真の虎咬拳をお見せしよう (トロカス)
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真の虎咬拳をお見せしよう
カストロ。ハンター×ハンターという作品におけるある意味で、主人公とその親友に自分の系統ではない念能力を高めるとどうなるかを教える役目を押し付けられた不憫な存在。
だが、その戦闘能力は決して低くなく、むしろ自身の系統を一心不乱に極めていたならばもっと違う結果となっていただろう。
これは正史とは違う、己の得意分野のみを鍛えた男の話。
+*+
まるで太陽のようだと、カストロは硬いステージの石板の上に大の字で転がりながらそんな事を思った。
無論、彼が見上げているのは太陽ではない。ステージとその周囲を照らす、強力なライトによる光の照射である。
ここは天空闘技場。野蛮人の聖地とも呼称され、多くの腕自慢がこぞって集まり日夜死闘に汗水流して報酬を得るべく相手を打倒する。
そして、今現在カストロのいるこのフロアは二百階以降の階層であり、報酬は名声のみ。
何より、この階層はそれより下の階層に比べてレベルが段違い。
彼の相手は、そんな中でも化け物レベルだった。
「どうしたんだい?♠もう、終わりかな?♦」
「…………ハッ……終われたならば、どれだけ楽だろうか」
軋む体に鞭を打ち、カストロは身を起こす。
彼の眼前に居る敵は、まるで奇術師の様な見た目をしていた。
ヒソカ。人を食ったような性格をした狂人。しかしその実力は自信に裏打ちされた確かなもの。出来る変態とは厄介が過ぎる。
この階層に来るまで対戦者を軒並み一蹴してきたカストロは弱い訳ではない。訳ではないのだが、変態ピエロは格上が過ぎた。
ポイントは5-0。一ポイントも毟れておらず、圧倒的な力の差というものを教え込まれている状態。
だが、
「ふっ…………」
カストロは笑った。震える膝を叩いて立ち上がり、これまでの年月心血注いできた構えをとった。
虎咬拳。達人ともなれば、大木一つ容易く引き裂くとされる拳法であり虎の爪や牙、噛みつきを両手で模して敵を攻撃するというもの。
「行くぞ、ヒソカ!」
叫び、駆け出す。
彼の移動方法は大きく分けて二種類。一つは、純粋な脚力によるダッシュ。もう一つが重心と重力を用いた加速。
今回用いたのは、後者だ。あえて自分から前に倒れる事で自然と出る足をそのまま加速に用いた。
これが常人同士の対決ならば決定打になりうる消えた様な加速からの右攻撃。だが、
「ああ、良いよ。スゴク、イイ♥!」
「ッ……!」
先に仕掛けたはずのカストロは、しかし
たった一撃だ。たった一撃だが、重みの違いを理解させられる。
「くそっ…………!」
苦し紛れの前蹴り。同時に、上体を後ろに倒すことで受けた右ひじからも逃れる。
当然、そんな蹴りをヒソカが受けるはずもなくアッサリと受け止められてしまったが。
「くくっ、君は能力者じゃあなかったね♦」
「何の話だ。放せっ!」
止められた足をおとりに、石板に両手をついて体をひねり、放たれるは頭狙いの蹴り。
これも受け止められてしまうがここまでもまた、カストロの作戦は終わっていない。
「…………!へぇ……♠!」
何とカストロ、鍛え上げた腹筋を利用して蹴りを止められた格好のまま腕を使って跳ねるではないか。
虎咬拳は、腕を主に使う拳法だ。いくら足が手の数倍力があるといっても、彼の場合はその括りには当てはまらない。腕力もまた脚力同等、もしくはそれ以上の破壊力を秘めていた。
完全に油断しきっていたヒソカは不意を突かれる。
その右手が、頬を捉え―――――
「…………くっ!」
反射的に手を放したヒソカによって、その破壊力は完全には伝わらない。それでも、彼の体を押しのける程度の破壊力はあった。
審判のポイント判定に沸く観客。
そして、
「…………♪」
ヒソカは歓喜していた。
彼は念と呼ばれる技能の体得者。そして、念能力者とそうでないものの力量差は天と地ほど離れており、そもそも戦いにならない場合が多い。
そんな通説を、カストロは覆した。
オーラによって体を包んでいるヒソカの頬は、打撃を受けたことで僅かに内出血しており口の中も切れて若干の出血も見られたのだから。
これは快挙といって良いだろう。
もっとも、そこに至るまでがかなり酷いが。
「ここまでやって、漸くか…………!」
「いやいやいや、誇っていいよカストロ。君の名前はボクの中にちゃんと刻まれたからネ♦」
「気味の悪いことをいうんじゃない!…………ぐっ!?」
舌なめずりするような恍惚の表情を向けてくるヒソカにキレるカストロ。だが、その直後に違和感を覚え胸を押さえた。
あふれ出る、何か。それがとめどなく、彼の全身より放出される。
「こ、れは……!」
「精孔が開いたみたいだね。うんうん、良いオーラだよ♥」
「せ、精孔?」
「そうだね。君は初心者だし、それぐらいは教えてあげよう。早くそのオーラを留めないと、君が干からびちゃうから♠」
「なっ……!ヒソカ!貴様、私に何をした!」
「新しい可能性の道を開いて上げただけさ。それよりも、オーラを抑えなきゃ。君の体は、生命力を流し続ける蛇口が完全に開かれたようなものなんだから、さ♥」
「くっそ……!」
歯噛みしてもどうしようもない。カストロは、どうにか全身から流れるオーラを塞き止めにかかった。
流れ続けていたオーラは、最初こそ止まる気配など無かったが、もとより拳法の鍛錬で精神修業は行ってきた人間だ。徐々にオーラは彼の周りに留まり、薄い膜の様なものへと変わっていく。
本来ならば、かなりの時間を要するであろう“纏”を短期間で習得。それだけで、ヒソカは目を輝かせた。
新しい“玩具”を見つけた、と。
+*+
試合の結果は、カストロの敗北。二ポイント獲得したが、ラッキーパンチであったことが否めない試合内容であった。
「念、か…………」
天空闘技場を離れた彼は、森へとやってきていた。
ここはカストロが虎咬拳の修行に用いていた環境に近く、ついでに天空闘技場へもすぐに戻れる。
というのも、天空闘技場は九十日間の休養期間があり、この日数を使い切らなければギリギリまで戦わなくてもいい。
そこで、カストロは念の修行を行い、ヒソカにリベンジすることを決めたのだった。
新しい力を得たのは僥倖だが、それはそれ。やられっぱなしは性に合わないというもの。
とはいえ、ここからは手探りだ。そしてカストロに出来ることといえば。
「虎咬拳だけ」
己の技を極める。いや、極めたと思っていたら更に先を見せられた感じか。
それが、
先がある、それは即ち成長できるということだから。
彼は知らない。昂ったオーラが形を変え始めていることを。その先に何が待つのかを。
+*+
「カストロ?」
「ええ、そうです。今回のヒソカの相手。恐らく強化系の念能力者です」
目の前の猫のような少年と、犬のような少年にウィングは笑みを浮かべた。
「とはいえ、私としてもそれ以上は分かりかねますがね」
「どういうことだよ」
「彼はこれまで、ろくに戦うことなく、文字通り対戦相手を一蹴してきました。私も、彼が本気で戦っている所は見ていないんですよ」
「……マジで?」
驚愕する少年に、ウィングはこれまで戦ってきた白髪の格闘家の姿を思い浮かべる。
白のチャイナシャツに黒のカンフーパンツとカンフーシューズ。両手には包帯を巻き長い白髪は後頭部で括っただけの簡素なもの。
暗器や武器を使うことなく、文字通り一蹴りで全てを薙ぎ倒してきた男だ。
あと
とはいえ、
「これ以上、私が興味をあおるのは酷というものでしょうね。ゴン君、分かっていますね?」
「あ、はい……」
「心配せずとも、ビデオは撮っておきますから。それに、カストロもヒソカも
「猶予?」
「最初の一敗以来、カストロは全勝中、そしてヒソカも未だ二回の不戦敗のみ。どちらが勝っても負けても、ヒソカは一回、カストロは二回の猶予がありますからね」
「ウィングさん。それって、俺とゴンをそいつらにぶつけようとしてないか?」
「少なくとも、カストロとは戦った方がいいと私は考えていますよ」
「……」
「勝てない相手と戦う事。実戦ならば、それも私は止めましょう。ですが、少なくともカストロは
「でも、それはウィングさんの願望じゃねぇか。確証がない」
「ま、良いじゃないキルア」
「ゴン、お前―――――」
「それに俺はヒソカと戦いたい」
ゴンと呼ばれた少年は、真っ直ぐにキルアと呼ばれた少年の目を見返していた。
彼の頑固さを知るキルアはしばらく見返していたが、やがてため息をついて肩を落とす。
「俺は知らないからな?」
「うん!」
丸く収まった二人を眺め、ウィングは目を細めた。
ゴンもキルアも才能の塊だ。それこそ、念の鍛錬を初めてわずかしか経っていないというのに潜在能力を十二分に発揮している。
少し前にとある一件があってゴンは負傷し修行を中断しているが、それもすぐに巻き返すことが出来るだろう。
(ですが……)
原石が磨いた後の宝石に敵うか否か。
それも、彼が見てきた中では間違いなく異質なのがカストロだった。
誰にも師事した様子が見られない我流。それでありながら洗練されたオーラをしており、肉体も同時に鋼の様に鍛え上げられていることを確認している。
(才能を極限にまで伸ばした実力者……彼らが居なければ、私が手合わせを挑みたいところですね)
猛るオーラを沈めながら、彼は内心でそう零すのだった。
+*+
その日、チケットは即日完売。転売ヤーすらも現れなかった人気の試合が始まろうとしていた。
騒ぐ観客や実況の声をBGMに二人の男はステージに立つ。
「二年ぶりだな、ヒソカ」
「そうだね……フフッ、随分と強くなったみたいじゃないか♦」
「当たり前、と言いたいところだが生憎と私はこれまでの戦いで全力を出せてはいない。自分がどの程度の技量なのかは分からないさ」
「フーン……」
にやけ面のヒソカは、目を細めた。
二年前のあの日、念を目覚めさせてからの期間カストロの戦いを目にしたことは彼にはない。
楽しみがそがれるというのもあるが、念能力者にとって己の必殺技ともいえる“発”は見せるだけ損。余程の馬鹿か、もしくは見せても対策のしようがない者ならば話は別となるが。
「ポイントアンドノックダウン制で試合を行います。宜しいですね?」
「ああ」
「……」
「では、試合開始!」
審判が腕を振り上げたその瞬間、
『『『え?』』』
空気が死んだ。
原因は、粉塵を上げる観客席下の壁の一角。そして、右拳を振り抜いた格好で初期位置から動いていたカストロ。
観客の声を無視し、彼は肩を回した。
「二年ぶりの再会だ。少しは派手な方が良いだろう、ヒソカ?」
ふつう死んだようにも思えそうな状況で、彼は気にした様子もなく言葉を紡ぐ。
そして、それに応えるように粉塵を切り裂く数枚のトランプ。
人体にすら軽く刺さるどころか切断する代物を、しかし彼は右手でアッサリと打ち払った。
「―――――ああ、良いよ。スゴク、イイ♥。君を生かして、正解だった♦」
「気持ちの悪いことを抜かすんじゃない」
ステージへと軽い足取りで戻ってきて早々、身悶えする様に体を掻き抱くヒソカを前にしてカストロは眉根を寄せた。
仕切り直し。互いに一定の距離をとって、
「ッ!」
「~♪」
ぶつかった。
“流”という念の技術がある。これは、体の各所にオーラを効率よく移動させて分配する技能。
初心者はともかくとして、一定以上の能力者になれば体得しているのだが、二人の場合は桁が違った。
まず、両手足の動きがそもそも見えない。回転率は強風を起こす程であり、そもそも体の動きすらも素人には影も捉えられてはいなかった。
唯一は肉と肉のぶつかるような衝撃音のみ。
実況の女性が騒いでいるが、二人の戦闘が見えているのは一定以上の実力者のみだ。
「む?」
何度目かの衝突、そこで何かに気づいたカストロはその場を大きく飛び下がった。
見るのは左手。自然と、目にオーラが集まり“凝”となりソレに気づく。
「これは……」
「ボクの能力、“
「……」
いつの間にか、カストロの左手とヒソカの右手がオーラによって繋がっていた。
何より、取れる気配がない。そして、ゴムバンドの様に撓んでいる。
「ボクのオーラはガムとゴム。二つの性質を併せ持つ♦」
「なるほど、変化系か。ネタバレがすぎないか?」
「ボクの能力は分かったところで意味は無いからね。それはそうと、君の発も見せてくれないかな?」
「……良いだろう」
ヒソカに応えるようにして、カストロは構える。
瞬間、彼の全身からは膨大な量のオーラが噴き出し、そして一気に圧縮されていく。
全身の変化は見受けられない。だが、明らかにその威圧感は増していた。
「やっぱり君は強化系かぁ♠」
「言っておくが、ヒソカ。最初の一撃を想定しているならば、防御を固めることを勧めるぞ」
「御託は良いさ。始めよう♦」
「真の虎咬拳を見せてやろう」
瞬間、カストロの姿は掻き消える。
それをヒソカが躱せたのは、彼と同程度に近い強化系の能力者を知っていたからだろう。
反射に加えて、能力によるガムとゴムの特性を遺憾なく発揮した高速移動。
回避したヒソカと紙一重で、彼が先程まで立っていた場所に現れたカストロは間髪入れずに右腕を振り下ろす。
その瞬間、ステージそのものが吹っ飛んでいた。いや、正確には引き裂かれたのか。
鉤爪を模した両手は、本物に等しい。いや、それ以上か。
彼の発は単純な身体能力の強化だ。だが、単純である分強力。特に、彼が思い入れのある虎咬拳をベースに据えることでここまでの爆発的な破壊力を得ていた。
何より、
「むっ…………」
ヒソカのオーラで引き寄せられない。
これは純粋に馬力でカストロが勝っているから。であるならば、
「石板の、破片か」
突如、己の左側面より高速で飛来してくる石飛礫を拳で砕き、カストロは目を細めた。
破壊力が凄まじい事になっている虎咬拳だが、その実破壊痕が大きすぎて自分の視界をつぶしてしまうというデメリットもあった。
無論、その点は対策してはいるものの舞い散る粉塵が煩わしい事には変わりがない。
何より、どちらかというと正面戦闘よりもトリッキーなタイプであるヒソカ相手に隠れられるスペースを作る事は愚策と言う外ない。
故に、カストロは纏うオーラを強めた。
オーラを纏うというのは、生身から防護スーツに着替えるようなもの。そして、分厚くなれば、当然防御性能も増すというもの。
(飛礫程度じゃダメージは無いかな)
“絶”によって粉塵に紛れながらヒソカは、冷静に戦況を把握していた。
狂人の色合いが強くみられる彼だが、その戦闘理論は実に論理的。相手の能力を正確に測る術も持ち合わせており、分析した上でその上を行くだけの力量もある。
戦闘において最もバランスが良いとされる強化系。攻守ともに隙が少なく、尚且つ機動力、回復力もある。達人ともなれば銃火器が相手でも正面から素手で制圧できるようになる。
わずか二年で、その段階を超えたカストロは、間違いなく天才だ。そして、自分の伸ばし方を本能的に知っている怪物。
努力する天才ほど厄介な存在は居ない。
そして、だからこそヒソカも場を整える。
「……」
「さあ、第二ラウンド♠」
突き立った石板が粉砕され天然の岩場の様な有様へとその姿を変えたステージ。
その中でもひときわ大きく尖った瓦礫の天辺に立ったヒソカは笑みを浮かべた。
目へとオーラを集めたカストロは、眉を寄せる。
「巣だな、ヒソカ。お前は、蜘蛛のようだ」
「蜘蛛、確かにそうかもしれないね♦でも、お喋りはここまで。さあ、遊ぼう♥」
言って、ヒソカの体は前へと跳んだ。その加速は、全身を強化するカストロに勝るとも劣らない。
迎え撃つように、カストロもまた前へ。鉤の様に指を曲げた右手を引っ掻くようにして前へと突き出した。
ぶつかり合う肘と手のひら。だが、そこから最初の様なぶつかり合いには発展しなかった。
「むっ……」
“伸縮自在の愛”による高速移動。カストロが“巣”と表現したように、ステージ全体を三次元の蜘蛛の巣状にヒソカのオーラは張り巡らされていた。
ガムとゴムという二種類の特性を遺憾なく発揮し、己の体に接着、ゴムの特性であり伸縮を用いて動き回る。
徹底して、ヒソカはヒット&アウェイに徹していた。
戦闘狂の嫌いがあるヒソカだが、その実彼自身の戦闘スタイルは頭脳的に攻めるテクニック型。そもそも、彼の念能力自体には直接的な攻撃力が一切ない。
むしろヒソカはその点を有効活用している節があるが。
なぜなら、“伸縮自在の愛”は
だからこそ、カストロは徹底して蹴り技を使わなかった。
人間の機動力、その要はやはり足にある。片方でも封じられればそれだけで機動力は半減以下。
(この能力、実に厄介だ。足を止められてしまえば、最早的だな)
カストロには遠距離の攻撃手段が乏しい。精々が、足元の石ころを投げつけるぐらいか。それでも、数十メートル離れた相手を撲殺できるのだが。
姿勢を低くし、足元へと伸ばされるオーラを腕で止めながら、カストロはヒソカを追う。
屋外の戦闘と比べれば圧倒的に狭いステージの上を駆け回る二人。
当然というべきか、立った瓦礫などは粉砕され、より細かな塊へと変えられていった。そしてそうなれば、自然と包囲網も下がってくるというもの。
「……チッ」
普通ならば攻撃に角度が無くなって有利になりそうなものだが、この場合は違った。
もとより、蜘蛛の巣の様な形であったヒソカのオーラは平面となる事でちょうど足元を絡めとるような形になっていたのだ。こうなると、自然密度を増した罠として機能し行動が制限される。
いつの前にか、カストロの膝丈ほどで形成されたオーラの包囲網の中に彼は立っていた。
「君のオーラも無尽蔵じゃない。その防御法も、いつまで持つかな?♠」
「ならば、手法を変えるまでの事」
カストロは全身に力を込めた。瞬間、オーラがその形を変えていく。
彼は強化系に属しているが、この系統の能力者は総じて変化系、放出系の念能力を一定水準で体得することが出来る。
彼のソレは、その応用。強化系と変化系の合わせ技。
「……!へぇ……!♦」
ヒソカはその変化に目を細め、笑みを浮かべる。
ひどく前傾姿勢となり、手がステージに触れそうな位置で垂らされる。
何よりその全身、半透明のオーラがまるで獣の毛皮の様な見た目へと変化しており、その中で軽く透けてカストロの姿が確認できた。
その見た目は、獣人。人狼ならぬ、人虎だ。
具現化系に見えるが、それは違う。今のカストロのオーラはあくまでも毛皮の様に見える状態へと変化し、強化系の応用で全身を包んでいるだけなのだから。
「
「ああ……ああ、ああ!君はそこまで辿り着いたのか!♥」
狂気と狂気のぶつかり合い。
その果ては―――――
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