魔法少女まどか☆マギカ〜魔法少女と落ちこぼれ魔法使い〜 (光三)
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プロローグ

また、やってしまった。だって思いつけてしまったんだからしょうがないよね。

尚この小説は、落ちこぼれ魔法使いのネタバレがあります。ネタバレしかありません。なのでそういうのがイヤな方は今すぐブラウザバックしてください。


 ここは、地球という天体がある『概念世界』の可能性の世界の1つだ。そして、アリス・ネクレリオンはとある存在からの要請を受けてこの世界にやって来たのだった。その内容は、いまいち要領の得ないものだったが、何か必死だったのが伝わるものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜少し前、アクレ魔法使い養成学園にて〜

 

「アリス、いよいよ今日か?」

 

「うん。私とっても楽しみ!でも、不安でもある……なんなんだろうねこの複雑な感情」

 

「アリスさん、これから行く世界は地球という天体がある『概念世界』の可能性『並行世界』……あそこは、αでもβでも無い例外だから何が起きてもおかしくない。やめるなら今よ!」

 

「ありがとう、ミネルヴァ先生。でも、私もう決めたから。『魔女』になるって」

 

「そう、わかったわ。これだけは、覚えて置いてくれる。あなたはあなたのままでいい。『魔女』になって成長して帰って来て。もし、何かに『絶望』している人を見つけたらあなたが『希望』になってあげなさい。その明るい笑顔を見せて元気づけてあげるの。以上よ」

 

「ありがとうございます、ミネルヴァ先生」

 

 アリスは、実のところ『魔女化』しかけている。その『精神性』と『肉体的』に。ともあれ、今回の(・・・)世界移動で確実に『種族進化』するだろう。

 

「(ごめんなさい、アリス。面倒な世界に行かせて……でも、今のあなたには必要なことだから。あの子たち(・・・・・)の『運命』を目の当たりにして、それでもあなたらしさを貫けるのかという最終試験。もしダメなら、その時は———私があなたを(・・・・・・)殺してあげる(・・・・・・))」

 

 それが、《勉学の魔女》ミネルヴァ・マギア・サーボグラスの覚悟であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜?????〜

 

「あれ?何で私、宇宙空間にいるの?」

 

 ———私が呼んだの……ごめんね迷惑かけて。

 

「いえいえ、大丈夫ですよ?ところでどちらさまですか?」

 

 ———私は、『概念』みたいなものです。ある人たちを守る為の。

 

「つまり、そういうシステムということですね?」

 

 ———しかし、ある時気づきました。自分が干渉出来ない世界が2つあることに。

 

「システム障害………というわけでは無さそうですね」

 

 ———1つは、神浜市を中心とした他とは違う出来事を辿る世界。もう一つは、あなたがこれから行くはずだった世界です。

 

「はずだった?」

 

 ———はい。その2つの世界は、何故か融合してしまいました。なのでその原因を調べて来て欲しいです。ついでに………いつかの私とあの子が幸せに暮らしている姿を私に見せて!!

 

「(この子)……………わかりました。任せてください」

 

 アリスは、満面の笑顔でそう言った。




今回は、アルティメットまどかと主人公のアリス・ネクレリオン、先生であり先輩魔女のミネルヴァを出しました。

これから、アリスの『絶望』を『希望』に変える戦いが始まります。応援してあげてください宜しくお願いします。(読んで頂けるかた)


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第1話 魔法少女との出会い

「僕と契約して魔法少女になってほしいんだ」

 

「は?(どういうこと?)」

 

 私の前に突然現れた謎過ぎる生物。名前は、キュウべえというらしい。

 

「魔法少女になったらどうなるの?」

 

「魔法少女になったら君の願いをなんでも1つ叶えてあげるよ」

 

「へぇ………で、デメリットはあるの?」

 

「うん。魔法少女になると『ソウルジェム』という物が生成される。そして、それを生成された者は『魔女』と戦う使命が課されるんだ」

 

「(は?『魔女』がどうして悪者みたいになってるの?あ!そういえば、2年前こんな話を聞いた気がする。『概念世界』と『並行世界』の関係性について。確か、『概念世界』のコピーである『並行世界』は、『概念世界』の法則と『並行世界』独自の法則が混ざり合うって、つまり、『魔女』はこの世界では魔獣のようなものということ?)」

 

「『魔女』ってどういう存在なの?」

 

「『魔法少女』が『希望』を振りまく存在なのだとすれば『魔女』は『絶望』を振りまく存在だよ」

 

「(あれ?何か思ってた答えと違う、どういうこと?それにこの『ソウルジェム』確か英語だったっけ?日本語に訳すと『魂の宝石』って意味なんだけど………まだ、何が何だかわからないなぁ)」

 

「ごめんね、私魔法少女にはなれないよ。叶えてほしい願いごともとくにないしね」

 

「残念だよアリス・ネクレリオン」

 

「ごめんね、キュウべえちゃん」

 

「別に構わないよ」

 

 気づくとキュウべえはもういなくなっていた。

 

「(『魔法少女』と『魔法使い』、『魔女』と『魔女』何か似てるなぁ。でも、私は『魔女』を目指す『魔法使い』だから魔法少女にならなくてもいいしね)」

 

 どこか疑問に思いつつ、謎の存在が言っていたことについて調べるアリスだった。

 

 ところで、今現在アリスは『無詠唱魔法』を使える。もしも、今ここで『魔女』に遭遇したとしても充分戦えるだろう。今のアリスは、もう落ちこぼれの魔法使いではない。しかし、彼女はそうは思わないだろう。なぜなら、最終的な目標は『魔女』になることなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然だがここで1つの疑問が生じる。それは、『知性種族』が語る物語をもとに創造された『並行世界』なのか、『概念世界』のコピーである『並行世界』なのかということだ。後者の場合は実に単純で、ただの厄介事に巻き込まれただけだ。前者の場合は、物語であるという性質上絶対に『主人公』と『仲間』と『キーパーソン』が存在する筈である。それぞれは、必ずしも1人(1つ)とは限らない。この物語の主人公はアリス・ネクレリオンであるが、この世界本来の主人公もいるはずだ。

 

「(『キーパーソン』は、今出会ったキュウべえとかいう謎の存在とこの世界に来る前に出会った謎の存在か………あの子、『システム』っぽいけど『感情』があった気がする。一方で、キュウべえの方は全く感情がなかったように思う。多分だけど『魔法少女』を創り出す為の『システム』?なのかな?)」

 

 ふと、アリスは疑問に思った。

 

「(そういえば、キュウべえは何で創り出されたんだろう?)」

 

 そう、当然の疑問である。『システム』は、何者かの意思が介在しないと創り出されることは絶対にない。必要だと思うから創り出されるのだから。

 

「(『魔法少女』ってどんな存在なんだろう?願いを1つ叶える代わりに『ソウルジェム』という宝石を与えられ、『魔女』と戦う使命を課される少女?何でそもそも少女である必要があるの?『人間』の女の子の方が多感だから魔法を発動させやすいから?うーん情報がなさ過ぎてわからないよ〜)」

 

アリスは、頭を抱えたのだった。

 

その時だった、声をかけられたのは。顔をあげると女の子がいた。

 

「あの、大丈夫かしら」

 

「あっ、すみません大丈夫です」

 

その時だった、アリスが異常を感じたのは。

 

「(突然、魔素が密集して………っ!?空間に異常な揺らぎが!)」

 

「「あなた、今すぐここから逃げて!」」

 

「へ?あなたは何者なんですか?」

 

アリスは、若干驚きを交えた声で質問した。

 

「これは、私のセリフだけど………まずはこの状況をどうにかしないといけないわね」

 

すると、彼女は指にはめていた『卵型の宝石』が埋め込まれている指輪に触れた。すると、突然周囲に魔力を纏い始め、それはやがて彼女の身体を包み込んだ。余りの眩しさにアリスは、目を塞いだ。アリスが目を開けると、先程とは違う服装の凄まじい量の魔力を纏っている『人間』が立っていた。

 

「ごめん、巻きこむつもりはなかったのよ。でも、見られたから説明しないといけないわね………私は、(ともえ) マミ。見滝原の『魔法少女』よ」

 

「あなた、『魔法少女』だったんですか?偶然ですね……実は、私『魔法少女』を探していてこの変容した空間を出たら『魔法少女』について聞かせてもらえませんか?それから、キュウべえという謎の生命体についても……」

 

「あなた、キュウべえが見えるの!?わかったわ、教えてあげる」

 

「ありがとうございます、巴さん」

 

「ううん、マミでいいわよ」

 

「じゃあ、マミさん。これからよろしくお願いします。私の名前は、アリス・ネクレリオンです。アリスでいいですよ」

 

「アリスは、外国の人かな?」

 

この時、この瞬間、アリスには幾つかの選択肢が存在している。1つは、マミが言っていたように外国から来た子供を装う。2つ目は、異世界から来たということを素直に言う。

 

「違います。私は、異世界から来た『魔法使い』で2つ目的があってきました。1つ目は、この世界を見守る『神』みたいな人?から依頼を受けたから。2つ目は、………『魔女』になる為です」

 

「何ですって!?」



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第2話 マミとアリスの話(前編)

「あんな、化け物みたいになりたいだなんてふざけないで!!」

 

 マミは、アリスの突然の発言に衝撃を受け、激昂してしまった。

 

「勘違いですよ、マミさん」

 

「へ?どういうこと?」

 

「それより、この変容した空間からいい加減に出ませんか?なんか、物凄い『魔物』?みたいなやつが近づいてきてるし………」

 

「そ、そうね。取り敢えず、すべてはこの『結界』を抜けてからね」

 

「自分も手伝いますよ。なにせ、私は『魔女』を目指す『魔法使い』ですから」

 

「(魔女を目指す?どういうことなの?アリスの世界の『魔女』とこの世界の『魔女』は存在から違うということ?)」

 

 様々な疑問を抱えつつ、マミはマスケット銃を発現させ、『使い魔』を次々と屠っていく。彼女は、ふとアリスの方をみた。すると、魔力を纏い『使い魔』に攻撃を加えていくアリスの姿があった。

 

「えい、ソイヤー!」

 

 気の抜けそうな、可愛らしい掛け声とは裏腹に次々と『使い魔』を倒すアリス。その姿を見てマミは、『凄く戦い慣れている』と感じた。

 

「マミさん、少しいいですか?」

 

「何?」

 

「この魔物さっきまでのより一回り大きくないですか?」

 

「説明は後でするわ。それにこれを倒したら終わりのようだし……」

 

「そうなんですか、わかりました」

 

 マミは、その場から駆け出して空中に飛び上がった後マスケット銃を巨大化させた。

 

 〔ティロ・フィナーレ〕

 

『凄い』とアリスが感じたその時、変容した空間が元の空間に戻った。

 

「(あれが、親玉だったのかな?)」

 

「アリスさん、約束覚えてる?」

 

「勿論です、全てお話します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜巴 マミの家〜

 

 アリスは、マミの家に入る前に保険をかけていた。キュウべえを中に入れない為だ。別に聞かれても構わないのだが、なんとなくそうしなければならないとアリスは感じた。

 

「それで、何が聞きたいですか?」

 

「そうね、取り敢えず『異世界』についてかな?」

 

「そうですね、取り敢えず異世界といっても大きく分けて2つに分類されます。って、ノート取るんですか?」

 

「だって、未知のことを知りたいと思うのは当然のことでしょう?」

 

「ふふ、そうですね。マミさん。よーし、気合い入ってきたー!頑張っておしえるぞー!!」

 

「(楽しそうね、アリス。良かった)」

 

「異世界は、『概念世界』と『並行世界』に分けられるんです」

 

「『並行世界』というのは、何となくわかるけど『概念世界』というのは聞いたことがないわね」

 

「『概念世界』というのは『神族』という『感情』を持った『システム』によって創造される世界のことです」

 

「『システム』?異世界なのに随分と機械的なのね」

 

「私も、始めは異世界とか聞いた時面喰らいましたよ。『システム』とか機械的なその他諸々何故か教科書に書かれてありますからね。魔法使いの養成をする学園なのに……」

 

「(確かにそうね、何か人為的な感じがするわね)」

 

「『神族』と『神』は同じ存在よね?」

 

「違いますよ」

 

「どういうこと?『神族』というのは、『神』という存在を『種族』という『カテゴリー』に分類した時につけられた『種族名』でしょう?」

 

「私も、そう思いました。けど、違いました。『神』というのは『システム』にしか過ぎず、機械でしかありません。『神族』というのは、『神』の『システム』を持ち、『知性種族』のように『感情』を持った『種族』です」

 

「(『知性種族』?もしかして、『魔女』というのは……)」

 

「『知性種族』……ということは他にもいるってこと?」

 

「うん、そうだよ。『神族』、『魔女族』、『人族』、『亜人族』みたいな感じで……他にもいるかもしれないけど」

 

「もしかして、アリスさん。『魔女族』になりたいってことだったの?」

 

「はい、『人族』から『魔女族』に『種族進化』する為に『概念世界』アムヌネジアからこの『並行世界』にやって来ました」

 

「『種族進化』する?そんなことが出来るの?」

 

「はい、色々と条件はありますけど、一番確実なこの方法をとることにしました」

 

「(一番確実な方法?他にも方法があってそれが上手くいきそうにないから代替案としてこの方法を選んだのかしら?)」

 

「この世界って『並行世界』だったのね。そういえば『並行世界』というのは『概念世界』の可能性の世界なのかな?」

 

「はい。『概念世界』のコピー、そして『知的種族』が書いた物語が『並行世界』となりえます」

 

「物語が新たな世界を創造する?」

 

「『並行世界』は、『概念世界』のあらゆる可能性が内包された世界のことです。その特性の為、『並行世界』は無限に存在します」

 

「なるほどね……(だとするなら、この世界は……)」

 

「でも、運命は変えることが出来ます。この世界が例え物語で語られたものだったとしても、あなたはあなたです。創られた存在だからといって『絶望』する必要はありません!」

 

「ふぇ?そ、そうね。そんなに気にしてるように見えた?」

 

「はい。でも、私がいます。私がいますから、いまは泣いていいですよ……マミさん」

 

「………………うっ、うっ、ぐすっ………ごめんなさい、アリスさん」

 

「大丈夫ですよ、あなたはひとりじゃないです。これから色んな人があなたに関わっていく何故かそんな気がするんです。だから大丈夫ですよ」

 

 その後、マミはひとしきり泣いた。でも、もうひとりではない。異世界から来たアリス・ネクレリオンという『魔法使い』は、確かに巴 マミという『魔法少女』の心を救った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう大丈夫よ、アリス(・・・)。次は、わたしの話よね」

 

「まず、キュウべえって何者なんですか?」

 

「わたしもそれはわからないけど、でも素質のある女の子にはその姿を視認出来て、願いを聞いて『魔法少女』に出来る生き物かな」

 

「素質のある女の子?」

 

「わたしもそうだったみたい。交通事故で死にかかっていた時に声をかけられたのよ。『僕と契約して『魔法少女』になってよ』って」

 

「そうだったんですね……」

 

「わたしは、『生きたい』という願いを叶えて今日まで生きているの」

 

「『魔女』ってどういう存在なんですか?」

 

「『魔女』は、『絶望』を振りまく存在。『魔法少女』かその素質がある人にしか視認出来ないわ。そして、この世界の自殺や原因不明の失踪事件は大体『魔女』の仕業。心の弱っている人間に『魔女の口付け』というものをつけるの」

 

「大体わかったかも。『魔女の口付け』をくらった人間は、生きることに『絶望』する。だから、自殺や原因不明の失踪事件が起こる」

 

「そう、普段は現実世界にいないの。『魔女』は、『結界』をつくりだす。そして、『使い魔』という手下を放ち結界に人間を閉じ込める」

 

「今日の結界は?」

 

「あれは、使い魔の結界ね。使い魔も成長して『魔女』になるから」

 

「なるほど。次の質問いいですか?」

 

「いいわよ」

 

「『ソウルジェム』ってなんですか?」

 

「そうね、少し待ってて今取り出すから」

 

「(ん?取り出す?)」

 

 すると、手の甲から『卵型の宝石』が出てきた。

 

「これが、『ソウルジェム』ですか……あれ、でも何か濁ってませんか?半分ぐらい(・・・・・)

 

「え?そんなに濁ってた?おかしいな、昨日(・・)グリーフシード(・・・・・・・)で穢れは(・・・・)取った筈なのに(・・・・・・・)………まあ、いいわ。『グリーフシード』の予備はまだあるし」

 

「察するに、魔力消費によって穢れ?が溜まっていくんですね?」

 

「そして、『グリーフシード』は魔女の卵。孵化すると魔女を生み出すわ」

 

「『グリーフシード』は魔女の卵でありながら『魔法少女』の生命線でもあるわけですね」

 

「『グリーフシード』は『魔女』をたおすことで得られる。あまり『ソウルジェム』に穢れを溜めすぎると、体調不良になるから定期的に『魔女』退治をしなければならないわ」

 

「(あれ?でも、なんで『ソウルジェム』の穢れを全く違う物質である『グリーフシード』で吸収出来るんだろ?まるで、磁石のN極、S極の関係みたい。でも、これも同じ磁石だからこそ干渉出来るだけ)」

 

「ああ、もう!『グリーフシード』で『ソウルジェム』になんで干渉出来るんだよ!わからない、くやしい〜!!」

 

「(ふふ、アリス、わたしと同じことで悔しがってる。でも、本当にそうね。もしかしたら、あの考察あながち間違ってないのかもしれない。それはそれで大問題なんだけど………まぁ、いいか。わたし、もう逃げない。わたしは1人じゃないから、もう何も怖くない!)」

 

「ちょっといい、アリス。見てほしいものがあるの」

 

 そういうと、マミは部屋から一冊のノートを持ってきた。ノートのタイトルは【魔法少女の考察】であった。マミは、ペラペラとページをめくっていき、あるページを見せた。そこには、信じられないことが書かれてあった。

 

 [『魔法少女』の『ソウルジェム』は、『グリーフシード』によって穢れを取ることが出来る。『魔法少女』は、『希望』を振りまく存在。よって、『ソウルジェム』も『希望』の象徴なのだろう。その一方で『魔女』は、『絶望』を振りまく存在。よって、『魔女』から貰える見返りである『グリーフシード』も『絶望』の象徴なのだろう。『希望』と『絶望』。なんだか、わたしたち人間の『感情』のようだ。四字熟語に『表裏一体』という言葉がある。『希望』を持つほど、『希望』が意味のないことだとわかると『絶望』する。『希望』と『絶望』は『表裏一体』、切っても切り離せないものだ。

 そして、『希望』と『絶望』が『表裏一体』というならば、『ソウルジェム』と『グリーフシード』も『表裏一体』なのではないだろうか。つまり何が言いたいかというと、『ソウルジェム』と『グリーフシード』は根本的に同じ物質なのではないだろうか。すると、『魔法少女』と『魔女』の関係も『表裏一体』である。

『魔法少女』は、『ソウルジェム』が完全に穢れ切ると、『魔女』を生み出す。そして、『ソウルジェム』は『グリーフシード』に変質する。無論、これは考察でしかないので本当にそうなのかわからない。]

 

 これを見て、アリスは納得できてしまった。これ以上ないほどの説得力を感じてしまったから。

 

「正直、反論の余地がない……『魔女』が『魔法少女』の成れの果て……あっ!そういうことだったんだ!!」

 

「突然どうしたの?アリス」




何だか、マミさんが考察しているという話と、アリスがマミさんに世界のあれやこれやを話すという話でした。長くなる為、前編、後編に分けます。後編では、アリスがマミさんに謎の存在について話をするところから始まります。


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第3話 マミとアリスの話(後編)

「あ、ご、ごめん。いきなり、大声出して。でも、解っちゃったんだ」

 

「何を?」

 

「マミさんは、私がこの世界にきたきっかけが何か覚えてる?」

 

「確か、2つあって1つは、この世界に降り立つ前に『神』みたいな人から依頼を受けたから。2つ目が、『魔女』になる為。って聞いたけど……」

 

「1つ目の目的っていうのが謎の存在に依頼を受けたから。でも、今の考察ノートを見て解っちゃった。謎の存在の正体」

 

「本当に?『魔法少女』が『魔女』になるって考察にヒントがある?アリスは、この謎の存在と話して『神』だと思った?つまり、機械(システム)ってこと………でも、みたいな()っていうことは、『感情』がある。だとすると『神族』が挙げられるけど………アリス、ちょっと質問。『概念世界』を創るのは『神族』に宿る『神』という『システム』なの?それとも、『神族』だから?」

 

「ごめん、マミさん。私は、よくわからないんだ。『神族』は、『感情』を持つ『システム』で一応『システム』だけで『概念世界』は創ることが出来ると思うけど……」

 

「なるほど、想像の域をでないか……でも、アリスがわざわざ『神族』と言わずに『神』みたいな人って言った……単純な『人』でもなく、『神』なのか『神族』なのかはっきりとしない『概念存在』ということ?『魔法少女』と『魔女』の関係がヒント………はっ!もしかして!この謎の存在は、『魔法少女』の『魔女化』を防ぐ『システム』?」

 

「私もそう思う」

 

「でも、『魔女』は最近増えてきている。さっきの話と矛盾してしまうわ。そういえば、依頼の内容はなんなの?」

 

「依頼の件は、この世界の異変についての原因を調べることです」

 

「『魔法少女』の『魔女化』を防ぐ『システム』があるのに、この世界では『魔女』が未だにいて増えてもいるから異変なのかな?」

 

「詳しく言うと、私は宇宙空間でその人に会ったの。その人によると、ある時『システム』が働かない世界を2つ見つけたらしいです。1つ目の世界は、神浜市を中心とした他の『並行世界』とは違う出来事が起こる世界。2つ目は、私が行く筈だった『並行世界』です」

 

「行く筈だった?どういうこと?」

 

「この2つの世界何故か融合してしまったらしいです。その原因を調べることが依頼の内容です」

 

「世界同士が融合した!?それ大丈夫なの?」

 

「正直わからない………でも、1つわかってることはある。確実に私たちは、本来の物語の流れから逸れ始めたということ」

 

「本来の物語の流れから逸れるとどうなるの?」

 

「その対象の世界が、『特異点化』する。つまり、世界の法則は改変され続ける。そして、最終的に『概念世界』や『並行世界』といった法則からも逸れた世界が創造される」

 

「『特異点化』すると、世界の在り方が変わってしまうということ?」

 

「うん。それが、良いことなのか悪いことなのかはまだわからない。でも、私たちは『選択』を迫られているのかもしれない。この世界で自分らしく生きていくか、この世界で運命の言いなりになりながら生きていくか……私は、どっちでもいいよ(・・・・・・・・)

 

 マミはアリスの言い回しに若干の違和感を覚えるが、それを後回しにして決意を伝える。

 

「アリス。私は、あなたと一緒にこの世界で生きていきたい!アリスは、いつか帰っちゃうかもしれないけど、それまでは一緒にこの世界で生きていきたい。『運命』の言いなりになんてならない!私は、自分らしく生きていくわ」

 

「そっか、わかった。マミさん、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、『魔法少女』の『魔女化』の問題はどう解決しましょうか?」

 

「それから、キュウべえは何者なのか。という疑問も湧いてきたわ」

 

「神浜市というところも気になります。もしかすると、何かヒントがありそうです」

 

『魔法少女』の『魔女化』。まだ考察の段階だが、マミは確実にそうだと考えている。ならば、『魔法少女』の『運命』に『絶望』するよりも、『魔女化』しない『希望』を見つける方が余程建設的だろうと考えているマミだった。

 

「(何故なら、私は『希望』を振りまく『魔法少女』だから!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは、『神界』で『神族』たちが住む『概念世界』だ。ここで、イルバールが7人の人影に向かって言った。

 

「地球という天体がある『概念世界』の『並行世界』に行ってもらいたいの。と言ってもこの世界、既に『特異点化』してしまいました」

 

「何!?そうだとするなら今から行く世界は、壊さなければ……」

 

「あのことを聞いてないじゃねぇか。なあ、イルバール様。この世界は、『概念世界』のコピーなのか?それとも、物語で語られた世界か?」

 

「安心してください。後者の方ですから」

 

 その言葉を聞いた瞬間、7人全員がホッとしたようだ。

 

「ところでイルちゃんこの世界は、どんな物語なの?」

 

「『魔法少女まどか☆マギカ』そして、『マギアレコード』これがこの世界のもとになった物語よ」

 

「ええぇ、そ、それって!地球において約10000年前に語られた物語!アニメやスマホゲームにもなった超大人気作じゃん!」

 

「まじか……」

 

「それで、楓とレグザー2人にこの世界へ行ってもらいたいのですが……」

 

「「わかりました」」




マミさんとアリスの話後半でした。
このお話のマミさんは、かなり精神的に強化されています。確実にアリスの影響です。
しかし、アリスは異世界人です。マミさんとは、いつか別れることになります。そのことが、今後の物語に大きく影響します。アリスは、最後にどういう決断をするのか、果たして『魔女』になれるのか、読んでくれているみなさん、これからもぜひお楽しみください。


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第4話 新たなる魔法少女と男の魔法使い

 ここまでの話を纏めると、『魔法少女』と『魔法使い』が邂逅し、ある1人の『魔法少女』の心を救ったというものだ。その少女の名前は、巴 マミ。見滝原の魔法少女だ。彼女は、幼い時に両親を交通事故で亡くした。そして、彼女もまた死にかけていたのだ。その時だマミがキュウべえと出会ったのは。

 

「わたし、まだ死にたくない!生きたい!」

 

 幼い心は、死という絶対的概念に耐えられる筈もなく、ただ衝動のままにキュウべえに願った。否、願ってしまった。そうして、巴 マミは、幼いながら1人で戦いの宿命を背負わされた。

 

 それから7年の月日が経った後、マミはある1人の女の子と出会う。その女の子の名前は、アリス・ネクレリオンという。アリスが、『使い魔』が作り出す『結界』に取り込まれてしまった。結果として、2人は無事に『結界』を抜け出すことに成功した。マミは、『生きたい』という願いで『魔法少女』になった。その結果彼女の『固有魔法』はリボンということになる。『生きたい』という願いは、『命を繋ぎ止める』、そして『生き延びる』という形で叶えられることとなった。

 

『固有魔法』とは、『魔法少女』になる時に願った内容によって決められる。『魂』、『心』から紡がれた願いは、因果を持つ少女ほど危険なく歪みなく叶えられる。だが、しかし。そんな、都合良くもない。『魔法少女』の『魔女化』。マミが考察した通りなら、因果を持つ少女が『魔女化』してしまうとしよう。そうするとどうなるだろう。少なくとも、ただ『魔女化』するだけではないだろう。キュウべえが叶える願いは、何故か裏目に出そうな気がするのは気のせいだろうか?何故、そもそも少女である必要があるのか?そして、キュウべえは『魔法少女』の『魔女化』について知っているのだろうか?もしも、狙ってやっているのならばどうしてそのような『システム(・・・・)』を創り出したのか?疑問ならば次々と出てくるが、今ここで語るべきではないだろう。

 

 その一方で、『魔法使い』という『魂核』から溢れ出す『魔力』を使い『魔法』を発動させる人物もいる。『詠唱魔法』と『無詠唱魔法』は、『魔法使い』の攻撃方法となる。『詠唱魔法』とは、詠唱により空に魔法陣を描き、そこに一定量の魔力を注ぎ込み発動させる魔法体系だ。その対となる『無詠唱魔法』は、イメージが重要でそれが明確である程その効果は大きくなる。魔法というものは本来キュウべえに願いを叶えて貰わなくても使える。何故ならば、『原初の神』が抑止力として世界が創り出される空間を『魔素』で満たしたからだ。その結果、全『概念世界』『並行世界』において『魔法』というものが使えるようになったのだ。しかしながらこの『特異点化』した世界で、『魔法』という概念は正常に稼動するのだろうか?今はまだ大丈夫だろうが、これからどうなるかはわからない。世界の法則や物語の内容が改変され続けるというのがアリスの言だ。しかし、それでも彼女たちは諦めないだろう。アリスは、『魔女』になることを。マミは、『魔法少女』の『魔女化』を防ぐ方法を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜????????〜

 

「また、ここからか………もう、疲れてきたわ。誰か、助けて!助けてよぉ!」

 

 クールな雰囲気の黒髪ロングの少女は、自身が入院する見滝原総合病院の病室にて慟哭の声を発していた。この少女の名前は、暁美(あけみ) ほむらという。ほむらは、実のところ限界に近い。『身体的』な限界ではなく、『精神的』な限界がきているのだ。前回(・・)、ストレスからか遂に幻聴が聞こえ出した。

 

『(諦めないで下さい!あなた、私を捨ててまでまどか(・・・)を救おうとしたんでしょう!?)』

 

「もう、無理よ!もう、限界なのよ!だったら、あなたがまどかを救ってよ!」

 

『(無理ですよ?何をあなたは寝ぼけたことを言っているんですか?さっき言わなかったですか?私を捨ててまでって………滑稽ですねぇ)』

 

「アアアアアアァァァアアァァァ!!」

 

 あの時のことを思い出してしまったほむらは、もうどうすればいいのか訳がわからなくなってしまった。もう、お気づきの方もいるだろうが改めて紹介しておこう。『固有魔法』は、時間操作。願いは、『鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に護られる私じゃなくて、彼女を護れる私になりたい!』である。時間停止と時間遡行、彼女の武器はそれだけだ。あとは、どこか暴力団の事務所に乗り込み、拳銃を手に入れたり、どこかの軍事訓練施設から戦車等の重火器を盗み出す。そんな、魔法少女なのだ。彼女は、『魔法少女まどか☆マギカ』の物語における『キーパーソン』であると言える。『魔法少女』の『魔女化』を防ぐ『システム』であろう謎の女の子、キュウべえとかいう『魔法少女』を創り出す『システム』であろう存在に続いて3人目だ。

 

「ねえ、聞いてる?もう1人の私」

 

『(聞いてるよ、どうしたの?)』

 

「助けて下さい、お願いします。助けて下さい、お願いします。助けて下さい、お願いします。助けて———

 

 ———————「おい、お前大丈夫か?」へ?」

 

 ほむらの前に現れたのは、男の子だった。しかし、何故かわからないがこの子は何かが違うと感じた。まるで別世界から来たような(・・・・・・・・・・)雰囲気(・・・)なのだ。もしや、わたしと同じ時間遡行者なのだろうか?

 

「あなた、何者?」

 

「うーん、取り敢えず自己紹介しておくよ。俺の名前は、アクロス・パーリアートといいます。よろしくお願いします」

 

「どこか、外国から来た人?」

 

「どうしようか………あなたはどうしたい?」

 

「ど、どういうことよ!」

 

「だって、今さっき壊れたように繰り返してたみたいなので気になったんです。『助けて下さい、お願いします。』って」

 

「っ!!??あなたみたいな子供に何が出来るっていうの!」

 

「わかりません。しかも、あなたは俺にまだ何も話をしていない。何にあなたが困っているのかわからないのにわかるわけありませんよ?」

 

「ごめんなさい。私は、人とのコミュニケーションのとりかたがわからないの………人との距離のとりかたも。私には、これがお似合いの末路なのね」

 

「………」

 

「そして、1人で『絶望』に堕ちて周囲に不幸を撒き散らして死んでいくのよ」

 

「………」

 

「そんなことならあんなこと願わなきゃよかった。あの時は、ただ衝動のままに願ってしまったの。『鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に護られる私じゃなくて、彼女を護れる私になりたい!』ってね」

 

「こうして聞いてみると、物凄く傲慢だね。そして、凄く『人間』らしい」

 

「え?私が『人間』らしい?違うわ。『魔法少女』になった時点で『人間』じゃあないのよ」

 

「ううん、あなたは『人間』ですよ。そんなに鹿目さんに執着して、でも救えなくて苦しんでいる。そんな人が『人間』じゃあないだって?ふざけるなよ!どっからそんな突飛な発言が飛び出してくるんだ?悩んでること吐き出してみろよ」

 

「あなたには、関係ない。出て行って!」

 

「ハァ………わかりました。今は、そうします。でも、いつでも構いませんから聞かせて下さい。それじゃ、また」

 

そうして、アクロスは病室から出て行った。

 

『(どうして、彼に協力を求めないんですか?心配してましたよ)』

 

「そんなことわかってる!でも、でも!」

 

『(信じてその期待を裏切られたら、今度こそ壊れちゃうから?)』

 

「そうよ!進む為とか言いつつ結局しているのは立ち止まること!そうよ、そんなこととっくの昔に理解してるわ!でも、今更どの面さげてマミたちに協力を求めればいいの?」

 

『(違います。あなたがするべきことはそんなことじゃないはずです!)』

 

「へ?どういうこと?」

 

『(そんなもの、自分で考えて下さい!いつまで、ウジウジしてるんですか?あなた、まどかを救いたいんですよね!だったら、今すぐこの病院から出て行動すべきなんじゃないんですか!)』

 

「そ、それは………」

 

『(ハァ………しょうがありません。あなたに『希望』を持ってもらう為に今から私はあなたにひとつの真実を言います)』

 

「真……実?」

 

『(私は、————————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—————————————というわけです。理解できましたか?)』

 

「ええ、理解出来たわ。まどかだけを救ってもそんなものに何の意味も価値もないってことが!あなたがほんとうに私の『———』に——————してきたのならこれからもあなたは私と一緒にいられる?見守っててくれる?」

 

『(そんな質問が出てくる時点で、完全には理解してないですよね!まぁ、無理はありませんけど)』

 

「ふふ、普通あんなこと言われても理解出来ないわ。でも、しまったわね。そんなことなら、いろいろ知ってそうなアクロス君に事情を話しておけば良かったわ」

 

『(今からでも充分間に合うと思いますよ。ファイトです、私!)』

 

「そうね、ひとまず………『——————』を創り出す『——————』と『——————』と『——————』に協力を依頼して『魔法少女』の『魔女化』を防がないと。でも、『因果』が足りないのはどうすれば………いや、気にする必要はないわね。私の予想が正しければ、その3人まどか並みの『因果』を背負っているはずだから」

 

『(どういうことですか?)』

 

「あのね………あなた、長々と私に何を話したのよ……天然なの?」

 

『(ヘ?…………あ!確かにそうですね。私が——————から——————にいる私の『———』の中に存在していることが何よりの証明でした)』

 

「でも、その場合だと新たなる『魔法少女』がいるんだけど。それも相当な『因果』を背負った」

 

『(そして、その願いは……)』

 

「私と同じでしょうね。キュウべえに願うと必ずといっていいほど襲いかかる願いの『副作用』。それを利用するなんて、相当な切れ者ねこの謎の『魔法少女』は」

 

『(現時点では、その『魔法少女』に関してはわかりませんね)』

 

「そして、その3人とコンタクトを取ろうとすれば当然より多くの『魔法少女』と関わりを持つことになる」

 

『(そして、何とかその時期までに見滝原の『魔法少女』達と絆を紡げれば)』

 

「うん、いける!今度こそ、いける!」

 

そうして、『———』に—————してきた1人と、ほむらは『希望』の光を見つけて再び走り出した。




『マギアレコード』の始まりを告げるフラグが立ちました。しかしながら、原作通りにはなりません。


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第5話 夢で会った謎の少女——————

 〜??????〜

 

 何もない暗闇の道を1人の少女が歩いていく。すると、その先に扉があった。突然、頭に声が聞こえてくる。

 

「え?い、一体誰?」

 

 〈我は、総てを知る者。この世界のことも、別世界のことも〉

 

「???」

 

 〈と言っても今のお前はまだ出会ってないか………さて、どうしたものか〉

 

「あの、さっきから声が聞こえてくるんですけど、どこから喋ってるんですか?」

 

 〈我は、この『異空間』の管理者。少し、オカルトな感じに言うと『神』といったところかな?〉

 

「う、嘘!?神様って本当にいたんだ!」

 

 〈我は、汝たちが言うところの神様ではない。つまり、『神族』ではないんだよ〉

 

「???どういうこと?」

 

 〈簡潔に言うと、我はただの『システム』であり、『神族』というのは感情を持つ『知性種族』なのだ〉

 

「この空間を管理する為だけの機械ってこと?」

 

 〈そういうことだ〉

 

「どうして、管理者さんは私をこの空間に連れてきたの?」

 

 〈汝は、知らなければならない。——————の想いとその道程を……〉

 

「もう一回言ってくれる?ちょっと聞き取れなかったから」

 

 〈無駄だ、汝。否、鹿目(かなめ) まどかよ〉

 

「!!」

 

 〈未だ、汝は——————に出会ってないのだから。兎も角、今は黙ってこの扉を開けると良い〉

 

「う、うん。わかったよ」

 

 そうして、まどかは目の前の扉を開けて中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まどかは、崩壊した見滝原の街と化け物を視認することができた。

 

「そ、そんな。どうしてこんなことに!」

 

「まどか!そこにいちゃだめぇ!お願いだからはやく逃げて!」

 

「え?うそ!私が、もう1人いる!?」

 

 もう1人の私は、狼狽しているみたいだ。

 

「ひどい……」

 

「仕方ないと思うよ、まどか。彼女には荷が重すぎた」

 

「!?!!?」

 

 本物のまどかは、吃驚しすぎて声すら出せなかった。なぜなら、謎の生物が言葉を喋っていたのだから。それと同時にまどかはこの生物を不気味だと感じてしまった。なぜなのだろう。見た目は、こんなにも可愛らしいのにも関わらず。

 

「そんな、そんなのってないよ。———ちゃんは私の為に『———』になってくれたのに!」

 

「やっぱり、聞き取れない!」

 

「狼狽している場合じゃないよ、まどか。さあ、僕と契約して『———』になってよ」

 

「嫌だ!———ちゃんは、そんなこと絶対に望んでないから」

 

「どうしてだい?まどか。君はもしかして、——————の———の能力に期待しているのかい?無駄だと思うよ?」

 

「無駄じゃない!『——————(——————)』、感情を理解出来ない(・・・・・・・・・)あなたには絶対にわからない!」

 

 本物のまどかは、もう1人のまどかが言っていたことが気になった。

 

「(感情を理解出来ない?感情が無い(・・・・・)の間違いじゃないの?)」

 

 本物のまどかがそう思うのも仕方のないことだ。なぜなら、ここまで謎の生物はこの景色にも関わらず、何らかの契約を取ろうとしていたのだから。淡々とした口調で(・・・・・・・・)

 

「本当に訳がわからないよ」

 

「ハァ………良かった(・・・・)あなたが契約しなくて(・・・・・・)

 

「(どういうこと?こんなに『絶望』的な光景なのにまるで『希望』を見たって感じの表情をしてる。何で?)」

 

「———ちゃんとの約束だもん!私、信じてるから!」

 

「え?」

 

「いつか、私と———ちゃんを含めたみんなが笑顔で生きていける『未来』が来るってこと!だから、頼んだよ」

 

「ありがとう、まどか。あなたのおかげで私はまだ頑張れる!だから、任せて!」

 

 そうして、———は——————をした。

 

 〈以上だ〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、なんだ。………夢オチ?(でも、なんでこんなはっきり覚えてるんだろ……)」

 

 まどかは、不思議に思いつつ学校に行くためにベットから起き上がった。下に降りると、母の詢子(じゅんこ)と父の知久(ともひさ)がいた。

 

「おはよう、まどか」

 

「どうしたのまどか。少し顔色が悪いみたい」

 

「今朝、少し変な夢を見たの。夢なのかどうかすらわからないけど」

 

「どういうこと?」

 

「だって、普通の夢だったら内容があやふやになるよね?でも、私が見た夢はハッキリと内容がわかるの。不思議でしょ?」

 

「そうね………よかったら内容聞かせてくれないかな?」

 

「うん、わかった。内容はね、—————————

 

 

 

 

 

 

 ————————————っていうものだったの」

 

「まどか、それは………」

 

「まどか、今日大切な話があるから学校終わったらすぐに帰ってきてくれる?」

 

「うん、わかった。じゃあ、学校行ってくるね」

 

 家から出たまどかは、学校に行く道中親友である美樹(みき) さやかとあった。さやかにも今朝見た不思議な夢について話した。

 

「…………不思議な電波でも受け取ったのかぁ〜この、この〜」

 

「えぇ〜さやかちゃん、酷いよ!真剣に悩んでるのに〜」

 

「もしかして、前世からの因果とか?」

 

 ニコニコしながら、さやかはからかうように言った。

 

「むぅ〜」

 

「ごめんごめんって。(まどか、ごめん。心当たりがありすぎる。前半部分は訳がわからないけど、後半は十中八九アレ(・・)のことだよね………そんなことにまどかを巻き込めないよ)」

 

 さやかは、何かを抱えているようだ。しばらく歩くと、学校に着いた。さやかとまどかは、同じ学年の同じクラスだ。

 

「さやかちゃん、ちょっと眠くなってきたからチャイムなったら起こしてくれる?」

 

「………わかった」

 

「まどか、チャイムなってるよ。起きろ〜!」

 

「さやかちゃん、おはよう」

 

「おはよう………じゃあねぇよ!何でガッツリ学校で寝てるんだ〜!」

 

「ごめん」

 

「はいはい。全員静かにして着席しなさい!」

 

 担任の早乙女(さおとめ) 和子(かずこ)は、英語の教師で、さやかは苦手としている。この教師には、1つ致命的な短所がある。

 

「突然ですが、質問です」

 

『(きた〜!)』

 

「目玉焼きは、半熟がいいですか?固焼きがいいですか?中沢君!」

 

「!え、えっと〜………どっちでもよろしいかと」

 

「はい、その通りです!そんなものは、どっちでもよろしい!みなさんは、こんなくだらないこだわりを持たないように!」

 

『(あ〜……またダメだったんだ)』

 

 まどかは、今朝見た夢が気になってまともに聞いていなかった。一方のさやかは、どう反応すればいいのかわからず苦笑いを浮かべるだけだった。

 

「(…………)」

 

「アハハ」

 

「さて、今日から転校してくる生徒がいるので紹介しようと思います。暁美さんどうぞ」

 

『(そっちが後回しかい!)』

 

 全員心のなかでツッコミを入れたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜まどかside〜

 

 今朝不思議な夢を見た私は、うわのそらになっていた。

 

「(お母さんとお父さん何か知ってるのかな〜)」

 

 父と母は、確かに何かを知っていそうな素振りであった。

 

「(本当に、夢だったのかな。まるで(・・・)本当にあった出来事(・・・・・・・・・)を追体験したみたいな(・・・・・・・・・・)感覚(・・)だった)」

 

 本当のところは、まどかにもわからないが………だとしても、どうしてもあの感覚が忘れられることはなかった。

 

「(さやかちゃんの言う通り、何か不思議な電波でも受け取っちゃったのかなぁ。それでも、問題だよ!)」

 

 まどかが言う通り、それはそれで問題なのだ。なぜなら、それが本当ならまどかは、別の法則、概念を(・・・・・・・・)持っている(・・・・・)ということになってしまうのだから。

 

「(うーん、考えてもわからないよ〜)」

 

 しばらくして、まどかは考えることを放棄した。そして、先生の声に耳を傾けるとこう言っていた。

 

「さて、今日から転校してくる生徒がいるので紹介しようと思います。暁美さんどうぞ」

 

「(転校生?こんな時期に?)」

 

 まどかは、教室に入ってきた黒髪ロングのクールな雰囲気の女の子を見た瞬間、確信した。やっぱり、あれは夢ではないと。

 

「(あれは、あの子は!)」

 

 すると、暁美さんは自己紹介を始めた。

 

「どうも、暁美 ほむらです。つい最近まで心臓の病気で入院していましたが、今は大丈夫なので心配しないでください。それと、私は病院の入院暮らしのせいかちょっと人付き合いの方が………少しアレですので……だから、あの!っ!わ、私と友達になってくれたら嬉しいと思います。みなさん、これからよろしくお願いします」

 

「(あの子もしかして、コミュ障っていうやつなのかな?)」

 

 何にしても、まどかはあの子とこれから沢山関わっていくのだろうと感じた。

 

 〜まどかside out〜




キュウべえ周りの設定を少しいじらせていただきました。
原作のまどかの夢は、所詮夢でしかありませんが、こちらのまどかの夢は……これ以上はネタバレになるので言及を避けたいと思います。原作の第1話は、夢で会ったような……と少し曖昧な感じのテイストでしたが、こちらの方は夢で会った(・・・・・)と断言のテイストです。このことが、どういう作用を引き起こすのか次回をお楽しみに!


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第6話 『魔法少女』暁美 ほむらと『魔法使い』アクロス・パーリアート

 見滝原中学に転校する前日、ほむらはアクロス・パーリアートを探していた。すると、声が聞こえた。

 

「どうも、2日ぶりですね。『魔法少女』さん。俺です。アクロス・パーリアートです」

 

「探していたわ。私の名前は、暁美 ほむらです。これからよろしくお願いします」

 

「ところで暁美さんは、なぜ俺のことを探してたんですか?」

 

「それは、聞いてみたいことがあったからよ。アクロス君、あなた何者?初めて会ったときから違和感があったのよ。まるで、別世界からやってきたようなそんな感じ……私の感覚の問題でしかないわ、何もなければ何もないでいいの」

 

「感覚ですか……本当にそれだけですか?」

 

 ほむらは、内心でやっぱりばれたかと思った。それは、想定内で言葉につまることはなかった。

 

「いいえ、ちがうわ。アクロス君、あのとき名前だけしか言わなかったでしょう。そして、私は名前を聞いて外国からきた人なのかと思った」

 

「だから、あの質問で確認したかったんですね?」

 

「そして、あなたは私に『どうしたい?』って逆に質問を返してきた。あのときの私は色々壊れていたから考える余裕がなくて、あなたに邪険に接してしまった。本当にごめんなさい。後からよくよく考えてみると、あなた自分が普通じゃないって喧伝しているようなものよあれ。気づかず?それとも意図的に?」

 

「半分半分かな?」

 

「保険をかけておいたということ?」

 

「あのときの暁美さんが普通でないことは、例のあれを見たおかげでわかってました。なので、接触するにしてもどう接していいのかわからなかった。だから、あんな強引な自己紹介をしました。出来るだけあなたの印象に残りやすいように」

 

「あなた、本当に子供?少しいや、かなり賢いわね」

 

「賢くなんてないですよ?俺の全てはアリスの為にあるものだから」

 

「アリスさん?何、彼女?」

 

「はい、そうです。この世界に来ているアリスを手伝う為にやってきました。改めて自己紹介します。俺は、『概念世界』アムヌネジアからこの『並行世界』にやってきた『魔法使い』です」

 

「想定内でもあり、想像以上の答えをありがとう。まず、『並行世界』はなんとなくわかるわ。でも、『概念世界』って何?」

 

「一言で言うのならオリジナル世界」

 

「わかりやすいわね……でも、詳しい話が聞きたいわ」

 

「そもそも『異世界』というのは、『概念世界』と『並行世界』に分けられます。その前に、あのことを話しておいた方がいいかもしれませんね」

 

「あのこと?」

 

「『異世界』には、『人間』以外にも『感情』を持った『知性種族』が存在します。たとえば、『神族』、『魔女族』、『亜人族』ですね。勿論、探せばまだまだいると思います」

 

「『魔女』!?で、でも『感情』を持っている?なるほど、そういうことなのね………つまり、あなたたちとわたしたちは持っている知識が違う。そして、『概念世界』の法則は一部『並行世界』の法則と混じり合う」

 

 率直な感想として、アクロスは驚いていた。

 

「ああ、その通りです。アリスは、『人間』から『魔女族』に『種族進化』する為にこの世界に来たんだ」

 

「『進化』か………皮肉なものね。こちらの『魔女』は、『絶望』の塊にしか過ぎないのに………」

 

「そろそろ、聞かせてくれませんか?『魔法少女』について」

 

 あのことを話さなければならない。ほむらは、気が重くなったが自身の『魂核』に宿るもう1人のほむらの『魂』が見守ってくれていることを感じ、勇気を持つことが出来るようになった。

 

「ふぅ〜。『魔法少女』とは、『インキュベーター』が創り出した『システム』よ」

 

「『システム』……『神』?いや、この場合は機械か?ん?どういうこと?」

 

「機械か……ある意味そうなのかもしれないわね。だって、この身体は抜け殻にしか過ぎないから」

 

「え?ぬ、抜け殻!?」

 

「ええ、わたしたち『魔法少女』の魂は体内から抜き出され、『ソウルジェム』という『卵型の宝石』に『変換』されるの」

 

「は、はあ!?『概念』を抜き出して視認できるように『変換』したあ!(パクパク)」

 

「『魂』って『概念』だったの?でも、視認出来なくても確かに存在するもの?そういえば、『魂核』というのも『概念』のひとつなの?」

 

「何?な、何故ほむらさんがそんなこと知ってるんですか!?」

 

「実はね、あの後もう1人の自分に言われたんです」

 

「もう1人の自分………もしかして!!」

 

「そうよ、もう1人の自分の正体は他の世界で死んだ私の『魂』がわたしの『魂核』に『転移』してきたものよ」

 

「そういうことだよな。そう言えば、なんでほむらさんは今平気そうなんですか?」

 

「もう1人のわたしは、こんなクールな感じではなかったわ。いつもおどおどして、友達が1人もいないそんな感じ」

 

「引っ込み思案って感じだったんだな。ほむらさんも昔はそんな感じだったのか?」

 

「ええ、そうよ。そして一番最初の世界でわたしは、運命と出会った。そう、『魔法少女』になったまどかとマミさんが『魔女』の『結界』に囚われたわたしを助けてくれたの」

 

「まどかというのは、ほむらさんの親友と呼ぶべき人か?」

 

「ええ、そうよ。わたしにとってまどかは初めての親友だった。だから、わたしはあの現実を受け入れることがどうしても出来なかった!」

 

 いよいよ始まるのかとアクロスは感じた。彼女の長く苦しい『運命』への反逆が。

 

「『ワルプルギスの夜』今から約一月後この見滝原にやってくる超弩級の『魔女』よ。基本的に『魔女』は『結界』を創り出し『使い魔』を使役し、『結界』内部に閉じ込めて喰らう。だけど、この『魔女』は『結界』を持たない。『魔法少女』の素質が無い人には、台風などの自然災害として認識されるわ」

 

『魔女』それは、ほむら曰く『結界』に閉じ込めた人間を喰らう化け物である。『魔女』それは、ほむら曰く『絶望』の塊である。そこでふとアクロスは疑問に思った。一体『魔女』は、どこから出現するのか。『絶望』の塊というが、『知性種族』が絶望する際の感情がエネルギーと化して『魔女』を実体化しているのだろうか。様々な疑問が湧いてくるがそれを後回しにして、アクロスはほむらの話を聞くことにした。

 

「そう。『ワルプルギスの夜』それがまどかを殺してしまうの。必ず(・・)

 

「そうして、『インキュベーター』にあの願いごとを叶えてもらう代わりにほむらさんの『魂核』から『魂』を抜き出し、それを『ソウルジェム』に『変換』された。そして、ほむらさんは『魔法少女』となった。そういうことだな?」

 

「ええ、そういうことよ。そして、『時間操作』の魔法を使って『時間遡行』をしたわ」

 

「キュウべえの方こそ『神』だと俺は思った。だってさ、願いごとを叶えてしかもそれを実現させるなんて普通は『概念創造』しないと無理だからさ。だから、『神』……機械だと思ったんだ」

 

「おそらく『具現』の能力で『概念創造』したのね………そんなことより今は、わたしの話よね。ごめんなさい、相変わらずの話ベタで……」

 

『変換』と『具現』というのが『インキュベーター』の能力である。ということがわかったので充分話は上手い方だと思うのだが、しかしほむらは自己評価を低く見過ぎているように感じる。

 今までの話の中で最もアクロスが驚いたことは、『概念』を抜き出せるということだ。そもそも、『概念』というのは『物体』で存在しているわけではない。しかし、存在している。『概念』というのは『結果』が出て初めて存在を確認することができるのだ。

 

「2度目の世界でわたしは、マミさんに戦い方を教えてもらった。あの頃は、とても楽しかった。時間停止の魔法を使用した戦い方を考えるのはとても難しかったけど、毎日がとても充実していたわ。ただ、無作為に無計画になんの興味も湧かなかったあの頃とは違って………まどか達と『魔法少女』として活動していると、自分でもだれかの役に立つことが出来るんだって思った。でも、これは幻想だった」

 

「何があった?」

 

 アクロスは、嫌な予感がしていた。これ以上聞くな。引き返すなら今だぞ。などの言葉が警鐘の如く鳴り響く。しかし、アクロスは決めている。自分は、絶対に逃げることはしないと………例えこれが残酷な真実だとしても。

 

「『ワルプルギスの夜』が襲来してきて、わたし達3人の『魔法少女』は戦いを始めた。結果として、撃退することは出来た。但しマミさんの犠牲があった。それでも、まどかは守ることが出来たわたしは嬉しかった。でも、まどかは突然苦しみ出した」

 

「ん?—————————もしかして、『ソウルジェム』に何か異常が?」

 

「そうよ。そもそも『ソウルジェム』は、魔法を行使して『魔力』を使うと穢れるのよ」

 

「『ソウルジェム』は、『魔法少女』の『魂』を可視化したもの………『魂』が穢れる?魔に堕ちる?——————なあ、今俺やばいこと考えてるかもしれません」

 

「そう………おそらくそれで正解よ」

 

「『魔女』は、『魔法少女』の穢れた『魂』から産まれるんだな?」

 

「ええ。まどかの『ソウルジェム』は砕けて『魔女』を産み出した。近くにまどかの遺体を残して………わたしは困惑しながら必死に時間遡行をしたわ。その時、『インキュベーター』がわたしの視界入ったわ。その表情を見てわたしはぞっとした!だって、いつも表情に変化が無いのに浮かべていたのよ!とても歪な笑みを!」

 

 ほむらが、激情を込めながら語り出した。

 

「あの時のやつの顔は、『してやった!』、『騙し切ってやった』って物語ってた!!悔しい、悔しい!騙された、騙された!!やつに対する憎しみだけが募っていった。でも、思い出した。わたしの大切な親友、仲間のことを。だから、わたしは伝えた。みんなは『キュウべえ』に騙されてるって………でも、誰も信じてくれなかった。それは、そうよね。『インキュベーター』の目的を知らなかったんだから」

 

「『インキュベーター』って『感情』があるのか?」

 

「あいつらは、『感情』は無いって言っているけどとてもそうは思えない」

 

「『感情』というものが理解出来ないんだな?」

 

「あいつらは、嘘をつかない。でも、誤魔化すのよ!『ソウルジェム』のことも『魔女』のことも、なにも教えてくれなかった!」

 

「タチが悪いな………『魔法少女』側が圧倒的に不利すぎる条件だ。それを説明せずに『契約』を取ろうとしているのか」

 

「『感情』が無いだったらわたしも割り切れた。でも、『感情』を理解出来ないってどういうことよ!『インキュベーター』を屠る度にわたしはわたし自身を人じゃないと思うようになった。そして、ある時わたしは壊れたわ」

 

「ほむらさんは、どんなにクールを気取っても優しさを捨てることが出来なかったんだね。どちらかというとα寄りだったんだほむらさん」

 

「αって何?」

 

「αが命を重くみるβが命を軽くみるということだな。αは、基本的に不殺を信条としているんだ。βは、『知性種族』の命を奪うことを躊躇しない。因みに俺とアリスはαだ」

 

「じゃぁ、わたしは何なの?」

 

「それが、わからない(・・・・・)んだ。αでもβでもないって、ミネルヴァ先生は言ってた」

 

「第三の価値観?」

 

「そうなのかもしれないし、それが『知性種族』のもともとの姿なのかもしれない……そんなことよりも、『インキュベーター』の目的はなんなんだ?『魔法少女』を増やしたいからあんな誤魔化しかたするんだよな?」

 

「ええ。『インキュベーター』の目的は、宇宙を熱的死から救うことよ」

 

「宇宙が壊れるってことか、なんか聞いたことあるな……たしか、エンなんとかが高まってるとなんとかかんとかって。それと関係あるのか?」

 

「おそらく『エントロピー』じゃないかしら?」

 

「そう、それだ。確か意味は……焚き火で得られる熱エネルギーは、焚き火に使う薪の元となる木を育てる労力と釣り合わないという熱力学法則だったよな?」

 

「エネルギーは、常に形を変えるごとにロスが生じてしまう。エネルギーを消費する量は、エネルギーを生み出す量を上回ってしまい常に目減りしていく一方ということよ」

 

「それと同じようなことが宇宙で起きているというのが『インキュベーター』の話なんだな?」

 

「そうよ。『インキュベーター』は、『感情』を理解することが出来ないから普通に感情を持って話すわたしたちを見て、その『感情エネルギー』を利用することを考えた」

 

「そうか、『感情エネルギー』を『回収』してそれを宇宙に送り出すことによって『エントロピー』を凌駕し、宇宙救済につなげようとしているのか………ん?『魔法少女』………『少女』??——————そうか、そういう事だったのか!!だとすると『インキュベーター』は、相当効率重視タイプの『システム』だ」

 

「ええ。わたしたちのような第二次性徴期の女の子の希望が絶望に変わる時の相転移エネルギーは、最も効率が良いエネルギーの回収方法なのよ」

 

 アクロスは、この話を聞いて考えていた。何かどこかに『魔法少女』が『魔女』産み出す事なく、宇宙を救済する為の方法が無いものかと………さっきまでの話を聞きこのような事が考えられる時点で、アクロスはガッツリとα側の『知性種族』だと言える。

 

「なぁ、こんな事ほむら(・・・)に聞くのはあれなんだが、『インキュベーター』と共存する方法は無いのか?」

 

 アクロスは、禁句と思われる言葉をほむらに対して放った。すると、彼女の反応は意外なものだった。




何か、途中みたいな感じで終わってしまいましたが、これで一旦終了です。何処かで続きは、書きます。次回は、ほむらからまどかへの警告とまどか、まどか母、まどか父の家族会議の開始まで書く予定です。


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第7話 『記録者』それは、総てを知る者

まどかは、今ほむらと話をしている。

 

「じゃあほむらちゃん、これから私用事あるから帰るね」

 

「まどか、白い生き物(・・・・・)には気をつけてね(・・・・・・・・)。じゃあ、また明日」

 

「!!」

 

まどかは、ほむらが言っていた事に驚いた。やっぱり、あの夢は何かがある。そう、まどかは感じた。

 

「まどかさん。あの子は、今日やって来た転校生ですよね。なのに、何故あんなにも親しいのですか?」

 

今、話しかけて来た女の子は志筑(しづき) 仁美(ひとみ)。わたしの大切な親友だ。

 

「それにまどかさん………今、何かに巻き込まれているんじゃないんですか?いや、違いますわねこれは………っ!!もう、巻き込まれてる?」

 

「相変わらずだね、仁美ちゃんのその能力。確か、対象の可能性を視る能力だったよね?やっぱり、制御出来てない感じ?」

 

「制御は、出来るようになりました。しかし、あなたのそれはとても重要な岐路に立たされている感じだったので………あなたのその選択で世界の明暗が分かれているから。1つアドバイスをするなら、どうか考えてください。考えて、考えて、悩んで、悩み抜いて………そして、後悔のない選択を!」

 

仁美は、所謂お嬢様と呼ばれる部類の人間だ。そんな彼女が不思議な能力を発現させたのは、小学4年生の時だ。この能力は、暴走して無差別に対象の可能性を視てしまった。彼女は、『心』を病んだ。しかし、そんな彼女を救い出した1人の女性がいる。名前は、ユーシュ・レイグバート。彼女は、自分のことをこう紹介した。とある秘密結社の最高幹部の1人で、『異能者』であると。

 

「未だに信じられないんだけど、この世界に『異能』なんて不可思議なものがあったなんて……」

 

「でも、実際あることを私自身が証明してしまいましたから」

 

「『異能』のような不可思議なものが、まだまだ存在するのかな?」

 

「まどかさん………」

 

「ごめんね、こんな話しちゃって。そろそろ家に帰るね」

 

そう言ってまどかは、家に帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰って来たまどかは、早速話を聞く為に父と母の元へと向かった。

 

「まどか、あなたの見た夢は夢じゃないわ。あなたは、選ばれたようね………『記録者』に」

 

「『記録者』?何それ?何かを記録する人?」

 

「うん、とっても名誉な仕事なのよ!何故なら、これからあなたは総てを手にする事になるから」

 

「あ!総てを知る者だっけ。でも、わたしいらないよ総てなんて」

 

「ふふ、やっぱりこの答えに行き着くのね。でも、遺伝なのかしら?『記録者』の能力の一部があなたに存在しているみたい」

 

「『記録者』は、基本的に未来の出来事を対象者に伝えてはならない。そして、『魂』を対価とする契約をする」

 

「『魂』を対価とする契約?『記録者』になると、『人間』じゃなくなるってこと?」

 

「いや、『人間』のままだ。『人間』のまま『神族』と似たようなことが出来る」

 

まどかは、思い出していた。あの不可思議な出来事を。『異空間』を管理する『総てを知る者』。彼は、自身のことを『神』と称した。『神』と『神族』の違いはなんなのだろうか?とそんなことを考える。

 

「まどか、多分これから大きな流れに飲み込まれるわ。その時、まどかはどんな風に困難に立ち向かうの?」

 

質問の意味は、わからなかったがまどかは一生懸命に答えた。

 

「わたしは、友達が困ってたらその子と一緒にその問題を解決したい!そして、わたしが困ってたら今度はその子がわたしを助けてくれると嬉しいな」

 

「まどか、いい答えだ。それがまどかの一番大切なことなんだな?」

 

「お父さん、お母さん。わたしは『友だち』を守りたいの!さやかちゃんに仁美ちゃん。それに、ほむらちゃんも」

 

「なら、この想いを覚悟をこれからも持っていて欲しい。それが、最良の結果に繋がるだろうから」

 

これは、このわたしの言葉は覚悟と言えるのだろうか……まどかは、そう感じたが自らの想いはしっかりと伝える事が出来たのでよかったと感じた。

 

「まどか、ちょっと待っててね」

 

「?」

 

「お待たせ。まどか、これを持っていて欲しいの」

 

そう言ってお母さんが取り出したのは、お守りだった。

 

「どうしたの?このお守り……」

 

「これは、まどかとまどかのお友だちを守る為のお守りよ。だから、なくさないでね」

 

「うん、ありがとう」




秘密結社の名前ですが、軌跡シリーズお馴染みの身喰らう蛇ではありません。志筑 仁美に関しては当初『魔法少女』にするつもりでしたが、この物語の目的にはそぐわないので『異能者』ということでアクロスと同じ感じにしました。


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第8話 まどかの選択

まどかは、今日会ったほむらという少女について考えていた。

 

「うーん、やっぱり何かある………一個とんでもない仮説を思いついちゃったけど、流石にないよね?ほむらちゃんも私と同じ『記録者』として選ばれたとかって」

 

だが、それが今の段階では一番あり得る可能性だった。

 

「あっ!じゃぁ、聞いてみたらいいじゃん!という訳で、(総てを知るものさん!質問があります。よろしいでしょうか?)」

 

雰囲気的に偉い感じの人格だと思ったので、丁寧な言葉遣いを心がけ心の中で話しかけた。すると、『異空間』管理する『神』はまどかに話しかけてきた。

 

〈ん?どうかしたか?〉

 

「(『記録者』に選ばれたのは私だけですか?)」

 

〈いや、確かに他にも『記録者』は存在する。だが、暁美 ほむらという少女は違うぞ〉

 

「(えぇ!私の完璧だと思った仮説が、いきなり否定されたぁー!)」

 

〈今、ある情報だとそう思ってしまうのも無理はない。悪くない仮説だったぞ!〉

 

「(ありがとうございます。じゃぁ、なんなんだろ?もしかして………『異能者』とか?)」

 

〈ほぅ?まぁ、違うんだが今の段階ではこのくらいが限界だろう?もう寝るといい〉

 

「(うん、わかったよ。おやすみなさい)」

 

〈……………〉

 

 

そして翌朝、学校にてほむらと話をしていた。

 

「今日、放課後時間あるかしら?」

 

「うん。わかったよ。私もほむらちゃんのこともっと知りたいと思うから」

 

「正直に言うと、私はまどかにこの話をしていいのかわからないの。でも、信じてるから」

 

「信じてるから、ほむらちゃんは私に隠し事をしたくなかったの?」

 

「っ!そ、そうよ。私は、まどかの一番の親友だと思いたいからそうやって話そうと思ったのよ?見損なった?私のこと」

 

その言葉を聞いたまどかは、何故かはわからないがムカムカとしてきた。しかし、理由はわからないので無言でムカムカをアピールした。

 

「ごめん、今の言葉は忘れて?じゃあ、放課後にまた………」

 

そして、放課後。ほむらとまどかは、まどかの家で話をすることにした。

 

「まどか、単刀直入に言うわ。私は、『魔法少女』なの」

 

「『魔法少女』………そうなんだ。でも、何かリスクはないの?」

 

「え?ど、どうして!今まで、そんなことなかったのに!」

 

ほむらは、唯ひたすらに困惑していた。今まで、怖がることはあるがリスクについて言及している周回はなかったのだから。

 

「私ね、ほむらちゃんが見滝原中学に転校してくる前に実は知ってたんだ。ほむらちゃんの()

 

「!?」

 

「夢でね見たんだ………崩壊している見滝原の街並みと、私とほむらちゃんと白い生き物のやりとりを」

 

「う、嘘!で、でも夢なんでしょう。どうしてそんなにおぼえてるの?」

 

「そ、それが『記録者』っていうのに選ばれてしまったみたいなの」

 

「ど、どういうこと!?そんなの知らない(・・・・)!」

 

「『記録者』って総てを知るものとも呼ばれているみたい………その話を昨日お父さんとお母さんから聞いたんだ………」

 

「……………」

 

ほむらともう1人のほむらは、まどかの話を聞いて只々呆然とするしかなかった。

 

「まどかは、『記録者』になろうと思ったの?」

 

「ほむらちゃん、私は『記録者』になりたいわけでも『魔法少女』になりたいわけでもなくて………ただ、ほむらちゃんの友達になりたいんだ。ただ、友達の力になりたいだけなんだ。だから、心の底に溜めている想いを聞かせてほしいな」

 

まどかのこの言葉でほむらにかかっていた最後の『枷』が外れた。それからの展開は非常に早く、今まで溜め込んでいた『魔法少女』についての一連の話を涙を流しながら話していった。

 

「ほむらちゃん、ありがとうね。私を、ううん、私達を助けようとしてくれて。これからは、私達がほむらちゃんの力になる番だね!」

 

これが、まどかの選んだ『選択』だった。



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