シルヴァリオサーガRPG ブランシェ家亡命√RTA (TTオタク)
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キャラメイク
正義や正しさなんかよりも、己の愛を貫き通す。なRTAは〜じま〜るよ〜。
本RTAは皆さんご存知。あの凄まじい作り込みと難易度で有名なシルヴァリオサーガRPGのルートの一つ。ブランシェ家亡命√のRTAをしていきます。
まあこの小説に行き着いた読者兄貴たちは先駆者兄貴たちの小説を読みシルヴァリオRTAについてご存知でしょうが、初見の光の亡者候補生にもわかるように、解説をさせていただきます。
このゲーム、シルヴァリオサーガRPGはかの有名アドベンチャーゲーム、シルヴァリオサーガシリーズを原作にしたアクションRPGです。その凄まじい自由度と原作再現度で数多の新規参入者を光の亡者に変えてしまった魔性のゲームです。
原作キャラを主人公に据えてゲームをする事もできるんですけど、オリジナル主人公を作成して新西暦世界に投入する事もできます。
要はギルベルトと一緒にエリュシオンを求めたり、アッシュくんの先輩傭兵になって一緒にモルモットにされたり、ゼファーさんの悪友になって大虐殺時に殺されたり、色々やりたい放題のゲームです。
という事で本RTAはブランシェ家生存ENDの一つ、ブランシェ家アンタルヤ亡命√を走ります。
ブランシェ家亡命√とはなんぞや? という兄貴に説明させていただきますと、ヴェンデッタヒロインの1人であり大天使の異名を持つあのミリアルテ・ブランシェと、両親であるカルロ・ブランシェとエミリー・ブランシェの3人を隣国アンタルヤに亡命させるルートです。
なぜ亡命させる必要があるかと言うと、ブランシェ家の属する国家であるアドラー内で保守派の血統派と革新派である改革派の権力闘争が起きていて、血統派に所属していたブランシェ一家は改革派の暗殺者によって殺害されちゃいます。
その暗殺者こそヴェンデッタの主人公であるゼファー・コールレインで、この一件が彼の軍からの脱走につながってヴェンデッタ本編になります。
それを本RTAはゼファーさんの同僚になって防ぎ、一家もろともアンタルヤに亡命するエンドを目指します。
それではNEW GAMEを押してタイマースタート。それではキャラメイクから始まります。ここでは【名前】【性別】【家系】【個性】それと七つのステータスの傾向を決める事になります。
それじゃあ早速生年を決めます、生年は新西暦1008年。ゼファーさんと1歳差になります。性別は女性にします。ホモ? 何のこったよ。
そして次は名前を入力しま───せん!。先に家系図を決めます。父方の祖父の欄に朧家、要はチトセネキの爺ちゃんの兄弟に当たる人を入れます。そして容姿の髪の色を黒ではなく金髪にします。するとどうでしょう、姓の欄の入力スペースが消えました!
なぜかと言うと血統派全盛期時代の生まれだと、黒髪に近い色じゃないとアマツの血が薄れたとして姓を剥奪されます。
朧家は実力主義的なので、イベントで実力を見せればその時の朧家当主が他のアマツにゴリ押ししてアマツ姓を名乗ってもいいと許可してくれるのですが、今は入力不可能です。なので名前欄にはカティアとだけ入力しておきます。
そして祖母はスラム街から成り上がった投資家のアンジェリックにします。アンジェリックを祖母にすると、黒髪アマツ以外の場合にスラム街イベントが発生するので、コールレイン姉弟との仲を深める事ができます。
残りの家系図は適当にぱっぱと決めていきます。
そして、はい。【天津の系譜】の個性を手に入れました。そしてランダム個性である【奈落の太陽】を入手しましたね。
【天津の系譜】はアマツの血筋を引いていると発生するスキルで、恋愛関連になると暴走する代わりに基礎ステータスと星辰光のステータスにバフがかかります。
そしてランダム個性の【奈落の太陽】は周囲のメンタル値にバフを与える良個性ですね。ただメンタル属性が光側に振れやすくなるので注意です。類似個性に【奈落の月】があるのですが、こっちはマイナさんが持っていたスキルで性能は同じなのですが、こちらはメンタル属性が闇に振れやすくなる個性です。
7つの基礎ステータスである【攻撃力】【防御力】【敏捷性】【技量】【精神力】【知力】【幸運】の傾向ですが、
はい、最後は容姿を作っていきます。実はキャラメイクで容姿ステータスが決まるとかいう鬼畜仕様なのでしっかりキャラメイクします。
そして最後に
収束性A
操縦性AA
維持性C
干渉性C
付属性B
拡散性A
覚醒率B
うん、アマツにふさわしい良ステータスだぁ。特にこの発動値はぶっ壊れてますね、魔星かな? まあランダムなんでこういうぶっ壊れステータスもたまに出るので豪運でしたね。
初見兄貴に説明させていただくと、覚醒率とはあれです。いわゆる「まだだっ!」するためのステータスです。土壇場で覚醒するためのステータスなので高い方がいいと思われがちですが、これが高いとどんどん光属性に寄っていくので気をつけましょう。
この星辰光について説明させていただきます。「
さてこれでキャラメイクは終了したのでいざ本編にイクゾーデッデッデデデデカーン。
誕生時ムービーを流しながらここで一つ。皆様はお気づきでしょうか? このキャラの星辰光の基準値がEである事に。はい、間抜けな投稿者はプレイ当時気づいていませんでした。アマツの血筋なんだしステータス高いやろという慢心と、発動値高いんだし高いやろという油断で見逃してしまいました。
プレイ中に気づいたのは星辰奏者になってから、初めて発動値に移行した時です。はい、お察しの通り引き返せない場所になってからです。EからAAAという怒涛の6段階強化です。辛そうなゼファーさんでさえ3段階なので6段階ともなると入院ルートで、数回使うと死にますね。こんなガバをして完走できるのでしょうか?
まあ完走して世界記録出たので小説になっているんですけどね。
今回はここまで、ありがとうございました。
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スラム街/暗闇の太陽は目を潰す
無計画な時間設定でストーリーが破綻したので時系列修正します。
いくら傍系とはいえど、アマツの血を舐めてはいけない。なRTA第2話はーじまーるよー。
はい誕生ムービーを終えて操作可能になりました。現在は新西暦1018年。カティアがちょうど10歳になった年ですね。仲のいい使用人が小さな誕生日パーティーをしてくれます。ん? 何で小さな誕生日パーティーなのかって?
それはもちろん、アマツの家系図から抹消された身の上だからですね。純系っぽくないアマツはこのようにして迫害されていくんですね。
今ステータスを確認した所、両親はすでに死亡済み。朧出身のおじいちゃんも死亡しており、スラム上がりの投資家であるアンジェリックおばあちゃんとの2人暮らしのようですね。弟が居るようですが、朧の分家に引き取られたようです。
しばらくは特にやることもないので、知力と技量ステータスを伸ばしておきます。
そうして一ヶ月くらい経つとおばあちゃんに呼び出されます。
「おい、出かけるぞ」
そうぶっきらぼうに言われて車に乗せられ、スラム街へ連行されます。そしてスラム街の中心で降ろされましたね。
「お前を捨てる事にした。じゃあな」
それだけ言い残して捨てられます。というのは嘘で実は数ヶ月後に回収しにきます。スラム上がりのアンジェリックは、自分の後継がスラム街で生き抜けるか試したようです。カティアが死んでも朧の分家にいる弟で代用すればいいですからね。
はい、捨てられたカティアちゃんは茫然自失となって泣いています。まだ10歳ですからね。かわいいですね。
今はメンタル値がガリガリ減っていますので、操作を受け付けてくれません。一旦泣き止むまで待ちましょう。
それで再び操作可能になったら迷わずマイナ・コールレインの居る廃墟を目指します。完全なメタ知識ですが、こうでもしないと死亡率が上がってしまいます。
「あら、どうしたの? お父さんとお母さんからはぐれちゃったの?」
はい、マイナさんを発見しました。カティアが着ている服がどう考えても浮浪児が着ているようなボロ切れでは無いから迷子の線を疑ったのでしょうね。
なので迷子ではなく捨てられたと伝えます。
「そうだったの。無神経な事聞いてごめんなさいね」
マイナさんは頭を撫でてくれます。年若い身でまさに聖母のような風格ですが、これもやせ我慢によるものだと思うと胸が苦しいですね。
「貴女、名前は? 帰るところが無いなら私のところに来ない? 私たちは子供同士で寄り合って生活しているの。こんな場所でずっと1人より、きっと良いと思うわ」
はい、孤児集団へ参加するかの誘いが来ました。もちろん承諾します。しないといくらアマツの血筋とはいえ普通に死んでしまいます。
「そう、よかったわ。さあこっちよ」
マイナさんは手を握ってくれます。
そして孤児集団の住処である廃墟に着きました。薄汚れた服を纏った少年少女の中には、幼き日のゼファーさんも居ます。この頃からすでにだいぶ疲れた瞳をしていますが、まだ姉を助けるために無茶をするくらいの向こう見ずさを備えていた頃です。
「みんな聞いて。この子が今日から私たちの仲間になるカティアちゃんよ。みんな仲良くしてあげてね」
「うん、わかった!」
とマイナさんに自己紹介され、明るい返事を返す子供たちですが、全員ではなく何名かは値踏みする様な目でこちらを見てきます。彼らのメンツをきちんと覚えておきましょう。うまく友好値や能力育成を行えられれば、マイナ失踪事件後にゼファーさんと一緒に軍に入って生き残る道を選んでくれるリアリストたちです。幼馴染というつながりは強固ですのでどうにかして生き残らせると後が楽です。
こうして孤児集団での暮らしが始まります。なので早速金策に走ります。
この孤児たちの人員の中から1人でも多く
早速下水道に侵入して貴金属漁りに精を出します。クリストファー・ヴァルゼライドが総統就任後は下水の事情が改善されて貴金属類が下水に流れることが減ってしまいますが、今はまだ公共費用をケチる血統派全盛期ですので金銀財宝が流れ着いてきます。具体的にいえば小銭、指輪、落とした財布など細かい物ですが、チリも積もれば何とやら。特にアクセサリー類は金になります。
はい、結構稼げましたね。ついでにマッピングもしておきましょう。調子乗って先に先に行くと1000匹以上のネズミに襲われて死ぬ事があります(3敗)
「どうしたのこんなに汚れて! え、うそ。これどこで拾ってきての?」
小銭や貴金属類を持って帰ってきたカティアにマイナさんは不安気です。それもそうでしょう。すでに大男たちが縄張りとして侵入者を妨害している上、そもそも命の危険がある下水道に潜り込んで取ってきたなんて普通は思いません。強盗やスリを疑ったのでしょう。
下水道から取ってきた事を告げ、これでみんなの暮らしを楽にするためという旨を話します。
「そう、でも危なくなったら絶対に帰ってきてね。お姉ちゃん、今日のパンが食べられない事は平気だけど。カティアちゃんが死ぬのはきっと耐えられないわ」
マイナさんがまたカティアのことを撫でてくれました。っと、ここでトロフィー『大切な人』を達成しましたね。このトロフィーは作中のNPCに対してプレイヤーキャラの、この場合はカティアの好感度が一定以上になると達成されます。
はいこの作品、実はプレイヤーキャラにも好感度が設定されています。なぜかというと光と闇の相互嫌悪などを再現するためのシステムなのでしょうね。これが結構鬼門で、プレイヤーキャラクターの好感度が高い相手への攻撃はデバフが乗ります。たとえメタ知識で敵になると知っている相手でも起こります。
この仕様は特にチトセ戦で足を引っ張りやすいので、追走者兄貴は注意してください(4敗)
さて、そうこう言っているうちに下水道探索団を組織できる様になりましたね。ここでゼファーさんを含めた見込みがありそうなメンツに声をかけ、下水探索を行います。特にゼファーさんはこの頃から斥候として破格に優秀なので重用します。文句言われてもうまい飯食えるぞと言えば悩んだ末について来るので問題ありません。
そうして資金を集め、廃墟の設備や備品、武装を整えていきます。カティアは一定期間生き残れば迎えがきますが、そのほかの子は無理です。軍入隊まで地力で生き残らねばいけないので、武装や設備は必須になります。
廃墟の防衛体制や見張りの指示を出しておきます。一応カティアはまだ子供なのでそこまで質の良い指示は出せませんが、無いよりはマシです。
「なあ、あんたはどうしてそんなに頑張れるんだ? あんた1人頑張ったからって飯が増えるわけじゃないのに。むしろ誰も助けずに1人で独占した方がいいだろ? なんでなんだ?」
おっと、地図作成中にゼファーさんが話しかけてきました。この質問は時期よって内容こそ変わりますが、ゼファーさんの好感度が一定以上で、プレイヤーキャラのメンタル属性が光だと発生します。はい、現在ゼファーさんには怖がられていますね。ですが今はどうしようもないので、みんなが好きだからと言います。見事に個性の【奈落の太陽】が悪影響を及ぼしたケースですね。
はい。そうして無事ゼファーさんには怖がられたままですが、裁剣天秤で再開後に好感度を回収するので問題はないです。
孤児集団での暮らしが三ヶ月たち、みんなの生活が安定してきた所でマイナさんイベントが起こります。
「本当に、本当にありがとうね。きっとカティアちゃんがいなければ死んじゃってた子も居たわ。かくいう私もその1人だったかもしれないわ。ありがとうね」
マイナさんはまた頭を撫でて、この時は抱きしめてくれますが、悲しいことにこれは決別イベントです。
光属性にメンタル属性が振れていると、返答内容が限られてしまいます。その内容はマイナがもう無理をしなくて良くなった事への安堵です。カティアも似た事を言っていますね。
はい、するとマイナはひどく動揺してこちらを見ます。怯えていますね。1プレイヤーとしては辛いです。
まあ年下の子供で、まだ無知であるはずの年頃なのに、自分が犯罪を繰り返してみんなを食わせていて、その上無理をし続けたことを見透かされたら怖いですけどね。
その後マイナが走り去ってこのイベントは終わってしまいます。翌日には元どおりの関係になりますが、好感度は固定されてしまい、マイナルートは攻略不可能になります。悲しい。
そして孤児集団での生活4ヶ月目にしてようやくお迎えが来ます。一応孤児のみんなを救済しないと自分は帰らないと言うイベントが発生しますが、倍速します。自分で金を稼いでから救えと言われて終わるだけのイベントですので。
はい。今回はここまでです。次回は
†
「本当に、本当にありがとうね。きっとカティアちゃんがいなければ死んじゃってた子も居たわ。かくいう私もその1人だったかもしれないわ。ありがとうね」
私、マイナ・コールレインはありったけの感謝を伝える。今腕の中にいる小さい子供であるカティアこそが孤児の集団でしかない自分たちを、1人欠けることなく存続させてくれたのだ。
腕の中のカティアは、照れているのか顔を赤くしながら答える。
「そんなことないよお姉ちゃん。だってお姉ちゃんだって頑張ってたじゃん」
子供ながらに謙遜だろうか? だが確かにカティアはすごいことをしたのだ。もっと褒められてしかるべきだろう。
「私なんて全然よ。皆が今みたいにご飯を食べられる様にするのは無理だったし。薬の備蓄をする余裕なんて全然なかったわ。だから、あなたのおかげよ。本当に、なんてお返ししていいかわからないくらいに」
カティアはその賛辞に照れながら、子供っぽく笑って返事をする。
「でも、私の下水探索が安定した収入になるまでの間、ずっと支えてくれてたのはお姉ちゃんだよ。嫌なことをいっぱいして。お姉ちゃん笑ってたけど、辛くないはずがないじゃん。だから私、お姉ちゃんが無理しなくても良いようにしたかっただけなんだよ。お返しなんてお姉ちゃんが本当に笑ってくれればそれでいいんだから」
本当に、なんで良い子なんだろう。年長者の自分を心配して、楽になってほしいと頑張ることができるのはカティアの並外れた善性によるものだ。きっと誰からも褒められる行為だろう。
だから───だからきっと間違いだ。心の中を怯えと恐怖、そして嫌悪が支配したのは。
まだ10歳の子供が食べるためのパンがそう簡単に手に入らないことを理解し、私が犯罪行為に手を染めている事を見抜いて心配する。その聡明さは称賛こそされど、嫌悪や非難を言われる義理はない。たとえ、自分の唯一の柱であった優しいお姉ちゃんという役割を破壊されたとしても。
だが発生した嫌悪は連鎖反応的にカティアの異常な行動力と、自分とは違う『本心から明日へ希望を抱ける強さ』に対する嫌悪に繋がっていき───
私は耐えきれなくなってカティアに背を向け、走り出した。カティアの呼び止める声が後ろ髪を引いたが、足はどうしても止まらなかった。
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朧家/反りの合わぬ人たち
時系列がガバったので修正します。これも親譲りのガバなのか? 時系列いじったせいでおかしいよ、って場所があったら教えてください。お願いします。
予告した部分まで行けなかった、なRTAはーじまーるよー。今回は前回ババアに回収され、家に戻ったところからスタート。
スラム街から帰還したカティアちゃんですが、帰ってから大してたたないうちに、また別の所に移動するイベントが発生します。
それはなんと、朧家に次世代当主の訓練用相手として呼び出されるイベントです。スラム街イベントで一定以上の成果を出し、朧の傍系の血筋であると発生するイベントで、単純な戦闘以外の視点を次代の当主たるチトセネキに教えるイベです。スラム街イベントと同様強制イベで、アンジェリックのババアが勝手に現当主と取引した結果です。
というわけで朧家の使いであるキリガクレの者が迎えに来てくれます。お、使用人たちが走ってきましたね。これは豪運です。
「お嬢様! きっと向こうでも辛い事があるでしょうが、どうかお気を強く持って下さい。私は、私たちはいつでもお嬢様の味方です。お嬢様がお呼びすればいつでも駆けつけますから。にっちもさっちも行かなくなったらこれを見て私たちを思い出して下さいませ」
と使用人筆頭の老婆がそれなりに値の張るアクセサリーをくれます。これはメンタル値の低下を防止してくれる良アイテムです。
カティアが申し訳なさそうにしていますね。きっと使用人たちの給料ではかなり高い物だったと理解しているからでしょうね。返答の選択肢からは「どうしてこんなに高い物を?」を選択します。
「お嬢様。自分をそう卑下してはいけませんよ。私たちにとってお嬢様は実の娘のような存在です。大切な娘が遠出するとなれば、金に糸目などつけられません。金など働けば手に入ります。しかしお嬢様はあなた1人しかいらっしゃらないのです。ならば、答えは明白でしょう」
カティアちゃん泣いていますね。よく泣く子ですが。10歳の子供なのでまあまああるイベントです。ロスでも見守りましょう。
そうこうあって朧家に到着します。当主に顔を通して挨拶をしたあと、呼び寄せた理由の説明をしてくれます。
「あのアンジェリックの女狐めから聞いていると思うが、お前には孫娘の稽古の相手をしてもらう。殺す気でやらせるから死ぬ気などという生温い覚悟ではなく、そちらも殺す気で挑め。わかったな」
はい、そうして翌日から当主やチトセとの稽古です。ここでチトセとは初対面になります。
「ああ、お前がカティアか。何やら武術を修めているようには見えないが、お爺様が言うのだから強いのだろう。よろしく頼むぞ!」
口調こそ大人時と変わりませんが、この頃の無邪気チトセは純真で勢いの良い口調で喋るので、見ていてとても可愛らしいです。まあこのRTAのラスボスなんですけどね。
そして訓練が始まります。訓練とはいえチトセネキは刃引きした刀を持っているので、殴られると入院ルートです。大ロス確定なのでそれは回避します。
一応ハンデとしてかカティアは訓練弾を装填した拳銃を渡されますが、チトセはこの頃でも初弾程度は平気で撃墜してきます。なのでまともにやり合うわけにはいきません。
訓練戦闘はマップ制限が無いので全力で逃げ回り、厨房に逃げ込みます。チトセが追ってきた頃を見計らって、煮立った油の入った鍋を銃撃して倒します。殺す気でやれって言ったからね、仕方ないね。
はい、子供とはいえチトセネキがこの程度対応できないはずがありません。別の鍋を投げて油の軌道を変え、コンロを叩き割って炎上を防いできます。本当に12歳か?
この後は当主の間に突入し、ライフル銃を拝借します。そのまま武器保管庫に立っている歩哨を銃撃し昏倒させた後、訓練ライフル弾の箱とスモークグレネードを引っ掴み逃走します。この時、間違えて近くにある規格の違う弾丸を拾ってはいけません。(2敗)
細い廊下に入ったらグレネードを間隔を開けて投げ、近くにある滑車付きの衣装掛けを転がしてぶつけます。斬鉄音がしたら効果がありです、衣装掛けをチトセネキが叩き斬った音ですね。なんで刃引きした刀で斬れるんですか?
その間にライフル弾を装填します。ちゃんとクリップでまとめてあるのでフル装填できますが、これ以降は装填の余裕すらないので落ち着いてやりましょう。
チトセネキが煙を突っ切りながら突入して来るので、落ち着いて刀に向かって射撃した後、残り2発を残しチトセネキを射撃します。これでまた数秒稼げたので再び厨房へ逃走します。ここで予定通りになっていなければ瞬時に別室に───なっていますね。なので厨房に突入し、突っ切って反対側の廊下に立ちます。
「そこまでだ」
ここでライフル銃を構え発砲しようとすると、当主に止められます。
「なぜ───ああなるほど。やるじゃないかカティア。お爺様の審美眼に狂いは無かった」
はい、チトセネキも気付きましたが、厨房に逃げ込んだのは叩き斬られたコンロから漏れたガスへ、火薬の発火で引火させて爆発させる作戦だったんですね。さすがに危なすぎるので当主に止められましたが。
まあ子供チトセだったから通じましたけど、後2年もすればこの手の罠にはあっさり対応されるようになります。天才って怖いね。
そうして初訓練は終わります。朧家での生活は丸1年にもなり、リアル時間でも結構な長さになります。なので、みーなーさーまーのーたーめーにー。
倍速をさせていただきます。その間右枠でチトセコミュのイベントを紹介します。
「おいカティア。新技の練習に付き合ってくれないか?」
これはチトセネキの新技習得イベントです。これをこなしておくと、チトセネキのステータスが向上し好感度も上昇するのですが、主人公側のチトセへの好感度が低いか、個性が温和系列だと断ってしまいます。
カティアは好感度も低く、『奈落の太陽』は温和のスキルなので断ってしまいますね。
すると後日、別イベントに派生します。
「カティアは訓練が嫌いなのか? それだけの素質があればできる事も多くて楽しいだろうに。私は楽しいぞ?」
会話選択肢で「才能を成長させる事が喜びとは限らない」を答えます。
はい、これがチトセ敵対ルート進行に必要なフラグです。チトセネキのような人物にとっては、才能を発揮する事は喜びなのでしょうが、喜べない人もいるという事を伝えるイベントです。
これを選んでいるとゼファーの好感度ばびっくりするほど上がりやすくなります。対してチトセの好感度は上がりにくくなりますが、本RTAはゼファーの好感度が大切なのでメリットしかないです。
説明が終わったところで倍速もちょうど終わりました。チトセネキが士官学校に入学したので、訓練相手がいなくなりました。
すると当主から呼びだされます。
「カティア、貴様はアマツの名を名乗る覚悟はあるか?」
当主がカティアの実力を認め、覚悟さえあるなら他のアマツの反対を押し切ってでも名乗らせてやるぞ? という意思表示です。いわばデレですね。
無論承諾します。混血の汚れた血扱いされるとはいえ、アマツ姓を名乗れるメリットがデカすぎるので、乗らない手は無いです。
ただチトセネキが
なので会話選択肢、「謹んでお受けさせていただきます。お爺様」を選択。
「そうか。これからはヒジリ・朧・アマツと名乗るがいい」
これで晴れて朧家の仲間入り。これ以降は割と当主はデレてくれます。当主は割とチトセには甘いところありますし、なんだかんだ弟の孫となれば可愛く見えるのかもしれませんね。
アマツ姓の方が正式名になりますが、めんどくさいのでカティア表記で続行します。
晴れてアマツの身分になったので、カティアはウキウキでスラム街に行きます。みんなを救う気満々です。かわいいですね。
でもどれだけ探しても誰も居ません。マイナさんも居ません。はいそうです、糞眼鏡がマイナさんを殺した後です。マイナ探索を諦めたメンバーは軍に入隊しているので、会う事はありません。
酷く傷心して朧家に帰ります。すると当主が話しかけてきます。
「ヒジリ。大切な瞬間に間に合わない事など往々にしてある。悔しく、辛く感じるのならば、そこから何かを掴み取れ。でなくば、死した者も、お前自身も報われまい」
はい、口調こそ重々しく厳しいですが、めっちゃ慰めてくれます。カティアの当主への好感度もすごい上がってますね。カティアは使用人には立場を配慮してしまうので、目上として甘えられる存在がいなかった分ちょろいんですね。こういう立場や境遇による好感度上昇の変化は大きいので、気を付けましょう(3敗)
新西暦1021年。カティアは士官学校に入学します。朧家で鍛えまくったステータスがあれば無敵です。士官学校ではあっさり主席を取れます。ギルベルトみたいな傑物が居ないこの学年ならではですけどね。
士官学校も倍速します。正直大したイベントもないので。
ん? どうして倍速を止めるのかな?
はい、イベントです。
「カティア? 嘘でしょ? カティアちゃん!」
士官学校の事務係が駆け寄ってきます。幼馴染イベントです。マイナの孤児集団の生き残りに貢献した場合、軍で働いている幼馴染と出会うというイベントが追加されます。
「私よ。覚えてない? カトレアよ」
カトレアさんですね。うp主はいちいち覚えていられませんが、カティアちゃんはしっかり覚えていたようで、感動の再会に涙を流しています。
カトレアさんはスラム出身の事務方なのに、この若さで軍曹にまで昇進していますね、将来有望です。
中途半端ですが今回はここまで。
†
「カティアは訓練が嫌いなのか? それだけの素質があればできる事も多くて楽しいだろうに。私は楽しいぞ?」
私は───チトセ・朧・アマツは心底不思議に思う。自分と比肩しうる才能を持ち、自分には無い視点を持って行動できるカティアを私は尊敬さえしている。なのに何故かその才能を伸ばす積極さに欠け、活かすことを拒んでいるように見える。私にはそれが理解できなかった。
カティアは少し悲しい顔をして言う。
「私はどうにも戦いの楽しさが理解できない質みたいです。好きじゃないことを努力するのは楽しくないですよ」
「なるほど、戦いを忌避する気質はわかった。だがその気質は、才能を
伸ばす実感や達成感すら奪ってしまう物なのか? 教えてくれ」
正直、私は戦いが嫌いということすら納得していなかった。初の訓練で私に黒星を付け。その方法がガス爆発を起こすという殺意に溢れたものだった以上、人を傷つける事に躊躇いがあるわけではあるまい。
その程度の戦闘への忌避がなぜ才能を伸ばす楽しさを奪うのだろうか?
「その人にとって、必ずしも才能を伸ばす事が幸せとは限りません。例えば水に顔をつけるのが嫌いな人が水泳の才能を持っていても、才能を伸ばす事を喜べるでしょうか? 要はそれと同じ理屈です。私は、戦いが嫌いなんです。だから戦闘訓練を楽しいと感じた事はありません」
カティアは失礼しますと言いその場を去る。私はその姿を漠然と見送った。
頭の中では、カティアの理論が渦巻く。
───才能を伸ばす事が苦痛? なぜ? たしかに努力は辛いだろう。だが得意分野ですら頑張れないのなら、一体何で頑張れるというのか。
チトセは答えを知る事はしばらくない。少なくとも、大虐殺のその日までは。
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星辰光/私のお姉ちゃん
ようやく星辰光を獲得する、なRTAはーじまーるよー。前回、士官学校での再会イベで終了しました。その後は倍速を続け、卒業にまで漕ぎ着けます。やってることはひたすら基礎ステータス上げなので、見ている方も暇ですしね。
はい、これで士官学校を主席で卒業できました。このまま士官大学校へ向かうルートもありますが、そんなもの通ってたら大虐殺に間に合いませんからね。
新西暦1024年。これで部隊へ配属になります。ですがその前に、念願の星辰光獲得です。アストラル照射を経て、はい無事に星辰奏者になりました。ぱちぱちー。
星辰光の能力の計測のために、星辰光を発動する事を要求されます。良いでしょう。発動値AAAの力を見せつけてやります。
選択肢「創世せよ、天に描いた星辰を。我らは煌めく流れ星」を選択。
はい、どうでしょうこれが発動値AAAの実力───ん? どうして画面からホラーゲームも真っ青な悲鳴が聞こえるのかな? まるでモルモットとして丹念に切り刻まれるアッシュくんのような悲鳴だね。あれれーおかしいね。
大慌てでステータスを再確認していますね。めちゃくちゃ動揺しています。こんなんじゃRTAになんないよ。
カティアちゃんは身体中の血管が負荷に耐えきれず破裂、脳を含めた体内出血と内臓破裂、その結果による細胞の壊死を繰り返しながら、生きながらにして腐っていきますね。
画面が暗転して集中治療室に叩き込まれます。一応カティアちゃんはアマツの血筋なので、死ぬと政治的にやばい立場ですからね、主に星辰奏者技術者たちが。
血統派がピンピンしてた時特有の高待遇の治療でどうにか生存します。なんと
はい、現在のカティアちゃんですが、全身の骨が砕けて立つ事もままなりません。内臓はどうにか回復したものの、しばらく流動食です。そして何より、視力が低下し、メガネが必要になってしまいました。
治療が進んでいくうちに髪も伸び、だんだんと髪の毛に白髪が増えていって、陽光を思わせるような金髪が、不健康そうな色素の薄い金色に変わってしまいました。ほとんど銀髪ですね。
個性【拭えぬ恐怖】が追加されました。クソ個性です。これはキャラに致命的な出来事が発生した場合、高確率で習得してしまう個性です。トラウマに関わる行動に制限がかかる個性で、往々にして邪魔なものでしかありません。一応光に傾きすぎないための重石としては有能なのですが、RTA的には地雷です。
この個性のせいでカティアは発動値への移行がほぼ不可能になりました。まあ完璧な医療設備が無いと地獄の苦しみの末に死ぬとか普通使おうとしませんからね。常識的な反応でしょう。
そんな出来事を踏まえ、カティアの配属は
まあ叡智宝瓶所属は当初の目標だったので、結果オーライだったりします。
というわけで叡智宝瓶での生活が始まります。配属部署は無理を言ってある場所にしてもらいます。はい、ブランシェ夫妻の所属する部署です。
「貴女が新任の助手の朧少尉ですね。自分のような冴えない技術者の助手などつまらないでしょうが。何か学べる事があるなら全て盗んでいって下さい。質問ならいつでもお受けします」
ミリィの父であるカルロ・ブランシェ少佐が笑顔で言ってくれます。穏やかで謙虚な性格で、あぁミリィのお父さんなんだなと思わせる温かい雰囲気を持っています。
選択肢「自分は少尉なのですから、敬語を使うのは私の方です」を選択します。
「いや、いくらなんでもアマツの方にそんな───いえ、貴女は真剣に技術を学びに来てくれたんですね」
「
はい、これで無事ブランシェ夫妻の部下になることができました。そして順当にカルロの妻であるエミリー・ブランシェとも仲良くなれます。そして本RTAのメインヒロインたる、ミリィ嬢の登場です。
「ほら、ミリィ。カティアちゃんに挨拶して」
「ミリアルテ・ブランシェです。ミリィって呼んでください」
かわいいですね。両親の部下で、たびたび家に遊びに来るのでミリィちゃんはあっという間に懐いてくれます。
「お姉ちゃん、どこか痛いの?」
ミリィはかなり聡い子で、適格にこちらの心理面の欠落を見抜いて癒しに来てくれます。さすがは魔星更生師とまで言われる天使ぶりです。
ここで選択肢「私はね。結局何もできなかった大馬鹿者なんだよ」を選択します。
あ、ミリィが抱きしめてくれましたね。カティアも思わず泣いています。カティアをカルロもエミリーも慰めてくれます。ほんとあったけえなぁ。これは世界敵に回してでも守ると誓う輝きですわ。
これでブランシェ家の好感度稼ぎは完了したので、次のステージに移ります。
メンタルが復活したおかげで自由度が増えました。相変わらず【拭えぬ恐怖】は消えていませんが、それでも十分です。全力で研究───ではなく叡智宝瓶内の横領や薬物横流しの告発に力を注ぎます。
研究は成果を出すまでに時間がかかりすぎますし、そもそも技術型チートのブランシェ夫妻とミリィがいるので技術系列の最終形態である
それよりもある部隊のスカウト条件である汚職や横領の検挙で一定以上の成果を上げる、を達成する必要があります。
さて、条件を達成したのかイベントが発生しましたね。
「はじめましてになるな。俺は
というわけで、深謀双児に転属します。チャート上は転属を決めて行動していましたが、カティアとしてはブランシェ家を思っての行動だったので、突然のスカウトに面食らっています。
自動で回答は一旦保留にされます。ここで相談相手を選べるのですが、ここはすかさずブランシェ夫妻を選択します。別に朧当主のおじいちゃんでもいいのですが、そろそろおじいちゃんは死期を悟りはじめているので関わりすぎるとチトセネキがおじいちゃん殺した時にメンタルが死にます。なのでブランシェ夫妻が最適解です。
「そりゃ一緒にいて欲しいっていう思いはあるよ。でもそれで行動を縛っちゃいけないんじゃないかな?」
「カティアちゃんが選びたい物を選んで。でも、私たちにはいつだって会えるんだから、カティアちゃんがやりたい事を優先してもいいんじゃない?」
はい、夫妻の後押しにより無事深謀双児配属が決まりました。
「ありがとう。お前さんみたいなのが居れば百人力さ。早速で悪いが、配属は新設された対テロ捜査部門になる。昨今の改革派と血統派の争いは激しさを増し、その手段としてのテロリズムが増加しつつある。政治主張はどうであれ、市民に被害を出すテロを許すわけにはいかねぇ。今までは普通の犯罪捜査部門で行なっていたが、処理能力を超えはじめてな。忙しい職場になるが、お前のウデを期待してるぜ」
対テロ部隊に放り込まれたところで今回はここまで
†
私───ミリアルテ・ブランシェは回想する。
「はじめまして、ミリィ。私はヒジリ・朧・アマツ。ヒジリでもいいけど、カティアでも良いよ。好きな方で呼んでね」
両親の部下であるカティアお姉ちゃんはすごく優しい人だった。貴種の生まれにも拘わらず、周りに優しく接し、私のことを実の妹みたいに可愛がってくれた。
時々遊びに行った研究所でも、お父さんやお母さんより年下なのに、まるで同僚みたいに仕事を託される様は、私の憧れでもあった。
「ミリィは本当に可愛いし良い子だね。お小遣いあげる。お父さんとお母さんには内緒だよ」
そう言って優しく頭を撫でるお姉ちゃんの顔は優しくて、とっても大好きだった。でも、その顔を見るたびに私の疑問は強くなっていった。
「大丈夫だよミリィ。ちょっと雷が強いけど、この家に落ちたりしないよ。大丈夫大丈夫」
辛い時や悲しいことがあれば抱きしめて慰めてくれた。どんな時も笑っていたお姉ちゃんの笑顔は、どこか悲しそうな雰囲気をしていて、すごく辛そうだった。
最初は私の事が嫌いなんじゃないかと思ったりもしたけど、お姉ちゃんが私に向けてくれる愛情は本物だったし、お父さんとお母さんに向ける笑顔も辛そうだったから。
だから私はお姉ちゃんを含めて4人でピクニックに来た時、お姉ちゃんに思い切って聞いてみた。
「お姉ちゃん、どこか痛いの?」
辛そうなのはきっとどこかが痛むからだ、という子供っぽい理由で私は言った。お姉ちゃんは少し驚いた顔をして言う。
「ミリィは優しいね。お姉ちゃんはどこも痛くないよ」
「でもお姉ちゃん辛そうだよ? 私にできることがあるなら言って欲しいな。私お姉ちゃんが大好きだから、お姉ちゃんが苦しそうだと、私悲しいな」
お姉ちゃんはしばらく私を見つめた後、私を膝の上に乗せた。
「じゃあ優しいミリィに甘えて、少しだけ愚痴らせてもらうね」
少しだけ鼻声だったけど、これは言ってはいけないんだと思った。お姉ちゃんの心の傷に踏み込んだのだと、子供心に理解できたから。
「私はね。結局何もできなかった大馬鹿者なんだよ」
そこからはまるで溜まった何かを吐き出すように、お姉ちゃんは過去を語ってくれた。
「昔ね、私が今のミリィより少し年上だった頃、私にも大好きなお姉ちゃんが居たんだ。私、結構早くお母さんもお父さんも死んじゃって。使用人たちは良くしてくれたけど、私は彼らより立場が上で、思うように甘えられなかったから。思う存分甘えられるそのお姉ちゃんが大好きだった」
お姉ちゃんは大きく深呼吸をして話を続ける。
「周りのみんなもお姉ちゃんが好きで、たくさん友達もできた。苦しい状況だったけど、久しぶりに子供でいられた時間だったんだと思う。私はあの場所が大好きだった。けどね、お姉ちゃん、私の事嫌いだったみたいで。結局仲直りもできずに離れ離れになっちゃって。友達を1人も助けられなくって。たまたま再会できた友達が、私のおかげだって言ってくれたけど、結局私の力不足だったんだ」
お姉ちゃんが私の手を握る。その手はとても震えていた。
「シンシアもロジーもダスティンもヴィルもマリアもゼファーも、マイナお姉ちゃんも! みんな! みんな大好きだった! 離れ離れになった後、みんなを助けられる立場を持っても、みんな既に居なくなっちゃってて。今度みんなと再会できたら、大切な人ができたら守り通せるようにと軍に入って、星辰奏者になって。でもダメだった。できあがったのは動かせば自壊する
お姉ちゃんが上を向く、晴れ渡る空を見たのか、涙を堪えていたのか。その両方だと、私は思う。
「みんなを守ってあげなきゃいけなかった。私はできたんだから! できるんだから! きっと私にはできたはず。おばあちゃんを殺して金を奪ってみんなに分ければよかった。嫌いだからなんて嫌がらず、もっと真面目に武術に励んでアマツになるべきだった。みんなよりずっと恵まれてるクセに何もできず、挙句発動値を使うのが怖い? なによそれ。この後に及んで自分の身が恋しいの? どうしようもない塵屑のくせに」
お姉ちゃんの呼吸が荒くなっていく。
「あれだけドブをさらえば、ほかのドブ漁りが廃業になるのはわかり切ってた。でもどうでもよかった。大切じゃない人だったら死んでも良かった。マイナお姉ちゃんみたいに誰かを犠牲にすることを辛いと思えないクズで。好きな人にしか優しくできなくて、甘えたい癖に甘える相手すら守れずに、挙句そんな無様を晒して自分の命が惜しい? 誰かは犠牲にできるくせに自分はできないんだ」
ポタポタと、私の手に水滴が落ちる。
「大馬鹿だよ、私は。みんな優しいなんて言うけど、結局はどこまでも自分優先のクズじゃない。自分が好きな人に優しくして気持ちよくなりたいだけの、救いようのない塵屑。本当に、救えない」
お姉ちゃんは袖で涙を拭き、私立たせて向き合う。
「ごめんね、変な話して。8歳の子にこんな話するべきじゃなかったのに。ごめんね」
目一杯吐き出したはずのお姉ちゃんは、いつもよりさらに悲しそうな顔をした。私は、子供なりに理解できた事を話す。
「よくわからないけど、お姉ちゃんはわがままが嫌なの?」
「わがまま?」
お姉ちゃんが聞き返す。
「だってお姉ちゃん、わがまま言って誰かの物をとっちゃったんだよね? それはいけない事だよ。けどね、欲しいって思う事はきっと悪い事じゃないよ。だって、私も欲しいおもちゃが一つしかなかったら悩んじゃうもん。お姉ちゃんもきっとそうだよね。だからね───えっとね」
言葉が出ない、私が迷っていると、横合いから声がする。
「
「カルロさん?」
「ごめんね、盗み聞きするような形になって。でも、言ったことは本心だよ」
お父さんは少し困った笑顔で言う。
「他人より愛する人を選んでしまうのはごく普通の事じゃないか。僕だって、ミリィと知らない人が溺れていたら、真先にミリィを助けるさ。それに、大切な人がいるからこそ命が惜しくなるんだ。カティアの言った事はごく当然の。普通のことだったんだよ」
お父さんの言葉に、お姉ちゃんは動揺する。お父さんに助けられたけど、私は私でお姉ちゃんにしてあげられる事をしよう。
「大好きだよ。お姉ちゃん」
私はお姉ちゃんを抱きしめた。
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契約女神/不信の対価
前回言っていた通り、カティアは深謀双児の対テロ部門に配属されます。配属は捜査課事前対策班となっていますね。はい、この事前対策班というのが新設された対テロ部隊になります。
対テロ部隊と聞くと、テロリストの本拠地に突入してどんぱちやるイメージが強いですが、そんなことは全然しません。というかできません。
なにせ諜報部隊の対テロ部隊。班の名前が事前対策と付けられている通り、テロの準備をしようとしている奴らをとっちめるお仕事です。要は銃器を買い集めたり、違法爆薬を買ったりした時点で逮捕です。そもそも戦闘になる戦力じゃないので、一応星辰奏者の居る深謀双児相手では一瞬でお縄です。
一応、こちらに反抗できる戦力を揃えてしまうケースや、敵側に星辰奏者が存在する場合も無いわけではないです。でもまあそんな事、深謀双児側も想定していまして。
はい、そんな時の
そういう訳なので、深謀双児は割と平和です。裁剣天秤に居るゼファーさんに何故かやたらと修羅場が回されたのはそういう経緯だったんですね。別にチトセネキが意地悪していた訳ではないんですよ?
というわけで大して戦闘が無い、あっても
捜査課事前対策班のお仕事は単純です。マップから場所を選び【捜査】コマンドを選択。基本的には何もないですが、【技量】【精神】【知力】【幸運】の合算値の判定で何か証拠を発見できます。だから知力を上げておく必要があったんですね。
元部隊が
一応変装はしていますが、腐ってもおっちゃんにヘッドハンティングされただけの才能はあります。あっさり見破って追跡の末、なにやら金持ちが集まる集会場を発見します。
乗り込んで無双したりはしません。成果だけ持って帰ります。そういうのは裁剣天秤の仕事だからね、仕方ないね。
おっちゃんを含めた班員と話し合い、情報を共有しつつ徐々に証拠を集めていきます。班員全員がおっちゃんのスカウトで集められているので、クッソ優秀です。多分スカウト式にしたのはスパイの混入を防ぐためもあったんでしょうが、おっちゃんの審美眼の凄まじさが伺えます。これは総統閣下の幼馴染ですわ。
はい、そんな事を話していると犯罪集団を逮捕できましたね。どうやら改革派の活動家の演説台に爆弾を仕掛ける気だったようです。
逮捕した貴族がなにやら喚いていますね。「貴種の誇りはどうした? このままではアマツも地に落ちるぞ」とか言っています。
選択肢「興味ない」を選択します。そりゃまあアマツ一族に入った理由が幼馴染救済の人に誇り説いても聞く耳持ちませんわ。
なので主犯格の貴族を下っ端協力者ごと独房へご招待します。ここから尋問チャートで、拷問したり自白剤つかったり、普通に対話したりで情報を引きせます。
ですが、ホルモンや薬物生成系の星辰光を持っていると尋問チャートが恐ろしく早く進みます。
皆さんボロボロ口を割ってくれますね。都合良く仲間の幻覚でも見てるんでしょうか? まあこんな事すれば脳にダメージが行きますが、自白剤使うよりは人道的です。
はい、逮捕した皆さんの協力によって組織壊滅にまで至りました。イイぞーコレ。この調子でテロが発生する前にテロ組織を壊滅させて行きましょう。
実は改革派の急進的グループによるテロとかあって推理パートは結構おもしろいのですが、倍速します。画面が代わり映えしないので仕方ないね。倍速中暇になってしまった視聴者のみーなーさーまーのーたーめーにー。
アルバート・ロデオンことおっちゃんとのコミュを紹介します。
「よう、朧大尉。このあと一杯どうだ?」
これは深謀双児で一定以上の成果を上げると発生するイベントです。スラム街出身者が傍系とはいえアマツの令嬢を飲みに誘うという血統派大激怒のイベントですが、もちろん快諾します。
「朧大尉、いや───カティア。最近調子はどうだ? カトレア准尉を副官に付けてからだいぶ大人しくなったが、お前さん未だに無茶したがるからな。頼むからたまには休んでくれよ。班の連中も俺自身も、またお前さんがぶっ倒れるんじゃないかと気が気じゃねえんだ」
この会話は精神が光寄りだと発生する会話で、光度合いによって内容が変化します。光を極めてるとある友人の話、闇側だと鉄火場への恐怖についての話になるのですが、割愛します。
選択肢「それでも、止まってなどいられない」を選択します。
するとおっちゃんはしばらく考え込んで言います。
「なあカティア。差し障りが無いのなら教えてくれ。お前は一体、何のためにそんなにしゃかりきに頑張るんだ?」
選択肢「今度こそは失わないため」を選択します。この選択肢は、過去に大切な人物を失っていると発生する物です。カティアの場合はマイナや幼馴染たちが該当します。
カティアの返答におっちゃんは真剣に頷きますが、顔は安堵していますね。
「なるほど。これならカトレア准尉もまだどうにかできそうだ。カティア、ちゃんと自分を止めてくれる人を見失うんじゃねぇぞ。そうしとかねぇと、お前みたいなタイプはどこまでも突っ走っちまうんだからな」
おっちゃんの安堵は、カティアの内面に輝く光の中に、過去を想う一条の闇を見たからですね。
はい、コミュを流している間に新西暦1026年、カティアが事前対策班の班長になります。そして世間からは
血統派の重鎮が星辰奏者を護衛につけていますね。クソ厄介なので裁剣天秤に援軍を要請しましょう。今は当主のお爺様が隊長ですが、あと数ヶ月もしないうちに死ぬので、あまり頼りたくはなかったんですが仕方ないですね。
裁剣天秤から星辰奏者が派遣されましたね、今回は暗殺系任務なので、十中八九あの人が来ます。
「裁剣天秤から出向しました、ゼファー・コールレイン中尉です。上官のチトセ・朧・アマツ大佐よりお話は伺っております。どうかその優秀さでもって楽な仕事を割り当ててくれると幸いです」
はい、お目々のハイライトがまだ生きている
ゼファーさんは、カティアがヒジリ・朧・アマツという名で呼ばれているのと、髪色が変わってしまっている事で気付いていませんね。
あ、勝手にカティアが抱きつきましたね。ゼファーさんはうろたえています。クッソいいとこのお嬢様が泣きながら抱きしめてきたら誰だってビビりますけどね。
ゼファーさんがこっちの正体に気が付きましたね。
「カティア……なのか? いや冗談ですよね。だって髪。彼女の髪はもっと───」
あれ? 幼馴染が美女になって帰ってきたのに不満そうですね。
はい、ゼファーさんは勘が鋭いので、髪色が人工的な物じゃない事くらいすぐに気づきます。大方、発動値が使用できない欠陥星辰奏者という噂と照合して、真実にも気がついたのでしょうね。
はい、今回はこの辺りで終了です。
†
「ゼファー? 本当にゼファーなんだよね? 嘘じゃないんだよね?」
俺───ゼファー・コールレインは激しく動揺していた。
出向先の上司、しかもあのアマツのお嬢様が抱きついてきたのだ。動揺しない理由がない。
まして、あのチトセの妹であり、氷のような冷静さと鋼のような決断力をもって深謀双児の特殊部隊を率いている女傑と聞いていたのだ。十中八九チトセの同類であり、俺を腑抜けと叱咤するタイプだと思っていた。
だが実際は、俺の胸に顔を埋め。ようやく顔を上げたかと思うと、俺の頬に手を当てて涙ぐんでいる。まるで感動の再会と言った風だが、あいにく俺はこんな銀髪美人は知り合いに居ない。
「いや、これが酒場の姉ちゃんだったらなぁ」
俺は聞こえないような声で、ほとんど声にも出さず呟く。
本当に、相手があのヒジリ・朧・アマツで、あの
自分に好意的でスタイルがよく、胸の大きい美人など嫌う理由が無い。現にぐいぐいと押し付けられる豊満な胸には男としての幸せを感じないでもないが、その巨乳が朧の血筋によるものだと思うと、どうしても師匠と姉弟子の顔がよぎってしまう。
だが妙な話だ。チトセはあれだけ美しい濡れ羽色の髪をしていたのに、妹のヒジリはどうして銀髪なのだろうか? 瞳の色も深い海を思わせるダークブルーで、興奮しているのかエメラルドの色彩を帯びて綺麗にきらきらと───
ふと、脳裏にある幼馴染の顔が映る。だがあり得ない事だ、彼女はアマツではなく、そもそもスラム街で出会った没落貴族の娘だったはずで、それに彼女は太陽のように輝く金髪をしていた。あの悪臭ただよう下水道でさえ、ランプの光を帯びて暗闇を振り払う
だがそれでも、じっと自分の瞳を見つめる仕草が、ハグの時に全身を使って抱きしめる所が、何より興奮が光彩に出てしまう所が、脳内の
「カティア……なのか? いや冗談ですよね。だって髪。アイツの髪はもっと───」
当たって欲しくないとさえ思いながら、俺は言う。だってそんな、あんまりじゃないかと。もしカティアであったなら、その銀髪の理由に心当たりができてしまうから。
「カティアだよゼファー! ずっと、ずっと会いたかったよ」
涙を零しながら笑うカティア。その笑顔があの日々の、俺の無事を知って泣きながら笑ったあの笑顔と繋がってしまって。
「クソがっ。あんまりじゃねえかよ」
聞こえないように細心の注意を払って、密かに星辰光さえ使用して、聞こえないように悪態を漏らす。なにせこれで完全に繋がってしまったから。
チトセの妹は直接の血のつながりが無かった理由が。事前対策班のスラム街での異様な手際の良さについての理由が。何よりカティアが銀髪になった理由が。容易に想像できてしまう。
話の論点はそこではなく、なぜ戦いを嫌い、愛する人と一緒に居る時間を尊ぶカティアが、星辰奏者などという力に手を伸ばしたか。
答えは知っている。カティアが何かを頑張るのも、無茶をするのも決まって大好きな仲間のためだった。そんな彼女が仲間を失ってしまったら、次は失わないようにと力を求めるのは至極当然の流れだ。
だがゼファーは生きている。カティアは全てを失ったわけでは無かった。問題は、失ったと一度でも思ってしまった事だ。
なぜカティアが力を求めたか。今ならわかる。スラム街に定期的に出入りするアマツの令嬢の話は俺も知っている。それがカティアであるのなら、きっと自分たちが居なくなっている事に絶望したのだろう。間に合わなかったと感じたのだろう。
俺たちはもうカティアが帰ってこないと思い、信じるのをやめて離散した。
結果、カティアは別離の負債を背負い、力を求めて星辰奏者になる。そんなひどい巡り合わせで金髪は光を失った。その上、カティアの眼鏡が反動による視力低下を矯正するものであったならいよいよ救われない。
「
もう声にすら出さない。自責の念を見せればカティアはきっと心配するだろう。それが再会後ならなおさらだ。
感動の再会は尊い。だが、別離の傷が消えるわけではない。その時に負った傷は後遺症のように残り、人生に影を残すだろう。むしろ、感動の再会でさえ『今度こそは失わない』という決意の炎の燃料にしかならないだろう。
まして、カティアのような。
こうして、感動の再会はお互いが全く違う感情を抱く形になった。
チトセ「お前を離さない」
カティア「もう離さない」
アマツに挟まれた男の末路はどっちだ?
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裁剣天秤/再会
ここから一気に乙女ゲーになっていくRTAはーじまーるよー。前回はゼファーさんと再会して曇らせたあたりですね。
暗殺任務はあっさり終了します。ゼファーさん自分を卑下しがちだけど、一般兵基準で考えると本当に強い人だからなぁ。というか帝国軍内でトップクラスの実力者なんですがね。比較対象がアレだからね。
任務の資料を書くために
まあスラム街出身なのに高い頭脳と教養を要求される諜報機関の部隊長やってるアルのおっちゃんとかが異常なだけで、ゼファーさんみたいなタイプは案外普通なのかもしれません。それはそれと、座学寝てたあたり普通に勉強嫌いなんでしょうけどね、ゼファーさん。
書類作成が遅いので、口頭報告をタイプライターで出力してあげます。実はこれやると、ゼファーさんが「学がないくせにそれを補おうとしない俺は屑だ」的な思考に陥って曇るのですが、タイム優先です。
そして隊長のおっちゃんが不在なので、副司令であるシロウ・漣・アマツ准将に報告に行きます。
副司令というのは副隊長とは別物で、事務方の副隊長みたいな物です。一国の軍隊である以上、それを12に分けても結構な人数になります。12部隊の内の2部隊である
なので、実行部隊の次席指揮官が副隊長。裏方の事務や補給、その他もろもろの次席指揮官が副司令となるわけです。隊長たちがわりと自由に動き回ってるのはそういう理由があるからですね。
階級的には副司令の方が高く、少将から最低でも大佐クラスです。なぜなら、隊長の副官としての側面が強い副隊長と違い、隊長不在時に数万規模になる部下を取りまとめる職務を負わされるからですね。そりゃ階級も高くなります。
「朧大尉。任務ご苦労だった。コールレイン中尉もよくやってくれた。貴官のような才能溢れる将兵が我が軍に居る事は国全体の幸福だな」
はい、そんな話をしていると副司令のシロウ・漣・アマツ准将の元に到着です。漣という名前の通り、実は彼はアオイちゃんの従兄弟です。この時代のアマツに珍しい公明正大なタイプで、スラム出身者だろうがちゃんと実力を評価してくれます。スラム出身者の隊長の下で働いてる辺りにもその人間性が窺えます。
「勿体無いお言葉です。小官は任務を遂行したまでであります」
ゼファーさんはガッチガチに緊張してますね。そりゃまぁ中佐以下は実は一般兵でもちょくちょく会うくらいの地位なので、中尉のゼファーさんも慣れていますが、大佐以上はVIPなので会う機会は基本ありません。
まだ裁剣天秤の副隊長じゃないゼファーさんにとっては式典以外じゃ基本会わない立場の人なので緊張しているわけですね。
「楽にしてくれよコールレイン中尉。もし僕が
「は、はぁ」
アオイちゃんと違い、シロウはフランクで緩い性格です。なのでシロウとアオイちゃんが会話するイベントでは、アオイちゃんが小言を言い、シロウが苦笑いする一枚絵があります。アオイちゃんファンにとっては彼女のまた違う一面を見れるのでおすすめなイベントです。
一通り報告を終えると、イベントが発生します。
「そうだコールレイン中尉。この際だからうちの突入部隊の奴らに裁剣天秤の一員としての戦訓や経験を教えてやってくれないか? 精鋭兵の経験談は貴重だし、うちにも裁剣天秤に憧れる奴は結構いてな、話してくれるとありがたい」
「はい? まぁ自分でよろしければ……」
ゼファーさんは「俺の話なんか聞いてどうすんだよ。聞くならチトセとかにしとけよ」とか思って困惑してますね。自己評価低い、低くない?
「感謝する。3階の2課作戦会議室に場所を用意してあるから、ぜひ話してやってくれ。あとガーランド少佐が君のブーツを磨きたがってたから応えてやってくれ、彼なりの敬意の表れなんだ」
「り、了解しました」
ゼファーさんの頬が引きつってますね。自分より階級が上の人に靴を磨かれるのは特殊部隊あるあるなのですが、ゼファーさんみたいな小心者にはきついのかもしれません。
ゼファーさんが部屋を出ると、シロウは会話を続けます。
「さて、ヒジリ。君に話しておきたい事がある」
はい、ここからが本題です。ゼファーさんは人払いされた訳ですね。
「君は、最近の改革派をどう思う?」
選択肢「頭痛の種」を選択します。ここで「帝国の未来を担う存在」を選ぶとシロウの好感度が下がるのでやめておきましょう。
「良かった、君も同じ心境か。僕もこの国の現状が良くないのはわかっている。だが、改革派は事を急ぎすぎじゃないか?」
シロウは一応改革派に近い思想の持ち主なのですが、穏健派思想の持ち主で、数十年をかけた無血改革を良しとするタイプです。
「本当に、奴らは一体何を考えているんだ? 内戦でもおっ始める気か? 二正面作戦を展開中の我が国で内戦なんて始まったら、それこそ諸外国の介入を招くだけじゃないか。
はい、穏健派だけあって慎重論を唱える質で、カリスマ改革者ヴァルゼライドに任せておけばどうにかなる的な楽観思想ができないタイプです。まあヴァルゼライド閣下にかかれば内戦なんて起きないですがね。それを信じられないから穏健派な訳で。
「それに次代隊長だろうチトセの事も気がかりだ。彼女が優秀なのはわかるが、いささか潔癖すぎないか? 一応朧は特定勢力に加担しないという名目がある以上はそこまで動かないだろうが、それでも隊長に就任すれば汚職を見逃したりはしないだろう。せっかく作った関係性がおじゃんになってしまう」
シロウなりに国を良くしようと、汚職政治家や軍人と関係を作り、ゆっくりと良い方向へ向けているようですが、今の犯罪を見逃す気のないチトセネキとは最悪の相性でしょうね。
「なのでヒジリ、君にチトセの監視を頼みたい。これは軍人としてでなく、1人の人間としての頼みだ。軍事力に依存した改革なんて所詮大博打だ、旧暦を含めて失敗だらけのな。そんな大博打に国を、民を、そして僕たちの家族を売り渡す訳にはいかない」
選択肢「もちろんです」を選択します。
これで完全にチトセルートが閉じます。ひいては改革派で暴れるルートともおさらばです。
「そうか、感謝する。改革によってアマツの栄華は幕を閉じるだろうが、それでもアマツが長きにわたって差別される事態は避けたい。改革によって権力者が零落すれば必ず一般より下に置かれる。男は日銭を稼ぎに、女は色街に売られるような立場にな。大博打にそんな破滅の運命を託してたまるか」
シロウも改革をする以上、アマツは断罪される必要があると感じてはいますが、改革派の流す「今」流れる血を我慢できないのでしょうね。価値観の違いという奴です。
はい、なので数ヶ月もしないうちに裁剣天秤に出向する事になります。あるイベント後にチトセネキから要請が来るので待ちましょう。
なぜチトセネキから要請があるかと言うと───はい、当主のおじいちゃんが死にました。チトセネキからの要請が通ってる辺りそう言う事ですね。
カティアは葬式で泣いていますね。一応それなりの期間親を務めてくれた人なので、懐いていたのでしょうね。逆に、葬式で一切涙を流さなかったチトセネキが不穏ですね。もうすでに覚悟ガンギまりの目をしています。
葬式後に正式に裁剣天秤隊長に就任したチトセネキはバリバリと正義執行に勤しみます。シロウが裁剣天秤本部に文句を言いに行くイベントがあるのですが早送りします。まあチトセネキに一蹴されて終わるだけですからね。
「ヒジリ、裁剣天秤に所属した以上、お前の力は正義のために使え。出向とはいえ、正義の天秤の一員たる自覚を欠かすなよ」
裁剣天秤に着隊した当日、チトセネキが釘を刺してきます。鉄の女モードのチトセネキは迫力がありますね。
「ああ、久しぶりだなカティア」
はい、だいぶ生気が失せてきているゼファーさんです。まだ大虐殺前のロボットゼファーさんじゃないですが、それでも目が虚で辛そうですね。カティアがゼファーを心配していますね。
そして、いい感じにカティア→チトセへの好感度が下がりましたね。なのでカティアを身内優先思考にする必要があったんですね。
あとは天秤兵としての任務を───ファッ! 旅行イベント⁉︎ ゼファーの体調を気遣って、カティアが慰安旅行を計画したようですね。やめてくれよ、タイム壊れちゃ^〜う。
はい、どうにかスキップ連打で旅行イベントを終了させて今回はここまで。
†
「ゼファー! カトレア! ヴィル! アイス買ってきたよ。」
「おいおいそんなに走んなって、また転ぶぞ」
俺ことゼファー・コールレインは久々に笑う。場所は旧フランス領西岸のビーチ。幼馴染同士の再会と、慰安を兼ねて旅行に来ていたのだった。
「何年前の話よそれ。だいたい私が子供の頃に転びやすかったのだって、外であまり運動したことがなかったからだし。私がおっちょこちょいなわけじゃないし。もう大人なんだから子供扱いしないでよ。こら! カトレアも頭撫でないで」
「はいはい、この前階段で滑って書類ぶちまけたのお姉さん忘れてないからね〜」
「ちょ、ちょっとカトレア? それ秘密だって言ったじゃん」
きゃいきゃいと、黄色い声を上げながらカティアがカトレアに抗議する。
数ヶ月前の自分からは考えられないほど俺の周囲は賑やかだった。思えば裁剣天秤で友人と言える存在はほとんどおらず、ダメ人間としての部分を笑って許してくれるタイプの部下を除けば、人付き合いは胃をすり減らすだけだった。
「ん、このアイス美味いな。ゼファーも食えよ、溶けるぞ」
「いやお前な……」
呑気にアイスを食う男。彼はヴィル───ヴィルヘルム・ニールセン。カティア、カトレアと同じくあのスラム街でのメンバーであり、裁剣天秤で再会した人物だった。
「昔からああだろあの2人。カティアが丸め込まれるまで時間かかるんだから、待ってる義理はないぜ。いやむしろこれはアイスへの義理だ。義理を通すことは全将兵の模範たる天秤兵の基本だぞ。ほら食えよゼファー。要らないなら貰うぞ」
半ば本気の目で俺のアイスを狙うヴィル。20にもなってその食い意地はどうかと思うが、かつてヴィルが風邪で寝込んで食事を拒否しただけで皆そろって大騒ぎしたのだ。ある意味正当な成長なのかもしれない。
俺はとりあえずアイスを平らげ、パラソルの下で横になる。疲れというより、激務からいきなり解放されても体は遊び方を思い出せていない状況からの行動だった。
「暇な時はいっつも昼寝してたよねゼファー。そんなに寝ると頭ボケるよ?」
と、いつの間にか戻ってきたカティアが俺の隣に座る。相変わらず距離が近く、見上げる姿勢とビキニの水着という状況も相待って、彼女の胸部に揺れる
見事に実ったものだと、昔のつるぺたボディを思い出して感慨深くなる。星辰奏者ゆえか生来のものか、程よく鍛えられた腹筋の恩恵による引き締まった腹部から大きく膨らんだ曲線は、男性なら誰もが見惚れるだろう。
「ゼファー、お前なぁ」
「カティアちゃんにそれはちょっとねぇ」
視線の方向に気づいたのか、2人揃って俺に苦言を呈する。
「いやこれは条件反射って奴です。決してやましい気持ちがあったとかそういうあれじゃなく。ただ単にあまりの曲線美に目を奪われてしまっただけで、ほら芸術ってそういうものじゃん? だからカトレアさんその視線をやめていただけると───っていうかおいヴィル。なんでお前までそっち側なんだよ。今更カマトトぶるんじゃねえ」
お前貧乳好きとはいえ巨乳も案外いける性癖知ってるんだぞと暗に示す。だが親友の返答はそっけないものだった。
「いや相手がカティアだしなぁ。うん、そういう感情を抱くのに罪悪感があるって言うか。なんか妹に劣情を催してる感があるというか」
「ほらカティアちゃん聞いちゃダメよ。ああいう話を女性の前でする輩と結婚したりしちゃだめだからね〜」
カトレアはそう言って素早くカティアの耳を塞ぐ。相変わらずの子供扱いであった。
そんな騒がしい状況の中、何故かふとあくびが漏れる。別に寝不足ということは無かったはずだが、何故だろうか?
「やっぱり結構疲れてたんだね。よし、ゼファー。ちょっと失礼するよ」
安心した表情でカティアは言う。カティアは俺の後ろに座り、ゆっくりと寝転ばせる。
そして、頭を軽く持ち上げ、下ろす。同時に後頭部に伝わる柔らかい感触。目線の先には視界を埋め尽くす夢の山。まさか、まさかこれは。
「カティアさん? もしかして今膝枕されてます?」
「そうだけど、嫌だった?」
「大人しく甘えとけよゼファー。お前最近働き詰めだろ? こういう時は羽を伸ばすもんだぜ」
「そうそう、せっかく任務から離れたんだし、今はゆっくり休みなさい。エッチなことしない範囲でなら、私も協力してあげるから」
「なんだよ急にお前ら」
急に優しくなった幼馴染たちに困惑してしまう。まるで重病人みたいな扱いだ。だがまぁ、役得を投げ捨てるほど俺は無欲じゃない。
「んじゃまぁお言葉に甘えて、ちょっとばかしゆっくりさせてもらいますわ」
水着美女の膝枕を堪能する気満々でいた俺だったが、程なくして本当に眠気が襲ってきた。
「わりぃ、結構疲れてたみたいだわ。足痺れてきたらおろしてくれていいからな」
一応カティアに言っておく。そうでもしないと目覚めるまで動こうとしないだろうから。
「そう。じゃあゼファーが寝るまではこうして居ようかな。だから安心してねゼファー。私が一緒に居るから」
「俺は1人で眠れない子供かっつうの」
相変わらずの過保護っぷりだ。思えば昔はと考えるうちにまぶたが重たくなり、ふと最後にカティアの顔を見る。
その顔は昔と変わらず優しさに溢れていた。だがちんちくりんの少女だった頃とは違う、女性としての魅力に溢れた笑顔は、少しだけ睡魔を追い払ってくれた。
そのおかげでできた時間に、俺は言葉をねじこむ。
「おやすみ、カティア」
昔、集まって雑魚寝していた頃みたいに寝る前の挨拶をして。
「うん、おやすみ、ゼファー」
カティアもそれに答え、そっと俺の目に手を乗せた。
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創生せよ/もう止まりはしない
あとグロ注意です。
通常戦闘全てが博打、なRTAはーじまーるよー。前回はゼファーさん含めた幼馴染メンバーで旅行に行った所ですね。
旅行から帰ると早速チトセネキが暗殺任務を課してきます。チトセネキの機嫌が悪く、正直結構怖いですね。しかも、忙しい時に空気を読まず休む部下にキレるパワハラ上司みたいな事言ってきます。いやーなんで不機嫌なんでしょうね?
ゼファーさんはほっといても暗殺任務を成功させてくれるので、基本は放置しておきましょう。好感度稼ぎを忘れず行っていればゼファーさんとは仲良くなれるので大丈夫です。わざわざ危険を犯してまで手伝う理由はありません。
なぜなら、ブランシェ家亡命イベントはゼファー・コールレイン死亡済みでも達成が可能だからです。『ブランシェ家』亡命ENDなので対象の中にゼファーさんは居ません。イベントは変化しますがトロフィーを獲得できるので問題ないです。
ただゼファーさんが居ないと、チトセネキ精神デバフ無しでガチで殺しにくるのと、単純に帝国軍最高峰の実力を持った
はい、なので地道に調査任務だけ行って、現場はゼファーさん達に任せれば───画面に「嫌な予感がする」というポップアップが出ましたね。
これは好感度が一定以上のキャラが死亡する可能性があるイベントが発生する際の通知ですね。そしてゼファーさんには暗殺任務が課せられているようです。
うーん。これは迷いますね。この手のイベントは実は不意打ちでやられるなどの2人いれば防げた系の簡単に回避可能な難易度から、いきなり作中最強クラスのキャラが乱入してくるまで様々です。一例を挙げると、以前作者がアンタルヤ狙撃兵ヴァルゼライド殺害RTAを試走していた時に、モブ星辰奏者暗殺イベントで本気おじさんにこのポップアップが出現し、ヴァルゼライド閣下が乱入してきたことがあります。
本気おじさんは楽しそうに死んでいきましたが、RTA勢的にはたまったものではありません。作者は当分「そこまでだ」という言葉がトラウマになりました。
なのでこのイベントは大事をとって無視します。ごめんねゼファーくん。君の涙を
選択肢「杞憂だろう」を選択します。
あれ? また選択肢が出ましたね。
選択肢「考えすぎだ」を選択します。
また出ました。シルヴァリオシリーズ特有の意味のない選択肢かな?
選択肢「過保護がすぎるだろう」を選択します。
よし、選択肢が消えましたね。操作画面も通常に戻り、カティアを操作できるようになりました。
はい、実は否定選択肢を選んでも次の選択肢が出た時点で嫌な予感はしていました。死亡イベント対象への好感度が高い状態で、なおかつアマツの血筋を引いていると発生するイベントがあります。
個性【アマツの愛】入手イベントですね。今までただの戦友や仲間だと思っていた相手に、なぜか嫌な予感がするというだけで駆けつけてしまうような激情が何かと考え、相手に恋しているのだと自覚するようになるイベントです。
この場合このイベントは強制イベになり、死亡イベントに強制介入します。アマツが愛を自覚したら止まるわけないよなぁ。
はい、というわけで暗殺現場に到着です。一応保険でヴィルとカトレアを連れていきましょう。ヴィルは
願わくば事故や不意打ち失敗からの泥沼戦闘になっちゃってるパターンであって欲しいです。操作キャラのカティアが星辰奏者としてクソザコな以上、ガチ戦闘があると詰みます。
なので戦闘音がしない事をお祈りして───はい、甲高い音や炎を伴わない爆発音がしますね。完全にゼファーさんが正面戦闘してる音です。これで少なくともゼファーさん相手に正面戦闘を張れる敵である事が確定しました。
お、ゼファーさんが家屋の壁を打ち破って外に出てきますね。どちらかというと壁を突き破って外に投げ出されたような感じですが、まさかゼファーさんが手も足も出ない相手なんてそんな屑運あるわけないでしょうし、ないよね? さすがにそんな屑運なんて信じたくはないです。
ゼファーさんが地面でゴムボールみたいに跳ねてこっちに飛んできます。血塗れですね。体のあちこちに火傷や裂傷を負っています。
はい、この時真剣に再走を検討しています。ロードし直しても、アマツの愛獲得イベは強制ですし、実はここまでは大小のガバはあれど結構な好ペースです。幼馴染から裁剣天秤所属の星辰奏者が出たという幸運もありますし、再走はしたくありません。
覚悟を決めたようですね。ヴィルに前衛を頼み、カトレアにゼファーの救護措置を頼みます。
さて、ゼファーさんを圧倒した星辰奏者の登場です。
「驚いた、今宵は運がいい。頼んでもいないのに追加注文とはな。寝ずの番もたまには良いか」
「仕事が増えて運がいいなんて仕事熱心ですわね。
はい詰みです。血統派星辰奏者中ほぼ最精鋭のチドリ・ムラサメとミカ・キリガクレです。
チドリは腐ってもムラサメを名乗るだけの戦士で、ヘイゼル爺並の格闘術かクロウ師匠クラスの剣術が無いと近接戦では劣勢になります。なおかつ体内の気圧操作で即死攻撃してくるので近付くとほぼ死です。その上干渉性を活かした爆撃を行なってくるので遠距離でも厄介です。
対してミカのベクトル操作は単純な防御型です。某もやしロリコンみたいな出力も無いので高出力でぶん殴れば勝てる相手ですが、血液を逆流させる攻撃や、星辰奏者の筋力を活かした規格外の銃器を乱射して攻撃してきます。無論ベクトル操作で追尾してくるのでうざったい事この上ありません。そもそも攻撃を逸らされるので戦闘時間が伸びて、反動の大きい短期決戦型は死にます。
そして極め付けは圧力操作とベクトル操作の相性の良さです。チドリの気圧爆撃に方向性を付与する事で攻撃力を増したり、ミカの銃弾の通路の気圧を薄くして弾速の低下を防いだりしてきます。そのほかにも連携技が多く、まさしく運命の赤い糸で結ばれてるような相性の良さです。
ほぼダメ元で戦闘を開始します。
「おや、貴女はヒジリ様ですか。悪いことは言いません、お帰りになった方がよろしいかと。此方としてはその短刀使いとそちらの星辰奏者さえ置いていってくださればそれで良いのですが」
このセリフはプレイヤーが非戦闘員だと発生するセリフです。アマツだから発生したのでは無く、アマツだと口調が丁寧になるだけです。
つまり非戦闘員レベルの脅威としか思われていないわけですね。
ガン無視して基準値で応戦します。ヴィルも全力で戦ってくれますが、やはり相手が悪いです。ヴィルの星辰光は雷電発生能力なのですが、拡散性が絶望的に低いため実質雷属性ブレードと化しています。それを補うために
あ、カトレアが爆発に巻き込まれました。生きてはいるようですがもう戦えませんね。
ヴィルが大気圧縮による炎で大火傷を負っています。まずいですね、めちゃくちゃ劣勢です。
この後に及んでカティアが発動値を使用しないのは、個性【拭えぬ恐怖】のせいですね。初回発動時のトラウマのせいです。
はい、順当に追い詰められました。プレイ当時は必死に戦ってますが、正直無理です。あ、致命攻撃くらいかけましたね。ゼファーさんが再起して助けてくれましたが、二度目はないでしょうね。
「カティア、お前は先に逃げろ。そんな顔するなよ、俺は天下の裁剣天秤副隊長様だぜ? この程度の修羅場で死ぬもんかよ。後できっちり3人揃って帰るから。だから先に行け」
ゼファーさんがここぞとばかりに特大フラグを立ててくれます。だめみたいですね。
はい、ここで個性欄が変化しましたね。個性【アマツの愛】を獲得です。なぜそこで愛? という状況で当時は何が起こったか理解するのに時間がかかりましたが、こういうことです。
個性【拭えぬ恐怖】を【アマツの愛】が上書きしたんですね。土壇場でゼファーへの愛を理解し、トラウマを克服した形になります。
なぜか愛を理解してメンタル値がげっそりなくなってますが、まあ今は関係ないです。
トラウマの対象は発動値に移行した時の反動なので、トラウマを解消した後の行動は、皆さんもうおわかりですね?
コマンド「発動値に移行」を選択します。
「おいやめろ! 頼む、頼むからやめてくれそれだけは!」
ゼファーさんが必死に叫んでいますが関係ありません。好タイムをどうにか
はい発動値に移行しました。凄まじい勢いでHPが消し飛んでいきます。というか最大HPが増えてるの見るに、発動値に移行するだけで一回「まだだ」しましたね。
威力の方はというと───はい、一撃で一軒家が消し飛びましたね。はじめてマトモに発動値を使うので操作に困惑していますが、これただの破壊光線ですね。
基準値のEだと何の破壊力も無い、細胞活動を操るだけの光線ですが、発動値のAAAにもなると光線自体が攻撃力を持ち始めるわけですね。基準値と発動値の差が大きい星辰奏者が、急に別の星に生まれ変わったように見える事のお手本みたいですね。
発動値だけじゃなく、操縦性も拡散性も収束性も軒並みA以上という欲しいものが高い感じのステータスなので、1発の長射程極太ビームかと思えば、数千発に別れて全方位射撃をしてくる弾幕射撃も可能という応用性もあります。
しかも元々の細胞操作能力が消えているわけではないので、かすったら細胞が暴走を起こして周囲を巻き込んで壊死してますね。
時間内にチドリとミカを撤退に追い込めました。タイム短縮のために失神してムービーをカットします。
今回はここまで。
†
庇って立つ俺の後ろで、カティアは言う。
「ごめんね、ゼファー。ごめんね、みんな。本当に私はどうしようもない。こんな奴は早く死ぬべきだったのに、本当に」
カティアは言葉を発する。どこまでも自虐的に、どこまでも苦しそうに。
「みんなが好き、だから守りたい? そうでしょうね、間違ってはいないわ。だって全員を守りたいのは本当だもの。でもその癖一番好きな人が危機に陥ったら、ほかの好きな人が死ぬかもしれなくても躊躇なく行動するんだ。今みたいに」
ゴミ切れのように地面に打ち捨てられたカトレア。大火傷を負い、腹部に大穴が空いているヴィル。この2人はカティアがゼファーの危機を察知して連れてきたものだった。
なのにカティアは躊躇しなかった。一番愛する人を失うのが怖かったという理由だけで。
「自分でも失望するよ。とんだあばずれだ。『愛する人を守りたい』、この衝動に引きずられて、それを貫かなければ生きていられないような。愛のために愛を犠牲にする破綻者だ。これからも私は生きているだけで周りに被害を振りまくと思う、守りたいから」
攻撃の合間に見たカティアの表情は泣きそうな顔で笑っていた。
「だから───ごめんねゼファー、『大好き』だよ」
呪いのような言葉とともに、カティアの体がアストラルに感応していくのが分かる、それはすなわち発動値への移行の前兆だった。
「おいやめろ! 頼む、頼むからやめてくれそれだけは!」
俺は必死に叫ぶ。カティアが何をするのか、そしてどうなるかを理解できたから。
だがもう、彼女は止まらない。
「創生せよ、天に描いた星辰を。我らは煌めく
発される言葉。カティアの体がアストラルに感応していく。
「かの英雄の不死身の体躯は、己の掴んだ才でなく、ひとえに大河の恵みのもの」
淡々と、生への渇望など無いような口調で。
「人の性と弱さを焼き払い、後に残るは強さのみ。苦痛を対価に残った鋼の灰は、あらゆる武具を跳ね返す」
カティアが自身に光を撃ち込む。おそらく反動に耐えるためだけに後遺症を覚悟で行ったのだろう。いや、後遺症などもう気にしていないようにすら見える。
「焼け、腐り、裂け、潰れ。絶望を与える地底の大河よ、我は喜び勇んで飛び込もう。この愛に迷いはなく。たとえ行き着く先が冥府とて、この進撃は止まらない」
愛するものを轢殺する己への絶望を覚悟の薪にし、その
「
瞬時にカティアの体が沸騰したように蒸気を発し、皮膚の一部が爆散した。右足が吹き飛び、姿勢を崩すが、剥き出しになった骨を足代わりにして立ち上がる。
戦闘は一方的だった。流星群のように放たれる破壊光線は、光線という性質故、防ぐ時間すら与えずに命中する。
相手も圧力操作による屈折率の変化や、光そのもののベクトル操作で防ごうとするが、光の速さに対応する事ができていない。いや、限定的とはいえある程度は対応しているのだが、全てが最適な弾道を辿る数千発の光線に対応することなど、どうあがいても不可能だった。
カティアも無傷ではない。暴走した皮膚が壊死を始め、時には血管が破裂し、腹部からは壊死で薄くなった腹の皮膚が腹圧に耐え切れずに内臓を体外に放出していた。
だがその程度で止まれるならカティアはここには居ない。せめて愛する人全てを救うという偽善でもって、愛する幼なじみに報いるために進撃する。
「カティア! カティア! くそっ。止まれよこの頑固者。頼むよ、頼むから止まってくれ。お前が死んだら何の意味もないだろうが」
俺は必死にしがみついてカティアを止めようとする。だがそもそもカティアの攻撃方法が光線を放つである以上、それも大した抑えにならない。
カティアの血と体液と内臓で汚れていく俺の体が、どうしようもなく絶望を増長させていた。
左足も吹き飛び、両足の骨だけで立ち上がる。左目の眼球が破裂して飛び出す、口も鼻ももはや本来の仕事を放棄し、血と体液の混合物を吐き出す穴と化していた。
「やめてくれ、もう。やめてくれよ」
俺は叫ぶ気力すらなくしてへたりこむ。
それでも、カティアは止まらない。残る右目に憤怒と覚悟を宿しながら、未だに粘る敵手を見つめる。
そして敵手は撤退した。当然の理屈のようにカティアの体は限界をむかえ、倒れ伏す。
俺はひどく軽くなったカティアを受け止めた。
カティアは所々欠損した皮膚を不器用に動かし、笑顔のような表情を作った後、口を動かす。
その口は、ごめんねと言っているようで。
俺の───ゼファー・コールレインの心を折るのに十分だった。
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命の価値/只人の矜持
あの鬼才ミリィの両親はこれくらいチートでいいと思った。後悔はしていない。
目が覚めたら知らない天井、のRTAはーじまーるよー。前回はゼファーさん死亡イベに介入して気を失った所からですね。
目が覚めると知らない天井です。左眼が破裂してお亡くなりになったので、視野判定にデバフが乗っていますね。
はい、しかもベッドから起き上がれません。ステータスを確認すると、右手、右足、左足、左眼が欠損しており、各種臓器も真っ赤っかなダメージカラーで表示されています。右手は戦闘中には欠損していませんでしたが、どうやら治療時に切断されたようですね。
ぶっちゃけほぼダルマ状態です。目が覚めたら今後の人生がやばい状況下なのにカティアのメンタル値が全然削れていません。はい、個性、【奈落の太陽】が【光の殉教者】に変わっていますね。覚醒率の上昇、メンタル値減少割合の低下、特定キャラの好感度上昇などのメリットがある状態です。【光の亡者】よりは光度合いが低いので、彼らほどの覚醒はできませんが効果はあるでしょう。
視界を動かして左を見るとゼファーさんが唯一残った左手を握って寝ています。かわいいですね。そうこうするとお見舞いイベントが発生します。
「カティアちゃん! 気がついたのね!」
カトレアが駆け寄ってきます。ゼファーさんも目が覚めたのか、カティアが目覚めたのに気づきましたね。
カトレアが甲斐甲斐しく世話を焼いてくれますし、ヴィルも消化器系に問題のない範囲の食事を持ってきてくれます。まあ胃腸が死んでるので粥みたいなのしか食えないんですけどね。
そしてゼファーさんは死にそうな顔をしています。カティアが意識を取り戻したおかげでより四肢の欠損を意識してしまったようですね。
時折気まずい沈黙が訪れるのが見ていて心が痛いです。みんな明るく振る舞わないとやってられないほど心を病んでいるのがみえみえでこちらの心も破壊してきます。
「まあ、なんだ。せっかく助けてもらったんだし、何か買ってやるよ。滅多にないぜ俺が奢るなんて。せっかくの機会だから、ほら。欲しいものを言えよ。なんでもいいぜ」
ゼファーが罪滅ぼしを兼ねてかこんな殊勝な事を言ってきます。今のメンタルボロボロゼファーさんは本当になんでも買ってきてしまうので注意です。
さて選択肢ですが、個性【光の殉教者】のせいで前に進むのに必要なもの───武器防具や義手義足といった戦闘力を取り戻す系しか揃っていませんね。
仕方がないので選択肢「義手と義足」を選びます。
ゼファーさんが俯いてしまいましたね。ゼファーさんはカティアが今なお、己の命を糧にして幼馴染たちの未来を切り開く気でいることに気がついたようですね。
病室の空気が見ているだけで窒息死しそうな重さになってきました。ですが放置です、なにせゼファーさん√で大怪我すると必ず発生するイベントが待っているからです。
「私だ、入るぞ」
はい、チトセネキが入室してきましたね。これはゼファー√必修イベのチトセネキ宣戦布告イベです。このイベントが発生するとゼファー√が確定になり、見事(生き残れば)ゼファーさんを婿とすることができます。
なぜ宣戦布告かと言うと。
「なあヒジリ。貴様も
はい。チトセネキからの好感度が一気に敵対まで行くからですね。特に今回は酷いようで、怨敵レベルまで好感度が下がってます。
まあ大虐殺でゼファーさんに右眼をえぐられると好感度が元どおりになり、妾としてなら認めてやるぞ? くらいまでは復活するのですが、今は機会があれば殺すくらいに下がっています。
「我々
チトセネキめっちゃ怖いです。試走した時より数倍は怖いですね。一体何がいけなかったんでしょう。
「だがお前は職務を放り出して無断で出撃し、許可もなく優秀な隊員2名を負傷させた挙句、自身はもう使い物にならない程の怪我を負ったと。そして結果は何の成果もなく、1人であれば逃げ切れただろうゼファーの足を引っ張っただけ」
この時は健在の両眼がギラギラと怒りに光っています。めっちゃ怖いですね。
「なんだそれは? ふざけるなよ。貴様は貴種としても軍人としても自覚が足らん。我が血縁からそのような愚物が出るとは思ってもみなかった。申し開きがあるなら言ってみるがいい」
選択肢は「ありません」を選択します。
「フン。言い訳をしたならば今すぐ叩き斬ってやろうと思っていたが、まあいい。後日査問会に呼び出してやるから用意をしておけ」
吐き捨てるように言い残してチトセネキは病室を去ります。ぶっちゃけ正論しか言ってないのが耳に痛いです。優秀な部下が勝手に戦闘に突っ込んで使い物にならなくなった挙句、ほかの部下を危険に晒し、何の成果も得られなかったとなればブチギレるのも無理はないでしょう。まだ敵星辰奏者を仕留めていればマシだったんでしょうが、時すでに遅しです。
ゼファーさんが呆然としています。目の前で起こったことが理解できないという風ですね。
チトセイベは終了し、査問会が始まります。チトセネキの影響力はデカく、指揮権限の剥奪という重たい罰則が下されましたが、ぶっちゃけ幼馴染がついてきてくれるのは部下だからじゃないのであんま関係ないです。
さて、無事義足を履いて行動ができるようになりました。任務に出ます。まだ不調は治ってないし、リハビリもろくにしていないけど止まってなどいられないからね。カトレアが号泣して止めようとしてきますが無理です、悠長にリハビリしていたら大虐殺に間に合いません。
たまに傷口が開いてやばいですが、気合で耐えます。気合と根性と聞くと胡散臭さしかありませんが、こうして恩恵に預かるとその偉大さが実感できますね。
そうこうしていると、目標のイベントが発生しました。
「なあ。軍を辞める気はないか、カティア」
はい、ゼファーさんが軍籍を離脱する事を提案してきます。これはゼファー→
正直病み病みイベントが多かったので、ぽっきり心が折れるのではと思っていましたが、どうやら再起に成功したようですね。
「生活費なら俺たちが稼ぐしよ。お前はしばらく食っちゃ寝でもしてろよ。金の事なら気にするな。生憎と、使う暇がなかった貯金が腐るほどあるんでな。俺たち3人分を合わせれば豪邸が建つ額だぜ」
ゼファーさんが他人を養う発言をするなんて意外に思えますが、なんだかんだミリィを一人前になるまで養ったりしてるあたり、なんだかんだ大切な人に対しては金に糸目をつけないイケメンなんですよね、ゼファーさん。
選択肢「ごめんね」を選びます。というか一択なのでこれしかないです。
ゼファーさんが絶望顔を───してませんね。まるで想定の範囲内だったかのように覚悟を決めた男の顔をしています。
「そうか。まあお前はそういうタイプだよな。じゃああれだ。お前は一旦原隊復帰して
ここはどの選択肢を選んでも無駄なので連打します。覚悟を決めたゼファーさんは強いからね。相手に否定されたくらいで折れるような雑魚メンタルではありませんからね。
現在カティアのメンタル属性が光に寄りすぎてますが、このイベントフラグを立てておくと、自動で闇に振り戻してくれるイベントが発生するので、光汚染された場合は必ずやっておきましょう。
ゼファーさんが只人として覚醒してくれたイベントですが、実はこれ地雷イベになる可能性を秘めています。なぜならこのイベントの発生が早すぎ、ゼファーさんがブランシェ一家暗殺を請け負う前に裁剣天秤を離脱してしまうと、別の凄腕星辰奏者が派遣されてしまい、説得が効かないため大ロス確定になってしまうからですね。
さて、放っておいてもろくに戦闘もできない体になったためか深謀双児に戻されます。しばらくは適当な任務で時間を潰します。
「ヒジリ。お前に知らせておきたい事がある」
シロウ・漣・アマツが話しかけてきましたね。表向きは穏やかな風を装っていますが、苦々しい顔を隠し切れていませんね。
「ブランシェ夫妻が改革派のターゲットになったらしい。おそらく夫妻の研究成果への警戒だろうな。なんでも星辰奏者の能力を向上させる兵装を開発中とのことだ。にわかには信じがたいが、もしそんな物が完成すれば戦局は一気に覆ってしまうだろうな」
はい、実はブランシェ夫妻は
問題を解決して前に進むのが兵器開発の基本である以上、いずれ量産性の問題は解決されて然るべきと誰でも考えます。仮に量産が不可能だとしても、クソ強い血統派星辰奏者が強化されるだけで十分脅威ですからね。
「開発されてしまったら間違いなく血統派の手に渡る。技術の持ち逃げもまず無い。あのお人好し夫妻が研究に出資してくれた恩人たちを裏切るわけがない───と改革派は考えている訳さ。君もあの夫妻を知っているならわかるだろ? あの夫妻は恩人が世間では如何なる評価をされていても、躊躇わずその味方をするタイプだ。元々血統派は身内に甘いし、夫妻のような金のなる木に親身に接しない訳がない。恩を感じた夫妻が命をかけても不思議じゃないさ」
そういう訳です。血統派全盛期の環境下で研究をする以上、スポンサーは軍部のお偉いさん、もしくは貴族の金持ちでしょう。両方血統派ですね。
そりゃ自分の研究に価値を見出してくれて出資してくれたなら恩義を感じない訳ないし、血統派にだってある程度の善良性を持ったタイプも居たでしょう。あの大天使ミリィの両親です。恩義を感じている相手が、家族を守るために力を貸してほしいと言ってきたら断る訳ないでしょう。まして、政治的な立場もなく、改革劇の傍観者でしかない夫妻に勝馬に乗れというのも無理な話です。
ですが、これは副次的な理由です。
「科学者という生き物は自分の好きな分野を認めてくれる相手には甘いものさ。なにせ夫妻はアダマンタイトには
シロウの口からとんでもない事が語られましたね。そうです。ブランシェ夫妻は極めて限定的に、度重なる偶然に助けられながらとはいえ
優秀な科学者を、拉致や監禁といった能力を損なわない形での無力化ではなく、殺害という過激な方法に至った理由がこれです。といってもカグツチは特に干渉しておらず、チトセネキの過激な粛清を止めなかっただけです。
研究者というのは得てして既得権益を持っている側に付いている物です。チトセネキのような過激派の餌食になるのは目に見えているでしょう。
魔星を作ったり、ヴァルゼライド閣下を改造したりするために、カグツチとヴァルゼライドは優秀な科学者を囲い込んでいました。なので結構な数の科学者が保護されていたのですが、優秀過ぎるのは対象外のようです。ほっとけば危険因子を排除できるなら便乗しない手はないですからね。
当然カグツチが干渉していない以上、ヴァルゼライド閣下も特に関知していません。血統派の危険な科学者が改革派によって殺されただけの事案ですからね。よくある一幕です。
結果、過激な強硬手段を取る人物を
というわけでブランシェ一家が命を狙われている事が判明した所で今回はここまで。
†
カティアの体はずいぶんと小さくなってしまった。人体において両足の占める割合は大きく、それが無くなっただけでずいぶんと縮んで見えるものだった。
ゼファー・コールレインは兵士である。四肢の欠損した兵士など腐るほど見てきたし、そもそも星辰奏者というのは強者である以上、一般兵の中から不具の者を生み出す機会くらいはいくらでもあった。
だがそれでも、残る左手のみが移動手段であるカティアの姿は、どうしようもないほどの吐き気を催してしまうものだった。
実際、俺はカティアが目覚める前に何度も吐いていた。カトレアは初めて見た時は失神したし、あの無感情なヴィルも声を上げて泣くほどの悲惨さだった。
「ほら無理しないで。大変な思いをしてるんだから少しぐらい頼りなさい」
カトレアは軽々とカティアを抱える。星辰奏者でない彼女ですら、簡単に持ち上げられてしまうほど、カティアの体は内外が欠損していた。
カトレアは必死に笑顔を浮かべて、病室の雰囲気を明るくしようとする。だが瞳に溜まる涙を隠し切ることはできず、声は震え上ずっていた。
ヴィルも美味い病院食の話題など、彼らしい話で盛り上げようとするが、食べられないものの話題に突き当たり、言葉をつぐんでしまう。
ならせめてと、俺は話題を切り出す。
「まあ、なんだ。せっかく助けてもらったんだし、何か買ってやるよ。滅多にないぜ俺が奢るなんて。せっかくの機会だから、ほら。欲しいものを言えよ。なんでもいいぜ」
冗談めかして、ほしいものの話題であれば暗い話は回避できるだろうと、学のない頭で考えて出した答えだったが。
「うーん。今は義足が欲しいかな。義手も欲しい。あまりみんなに迷惑をかけるのも良くないしね。せっかく私の星辰光が強い事がわかったんだから、いつまでも戦えない体でいるわけにもいかないし」
ニコニコと、まるでいつもと変わらないような笑顔でカティアは言う。
俺はその返答に表情を保つ事ができなかった。なにせ2回目でこれだ。3回目の発動などただの自殺でしかない。それをわかった上でカティアは進むと言っていた。
特に、ヴィルとカトレアが気を失っている間にカティアの本心を聞いていた俺は、どうしようもなく理解できてしまう。
愛に序列を付けてしまう闇の理屈と、目的のためにあらゆるものを切り捨ててしまう光の宿痾の合併症に悩んだカティアは。結局は特定の誰かを愛さないという光の道を選び、愛し愛されることを喜びとする闇の道を捨てたのだ。
自分を愛し助けてくれる人を守るために、決して特定の誰かを愛さずに助けを乞わず戦うという矛盾した決意を抱きながら。
カティアの言葉の本質を理解せずとも、機会があれば死ぬ気で戦うと宣言された以上、ヴィルとカトレアもカティアの末路を理解して絶望していた。
だから正直期待していたのだ、部屋に入ってきたチトセがせめて明るい話題を持ってきてくれると。
だがしかし、チトセの口から発せられたのは明るい話題でも、それどころか無事を喜ぶ言葉ですらなく───
「なあヒジリ。貴様も
ほとんど罵倒に近い叱責であった。
そこからのチトセの言葉は耳に入ってこなかった。
ふざけているのか? 義理とはいえ妹が左手以外全て失い、ロクに物を食えない体になって言う言葉がそれか? 愛する人を守ろうと必死になった姿が無様だと?
怒りに我を忘れたわけではない。チトセの正しさは理解できるし、軍規の面で考えれば何一つ穴などない理論で、
だがそれは、正しいだけだろう。愛や想いの入り込む余地のない正論は、それこそただの暴力でしかない。
弱さを一切理解しない光のあり方を見て、俺はふと思う。
自分を守ってくれない正しさなど、ただの害悪じゃないか、と。
なぜか笑えるほど簡単に受け入れる事ができたこの理屈は、言ってみればただのわがままだ。
だがそのわがままは、俺の中で日に日に大きさを増していった。
「もうやめて! 私なんでもするから、お願いだから止まってよ。私たちを幸せにするためにカティアちゃんが死ぬなんて、そもそも破綻してるじゃない。貴女が死んじゃったらぜんぜん幸せになんてなれないよ」
幼馴染3人を含めた人々に未来をもたらすべく国へ奉仕せんと未だ癒えぬ体で立ち上がったカティアと、それを涙ながらに止めるカトレア。
国全体に利益をもたらす奉仕者と、それを私欲で止める者。どちらが正しく、どちらが間違っているかは明白だが、どうにもその正しさには納得できなかった。
こうして俺は───ゼファー・コールレインは芯を得た。わがままに、自分の思うままに生きてやろうと。当たり前に生きて、当たり前に死のうと。
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亡命準備/わがまま
今回から本格的にアンタルヤ亡命を目指していくRTAはーじまーるよー。前回はブランシェ家が裁剣天秤の粛清リストに挙がっていることが判明した所ですね。
さっそく方々に連絡を取り、亡命の準備を進めます。とりあえず亡命の役に立ちそうな人間にはかたっぱしから連絡を取ります。選択肢の上から順に交渉をしていく感じですね。
ただこの選択肢の中にゼファー、ヴィル、カトレアの選択肢はありません。自分のわがままで大切な家族を叛逆者にするわけにはいかないというカティアの考えからでしょうね。
さて、そうこうしていると協力者が現れたようですね。朝起きてポストを見てみると、一冊の本が投函されています。中身はなんの変哲もない
「此方、協力の用意あり。協力を求めるならば今すぐこの紙を燃やせ」
と短く書いてありますね。無論速攻で燃やします。
はい、これで血統派との協力フラグが立ちました。血統派ルートとかいう普通にプレイしていたら入れないルートなので、読者兄貴たちには珍しく感じるかもしれません。だけど改革の犠牲になるのを防ぐには血統派を頼るしかありませんからね。
さて、次はブランシェ家に接触します。はい、結晶核を作るためですね。あまりにもクソザコな基準値を改善するためです。本来のチャートでは必要なかったのですが、このままだとカティアちゃんは次星辰光を発動すると即死してしまうので必須ですね。
実はこのタイミングでブランシェ家に接触してもゼファーとかち合いません。いくら裁剣天秤の星辰奏者とはいえ、機密の宝庫たる叡智宝瓶に入ることはできないからですね。
対してこっちは元叡智宝瓶の研究員で、なおかつ防諜を担当する深謀双児の情報幹部ですので施設に入れてもらうくらいはできます。
「ああ、久しぶりだねカティア。怪我は大丈夫かい? 幻肢痛の相談なら知り合いの医者を紹介するから言ってくれよ?」
カルロはひさびさの再会をするなりいきなり心配してくれます。さすがミリィの父親ですね。セリフ量を減らすためエミリー不在のシーンをねらって訪問しましたが、エミリーが居るとカティアのこれからについてプチ夫婦喧嘩をするほど慮ってくれるイベントが発生します。本当に優しいですね。
ですがただ話に来たわけではありません。選択肢「結晶核を作って欲しい」を選択します。
「結晶核を? アレはまだテストヘッドの検証が終わったばかりの段階だ。とても兵器としての利用に耐えるレベルじゃない。それに君は星辰光のせいで体がそうなったばかりじゃないか。それ以上の無茶は看過できないよ」
はい、全力で反対されます。そりゃそうですよね。自分の妹か娘くらいに思っていた後輩が四肢を左手を残して全損し、右目も失っている状態でなお戦おうとしていれば普通止めます。ですが、止まってなどいられません。
選択肢「必要な理由ができたんです」を選択します。
「必要な理由? 一体何だいそれは」
はい、ここでブランシェ一家が暗殺されるかもしれないという話を打ち明けます。
するとカルロは頭を抱えます。自分が政治動向に無関心だったせいでこんな事態を招いてしまったと悔やんでいます。ですが一介の研究者に政治的なバランスを求めるのは酷でしょう。
「でも、それでもダメだよ。僕たちの安全を考えてくれたことは感謝するよ。でも僕たちを助けたら君まで改革派の敵になってしまう。まして普通ならまだ病院のベッドで寝てるはずの怪我人に無茶をさせる訳にはいかない」
優しいですね、でもいう事を聞くわけにはいきません。
選択肢「エミリーさんとミリィちゃんのためです」を選択します。実際ゼファーさんにミリィちゃんを除いて殺されていますからね。助かったミリィでさえゼファーさんがすんでのところで思いとどまったからで、本来は殺されていました。
カルロはしばらく考えたあと、納得してくれます。
「わかったよ。でも無茶はなしだ。君は僕たちにとって大切な家族なんだ。君を失うのは、僕にとってエミリーやミリィを失うのと同じ事なんだ。だから、絶対に無茶をしないでくれよ」
そう優しく教え諭してくれます。はい、これで結晶核をゲットできます。しばらくは結晶核の調整と、協力者との接触に時間を費やします。単調な作業なので倍速します。
はい、結晶核が完成しました。ステータスが変化していますね。
収束性A
操縦性AAA
維持性C
干渉性C
付属性B
拡散性AA
覚醒率A
やったぜ、基準値が2伸びた上に操縦性、拡散性が1ずつ向上しましたね。試作でこれなあたり本当にアマツの血筋は怖いですね。基準値と発動値の差が4にまで減っています。これならまだ水風船みたいに破裂して死ぬのは避けられるでしょう。
ついでに戦闘用の義肢の作成をお願いします。ジン爺さんの義手ほど器用には動きませんが、剣を握って相手を殴れれば十分です。
亡命の日はメタ知識で大虐殺の日を選びます。なぜならアドラーの首都機能が麻痺する唯一のタイミングだからですね。
さて、暗殺決行の日になりました。ブランシェ夫妻に斬りかかる暗殺者の攻撃を防ぎます。
ゼファーさんですね。一応ゼファーさんがブランシェ夫妻の護衛についている事は情報収集の過程で知っていたのでカティアに動揺はありません。ゼファーさんはかわいそうなぐらい動揺していますが無視します。
「嘘……だろ……。なんでお前なんだよ」
どうやらゼファーさんも暗殺を妨害しようとする者がいる気配を感じ取っていたようですが、まさかカティアだとは思わなかったようですね。
はい、ここからがこのルート最大の勝負です。ゼファーさんがどれだけ真人間に更生しているかでこの後のゼファーさんの行動が変わります。
ゼファーさんがまだ負け犬モードだとこのままカティアを気絶させてブランシェ夫妻を殺害してしまいます。ですが、真人間に更生したゼファーさんは───
「なあ、どうして頼ろうとしねえんだよ。なんで相談しねえんだよ! 俺たちがそんなに頼りないか?」
はい、なんと亡命にゼファーたちが協力してくれるようになります。これで亡命成功率がグッと向上します。というかほぼ成功します。
そうして想い人の協力を得られてカティアは喜んで───いませんね。それどころか盛大に慌てています。
ムービー戦闘が入るのでスキップしますが、内容は以下のとおりです。
「バカ言えよ、1人で突っ走ってボロボロになる女を放っておく奴がいるか」
ゼファーさんは出来の悪い妹を叱るように言ってくれます。
「それに、俺たちだって後悔してるんだよ。昔から一歩踏み出すのはお前任せで、お前が敷いた道に続いてただけだった。再会しても無茶ばかりで、なんでも1人で背負い込んで。そういうのは年上の役目なんだぜ? たまには俺たちにもそういう事させろよ」
カティアはなおも否定しますね。カティアからすれば自分のわがままにゼファーたちを巻き込むことになるので、耐えられないのでしょう。
「カティア───頼むよ。俺たちを家族も守れないあの頃に戻さないでくれ。もう俺たちは負け犬なんかじゃないって、信じさせてくれ」
はい、ここまで言われてようやくカティアは了承しました。次回はウルトラ姉妹喧嘩編です。
†
「嘘……だろ……。なんでお前なんだよ」
俺───ゼファー・コールレインにとって一番起こって欲しくない出来事が目の前で展開されていた。
血統派に与する研究者であるブランシェ夫妻を殺すために放った俺の刃を、カティアの剣が受け止める。
身の丈ほどもある細身の大剣と、研究者の星辰奏者が使用する短剣。短長双対の剣を事前に準備していたことが、カティアが噂の血統派に与した星辰奏者である事を雄弁に語っていた。
血統派に与したのがよりにもよって自分が救うと決めた相手とはなんとも笑えない。
「ごめんね、ゼファー。私は、私の好きな人には生きていてほしいと思うから。だからごめん。ちょっと痛いと思うけど気を失っててね」
そう言って、カティアは星辰光を使用する。発動値でないはずの、基準値の攻撃。だがどういうわけかカティアの基準値からは想定できないほどの高威力の光線が次々と飛んできた。
「っチィ!」
どうにか遮蔽物を使って光線をやりすごす。確実に致命傷にならないところを狙ってきているため、回避自体は容易であった。
カティアに攻撃をされた動揺以上に、敵対勢力に与したという絶望以上に、俺はこの胸を占める思いを叫んだ。
「なあ、どうして頼ろうとしねえんだよ。なんで相談しねえんだよ! 俺たちがそんなに頼りないか?」
この胸を占める、頼りない自分への怒りを、カティアへ叫ぶ。
「お前が入院した時、ヴィルの奴泣いてたんだぞ。カトレアもお前のことを泣きながら止めてたじゃねえか。なのにどうしてそうやって無茶をするんだよ。せめて何か言ってくれよ、そうすればお前を手伝うなりなんなりして負担を軽くしてやれるのに。なのに、どうして黙って無茶するんだよ!」
カティアは優しく、悲しそうな顔で言う。
「だってほら。これって私のわがままじゃない。みんなにとって関係のない人を守りたいから、なんて理由でみんなを危険に晒すなんて。できるわけない」
当然のことを語るような口調で、カティアは言う。
「大切な人を救うために、大切なひとのこれからの人生をめちゃくちゃにしろとか、前提条件がおかしいよ。できるわけがない」
会話の最中も、カティアの攻撃の手は緩まず、拒絶の意思を強く表していた。
「だからさ。私の事を心配してくれるのは嬉しいけど、放っておいてくれると嬉しいな」
「バカ言えよ、1人で突っ走ってボロボロになる女を放っておく奴がいるか」
あまりにも身勝手な物言いだった。まるでこちらの事情を斟酌していないカティアに、俺はこちらの事情をぶつけてやる。
「大切な人に迷惑をかけたくない? なにを寝ぼけた事言ってんだよ。お前も誰かにとっての大切な人だって事考えねえのか? 自分は大切な人がいなくなるのが嫌なのに、他の人はいいのか? それはあんまりじゃねえか」
光線を躱しつつ、カティアに近づいていく。
「それに、俺たちだって後悔してるんだよ。昔から一歩踏み出すのはお前任せで、お前が敷いた道に続いてただけだった。再会しても無茶ばかりで、なんでも1人で背負い込んで。そういうのは年上の役目なんだぜ? たまには俺たちにもそういう事させろよ」
大振りになったカティアの攻撃を躱し、カティアと直接剣を交える距離に立つ。
「無理だよ! 私がわがまま言って、ゼファーたちがひどい目にあったら私、絶対後悔する。そんな思いするくらいだったら、1人で死んだ方がずっとマシだよ!」
カティアの唇は動揺に揺れていた。何よりも家族と一緒にいる事を好むくせに、相手を傷つけるのが怖くて離れたがる。そんな矛盾を抱えて苦しむカティアを今度はこっちが救う番だ。
カティアの青緑の瞳を見据え、ハッキリと口にする。
「カティア───頼むよ。俺たちを家族も守れないあの頃に戻さないでくれ。もう俺たちは負け犬なんかじゃないって、信じさせてくれ」
カティアは瞳に涙を浮かべ、剣を落とした。開いた手で俺の服の裾を、子供の頃と同じように握りしめて言う。
「私がわがまま言って、居なくなったりしない? 死んだりしないって約束してくれる?」
まるで買い物に行く両親が帰ってこなくなる事を心配する子供のような口調で言うカティアを微笑ましく思いながら、俺は言った。
「当たり前だろ。俺は居なくなったりしない。だからもう泣くな」
我ながらギザなことを言っている自覚はあったが、カティアは笑顔でいてくれるならそれでいいと思えた。
「じゃあ、お願い。ミリィちゃんたちを助けて」
その健気で弱々しい願いに。
「おう」
俺は笑って答えた。
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