機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズofアストレイ (黒アライさん)
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鉄と血 

こんにちはなのだ!黒アライさんなのだ!最近、鉄血を久しぶりに見たのだが、相変わらず終わり方がアレだなあって思って、自分のお気に入りの機体で、世界観をなるべく壊さずにストーリーを進めたいなぁと思って、書き出した物なのだ!わからないことが有れば感想などで教えて下さいなのだ!それではどうぞなのだ!


文明を大きく後退させる程の大戦争「厄祭戦」が終結してから300年の時がたったP.D.323年ーー

 

地球では治安維持組織 通称「ギャラルホルン」によって4つの巨大経済圏が繁栄していた。一方で、コロニーや火星では、巨大経済圏の搾取対象となっており、経済的不均等は大きくなっていくばかりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーー火星ーー

 

 

 

パンッ!パンッ!

 

 

 

ってぇ……

 

うぐ…ぐ…

 

ふう…ねぇ…オルガ……

 

 

 

 

 

次は何をすればいい?

 

 

 

 

 

 

「ハッ!!」

 

銀髪のとんがった頭が特徴的の背の高い少年が目を覚ますと、そこは機械的でオイルと人間の汗のような匂い、頭に響く騒音が鳴り響く所であった。

 

「オルガ」

 

オルガ「ん…?おぉ、ミカか」

 

「おぉ、じゃないよオルガ。またこんなところでサボって…見つかったらまたなにされるか…」

 

ミカと呼ばれた背の小さい小柄の少年の名は、「三日月・オーガス」そして、それに起こされた銀髪の少年は「オルガ・イツカ」である。

 

オルガ「わぁってるよ…」

 

オルガは背中を手でボリボリとかきながらそう答えると、

 

「おぉーい、いたかぁー?三日月ー」

 

三日月「うん」

 

オルガ「どしたー、おやっさん」

 

大声で三日月を呼ぶその男は、「ナディ・雪之丞・カッサパ」という。

オイルや汗で汚れきった半袖シャツを着ており、腹巻をつけているのが特徴の褐色肌の大男である。

 

おやっさん「どうしたじゃねぇよ、マルバが呼んでるぞー?」

 

オルガ「社長がぁ?」

 

おやっさん「つうか、ここはいんなって言ってんだろぉ」

 

オルガ「いやだってここ年中あったけえからさぁ」

 

おやっさん「ったく…」

 

三日月「……」

 

オルガがおやっさんに小言をいわれている間、三日月は部屋の一番奥にある、とある物を見つめていた。それはたくさんの太いコードとケーブルで繋がれた、膝立ちで収納されている人型の兵器であった。

 

オルガ「ミカぁ!いくぞぉ!」

 

三日月「…うん」

 

三日月はそう返事するとオルガの背についていった

 

 

 ーーCGS「クリュセガードセキュリティ」本部ーー

 

「…クリュセ独立自治区、その代表の愛娘を地球まで運ぶ。…その護衛を、お前ら三番組に任せる」

 

どかっと贅沢そうな椅子に堂々と座り、葉巻に火をつけ、口に加えながらそう言ったこの男は、「マルバ・アーケイ」である。このCGSの現社長でもある。

 

「…あの、代表の娘ってあの、「クーデリア・藍那・バーンスタイン」ですか?」

 

そう言った彼の名は、「ビスケット・グリフォン」。帽子をかぶっており、横に太い体格が特徴的な少年である。

 

マルバ「知ってんのかビスケット」

 

ビスケット「えぇっと、たしか独立運動をやってるとか…」

 

マルバ「今回の地球行きも、火星の独立運動がらみらしい。ご立派なことだ…」

 

オルガ・ビスケット「……?」

 

オルガとビスケットは、一回目配りし、オルガが尋ねる

 

オルガ「でもそんなデカい仕事なんで俺らに…」

 

マルバ「お嬢様直々のご指名なんだよ」

 

マルバは心底めんどくさそうにそう言い捨てる

 

ビスケット「え?それって…」

 

ビスケットが尋ねようとしたとき、

 

「形はどうあれ、やることはいつもと変わんねぇ!お前らガキどもはしっかり俺らの言うこと聞いてりゃいいんだよ!!」

 

怒鳴りつけるように言葉を放ったこの男は、「ハエダ・グンネル」である。

 

オルガ「……」

 

オルガはただ、そう怒鳴りつけるハエダのことを、片目をつぶりながらじっと、バレないように睨み付けていた…

 

 ーーCGS外敷地内ーー

 

ザクッ!  バッ…

 

「たくっ…ありえねえよ〜地雷設置訓練とかよぉ〜」

 

一人の少年がそう言うと、続け様にもう一人の少年が言う

 

「ただのいじめだろ〜?明日は撤去訓練だぜ」

 

そう言った少年は、「ライド・マッス」。オレンジ色の髪が特徴の幼い少年である。

 

CGS少年「まじかぁ…」

 

ドォーン!!

 

「…あ」

 

「ん?」

 

シャベルをもち、訓練をし続ける少年達の耳に鳴り響く、遠くから聞こえる砲音。それは…

 

ババババババッ!ヒュンヒュン!

 

カンッ!キンッ!

 

ガラララッ!、

 

「っく、クッソォ…三日月のヤロォ!」

 

鳴り響く砲音の真っ只中でそう叫ぶ男の名は「ユージン・セブンスターク」である。

 

三日月「…お」

 

ギャギャギャ!バンバン! 

 

ヒュン!

 

「このタイミングでかわすかよ!三日月のやつ!」

 

ユージンが三日月によって訓練用ペイント弾で撃たれだ後に、その隙を狙い、三日月の後ろから奇襲をかけたこの少年は「昭弘・アルトランド」である

 

バンッ!バンッ!

 

ライド達から離れた場所で行われるそれは、モビルワーカーという小柄な戦車のような兵器を用いた訓練であった。そしてそれを地雷設置訓練をしながら見つめている少年がいた

 

「…カッコいいなぁ、いつかは僕も…」

 

そう呟く少年の名は「タカキ・ウノ」。金髪と黒髪のツートンカラーが特徴の少年である。しかし、そう呟いていると……

 

「なぁ〜にを…」

 

タカキ「へ?」

 

バシィッ!」

 

タカキ「ふぐっ!?」

 

「チンタラやってんだぁ!」

 

そう叫ぶこの男は「ササイ・ヤンカス」である

 

ササイ「おいトドォ!ガキの躾はテメェの仕事だろうがぁ!」

 

「あ…ヘヘ……お、おいお前らぁ!キリキリ働けコラァ!」

 

そう叫ぶこの男は「トド・ミルコネン」である。

 

ササイ「ったく…ヘッ、宇宙ネズミが…はしゃぎやがって…」

 

ササイはそういい捨てると、どこかにいってしまった。

 

CGS少年「…おい、大丈夫か?タカキ」

 

タカキ「う、うん……へへへ…」

 

駆け寄ってきた少年に対してタカキは力なく苦笑いしながらそう答える

 

宇宙ネズミ……背中に阿頼耶識というナノマシンを埋め込み、反射神経などを強制的にあげる装置である。これだけ聞くと特に問題はなさそうだが、実はその阿頼耶識を埋め込む時の手術が問題なのでおる。その手術は成功率が極端に低く、10人中、6人しか成功しない程だ。成功したものはまだいい。だが失敗したものは…一生ベットから這い上がらなくなるだろう。そんなリスクしかない手術をうけるのは身寄りや金のない子供達ばかりである。そのナノマシンの性質上、子供のうちでしかこの手術をすることはできず、これをしなければ、まともな働き手などがないのも、手術を強制的にされる理由の一つである。これが、このCGSに住む子供達の日常であった。

 

 

ーーCGS食堂ーー

 

ユージン「俺たちがお嬢様の護衛?」

 

ユージンは訝しげにそう聞き返した。

 

「お嬢様って、イイ匂いするんだろぉなぁ〜!なぁ三日月!」

 

ユージンの問いに対してそんな変な事で返すこの少年の名は「ノルバ・シノ」。気さくで、皆のムードメーカーのような少年だ

 

このCGSの組織内には女性が誰一人としていない。一応、「アトラ・ミクスタ」という小さな女の子がいるがそれだけだ。その上、彼ら少年達は、皆年頃の男達であり、自然的に女性に飢えているのだ。

 

三日月「…ん、お嬢様っつっても、同じ人間なんだし、そんな変わんないだろ?」

 

三日月はシノの質問に、昼食なスープを頬張りながらそう言う

 

シノ「ハァァ〜〜ン?」

 

CGS少年「女に飢えてない三日月さんにそんな事聞いても無駄っすよ」

 

そんなたわいもない話ができるこの時間は、少年達にとって、心休まる数少ない時間だった。

 

三日月「…タカキ」

 

タカキ「あ、はい!水ですか?」

 

三日月「いや、その傷…」

 

三日月は、タカキの地雷設置訓練のときにつけられた傷について聞くと、

 

タカキ「…いつものことですから」

 

タカキは力なくそういった。

 

ユージン「でもあれだな、社長もよ、口だけの社員様より、結局は俺らの力を認めてるってことなんじゃねぇの?」

 

ユージンはニヤにやしながら一緒にいるオルガに続け様に言う。

 

ユージン「んで、これをきっかけによ、社員の奴ら出し抜いて、俺らが一軍になって…!」

 

オルガ「いくらマルバの親父がボケたって、使い捨ての駒ぐれぇにしか思ってねぇ俺らを認めるわけねぇだろ?」

 

オルガはスプーンを食器にカンカン鳴らしながらユージンの言葉を遮るようにそう言った。

 

ユージン「っ、おい、俺ら三番組隊長のお前がそんなだから、いつまでたってもこんな扱いなんじゃねぇのか!?」

 

ビスケット「っ、やめなよユージン」

 

ユージン「うっせえビスケット!テメェは黙ってろ!」

 

ユージンの言葉を聞いたビスケットは止めに入るもそう言い捨てられてしまう

 

ユージン「大体テメェの《グイッ!》!?イデッ!?いててて!!」

 

三日月「喧嘩か、ユージン。俺は嫌だ」

 

三日月はユージンの片方の耳をかなり強く引っ張り、そう言った

 

ユージン「と、取れる!取れるって!!」

 

ユージンが涙目になりながらそう叫ぶと、

 

オルガ「喧嘩じゃねえよこんぐらい…な?」

 

ユージン「!あ、あぁ!あったりめえだろ!」

 

オルガが助け舟をだすとユージンはすかさず反応し、三日月にそう言った

 

こんな男所帯だ。喧嘩の一つも起こるのが自然だ。しかし、喧嘩ばかりではCGS内で過ごすのは難しいため、こうやってビスケットや三日月が率先して収めにいってるのだ

 

オルガ「悪いな、昭弘。騒がしくってよ」

 

オルガは食事を食べ終わり、食器を下げにいく昭弘にそういうと、

 

昭弘「いつものことだろ」

 

と、返事を返した。

 

オルガ「フッ…」

 

 

 ーーアーブラウ領 クリュセ独立自治政府 首相官邸ーー

 

「それではお母様、行ってまいります」

 

上品な真っ赤な服装で身を包み、そう告げる彼女の名は「クーデリア・藍那・バーンスタイン」であり、独立運動を始めた本人でもある。

 

クーデリア母「あら、藍那。もういくの?くれぐれも、地球の方々に失礼の内容にね?」

 

母は優しく、そう告げると、クーデリアはなんとも言えないような表情で聞く

 

クーデリア「…お父様は私の運動に反対なさっていると思っていたのに…今回地球との協定役という大役を、いきなり任せて下さるなんて…」

 

クーデリア母「なんでも悪くとるのは、貴方の悪い癖。お父様は貴方の事を、いつも心配してくださっているのよ?」

 

クーデリア「……」

 

クーデリアはただ俯き、母の言葉を聞いていた。

 

 ーー官邸 廊下ーー

 

クーデリア「お母様は、目を背けているのよ。この屋敷の外で何が起こっているのか知ろうともしない…私はそんなの嫌。本当の事を見たいし、本当の事に触れたいの」

 

クーデリアは母の言葉を聞き終わった後、廊下を歩きながら侍女にそうなことを呟いていた

 

「それで今回の護衛役に彼らを?」

 

そう聞く侍女の名は「フミタン・アドモス」という。

 

クーデリア「そう!彼ら非正規の少年兵達は、長く続く地球圏の支配が生んだ、今の火星が抱える問題そのものなのよ。そんな彼らと触れ合う事で、私は少しでも、その痛みを分かち会えたらっておもうの!」

 

決意に満ちた、なんの穢れもない目をしながら話す彼女を、フミタンはただ、なんの感情も示す事なく聞いていた。

 

 

 ーーGH 火星本部 静止軌道基地 アーレスーー

 

「若さとは、純真さとはなんと美しいことだろう。地球との関わりの深いバーンスタイン家の娘が独立運動の旗頭として扱われるとは…皮肉なものだな。「ノーマン・バーンスタイン」さん?」

 

そう淡々と告げるこの男は「コーラル・コンラッド」。このアーレス司令官である。

 

「は、はぁ…愚かな娘で…」

 

そう言うこの男は「ノーマン・バーンスタイン」。クーデリア・藍那・バーンスタインの父である。

 

コーラル「いや、愚かさもあそこまで行けば立派なものだ。だからこそクリュセの…いや、火星中のならず者達も、彼女を支持するのだろう。ならば、完全なるカリスマとして、永遠に民衆の記憶に残るよう…我々も手助けをしようじゃないか」

 

コーラルは営業スマイルを掲げながらノーマンにそう言った

 

ノーマン「は、はい、お手柔らかに…コーラル閣下…」

 

コーラル「…」

 

 ーーモビルスーツ格納庫ーー

 

コーラル(自分の娘を売っておきながら、お手柔らかにときたか…ふぬけとはあのような者をいうのだ。娘の爪の垢でも飲むがいい…)

 

コーラル(しかしこれで、厄介な地球からの監査も好機に変わる。ノブリスからの援助をうけるためにも、あの娘には頑張ってもらわないとな…)

 

コーラルは内心ほくそ笑みながらモビルスーツの整備を行っている部下のもとにいき、命令を伝える。

 

コーラル「モーリス!作戦が決まった!今回はお前に指揮を取ってもらう!」

 

オーリス「!…了解!」

 

オーリスはやっと出番が回ってきたとばかりに気前よく返事をする。

 

コーラル「クランク!お前はサポートだ!」

 

クランク「…了解」

 

クランクと呼ばれたその男はまるで熊のようないかつい顔立ちをした、ガタイのいい大男である。

 

コーラル「アイン!」

 

アイン「!は、はい!」

 

コーラル「貴様は今回が初陣だ!しっかり励め!」

 

アイン「りょ、了解です!」

 

同じくアインと呼ばれたその男はクランクとは違い、優しい面影を残しつつ、緊張でその顔を引き締める、まるで絵に描いたような新人であった。

 

 

 ーーGH ビスコー級クルーザー ヴィルム内ーー

 

「しっかし火星かぁ。植民地としては旨味を吸い尽くした出がらしみたいな星だ。ギャラルホルン特務監査官様が直々に出向く必要があるのか?」

 

そうぼやく青髪の男の名は「ガエリオ・ボードウィン」である

 

「辺境任務は退屈か?ガエリオ」

 

ガエリオの質問に対し答えるこの男はそのガエリオの親友、「マクギリス・ファリド」である

 

ガエリオ「まさか、監査官としての仕事はきっちりやるさ、マクギリス特務監査殿」

 

マクギリス「フッ…今の地球圏の経済は、その出がらしを組み敷いた上になりたっている。今後とも、彼らに地球圏への変わらぬ献身を貫いてもらうためにも、火星支部には、秩序の番人たるギャラルホルンの一員として襟を正してもらわねばな……」

 

マクギリスは自分の前髪を弄りながらそう告げる。

 

ガエリオ「支部の連中には、同情する」

 

ガエリオはいかにもざまぁみろといわんばかりの表情でそう言った

 

マクギリス「火星は今、全国で独立の気温が高まっているらしい」

 

マクギリスはそこで区切り、ガエリオのほうに振り向くと笑いながらこう言った

 

マクギリス「案外、人の心配をする余裕はないかもしれないぞ」

 

ーーCGS敷地内ーー

 

「えっとー、今日は南からDブロックまでな」

 

「了解、さっさと行こうぜ」

 

真夜中のCGSの外では少年兵がいつも通りに見回りを行っていた。

見回りの少年兵達も眠そうにしているが、仮にも見回り。手に持つものは物騒な物ばかりであった。CGSの内部は見回り当番でないものは当然、深い眠りについていた。しかしその中では…

 

ギッ!ギッ!

 

昭弘「フゥッ!フゥッ!」

 

三日月「ハァッ!ック!」

 

三日月と昭弘は真夜中でも筋トレを欠かさずに行っていた。CGSの地下にある蒸気機関室で、低い天井に張り巡らせている鉄パイプにぶら下がり、必死にトレーニングを続ける。

 

昭弘「ッフゥッ!ッグゥ!い、いいか、三日月!俺の方が、体、重いん、だからな!」

 

三日月「ッングッ!ッハァ…はいはい…」

 

昭弘「なぁ!?」

 

昭弘は自分よりも長く筋トレを続ける三日月に、必死に抗議するが、軽く受けながらされてしまう。そして、この真夜中に起きているのは当然彼らだけではない

 

ーーモビルワーカー格納庫ーー

 

おやっさん「よぉし、これで持ってく装備の確認はおしまいだ」

 

オルガ「おつかれさん」

 

雪之丞やオルガも、のちに来る護衛任務に向けて、物資や装備を確認していた。

 

おやっさん「もう明日かぁ、例のお嬢さんがくるのは」

 

オルガ「あぁ、んで明後日には出発、地球までの往復に、あれやこれやで5ヶ月くらいか」

 

オルガは護衛任務に詳細を思い出しながらそう答える。護衛が必要なくらいだ。決して楽な任務じゃあないだろうなと予想し、覚悟を決めていた。

 

おやっさん「ここも静かになるなぁ」

 

おやっさんは静かにそう呟く

 

おやっさん「ま、ご指名の仕事なんだろ?よかったじゃねぇか」

 

オルガ「何がいいもんか、いつも通り便利に使われるだけさ」

 

オルガは乾いた笑いを浮かべながら続ける

 

オルガ「マルバは俺たちのことなんざ、ヒゲのお陰ですばしっこくなったネズミぐらいにしか思っちゃいねぇからな」

 

おやっさん「…旧時代のマシンインターフェイス「阿頼耶識」のことか、ひでぇ話だな」

 

おやっさんは葉巻をくわえながらそう言う。阿頼耶識は専用の装置がついたモビルワーカーなどに乗る事によって真価を発揮する。背中の阿頼耶識にその装置をつけることによって、直に脳にモビルワーカーの情報が入り込み、例え素人でも熟練した操縦者並の動きをすることができる

もっとも、それができるとはいえ、失敗すれば一生動けなくなるようなリスクを考えると誰もしたがらないのが現実である。

 

 

オルガ「それでも、これを埋め込むことがここで働く条件だからな」

 

おやっさん「それでも、仕事があるだけまだマシか…ヘッ、お前ん時は笑えたよなあ?麻酔もねえ手術なのに、泣き声一つあげねぇで、可愛げがねぇってぶん殴られてたっけか?」

 

オルガ「泣けばだらしねぇって殴られてただろ?」

 

おやっさん「違ぇねぇ」

 

格納庫に二人の男の乾いた笑い声が響いていく

 

オルガ「…ここじゃ俺たち三番組は、ガス抜きする為のおもちゃか、弾除けぐらいの価値しかない…でも、俺にも意地があるからな…カッコ悪いとこ見せらんねぇよ」

 

おやっさん「スゥ…フゥ…三日月には、か?」

 

オルガ「っ」

 

オルガは少し目を見開いたが、すぐ元に戻った

 

おやっさん「フッ…苦労するなぁ、隊長」

 

 




オルフェンズって一話一話が長くて戦闘まで長いのだ!ていうかまだ主人公が出せてないのだ!これはちょっと問題なのだ…できたら次の話で出したいのだ!それではまたなのだ!感想もできれば欲しいのだ〜!


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バルバトス

こんにちはなのだ!黒アライさんなのだ!今回はなんとか主人公を出したいのだ!だがどうやって出そうか未だに悩んでるのだ!世界観を壊さずにどうやって出すか…まあとりあえず!楽しんでもらえたら幸いなのだ!それではどうぞなのだー!


マルバ「いや〜光栄ですな。クーデリア様の崇高な志には私は常々…ハハ…」

 

クーデリアを直に目の前にしたマルバは、ごますりしながらご機嫌とりをしていた。その時…

 

コンコン、

 

マルバ「…フゥ、入れ」

 

ガチャ、ゾロゾロ…

 

ザッ!

 

オルガ「三番組隊長、オルガ・イツカ以下4名到着しました」

 

オルガ達は訓練されているだけあって綺麗に息のあった整列を見せた。

 

マルバ「うむ、こいつらが、今回護衛を担当する予定の…」

 

マルバがそこまで言うとクーデリアが突然立ち上がり、彼らな方を向いた。

 

クーデリア「初めまして!クーデリア・藍那・バーンスタインです」

 

……

 

とても長い時間…いや実際にいうとたった数秒のことだがとても長く感じる沈黙が生じた後、

 

オルガ「…はい」

 

ユージン「っ、どーもっす!あ、あの」

 

ハエダ「てめぇら!挨拶もまともに出来ねぇのか!?」

 

オルガとユージンはなんとか反応したが、どうやらハエダが気に障ったらしく、怒鳴り散らした。

 

ハエダ「ったく…」

 

マルバ「では改めてこれからのことなんですが…」

 

マルバが逸れてしまった話を元に戻そうとした時、

 

クーデリア「貴方!」

 

三日月「…?」

 

急にお嬢様に指名された三日月は少し反応が遅れたがちゃんと目を合わせた

 

クーデリア「名前は?」

 

三日月「…三日月・オーガス…です」

 

三日月は敬語があまりわからない為、ちょっとおかしな答えになったがちゃんと答えた。その様子にクーデリアは満足したのか、こんなことを言い出した。

 

クーデリア「三日月、ここを案内してもらえますか?」

 

三日月「はぁ?」

 

三日月はさっきまでギリギリ許容範囲にはいる応答ができていたのに、この問に対しては失礼に聞き返してしまった。当然、一緒にいたマルバも同じで聞き返す。

 

マルバ「は、はい?」

 

クーデリア「フミタン、ここは貴方に任せるわ」

 

クーデリアがそういうとフミタンはさしてどうこうすることもなく、

 

フミタン「かしこまりました」

 

と、淡々と言った

 

クーデリア「うん、それじゃ…三日月」

 

クーデリアはそう言うと右手を三日月の方に差し出してきた。三日月は一度その手を見つめ、もう一回クーデリアのほうに見返すと、

 

三日月「…んじゃあこっち」

 

三日月はそう言って、差し出された右手をとくにどうこうするでもなく歩いていった

 

クーデリア「え?あ、あの、ちょ、ちょっと!」

 

クーデリアは急いで三日月を追いかけて行った。

 

オルガ・ビスケット「…フッ」

 

その様子をみたオルガとビスケットも苦笑いしつつ、任務の話に戻って行った

 

 

ーーCGS 内部 廊下ーー

 

三日月「……んで、ここが動力室」

 

クーデリア「あの…」

 

三日月「ウチは自前のエイハブリアクターがあるから…」

 

クーデリア「あのっ!」

 

三日月が淡々と案内をしていく彼に対し、クーデリアは彼をもう一度呼び止めた

 

三日月「……なに?」

 

三日月は何度も自分を呼ぶクーデリアに振り向いた

 

クーデリア「フゥ…あの!握手を…あ…」

 

彼女はそこまでいうと、あっ、と気付いたように右手の白い手袋を外し、素肌を晒したその右手は再び三日月に差し出してこう言った

 

クーデリア「握手をしましょう!」

 

そんな、まるで子供が訪ねるような願いに三日月は、

 

三日月「…あ〜」

 

と、自分の手を見て、あまり乗り気ではない反応を見せた

 

クーデリア「…なぜですか?私はただ、貴方達と対等の立場になろうと思って「手が汚れてたから遠慮したんだけど…」…え?」

 

三日月が煤で黒く汚れた掌を見せながらクーデリアの言葉を遮るようにそう言った。それを聞いた彼女は少し赤面し、弁明しようとした

 

クーデリア「…え、えっと…私「けどさ」…?」

 

三日月はまたもクーデリアの言葉を遮ってこう言った

 

三日月「それってつまり、俺たちは対等じゃないってことですよね?」

 

クーデリア「…あ」

 

三日月はそれだけ言うと何事もなかったかのように案内を再開したが、クーデリアはその言葉を聞いて、少し、立ちすくんだ。

 

 

ーーCGS 外敷地内ーー

 

ビスケット「…眠れないの?オルガ」

 

オルガ「お前もだろ?ビスケット」

 

二人は、外の空気を吸いに外に出ていた。

 

オルガ「なんせ胡散臭すぎるからなぁ」

 

ビスケット「確かにね」

 

ビスケットは被っている帽子を整えながらそう答え、言葉を続ける

 

ビスケット「あのお嬢様自身はただの天然っぽいけど、その出自と立場は本物。ギャラルホルンが直接動いてもおかしくない程の大物だ」

 

ビスケットはオルガにそう言ったが、オルガは対してどうするわけでもなくこう言った

 

オルガ「裏で何が潜んでようが、俺たちに選択肢なんてねぇんだ。罠があるってんなら…」

 

オルガはそこで区切ると不敵な笑みを浮かび、言った

 

オルガ「罠ごと噛み砕くまでだ」

 

 

ーーCGS 外敷地内 見回り組ーー

 

CGS少年兵「…」

 

…カクッ…カクッ…

 

ゴスッ!

 

CGS少年兵A「痛って!」

 

CGS少年兵B「ほら、あと少しで夜明けだ。頑張ろうぜ」

 

例え交代制とはいえ夜明けの当番はとてつもない睡魔が襲いかかってくるものだ。だがそれでも、大人達の目がなく、仲間と一緒にかるくこづきあいながら過ごすのは彼らにとって幸せなひと時の一つであった

 

しかし

 

その平穏のときは…

 

 

パシュッ

 

ドサッ

 

CGS少年兵A「え、おい、どうし「パシュッ」」ドサッ

 

 

静かな銃声によって突如として消える

 

???「クリア、そっちは?」

 

???「こっちもクリ…「バシュッ」…あ」

 

謎の舞台がスナイパーライフルで少年兵達を暗殺していたが、仮にも見回り組、白い信煙弾によって襲撃されていることを基地内全ての少年兵に伝えた。

 

ーー???ーー

 

???「ちっさっそくしくじりおって…ヘマしたスナイパーは独房にぶち込んでやれ!」

 

???「まてオーリス!」

 

???「もういい、全体、攻撃…」

 

オーリス「開始!!」

 

隊長機がそう叫ぶと、どこかしこから赤いモビルワーカーが無数に現れ、弾幕の雨がCGSの拠点に降り出した。

 

ドドン!バンッ!バンッ!

 

ガシャァン!

 

 

ガタタッ!

 

クーデリア「!?えぇ!?ふ、フミタン、これは…」

 

クーデリアは突然の砲撃の雨霰に混乱し、フミタンに状況を問うが、

 

フミタン「状況を確認してきます。お嬢様はここでお待ちを…」

 

フミタンは落ち着いた表情でそう言うと部屋を出て行った

 

クーデリア「え、えぇ!?ま、まってフミタン!私も!「ドオォォン!」ひっ…」

 

クーデリアはこの砲撃のなか、動くことなんて到底出来ず、ただベットの上で縮こまるだけだった

 

 

ーーCGS モビルワーカー格納庫ーー

 

ドオォォン!

 

ユージン「おーおー、擊ちまくってんなぁ!」

 

オルガ「ユージン!状況は!」

 

急遽駆けつけたオルガは先にモビルワーカーの出撃準備を終えたユージンに状況を聞く。

 

ユージン「っ!おっせーぞオルガ!今、三日月と昭弘の隊が襲撃したところだ!」

 

そう説明されている間にオルガはビスケットに背中に阿頼耶識をつけてもらっていた。すると、

 

ハエダ「おっせーぞ!何チンタラやってんだ!テメーら三番組は全員

敵の足止めだ!」

 

ハエダは準備する三番組にそう怒鳴りつける。

 

オルガ「敵って…相手がわかったんですか?」

 

オルガのその問に対し、ハエダは苦虫を噛み潰したような表情で口籠る

 

ハエダ「ぅ、そ、それは…」

 

 

ーーCGS 前線ーー

 

ヒュンッ!ドゴォン!バガァン!

 

シノ「クッソォ!金持ちが!ボカスカ擊ちまくりやがって!このまま俺らを塩漬けってかぁ!?」

 

シノはモビルワーカーの前に鉄板プレートを敷き、盾のようにしてとにかく敵モビルワーカーに対して固定射撃を行なっていた

 

三日月「いや…くる!」

 

シノ「え?」

 

ギャオォン!ギャギャギャ!

 

砲弾によってできた土煙から出てきたのはモビルワーカー、しかも、それに刻まれている紋章は、

 

シノ「う、ウッソだろ!あれ、《ギャラルホルン》のモビルワーカーじゃねえか!!」

 

 

 

ーーCGS 内部 社長室ーー

 

マルバ「ギャラルホルンだとぉ!?クソッタレ!なんで奴らがここに…!大体、うちには大した資産も!…ええい!クソッ!パスワードが思い出せん…確かガキの頃飼ってた雌犬に関係していたんだが…」

 

マルバはギャラルホルンに襲撃にあったと聞くがいなやすぐに自室に戻り、バッグの中に現金や、金目のものを積み込んで逃げようとしていた。

 

マルバ「…ん?資産…?雌犬…?…!!おい、ササイ!」

 

ササイ「!?へ、へい!」

 

マルバはおなじく資産を持ち逃げする準備をしていたササイを呼び止め、何やら良からぬ事を企てていた……

 

ーーCGSモビルワーカー格納庫ーー

 

オルガ「ギャラルホルンですって!?なんでうちにそんなもんが…」

 

ハエダ「しるわけねぇだろ!」

 

トド「いいからとっととでろぉ!!」

 

ハエダとトドが、何かに焦るようにオルガ達にまくしたてる

 

オルガ(なんだ?襲撃されてっから混乱するのはわかるが、それを引いてもこいつら、なんかおかしい……)

 

オルガ「…一軍は?本隊はどう動くんです?」

 

ハエダ「お、俺たちは、回り込んで…背後を撃つ!挟撃だ!だからお前らはそれまでにしっかり相手を抑えとけ!」

 

オルガ「…チッ」

 

そのハエダの全く信頼できない言葉に、オルガは舌打ちしながらも命令に従った。

 

ユージン「…クソッタレ、いくしかねぇか」

 

ユージンはそう言うとモビルワーカーに乗り込み、コックピットの蓋を閉めた

 

そしてさらに、この窮地の状態をさらに地獄にたたき落とす情報がビスケットから伝えられる。

 

ビスケット「…オルガ、うちのエイハブリアクター《以外》の物が観測されてる…!」

 

オルガ「っ!?そりゃ、まさか!?」

 

オルガが驚くのに対し、ビスケットはできるだけ冷静に予想を伝える。

 

ビスケット「相手がギャラルホルンなら、これはもしかすると…」

 

オルガ「…クッソ」

 

オルガが悪態をつくが、戦場はそんな時間すらもまってくれない。

 

ユージン「オルガ!早くしろよ!」

 

オルガ「あぁわかってる!!…ビスケット、頼みがある」

 

ビスケット「っ!…任せてよ」

 

オルガはビスケットに一つの作戦を伝えた。

 

ーーCGS 前線ーー

 

バンッ!ヒュンッ!カンッ!

 

ダダダダッ!バキンッ!

 

ガシャァン!!

 

シノ「フゥーッ!助かったぜ三日月!」

 

三日月「いいよ、別に」

 

シノと三日月は無茶にも程があるが、阿頼耶識の力によって、あいてのモビルワーカーを翻弄していた

 

三日月「…にしても、数が多すぎる、このままじゃ弾も「シノの隊は一旦下がれ!」!!」

 

戦闘中に響くその声は、三日月が信頼するオルガの声だった。

 

シノ「オルガ!?おっせーぞオイ!」

 

オルガ「悪いなぁ!ミカと昭弘も戻れよ!」

 

オルガは冷静に状況を判断し、その上でどう動くか考える

 

オルガ(さて、こっからどうするか…)

 

「オルガさん!」

 

オルガ「…?」

 

オルガが振り向くと、別の隊の少年兵がいた。

 

少年兵「数が足りないなら俺を出してください!モビルワーカーが一台空いてます!!」

 

タカキ「ちょっ!?おい、そんな…」

 

オルガ「…シノの隊が戻ったらその援護だ!」

 

少年兵「っ!!ッシャア!!」

 

タカキ「えぇぇ!?」

 

ーーCGS基地内ーー

 

ドゴォン!!

 

ササイ「ヒイッ!…く、クソッタレ!女の面倒は三番組が面倒見るんじゃなかったのかよ!」

 

ササイはそんなことをぼやきながらクーデリアのいる部屋に着く。

 

ササイ「ったく…失礼しますよ!…って、あれ?」

 

 

 

ピッピッピッ

 

クーデリア「あの、どこにいくのですか?…私はフミタンを待たねば「あのままあそこにいたら死にますよ!!」っ!?」

 

クーデリアは部屋の中にいると、ビスケットが現れ、ササイよりも先に彼女を救出していた

 

クーデリア「…し、死ぬ…」

 

クーデリアは立場上、今まで死ぬような危険なことなど体験したことがなかった。それ故に未知の物体がこの基地内に攻めこみ、実際の死を目の当たりにすると、恐怖で体が動かなくなった。

 

クーデリア「…わ、私は、死ぬ…の、ですか?」

 

ビスケット「そうならないように努力してるところです!!」

 

ビスケットはそう叫ぶとある部屋のドアのパスワードを解除し、ドアを開けた

 

そこは……

 

 

 

ガシャン!プシュー!

 

おやっさん「ヤマギ!5番のケーブル!!」

 

ヤマギ「はいっ!」

 

ビスケット「おやっさん!」

 

おやっさん「おお、ビスケットか!もう始めてるぞ!」

 

ビスケット「はいっ!」

 

クーデリア「……あぁ…」

 

そこは、あの大量のケーブルに繋がれた、膝立ちで静止してる人型の兵器 

 

《モビルスーツ》があった

 

 

 

ーーCGS 前線ーー

 

ダダダダダダッ!ガンッ!キンッ!バゴォン!

 

「う、うわぁぁぁ!!」

 

「いやだ!死にたくない!死にたく…」

 

「こ、こんなの無理だろォ!?」

 

オルガ「三班!もうすぐ増援が到着する!それまでもう少し耐えててくれ!五班突っ込み甘い!!当たり負けんぞぉ!!ユージン移動!!」

 

ユージン「い、移動はいいけどよ!このままじゃジリ貧だぞ!」

 

オルガはユージンのモビルワーカーに乗り、移動をユージン、指揮をオルガが、というふうに役割分担して戦っていた。

 

ヒュルル…バガァン!!チュドオオォン!

 

シノ「来るぞォ!!正念場だぜぇ!…おぉ!?」

 

今まさにシノが突っ込もうとした時、

 

ギュォォォン!!

 

シノ「お、おい!!なにやってんだ!」

 

突然、シノの援護をしていた一台のモビルワーカーが敵に突っ込んでいった。そのパイロットは、オルガに無茶を言って戦線に加えて貰った、あの少年兵だった。

 

少年兵「ハァッ!ハァッ!む、向こうの方が硬いんだ!近づかなきゃ!

「ガキンッ!」っ!?う、うわぁぁ!!」

 

ガコォォン!

 

乗っていたモビルワーカーの車輪が岩で滑り、体勢を崩し、前にめり込むように倒れてしまった

 

シノ「動けええ!!足止めたら死ぬぞォォォ!」

 

ギャギャギャ!

 

シノの忠告も遅く、その少年兵の目の前には、一台のGHモビルワーカーが現れ、その砲身を自分に向けた。

 

少年兵「あ……あぁ……」

 

バンッ!バンッ!バンッ!

 

ガンッキンッ!

 

「ごめん」

 

三日月「待たせた」

 

少年兵「……!あぁ……」

 

三日月が横からGHモビルワーカーを撃ったおかげで少年兵は九死に一生を得た。

 

バンッ!バンッ!

 

ヒュンッ!バァァン!ギャギャギャ!!

 

「お前にばっかり!」

 

三日月「……お」

 

昭弘「いいカッコさせっかよぉ!!」

 

そして昭弘も前線に加わった。それを見たオルガは

 

オルガ「よぉし!ミカと昭弘が食いついた!混戦の中であいつらに勝てるのはそうはいねぇ!宇宙ネズミの本領発揮ってところだ!」

 

オルガはそう言いながら負傷者の援護に入った。

 

オルガ「今のうちに状況を立て直すぞ!負傷者もなるべくさげろ!」

 

その命令に下で運転してるユージンが叫ぶ。

 

ユージン「けどよ!こんなんただの時間稼ぎだぜ!?ジリ貧なのは変わんねえ!!それより本隊は!?一軍はなにやってんだ!?一体いつになったら来るんだよぉ!?」

 

ユージンがそう叫んでいると、通信がビスケットに切り替わった

 

ビスケット「オルガ!」

 

オルガ「!ビスケットか!どうだ!?」

 

オルガがそういうと、ビスケットは機械越しでも伝わる苦しい声で伝えた

 

ビスケット「悪い読みが当たったよ…!一軍は今、社長と一緒に戦闘区域を全速力で離脱中…!!」

 

それを聞いたユージンは半分泣き声でオルガに問う

 

ユージン「おいおいどーすんだよ!?俺たちこのままじゃ犬死にかよぉ!?」

 

その問に対してオルガはキッパリと言った

 

オルガ「いいや違うな」

 

ユージン「はぁ!?」

 

オルガ「それじゃ筋が通らねぇ…だよなぁ?ビスケット!」

 

ビスケット「あぁ、そうだね!!」

 

オルガとビスケットは不敵な笑みを浮かべるとビスケットが懐から何かのスイッチを取り出し、押した。

 

 

カチッ

 

 

トド「あぁ〜ん?「パシュッ!」おぉわぁぁ!!」

 

すると、逃げていた一軍の中の一台のモビルワーカーから赤い信煙弾が上がった

 

タカキ「な、なんだ?あれ」

 

ユージン「なんだよありゃあ!?一軍か?」

 

ユージンも身を乗り出してその光を見る

 

オルガ「あぁ、どうやら俺たちの為に…」

 

オルガはニヤけながら告げる

 

オルガ「囮になってくださるそうだ」

 

 

 

ガシッ!

 

ハエダ「おいトドォ!!一体どういうつもりだテメェ!!」

 

トド「い、いやいや、俺はなんもしてないっすよぉ〜!!」

 

ハエダ(っ!?まさか…)

 

ハエダ「チィッ…ガキどもがァァァ!!!

 

 

 

 

シノ「おぉっ!?敵が移動してくぞぉ!」

 

オルガ「だろうなぁ」

 

ユージン「はぁ?」

 

ユージンは理由を求むと、

 

オルガ「俺の読み通りなら、奴らはここから逃げ出すやつを無視できねぇ」

 

 

 

ーーCGS 倉庫内ーー

 

おやっさん「ヤマギ!12番!」

 

ヤマギ「はいっ!!」

 

クーデリア「あ、あの!私も何か「お嬢さんは危ねえから、もっと下がりなぁ!!」…うぅ」

 

 

 

ーーCGS前線ーー

 

ピッピッピッ

 

ピーー!!

 

チュドオオォン!!

 

タカキ「あ!」

 

ライド「あれは!」

 

タカキ・ライド「俺たちの植えた地雷!?」

 

それは少し前にライド達がやってた地雷設置訓練で設置したままにしていた地雷が敵に当たったのだ。

 

オルガ「フッ…さぁ!!反撃開始といこうかぁ!?」

 

バガァァァン!

 

ユージン「なっ!?」

 

オルガ「重砲だと!?一体どこから「ボォォン!」ぐわっ!!」

 

その時、オルガの頭の中に、一つの言葉が浮かぶ

 

 

ビスケット『ウチのエイハブリアクター《以外》のものが感知されてる!!』

 

 

オルガ「…まさか、これは!!」

 

オルガがそう叫ぶと三機の巨大な《人型の兵器》が現れた

 

オーリス「全く……この程度の施設制圧になにを手間取っておる!?

モビルワーカー隊は全員、減給だ!!」

 

ユージン「…冗談だろ…」

 

ユージン(モビルワーカー相手に、モビルスーツ出してくんのかよ!?)

 

ユージンが内心怯えていると、

 

クランク「オーリス!何故撃った!?我々の目的は…」

 

オーリス「黙っていてもらおう、クランク二尉!指揮官はこの私だ!」

 

クランク「うぐぅ…」

 

オーリスの言葉に、クランクはただ唸ることしか出来なかった。

 

オーリス「ふん、そんなに目的が大事なら、回収はそちらに任せよう。

アイン!貴様もだ!」

 

アイン「!りょ、了解!」

 

 

 

 

シノ「……ハッハハ…どうすんだよこれぇ…」

 

少年兵「に、逃げなきゃ……」

 

昭弘「どこへ!?」

 

オルガ「そうさ……どこにも逃げ場なんてねぇぞ…ハナっからなぁ…」

 

シノ・少年兵・昭弘「!?」

 

同様する仲間達を置いてオルガは話し続ける

 

オルガ「…なあ?ミカ」

 

三日月「うん…で…」

 

三日月はそこで区切ると、いつもの如く、言った

 

次はどうすればいいの?

 

オルガ「…へッ」

 

オルガはまだ、こんな状況でも諦めてはいなかった。

 

 

 

ガンッ!ガンッ!

 

モビルワーカーの主砲よりも甲高い音をだして放たれる弾丸はモビルワーカーをいともたやすく屠りさる

 

オーリス「ハッハッハァ!まるで虫からだぁ!」

 

そして、その虐殺とも言える行動を見続けている新人、アインは…

 

アイン「あの、クランク二尉…モーリス隊長は「放っておけぇい!」

は、はっ!」

 

クランク二尉「…」

 

クランクは腕を組みながら考える。

 

クランク(我らがもっと早く出ていれば、こんな犠牲を出さずにすんだものを…!!)

 

 

 

オルガ「いいか皆!ミカが戻るまででいい!それまで時間が稼げたら、このクソみたいな状況に、一発かましてやれるんだ!だからそれまで…」

 

オルガは尚も、指揮を続け、戦闘を継続していた。その時…

 

 

ヒュン!ガシャァン!!

 

少年兵「基地が!?ック!やめろおぉ!!」

 

ギャギャギャ!!

 

少年兵「そこには!そこには俺の仲間…」

 

ガシャァァン!

 

一瞬の出来事だった。たった一瞬、モビルスーツの振り向き様に、蹴られて終わり、それだけだった…だが…

 

シノ「!?おい!?…っ!チッッキショォォォ!!」

 

オルガ「足を止めるなシノォ!死ぬぞぉ!」

 

オルガ「あと少し!あと少しなんだぁ!あと少しでぇ!」

 

ユージン「!?おいおいおいおいおいおい!!なんかあいつ、こっちみてんぞぉ!?」

 

ユージンが言った通り、モビルスーツがこちらを見ると、頭部の内部から特徴的なカメラアイが出てきた

 

オーリス「貴様が、指示をしてるのか」

 

オーリスはそういうと、銃口を向け、続け様に撃ってきた。

 

ユージン「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬゥ!!死んじまうぅぅ!!」

 

オルガ「死なねぇ!!」

 

オルガ「そうさ、こんなところじゃ…」

 

 

 

 

オルガ「終われねえ!!」

 

 

 

 

オルガ「だろ?」

 

 

「ミカァ!!」

 

 

 

 

 

バゴォォォォン!!!

 

 

 

突如として地面から現れたソレは、今まさにオルガを潰そうとしていた

モビルスーツ、グレイズを、巨大な鋼鉄の鈍器、メイスによって叩き潰した。そのモビルスーツの名は…

 

三日月「…フゥ…さぁいくぞ…」

 

 

 

 

「バルバトス!!」

 

 

 

そして、それを上空から一部始終見届けていた一つの機体がいた。

 

???「……ふーん、あれが、バルバトス、か…」

 

「…ガンダム同士は惹かれ合う、のかな?」

 

 




………はい!ごめんなさいなのだ!!主人公足すとか言っておきながら、最後の最後しか出せなかったのだ!許して欲しいのだ!そのかわり、次は必ず!ゼェッタイ出せるから、また続きを読んで欲しいのだ!
それではありがとうございましたなのだ!よければ感想下さいなのだ!


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戦いの後の痛み

こんにちはなのだ!黒アライさんなのだ!今回はやっとこさ主人公を出していくのだ!今までの話ははっきり言えば原作となんも変わらなかったのだ!けど少しずつ変えていくのだ!それではどうぞなのだ!


突如として地面から現れたソレは、正確に、相手のグレイズのコクピットを捉え、確実に破壊した。それを成したモビルスーツ。それは…

 

???「ガンダム…」

 

???「…と言っても、なんかボロっちいなぁ…所々フレーム剥き出しだし、あれで動くんだからびっくりだ…まぁ、300年もの前の遺物なんだし、仕方ないのかも…ねぇ、お前もそう思うでしょ?《アビス》」

 

その様子をしっかりと上空から見続けていた一つのモビルスーツ。それもまた、三日月と同じ、ガンダムであった…

 

 

ーーCGS 前線ーー

 

シノ「ま、マジかよぉ!?本当にやっちまったぁ!!」

 

昭弘「アレに三日月がのってるのか…!?

 

また突然現れたモビルスーツに、CGSの少年らも混乱してしまっていた。しかしそれでもわかっていることはあった。それは、三日月が乗り、相手のモビルスーツを倒してくれたのだということ。

 

 

 

アイン「そ、そんな…モーリス隊長が!?それに、こんなところにモビルスーツがあるなんて情報はなかったのに!?」

 

クランク「っク…!」

 

クランクは現状に歯を噛みしめながらも冷静に現実を見ていた。故に行動するのも早かった。

 

ギュィィィン!

 

モビルスーツが持つ原動機、エイハブリアクターの生じる甲高いスラスターの起動音を轟かせながら、クランクは前に出る。

 

アイン「!?クランク二尉!?」

 

クランク「アイン!貴様は援護だ!!」

 

アイン「!は、はい!!」

 

ギュォォォン!!

 

 

 

 

ユージン「!?お、おいおい!またくるぞぉ!?」

 

オルガ「…チッ!」

 

オルガは舌打ちをしながら策を練ろうとしたが、急に三日月が、オルガの前に立ち、

 

三日月「オルガ、下がって!」

 

オルガ「…やれるのか?」

 

三日月「やるしかないでしょ…!」

 

三日月はそういいながら、自機に向かってくる二機のグレイズに向かって突っ込んでいく。

 

クランク「行かせるかァァァ!!」

 

クランクも迎え打とうとした、がしかし、バルバトスは急に軌道を変え、二機のグレイズとは違う方向へ飛行する

 

アイン「っ!クランク二尉!自分が足を止めます!」

 

クランク「待てアイン!そっちは…!」

 

クランクはなぜかアインの動きを止めようと指示した、それは何故か、それは…

 

アイン「っ!?あ、あれは…撤退中の我が軍のモビルワーカー隊!?」

 

アインから見て、一直線上にガンダムがいる。そしてその横には、撤退中のGHモビルワーカーがいたのだ。

 

ガンダムはそれをいともたやすく踏み潰していった。それはまるで自分達がやられた時と同じように…

 

三日月「…これじゃ撃ちにくいだろ?」

 

三日月はワザとコクピットを潰さず、中のパイロットがギリギリ生きている具合で止めていた。その目的はただ一つ、相手の遠距離武器を封じる為である。そして、それを見ていた上空に佇む謎のモビルスーツも感心していた。

 

「へぇ、考えるなぁ、確かにあれじゃ撃ちづらい。GHにとって同士打ちはご法度だからね…」

 

しかし、実際に戦っている前線のものにはそれを考える余裕もなく、アインは叫ぶ。

 

アイン「ックゥ!貴様ぁ!モビルワーカーを狙うとはなんと卑怯なぁ!」

 

アインは激情し、三日月に突っ込んでいく。

 

三日月「…どの口が言ってんだ…!」

 

三日月も、自分の武器である鉄塊、メイスを片手に、相対す。

 

しかし、この中でも冷静に対処しようとするものはいた。クランク二尉である。

 

クランク「やめろアイン!私が合流するまで…」

 

アイン「やれます!!銃が使えなくたとも、こんな奴!」

 

アインは懐のバトルアックスを引き抜こうとした瞬間、

 

三日月「…ッフッ!!」

 

ガンダムは急に自分の武器であるメイスを《ぶん投げて》きた。そして、そんな突拍子もない行動に、アインはギリギリ弾き返しだが、そのせいで体制が崩れかけた

 

アイン「ッグゥ!!…武器を投げてくるなんて!!」

 

アインは悪態をつきながらも、なんとか体制を整え、再びガンダムを捉えようとする、が…

 

アイン「…!?何ッ!?」

 

アインは体制を整える時に、少しばかりガンダムから目を離した。しかしその一瞬とも言える間に、ガンダムは視界から消えていた。

 

アイン「ど、どこにっ!?」

 

アインが探そうとした途端、突如上からはじき飛ばした筈のメイスを手に持ったガンダムが、メイスを振り下ろしてきた。

 

バキィン!

 

アイン「っ!?何ィッ!?」

 

ガンダムの全体重が乗った一撃に耐えれるはずもなく、片腕を潰された。

 

 

???「うわ…あれが人間のする動き?」

 

上空のモビルスーツも、その動きには驚きを通り越して引いていた。

 

???(メイスをぶん投げ、ワザと上に打ち返させ、上空に飛びそれをキャッチすると同時に襲い掛かる…まさか一瞬にしてこれを頭の中で…?)

 

???「…なんて奴」

 

 

 

三日月「チッ…浅いか!」

 

しかし当の本人は不満気であった。どうやらさっきの一撃で決めたかったようだが、結果的に片腕を潰しただけであった。三日月は更に追撃しようとするが、

 

ボォォン!!

 

クランク「ヌォォォァァ!!」

 

三日月「…!?」

 

バギィィンッ!!

 

もう一機のグレイズ、クランクがそれを許さず、バトルアックスを持って三日月のメイスに打ち付ける。

 

クランク「どこから持ってきたのか知らんが、そんな旧世代のモビルスーツで、このGHのグレイズの相手ができるとでもッ!?」

 

クランクはそういいながらグレイズの特徴的なカメラアイをバガッと開き、バルバトスを見つめる。

 

三日月「よく言う…すでに一人死んだみたいだけど?」

 

三日月は流れ出た鼻血を拭いながら動揺することもなくそう告げる。

 

クランク「ッ!?その声、まさかっ!子供なのかっ!?」

 

クランクは自分が相対するモビルスーツのパイロットが子供だという真実に、動揺を隠せなかった。

 

三日月「そうだよ…あんたらが殺しまくったのも…」

 

三日月は続けて言う。

 

三日月「そして!」

 

ガギン!ギギギギッ!

 

クランク「ヌゥッ!?」

 

さっきまで押していた筈のグレイズが力負けしてきている。

 

三日月「これからッ、あんたらを殺すのもッ!」

 

クランク「ヌグゥっ!」

 

クランクは押しつぶされそうになるが、

 

アイン「クランク二尉ッ!!」

 

三日月「ッ!チィッ!」

 

バッ!

 

ガガンッ!バンッバンッ!!

 

片腕を失ったアイン機がライフルを片手に撃ってきたのだ。しかし三日月は咄嗟にバックステップで避けた。

 

クランク「…ッ!なんて反射速度だッ!」

 

三日月は地面スレスレを背中を向けて滑るように飛行し距離を取ろうとした…が、そこで最悪の事態がおこる。そしてそれを上空から見ていたモビルスーツのパイロットも思わず口に出してしまう

 

バシュン!バシュッ…ブシュー…

 

???「…あ」

 

三日月「…!?」

 

三日月「ガス欠!?」

 

???「ガス欠だ」

 

ーーモビルワーカー格納庫ーー

 

おやっさん「アァァァァァァァァァ!!?」

 

ヤマギ ビクッ!

 

ヤマギ「お、おやっさん?」

 

急に叫び出したおやっさんに驚きを隠せないヤマギだったかがそんなもの関係ないと言わんばかりに雪之丞は叫ぶ

 

おやっさん「いっけねっ!ヤマギ、ヤベェッ!スラスターのガス補給すんの忘れたァッ!!」

 

ヤマギ「…え、えぇぇぇ!?」

 

ーーCGS 前線ーー

 

三日月「…チィッ!」

 

三日月は残りのガスを使い切り、なんとか体制を立て直し、メイスを使って地面を叩き、土煙を起こし、煙幕をあげた。

 

アイン「無駄だッ!この距離なら照準はッ!!」

 

クランク「違うアイン!!下だァッ!」

 

アイン「ッ!?」

 

三日月は超低姿勢でアインの懐に潜り込み、削り取るようにメイスを振るう、が、スラスターがない状態でのこの体制はモビルスーツにとってはキツイものであり、コクピットの装甲と頭部の装甲を削り取るだけであった

 

三日月「ッ!また浅いッ!」

 

三日月がそう言うや否や、クランクは三日月をそっちのけでアインを回収し、スラスター全開で距離を取るように逃げる。

 

クランク「アイン無事かッ!?」

 

アイン「…は、はい!しかし「よしッ!このまま撤退する!」…ッ!?い、一体なにを!?」

 

クランク「相手はスラスターが不調だ!モビルワーカー隊も、安全圏まで離脱できた…逃げるなら今しかない」

 

やはり腐っても上官、クランクは部下の命を守るため、引き際も完璧に逃さなかった。一方で三日月は…

 

三日月「…まだだッ!」

 

ドクンッ!と、三日月の阿頼耶識につながれたコードが脈打ち、更に追い討ちをかけようとするが…

 

三日月「まだ…だ…」

 

ガクッ!

 

キュォォォン…ヒュゥン…

 

三日月がなんらかの原因で気絶し、それに応じてバルバトスも機体を停止した。

 

???「…潮時かな…行こう、アビス」

 

上空にいた謎のモビルスーツも、まるで語りかけるように喋り、戦闘区域から離脱していった…

 

ビスケット「…?あいつ、今までずっと上空にいたのか?何故…?」

 

ビスケットはそのモビルスーツの豆粒程に小さく見える後ろ姿を見ながら重要なことに気づく。

 

ビスケット(!!…待てよ、エイハブリアクターの感知された数はうちのを除いて3つだった筈!その3つはあのGHのグレイズの筈だ…じゃああいつのは…!?あんな近くにいて、感知できない筈ないのに…何故…)

 

そしてそれを偶然見たビスケットの疑問に、答える者は誰もいなかった

 

 

 

 

ーーアーレス 本部ーー

 

コーラル「何ィ!?失敗しただとぉ!?」

 

クランク「…指揮官である、モーリス・ステンジャーが死亡、三割の兵と、グレイズ一機を失い、止むを得ず撤退を「ふざけるなぁッ!」…!」

 

画面越しでもわかるぐらい、神妙な顔で報告するクランクのことなどどうでもいいと言わんばかりにコーラルは怒鳴り散らす。

 

コーラル(なんて事だ…火星独立宣言をした旗頭であるクーデリア・藍那・バーンスタインが、我々の襲撃により華々しい戦死を遂げる…ヒロインを失った火星は、今まで以上の混乱に陥り、地球への憎しみを強くするッ!そういう手筈だったのにッ!)

 

コーラルは机上を強く叩きながら頭の中でそう叫ぶ。

 

コーラル(…そういえば)

 

コーラル「おいクランク!《あいつ》はどうなった!」

 

クランク「は…?あいつ、とは?」

 

コーラル「とぼけるな!貴様のところに向かわせた傭兵、《鈴付き》は!!」

 

クランク「よ、傭兵ですか?い、いえ我々が戦闘をしている間は傭兵の類のものは何も…」

 

コーラル「…何ィ!?」

 

コーラルはそれを聴くや否や電話をとり、部下につなげる。

 

GH兵士「ご命令でしょうか!コーラス閣下!」

 

コーラル「今すぐ鈴付きを呼んでこい!」

 

コーラルは怒鳴りつけるように言い放った…

 

コーラル(いかん、落ち着け、このままではノブリスからの資金援助はオジャン…しかも、モビルスーツを失ったとなれば…)

 

コーラルはまたも机上に頭を打ちつけ、考える。

 

コーラル「ファリド特務監査がこちらに着くのはいつだ!」

 

GH兵士「はっ!2日後に到着する予定です!」

 

コーラル「聞いたなクランク!2日後だ!それまでの間にクーデリアを捕らえろッ!そして、戦闘の証拠は全て消せ!相手ごと全て!」

 

クランク「…それは」

 

クランクは拳を握りしめながら告げる。

 

クランク「相手は…子供でした…!」

 

それを聞いたコーラスは更に激怒し、

 

コーラル「何ィ!?子供!?雁首揃えて、子供たちにしてやられたと言うのかぁ!!」

 

クランク「子供はッ!」

 

クランクはそこまで言うと一旦区切り、息を整えて再度伝える

 

クランク「私は軍人である前に、一人の親でもあるのです…少年兵を相手に…戦うことなど出来ません…」

 

クランクはなおもまだ訴え続ける

 

クランク「彼らが自らの意思で、戦っているとは思えません…」

 

その言葉を聞いたコーラルはそんな事など関係ないと言わんばかりに更に怒鳴りつける。

 

コーラル「ふざけた事をぬかすな軟弱者が!相手が子供だろうと関係ない!一人残らず駆除しろ!いいか!?これは命令だ!!失敗は許されんぞ!!」

 

クランクはその言葉にはを食いしばりながら了承した。

 

そして、それらを影から一部始終見ていた、短い銀髪の、青い鈴付きのリボンを髪にくくりつけてる小さな少女がいた。

 

???「…」

 

「ミトメタクナイ!ミトメタクナーイ!」

 

???「静かにしてね、ハロ」

 

ハロと呼ばれた真っ白い円形状の喋る、結構大きい機械が、その少女に抱き抱えられていた。

 

 

 

ーーCGS 戦場跡ーー

 

「おーい、こっちだー!」

 

「急いでクレーン持ってきてくれ!下敷きになってる!

 

「…こいつはもうダメだな」

 

 

 

シノ「…嘘だろ?これが…アイツの…?」

 

そう言うシノの掌の上には、小さな鉄の燃えかすのようなものが握られていた。

 

「間違いない…焼き尽くされた後に残ったのはその阿頼耶識のピアスだけだ…」

 

そう言った褐色肌のこの少年は「チャド・チャダーン」である。

 

シノ「…チッキショウッ!お前言ってたじゃねぇか!!死ぬ時はでっけぇオッパイに埋もれて死にてぇって!!オッパイはやわらけぇんだぞ…こんな硬いコクピットとは違うんだ…」

 

シノは泣きながら鉄の燃えかすにそう言っていたそして、それを見つめていたオルガも、なんとも言えなかった。

 

オルガ「…」

 

昭弘「…おいオルガ、一番組の奴らが戻ってきたが、どうする?」

 

オルガ「…フゥ…」

 

 

ーーCGS 基地内ーー

 

ハエダ「クッソ…どこ行きやがったあのガキどもは…」

 

ハエダは戦闘区域から離脱する時、わざわざ自分達のモビルワーカーに信煙弾を設置し、起爆させることによって囮にされたことに気付いた為、その犯人であるのだろうオルガを、血眼にして探していた。

 

ササイ「…なぁ、これからどうする?GHに目ぇつけられちまって…マルバもいねぇし…」

 

ハエダ「んなもん知るか!取れるもんは取って、とっととずらかるだけだ!」

 

ハエダはとにかく虫の居所が悪くそう怒鳴り散らすばかりであった。

 

そして、それをモビルワーカーの影から聞いていたトドは…

 

トド「…こいつは潮時だなぁ」

 

そう言って自分のヒゲを弄っていた。

 

 

ーーモビルスーツ格納庫ーー

 

ドクンッ!

 

三日月「ングッ!?」

 

三日月は阿頼耶識の刺激によって目を覚ますと、そこはバルバトスの半分程空いたコクピット内だった。

 

おやっさん「おぉ、目ぇ覚めたか」

 

三日月「…おやっさん…うぐッ!」

 

おやっさん「ちょっとまってろ、お前が気絶してる間は、この阿頼耶識は取ることはできなかったんだよ……」

 

おやっさんはそう言うと、三日月の背中から阿頼耶識の装置を取り外した

 

カチャカチャ…

 

おやっさん「…」

 

三日月「…」

 

カチャ…プシュー…

 

おやっさん「…」

 

三日月「…ねぇおやっさん」

 

おやっさん「なんだ?」

 

三日月「何人死んだんだ?」

 

おやっさんはそれを聴くと、なるべく普通に言った

 

おやっさん「…三番組は47人、他の奴らは68人だ」

 

三日月「…」

 

三日月はそれを聴くと特にどうこうするでもなく、ただじっとしていた。それを見たおやっさんは言う

 

おやっさん「…お前は、お前とコイツは、良くやったよ…」

 

おやっさんはバルバトスのコクピットを軽く小突きながらそう言った

 

 

ーーCGS 駐車場ーー

 

アトラ「…」

 

イジイジ…

 

物資の配達の車に寄りかかりながら手首に巻いてあるミサンガを弄るこの少女は、「アトラ・ミクスタ」である。いつもはこのCGS内の料理当番や、物資の配達係を受け持っているがCGSの組織に入っているわけではないというあやふやな立場である彼女。そんな彼女の唯一の目的は…

 

ザッ…ザッ…

 

アトラ「…!み、三日月!」

 

三日月「ん、あれ?アトラ?なんで…あぁ…配達か」

 

そう、彼女は三日月に会うのが目的でこのCGS内の仕事を受け持っていると言ってもいいだろう。しかし、いつもは会えばとても嬉しがるが、今日は一瞬驚いた顔をすると、下に俯き、体調を尋ねる。

 

アトラ「…三日月、大丈夫?」

 

三日月「え?うん?大丈夫だよ?それだけ?じゃあ俺仕事あるから」

 

三日月はそれだけ言って去っていった。

 

アトラは何故今日はあまり嬉しがらないのか?理由はさながら分かりきっている

 

アトラ「…馬鹿だなぁ私…大丈夫な訳無いのに…」

 

誰でも、血で顔半分真っ赤に染めていたら、不安がるものだ。ましてそれが、自分の愛する人なら当然である。

 

 

ーーCGS 基地内部ーー

 

クーデリア「…」

 

クーデリアは戦闘が終わった後、なにかできることはないかと探したがどこも邪魔だと言われて終わりだった

 

クーデリア「…私の、せいで」

 

クーデリアには分かっていた。今回の襲撃が、偶然ではなく、確実に自分を狙っているものだという事を。

 

フミタン「お嬢様」

 

そんな落ち込んでいるクーデリアに、侍女のフミタンはどうこうするでもなく、普通に接してきた。

 

クーデリア「!フミタン!どこにいたの!?心配し…て…」

 

よく見れば彼女は右腕を抑えており、その服には血が滲んでいた。

 

フミタン「…お気になさらず、かすり傷です…それより、申し訳ありませんでした。非常事態の場合は、まずノーマン様に連絡をと命じられていたので」

 

フミタンは相変わらず、声に感情を載せずそう言った。

 

クーデリア「ッ!…お父様はなんと?」

 

フミタン「大層心配していらっしゃいました。すぐに戻ってくるようにと」

 

それを聞いたクーデリアは顔をすこし歪ませる。

 

クーデリア「…今回の地球行きは、秘密裏に行われる予定でした。ですが、ギャラルホルンの攻撃は、間違いなく私を狙ってのもの。そして、いつもは私の活動に反対なさっているお父様が、今回に限って…考えたくは、ありませんが…」

 

クーデリアはそこまで言うと、フミタンから顔を逸らす。

 

フミタン「…お嬢様」

 

クーデリア「分かっています。ただ私は、それを確かめてからでないと…お父様の元には戻れません…」

 

クーデリアはキッパリとそう言った。フミタンはそれを聴くと、仕方なさげに言った

 

フミタン「…わかりました。ですが、ここに残る意味も無いでしょう」

 

クーデリア「…それは」

 

クーデリアは言葉に詰まってしまう。すると、後ろから聞いたことのある声が聞こえた。

 

「まだいたんだ」

 

クーデリア「!…あ…」

 

三日月「…」

 

振り向くとそこには荷物を運んでいる最中の三日月がいた。

 

クーデリア「み、三日月!あの…」

 

クーデリアはそこまで言うと、もう一度息を整え、はっきりと言った。

 

クーデリア「先程は守っていただき、ありがとうございました!」

 

クーデリアが礼を言うと三日月はさも興味なさげに、

 

三日月「そういうのいいよ」

 

と言って終わった。しかしクーデリアは納得がいかないのか言葉を続ける

 

クーデリア「…でも、私の、せいで…大勢の方たちが「マジでやめて」…ッ!」

 

三日月は振り返らずに言う

 

三日月「たかがあんた一人のせいで、あいつらが死んだなんて…」

 

 

 

 

三日月「これ以上、俺の仲間を馬鹿にしないで」

 

 

 

 

三日月が珍しく、言葉に静かな怒りを乗せてそう言った

 

 

 

 




…はい!いかがでした?なのだ!一応主人公は出したのだ!一応!とりあえず、今のところはまだほとんど原作に忠実に作っているのだ!大体かわってくるのは宇宙に出た時?だと思うのだ!それまでまた見て欲しいのだ!それではまだなのだー!


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これからの事

こんにちはなのだ!黒アライさんなのだ!最近Gジェネクロスレイズをやってると、無償にガイアガンダムを鍛えたくなることがあるのだ!このことは特に本編とは関係ないから、ガイアガンダムが出てくることはないのだ!それではどうぞなのだ〜!


ーーCGS基地内ーー

 

ハエダ「テメエ!」

 

ドガッ!

 

オルガ「グッ!」

 

ハエダ「よくもコケにしてくれたな!えぇ!?オルガ!」

 

オルガは、戦闘中、ハエダ達一軍を囮にしたことから、その一軍たちから問い詰められていた。

 

ハエダ「お前らのしたことが、どう言うことかわかって「一軍の皆さんが挟撃作戦に向かう途中!」…ッ!?」

 

黙って従っていたオルガが珍しく、本人を前に反抗してきた。

 

オルガ「不幸な事故で敵の攻撃を受けたことは聞きましたが」

 

オルガ「それが俺らとなんの関係が「バキッ!」ッ!!」

 

オルガは尚もシラを切るが、我慢の限界かハエダは構わず殴り飛ばした。

 

ハエダ「ったく!よくもまあぬけぬけとよぉ!」

 

その姿をオルガの後ろで静かに整列している三番組の少年たちは、三日月以外の全員が反抗的な目を向けてしまった

 

ハエダ「…なんだあ!?その目は!?テメエらも殴られてぇか!?ああん!!?」

 

そう言ったハエダだが、立ち上がったオルガが、皆の前に立ち、静かに言った

 

オルガ「…俺だけで…十分でしょう…」

 

それを聞いたハエダは、

 

ハエダ「…ああ、そうかよ!じゃあ!」

 

ドガッ!ベキッ!ボゴッ!

 

静かに佇む三番組の前で、オルガは大人達全員にいたぶられ、殴られ蹴られ、リンチにされた。しかしオルガは泣き声どころかうめき声さえ上げず、ただひたすらに耐えていた。

 

…大人達による集団リンチが終わった頃、

 

ハエダ「ケッ…面白くねぇ…後で今回の損害調べて持ってこいよぉ!?」

 

ハエダ達はそう言って、三番組を後にして出ていった。

 

 

ビスケット「っ!オルガ!大丈夫?」

 

シノ「ッ!クソッタレがぁ!あいつら許せねぇ!」

 

ビスケットとシノが顔面が腫れあがったオルガに近づくが、オルガはなにもなかったかのように立ち上がる。しかし、シノの放った言葉にオルガは反応した。

 

オルガ「…ぺッ!…あぁ…そうだな。許せねぇ…」

 

シノ・ビスケット・ユージン「!!」

 

オルガはそう言うと、乾いた笑顔で告げる。

 

オルガ「…ちょうど、いいのかもな」

 

 

ーーCGS モビルワーカー格納庫 外ーー

 

ユージン「俺たちがCGSを!?」

 

驚くユージンを相手に、オルガはただ当然と言わんばかりに話す

 

オルガ「前にお前も言っていただろうがユージン…乗っとるってよ」

 

ユージン「そりゃあ…そうだが、この状況でか!?三番組の仲間も、何人も死んだ後なんだぞ!?」

 

オルガはその言葉を聞いてもまだやめずに言葉を続ける

 

オルガ「マルバも相当のクズだったが、一軍の奴らはそれ以下だ。あいつらは俺たちの命を撒き餌ぐらいにしか思っちゃいねぇ…それに、あいつらの単細胞みたいな脳みそじゃ、すぐに商売に行き詰まる。そうなりゃ自然的に危険なヤマに手を出す…それについて行こうもんなら、俺たちはすりつぶされて、いずれ確実に殺される!」

 

ビスケットがそれに続くように話す

 

ビスケット「かと言って、ここ以外に働ける場所なんて無いしね…」

 

ユージン「…選択肢はねぇってことかよ…」

 

オルガ「そうだ…俺たちには、ハナッからそんなもんは存在しねえ…お前はどうする?昭弘」

 

オルガはモビルワーカーの上に居座ってる昭弘に聞く。

 

昭弘「…俺たちはヒューマンデブリだ。自分の意思とは無縁でここにいる…俺たちはただ上の命令に従うだけだ。それがあいつらであろうと、お前らであろうと、な」

 

昭弘はそう言って去っていく。

 

オルガ「…」

 

ユージン「…んじゃぁ、そうと決まればさっそく作戦会議だな」

 

ビスケット「三日月は呼ばなくていいの?オルガ」

 

オルガはビスケットの言葉を聞くとあっと驚いていた

 

オルガ「…ヤッベ忘れてた…」

 

ビスケット「忘れてたって…」

 

オルガはすこし笑いながら話す

 

オルガ「三日月が反対したら…お前らには悪りぃが今回は中止だ」

 

シノ・ユージン「えぇッ!?」

 

三日月だけの判断でこの先が決まるのかと、文句を言おうとした二人だが、オルガの次の言葉の前に、それを治めた

 

オルガ「まぁ十中八九ねぇだろうがな。俺が本気なら…」

 

オルガ「あいつはそれに答えてくれる…確実にな」

 

 

ーーアーレス アイン室ーー

 

アイン「そんな!?部隊を動かさない!?」

 

クランク「あぁ、俺が一人で行く」

 

クランクは負傷したアインを置き、ただ一人で黙々と出撃の準備を整えていた

 

アイン「無茶ですクランク二尉!!俺たち三機がかりで倒せなかった相手ですよ!?」

 

クランク「あの時は相手をなめていた…同じヘマはしないさ」

 

アインは自分の忠告に耳を貸さないクランクに痺れを切らし、叫ぶ。

 

アイン「ならばせめて!俺だけでも連れて行ってくださ「その体でこられても足手まといになるだけだ」…ッ!」

 

アインはクランクの言葉に、何一つ言い返すことができなかった…

 

しかし、そこで奇妙な物が現れる。

 

「ミトメタクナイ!」

 

「ミトメタクナイ!」

 

「ミトメタクナ〜イ!」

 

アイン・クランク「!?」

 

アイン達が話していると、真っ白な球状の機械?のようなものが跳ねたり転がったりしながら部屋のドアの前で止まった。

 

すると、

 

コツ…コツ…ガチャ…

 

「じゃあ、私が行く」

 

そう言って入ってきたのは、綺麗な短い銀髪に、心地よい鈴の音が鳴り響く青いリボンを髪にくくりつけた碧眼の《美少女》だった

 

アイン「なっ!?」

 

アインはあまりの驚きに動きが固まってしまった。それもそうだろう。ここは軍の基地内なのだ。そんなところに、こんな華奢な女の子が入ってきているのだから。そんなアインを置いて、クランクはただ、その少女をじっと見つめていた

 

クランク(…この鈴の音色、どこかで…鈴…ん?鈴?)

 

クランク「…君はもしかして、コーラル閣下に依頼されたと言う、《鈴付き》かね?」

 

クランクのその言葉に少女はそうだと答えた

 

ユーリ「知ってるなら話は早い、私はユーリ。ユーリ・アルレイズ。傭兵稼業で暮らしている一人」

 

静かに、そして淡々と答えるその様子に、どうやら嘘は感じられないようだ

 

アイン「こ、こんな女の子が…?」

 

ユーリ「信じられないなら、試してみる?」

 

スチャ…

 

ユーリはそう言うと懐からナイフを一本取り出し、アインに向けた

 

クランク「待ってくれ、部下の非礼を詫びる。馬鹿にしたわけじゃ無いんだ。話には聞いていたんだが…まさかここまで幼いとは思わなんだ」

 

鈴付き。

 

傭兵の中ではそれなりにいい意味でも悪い意味でも有名である傭兵である。しかし、そのほとんどが謎に包まれており、曰く、とんでもない大男であるだとか、曰く、独自のモビルスーツを製造しているとか、曰く、化物じみた力をもっているだとか、取り上げたらキリがないほどの噂が流れている傭兵である。ちなみに何故鈴付きと呼ばれているのかもわかっていない。唯一わかっているのは、その傭兵はたった一人で仕事をこなすこと、そして実力は本物だと言うことである。そんな謎に包まれた傭兵がまさかこんなあどけない少女だったとは誰も思わないだろう。

 

ユーリ「…別にいい。幼いことに、かわりはないんだから」

 

ユーリはナイフをしまうと、隣で跳ねていた真っ白の奇妙な機械をだき抱えながらそう言う。

 

 

クランク「それと、さっき、自分も行くと、そう言ったのかね?」

 

ユーリ「うん、そう。人手が足りないんでしょ?だからいく」

 

クランク「気持ちはありがたいが、つれてはいけない」

 

クランクの言葉を、ユーリは予想していたかの如く間髪入れずに話す

 

ユーリ「私が子供だからでしょ?」

 

クランク「…理由を知っていたのか。なら話は早い。さあ「でも」…?」

 

ユーリ「あなたは彼らを殺す気なんてないでしょ?」

 

ユーリはじっと、クランクの目を見つめながらそう言う。

 

クランク「…あぁそうだ。罪なき子供を殺すことなど、私にはできんのだ…」

 

ユーリ「でも彼らはあなたの事情なんて関係ない。このままいくと、貴方殺されるよ?」

 

ユーリのその言葉に、アインは自分の尊敬する上官を侮辱されたのかと激怒する。

 

アイン「貴様ぁ!傭兵の分際で!クランク二尉になんてことを!」

 

クランク「やめないかアイン!…君をつれて行けば、なにかかわるのか?」

 

クランクの問いに、ユーリは淡々と答える

 

ユーリ「そんなのわからない。かわるかもしれないし、変わらないかもしれない」

 

ユーリ「それに」

 

ガチャ…

 

ユーリはそう言うと、クランクたちから振り向き、部屋のドアを開け、去り際に一言言っていった

 

ユーリ「無理に連れていってなんて言わない。自分一人でいけるもの。貴方についていくのはついでに過ぎない」

 

バタン…

 

クランク「…」

 

アイン「…なんなんです!?あいつは!」

 

見た目を幼いこどもでも、身に待とう空気はただならぬものを感じさせる少女であった…

 

 

ーーCGS 戦場跡ーー

 

オルガ「ミカァー!」

 

三日月「ん?…あはっ!色男になってんね!」

 

三日月はオルガの腫れあがった顔をみてそう言った。

 

オルガ「フッ…なぁミカ、死んでいった仲間に、最後の別れをしなくていいのか?」

 

オルガは三日月に問う。しかし三日月はまるでそれが当然だと言わんばかり告げる

 

三日月「うーん…いいよ、昔オルガがいってた。死んだ奴には、死んだ後で会えるんだから、今生きてる奴が死なないように」

 

キュッキュッ…

 

三日月「精一杯できることをやれって」

 

三日月はバルバトスの整備をしながらそういった。それをみたオルガは…

 

オルガ「…そんなことも、あったかな」

 

オルガ「…なぁミカ、頼みてぇことがある」

 

三日月「ん?」

 

チャキッ…

 

オルガはそう言うと三日月の前に一丁の拳銃を差し出した。

 

オルガ「お前にしかできねぇ「パッ、カチャッ!カランカラン…」…話聞く前から受け取るかぁ?」

 

三日月「これから聞く。でもどっちにしろ、オルガが決めたことならやるよ、俺」

 

三日月は拳銃を手に取り、笑いながらそう言う。

 

オルガ「…フッ…そうやってお前は…」

 

三日月「え?」

 

オルガ「いや、なんでもねぇよ…ありがとな」

 

 

 

そして、深夜……

 

 

 

ーー朝 バルバトス 格納庫ーー

 

三日月「…」

 

ゴソゴソ

 

コロッ

 

ムグムグ…

 

オルガ「ま〜た食ってんのか、それ」

 

三日月「…ん?うん」

 

三日月はバルバトスの下で、火星ヤシの実を食べていた。オルガはその三日月の隣に腰掛けた

 

オルガ「なぁミカ、何度も聞いてる気がするが美味いかそれ?」

 

三日月「何度も聞かれた気がするけど俺は気に入ってるよ、オルガ。…食べる?」

 

三日月は一粒オルガに渡すが、

 

オルガ「いや、いいよ…さて」

 

オルガはそう言うと立ち上がり、格納庫を後にする。三日月もそれに続いていく。

 

カチャ…

 

一丁の拳銃を手に持って…

 

 

ーーCGS 食堂ーー

 

ビスケット「ありがとう、クッキー、クラッカー。次はこれをみんなに運んでくれる?」

 

クッキー・クラッカー「「了解!!」」

 

この元気な双子はビスケットの妹であり、アトラと同じく、物資配達係としての仕事を受け持ってる…ようなそうでないような。そんな二人はアトラととある人物が作ったスープを少年達に振る舞っていた。

 

ビスケット「それにしても驚いたよ、まさかクーデリアさんが料理を作りたいだなんて」

 

アトラ「うん、私も驚いちゃった」

 

そう、何とクーデリアが今回のスープの調理を手伝っていたのだ。しかし、クーデリアはお嬢様育ちの箱入り娘、もちろん料理などしたことがなく、スープのなかには所々歪な形の野菜が入り込んでいた。

 

ガチャ…

 

ユージン「おい、ビスケット」

 

ビスケット「!…わかった、すぐにいくよ」

 

シノ「急げよ〜?」

 

アトラ「…?」

 

アトラはまた何か異常でもあったのだろうかと、不思議がるが、少年達のおかわりという声によって、その思いも打ち消された

 

 

ーーCGS 上官 寝室

 

カチャカチャ…

 

トポポ…

 

カチャ…

 

ビスケット「どうぞ」

 

ビスケットはそう言って、スープの入った皿をハエダに渡した

 

ハエダ「…おい!具が少ねえぞ!テメェのダボついた肉でも入れとけや!」

 

ドガッ!

 

ビスケット「うわわっ!?」

 

しかしハエダは気に食わなかったらしく、ビスケットの尻を蹴飛ばし、部屋から追い出した。

 

ビスケット「…フゥ」

 

いつも上官の食事はこうやって誰かが持ってくることが決まってある。

そして隣を見ると同じく上官の食事を届け終わったユージンがいた。これだけみるといつもの日常とかわりない、が、二人の顔はなにかの決意に満ちた表情をしていた。

 

 

 

ーーCGS 廃棄倉庫ーー

 

ハエダ「………ん、んん?」

 

ハエダは目を覚ます。

 

ハエダ(俺は、いつのまに寝て…ん?…んん!?)

 

気がつくと自分の腕は縄で縛りつけられていた。それだけではない。周りを見ると自分と同じように両腕を縛り付けられた同僚達がいた。

 

ハエダ(…!?い、一体なにが起きてやがる!?この状況は!?)

 

ガチャ…

 

「おはようございます、薬入りの飯の味は如何でしたか?」

 

そう言って入ってくるのは、オルガであった。しかし彼だけでは無い。三番組全員がゾロソロと入って来た。

 

ササイ「薬だあ!?」

 

ハエダ「ガキが!一体なんの真似だ!?」

 

オルガ「まぁ、この際ハッキリさせたいんすよ…誰がここの一番かってことを…」

 

オルガは半笑いしながらそう告げる。

 

ハエダ「ガキども、一体誰を相手にこんな事「ロクな指揮も出さず、これだけの損害を出した」…!」

 

オルガ「無能をですよ」

 

ハエダは尚も上からな態度を崩さずに言う

 

ハエダ「ガキが!ふざけんなッ!!」

 

ハエダはそういうと、オルガの足元に唾を吐きかけた。

 

オルガ「…」

 

ドガッ!

 

ハエダ「ぅぐぁっ!?」

 

オルガはハエダに近づくと、顔面を蹴り付けた。それによって初めてハエダはこのままではダメだと感じた。それまではいい。しかし、この後の行動が、自分の人生に終わりを告げるのだ。

 

ハエダ「わ、わかった!わかった!と、取り敢えず、こいつを外せッ!そしたら命だけは助けてやる…!」

 

これが捕まっている者の態度かと言いたくなる反応を、ハエダは続けていた。

 

オルガ「あ?お前状況わかってんのか?そのセリフを言えんのは、俺か、お前か、どっちだ?」

 

オルガはドスを聞かせた声でそう尋ねる。

 

オルガ「お前らのロクでも無い指揮で、死ななくてもいい仲間が大勢死んだ…」

 

そこまで言うと、三日月が前に出て来た。夕方、オルガに渡された、黒光りする一丁の拳銃を握って…

 

オルガ「その落とし前は…キッチリつけさせてもらう」

 

カチャリ…

 

ハエダ「!?ま、まて!!なに「パンッ!パンッ!」

 

三日月は二度、ハエダの頭に向かって銃の引き金を引き、倉庫内に発砲音を轟かせた。

 

オルガ「…さて、これからCGSは俺たちなもんだ…選べ、俺たち宇宙ネズミの下で働くか、それともここから出て行くか」

 

オルガの言葉に、反抗するものがいた。ササイである

 

ササイ「ハァ!?ふざけんな!!こい「パンッ!パンッ!」

 

ササイの抵抗など意味がないかのように、三日月は再度引き金を引く。まるでこれが当たり前かのように、彼は撃つ事に抵抗など無かった…ササイが射殺されるのをみたオルガは再度問う。

 

オルガ「どっちも嫌ってんなら、こいつらみてぇさにここで終わらせてやってもいいんだぜ?」

 

「あの…!」

 

そこで声を上げたのは、CGSの参謀、「デクスター・キュラスター」である

 

デクスター「お、俺はでてい「あぁ、ちょっと待ってください」…え?」

 

その声を止めたのはビスケットである。

 

ビスケット「貴方、会計担当のデクスター・キャラスターさんですよね?貴方には、ちょっと残ってもらいます」

 

デクスター「え、えぇぇ!?」

 

そんなデクスターの悲鳴が、CGSの朝に響いた。

 

 

 

 

ーーCGS 本部 社長室ーー

 

バンッ!

 

ユージン「おいオルガッ!テメェ、辞めてく連中に退職金やったんだってぇ!?」

 

事が無事に済んだ三番組はこれからの事について作業を始めていた。その中で、オルガがわざわざ辞めていく大人たちに、退職金を払っていたのだ。

 

しかし、その目の前に広がるのは…

 

少年兵「…あ」

 

少年兵「…う」

 

オルガ「…」

 

オルガの目の前に、辞職願いを出している最中の少年兵が2人いた。それを目の前にしたユージンは…

 

ユージン「…おいおいおいおい!どう言う事だ!?まさかテメェらも辞め「やめろユージン!」…ッ!」

 

オルガ「仕事には正当な報酬が必要だ…こいつらはよくやってくれたよ」

 

オルガはタブレットで、退職金の金額を確かめながらそう言う。

 

ユージン「…じゃあ一軍は!?あいつらのはどう説明すんだよ!」

 

オルガ「あいつらが辞めた後、どうするかは分からねえ。興味もねぇが、嫌がらせでこの会社の信用を傷つけられたらたまんねぇからな」

 

オルガ「いいかユージン。俺たちがやるのは、真っ当な仕事だ」

 

オルガはユージンを諫めるようにそう言うが、ユージンは納得が行かず怒鳴り散らす。

 

ユージン「信用?真っ当!?ハッ、今更どの口が言うんだよ、えぇ!?」

 

そう言っていると、彼らにとって意外な人物が現れる。

 

トド「喧嘩はいけねぇぜぇ?ユージンよぉ」

 

ユージン「!?て、テメェ!トドッ!」

 

トドがなんと意外なことにこの組織に残ると言い出したのだ。

 

トド「まっ、これからよろしく頼むぜぇ?」

 

ユージン「…マジかよ」

 

ユージンはあまりの胡散臭さに後退りした…

 

 

 

ーーCGS モビルスーツ格納庫 外ーー

 

ヤマギ「ふふっ、おやっさんは残ってくれるんだね!」

 

おやっさん「おお、俺も、歳食ったからな。ガキの面倒見てる方が楽なんだよ」

 

タカキ「おやっさん友達いなさそうだしね〜」

 

おやっさん「んだぁおめぇ、心抉んのやめろコラ」

 

クーデリア「…」

 

そんな親子の様な関係を見ていたクーデリアは、物思いにふけっていた。そんな時、

 

ブロロロロ…

 

オルガ「おやっさん!ミカ見てねぇか?」

 

おやっさん「んー?三日月はここにゃいねぇよ」

 

オルガ「そっかぁ…ん?」

 

オルガはそう言って後ろにいるクーデリアに気づき、尋ねる

 

オルガ「あんた、こんなとこでなにやってんです?」

 

クーデリア「…いえ、何も…凄いですね、三日月は」

 

オルガ「は?」

 

オルガはクーデリアの突拍子のない言葉に思わず聞き返した。しかしクーデリアは話を続ける。

 

クーデリア「あんな大きな物を、手足のように動かして…さぞ、鍛錬されたのでしょう?」

 

どうやらクーデリアはバルバトスを動かしたあの時な三日月のことを言っているようだ

 

オルガ「いや、今回がぶっつけ本番だった…あー、まぁ、阿頼耶識は元々、モビルスーツのために作られたって話だからなぁ。感覚的に動かしやすいんだろ」

 

クーデリア「…えぇ!?」

 

クーデリアは動揺してしまった。それもそうだろう。あの時の三日月の動きは、決して素人がやれる動きでは無かったのだから。しかしオルガはさも当然の如く言う

 

オルガ「そういやよ、あんたこれからどうすんだ。

 

自分のこれからについて尋ねてきたオルガに対し、クーデリアは数秒間沈黙したあと、答えた。

 

クーデリア「…父の元には、帰れません」

 

オルガ「だったらどうする」

 

クーデリアはオルガの質問に困ったような苦笑いを見せた。

 

クーデリア「…わかりません。私には、できることがあると思っていました。もちろん、今でも思っています。しかし、それを行うには、罪のない人々を、巻き込んでしまいます」

 

オルガはそれを聴くと、再度クーデリアに問う。

 

オルガ「…俺たちの仲間が死んだのは、アンタの責任だと?」

 

クーデリアは歯を噛みしめ、答える

 

クーデリア「いいえ…私はただ、悔しいのです…こんなにも…」

 

クーデリア「無力な自分が…」

 

 

 

ーーCGS 社長室ーー

 

そこにはオルガと、三番組達、そして会計担当のデクスターとトドがいた。そこでは、これからの事について話し合っていた。資金のこと、クーデリアのこと、GHのこと…取りあげればキリがない問題に、手をこまねいていた時、トドが一つの案を出す。それは、クーデリアをGHに売り、その時に得る資金で、当分はどうにかしようと言う案である。ふざけている案だが、実際にクーデリアを抱えたままでは、仕事にならない事は、オルガが一番よく知っていた。そうやって頭を唸らせているとき…

 

CGS内の警報が鳴り響く。

 

オルガ「!?な、なんだ!?」

 

警報を聞くと、それと同時に何が起こったのかの放送が流された。どうやら先日襲撃してきたときのモビルスーツが来たらしい。

 

ライド「GHのモビルスーツが一機接近中!えーっと、その一機は、赤い布をつけている!」

 

 

 

 

ーーCGS 戦場跡ーー

 

タカキ「…それで、なんなんすか?あれ…」

 

タカキは赤い布をつけたグレイズを双眼鏡で見つめていた。

 

おやっさん「ありゃあ…決闘の合図だな」

 

ライド「決闘ォ!?」

 

おやっさん「それもそうだが、俺が気になるのは後ろのもう一機の方だ。ありゃあ…ガンダム・フレームだぜ…」

 

ライド「ガンダム?」

 

タカキ「それって!三日月さんの乗った、あのバルバトスと同じってことですか!?」

 

おやっさん「多分、だがなぁ」

 

雪之丞の言うもう一機のモビルスーツ、それは、全身が黒色がメインであり、その上に所々蒼の塗装がされており、腰には一本の、鞘付きの剣が携えられていた。

 

おやっさん「しかしよぉ…ライド。そもそもおまえ、一機だけって言ってなかったか?なんでもう一機いるんだよ」

 

雪之丞のその言葉に、ライドはブンブンと首を振りながら否定する。

 

ライド「いやだって、エイハブリアクターは一つだけしか感知されなかったんだよ!仕方ないだろぉ!?」

 

おやっさん「なにぃ?どう言う事だ」

 

タカキ「レーダーの故障でしょうか?」

 

おやっさん(…いや、故障じゃねえ、現に一機は確実に捉えてるんだ…考えられるのはただ一つ…あのモビルスーツ、《エイハブリアクターじゃない別の何か》で動いてんのか?)

 

相手の事を冷静に分析していると、突如グレイズのパイロットであるクランクが語りかけてきた。

 

クランク「私は、ギャラルホルン実働部隊所属、クランク・ゼント!そちらの代表との一対一の決闘を望む!」

 

クランクはそう叫ぶ。対してオルガ達は…

 

 

ユージン「おいおい、決闘ってマジかよ…」

 

おやっさん「厄祭戦の時代じゃあ、大抵の揉め事は決闘で白黒ハッキリつけてたらしいが…まさかこの時代に本気でやってくる奴がいたとはなぁ…」

 

雪之丞は感慨深そうにそう言う。

 

シノ「けどよぉ〜、相手二機いるんだろ?一対一で勝負しようもんなら、例え勝ったってもう一機にやられちまうんじゃねぇの?」

 

とシノが疑うが、クランクの次の言葉に口を摘んだ

 

クランク「なお、私の後ろにいるモビルスーツは、一切手出しをしない事を約束しよう。そして!私が勝利した暁には!クーデリア・藍那・バーンスタインの身柄のと、そちらが鹵獲したグレイズ一機を引き渡してもらう!」

 

クランクがそう叫ぶと、ビスケットがオルガに話す。

 

ビスケット「…やっぱり、クーデリアさんが目当てなのか…」

 

オルガ「…」

 

クランクは続け様に言う。

 

クランク「クーデリアとグレイズの引き渡しが済めば、そこから先は全て、この私が預かる。GHとCGSの因縁は、断ち切ると約束しよう!」

 

その言葉を聞いていた三日月は、少し、不機嫌になった

 

ユージン「んだぁ…?俺たちが負けても、お嬢さん引き渡すだけで、あとは向こうがいいようにしてくれるってか?」

 

ビスケット「…どうする?オルガ。このままじゃクーデリアさんが「行きます!」…!?」

 

ビスケットの言葉を遮り、出てきたのはクーデリアであった。

 

クーデリア「私が行けば済むのでしょう?無益な戦いは避けるべきです!」

 

クーデリアのその言葉にオルガは尋ねる

 

オルガ「…どうなるかわかんねえんだぞ?」

 

ビスケット「そうですよ!あいつらは、貴方を殺そうとしたんですよ!?」

 

クーデリアはビスケットの言葉に首を横に振った。

 

クーデリア「既に、多くの少年兵が死にました…それに、ただ殺されにいくのではありません。なんとか話を聞けるよう頑張ってみます」

 

クーデリアのそんな言葉にビスケットは断固拒否する。

 

ビスケット「そんな、無茶ですよ!」

 

トド「まあまあまあ、本人がそう言ってんだからよ!大丈夫だって!」

 

そう言ってビスケットとトドの言い合いが始まると、オルガが一言言った。

 

オルガ「そのつもりはねぇ」

 

ビスケット・トド「!?」

 

オルガ「あいつの言葉がどれだけ本当か分からねえしな…現に一対一って言っときながら、相手はもう一機いるんだ。信用ならねえよ…ミカァッ!やってくれるかぁ!?」

 

オルガのその問いに、三日月は二つ返事で答えた。

 

三日月「いいよー!!」

 

ユージン「な!?やっちまうって、なにを!?」

 

オルガ「そのまんまさユージン。あのオッサンを…

 

 

 

オルガ「殺っちまうのさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




…はい!どうてした?なのだ!決闘について行ったユーリがこの先どうするのか、見物なのだ!それでは次も見てくださいなのだ!あ、あと、感想もできれば欲しいのだ!


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主人公・機体紹介

こんにちはなのだ!黒アライさんなのだ!今回は、戦闘回に入る前に、主人公の事について説明しておくのだ!というより、どちらかというとモビルスーツについて話すのだ!とてつもない長文だから、読むのが面倒な人は、主人公詳細と、機体の武装だけでも見れば大抵わかると思うから、それをみて次の話にいくのもありなのだ!それではどうぞなのだ!


名前 ユーリ・アルレイズ

 

年齢 14歳

 

身長 152cm

 

体重 29kg

 

血液型 O型

 

性格 何もされないうちは何もしない。

 

見た目 短いショートボブの銀髪で、鈴のついた青いリボンをカチューシャのようにくくりつけている、碧眼の少女。服装は黒いロングコートに身を包んでおり、下は結構際どいショートパンツ、靴はブーツを履いている。常に真っ白なハロを抱えている。

 

詳細 

物心ついたときから傭兵として生きており、常に1人で仕事をこなす。

他の傭兵稼業の者達には、鈴付きと呼ばれ、いい意味でも悪い意味でも少しばかり有名である。しかし、それが幼い少女だということは、誰一人として知らない。

彼女の愛機であるアビス・アストレイの機体性能も高いが、それを完全に使いこなす彼女の技術も相当高いものである。接近戦を最も得意としており、「圧倒的なスピードで接近し、相手を翻弄しながら撃墜する」というのが彼女の戦法である。一方、射撃がとても苦手であるが、コクピットに自分のハロを装着する事によって、半分自動的に照準を合わせてくれるので、一応、射撃も可能ではある。もっとも、彼女自身が射撃武器を一切搭載しようとしないので半分意味の無いシステムでもある。

 アビス・アストレイは、彼女が傭兵稼業として暮らす前からあったガンダム・フレームである。元は彼女の母親が扱っていたものでもある。ちなみに、本来の名前はアストレイだけであり、アビスの名はユーリがつけたものである。

 

 

 

アビス・アストレイ

 

全長 17.53m

 

重量 27.8t

 

装甲 発泡金属装甲 GNフェイズシフト装甲

 

主原動機 GNドライブ

 

見た目 黒をモチーフとした塗装がされており、所々に蒼い塗装も施されている。それ以外はバックパックがガンダムエクシアのGNドライブであるだけのノーマルのアストレイとかわりない。

 

武装 

対装甲コンバットナイフ 「アーマーシュナイダー」×4

75mm対空自動バルカン砲塔システム「イーゲルシュテルン」×2

ナノラミネート加工シールド×1

ドラグーンシステム搭載型GNカタール×2

対装甲重斬刀「ガーベラストレート」×1

 

詳細

アストレイシリーズの一機に、ノーマルのバックパックを取り外し、GNドライブを装備し、常にGN粒子を無尽蔵に生産し続ける為、全エネルギーをGN粒子によって賄うことができる、いわゆる無尽蔵エネルギーを持つアストレイ。

ユーリの戦法である「圧倒的速度で接近し、斬る」をコンセプトに作られたものであり、その圧倒的超スピードを求めるあまり、装甲がほとんど消えてしまっている。一応、見た目上では装甲は付いているが、その装甲の薄さはモビルワーカー並である。しかし、GN粒子をエネルギーとして発動させるGNフェイズシフト装甲は、装甲の表面上に、GN粒子を電気のように流す事によって、なんらかの物理衝撃が加わったとき、本来の装甲自身にかかる衝撃をほとんど消滅させるシステムであり、エネルギーがGN粒子を使う為、燃料が切れない上に、対物理性能が極端に高い。

この装甲と、GNドライブのおかげで、オルフェンズ世界では唯一の絶対装甲をもちながらも超スピードを実現し、なおかつ補給を必要としないガンダムである。しかし、ビーム兵器を一切持たないこのガンダムは攻撃面では普通である。だが、武装の一つである、ドラグーン搭載型GNカタールによって、その武装を飛ばし、オールレンジ攻撃を可能とする。しかしさっきも言った通り、ビーム兵器を搭載していないため、ファンネルのように中距離から打つことは出来ない上に、2本しか装備していないので扱うのは難しい。扱い方としては、ダブルオークアンタのGNビットとほぼ同じである。

 

注意

本編では、このアストレイはユーリが母親から受け継いだものとしており、ユーリ自身も、母親がどうやってこのアストレイを手に入れたのかは知らない、という設定である。

 

 

 

 

 

 

 




…はい!如何でしたか?なのだ!ちゃんと読んでくれた人がいるのかとてもとても不安だけど、少しでも主人公とその機体のことがわかってくれれば嬉しいのだ!ちなみに、ちゃんとストーリーが進むにつれ、アストレイの装備も変わってくるので期待してて欲しいのだ!それではまだなのだー!


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鉄華団と、新たな仲間。

こんにちはなのだ!黒アライさんなのだ!最近、ガンプラでアストレイブルーフレームセカンドリバイを作ったのだ!猫に粉砕されたのだ!それではどうぞなのだ!


オルガ「あー、あー、待たせたな!この勝負、謹んで受けさせてもらう!」

 

オルガは拡声機を使い、クランクにそう伝える。クランクはそれを聴くとただ一言だけ言った

 

クランク「…感謝!」

 

 

おやっさん「いいか三日月、システムを軽く調整したから、前程の衝撃はねぇだろうが…無茶だけはしてくれるなよ?」

 

三日月「うん、わかった」

 

クーデリア「…本当に凄いですね、三日月は…私も阿頼耶識というものを使ったら、あれを思うがままに動かせるのでしょうか…そうすれば私も…」

 

オルガ「やめとけ」

 

オルガは静かに、止める、

 

オルガ「俺たちは運が良かっただけさ。俺とミカ、その日手術を受けたのは合わせて10人、そのうち成功したのは6人、4人は失敗してそのまま病院送り…」

 

クーデリア「ッ!?」

 

驚くクーデリアをそっちのけにオルガは語る

 

オルガ「多分今でもベットから起き上がれねぇだろう…もっとも、生きてれば、の話だがな…ミカはそれを3回も受けてる。そんなリスクしかねぇ手術を…もちろん、自分の意思でな」

 

 

 

スー…ハー…

 

三日月はアトラがくれたお揃いのミサンガの匂いを嗅ぎ、心を落ち着かせていた。そして…

 

ドクンッ!

 

ギュィィィン!

 

エイハブリアクターの甲高い起動音を轟かせ、バルバトスのカメラアイが力強く光る

 

オルガ「頼んだぜぇっ!ミカァ!」

 

それを聞いた三日月は返事はせず、バルバトスの背中を向け、頼もしく、進んでいった。

 

 

 

クランク「ギャラルホルン火星支部、実働部隊、クランク・ゼント!」

 

クランクは三日月に向かい、そう言い放った。

 

三日月「え?あぁ、えっと…CGS三番組」

 

三日月「三日月・オーガス」

 

それを聞いた三日月も、自分の名をクランクに伝えた。

 

 

ユーリ「…三日月…オーガス…」

 

そして、それを少し離れたところで見物しているユーリも、三日月の名を脳に刻みつける

 

 

クランク「参るッ!!」

 

ギュォォォン!!

 

その言葉を合図に、クランクと三日月は同時にスラスターをふかし、突撃していく。そして、グレイズのバトルアックスと、バルバトスのメイスが鈍い音をたててぶつかり合う

 

バギィィン!!

 

しかし、メイスというグレイズのバトルアックスより重い獲物を使いながらもグレイズより早くメイスを打ち込んでくる三日月は、戦いながら聞いてきた。

 

三日月「ねぇ!決着ってどうつけんの!?」

 

ガギィンッ!!

 

三日月「どっちかが死ねばいいの!?」

 

クランク「その必要はないッ!」

 

ガギィンッ!!

 

クランクは紙一重でメイスを避けながらもバトルアックスを打ち付ける。

 

クランク「我らの目的はクーデリアの捕獲それだけなのだ!それさえすめばいい!大人達の争いに、君たち子供が犠牲になる必要はないんだぁ!」

 

三日月「散々殺しといてよく言う…」

 

ドガァッ!!

 

三日月はしつこくバトルアックスを打ち付けてくるグレイズに嫌気が刺し、グレイズの腹部を思い切り蹴飛ばした。

 

三日月「あぁもういいよ!」

 

クランク「ぬっ!?」

 

三日月はメイスをゆっくりと構えながら答える。

 

三日月「俺はオルガに言われたんだ…あんたを…」

 

三日月「殺っちまえってさぁっ!!」

 

バギャッ!!

 

そう言いながらバルバトスは上空に跳び上がり、全体重を乗せた一撃をグレイズにくらわせた。そのせいでグレイズのシールドは粉々に砕け散った。

 

 

 

オルガ「…ミカはな、強くなきゃ生きていけない事を知ってるんだ…」

 

バギィィン!!

 

クーデリア「…だからってそんな危険な手術を…」

 

バガァンッ!!

 

オルガ「意地汚くて…だけど潔い…だけど…だからこそあいつは強い!」

 

メギャァッ!!

 

クーデリア「…凄いですね、三日月は…私も、彼のように戦えるでしょうか」

 

オルガ「…アンタ」

 

クーデリアは顔を上げると、覚悟と決意に満ちた表情をしていた

 

クーデリア「もう、手術を受けたいなどとは言いません。わたしの戦うべき場所は、別にあることを知っています」

 

クーデリアはそう言い切った

 

 

 

ガギィン!!

 

ガシャァァン!!

 

バギョッ!!

 

クランク「くっ!これが子供の打ち込みか…!?」

 

三日月「言っとくけど、俺は犠牲になんてなってないよ」

 

三日月は尚もメイスをふるいながら言う

 

クランク「ッ!」

 

三日月「俺は、俺と仲間たちのために、できることをやってるだけだ!んで今は…」

 

三日月「とりあえずアンタが邪魔だぁっ!!」

 

三日月はそう言い、バルバトスの出力の高さにものをいわせ、スラスター全開でメイスを一直線上に構え、突っ込んでくる。

 

が、

 

グァシャァン!!

 

クランク「ヌゥッ!!」

 

バギンッ!!

 

三日月「!?しまっ」

 

クランクはワザと片腕をメイスにぶち当て、軌道をずらし、バトルアックスをもった片方の腕でメイスの持ち手の部分をへしおった。

 

クランク「デェェヤァァァッ!!」

 

クランクは雄叫びを上げ、バルバトスに斬りかかる、が、

 

三日月「ッ!まだぁ!」

 

三日月はメイスの先端部分を素手で掴み、クランクのバトルアックスを振り下ろされる前に素早くコクピットに当て、

 

バシュッ!!

 

クランク「ッ!?」

 

バギャァン!!

 

メイスの先端にあるパイルバンカーを起動させ、コクピットを貫いた。

 

 

オルガ「…鉄華団」

 

クーデリア「えっ?」

 

オルガはそういうと上を見上げ、告げる

 

オルガ「俺たちの新しい名前だ、いつまでもCGSなんてカビ臭い名前を名乗んのは…癪にさわるからな」

 

クーデリア「てっか…鉄の火、ですか?」

 

オルガ「いいや、鉄の華だ」

 

オルガ「決して散らない、鉄の華」

 

オルガは笑みを浮かべながらそういう

 

ドシャァァ!!

 

 

気がつけばクランクと三日月の決闘も終わっていた。

 

三日月は倒れたグレイズに跨がり、止めをさそうとすると、

 

三日月「…」

 

クランク「ハァ…ハァ…」

 

プシュッ!

 

三日月はコクピットをあけ、虫の息であるクランクに聞く。

 

三日月「ねえ、俺が勝った場合はどんなんの?あんた、それ言ってなかっただろ?…気に食わなかったんだ」

 

クランクはそれを聴くと笑みを浮かべ、答える。

 

クランク「すまない…馬鹿にした…訳じゃ…ないんだ…ただ…俺がその選択を…持たなかっただけのことだ…」

 

クランクは苦しそうに伝える。

 

クランク「…俺は、上官の命令に背いた…なんの土産もなく帰れば…部隊全体の責任になる…だが、ここで俺が終われば…責任は全て…俺が抱えたまま…ガフッ!」

 

三日月「もういいよ、喋んなくて」

 

三日月は血を吐き、苦しそうにするクランクにそう言う

 

クランク「…すまんが、手を貸してくれないか?」

 

三日月「あ?」

 

クランク「俺はもう…自分で終わることすら…できんのだ」

 

クランクは剥き出しになった血塗れのグレイズのコクピットのなかからそう言った

 

三日月「…んー、わかった」

 

三日月はそう言うと、拳銃を構えた

 

クランク「…フ…ありが「パンッ!パンッ!」

 

三日月は静かに引き金を引いた。

 

 

 

 

三日月「…フゥ…さて」

 

三日月は再度バルバトスのコクピットに入り、ずっと外で棒立ちしているもう一機のモビルスーツに聞いた。

 

三日月「…ねぇ、帰んないの?それとも…」

 

三日月「戦るの?」

 

三日月のその問いに、そのモビルスーツのパイロットであるユーリが逆に問う。

 

ユーリ「戦るって言ったら、戦ってくれるの?」

 

三日月「…あんたがそのつもりならね」

 

三日月はゆっくりと、ユーリのほうを向く。

 

「待て!」

 

三日月「!!」

 

三日月を止めたのは拡声機を使ったオルガの声であった

 

オルガ「おい!そこのもう一機のモビルスーツ!決闘は終わったんだ!大人しく帰んな!それとも何か?法と秩序の番人であるギャラルホルンが、約束破って戦うっていうのかぁ!?」

 

オルガはその言葉に、数秒間固まった後に、ユーリはアストレイのオープンチャットを開き、オルガ達全員に聞こえるように話した。

 

 

 

ユーリ「…降参」

 

オルガ「…は?」

 

バシュン、ガチャン!!

 

ユーリはそう言った後、アストレイに付いている武装を全部外し、コクピットから出て、拡声機を使い、もう一度言う。

 

ユーリ「降参する。だから…」

 

ユーリ「私の話を聞いて欲しい」

 

 

 

ーーCGS 本部前 外ーー

 

トド「やってくれたなぁ!えぇ!?三日月よぉ!」

 

ユージン「そうだよ!どうすんだよ三日月!」

 

シノ「まあまあ、いいじゃねぇか!勝ったんだからよ!」

 

三日月は帰還後、トド達から問い詰められ、それをシノが庇っていた。

 

トド「ケッ!上手くいきゃお前、金にだってなったってぇのによー!」

 

オルガ「…」

 

「あの!」

 

トド「あぁん!?…っとヤッベ!お、お嬢さん、どうしたんですか?」

 

そこにはクーデリアがいた

 

オルガ「何の用です?」

 

クーデリアは意を決した表情で、オルガ達に提案する。

 

クーデリア「私の…私の護衛任務を続けてください!」

 

オルガ「…は?」

 

オルガは意味が理解できずそう聞き返してしまう。しかし、次の提案に、頭を捻らせる。

 

クーデリア「そうすれば、当面資金問題は何とかなるのでは?」

 

フミタン「…!お嬢様!」

 

迫るフミタンを、クーデリアは手で静止させる。

 

クーデリア「資金を援助してくれる人には、あてがあります」

 

オルガ「あて?」

 

クーデリア「はい、火星独立運動のスポンサー…ノブリス・ゴルドン」

 

その言葉と名前に、ビスケットが反応する。

 

ビスケット「!ノブリス!?」

 

シノ「誰だ?そいつ」

 

トド「名前は聞いたことあるぜ?なんでも、凄い大金持ちだって噂だ」

 

それを聞いたビスケットは、安心したような声を上げる。

 

ビスケット「よかった、それなら、当面の資金面は何とかできる!」

 

その言葉に、ライドとタカキも乗り、

 

タカキ「そうですよ!それに、うちには、三日月さんと、敵から鹵獲したガンダム・フレームがある!ギャラルホルンなんて敵じゃないですよ!!」

 

ライド「だよなぁ!!」

 

そうして周りの者たちも、希望の様な声を上げてきた。

 

トド「おいおいそんな楽観的なぁ…」

 

オルガ「…フッ」

 

オルガはクーデリアのほうに振り向き、次の言葉を言った

 

オルガ「引き続きのご利用ありがとうございます。俺たち鉄華団が、貴方を無事、地球まで送り届けましょう」

 

クーデリア「!…宜しくお願いします!」

 

ユージン「あ、おいおい!そんな急にっ!」

 

タカキ「ってか、鉄華団ってなんすか?」

 

ユージンの言葉を遮り、タカキが質問する。

 

オルガ「…俺たちの新しい名前だ、今決めた」

 

ユージン「なっ!?」

 

シノ「うほぉぉ!カッケェェ!!」

 

ユージン「おいおいちょっとまて!何勝手に決めてんだよ!!」

 

タカキ「いいじゃないすか!ねっ?三日月さん!」

 

タカキに聞かれた三日月は、笑みを浮かべながらこたえる。

 

三日月「鉄華団…うん、いいね」

 

そう言って皆で騒ぎまくる夜になった。

 

オルガ「…」

 

クルッ

 

三日月「…オルガ、《あいつのところ》にいくの?」

 

オルガは騒ぎまくるシノ達を後目に、もう一つの問題のところに行こうとすると、三日月に呼び止められた

 

オルガ「…あぁ、流石に、放っておくわけにゃいかねぇからな」

 

 

 

 

ーー鉄華団 廃棄倉庫室ーー

 

ガチャ…

 

オルガ「…」

 

オルガは、先日ハエダ達上官を拉致し、射殺したあの部屋に来ていた。

今では誰も用が無い限り近寄らない廃棄倉庫室。その中央の木箱の上に、黒いコートに身を包んだ少女が座っていた。

 

オルガ「気分はどうだ?」

 

ユーリ「…最悪。若干血生臭い匂いがするんだけど…ここ、死体でもおいてるの?」

 

ユーリは淡々と、しかし嫌そうに答える。

 

オルガ「安心しろ、先日ここで何人か殺したが、死体そのものはおいちゃいねぇ…そんなことより」

 

オルガ「理由を聞こうか…何故降参したのかをな」

 

オルガはユーリに近づき、座っているユーリを見下ろす感じに見つめていた。

 

ユーリ「…大した理由はない。ただ、前の契約人の依頼が、クーデリアを殺すことだったんだけど、必要なくなったから逃げてきた、それだけ」

 

ユーリはクーデリアを殺すという仕事を受けていたが、GHの特務監査が来るらしいし、今更殺したところでコーラスがそれを手配したということは十中八九ばれる。ならば別に殺さなくてもいいんじゃないかと思い、契約を破棄した。

 

オルガ「お嬢さんを?…一体誰だ、その契約人ってのは」

 

ユーリ「コーラル・コンラッド。ギャラルホルン火星支部の司令官」

 

ユーリは特に隠すこともなく喋る

 

オルガ「…ベラベラと情報喋ってくれんのは嬉しいけどよ、お前、一体何が目的だ?鈴付き」

 

ユーリ「…知ってたんだ。私が鈴付きってこと」

 

オルガ「それだけしかわからなかったがな」

 

ユーリは意外そうな顔をしてオルガを見たが、すぐに顔を下げる。

 

オルガにとって、ユーリが降参をした理由、または目的が全く持ってわからなかった。ユーリはGHではない、傭兵である。傭兵というのは金さえ払えばどんな汚いことだろうと、それに見合う金額であれば関係なく受ける。そして、そんな奴らは大抵が性格がゴミクズだ。卑怯な手なんてさも当然かの様に使う。彼女は見た目は幼い少女であるが、それでも鈴付きという名を、真実はどうあれそれなりに広めているのだ。つまり、それだけ傭兵としての血生臭い仕事をやってきた筈だ。

そんな奴が、何故あの時、戦わずに降参したのか…三日月はあの時戦おうとしていたが、武器を壊され、実質素手で戦わなければならない状況であった。それに比べて向こうは傷一つ付いてない新品同様の状態である。そんな状態で戦りあえば、いくら三日月でも死んでいただろう。どちらが有利かなど、子供にだってわかることだ。

 

オルガは内心焦っていた。というより、恐れていた。相手はきっと、仕事の邪魔をする敵の事は全部調べている筈、であればこちらのことなど筒抜けと考えた方がいい。対して、オルガは彼女のことが何一つとしてわからない。未知の恐怖をオルガは感じていたのだ。

 

そんなオルガのことなどいざ知らず、ユーリは逆に聞いてくる

 

ユーリ「貴方達は、これからどうするの?」

 

オルガ「あ?…んなもん聞いてどうすんだよ」

 

ユーリ「私のこれからを決めるの」

 

オルガは表情を悟られないように、必死に頭の中で考える。自分の回答によって、相手はこれからのことを決めると言った。要するにこちらの出方次第で相手の動きは決まる。

 

オルガ(どう答えるのがいい…馬鹿正直に伝えていいのか?俺たちは今が重要な時だ、せっかく先の事について光明が見えてきたんだ…こんなところで邪魔されるわけにはいかねぇ…ん?)

 

オルガは一つの、ユージンがいれば絶対に反対されるだろうことを思いついた。そして、オルガはそれを切り出すために、ユーリの問いに答えた

 

オルガ「…鉄華団」

 

ユーリ「…てっか?」

 

オルガ「俺たちの新しい企業名だ。俺たちは、新しく会社を建てる。俺たちの居場所を作るためにな。そこでだ、アンタに頼みがある」

 

ユーリ「…?」

 

ユーリは首を傾げながらオルガを見つめる。

 

オルガ「アンタ、傭兵なんだろ?おれに…鉄華団に、雇われちゃくれねぇか?」

 

そう、オルガは、敵であるならこちらに引き寄せればいいと考えた。良くも悪くも彼女は傭兵。金さえ積めばどんなこともやってくれる。しかし、傭兵は商人と同じ、信用が第一だ。信用がなければ仕事は入ってこないのだから。先に依頼されたコーラスの依頼を破棄しているとはいえ、それは彼女は独断できめたことであるし、その間に新しい依頼を受けたとなれば、GHに対する信用は地に落ちる。彼女もそれは理解している筈。故にこれは、一か八かの賭けであった。

 

そのオルガの提案に、ユーリはとても意外な返事を出した

 

ユーリ「いいよ」

 

オルガ「!」

 

ユーリ「でも、条件が一つある」

 

ユーリはオルガの顔を下から見つめながら、今までと変わらず無表情でいう。

 

ユーリ「私も…」

 

 

 

ユーリ「鉄華団にいれて」

 

 

 

ーー鉄華団 動力室ーー

 

ギッ!ギッ!…

 

三日月「フグッ!ッハァ!…ッフゥ!」

 

昭弘「三日月、俺はもういくぞ」

 

昭弘は深夜だというのに、まだ筋トレを続ける三日月にそう告げる

 

三日月「…んん、わかった…明日早いんだっけ?」

 

昭弘「あぁ、仕事だ」

 

三日月「…仕事、か」

 

三日月は笑みを浮かべながら昭弘に言う。

 

三日月「また一緒に仕事ができるな」

 

そんな言葉に、昭弘は呆れた様に言う

 

昭弘「なんだそりゃ…仕事なんだから、当たり前だろ?」

 

昭弘はそう言ってジャケットを持ち、部屋から出ようとするが、すこし立ち止まり、三日月に問う。

 

昭弘「そういやよ、三日月」

 

三日月「ん?」

 

昭弘「あいつはどうなったんだ?ほら、お前と戦りあわずに降参した女だよ」

 

三日月は昭弘の問いに、さして興味がない様に答える

 

三日月「さあね、オルガが廃棄倉庫に連れて行ったことは知ってるけど、それ以外は何も知らないよ…でも、オルガが決めたことなら、俺はそれについていくだけだ」

 

昭弘「…そうか」

 

昭弘はそう言って出て行った

 

 

 

 

ーー鉄華団 外敷地内

 

 

シノ「オラァ、チンタラやってんじゃねぇぞー?」

 

ライド「うーっす!」

 

シノ達はモビルワーカーの整備及びこれからの事の準備に入っていた。しかし、そのこれからのことについて不満が多いものが一人だけいた。トドである。

 

トド「…チッ、ガキどもが…GHに喧嘩売って、ただで済むわけねぇだろ!相手はお前、何百年もこの世界を支配してる奴だぞぉ!?畜生!このままじゃ身の破滅だぜ…」

 

トドがそんなことを愚痴っていると、後ろから聞き覚えのある声に呼ばれた

 

ビスケット「あれ?トドさん、こんな所で何やってんです?」

 

オルガ「アンタも会議に出るんじゃなかったのか?」

 

トド「え!?あ、あぁ!すぐいくさ…」

 

オルガ「早めに来いよ」

 

トド「…ケッ!馬鹿どもが…」

 

トドはオルガ達に気付かれない様に悪態をつく。

 

トド「…だが、バカとなんとかは使いようってか?」

 

 

 

ーー鉄華団 新作戦室ーー

 

ユージン「うーっす」

 

シノ「お、きたか!ユージン!」

 

オルガ「もちっと早くこい」

 

ユージン「んだとテメェ!」

 

ビスケット「まあまあ落ち着いて…三日月もいるんだしさ」

 

三日月「…」

 

ユージン「ゲッ…わかったよ…ったく…」

 

昭弘「これで、三番組はそろったな」

 

オルガ達は、これからの方針を決めるために新しく作った作戦室に集合していた。

 

クーデリア「えぇ、そうですね。では、始め「ちょっと待った」…?」

 

オルガがクーデリアの言葉を遮り、言葉を止める。

 

オルガ「まだもう一人来てねえ、もう少し待ってくれ」

 

ユージン「はぁ?三番組は全員きてっぞ?」

 

ビスケット「…他の隊の誰かを呼んでるの?」

 

オルガ「いや、三番組だ。もっとも、《新しく入った》だけどな」

 

シノ「は?」

 

そんなことを言ってると、何やら奇妙な声が聞こえてくる。

 

「ミトメタクナイ!」

 

「ミトメタクナイ!」

 

「ミトメタクナ〜イ!」

 

ゴンッ!

 

ユージン・昭弘・ビスケット・シノ「!?」

 

急に変な声が聞こえたかと思えば、締まっているこの部屋のドアにぶつかったようだ

 

「テヤンデイッ!」

 

「ハロ、少し静かにして」

 

「オマエモナ!」

 

ガチャ…

 

ユージン「…ツ!?お、お前は!」

 

ユーリ「…」

 

部屋に入ってきたのは、真っ白なハロを抱えたユーリである。

 

それに驚く三番組の内の四人

 

ビスケット「ど、どういうこと!?まさか、脱獄!?」

 

昭弘「とっ捕まえるか」

 

シノ「だな、傭兵とはいえ、女の子に手荒なことはしたくねぇんだけど…」

 

そうやってジリジリと近づくシノ達を前に、オルガが再び止めた。

 

オルガ「やめろお前ら…こいつは脱獄したんじゃない。俺が連れてきた」

 

……

 

オルガのその言葉に、数秒間沈黙した後、少年達が叫ぶ。

 

ユージン「ハァーーッ!?」

 

ビスケット「ど、どういうこと!?オルガ!」

 

二人が詰め寄ると、三日月が前に出て、二人を止めた

 

三日月「落ち着けよ…オルガ、俺はオルガのきめた事なら従う。でも理由は知りたい」

 

そう言う三日月を相手にオルガは語る

 

オルガ「…まぁちょっとした事があってな、仲間になった」

 

シノ「仲間?」

 

 

 

 

 

 

 

オルガ「鉄華団に、入れろ?」

 

ユーリ「うん、いれてくれれば、報酬金も払わなくていいし、無期限で雇われる」

 

オルガ「…アンタ、言葉の意味わかってんのか?理由はなんだ?鈴付きの傭兵を辞めてまでうちの組織に入るメリットがどこにある」

 

オルガは動揺を隠せなかった。金を高くふっかけられたり、断れるのは予想していた。しかし、自分らの仲間に入れろなんて言葉は流石に予想外であった。

 

ユーリ「メリット…ない、かな」

 

ユーリはなおも淡々と言う。

 

オルガ「じゃあなんで…」

 

ユーリ「…なんでも、理由なんてない。ただ、いいなって…思ったから…」

 

ユーリの、理由とは言いにくい理由を聞いたオルガは、少し呆れていた。

 

オルガ「…フッフフッ…ハハハハッ!」

 

ユーリ「…?」

 

オルガ「フゥー…アンタ、思ったより、子供なんだな」

 

オルガは、ユーリに対する認識を改めた。例えどんなに強かろうが、謎に包まれてようが、彼女が子供であることに変わりはない。それに、一人で傭兵なんてやっているのだ。そんな奴が、ずっと一人でいることなんできるはずがないのだ。そして、それはこいつ自身もよく知っている。だからこそこの提案をしたのだろうとオルガは思った

 

オルガのその言葉に、ユーリは怒るでも、不機嫌になるでもなく、ただ不思議そうに答える

 

ユーリ「そうだよ?当たり前じゃないか、子供なんだから…それより」

 

ユーリ「…駄目?」

 

ユーリが下からオルガを見上げ、そう尋ねる。その問いに対する答えは、もう決まっていた

 

オルガ「…いや、わかった。歓迎するぜ、ようこそ。鉄華団に」

 

 

 

 

その言葉を聞いたユーリは、オルガ達の前で始めて子供らしい笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




…はい!如何でしたか?なのだ!ユーリのことがいまいちよくわからない、と言う人もいるかもしれないから言っておくのだ!ユーリはとてつもない気まぐれ女の子なのだ!クランクについて行ったのも、またバルバトスがみたいから、という理由だけで来ていただけなのだ!深く考えてもあまり意味はないのだ!それでは、また次の話を、読んでくださいなのだ!


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命の値段

こんにちはなのだ!黒アライさんなのだ!最近、ガンプラのスミ入れをしていたら、ペンの方のインクが漏れていたのだ!それではどうぞなのだ!


ビスケット「…それじゃあ、始めようか」

 

ユージン「…あぁ」

 

昭弘「そうだな」

 

ユーリ「…」

 

シノ「おう!」

 

オルガ「頼んだ、ビスケット」

 

新たに加わった仲間、ユーリの事は、後々考えることにして、とにかく、まずは地球に行くための航路を議案していた

 

ビスケット「まず、静軌道ステーションまで上がり、案内役の船を待ちます。その後、静止軌道上で内の船に乗り換え、地球に向かいます」

 

ビスケットが、タブレットを使い、壁に取り付けた大画面のモニターをつかい、地球に行くための航路を説明していたそこでクーデリアが質問する

 

クーデリア「あの、質問ですが、案内役というのは?」

 

クーデリアのその問いに、黙っていたユーリが答える

 

ユーリ「…通常、地球に向かう全ての航路は、ギャラルホルンの管理内にある。けど、今回の積荷はGHに狙われているクーデリアだから、それら全てに引っかからない、いわゆる裏ルートを通らなくちゃいけないの」

 

スッ…

 

ビスケット「え?あぁ、ちょっと!」

 

ユーリはビスケットのもつタブレットをとり、説明する。

 

ユーリ「その裏ルートの航路は、完全に道を知ってるものじゃないと複雑すぎて迷ってしまう。それに、この裏ルートには、それぞれの民間業者による縄張りがある。勝手に使おうものなら銃口突きつけられるのがオチだよ」

 

ユーリの的確な情報に、三日月以外の全員が呆けていた。

 

オルガ「…随分詳しいな。流石、元傭兵なだけあるぜ」

 

シノ「凄えなぁ!見た目スッゲエ可愛い子ちゃんなのに、航路のことまでわかるのか!」

 

シノがユーリの肩に腕を回しながらそう言う。ユーリはそれを軽く払い除けながら言う。

 

ユーリ「逆にわからないと、傭兵として生きていくことなんてできないよ」

 

ユージン「…ケッ」

 

昭弘「なんだ、まだ不満か?」

 

昭弘はユージンに尋ねる。

 

ユージン「…有能な奴なのはわかった、けど、仲間として見るにはちと信用ならねぇよ。大体、その情報もホントのことなのかどうか、疑わしいもんだぜ…」

 

ユーリ「…」

 

ユージンはユーリを見ながら悪態を吐くが、その言葉をビスケットが否定した。

 

ビスケット「その点に関しては心配ないよユージン。彼女の言ってることは本当だ」

 

ユージン「!?なんでそう言い切れるんだよ!」

 

ビスケットの反応が意外だったのか、ユージンは少し動揺しながら言う。

 

ビスケット「僕も、この日の為に色々と情報を仕入れてきてるからね。彼女の説明した事は、一字一句間違っていないよ」

 

オルガ「…だそうだユージン。もういいだろ?いい加減認めてやれよ」

 

ユージン「…」

 

オルガの言葉に、ユージンは何も言い返さず、沈黙した。それを見たユーリが、わざわざユージンの目の前に立ち、ユージンと目を合わせながら話す。

 

ユージン「…なんだよ」

 

ユーリ「貴方の心情はよくわかる。私も、会って数日も経ってない人間を信用しろと言われても無理だもの。そんなの、聖人君子にだってできない。だから…今すぐ信用してなんて言わない。私は、私の行動で、信頼を勝ち取ってみせる」

 

オルガ「…へぇ」

 

シノ「ヒュー!カッケェ!」

 

昭弘「言うじゃねぇか」

 

三日月「…」

 

ユーリは表情一つ崩さず、ユージンに向かって言いきった。その言葉にオルガ達は驚き、ユージンは複雑な表情で言った

 

ユージン「…わかった。けど、妙な真似したら、俺が叩き出すからな!」

 

ユーリ「…うん」

 

ユージンのその言葉に、ユーリは少し、軽く微笑みながら返事した。ユージンはその顔を見て、照れてしまったのか、少し赤面していた。

 

ユーリ「…時間をとらせてごめん。説明の続きに入るよ」

 

オルガ達はうなずき、静かに聴く。

 

ユーリ「それで、案内人の件なんだけど…」

 

ユーリがそこまで言うと、珍しくじっと黙っていたトドが提案する。

 

トド「そう言う事なら、安心と信頼のオルクス商会が一番だ。社長のオルクスさんとは、昔馴染みでなぁ〜。俺なら連絡ぐらいいつでも取れるぜ〜?」

 

胡散臭さ満載のトドの提案に、ユージンはオルガ達に尋ねる。

 

ユージン「なぁオルガ…こんな奴本当に信用していいのか?」

 

トド「おいおいおい酷いなキミィ!!仲間だろ仲間ぁ!そこのポッと出の女の子は信じといて、CGS時代からずっといた俺の事は信じないのかよぉ!」

 

トドは断固抗議するような大声で叫ぶ。しかしユージンはそれでも悪態をつく。

 

ユージン「ケッ…よく言うぜ…実際どうなんだよユーリ。そのオルクス商会ってのは」

 

ユージンはユーリに問い掛ける。

 

ユーリ「…表向きは確かに、安心と信頼を売りにした商売をしてる…《あくまで表向きは》だけど」

 

そこで、オルガがユージンに言う。

 

オルガ「なぁに、俺達相手に下手うちゃどうなるか、嫌って程知ってるだろうさ、なぁトド?」

 

トド「ヒッ…お、仰る通りで、団長さん…」

 

トドはごますりしながらそう言う。

 

フミタン「…ところで、船はあるのですか?」

 

フミタンのその質問に、ビスケットが答えた。

 

ビスケット「はい、「箱舟」のドックに、CGSの船、「ウィル・オー・ザ・ウィスプ」があります」

 

ビスケットの話した「箱舟」について、クーデリアが言う。

 

クーデリア「「箱舟」…たしか、民間の共同宇宙港でしたよね」

 

ビスケット「はい。でも…コレを一般的に使うには、船自体を鉄華団の物にしないといけないんです」

 

その言葉にオルガが追加で話す

 

オルガ「その件についてはデクスターの奴に頼んである」

 

ビスケット「モビルワーカーなどの整備は、雪之丞さん達に任せてあります。この二つについては、余り心配はないと思いますが、正式な出発日時は、そのオルクス商会との交渉次第ですね…」

 

そこでオルガは気を引き締める為に告げる

 

オルガ「ここからが本番だぞ、お前ら」

 

ビスケット「鉄華団の初仕事だもんね!」

 

そんな二人を傍目に、トドは不敵にニヤケていた

 

トド(…ヘッヘヘへ…)

 

 

 

 

ーーGH 火星支部本部 アーレスーー

 

カチャ…

 

ガエリオ「流石に部下達も、死にそうな顔をしていたぞ?マクギリス」

 

マクギリス「そうか」

 

二人はこの火星支部本部、アーレスの監査役として、ここに派遣されていた。

 

ガエリオ「お前のペースで働かされていては、体が持たないだろうな。優秀すぎる部下を持つと苦労するというやつだ」

 

ガエリオは紅茶を仕事をしているマクギリスの横で立ち飲みしながらそう告げる

 

マクギリス「そうだな、以後気をつけよう」

 

マクギリスは書類から手を離さずにそう言う

 

ガエリオ「…時間稼ぎのつもりだったんだろうが…コーラスの奴、驚くだろうな…」

 

そんなことを言っていると、とうの本人であるコーラルが現れた。

 

コーラル「朝からご苦労なことですな、ファリド特務監査、ボードウィン特務監査」

 

ガエリオ「…噂をすれば」

 

ガエリオはマクギリスの耳元に小声で語る。そして何事もなかったかの如く挨拶する。

 

ガエリオ「おはようございます、本部長」

 

挨拶を聞いたコーラスはマクギリスに申し訳ないように話す。

 

コーラル「作業は順調かね?いや〜すまんね〜?我々の不手際で、データの処理がまるで追いつかず…あれなら目を通すのも一苦労だろう?」

 

コーラルのこの言葉に、マクギリスは不敵な笑みを浮かべて報告する

 

マクギリス「いえ、お預かりしたデータの整理は、ほぼ全て完了しました」

 

コーラル「何!?」

 

驚くコーラルを傍目に、マクギリスは告げる

 

マクギリス「監査の結果も、もうじき報告できるでしょう」

 

コーラルは冷や汗をかきながらも建前だけでも話す

 

コーラル「そ、そうか、それは何よりだ…」

 

マクギリス「ところで」

 

コーラル「!」

 

ビクッと体を震わせるコーラスを見ながらマクギリスは尋ねる

 

マクギリス「少しばかり、気になるデータがあったのですが…」

 

コーラル「…何かな?」

 

マクギリス「一個中隊が出撃したまま、帰投していないようですが…?」

 

マクギリスの疑問に、コーラスは焦ることなく答えた

 

コーラル「あぁ!それなら、暴動の鎮圧にでていてなぁ」

 

その言葉にガエリオが尋ねる

 

ガエリオ「暴動?独立運動のですか?」

 

コーラル「あぁ、所詮、市民のガス抜きだろうがね…このところ多発していて難儀しているのだ…」

 

マクギリスは上部だけの労いの言葉をかける

 

マクギリス「噂には聞いていましたが…一個中隊の戦力を出すほどとは…気苦労、お察し致します」

 

妙に棘のある言葉に、コーラルは苦虫を噛み潰したような表情で言った

 

コーラル「ッ!あ、あぁどうも…それでは執務があるのでな、コレで失礼する…あぁところで、なにか不便はないかな?」

 

ガエリオ「不便?」

 

コーラルはそう言いながら胸元のポケットを探る

 

コーラル「滞在中、何かの必要があれば…まあ何かの足しにでも「それを出せば!」…!」

 

マクギリス「貴方を拘束しなければならなくなります」

 

コーラル「ッ!?」

 

マクギリス「ご自重下さい…コーラス・コンラッド本部長」

 

ガエリオ「…意地が悪い」

 

 

 

 

ーーアーレス 廊下ーー

 

ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!

 

コーラル「ふぐぅっ!!」

 

コーラルは自らの頭を壁にぶつけながら悶える

 

コーラル「…若造どもが…舐め合って…」

 

コーラルは悪態をつきながら不始末を犯した部下の事を思い出していた

 

コーラル「これも全てクランクのせいだ…あやつが勝手な事をしてしくじるから…あの役立たずの愚か者が!」

 

 

 

 

ーー鉄華団 バルバトス アストレイ 前ーー

 

ザッザッ…

 

オルガ「ミカァ!ユーリィ!どうだぁ、調子は!」

 

オルガが呼びかけると、バルバトスのコクピットが開き、三日月が出てくる

 

三日月「うーん…いいんじゃないのぉ?多分」

 

オルガ「多分って…」

 

そして、バルバトスの隣に立つアビスもコクピットを開き、中からユーリが出てきた。

 

ユーリ「私のほうは大丈夫、いつでも出せるよ」

 

ユーリは大声を出すのが苦手なので、コクピットの上から拡声機を使って話す

 

オルガ「そうかぁ!わかった!」

 

ビスケット「アビスの方はよし、と…おやっさん、どうです?バルバトス、上にもっていけそうですか?」

 

ビスケットはバルバトスの整備をしている雪之丞に尋ねる

 

おやっさん「さぁなぁ」

 

ビスケット「ええ!?」

 

雪之丞は驚くビスケットのことなど知らないかの如く言う

 

おやっさん「あのなぁ…俺ぁもともとモビルワーカー専門なんだぞ?

しかもコイツは、何百年昔、厄祭戦の時のモビルスーツときやがる。アビスにいたっては俺ぁ完全にお手上げだ…あの機体は全てが謎に包まれてやがる。もっとも、手入れはお嬢ちゃん自身でできるらしいから、それだけは不幸中の幸いだ。まだ向こうのGHのモビルスーツの方が、シンプルな分、マシだな」

 

雪之丞は作業しながらそう言う

 

オルガ「そう言わずに頼むぜおやっさん。いまモビルスーツを弄れる技術があるのは、ユーリとおやっさんの2人しかいねぇんだから…」

 

オルガのその言葉に、雪之丞はため息をつきながら答える

 

おやっさん「ま、やるだけやってみるさ。幸い、ユーリの嬢ちゃんはモビルスーツに対する知識が高えからな。教えてもらいながらどうこうしてみせるさ」

 

その言葉を聞いたビスケットは不思議そうに問う

 

ビスケット「今更だけど、あの機体、…アビス・アストレイってエイハブリアクターが動力じゃないんでしょ?」

 

雪之丞は困ったように告げる

 

おやっさん「そうなんだよ…そこの時点でもう俺には分からねえ。嬢ちゃん本人に聞いたところ、なんでも、GN粒子っていうやつを動力として使っているらしい。…ほれ、アビスの後ろ見てみろ。背中部分に、変な突起がくっついてるだろ?」

 

そう言って雪之丞は二人に、アビスの後方をとった写真を写したタブレットを見せる

 

ビスケット「…ホントだ」

 

オルガ「…これがGN粒子ってやつなのか?」

 

おやっさん「違う。嬢ちゃん曰く、それは動力であるGN粒子を生成する機械らしい、確か…GNドライブっつったか?」

 

オルガ「…GNドライブ」

 

ビスケット「具体的に、稼働時間はどれぐらいなんです?

 

ユーリ「半永久」

 

オルガ「…は?」

 

そんな事をいってると、アビスの整備が終わったのか、ユーリが降りてきた

 

ユーリ「ただ稼働し続けるだけなら半永久的に稼働し続ける」

 

オルガ「な!?」

 

ビスケット「ど、どういう事!?」

 

驚くオルガ達に、ユーリは二人がちゃんと聞き取れるように説明する

 

ユーリ「GNドライブ…別名、太陽炉。重粒子を蒸発させずに質量崩壊させることによってエネルギーに変換するシステム。エネルギー変換効率はほぼ100%であり、システムそのものに異常が現れない限り半永久的にエネルギーを生成し続ける。欠点は、主に二つあり、一つは一度稼働すれば機関が故障するまで停止することはなく、それ故にGNドライブ自体を強化したりすることは不可能であるという事。二つ目は生産性が皆無であり、製造には木星のような高重力環境が必要である。その製造自体にも平気で数十年はかかってしまうことから、製造されたのはわずか5機、そのうち3機はお母さんが見つけ出し、破壊した。あとの2機の内1機は私のアビスに、もう1機は不明である」

 

オルガ「…」

 

ビスケット「…」

 

雪之丞「…」

 

ユーリ「…理解できた?」

 

ユーリは呆ける三人に尋ねる

 

オルガ「!お、おう…半分以上なに言ってるかわかんなかったが、とにかく凄えってことはわかった…」

 

雪之丞「右に同じだ…」

 

ビスケット「僕も…あ、でも!さっきの話で、一つだけ、気になることがあるんだ!」

 

ユーリ「なに?」

 

ビスケット「さっき、GNドライブは5機しか作られていないって言ってたよね?」

 

ユーリ「うん」

 

ビスケット「で、なんだけど、その内3機はお母さんが破壊したって言ってなかった?」

 

ユーリ「言った」

 

ユーリはビスケットの質問に、一言だけで答えるその反応に、ビスケットは困ったように尋ねる

 

ビスケット「えっと、なんで破壊したのかなぁ…なんて」

 

ユーリ「わからない」

 

ユーリはキッパリという

 

オルガ「わからない?母親のことなのにか?」

 

ユーリ「お母さんはGNドライブやアビスの性能、扱い方のことは教えてくれたけど、どうやって手に入れたのか、なぜそんな有能な機械を破壊したのかは教えてくれなかった…もっとも、後者は予想できるけど」

 

おやっさん「予想じゃ、なんだったんだ?」

 

おやっさんの疑問に、ユーリは淡々と答えた

 

ユーリ「強すぎる力はまた争いを呼ぶ。だから破壊した。そう思う」

 

オルガ「…んっと、もちっと詳しく頼む」

 

オルガが苦笑いでユーリにそう頼む

 

ユーリ「…GNドライブは製造がかなり難しく、時間もかかるけど、それに見合うだけの強力な力がある。人間は、なにをするにも強い力を欲する生き物。そしてそれを巡って戦争を引き起こす。お母さんはそれを危惧したから、自分の扱うGNドライブ以外を破壊したんだと思う」

 

その話を聞いたオルガ達三人は頭を捻らせていた

 

おやっさん「強すぎる力はまた争いを呼ぶ、か…中々深い言葉だな」

 

ビスケット「本当にその通りだと思う。厄祭戦が起きた理由も、そういうのが少なからずはいっているだろうしね」

 

オルガ「けど、力がなきゃ、俺たちみたいなのは生きてけねぇよ…」

 

ユーリ「力はただ力に過ぎない。ようは使う人間次第だということ」

 

オルガ達3人は神妙な顔つきで考えこんでいた。するとユーリが、ビスケットとある事を聞く

 

ユーリ「…そういえば、船の方はどうなってるの?」

 

ビスケット「ん?あぁ…それなら…」

 

 

 

 

ーークリュセ 中央宇宙港 ロビーーー

 

ザッザッ…

 

デクスター「…」

 

昭弘「…」

 

チャド「…」

 

ダンテ「…」

 

デクスターを筆頭とした昭弘達は、船を正式に鉄華団の物にするため、手続きを行いにきたのだ。

 

昭弘「…」

 

その中で昭弘は、鉄華団ができてから数日後の夕方のことを思い出していた。

 

 

 

ーーーー

 

 

オルガ「何の用だ?昭弘」

 

オルガはその日、昭弘に呼び出されていた。

 

昭弘「…オルガ、こいつは、お前が…?」

 

そう言って昭弘は手に持っているUSBをオルガに見せた。それは、昭弘達ヒューマンデブリの様々なデータが入っており、マルバの持ち物でもあるという証だった。先日、ヒューマンデブリである者達全員の元に渡されていた。

 

オルガ「あぁ、そいつのデータなんだがよ、ビスケットが見つけてくれたんだ」

 

昭弘は手に持っているUSBを見つめながらオルガの言葉を聞き、尋ねる

 

昭弘「これを俺たちに渡すってことがどういうことか…お前わかってるのか」

 

その言葉に、オルガは神妙な顔で答えた

 

オルガ「…ヒューマンデブリ。お前達がマルバの持ち物だっていう証。そいつがなくなれば…自由になれるんだろ?」

 

昭弘「どから、それがどういう意味かわかって「お前らは!」…!」

 

オルガは昭弘の言葉を遮り、昭弘と目を逸らさずに伝える

 

オルガ「お前らは、もう誰の物でもねぇってことだ。恩を売る気もねえし、どこへ行くのも好きにしな…けどよ」

 

オルガ「残るってんなら…俺が守る」

 

昭弘はその言葉に怪訝そうな表情で再度聞き返した

 

昭弘「…守る?ゴミクズ同然の俺たちをか?」

 

オルガはその言葉をきくと、片目をつむり、笑みを浮かべながら告げる

 

オルガ「…一緒によ」

 

オルガ「デッケェ花火打ち上げようぜ」

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

昭弘「花火、ねえ…」

 

昭弘はそう呟くと笑みを浮かべ、後ろにいるダンテ達に告げる

 

昭弘「お前ら、気合い入れていくぞ」

 

ダンテ「え?」

 

チャド「あ」

 

ダンテ・チャド「お、おう!」

 

 

 

デクスター「…事務手続きするだけなんですけど…」

 

 

 

 

 

ーー鉄華団 社長室ーー

 

トド「オルクスに連絡入れといたぜ、地球までの案内、受け入れてくれるとよ」

 

ビスケット「それで、手数料は?」

 

ビスケットが聞くと、トドは耳をほじりながら答える

 

トド「んっとな、報酬の45%だと」

 

その言葉に、ビスケットは顔を歪ませた

 

ビスケット「…結構ふっかけてきたなぁ…」

 

オルガ「状況が状況だ。今回は目を瞑るさ」

 

しかし、それに納得いかない者がいた。ユージンである

 

ユージン「おいおい冗談だろ?この報酬で45%?ありえねぇ…おいトドォ!テメー、上前はねようってハラじゃねえだろうなぁ!?」

 

そんな怒鳴り声には屈せず、トドは強気に言う

 

トド「気にいらねぇならテメーでナシつけるこった」

 

ユージン「んだとゴラァ!?」

 

ビスケット「まあまあ、落ち着いて、ユージン」

 

トドの言葉に危うくプッツンしかけたユージンを、ビスケットが治める

 

ビスケット「フゥ…地球に行くメンバーも選ばないとね…」

 

しかし、そこで、心配性のユージンはまたも尋ねる

 

ユージン「残った奴らはどうすんだ?」

 

当然の疑問である。オルガ、ビスケット、ユーリ、三日月、ユージン、シノ、昭弘は行くことが決まっているが、オルガが火星を不在するとなると、火星に残る者は露頭に迷ってしまう。その疑問にビスケットが答える

 

ビスケット「そのことなんだけど、この間の戦利品の売却と、この時期なら、いつも通り農園の仕事で「みみっちいこというなよビスケット」

 

ユージン「シケちまうぜ…」

 

気が滅入ってしまっているユージンを、オルガが諫める

 

オルガ「デケェ仕事にはリスクがつきもんだ。まともな仕事程、地味なもんだろ」

 

ユージン「じゃあお嬢さんの護衛はあぶなくねぇってんのかよ」

 

ユージンの怒りもごもっともである。誰しも危険な目にはあいたくないのだから

 

ビスケット「クーデリアさんは、良くも悪くも有名人だ。そんな人を地球まで送り届けることが出来れば、鉄華団の名前も、少なからず広まるはずだよ」

 

オルガ「そうすりゃどんどん仕事が入って、少しはまともな生活ができるようになる」

 

ビスケット「リスクはあるけど、それだけの価値はあるよ、ユージン」

 

ユージン「…けどよぉ」

 

まだ反対の色を残すユージンに、オルガが重要な一言を言う。

 

オルガ「いいかユージン、これは金だけの問題じゃねぇんだ。俺たちの未来が掛かっている」

 

ユージン「…未来、ね」

 

オルガはそう言って気を引き締めていた。しかし、その中でただひとり、不気味な笑みを浮かべる男がいた

 

 

 

トド(テメーらの思い通りにいくかよ…)

 




…はい!如何でしたか?なのだ!今回、ちょっと終わりが中途半端だったのだ…反省なのだ…。だけど!次も頑張って書くから見てほしいのだ!それではまたなのだー!


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空への準備

こんにちはなのだ!黒アライさんなのだ!最近、この挨拶をするのも面倒になってきたのだ!しかし謎のプライドがやめさせないから書いていくのだ!それではどうぞなのだ!


ーー鉄華団 食堂ーー

 

ガタガツガツッ!

 

シノ「ぷはぁ!うんめぇーー!」

 

タカキ「ちょ、シノさん!汚いですよ!」

 

シノ「んお?あぁ悪りぃ悪りぃ!いやでもすんげえうまくてよー!」

 

シノはCGS時代に食べていた冷たいレーションではなく、また温かい食事ができるのが凄く嬉しいのか怒涛の勢いで平らげていく。タカキは注意するのも半分諦めていた。

 

ライド「…」

 

ピッ、ピッ

 

タカキ「…ライド、なにやってんの?」

 

ライド「へっへーん、ちょっとなぁー」

 

ライドはタブレットを使い、なにか書いていたが、悪戯心でもわいたのか、タカキにははぐらかすようなことを言っていた

 

 

ザッザッ

 

三日月「…ん?」

 

三日月も少し前に食べ終わり、今は食器を片付けていたところであったが、途中で、食事をしながらフミタンと話すクーデリアを見つけ、数秒程見物していた

 

 

クーデリア「…弱い人間ですね、私は…」

 

フミタン「…どうかされたのですか?」

 

いきなり自分を卑下し始めるクーデリアに、フミタンは問う

 

クーデリア「このままいけば…私は、彼らからあんな笑顔を奪ってしまうかもしれない…それがわかっておきながら…」

 

クーデリアは歯を噛みしぎりながらそう呟く。

 

 

ーーーー

 

 

つい数刻程前、クーデリアは、火星独立運動のスポンサーであるノブリスから資金を貰っていた。

 

ノブリス「それでは、費用につきましては、指定の口座に振り込んでおきましたので…」

 

クーデリア「ありがとうございます」

 

クーデリアは画面越しに頭を下げながら礼をいう。それを同じく画面ごしから見たノブリスは、

 

ノブリス「いやいや!お気になさらず…それにしても今回の決断…貴方は本当に高潔で勇ましいお方だ。若き勇者達と共に死地へ赴く戦の女神が、彼らの屍の上に永遠の楽園を築く…」

 

クーデリア「ッ!」

 

クーデリアはそのことはに気づかされた。自分のやっていることは、彼らに武器を持たせて、死地に送り届けているのと同じであるということを。

 

ノブリス「まるで、神話の英雄譚のようではありませんか…流石は、私が見込んだお方だ」

 

 

ーーーー

 

 

クーデリア(一体、私はどうすれば…)

 

三日月「また難しい顔してんね」

 

クーデリア「…あ、三日月」

 

三日月が食器を片付け終わった後にそう尋ねてきた。そしてそのうしろからも奇妙な声が聞こえる

 

ハロ「オマエモナ!」

 

三日月「は?…こいつ、ユーリが持ってた…」

 

ハロ「テヤンデイッ!」

 

そう言葉を発しながらコロコロと三日月の周りをコロコロと転がる真っ白なハロ。そしてその持ち主であるユーリが現れる。

 

ユーリ「…ごめん、三日月。その子、気づいたらいなくなってることが多くて…」

 

三日月「…変な機械」

 

三日月はハロを両手で鷲掴みにしながらそういう

 

三日月「んでさ、あんた、なんでそんな顔してんの?」

 

三日月はハロをユーリに返しながら急にクーデリアの方に振り返り、再度問う。

 

クーデリア「…それは、その…」

 

ハロ「アタマヒヤセ!アタマヒヤセ!」

 

クーデリア「うぇっ!?あ、あぁその子が言ったのね…機械なのに、私の気持ちがわかるのかしら…?」

 

ユーリ「さあ?」

 

クーデリア「…そ、そう」

 

クーデリアはユーリにハロのことを聞いてみるが、一言で返される答えに苦笑いしてしまう。

 

三日月「…頭冷やせ、か」

 

三日月はそう呟くと、クーデリアに尋ねる

 

三日月「あのさ、俺、これからユーリの案内ついでに農園行くんだけど、あんたもくる?」

 

クーデリア「…え?」

 

 

 

ーー火星ーー

 

マクギリス「…」

 

ガエリオ「まさに、不毛の大地だな」

 

ガエリオは双眼鏡で当たりを見回しながらそういう。それもそうだろう。地球とは違い、ここには雑草一つはえていないのだから

 

ガエリオ「しかし、なんでこんなところに?」

 

マクギリス「クーデリア・藍那・バーンスタインが、行方を絡ませている」

 

ガエリオ「クーデリア?独立運動の代表だったか?」

 

ガエリオは頭の中にある資料に、クーデリアとは誰だったかを思い出しながらマクギリスに尋ねる

 

マクギリス「実は地球を出る際、彼女がアーブラウ政府と、独自に交渉しているとの情報を耳にした」

 

ガエリオ「はあ?まさか。圏外圏の人間が、地球経済圏の一つである国家と交渉をするなど、あるはずが…」

 

ガエリオは信じられないような表情でマクギリスに問う。その問いにマクギリスは答えるでもなく、手に持っていた双眼鏡をガエリオに渡し、あるものを見てみるよう指示する

 

ガエリオ「…?なんだあれ」

 

ガエリオがみたのは、突起した岩が、半分程抉られていた物である

 

ガエリオ「…あれがなにか?」

 

マクギリス「先日、ここの周辺で戦闘があったという情報がある。そしてその前日、クーデリアの父親であるノーマン・バーンスタインが、コーラルの元を訪れている」

 

ガエリオ「それは…」

 

ガエリオは頭を捻らせ、一つの答えにたどり着く

 

ガエリオ「…コーラルが彼女を狙ったってことか?そうか、あの行方不明の一個中隊はここで…」

 

マクギリス「彼女の身柄を抑えれば、同政局からの覚えも良くなるしな。我々の監査など、どうということもないように…」

 

 

 

ーー鉄華団 エンブレム前ーー

 

コロコロ…

 

ペタペタ…

 

ライド「フゥーー…」

 

ライドは施設の上に登り、そこに今まであったCGSのエンブレムを消す作業をしていた。そしてその上に新しいエンブレムを描く作業も兼ねていた

 

オルガ「ライドォ!気を付けろよぉ!」

 

シノ「…なんだあ?あいつ何描いてんだ?」

 

シノが作業の手を止め、一緒にいたタカキに問う

 

タカキ「なんでも、団長が指示したとかで…」

 

シノ「ふーん…ハァ…あぁ、ユーリちゃんに会いたいなぁ…会って癒されたい…」

 

タカキ「シノさん、可愛いってのはわかりますけど、アトラと同い年か、それ以下の少女なんですから、気をつけないと、嫌われますよ?」

 

シノ「えぇ?アトラと同じかそれ以下だって?そりゃないだろお?」

 

タカキの注意に、シノは笑いながら答える。しかし、タカキにはその言葉の意味がわからず、尋ねる

 

タカキ「?どうしてそう思うんです?」

 

シノ「いやだってよぉ、よく思い出せタカキ。ユーリのオッパイ、あれがアトラと同じにみえるかぁ?」

 

シノはニヤケながらそう答える。

 

ユーリの乳房の大きさは、歳に似合わず大きい。巨乳とまではいかないが、巨乳一歩手前ぐらいの大きさであり、いつもロングコートを羽織っているが、それでもそれがはっきりとわかるぐらいの膨らみがある。それを聞いたタカキは酷く赤面し、戸惑う

 

タカキ「ちょ、シノさん!あんたそういうところばっかみてんですか!?相手は自分より下の少女…ていうより、言っちゃ悪いですけど見た目に関してはほぼ幼女ですよ!?」

 

シノ「仕方ねぇだろ!あんなデケェ胸垂らしといてみるなってのが無理な話だ!それによ、よーくみると揺れてんだよ…」

 

タカキはその話に鼻血を出し、医療室に運ばれていった

 

 

シノ「…つかよ、ユーリちゃんって、本当いくつなんだろ?…」

 

シノの疑問に答える者は誰もいなかった…

 

 

 

ーー火星 農園ーー

 

クーデリア「…あの、ここは?」

 

クーデリアが三日月達につれてこられたのは、火星にとってはとても珍しい緑のある大地であった

 

三日月「さくらちゃんの畑」

 

クーデリア「…さくらちゃん?」

 

説明不足な三日月の代わりに、ビスケットが答える

 

ビスケット「僕の祖母です。ここは祖母の畑なんですよ」

 

ユーリ「…畑、あったんだ」

 

ハロ「ミトメタクナイ!ミトメタクナイ!」

 

そんなことを言ってると、三日月の名を呼びながらくる人影がいた。アトラである

 

アトラ「三日月ー!」

 

クーデリア「あら、アトラさんも?」

 

アトラ「あ、はい。クーデリアさんとユーリちゃんも?」

 

アトラがそう聞くと、後ろから二つの幼い声が聞こえる。ビスケットの妹、クッキーとクラッカーである。

 

クッキー・クラッカー「三日月ー!お兄ちゃーん!」

 

ビスケット「!おーい、ここだよー!」

 

ビスケットがそう呼ぶと、2人は思い切りビスケットの胸に飛び込んできた。

 

クッキー「あぁ!クーデリアもいる!」

 

クラッカー「本当だ!お野菜切れるようになったぁ?」

 

クッキーとクラッカーに託し立てられ、クーデリアは焦る。

 

クーデリア「え!?え、えぇ、まぁ…」

 

クッキー「あれ?知らない女の子がいる!」

 

クラッカー「ホントだ!ねぇねえ!貴方は誰?」

 

ユーリ「…ユーリ」

 

ユーリはいきなり話かけられていたが、動じることなく答えた。しかし、2人の次の行動に驚かされる

 

クッキー「ユーリ!よろしくね!」

 

クラッカー「よろしくねー!」

 

ムギュッ!

 

ユーリ「フグッ!?」

 

ユーリの身体に思いっきり抱きつく2人。ただでさえ小さい身体なのに、2人の女の子が力一杯抱きつくものだから後ろに倒れてしまった

 

ハロ「テヤンデイッ!」

 

クッキー「!わぁ、なにこれぇ!」

 

クラッカー「かわいい!ペット?」

 

ユーリ「ゲホッ…まぁ、似たようなもの…」

 

ユーリは咳込みながら答える。2人はそんなユーリのことなど傍目に、転がり逃げるハロを追いかけて行った

 

ビスケット「…大丈夫?ユーリ」

 

ユーリ「…平気…ありがとうビスケット」

 

ユーリは立ち上がり

 

、パッパッと服についた土埃を落とす

 

しばらくして、ビスケットの祖母であるさくらちゃんがきた

 

さくらちゃん「全員そろったね、んじゃ始めるよ。準備しな」

 

三日月「うん!」

 

三日月は機嫌良く返事した。

 

 

三日月達は畑の収穫をする為に、籠を用意し、各自準備に取り掛かる。その中で、アトラは三日月に尋ねる

 

アトラ「…クーデリアさんとユーリちゃんもつれてきたんだ…」

 

三日月「?うん」

 

アトラは少し不機嫌になるが、三日月の腕につけてあるミサンガを見て、驚く。

 

アトラ「あ、それ!」

 

三日月「え?あぁ、アトラが作ってくれたんでしょ?」

 

三日月は籠を運びながらいう

 

アトラ「…う、うん。それ、お守りなの。私とお揃いで…」

 

アトラは照れながらもそう伝える。その様子はとてもいじらしく、可愛らしいものだが、三日月はそんなアトラの好意など気づかずに礼を言う。

 

三日月「うん。ありがとう、アトラ」

 

アトラ「…うん!!」

 

 

 

ーー火星 農園付近ーー

 

ガエリオ「調査なんかやめて、さっさと尋問すればいいだろうに…」

 

マクギリス「シラを切られるのがオチさ。確かな証拠を掴まないとな…」

 

ガエリオ達は車に乗り、前日戦闘が起こったという場所の付近で情報を集めていた

 

ガエリオ「お前は相変わらず石頭だな」

 

マクギリス「それが任務というものだ」

 

ガエリオ「監査官殿も大変だな…」

 

ガエリオはそこで話を区切り、車の運転をしているが、ふと思い出したようにまた話しかける

 

ガエリオ「そういえば、今夜妹に連絡するんだが、一緒にどうだ?」

 

マクギリス「アルミリアにか?」

 

アルミリア・ボードウィン…ガエリオの妹であり、9歳の幼い子供でありながら、マクギリスの婚約者でもある

 

ガエリオ「お前に会えないと駄々こねてうるさくてな…それにしても、親同士が決めた婚約とはいえ、許嫁が9歳とは…苦労するな」

 

しかしマクギリスはその言葉に優しく微笑みながら答える

 

マクギリス「気にするな…親友の妹なのだからな…お兄様?」

 

ガエリオ「やめろ気色悪い」

 

 

 

ーー火星 農園ーー

 

ブロロロロ…

 

フミタン「…」

 

フミタンは畑に植えてあるトウモロコシを収穫する機械を意味もなくじっと見つめていた

 

クッキー「わーい!このおっきいトウモロコシ私のー!」

 

クラッカー「あー!ずるい!私が取ろうと思ってたのにー!」

 

さくらちゃんが機械を使ってトウモロコシを刈り取り、落ちたトウモロコシを収穫しようと双子達がはしゃいでいた

 

ビスケット「こーら、はしゃぐと危ないよー!」

 

クーデリア「…ふふっ!」

 

クーデリアも楽しげにトウモロコシを収穫し、大きいトウモロコシをとっては達成感のようなものを感じていた。

 

クッキー「キャハハッ!ユーリお姉ちゃんも取ろうよ!」

 

クラッカー「ほら!早く行こ!」

 

ユーリ「う…わかったから、コートを引っ張らないで…」

 

ハロ「テヤンデイッ!」

 

ユーリもビスケットの妹達に囲まれながらも、その顔は少し微笑みながら収穫していた

 

三日月「…いいところでしょ?」

 

クーデリア「…え?…えぇ。汗を流して大地に触れていると、頭が空っぽになって、なんだかスッキリします」

 

クーデリアは胸に手をあてながら答える

 

三日月「そりゃよかった」

 

クーデリア「…あの、もしかして、それで私を?」

 

クーデリアは、三日月が頭を悩ませている自分を、一度スッキリさせるために連れてきたのかと思い、尋ねるが、三日月は急に話を変えてくる

 

三日月「そのトウモロコシ、いくらだと思う?」

 

クーデリア「?一本で、ですか?うーん…200ギャラ、ぐらい?」

 

三日月「10kgで50ギャラ」

 

クーデリア「!?」

 

自分の外れるのはおかしくないが、10kgで50ギャラという、ほぼタダ同然の値段に驚いた

 

三日月「この辺のトウモロコシは全部、バイオ燃料用として買い叩かれるからね…ビスケットの給料がなきゃ、やっていくのは厳しいんだ」

 

三日月は静かに話す

 

三日月「ほかの連中も似たり寄ったりさ。家族を養うためであったり借金を返す為であったり…生きていく為に身体張って働いてる」

 

三日月はまた話を変えてくる

 

三日月「ヒューマンデブリって知ってる?」

 

クーデリア「え?えぇ、一応存じています。その…お金でやりとりされる人達ですよね」

 

三日月「ゴミカスみたいな値段でね。昭弘ってガチムチな奴がいるだろ?そいつとその周りにたむろってるのがそれ。あいつらは例え自由になっても、まともな仕事にはありつけない…ま、俺たちも似たようなものだけど」

 

三日月はそこまでいうと、クーデリアの方に振り向いた

 

三日月「アンタのお陰で、俺たちは首の皮一枚繋がったんだ」

 

すると三日月は頭を下げ、礼をいう

 

三日月「ありがとう」

 

クーデリア「…あ…いえ、そんな」

 

クーデリアはなんとも言えない表情でそれを聞いていた

 

 

アトラ「…むぅ」

 

その様子を遠くから見ていたアトラは、少しばかり不機嫌だった。するとクッキー達が群がり、からかい始める

 

クッキー「大変だねー?アトラ?」

 

クラッカー「三日月、取られちゃうねー?」

 

アトラ「うぐぐ…コラァー!待ちなさぁい!」

 

アトラが妹達を追いかけてると、ビスケットが駆けつけ、妹達に頼み事をする

 

ビスケット「クッキー、クラッカー。悪いけど、籠をもう一つ取ってきてくれるかい?」

 

クッキー・クラッカー「「了解!」」

 

そう言って二人は元気に籠をとりにいった

 

アトラ「…ハア」

 

ユーリ「…ん」

 

アトラ「へ?」

 

ユーリ「あげる」

 

突然後ろに立ってたユーリが、アトラに一粒の飴のような物をくれた

 

アトラ「なに?これ」

 

ユーリ「コンペイトウ、っていうものらしい。昔、お母さんがくれたの。ちゃんと保存すれば長い間持つから…」

 

ユーリはそう言って自分も一つ食べた。

 

ユーリ「…おいしいよ?」

 

アトラ「…ふふっありがとう、ユーリちゃん」

 

ユーリ「ん」

 

アトラは不器用なユーリなりに元気づけてくれたんだろうと思い、頬が緩む。

 

しかし、その時、

 

 

キャーーッ!

 

ガシャァァン!

 

ユーリ「!?」

 

クーデリア「え!?」

 

アトラ「い、今の音!」

 

ビスケット「クッキー!?クラッカー!?」

 

バッ

 

三日月は誰よりも早く音のした方向へ走り出す。

 

 

 

ガチャ…

 

ガエリオ「お、おい、大丈夫か!?」

 

ガエリオは引き掛けた姉妹にそう言い、車を降りた

 

その瞬間

 

三日月「ッ!!」

 

ガシッ!

 

ガエリオ「うぐっ!?」

 

バァン!

 

三日月はガエリオの首を掴み、車に叩きつけた

 

ガエリオ「…かはっ!お、お前…な、何を…」

 

三日月「フーッ!…フーッ!…」

 

三日月は周りのことなど気にせず、相手の首をへし折る勢いで締め付け等。その時

 

ガシッ!

 

三日月「っ!?」

 

ユーリ「三日月、落ち着いて」

 

ユーリへ後ろから三日月を羽交い締めにしてやめさせる

 

さくらちゃん「いい加減にしないか、この馬鹿。姉妹が飛び出したのを、この車が避けてくれたんだよ」

 

三日月「え?」

 

さくらちゃんはそう言って三日月の頭を叩く

 

ガエリオ「がはっ!!…ゲホッ…」

 

ガエリオが咳き込んでいると、

 

マクギリス「すまない、こちらの不注意だった。謝罪しよう」

 

車に乗っていたマクギリスが降り、謝罪してきた。

 

ビスケット「おーい!クッキー!クラッカー!」

 

ビスケットは叫びながら駆け寄ってくる。しかし、そこで目に入ったのは

 

ビスケット(!?ギャラルホルン!?)

 

ビスケットは固唾をのみ、妹達の無事を確認した後、二人に立ち向かう

 

マクギリス「大丈夫か?ガエリオ」

 

三日月「えーっと、じゃあ俺、勘違いしてたの?」

 

ユーリ「勘違いというより、早とちりだね」

 

さくらちゃん「カッとなるとすぐこれだ。気をつけな」

 

三日月「ごめん、さくらちゃん」

 

三日月はさくらちゃんに謝るが、

 

さくらちゃん「謝る相手が違うだろ」

 

そう言って作業に戻った

 

三日月「えーっと、すいませんでした」

 

三日月はガエリオに頭を下げるが、

 

ガエリオ「何がすいませんだ!このガキ!」

 

三日月「ッ!」

 

バッ!

 

ガエリオはそう言って殴りかかるが、三日月は軽くよける。その際、ガエリオの目に、三日月の背中にある、異形のものに気づいた

 

ガエリオ「…おい、貴様、その背中のものはなんだ…」

 

三日月「…?」

 

マクギリス「…阿頼耶識システムだな」

 

マクギリスは腕を組み、冷静に説明する

 

ガエリオ「あらやし?」

 

マクギリス「体内に埋め込むタイプの、有機デバイスシステムだったか?未だに使われているとは聞いていたが…」

 

ガエリオはそれを聴くと、さもゲテモノを見るかのように告げる

 

ガエリオ「身体に異物を埋め込むなんて…ウプッ…」

 

ガエリオは吐き気を感じながらマクギリスに支えられ、車に戻ろうとする

 

そのとき、

 

 

ヒュッ!!

 

ガエリオ「え?」

 

ダンッ!

 

ガエリオ「ひっ!」

 

急にガエリオの目の前にナイフが飛び、車に刺さった

 

ユーリ「…ごめん、手が滑った」

 

ユーリはそういいながら懐からどんどんナイフを取り出していく

 

ユーリ「本当にごめんなさい、今まさに手が滑りそう」

 

ガエリオ「な!ちょ、ちょっとま「ユーリ!」

 

ビスケット「やめないか!三日月よりひどいぞ!」

 

ユーリの奇行をとめたのはビスケットであった

 

ユーリ「…」

 

ユーリはそれをきくと、一応、ナイフを戻した。が、馴染み出る殺気を隠そうとはしなかった

 

ユーリ「…失せろ。温室育ちの坊ちゃんが」

 

ユーリはいつものそれとは想像もつかない程の殺気をこめ、それだけいうとビスケットの妹達のところに駆け寄る

 

ガエリオ「な、なんなんだ!こいつらは!人をなんだと思ってやがる!」

 

マクギリス「ガエリオ、気を治めて、今は車に乗っていろ」

 

マクギリスはそういうと、クッキー達の目の前に立ち、

 

マクギリス「怖い思いをさせて、すまなかったね…こんなものしかないが、お詫びの印に、受け取ってもらえないだろうか?」

 

マクギリスはそう言うと、懐からチョコが複数入った袋を取り出し、クラッカー達に与えた。二人はとても喜び、さっきのことなどなかったかのように嬉しがる

 

アトラ「ど、どうも…」

 

マクギリス「念のため、医者に見せるといい。何かあれば、ギャラルホルン火星支部まで連絡を。私の名前は、マクギリス・ファリドだ」

 

マクギリスはそう言い、ビスケットの方に振り返る

 

マクギリス「ところで、聞きたいことがあるんだが…」

 

ビスケット「!は、はい!なんでしょう?」

 

マクギリス「この付近で最近、戦闘があったようだなのだが、何か知らないか?」

 

ビスケットはマクギリスのその問いに、苦笑いしながら答える

 

ビスケット「そういえば…2、3日前、向こうでドンパチやってる音は聞こえましたが、近くに民間企業があったので、そこが演習でもやってるのかと…ね?二人共」

 

ビスケットは三日月達に話を振る。

 

三日月「うん」

 

ユーリ「そうだね」

 

マクギリス「…そうか、ところで、そこの二人」

 

三日月・ユーリ「ん?」

 

マクギリス「見事な動きだった。なにかトレーニングを?」

 

マクギリスは急に二人のほうに向き、そう問いかける

 

三日月「…まぁ、ボチボチ」

 

ユーリ「右に同じ」

 

二人はその問いに対して適当に答えた

 

マクギリスはその言葉をきくと微笑み、

 

マクギリス「そうか…いい戦士になるな」

 

マクギリスはそういうと、車に乗り込み、去っていった

 

それを見た三日月はビスケットに尋ねる

 

三日月「あいつら、この間の戦闘のこと、知らないみたいだった」

 

ビスケット「うん…向こうにも、いろいろあるってことだろうね…」

 

ギャラルホルンはとてつもなく巨大な組織である為、どこかでいざこざがおきようと、特段珍しくもないだろうと、ビスケットは感じていた

 

三日月「…そういえばさ、ユーリ。なんであのとき怒ってたの?最初の時は冷静だったのに」

 

ビスケット「あ!そうだよ!もう、本当にあのナイフが当たってたらどうするのさ!」

 

ユーリはその言葉に、バツが悪そうな顔をして、

 

ユーリ「…当たらないように投げた」

 

ビスケット「そういう問題じゃないよ…でも、本当にどうして?」

 

ビスケットがそうきくと、ユーリは当たり前のことを話すが如く言う

 

ユーリ「仲間をゴミみたいな目で見たから、侮辱されたと思った。だからやった」

 

ビスケット「…えぇ?」

 

三日月「…ふーん」

 

ユーリ「?何かおかしい?」

 

ユーリはおかしいところなどないだろう?みたいな表情をしながらビスケット達を見る

 

三日月「いや、なにもおかしくないと思うよ…ユーリって案外仲間思いだったんだな。少し誤解してた」

 

ユーリはそれをきくと、驚いた表情をしていたが、すぐに元の無表情になった

 

ビスケット「とにかく、ユーリ。次からは気をつけてね?」

 

ユーリ「…善処する」

 

ユーリは小さい声でそう言った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




…はい!如何でしたか?なのだ!今回、終盤らへんが描く時、あまりにも眠すぎて若干適当になってしまったのだ…反省なのだ。ちなみに、ユーリちゃんは必ず身体の色んなところに約10本程ナイフを隠し持ってるのだ!それでは、また次も見てくださいなのだー!


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子供達が守る場所

こんにちはなのだ!黒アライさんなのだ!最近感想をくれる人が数人だけでもいてくれて嬉しいのだ!感想を読むたび、自分の小説に何が足りないのかよくわかるのだ!それを改善できるかは…お察しして欲しいのだ。みんなもできれば感想を下さいなのだ!


ーー火星共同宇宙港 方舟ーー

 

デクスター「登録名称は、これでいいんですね?」

 

デクスターは昭弘達に確認を取る

 

昭弘「あぁ、団長の命名だ。CGS時代の名前は嫌なんだとよ」

 

昭弘達は無事、CGSの舟であった舟、「ウィル・オー・ザ・ウィスプ」を鉄華団の物として正式に登録できたので、オルガの指示に従い、艦名を変更している最中であった。

 

デクスター「では…ウィル・オー・ザ・ウィスプ、改め…《イサリビ》」

 

 

 

 

ーー火星 辺境ーー

 

ブロロロロ…

 

マクギリス「農場にいた子供達の証言通り、あのあたりにはCGSという民兵組織が存在していたよ」

 

ガエリオ「存在…していた?過去形か?」

 

ガエリオは車の運転をしながらマクギリスに尋ねる

 

マクギリス「経営者も変わり、社名も変更されている…新しい名前は、鉄華団」

 

ガエリオ「鉄華団、ね…それがどうかしたのか?」

 

マクギリスはガエリオの疑問には答えず、窓の外を見ながら、意味ありげなことを呟く

 

マクギリス「消したかったのは名前だけか…それとも…」

 

 

 

 

ーー鉄華団 本部ーー

 

ギャギャギャ…

 

三日月達はモビルワーカーにのり、農園から帰還したところであった。

 

 

ビスケット「…あ!」

 

ユーリ「…!」

 

クーデリア「あ、あれは!」

 

三日月「!」

 

そこで四人は、今日1番に驚くものを目にする。

 

それは、華の形を象られ、真紅に塗られた鉄の華…鉄華団の、新たなエンブレムが、鉄華団本部の壁に、描かれていた

 

ビスケット「おー!」

 

クーデリア「あれが…」

 

ユーリ「私達の…」

 

オルガ「そうだ、あれが、俺たちの新しいマーク…鉄の華!」

 

オルガは驚く三人の元に現れ、力強くそう言う。

 

ライド「へへーん!団長に頼まれて、俺が考えて描いたんだぜ!」

 

ライドは自慢げに言う。実際、ここまで鉄華団に似合うエンブレムなどこれ以外ないだろう。それを考え、描いたライドはそういう才能があるのだろう。シノはライドの元に寄り、肩を叩きながら褒める。

 

シノ「スッゲェェ!カッケェェ!やるじゃねえかライドォ!」

 

 

 

オルガ「なぁミカ、ユーリ。中々いいだろ?」

 

ユーリはずっとエンブレムを見つめ、三日月も満足したように返事をする

 

ユーリ「…凄い」

 

三日月「うん!」

 

二人のその言葉に、オルガは付け加えて言った

 

オルガ「なあ、二人共」

 

三日月・ユーリ「?」

 

オルガ「これを…俺たちで守っていくんだ…!」

 

オルガは振り向き様にそう告げる

 

三日月「…あぁ!」

 

ユーリ「…守る、壊させはしない…!」

 

ユーリ(…やっと手に入れた、私の居場所なのだから…)

 

二人は、心にしっかりと鉄の華を刻み込んだ

 

 

 

ーー鉄華団 本部 廊下ーー

 

トド「はい…ええ、そっちは任せて下さい…」

 

トド「それじゃ、宜しく頼みますよ…」

 

トドは、エンブレムをつくり、喜んでいる少年達を傍目に、何やら怪しい電話をかけ、不敵ににやけていた…。

 

 

 

そして、時は順調に進み、オルクス商会との交渉日になる

 

 

 

ーー鉄華団 本部ーー

 

ピッピッピピッピッ…

 

オルガ「……」

 

オルクス「……」

 

オルガと、オルクス商会、現社長であるオルクスは、無言でタブレット内にそれぞれ今回の交渉内容について記す。そして同時にそれぞれのタブレットを交換する。

 

しばらくしてからオルクスの使用人が喋る。

 

使用人「…確認しました」

 

オルクス「うむ」

 

続いてビスケットも確認完了の言葉を出す。

 

ビスケット「こちらも確認しました」

 

オルガ「…フッ」

 

二人はそれぞれの言葉を確認すると、立ち上がり、互いに手を差し出し、握手した。

 

オルクス「契約は成立だ」

 

オルガ「代表自ら顔をだしてくれたこと、感謝するよ、オルクスさん」

 

オルガは手を交わしながら礼を伝える

 

オルクス「商売ってのは信用が売り物だからなぁ」

 

オルガ「同感だ。地球まで、宜しく頼むよ」

 

オルクス「こちらこそ。CG…じゃなかったな。えーっと…鉄華団」

 

 

 

ーーGH 火星支部 アーレス ーー

 

コーラル「クソォッ!!」

 

コーラル「クソォッ!クソォッ!クソォッ!クソォッ!」

 

コーラル「計画が!全て台無しだぁ!」

 

バンッ!

 

コーラルは机上を強く叩きながら叫ぶ

 

コーラル「このままでは身の破滅だ…」

 

コーラルはそう呟き、今をどうするか必死に考えていた。そのとき、一つの連絡が入る

 

コーラル「…チィッ!」

 

ピッ

 

コーラルは連絡をつなげると、その連絡をかけてきたものに怒鳴る

 

コーラル「しばらく連絡入れるなと言っただろうが馬鹿者がぁ!」

 

しかし、かけてきたGH兵は謝罪しながらも、要件を告げる

 

GH兵「申し訳ありません…しかし、オルクス商会の代表を名乗る物が、バーンスタイン嬢の件について、急ぎ取り次いで欲しいとのことでして…」

 

それを聞いたコーラルは冷静さを取り戻す

 

コーラル「クーデリアの件だと…?」

 

GH兵「はい…如何なさいますか?」

 

コーラルは数秒もの間、脳を働かせ、答えを出す。

 

コーラル「…ふむ、いいだろう、繋げ」

 

それからコーラルはオルクスのバーンスタインの件について聞くと、不気味に笑い出した…

 

 

 

ーーアーレス 兵室ーー

 

アイン「…」

 

アインは、クランクに密かに託されていたGHのバッヂを、クランクが戦死したあの日からずっと見つめていた。

 

アイン(クランク二尉…俺は…)

 

アイン「…俺は…」

 

プシュー!

 

アイン「!」

 

アインがバッヂを握りしめ、悩んでいると、一人のGH兵士が命令を伝えにきた

 

GH兵士「アイン、こんなところにいたのか!急いで支度しろ!コーラル司令から、今日中にお前とお前のグレイズを宇宙にあげろとのご命令だ!」

 

アイン「!それじゃ!」

 

GH兵士「あぁ、待機命令は解除だそうだ!」

 

アインはそれを聞くと、力強くバッヂを握りしめ、心に決意を宿した。

 

 

 

 

ーー鉄華団 本部 深夜ーー

 

グガー…スピー…

 

鉄華団の少年達は日日の疲れからか、酷く眠りかけていた。ある一人を除いては…

 

ザッザッ…

 

クーデリア「…フゥ、流石に冷えますね…」

 

クーデリアはそういいながら薄着一枚で外に出ており、宇宙を見上げていた。内心緊張しているのだろう。きっと、これから行く地球への道は、生易しい物ではないと感じたから…

 

クーデリア「…ん?あれは…」

 

クーデリアは鉄華団の見張り台のような所に、一つだけの明かりと、見知った人物がいた

 

 

ーー鉄華団 本部 見張り台ーー

 

コッコッ…

 

クーデリアは先程見つけた明かりのもとへ、自然と足が向かっていた

 

ユーリ「…」

 

そこにいたのは、いつも着ているコートを脱いでおり、袖の無い黒いセーターのような物を着ているユーリがいた。

 

ユーリ「…ん」

 

ユーリはそう言うと、クーデリアに自分の着ていた毛布を渡した

 

クーデリア「え?あ、ありがとう…ずっとここに?」

 

クーデリアは毛布を貸してもらいながらそう尋ねる

 

ユーリ「いつもは交代制でやってる…らしい。早く鉄華団の規則に慣れるために、無理言って代わってもらったの」

 

ユーリは窓の外を見つめながらそう言う。

 

ユーリ「それに…今はいつGHに襲われてもおかしくないから」

 

ユーリのその言葉に、クーデリアは何とも言えない表情をすることしかできなかった。その襲われてもて仕方ない状況にしたのは、紛れも無い、自分なのだから…

 

クーデリア「…私は「ん」…え?」

 

そう言ってユーリは、クーデリアに何かの種のような物を差し出した。よく見るとそれは、三日月がいつも隠し持ってる火星ヤシの実であった。

 

ユーリ「さっき、三日月が毛布届けるついでに様子見に来たの。その時も、三日月はそれ食べてたから美味しいのかとおもって、無理言って少し分けてもらったの」

 

クーデリア「…えっと、下さるのですか?」

 

ユーリ「嫌ならいい」

 

ユーリはそう言って手を引っ込めようとするが、クーデリアが慌てて止める

 

クーデリア「い、いえ!頂戴します!」

 

クーデリアはそう言って一粒口の中に放り込んだすると…

 

クーデリア「…むぐっ!?」

 

クーデリアは急に口元を隠し、顔色を悪くした。

 

ユーリ「気を付けて。それ、三日月によると当たり外れがあるらしいから」

 

クーデリア「…できれば早く言って欲しかったです」

 

クーデリアはそう言うが、ユーリの視線は既に外に戻っていた。クーデリアは、その時のユーリが身に纏う、子供が出せるとは思えない美しさと、なんとも話しかけづらい雰囲気を感じた。話しかけたら、ユーリの何かが壊れてしまうようにおもったから…

 

しかし、ユーリはそんなことなどいざ知らず、視線はそのままにクーデリアに尋ねる

 

ユーリ「ねえ…地球ってどんな所?」

 

クーデリア「え?」

 

ユーリ「私、地球には行ったことがない」

 

ユーリのその質問に困りながらもクーデリアは話す

 

クーデリア「そうですね…私も、火星育ちですので、特段詳しいわけではありませんから、なんとも言えませんが…どんなところか、と言われると、やはり1番先に思いつくのは、あの広大な海ですかね」

 

ユーリはその言葉を聞くと、少し微笑んだ…ような気がした。彼女に会った初めの頃は、感情がないのかと密かに心配していたが、少し触れ合っただけの今でもわかる。彼女はにはちゃんと、喜怒哀楽があり、表情にも出ていると。

 

ユーリ「…私は、嬉しい」

 

クーデリア「え?」

 

ユーリ「私の…居場所があることが」

 

クーデリア「…居場所…」

 

ユーリは空を見上げて言う。

 

ユーリ「両親が死んでからは、この世界に、私の居場所は消えた。子供の私には、それを得る方法を知らなかった。傭兵をやっていたのも、依頼されることで、私はその時だけでも、私がその人に必要とされているとおもったから」

 

ユーリ「でも違った。必要としているのは私じゃない。私のもつ力だけ…それがわかったのは最近。だから、今まで頑張ってきた傭兵稼業も

嫌気が差していた…正直言って、貴方を殺すと言うコーラルからの依頼が終われば、私は死ぬつもりだった」

 

クーデリア「ッ!?」

 

クーデリアは驚くが、どんな言葉をかければいいのかわからないように困っていた

 

ユーリ「安心して。今はもう、そんな気はない…でも、あの時、鉄華団と会ってなかったら、私は本当に死んでいたんだと思う」

 

ユーリ(…お母さんの遺した意思すらもかなぐり捨てて…)

 

ユーリは一旦区切ると、側においてあった自分のコートを羽織る。そのコートの後ろには、立派な鉄の華…鉄華団のエンブレムが刻まれていた。

 

ユーリ「私にとって、私自身を見てくれる鉄華団は、とても大切なんだ…私を受け入れてくれる、大切な家…。だから、私はそれを命にかえても守るし、その鉄華団が決めたことなら、全力でやり遂げる…二度と、壊させなんてしない…させてたまるか…!」

 

クーデリア「…」

 

珍しく、感情に身を任せて語るユーリに、クーデリアは静かに聞きながらも、己の立場を再確認した。

 

クーデリア(世の中には、彼女や鉄華団のような少年少女達がごまんといる…でも、私の今回地球行きが成功し、アーブラウとの交渉が成立すれば、少なくともそんな子たちを減らせるきっかけになる…私の成すべきことは、彼女達の、未来の為にもなる!)

 

スッ…

 

ユーリ「…?」

 

クーデリアはそう思うと、ユーリの手を取り宣言する。

 

クーデリア「…頑張りましょう。お互いに、成すべきことを成すために!」

 

ユーリはそれを聞くと、表情はそのままだったが、握った手を、力強く握り返してくれた

 

 

 

ーー鉄華団 食堂 朝ーー

 

「私を!」

 

アトラ「私を!炊事係として!鉄華団で雇って下さい!」

 

朝の食事を楽しむ少年達に、アトラの大きな声が鳴り響いた。

 

アトラ「女将さんには事情をはなして、仕事を辞めてきました!」

 

アトラは続けて言った。彼女も必死なのだろう。気兼ねなく話せる家族のような少年達と、自分が好意を寄せている男が命をかけて仕事をしにいくのだから。

 

それを聞いたオルガは隣のいる三日月を見ながら言う。

 

オルガ「…いいんじゃねぇの?なあ?三日月」

 

三日月「アトラのご飯は美味しいからね」

 

三日月もそう言って賛成する

 

鉄華団への入団を認められたアトラは、がばッと頭を下げて礼を言う。

 

アトラ「あ、ありがとうございます!一生懸命、頑張ります!」

 

その言葉をもとに、オルガが立ち上がり、皆に激を送る

 

オルガ「よぉーしお前ら!地球行きは俺ら鉄華団の初の大仕事だ!気ぃ引き締めていくぞぉ!!」

 

鉄華団「オォーー!!」

 

そうやって朝から盛り上がる者達に、ユージンは呆れながら言う。

 

ユージン「ったく、オルガの奴、状況分かってんのかよ…俺達ゃギャラルホルン…いわば世界の一国に喧嘩売ってるのと同じなんだぜ…?」

 

そういいながらも内心熱く感じる心を治めながらユージンは食事を続ける

 

しかし、

 

トド「…へッ…最後の晩餐だ…せいぜい楽しめや…」

 

トドはそういいながら不気味な笑みを浮かべる

 

 

 

アトラ「あ、そーだ三日月!さくらちゃんからこれ、預かっておいたの、はい!」

 

 

アトラはそう言うと、懐から大きな袋をだしてきた。その中身は…

 

三日月「お、火星ヤシの実…よかった、ちょうど切れかけてたんだ」

 

アトラほ渡し終わると、近くで食事をとっていたクーデリアの方を向く。

 

アトラ「よ、宜しくお願いします!」

 

クーデリア「ふぇっ!?え、あ、えぇ、お願い、します?」

 

クーデリアは驚きながらも一応、返事を返した

 

 

 

ーーGH 火星本部 アーレスーー

 

ガエリオ「クーデリアの件、お前の睨んだとおり、コーラスが関わっていたな。だが…」

 

ガエリオはそこで区切るとマクギリスの方を向いた

 

ガエリオ「そんな下衆の命令を、お前が聞くとは思わなかったよ、マクギリス」

 

その言葉に、マクギリスは答えなのかわからないことを言う

 

マクギリス「下衆、か…確かにな」

 

 

 

数刻程前、マクギリスとガエリオは、コーラスに呼ばれていた。

 

マクギリス「急な話とは?」

 

コーラス「実は、監査官どのにぜひともご同行願いたい作戦があってね」

 

コーラスは妙に機嫌よさそうにそう切り出す

 

ガエリオ「作戦?」

 

ガエリオは物騒な言葉に突っかかる

 

コーラス「クーデリア・藍那・バーンスタインが調停のために地球へ旅立つのは、君たちの望むところではなかろう?」

 

そこでコーラスは、マクギリス達の目を見ながらニヤケ顔で告げる

 

コーラス「この手柄を君達に譲ろうと言うのだよ」

 

 

 

ガエリオはコーラスの話を聞き終わったあとに愚痴る

 

ガエリオ「一度は自分の手柄にしようと、中隊規模まで動かしたくせに、手柄を譲るとはよく言えたものだな」

 

マクギリス「失態の穴埋めに必死なのだろう。笑ってやるな」

 

そうマクギリスが言うと、ガエリオは流石に不審におもったらしく、聞き出す

 

ガエリオ「…お前、何を考えてる?」

 

その問いに、マクギリスは前髪を弄りながら答えを出す

 

マクギリス「今やクーデリア・藍那・バーンスタインは、火星独立運動の象徴だ。その小娘一人を飼い慣らすだけで、火星の市民を黙らせることができるのなら、利用価値はあるとおもわないか?」

 

マクギリスの答えに、ガエリオは納得したように話す

 

ガエリオ「なるほど…身柄を抑え、我々の手の上で囀ってもらうわけか…」

 

 

 

 

ーーアーレス 入港口ーー

 

「お手を煩わせずとも、我らの船が、クーデリアをとらえましたものを…!」

 

画面から発するその言葉に、コーラルはキッパリと答える

 

コーラル「これは政治的な問題だ、手順に意味がある!結果だけの話ではないのだ…」

 

コーラルの言葉に、謎の男は、

 

「未熟なものでして、何卒、ご容赦を…」

 

コーラル「いい、情報提供には、感謝している…」

 

コーラルはそういいながら船を発進させる

 

その画面の先にいる男は…

 

オルクス「今後とも、我らがオルクス商会を、ご贔屓にお願いします

 

コーラル「わかっている…礼記はまかせる」

 

そう言ってコーラルはオルクスとの通信を切る

 

コーラル「後はクーデリアを確実に始末するだけか…フッ…ノブリスの金さえ手に入れば、どうにでもなる…」

 

コーラルは笑いながらそう言った…

 

 

 

 

ーークリュセ 静軌道ステーション カタパルトーー

 

そのクリュセのカタパルトには、小型の輸送船が乗せられていた。

 

その中には、鉄華団が乗っている。

 

フミタン「…いよいよですね、お嬢様」

 

クーデリア「えぇ」

 

クーデリアは内心緊張しつつも、自分の視界に、オルガや三日月、そしてユーリの姿が入ると、自然と心が落ち着いた

 

クーデリア(行ってまいります…お母様、お父様)

 

バシュゥゥン!!

 

スラスターの音を轟かせ、鉄華団を乗せた小型輸送船が今、宇宙へと旅立つ。

 

 

 

ーー宇宙 火星付近ーー

 

バシュッ

 

ガコン…

 

彼らを乗せた小型輸送船は、補助ブースターを切り離した

 

クーデリア「この後、低軌道ステーションへ行き、迎えの船を待つ手筈でしたよね?」

 

クーデリアの問いにビスケットが答える

 

ビスケット「はい、オルクスの低軌道輸送船にひろってもらって「あ、あれがオルクスの船じゃないですか!?」え?」

 

そう叫ぶタカキの声に、皆が前を見る。

 

タカキ「ほら!あそこあそこ!」

 

タカキが指を刺すと、そこには薄い緑色をした船がいた

 

しかし、

 

オルガ「…予定より少し早ぇな…ん?」

 

オルガはそのオルクスの船らしきものから、数個の光が出てきた。それは…

 

オルガ「…おい、まさかあれ!?」

 

ビスケット「ギャラルホルンのモビルスーツ!?」

 

ギュォォォォン!!

 

宇宙用に回収されているGHのモビルスーツ、グレイズが、こちらに向かって急速接近してくる

 

ユージン「お、おいおい!つか、奥にもまだなんかいんぞ!?」

 

シノ「ハァーーー!?」

 

モビルスーツを出したその船の後ろには、もう一隻の船があった

 

トド「なにぃ!?どうなってやがる!?」

 

ユージン「トドォ!!説明しやがれ!」

 

トド「い、いや!俺だって何がなんだか!ギャラルホルンなんてきいてねぇよ!」

 

トドはそう言うと操縦室に向かい、オルクスに連絡を取る

 

 

ーーオルクス船 司令室ーー

 

オルクス私兵「トド・ミルコネンからの連絡ですが…」

 

オルクス「我々への協力に感謝すると返しておけ」

 

ーー小型輸送船ーー

 

シノ「協力たぁどう言うことだテメー!俺らを裏切りやがったな!?」

 

バキッ!

 

トド「フグォッ!?」

 

トドはシノにボコボコにされ、オルガがその間に指示を出す。

 

オルガ「運行はいい!加速して振り切れ!!」

 

操縦者「えぇ!?あ、はい!!」

 

小型輸送船は運行ルートから外れ、とにかく加速して距離を開ける

 

トド「畜生ォー!テメーら許さねえからなぁ!」

 

ユージン「許さねえのは!」

 

シノ「俺らだよ!」

 

ガコンッ!

 

ビスケット「!?」

 

小型輸送船が少し揺れた。グレイズからアンカーを射出され、引っ掛かったのだ

 

オルガ「チィッ!囲まれたか!」

 

操縦者「も、モビルスーツから緊急連絡!クーデリアの身柄を引き渡せとか言ってますけどォ!?」

 

操縦者も動揺しながら指示を待つ

 

トド「そ、そうだ!差し出せ!」

 

ユージン「うっせぇ!テメーは黙ってろっ!」

 

トド「他に助かる道があるってのかよォ!?」

 

ユージン「ッ!そ、それは…!」

 

認めたかはないがトドの言葉は正論である。小型輸送船は数機のモビルスーツに既に包囲されてしまっている。もはや逃げる事はできない。

 

シノ「…どうすんだ!?オルガ!」

 

シノはオルガに指示を仰ぐ

 

クーデリア「私を差し出して下さい!」

 

オルガ「それはなしだ。俺らの筋が通らねえ…」

 

オルガは即答でそう言った。

 

オルガ「ビスケットォ!」

 

ビスケット「了解!いくよ!ユーリ!三日月!」

 

オルガはビスケットに合図すると、ビスケットはなにかのレバーを下ろした。

 

ユージン・シノ「なにい!?」

 

アトラ「三日月!?」

 

クーデリア「ユーリ!?」

 

 

バシュゥウ!

 

小型輸送船の背部から、なにかのハッチが開くと、煙幕が立ち上げた。

 

GH兵「チィッ!小細工を…」

 

しかし、それは煙幕だけではなかった

 

ジャキンッ!

 

GH兵「…は?」

 

グレイズのコクピットにまっすぐ伸びたそれは、紛れもない、細長い銃身だった。

 

バゴォンッ!

 

一つの爆音が轟くと、グレイズのコクピットに、巨大な穴を開けた。

 

そして煙幕から出てきたのは、

 

バルバトスであった。そして…

 

 

GH兵A「何!?モビルスーツだと!?」

 

GH兵B「一体どうな…」

 

ブツッ!

 

GH兵A「…ん!?GH兵B!!どうした!?応答しろ!おいっ!!」

 

そしてGH兵Aがみたのは…

 

二つの《短剣》にコクピットを無残に貫かれたグレイズであった。

 

GH兵A「な!?なんだあれは!?剣が…《飛んでる!?》」

 

美しい緑色の粒子を放ちながら飛ぶ二つの短剣は、小型輸送船のところにいき、バルバトスとは違う、《もう一機のガンダム》に収納される。

 

ギュォオォォン!!

 

ヒュィィィィン!!

 

片方のガンダムはエイハブリアクターの甲高い音を、もう片方のガンダムはあの短剣と同じく、明るい緑色の粒子を放ちながら風を切るような静かな稼働音を鳴らし、飛来してくる。

 

 

三日月「ユーリ…」

 

ユーリ「うん、わかってる」

 

三日月・ユーリ「…殺ろうか…!」

 

キュィィン!!

 

白と黒の二つのガンダムのカメラアイが、猛々しく光り、敵をしっかりと見据えていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




…はい!如何でしたか?なのだ!次回はユーリの鉄華団としての初陣なのだ!楽しみにしていて欲しいのだ!それではまた次回なのだ!できれば感想またはアドバイスをくださいなのだ!


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2機のガンダム

こんにちはなのだ!お馴染み黒アライさんなのだ!最近、コロナウイルスの感染者が多いなぁって思うのだ!幸い自分はまだかかっていないけど、気をつけて行きたいのだ…それではどうぞなのだ!




GH兵「目標の確保、失敗しました」

 

コーラル「クーデリアがそこにいるならそれでいい…それにしても鈴付きめ、音信不通になっていたから死んだかと思っていたが…まさか寝返っていたとはな!」

 

バシュン!

 

コーラルはそういいながら銃を持ち、クーデリアののる小型輸送船に向かい、飛行する

 

アイン「コーラル司令!ファリド特務監査より、殺すなとの司令が「貴様の上官はいつからあの青二才になった!」

 

コーラル「構わん!ファリドが来る前に船ごと撃ち落とせ!」

 

アイン「は、ハッ!」

 

アイン(そうだ…せっかくもらったチャンス!今はあの角付きを倒すことだけを考えろ!)

 

アインは決意を胸に秘め、グレイズを発進させる

 

コーラル(監査官自らが参加している作戦中での事故ならば、幾らでも言い訳はつけれる…あとはノブリスとの契約だ!華々しく散ってもらうぞ!クーデリア!!)

 

コーラルはなりふり構わず、ライフルを打ちまくる

 

ガンッ!ヒュンッ!キンッ!

 

シノ「おぉわっ!チックショウ!アイツ打ってくんぞ!?」

 

オルガ「進路はこのままでいい!とにかく突っ走れ!」

 

オルガは輸送船を指示しながらとにかくスピードをあげる。だが、ただそれだけでは、グレイズのライフルから逃げることなど当然出来ない。

 

コーラル「フハハッ!落ちろ!「ドガァンッ!」のぉっ!?」

 

コーラルのグレイズの背中に強い衝撃が加わる。

 

三日月「させるかよ」

 

三日月のバルバトスによる長距離射撃が、コーラルの背中を直撃したのである。しかし、当たりどころが悪かったのか、コーラルのグレイズの装甲を貫通する事はなかった

 

コーラル「チィッ!アイツから落とせ!」

 

コーラルはバルバトスの方に飛行する。その行動に三日月は笑みを浮かべる

 

三日月「そうだ…こっちに来い…!」

 

 

 

 

オルクス「モビルスーツ隊は敵に釣られたか…よし、こちらで船を沈めるぞ。コーラルに恩を売るいい機会だ」

 

オルクスはそう言い、オルクスの船についている連装砲を打ちまくる

 

オルクス「ハッハッハッ!引導をわた「ドゴォン!」おわっ!…な、なんだ!?」

 

オルクス兵「右舷上部後方!敵艦です!さらに、右舷下部前方!モビルスーツ一機!来ます!」

 

オルクス「何ィ!?」

 

なんと、オルクスの真上には、ずっと先の航路で合流するはずの鉄華団の船、強襲装甲艦《イサリビ》がいた。

 

昭弘「迎えに来たぜ、大将」

 

昭弘はイサリビの中でそう告げる。

 

さらに…

 

ユーリ「…確実に、殺さなきゃ…」

 

ユーリはそう言い、ドラグーン搭載型GNカタールを飛ばし、オルクスの船を斬りつけながら飛び、アビス自身も腰部にマウントしてある「対装甲重斬刀 ガーベラ・ストレート」を抜き、オルクスの船の至る所を斬り壊していく。

 

オルガ「時間ピッタシに来たな…!ユーリの援護も的確だ…流石、いい仕事してくれるじゃねぇか!」

 

ユーリがオルクスの船に攻撃している間に、イサリビは小型輸送船を取り込み、オルガ達がイサリビのブリッジに移動する

 

オルガ「状況は!?」

 

チャド「後方からオルクスの船がまだついてくる!流石にユーリ一機だけで止めんのは無理があるんじゃねぇの!?オルガ!」

 

ダンテ「向こうもボカスカ撃ってくるぜ!?」

 

オルガ「こっちからも撃ち返せ!間違ってもユーリに当てんなよ!」

 

オルガはそう指示し、イサリビに付いている連装砲全砲門をオルクスに向ける。

 

すると、

 

トド「お、おい!なんでこの船がここにあんだよ!静止軌道で合流のはずじゃなかったのか!?」

 

ユージン「うっせぇ!黙ってろクソジジイ!」

 

ユージンに拘束されたトドがブリッジに連行される。そんなトドの答えに、オルガは当然のように答える

 

オルガ「これまでにお前が信用にたる仕事をしたことがあったかよ?」

 

オルガのその答えに、トドは顔に血を昇らせ、怒鳴り散らす

 

トド「な!?ゆ、許さねえぞ!オルガァ!」

 

オルガ「ユージン!倉庫にでもぶち込んどけ!」

 

ユージン「おぉよ!ほら来い!もうすぐでテメーも豚小屋行きだ!」

 

そう言ってユージンはトドを連行する。それをブリッジにいくすれ違いざまにみたクーデリアとアトラはドン引きしていた

 

ビスケット「!?な、なんでクーデリアさんが!?危ないからブリッジに来ないでください!」

 

ビスケットに止められるが、クーデリアは聞く耳を持たなかった

 

クーデリア「私はこの目で見届けたいのです!」

 

ビスケットはそれに気圧され、仕方なく同行を認めた

 

ビスケット「…じっとしててくださいね!?」

 

すると、クーデリアの隣にいたアトラが三日月を映像の画面越しに見つけ、叫ぶ。

 

アトラ「いた!三日月!」

 

三日月はどうやら複数のモビルスーツを相手に遠距離戦で戦っているようだ。それに対してビスケットは力強く答える

 

ビスケット「大丈夫!遠距離戦で撃ち合っている間は、モビルスーツのナノラミネート装甲は貫けない!むしろ、問題はユーリだ!幾ら腕があっても、たった一人で装甲艦の相手をするのは危険だ…!彼女のガンダムには遠距離武器がないし、どうすれば…!」

 

焦るビスケットに、オルガは二つの指示を出す。

 

オルガ「…ビスケット!ヤマギにアレを準備させろ!」

 

ビスケット「え!?アレって…まさか、売り物を使うの!?」

 

オルガ「ここで死んだら元も子もねぇ!使えるもんは使うだけだ!…昭弘!頼めるか!」

 

オルガの指示に、昭弘は力強く頷く。

 

昭弘「了解だ!」

 

オルガは昭弘の返事をきくと、ユーリに通信を繋げる

 

オルガ「よし!ユーリ!その艦は俺と昭弘がやる!お前は三日月の援護に行ってくれ!

 

ユーリ「…了解!」

 

ユーリはその指示に従い、武器を収納し、GN粒子を放ちながら三日月の方に急行する

 

オルクス「ん!?あの奇妙な黒いモビルスーツが移動したか…!なんのつもりか知らんが、このチャンスを逃すわけにはいかん!あの装甲艦を撃ち落とせ!」

 

オルクスは、怒涛の攻めを繰り出して来ていたユーリがどう言う理由か知らなかったが、それがなくなった今、攻勢にでようとするが、

 

オルクス私兵「…!目標の装甲艦から、一つのエイハブウェーブを確認…!モビルスーツ、グレイズです!」

 

オルクス「何ィ!?何故ギャラルホルンのモビルスーツがあそこに…!」

 

イサリビから出てきたグレイズは、出撃したはいいものの、体勢が上手く取れていなかった

 

昭弘「クッソ…なんでこう宇宙ってのは動きづらいんだよ…阿頼耶識が欲しくなるぜ…!」

 

昭弘は愚痴りながらもライフルを片手に、イサリビと共にオルクスと対峙しに行った

 

 

 

 

ガガガンッ!ガガガンッ!

 

グレイズの3連射式ライフルが、バルバトスに向かって打たれる。しかし、バルバトスは軽々とよけ、逆にカウンターのように三日月は滑空砲をグレイズに直撃させる。

 

コーラル「ウグッ!?…チィッ!ちょこまかと!」

 

コーラルはそう言うと、側にいたアインにライフルを投げ、腰部にマウントしてあるバトルアックスを抜く。

 

コーラル「接近戦で仕留める!アイン!援護しろ!」

 

アイン「!りょ、了解!」

 

三日月「…!?」

 

ガギィンッ!

 

三日月「うぁっ!」

 

三日月は急に近接戦を仕掛けてきたグレイズに対応できず、バトルアックスを叩きつけられる。幸い装甲は破壊されていないが、衝撃はそのまま三日月に伝わる。

 

三日月は初の宇宙戦なだけあり、上手くガンダムが扱えていなかった。その状態で数機のモビルスーツを相手にできる時点で大したものだが、バトルアックスを叩きつけられた衝撃で、体勢を整えるのに必死になり、コーラルの追撃を許してしまう

 

三日月「しまっ!?」

 

コーラル「死ねぇい!!」

 

ババババババッ!

 

ガガンッ!ギンッ!ガンッ!

 

コーラル「ぬぉっ!?な、なんだ!?どこから…ぬ!?」

 

突如、コーラルの上方から小口径の弾丸が降り注ぐ。

 

ユーリ「三日月に…触れるなぁっ!!」

 

ユーリはそういいながら頭部に搭載されている、「75㎜対空自動砲塔システム イーゲルシュテルン」を撃ちながらガーベラストレートを抜き、斬りかかるが、

 

ガガガンッ!ガガガンッ!

 

ユーリ「!」

 

ユーリの横側から、3連射式ライフルの銃弾が降り注ぐ

 

アイン「コーラル司令!」

 

コーラル「!アインか!」

 

アインの射撃により、ユーリは追撃を逃したが、まだ諦めていなかった

 

ユーリ「ハァァッ!!」

 

ユーリは吠えながらガーベラストレートを《ぶん投げた》

 

コーラル「ふん!そんな我武者羅な攻撃が当たるものか!」

 

コーラルのそう言うと、飛んでくるガーベラストレートを避けた

 

 

アイン「…!コーラル司令!上です!」

 

コーラル「ん?上?」

 

コーラルは上を見上げると、そこにはガーベラストレートを持ったバルバトスが至近距離にいた。

 

ユーリは最初からコーラスが避けるのを計算して投げていた。しかし、それはコーラルに向けてではなく、その後ろにいるバルバトスにむけてのものだった

 

コーラル「…へ?」

 

ユーリ「…いけ!三日月!」

 

三日月「ハァッ!!」

 

ドシュッ!

 

三日月はコーラルの乗るグレイズのコクピットを、ガーベラストレートで真っ直ぐに貫いた。

 

GH兵「…そ、そんな…」

 

アイン「…またしてもあいつらに…!」

 

アインは歯を噛みしぎり、手に持っていたライフルをなげすて、二機のガンダムに向かって飛来する

 

アイン「これ以上…好き勝手させるかぁ!!」

 

 

 

三日月「ありがとう、ユーリ。はい」

 

ユーリ「いいよ、持ってて」

 

ユーリはガーベラストレートを返そうとする三日月にそう告げる

 

三日月「え、いいの?武器無くなるんじゃ…」

 

ユーリ「まだあるから、気にしないで使って…でも折らないでね?」

 

ユーリのそう言うが、三日月は聞いていなかったようで、手に持っていた滑空砲とその弾薬の入ったマガジンを渡す

 

三日月「…んじゃあこれあげる」

 

ユーリ「え?ちょっと」

 

三日月はそう言うと、飛来してくるグレイズに突っ込んでいく。

 

 

 

 

ユーリ「…私、射撃できないんだけど…」

 

 

 

 

アイン「うおおおお!!」

 

アインは雄叫びをあげながら三日月にきり掛かるが…

 

ヒュンッ!

 

アイン「ッ!?な、何ッ!?」

 

三日月「邪魔」

 

ドガァッ!

 

アイン「ぅぐぁっ!?」

 

 

三日月は軽く避け流し、振り返ったグレイズの腹部を思い切り蹴り上げた。

 

GH兵「クッソオォ!当たれ!当たれェェ!!」

 

ガガガンッ!ガガガンッ!

 

GH兵がライフルを撃ちまくるがこれも軽く避けられる

 

三日月「…だいぶ宇宙にも慣れてきたな」

 

GH兵「でやぁぁっ!!」

 

GH兵はなおも接近しながらライフルを撃ち続けるが、

 

ガンッ!

 

GH兵「うわぁっ!?」

 

GH兵の持つライフルに、突如として巨大な穴が開き、爆発した。

 

 

 

ユーリ「…ねえ、ハロ。今の直撃コースだったって言ってなかった?なんで銃に当たるの?」

 

ハロ「シラナイッ!シラナイッ!」

 

コクピットに連結されている真っ白なハロがそう告げる。

 

ユーリ「…使えない奴」

 

ハロ「ミトメタクナイ!ミトメタクナ〜イッ!」

 

ユーリ「…別にいいや」

 

ユーリはそう言うと、三日月に襲いかかろうとしていた別の一機のグレイズ目掛けて突っ込んでいく

 

GH兵「!?な、なんだ、こいつ!」

 

GH兵は急に接近してきたアビスに対し、ライフルを撃つが、バルバトスよりも機動性の高いアビスに当たるわけもなく、超至近距離にまで接近する

 

ユーリ「当たらないなら…」

 

ドゴォッ!

 

GH兵「おぶっ!」

 

ユーリは土手っ腹を蹴り上げ、隙だらけのグレイズに滑空砲を突きつけ…

 

ユーリ「当たる距離で撃てばいい」

 

バガァンッ!

 

ゼロ距離で撃ち落とした…

 

三日月「…至近距離で撃てば、装甲貫通できるのか…」

 

その光景を見ていた三日月はグレイズをあしらいながらそう言う。

 

しかし、

 

キンッ!

 

三日月「ッ!…掠めた?ってか、どこから…」

 

三日月のバルバトスの上方から、新たな一つの光が見えた。

 

三日月「…新手?」

 

 

ガエリオ「コーラルめ…我々を出し抜こうとしてこのザマか…しかし、こいつはグレイズを4機…向こうは3機か…見てくれよりはできるようだな!」

 

上方から現れたのはグレイズを改良した機体、シュヴァルべグレイズ

である。そしてそれに乗っていたのは、ガエリオ・ボードウィンであった

 

 

 

ーーGH 戦艦ーー

 

GH兵「ガエリオ機、接敵しました」

 

ブリッジの中で、GH兵がマクギリスに報告する

 

マクギリス「…2機とも形が似ているが、見ない機体だな。照合できるか?」

 

GH兵「それなんですが…あそこの一機と、強襲装甲艦から出てきたグレイズのエイハブウェーブは確認しているのですが、あの妙な粒子を放つ黒いモビルスーツからは何も感知できないのです…」

 

マクギリス「…なに?」

 

マクギリス(…感知できない…初めてのケースだ。エイハブリアクター以外の動力で動いているとでも言うのか…)

 

マクギリスは思考を回転させていると、GH兵からまた報告が来る

 

GH兵「一応、白い方のモビルスーツは特定できました」

 

マクギリスはその画面を見ると目を疑った

 

マクギリス「…バルバトス…ガンダム・フレームか。となると、もう一機の方もそれか」

 

GH兵「マッチングエラーでしょうか…?相当古い機体ですよ…?」

 

GH兵は訝し気にそう言う。ガンダム・フレームは約300年前の厄祭戦時代の兵器なのだから、そう思うのもおかしくはない。しかし、マクギリスは意外なことを言う

 

マクギリス「…いや、もしかしたらこれは、必然の事なのかもな…」

 

GH兵「え?」

 

マクギリス「その名を冠する機体は、幾度となく歴史の節目に存在し、人類史に多大な影響を与えてきた…火星の独立を謳う、クーデリア・藍那・バーンスタインが、それを従えているのだ…」

 

マクギリスは妙に興奮したようにそう話していた

 

 

 

GH兵「ヒッ!や、やめ…!くるなぁァァァ!」

 

バギンッ!

 

三日月「うるさい」

 

三日月はまたもグレイズのコクピットを粉砕していく。しかし…

 

三日月「それにしてもこれ…使いづらいな…ユーリってよくこんなの使えるな」

 

三日月はまるでメイスの時と同じように使う為、斬る、というよりもはや叩きつけていた

 

 

 

 

マクギリス「…フッ」

 

マクギリスは不敵な笑みを浮かべると、部下に指示する

 

マクギリス「船は任せたぞ。私も出る」

 

そう言うとマクギリスはブリッジを離れた…

 

 

 

三日月「…また増えた。一体何機いるんだ?こいつら…」

 

ユーリ「愚痴っていても仕方ない…何機いようと、やる事は変わらないんだから」

 

三日月「…うん、そうだね」

 

バルバトスとアビスが互いに背を向け合いながら話していると、

 

ガエリオ「何を!余所見している!」

 

ガエリオが高速接近しながら、専用の武器、ランスを持ち、突貫してくる。しかし…

 

ユーリ「…意外と早いな」

 

ドガァッ!

 

ガエリオ「ッ!?なに!?」

 

ユーリは避けることなどせず、自分に向かってくるランス自身を思い切り横に蹴り上げ、軌道をずらした

 

ガエリオ「うぐッ…!クソッ!この俺がこんな…!」

 

ガエリオは悪態をつきながらも、体勢を整える

 

三日月「…俺、あいつ嫌いだな。すぐ逃げるから」

 

ユーリ「機動性には機動性をぶつけた方がいい…私がやる、三日月はもう一機を」

 

三日月「…了解!」

 

 

三日月はそう言うと、出撃してきたマクギリスに狙いを定め、接近していく

 

マクギリス「…ほぉ、一機で私に来るか…面白い!」

 

三日月「…早く終わらせる!」

 

 

 

ユーリ「…三日月が食いついたか…さて…来なよ。ちょっとばかし機動性を上げただけの機体が…アビスには到底追いつけやしないってこと、教えてあげる」

 

ユーリは滑空砲を持ちながらどうこうするでもなく、ただ立っていた

 

ガエリオ「ッ!…貴様ぁ…!侮辱するのも大概にしろッ!!」

 

ガエリオはユーリの言葉が聞こえていたわけではなかったが、自分という敵を前にして、何をするでもなく、ただ突っ立っているという行為が頭に血を昇らせ、猪突猛進に突っ込んでくる。それをみたユーリは…

 

ユーリ「…来いとは言ったけど、馬鹿の一つ覚えみたいに…」

 

ブンッ!

 

ユーリはそう言うと、突っ込んでくるガエリオに対し、思いっきり滑空砲を投げつけた。

 

ガエリオ「ッ!?こいつ、武器を!?…だがッ!」

 

ガシャァァンッ!

 

ガエリオはその行動に驚いたが、投げられた滑空砲自体を弾き、再びユーリに接近しようとするが…

 

ガエリオ「…!?いない!?レーダーにも反応が無い…一体どこ「ドシュッ!」うわぁッ!」

 

ユーリ「遅い」

 

ユーリはガエリオが、自分から目をそらした一瞬の隙に、ガエリオの背後に周り、頭部に「対装甲コンバットナイフ アーマーシュナイダー」

を突き刺していた。その動きはまるで、三日月が火星でグレイズと戦った時に取った動きと同じであった。

 

しかし、ユーリはそれだけに留まらず、そのあとシュヴァルべグレイズを《捕まえる》と、GNカタールを飛ばし、その切っ先をガエリオのコクピットに向ける

 

ユーリ「…これじゃ、避けられ無いでしょ」

 

ガエリオ「なっ!?なんだ、こいつは!?剣が…飛んでいる!?クソッ!動け!動いてくれッ!」

 

ギギギ…

 

ユーリ「それじゃ…さようなら」

 

ガエリオのグレイズはアビスに羽交い締めにされ、身動きが取れず、それ故に回避もできない。その状態で、ユーリは一思いにとどめを刺そうとする…だが、

 

ガギィンッ!

 

ユーリ「…!?きゃぁっ!」

 

ユーリは突如として横側からバトルアックスで斬り付けられる

 

マクギリス「…そう簡単に友をやらせはしないさ」

 

ガエリオ「ま、マクギリス!助かった!」

 

ユーリを斬りつけたのは、三日月が相手をしているはずだったマクギリスであった。彼は三日月と戦いながらも、ガエリオが窮地にあることを察し、三日月を振り切りながらもユーリを斬りつけたのだ。

 

 

三日月「ユーリ!」

 

ユーリ「…大丈夫。機体にはダメージは無いから…」

 

確かに、アビスはGNフェイズシフト装甲のお陰で傷一つつかなかったが、中のパイロットであるユーリにはそうもいかず、斬りつけられた時の衝撃で頭を打ったのか、額から血を流していた…

 

ユーリ「…三日月、向こうは連携で来る。だからこっちもそうする」

 

三日月「え、連携?…俺、やり方わからないよ?」

 

ユーリ「大丈夫、三日月は今まで通り好きに動いていい、わたしがそれをサポートする。撃たれる心配なんてしなくていい。ゴリ押しで行って」

 

ユーリは目にかかる血を払いながらそう告げる。その時の血で半分濡れたユーリの顔を見た三日月は一瞬顔を歪ませるが、すぐに切り替えた

 

三日月「…わかった。そういうことなら、全力でいく!」

 

三日月は銀色に輝くガーベラストレートを持ち、ユーリを、仲間を傷つけた静かな怒りを乗せて、振るうのであった…

 

 




…はい!如何でしたか?なのだ!戦闘シーンって、ホント難しいのだ…。戦闘の描写が伝わりにくかったらごめんなさいなのだ…。それでは次回も見てくださいなのだ!


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逆転の狼煙

こんにちはなのだ!毎度お馴染み黒アライさんなのだ!自分で言っといてなんだけどお馴染みでもなんでも無いなのだ!最近小説を書くよりもこの小説にくれる感想を読む方が楽しいのだ!それと、下手なりにユーリちゃんを描いてみたから見てくれると嬉しいのだ!それではどうぞなのだ!


ズガンッ!ガギィンッ!バゴォンッ!

 

アトラ「うわぁッ!?」

 

オルガ達の乗るイサリビとグレイズ改にのる昭弘は奮戦しつつも、オルクスの装甲艦は前を向いているイサリビの真後ろにおり、なおかつイサリビが撃ち合う為に反転しようにも止まった瞬間撃沈されることが目に見えているため、うかつな判断はできない状態であった

 

ユージン「おわっ!くそッ!どうにか振り切れねぇのかよ!?」

 

ビスケット「こっちが一度高度を下げた分、向こうのほうが早いんだ!」

 

イサリビは輸送艇を確保する時に一度高度を下げてしまっているため、オルクス達よりも高度が艦一隻分低かった

 

ユージン「なら真っ向から撃ち合うぞ!」

 

ビスケット「回頭するにしても、足を止めたらその場で沈められる!」

 

ビスケットの言うことは全て本当のことであり、それ故に打開策を練るのが厳しかった。その時…

 

オルガ「…なあ、ビスケット、アレ使えねぇか?」

 

ビスケット「?あれって…資源採掘用の小惑星?」

 

オルガが指差したそれは、小ぶりの小惑星であった

 

ビスケット「え、使うったって、あんな岩、なににどう使うのさ!」

 

オルガ「…フッ…」

 

オルガは冷や汗をかきながらも不敵に笑い、ビスケットにある作戦を伝える

 

 

 

ビスケット「…正直、正気の沙汰とは思えない作戦だ…。できたとしても問題は離脱方法だ…船体が振られた状態での砲撃は当てにできない。例えば、誰かがモビルワーカーでアンカーの接続部に取り付いて、爆破するとかしないと…」

 

シノ「んなもん自殺行為だ!誰がやるってんだよ!」

 

ビスケットはオルガから伝えられたある作戦の一部を伝えるが、その一部の時点でほぼ運に近い作業をしなければいけなかった。理論的にできるとはいえ、失敗する確率の方が高く、失敗すればイサリビのメンバーは全滅である。そんな作戦に、シノが反対していた。その言葉もオルガは予想しており、予定通り自分が行こうとするが、

 

オルガ「危険な事は百も承知だ。だがこのままじゃ遅かれ早かれ、落とされることに変わりはねえ!だから、この作戦を実行する必要がある。いくのは勿論、言い出しっぺの俺「待てよオルガ!」…!?」

 

オルガの言葉を遮ったのは、ユージンであった。そして、慎重な彼らしくもない言葉が、彼自身から発せられる

 

ユージン「テメーは大人しく座ってろ。大将ってのは奥ででっかく構えてるもんだろうが。ノコノコ出ていくなんてみっともねえ真似は俺が許さねえ…!その大役、この俺が引き受ける!」

 

シノ「なっ!?」

 

ビスケット「ユ、ユージンが!?」

 

二人は驚き聞き返すが、その中でオルガは、ユージンに最後の確認と言わんばかりに、問う

 

オルガ「…いいんだな?ユージン」

 

ユージン「あぁ…どの道この作戦を誰かが引き受けねえと、遅かれ早かれ撃ち落とされる…テメーが言ったことだろ?」

 

ユージンのその言葉に、オルガは頼もしさを感じながら皆に伝える。

 

オルガ「…わかった…!昭弘!一旦イサリビに戻れ!皆聞いたな!早速準備に取り掛かれ!一度きりのチャンスだ…!絶対に掴むぞォ!」

 

「「了解!」」

 

オルガは昭弘は撤退命令を出し、作戦を開始する…

 

 

ーーオルクス艦内ーー

 

オルクス私兵「敵艦、高度上げます!」

 

オルクス「ふん、小惑星を盾にする気だろうが、無駄な足掻きだ!構わず撃ち続けろ!いずれ落ちる!」

 

オルクスはグレイズも撤退したことに不信感は抱いたが、とにかくイサリビを撃つことだけを考え、執着に狙いつづける

 

 

 

ガンッ!バガァンッ!

 

ダンテ「ったく!どうなっても知らねぇぞ!?団長!」

 

オルガ「んなもん、乗り込んだユージンに言え!」

 

ユージン「んなこと言わせっかよ!」

 

ユージンは宇宙用に改装されたモビルワーカーに乗り込み、機会を待つ。

 

チャド「ユージンの出撃準備、完了!」

 

オルガはその言葉を聞くと、焦る心を落ち着かせ、号令をかける

 

オルガ「さぁ!鉄華団の門出だぁ!景気よく前を向こうじゃねえか!」

 

ビスケット「了解!アンカー、射出!」

 

バシュンッ!

 

ビスケットがそう叫ぶと、イサリビの前方の左右についてある二機のアンカーのうち一方が射出され、小惑星にくっつく。その行動にオルクスも動揺を隠せなかった

 

オルクス「…!?あいつら、一体なにをするつもりだっ!?」

 

そして、オルクスは目を疑うような光景を目にする。

 

オルガ「出力上げろ!皆、耐えろよォ!」

 

ギュォォォォォンッ!!

 

イサリビはなんと、小惑星を起点に、アンカーを繋げたまま加速し、振り子のように遠心力を受けながらも小惑星の周りをぐるっと回る。そしてオルガ達の目の前に見えたのは、オルクスの船であった。

 

しかし、まだ問題はあった。イサリビ自身は見事180度回頭することができたが、アンカーは小惑星に接続されたままである。だがイサリビ自身でアンカーを外すことはできない。そこで、彼の出番である。

 

オルガ「やれぇっ!ユージン!」

 

ユージン「オォォォォォォッ!!」

 

ガンッ!

 

ユージンは雄叫びをあげながら、モビルワーカーで小惑星に接続されているイサリビのアンカーの鉄線を辿り、ぶつかるようにしてアンカーの接続部分に到達する。

 

ユージン「よっしゃぁっ!!派手にかますぜぇっ!!」

 

バババババッ!!

 

ユージンはそう言うと、射出する前にあらかじめアンカー部分に取り付けてあった爆薬に向けて、モビルワーカーの機銃を撃ちまくる。そして、その機銃の弾幕に爆薬が当たり、爆発する。だが…

 

シノ「ッ!?ヤベェ!抜けてねぇぞ!」

 

シノはイサリビのモニター越しに映るアンカー部分を見てそう言う。

 

ビスケット「計算よりアンカーが深く突き刺さってるんだ!このままじゃ…!」

 

しかし、オルガはまだ諦めてなかった

 

オルガ「いいやまだだっ!アイツなら絶対にやりとげるッ!だろ!ユージン!!」

 

ユージン「ッ!テメーのそう言うとこはっ!ほんっと気に入らねえなァァァァァッ!!」

 

ユージンは考えるよりも、もはや身体が勝手に動くレベルで、とっさにモビルワーカーの後ろに装着してある推進剤ボンベを切り離し、アンカーの接続部分にぶつけると、そのボンベに向かって再び機銃を撃ちまくる

 

バババババババッ!

 

ユージン「オラオラオラオラァッ!!」

 

バガァァァンッ!!

 

機銃に撃ち抜かれたボンベは誘爆し、アンカーの先端を破壊した。

 

ユージン「…ヘッ…見たかよ、クソ野郎…」

 

ユージンは見事、作戦を成功させたのである。そして、それが意味するのは…

 

オルクス私兵「敵艦、回頭!来ますッ!」

 

オルクス「なぁにいぃ!?」

 

イサリビは全速力で小惑星を回ったときの遠心力から生まれた推進力をいかし、イサリビのその巨体を、オルクスの艦に火花を散らし、擦りつけながら横側についている主砲を、オルガの指示に合わせ、一斉に放つ。

 

 

オルガ「主砲斉射ァァァ!!」

 

ドガンッ!バゴォンッ!ガギャァンッ!!

 

オルクス「ヌォォォ!?」

 

ビスケット「続けて閃光弾!撃てぇっ!!」

 

ビスケットは後方に閃光弾を撃つことにより、オルクス艦は至近距離でその閃光を浴びることとなる

 

オルクス「ぬあっ!!クソッ!照準補正急げぇっ!!」

 

オルクスはそう指示するが、目眩しを喰らったオルクス艦はそれどこれではなかった

 

オルクス艦とイサリビはすれ違いになり、互いに真反対向きになっている状態である。それすなわち、オルクス艦はイサリビの後手に回ることを意味していた。

 

 

 

シノ「いやッシャアァァァ!!」

 

ダンテ「かましてやったぜこんちくしょうがぁ!!」

 

鉄華団のクルー達はオルクス艦を出し抜いたことに喜び、はしゃぎまくる。しかし、ここはまだ戦場である。オルガはすぐに、今尚戦闘を続ける二人のパイロットについて状況を聞く

 

オルガ「ミカとユーリは!?あいつらはどうなってる!?」

 

チャド「ユーリ機は機体の性質上捕捉不可能!三日月は…!」

 

三日月を探すチャドだったが、アトラがチャドよりも早く三日月を見つけた

 

アトラ「…!あそこ!三日月とユーリちゃんがいるっ!!」

 

 

オルガ「っ!!」

 

オルガはアトラの指差す方角をみる…

 

クーデリア「…あの光は…」

 

 

 

ーーグレイズ対ガンダム戦闘域ーー

 

マクギリス「これが避けられるか!?」

 

バシュンッ!

 

三日月「…っ!?」

 

ユーリ「させないっ!!」

 

ガキンッ!

 

マクギリス「…!?ほお、キミが変わりに受けるか。ならば遠慮なく!」

 

マクギリスは背を向けている三日月に向けて、右手に装備しているアンカーを射出するが、ユーリが三日月を庇い、アビスの腕部にアンカーが絡みつく。マクギリスはそのアンカーを引っ張り、ランスに付属しているライフルでアビスを撃つ。だが、

 

ガギンッ!ギンッ!ガンッ!

 

ユーリ「そんな弾!アビスには効かない!!」

 

ユーリはあえて避けずにライフルを受けるが、アビスのもつGNフェイズシフト装甲がライフル弾をいとも容易く弾き、そしてアンカーに引っ張られることに抵抗せず、むしろ自分からマクギリスに接近していき、

 

マクギリス「っ!?」

 

ユーリ「ハァァッ!」

 

ドギャッ!

 

ユーリはマクギリスに向けて蹴りを放つ。マクギリスはそれを冷静に、かつ最小限の動きで避けるが、何故か少し掠めただけのシールドが《真っ二つに両断される》

 

マクギリス「…なにッ!?」

 

マクギリスは何故シールドが破壊されたのか、必死に頭を回転させる。すると、答えはすぐにわかった

 

キラッ…

 

マクギリス「…!そうか!足先にナイフがついていたのか!」

 

そう、ユーリのアビスは腰部後方にある2本のアーマーシュナイダーだけではなく、両足の足先にも仕込み武器のように、刺突式のアーマーシュナイダーが搭載されていたのだ

 

マクギリス「…これは、まともに近づけんな…」

 

マクギリスは近接は不利と見て、一定の距離を取る

 

ユーリ「…もうアーマーシュナイダーに気づいたか…意外とよく見てる…」

 

ユーリ(…マズイ、早めに倒さないと、三日月が危ない…!でも、コイツも強い…!)

 

ユーリ「…ごめん三日月。もうしばらく耐えてて…!」

 

ユーリはガエリオ機と交戦する三日月を確認しながらそう言った

 

 

 

 

三日月「…こいつ、ちょこまかと!」

 

三日月は初の宇宙戦で、慣れるまでにスラスターをふかしすぎていたため、スラスターが不調を起こしていた。ガエリオはそれに気づいたのか、近づかぬようにし、攻撃を加えていく。

 

ガエリオ「ふん!もう一機の方は焦ったが、貴様相手なら、この俺の敵ではない!」

 

ガエリオは右手についているアンカーを三日月の脚部に絡み付ける。そしてガエリオは通信機を使い、三日月とユーリに聞こえるように話す。

 

ガエリオ「今のうちに投降すれば、然るべき方法で処罰してやるぞ?」

 

しかし、三日月とユーリはキッパリと答える

 

三日月「投降はしない!」

 

ユーリ「する理由も無い!」

 

ガエリオ「っ!?」

 

ガエリオはその返事、というより、その声に驚いていた。

 

ガエリオ「そのクソ生意気な声…あの時のガキどもかぁっ!」

 

三日月「!そういうあんたは、たしかユーリにナイフ投げられてビビってた…」

 

通信越しに聞こえるその声を聞いた二人も思い出す

 

ユーリ「…世間知らずの坊ちゃんか…!」

 

ガエリオ「ガエリオ・ボードウィンだ!変な覚え方をするなぁっ!」

 

ガエリオはそういうとアンカーを一層強く縛り付ける

 

ガエリオ「火星人はぁ!火星に帰れェェ!!」

 

ガエリオのそう叫ぶ声に、三日月はマクギリスと戦っているユーリと同じように、自らガエリオ機に突っ込む。

 

ガエリオ「!?気でも触れたか!宇宙ネズミがぁ!」

 

ガンッ!ガンッ!

 

ガエリオは接近する三日月にライフルを撃つが、三日月は冷静に考える。

 

三日月「…確か、ユーリはあの時…」

 

三日月は思い出したようにそう呟くとガーベラストレートを思いっきりガエリオにぶん投げる

 

ガエリオ「!?コイツら!武器を投げる習慣でもあるのかぁ!?」

 

ガエリオはユーリに一度滑空砲を投げられたことにより、痛手を負ったことを思い出していたが、冷静にガーベラストレートを弾く

 

ガエリオ「武器を投げた後は、後ろに来るんだろ!?」

 

ガエリオはユーリの動きからそう予想し、後ろを向くが…

 

マクギリス「ガエリオ!避けろぉ!」

 

ガエリオ「なっ!?」

 

そこには三日月のバルバトスではなく、後ろから急接近していたアビスがいた。

 

ユーリ「一度ならず2度までも…私の、家族達を!侮辱したなぁ!!」

 

ガギンッ!

 

ガエリオ「うおぉっ!?」

 

ユーリは普段の性格からは想像できない程怒り、足先のアーマーシュナイダーでガエリオのコクピットを貫こうとするが、マクギリスの忠告のおかげか、いち早く反応でき、コクピットの装甲板を、ギリギリパイロットに届かないレベルで切り裂いていた。

 

 

 

ユーリ「…チッ、運のいいやつ…」

 

三日月「ユーリ!手を!」

 

ユーリは下にいた三日月に手を引かれ、横から現れたイサリビに捕まり、その勢いで戦闘区域から離脱していった

 

三日月「そうか…俺が戦ってた相手があのビビり野郎だとすると…もう一機は、あのチョコレートの人か」

 

三日月はイサリビの上部に捕まりながらそう言う。しかし…

 

ユーリ「…次会えば、必ず殺す…必ず…!」

 

三日月(…ユーリ、またキレてる…俺たちがあぁ言われるのなんて、いつものことなのに…)

 

とてつもない殺気を放ちながらずっとマクギリス達を見るユーリを三日月は見ながらそうおもっていた…

 

 

 

 

 

 

 

マクギリス「無事か?ガエリオ」

 

ガエリオ「…あんの小娘め…!いつか必ず落としてやる…!」

 

ガエリオはユーリにコクピットを切り裂かれた時の破片が腕に刺さり、出血していたが、それ以外はとくに怪我らしきものはなかった。

 

マクギリス「しかし…してやられたな。俺たちは」

 

アイン「…クゥッ!」

 

マクギリス達は、高速で戦闘区域を離脱するイサリビを、それぞれの思いで見続けていた…

 

 

 

 

 

 

 

ーーイサリビ モビルスーツドックーー

 

おやっさん「ヤマギ!いまから装甲外すからちょっと待ってろ!ユーリのお嬢ちゃん!必要な工具はあるかぁ!」

 

ユーリ「大丈夫。補給もいらない」

 

おやっさん「うおっ!?」

 

ヤマギ「うあっ!?」

 

ライド「うひっ!?」

 

シノ「ぎゃあ!?」

 

三日月「ッ!?」

 

ユーリは雪之丞の言葉に拡声機を使って話す。だが、外とは違い、密閉された狭い空間なので、ユーリの声が大音量で反響し、その場にいた全員が驚き、耳を塞ぐ。

 

おやっさん「ユーリ!お前拡声機の音量下げろぉ!!鼓膜が破れちまう!」

 

ユーリ「あ…ごめん…」

 

ユーリは言われた通りにアビスの拡声機を弄りはじめた

 

三日月「…びっくりした…」

 

三日月はそういうとドックから退室し、ノーマルスーツを脱ごうとすると、アトラとクーデリアにあう

 

アトラ「三日月!!」

 

クーデリア「お怪我はありませんか!?」

 

三日月「俺は大丈夫。みんなは?」

 

二人から心配されるが、三日月は適当に返し、皆の状態を尋ねる 

 

アトラ「私達は大丈夫!でも…」

 

三日月「…!」

 

アトラの指差した場所をみると、そこには辛うじてコクピットは無事なものの、半壊したモビルワーカーがあった

 

シノ「早く開けろぉ!」

 

ヤマギ「今開けます!」

 

バシュウ…

 

ユージン「…!」

 

「ハラハラさせやがって」

 

そう言って、開けたハッチの外から手を差し伸べたのは、オルガであった

 

ユージン「…クソみてえな作戦立てたテメーが言うなっての…たくっ」

 

パシッ

 

ユージンはそう言って差し出された手を掴み、ハッチから出てくる

 

オルガ「次もこの調子で頼むぜ?」

 

ユージン「ハァ!?ふざけんな!」

 

その様子をみた鉄華団の少年達は笑い合う

 

 

 

 

昭弘「…疲れた」

 

ユーリ「私も」

 

昭弘「…!?おま、いつ隣に!?」

 

 

 

 

 

ーーGH ハーフビーク級戦艦 内部ーー

 

ガエリオ「一体なんだ?謎のコンテナとは…」

 

マクギリス「さあな、我ら宛に贈られているらしいぞ?」

 

ガエリオ「…嫌な予感しかせん…」

 

ガエリオがそんなことを言ってると、目的のコンテナが見えた。

 

GH兵「特務監査、こちらです」

 

マクギリス「…これが?」

 

ガエリオ「小さいな…爆弾でも入ってるんじゃ無いだろうな?」

 

そう言って開放すると…

 

GH兵「な!?」

 

ガエリオ「…ほれみろ、ろくでもないものものをみるはめになった…」

 

マクギリス「…これは」

 

そこにはボロボロのボロ雑巾のようになり、腹の部分にメッセージが書かれたトドが入っていた

 

マクギリス「…『お前らの仲間らしいから、お前らでケジメをつけろ』…はて、なんのことやら…?」

 

 

 

 

 

 

ーーイサリビ 艦内ーー

 

オルガ「どうだ?追ってくる敵はいるか?」

 

チャド「今のところはなんとも…だがエイハブウェーブの反応はない。哨戒にでている奴らからも、とくに問題はないそうだ」

 

オルガ達はGHを出し抜いた後も、警戒を怠らなかった

 

ユージン「とりあえずは、助かったみたいだな」

 

ビスケット「油断はできないけどね…」

 

 

 

ーーイサリビ モビルスーツドックーー

 

おやっさん「…ったく、なかなか楽させちゃあくれねぇなあ…」

 

雪之丞はバルバトスの損傷データを見ながら、どこをどう弄ればいいのか探っていた

 

タカキ「おやっさん、バルバトスの装甲の張り替えって、モビルワーカーのでいいの?」

 

おやっさん「バカかお前。ナノラミネート加工をしてあるアーマーが、モビルワーカーと一緒な訳ねぇだろーが…」

 

タカキ「えぇえ?じゃあ一体どうすれば…」

 

おやっさん「ちょっと待ってろ、今調べてっから…たくっ…ロクな記録が残っちゃいねえ」

 

雪之丞はユーリが調べたバルバトスのデータの入っているタブレットを使うがその言葉どおり、有能な情報ははいってなかった

 

ヤマギ「おやっさん、リアクター周りってどうすれば「だから待ってろっていってんだろ!?」ひうっ!」

 

おやっさん「何度も言うが俺ぁモビルワーカー専門なんだよ…それこそ、モビルスーツなんてさわったのはガキの頃以来だ…」

 

その時、タカキが呟く

 

タカキ「ねぇおやっさん。このモビルスーツと、ユーリちゃんのモビルスーツって、大昔に作られた物なんでしょ?」

 

おやっさん「あぁ…昔も昔、厄祭戦時代の骨董品だ…もっとも、ギャラルホルン以外が使うモビルスーツなんざ、大抵が骨董品だかな…」

 

おやっさんはバルバトスを小突きながらそう言う

 

タカキ「厄祭戦って?」

 

ユーリ「300年もの前に起こった大規模戦争の事」

 

タカキ「あ、ユーリちゃん」

 

タカキの質問に答えたのは、ハロを抱えたまま無重力空間にぶらぶらと浮いているユーリであった

 

ユーリ「嘘か本当かはわからないけど、それこそ地球を破壊する程のモビルスーツが争ったと言われている」

 

タカキ「へ〜!…今更だけど、ユーリちゃんって歩くタブレットだよね」

 

ユーリ「…え?」

 

タカキは急にそんなことをいうと、何故か得意げに説明した。

 

タカキ「だって、ユーリちゃんって俺たちの知らないことなんでもしってるんだもん!」

 

ユーリ「…私は機械じゃない」

 

バシュン…

 

ユーリはその言葉に気を損ねたのか、アビスのコクピットに入り、閉じこもる

 

タカキ「…あれれ?」

 

おやっさん「…お前なぁ、誰だって機械扱いされたら嫌がるもんなんだよ」

 

タカキ「えぇ!?そうなの!?」

 

おやっさん「…たくっ…お前らはモビルワーカーの技術より先に常識を嬢ちゃんに教えてもらえ」

 

おやっさんはそういいながら作業に戻る

 

 

 

 

 

 

ーーイサリビ 食堂ーー

 

ガツガツッ!

 

三日月「…」ムグムグ

 

アトラ「すっごい食欲だね、三日月」

 

三日月「仕事の後は、腹減るんだ」

 

三日月はそういいながら、アトラの作った料理を頬張る。しかしそんな三日月に、アトラは神妙そうな顔つきで尋ねる

 

アトラ「…ねえ、三日月。ああいうのって、これからも続くのかな…」

 

三日月「多分ね。クーデリアを…ハグッ、狙ってる奴が大勢…ムグッ、いるみたいだから」

 

三日月は食べる手を止めずにそう話す。そんな三日月に、アトラは最大の疑問を問う。

 

アトラ「…ねえ三日月…怖くないの?」

 

アトラのその言葉に、三日月はやっと手を止め、考えるが、当然のように軽く言った

 

三日月「別に。そういう訓練を昔からしてたからね。それに…」

 

アトラ「…それに?」

 

三日月「ユーリが背中を守ってくれるから。安心して行ける」

 

アトラ「!!…そっか、ユーリちゃんが…」

 

アトラはそれをきくと、少ししょんぼりしてしまった。しかし、三日月はその話をもとにとあることを思い出す。

 

 

三日月「…そうだ、俺、ユーリに用があるんだった」

 

アトラ「え?」

 

三日月「ご馳走さま」

 

アトラ「えぇ!?」

 

三日月はそういうと、食器を片付け、そそくさと食堂から出る。

 

アトラ「…なんの用事なんだろう」

 

アトラは気になって仕方なかった。それもそうだろう。彼女にとって三日月は片思いを煩わせる相手である上に、相手は自分と同じかそれぐらいの女の子であり、その上自分よりも魅力的な部分がおおい少女なのだから、気になるのも仕方がない。

 

アトラは無意識に、三日月のもとをバレないようにこそこそとついていった…

 

 

 

三日月「…ユーリ、どこにいんだろ」

 

三日月はユーリを探すが、なにぶん性格が読みづらい子である為、どこで何をどうしているかわからなかった。

 

三日月「…地道に探すか」

 

三日月はそう思い歩いていくが、目の前の廊下に特徴的な白く丸いフォルムの機械、ハロがいた

 

三日月「…ついていけば着くかな」

 

ユーリ「どこに?」

 

三日月「ユーリのとこに…え?」

 

ユーリ「何?私に用?」

 

ユーリはいつのまにか三日月の後ろに立っていた。その事に三日月も少なからず驚いていた

 

三日月「…うん、そうなんだけど…凄いね、気配感じなかったよ」

 

ユーリ「腐っても元傭兵だから…それで、なに?」

 

ユーリはハロを回収し、三日月の前に立つとそう聞く。すると三日月は

 

サラッ…

 

ユーリ「…?私の髪がどうかした?」

 

三日月は急に、ユーリの前髪を捲し上げた。

 

三日月「…いや、あの時の傷、どうなったかなって」

 

ユーリ「傷?…あぁ、額を切った事?大丈夫、傷は残らないらしいし、今はもう痛くないから」

 

三日月はそれを聞くと少し笑って、ユーリに伝える

 

三日月「そっか、よかった…あの時、チョコレートの人を止めてれば、怪我させることもなかったんだけど…ごめん」

 

三日月はユーリに頭を下げて謝る。その行動に、ユーリは多少驚いたが、すぐにいつもの無表情に戻った

 

ユーリ「…わざわざそれだけの為に?」

 

三日月「怪我させたのは、俺の責任だから、謝っておきたかったんだ」

 

ユーリ「…三日月は意外と律儀なんだね。別に謝らなくてもいい。怪我したのは避けられなかった私自身の問題でもあるから、気にしないで…それと」

 

ユーリはそこで区切ると三日月の手を握り、告げる

 

ユーリ「ありがとう、心配してくれて。素直に、嬉しい」

 

三日月「!」

 

ユーリは軽く微笑みながらそう言った。

 

ユーリ「それじゃあ、私は仕事があるから、また」

 

三日月「…ああ」

 

三日月は少し遅れて返事した。そして、ユーリが廊下を曲がり、姿が見えなくなると、三日月は無意識に呟いた

 

三日月「…あんな顔もできたんだな」

 

三日月は無意識にそう言った事に気付かず、自分も仕事に戻っていった

 

 

 

 

 

 

アトラ「…ユーリちゃんと手を握って、何してたんだろ

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




…はい!いかがでしたか?なのだ!一応、ストーリーに忠実につくっているのだが、本当に一つ一つの話が長くて作るのが大変なのだ!それでは次回もまた呼んでくださいなのだー!


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鉄華団の行く先

こんにちはなのだ!黒アライさんなのだ!最近、アビスアストレイの武装はどうして行こうかなぁって考えてると、何故かガンダムエクシアを思い出してしまうのだ。ちなみにエクシアは出てこないのだ!それではどうぞなのだ!


ーーイサリビ ブリッジーー

 

ビスケット「で、これからのことなんだけども…」

 

シノ「オルクスが駄目になったからには、別の案内役を探さなきゃな」

 

オルガ達は、つい先程案内役であったオルクス達に襲われ、命からがら脱出してきていたところである。それ故に新しい案内役を探さねば、この広大で真っ暗な宇宙を永遠に彷徨う事になってしまう

 

クーデリア「あの、やはり案内役というのは必要な物なのですか?」

 

ユージン「そりゃ当然だぜ。生きて地球まで行きたかったら、案内役は必要不可欠だ。もし航路がわかっていたとしても縄張りがある以上、勝手に使えば銃口を向けられる…ユーリが最初の頃にいってたろ?」

 

オルガ「それに、ここまでギャラルホルンと拗れた以上、ただの案内役じゃ駄目だ。火星の奴らのこともひっくるめて協力してくれるような、でっかい後ろ盾がねぇとな」

 

シノ「後ろ盾かぁ…」

 

シノは力無さげにそう言う。実際、ギャラルホルンに対抗できる裏業者など、そうそういるものではない。

 

ビスケット「そんな企業、そうそういるものじゃないし、いたとしても、僕たちみたいな小企業に協力してくれるかどうか…」

 

ユージン「どうしたもんかね…」

 

プシュー…

 

オルガ「!ユーリ、遅かったな。だがいいところに来てくれた」

 

ユージンがそう愚痴っていると、ブリッジの扉が開き、ハロを抱えたままのユーリが入ってきた

 

ユーリ「…?なにか私の仕事が?」

 

オルガ「仕事って訳じゃねぇが、相談しときたかったんだ」

 

オルガはそう言うと、これまでの話したことを全てユーリに話した。その上で尋ねる

 

オルガ「なぁユーリ、ギャラルホルンとやりあえるような力を持ち、かつ協力してくれそうな企業…知らないか?」

 

 

ユーリ「…うーん」

 

いつも即決即断で動いてそうなユーリが珍しく頭を捻る

 

オルガ「…まぁ、そう簡単には出てこねぇか…」

 

ビスケット「そんな企業は滅多にいないからね…」

 

オルガ達が落胆した時、ユーリが呟く

 

ユーリ「…テイワズ」

 

オルガ「え?」

 

ビスケット「…テイワズ?って、あのテイワズ!?」

 

ビスケットが驚いて2度聞き返す

 

シノ「なんだ?テイワズって」

 

クーデリア「テイワズ…木星圏を拠点とする、大企業ですね。実態はマフィアだと言う噂もありますが…」

 

ユーリ「噂じゃない、本当の事」

 

ユーリはキッパリとそう答える

 

オルガ「マフィアね、確かに、大企業でマフィアっていうと、ギャラルホルンにも対抗してそうだが…果たして協力してくれるかどうか、だな」

 

ユージン「危険すぎやしねぇか?マフィアが噂じゃねえってんなら、会った瞬間、ズドン!とかになってもおかしくはないと思うぜ?」

 

ユージンはそう危惧するが、ユーリは言葉を付け加える

 

ユーリ「確かに、初対面の相手に優しくするほど、善良な企業じゃない。でもツテはある」

 

オルガ「…ツテ?」

 

ビスケット「テイワズにツテなんて…そのツテってどんな人なの?」

 

ユーリ「私」

 

シノ「…は?」

 

ユージン「え」

 

ビスケット「嘘…」

 

ユージン・シノ・ビスケット「えぇぇぇ!?」

 

ユーリは変わらず無表情でそう言うが、言ってる事はそれなりに大きい。それに驚くユージン達だが、オルガがだけは妙に納得していた

 

オルガ「なるほど、ユーリか。確かにツテがあってもおかしくはねぇ」

 

ユージン「!?な、なんでそう思うんだよ!」

 

オルガはユージンの言葉に、当たり前のことを言う。

 

オルガ「思い出せユージン。ユーリは鉄華団に入る前は、実態はどうあれ、鈴付きとしてそれなりに名を広めていたんだぜ?その中に、テイワズの一員の中に、ユーリの名を知ってるやつがいたとしても不思議じゃねえ…不思議じゃねえがよ、それだけじゃちとツテとしては弱えんじゃねぇの?」

 

オルガはそういいだす。確かに、名は知っていたとしてもおかしくはない。だが、所詮《知っているだけ》である。ユーリは傭兵時代、ほぼ素性を晒していないが故に鈴付きとしての名しか知らない者がほとんどだ。そんな素性の知れない傭兵を、雇う事は考えられなくもないが、受け入れるとはあまり思えない。ユーリもそれはわかっていた。だが、まだ切り札はあった

 

ユーリ「もちろん、それだけで受け入れてくれるとは思えない。だから、もう一手ある」

 

ビスケット「もう一手?」

 

そしてユーリは、更に驚く発言をする

 

ユーリ「私の母親、『アメリア・アルレイズ』は、テイワズと友好関係にある…らしい」

 

ユージン「なっ!?」

 

ユージン・シノ・ビスケット「何ィ!?」

 

クーデリア「驚きました…まさか、ユーリさんの母君が、その、マフィアだったとは…」

 

オルガ「ちょっとまて」

 

オルガは驚くユージン達を傍目に、ユーリに問いただす

 

オルガ「ユーリ、お前さっき、らしいって言ったよな?つまり確証はねえってことか?」

 

ユーリはその言葉に、少し目を背けながら語る

 

ユーリ「…昔、お母さんが生きてた時は、テイワズに雇われてることが多くて、誰かと友人だったって言ってた。誰かは知らないけど…でも、テイワズとしてそれなりに立場のある人だったらしい…そして、テイワズの友人である母親のその娘という立場があれば、話ぐらいは聞いてくれる…かもしれない」

 

ユージン「…随分、不確定要素が多いな」

 

ユーリの言葉に、ユージンが言う。だが、オルガはそれを聞くと笑みを浮かべる

 

オルガ「いや、上出来だ」

 

シノ「だな!」

 

ユーリ「…上出来、なの?」

 

ユーリは不安そうに尋ねるが、オルガは力強く答える

 

オルガ「そもそも、なんのツテも無い俺達が、テイワズという大企業に受け入れられるなんて考えられねぇ。それどころか、門前払いされるのがオチだと考えていたが、ユーリのおかげで、確証はないとは言え、そんな立場から話を聞いてくれるところまで持って行けたんだ。十分だろ」

 

ビスケット「成功するかどうかは、その交渉をする僕達次第ってことだね」

 

シノ「なら、今までとあんまかわんねぇな!」

 

オルガ達はそう言い、次の道が決まりつつあった。しかし、一番の問題がでてきた

 

ユージン「…それでいいんなら別にいいけどよ、問題は、そのテイワズんとこにどうやっていくんだよ。まさか、木星までいくのか?」

 

ユージンはそう唱える。実際、テイワズの本拠地である木星は、今から行くとなると、相当な距離がある。しかし、オルガはキッパリと言った

 

オルガ「もちろん、いくしかねぇだろ」

 

ユージン「…うそだろ」

 

ビスケット「今の状態じゃ地球に行くことも、火星に戻ることもできない。どっちみち木星に行くしか道はないんだよ」

 

シノ「うっは〜、面倒だなぁオイ〜…」

 

行くべき道は決まったが、まだまだ道のりは遠かった…

 

 

 

ーーイサリビ 廊下ーー

 

クーデリア「…ふう」

 

クーデリアは窓から宇宙を見ながらため息をついていた

 

クーデリア(ギャラルホルンの一部に狙われるだけで、こんなにも苦しい道のりを通らなくてはならないなんて…)

 

クーデリアは憂鬱になりながら宇宙を見ていると、

 

アトラ「あ、クーデリアさん!」

 

クーデリア「アトラさん、三日月…」

 

大きいカバンを背負ったアトラと三日月が、クーデリアに話しかける

 

三日月「何してんの?こんなところで」

 

クーデリア「つい先程、これからの進路について話し合っていたところです」

 

三日月「ふーん」

 

三日月は興味無さがにそう返事した。その返事に、クーデリアは訝しげな表情をしながら三日月に問う

 

クーデリア「…三日月、何故貴方は来なかったのです?鉄華団のこれからは、貴方にも充分関係のあることでしょう、気になったりはしないのですか?」

 

クーデリアのその言葉に三日月は少し間を置いて答える

 

三日月「…別に。難しいことなんて俺にはわからないし、そもそも、オルガが決めたことなら、俺はそれを信じて進むだけだ」

 

三日月は淡々とそういった

 

クーデリア「そうですか…あの、ところでそれは?」

 

三日月の言葉に納得したようなしてないような顔をしていたが、もう一つの疑問について、クーデリアは背負っている鞄を指して尋ねる

 

アトラ「あ、これ?」

 

三日月「弁当だよ」

 

クーデリア「弁当…?食堂でたべればいいのに、わざわざ、つくっていくのですか?」

 

クーデリアが尋ねると、アトラが困ったよう苦笑いしながら返答する

 

アトラ「皆忙しくて、食堂に来る時間なんであまりないんです。だから、こうやって弁当作って持っていってあげないといけないんですよ。三日月は、その手伝いを頼んでるんです」

 

三日月「そういうこと。もういい?早くしないと、あいつらの食べる時間が減るから」

 

説明し終わったアトラを連れて、三日月は弁当の配達を再開しようとするが、クーデリアがまだ呼び止める

 

クーデリア「ま、待ってください!」

 

三日月「…何?」

 

クーデリア「わ、私にも、お手伝いさせて下さい!」

 

クーデリアは半分無意識にそう言っていたが、三日月達は人手は多い方がいいのか、片方の鞄をクーデリアに渡した

 

アトラ「落とさないように、気をつけて下さいね」

 

クーデリア「あ、はい」

 

 

 

 

 

ーーイサリビ 倉庫室ーー

 

「こっちこっちー!」

 

「パスパス!ほい!」

 

「おいこら!投げんじゃねえよ!危ねぇだろーが!」

 

そこには鉄華団の少年達が、さまざまな物資の入ったコンテナを次々と整理する光景が見られた。そこに、弁当を持ってきた三日月、アトラ、クーデリアが現れる

 

アトラ「皆さーん!弁当持ってきましたよー!休憩にしてくださーい!」

 

「お!飯か!」

 

「悪い!俺のもとってきてくれ!」

 

「自分で取ってこいバカ!」

 

アトラ達三人の周りに、あっという間に人だかりが出来る。

 

三日月「ほら」

 

「ありがとうございます!三日月さん」

 

アトラ「焦らないで!弁当はまだあるから!」

 

クーデリア「はい、どうぞ」

 

「ありがとーねーちゃん!」

 

三人はそうして、必要な分の弁当を置いていくと、次の部屋にむかっていった。

 

 

 

 

ーーイサリビ 個室ーー

 

昭弘「ッフンッ!ッフッ!」

 

イサリビの所々空いている個室、その一室をトレーニング室として使っている昭弘がいた。

 

プシュー…

 

昭弘「あん?」

 

三日月「昭弘、弁当ここに置いてくから」

 

昭弘「おぉ、三日月か。あぁ、わかった。それとよ」

 

三日月「ん?」

 

昭弘は思い出したように腹筋しながら三日月を呼び止め、一つの頼み事をする

 

昭弘「後で、シミュレーター付き合えよ。ユーリも呼んでっからよ」

 

三日月「わかった」

 

三日月はそう言って、次の場所に弁当を届けに行った

 

 

 

 

ーーイサリビ エレベーターーー

 

ウィーン…ガチャン…

 

アトラ「じゃあそのテイワズって人のところへいくの?」

 

三日月「そうだけど、テイワズって人じゃなくて、会社の名前じゃなかったっけ」

 

クーデリア「えぇ、そうですよ」

 

三日月達三人は、下層へと向かうべく、エレベーターに乗っていた。その最中に、三日月は会議で決まったことをクーデリアに聞いていた

 

クーデリア「ただ、テイワズは地球にも影響力のある巨大な複業企業です。ユーリさんの助力があるとは言え、そう簡単にはいかないでしょうね」

 

三日月「ふーん」

 

三日月は聞いておいて興味なさげにそう答える

 

クーデリア「…三日月は、会議のこと、本当に気にしていないのですね」

 

三日月「人を薄情者みたいに言わないでくれる?」

 

クーデリア「あ、いえ!そんなつもりは…」

 

クーデリアは焦りながら否定するが、言ってることはそれと同じである

 

三日月「興味がないんじゃない、ただ、俺が口出しすることなんて何もないから。オルガ達鉄華団が決めたことなら、俺はそれについていく。さっきも言ったでしょ?それに…」

 

三日月「俺、なんでアンタが地球までいく必要があるのかもわからないし」

 

アトラ「えぇ!?」

 

アトラは持っているカバンを落としそうになるぐらいドン引きしていた。しかし、その理由は三日月がその目的を知らなかったということではない

 

アトラ「私達、地球へいくの!?」

 

三日月「言ってなかったっけ?」

 

アトラ「…多分、聞いてなかった」

 

アトラは地球に行くことすらも知らず、今回の遠征に参加していたのだ。その様子に、クーデリアも少し苦笑いする

 

アトラ「どうしよう…お洒落な服とかもってないよ…」

 

三日月「そのままでいいんじゃないの?」

 

アトラ「駄目だよ!田舎者だと思われちゃう…」

 

騒ぐアトラを傍目に、クーデリアは話す。

 

クーデリア「…私が地球へいくのは、火星の人々の自由な暮らしを勝ち取る為です」

 

アトラ「え?」

 

三日月「…」

 

二人は予想とは少し違った理由に、少しばかり不思議に思った

 

クーデリア「…厄祭戦の影響によって、細分化していた地球の国家間が、4つの経済圏に統合されたのは、知っていますよね」

 

三日月・アトラ「知らない」

 

クーデリア「あ…そうですか…」

 

クーデリアはそれすらも知らないのかと困惑するが、とりあえず話を続ける

 

クーデリア「まぁ、とにかく、それを受けて、火星や木星などの圏外圏でも、それぞれの経済圏による分割統治が積極的に進められていました。クリュセ自治区は、経済圏の一つ、アーブラウの支配下に入ったのですが、開拓時代に結ばれた、不利な惑星間経済圏の元、長年の不当な搾取に苦しんできたのです…」

 

クーデリアはそこまでいうと、自分にも戒めるように話す

 

クーデリア「この状況を改善するために、私は地球のアーブラウ政府と交渉を続けていました。そして先日、アーブラウの代表、蒔苗東護ノ介氏が、対話の席につくことを初めて了承して下さったのです…私の目的は、火星の経済的独立を勝ち取る事。それが、火星に住むすべての人々の幸せにつながると信じています」

 

パチパチパチ…

 

クーデリアがそこまで言うと、隣から拍手と称賛の声が聞こえる

 

アトラ「クーデリアさんすっごーい!かっこいい!」

 

アトラが拍手しながら称賛すると、隣で三日月が確かめるように聞く

 

三日月「ふーん、じゃあアンタが俺たちを幸せにしてくれるんだ?」

 

クーデリア「…ええ、そのつもりです」

 

クーデリアは三日月の問いに、キッパリとそう言い切った

 

三日月「…ふーん」

 

 

 

 

ーーイサリビ モビルスーツドックーー

 

タカキ「それにしても、大分やられてるなぁ…」

 

おやっさん「無駄口叩いてねぇで手ぇ動かせよー?」

 

ライド「うーっす!」

 

プシュー…

 

アトラ「お疲れ様でーす!お弁当持ってきましたー!」

 

バルバトス、アビス、グレイズ改の3機のモビルスーツを整備している雪之丞達に、アトラはそう言ってドックに入ってきた

 

雪之丞「おぉ、ありがてぇ。おーいお前ら!キリのいいところできりあげろ!飯にしようやー!」

 

ヤマギ「了解です!」

 

ライド「やった飯だあ!」

 

 

 

アトラ「はい、慌てないで!ちゃんとあるから!」

 

クーデリア「はい、どうぞ」

 

鉄華団少年兵「あ、ありがとう!」

 

鉄華団の少年は照れながらもクーデリアから弁当を受け取る

 

 

 

三日月「大変そうだね、おやっさん」

 

三日月は3機のモビルスーツをみてそう言う

 

おやっさん「主にお前のバルバトスのせいでな」

 

三日月「そういえばユーリは?」

 

おやっさん「お前、話切り替えんなよ…ユーリなら、ほらあそこだ。」

 

三日月「…なにあれ?」

 

おやっさんが指差したところは、寝袋の中に入りながら無重力空間に漂う、側から見ればミノムシのような光景があった

 

おやっさん「なにって…見ての通りだ。あんなかにユーリが入って寝てんだよ。ったく、ちゃんと部屋に行って寝りゃいいのによ」

 

三日月「…今度俺もやってみよっかな」

 

おやっさん「別にかまわねぇが、このドックでやんのはやめてくれ。邪魔だ」

 

雪之丞はそう言うと、自分の側においてあった弁当を探す

 

三日月「そっか…ねぇ、俺も作業手伝った方がいい?」

 

三日月はおやっさんの弁当をつまみながらそう言う

 

おやっさん「…そいつはありがてぇけどよ、今細かい調整をやってんだ。お前、字、読めねぇだろ?だから、大人しくしてな。あと、その弁当、まさか俺のじゃねぇよな?」

 

三日月「…ん」

 

おやっさんの言葉をきくと、三日月は手に持っていた半分食われた弁当を渡す。それをみたおやっさんは当然怒る。

 

おやっさん「おい三日月!おめぇ、半分ぐらい食ってるじゃねぇか!返せ!」

 

三日月「美味かった」

 

おやっさん「だろうな!だが感想聞いてんじゃねえんだよ!」

 

そのやり取りをみていた少年達は笑い出す。しかし…

 

クーデリア「…三日月、貴方字が読めなかったの?」

 

クーデリアは驚いてそう聞く

 

三日月「ん?うん、そうだよ」

 

三日月はさも当然の如く答えた。しかしクーデリアはまだ信じられないように三日月を見る

 

クーデリア「だって、あんな複雑そうな機械を動かしているのに?」

 

三日月「字ぃ呼んで動かすわけじゃないからね。モビルワーカーと大体同じだし、あとは…勘?」

 

クーデリア「…勘、ですか…」

 

クーデリアはもはや驚きを通り越して引いていた。

 

三日月「そんな驚くことかな?ユーリに言ったときは、別におかしくもないように言われたけど」

 

クーデリア「聞く人物が間違ってます!ユーリさんは、その…あの年で傭兵をやっていたような人ですから…というか、学校は?」

 

クーデリアはそう聞くが、三日月は火星ヤシの実を食べながら答える

 

三日月「そんな金ないよ。むしろ、行ったことのある奴の方がよっぽど少ない」

 

おやっさん「まぁ、ここには生きてくだけで精一杯の奴がほとんどなんだ。マシな施設にいた奴らは、幾分かはわかるようだがな」

 

おやっさんはモビルスーツの整備をし始める少年達をみながらそう答える

 

クーデリア「そうですか…あの、三日月。もし良ければ、読み書きの練習をしませんか?」

 

三日月「は?」

 

三日月は何言ってるんだコイツみたいな反応をしながらクーデリアを見る

 

クーデリア「読み書きができれば、それだけで視野は広がります!本を読んだり、手紙や文を書くことによって、知識を得ることだってできます!」

 

三日月はそれを聞くと、思い出したように言う

 

三日月「…そっか、文字が読めると、本も読めるようになるんだよな」

 

クーデリア「!えぇ!そうですよ!」

 

三日月「…じゃあ、やってみようかな」

 

三日月はクーデリアに向かってそう言った。すると…

 

ライド「いいなぁー!」

 

タカキ「俺も読み書きできるようになりたいっす!」

 

「おれもおれも!」

 

「俺にも教えてくれよ!クーデリア先生!

 

クーデリア「せ、先生?」

 

クーデリアの話を聞いていたのか、たくさんの少年達がクーデリアを囲む。その様子にクーデリアは困惑してしまう

 

クーデリア「え、えっと…」

 

おやっさん「いいじゃねぇか。教えてやれよ」

 

雪之丞の言葉がきっかけになったのか、クーデリアは数秒間考えた後に頷くと言った

 

クーデリア「わかりました!皆で勉強しましょう!」

 

アトラ「勉強かぁ!偉いなぁ皆!」

 

弁当を配り終わったアトラがそう言って駆け寄ってくる

 

アトラ「よし!私も文字はわかるから、わからないことがあったらどんどん聞いてね!」

 

アトラは力強くそう言うが…

 

ライド「えぇ…?俺、クーデリア先生がいいなぁ」

 

アトラ「なっ!?どう言う意味!?待ちなさいライド!」

 

そう言ってライドを追いかける光景をみた少年達は再び笑い出す

 

おやっさん「…おぉ、そうだ、嬢ちゃん」

 

クーデリア「?はい、なんでしょう」

 

おやっさん「アトラと嬢ちゃん二人じゃ大変だろ?あそこの嬢ちゃんも連れてっていいぜ」

 

おやっさんはそう言って、ミノムシのような姿で宙に浮きながら眠るユーリを指差した

 

クーデリア「…えっと、あれは?」

 

おやっさん「ユーリの嬢ちゃんさ。いつでも出撃できるようにモビルスーツの近くで寝てんだと」

 

クーデリア「…そうですか、凄いですね「ゴン」…ゴン?」

 

クーデリアが言葉を放つと同時に、鈍い音が聞こえた。どうやら宙に浮いていたユーリがバルバトスにぶつかった音のようだ

 

ジィー!

 

ムクッ…

 

ユーリ「…痛い」

 

そう言って寝袋のチャックを開け、ユーリが出てきた

 

おやっさん「そりゃそうなるだろ…おーい!ユーリ!話があるんだ!ちょっとこい!」

 

ユーリ「…?」

 

 

そうしてユーリは雪之丞からこれまでの話を聞かされていた

 

未だ安心できない宇宙の中にいる鉄華団だが、その中でも、ひと時の幸せを、彼ら少年少女達は感じていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




…はい!どうでしたか?なのだ!今回の投稿がいつもより遅れた理由は、スマホで絵を描いていたからなのだ…許して欲しいのだ!これからもちゃんと投稿していくから読んでいって欲しいのだ!それではまだなのだー!


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タービンズ

こんにちわなのだ!黒アライさんなのだ!最近、ブラックアストレアが好きなのだ!というかGNソードが大好きなのだ!そういう武装も欲しいなあ…おっと、それではどうぞなのだ!


ーーハーフビーク級戦艦ーー

 

マクギリス「…君が、アイン・ダルトン三尉か」

 

アイン「ハッ!」

 

マクギリスは鉄華団との戦闘が終わってからしばらくしたのち、鉄華団の初陣の時から参戦していたアインに、彼らの情報を聞き出していた

 

マクギリス「君達がクリュセ郊外において、民間組織と交戦したことは知っている。君らの中隊は、圧倒的戦力を持って制圧するつもりだったが、その予定が狂った。それは敵のモビルスーツのせいか?」

 

アイン「…ハッ!そうであります!」

 

マクギリス「率直な意見が聞きたい。奴ら二機のモビルスーツの戦い方はどうだった?」

 

アインはその問いに、少し訂正を加える

 

アイン「マクギリス特務監査。その情報に、一つ付け加える事が…」

 

マクギリス「?なにかね?」

 

アインは歯軋りしながら答える

 

アイン「…あの二機のモビルスーツのうち、一機は、元は我らの味方でした」

 

マクギリス「…何?どういう事だ」

 

マクギリスはあの二機のうち一機が味方という言葉に少し驚いたが、理由を聞く。

 

アイン「…あの、特殊な粒子を放つ機体ですが、元はコーラル閣下が、個人的に雇っていた傭兵なのです」

 

マクギリス「傭兵…その傭兵の名は?」

 

アイン「確か、閣下は鈴付き、と呼んでおられました。それ以外は、なにも…」

 

マクギリス「鈴付き…か。聞いたことはある。確かほとんどのことが謎に包まれており、何者なのか、なぜ傭兵をやっているのか、そもそも男なのか女なのかもわからない謎に満ちた傭兵だと。しかし…乗っていたのは若い女の子だったが…本当にあの子が?」

 

マクギリスの質問に、アインは力強く頷く。

 

アイン「はい。謎に満ちた少女ですが、その身に纏う雰囲気は子供の出すものではありませんでした」

 

アインはそう言い、クランクと共にあの少女と話していたことをそのままマクギリスに伝えた。

 

 

マクギリス「…なるほど、その少女…ユーリ・アルレイズだったか。急にクランク二尉の決闘についていきたいと言い、君達の言い分など聞きもせず、そのままクランク二尉について行ったと」

 

アイン「はい…おそらく、その時点で裏切りを計画していたのでしょう…!クランク二尉が討たれたのもきっと、その薄汚い傭兵に騙し討ちにあったのでしょう。そうに違いありません!」

 

アインは裏切りにあったからクランクが討たれたのだと言った。裏切りにさえ合わなければクランクが死ぬことはなかったと言いたいのだろう。しかし現実は非常かな、クランクの決闘時にはユーリは手を出していなかったのだ…

 

マクギリス「そうか…まあ、その子は後々対策を練るとして、問題なのは、その圧倒的戦力があったにも関わらず、制圧できなかったと、それは向こうのモビルスーツが原因になったことは予想できる。その原因を詳しく知りたい。何故だ?」

 

いくら向こうにモビルスーツがあろうと、こちらは三機、そして貧弱ながらもモビルワーカーだっていたのだ。それが数少ないモビルスーツ、しかも子供の乗っているものにしてやられたのだ。マクギリスは怒るでもなく、ただ知りたいことを知りたいだけと思わせるような声色で問う

 

アイン「…最初は小さな民兵組織が、モビルスーツを持っていたことに驚きました。しかし、すぐにそれは別の驚きによって上書きされました」

 

マクギリス「…どんな?」

 

アイン「…機動力、反射速度、訓練にはない独特の動き。まるで熟練パイロットのような動きでした。それらを駆使した怒涛の攻めにより、我々は辛くも敗れたのです…」

 

マクギリス「…そうか」

 

マクギリスは予想していた答えとほとんど同じ答えがでてきたのか、その話をきくと、アインからの情報収集をやめた

 

マクギリス「ご苦労だったな。下がっていいぞ」

 

アイン「…監査官殿!不躾ながらもお願いがあります!」

 

アインは急にマクギリスの前で叫ぶ

 

マクギリス「…なんだ?」

 

アイン「自分が不甲斐ないばかりに、上官を2度も失いました…なのに、このままのうのうと火星勤務に戻っては、先に逝った上官殿達に顔向けできません!願わくば、追撃部隊の一員に加えて頂きたく!」

 

アインは力強くそう言った。彼の初陣は、敬愛する上官の死に終わり、宇宙での戦闘も、子供のようにあしらわれて終わり…相手にすらされていなかった。このまま大人しく帰ることはできないと、その言葉を聞いたマクギリスは、どうこうするでもなく言った

 

マクギリス「…気持ちはわかった。考慮しよう」

 

アイン「!あ、ありがとうございます!」

 

マクギリス「指示はおってだそう。今日はもう下がりたまえ」

 

アイン「ハッ!」

 

アインはそういうと、敬礼し、退室した

 

マクギリス「…鈴付き…ユーリ…ガンダム…わからないことだらけだな」

 

マクギリスは笑みを浮かべながら一人そう呟いた

 

 

 

ーーイサリビ 食堂ーー

 

カキカキ…サラサラ…

 

三日月「…」

 

タカキ「…」

 

ヘンリー「…」

 

ヘルガー「…」

 

三日月達はクーデリアとユーリからそれぞれ一つずつダブレットを渡され、字の練習をしていた。ちなみに、ヘンリー・ヘルガーは双子の兄弟であり、クーデリアが授業をやると聞いて駆けつけてきた

 

クーデリア「まず、自分の名前を書けるようにしましょう。丁寧に、しっかりとね」

 

クーデリアは優しく笑いながら全員に言った。

 

ヘンリー「クーデリア先生!見てよコレ!上手く書けたっしょ!?」

 

ヘンリーは張り切りながらクーデリアに自分の書いた字を見せる

 

クーデリア「…そうね、うん。とても上手だわ!」

 

ヘンリー「!っしゃあ!」

 

ヘンリーはガッツポーズをとり、大袈裟にはしゃいだ。しかし、そのすぐ近くからちょっとした唸り声が聞こえる。三日月であった。

 

三日月「…んぅ」

 

その唸り声が気になったのか、ヘルガーが三日月のダブレットを見ると、笑いを吹き出した。

 

ヘルガー「ブフォッ!wちょ、三日月さん!」

 

三日月「なに?なんかおかしい?」

 

三日月はライドに聞くが、その隙にユーリからダブレットを取られる

 

ユーリ「…三日月、これ、左右反対になってるところが二箇所ある」

 

三日月「え」

 

三日月はユーリからダブレットを返してもらい、自分の書いた字を見ると、確かに二箇所ほど逆に書いていた文字があった

 

三日月「…あ、そっか、俺も何かおかしいと思ってたんだ」

 

ユーリ「精進あるのみ…頑張って、三日月」

 

ハロ「オマエモナ!」

 

ユーリはハロを抱え、そういいながら三日月の対面に座る

 

ヘンリー「三日月さんって、仕事ん時はすっげぇのに、字はヘタクソだな!」

 

ヘルガー「字のうまさだったら、俺三日月さんに勝てるかも!?」

 

タカキ「ヘンリー!ヘルガー!やめないか!人にだって得手不得手はあるんだぞ!?CGSの時とは違うんだ!俺たちが、いつまでも何もできないままだったら、鉄華団の重りになるんだぞ!?」

 

タカキは調子にのるヘンリー兄弟を注意していた

 

ヘンリー・ヘルガー「「へ、へ〜い…」」

 

ヘンリー達は大人しく自分の席に戻った

 

クーデリア「…厳しいんですね」

 

三日月「タカキは小さい子達のまとめ役だからね。俺たちに追いつこうって頑張ってるんだよ」

 

三日月はそう言いながら字を描き続ける

 

 

オルガ「…フッ…」

 

 

オルガは部屋の入り口で、三日月達の様子をしばらく見たのち、笑みを浮かべながら去っていった

 

 

 

ユーリ「…オルガ?」

 

 

 

ーーイサリビ 廊下ーー

 

オルガ「…」

 

コッコッ…

 

オルガは抜け出してきたブリッジに戻ろうとしていた。

 

「おいおい!はやくしろよ!」

 

「ちょ、まてっての!」

 

ダダダダ!

 

ドスッ!

 

オルガ「…おっと」

 

鉄華団少年兵「あ、団長!」

 

オルガは目の前を走ってくる小さな子供達とぶつかった

 

オルガ「おいおい、気ィ付けて走れよ?」

 

鉄華団少年兵「すいません!団長!」

 

オルガ「あぁ、ほら、急いでんだろ?行きな」

 

鉄華団少年兵「あ、そうでした!すいません!団長!」

 

鉄華団少年兵はオルガに礼と謝罪を済ませると再び走っていった

 

タッタッタッ…

 

ビスケット「…オルガ」

 

オルガ「ビスケット?」

 

すると、今度はビスケットがやってきた

 

ビスケット「ちょっと話があるんだけど、いいかな」

 

 

 

 

 

ーーイサリビ ブリッジ付近ーー

 

ビスケット「やっぱり、いくらユーリのツテがあったとしても、ユージンの言った通り、不安定要素が多すぎる。テイワズはあまりにも強大だ。素直に交渉にのってくれるとは思えないよ」

 

オルガ「ならどうする?」

 

オルガはその否定の声を聞くとビスケットに聞いた

 

ビスケット「…僕にはわからないよ。でも、もっとじっくり考えてから「考えたさ」…」

 

オルガ「…考えた上で選んだ。もうこれ以上、俺たちが地球に行ける方法はない。なら、あとは運に任せて、突っ走るだけだ」

 

オルガは当たり前のようにそう言った。今の自分には、これぐらいしかできないのだというように…

 

ビスケット「…正直、今回の仕事は鉄華団には荷が重すぎる…ただでさえ、僕らは仕事の経験すらないのに…」

 

オルガ「だったらなんだ?お嬢様をギャラルホルンに潔く引き渡せってのか?」

 

オルガは怒っているわけでもなく、ただ本当に聞きたいだけと言うような声で言った

 

ビスケット「それができないのはわかってる。でも、何も俺たちがする必要はないんじゃないかって思うんだ。例えば、他の会社に委託するとか…」

 

オルガ「いいやダメだ。それじゃ筋が通らねえ。やると決めたからには進むだけだ」

 

その言葉を聞いたビスケットは、オルガを諫めるように言う

 

ビスケット「オルガは焦りすぎてるよ。僕にはわざと、危険な道に突っ込んでるような感じがするんだ…」

 

オルガ「…かもな」

 

ビスケット「え」

 

オルガ「…お前の言う事は、間違っちゃいねぇよ」

 

オルガは静かにそう言った。だがそれを聞いたビスケットは真剣に問う。

 

ビスケット「どうしてさ!?何故そんなに前に進む事にこだわる!?」

 

オルガ「見られてるからだ」

 

ビスケット「…は?」

 

オルガ「…振り返るとそこに、いつもあいつの目がある」

 

ビスケット「…あいつ?」

 

オルガは疑問だらけのビスケットに告げる

 

オルガ「凄えよミカは…強くて…クールで度胸もある。初めてであるモビルスーツを、経験の長いユーリと互角にやりあえる程に操れる。その上読み書きまで…」

 

ビスケット「…」

 

オルガ「そのミカの目が俺に聞いてくるんだ…オルガ、次はどうする?なにをすればいい?次はどんなワクワクすることをみせてくれるんだ?ってな…あの目は、裏切られねぇ。あの目に映る俺は、いつだって粋がってて、カッコいいオルガ・イツカじゃねえといけねぇんだ…」

 

ビスケット「…そっか」

 

ビスケットはそういうと、静かに別の場所に去っていった

 

オルガ「…フゥ…」

 

「ここにいたんだ」

 

オルガ「!!」

 

ユーリ「…」

 

声がかけられた方をみると、そこにはユーリがいた。

 

ユーリ「さっき、見てたよね?」

 

オルガ「…なんだ、バレちまってたか」

 

ユーリはそのオルガの声を聞きながらオルガの側に寄る。

 

オルガ「…どうしたんだ?いつもは万全の状態で行けるようにって、休んでるじゃねぇか。それが教師なんてしててよ」

 

ユーリ「別に…頼まれたからしてるだけ」

 

ユーリは窓に映る広大な宇宙を見ながらそういう。しかし、オルガはとんでもないことを言う

 

オルガ「…お前ってさ、ミカが好きなのか?」

 

ゴトンッ!

 

ハロ「グエッ…」

 

ユーリ「………は?」

 

ユーリはとんでもない言葉を聞き、思わず抱えていたハロを落とした

 

オルガ「いやだってよ、お前って、ほとんどミカと一緒の時が多いじゃねぇか。そういう気持ちでももってんのかなって気になってよ」

 

オルガはユーリに向かってそう付け加えるが、ユーリの耳には入らず、ずっと唸っていた

 

ユーリ(…三日月を?…私が?…)

 

ユーリ(…)

 

オルガ「…なんか、悪かったな。こんなこと、おいそれと他人に話せるような「ないな」…あ?」

 

ユーリ「うん、ない。確かに好きか嫌いかと言われれば好きな方だけど、家族としてに過ぎない。私は、三日月に対して、そんな感情を抱いていないし、抱いたこともないし、そもそも誰かと恋愛をする気もない」

 

オルガ「お、おう…そうか…」

 

オルガは早口でそういうユーリに気圧されながら返事した

 

オルガ「…しかし、だとしたらもったいねぇよ」

 

ユーリ「?なにが?」

 

オルガ「お前、結構可愛らしい見た目してんのによ」

 

オルガはユーリに向かってほぼ無意識にそう言ったが、ユーリは…

 

ユーリ「…オルガ、もしかして口説いてる?」

 

オルガ「へ?あ、いや、そんなつもりはなかったんだ。気に触ったなら謝る。すまなかった…」

 

オルガは咄嗟にユーリに謝罪した。ユーリはそれをみると、再び視線を宇宙に向けた

 

ユーリ「…私は、戦士。戦う者…。私は、戦うことでしか、自分の存在意義を見出せない。だから、恋愛なんてできない。そんな感情も、捨てた」

 

ユーリは宇宙を見ながらそう答える。彼女はまだ14という幼い少女でありながら、モビルスーツを操り、人を殺せる度胸を持っている。それは生半可なことじゃない。きっと、恋愛感情を捨てたというのも本当のことなのだろう。しかし、オルガには一つの疑問が浮かびあかった

 

オルガ「…なぁ、ユーリ」

 

ユーリ「?」

 

オルガ「そもそも、なんでお前戦うんだよ。戦う必要があるのか?」

 

ユーリ「…」

 

オルガの問いはもっともである。戦士であるから感情を押し殺す。ならばそんなことなどやめてしまえばいいだろうにとオルガはおもった。しかし、ユーリは黙秘する

 

オルガ「…言いたくないなら別にいいけどよ、でも覚えとけ」

 

ユーリ「…?」

 

オルガ「お前は、もう鉄華団の一員なんだ。だから、団長である俺が、命に変えても絶対に守る…いや、俺だけじゃねえ…この鉄華団にいる全員がだ。無理に戦場に出なくたっていいんだ」

 

オルガはユーリの深い深海のような深蒼の目を見ながらそう告げる。だが、ユーリはそれをきくと、オルガの目を真っ向から見返して言う。

 

ユーリ「断る」

 

オルガ「え?」

 

驚くオルガを傍目にユーリは言葉を続ける

 

ユーリ「オルガは、酷い人だ。命に変えても守ってやるだなんて…それは、私よりも先に死ぬと、私よりも先に、鉄華団は消えると、わたしの目の前で告げるのと同じ…」

 

ユーリは怒りを込めた目でオルガを見つめ、叫ぶ

 

ユーリ「そんなの、絶対に嫌!認めない!私は、もう2度と、あんな感情を味わいたくはないの!私にとって鉄華団は、ありのままの私でいられる唯一の場所であり、家族のいる家なんだ!それを失って生きるぐらいなら…」

 

ユーリ「私は、鉄華団の為に戦って死にたい!」

 

オルガ「!」

 

オルガは怒りに我を忘れながら叫ぶユーリを初めて目の当たりにし、何も言えなかった

 

ユーリ「…オルガ、貴方こそ覚えておいて。私は、守られるだけの存在じゃない。もう既に、私の両手は紅黒い血で穢れてるんだ…今更、普通の女として生きるなんてできない。なら、この命、鉄華団のために捧げる…私は、鉄華団に入った時から、鉄の華とともにそう刻んだのだから…」

 

ユーリは、背中に紅い鉄の華が大きく刻まれている黒いロングコートを羽織りながら、オルガの元を離れようとすると…

 

 

ビーッ!ビーッ!

 

オルガ「!?」

 

ユーリ「!?」

 

突如としてイサリビの全艦内にサイレンが鳴り響く

 

 

 

ーーイサリビ ブリッジーー

 

プシュー…

 

オルガ「フミタン!状況は!?」

 

オルガはユーリと共にブリッジに入り、状況を問う。

 

フミタン「謎の艦から停止信号が出ております」

 

オルガ「艦…?一体どこの…!?」

 

ユージン「わからねぇ!ギャラルホルンじゃねぇのか!?」

 

ビスケット「にしてはエイハブウェーブの波長が違う!一体どこから…!」

 

ビスケットがそう言った途端、ブリッジのメインモニターから、鉄華団の少年達にとっては因縁のある顔が出てきた

 

「ガキ共ォ!俺の艦を返せェ!」

 

ユージン「なっ!?」

 

ビスケット「あれは!」

 

オルガ「マルバ・アーゲイ!?」

 

ユーリ「…誰?」

 

それは、CGS時代の社長、マルバ・アーゲイであった

 

マルバ「この泥棒ネズミどもが!俺のウィルを!今すぐ返せェェ!」

 

プツッ…

 

ユーリ「…お前も、鉄華団を侮辱するの…?」

 

ユーリの頭からなにかの切れた音がすると、画面越しに半端無い殺気が溢れてくる。

 

マルバ「な、なんだこのメスガキは!?…いいや、それよりもオルガだ!テメェ!さっさとその艦から降りろォ!」

 

マルバは騒ぎまくるが、ユージンが叫ぶ。

 

ユージン「黙って聞いてりゃ好き勝手いいやがって!!一番最初に逃げ出した腰抜けがぁ!!今更テメェなんぞに用はな「誰だテメェ!オルガだ!オルガを出せぇっ!」…うっせんだよ!!」

 

ビスケット「アドモスさん、LCSの信号、解析できますか?」

 

ビスケットはユージンがマルバを止めている間に、向こうの艦の場所をあぶりだそうとしていた

 

フミタン「相対座標、モニターに出します」

 

フミタンがそう言うと、イサリビの座標とマルバの艦の座標がメインモニターに映し出される

 

フミタン「方位180度、距離6200、相対速度、ほぼ一致しています」

 

ビスケット「マズい…!完全に後ろを取られてる…!

 

チャド「けど、エイハブウェーブの反応は無かったぞ!?」

 

ビスケット「一体どうやって…」

 

ビスケットやユージンが焦り出す。その中でユーリが一人呟く

 

ユーリ「…そういうのが得意って事…面倒極まりない…」

 

ユーリ(…でも、何か引っかかる…なにか、私はこの状況を知ってる?…)

 

ユーリがそう言っていると、急にマルバがモニターから退かされた

 

マルバ「!?ちょ、旦那ぁ!なにを…」

 

???「ちょっとどいてな、おっさん。これじゃ話が進まねえ」

 

ユーリ「…!!」

 

そこには、ユーリにとって、懐かしい顔が出てきた

 

???「このままじゃねえなにも始まらな…あん?なんか…どっかで見たことある顔してんなあ、そこの可愛い子ちゃん」

 

オルガ「…?ユーリ、知り合いか?」

 

オルガがユーリの名をだすと、その謎の男が驚く

 

???「…ユーリ?って…まさか、ユーリ・アルレイズか!?」

 

ユーリ「…久しぶり、名瀬さん…」

 

ユージン「…おいおい、どういうことだよユーリ?」

 

ユージンがユーリに尋ねると、ユーリは手短に話す

 

ユーリ「名瀬・タービン。テイワズの直下組織、タービンズのリーダー」

 

ビスケット「タービンズ…ってテイワズの直下組織!?」

 

名瀬と呼ばれた男は、ユーリが自分の知っているユーリであることがわかると、嬉しがった

 

名瀬「おいおいおい!お前生きてたのか!心配したぞ!?…ってか、なんでお前がそこにいんだよ!雇われたのか?」

 

ユーリ「違う」

 

ユーリは名瀬の言葉を否定した。

 

ユーリ「私は雇われたんじゃ無い。私は…鉄華団に入った」

 

名瀬「鉄華団?なんだそりゃ…どこの組織「旦那!そんなメスガキなんて放って、問題は俺の艦ですよ!」

 

マルバ「おいこらオルガ!いいから俺の艦を「おっさん」…ヒッ…」

 

名瀬「俺はいま、《家族》と話してんだ。邪魔しないでくれよ」

 

オルガ「…!!家族…!?」

 

オルガはユーリを見るが、ユーリはじっと画面越しの名瀬を見つめる

 

名瀬はマルバをどかすと、自己紹介を始めた

 

名瀬「やあやあ皆の諸君。まだ自己紹介をしてなかったな。俺は名瀬・タービンってんだ。テイワズの直下組織、タービンズを取り仕切ってる。そっちは?」

 

オルガ「…鉄華団のオルガ・イツカだ」

 

オルガは冷静にそういうが、隣にいるビスケットは焦っていた

 

ビスケット「…名瀬っていうと、テイワズの頭領、マクマード・バリスタンと親子の杯を交わしている人だ…!マズいよ、最悪の展開だ…!テイワズまで敵に回したら終わってしまう…!」

 

ビスケットは冷や汗をかきながら名瀬をみていた

 

名瀬「おいおい、男同士でヒソヒソと…仲良いなぁお前ら」

 

オルガ「…悪りぃ、んで、そんなお方が、なんでマルバなんて乗せてんだ?」

 

名瀬「そのことなんだがよ、なんでも、マルバの会社がギャラルホルンに襲撃されたっていうじゃねぇか?俺はその時に逃げてる途中のマルバに出会ってよ、仕事の付き合いもあったし、手助けしてやってたんだよ。でなぁ?その報酬が、マルバの持つ資産をうちが預かるって約束だったんだが…調べてみたらCGSは廃業。全ての遺産は鉄華団とかいう組織に移譲されてるじゃねえか…おまけに、ユーリと一緒にいるなんてな」

 

名瀬はユーリをチラリと見るとそう言った

 

オルガ「…つまりなんだ、アンタは俺らから受け取るべきものを受け取りにきたと?」

 

名瀬「そう構えなさんな。ギャラルホルンとの戦闘はこの目で見させてもらった…見覚えのあるガンダム・フレームが一機いたと思えば、ユーリがいたんなら納得だ、しかし、それだけの実力じゃねえ。もう一機のガンダム・フレームも中々の力を持ってる。資産の移譲を認めてくれれば、悪いようにはしねぇよ。なんせウチの可愛い家族が世話になってんだ。下手なことすりゃ嫌われちまう」

 

オルガ「…」

 

名瀬は笑みを浮かべながらそう言う。その言葉にオルガは黙って聞いていた

 

名瀬「ウチの傘下に入れば、もっと真っ当な仕事を紹介してやる命を貼る。必要が無い真っ当な仕事をな」

 

その言葉にユージンが疑問を浮かべる

 

ユージン「はぁ?なんだそりゃ…」

 

名瀬「ま、お前らも結構な大所帯だからな、全員一緒って訳にゃいかなぁが…」

 

オルガ「アンタ正気か?」

 

オルガはまるで向こうにはほとんど得がないような言葉に疑いの目を向ける

 

名瀬「嘘かどうかは、そこにいるウチの家族に聞けばわかる」

 

ユーリ「…」

 

ユーリはじっとしていたが、名瀬に話されると、体をピクッと震わせた

 

ビスケット「…大丈夫?ユーリ…」

 

ビスケットは様子のおかしいユーリの肩を持つ。が、ユーリは大丈夫と言うと、名瀬の言葉を肯定する

 

ユーリ「…名瀬さんは、仕事以外には嘘をつかない。私も、一時期引き取ってくれたことがある」

 

しかしその言葉を聞いた名瀬は言葉を付け加える

 

名瀬「一時期じゃねえ。これからもだ。ユーリ、お前が何故うちを何も言わずに抜けたのかは知らないが、優しいお前のことだ…それなりの理由があるんだろう?どうだ、こっちに来ないか?雇われてるってんなら、その仕事は俺たちが受け持つからよ、な?」

 

名瀬はまるでユーリの父親のように優しく言った。しかし…

 

ユーリ「ごめんなさい、名瀬さん。私はもう、鉄華団の一員だから…」

 

ユーリは震えながらもそう答えた。それを見たオルガが言葉を挟む

 

オルガ「悪りぃが、アンタの要件は飲めねぇ。俺たちは既に受け持ってる仕事がある。途中で投げ出すわけにゃいかねえ」

 

名瀬「…ほぉ?」

 

名瀬はオルガを見つめるが、このままではいけないと思ったビスケットが話す。

 

ビスケット「あの!少しよろしいでしょうか?」

 

名瀬「ん?なんだ?丸いの」

 

ビスケット「ビスケット・グリフォンといいます。いまこの場で、鉄華団として、タービンズと取引をすることはできませんか?」

 

ユージン「はぁ!?おま、なにを!?」

 

ユージンはビスケットに意義をとなえるが、ビスケットは構わずに言う

 

ビスケット「僕達鉄華団は、火星独立の重要人物、クーデリアさんを地球まで送り届けたいんです!しかし、この仕事を続けるには、ギャラルホルンの目を避け、地球までの裏ルートを進む為の案内人が必要になります。タービンズは、テイワズの輸送部門を管理してるんですよね?その航路をつかわせてもらえませんか!?」

 

ビスケットは頭を下げ、言葉を続ける

 

ビスケット「もちろん、相応の通行料はお支払いします!」

 

ビスケットは機嫌を損ねないように話すが、名瀬の一言により、状況がかわる

 

名瀬「駄目だな、話にならん」

 

ビスケット「…!な、何故です?貴方達にとってもそんなに悪い話じゃ…」

 

名瀬「火事場泥棒で組織乗っ取っただけのガキが一丁前な口を聞くな!いいか?おれはなぁ、さっきから道理の話をしてんだよ」

 

しかし、ユージンがその言葉に黙っていなかった

 

ユージン「俺らを見殺しにしたそいつとは取引しといて、それを言うのかよ!」

 

ユージンは啖呵を切るが、名瀬は冷静に聞き返す

 

名瀬「なら聞くがよ、お前らどうするつもりなんだ?ガキじゃねえってんなら、俺らを敵に回すことの意味ぐらいわかんだろ?」

 

テイワズの直下組織であるタービンズを敵に回すということはそれすなわちテイワズも敵に回すことと同じである。ギャラルホルンとテイワズに狙われようものなら、鉄華団はあっという間に潰されるであろう。

 

数秒間沈黙した後、その言葉にオルガが答える

 

オルガ「さっきも言った通りだ。アンタの要求は飲めねぇ。アンタの道理がなんだろうが、俺たちにも通さなきゃいけねえ筋ってもんがある」

 

名瀬「…そりゃあ、俺たちと戦りあうって意味でいいんだよなあ?」

 

オルガ「ああ、俺たちがただのガキじゃねえってところ、教えてやるよ!」

 

オルガは啖呵を切ったが、名瀬は冷酷に告げる

 

名瀬「お前ら、生意気な代償は高くつくぞ…」

 

プツッ…

 

そう言って回線が途切れた。

 

 

 

 

 

ーー強襲装甲艦 ハンマーヘッド ブリッジーー

 

名瀬「悪いな、アミダ。結局こうなっちまった」

 

アミダ「いいんだよ、やんちゃする子供を叱ってやるのは大人の役目さ」

 

アミダと呼ばれたその女性は、名瀬にそう言う

 

アミダ「…しかし、それにしても、あの大人しいユーリちゃんがあそこまで言うなんてね…」

 

名瀬「ホントだよ…鉄華団の一員だから、か…チクショウ、妬けちまうぜ…なぁアミダ、悪いが…」

 

アミダ「わかってるよ、ユーリはなるべく傷つけずに捕縛、ね?」

 

名瀬「…ほんっと、いい女だよ、お前は」

 

名瀬はそう言い、目の前にいるイサリビに不敵な笑みを浮かべた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




…はい!如何でしたか?なのだ!今回ちょっと長くなったのだ…しかし、次回も頑張って書いていくのだ!それでは次回も読んでくださいなのだー!


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いさなとり

こんにちはなのだ!黒アライさんなのだ!最近風邪になったり、治ったり、また風邪ひいたらの連続でこんなに伸びてしまったのだ。許して欲しいのだ…m(_ _)mしかし、なんとか頑張って書いたのだ!それではどうぞなのだ!


アミダ「ラフタにノーマルスーツを着せな!総員戦闘準備だ!相手はあのユーリがいるんだ!油断するんじゃないよ!」

 

アミダは的確にブリッジ内にいるメンバーに告げ、それを通して艦内全域に伝わる

 

アミダ「アジー!アンタは私と出てもらうよ」

 

アジー「了解です、姉さん」

 

アジーと呼ばれた銀髪の女性は、ノーマルスーツを着ながらそう答えた

 

 

 

ーーイサリビ ブリッジーー

 

ビスケット「オルガ!あれほど慎重に行こうって言ったのに!交渉の余地はあったはずだ!」

 

ビスケットはオルガに向かって叫ぶ。オルガが啖呵を切ってしまったおかげでタービンズとの戦闘に発展してしまったのだから

 

オルガ「わかってるけどな、通すと決めた筋は、曲げらんねぇよ」

 

オルガはどうやってこの場を切り抜けるか思考しながらそう答える。ビスケットはそのオルガの様子と言葉を聞いて、黙るしか無かった

 

オルガ「いいかお前ら!敵にケツとられちゃいるが、鉄華団の力を見せつけるにはむしろ好都合だ!だろ!?」

 

ユージン「おぉ!あったりめえだろ!」

 

シノ「目に物見せてやろうぜ!」

 

オルガの檄に、ユージンとシノが乗っかり、力強く答える

 

オルガ「テイワズとのあたりをつける千載一遇のチャンス…モノにすんぞ!」

 

ブリッジ内「おぉ!!」

 

 

ユーリ「…」

 

ユーリはそう叫ぶオルガ達を傍目に、苦汁の表情で現状を受け止めていた。だが、それを見たオルガが答える

 

オルガ「…そうだユーリ。今回の戦闘だが…お前は出るな」

 

ユーリ「…え?」

 

オルガの言葉に、ユーリは珍しく動揺した

 

シノ「え!?おいおい!ユーリちゃんがでないってなると、結構厳しいんじゃねえの?」

 

ユージン「そうだぜ!相手はテイワズの直下組織なんだぞ?出し惜しみしてたらこっちがやられる!」

 

シノとユージンがオルガに抗議するが、オルガはその言葉に対する答えを、ユーリに向けて答える。

 

オルガ「…今回の相手は、お前にとっちゃ家族みたいなもんなんだろ?それに銃口を向けろとは言わないし、言えねぇ…それによ、ついさっき言っただろ?ユーリ。無理に戦う必要はねぇ…俺たちが命がけで守るってな」

 

ユーリ「…嫌だ」

 

ユージン「あん?」

 

ユーリ「嫌だ!!」

 

シノ「うおっ!?」

 

ユーリは突然叫びだし、体を少し震わせながらも答える。

 

ユーリ「…私は、確かにタービンズの仲間だった。実際に銃口を向けるのも躊躇ってしまう…でもオルガ。私だって、さっき言ったよ…」

 

ユーリは震える体を抑え、不敵に笑みを浮かべながら言う

 

ユーリ「私の命は、鉄華団に捧げる。これは自己犠牲でもなんでもない…私個人の意思で決めたことだから」

 

ユーリは苦笑いしながらそう答える。家族を守りたい。…だが、そのためにかつての仲間に銃を向けなければならない…現実が非常であることと、今の状況が彼女を苦しめる…

 

オルガ「…そうか、わかった…聞いたなお前ら!ユーリがここまでやってくれてんだ!このチャンス、絶対にモノにすんぞぉ!」

 

シノ「よぉし!任せろぉ!」

 

シノ達の士気が上がると同時に、チャドから報告が出る

 

チャド「エイハブウェーブの反応確認!敵艦距離をつめてくるぞ!」

 

オルガ「よし、ブリッジを収納!速度は維持したまま180度回頭!砲撃戦に備えろォ!」

 

チャド「了解!ブリッジ収納!繰り返す、ブリッジ収納!」

 

ゴォォォォン……

 

ガシャン…

 

イサリビのブリッジが低い起動音を鳴らしながらブリッジを艦の装甲内に収納される

 

 

 

 

ーーイサリビ 食堂ーー

 

フミタン『これより本艦は、戦闘体制に移行します。艦内重力を解除』

 

アトラ「うわぁ!ま、待って待って!」

 

カチャカチャ

 

フミタンからの艦内放送を聞くと、アトラはそう言いながらスープの入った鍋の蓋をベルトで固定する。運悪く偶然的に調理をしている最中に戦闘体制に入ってしまったため、料理材料などが無重力空間で漂う。

 

 

 

 

ーーイサリビ 倉庫室ーー

 

オルガ『昭弘、出てくれるか』

 

昭弘「あぁ、任せろ!」

 

昭弘はそう言い、すぐさまノーマルスーツに着替える。

 

 

 

 

 

ーーイサリビ ブリッジーー

 

ユーリ「…行かなきゃ…私が、守らなきゃ…」

 

ユーリは自分に戒めるようにそう呟く

 

オルガ「…あんまり気負うなよ?シノも準備してくれ!三日月は!?」

 

チャド「いつでもいけるってよ!」

 

チャドが通信を聞きながらそう答える。どうやら三日月は既にバルバトスに乗り込んでいるようだ

 

ユージン「よし!俺も出るぜ!」

 

オルガ「まて!ユージン!」

 

ユージン「!?な、なんだよ!」

 

オルガがユージンを呼び止める

 

オルガ「お前はここに残れ」

 

ユージン「…はぁ?お前何言って「船を任せたいんだよ」

 

オルガ「今イサリビを任せられんのは、お前だけだ。ユージン!」

 

ユージン「!…し、仕方ねぇな…うし、任せろ!」

 

ユージンは照れながらも力強く返事をする。通信を終えたフミタンもクーデリアを避難させるためブリッジから出ようとすると

 

オルガ「悪りぃフミタンさん!今は少しでも情報が欲しい!アンタに抜けられるのは困る!お嬢さんはタカキに任せるから頼む!」

 

フミタン「…承知しました」

 

フミタンは渋々元の席に戻った

 

オルガ「…悪りぃな、ビスケット…こんなことになっちまって…」

 

ビスケット「いいさ、元々うまく行くなんて思ってなかったしね…さあ!行くよ!」

 

オルガ「…あぁ!」

 

オルガはビスケットに力強く答え、指示を出す

 

オルガ「右舷180度回頭!速度は落とさず相手に頭向けてバックのまま

後ろに進めろ!」

 

グォォォォン……!

 

イサリビは右側から回頭しながら後ろ向きで進む

 

 

 

ーーハンマーヘッド カタパルトーー

 

アジー「姐さん、先にいかせてもらいます」

 

アミダ「あぁ、気をつけなよ?相手にはユーリがいるんだから」

 

アジー「えぇ、あの子の危険性は身をもって知ってますよ。昔コテンパンにやられましたからね…」

 

アジーは苦笑いしつつ、モビルスーツをカタパルトに乗せ、叫ぶ。

 

アジー「アジー・グルミン!行きます!」

 

ギャリリリッ!

 

バシュゥゥゥン…!

 

アジーは一足早くカタパルトから出撃していった

 

アミダ「…へぇ、教科書通り、速度を落とさず艦首だけを向けてきたか…まずは合格点だね」

 

ガコォン!

 

アミダがそう呟くと、アミダのモビルスーツがカタパルトに装着される

 

アミダ「アミダ・アルカ、《百錬》!でるよ!」

 

ギャリリリッ!

 

バシュゥゥゥン…

 

 

 

 

ーーイサリビ モビルスーツ格納庫ーー

 

おやっさん「すまねぇ三日月、結局リアクターは調整不足のままだ…こんな状態でおめぇを出したくはねぇんだが…」

 

三日月「まぁ、うごくんなら何とかするよ」

 

三日月はノーマルスーツに着替え、ヘルメットをかぶりながらそう返事する

 

おやっさん「目覚めが悪いから…死ぬんじゃねぇぞ?」

 

三日月「おやっさんよりは、長生きするつもりだよ」

 

三日月は生意気に笑みを浮かべながらそう言った

 

おやっさん「!…ヘッ…調子いいこといいやがって…気ぃつけてな」

 

三日月「うん」

 

ガシュゥン…

 

三日月は返事し、コクピットに乗り移り、ハッチを閉める

 

ピッピッ…

 

三日月「…リアクターだけじゃない…各モーターに変な負荷が掛かってる…やっぱり、ユーリのようには扱えないか…」

 

三日月はバルバトスのコクピット内でモニターを操作しながら各部損傷している部分を確かめる

 

三日月「ま、やるだけやってみるさ」

 

三日月はそう言い、出撃の時を待つ…

 

 

 

 

ユーリ「…」

 

タカキ「…あ、あの…ユーリ、ちゃん?」

 

タカキは、アビスのコクピットの中で目を瞑り、静かに出撃の時を待つユーリに、恐る恐る声を掛けた

 

ユーリ「…なに?タカキ」

 

タカキ「いや、えっと…その…」

 

タカキは言い淀んでしまうが、勇気を振り絞り、ユーリに告げる

 

タカキ「そのっ!無理だけはしないで!」

 

ユーリ「…?」

 

タカキ「…そのっ!ユーリちゃんが、とても強いのはよく知ってる…俺より年下なのに、君は俺の全て上をいってる…でも、それでも君は!まだか弱い女の子で、子供なんだ!…だから、その…無理せずに、危なかったら帰ってきて。…皆、待ってるから…」

 

タカキはユーリにそれだけ言うと、アビスから離れる。タカキは心配しているのと同時に、教えたかったのだ。鉄華団に入団してから間もないが、それでもユーリは、皆から仲間だと思われている事を、ユーリの帰りを待っている者が沢山いるのだと。タカキはなんとも言えない表情で無重力空間に漂いながら、アビスアストレイの顔を見る…すると、コクピットからユーリが半分でてきた。

 

ユーリ「帰ってくるよ…必ず」

 

タカキ「…!」

 

ユーリは叫ぶでもなく、ただ淡々とタカキをみつめながらそう言った。そして片手で親指を立てて、不敵に笑みを浮かべながら告げた。

 

ユーリ「私を誰だと思ってるの?鈴付きとして名を広めた私が負ける訳がない」

 

タカキ「…うん!頼んだよ!ユーリ!」

 

ガシュゥン…

 

ユーリはその言葉をきくと、返事をせず、かわりに片手をピースしながらコクピットに戻り、ハッチをしめる

 

ピッピッ…

 

カタカタカタカタ…

 

ユーリ「GNドライブ正常稼働、機体のGN粒子伝導率正常、GNフェイズシフト伝導率正常、ターゲットロックカメラ正常起動、各部武装装着完了、ドラグーンシステム正常稼働、OS等に異常無し、各部分損傷または異常無し、GN粒子によるエネルギー量充分、トランザムシステムの安全リミッター解除…アビス、異常無し」

 

ユーリはコクピット内にあるモニターとキーボードを駆使しながら各部のシステムの異常がないかくまなくチェックし、正常に動く事を確認した。その時、カメラをチェックする際にモニター越しにタカキが見えた

 

ユーリ「…無理しないで、か…」

 

ユーリ「…安心して、タカキ…自分の事情の為に無理はしない…でも、鉄華団が加わるのなら、話は別…」

 

ユーリ「…名瀬さん…アミダさん…私は、行くよ…」

 

ユーリはそう呟くと、モニターにブリッジにいるフミタンが通信で映し出される

 

フミタン『敵艦からモビルスーツの出撃を確認、数は2機』

 

ユーリ「了解、おやっさん!」

 

おやっさん「うし!アビスを下に下ろすぞ!下ぁ気ぃつけろよ!」

 

ガコォン…

 

雪之丞の指示により、アビスアストレイがクレーンでゆっくりとイサリビ下部にあるカタパルトに移送されていく

 

三日月『ユーリ』

 

ユーリ「?なに、三日月」

 

三日月が通信でユーリに話しかける

 

三日月『…いや、なんでも』

 

ユーリ「…??」

 

ユーリは三日月の言葉に疑問しか浮かばなかったが、ユーリの顔を見た三日月は安心したような表情だった

 

三日月(…よかった、出撃前は少し様子変だったけど、今は、いつものユーリだ)

 

三日月がそう心の中で思っていると、アビスがカタパルトに装着される

 

フミタン「カタパルト装着完了、発進、どうぞ」

 

ユーリ「…ユーリ・アルレイズ、アビス・アストレイ…出る!」

 

ギャリリリリッ!

 

バシュゥゥゥン…

 

アビスがカタパルトから勢いよく射出され、その勢いに乗り、アビスが宇宙を縦横無尽に飛行する。

 

ユーリ「さてと、ぶっつけ本番だけど、コイツの使い心地試させて貰うよ」

 

射撃武器を持たないアビスの為に、前戦の時に手に入れたグレイズの武装を、ユーリの意見を取り入れながら急遽組み合わせて作った「GRーWOA銃斧型120mmライフルガン」を二丁、グリップを折りたたんである状態で両腕の肘部分に、さながらトンファーのように装着されていた

 

バシュゥゥゥン…

 

ユーリ「…ん?」

 

三日月「お待たせ」

 

後ろからエイハブウェーブを確認すると、三日月がそう言いながらアビスの隣を飛行する

 

昭弘「お、おい!俺を置いてくな!速すぎなんだよお前ら!」

 

三日月「…あ、置いてきちゃった…」

 

昭弘もグレイズ改に乗りながらそう言う

 

ユーリ「…!三日月、昭弘、モビルスーツ来る。紅色のモビルスーツに注意して。並の兵士の3倍は強いから」

 

昭弘「さ、3倍!?」

 

三日月「へぇ…ユーリがそこまで言うなんて…ま、やるだけやってみるさ」

 

 

 

 

 

 

アミダ「アジー、艦の射線にはいるんじゃないよ?」

 

アジー「ラジャー」

 

アジーは目の前にいる3機のモビルスーツを捕らえながら返事する

 

アミダ「さぁて…躾の時間だ、坊や達!」

 

 

 

 

バァンッ!バァンッ!

 

バシュゥゥゥン!!

 

ドゴォンッ!

 

ユージン「ぅぐぁっ!…クッソ!ちったぁ回避できねぇのか!!」

 

ビスケット「下手に動けば距離を詰められて、対艦ナパーム弾の射線に捕まるんだ!」

 

イサリビは、タービンズの艦、「ハンマーヘッド」から真っ向に撃ち合っていたが、ジリ貧すぎた

 

フミタン「ミサイル接近、来ます!」

 

ユージン「チィッ!撃ち落とせ!一つも艦に当てるんじゃねえ!」

 

バババババババッ!!

 

チュドォン!

 

バガァン!

 

ビスケット「っぐ!あれをまともに食らったら、いくら艦のナノラミネート装甲でも溶解してしまうんだ!今は迎撃可能な距離を維持することだけに専念して!」

 

チャド「このままでも十分マズいって!」

 

何とか対艦ナパーム弾が直撃する前に撃ち落とせたが、チャドの言う通り状況は良くなるどころか悪化していく

 

 

 

 

 

ーーハンマーヘッド ブリッジーー

 

エーコ「敵艦、変わらず進路維持!」

 

ビルト「へぇ、中々肝は座ってるんだぁ」

 

ハンマーヘッドのブリッジの通信オペレーターをしているエーコとビルトがそう言う

 

名瀬「あんまり長引かせるなぁ。ユーリがでてきてからじゃ面倒だ。ラフタに出てもらったらどうだ?」

 

エーコ「了〜解!」

 

 

 

 

バンバンバンッ!

 

ユージン「!?何の光だ!?」

 

ビスケット「わからない…なにが「バゴォンッ!」うわぁッ!」

 

フミタン「ッ!上甲板に被弾!圧力一部低下、上第2ブロック、隔壁閉鎖します」

 

ガシャンッ!ガシャンッ!

 

イサリビの艦内の隔壁が起動していく

 

 

 

 

ラフタ「もうっ!爪のマニキュア乾いてなかったのにぃ!」

 

そう言う彼女は、専用のモビルスーツ「百里」を操り、高速でイサリビに攻撃を仕掛ける

 

 

 

 

 

ユージン「別のモビルスーツか!?対空砲じゃ追いつかねぇぞ!?」

 

ビスケット「アドモスさん!ユーリか三日月、昭弘に連絡取ってください!モビルスーツを戻さないとやられる!」

 

フミタン「了解です」

 

フミタンは冷静に、三日月達に連絡を取る

 

 

 

三日月「!…もう一機いたのか!」

 

三日月は急いでイサリビにもどろうとする…が、

 

アミダ「余所見してんじゃないよ!」

 

ガンッ!ガンッ!

 

アミダはそう言うと三日月に向かって容赦なく引き金を引いた

 

昭弘「三日月!」

 

ガシッ!

 

ヒュンッ!

 

三日月「…あ、ごめん昭弘」

 

アミダの弾は、昭弘が直撃する直前に三日月を庇った為、当たらなかった

 

ユーリ「三日月!イサリビの周りにいる一機…頼める?」

 

三日月「言われなくても行くよ…ここ、任せたから、昭弘。ユーリ。」

 

昭弘「おぉ!任せろ!」

 

昭弘はそういうと、アジーに向かって突っ込んでいく。それを好機と言わんばかりにアミダが狙いをつける

 

アミダ「むざむざいかすと思うの「ヒュンッ!」っ!?」

 

しかしレーダーに反応していなかった方向から突然の射撃が飛んでくる

 

アミダ「レーダーには反応なし…この感覚、ユーリか!」

 

ユーリ「…貴方の相手は、私だ」

 

ユーリはそう言いながら両肘に装置されているライフルをアミダに向ける

 

アミダ「…いいよ、この際だ。アンタもまとめて躾けてあげるよ!」

 

 

ーーイサリビ 百里戦ーー

 

ガンガンッ!

 

バゴォンッ!

 

シノ「おわっ!?おいおい!このままじゃもたねぇぞ!」

 

ビスケット「わかってる!…三日月、急いで!」

 

イサリビはラフタの乗る百里の猛攻に何とか耐え忍んでいた。しかし、このままではいずれ撃沈されるのは目に見えていた

 

ラフタ「エビだけにかったいなぁ!この艦!…ん?」

 

ビーッ!ビーッ!

 

百里のモニターに警報がなると、ラフタの右方向から一つのモビルスーツ…バルバトスが接近してきていた

 

ガンッ!ガンッ!

 

三日月「俺達の艦に、勝手に手を出すなよ!」

 

三日月は滑空砲を手に持ち、百里に向かって射撃する

 

ラフタ「チッ!生意気なんだよ!子供がモビルスーツなんてさぁ!」

 

ラフタはそういいながら飛んでくる砲弾を華麗に避け、その高機動性にものを言わせた動きでバルバトスに接近する。

 

ラフタ「ウラァッ!」

 

ガギィンッ!

 

三日月「うわっ!」

 

ラフタはすれ違いざまにバルバトスの肩部に蹴りを入れる。アビスに勝るとも劣らないその機動性に、三日月は歯軋りする。

 

三日月「速いっ!」

 

ラフタ「アンタのとは推進力と機動性が違うんだよぉ!」

 

ガンッ!ガンッ!

 

バガァンッ!

 

三日月「ウグゥッ!」

 

バルバトスのレーダーに百里の姿を捉えるのが精一杯の三日月は、ラフタの射撃に回避することもできずモロに直撃してしまう。

 

ラフタ「へっへへっ!グゥレイトォ!」

 

ラフタはそう言った、が、爆煙の中から出てきたのは、直撃したにも関わらず、損傷軽微で済んでいるバルバトスだった

 

三日月「…まだだッ!」

 

三日月はそう言いながら滑空砲を構え、百里に撃ちまくる。

 

ラフタ「ハァ!?直撃したってのに、ダメージほとんどないの!?ったく、ガンダム・フレームは相変わらずめんどくさい!…まぁ、ユーリのアビスに比べりゃまだましだけど…さ!」

 

ガンッ!

 

ラフタも愚痴りながら、向かってくるバルバトスに向かって、両脇についている主砲を斉射する

 

ラフタ「遅い遅い遅い遅いッ!」

 

三日月「…クソッ、どうにかして動きを止めなくちゃ…」

 

 

 

ーーイサリビ モビルワーカー格納庫ーー

 

ピッピッ…

 

ヤマギ「…」

 

シノ「ヤマギ、どうだ?」

 

ヤマギ「…行けるよ、シノ」

 

シノや他の少年兵達はある作戦の為に急いでモビルワーカーの起動を確認していた

 

シノ「そっか、助かるぜ!ヤマギ!」

 

シノはそう言ってモビルワーカーのコクピット内にあるヤマギに手を差し伸ばす

 

ヤマギ「…!」

 

シノ「…ん?どした?遠慮すんなよ。ほら」

 

ヤマギ「…ありがと」

 

パシッ…

 

ヤマギはシノの手を取り、コクピットないから出す。

 

シノ「ユージン!こっちは準備できたぜぇ!」

 

 

 

ーーイサリビ ブリッジーー

 

ビスケット「ユージン!シノ達は準備完了!」

 

ユージン「わぁってる!」

 

ユージンが次はどうすべきか考えていると、

 

プシュー…

 

アトラ「あれ?オルガさんは…」

 

クーデリア「…」

 

ビスケット「!?な、なんで2人がここに!?」

 

ブリッジの扉から出てきたのは、ノーマルスーツを着たアトラとクーデリアだった

 

クーデリア「私はここで見届けます!」

 

ビスケット「っ!?…もう!ちゃんと捕まってて下さいよ!?」

 

クーデリアの言葉を注意する暇もないビスケットは、諦めて状況を確認する

 

ユージン「敵のモビルスーツが邪魔だ!三日月、もっと遠ざけろ!」

 

ユージンに命令される三日月。しかし当の本人は思った以上に苦戦していた

 

チャド「ダメだ!相手との速度差が厳しいんだ!」

 

アトラ「…三日月…」

 

アトラは心配そうに三日月の乗るバルバトスを見つめる

 

 

 

 

三日月「ハァ…ハァ…!」

 

バゴォンッ!

 

三日月「うぅっ!…ダメだ、このままじゃ埒があかない!」

 

三日月は滑空砲で百里に射撃するが、相変わらず百里には軽々と避けられ、その上相手の射撃をモロに喰らう

 

ラフタ「いい加減墜ちろぉ!」

 

三日月「っ!しま」

 

バゴォンッ!バガァンッ!

 

百里の方を向いていたバルバトスの頭部と腹部が百里の主砲によって直撃される。しかし、ラフタはそれでもまだ墜ちないことを予想し、相手が怯んでいる隙に急接近し、ゼロ距離射撃で撃ち落とそうとした、が…

 

三日月「…そこだぁっ!」

 

ラフタ「っ!?なにっ!?」

 

バシュンッ!

 

ガギィンッ!

 

三日月はラフタが接近することを予測しており、バルバトスの腕部に新しくつけられていたワイヤーアンカーを、接近したこの時を好機と言わんばかりに百里に引っ掛ける

 

ラフタ「クッソ!こんなのでぇ!」

 

ラフタは推進力と機動性にものをいわせ、引っ掛かったアンカーを外そうとがむしゃらに飛び続ける。それはさながら暴れ馬のようであった。そしてアンカーを引っ掛けたバルバトス自体も、そのがむしゃらな飛行に引っ張られ、制御が思うようにできなかった…しかし、ユージンの最初の命令通り、モビルスーツを引き離すことができた。それを見たユージンは命令する

 

 

 

ビスケット「ユージン!」

 

ユージン「よっしゃいくぜぇ!ミサイル斉射ァ!」

 

ユージンがそう叫ぶと、ハンマーヘッドに向かって三つのミサイルが発射される

 

 

 

ーーハンマーヘッド ブリッジーー

 

ビルト「!ミサイル来ます!」

 

名瀬「あたんじゃねぇぞぉ?」

 

エーコ「了解!迎撃しまーす!」

 

ガンッ!ガンッ!

 

バゴォンッ!チュドォンッ!

 

エーコは難なくイサリビのミサイルを破壊した…が、そのミサイルから大量の煙が噴出された

 

マルバ「!?煙幕!?」

 

名瀬「ただの目眩しか…それとも…」

 

ビーッ!ビーッ!

 

マルバ「!?な、なんだ!」

 

突如としてハンマーヘッドのブリッジ内に警報が鳴り響く。

 

ビルト「!…エイハブウェーブの反応増大!」

 

エーコ「これ…まさか近づいてきてんの!?」

 

名瀬「何!?」

 

ブォォォンッ!

 

大量の煙の中にいるハンマーヘッド、そのほぼ目の前に突如としてイサリビが現れた

 

マルバ「ぶ、ぶつかるぅ!!」

 

 

 

ユージン「いっくぜぇぇッ!!」

 

ダンテ「よっしゃあ!任せろォ!」

 

イサリビはハンマーヘッドとぶつかる直前、全力で上に上昇しつつ、艦をバレルロールさせ、ギリギリ当たらない範囲でハンマーヘッドの頭上をすれ違った。それを見た名瀬は絶句した

 

名瀬「なぁ!?…ヘッ…!やってくれんしゃねえか!けどよ…そう簡単にゃあ逃さねぇぞぉ!」

 

ハンマーヘッドも急遽回頭し、イサリビを追いかける

 

ユージン「あとは頼んだぜぇ!お前ら!」

 

 

 

 

名瀬「度胸は認めてやるがよ、やっぱお前らまだ未熟なガキ「ドゴォンッ!」おわっ!」

 

突如としてハンマーヘッドに爆発が轟く

 

名瀬「ったく、なんなんだよこれは!」

 

エーコ「モビルスーツ格納庫に爆発!…え!?艦内に侵入者あり!」

 

名瀬「何!?すれ違いざまの置き土産に飛び移ったってのか!?艦の速度考えろよ体がミンチになんぞ!?」

 

名瀬は正気の沙汰とは思えない行動の連続で驚いていた。そこにマルバが叫ぶ

 

マルバ「奴らは宇宙ネズミだ!それくらいは平気でやってくる!」

 

名瀬「…ネズミぃ?阿頼耶識のことか?アンタまさか無理やりあの手術を…!?」

 

マルバの言葉に名瀬は眉を潜める

 

マルバ「あぁそうだ!手術を拒否したただのガキがなんの役にたつ!ヒゲありの宇宙ネズミだからこそ使ってやったってのによ!」

 

名瀬「…チッ」

 

マルバの言葉に名瀬は蔑んだ目でマルバを睨む

 

 

 

アジー「姐さん、艦行っちゃいますよ」

 

アミダ「…上手いこと引き離されたね。追うよアジー」

 

アジー「了解です」

 

アミダはそういうと相手をしていたユーリ、昭弘を放っておき、イサリビに急行する

 

昭弘「行かせるかよぉ!」

 

昭弘は後ろを見せた今がチャンスと言わんばかりに、ライフルを撃ちながら急接近する、が

 

アミダ「邪魔なんだよ!」

 

バギィンッ!

 

アミダの勢いよく振り下ろした片刃式ブレードに、グレイズのバトルアックスは耐えきれず破壊されてしまう。だが、その時に生じたアミダの隙を、ユーリは見逃さなかった

 

ユーリ「させるもんか!いけ!カタール!」

 

ユーリは膝部のGNカタールを飛ばし、アミダにオールレンジ攻撃を仕掛ける。

 

アミダ「っ!チッ!相変わらず面倒な武装だよ!」

 

ユーリ「ハァァッ!」

 

ユーリはオールレンジ攻撃を仕掛けながらもガーベラストレートを抜き、攻撃する。

 

アジー「姐さん!」

 

アジーがユーリに向けてライフルを向けるが、昭弘がそれを阻止する

 

昭弘「させるかぁ!」

 

アジー「ッ!しつこい!」

 

昭弘「俺ぁ負けられねぇ!負けるわけにゃあいかねぇんだよぉ!」

 

昭弘は弾切れのライフルも、半壊したバトルアックスもなげすて、素手でアジーに殴りかかる。だが、プロの戦闘員に昭弘が素手で叶う筈もなく、接近したところを掴まれ、頭部に膝蹴りをくらった。だが…

 

昭弘「まだだぁっ!」

 

ガコンッ!

 

アジー「…!?」

 

昭弘のグレイズの改にはバックパックにバルバトスと同じ折り畳み式の滑空砲がマウントされていたのだ。それを展開した昭弘は正確な狙いなどつけずにただ砲身をアジーに向けた

 

ガァンッ!

 

アジー「甘いんだよ!」

 

しかしアジーは撃たれる直前に砲身を蹴り上げた為に撃たれることはなかった。

 

昭弘「オォォォ!!」

 

しかし昭弘は砲身を蹴られた瞬間、すぐさま滑空砲をパージし、アジーの足に組みつき、殴りつける

 

アジー「こんのっ…いい加減にぃ!」

 

 

 

 

 

バギィンッ!

 

ガァンッ!

 

ガギィンッ!

 

アミダ「どうするんだいユーリ!お仲間が危ないよ!」

 

ユーリ「もともと危険なしでやり合えるなんて思ってない!」

 

アミダとユーリはとにかく近接戦で斬り合っていた。もともと機体性能はアビスの方が圧倒的に上だが、それを補って余りある操縦技術をアミダは持っていた

 

ユーリ「このぉ!!」

 

ガンッ!ガンッ!

 

アミダ「アンタの射撃に当たるほど腕は鈍っちゃいないよ!」

 

ユーリはライフルを撃つが、やはりアミダには当たらない。

 

アミダ「アンタ、結構容赦なくくるね。昔の仲間はもう必要ないって?」

 

ユーリ「…拾ってくれたことに感謝はしているよ。でも、あそこは私の場所じゃない、貴方達の場所だ!あそこに、私の生きる道は無いんだ!」

 

ガギィンッ!

 

ユーリとアミダが互いの剣で斬り合いながら話す。

 

アミダ「なら今いる所に、アンタの生きる道があるっていうのかい!?」

 

ギャリンッ!

 

ユーリ「そうだよ!私が!私自身の意思で!決めたことだァ!」

 

ユーリはガーベラストレートでアミダに斬りかかるが、アミダは剣を横に防いだ。しかし、

 

ユーリ「こんのぉ!」

 

ガシッ!

 

アミダ「!?」

 

ユーリはそのままアミダの腕部を掴み、アビスのもう片腕についているライフルを至近距離で向けた

 

アミダ「くっ!!」

 

ユーリ「…っ」

 

しかし、ユーリは撃たなかった。

 

アミダ「…どうしたんだい、撃ちなよユーリ。絶好のチャンスじゃないか」

 

ユーリ「…降参して」

 

ユーリはなおも銃口を突きつけながら言う

 

アミダ「…フッ…やっぱりアンタは、子供で、未熟だよ!」

 

バギッ!

 

ユーリ「っ!?」

 

ガギィンッ!

 

アミダは掴まれている腕をひっぱり、アビスが大勢を崩した瞬間、アビスの腕部についているライフルを奪うと同時に腹部に剣をたたき込んだ。

 

ユーリ「うぐっ!?」

 

アミダ「殺しはしないけど、少しばかり痛い目を見てもらわないとね!」

 

アミダはそう言うと、銃口をユーリに向ける

 

ユーリ「…ッ!」

 

ユーリも咄嗟に片腕の銃口をむけた。その時、

 

オルガ『もういい皆!話はついた!』

 

三日月・昭弘・ユーリ「!?」

 

通信越しの突然のオルガの言葉に、三人は驚いた。そしてその言葉の上に名瀬が告げる

 

名瀬『そう言うことだお前ら、俺はこいつらの話を聞くことにした』

 

アミダ「…だそうだよ?よかったね、坊や達」

 

ジャキ…

 

アミダはそう言い、ユーリに向けた銃口を下ろした

 

ユーリ「…終わった…の?」

 

 

 

 

昭弘「…ハァ…ハァ…」

 

アジー「…もう終わったんだ。いい加減離れろっての」

 

昭弘は無我夢中でアジーの百錬の足にしがみついたまま休憩していた

 

 

 

 

ラフタ「…なによ、せっかくいいところだったのに」

 

三日月「…しんどかったな」

 

ラフタと三日月も互いにボロボロの状態で小型小惑星にぶつかり、止まっていた

 

 

少年兵の集まりである鉄華団と、テイワズの直下組織、タービンズの長いようで短かった戦闘は、ここに幕を閉じた…だが、ここから先の道のりが、彼らにとってもさらに厳しい道になっていく…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?なのだ!これからも体調が良くなり次第あげていくから待ってて欲しいのだ…それでは次回もよろしくなのだー!


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短番外編 アメリアの宝物

こんにちはなのだ!黒アライさんなのだ!今日はちょっと短めの番外編を書きたくなったのだ。だからユーリの母親ことアメリア・アルレイズについて書いていくのだ!それではどうぞなのだー!




カチャカチャ……

 

キュッキュッ…

 

 

 

「ハァ……全く、このGNドライブ作った人は頭おかしいんじゃないのかしら…」

 

長く美しい銀髪を、鈴のついた青いリボンで後ろにひとつに纏めている女性がそう呟きながら、一つの人型兵器…モビルスーツを磨いていた

 

「強すぎる力は、争いを呼ぶ代表の一つなのに…まぁ、その争いが起きるおかげで、戦うことしか能のない私でも、あの子を養えてるわけなんだから…皮肉なものね」

 

女性は休憩代わりにモビルスーツの頭部の横、右肩に座りながらひとり呟く

 

アメリア「貴方の遺してくれたこの機体に、その力が植え付けられてるのも、一種の運命なのかしら……アストレイ…《王道ならざる者》…」

 

アメリア・アルレイズ…これはユーリが傭兵やり始める前…ユーリの母親であるアメリアが、彼女と過ごしているときの少しばかりの物語…

 

 

 

 

ーー 廃棄コロニー ーー

 

ガシャン…

 

ピッピピッピ…

 

アメリア「…さて、報酬も貰ったし、大切なあの子の元に戻らないと…寂しがってるかなぁ…そんなことないかしら…いやでもまだ8歳だし…」

 

アメリアは、全体的に黒がモチーフとなっているモビルスーツ、《ケイオス・アストレイ》にのり、仕事中隠れ家として使っていた廃棄コロニーから脱出していた、しかし…

 

ピッ…ピッ…

 

アメリア「…面倒なのが来たわね…」

 

ケイオスのレーダーに突如として反応した四つほどのエイハブウェーブが、真っ直ぐと自分のいた廃棄コロニーにむかっている

 

アメリア「…私は相手のレーダーには映ってないだろうし、このまま行ってもいいんだけど…探られるのは嫌ね」

 

アメリア「…殺すか」

 

アメリアは小声でそう呟くと、廃棄コロニーの周りに散らばっているデブリに身を隠しながら相手のモビルスーツに接近する…

 

 

 

 

 

 

 

傭兵A「なぁオイ…本当にここにいんのかぁ?こんな静止軌道から遠く離れた厄祭戦時代の廃棄コロニーに来るやつなんていねぇだろ?」

 

傭兵B「だからこそ、隠れ家としてはちょうどいいんじゃねえか…もっとも、こんなところに廃棄コロニーがあること自体、俺も今回ので初めて知ったんだがな」

 

傭兵C「いくらお偉いさんの依頼とはいえ、鈴付きを相手にすんのなんて、憂鬱だぜ…」

 

傭兵D「そういやよ、その鈴付きの事なんだが、嘘かホントか、パイロットは絶世の美女なんだとか!」

 

4機のモビルスーツのパイロット達は安定した速度で廃棄コロニーに近づきつつ、今回のターゲットのことについて話し合っていた

 

傭兵A「マジかよ!?うへぇ、勿体ねえなあ…なぁ傭兵B、その鈴付き殺さずにとっ捕まえてよ、俺たちで楽しまねぇか?」

 

傭兵B「バカかテメェ。んなもん、嘘っぱちに決まってんだろうが…忘れたのか?鈴付きはなんの情報もない、未知の傭兵なんだぜ?腕っぷしどころか、どんなやつなのか、どんな仕事を受け持つのか、そもそもどこでどんな活動をしているのかすらわからない奴だ。そんな奴に依頼する方もする方だが、何より恐ろしいのは…」

 

傭兵B「俺達の様な傭兵に数多く狙われながら、今なお存命していることだ…」

 

傭兵Bは少し冷や汗をかきながら語る

 

傭兵C「まぁ確かに、俺達、《夜明けの地平線団》の他にも、《ブルワーズ》や《テイワズ》。はたまた《ギャラルホルン》にまで狙われてるって噂は聞いたことあるしな」

 

傭兵A「うっわマジで?それでも生きてるなんて…もしかしてよ、俺達かなりヤバイ連中に手ェ出したんじゃねぇだろーなぁ…」

 

傭兵Aと傭兵Cも、途端に恐怖に襲われながらコロニーに着く。

 

傭兵A「なぁ傭兵D、そこんとこどうなんだよ…傭兵D?」

 

傭兵Aが傭兵Dに喋りかけるが返事はなかった

 

傭兵A「…おい、まさか!」

 

バッ!

 

傭兵Aは知らないうちに襲撃されているのかと思い、勢いよく後ろを振り向いた。しかし、すこし離れたところに、何故か動きは止まっていたが、ちゃんと傭兵Dの姿はあった

 

傭兵C「んぁ?どうした傭兵A」

 

傭兵A「…いや、なんでもねえ。傭兵Dが返事しねえからさぁ、しらねえウチに墜とされてんのかと思ったぜw」

 

傭兵Aは傭兵Dに近づく。

 

傭兵A「おい!寝てんのか?ちゃんと返事しろよおい!」

 

傭兵Aは傭兵Dのモビルスーツのコクピットあたりをこづく。しかし、一向に返事は返ってこない

 

傭兵B「おい、なにしてる」

 

傭兵A「それがよ、こいつ急になにも言わなくなっちまってよ。動いてもねぇんだ。一体どうしちまったってん…」

 

 

 

 

ガシュッ!

 

傭兵B・傭兵C「!?」

 

突如として上から降ってきた黒いモビルスーツに、傭兵Aのコクピットはナイフの様な物で後ろから突き破られていた

 

傭兵C「なっ!?テメェェ!!」

 

ガガガガガンッ!!

 

傭兵Cは突然殺された仲間の仇を取ろうと、反射的に銃を取り、その黒いモビルスーツに向かって乱射した。しかし…

 

ガシッ!

 

傭兵B「!?まさかっ!?」

 

ガンッ!ギンッ!

 

黒いモビルスーツは殺したばかりの傭兵Aのモビルスーツを掴むと、盾のように扱い、傭兵Cの撃った弾丸を防いだ。しかも、それだけでは終わらなかった

 

バギィンッ!

 

傭兵C「!うわぁっ!」

 

バガァンッ!

 

黒いモビルスーツは防ぎ終わった後、穴だらけになった傭兵Aのモビルスーツを傭兵Cに向かって蹴り飛ばした。傭兵Aのモビルスーツは推進剤に引火したのか、傭兵Cを巻き込み、誘爆した。この時にかかった時間は僅か5秒たらずである

 

傭兵B「…ま、まさか、そんな…俺たちは、団のなかでも精鋭だぞ?それが、こんなあっさり…」

 

「知ったことじゃないわよ」

 

傭兵B「!!?」

 

傭兵Bが恐怖のあまり、動けないでいると、黒いモビルスーツのパイロットと思わしき者の声が聞こえた

 

傭兵B「な、なんだ…!なんなんだお前はぁっ!?」

 

アメリア「アンタ達が探してた鈴付きよ」

 

ガシッ!

 

傭兵B「!?な、なにを!」

 

バリリィッ!バチィッ!

 

傭兵B「ッ!がぁぁぁぁっ!?」

 

アメリアはそう言うと高速で傭兵Bのコクピット部分を鷲掴みにし、手のマニュピレーター部分に内蔵されている武器《ナルカミ》を発動させ、高圧電流を流し込み、中のパイロットを感電死させた。

 

アメリア「…私を殺したいなら、アリアンロッド艦隊でも連れてこいっての」

 

アメリアはそう言うと傭兵Bのモビルスーツを放す

 

アメリア「さてと、新品同様のモビルスーツが手に入ったことだし、テイワズに売りつけよっと…あぁでも、ジャスレイに見つからないようにしないと…何かした覚えもないのに、なんでか命狙われてるからなぁ…」

 

アメリアは無線でテイワズのとある人物に連絡を取り、回収に行かせた…

 

 

 

 

ーー火星 クリュセ街 街外れーー

 

ヒュッ!バッ!

 

ユーリ「…ふっ!」

 

タンッ!

 

クリュセ街のとある街はずれ。そこに、ポツンと小さい一軒家があった。そこには鉄華団と出会う前…もっといえば傭兵として活動する前の幼いユーリが、ナイフを片手に格闘術や、ナイフの投擲訓練を1人でやっていた

 

ユーリ「…違う、今のじゃ力の掛け方が弱い…効率よく多人数を殺すには…」

 

ゴォォォォン…

 

ユーリ「…あ」

 

ユーリははるか上空から聞こえる何かの音に、上を振り向いた。そこには、黒い豆粒ほどに見える小さな物がこっちに結構な速度で落ちてくる。だが、ユーリはどうこうするでもなく、ただそれをじっと見つめていた。

 

接近するにつれ、豆粒ほどにしかみえなかったそれは、だんだんと人型のように見え、最終的には、肉眼でもモビルスーツであることがわかった

 

ギュォオォォン…!

 

ブワァァッ!

 

ユーリ「…!」

 

その黒いモビルスーツはユーリの家に近づくと、そのモビルスーツから巻き起こされる突風に、ユーリの髪がさらされる。そしてそのモビルスーツがゆっくりと着地した途端、ユーリは猛ダッシュでそのモビルスーツに駆け寄る

 

ダダダダダッ!

 

ユーリ「ハァ…ハァ…!」

 

ガシャン…ウィーン…

 

ユーリがモビルスーツのそばに駆け寄ると、モビルスーツのコクピットが開き、その中から1人の女性が現れる。すると…

 

アメリア「ユゥゥーリィィーー!!」

 

アメリアはそう叫ぶとコクピットから《飛び降り》、ユーリを捕まえると思いっきり抱きしめた

 

ユーリ「むぐっ…」

 

ユーリも、抱きしめられると同時に、ユーリもアメリアの体にその小さな腕を巻きつける

 

ユーリ「…お帰り…お母さん」

 

アメリア「…フフッ…ただいま♪ユーリ…」

 

アメリアとユーリはしばらく抱き合うと、ユーリがそろそろ苦しくなったのか手を放す

 

ユーリ「…お母さん、今回は帰ってくるの早かったね」

 

アメリア「そりゃぁもう頑張ったからね!ユーリの為になると思えば、楽なものよ」

 

アメリアは割と大きいその胸を張りながらドヤ顔でそういう。しかし、ユーリはあまり嬉しそうではなかった

 

ユーリ「…そっか、でも、気をつけてね?…死んじゃ、やだよ…?」

 

ユーリは1人しかいない家族が、自分の為とはいえ危険な場所に行って死なれるのが一番怖かった。ユーリは少し涙目になりながらアメリアを見つめる。それを見たアメリアはユーリの頭を撫で、優しく微笑みながら語る。

 

アメリア「大丈夫、私にはお守りがあるもの…あの人がくれた、アストレイって言うお守りがね」

 

ユーリ「…お父さんがくれた、お守り?」

 

ユーリは首を傾げながら尋ねる。その問いにアメリアは笑いながら答える

 

アメリア「フフフッ♪そうよ、《アイゼン》が遺してくれたこの機体が、私とユーリを守ってくれるのよ」

 

ユーリ「…そっか、お父さんが守ってくれるなら、安心…」

 

アメリア「でしょ?さぁ、お夕飯にしましょ。私お昼食べてないからお腹空いちゃって…ほらほら!入って入って!」

 

ガチャ…

 

アメリアはユーリを押しながら家に入る。モビルスーツはそのままになっているが、GN粒子はレーダーに移らないことと、クリュセの街はずれに住んでいることもあり、見つかることはなかった。仮に見つかったとしても、こんなご時世なのだからそこらじゅうに兵器があってもおかしくはないのである…モビルスーツは例外だが…

 

 

 

 

ユーリ「…はい、お母さん」

 

コトッ…

 

アメリア「ありがとう、ユーリ。…わぁ!お肉はいってる!久しぶりにお肉入りのご飯が食べられるぅ!」

 

ユーリは今日の為に奮発して、火星じゃ高級品であるお肉が少々入った野菜たっぷりのシチューを作り、アメリアにだす。

 

ユーリ「…喜んでくれたならよかった」

 

アメリア「うん!嬉しい!…でも、ユーリが多く食べないとね?」

 

アメリアはシチューの中に入っている肉をユーリにシチューに入れる

 

ユーリ「!い、いいよお母さん!私は少食だからあまり食べられないし…」

 

アメリア「ダメッ!そんなだからまだ体が細いのよ!ちゃんと食べないと、訓練もさせないわよ?ほらっ!口開けて!」

 

ユーリ「!?ま、まってお母さん!自分で食べむぐっ!?」

 

アメリアは半端強制的にお肉の入ったシチューをスプーンを使ってユーリの口に突っ込む。

 

アメリア「私が食べてもしょうがないわ。なんせ望んでもいないのに、ここについちゃうしね」

 

アメリアは苦笑いしながら両手で自分の胸をタプタプと揺らす

 

ユーリ「…ん…」

 

ユーリは自分の胸を見るが、まだ8歳の子供には当然胸の膨らみなどはなかった

 

アメリア「食べなきゃ成長するものもしないわよ?さぁ!どんどん食べなさい!」

 

そうしてユーリは、自分が母親の為に作ったシチューを、自分がその母親にほとんど食わされる羽目になった…

 

 

 

ーー夜中9:00頃ーー

 

アメリア「…」

 

カチャカチャ……

 

アメリアは自分の懐につけているマグナムを取り出し、一度分解して整備していた

 

アメリア「…あぁダメだ!やめやめ!せっかく家にいるんだし、あの子ともっと戯れないとね!」

 

アメリアはそう言って寝ているであろうユーリの部屋に潜り込む

 

 

 

ユーリ「…ZZZ」

 

アメリア「…ハァ…愛らしいなぁ…」

 

ナデナデ

 

アメリアはユーリの部屋に潜り込むと、大人が見せてはいけないだらしない表情でユーリの頭を撫でていた

 

アメリア「…ユーリ、私、頑張るからね。何一つ、母親らしいことなんてできない私だけど、それでも、貴方の母親だから…頑張って、頑張って、いつかユーリを守ってくれる人が現れるまで、私が守ってあげるからね…」

 

アメリアはユーリの頭を撫でながら優しく微笑み、そう呟いた

 

 

その日の夜、クリュセの街外れの家の近くには、優しい優しい鈴の音色が鳴り響いた……

 

 

 

 

 

 

「…て…リ…」

 

「…ユー…おき…」

 

「…ユーリ」

 

ユーリ「!?」

 

ガバッ!

 

ユーリが目を開けると、そこは自分の記憶にある、イサリビの鉄臭いモビルスーツ格納庫だった。そしてその隣には、三日月が立っていた

 

三日月「…」

 

ユーリ「…夢…」

 

三日月「…怖い夢でも見たの?」

 

ユーリ「え?」

 

三日月「ユーリ、泣いてる」

 

ユーリ「!」

 

バッ!

 

ユーリは慌てて顔を触ると、目の部分が湿っていた。ユーリはグシグシと涙を拭くと、三日月が語る

 

三日月「…ずっと、お母さんって呼んでた」

 

ユーリ「…」ビクッ…

 

三日月「…ユーリの過去に、なにがあったのかなんて俺は知らない。でも…溜め込んで爆発するぐらいなら、適度に発散するのも、大事なんじゃないの?」

 

三日月「俺達じゃ母親の代わりにはならないだろうけど、それでも、仲間だ。誰かに甘えることぐらい、していいと思うよ」

 

三日月はそれだけ言うと、モビルスーツ格納庫から出て行った

 

ユーリ「…甘える、か」

 

ユーリ「…お母さん…会いたいよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




…はい!いかがでしたか?なのだ!今回はユーリの母親、アメリアについて描いたのだが、番外編が読みたいって人は感想で教えてほしいのだ!本編も進めながら適度に描いていこうと思うのだ!それでは次回も読んでくださいなのだ!


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寄り添う形

こんにちはなのだ!黒アライさんなのだ!最近ウチの飼っている猫が一匹脱走していなくなってしまい、ショックで寝込んでいたのだ…いつか帰ってくることを願って、今日も書いていくのだ!それではどうぞなのだ!


ーータービンズ戦 オルガ視点ーー

 

エーコ「モビルスーツ格納庫に爆発!…え!?艦内に侵入者あり!」

 

名瀬「何!?すれ違いざまの置き土産に飛び移ったってのか!?艦の速度考えろよ体がミンチになんぞ!?」

 

名瀬が正気の沙汰とは思えない行動に叫ぶ。そして、ハンマーヘッドの監視カメラには、しっかりと飛び移った者達の顔、オルガやシノ達の顔が映っていた

 

 

 

ーーハンマーヘッド モビルスーツ格納庫付近ーー

 

ピッピピッピ…

 

ダンテ「…よっしゃきた!艦内図取れたぜ!」

 

ダンテはそう言い、艦内の電子情報をハッキングしたタブレットをオルガに渡す

 

オルガ「流石だぜダンテ!…よし、あとは任せていいか!?」

 

ダンテ「おう!電子戦なら任せとけっ!」

 

ダンテは頼もしく返事した

 

オルガ「っし!いいかお前ら!俺たちは一気にブリッジを落としにいく!」

 

シノ「やっとかよ!ならさっさと行こうぜ!いつまでもここにはいらんねぇかんなぁ!」

 

オルガやシノ、ダンテなど、そのほかにもたった2人、合計5人だけの少年兵がいた。そのもの達が勢いよく返事する

 

オルガは最初から真っ当に勝負するつもりなど無かった。なんせ向こうにはプロの戦闘員がいるのだ。こちらにもモビルスーツはあり、三日月やユーリ、昭弘などの優秀なパイロットはいるが、正直いって状況が悪かった。三日月は三日月なりにやってくれるだろう、だが昭弘とユーリに至っては今回はお世辞にも期待できない。しかし、オルガは考えた。モビルスーツ戦が無理ならそれ以外で勝てばいいと。

 

オルガはとある作戦を考え、実行した。それはユージンがイサリビで相手の艦、ハンマーヘッドに出来る限り近づき、モビルワーカーを使って艦に取り憑いて侵入し、一気にブリッジまで駆け上がって大将を抑えるという、正気の沙汰とは思えない作戦だった。

 

 

 

タッタッタッ…

 

タービンズ兵「…!いたぞ!」

 

オルガ「チッ!対応が早え…!シノォ!」

 

シノ「了〜解ってなぁ!」

 

バシュッ!

 

…ブシュゥゥ…

 

シノは一度止まり、後ろから追いかけてくるタービンズ兵に向かって、ガス弾を撃った

 

タービンズ兵「クソッ!小細工を!」

 

タービンズ「待て撃つな!ガスに引火する!」

 

シノ「そこでずっと止まってろってんだ!」

 

 

 

 

ーーハンマーヘッド ブリッジーー

 

ビーッ!ビーッ!

 

マルバ「!?な、なんだ!?」

 

名瀬「…警報?」

 

突如として鳴り響く警報にマルバが驚く

 

エーコ「これは…可燃性のガスが艦内に広がってます!」

 

マルバ「なにぃ!?」

 

マルバがどうしたものかと慌てふためく間に、名瀬は冷静に対処法を考える

 

名瀬「…艦内の隔壁でガスごとガキどもを封鎖できねぇのか?」

 

ビルトは名瀬の指示通り、隔壁を閉じようとするも…

 

ビルト「…無理です!閉じられません!」

 

名瀬「あぁん?」

 

エーコ「ウチのメインフレームに潜り込まれたみたい!こちらの操作をブロックされ続けてます!」

 

 

 

ピッピピッピ…

 

ダンテ「…ッヘヘ!お前らにゃぁ、艦の操作一つ取らせやしないぜっ!」

 

ダンテは1人艦に繋がれたタブレットを駆使し、相手の操作をことごとく妨害していた

 

 

 

エーコ「…うわっ!モニターまで!」

 

エーコの扱うモニターが、急に電源を閉じられた。これも全てダンテの仕業である

 

名瀬「チッ…居場所も数もわからねぇのかよ…」

 

クロエ「直前の映像ならなんとか…!正面に出します!」

 

クロエという金髪の女性がなんとか映像をかき集め、正面モニターにだす

 

名瀬「…4人、か」

 

名瀬は冷静にどう対処するか考える。しかし、隣にいるマルバは、モニターのとある1人を見つけると、滝のような冷や汗をかいた

 

マルバ「…オ、オルガ…!」

 

 

 

 

ーーハンマーヘッド ブリッジ付近ーー

 

エーコ『艦内に可燃性ガスが発生!繰り返す!可燃性ガスが発生!』

 

タービンズ兵「…え?な、なに?」

 

タービンズ兵の何人かは、ダンテの妨害によって通信が入っておらず、現状がどうなっているか分からないものが多かった。慌てふためくタービンズ兵のいる場所、その真上には…

 

 

 

オルガ「…ダンテの奴、上手くやってるみたいだな」

 

オルガとシノは艦のダクトを通り、順調にブリッジに近づいていた

 

シノ「だな…しっかし、さっきから女しかでてこねぇぞ?」

 

オルガ「知るかよ…男だろうが女だろうが、やることは変わんねぇ…いくぞ」

 

オルガは急ぎながら、されど慎重に、ブリッジに近づいていく

 

 

 

ーーハンマーヘッド ブリッジーー

 

名瀬「…しっかし、古臭い手だが、上手いもんだ…なぁマルバ、あのガキどもはどうやってこっちのシステムに侵入してるんだ?」

 

名瀬は苦笑いしながらマルバに問う。

 

マルバ「!?そ、そんなもん、知るわけないでしょう!?」

 

マルバは訳がわからないと言わんばかりに即答する。その答えに、名瀬は顔をしかめる

 

名瀬「あぁん?テメーんとこのガキだったんだろーが」

 

マルバ「ネズミ共にどんな手仕込んだかなんていちいち覚えてる訳ないでしょう!?いいから!さっさと殺しちまって下さいよ!あいつら、名瀬さんに喧嘩売ってるんですよ!?テイワズの顔に、泥を塗ることになるんじゃないですか?!?」

 

名瀬「…そうだなぁ」

 

名瀬は至って冷静にマルバに相槌を打つ

 

マルバ「ほら、早くしないと!あいつらここに来ちまう!殺しちまって下さい!」

 

マルバはまるで目の前に死神が迫っているかのように切羽詰まったような表情で叫ぶ

 

マルバ「殺しちまって下さいよぉ!」

 

名瀬「…」

 

 

 

ーーハンマーヘッド ブリッジ付近ーー

 

シノ「…なぁオルガ。なんか、さっきから抵抗が弱くなってきてねぇか?」

 

シノの言う通り、いくらダンテの妨害があったとしても、さっきから1人もタービンズ兵が出てこないのはおかしかった

 

オルガ「そうだな…だが、やりやすくなっていいじゃねぇか。とっととブリッジに行くぞ!」

 

 

 

ーーハンマーヘッド ブリッジーー

 

マルバ「名瀬さんきいてるんですか!?」

 

マルバが名瀬に向かって叫び続けていると、ついにマルバの恐れていたことが起こる

 

プシューー…

 

ジャキッ!

 

マルバ「っ!?あ、ああ…」

 

マルバが名瀬の後ろを見ると、恐怖のあまり、立ちすくんでいた

 

オルガ「…」ジャキッ!

 

名瀬「…よぉ、ご到着か」

 

名瀬はこちらに銃をむけているオルガ達に、ゆっくりと顔を合わせる

 

シノ「…ん?」

 

オルガ「…なんだ?」

 

オルガ達は、自分達という敵がきたにもかかわらず、なにもしてこない名瀬達に、少しばかり動揺した。しかし、マルバの叫び声に、気を引き締める

 

マルバ「ひぃぃぃッ!!オ、オルガァ!?」

 

マルバは恐怖と驚きのあまり、腰を抜かしてしまう

 

オルガ「…なんかよくわかんねぇけどよ。俺たちがただのガキじゃねぇってことは、分かってもらえましたかね?」

 

オルガのしてやったような態度に、名瀬は笑みを浮かべながら答える

 

名瀬「…確かに、ただのガキじゃあねぇようだな」

 

マルバ「!?ちょっ、ちょっと名瀬さん!?なに言ってるんですか!こいつらこのまま許しちまったら…!」

 

オルガ「…ハッ…」

 

マルバが必死に名瀬に抗議していると、オルガがゴミでも見るかのような目を向けながら鼻で笑った

 

マルバ「!?な、なんだ…!なんなんだその目は!」

 

マルバがオルガに向かって叫ぶと、オルガは思い出したように呟く

 

オルガ「そういやぁ、もう一つ用事があったなぁ…」

 

ガコンッ!

 

オルガはそういうと、ノーマルスーツのヘルメットを脱ぎ捨て、手に持っていたライフルを握りしめながらゆっくりとマルバに近づく

 

スタスタ…

 

オルガ「…」

 

マルバ「…!?ま、まて!お前らを置いてったのは…!そ、そう!作戦だ!あそこで全滅しちまったら、元も子もな「ジャキッ!」…ヒッ!」

 

オルガはマルバの頭に照準を向ける

 

マルバ「…ッ!!い、今まで面倒見てやったのは誰だッ!!お前らに仕事をやって飯食わせてやったのは、一体誰だと思ってやがる!!」

 

マルバはなおもオルガに対する抗議をやめなかった。しかし、オルガは淡々とマルバの問いに答えた

 

オルガ「もちろんアンタさ、マルバ・アーゲイ…だから俺たちは、今までアンタの命令に文句なく従ってきた」

 

マルバ「!そ、そうだ!だから「そして…」!」

 

オルガ「アンタの命令通りに…俺は…あいつらを…!」

 

オルガは怒りのこもった目でマルバを睨みながらライフルの引き金を引こうとする、が…

 

名瀬「やめとけ…そんなクズの血で手を汚すこたぁねぇ…」

 

オルガ「…」

 

名瀬の言葉に、オルガはゆっくりただが、ライフルを下ろす。しかし、マルバはあまりの恐怖に失神してしまった

 

名瀬「お前らの覚悟はしっかりと見せてもらった…取引、考えてやろーじゃねぇか」

 

名瀬が放ったその言葉に、一番最初に反応したのはシノ達だった

 

シノ「ま、マジか!!うおっしゃぁぁぁ!!」

 

オルガ「…」

 

オルガは声には出さなかったものの、心の中ではこれ以上ないぐらい安堵していた

 

名瀬「エーコ、アミダに繋いでくれ…祭りは終わりだ」

 

 

 

 

 

 

ーーハンマーヘッド モビルスーツ格納庫ーー

 

ガシャン…

 

ウィーン…

 

アミダ「…ふぅ」

 

アミダのモビルスーツ、百錬が着艦すると、コクピットからアミダがでてきた

 

名瀬「よっ」

 

アミダ「…フッ…」

 

名瀬がアミダを出迎えると、アミダに問う

 

名瀬「…んで、どうだったよ、久しぶりのあいつは」

 

アミダ「…他の子供達はともかく、ユーリに関してはやっぱり寂しいものがあるね。実の子供じゃないのに、娘を嫁にやる気分だよ」

 

アミダは笑いながら名瀬にそう伝える

 

名瀬「ハハッ、俺と同じ事言ってらぁ…」

 

名瀬も苦笑いしながら答える

 

名瀬(…けどま、丁度いいのかもな)

 

 

 

 

ーーイサリビ モビルスーツ格納庫ーー

 

ガシャン…

 

ウィーン…

 

ヤマギ「お疲れ、昭弘」

 

昭弘「お互いにな」

 

イサリビに着艦したグレイズ改のコクピットから、昭弘が出てくる。すると、昭弘は振り返り、アジーの膝蹴りを喰らったせいで潰れてしまったグレイズの頭部を見て、笑みを浮かべた

 

昭弘「…フッ」

 

ヤマギ「…?」

 

 

 

 

 

おやっさん「大丈夫か?三日月」

 

三日月「うん」

 

カチャカチャ…

 

三日月はコクピットからでて、ヘルメットを外していた

 

おやっさん「悪かったな、ロクに調整の効いてねぇ状態で出させちまってよ

 

三日月「おやっさんのせいじゃないよ、俺がもっと上手く扱えてればいい話だったんだから…それで、結局どうなったの?」

 

三日月は、タービンズとの取引はどうなっているのか聞いた

 

おやっさん「今、オルガがビスケットと嬢ちゃん連れて、ナシつけに行ってるよ」

 

三日月「…そっか」

 

三日月はそれだけきくと、ほかには何も聞いてこなかった

 

 

 

 

 

ユーリ「…フゥ…」

 

カポッ…

 

ユーリも先の2人のように、コクピットからでて、ノーマルスーツのヘルメットを外していた。

 

タカキ「…その、ユーリ、ちゃん?」

 

ユーリ「…あ」

 

そこに、おそるおそるタカキが声をかけてきた

 

タカキ「えっと…怪我とか、してない?大丈夫?」

 

ユーリ「うん、大丈夫…それと」

 

タカキ「…?」

 

ユーリはタカキに向かって親指を立てた

 

ユーリ「約束通り、帰って来たよ」

 

タカキ「!…うん!おかえり!ユーリちゃん!」

 

タカキは嬉しそうにはにかみながら、バルバトスの整備に戻った

 

ユーリ「…」

 

ユーリは親指を立てたその手を改めて見つめて…

 

ユーリ「…今の、お母さんが見たら、笑うかな」

 

一言そう呟いた

 

 

 

 

 

 

ーーハンマーヘッド 客室ーー

 

名瀬「マルバの奴は、ウチの資源採掘衛星にぶち込んだいた。今回かかった費用は、あいつの体で支払ってもらうさ…文字通りな」

 

名瀬はアミダに持って来てもらった、そこらに売ってある安酒を飲みながらオルガにそう告げる

 

オルガ「そちらに預けた話です。お任せしますよ」

 

オルガは淡々と、されどなめられないように、威嚇する様に答える

 

エーコ「失礼しますよーっと」

 

エーコはそう言いながら、オルガのティーカップに紅茶を注ぐ。それをみたオルガは、名瀬に思わず問いかける

 

オルガ「…それにしても、ここ女性しか見かけませんね…」

 

その問いに名瀬はさも当然かの如く答える

 

名瀬「そりゃそうだ。ここは、俺のハーレムだからな」

 

クーデリア「…え?」

 

ユージン・ビスケット「…は?」

 

オルガの隣でそれを聞いたクーデリア達は、思わず聞き返してしまう

 

名瀬「この船の女は、全員俺の女ってわけだ」

 

ビスケット「…全員…」

 

クーデリア「奥さん、なのですか…?」

 

クーデリア達は困惑しながら問う。この艦には、数えきれない程の女性がいるが、それも合わせて全部が名瀬の妻だというのだから聞き返すのも当然だろう

 

名瀬「ま、そういうことだな…あといるのは、子供が5人くらい、か?」

 

クーデリア「5人ッ!?」

 

クーデリアは信じられないものでもみたのかのように驚く

 

オルガ「…その、子供ってぇのは…」

 

名瀬「全部俺の子供にきまってんだろ?まぁ、どれも腹違いなんだがな」

 

名瀬は自慢するかのように答える。そこに、アミダが止めにかかる

 

アミダ「いい加減にしなよ、仕事、だろ?」

 

名瀬「おっと、そうだな。じゃ、本題に…」

 

名瀬がそう言おうとすると、オルガが止めた

 

オルガ「ちょっと待ってください!本題に移るまえに、一つ確認しときたいことが…」

 

名瀬「ん?なんだ?」

 

オルガ「…その、ユーリのことなんですけど…あいつ、前ここにいたんですよね?」

 

名瀬「そうだが…それがどうした?」

 

オルガは一層顔をしかめて問う

 

オルガ「…まさかと思いますけど、アンタあいつに手ェ出したんじゃ…」

 

名瀬「ブフォッ!」

 

アミダ「…ックク!」

 

名瀬はそれをきくと、飲んでいた酒を吹き出し、アミダはクックッと笑い出した

 

名瀬「…心配しなくても、あいつにゃ指一本触れちゃいねぇよ!ったく…子供は守備範囲外だっての…」

 

アミダ「まぁ、ここの女全員がアンタの女だってきくと、過去にいたあの子も手を出されていても不思議じゃないからね。でも、ホントに手は出しちゃいないよ。そこは、アタシの命にかけて証明しよう…それにね」

 

アミダも酒を飲みながら答える

 

アミダ「あの子が来たのは4年前。…丁度あの子が10歳の時だ。流石に、そんな年頃の子に欲情するほど、ウチの亭主は性癖歪んじゃいないよ」

 

オルガ「…そう、ですか…」

 

オルガはそれを聞くと、納得はしたものの負に落ちない表情で下がる

 

名瀬「…ほらほら、さっさと本題に移るぞ…」

 

名瀬はそういうと、真剣にオルガに問う

 

名瀬「お前らの力はしっかりと見せてもらった。それで、なにを望むんだ?」

 

その問いに、ビスケットが答える

 

ビスケット「…その、僕達は、ここにいるクーデリア・愛菜・バーンスタインさんを、無事に地球まで送り届けたいんです。そのためには、安全な航路を持っている案内役が必要です。その案内役を依頼したいんです…それと、もう一つ」

 

ビスケットはそこまで言うと、今度はオルガが告げる

 

オルガ「俺達を、テイワズの傘下に入れてもらえないでしょうか」

 

それを聞くと、名瀬はほんの少し眉を潜めた

 

ビスケット「…僕達はギャラルホルンに狙われています」

 

ビスケットの言葉を聞くと、名瀬は理由を確認する

 

名瀬「テイワズなら、奴らに抵抗できる後ろ盾になるってわけか」

 

ビスケット「…はい」

 

オルガ「…」

 

名瀬はほんの少しだけ考えると、案外答えはすぐにでた

 

名瀬「…まいいだろ、あの鉄面皮のユーリが信頼する程だ。親父には話をつけてやる」

 

オルガ達はそれを聞くと、心底安心したように心の中で喜ぶ

 

オルガ「…ありがとうございます!」

 

オルガは深々と頭を下げる。だが、名瀬は忠告とばかりに言う

 

名瀬「まだ入れると決まったわけじゃねぇ。親父と交渉できるように渡りをつけてやるだけだ…あとは、オメーら次第ってな」

 

現実はそう甘くなく、例え名瀬に認められようとも、名瀬はテイワズの頭領ではない。鉄華団の入団を決めるのは、その名瀬のさらに上にいる男に、直に交渉しなくてはいけないのだ。

 

オルガはその現実をしかと噛み締め、答える

 

オルガ「…分かってます」

 

そこで、クーデリアが問う

 

クーデリア「お父様と交渉…ですか?」

 

名瀬はそれを聞くと、ちょっと笑いながら答える

 

名瀬「あん?あぁ、違うって」

 

名瀬の代わりに、クーデリアの後ろにいるビスケットが説明する

 

ビスケット「テイワズのボス、マクマード・バリスタンさんのことですね。そういえば、クーデリアさんの件で何か確認を取るって…確か、資産がどうとか…」

 

名瀬はそれを聞くと、困ったような表情で語る

 

名瀬「んー…どこまで話していいもんか…お前ら、ギャラルホルンについて、どう思う?」

 

その問いに、オルガ達は顔を見合わせる

 

ビスケット「…ギャラルホルン…ですか?」

 

ユージン「どうもなにも…軍隊だろ?よくわかんねぇけど…」

 

ユージンはさも当然かの如くそう告げる。その回答に、クーデリアが付け加える

 

クーデリア「300年前、厄祭戦を終わらせ、その後も強大な軍事力を背景に、戦争が起きないよう、四つの経済圏を外部から監視する組織。それが、ギャラルホルンです」

 

名瀬はその説明を聞くと、満足したように頷く

 

名瀬「そいつを各経済圏が重荷に感じ始めている。最近のギャラルホルンは、自分達の利益追求に走っているからなぁ…んで、そんな時にお嬢さんが現れた…ノアキスの7月会議のクーデリア。火星の独立運動をまとめた、時代のヒロイン…いち地方の独立運動家が、ギャラルホルンを飛び越え、独自に地球経済圏のトップと会談する…もしそれが実現したらギャラルホルンとしては一大事だ。それこそ、ギャラルホルンの支配体制を揺るがしかねない程にな」

 

クーデリアは名瀬の考察を聞き、改めて己のやろうとしていることの現実を突き詰められる

 

ユージン「…なんかよくわかんねぇけどよ、とにかく凄え人ってことすか?」

 

ユージンが一応名瀬の説明を間違って捉えてないか確認する

 

ビスケット「それと資産の話に、一体なんの関係が…?」

 

ビスケットは名瀬に問うが、名瀬ははぐらかす

 

名瀬「これ以上は親父に聞いてくれ…ま、俺如きが扱えることじゃないってことさ…そこのお嬢さんは」

 

 

 

 

 

ーーイサリビ 食堂ーー

 

カチャカチャ…

 

三日月「…」ムグムグ…

 

昭弘「…」ガツガツ…

 

ユーリ「…」ハムハム…

 

先の戦闘で苦労したパイロット3人組は、アトラの作った食事を胃袋に流し込んでいた

 

アトラ「…それにしてもよかったぁ。皆無事で…」

 

アトラは3人にドリンクをおきながらそう答える

 

ユーリ「…昭弘のお陰…今回、私は…ハムッ…躊躇ってしまった…」

 

昭弘「そこまで悲観するこたねえだろ…前の仲間だって…ングッ…言うなら当然だ…逆に、躊躇いもなく撃っていたら、少し信用できなくなってたな」

 

ユーリ「…ごめん、ありがと…」

 

昭弘なりの不器用な励ましに、ユーリは微笑みながら礼を言う

 

昭弘「…別に…ハグッ…」

 

昭弘は満更でもなさそうに食事しながら返事する

 

三日月「…俺の方が…よっぽど酷かった」

 

アトラ「え?」

 

三日月はそれだけ言うと、いつもよりあんまり食べず、立ち上がる。

 

ウィーン…

 

そこに、タカキがやってくる

 

タカキ「あ、いたいた!三日月さん!オルガさん達、帰ってきましたよ!」

 

タカキは三日月にそう言うが、三日月はジャケットを着ると、

 

三日月「俺、ハンガーでおやっさんのところ手伝ってくるから。オルガにはそう伝えといて」

 

タカキ「え…?あ、でも!」

 

ウィーン…

 

三日月は有無を言わさない雰囲気を纏いながら、食堂を後にした

 

タカキ「…どうしたんだろ?三日月さん…」

 

アトラ「…わかんない…」

 

昭弘「なに、あいつのことだ。体でも動かしてスッキリすりゃ元に戻るさ」

 

昭弘はそう言った。そこに、食事し終わったユーリが立ち上がり、自分のコートを着る

 

タカキ「あ、ユーリちゃんも行っちゃうの?」

 

タカキの問いに、ユーリは扉に行き、振り向きざまに言う

 

ユーリ「…借りを返しに行くの」

 

タカキ「え?借り?」

 

ウィーン…

 

ユーリはそう言うと、三日月と同じようにそそくさと退室した

 

タカキ「…」

 

アトラ「…」

 

昭弘「…おかわり頼む」

 

アトラ「ぁ、うん」

 

 

 

 

タカキ(…借りって、なんだろう…?)

 




…はい!いかがでしたか?なのだ!そういえばなんだけど、原作死亡キャラとかは生かしておいた方がいいのだ?それともそのまま原作通りにしておくのだ?どっちがいいか迷ってるから、よければ意見をくださいなのだ!


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ユーリとタービンズ

こんにちはなのだ!黒アライさんなのだ!今回はちょっとばかし短くなってしまったのだ…それではどうぞなのだ!


ビスケット「と、いうわけで」

 

ビスケットはそう切り出すと、声を大きくしてイサリビのブリッジにいる者達に報告する

 

ビスケット「テイワズのボス、マクマード・バリスタンさんと交渉することが決まりました!!」

 

シノ「うぉぉーー!!」

 

チャド「マジかよ…!やったなおい!」

 

ダンテ「ったりめぇよ!苦労したんだぜぇ?俺達!」

 

ユージン「それは艦内にいた俺達も同じだっての!!」

 

シノ達はブリッジではしゃぎ周り、喜びを全体で表現していた。まだテイワズの傘下に入れると決まったわけではないが、なにももたない少年少女達が、テイワズのボスと交渉できるまでに進めたのは、紛れもなく彼らの努力と強運のおかげである。

 

しかし、オルガが落ち着いて皆を諫める

 

オルガ「慌てんな…まだテイワズの傘下に入れると決まったわけじゃねぇんだ」

 

シノ「あぁ、そっか…」

 

ユージン「そうだぜ、まだなんとか食いつないでいる状態だ。俺達はここからまたさらに上がって行かなくちゃいけねぇんだかんな…それで、こっからどうするんだ?ビスケット」

 

ユージンがこれからの道のりについてビスケットに聞くと、ビスケットはこれからの予定について答える

 

ビスケット「これから俺たちは、タービンズの方達と一緒に歳星に向かいます」

 

シノ「歳星?なんだそりゃ?」

 

シノが聞くと、オルガが答える

 

オルガ「なんでも、テイワズの本拠地である、デッケェ艦なんだとよ」

 

ユージン「ん?ちょっと待てよ。本拠地は木星なんじゃねぇのか?」

 

ユージンが質問する。確かに、ずいぶん前の会議に、テイワズの本拠地は木星だと言っていた

 

オルガ「あぁ…言い方が悪かったな。確かに本拠地は木星だ。それは変わりない。だが、相手はテイワズっていうとにかくデケェ組織なんだ。移動できる拠点も、必要だろ?」

 

ユージン「…なるほどな、わかった」

 

ユージンは納得すると席に座った。すると、今度はフミタンから報告が入る

 

フミタン「団長さん、火星と連絡が繋がりました」

 

オルガ「そうか、んじゃあ、こっちの状況を伝えるんで「その前に」

 

フミタン「あちらからメールが来ている様ですが…」

 

オルガ「何?」

 

 

 

 

 

 

ーーイサリビ ブリッジ付近 廊下ーー

 

オルガ「…」

 

ビスケット「…」

 

オルガ・ビスケット「「ハァ…」」

 

2人は窓から宇宙を見ながら、同時に溜息をついた

 

ビスケット「…まさか、火星の運営資金が底をつきそうだなんて…」

 

オルガ「…もう少し持つかと思ったんだがな…」

 

ビスケット「ギャラルホルンに目をつけられてちゃ、ろロクに商売なんてできないもんね…なんとかしないと…」

 

オルガ「…」

 

2人は頭を悩ませながら、今後についてのことを考えていく…

 

 

 

 

ーーハンマーヘッド モビルスーツ格納庫ーー

 

アミダ「…」

 

アミダは格納庫に入り、今回の戦闘の被害総額を確かめていた

 

ラフタ「あぁ!姐さん!」

 

アジー「話は終わったんですか?」

 

すると、モビルスーツの整備が終わったのか、ラフタとアジーがアミダに寄ってくる

 

アミダ「あぁ、あの子たちを連れて、歳星に帰ることになったよ」

 

アミダがそういうと、ラフタがうずうずしながらアミダに問う

 

ラフタ「あの白いモビルスーツに乗ってた子も来てるんですよね!?」

 

アミダ「さぁねぇ?アタシは見てないよ」

 

アジー「気になるのかい?」

 

アジーは白いモビルスーツがなんだったかを思い出しながらラフタに答える。すると、ラフタはまるで自分の事のよう自慢気にバルバトスのことを語った

 

ラフタ「中々いないからねぇ。アタシをあそこまでアツくしてくれるのは!ま、もちろんダーリンほどじゃ無いけどさ?」

 

アジー「はいはい」

 

元気に語るラフタを横目に、アジーは呆れたように笑いながら軽く返事する

 

アミダ「でもまぁ、ホントにいい子達だと思うよ」

 

アミダはそう言うと、ふとしたことを思う

 

アミダ(…素直に名瀬の言うことを聞いていれば、楽できたろうに…)

 

 

 

 

 

ーーイサリビ モビルスーツ格納庫付近ーー

 

ザッ…ザッ…

 

三日月「…」

 

三日月はいつも通りの無表情でモビルスーツ格納庫に向かっていた。だが、その顔は無表情ではあるが、心無しか、少しばかり覇気がなかった

 

三日月(…俺は…)

 

ユーリ「三日月」

 

三日月「!」

 

三日月が振り返ると、そこにはいつも通り、真っ白なハロを抱えたユーリがいた

 

ユーリ「…何、悩んでるの?」

 

三日月「え?…いや、別に悩んでなんて無いけど」

 

三日月は不思議そうにそう聞くが、ユーリはその言葉を聞くと、呆れた様に語る

 

ユーリ「…無自覚なんだ…そんな顔して、なにも悩んでいませんなんて、説得力無い」

 

三日月「…俺、そんな変な顔してた?」

 

三日月は自分の顔を触って確かめた。ユーリは壁にうっかかりながら三日月に聞いた

 

ユーリ「…もう一度聞くけど、何悩んでるの?」

 

三日月「…」

 

三日月も同じようにユーリの隣で壁に寄りながら言った

 

三日月「…俺、勝てなかった」

 

三日月「皆を、危険に晒した…俺がもっと早く敵を倒せていれば…」

 

三日月はそういいながら手首につけている青いミサンガを握る。

 

ユーリ「…三日月、貴方は敵を殺すことだけが、貴方の全てなの?…違うでしょ?」

 

ユーリ「三日月は、必死に戦い、そして生きて帰ってきた。それでいいじゃない…それだけで、オルガ達は嬉しいと思う」

 

ユーリの言葉を聞いた三日月は、宇宙を見ながら静かに問う

 

三日月「…勝てなくても、いいのかな?」

 

ユーリ「負けてもいい。どんなにボロボロになってもいい…でも死んじゃダメ。生きていれば、何度だってやり直せる…皆が生きて、そして集まり合えば、そこが私達の家になる…簡単に言うと」

 

ユーリ「生きるほうが、大事ってこと」

 

三日月「…そっか」

 

三日月はその言葉に納得したのか、少し微笑みながらユーリに礼を言う

 

三日月「…ありがとうユーリ。少しスッキリしたよ」

 

ユーリ「別にいい。借りを返しただけだから」

 

三日月「…借り?そんなものあったっけ…?」

 

ユーリ「少し前、私が夢を見て泣いていたときに励ましてくれた」

 

三日月「…そういえばそんなこともあったな」

 

三日月は思い出したようにいった。ユーリは自分の泣き顔を思い出して欲しくなかったのか、三日月の背を押しながら話を変える

 

ユーリ「…早く。格納庫に行くんでしょ?」

 

三日月「え?あ、そうだった…でも、ユーリもくるの?」

 

ユーリ「アビスの整備は私にしかできない」

 

三日月「そういえばそうだったね…じゃあ行こうか」

 

ユーリ「…うん」

 

 

 

 

 

ーーイサリビ モビルスーツ格納庫ーー

 

ウィーン…ガコン!

 

おやっさん「コラァ!そこ気ィつけろって言ってんだろぉ!」

 

ライド「す、すんません!」

 

そこでは前の戦闘で損傷したバルバトスやグレイズ改を整備する子供達がいた

 

オルガ「おーい!おやっさん!」

 

おやっさん「んお?あぁオルガか」

 

オルガ「どうだ?調子は」

 

オルガのその言葉に、おやっさんは溜息をつきながら整備状況を報告する

 

おやっさん「グレイズの方は、まだ予備パーツがあるし、アビスは言わずもがな…問題は…」

 

おやっさんはそういいながらバルバトスの頭部を下から見上げる。そこには肩部に座っている三日月がいた

 

オルガ「ミカァ!」

 

三日月「!、オルガ」

 

オルガは三日月を呼ぶと、三日月のところに登って行く

 

三日月「うまく行ったんだって?」

 

オルガ「あぁ、なんとかな…ミカもよくやってくれたな」

 

三日月「いや…今回、俺はあまり役に立てなかった…ごめん」

 

オルガは三日月が謝るのを見て、慌てて問う

 

オルガ「な、何言ってんだよミカ!お前は充分よくやったよ」

 

三日月「…やっぱり、そう言ってくれるんだ」

 

オルガ「そりゃぁ、当たり前だろ?ってか、わかってて聞いたのかよ」

 

三日月「ユーリが、そう言うだろうって言ってた」

 

オルガ「…ユーリが?」

 

 

 

シャッ…シャッ…

 

ユーリ「…」

 

オルガがユーリを見ると、そこにはアビスのコクピットハッチの上で愛用のナイフを研いでいるユーリの姿があった

 

三日月「…とにかく、このままじゃダメだ。もっともっと強くなって…生き続けないとね」

 

オルガ「…そうだな、俺も、もっと頑張らねぇとな」

 

オルガ達はバルバトスの剥き出しになったフレームを見ながら、そう決心した…

 

 

 

 

十日後…

 

ーーハンマーヘッド 客室ーー

 

コッ…コッ…

 

ガチャ…

 

ユーリ「…」

 

名瀬「…よぉ、来たか、ユーリ」

 

名瀬はソファに座り、自分が愛飲している安酒を飲みながらユーリにそう言った。

 

ユーリがこのハンマーヘッドの客室に来た理由は、単純に名瀬から2人だけで話がしたいと言われたからだ

 

ユーリ「…なんですか?話って…」

 

名瀬「とぼけんなよ…お前が一番よくわかってるだろ?」

 

名瀬の言葉に、ユーリは若干顔をしかめながら確認する

 

ユーリ「…何故タービンズを無断で抜けたか、ですか?」

 

ユーリのその表情を見て、何故は安酒の入ったグラスを置いた

 

名瀬「誤解のないように言っておくぞ?俺は別にお前が抜けたことを責めちゃぁいねぇ…もともと、付いてきたい奴が勝手について来いってのが俺の船だからな。俺ぁ単純に、理由が知りたいんだ。あまり不自由な思いはさせてなかったと思うんだが…まぁとにかく、座れよ」

 

名瀬はそういいながらもう一つのグラスに自分と同じ酒を注ぎ、対面に置く

 

コトッ…

 

ユーリ「…」

 

グイッ!

 

名瀬「おっ」

 

ユーリはそれを受け取ると、一気に飲み干した

 

名瀬「…いい飲みっぷりだが、本当に飲むとは思わなかったぜ。お前のことだから、まだ未成年だから飲まないとでも言うと思った」

 

名瀬はそういいながら、空になったユーリのグラスにまた酒を注ぐ

 

ユーリ「…今回の事は、少し言いづらいから…お酒の力を借りたくなりました」

 

ユーリは既に少し頬を赤く染めながらもそう言った。名瀬はその様子を見ると、深くは追求しなかった

 

名瀬「そうか…そういや、その敬語、やめていいぞ?前々から思ってたが、お前に敬語はあってねぇよ」

 

名瀬はグラスを振り、カラカラと氷の揺れる音を鳴らしながらそう言った

 

名瀬「ところでどうだ?中々上手いだろ?そこら辺に売ってあるなんの変哲も無い安酒だが、俺にとっては思い出の品なんだよな」

 

ユーリ「…知ってる…昔、名瀬さんが飲めない私に、お酒の代わりに昔話を聞かせてくれたから…」

 

名瀬「…そういや、そうだったな…そんなことも、あったなぁ…」

 

名瀬は感慨深そうにそう答える

 

名瀬「…なぁ…教えて、くれるか?」

 

ユーリ「…」

 

コクッ…

 

ユーリは静かに頷き、語り出す

 

 

 


 

 

ユーリが傭兵になったのは、母親であるアメリアの死が告げられてからすぐだった。ユーリが傭兵として働く一年前、アメリアの乗っていたケイオス・アストレイ…今で言う、アビス・アストレイの腹部には、グッサリと、鉄製のブレードが2、3本突き刺さっており、木星近くの資源衛生にぶつかり、静止していた状態で見つかった。それを名瀬が偶然仕事中に見つけ、鹵獲したのだ。

 

名瀬はアメリアのことはよくモビルスーツ関連のことで知り合い程度には知っており、娘を養う為に傭兵をやっているのだと聞いていた。名瀬は顔見知り程度であったが、とにかく心配し、アストレイのコクピットを見たが、そこには所々大量の血で汚れており、煤で黒く汚れた青い鈴付きのリボンがあるだけの、無人のコクピットであった…そして、そのコクピット内の隅に、半分血で汚れた真っ白なハロがあり、そのハロは「アメリア!アメリア!」とざっと叫びながら、一つの写真を体の隙間に挟んでいた

 

 

ハロ「アメリア!アメリア!アメリア!アメリア!」

 

名瀬「…わかったから!ちったぁ黙ってろっ!…あん?お前何挟んで…」

 

ピラ…

 

名瀬「…!こいつぁ…!?」

 

 

名瀬の見つけた一枚の紙切れは、アメリアと、その旦那と思われる銀髪の男と、幼い少女が笑いながら寄り添い合う写真であった。そして、その裏には、彼女の住んでいる住所と思しき言葉が書いてあった

 

そこからの名瀬の行動は早かった。もともと名瀬はなんでも放っておけない性格であった。だからこそ、その一枚の写真の情報をもとに、アストレイをできる限り修復し直し、それを持ってその住所と思しき場所に行った。全ては、母親を待っているであろう、1人の少女を救う為に…そして、そこには確かにポツンとかなり町外れのところにある一つの家があり、幼い銀髪の少女が1人だけいた。名瀬はハンマーヘッドで独自に運んできたアストレイを近くに下ろし、その少女に告げた

 

 

ユーリ「…貴方、誰…?どうして、お母さんの機体を持ってるの?」

 

ユーリは警戒心を最大限に高め、いつでも攻撃できるように背中の後ろでナイフを握っていた

 

名瀬「…その、お前さんの母親なんだがな…」

 

名瀬「…亡くなった…」

 

ユーリ「…え?」

 

名瀬から急に告げられた母親の死に、ユーリは最初は嘘だと思ったが、母親がいつも大事にしていたアストレイが本物であることがわかると、ユーリは取り乱し、泣き叫びながら家に篭った。名瀬も、出来る限り側にいようとしたが、家はどこもかしこも戸締りがされており、入ることは出来ず、何度呼びかけても反応が無いことから、結局数日分の食料と、一枚の写真と鈴付きのリボン置いてその場を離れた…

 

 

 

 

 

ユーリ「…」

 

グスッ…

 

ユーリ「…お父さん…あのね、お母さんも…死んじゃった…私を置いて、死んじゃった…」

 

ユーリは一枚の写真を握りしめながら呟く

 

ユーリ「…あんなに、死なないでって…帰ってきてって…いったのに…!」

 

ユーリ「…お母さんの、嘘つき…」

 

ユーリはずっとずっと泣きながら、1人過ごしていた。が、ある時少女は、最愛の人を失った寂しさを紛らわそうと、一つのことを思いつく

 

ユーリ「…お母さんの、役目…私が、やらなきゃ…」

 

チリリン…

 

アメリアが生前やっていた役目、それはアストレイにもついている5機のGNドライブを破壊することである。今は3機破壊されているが、残りの物も破壊する為に、彼女は心の無い深海のような青い瞳をアストレイにむけ、写真と共に置いてあった鈴付きの青いリボンを髪につける

 

 

 

 

 

それから一年後の話だった。名瀬はいつもどおりに仕事をし続け、タービンズとしてテイワズの中で名を上げていた。その時であった。仕事の関係で危険な商売をすることになり、護衛を雇おうとした時、鈴付きの噂を聞いた。既に死んだはずのアメリアが名乗っていた鈴付きの噂が、今なお騒がれていることに不審がり、まさかと思って依頼すると、あの時の黒いアストレイと、少し髪の伸びたユーリが現れた。

 

名瀬は当然驚き、彼女から何故傭兵などをやっているかなどの理由を聞いた。それを聞いた名瀬は、とにかく心配で心配で、自分も少し手伝ってやるからここに残れと言った。ユーリは断りつつも、名瀬の周りの女性達にも説得され、最終的に、共に行動するようになった

 

 


 

ユーリ「…私も、出て行きたくなんてなかった…ここは私にとっても、凄く居心地が良くて…まるで新しく家族ができたかのようにさえ思えた…でも…」

 

ユーリ「…当然、私は気になった。どうして他人である私に、ここまで優しくしてくれるのだろうって…そして私は一つの考えについた。私がお母さんの娘だから優しくしてくれるんだって…」

 

名瀬「…ちょっと待て、それ「わかってる」

 

ユーリ「名瀬さんがそんなことで私を拾ってくれた訳じゃないのは、《今なら》わかる…でも、昔の私は、そう思うと不安だった…もしそうなら、いつかこの人達は、私にお母さんにとっても、自分達にとってもなんの利がないとわかると、捨てるんじゃないかって…」

 

ユーリはグラスを握りしめながら下を俯きつつ話を続ける

 

ユーリ「私は、もしそうなったら、今度こそなにかが壊れると思った…私の中の何かが…だから、自分から出て行ったの。もう、失う苦しみを味わいたくなんてないから」

 

名瀬はユーリの話を聞き終わると、追加の安酒を自分のグラスに注ぐ

 

名瀬「…あいつらはどうなんだ?鉄華団…あいつらは、お前を捨てるとは思わねぇのか?」

 

ユーリ「…鉄華団は、私の事を知らなかった。私の母親の事も、何も…それでも、私を家族として迎えてくれたから…」

 

グイッ

 

ユーリはそこまで話すと、またも自分のグラスに注がれた酒を飲み干し、桃色に染まった顔で名瀬を真っ直ぐと見ながら告げた

 

ユーリ「私は、鉄華団を信頼し、共に戦う事を決めた」

 

名瀬「…そっか」

 

名瀬はその言葉を聞くと、満足したように酒を飲む

 

名瀬「お前がそこまで言うってんなら、俺からは何も言わねぇよ…達者でな…」

 

ユーリ「…ごめん、名瀬さん」

 

名瀬「なんで謝る?謝るような事言ったか?」

 

ユーリ「最初から今まで、ずっと…迷惑かけてきたから…」

 

ユーリは申し訳なさそうに俯くと、名瀬は近寄り、ユーリの小さな頭に手起き、撫でながら言った

 

名瀬「いいんだよ…お前がどこに行こうと、このタービンズの家族であることに変わりはねぇ…アミダ達も、お前がいなくなってからもずっとそう言ってた…」

 

ナデナデ

 

ユーリ「…ありがとう、名瀬さん」

 

コテッ…

 

名瀬「…ん?おい、ユーリ?…寝ちまったか…」

 

ユーリは涙目になりながらも名瀬に礼を言い、そのまま眠ってしまった

 

名瀬「…まぁしゃあねぇか、あんだけ呑んでりゃそりゃ眠たくもなるわな」

 

名瀬はユーリを抱え、一つの部屋のベットに休ませた

 

 

名瀬「…ユーリのこと、頼んだぜ…」

 

 

名瀬「鉄華団…」

 

 

名瀬は1人、そう呟いた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




…はい!如何でしたか?なのだ!よければ感想など下さいなのだ!それではまた次回も読んでくださいなのだ!


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歳星への道のり

こんにちはなのだ!黒アライさんなのだ!最近亀投稿になってきたのだ…本人にごめんなさいなのだ_:(´ཀ`」 ∠):…でもでも!ちゃんと続きはだしていくから読んでいって欲しいのだ!それではどうぞなのだ!


名瀬「で?改まって話ってなんだ?」

 

名瀬はユーリと話し合えて数日後、オルガとビスケットに話があると言われ、またも客室に足を運んでいた

 

ビスケット「そのことなんですが…とりあえず、これを」

 

スッ…

 

ビスケットが手に持ったていたタブレットを名瀬に渡した。名瀬はそれを見ると、少し驚いた

 

名瀬「こいつぁ…」

 

ビスケット「僕達が火星で、ギャラルホルンから鹵獲した物のリストです」

 

名瀬「結構あるなぁ」

 

ビスケット「はい、それで話というのは、それを売却できる業者を紹介して欲しいんです」

 

ビスケットの言葉に、名瀬はタブレットに入っているギャラルホルンから鹵獲したという物資のリストを確認していた

 

名瀬「馴染みの業者はいないのか?」

 

ビスケット「CGS時代から付き合いのある業者はいるんですが、物が物ですからね…並の業者では扱えきれないんじゃないかと…」

 

名瀬「確かになぁ…」

 

ビスケットは申し訳なさそうに話を続ける

 

ビスケット「もちろん!仲介料はお支払いします。…どうにか、お願いできないでしょうか…」

 

ビスケットは座りながら頭を下げて頼み込んだ。名瀬はその様子を見て数秒後に尋ねる

 

名瀬「…お前ら、そんなに金に困ってんのか?」

 

ビスケット「…それは…」

 

ビスケットがいいどもると、隣にいたオルガが代わりに答えた

 

オルガ「…正直、困ってます」

 

名瀬「ならよ」

 

名瀬は体制を変え、足を組み直しながら尋ねる

 

名瀬「なんで俺が仕事紹介してやるって言った時に断った?」

 

名瀬の質問に、オルガは何故か少し驚いてしまった

 

オルガ「え?あ、いや…だって、あの話を受けたら、俺達はバラバラになっちまうって」

 

名瀬「…なっちゃいけないのか?」

 

名瀬の疑問は至極当然である。その質問に、オルガは少し沈黙した後、語りだす

 

オルガ「…俺らは、離れらんねぇんです」

 

名瀬「離れられない?きんもちわりいなぁ…男同士でベタベタと…」

 

オルガ「なんとでも言ってください…俺らは、離れちゃいけない」

 

名瀬「だからなんでだよ」

 

オルガ「…それは…」

 

名瀬が理由を聞くが、オルガは答えられずに、必死に思考を巡らせていた

 

オルガ「…繋がっちまってんです。俺らは」

 

名瀬「…あん?」

 

オルガはなんとも言えない感情をなんとか言葉にしながら話す

 

オルガ「死んでいった仲間が流した血と、これから俺らが流す血が混ざり合って…鉄みたいに固まってる。だから…だからはなれらんねぇ」

 

オルガは名瀬の目を真っ直ぐと見返しながら力強く語る

 

オルガ「離れちゃいけねぇんです。危なかろうが、苦しかろうが、俺らは…」

 

名瀬はそこまで聴くと、おもむろに立ち上がり、尋ねる

 

名瀬「…マルバに銃を向けたとき、お前言ったよな?アンタの命令通りに、俺はあいつらを…あいつらってんのは、その死んじまった仲間のことか?」

 

オルガ「…」

 

オルガは名瀬の言葉に俯いた。いくら命令されたとはいえ、仲間に死んでくれと言っているのと同じような作戦を彼らにやらせた隊長としては、その事を聞かれるのは胸が痛くなった

 

名瀬「離れらない?結構だ、好きにするといいさ。だがな、鉄華団を守りぬくってんなら、こっからは誰もお前に指図しちゃあくれないぜ?」

 

名瀬はオルガを見下ろしながら指差し、そういう。オルガは良くも悪くも鉄華団の団長である。団長というのは仲間に適切な命令を下す者、しかし団長に指図をする者はいない。団長になるということは、自分自身で、仲間全員の道を切り開いていかなくてはならないのだ。

 

名瀬「お前の命令一つでガキどもが簡単に死ぬ。当然だよなぁ?お前らの今の道は、例えるならポケットぐらい小さな戦争そのものだ。だがいくら小さかろうが戦争は戦争…戦争じゃ命なんて安いもんだ、一瞬で失われる…そして、その安っちい命を預かる責任は、誰にもなしつけることはできねぇ…てめぇひとりで背負っていかなくちゃいけねぇんだ」

 

名瀬はそこまで言うと、途端に心配そうにオルガを見つめながら尋ねる

 

名瀬「オルガ…お前に、それが背負えんのか?その責任の重さに、重圧に、耐えられんのか?」

 

オルガ「…っ」

 

オルガはその言葉に、言葉をつまらせてしまっていた…

 

 

 

 

 

 

ーーハンマーヘッド 育児室ーー

 

アトラ・クーデリア「…うわぁ…!」

 

赤ちゃん「オギャア!オギャア!」

 

2人が見ていたもの、それはベットで泣いている小さな小さな赤ちゃんであった。

 

アトラ「…これが、名瀬さんの…?」

 

アミダ「そうだよ。母親はそれぞれ別々だけどね」

 

ラフタ「元気でしょぉ?ウチのダーリン!」

 

クーデリア「…えぇ…本当に…」

 

ラフタはそう言うと子供をあやしはじめる。アトラとクーデリアはラフタの言葉に苦笑いしつつ子供を見つめていた。彼女達も女の子であり、アトラにいたっては今はまだ若いが、想い人もいる彼女にとっては、赤ちゃんの存在は決して関係のないことではなかった。 

 

ウィーン…

 

ラフタ「ん?…あ!」

 

アミダ「…おや」

 

ユーリ「…」

 

ラフタが子供をあやしていると、育児室の扉があいた。そこにいたのは相変わらずの無表情であるユーリだった

 

ガシッ!

 

ラフタ「ユーリじゃん!ひっさしぶり!もうなんですぐ会ってくんないの!?心配したんだかんね!?」

 

ユーリ「…うぁ」

 

ラフタはユーリの肩を掴み、揺らしながらまくしたてる。ユーリもガクガクと揺らされる。

 

アミダ「よしなラフタ。はしゃぐ気持ちは分かるけど、そんなに揺らしたら吐いちまうよ」

 

ラフタ「おっと、そっか…んでも!納得いかないっての!皆に心配かけて…」

 

ユーリ「…ごめんなさい」

 

ユーリは頭を下げながらラフタに謝った。ユーリにとってラフタは、時に頼りになり、時に世話の焼ける姉のような存在であった。そんな彼女に、自分から出て行ったとはいえ、心配させていたことに、心を痛めていた。もちろん、ほかのハンマーヘッドのクルー達も同じだ

 

ラフタ「…んもう…いいよ!許してあげるよ。妹の失敗を許すのも、姉の務めだかんね!」

 

ムギュ

 

ユーリ「んぐ…ん」

 

ラフタはユーリに抱きつきながら頭を撫でる。ユーリも最初はビクリと体を震わせたが、次第にラフタの背中に手を回した。

 

アミダ「ラフタ、そこまでにしな。子供が待ちかねているよ」

 

アミダは困ったように笑いながらラフタの背を叩く。

 

ラフタ「あ、ごめん姐さん!」

 

ラフタはユーリを離すと、離乳食をとりにいった。その際、自由になったユーリは赤ちゃん達をみると呟いた

 

ユーリ「…増えてる」

 

クーデリア「え?」

 

アミダ「あぁ、アンタがいなくなったのは4年前だからね。そのうちに、3人ぐらいは新しく生まれたよ」

 

アトラ「…えぇ?」

 

本当に元気な人だなぁ…とアトラとクーデリアは苦笑いしていた。ユーリも赤ちゃんの1人を撫でながらその言葉を聞いた。

 

アトラ「…あの、ユーリちゃん」

 

ユーリ「…ん?」

 

アトラ「…ちょっと、外に出ない?」

 

ユーリ「…?」

 

アトラはうずうずとしながらユーリを半端強制的に外に連れ出した

 

アミダ「…フッ」

 

クーデリア「…??」

 

 

 

 

 

 

ユーリ「…どうかしたの?」

 

ユーリは育児室のすぐ隣の壁側でアトラと2人でいた。アトラはその言葉に、少し言葉をどもらせながら小声でユーリの耳元で聞いた

 

アトラ「…もしかしてだけど…あの中にユーリちゃんの赤ちゃんもいるの…?」

 

ユーリ「………」

 

アトラ「…あれ?ユーリちゃん?」

 

ユーリはアトラの方を振り向き、心なしかいつもよりも冷たい無表情でアトラに告げる

 

ユーリ「…私が、子供を持つような歳に見える?」

 

アトラ「…あ、えっと…そう、だよね!あはは…」

 

アトラは焦ったように笑う。それもそうだ。よくよく考えればユーリは14歳。対して赤ちゃんは1歳か2歳の子だ。もしもこの中ににユーリの子がいたとなると、少なくとも12歳以下の歳に生んでいることになる。流石にそれはないだろう

 

アトラ(…そっか…まだ、早いんだよね…うん…)

 

アトラは落ち着きながら心の中でそう呟いた。焦る必要はない。いつか自分にも、赤ちゃんを抱く日は来ると自分に言い聞かせていた。

 

ユーリ「…全く…」

 

ユーリはため息をついていたが、少しばかり顔が赤くなっていた。彼女もいくら女を捨てた世界で暮らしていたといえども女の子なのだから、そういう話は恥ずかしかったらしい

 

アトラ「…ねぇ、ユーリちゃん」

 

ユーリ「…何?」

 

アトラ「…ユーリちゃんはさ、赤ちゃん、欲しい?」

 

アトラは顔を赤くしながら恥ずかしそうにそう尋ねた。その言葉に、ユーリは難しそうに答える

 

ユーリ「…私は、多分そういうのとは程遠い世界にいるから、子供を授かるのは、難しい」

 

アトラ「…そんなことないよ!」

 

アトラはユーリの目の前に立ち、肩を掴んでそう言った。

 

アトラ「…だって、ユーリちゃんのお母さんも、傭兵していたんでしょ?」

 

ユーリ「…そうだけど、それが何?」

 

ユーリは怪訝そうに聞いた。子供の話と自分の母親のことになんの関係があるのだろうと思った。しかし、アトラの言葉によって、当たり前の事に気付かされる

 

アトラ「それでも、ユーリちゃんっていう子供を産んでるんだよ!なら、ユーリちゃんだってきっと、そういうチャンスはあるよ!」

 

ユーリ「!」

 

アトラはまるで自分のことのように必死に話した。ユーリはそんな当たり前の事が頭から抜け落ちていた事に少し驚いた。が、すぐに元の無表情に戻った

 

ユーリ「…確かに、お母さんは傭兵の身でありながら私を産んだ。でも、産んだ後も、その子供と一緒にいられるとは限らない。現に私の両親はもういない…貴方達も、そうでしょ?」

 

アトラ「!…そう、だけど…」

 

アトラはユーリの言葉に、見てわかるほど落ち込みながら下を俯いてしまった。

 

ユーリ「…でも」

 

アトラ「…?」

 

ユーリ「…抱いてみたい、とは思う…かな…自分の子供…」

 

ユーリはまるで初めから諦めているかのように乾いた笑みを見せながらそう呟いた

 

 

 

 

ーーハンマーヘッド 客室ーー

 

 

オルガ「…覚悟は出来てるつもりです」

 

名瀬「…ほぉ?」

 

オルガは身を強張らせながら告げる

 

オルガ「どこの誰とも知らねえ奴に、訳のわからねぇ命令をされて、無駄死にさせられるのはごめんだ!」

 

オルガはそこまで言うと、名瀬を見上げ、力強く答える

 

オルガ「…あいつらの死に場所は…鉄華団の団長として、俺がつくる!そして…」

 

オルガ「それは俺の死に場所も同じです…あいつらの為なら、俺はいつだって死「ビシッ!」ッて!?」

 

オルガが話している途中に、名瀬はオルガの額に指を打ち付けた。その時の名瀬の表情は、呆れて物も言えないようだった

 

名瀬「テメーが死んでどうすんだよ…指揮官が死んだら、それこそ鉄華団はバラバラになって終わりだ…」

 

名瀬「…まぁでも、血が混ざって繋がって…か…そういうのは、仲間っていうもんじゃないぜ?」

 

名瀬は一転して微笑むと、一言呟いた

 

名瀬「…家族だ」

 

オルガ「!」

 

オルガは、その言葉にとても驚いた。オルガにとって名瀬の放った言葉は、心の奥底にすっぽりとはまり、同時に、この後の鉄華団のあり方を決める物であった

 

 

名瀬「ま、用件はわかった」

 

ビスケット「え?あ、あの!」

 

名瀬はそう言うと、部屋を出ようとした。が、ビスケットはまだ返事をもらえていない故に、急いで止めた

 

名瀬「わかってるって、悪いようにゃぁしねぇよ」

 

ビスケット「…お、お願いします!」

 

オルガ「…あっ!お、お願いしますッ!」

 

ビスケットは去っていく名瀬に向かって礼を言い、呆けていたオルガも我に帰り、ビスケットに続き急いで礼を言っ

 

 

 

 

 

 

ーーハンマーヘッド 廊下ーー

 

オルガ「…あぁぁ…」

 

ビスケット「ん?、どうしたの?オルガ」

 

ビスケットとオルガがイサリビに戻る途中、急にオルガがしゃがんで頭を抱え込み、唸った

 

オルガ「…しくじったぁ…」

 

ビスケット「え、そう?考えてくれるって言っていたじゃないか」

 

ビスケットはオルガの言葉に、そんなことはないとフォローした。実際、名瀬の反応は決して悪くはなかった。少なくとも、何もしてくれないと言うことはないだろう。しかしオルガはそう言うことを言っていた訳ではなかったらしい

 

オルガ「問題はそこじゃねえんだ…商売の話はあくまで対等にしなけりゃいけねぇってのに…あんなガキ扱いされてよ…」

 

ビスケット「…フフッ…アッハハッ!」

 

オルガの苦渋の声を聞いたビスケットは、静かに笑った

 

オルガ「な、なんだよ!」

 

ビスケット「…大丈夫だよ、何があっても、俺たちはオルガを信じてついていくから」

 

ビスケットの放った一言。なんの変哲もない言葉だが、オルガにとっては心の重荷を下すことができた一言であった

 

オルガ「…おぉ、わかってる」

 

オルガはそう言うと、足を進めていった…

 

 

 

 

 

ーーハンマーヘッド モビルスーツ格納庫ーー

 

ガションッ!ガシャンッ!

 

ババババッ!

 

ラフタ「ヘッ!」

 

昭弘「チィッ!…ハッ!?」

 

 

 

 

うわぁぁぁっ!!?

 

 

 

ガコンッ!

 

ラフタ「よっしゃあっ!勝っちぃッ!!」

 

モビルスーツ格納庫内に突如として広がる昭弘の悲鳴、それと同時にハンマーヘッドのモビルスーツの一つである百里から汗だくのラフタが喜びながら出てきた。

 

ガコンッ!

 

昭弘「…ハァッ…ハァッ…!ま、まだだ…!まだ終われねぇッ!!」

 

するともう一つのモビルスーツであるの百錬から汗だくの昭弘が這い出てきてそう言った。2人はモビルスーツのコクピット内で百里と百錬のシミュレーター訓練をしていたのだ。状況から察するに程よくラフタと交戦していたがあと少しのところで敗れたのだろう、ひどく悔しそうに昭弘は唸っている。

 

アミダ「やめときな!暑くなってちゃ勝てないよ。ちょっとはユーリを見習ったらどうだい」

 

ラフタ「心配しなくても、また可愛がってあげるよー」

 

昭弘「ヌッ…ウグゥ…!」

 

2人の言葉に、昭弘は何一つ言い返すことができずに唸っていた。

 

三日月「じゃ、次は俺達の番だね…いこう、ユーリ」

 

ユーリ「うん、じゃあ私は百里で、三日月は百錬。いい?」

 

三日月「わかった」

 

ユーリと三日月は必要最低限の会話で、次のシミュレーターの順番と設定を決めていた。

 

アジー「…しかし、よくもまぁ飽きもせずに毎日毎日やるもんだね。正直感心を通り越して呆れるよ」

 

アジーの言葉に、2人は振り向くと、意図した訳ではないが、同時に告げた

 

三日月・ユーリ「俺(私)達には、これぐらいしかできないから」

 

アジー「…はいはい」

 

アジーは乾いた笑みをうかべると、ラフタが叫ぶ。

 

ラフタ「今回のシミュレーターのモビルスーツは百里と百錬だし、シミュレーターに阿頼耶識はないんだから!ユーリはともかく、三日月!アンタはたぁっぷり可愛がってあげるからねぇっ!」

 

ラフタは三日月に指差し、そう言う。前の戦闘でラフタは三日月に墜とされる結構ギリギリのところまでダメージを与えられたので根に持っているのだろう。

 

三日月「…可愛がるって…ユーリとは別の意味で変な奴だなぁ…」

 

ユーリ「…え?」

 

三日月はコクピットに潜り込む際に一言そう呟いた。ラフタには聞こえなかったが、その横にいた1人の少女の心をさりげなく傷つけていくのだった…

 

 

 

 

 

ーーハンマーヘッド ブリッジーー

 

アミダ「あのオルガって子、どうだったんだい?話してきたんだろう?」

 

名瀬「それが青臭え話ばっかりで、ケツが痒くなっちまったぜ」

 

名瀬はブリッジの指令席に座りながらアミダに愚痴を言っていた。だが、言っている本人の顔は、不思議と微笑んでいた

 

アミダ「昔のアンタも相当だったけどねぇ…お望みならベッドの上で朝まで昔話でもしようか?」

 

名瀬「勘弁してくれ…」

 

名瀬は苦笑いしながらオルガ達の頼みを叶えるべく算段を立てていた。その時、オペレーターのエーコから報告が入った

 

エーコ「あ、正面!歳星を捉えました!」

 

名瀬「…やっとか」

 

名瀬は長かったと言わんばかりに溜息をつきながら歳星えと艦を進める

 

 

 

 

 

ーーイサリビ 廊下ーー

 

 

オルガ「…あれが、歳星だとよ」

 

三日月「ふーん」

 

ユーリ「…長かった」

 

オルガと三日月、ユーリは廊下のガラス越しに肉眼でも見えるほどに近付いた歳星を見据えていた

 

オルガ「…最近、どうだ?向こうの艦でえらくしごかれてるらしいじゃねぇか」

 

三日月「オルガに見捨てられないように、頑張らなきゃいけないからね…はい、ユーリ」

 

ユーリ「ありがと、三日月」

 

三日月は火星ヤシの実を頬張りながらユーリにも数粒渡し、オルガの問いにそう答えた。その様子をみながら、オルガはまるで歳の離れた弟と妹を見てるような気分になり、静かに笑いながら話す

 

オルガ「…バーカ、見捨てるとか見捨てないとかじゃねぇよ。家族ってのは…」

 

三日月「え?」

 

ユーリ「…家族?」

 

2人はオルガの方に振り向き、聞き返す。オルガは少しあっと気づき、口を閉じると、片腕の拳を三日月にだした

 

オルガ「…これからも頼むぜってことだよ、ミカ。それと、ユーリもな」

 

三日月「…うん」

 

ユーリ「わかった」

 

2人は静かに返事し、オルガの差し出した拳に自分達の拳を当てた。淡々とした一言の返事だったが、3人にとっては、それだけでもとても心強い返事であった…

 

 

 

 




…はい!如何でしたか?なのだ!ユーリちゃんの姿はあまり言葉ではいい表しにくいのだ。しかし自分で挿絵を作れるほど画力はないのだ…だから個人の想像でもいいからだれか挿絵とか描いてくれたりしないかなぁ…ていつも思ってるのだ。よければ描いてくださいなのだ!それでは次回も読んでくださいなのだ!


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マクマード・バリスタン

こんにちはなのだ!黒アライさんなのだ!皆さんどうも久しぶりなのだ。ずっと別の小説を書いていたから長い間更新していなかったのだ。
もう読んでる人がいるかはわからないけど、新規で読み始める人のためにに更新し続けて行くのだ!それではどうぞなのだ!


ーー木星 コングロマリット テイワズ代表邸宅ーー

 

 

 

 

名瀬「この先にいるのは圏外圏で一番恐ろしい男だ。わかってると思うが…くれぐれも、失礼のねぇようにな?」

 

名瀬はそういいながら鉄華団の数人のメンバーを一通り見渡した。一応、見た限りでは服装などもギリギリ問題はなかったようだ

 

ユージン「…」キュッ…

 

ビスケット「…ふぅ」

 

しかし、それでもテイワズのトップに会うというプレッシャーは、少年達の心に重くのしかかり、ユージンはシャツが変になっていないか確かめ、ビスケットは頭にかぶっていた帽子を外した。

 

ユーリ「…緊張…する」

 

三日月「そう?」

 

かくいうユーリも、普段の彼女からは珍しく、ソワソワしながらオルガの隣に立つ。三日月は相変わらずどうこうするわけでもなく、ただぼーっと突っ立っていた。

 

オルガ「…そういやユーリ。お前、テイワズのトップには会ったことないのか?」

 

ユーリ「ただの傭兵に会う理由なんて、向こうにはない…私自身も、テイワズのトップに会う理由もなかったし、あの時は、そんなに興味なかったから…」

 

オルガ「そうだったのか。…なら、正真正銘、俺たちの中で誰も知らねえ傑物に会いにいくってわけか…」

 

オルガはそう言うと、冷や汗を描いた。今までは様々な情報をもとに、なんとかその場凌ぎで苦難を乗り越えてきたが、今回は相手が大きすぎるが故に、一つの行動選択を間違えるだけでオルガ達の、ひいては鉄華団の行末が簡単に消える事が充分にあり得るのだ。

 

名瀬「…久しぶりだな、お前ら」

 

名瀬が話しかけたのは、テイワズ代表邸宅の門番をしているのであろう黒ずくめのスーツを着こなしている2人の男であった

 

門番「お久しぶりです、タービン様。失礼ですが、本日のご用件は?」

 

名瀬「あぁ…親父に会いにきた」

 

名瀬が帽子を脱ぎながらそう答えると、黒ずくめの男は、静かに頷いた。すると、門番の後ろにある鉄柵の扉が開いた

 

ガラガラガラ…

 

名瀬「さぁ、行くか」

 

名瀬の後ろ姿を追いながら、鉄華団はそれぞれの思いを胸に、進んでいく…

 

 

 

 

 

ーーテイワズ 代表室ーー

 

ガチャ…

 

???「…んん?」

 

枝切りバサミを持った大柄の老人が、突如開いた自室の扉を見た。そこには、自分の息子と呼べる仲の部下と、見知らぬ少年少女達が後ろにいた。

 

???「おぉ、来たか。名瀬」

 

名瀬「お久しぶりです、親父」

 

名瀬が親父と呼んだその男は、間違いなく、このテイワズの代表であるマクマード・バリスタンであった

 

………

 

マクマード「…なるほどなぁ、お前らが…話は聞いてるぜ。…フッ、いい面構えしてんじゃねぇか。おーい、客人に菓子でも出してやれ。クリームたっぷりのな」

 

黒ずくめの男「へい」

 

マクマードは鉄華団の少年少女達をみると、ひとまずは機嫌良さそうに、黒ずくめの男に鉄華団に向けて菓子を出すよう頼んだ。

 

 

 

ビスケット(あれが…テイワズの代表、マクマード・バリスタン…)

 

ユージン(…なんか、イメージと違くね…?)

 

しかし、鉄華団の少年達は、自らが想像していた人物とは、とてもとは言わないが、だいぶ違かったので軽く混乱していた。だが、そんな心情を、マクマードは知るよしもなく、名瀬に話しかける

 

マクマード「んで名瀬よ、お前はどうしたいんだ?」

 

名瀬「こいつらは、デカいヤマを貼れる奴らだ。…俺は、こいつらと杯を交わしたいと思っている」

 

オルガ(!?え、杯って…!?)

 

ビスケット(そこまでしてくれるなんて…!)

 

名瀬は、マクマードに杯を交わしたいと言った、が、その言葉は鉄華団にとっても初耳のことだった。なんせ自分達のような小企業と協力してくれただけでもありがたいのに、兄弟の絆を誓ってくれることなど、普通は絶対にないことであるからだ

 

マクマード「ほぉ…お前が男相手にそこまでいうとはなぁ…珍しいこともあるもんだ」

 

マクマードは意外そうに名瀬を見つめるが、すぐに素の表情にもどる。

 

マクマード「まいいだろ。俺の元で義兄弟の杯を交わせばいい。タービンズと鉄華団は、晴れて兄弟分だ」

 

オルガ(…鉄華団と、タービンズが…兄弟分…!)

 

オルガは内心、上手く行きすぎている状況に興奮していたが、すぐに表情を治す。

 

マクマード「んで、感銘は?」

 

名瀬「五分でいい。俺たちに、上も下もねぇ」

 

名瀬の言葉に、マクマードは乾いた笑みをうかべる

 

マクマード「名瀬よ、お前が良くてもな、周りが許さんだろ。こいつらにゃ荷が重い…せめて、四分六にしておけ」

 

オルガ「…」

 

マクマードの言葉はごもっともだ。それには同意するが、まるで自分達の力が甘く見られているようで、オルガは内心複雑だった…

 

 

 

 

 

ーーハンマーヘッド モビルスーツ格納庫ーー

 

バシュゥン…

 

ガコン!

 

ラフタ「もぉーー!あいつしつこずぎるっての!!」

 

ラフタはまたも汗だくの状況でモビルスーツのコクピットから出てきた。どうやら昭弘のシミュレーションにまた付き合わされていたらしい

 

ラフタ「ほんとタフなんだから…夜の名瀬が手ぬるく感じちゃう…」

 

ガコォン!

 

昭弘「ハァッ…ハァッ…」

 

昭弘も上半身裸になっている状態でコクピットから体半分出したまま伸びていた。が、昭弘はすぐにラフタの方へ向き、叫ぶ。

 

昭弘「…もう一戦、頼むっ!」

 

ラフタ「ゲッ…勘弁して…」

 

ラフタはジュース片手に昭弘の言葉を聞いたが、もう昭弘のその言葉だけでいつもの元気なラフタとは思えない程の疲れた声でそう呟いた

 

 

 

 

ーーハンマーヘッド 食堂ーー

 

アジー「悪いね、手伝って貰ってさ」

 

アトラ「いいんです、いろんな料理覚えたいし」

 

アトラはアジーと共に、鉄華団とタービンズの食事を作っていた。

 

すると、鉄華団の少年兵がアトラに尋ねる

 

少年兵「なあアトラ。なんでオルガさん達について行かなかったの?」

 

アトラ「え?」

 

急に聞かれたことに少し呆けていたが、隣のもう1人の少年兵が代わりに言った。

 

少年兵「女だからだろ?女は弱いから、連れてっても邪魔になるし「ガシッ!」痛っ!?ちょっ、痛い痛い!!」

 

アジー「もっかい言ってみなぁ?」

 

アジーが後ろから少年兵の頭を両手で掴みこめかみをグリグリと押す。

 

少年兵「すいません!もう言いませんからぁ!」

 

少年兵は半泣きになりながら謝り出す。それを見て苦笑いになっていたアトラだが、すぐに別の少年兵から聞かれる。

 

少年兵「でもさ、クーデリアは女なのに、ついていってたよ?」

 

アトラ「…ぁ」

 

アトラはその言葉に、小さく返事するしかなかった。クーデリアは鉄華団とタービンズにとって、かけがえのない重要人物なのだ。故に彼らについて行くことは道理にかなっている。いるのだが…

 

アジー「…どうでもいいだろそんなこと。ほら、あんた達も手伝いな」

 

少年兵「ちぇっ…はーい」

 

アトラ「…」

 

頭ではわかっていても、何も出来ない自分の無力感が、アトラは嫌という程感じていた。

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして…

 

 

 

コトッ…

 

アトラ「ふぅ…」

 

アトラはその後、いつまでも暗い気分で仕事をしていても仕方ないと割り切り、料理が出来てからも食堂の掃除などをしていた。

 

すると…

 

「…何を、悩んでいるんだい?」

 

アトラ「ふぇ?…あ、えっと、確か…」

 

アミダ「アミダだよ、アミダ・アルカ」

 

アミダは食堂の入口の扉にうっかかりながらそう答えた

 

アトラ「えっと、すみません…」

 

アミダ「いいんだよ。会ってまだ日が浅いしね。コーヒーひとつ貰えるかい?」

 

アトラ「あ、はい!」

 

アトラはパタパタと調理場に行く。

 

アトラは厨房に置いてあるインスタントコーヒーをとると、先程の料理で余っていたお湯をカップに注ぎ、そのコーヒーを加えて混ぜていく。

 

そうしてできあがったものを、トコトコと歩きながらアミダに渡しに行った

 

 

コトッ…

 

アトラ「はい、どうぞ」

 

アトラはそうして出来上がったコーヒーをアミダの目の前に置いた。

 

アミダ「ありがとう、すまないね。忙しいだろうに」

 

少しばかり申し訳ないように笑うと、アトラはそんなことないと言わんばかりに話した

 

アトラ「いえいえ!このコーヒーも、元はタービンズの人達がくれたものだって聞いたし、そんな、全然…」

 

アミダ「…フッ…」

 

アミダは少し笑うと、カップをほんの少し揺らしたあと、コーヒーを飲んだ。

 

そして、本題に入り始めた。

 

アミダ「それで、一体何を悩んでいるんだい?」

 

アトラ「!!」ビクッ!

 

急に尋ねられたことか、はたまたその質問の意図に対して何かあるのか、恐らくはどっちでもあるだろう驚きが、アトラを襲った

 

アトラ「…悩んでいるように、見えますか?」

 

アトラは後ろにいるアミダには振り向かず、後ろ向きの体勢でそう返した。

 

アミダ「あぁ、見えるよ。私だって女さ…それに、この艦の中では結構年上の部類だしね。同じ女の悩みなんて、いくらでも予想つくさ…」

 

そこで一旦区切ると、意味深そうな笑みを浮かべながら単刀直入に聞いた

 

アミダ「…男、だろう?」

 

アトラ「うぇっ!?」

 

アミダの言葉は、アトラの考えている悩みに見事的中した。その驚きのせいかちょっと情けない声を上げてしまった

 

アトラ「…うぅ…私、そんなわかりやすいですか?」

 

ほんの少し涙目になりながら、アミダに尋ねると、優しく言葉を返してくれた

 

アミダ「あぁ、あたしの中では、アンタは結構わかりやすい」

 

アミダ(アンタみたいに初心(ウブ)な心の持ち主、久しぶりに見るしね)

 

アミダは心の中でそう思っていたが、アトラはそんなことは知る由もなく、少ししょんぼりとしていた

 

しかし、そんな中で、アミダは独り言のように語り出した

 

 

 

アミダ「…男の度量ってのはね…愛の量で決まるんだよ」

 

アトラ「…?愛の量、ですか?」

 

その言葉がいまいち分からなかったのか、アトラは聞き返した

 

その疑問をひとつずつ解消させるように、アミダはゆっくりと語る

 

アミダ「あぁ、男の中にはね、持っている愛がやたら多い奴がいるんだよ」

 

アミダ「そして、その男の愛は例え多くの女に分配されるようなことになっても、普通の男の愛なんかよりずっとでかくて…心も体も、真の心から満足できるのさ…」

 

アトラ「…はぁ…?」

 

まだよく理解できていないのか、アトラは少し曖昧な返事しか出来なかった

 

それを見たアミダは、なるべくわかりやすいような例えを探して、そして言った

 

アミダ「アンタはさ、ザラザラしたモロコシのパンを独占するのと、飛びっきりの極上の肉をみんなで味わうの、どっちがいい?」

 

ちょうどいいような例えを出してみたアミダだが、アトラから帰ってくる言葉は、少し予想外のものだった。

 

アトラ「私は…パン、ですかね?」

 

 

 

 

アミダ「…え?」

 

その予想外の言葉に、アミダはほんの少し沈黙した後、聞き返してしまった。

 

その様子で、アトラは自分がなにか間違った回答をしたのか、弁明するかのように話した

 

アトラ「あ、いや、ごめんなさい!…えっと、肉って本物のお肉、ですよね?」

 

アミダ「あぁ、そうだけど…」

 

アミダの言葉を聞いた後、アトラは少し恥ずかしそうに理由を話した

 

アトラ「えっと、私お肉食べたことなくて…高いですし、何より可哀想で…」

 

アトラ「あぁえと、それに、火星にいた頃に雇ってくれていた女将さんが焼くパンは、とっても美味しいんですよ!」

 

両手を繋いで嬉しそうに話すアトラを見て、アミダは思わず笑ってしまった

 

アミダ「フフッ…アンタならきっと良い奥さんになれるよ」

 

急に言われた褒め言葉に、少し驚いたが、それでも褒めてくれたことに対して嬉しさが勝り、アトラは素直に喜んだ

 

アトラ「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!」

 

アトラは深々と頭を下げたあと、頬の緩みきった表情でにやけながら掃除に移った

 

アミダ(そう…アンタはきっとじゃない。間違いなく良い奥さんになれる)

 

 

 

 

 

アミダ(男選びさえ間違えなければね…)

 

アミダは内心そう思いながら、残ったコーヒーを一気に飲み干すのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーギャラルホルン ハーフビーク級戦艦 ブリッジーー

 

 

 

 

 

マクギリス「あと3つ、アリアドネを辿ればもう地球だ」

 

ブリッジの艦長用の座席に座りながら、マクギリスはガエリオに現状を伝えた

 

ガエリオ「全く面倒な仕事だった…それに…」

 

ガエリオ「あの宇宙ネズミ共め…!」

 

腹の中が煮えくり返っているガエリオを、いつもどうりに諌めながら、マクギリスは鉄華団について話した

 

マクギリス「クーデリアを連れた鉄華団も、地球を目指しているだろうが、アリアドネラインを使わなれば、補足は難しい」

 

ガエリオ「フン…下賎な生き物程逃げ足は早い、か…」

 

未だに宇宙ネズミと呼ぶ鉄華団の少年少女達に上手くあしらわれたのが認められないのか、ガエリオは親友のマクギリスにも素っ気ない対応をしていた

 

しかし、マクギリスは余裕の表情で伝える

 

マクギリス「安心しろ、むざむざと逃がすつもりもないさ。その為に、裏の情報に詳しい者に探らせている」

 

ガエリオ「抜かりなし、か。流石だな、マクギリス特務監査…いや、もうこの名では呼べんな…地球に帰れば昇進が待ってる」

 

マクギリス「アルミリアとの婚約パーティもあるしな」

 

そこまで嬉しさを出すわけでもなく、全面的に冷静にマクギリスはそう言った。

 

彼にとって、軍での昇進は些細なことなのかもしれない。親友の妹との結婚も、マクギリスにとっては、取るに足らないことなのかもしれない…

 

 

 

 

 

 

 

ーーハーフビーク級戦艦内部ーー

 

 

ガエリオ「アルミリアねぇ…」

 

ガエリオ「自分の妹の事を言うのもなんだが、あんな幼い子供を許嫁にされるなんて…マクギリスも大変だな…」

 

ガエリオはため息をつきつつも、マクギリスの心情を察した。

 

いくら親同士が決めた婚約でも、齢8歳ぐらいの少女を許嫁にさせる軍の上層に、ガエリオはなんとも言えないため息を着くことしか出来なかった

 

そして、ついには考えるのも億劫になったのか、ガエリオは自分の後ろで静かに着いてきていたアインに尋ねた

 

ガエリオ「アイン、お前相手は居ないのか?」

 

急に自分に尋ねられたことが驚いたのか、少し反応が送れたがちゃんと答えた

 

アイン「相手…ですか。いえ、自分はそういう出会いとはあったこともありません」

 

ありのままの事をアインは伝えたが、ガエリオにとっては面白くなかったらしく、苦情を言われた

 

ガエリオ「お前はほんとにつまらん男だなぁ。せっかく部下にしてやったというのに…暇つぶしの会話のネタぐらいいくつか仕込んでおけよ?」

 

アイン「ハッ、申し訳ありません…」

 

アインは深々と謝罪をしたが、ガエリオはあまり気にもとめず、さっさと先に言ってしまった

 

 

 

 

 

アイン「……」

 

ゴソゴソ…

 

アインは懐からひとつのバッジを取りだした。それはギャラルホルンの兵士であることを示す勲章のようなものだった

 

しかし、それはアインのものではなく、かつて自分が一番尊敬していた上司であるクランクのものであった

 

アインは、彼が戦死する前に自分に話した言葉を思い出していた。

 

 

 

 

 

 


 

クランク「すまないな、アイン。俺はギャラルホルンの兵士であると共に、1人の子供の親でもあるのだ」

 

 

 

 

クランク「…許してくれとは言わん。これは俺の勝手な事情でやっている事だ。本来の兵士ならそんなものは真っ先に捨てなくてはならない…それでも」

 

 

 

 

クランク「…罪無き子供を殺すことなど…私にはできんのだ…」

 

 

 


 

 

アイン(ここまで自分達のことを考えてくれた人のことを、情け容赦もなく殺すなんて…)

 

 

アインは手にあるギャラルホルンのバッジを、力の限り握りしめた

 

アイン「罪の無い子供は殺せなくとも…」

 

 

 

 

 

 

アイン「罪のある子供なら、手にかけてもいいですよね…クランク二尉…」

 

そして、1人しかいないその空間で、ボソリと呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー木星 コングロマリット テイワズ代表邸宅ーー

 

バリッ!

 

ムグムグ…

 

ユージン「う、うめぇ!!なんっじゃこりゃあ!?」

 

ユージンやオルガ、ビスケットに名瀬という4人組は、テイワズ代表宅の庭で、クリームのたっぷりとのった菓子パンを頬張りながら話していた

 

ビスケット「なんなんだろうね…クーデリアさんにだけに話って…」

 

ビスケットは不安そうにオルガに尋ねたが、名瀬が変わりに答えた

 

名瀬「親父は、とてつもなく恐ろしい人ではあるが、道理の通らないことはしないお方だ。それに、一応護衛役もつけたんだろ?」

 

オルガ「あ、はい」

 

オルガはオルガなりにクーデリアを守る為、テイワズに来る前から決めていた事前の護衛役を送らせていた

 

少しして名瀬が思い出したかのように伝えた

 

名瀬「あぁ、そうそう。お前らから引き取った諸々の鹵獲品に値が着いたぜ」

 

オルガ・ビスケット「!!」

 

オルガ達が数日前に名瀬に託していたギャラルホルン製の鹵獲品の売却を頼んでいたが、ちょっと前にそれの目処がたったらしい。

 

名瀬はタブレットを取りだし、売却した後の金額をオルガ達に見せた

 

名瀬「この金額でよけりゃあ請求を寄越してくれ」

 

オルガ「なっ!こんなに!?」

 

ビスケット「凄い!こんなに値が着くなんて!」

 

ユージン(…すげー、のか?数字がよく分からねー…)

 

各々がそれぞれの反応を見せていると、名瀬が得意そうに話してくれた

 

名瀬「鹵獲品の中でもグレイズのリアクターは高く売れたぜ。なんせ今エイハブリアクターを新規に作るのはギャラルホルンにしかできねーからなぁ」

 

厄災戦を過ぎてからは、文明が極端に衰弱したことと、ギャラルホルンが他の勢力に力を手に入れさせないために、モビルスーツの核となるエイハブリアクターの製造はギャラルホルンにしか出来なくなっていた

 

ビスケット「やったね!オルガ!これで少しは楽になるよ!」

 

ビスケットやユージンは素直に喜んでいたが、オルガは自分達だけではここまで上手くいかなかったことをよく分かっているため、目の前にいる名瀬に、心の限り礼を言った

 

オルガ「…その、ほんとに、何から何まで、恩に着ます…!…あ、兄貴…」

 

 

慣れない兄貴呼びに、オルガは少し言い淀んでしまったが、名瀬は笑いながら告げた

 

名瀬「その呼び方はまだ早いぜ?オルガ」

 

名瀬は手元においてあったコーヒーを1口飲んでからオルガ達言った

 

名瀬「いいか?歳星ってのは金さえあればどこでも楽しめる場所だ。それに、ずっと戦場と依頼で、ガキ共もストレスが溜まってるだろう?…少しぐらいは、息抜きさせてやれ」

 

20歳にもならない少年達が、大人顔負けの商売や戦場を駆け巡っているが、もちろんその分の心身のすり減り方も尋常ではない。たまには休ませることを提案した名瀬だが、オルガはとあることが気になり、尋ねた

 

オルガ「…そういうのって、カミさんたちにしてるんすか?」

 

名瀬「ん?」

 

オルガ「いや、ほら、家族サービスってやつをやってるのかなって…」

 

名瀬が家族にする事は、オルガにとってもこれからの団員に接する時に勉強になるため、オルガは家族との接し方について名瀬から見て学んでいた。

 

オルガは、鉄華団の団員が家族と思うようになって日は浅いが、それでも思いの強さは誰にも負けていなかった。

 

名瀬「あぁ、お前らは男ばかりだからいいだろうが、女ってのは適度にガス抜きしてやらねぇとすーぐ爆発しちまうからなぁ」

 

名瀬「ま、家長としては当然の事さ」

 

オルガ「…家長の…務め…」

 

必死に考えた。そして改めた。今までの自分は焦りすぎていたと…

 

俺達は一つ。誰も欠けちゃいけねぇ…だが、俺達のやった事は沢山の敵を作ってしまった…

 

そんな中で、誰も死なずに行ける…なんて甘い考えを持つのは団長として間違ってる…

 

 

 

 

 

それでも……

 

 

 

 

 

オルガ(願ってもいいよな…誰も死なずに、火星に帰って…適当に商売して、そんで…)

 

オルガ(宇宙ネズミの俺達皆が、バカみてぇに笑って生きていけるような、そんな世界になる事を…)

 

 

オルガ「…っし、兄貴の売ってくれたコイツの土産で、今夜はパーッといくか!」

 

オルガは立ち上がり、ユージンとビスケットの前でそう叫んだ

 

ユージン「うぉ!マジでか!!」

 

ビスケット「えぇ!?ちょっ、ちょっと待ってよオルガ!」

 

ユージンは素直に喜んだが、鉄華団の事務系統の役割を持つビスケットにとっては少しばかり不安になる事だった

 

ビスケット「これからのことを考えたら、現実に資金運営を「他の連中にも早く伝えてやんねぇとな!」…まぁたまにはいいか…」

 

ビスケットはため息一つついてはいたが、その顔は嫌がってはおらず、むしろ少し微笑んでいた

 

 

鉄華団はまだまだ立ち止まらない。たとえその先に絶望や、大切な者との別れがあったとしても、彼らは、鉄華団は、前に進み続けるのだ。

 

その先に、自分達の目指した世界があると信じて……

 

 

 




…はい!いかがでしたか?なのだ!今回はなんだかユーリや三日月の出番が少ない…で、でもでも!次回はちゃんと多くなってるし、もう描き始めているから今回みたいに更新が遅くなる事はないのだ!

それでは次回も読んでくれるとこを祈って!

ユーリ・三日月・オルガ「ご愛読、ありがとうございます!」






三日月「これでいいの?」

ユーリ「いいんじゃないかな」

オルガ「ま、次回も読んでくれる事を祈ってようぜ!」


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レイリア・グランヴァルス

ーー木星 コングロマリット テイワズ代表邸宅ーー

 

 

マクマード「アンタが、火星独立運動家のお嬢さんか…時の人と会えて光栄だ」

 

マクマードの執務室の中で、クーデリアを前にして、その左右に三日月、ユーリがおり、マクマードはクーデリアに対して時代の変わり目の最先端にいる人という意味を込めて時の人と呼んだ

 

クーデリア「そんな、時の人だなんて…」

 

少しばかり照れ臭そうにしながらクーデリアは謙遜していた

 

マクマード「フゥ…そんで、お嬢さんは火星政策の再生策として、地球側が取りまとめていた火星のハーフメタル資源の規制解除を要求」

 

 

マクマード「火星での独自流通を実現するため、地球まで出向く、そいつで間違いないな?」

 

葉巻を吸いながら、現場を整理するため、マクマードはこれから鉄華団が成そうとしていることを簡単に述べた

 

クーデリア「あ、はい」

 

マクマード「そうか。うちで仕入れた情報じゃ、現アーブラウ市長である蒔苗は、本気でそいつを通そうとしているらしい」

 

その言葉を聞いたクーデリアは、驚きつつも素直に喜んだ

 

クーデリア「!ほ、本当ですか!」

 

 

 

 

しかし、その次にマクマードが放った言葉によって一気に表情が変わった

 

マクマード「下手すりゃ戦争になるな、これは」

 

クーデリア「…え?」

 

クーデリアには何故戦争に繋がるのかがよくわからず、聞き返してしまった

 

クーデリア「…戦争、ですか」

 

マクマード「あぁ。アンタの目的が叶った時、得するのは火星の奴らだけじゃない…利益を得ようとさまざまな組織が暗躍する」

 

マクマード「それこそ、どんな悪どい手を使ってもな」

 

その言葉に、クーデリアは固唾を飲んだ。今の敵戦力はギャラルホルンだけだが、その上に様々な企業を相手取ることになるのかと、不安になった。

 

そして、またさらに不安な火の粉をマクマードは巻いた。

 

マクマード「その上、この戦争は長引く。利権を勝ち取ったとして、その後の各組織間に軋轢が残るからなぁ」

 

クーデリア「…どうして」

 

クーデリアは半分絶望していた。火星を少しでもより良くするために今動いているのに、その目的が果たされたとしても、また新たな争いに火星を巻き込むことになってしまうからだ

 

フゥ…………

 

マグマードは葉巻の煙を吐きながら、そんな絶望を味わっているクーデリアに向けて一言言った

 

マクマード「お嬢さん、ここは一つ、テイワズを指名しちゃくれないか?」

 

クーデリア「え?」

 

マクマード「お嬢さんが直々に指名したという体を得られれば、当然様々な問題に関してはこっちがなんとかやれる」

 

マクマード「まぁ避けようもねえことももちろんあるだろうが…」

 

クーデリア「…それは…」

 

今までのマクマードの提案をもう一度頭の中で整理し、慎重に考えたあと、クーデリアは言いづらそうに言った

 

クーデリア「…もう少し、考えさせてもらえますか?」

 

マクマード「考える必要があるのか?」

 

しかし、マクマードはその言葉を許さない。鉄華団はいまやテイワズの傘下。その鉄華団が成そうとしていることはもちろんテイワズにも関係してくる

 

ならばそれを活かし、火星での経済面に手を出すことがテイワズにとっての利益が大きいと、マクマードは分かっていたが故に、クーデリアを逃しはしなかった

 

クーデリア「…っ…」

 

クーデリアはマクマードと目を合わせられなかった。こんな重要な事を、はいそうですかと簡単に決められるわけがない…

 

しかし、今の私達にとってテイワズの協力は必要不可欠。そのテイワズの頼みを断ることなどできるわけがない。

 

しかし、だからといってこのままでは火星は何も変わらない

 

クーデリアはその責任の重みから逃げるように、隣にいたユーリに目を合わせた。

 

しかし、ユーリは救いの手を持たなかった

 

ユーリ「これは、クーデリアが決める事だよ」

 

ただ静かに、ユーリはそう言い放った。

 

そして三日月が付け加える

 

三日月「どんな選択をしたって、どっちみち人は死ぬんだ。今までのことで分かってるだろ」

 

クーデリア「…それは…」

 

その言葉が、さらにクーデリアを締め付ける。

 

ユーリ「これは、多分私や三日月が最初に人を殺したのと同じ、クーデリアの…これからの全部を決めるような決断になる。だから…」

 

ユーリ「だからこれは、クーデリア自身が自分で決めなければ駄目…」

 

ユーリは淡々と、されど一切目を離さずにクーデリアに告げた

 

そこで、マクマードは何を思ったのか、先程のグイグイくるような意気込みはなくなり、急かすような事は言わなくなった

 

マクマード「ま、確かにそいつは一大事だな。いいだろう、少しばかり待つとしよう。しかし…」

 

マクマード「俺はもう老いぼれだ…そうそう長く待つことはできねぇ。なるべく早く決断する事を祈っている」

 

何とかこの場を切り抜けられたと思ったのか、クーデリアは安堵したかのように息を吐き、礼を言った

 

クーデリア「…ありがとうございます…今日は、これで…」

 

そう言ってクーデリアは頭を下げると、三日月とユーリを連れてマクマードの元から去ろうとした

 

 

その時、1人が呼び止められた

 

マクマード「そこのちっこいお嬢ちゃん。ちょっと待ちな」

 

ピタッ…

 

ユーリ「…」

 

急に呼び止められたユーリはピタリと動きを止め、マクマードの方へ顔だけを向けた。

 

その時、一緒に出ようとしたクーデリアが一瞬振り返ったが、三日月によって退室させられた

 

このマクマードの執務室で、2人きりの状況になったわけだ

 

ユーリ「…はい、なんですか?」

 

マクマード「名前、ユーリ・アルレイズで、間違いないな?」

 

マクマードは淡々とまずは名前だけを聞いた

 

ユーリ「…はい、そうです」

 

いつもの彼女には想像しづらい、緊張した表情でマクマードにそう言った

 

そして、その名前を聞いたマクマードは、神妙深そうな表情で話し始めた

 

マクマード「…そうか…アルレイズ、か…」

 

ユーリ「…?」

 

ユーリはなにかおかしいことでもあったのかと、先程の発言について色々考えていた。

 

その時、マグマードは独り言のように呟いた

 

マグマード「…お前、アメリアの娘っ子だろう?」

 

ユーリ「!!」

 

ユーリは驚いた。この場でなんの脈絡もないはずの両親の事が話題に出てきたのもあるが、なによりもテイワズのトップであるマクマード・バリスタンが、自分の両親と関係があるようなことを言ったのだから

 

ユーリ「…両親を、知ってるんですか?」

 

恐る恐る尋ねた。優しく接してくれる母以外、ユーリは何も知らない。父親の事は名前しか知らない。

 

少しでも両親のことが知れるならと、ユーリは聞いた

 

マクマード「両親、と言うよりかは母親の方だけだ」

 

マクマードは葉巻をグリグリと灰皿に押し付けると、淡々と言い出した

 

マクマード「アメリア・アルレイズ。かつてはよく依頼を頼んでいた仲だった…あいつは鈴付きとして名を広めちゃいたが、もうほとんどは、テイワズの一員のような立ち位置だったさ」

 

マクマード「まぁ余所者だから嫌われることも多々あったらしいが、それでもま、ウチの依頼ばかりを優先して受けてくれていたさ」

 

マクマード「…俺にとっても、あいつは信頼できる、数少ない味方でもあった」

 

マクマードはそこまで言うと、両手を組んで感慨深そうにユーリに言った

 

マクマード「…名瀬から聞いた。死んじまったんだってな…」

 

ユーリ「…」

 

別に怒るでも怒鳴るでもなく、ユーリはマクマードの言葉を待った

 

マグマード「…もうあいつが死んでから4年も経っているんだ。それに、傭兵なんてやってる身だ。綺麗な最期なんて迎えられるはずがないのは、あいつにも、俺にも、そして…お前も、分かっていたはずだ」

 

マクマード「だから、今更お前に何か言うつもりは無い…しかし」

 

マクマードはそこで区切ると、葉巻の火種をグリグリと潰しながら姿勢を正して、言った

 

マクマード「お前に、『会わせたい奴』がいる」

 

そう言うと、机の上にある固定電話から、とある人物に繋げた

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

ツー…ツー…

 

 

???「………んぅ……」

 

モゾモゾ……

 

とある暗い部屋の中、ベッドの上で毛布の中にうずくまる1人の者がいた

 

ガチャ…

 

???「……はい、もしもし……」

 

マクマード『…よう、俺だ。急で悪ぃが、お前に合わせたい奴がいる』

 

???「見返りは…?」

 

寝ぼけたような声でマクマードに向けて話していたが、マクマードの次の言葉で、完全に目が覚める

 

マクマード『見返りか…【お前の身内】に関係する情報が得られる…これでどうだ?』

 

???「……身内?……わかった、今すぐ行く。場所は?」

 

マクマード「俺の家の執務室だ」

 

プツッ……ツー…ツー…

 

そう言って謎の者は一方的に電話を切られた。

 

???「…俺の家の執務室って……アタシの部屋の2つ隣じゃん…」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

マクマード「とまぁ、今呼んだところだ。なに、時間はかからねぇよ。この部屋の2つ隣の部屋にいつも寝泊まりしてんだ」

 

ユーリ「…そう、ですか…」

 

ユーリはマクマードからすぐ側にあった客専用のソファに座りながらココアを飲んでいた。

 

そして5分ぐらいが経過した後……

 

 

 

 

コンコン

 

 

 

マクマード「ん?あぁきたか……開いている、入れ」

 

???「失礼しますよ」

 

ガチャ……

 

マクマードの執務室の部屋をノックし、そして入ってきた人物は…

 

 

ユーリ「……へ?……」

 

 

 

 

 

 

 

ユーリ「……お母、さん?……」

 

???「……は?……んん?え、何この子。マクマードさんの隠し子?」

 

 

それは、髪型こそ違うが、ユーリと同じショートボブの髪型に、銀色の髪をたなびかせ、まるでユーリをそのまま大人にしたかのような女性がいた。

 

唯一違っていたのは、ユーリのように蒼眼ではなく、緋色の目をしていたことだった

 

チリンチリン……

 

ユーリ「……違う……他人なの?……でも、こんなに、似ている人は……それに、その鈴も……」

 

 

ユーリは軽く困惑状態になり、いつもの無表情が跡形もなく消え、代わりにカタカタと震えている

 

 

???「え、えぇ?な、何でこんな出会ったばかりの子に怖がられなきゃならないのよ……っていうか、キミどっかで見たような顔してんね……」

 

マクマード「まぁとりあえず、座れよ。このままじゃ話が進まん」

 

マクマードはそう言ってユーリの対面にあるソファを指した。

 

マクマード「ほら、お前も落ち着け」

 

ユーリ「……はい……」

 

ユーリの肩を軽く叩き、ソファに座らせた。

 

 

 

 

 

マクマード「そんじゃ早速、紹介しよう。こいつは、『レイリア・グランヴァルス』……お前の母親である、アメリア・アルレイズの、【双子の姉】だ」

 

 

 

 

 

ユーリ「……ふぇ?……えぇ!!?」

 

ユーリは一瞬マクマードの言った言葉の意味が呑み込めず、二度驚いていしまった。

 

赤いコートをはおり、ショートパンツを来ているこの女性が、自分の母親の、姉であるということに、ユーリは混乱してしまう

 

レイリア「……アメリアが、母親……ってことは、キミ、アメリアの娘?」

 

マクマード「まぁ、概ねそうだな。アメリアと同じように、鈴付きの名を冠した傭兵をやっていたが、今は鉄華団という企業に所属している」

 

レイリア「ふーん……そう、キミが……」

 

レイリアはそう言ってソファから立ち上がると、ユーリの目の前に来て、頭に着いている鈴付きのリボンを見た

 

ユーリ「……あ、あの…」

 

レイリア「……確かに、これはアメリアのリボンだ。本物とみて、間違いないようだね」

 

そう言うと、レイリアはユーリの隣に座った

 

マクマード「……まぁ、実の母親では無いにしろ、それに最も近い存在と出逢えたんだ。レイリア、お前の部屋に連れて行ってやれ。2人で話でもすればいい。俺はまだ仕事があるんでな」

 

マクマードはそう言って、椅子から立ち上がり、執務室から出ていった

 

 

 

 

 

 

 

レイリア「……」

 

ユーリ「……」

 

 

レイリア「……まぁ、とりあえず、おいで。案内するよ。すぐ近くだけど」

 

ユーリ「あ、はい…」

 

レイリアはユーリの手を取り、同じく執務室を後にした。

 

 

 

ギュッ……

 

ユーリ(……お母さんと、同じ手……でも、違う……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ……

 

 

レイリア「さ、入って入って」

 

ユーリ「…失礼します」

 

ユーリはそう言ってレイリアの部屋に入った。

 

部屋の中は案外シンプルで、テレビと本棚。あとはテーブルとベッド、簡単なキッチンとバスルームがあるだけの質素な部屋だった。

 

レイリア「悪いね、何も無くて。……そうだ、お菓子でも食べる?……って言っても、携帯食料ぐらいしかないけどね」

 

そう言ってレイリアは、キッチンの棚の中にある携帯食料を取りだし、ユーリに渡した

 

レイリア「ん」

 

ユーリ「…どうも」

 

どう接していいか分からず、ユーリはぶっきらぼうに返事をしてしまった。しかし、レイリアは特に気分を損ねることもなかった

 

レイリア「どういたしまして。…さて、何を話そうか。聞きたいことがあるなら、先に聞いてあげるよ」

 

ユーリをベッドに座らせながら、自分も隣に座り、優しくそう言った

 

ユーリ「…じゃあ…」

 

ユーリ「レイリア、さんは、何者なんですか」

 

レイリア「何者、か。曖昧なようでどう答えたらいいのかなぁ…」

 

レイリアは悩む素振りをしながら、少し間を置いて、話し始めた、

 

レイリア「私は、というより、私達グランヴァルス家は、代々傭兵家業でね。私の妹…もとい、君の母親であるアメリアも、元はグランヴァルス家だから、傭兵として暮らしてたんだよ」

 

レイリア「君の名乗っている『鈴付き』って名前も、結構昔から私達が名乗ってるものだよ。名前の由来は知らないけど……まぁ、案外私達が着けてるこの鈴が関係してんのかもね」

 

レイリア「今度は、私個人の話。今の私の立場は、テイワズ専用の『鈴付き』って感じ?ほら、鈴付きの情報って限りなく少ないでしょ?あれってマクマードさんやテイワズの皆がもみ消してくれてるんだよ」

 

ゆっくり、伝わりやすいようにレイリアは話した。そして、今度はレイリアが質問してくる

 

レイリア「そんじゃ、今の私のことは簡単に説明したし、今度は君のことを聞かせて欲しいな」

 

ユーリ「…私のこと、ですか」

 

レイリア「うんうん。あぁそれと、その敬語やめていいよ?君敬語苦手なんじゃない?勘だけど」

 

ユーリ「…わかった。私は……」

 

 

ユーリは全て話した。自分達アルレイズ家は火星の移住区の隅っこで暮らしていたこと。父親のことは名前しか知らない事。母親が死んでからは傭兵としてテイワズにいたり、1人ですごしたりしていたこと。

 

そして…

 

今の鉄華団に出会ったことも。

 

レイリアは口を挟まず、ただ静かに聞いていた。ユーリが話し終わると、レイリアは満足したように頷いた

 

レイリア「そっか。わかった。でも、一つだけ聞きたいことがあるの」

 

ユーリ「…?」

 

ユーリは何を聞かれるのか考えたが、聞かれたことは単純なものだった

 

 

レイリア「…アメリア、元気にしてた?」

 

ユーリ「……それは…」

 

ユーリはどう答えたらいいのか、分からなかった。最後にアメリアと話したのは、もう随分前の話であるし、アメリアは常にユーリの前では笑顔だったので、彼女の本心など、ユーリにとっては分からなかった

 

ユーリ「…多分、元気、だったと思う…」

 

絶対にそうだと言い切る自信がなく、断片的な答えになってしまったが、レイリアは特に不思議がることもなかった

 

レイリア「そう。…まぁ別にいいんだ。ちょっとした興味本意なだけだし」

 

ユーリ「…え?」

 

ユーリはレイリアの言葉に、逆に不思議になった。自分の家族のことなのに、自分の妹が死んだのに、何故そんなに素っ気ない態度なのかと。

 

その思いを、レイリアは察したのか、ひとりでに話した

 

レイリア「…さっきも言ったでしょ?私達は根っからの傭兵家業。真っ当に死ねることなんて絶対にない。だから、私達姉妹は、親が死んでも涙ひとつ流さないし、その姉妹が死んでも、私達は悲しまない」

 

レイリア「全部、分かってたことだから」

 

レイリアは淡々とそう言い放った。眉ひとつ動かさず、なんの感情の変化もなかった

 

ユーリ「…それは、違う」

 

レイリア「ん?……違うって、何が?」

 

けれどもユーリはそれを否定した。それが意外だったのか、レイリアは思わず聞き返してしまった

 

ユーリ「悲しまないわけが無い。私だって、元傭兵だから、貴方の言っていること、分からないわけじゃない。分からないわけじゃないけど…でも、だからって、自分の大切な家族をなくして、平然と居られるほど、人間は便利にできてない」

 

ユーリ「私も、幼い頃から色んなことをお母さんから教えられた。それは、私が傭兵という、安全とは程遠い世界に生きているから。だから私はすぐにわかった。貴方の言う通り、真っ当に生きることも、死ぬ事も出来ない事を…それでも!」

 

ユーリ「それでも私は、お母さんが死んだ時は、とても、とてもとても、悲しかった。悲しくて、苦しかった。いっぱい泣いた。叫んだ。例え分かっていたことでも、理解なんてできなかった。……貴方も、そうだったはず。私より長い間生きている貴方なら、お母さんと長く一緒にいた貴方なら、私より悲しかったはず。苦しかったはずだ」

 

 

ユーリは、辛そうに話した。それでも貴方のその言葉は違うと、貴方を嘘を言っていると否定する為に、ユーリは何も考えずに、ただ思ったことをそのまま言った

 

それを静かに聞いていたレイリアは、何一つ表情を変えずに言った

 

レイリア「そっか、君は苦しかったんだ。悲しかったんだ。幸せ者だね、あの子も…。まぁ、君の言うこともよく分かるよ」

 

 

 

 

 

 

 

レイリア「でもさ、それって君の価値観でしょ?」

 

 

ユーリ「…ぇ」

 

ユーリはレイリアの言った言葉がよく理解できず、曖昧な返事になったが、レイリアはユーリから一切目をそらさずに話す

 

レイリア「君がアメリアをどう思おうが勝手だよ。でもそれは私も同じ。私は本当に悲しくなんてなかったよ。苦しくなんてなかったよ。ただ私がアメリアに感じたのは…」

 

 

 

 

 

 

レイリア「家族なんて邪魔なものを持つから、そうやって早死にするんだよってことかな?」

 

ユーリ「ッ!!」

 

ガタッ!!

 

レイリア「うわっ!…と」

 

ユーリはその言葉を聞いた瞬間、頭の中で何かが切れた。

 

懐からナイフを1本だしてレイリアを押し倒し、馬乗りになった状態で、レイリアの首にナイフを押し当てた。

 

ユーリ「…訂正しろ…さっきの言葉、今すぐにっ!!」

 

ユーリは、初めて…いや、久しぶりに感じた、『憎悪』と『殺意』いう感情に身を任せてそう言った。殺意はともかく、これほどまでに相手を憎んだのは、三日月達鉄華団を侮辱された時、そして…母親を失った時。

 

そんな殺意に満ちた表情で叫ぶユーリだが、レイリアはそんなことなど関係ないようにヘラヘラと笑っている

 

レイリア「あっはは!へ〜やるぅ〜。流石、腐っても傭兵ですって?………でもさ」

 

レイリア「調子に乗んないで」

 

ドスッ!

 

ユーリ「い”っ!?」

 

レイリアはコートの袖から、仕込み武器のようにナイフ取りだし、ユーリの太ももに突き刺した。そして、

 

レイリア「よっと」

 

ドゴッ!

 

ユーリ「かはっ!?」

 

怯んだ隙にユーリのナイフを持つ手を取り、そして腹に膝蹴りを入れたあと、ベッドから投げ飛ばした

 

ユーリ「……ハァッ…ハァッ…痛っ…」

 

レイリア「子供にしちゃよくやるけど、まだ経験が足りないなぁ…まぁ、私に挑むにはまだ早かったってことだよ」

 

レイリアはうずくまるユーリの前にしゃがみ、頭を撫でながらそう言い放った

 

ユーリ「っ…このっ!!」

 

バッ!

 

レイリア「はいはい、あんま動かないのっと」

 

ユーリは負けじとその場でナイフを振ったが、さすがにうずくまっている状態ではどうにも出来ず、片手で軽々と止められてしまう。

 

レイリア「あんま動くと、血の流れがはやくなって、その太ももから失血死しちゃうよ?」

 

ユーリ「……っ…」

 

ユーリはとても悔しそうに、レイリアは睨むが、あいもかわらずレイリアはヘラヘラとしている

 

レイリア「あはは、まだやる気ー?……でもダメ、これ以上は殺し合いになっちゃう」

 

レイリア「私は人を殺すことに何も感じないけど、依頼されてもいない者を自ら殺すことはしないよ。まぁ逆を言えば」

 

レイリア「依頼されれば君でも殺すってことだけど」

 

そう言ってレイリアはふところから携帯電話を取りだし、誰かに電話したかと思うと、すぐ側にある本棚の隣に置いてあった箱から、包帯を取りだし、ユーリの太ももに服の上から巻き付け、止血した。

 

ユーリ「…なんで」

 

レイリア「だーかーらー、私は君を殺したいわけじゃないの!逆に殺したらマクマードさんに怒られちゃう。それに、君たち鉄華団とテイワズは、もう仲間でしょ?なら、仲良くしていこーよ。ね?」

 

先程まで刃物を使った取っ組み合いしたとは思えない程無邪気に笑う彼女に、ユーリは初めて、『恐怖』というものを感じた

 

それを察したのかそうじゃないのかは知らないが、レイリアは立ち上がり、部屋を出ようと扉に手をかけた

 

レイリア「もうすぐで誰か来るから、手当してもらいな。あぁそれと…」

 

 

 

 

 

 

 

 

レイリア「次は無いよ?」

 

 

 

 

 

 

 

ユーリ「…っ…!!」

 

レイリアがそう言った瞬間、一瞬だけ身を凍らせるほどの殺意がユーリを襲った。

 

ユーリはおびただしいほどの冷や汗を流し、ただ身体を震わせながら見返すことしか出来なかった

 

レイリア「フフフッ…早く大人になりなよ?じゃないと、君は奪われるだけだ」

 

レイリアは振り向きつつ、光の無い紅黒い目をむけながら美しく微笑んでそう言い、部屋を出ていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




レイリア・グランヴァルス

身長  174cm

服装  袖なしのセーターを着ており、その上にコートをはおり、結構際どいショートパンツを着て、ニーソックスとちょっと長いブーツを履いている


性格  基本的に友好的な性格だが、意外と腹黒い



詳細

傭兵家業であるグランヴァルス家に双子の姉妹が産まれてから、彼女達はひたすら訓練しかしなかった。互いに互いを鍛え合い、切磋琢磨していたが、ある日、妹のアメリアが恋人と駆け落ちしてしまい、彼女は1人でグランヴァルス家にいた。やがて両親も死に、彼女が世界に出る頃には、彼女は傭兵として、暗殺者としては完璧であったが、ある意味『壊れていた』。様々な企業に雇ってもらい、色んなところを転々としていたが、テイワズにその腕を買われ、破格の給料と衣食住の提供により、レイリアはテイワズでしばらくの間専用の傭兵となることを決めた。以降、テイワズの様々な障害を、文字通り消している。


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