Re:ゼロ RTA エミリア陣営・なんでもありチャート 《完》 (青煉瓦)
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プロローグ
Part.1


 はーい、よーいスタート。

 

 初見殺しな強敵が跋扈するゲーム、はーじまーるよー!

 今回走るゲームはこちら、『Re:ゼロから始める異世界生活RPG』!

 異世界に転移したスバルくんが、ルグニカ王国の王選や魔女教・大罪司教との争いなどに巻き込まれながら生き抜くアクションRPGですね。

 

 本作の特色と言えば、リスタート地点が『嫉妬の魔女』に勝手に記録される点でしょう。なんだこの糞仕様!?そんなところまで原作再現しなくてもいいから(良心)。

 原作通りゲーム中に死ぬとオートセーブされた地点まで戻されますし、中断セーブをせずにゲーム終了した場合にもオートセーブされた地点まで戻ります。

 

 しかも、中断セーブで作成したセーブポイントはゲームを再開した時点で消去されるので、途中でミスをしてもリセット&リスタートでガバをリカバリーという手法はとれません。

 死に戻りと違って、リセットではスバルくんの記憶の持ち越しができないので、リセットは基本的にタイムロスになります。ド級のガバをやらかした場合は自害を狙うか素直に再走をしましょう。

 

 さて、上記した通りセーブ周りの不便さ、そして原作通りの理不尽な強敵などから取っ付きにくさを出している本作ですが、心躍るストーリーに格好良い・可愛いキャラ達、感情を掻き立てる音楽、圧倒的な自由度などなど、マイナスを補って余りある魅力があります。プレイし甲斐のある良ゲーと言えましょう。

 

 本作では原作の『エミリア陣営』ルートに加え、『クルシュ陣営』『アナスタシア陣営』『プリシラ陣営』『フェルト陣営』を加えた計5ルートが用意されています。

 どの陣営を選んでもキャラクター達の意外な一面が垣間見えて楽しいのですが……本RTAでは王道を征くエミリア陣営ルートを走ることにします。原作ルートだけあって人気があり、wikiの攻略情報が充実していてチャートを組みやすいんですよね。

 なお、本RTAは『怠惰』・『憤怒』・『強欲』・『暴食』・『色欲』の大罪司教を撃破した時点でタイマーストップとなります。

 

 さて、前置きはこれぐらいにしましょうか。そろそろ始めていきましょう。

 

 当然ながらOPはキャンセルだ。OPが終わって操作可能になった瞬間に計測開始です。

 名前は入力速度を考慮してホモ……といきたいところですが本作はナツキ・スバルで固定されています。当たり前だよなぁ?

 

 開始地点は自宅のスバルくんの部屋となります。木刀や着替え、パソコンに雑誌などなど……原作になかった物を含め、あってもおかしくない道具が色々存在しています。

 ここでパソコンや本を利用すれば様々なスキルを向上させたり知識を得たりすることができますが……そうですね、『ループものの小説』を流し読みしておきましょう。これがタイムを短縮するうえで地味に重要になります。

 本を読み終わったら、自宅でジャージにスニーカー、財布に携帯電話といった必要なアイテムを入手し、コンビニにダッシュ。異世界転移フラグを立てプロローグを終わらせに行きましょう。

 

 はい、コンビニに到着しました。

 コンビニではカップラーメン、スナック菓子をパパッと買ってすぐに退出しましょう。食べ物は友好度上昇に補正がかかるので、チャートによってはここで更に多く買っておいても良いかもしれませんね。

 

 コンビニから出ると視界が歪み始めて―――無事に転移しました。ここからが異世界生活の本格スタート、走者の腕の見せ所さんとなります。ではイクゾー!

 

 短いですが切りが良いので今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 



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第一章 矢のように過ぎる一日目
Part.2


 死が隣り合わせの異世界生活、もう始まってる!

 前回はプロローグが終わり第一章が始まったところでしたね。

 第一章の舞台となる王都ルグニカでは多くの人々が行きかっています。中には商人や吟遊詩人、休日を満喫している衛兵、獲物を見定めに来た犯罪者なんかもいますね。

 

 異世界転移してから最初に行うことは、クッソ多い人々の話に聞き耳を立てて情報収集することです。聞いた話によってフラグが立ち、そのフラグによってイベントが発生したりイベント中の選択肢が増えたりするので、結構重要だったりします。

 ただ、取得できる情報がランダムなので、乱数に見放されるとタイムロスになるのですが……。祈りつつ聞き耳開始です。

 

『ぬわああああん疲れたもおおおおん! やめたくなりますよ~護衛稼業~~~!』

 

『カドモンの売るリンガは美味いな、果実がしっとりしていてベタつかない』

 

『剣聖が矢の雨を潜り抜けたって逸話マジ? ウッソだろwww』

 

『先輩コイツ飴玉とか舐め出しましたよ、やっぱ好きなんすね~』

 

『貧民街にぃ良い盗品蔵があるらしいっすよ』

 

『ぷは~今日も良い天気☆』

 

『衛兵三人に勝てるわけないだろいい加減にしろ!』

 

 っとと、ここで聞き耳ストップ。今回はかなりデレてくれましたね。今後必要となる『貧民街の盗品蔵』『衛兵の存在』『ラインハルトの矢避けの加護』の情報についてパパッと入手できました。それぞれの情報について解説を。

 

 まず『貧民街の盗品蔵』について。ルグニカの貧民街には巨人族の爺さん、ロム爺が営んでいる盗品蔵が存在しています。

 フラグを立てずともスバルくんを操作して盗品蔵に直行することはできますし、ロム爺にお菓子を渡せば懐柔できるのですが……そのルートはキャンセルだ。本チャートでは別の道筋で行きます。

 盗品蔵の情報を得てからフェルトという貧民街のメスガキに会うと、盗品蔵に連れて行って貰うイベントを起こせるので、そのルートを選びます。

 

 『衛兵の存在』はラインハルト利用のために必要なフラグですね。ラインハルトというのはクッソ強い衛兵の兄ちゃんです。原作既読の兄貴達はご存じの通り、衛兵の存在を知ることは路地裏でラインハルトを呼び出す選択肢を発生させます。

 

 『ラインハルトの矢避けの加護』の情報が要るとかウッソだろお前wwwと思うかもしれませんが……要ります(鋼の意思)。

 矢避けの加護というのは、飛び道具などが当たらなくなる能力ですね。原作ではパッとしないこの加護ですが、本チャートでは大きな役割を持つんですよ。それに関しては後ほど。

 もちろん、他人の加護の利用自体はフラグを立てずとも可能です。ですがその場合、相手からの不信感が上昇したり場合によっては拒否されたりするので、今回は安定をとる形になりました。

 

 

 さて、必要な情報は得られたので、人によっては『腸狩り』のエルザ姉貴より印象に残っている、チンピラのトン・チン・カン三人組に会いに行きます。お前らのことが好きだったんだよ!

 

 なぜ彼らに会いに行くのか……それはもちろん死ぬためです。

 あっ、おい待てぃ(江戸っ子)、リゼロRTAで死ぬとかガバか?チャート練り直してどうぞと思った兄貴もいるでしょうが、これに関しては必要なことなんですよね。

 

 原作と同じく本チャートでも、死に戻りの自覚とそこから派生する『嫉妬の魔女呼び出し』のスキルが必要となります。そしてこのスキル、本チャートでは第一章から活用します。

 ただ、このスキルの獲得フラグを立てるには最低でも二回死ぬ必要があるんですよね。原作では死に戻りの自覚まで死を三回経験する必要がありましたが、本チャートでは自宅でループものの小説を読んだので気づきが早くなり少し短縮できます。

 というわけでここで1死稼いでおきましょう。では逝クゾー!デッデッデデデデ……。

 

 ~少年移動中~

 

 はい、路地裏に到着しました。前方からトン・チン・カンの三人組が歩いてきてスバルくんとぶつかってきます。

 

「おいテメェ、黒髪のガキ。他人様にぶつかっておいて謝罪も――ブヘァ!?」

 

 トン・チン・カンはぶつかると謝罪と金品を要求してくるのですが、長いセリフはキャンセルだ。無言でトン・チン・カンの内のヒョロガリ、チンの顎を殴って会話スキップ。戦闘開始です。

 

 ここで本作の戦闘について解説しておきましょう。

 本作の戦闘は数多のアクションRPGと同じく主人公を操作して敵を撃破していきます。設定されているステータスはアクションの結果や過程――例えば筋力ならダメージ、俊敏なら行動速度など――に影響を及ぼすわけですね。

 

 敵へのダメージは筋力だけでなく攻撃が当たるときの速度も考慮されるらしいです。スピードキャラの攻撃が痛くないって物理的におかしいダルルォ!?って考えの下設計されたのでしょうかね。俊敏ではなく『速度』が影響するので、ステータスゼロの岩を落とすとかでもダメージを与えられるわけです。

 

 ステータスは重要な要素ではありますが、プレイヤーの技術や工夫次第では積極的にステータスを上げなくてもクリアできます。各ステータスの詳しい解説については後ほど。

 

 さて、予測していなかった攻撃でトン・チン・カンがひるんでいるので、その間に大柄なトンに掌底を、小柄なカンに蹴りをお見舞いしてやりましょう。お前のそこが隙だったんだよ!

 こうやってある程度ダメージを与えると相手の油断がゼロになり、チンがナイフを取り出してくれます。やめろォ(建前)、ナイスゥ(本音)!

 そして、ナイフを持ったチンが

 

「このボケがァ調子に乗りやがって……三人に勝てるわけないだろ!」

 

と言って激怒しながら突っ込んできてくれます。

 逃げたり人を呼んだりせず、こちらからも突撃して積極的に殺してもらいましょう。ここでモタモタしているとフェルト登場イベント、更にはエミリア登場イベントと2連続で操作不可能のムービーシーンが挟まるので大幅なタイムロスになります。

 

 パパッと殺られて、おしまいっ!

 真っ暗になった視界は……やがてクリアになり、そこには都を行きかう人々の姿が。

 

 オッハー!(激寒)

 死に戻りからの目覚めは気分が悪いですね。死亡シーンは結構凄惨なので何度プレイしてもあまり慣れないです。

 さて、糞みたいな目覚めをしたばかりですが、早速フェルトのねぐらに直行しましょう。フェルトとの合流イベント、その後に続く合言葉確認イベントを発生させに行きますよ~行く行く。

 フェルトのねぐらはガバガバセキュリティなので、侵入のためにフラグを立てる必要はないです。試走で位置は分かってるので急ぎましょう。

 

 ~少年移動中~

 

 はい到着。ねぐらに難なく侵入できましたね。ちなみにここ、貧民街では珍しく安全地帯となってます。貧民街でここ以外に留まってるとランダムでならず者襲撃イベントが発生するので気を付けましょう。

 さて……トン・チン・カンに殺された影響で時間が巻き戻っているため、フェルト帰宅までクッソ待たされます。

 

 それまでの空き時間に本作のステータスと成長方法について解説をしておきましょうか。

 本作のステータスは大きく分けて二つあります。

 

1.肉体値

 現在の身体能力を表す数値です。更に細かく見ると体力・魔力・筋力・知力・俊敏に分かれています。体力・筋力・知力・俊敏については鍛錬で伸びます。魔力については生まれつき決まっているので伸びません。

 それぞれの能力を高めると、それに関連する行動に補正がかかります。

 

2.技能値

 技能の熟練度を表す数値です。細かく見ていくと剣術・鞭術・投擲……などなど多岐にわたります。技能値が高いと攻撃の威力が上がったり命中率が高まったりと行動に補正がかかります。

 スバルくんは地球での経歴から剣術の値がやや高くなっていますね。

 

 ちなみに死に戻りをした場合、肉体値はセーブ地点の能力に戻される一方で技能値は引き継がれるといった違いがあります。

 

 そして、スバルくんがこれらの値を伸ばす方法は、『訓練を行う』『強敵を撃破する』『章をクリアする』の三つがあります。

 

 NPCのステータスに関してはこれらに加えて加護が合わさってくるのですが……加護に関しては必要に応じて解説を入れることにしますね。

 

 

 解説終了。前述したとおりフェルト帰宅までかなり空き時間があります。現在行える成長方法は訓練のみ、この後死ぬ予定なので肉体値の成長はリセットされてしまう。というわけで……フェルト宅で技能値トレーニングやるぞオラァ!!!

 

 盗品蔵に直行しなかった理由はここにあります。合言葉無しで盗品蔵に行った場合、フェルトが来るまで会話イベントが続いて拘束されるんですよね。その間自由行動が不可能になるのがちょっと不味いです。

 

 本チャートではエミリア陣営ルート第一章のボス、エルザ戦にて受け身の技術が必要になるので、どこかで受け身の訓練をしておきたいんですよ。

 その上で盗品蔵の合言葉を知っておきたい。次の周回で合言葉を使って客として入れば、盗品蔵の中で自由行動できるようになります。これは本チャート第一章攻略の必須条件です。

 

 それじゃ盗品蔵の近くで訓練しつつ合言葉だけ盗み聞きすればいいんじゃね?と思うかもしれませんが、フェルト宅以外だとならず者襲撃イベントが発生するせいで安定しないんですよ……。

 

 このようにしてチャートを練った結果、フェルト宅で訓練して時間を潰す→フェルトと合流→共に盗品蔵へGO→合言葉を確認→エルザに殺される、これが一番効率が良いと判断したわけです。

 

 

 チャートを確認したところで早速訓練を始めましょうか。

 床に寝転がり、ゴロゴロすることで受け身の練習を行います。クッソ長いのでスピードは32倍速で。ゴロゴロ……ゴロゴロ……ゴロゴロ……。Foo↑気持ちいぃ~!

 

「あー疲れた。あの姉ちゃんしつこ過ぎ――ッ! へ、変態だーーー!!!!!」

 

 フェルト帰宅早いっすね。こっちの事情も考えてよ(棒読み)。

 

「勝手に他人の家に入ってゴロゴロする事情って何だよ!? どう考えても頭おかしいじゃねーか!」

 

 おっ、そうだな(適当)。

 フェルトが混乱していますが、今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 



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Part.3

 スバルくんの命が安いRTAはーじまーるよー。

 

 前回はフェルトを混乱させてしまったところでしたね。ですが大丈夫、ここでの好感度マイナスなんて死に戻りでリセットされるから誤差だよ誤差!

 

 フェルトも毎日を生きるのに必死なので、コンビニで買っておいたお菓子で釣れば多少は警戒を緩めてくれます。といっても先に自分が食べて毒がないことを示すとか、そういう工夫は必要ですけどね。そのまま差し出しても流石に受け取ってくれないので。

 盗品蔵の主に紹介して欲しいんで……手数料だと思って受け取ってくれよな~頼むよ~、独自ルートで入手したブツを鑑定してほしくて~、ってな感じで説得していくと、

 

「まぁそういうことなら貰っとくけど……ん、美味い! なんだこれ!」

 

一生懸命お菓子を食べ始めましたね。意外と早く落ちたな~(歓喜)。

 

 余談ですが、フェルトちゃん可愛いですよね。見た目小さくてちょこまか動くので小動物感ある一方、意志が強いところとか好きです。

 攻撃されて苦悶に染まるところも……おじさんはねぇ、君みたいな可愛いねぇ、子の悶絶顔が大好きなんだよ!

 服も良いですよね。お金が無いなりに可愛いファッションしてますし、大胆に露出したお臍もセクシー……エロいっ!

 (ここまで熱く語りましたがロリコンでは)ないです。

 

 フェルトを説得し終えたので盗品蔵に向かいましょうか。スバルくんが移動している間、平行してフェルトにはエミリアに対する妨害工作をしてもらいましょう。エミリア到着が早まってエルザ到着とタイミングが被ってしまうと、タイムロスになっちゃうので。

 

 ~少年移動中~

 

 ……はい、盗品蔵につきましたね。ここから待たされる、なんてことはなくフェルトの足はクッソ速いので同じぐらいのタイミングで到着します。

 

「すまねー兄ちゃん、ちょっと待たせちまったか?」

 

 待ってないよ♡、といった感じで適当に会話しつつ、盗品蔵に突入しましょう。

 フェルトが扉の前で合図をして――

 

「大ネズミに」

 

「毒」

 

「スケルトンに」

 

「落とし穴」

 

「我らが貴きドラゴン様に」

 

「クソったれ」

 

無事合言葉を確認できましたね。おっ、開いてんじゃ~ん!オッスお願いしま~す。

 

 中に入ったらロム爺に携帯電話の鑑定をして欲しいと伝えます。鑑定が終わり次第、こりゃ『魔法器』か、とか、これまでにない値段がつくな、とか言われます。

 そして用件が一通り終わると、

 

「じゃあ兄ちゃん、アタシはこのあと大口の取引があるからさ、一旦帰ってくれねーか」

 

とフェルトが言ってきます。大口の取引ってなんだよ?(すっとぼけ)

 

「ん~まぁ話していいか。これ、銀髪の姉ちゃんから値が張りそうな徽章を盗ってきたんだけどさ、これと大金を取引する予定なんだ。だけど兄ちゃんが欲しいってんなら、この場に残って交渉の席についてもいいぜ? さっきの魔法器ってのスゲー高価なんだろ。もしかしたら……アタシがもっと稼げるかもしれないしな」

 

 すると、このように提案をしてきます。いいじゃんアゼルバイジャン。ここに滞在してエルザに殺してもらいたいので、交渉に乗っかるフリをしましょう。

 

 次の周回に行きたいなら自殺の方が手っ取り早いんじゃ?と思うかもしれませんが、舌を噛み切るといった自殺スキルはもうちょっとステータスが伸びないと開放されないんですよね。盗品蔵にある武器を使って自殺しようとすると二人に止められますし、ならず者探しに放浪するのも安定はしません。

 

 じゃけんエルザが来るまで待ちましょうね~。しばらくするとノックの音が聞こえ、フェルトがエルザを連れて入ってきます。

 

「そちらのご老体はわかるのだけれど、こちらのお兄――」

 

 セリフはキャンセルだ。エルザを見かけたらダッシュで駆け寄り、思いっきり殴りかかりましょう。すると攻撃に反応して腸を切り裂こうとしてくるので……それを予測して身をかがめつつ横に動くことで、心臓を突き刺してもらいます。はい、死亡しましたね。

 こうやってすぐに殺してもらわないと、ネチネチ嬲ってきてなかなか殺してくれないんですよね。そうなるとタイムロスが大きいので、パパッと心臓を刺してもらう必要がありました。

 

 

 例によって例のごとく視界が真っ暗になり、目が覚めると大通り。三周目突入です。そして……第一章はこの周回で終わらせます。

 

 この周でまずやるべきことは、『嫉妬の魔女呼び出し』のスキルを獲得することです。俺は死に戻りをしているって言うアレですね。

 

 では早速その辺のリンガ屋のおっさんにでも話しかけましょう。おっさん、いきなりで悪いんだけど聞いてほしいことがあってさ……奇妙な話なんだけど、もしかしたら俺って――

 

 その瞬間世界から音が消え、時間が止まり、黒い靄が現れる。

 

 はい、嫉妬の魔女の登場ですね。現れた黒い靄はやがて腕の形状を取って、スバルくんの心臓を握りしめます。クッソ痛そうにしてますが……死ななきゃ安い!へーきへーき。

 これで『嫉妬の魔女呼び出し』のスキルを獲得しました。

 

 あ、魔女が居なくなりましたね。世界が動き始めました。急にスバルくんが苦しみだしたのでおっさんが心配してくれますが、適当に言葉を遮って立ち去りましょう。時間が惜しいです。

 

 

 このスキルを獲得した後は、路地裏でラインハルトと合流します。ラインハルトを呼び出すために早速トン・チン・カンに会いに行きましょう。

 

 路地裏に行きウロウロしていると……はい、来ましたねトン・チン・カン。

 

「よお、変な恰好してるガキ。突然で悪いが、持ち物全部置い――」

 

 ア゛ァン!オ゛ォン!ンアッー!!!

 アツゥイ!!!衛兵助けてー!!!!!

 

 早速、自身の中の野獣を解放して大声で叫びます。

 

「ちょっ、なんだこのガキ!? 俺らはまだ何もしてねーよ馬鹿!」

 

 うるせえ!まだってことはこれからするってことでしょ!

 

 やだやめて叩かないで叩かないでよ!痛いんだよおおおお!!!

 

と恥も外聞も捨てて叫んでいると、

 

「――そこまでだ」

 

路地裏の糞みたいな空気を切り裂いて凛とした声が響き渡ります。炎のように真っ赤な髪、輝く青い双眸、威圧感を放つ騎士剣。剣聖の称号を持つラインハルトの登場です。

 

「ラインハルト……『剣聖』ラインハルトか!? クソッ」

 

 ああ^~生き返るわぁ^~。トン・チン・カンはラインハルトと二言三言やりとりをすると去っていきます。やったぜ。

 

「無事でよかった。ケガはないかい?」

 

 ないです。助けてくれてありがとナス!しっかりお礼を言いましょう。

 いくつか言葉を交わした後、「珍しい恰好だけど何か理由があって王都に来たんだろう?僕でよければ手伝うよ」と言ってくれるので、遠慮なく力を借りましょう。

 実は銀髪の子が徽章を盗まれたみたいなので、それを届けてあげたいんですよ。自分一人の力だけじゃ難しいから協力オナシャス!

 そう言うとスッと目を細めて値踏みするように見てきますが……。

 

「――わかった、僕でよければ、微力ながら力を貸すよ」

 

 流石イケメンですね。あっさり了承してくれます。ではラインハルトと世間話でもしながら盗品蔵に向かいましょうか。この時にラインハルトから矢避けの加護について語ってもらうことと、盗品蔵内での行動の打ち合わせをしておくのも忘れずに。

 

 これでエミリア陣営ルート第一章ボス、エルザ・グランヒルテを攻略するための下準備が整いました。無敵のラインハルトがいればエルザなんて余裕だな!

 まあ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、初見さん。

 

 そう、重ねて言いますが本チャートでエルザを討伐するのはスバルくんです。ラインハルトに任せるとエルザ討ち逃しイベントにつながってしまうので、後々を考えるとタイム的に美味しくないんですよ。

 というわけで、ここはスバルくんの手で、確実に討ち取ります。

 

 さあ、殺人鬼お姉さん解体ショーの始まりや。

 

 今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 



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Part.4

 死ねば死ぬほど臭くなるRPGはーじまーるよー!

 

 前回はラインハルトと合流して盗品蔵に向かうところで終わりましたね。移動シーンは特に面白い箇所もないので16倍速で流します。

 

 到着しました。合言葉を使うことですんなりと扉を開けてくれますが、

 

「なんじゃ、どんな客かと思ってみれば妙な服の小僧に―――その髪、その剣……剣聖か。儂を捕まえに来たということかの」

 

ラインハルトとかいう有名人が隣にいるのでクッソ警戒してきます。当たり前だよなぁ?

 

 というわけで、ラインハルトに事前の打ち合わせ通り喋ってもらいます。

 

「安心してください、と言って信じてもらえるか分かりませんが、捕まえに来たわけではありませんよ。今日は非番の日ですからね。この少年、スバルに力を貸してほしいと頼まれたから引き受けただけです。護衛みたいなものですよ」

 

「ふむ……不可解だが、嘘をついているというわけでもなさそうじゃのう。わかった、中に入ってくれ」

 

 少しヒヤヒヤしましたが上手くいきましたね。あとは携帯電話を鑑定してもらって価値を示しましょう。そして、これを使ってフェルトが持ってくる物と取引したい、交渉の場を設けてほしいという旨を伝え、盗品蔵に滞在することにします。

 

「対抗相手がいるから小僧っ子の手に渡るとは限らんがね。手数料はしっかり払ってくれよ。しっかし妙な奴じゃな……あの剣聖を連れてきてやることが小娘との交渉とはな。お前さん余程の変人じゃな?」

 

 ま、多少はね……あっそうだ!(唐突)

 ロム爺、ここに居るあいだ剣を借りてもいいですか?必要なら後でレンタル料払うんで。

 

「そりゃ構わんが、一体何をするつもりじゃ?」

 

 OK、許可を貰えましたね。ではラインハルトを床に寝させて、V字バランスのポーズをしてもらいましょう。前々回述べた通り、合言葉を使って客として入室しているので盗品蔵の中を結構自由に行動できます。ロム爺はクッソ訝しんでいますが止めてきません。

 

「スバル、あの話はいまいち理解できなかったけど……これでいいんだね?」

 

 オーケーオーケー。じゃあそのまま姿勢を固めて、暴れんなよ……暴れんなよ……。

 ラインハルトは多少意味不明なお願いでも、誰かを傷つけるお願いではないと判断すれば引き受けてくれる可能性が高いです。心も器もでけぇなお前(褒めて伸ばす)。

 

 盗品蔵にあった剣を装備。よし、準備が整いましたね。では遠慮なく……ラインハルトにヒップドロップをぶちかまします。真横からみるとこんな感じですね

 

  ↓  スバル

  ↓     

  \/  ラインハルト

 

 

「「!?」」

 

 ラインハルトもロム爺もクッソ驚いてますが……見とけよ見とけよ~。

 

 ふわっ

 

 はい、スバルくんの体が不自然に浮き上がりましたね。そしてヒップドロップを行い……また浮遊、これの繰り返しを始めました。これだけだと視聴者兄貴たちには理解不能でしょうから解説をします。

 

 ラインハルトが持っている矢避けの加護は、自分に飛んできた物体を逸らす効果があります。そしてこの効果、横から飛んできた物だけではなく、上から落ちてきた物に対しても発動するんですよ。

 おそらく落石とかが当たらないようにするためでしょう。この効果はヒップドロップをかましたスバルくんにも発揮されます。

 

 そして重要なのは、矢避けの加護の効果では()()()()()()()()()()()()()()()()ということです。今回の場合ラインハルトはV字バランスをしているので、そこに垂直にヒップドロップをすると……ラインハルトの体に当たるわけにはいかないので、軌道が逸れて逸れての繰り返しで処理がバグり、スバルくんの位置がヒップドロップをした瞬間の座標へとリセットされます。

 

 そして元の座標に戻った瞬間、システムがまだヒップドロップが終わってない、ヒップドロップを履行しなきゃ(使命感)と勘違いして、処理が中断されずに続いてしまうんですよ。

 このとき何故か座標リセット前の勢いを保持して次のヒップドロップに移行するので、スバルくんがどんどん加速していくんですよね。

 このようにしてヒップドロップ→加速→座標リセット→ヒップドロップ……がキャンセルボタンを押すまで永遠に続きます。

 

 長々と語りましたが、移動速度を溜めるという点ではスーパーマリオ64のケツワープの疑似再現みたいなものでしょうか。方法は大きく違いますがね。

 では、この状態をエルザが入ってくるまで維持しておきます。

 

「なんじゃこれは……たまげたなぁ」

 

 ロム爺がたまげてますが、仕方ないね♂。傍から見たら意味不明な挙動してますからね。

 あとは適当に喋りながらフェルトの来訪、その後にあるエルザの襲撃まで待ちましょう。しばらく時間がかかるので映像を64倍速でお送りします

 

 ~少年加速中~

 

 はい、そろそろエルザが襲撃してきますね。盗品蔵に来たフェルトに「すっげーキモイな、何だこの兄ちゃん!?」と言われたときは死ぬほど心が苦しかったのですが、なんとか耐えました。

 おっと、コンコンとノックの音が。ようやく来ましたね。フェルトがエルザを迎えに行き、中へ連れてきます。そして、エルザはこちらを見るや否や、

 

「――あら、面白い遊びをしているのね。そこにいるのは……もしかして私、嵌められたってことかしら?」

 

と察して、こちらに高速で飛び掛かって攻撃を仕掛けてきます。エルザ戦開始ですね。

 

 こんな奇妙な状況でもエルザは逃げません。取引相手に裏切られたと思っていますし、ラインハルトという美味しい獲物を目の前にして退くという選択肢は彼女にはないのです。

 それに幸か不幸か、ラインハルトという脅威が奇妙なポーズで隙をさらしている絶好のチャンスでもありますから。ですがそちらは囮。

 

 宣言した通りスバルくんでエルザを倒すわけですが……今の糞雑魚ナメクジなスバルくんでは速すぎるエルザを目で追えません。バグ技でスバルくん自体が加速していても、ステータスが向上したわけではないからです。

 また、エルザの重力を無視しているかのような滅茶苦茶な軌道を予測するのは至難の業です。

 

 ですからここで――『嫉妬の魔女呼び出し』を発動。

 

 世界から音が消え、()()()()()()

 

 そう、このスキルで重要なのはここ、魔女が現れる前に時間が止まる点にあります。どれほど速い強敵であっても、この瞬間だけはどの位置にいて、どの方向に向かっているのかをはっきりと視認できます。

 

 エルザの位置は……あそこですね。移動キーをエルザがいる方向に合わせ、あとは魔女が去るまでキャンセルボタンを連打。

 時間停止が解除された瞬間ヒップドロップをキャンセル、そしてすぐさまジャンプボタン!バグ技により極限まで加速されたスバルくんを射出!それから攻撃ボタンを押して―――

 

 

 

 世界を置き去りにした一閃がエルザの首を切断しました。工事完了です……と言いたいところですが、まーだやることが残ってるんですよね。

 受 け 身 の 時 間 で す 。

 

 速度が意味不明なぐらい高まっているので、このまま何かにぶつかるとスバルくんが死にます。ですから受け身受け身受け身受け身受け身ィッ―――――!!!

 

 ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛

 ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!

 

 はぁ、はぁ……おっぶぇ!

 体力が今にもゼロになりそうですが、なんとか生き残りましたね。フェルトの家でギリギリまで訓練を行ったのがプラスに働いたのでしょう。いやー計算通りですねぇ!

 

 そしてリザルト画面へ移行。ああ、やっと戦いが終わったんやなって。エルザ戦が終わったので……はい、第一章幕間シーンに突入しましたね。ぬわああああああああん疲れたもおおおおおおおおおおおおおおん……。

 

 今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 



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第一章幕間 『月夜に咲く花』

 徽章が盗まれて行方不明になったとき、エミリアは非常に焦った。

 

 エミリアは、かつて世界を恐怖に陥れた『嫉妬の魔女』と同じく、銀髪のハーフエルフである。そのため彼女に快く力を貸してくれる者は少ない。衛兵などに頼めば顔をしかめながらも手伝ってくれるかもしれないが、徽章を盗まれたという事実が公になれば資質が疑われ、王になることなど夢のまた夢になってしまうだろう。

 

 この広い王都で探し物をするのに人海戦術が使えないのはあまりにも辛い。大精霊のパックという心強い味方はいるものの、彼が役に立つのは主に戦闘方面である。

 

 それでも、それでも彼女は諦めなかった。この程度の苦しさなんて想定済み、ここで諦める理由にはならない。

 

 だから、王都を駆け回って駆け回って――――ようやく情報をつかんだとき、思わず声を出して喜んでしまったのは無理もないことだろう。

 そして、盗品蔵に駆け付けたときに待っていた結末を見て、ぽかんと口を大きくあけて阿呆面をさらしてしまったことも。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 私がすごーく必死に探しまわって、ようやく在処をつかんだというのに。だというのに、目の前の黒髪の少年は数刻前にあっさりと突き止め、さらには徽章の取引に関わった殺人鬼『腸狩り』を討ち取ったという。

 今回の件はラインハルトの功績9割だなんて言ってたけど、ラインハルトが「自分は何もしてないです」と真顔で言ってたから、少年なりの冗談なのだろう。

 

 あまりにも呆気なく、あまりにも私に都合が良すぎる。私を驚かせるためにロズワールが仕組んだ壮大な悪戯と言われた方がまだ納得できるぐらい。でも私から徽章を盗った子、フェルトから話を聞いたところ、ロズワールのことなんて知らないらしい。

 

 そして、私を追い越して事態を収束させた彼がどんなに凄い人なのかと思えば――

 

「兄ちゃんスゲー! キメー! アタシは絶対マネしたくないけど、あのヒュンッ! スパッ! ってやつヤバかったぜ」

 

「はっはっはー! あれが俺の必殺技、邪剣『夜』だぜ! 凄いだろ! あ、でもキモイってのはマジ傷つくので勘弁してください」

 

「うーむ、たしかに凄かったが……仮にマネ出来てもやりたくないというのに儂も同意じゃな。初動が気持ち悪すぎたぞ」

 

「勘弁してって言ったのに追撃!? このドS! 鬼!」

 

「ドエスって何じゃ!? それに儂は鬼じゃなくて巨人族じゃ!」

 

年相応にふざける普通の少年にしか見えない。思わず夢かと思って頬をつねってみたぐらいだ。

 しかし痛む頬と、それから少年のボロボロになった身体が、夢ではないことをこれでもかと突き付けてくる。

 

 どうやって解決したのだろうか……いや、重要なのはそこじゃない。どうして私なんかのためにここまで頑張ってくれたのか。

 

 見ても考えてもわからない。ならば尋ねるしかない。

 

「ねえあなた、ちょっといいかな。どうして知り合いでもない私のためにここまで頑張ってくれたの? 手際が良かったみたいだけど、それでも苦労しただろうし……すごーくボロボロになってるじゃない。そこまであなたを駆り立てる理由って?」

 

「それはもちろん君が可愛いから―――と言いたいところだけど本当は俺のためだな。あることがきっかけで変わったというか変わらざるをえなかったというか。とにかくさ、大勢に誇れなくて良いから、誰かに、そして自分に誇れるような人生を送りたいって思ったんだよ。今日君を助けたのは俺の人生計画の第一段階!」

 

「あなた自身のために私を? もしかしたら知らないかもしれないけど、私ってば皆にすごーく嫌われてるのよ。助けて良いことなんてない……どころかあなたまで嫌われちゃうかも」

 

「かもな! でも今の好感度なんて誤差だよ誤差! 嫌われたっていつか挽回できるって」

 

「誤差って……私はこんなに悩んでるのに」

 

 あまりにも無神経な発言。それでも心から嫌だと思えないのは、私を見つめる眼差しに軽蔑や嫌悪の欠片がなく、真っすぐだからなのか。

 

「まだ納得はできないけど、理解はしたわ。それから、あなたは自身のために行動したって言ったけど……これだけのことをしてもらった以上、私はあなたにお礼をしなければならない。ううん、お礼をしたいの。もちろん私にできることなら、って条件付きになっちゃうけど」

 

「ほうほう、お礼とな。そんじゃあ俺を君の所で雇ってくれない? あんな高そうな徽章を持ってたってことは、かなりの金持ちだろ? 俺ってば帰る家も生きていくための金もなくてさ!」

 

「えっ、私のところに!? もちろん嫌じゃないけど……というか資産がないって誇らしげに言うことじゃないわよ。あなたって少しあんぽんたんな所があるかも」

 

 『腸狩り』討伐が本当なら私なんかのところに来なくても引く手数多だろうに。なんならこちらから協力を要請してもおかしくないほどだ。この少年は自身のために行動していると言いながら明らかに損な選択をしている。

 私の陣営に送り込む工作員という可能性は……ないだろう。こんな表情の分かりやすい子を工作員として差し向ける組織があったら余程のうっかりさんだ。

 しかし、予想外の発言に混乱して思わず酷い言い方をしてしまった。後で謝らなきゃと一人悩んでいるのに、

 

「あんぽんたんって今日日聞かねえな! でも美少女に言われるのはご褒美だぜ! ありがとうございます! あと嫌じゃないってことはOKってこと? やったぜ」

 

目の前の少年はそんな気持ちも知らずに、悩みなんてないかのように喜ぶ。これでは先ほどからずっと悩んでいる私が馬鹿みたいではないか。

 

「一応、私の後見役を務めてるロズワールにも話を通す必要があるけどね。詳しい条件は後日詰めましょう。それから、助けてもらった私がお願いをするというのも烏滸がましいけど、一つお願いがあるの」

 

「おっ何々?」

 

 そう、私は彼にいろいろ尋ねてきたけれど。ここに来て、まだ重要なことを聞きそびれていた。それを聞かなければならない。

 

「改めまして、私の名前はエミリア。ただのエミリアよ。私に――あなたの名前を教えてほしいの」

 

 私がそう言うと、彼は瞳を少し見開いた。そしてしばしの無言が周囲を支配する。

 どうしよう、もしかして私ってば変なこと言っちゃったのかしら。でもここで尋ねるのっておかしくないよね? と目をぐるぐるさせていると、

 

「ぷっ、ははは」

 

と彼が吹き出す。やっぱり変なこと言っちゃったのかな!?

 

「あーごめんごめん、全然変なことは言ってないよ。どんなお願いされるのかと思ってたからさ。コホン、よくぞ聞いてくれました!」

 

 彼はそう言って指を天に向けて、

 

「俺の名前はナツキ・スバル! 無知蒙昧にして天下不滅の無一文! これから君ン所で世話になるんでヨロシクゥ!」

 

私の悩みなんか吹き飛ばしちゃいそうなほどの満面の笑みを咲かせるのだった。

 



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第二章 糞ったれな二日間
Part.5


 双子の可愛いメイドが登場するRTAはーじまーるよー!

 

 前回は第一章が終わったところでしたね。いよいよ第二章に突入、早速竜車に乗って変人領主のロズワールが暮らすメイザース領へ出発……と言いたいところですがその前に一つ準備を。

 ロム爺のところに行ってある道具を入手しておきましょう。

 

 ~少年移動中~

 

 到着しました。ロム爺が少しやつれていますね。

 エルザ戦の後しばらく和やかな時間を過ごしました。ですが、最終的には原作と同じようにラインハルトがフェルトの王の資格に気付いて、フェルトを拉致していったんですよ。ロム爺はフェルトを孫のようにかわいがっていたのでそりゃ悲しいでしょう。

 (ですがそんな事情は自分に関係)ないです。エルザの魔の手からフェルトを守ったことを理由に報酬をおねだりしましょう。

 

「いきなり来たと思ったら面の皮が厚い要求を……そもそもエルザに襲われたのは、そしてフェルトが剣聖に連れ去られたことはお前さんの責任だと思うんじゃが」

 

 あっ、おい待てぃ(江戸っ子)。あの欲深い、もとい今を生きるのに必死なフェルトなら、スバルくんたちが居なくても要求を釣り上げて殺されてた可能性が高いゾ。

 それにフェルトが連れ去られるなんて予想できないし(すっとぼけ)、連れ去られたことへの文句はラインハルトにオナシャス。

 

「それはまぁ……そうかもしれんが」

 

 ロム爺は巨大な身体から脳筋と思われがちですが、実際は頭脳派なのでこうやってしっかり説得すれば理解してくれます。しかもかなり優しいし天使か何か?

 ラインハルトより劣るとはいえ戦闘面でも優秀ですから、その頭脳と武力によってフェルト陣営ルートで心強い味方となってくれる一人ですね。

 

「仕方ない。お前さんに助けてもらったのは事実だし、高価な物でなければ、なんでもくれてやろう」

 

 ん? 今なんでもって言ったよね?

 さて、ここで安い武器や防具、応急手当用品、サバイバル道具などいろいろ貰えますが、今欲しいのはそういうのではないです。

 

 ロム爺さぁ、ウンチして?

 

「は? 嫌じゃ……」

 

 なんで?(殺意)

 嫌って言ってもするんだよウンチを……。ほらそこにもう(カップラーメンの容器を)用意してあるからさ。

 

「えぇ……」

 

 はい、というわけでウンチを貰いましょう。文字通り糞みてえな要求にロム爺の好感度が下がりますが誤差だよ誤差、今はお前のウンチが必要なんだよぉ!

 

 ウンチといえば小説家になろう異世界モノにおける神器の一つと言っても過言ではないでしょう。肥料にするという展開はありがちですよね。あるいは武器に塗って毒として用いるという活かし方もあります。

 ですが本チャートでの使い方は別です。それについては後ほど。

 

 クッソ嫌々ながらロム爺がウンチをしてくれたので、ここでの用事は終わりました。では竜車に乗り込んでメイザース領に出発しましょうか。イクゾー!デッデッデデデデ!

 

 さて、竜車に乗り込むと、エミリアやパックとの会話イベントが発生します。身元の怪しいスバルくんへの探りを兼ねてるんでしょうね。

 

 とりあえずどこから来たのかを適当にはぐらかしつつ、エミリアの立場、パックに関すること、他の王選候補者、ふもとのアーラム村についての話などを聞きましょう。

 しばらく時間が経ちロズワール邸が近づいてくると、会話の内容はロズワール邸の住人のことへ移ります。すなわちロズワール、レム、ラム、そして、

 

「屋敷には禁書庫があって、そこにはベアトリスっていうすごーく可愛い番人がいるのよ。陰魔法がとっても得意で、禁書庫の扉と離れた扉をつなぐ『扉渡り』って魔法が使えるの」

 

「可愛いといっても実力は折り紙付きだから、不興を買わないように気を付けた方が良いけどね。スバルもボクやベティーみたいな精霊には敬意を払いなよー」

 

そう、金髪縦ロール幼女のベアトリスについてですね。

 

 禁書庫の番人ベアトリス、彼女は本章攻略の鍵になってくるので絶対に力を借りる必要があるのですが……協力してもらうのは容易ではありません。

 原作のようにマナドレインさせて負い目を作る、あるいは時間をかけて交流を深めるといった方法はありますが、タイムを考えてそれらの手段は却下しました。

 

 色々考えたのですが、ベアトリスはパックを慕っているので、パックを利用するのが一番速いと思います。というわけで、ここはパックに間を取り持つようお願いしちゃいましょう。

 原作でスバルくんがモフモフ権を要求したように、エミリアを助けたことを理由としてパックにも何か要求できるんですよ。

 

「そりゃ構わないけどさ。一応聞いておくけど、どういう目的だい?」

 

 可愛い女の子と仲良くなりたいってのは男の子として当たり前だよなぁ? それから正直言うと今後力を借りる機会が出てくると思うんで、説得オナシャス!センセンシャル!

 

「ふーん。ボクはなんとなく心が読めるんだけど、嘘は言ってないみたいだね。ベティーやリアに対する悪意も感じられないし……ん、わかった、ボクなりに話を通しておくよ」

 

 ありがとナス! やっぱパックくんの優しさを……最高やな!

 

 さて、必要な準備の一つを済ませたところでロズワールの屋敷に到着しました。ロズワール邸の双子メイド、レムとラムが出てきて迎えてくれます。

 

「おかえりなさいませ、エミリア様、パック様。それから……あなたが新入りのスバルくんですね」

「おかえりなさいませ、エミリア様、パック様。それから……あなたが新入りのバルスね」

 

 左右から同時に流れてくる声がFoo↑気持ちぃ~。しかもこの子たち可愛いだけでなくクッソ強いです。これって勲章ですよ?

 

 その後メイド二人に応接間へと案内され、ロズワールと出会い、屋敷で働くうえでの契約内容を詰めていくのでーすーがー。映像的にクッソつまらないので、ここのシーンは128倍速で送ります。仕方ないね♂

 

 さて、一通り話が終わるとロズワールがレムとラムに屋敷の案内を頼もうとするのですが……それはキャンセルだ。

 じゃあ俺、ギャラ貰って帰るから、というのは冗談です。外が明るい内にふもとにあるアーラム村に向かいたいんでね。

 

「―――、いーぃよ。地元の住民との交流、それも大切だよねぇ。たぁだ、キミ一人では不審に思われるだろうから、レムをお供に付けよう」

 

 ロズワールありがとナス! まぁスバルくんの監視のために、安定して強いレムを同伴させるんですけどね、初見さん。この後レムに殺されたいのでありがたいというのは本音です。

 

 さて、では村に向かって散歩しましょうか。

 

 ~少年移動中~

 

 ロズワール邸と村の間の丁度中間ぐらいまで来ましたね。ある程度歩くとレムが質問をしてきます。

 

「ところでスバルくんに聞きたいことがあるのですが、いいでしょうか」

 

 いいよ!来いよ!

 

「なぜ今、アーラム村へ? 今日は屋敷の把握につとめ、訪れるのは明日にしてもよかったのでは?」

 

 今行きたい気分だったからね、仕方ないね(適当)。

 

「……あなたは、エミリア様ではなくあなた自身のために行動しているそうですが、それは本当ですか? 自分のためなら何でもすると?」

 

 自分の(最速記録の)ために何でもするのは当たり前だよなぁ?

 

「当たり前? それは、だれかの命を犠牲にすることさえも、ですか?」

 

 場合(チャート)によっては死んでもらう人も出てくるでしょうね。

 

「―――ッ! ……最後に。あなたは、魔女教の関係者ですか?」

 

 んまぁ、そう、よくわかんなかったです……(情報・フラグ不足)。

 

「とぼけないでください! こんなに怪しい行動をして! そんなに魔女の臭いを漂わせて! 無関係だなんて白々しいにも程がありますよ!」

 

 そうだよ(便乗)。

 さて、レムがスカートに隠していたモーニングスターを構え、敵意を露わにしてきました。原作でもせっかちな独断行動でスバルくんを殺していたレムですが、普通ならここまで短絡的に殺そうとはしてきません。

 

 ですが、本チャートは魔女の臭いに加えて、クッソ唐突な外出、ド素人な身のこなしなのにエルザを討伐した歪さなどが怪しさにブーストをかけています。

 そして今の質問への返答がとどめとなってレムを激怒させたのでしょう。

 

「やはりお前ら魔女教徒は人の心が分からない狂人……姉様たちのため、今ここで排除します!」

 

 『魔女教』『魔女の臭い』の話を回収できたのでおとなしく殺されましょうか。では諸君、サラバダー!

 

 

 死んで目が覚めると……はい、ロズワール邸に到着したときに戻されましたね。本チャート第二章の最初のセーブポイントはここです。

 さて、死に戻って最初にすべきこと、それは――

 

 ロム爺にもらったウンチを上半身に塗りたくることです。あぁ~たまらねえぜ。

 

「ちょっ!? スバル!? えっ? 一体何をしてるの!?」

 

 エミリアが驚いていますが今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 



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Part.6 前半

 女性からの視線が痛いRTAはーじまーるよー!

 

 前回はウンチを上半身に塗りたくったところでしたね。ズボンは後で利用するので汚さないよう気を付けましょう。

 

「ええっと……スバル、それはどういう意味が?」

 

 今後屋敷で平和に過ごすための儀式みたいなモノだゾ。こんな状態で屋敷をウロウロするつもりはないし、二度とこんなことしないから。

 

「リア、信じがたいかもしれないけど、この子本気で言ってるよ」

 

「えぇ……? スバルってばロズワール以上の変態なのかも」

 

 やや不審に思われますが、そこそこ変態なロズワールを間近で見てきているので反応薄めで済みます。感覚が麻痺してますねぇ。

 ちなみに『魔女の臭い』フラグ未回収でこういったことをすると、馬鹿の虚言と思われてパックの魔法で洗浄されるので気を付けましょう。(1敗)

 

 さて、屋敷の前で問答しているとレムとラムが迎えに来ましたが……ドン引きしていますね。当たり前だよなぁ?

 

「あなたが新入りの……えぇ?」

「あなたが新入りの……は?」

 

 誰だって引きます。私だってこんな奴がいたらビビりますもの。

 

 さて、視聴者兄貴たちがお察しの通り、ウンチを体に塗った目的の一つは嫉妬の魔女の臭いを一時的に誤魔化すことです。レムからの不審・監視の目をほんの少しの間だけ抑えたかったので。ちなみに死や『嫉妬の魔女呼び出し』を重ねすぎるとこういった小細工は効かなくなります。

 いや、ウンチ塗るのも大概狂ってるし怪しいじゃねーかと思うでしょうが、レムに関してだけは魔女の臭いを漂わせるよりかなりマシなんですよこれが。レムにとって魔女教徒は憎悪の相手ですが変態は憎悪の相手ではありませんから。

 

 勿論、目的はそれだけではありません。臭いを消すだけなら別の手段がありますから。もう一つの、そしてメインとなる目的は――

 

「おーやおや、なかなか来ないと思ってみれば……私もこの国最高峰の変態を自負していたつもりだぁーけど、これは負けるかもしれないねぇ?」

 

ロズワールをここまで呼び寄せること、そして身体が著しく汚れているという条件により、

 

「うんうん、キミとはなんだか気が合いそうだ。たーぁだ、その格好で屋敷を歩かれるのは困る。丁度、私も休憩をしたかったところだぁし……どうだい、少し早いが風呂に入ろうじゃあないか。男二人で裸の付き合いを楽しもうねぇ?」

 

アッー!な展開ではなく……ロズワールとの入浴イベントを前倒しで発生させることです。彼と密談をしたいからですね。

 かなり忙しい彼と二人っきりで話をするのは難しいのですが、このイベントを発生させることで安定して密談できるというわけです。

 では風呂場にイクゾー!

 

 ~少年移動中~

 

 はい、風呂場につきました。着替えもちゃっかり貰っています。

 ちなみにロズワール邸の趣向を凝らされた風呂場はかなり綺麗です。良い内装してんねえ!どうりでねぇ!

 

「ありがとぉ。さて、あそこで普通の人を、女性陣を遠ざける真似をしたのは私へのメッセージだーぁよね? キミは一体何の話がしたいのかな?」

 

 勘の良いイケメンは好きだよ。ロズワールにお願いしたいのは……ラムに禁書庫での待機を、レムに渡り廊下の掃除を命じてもらうことです。それからレムに対して、『ラムはスバルくんへ屋敷案内をしている』とでも伝えといてください、オナシャス!

 エミリアを助けた件の貸し借りは、これでゼロにしてくれていいからさ~頼むよ~。

 

「ふぅーん? 欲がないうえに奇妙なお願いだねぇ。どういう目的なぁのかな?」

 

 それは今後レムやラムと平和に過ごすためですねぇ! もちろん危害を加えるつもりはないし、ロズワールの判断次第ではスバルくんを処分してくれていいんで。

 

「……良いよぉ。私としてもこれぐらいのことで貸し借りがなくなるなら喜ばしいことだ。従業員に負い目を持つのも嫌だからねぇ」

 

 クッソ怪しいだろうし詳細は気になるだろうから、事が終わったらメイドに尋ねるといいっすよ。

 

「君といると悪だくみのし甲斐がなくなるねぇ。それに怖いもの知らずだ」

 

 ま、多少はね?

 さて、要件は済んだので風呂から出て着替えましょうか。ただし、ズボンは地球から持ってきたものを再び履きます。ウンチを塗らないようにしたとはいえ少し不潔ですが、これは必要なことなんでね。

 

 さて、次は……ベアトリスのいる禁書庫に向かいましょうか。

 

 ~少年移動中~

 

 あ、禁書庫に通じる扉がありましたね。本作では禁書庫に通じる扉を見つけるとエフェクトが発生して知らせてくれます。わかりやすいですね。

 

 では早速侵入しましょう。おっ開いてんじゃーん!

 

「お前が勝手に開けたのかしら!? まったく無礼な奴なのよ……にーちゃから話を聞いてなければすぐに追い出してやったのに」

 

「やぁスバル、一応説得しておいたよ~。どういう話をするか気になるからボクも同席していいかい?」

 

 いいっすよ。というかこっちから頼みたいぐらいです。

 さて、ベアトリスにお願いしたいことがあるんですが……『扉渡り』で禁書庫の扉とコレを繋げてもらえませんかね?

 

「は、はあっ!? ななな、なにを言ってるのかしら!? 聞いてた以上に頭がおかしいのよ!」

 

「ぷっ、あはははっ! やっぱスバルって変だねぇ! ボクも、ベティー目当てに訪ねてくる子は何人も見たけど……くくっ、こんな目的で来た子は初めてだよ。あーお腹痛い。害意はないみたいだしさ、願いをきいてやりなよ」

 

「にーちゃまで!? 大体そんな所と繋げられるわけが……つ、繋がったのよ。ただ、この間を移動するのは……はっきり言って無理かしら、いろんな意味で」

 

 ありがとナス!それは十分理解してますよ。それじゃあスバルくんが禁書庫から出て行ったらよろしくね。

 さて、準備が終わったのでレムのところへと向かいましょうか。さぁ、青メイド解体ショーの始まりや。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 今日は新入りの子がやってくると聞いていたので少しだけ楽しみにしていたのですが……まさかロズワール様以上の変態が来るとは。

 姉様が暴言を吐いてしまったのも仕方のないことでしょう。レムも正直引いてしまいましたし。エミリア様の徽章を取り戻すのに貢献した凄い方らしいですが、尊敬するのは無理だと思いました。

 

 と、掃除をしながらそこまで考えていたとき、コツコツと足音が響いてきました。噂をすれば何とやら、あれは新入りのスバルくんですね。

 身体を洗って糞の臭いがなくなり―――ッ! この臭いはまさか!?

 それに屋敷案内で同伴しているはずの姉様が彼の隣にいません。嫌な予感がレムの中を駆け巡ります。

 

「やっほーレムりん、良い仕事っぷりだねー。これから俺も働くことになると思うと気が滅入るぜ」

 

「……スバルくん、姉様はどちらに? あなたと一緒に居るはずなのですが」

 

「ああ、ラムちーなら誰の手も届かないところで()()()してるぜ」

 

 そう言って、彼は鋭い目でニヤリと嗤います。

 ッ、ということは! あの狂った行動は魔女の臭いを一時的に誤魔化し、レムの目を掻い潜るため! そして姉様はもう……そこまで考えたとき、レムの頭がカッと熱くなりました。

 こいつは、こいつだけは生かしておけない。隠していたモーニングスターをサッと取り出し、思いっきり攻撃を仕掛けます。

 

「うっぉおおおお、あぶねえ! 今のマジで神回避!」

 

 初撃は回避されましたが、彼はそれだけで精一杯で、もう隙だらけです。最初に見たときも感じていましたが、動きが素人のそれです。これでどうやって殺人鬼を討ち取ったというのか……。ですがそれは好都合ですね。

 今は周囲に誰もおらず、扉もないため万が一にもベアトリス様に邪魔されるということもない。彼にはレムに対する勝ち目がありません。

 ここで一気に仕留めようと思い、攻撃に移ろうとした正にそのとき―――彼がズボンの前開きに手を伸ばし、大きく開け広げました。

 

「……は?」

 

 思わず思考停止。ですがすぐに思考は再開し、レムの中の怒りが膨れ上がりました。

 

「お前はどこまでレムを馬鹿にすれば……もういい、死ねえぇぇぇぇ!」

 

 怒りを乗せて攻撃を行い、鉄球を彼に飛ばします。

 あの体勢では避けられない、勝ったと思ったその瞬間……

 

『フーラ!』

 

鉄球がはじかれました。

 

「一体なにが―――」

 

 突然の事態に困惑していると、

 

『やめなさい、レム。バルスは馬鹿で臭くて頭がおかしくて救いようのない豚だけど、エミリア様の恩人であり、そしてロズワール様の貴重な駒となる存在よ。ここで潰すのは二人への反逆。そんなことラムが許さないわ』

 

彼に殺されたと思っていた姉様の声が響いてきたのでした。……彼の股間から。

 

「姉様ッ!……えっ……えぇ?」

 




設定画見た感じスバルくんが履いているズボンはファスナーとか無さそうなんですけど、本RTAではファスナー有りのズボンを履いているということで。


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Part.6 後半

 はい、というわけでスバルくんのズボンの前開きと禁書庫を『扉渡り』で繋げて、禁書庫からラムに説得してもらいましょう。

 

 あっ、おい待てぃ(江戸っ子)、『扉渡り』で繋げられるのは扉同士のはずでしょ、と思うでしょうが、何故か地球産のズボンに限って禁書庫の扉と接続できるんですよね。

 ファスナーのお陰でしっかり開閉できるから扉!とかいう謎判定なんでしょうか。あるいは地球で入手できる道具の設定を適当にしてたとか、股間のココの通称が社会の窓だからとか……なんだよお前のプログラムガバガバじゃねえかよ。

 

 バグ技という邪道ですし、やや回りくどい方法ではありましたが、私はこれが最速だと判断したので採用しました。

 

 本チャート第二章の第一関門はレムです。このゲームにおいて、彼女からスバルくんへの攻撃をやめさせる方法は、時間をかけて仲良くなること以外にも存在しています。

 その一つが、屋敷雇用ルートにて、レムにスバルくんを攻撃させたあと逃げ切ってラムに知らせることです。そうすればラムとともにレム説得イベントに突入します。まぁ普通にやると逃げ切るのはかなり難しいですけどね。

 ちなみに食客ルートだとラムはスバルくんを保護してくれず、レムと協力して殺しにくるので気を付けましょう。

 

 ただ、このレムから攻撃させるというのが少し手間で……普通なら人気のない場所に移動して、前回のように問答を重ねるといった行動が必要になってくるんですよね。周囲に誰かが、特にラムがいると絶対に殺しにきませんし、そもそもそんな状況でレムを挑発できるわけがないです。

 

 タイムを考えると、屋敷で問答を重ねず攻撃させるのが一番です。そのために周囲に誰の目もないことを確信させた上で、レムの感情を一気に高ぶらせる必要がありました。

 

 以上の理由により、人の気配と扉のない渡り廊下で仕掛けました。ラムがどこにもいない状況にしたこと、それからウンチで魔女臭を回避という小細工はレムの怒りを爆発させるためでもあります。

 バグ技でズボンと禁書庫を繋いだことで、スバルくんを殺す旨の発言がラムに届いたので、説得イベント発生条件も達成できています。

 ラムの千里眼の能力でも代用できましたが、チャート的に不安定なうえラムに負担がかかるのでキャンセルだ。

 

 以上で解説終了。では説得イベントに突入しましょうか。

 

「姉様、レムを止めないでください。そいつはあの日レムたちを……あいつらと同じ臭いがするんです」

 

『ラムもバルスが臭いのは十分わかっているわ。でもそれだけで処分するのは早計よ、レム』

 

「そういうことではなく――! そいつは、魔女に愛され、愛を示すためならなんでもする狂った魔女教徒です。ここに置いておくべきではありません!」

 

『……あら、それは初耳ね。確かに頭はおかしいけど。バルス、本当なの?』

 

(そんなわけ)ないです。というかエミリア陣営を抹殺したいなら屋敷に潜りこむなんて遠回りなことしませんよ。

 

「口先では何とでもいえます! 教徒の証である福音書だって隠せばいくらでも誤魔化せるでしょう」

 

 口先ねえ……あっそうだ(唐突)、エミリアから聞いたんだけど、ルグニカ王国にぃ~嘘を見分ける加護を持った奴がいるらしいっすよ?じゃけん今度尋ねましょうね~。

 パックの読心と合わせて二重チェックすれば文句ないでしょう。

 

『カルステン公爵家の当主、クルシュ様のことね。ロズワール様なら顔つなぎできると思うわ』

 

「ですが……」

 

 とにかくクルシュの加護で証明されるまで待ってください!オナシャス!センセンシャル!

 もし魔女教徒だという確証が浮かび上がったらそのときは殺してくれていいんで……。

 

「――いいでしょう、姉様の説得もありますし今は見逃します。先ほどの戦いであなたに力がないことも把握できましたし……その気になれば、いつでも殺せるということを覚えておいてください」

 

『バルス、私にこんなことをさせたんだから、あとでしっかり償ってもらうわよ。覚悟しておきなさい』

 

 ファッ!? ウーン……まま、ええわ。

 とりあえずレムからの危機を逃れたので第二章前半戦終了、ここでセーブポイント更新ですね。

 

 さて、それでは次に発生するイベントに備えて、といきたい所ですが。今できることなんてたかが知れてますし、ここはタイム短縮を考えて睡眠で時間をスキップしましょうか。

 

 ~少年睡眠中~

 

 オッハー!(激寒)

 翌日になったので早速とある場所に向かいましょう。その場所とは、森にある結界維持の基点辺りですね。本チャートでは二日目の昼過ぎ頃、その辺りでイベントが発生するので、情報を回収しに向かいます。

 

 ではイクゾー!と言いたいところですが、

 

「……おはようございます、というよりこんにちは、ですかね、スバルくん。コソコソと一体どこに行くつもりですか?」

 

 助けてー単独ストーカーに襲われてまーす! はい、レムがずっと監視していたので呼び止めてくるんですね。お前屋敷の仕事は大丈夫か大丈夫か?

 

「パパッと済ませておきました。あなたから目を離すのは怖いので」

 

 あっそっかぁ……有能すぎてヤバイですね。まあこれは想定済み。これから森に散歩に行くんで一緒にどう?

 

「言われなくても付いていくつもりです。もし怪しい動きがあれば……わかってますね?」

 

 オーケーオーケー、では出発しましょうか。

 

 ~少年移動中~

 

 はい、目的地に近づいてきましたね。森の中の澄んだ空気がンギモヂィィィ!!! ま、森林浴を楽しんでいられるのは今の内なんですけどね。

 

「この辺りには……結界を維持する結晶があるはずです。まさか……?」

 

 (そんな目的では)ないです。仮に壊そうとしても隙を見せた瞬間殺されて終わりじゃんアゼルバイジャン。

 

「それはそうですが」

 

 さて、視聴者兄貴達は本チャート第一章を見終わったとき、こう思いませんでしたかね。『ネームドキャラを殺すと後の運命に大きな影響を与えてしまうのでは?』と。

 もしそう考えたなら、それは当たりです。エルザを殺した影響が小さいもので済むわけがない。

 

 

「んーんー? なーんでオス肉とメス肉がこんなところに居やがりますかねー? ここってクズ肉どもの小屋から離れてやがるはずなんですけど」

 

 

 その影響はエルザと共に何度も仕事をして、絆のような何かを築いたメィリィだけに留まりません。すなわち――

 

「ああ……てめーらもしかして青姦しやがるってことじゃねーですか? 健全な交際をしてまーす!って他人の前ではウブなふりしやがって、結局は劣情を隠したいだけ。健全な世界を装って綺麗な言葉を並べ立てて、周りを欺いて気取ってるだけじゃねーですか」

 

「本当は自分の思い通りに肉欲を満たしたいだけ。だから永遠の愛なんて格好つけておいても、番のオス肉メス肉が不細工な姿になれば掌を返しやがるんです。自分たちが愚かしいといつになれば気付きやがりますかね? ま、慈悲深く優しいアタクシは、そんな愚かしいクズ肉に対しても尽くせる良い女なんですが」

 

「そしてクズ肉でも最後には気づきやがるわけですよ。愛と尊敬を捧げるべき相手は、この世で最も尊く美しいアタクシ、大罪司教『色欲』担当、カペラ・エメラダ・ルグニカであることにね」

 

エルザとメィリィの"ママ"であり、魔女教の大罪司教『色欲』担当のカペラ・エメラダ・ルグニカ。彼女の運命にも大きく影響するということです。

 

 今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 



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Part.7

 狂人が蔓延るRTAはーじまーるよー!

 

 さて、前回は森で大罪司教『色欲』担当、カペラ・エメラダ・ルグニカと遭遇したところでしたね。大罪司教の肩書きを持っている時点であっ(察し)となるでしょうが、彼女はクッソ強いうえに悪辣、まともに戦って勝てる相手ではありません。

 

 特筆すべきはその権能でしょう。自分や他者の姿を変貌させ、さらに見た目だけでなく特性まで変動させる能力を持っています。腕を獣のものに変身させれば強大な腕力を以て敵を薙ぎ払うことができますし、全身を竜に変身させれば火を噴くことすら可能です。

 さらに、傷を与えられても権能で姿を戻すことでダメージをなかったことにできるという無敵っぷり。初見殺しと言われる大罪司教にふさわしいチート性能ですね。

 

 現時点ではどうやっても勝てません。ですから、

 

 俺は大罪司教『傲慢』担当、ナツキ・スバルだァ! 騙して悪いな、死ねレムゥゥゥゥ!!!

 

と叫んで、レムに攻撃をしかけましょう。これはもちろん、スバルくんを殺してもらうための行動です。

 カペラと話して情報を引き出すという選択肢も一応ありましたが、それは悪手でしょう。まともに交渉なんてできませんし、虫の姿に変えられてしまうとリセットするしかなくなるのでタイムロスが甚だしいです。

 

 そして、こうやって挑発すると、

 

「きゃははははっ! てめーアタクシの美しさに脳まで焼かれやがりましたか? それとも番のメス肉を殺して私に命乞いでもしようってことですかねー」

 

「ッ! あのとき見逃したレムはなんて愚かな……!」

 

レムが目に怒りを湛え、スバルくんを攻撃してくれます。ありがとナス!レムなら迷わず殺してくれると信じてましたよ。そのために連れてきたんですから。

 

 というわけで飛んできた鉄球に頭突きをしてパパッと死にましょう。カペラの存在を知覚できたらこの周回は用済みですからね。

 

 

 そして時間はレム説得直後まで巻き戻ります。オッハー!(激寒)

 

「!? ……今は朝ではありませんよ、何を言ってるんですか。やはり狂人なのですか?」

 

 いたって正常なんだよなぁ。さてレムりん、この後ロズワールと話をしたいので案内してくれませんかね。議題はクルシュに顔つなぎしてもらうための対価について。

 もちろんスバルくんが怪しい動きをしないよう見張りとして同伴していいですよ。

 

「あなたと姉様が先ほど言っていた……わかりました。少しでも怪しい動きをすれば、そのときはわかっていますね?」

 

 おう打ってこい打ってこい。ではレムと一緒にロズワールが居る部屋へ移動しましょうか。

 

 ~少年移動中~

 

 はい。ロズワールの執務室に到着しました。おっ、開いてんじゃ~ん!オッスお願いしま~す。

 

「やぁやぁスバルくん、レムやラムとの仲は深められたかね」

 

 ま、多少はね。あっ、そうだ(唐突)、レムに身の潔白を証明するために、クルシュに会う必要が出てきたんで顔つなぎオナシャス!

 

「なーるほど、彼女の『風見の加護』が目当てというわけだね? たぁだ、彼女は高貴な身分だ。当然、面会の機会をタダで設けられるわけではない。借りを作るのは痛いのだけど、君は私に何を支払ってくれるのかぁな?」

 

 エミリアを助けたお礼として得た権利は、先ほどのレム説得イベントの準備として消費しています。ですから、ここで新たに対価を、スバルくんのためにクルシュに掛け合って良いと思わせるほどの価値を示す必要があるわけですね。

 ここで示すロズワールへの対価、それはもちろん……大罪司教の討伐です。

 

「ちょっ!? スバルくん、何を言ってるんですか!?」

 

「――ほう。それは本気で言っているのかぁね? エミリア様は銀髪のハーフエルフだからね、魔女を崇める彼らに襲撃されるという可能性はゼロではないよ。だが大罪司教は神出鬼没で居場所をつかみ難く、そのうえ都市を滅ぼした者がいるほど強い。それを君が見つけて、そして滅することができると?」

 

 そうだよ。ただし、スバルくん一人の力では無理ですがね。今回協力する必要があるのはベアトリス。そしてロズワールの力も貸してほしいところです。

 

「ふむ、ちなみにだーぁけど、いつ大罪司教と戦うのか、その目安はあるのかね」

 

 明日の昼過ぎです。ほとんど猶予はないけどOK?OK牧場?(激寒)

 

「はぁっ!? ロズワール様、スバルくんは狂った発言で翻弄しているようにしか思えません。こんな戯言には耳を傾けず早く処分するべきではないでしょうか」

 

「いーやいや、レム。確かにスバルくんは変な子だーぁけど、無意味な行動をする子とは思えないよ。もし本当に大罪司教を討伐してくれるなら、なるほど、顔つなぎの対価としては十分すぎる。それに……私はこの少年を気に入っていてねぇ、次はどんな喜劇を見せてくれるのかと楽しみにしていたんだよ」

 

 糞雑魚ナメクジスバルくんがエルザを殺すというウルトラCをぶちかましたため、ロズワールの好感度が上がっていますね。子供のようにはしゃいでいます。

 ロズワールがこちらの話に乗ってくれるのは、叡智の書でスバルくんのやり直し能力をなんとなく把握しているからという要因も大きいですがね。

 ではベアトリスを部屋に呼んでもらって、カペラ討伐会議に臨みましょうか。

 

 前述した通り、カペラはチートじみた性能をしており、普通に戦っても勝てません。

 ならば、普通に戦わなければいいんです。初見殺し(大罪司教)には初見殺し(バグ技)をぶつけるんだよぉ!

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 大罪司教カペラ・エメラダ・ルグニカがメイザース領を訪れた理由、それは福音書の指示によりエミリアを連れ去るためである。

 カペラは馬鹿ではなくむしろ賢い方であるが、目的に向かってまっすぐ駆け抜けるRTA走者じみた思考の持ち主ではない。ゆえに、ふもとの村で遊び、自分への愛を集めようと考えていた。

 

 ああ、今日はどんなシチュエーションで滅茶苦茶にしようか。醜い蝿に変えてクソッたれな愛をぶち壊し自分のモノにする、これが鉄板だが……一人目はシンプルな方法で行こう。男が好みそうな女に変身して誘惑する、この手っ取り早い手段をとることにした。

 

 そうと決まれば早速変身だ。豊満な体の、少し汚れた衣服を纏った女性の姿へ変身し、すり傷も適度につけて……よし完成だ。さぁ適当に男を探そうか。

 

「おっと、お嬢さん、見ない顔だがこんなところでどうしたんだ? 獣にでも襲われたのか?」

 

 丁度良いところで男と出会った。黒髪の……少々見た目は冴えない奴だが、最初のターゲットとしては悪くないだろう。

 

「そ、そうなんですぅ。もう泣きそうになっちゃってぇ……足もくたくたになっちゃってぇ」

 

 すかさず男に抱き着く。その瞬間男に浮かんだ照れと嬉しさが混じったような表情を見逃さない。

 

「わ、わかった。とりあえず近くにある俺の家に行こう。俺の彼女が手当の魔法を使えるから、傷を癒してもらおうぜ。服も汚れたままじゃいけないし、彼女に借りるといいよ」

 

 彼女持ちの男とは運が良い。クソッたれな綺麗事をぶち壊してクズ肉どもの愛を自分のモノにする、この瞬間がたまらなく気持ち良いのだ。

 

「ありがとうございますぅ、あなたって優しい方なんですねぇ」

 

「い、いやぁそれほどでも……」

 

 ニヤニヤとする表情からは嬉しさを隠しきれていない。最初のターゲットは楽に攻略できそうだ。

 しばらく歩いた後、男の家らしき場所に到着。

 

「っと、ここが俺の家だ。ちょーっとボロいけど我慢してくれ」

 

 そう言う男に手を引かれ、いよいよウキウキお宅訪問、ぐちゃぐちゃの愛に塗れる時間だ。あぁゾクゾクしてきた。

 

 と、そこまで考えて家の中に入った瞬間、とてつもない違和感が駆け巡った。なぜなら目の前に道化師のような格好をした男と金髪の幼女がいたから。

 そして一瞬で察した。ああ、自分は嵌められたのだと。どうやったかは分からないが、福音書の指示が筒抜けだったようだ。

 

 だが、何も問題ない。なぜならこんなクズ肉どもに自分が負けるわけがないから。これは油断でも慢心でもなく事実だ。この『色欲』の権能は知っていても封じられるようなものではない。他の大罪司教どもと違って弱点がある間抜けな権能ではないのだ。

 

「あーらら、アタクシが誰だかバレてやがるってことですか? いや、美しすぎるアタクシがアタクシであることに気付きやがるのは当然のことでしたかね。ま、いいや。パンパカパーン! 見事正体を見破ったてめーらに優しいアタクシから景品を贈呈! 先制攻撃をゆずってさしあげますよー」

 

 そう言うと遠慮なく魔法が飛んできて、自分を吹き飛ばす。

 ま、自分に攻撃なんて無意味だけれど。ああ、勝ち誇ったようなあいつらの間抜け面がおかしくてたまらない。魔法を放った直後で隙だらけじゃないか。

 残念でしたー! 当然のように身体を一瞬で再生。それじゃあ遠慮なく―――

 

 そこまで考えた瞬間、カペラ・エメラダ・ルグニカの意識は虚空に飲み込まれた。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 Part6にて、バグ技でスバルくんのズボンと禁書庫の扉を繋げられると言いましたよね。

 このバグ技の欠点は、両者の間をまともに通行できるものが限られることです。声や風といった形のないものならやりとりできるんですけどね。ですが今回はこの欠点を活かします。

 

 ズボンの前開きを入り口、禁書庫の扉を出口とした場合、入り口から人間が通ることはできない、これはわかりますよね?ズボンの前開きが身体に対して小さすぎます。

 では、禁書庫の扉を入り口、ズボンの前開きを出口にした場合どうなるでしょうか。入り口の扉は大きいので通ることはできます。ですがズボンを出口にしてまともに出られるかというと……答えは否。その結果をここに示しましょう。

 

 まず、ロズワールに頼んで村の住人を家の中で待機させます。次に『扉渡り』で村の小屋と禁書庫をつなぎ、カペラを禁書庫の中までおびき寄せます。そうしたら、ロズワールの魔法でカペラを扉に向かって吹き飛ばしてもらいましょう。

 

「アル・フーラ!」

 

 直後ベアトリスに禁書庫の扉とスバルくんのズボンを繋いでもらい、そしてワンテンポ遅れてカペラが禁書庫から退場。その瞬間ズボンのファスナーが開き―――

 

ブッチッパ!

 

汚い異音とともに、スバルくんの股間から下痢のような謎の物体が溢れ出しました。これ、カペラです。ついでにスバルくんが履いていたズボンが弾け飛びました。

 

 視聴者兄貴たちは困惑しているでしょうから解説を。

 禁書庫を入り口、ズボンを出口とした場合、通ることはできても、まともに出ることはできない。これは一体どういうことなのか。

 

 入り口を通ってしまった以上、ゲームシステムは通行人、ここではカペラを出口から出さずにはいられません。しかしそのまま出すには出口が小さすぎる。

 そこでゲームシステムは整合性を保つための解決策として……ドラえもんのガリバートンネルのように、通行人を小さいモノに再定義します。

 

 ただし、ドラえもんの道具と違って無理やり物体を縮めるので、通行人の身体がバグってゴミのような何かに変化します。見た目だけでなくステータスもバグるので知性も失われ、カペラが権能で再生してくるということもありません。

 通称『通行人変化バグ』。成功すれば強敵を一瞬で完封できる悪夢のようなバグ技ですね。

 

 まぁ権能発動中は特殊処理されているレグルスだったり、肉体にとらわれないペテルギウス、あるいは禁書庫に入りきらない白鯨だったりと、効かない相手もいるので最強・無敵の技ではありませんが。

 何よりこれを一回やると、無理やり通行人を排出したせいなのか、スバルくんのズボンの耐久度がゼロになって弾け飛ぶので二度とできません。

 

 解説終了。あとは謎の物体になったカペラを踏みつぶして工事完了です……。リザルト画面に突入したのでこれで第二章終わり!閉廷!

 

 では今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 



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第二章幕間 『道化師は笑う』

 スバルがカペラを討伐した日の夜、屋敷の一室にて四つの影がうごめいていた。それはすなわち、ロズワール、レム、ラム、ベアトリスの四人である。

 今回の件の立役者であるスバルと、意図的に遠ざけられていたエミリアは、今一緒にイ文字の勉強をしているためこの場にはいない。

 

「いやーぁ目まぐるしい二日間だったねぇ。みんなご苦労様」

 

 話を切り出すのは屋敷の主、ロズワールである。彼は満面の笑みを浮かべ、心から嬉しそうにしていた。一方で他の面々はドッと疲れた顔をしている。

 

「ロズワール様、未だにスバルくんが大罪司教を討伐したということが信じられないのですが。レムが見たところ彼はかなり弱いです。恐怖と災厄の象徴のような存在を倒せるとは到底思えません」

 

「そこはラムも気になるわね。あの子、一般人よりは喧嘩慣れしてるかもしれないけど……正直、今のラムでもバルスを倒せると思います」

 

 投げかけられて当然の疑問、それに対してロズワールはさらに笑みを深める。

 

「んふふ、やっぱりそう思うよねぇ。原理はいまいち分からないから説明しにくいけど……かなぁり愉快な光景だったよぉ。敢えて言葉にするなら、ブリュ! バァン! って感じだったねぇ」

 

「「は、はぁ……」」

 

 光景をそのまま擬音で表現しているのだが、二人には理解できるはずもない。だが、理解できなくて幸せだと言えよう。

 

「相変わらず趣味が悪いかしら。ベティーには全く理解できないのよ。とりあえず、もう二度とあんなことせずに済みそうで安心したかしら」

 

 二人が困惑する一方で、『扉渡り』で扉とズボンを繋ぐというクッソ汚い使い方を二度とやらなくて済むことに安堵するベアトリス。

 なおロズワールはあの技を二度と見られないと告げられ酷くがっかりしていた。

 

「ま、レムもラムも安心しなさい。スバルくんが大罪司教……あるいはそれに準ずる実力者を倒したというのは事実だぁよ。対面したときに感じた悪寒が只者じゃないと知らせてくれたからねぇ」

 

「濃厚な魔女の臭いがしたこと、身体が一瞬で再生していたところを見ればロズワールを欺くための生贄ではなさそうかしら。禁書庫が派手に汚れて迷惑極まりないのよ」

 

「まぁまぁベアトリス、そこは大目に見てほしいところだぁーね」

 

 そう言ってロズワールはワイングラスを傾ける。今宵は面白い光景を肴に酒が進みそうだ。

 

「どうやって大罪司教の動向をつかんだのか、かなぁり気になるけど……教えてくれないだろうねぇ。ま、私としてはエミリア様が歩む道を舗装してくれれば問題なぁいね。と・こ・ろ・で。ふふふ、みんなのスバルくんへの評価を聞きたい所だぁね。濃厚な二日間でいろいろ思うところがあるだろう」

 

 レム、ラム、ベアトリスの全員がスバルに対して良い感情を持ってないと知りながら、敢えて尋ねられた質問。それに対して―――

 

「変態ですね」

「変態だわ」

「変態なのよ」

 

満場一致の変態評である。スバルが聞いていたら俺は変態じゃねえ!ありがとうございます!と叫んでいただろう。

 

「くくく、この私を差し置いて変態と言わしめるだなんてねぇ。本人はいたって真面目に、みんなのためを思って行動してるみたいなのに……すこぉし可哀そうだなぁ」

 

「真面目におかしなことをやる人を変態、あるいは狂人と呼ぶのではないでしょうか」

 

「ラムに糞の臭いを嗅がせ、股間に顔を近づけさせたあの子を他にどう評価しろと。毎日咽び泣いて感謝して欲しいぐらいです」

 

「魔法が汚れるなんてことはないけれど……『扉渡り』が汚された気分なのよ」

 

 残念でもなく当然の評価である。スバルの周囲には女性の方が多いのに、女性陣の好感度は凄い勢いで下がっていた。痛いですね……これは痛い……。

 嫉妬の魔女を除いたスバルへの好感度ランキングを作成すれば、ぶっちぎりの一位がロズワールとなり、二位にパックがランクイン。三位にようやくルートヒロインのエミリアが入ってくるぐらいだ。

 

「みんな正直だねぇ。ま、仲良くしろとは言えないけど……大切な仲間だから、いざというときは守ってあげてね?」

 

 スバルという面白く重要な駒が消されないよう身内に釘をさしておく。これが、ロズワールが三人を招集した目的である。

 

「さぁて、屋敷の仕事が残っているだろうし、私もやらなければならないことがある。これにて解散としようか」

 

 パン!と手を叩いて解散を示すと、それぞれが持ち場へと帰っていく。そして、誰もいなくなったことを確認してから、ロズワールは『叡智の書』と呼ばれる黒い装丁の本を優しく撫で、ページをパラパラと捲り始めた。

 

「しかぁし、初めてこのページを読んだときは奇妙な語り口に戸惑ったのだぁけど。なかなかどうして、実際に目の当たりにすると楽しいものだね」

 

 彼は本日何度目か分からない笑みをこぼす。そんな彼の横顔と開かれた黒い本の一節を、月の光が優しく照らしていた。

 

『はーい、よーいスタート。―――――』

 



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第三章 忘れられない戦い
Part.8


 王選候補者が可愛いRTAはーじまーるよー!

 

 前回は大罪司教『色欲』担当のカペラを倒して第二章が終わったところでしたね。章クリアの経験値は体力と俊敏に振っておきましょうか。

 

 さて、早期クリアしちゃったから屋敷でイ文字やシャマクを習得できてないんじゃね?と思っている兄貴もいるでしょうが、実は習得できています。技能イベントを経ずに早期クリアしても、本来習得できたはずの技能は章クリア時に勝手に習得してくれる優しいシステムなんですよねー。

 なんなら早期クリアのおまけでロ文字まで習得できちゃってます。ま、これは本当におまけみたいなものですけど。

 

 さて、物語はいよいよ第三章に突入ですね。王選候補が一堂に会するという、ワクワクに溢れたイベントのある章です。

 魔女教徒ではないことを示すため、クルシュとの会談の準備をロズワールにお願いしてあるので、本章最初の動きはクルシュ陣営との会話からになるでしょう。

 

 そろそろ使者として送られてきたフェリスとヴィルヘルムがやって来―――

 

「あ、いたいた。スバル、これから王都に出発するから準備をしてほしいの」

 

 おファッ!?なんでエミリアがここに?クルシュ陣営から使者が来て、そのまま会談へって流れのはずなんですけど。

 

「彼女との会談は用事のあとでってロズワールが言ってたわよ。今回の用件は……王国から王選候補者に対して招集があったから、スバルには私の騎士として同伴してほしいの」

 

 ああ~いいっすね~……って言うわけないでしょ!これは、まずいですよ!

 章クリアや強敵撃破の経験値があるとはいえ、それを加味してもスバルくんの強さは素人に毛が生えた程度、騎士に相応しい力を備えていないことなど近衛騎士達には一瞬で看破されてしまいます。こんな男が騎士とかウッソだろお前wwwって思われますよ。

 

「スバルは自己評価が低いけど、ほかの騎士たちに恥じない働きをしてくれてると思うわよ。それから……正直言ってしまうと、スバルの所属がどこなのかをはっきりさせておきたいという思惑もあるの。他所からの引き抜きが怖いけど、一の騎士であると公言しておけば手を出しにくくなるじゃない」

 

 こちらとしては裏切るつもりはないんですけど、ふらっと他所に行かないか心配に思う気持ちはわかります。んーしかし……。

 

 前述した通り、今のスバルくんが糞雑魚ナメクジであることは一瞬で看破されてしまいます。それを理解したうえで、なお騎士の肩書きを、それも王選に関わる重要な場で名乗るというのは近衛騎士達の不興をクッソ買うことになるんですよね。

 

 単に好感度が下がるだけなら誤差だよ誤差、と言って済ませていたのですが。近衛騎士の不興を買った場合、彼らの溜飲を下げるために『最優の騎士』ユリウスによるスバルくんわからせ♂イベントが始まる可能性が高いんですよね。

 これがまたクッキー☆並に長く、見ていて苦しいイベントになります。ユリウスの騎士としての在り方、厳しさの中の優しさが垣間見える良いイベントではあるのですが、タイムロスが甚だしい。

 すぐに降参を宣言すればパパッとおしまいにできますが、それをやるとユリウスをはじめとして主要人物の好感度が著しく下がるのであんまり美味しくないです。

 

 ……ですが、ここでオリチャー発動!

 折角の提案ですし乗ることにしましょう。ユリウスイベントに突入する危険性はありますが、他の王選候補者に顔を覚えてもらえるという利益は大きいですからね。

 それに、今回はスバルくんから騎士を名乗るのではなく、エミリアからの宣言という形になりますから……原作のような軽薄な態度をとらず、黙っておとなしくしていれば騒ぎにはならないはず。

 

 というわけで、かしこまり! いいよ、こいよ!

 

「スバルがそう言ってくれてすごーく安心したわ。それじゃ準備が整い次第出発しましょ」

 

 ではパパッと準備して王城に行きましょうか。まぁ準備といっても礼服に着替えて必要な小道具を持つぐらいですが。

 

 さて、王都へ向かうメンバーについてですが、これに関しては原作と同じですね。スバル、エミリア、パック、レム、ロズワールの五名で王都に行き、ラム、ベアトリスの二名がお留守番となります。

 レムは原作のように愛ゆえに介護を申し出て……という感じではなくスバルくん監視の意味が強いでしょうね。仲良くなれてませんし。まぁ特に問題はありません。

 

 あれこれ言ってる内に準備も終わりましたし、早速王城にイクゾー!デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!

 

 ~少年移動中~

 

 はい、あれよあれよという間に王選会議の会場に到着しましたね。エミリアに一言告げて、他陣営の一の騎士、つまりラインハルト、ユリウス、フェリス、アルの四人が立っている位置まで移動しましょうか。

 ここでの余計な会話はキャンセルだ。あんまり喋るとスバルくんが常識に疎いことがバレてマイナス評価をもらうことに繋がりますし、単純にタイムロスにもなります。軽く挨拶したら耳を塞いで無言で突っ立ってましょう。

 

 このあとは原作通り、第五番目にして最後の王選候補者であるフェルトの入場と一悶着が収まってから賢人会の開始となります。

 次にスバルくんが動くのはエミリアの所信表明の時なので少し時間がありますね。そこでみなさまのためにぃ~ルグニカ王国が王選を開始するに至った経緯と、王選候補者の軽い紹介でもしておきましょうか。

 

 事の起こりはルグニカ王国の王族たちが全員病気で亡くなったことに起因します。代理人を立てて国の運営を続けていけばいいのではと思うでしょうが、そうは問屋が卸しません。

 なぜかというと、王国が繁栄していたのは王族が龍と盟約を結んでいたお陰だったから。その当事者たる王族が死んだということは盟約の破綻、延いては国の滅亡に繋がるというわけです。だから国民はてんやわんやの大騒ぎ。

 

 そこでルグニカ王国に伝わる預言の石板『竜歴石』が示した解決方法が、国の導き手になり得る五人から一人の巫女を選び、龍との盟約に臨むことでした。王選候補は徽章に埋め込まれている竜珠という探知機によって判別されます。その探知機の反応に見事かかった一人がエミリアだったというわけですね。

 

 では早速、王選候補者の紹介を。

 

 まず一人目は本チャートのルートヒロインであるエミリア。長い銀髪と紫紺の瞳が特徴の少女ですね。過去に世界を蝕んだ『嫉妬の魔女』と似た外見をしているため周囲に忌み嫌われますが、そのような逆境の中、故郷で氷漬けになっている家族や知り合いを解放するために王選に臨みます。

 

 二人目はクルシュ・カルステン。緑の長髪と男装が特徴的な女性です。ルグニカ王国を長きにわたって支えてきたカルステン公爵家の現当主であり、王選の最有力候補ですね。王国を龍の保護から脱却させ、国民自らの足で歩む国にするために王選に臨みます。

 

 三人目はプリシラ・バーリエル。橙色の長髪を後ろでまとめ、血のように赤い瞳をした女性です。世界は自分に都合の良いようにできていると公言しており、実際かなり運が良いですね。此度の出来事は自分を輝かせるための天意と考えて王選に臨みます。

 

 四人目はアナスタシア・ホーシン。薄紫色の長髪にロシア帽、それから関西弁が特徴的な女性です。カララギという国の最下層から今をときめく商会のトップに成り上がった才媛ですね。自らの飽くなき欲求を満たすために王選に臨みます。

 

 五人目はフェルト。金髪に真っ赤な瞳、そして八重歯が特徴的な少女ですね。外見の特徴から滅んだ王族たちと関係が示唆されています。原作では城内で捕縛されたロム爺を助けるために王選に参加するのですが……ロム爺、本チャートでも捕縛されてるみたいなんですよ。

 ただし城内ではなく上層区で。ラインハルト家に侵入するための下調べをする際に捕まったみたいです。で、結局原作と同じくロム爺を解放するために参加する運びとなったわけですね。嫌いな王国をぶっ壊して風通しをよくするために王選に臨みます。

 

 以上、王選候補者五人の解説終了。

 

 さて、そろそろエミリアの所信表明の時間ですね。スバルくんも一緒に前へ歩み出ます。最低限の発言だけして穏便に終わらせましょう。

 

「では、エミリア様、そして騎士ナツキ・スバル。お願いします」

 

 賢人会代表のマイクロトフに促され、エミリアが軽い挨拶をはじめとして自己紹介していくのですが、

 

「半魔が王を目指すなどと烏滸がましい……かの『嫉妬の魔女』と同じ容姿の者に心を許す国民がいると思うか? そなたが王座に手をかけたとなれば上層部は乱心したと思われ、国は乱れることになりましょうよ」

 

はい、賢人会のハゲ、ボルドーが文句を言ってきましたね。でも大丈夫です。彼がヒートアップする際中にパックが登場して周囲を威嚇、それをエミリアが収める形で周囲に王の器を示すという流れに―――

 

「ボルドー様がおっしゃる通り、銀髪のハーフエルフである私が、今のまま王になるのは無理でしょう。とはいえ姿を変えて偽ることはできません。ですので……私はこの容姿に対する恐怖を払拭して民を説き伏せます。その第一歩として私たちの陣営は『色欲』の大罪司教討伐を成し遂げました。私の隣に立つ騎士、ナツキ・スバルはその立役者です」

 

「ほう」

「ふむ」

「あら」

「へぇ」

 

 おファッ!?エミリアさん!?何してんすか、やめてくださいよ本当に!スバルくんが目立ち過ぎて騎士達の不興を買うとクッキー☆上映会始まっちゃうでしょうが!

 というか大罪司教の件はエミリアに黙ってたはずなんですが。

 

『あの件なら裏でコソコソ動いてたのをリアが察したみたいでねー。ロズワールに尋問したら正直に吐いてくれたってさ。君を心配してのことだから、リアを責めないであげてね』

 

 あ、パックから念話が飛んできましたね……ってロズワールのせいかよ!ふざけんじゃねぇよお前これどうしてくれんだよ!

 

「ちょーっとええかな? ウチにはそちらさんが法螺吹いてるようにしか思えんのやけども。所在不明の大罪司教に遭遇したことは百歩譲って認めてあげてもいい。でもそこらの傭兵より圧倒的に弱そうなその子が、災害の擬人化のような大罪司教を討伐できるとは到底思えんのよ」

 

 そうだよ(便乗)。アナスタシア、ナイスゥ!

 ただ、信じられないでしょうが『色欲』の大罪司教を討伐したというのは本当なんですよね。ただし、スバルくんはただの補助!ロズワールが獅子奮迅の働きをしてくれたんです!今回はエミリアが騎士であるスバルくんを立ててくれただけ!

 よし、無事ロズワールに手柄をなすりつけて目立つのを―――

 

「ナツキ・スバルと言ったか。卿の発言は途中から嘘の風が吹いていた。つまり大罪司教を討伐したのは事実で、卿が補助に徹したというのが嘘ということだな?」

 

 てゅわあああ!(クルシュのこと)忘れてたああああ!

 あの人、風見の加護で嘘を見抜けるじゃん!私ってほんと馬鹿!

 

「もっとも、卿が狂人で、大罪司教を討伐したと思い込み、そのうえで周囲を欺いたという可能性もあるが――」

 

「アタシはその兄ちゃんならヤバイ奴の討伐ぐらいやりかねないって思うぜ。実際『腸狩り』ってやべー女を殺ってるわけだしな」

 

 待てこらガキ!なんで援護射撃してるんだよ!痛てぇっつってんじゃねえかよ。

 あーもう滅茶苦茶だよ……。そうだ、ラインハルト!この場を収めてください!オナシャス!

 

「任されたよ。うん、そうだね……皆様、この際大罪司教が討伐されたかどうかの真偽は一先ず置いておきましょう。薄っぺらい嘘つきが王座につけるほど、民も龍も甘くないはずです。今回の発言が真実だったか否かはいずれはっきりとするでしょう」

 

 さて周囲の反応は――

 

「うーん、カララギでは『能ある鳥は爪を隠す』っていうけど、そういうことなんかなぁ。ふふ、ウチあの子が少し欲しくなってきたなぁ」

「アナスタシア様、お言葉ですが一の騎士の引き抜きは無謀かと」

 

「そろそろ飽きてきたし、妾帰っていいかのう?」

「流石姫さん、今の流れでそれ言うか。我が道を行き過ぎて言葉がでねーよ」

 

値踏みするような視線は感じるものの、賢人会で爆弾発言したことへの怒りはそれほど見られない……これはもしかしてガバ回避か?

 サンキューラインハルト!ありがとナス!ああ^~生き返るわぁ^~。

 

 流石に王選候補者や近衛騎士達が見ず知らずのスバルくんを信用したということはないでしょうね。世界に名を轟かせる剣聖ラインハルトの忠言と、実績から信頼のあるクルシュの加護を信用して矛を収めた形になったのでしょう。

 

 

 さて、見事にガバを回避したところで今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 



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Part.9

 白鯨が厄介すぎるRTAはーじまーるよー!

 

 前回はガバを回避したところでしたね。あの後一応身構えてユリウスや近衛騎士の様子をうかがってたんですが、特に接触してこなかったので安心です。お前には歴史がないから云々~と言われると思ったのですが、何もありませんでした。

 

 さて、王選会議が一段落したのでここでセーブポイント更新です。会議を乗り越えて最初にやることは……情報収集ですね。後で合流する旨をエミリアに告げて、王都を練り歩きましょう。一応ロズワールにも挨拶しようと思ったんですけど、用事があるとか言って何処かへ行っちゃいましたね。

 

 情報収集についてですが、徽章事件やら大罪司教討伐やらのお礼が給料に上乗せされているのでポケットマネーに余裕があり、金に任せた強引な情報収集が可能になっています。

 必要な情報はクルシュが武器・防具をかき集めているということ、クルシュが商人勢から快く思われていないこと、白鯨と先代剣聖とヴィルヘルムの関係性、王都の有力商人(ラッセル)のこと、それから『複製魔法』について。

 必要とあらばマネーパワーに頼りつつパパッと情報収集しましょう。

 

 ――OK、情報収集が終わりました。思ったより時間がかかったのが痛いですけど、ままええわ。ついでに自害用の剣を買っておきましょうか。

 では次に何をするかと言うと……行商人のオットーが居るフルールという街まで移動し、その後オットーに金を握らせてペテルギウスの隠れ家にお邪魔しましょう。

 エミリアに後で合流すると約束しましたが、あれは嘘です。(この周では合流し)ないです。

 

 では道中面白いイベントもないのでペテルギウスに会うまで114514倍速で送りましょうか。

 

 ~少年移動中~

 

 はい、ペテルギウスの隠れ家、というか隠れ洞穴が見えてきましたね。話が長引くのは嫌なのでオットーには帰ってもらいました。

 

 カペラのときもそうでしたが、大罪司教は特にフラグを立てなくても遭遇することができます。出現場所を知らずに偶然出会ってしまって初見殺しされたプレイヤーは数知れず……。

 メタ知識で居場所を特定して出会った場合、ゲーム中ではスバルくんが『偶然にも』大罪司教に出会ってしまったという扱いになります。いやー偶然って怖いなーとづまりすとこ(適当)。

 

 さて、そうこう言っている内に、

 

「お待ちしておりましたデス、寵愛の信徒よ。ワタシよりも更に深い寵愛、興味深い……。申し遅れマシた、ワタシは魔女教、大罪司教『怠惰』担当。ペテルギウス・ロマネコンティ、デス!」

 

 出たわね。大罪司教『怠惰』担当、ペテルギウス・ロマネコンティの登場です。第三章ボスは二体いるんですが、その内の一体ですね。

 彼も大罪司教の例に漏れず、普通に戦うとかなり苦戦するというか、情報がないと勝てないぐらい厄介な相手です。

 不可視の手を生み出し敵を攻撃する『見えざる手』、黒い霧を周囲に広げ耐性のない者を発狂させる『怠惰』、そして殺されても魂を別の身体に移動させて生きながらえる『憑依』と糞能力モリモリですね。こんなんじゃ戦いになんないよ~(棒読み)。

 魔女教創設者の1人であり、エミリアの養母フォルトナとも交流があったなど、単なる敵では終わらない設定があるようですが……真相は自分の目で確かめてください。

 

 当然現状では勝てないので、まずは情報収集に徹しましょうか。エミリア……半魔は結構手強いらしいけど、そっちの『計画』は大丈夫か大丈夫か?(適当)

 

「それについては問題ないデス。各地に『指』を配置してマスから、半魔がこちらに来れば――」

 

 各地に『指』という存在がいることがわかったので会話はキャンセルだ。これ以上話しても有益な情報はそれほど出てきませんからね。狂人とまともな会話なんてできないってそれ一番言われてるから。

 では時間がもったいないので自害しましょう。サラバダー!

 

 

 オッハー!(激寒)

 死に戻って再び王選会議終了後へ。さて、次にやることは白鯨の出現場所と時間の確認です。これをやっておかないと、クルシュとの白鯨討伐会議のときに嘘判定されちゃいますからね。

 

 エミリアに後で合流すると伝えて一旦別れましょうか。皆さんお察しの通りこの周でも合流なんてしません。エミリアのこと嫌いじゃないし好きだよ。でもタイムのためだから仕方ないね♂

 

 では自害用の剣を購入後、大金で商人殴りつけて竜車に同乗しつつ、白鯨が出現するリーファウス街道まで移動しましょうか。イクゾー!

 

 はい、到着しました。後は携帯電話を取り出して時間を確認しつつ、白鯨が出現するまで受け身の練習でもしておきましょうか。死んだら肉体値はリセットされるので、技能値の向上ぐらいしか今はできないんですよねー。

 

 白鯨が出現するまで時間があるので、第三章ボスの内のもう一体、白鯨の解説もしておきましょう。

 白鯨というのは『暴食の魔女』ダフネが生み出した三大魔獣の内の一体です。白鯨という名前が示している通り白い鯨の姿をしており、身体がクッソ大きいです。

 人に害をなす魔獣であり神出鬼没なため、職業柄各地を移動する商人たちにはかなり恐れられている存在ですね。

 

 こいつの特に恐ろしい点は、触れると世界中から記憶ごと存在を抹消される『消失の霧』を排出するところです。

 人が本当に死ぬのは命が尽きたときではなく他人に忘れられたとき、なんて言いますが、そういう意味では人を一瞬で死なせる能力を持った悪辣な魔獣といえるわけですね。

 

 しかもこいつ、死にそうになったら分身した挙句、本体は上空に逃げて安全地帯から攻撃を仕掛けてくるんですよ。生き抜くことだけを考えた恥知らずな行動に、クッソイライラさせられます。

 一回でこれを撃破した原作スバルくんたち誇らしくないの?

 

 本チャートでも原作同様、白鯨との戦闘に臨むのですが……原作とは違ってレムとの信頼関係を築けていない以上、ただ原作をなぞるだけでは絶対に失敗します。日時的にラインハルトがまだ邸宅にいるでしょうから、相談すれば協力してくれるでしょうが、それをやると功績がフェルト陣営に集中するのが不味すぎる。

 

 ではどうするのかというと……化け物には化け物をぶつけるんだよ!

 

 さて、説明をしている間に白鯨が出現したようです。出現時間は……試走通り『8時30分』、プリキュアが始まる時間ですね。原作の時間から大幅にズレていますが、諸々のフラグの影響でしょう。必要な情報は入手できたのでパパッと自害。

 

 オッハー!(激寒)

 時は再び王選会議後へ。下準備が整ったので、アナスタシアとラッセルに声をかけてから、エミリアと一緒にクルシュ邸に行きましょう。そこで白鯨討伐会議を終わらせればいよいよ――

 

 白鯨解体ショーのはじまりや。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 大精霊、パックの朝は遅い。目覚めるのはなんと午前9時、社会人なら遅刻間違いなしである。もっとも目覚めと仕事開始が同時なうえ、エミリアの部下ではないから叱られることなど無いのだが。

 

 そして公務員と揶揄されるほどホワイトな勤務時間で、その時間なんと8時間。つまり午後5時から午前9時までが休憩時間、もとい就寝時間となるのである。その間はパックの目がエミリアに届かない時間であり、エミリアが危険に晒され得る時間となるわけだ。

 

 もっとも、このことに関してパックはあまり心配していない。なぜなら、エミリアはそれなりに強いから。

 その辺のチンピラどころか、騎士でも勝つのは難しいだろう。それぐらいには強い。流石にエルザぐらいの強敵には敵わないかもしれないが、そのときはオドを消費してパックを呼び出せば解決する。

 そして、エミリアは彼我の実力差を察せるほどには優秀で、必要とあらば自身のオドを迷いなく消費できる冷静な子である。加えて、数は少ないものの周りには心強い味方も居る。

 

 だから、自分の目が届かないときにエミリアが死ぬことはないと、パックはそう考えていた。だが、この世界は厳しい。そのような油断をしていた彼の目の前に、このような光景がやってくるのはある意味当然だったと言えよう。

 

 

 本来活動していない時間に呼び出され、それに応じて急遽顕現したパックの足元には―――息の根が止まったボロボロのエミリアが転がっていた。

 

 

 それを見た瞬間思考が止まる。これはなんだ、どうしてエミリアは。スバルやロズワールは何をしていたんだ。考えども疑問は尽きない。嘘や幻術、あるいは演技の可能性を考慮して、エミリアとの見えない繋がりを通して呼びかけたものの……やはり返事は帰って来ない。そしてマナの流れや生命の鼓動を感じない。

 

 そこまでやって理解した。ああ、終わってしまったんだと。次いで思うのは誰がこんなことをしたのか。その答えと思しきものは目の前を悠々と漂っていた。

 

「暴食……今は白鯨と呼ばれているんだったか。お前がリアを……。ロズワールやスバルなら危険から遠ざけてくれると思っていたが、信頼したボクが大馬鹿だったようだね」

 

 悔やんでも悔やみきれない。目的の上で絶対にエミリアが必要なロズワールなら、あるいはエミリアと分け隔てなく接し、突拍子もないアイデアで困難を打ち砕くスバルなら、エミリアを危険から遠ざけてくれるなどと油断しきっていた。

 

 だがもう遅い。そしてエミリアの居ない世界など彼にとっては意味がない。だから―――こんな世界など消えてしまってもいいだろう。

 

「世界を終わらせる前に……まずはお前からだ。楽に死ねると思うなよ」

 

 パックがそう吼えると、瞬間、世界が凍てつき始めた。その影響は地面だけにとどまらず、上空を漂う白鯨に及び、厄介な霧を噴出する部位を尽く凍らせていく。

 

 そして今、白鯨が地に沈んだ。パックに対する反撃の術は封じられ、もう使えない。ここから始まるのは戦闘ではなく蹂躙、ただの八つ当たりである。いざ、嬲り始めようとしたそのとき、

 

「――――そこまでよ、パック。騙すような真似をして本当にごめんね」

 

鈴の音のように綺麗な、耳慣れた優しい声がした。その声に思わず振り向く。

 

「……リア、なのかい? そうか――」

 

 そこには、ボロボロのエミリアの遺体とは別に、生きているエミリアが無傷で立っていた。繋がりを通して流れ出してきた温かいマナが、目の前の彼女が偽物ではないと告げる。そのことに思わず涙が出そうになった。

 

 そして理解の早いパックは一瞬で察した。あ、これスバルの糞野郎が仕組みやがったな、と。

 



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Part.10

 魔女の臭いでマウントをとるRTAはーじまーるよー!

 

 さて、白鯨討伐戦についての解説です。前回述べた通り戦う手段は少ないので、正面から戦えば長期戦は必至、なんなら撃破できるかどうかも怪しい。

 そこで本チャートで採用した方法が、本気パックを白鯨にぶつけることです。

 

 エミリアにお願いして事前にパックを説得できればよかったんですけど、それは無理なんですよね。というのも、パックはエミリアに対して過保護なので、必要もないのに白鯨という化け物に近寄らせるという選択をしません。また、古の契約の関係でエミリアが生きている内は大罪関係で本気を出しません。

 

 じゃあ事後承諾で、エミリアが死んだと思わせて本気出させればいいんじゃね?というのが本チャートを思いついた経緯です。では実際どうやったのか。

 

 まず、エミリアが死んだと思わせるにしても、本当に殺すわけにはいきません。そんなことしたらゲームオーバー直行ですからね。

 そこで、『複製魔法』を用いてエミリアの身体の複製を行い、遺体を偽装することにしました。複製魔法は人間に使うと魂のないガワだけの物体が生まれるので、遺体偽装に丁度良いんですよね。この魔法の使い手は、商人として様々な人材と繋がりのあるアナスタシアに用意してもらいました。

 

 もちろん、ただそれだけではパックを騙しきれません。そこで、離れた位置で待つエミリア本体に、パックを召喚すると同時に魔法で一旦仮死状態になってもらいます。これで見えない繋がりから生存を察知されることもなくなります。

 パックが騙されて白鯨を氷漬けにしたのを確認したら、王国一の回復魔法使いであるフェリスの手でエミリアをパパッと蘇生。そしてパックを止めに行ってもらった……というのが一連の流れです。

 

 この案、エミリアに却下されるんじゃないかとヒヤヒヤしてたんですが、ずっと遠ざけられているのは嫌だと思っていたようで、無事引き受けてくれましたね。パックの過保護っぷりをよく理解していて、普通に説得するのは難しいと分かっていたから、というのもあるでしょう。

 

 ちなみに今回の白鯨討伐成功は9割ぐらいエミリア陣営のお陰ですが、功績はエミリア陣営に集中しません。なぜなら、功績の山分けを条件としてクルシュ陣営と同盟を結び、フェリスやヴィルヘルムをはじめとした強力な部下たちを貸し出してもらったから。

 フェリスは白鯨攻略に、ヴィルヘルムはペテルギウス攻略に必要なのでここは妥協するしかありませんでした。

 

 解説終了。あとはヴィルヘルムたちが瀕死の白鯨に止めを刺すのを確認すれば、工事完了です。氷漬けになっていて分身も『消失の霧』も使えないので安心できますね。

 いやぁ順調すぎて怖いです。

 

 白鯨戦が終わったのでエミリアとパックのところに行きましょうか。パックが滅茶苦茶疲れた顔してますね。おっ、大丈夫か大丈夫か?

 

「スバルさぁ……君ってやつは本当に……。リアの道を考えてやったってのが伝わってくるから怒りにくいんだけどさ、もうちょっとどうにかならなかったのかい。事前にボクを説得するとかさ」

 

(その選択肢は)ないです。それが無理なのはパック自身がよーく分かってるでしょう。

 

「それはそうなんだけど。リアに無茶をさせたのはちょーっと許せないかなぁ?」

 

「パック、今回の件でスバルをあんまり責めないであげて。スバルは提案してくれただけで、それを承諾したのは私なんだから。いつまでも守られてるだけの飾り物でいるのは嫌だったの」

 

「リアがそこまで言うなら……。スバル、分かってると思うけど、リアにあんまり無茶をさせないでね。ボクの大切な娘だから、本当に死んじゃったら許さないよ」

 

 かしこまり! こちらとしても死なせたくないと思ってるので安心してくれよな~。

 

 さて、エミリアやパックとの会話も終わったので、クルシュから借りた戦力を引き連れてペテルギウス討伐に向かいましょうか。原作通り、クルシュやレムたちには白鯨の死体を王都に運搬してもらうことになっています。

 

 原作では重傷のため仕方なく王都に帰還することになったレムですが、全く怪我を負っていない本チャートでもロズワールへの報告という名目で帰ってもらいます。

 なぜこんなことをするかというと、大罪司教『暴食』担当のライ・バテンカイトスにレムの記憶と名前を食べてもらうためですね。後々プレアデス監視塔に行くフラグの一つになるので、レムには申し訳ないですがここで昏睡してもらいます。

 

 ではクルシュたちに一言告げて、いよいよ『怠惰』討伐にイクゾー!デッデッデデデデ!

 

 ~少年移動中~

 

 はい、ペテルギウスの隠れ家の近くまでやってきました。少し離れたところにエミリアを待機させて、ヴィルヘルム以外の戦力には各地の魔女教徒討伐と村の保護をしてもらっています。

 

 さて、ペテルギウスの調理方法についてですが……かなり単純で、白鯨より速いです。

 

「お待ちしておりましたデス。寵愛の信徒よ。ワタシは魔女教、大罪司教『怠惰』担当。ペテルギウス・ロマネコンティ、デ――」

 

 まず相手が名乗ったら石を投げつけて会話をキャンセルだ。そして……これでもかというほど挑発しましょう。

 スバルくんより臭くない野郎の話なんて聞かねーよバーカ!もっと寵愛もらってから出直してこい。ちなみにスバルくんってばウンコ遊びしてただけでこんなに愛されちゃったんですけどね、初見さん。こんな奴より寵愛薄いってウッソだろお前www

 ちょっと怠惰過ぎねえか?ねえどんな気持ち?どんな気持ち?悔しかったら殺してみてどうぞ。

 

「――ッ! よくもよくもよくもよくもォォォ! ワタシの愛をォォォ――」

 

 ヘイトをしっかり稼いで視線を引き付けたら、背後から忍び寄ったヴィルヘルムが、

 

 

 

ペテルギウスの首を切り飛ばしてくれます。そして、かなり挑発したので……来ましたね。他の指先に憑依せず真っ先にスバルくんに憑依して、自害させようとしてきます。

 

『あの程度で勝ったつもりになるとは実に実に実に実に実に実にィ……怠惰デスね―――』

 

 はい、ここで『嫉妬の魔女呼び出し』を発動。(嫉妬の魔女を)見たけりゃ見せてやるよ!

 

『あ……アナタは……魔女よ――』

 

 『嫉妬の魔女呼び出し』を発動。

 

『何故――』

 

 『嫉妬の魔女呼び出し』を発動。

 

『あ――』

 

 『嫉妬の魔女呼び出し』を発動。

 

『――――』

 

 はい、ペテルギウスの反応がなくなりましたね。これで大罪司教『怠惰』担当、ペテルギウス・ロマネコンティの討伐終わりッ!閉廷!

 最後が気持ち良かった(小学生並みの感想)。

 

 さて、第三章のボスを全て討伐できたので、後はエミリアと合流しましょう。たしかこの辺りで待機させて……いましたね。

 エミリアおっすおっす、無事『怠惰』を討伐してきましたよ。

 

「お疲れ様、スバル。この短期間で大罪司教を二人もギッタギタにやっつけちゃうなんて夢みたい」

 

 ギッタギタにやっつけるって今日日聞きませんね。こうやって軽く会話をして、最後にレムについての話題を振りましょうか。それに対してエミリアが「レムって誰の事?」と言った瞬間、第三章が終わりに――

 

「これだけのことをしたんだから、レムもスバルのこと見直してくれるといいわね」

 

 ちょっ、ちょっと待ってください。今、何と言いましたか?

 

「え? レムもスバルのこと見直してくれるといいわね、って」

 

 えっ?は?

 

 なんでレムの記憶が抹消されてないんですか!

 確かにペテルギウスを最速で撃破しましたが、時間的にはもう『暴食』に襲撃されて権能が発動しているはずなんですが!?

 

 今自害しても、セーブポイントがペテルギウス撃破後に更新されているので、やり直しはできません。

 こんなもの!こんな!手作りチャートなんて!! こんな! うっ、ううっ…… 壊れちゃった……私の気持ち……。

 

 

 あ゙あ゙あ゙も゙お゙お゙お゙や゙だあ゙あ゙あ゙ああ゛!!!!!

 

 



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第三章幕間 『浅慮の代償』

 王都に向かって帰還していたレムやクルシュたちは、かつてない危機に陥っていた。

 油断していたのだろうか。あるいは白鯨戦があまりにもあっさり終わってしまったことに気が緩んでいたのかもしれない。

 だがそれ以上に、このタイミングで奴らが来るなどと予想していなかったのだ。こいつらは所在不明、神出鬼没だなんてことはわかりきっていたはずなのに。

 

「ペットがやられた気配を感じて来てみれば――こりゃ豊作じゃないか。やっぱり食べるなら気骨に満ちた奴が一番ッ! 久々に喰らい甲斐のある奴を食べられそうで、俺たちの飢餓が満たされていくのを感じるッ」

 

 一人は大罪司教『暴食』担当、ライ・バテンカイトス。

 

「そういうところ、僕には理解できないなぁ、バテンカイトス。満たされるといってもそれは自分のものでもないじゃないか。どうして今の自分に満足できないのかね。人間を噛みしめる前に、自分がここに生きているという細やかな幸せを噛みしめるべきだよ」

 

 もう一人は大罪司教『強欲』担当、レグルス・コルニアス。レムたちは『暴食』と『強欲』の二人による襲撃にあっていた。

 

 白鯨戦を無傷で突破できたおかげで力が有り余っており、彼らの初撃には何とか対応することができた。現在、レムとクルシュの両名に怪我はない。

 

 だが、万全の状態を以てしてなお勝てる未来が見えない。大罪司教二人がどのような能力を秘めているのかは分からないが、『暴食』は先ほど歴戦の仲間たちをたった一人で薙ぎ倒した実力者。『強欲』にいたっては、たった一人で都市を滅ぼした噂のある化け物なのだ。

 

 この場で特に戦闘力が高いレムとクルシュが連携しても倒すことがかなわない相手である。不思議な発想で道を切り開くスバルや単純に力のある大精霊パックがいればあるいは、とは思うが、それは無い物ねだりに過ぎない。

 

 せめてもの足掻きとして時間稼ぎをしようとしたその時―――飛来した剣圧がバテンカイトスとレグルスに襲い掛かった。それをバテンカイトスは曲芸じみた動きで回避し、レグルスは棒立ちのまま受け止める。

 

「どうやら、最悪の事態は防げたようだね」

 

 その場にいた全員が声の方に向くと……そこには燃えるような赤い髪に青い瞳の男が立っていた。そう、『剣聖』ラインハルト・ヴァン・アストレアである。

 

「あのさぁ、不意打ちして他人を殺そうだなんてどういうつもりなの? とてもじゃないけど人間のやることとは思えないよね。騎士でございますって格好してるけどさ、騎士道精神とかないわけ? 立っているだけで何もしていない僕を切り殺そうとするなんて、王国も腐ってるんじゃないかなぁ」

 

 ラインハルトがとてつもない威圧感を放っているにもかかわらず、レグルスは揺らがず日常のワンシーンであるかのように喋り続ける。

 一方で彼我の実力差を感じとり、下手に動けないことを察したバテンカイトスは打開策を虎視眈々と模索する。

 

 そして、あまりに目まぐるしい展開に、レムたちは困惑していた。

 

「どうして『剣聖』がここに……?」

 

 出てきて当然の疑問、それに対し、

 

「――それはアタシが連れてきたからだぜ。あの頭のおかしい兄ちゃんの功績を聞いたとき、ピーンと来たんだ。こいつの後をつければデカイ案件が見つかるってな。んで、後をつけてみれば大当たりってわけさ! アンタらには悪いがアタシの王道の踏み台になって貰うぜ」

 

 返答をしたのは、いつの間にか隣に立っていたフェルトだ。走者がオリチャーを発動したせいで、王選会議にて『色欲』討伐がフェルトに伝わってしまい、そのことが彼女の盗賊としての嗅覚を刺激してしまった。その結果、ラインハルトを引き連れて大罪司教二人との対面に至ったというわけである。

 

 そして、フェルトの発言を耳にしたバテンカイトスは、こいつは馬鹿だと思った。今の話が本当ならこいつはラインハルトの主、つまりは弱点である。しかも見たところ大した実力もない小娘だ。この場に打開策があるとすれば、それはこいつを捕らえることだ。

 

 そうと分かればすぐ行動、バテンカイトスはジグザグとした軌道を描いてフェルトに向かっていく。当然ラインハルトがそれを阻止しようとするが、レグルスの妨害によってかなわない。レムやクルシュではバテンカイトスの動きを止めるに至らない。

 

 ついにフェルトに手が届くと思ったその瞬間――空から炎弾が降り注ぐ。

 

「あーららぁ、外しちゃったぁ」

 

 バテンカイトスが咄嗟に回避して声のする方向……空を見上げると、そこには道化師の恰好をした奇妙な男が浮かんでいた。

 

「あと少しってところだったのにさァ。やるね、やるなぁ、やるじゃん、やるかも、やってくれる、やってくれたよ! あァ、でもこんなに嬉しいことはない。次から次へと食べ甲斐のある奴が来てくれるんだからさァ! そこの美味しそうなお前、せっかくだから名前を教えて欲しいなァ」

 

「私の名前かい? そうだね、速度を考慮して……名前は『ホモ』だーぁよ。しっかり覚えておいてくれたまえ」

 

 それを聞いてバテンカイトスはニヤリと嗤う。馬鹿だらけで大助かりだ。これで『暴食』の権能の条件を一つ満たせた。あとは奴の掌さえ舐めれば。

 だがもちろん、それは彼のぬか喜びである。

 

「なーんてね、私の名前は『ホモ』じゃないよ。あれぇ、その反応。もしかして名前を起点に発動する呪術でもあったのかーぁな? ごめんねぇ」

 

 なぜなら、道化師姿の男、ロズワールの名前はホモではないから。

 

「さーて、討伐するのはスバルくんの役目だから……大罪司教撃退戦はぁじまぁるよぉー!」

 

 そう、ロズワールがここに来た目的は大罪司教の『討伐』ではなく『撃退』にある。ラインハルトの手で討伐されることだけは避けたい。

 ロズワールがここに来られたのは、王選会議室にてフェルトが野獣の眼光でスバルを眺めていることに気付いたからだ。よからぬことを企んでいると察したものの、国の最強戦力であるラインハルトを止めることはできない。だからこうやって尾行してきて、手助けするフリをしながら大罪司教が逃げる隙を作り、ガバを修正しようとしていた。

 

 本来ならバテンカイトスにレムを食べさせておきたかったが、あの場で動いてなければレムの前にフェルトが落ちていた。王選候補者の予期せぬ脱落が未来に与える影響は計り知れない。ゆえにやむを得ずバテンカイトスを阻止。

 その隙にレムたちが撤退したため、そこからバテンカイトスをレムの方へ誘導するとなると、さすがにラインハルトの不信感を高めすぎてしまう。

 

 結果――ロズワールの目論見通り、『暴食』と『強欲』の撃退には成功。一方でレムとクルシュが権能の影響を受けないままイベントが終わってしまったのである。

 

 

 斯くして、オリチャーという名の浅慮、その代償が形となって現れたのであった。

 



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第四章 動き始める時計の針
Part.11


 魔女の個性が強すぎるRTA、もう始まってる!

 

 前回は第三章が終わったところでしたが……終わりのムービーシーンを見た感じ、ラインハルトとロズワールが駆けつけて『暴食』と『強欲』を撃退したようですね。どうしてこうなった。

 

 視聴者兄貴たちは「再走して?」と思っているでしょうが、ここまでかなり良いタイムが出ているので続行します(鋼の意思)。

 チャート外の出来事が発生しても対応できるようにちゃーんと知識を仕入れてますから(激ウマギャグ)、ここでのガバなんて誤差だよ誤差!

 

 さて、第四章突入前に現状確認をしておきましょうか。まず、第三章クリアの経験値は体力と俊敏へ。この辺りは伸ばしておいて損のないステータスですからね。

 それから経験値以外の報酬ですが……まずクルシュ陣営から謝礼の一つとして地竜のパトラッシュをもらっています。原作と違って共に死線を潜ってないので好感度は低いですけどね。まぁ無いより有った方が良いのでありがたくもらっておきましょうか。

 そして、魔女教徒撃退の副産物として行商人、オットーが仲間に加わっています。彼は事務能力が高いだけでなく、『言霊の加護』という加護を持っており、動植物と会話して力を借りることができる有能キャラですね。

 

 

 確認は以上。いよいよ物語は第四章に突入します。エミリアやオットーと共に『聖域』にイクゾー!デッデッデデデデ!

 

 さて、目的地に到着するまで時間があるので、みなさまのためにぃ~本チャート第四章の流れを説明しましょうか。

 

 最初の流れは、疲弊して休養目的で移動したロズワールと魔女教徒の襲撃から避難した村の住人たちが、メイザース家が継いできた『聖域』という土地にいるので、そこに迎えに行くという運びです。

 

 そして、本章で予定されているイベントは『強欲の魔女エキドナとの出会い』『聖域の試練の突破』『魔獣:大兎の討伐』の三つ。エルザとカペラを抹殺しているのでロズワール邸襲撃イベントは消滅しました。

 では、それぞれ解説していきましょうか。

 

 

 まず『強欲の魔女』エキドナとの出会いについて。聖域にある墓所には、強欲の魔女エキドナの魂が眠っているので、ここにお邪魔します。

 

 エキドナは真っ白な髪と喪服のような黒い衣装が特徴的な美しい女性で、知識欲と未知への好奇心を行動原理としています。

 そして、なんと『叡智の書』という世界の記憶を引き出して知識を得られるチートアイテムを持ってるんですよ。これによってスバルくんの『死に戻り』を把握できる数少ないキャラであり、様々な可能性を観測できるスバルくんに強い興味を抱きます。

 

 エキドナと契約すると膨大な知識をもとに助言や選択肢の提示をしてくれるのですが……そんな契約はフヨウラ!速さを度外視して、ゲームクリアという結果だけを重視するなら協力するのもありなんですけどね。

 

 エキドナと契約をしない一番の理由は……RTAってのは自分で頭をひねってチャートを組むのが楽しいものだと思うからです。

 それに、エキドナの提示する道って意図的に無駄が作られてるんで、従うとタイムロスが甚だしいんですよね。

 

 (そういうわけでエキドナとの契約はいら)ないです。

 

 それでもエキドナに会おうとしているのは、あるモノを手に入れてスバルくんを強化するためです。それについては後ほど。

 

 

 次に聖域の試練の突破について。聖域にはハーフ種族の脱出を阻害する結界が張られていて、エキドナの墓所で行われる『試練』を突破してこの結界を剥がすことが第四章のクリア条件の一つになっています。

 

 これに関して、エミリアに突破させるよりスバルくんに突破させた方が早いんじゃね?と思うでしょうが、そうするとエミリアが強化されないまま第四章が終わっちゃうんですよね。後々を考えるとそれはうま味に欠けるので、本チャートでもエミリアに試練を突破してもらいましょう。

 

 

 最後に大兎の討伐について。大兎という、まとめて殲滅しなければ分裂を繰り返して増え続ける厄介な魔獣が来るはずなのですが……前章のガバの影響が出るならここだと睨んでいます。

 エキドナイベントや試練イベントの発生はスバルくんの手で促せますが、これに関しては無理ですからね。

 

 ここの変化にどう対応するかが重要になるでしょう。ちなみにパックは聖域に突入するとほとんど顔を見せなくなるので役に立ちません。はーつっかえ。

 森を焼き払って大兎を殲滅できるように、オットーが売り損ねた大量の油も一応持ってきているのですが、どうなるやら。

 

 

 解説は以上。色々言っている間に聖域に到着しましたね。聖域に突入した途端、獣人のクォーターであるガーフィールに襲われますが、ここではどうあがいても勝てません。心意気を認められる程度に戦ったら素直に負けましょう。

 

 はい、戦闘が終わりましたね。ではガーフィールの案内でロズワール、レム、ラムが待つ場所まで進んでいき、状況説明、それからエキドナや試練についての話を聞きます。

 

 それが終わったらエキドナの眠る墓所へ。試練を受ける資格の無い奴が入ると怪我をするとガーフィールが説明してくれますが、無視して全力で駆け込みましょう。スバルくんは大した怪我を負わないので問題ないです。

 墓所に足を踏み入れた瞬間、意識が暗闇の中に落ちていき……。

 

 

 オッハー!(激寒)

 目が覚めると謎の真っ暗な空間にいるので、ひたすら前に走っていきます。そうすると、やがて周囲の景色が石造りの通路に変わり、

 

「――なるほど、それが君の根幹か。おっと、これは失礼。ボクの名前はエキドナ。強欲の魔女と名乗った方が通りが良いだろうか」

 

目の前に強欲の魔女エキドナが現れます。

 

 さて、なぜエキドナに会いに来たかというと、彼女の体液によって作られたお茶、通称『ドナ茶』を飲みたいからです。これを摂取することで、大罪司教撃破で獲得した『魔女因子』が身体に馴染み、新たなスキルを獲得できるんですよね。

 

 というわけで、お茶出して?

 

「嫌だよ」

 

 なんで? 嫌だって言っても出すんだよお茶を……。客人をもてなすのは当たり前ダルルォ!?

 

「君という客人を迎え入れ、対話の席を設けるのはボクの望むところだけどね。君、お茶を飲んだらすぐに帰ろうと思ってるだろう? 知ってるんだよ。だから対話が終わるまでお茶を出してあげない」

 

 はぁ~~~~~~~~~(クソデカため息)、あほくさ。

 こうなったらエキドナからお茶を貰うことは不可能ですね。仕方ない……それでは交流の第一歩、友好の証として握手でもしましょうよ。話はそれからです。

 

「うんうん、物分かりが良くて助かるよ。実りある語り合いをしようじゃないか」

 

 はい、エキドナと握手できましたね。――ここでオリチャー発動!

 

 エキドナの手をスバルくんの口元に引き寄せて、ペロペロ舐めます。

 

「ちょっ!? えっ?」

 

 好感度は死にましたが、エキドナの体液を取得できたので問題ありません。これで今まで獲得した魔女因子がスバルくんに馴染んでいきます。

 それじゃパパッと現実に帰してもらいましょうか。あくしろよ。

 

「いや、問題しかないよね? というかボクはあらゆる知識を蒐集した『強欲の魔女』なんだよ。質問とか無いのかい? 答えられることなら何でも答えてあげるよ。『暴食の魔女』のことでも『色欲の魔女』のことでも『憤怒の魔女』のことでも『怠惰の魔女』のことでも『傲慢の魔女』のことでもいい。こんな機会滅多にないから、よく考えてみてはどうかな」

 

 あくしろよ。

 

「……まぁいいさ。ただ、仮にも魔女と会話したんだし、そのまま返すわけにはいかない。いくらか対価を差し出してもらおうか。そうだね、一つはこの空間の口外禁止でどうだろう。それから、ボクの手を舐めるなんて無作法な真似をしたんだから、何かもう一つぐらい欲しいところだね」

 

 もう一つの対価ですか。どうすっかな~俺もな~。

 

 よし、コレを渡しちゃいましょうか。さあ、受け取ってどうぞ。スバルくんの故郷から持ってきた形見のようなものです。もう手元に残ってるのはコレと上着ぐらいしかないんですが、そこまで言うなら差し上げますよ。

 

「君の故郷の物か、興味深いね。いいだろう、取引完了だ。これは小物を収納する容器かな……ん? この中にこびりついてる黒い物体は?」

 

 ああ、それですか。それはロム爺のウンチですよ。そのカップラーメンの容器に入れて持ち運んだので、その時にこびりついたんでしょうね。

 

「……やっぱり取引は無しってことにするのは、ダメかな?」

 

 駄目です。取引完了って言ったのに反故にするっておかしいだろそれよぉ!?

 

「――それもそうだね。名残惜しいがここまでか。ああ、そうだ……ついでに『試練』を受ける資格を授けておいたから有効活用するといい。それじゃ、()()()()()

 

 ありがとナス! それではサラバダー!

 

 

 

 エキドナから解放されて目がさめると、そこはベッドの上。オッハー!(大声)

 

「そこまで元気なら大丈夫そうね。すごーく心配したんだから」

 

 まずはエミリアに無事を伝えて安心させましょう。

 さて、次にやるべきことは大兎への対処の準備ですが……ここはひたすらゴロゴロして時間を潰しましょうか。大兎が素直に来てくれると思えないので、まずはイベントの把握に努めます。

 

 ~少年休憩中~

 

 すいませ~ん、ナツキですけど~、次のイベントまでま~だ時間かかりそうですかね~?

 もう二日後の昼になってるんですけど。

 

「ごめんねスバル、また試練を乗り越えられなくて……皆にも迷惑かけちゃってる」

 

 特にきっかけを与えていないので、やはりというべきかエミリアは試練を突破できてませんね。すぐに解消してやることもできたのですが……試練クリア直後にボスキャラが来て詰むという事態は避けたいので安定をとっています。

 まぁ試練なんて何回でも挑戦できるからへーきへーき、エミリアも安心してくれよな~頼むよ~。

 

「うん、まだ機会はあるわよね。私、皆の期待に応えられるように頑張――」

 

 

 

 ……は?エミリアの心臓が突き刺されて……えっ?

 

 ああ――――なるほど、そういうことですか。レムやクルシュの健在でここまで未来が狂うとは……いや~きついっす。

 目の前でエミリアを殺した、この真っ赤な髪の女性が、大兎の代わりにやってきた本チャート第四章のボスのようですね。

 

 

 彼女こそ、『剣鬼』ヴィルヘルム・ヴァン・アストレアの妻にして、『剣聖』ラインハルト・ヴァン・アストレアの祖母。

 

 そして――かつて白鯨との戦いで命を落とし、魔女教の傀儡となった『先代剣聖』、テレシア・ヴァン・アストレア。本来ならば第五章でアストレア家と決着をつけるはずだった強敵のお出ましです。

 

 

 今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 



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Part.12

 ボスキャラがヤバすぎるRTA、はーじまーるよー!

 

 前回はエミリアが『先代剣聖』テレシアに殺されたところでした。しかしこれはどうしたものか……何か糸口を探さねばならないですね。

 

 現場にはスバルくんとエミリアの二人がいましたが、真っ先にエミリアが殺されました。つまり魔女の臭いに反応する魔獣とは思考ルーチンが違います。

 

 うーん、おそらくですが……魔女教がテレシアをここに連れてきたのは、エミリアを確保して、嫉妬の魔女を降ろすに相応しい器かどうか試したいからだと思います。

 ペテルギウスがエミリアを襲おうとしていた理由がそんな感じでした。そして、器として重要なのは身体であり、魂は邪魔。だからエミリアを殺して持ち帰ろうとしているのでしょう。

 

 というわけで、現在のテレシアの思考ルーチンはエミリアを斬って連れ去ることが最優先になっているはず。

 さて、それを踏まえたうえで、今の手持ちの道具と頼れる仲間は――――ちょっと待ってください、これってもしかして、もしかするかも知れませんよ?

 

 作戦を思いついたので、早速テレシアに突っ込んで殺されます。そして、目が覚めたら仲間を集めて作戦会議を開きましょう。

 

 さあ、先代剣聖解体ショーの始まりや。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 ある日の昼頃、スバル、レム、オットーの三人を乗せた竜車が聖域を駆け抜けていた。

 

「ああああああ怖い怖い怖い怖いっ! ナツキさん何ですかあの女性!? 地竜の速度についてくるって化け物か何かですかぁ!?」

 

 それを追いかけるのは赤い化け物、テレシア・ヴァン・アストレア。

 この竜車には優先的に狙われるはずのエミリアが乗っていない。それなのに、なぜテレシアに追いかけられているのかというと、

 

「スバルくんスバルくん! こんなことを思いついて実行してしまうなんてやっぱり魔女教徒なのでは!? こんな――偽物とはいえ、エミリア様の体を! 地竜で引きずり回すなんて!」

 

パックを騙すときに使ったエミリアの複製体、それを鎖で引きずっているからだ。テレシアも本来ならこの程度の小細工に騙されなかっただろうが、魔女教の手で屍兵となり判断能力が著しく下がっていたため、見事に釣られていた。

 

「本物のエミリアたんが無事なら細けぇこたぁ良いんだよ! レムは引き続き攻撃魔法でアイツの妨害を頼む! オットー、目的地まであとどれぐらいかかる!?」

 

「もうしばらくで到着しますよ! でも本当にあの人に重要な役を任せても良いんですかね!? サボって何もしてない印象しかないんですけどぉ!」

 

「ああ、安心してくれ。本気を出したラムは」

「安心してください、本気を出した姉様は」

 

「「強いから」」

 

 

 

 スバルたちがテレシアと鬼ごっこをしているとき、少し離れた位置にてラムとエミリアが息を潜めて待機していた。

 

「エミリア様、『千里眼』でバルスたちの無様な姿が見えました。そろそろ仕掛ける時ですので、ご用意をお願いします」

 

「分かったわ」

 

 重要なポジションを任されたラムはいつも通りの冷静さを保っているが、一方でエミリアは少し緊張した面持ちでいる。

 

「エミリア様……安心してください。もし失敗してもバルスの馬鹿が頭のおかしい一手でなんとかしてくれるはずです」

 

「ふふ、それもそうね。それに……囮を引き受けているスバルたちの方が怖い思いをしてるもの、私が緊張なんてしてられないわね。―――それじゃ、ラム、いくわよ」

 

「はい。では合図に合わせてください。…………サン、ニ、イチ、ゼロッ!」

 

「ウル・ヒューマッ!」

 

 合図と同時にエミリアが氷の柱を生成し、射出する。そして、それにラムが飛び乗ることで前方へ高速移動。狙いの先にあるのは当然――スバルに釣られて移動してきたテレシアだ。

 

 ラムは標的を視界におさめると同時に氷を踏み台にして前方に跳躍し、さらに加速。そしてテレシアに攻撃を仕掛ける。

 奇襲に気付いたテレシアは足を止め、ラムを切り伏せようとするが……ラムは類い稀な戦闘センスとパワーによって、左拳で剣を弾いて斬撃を回避。そして、空いている右手でテレシアに全力の掌底をお見舞いする。

 

 その攻撃を受けてテレシアが吹き飛んでいくが、当然これだけで死んでくれるような相手ではない。それはここに居る全員が肌で感じていた。そして一撃を放ったラムは息切れで、もう全力を出せない。

 だが心配はない。なぜならここまで計画通りで……ここまで最後の一手のための布石にすぎないから。

 

 吹き飛んだテレシアが転がる先に待っていたのは落とし穴。そして、その中に溜められていたのはオットーが大量に買い込んでしまった油だ。

 当然、そこに落ちたテレシアは油まみれになる。そして、

 

「ロズワール様、お願いします!」

 

「任されたーぁよ。――――アル・ゴーア!」

 

そこに過たず放たれたのは、ロズワールによる全力の炎弾である。それによってテレシアは燃え上がり、灰燼に帰した。

 

 斯くして、エミリア陣営ほぼ全員の協力により、屍兵と化したテレシアが討たれたのであった。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 テレシア・ヴァン・アストレア戦、工事完了です……。火がこのまま燃え広がるのは不味いので、仲間にパパッと消火してもらっておしまいっ。

 

 作戦の成功にはロズワールの協力が必要なので少し心配でしたが……無事協力してくれて助かりましたね。素直に力を貸してくれたのは、これまで大物を討伐して好感度が上がっていたからでしょうか。

 

 それから、テレシアが全盛期より弱体化していたことも大きな勝因でした。『剣聖の加護』と正常な思考能力を持った彼女相手なら、この場の全員と協力しても絶対に勝てなかったので。

 

 さーて、ボスキャラを倒したことだしエミリアの試練に――

 

 

「あらあら、やはり人が心を通わせあう光景は素敵ですね。息を合わせ、喜びを分かち合い、苦しみを分け合い、一つになる。これこそまさに愛。そして、やはり愛は世界を救うんです。だってその証拠に、こんな苦難だって乗り越えてしまうんですから。私、思わず感動してしまいました」

 

 

あのさぁ……イワナ、書かなかった?間髪を入れずに行われるボスラッシュは卑怯だって。

 

「突然驚かせちゃってごめんね。でも皆さん黙って聞いてくれてありがと。戸惑っていらっしゃるみたいですから、まずは名乗るべきでしょうか。――私は大罪司教『憤怒』担当、シリウス・ロマネコンティと申します」

 

 今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 



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Part.13

 大罪司教の初見殺し性能が高すぎるRTAはーじまーるよー!

 

 さて、前回は屍兵と化した『先代剣聖』テレシアを撃破した直後に、大罪司教『憤怒』担当、シリウス・ロマネコンティがやってきたところでしたね。

 こんな難易度じゃ商品になんないよ~(棒読み)。

 

 いや本当、勘弁して欲しいです。ここから突破する術あるんですかね……?

 

 

 とりあえず解説を。シリウスは頭部を包帯で覆い、黒いコートを着込み、両腕に長い鎖を縛り付けた女性ですね。ペテルギウスを一方的に愛していて、彼と結ばれてないのにロマネコンティの家名を勝手に名乗っているというヤバイ女です。

 そしてぺテルギウスの愛の対象になる嫉妬の魔女、それからハーフエルフを滅茶苦茶憎んでいます。

 

 戦闘能力に関してですが、権能を抜きにすれば大罪司教随一の身体能力を誇る強敵です。普段の戦闘スタイルは、大量の炎を操りながら鎖をぶん回す感じですね。

 そして、単純に強いだけでなく権能がかなり厄介なんですよ。彼女が持つ権能は『感情の共有』と『感覚の共有』。

 

 例えばAとBに『感情の共有』を発動すれば、Aが恐怖した時点で、Bがどんなに勇ましい人物だろうと恐怖してしまい、足がすくんで動けなくなります。それだけでなくBの恐怖がAにプラスされ、そのAの恐怖がBにプラスされ……と感情がどんどん上乗せされていくという始末。また、自分と周囲の感情を繋げることで敵対心を削ぐという使い方もできます。

 

 そして自分と周囲に『感覚の共有』を発動すれば、誰かがシリウスを傷つけた時点で周囲の人間もダメージを受けてしまいますし、勢い余ってシリウスを殺せばその場にいる全員が死んでしまいます。

 

 これらの権能の範囲は一人や二人というわけではなく、シリウスを視界におさめられる位置にいれば何人相手でも発動可能という糞仕様。ああ逃れられない!

 ちなみにこのシリウスも本来なら五章で戦うはずの相手でした。

 

 

 解説終了。どうすっかな~俺もな~……。テレシア撃破の際、エミリアが離れた位置にいたお陰で未だこの場におらず、シリウスが怒り狂っていないことが不幸中の幸いでしょうか。現在シリウスと対話可能なところに糸口があるはずです。

 

 とりあえず撃破条件を整理しましょう。必要なのは『感情の共有』と『感覚の共有』を掻い潜ること、その上で大ダメージを与えて倒すこと。

 

 この場にいる味方、持っている道具、環境……ん、環境?

 

 ――OK、光明は見えました。まぁ拙い賭けの範疇を出ませんが、これに賭けてみるしかないです。

 

 

 まず最初にやることは、皆が行動を起こす前に、シリウスに愛を叫ぶことです。

 

 シリウス! お前の事が好きだったんだよ!

 

「えっ? ナツキさん、一体何を――」

 

 ツッコミ役のオットーがツッコんできますが、ここで『怠惰』の魔女因子獲得により生まれたスキル、スバル版見えざる手『インビジブル・プロヴィデンス』を発動!

 見えない手を生み出し、オットーの口を軽く塞いで一旦黙らせます。

 

「ッ!? …………!!!」

 

 暴れるなよ……暴れるな……。

 オットーすまんな。これも全部大罪司教って奴が悪いんです。もちろん錯乱してこんなことしてるんじゃないですよ。こうやって『怠惰』の権能を発動して見せることで、

 

「ああ、あああ! あなたは!? 良かった! そうですよね。やっぱりあなたは、帰ってきてくれたんですね!? あなたは真っ先に私に気付いてくれたのに、私はここまで気付かなくてごめんね。ずっとずっとずっとずっとずっとずっと、あなただけを探していました! あなただけを見つめていました……愛しい愛しいペテルギウス!」

 

はい。シリウスが、スバルくんをペテルギウスだと勘違いしてくれます。そして、シリウスは自分の気持ちがペテルギウスに伝わるのは恥ずかしいと思っているので、権能の対象からスバルくんを外してくれます。

 

 まずは第一段階突破!この時点で『インビジブル・プロヴィデンス』も解除しておきます。

 次にやることは、シリウスをこの場から遠ざけて、とある場所まで誘導することです。最初に愛を叫んだのはそのための布石ですね。

 

「しかも私を愛しているだなんて! 嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい! いつもはつれない態度だったのに! 以前の別れはこの時のための試練だったのですね! ああ、ああ! でもまずは忌まわしき半魔を――」

 

 あっ、おい待てぃ(江戸っ子)、シリウスと愛しあって一つになるなら血で汚れてないときにしたいゾ。後日にヤるって手もあるけど……もう待ちきれないよ!早く食べさせてくれ(意味深)。シリウスだってだいぶ溜まってんじゃんアゼルバイジャン。

 結界があるからハーフエルフは逃げられないし、殺すのは後回しにしてへーきへーき! 最悪こいつらが襲い掛かってきても、二人の愛情で力を合わせればイチコロだって!

 

「ああ、あああ、こんなにも私を求めて……そうですね、あなたとの愛の前に、あんな半魔のことを考えてしまってごめんね。ずっと一つになりたくてなりたくてなりたくてなりたくて苦しんでいたけど、ようやく――」

 

 OK、一旦エミリアや他の仲間を放置してスバルくんに集中してくれました。これで第二段階突破です。ここは誘いに乗ってくれるか怪しかったのですが……原作と違って、飽くまでシリウスが最優先、その他の奴らはカスという姿勢を見せたお陰でしょう。

 

 隣に女性を侍らせていたら、仲間が思わず反論したりシリウスが疑ってきたりして上手くいかなかったでしょうし、今までの糞みたいな交流や態度が活きましたね。

 

 さて、仲間たちが呆気にとられていますが、放置して計画の最終段階へ。

 誰にも邪魔されずに愛を囁きあって一つになれる良い場所があると言って、シリウスと共にこの場から離れ、ある場所へ誘導します。これで仲間たちもシリウスの権能の範囲から外れました。

 

 ~少年移動中~

 

 はい到着。早速、中に入りましょうか。シリウスも入ってどうぞ。少し暗いですが、衣擦れの音だけが分かる中で愛し合うというのも乙なものでしょう(適当)。

 

「いよいよ、あなたと! 私の『愛』が―――」

 

 シリウスがそう言って、この場所、()()()()()()()に入った瞬間―――『試練』を受ける資格を持たない者に罰を与える術式が発動します。資格があるのはハーフ種族かエキドナから直接資格を貰った者に限られるので、どちらにも該当しないシリウスは当然罰を受けるんですよ。

 そしてこの罰、ゲートの数が多くて大きい人ほど痛い目に遭います。だから大量の炎を操れるほどゲートの多いシリウスは大ダメージを受けるというわけです。

 

 ……よし!罰のダメージで気絶してくれました!意外と早く落ちたな~(歓喜)。

 ここが最大の賭けだったのですが、上手くいって良かったですね。シリウスが意識を保っていたら負け確だったので安心です。

 

 ちなみにスバルくんはエキドナから資格を貰っていたので、墓所に踏み入った罰を受けることはありません。

 そして、シリウスはスバルくんをペテルギウスだと思い込んで権能の対象から外していたので、ダメージの共有もないです。Foo↑気持ちぃ~!

 

 あとはシリウスが気絶している間に止めを刺すだけです。せめてもの手向けとして、見えざる手、『インビジブル・プロヴィデンス』で倒してあげましょう。

 

 シリウスの心臓を潰して……工事完了です。ぬわあああああああああああん疲れたもおおおおおおおおおおおおおおおん!

 

 

 上手くいきすぎて怖いんですが、何か見落としてないですよね……ないですよね?何か引っかかりを覚えるんですが。

 このシリウスは間違いなく本物。そして近くに権能の対象となる人間は居ません。シリウスの服をまさぐってみましたが、実はコートの中に村の子供を隠していました、なんてこともなかったです。うーん、モヤモヤしますが大丈夫そうですね。

 

 まぁここまでイベントがおかしくなっていると、エルザやカペラを抹殺しているのにロズワール邸が襲撃されている……という可能性は捨てきれません。ですが、もうセーブポイントが更新されていてどうしようもないので、そっちは諦めるしかないですね。

 

 

 ともあれ、第四章ボスを撃破したので、次はいよいよエミリアの試練突破に向けて動きます。

 

 では今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 



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Part.14

 試練の内容が意地悪なRTAはーじまーるよー!

 

 前回はテレシアに引き続きシリウスを倒し、ボスラッシュを制したところでしたね。妙な行動で仲間に怪しまれましたが、あの後シリウスの死体を見せつけることで誤解を解きました。

 今回は第四章最後のイベント、エミリアによる試練突破を行っていきたいと思います。

 

 本章最初に述べた通り、墓所の試練突破は第四章クリアに必須。なぜなら試練を突破して聖域の結界を剥がさないとエミリアが外に出られませんし、ガーフィールがメイザース領から避難してきた村人を解放してくれないからです。

 

 では、改めて試練について説明しましょうか。

 

 試練というのは夜にエキドナの墓所で発生するイベントのようなモノですね。全部で三つあり、それぞれ『過去』『現在』『未来』に向き合うことが必要となってきます。試練を受けられるのはハーフ種族かエキドナに資格を貰った者のみ。

 

 本チャートでもスバルくんではなくエミリアにこの試練を突破してもらうわけですが、その上で大きな壁となるのは第一の『過去』に向き合う試練でしょう。

 

 エミリアには故郷を襲撃されて大切な人を失い、そのときの力の暴走によって故郷の皆と自分をまとめて氷漬けにしてしまったという辛い過去があるんですよ。

 この過去に向き合うのはかなりの困難です。彼女の持つ精神的な脆さもありますし、何より『虚飾の魔女』パンドラの力によってエミリアの記憶が書き換えられていますので。

 

 そのうえで、エミリアが過去を直視しようとするならば、彼女の内面、精神性に大きな変化をもたらす必要があります。

 

 原作のように普段からエミリアに寄り添う姿勢を見せていれば、彼女の弱さを認めたうえで好意を伝えるという手段が有効でした。そうすればエミリアは精神的な弱さを克服して過去を直視できるようになります。

 ですが、本チャートでは積極的に交流していませんので、その手段はとれません。原作のように愛の言葉を囁いても薄っぺらいものになってしまうでしょう。だから別のアプローチをする必要があります。

 

 そこで本チャートでは……エミリアに試練を突破してもらうために、とある魔法を使います。

 というわけで、その魔法を使えるロズワールの下へ行きましょう。ロズワールさんは本当に神的に良い人だから協力してくれるはず。

 

 

 そうこう言って歩いている内にロズワール発見。オッスお願いしま~す。

 

「おやーぁ、スバルくんじゃないか。私のところに来たのは……また頼み事かーぁな?」

 

 そうだよ。ロズワールぐらいの魔法使いなら意思疎通の魔法を使えますよね?

 

「意思疎通……陰属性と陽属性を複合させた高等魔法『ネクト』のことだーぁね。六属性全てを高いレベルで操れる私なら確かに使えるとも。一体何に使うつもりかーぁな?」

 

 エミリアに試練を突破してもらうためですね。協力オナシャス、センセンシャル!

 

「ふむ。いーぃとも、協力しようじゃないか。――君がそうするべきだと思ったなら、それが効率的で最善の手段だろうからね」

 

 ありがとナス! やっぱロズワール君の優しさを……最高やな!

 というわけで、エミリアの背中を押すために使う手段とは、意思疎通の高等魔法『ネクト』です。原作ではペテルギウス討伐に一役買った魔法でしたが、本チャートでの出番はここですね。

 この魔法の有用性見とけよ見とけよ~。

 

 さて、協力を取り付けられたのでエミリアが試練を受ける直前までスキップです。

 

 ~少年待機中~

 

 はい、試練の時間になりましたね。

 

「それじゃ、スバル、それからロズワール。私頑張ってくるわね」

 

 エミリアが墓所に入ったのを見届けて十分な時間が経ったら……OK、もう試練が始まっている頃合いでしょう。それではロズワール、お願いします。

 

「――――ネクト」

 

 その瞬間スバルくんの視界がガラリと変わり―――。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 私、エミリアの目の前で……大好きな養母フォルトナが幼き日の私に微笑んでいる。

 

 私がこの過去の光景を眺めるのは二度目だ。一度目は初めて聖域にやってきた日。その後は襲撃者の件でゴタゴタしてたから、落ち着いて試練を受けた今日で二度目。

 

 私の目の前で故郷の人たちが微笑み、優しさを見せるたびに心が針で刺されたように痛む。やめて、私はこの後皆を裏切ってしまうのに。

 後悔と申し訳なさに押しつぶされそうになって、ごめんなさいごめんなさいと叫ぶけれど、私の声は届かない。ああ、なんて苦しいんだろう。

 

 そして、目の前の光景は苦しむ私にお構いなしに進んでいく。止まって!それ以上見たくない!無駄だとわかりつつそう叫んでしまったとき―――

 

 

「オッハー! オッッッハーーー!!!」

 

 

 馬鹿みたいに元気で大きい声が私の耳に響いてきた。この声は……スバル?

 

「エミリアたんオッスオッス。一緒に眺めてたけどすっげえキツかったぜ」

 

 声は聞こえるけど姿が見えない……というか私の過去見られてたの!?

 怒りと困惑が入り混じったような感情がこみあげてくるけれど、これまで献身的にしてくれたスバルに身の上話をしてなかった負い目もあるから素直に怒れない。

 

「あー、こういう強引な手段になっちゃったのは正直すまないと思ってる。後で何でもするから一旦無礼に目を瞑って欲しい。こうやってエミリアたんの試練に介入してきたのは伝えたいことがあるからだな」

 

 伝えたいことって?

 

「さっきのごめんなさいってのは、この故郷の人たちに言いたいんだよな? 見たくないって言ってたけど……謝りたいなら猶更、過去を直視するべきだと思うぜ。辛いこと言うようだけどな」

 

 その言葉で頭に血が上る。スバルが……私の、皆の何をわかるっていうのよ!

 

「話してもらったこと無いから何もわからねえよ。ただこれだけはわかるぜ。自分のやったことを理解しないのに上辺だけで謝っても、故郷の皆も……エミリア自身も納得できないってことはさ」

 

 それ、は……。

 

「直視したうえで謝るのが怖いってんなら俺も、ロズワールもレムもラムもパックもベア子も一緒に頭を下げる。なんならオットーに土下座させても良い。赤信号みんなで渡れば怖くないってやつだ」

 

 意味は分からないけど使い方は間違ってると思う。そもそも、謝ると言ったって氷漬けになったせいで皆死んだ可能性も……。

 

「エミリアが生きてたんだから、皆だって生きてる可能性の方が高いと思うぜ」

 

 仮に、生きてたとして。謝っても拒絶されたら……私は悪魔だって、魔女の娘だって呼ばれたのよ。

 

「エミリア、知ってるか? 俺ってば傭兵の皆に『良心を大瀑布に落とした男』『頭大罪司教』とか呼ばれてるんだぜ。これで主従そろって魔女コンビだな」

 

 ダメダメな評価じゃない。一体、何を――

 

「でもな、すげえ恥ずかしいけど、あいつらは『漆黒の策士』『エミリア陣営の柱』とも言ってくれたんだ。んで……エミリアのことは『白銀の天使』って言ってたかな?」

 

 ―――。

 

「それから、白鯨相手に無事勝てたのはエミリア様のお陰だ、感謝をって。以前にも言ったけど、今のマイナス好感度なんて誤差だよ誤差! 人生の時計が止まるまでリカバリーの可能性は残ってる。だから仲直りのエンディングに向けて一緒に駆け出そうぜ」

 

 ……でも、そこに辿りつくまですごーく大変だと思うわよ。

 

「へーきへーき、みんなで協力すれば大丈夫だって。安心してくれよな~頼むよ~」

 

 何も考えてないような返事に何故だか頬が緩む。どうしてだろう、スバルの返事を聞いて安心してしまったのは。厳しい道のりなのは分かってるのに、皆で力を合わせれば、なんとかできてしまうんじゃないかと思ってしまった。

 

 そうか。そうだ、私はもう独りぼっちじゃないんだ。そして、こんなところで蹲ってられない。

 今まで目をそらして立ち止まっていたから……私の出発地点はここだ。ここから駆け出そう。皆と笑いあえる未来に向かって、よーいスタートだ。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 エミリアが試練を受けている最中に、エミリアとスバルくんを意思疎通魔法『ネクト』で繋ぐことで試練に介入できます。これが通称『試練介入』の裏技、直球なネーミングですね。これを使えばエミリアとの会話をショートカットして彼女の過去を把握することができます。

 

 まぁ介入といっても、できるのは声を届けることぐらいですが。見ている光景を弄るとかは無理です。

 試練が始まる前に直接説得すればよかったんじゃねと思うかもしれませんが、本チャートでそれをやると失敗する可能性が結構ありました。説得の成功率を高めるためにネクトのある性質が重要だったんですよ。

 

 ネクトによって意識が深く繋がっている間は、自分と相手の境界が薄くなるんですよね。だから、スバルくんがへーきへーき大丈夫だと思うと、それに影響されてエミリアの思考も楽観的かつ前向きな方向に寄ります。結構あっさり説得されたのにはこういうカラクリがあったわけですね。

 まぁ一時的な効果かもしれませんが、試練を乗り越える間だけでも前向きになっていればそれで十分ですので。

 

 (邪悪な方法に見えますが洗脳では)ないです。ファンタジーなカウンセリングと言って欲しいですね。

 

 解説終了。これでエミリアが第一の試練を乗り越えてくれました。こうなると第二、第三の試練はトントン拍子に進むので何の心配もいりません。

 

 途中、聖域開放を嫌がるガーフィールが墓所を潰そうとしてくるのですが、エミリア陣営で囲んでパパッとねじ伏せましょう。戦いは数だよ兄貴。

 

 

 そうやって時間を過ごしていれば――

 

「みんなお待たせ。それから、改めて……すごーく迷惑かけちゃうかもしれないけど、これからもよろしくお願いします。力を合わせて、笑いあえる未来を作りましょう」

 

エミリアが全ての試練を乗り越えて、工事完了です……。エミリアの素敵な笑顔を見たらリザルト画面へ。

 

 ハラハラドキドキした第四章もこれで終わりッ!閉廷!あーさっぱりした。

 



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第四章幕間 『よーいスタート』

 聖域の木陰で一人の少年……スバルが休んでいた。怒涛のボスラッシュに加え、ネクトによる試練介入で大きな疲れがたまっていたのだ。

 

「ぬわあああああああん疲れたもおおおおおおおおおん! ……ん、あの人は」

 

 そこに薄赤の長い髪の少女が一人、トコトコ歩いて来る。

 

「おーい、スー坊! ようやく見つけたぞい。ここにおったのか」

 

「あんたは確かガーフィールの婆ちゃんの……リューズさん、でしたっけ。俺に何か用が?」

 

 リューズというのはガーフィールの祖母のような存在で、聖域のまとめ役である。見た目は少女だが口調は婆さんというロリババア属性の持ち主だ。

 

「儂からスー坊にどうしても礼を言いたくてのう。聖域を開放してくれて、ありがとう」

 

 そう言って少女は恭しく頭を下げ、手を差し出してくる。

 

「あー、どういたしまして? でもこっちにも利益があったから開放したわけで……それに開放したのはエミリアですし、俺なんかにそんな畏まらないでください」

 

 それに対してスバルは照れながら言葉を返し、少女の握手に応じる。その瞬間――

 

 

 少女がスバルの手を口元に引き寄せ、ペロペロと舐めた。

 

 

「リュッ、リューズさん、何を――いや、お前リューズさんじゃないな?」

 

「当たりだよ、ナツキ・スバル。これで意趣返し成功といったところかな」

 

 見破られた途端、少女はリューズの真似をやめ、普段の口調に戻った。スバルの手を舐めることが意趣返しとなる存在など一人しかいない。

 

「エキドナか……!? でもお前は死んでて……だけどその身体で動いてるってことはもしかして」

 

「安心したまえ、ボクはリューズの複製体の一つに宿っているに過ぎない。ガーフィールの祖母役に迷惑はかけてないよ。こうして蘇って出歩くことができたのは、君が結界を剥がしてくれたお陰だ。だから感謝を伝えようと思ってね」

 

 そう、エキドナは複製体に魂を定着させる蘇生の術式を完成させていたが、聖域の結界に阻まれて外に出ることができずにいたのだ。だから最初に述べた聖域開放に対するお礼は本心からの発言である。

 

「そうかよ。でも強欲の魔女って肩書きのお前が、お礼だけ言いに来るような殊勝な奴には思えないんだけどな」

 

「察しがいいね。単純な話さ、こうやって君のところに来たのは、君についていこうと思ったからだよ」

 

「はぁ!? 何で俺に? 自分で言うのもなんだが、お前にあんな無礼なことをやらかしたんだぜ」

 

 エキドナの唐突なストーカー宣言にたまげるスバル。次いで出てくるのは疑問である。

 

「君にも人間らしい感性が残ってたんだね。あの程度のことで、未知と予想外を好むボクが、君のような存在を諦めるわけがないだろう。あとアレは君のボケに乗っただけだよ」

 

「それは負け惜しみっぽくね? でも正直ついて来られても困るっつーか」

 

「おや、恩人であるボクにそんなつれない態度をとってもいいのかい?」

 

「は? 恩ってーと……」

 

 試練の資格を授けてくれたことだろうか。エキドナの好意で何かをしてもらった記憶はそれぐらいしかない。

 

「資格のことじゃないさ。――シリウスが気絶したとき、意外と早く落ちたなと思っただろう。でも、墓所の罰の威力が凄まじいとはいえ、あの大罪司教がすぐに気絶するのはおかしいと感じなかったかい?」

 

「それは……いや、まさか……!」

 

「そのまさかだよ。墓所に踏み入ったシリウスがすぐに気絶したのは、ボクが彼女を意識だけが滞在できるあの空間に招いたから。君も初めて墓所に入ったときに体験しただろう」

 

 今明かされる真実。またしてもオリチャーのガバの尻拭いをNPCにしてもらっていた。

 

「マジ、かよ……」

 

「まぁ安心したまえ。これだけを理由に何か強請ろうって魂胆じゃないからね。これは君に対するパフォーマンスの一つさ」

 

「パフォーマンス?」

 

「そうだよ。君がボクと契約を結ばないと考えてるから、その考えを改めさせて契約するためのパフォーマンス。言わば『ナツキ・スバル攻略RTA』の第一歩といったところかな」

 

「は――」

 

 既にセーブポイントは更新されている。ああ、逃れられない。

 

「良い機会だ。新しい身体になったことだし、名を改めようか。エキドナの名で暮らすのは都合が悪い。そうだね……君の知識で魂を意味する『アニマ』と名乗ることにしよう」

 

「―――」

 

 新たなるタイマーが今、時を刻み始めた。

 

「欲深いボクから逃げ切れるとは思わないことだ。覚悟したまえ、未来の共犯者クン」

 

 

▼ 強欲の魔女エキドナに付きまとわれた!

 



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第五章 終幕
Part.15


 ストーカーが怖いRPGはーじまーるよー……はい。

 

 えー、第四章終わりのムービーシーンで爆弾をぶちこまれましたね。幕間イベントでの不意打ちはリゼロの醍醐味みたいなものですが……なんだこれはたまげたなぁ。

 

 ちなみにシリウス戦での手助けの対価を求めるつもりはないとか言ってましたけど、スバルくんの状態異常を確認したらエキドナの正体を口外できないようにされてました。うーん、この。

 

 まぁRTAも終盤なんで続行します。ここまで来たら走り切っちゃいましょう。タイムも結構良いんでね。

 ただ、このゲーム、自陣営が強化されると乗り越えるべき壁も高くなる傾向にあるんですよね。ベアトリスやガーフィールの仲間フラグは折れてますけど、エキドナが味方判定になってるので、第五章の戦いも結構辛いことになりそうで怖いです。

 

 

 さて、いよいよ第五章に突入するわけですが、最初に流れをさらっと説明しておきましょうか。

 

 第五章はアナスタシアから水門都市プリステラという場所に招待されるところから始まります。

 原作ではパックを収める新しい触媒を出汁に呼び出してきましたが、本チャートでは便利な魔法器の商談などがメインになりそうです。エミリア陣営には足りてないモノが多いですから。名目としては陣営を招いてのパーティーということになってますけどね。

 

 プリステラに向かうのはスバルくん、エミリア、オットー、パックです。まぁパックに関しては本当におまけみたいな存在ですけど……。もう不意打ちで騙して本気を出させるという手段も不可能になってますから。仮にもう一回騙せても街中で本気を出させるわけにもいかないですしね。

 

 ちなみにロズワールとラムは別所での会合に行って、レムは屋敷の手入れのためにお留守番、ベアトリスは引きこもりという感じですね。

 エキドナは少し離れたところからストーキングしてくるみたいです。

 

 解説終了。では早速プリステラに行きましょうか。イクゾー!デッデッデデデデ!

 

 ~少年移動中~

 

 はい、到着しました。そのままアナスタシアが待つ『水の羽衣亭』という旅館に直行。アナスタシアと挨拶してから、従者らしき美少年たちの案内によって部屋へ……ん?美少年たち?

 

「あれ、ナツキくん女っ気が全然ないから男色家かと思ってたんやけど、違ったかな。ウチとしては最高のおもてなしをしたつもりだったんよ」

 

 あっそっかぁ……恋愛フラグバキバキになってるせいでスバルくんがホモだと勘違いされてますねこれは。(でもホモでは)ないです。

 

「そっか、ごめんよ。――男色家でもないとなると、また別の方法を考えんとあかんね」

 

 アナスタシアによるスバルくん引き抜き工作の一環だったみたいですね。ままええわ。とりあえず荷物を置いて宴会の会場に向かいましょうか。

 

 

 宴会の会場に待っていたのはアナスタシアの騎士ユリウスだけ……ではありません。クルシュ陣営からクルシュ、フェリス、ヴィルヘルムの三人が、フェルト陣営からフェルト、ラインハルトの二人が席についています。

 プリシラとアルはこの場にはいませんね。

 

 それから、場を盛り上げるゲストとして、吟遊詩人のリリアナが呼ばれてるみたいです。

 リリアナは褐色の肌とツインテールにした黄色の髪が特徴的な少女で、歌姫と呼ばれるほどの歌の才能の持ち主です。加えて『伝心の加護』という自分の考えや感情を周囲に伝播させる加護を持っていて、歌を通して周りの感情を動かすことができるんですよ。

 この加護を利用した歌の効果は『憤怒』の権能に競り勝てるぐらい強いんですが、もうシリウスを撃破してるので出番は……ナオキです。

 

 

 解説終了。おや、ここでセーブポイントが更新されたみたいですね。ということは、ここの四陣営の協力が必要になるほどヤバイ事態になるということでしょう。

 では、ちょっとトイレ行ってくらぁ!と言ってダッシュで外に出ましょう。まーたスバルくんが奇行に走ってるよ、って感じで皆からの理解度が深まっているので、特に引き留められることもありません。

 

 

 さて、まずはプリステラを駆け回って情報収集を――

 

「どうしたんだいナツキ・スバル。トイレはこっちにはないよ」

 

 出たわねエキドナ。(でも今あなたに構ってる暇は)ないです。無視しましょう。

 

「おや、忙しそうだね。まぁ当然か。だって『暴食』のライ・バテンカイトスとロイ・アルファルドに『強欲』のレグルス・コルニアス、それから三大魔獣の内の二体、大兎と黒蛇がここにやってくるんだものね」

 

 は?

 

「今言った通りだよ。『暴食』と『強欲』と大兎と黒蛇がプリステラを襲撃する。ルグニカの王選候補が集まったときを狙って一網打尽とはなかなか賢いやり方だ。『剣聖』が居るとはいえ一人では限界があるしね」

 

 これもエキドナがムービーシーンで言ってたパフォーマンスでしょうかね。おそらく嘘は言ってないはず。今、嘘を言う理由もないですから。

 

 しかし……はぁ~~~~~(糞デカため息)、いやーきついっす。とりあえず本章のボスキャラについて解説をしましょうか。能力を知っている人は流し読み推奨です。

 

 

 まず『暴食』の大罪司教について。『暴食』担当は『ライ・バテンカイトス』と『ロイ・アルファルド』と『ルイ・アルネブ』の三体がいます。

 アルネブの人格は『記憶の回廊』という場所に囚われているのでフリーに動けるのはバテンカイトスとアルファルドの二人ですね。といっても二人は人格をアルネブと入れ替えて動けるので制限はないようなものですが。

 

 『暴食』の権能は『名前を食べること』と『記憶を食べること』、それから『食べた記憶から能力を再現すること』です。名前を食べてしまえば食べられた人物に関する記録が世界から消え、記憶を食べてしまえば本人の記憶や経験をそっくりそのまま自分のモノにできてしまいます。

 そして、今まで食べてきた武人たちの能力を再現して組み合わせることで高い戦闘力を発揮でき、生半可な奴では敵にすらなりません。BBの数だけ強くなる野獣先輩のような存在です。

 

 

 次に『強欲』の大罪司教について。『強欲』担当のレグルス・コルニアスは白い髪をした冴えない見た目の男です。特筆すべきは『時間停止』と『小さな王』という二つの権能。これがかなりエグいです。

 『時間停止』は自分の心臓を止めている間、自分や触れたものを無敵状態にするという技。これで無敵状態になるとラインハルトでさえ傷つけることができなくなります。また、攻撃手段としても絶大な威力を発揮します。

 『小さな王』は他人の心臓に自分の疑似的な心臓を寄生させるという技。これと『時間停止』を合わせることで、デメリット無しで常時無敵状態になれるというわけです。レグルスは現在、嫁たちに疑似心臓を植え付けていますね。

 

 まぁレグルスは種さえ割れれば楽に対処できるので、こいつはどうでもいいです。

 

 

 次に大兎。第四章で述べた通り分裂・増殖を繰り返し人間を食べる厄介な魔獣です。数が多いので一度に殲滅するのは難しく、放置すればプリステラの住人たちに多大な被害を与えるでしょう。ですが、こいつらに対する策は思いついたのでおそらく大丈夫なはず。

 

 

 最後に黒蛇。常に周囲に毒や病をまき散らし、こいつに舐められると絶命してしまうというインチキ生物です。こいつには、『百薬の加護』で病を一切受け付けず『不死鳥の加護』や『続・不死鳥の加護』で無限に蘇生できるラインハルトをぶつけるしかないでしょうね。本気パックをぶつけられたら良かったんですけど……ままええわ。

 

 

 解説終了。やはり問題となってくるのは戦闘能力が非常に高い『暴食』でしょうね。ラインハルトをぶつけられたら簡単だったんですが。うーん……ちなみにどいつがどの場所にいるとか分かります?

 

「これ以上の手助けは課金ならぬ課魂コンテンツ、と言いたいところだが――そうだね、今回は特別セールだ。君の上着を対価にくれるなら、防衛戦を手伝ってあげてもいいよ。今着ている服じゃなくて、君が故郷から持ってきた服ね。未知なる異世界の物品だから気になるのさ」

 

 あんな安物が対価でいいんですか……エキドナ、心も器もでけぇなお前(褒めて伸ばす)。

 行動が過剰に制限されるような取引なら絶対にしませんが、ジャージを渡すぐらいなら構いません。取引完了です。

 

 では、それぞれの敵の居場所を聞きましょう。それからエキドナ、『復元魔法』と屍を操る魔法を使うことってできますかね。

 

「可能だよ。一体何を……ああ、そういうことか」

 

 オーケー、大丈夫みたいですね。では、あるモノをエキドナに渡して、いくつか相談したら皆のところに戻って作戦会議をしましょう。

 さぁ、プリステラ防衛戦の始まりや。

 

 

 今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 



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Part.16 前半

 NPCとの協力が重要なRPGはーじまーるよー!

 

 はい、前回は作戦会議を終え、プリステラ防衛戦が始まったところでしたね。

 ボスに対する割り振りですが、大兎の対処にはオットーとリリアナとユリウスを、『暴食』のロイ・アルファルドにはヴィルヘルムと()()()()を、黒蛇にはラインハルトをぶつけることにしました。

 みんな頼もしいキャラクターなので、上手くやってくれるでしょう。

 

 そして、スバルくんが担当するのは『強欲』のレグルス・コルニアスと『暴食』のライ・バテンカイトスです。二人は今、プリステラの東部にある屋敷に居るようなので、準備が終わったら突入しましょう。

 

 現在、エミリアにはレグルスの花嫁たちが集合している教会に向かってもらっています。そして、花嫁たちを氷漬けの仮死状態にしてもらったら、対話鏡という遠距離通信用の魔法器を通して連絡するようにお願いしています。

 

『もしもし、スバル? こっちは終わったわよ。だから、そっちをお願い。無事に帰ってきてね……私、信じてるから』

 

 オーケー、エミリアから連絡が来ましたね。これでレグルスの疑似心臓が停止し、無敵状態が解除されました。では窓を割ってレグルスが居る部屋にダイナミックエントリーしましょう。おっ、開いてんじゃ~ん。

 部屋に入ったら即座にレグルスに不意打ちをします。くらええええ!

 

「誰だよお前はグアアァァァァァァ!!!!!」

 

 ギャグマンガ日和のように、勢いに任せてレグルスの心臓を貫けば工事完了です……。レグルスは『小さな王』で作った疑似心臓が止められたことに気付けませんし、身のこなしがスバルくん以下のド素人なので、準備してから不意打ちすればサクッと倒せます。

 

 いやあ『強欲』は強敵でしたね。まぁこれは前座みたいなものです。本番はこの後。

 

 

「あァ、おまえが噂の策士、ナツキ・スバルか。いいね、いいよ、いいさ、いいな、いいじゃないか、いいだろうともさ! ひ弱なのに単身乗り込んでくるその度胸ッ! あのレグルスの権能を乗り越えてしまうその頭脳ッ! 俺たちが味わうに相応しい相手だなァ」

 

 

 はい、ウンコの擬人化かと思うほど小汚い存在がやってきましたね。ついに本番……魔女教大罪司教『暴食』担当、ライ・バテンカイトス戦の開始です。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 水門都市プリステラの都市庁舎は、プリステラの中枢を担う機関である。この建物の特徴はなんといっても、都市全体に声を届ける放送の魔法器が備え付けられていることだろう。緊急事態の際、住人に声を届けて指示を与えられるような作りになっているのだ。

 

 そして今、この都市庁舎にオットー、リリアナ、ユリウスの三人が集まっていた。

 

「えーと、とりあえず、もう一度だけ確認しておきましょうか」

 

 そう言って話を切り出すのはオットーである。作戦開始前に念のため、確認を行っていた。

 

「まず、ユリウスさんが僕とリリアナさんを意思疎通魔法『ネクト』で繋げる」

 

「そうだね。私としては現場で戦えないのが歯がゆいところだが……これも重要な役目だ。全力を以て務めさせてもらうよ」

 

 ユリウスは戦力として頼もしい存在だが、ネクトを使える人間が他にいなかったため、ここに駆り出されていた。

 

「ありがとうございます。んで、次に僕が『言霊の加護』で魔獣……大兎に通じる言語を思い描き、ネクトの効果でリリアナさんの頭に直接叩き込む」

 

「そして私が『伝心の加護』を利用した歌で兎さんたちの感情を塗り替える! いいえぇい! 私、兎さん相手に歌うなんて初めてで、なんだか興奮しちゃいますよぅ」

 

「兎さんと呼べるほど可愛い存在ではありませんけどね……。で、それからアナスタシア様の傭兵団『鉄の牙』やクルシュ様などが動いて大人しくなった大兎を仕留めると」

 

 まとめると、ネクトでリリアナとオットーを繋ぎ、翻訳した歌によって大兎の飢餓感を別の感情で塗りつぶし、その間に仕留める。これが一連の流れだ。

 三人は街中の大兎に歌を届けるために、放送の魔法器がある都市庁舎に集合したのである。

 

「魔獣を歌で鎮めて倒すとはなんとも童話的な……ナツキさんもまた妙なことを思いつきますねえ」

 

「街中で広域殲滅系の魔法を使うわけにもいかないからね。なかなか合理的な方法だと思うよ。エミリア様の陣営の柱、策士だという噂は本当だったようだね」

 

「合理的ねぇ。まぁそうなんですけど……僕まで一緒に歌う必要ってありますかねえ? ナツキさんがいつもみたいにからかってるだけのような」

 

 そう、歌うのはリリアナだけではない。オットーも一緒に歌うデュエットの形式である。

 

「何言ってるんですかっ! 一緒に歌った方が絶対に楽しいですよぅ! それにそれにっ、ネクトで繋がるとはいえ『言霊の加護』を持ってるのはオットーさんなんですから、オットーさん自身で語りかけることも必要になりますって」

 

「それはそうかもしれませんが……はぁ、仕方ないですね」

 

 なんだかんだ押しに弱く、必要とあれば動いてしまうオットーであった。

 

「住人に対する外出禁止令も完了した。スバルの言う通りなら、そろそろ大兎が動き出す頃だ。では始めようか。―――ネクト」

 

 ボーカルは『歌姫』リリアナと行商人オットー。サポーターに『最優の騎士』ユリウス。

 

「「せーのっ、兎どもぉ! 私 / 僕 の歌を聴けぇーーー!!!」」

 

 大兎を観客に迎え、異色のバンドによるコンサートが開幕した。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 同時刻、プリステラの西部を二つの影が移動していた。その二人とは、ヴィルヘルムと、亡くなったはずのテレシアである。

 

「スバル殿から作戦を聞いたときは耳を疑いましたが、実際に目の当たりにすると……いやはや」

 

 なぜテレシアがここに居るかと言うと、聖域で灰になった彼女をエキドナが再び蘇らせたからだ。

 聖域の問題が片付いた後、スバルはテレシアの灰を回収していた。本来はそのままヴィルヘルムに渡すはずだったが、急遽予定を変更。エキドナの『復元魔法』で形を元に戻し、屍を操る魔法によって強力な仲間の一人に仕立て上げたのであった。

 

『ヴィルヘルムさんの居ない場所で勝手に倒した挙句、こんな弄んで利用するような真似をしてすいません。でも今回は本当にヤバイんで、どうか協力をお願いします』

 

 そう言って頭を下げるスバルの姿を思い出す。テレシアが自分の与り知らぬ所で討たれたことに対する複雑な思いはあったものの、ヴィルヘルムはスバル達がやったことは正当防衛だと納得していた。一度死んでいるとはいえ、妻は手加減して勝てるほど柔な相手ではないからだ。

 

 テレシアの蘇生と利用に対しても複雑な思いを抱いたが、その中で一番強い感情は怒りではなく感謝だった。魔女教の手から解放してくれたことに、仮初の舞台とはいえ再び妻と舞う機会を用意してくれたことに感謝している。

 

 と、そこまで考えたとき、ヴィルヘルムの視界に一人の男が映った。

 

「嬉しいな、嬉しいね、嬉しいさ、嬉しいとも、嬉しいと感じられるからこそ! 暴飲! 暴食ッ! お前は確か『剣鬼』だよなァ。僕たちが食べた記憶に残ってるよ。それに、どういうカラクリか分からないけど、隣にいるのは『先代剣聖』だよね。こんな歯ごたえのある奴らがまとめて来るなんて、僕たちってば運が良いなァ!」

 

 その異常性と強さを察知し、ヴィルヘルム達はすぐに臨戦態勢に突入する。

 

「お前は……」

 

「僕たちは魔女教大罪司教『暴食』担当、ロイ・アルファルド」

 

 目の前に現れたその男、アルファルドは名乗りをあげて、ゆらゆらと独特の歩法で歩いてくる。

 

 それに対してヴィルヘルムは剣を構え、一人の戦士として名乗り返す。『暴食』に対して名乗るのは危険だと教えられているが問題ない。なぜなら、妻と共に戦えば負ける気がしないから。

 

 

「《夫》、ヴィルヘルム・ヴァン・アストレア」

『《妻》、テレシア・ヴァン・アストレア』

 

『「――――いざ、参る」』

 

 

 終わったはずの剣鬼恋歌、その新たな一節が刻まれようとしていた。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 プリステラを出てしばらく北に進んだ所にある、周囲に人気のない場所にて、ラインハルトは一人で待ち構えていた。そして今、彼の眼前に三大魔獣の一匹、黒蛇が佇んでいる。

 

「なるほど……スバルが僕をここに配置した理由が分かったよ。これは僕以外では荷が重いね」

 

 そう言って、ラインハルトは鞘から龍剣レイドを引き抜く。化け物VS化け物、勝手に戦え、と言いたくなるような戦闘が始まった。

 



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Part.16 後半

 プリステラ南部にて大兎殲滅戦が行われていた。目論見通り歌によって大兎が大人しくなっているため、討伐自体は一切の負傷なく進んでいる。

 ただ一つ問題があるとすれば、

 

「予想以上に数が多すぎる、か」

 

大兎が多すぎたことだ。リリアナやオットーの体力を考えれば長期戦は好ましくない。そのうえ、大兎は一匹でも残ればそこから無限に分裂できてしまうため、悩ましい事態となっていた。

 

 陣頭指揮をとるクルシュと『鉄の牙』団長のリカードが優秀だったため素早く討伐が進んでいるものの、リリアナたちの体力が尽きるまでに殲滅しきれるかどうかは五分五分といったところだろう。

 

「一か所に集まってくれたら楽なんやがなぁ……ん?」

 

 そうしてクルシュとリカードが悩んでいたとき、仲間たちの悲鳴が聞こえてきた。その方向に視線を向けると、そこにいたのは――青い髪をお下げにした少女、それと列をなして進行してくる大量の大兎たちだった。

 

「なんやあの嬢ちゃん!? あれが大兎を嗾けてきた魔女教の主犯格ってことかいな」

 

 リカードの叫びを聞いて、その少女がカラカラと笑う。

 

「あはは、お兄さん面白いこと言うわねえ。期待されてるところ悪いけど、私は魔女教の手先じゃなくてロズワール様の手先よお。あなたたちが手間取ってるから、兎たちをまとめて連れてきただけ。感謝してほしいわあ」

 

 そう、その少女とは『魔獣使い』メィリィだ。カペラとエルザが死んで身寄りの無くなった彼女をロズワールがこっそり引き取り、今回の件を見越してプリステラに寄越していたのである。

 スバルくん大好きおじさんと化したロズワールがまたしても手助けをしていた。

 

「卿が嘘を言っているのかと思ったが……『風見の加護』によると嘘は言ってないようだな」

 

「当たり前じゃない。ま、私の『魔操の加護』がこの子たちに効くのは大人しくなってる今だけだから、一か所にまとめてる間に早くやっつけてちょうだいねえ」

 

 味方と分かれば話が早い。あとはパパッと殲滅するだけだ。

 

「ようわからんが、ありがとうな! お前らァ! 嬢ちゃんがまとめてくれてる間にやっつけてしまうでぇ!」

 

 リカードが声をあげて、部下に指示を飛ばす。まとまった大人しい大兎を倒すのは非常に容易い。難航するかと思われた大兎殲滅戦は、メィリィが登場したことにより瞬く間に終わったのであった。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 プリステラ西部のアルファルド戦は、ヴィルヘルム達の一方的な優勢が続いていた。二人の連携は正に完璧で、アルファルドが付け入る隙が無かったのである。

 

「なにさ、なんでさ、なんなんだよッ! 僕たちの中の記憶じゃ剣鬼はこんなに強くなかっただろうッ! それに『剣聖の加護』が消えた先代剣聖だってッ!」

 

 防戦一方の状況に怒りが募るアルファルド、一方でそれを見るヴィルヘルムの視線は冷ややかだった。

 

「単純な話だ。私は妻の前で格好悪い姿を見せられない。そして妻はお前ごときに後れをとるほど柔な剣士ではないというだけの話」

 

「何それ何それ、愛の力が二人を強くしたってこと? そんな腹の足しにもならないモノで強くなるなんて、馬鹿な話があってたまるかッ! クソッ」

 

 アルファルドはそう言いつつも、この場でこの二人相手には絶対に勝てないことを悟り、逃走を図り始める。

 元々、悪食のアルファルドは食べ物の質に拘る性格ではなく、食べられればどんな人間でも良いという性格なのだ。この二人に拘った結果死んでしまい、食事の機会が失われるなんて馬鹿馬鹿しい。

 

 アルファルドは防戦をしている間に、着実に逃走経路を見繕っていく。そしてタイミングを見計らって魔法で足場を崩し、縮地と呼ばれる高速移動の技により一気に距離をとった。

 

「むっ、小癪なっ」

 

「戦略的撤退ってやつさァ! あばよ爺さ――」

 

 だがアルファルドが逃げきることは叶わなかった。なぜなら、血のように赤い瞳の女に斬り伏せられて絶命したから。

 

「誰が舞台を降りて良いと言った?」

 

 彼女の名前はプリシラ・バーリエル。王選候補者の一人、世界に愛された女である。隣には従者のアルも立っていた。

 

「あなた様は……」

 

「妾のことは名乗るまでもなく知っておろう。そこな老骨、見事な舞台じゃった。小汚い此奴のせいで幕切れは微妙であったが、満足したぞ。褒めてつかわす」

 

「姫さんが礼を言うなんて珍しい。良いもん見られたな、爺さん」

 

「あなた様のために舞っていたわけではないのですがね」

 

 手助けをしてくれたことに対する感謝はあるものの、勝手に娯楽の対象とされていたことに少しムッとする。

 

「気にせずとも良いぞ。世界も人の動きも妾に都合の良いように出来ておるが、それに気づかない愚か者はごまんといるからの。今まで何度も見たから慣れておる。――さて、アルよ。これ以上留まるのは無粋というもの。ここに用はないゆえ、そろそろ帰ることにするぞ」

 

「あれっ、姫さんが空気読めるなんて珍し――痛ェ! いってぇ! マジすんませんでした!」

 

 プリシラたちは言いたいことを一方的に言うと、漫才のような掛け合いをしながら去って行ってしまった。

 

 

「……スバル殿とはまた違った、嵐のようなお方でしたな。さて」

 

 プリシラが去ったのを見届けると、ヴィルヘルムは隣に立つテレシアに視線を向けた。見れば、テレシアの身体がポロポロと崩れ始めているではないか。

 

「無理矢理な復元ゆえに、もって三時間、激しい戦闘をすれば加速度的に崩れていくという話でしたな」

 

 灰からの復元という無茶をして、完全な蘇生などできるわけがない。こうしてテレシアが戦える状況にできたこと自体、奇跡のようなものだったのだ。

 そして今、奇跡の終わりが来ようとしている。だから最後に、あの日言えなかった言葉を言おう。二人の結末に相応しいあの言葉を。

 

 

「テレシアよ。私はお前を、愛している」

 

『――――――』

 

 

 その告白にテレシアがどのような返事をしたのか、そもそも屍兵になった彼女が返事をすることができたのか。それはヴィルヘルムのみぞ知る。

 

 剣鬼恋歌、ここに終演。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 一方そのころ、プリステラから離れた北方にて。

 

「ふぅ、ようやく倒すことができたね。スバルたちは今頃どうしているだろうか」

 

 そこには激闘の末、黒蛇を討伐したラインハルトの姿があった。ラインハルトさんマジ半端ねえ。

 化け物同士の戦い、これにて終結。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 はい、ライ・バテンカイトス戦が始まりましたね。説明した通り、『暴食』の権能によりスキルマシマシのこいつは戦闘力が非常に高く、糞雑魚スバルくんでは攻撃を通すことすら難しいです。

 

 ですが、そんなこいつにも隙を晒す瞬間が一度だけあります。では早速、適当に動いてスバルくんを捕らえてもらい、『暴食』の権能を発動してもらいましょうか。良いよ!来いよ!

 

「甘い、甘いね、甘いとも、甘いじゃないかッ! やっぱり頭が切れるだけで、腕っぷしは微妙みたいだね。ちょっと拍子抜けだけど、まあいいや! それじゃ、ナツキ・スバル……イタダキマス」

 

 狙い通りバテンカイトスが権能を発動しようとしていますね。この瞬間、スバルくん版見えざる手、『インビジブル・プロヴィデンス』を発動!

 見えざる手を、バテンカイトスが舐めようとしているスバルくんの手に重ねます。こうすることで、

 

「うげェ……ッ」

 

『暴食』の権能を失敗させることができます。

 

 『暴食』の権能を完全に発動するには、相手の名前を認識したうえで、その名前に対応する人間の手を舐める必要があるんですよ。

 そしてこのゲーム、スバルくんの見えざる手はペテルギウスが使ったモノを使いまわしているので、見えざる手の内部判定がペテルギウスの身体の一部となっています。だから見えざる手を舐めさせると、『暴食』の権能失敗を誘発できるんですね。ちょっとした裏技です。

 

 解説終了。バテンカイトスは権能発動のためにスバルくんの傍に来ており、権能失敗により苦しんでいるので隙だらけです。

 お前のそこが隙だったんだよ!この瞬間を狙って、袖に隠していたあるモノを取り出し、バテンカイトスの懐に突き刺します。

 

「あァ? アアァァァァ――――」

 

 今突き刺したモノは、『パックが収められた魔鉱石』です。バテンカイトスが苦しんでいるのは、彼と接触したパックがマナドレインを行っているからですね。

 パックは基本的に大罪関係で本気モードの姿になれません。ですが、マナドレインは初歩的な技なので、この状況でも発動することができます。そして、大精霊パックが行うマナドレインは並の人間なら数秒で干からびるほどの威力なため、致命的なダメージソースになります。

 

 パックはおまけみたいなモノだと言いましたね、あれは嘘だ。利用価値があることに思い至ったので、骨の髄までしゃぶりつくしましょう。

 親(パック)の脛をかじるのは……うん、おいしい!

 

 

 さて、苦しんでいるバテンカイトスがルイ・アルネブと人格交代する前に、見えざる手で取り押さえ、剣で首を斬り飛ばせば――工事完了です……。

 

 ちなみに、今の一瞬でアルネブと人格交代されていた場合、魔鉱石に仕掛けた術式を発動することでパックもろとも爆破する予定でした。使わずに済んでよかったですね。

 

 

 他のボスキャラも倒されたようなので、これにて第五章終了です。そして『怠惰』『憤怒』『強欲』『暴食』『色欲』の大罪司教を撃破したので、ここで計測終了。

 ルイ・アルネブ?なんのこったよ(すっとぼけ)。

 

 

 さて、完走した感想ですが……これ、オリチャー多すぎて半ば新規ルート開拓になってますね。まぁ、かなり良いタイムが出たので、RTAの体裁を保っていると言ってもいいのではないでしょうか。

 

 知らない展開が連続したときは焦りましたが、同時にワクワクしました。ボスラッシュ中は正直かなり苦しかったですが、その分乗り越えたときの爽快感が凄いと思いました(小並感)。

 ゼロから始めるオリチャー構築はもうお腹いっぱいですけどね……。

 

 反省点としてはスピード重視で、楽しいイベントやキャラとの会話が消え去ったことでしょうか。まぁこれはRTAの宿命みたいなものですが……本来どんなイベントが用意されてるかは自分でプレイして確かめてください。

 スバルくんの恋愛フラグがバキバキに折れたのは少し可哀想ですが、人は何かを失わずに何かを得ることはできないなんて言いますからね。記録の代償に恋愛フラグを失ったのは仕方ないね♂

 

 リゼロは魅力的なキャラや設定が多いので、かなりの可能性を秘めていると思います。みんなもリゼロRTA、走ろう!

 

 では、長かったRTAもここでおしまいです。皆様、ご視聴ありがとうございました。

 




 次話、エピローグ。
 原作にほぼ追いついたので、これ以上のチャート増設はありません。


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エピローグ
Part.Final 『勝利は誰の手に』


 大罪司教を撃破してもルグニカの王選は終わらない。王が選ばれる日まで、まだまだ時間は残っている。ゆえに、決着がつくその日に備え、各陣営はそれぞれ努力の日々を重ねていた。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 大商人アナスタシア・ホーシンは、プリステラ防衛戦でのことを思い出しながら次の策を練っていた。

 

「うーん、やっぱナツキくんウチのところに欲しいわぁ。プリステラでのあの采配、ぶっとんだ発想! 手元におったら絶対楽しいんやけどなぁ」

 

「またですか……一の騎士を引き抜くのは無理だと、仮に出来ても不要な争いを招くとなんども申し上げたはずですが」

 

 またしてもスバル引き抜き作戦を考え、ユリウスを振り回していたのである。

 

「せやから、無理に引き抜くんじゃなくて、ナツキくんの意志でこっちに来てもらったらええんやろ。男もダメ、女もダメ……そうや! フタナリならいけるかもしれん!」

 

「アナスタシア様……」

 

 アナスタシアに振り回されるユリウスの苦難は今日も続く。後日、迷走したアナスタシアの一手によってフタナリのガキがスバルに夜這いを仕掛けるのだが、それはまた別のお話。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 カルステン公爵家の主、クルシュ・カルステンは忙しい日々に追われていた。元々管理している勢力は多かったのだが、白鯨討伐やプリステラ防衛戦の功績を聞きつけた様々な新勢力が擦り寄ってきたことで、その対応に追われていたのだ。

 

「まったく、こちらはおこぼれに与った側面が大きいというのに」

 

「その辺りはスバルきゅんが功績を山分けにしたから仕方にゃい面もありますけどね~。ま、名誉は貰っておいて損はないですし、ガンガン活用しましょう」

 

 クルシュは白鯨戦やプリステラ防衛戦のことを思い出し、ため息をつく。

 クルシュ陣営に組する者は多いが、最近ではエミリア陣営につく勢力も増え始めている。今では嫌われ者のハーフエルフ陣営などと侮ることは誰にもできないだろう。だから新勢力を飲み込み利用することも今後必要だとはわかっている。だが、それはそれとして対応は疲れるものなのだ。

 

「しかし、ナツキ・スバルか……面白い男だったな。私にはあのような頭の柔らかさが足りていないのかもしれない」

 

「いやいや、あの子の発想はちょっと真似できませんし、真似するべきではありませんって。ところでクルシュ様、綺麗なドレスを注文していましたが、あれってばフェリちゃんへの贈り物だったり? だったり?」

 

「ん? あれはナツキ・スバルへの贈り物だぞ。最近気づいたのだが、彼はフェリスと同様、ドレスが似合うのではないだろうか」

 

「えっ? ク、クルシュ様……」

 

 疲れてしまったのか、はたまたスバルの悪影響を受けてしまったのだろうか。どちらにせよ、クルシュはすでに手遅れな状態になっていたのだった。フェリスは泣いた。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 盗賊から姫へと駆け上がった少女、フェルトはロム爺を振り回していた。

 

「ロム爺早くウンチしてくれよな~頼むよ~」

 

 誰が予想できただろうか。なんとフェルトがロム爺限定のウンチ提案少女になっていたのである。

 

「フェ、フェルトが頭のおかしい子になってしもうた……儂の教育が間違っていたのかのぅ……」

 

「おかしくなってねーよ! あの兄ちゃんの功績が広まったついでに、ロム爺のウンチが厄除けに効くって噂が広まっちまったんだ。こりゃ大きい商売のチャンスだぜ。アタシの陣営は経済的な余裕がないんだから、何でも利用しないとな!」

 

 そう、プリステラの一件でスバルの功績が大きくなり国中に広まったのだが……同時に過去の所業、ウンチ浴び事件の情報もどこからか漏れ出してしまったのだ。その噂に尾ひれがついて、今やロム爺のウンチは厄除けのアイテムとして一大ムーブメントを引き起こしていた。

 

「ロームーじーいー、早くウンチしてくれよー」

 

 スバルの奇行を笑いながら自分とアイツは違うと馬鹿にしていたフェルトはもういない。完全にスバル側の人間になってしまっていた。

 

「とほほ……もうこりごりじゃ……」

 

 ロム爺は、あの日スバルに糞を渡してしまったことを、トイレに行く度に後悔するのであった。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 傲岸不遜な女、プリシラ・バーリエルは大層不満な顔をしていた。

 

「おいアル、あのハーフエルフの陣営の方が妾より目立っておるではないか。お主も妾のために何か目立つことを、面白いことをするのじゃ」

 

「いやいや無理だって姫さん、そいつぁ無茶振りが過ぎるぜ」

 

 今日も今日とて……いや、いつも以上にアルが無茶振りされているのであった。

 現在エミリア陣営は『怠惰』『憤怒』『強欲』『暴食』『色欲』の討伐という頭のおかしな功績を作った陣営となっている。あれより目立つとなると、最果てにある大瀑布を真っ二つにしたり嫉妬の魔女を世界から抹消したりといった化け物級の実績が必要になってしまうだろう。

 

「お主はあの黒い小僧と同郷なんじゃろう? ならば、あの程度のこと軽々成し遂げて妾を楽しませてみよ。ところで……以前から気にしていたようじゃが、あの小僧と連絡をとらなくても良いのか?」

 

「いや、正直語録使いのホモガキとは反りが合わないっつーか何つーか……」

 

 語録を知っているアルは、語録使いのスバルに対して正常な感性を示していた。

 もっとも、語録を判別できる時点でアルも……。異世界に飛ばされる前の記憶を失ったことは、彼にとってある意味幸せだったのだろう。

 

 こうして、アルが無茶振りされる日々が過ぎていく。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 そして、各陣営に波紋を呼んだエミリア陣営の騎士、ナツキ・スバルがどうしているかというと……。

 

「クッソ、世界を書き換えるなんてチートすぎるだろ、『虚飾の魔女』パンドラ! おいエキドナァ、準備あくしろよ」

 

 いつも通り、高難易度の糞イベントにぶつかっていた。何度も苦難を呼び寄せる疫病神のようなスバルは、されど孤独ではなく――

 

「ナツキ・スバル、おまたせ。リューズの複製体は114,514体しか用意できなかったけど良いかな?」

 

 その傍らに、常に謎の少女が付きまとっていたという。

 

「でかした! いいゾ~これ。世界を書き換えるのがお前の専売特許だと思うなよ、パンドラァ! 俺は114,514体の複製体を同時爆破することで―――世界を処理落ちさせる」

 

 その二人はいつも不思議な発想と策略で、どんな困難も砕いてしまったとかなんとか。

 

 

 またしてもスバルが奇行に走っていたとき、その光景を離れた場所から鑑賞する男が一人。彼はワインを飲みながら楽しそうに笑っていた。

 

「うーん、やはりスバルくんは面白いねぇ。私は良い拾い物をした」

 

 その男とは、メイザース領の領主、ロズワールだ。彼は舞台裏からスバルを眺め、いつまでもいつまでも楽しんでいたという。

 

 此度の王選の一番の勝者は、五陣営のトップでもスバルでもエキドナでもなく……スバル鑑賞という新しい趣味を見つけて人生を謳歌しているロズワールなのだった。

 

 

 完

 



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おまけ
Ex リザルト画面


エンディング名「後方彼氏面ロズワール&ストーカーエキドナEND」

 

[日数]

・第一章……01日

・第二章……02日

・第三章……05日

・第四章……05日

・第五章……01日

 

・合計………14日

 

[死亡回数]

・第一章……02回

・第二章……02回

・第三章……02回

・第四章……01回

・第五章……00回

 

・合計………07回

 

以下、エピローグ時点での各陣営・各キャラクターからスバルへの評価等。

 

[エミリア陣営]

・ロズワール

 行動が面白いから好ましく思っている。並の女性キャラ以上にスバルに尽力している。

 スバルくん大好きおじさんと化した男であり、本チャートでの相棒的な存在。

 本チャートで原作以上に協力的なのは、叡智の書(複製品)を読んで、スバルが最短かつ効率的に道を舗装してくれると知っているから。

 叡智の書でRTAを知ってる人その1。

 

・エキドナ

 様々な可能性を観測できるスバルに大きい興味を抱いている。スバルのストーカーになっただけでエミリアの下についたわけではない。なぜならエミリアを嫌っているから。

 遅れてきたヒロインポジション。今もなおスバルに付きまとっている理由がタダの好奇心なのか、それとも愛の感情に変わったのかはエキドナ本人のみぞ知る。

 叡智の書でRTAを知ってる人その2。

 

・エミリア

 変な騎士であり大切な友人だと思ってる。ハーフエルフという種族にとらわれず、自分を真っすぐ見てくれるのは嬉しい。だが、スバルに対する恋愛感情は無い。

 何だかんだ頼りにしていて、最近スバルの奇行に慣れてきた。息抜きとして一緒に馬鹿をやることも多く、良い異性の友人になっている。

 

・レム

 実績からスバルを仲間として信頼しつつある。当然ながら恋愛感情は無い。

 スバルが奇行に走るタイミングを察せるようになったが、そのことが自分の感性がスバルに寄っていることを示しているようで悲しい。かわいそう。

 

・ラム

 普段はスバルに対して、跪けよ豚、ぐらいに思っている。スバルへの評価は『頭はおかしいが危険への嗅覚は一級品』。味方としてはかなり信頼している。

 本チャートではレムよりラムの方がスバルと仲が良い。だが当然、恋愛感情は無い。

 最近スバルと一緒にマヨネーズを作り、料理に目覚めたとかなんとか。

 

・パック

 面白いから好きだったが、白鯨の件で好感度は下がった。ただ、エミリアのために何でもしてくれそうなので騎士としては頼っていいかも、とは思っている。

 バテンカイトス撃破の件で好感度は更に低下。道具のように扱われて良い気分になるわけがない。

 

・ベアトリス

 スバルが自分を終わらせてくれる『あの人』かと期待したが、交流を重ねる内にこいつが『あの人』なのは絶対嫌だと思った。第四章でスバルとの契約イベントが発生しなかったので引きこもりに突入。

 流石に暇すぎたのか、最近は禁書庫の外に出て遊んでいるらしい。

 

・オットー

 頭おかしいなこの人と思いつつ、普段はそれなりに仲良くやってる。スバルがシリウスの死体を引き摺ってきたのを見たときは「もしかしてこの人大罪司教よりヤバイんじゃ」と思った。

 そこそこ優秀で加護も便利なので、度々酷使されている苦労人。

 

 

[クルシュ陣営]

・クルシュ

 スバルは良い取引を持ち掛けてくれた相手であり、厄介な策士という印象。一人の騎士として敬意を払っている。

 贈り物のドレスが実際スバルに似合っていたため、非常に満足したとかなんとか。政敵ではあるものの、スバルの異常性を気にしないので、個人としての交友が続いている。

 

・フェリス

 クルシュ様に悪影響ありそうだからスバルきゅんにはあんまり関わってほしくないかにゃーって思ってた。もう手遅れだった。泣いた。

 

・ヴィルヘルム

 復讐の場を、白鯨にとどめを差す役割を整えてくれたことに感謝。白鯨と真っ当に戦うと被害が甚大になるのは目に見えていたので、パックを利用するやり方にも理解を示している。

 テレシアと共演する舞台を整えてくれたことに対しても非常に恩義を感じており、一人の騎士としてスバルを尊重している。まともな感性を残しつつスバルと接することができる稀有な人物。

 

 

[アナスタシア陣営]

・アナスタシア

 金になりそうな臭いがするし、面白い子だからウチのところに欲しいなぁ、と思ってる。白鯨討伐に一枚噛ませてくれたことに感謝。プリステラの一件でも大儲けできてウハウハだったとか。

 本チャートスバル君との性格的な相性は悪くない……どころかかなり良い。積極的にスバル引き抜き工作を続けているのだが、どれもこれも実らなかった。

 

・ユリウス

 白鯨やプリステラの件から、実績は認めている。原作と違って共闘の機会がなかったため、それほど仲良くない。

 最近アナスタシアに度々干渉されるスバルのことを可哀想に思い始めた。

 

 

[フェルト陣営]

・フェルト

 面白い兄ちゃんだなー!とマジキチ実績を聞いて笑っている。昔ならば、でもアタシはスバルとは違うぜ、と思っていたのだが……。今や見る影もない。

 スバルの悪影響を一番受けた人物。でも上手くいってるから結果オーライ。

 

・ラインハルト

 スバルの実績を聞いて、流石スバルだねと真っすぐ肯定してる。

 盗品蔵の件も、白鯨やプリステラの件も素直に感心して褒めているらしい。

 

・ロム爺

 脱糞しながら泣いた。

 

 

[プリシラ陣営]

・プリシラ

 妾よりスバルの方が目立っていて気に食わないと思ってる。最近はアルに対する無茶振りが一層ひどくなったとかなんとか。

 

・アル

 ようやく出会えた同郷の人間が語録使いのホモガキでたまげた。だが、語録を判別できる時点で……。記憶を失ったのが幸せなのか不幸なのか判断に困る男。

 



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