金! 暴力! TS!! (KBT……IT)
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旅立ち
「っべー……、マジパネェ……」
それは、高貴なる光の輝き。
「え、これ見世物じゃねーの? 後で金取られる感じの奴?」
その日、オレ達の目の前に舞い降りたその女性は。
「も、もう少しで乳首見えそう……。ゴクリ」
何もかもを包み込むような、柔らかな笑みを浮かべ。
「はじめまして、勇者よ。私はテトラ。女神『テトラ』と申します」
────女神、を名乗った。
それは、祝祭の日。その日もいつも通り、男3人で連るんでナンパ失敗しつつ遊び回っていた。
夕暮れ時。とうとう疲れてその辺に腰を下ろし、買った酒とツマミを広げ駄弁り始めたオレ達の前に、女神を名乗るセクシー衣装の女性が空からゆっくり舞い降りた。
羽衣、と言うのだろうか? その女性は白い布を体に巻き付けて大事な部分だけを覆い隠したような、エッチな出で立ちだった。
「────女神?」
「ええ。私は、女神と呼ばれる存在です」
しかも、なんか神々しい。こう、キラキラとしている。
言葉にしにくいのだが、神の気配というのだろうか? 膝まずいてしまいたくなるような、何かをその女性は持っていた。
「め、女神様、ですか。その、オレ達にいかなる御用なので?」
「ええ。まもなく、世界に闇が蔓延ります。私は、その闇を払う勇者を選定するべく、この場に参上致しました」
「ゆ、勇者!?」
その女神は、勇者の選定のためにここに来た。間違いなく、そう言った。
「魔王───魔を統べる王が、間もなく復活いたします。私の役目は、その魔王を打倒する者の支援。勇者よ、貴方を導くために私は現れたのです」
「お、おお────」
な、なんて事だ。魔王が復活するだって?
いや、それは重要じゃない。そこもソコソコ重要ではあるが、大事なのはその次だ。
「勇者……」
そうか。オレは、勇者だったのか。
冒険には危険が付きまとう。悲しいこと、悔しいこと、これこら沢山経験していくだろう。
だが、それは世のため人のため。勇者に選ばれてしまった以上は、オレが頑張らねばならない。
そう言えば、昔から運命に導かれているような節は有った。村のくじ引き大会であっさり1等を引いたり、たまたまオレが一人で散策してた山道に小銭が大量に落ちてたり。
思えば、あれは全て素養だったのだ。オレが、勇者たる素養────
「……っべー!! 俺ってば、勇者だったとかマジ!?」
……。
その勇者たるオレの隣で、ベストと言うアホが驚愕していた。
お前じゃねーよ。
「おーいベスト。お前何言ってんの? お前が勇者な訳ねーだろ」
「村一番のチャラ男で、女遊び大好きの脳ミソ性欲ゴミ野郎の分際で。お前は色町に籠ってろ」
「はぁ!? 何お前ら、喧嘩売ってんの?」
ベストは大層憤慨しているが、何を勘違いしているのだろうか。
この男は、時も場所も選ばずナンパを吹っ掛けて顔面をしばきたおされるアホの中のアホだ。こんな低俗な勇者が居てたまるか。
今すぐ、自分の人間としての器を自覚して恥じ入るべきだろう。
「勇者っつったら、俺に決まってんだろ?」
「……あ?」
「は?」
ところが、その勘違い恥知らず野郎は1人ではなかった。なんと、同じくアホ代表のレダまで自分が勇者だと言い出したではないか。
こいつの頭の中はどうなっているのだろう。
「頭脳明晰、容姿端麗の俺以外に勇者候補とかいねーだろ」
「容姿端麗(笑)」
「容姿端麗ならなんでその年まで童貞なんですかね? そもそもお前は卑怯なだけで頭悪いだろ」
「はぁぁぁ!? こないだカードで惨敗した雑魚どもがよく言うぜ!」
「あれはイカサマしてたろーが!」
「後から何を言おうとと、その時に証明できなきゃ言い掛かりでしかねぇなぁ!! この頭プリン野郎が!」
「こんな下衆な勇者が居てたまるか! お前は自分の人格が破綻してるのに早く気付け人間のクズ!!」
やれやれ。本当に頭がイカれてる。
レダは言わば、人間のクズだ。ゴミカス、恥知らず、ウジ虫の愛称で親しまれているウンチみたいなヤツだ。
そんな奴が勇者な訳が無いだろうに。
「お前らも本当は気付いているんだろ? 真の勇者ってのはオレの事だって?」
「えっ」
「それはねーわ」
そんな事言ったって、消去法でもほぼ決まりだろ。
「常識的で、頭も良くて、喧嘩も強い。素手勝負でオレに勝てる奴が此処に居るか?」
「おめーみたいなエロチビが勇者な訳あるか! あと、本気出せばお前くらい一捻りだからな」
「てかお前が近接職なだけでしょーが! 遠距離なら俺のボウガンがお前の眉間射ぬくし!?」
「あっそ? しゃ、勝負する?」
「てかそもそも、こないだ覗きやらかして留置されてた奴が勇者とか有り得なくね?」
「酒場でセクハラかましすぎて一部の店で出禁くらってる勇者とかいる?」
「うっせーな!! たまたま手が当たっただけだよ!!」
「いや、わざとだったろ」
違うし。たまたま伸びをして手を伸ばした先にお尻が置いてあっただけだし。
まぁエロいのは否定しないけど。
「オレが勇者だと言う根拠は、それだけじゃない。お前らに、1つ有名な故事を教えてやろう」
「なんだし?」
まぁ、そろそろ決着を付けるか。この愚かなモブキャラ達に、誰が勇者か教えてやろう。
「────英雄、色を好む」
「「────はっ!?」」
ま、そう言うことだ。
「確かにラット以上のスケベを、俺は知らないぜ……」
「マジかよ……、このムッツリが勇者ってマジかよ……」
そう。オレは町一番の変態にして、ムッツリ男。
『色欲のラット』とは、すなわちオレの異名なのだ。
「ふ、納得したかお前ら。さぁ、女神様、話をしよう。オレは一体何をすれば良い?」
「あの、その……」
雑魚共を完全論破し、オレは悠然と女神の正面にたった。
さぁ、ドスケベラットの英雄譚の幕開けだ!
「あの、勇者はレダさんです」
「よっしゃぁぁぁあああ!!!」
「「何故だぁぁぁぁぁあああ!!?」」
オレは勇者じゃなかった。なんでや!!
「え、え、え!? この人間の屑が勇者!? 正気か女神様!!」
「うっそだろ、それはねーわ!! こんなんが勇者になるなら、俺は聖人君子になれるわ!!」
勇者扱いされた人間性が破綻しているガチクズ野郎は、それはそれは鬱陶しいドヤ顔をオレ達に向けてきた。
「ざまぁぁぁぁぁあ!!! ホレ見ろ、どうだ見ろ、ざまぁみろ!! どうだ悔しいかぁ!? お前らみたいな何処にでも居る俗物が勇者になれる訳ねーんだよなぁ!!」
「うっせぇ殺すぞカス!!」
「上等だし、やっちまうぞコラァ!!」
なんだコイツ、殺そう。とりあえずぶっ殺して山に埋めよう。
「人選おかしいだろ!! 何でこんなのが勇者なんだよ女神様!!」
「……その。性格はともかく、勇者に選ばれる人間はその闘いの素質による所が大きいのです」
「ほほー、俺は闘いの素養に溢れていると! く、くくくっ!! すまんなぁ、悪いなぁ、ごめんなぁお前ら。俺は勇者として英雄になるらしいわ、お前らみたいなゴミが一瞬でも俺と連るんでいたことを一生誇っていいぞ」
「調子乗りやがってこの屑が!!」
「性格はともかく、って女神様にまで言われてるぞこの人格破綻者!!」
「木っ端の遠吠えなんぞ聞こえんなぁ!! ごめんねぇ強くてさぁ!!」
調子乗りすぎじゃね? ここでコイツぶっ殺したらオレが勇者とかにならねーかな?
なるんじゃね? やる? マジで殺っちゃう?
「……他のお二人に声をかけたのも、勇者を支える勇者一行としての素養があるからでして、その。出来れば、皆様仲良くしていただけると……」
「え、この糞の引き立て石にならなきゃいけないのオレ達」
「ねーわぁ、それはねーわぁ。何なら魔王側に仕えることすら考慮だわ」
「えええ! そ、それは困るのですが!」
だって、ねぇ。勇者がレダって、それなんの冗談だよって話じゃね?
何ならコイツ、魔王側の尖兵みたいな性格してるじゃん。卑怯汚いは敗者の戯言とか、平気で言う男じゃん。
「その、一端私の話を聞いてくださいませんか?」
「それは良いんすけど、女神様」
「先にレダを虐殺してからで構いませんかね、女神様」
「駄目ですよ!? レダさんは、今代の勇者ですよ!? 今はまだ花開いていませんが、後々彼は国一番の戦士として────」
「ほう、なら殺るなら今のうちって事か」
「話を聞いて!?」
さて、どうやって殺してやろうか。
「……」
「ふ、ふぅ。と、とりあえず話を聞いてくださいますか?」
「……うっす」
とりあえずベストと二人がかりで調子こいてるエセ勇者を殺そうと頑張ったけど、女神様からの何か不思議な加護的なので守られてしまった。
ちくしょう、可愛い女神様に庇われやがって。良い身分だクソが。
「やれやれ、野蛮な連中ですみませんね女神様。後で勇者たる俺が躾しておきますので」
「は?」
「殺すぞカス」
「レダさんも煽るのをやめてください!! 話が、話が進みませんので!」
「「はーい」」
たく、しょうがねぇ。女神様に免じて、黙ってやろう。
「あの、その。間もなく魔王が魔族を統べて、人族の里へ攻めてくるのです」
「それは大変だ」
「私は人族の守護者にして導く女神。迫りくる魔王の脅威に対抗するべく、素養に溢れた人間を一人選んで加護を与え、勇者とすることを決めたのです」
「へー」
「で、その。そこにいらっしゃるレダさんが、私の加護と相性が良くてかつ、潜在能力がすさまじいので」
「まーね。才能の塊って訳ね」
「調子乗んなボケ」
「……魔王を倒す、役割をお願いしたいなぁ、なんて」
「良いよ!! 任せてください女神様」
「良い訳ねーだろ、辞退しろクズ」
「お前には無理だ、身の程を知れ」
やっぱ黙ってられねぇわ。コイツが勇者とか世界が亡ぶわ。
「あのー、レダさんだけでは無く、ベストさんにラットさんのお二人も素晴らしい才能の持ち主で……」
「だよねー」
「そこは自覚してますよ女神様!」
「……この3人が仲が良いのは奇跡だと思い、声をかけたのです」
「Foo、見る目あるぜ女神様」
「惜しむらくは勇者役を間違えてるところかなぁ」
「どうか、3人で力を合わせ魔王の脅威を退けては戴けませんか? 勇者の加護を与えられるのは一人だけなのですが、ここは一つ全員勇者みたいなモノと考えて……」
「ふーん、まぁそんな扱いなら良いか」
「レダだけ魔王と相打ちさせて、平和になった世界でオレ達だけ英雄として凱旋とかどうよ」
「ソレ良いじゃん、ラット。そのプラン、Doで行こう」
「ふざけんな死ぬのはテメェらだ」
レダに全部しんどいことやらせて、うまい汁だけオレ達が吸う。まさに完璧なプランだ。
「後、この地上には5人の女神が存在します。それぞれが勇者を選定し、魔王への脅威に立ち向かうべく備えています」
「え、勇者って俺だけじゃねーの?」
「一応、5人の勇者が選ばれます。最終的には、その勇者面々と力を合わせて魔王に相対することになるでしょう」
「そんなにいるなら、他の連中に魔王任せて良くね」
「俺がやらなくても、誰かがやるっしょ」
「美味しいところだけ貰う感じ~?」
「全員力を合わせて、頑張るんです!! その代わりに、テトラの加護を与えますから」
えー、5人も勇者居るのか。ありがたみがねぇなぁ。
てか最初から、その勇者5人で旅しとけばよくね。オレやベストの存在意義ある? マジでレダの引き立て役じゃねオレら。
「5人の勇者が合流してパーティ組んだら、俺らってお払い箱?」
「序盤の仲間枠? 旅の後半では戦力として数えられず、雑用押し付けられる立ち位置になる奴?」
「い、いえ。そうはならないかと思います」
「どして?」
「多分、最終決戦までは絶対合流しないと思うので。勇者同士で肩を並べる機会は多いでしょうが、5人が連携を取るのは魔王と相対する時くらいだと思います」
「え、ソレこそ何で? 最初から5人で旅すりゃいいじゃん」
「……そこは、そのぅ……」
女神さまが言うには、魔王戦まで勇者はパーティを組まないらしい。何でや? と問うと、それはそれは言いづらそうな顔で女神さまは目を逸らした。
何なんだろう。
「────ごめんなさい。その、人間には関係のない話なのですが……。5人の女神同士、凄く仲が悪くて」
「……はぁ」
「実はそもそも、基本的に女神同士って、信者の奪い合いをする関係なんです。で、少しでも自分の信者を増やすべく自分の選定した勇者に活躍させようとアレコレ画策するので……」
「協調性ないんか、女神」
「なんか胡散臭くなってきたな」
「……あうう。そ、その、私は協調路線を毎回押してるんですよ!? セファちゃんとかキノちゃんとかが毎回暴走して……」
「なんか女神も俗物臭がするし」
「一応カルちゃんとかは私と同意見の協調派女神なので、カルちゃんの選んだ勇者さんは貴方たちと好意的に接してくれると思います。ただ、他の女神は多分力を合わせてくれないでしょう……。自分の勇者が活躍することしか考えないと思います」
「人類の危機に、人類を守る女神が既に仲間割れしてるのはどうなんだろう」
「すみません、すみません。それは本当にすみません」
女神も案外、自己中心的なんだな。
最終決戦では協力してくれるっぽいが、それまでは各勇者は女神の売名行為に走りまくるって訳ね。世知辛い。
「せめて貴方達には、他の勇者と仲良くして貰って魔王を討伐してもらいたいのですが……」
「んー」
「オレ達は別に構わんけど」
「そんな変な女神がいっぱいいるなら、1人くらいまともな勇者も必要だしな」
「まとも……? レダが、まとも……?」
飛び切りのクズの間違いではないか。この女神の選ぶ勇者が良心枠だとするなら、勇者の良心が一つ減ってしまうぞ。
「危険で過酷な旅になると思います。でも、私なりに精一杯サポートもしますし、導くつもりです」
「はい」
「なのでどうか、貴方達の手で人類を救ってはいただけないでしょうか?」
「……まぁ、良いか」
「俺も良いぜ、上手く活躍できればモテそうだしぃ」
「うん。魔王討伐後は酒池肉林が待ってると思えばまぁ」
「金に囲まれて何不自由ない老後を過ごしたい」
「女の子に囲まれて過ごしたい」
「人選、間違ったかなぁ?」
魔王討伐で人気者になれたら、きっと入れ食いだぜ。ふへへ。
「……で、では。勇者レダよ、貴方に加護を授けます」
「おっしゃこい!!」
「汝は旅に何を望みますか? 無限の体力、溢れる魔力、強靭な肉体……なんでも、貴方の望むものを1つ言いなさい。私に可能なものであれば、何でも授けましょう」
いよいよレダは、女神さまから勇者としての力を授けられるようだ。
良いなぁ。オレもなんか欲しいなぁ。
「どうするべ?」
「肉体じゃね? 生存確率上げる方が大事だと思うが」
「オレらの中に魔法アタッカーいないし、魔法では?」
レダは、オレ達にどんな加護を貰うか相談してきた。
格闘家のオレ、弓兵のベスト、剣士のレダと魔法アタッカーが居ないのが俺達のネックだ。出来ればレダに魔法剣士的な感じになって欲しいのだが。
「魔法使えねぇのは確かに困りそうだよなぁ」
「うーん。でも、魔法って面倒くさいんだよなぁ。一から暗記していかないと強くなれないらしいし。頭使うのは嫌いだ」
「贅沢言うなよ、魔法貰えよ」
「うーん……」
こいつ、努力するのが嫌いだから魔法習得を渋ってやがる!! マジで勇者の人選考え直した方がいいんじゃないか? コイツただのクズだぞ。
「あ。すっげぇ妙案思いついた!!」
「お、何?」
「まぁ見てろ。おーい女神様、決まったぜ」
「伺いましょう」
何やら自信満々だが、大丈夫か? 変なこと言いださねぇよな。
「仲間をくれ!!」
「仲間、でしょうか」
「そう!! 魔法が使える仲間をください!!」
……ほう。
「それは可能なの?」
「え、ええ。新たな仲間を導くくらいであれば出来ますよ」
「腕が良いのを頼むぜ」
「それいいな。人手が増えるのは単純にありがたい」
「女の子!! 女の子って条件付けろレダ!! 野郎4人旅とか絶対嫌だぞオレは!!」
「あ、ソレな。女神様、女の子って条件で頼む」
「は、はぁ。ちょっと待ってください、検索します」
それは確かに妙案かもしれない。
むさくるしい男3人の旅が、一気に華やかな旅になるし。今までオレ達の欠点だった魔法アタッカー不在が解消されるし。
一石二鳥じゃないか。
「俺っち、ゆるふわ系が好みでさぁ。小柄で童顔な感じの娘をリクエストするし!」
「オッケー、その条件も追加だぜ女神様」
「えっ。あ、ハイ。頑張ります」
「それでいて無防備!! 人前での着替えとかあんまり気にしない無防備な女の子がいい!! しかも、覗きとかがバレても笑って許してくれる度量の広い子が良い!!」
「あ、ソレも追加で」
「え、ええぇ……」
「旅に癒しを与えてくれる女の子がいいな、癒し系要素も入れてくれ」
「そうだな。それでいて身持ちも固く、貞操観念もしっかりしているとなおよい。当然、今まで彼氏ナシのフリーで処女だ」
「それでいて、俺達の馬鹿なノリにも付き合ってくれる女の子とか最高じゃね?」
「うむ。じゃあ今のも全部追加で」
「えええええぇぇぇ……?」
ぐふふふ。さて、どんな女の子が来るのだろう。
楽しみだ、楽しみで仕方がない。
「…………」
「まだー?」
「女神様、早くー」
「ちょ、ちょっとお待ちを……」
女神さまがなんか困ってる。ちょっと条件を付けすぎたかもしれない。
でも、出来れば妥協したくないなぁ。どうせなら好みドストライクの女の子が来て欲しいもんだ。
「……、……」
「わくわく」
「ぐふ、ぐふふふ」
まぁ、そんな女の子が来ても女の子ってだけで夢が……。
「……あっ。これなら、何とか」
「おっ!」
「来たか!!!」
そしてついに、女神さまが顔を上げた。
見つかったらしい。オレ達の理想の、女パーティメンバーが!!
「では、改めて。勇者レダよ、汝に加護として望み通りの仲間を授けましょう」
「よっしゃ! かもん!!」
「その代わり、どうか魔王を倒してください、この世界に、人類に明日をもたらしてください。頼みましたよ、レダ……」
「オッケー分かったから早くだせ!!」
「ゆーるふわ!!」
「無ー防備!!」
さぁ、どんなのが来る?
女神の選んだ女の子だ、それはもうきっと可愛くて素晴らしい……。
────ぐにゃあり。
「……ん? 女神様、仲間はまだか?」
「いえ、もうそこにいますよ」
今、変な感覚が体を過った。こう、世界がうねるような、気持ちの悪い感覚が。
「いますよって、一体どこに……」
「え、いなくね?」
それだけじゃない。なんか、微妙に背丈が縮んでいるような。
ベストやレダが、一回り大きくなったような……?
「────ファッ!?」
「え、何その声。ラット、どうし……」
「……」
────。胸が、でかくなってる。
「すべての条件に当てはまる女性が居なかったので、この場で作成いたしました」
「ラットォォォォォ!!?」
……は?
「確かに願いはかなえましたよ。では、さようなら……」
「え、ちょっと待って。待って、待てえええええ!!」
「ふざけんな!! ふざけんな!! こんなの詐欺だ!!」
「何処がゆるふわ癒し系だぁぁ!! 外見はともかく、ラットに癒し系要素ねぇだろ!!」
「ラットさんには回復魔法を使用できるように、知識と魔力を付与しております」
「ちくしょう癒し系になっちまってる!!」
…………はぁあ!?
「えっ、えっ、えっ?」
「クソ、ちくしょう!! お前らが注文つけすぎたからだぞ!! 加入する筈だった美少女魔法使いちゃんを返せ!」
「おめーが全部追加とかいったんだろーが! 女神様、女化ラットは返すから別の女の子連れてきてほしーべ!」
「えっ?」
「加護を授けられるのは、一度のみと決まっているのです。では、さようなら……」
「待てってばぁぁぁぁぁ!」
うっそだろお前。
ちょっと待った、これ元に戻して貰えねぇの? いくら色欲のラットと言えど、自らが女の子になる願望まではねぇよ?
「……」
「……」
「……」
どうするのんこれ。
「ヒュー~~~っ!!!」
その晩。オレ達は飲んでいた。
「回復術師がいるから二日酔いが怖くないぜ! 浴びるほど飲んでやる!」
「おっ可愛いお尻……。って痛ぁ!! 女の子同士だぞ、尻くらい触らせろや!!」
「ギャハハハハッ!! ラットは女になってもラットじゃねぇか!!」
女の子になってしまったと言う現実から目を背けるために、ただひたすらに飲んでいた。
そしてお酒をたっぷり飲んだ結果、
「まぁよく考えたら女になるくらいあんまり大したことねぇな!! 実質オレが加護もらった様なもんだし!! 勇者って実質オレじゃね?」
「レダざまぁぁぁぁ!!!」
「ほんと無駄な事した、素直に魔法もらっときゃ良かった! 女神様のくそったれ! 今度会ったときはF●CKしてやる!!」
「良いねぇ、ヤっちゃう? 女神様も女だってことを分からせちゃう?」
「3人でかかれば勝てるんじゃね? 弱そうだったし!」
「ふっふぅー!!」
馬鹿が3人、お酒で完璧に出来上がったのだった。
「あの糞女神、俺達の夢をぶっ壊しやがって。許さん!」
「女にされた恨みを、その女体で返済してもらうぜ!」
「女神で脱童貞とか豪華過ぎるっしょ! 神様だって犯してみせるってか!」
その、あんまりなゲス発言を見かねたのだろうか。
「俺達の新たなパーティー名は『Goddess Fuckers』だぜ!」
「足腰立たなくしてやろうぜぃ!! ひゃっはー!!」
その屑発言の直後、大きな雷が3人の飲む酒場を隣の大地を焦がし、『これは天罰の予行演習、ウフフ』と嗤う声がどこからともなく聞こえてきたという。
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