるからな」

 

「!?」

 

母親(リヴェリア)に伝える、それは少女(アイズ)にとっては一番効く説教(くすり)だ。

 

リヴェリアの名を出されて動揺しあたふたするアイズを尻目に我はアンジャナフに近付く。

 

すると、鋭い剣での傷の他に爪で引き裂いた様な傷もあった。

 

「おい剣姫、この爪痕のようなものはなんだ?」

 

「! 解らない、その爪痕は私が戦う前からあった。それに動きがおかしかったよ」

 

この爪の攻撃だけじゃないな、恐らく・・・。

 

「毒か」

 

「それならダーク・フィンガスの毒を受けていたと言うことでしょうか?」

 

「ううん、それなら爪痕以外の場所にも毒の粉が付いてるはず」

 

毒についてのレフィーヤの指摘にアイズがすかさず否定する。

 

「爪に毒・・・」

 

それなら思い当たるモンスターがいるんだが・・・。

 

今は考えても仕方がないか、とりあえず剥ぎ取りを済ませるか。

 

「何をしているんですか?」

 

我の行動を疑問に思ったレフィーヤが問いかけてくる。

 

「素材を剥ぎ取っているんだ、こいつらの素材は武器や防具になるからな」

 

「へぇ、そうなんですか・・・って本当ですか!?」

 

我の説明を聞きレフィーヤがそう答える。

 

「あぁ」

 

蛮顎竜の鱗×2 蛮顎竜の牙×1

 

「ほら」

 

「?」

 

我がアンジャナフの素材をアイズの前に出すと首を傾げる。

 

「お前が狩ったのだからこの素材はお前のモノだ、剣姫」

 

「解った」

 

我の行動の意味を理解し、アンジャナフの素材を受け取るアイズ。

 

「それでは、我はここまでにするがお前達は如何する?」

 

「私達も帰ろっか」

 

「はい、アイズさん」

 

そうして、アンジャナフによる冒険者襲撃事件は幕を閉じた。

 

しかし、問題はアンジャナフに毒を喰らわた正体は未解決のままである。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

12

アンジャナフ討伐の翌日、(オレ)はヴェルフの工房に来ている。

 

ヴェルフから注文していた大剣が出来上がったという連絡があったからだ。

 

「ヴェルフ、完成したんだってな」

 

「おうよ!ベル、これがお前の大剣だ!!」

 

そう言って目の前に出されたのは正しく我の望む大剣。

 

一見、戦斧と見紛うてしまう程巨大な刃を持つ大剣。

 

その一振りは幾万のモンスターの生命(いのち)断ち切るだろう。

 

「ヴェルフ、良い出来だな」

 

「そうか?気に入って貰えたんなら俺も満足だ」

 

こうして、俺は「大振りな剣鱗の欠片」を手にした。

 

「ベル、頼みがあるんだ」

 

「なんだ?」

 

「俺をお前の部隊(パーティー)に加えて欲しいんだ」

 

「別に構わない」

 

「本当か、助かる!!」

 

こうして、我はヴェルフと部隊(チーム)を組むことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後我とヘスティアは【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)である黄昏の館に訪問している。

 

何故、そんなことになっているのかというと昨日アイズがやらかしたことをただ事実だけを書き記した手紙をエイナ経由で渡して貰った。

 

アイズの方は完全に油断していたようでまさか手紙で伝えてくるとは露にも思っておらず母親(リヴェリア)団長(フィン)にこってり絞られたらしい。

 

そうして、通された応接室で待っているとフィンとリヴェリア、ガレス、ベート、ティオネ、ティオナ、ラウル、アナキティと疲弊しているアイズとレフィーヤ、何故かボロボロの神ロキがやってきた。

 

「すまない、待たせてしまったね」

 

「構わない、そっちにはそっちの事情があるからな」

 

フィンの言葉にそう返して対談が始まる。

 

「始めに自己紹介をしておこうか。ロキとは初対面だろうしね」

 

「せやな、初めましてやな。ウチが【ロキ・ファミリア】の主神ロキや」

 

「初めまして、神ロキ。我はベル・クラネル【ヘスティア・ファミリア】の団員です。それでこっちが・・・」

 

「あぁ、ドチビやろ」

 

「ちょっと待て、ロキ!!ボクの自己紹介の邪魔をするんじゃない!!」

 

「ハン!!ドチビの自己紹介なんぞ・・・ブゲラッ!!?」

 

「ロキ、彼は我々の恩人だ。仲の悪い神の眷族だからと言って喧嘩腰は止めろ」

 

「済まないねベル・クラネル、神ヘスティア」

 

リヴェリアがロキを窘め、フィンが謝罪してくる。

 

「それは構わないんだが・・・、部屋に入ってきた時から気にはなっていたんだが神ロキは何故ボロボロなんだ?」

 

「なに、いつものことだから気にしないでくれ」

 

「解った」

 

「いや、ベル君それで納得するのはおかしいと思うよ!?」

 

我の切り替えの早さにツッコミを入れてくるヘスティアだが無視(スルー)する。

 

「昨日の一件は全てアイズとレフィーヤから聞かせて貰った。また君の住んでいた場所からモンスターがダンジョンに現れた様だね」

 

「あぁ、前回のラージャンに引き続いてダンジョンの外にいるモンスターがダンジョン内にいたと言うことになる」

 

「なぁ、そのラージャンって言うモンスターのこともうちょい詳しく聞いてもええか?」

 

「構わない」

 

さっきまで痛みに悶えていたロキが復活しそう言ってくる。

 

「フィン等の遭遇したラージャンっちゅうモンスターは瀕死に近い状態やったんやろ、それでも第一級冒険者が苦戦するようなそないな化け物をそこまで追い込めるんや?」

 

「簡単に言えば純粋な強さだが、後は数だな」

 

「つまり、今のダンジョンにはそのラージャンを追い詰めたそのモンスターがまだ居るっちゅう訳やな」

 

「いや、それは我が狩っておいた」

 

『は?』

 

ロキの言葉を否定するように我がそう言うと全員が素っ頓狂な顔をする。

 

「竜の坩堝に降りたときにな。そこには古龍がいた」

 

「古龍?」

 

「簡単に言えばあらゆる生態系を逸脱した生物だ」

 

「つまり、どういうこと?」

 

「化け物」

 

我の言葉に全員が口を閉じる。

 

すると、ラウルが話しかけてくる。

 

「あの、純粋にその古龍について知りたいッス」

 

「ラージャンを追い詰めた古龍の事か?」

 

「はいっす」

 

「解った。ラージャンを追い詰めた古龍の名は【炎王龍】テオ・テスカトル、炎と爆発を操る古龍だ」

 

「炎と爆発・・・」

 

「後方に伸びる長い角、口外に露出した鋭い牙、そして赤い鬣と、獅子にも見える頭部が特徴の古龍で王を思わせる堂々たる気風、古龍種の中でも特に凶暴と云われる荒々しい気性を兼ね備えている古龍だ。業火の王、煉獄の主、陽炎龍、炎帝などと呼び名も多様だ」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

我の説明を聞いてロキ・ファミリアは黙り込む。

 

すると、アイズがこう言ってくる。

 

「他の古龍についても教えて欲しい」

 

「それは挑むために対処法として聞くという意味なら我は教えるつもりはない」

 

「どうして?」

 

「その答えは己自身がよくわかっているんじゃないのか」

 

「!!」

 

我の言葉にアイズは目を見開く。

 

「じゃあさ、昨日アイズが倒したっていうアンジャナフってどういうモンスターなの?」

 

「アンジャナフは古龍でも古龍級生物でもない普通のモンスターだ。獣竜種に位置づけされている」

 

空気を変えるように質問をしてくるティオナに答える。

 

「それって強いの?弱いの?」

 

「それは個体によるから見た目による判別は難しいな」

 

「そっか〜」

 

ティオナは我の言葉にそう返すのだった。

 

そうやって話していると、フィンがこう言ってくる。

 

「もし、そのモンスター達がダンジョンの中ではなく外から来たらどうなる?」

 

「ヤバい」

 

「いや、急に説明が雑やんけ」

 

「そう答えるしかないからだよ、神ロキ」

 

フィンの質問に答える我にツッコミを入れてくるロキにそう返すのだった。

 

カンカンカンカンッ!!

 

「きゃああああああああああああああああああああっ!!」

 

「ゴォアアアアアアアアッ!!」

 

すると、外から悲鳴とともにモンスターの鳴き声が聴こえてくる。

 

「何だ何だ!?」

 

突然の事態にヘスティアが慌てる。

                                                                                                       

「待て、アイズ!!」

 

リヴェリアが静止するも聞かずに飛び出していく。

 

「フィン、あたしも行くね!!」

 

「待ちなさい、馬鹿ティオナ!!」

 

「待ちやがれ、バカゾネス!!」

 

「ま、待って下さい皆さん!!」

 

アイズに続いてティオナ、ティオネ、ベート、レフィーヤが部屋を飛び出す。

 

「すまない、ベル・クラネル。もし・・・」

 

「あぁ、我の所に居たモンスターなら対処しなくてはな。だが、まずは本拠(ホーム)に武器を取りに戻らないといけないがな・・・」

 

フィンの言葉を皆まで聞かずとも解ったため、俺はヘスティアにこう言った。

 

「ヘスティア、神ロキも連れて俺達の本拠(ホーム)に避難しろ」

 

「えっ、どういう事だい!?」

 

我の言葉に動揺するヘスティアに説明する。

 

「もし、ここまで被害が及ぼすモンスターなら主神であるヘスティアと神ロキを守る事も重要になってくる」

 

「確かに・・・、ラウルにアキは先行してアイズ達を援護しろ。それからクルス達にロキと神ヘスティアの護衛をするように伝えろ」

 

「了解(っす)!!」

 

フィンの命令に二人は即行動し事態が動いていく。

 

勇者(ブレイバー)感謝する。行きはさっきも言ったが武器を取りに行く為同行する」

 

「解った、出来る限り早く頼むよ」

 

「あぁ」

 

こうして、各々が行動を開始する。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。