綾崎ハヤテ、私! (桂ヒナギク)
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1話

 杉並区の私立白皇(はくおう)学院。

 私、(かつら) ヒナギクは高等部の二年生だ。

 いつも通り授業を終え、放課後を迎えると、私は時計塔(ガーデン・ゲート)の最上階にある生徒会室へ帰りの支度をしてから向かう。

 白皇の生徒会長である私は、生徒会室の会長席で本日の仕事をする。

 集中すること二時間、下校時間を迎えた。

 今日の作業をやめ、下校する。

 家に帰り着き、部屋に荷物を置いて着替えると、睡魔に襲われベッドにダイブした。

 翌朝、目が覚めると、見慣れない風景が視界に飛び込んできた。

 部屋の様子から見て、そこは3LDKの家。

 尿意を覚えた私は、トイレを探した。

「ここか!」

 ドアを開けるとビンゴ。トイレだった。

 私はスカートを……スカートを……あれ?

 昨日はスカートを穿いた筈だが、どういう訳か寝間着姿だった。

 恐る恐るズボン、パンツを下ろしてみると、股間に一物が生えていた。

 男の子?

 取り敢えず、私はおしっこをし、洗面所へ移動した。

 鏡を覗くと、そこには水色短髪に童顔の少年、綾崎(あやさき) ハヤテが映っていた。

 何でハヤテくんが?

 分からない。

 私は取り敢えず、服を着替えて学校へ登校する。

 校門の前でもう一人の私と出会う。

「おはよう、ハヤテくん」

 向こうが先に挨拶をしてきた。

 どうやら私は入れ替わった訳ではなさそうだ。では私は一体誰?

「おはようございます」

 取り敢えずそう返す。

「ハヤテくん、ナギはどうしたの? いつも一緒よね」

 ナギどころの騒ぎではない。

「どうせ仮病だろうから聞くだけ無駄か」

「ええ」

「じゃ、私はやることがあるから後でね」

 もう一人の私、元いヒナギクは時計塔へ向かって歩き去る。

 私は校舎へ向かう。

 校舎内に入り、教室へ。

 教室に着き、席に座る。

「おはよう、ハヤ太くん」

 瀬川 泉(せがわ いずみ)が挨拶をしてきた。

「おは──」

「綾崎──っ!」

 私の挨拶が終わる前に泉の兄の虎鉄(こてつ)くんが教室に入ってきて声をかけてきた。

「今日こそ俺と付き合ってもらうぞ!」

 虎鉄くんはどういうわけか、ゲイの(へき)があり、ハヤテくんを好いてるらしい。

 だがハヤテくんは彼を本気で嫌っていた。

「消えて下さい!」

 私はいつもの癖で正宗を召喚……出来なかった。

「早くどこか行け──っ!」

 私は虎鉄くんを遠くへ投げ飛ばした。

 チャイムが鳴り、担任教諭が入ってくる。

 担任教諭は私の姉、桂 雪路(かつら ゆきじ)だ。

 HR(ホームルーム)が始まり、出席を取り、世間話をして出て行く姉。

 入れ替わりにヒナギクがやってくる。

「ヒナギクさん、HR終わっちゃいましたよ」

「ホント?」

「はい」

 席に着くヒナギク。

「ハヤテくん、放課後に生徒会室へ来てくれない?」

「分かりました」

 私はそう答えた。

 



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