アカシロしろくろ (くりーむソーダ)
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序章
プロローグ 49番目の帝具


はじめまして。くりーむソーダと申します。
今まではROM専でしたが自給自足しようと考えて初投稿です。
見切り発車の上に至らない文章ではありますがよろしくお願いします。


「人が次第に朽ちゆくとしても、人が創りしモノは永久不滅」

 

「然らば、朕の名の下に幾千年先までも残り続ける至高の武具の数々をこの国に授けよう」

 

 

 

 千年前、帝国原初にして至高の皇帝——始皇帝——は彼の絶大なる権力を背景に48の超兵器『帝具』を作らせた。

 

 帝具には超級危険種の素材やオリハルコン等のレアメタル、更には現代では喪われた技術を惜しみなく使われ、帝具1つで戦況を一変させる程の力がある。

 

 たとえば、『"悪鬼纏身" インクルシオ』。

 

 超級危険種タイラントの亡骸より創られし鎧の帝具。身に纏えば龍の力を得て敵を打ち砕く。反面、龍の力は所有者をも蝕み、並みの人間では耐えきれずに死に至る。

 

 たとえば、『"魔神顕現" デモンズエキス』。

 

 北方に語り継がれる超級危険種の生き血の帝具。一口呑めば無より氷を生み出し操る力を得る。しかし、力を引き出すには生き血に遺る超級危険種の怨念をも呑み干さねばならず、それを成し遂げたのは歴史上ただ一人のみ。

 

 

 

 古来より戦の有利は帝具の数によるとも言われるほどの超兵器。そんな帝具には、ある噂があった。

 

 曰く、帝具には歴史の闇に封じられた『49番目(四苦)の帝具』があるらしい。

 

 曰く、49番目の帝具は東方未開の島国をルーツに持つ、刀の帝具らしい。

 

 曰く、49番目の帝具は制御不能で、一度戦場に投入すれば敵も味方も阿鼻叫喚の地獄絵図を巻き起こすらしい。

 

 曰く、49番目の帝具はその存在を恥じた始皇帝が、その帝具に封印を掛けた上で歴史から葬り去ったらしい。

 

 曰く、曰く、曰く、曰く——

 

 

 

 そんな下町の酒場で酒の肴にもならないような下らない噂話。しかし、この噂話がオネスト大臣の耳に入った事で事態は一変する。

 

 なんと大臣は49番目の帝具の捜索に乗り出したのだ。なぜ49番目の帝具を求めたのかは分からない。更なる武力を求めてか、あるいは権力を求めてか、はたまた常人には理解できないナニカを求めたのか。

 

 大臣はあらゆる手段を用いて捜索した。彼の私兵達、情報局、闇の特殊部隊、羅刹四鬼、更には軍部までをも駆り出した。

 

 

 

 ある日、遂に大臣に49番目の帝具発見の知らせが届いた。発見したのは大臣が公私ともに重用している帝国情報局独立行動部隊——通称『くるみ割り人形』——であった。

 

 驚くべきことに49番目の帝具の発見のみならず、適応者まで発見できたという。適応したのは『くるみ割り人形』の隊長を務める男であった。

 

 この報告を聞き大臣は歓喜した。一つは49番目の帝具が噂以上にロクでもない殺戮兵器であったことに。

 

 もう一つは適応者の存在だ。この適応者は幼少期から大臣に目をかけられ重用されてきた人物だ。敵の多い大臣にとって数少ない信用できる男である。

 

 後に当時の心境を大臣は振り返り、こう発言した。

 

「あの時の事は今思い出してもいい思い出ですよ。だって、考えてもみてくださいよ? 3つの大量殺戮兵器がこの手にあるのですよ。至高の帝具、エスデス将軍、それにあの男ですよ。笑っちゃいますよねぇ。ヌフフッ」

 

 

 

 

 さて、ここまで49番目の帝具とその所有者について多少ボカシながら話を進めてきたがここからは、ほんの少し核心に触れた話をしよう。

 

 49番目の帝具は噂通り実在する。それは『"一斬必殺" 村雨』と『"死者行軍" 八房』の姉妹刀として創られた刀型の帝具だ。

 

 その形状は刀型だが、他の二本といささか異なる箇所がある。

 

 まず、鞘の色だ。村雨の鞘は赤、八房の鞘の色が黒なのに対し49番目の帝具の鞘は汚れなき純白だ。また、柄に描かれている紋様の色もまた純白。

 

 しかし、なによりも目を引くのは柄頭より伸びる至極色の鎖だろう。封印の為だろうか、柄頭から鞘先にかけてグルグルと巻きついており解くことができない。

 

 常人には解く事はできないが、所有者が柄に触れた途端に鎖が鞘から解け、代わりにひとりでに所有者の腕へとキツく——痛みを伴う程に——巻きつく。

 

 さて、そんな49番目の帝具の能力は何なのだろうか。村雨は斬った相手の『命』を奪う妖刀。八房は斬り殺した相手から『身体』を奪う妖刀だ。

 

 では、49番目の帝具はどうだ。秘蔵されていた文献にはただの一文だけ書いていた。

 

 ——その刀、魂奪いし妖刀なり——

 

 

 

 49番目の帝具。その名は『"無明空亡(むみょうそらなき)" 伏姫(ふせひめ)』。

 

 その担い手は『シロメ』。村雨、八房の担い手達の兄である。

 




見切り発車の為、次回の投稿日は未定です。
投稿の際には19:00の投稿を予定しております。



竜船編までのザックリとしたプロットは出来てるので、失踪しないように頑張ります。


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絵描きのバンシー

なんとか書けたので投稿します。


現在、アカ斬るの原作本を確認できる状態ではないため、キャラの口調に違和感があるかもしれません。
後日修正予定ですが、あまりにもキャラ崩壊が激しい場合は報告していただけると大変助かります。


「絵描きのバンシー?」

 

 帝都下町のとある酒場で金髪の美女——レオーネ——が酒盛りしている男たちに聞き返す。

 

 レオーネは仕事(ナイトレイド)の為の情報収集——本人は理由を作って酒を飲みたいだけだが——のために白昼堂々と酒盛りをしていたところ気になる話を聞いたので、つい聞き返したのだ。

 

「あぁ? 知らねぇのかレオーネ。情報通のお前が珍しいなぁ。この辺りじゃあ、ヤツの噂で持ちきりだぜぇ」

 

 脂ぎった中年の男性——彼も相当酔っているのか顔が真っ赤だ——がレオーネに答える。

 

 彼が語ることにはこうだ。

 

 最近帝都で落書きが多発しているらしい。

 

 落書きと言うとマヌケな響きだが問題はその規模だ。

 

 毎日、夜に一つどこかの建物の壁に落書きをしていく。その落書きがでかい。今までに見つかったもので一番小さなものでさえも2mに届くような巨大なものなのだ。

 

 落書きはスプレー缶とペンキで描かれているようで、ケバケバしい蛍光色を基調としている。

 

 落書きの題材が何なのかと言うと、それはまあ色々だ。

 

 ある時は民家に『民から武器を取り上げて帝国軍と戦う革命軍』の絵がデカデカと描かれていた。

 

 また、ある時は宮殿の壁に『官僚の腹からステーキを取り出して食べるオネスト大臣』の10メートルはあろうかと言う巨大な絵が描かれていた。

 

 余談だが、その絵を見た大臣は人目も憚らずに大爆笑して呼吸困難を引き起こして医務室に担がれていったらしい。

 

 そんな感じにテーマも色使いもサイズも無茶苦茶な絵なのだが、共通してサイン代わりなのか右下に妖精の絵が書かれているのだ。

 

「ふーん。それで『絵描きのイタズラ妖精(バンシー)ってわけか」

 

 レオーネは納得する。なるほど、そんなヤツがいたら酒の良い肴になるだろう。

 

(バンシーか。メーワクそうな奴だけど、この程度だったらウチ(ナイトレイド)に依頼が来ることはないかな。イタズラレベルだし)

 

 レオーネは殺し屋(ナイトレイド)に所属する殺し屋だ。しかし、依頼があれば誰も彼も区別なく殺害するわけではない。

 

 ナイトレイドの正体は、革命軍の裏の部隊だ。

 

 それ故にターゲットは弱き民を甚振る外道共や帝国軍のみである。

 

 仮にバンシーへの殺害依頼がナイトレイドへ来たとしてもこれでは門前払いだろう。

 

 酔いも程よくまわり、気分の良くなったレオーネは店を出て、ラバックが経営する貸本屋へと向かうことにした。

 

 ナイトレイドは今夜、アリア一家へと夜襲をかける予定だ。レオーネは屋敷の使用人達が標的になるかどうかの最終判断の為の調査も兼ねて飲んでいた。

 

 レオーネはラバック達との合流後の算段をたてながら街をブラブラと歩き人混みの中に消えていった。

 

 

 

「なんだ、この人だかりは?」

 

 レオーネが貸本屋の近くへ来てみると、貸本屋前に人混みが集まっていた。

 

 いつからラバの店は帝都で大人気の貸本屋になったんだっけ? っとレオーネが呑気に考えていると

 

「ちょっと! レオーネ! なんなのよコレは!? ひょっとしてアレ(帝都での活動拠点)のことバレたワケじゃないわよね?」

 

 と気の強そうな女子の声が聞こえてきた。レオーネが声の方を振り返ると鮮やかななピンク色の髪のツインテールの少女がやって来た。

 

「おお! マインか! いやーあたしにもそれがさっぱり…… いや、原因が分かった」

 

 そう言って、レオーネは古本屋の壁を指差した。

 

 見るとそこには巨大な水着の美女の絵がいくつもあった。水着の美女はどれも同じ女性をモデルにしているようだが、右の方に絵は段々とくずれていっている。そして、原型を留めていない程に崩れた右端の絵の下には妖精の絵が描かれていた。

 

「さながら、『印刷され続け消耗していく女』ってワケか。にしても、まさかここにバンシーが来るなんてね。この辺りはラバが警戒してるから不審なヤツが来ればすぐに分かるハズなんだけどねぇ」

 

 レオーネはマインを呼び寄せると古本屋の中へと入っていった。

 

(こりゃ、後でラバのヤツを折檻してやんないとな)

 

 

 

 

 

 

 

 昏き空に一片の影も見当たらないような望月が輝き、夜の帝都を照らす頃。ダボダボとしたラフなパーカーを着た男が一人、帝都の貴族街を放浪していた。

 

 男は南方の異民族の血が流れているのだろうか? 肌は褐色で髪は星一つない夜空で染めあげたかのように艶やかな黒の癖っ毛だ。

 

 背丈は高く。顔立ちの方はと言うと、街で女に声をかければ呼んでいない女までホイホイついて行くのだろうと思われるほどに整っており色気がある。

 

 そして瞳の色は紅玉をそのまま嵌め込んだかのような美しい紅色をしており。宝石収集家に見つかれば、たちまちに彼の眼球を引き摺り出し、彼の眼球を家宝として子々孫々へと受け継がせていこうと決心させることは間違いないだろう。

 

 男は手提袋を持っており、中には色とりどりのペンキ缶や絵筆やローラー、さらにはスプレー缶が所狭しと押し込まれている。

 

 何が楽しいのか鼻唄を口ずさみ、ウキウキとした様子で歩いている。

 

「んん〜 良い夜だ。満月が煌々と辺りを照らしている辺りが特に良い。こんな夜は創作意欲が湧いてきて、今にも踊り出したいくらいだ」

 

 男は誰に言うでもなく、そんなことを独り言う。状況から類推するに、どうやらこの男こそが帝都を賑やかす『絵描きのバンシー』のようだ。

 

 

 

「あぁ、そうだ。ここがいい。ここにしよう」

 

 彼はそう言うと、ある屋敷の門前で立ち止まった。その屋敷には、相当な力を持つ貴族が住んでいるようで、庭の至る所に警備の為の使用人達が彷徨いている。

 

 彼は塀をヒョイと登り、庭へと忍び込むと、使用人達に見つからないように巧みに身を隠しながら屋敷の壁へとたどり着いた。

 

 この位置には窓がなく、周囲が茂みに覆われているために早々人の目につくことはないだろう。

 

 一つ気になることがあるとすれば、少し遠くに倉庫があることだろうか。ただの倉庫にしてはいやに警備が厳重で、まるでこの屋敷の全ての秘密がここにあるとでも言うような異様な気配をかんじる。

 

 彼は手提袋から緑のスプレー缶を取り出すと、それを壁一面に吹きかけた。バンシーの表情はもう楽しくて楽しくてしょうがない、とはしゃぐ子供のように喜色満面である。警備が自分を捕まえに来るなど欠片も考えていないことがありありと感じられる。

 

 壁一面を塗り終えると、今度は幾つかのペンキ缶と絵筆を取り出した。どうにも3匹のブタの絵を描くらしい。ブタは父、母、娘の3匹らしくデフォルメが効いた可愛らしい絵柄で描かれてていく。しかし、どのブタも所々が黒く化膿したかのように変色しており、特に腹部においては黒一色で塗られている。

 

「ふふ〜ん♪ ふ〜ん♪ たーんたたーん♪」

 

 酷く陽気で調子の外れた鼻唄を歌いながら彼は作業を進めていく。彼の中では今の絵を描く瞬間こそが全てであり、彼の絵に他人がどう評価するのか、絵がどう処分かされるのかなど頭の片隅にもなかった。

 

 

 

「あとは妖精ちゃんを描いて完成だな」

 

 どうやらもう時期ひと段落つくようで、彼は絵の右下に黄色いペンキで妖精を描いていった。その時。

 

「貴様、ここで何をしている!」

 

 屋敷の使用人が彼を発見した。

 

 慌てる様子はなく、彼はすぐさま塀の外を目指して駆け出した。ピーッと笛の音が鳴り響く。使用人が彼を捕らえるために応援を呼んだのだ。すぐさまに庭中の使用人達が彼のもとに集まった。その数は30を超えるであろうか。

 

「ヤツを捕まえろ!」

 

 使用人たちのリーダーと思わしき人物が怒鳴り立てる。使用人は波のように一丸となって彼を追い詰める。しかし、彼はひらり、またひらりと交わし遂に塀をよじ登り始める。しかし、

 

「バカめ、そこには罠がある」

 

 使用人の一人が叫ぶと、ばっと塀の上から網が落ちてきた。さしもの彼も予想外だったようで、ついに捕まってしまった。

 

「貴族の屋敷に忍び込み、落書きしていくなんぞ無礼者め!」

 

 彼は使用人たちに取り押さえられ連行されていく。その間、彼はただの一言も話さない。ただなされていくままである。

 

 その一部始終を見守っていたのは、夜空に浮かぶ満月と彼の描いた、()()()()()()()()()()()()()()()()が腐ったブタを貪り喰ったような絵だけであった。

 

 

 

「キサマはここに入っていろ! ここにいる者達がキサマの未来の姿だ! よく目に焼き付けておけ!」

 

 彼が手錠を嵌められ連行されたのは、あの異様な倉庫の中にあった牢獄であった。その内情はこの世の地獄が具現化したようなものであった。

 

 数多の拷問器具が所狭しと並べられ、その犠牲者と思わしき亡骸が至る所に放置されている。

 

 牢獄の中も悲惨なものだ、様々な疫病に感染し苦しむ生者と死者がごった返している。辛うじて生きてる者はひたすらに呻き声をあげている。

 

「……アンタも捕まったのか。運がなかったな」

 

 彼に話しかけたのは少年であった。少年の状況もまた悲惨なものであり、末期のルボラ病に冒されているのだろうか全身に黒い斑点が現れている。時々息苦しそうな様子が見られ、口元には吐血した痕も残っていた。

 

「オレの名はイエヤス。短い間だろうけど仲良くしようぜ」

 

 まさに絶望的状況。しかしイエヤスの目にはまだ力が残っており生きる事を諦めてはいなかった。

 

 突然、ガチャりと音がした。続いて金属が床に落ちたかの様な音もする。イエヤスが音の先を見てみるとイエヤスと男に嵌められた手錠が外れていた。

 

「!? アンタ、いったい?」

 

 男は自分のパーカーで顔を拭った。すると褐色だったはずの肌が病的に白くなっていた。白い肌の色を化粧で変えていたのだ。

 

「やあやあ、イエヤス少年。俺はこの屋敷の事情を知っていたし、何ならこの後に、ここでどんな惨劇が巻き起こるのかも知っていた」

 

 突然、男が饒舌に語りだす。思わずイエヤスはギョッとする。

 

「しかし、お前の事を俺は知らなかった。また、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の事も俺は知らなかった」

 

 聞いてもいないのに、男はベラベラと喋る。

 

「俺はナイトレイドがここを襲撃するとの情報を手に入れたからここに来たのだ。まあ、流石にこんな満月の日に襲撃に来るとは思わんから、適当な理由で屋敷に入り込み食料を掻っ払いながら潜んで奴らがこの屋敷に来るのを気長に待つつもりだったのだ」

 

 男は脈絡もなくイエヤスの両手を握りしめた。イエヤスは身震いした。

 

「ああ、しかし。だがしかしだよ。お前とそこの少女のように悲惨な状況の中で必死に生きもがこうとする素晴らしい魂を持った若者にこうして出会えた。これは本当に素晴らしいことだ」

 

「こうなったら仕方がない。ナイトレイドの調査は取りやめだ。人命救助に勝る大儀なんぞ、そんなものにありはしない。よし! 脱出だイエヤス少年! こんな辛気臭い場所に長居はしたくないだろう? そこの少女諸共脱出だよ!」

 

 そして男はイエヤスに己の名を名乗った。

 

「俺の名はシロメ。帝国情報局独立行動部隊『くるみ割り人形』の隊長を務めている。さあ! とっととここを出よう! イエヤス少年!」

 

 

 

「ちなみに、ここまで機密情報を知ってしまったんだ。断ったらこの場で君と少女を殺すのでそのつもりで」




オリ主の容姿について

癖のある黒髪→クロメの髪
紅玉のような瞳→アカメの瞳
病的に白い肌→名前がシロメだから白くした



美形→オリ主だから


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