DQMJ- future professional (ZUNEZUNE)
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冒険の書1 駆け出しのモンスターマスター

最近ドラクエ熱が再発したので軽い感じで書きます。更新ペースは不定です。


「――落ち着こう、真のマスターは常に冷静だ」

 

生い茂る密林の中、俺は独り言を呟く。今流している汗は熱帯雨林の湿度によるものではなく冷や汗。この危機的状況をどう打破するのか、今一度状況を確認しなければならない。

現在単独行動中、パートナーとは分断され孤独だ。俺一人ではどうにもならないだろう。ならば今持っている物で何とかならないか?

 

――やくそう、せいすい、まもののエサ、なけなしの金で買ったそのアイテムは決して良い代物とは言えるものではない。やくそうとせいすいはまずアイツがいなきゃ何の役にもたたない。まもののエサで新しい仲間をスカウトする手もあるが、これも俺一人では確率が少なすぎる。近くに飢えているモンスターがいなければの話だが。

 

(取り敢えず動かないと何も始まらない、慎重に動いて……)

 

ゆっくりと足を進めていき、今さっきまで追ってきていた「それ」に気づかれないようにする。しかし運が悪いことに、足を下ろした場所に枝がありパキリと割れてしまう。

その音を聞きつけた「それ」が、轟音を鳴らし飛び出してくる。

 

『ウゴァアアアアアアッ!!!』

 

「ぎゃーーーーッ!!??」

 

突如として動き始める大木、根っこが足のように歩幅を描き枝が手のように分かれる。正面には赤く光る眼と大きな口が形成され、物凄い形相でこちらに向かってくる。捕まったらおしまいだ、全速力で逃げた。

 

(じんめんじゅ! バトルじゃあんまり強い印象は無いけど俺にとっては強敵……訂正!()()()にとっては強敵! )

 

自然系のモンスターの代表格といっても過言ではないじんめんじゅ、俺たちはうっかりその縄張りに入ってしまいこうして追われているわけだ。きっかけは最悪、この様子じゃ言葉も通じないだろう。まもののエサに見向きもしないとみた。

 

「いつか最強マスターになる俺がじんめんじゅに丸のみされて教会で生き返るなんてことはあってはならない! そもそも協会なんざ自宅近くにねぇ!」

 

ここで捕まったら死ぬのは確実、意地でも生き延びてこの世界から脱出しなければならない。でもこのままだと追いつかれてしまう。やがてじんめんじゅの間合いの中に入りそうになり、思わず俺はパートナーの名前を叫んだ。

 

「けもきちーーーー! 助けてくれーー!!」

 

 

 

 

 

「全く世話のかかる――マスターだぜ!!」

 

 

 

 

 

けもきちの かぶとわり!

 

空から聞こえる声、見上げると同時に上から毛玉が落ちてきてじんめんじゅの頭部を叩いた。じんめんじゅの悲鳴が森に響き、その根っこの歩みを止める。

守備力を下げる「かぶとわり」、そしてこの聞き覚えのある声はあいつしかいない。

 

「けもきち! 遅ぇぞ!」

 

「全く来て早々バラけるとは運が無かったな!」

 

けもののきし のけもきち。こいつが俺のパートナーであり最初に貰ったモンスター。コアラの姿で斧を翳し、小さな体と言えど強敵に立ち向かう。

今ぶつけたかぶとわりでじんめんじゅは弱くなっているはずだ、仲間とも合流できたところでやるなら今しかない!

 

「よっしゃけもきち! まずはこいつをぶっ飛ばすぞ! 守備力が下がったところにメラだ!」

 

「おっしゃ任せろ……って」

 

反撃開始、そう指示を入れようとするも攻撃された頭を掻いているじんめんじゅを見て思わず思考停止してしまう。かぶとわりで弱くなるどころか、バイキルトでもかけられたように怒りで力溢れているように見える。それを見た俺たちは、一気に青ざめる。

 

「……もしかして、守備力下げミスってる?」

 

「……もしかしなくても、そうだな」

 

 

じんめんじゅの ふしぎなおどり!

 

 

やがてじんめんじゅはその場でおかしな踊りを始める。その瞬間力が抜けるようにけもきちの体から淡い色の光が透けていく。放つ寸前だったメラは、燃えカスとなって消えてしまう。

 

 

けもきちの メラ!

しかしMPが たりない!

 

 

「あっやべ、MP全部減らされた」

 

「えっ」

 

じんめんじゅに良く効くはずの炎系呪文「メラ」も「ふしぎなおどり」でMPを消されて不発に終わる。踏んだり蹴ったりの時に、容赦のないじんめんじゅの攻撃が迫った。

 

 

じんめんじゅの こうげき!

かいしんの いちげき!

 

 

「「ぎょえーーーーーー!!??」」

 

伸びる枝から炸裂する剛腕のラリアット、それをもろに受けたけもきちは盛大に吹っ飛び俺もまたそれに続く。加えて会心の一撃となり、空中でけもきちのHPはゼロとなった。

 

 

けもきちは しんでしまった!

ミライたちは ぜんめつした!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、モンスターマスターに憧れる青年の物語。人と魔物が共存する職業と世界、時に牙を剥き時に仲間として戦ってくれる、今やかけがえのない存在。

 

駆け出しのモンスターマスター「ミライ」と相棒のけもきちの冒険譚である――!

 

 

 

 




・けもののきし
初出『ドラゴンクエストモンスターズ2 マルタのふしぎな鍵』

・じんめんじゅ
初出『ドラゴンクエストⅡ』



好きなモンスターはわかめ王子です。


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