ねぇパパ? (AO.K)
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ねぇパパ?【及川徹】
えがお


及川side

 

及川「麗香(れいか)〜、かーえろっ!」

 

麗香「あ!パパ〜!おかえり!!」

 

そう言って俺の胸に飛び込んでくるのは5歳になった愛娘の麗香。

もうすっっごく可愛いの!!天使だから!

麗香と手を繋いで歩きながら今日あったことを話す。

 

及川「今日は何してたの〜?」

 

麗香「んーとねー?おともだちにね、おもちゃ貸してあげた!」

 

及川「麗香は優しいね!」

 

うちの子可愛すぎるっ!めちゃめちゃ優しいし!!

麗香の優しさは死んだ優香(ゆうか)によく似てる。

優香は1年前に脳のがんによって死んでしまった。けど麗香は…泣かなかった。

涙を目にいっぱいためて、それでも笑顔をつくって、泣いている俺の頭を撫でてこう言った。

 

麗香「れいかがママの分までいーっぱい笑うよ!

パパのこともいーっぱい笑顔にするから、だいじょうぶだよ、パパ!」

 

たった4歳の子供に、俺は我慢させてしまった。

だから俺は決めた。これからは絶対に麗香を笑顔でいっぱいにする。

優香のお墓の前でもそれを誓った。

 

及川「今日のご飯は何にしよっか〜」

 

麗香「にゅ、…ぎゅーにゅーパン!」

 

及川「麗香、それご飯じゃない!」

 

ていうか今言い間違えたよね!にゅーにゅーパンって言いそうになったよね!

超可愛い!!なんで動画撮っとかなかったんだろ!!

 

麗香「パパの好きな食べもの!」

 

及川「めっちゃ嬉しいけど違うのにしようね!

じゃあ〜麗香の好きなカレーにしよっか!」

 

麗香「れいかもおてつだいする!」

 

及川「じゃーまずはお買い物だー!」

 

麗香「ダメだよパパ!おかいものならヘンソーしないと!」

 

及川「はっ!そうだった!」

 

俺は今でもバレーをしててテレビにも出てる。つまり有名人なわけ☆

買い物とかに行くといっつも女の子たちが寄ってきちゃうから出かける時は

変装しなきゃなんだよ〜。

 

及川「お家とうちゃーく!じゃあお着替えしよっか!」

 

麗香「うん!」

 

はぁああぁ……あと10年もしたらこんな風に一緒に着替えらんないんだ…

お風呂も一緒に入らなくなるだろうし…洗濯別にしてとか言われたら俺絶対に泣いちゃう自信あるんだけど…

 

麗香「ん〜〜、ん?」

 

及川「麗香、袖はここだよ。」

 

麗香「ん… スポッ ぷはぁ!」

 

及川「ん"がわ"いい"……っ、」(震)

 

麗香「?」

 

この可愛さ最早罪じゃない?もう誰にも渡さない!

彼氏とか連れてきても絶対認めてやんないもんね!!

 

麗香「パパ、まっきーだよ」

 

及川「え?あ、ホントだ。」

 

LINEを開くとマッキーからご飯の誘いが来てた。

まっつんと岩ちゃんも来るらしい。丁度いいじゃん、着替えてたし。

 

及川「麗香、マッキー達からご飯のお誘い来てたよ。行く?」

 

麗香「まっつんと岩ちゃんもいるの?」

 

及川「うん、この前行ったお店だから麗香の好きなお子様カレーもある!」

 

麗香「行く!!」

 

及川「よーし!じゃあ出発だー!」

 

麗香「おー!」



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ご飯

岩泉side

 

及川「やっほ〜!」

 

花巻「麗香ちゃん久しぶり〜」

 

松川「あれ、また可愛くなった?」

 

岩泉「デッかくなったな」

 

及川「ねえ俺は!?」

 

何歳になってもうるせぇなコイツ。

麗香が及川じゃなくて優香に似てて良かったわ。

 

及川「岩ちゃん顔に書いてるよ!!失礼だな!!」

 

松川「麗香ちゃん、俺の膝の上来る?」

 

及川「まっつんはダメ!!麗香によからぬ事しようとしてるでしょ!」

 

麗香「いわちゃんのとこ行くー!」

 

及川「そこはパパじゃないの!?」

 

過保護すぎるだろコイツ…絶対男連れてきても認めないな。

…まァ麗香なら分からなくねぇな。麗香は誰が見ても可愛いからな。

優香に似て目が大きくて肌が白い。髪の色は茶色で少しクセがある。

顔の造形はどっちかっつーと及川だな。

 

花巻「大きくなって益々可愛くなったな〜」

 

麗香「まっきーはカッコイイ!」

 

花巻「この子天然タラシだわ……」

 

及川「麗香〜パパは〜?」

 

麗香「パパもカッコイイ!ボールずばーん!って!すごい音!」

 

及川「んんん、今度の試合絶対勝つ!!」

 

デレすぎだろ…まぁ、及川だし。

最近は試合だ合宿だの忙しくて俺らが麗香を預かることが多かった。

その時麗香はいつもワガママ一つ言わないで笑って及川を見送ってた。

 

及川「あ、チームメイトから電話来たからちょっと行ってくるね」

 

麗香「行ってらっしゃいパパ〜!」

 

及川が行ってからも麗香はずっとニコニコ笑ってた。

いつからだったか……麗香が泣かなくなったのは。昔はもっと泣いてた。

子どもらしくワガママも言って。……優香が亡くなってから、麗香は笑顔しか見せなくなった。

 

松川「なぁ麗香、おいか…パパがいなくて寂しくないか?」

 

麗香「れいかはママの分までいーっぱい笑うからさみしくないよ!」

 

それが当然であるかのように麗香はそう言った。

俺たちは麗香のその答えを聞いてただ頷くしかなかった。

 

花巻「悲しいことがあったらいつでも言うんだぞ!」

 

麗香「うん!ありがとうまっきー!」

 

及川「れーいかー!ただいまー!」

 

岩泉「うるせぇ及川!!」

 

麗香「おかえりパパ!」

 

コイツ親バカすぎるだろ!

…いや、俺らも人のことは言えねぇかもな。

 

及川「麗香…、パパ急な合宿入っちゃったんだ…。」

 

松川「何日だよ?」

 

及川「明日から5日間。…麗香が5回夜に寝たらパパと会えるよ。

ごめんね、それまで岩ちゃんたちのとこで待ってられる?」

 

麗香「…れいかパパがたくさんがんばってるの知ってるよ!

れいかはだいじょうぶ!笑顔でパパのこと待ってるね!」

 

及川「れいかー!大好きー!!」がばっ!

 

岩泉「重い!!離れろクソ川!!」

 

麗香「パパがんばれー!」

 

そう言った麗香の手は無意識か…俺の服の裾を掴んでた。

 

 

 



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クレヨン

花巻side

 

今日は俺が仕事休みだから俺が及川ん家で麗香ちゃんを預かることになった。保育園は今日休みで一日中2人で家でゴロゴロすることにした。

 

花巻「ゴロゴロするのも暇だな〜。麗香ちゃんもお友達と遊びたいよな〜」

 

麗香「れいかはお友達と遊べなくてもさみしくないよ!」

 

花巻「ん〜、お絵描きでもするか!」

 

麗香「する!」

 

白い紙とクレヨンを用意した。麗香ちゃんは器用に肌色のクレヨンを持ち、小さい手で何かを描き始めた。人なのは確か……この髪型は…

 

花巻「それパパか?」

 

麗香「うん!まっきーとまっつんといわちゃんも描くよ!」

 

絵に描かれた及川は笑顔だった。

俺は麗香ちゃんの笑顔は好きだけど見てると心配になる。

ずっと笑顔で、嫌なことは溜め込んで…なんてしてほしくねぇしな。

 

花巻「あ、そうだ。国見とかでも呼ぶかな。」

 

麗香「くにみ?」

 

花巻「俺の知り合いだよ〜。…あ、もしもし国見?」

 

連絡を取ったら国見も丁度休みで、こっちに来ることになった。

確か国見は優香の葬式の時に麗香ちゃんを少し見た程度だったよな…

 

ピンポーン

 

花巻「お、来た来た。 ガチャ よう国見。久しぶりだな。」

 

国見「どうも。あれ、及川さんいないんですか?」

 

花巻「アイツ今合宿。今日は俺が預かってんの。麗香ちゃーん!」

 

たたたっ…と足音がして、少し照れたように麗香ちゃんが国見の前に出る。え?天使すぎね?

 

麗香「こんにちは!おいかわれいかです!」ぺこっ

 

国見「こんにちは、国見英です。英でいいよ。」(可愛い…)

 

麗香「れいかのことはれいかって呼んでね!よろしくね!あきちゃん!」

 

国見「可愛すギルティ……」←

 

いやホントそれな。麗香ちゃん以上に可愛い子いないだろ。

優香は青城のマネージャーだったけどその時からモテてたし…麗香ちゃんも絶対モテるだろうなぁ〜〜…

 

国見「麗香ちゃんパパいなくて寂しくない?」

 

麗香「れいかはママの分までいーっぱい笑うからさみしくないよ!」

 

国見「……そう。」

 

まぁ思うよな…たった5歳の子が泣きもせずワガママも言わず笑顔で寂しくないなんてなぁ…。もう少しワガママ言ってもいいのにって思うよな。

 

麗香「まっきー!きょうご飯どーしよ!」

 

花巻「そうだなぁ…、唐揚げでも作るか!」

 

麗香「からあげ!やったー!」

 

国見「俺の分もお願いします。」

 

花巻「じゃあ下ごしらえとかするから国見、麗香ちゃんと遊んでて」

 

麗香 国見「はーい」

 

国見絶対麗香ちゃんにオチたな←

……そういや、明日俺仕事だったな、明日誰に頼むか…。

唐揚げ用の鶏肉を用意しながら電話を繋げる。

 

花巻「……あ、松?明日俺仕事なんだけど来れる?」

 

松川『あー、悪い。明日は仕事だわ。明後日なら休み。』

 

花巻「え、マジか。明日岩泉も仕事なんだよね。」

 

国見「俺明日も休みですよ。預かりましょうか?」

 

松川『え?国見来てんの?』

 

花巻「おー。今麗香ちゃんと遊んでもらってる。

俺は夕飯の唐揚げの下ごしらえ中。」

 

松川『え、俺も食う。仕事、巻で終わらせて岩泉と行くわ。』

 

花巻「じゃあめっちゃ作っとくわ。」

 

麗香「まっつん仕事がんばれー!!」

 

松川『俺今なら社長に登り詰めれる気がする』

 

花巻「気持ちは分かる。」

 

国見「今金田一も呼びました。来るそうです。」

 

男5人って…しかも元運動部。滅茶苦茶作んなきゃだろ…。

…まぁ、賑やかな方が麗香ちゃんも楽しいよな。人見知りはあんましないし。金田一は良い奴だから大丈夫だろ。らっきょだけど。

 

花巻「いっちょ頑張りますかー!」

 



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にぎやか

国見side

 

及川さんの家に来てから思った。麗香ちゃんはずっと笑ってる。

いや、笑うのはいいことだと思うけど…、泣きもしないしワガママとかも言わないし…。なんて言うか、俺らに気を遣ってるみたいな…。

 

麗香「あきちゃんどうしたの?」

 

国見「!なんでもない。麗香ちゃん、明日は俺と一緒でいい?」

 

麗香「うん!あきちゃん好きだからうれしい!」

 

国見「うん、俺も麗香ちゃん好きだよ」

 

そう言えばもうすぐで優香先輩の命日か…。

ちょうど1年。5歳の子がたった1年で母親のこと割り切れるか、普通。及川さんだって泣いてた。

 

麗香「れいかお手あらい行ってくる!」

 

国見「分かったよ」

 

麗香ちゃんがリビングから出たのを確認して、俺は花巻さんの所に行った。花巻さんなら麗香ちゃんと一緒にいる機会長そうだし。

 

国見「麗香ちゃんって泣かないんですか?」

 

花巻「…あぁ、優香の葬式の日から一度も泣いてない。

目に涙いっぱい溜めて、ずっと笑って及川のことを励ましてた。

自分がママの分まで笑うから大丈夫だって。」

 

国見「……たった5歳の子が、何を感じたんでしょうね」

 

花巻「俺たち大人よりあの子は周りを考えてるよな…」

 

麗香「ガチャ まっきー!今日まっつんたち来るー?」

 

花巻「!おう!今日のご飯は賑やかになるぞ!

俺と国見と松と岩泉、あともう1人金田一って奴が来るから6人で食べるぞ!」

 

麗香「にぎやか!やったー!」

 

飛び跳ねて喜ぶ姿は小さな子供そのものなのにな…。

その瞬間、麗香ちゃんは自分の足につまずいて顔から転んだ。

 

国見「麗香ちゃん大丈夫!?」

 

麗香「いたいぃ〜…、えへ、ころんじゃった!」

 

花巻「…危ないから気をつけるんだぞ!」

 

麗香「はーい!」

 

この子の笑顔に俺は一瞬身をすくめた。それと同時に思った。

麗香ちゃんの真っ直ぐすぎる笑顔はいつかこの子自身の心も偽ることになるんじゃないか…って。……俺の考えすぎか。

 

国見「麗香ちゃん、寂しかったら、言っていいんだからね。」

 

麗香「?うん、ありがとうあきちゃん!」

 

その後は金田一たちが来るまで遊んで過ごした。

金田一と会っても普通にあいさつが出来る子だった。

人見知りしないのは及川さん譲りか…。ウザさまで似なくて良かったな。

 

花巻「はい、いただきまーす!」

 

「いただきまーす!」

 

美味い…。花巻さん料理出来たんだな。

これからちょくちょく行こうかな…飯代が浮く←

 

麗香「れいかね!おっきくなったらあきちゃんとケッコンする!」

 

花巻 松川 岩泉「ブフォッ!!」

 

金田一「先輩たち!!?」

 

え、これ及川さんに知られたら絶対面倒じゃん…。

いや、先輩たちに聞かれてる時点でもう面倒臭い……。

 

花巻「え?マッキーは?俺とはケッコンしないの?」

 

松川「なんで国見?」

 

麗香「あきちゃんハンサム!!」

 

岩泉「くっ…、ここで及川の遺伝か!!」

 

なんか俺が顔だけみたいな男じゃない?これ。

ていうか岩泉さんさりげなく及川さんディスってるし……いつもの事か。

 

花巻「俺たちハンサム認定されてないの!?」

 

麗香「まっきーはカッコイイ!まっつんはイケメン!いわちゃんは男前!」

 

松川「この子将来大物になるわ。」

 

花巻「俺らを超えないと麗香ちゃんとの付き合いは認めねぇ。」

 

国見「父親役3人とか絶対無理じゃないすか。あと及川さん入れて5人。」

 

金田一「威圧感がハンパねぇ…」

 

そんな事を話ながら全員で唐揚げを食べて一緒の部屋で寝ることにした。

全員及川さんの家に泊まっても仕事に行く時間には大差がないらしい。

 

花巻「麗香ちゃんの隣は誰が寝るか選手権〜!!

勝ち残れるのは2人だ!さーいしょーはグー!!じゃんけん…」

 

「ホイっ!!」

 

岩泉「だァあ!クッソ!」

 

松川「勝利の女神は俺に微笑んだ」(ガッツポーズ)

 

花巻「国見ぃい!ズリぃぞ!!麗香ちゃんの心を弄んだくせに!!」

 

国見「俺がクソ野郎みたいな言い方やめてくださいよ。」

 

金田一「俺布団とか持ってきますね!」

 

松川「金田一…優しい子…。」

 

単に先輩たちのテンションについていけないだけだと思う…。

ていうか男6人が女の子囲んで寝る絵面とかちょっとヤバくないか…?

 

国見「ていうか、着替えなくないですか?」

 

岩泉「及川のタンスにジャージ入ってる。ほれ。」

 

金田一「えっ、着ちゃっていいんですか!?」

 

花巻「及川のだしヘーキヘーキ。毎回それ着てるし。」

 

及川さんのだからで納得出来るのか。そういう俺ももう着てるけど。

金田一はなんかめっちゃ恐る恐る着てる。

 

松川「全員着たかー?電気消すぞー。おやすみ〜」

 

「おやすみ(なさい)〜」

 

そう言って、電気が消えて全員寝た。

 



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怖いユメ

松川side

 

麗香「ぅ……っ、ま、ま…ぁ、」

 

松川「ん……、?麗香ちゃん…?…!どうしたの?」

 

俺はいつも笑ってる麗香ちゃんが泣いてることに気づいて飛び起きた。他の奴らも物音に目を開け始める。

 

松川「よしよし、どうしたの?」

 

抱き上げて膝の上で背中をさすりながら優しく聞く。

ホント珍しいな…麗香ちゃんが泣くなんて。

 

麗香「ママが…パパの手、ひっぱってつれてっちゃったぁ…っ

ママとパパわらっ、てて……っ、れいかひとりぼっちで…」

 

松川「今麗香ちゃんは寂しい?」

 

あえて今聞いてみた。今なら、我慢してたもの全部出せるんじゃないかって思った。麗香ちゃんは止まらない涙を拭きながら頷いた。

 

麗香「パパに会いたいぃ…っ、」

 

花巻「及川に電話するか?」

 

金田一「起きてますかね……今3時半っすけど、」

 

岩泉「叩き起す。スピーカーでいいだろ。…………このクソ、はよ出ろ!」

 

岩泉キレすぎだろw気持ちは分からなくもないけど。

麗香ちゃんが泣いたなんて知ったらアイツすっ飛んでくんじゃないの?

 

及川『ん"…なに岩ちゃんこんな時間に…まだ3時半だよ…』

 

岩泉「うっせ、ほら麗香。及川だぞ。」

 

及川『え?麗香?』

 

麗香「ぱぱぁ…っ、ひっく、ぅう…」

 

及川『バッ!ガタッ!ズル,ドタッ い"だっ、麗香!?どうしたの!!?』

 

岩泉「うるせぇな!そんなデカく喋んなくても聞こえるわ!」

 

今及川明らかにベッドから飛び起きてすっ転んだろ。

現にい"だっ、て聞こえてるしな。

 

麗香「ママが…パパのことつれてっちゃうユメみて…っ、

れいかひとりぼっちで…っ、"さみしい"よぉ…、パパぁ…っ」

 

及川『~~っ、パパ今から帰るから!待ってて!』

 

花巻「は!?お前帰って来れんの!?」

 

及川『娘と合宿どっちが大事なのさ!!』

 

花巻「どっちかっつーと言うならソレこっちのセリフな!」

 

及川『監督には意地でも許可とるし!!今から帰る!!

麗香!パパすぐ帰るから!あ!タクシー!!』

 

松川「既に外に出てるwつーか声デケェな」

 

金田一「行動が早いっすね…」

 

ホント親バカだな。まぁ無理ねぇな。

麗香ちゃんが泣いた上に寂しいって言ったんだから。

 

麗香「パパ……ワガママ言ってごめんね…」

 

及川『何言ってるの麗香!パパすっごい嬉しい!

パパも寂しかったし、麗香が自分の気持ち言ってくれて嬉しいよ!』

 

及川の奴今絶対にやけてんだろ。

…じゃあここいらで言ってやるかな、アレを。

 

松川「及川〜、麗香ちゃんは大きくなったら国見と結婚するらしいぜ」

 

国見「げっ、ちょ、松川さん!」

 

及川『はぁー!?なんで国見ちゃんがいるのかは知らないけど絶対認めないからね!!麗香!絶対パパの方が良いって!』

 

花巻「お前声落とせよwタクシーの運転手可哀想だろうが」

 

及川『だって麗香の将来の危機なんだよ!え?運転手さんなんて?

え、渋滞!?じゃあここで降ります!はいお金!お釣りいらないです!』

 

金田一「何で帰る気ですか!?」

 

及川『え、金田一もいんの?何ってそりゃあ…走るでしょ。

大丈夫、あと1駅くらいだから!』

 

松川「じゃあとっとと来いよ〜。一旦切るから。」

 

及川『麗香〜!!待っててね!!』

 

岩泉「うるせぇっつーの! ブチッ はぁ…近所迷惑だろアイツ。」

 

花巻「どっちが子供か分かんねーな。」

 

国見「恨みますからね…松川さん…」

 

松川「はっはっはっ。さぁ〜て、俺はホットミルクでも作るかな。」

 

俺は国見の言葉をスルーしてリビングの電気をつけてキッチンでホットミルクを作る準備をした。

 



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スタートライン

及川side

 

夜中から岩ちゃんから電話がかかってきた時は何かと思った。

でも麗香の泣き声が聞こえた瞬間一気に頭も目も覚めた。

ベッドから飛び起きた時はシーツに引っかかって転んだけどお構い無し。

だって麗香が泣いてる。あの日から…優香が死んだ日から泣かなかった麗香が…どうしたのかと問えば

また驚くべき答え。麗香は"寂しい"と言った。

 

及川「ハッ…ハッ…、ッ麗香…」

 

街灯が照らす夜の街を走りながら麗香の事を考える。

麗香が産まれたのは肌寒い秋だった。ヒラヒラ舞う紅葉が綺麗で、冷たい風の匂いが赤い鼻をくすぐる。今でも覚えてる。

 

及川「優香…ごめん…ハッ…ハッ…、俺全然ダメだ……」

 

麗香に1年も我慢させちゃった…。葬式の時から…、俺は泣いてばっかで、麗香に泣いていいんだよって、言ってあげられなかった…。その後だって…練習とか合宿ばっかで全然遊んであげられなかった…。

 

及川「だから…もう離さないから…!」

 

麗香が1歩踏み出してくれたんだ。1歩踏み出して、手を伸ばしてくれたんだ。絶対に離さない。今度はちゃんとそばにいて、麗香の涙を受け止める。

岩ちゃんたちにはホントに感謝してる。いつも麗香のこと気にかけてくれて。俺は色んな人に助けられてきた。さっきだって電話で話してたら監督から早く行ってやれって言ってくれて…チームメイトは俺の荷物は後で届けてやるからってすぐに見送ってくれた。

 

及川「優香……、俺は幸せ者だよ…」

 

優香はどうだった?幸せだった?俺優香の事幸せに出来てた?

 

 

何言ってるの徹………

 

 

及川「!優香…?」

 

いないと分かっててもその場で止まって周りを見渡して優香を探す。

今確かに優香の声が聞こえた……。

 

 

私が幸せじゃなかった時なんてないよ…早く麗香の所に行ってあげて……

 

 

及川「ッ……優香、ありがとう…!」

 

優香の言葉に背中を押されるように大きく1歩を踏み出して走る。

もう何も迷うことなんてない。麗香が手を伸ばしてるんだから。走ってその小さな手を掴むことが、今の俺のすること。

なんだろう、この気持ち。胸の底から湧き上がる抑えきれない感情。やっと、俺たちは歩き出すことが出来るんだ。ここが、俺と麗香のスタートライン。

 

及川「はぁ…っ、 ガチャ! 麗香ッ!!」

 

力の限りに大好きな娘の名前を呼べば小さな足音が聞こえてくる。

靴を脱ぎ捨てて家の廊下を走る。

 

麗香「パパっ!」

 

及川「麗香!」

 

膝を床について、駆け寄ってきた麗香をぎゅうっと抱きしめる。

小さな手で背中を掴んでくる子供らしさが愛しくて愛しくて、今までのことも全部フラッシュバックみたいに頭の中に流れてきて、涙が出る。

 

及川「ただいま…っ、麗香」

 

麗香「おかえりパパっ!」

 

優しく抱きしめてた手をゆるめて麗香の顔を見ると、大きな真珠みたいな涙を流してて、心の底から笑ってるように見えた。

 

 



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パパの背中

麗香side

 

パパはかえってきて、れいかのことをぎゅうってした。

れいかもパパのことをぎゅうってしようとしたけど、パパの背中はおっきくて手がまわらなかった。パパの背中っておっきいんだなぁ…。

 

及川「これからは、2人でいっぱい泣いて、笑って過ごそうね!」

 

麗香「うん!」

 

それからはパパとたくさんいっしょにあそんだ!

まっきーとまっつんといわちゃんとあきちゃんとゆうたろーともあそんだ!みんなでたくさん笑った!れいかはおっきくなったらパパみたいになるの!

 

麗香「れいかがんばる!」

 

及川「?よく分かんないけどパパも頑張る!!」

 

 

〜5年後〜

 

 

麗香「パパ!起きて!ご飯出来てるよ!!」

 

及川「んぅ〜…後5分待ってぇ…」

 

麗香「問答無用!」ガバッ

 

及川「わーっ!寒いー!!」

 

私は5年生になった。今ではパパの影響でバレーをやってる。私はどっちかって言うとパパに似てて、背が大きくて少しだけ才能があったのか他の子よりちょっとだけ上手い。チームではエースをしてる。でも私はもっと強くなってパパみたいになるのが夢だから、まだまだ練習する!

 

及川「いつも朝ご飯ありがとね、麗香!」

 

麗香「パパはバレー頑張ってんだからこれくらい普通だよ。

はいお味噌汁。あ、あとこれ今日のお弁当ね。高タンパク質低カロリー!」

 

及川「出来た娘でパパ嬉しいけど複雑っ!」

 

泣きながらお味噌汁を飲むパパは面白かった。←

それにしてもパパって年とっても全然見た目変わんないんだけど…なんで?ここまで来ると逆に怖いというか…。美容にでも気ぃつかってんのかな?

 

及川「?何この紙。」

 

麗香「え?あ"っ!?なんでもないから!!」

 

慌てて奪おうとしても凄く背の高いパパには届かない。

ヒョイっと紙を持ち上げてまじまじと見るパパ。あ、これもうダメだ……。

 

及川「なになに〜?授業参観のお知らせ…?二分の一成人式で作文発表…?はぁ!?なんで言わなかったの!?しかも今日!!?」

 

麗香「い、いや…だってパパ最近忙しそうだったし…?」

 

及川「パパに来て欲しくないの!?反抗期!?パパ泣くよ!?」

 

麗香「プリント見せなかったくらいで反抗期なら世界中の子供ほぼ皆反抗期だよ!本当に言うの忘れてて気づいたら参観日前日だったからもう遅いかなって思って言わなかったの!」

 

及川「パパは言われない方が傷つく!!」

 

こういうとこは面倒臭い!言ったら泣くから言わないけど!

あたしが将来彼氏でも連れてきたらパパどうすんの!?

 

及川「しかも二分の一成人式とか超大事じゃん!!絶対行くから!」

 

麗香「いやいや、今日試合でしょ!?」

 

及川「監督に言うもん!」

 

麗香「もん!じゃないから!!ダメ!大人しく試合行って!」

 

及川「優香ぁ!麗香が反抗期だよぉ!!」

 

麗香「ママに変な報告しないで!!ほらもう時間だよ!

早く行った行った!!パパの代わりに岩ちゃんたちが聞くから!」

 

及川「なんでパパじゃなくて岩ちゃんなのさ!?」

 

麗香「パパに言ってないこと相談したら来てくれるって。」

 

及川「パパにも教えてよ!!」

 

朝からギャーギャー言うパパを無理矢理バレーに行かせて、やっと一息つける…と思ったら鬼LINEしてくる…。じとぉ、っていうスタンプずっと送ってくるし…。終いには岩ちゃんに動画撮影頼むって。

 

麗香「はぁ……、バレーしてる時は超カッコイイのに…。」

 

……学校行こ。

 



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勘違い

麗香side

 

学校に行く途中でパパへの罪悪感がちょっと強まった。

うーん…、どうしよ……。正直パパ以外皆知ってて来るんだよな←

パパだけハブってるみたいだ……うぅん…、あ!

 

麗香「……あ、もしもし岩ちゃん?あのね、実は……」

 

パパが来れないなら帰ってきた時に作文読んであげればいいんだよ。だから休みをとってくれた岩ちゃん達には悪いけど授業参観には来ないで夜に集まりたいってお願いした。2回も作文聞かすのもちょっと私も照れるし…。

 

麗香「~~て事で夜に集まることってできる?」

 

岩泉『おう。ベソ川は帰ってきたら1発殴っとくから』

 

麗香「あはは…ちょっとは手加減してあげてね。じゃあ、夜にね!」

 

皆が集まるなら今日のご飯は豪華にしないとね!

学校の帰りに買い物してこーっと。クラスに行くと私の前に1人の男子が立ち塞がった。また優太…。こいつとは1年生からクラスが一緒で毎回私にちょっかいをかけてくる。何が楽しいのか?

 

優太「おい巨人女!」

 

麗香「何よ巨人男。」

 

優太もバレーをやっていてチームも男女が違うだけで同じだから一緒にいる事が多い。私はクラスで唯一、優太に身長が負けてる。2ミリだけ!!

 

麗香「あ、ねぇ優太。」

 

優太「なんだよブス。」

 

麗香「うるさいわねチビ!はぁ…帰りって暇?買い物するんだけど少し持ってもらいたいの。あ、お母さんとかが来るなら別に大丈夫だけど。」

 

多分たくさん買い物するから荷物持ちがほしい。まっつん達でも言えば迎えに来てくれそうだけどなんか頼ってばっかりで悪いから…。

 

優太「何だお前、そんなお菓子買うのか。」

 

麗香「誰がお菓子買うって言った!」

 

優太「俺、親に授業参観って言ってねーし来ねーから別にいいぜ。」

 

何だかんだ引き受けてくれるとこが優しい所だよね。

普段はちょっかいかけてくるくせに時々助けてくれるし。

パパがこいつら見つけたら取って食いそうだけど……。

 

麗香「いや、さすがにそれはないかぁ。」

 

優太「?」

 

そんなこんなで授業参観は終わって買い物に行く。

あ!今日特売の日じゃん!!買う以外にないでしょ!!

詰め放題とか神ですか!!ラッキー!!

そして私は何も考えず一心不乱に買い物をした……。

 

優太「お前さぁ……」

 

麗香「はい……」

 

優太「どんっだけ買うんだよ!!重すぎるわ!!」

 

麗香「ご、ごめんって!だって今日は色んなものが特売で……」

 

優太「だからって食いつきすぎだわ!

俺がいなかったらお前店から1歩も動けてねーぞ!」

 

ギャーギャー言うけど心配してくれるんだよなぁ…。

優太は1年生から一緒だからあたしの親の事情とかは大体知ってるけどその事は何も言ってこないし聞いてこない。なんか岩ちゃんみたいだな……。性格はちょっとだけ曲がってるけど男前。

 

優太「お前今シツレーなこと考えたろ。」

 

麗香「褒めたんだよ。」

 

優太「いや何がだよ。つーかこんだけ重いもん持ってやったんだから何かゴホービでもくれよ。」

 

麗香「お金ならあげないわよ」

 

優太「どんだけクソ野郎なんだ俺は。あー、そうだな…。何か作れよ。」

 

麗香「作る?クッキーとか?」

 

優太「なんでもいー。」

 

時々優太って何考えてるか分かんないんだよね。

まぁ、ただなんか食べたいだけだろうけど。優太食いしん坊だし!

 

優太「絶対シツレーな事考えてんだろテメー。」

 

麗香「優太の長所だって。」

 

優太「だから何がだよ。」

 

何作ってあげようかな〜。クッキーでもいいけどベタだよね。

マカロンとか?……なんか食べてるとこ想像できないな。

モンブランとかなら大丈夫かな。優太甘いもの好きだし。

 

及川「あ!麗香〜!!」

 

麗香「!?パパ!?ゆゆゆ、優太!!逃げて!!」

 

優太「は!?何だよ急に!」

 

麗香「いいから!!食べられちゃうよ!?」

 

優太「食われんの!?」

 

及川「ん?君は…誰かな?」(ニッコリ)

 

光より速いスピードで来た!!しかも逃げられないように肩をしっかり掴んでる!そして絶対何か大きな誤解をしてる!!

優太がとって食われちゃう!パパなら食べかねない!!←

 

優太「どうも、麗香と同じクラスの優太です。」

 

及川「へぇ〜、なんで一緒に買い物してるの?麗香とどういう関係?」

 

優太「荷物持ちです。……関係、…友達…なのか?」

 

麗香「私に聞かれても……」

 

及川「え?なに?友達以上の関係なの??」

 

麗香「違うから!!ていうかなんでいるの!?まだ夕方だよ!?

試合と練習入ってるはずじゃなかったの?」

 

及川「麗香!パパは認めないからねっ!!」

 

麗香「話聞いて!!」

 

コレは後で岩ちゃんに言ってやる!

パパは誤解がはげしすぎる!

 



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