死神ワールドに転移したが全力で米花町を脱出する (伝説の類人猿)
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死神ワールドに転移したが全力で米花町を脱出する

高校生探偵と聞いて何を思い浮かべるかと言われたらご存知毎週人が1人は死ぬ国民的人気アニメ名探偵コナンしかないだろう。

 

頭脳明晰超絶イケメン、迷宮なしの高校生こと工藤新一。

頭の角は伊達じゃない、1メートルと数十センチ級巨神兵の毛利蘭。

 

おおよそこの二名を中心に描かれる犯罪解明ストーリーは読者として読むならともかく作中の人物として彼らに関わりたいと思う人間は……多分男なら確実にいないだろう。

 

熱狂的なファンだと案外原作キャラに会うためにのりのりで飛び込むかもしれない。いやただの偏見だから殴らないでくれ本当に。

 

ちなみに個人的には鈴木園子が一番好きなキャラです、はい。次点で灰原哀かな。三番目にくるのはウォッカです。

 

話がずれてしまった気がしないでもないけどあれだよね推しキャラ談議は楽しいから正義だもんな。うむ決めた今そう決めた。決めたったら決めた。

 

それでまぁなんでこんなことについて語っていのか察しのいい人ならわかるのではないだろうか。

はいそうです。そうなんです!転生したんだなぁこれが。

 

日本のヨハネスブルグ、いやそれどころか世界屈指で治安が悪いこの世の地獄こと東都の米花町。

そんなところに気がつくと住んでいました。

 

ほんとに意味がわからない。なんでなのか。気がつくと知らない街に住んでるとか普通にこえーよ。しかもなんか昔から住んでましたっていうふうに周りから認識されているんですけど。

君らにわかるか?今まで一度もあったことのない人間から知り合いだと言われる恐怖が。

 

すまんひとつ嘘ついた。実はそんなに怖くない。だってせいぜいが近所の住人から馴染みのように挨拶されるだけだし(友達もいないし)それどころかこの米花町の俺の家?になってるところには大量の金額が振り込まれている通帳もあったし。

しっかりと通帳には俺の名前が書いてあったし俺のってことでええやろ(思考放棄)。

 

というかこんな物騒な街に強制移住させられたんだからこれぐらいのご褒美がないとやっていけないまである。

 

とりあえず今すぐにでも他県へ脱米したいのだがそうは問屋が卸さない。なぜかっていうと簡単に言って手遅れ、もしくは後の祭りであったためである。

 

具体的に俺の今の状況を説明すると、まず今の自分は高校生である。これでせめて工藤新一その他が通っている高校以外であればまだ救いはあったのだが残念同じところだ。それどころか俺の席はくだんの死神の真前である。だれか俺を殺せ。あっ死神はいいです。

 

辛いのはそれだけじゃない。確か俺は神という名の悪魔がこの禁断の地に自分を送り込む前までは大学生生活をエンジョイしていたはずだ。なんでもう一回高校生生活をして受験に臨まなきゃいけないんだよ。あっでもこの世界ってループしてるからもう二度と大学生になれないんだねぇ…死ねよ。俺の頑張りを返せ神。

 

それに関連してだがこのループのせいで県外への脱出すらも出来ない状況である。

何度新居を構えても一年後には綺麗さっぱり無かったことにされているせいで遅々として脱出が進まないのである。

 

これで俺の新居に使った金額も減ったキリなのかなと絶望しかけたのだが何故か貯金に関しては年々増えていく一方だ。

いや正確には歳を重ねているわけではないのでループを重ねるごとに、というべきか。知らんけど。

 

しかしながらたかがそれしき、こんなことではまだめげない。住居を自分で用意できないなら他人に用意して貰えばいいじゃない。

つまり居候である。うーんこの。

 

しかし実はこれ意外に有用そうなのだ。ループする世界と聞くとさも全く同じ現象を繰り返しているように思われるかもしれないがそれはマジのSF。

 

生憎この世界は商業誌の世界であるためそんなことはないのだ。普通に年数は変わっていくし携帯だってスマホに変わった。けれども主人公たちは一年生のままというだけである。

 

であるならばもしも特定の行動を必要以上にほぼ日課として取り続けたならば?そういつのまにかその行動が後付け設定として付与されるはずなのだ!

 

そんなわけで今すぐにでもフランスなりドイツなりにずっと永遠留学していたいのだが生憎俺は外国語は対応外。ていうか留学先でうまくやっていける自信もない。

 

そうなると国内に限るのだがまず島や山奥は却下。どうせ殺人事件が起きてそれに巻き込まれる。

 

あと伝説とか言い伝えがあるところも却下。どうせお宝関係で巻き込まれる。

それから明かに日本にそぐわない施設が存在する付近も却下。海上テーマパークや洋風の城、左右対象っぽく見えるような建物ももちろん不可。

ついでに京都大阪、北海道とかもありそうだな。そういう有名どころな県もダメ。絶対ネタにされているはず。

 

そうなってくると大丈夫そうな場所っていうのも限られてくるな……。

南から順に宮崎県、佐賀県、大分県、山口県、島根県、岡山県、岐阜県、山梨県、岩手県とかそんな感じの場所になってくるのか……。

 

その場所でなおかつ居候させてくれそうな余裕のある名士なんてコナンワールドにいたかなぁ……。いやいる!がんばって探せば多分絶対存在するはず!

 

え?高校に行かなきゃいいだろって?馬鹿野郎、不登校なんてしてみろ。絶対高校生探偵の目に引っかかって事件に巻き込まれる。

 

すなわち俺に課せられたミッションは高校生探偵に違和感を抱かれず、なおかつ魔界都市米花から自然にフェードアウトしなければ命はないということである。控えめに言ってヤバすぎんだろこんなの。できる気がしないわ。

 

しかしながら前人未到の楽園(シャングリラ)があるかもしれない。大航海時代のスペイン人もかくやという気概でもって毎年のように訪れる夏休みに各都道府県へ出かけているのだが…………見つからない。

 

それどころかなんか厄介ごとが増えたような気さえする。どうにも主人公組(工藤と毛利)にいつのまにか友達認定されている上に大の旅行好きと判断されたようだ。

 

だから違うって!俺はお前らとは友達になったつもりもないし旅行が好きなわけじゃないから!これ全部自分の命を守るためだから!だから今すぐにその大阪京都ツアーとかいう恐ろしいものをどっか他所にやってくれ!お前らと一緒にそんなところに行ったら絶対に……ぜっったいに!米花町超えの大事件が起きるから!!!

 

*****

 

死ぬかと思いました(予定調和)。

案の定爆弾騒ぎだよ畜生。死神一行と分断されて西の名探偵たちと行動を共にして挙げ句の果てに人質にとられて最後は紐なしバンジージャンプだとッ?!

こんなの旅行じゃ無いわ!鎌首担いだ死神よッ‼︎だったら死ねばいいだろ‼︎(大いなる意志)

 

ああああああああああっと発狂も済んだところで現実を振り返ると、いよいよもって俺はドツボにハマってしまったのでは無いだろうかと思う。

だって大阪府警とか変な栗鼠を背中に乗せた刑事とかと知り合っちゃったし……。

 

しかしこれでも脱米歴2年(転生後の計測日数による)のベテランである俺に抜かりなどないッ!

考えてもみて欲しい。西のうんたらの忍者服部は単体だとそこまで死神ではないッ!

 

つまりこいつらのところに居候させてもらえれば俺の環境は戦場から紛争地帯にまで低下する‼︎

 

だからさ2人とも、俺の全力の泣き落としに引かないでくれ。切実なんだ。

ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから俺を助けてくれ。



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2話

今更ですがこの小説では著しいストーリーの変化とキャラ崩壊が存在します。


誠に残念ながら西の高校生探偵は非情だった。

それどころか「うちがあるんならそっちに帰れ」とか吐かす始末である。

ああなんと言うことか!見よ!この人間の残酷さを!

 

遠山さんの方は「そない本気で泣くって…ひょっとして虐められとるんか?」と心配してくれた。天使かな?

でも実際それに近いんです。俺は虐められているんです。変な蝶ネクタイをつけた最終学歴を高校にしようとしているサッカー探偵に。

 

そんなことを言ったら後ろからぶん殴られた。そう言うとこやぞ工藤。

なおその工藤は毛利さんに蹴られて地面にめり込んだ。ざまあみろ。でも工藤を叱ってくれるのは有り難いんですけどやり方が結構怖いです毛利さん。

 

そのあとなんのかんのと西と東の鍔迫り合いがあったがそこは省略。ただ純然たる事実として俺は必死の抵抗虚しくヨハネスブルグへ収監されることとなったのだった。

 

で、今現在俺は新たなる脱出プランを練っている所である。正直な話大阪組はあと一歩のところまで行けてた感触はあったので個人的に工藤抜きでまた大阪に助けを求めに行こうと思う。

 

ではそれ以外には何も可能性は無いのか?そんなことはない。

そう我らが黒幕にしてコナンssであり得ないぐらいの頻度で光彦を〇〇するスイッチを開発している畜生こと阿笠博士である。

 

「というわけで阿笠博士、押すたびに工藤の性癖が歪むスイッチを作ってくれ!」

 

「いやわしそんなの作れないし作ろうとも思わないんじゃが…」

 

こいつ本当に博士か?まともな倫理観を有してるとかさてはお前偽物だな。

騙されんぞ!

 

「一郎君のわしに対する印象について大いに問いただしたいところじゃが本題はなんじゃね?」

 

あっそうそう俺の名前は大谷一郎なんだわ。別にメジャーに出るわけでもないし野球が好きってわけでもないからな。

 

「俺は如何にかしてこの呪われた町米花を脱出したいんだ。ところが今の今までろくに上手くいかなかった……。失敗した原因は一つ!横の移動をしたからだと悟った‼︎‼︎」

 

(また頭のおかしいことを言っておる……)

 

博士がジト目で見てきているがそんなの知ったこっちゃねェッ‼︎

こちとら毎日デスゲームしてるんやぞ!昨日も殺人に巻き込まれたし!

 

「地球のプレート上を移動するのはもう時代遅れッ!これからは地下だ!俺は穴を掘って日本の反対側へ脱出する!…というわけでサンダーバードのジェットモグラ タンクみたいな穴を掘る道具を作ってくれ!マントル貫通できるくらいの!」

 

「多分地球上にはマントルでも溶けないなんていう物質は存在しないと思うぞ」

 

「そんな!あなたそれでも博士なんですか‼︎無能!嘘つき!黒幕!御茶ノ水博士みたいな見た目してるくせに!」

 

絶望した!まさか公式チートの阿笠博士ですらこの町の脱出においては無力だったなんて!

ああ、神様どうかこの哀れな羊に慈悲を……ってよくよく考えれば神は畜生で俺の敵だったわ。くそっ!それもこれもループするコナン時空が悪いんだ。

 

「まぁそんなに慌てても仕方なかろうて。わしに狂人の発想は理解できんが博士として何か言うとすれば、物事に詰まった時は気分転換することが成功につながるということじゃ」

 

「ふむぅ……。まぁ確かにそうだけどさ」

 

あれ?てか今こいつさらっと俺のこと狂人ってディスってなかった?

この清く正しい俺を狂人と申すか貴様。表に出ろ。久々に切れちまったよ……。

 

「君がメンチ切っても変顔にしかならんのはいつものことじゃの。ほら紅茶とクッキーじゃ」

 

「う、うるさいやい!仕方ないから紅茶とクッキーに免じて許してやらぁ!」

 

あっクッキーうまし。やはりクッキーはバターが王道。2番手はロシアン……何とかって言うジャムがついてるやつ。

 

でも本気でどうやって脱出をしたらいいのだろうか?

引きこもる?それは無理。工藤と毛利が引っ張り出すのは目に見えてる。

地下室も無し。前にアイドルと閉じ込められて俺は殺されそうになったからな。

 

じゃあ空はどうかというと有り得ない。この間珍しく脱出以外で飛行機に乗ったらハイジャックされた。

居住を考えたら飛行船だけどどうせこれもなんか爆発とかするんだろ?容易に想像できるわ。

 

……あかん。安全な場所が全く思いつかない。

本当にこの町はどうなっているのだろうか?一ヶ月に一回は爆弾騒ぎが起きるとか普通じゃねえって絶対。

 

「なあ博士ぇ、どっか殺人事件に巻き込まれない異空間って作れないの?」

 

「なんじゃ藪から棒に。…そうじゃのう、そういえばわしも関わってる研究でバーチャルリアリティ関係のものがあったはずじゃが」

 

それってひょっとしなくてもノアズアークじゃないですかやだー。もう映画のことなんて朧げにしか覚えてないけど絶対なんか大変なことになるやつでしょそれ。

 

「電脳空間とかプログラムがハッキングされたらアウトじゃん。却下です却下」

 

「そこまで骨のあるハッカーなんているのかのぉ……?」

 

「週一で連続殺人が起きてる町なら絶対いるでしょ」

 

仮にもわしと彼らの共同制作なんじゃがなぁとか言ってるけど絶対なんか問題が起きるはずである。だってここコナン時空だし。

生存性については一切信用できない場所ではあるが危険性については確実な米花である。問題が起きないこと自体が問題であると断言できる。

 

……もっとマシなことで確信を持ちたかったなぁ。主に安全とか。

 

しかしこれはあれか、もう科学は万策尽きたのか。

技術的なアプローチが無駄だとなると後はオカルトかスピリチュアル方面に頼るしかない。

そうなるとまずはあの疫病神の呪いを緩和する所から手をつけるべきか……。

 

「工藤に塩ぶっかけたら溶けてこの世から消えないかな」

 

「新一はナメクジじゃないと思うんじゃが。というかよくそれで今まで友達としてやっていけたのう」

 

いや友達でもなんでもないんですけど。アイツが勝手に付きまとってくるんです。

そしてその結果俺が命の危機に陥るんです。

 

「まぁ犯罪を解明することで快感を得る頭のおかしい奴ですからきっと生きている人間とのコミュニケーションが欲しいんでしょ。アイツの人間関係の9割は見ず知らずの死人ですし」

 

「多分じゃがそんな調子で友達のいない君を心配して接してくれているんじゃないかのぉ……」

 

そんな馬鹿な。これでも友達はいたんだぞ!元の世界に!

カラスのサブ吉にダンゴムシのヨルナンデスとかサボテンのサボちゃんとか。

彼らはみんないいやつだった……。辛い時に俺の話を静かに聞いてくれたし。

 

「っていうかそんなことはいいからなんかこう除霊とか清め関係の資料とか文献ってない?」

 

「なんに使うかは知らんが昔友人から貰った霊媒師の本ならあるぞい」

 

*****

 

なんたることか!どうやらこの霊媒師の本によると幻の土地ムーに存在するセイクリッドジェネシスアークと呼ばれる聖剣を引き抜くことができればもろもろの厄介ごとから逃れられるらしい。

 

「のぉ一郎君、もうだいぶ夜も遅いしそろそろ帰らないと親御さんが心配するんじゃないかの?」

 

「いやいまちょうどいい所なんだよ博士。主人公のクールが宿敵グリーンハーブ将軍と対決して惑星タブーを救う所なんだ。あと両親は(この世界では)見かけたことがないから大丈夫」

 

「さらりととんでもない闇を聞いてしまったんじゃが。あとそれ本当に霊能力の本なのか?」

 

いやしかしこのクールスッピンウォーターにはかなりの親近感が湧く。

師匠のクロ=オビが事件に突っ込んでそれに巻き込まれるというのが彼のテンプレなのだ。

彼が将軍と戦っているのも実は成り行きで本人としてはとっとと隠居暮らしがしたいのに師匠のせいでそれができないという……。

 

あっちょうどいい所なのに第一巻が終わってしまった……。ていうかこの本って二巻もあるのね。

この本の作者には文才があるわぁ〜。

 

「あっ巻末になんか書いてある」

 

後書きかな?せっかくだし読むか。

えーっと、『この本を最後まで読み終えたあなた、魔女であるわたくしの占いによりますとこの後すぐに人生を変える厄介ごとに巻き込まれます。諦めて天命を待ちましょう』…………っは?

 

「博士ぇぇぇぇ‼︎‼︎大変なんだ!俺の体が縮んで子供になっちまった‼︎」

 

「なっ‼︎?ひょっとしてその姿!小学生の頃の新一かァッ⁈」

 

居間の方から聞こえてきた大声なんて聞いてないし聞くつもりもない。ないったらない‼︎

…………あかんこのままじゃ厄介ごとに巻き込まれるゥ⁈



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3話

『…というわけでして今回の犯人逮捕にはこの私、毛利小五郎の力あってのものなんですなぁ!がーはっは!』

 

「あら、今日もまた何か事件を解決したようじゃないあの子」

 

「おーここ最近は新一の活躍も一段とましているようじゃのう」

 

阿笠邸の居間では薬をキメた結果幼女になったヤバめの組織(実態不明・構成員の半数は他組織のスパイ&遊園地でジェットコースターに男だけで乗る組員の所属するいろんな意味で危ない所)の元職員の……なんて名前だったっけ?

シーシェパード?

 

みたいな名前だったらしいが今現在は灰原哀としてこの世を謳歌している魔性の小学生がいい歳こいた爺さんとお茶会をしていた。

うん、控えめに言って犯罪的だよな。

 

「ところで……あなたは飲まないの?この紅茶美味しいわよ」

 

あっでもよくよく考えてみるとこいつもと成人女性だよな?

そうすると実際は結構いっているわけで今で言うロリババア枠になるのか。

そう考えると違和感……ない?

 

「……ねぇあなたってどうしてそう私を無視するのかしら?確かに私や彼は組織と対立している人間だけどそうもあからさまに距離を取られると誰が見ても怪しまれるからやめてほしいのだけど」

 

あーロリババアがなんか言ってる。そうだね今日も空は青いね。

あの空の向こうにある天空の城に行ってみたいねぇ。

あっ今彗星が流れた……いや違うな。彗星はもっとバァーって動くもんな。

 

血生臭いなぁここ(米花町)。うーん……脱出できないのかな?おーい、出してくださいよ。ねぇ?

 

「ねぇちょっと、あなたが普段から頭おかしいのはよく分かってるけど虚空を笑顔で見つめないでもらえる?そろそろ警察を呼ぶわよ」

 

「哀君流石にそれはかわいそうだからやめてくれんかの?確かに一郎君は危ないやつじゃが根は優しいやつ……かも知れんのじゃから」

 

「せめて言い切れよ黒幕一号」

 

俺が現実逃避しているのをいいことに散々ある事ないこと言いやがって。

俺ほどの善人がなぜ頭がおかしいと言われなければならないのか!

 

あー……いい加減現実を見よう。もう日課のカミーユごっこはやったことだしね。

さてなぜ魔都米花からの脱出を図っている俺が爆心地(予定)たる阿笠邸にいるのか?

 

その理由は至極簡単で『比較的』安全地帯だからだ。

コナンが子供になったあの日から本格的に毎日が殺人事件になっていってるのだ。

 

おまけに俺がコナン=工藤というのも知っている(今も俺は全力で知らないと主張しているが無理やり工藤の協力者にさせられかけてる)ために俺自身が犯罪に巻き込まれる頻度が上がっている。

そのせいで強制的に灰原とも関わることになるっていうーね!神は死んだ。

 

で阿笠邸の話だが、考えても見て欲しい。一般にここでは近所のコンビニに行くだけでも殺人事件に巻き込まれる。

だがそれはコナンたちにとってさほど重要ではない場所だから発生するのである。では工藤邸や阿笠邸はどうか?

基本ここらでは何も起きない。

 

毛利探偵事務所は別。なんか俺の直感があそこは爆発すると囁いてる。

同じビルということでポアロも危ないだろう。

 

ではなぜ工藤邸ではなくここなのか。え、そもそも俺の家はだって?

この間上空からヘリが落ちてきて修理中。まじで意味わからん。対空砲でも設置するか。

 

で、話を戻すが工藤邸は無しだ。理由はすでに居候がいるから。でもってその居候は糸目である。

糸目ってことはつまり強キャラかつバトル漫画の師匠ポジ。関わらないほうがいいね。

 

まぁそんなのは他の連中(コナンとか博士とか)への表向きの言い訳。

実際はみんなお察しの通り阿笠の隣人沖矢昴が実際は赤井秀一とかいう黒の組織関連のヤバいやつだからだ。

 

じゃあ灰原哀は?元メンバーじゃんってなるわけだが考えてもて欲しい。

むさ苦しいおっさんと幼女、どっちを取る?俺は幼女。

まぁアンタッチャブルには違いないので基本関わらないようにしてるけども。

 

もっともこの阿笠邸は事件こそ起こりにくい(ここ重要)が代わりに事件への片道切符がやってくる。

そう例えば……「おーい博士〜!」「僕たちが遊びにきましたよう!」「哀ちゃーん!」……ほら来た。

 

説明するまでもないだろうが一応言うと前から順に高木刑事、ホロライブ三期生……じゃないピカチュウだ、ピカチュウ。最後は歩美ちゃんである。

そう阿笠邸唯一(灰原から目を逸らしつつ)の移動式危険ゾーンとは少年探偵団のことである!

 

「あなた達相変わらず騒がしいわね」

 

「哀ちゃんも一緒に遊ぼう!一郎お兄さんも一緒に!」

 

「やめろぉ‼︎俺を地獄へ導こうとするんじゃない!」

 

なぜこいつらは事あるごとに俺を何かに誘うのかッ⁉︎

あれか?俺に恨みでもあるのか?

まぁ恨みがあろうとなかろうと全力で小学生からの誘いとお願いを拒否するんですけどね。プライド?面子?そんなもの捨ててるから(無敵)。

 

いかに第三者からの視点では小学生の誘いにガチ泣きしながら拒否する高校生であろうとも俺は俺の命が惜しいんだ。

 

「なぁなぁ一郎の兄ちゃん、一人で天空の城に届く梯子を作るより俺たちと一緒に遊んだほうが楽しいと思うぞ」

 

「そうですよ一郎さん!一人より二人、二人よりみんなで、ですよ!」

 

「やかましいぞ、うな重に黒幕二号!大体お前らの遊びって大概殺人事件に直結するじゃんか!いーやーでーすー。俺は死にたくないんでーすー」

 

とにかく比較的安全かつ脱出のための道具を用意できると言う利点からこれまで居候(家賃未納)してきたがこうも地獄からの使者(連れて行く意味で)が多いとおちおち脱出のプランすら練れない。

 

いまだって一応天空へ逃げるための梯子を庭にかけてる途中だがそもそも竜の巣が見つからないという悲劇。

 

これは本格的に場所を移して新たな計画を練る必要がありそうだ……。

気分転換は大事。エジソンも言ってた。

 

ともあれこの比較的安全な場所と同等かそれ以上に殺人事件の発生率が低い場所など米花にあるのか……?

 

毎日殺人、2日に強盗、週末必ず連続殺人、月一単位で爆破事件がデフォの米花だぞ…………!

そんなシャングリラがあったら工藤が小一になる前にそこに逃げ込んどるわ!

 

「ねぇ哀ちゃん?また今日もお兄さんは虚空を見つめてたの?」

 

「ええそうよ吉田さん。そろそろ警察を呼ぼうかと博士と話してたわ」

 

「えへへ警察ってうな重おごってくれんだよな!」

 

「元太く〜ん。それをいうならカツ丼ですよ、カツ丼。それに奢るんじゃなくて後で自分で代金を払うんですよ」

 

「ちぇ、なんだよ警察の奢りじゃねーのかよ」

 

「こらこら元太君や。そもそも頼むには警察に捕まらんといかんのじゃぞ」

 

警察……うな重……高木刑事……黒幕……やけに詳しい光彦……ちくわ大明神…………。

ハッ⁉︎それだッ‼︎警察署、警察署だ!

 

もっとよく言えば留置場!あるいは独房!コナンワールドでは犯罪者はそのまま原作からフェードアウト出来る!

つまり裏を返せば警察に捕まることこそが原作からの退場になるわけだ!

 

とすればだぞ!もし俺が警察に捕まれば………!

 

「米花脱出の糸口になる‼︎」

 

「きゃっ⁈ちょ、ちょっとびっくりするじゃない!急に大声出さないでよ」

 

「哀君のいう通りじゃぞ一郎君。それに君の閃きは大体ろくなことにならんじゃろ」

 

やかましいぞ変態ロリコンチート黒幕野郎!俺の閃きは全宇宙で一番素晴らしいんだ!

断じてアレなものではない!

 

「わぁ〜一郎お兄さんの閃きだぁ‼︎」

 

「あれやるとめっちゃ面白いことが起きるんだよな!」

 

「眠りの小五郎、コナン君の勝手な行動に続く三大米花町名物ですよ‼︎……まぁ僕らが勝手に言ってるだけなんですけどね」

 

ではどうやってお縄を頂戴されるのか?

殺人?いやいやそれではコナンが来るまで時間がかかる上に労力が伴う。よってナンセンス!

ふふふ……天才的な俺にはすでに確定有罪かつすぐに通報されるような犯罪は思いついているのであるよ!

 

「というわけでだハイダラー!これから毎日ドゥンドゥン家を燃やそうじゃねえか……じゃねえや。灰原ァ‼︎俺を性犯罪者にするためにいますぐ協力するんだ!」

 

「色々と言いたいことしかないのだけれど?とりあえず吉田さんは下がってなさい。飢えた獣に近づく必要はないわ」

 

「あのぉ一郎さん、流石に男子高校生が小学生に手を出すのは不味いと僕思うんですけど?」

 

うっさいぞ光彦!今の一瞬で俺のしたいことを理解できるお前こそ小一じゃないだろ。

やっぱお前が真の黒幕やな。

 

「いいか灰原、これから俺はお前に手を出すからお前は手を出されたらすぐに通報しろ。アーユーオーケー?」

 

「Not at all. You should go to the hospital once in earnest and get a test.」

 

「ええい!英語で返すな!俺の英語力は毎回赤点なんだぞ!」

 

もう何回もループしてるっちゅうのに英語だけ全く上達してないんだぞ!

えっ嘘……私の英語力低すぎ……?

 

「取り敢えずあなたが高校生のくせして英語が致命的なまでに苦手なのは放っておくとして、今から救急車呼ぶからじっとしてなさい。それまで我慢できるのなら…………私の体、触れるかもしれないわよ?ロ・リ・コ・ンさん」

 

「はっ灰原さん⁈」

 

「おい灰原流石にそれはやべーぞ⁉︎」

 

「そうだよ哀ちゃん!こういうのはまず告白から始まるんだよ‼︎」

 

病院……病院だと……⁈

 

「冗談じゃない!俺が欲しいのは病院じゃなくて警察だ!いいから早く警察を呼ぶんだ灰原!一刻もはやく俺を犯罪者にしろッッ‼︎」

 

*****

 

「それでそのあとアイツはどうしたんだよ?」

 

今日は事件を解決するために阿笠博士のとこへ行けなかったがどうもそこで一悶着あったらしい。そのことについて電話で灰原に聞いてみたが……アイツ何してんだろうなホントに。

 

『あら、友人の行動ぐらい推理してみたらいいんじゃないの?ホームズさん』

 

まーたこの偽幼女は無茶なこと言う。俺だって長年アイツとつるんでるけど未だに行動原理というか考え方がわからないんだぞ。

 

「バーロー、探偵が推理できるのは人間だけだっつーの」

 

『じゃあハンターにでも弟子入りしたらいいんじゃないかしら?まっそうね、取り敢えず高木刑事を呼んでその場は治めたわよ』

 

「あはは〜かわいそうに……(確か高木刑事って今日非番だったような)」

 

あれ?でもこの時間になっても阿笠博士の家にいないってことはアイツまだ警察なのか?

 

「なぁ灰原、アイツまだ警察のところにいるのか?」

 

『ええ、泣きじゃくりながら『俺を地獄に送り出さないでくださぃぃ!』って言いながら縋り付いてるみたいよ。今は取り敢えず本人の意向もあって取調を受けてるみたいだけれど』

 

(アイツまじで意味わからん行動しかしてねぇな)

 

取り敢えず今夜中に戻りそうもないし明日引き取りに行くか……。

はぁ…今日はやけに阿笠博士ん家が静かだと思ったらそう言うことだったのかよ。

あれ…?そういやぁー

 

「なぁ元太達が言ってたけどお前の体を好きに触らせるって言う発言、あれ本気だったのか?」

 

『むしろ本気だと思うわけ?』

 

「いや……お前があんなこと言うの珍しいなって」

 

普段のコイツならそうそう言わないセリフだよなぁ。

なんかあったのか?ストレスで剥げたとか。

 

『あなたの事だから大体碌でもないことを考えてるのはわかるわよ。別に何よ、私がああいうこと言っちゃ悪いわけ?』

 

おおこえー……。電話越しでも背筋が凍るなんて恐ろしすぎるだろ…。

 

「アハハー、い、いやぁとりあえずアイツが誤って手を出してないことがわかって良かったわ、じゃまたな」

 

『ふん、どうせ私にお調子キャラは似合わないってことでしょ。………… それに、私だってこんなセリフをいう相手くらいは選んでるわよ。じゃまたね、工藤君』

 

「えっあっおい最後なんか言ってなかったか……って切ってやらァ。ったく」

 

あーあ、明日は一郎の引き取りかぁ。はやく寝なくちゃな。

 

「コナンくーん、お風呂沸いたよ」

 

「あっはーい!今行く〜!」



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4話

今更かもしれませんがこの作品は時系列がメチャクチャですのでご注意ください。


「だけどねぇ一郎君……僕はこれまで刑事をしてきた訳だけど、どう考えても理由も無しに監獄へ送るのは無理だと思うんだ。まして何かと事件解決の実績のある君だとなおね」

 

「いやあれ大体コナンのせいであって俺の実力じゃないんで。せっかくの非番なのに俺のために時間割いてくれたのはホント申し訳ないんですけど俺にも譲れない一線はあるんです」

 

なんのかんのと俺はシャングリラ(独房とも言う)への片道切符を手に入れるために苦心して説得を試みているのだが現状を鑑みるにあまり状況は好ましくない。

 

残念なことに灰原に手を出す前に高木刑事がきたので確定犯罪ではないが未遂ということでなんとか監獄に入れてもらえないだろうか。

……なんてことを主張しながらどうにか警視庁までは無理やり移動することができたのだがその先が続かない。

 

結局夜になっても俺を監獄まで連れて行く素振りすら見せないのでこれは本格的に犯罪者になる準備をしなければならないだろう。

 

「じゃあ犯罪者になるんで覚悟しておいてください」

 

「冗談でもやめてくれよ!君普段から色々と頭のネジがぶっ飛んでるのに変なところで真面目だからホントにやりそうなんだよ⁉︎」

 

「冗談でもないし本気です。俺は監獄に入って余生を健やかに過ごしたいんです。それとも入監料を払えば入れてくれるんですか?」

 

あっ月々の家賃も必要なら言い値で買おうじゃないか。これでも金持ちだし札束で頬を叩いてやる。

 

「そんな金の使い方をしようとするのは君ぐらいしかいないと思うよ……。はぁぁ…せっかくの休みだったのに……」

 

「むっそこを攻められると罪悪感が……。……はぁ、仕方ない。ただでさえ高木刑事には普段から迷惑をかけてますし今日のところは諦めて留置場で妥協します」

 

「いやいや一郎君、さも反省しているように見せかけてるけど全く反省してないよね。妥協も何もないと思うよ」

 

いいじゃん留置場くらい。ここって天下の警視庁なんだしもっとこう器の大きいとこ見せたほうがイメージアップに繋がるって絶対。

ほら利点しかないでしょこの考え?

 

「公的機関への市民の参入だと思えばイメージアップになると思いますよ」

 

「うん、どう考えてもイメージダウンだからね?まかり間違っても無罪の市民を理由も無しに拘束できないから」

 

「じゃあやっぱり犯罪を犯せば…………いや流石に冗談です。ループしそうですしね。取り敢えずお詫びの小切手あげるんで好きな額言ってください」

 

しょうがない。高木刑事も疲れてるだろうし俺は未だにヘリの墜落によって大穴の開いた我が家へ久々に帰るとしよう。下水道を使って。

臭くなるし最悪迷うけど割と使える緊急避難ルートだったりする。臭いけど。

 

あっそういやなんだかんだと灰原にも迷惑かけたしお詫びの品でも買うか。

こうやって誠意を見せれば俺の性犯罪者への道に協力してくれるかもしれないしね!

 

「い、いやそんなの受け取れないよっ⁈第一安心したまえ、僕はこう見えても高給取りだからね!」

 

「いやまぁそれは確かに認めますけど自分不労所得が毎日数千万円単位で入ってくるんで適当なところで使わないと貯まる一方なんですよ」

 

「うらやましいなぁ!コンチクショー‼︎」

 

これでも株とか物件とか持ってるからね。

なお米花の物件はほぼ全てが過去に殺人事件が発生しているため値が下がっている……と思いきやもはやここではそれぐらい当たり前のことなのでそんなことでは価値は下がらない模様。

やっぱ頭おかしいわこの町。

 

まぁともかくとしてどうせ断るとは思ってたし適当な金額書いて後で無理やり渡すか。

310万くらいでいいかな?ほら語呂合わせが高木刑事の好きな佐藤刑事だし。

あっまてよ?そういや公務執行妨害でも犯罪になるんだっけ?

どうせ警視庁にいるんだしものの試しで暴れてみるか?

 

「その顔はまた何か企んでる様子ね一郎君。悪いけど今日はもう遅いし高木君も疲れてるから明日にしてくれないかしら?」

 

「さっ佐藤刑事⁈今日は早めに帰ったんじゃないんですか!」

 

「あっ佐藤さんこんばんは。さりげなく高木刑事が元気だったらやっていいなんて流石ですね」

 

ていうかなんでこの人は俺が何か企んでいたことが分かったんだろうか?

あっそういやこの人刑事だったわ。そりゃ犯行計画には敏感よな。

うむ流石警視庁の刑事。高木刑事?あれは中身元太だから……。

 

「はいこんばんは。高木君もわざわざ非番なのにお疲れ様。それで私がここにいる理由なんだけど私の持ってる資料が必要だって頼まれてね」

 

「資料?誰がこんな時間に欲しがるんですか佐藤刑事?」

 

「ああそれがね高木君ーー」

 

刑事ともなると色々大変なんだな。

てかこんな夜中に持ってこいなんて命令するやつは余程仕事に熱を持ってる人なんだろうな。

ん?いま俺の中で変な虫の予感がしたんだが。なんかこう危ないような危なくないようなって……とりあえず何か起こるって感じの……。

 

「高層マンションにキッド出現!現在ヘリ部隊が追跡中‼︎」

 

「私が呼ばれたのは怪盗キッド関連なのよ」

 

……えっこれ俺も事件に巻き込まれるやつですか?

 

*****

 

バタバタと動いている刑事たちの姿を部屋の隅でポケ〜っと見守るのは些かシュールかもしれない。

なんで俺が未だ警視庁に残っていて刑事たちが追い出さないのか、その理由は俺のガン泣き説得と普段の活躍(大嘘)による信頼関係の構築である。

 

いやもちろん嘘だよ?

俺だっていつも泣いてるわけじゃ無いから。でも信頼関係は本当だよ。ね?刑事さん!

 

え?どちらかというとこいつを野放しにしたら何するか分からないから取り敢えず待ってもらってるって?

なんだぁ……てめぇ……?いくら白鳥警部でも容赦しねえぞ。表出てこいってんだ。

河川敷でやり合おうじゃねえか。

 

まぁ高木刑事が佐藤刑事とよろしくやるのを妬ましく思って妨害しようとするような器の小さな御坊ちゃまは放っておくとして問題は怪盗キッドである。

というか俺が未だここにいる理由はこのことについて考えをまとめてたからだ。比較的安全な部類だしここは。

 

最初こそまたもや俺が殺人事件に巻き込まれると発狂しかけたがちょっと落ち着いて考えてみるとそうでもないことに気が付いたのだ。

 

よくよく思い出してほしい。そもそも怪盗とは人殺しをするものなのか?

答えは否である。怪盗たるもの常にエレガントでならなければいけない。

つまりキッド自身が人殺しをすることはないのである。

 

でだ、コナンシリーズの中でキッドが出てくるのはどんな時か?

そう劇場版である。基本普通の……いわゆるテレビアニメの方には出てこない。漫画版はちょっと自信ないけど。

 

まぁ何が言いたいかっていうとここコナン時空においてキッドはあまり殺人と縁がないのだ。

おまけに住む場所も(多分)米花ではないときた!

 

これこそ地獄に垂らされた一本のクモの糸ではないか?

もしも俺がキッド陣営に入社出来たらその暁には……殺人事件との遭遇率が極めて低くなる!てか上手くいけば米花からそのまま脱出できる!

ついでにコナンシリーズからもフェードアウトできる!

 

いやぁ最高じゃないか‼︎

あん?いやいやキッドはキッドで事件に巻き込まれるだろって?

心配ご無用‼︎俺は全力で裏方に回るから。

ほらスパイアクションものでよくあるパソコン操作して経路を示す係みたいな。

 

こう見えても俺資格はたくさん持ってたりするんで。

ぶっちゃけループ世界において時間なんて事実上無限な訳だしそれぐらいしかやれること無いんだよ……。それに役立つ技能があれば脱出の可能性は上昇する訳だしね!

 

そんなハワイで親父に、ならぬユーキャンの通信講座で…な俺の現状ならばきっとあの怪盗キッドだって雇ってくれるに違いない。

雇わなかったら雇うまで押しかけるまでだ。

 

そんなわけで現在の怪盗キッドによる犯行は俺に対して非常にいい流れになるわけである。

ここが少なくとも名探偵コナンの世界であるのは疑いようのない事実である以上いま起こってるキッド騒動は所詮前座。この場にコナンがいないのだから物語でいうところのオープニングにあたるわけである。

 

「とすると今回ばかりはコナンに一部くっついて行った方が雇用主(怪盗キッド)と会える可能性が高いわけか……」

 

キッドが出てくるのは劇場版。だとすると一連の流れはなんらかの劇場作品と同じであるわけである。

映画の中でキッドが直接姿を見せるのはオープニングとクライマックスぐらい。

すでにオープニングは終わったとみてもいいことから次に接触できるのはクライマックスかあるいは……。

 

「変装中ってことになるわけか……。でも誰になってるかなんて知らんしなぁ」

 

もはや度重なる心労(主に殺人事件)によって俺の精神は擦り切れてしまっているのだ。映画の内容なんてもう大まかなことぐらいしか覚えてない。

かぁ〜ッッ辛いわぁ!マジ辛いわぁ!でもなぁ心労だもんなぁ!俺の記憶力のせいじゃないもんなぁ!

 

……取り敢えず暫くしたらどうせ俺も事件に巻き込まれるんやろ?知ってる。

そん時に臨機応変に行動したらいいか。

……ところで高木刑事はまだ雑用中なんですか目暮警部?そろそろ小切手渡したいんですけど。

あっはいまだですかそうですか。

 

えっ?明日コナンが引き取りに来るから仮眠室で寝てなさいだって⁉︎

冗談でしょ警部‼︎



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5話

キッドでわちゃくちゃした警視庁を去ったのは結局の所翌日の昼になってしまった。

その理由は結構まともなものでキッド対策会議に特別出席していた小五郎のオッチャンをコナンと一緒に待っていたからだ。

……まぁ一緒という部分には些かの疑問符がつくかもしれないが。

 

だってアイツさっそく他の刑事にキッドの犯行手口とか今回の事件の情報とか聞き込んでたし。

そういや結局高木刑事はそのまま出勤する羽目になってた。本当に申し訳ない。後で癒し効果のあるアロマ送るから佐藤刑事と一緒に楽しんでください。

 

「“黄昏の獅子から暁の乙女へ、秒針のない時計が12番目の文字を刻む時、光る天の楼閣からメモリーズ・エッグをいただきに参上する”ってまぁなんとも洒落た予告状なこっちゃ」

 

「ねぇおじさん。キッドの担当は中森警部がやるんだよね?どんな事するつもりなの?」

 

「バァーカ教えれるわけないだろ普通に考えて。あぁん……ただまぁ会議に出たがありゃ相当腹わた煮えくりかえったな」

 

メモリーズ・エッグにキッドとなると導かれるタイトルは世紀末の魔術師。

……だったよな?合ってるよな?

いやまぁループ世界において世紀末なんて存在するのかと聞かれたら微妙だけど。

 

でもタイトルとそのメモリーズ・エッグの仕掛けぐらいしか覚えてないという悲劇。

でもまぁ俺にとって重要なのはキッドとの接触。所詮事件は二の次よ。

どうせ事件が進展したらいかにもなファイナルステージにたどり着くんでしょ?知ってる。

 

んで俺はその時にキッドと接触し自分を売り込めばいいわけだ。

いやぁなんと楽なことか‼︎もはや近づければ小判鮫の如く無理やりくっついてアジトまでついてくつもりだし勝ったなガハハ。

 

「まぁでもどのみち俺たちゃキッドの狙うそのインペリアルなんちゃらってのを拝めるんだ。どうにかなるだろうよ」

 

「それもそうだね。……あっそうだ!一郎兄ちゃんに伝言があったんだった!あのね、園子ねーちゃんが『あんたも一緒に来て楽しみなさい!』だってさ!」

 

「願ったり叶ったりじゃねえか‼︎行くよ行く行く!さっすが園子さん!」

 

今回ばかりは事件に巻き込まれて万々歳だ!

ぐふふ……!この機を逃さずうまく利用して魔都米花からの脱出を図ってやるッ!

 

「待ってろよキッドォ‼︎」

 

((……アイツあんなキャラだったっけ?))

 

*****

 

鈴木近代美術館とは近々オープンする鈴木財閥の新しい美術館である。

大阪城公園内とかいうトンデモ立地によく建てれたなぁとは思うがまぁこの財閥に不可能はないんだろう多分。

 

空調も行き届いていてなおかつオープン前だから人気もゼロ。

快適空間すぎてダメになりそう。やっぱ持つべきものは金持ちの知り合いやな。

 

「ねぇねぇコナン君、キッドの狙うメモリーズ・エッグってなんなの?」

 

「卵なんて近所のスーパーでも買えるよなぁ……あっ!ひょっとして超美味い卵とかか!」

 

「違いますよ元太君。いいですか?メモリーっていうのは記憶っていう意味なんです。ですからきっと……記憶がある卵なんですよ!おそらく中のヒヨコが自分の前世を覚えてるんです!」

 

「ええー⁉︎じゃあまだ中にヒヨコさんが入ったままなの⁉︎そんなのかわいそうだよ!早く出してあげなくちゃ!」

 

俺以外にも園子さんは誘ってたらしくその際たる例が今目の前ではしゃいでいる少年探偵団である。ついでに博士と灰原も一緒だったりするから気分的にはいつもと変わらなかったりはする。

 

「ほほー最近の子どもはなかなかの推理力やなぁ。そんだけトンチを利かせられるんなら大阪でもやってけるで」

 

「もう平次ったら!ごめんなぁこの兄ちゃん人を揶揄うのが趣味なんよ許してやってくれへん?」

 

もっと言うと西の工藤こと服部もこの場にいたりする。まぁキッド相手だし色々と惜しまずに全力で捕まえる努力をしたいんだろう。

警察と鈴木財閥の意気込みがよくわかる。

 

……それはともかくとして居候させてくれない?

まだキッドとの雇用契約がうまく行くか分かんないし保険が欲しんだよ。

 

「おまえを養うつもりはないって前も言うたやんかい」

 

「お前にじゃねーよ色黒偽工藤!大天使遠山さんにお願いしてるんです!俺を地獄から救い上げてくれませんか?」

 

「あはは〜……今日も元気そうやね一郎くんは」

 

でた!日本人の断り文句の最上位グレード「愛想笑い」‼︎

その笑いって実質拒否ってことでいいんですよね!畜生。

遠山さんなら……彼女ならきっとこの俺を階段下のスペースに押し込めてくれるぐらいの慈悲をもたらしてくれると思ったのに。

 

「そもそもいい年した男女が一つ屋根の下で暮らすような状況を親が認めるわけないやろ。アホか」

 

「うっせー。ああ……もはや俺に残された最後の希望はキッドだけだ。さらば服部。次会うときは犯罪者だ」

 

「探偵の前でどうどうと犯罪者宣言するやつ初めて見たわ。でも心配せんでええ。お前が犯罪者に成れるビジョンがこれっぽっちも見えてこんわ」

 

いいや成れる!俺だって夢追い人だ!

夢はいつかききっと叶うんだってジャンプとかから教えてもらったんだよ!

えっそこはサンデーにしろって?ごめん俺ジャンプしか読まないんだ。

 

「相変わらずキマッってる一郎のことは放っておくとしてガキンチョたち、残念ながらその推理は外れよ!せっかくだしこの私が直々に説明してあげるわっ!」

 

相変わらずテンション高いっすね園子さん。

あれ?そういや君いま俺のことを薬中みたいに言わなかった?ねぇねぇ……あっはい説明が進まないから黙れってことですね分かりますとも。

 

「メモリーズ・エッグっていうのはねうちの蔵に眠ってたロマノフ王朝の秘宝なのよ。ああロマノフ王朝っていうのはロシアに昔あった王国のことよ。それでねーもうすっごく綺麗で輝いててねーー」

 

「エッグって言う名前がついてるのは文字通り卵を模して作られたから。金や宝石が余すことなく使われているそれは皇后への贈り物として作られた……だよね園子ねーちゃん!」

 

「せっかくのあたしの出番を奪うなっての!」

 

コナンってそういうとこあるよな。一番美味しいところを持ってくとかさ。

いつか逆恨みされそうだなって思いながらそれがいつになるのか予測してるけど悲しいことに未だにそのXデーは訪れない。

ああ、そういや贈り物といえば俺も渡すもんあったわ。

 

「贈り物で思い出したけど俺からも少し渡すもんがあるんだわ。ほい灰原。この間の詫びなこれ。あと探偵団たちと一応博士にも」

 

「あら?キーホルダーなんてちょっと洒落てるじゃない。どうしたの?頭でも打ったかしら」

 

ひっでぇ言い草で草も生えないんですがそれは。ある意味灰原の通常運転とも言えるかもしれないが。

君黒の組織が〜って言ってる割にはこれっぽっちも子供のフリしてないよね。

 

見ろよ探偵団(と博士)たちのはしゃぎっぷりをさ。えっ?博士のははしゃいでるんじゃなくて俺が贈り物をしたことに驚愕してるだけだって?

キーホルダーぶつけんぞ髭爺い。

 

「あたしのはウサギさんだ!かっわいぃ!」

 

「へへへ!俺のは仮面ヤイバーのだぜ!」

 

「僕のはあの世界的人気を誇る大ヒットゲームの大大大人気キャラのピカチュウですよッッ‼︎やっぱりイブカスの時代は終わったんです!」

 

今光彦からそこはかとない畜生オーラを感じた気がするが気のせいか?

それはともかくとして博士以外の連中も驚きすぎじゃないかと思うんだ。

俺だって人並みの倫理観はあるし子供には優しくするんだぞ。一部例外はあるが。

まぁ正直元太のやつはうな重のにしようかどうかすごく悩んだけども。

 

うん?そうじゃなくて俺が自分の痴態の詫びをする事自体が驚きを通り越して恐怖を感じるだって?

この場で性犯罪者になってやろうかお前ら。

 

「まぁともかくとして詫びは詫びだ。素直に受けとれよ、特に灰原」

 

「ふーん……十字架のキーホルダーねぇ。まっあなたにしては極めてまともな選択じゃないかしら?けどホントにどういう風の吹き回しなの?」

 

「そこの嬢ちゃんの言う通りやで大谷。こんなことされたらキッドに宝を盗まれるどころか通天閣が爆発するわ」

 

俺だとなに言ってもいいってわけじゃないからな服部?

そんなに理由を知りたいなら教えてやるよ。俺が詫びの品を送った理由をな……!

フフフ……どうしてこんな簡単なことに気付けなかったんだろうな。あたしって、ほんとバカ。

 

 

「よくよく考えればさ、性犯罪者には俺一人でもなれるんだ。ほら、フルチンで街を練り歩けば捕まるだろ?そんなわけで無駄に俺の行動に付き合わせた分の詫びってわけさ」

 

性犯罪者になるには襲う相手が必要だとばっかり思ってた。

けどもう時代は違うんだ。今ならインターネットに自分の息子を晒すだけでも通報できるぐらいにはお手軽になった。

 

駅前で裸になれば問答無用で警察も逮捕してくれるはず。

警察は俺で実績を上げることができて、俺は安全地帯の独房に避難できる。

ああ…!なんと完璧なwin -winの関係かッ‼︎

 

許せ灰原。お前が常日頃俺に言ってくることは正しかった。

俺は馬鹿だ。こんな簡単なことにも気付けないなんて脱出者失格だ!

ま、キッドにくっついて行く予定だし実際にやることはないだろうがな。

 

「まちなさい。何も良くないどころかますます悪化しているわ。鈴木さんちょっとこの人病院に送って行くから私と博士は席を外れるわ」

 

おっおいこら!真顔で俺を掴むんじゃない!

やめろこら!離せこら!あっあっあっ!服部まで真顔で掴みかかってくんじゃねえよ‼︎

博士も何か言ってくれ!ていうかここで病院にブチ込まれたら俺のキッド接触計画大阪編がご破算になるから!ねぇちょっとみんな聞いてる⁈

ねえってば!



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6話

前回投稿した6話を元に書き直したものです。
話が予想より長くなりそうなので2分割しました。短いのはそのためです。


くそぅ……まさか本当に病院に押し込めてMR検査するなんて……!

 

しかも検査に手間取って夜中までかかるとか笑えねーよ!

なぁーにが『手を尽くしましたが当院では既に治療できるものは居らず手遅れです』だ‼︎どこも悪くないわ!

挙げ句の果てに俺がまだ病院にいるうちにキッドが暴れ始める始末だし!

 

頑張って検査衣(病院で着るあれ)のままで用意してたジェットエンジン付きパラシュートで追いかけたけど目前でなんか撃ち落とされてるし!

何やってんだよ、怪盗!高木刑事だって頑張ってたんだぞ!その先にはなんもねーよ!

 

『次は東都。東都です。お降りの際は手荷物などのお忘れ物が無いようにご注意ください』

 

「……………はぁ。降りるか」

 

*****

 

とりあえず一人我が家(大穴が空いてるけど)に帰るまで手持無沙汰なので軽くここまでの回想でもしながら暇をつぶそうじゃないか。

 

まず勢いでいろいろ言ってたけど無理やり病院から脱出した俺は秘蔵中の秘蔵である小型エンジン付きパラシュートを用いて大阪の空を飛んだわけだ。意外と大阪の空は寒かったです。はい。

 

でもってキッドまであと一歩!……のところまで追い詰めたのはいいものの残念なことにキッドが目の前でいきなり墜落した。

正直「は?」ってなったけどどうにも状況から見るに何者かによって狙撃されたらしい。

 

一部ではエッグを狙うものの仕業だとも言われてるらしいんだけどとりあえず墜落現場にはキッドは居なかった。

幸いにもエッグ自体はその場にあったため急遽安全な場所へ移動させ当面の間一般公開は中止するらしい。

 

というのが”新幹線の中で”知った話。

ええそうですとも。わたくしこと大谷一郎はほぼ丸一日(それ以上かもしれないが)中森警部の事情聴取に付き合わされていたんですなこれが。

 

やばすぎるでしょあの人。いや確かにキッドを間近で見たのは俺だけどさ。俺だけどさ……!

もうね、ほっぺが痛い。めっちゃ引っ張られた。

 

なんでもキッドが変装しているかもしれない可能性を考慮してうんぬん……って奴だったんだけど痛いわ!

挙句の果てにお前がどこかにキッドを隠したんだろさては仲間だな!(迫真)とまで言われる始末。

 

勿論それに対しては「失礼な!これから仲間になるんです!!」って力強く返事したんだけどさ。

あれ?ひょっとして今思えばそれが原因で一日以上も事情聴取された?

選択ミスったわ畜生。

 

それでもってようやく解放されたころにはコナン一行は遥か彼方。俺は一人大阪に。

もう真面目にすることもないしコナンならこんだけ時間があれば事件の百個や二百個は解いてるだろうし終わったな。

 

せっかくの劇場版(勝手な予想)っぽい事件でなおかつ貴重なコナンワールド要素の薄い人間と会えたかもしれないチャンスをみすみす逃してしまうとは脱米者失格だな俺…………。

 

ていうかほかの知り合いは壮大な事件に巻き込まれている(かもしれない)のに俺は一人先に家に帰るって虚しすぎやしないか?

いや確かに「でも一緒にいたら事件に巻き込まれるじゃん」って言われたらそうだね、って答えるしかないけどさそれはそれってやつよ。

 

そもそも今回はコナンワールド脱出の糸口だったかもしれないってのもあるけどさ、なんかこう……友達とラウンドワンとかで遊んだ後に「じゃあ飲もうぜ!」って話になったけど酒に弱いから断って先に一人だけ家に帰る途中にふと「俺何やってんだろうなぁ」って思っちゃうあれになってるんだよ今。

 

きっと今頃あいつら飲んで騒いで歌とか歌って盛り上がってるんだろうなぁって思った時のあの寂しさ……。

まして今真昼間だよ?なんで俺こんないい天気の日に一人で新幹線に乗って家に帰ってるんだマジで……。

えっ何?そもそもお前友達いないじゃんだって?余計悲しくなるからやめてくれ……。

 

悲しくなってきたしこの話はこれでお終い。それにもうすぐ家に帰りつくしね。

とりあえず帰ったらまた新しい脱出プランでも考えるか。あと博士の家からなんか使えそうな発明品を調達しよっと。

 

あれ?ってか今向こうから車飛ばしてきてるの博士のビートルじゃね?なんであんな急いでいるんだ。

 

*****

 

「やあ助かった!!……っていうのも変か。にしてもさぁ、もうちょっと子供のことはよく見ておこうよ博士。そんなんじゃいつか探偵団の親から苦情言われるよ?」

 

あるいは裁判を起こされるか。そうなったらなったで面白くはなりそうだけどでもその状況ってまず間違いなくあいつらが怪我とかした時だよな。じゃあ笑えねえわ。

 

「確かにその通りなんじゃがのぉ……。あいにくこの年になると体が心についていかんくなるもんなんじゃよ」

 

「心も鈍ってるんじゃないですかね」

 

なんて失礼な、とかいろいろ阿笠博士が言ってきているが正直俺との会話はいつもこんな感じだし平常運転よ平常運転。ゆえに博士は無視して話を整理することにしよう。

 

まず第一にこのエッグ強奪事件はまだ解決していない。なおかつ今もまだスコーピオンなる人物が相次いでエッグを狙う人物を殺害しているということ。

これではっきりしたな。俺の目の前でキッドを撃ったのはそのスコーピオンとかいうやつだ。

 

でだ、どうにもそのエッグに関係するものを持ってる人がいるらしくてそれを手掛かりにしてコナンは横須賀にある城に残りのエッグを探しに来たとかなんとか。

 

第二にスコーピオンっていうのはどうも右目を撃ち抜くという変な殺し方をしている犯罪者なんだとか。経験したことないからよくわからんけど目ん玉無くなっただけですぐ死ぬもんなんかね?

あっでも弾丸が脳まで到達してたら死んじゃうか。

 

それでその対策のために特別仕様の眼鏡を博士が作ったんだと。なんでも防弾使用で場合によっちゃ弾を跳ね返すんだとか。やっぱ頭おかしい技術力してるよね博士。

 

それでその特別眼鏡をコナンに届けに来たところなんと後ろの座席に探偵団一行が潜んでいたんだとか。気づかない?普通。

しかも運の悪いことにどうやら博士のせいで城の古い装置が動いてしまったらしく探偵団が地下に落ちてしまったらしい

幸いなことにけがは無いようで急いで引っ張り上げるためのはしごを取りに戻ったのだとか。

 

「けどさぁ……。もう夜だよ?」

 

「……思ったよりわしの家が遠かったの」

 

「やっぱりさ、もう少し速度出せる車買っといたほうがいいんじゃないすかね?何ならプレゼントしましょうか?」

 

これでも金ならあるんで買おうと思えば余裕で買えちゃうぐらいである。

フハハハハ俺は金持ちだ!住んでる場所は地獄だけど。……これならまだド貧乏でいいから米花町以外のところで暮らしたかった(切実)

 

「とにかく、まだ子供たちが無事じゃといいんじゃが……。おっそろそろ着くぞ!」

 

「そうかこれが…………」

 

出発したときにはまだ晴れ渡っていた空も今は黒くなってすっかり夜である。そんな夜の中にズンと古い城が立っているとなれば想像つくのは一つしかない。

 

「間に合ったか……!」

 

まず間違いなくこここそが映画で言うところの終盤の舞台である!



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7話

これで6話改訂は終わりです


「ふう……死ぬかと思ったぜ……。早くうな重食いてえなぁ」

 

「もう博士は少し反省してくださいよ。僕たちへとへとなんですからね」

 

「い、いやぁすまんのぅ…」

 

縄梯子を博士が開けたという(語弊)穴にたらしたら出るわ出るわ人間が。

ふと思ったんだけどさこれ順番を上手く利用したら合法的にパンツを覗ける…………いやいやそうじゃなかった!

とにもかくにもキッドだキッド!!

 

キッドの一味になれば俺の立場が米花町市民からキッドの手下にジョブチェンジする可能性が高い!そうなればひょっとすると一年たつと強制的にどこにいても米花町に戻るという呪いがなくなるかもしれないのだ!!

 

乗るしかない、このビックウェーブにッッ!!あるいは、試すしかない!この大科学実験を!!

ぶっちゃけもうやれることはあらかたやってしまったしマジで後がないという事情も多分に含まれていたりはする。

 

で、そのためにも俺はキッドが現れるであろう終盤のシーンに突入しなければならないんだがわれらが死神こと主人公のコナンはどこいるんだ?

 

「とりあえず下手な大人よりしっかりしてそうな灰原に聞きたいんだけどコナンはどこに行ったんだ?」

 

「……彼なら一人でスコーピオンを追ったわ。今頃城のどこかだとは思うけれど」

 

「よしッ!分かった」

 

今ならまだ間に合う!いける……!行けるぞ!いい感じのシーンにお邪魔してキッドの正体を確認!

そしたら素早くノミのようにキッドにすり寄り意地でも手を離さない!

あとは多分キッドがなんやかんやしてとりあえず窮地は脱せるはずだからモウーマンタイ!!

 

ナハハハハ!!爆弾包丁ピストル拳、なんでもどんとやって来い!犯人の武器たちよ!(多分)キッドがどうにかしてくれるはずだからな、怪盗だし。

 

「ちょっと待ちなさい!あなた城に入るつもりなの!?」

 

「当たり前だのクラッカーが分かるやつはもういないとは思うが今のを現代語訳したらそうだ、ということになるな」

 

「相手は凄腕の殺し屋なのよ!?あなたみたいな年がら年中お茶らけている人が無事に帰れるはずがないわ!!」

 

一理あるどころかド正論をぶつけてくるのはやめてくれないかな。これでも一応リスクの比較をしたうえであえて鉄火場に突っ込もうと無理やりテンション上げてるんだよこちとら。

 

控えめに言ってこのまま怪我を負う可能性が高い場所に突っ込むのと米花町に住み続けるのでは圧倒的に後者のほうがリスクが高い。

米花町は現代の地獄ハッキリわかんだね。

 

「いいや行くね!!それでもあえて、怪我すると分かっておきながら突っ込まなきゃいけない時があるんだ俺には!!その時が今なんだ!!」

 

「こんな時まで頭おかしいこと言わないでもらえないかしら……!博士、絶対にこの馬鹿が変なことしないように取り押さえておきなさいよね」

 

「哀君の言う通りじゃぞ一郎君!確かにコナン君が心配なのは分かるが早まってはいかん!!普段からだらけておる君がこんな時だけ都合のいい超人パワーが使えるはずもないじゃろ!!」

 

ぬわぁぁ!誰もだらけとらんわ!ただ少し人生に休息という名の彩を入れてるだけじゃ!

HA・NA・SE!こんなところで無駄な信頼と連携を発揮するんじゃない!

 

「あっお城が……!」

 

「も、燃えてる……」

 

「コナン君……」

 

なああ!なんかもう明らかにことが済んだかのような火の燃え広がり方をしてる!?っていうか一体いつの間に火事が起きたんだよ!あれか、これもそのスコーピオンってやつの仕業かッ!

 

それともまさか犯人との決着がついてコナン映画特有のいかにもな建物崩壊の時間がやってきてしまったのか!?

 

い、いやまだコナンは現れていない。だとしたら急いであの火の中に突っ込めば…………!

 

 

 

 

 

 

 

「心配すんなよお前ら」

 

「「コナン(君)!!」」

 

「お、遅かったか…………」

 

どうやら間に合わなかったようである……。ぐうぅ、いやまぁあれだけどさ。大阪あたりのグダグダを考えたらぶっちゃけ事件が解決するシーンに間に合ったこと自体が一種の軌跡なんだけどさ。

 

火事の中に突っ込まなくて良くなったことを祝うべきか、はたまた俺が事情聴取を受ける原因を作ったスコーピオンとかいうやつをぶん殴れなかったことを悔やむべきか、あるいはキッドととうとう面を向かって会えなかったことを嘆くべきか……。

 

とりあえず上向くか。有名な歌にも上を向いて歩こうって言うのがあるし空見てたら元気も出るはずだ、多分。

 

じゃ、今は燃え盛る城を背景に明日どうやって生き抜く(事件を避ける)か考えようかな。来たれ平穏、帰れよ殺人。

このモットーを大切にしつつ今はコナンの無事を(一応)祝うことにしよう。

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 

「などと言って普段なら終わったかもしれんが今回の俺は一味も二味も違うんだよなこれが」

 

ふふふふ、真夜中に一人物陰からこっそりと毛利探偵事務所をのぞき込んでる俺はもはやまごうことなき変質者である。職質不可避であるがそれでも意味がある以上しなければならないのだ。

 

そもそもキッドとあろうものがこっそりとフェードアウトするだろうか?そりゃ現実においてはそうだろうけどさ。少なくとも漫画やアニメ的展開を考えるのであれば脚本家は絶対に地味な幕引きを行わない。

 

しかしそれに反して予想外にキッドは地味な幕引きを選んだ。それはなぜなのか?

 

コナンは俺たちの後ろからひょいっと現れた後「なぁーに心配してんだよ。俺は無事だぜ。ヘッ(キメ顔)」的なことを言って格好つけた後犯人は白鳥刑事が護送していったと語った。

 

状況から察するに今回の事件においてキッドは白鳥刑事に化けていて最後の土壇場に火事の中からエッグとコナンを救い出したというシナリオが想像できる。

とすれば彼は犯人の護送があったからおとなしくフェードアウトしたのだろうか?

 

さらに疑問なのはなんでキッドがお宝を目の前にしながら持ち主に返したのかだけどもまぁそういう展開ってある種お約束みたいなところがあるし今回もご多分に漏れずそういうやつだったんだろう。

しかしそうするにしても何かしらの理由があるべきなのだ。

 

以上のことからおそらく今回のお宝に関する話には何か感動秘話的なものがあったと予想したほうが筋が通りやすい。

 

キッドはお宝を盗むために変装して潜入していた。しかしながらコナン一行と共にエッグについて探りまわった結果としてこれは盗むわけにはいかないという結論に陥った可能性が高い。

ここから導き出せるのはこの事件は全体的に感動路線を走っているということである。

 

感動路線の事件であったからキッドはひっそりと(余韻を際立たせるために)退場していったのだろう。

 

そうすると少なくとも拘置所まで真面目にキッドは犯人を連れて行ったことになる。

白鳥刑事は警視庁所属の人間だからそこまで運んだ……であってるよな?違ったら最悪なんだけど。

 

まぁとにかくここで重要なのはどう見ても主人公たるコナンと敵方のキッドが別れの言葉的な奴を言う暇がなかったということである。

 

少なくとも火事の真っただ中で悠長な別れのやり取りはできないはずだ。

すると考えられるのはどこか落ち着いた場所で再び相まみえて少しの会話をするというパターン。

 

映画ならお約束だろ?

主人公と好敵手が事件が終わったあとになんかちょっとしたお話をするやつって。

 

まして今回は感動路線。ないわけがない。締めの洒落たやり取りが。

それがあると仮定した場合、この落ち着いた場所とはどこか?少なくとも城ではない。

 

だって焼け焦げてるしわざわざコナンがあんな遠くまで一人で足を延ばす理由はない。

すると予想される可能性の高い場所はここ。毛利探偵事務所しかないわけだ。

 

「いやぁ俺冴えわたっちゃってるかもしれないぞ!」

 

アホだって?でももうこれぐらいしか思い浮かばないし可能性がゼロじゃないならなんだってするぐらいの心意気だよ。

 

実際に当たってたみたいだしな。

 

「事務所から存在しないはずのおっきくなったコナンが下りてきた……ってことはまず間違いなくあいつがキッドだな!」

 

ふはははは!俺のメタ推理に恐れをなすがいい怪盗キッドよ!

あとついでに俺をぜひとも手下に迎え入れてください!入れてくれないと俺いつか死ぬかもしれないんですよキッドさん!!




『大阪で発生したエッグ強奪未遂事件ですが先ほど容疑者を確保したとの情報が入ってきており現在警察による__』

「やっぱり大騒ぎになりましたなぁ。あの人らしいといえばらしいですけど」

「手のものに調べさせたところ名前や住所が判明いたしました。大谷一郎、現在17歳。両親は見かけられず一人で父親が米花町に所有している邸宅に住んでいるようです」

「……そう、大谷一郎。それがあの人の名前なんですね」


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8話

遅くなりました
方言女子難しい……可愛いけど


「ああ“〜やる気しね”えぇぇ……」

 

なんかもうさ、何もかも諦める境地に至るときってあるよね。今がそうなんだけども。

 

「大体なんだよ怪盗って……。やってることただのスリじゃねぇかっての……」

 

無気力の時って何してもうまくいかないし下手に動けば余計に被害が広がるよな。なんなんだろうなあれって。

 

ちなみに既に被害を被ってしまっていたりする。

具体的にいえば最低限水分補給ぐらいはしようと冷蔵庫に向かったら途中でつまづき掛けて思いっきり壁に腕が当たった。地味に痛いしストレスが溜まって控えめに言って最悪すぎる。

 

これがまだ人間が掴める範疇の物ならさ、こう何してやがる畜生!って言って叩くぐらいは出来るけどさ、相手壁だぜ?

叩いてもダメージはこっちにしか来ない。おのれ。

 

「……あれが一応頼みの綱だったんだけどなぁ。…………それも最後の」

 

これまで色々な手段で米花町脱出を図ってきたわけだけどもそのことごとくが最終的に失敗している。

転校とか物理的に家を消して強制リスポーン(一年で米花に戻ることをそう名付けてる)を不可能にさせたりとか。

 

ちなみに前者は全くの無駄に終わった。頑張って途中入学するために試験も受けたんだけど気がついたらいつもの高校に通ってた。

 

後者に関しては家がなくても問答無用で空き地に転送されてた。

これぞホントの家なき子。同情するならせめて時を進めてくれ……‼︎

 

まぁこれ以外にも思いつく限りのことはしてきたわけで、後やっていないことと言ったら黒の組織を壊滅させるとかなんかそういう難易度高すぎるものばかり。

というかこれに関してはそもそも実態不明、規模も不明、ラスボス誰かも分かりませんって状況だしどうしようもなくね?

 

比較的成功する可能性が高くてなおかつ実現性が高かったのがキッドの仲間になるってことだったわけなのだ。

……もっとも肝心のキッドには拒否られ全力で逃げられたけど。

 

頑張って持ち得る限りの追跡装置とかつけたんだけどなんで全部無力化されてるんですかね……。

改めてこの世界の人間は人外ばかりなんだなって再確認させられたわ。

 

「あー……いかん。あんまりにも悪い方向にばかり考えていると本当に悪いことが起こりそうだ」

 

とにかく前向きに、出来る限りポジティブに思考を巡らそう。

兎にも角にもこの数年間にわたる脱出とその度に得られたデータを見ればもはや脱出は極めて困難だと読み取れる。

 

であるならばもう次善策として「少しでも事件と接触する回数を減らす」方向に舵を切るべきなのだ。

 

「問題はどうやって事件と直接合わずに済ませるかなんだよなぁ……」

 

一応無いわけではなかったりもする。

 

「事件に関わりつつ危ない所とは距離を離せる場所……。やっぱ灰原ポジだよな」

 

コナンの無茶振りに素早く答えるのがお仕事です!アットホームで職場は自宅からすぐ近く!給与なし。

 

まぁ最後のは別にどうだっていいんだけど。

問題は……

 

「でもこれだと灰原とポジが被るんだよな。当たり前だけど。……俺灰原より有能になれる自信がないんだけど」

 

無限の時間があるからと言ってその時間を勉学に当てるほど出来る人間じゃない(断言)。そんな俺にとって参謀ポジとかもっとも似合わない(血涙)。

そもそも俺は考えるより行動するタイプだし。

 

小学一年生に知力で負ける高校生とはどうなのか?お前にプライドはないのかだって?

断言できるが無い。それに灰原は小学生の器に収まらない存在だから例外として扱うので問題なし。

 

「もういっそコナンたちを運ぶドライバーになろうかな……。大型免許……あっそういや免許取れないじゃん」

 

ワロスwwwwww…………。

やっぱループがネックすぎるんだよ。何やっても未成年のままじゃなんも出来んわ。

 

本当に嫌だけど百歩譲って殺人事件はしょうがないとしよう。もうそういう世界なんだし。

けどこのサザエさん時空が続く限り一生学校生活に縛られて自由な時間が確保できなくなる。

 

せっかく無限にある時間を有効活用しようとポジティブに考えても昼は勉強で夜は事件とか心も体も休まらないんだよ本当に。

 

不登校になればって?もう何回か試したけど最終的に毛利さんが出張って来るから無意味だったな。

というか俺が学校に行かないことで事件につながるっていうパターンすらあったからもう大人しく登校してる。

ただし授業は寝てるがなッ‼︎

 

いや流石にもうループしすぎて教員の考える問題形式も覚えちゃったし正直楽勝ですわ。

おかげで今では頭はいいけど性格がダメっていう典型的知能キャラの貫禄すら……見せれてないな。忘れてくれ。

 

ともあれ本格的にやる気も落ちてノイローゼになりそうだ。太陽光浴びて体内にいい感じのなんかを生成しないと(使命感)。

 

『ピンポーン』

 

「あれっ?今日なんか届く日だっけ?」

 

でもアマズーンの商品てさくらレビューが多いんだよなぁ。果たして今回は当たりか外れか。

 

「はーい、どなたですか?」

 

「どなたってそんなぁ決まってます。あなたに助けられた女の子ですわ」

 

「へ?」

 

なんかブロンド?金髪のおっきなお胸のめっちゃ可愛い子となんか裏稼業してそうなキリッとした目の男が居るんですけどまたこれ事件ネタですか?

 

*****

 

「はぁ……、百人一首をしていらっしゃるんですか」

 

「えぇそれはもう、ウチこれでも少しばかり物覚えが良くてですね。それなりにその分野では楽しませてもろてます」

 

突然現れたこの美少女の名前は大岡紅葉というらしい。

アマズーンでなかったことと、まったく予期せぬ女の子の訪問という人生において数回しか経験のない出来事でしばらくフリーズしていたのは内緒である。

 

それはそうとしても、物覚え……いいなぁ。俺も欲しかった(血涙)。

いやこれでも暗記能力を上げようと色々頑張ったんだけどさ、悲しいかな俺の脳みそはファミコン以下だったのだ。

 

「それで……えっとその、大岡さ「紅葉でええですよ」……えっ、いいやぁ…………」

 

何なのこの人⁉︎いきなり名前呼びをしろだと‼︎

自慢じゃないがこちとら男ですら名前呼びするの恥ずかしいんだぞ‼︎

えっそれは異常だって?……そんなぁ。

 

「あ、あーあはは。それで、その……紅葉さんはどうしてこちらに?その、正直縁もゆかりもないと言いますか、関わりがないといいますか……」

 

「縁もゆかりもないなんてイケズやなぁ一郎はん。ウチのこと、本当に覚えていませんか?」

 

いやいやいやいやいやいあいあいあいあいあ‼︎(クトゥルフ的発狂)

こんな美人で!おっぱい大きくて!可愛い方言女子!会ってたら絶対に覚えてるはずなんだよなぁ。

 

まさかハニトラ⁈とうとう数少ない金持ちというアドバンテージすらコナンワールドの住人から奪われてしまうのか‼︎

 

金なんだな!金なんだろう!むしろよくよく考えれば俺って金持ちじゃん!絶対に事件に巻き込まれる立場じゃん!

 

「やべぇよ……やべぇよ……」

 

(あーこれはまったく違う方向に考えがいってはりますなぁ)

 

そういえば今更だけどここってコナンワールドだよな⁉︎そうだよな‼︎

ほとんど高確率で身内が真犯人の金田一とか混ざってないよな⁉︎

 

落ち着け……落ち着くんだ俺……。

こういう時はひっひふーだったよな!

 

「盛大に勘違いしているみたいやけど本当に覚えておらん?」

 

「ひっひふーひっひふー……。すみません。本当に覚えてないんです。せめてヒントをください」

 

「正直な人は好きなんで許しちゃいます。ヒントはなぁ、大阪・京都・爆弾・紐なしバンジーってところです」

 

大阪・京都……紐なしバンジーに爆弾騒ぎってあれ………………。

 

 

 

「あ“あ”‼︎思い出した‼︎俺が死にかけた死神による死神のための大阪京都爆弾旅行(物理)事件の時に最後に一緒に清水寺の上から抱き合ってジャンプした女の子ォ‼︎」

 

 

 

具体的には第一話でチラッと出てきた事件の被害者じゃねえか‼︎

そうだそうだ、あん時マジでなんやかんやあって清水の舞台から紐なしバンジーしたんだ!

 

そんでもって最後は俺がヤケクソになりながらロックンロールを決めてどうにか全治3日で済む怪我を負って退院後真っ先に工藤のくそったれをぶん殴った事件だ!

 

 

「爆弾の仕掛けられた清水寺からウチを助けてくれた人は脱出後直ぐにどこかへ消え去ってしまいました。お礼のひとつも言えないままでは我慢ができんかったんです。以来ずっと探しておったんですが、ようやく会えました」

 

 

___ウチのヒーローさん。

 

大岡紅葉があふれんばかりの笑顔で言ったことに対して一郎は激しい後悔と胃痛に悩まされていた。

 

___すみません。あの時そそくさとどっか行ったのはその、飛び降りる時に女の子のおっきな胸を触ったことで我が息子がびっくり(意味深)してしまったのが理由なんです。



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9話

なんだこのめんどくさい主人公……。
次回で米花脱出です。
ちなみに主人公がどれだけループしたのかはご想像にお任せします(考えてないとも言う)。


「まぁとりあえずこんなものしかないですけどどうぞ」

 

最初こそ大慌てしたが今は取り敢えず一旦気持ちを落ち着かせた。

でなきゃいつまで経っても話が始められないだろうしね。

 

「それで、紅葉さんがあの時の人だということは理解したんですけど一体なんの用でこちらに?」

 

わざわざ京都からこっちまで来るのは大変だったはずだ。飛行機にせよ新幹線にせよそれなりに時間はかかるしもちろんお金だって結構飛ぶ。

いやまぁ見た目金持ちそうだし全然大丈夫なんだろうけど。

 

……そういやここ最近飛行機乗ってねえなぁ。まぁ乗ったら乗ったで高確率でなんか起きるだろうから絶対に乗りたくはないが。

 

「端的に言うとあの時のお礼がしたかったんです。ウチ個人としては勿論そうですし、大岡家としてもお礼をしないことはあり得ません」

 

「いやいやむしろあれはこっちが巻き込んだと言うか何というか……。こう言っちゃなんですけどそんな無理してもらわなくても気にしませんので……」

 

むしろご褒美(胸的な意味で)だった説の方が濃厚だしぶっちゃけこう言うことでお礼を受けるのは気が乗らない。

結局ああいう事件が起きたのはコナンが(当時は工藤だったが)旅行へ行ったというのが大きいだろうし、そう考えるとどうもマッチポンプみたいに思えて仕方がないのだ。

 

コナンという主人公を引き立たせるために起きた事件、まぁあいつ自身はカケラも悪くないしそうあれかしとしたこの世界自体に罪があると言えばそうなのだが。

ともかく事件を解決したコナンがお礼を言われるならともかく何かが起きると知っておきながら特に何もしなかった同行者の自分まで感謝の声を貰うのは気が引けてしまうのだ。

 

ともあれやっぱり立派な家である以上それ特有のしがらみとかもあってせざるをえないんだろうな……。

 

「まぁ内容はともかくとしてそういうのは俺じゃなくて工藤のやつに言ってやってください。……ああ、そういやあの馬鹿今遠いところへ事件を解決しに行ってたんだっけ。俺に言付けしてくれたらアイツに伝えますけどどうしますか?」

 

「そんならそれも頼んます。あの人の推理が無かったらこの事件は解決しませんでしたから。けどウチは他でもない、一郎君にお礼をしたいんです」

 

真面目な顔でそうジッと見られても困るというか困惑するというか、ていうか美人に見つめられると恥ずかしいのでやめて欲しいです。切実に。

 

……いやまぁ7割冗談だよ。紅葉さんも真剣そうだし。

しかしお礼って…お礼かぁ……。

 

「そんな困らんどいてください。これやとどっちが感謝してるか分からんくなります」

 

あまりに悩む俺に対して見かねたのか苦笑しつつ紅葉さんは続けてこう言った。

 

「ウチかてそれなりのものは用意できるんです。……例えば、居候先とか」

 

「っっっ⁉︎」

 

「ウチの話、聞きたくありませんか?」

 

*****

 

命の恩人と言っても差し支えないであろう大谷一郎のことについては軽く調べただけでも相当な情報が手に入ったことは紅葉にとって記憶に新しかった。

 

最もそうした情報の大半は本人の奇行と言っても差し支えないものではあったが。

かっこよく助けてくれた恩人の正体がまさか人目も憚らずガチ泣きできるヤベーやつだったと聞いてしまったらさすがにどんな聖人であってもフォローは厳しいだろう。

 

しかし同時になぜそんな奇行が目立つのかについては一つ気になったところはあった。

例えその疑問自体がある種の現実逃避であったとしても、それなりに考える意味はあったのだ。

 

(たしかにお世辞にもカッコいいとは言えへん人や。変な行動も目立つ……。けどその行動理由はしっかりとあったことは間違いない)

 

彼が奇行に走った時必ず口にしていたのは殺人事件に遭うということ。

しかもそれが1年365日、24時間どこでもそこでもで遭うと言うのだ。

それも日本において屈指の治安の良さを誇る米花町で、である。

 

勿論そのことを聞けば一郎は「これで治安がいいのか……」と絶望の淵に立たされあんまりだぁぁぁっと叫びながら目からハイライトが消え失せすべての願いを歪な形で叶える魔法の聖杯を探しに行くに違いない。

 

それはさておくとしても、実際に一郎の足取り調査を行わせた紅葉の元には『確かに行く先々で事件に巻き込まれている』という調査報告書が上げられていた。

 

これを単なる不幸で片付けてよいべきか否か。

 

ましてその多くは殺人事件。時として自身も狙われた爆弾事件や航空機のハイジャックにまで遭遇している。

運命というものを恋占い程度には信じていた紅葉にとってまさか、とは思うが本当に本人が巻き込まれ体質なのかこの目で判断したかったので。

 

よしんばあまりにも連続で事件に巻き込まれて彼がそう思い込んでしまっていたのだとしてもメンタルケアという形でお礼をしようと考えていた。

 

最も狂人だったらどうするのか、という声もここに来るまではあったが杞憂というものだろう。

さっきだって顔を赤くしながらビックリしていたのだし間違いないはずだ。

 

彼の性格はどこまでも普通のそれである。

 

「ウチもべつにそこまで探るつもりやなかったんですけどね。一郎君の家を探していると一緒にいろいろな情報が入ってきたんです」

 

(えっじゃあこの間警視庁で泣き喚いたことも耳に入れてるわけ⁉︎)

 

最悪の事態を想定して顔を青くする一郎(もっとも始めからそんなことしなければいいとは思うが)だが今はまだ感情ブレイクする時ではないと自制し紅葉の話を聞き続けた。

 

「あちこちで言われてたんはひとつだけ。“殺人事件に遭いたくない”でした。……正直ウチも話半分では聞いていたんですけど、この家に来たときに確信したところはあります」

 

紅葉の目線の先にあるのはブルーシートで覆われた屋根の一部。この間ヘリが墜落した時にできた穴である。

 

「せやけどそれは全部ウチの予想でしかありません。あなた本人がどう考えてるか、そこまでは分からないんです」

 

だから、と一呼置いて紅葉は言葉を続けた。

 

「もし何か悩みがあるんでしたら、聞いてもよろしいですか?程度にもよりますけど何か力になれることもあるかもしれませんし」

 

本人の評判や普段の行動。そうしたものは特に紅葉の何かを変えることはなかった。ただ純粋に、自身の恩人が困っているならその悩みを聞いてあげたいというものであった。

 

しかし目の前の男はそんじょそこらの人間じゃない。

アニメや漫画なら「実は……」と素直に己の境遇を話し出すかもしれないがそうするべきか否か悩んでいた。

 

この世界に転移してから数年たってようやくやってきた米花脱出に繋がるかもしれない希望。

確かに自身が他の何よりも待ち望んでいたものだったがいざ対面すると途端に躊躇してしまうのだ。

 

それに、と一郎は考える。

 

これまで考えたありとあらゆる方法は失敗に終わっている。

それも強制的なやり直しという形かコンタクトの失敗という形でだ。

 

有り体に言えば、度重なる失敗という結果に一郎はすっかり自信というものを喪失してしまっていたのだ。

もうどうにもならない諦めよう。少しでも前向きに生きれるように頑張ろうというのが今の心情だったのだ。

 

果たして次の計画は上手くいくのか。

一郎の胸の内にはその言葉ばかりが渦巻き、そしてそれについて成功すると言えるような気概は持っていなかった。

 

「……正直申し出は本当にありがたいです。今も涙が出そうではあります。……けど、どうしたらいいか。心の整理がおっつかないんです」

 

側から見たら事件終盤で犯人が自供するようなシーンにも見えるこの状況、そう言っても過言ではないくらいに一郎の顔は憔悴しきっていた。

 

しかし意外にもその憔悴は米花脱出の失敗によるものでは無かった。

ほとんど赤の他人をこのイカレた問題に巻き込んでしまっていいのかと。それこそが今まさに一郎を苦しめていた問題である。

 

他でもない自分自身が一番よく知っているのだ。

進まない時間、繰り返される1年。そしてそれを自分以外誰も認知していないということ。

 

それがどれだけ辛いことなのかは一郎はこの世界の住人の中で一番知っていた。

 

おまけにただループするわけじゃない。

殺人事件という余計なおまけまでついてくる悪徳商品だ。

 

それにだ、究極的に言えばこの問題はそもそも問題にすらなっていないのだ。

少なくとも一郎が来るまではそれで何もかもうまく行くはずだった世界である。

 

他でもない自分がトリッパーという特殊な立場ゆえに(自分だけ)問題に見えているだけのこと。

自分が他とは異なる出自だから、この世界における普通じゃないから、だから自分以外の誰もが気にしていないことに苦痛を感じる。

 

もしここで目の前の人に助けを求め、すべてを話したらどうなるだろうか?

自分は救われるかもしれない。

そうでなくとも少しは心が軽くなるはずだ。仲間を得たことによって。

 

だがそれは己自身の主観に過ぎない。

結局のところ自分の感じる苦痛を幾分か肩代わりさせるだけなのだ。

 

この場合紅葉に時間のループを知覚させ、永遠とも思える繰り返しの中に身を投じさせかねないのだ。

 

そして残念なことにそれによって起こる苦痛に対する責任を負えるほど一郎は強くなかった。

 

「長々と考えて行き着いた結論がこれかよ。……やっぱ俺ってクズだな」

 

自嘲した笑みを浮かべ続ける。

 

「……正直に言うとですね、俺……紅葉さんを巻き込むことに対する責任を取れないんです。だから言えない。責任を感じたくないから、だからーー「だから帰ってくれって言いなさるんですか?」……」

 

ほんま、ここまで不器用やとは思いませんでした……とため息をつきながら紅葉は言った。

 

「苦しい時は苦しいって言えばええんです。なんもかんも溜め込んでたらお腹壊します」

 

ここに最初に訪れた時から何か抱えてそうだなと当たりをつけていた紅葉だが改めて確信した。

 

今自分の目の前にいるのは迷子の犬である。

それも飼い犬なんかじゃなく野生の犬だ。

 

いつのまにか見慣れた山から街中に迷い込んでしまって困惑している、という具合だろうか。

おまけに厄介にも自分のような存在がバレて捕まったらどうなるかまで知っているようなものである。

 

さて、そういう状態の犬にはどうするのが効果的だったか。

少しばかり考えた紅葉はさっそく行動に移すことにした。

 

「ま、言おうにも言える相手がいなかったっていうところやったんでしょう。せやから……」

 

「えっ?ちょっと紅葉さん何を……」

 

おもむろに席を立った紅葉はそのまま向かいの一郎の元に向かって行って、優しく抱きしめた。

 

「っ⁈」

 

あまりに突然というか予想だにしない行動により一郎の頭は完全にパニクってしまった。

慌てて振り解こうとするが、下品な話だが、その度に大きな胸が当たってなれぬ異性の存在を感じ体が硬直してしまう。

 

……一瞬なんでこんなに無駄にリアルに伝えたんだろうと我に返るが、とにかく今は一度離れて欲しかった。

 

「ちょちょちょっと紅葉さん!そのっ!あのっ!」

 

続けて気は確かかと声をかけようとした時抱きついてきた紅葉から優しげな声色で宥められた。

 

「説明しろとは言いません。訳も聞きません。けどあんまりにも見てられないほど苦しそうな顔してたんです」

 

苦しい時は苦しんでいることを吐け、とはよく言うが実際に吐けるほど簡単な悩みじゃないことがほとんどである。

 

それは紅葉自身にもあったことで小さい頃は色々と悩みがちだった。

そうしてどうにもいかなくなった時には必ずする対処法があったのだ。

 

「苦しかったら眠ることです。少しでもええ。眠ってる間は心も体も苦しいことから解放されますから……」

 

そう言いながら一郎に頭を優しく撫でる紅葉。

小さな頃は時たま母にこうしてもらうことがあった。

 

まさかそれを十数年越しに、しかも同い年の男の子にするとは思っていなかったが。

 

「果報は寝て待て、急がば回れ。まずは心を落ち着けてください」

 

すでに一郎の抵抗もなく部屋にはほんの少しの嗚咽する声が響くばかりだった。



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10話

今までオチをどうするかで悩んで投稿できていませんでしたが、この度オチらしきものを見つけられたかもしれませんので投稿いたします。
ちなみにそこに至る展開とかストーリーとか一切思いついていません(迫真)
なんなら久々に書いたので雰囲気違うと思います(1敗)


せせらぎの音と小鳥のさえずりをbgmにして朝の支度を始めるシーンって偶に洋画であるよね。あれってたいていお金持ちとかがしているやつでそういうのを見るたんびにあんなののどこがいいんだクソ野郎。こちとら毎朝スマホのアラームじゃいって思ってたんだが……。

 

「ん~……今日もおいしい平和な空気だ。観よあの小鳥たちを。今日も一日輝いているではないか。ご苦労だよ雀たち!」

 

あぁ……なんという最高の朝。なんという最高の始まり方!

これこそ我が人生におけるごーるでん!

 

「毎朝毎朝よく飽きないもんやね。一度病院に連れて行こうか?」

 

「ふはは~!今日も空がきらめいてるなぁ!……いやすみません。冗談です、はい」

 

いやさ、ほら、こぅ人生で一度はこの世の勝ち組みたいな人生舐め腐った発言ってしてみたいもんじゃない?

えっそんなことないって……そんな……。

 

まぁとにかく現在の状況を説明するついでに整理しよう。

 

結論から言うと紅葉さんは俺の協力者になってくれた。しかもそのおかげで俺はあの米花町から脱出することが出来たのだ。

そして今は紅葉さんの実家の方に居候(穏当な表現)させてもらっている状態である。

 

どうしてあの魔境から逃れられたのかといえばなのだが、やはりカギになったのは作品に登場したキャラクター(それも一回の出演で終わりではない何か特別性のある)だった。

 

俺が一人でどうにかしようとしていたときはキッドを利用してコナン時空からフェードアウトしようとしたわけだがその計画は結局とん挫してしまった。

 

その時点でもうこの方法は使えないだろうと半ばあきらめていたのだが、無限ループとこの計画を含めたこれまでの体験を紅葉さんに話したところナイスなアイデアを閃いてくれたのである。

 

「いやーにしてもこれで何度目の春なんやろね。にしても不思議やわぁ……。世界がループしているなんて言われるまで全く気がつかんかったのに気づいたらもう違和感しか感じんのやね」

 

「まぁそれも最初のうちだけでしばらくしたら慣れるけどね。それよりもそろそろ学校もまた始まるし準備をしておかないと」

 

「せやね」

 

そのアイデアというのが引っ越しである。とてもシンプル。分かりやすい。

 

ただし俺が今までやってきたようなものというわけではない。

色々と細かいことは省くが俺は大岡家の関係者となったのだ。

 

とはいえ別に家族になったとかそういうわけじゃなく、あくまで大岡家はパトロンとして俺はその支援を受けるためということで”やむを得ず”、そう”やむを得ず”京都に引っ越す必要が出来たのである。

 

まぁ名目なんかはハッキリ言ってどうでもいいのだ。そもそもそのあたり全部紅葉さんがやってくれたんで俺は一切分らん。何とかなるやろ(楽観的希望観測)。

 

そしてやはりというか俺の予想通り今回の引っ越しでは俺は強制的に米花町に戻されることはなかった。

 

このことを踏まえるとこの世界は原作キャラクターによる変化しか受け入れないのだろう。メタ的に言うならば新たな展開を生み出すためのキャラ人事というところかな?

 

とはいえ慎重を期するためにも長い時間をかけてちょっとずつ”当たり前”になるように行動はしてきたのだが。

 

正直上手くいったときの元日は泣いた。超泣いた。おもっくそ泣いて泣きまくりましたとも。

 

ああ……ようやくこの地獄はいったんの終わりを迎えたんだな……って。

感動のエンディングですよ?ほら泣けよ。

 

とはいえ完全に安全か?といわれるとそうでもないところではある。

なにせここは京都。映画の舞台になったのは数知れず。しかもたいていスペシャルでいつもより火薬多めな事件が起きるわけで……。

 

まぁそれでも毎日人の死体を見るよかはるかにマシである。

 

それにどう頑張っても、それこそ普通のコナンワールドでない現実世界でだって殺人事件に合う時は合うのだ。

 

そのあたりはもう潜在的な、取り外しのできないリスクとして甘受するしかないだろう。

実際俺もそんなレベルまで求めてないし。

 

まぁ積極的にかかわろうとは一切思わないし巻き込まれたくもないがな!

 

とにかく!こうして俺は素晴らしき平穏を呈に入れることが出来たのだ。悔いはない。

……っあ嘘です。割と結構色々あるんで許してくれ。

 

「いやはやしかし!なんというかこう清涼な空気っていうのは時間を忘れさせてくれるものだよね!具体的には丸一年くらい!」

 

「何やらツッコミ入れて欲しい空気は分かりますけど、ウチは大阪の人やないですからやりません」

 

時間と空間には関係性があるし子供の頃の1日と大人の1日は感じ方がまるで違うしなんかそういうアトモスヒアなスーパーエネルギーが大岡邸にはあるのだろう。

ナムサン‼︎イヤー!

 

「というわけで今日は気分もいいしちょっと遊びに行ってくるよ」

 

「学校はないですけど部活はあるってこと忘れてません?」

 

忘れた!っていうか米花町での一件以来紅葉さんが微妙に辛辣で辛い‼︎辛いじゃなくて辛い。ここポイントな。

それに問題はない。どうせループするからやり直すチャンスはある。

 

「自分で言うのもなんだけどこれ絶対しないやつだ。自信もって言えるよ」

 

とはいえちょっとは真人間なところを見せないと立場がやばそうではある。居候()で学業(部活)も不真面目でよろしくないとかこれ腹切案件では?

コナン時空だし下手すりゃ恨み買ってて殺されるかも分からんね。

子供が被害者の事件って記憶にないけどこれから起きる可能性は十分にあるわけで…………あれ?俺ひょっとして堕落しすぎて生命がやばい?

 

「……たまには永遠の青春を味わうのも悪くないかな。うん。超世紀エンクロジャジャリオン最終章を見るのはまたにするよ」

 

「なんとなく考えていることは分かりますしそれが考えすぎってこともわかりますけど結果良ければってやつにしといた方がよさそうやね」

 

あっちなみに部活は世界を大いに盛り上げることも特になさそうな文化系の部活である。具体的にはって?まぁ好意的にいえば万屋。

えっそうじゃないならなんて言うかだって?……うん、まぁその、都合のいいやつ?

 

「説明しよう!何度もループを重ねるうちに大概のことは出来るようになったのだ!つまりは毛利さんの超人化現象だな。流石に弾丸は避けれないけど」

 

おかげさまで7面ロップだっけ?なんかそんな感じのことわざみたいに多方面で大活躍である。

結果としていろいろな部活から勧誘がかかり最終的に各部活同士の抗争に至りそうになったが俺が共有財産として扱われることで解決に至ったらしい(紅葉さん談)。

それを聞いて俺は最初にこう思ったね。「いや俺の人権は?」

 

とはいえ頼られるのも悪くないしマジで事件も起きなくて平和なので気分転換も兼ねて活動している。

共有財産になったことで独自の部活の作られたんだぜ!名前はボランティア部。部長は俺!部員は俺!以上!すくねぇ!

 

「孤独を再確認したところで今日の遊び(部活)の準備をするかね」

 

「ウチも午後は無理やけど午前は空いてるんで見させてもらいます」

 

しかし考えられないほど平穏だな……。今までなら絶対部活なんてしなかったと思うし確信してる。

どう考えても部活関係で事件に巻き込まれるだろうしね。

 

それになんのかんので阿笠博士とか灰原とかコナンにそこそこ(重要)迷惑かけてたしあっちもこれで一息つけるだろう。

いや一息どころか永遠に息をつけててほしいしなんならコナンはぜってぇこっちに来るなとは思ってるが。

 

「案外向こうは気楽にやってるかもな!わはははは!」

 

なんて自分でも分かるくらい阿呆なことを言いながら俺は紅葉さんと支度を始めた。今日は雲一つない快晴である。

 

*****

 

「のぉ新一……流石にあれはまずいんじゃないかのぉ」

 

「わぁってるよ博士。流石にあれはどうにかした方がいいよな」

 

阿笠邸の居間で物陰に隠れながらヒソヒソ話しているには家主の阿笠博士とその知り合いのコナンである。

2人が見つめる先にいたのは灰原哀であった。

 

「………………………ッチ」

 

訂正する。傍目で見ても分かるくらいメチャメチャ機嫌の悪い灰原哀であった。

なんというかもうオーラがすごい(KONAMI)。

とはいえ灰色の脳細胞っぽい何かを持つコナンにとって原因はすぐに推理できた。

 

「どう考えても一郎が引越ししたからだよな博士……」

 

「そうじゃな新一。ついでに言えば『大丈夫だって。たまには連絡するし帰ってくるよ』とか言いながら一度も帰らず挙句の果てに“新天地で平穏に暮らしてます。ぶち壊しに来ないでください”なんて手紙を堂々と笑顔の写真と一緒に君らに送ってきたからじゃないかのぉ」

 

「ああ、ちげえねぇ。もっと言えば大岡さんの胸にデレデレしてた写真だったからな……」

 

冷や汗を流しながらコナンは阿笠博士の仮説に補足をする。その瞳は確信があるようだった。

 

「そういえば灰原のやつ今何やってんだ?」

 

「よくは分からんが……そういえばこの間アマゾオォンで頼んだ覚えのない藁の束が来ておったな……」

 

「あっ(察し)」

 

本日の米花町は曇天。ちなみに今週はずっと雨の予報である。

コナンはこの頭痛を季節外れの梅雨のせいだと信じたかった。



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