高木さん? (もね王)
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高木さん?

4回目の妄想の投稿です。
ちょっと不思議な出来事系のお話です。
お見苦しいかと思いますが、よろしくお願いします。


ある日の放課後。

 

「うぅぅ、眠い…」

 

別に夜更かししたわけでもないし、学校にいる間も普通だった。高木さんにいつもより多めにからかわれて多少気疲れはしたが…

 

学校から出てしばらく歩いていたら急に睡魔が襲ってきたのだ。

 

「だめだ…ちょっと休もう。」

 

ちょうど公園の側を通っていたので、ベンチに座って少し仮眠を取ることにした。

 

それにしてもなんでいきなりこんなに強烈に眠くなったんだろうか?疲れてるのかな?

まぁ確かに最近高木さんにからかわれることが多くなってる気が…

 

などと、目を瞑ってつらつらと考えていると…

 

「えいっ。」

 

聞き慣れた掛け声が聞こえたと同時に、わき腹に電気が走った。

 

「わっひゃぁぁぁっ⁉︎」

 

「あっははは!」

 

飛び起きた俺の横には、見慣れた顔の少女がケタケタと笑っていた。

 

「ちょっと!やめてよ高木さん!ビックリしたじゃないか!」

 

「あははは!わっひゃぁぁぁって…ぷっあははは!涙出てきた!あははは!」

「笑いすぎだよ!」

 

くっそー!高木さんめ!

寝込みを襲うなんて!

 

「ふぅ、ごめんごめん。」

高木さんはひとしきり笑うと目を拭いながら謝ってきた。

「春とは言っても今日は少し冷えるでしょ?こんなところで寝てたら風邪ひいちゃうと思って。」

 

…心配してくれたのはありがたいが、起こし方ってもんがあるでしょ。

 

「でもこっちの方がおもしろ…すぐ起きると思って。」

「今面白そうって言おうとしたでしょ!」

 

あとさりげなく心読まないで。

全く高木さんめ…?

 

少し違和感を感じた。

どこからどう見ても高木さんなんだけど…

なんか、違う?

 

「高木さん、だよね?」

「…え?」

 

高木さんは不思議そうな、そして少し驚いたような表情をした。

 

「…わたしの顔に何かついてる?」

「いや、そうじゃないけど…」

「…そんなに見惚れられちゃうと流石に恥ずかしよ。」

「あ、ご、ごめん!」

 

俺は違和感の正体を突き止めるため、高木さんの顔をまじまじと見てしまっていた。

 

「わたしに見惚れちゃってた?」

 

いや、高木さんだ。このニヤッとした感じの表情は間違いなく高木さんだ。

 

「み、見惚れてたんじゃないし!」

「じゃあなんで、あんなに熱い視線で見つめてたの?」

「熱い視線なんて送ってないから!」

 

やっぱり高木さんだ。この感じは高木さんだ。

 

「あっははは!ほんと面白い反応するよね!」

 

あははじゃないよ全く…

それにしてもさっきの違和感は…?

まぁいいか。

 

「ねぇ、わたしと勝負しない?」

 

いきなりだな。まぁたまにあることだけど。

 

「いいけど、何で勝負するの?」

「じゃあねぇ、21ゲーム!」

 

21ゲーム…ずいぶん前に一度やって負けたやつだ。だが…

 

「…いいよ、高木さん。受けて立つよ!」

 

ふっふっふ。どうやら高木さん、このゲームの必勝法を自分から俺に伝えた事を忘れているようだな!確か先攻が圧倒的有利…あれ?後攻だったかな?

 

…ヤバイ!俺も忘れてしまった!

 

「じゃあわたしが先攻で…」

「ち、ちょっと待った!」

 

危なかった!高木さんに主導権を握られるところだった!

 

「…先攻後攻はじゃんけんで決めようよ。」

「!…い、いいよ。」

 

お!高木さんが少し焦ったような顔をしたぞ!

さっき高木さんは先攻を取ろうとしていたな。ならばこのジャンケン、なんとしても勝って先攻を取らねば!

 

「「最初はグー、ジャンケンポン!」」

 

俺はグー、高木さんはチョキ。

よっしゃ勝ったぞ!普段から高木さんとジャンケンしてもなかなか勝てないからこれだけでも正直嬉しい!そしてそんな自分が悲しい…

 

「うっ!…」

 

お⁉︎高木さんが露骨に「しまった!」て顔してるぞ!かわい…じゃなくて!

こんなに焦った表情は初めて見たぞ!

キテる!これはキテるぞ!

 

「ふふふ、じゃあ俺は先こ…」

 

いや待て!あの高木さんの事だ!

心理作戦で俺を惑わそうとしているんじゃないか⁉︎

わざと俺に先攻を選ばせるように誘導しているとか…

あり得る!十分あり得る!

高木さんめ!そうはいかないぞ!

 

「後攻でいいよ。」

「…え?ほんとに?」

 

キョトンとした顔しちゃって、かわいい…じゃなくて!白々しいんだから!

 

「あぁ、問題ないよ。さぁ、はじめよう!」

 

はーっはっはっは!今度ばかりは、勝たせてもらうよ!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…に、21…」

「やったぁ!わたしの勝ち!」

 

なぜだぁぁぁぁぁ⁈

俺は高木さんの心理作戦を完璧に読んだはずなのに…

 

高木さんは得意げに俺にこう言った。

 

「このゲーム、先攻が圧倒的有利なんだよ!知らなかった?」

 

完璧に読み外してたぁぁぁぁぁ!

深読みしすぎて自爆したぁぁぁぁぁ…

 

じゃあなに⁈高木さんのあの焦った感じは素だったの⁉︎

 

「いやぁ、ジャンケン負けた時はさすがにあせったなぁ。」

 

素だったのかよ!

くそぅ、もっと自分を信じればよかった…

 

でもあの高木さんが焦るなんて…

しかもそれを表情に出すなんて…

 

「ねぇ、今度は違う勝負しようよ!」

 

またいきなりだな。

高木さん、なんかテンション高くないか?

 

「…いいよ。今度は負けないからね!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それから何回か勝負をしたが、俺はことごとく負けてしまった…

 

ただいつもと違うことが一つあって、高木さんの表情が豊かというかなんというか…

いつもポーカーフェイスで考えが全く読めない高木さんが、焦ったり迷ったり困ったりと、動揺が全て顔に出るのだ。

俺はそれを深読みしすぎて負けてしまうんだけど…

 

「あははは♪また勝った!」

 

そしてなんだかよく笑う。今まで以上に無邪気な笑顔で。

 

「はぁぁ、楽しいなぁ!」

 

…まぁ、負けはかさんじゃったけど、高木さん、楽しそうだからいいか。

 

そう思った瞬間、また急に強烈な睡魔か襲ってきた。

一体なんなんだ?俺、なんか病気にでもかかったのか?

ヤバイ、意識が…飛びそう…

 

「…高木さん…ごめん…ちょっと」

 

「…うん、いいよ。ゆっくり休んで。」

 

「…ご…めん…」

 

朦朧とする意識の中、最後に見たのは高木さんの寂しそうな表情だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

少女は目の前にいるベンチに横たわって眠っている少年の顔を、名残惜しそうに見つめていた。

 

「…もう時間か。楽しい時間はあっという間だね。」

 

「この頃から変わってないんだなぁ。からかいやすいとことか、わき腹が弱い事とか、面白いところとか。」

 

「それにしても、ずっと《高木さん》だと思ってたなんて…やっぱりわたしって、そっくりなんだなぁ。」

 

少女は少年の頬を優しく撫でながら…

 

「ありがとね、楽しかったよ。また会おうね。」

 

…おとうさん…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…かた?西片?大丈夫?」

「ん…うーん…」

 

目が覚めると、心配そうな顔をした高木さんが目の前にいた。

 

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

ほんと、目と鼻の先にいた。近い!顔が近いよ高木さん!

 

「ご、ごめん高木さん!急に眠くなっちゃっ…のぉわ!」

 

ズテン!

慌てて飛び起きたせいで、勢いよくベンチから落ちてしまった…

 

「イテテテ…」

「大丈夫?西片。」

「だ、大丈夫だよ…」

 

まだ心配している様子の高木さん。

 

「どこか調子悪いの?」

「いや、そういうわけじゃない…と思うけど。」

「ほんとに?なかなか起きなかったから…」

 

…いつもはからかってきたりするけど、やっぱり優しい人なんだな。

 

「…ほんとに大丈夫だよ。ちょっと眠かっただけ。」

 

心配かけて申し訳ないな…

 

「そっか…昨日、遅くまで『100%片想い』でも観てたの?」

 

前言撤回。やっぱり高木さんは高木さんだった。

 

「観てないよ!昨日は放送日じゃないし!」

「放送日には観るんだね。」

 

しまった!

 

「…と、とにかく!俺は大丈夫だから!」

「うん、大丈夫そうでよかったよ。」

 

…まぁ安心してくれたようでよかった。腕立て伏せのノルマは増えたけど…

 

「でもびっくりしたよ。通りかかったら西片がベンチで横たわってたからさ。揺すってもわき腹つついても起きないから心配しちゃった。」

「またわき腹つついたの⁉︎やめてよ!」

「また?」

 

高木さんがキョトンとした顔をした。

 

「いや、最初に起こした時わき腹つついたじゃないか?」

「最初?」

 

またとぼけちゃって。からかう気か?

 

「わたし、ここに来たの今さっきだし、西片を起こしたのも今さっきだよ?」

「…え?」

 

どういう事だ?

 

「いや、今まで一緒に勝負してたじゃない?21ゲームとか、色々…」

「してないよ。」

 

あれぇ?じゃああれは…

 

「夢だった…のか?」

 

そう呟いた瞬間、高木さんの顔がニヤッと

した。

まずい!

 

「ふぅん、西片は夢の中でもわたしと勝負してたんだぁ。」

 

しまったぁぁぁぁぁぁ!

 

「そんなにわたしと一緒にいたいの?」

「いや、別に一緒にいたいとかそういうんじゃ…」

「夢に出るほどわたしのことが気になってるの?」

「だから違うって!」

 

くっそぉ!高木さんめぇ!

 

 



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