アクセル・ワールド/フォーゲット・ジュエル (こぶ茶)
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設定資料

『アクセル・ワールド/フォーゲット・ジュエル』読んでくださいましてありがとうございます。
まだな方はぜひ読んでくだされば幸いです。

さて下記内容は『アクセル・ワールド/フォーゲット・ジュエル』のキャラクターなどの
外見等の細かな設定をづらづらと書かせて頂きました。
記載内容は本編で新たなキャラや追加情報が登場次第、随時更新していきます(`・ω・)ゝ

(2013/06/09追記:安堂 春絵、ライガの設定文を更新しました。)


=====================  登場人物設定  =====================

 

・【鈴峰 宏斗(すずみねひろと)/オブシディアン・バイパー】

 本作の主人公。江戸川区住んでいる中学1年生。

 一緒に住んでいる2つ上の姉からブレイン・バーストを貰いバーストリンカーになるが、

 突如、その姉がポイント全損しブレイン・バーストの記憶をなくしてしまった。

 真相を探るためブレイン・バーストを疾走する。

~アバター情報~

◎カラー:黒系(黒曜石色) ◎タイプ:機動近接M型

 半透明な黒色装甲を持つ暗殺者風のM型アバター。

 頭部はにフードを被ったような形状に牙のついた半仮面を付けている。

 右手首に篭手型強化外装《サリテュードバイト(孤独な牙)》を装備。

 その他に胸、四肢に軽装甲が付いている。

 拘束・切断系に強く、打撃系に弱い。モース硬度5

 ・≪索敵妨害≫サーチジャミング(常時発動型・初期アビリティ)

  「相手のガイドカーソルに自分の位置報告が表示されない。」

 ・≪存在迷彩≫エグズィステンスステルス(限定発動型・習得アビリティ)

  「自分の体を光学迷彩で隠す。使用中は少しずつ必殺ゲージを消費する。」

 ・《エクリプス・ベナム》(貫通系状態異常外装用必殺技・Lv2UPボーナス)

  「必殺ゲージ50%消費 相手に強化外装による特殊な一刺し攻撃。状態異常付与:毒」

 ・《攻撃力強化》(能力値強化・Lv3UPボーナス)

 ・《アビリティ効果延長》(アビリティ強化・Lv4UPボーナス)

 

 

・【寧々森 日向(ねねもりひなた)/フローライト・モルフォ】

 江戸川区住んでいる中学1年生。

 普段は穏やかな物腰な性格なお嬢様でだけど、いざという時は凛とした性格になる。

 事故によって盲目になってしまった。1つ上の姉がいる。

~アバター情報~

◎カラー:黄色系(蛍石色) ◎タイプ:特殊間接F型

 黄色の振り袖着物を着た様なビュジュアルのアバター。

 頭部は長い髪を背中のあたりで結んでいるような形。 振り袖を広げると蝶が羽を開いているように見える。脚は付いてるけど、移動は浮遊式で速度は遅い。

 炎熱・腐食系に強く、貫通に弱い。モース硬度4

 ・《フレア・フェアリー》(光・爆発系必殺技・初期技)

  「必殺ゲージ3%消費 蝶エネミーを召喚。蝶を操作、爆破できる。」

 ・《オブサベイション・フェアリー》(特殊系必殺技・初期技)

  「必殺ゲージ5%消費 蝶エネミーを召喚。蝶を操作、蝶を介して通信・視覚情報を得る。」

 ・《必殺技限度数強化+3》(必殺技強化・Lv2UPボーナス)

 ・《必殺技限度数強化+3》(必殺技強化・Lv3UPボーナス)

 ・《必殺技限度数強化+3》(必殺技強化・Lv4UPボーナス)

 

 

・【安堂 春絵(あんどうはるえ)/アンバー・メモリー】

 江戸川区住んでいる中学1年生。宏斗や日向の同級生。眼鏡っ子。

 常に敬語で礼儀正しいが、たまに暴走する。

~アバター情報~

◎カラー:黄色系(琥珀色) ◎タイプ:特殊間接F型

 調理等でつける頭巾を被った頭部に薄翅型の耳あてが付いており、

 へそ位置まで覆い隠すようにケープ型の装甲を身に纏っている。

 図鑑のような本型強化外装『イミテーションレジスター(登録模倣)』装備。

 ・《ブック・メモリー》(特殊系外装用必殺技・初期技)

  「必殺ゲージ60%消費 対戦相手の必殺技を本で受け止め、必殺技を記録する。最大数3」

 ・《ブック・マーカ》(特殊系外装用必殺技・初期技)

  「必殺ゲージ源技÷2%消費 強化外装に登録された技を効果半減で使用できる。」

 ・《登録最大数強化+1》(必殺技強化・Lv2UPボーナス)

 ・《登録最大数強化+1》(必殺技強化・Lv3UPボーナス)

 ・《登録最大数強化+1》(必殺技強化・Lv4UPボーナス)

 

 

・【鈴峰 由貴(すずみねゆき)/ルベライト・ハンター】

 主人公の姉。中学2年生。姉御肌な性格をしている。

 主人公・宏斗(オブシディアン・バイパー)のブレイン・バーストの《親》。

 強さもポイントもそれなりあったのに、突如ポイント全損しブレイン・バーストを失った。

 

・【寧々森 鷹乃(ねねもりたかの)】

 日向の姉。中学2年生。絵に書いたような天真爛漫な性格。

 日向(フローライト・モルフォ) のブレイン・バーストの《親》

 宏斗の姉・由貴の親友。突如ポイント全損しブレイン・バーストを失った。

 

・【** **(*** **)(ライガ)/ゴールド・ライガー】

 江東区に住む中学3年生。ツンツン頭で面倒見のいい大雑把なお兄さん。

 春絵(アンバー・メモリー) のブレイン・バーストの《親》

 ~アバター情報~

◎カラー:メタリック系(黄金色) ◎タイプ:**M型

 頭は戦隊物のような金色のマスクに上部と左右込み噛み部分に鬣状の突起がある。

 黒色のボディースーツに肩・胸・腕・腰・脛に金色の装甲が装着されており、

 まさしくライガーを想像させる。

 

 

================= 対戦済デュエルアバター =================

 

【ネイビーゲーター】◎カラー:青系(藍色) ◎タイプ:獣形攻撃近接M型

 全長2m程の鰐人のM型アバター。ワニ人間というよりは2足歩行の鰐。

 一番特徴は人間サイズでも人のみしてしまいそうな大きな口。

 機動性は遅いが一撃・一撃が非常に重い。

・《フィジカル・クラッシュ》(切断系必殺技・初期技)

  「必殺ゲージ60%消費 大きな顎で相手を砕く。部位欠損大補正あり」

 

【カーマイン・コーンシェル】◎カラー:赤系(韓紅) ◎タイプ:遠距離M型

 胸や肩が赤色の装甲が装着されており右肩や頭の形が筒巻貝に似ている。

 狙撃銃型強化外装『ダウスシェル(水吹く貝殻)』を装備

・《パララサス・ワン・ショット》(状態異常系外装用必殺技・初期技)

 「必殺ゲージ70%消費 相手に強化外装による特殊実弾丸攻撃。状態異常付与:麻痺」

 

【オークル・ギター】◎カラー:黄系(イエローオレンジ) ◎タイプ:特殊中距離M型

 頭にバイザー(サイクロプスアイ)とヘッドホンを装着し、黄色よりのオレンジ色ボディをもつ。

 エレキギター型強化外装『ノイズ・ジェネレーター』と浮遊アンプ型強化外装『ラウド・ノイズ』を装備

・《マッドネス・サウンド・キャノン》(衝撃系外装用必殺技・初期技)

 「必殺ゲージ50%消費 全《ラウド・ノイズ》を連結させ大威力衝撃波の攻撃を出す。」

 

【ビリジアン・トータス】 ◎カラー:緑系 ◎タイプ:獣形防御近接M型

 胴体が非常に大きく、丸みのある頭に嘴形の口アバター。背中に大盾強化装甲がついている。

 

【セラドン・モンク】◎カラー:青緑系(青磁色) ◎タイプ:近接攻防M型

 全身を丸みの帯びた装甲に包まれ、自分の硬さを活かしたインファイトの殴り合いを好む。

 特徴的なのは少し大きめなガントレット型の装甲。(強化外装ではない。)

・《ビルド・アップ》(特殊必殺技・初期技)

 「必殺ゲージ50%消費 自分の攻撃力・防御力を向上させる。」

 

【ディープ・ウルフ】◎カラー:青系(ディープブルー) ◎タイプ:機動近接M型

 頭部が犬のような耳付きヘルメットのアバター。

・《シェイプ・チェンジ(ビースト・モード)》(特殊必殺技・初期技)

 「身体の構造を変化させてる。使用中は少しずつ必殺ゲージを消費する。形状:狼」

・《ウルフバイト》(補助攻撃必殺技・変化後専用技)

 「攻撃力を上げつつ、相手に噛みつく技」

 

【ヴァイオレット・ボマー】◎カラー:紫系(赤紫色) ◎タイプ:中遠距離系M型

 赤紫色の爆弾使い

・《ボム・クラフト》(限定発動型・初期アビリティ)

 「様々な特殊な爆弾を作成する。」

 

 




『デュエルアバター案募集中!!』

作者が見切り発車したせいかいろいろと内容が決まっていません。(あちゃ~==;)
そこでデュエルアバタ―やストーリーなどの案を作者メッセージにて募集してます。

<注意点>
※アバター案を投稿していただく際は筆者へ”メッセージ”でお願い致します。
※アバター案を頂ける際は「名前」「色」「性別」「見た目」「能力」を記載してご連絡ください。
 (細かな設定理由などもあれば大変助かります。)
※強さ制限についてはLv相応の強さを持っていれば規制は特に考えていません。
 (規格外過ぎる強さは控えていただければと思います)
※一人5案までとさせて下さい。(今のところ)
※投稿頂きました案のアバターは必ずお話に出るとは限りません。
 また少々設定等をいじらせて登場させていただく場合もございます。(これ重要)
※選考基準はあくまで本編に合わせてと、その時の作者の直感で検討させて頂きます。

以上の点を踏まえて案を頂ければ幸いです( 〃∀〃)


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設定資料2

『アクセル・ワールド/フォーゲット・ジュエル』読んでくださいましてありがとうございます。
まだな方はぜひ読んでくだされば幸いです。

さて下記内容は『アクセル・ワールド』の対戦ステージを現状わかる範囲で
まとめてづらづらと書かせて頂いたものです。
記載内容は本編等で情報が追加次第、随時更新していきます(`・ω・)ゝ

(2013/04/29追記:ステージとか人物が多くなったので、分けました。)


 

================  対戦ステージ  ================

 

01《魔都》

 建物が青黒い金属回廊に変貌する。濃い霧がわだかまり、空は薄暗い闇となっている。

 ステージ属性が金属性となる。地形オブジェクトは壊れにくい、暗い

02《煉獄》

 建造物が生物めいたフォルムの襞のある錆金属に覆われる。所々に奇怪な突起がボコボコと浮かび上がる。

 ステージ属性が暗黒属性となる。地形オブジェクトは壊れにくい、暗い

03《世紀末》

 深夜の瓦礫が山ほどある廃墟。所々に明りとしてかがり火が設置されている。

 建物侵入禁止、暗い

04《黄昏》

 空が薄黄色の淡い夕陽がさし、乾いた風が吹く風化したギリシャ神殿の用に変化する。物影が少し暗い。

 ステージ属性が地属性となる。地形オブジェクトは壊れやすく、草花オブジェクトは燃えやすい。

05《風化》

 建物が鉄骨が見える程殺風景に変わる。

 地形オブジェクトは壊れやすい。埃っぽく、ランダムで突風が吹く

06《工場》

 巨大な歯車やコンベアがごとごとと動き回るステージ。

 ステージ内に破壊オブジェクトが多く、破壊すると多少HPが減る。

07《墓地》

 建物が廃墟化、植物が朽ちて至る所に墓碑や苔むした十字架が生える。

 ステージ属性が暗黒属性となる。暗い、ランダムで地面から死人の腕が対戦者の足を搦め捕る。

08《荒野》

 薄黄色い空に赤茶けた巨石が多々設置されている。

09《氷雪》

 あるゆる地形が分厚い氷と雪で覆われる。空は灰色の雲に覆われ雪片が舞っている。

 ステージ属性が水属性となる。破壊オブジェクトが少ない。

10《繁華街》

 無数のネオンに彩られた街並みステージ。地形の高低差が激しい。

 建物侵入禁止、明るい

11《月光》

 巨大な満月が出ている夜のステージ。建物の色は白く変わる

 明るい、建物等のオブジェクト影内は暗い

12《原始林》

 ステージ全体がうっそうと茂る巨大植物群の林に変わる。小動物オブジェクトが至る所で徘徊している。

 ステージ属性が木属性となる。破壊オブジェクトが多い。

13《草原》

 辺り一面が草の海と化す風吹くステージ。空は現実世界と同じ。

14《平安》

 地面は白い玉砂利へ変わり、建物の壁は白く柱は朱塗り、木々が色鮮やかな紅葉へと変貌する。

15《焦土》

 ステージ全体が焼け焦げた風に変わる。稼働オブジェクト・小動物オブジェクトは存在しない。

 ステージ属性が火属性となる。地形オブジェクトは非常に壊れやすく、必殺ゲージは上昇は微少。

16《鋼鉄》

 あらゆる地形がリベット打ちの鉄板へ変貌し、足音が異様に響く。

 ステージ属性が金属性となる。ステージ全体が電撃をよく通し、地形オブジェクトは壊れにくい。

17《大罪》

 建物や床が灰色のタイルに変わり、継ぎ目から粘度のある赤い液体が染み出す。

 ステージ属性が暗黒属性となる。空も毒々しい赤へ変貌する。相手への直接物理ダメージが半分反射する。

18《腐食林》

 腐敗した木々が生い茂るステージ。

 ステージ属性が木属性となる。至る所に体力を減少させる毒に沼が点在する。

19《城趾》

 地面は白砂利で敷き詰められ、建造物が岩で積み上げられた壁へと変わる。沖縄エリア特有。

20《大海》

 ステージ全体が見渡す限りの海と化す。所々に小さな岩・小島が点在する。

 ステージ属性が極水属性となる。レーザー系技不可。

21《轟雷》

 空は黒雲が覆い。建造物が金属製パイプとなる。ランダムで落雷が発生する。

 ステージ属性が風属性となる。

22《暴風雨》

 空は黒雲が覆い、激しい雨風が吹く。ランダムでオブジェクトが自然破壊される。

 ステージ属性が水属性となる。レーザー系技威力減少。

23《霊域》

 空が真珠のような乳白色に変わり、建物が神殿風に変わる。

 ステージ属性が神聖属性となる。所々にクリスタルオブジェクトが設置され破壊すると必殺ゲージが大増加。

24《妖精郷》

 建物が西洋風のお城に、周囲が花乱れる庭園とに変わる。

25《古城》

 ????

26《溶岩》

 ???? ステージ属性が火属性となる。

27《霧雨》

 ???? ステージ属性が水属性となる。レーザー系技威力減少。

28《極光》

 ???? ステージ属性が神聖属性となる。

29《天界》

 ???? ステージ属性が極神聖属性となる。

30《地獄》

 ???? ステージ属性が極暗黒属性となる。

31《砂漠》

 ????

32《下水道》

 地上部分は高い壁で自由な移動は不可。地下は下水道が走り所々にドラム缶オブジェクトがある。

 自然系・ステージ属性が水属性となる。水が汚い。

33《奇祭》

 暗い空の中、白熱電球の照明に照らされ人型シルエットが踊り蠢くステージ。

 行動阻害ギミック仕込まれており、ステージ属性が暗黒属性となる。

 

 

================  オリジナルステージ  ================

 

《豪雪》

 空が灰色の雪雲に覆われ、ぼた雪がしんしんと降り積もる。

 ステージ属性が水属性となる。地面は脛位まで雪が積もり所々に雪山オブジェクトが点在する。

《熱砂》

 空に照りつく太陽が昇る砂漠のステージ。破壊オブジェクトが少ない。

 ステージ属性が火属性となる。冷気系技は無効。

《樹海》

 至る所、葉樹・広葉樹入り乱れる樹木の世界。

 木オブジェクトは燃えやすい。ステージ属性が極木属性となる。

《廃船場》

ステージ一帯を壊れた廃船が多々捨てられている。 空には濃霧と廃船の残骸が浮いている。

ステージ属性が水・木属性となる。(アニメ6話登場ステージを勝手に命名)

《水没街》

街一体が水没状態になり、高いビルだけが水面から足場として点在している。

ステージ属性が水属性となる。破壊オブジェクトが少ない。

 

 

 



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第00話「prolog;序幕」

 「――――ガイドカーソルからすると敵は、あの大木付近か。」

 

俺はうっそうと茂る木々の間を駆け抜けていた。

敵は今だスタート地点で俺の姿を捜索しているらしい。

念のために説明するがここは江戸川区の葛西駅付近なのだが、

辺りは大昔生えていましたと言うばかりの巨大植物に、遠くからは不思議な鳴き声が聞こえている。ここはニューロリンカーにインストールされている《ブレイン・バースト》と呼ばれるゲームの世界。

俺、鈴峰宏斗(すずみねひろと)は2ヶ月前、《親》である姉からこの世界を教えてもらった。

 

 

――――2か月前

 

 

 「――――すげ~フィールドでけ~! やっぱFPSゲームみて~。」

 

僕のこの世界を初めて見た感想はそんな感じ。

このゲームについていろいろ説明を受けていたが

バトルロワイヤルやタッグと呼ばれる複数人での対戦に、無制限フィールドと呼ばれる時間制限なしのステージ、何より今目の前に広がる広大なステージ。

格闘ゲームにこんな大きな対戦場は必要とは思えないし、何よりガイドカーソルなるものを使ってまず最初に敵を探さなきゃならないって完璧FPSっぽいと思うんだけど・・・

 

 

 「おいおい・・・、さっき説明したと思うけどこれは格闘ゲームだって、宏。」

 「さて、《オブシディアン・バイパー》・・・黒色のアバター。珍しい色が出たね。」

 

突如、背後から女性の声が聞こえ後ろを振り向くと、全身赤色で大きな弓を背中にしょった短髪の女性アバター《ルベライト・ハンター》が立っていた。

なお、この女性は鈴峰由貴(すずみねゆき)。俺の姉であり、この世界でいうなら《親》と呼ぶらしい。

 

 「珍しいってどういうこと?これなんかすげ~能力とかあるの?姉さん。」

 

 「青色は近接系、黄色は間接系、そして私みたいな赤色は遠距離系」

 「その他にも金属色のメタルカラーとかもあるけど、

  白と黒はどんなスタイルかまだ分かりきっていない。」

 「ちなみに能力は自分の欲望、恐怖等が関わってくるというが・・・、

  その話はよしておこう。」

 「まずはHPゲージ下の名前をクリックすると、自分の所持技などが確認できるから確認して。」

 

僕は言われた通り確認すると、《払い斬り》《一刺し》などの刃物を用いた技があった。刃物?そんなのどこについてるんだと思っていたら、右手首あたりに左手にはない篭手が付いていた。

振ってみると突如右手首から30cm程の細い刃が出てきた。

なるほどこいつか。装備欄を確認すると≪孤独な牙≫(サリテュードバイト)というらしい。

後、もう一つ≪索敵妨害≫(サーチジャミング)ってスキルっぽいのがあるけど攻撃技ではなさそうだ・・・。

ちなみにこのスキルが()()俺の大いに助けになることとなる。

 

 「あ!その仕込み刀で思い出したんだけど、

  宏がもっているアクションゲームのキャラに似ているね。」

 

 「あ~、たしかにそれっぽいゲーム持ってるわ。」

 

たしかに僕の持っているゲームの中に暗殺者を題材にしたゲームキャラクターがこんな姿だったと思う。

 

 「姉さん、ちなみに一撃必殺とかってあるの?」

 

 「さっきも言っただろ。これは格闘ゲームだぞ。あるわけないでしょ。」

 「そんな無いものねだりはいいとして、そのアバターの特徴を確認するよ。」

 

その後いろいろ試してみた結果、このアバターは機動近接型。

攻撃力はまぁまぁ。防御とかは低いっぽいらしいが動きがとても素早いらしい(姉談)。

珍しいと言われたけど、これといって特徴がないのだが追々身に付く可能性もあるらしい。

 

 「さて、宏の今後については成長次第ってことで、

  明日私は秋葉原に用事があるから初対戦は私が戻ってからね。」

 

 「え~、今から対戦に行くんじゃないの~。」

 

 「時間を考えなさい。もう夜遅いんだから。後、今日は少し興奮を冷ますことね」

 

 「・・・わかったよ。」

 

 「ははっよし!わかったならばよろしい。」

 「私が帰る前に勝手に対戦とか始めるなよ。」

 「姉として《親》としても宏の初対戦を見逃せないからね。」

 

 

 

――――次の日、帰ってきた姉は《ブレイン・バースト》に関する一切の記憶をなくしていた。

その日から《オブシディアン・バイパー》こと鈴峰宏斗(すずみねひろと)の物語が始まった。

 

 

 




初めまして、アクセルの妄想しすぎて筆?をとらせて頂きました。
原作好きにも読んでもらえるよう、なるべく原作に影響ださないよう配慮してるつもりです。
(単語等で名前をだしちゃうかもしれませんが^^;)
今後の連載ペースについては見切り発車でスタートしたのと文才ない為、不定期です。(コレ重要)
なのでメッセージでデュエルアバタ―やストーリー案等を頂ければとても助かります。
よろしければご感想等頂けると幸いです>ワ<ノシ


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第01話「awakening;覚醒」

 

 

 「ただいま~。」

 

 「お帰り姉さん。早速ブレイン・バーストの対戦に行こうよ。」

 

 「ん?ブレイン・バースト?新しいゲームでも買ったの?」

 「悪いけど、宏のやるゲームは姉さん苦手分野だから遠慮するよ。」

 

そう言って姉さんは自分部屋へ行ってしまった。

 

 「え!?なんで!?このゲームは姉さんが教えてくれたのに!まるで――――」

 

そう、姉さんが僕にブレイン・バーストを説明してくれた中に『バースト・ポイントを全損するとブレイン・バーストが強制アンインストールされる。また、強制された者はブレイン・バーストの記憶は一切なくなる。』という説明と全く同じじゃないか。

それならば、もう姉は――――

 

 「バースト・リンク!!」

 

僕宏斗はグロバールネットに接続しマッチメイキング画面を急いで開いて驚愕なことを認識していた。昨日まで表示されていたはずの姉のアバター《ルベライトハンター》の名前がなかった。

この瞬間僕は認めたくない事実を宏斗は認識してしまった。

 

『姉がもうバーストリンカーではないのだと。』

 

 「どういうことなのこれは!?昨日ポイント消費の説明の際にも、

  姉さんのポイントは全然余裕があると言って――――」

 

バシィィィ!!と音と共に次の瞬間、世界が暗転し目の前に一度見たことがある文字が目の前に広がった。

 

【HERE COMES A NEW CHALLENGER!!】

 

【FIGHT!!】

 

それは姉が説明の際に宏斗に対戦を申し込んだ時と同じ文字。

そして次の文字で、《オブシディアン・バイパー》のデビュー戦を開始された。

 

 

あたりを見渡すと空には灰色の雲。轟く雷鳴。建物は鋭利な鋼鉄板に変わり、一言で言うなら「暗い」。そして自分がディエルアバターに変わっていたことに気付いた。

 

 「しまった。グローバル接続していまったから対戦挑まれてしまったのか。」

 「落ちつけ僕。姉さんは挑まれたらどうしろと言ってた。」

 

”いきなり事に対して人は慌ててしまうのが普通だけど、ブレイン・バーストの場合はまず落ちついて冷静になることが先決。”

 

 「そうだ。まずは落ちつくんだ。」

 

 スー、ハー、。宏斗は何度か深呼吸をして再度姉の今教えを思い返す。

 

”落ちついたのならばガイドカーソルを見なさい。矢印が向いている方向に宏の対戦相手がいるから。”カーソルは西の方角を指している。挑まれたなら仕方がない。僕は不安な気持ちを抑えつつカーソルの向く方向へ駈け出した。

 

 「相手の名前は《ネイビー・ゲーター》直訳すると”藍色の鰐”・・・」

 「藍色は青系統だから確か近接系だったよね?」

 

走り出してからしばらくすると大きな十字路に辺りを確認している藍色の鰐がいた。いや正確にいうならば鰐ではない、まず鰐は2足歩行ではないし何より目の前の鰐は僕の姿に気がつくと人の言葉で僕に話しかけてきたからだ。

 

 「お!どんな仕様だが知らんが()()()()()()()()()()

  必殺技ゲージが溜まってないところを見ると道にでも迷ったか?ニュービー」

 「ったく『世紀末』ステージか。お互い暗い色だからギャラリーからは見せにくいぜ。」

 

と言っても江戸川区にはバーストリンカーは少ないらしくギャラリー数は2、3人しかいない。

ニュービーとは初心者を表す単語。ということはこのバースト・リンカーはそれなりに対戦経験があるのだろうか?そうなれば姉のことも知っているかもしれない。姉は自分のことをこの地区では凄腕のバーストリンカーと言っていたので知名度もある。ならばポイントを全損したということはなんらかの方法で対戦相手に奪われた可能性がある、その対戦を見た人がいれば真相が・・・・

 

 「あのぉ、すみませんがこのゲーム初めてどのくらいですか?

  ルベライト・ハンターって名を知っていますか?」

 

 「ん?まぁ俺もLv1だからそんなに時間はたってねーよ。5日程ってとこか。」

 「そのアバター名も悪いが知らんな。俺の親なら知ってるかも知れんが。」

 

どうやらネイビー・ゲーターも僕と同じまだ初心者のようだ。

 

 「それよりそろそろ始めようぜ。時間が結構経っちまった。」

 

残り時間を確認すると1500カウント。それを確認し視線を相手に戻すとネイビー・ゲーターは大口を開けて猛突進してきた。

 

 「仕方ない。応戦するしかないか!」

 

ネイビー・ゲーターが噛みつき的な攻撃を繰り出してきたので左に回避すると、宏斗の後ろにあった元はビルらしき建物の鉄板壁をネイビー・ゲーターはその顎で砕いた。

 

 「―――っなんて破壊力だよ。」

 

 「ちっ、外したか。ならばこれはどうだ!」

 

 「ック!!」

 

今度は人にはあるはずのない太い尾を大ぶりに振り上げてきた。

宏斗はそれも避けたが一瞬反応が遅れたのか脇腹に軽く当たってしまいHPを10%程減少させてしまった。オブシディアン・バイパーの防御力が低いのもあるがそれでも、軽く当たった程度でもこの攻撃力。まともに攻撃が当たれば終わってしまうのではないのか?そんな思考をめぐらせつつも宏斗の目は相手のパターンを次第に掴みはじめ、右手の篭手から刃を出して相手に攻撃が通していく。機動型ならではのヒット&ウェイ戦法である。残り時間も800を切ったころ僕らのHPは、

 

オブシディアン・バイパーHP60% ネイビー・ゲーターHP40%

 

このままいけば勝てると思ったその時、突如ネイビー・ゲーターの牙が光始めた。

 

 「調子に乗るなよ!!《フィジカル・クラァァァァァァァァァァァァッシュ》!!」

 

ネイビー・ゲーターが必殺技ゲージを消費し、その太い足で勢いよく飛び跳ね僕の左手に噛みついてきた。今まで初動が突進攻撃だった為、反応が遅れてしまい僕の左腕をそのまま食い千切られた。

 

 「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!」

 

痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!HPゲージが一気に30%も減少する。

痛覚が少々緩和されているとはいえ、左腕が無くなったのだ。左肩部分から壮絶な痛みを感じた。

ネイビー・ゲーターは勢いのあまりビルに突っ込んだらしく、そのビルに大穴を空け土煙が上がっていた。このままだとまた食われるんじゃないのか。宏斗はその恐怖と痛さからその場から逃げ出した。

 

ネイビー・ゲーターは自分が空けた大穴からゆっくりと這い出てきた。《フィジカル・クラッシュ》は勢いよく相手に飛びつくため初動が早く命中率は高いものの、その勢いのあまりか狙いがうまく付けないという欠点があった。今回は更に勢い余ってビルまで激突してしまったのだが、オブジェクト破壊で必殺技ゲージがあと少し溜めればもう一度《フィジカル・クラッシュ》が打てる程溜まってる。

 

 「腕一本か。あそこで胴を噛めれば勝ち確定だったんだが・・・」

 「次に当てれば勝ちは変わらないか。」

 「ん、あの蛇野郎がいね~・・・。ってことは()()()()()()()()()()()()()

 「オイ! オブシディアンバイパーどこに隠れていやがんだぁぁぁぁ」

 

 

僕はどこまで逃げたのだろうか?ネイビー・ゲーターの姿が見えない地点まで走りその場に座り込んだ。

 

 「ハァハァ・・僕はいったい何をしてるんだろう。」

 

対戦ゲームで逃げるなんてもってのほかなのに。逃げてしまった理由にはネイビー・ゲーターの強力な技に対する恐怖心もあったが、一番のところは相手との体格差が決定的な要因だった。

宏斗の心的外傷(トラウマ)は『8歳~12歳に掛けて父親からの言葉の虐待』だった。

父は姉・由貴と僕・宏斗を比較し、何に対しても劣っていた宏斗はいつも父から罵倒を浴びせられていた。

 

 ”お前はなぜそこまで出来んのだ。お前のような奴は私の子には()()()。」

 

そんな言葉を受け続け宏斗が13歳の時、そんな正確の父と剃り合わなくなってたのか父と母は離婚したのだが、それ以来宏斗は宏斗より大きい男性を父の面影と重ね畏怖感を頂くようになってしまった。その為2mもあるネイビー・ゲーターにも畏怖してしまい、気持ちが鬱になっていた。

 

「僕はこの世界でも居場所はないのかな・・・姉さん。」

 

”―――じゃ、宏がその弱さを克服できちゃう秘密の世界を教えてあげよう。”

”なにその怪しげなフレーズは。ものすごく不安しか伝わらないんだけど。”

”失敬な。このお姉様に騙されたと思ってこのゲームをインストールしてみないさい。”

”それは宏がその世界に居てもいいと思える世界だから。”

”そしてその世界で戦い続ける限り、宏はその弱さを捨てられる世界。”

 

―――そうだ、僕はまだこの世界を知らない。

―――僕はまだこの世界で何もしていない。

―――僕は・・・

―――俺はこの世界に居ていいと、まだあがき戦っていない!!

 

 

次の瞬間自分の身体の内から熱い感覚と違和感を感じた。ふと自分の足元を見ると両足が忽然と消えている。

 

 「え?何だこれ!?攻撃を受けた?いつ?」

 

消えた足がどうなったのか確認しようと残った右手を前に出したが、その手もが消えていた。

いや、胴体さえも消失していた。これはヤバイ。自分が消えていく感覚に恐怖感がますます積っていく。宏斗はその現実を拒否するかのように目を閉じた。

 

しかし、消えている感覚はあるもののそれ以外の変化は感じられなかった。

むしろ座っているといういる感触がある。右手を強く握ろうと思えば握った感触がある。

そして目を開けHPゲージを見たがHPは30%から変化はなく代わりに必殺技ゲージが少しずつ減っていく。必殺技は持っていないので必殺技ゲージ減らないはずなのに・・・

そういえば攻撃技じゃないスキルがあったはず。それが発動しているのか?宏斗は確認の為自分の名前をクリックして技一覧画面を表示させると、そこには昨日は無かった新しい能力が記載されていた。

 

 「―――≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)。新しい能力なのか?」

 「ステルスってよくゲームで出てくる周囲に溶け込んだり透明になったりと・・・」

 

その時、目の間にあった窓ガラスを見た。ガラスは鏡と同じでうっすらだが自分の姿を映すはずなのだが、ガラスには本来映るはずのオブシディアンバイパーの姿が映っていなかった。

 

 「ほ、本当に消えてる。この力が俺を今消している原因なのか。」

 「これなら気付かれず相手に攻撃が・・・」

 「いや、姿が消えたところでガイドカーソルで俺の方向位置はわかって―――」

 

ふと、ガイドカーソルを見て違和感を感じた。

 

 「あれ?そいうえばネイビー・ゲーターは?」

 

対戦の初めはガイドーカーソルが示す方向を目指し、それを元に相手の場所まで移動するもの。

宏斗が戦っていた場所から逃げて300カウントは経ったいた。ネイビー・ゲーターは機動性は高くないものの300カウントもあれば十分追いつける時間だ。なのになぜネイビーゲーターは追ってこないんだ?何か理由があるのか?相手の能力上の問題か?あるいはこちら側の要因か・・・

そこで気がつく。この身体が消えてる能力は≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)と言うアビリティ。

そして宏斗にはもう一つアビリティが存在する。―――≪索敵妨害≫(サーチジャミング)

そこで一つの仮説を思いつく。宏斗はその仮説を確認する為まだ心に残っている勇気を絞り再び戦場へ駈け出した。

 

 

≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)は強く念じれば解除できたので今は解除している。今度は身を隠しながらネイビー・ゲーターへ近付き、遠く方でネイビー・ゲーターの姿を先に発見した宏斗は相手が見下ろせる程の高いビルがあったのでその屋上に上りすこし観察してみた。

 

 「くそ~、どこに居・や・が・ん・だぁぁぁ!」

 「タイムアップで勝利とか物足りないぜぇぇぇ。」

 

オブシディアン・バイパーを探しているらしく隠れられそうな辺りを豪快に壊しながら俺を探しまわっていた。しかも全然見当違いなな方向側を。これで≪索敵妨害≫(サーチジャミング)というアビリティが『相手のガイドカーソルを使用不能とさせる』という能力であることが理解した。

これならば身を隠せば相手に気付かれることはない。≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)を再び使用すれば近付ける。だけど、攻撃をすれば確実に気付かれるし一撃ではネイビーゲーターは倒せないだろう。しかも奴の《フィジカル・クラッシュ》を使用を許してしまえばその時点で試合終了だ。後もう一押し何かないか。その時ネイビー・ゲーターが壊した辺りに毛布があったらしく、毛布は宙を舞いたまたまネイビー・ゲーターの背中に被さった。

 

 「ああああl邪魔くせ~~!」

 

ネイビー・ゲーターは手を使い取ろうとするが届かないらしく手は宙をかいている。

今度は身体を揺さぶりようやく布が地面に落ちた。

これだ!宏斗はこの試合に勝つべく≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)を起動させた。

ネイビー・ゲーター付近に転がっている奴が壊した残骸まで走り≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)を解除し身を隠す。

あとは待つだけだ。奴がこちらに背中を見せた瞬間を。

そしてその瞬間はが来た。奴が背中をこちらに向けた!!

 

 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

その瞬間を待っていたと言わんばかり、オブシディアン・バイパーは駈け出した。

ネイビー・ゲーターは突如背後に現れたオブシディアン・バイパーに慌てて振り向くがすでにオブシディアン・バイパーは背中に取り付き、右手に装着している強化外装≪孤独な牙≫(サリテュードバイト)の刃を背中目掛けて突き刺した。

 

 「グハァァァァァァ!!」

 

一瞬の奇襲劇にギャラリーがざわつく。今まで特に派手な戦闘もなく、両者の色も暗めで見づらてく、更にオブシディアン・バイパーが逃げだしたので面白みがなくなったはずの試合だった。それが最後の最後で思いがけない逆転劇。しかも今までどこに隠れてたのかもわからなかったのに、気付けばネイビー・ゲーターのすぐ背後を獲っていたのだからなおさらだ。残りカウントは50。

 

 「糞!背中から離れろぉぉ!」

 

 「悪いがそれは無理だ!」

 

 「ゴオァァァァァァ!」

 

ネイビー・ゲーターは激しく暴れるが、オブシディアン・バイパーは背中にしがみ付き刃をしっかり背中に刺し込む。先ほど気付いたネビーゲーター弱点。それは大きな巨躯の割に身近な四肢にある。それゆえネイビー・ゲーターの背中は死角となっていたのだ。ネイビー・ゲーターは咆哮をあげ更に暴れるが残り時間は後数秒。ネイビー・ゲーターはHPゲージが、

35%、33%、31%と減りそして残りカウントが0になったその瞬間。

 

【TIME UP YOU WIN!!】

 

オブシディアン・バイパーHP30% ネイビー・ゲーターHP29%

オブシディアン・バイパーは初めての対戦を勝利で飾った。

宏斗は試合終了に安堵してネイビー・ゲーターの背中から落ちて尻餅をついた。

そんな勝者を見てネイビー・ゲーターが、

 

 「勝者が尻餅とか情けね~な(笑)。あ~ぁ~勝てると思ったんだがな。」

 「さっき逃げたのも俺のカーソルが表示されてないことからの一時退却だったってわけか。」

 「なかなか、トリッキーな戦い方じゃね~か。まぁ個人的にはガチバトルのほうが好みなんだがな(笑)。」

 「次、戦うことがあったら今度は俺が勝つぜ。じゃあな」

 

ネイビー・ゲーターがその場からバーストアウトする。

つ、疲れた。時間でたった1800カウントなのにもう何日分も身体と頭を働かせた感じだ。

その場でへたばっていると。ギャラリーから歓声が聞こえた。

 

 「NICE FIGHT!! いい試合だったぜ。」

 

 「本当いい試合だったよ。次も観戦させてもらうね。」

 

 「早くレベルあげて。今度は俺と戦おうぜ。」

 

数こそ少ないものの、その歓声は俺がこの世界に居てもいいと言われているような気持ちになれた。

 

 

 「姉さん・・・ 俺、強くなって姉さんの仇。いつか獲るから。」

 

 

 

こうして宏斗こと《オブシディアン・バイパー》のバーストリンカーとしての戦いが始まった。

 

 




ようやく第1話本編完成しました>ワ<

今回はアクセル・ワールドの華。対戦のお話です。
ド派手な技でないにしろついに主人公の能力解禁させました。
正直なところ、トラウマ思い返してげんなりした以降の話が全然うまく書けてないような感じがしてます。普通、鬱状態になって自力で立ち直るのって無理じゃね?
そしてやっぱ、シリアスだけじゃ僕のモチベが持たないです。
ちょいちょいギャグとかおんにゃのことかのお話を書かないとモチベ上がらんわ!
ってなわけで次回はついにヒロインを登場させたいと思います。
いあ、上記理由でって訳じゃないよ。最初から考えてたよ。

それでは感想・ご質問等あれば幸いですのでお願いいたします。


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第02話「twilight;黄昏」

 

 

 「俺、なんでこんなとこ来てるんだろ・・・(泣)」

 

宏斗は病院に来ていた。

 

 「おーい、宏斗君こっちこっち。あんまり離れすぎるとはぐれちゃうよ(笑)。」

 

この元気よく俺を手招いている人は、寧々森鷹乃(ねねもりたかの)さんと言って姉の親友に当たる人だ。

今日は病院に入院しているこの人の妹さんが退院するということで、運悪く荷物持ちとして捕まってしまったのだ。

事の原因は昨夜のことになる

 

 

宏斗は初勝利を飾ったあと今後について考えていた。 ブレイン・バーストの知識については姉から一通り教わったといえ、事実上ブレイン・バースト初心者だ。

知識はないが最初の方針はすぐに思いついた。まずは自分のアバターを強化すること。

姉のLvを記憶している限りたしかLv7だったはず、この世界で一番上のLvが9で人数が6・・・いや7人だったはずなので姉はそれなりに強い分類なのだ。

そんな姉を全損させるまで追い込んだのだ。何かしらのあくどい手を使いを使ったのだろう。

そして強いはず。 そんな強い奴が復讐目標なのだ。

ならばバーストリンカーなりたての宏斗が敵うはずはないのは安易に想像できた。

その為にまずは自分のアバターを強化すること。 そう思い自分を強くするため早速グローバルネットに接続し対戦をおこなった。

 

 

・・・のだが。結果は、1勝3敗。ポイントは-20P。そこで心が折れた。

 

その分、怪我の功名と意味べきか減った分の代償としてこのアバター『オブシディアン・バイパー』の弱点がいくつか判明出来たことが幸いだ。 それはまず第一戦。相手に負けたというより対戦ステージに負けたと言うべきか・・・。

初戦で会得した≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)を使用すれば一方的な戦闘が出来るのではと期待していたのだが、この《豪雪》ステージでその考えは簡単にも打ち砕かれた。

この《豪雪》ステージの特徴は空が灰色の雪雲に覆われ、ぼた雪がしんしんと降り積もる。 地面は脛位まで雪が積もり所々に雪山オブジェクトが点在するというものだ。

宏斗はその雪山オブジェクトを破壊して≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)を発動出来るまでゲージを溜め発動させたのだが驚くことが起こった。

そこには空中に雪が積もるという異様な光景あった。あきらかにシュール過ぎる。

唖然として5カウント、宏斗はやっと我に帰り≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)について改めて理解しなおした。

≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)とはつまるところは姿が消えるだけ。 物理的には存在しているのだと。

だから雪が降れば身体に積もるし、もし雨に打たれれば雨を弾く、おそらく今歩き回ると誰もいない所に足跡がどんどんできる用に見えるだろ。 実際に数歩歩いてみるとやはり足跡が出来てた。

 

宏斗はこのステージでは使用できないと判断してアビリティを解除し、ひとつ考える。

今後≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)の使用は限定時控えたほうがいいのかもしれない。 もし、このようなステージによってバイパーの弱点が知られれば脆弱な耐久性のバイパーが弱点を突かれれば一溜まりも無いだろう。

今のところ対戦相手がまだ近くにいないことと、ギャラリーがまだ観戦に来ていないのでなんとか弱点は隠せそうだ。

 

 「さて、気を取り直しっ」

 

ッダン!!

 

 「アレ?か、身体が痺れ・・・」

 

ッダン!ッダン!ッダン!

 

【GEME SET YOU LOSS!!】

 

よくわからないまま負けてしまった。相手の名前からどうやら赤系アバターだったらしく、いろいろともたついているうちに狙撃されてしまったようだ。

 

その後は対戦は《熱砂》と呼ばれる太陽が照りつく砂漠ステージで砂中に潜んでた重量級緑系アバターに拘束圧死され、またその後対戦は《世紀末》と呼ばれる荒廃ステージで対戦相手が所構わず建物オブジェクト爆破系技で破壊し、それ巻き込まれて爆死。 ちなみに《熱砂》で判明したのだが≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)は自身の影も隠せないらしい。

そしてそんな心折れそうになりつつ最後の一戦はなんとか初戦のような戦い方で勝てたのだが・・・。

 

 「ヤバイ。こんな戦い方じゃ、俺もすぐポイント全損しちゃうな。ん~・・・よし!運は試しだ。第2プランを実行しよう。」

 

 

――――後日

 

宏斗は学校が終わってから、姉の友人である寧々森鷹乃さんという人の家の行ってみることにした。

目的の場所は家にある情報と地図ツールでなんとか来れた。 寧々森さんのお家はずいぶんと大きく、家にある庭も俺の家のリビング以上の広さがある。 結構、お金持ちなのだろうか?

何故ここに来たかと言うと、ブレイン・バーストにはタッグとかレギオンなどの仲間との繋がりがあるのだという。 そこで宏斗が考えた第2プランとは『姉の親友ということならその寧々森さんもバーストリンカーなのではないのか?』というものだ。

もし俺の考え通り寧々森さんもバーストリンカーであれば、ブレイン・バーストについて教えを請えるかもしれない。 宏斗はブレイン・バーストのシステム説明を受けていたが、戦闘知識については無知。 なにより宏斗にとって戦い方に模索している現状、戦闘について教われば次のステップにいける。

そしてもうひとつ理由は実は寧々森さんは姉がバーストリンカーで無くなった日、一緒に秋葉原に行っていたという。 もし運が良ければ何かしらの姉を仇を打てる情報があるかもしれないと思った。

 

しばらく待っているとその人らしき人物が家から出てきた。

 

 「バースト・リンク!!」

 

普通自宅いる場合はホームネットに繋いでいるのが一般的なので、グローバルネットに繋ぐとしたら家から出る今だ。

もし、寧々森さんがバーストリンカーならばマッチングリストに新たに対戦者が表示されるはずだ。

グローバルネットに繋いで急いでマッチングリストに変化がないか探した。

急いで確認したがマッチングリストに新しい対戦者名は無いようだ。

なお、急いで確認した理由はもたもたしていると、こちらが対戦を挑まれかねないからだ、また事前にマッチングリスト情報は確認済みである。

 

 

 「バースト・アウト!! どうやら寧々森さんはバーストリンカーじゃないのか。さて、後は昨日の姉のことを聞くだけだけど、どうやって接触しようか・・・」

 

 「お姉さん?由貴に何かあったの?」

 

 「え!?」

 

振り向くとそこに寧々森鷹乃の顔が近くにあった。

 

 「うわぁぁぁ!!」

 

 「あ、ごめんごめん。驚かせちゃったかな?君、由貴の弟君だよね。こんなところで何してるの?」

 

 「え!?いやあのですね。え~あ~、そう!昨日姉が機嫌よく帰って来たものでして、何を企んでいるかと思いまして。」

 

宏斗の姉・由貴は何か悪だくみをする時やサプライズをする時は何かと上機嫌になる性格だ。

昨日はそんな素振りはしていないので嘘になるわけだが、姉を知る人にはおそらく嘘だと気付かれないと思う。

 

 「う~ん、昨日一緒にいた時は特になにか企んでいる雰囲気じゃなかったかな。でもそういうことなら私も気を付けないとね(笑)」

 

宏斗は、昨日の姉が普段通りならこれ以上情報は出ないだろうと感じた。

 

 「そうですか。これからお出かけのところ失礼しました。」

 

 「あ、ちょっと待って。君これからちょっと暇あるかな?」

 

 「特に用事はありませんが、何か用ですか?」

 

 「そう、よかった。それならちょっとそこまでお姉さんとデートしようか。」

 

 「は?」

 

 

 

――――話の冒頭より

 

 

そんな感じで拉致られて、現在鷹乃さんの先導のもと病院内を進んでいた。

鷹乃さんの話では妹さんは大きな怪我を負ったとのことで重傷治療施設にいるらしい。

施設内では入室パスが必要なので病院内ネットに接続しなければならなかった。 宏斗としてはまだ戦い方を模索中なのでローカルネットに接続するのは抵抗があった。

なお、「寧々森さん」と呼ぶと妹さんも反応するので名前でよいとのことだ。

 

 「さぁ、こっちこっち。」

 

鷹乃さんがある扉なのまで手招きをしている。どうやら妹さんの個室についたようだ。

 

ガラガラガラー

 

 「ひなちゃーん、優しいお姉さまが迎えにきたよ~♪」

 

部屋の扉を開けてに入るとそこには夕陽の中、本に手を当てて瞳をつぶっている少女がいた。

少女は扉の開いた音に気がついたのか本を閉じるとこちらへ振り向いた。 ただ瞳は閉じたままだ。

そこに宏斗は違和感を感じた。

 

 「あ、お姉ちゃん。いらっしゃい。あれ?足音がもうひとつあるけど誰か他にいるの?」

 

 「私の親友の弟さん。ちょっと私に用があったんだけど、ちょうど良かったから荷物運びとして連れてきました。」

 

 「え!?申し訳ありません。姉が無理を言ったのではないでしょうか。」

 

 「いえ、特に用事もなかったので問題はありません。あの、失礼かと思うのですがもしや目が・・・」

 

 「はい、半年前ちょっと事故にあいまして目がもう見えていません。」

 

 「すみません。傷に触れるようなことを聞いて。」

 

 「いえ、事故から結構経ってますし気持ちの整理もついているので大丈夫ですよ。」

 

 

宏斗は聞いてしまったことに罪悪感を感じてしまった。

さすがに身体的障害を負った人に対していきなりその話を振るのはタブーだったかもしれないと感じた。

そんな重たい雰囲気を崩してくれるかのようにへ鷹乃さんが会話を打ち切るよう自己紹介を進めてきた。

 

 「はいはい、二人とも初対面なんだからまずは自己紹介でしょ。」

 

 「あ、私ったら名乗らないですみません。私は寧々森日向(ねねもりひなた)と申します。来年度で中学1年なります。」

 

 「俺は鈴峰宏斗といいます。俺も来年度中学生になります。」

 

日向は話した感じおっとりとしたお嬢様って感じがした。

実際にあの大きな家に住んでいるのだからお嬢様っていうのは当たっているか。

そして宏斗と日向は自己紹介を終えると鷹乃さんが・・・

 

 「さて実は宏斗君をここに連れてきたのは、荷物持ちもあるんだけど1つ頼みがあって連れて来たの。」

 

 「え、何ですか?」

 

 「自己紹介で聞いた通りひなちゃんも後2ヶ月後には中学生になるんだけど、御覧の通りは目が見えないから中学校生活は不安で。私がサポートしてあげればいいんだけど、いつも一緒に居てあげれるわけじゃないの。そこで同級生になる宏斗君には私の代わりに少しサポートしてあげてほしいの。」

 

鷹乃さんのいきなりの重大発言。

話の流れから彼女も同じ中学へ入学するのだろう。 確かに俺も来年は姉や鷹乃さんと同じ中学へ入学するのだが、鷹乃さんはその点をリサーチ済みだったわけだ。

 

 「お姉ちゃん、まだ会って間もない人になんてお願いしてるのよ!」

 

 「大丈夫、私の親友の弟君だもの。信用に値する人物だわ。それで宏斗君引き受けてくれる?」

 

特に問題が思いつかなかったので断る理由は無いと思う。

むしろ、本人を目の前にして断るとか更に罪悪感を駆られるのですが。 断ったら断ってで後が怖い。

さすが姉の友人。 類は友を呼ぶということか。

 

 「ひとつ確認なんですけどサポートってどんなことをするんですか?」

 

 「サポートっていっても四六時中一緒にいて盲導してってわけじゃないの。ひなちゃんの脳内には医療用硬膜内留置型通信機って機械が入っててそれがある程度は視覚補助はしてくれるから。宏斗君にしてもらいたいのは他の人から障害者っていう偏見の払拭と、通信機が対応できない範囲での補助、保険代わりってとこかな。」

 

 「え~と・・つまりどういうことですか?」

 

 「噛み砕くと、『中学で右も左も分からないひなちゃんのお友達なってあげて』ってこと。私としてはそれ以上でも構わないけど・・・ふふふっ」

 

 「お姉ちゃん!!」

 

鷹乃さんの言葉に日向は顔を真っ赤にして抗議し始めた。

俺も少しドキッっとしたがあれは鷹乃さんの場を盛り上げる冗談だったんだろ。 たぶん。

ちなみに俺も中学校生活なんて右も左もわからないのだけど、三人寄れば文殊の知恵の二人バージョンってことなのかな?

 

 「わかりました。俺に何ができるかわかりませんが、出来る限りサポートしますよ。」

 

 「本当!ありがとう宏斗君。」

 

 「え?本当ですか!?ご迷惑を掛けるようなことに申し訳ありません。」

 

鷹乃さんが俺にお礼をいい、日向が俺に謝ってきた。

 

 「ひなちゃん違うでしょ。こういう時は『ありがとうございます』でしょ。」

 

 「・・・・あ、ありがとうございます。」

 

鷹乃さんに促され日向は照れながらも俺にお礼をしてきた。

不覚にもその表情にまたドキッっとしてしまった。その心境が顔に出てないことを祈りたい。

 

 「おっと!医療用硬膜内留置型通信機で思い出した!私は担当の先生からその機械について説明を聞きに行かねばならないので、宏斗君。今後の練習としてひなちゃんをお家までエスコートよろしくね~。」

 

そんな一言を残して鷹乃さんは部屋から出て行った。なんとも嵐のような人である。

二人だけになった部屋で俺と日向はまだ出会って間もないせいか少し気まずかしい雰囲気を感じとっていた。

ひとまず今後の仲良くしていく為にも、もう一度挨拶をしておいたほうがよいと宏斗は思った。

 

 「えっと、改めて今後、君を出来る限りサポートしていくからよろしくね。」

 

 「こ、こちらこそ、よろしくお願い致します。」

 

 「じゃ、じゃあまだお互い名前だけしか知らないから今後の為にお互いをもっと知ろうか。」

 

 「知るですか・・・」

 

 「そう、俺が答えられることなら何でも答えるから聞いてよ。」

 

 「えっと・・・その・・・」

 

なんだこれ?日向の口調が恥ずかしがっているような口調になった気がした。

こ、これは少年少女の青春で有名なあのワンシーンか!? 俺らまだ出会ったばかりなんですが!

先程の鷹乃さんの言葉に影響されたのか!? ヤバイ俺もなんか恥ずかしくなってきた。

外から見える夕焼けのせいで日向の顔が照れているような色に見えてきた。

 

 「・・・それでは、ひとつお聞きしてよいですか?」

 

 「ど、どうぞ。」

 

 「宏斗さんも()()()()()()カー()なのですか?」

 

 

 

その瞬間、宏斗は予想だにしない言葉に耳を疑った。

その言葉は当初の目的に関連する言葉で、宏斗が今頭から忘れていた言葉だった。

 

 「ひ、日向さん今なんて言ったんですか?よく分からない単語が聞こえた気がしたのですが。」

 

 「では、分かりやすいようにこうしましょう。 ―――バースト・リンク!!」

 

 

次の瞬間世界が青く代わり、またたく間に部屋を崩壊させギリシャ風の神殿のような建築物に変わる。

世界がまた色を取り戻した時、現実世界と同じ夕焼け空が病院の個室だった場所を照らし、見慣れた文字が表示された。

 

 

【HERE COMES A NEW CHALLENGER!!】

 

【FIGHT!!】

 

 

自分の姿がオブシディアン・バイパーの姿に変わったことを確認すると、先程まで日向がいた位置にこの《黄昏》ステージの夕焼けの色のような橙色の振り袖をまとったアバターが存在していた。

 

 

「このアバターの名前は《フローライト・モルフォ》。私もあなたと同じ()()()()()()カー()です。」

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございますm(_ _;)m

今回はちまちま書いていたら1話目の倍掛ってしまいました。
ネタはすでに出来上がっていたのですが文才がないので、文書として全然うまくまとめられないのが
大変にもどかしいです><

さて、前回は戦闘パートを書かせて頂いたので、今回は現実世界パートを書かせて頂きました。
また今回は女性を登場させて頂いております。私は男なので女性の口調とか難しい、難しいw
他の作品等参考にもっと文才磨いてせめて女の子らしい感じを文章で出せるよう精進致します。

さて次回は、やっと皆様から投稿頂きましたアバター案を使わせて頂こうと思います。
誰のが出るかは候ご期待下さい。

※今回オリジナルステージを盛り込んでみました。その過程上、原作の対戦ステージを調べてみましたので
設定資料内にまとめて記載してみましたのでアクセ執筆者の方々の参考になれば幸いです。



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第03話「environment;境遇」

 

 

宏斗は混乱と動揺に陥っていた。

本来の目的を終え、姉の友人のお手伝いに軽い気持ちで付いて来ただけなのに、それが今、夕焼けの赤色に染まる《黄昏》ステージに立っている。

そして目の前にはこの場所へ連れ込んだ橙色の振り袖姿のアバターが存在していた。

 

 「このアバターの名前は《フローライト・モルフォ》。私もあなたと同じバーストリンカーです。

  さぁ!何の目的でこの場所へ来たのですが!」

 

 「お、落ちついて下さい、日向さん。確かにバーストリンカーだったことは隠していたけど、

  俺は鷹乃さんの頼みでここへ――」

 

 「まさか!?()()()()()()()()()()()()()()()()だけでじゃなく、私からもこの世界を奪うのですか!?」

 

 「!?」

 

宏斗はその言葉に驚きを隠せなかった。 この世界とはブレイン・バーストのことだろう。

そしてそれが本当なら鷹乃さんは元バーストリンカーだったということだ。

 

 「ちょ!?ちょっと待って!日向さん、その話を詳しくっ――」

 

 「問答無用。先手必勝です。」

 

そういうと日向の操る橙色のアバターは俺目掛け体当たり・・・するのではなく傍にある石柱へ体当たりした。

石柱は脆いせいか一撃で壊れた。 ただ石片が頭に当たったのか日向は頭を押さえうずくまっていた。

 

 「ゔゔゔゔゔゔゔっ・・・痛い。」

 

 「あの~、日向さん大丈夫?」

 

 「大丈夫じゃ・・・・ハッ!! あなたに心配されずとも、これは計算内です。」

 

よかった。言葉の通り大丈夫そうだ。 でも対戦なのに対戦相手の安否を気遣うのもおかしな話だ。

アバターを最初見た時の凛としてたのに、いきなり弱々しくなったギャップのせいかな。

 

 「これで、私の必殺技ゲージが溜まりました。」

 

 「え!?まだ5%しか溜まっていな――」

 

 「お願い力を貸して。《オブサベイション・フェアリー》!!」

 

モルフォの必殺技ゲージが全て消費され突如、袖元から目玉模様の青い蝶が現れた。

その蝶は俺の元まで飛んで来て・・・・・飛んでいるだけた。

 

 「え~と、日向さんこの技はどんな効果が――」

 

 「まだまだです!」

 

そう言って、日向はまた石柱に向かって体当たりを繰り返す。

石柱を壊す度、痛そうな声を出しながら必殺技ゲージを溜めていく。

 

 「こ、これならどうです。《フレア・フェアリー》!!」

 

今度はの必殺技ゲージを30%程消費して、袖元から翅先がギザギザしている赤い蝶が9匹出現した。

その蝶も俺の元まで飛んで来・・・・・また周りを飛んでいるだけだった。

 

 「・・・・・。」

 

 「えー、これも攻撃技じゃないのぉ~。こうなったらもう体当たりしか!!」

 

日向は意を決したのだろう、全力で宏斗に体当たりを仕掛けてきた。

が、動きが遅かったので宏斗は軽く避けてから後ろから羽交い締めにし拘束する。

計10匹の蝶は特に主人を守るわけではもなく今も俺の周りを飛んでいる。

 

 「離してください!!」

 

 「日向さん、落ちついて!! 俺らの目的はおそらく()()だから。」

 

 「え?」 

 

日向は振り解こうと抵抗していたが宏斗の言葉に大人しくなった。

それから宏斗は一昨日バーストリンカーになったこと、その翌日親である姉がブレイン・バーストを失ったこと、これから姉の仇を討つ為に動いていることを説明した。

 

 「嘘・・、私と全く同じ・・・・。」

 

 「やはり、鷹乃さんもバーストリンカーだったんだね。」

 

 「はい、そしてお姉ちゃんも同じく昨日確認したらブレイン・バーストのことを知らないようでした。」

 

 「つまり、姉さんも鷹乃さんも一昨日、秋葉原で何者かに襲われてブレイン・バーストを

  無くしたってことか・・・。」

 

二人が一緒に秋葉原に行っていたのだからおそらく、姉・由貴を襲ったのも鷹乃を襲ったのも同一人物であるのは間違いない。 しかし、その話が事実であるならば相手は高Lvバーストリンカー2人を倒せる実力がある者か、複数いるということだ。

宏斗は最終目標に大きさにこの先の不安を感じた。

 

 「――あの~、宏斗さん?」

 

 「あ、ごめん。考えごとをしていたから。対戦時間もあと少しですし、

  ドローにするために何発か攻撃していいですよ。」

 

 「?? あの、ドローってどういうことですか?」

 

 「え?」

 

日向が何のことか分からないという仕草をしていたので、HPゲージが互いに等しい場合ポイントの変動は起きないことを説明したが、日向はそれでも分からないとう感じだった。

 

 「日向さん、ひとつお尋ねしますが鷹乃さんからはブレイン・バーストについて

  どんなことを教わりましたか?」

 

 「お姉ちゃんが教えてくれたことは、使用すると景色がいろんな姿で見れることと。

  使用するのにポイントが消費されるってことと。特別な力が使えることと、

  他の人にはブレイン・バーストについては他言しないことの4つかな。」

 

 (鷹乃さん、感じな所を端折ったな・・・・)

 

 「まず根本的な話、ブレイン・バーストは格闘対戦ゲームなんだ。そして日向さんが知っているポイントは

  使用するだけじゃなくて対戦の勝敗によって敗者から勝者へポイントが移動するんだよ。」

 

 「あ、それでお姉ちゃん、現実世界(リアル)へ戻る前に私に一度攻撃させてたのかな。」

 

鷹乃はおそらく、日向に対戦ゲームとしてではなく一種のフィーリングツールとして使用させていたのだろう。 そして使用させるためにポイントを譲渡していたに違いない。

 

 「そういうわけだから、ドローにしてポイント変動なし対戦を終わらせようか。」

 

 「いえ、それなら尚更ポイントは宏斗さんお譲りします。私の勘違いで挑んでしまったことなのですから。

  ・・・あの宏斗さん、立て続けに不躾で申し訳ありませんが、私に対戦の仕方を教えて頂けませんか!!」

 

 

 

――――寧々森邸・日向の部屋

 

あの後、日向の申し出に承諾してしまった宏斗は対戦のレクチャーの為と、鷹乃のお願い通り日向を家へお送る為に寧々森邸へ来ていた。 まだまだ知らないことが多く、宏斗も教わらなければならない

 

立場だった為、日向の申し出を最初は断ろうと思っていたのだが、日向が「レクチャー代としてポイントを譲渡する」と申し出た為、宏斗は即座に承諾したのだった。 なお、日向のポイントは鷹乃が譲渡により少し余裕にあるらしい。

 

 (ポイント欲しさに咄嗟に承諾してしまったが、困ったな・・・)

 

宏斗は初めて入る姉以外の女の子の部屋にドキドキしていた。

また、よくよく考えれば女子と密室で2人きりという展開に更に心臓の鼓動が速くなり、顔が熱くなる。

 

 「どうかしたんですか?」

 

 「い、いえ。な、何でもないです。」

 

 「ひとまずホームサーバのゲートを開けてました。

  私個人のホームサーバですのでそこなら内密にお話できます。」

 

 「り、了解。え~とっサーバへアクセスする前に一つ言っておくけど俺のアバター見ても驚かないでね。」

 

 「???、わかりました?」

 

 「「ダイレクト・リンク!!」」

 

レクチャーにするにあたって2つ問題することがあった。

宏斗の身体がネットワーク用のアバターに姿を変えると、窓と思われるところから夕焼けが射している。

そこは本棚がずらりと並ぶ空間が存在していた。大きさ的に図書室というよりは図書館である。 

 

 「これはすごいな。この本の数、図書館並みじゃないのか?」

 

 「――っといっても、中身があるのは半分ぐらいで後の半分がグラフィックだけなんですよ。

  中身も漫画とか小説とかの電子ファイルしかありません。」

 

後ろから聞こえたその声に宏斗は振り向いた。

そこに立っていたのは白のブラウスに黒のチョッキとスカート姿の日向だった。

その姿からこのホームサーバに合わせた司書風の格好なのだろう。

 

 「そういえば、アバター見ても驚ろ・・・ ーーーーーーーっ(言葉にならない悲鳴)!!」

 

やはり驚かれた。 これが問題点その1。

俺のアバターを初見で見た女の子は必ず悲鳴を上げる。 理由としてはアバターがボロボロのフードに中身が白骨化というホラー的な姿であるからだ。 昔ハマっていたゲームのモンスター『リッチ』のダークな雰囲気惹かれリアルに作ったのだが女子受けが相当に悪い。 姉からも「お前の感覚はどっかズレている」と言われた。

動く骸骨とかいかにもファンタジーっぽくてかっこいいと思うのだが・・・。

 

宏斗は日向が落ち着くのを待ってから、ブレイン・バーストついての説明を始めた。

なお、日向からは「そのアバター変えたほうがいいですよ」と言われてしまったので少し妥協してみようかと少々落ち込んでいる。

そして、基本的なことの説明が終了し続いては問題点その2。 日向のアバター《フローライト・モルフォ》の特性を見つけなければならない。 予想としてはおそらくあの2種類の蝶がモルフォの特性なのだろう。

詳細な特性を知るには実践で検証するのが一番だ。

 

 「それじゃ、お代権日向さんのアバターの特徴調べに一戦します。」

 

 「はい、お願いします。 それじゃ、バースト・リンク!!」

 

 

――――数分後

 

 「これで何とか、戦えそうですね。」

 

 「俺としては完璧に判明できればよかったんだれど。」

 

ブレインバーストは加速するにも、対戦するにもポイントを消費する。 ポイント節約の為検証対戦は1試合に留めた。 この検証対戦でモルフォのステータスと先程見た必殺技2つのうち1つが判明することができた。 何とかして1戦で日向のモルフォについて完璧に判明させてあげたかったのだが仕方がない。

 

 「仕方がない、少し不安度が増したけど最後の仕上げと参りますか。」

 

 「仕上げ?」

 

 「練習じゃなくて、本当の対戦を実施します。」

 

 「ほ、本番!? だ、大丈夫なのでしょうか?」

 

 「その為のレクチャーだったのでしょ。それにちょっと作戦を考えたから今回は俺も交えたタッグ戦でいこう。

  俺も全然初心者で絶対に大丈夫とは言わないけど・・・、勝てるように全力を尽くすよ。」

 

 「わかりました。何だか宏斗さんが言うのであれば勝てそうな気がします。」

 

 「そこまで大層な作戦じゃないんだけどな。ちなみにここから外部グローバルネットに接続って可能かな?」

 

 「はい、可能です。 ・・・今、接続完了しました。」

 

 「対戦相手は作戦もあるからこっちでの選択するよ。よしそれじゃ、いくよ。」

 

 「「バースト・リンク!!」」

 

バシィィィ!!と音と共に今いる空間が青くなる。 宏斗はマッチングリストをすばやく参照する。

日向に宏斗が知っているだいたいの知識と、日向の必殺技が1つ判明したとは言えやはりそれだけじゃ勝ちをもぎ取る要素としては不安定なことは変わりない。 それでも宏斗は対戦するからには少しでも勝率を上げるため名前から相性のよさそうな相手を詮索していた。

その時、一度見た名前を見つけた。

 

《カーマイン・コーンシェル & オークル・ギター》

 

カーマイン・コーンシェルは2戦目で宏斗が狙撃により討ち取られた相手だ。

一度負けはしたが相手の一人がが狙撃タイプであるなら、宏斗が想定している作戦にピッタリだ。

また、ステージ次第では宏斗の≪索敵妨害≫(サーチジャミング)≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)である程度は有利に持っていけるかもしれない。

 

 

 「それじゃ、日向さん。対戦相手はこの2人でいこう。

  割りこまれたら大変だから作戦は対戦開始したらすぐ説明するよ。

  それから現実世界(リアル)情報は秘密だから向こうではアバターネームでよろしくね。()()()()。」

 

 「了解です。()()()()♪」

 

 「よし、試合開始だ!」

 

宏斗は選択欄の中から《カーマイン・コーンシェル & オークル・ギター》を選択しDEULボタンを押すとネットワーク用のリッチ姿のアバターから、黒曜色の宏斗ブレインバースト専用のアバター《オブシディアン・バイパー》に姿が変換された。

 

 

【FIGHT!!】

 

宏斗がバイパーに変換され、辺りを確認すると隣にも同じくブレインバースト専用のアバター《フローライト・モルフォ》に変わった日向が傍にいた。 空には大きな丸い月が出ており、建物は西洋風のレンガ造り、周りには花びらが乱れ舞う程の花々が生い茂っている。

 

 「わぁ~♪ 綺麗な場所ですね。」

 

 「多分、《妖精郷》ってステージなのかな。」

 

 「名前も素敵ですね。」

 

 「おっと、それじゃ大まかだけど作戦を説明するよ。作戦は――」

 

 

――――某塔屋上

 

 「おや、見たことない名前だNE♪ シェルっち何か情報ない?」

 

 「ほぉ、この前の《豪雪》で対戦した奴だな。」

 

 「OH!、シェルっち、もう対戦済みかYO♪」

 

 「あぁ、片方は初だが、このバイパーってのは俺が一方的に狩らせてもらった。」

 

 「HAHAHA、例のあの技か。おっそろしいNE♪」

 

 「俺はここから狙撃する。いつものよう頼むぞギター。激しく暴れてこい。」

 

 「了解♪ 俺の激しくてCOOLなSOUND聞かせてやるYO♪」

 

赤と黄色のアバター、カーマイン・コーンシェルとオークル・ギターがバイパーとモルフォを倒すべく

動き出した。

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございます(`・ω・)ゝ

本当ならこのまま戦闘パートも書く予定だったのですが、予定していたよりも文字数が多くなったので
2話に分けてお送りさせて頂きます。
なお、この回で伏せられている設定内容は次回の話で盛り込むよ。

今回は投稿頂きましたアバター案より『オークル・ギター』を採用させて頂きました。
投稿者様におきましては案を頂きまして有難うございます。
タッグ戦なので、もう片方も投稿案を採用したかったですが、なかなか赤系のアバターで
話にマッチするものがなかったので『カーマイン・コーンシェル』は自分で考えました。


《PS.》最近AWのアナザーストーリーが増えてきた事と、本作が今の所原作との絡みがない事から、
  タグを分かりやすくする為「原作沿い」を「サイドストーリー」「原作設定順守」に分けました。


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第04話「butterfly;蝶」

 

 「わぁ~♪ 綺麗な場所ですね。」

 

 「多分、《妖精郷》ってステージなのかな。」

 

 「名前も素敵ですね。」

 

 「おっと、それじゃ大まかだけど作戦を説明するよ。作戦は必殺技ゲージを溜めつつ、

  ガイドカーソルとは逆の方向へ逃げて。」

 

 「??? え?逃げるんですか?」

 

 「逃げるって言っても、戦わないわけじゃないよ。そこから――」

 

宏斗が立てた作戦はこうだ。

オブシディアン・バイパーは≪索敵妨害≫(サーチジャミング)が常時発動している関係上、

対戦相手のガイドカーソルには敵の方向を示す矢印がフローライト・モルフォしか映っていないと考えられた。

それゆえに、敵はモルフォを最初の標的として定め、モルフォがいる方向に揃って向かってくるはずだが、それは青や緑、一部の黄色や金属系統などの大体のプレーヤーの場合。 宏斗が赤系統、狙撃手がいるタッグを対戦相手に選んだ理由は長距離攻撃を得意とするうえで、モルフォに向かうというよりモルフォが見える位置に陣取って射ってくる可能性が高いからだ。 それは即ち対戦相手は別々に行動するということ。

それだけでも分かれば、モルフォはダメージを受けないように囮として逃げてもらって、対戦相手の一人をある地点まで誘導、そしてモルフォの必殺技を使って対戦相手を分断しようと思う。

 

 

――――それはほんの数分前

 

 「はぁ・・・、はぁ・・・、い、如何ですか?」

 

 「う~ん、残念だけどモルフォ自体の身体能力は低いみたい。」

 

今俺たちがいるのは壁や床が全てリベット打ちの鉄板に変化した《鋼鉄》ステージだ。

歩くたび足音が響くので隠密系のアビリティを持つバイパーにとっては非常にやりにくい。 この対戦がフローライト・モルフォの検証対戦でなかったら宏斗は泣いていたかもしれない。

そしてモルフォのアバター性能だが唯一の通常攻撃技の体当たりで攻撃させてみたり、一発攻撃して防御率を図ったりしてみたのだが、攻撃はあんまし痛くなく、軽く殴った程度でも結構HPが減って痛がっていた。

そして今は全力で走らせて機動力を見ていたのだが、正直言って遅い。

でも走らせた時に足音が聞こえなかったので、不思議に思い足元をよく見たら数センチ程浮いていた。

足音、足跡がつかない点について、宏斗は正直羨ましく思っていた。

 

 「それならば、このアバターは何ができるのでしょうか・・・」

 

やばい。 日向さんが本気で凹んでいる。 現実世界(リアル)だったら半泣き状態かもしれない。

ここはなんて言うべきか・・・。 そうだ、デュエルアバターのポテンシャルは皆平等と宏斗の姉・由貴は言っていたはずだ。 そしてモルフォのような黄系統のカラー特徴は間接技を得意とすると。 それならば断じて体当たりのような物理攻撃手段ではないはずだ。 そして宏斗はその間接技を一度見たことがある。

目玉模様の青い蝶を召喚する技《オブサベイション・フェアリー》。

翅先がギザギザした赤い蝶を召喚する技《フレア・フェアリー》。

この2種類の蝶こそがフローライト・モルフォのポテンシャルの大部分と見て間違いない。

 

 「だ、大丈夫だよ。黄系統のアバターの特徴は間接技だから。」

 

 「間接技?」

 

 「最初に出会った時に見せてくれた蝶を出す技があったでしょ。

  それこそがモルフォのポテンシャルの大部分なんだよ(多分)。

  ちょうどゲージも溜まっているから技を使って確認してみようよ。」

 

 「・・・はい、わかりました! 《フレア・フェアリー》!!」

 

よかった。なんとか元気を取り戻してくれたみたいだ。

日向が技を使用すると50%程溜まっていたゲージが40%ぐらいまで減り、振り袖部分の内側から3匹の赤い蝶が出現する。

 

 「あれ?その技って前見た時、9匹出ていなかった?」

 

 「この技、任意で思った数だけの蝶々を出せるんですよ。」

 

 「お、まだ効果は分からないけど。それはすごいな。」

 

 「でも、出した蝶々の数だけゲージも比例して減りますし、

  もう一つの技合わせても最大10匹までしか出せません。」

 

日向はそう言いながら召喚した蝶の1匹を指先に止まらせる。

振り袖姿のアバターに蝶っていうのはなんとも絵になる風景だ。 これが《鋼鉄》ステージじゃなくてもっと綺麗なステージなら尚更絵になるのだけど。 そう思いつつ宏斗もなんとなくその辺で飛んでいた蝶々を獲ってみようと手を伸ばす。 しかし蝶々に手が触れた瞬間、簡単に蝶々が砕けてしまった。

あ、やばい。せっかく出して貰ったのにと宏斗が考えた次の瞬間、砕けた蝶が収縮すると直径50㎝程の光の球体となってバイパーのHPをガリガリと削った。

 

 「熱っ!!」

 

 「!?」

 

日向も宏斗が触れた蝶が突然の爆発したのを見て、驚きの表情を浮かべ宏斗のもとへ駆け寄ってた。

いきなりなことに宏斗もびっくりしたが、これは間違いないと確信した。

 

 「・・・・」

 

 「だ、大丈夫ですか!!宏斗さん。 宏斗さん?」

 

宏斗は部屋を見渡し一つの鉄廃材を見つけて手にすると、その廃材をまだ残っている蝶に狙いを定めて投げた。

蝶に廃材がぶつかると先程と同じように直径50㎝程の光の球体となって爆発する。 日向が先程指先に止まらせていた蝶も近くで飛んでいたので巻き込まれて連鎖で爆破した。

廃材が壊れた為でモルフォの必殺ゲージが45%くらいに少し回復していた。

 

 「お~連鎖爆破もできるのか。起爆の条件は接触かな、それとも衝撃かもしれないな。

  技の属性は炎熱と爆発か・・・いや発光したから光かも。」

 

 「あの~?」

 

 「あ、ごめん。 でも日向さん、おめでとう! 《フレア・フェアリー》は攻撃技だよ。」

 

 

あの後、日向の話を聞くと見えている蝶ならば強く念じれば操作が可能らしい。 

また任意での爆破も可能か試したところ案外あっさりと出来てしまった。

それならもう一つの《オブサベイション・フェアリー》は青いから氷雪属性の技かなと思い、同じように衝撃を与えてみたのだが蝶が砕けただけだった。 以上がモルフォを検証した結果だ。

今回モルフォには囮として逃げながらこの先にある四方が壁に囲まれている広場まで、狙撃タイプじゃないオークル・ギターという相手を誘導してもらい相手が広場に来た時点で俺が攻撃を仕掛け、モルフォが蝶で出入り口を塞ぎ1対1に持ち込むという作戦だ。

 

 「バイパーがオークル・ギターという方と戦っている間、私はどうしましょう?」

 

 「それじゃ、もう一方のカーマイン・コーンシェルの注意を逸らしててよ。

  こっちが片付いたら直ぐにそっちに向かうよ。

  可能だったら()()()()()()()構わないよ。」

 

 「くすっ、わかりました早くしないと私が先に倒しちゃいますよ。」

 

 

――――日向は作戦通り、矢印とは別方向にある走り目的の広場にたどり着いた。

必殺技ゲージは半分ほど溜まっていて、モルフォの周りには4匹の赤い蝶と1匹の青い蝶を出している。

《フレア・フェアリー》は一番の利点は何と言っても消費ゲージの低さだ。 そのおかげでモルフォはゲージを溜める為に一度体当たりでオブジェクトを壊すだけで技を使用できるだけのゲージが溜まり、あとはその蝶使用してオブジェクト破壊を繰り返せば必殺ゲージは溜まる一方なのだ。

それゆえゲージに余裕ができていた。 そして何かのきっかけで《オブサベイション・フェアリー》について判明するかもしれないと思い、こうして召喚しておいている。

 

 「えっと、この広場でいいのかな・・・」

 

 「HAY!俺に会いに来てくれないから、こっちから来てやったぜZE。」

 

突如後ろから聞こえた声に、日向は振り向いた。

そこに居たのは1.5c㎥の正方形型の浮遊しているアンプに座っている、少し黄色みがかった橙色のアバターがいた。 サイクロプスアイ型のバイザーとヘッドホンを装着し、手には名前通りエレキギターを持っている。

彼の後ろには彼が座っているアンプと同型のアンプが浮遊していた。 彼がおそらくオークル・ギターなのだろう。

 

 「俺的には、追いかけっこなら浜辺のほうが好みだZE。」

 

 「な、なんですかそれは!? 別にあなたとそのような事をするつもりはありません!!」

 

 「SHOCK~。 振られちまったZE。」

 

そう言いながら、ギターが壁の上を振りむくとそこには複数の色とりどりのアバター達がいた。

 

 「ひゃひゃ、ダッセ~。 ってか、もうちょい真面目に立ち振舞えよ。」

 

 「なんなら私がじっくり追いかけっこしてあげようか。もちろん私が狩る目的で追うけど。」

 

 「対戦相手は新顔だな。相方も最近出てきた奴だし、どこ繋がり子だ?」

 

この広場の壁上部をギャラリーと呼ばれる何名かの対戦観戦者が観戦していた。 どうやらギャラリーの発言からギター側の観戦者のようだ。 そして日向もその中にある者をみつけた。

 

 「さぁ、モルフォっち。俺のライブを聴いてけYO。」

 

 「初対面なのにいきなりあだ名ですか・・。残念ながら私は遠慮しておきます。代わりに彼が聴いてくれますよ。」

 

 「WHAT?」

 

日向が笑顔でギターの後ろを指さすと、そこには先程までギャラリーに紛れ込んでいたオブシディアン・バイパーがオラクル・ギター目掛けて一撃を仕掛けるべく跳躍していた。

 

ッガキン!!

 

 「ぬわぁ!」

 

 「モルフォ、早く広場から離れて。離れたら作戦通りに!」

 

 「わ、わかりました。」

 

バイパーはギターを斬りつけアンプの上からギターが転げ落ちた。 奇襲成功と高所からの攻撃と相成ってギターのHPが10%程削れた。 ギターは体制を立て直すべく立ち上がり、バイパーは敵を逃さぬよう立ちはだかる。

そしてモルフォは広場から出て、作戦通りこの広場を封鎖すべく蝶たちへ指示を出した。

 

 「爆ぜて!!」

 

出入り口2か所へ飛んで行った4匹の赤い蝶達は、日向の命令通り壁を爆発すると破片が出入り口を塞いだ。

これでこの広場は誰にも邪魔されず、逃げ場のない戦場と化したはずだ。 しかしそれはバイパーも同様の条件である。 

 

 「ちっ、まさかギャラリー内に紛れ込んでいたとは普通は思いつかなかったZE。

  後、俺的にはお前とガチンコするより、さっきのかわいいGIRLとガチンコを希望するZE」

 

 「残念ながらそれは却下だ。俺の相手をしてもらうぞ。」

 

 「仕方ね~な。それじゃお前に今の俺の気持ちをSOUNDで()()()()やるYO。」

 

それが戦いの火ぶたを切った合図だった。 ギターは手に持ったエレキギターを構え直すと、それに連動して2つのアンプが更に浮上し、バイパーはギター目掛けて疾走した。

 

 

――――残り1100カウント

日向は先程の広場から少し離れた場所まで移動していた。

ガイドカーソルには2つの矢印が表示されている。 1つは先程までいた広場のオラクル・ギター。

そしてもう一つはまだ見ぬカーマイン・コーンシェル。

 

 「この後はこの矢印にいる相手の注意を引けばいいんだよね?」

 

その時矢印方向にある遠くの壁上からキラリと光る物が見えた。 次の瞬間、日向目掛けて高速で飛来する何かが飛んで来る。 日向はそれに気付くと反射的に近くにあった噴水の影に隠れ避けた。

 

 「な、なんか飛んできた!!」

 

ッビシュー!ッビシュー!ッビシュー!・・・

 

モルフォが回避した後もその何かは止めどなくモルフォに向けて撃ち込まれていた。 飛来してきたものの正体は“水”。 コーンシェルは圧縮した水を高速に撃ち出すことで狙撃していたのだった。

 

 「これは注意が私の方へ向いているということなんだと思うけど、ここからどうしよう・・・。」

 

宏斗は可能だったら倒して構わないと言っていたが、先程の回避さえ奇跡的だった為この狙撃攻撃を潜り抜けることはモルフォには不可能に近い。

ここは宏斗がオラクル・ギターを倒すのまで隠れ耐えるべきと感じた、その時――

 

ッドッゴォーーーーーン!!

 

「!! 今の音は広場の方!? もしかして宏斗さんの身に何か・・・。」

 

それはバイパーとギターが戦っている広場の方から聞こえてきた。

この戦いはいろいろと宏斗が作戦を立て日向はその作戦をこなしていたが、結局のところ宏斗頼りなことを日向は感じ取っていた。そして助けにも行けない自分と何も出来ない自分とに苦虫を噛み締めながら、日向は目を瞑り宏斗の無事を祈るしかなかった。

 

 「お願い無事でいて・・・。  え!?」

 “お願い無事でいて・・・。”

 

目を閉じた瞬間、そこに見え聴こえたのは目を瞑り祈るモルフォの姿と自分の声だった。

 

 「これはもしかして――」

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございます。

そしてごめんなさい。2話でまとめるつもりがいろいろ詰め込んだらまた次回に持ち越しちゃいました><
おそらく次回でなんとかこのバトルは完結させる予定です。
今回時間軸を戻したり進めたりするのに「――」をいっぱい使ったり、名前の記述を意図的に場面で変えてみたのですが如何でしょうか? 見にくいや文章的に変と感じた方はご指摘お願い致します(`・ω・)ゝ
その他、ご意見や質問、感想等もどしどしよろしくお願い致します^^

《PS.》あれ?AWのサイドストーリー系の小説1つ減りました?


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第05話「partner;分身」

 

 

ギュイィィーーーーーン!!

 

オークル・ギターがエレキギター型の強化外装を弾くとそれに繋がっている浮遊型のアンプから、呼応するかのようにとてつもなく大きな“音”という名の衝撃波がオブシディアン・バイパーへと襲う。

 

 「どうだぁ!いい音だろRO。避けなければ真の意味で直接心に響くZE。」

 

 「んなことするかぁぁぁ!!」

 

宏斗は器用に障害物を使いつつ、衝撃波を躱すと放たれた場所は吹っ飛んだような跡が残っていた。

本来、“音”と言う名の衝撃波は弾がない。 さらに射撃技な為避けるのが困難なはずなのだが、ギターの大げさな攻撃モーションとアンプの向き、更に《妖精郷》特有の舞う花弁の動きが衝撃波の姿を晒していた。

 

ギュイィィーーーーーン!!

 

宏斗の隠れている障害物元へ衝撃波の第2撃が放たれる。

今度は花弁だけではなく地面の砂埃までその衝撃で宙へ舞い、辺り一面の視界を悪くする。

 

今だ!≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)発動!!

 

宏斗はここぞとばかりアビリティを発動しその場から姿を消す。 砂埃に紛れバイパーの必殺ゲージを消費させつつも別の障害物に移動開始した。

 

ギュイィィーーーーーン!!

 

別の障害物への移動が終わったころにギターの第3撃が先程まで隠れていた場所に放たれていた。

障害物は粉々に砕けたが、残念ながらそこにバイパーの姿はない。

 

 「WHAT!?どこへ消えた!?」

 

 「こっちだよ。」

 

ッガキン!

 

 「くっ!ちょ、ちょっとタンマ!」

 

宏斗は≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)を解除すると、右手の強化外装≪孤独な牙≫(サリテュードバイト)の刃を出して真横からギターへ躍り掛った。ギターはご自慢のエレキギターバイパーの攻撃を受け止め距離を開けるべく後ろへ下がったが宏斗はそれを許そうとしなかった。

大抵、遠距離技を得意とする相手は懐に入れば脆いものである。更にあの攻撃技だ。

インファイトに持ち込めば技を出そうにも、相手と一緒に自分ごとふっ飛ばしかねない。

これはすでに詰んだも同然。いつもはステージで泣かされた宏斗だったが今回はステージに救われた感じだ。

初撃のダメージに加え、防戦しているとはいえ少しずつHPが削れ、ギターのHPは6割ぐらいになっていた。

一方で宏斗のHPはまだMAXと言っていい。 勝利を確信した宏斗に笑みがこぼれる。

 

 

 「これギター詰んだんじゃね?」

 

 「いやいや、一試合につき1回は()()出すからまだだろ。」

 

ギャラリーの声に応えるかのように、次の瞬間ギターに変化が訪れた。

 

 「YAーーーー!やっとゲージ溜まったZE。《マッドネス・サウンド・キャノン》!!」

 

ギターのMAXまで溜まっていた必殺ゲージが50%消費すると、個々に宏斗を狙っていた2つのアンプが一列に直結する。そして当然のごとくその矛先をこちらに向けて。

 

 「ま、まさか!自分ごと撃つつもりなのか!」

 

「言っただRO。()()()()()()()()意味()()()()()()()()ってNA。」

 

ギターは何の迷いもなく手に持つエレキギターの弦を弾いた。

その直後、直結したアンプから先程から放たれていた衝撃波なんて比べ物にならない程の、特大の衝撃波と大音量がギターとバイパーに向けて放たれた。

 

ギュイィィーーーーーーーーーーン!!

ッドッゴォーーーーーン!!

 

「「っっぐぁ!!」」

 

2人とも衝撃波をまともに喰らい別々の方向に吹き飛ぶ。

バイパーのHPが40%削れ残り60%。 ギターのHPが30%削れ残り30%くらいになる。

 

 「っく・・・、こんな事まともな奴がやることじゃないぞ。」

 

「HA・・HAHA、当たり前だRO。ROCKなんざまともにやっても面白くもないZE。」

 

 「くそっ、だけど距離が離れたとはいえ、このHP差なら巻き返させず倒してみせる。」

 

 「甘いZE。もう逆転なんだYO。」

 

ギターがそう言いながらある方向を指さすと、そこにあったはずの壁が撃ち抜かれ崩れていた。

 

ッダン!!

 

 「ア――カ、身体が――動かない―――。」

 

バイパーの身体が自分の意志とは関係なくその場で崩れる。

この感じ、以前にも体験したことがある。そうそれは以前カーマイン・コーンシェルと戦った時の・・・

バイパーが動けないと知ると、ギターが満面の笑みでバイパーの傍まで近づいてきた。

 

 「作戦大成功~♪わざわざ必殺ゲージ溜まるまで我慢して、自分のSOUND喰らったかいあるZE。

そいや、YOU前に撃たれたんだったNA。優しい俺が撃ったシェルっちの代わりに説明してやるZE。

この技の名前は《パララサス・ワン・ショット》。

アバターの動きを封じる麻痺性の水を高速で撃ちだすとかなんとか・・・って言ってたZE。」

 

 「作戦って――最初からこの閉鎖空間を――壊す為に動いて――いたっていうのか。」

 

 「当ったり前だRO。タッグ戦なんだから協力し合わないと意味ないZE。

  俺達の戦い方はシェルっちが狙撃で相手の動きを止めて、俺が狙撃しやすいステージを作ってやる。

  これが俺達の本来の戦闘スタイルSA。さて、そろそろ・・・・」

 

ギターが後ろを振り向くと先程まで沈黙していたアンプがゆっくりとギターのすぐ後ろ、

バイパーの直ぐ近くまで迫っていた。

 

 「ここまで近ければ、《マッドネス・サウンド・キャノン》後一発でENDだRO。それじゃ、

せっかくシェルっちが()()()()()()おいしいところ譲ってくれたんDA。そろそろFINALEといこーKA。

《マッドネス・サウンド・キャノン》!!」

 

ギターの残りの必殺ゲージが消費され、2つのアンプが再度一列に直結された。

ギャラリーに派手な演出を見せる為かギターがアンプの上に立ち、手に持つエレキギター弾き始める。

その時、痺れがまだ取れないバイパーは見た。3匹の赤い蝶がスピーカー部分に止まるのを――

 

“爆ぜて!!”

 

次の瞬間、衝撃波を出す筈のアンプが2つまとめて炎をあげて吹き飛んだ。

もちろん、上に乗っていたギターも派手に吹っ飛び、ギャラリーが一斉に騒ぎ立つ。

 

 “宏斗さん!大丈夫ですか!”

 

その声は先程まで一緒に話していた相手、日向の声だった。

やっと痺れが取れ始めた宏斗が声の方を振り向くと、そこに居たのはあの青い蝶だった。

 

 「――日向さんなの?その蝶は・・」

 

“はい!やっとこの子《オブサベイション・フェアリー》の力が分かりました。この子の力は『私の代わりに物を視て、音を聴いたことを私に教えてくれる』みたいなんです。

それよりもオークル・ギターを倒すなら今です。”

 

宏斗は再度ギターが飛んで行った方向へ顔を向けると、先程まで宙に浮いていた2つアンプは壊れポリゴンと化し、

当のギターは犬○家のごとく頭から瓦礫に突っ込み這い出ようとしている。

これならば―――

 

 「痛ててて、一体何があったんだ?」

 

 「一つ質問だけど、お前パンクバンドみたくエレキギター打武器にしないの?」

 

ギターがゆっくり後ろを振り向くとバイパーの手甲の刃が、ギターの首真横にあった。

 

「い、いや~~、それは次回のLvUPの時にでも考えておくZE・・・・」

 

オークル・ギター HP 00%

 

 

「――ふ~、とりあえず一人撃破ってとこかな。そうだ!カーマイン・コーンシェルは!」

 

宏斗は慌てて物陰に隠れ、コーンシェルから狙撃を警戒したが・・、1つおかしな点に気付いた。

そもそも、狙撃してくるのであればギターを助ける為、ギターを倒す前に撃ってくるはずだ。

それが必殺技を撃って以来まったく撃ってこないのだ。

しかし、その答えは意外なとこから帰って来た。

 

 “カーマイン・コーンシェルさんなら今私が追っています。”

 

 「え!?」

 

 

――――宏斗が戦っていた場所から少し離れた場所

 

ゴォッ!

 

突如、壁の一部が光の爆発を起こし消失する。そこは先程までカーマイン・コーンシェルが立っていた場所だ。

 

 「糞っ!なんなんだこの蝶は!!」

 

コーンシェルは最初に居た狙撃地点から離れ、全速力で逃げていた。

先程、必殺技《パララサス・ワン・ショット》をバイパーに撃った後、再度バイパーを仕留めるべく狙いを付けていた。 近くにオークル・ギターが居たが止めを譲る気はない。 むしろ自分がそのまま止めを射す気でいた。

あの蝶が目の前に現れるまでは・・・・

 

 「ハァ・・ハァ・・、この袋小路ならば入口は一つ。何が来ようと撃ち抜いて見せる。」

 

コーンシェルは壁に背を向け姿勢を低くすると、ご自慢の狙撃銃≪水吹く貝殻≫(ダウスシェル)の銃口を先程自分が通って来た道に向けて構えた。 そこへ通路向こうから1匹の蝶が飛びだすのを丁寧に撃ち抜くと蝶は爆散した。 すでにコーンシェルの必殺ゲージはMAXまで溜まっていたが、代わりにHPは50%を切っていた。

 

 「くっ!これはさっきのF型の攻撃か!?俺が一瞬目を離した瞬間に何をした!」

 

コーンシェルは混乱していた。 なぜならモルフォは噴水の影に隠れており、互いにその死角のせいで見えない

はずなのにモルフォは正確にコーンシェルへ攻撃を仕掛けてきたのだ。 そして攻撃は今もなお続けられている。だがやはりカーソル方向を見てもモルフォの姿見えない。 相手の距離、高低差も分からず方向だけでこうも正確な攻撃が繰り返されているコーンシェルは驚きを隠せなかった。

 

ッダン!!

 

コーンシェルはまた通路向こうから飛び出てくる蝶を撃ち抜く。

気付けば相方のオークル・ギターはすでにHPが全損している。このまま時間切れになればHP差でコーンシェル達の負けは確定である。

 

 「ちっ!時間切れを狙うつもりか!!」

 

“い、いえ。そんなつもりはありません。”

 

始めて対戦相手フローライトモルフォの声を聞いたコーンシェルは、条件反射で銃口を声の方へ向け引き金を引いた。 だがコーンシェルは気付くべきであった。 声がした方向は空間なんて存在しない壁しかないことを。 銃口から放たれた弾丸は声の主モルフォではなく、1匹の青い蝶に当たり蝶が拡散する。

 

 「居ないだと!?どこから声が!?」

 

 “今です!!”

 

その時、コーンシェルのもとに1つの影が射した。

それは逆の壁からコーンシェルへ飛び掛かるオブシディアン・バイパーの姿であった。

 

カーマイン・コーンシェル HP 00%

 

【KO!! YOU WIN!!】

 

 

――――寧々森邸・日向の部屋

 

 「っぷはぁ~、何とか勝った~。」

 

 「これが対戦なんですね!私、まだドキドキしています。」

 

そう言いながら日向は自分の手を胸に手を当て興奮しているようだった。

確かに、宏斗にも初めてバーストリンカーになった時と同じような、興奮を感じていた。

そんな興奮が少し静まったのか日向がこちらへ姿勢を改めて話し掛けてきた。

 

 「宏斗さん、今までありがとうございました。おかげで私のモルフォの力を知ることができました。」

 

あぁ、そうか。 日向は『戦い方を教えてほしい』と最初に言っていた。モルフォの能力が分かった今、

すでにその頼みは達成されている。 ただ宏斗は出来ればこんな対戦をもう一度をしたいと、自分を鍛えるのとは別の思いがあったからこそ、これから言うことも自然と口から出ていた。

 

「日向さん!あの・・・その・・1つ頼みがあるんだ。 

 助けるつもりが助けられちゃうような弱っちい俺だけど、これからも俺とタッグを組んでほしい!

 もちろん、今度はちゃんと守れるよう、もっと強くなるよ!」

 

その言葉に日向は少し嬉しそうな顔した後、1つ条件を付きけて返してきた。

 

 「では、お互い名前に “さん”を付けるのは禁止です。これからパートナーになるなら他人行儀じゃ変ですよ。」

 

 「・・・ははっ、それもそうだな。よし、これからもよろしくな()()。」

 

 「はい、よろしくです。()()()。」

 

 「って“君”はOKなのかよ。」

 

 「“さん”がダメと言いましたが、“君”はダメとは言っていませんから!」

 

そして部屋の中では2人の笑い声が響いた。

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございます(`・ω・)ゝ

まさか1試合文の話がここまで長くなるなんて想定外でした^^;
でも何とか1か月以内に書き上がってなんとかホッとしています。
ちなみに今回のタイトルは当て字です。あと「ぶんしん」ではなく「わけみ」とお読み下さい。

それではご意見や質問、感想等もどしどしよろしくお願い致します^^


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第06話「name;真名」

 

 

ッドッゴーーーーン!!

 

崩れかけた木造船の甲板の上に爆発音が轟いた。 本来なら爆発した場所に穴が開き木造ゆえそこから燃え広がるのだが、甲板には数秒黒煙を上がり穴は開かず表面上に後が残るだけだった。 ここは《廃船場》というステージで辺り一面に壊れた廃船が捨てられている。 また空には濃霧とどんな原理か不明だが船の残骸が浮いている。

今回の対戦相手は手投げ型爆弾を作成して中距離から攻撃してくる赤紫色M型アバター『ヴァイオレット・ボマー』、頭部が犬のような耳付きヘルメットでバイパーのような機動タイプの濃い青色M型アバター『ディープ・ウルフ』である。

 

 「爆ぜて!」

 

 「ぬわぁ!!」

 

 「ボム!?」

 

先程まで爆破合戦を繰り広げてたモルフォとボマーは、どうやらモルフォに軍配が上がったらしくモルフォの《フレア・フェアリー》がヴァイオレット・ボマーを焼いた。

 

 「くっ!ボムお前の仇は俺が取ってやるぜ。《シェイプ・チェンジ》!」

 

 「まだ生きとるわーーーーーー!!」

 

そして俺と対峙していたディープ・ウルフが必殺技を叫び飛び出すと、今まで人の姿をしていたのが瞬時に四肢の形状が変わり四足歩行の獣“狼”の姿へ変った。 ウルフはそのままバイパーの横をすり抜けると、ボマーと対峙しているモルフォへと飛び掛かった。

 

 「その首貰った!!」

 

 「ふぇ!?」

 

ウルフが飛び掛かって来たことにモルフォは即座に反応が出来ず、咄嗟に両腕を顔の前でガードした。

が、それが功を奏したのかたまたま袖から出かけていた《フレア・フェアリー》ごとウルフが噛みついた為、モルフォとウルフはフェアリーの爆発を受け後方へ吹き飛び再度2人の距離が離れた。 しかしモルフォのダメージの方が大きい。

 

 「きゃ!?」

 

 「うぉ熱つつつつつっ!! 糞っ、タイミングをミスったぜ。だが次こそ仕留める。《ウルフバっうぉ!?」

 

 「させるかーーーー!!」

 

仮にも機動タイプのバイパーも急いでウルフの元へ追いつくとウルフの左足、この場合は後ろ左足を掴むと思いっきりモルフォとは逆の方へ投げ返した。 そして不幸にも投げた方向には先程から投げていた爆弾より大きめの爆弾をせっせと作成しているボマーの姿がいた。

 

 「うっしゃー、俺特性のスペシャル爆弾の完成だぜ。」

 

 「うわぁぁぁぁ、ボム、どけ!どけ!どけーー!」

 

 「え?」

 

 「「どぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」

 

ウルフがボマーに激しくぶつかり更に後方へ転がる。 更に彼らが不幸なことはボマーが頑張って作った爆弾がそのまま地面に落としてしまったことだ。 モルフォの蝶と同じく衝撃で爆発する爆弾はそのまま地面に落ちた衝撃で激しく爆炎を上げボマーとウルフの残り少ないHPを綺麗に吹き飛ばした。

 

【KO!! YOU WIN!!】

 

 

 「やった!これで十連勝目。絶好調だね♪」

 

 「最後はちょっと危なかったけどな。」

 

ボマーとウルフの身体がポリゴン片となって見送った後、日向が宏斗の元へ駆け寄ってきた。

宏斗と日向がタッグを組んで1週間、互いのアバターの相性がいいのかソロ対戦と違って好調に勝ち星を掴んでいった。

そんなことをふと考えていると日向が再度声をかけてきた

 

 「宏斗君、『 YOU CAN LEVEL 2 』って出てるんだけど・・・・これって!?」

 

 「やったな日向。レベルアップメッセージだ!!」

 

バーストポイントが300ポイント貯まった事により日向のフローライト・モルフォもついにLv2へ上がれる権利を得たのだ。 レベルアップすると、新しい必殺技を得たり、既存の技やステータスを能力を向上させたり、強化外装と呼ばれる武器・防具がGET・強化出来たりと1つだけアバターを強化出来る。

ちなみに宏斗のバーストポイントはというと現在70ポイント。 というのもすでにLv2へ上がっているからだ。 ではなぜレベルアップしてるのにポイントが少ないかと言うとそれは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。

つまり、Lv2に上がるのに300ポイントきっちり貯めて即刻レベルアップすると300ポイント消費して残存0ポイントになりその場でブレイン・バーストが強制アンインストールされてしまうという何ともマヌケな話しである。

『宏斗はどっか抜けてるからな。もしかしたら同じ失敗しそうだ。』と姉の由貴からレベルアップの説明を受けた時に散々からかわれた。 だからしっかりと忘れずに安全圏までポイントを貯めてからレベルアップし、現在減った分のポイントの回復とレベルアップによる強化の方向性の思案中な訳だ。

なお、最初のレベルアップで出た強化の選択肢は『速度値強化』『アビリティ強化』『必殺技取得』『強化外装強化』の4つだ。

 

 「えっと・・まずはOKを押して・・・YESかな?」

 

 「そうそう、そこでYES押しちゃうとレベルアップしちゃうんだよな・・・え?」

 

その日向の言葉に宏斗は振り向くと、日向は英語で表示されるポイントを消費してレベルアップしてよいかのダイアルログにYESのボタンをしているところだった。

 

 「バ、バーストアウト!!」

 

宏斗は加速世界から現実世界へ戻るなり、隣でベンチに座っている日向の首に付いているニューロリンカーを引っこ抜いた。  姉さん、やっぱ俺抜けてたわ。日向に教えるのを忘れてました。

 

 

現在、宏斗と日向は対戦する為に江戸川1戦域(エリア)にあるあまり人気のない公園からローカルネットへアクセスしていた。 というのも今年の入学する中学校がある場所がここ江戸川1戦域(エリア)な為、どんなバーストリンカーが居るのか下調べに訪れていた。

なお、宏斗の家は江戸川4戦域(エリア)、日向の家は江戸川2戦域(エリア)に分類されている。

そんな訳で公園のベンチで宏斗は日向に手遅れであるがレベルアップの最大注意点と、対戦を挑まれない為に緊急処置としてニューロリンカーを外したことを説明していた。

 

 「・・・と言う訳で、マナー違反承知でニューロリンカーを外しました。本当に申し訳ない。」

 

 「そんな、私がしっかりと文章を読めば分かる事だったのに・・・ ごめんなさい。」

 

 「それで残りのバーストポイントはどれくらいなの?」

 

 「それが・・・・残り5ポイントでした。」

 

本当に危ないところだったみたいだ。 もし今対戦を挑まれ負けていれば日向はブレイン・バーストをアンインストールされバーストリンカーでなくなっていたところだ。 さて、問題はどうやって日向のポイントを回復させるかだ・・・。

 

 「ひとまず俺のポイントを半分分けて、即死から回避しないと。」

 

 「駄目だよ!そんなことしたら宏斗君までポイントが危なくなっちゃう!」

 

 「でも、安全にポイントを回復させる状態にさせるにはそれしかないよ。」

 

 「・・・・・・ わかった。」

 

やっと納得してくれたことに宏斗は一安心したが、

 

 「宏斗君がポイント分けても()()()()()()()()()()()()、ポイント分けてもらいます。」

 

 「な、何を言っているんだ日向!大丈夫なまでって――」

 

 「さっきも言った通り、今回の粗相は私が少し考えれば分かることだと思うの。だからやっぱり私の為に宏斗君まで危険な橋を渡る必要なんてないんだよ。」

 

 「でも俺が分けても大丈夫な安全圏までって、それまでどうするんだ?家のホームサーバなら対戦を挑まれる心配はないけど、一歩でも外に出てローカルネットに繋がってしまえば対戦挑まれる危険ががあるんだぞ。」

 

 「その対策は今宏斗君がしているじゃない。」

 

そう言って日向が指を射す先には、俺が右手に握っているカメラ付き日向の白いニューロリンカーがあった。

 

 「宏斗君が貯めるまで、私がニューロリンカーを付けなければいいんだよ!」

 

 「な!?」

 

宏斗は絶句した。 このご時世ニュローリンカーは必須道具だ。 他者との連絡や情報収集、お金の支払いや宿題の受け渡しまで全てのやり取りがこのニューロリンカーを介して行われている。

さらに目の見えない日向にとっては新たな目と言ってもいい。 日向のニューロリンカーは特殊で小型のカメラが付属されている。 そのカメラが写している映像をニューロリンカーが処理して日向の脳内部にある医療用硬膜内留置型通信機、通称BIC(BrainImplantChip(ブレイン・インプラント・チップ))に送信して日向にカメラが見ている風景を見させているのだという。

 

 「・・・・本当にいいのかそれで?」

 

 「多少生活に不自由が出るけど、これからも2人でブレイン・バーストやってく為だもん。大丈夫だよ。」

 

 「・・・はぁ~。そこまでの覚悟でいられちゃ、後は俺が頑張るしかないな。」

 

 「ごめんね頼っちゃって。あとね、もう一つ頼みたいことがあるんだけど・・・今何も見えてないから家まで送ってほしいんだけど・・・」

 

 「・・・・」

 

それから日向を家まで送る為に手を繋いで誘導していたところを、姉ちゃんズに見られて茶化されたのは言うまでもない。

 

 

――――江戸川4戦域(エリア) ステージ:《水没街》

 

 「って訳なんだよ。一体ど~すればいいんだろ。」

 

 「それを僕に聞かれてもな・・・」

 

宏斗は日向を家に送った後、ブレイン・バーストのデビュー戦で対戦したネイビー・ゲーターのギャラリーとして観戦に来ていた。 なお現在ゲーターは対戦相手の青の機動型アバターに苦戦中である。

そして、同じく観戦に来ていた『ビリジアン・トータス』へ現状の悩みを相談していた。

彼は宏斗が日向に会う前に1度戦った相手で、なかなか彩度の高い緑色型アバターで背中には超大型のカイトシールド背負い、丸みのある頭に嘴形の口が付いている。 一言でいえば目の前で熱い戦闘を繰り広げているゲーターと同じような獣人タイプ、大型のカメである。

 

 「でも安心したよ。女性バーストリンカーは少ない上に、江戸川区は過疎区だから余計お目にかかれないからね。

  江戸川バーストリンカーの楽しみの一つが無くならずに済んだよ。」

 

 「楽しみって・・・」

 

 「どんなゲームでも女性キャラクターってのは人気になるからね。そういうことだよ。」

 

そもそも何故彼とこんなにも親しくなったというと言うのも宏斗達が住む江戸川区は過疎区と呼ばれ、バーストリンカーの数が極めて少ない。 だから何度か同じ戦域《エリア》で対戦していれば戦っていない相手はいなくなってしい、そう言う意味では顔見知りが多くなるのでご近所付き合い並みに仲が良くなったりもする。 彼もその一人だ。 仲良くなったきっかけも今日と同じようにたまたまギャラリー観戦していたところ、彼から気軽に話しかけられたのが縁だ。

 

 「ところで、トータスもLv2になったんだよね。おめでとう、ボーナスはもう使ったの?」

 

 「うん、今回は『必殺技取得』を選んだよ。」

 

 「それでどんな技だったんだ?」

 

 「それは秘密。なんなら今から直接対戦で教えてあげようか?」

 

 「こっちはまだボーナス振ってないので遠慮しときます。」

 

 「あれ?まだ決めてなかったの?」

 

 「まだアバターの強化方向性が定まんなくて・・・トータスはどうやって決めたんだ。」

 

宏斗の質問にトータスが少し考えているとふと顔を横に向けたので、宏人も顔を横に向けると対戦中のゲーターが対戦相手と一緒に水面へ落ちるのが横目で見えた。 現在の対戦ステージは《水没街》と言うステージで都市一体が水没しており、水面から突き出ているビルの屋上で対戦が繰り広げられるのが一般的だ。 対戦相手の青のアバターが水面に浮上してきたが、ゲーターは一向に浮上してこない。

 

 「ゲーター君って名前の通り、ワニ見たく泳ぎが上手いというか多分泳ぎ関連のアビリティ持ってるっぽいんだよね。」

 

 「え?」

 

宏斗とゲーターが対戦した回数はまだ指で数える程しかないが、そのほとんどが泳げるような対戦ステージでなかったので初耳の情報だ。というか、強化方向性の質問をしたのに何故その回答でなくゲーターの話をしたのか宏斗は不思議に思った。だがその答えは彼の話で直ぐ判明した。

 

 「そういう意味では大抵のアバター能力は名前から連想される特徴が出て来るんだと思うだよね。

  僕も色と名前の連想通り防御値も高いし盾型の強化装甲は持っているんだけど・・・・

  ただ一つ不満があるとしたら防御系の技がないんだよね!」

 

 「なるほど!だから『必殺技取得』を選択したのか。」

 

 「うん、僕の最初の強化方向性を一言で言うなら『名前のインパクト性強化』かな。」

 

 「名前のインパクト性か・・・・」

 

 「だけど、今回の会得した技は防御系じゃないからLv3ボーナスも『必殺技取得』かな(笑)。」

 

アバターの特徴表す大体の部分は必殺技とアビリティがほとんどと言っていい。 そして先のトータスの話通り、アバター特徴が名から連想に密接関係するのであれば、『必殺技取得』『アビリティ取得』を選べば名前の特徴を捉えた力が身につけられる可能性が高い。 トータスは惜しくもそうではなかったがそう言った強化方向もありかもしれない。 では、宏斗のアバター『オブシディアン・バイパー』(黒曜石の蛇)から連想される特徴とはなんなのか。 今度は宏斗が腕を組んで考だすとあることに気付いた。

 

 「あ!」

 

その時、周りのギャラリーが一斉に歓声を上げた。

 

 「砕け散れ!《フィジカル・クラァァァァァッシュ》!!」

 

 「グァァァァァ!!」

 

いつの間にか浮上していたゲーターが技名を叫んで対戦相手の胴に噛み付き持ち上げていた。

技をまともに喰らった相手は上半身と下半身が真っ二つに分断されると、HPを全損してポリゴン片として退場していく。

 

 「うぉぉぉぉぉぉぉぉ、俺様の勝ちだぁぁぁぁ!!」

 

ゲーターは水面から俺達ギャラリーのいるビル屋上へ向けて勝利のアピールをし始めた。

 

 「いや~、おめでとう。おめでとう。ゲーター君もそろそろレベルアップかな。

  そしてバイパー君も何か見えたようだね。」

 

 「1つ思うことがあるけど、トータスと同じで想像通りいくかはまだ分からん。」

 

 「どんな結果になっても強化なんだから問題ないさ。それじゃ良い結果がでるか楽しみにしてるよ。」

 

 「ああ、楽しみにしていてくれ。それじゃ、バーストアウト!」

 

宏斗は友人に別れを告げその場を後にした。次は宏斗が戦う番だ。

 

 

――――江戸川4戦域(エリア) ステージ:《樹海》

 

針葉樹・広葉樹が青々と茂る木々の中に1匹の巨大な青いトカゲが出現した。いや、それはトカゲと言うには余りにも大きな口を持ち2足歩行で歩いている。 彼の名は『ネイビー・ゲーター』、先程まで《水没街》と呼ばれる対戦ステージで勝利をもぎ取り見事にバーストポイントが300を超えたところだ。ゲーターは今度は誰に挑まれたかと気合を入れ直そうとしたがHPゲージの上には彼の名ではなく彼が最近知り合った友人の名が刻まれていた。

その時横から緑のアバターが姿を現した。

 

 「やぁ、ゲーター君。さっきの試合はおめでとう。」

 

 「おう!トータスか。しかし、バイパーがソロ試合とは久しぶりだな。」

 

 「モルフォちゃんが、ニアデスミスしちゃったみたいだよ。」

 

 「かかかかか! そいつはバイパーの奴も災難だな。」

 

 「それでモルフォちゃんの分も稼がないといけないんだって。」

 

 「ほぉ・・・なら俺にいい案があるぜ。」

 

 「うぁ~、嫌な予感しかしないよ~。」

 

ゲーターとトータスが談笑している中、対戦スタート告げる文字が表示された。

今回のバイパーの対戦相手は『セラドン・モンク』。全身を丸みの帯びた青緑色の装甲に包まれ、自分の硬さを活かしたインファイトの殴り合いを好むのが特徴だ。 対戦開始から50カウント経過したが、モンクはバイパーがガイドカーソルで表示されない以上周囲を警戒しつつ無作為に進むしかなかった。 その時、樹上からで待ち構えていたバイパーが上空からモンクへ躍りかかる。 モンクもバイパーの存在に1テンポ遅れて気付いたが回避するにも防御するにも既に間に合わず、右肩を斬られ鈍い金属音が響いた。

対戦相手に居場所を特定させないバイパーの索敵妨害(サーチジャミング)は、相手に警戒を誘発させるので初手を封じさせ初撃を与えられるのは、もはやバイパーの基本戦術になりつつある。

 

 「っぐぅ・・・」

 

 「!! 硬い、ならもう一撃。」

 

 「甘い!」

 

初撃ダメージがあまり大きなものではなかったバイパーは追撃で斬りにかかったが、モンクはそれに合わせる様にカウンターの拳をバイパーの腹部に叩き込んだ。

 

 「がはっ」

 

重い拳に息が詰まりそうになるが、直ぐに呼吸を正常に戻しモンクから距離をおく。

モンクがガチで殴り合うインファイトを得意とするなら、バイパーはスピードを活かしたヒット・アンド・ウェイを得意とする。 今度は焦らずに樹々を利用した撹乱奇襲を繰り出してみるが、やはりモンクは合わせたかのようにカウンターで返してくる。 激しい攻防を繰り返し攻撃の手数ではバイパーが勝っているものの、モンクの硬い鎧と重い拳の一撃で結果としてはバイパーの方がダメージは大きくなってしまっている。

バイパーは一度攻撃の手を休め樹の後ろに隠れつつ、自分のHPと必殺技ゲージを見比べた。

 

 (う~ん・・・、ゲージはMAXまで溜まったけど、このまま撃ち合えば確実に負けるな。)

 

その時、先程から口数が少ないモンクがバイパーに向けて声を上げた。

 

 「悪いがこのまま続けても、貴様の攻撃力じゃ俺に決定打を与えることは無理だ。そして《ビルド・アップ》!!」

 

必殺技名を叫ぶと、突如モンクの身体から白い湯気のような靄が立ち上り始める。

 

 「これで攻撃力・防御力共に向上させた。貴様の勝つ見込みは0だ。」

 

 (まじかよ。ならもう()()使()()()()()()。)

 「そいつは残念だけど、その考えをひっくり返す奥の手ってのが俺にもあるんだよ!」

 

 「なら、証明して見せろ!」

 

宏斗はモンクに向かって駈け出す、モンクもそれを迎え撃とうとファイティングポーズを構え直した。

勝負は次の一瞬で決まる。決まれば宏斗にとってこれが()()()()()となるはずだから。

 

 「さぁ来い蛇。」

 

 「うおぉぉぉぉぉぉ!《エクリプス・ベナム》!!」

 

サリテュードバイト(孤独な牙)の刃が紫色の光り出し、モンクに向けてその刃を付き出した。

しかし、その刃モンクに突き刺さらずモンクの頬を掠めただけに終わる。 逆にモンクの拳がバイパーの顔にヒットしバイパーの身体を吹き飛ばした。 HPはモンクは残り3割、バイパーは残り1割も残っていない。 それでも宏斗は立ち上がり心の中で笑みを浮かべた。

 

 「残念だったな。奥の手というのも当たらなければ意味がない。

  さぁ、その半端に残ったHP吹き飛ばしてやるから掛ってこい。」

 

 「悪いけど攻撃はそれが最後だ。」

 

 「攻撃さえあきらめたか。ならばそこを動くな引導を渡してやる。」

 

 「ははっ、まだ気づいてないのか。HPを見てみろよ。」

 

モンクがHPを見直すがHPに変化はない。 と思っていたがHPがジリジリと減り出している。

 

 「なっ!これは!?」

 

 「やっと気付いたか。お前の身体に毒を入れてやった。」

 

宏斗の放った《エクリプス・ベナム》は単なる攻撃技ではあるが、ダメージはおまけにすぎない。

トータスと話した時、宏斗も自分の力に一つ疑問があった。 最初こそ索敵妨害(サーチジャミング)存在迷彩(エグズィステンスステルス)などの隠密アビリティがバイパーの能力と思っていたが、アバター名から連想できる能力ではなかった。 トータスの仮説が本当ならバイパーにもその名の通りの力がまだあるのではないかと。だから宏斗は賭けに出てみた『必殺技取得』を選択することでバイパーの本当の能力が開放されることを。

そして会得した《エクリプス・ベナム》は刃に接触した相手を“毒” 状態にさせる。 この毒は痛みさえないものの相手の防御力に関係なくHP確実に削っていく。

そう、無かったものは“毒牙”。 バイパーは蛇は蛇でも(Snake)ではなく毒蛇(Voper)なのだから。

 

 「ってな訳でギャラリーに申し訳ないけど後は全力で逃げる。時間もまだまだあるし、お前のHPも削りきれるだろう。

  あ、追い掛けてくるなら追い掛けて来てもいいぞ。追いつければの話だけど。」

 

 「ちょ、ちょっと待て!?」

 

宏斗はモンクに背中を向けるやいなや全速力で駆けだした。

後方でモンクの絶叫が聞こえるけど無視。 彼も分かっているのだろうスピードではバイパーに勝てないことを。

そうしてバイパーは時間いっぱい逃げ切り、毒の効果でモンクのHPを削りきった。

ギャラリーにも後半のモンクとのおにごっこが好評だったのは意外だ。

 

 「ふ~。とりあえず毒と隠密アビリティで勝率は上げれそうだな。」

 

その時ギャラリーから聞いたことがある声が聞こえてきた。

 

「HEY!バイパー!俺のマイ フェアリーがニアデスナウってどういうことDA!」

 

声の主はオークル・ギター。というかギターはどこで日向がポイントが危ないことを知ったのか?

あと、日向はお前のものじゃない。 続いて今度はよく知る知人達の声がギャラリーの中から聞こえてきた。

 

 「ごめんねバイパー君。ゲーター君に話したらが周りにバラしちゃったよ。」

 

 「おぅ、バイパー。これで対戦者がこぞって江戸川4戦域(ここ)に集まってくるぜ。」

 

宏斗は再びトータスの言葉を思い出した“江戸川バーストリンカーの楽しみの一つが無くならずに済んだよ。”。

確かにご当地アイドルの危機なればこぞって確認に来るという訳か。

 

 「どうなんだYO、バイパー。MAGIな話なのかYO。」

 

 「さぁ、第2ラウンドといこうぜ。バイパー。」

 

 「あ、ギター君は今来たばかりだから必殺技は見てないよ。」

 

この後バイパーの連戦は続き1日で日向のニアデスを回復できたことは言うまでもなかった。

 

 




ここまで読んで頂き大変ありがとうございますm(_ _)m

今回は原作13巻の発売日に合わせて書いたのでいつもよりボリューム多めになっております。
また今回は、アバター案を頂きました中から『ヴァイオレット・ボマー』、『ディープ・ウルフ』を
ちょこっと出させて頂きました。(後、オークル・ギターも引き続きちょこっと出してみました。)
案を投稿して頂きました方々におかれましては大変有難うございます。
ここで1点か皆さまにご質問です。アバター案を採用させて頂いた方のやはり名前は伏せたほうが
良いのでしょうか? ひとまずは伏せる方向でいきたいと思います。


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第07話「germination;萌芽」

鈴峰宏斗こと《オブシディアン・バイパー》はうっそうと茂る木々の間を駆け抜けていた。 辺りは大昔生えていましたと言うばかりの巨大植物に、遠くからは不思議な鳴き声が聞こえている。 此処は《原始林》というステージで属性は木、自然系ステージで草木型の破壊オブジェクトや生物型のオブジェクトが闊歩しているのが特徴だ。

 

 「日向、そっちの様子はどうだ?」

 

宏斗は走りながら相方の様子を聞くと、バイパーの肩に止まっている青い蝶から可愛らしい女の子の返事が返ってきた。

 

 “さっき宏斗君が毒状態にさせた方の足止めは成功したよ。

  あと、その辺にいたカマキリさん達をご案内したからもう少しでHPが無くなると思う。”

 

これは相方である寧々森日向のアバター《フローライト・モルフォ》の『オブサベイション・フェアリー』という技で蝶が見聞きしたものを共有できる。 またこうして互いに離れた場所から音声通信も可能なので通信機として使用している。 ちなみに先程日向が言っていたカマキリさんというのはおそらくこのステージの生物型のオブジェクトの事であろう。 そして『達』ってことは複数匹けしかけたのか? 生物型オブジェクトは1匹でも場合によっては戦局をひっくり返す可能性があるのに、毒状態と日向の遠隔攻撃を喰らってはご愁傷さまとしか言えない。

 

 「了解。了解。もう一人は今どの辺?」

 

 “そのまま真っ直ぐ行くとおっきなラフレシアがあるから、そこを越せば直ぐだよ。”

 

 「りょーかい!」

 

宏斗は前方を凝らしてみると確かにラフレシアっぽい花が見えてきた。そしてその先にはお目当ての赤いアバターも発見できた。 現在このステージ一帯は日向が所々に配置している『オブサベイション・フェアリー』で監視しているので相手はもはや逃げ隠れは不可能である。

 

 「くそっ、もう追いつてきたか!」

 

対戦相手の赤のアバターもHPが残り少なく、これ以上の逃走は不可能と判断するや否や腰にぶら下げていた2丁のサブマシンガンを後方から追ってくるバイパーへ向けて乱射した。

 

 「ぬわぁ!! あ、危ね~。」

 

宏斗は寸前のところで物陰に隠れたが、それでもマシンガンの弾幕は止まない。撃ち方的に自棄(やけ)になっているようだ。

 

 「はぁ~、しょうがないな~。(≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)!)」

 

宏人はご自慢の隠密アビリティを発動させるとバイパーの身体の色が次第に周囲に溶け消えていく。

次に銃撃の弾幕に当たらないように匍匐前進でこの場から離脱する。 この≪存在迷彩≫(エグズィステンスステルス)は、姿は消えるが実態が存在するがゆえに雨や霧、雪などの気候の影響、明るい場所だと影のせいで存在位置がバレてしまうのが弱点だ。 それに加え最近判明したのだが大きな衝撃加わると解除されてしまうことがわかった。 だからこの弾幕が1発でも当たれば居場所がバレそれでこそ蜂の巣にされかねない。

 

 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、銃身が焼けるまで撃ち続けてやる!!」

 

銃撃の雨の中を慎重に抜けきった当たりで、振り向くと対戦相手がテンション高めでまだ弾をばら撒いているのが見えた。 宏斗は音を立てないように、といっても銃撃音で聞こえないと思うが対戦相手の後方に回るとご自慢の強化外装の刃を相手の首元におき、アビリティを解除する。

 

 「その首頂戴する。」

 

【KO!! YOU WIN!!】

 

 

――――寧々森邸

 

 「やっぱり最後のセリフ、時代劇っぽいほうがかっこいいね。」

 

 「そうか?俺的には決め台詞とかよくわからないんだけど。」

 

時刻は現在朝の07:30。 宏斗はこれから日向を学校へエスコートする為に寧々森邸まで訪れていた。 ブレイン・バーストを始めて2ヶ月、宏斗と日向は中学生となっていた。

 

 「ところで宏斗君、どうですか私の制服姿。似合っていますか?」

 

日向の今の服は白をベースに襟に2本の水色線が入ったセーラー服に青色のスカート、胸元にスカートと同じ色のネクタイが付いている制服だ。 髪型はいつものロングヘアーを背中のあたりでこれまた同じ青色のリボンで結んで日向のデュエルアバターと同じ髪型にしている。 日向は宏斗に全体を見せる様にその場で一回転すると、膝の少し上丈しかないスカートが少しふわっと浮き上がった。

 

 「ま、に、似合うんじゃないか!」

 

宏斗は少し目を逸らしながらも照れくさそうに褒めた。 なお宏斗の制服は紺のブレザーと同色のズボン、日向と同じ青いネクタイを着用している。

 

 「えへへ、そうかな♪ そうだ知り合いの子にも見せたいので

  スクリーンショットお願いしていい?」

 

 「あ、うん。いいよ。 えーっと視界スクリーンショットアプリは・・・」

 

 「・・・・」

 

 「ん?準備いい?」

 

 「う、うん。いいよ。」

 

気の性だろうか。スクリーンショットアプリを探してる間に、日向も何か仮想デスクトップで操作していたように見えたのだが・・・

 

 「(ま、いいか。)はい、チーズ!! よし撮れたよ。」

 

 「ありがとう。」

 

宏斗は自分の仮想デスクトップから寧々森邸のホームサーバ経由で先程の写真を日向に渡す。 ついでにコピーもとったから後で自分用に引き延ばしておこう。

 

 「よし、そろそろ時間だし行こうか。」

 

 「うん♪」

 

 

――――江戸川第2中学校・教室

 

なぜ「校長先生からの一言」って本当に一言で終わらないんだろう。 宏斗は机に突っ伏しながら入学式の校長の話が長いことにげんなりしていた。 席は窓側の後ろから2番目、俗に漫画とかで先生から目が付けられにくかったり、窓からUFOを探せる席として有名な席である。 現実ではあまり人付き合いの良くない宏斗としては静かに過ごせる席としてベスト的な環境だ。 ちなみに日向も宏斗と一緒のクラスとなり宏人の右斜め前の席に座っている。 そして現在日向はいろんな女子や男子に囲まれて「どこの学校からきた?」だの「困ったことがあったら頼って」だの質問責めにあっている。 やはり目が見えないのは珍しいのだろう。 それに宏斗から見ても日向はかなりの美少女なので、それと相まって想像以上の人気が出ている。

そんな日向が先程からチラチラと宏斗のほう見て来る。 察するに今まで話したことがない人から質問責めにあって宏斗に助けを求めているようだ。

 

 (すまん日向。俺にはその集団内に入る勇気が出せない。 しかし・・・)

 

 「なぁなぁ、さっきからあの子、俺のことチラチラと見て来ていないか?

  やばい、惚れられた!」

 

 (あー耳元で騒ぐな! あと見ているのはお前じゃなから!)

 

先程から宏斗とテンションが真逆な前の席の男子が、宏斗に話しかけて来る。 宏斗は出席リストデータを見て前の男子の名前が“砺波 翔(となみかける)”という名だと分かった。

 

 「はーい。みなさん席について下さい。HRを始めますよ。」

 

突如、教室の戸が開けられると30代くらいの大人の女性が教室に入って来た。 どうやら宏斗のクラスの担任はこの女性になったらしい。 宏斗はすこし胸をホッとなでおろした。 そしてHRが始まると担任の女教師は仮想デスクトップを使い各生徒にこの江戸川第2中学校のことや、今後の学校生活について説明していく。

なお本日は入学式と簡単な学校説明をするだけなので、本格的な授業は明日からとなる。

 

 「それでは、みなさんに学校内ローカルネットのアカウントをお渡ししますので、

  各自接続できるか確認してください。」

 

 ((きた!!))

 

宏斗と日向は心の中で身構えた。 学校内ローカルネットに繋ぐということは、宏斗達と同じく新入生にバーストリンカーが居た場合これから3年間、共に学校生活を過ごさなければいけないということだ。

なお、上級生にバーストリンカーが居た場合についてだが、宏斗達が入学する前は宏斗達の姉である鈴峰由貴や寧々森鷹乃が通っているので(現状も通っているが)少なくとも姉達と関わりがある人物であることは間違いない。

仲が良かったか悪かったか分からないがどちらにしても接触しなくてはいけないだろう。

そのことについては今朝方日向と話し合っている。 先生からアカウントを貰ったと同時に加速してどちらかが対戦を申し込む手筈になっていた。 そうして宏人の仮想デスクトップ上に先生から配布されたアカウントが届いた。

すぐさま学校内ローカルネットに繋ぐと小声でコマンドを唱える。

 

 「「「バースト・リンク!!」」」

 

バシィィィと音と共に周囲の空間が青く染まると、先生やクラスメイトの動きがぴたりと止まると共に宏斗の身体は仮想アバターである全身フル鎧の黒騎士の姿に変わった。(なお以前のアバターは、日向に不評であった為コーディネートさせられた。) これこそ『ブレイン・バースト』が意識のみを千倍まで加速させた状態である。 宏斗はそこからデスクトップ上の《B》のアイコンにクリックし『ブレイン・バースト』を起動させマッチングリストを表示させる。 しばらくするとリストの最上部に《オブシディアン・バイパー Lv4》宏斗のデュエルアバターが表示され、その次に《フローライト・モルフォ Lv4》日向のデュエルアバターが表示された。 そして肝心の次項目に《アンバー・メモリー Lv4》。 以上3つ名が表示されている。

宏斗は《アンバー・メモリー》を選択しDUELボタンを押そうとした次の瞬間、再び世界に色がついた。

 

 

――――学校内ローカルネット ステージ:《奇祭》

 

窓から見る空は暗くなっているが、色取り取り白熱電球で教室内は明るく照らされ、アコーディオンが奏でるBGMが流れて来る。 対戦表示は『オブシディアン・バイパーVSアンバー・メモリー』、対戦を申し込むはずがどうやら逆に申し込まれたようだ。 そして視線を対戦表示から目の前に移すと目の前に、薄翅型の耳に調理の際に付けるような三角頭巾を被った頭部、お腹の辺りまで上半身を隠すケープを着たオレンジ色のF型アバターが黒板の方を向いていた。

 

 「あの席の位置は確か――」

 

宏斗の言葉に目の前のF型アバター、アンバー・メモリーが振り向くと。

 

 「うぉぉぉぉぉ、生バイパーです♪ かっこいいです!

  黒いです!カーソル表示されないです。」

 

 「へ?」

 

宏斗は思いがけなかったことに身体が反応できなかった。 なぜなら目の前のメモリーが宏斗に抱きついて来たからだ。

 

 「え!?え!?ちょ、ちょっと!!」

 

 「お!よく見ると装甲の一部が半透明なのです。 美しいですね~。 綺麗ですね~。」

 

 「ストッーーープ!! 何抱き合っているんですか!!」

 

声の方を2人で見ると、そこにはギャラリーとして加速しているフローライト・モルフォ・日向の姿があった。 ちなみに宏斗の手は手ぶらなので正確には抱きつかれているである。

 

 「おおっと!コホン、失礼しました。興奮のあまりテンションが暴走してしまいました。」

 

目の前のメモリーはせき払いして宏斗から離れる。

 

 「えーと、このクラスから加速したってことは・・・」

 

 「はい、出席番号16番、安堂 春絵(あんどうはるえ)と申します。失礼ですが、

  ひとまず対戦を切り上げてこの後リアルでお話しませんか?

  このまま対戦でも構いませんが、私としましてはバイパーさんと

  少々お話をさせて頂きたいのですが。」

 

メモリーこと春絵はビシッと敬礼しながら自己紹介した後、リアル会談を望んできた。

たしかに、これからの学校生活を送る上で友好的な付き合いを必須だ。

あと、最初は驚いたけど春絵はなかなか好感的な態度なので、好戦的だったり悪い人と言う訳ではなさそうだ。

 

 「俺は構わないけど、モルフォはどう?」

 

 「・・・・バイパー君がいいって言うなら私も構わないけど。」

 

 「OKですね!それじゃ、後ほどリアルで、バースト・アウト。」

 

 「それじゃ、俺らもバースト・アウトしよう日向。」

 

 「あ、うん」

 

 「「バースト・アウト!」」

 

 

――――某マ○ドナルド

 

 「改めまして、安堂 春絵と申します。」

 

 「鈴峰 宏斗です。」

 

 「寧々森 日向といいます。」

 

リアルであったアンバー・メモリーは宏斗と日向と同じクラスメイトで、髪型を後頭部でまとめたシニヨンと呼ばれる髪型に、下ふち眼鏡が似合う女の子であった。

 

 「いや~、しかしあの『暗影の毒蛇』『光明の妖精』と

  同じ学校になれるなんて超ラッキーです。」

 

 「「何(何ですか)、その名前?」」

 

 「え?知らないんですか?お二方の通り名ですよ。ちなみ考案は私です!」

 

宏斗と日向とそして春絵は学校近場のファーストフード店に来ていた。

なお日向は入店の際、ファーストフード店は初めてらしくお嬢様全開で物珍しく見回していた。

 

 「ひとまず、この場でゲームワードはNGなので直結しましょうか。」

 

 「「ええええ!(ぶはっ)」」

 

春絵はバックアからの1mのケーブルを2本取りだすと、日向は顔が真っ赤にして大きく驚き、宏斗は飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになり思考がフリーズする。

直結とは有線ケーブルを用いてニューロリンカー同士を繋げ通信を通信速度を速めたり、機密なやり取りを行う行為だ。 だが基本無線通信を行うニューロリンカーは本来通信の際十分なレベルのセキュリティが施されデータや通信のやり取りを行うが、それを有線を介して行った際そのセキュリティの約9割が無効になる。 その為ある程度のニューロリンカー操作技術がある者ならば、この状態で接続相手のプライベートメモリを覗くことも可能だ。 ゆえに世間一般家族同士以外で公共の場で直結する男女は99%恋人関係になる。

 

 「ちょちょちょ直結ってて、ここんな公共の場ですすするなんて!!」

 

 「あ、すいません流石に恥ずかしいですよね。」

 

その言葉に日向は心をホッと撫で下ろしたが、次の言葉にまたすぐ打ち砕かれた。

 

 「それじゃ言い出しっぺの私が間に入るので、寧々森さんは私と繋ぎましょうか。」

 

春絵は宏斗と日向のニューロリンカーにケーブルを差し込むと、それぞれケーブルの反対側を自分のニューロリンカーへ差し込んだ。

 

「はーい♪それじゃ改めてブレイン・バースト会談をしましょうか♪」

 

宏斗はもう突然のことに何が何だか混乱し、やっと思考の停止から戻った時は春絵が張り切って話を進めようとしていた。 そして日向は宏斗と春絵の間の()()を見ていると心のどこかでか切ない気持を感じていた。

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございます(`・ω・)ゝ
誤字脱字報告や感想等があればコメントに書いて頂けると幸いです。

今回は頂いたアバター案の中からメインキャラとして《アンバー・メモリー》を採用させて頂きました。ちなみに名前の後半部分を変えさせて頂いてますので、色名で反応された投稿者様。あなたの案を使ってますよ~!
PS:漫画AW4巻のアバター案投稿している「こぶ茶」さんは私と別の方なのであしからず。


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第08話「strength;強度」

 

 

 『じつは私、バイパーさんのデビュー当時からのファンなんですよ。』

 

春絵は宏斗の方へ席を近付けて、興奮のあまりか宏斗の手を取る、。

現在、宏斗と日向そして春絵は入学式帰り学校の近場にあるファーストフード店に来ていた。

 

 『それでいつも対戦を見てて思っていたんですが、どこかに身を隠した後に突如別の場所に現れたり、対戦相手の後ろに現れたりとあれはどのような仕組みなんですか? 瞬間移動か何かですか!?』

 

 『えっと…、それは企業秘密ということで。』

 

流石に隠し通せなくなってきている。 今までは《エクリプス・ベナム》を前面の押し出すことで《存在迷彩(エグズィステンスステルス)》を隠してきけど気付き始めている人は気付いてきているということか。

でも、今気にするところはそこじゃない。 宏人は横目で日向を見ると……

 

 『………。』

 

日向の瞳は閉じているものの明らかに日向のニューロリンカーカメラは、春絵が握っている宏斗の手に向いていた。

 

 『ところで安堂さんに聞きたいんだけど、《無制限中立フィールド》って知ってる?』

 

宏斗は話題を変え、ひとまず握られていた手を振り解く。 《無制限中立フィールド》というのはレベル4以上のバーストリンカーのみが許可されるハイ・プレイヤー向けのフィールドであり、エリア制限と時間制限が無くなるという通常対戦とは違うブレイン・バーストのもう一つ顔だ。

姉の由貴から《無制限中立フィールド》の話を聞いた時から宏斗の最初の目標であったが、そこへ行ける為のコマンドを聞く前に姉のブレイン・バーストがアンインストールされてしまった為、実は宏斗も日向もレベル4になっているものの《無制限中立フィールド》へ行けないのだ。

 

 『春絵でいいよ。これからクラスメイト件同じ学校のバーストリンカーになったんだし、その代り私も名前で呼んでもいいよね。宏斗さん♪』

 

 『わ、わかった。それじゃ春絵さんと呼ばせてもらうよ。』

 

 『ノン、ノン。“春絵”でお願い致します。呼び捨てされた方が新密度もUPですよ。』

 

 『それより安堂さん、先程のお話を!!』

 

突如、日向が話の方向性を修正すべく声を上げた。

いつもおとなし目な性格なだけに大きな声を上げた日向に宏斗は少し驚く。

 

 『すみません《無制限中立フィールド》のお話でしたよね。もちろん知ってますよ。ただ……』

 

 『『ただ?』』

 

 『私も先日レベル4になったばかりなので、まだ《無制限中立フィールド》って行ったことないんですよね。お二方はもう行ったことあるんですよね?どんな所なんですか?』

 

 『『………』』

 

宏斗と日向は顔を見合わせた後、自分達がまだ《無制限中立フィールド》へ行ったことがないこと、何故行ったことがないのかを春絵に語った――。

 

 『――ううぅっ、苦労したんですね~。』

 

 『あ、安堂さん。これ、どうぞ。』

 

俺の話で春絵さんが共感して泣いている。 そして日向が涙を拭く為春絵にハンカチを渡した。

たしかに親が居なくていろいろ大変ではあったが泣くほど共感してもらえるとは…。

 

 『ハンカチありがとうございます。 ……よし!わかりました。ここは私に任せてください。』

 

 『任せてというと?』

 

 『私の親であり師匠に掛け合ってみます。』

 

春絵は仮想デスクトップを開きボイスチャットコマンドを選択すると、アドレス帳の中の1つを選択する。 

先程言った春絵の親という人物に連絡取るのだろう。

 

 “『あ、もしもし、師匠今よろしいですか?』”

 

 “『どうした春絵?これから領土戦だから手短にな。』”

 

直結している為、宏斗と日向にも春絵のボイスチャット通信が聞こえてくる。 声から察するにどうやら春絵の親は男性のようだ。

 

 “『ラジャです。本日、師匠が入学祝いでご馳走して頂く予定ですけど2名追加でお願いします。』”

 

 “『は?ちょ、ちょっとまて!?2名追加ってどういうことだ!その前にご馳走なんて約そ――』”

 

 『私の師匠の許可を得たのでこれで問題ないです♪』

 

 『『………。』』

 

はたして相手の返答を待たずに問答無用で要件だけ伝えたことを「許可を得た」というのだろうか?

春絵の説明だとこの後その春絵の親に≪無制限中立フィールド≫のレクチャーを受けに会うのだという。

リアル割れの心配もあるが、日向と話し合いひとまずその人物に会うことにした。

 

 

――――江東区・某ファミレス

 

ブレイン・バーストには複数のバーストリンカーが徒党を組む『レギオン』と呼ばれるシステムがある。

レギオンに入ると戦域を占領することが出来る領土戦ができる。 そして東京都には約60の戦域があり、その大多数を7つのレギオンが占領しているのだ。 練馬区・北中野区を占領している赤のレギオン《プロミネンス》、足立区・荒川区・台東区を占領している黄のレギオン《クリプト・コズミック・サーカス》、新宿区・文京区・南中野区を占領している青のレギオン《レオニーズ》、渋谷区・東世田谷区・目黒区・品川区を占領している緑のレギオン《グレート・ウォール》、港区を占領している白のレギオン《オシラトリ・ユニヴァース》、杉並区を占領している黒のレギオン《ネガ・ネビュラス》、中央区・そしてここ江東区を占領しているのが紫のレギオン《オーロラ・オーバル》だ。 7大勢力が占領する土地だけあって宏斗達が住んでいる江戸川区に比べて断然バーストリンカー数は多い。 そんな土地の某ファミレスに宏斗と日向、そして春絵は来ていた。

 

 「えっと師匠は……、あ!あそこに居ました。」

 

春絵が向かう方へついて行くとツンツン頭の男性が座っていた。

 

 「おぅ、遅かったな春絵。んで、その2人がさっき言ってたふた……」

 

男性が日向を見ると立ち上がり――

 

 「春絵でかした!お嬢さん、ぜひうちのレギオンに入って――」

 

 「何、初対面の女の子にナンパかましてるんですか!」

 

日向の手を握ろうと近寄って来た男性の溝内に、春絵の強烈な突っ込みがめり込んだ。

 

―――

 

 「先程は師匠が暴走してしまって申し訳ありませんでした。」

 

 「痛てて、女性バーストリンカーは人口少ないんだから見かけたら積極的に勧誘しとくもんだろ。

  うぉほん、じゃあ改めて自己紹介しよう“ライガ”だ。」

 

ライガと名乗る男性が握手を求めてきたので、宏斗達は握り返す。

 

 「師匠、それ本名じゃ…」

 

 「馬鹿者、俺の立場上を考えろ!」

 

ライガさんの立場って何だろう? それより俺達も自己紹介しないと。

 

 「俺達も本名伏せたほうがいいですかね?」

 

 「別に伏せてもいいが、制服着てる時点であんまり意味がないな。」

 

確かにライガさんの場合春絵の知り合いという以外リアル情報はないが、俺達は学校帰りでもある為制服を着用している。 制服から学校を特定すればそれでいろいろな情報が分かるというものだ。

宏斗と日向は素直に本名で自己紹介し、4人で直結後何故俺達が春絵に連れられてこの場に来たかを説明した。

 

 『くぅぅ~、泣ける話じゃねえぇか。』

 

ライガが右手で目を隠し、宏斗の話に悲観的になっている。 子も感情的なら親も感情的である。

 

 『そうです師匠。こんなに苦労しているお二方に協力してあげないでどうするんですか。』

 

 『よし、わかった。教えよう!』

 

 『本当ですか!?』

 

今まで大人しかった日向が笑顔になり喜びの声をあげる。 日向ははしゃいで宏斗の手をとった。

知り合ってまだ2ヶ月くらいだけど、日向はたまに感情をダイレクトに伝えてくるのでドキッとする。

 

 『ただし、条件がある。』

 

 『『………』』

 

 『…条件とか非道です。師匠。』

 

え?この人なんて言った?と宏斗と日向は唖然となり、春絵は頼んだオレンジジュースを飲みながら、ライガを横目で非難した。

 

『馬鹿たれ。その条件ってのはお前も含めてだ。』

 

 『へ?』

 

『まず、《無制限中立フィールド》っていうのが、どういうところなのか分かるか?』

 

宏斗は姉から聞いている《無制限中立フィールド》について思い出し話す。

 

 『姉からレベル4以上で入れるようになる、時間と戦域が無制限の広大なフィールドと聞いていますが。』

 

 『それは大まかな説明だ。もっと細かく言うと《無制限中立フィールド》全地球上にあるソーシャルカメラが写している全ての場所が範囲だ。そしてそれゆえに時間さえ合えば《無制限中立フィールド》に入っている者なら誰にでも攻撃でき、誰にでも攻撃を受ける。これがどういう意味だか分かるか。』

 

誰にでも攻撃でき、誰にでも攻撃を受けるか…。宏斗はライガの質問に顎に手をあてに考える。

あれ?時間さえ合えばってことは…。

 

 『そうか! 唐突に乱入されたり、一対多の戦いになるかもしれないのか。』

 

 『そういうことだ。 だからいざという時に対処できるよう、ある程度の強さがなければ俺は教えん。』

 

 『その強さはレベル4になった私達なら問題ないんじゃないですか?』

 

オレンジジュースを飲み終えた春絵がライガの答えに質問で返した。

たしかに、《無制限中立フィールド》の条件はレベル4以上だからこそ十分な強さだとライガ以外の3人は思っていた。

 

 『確かにそうだが、俺はそれを最低条件だと思っている。 実は《無制限中立フィールド》にはバーストリンカー以外にも気を付けなきゃいけないものがある。そいつらを倒すにはもっと力を付けなきゃいけないんだ。その相手の名称がエネミー。』

 

エネミー・・・、あれ?どこかで聞いたことあるような。

 

『エネミーは《無制限中立フィールド》を闊歩する仮想生命体で、その強さは小さいものから小獣(レッサー)級、野獣(ワイルド)級、巨獣(ビースト)級、神獣(レジェンド)級。ちなみに小獣(レッサー)級をソロで倒せるようになるのは、レベル7クラスになってようやくってところだ。』

 

宏斗達はライガの言葉に息をのんだ。 高ぶる≪無制限中立フィールド≫への気持ちが叩き付けられた話の厳しさによって一気に宏斗を現実へ引き戻す。 日向も春絵も視線がうつむいている。 表情からして宏斗と同じ心境なのだろう。

 

 『何そんな残念な顔してんだよ、おまえら。さっき言った条件の“ある程度の強さ”の強さってのは、別にレベルの話ってわけじゃないぜ。』

 

再び投げかけられたライガの言葉に厳しい現実に打ちのめされた3人は顔を上げた。

そしてその投げかけに日向は驚いた顔で質問を返した。

 

 『あの~、それ以外に強さが測れるものなのでしょうか?』

 

 『ん~、それは少し言葉では説明しづらいな。実際に見たほうが早いな。よしお前ら加速だ。』

 

 『は?』『え?』『へ?』

 

ライガの行き成りの加速宣言に宏斗、日向、春絵は素っ頓狂な声を上げる。

 

『ほら、行くぞ3、2、1、『『『バースト・リンク!!』』』』

 

世界が青く塗り替わる、ファミレス店員の歩みも止まったかのように遅くなり、奥の厨房ではチャーハンを作っていたのだろうか、炒ったお米が宙で浮かんでいる。

宏斗が鎧姿の黒騎士に変わり、横では日向が司書風の格好で座っている。最近はデュエルアバターに合わせて同じ色の髪止めのリボンと胸と腰の位置に同色の紐止めを結んでいる。

そして目の前には、宏斗と同じような全身フル鎧姿の重装戦士と、原寸大のミケ猫座っている。

あれ?でもこれは席の位置的に……。

 

 「いぁ~、師匠のアバターはいつ見ても心癒されますね。えへへへ」

 

 「あっ、こらっ、頬ずるな。お前の鎧の棘が刺さるだろうが!」

 

重装戦士がミケ猫を抱き抱え、猫に顔面まで覆われた鎧兜で頬づいている。

間違いない。 この重装戦士が春絵さんで、このかわいいミケ猫がライガさんだ。

ライガがもがいて春絵の腕からするりと抜けるとテーブルの上にあぐらをかく。

 

 「ったく、春絵は俺がこの姿になると直ぐこれだ。さて、加速したということは何するかわかるな。」

 

 「対戦ですね、師匠。」

 

重装戦士の春絵が敬礼しながら答える。 ただ春絵の声のトーンは女性特有の高さなので物凄く違和感を感じた。

 

 「そう、言葉を交わすより、拳を交わす方が一番実力が分かりやいだろ。さて組み合わせだが俺が1対1で3人の面倒をみるかな。」

 

 「師匠、提案です。4人いるんだから2試合でいいんじゃないですか?」

 

 「そうだな。じゃ、それでいこう。」

 

春絵の提案にライガはあっさりと考えを変えた。

そして春絵は兜の向きを宏斗との方へと向ける。 これはどう見ても宏斗をご使命である。

 

 「じゃ、私は宏「あの、安堂さん。私と対戦しませんか。」」

 

日向が大きな声を出して春絵に勝負を挑んだ。 現実では開かれることのない仮想の瞳の影響で真剣な表情に見える。

そして勝負を挑まれるんだろうなと身構えてた宏斗は、日向の申し出に驚いた。

なぜなら、日向は普段の性格から極力自分から誰かに対戦を挑むということはしない。

だからこんなにも闘争心をあらわににしていること日向は珍しかった。

 

 「う~ん、いいですよ。それでは1つよろしくお願いします。」

 

春絵が承諾したことで対戦組みお合わせは決まった。 日向が仮想デスクトップを開いて春絵に対戦を申し込む。

こうして《フローライト・モルフォ》VS《アンバー・メモリー》、太陽の橙と太古の橙の戦いが始まった。

 

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございます(`・ω・)ゝ
ちょいと身内の不幸やら、仕事の忙しさやらで更新が遅れてしまいました。
今回は括弧の使い方に気をつけて書かせて頂きました。
誤字脱字報告その他、ご意見や質問、感想等あればよろしくお願い致します^^
さぁ、次回は戦闘パートだ(ノ〃∀〃)ノ


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第09話「orange;橙」

 

 

青い世界が再び色を取り戻すと、今までファミレスだった建物が消え、白い石畳の空間が広がった。4隅には石畳と同じ白さの石柱が、まるでその場を舞台かのように見栄えさせる。 何よりも特徴的なのは空が真珠のような光沢のある乳白色に変わったことだ。 このステージの名前は《霊域》。 属性が神聖属性になり、建物が神殿風に変わる。 そして一番の特徴はステージの所々に正八面体のクリスタルが浮遊する。

このクリスタルは破壊することで、必殺技ゲージを通常の破壊オブジェクト以上に溜めさせることが出来る。 そう、この対戦の主役である彼女達にもっともふさわしいステージなのだ。

 

 「ふっふっふ、こっちは何度も対戦を観戦させて頂いているので、対抗手段はバッチしですよ。」

 

上半身を隠す程のケープを纏い、調理用三角頭巾のような頭巾を被った薄翅型耳のオレンジ色のF型アバターが、目の前の相手を警戒するように強化外装であろう1つの本を取りだす。

 

 「どのような手で来ようとも、圧倒させて頂きます。」

 

そして、長く垂れ下がる振り袖が特徴の着物に、長い髪を背中当たりで1つに結んだオレンジ色のF型アバターもいつでも動き出せるよう、身体が少し地面から浮かぶ。

そしてお決まりである対戦開始メッセージ合図で『フローライト・モルフォVSアンバー・メモリー』の対戦のカウントダウンが動き出した。

 

【FIGHT!!】

 

両者は合図とともに駈け出し、そしてそのまま接触、激しい格闘戦が……  始まらなかった。

2人はそのまま対戦相手に目もくれずにすれ違ったのである。 だがその理由は2人の特性としてはごく当り前の行動と言えば当り前のこと。 なぜなら2人が最初に取った行動は浮遊するクリスタルを壊して、必殺技ゲージを溜めることが目的だったのだ。 そしてモルフォは体当たりでクリスタルを1つ壊し、メモリーは手に持っていた本を鈍器のようしてクリスタルを1つ叩き壊した。 両者の必殺技ゲージが一気に半分まで溜まる。

さぁ、ここからだ。彼女達()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「さぁ、行って!《フレア・フェアリー》《オブサベイション・フェアリー》!!」

 

モルフォは振り向きざま両の腕を前に突き出し技名を叫ぶと、腕から垂れ下がる振り袖から赤い蝶達がメモリーに向かって宙を舞い始めた。

 

 「放て!《ブック・マーカ『バースト・バレット』》!」

 

メモリーもモルフォに呼応するかのように振り向き、手にしている本型の強化外装を開き技名を叫ぶと開いたページから無数の銃弾が出現し一斉にモルフォ目掛けて撃ちだす。

モルフォが飛ばした蝶達とメモリーが撃ち出した銃弾が、2人の中間距離でぶつかり大きな音を立てて爆発した。

だが、モルフォが飛ばした蝶の数に比べて、メモリーが撃った弾の方が多かったらしく、いくつかの銃弾が爆発を突き抜けてその数発がモルフォの肩を撃ち抜く。

 

 「キャッ!!」

 

爆発で視界がまだ視界が開けてない中、メモリーはその悲鳴で攻撃が当たったことを悟ったが、次の瞬間、メモリーは自分の背中に強烈な熱さと衝撃が走るのを感じた。

 

 「うぐっ!!」

 

お互いのHPはほぼ同じ9割になるが、ここまでの攻防で掛った時間はわずか30カウント。

 

 「ほぉ、春絵もしばらく見ないうちに強くなったじゃないか。それにあの子もなかなかやるな。」

 

その言葉に、宏斗は視線をその一言を言った人物の方へ向けると、そこには黒色のボディースーツに肩・胸・腕・腰・脛に金色の装甲と、上部と左右のこめかみ部に鬣状の突起を付けた金色のヘルメットを被ったデュエルアバターが立っていた。 先程マッチングリストで確認したがアバター名は『ゴールド・ライガー』。 レベルは7。 彼こそが春絵さんの親である“ライガ”さんのアバターだ。

 

 「やっぱ《霊域》だと、必殺技メインで戦う黄色系アバターを最初から激しい戦闘(バトル)にさせるから見応えあるな。」

 

 「は、はい…。」

 

この対戦が終わった後、宏斗は目の前の3つレベルが離れたアバターと対戦しなければならなく、杞憂な気分ではあるが今は目の前の対戦だ。

先程メモリーがダメージを受けた理由は、至極単純。 大多数の蝶を正面から仕掛けさせたが、それとは別に左右からに1匹ずつ別の蝶で後方から攻撃させたのだ。 だけど、モルフォ戦法はこれだけではない。

爆発が開けるとそこには撃たれた場所を手で押さえるモルフォの姿と、爆発の衝撃で片膝をついているメモリーの姿が見える。

 

 「まずは痛み訳ってとこですね。でも、こちらはまだゲージに余裕があるのでどんどん行かせてもらいますよ。」

 

メモリーは再度、本を構え直す。だが、モルフォが次に言った一言で直ぐには動くことが出来なかった。

 

 「ここから西10mの柱の影に1つ、南へ50mの公園噴水の上に1つ、北東120mの神殿入口に1つ。」

 

 「え? 一体、何を話ですか!?」

 

モルフォの不可思議な一言に、メモリーは質問せずいられなかった。

何故ならモルフォは、驚くことに目の前に対戦相手がいるというのにアバターのアイレンズを閉じメモリーを見ていない。 はたから見れば精神統一にも見えるが、宏斗はその行動の理由を知っていた。

再びモルフォが静かにアイレンズを開くと、次の瞬間、メモリーよりも必殺技ゲージを消費していたはずのモルフォのゲージが再び増え出した。

 

 「!?」

 

 「私が見えている範囲のクリスタルを索敵、1つ破壊しました。」

 

 「見えているって……ッ!!」

 

その言葉にメモリーはハッと上を見上げると頭上50 m付近に青い蝶を見つけた。

それはモルフォが使えるもう一つの技《オブサベイション・フェアリー》。 視認して操る爆炎の赤い蝶(フレア・フェアリー)と、瞳を閉じることで自分が蝶になったかのように操れる青い蝶(オブサベイション・フェアリー)。 モルフォはその青い蝶(オブサベイション・フェアリー)を使って破壊オブジェクトを探し赤い蝶(フレア・フェアリー)で壊していたのだ。

必殺技の消費も少ないことから永遠と枯渇することがない攻撃のサイクル、これこそがモルフォが導き出した戦法スタイルである。 この対戦方法をしっかり理解しているのは、おそらくパートナーである宏斗のみだ。 普通、ギャラリーは対戦しているところを見るから、裏側で何をしているかなんて見なし、加えて俺達の対戦ではモルフォはほとんど後衛にいて対戦相手との接触はない為、知る人はほぼいないだろう。

メモリーに戦慄が走る。 一応、必殺技が何回か使えるだけのゲージは残っているが、それでも今の状況を覆るだけの()()は出来ていない。 ならば次の選択肢は1つ。

 

 「仕方ないですね。ここは……、戦略的一時撤退です!!」

 

 「あっ! 逃がしませんよ。追いかけて!《フレア・フェアリー》達。」

 

メモリーは踵を返して全力でモルフォから距離を取ろうと逃げ、モルフォは再び赤い蝶達(フレア・フェアリー)を召喚し始めた。 《フレア・フェアリー》は形状がひらひらと舞う蝶なのでそれほど速くないが、それでも機動タイプ出ないメモリーに追いつくだけのスピードはある。 そして赤い蝶(フレア・フェアリー)がメモリーの背中まで近づくと……。

 

 「爆ぜて。」

 

 「うわっと!あ、危なかったです。」

 

しかし寸前のところでメモリーは前方へ飛び込み躱し、そのまま前転の勢いで立ち上がり再び駈け出す。 だが、モルフォも手を休めず絶え間ない攻撃で繰り返した。 紙一重のところで赤い蝶(フレア・フェアリー)を回避していくがやはり数の多く、爆発の熱風がメモリーのHPを少しずつ削っていく。 

何度目か回避したその時、絶え間ない攻撃で足元がよろめいたメモリーは前のめりに転倒してしまった。

 

 「今です。これで決着を付けさせて頂きます。 《フレア・フェアリー》達、陣形・(しゅう)!!」

 

袖口から赤い玉が放たれ、一直線に飛んでいく。 それは無数の赤い蝶達(フレア・フェアリー)がまるい形に密集して相手に向かって飛んでいく姿だった。 宏斗が別名:赤玉と密かに呼んでいるモルフォのオリジナル技で、単純ではあるが火力源を一点に集中させることで大ダメージや衝撃をピンポイントに与えるものだ。 別に技名を叫ばなくても出せるが、日向曰くなんというか“()()()()()”らしい。 その赤い玉が再び立ち上がろうとしたメモリーへと襲おうとしていた。

 

 「これはヤバ…、いや、チャンスです!」

 

次の瞬間、何を血迷ったのかメモリーはその赤い玉へと駈け出した。

赤い蝶達(フレア・フェアリー)とメモリーの距離は10m。 メモリーは脇に抱えていた本を見開く。

赤い蝶達(フレア・フェアリー)とメモリーの距離は5m。 見開いたページを前にして本を突き出す。

赤い蝶達(フレア・フェアリー)とメモリーの距離は1m。 そして叫んだ。

 

 「《ブック・メモリー》ィィィ!!」

 

次の瞬間、メモリーのHPゲージが一気に吹き飛ぶと、赤い爆炎に飲まれメモリーの姿が消えた。

 その光景を見たバイパーは、興奮のあまり拳を握りガッツポーズをとる。

 

 「よし!!これでモルフォの勝ちですね。」

 

 「確かに、このままカウントが0になれば終了だが、まだ試合は終わっていないだろ。」

 

 「何言っているんですか、だって現にゲージが0に・・・・」

 

ライガの言葉に宏斗は気付いてしまった。 試合はまだ終わっていない。 何故なら試合の終了を告げるメッセージが表示されていないことを。

 

 「モッ、モルフォォォォォォォ!!」

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございます(`・ω・)ゝ
1話でバトルパートをまとめようとしましたが無理だったので2話構成になりますた。
なるべく描写が分かりやすく書こうとしますが、無駄に長かったり、単調な文になっていたらごめんないさい。
それでは誤字、脱字、感想・ご質問等あればよろしくお願い致します。


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第10話「secret;内緒」

 

 「モッ、モルフォォォォォォォ!!」

 

バイパーの声に気付いたのか、モルフォが観戦位置にいたバイパーらに向かって手を振っている。

だが、その行為が一瞬の隙を生んでしまった。

 

 「飛べ!《ブック・マーカ『クリスタル・ブレイク』》!!」

 

爆炎の中から紫に輝く何かが2つ紫電のごとく飛び出し、モルフォの背中に突き刺ささり吹き飛ばす。

 

 「ッア゙、クゥゥゥ!」

 

背中に刺さったのは腕くらいの大きさを持つ紫の水晶。 そして煙の中から現れたのは全身ボロボロになりながらも、本型の強化外装をモルフォに向けて突きだすメモリーの姿であった。

 

 「はぁ、はぁ、どうして、一撃で倒せる威力なはずなのに。」

 

 「なんとかギリギリでしたよ。 ネタばれは後でするとして、()()は整いました。さぁ、反撃を開始させて頂きますよ。」

 

攻守逆転というべく、今度は目の前の相手を倒すべくメモリーは駈け出した。

 

 「反撃?後1度攻撃を当たれば、どの道私の勝ちです。《フレア・フェアリー》!!」

 

モルフォの腕から、赤い蝶達が再び飛び立つ。 だが、メモリーは駆けることを止めない。

そして今度は、本型の強化外装をめくり上に向けゲージを消費させる。

 

 「開放!《ブック・マーカ『アトラクション・スフィア』》!!」

 

開かれたページから飛び出たのは、直径50㎝程の黒い球体。 モルフォとバイパーはその球体を見て絶句する。 何故なら2人はこの球体を知っているし、この球体がもたらす結果を一度味わったことがあるのだ。

 

 「も、戻って、《フレア・フェ――」

 

 「吸いこんじゃえ!!」

 

本から飛び出た黒い球体はある一定の高さまで浮かぶと小刻みに振動を始めた。 メモリーへと飛び立った赤い蝶達(フレア・フェアリー)は、モルフォの(めい)でも戻ることなくメモリーの元へと飛んでいく。

いや、正確には宙に浮く黒い球体へと引き寄せられているのだ。 それも範囲は広く50m頭上で待機している《オブサベイション・フェアリー》でさえも引き寄せている。

2度言うが2人はこの球体を知っている。 何故ならこの技は、ブレイン・バーストでの友人である『ビリジアン・トータス』の技なのだ。

 

 「ダメ。これじゃフェアリー達を召喚できない。確か《アトラクション・スフィア》の効果は20カウントのはずだから、時間切れまで逃げ切れば――。」

 

 「逃がしませんよ。突貫!《ブック・マーカ『クォーツ・ホーン・ラッシュ』》!!」

 

上空の黒い球体に気を取られていた為、気付いた時にはメモリーはすぐそばまで来ていた。

メモリーは再び本型の強化外装をめくり、今度はモルフォに向けて突きだすと本の中心から青い水晶がまとわり付き3本のトゲを持つスパイクシールドが出来上がった。

そしてそのまま……

 

 「ッウォリャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 「…………――――――――――――――!!」

 

3本のトゲがモルフォの身体を捕え、激しい突進の威力で受けたモルフォはHPゲージを吹き飛ばす。そして、その身体も勢いよく吹き飛ばされ、後方の壁をぶつかり瓦礫の山を作りだした。

 

 「――っごほぉ、ごほぉ、くぅっ…。ま、まだ終わりじゃ……。」

 

 「《ブック・マーカ『フレア・フェアリー』》。」

 

 「え!?どうして!?」

 

再び絶句する。起き上がろうとしたモルフォに、メモリーが放ったのはモルフォの得意技の《フレア・フェアリー》であった。蝶達はモルフォの身体に止まり、傍から見れば爆発物とは思えないくらいに優雅に翅を動かしている。しかし、数からして1匹でも爆発すれば連鎖を起こして、モルフォのHPは全損する数だ。

 

 「ハァ…、ハァ…、そう言えばネタばれするって言いましたっけ。 最初に言っておきますが、本当は2つしかないんですよ。」

 

 「え!でも、さっきまでいろんな技や私の技だって――」

 

 「私のアバターの特徴は“模倣”。《ブック・メモリー》で記憶して、《ブック・マーカ》で再現しているだけです。」

 

思い返してみると、技を出す際に《ブック・マーカ》という単語を発言している。 《フレア・フェアリー》を受ける際に《ブック・メモリー》という技を使っていた。

 

 「ちなみに《ブック・メモリー》は記録してない必殺技なら1度だけ威力・効果を無効化させて、記録させる技なんですけど、攻撃を受けた時、私のHP分キッチリの数でよかったです。集まってるから全部無効化出来るかなと思ったんですけど、やっぱり1匹分しか無効かできませんでした。後1匹でも多かったらアウトでした。あっ、でも結果的には必殺技ゲージがMAXに出来たので助かりました。」

 

 「そう言えば、対抗手段があるって言っていたのはタートルさんの《アトラクション・スフィア》がフェアリー達の動きを束縛できるとリサーチした上での事でしたか。そして効果が発生してからの繋ぎ技見事です。これは完敗ですね。」

 

モルフォはアイレンズを(つむ)り負けを宣言した。 閉じた為《オブサベイション・フェアリー》の視覚になり、その視覚には黒い球体から解放された赤い蝶達(フレア・フェアリー)の姿も見えるが、どんな命令を出しても負けは覆せなさそうだ。

 

 「……私の技のネタばれをしたので、代わりといっては何ですが2つ質問していいですか?」

 

 「はい、なんですか?」

 

 「何か私に接する態度が刺々しく感じたんですけど、私、何かしましたか?」

 

本日何度目だろう。閉じたアイレンズがまた開き、デュエルアバターは表情が分かりにくいのにモルフォは驚いた表情をしているように見える。

 

 「え!?だ、だって、その……あの………、ひ、宏斗君にすっごく急接近してたし、話し方からきょ、興味があるのかと………。」

 

すごく小さい声で聞きづらかったが、メモリーも何となく意図していることが分かった。

 

 「ぅえ!!いやいや、それは無いです!人様の彼氏を掻っ攫う様な事なんてしませんよ。」

 

 「か、()()彼氏じゃないよ!!」

 

 「でもさっき直結した時、プライベートフォトライブラリに宏斗さんの写――。」

 

 「きゃぁぁぁぁぁぁぁ、何勝手見ているんですか!!」

 

モルフォは悲鳴を上げるも、何とか動かないように努める。動いて何かの拍子で《フレア・フェアリー》が起爆したら大変だ。それでこそ笑い物である。

 

 「いや~、ごめんなさい。ついうっかり。(っということはお互い知らないってことか。やれやれってとこですね。)それじゃ、お詫びって訳じゃないんだけど安心できる情報を1つ。」

 

モルフォは本型強化外装を脇に抱え、モルフォに数歩近付いてしゃがむとこれまた小さな声で話す。

 

 「実はですね、私にも片思いの人が居るんですよ。あ、宏斗さんじゃありませんよ。」

 

 「え?それって………。」

 

 「シー。内緒ですよ。」

 

左アイレンズを閉じ、右人差し指を口元に当てモルフォは立ち上がった。

 

 「そういえば、もう1つの質問って何ですか?」

 

 「あぁ!そうだった。この蝶って“爆ぜろ”って唱えれば爆発するんですか?」

 

最後の質問は最初の質問とは打って変わって、特にどうでもいい質問だった。

 

 「あはははっ、別に唱えなくても念じれば起爆しますよ。あくまでも“()()()()()”ですから。」

 

 「あはっ、そうでしたか。」

 

最後の質問が終わるとモルフォの身体に止まっていた蝶達は、離れる様に飛んでいき、メモリーは倒れているモルフォへ手を差し伸べる。

 

 「止めを差さなくていいんですか?」

 

 「これから友達になる方にそんな非人道的なことはしませんよ。それに先程、負け宣言していたじゃないですか。あれ嘘じゃないですよね。日向さん。」

 

差しだされた手に捕まり、立ち上がる。

 

 「私もそんな非人道的ではありませんよ。春絵さん。」

 

 「うっふふ。」「あははっ。」

 

 

 

――――――

 

 「なんか、笑ってますね。」

 

 「笑っているな。」

 

試合の行く末を見守っていた金の獣と黒の蛇が口を開く。

現状HPゲージ的にはまだモルフォが勝っているが、見たところメモリーの勝ちのようだ。 さしずめ試合に勝って、勝負に負けたっていうところか。 そんな2人は今、先程まで戦っていたのが嘘だったかのように仲良さそうに話し合っている。

でも、それとは対照的に、こちらは今すぐにでも戦闘が始まりそうな雰囲気が漂っていた。

 

 「ひとまず、この試合はメモリーの勝ちだな。さて………。」

 

金の獣が、黒の蛇に視線を向けた。

 

 「次は俺らの番だ。」

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございます(`・ω・)ゝ
今回は結果的にモルフォちゃんの負け回を書いてみました。でも均衡した戦闘って難しいですね~。どっかで骨休めにストーリーとはある意味で関係ない閑話でも挟もうかな。
それでは誤字、脱字、感想・ご質問等あればよろしくお願い致します。
※あと、差し絵機能なんて物が出来たので、試しに『挿絵募集』タグを付けてみました。


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