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馬鹿と天才は紙一重という言葉がある。
昔の俺は天才なら馬鹿と紙一重な訳ないじゃん、と言葉の意味を深く理解しようともせず感じたままにそう思っていた。
俺は馬鹿でも天才でもなく、学校の教室を見渡せば絶対いる凡人だと自分では思っている。
実際テストの成績は平均を行ったり来たり、運動神経も悪いとも良いとも言えない、何か特別に得意と言える物も特にある訳でもない。
極普通で世界にありふれた一般人。
言うならればモブだ。
だから天才という言葉にほんの少し憧れがあった。
何もしなくとも成績は常にトップ、運動神経も抜群で何だって出来る、そんな絵に書いたような天才になりたい。
そう思った時期が誰にだってあると思う。
もちろん俺にもあった訳だ。
でも意外と天才ってやつは身近にいたらしくてこれがまたあれだ。
なんというか.......あれなのだ。
「どうして私たちは空を飛べないんだろうね」
「なんだよ藪から棒に。タ○コプターはねぇけど飛行機とかヘリコプターとか色々あるだろ」
「それだよ!よしっ、じゃあ飛行機に乗ろう!」
「いやお前ふざけんなよ」
こんな感じに色々とぶっ飛んでるやつなのだ。
もうね、天才への憧れというかそういうの全部吹き飛んだよね。
いや100歩譲って飛行機に乗るのはいいよ?
今もう夕暮れじゃねぇか、てか何処行くんだよとか思わなくねぇけど、まず言わせて欲しい。
「お前が山に登りたいとか言って今山登ってんのに飛行機乗ろうって馬鹿なの?アホなの?下山するの?」
「うん、下山する」
「下山するじゃねぇよ!」
「だってその3択だったらそれしかないじゃん」
「なんか日菜に馬鹿正直に返されると無性に悔しい.......」
よしっ、降りよう!
と元気に降りて行く日菜の後ろ姿を眺めつつ溜息を吐いて俺もそれに続く。
え、降りんのはいいけどホントに飛行機乗らないよね?
嘘だろお前.......助けて紗夜えもん!
「全く貴方は.......」
「えへへ、ごめんなさい」
「ねぇなんで俺も怒られてんの?」
結局あの後紗夜に連絡して日菜の暴走を止めてもらい、こうしてマックにて反省会なう。
因みにこの机にあるポテトの山は俺の奢りである、まぁ飛行機のチャーター代に比べればダメージは軽い。
おいこらそこの氷川妹の方、ナゲットも追加で頼もうとしないの。
俺のサイフが悲鳴上げてるから。
そもそもですね、とポテトをパクつきながら俺を叱る紗夜。
ていうかそもそも何で俺が怒られてんの?
寧ろ被害者じゃん俺。
はぁ、と溜め息を吐いて、ついでにポテトを食べて紗夜は言った。
「そもそも空はなんで馬鹿正直に日菜に着いて行ったのよ」
「いや1人で登らす訳には行かなかったし.......」
「そんな所で微妙な優しさ発揮しないで、最初から私に連絡して下さい」
めっちゃ紗夜が俺に辛辣な件について。
だからですね、とポテトをぱくぱくしながら積極垂れる紗夜。
全く、と呆れながらもポテトをぱくぱくする紗夜。
もうこんな時間なのに、とまだ説教を続けつつもポテトをぱくぱくする紗夜。
何というか相変わらずのようで、そんな紗夜のポテ狂な様子を見ていると微妙に反省仕切れない自分がいる。
「あっ、これ新商品だっ!すみませーん、これ6つ下さい!」
「待て待て待て待て」
「どうしたの?」
どうしたの?
じゃねぇよ、可愛く首を傾げたって無駄だ。
「可愛いだなんて.......褒めてもこの新商品しか上げないよ?」
「いやそれ俺のお金で買うんだよね?」
バレたかー、ってバレるわ馬鹿。
「なんでそもそも6つも頼む必要がある」
「1人2つずつだよ?」
「1つでいいよね?なに、お前は冒険しないと気が済まない体質か何かなの?」
「んー、空の苦しむ姿が見たいから?」
「やめてくださいしんでしまいます」
冗談だよ、と笑う日菜だが果たしてそれは本当に冗談だったのか。
俺は知っている、コイツはやる時はやる女だということ。
昔俺が何でも頼んでいいぞー、と言って先に席を確保しに行った時の事だ。
俺が席を確保して日菜の元に帰ろうとすると、日菜がやって来て「空の分も頼んどいたから!」とたまには気が利くじゃんと席に着いた訳だ。
今思えば俺はもっと疑うべきだった。
そして運ばれてきたのはなんと全メニュー。
1度やってみたかったんだよねー、とホクホク顔な日菜に俺は開いた口が塞がらなかったね。
そして当の本人は「もう食べられないや」とか抜かしてそうそうにリタイア。
風のように去っていく日菜、そして残された俺と山のようなポテトとバーガー。
俺は泣いた。
「頼むなよ?絶対頼むなよ?」
「うん、だから頼んどいた」
「だからって何?」
「ポテトだけ頂きますね」
てか相変わらずかよ紗夜は。
因みにこの日は晩飯が食べられなかった。
―――――――――
「んー.......んー?」
「どうした、そんなに唸って」
俺は学校の宿題であるプリントからペンを話して、隣の机の上で足をぶらぶらさせながらうーだとか、んーだとか言って唸っている日菜に声を掛ける。
俺は日菜と違って天才でも紗夜とも違って秀才で努力する事も殆どないから、一刻も早くこのプリント終わらせないと最終下校時間まで此処にいるハメになるんだけど?
「えっとね、どうして空はモテないんだろうって」
「ナチュラルにディスるのやめない?」
唐突過ぎる侮辱に俺は泣いてもいいと思う。
顔か?顔が世の中全てってか?
はい、概ねその通りだと思います。
くたばれイケメン、ファッキン世の中。
俺が心の中でイケメンに中指を立てていると違うの、そう言って未だに難しい顔をして言った。
「空って要領もいいし、人付き合いというか距離の取り方も上手いから意外とクラスでも人気だし、気も利く。なのに何で告白すらされないんだろうって」
「褒めてんの?貶してんの?」
何真剣に悩んでますって顔してんだよ。
ハッキリいえよイケメンじゃないからって。
泣いてないよ?ホントダヨ。
この際日菜の俺に対するナチュラルディスりは置いておいて。
別に俺はそんな絵に書いたような出来る人間じゃない。
自分の無能さは自分が良く理解している。
幼い頃から氷川姉妹とずっと一緒にいれば嫌でも思い知らされる。
日菜は何でも簡単にこなしてモノにしていくし、紗夜も日菜のせいで目立ってないが間違いなく天才寄りの人間だ。
そんな常にキラキラしていて今をときめく2人とずっと一緒にいたんだから腐っても仕方がない、そう思っている。
別に俺が特別劣っている訳じゃないってのは分かっているがこればかりは俺だって嫉妬もすれば、カッコイイ自分に憧れるたりもする訳だ。
まぁもうそんなことは無いけれど。
要するに不貞腐れて色々と達観しちまった訳で。
けど今はそれに関してどうとも思っちゃいない。
色々あったが今は日菜や紗夜の周りが何となく自分の居場所なんだなって思えるようになったから。
2人は俺にとって自慢の幼なじみだ。
「ねぇ、空はどうしてだと思う?」
「それ俺に聞く?ねぇ死体虐めて楽しい?」
でも誠に遺憾ながらモテないのは紛れもない事実でもある。
やっぱ顔かな?
日菜曰く、るんってする感じの顔らしい。
どういうこっちゃねん。
いや、まだ高校2年目。
最悪大学生になればワンチャンあるはず.......あるといいなぁ。
「というかお前今日此処にいて大丈夫なのかよ」
「うん、今日は撮影の予定もなにもないしずっと一緒だよ!」
「そうか。じゃあ晩飯も一緒だな」
うんっ!と元気よく返事をする日菜の笑顔はいつもどんな時も変わらずキラキラしている。
なんだろうか、そんな笑顔を見ているとつられて笑っちまうし頑張ろうかなって思えてくる。
まぁその分疲れたりもする事もあるけどな。
俺と日菜しかいない教室は静かで、耳を澄ましても外で部活に励んでいる生徒とペンが机を叩く音しか聞こえない。
そろそろ終わるかなぁと少し伸びをしながらふと隣を見ると何故かニコニコしながら俺を見ている日菜と目が合った。
ずっと見てたのか?
「どした?」
「んーん、なんでもなーい」
以前としてニコニコとした笑顔を崩さずに俺を真っ直ぐと見詰める日菜に首を傾げながら俺はプリントへと視線を落とす。
そこで俺はそういや、と口を開く。
「そこ座って足ぶらぶらさせてるとパンツ見えるからやめとけ」
「私は気にしないよ?」
「そうか、ならいいか。って良くないわ」
「えー、いいじゃん。今なら見放題だよ?」
「うっせ。いいから隠せ」
ほらほらー、とスカートをひらひらさせる日菜はきっと悪い顔をしていると思う。
ちらりちらりと顔を覗かせるパンツに目を吸い寄せられるのは男の咎みたいなもので、ゴクリと唾を飲み込む俺を誰が責められようか。
俺のそんな様子を見て日菜は更に笑顔を深くする。
幾ら幼なじみと言えどもこればかりは弱い。
「うわっ、いやらしー」
「誰か来たらどうすんだ馬鹿!」
欲情はしなくとも何となく気恥ずかしいのだ。
断じて童貞だからとかそういうのではない。
ないったらない。
からかい飽きたのかまた静かになる教室。
また暫くプリントに集中していると唐突に話しかけられた。
「空は好きな人、いないの?」
「いねぇよ」
珍しく少し歯切れの悪いの言葉に俺は即答で答えを返した。
そうなんだよ、出会いは求めてはいるが日菜風に言うとるんってくる相手がいないのだ。
紗夜みたいにクールと見せかけて割とお子ちゃまみたいなギャップ萌えがあって、日菜みたいに明るくて一緒に居て楽しい女の子どっかにいないもんだろうか。
俺の答えを聞いて「そっか、そっか!」と唐突に声を張り上げ嬉しそうにする。
何でそんなに嬉しそうなんですかねぇ、俺の事そんなに虐めて楽しい?
「何でそんなに嬉しそうなんだよ」
「分かんない!だからマックに行こうよ!」
何がだからなんだろうね。
というか分かんないのかよ、そんな気はしてたけど。
それよか引っ張んないで、俺まだ提出すんの忘れてた宿題終わってねぇから。
「お、2人ともこんな時間に何してんだ?」
よせやい、行こうよ!と漫才をするかのように無益な引っ張り合いをしていた俺達は教室に入ってきたクラスメイトに話しかけられて咄嗟に佇まいを整えた。
「なんだ、居残りか。俺は帰るけど2人きりの教室で間違いだけは犯すなよー」
「余計なお世話だっつーの!」
「あははは.......」
そう言って教室を出て行くクラスメイト。
反射的にそう言い返す俺に対して、苦笑いを零す日菜。
何でそこで苦笑いなんだよ、もしかして間違い犯すつもりだったのかよ。
「犯すとしてもこんなリスキーな場所ではしないよ」
「おい、なんだよその隙あれば犯します的なニュアンスは」
「例え話だよ。もしかして期待した?」
「ばっかお前、そんな訳ねぇじゃん」
嘘だ。
割とやるんすかマジすかやっべーどうしよ準備とか全然出来てないしどうすればいいかわかんねぇやべぇよやべぇよ、とか思ってたりした。
ホントかなぁ、とくすくす笑いながら見上げるように俺を見詰めてくるもんだから目線を逸らしてしまう。
「冗談に決まってるじゃん。空はホントに変わらないね」
「もう俺の負けでも何でもいいからそろそろ真剣にプリントやらせてくれ.......」
「ごめんごめん」
ぜってー申し訳なく思ってねぇだろお前。
「じゃあさ!この後ポテト奢ってよ!」
「わーったから静かにしてくれ」
「やった!空大好き」
はいはい俺も大好きだよ。
更西 空
本作のオリ主。
氷川姉妹とは幼なじみ。
日菜の理解者でもあるが、付いていけるのは彼だけという意味でもありある意味苦労人。
氷川 日菜
氷川姉妹のやべぇ天才の妹の方。
距離感が近く、特にオリ主との距離はもはや異性との距離感ではなく学校では公認のカップル.......ではなく夫婦。
最初は騒がれてたがもう今では「またかよ」みたいな感じで皆慣れた。
氷川 紗夜
氷川姉妹のなんちゃってクールビューティ(笑)な姉の方。
嫌いな食べ物がにんじんと知った時のときめきは半端ではない。
根から真面目なのでクールに見えるが、オリ主と居ると気が緩むのか割と抜けている事が多い。
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朝強い奴は人間じゃないと思う
朝は辛い。
夏はくっそ暑くて起き上がるのも億劫で、全てにおいてやる気が削がれて何もする気になれない。
冬は冬で寒過ぎてそもそも、ベッドの中から出る気になれずあと何分.......何分と言い訳するように篭っているとそのまま寝過ごすという事態が発生する。
2度寝なんて日常茶飯事で休日にもなれば毎回のように昼まで寝ている、そして紗夜にドヤされる。
お前は俺の嫁か何かか。
そう言うと更に怒りが増して罵倒が激しくなるので絶対言わないが。
そして何よりも、
「空、おはよー!」
いつも聞き慣れた明るい声と同時に我が掛け布団が宙を舞う。
あぁ、俺の相棒が.......
何よりもお隣さんの我が幼なじみがこうして毎朝寝起きにテロってくる天災。
「あぁ.......日菜、おはよう」
「おはよー!相変わらず朝は機嫌悪いねぇ」
「分かってんならもう止めてくれ」
「んー、いや!」
ですよねー。
無駄にいい笑顔が俺には朝日よりも眩しいよ。
正直このまま日菜を無視してベッドに立てこもってもいいのだが、そうすれば間違いなく日菜は暴走するし、紗夜からはありがたーいお話を頂くことになるので渋々立ち上がる。
.....................。
「いや出てってくれないと着替えらんないんだけど」
「今更じゃない?私は気にしないよ」
「だから俺が気にするの!」
女の子にニコニコ笑顔でガン見されながら着替えるとか新しい拷問か何かかな?
「ただの布切れ1枚に大袈裟だなー。じゃあさっ!私のパンツも見せてあげるよ、これでおあいこだね!」
「何がじゃあだよ!スカート持ち上げんな馬鹿!」
「そう言ってパンツを食い入るように見る空くんであったー」
「ばっか、お前のパンツなんかに興味なんてねぇよ」
嘘です。
こんなんでも可愛いから普通にドキッとします。
水玉パンツ、ありがとうございます。
「うっそだー。鼻の下伸ばして言われても説得が力ないよ」
「の、伸びてなんかねぇし!どちらかと言うと俺は日菜のパンツより紗夜のパンツの方が見たいね!」
「へぇ」
すぅ、と細くなった日菜の目。
あ、やべぇ死んだわ。
寝惚けていた頭が途端に冴えてきて、背中に嫌な汗が流れる。
「私のよりお姉ちゃんのパンツが見たいんだ」
「あ、いや.......」
「ふーん。そっかそっか」
パンツの話でここまで窮地に陥った奴が居るだろうか。
少なくとも俺は知らない。
というか日菜がパンツを俺に恥ずかしげもなく見せびらかしてくるから、なんというかレア度が乏しく低くありがたみが薄いのに対して紗夜のパンツはガードが固い。
装甲車どころかメタルギア並に固い。
故にそのスカートの中にある桃源郷を見ていたいと思うのは仕方がない事ではないだろうか。
見えないからこそ求めるのだ我々男はその先を。
それに紗夜は絶対赤面して超恥ずかしがるぞ、絶対可愛いぞ。
「それに比べて私は可愛くないって?」
思考が全部筒抜けな件について。
「い、いや日菜も可愛いぞ」
「声震えてるけど」
幼なじみ様の後ろに修羅が見えるからです。
「だってさ、お姉ちゃん」
「え」
日菜がさっと身を引いて現れたのは姉である紗夜。
表情は俯いていて分からないが見えている耳は真っ赤で小刻みに震えているのが伺える。
え、何時からいたんですと?あ、最初からっすか。
「空の馬鹿!変態!え、えっち!」
なんで言ってる方が恥ずかしそうにしてんだよ可愛いかよ。
因みに腰の入ったいいビンタを頂きました。
そして日菜は大笑い。
ほんと朝はろくな事がない。
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「それ、どうしたの?」
「聞くな後輩」
俺の頬に真っ赤に咲いた椛を指さしながら呆れている赤メッシュの後輩ちゃん。
ジト目でまたか、みたいな呆れ顔してるけど、絶対想像したのと違うからなそれ。
今俺は日菜にお姉ちゃんのご機嫌取ってくるから先行ってて、と言われて先に学校に行ってる途中にコイツらに会ったという訳だ。
もはや彼処まで怒らせると俺とは間違いなく口を聞いてくれないので、日菜に任せるしかない。
ホントに頼むぞ日菜。
まぁお前が原因でこうなったんだけどな。
「紗夜さんに〜、パンツ見たいって言ってビンタされたんだ〜」
「うっわ、先輩さすがにそれはないですよ」
「色々と弁明させて貰いたいところだがその前に、モカお前なんでわかんだよ」
モカちゃんは超絶美少女だから〜、と間の抜けた声でいう自称美少女。
まぁ確かに美少女なんだが自分で言っていいものじゃないだろそれ。
ていうか美少女うんぬん関係ないからな。
後、ひまりはどうでもいいけど蘭が本気で後退り始めてるからモカは少し黙ってような。
コイツらは同じ学校の1個下の後輩で、日菜や紗夜というかバンド関係で知り合いになった仲でそれ以来こうして顔を合わせれば話をするような間柄。
いつも5人なのだが今日は3人。
赤メッシュのツンデレ担当、自称美少女担当、アホ担当。
「それ、どういう意味ですかっ!」
「どういう意味も何もそういう意味だ」
「意味わかんないですよ!」
君は一々鵜呑みにし過ぎな、あと蘭足踏まないでそれ結構痛いから。
「まぁ俺の中での美少女は日菜と紗夜だからな」
「空先輩も罪作りな男ですな〜」
「何がだよ」
「そう言う所です」
「ほんと空先輩は乙女心ってものが分かってないですね」
「馬鹿野郎、お前は万年頭ん中恋愛脳なだけだろ」
「失礼ですねっ!」
ギャーギャーと五月蝿いひまりが噛み付くように飛び掛ってくる。
残念だったな、俺は日頃から日菜の無茶振りにより身体はそれなりに鍛えられているのだ、女の子1人あしらうのは容易い事。
むにゅん。
「えいっえいっ、先輩のバカ!」
「くっ、殺せ」
「正直者ですな〜」
おっぱいには勝てなかったよ.......
動く度に結構揺れるそれはたいそう立派な大きさで、じゃれ合うようにべしべしと俺を叩いてくるひまりの攻撃よりも、押し当てられるように形を変える柔らかいそれの方が何百倍もの破壊力があった。
冷やかな目で俺を下げずむ蘭と、相変わらず何考えてんのか分からんモカ。
どうやら自分の意思じゃ抵抗不可なようなので助けて頂きたい。
助けて欲しいなあ。
「何、してるの?」
「ひっ」
突然後ろから掛けられた声にピンっと背筋が伸びた。
誰だよ情けない声で悲鳴なんてあげたやつ。
俺だよ。
「日菜さんっ!?」
「やっほー、で何してたの?」
うわぁ、笑顔が素敵ですね。
でも目が全然笑ってないですよ。
俺に抱き着いていたひまりは飛び退くように離れて、俺と同じようにガクブルしている。
分かるよ怖いもんな。
ちらりと日菜の目線がひまりの胸に行って自分の胸に行く。
そして俺へとやって来た。
あっ、死んだわ。
「そんなに大きいおっぱいが好きなの?そんなに鼻の下伸ばしちゃって.......どうなの?」
「あ、いや.......」
目のハイライト死んでますよ。
どもっちまったがこれどもらないで普通に言える奴いる?
目線を泳がしてガクブルし情けない姿を晒す童貞がいた。
はい、俺です。
おい童貞は関係だろ。
「別に俺とひまりは争ってただけで.......」
「私にはイチャイチャしてるようにしか見えなかったけどなぁー」
日菜は怒っている。
何故怒っているのかは分からないが、怒っているのは確かだ。
でも今ここで何か言わなければヤバい、何がヤバいかは分からないがそれだけは分かる。
でも俺の口は開いては閉じてを繰り返すだけで言葉を発してはくれない。
やべぇよやべぇよ。
流れる冷や汗、目の前にハイライトの死んだ目。
俺には分かる、これ日菜も口聞いてくれなくるやつだ。
無視されるのはすごく辛いのだ、1週間ほど昔無視された事があるのだがその時は何やってもいまいち楽しくなくてホントに辛かった。
「日菜さん〜、さっき空先輩が1番の美少女は日菜さんだって言ってましたよ〜」
「それ、ほんと?」
「お、おう」
「もー、空ってば恥ずかしいよっ!」
ぴょんっと跳ねて腕を取ってくる日菜はニコニコ笑っていてハイライトさんが帰ってきてきた。
なんか良く分からんがナイスだモカ!
モカの方を見ればサムズアップをして無駄に様になったドヤ顔で「パン1つ追加で」との事で。
「すみません、日菜先輩。勘違いさせちゃったみたいで」
「もういいよ。でも空は私達のだからあまりそういう事したらダメだよ?」
「おい。誰が誰のだって?」
「嬉しいでしょ?踏んであげよっか?」
「なんで踏むとかいう話になった」
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