幻想の園に螢は舞う (螢司教)
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始まりは突然なのはマジらしい

中々中身がぶっ飛んでるので、閲覧する際は覚悟してくださいな。


ひたすらにつまらない日々だった。

授業も適当に聞いて、くだらない話に作り笑顔で応じ、高校受験に有利だろうと入った委員会もぱっぱと終わらし、帰路につく。

道端で、唯一の楽しみである生物観察をし、絡んでくる変なやつらを返り討ちにし、何もなかったかのように家に帰る。

社会、数学、国語、小説、心理学…生物に関する事以外何事にも興味がわかない。

欲しいものも思いつかない。何かをする気力もわかない。生きたいとも思わない。

寧ろ、死にたいな。その方が楽チンだし。

 

人間は何を目的として生きているのだろう。

金を稼ぐこと?名声を手にいれること?世界の役に立つこと?…

それぞれに、綺麗で秀逸な目的があることだろう。

だがそれは綺麗は綺麗でも綺麗事。

どうせ自分の利益に収束していく何とも愚かしい公言なのだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…考えていると、自分がいる場所も分からなくなる。

でも考えることは止まられない。だから一人じゃないときは考えることを遅く行っている。

ここは何処だろう……

「あ~、死にたい」

俺はどこにいるのか、そして周りに人がいるかの確認もせず、会話するくらいの声で呟いた。

更に溜め息をついて周りと状況の確認をする。

確か俺は………夕方、学校も終わったからちょっと学校近くの森(というよりも結構木々が生い茂っている散歩道)に寄り道してて………考え事をしながら散策して…………ここまでが今より前の状況か。

さて周囲は……時間帯は夜。写真とかでよく見る木々、茂み、そして倒木が視界にうつる。おや、キノコも群生している………

 

…………………?……………

 

 

どこだここ?

 

 

 

おかしいな。何でこんなところにいるんだ?

歩きながら寝てしまって夢でも見てるとか?

それとも誰かから身体強化魔法でも食らって青木が原樹海までジャンプしてしまったとか?

さて冗談をかましている場合じゃない。

一刻も早く住宅街を探さなければ!

ただでさえ過保護な家なのに、空が暗くなった今遅く帰ったら面倒なことになりそうだ!

俺は駆け足で森(?)を歩き回った。

ただし、視界に写るのは木、木、木!

本当に樹海に迷ったのか、全く終わりが見えずひたすら同じ所をぐるぐる回っているような錯覚に陥った。

歩き続けてしばらく経つと、前に明かりが見えてきた。

ただ違和感がある。

人工的な光の強烈な明かりではなく、もっと控えめな優しい光だった。

しかもその光は蠢いている。

まさか…!

光のもとにたどり着くと、やはり光の主は…!

 

 

「蛍だあっ!」

 

 

蛍だぁぁぁぁ!

マジで!?これ本物の蛍!?やべぇ最高だぁぁ!

恐らくこれを見ている人はドン引きしているだろうが、何を隠そう俺は生物の中でも虫が大好きなのだ!

その中でもとりわけ大好きなのが蛍なのである!

言うならば、好きなアイドルグループの推しメンバーみたいなものだ。

嬉しさのあまりその場で踊ってしまった。

その時に何かの小さい笑い声が聞こえた気がしたが、そんなことより蛍の観察が先だ!

さてさて、まずなにから見ようかな!甲殻もいいけど、やはり触角からだろうな。ぐへへ。

観察を始めようとしたその時だった。

 

ギチギチギチ…!

 

何かが軋むような音が聞こえた瞬間、俺は何かに巻き付かれた。

「ぐっ…がっ!」

とても強力な締め付けだ。自分の骨と、俺に巻き付いてきた何かが奏でる軋む音が不快なハーモニーを生んだ。

辺りが暗いのでよく見えないが、黒光りする甲殻にしっかりとした脚がついている。

それが連なり長い体躯を作り出しており、横を見ると、紅蓮に染まる扁形の顔のすぐ後ろの甲殻から太い牙のような脚が頭に突き刺さんと動く。

この大きさは信じられないが、トビズムカデだ。

危機的状況だが、これだけは伝えたい。

 

最っっっっっ高!!!

 

何これ!?あのカッコいいムカデさんに巻き付かれるなんて、ご褒美ですか!?

ヤバイわ~、テンション上がるわ~!

ただちょっときついのは、巻き付かれる際に少し咬まれたのか、足元が激しく痛むことだ。

確か神経毒だったかな?ハチ毒に似てる成分だったような…

あれ?だったらアナフィラキシーショックになるんじゃね?

しかも俺喘息持ってるし、余計になりやすい…

俺は今、最高に詰んでいるのでは?

まぁ、そんなことどうでもいいさ。

そんな心配をよそに、俺はムカデに巻き付かれた喜びを噛み締めていた。すると、

「あなた、人間?」

前から女性の声が聞こえた。

直ぐ様前を見ると、そこには緑髪の少女が佇んでいた。

「タイミングが悪かったね。今はこの子たちの繁殖期でね…」

この子たち?でかいムカデのことか?

“たち”ということは他にもこういった虫がわんさかいるのだろう。

ヤバイ…鼻血でそう……

少女をよそに色んな虫の想像をする。

だがこの少女の言葉がその虫の想像を消し去った。

 

「あなたは、今からこの子たちの栄養になってもらうね」

 

周囲が殺意に満ちた目線で溢れた。



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飲み込みにくい状況ばかりで困惑なう

何故だろう、この作品は筆(?)が凄く進むゾ…
他の作品にも生かせたらな…


へ?どゆこと?

俺が虫のエサになるってこと?

唖然としている俺に、少女は近づきながら話し始める。

「ごめんね?私も出来れば人間を食べさせたくないんだぁ。厄介なことになるし。

でも、人間って色々食べるから栄養はいっぱいあるし、見たところあなたは外から来たんでしょ?

だったら見つかる前にやれば問題はないからね」

外から来た?厄介なこと?

とても訳が分からない。だがともかく整理すると、俺は違う場所から来て、その俺を殺す現場を見られたらヤバイって感じ?

まぁそんなのヤバイってのは普通じゃないか?

心の中で突っ込む。

「さて、お話は終わり

もうそろそろ、この子たちの役に立って貰うね」

……

……………え?

 

役に、立つ?この俺が?

更に呆然としてしまった。すると少女はいささか困惑した顔で、

「え?何で笑ってるの?今から食べられちゃうんだよ?怖くないの?

いや、泣いてるから怖がってはいるのかな…?」

どうやら嬉しさのあまり笑みが溢れていたようだ。

食べられるまで終止無言でいようとしたが、思わず少女の問いに答える。

「うん、すっごく嬉しい」

少女は更に困惑している。

その様子を見ながら俺は話を続ける。

「俺はさ、今まで誰かを幸せに出来なかったんだ。

態度も、表情も、話し方も、何もかも他人に疎まれてたんだ。

だからいつしか、何かに興味を湧かすことも出来なくなっていた。

だっていつも通りの俺でいたら、また周りを不幸にしてしまうからさ。

だから、今自分の愛する虫さんたちの役に立てることに、感動してる。

だからむしろ、食べてほしい。

居場所のない所で何の意味もなく死ぬより、俺を必要としてくれる所で何かの役に立てて死ねるなら、冥利に尽きる」

上手く言葉に出来なかった。だが、

初めてだ。こんなに心情を語ったのは初めてだ。

初めてだ。こんなに安心できたのは初めてだ。

先ほどよりも涙があふれでる。

くそう、人の前で泣くのは恥ずかしい!

余韻を噛みしめていると、少女をそれを見て笑いを堪えている。

だが限界が来たらしく、クスクスと笑いが漏れ出てくる。

俺は不思議に思っていると、少女は指を振った。

すると先ほどまで今にも食らいつこうとしていたムカデが拘束をとき、森の奥へと消えていった。

何が起こったか分からずぼーっとしていると、少女はこちらに話しかけてきた。

「あなた、本当に変わってるね

妖蟲を見ても、命の危機が迫ってもそんな調子で…

面白い人間もいたものだなぁ」

人間という言い回しが気になるものの、俺は話そうとする。

だがその瞬間、体から力が抜ける。

どうやらムカデの毒が回ってきたようだ。

巻きつかれていたから回りが遅くなっていたが、それが解かれた今は血流が元に戻ったため毒の回りが早くなったのか。

そう考えながらその場に倒れ伏せる。

さしもの少女もこれには驚いたようで、こちらに駆け寄ってきた。

何か呼び掛けているようだが、意識が遠のいてきて上手く聞き取れない。

くそっ、確かにあの大きさだったら注入される毒の量もヤバいだろうな。

確かムカデの毒は小動物も殺せるくらいだから、人間より大きかったら…

想像するだけで体が強張る。

かすっただけで良かった~。良くないけど。

少しお気楽思考で考えてる間に、呼吸がしづらくなり、しかも体中の感覚も麻痺してきた。

アナフィラキシーショックかな…こんな感覚なんだなぁ…

そう思いながら意識が薄れていき、そして完全に意識が途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ょうぶ………

 

 

何か、聞こえる…?

 

 

………返事して……………

 

 

あれ、声が変わった。違う人かな…?

 

 

大丈夫!?

 

 

急に大きくなった声に驚き、直ぐ様起き上がる。

先ほどの暗闇ではなく、周りには灯りがあったので目が眩んだ。

「ここは…どこだ?」

すると横から急に声を掛けられる。

「良かった~、目が覚めました? どうやら大丈夫そうですね」

声の方に顔を向けると、そこにはウサギの耳を着けた女性が座っていた。

彼女は俺の安否を確認すると、部屋の入り口から顔を出して

「お師匠さま~!意識が戻られました~!」

と誰かを呼んだ。

不思議そうにしていると、ウサギ耳の女性はこちらに顔を向け、

「驚きましたよ~!心音が止まったので…あ、もう少し待っててくださいね」

と伝えた。

その後すぐに、また新たな人が入ってきた。

「お師匠さま、お疲れ様です」

どうやらこの女性が彼女の師匠のようだ。

変わった服をしており、真ん中を境目に赤と青に分かれている。

きちんと手入れされているのであろう綺麗で腰元までかかる長い白髪は後ろで三つ編みにしてまとめてある。

小さい帽子もかぶっており、そこには赤十字のマークが縫い付けてある。

どうやら医者のようだ。

その医者はウサギ耳の女性に向かって頷き、その後こちらに話しかける。

「大丈夫かしら? 良かったわね、結構危ない状態だったのよ?

何か気になる所は無い?」

落ち着いた口調で医者は問いかける。

俺は起きたすぐからする頭痛と気だるさを訴えた。

「それは貴方の体が頑張った証拠よ。

血清を打ったけど既にアナフィラキシーショックが起こってて…」

「それで俺の体に免疫抑制剤と気管支拡張剤を打って、免疫の過剰反応を抑えて且つ呼吸出来るようにした。

その免疫の暴走と毒の後遺症で頭痛と気だるさが起きている、という訳ですね?」

面白い話だったので、話を遮って続きを話してしまった。

医者と彼女の弟子は驚いた顔をする。

あ、あちゃー、マズイことしたかな?

「す、すんません」

俺は二人に向かって謝った。

「い、いや良いのよ。そんなに詳しいから驚いたのよ

むしろ感心するわ」

医者が感嘆を漏らしていると、弟子の方も質問してくる。

「い、いったいどこでそんな知識を得たのですか!?

もしかしてあなたも?」

興奮気味で迫ってきたが、医者がそれを止める。

「こらこら、病人に質問は控えなさい」

弟子はハッとし、こちらに謝罪する。

「ご、ごめんなさい」

「い、いや、大丈夫っす」

 

ギャグめいたやり取りをしている内に疑問がわいてきた。

「そういえば、俺は何でここに?

もしかして、緑の髪した女の子が?」

俺は医者に質問する。

「えぇ、そうよ。

とても慌てた様子で来るから何事かと思えば、あなたが大変だって聞いてね。

彼女についていって魔法の森へ行ったら、あなたが倒れてたのよ」

魔法の森?変な名前だなぁ。

そんなことを思いつつ、話の続きを聞く。

「最初は焦ったわ。何せ呼吸が止まっていたから。

でも、ちゃんと生きてて良かったわ」

おう、マジか…

じゃあこの人達がいなかったら俺はあのままお陀仏だった訳だ。

俺は彼女達にお礼を言った。

「そんなことが…遅れましたが、ありがとうございます!」

「いいのよ。私もこれが仕事なんだから。」

医者は笑顔で応じる。

かっこいいなぁ…

あ、そうだ。忘れてた!

俺はまた医者に質問する。

「あの、すみません。先生……」

「おっと、先生は堅苦しいからやめてちょうだい」

医者は一旦俺の話を制止して自己紹介を始める。

「私は、八意 永琳。気軽に永琳と呼んでちょうだい。そして私を師匠と呼ぶこの子は…」

「鈴仙・優雲華院・イナバと申します!

私のことはイナバと呼んでくださいね!」

自己紹介が終わり、俺は話を続ける。

「ありがとうございます、永琳先生、イナバさん。

で聞きたいことがあるのですが、緑の髪の少女がどこにいるのか教えて頂きたいのですが…」

永琳達は思い出したという顔をし、質問に答える。

「あぁ、彼女は疲れたのかここの居間で寝てるわ。

連れてこようかしら?」

「いや、そこに連れていってくれれば……っつ!」

蒲団を退け立とうとしたが、右足に激痛を感じこけてしまった。

「あぁっ!ダメですよ!

傷は結構深いので、安静にしないと!」

イナバが慌ててこちらに駆け寄ってくる。

お、おかしいなぁ?あまり痛みを感じなかったからかすっただけかと…

深く切れたから、アドレナリンが大量に放出されてあまり痛みを感じなかったのかな?

「私が連れてくるから、あなたは安静にしてなさい。

イナバ、傷口が開いてないか診てあげなさい。」

永琳はそう言い残し、部屋を出ていった。

そしてすぐにイナバは俺の右足を確認する。

「よいしょっと。痛いかもしれませんが、我慢してください」

包帯が外れていく。イナバは傷口を見、そして

 

 

「…えっ?」

 

 

何かに驚いたような声を漏らした。

気になって何があったか聞こうと思ったその時、永琳が少女を連れて部屋に戻ってきた。

「あ!人間~!」

少女は嬉しそうな表情で駆け寄ってくる。

スキンシップが激しく、小さな体躯で俺の上半身に抱きつく。

「良かった~!良かったよぅ~!」

俺の胸に顔をうずめながら言う。

胸元が湿ってきた。嬉しすぎて泣いているのであろうか。

「あぁ、もう大丈夫だ。

永琳達とキミのお陰で助かったんだ」

俺は永琳の方を見る。

永琳は笑顔で応じた。するとイナバが永琳と話し始めたので、視線を少女に戻した。

いつの間にか少女はこちらに顔を向けていた。

「本当に良かった…死んじゃってたら、友達になれなかった…」

泣きじゃくりながら少女は言う。

俺と友達になりたいのか…

……ふふ、悪くないな。

そう思いながら少女に語りかける。

「心配してくれてたのか?ありがとう。

さて、キミの名前は…?」

少女はあっと声を漏らし、自己紹介をする。

「私は、リグル・ナイトバグ!

よろしくね!」

「よろしく。じゃあリグルと呼ばせてもらうよ。」

少女はかわいらしい笑顔で続ける。

「それじゃあ、あなたの名前は?」

「俺か?俺の名前は…」

自分の名前を言おうとした瞬間、永琳が真剣な表情でこちらに来、俺の側にしゃがむ。

あまりにも真剣な顔をしていた為、俺とリグルは互いに口をつぐむ。

「ちょっとごめんね」

そう言うと、永琳は俺の右足を診る。

すると永琳は、先ほどのイナバと同じように驚いた表情を見せた。

「あなた、本当に人間よね?」

永琳は奇妙な質問をする。

「勿論ですよ。俺は純度百パーセントの人間です」

「そう、よね…」

永琳は困惑した様子で考え込む。

何があったかのかを確認するため、俺は自分の右足を見る。

「………は?…」

俺も永琳達と同じリアクションをしてしまった。

 

傷口が再生していってるのだ。

 

「な、何だ。これ…?」

思わず俺は動揺してしまう。

 

「あらあら、何やら困っている様子ねぇ?」

 

後ろから艶かしい声が聞こえてきた。

俺が小さくひゃっと声を出し体が跳ねるほど驚くのを見て面白かったのか、声の主はクスクスと笑う。

俺を除く場にいる全員が一気に声の聞こえた方を見やる。

俺も遅れて後ろを見ると、無数の目が覗く謎の割れ目状の空間から妖艶な雰囲気を醸し出す女性の上半身が出ていた。

金髪で、背中の中腹あたりまで伸びた髪をリボンでくくりいくつかの束にしている。

大胆にもその豊かな胸の谷間が見える首もとの広い紫色のワンピースを着ている。

首もととスカートの裾にはフリルが付いており、可愛らしさを強調している。

一番特徴的なのは、フリルのやわらかくしたつばのふんわりした帽子で、真ん中に細いリボンがしてある。

何が何なんだ、全く!

俺はさらに混乱する。

すると彼女はこの状況を楽しそうに見ながら口を開く。

「何が起こったのか、教えてあげましょうか?」

本当かどうか怪しいが、どうやら原因を知っているようだ。

あぁもう!こうなったら聞くしかない!

俺は半信半疑ながらも彼女に聞いた。

すると彼女は小さく笑いながら真実を伝える。

「ふふ、かわいい反応ばかり見せてくれるわね少年。

えぇ、今教えてあげるわ。

少年、あなたはね、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー一回、死んじゃってるのよー




感想もお待ちしております!


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こんがらがる思考

「紫さん、一体何の御用?

いきなり現れて変なこと言ったりして、からかいに来たのかしら?」

永琳が呆れた顔で、上半身のみ見せる女性に皮肉めいた風に言う。

「あら、私は本当のことを言ったのよ?

確かにからかうのは好きだけど、今は結構真面目な話をしに来たのよ?

そこの少年についてのね。

この子、外から迷いこんだのよ」

紫と呼ばれる女性はまったくぶれずに目的を伝える。

それを聞き、永琳は一瞬こちらを見、真剣な表情に戻る。

しかしまた気になるワードが現れる。

“外”、というのはどういうことだろうか。

だが俺は違う疑問を優先的に考えていた。

一回死んだ?どういうことだ?俺はぴんぴんしてるぞ…?

思考が追い付かなくなっている。

「ふふふ、必死に考えちゃって。

若い子は本当にかわいいわぁ♥連れて帰ろうかしら?」

紫は妖しい笑みを浮かべてこちらを見やる。

か、勘弁してくれよ…

内心そう考える。

「さて答えも出ないようだし、彼が悩んでることも含めて教えてあげましょうかしらね?」

紫はどこから出したのか、片手で扇子を広げ口元を隠す。

決断を迫られ、俺は悩む。

パニックになった頭ではもう考えることが出来ない。だがそんな状態で答えを導きだしたらさぞ気持ちよいことだろう。

どうしよう…

すると永琳はため息をつきながら紫に話す。

「あなたって、本当に意地悪いわね。

外から来た人間なら、こんな現象迷宮入りよ」

「あら、あなたは分かったのかしら?」

「一瞬悩んだけど、最適解は見つけたつもりよ」

永琳は堂々と発言した。

こんな短い間に本当に答えに辿り着いたのか!

すごいな…

それを聞き、紫は永琳に答えを迫った。

「じゃあ、答えを聞かせて?

あ、少年はもう少し考えたい?」

急に話しかけられたので、俺は若干きょどりながら応じた。

「い、いや大丈夫っす。

むしろどんな風に考えたのかを知れるので、新たな考え方を習得出来そうなので、是非ともお願いしたいです!」

それを聞いた永琳は、一瞬こちらに笑顔を向け、紫に答えを突きつけた。

「えぇ、彼の傷口が治っているのは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー能力の影響よ!ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

ん!?

い、今何と!?

能力!?能力って言った!?

意味不明ワードがまた出てきたので、俺の頭は過去最高レベルに混乱した。

「へぇ、やるわね…正解よ」

紫が正解を認め、さらに混乱する。

「大丈夫よ、少年。

このお医者さんの頭が良すぎるから、答えが出せなかったあなたの頭が悪い訳じゃないのよ?」

「いや、俺が困惑してるのはそこじゃないんすけど…」

慰めようとしてきた紫に応対する。

「さて、じゃあ真実を教えてあげるわ」

紫は笑顔のまま真面目な表情をし、話を始めた。

「まずは…そうね、この土地の話をしましょう。

ここは幻想郷といって、大結界によってどこかに隔絶された場所なの。

そして、私たちが“外”と呼んでるのは結界外の世界のこと、まぁ少年には“日本”と言った方が分かりやすいわね」

ほうほう…中々非科学的だが、理解は出来た。

「でも、隔絶されているのなら何で俺はここに来れたんスか?」

すぐに疑問が生まれ、新たな質問を投げ掛ける。

紫はすぐさま返答してくれた。

「そうねぇ…まぁ何千年もの間存在してるから、その影響で多少の歪みが生じることはあるわ。それは外と幻想郷を繋いでしまうの。だからそれに迷いこむ人間はいるわね。あなたもそれでここにいるのよ。

でも大体無名の丘って呼ばれるところに来るのだけれど、魔法の森に現れるのはあまり無いわ。」

「つまり俺はレアケース?」

「まぁ、そうゆうことね」

ふむふむ、とりあえずここが特別な場所ということか…

でも幻想郷か。どこかで聞いたことあるような…?

俺はそう考えていたが、紫は話を続けた為に一旦頭の隅に置いた。

「さて、次はあなたのその再生途中の傷のことよ」

一番気になる疑問が来た為、その続きに耳を傾ける。

「その現象は、あなたが持ってしまった能力のためなの」

まただ。また謎ワードが出てきたぞ。

今度は俺が疑問を投げ掛ける前に紫は説明してくれた。

「能力というのは、今私が出してるこの“境界”みたいなものよ。私は“境界を操る程度の能力”を持っているの。

幻想郷では能力を持たない普通の人もいるけど、私のように能力を持った者もいるわ。

ちなみにそこにいるお医者さん、ウサギちゃん、そしてあなたのそばにいるお嬢ちゃんも能力持ちよ」

ふぇ~、そうなんか~!

俺はリグルを見て、内心驚く。

その際に笑顔でこちらを見返すリグルが可愛かったのはここだけの話だ。

「さて一旦話を戻すけれど、私はあなたは一回死んだって言ったでしょ?

それがさっきお医者さんが言った、能力の影響なの」

「それで、俺の能力はどんなやつなんすか?」

興味深い話が多かったが、俺は紫に答えを求める。

「ふふ、せっかちな子ねぇ

嫌いじゃないわよ?」

紫は扇子で口を隠しながらはぐらかせる。

「早く教えてちょうだい。

私だって気になってるのよ」

紫の行動を見、永琳も答えを迫る。

「分かったわ。教えてあげる。

少年の能力は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―『死なずに生き返る程度の能力』よ―




いやぁ、楽しいな✨


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ヘンテコな一日の終わり

今日は欲張って2話一気に書いてしまいました(笑)


俺は思わず、一言漏らしてしまった。

「死なずに、生き返る…?」

何だそれ、もはや人間を越えているじゃないか!

俺はよほど間抜けな表情をしていたのか、紫はクスッと笑ってから話を続けた。

「えぇ、死なないのがあなたの能力よ。

魔法の森から見てたけど、あなたが死んでから生き返ったのを確認したわ」

紫の言葉を聞き、イナバは少し前の出来事を思い出した。

「そういえば、ここに運ばれてからしばらく経ってから、彼の心停止を確認しました!

息を吹き返したので一時的なものかと思ったのですが、もしかしてそれも…?」

「ちょっ、イナバ!?

何でそんな大事な事を言わないのよ!」

永琳はイナバを叱る。

元気そうに立っていたウサギ耳も、しおしおと倒れる。どういう仕組みなのだろうか?

それを気にする事なく紫は話を続ける。

「あら、そんなことがあったの?

だったら二回死んだことになるわね」

「そんなさらっと言うことですかね…?」

俺は思わず突っ込む。

そのあとも、何もなかったかのように話題は続く。

「でも、その能力とこのキズナオール現象は一体どんな繋がりが?」

俺は疑問を投げ掛けると、紫はすぐ返答した。

「それはあなたの死因が毒だからよ。

どうやらあなたの能力は死因に直結する部位を治すものらしいわね。」

「それだったら納得出来るわ。

彼の死因は毒死。毒によって死んだから体内の毒は浄化したけど、それに関係ない切り傷は治ってない、と説明できるもの」

丁寧に永琳が仕組みを話してくれたお蔭で、話がやっと理解できた。

だが永琳はそこから生まれた疑問を提示した。

「でもそれであればこの傷が治る現象は証明出来ないわ。

傷ができたことと直結する死因ということは、出血死、またはショック死以外あり得ない。

でも包帯を見ても出血痕は見られるものの、大した量じゃない。

つまりこの子の能力は“死んでも完全に復活できる程度の能力”と考えるのが妥当なんじゃないかしら?」

「確かに…

私は体の一部がバラバラになっても、それをかき集めて復活できると予想したのだけれど…

まぁ、それはいつかまた確かめましょう」

不安な言葉が聞こえ、俺は一応紫に確認する。

「ま、まさか実験するつもりではないっすよね?」

「ふふ、流石にそんなことしないわよ」

本当だろうか。

そんなやりとりをしてるうちに気付いたことがあったので、俺は紫に質問する。

「そういえば話が変わりますけど、紫さんの能力で俺を結界の外に帰せないんですか?」

確か紫さんは“境界を操る程度の能力”だった。

ならば幻想郷と日本に繋げて、俺を帰せるかもしれない。

「そうねぇ、出来なくもないわよ。

でも、あなたは特例なのよね…」

「? どゆことっすか?」

思わぬ返答に困惑した。

「普通、外から来た人間に能力が発現することは無いのよ。

今までにもいなかった訳じゃないけど、その子たちは私たちのように自由自在に使えることはなかったわ。

でもあなたは違う。

この短時間で、しかも幻想郷に来てすぐに能力が発現した。且つ人間ではあり得ない能力…

どうやら偶然手にいれた訳では無さそうだもの」

「と、言うと…?」

嫌な答えが返ってきそうな予感がしてきた…

 

「普通は帰すところだけど、真相が解明するまでここに残ってもらうことにするわ」

 

…やはりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後紫にはほかにも聞きたいことがあったが、

「衣食住には困らせないから大丈夫よ!」

とだけ言って帰っていった。

永琳曰く、彼女は眠たくなったら若しくはからかい飽きたら帰っていくそうな。

「まぁ、今日はうちに泊まっていったら?

泊まるところも無いんでしょう?

というかあなたは怪我人なんだしね」

永琳は俺に提案する。

「いや、大丈夫です。

見たところ傷も治ったようですし」

「大丈夫じゃないわよ。

あなたの能力がどんな能力が断定した訳じゃないのよ?

もしかしたら能力の後遺症があるかもしれない。

だからこそ、心配なのよ」

永琳の意見に納得し、俺はここ、永遠亭に泊めてもらうことにした。

リグルも俺のことが心配らしく、一緒に泊まるらしい。

「さ、もう時間も遅いし寝ましょうか。

イナバ、二人を部屋に案内してあげなさい。

私はこの少年の診療記簿をつけるから」

「はい、承りました!」

元気に返事をし、イナバは俺たちを先導した。

 

廊下にて…

 

 

永遠亭の中は中々広く、診療所ではなく誰かの豪邸のようだった。

…しかし…

さっき思ったがイナバさんのウサギ耳、何かバリエーション多く動くな…

俺を先導するイナバの耳はピョコピョコ動いている。

そういえばリグルにも、虫の触角がついていたな。こっちもピョコピョコ動いているし…

ほんとよく出来た飾り物だなぁ。

蛍の触角かな?リアルに再現できている。俺も欲しいな。

感心しながらリグルの触覚の飾り物に手を触れる。

「ひゃぅい!!!???」

その瞬間リグルが凄い声を上げた。

「ゑぇ!?」

「な、何事ですか!?」

俺も驚いて叫び、イナバが驚いた顔でこちらを見る。

リグルがその場でへたんとしゃがんでいるので、俺が説明する。

「い、いや、リグルの頭につけてる飾り物がよく出来てるなぁと思って、触ったら急に…」

「飾り物…?」

イナバは不思議そうに考え、何か分かったのか明るい顔で説明する。

「そっかぁ、あなたは外から来たのでしたね。

これは“本物”の触角ですよぉ」

本物、だと?

俺はリグルの髪をそっと上げる。

すると確かに、リグルの額から触角が生え、しかも耳が無かった。

信じられない光景を目の当たりにし唖然としてると、イナバも自分の耳を見せてくれた。

「ほら、私もウサギの耳が生えてるでしょう?

あ、ちなみに横につけてるのはつけ耳です」

「え?、な?、どうゆう、え?」

今日はワケわからんことが多い。

その様子を見て、イナバが驚愕の真実を伝えた。

 

「あはは、そりゃ取り乱しますよね。

だって私は月から来た者、そしてリグルちゃんは妖怪ですもの!」

 

俺は、今日一番の驚きを体感した。




やばい、前の話も含めて全然リグルが喋ってない…(笑)
次はいっぱい話させてあげなければ…!


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壮絶な日常、始まりました!?①

今回と次の話は、見る人によってはタグに入れていない“残酷な描写”が入るかもしれません 
ご了承ください(´・ω・`)


朝、目が覚める。

周りには永琳、イナバ、リグル、そして金髪の少女が俺をとりかごんでいる。

「死んでも生き返る能力って便利だなー!

一生この人食べ放題じゃん!」

続けて金髪の少女が黒いスカートを揺らし、笑顔で言う。

可愛らしい少女の姿で中々恐ろしいことを言うものだな、と内心思う。

「全く…まだ一日も経ってないのに、何ですぐ死ぬのよ…」

続けて永琳が呆れ気味に言う。

そう、俺はあの後また死んでしまったのだ。

 

 

 

昨日の夜…

 

遅いと言われてもまだ9時頃だったので、俺は永琳にリハビリがてらこの辺りを散策する許可を貰いにいこうとしていた。

でもそう簡単には許してはもらえないだろうと思っていたが、

「いいわよ。でも同伴者を連れていってね」

あっさり許可は貰えてしまった。

永琳にお礼を言い、部屋を出ようとした。

そして部屋を出る際に、永琳がこちらに声をかけた。

「無いとは思うけど、また死なないように気をつけるのよ」

よほど心配されているのか、死なないようにと強調して言ってきた。

「流石にそんな遠くに行くわけではないので、死にませんよ」

ちょっと冗談じみて永琳に言う。

そして俺は永琳の部屋から出た。

「死なないように気をつけるのよー!」

ドア越しから二度目の忠告が聞こえた。

 

「では、この時計を持っていってください。

最低でも11時迄には帰ってきてくださいね?」

玄関でイナバは木製の時計を渡してくれた。

木製とは言っても中々しっかりしている。凄い技術だ。

「ありがとう、イナバさん」

「いえいえ♪

あ、そういえば師匠が死なないよう気を付けるようにと言っていたので、気をつけてくださいね」

まさかのここで永琳からの三度目の忠告が来た。

俺は了承し、散歩に向かった。

「そこの竹林は迷いやすいのでお気をつけてー!」

そう言ってイナバは見送ってくれた。

 

「へぇ~、すごいなぁ。

ホントにけがしてたのかなぁ?」

おれの歩く姿を見て、リグルは感心した。

付き添いにはリグルが付いてきてくれた。

彼女も俺と仲良くなりたいということもあるらしい。

また、リグルの能力は危険察知もしやすいのでそれも理由のひとつだ。

「そういえば、リグルの能力ってどんなんなの?」

聞いたことが無かったので、この際に知っておこうと考えた。

「私の能力は、“蟲を操る程度の能力”だよ」

「なんですとっ!?」

とても羨ましいことを聞いた!

更にリグルは目の前でその能力を見せてくれた。

「ほら、こんな風に…」

リグルが指を振ると、どこからか蛍が集まってき、小さな優しい明かりを作ってくれた。

「ね?」

「すごいな…」

俺は感動のあまり上手く感想を言えなかった。

それに見とれていると、蛍たちが俺に近づき俺の周囲を飛び交った。

「へぇ~…」

リグルは感心したような声を出した。

「どした?」

「いや、今私はこの蛍たちを集めただけだったんだけど、ここに集まった子が皆あなたになついてるんだぁ」

「…それは嬉しいねぇ」

俺は微笑みながらそう言った。

そして俺は目を閉じ、意識を集中した。

「…ほんとだ。俺はそんな優しいやつに見えるのか、ん?」

「誰と話してるの?」

空虚に向かって話す俺を見て、リグルは不思議に感じたようだ。

「誰って、この蛍たちにだよ」

「えっ!?」

リグルは物凄く驚いている。

普通の人間が蟲と話しているのだ。驚くのも当然だろう。

何故か俺は蟲だけでなく草木など自然のものと話すことが出来る。

小さい頃から話していたので普通なのだと思っていたが、学校に入ってからそれが普通ではないのだと分かった。

周りからの奇異な者を見る目を、まだ忘れていない。

そのことを思いだし、リグルに何か言い訳を繕おうとした。

興奮していた自分を激しく恨んだ。だが

「すごい!すごいよ!」

予想外の反応に、おれはきょとんとした。

「蟲たちの声が分かるんだ!

そんな人初めて見たよ!私と同じ、嬉しいなぁ♪」

「…気味悪くないの?」

喜んでいる様子だったので、逆に内心を知りたくなったので俺は質問する。

「そんなことないよぉ。

そう聞くってことは何かあったんだろうけど、そんな素晴らしい力はむしろ誇るべきだよ!」

…誇るべき、ね。

俺は驚いていた。リグルは、気味悪がられたこの力を誇るべきだと言ったから。

リグルは話を続ける。

「それにね、あなたは凄く優しい人なんでしょ?

だってその子たちもそう言ってるもの」

「…いや、そんなことは」

「あるよ」

否定する俺を、リグルは更に否定する。

「あなたは絶対優しいよ。

じゃなかったら、この子たちも近づいてない。

それに…」

リグルは少し悔やむ表情を見せながら言葉を詰まらせた。

「?」

「ううん、何でもない!

だから、あなたは優しい人なんだよ!」

俺が不思議そうに見たからか、リグルは明るい表情に変え半ば無理矢理話を帰結させた。

こんなに言われて否定したら、それこそ嫌われるな。

「ありがと、リグル」

俺は素直にお礼を言った。

「えへへ~」

とリグルは笑顔で照れる。

 

トクン…

 

この時俺は、謎の感覚に捕らわれた。

リグルを見ると心が苦しくなる。でも、不快な感じはしない。

今までに感じたことの無い感覚に困惑する。

これは、一体…?

 

すると突然、視界が真っ暗になった。

「おわっ、なんだ!?」

リグルが蛍をどこかに帰したのか?

しかし周りから蛍の声が聞こえたので、帰ったわけではなさそうだ。

「リグル-!どこだ―!」

俺はリグルの安否を確認する。

すると、

「大丈夫―!私はここだよ―!」

近い、というより近すぎる場所から声が聞こえた。

どうやら俺の真横にいるようだ。

俺は手探りでリグルを探し、見つけるやいなやすぐに手を掴んだ。

「離すなよ」

俺はリグルにそう伝え、感覚を頼りにリグルの少し前に立つ。

リグルはきゅっと力強く俺の右手を握り返した。

返事の代わりだろう。

そうした直後、周りに気配を感じた。

俺は周りを警戒する。

(くそっ、これじゃ対応がしにくい!

リグルを護りきれるか…?)

そう思っていると、後ろから強い気配を感じた。

後ろを振り向いたが、どうやら遅かったようだ。

 

 

「いただきまーす♪」

 

 

声が聞こえた瞬間、俺は何かに右肩を食いちぎられた。

 

 

 

 

 

 

 




沢山の感想、お待ちしております♪


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壮絶な日常、始まりました!?②

前回のよりむごくできてしまった…
申し訳ありません…


痛みのあまり、声を失った。

激しい痛みを感じると声が出なくなるのは本当なのだと実感した。

俺は倒れそうになるが、何とか踏ん張る。

右肩が熱い。手を握るだけで肩から尋常じゃない痛みを感じる。力も入れにくい。

だがリグルを護るためにも、俺は掴んだ手を引っ張り、胸元に引き寄せる。

リグルがすごい声を出したが聞いてる暇が無かった。

しかし、さっきの声…

明らかに少女の声だった。リグルみたいに少女の姿をした妖怪だろうか。

ならばこの暗闇も、その妖怪の能力だろうか。

本来ならあり得ない考え方を実行している。

これからもその機会が多くなりそうだなとふと思う。

そう考えている間にも、どこからか何かの気配を感じる。

あまりにも速く移動しているらしい、気配の位置が特定できない。

そうしてる間にも、俺の体の一部が喰われていく。

左上腕の一部、右のふくらはぎの一部…

軽い傷だが、蓄積していけば大変なことになる。

くそっ、どうすれば…

俺は焦り、周囲への警戒が薄れてしまう。

それが命取りとなった。

 

「お兄さんのお肉、美味しーね♪」

 

後ろから咀嚼音とともに声が聞こえた。

それに反応し、後ろを向く。

だがその直後、俺は喉元を喰らいつかれた。

 

 

瞬間、周りを覆っていた暗闇は嘘のように晴れ、視界が良好になった。

夜空が見える。

どうやら何かに喰らいつかれた勢いで倒れかかってるそうだ。

出欠量が多くなったのか、力が抜けていく。

だが俺は腕に何かを抱き寄せてる感覚があった。

その正体を思いだし、出せる力を振り絞ってリグルを突き飛ばす。

少し痛いだろうが、許してくれ。

バランスを崩し、俺は地面に倒れた。

喰らいついてきた何かが喉元から口を外す。

それは先ほどの予想通り、少女の姿をしていた。

短い金髪に赤いリボン状の飾り物を着けており、夜闇のように黒い服とスカートを身に付けている。

黒い服は羽織りものなのか、袖は白い。

その少女の血塗れの口が開いた。

「今、ワタシの“友達”に乱暴したな~

もう許さないぞ~!」

ふわふわとした声色で怒りを露にする。

…ん?友達に乱暴?

身に覚えのないことだ。

誰がこの少女の友達に乱暴するのだ…

…今って言ってたな。

倒れる直前に少し粗い行動をしたと言えば、リグルを突き飛ばしたことくらいしか…

もしかして、この子の友達ってリグル?

なら、弁明の余地がある!!

俺は少女にリグルを突き飛ばした理由を伝えようとしたが、声が出なかった。息も苦しい。

恐らく、先ほど喉元を噛まれた時に声帯が潰れたのだ。

必死に弁明しようとしたがそれも虚しく、俺は金髪の少女のディナーとなった。

 

腹に食らいつき、腹筋を引きちぎる。

肩の痛みとは比べ物にならない痛みに、俺は無意識のうちに体に力を入れる。

だがその勢いで臓物が飛び出る。痛みは更に倍増した。

少女が掴んだのか、内臓、小腸だろうか、本来感じてはいけない感触が生じる。

そして少女は何のためらいもなく、むしろ表情を明るくしてそれを食べ始める。

痛い、痛い!

痛みで頭がおかしくなりそうだ。

本来であれば、今俺が振り絞って出そうとしてる絶叫でこの不快な咀嚼音が聞こえなくなるはずなのだが、声の代わりに口からはどす黒い血が溢れ、辺りにクチャクチャと嫌な音が響き渡る。

少女は小腸(?)を口に咥えたまま、箱の奥に埋まったおもちゃを出すかのように、俺の内臓を引っ張り出していく。

肝臓、腎臓、脾臓… 手にとってはそれにかぶりつく。

「おいしー♥」と満足そう内臓を食している姿は、ファミレスでお子さまランチをはしゃいで食べる子供のようだ。

「え!?ルーミア!?」

やっと起き上がってこちらを見たのか、リグルは少女に声をかける。

「はふぇ?ひふふ?」

口に含んだまま話したせいか、音が濁る。

どうやら予測通り彼女達は友達だったらしい。

リグルが震えた声で、ルーミアに問いかける。

「なに…食べてるの?」

「さっきリグルに乱暴したやつだぞー?

リグルも食べるかー?」

口に入ってたものを飲み込んでから、ルーミアは自慢気に言う。

寧ろリグルに、食べかけの肝臓を手渡そうとしてる。

リグルはそれを無視し、ルーミアに怒鳴り付ける。

「バッ、バカァァ!!!」

「ふぇっ?ど、どーしたのだ?」

ルーミアもこれには驚いたようだ、リグルの様子に困惑する。

リグルは怒りのまま続ける。

「この人は私の友達!

ルーミアが急に暗闇で包むから、パニックになっただけだったの!」

「そ、そーなのかっ!?」

ルーミアが凄くテンパる。

(まぁ、本当はあなたを助けようと思っただけなんですけどね…)

感覚が麻痺しているなか、俺は冷静に心の中で突っ込む。

「どうしよう!?もぐもぐ、どうすればいいのだー!?」

「ホントにそう思ってるんなら、食べるのを止めてよ!」

「だってこの人のお肉、もぐもぐ、美味しいんだもん!

やめられない止まらない…もぐもぐ」

「もぉぉぉ!ルーミアぁぁぁ!」

反省しながら俺を食べるルーミアにリグルは激怒する。内容はヤバいがギャグめいたやり取りを面白く思ってしまう。

だがその賑やかな声も遠くなり、ひんやりと寒くなってくる。

そして視界もなくなっていく。

意識も…遠く、なって……………

………………

………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその日の次の日の朝。

「いや~、しかし良かった~!

もしこのまま死んでたらリグルに顔が立たなかったのだー!」

「いや、普通なら死んでますからね?

ホントに反省してる?」

明るく言うルーミアに俺は突っ込む。

「反省してるぞ!

でも、もしよかったらまた食べさせてほしいのだー!」

「…ルーミア?」

「じょ、冗談なのだ、リグル!」

怒りながら言うリグルに、ルーミアは冗談だと笑い飛ばした。

「そんな怒るなよ、リグル。

俺も大丈夫なんだし、許してあげなよ?」

「……」

リグルは無言で返す。

あのあとリグルはルーミアに激昂し、大喧嘩をしたそうな。

そして、今の今まで全く話していないとのことだ。

「まぁ、友人があんな酷い目にあったら、確かに許しがたくはありますよねぇ…あはは…」

イナバがどんよりした笑顔でリグルに同感する。

昨晩、俺とリグルが11時になっても帰ってこないので迎えに来てくれた。

だがイナバがそこで見たのは治ってる最中と言えどむごたらしい死体と、その傍らで喧嘩する二人の少女だった。

「あんなにヤバいのは、初めて見ました…

うっ、思い出しただけでも吐き気が…」

どうやらとても強烈な見た目をしていたらしい。

イナバは小走りで厠に向かう。

「まぁでも、あんなにも損傷が酷かったのに全部元通り…

そしてお腹だけ治って、肩は今再生中…か」

小走りしていったイナバを横目に永琳は冷静に俺の状態を分析する。

「どうやら死因に直結する部位が一番早く治るのは確かね。

そしてそれ以外の部位は後から再生するらしいわね」

「ほほう…」

分析を終えた永琳に俺は感嘆を漏らす。

「でも内臓は治ってるんですかね?」

「それは問題無かったわ。

お腹が治る前に内臓が修復されるのを確認したもの。

あれには驚かせられたわ」

永琳はイナバが拒絶していたあの死体を見ていたらしい。

だがそれでも永琳は平然としている。

流石だな、と内心思う。

 

「リグル~、ホントにごめん~…

反省してるぞ~…」

「……」

傍らではルーミアがリグルにずっと謝っていた。

リグルはまだ怒っているらしい。

俺が見ていたことが分かったらしいルーミアは、目をうるうるさせながらこちらを見てくる。

流石にルーミアも真面目に反省してるようなので、俺は助け船を出してやる。

「な、なぁリグル?

ルーミアもお前を助けようとしてこんなことしたんだ。

そう考えると、ルーミアもわざとじゃないって分かるだろ?」

「……」

リグルは無言で頬を膨らませ、そっぽを向いている。

俺は頑張ってリグルを諭し続ける。

「それにほら!妖怪も人を襲うこともあるんだろ?

ほら、致し方ないことだって!…」

「ねぇ」

リグルが急に俺に声をかけてくる。

「ど、どうした?」

「…あなたは怒ってないの?

あんな酷いことされて…昨日から思ってたけど、何でそんなヘラヘラしてられるの?…」

リグルは逆に問いかけてくる。

“ヘラヘラしてられるの?”

この言葉にドキリとする。俺もこれが原因で人に嫌われたものだ。

少し本心を言うのをためらう。

だがリグルは、俺の虫と話せる力を気味悪がらなかった。

リグルになら、話せる。

そう思い、俺はリグルに伝える。

「俺は、ヘラヘラすることで相手も同じように気分が紛れると思ってやってる。

そうしたら、相手も暗い気分が晴れて笑顔になるかもだろ?

だから、俺はこうし続けるんだ。

もしこれが気に障ったのなら謝る。すまない」

俺はリグルに頭を下げる。

「な、何してるの?

別に怒ってる訳じゃないよ?」

リグルは怒ってない旨を伝える。

「私はね?、えっとね?

ルーミアに怒ってないのか聞きたかっただけなの」

リグルがおろおろしながら俺に再び問いかける。

俺は顔をあげ、笑顔を作りリグルに返答する。

「全然怒ってないさ。

わざとじゃないんだし、それなら仕方ないじゃないか。

それに、ルーミアの行動は友達を思ってのことだ。だったら怒る理由もないさ」

「でも…それでも……」

リグルはいまだに納得してない様子だ。

俺は更に続ける。

「リグル。

友を思っての行動は素晴らしいことだ。やり過ぎはよくないけどな。

まぁ今回はやり過ぎの域に入るとは思うけど、俺は咎めることもしないし気にしてもないさ。こうして無事なんだし。

だから、ルーミアを許してやってくれないか?」

「……」

リグルはまた無言になる。

それを見たルーミアは今にも声を上げて泣き出しそうだ。

「…許す…」

リグルが小さい声で呟く。

その膝には涙が零れ落ちている。

「ルーミアを、許してあげる!」

リグルは大声で言う。

「ゆ、許してくれるのかー?」

「うん!優しい友達のルーミアを、許します!」

リグルは目元に涙を溜めながら、笑顔でルーミアに応じる。

それに対しルーミアは涙と鼻水を垂れ流しながらリグルに抱きつく。

「ぶぇぇぇぇ!リグルぅぅぅぅぅ!

ごぶぇんなざいぃぃぃぃ!!」

「ありがとう、ルーミア。

私もずっと怒っててごめんね?」

泣きじゃくるルーミアを、リグルは撫でる。

俺はそれを見て思わず涙腺にうるっと来てしまう。

「友情って良いものだなぁ…」

「えぇ、そうね」

永琳は俺に同感してくれた。

 

清々しい朝が、訪れたものだ。




さて、この次の話は誰が出てくるでしょうか?
お楽しみに!


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紅魔館に誘われて
1週間後…


長らくお待たせしました!
最新話でございます!!


朝:6時ちょうど

俺はいつも通り目が覚める。

若干寝ぼけ眼のまま洗面台に向かい、顔を洗い、歯を磨く。

磨くこと15分、うがいをし、鏡で歯を確認する。

うむ、ちゃんとつやつやだ。

何か無いかと調理場に向かうと、イナバがいた。

「あっ、おはようございます!」

「おはよう、イナバさん。

もうご飯作ってるんすか?」

イナバの手元を見ると、いくつかのおにぎりが並べてあった。

「いや~、早起きしてもすることが無くて~」

苦笑しながらイナバは答えた。

「へぇ~。

あれ、お惣菜はまだな感じですか?」

「はい~、今日はいつもよりおにぎりを多く作ってるので、まだ手がつけられてなくて…」

それを聞き、俺はイナバに提案する。

「もしよかったら、今日も作りましょうか?」

「いや、大丈夫ですよ!

朝食の時間には間に合わせるので…」

「いや、それじゃ大変でしょ?

作っておくんで、任せてください!」

俺は服の裾をまくり、気合いを入れる。

「すみません、ありがとうございます~

でも、1週間も頑張ってくれてたので退院日くらいはもう少しゆっくりしていただいても良いのですよ?」

そう、あのルーミア騒動があってから1週間。

今日は俺の退院日なのだ。

そして今日まではいくら患者だと言っても、俺の怪我は一日目で治っていたので、お礼がてらここの家事や仕事の手伝いをしていたのだ。

おかげで永遠亭に住む方とは皆話せる位には仲良くなった。

「いやいや、お構い無くですよ」

「はぁ~、感心しますよ

あなたみたいな人そうそういませんよ?」

イナバに褒められ、照れながら作業を進めた。

 

 

一時間後…

朝食が出来た為、居間に料理を運んでいく。

その際起きていた他のウサギの人達が手伝ってくれた。

居間に着くとちょうど永琳が診療室から入ってきた。

他の住人達は既に席についていた。

ちなみにリグルは寝ぼけ眼でうつらうつらとしていた。

「おっ、待ってました!」

料理が運ばれてくるやいなや、ウサギの少女が明るく言う。

「相変わらず朝から元気だなぁ、てゐは」

ウサギの少女、因幡てゐは丸いもふもふした尻尾を振りながらむふんと鼻息を鳴らし笑顔でこちらを見る。

「むしろ因幡が明るくないことなんてあったかしら?

私はここに来てからはずぅっと見てないわ」

居間の奥に座る女性が微笑しながら言う。

「ほんと輝夜様の仰る通りですよぉ。

私もどれだけ苦労してるか…」

「失礼な!何も迷惑はかけてないぞ!

悪戯はするけど!」

イナバはその女性、蓬莱山輝夜に同意し、てゐと少し口論を始めた。

輝夜は月のお姫様らしく(やや信じられないが)、まぁとても偉くはあるらしい。

何故こんな場所にいるかはまだ教えてもらえていない。輝夜とも話す仲ではあるのだが、それを聞くと必ずはぐらかされる。

余程の理由なのだろう、俺も二度聞いてから踏み込まないようにしている。

「まったく、朝っぱらから騒がしいわよ

姫様の御前なのだから静かになさい」

永琳が口を酸っぱくして二人に言う。

「まぁまぁ、良いじゃない永琳。

お堅い場所じゃないんだし、食事の時くらいは良いじゃない?」

「そうっすよ、永琳さん。

ご飯は楽しく食べてこそ美味しいのです!」

口元を薄桃色の着物の袖で隠し笑う輝夜に合わせて俺も永琳に述べる。

「まったく…あなた達も相変わらずね」

永琳は呆れながら、だが笑顔でそう言った。

ちょうどその時配膳が終わったので、輝夜は皆が座っているのを確認する。

そして輝夜は俺に目配せをする。俺が合図をするようにとしたのだろう、俺は指示に従い、

「それでは皆様、合掌!!

それでは!」

 

 

 

いただきま~す!

 

 

 

 

 

号令と同時に騒がしい朝食が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

朝:10時頃

「これ、お弁当です。

お昼になったら是非食べてください!」

永遠亭の玄関先で、イナバが俺に風呂敷を手渡してくれた。

手に持つと結構ずっしりと重い。どうやら大量に入ってるらしい。

俺は礼を言い、それを受け取った。

玄関にはイナバだけでなく、永琳や輝夜、てゐや他のウサギ達もいた。

「でも、これから大丈夫?

あなたの家が見つかるまでここに居てもいいのよ?」

「私も姫様の言うことに賛成だわ。

ここで働いてくれるのだから住み込みでも大丈夫よ?」

輝夜と永琳が俺に提案してくれた。

「ありがとうございます。

でも、紫さんが衣食住は心配ないって言ってたんで大丈夫です!」

「紫はあまり信用できないわよ?

あの人とてもお気楽な人だから、もしかしたら藁で出来た家かもしれないわ」

永琳の発言に俺以外のこの場にいる全員が同意した。紫はどれほど信用されてないのだろう。

しかし住み込みで働けるのは魅力的だが、俺はちょっと一人暮らしにも憧れを持っている。

だから非常に心苦しいが断ることにしておいたのだ。

…少し住む場所が気になるが。

「た、多分大丈夫ですよ!

ではもうそろそろ…」

「そうね。そこの蛍少女の幻想郷案内の時間を短くしちゃ悪いしね」

リグルは得意気に胸を張る。

輝夜の言った通り、紫から連絡まではリグルに軽く幻想郷を案内してもらう予定なのだ。

幻想郷には人が入り込んでも大丈夫な所も危険な場所もあるので、土地勘くらいは養っておこうと永琳が提案してくれたのだ。

そしてその役をリグルが率先してやってくれたのだ。

「私はもうちょっと話してても良いよ?」

こちらを気遣ってか、リグルはこちらに話しかけてくる。

「いや、大丈夫だよ

また近い内に会えるからさ」

「まぁ、それもそうですねぇ」

イナバ達はクスクスと笑った。

「それじゃあ、気を付けてね

もう死ぬんじゃないわよ?」

「また話しましょうね?

あなたと話すのは中々面白いから」

永琳と輝夜がそう言ってくれた。優しい人達だなぁ。

「それでは皆さん、お世話になりました!

まぁまたすぐにここでお世話になりますが」

「それは仕事の方?それとも患者側?」

てゐの冗談で場が和んだ。

あまりにも短い別れだが、笑顔で告げられて良かったと感じた。

 

 

 

 

 

 

永遠亭を出てから、俺達は竹林の中に入っていった。

「しかし、ここは本当すごいなぁ

樹海ならぬ竹海、と言うべきか…」

俺はこの光景を見てそう言った。

周りに竹以外見えるものが無いのだ。本当に真っ直ぐ歩いているのかも怪しく思える程だ。

実際、ここに迷い込むと入口に戻ってきてしまうらしい。

そんな場所を、俺とリグルでは抜けられないだろう。

イナバ達はここを抜けられるのだが、運悪く今日は忙しいらしく、案内出来ないらしい。

そこで永琳は、迷いの竹林を抜けられる人物にガイドを頼んでくれた。

そのガイドは今、俺達を先導してくれている。

「…ここの竹は成長が普通のものに比べて早い。

だから目印となるものが作れないくて迷う人が多いんだ」

「へぇ~、それはまた研究してみたいな!」

ガイドがとても興味深いことを教えてくれたので、俺の研究心がくすぐられる。

「でも、何で妹紅さんは迷わないんすか?」

「確かに~!

秘訣でもあるのかな?」

俺とリグルは、ガイドさん、藤原妹紅に質問した。

妹紅はその足元までかかる白く長い髪をたびなかせ、「長年の勘ってやつさ」と手短に話した。

実を言うと俺は妹紅さんと話すのは初めてではない。

彼女は迷いの竹林を抜けられるため、永遠亭に病人や怪我人を連れてくることが多い。しかも俺が初めて幻想郷に来て死にかけた際、リグルを永遠亭に案内したのも彼女だったそうだ。

その恩もあったので、ある日急患を担当した際にお礼がてら話したのだ。おかげで最初は無口だった妹紅も、今では結構話してくれるようになった。

「そういえば、あんた永遠亭で働くんだってね

良かったらうちに住む?

この竹林のこともあるし」

妹紅は俺に問いかけてきた。

幻想郷にはやばいやつもいるって聞いたけど、そんなことが無い気がしてくる。

「ありがとう、妹紅さん

だけど俺迷惑かけちゃうよ?めちゃくちゃ飯食うから」

今回も俺は断ることにしておいた。

冗談めかして言ったからか、妹紅はクスッと笑って話を続けた。

「そこは問題無いぞ

ご飯はほぼ自給自足だから、食費は心配ない

が、参考程度にどれくらい食べるのか教えてほしい」

「そうだなぁ、まず白米は三合以上食うなぁ」

「ははっ、その時点でちょっとまずいかもなぁ

やはりやめておこう」

こんな感じに話している間に、迷いの竹林の出口に着いた。

「うぉー…」

俺は感嘆を漏らした。

「そういえば、あなたは永遠亭以外見れてなかったもんねぇ」

「そうか、あんたが死にかけたのって夜だったもんな」

「えぇ、まぁ実際死にましたけどね」

少しの間、三人で話した。とても充実した時間だった。

「それじゃ、あたしは戻る

また用があるときは呼んでくれ」

「ありがとう、妹紅さん」

俺が礼を言うと、「じゃあな」と妹紅は片手を挙げて対応し竹林の中に消えていった。

 

 

 

 

 

「それじゃあまずは、魔法の森に行こう!

私の友達もよくそこにいるから、紹介したいんだぁ!」

余程楽しみなのか、リグルははしゃいで手を引っ張る。

俺は承諾し、勢いに任せて歩きだした。

「おわっ!?」

情けなくも、俺は何かに躓き転んでしまった。

それを見たリグルはこちらに駆け寄ってくる。

「大丈夫?」

「あぁ、驚いたが大したことはないさ

でも何に躓いたんだ…?」

俺はその正体を見、ぎょっとした。

ナイフが地面に突き刺さっていたのだ。

直ぐ様俺は周りを警戒する。どうやら何もいないようだ。

「ねぇ、何か刺さってるよ?

何だろう…?」

リグルがそう言ったのでよく見ると、ナイフは何かを固定している。

それを取ってみると、何か文字が透けて見えた。

手紙、らしい。

開けるともう一枚紙があった。何やら地図のようだ。

紅魔館と書かれた大きな屋敷への地図で、とても分かりやすく丁寧に描かれている。これなら迷うことがないと言い切れる位に。

地図は確認し終えたので俺は手紙の方に目を向ける。

そして俺は、その内容に驚いた。

 

 

 

 

『外から来た死なずの人間に告ぐ。

用件がある故本日15:00に紅魔館に来られたし。

貴殿の意志で来られぬ場合は些か暴力的な手段を取らせていただく。

紅魔館領主 レミリア・スカーレット』

 

 

 

 

 

 

嫌な予感しかしない。直感がそう告げた。

 

 

 




他の作品も執筆中なので、今回みたいに遅くなるかもしれませんが、その時はご容赦ください。(´・ω・`)


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勘違いって怖い①

不定期投稿で申し訳ない……m(__)m


14:15頃

 

「本当に二人で大丈夫なのかー?」

「あぁ、大丈夫だよ」

ルーミアが俺とリグルを心配してくれている。

また、その隣にいる他三人もそわそわしている。

「あたいも付いてく!

最強のあたいだったら、紅魔館のやつらなんてけちょんけちょんなんだから!」

「あたしも、付いていきたい!

せっかく出来た人間さんの友達を危ない目に遭わせたくないもん!」

「わたしも心配だなぁ

あの館のことよ、何か良からぬことをしてきそうだもの」

さっき会ったばかりの俺をこんなにも気遣ってくれている彼女達に、俺は感激した。

彼女達とは、先ほど二時間半程遊んだ仲だ。

一応彼女達も人ならざる者なのだが、本当に凶暴なものはここにいないだろうと確信しそうだ。

「ルーミア、チルノ、大ちゃん、みすちー!

大丈夫だって!

何てったってこの人間さんは死なないんだから!」

何故かリグルが得意げに話した。

きっと皆を安心させるためにこの態度を取ったのだろう。

ちなみに、勝気な子は氷精のチルノ。(お世辞だが)ちょっとおバカさんで自分のことを最強と言っているが、実際妖精という種族の中でも強い方らしい。

これを教えてくれたのが、チルノの次に発言した妖精の大ちゃんだ。本当は大妖精という普遍的な妖精のくくりに入るのだが、チルノ達と仲良しなのであだ名が出来たとのこと。

最後に発言したのはみすちーと呼ばれる少女。本名はミスティア・ローレライといい、夜雀という妖怪だそうだ。おそらくこのメンバーの中でも勤勉な方で、夜になると焼き八つ目鰻の屋台を開いているそうだ。

彼女達はどうやら寺子屋に通っているらしく、そこで仲良くなったそうな。

種族問わず仲良くしている彼女達に感動しつつ、俺はリグルに続く。

「そっ!

俺は死なない人間だから大丈夫!

また皆と遊べるから安心しな?」

チルノ達はそれを聞いて安心したのか、付いていくとか言わなくなった。

そのかわり、

「絶対帰ってこいよ!

帰ってこなかったらゼッコーだからな!」

「わ、わたしも!

ずっと、ずーっと怒るからね!」

「ほんとに生きて帰ってね?

こんな楽しい友達と一日限りだなんて嫌だもん」

「そうだぞ!

またこのめんばーであそびたいもん!

絶対帰ってくるんだー!」

と、むしろ帰りを待ちわびていると言ってくれた。

少しの時間だろうに、と思いながらも俺は感激して涙が出そうになる。

「おう!

それじゃ行ってくるぜ!」

俺は親指を立てながら笑顔で返し、皆に背を向け出発した。

後ろから気を付けるようにといった内容のかけ声が聞こえてきた。

その声援を受け、俺は決意をみなぎらせた。

 

 

 

 

歩くこと数刻

 

「へぇ~、毎日大変だぁ」

「そうなんだよな~

ま、早起きしない俺が悪いんだけどな」

俺はリグルと話しながら歩いていた。

紅魔館まで結構な距離があったので、ふと外の世界について話題を出したら、話が盛り上がったのだ。

「でも、そのしんごう?って何であるの?

道を塞いでるだけじゃん?」

「ううん、ちゃんと人を守ってるんだ

自動車からね」

「じどうしゃ…?」

リグルはすごく不思議そうな顔をする。

「自動車ってのは外の世界の交通手段のひとつでな、そだな~…人力車の何倍も早いんだ」

「そんなのあるの!?

外の世界ってすごい…!」

リグルは触角をぴょこぴょこ動かしながら感動している。

まさか自動車の話だけでこんなに盛り上がるとは思っていなかった。

だがこんなにも楽しそうな姿を見てこちらも思わず口が緩む。

これから危険な場所に出向くというのに、あぁなんと悠長なことだろう。

しかし紅魔館に着くまでこの雰囲気が収まることはなかった。

 

 

 

 

あれこれと話題を出している間に彼らは霧に包まれた巨大な館の入り口に到着した。

まだ門の前に立った訳でもないが、建物からあふれ出る威圧にやられ思わず唾をのむ。

「はわぁー...すごいでかーい......」

いまだにほわほわとした雰囲気を醸しているリグルに、心なしかほっとする。

「うし...行くか」

そう言うと彼は門に向かって歩き始めた。

 

すると今まで霧で見えていなかったが、門の前に誰かがいる。

お迎え係的な人だろうか?だがその割には不審な点がある。

門の前にいた長身の女性はなにやら不思議な行為をしていた。

踊っているような、武道の型にも見える動きを取っていたのだ。

ゆるやかでありながらしっかりと軸の通った動きをしている。

その動きに見とれている彼らに、女性は気づく。

「何か御用でしょうか?」

彼女はその長い紅髪を揺らしながらこちらに向き合う。

彼女も警戒しているのであろうか、空気が一気に張り詰める。

その空気に飲まれ下手な動きをすれば危ないと察した彼は、リグルを後ろに控えさせながら門番を刺激しないようここに来た件を伝える。

「こちらの屋敷に来るようにと、手紙を貰ったのですが」

「手紙?」

彼女は不思議そうに首をかしげる。

差し出してきた場所の者にも知らされていない、どういうことだろうか?

すると彼女は手を出して、こちらに手紙を見せてほしいと頼んだ。

筆跡を見さえすれば通れるだろうと、彼は懐にしまってあった手紙を出そうとする。

 

 

 

カツーーーン……

 

 

 

だが彼が懐に手を入れ出てきたのはナイフであった。

けたたましい金属音を発し、地に落ちる。

「なっ……!」

彼女はそれを見ると直ぐ様構えをとった。

「……入れてたの忘れてた~…………」

彼は呑気にため息をつく。

「これはヤバイんじゃ…?」

「うん、ちょーやば…」

 

スパァン!

 

彼がリグルに対応しようとした瞬間、紅髪の女性が張り手を喰らわせる。

思わぬ一撃に少し身を揺らしながら、彼は女性と向き合い説得を試みる。

「ちょ、ちょっと待ってください!

このナイフは手紙と一緒にあったもので…」

「黙れ!お嬢様を狩ろうとするハンター!

この屋敷には一歩も入れさせない!」

最早完全に敵と見なされたようだ。

 

だが彼は諦めずに弁解を続ける。

「だから待ってくださいって!

この手紙さえ見れば…」

彼は手紙を見せる為に再び懐に手を入れようとしたが、その瞬間物凄い速さでこちらに駆け寄り攻撃を仕掛けようとする彼女の動きを見、取り出せなかった。

上半身を前に傾けながら突きを繰り出してくる。

咄嗟に彼は避けるものの、避けた時には既に二発目の突きを繰り出していた。

胴体にまともにくらいながらも、本能的に彼は少しでも威力を殺すためにバックジャンプをする。

突きの勢いも加わっているせいか、リグルが控えている場所まで後退する。

「もう武器は出させない。

さぁ、今なら見逃してあげます。

早くお帰りに」

彼女は迎撃態勢を取りながら帰るよう促す。

ダメだ、まったく話を聞く気がない。

そう悟ると、彼はメガネを外す。

そして畳んだメガネをリグルに渡す。

「リグル、これ持ってて」

「え?…う、うん」

なぜメガネを外したのか、理由が分からないリグルは疑問に思いながらもそれを受け取る。

そして彼は紅髪の女性に近づいていった。

堂々とこちらに向かってくる男性に対し、彼女はまったく動じずにいる。

そして女性と面向かった彼は一定の距離まで来ると、深いため息をついた。

「少しは話を聞いてくださいよ……

でも、もう聞く気はないんスよね?」

彼の言葉遣いがやや荒くなる。

その変化に気づいた彼女はやや挑発気味に答えを返す。

「えぇ、ありませんよ。

あなたのような嘘つきの話を、どう信じろと?」

"嘘つき"。

その言葉を聞いた瞬間、彼はブルッと肩を震わす。

同時に重苦しい雰囲気がこの場を飲み込む。

余程怒っているのか、彼は下を向きながら身体全体を震わしている。

リグルはその姿を見、唖然とする。

少し前とは全く違う彼の様子に驚きを隠せないのであろう。

(こんなに怒ってるの初めて見た…

でも、怒ってるというより……)

誰も気づかない微妙な差を見つけたのか、リグルは心配そうな眼差しを彼に向けた。

 

一方挑発に乗ったと思った紅髪の彼女はいつ攻撃が来てもいいように、呼吸を整える。

すると次は彼が口を開く。

「覚悟は?」

謎の質問に、紅髪の女性は「は?」と返した。

「殴りあう覚悟はできてるんスか?って聞いてるんですよ…」

彼が重々しい声色で再度問いかける。

いきなり何を聞いているのか、不思議に思いつつ彼女は答える。

「勿論、ありますよ」

その答えを聞くと、彼も構えを取り始める。

どうやら本気で殴りあうようだ。

「名前は?」

またもや訳の分からない質問に、彼女は「え?」と返してしまう。

「あなたの名前ッスよ…」

本当に掴みにくい男だと思いながらも、彼女は返答する。

(ホン) 美鈴(メイリン)と申します。

これから無いとは思いますが、お見知りおきを」

彼女は丁寧に答える。

それに対し彼は彼女に正々堂々と勝負することを宣言する。

「美鈴さん。これから勝負を仕掛けさせていただく。」

そう言い放った瞬間、彼は急に感情を落ち着かせ真剣な表情をする。

対する美鈴も引き締まった顔をし、構えに磨きをかける。

どちらが先に動くか、拮抗状態の中思い出したように美鈴が彼に問いかける。

「そういえば、あなたも名乗っておいては?

相手の名前を聞いておいて自分の名を明かさぬのは無礼だと思うのですが?」

それを聞き、彼は変わらぬ表情で少し考え、名乗る。

「俺は…?????????と言います。」

それだけ聞くと、美鈴は彼に向かっていくのであった。

 

 

 

 

美鈴が彼に攻撃を仕掛けようとしたほぼ同時刻。

 

 

「……初めて聞いた………」

紅魔館の入り口付近の茂みに身を隠しながら、リグルは彼の名を覚えるように復唱するのであった。




中盤らへんからややまとめ方が複雑になっている気が……

さて最後あたりはバトル小説風な終わり方になってしまいました。
というかこれから実際戦います…(タイトル・タグ詐欺ではありません!信じてください!)(^o^;)
この話以降も恋愛小説ではないような展開があるかもしれません(^^;
ですがこの話を、物語を楽しんでくれたらと思っています‼

それではまた次の話で~


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勘違いって怖い②

結構長くなったので、誤字、脱字があるかもしれません

発見したら報告していただければ幸いです…!


永遠亭にて……

 

 

「大丈夫かしら……」

少し前に出ていった不死の青年のことを、永琳は心配していた。

 

「お師匠さま、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ

なんてったって彼は死なないんですから!」

永琳の漏らした声を聞いていたイナバは元気に言う。

「それはそうだけど…」

 

何かが気になる。なんせ1日(時間的に言えば半日以内)に2度死んだ男なのだ。

そんな不幸属性を持つ彼がたった一週間で外を出歩いても大丈夫なのだろうか。

もう少し彼をここに引き止め、ちょっとずつ幻想郷を巡らせた方が安全性が増えたかもしれない。

一度診た患者ということもあってか、そう考えているうちに心配が増大する。

 

「心配しすぎるのも毒ですよ?

一旦お茶でも飲んで落ち着きましょう!」

そう言うとイナバはちょうど持ってきていたお茶を入れ、永琳に手渡した。

「…それもそうね。ありがとう」

確かに、そんなに気にかけることもないだろう。

ここに来た初日にあんな目に会ったのだ。少なくとも警戒はしているだろう。

それに氷精達とも会うみたいだし、まぁ大きな危険が迫らない限りは大丈夫なはず。

そう考えながら、永琳はお茶を少しずつ飲み始める……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、紅魔館では……

 

 

 

 

 

 

 

「たぁっ!」

「ぬぅっ!」

美鈴とその件の青年が激闘している。

 

戦局は美鈴の方が優勢。

青年は守りに徹するも、彼女の猛攻を全て防ぎきれず所々ダメージを負っている。

それだけでなく、彼は打ち所が悪く、美鈴の知らぬ間に二度死んでいる。

一般に健康法として、古くからの護身術として知られる太極拳を含め、中国拳法の達人である彼女には造作もない。

 

かといって美鈴が圧倒的という訳でもなく、彼女も青年の繰り出す柔術の威力に警戒している。

彼も只者ではないらしく、空手や柔道などのある程度の武道は心得ているように見える。

証拠に、東洋武術に多く見られる摺り足がそれを物語っている。

 

「中々やりますね」

「そっちこそ、お見それしました」

一度距離を取り、互いに各々の実力を認めあう。

 

 

そしてすぐに美鈴が先手を仕掛ける。

間合いを一気に詰め、連続で中腹を狙った突きを繰り出す。

青年はそれをいなしながら後退し、相手の重心がより前に出るタイミングを待つ。

そして美鈴が右手で少し強めの突きを放つ。

青年は待っていたと言わんばかりに上半身を捻り、左側に避けつつ左手で彼女の手首を掴む。

 

 

そのまま自分に向かって外側に手首を捻り、勢いの方向を変えることを利用した投げを狙う。

ここまでの動作は完璧だった。

だが美鈴が掴まれた手首を少し震わせただけで青年の体が後ろに吹き飛ぶ。

発勁を放ったのだ。

 

 

発勁とは、身体の捻りなどといった最少の動作から最大の威力を放つ技法であり、中国拳法のみならず、極式空手や太極拳などにも使われている基礎技である。

流派や武道によって様々な応用技があり、修行を積み重ねていればどの方向にも放つことができ、放ったとしても静止しているように見えるという。

そして今美鈴が放ったのは発勁の1つ、至近距離から放つ寸勁であり発勁の中でも基礎的なものである。

 

だが美鈴は静止しているどころか投げられている状態から発勁を打ったのだ。

そこからも美鈴の実力が見受けられる。

 

 

一方吹き飛ばされた青年はそれを見越していたのか、受け身を取り素早く体勢を整える。

流石に何度も痛手を食らえば学習はするだろう。

しかしそうだとすれば勁を食らわないよう立ち回るはずである。

しかも死を味わっているのであればより当たるまいとするはずである。

 

 

美鈴もそれを疑問に思っていた。

だがそれでも相手にダメージを与えられているのでそのまま攻撃を続けていた。

今度は少し攻め方を変えながら迎え撃つ。

顔を狙い回し蹴りをし、よろめいた瞬間を狙って中腹に掌底を当てる。

 

 

しなやかな動作から放たれる剛き一撃を、青年は必死に受け流す。

そして猛攻の中、再度頭部を狙う回し蹴りに対し、青年はバランスを崩す。

その蹴りが青年の頭を砕かんとした刹那、美鈴の視界から突如として青年の姿が消えた。

そして間もなく下から襲った強烈な一撃が美鈴の首もとを狙う。

達人であるが故の直感のお陰で、美鈴は両の手でそれを弾く。

 

 

すると地面から飛び出たように青年の姿がまた現れ、正拳突きを放つ。

美鈴はそれを捌くと直ぐ様距離を取り、体勢を整える。

だが先ほどの一撃、躰道の海老蹴りの威力は大きかったらしく、痛みをとるかのように手をぶらぶらさせている。

 

 

青年はその様子を見、自身の呼吸を整える。

その隙を狙い、美鈴が手刀を当てにくるが、青年は何とか追い付きそれを投げに変換しようと手首を持つ。

当然美鈴の発勁を食らって吹き飛ぶ青年の姿が想像できる。

だが青年は吹き飛ばされずに見事投げを成功させた。

 

 

美鈴も何が起こったか分からなかったようで、地面に背中が激突するまで自分が投げられていることに気付けなかった。

大きな衝撃が体を駆け巡っていても、美鈴は何とか距離を離し体勢を立て直す。

そして青年の方に目を向けると、先ほど美鈴の腕を掴んでいた方の青年の上腕から骨が突き出ている。

更に掴まれていた美鈴の腕も青黒く腫れている。

そして美鈴は気づく。自分は反撃されていたことに。

 

 

青年が何度も発勁を食らっていたのは力の感覚や威力を覚えるため。

更に打ち方もある程度覚えるようにしていた。

そしてある程度感覚が分かった瞬間、一か八か美鈴の発勁を自身の発勁で相殺、そのまま投げに変換したということだ。

しかし打ち方の悪さや美鈴の勁の威力が高かったといった要因が重なり、彼は代償として尺骨を折ることになったのだ。

 

 

「さ、さぁ………まだまだ…………」

痛みや積み重ねてきたダメージに耐えながら、青年は弱々しく構えを取る。

その姿を見て、美鈴は思う。

(彼はここまで充分やった…

勝ち目のない戦いでも自分の持つ全てを振り絞り、勝とうとしている…

いくらハンターとはいえ、その心意気には尊敬できる…)

そして美鈴はその精神に答えるべく、距離を詰め止めの一撃をあてようとする。

彼のみぞおちに、勁が放たれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、美鈴が放った勁は紅魔館の入口付近の大木にうちこまれていた。

大きな音を立てて大木は倒れる。

 

 

「そこまでよ

これ以上は暴れないでちょうだい」

 

 

突然何者かの声が聞こえた。

美鈴は慌ててそちらを見る。

「さ、咲夜さん!?」

そこにはメイドの姿をした女性が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いというものは良いものだ。

相手の動きを見る度に学びとれるものが見つかり、場数を重ねる度に自分が成長していると実感できる。

しかも何故か楽しい。

よく分からないが、何かを昂らせてくれる。

だが思えば戦いは良いものを得るのと同時に大きな代償を支払わなければならぬ時もある。

今までの歴史でも、戦争という国同士の戦いは悲惨な結果を産み出してきた。

形式がどうであれ、そんなものを楽しむ自分を醜く感じる。

 

 

 

あぁ、死にたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい…???くーん……」

「大丈夫ですかー…」

周りから声が聞こえ、青年は意識を取り戻す

どうやら気絶していたようだ。

「良かった~…全然気が付かなかったから、ちょっと焦ったよ~…」

リグルが心配そうな顔つきで彼の身を案じていた。

だが安否を確認できて安心したのか、胸を撫で下ろしていた。

 

 

「す、すみませんでした!」

突如リグルの傍らにしゃがんでいた美鈴が、青年に向かって謝罪をした。

「え、な、何が…?」

あまりにも急なことに青年も困惑している。

 

 

「彼女の勘違いだった。

そう分かっただけよ」

いつの間にか後ろに立っていたのか、メイド姿の女性が説明してくれた。

何故か片手に2,3本ナイフを持って…

 

「あ、あなたは…?」

「あ、申し遅れたわね。

私は十六夜 咲夜。紅魔館のメイド長を務めているわ。

どうも、よろしく」

誰かという疑問に、丁寧で短的な自己紹介で返すと急に美鈴の頭にナイフを投げる。

 

「あぃッたぁ!」

ナイフが美鈴の頭部にしっかりと刺さった。

そしてすぐに顔に血が垂れてくる。

「「え、ゑぇ!!??」」

リグルと青年は驚きを隠せずにいた。

そんなことを気にすることなく咲夜は美鈴に説教を始める。

 

 

「全く、勘違いで致命傷を与えるなんて、門番としてどうなの?

たまたま件の人間が意外と強かったから死なずに済んだけど…

もしこれが噂になったら紅魔館の、いやお嬢様の評判が下がってしまうじゃない

まずナイフを落としたっていってもこのナイフは私のでしょう?

その時点で何があったかを聞くべきよ…

グダグダグダグダ………」

まだまだ説教は続く。

ここまで来ると美鈴がすごく可哀想になってくる。

 

 

そこから5分後、ようやく説教が終わる。

怒られた本人はめそめそと泣いている。

まぁ、あそこまで怒られれば当然だろう…

すると咲夜はこちらに向き直り、やや営業スマイルじみた表情を出す。

「うちの門番が粗相をしてしまい、申し訳なかったわ

さて、外の人間さん、今からお嬢様の所へ行く前に医務室に案内するわね」

「い、いや、俺は大丈夫ですよ

傷も治ってるし…」

「いえ、だめよ

そのような不潔な格好ではお嬢様に会わせられないもの」

 

 

という感じでケガというか身なりを整える目的で何故か医務室に案内されることになった。

ただ美鈴は咲夜に門の前で正座するように言われていたが、彼女の手当てもしてほしいと青年は頼んだ。

彼女は妖怪だからそれくらい大丈夫と言われたが、それでもと頼むと咲夜は渋々承諾した。

 

 

更に紅魔館にリグルも入れていいという許可も得られた。

本人は触角をぴょこぴょこさせて喜んでいる。

そして咲夜を先導とし、それに付いていく形で青年らは紅魔館に入っていった。

 

 

 

 

 

 

霧の湖に囲まれ、異様な雰囲気を漂わせる外見をしている紅魔館だが、中は非常に落ち着いた雰囲気であった。

入口の大扉を開ければ紅一色で彩られた左右に別れる廊下に、仄かな光を発するシャンデリアが上品な気品を感じさせる。

入口真正面にある大広間には大きなステンドグラスが飾られ、2階席にまで到達している。

またステンドグラスから射し込む僅かな光は、広間全体に神々しい雰囲気を漂わせる。

「さぁ、こっちよ」

咲夜がやや足早で医務室に案内する。

 

 

ドアを開くと、中々整った小部屋が視界に入った。

医療部屋、というより研究室のような間取りからは、中世の病院のようなものを感じさせられる。

そして室内の椅子に、紫色の髪をした女性が座っていた。

どうやら咲夜曰く、紅魔館の主の古くからの友人である魔法使いらしい。

パチュリーと名乗ったその魔法使いは咲夜から手短に事情を聞くと、直ぐ様傷薬の調合を行った。

しばし時間の掛かるものだと思っていたがそんな事はなく、3分も経たぬ内に二人分の傷薬が作られた。

しかも効果も高く、ぱっくり割れていた美鈴の頭もみるみる治っていった。

 

 

替えの服をもらい、パチュリーにお礼を言ってから咲夜とともに医務室を出る。

どうやらお嬢様の話は誰彼聞かせられるようなものではないらしく、リグルは美鈴に連れられ別室で待機することになった。

リグルはとても心配していたが、大丈夫だと言い聞かせるといつもの明るい表情に戻った。(しかも激励もしてくれた。)

 

 

 

 

「ここよ、くれぐれも失礼の無いようにね」

どうやらお嬢様の部屋の前に着いたらしく、咲夜が注意を促す。

ノックをし、向こうの了承が得られたことを確認し、ドアを開ける。

すると小さな書斎のような部屋のまん中に、一人少女が席に着いていた。

幼いながらも整った顔で、フリフリとしたドレスを身に包む姿は一見生まれの良いお嬢様に見えるが、背中にあしらえる蝙蝠の様な翼が只者ではないと直感させられる。

 

 

「待ってたわ、あなたが件の人間ね?」

可愛らしくも凛々しい声色に身を強張らせながらも、青年は返事をする。

「いかにも、私が死なずの人間でございます

お目にかかれて光栄です、お嬢様」

「ふーん、下民かと思ってたけど、ある程度の礼儀はあるようね

さ、席につきなさい」

「ありがとうございます」

彼女の指示に従い、青年は席につく。

 

 

「さて、簡単に自己紹介させていただくわ

私はレミリア・スカーレット。

紅魔館の主をしているわ、どうぞよろしく」

レミリアは席を立ち、スカートの裾を軽く持ち上げ、お辞儀をする。

それにならい、青年も右手を左胸に当てながらお辞儀を返す。

「お初にお目にかかります、レミリアお嬢様

私は???????と申します。以後お見知りおきを」

互いに自己紹介が終わり、二人とも席に着く。

 

 

するとレミリアは直ぐに口を開いた。

「一応だけど、貴方が死なずの人間だと確かめさせてもらってもよろしいかしら?」

普通挨拶をする前にした方が良かったのでは?と思いながらも青年は了承する。

するとレミリアは再度席を立ち、今度は青年の隣に移動した。

「ちょっと首もと失礼するわね」

一体何をするのか、レミリアは支えるように青年の両肩に手を添え、首筋に顔を近づける。

彼女の温かい息が首に当たり、少しこそばゆくなる。

少し恥ずかしくなって顔を赤らめるが、急に走る激痛によって顔が更に赤くなった。

 

 

首もとからは何かに噛まれているような感覚を感じ、すぐにレミリアによるものだと分かる。

「な、何を…」

「本当に死なないのかの確認よ

食事がてら、ね」

先ほどと変わらぬ声色で、必死の質問に対してさりげなく返す。

青年は再度首もとに鋭いキバが入りこむ感覚を感じた。

そして次は奇妙な感覚に囚われる。

 

 

何かが吸いとられるような感覚が首もとに集中する。

同時に「んくっ、んくっ」とレミリアが何かを飲む声を発している。

その瞬間青年は自分の血が吸われていることに気づいた。

そして少しの間吸血すると、レミリアは青年の首から口を離す。

満足そうに、そして上品に小さくぷはっと息を吐き、食後の余韻に浸っている。

一方青年は頸動脈を噛まれていたのか、首から血を噴き出しながら悶絶していた。

噴き出る血液がレミリアのドレスを、スカートを赤く染めていく。

 

 

しばらくの間余韻に浸りきったレミリアは添えていた両手をどけ、支えを失った青年の体はうつ伏せで倒れこんだ。

出血するにつれて大きく痙攣していた青年の体は、必死の呼吸によって微かにしか動いておらず、首もとからは出血することはもう無くなっていた。

強いていうなら、横になったことによって噛み跡からポタポタと少しずつ垂れているくらいであった。

そんな彼を横目に、レミリアは口をハンカチで拭きながら青年に言葉をかける。

「結構美味だったわ

もし私以外に吸血鬼がいたら、あなた、全員からたらい回しにされていたかもね」

薄れゆく意識の中それだけが聞こえたが、もう間もなく彼は冷えきった体で眠りにつくこととなった。

 

 

 

 

 

………

 

………?

 

 

あ…………う……

 

 

温かい……どこだ…ここは………

感覚を取り戻してきた青年の意識が、周りの情報を分析し始める。

今自分は何か柔らかいものの上、恐らくベッドにでも横たわっているのか。

次第に触覚、聴覚、温度覚を取り戻していき、そしてやっと視覚が復活する。

体も動かせるようになり、上体を起こし周りを確認しようとしたその時。

「どうやら本物のようね」

本の閉じる音と同時に横から聞き覚えのある声が聞こえた。

レミリアは先ほどの席に着き、今まで読書をしていたようだ。

「どう?歩けるかしら?」

「あ、はい、大丈夫です」

部屋の入口付近で待機していた咲夜が彼の動作を補助しようとしたが、青年はそれを丁寧に断る。

 

 

ベッドから降りようとすると、レミリアはやんわりとそれを制すような発言をする。

「もし動きにくいんだったら、ベッドの上でも構わないわよ?」

「いえ、大丈夫です。

それにお嬢様のお話しは重要であるとお聞きしております。

だのに寝具の上で聞くのは無礼でありましょう」

青年もレミリアの気遣いに対し丁寧に対応し、そして席へと移動する。

それを聞きレミリアはクスッと笑う。

「あなた、中々面白いわね」

 

 

咲夜が紅茶を持ってきたところで、レミリアは話を切り出す。

まず話はレミリアの謝罪から始まった。

門番が迷惑をかけたこと、確認のため何の合図もなしに殺したことについてだった。

「いえ、気にしてはいません

美鈴さんも門番としての責務を果たしていただけですし、そもそも勘違いさせるような行為をしてしまったのは私の方です。むしろこちらが謝らなければいけません。

それと事前の合図無しに私を殺した件ですが、賢明な判断であったと思っております。

もし相手が私の偽物で、危害を加えようとする輩であれば、これから殺すと聞けば自分の身を守ろうと手を出してきて、お嬢様の身を危険にさらそうとしたでしょう

だから私はそれらについて不服に思っておりませんし、お嬢様も気にしなくても大丈夫ですよ。」

青年が落ち着いた口調でそう言うと、レミリアは完全に予想外だったのか、目を見開き驚いていた。

そしてレミリアは非礼を許した彼に感謝を伝えた。

 

 

「して、本題とは如何様なことでしょうか?」

先に聞いてきたのは青年の方であった。

レミリアはその質問に対し、紅茶を一口すすってから答える。

「あなたのその能力を見込んで、1つ頼みたいことがあるの」

青年はそれを聞き、少し顔を強張らせる。

不死の能力を見込んでということは、恐らく危険な依頼なのだろう。

 

 

実を言うとそれを聞いた時点で頼み事を断りたかった。

だが断れば何をされるか分からない。

彼は断るという選択肢を捨て、内容を聞いても怖じ気づかぬよう、自分の思い付く限りの最悪な想像をしていた。

紅魔館の前には森があるから、熊とかの危険動物の狩猟か。

はたまた薬とかの実験体にさせられるのか。

 

 

そんな風に考えている内に気が重くなってきた彼は、どんな内容かをレミリアに聞く。

するとレミリアは少しの間を置く。

よほどやばいことなのだろうか、どんどん精神がすり減っていく。

そしてついに、レミリアが口を開く。

 

 

 

 

「あなたには、私の妹と遊んでもらいたいの」

 

 

 

予想以上に平和なお願いだったので、青年は逆に固まってしまった。




やっと紅魔館に入った……

今回は状況説明が多くなってしまいましたが、どうでしょうか?
戦闘の激しさや、紅魔館の雰囲気が伝わっていれば嬉しい限りです♪


咲夜さんのナイフの餌食になる美鈴がここで出るとは…笑
なお本編では書いてないのですが、不審者問題は咲夜さんにも不備があって、紅魔館に主人公を招く事を美鈴に伝え忘れてたのです。
説教中に私もあなたに伝えていたでしょう的なことを言われた時、美鈴は聞かされてないことを言うと、咲夜さんも、アッ…(゜ロ゜;てなっちゃってました。

完全で瀟酒なメイドさんですからね、仕方ないですね笑


おぜうだよ!みんな大好きおぜうだよ!!
ちょっと大人なおぜうだよ!!
うー☆

主人公が吸血されるとき、何かアダルトな雰囲気が…
って思ったあなたは真のおぜう推しです(謎)

次回は誰がでるのかなー
おや、何か破壊音が……

紅魔館の構造ですが、少し自分のイメージを取り入れてます。
そういうのが嫌いな方には申し訳ございませんが、今後も自分イメージを入れていくかもしれないので、ご了承いただければと思います。


では今回も読んでいただきありがとうございます!
相変わらずの不定期すぎ投稿ですが、応援していただけると嬉しいです!!


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お遊戯(命懸け)が始まった

うー☆


カツーン………

 

 

カツーン……………

 

 

地下へと続く階段を降りる度に、靴音が周囲に鳴り渡る。

ただ、いくら歩いても鳴り止むことは無く、新しく鳴る靴音は暗闇に飲まれていく。

それを聞きながら、今青年は咲夜の案内のもと、レミリアの妹君の部屋に向かっている。

 

 

しかし蝋燭一本の灯りで、こんなにも明るくなることがあるのだろうか。

そう言わしめるほどに周囲は暗い。

もし暗闇の中に誰かが佇んでいても、恐らく気付かない、いや気付けないだろう。

 

 

ただ咲夜はここにも慣れているのかスタスタと進んでいく。

一方青年は周りに興味を示しながら咲夜に付いていく。(本当は恐怖心を紛らわせるためだが…)

 

 

「しかし、レミリア様の妹君は、なぜこのような地下に?

たとえ太陽が出ている時間帯でも、紅魔館内はレミリア様でも行動できるのでしょう。

であれば、妹様もこんな地下にいる必要が無いのでは?」

青年はふとした疑問を抱く。

地下室に連れられる前に紅魔館の内装を見渡したが、吸血鬼であるレミリアも自由に行動できるほどに日光対策ができていた。

だのに同じ吸血鬼である妹君はなぜ地下にいるのか。

 

 

「…妹様は吸血鬼の中でも太陽に弱い方なのよ。

もし日光に当たってしまわれたら、レミリア様よりも症状がひどくなる恐れがある。

だからこそ、日光が完全に遮断できる地下室にいらっしゃるのよ」

質問に対し、咲夜は丁寧に返す。

ただ、咲夜が一瞬言葉に詰まったのは気のせいであろうか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、ここよ」

長々と階段を降り、やっと妹君の部屋の前に到着する。

その扉は鉄製であり、重々しい雰囲気を醸し出している。

しかも周りがレンガで出来ている所為か、監獄の入り口にも見えなくもない。

 

 

「では、私は他の仕事があるから先に行くわね。

時間になったら迎えに来るわ。

くれぐれも粗相のないようにね」

咲夜は青年に忠告し、階段を上って行った。

 

 

青年はレミリアに、妹と3時間ほど遊んでほしいと頼んでいた。

その頼みごとに青年は安心していたが、いざ扉の前に立つと体が強張っていた。

何か、扉の向こうに禍々しいものでもいるかのようなイメージが思い浮かび、ノックもできない。

だがそれも、この暗闇が原因であろうと心を奮わせ、扉にノックし部屋に入る。

 

 

扉を開けると急に明るくなったために目がくらむ。

視界が戻るとそこには広々とした空間が広がっていた。

壁と床と天井は、濃さが若干違えど明るい紅色が基調とされており、部屋全体を彩っている。

ベッドなどの寝具やタンス、テーブルなど必要なものは揃っているが、やや歪な形になっている。

床には玩具や千切れた枕、そしてナイフ(!?)がところどころに点在していた。

 

 

そしてベッドの上に人影が見える。

どうやら座っているようだ。

向こうもこちらに気づいたのか、ベッドを降りこちらを観察する。

姉とは違い髪は金色で、長い髪を片方だけに纏めている。

また衣服も、部屋と同じ明るい紅色で、子供らしい雰囲気が出ている。

背部にあしらう翼は一般的な形をしておらず、翼の骨格から虹色の結晶がぶら下がっている、何とも歪な形をしていた。

笑顔を向けると、向こうも少し安心したのかこちらに何者か訊ねてくる。

 

 

「…お兄さん、だぁれ?」

レミリアのように子供の姿をしているが、どうやら彼女は外見通りの精神状態のようだ。

かわいらしい声の質問に柔らかい雰囲気が流れるが、青年はそれに流されず礼儀正しく自己紹介をする。

「お初にお目にかかります、お嬢様。

貴女様の姉上から頼まれ、ここに来ました。

名前を、??????????と申します」

 

 

それを聞くと、彼女はなぜか恥ずかし気に挨拶を返す。

「は、初めまして、お兄さん。

私は、フランドール・スカーレットと申します。

い、以後もよろしくお願いします」

ぎこちない自己紹介とお辞儀とともに、彼女の挨拶が終わる。

だがぎこちないといえど、幼いながらに作法はしっかりとしていたので、青年は感心していた。

 

 

「…ね、ねぇ」

少しの沈黙の間を破りフランドールがこちらに何かを問いかける。

「お、お兄さんは、御姉様から何を頼まれたの?」

どうやら青年が、レミリアから頼まれた内容が気になっているようだ。

青年はそれに答える。

「貴女様の遊び相手になるよう命じられました」

「遊び…相手?

……ホント!?」

 

 

"遊び相手"というワードに反応し、フランドールは目を輝かせながら青年の前まで歩み寄ってくる。

「お兄さんが遊んでくれる!

お兄さんが遊んでくれる!!

御姉様、ありがとう!!!」

余程嬉しいのか、青年には目もくれず、少女はその場ではしゃぎまくる。

 

 

「じゃあ、何して遊ぼっか~…」

少女は頭を抱えて悩み始める。

少女の提案を待っている青年を、フランドールがちらりと定期的に見る。

一緒に遊び内容を考えろ、ということなのだろう。

青年も少し悩むが、ちょうど足元に人形があったので、人形遊びはどうかと持ちかけた。

すると少女はとびきりの笑顔で賛同した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

 

 

「失礼します」

ノックをし、咲夜はレミリアの部屋に入る。

レミリアは読書をしていたその手を止め、咲夜に質問する。

「死なずの人間と共に来た妖怪は?」

「はい、蛍の妖怪は小悪魔様とともにお話ししておられます。

こちらを怪しむ気配はまったくありませんでした。」

「そう…

なら面倒も起きなさそうね」

 

 

レミリアは安堵の溜息をつきながら、お茶を一口すする。

咲夜も静かに頷き、それに同意する。

だがレミリアの目には不安の色が宿っている。

 

 

 

「…これでフランも、少しは落ち着いてくれるかしら…?」

 

 

 

その眼差しは、カップの中に残っている紅茶に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、フランドールと青年はにこやかに遊戯を楽しんでいた。

純粋無垢な笑顔に、青年も思わず笑顔になる。

「フランちゃんは、ネコの人形さんが好きなんだねぇ」

「うん!!フラン、ネコさん大好きだよ!!」

フランは指を丸めながら「にゃんにゃん♪」とネコの真似をする。

 

 

なお青年が今敬語も無しに喋っているのはフランが許可したからである。

どうも彼女にとっては礼儀作法など堅苦しいのが気にくわないらしく、敬語も封じられ、あだ名で呼ぶように言われたのだ。

ちなみに最初は身分の問題などがあるため断ったのだが、うるうるした目で懇願されては断る術もない。

 

 

結果なんの気兼ね無く遊んでいる。

フランもとても楽しいらしく、背中の羽がピョコピョコと動いている。

「お兄さんお兄さん!

今度はお馬さんごっこしたい!!

お兄さんがお馬~!」

「ははっ、元気いっぱいだなぁ」

青年は四つん這いになり、その上にフランが乗る。

その様はまるで妹の遊びに付き合う兄のようだ。

 

 

「そういえば、フランちゃんはお姉さんと仲良いの?」

ふと気になったので、青年はフランに質問する。

「うん!とぉっても仲良しだよ!!

フランも御姉様大好きだもん!!!」

どうやら余程好きらしく、背中でフランがはしゃいでいる。

「へぇ~、じゃあお姉さんのどんなとこが好きなんだい?」

さらに青年は質問する。

 

 

「ん~っとね、綺麗なところと、優しいところ!!!

あと、かっこいいとこも好き!!

それとね~…」

はしゃぎすぎて言葉に詰まったのか、少し黙りこむ。

それを待っていると、何やら掴まっている手が次第に強くなっていく。

吸血鬼の力は強いので、勿論青年も傷みを感じ始めてくる。

「ふ、フランちゃん、ちょっと痛いかな…」

フランに力を弱めるよう頼むが、反応は無し。

むしろ強くなっていく。

 

 

「フランちゃ~ん、聞こえて…」

青年が背中の方を見やると、そこには先程とは違うフランがいた。

焦点が定まっていない目は見開かれ、何かをブツブツ呟いてる。

「ふ、フランちゃん?」

この状態が心配になった青年は、フランに向かって呼び掛ける。

どうやら呼び掛けに気付いたようで、彼女は正気が無さげな目を合わせてくる。

 

 

 

 

「……あなた、誰?」

 

 

 

 

謎の言葉に、青年は理解が追い付いていない。

「あなた、誰なの?

御姉様は?御姉様はどこ??」

フランは声を震わせながらこちらに問いかける。

何故かは分からないが、取り乱しているようだ。

 

 

「だ、大丈夫だよ。ちゃんとお姉さんは上にいるから」

「御姉様はどこ!!!!!

どこなの!!!!!!!!」

なだめようとするが、もはや耳に入っていないらしい。

「フランちゃん、落ち着い…」

「早く!!

御姉様に!!!!

合わせてよ!!!!!!!」

駄々をこねる子供のように、フランは青年の背中に手をバンバン叩きつけてくる。

その威力は半端なく、青年は思わず息を漏らす。

 

 

暫くの間青年の背中を叩いていたが、フランは急にそれを止める。

だが怒りは収まりきらないようで、声を漏らしながら息を漏らしている。

「フー……フー…………」

少し落ち着いたと思った青年は、まだ残る痛みに耐えながらフランの安否を確認する。

「…だ、大丈夫、かい…?」

しかし反応は無し。

その代わりに、光輝く翼の結晶を揺らしながら宙に浮き始める。

 

 

一定の高さまで到達・停止すると、フランは開いた右手を上げる。

一体何をするのだろうか。

青年がそう考えていると、フランは口を開ける。

「……何で、御姉様に会わせてくれないの???」

高い所にいるためよく見えないが、その顔には涙が伝っているように見える。

 

 

 

 

「…消えちゃえ」

 

 

 

少女がその言葉を発した瞬間、青年の体は爆散した。




さて、今回はどうでしたでしょうか?

まぁ終わり方がちょっとあれですが…(微笑)
最後の文章からも推測できるかもしれませんが、次回はちょっぴりおグロくなってしまうかもしれません。

ご了承下さい…!


ついに出てきたぜ、妹様!!
姉様も出てきてうーうー☆パーティーだ!!!(作者の頭のネジが外れた瞬間)


フランちゃん、かわいいですよね(*´ω`*)
私の中の1位は勿論リグルですが、フランちゃんも結構気に入っております(笑)

きゅっとしてドカーン!!


ちなみにフランちゃんが挨拶をする時に恥ずかしがっていましたが、理由は
「御姉様みたいにかっこよく、上手く出来ないよ~!!」
…とのことです。

御姉様、尊敬されてて羨ましいッス!!(笑)


さて、フランちゃん相手に青年は何回生き返ることになるのか!?
予想しながら次回を楽しみにしててください!(笑)

今回はこれくらいにして、次回に会いましょう‼
それではっ!


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紅魔の狂気①

今回もやり過ぎてしまった…



狂気。

それは誰からも恐れられるものであり、誰でも持っている代物である。

普段は隠れていても、ふとしたきっかけで簡単に出てきてしまう。

孤独、正義、悲哀…

本当に要因は様々だ。

 

 

狂気にまみれたものは、自分が狂気にまみれていると分からない。

ただ目の前にある見える欲するものを、必死に自分のものにせんと動くのみ。

だが手にすることはない。

欲するものは自分の中にあり、現実のその場には無いからだ。

 

 

狂気は自分の欲するものが手に入らぬ時、精神が限界を迎えると現れる、欲望による産物だ。

自分の大切なものが失われた時も、それが自分がずっと欲しており、手を離したくないから…………

 

 

手を、離したくない………?

 

 

…………あれ?……何故だろう。

この感覚は、以前にも感じたことがある。

 

 

 

 

…何か、大切なもののような…

…思い、だせない………?

 

 

 

 

 

 

 

 

……あぁ、死にたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

……感覚が、戻ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徐々に……………

 

 

 

 

 

徐々に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徐々に…………!!

 

 

 

 

 

身体が自由に動かせるようになり、青年は飛び起きる。

(……何だ、今のは

忘れたい、が、忘れてはいけないもののはずだ!)

不快な感覚が身体中を駆け巡る。

 

 

 

 

(それなのに、それなのに!)

思い出せずにいる自分に、憤りを感じる。

 

 

 

 

(…何故思い出せない?)

そこで青年は気づく。

 

 

 

 

 

 

「記憶が、無くなっているのか……?」

 

 

 

 

 

 

「あれ?何で人間がここにいるの?」

声がする方を向くと、そこには紅い服を纏う吸血鬼がいた。

つい先程自分を殺した少女は、あどけない顔で話している。

吸血鬼にとって人を殺すのは普通なのか、それとも自分がしたことを覚えていないのか。

どちらにしろ恐怖であることには変わりない。

 

 

「あ!もしかして今日のご飯かな…?

でも咲夜来なかったし…う~ん……」

何やら恐ろしいことを言っているのが聞こえてくる。

彼女が疑問に思っている間に、青年はゆっくりと後退りをしながら扉へと向かう。

フランが記憶を思い出すまで、すぐに逃げれるようにするためだ。

 

 

そのまま逃げようとも考えたが、監視がいると厄介なことになりそうなのでやめておく。

ゆっくりと、ゆっくりと……

たまに後ろを振り返り、扉との距離を確認する。

あと数歩、あと数歩だ…

そして扉との距離が縮まってきた。

よし!あと一歩…!

 

 

 

「お兄さん、何してるのー?」

扉に近付くことに夢中になりすぎて、フランの様子を伺うのを忘れていた。

とんだヘマを、やらかしてしまった。

 

 

「もー、逃げようとしてたでしょ?

だめだよ、フランのご飯なんだから」

可愛く叱りつけながら、フランはこちらに近付いてくる。

軽い足取りだが、最早悪魔の一歩にしか見えない。

そしてフランは青年の前に辿り着き、ズボンの裾を掴んでグイグイと下に引っ張る。

どうやらしゃがめ、ということらしい。

 

 

抗ったら何をされるか分からないので、抵抗はしない。

指示に従いその場にしゃがむと、フランは青年の顔を掴み目線を合わせてくる。

そのつぶらな瞳からは異様なものが感じ取れる。

まるで何人もの人がその瞳を通じてこちらを見るような…

 

 

「お肌つやつやだ~!血行が良いんだね!

とっても美味しそう…!」

その小さな手で顔や首をぺたぺた触ってくる。

発言から、仕草から、自分の死が近付いてくるのが分かる。

今までは突然で一気に訪れる死だったから、まだ恐怖を感じることなく死ねたが。

 

 

だが今回は違う。

急に血を吸われる訳でもなく、急に喉を噛み砕かれる訳でもない。

今からはじっくりと、じっくりとした死を味わうのだ。

突然の予期せぬ死ではなく、目視できる確定された死。

恐怖の度合いが一気に変わってくる。

 

 

身体の状態を確認し終えたフランは、満足そうに食事を始めようとする。

「それじゃあ、いただきまーす!」

そしてフランの牙が喉に突き刺さらんとしたとき、青年はフランの顔と自身の首の間に手を挟み、すんでのところで食事を止める。

そして自分の死を食い止めるためにも、フランに向かって必死に問いかける。

「…フランちゃん、何も覚えていないのかい?」

 

 

だがそれを聞いても彼女は不思議そうに首を横に振る。

先程まで共に遊んでいたではないかと問うても、ひたすら首を振っている。

それどころかフランは不機嫌になってきている。

彼女からしたら、せっかくの食事が妨げられているのだ。

 

 

だが青年はひたすら問いかけ、食事を妨害し続ける。

いくら今不機嫌であろうと、先程のことを思い出せば丸く収まると考えたためだ。

しかし先にフランの怒りが最大まで溜まったらしく、眼光に殺意が満ちる。

「あーもう!!しつこい!!

フランはお腹が空いてるの!!!

お手てを退けて!!!」

 

 

青年はそのフランの怒りをよそに、姿勢を崩さずにいた。

遂にフランが広げた手を上げてきた。恐らく張り手が飛んでくるのだろう。

だが安直な一撃であれば、互いにダメージの無いように受け流しができる。

そして青年が流しをしやすいように手の向きを変えるが、フランは何もしてこない。

その代わりにフランは怒号を発した。

 

 

「~~~~!!!!!もういい加減にしてよ!!!!!!」

広げていた手を、フランがぎゅっと握りしめる。

すると首を庇っていた青年の腕が。

 

 

 

 

 

 

 

バラバラに吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……あ?」

突然の出来事に、青年は固まる。

一瞬赤い霧が見えた後、上腕から先が無くなっていた。

そして何が起こったのかを確認する間もなく、痛みが全身に駆け巡る。

「あ、ああ、ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 

 

内臓を食われた時とは違う激しい痛みに耐えきれず、絶叫する。

「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

言葉も出ない。口から出てくるのは。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

果てしなく続く間抜けで、醜い声だけだ。

 

 

「ごくっ……ごくっ………おいひっ………ごくごくっ……」

青年の絶叫をものともせず、フランは腕から吹き出る血を直に飲んでいた。

その姿に上品さはなく、感情むき出しで食事を楽しんでいる。

「ぷはっ。お兄さんの血、結構美味しい♪

もっと、もっと!!」

 

 

するとフランは青年の腕の断面に牙を突き立て、さらに吸血してくる。

「あ!?あ!!!っがぁぁぁあああああ!!!????」

筋肉の位置がずれ、牙が腕の中にかき分け入ってくる感覚がする。

同時に身体が冷えてきながらも、痛みが引くことはない。

しかし青年はひたすら痛みをごまかそうと叫び続ける。

「……あ~もう

ちょっとうるさいな~~~………」

 

 

そう言うとフランは急に青年の唇と自身の唇を重ねる。

口内に別の生き物が入ったような感触がし、青年の口の中をひたすら探る。

そして青年の舌を発見した瞬間、フランはそれを自分の口に無理矢理入れさせる。

一見濃厚な接吻のようであるが、それは一時の事。

フランは青年の舌を容赦なく噛みちぎった。

 

 

「が!?ばっばぶぼ……!!?………………… !!!!!????????」

青年の絶叫の音色が一瞬変化し、そして止まる。。

舌が千切られたことで、舌根が収縮し気道を閉じ呼吸を阻害させる。

それに加え舌からは血が溢れ、微かな呼吸も許さない。

 

 

息が出来ぬ苦しみ、身体中に走る痛み、死への恐怖。

それら3つが身体中にこびりつき、離れない。

生き地獄とはこのことかと、青年は悟る。

 

 

一方フランは、噛みちぎった青年の舌に残る血液を吸い終わり、今まさに青年から吸血をしようとする。

どうやら腕よりも口からの出血がひどいことに気付いたのか、口を開けながら青年の顔に近付いてくる。

青年の血液で真っ赤に染まった歯が迫ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…が、フランはすんでのところで停止した。

しかし青年の意識は既に消えかかっている。

出血も、ほとんど無くなっている。

最早フランがこれ以上手を出さなくとも、彼の命は尽きるだろう。

 

 

もう何の感情も湧いてこない。

これ以上は抵抗しても無駄なので、青年は命尽きるまでフランの様子を伺うことにした。

…今、胸元あたりにぽたぽたと何か液体が零れ落ちている感覚がする。

そしてフランが離れていくにつれ、何かが落ちる場所が下肢の方向へ移っていく。

 

 

 

もういいかと青年が目を閉じようとした瞬間、少女の口元が動くのを確認した。

何かを喋っているのだろう、青年は他の感覚を遮断し、聴力を出来る限り敏感にした。

 

 

 

 

 

 

「………で………えさま……………そん……………の?……」

 

 

意識が消えかかっているせいか、断片的にしか聞こえない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………とり……………やだ……………………だよ………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

どんどん意識が薄れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………か…………てよ…………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうほとんど聞こえない。だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう……ひとりにしないで……………」

 

 

 

泣きじゃくる声が聞こえたのを最後に、青年の意識が途絶えた。




さて今回はどうでしたか?

前回に予告させていただきましたが、残酷な描写ではなく残酷すぎる描写になってしまいました。

もしこういう描写が苦手だよ…という人は、次の話も出てきてしまうのでご了承下さいm(__)m


なに?ちょっとえっちっちな箇所があった?
はて何のことや((殴

ち、違うんだリグル!これには訳が……
グベェ>(゜Д゜(((殴(^ω^ リグル)<リグルン・ジャッジメントォ!




フランちゃんの異常行動…
その原因が分かり始めてきましたね…!


最後らへん、フランちゃんは何と言っていたのでしょうか…?
想像しながら次の話に進んでいただけると楽しいと思いますよ~♪



さて今回は二本一気に行きますのでここら辺で!
それでは、またすぐにっ!!


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紅魔の狂気②

紅魔館、レミリアの部屋にて…

 

 

 

 

人間がフランの部屋に行ってから1時間半ほど経つ。

しかし紅茶を飲み、本を読んでいるだけでこんなにも経っていたとは。

余程本に夢中になっていたのか、何か気がかりなことでもあるのか。

レミリアは大して進んでいない本を机の上に置き、溜息をつく。

 

 

「…咲夜」

「はい、いかがいたしましたか?」

どこからか咲夜が現れ、レミリアの指示を待つ。

だが、命じられたのは指示ではなかった。

 

 

「人間を迎えに行くのは、私に任せて貰えないかしら?」

咲夜は驚いた顔をする。

だがレミリアの眼差しを見、意思を悟る。

「…かしこまりました」

そして瞬く間に、咲夜はどこかに消えていった。

 

 

 

咲夜がいなくなり、自分しかおらぬ部屋で、レミリアは目を閉じる。

眠い訳ではない。ただ、考え事をするために。

 

あの人間が、大して役に立たなかった後を考えるために。

 

 

だが考え事をする内に、他のことが思い浮かんでくる。

 

 

(紅魔館の主が、情けないことだわ………)

 

 

 

 

 

 

妹一人、救ってやれないなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

…………………

 

 

 

 

 

………………!

 

 

 

(…戻ったぁ!!)

 

 

復活が完了し、青年は起き上がる。

場所は勿論、恐怖でしかないフランの部屋だ。

夢ではないのかと若干絶望しながらも、直ぐ様周囲の状況を確認する。

フランはどうやらまだ泣いており、こちらに気付いてないようだ。

今のところは襲われそうにないので、そのまま考え事をする。

先程見た、フランの状態についてだ。

 

 

ある時は無垢な子供のようで、またある時は狂ったようで…

1時間ほどだろうか、その間だけでも3,4の面が見られた。

だがどれにも共通する点を、青年は見いだす。

感情的であったということ、そしてまだ子供染みていることだ。

 

 

まずは感情的であることについて、整理をする。

最初、自分と遊んでいた時はまさに喜びや楽しさを体現したかのようであった。

次に自分を殺した時には、怒りに包まれていたように感じた。

そして最後、自分が死ぬ前に見た悲しみに暮れている様子だ。

 

 

感情表現がオーバーすぎるのか?

そう考えたが、それだけでは妥当性がない。

 

 

『もう………ひとりにしないで……………』

フランが最後に言った言葉を、青年は思い出す。

この言葉にも、手がかりが隠されているはずだ。

 

 

その情報とフランの子供染みた行動と照らし合わせる。

フランは先程からレミリアを探しているようだ。

しかし彼女がいないと、駄々をこねるように物(今回は青年)に当たり、強烈な不安を感じている節があった。

まるで留守番を頼まれ、一人という状況に始めて遭遇した子供のように。

つまり……

 

 

「……あなた、どこから来たの?」

考えている内に、フランがこちらに気付いたようだ。

 

 

目に光がない。

どうやらいきなりヤバイ状態のようだ。

 

 

恐らくこの後殺しにかかってくるだろう。

だがフランの謎についてまだ解けてないため、行動や言動を注意して観察する。

彼女はゆっくりこちらに近付いてくる。

一歩、一歩、一歩…………

一言も発さず歩いてくるだけで、場に緊張感が走る。

 

 

青年もそれに合わせ後退りをするが、そんな事せずとも背中は部屋の端についている。

すぐに逃げれるようにと位置取りをしたのが、まさか自分の命取りになるとは。

「…なにやってんだ俺…!」

青年は自分の不甲斐なさに落胆した。

 

 

遂にフランの猛攻が始まる。

しかし今回はいきなり吹き飛ばすようなことはしてこず、文字通り力で吹き飛ばそうとしてくる。

ジャンプし、頭を狙った手刀を、青年は避ける。

が、壁を貫いた手刀は青年の首を狙い迫ってきた。

 

 

しかし青年はすんでのところでかわせず、そのまま首を切断される。

視界がアクロバティックになりながら、たまに自分の身体が見える。

吹き飛んだ頭部がべちゃっと音を立て、地面に着地する。

 

 

視界は既にぼやけているが、司令塔を無くした自分の身体がびくびくと、各所が芋虫のように痙攣しながら倒れていくのが確認できた。

倒れたあとも、陸に上げられた魚のように跳ねている。

まぁ魚のように美味しそうには見えないが………

 

 

(………よく映画とか、アニメで見たなぁ…………………)

そんな呑気な感想を思い浮かべながら、青年の意識は消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……あれ、お兄さんは?)

先程まで遊んでいた人間がいなくなったことに気付く。

辺りを見回しても、周りには首が取れたりして壊れた人形しかない。

 

 

 

 

 

……何で??

何で、何で???????

何でいつもこうなるの??????

結局フランはひとりぼっちになっちゃうの?

 

 

 

 

 

トラウマが甦ったような恐怖感が、フランを包む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………どうして?

 

 

 

 

 

 

…………フランはいつも………

 

 

 

 

 

 

 

 

いいに、してるのに………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして、どうして?????????

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして、なの?

 

 

身体中に何とも言えぬ感情が込み上げてくる。

イライラしてるようにも感じるし、寂しいような気持ちもする。

 

分からない。

 

分からないよぉ…………

 

自分の感情を、押さえられなくなってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……消えちゃえ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全部……消えちゃえ………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全部、全部!!!!消えちゃえ!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランをひとりにしちゃうものなんて!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全部消えちゃえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこからともなく怒りが沸き上がってき、もう歯止めが効かない。

憤怒に身を任せ、壁を力いっぱい殴り付ける。

殴った箇所は勿論穴が空く。

 

「ハァーーーーッ、ハァーーーーッ…………………」

 

 

息を荒げ、鬱憤を晴らそうとした瞬間。

視界の端に、人間の姿が見えた。

 

ちょうど、いいところに。

 

 

 

フランはその青年に、殺意を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…こんな最悪なことってあるか。

 

 

 

生き返ったばかりの青年は今、早速フランから殺意を向けられている。

目には光がなく、最早狂気に取りつかれているようだ。

 

 

そして青年がフランの行動を先読みしようとしたが、彼女は早速攻撃を仕掛けてきた。

勿論青年はそれらをいなし、かわしていく。

ちょうど後ろには開けた空間しかなく、時間稼ぎにはちょうどいい。

 

 

(しかし、復活したのは身体の方か…)

攻撃をいなしながら、青年はふと自分の能力について考える。

少しフランの後ろを見ると、本来そこにあるはずの青年の首無しの身体がない。

そして復活地点は頭が落ちた場所。

(つまり身体がバラバラになった時は、頭部がある場所で復活するわけか

…我ながらなかなか酷い状況を想像したもんだよ)

 

 

考えている内に、フランの攻撃が激しくなってくる。

威力は桁違いであろうが、安直であるのが救いか。

青年はいなすことのみに意識を集中させる。

 

 

すると突然フランは手を止め、右手を開く。

それを見た青年は直ぐ様距離を取る。

手を開き、閉じる行為をすると、身体が吹き飛ぶことを身をもって体感したからだ。

恐らく彼女の能力であろうが、青年は調べたいこともあったために中途半端な距離を取り、右足を出す。

そして開かれた少女の手が、閉じる。

 

 

 

瞬間青年の頭部が弾け飛んだ。

力を失い、残った身体は床に崩れ落ちる。

「ハァーーーー……ハァーーーー……………」

ちょうどストレスがうまく発散できたのか、フランはその場に座り込んだ。

 

 

「…………グゥウゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」

するとフランは突如自分の頭をかきむしる。

そして腕、足、顔を次々とかきむしっていき、身体中に痛々しい傷が出来ていく。

激しい自傷に、痛みを感じる様子もない。

元々吸血鬼に痛覚が無いのか、はたまた痛みを感じないほど荒れているのか。

 

 

しかし流石は吸血鬼、みるみると傷は治っていく。

そしてきれいに傷が治ったフランは、虚空を見つめる。

そこに希望を見出だしているかのように…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ょおっし!!!!」

重い雰囲気の中に、急に明るい声が響き渡る。

声のする方を向けば、本来頭部が無いはずの青年がぴんぴんと立っている。

 

 

それを見るやいなや、フランは再度手を広げる。

余程怒りに怒っているのか、敵意むき出しの表情だ。

青年は距離を取り壁際まで到達、先程と同じように右足を前に出す。

そしてフランの手は閉じる。

当然青年の身体の一部は吹き飛んだ………

 

 

 

 

 

だが吹き飛んだのは、青年の右足のつま先であった。

えげつない痛みではあるが、上腕をまるまる吹き飛ばされる痛みよりかは幾分かましであった。

(…よし、分かった!

フランの能力が!!!

何もかもが!!!!!!)

 

 

青年は頭部を吹き飛ばされた時から推理を始めていた。

フランの能力には不可解な点が多かったため、彼は自らの身体を以て、吹き飛ばされる瞬間の感覚をしっかりと記憶していたのだ。

死なない身体だからこそ、持てる利点。

それに加え、青年の死に対する恐怖の克服が功を奏したとも言えよう。

 

 

頭部が吹き飛ぶ瞬間、青年は奇妙な感覚を捉えた。

頭内部の中心から外側に向けてエネルギーが移動していく感覚……

この感覚が、まるで核心を突かれた物体が形を無くしていくように思えた瞬間、謎が解けていった。

 

 

フランはただ手を広げ、閉じているわけではなかったのだ。

彼女は何らかの力で対象の核心を手に移動させ、それを握りつぶすことで核心を破壊。

そうして対象の破壊を行っていたのだ。

 

 

そしてフランの部屋に散らばる不自然な壊れ方をしている人形も、恐らくこの能力で行われたものであろう。

つまり核心がある物体であるのならどんなものでも破壊できる。

ありとあらゆるものを破壊できる能力。

これほど末恐ろしいものがあっていいのか。

 

 

しかし青年はその能力の弱点も見出だしていた。

それは、[距離]

最初、中途半端な距離を取った場合は、恐らくフランが狙ったであろう場所が吹き飛んだ。

だが先程十分すぎる距離を取り右足を少し出すと、右足のつま先だけが吹き飛んだ。

そこから推測すると、恐らくフランの能力の有効範囲は半径5~6m。

つまりそれ以上の距離を離せれば大丈夫であると判断した。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の能力と状態を理解した青年は、フランと向き合う。

彼女の眼差しは怒りとともに、他の感情が混ざっているようにも見えた。

それを見た青年は、今自分がせねばならぬことを思い浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対にフランを、救ってみせると。




どうも、先程ぶりです!
フランちゃんのお話ですが、あと1~2話くらいかかっちゃうかもしれません…(^^;
なかなか恋愛展開にならず、申し訳ないです…m(__)m


さて、もうそろそろ主人公が動き始めますよ……!
善意からか、それとも……?


ちなみにフランちゃんのお部屋ですが、広さは半径5~6m以上あります。(正確には直径17m)
当初は直径8mほどと、元からやや広めだったのですが、過去荒れていた際に暴れまくったおかげで広くなっちゃいました!って感じですね
吸血鬼の力の強さが分かる…


そういえば、冒頭の咲夜さんの時止め描写ですが、どうだったでしょうか?
どのようにすればかっこよく描けるのか悩んだのですが、中々上手くいきませんでした…(T_T)
上手く伝わっていたら幸いであります…!



レミィが暗い雰囲気を漂わす!
フランの狂気の謎も解けていく!!
フランとレミィの間に、一体何が!?
次回!青年、死す!!


デュエルスタンバイはしませんが、ここら辺で!
そいじゃ、また!!


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深淵の狂気から

久しぶりの投稿!!


…何で?

何でなの??

 

 

疑問、疑問、疑問。

疑問ばかりが思い浮かぶ。

 

 

壊れない……

壊れてくれない……!!!

 

 

鬱憤、鬱憤、鬱憤。

頭に浮かぶのは、鬱憤ばかり。

 

 

言い付けを守ってたら、良いことが起こるんじゃないの?

言い付けを守ってたら、遊んでくれるんじゃないの?!

 

 

御姉様!

御姉様!!

 

 

一緒に遊んでよ!!

フランのお部屋で、一緒に遊んでよ!!!!!

 

 

ただ御姉様と遊びたいだけなのに。

どうせなら一緒にいるだけでもいいのに。

ずっと良い子にしてたのに。

 

 

……もう、誰でもいいから…

フラン、ワガママ言わないから………

誰か、フランと一緒に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………もう、嫌だ。

 

 

 

少し戻った理性が、闇に霧散していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォォォォォォォン……!!

 

 

絶え間なく破壊音が鳴り響く。

不気味ながらも上品であった地下室は、もはや廃墟の如く荒れ果てている。

約2時間と少し経ったぐらいで、これ程までに変容させるとは。

流石の能力と身体能力と言えよう。

 

 

「ぐぅぅぅぅ!!!!!!!」

怒りに任せながら、フランは拳を浴びせにかかる。

青年は勿論、拳を捌きながら時間を稼ぐ。

 

 

しかし腹に迫る拳を捌ききれず、青年はまともに喰らってしまった。

「っぐぶぇ…」

腹を貫き、腹腔に少女の手が紛れ込む。

しかし少女は臓物の一つや二つを握り潰したりはせず、青年の顔面に強烈な一撃をお見舞いする。

 

 

ペキョっという軽い音の後に、ゴキュアっと鈍い音が続く。

青年の顔面は勿論陥没し、それだけでなく頭部全体も砕け散る。

勢いのまま倒れた青年の身体に、フランは容赦なく『禁忌 レーヴァテイン』を炸裂。

身体のほとんどが塵と化す。

 

 

だが運よく残った腕から、青年の再生能力が発動。

元のまま身体が復活し、全感覚も取り戻す。

その様を見ていたフランはふらつきながらも、直ぐ様青年との距離を詰める。

 

 

(よし、もう少しか…?)

フランが一瞬ふらついたのを確認した彼は、より気合を入れる。

実はこの時点で、青年は既に10回以上命を落としている。

身体を吹き飛ばされたり、半分に引き裂かれたり…

それらが原因でか、青年も体力に限界が来ていた。

 

 

(いくら復活能力でも、体力は回復しない、それどころか消費するのか…)

どうやら死なぬからと言って、安心は出来ないそうだ。

いや、もしかしたら体力が尽きたら復活できないのかもしれない。

いまだ謎の多い自身の能力に、少し恐怖を覚える。

 

 

だからこそ青年は、身体に喝を入れる。

空元気でも、無いよりかはましであろう。

そして再度襲いかかるフランの猛攻を、後退しながらも何とか凌ぐ。

 

 

しかし突然、身体が宙に浮く。

もしやフランの隠していた他の能力かと思ったが、答えは単純。

 

 

 

ただ自分が、瓦礫に足をひっかけただけだったのだ。

 

 

だがそれも命取り。

フランは青年の足を掴み、力任せに地面に何度も叩きつける。

ベチョ、ベチョと水音が部屋に響くにつれ、人間の形を失っていく。

肉塊から骨があらゆる部位から露出している様は、まるで子供が適当に作った粘土のよう。

そして止めを刺すためか、最後に目一杯壁に叩きつけられ、青年は完全な肉塊と成り果てた。

 

 

「ぐぅぅぅぅ…

フゥウゥゥゥ………!」

しかしフランの怒りは収まらない。

いや、これを怒りと呼んでいいのか?

そう言わしめるほど、彼女はひたすらに暴れ続ける。

その様はまさに、狂気に取りつかれているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館、大広間にて…

 

約束の時刻まで、あと45分。

自室から移動したレミリアは、大広間の二階席で読書をしていた。

約束の時刻になったら、某死なずの人間とここで話したいと考えているためだ。

…が先程から地下から微かに音がする。

まぁフランが暴れているのであろうが、少しばかり違和感を感じる。

 

 

長すぎる。

大抵は4~5分程度で終わるのだが、今回は20分以上続いている。

もしや、某死なずの人間がフランの逆鱗に触れてしまったのか。

…やはり彼に任せたのは失敗であったかと、些か失望する。

 

 

あの時感じた希望が、徐々に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァー……ハァー…………」

意識が戻ると、部屋の中央に座り込んでいるフランが見えた。

ようやく疲れが身体に効いてきたのであろう、息は荒く、身体中に汗が滴っている。

 

 

だが今のフランは、違うことに苦しんでいるようにも見える。

いや、思い返せば何かに捕らわれたように苦しむ姿を度々見ていた。

だが、もう少しでそれも終わらせることが出来よう。

青年は確信する。

 

 

そしてフランに近付こうとした時、足で瓦礫を蹴飛ばしてしまう。

その音に気がついたフランは、疲れなど無いかのようにこちらに走って向かってくる。

予想だにしない行動だったので、青年は横に避ける。

すると青年が先程まで居た壁に、大きなクレーターが出来る。

 

 

それほどの力を出しておきながらも、フランは執拗に青年を追いかける。

一息つけると安心していた青年の身体が、悲鳴を上げながらフランの連撃を捌き始める。

 

 

…いや、少しはましか。

フランの一撃一撃は遅くなっており、しかも手数も少なくなっている。

すぐに反撃できそうなほど隙も出来ている。

 

 

「ハァー………ッハァー…………ッ」

呼吸音が大きくなってきている。

「どうして…………どうして………………!」

耳を澄ませば、フランの呟きも聞こえてくる。

それほどに余裕が無くなっているのだろう。

 

 

(もう、楽にしてあげねば。)

青年はフランの一撃を通常より強く捌く。

急に強く捌かれたため、フランは大きな隙を見せる。

その瞬間、青年は両の手をフランに伸ばし…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま胸に抱き寄せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………え…………」

フランは少し間抜けな声を漏らす。

「フランちゃん、もう大丈夫」

青年はフランに語りかける。

 

 

だがその返事は、腹に向かっての拳であった。

「離せ………!離して………!!!」

何度も何度も、食らわせてくる。

そして吸血鬼の腕力もあってか、内臓に大きなダメージが入り、青年は口から血を流し始める。

 

 

「離せってばぁ!!!!!!」

そしてフランはより力の込めた拳で殴り付ける。

その拳は簡単に青年の腹を貫く。

 

 

だが青年はフランを離さない。

どんなに苦しかろうが、どんなに痛かろうが。

腹の内部に走る激痛に耐えながら、青年はフランに話しかける。

 

 

「もう、大丈夫だよ

フランちゃんは、これからも、一人じゃないんだ」

痛みに耐えながら話しているためか、変に途切れ途切れになってしまった。

 

 

「フランちゃんは、ただ誰かと一緒に、遊びたかっただけなんだよね

一人になるのが、怖かっただけ、なんだよね

でもフランちゃんは、優しい子だから、みんなを、お姉さんを、心配させたく、なかったから、一人で頑張ってたんだよね」

「………」

フランがそっと、残った腕で青年の身体を抱き寄せてきた。

 

 

「…………あれ……どうして………?」

フランに理性が戻り始めている。

ただ無意識に抱き寄せていたのか、自分でも困惑している。

しかし少ししてから、青年の肩に顔をうずめてきた。

 

 

「……辛かった、よね

苦しかった、よね」

うんうんと首を縦に振っているのが、感触で分かる。

背中を掴む手も強くなってくる。

 

 

「…だけど、もう一人にならなくても、いいんだ」

「…ほんとに?」

フランが初めて言葉を返す。

 

 

「…御姉様は、フランを一人ぼっちにしてきた……

貴方も、そうするで…」

「それは違うよ」

悲観的なことを言うフランを、青年は否定する。

 

 

「お姉さんはね、フランちゃんのことを、とても心配していたよ?

でもお姉さんはね、館にいる全員のことを、見なくちゃいけないんだ。

そんな、忙しいことばかりしてても、お姉さんはフランちゃんのために、出来ること全部やってたんだよ

だから俺も、ここにいるんだ」

フランは反論もせず、ただ話を聞いていた。

 

 

「…フランちゃんは、お姉さんにとって、宝物なんだよ」

肩がじんわりと濡れてくる。

青年はそれに気付くと、フランの頭を優しく撫でる。

 

 

「フランは、もう、一人ぼっちじゃないの…??」

泣きじゃくりながら、フランは問いかける。

「…あぁ」

青年は優しい声でそうだと言う。

 

 

 

「これからも、ずっと、フランちゃんは一人じゃないよ」

 

 

その言葉を聞くと、フランは大声を上げて泣き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一緒に遊びたかった。

 

一緒にお話したかった。

 

 

でも皆すぐに行っちゃうから。

 

 

 

皆大変そうだったから。

 

 

 

 

 

 

皆を困らせたくなかったから。

 

 

 

 

 

 

ワガママを言わないようにした。

 

 

 

 

 

 

いっぱい我慢もしたよ。

 

 

 

 

 

 

だってフランは良い子なんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

御姉様は皆を困らせたらダメって言ってたから。

 

 

 

 

 

一人ぼっちは寂しかった。

 

一人ぼっちは苦しかった。

 

 

 

 

 

でもずっと頑張ってた。

 

 

 

 

 

一人ぼっちでも、ずっと頑張ったよ。

 

 

 

 

 

だってフランは良い子なんだから。

 

 

 

 

 

 

御姉様もいっぱい頑張ってるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……でも、ずっと頑張ってるのに。

 

 

ずっと良い子にしてるのに。

 

 

誰も褒めてくれない。

 

 

 

 

 

 

良い子だねって言ってくれない。

 

 

 

 

 

御姉様も全然遊びに来てくれない。

 

 

 

 

 

 

ちょっと嫌な気分。

 

 

 

 

 

 

だけど文句は言わないよ。

 

 

 

 

 

 

だってフランは良い子なんだから。

 

 

 

 

 

 

フランが悪いだけだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……でもこの人間は、お兄様は。

 

 

フランを褒めてくれた。

 

 

優しい子って言ってくれた。

 

 

 

嬉しかった。

 

とても嬉しかった。

 

まるで御姉様に褒めてもらった時みたいに。

 

 

 

頭を撫でてもらった時なんて。

 

 

 

ぴょんぴょんしたくなっちゃうくらい嬉しかった。

 

 

 

ぎゅってしてくれた時なんて。

 

 

 

きゃーって言っちゃうくらい嬉しかった。

 

 

 

 

でも何でだろう。

 

 

 

涙が止まらなくなっちゃった。

 

 

 

早く、早く泣き止まなくちゃ。

 

 

 

良い子は泣かないんだから。

 

 

 

でもお兄様はずっとぎゅってしてくれた。

 

 

撫で撫でもしてくれた。

 

 

怒ったりもしなかった。

 

 

 

ただただずっと、フランの一番近くにいてくれてた。

 

 

良い子じゃなくても良いんだよって、言ってくれてるみたいに。

 

 

 

 

お兄様がぎゅってしてる時は、

 

 

まるで御姉様と一緒にいるみたいに。

 

 

温かかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだフランは泣きじゃくっている。

よほど我慢していたのだろう。

青年はただ、フランの頭を撫でていた。

フランに安らぎを与えるためにも。

 

 

だが、その時は長くは続かなかった。

急に身体中に痺れが走り、頭がくらくらする。

そういえば、いまだ腹を貫かれたままであった。

微量だが長い間出血したおかげで、軽い失血状態になっているのだ。

「……?

お兄様…?」

 

 

フランが異変に気付き、慌てた拍子に腹に刺さった手を抜く。

勿論栓が外れ、噴き出すように血と臓物が飛び出る。

青年の症状は勿論悪化し、抱き寄せていた手が力無くほどける。

 

 

「お、お兄様?」

フランが震えた声で青年に声をかける。

だが彼には返事をする余裕もない。

ついには身体を支える余裕も無くなり、フランに倒れこむ形になる。

 

 

「イヤ!!!お兄様!!お兄様!!!!死んじゃダメ!!!!!」

フランが必死に叫んで青年の身体を揺らすが、既に手遅れ。

青年の意識はほとんど無くなっている。

 

 

そこにちょうど、ドアを開けるような音が聞こえた。

もう聴覚もほとんど途切れているが、誰かが来たことだけは分かった。

後はもう、大丈夫だろう。

そしてついに青年の意識が消失した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

…………?

 

 

 

 

……………こ……

 

 

ここは………?

 

 

断片的に、色んな風景が見える。

 

今は誰かの部屋の中で、男性らしき人物がそこに座っている。

しかしどこかで見たことがあるような…

 

ガチャリ。

ドアが開き、誰かが入ってくる。

何故か影がかかって顔やらは見えないが、シルエット的に女性のようだ。

 

誰だか分からないが、どこか懐かしい雰囲気を感じさせる。

きっと、自分ととても仲良かった人のような。

 

 

「……………」

「………………!」

今度はその二人が楽しそうに話している光景だ。

楽しそうと言っても騒がしい訳ではなく、なんと言うか穏やかな楽しさだ。

見ているだけでも微笑ましくなるその光景に、心が落ち着く。

だが奇妙な現象が起こる。

 

 

 

「大好きだよ」

 

 

女性側が口を動かした時、自分の耳元で女性が言ったであろう言葉が聞こえた。

何が何やら分からなかったが、その声は心の安らぐ、聞き覚えのある声だった。

瞬間以前感じたような不快感が襲ってきた。

罪悪感のような、悲壮感のような。

色んな負の感情が入り乱れているようであった。

 

 

(これは……!?

何なんだ…………!!)

 

頭にその言葉をが出てきた瞬間、意識と映像が消えた。

 

ただ不快感だけを残して。




どうも、螢司教です!!

今回はちょっと重めになってしまいました…


フランちゃんの抱えた闇。
それは孤独の影響と良い子でいるために起こったものでした。
ただ自分の欲求を抑えつけ、ひたすらに良い子になろうとする…

そうして狂気に侵されていったと考えると、フランちゃんはちゃんと心根の優しい『良い子』だったのでしょうね…


ちなみに次回でも若干触れますが、フランちゃんが全然遊びに来てくれないと言ってたのは、実は間違い。
確かに回数は少ないですが、それでもおぜう達は、週3日はフランと遊ぶようにしていました。
では何故フランちゃんはあんなことを言っていたのか…
それは次回までのお楽しみにさせていただきます(笑)


最後に映った謎の風景。
それは彼の『何』なんでしょうか…


次回!リグル、久しぶりの登場!
全然出せなくてごめんね…次回はいっぱい喋らせるからね…!(T_T)

それでは次回で会いましょう!!
コメントもお待ちしております~m(__)m


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お遊戯が終わりました。

…………

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

 

……………………、?……………

 

 

 

 

……………………何、だ………?

 

 

 

 

 

何が……………?

 

 

 

 

 

 

 

 

何かが……………乗ってる………………??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

謎の重みを感じ、目が覚めた。

手からはふかふかした感触がし、自分がベッドの上にいることに気付く。

どうやら寝室かどこかまで運び込まれたようだ。

ただやはり、自分の上に何が乗っているのかが気になる。

という訳で確認すると、自分の上ではリグルとフランがすやすやと寝ていた。

 

 

「スゥーーー……」

「んん……ふぅ……」

長い時間泣いていたのか、目元には涙の後が出来ている。

そんな二人は現在心地よく寝ているため、下手に動くことが出来ない。

だがちょうどタイミング良く誰かが部屋に入ってきた。

 

 

「あら、おはよう

やっと目が覚めたのね」

咲夜さんがお粥を手にしながら挨拶をする。

……おはよう?

 

 

「すみません、今って何時ですか…?」

自分がどれ程眠っていたのか、咲夜さんに確認を取る。

「えっとね…今は午後6:30くらいね」

ということは……大体30分くらい寝てたのか。

 

 

「長く感じたけど、以外と短かったんだな~…」

「えぇ? 1日と30分も寝てたのに、どこが短いのよ」

「…そうゆーパティーンですか…」

何ということだ。まさか1日も寝ていただなんて。

 

 

「…えっと、お嬢様は…?」

確か最後の記憶では、レミリアがフランの部屋に来ていたはずだ。

恐らく自分かフランに何か用事があったのだろう。

そしてもし、自分の方に用事があったとしたら…

ちょっとどんな目に合うか怖かった。

 

 

「お嬢様は今くつろいでらっしゃるわ

大丈夫。心配しなくても、貴方の件では特に怒っている様子も無かったから

むしろ無理をさせたとお嬢様の方が罪悪感を感じていらっしゃるわ」

こちらの思惑を察した咲夜さんは、淡々と話す。

 

 

「それと、あなたが回復するまで面倒を見るよう言われたから、食事を持ってきたわよ

手はちゃんと動かせる?」

ちょっと驚いた。

吸血鬼だから一人間が死んだとしても興味を示さないと思っていたが、レミリアは結構寛大なのかもしれない。

「は、はい 大丈夫で…あれ?」

 

 

何故だ。触覚はあるが、思うように手が動かない。

「どうやら難しいみたいね

ほら、食べさせてあげるからお口を開けなさいな」

「すみません…」

そのまま咲夜さんに食べさせてもらう。

お粥はとても美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もー!!フランとっても心配したんだからぁ!!!!」

「いくら何でも寝坊助さんすぎるよぉ!!」

青年が食事を終えてから起きた二人は、心配したと滅茶苦茶怒ってきた。

自分自身もこの出来事に驚いているが、実際自分が心配をかけてしまったので、二人にはただ謝ることしかできなかった。

一通り説教が終わった後、咲夜はレミリアに報告があると言いフランを連れて部屋を出ていった。

 

 

だが思えば、ある程度この復活能力の仕組みが若干分かってきたのは大きな一歩だ。

復活する時には体力を大きく消費するということ。

そして体力の限界を越えた際での復活能力の使用は、神経系まで影響を及ぼすこと。

つまり行われているのは身体の欠損部位を修復することのみであり、体力も身体の調子も完全回復させるという訳では無いことである。

 

 

ということは、復活できる回数は自身の体力と比例するのではないか?

この幻想郷には人食い妖怪もいる。

つまり襲われて生き返った後、万全の状態で逃げれる(若しくは少し反撃できる)ようにしなければならない。

では自分の住居が決まり次第やらねばならぬことは、無論体力をつけることだ。

 

 

「…ハァー……」

やることは見えてきたのに、何故か不安感が募る。

それにあの映像……

恐らく自分の記憶なのだろうが、全く思い出せない。

まるで夢を見たあと内容を思い出せないみたいに、先程見たはずの記憶が無い。

 

 

ただ無くした記憶を思い出そうと試みると、誰かへの罪悪感が募ってくる。

何だか心がとても苦しくなるみたいな…そんな感じのものだ。

 

 

だが同時に、自分にとって忘れてはならない記憶であると感じる。

だからこそ、一刻も早く思い出さねばならない。

 

 

「? どうかした?」

今感じている焦りが表情に出ていたのか、横に座っていたリグルが青年に話しかけてきた。

だがリグルにまた心配をかけたくなかったため、何も無いと伝える。

「…ウソ、だね」

 

 

リグルはそれがウソだと分かったらしい。

余程自分のウソが下手であったのか、リグルの勘が良いのか。

また大丈夫だとその場を貫いてもいいが、リグルにこれ以上ウソはつけないと思い、今自分が感じている不安について話した。

 

 

能力についてはあまり話さなかった。

ただ自分の記憶が無いこと、その記憶が思い出せないこと、その記憶が恐らく大事なものであること…

そして自分が、その記憶を取り戻せなかった場合のこと。

自分にとって大切なものと感じるほどの記憶なので、それをずっと思い出せなかったらどうすれば良いのか。

とても口下手なので話が長くなってしまったが、リグルはひたすら聞いてくれた。

 

 

「…という訳なんだ」

「…そっか」

一通り話を終えると、リグルはそっと青年の手を握ってきた。

 

 

「???クン、頑張ろうね

私もついてるから」

とても優しい声で、リグルはそう言った。

 

 

…何故だろうか、リグルのその一言を聞いただけで身体に自信が溢れてきた。

今ならどんなことでもできそうな気がする。

それと同時に、胸に苦しさを覚える。

以前も感じたが、この正体は何なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

「よしよし、???君は頑張ってるよ」

 

 

 

 

 

 

 

「…っ、!?」

突如頭に女性の声が流れる。

何故、自分の名前を…?

でもどこかで聞いた覚えがあるような…?

それだけでなく、息もできなくなるほどの恐怖心、激しい頭痛が襲ってきた。

あまりの苦しさに、後ろに倒れてしまう。

 

 

「だっ大丈夫!?」

青年の唐突な状態の急変に、リグルは驚きを隠しきれていない。

だが焦りながらも、リグルは冷静な対応をする。

「さ、咲夜さん呼んでくるから、ちょっと待ってて!」

 

 

リグルが青年から手を離し、急いでドアに向かう。

その瞬間、青年は思わず叫んだ。

 

 

「行くなっ!!!!」

 

 

ちょうどその時リグルはドアを開けようとしていたが、青年の絶叫を聞きドアノブから手を引く。

そしてリグルが振り向くと、横になりながら号泣している青年の姿があった。

「行かないで…くれ……

一人に、しないでくれ………」

それを聞くと、リグルは再び青年の横まで戻り、また手を握った。

 

すると青年はしばらくの間泣き続け、泣き疲れたのかそのまま眠りについていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然であった。

 

 

 

 

 

手が離れた瞬間、リグルがもう戻ってこないような気がした。

 

 

 

 

 

二度と話せなくなるかと、ずっと会えなくなると感じた。

 

 

 

 

 

それが怖くて、怖くて。

 

 

 

 

 

 

気がついたら、自分は泣き叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

…過去にも同じ経験をしていると、本能が告げる。

 

 

 

 

 

 

 

失った記憶の中に、似たような出来事があったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

頭では覚えていなくても、身体は覚えていた。

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

…寂しさを感じた理由が分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は誰かを、失ったのだ。




どうも、螢司教でございます!


フランちゃんの言っていたことですが、今回のお話では書けませんでした…
ちょっと情報量が多いかなと思い、次回に回すことにしたのです。
楽しみにしてた方、すみません…(T_T)


久しぶりの出番だよ、リグルたん!
前回まで話せなかった分、次回以降でいっぱい出すからね…!

さて、冒頭から泣き疲れて眠っていたリグルとフランちゃん。
実は青年が部屋に運び込まれた時から、青年が目覚める3時間ほど前までずっと寝ずに起きていたのだとか。
ずっと待ってても起きないので、リグルも彼が死んだのでは?と思って長いこと泣いていたそう。
フランちゃんも同じ理由なようです。

リグルを泣かせるなんて…青年め!許せん!!(どいつが言っているのやら)


青年も、失った記憶の手かがりを見つけ始めました…!
彼の失われた記憶の全貌は…!?

というところでおいとまさせていただきます!
それではまた次回!

感想待ってま~す(´ω`)


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騒動が終わったのは良いんだけど…

幻想郷のどこかにて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………まただ。

 

 

 

 

 

 

一瞬、胸騒ぎがした。

いや、胸騒ぎというか…やや不思議な感覚がこの身体に起こった。

まるで、他人の感情が入ってきたような……?

 

 

「紫様、どうかなされましたか?」

変化に気付いたのか、私の式である八雲 藍はこちらに尋ねてくる。

「いや~最近色々やってるからね~

疲れてるのかしら…?」

そう言いながら少し背伸びをする。

 

 

実はここのところ、変な感覚がすることは度々あった。

しかも不思議なことに、ここ、『狭間』にいる間だけ起こるのだ。

最初は気のせいだろうと考えていたが、流石に5~6回も起こるとおかしいので、最近は色々と調査をしている。

 

 

「…まぁ確かに

最近の紫様はおかしいってくらいバタバタしてますもんね

いつもはだらしない上、面倒事は私に押し付けるのに…ぃいたたたた!」

「ちょっと~?一言余計じゃないの~?」

さらっと毒を吐く藍の頬をつねる。

 

 

…やっぱり疲れてるのかしら?

ホントは今すぐ寝たいところだが、この感覚も心苦しくなるから嫌なので、まだ起きておく。

それにあの青年に対して、衣食住は任せろと言ったのに、どれも全く準備していないし。

ほっといてもいいけど、『外』の人間が幻想郷で死んだら閻魔がうるさいし…

……いや、彼は死なないのか…………

 

 

不死。

いくらなんでも、こんな突拍子も無い能力は初めてだ。

幻想郷にも不死の力を持つ人(?)はいるが、蓬莱の薬によるものであったり、輪廻転生を早める擬似不死能力によるものだ。

不死そのものが能力として、しかもそれが『外』から来た人間に発現するだなんて。

 

 

 

…ちょっと面倒くさいけど、彼について色々調べなきゃ。

 

 

 

…でもその前に彼の住む家なんだよな~

家が無かったら、彼を探すのも大変になるし…

かと言って、都合よく空家なんて無いだろうし…

む~…

 

 

……ま、こういう時はあの子に任せるとしましょ!

彼女の家にはよく遊びに行くし!

 

 

紫は少しすっきりしたような顔をした。

もふもふした九つの尻尾を振り、許しを乞う藍を無視しながら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館にて……

 

 

 

 

「…気がついた?」

目を開けると、目の前にはリグルの顔があった。

…どうやら泣き疲れて眠っていたらしい。

……恥ずかしい、あんなに号泣したのは初めてだ。

いや、実際は初めてではないのだろうが。

 

 

…そうだ、その前に。

「…ごめんな、リグル

迷惑、かけたな…」

眠ってしまう前に、俺はリグルを心配させたりしてしまった。

いくら自分が怖い思いをしたからって、迷惑をかけるのはいかがなものだろう。

罪悪感が募り、死にたくなる。

 

 

「うぅん、そんなことないよ

それよりも大丈夫?」

だがリグルは大丈夫と言うどころか、心配さえしてくれた。

どれほど温かい子なのだろう。

 

 

「…うん、大丈夫だよ

ありがとう」

大丈夫だと伝えると、リグルは満円の笑みを見せた。

 

 

「でもちょっとびっくりしちゃった

何があったの?」

「…急に声が聞こえたと思ったら、とても苦しくなって…

そんで急に怖くなって…

ただ、それだけ」

そう返すと、リグルは「そっか」とだけ言い、頭をなでてきた。

 

 

一撫でされる度に、心が安らぐのが分かる。

まだ恐怖の余韻が残っていたが、除々に無くなっていく。

…とても、温かい。

 

 

ふとリグルの顔を見ると、笑顔で返してくる。

すると息苦しさが増してきた。

何故か緊張感も湧いてくる。

長く続いてほしいような、早く終わってほしいような…

 

 

ガチャリ。

「死なずの人間、御嬢様がお呼び…

…あら、お邪魔だったかしら」

部屋に入ってきた咲夜は、ちょっと驚いた顔でこちらを気遣う。

 

 

「えっ、あっ、だだ大丈夫、です」

いきなり来たので、思わず俺はテンパってしまう。

逆にリグルは落ち着いた様子だ。

「はい、ただお熱を計ってただけなんで」

と、リグルはこの状況を上手く誤魔化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

起きた時には腕も足も、元通り動かせるようになったので、青年は咲夜に連れられレミリアの元へ向かった。

大広間の一階で無邪気に走りまわるフランとは真逆に、大広間の二階のテラスで、レミリアは優雅な雰囲気を纏いながら本を読んでいる。

「あ!お兄様!!」

こちらを見つけたフランは、一心不乱に駆け寄り、青年に抱きついた。

 

 

「お兄様お兄様!!

フランね、肩車してほしい!!」

元気いっぱいのスマイルで、フランは肩車を要求してきたが。

「フランドール様、すみませんがもう少し待ってていただけませんか?

彼は御嬢様とお話があるんです」

咲夜はフランを説得する。

 

 

「ほら、一緒にナイフジャグリングしませんか?

楽しいですよ?」

「え~、フラン今は肩車の気分なの!

ちょっとだけでいいからぁ!」

…さらっと危険なものが聞こえたが、気のせいだと信じておく。

 

 

「…人間、ごめんだけどフランを肩車してあげてちょうだい」

館内が静かなのもあってか、レミリアの声が響く。

そして肩車の許可を貰ったフランは、とても喜んでいた。

「やったぁ!御姉様、ありがとう!!

大好き!!」

今度はフランの声が響くと、レミリアは静かに、そして嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で、10分ほどフランに肩車をした後、レミリアとの会話を始めた。

肩車をしてもらい満足したフランは現在、咲夜とアルプス一万尺をしている。

そのおかげで、下からは軽快なリズムが聞こえてくる。

 

 

「フフッ、楽しそうね」

その光景を見、レミリアは微かに笑っている。

「…さて、まずはお礼を言わせてもらうわ

今回のこと、ありがとう」

レミリアは深々と頭を下げた。

 

 

「いえいえ、私も大したことはしてませんよ」

青年は謙虚に、お礼を受け止める。

「いえ、あなたはとても凄いことをしたわ

…私にもできなかったから」

彼女の表情に、暗い影がかかる。

 

 

「…以前、私はフランのために、この幻想郷を闇に覆ったことがあるの

まぁ、それはとある紅白巫女と魔法使いによって、失敗に終わったけど…」

ぽつりぽつりと、レミリアは語り始める。

 

 

「その後、私はフランと一緒にいるようにしたわ

少なくとも、1週間に3日はね

でも、フランはあまりこうしたいとかああしたいとか言わなかったから…

私はフランの世話を、使用人に任せたりしてた」

青年はひたすら、彼女の話を聞いていた。

 

 

しかし、少し疑問に思うことがある。

フランは全然遊んでくれないと言っていたが、週3日は多い方になるのでは?

だがその謎はすぐに解けることになる。

 

 

「その内フランは、以前のように、またおかしくなりはじめた

短いけど以前のように暴れ始めたの

落ち着いたかと思えば、会話も成立しないし、記憶も定かでは無くなっていったの

…私が原因なのだけれどね」

成る程、それならばフランがああ言っていたのも、納得できる。

 

 

しかしレミリアは、何故自分が原因だと言っているのか?

「…一体、どうしてそう思われに?」

よほど思い詰めているのか、彼女の顔は暗くなる一方だ。

そしてようやく、重々しく口を開いた。

 

 

「…今思えば、違う方法もあったのかもしれない

でも当時の私は、この決断をしたの」

重々しくなる雰囲気に、ごくりと唾を呑む。

 

 

「…私はフランを、幽閉することにした

その危険すぎる能力ゆえに、ね」

…ふむ、そういうことか。

 

 

「…フランを幽閉した後、私は精一杯考えていたわ

どうにかして、フランが暮らせる環境を作れないかって

でも私はそのおかげで、150年以上もの間、フランを孤独にしてしまった」

「ひゃ、150…!?」

人間ではあり得ない年月に、思わず驚いてしまう。

 

 

「えぇ、150年よ

知っての通り私達吸血鬼は、人間に比べて長寿だから

私も一応500年以上は生きてきたわ」

確かに吸血鬼は長寿とは聞いたことがあるが、まさか目の前にその実例が見れるとは。

 

 

「でもフランはまだ幼すぎた

一人になったら泣きわめいたりするほどにね

でも私はそんなフランを、一人にして、おかしくしてしまった

…私は、姉失格だわ………」

下に顔を向けたレミリアの頬に、涙が伝う。

 

 

「…ねぇ、人間

こんな非情な私の願いを頼み事を、聞いてくれてありがとう」

顔を上げたレミリアは、無理に笑顔を作った。

その笑顔を見た青年は、ついに耐えられなくなり、反論をする。

 

 

「…少しよろしいでしょうか」

青年の気迫に少し驚きながらも、レミリアは発言を許可した。

「…私は当時の背景を、私は知りません

ですが正直、私も御嬢様があまりに酷い選択をしたとは思っています

しかし視点を変えれば、それは正しい選択だとも思える

フラン様を幽閉したが故に、救えたものもあるのです」

 

 

「だから何だと言うの?」

青年の言葉が気に触れたのか、レミリアは少し声を荒げる。

「もし貴方の言う通りなら、何かを救えたかもしれないわ

でもそれは、所詮赤の他人じゃない!

そいつらの命のために、私はたった一人の妹を犠牲にしてしまったのよ!?」

感情的になったレミリアは、机を力強く叩いた。

 

 

「なのにそれが、正しい判断!?

ふざけないで!!!」

ついに怒りが有頂天に達したレミリアは荒々しく席を立つ。

辺りに鳴り響いていたアルプス一万尺も、いつの間にか止んでいた。

 

 

対して青年は全然ぶれていない。

むしろ少し口角を上げ、笑っているようだ。

「…何がおかしいの?」

それに気付いたレミリアは、勿論怒りに声を震わせている。

「…おかしくはありません

ただ御嬢様の本心が知れて、思わず口が綻んでしまいました」

 

 

いきなり何を言い出すかと思えば、最早その言葉は挑発のようであった。

「…そんなに私を怒らせたいのかしら?」

「違います、御嬢様

御嬢様は自分を酷い存在だ、とおっしゃってましたが、それは違うと証明したかっただけなのです」

 

 

理解が追いつかないレミリアは、首をかしげる。

「勝手ながら私は、御嬢様がどれほどフラン様のことを大事に思っているかを観察させていただいていたのです

御嬢様は、フラン様を幽閉していたことを後悔なさっています

そして先ほどの私の発言に対し、怒りを露になさいました

しかしそれほどの感情を出せるということは、それほどフラン様を思っている証拠です」

 

 

青年の言動を理解したレミリアは、冷静さを取り戻していく。

「…だとしても、私が姉失格なのは変わらないわ…」

「いえ、そんなことはありませんよ」

レミリアの発言に対し、青年は続く。

 

 

「何故?何故そう言えるの?」

「フラン様が、御嬢様のことを好きだと言っていたから、ですよ」

その言葉に、レミリアは驚いている。

「そ、そんな訳ないわ…

私は…私は、フランを酷い目に合わせたのに…」

 

 

あまりに信じられないようで、レミリアは動揺している。

「フラン様は、御嬢様のことを話す時が一番楽しそうでした

それに自我が無くなっていた時も、御嬢様を探しておられるような発言や素振りが確認できました

つまりフラン様にとって、御嬢様はとても重要な、大切な存在なんです」

「そんな…そんなこと…」

 

 

レミリアは顔を手で覆い隠した。

「御嬢様、もう自分を責めるのはおやめください

フラン様にとって、あなたは最高の御姉様なのです」

青年のその言葉を最後に、大広間には静寂が訪れる。

 

 

「……フフッ……」

静寂を、レミリアの小さな笑い声が破る。

「そう、ね…

フランの最高の姉なのに、自身で責めたらそれこそ酷い姉よね………」

レミリアは隠していた顔を露にした。

その瞳に、暗い影は全く無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に大丈夫なの?

これからここに住んでも良いのだけれど…」

「お気遣いありがとうございます

ですがこれ以上お世話になるのも申し訳ないので」

「ふ~ん、遠慮しなくてもいいのに」

レミリアは少し寂しそうな顔をする。

 

 

「やだやだやだ~!!

お兄様もここに住むの~!!」

一方フランは物凄い駄々をこねてきた。

引き留めようと足を掴んでくるが、えげつないほど痛い。

「ごめんな、フランちゃん

また遊びに来るから…ってそんな簡単に来ていいのかな…?」

ついでにレミリアに聞いてみる。

 

 

「あなたならむしろ大歓迎よ

自宅に帰るかのように遊びにいらっしゃい」

と満足そうにレミリアは言った。

 

 

「それじゃ、俺達はそろそろ…」

「そうか、待ち合わせがあるんだっけ?

長く引き留めて悪かったわね

咲夜、門まで送ってあげなさい」

「かしこまりました」

 

 

と青年とリグルは、咲夜に門まで送られることになった。

「あ、ちょっと待って!」

お礼を言い、門に向かおうとすると、突如レミリアに呼び止められた。

「これから私のことは"レミィ"と呼んでちょうだい

あと、敬語じゃなくても大丈夫よ

何せ私達はもう、友達なんですもの」

 

 

友達…

まさか吸血鬼から友達だと言われるとは思っていなかった。

種族を越えた友情…

本にしかありえぬ展開に、とても嬉しくなる。

「ありがとう!レミィ!!」

青年はその言葉に様々な思いを乗せ、紅魔館を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青年が去った後の紅魔館にて…

 

 

 

 

コンコン…

静かな廊下にノック音が鳴り響く。

「どうぞ」

部屋内の住人に許可を貰い、レミリアは部屋に入る。

 

 

「あら、レミィ

何か用?」

部屋ではパチュリーが大量の書物に囲まれながら読書をしていた。

「えぇ、パチェとお話がしたくてね」

 

 

「ははぁ~ん…さてはあの人間のことでしょ?」

パチュリーは見事、レミリアの話したい内容を当てた。

「えぇ、そうよ

…久々に面白い友達ができたわ」

 

 

「へぇ…レミィにしては珍しい

…でもそれほど魅力ある人ってことね

今度私も話してみたいものだわ」

「きっとパチェも気にいるわ

私が保証する」

 

 

「御姉様~~!!

どこ~~~~!!!」

「ふ、フラン様!

廊下は走っちゃ危ないですよ~~~!」

話していると、廊下から騒がしい声が聞こえてくる。

すると急に、ドアが開いた。

 

 

「ここだ~~~!………

ってホントに御姉様いた~~!!!」

「あっ、レミリア御嬢様!!

お取り込み中にすみませ…ったぁ!!!」

フランの制止に失敗した美鈴の頭に、突如ナイフが刺さる。

 

 

「咲夜さん、いきなり刺さないでくださいよぅ~

痛いんですから~」

涙目になりながら、美鈴は咲夜に示談する。

「あっ、ごめんなさい

無意識だったわ…」

「無意識レベルでやっちゃうほど、咲夜さんにとって私はナイフで刺していい存在になってるんですか!!??」

美鈴はつい大声で突っ込む。

色々と集まり騒々しくなる様子を見、レミリアは笑みを浮かべた。

 

 

「あら、どうかしましたか?」

騒がしかったからか、部屋の奥にある扉から小悪魔が顔を出した。

「えぇ…」

小悪魔をちらっと見て、パチュリーは返す。

 

 

 

「レミィに、笑顔が戻ってきたのよ」




久しぶりでございます、螢司教です!


ようやく紅魔館編が終わった…!
次回はあの紅白が…?
登場するかも?
お楽しみにっ!!


さてパチェの部屋の奥にある扉。
察しているかもしれませんがヴワル魔法図書館に通じています。
ちなみに館内には、ヴワル魔法図書館への通路が3つあるのですが、その内2つはパチェの研究室と自室につながっています。


パッチュンプリン、めっちゃ部屋あるやん…



それでは今回はこの辺で!
ではまた次回!!


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