FGORTA 召喚鯖単騎のみで人理修復 (リハビリ中)
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再走

リハビリ目的と流行りに乗っかっていくスタイル。


 

 

 

 

 召喚鯖単騎で行くFGORTAはーじまるーよ。

 今回の目的は“召喚サーヴァントを一人のみで第一部クリア”の実績解除。これが中々にマゾいです。ちなみにトロフィー名はアルストロメリアですね。

まず何故マゾいかって言いますと、ただ純粋にキツい。単騎クリアになりますと、その時点で可能なサーヴァントが限られてきます。例えばオルレアンではワイバーンが大量に出現するため、遠距離の攻撃手段を持てるサーヴァントが必要ですが、オケアノスではヘラクレスと渡り合えるぐらいの戦闘能力が求められます。

 特にバビロニアは中盤から終盤になると、広範囲を一騎に殲滅出来る火力を持ち尚且つそれを連射する事が可能な燃費の良いサーヴァントが必須です。

 

 これに挑むやつ本当にバッカじゃねぇの???

 

 ここまで聞くと無理ゲー臭がしますが、現地鯖との契約は例外です。現地鯖二人までなら、契約しても単騎としてみなされます。

 つまり特異点をゴリ押しで突破する事はほぼ不可能です。後は原作主人公である立香がどんなサーヴァントを召喚してくれるか、ですね。こちらを縛る事はほぼ不可能なので(逃避)。彼が強力なサーヴァントを召喚してくれればそれだけでこちらが一気に楽になります。ただその場合魔術王がロンドンで立香を瞬殺するため詰みます。

 そしてダメ押しに一つ、検証しているときに気付いたんですけど同じ特異点でも攻略チャートが変わる事があるんですよね……。準備こそは大方予測出来ますが特異点攻略は臨機応変です。誰だよ、こんな縛りに挑もうとするやつ。

 カルナやアキレウス、クーフーリンなどはかなりいい線まで行けますね。ただ、それでもいい所止まりです。実質契約鯖マシュだけで一部乗り超えた立香君は何者なんですかね……。

 ちなみに召喚予定のサーヴァントですが、とりあえず本RTAではカルナを目標にします。ヘラクレスとタイマン出来る程の戦闘能力、大軍を一気に殲滅出来る高火力持ち、尚且つ真偽を見極め状況を推察できる――単騎攻略なら、確実にあたりです。燃費はカルデアに頑張ってもらいましょう。

 一応どんな鯖でも立香と協力すれば、クリア出来ない事は無いです。ただし一人だけ絶対召喚してはいけないサーヴァントがいます。両儀式(セイバー)です。

 彼女を召喚した場合、望みを叶えてくれる事があるのですがもしそれをしてしまうと、実績解除されません。要するにチートしたって認定されます。

 その望みの内容を言いますと、全魔術使用解禁、魔力常時最大回復、魔法使用可、ステータス限界突破とか。要するに攻略チャートの概念が全てぶっ壊れます。

 じゃあ、望みを言わなければいいじゃんってなりますけど断っていく内に、何故か彼女本気になってくるんですよね……。特に主人公が追い詰められてる時に彼女から望みを聞かれた場合はアウトです。彼女は本気で叶えてきます。

 私は好きなんですけどね……。悲しいなぁ。

 

 説明が長くなってしまいました。まずはキャラクリに入りましょう。

 性別は男にします。名前は……ランダムでいいです。“在間(あるま)  来周(くるす)”ですね。略してホモ――にならないやんけ、はーつっかえ。とりあえずホモ君と呼びます。

 起源の設定ですね。関係する使用魔術やステータスに大幅なボーナスが加算されます。まぁ、起源覚醒して暴走しちゃうと死ぬんですけどね。ここは普遍を選びます。何故かと言いますと、デバフが入る確率を最低限にまで減らせるからです。

このデバフが本当にヤバいです。戦闘中にマスターがデバフに掛かりさらに追加効果まで出された時、すぐに解除しないとゲームオーバー直行します。だってサーヴァントですら無視出来ない状態を人間であるマスターが食らったらそりゃそうなる(確信)。

マルタやアスクレピオスなどがいた場合解除してもらえるのですが、サーヴァント単騎の場合はほぼ無理です。レイシフトして立香とはぐれ、目の前にデバフを与えられるサーヴァントがいた場合詰みます。

 このデバフの恐怖はどの特異点でも存在するので、単騎ならこの起源でほぼ決まりです。

その代わり、経験値に入るボーナスも最低値で固定されますがそこはアイテムで何とかします。

 ではイクゾー!

 

 

>貴方は長い眠りの中から意識が覚醒する。悪い夢でも見ていたのか、酷く疲れが残っていた。

 けれど、それはいつもの事だ。どれだけ惰眠を貪ったところで無くなる事は無い。

 

 おっ、中々いいですね。結構レアな開幕です。デバフに対して耐性が上がりやすいですね、これ。元々対策の為、起源を普遍にしましたがこれならステータスを上げる方向にもっていっていいかな。

 

 >誰かがドアを乱暴に開けて入ってくる。

 

 おっ、開いてんじゃーん。

 

>いたのは金髪の少年で、貴方に対して侮蔑や嫉妬の目線を向けていた。

 

「はっ、相変わらずつまらない顔してるなお前。せっかく養子に来たんだから、せめて作り笑いでも浮かべるのが普通なんじゃないのか」

 

 あー、これ珍しいですね。今回は魔術家系に養子で引き取られたようです。

 ただし魔術刻印は直系血族しか引き継げない筈なので、ホモ君にそれだけの才質があったか或いは実験代わりでしょうね。

 

「フン、どうせ後数日の人生だ。精々、足掻いとけ」

 

 >そういって、彼は部屋から出ていった。

 >そろそろ学校に向かう準備をしなくては。

 

 んー、気になるところがありましたがこれはまさかな……。

 原作主人公ですが、どうやら他の先駆者兄貴達のように幼馴染ではなさそうです。これでフラグ管理とか面倒な事せず、ステータス上げや準備に移る事が出来ます。

 まずはスキルを確認しましょう。ゲーム開始時、ランダムでスキルが三つ選ばれます。

 

『無銘刻印』

『太極』

『追憶』

 

 ん???

 無銘刻印は欲しかったスキルですね。これがあるおかげで特異点Fから『禁忌礼装(ミスティックオーバー)』を準備する事が出来ます。禁忌礼装の説明についてはまた後程。

 太極……? こんなスキルありましたっけ? (攻略wikiに載って)ないです。説明文見てみましょうか。何か考察出来るかもしれません。

 

 『太極 説明不要』

 

 えぇ……(困惑)。でもこのゲームたまにあるんですよね。説明文や効果が後から詳細に分かるのって。こういう所で原作再現しなくていいから。

 追憶も初めて見るスキルですね。まぁ無銘刻印が取れたので続行します。ちなみに取れなかったらリセ案件です。単騎では無銘刻印は絶対に外せません。理由はいずれ。

 日常回は倍速します。ちなみに立香と幼馴染では無かった場合、ここで軽く言及あるぐらいです。

 

 >下校時間になった。これから何をしようか……。

 

 とりあえずカルデア入りまで時間は二年数か月ほどあるので、じっくりやっていきましょう。ステータス上げやスキル獲得に専念していきます。ちなみに二年とか言ってますけど、イベントで一気に数か月飛んだりします。

 他の先駆者兄貴達は神社だったり、謎の商人のところに向かうらしいです。

 

 >そういえば博物館で展示会がやってるらしい。行ってみようか。

 

 おっ、これは中々いいイベント。新スキルを入手出来たり、いくつかのステータスを同時に上げられるので、かなりうまあじ。

 ただ、一度切りなのが悲しい所。毎日、イベントやってどうぞ。

 

 >博物館に着いた。平日のせいか、職員以外の人影はほとんど見当たらない。

  どうやら日本刀の展示会をやっているらしい。

 

 日本刀かぁ。これで呼べるサーヴァントと言うと武蔵ちゃん、沖田さん、鬼の副長、坂本龍馬、人斬り侍……後半になるとなんともなぁ……。ちなみに本RTAにおける当たり枠としては沖田オルタです。対サーヴァント戦も出来ますし、ビームも打てますので。また抑止力補正でビーストに対して特攻ボーナスが入る為、クリアになるまでお世話になるサーヴァントの一人です。吐血しないのもいい所。

 

 >展示されている刀を見ていると、ふと隣に気配を感じた。

 

 ん?

 

 >見れば、白い着物に身を包んだ嫋やかな女性が微笑んでいる。

 

 えっ、誰ですかこの人。

 

「あら、奇遇ね。貴方もこの子達を見に来たの?」

 

 >親しくさせて貰っている近所のお姉さんだ。素性は不明だが、あなたをとても気にかけてくれており時折食事も御馳走になっている。

 

 はえー、初めて見る人物ですね。こんな内容があったとは……。

 

「まだ時間もあるみたいだし、もし貴方が良ければ、一緒に見て回らない?」

 

 とりあえず後でwikiに報告しておきましょう。これは初めて見るパターンですし。

 何やら二人が楽しげに会話をしている間、今後の方針を決めておきます。

 まずはステ振りからですね。単騎運用の前提として、マスターも可能な限り支援していく事が必須です。火力を上げていくのは二章からでも間に合いますので、持久や防御に振っていきます。

 まぁ、カルナが引ければ大丈夫なんですけどね。彼が引けた時点で、ホモ君は自衛と支援に専念してれば、余程のガバが無い限り七章まで到達出来ます(5敗)

 じゃあそのための触媒集めとなりますと、実はカルナ確定の触媒、一般家系やそこらの魔術家系では入手困難です。それこそ時計塔でもトップクラスの人物となれば、手に入るかもしれませんが……。

 故に触媒は集めません。ランダム召喚でただ祈り続けます。

 もし普通の鯖でも、頑張って立香君と協力すれば何とかなるでしょう!

 ――と、そんなこんなでイベントも終わるみたいですね。

 

 >彼女の解説を聞きながら、博物館を見て回った。

 

「今日は付き合ってくれてありがとう。また縁があったらよろしくね」

 

 >彼女の言葉に貴方は頷く。

  教えてもらった内容はとても分かりやすく、当時刀を振っていた者達の心境を理解出来るような気がする。

  『雲耀』を習得した!

 

 ファッ!?

 雲耀――火力と精神異常耐性を上げてくれるスキルですね。しかもパッシブ扱いで、常時補正がかかるみたいです。マスター自身が直接、戦闘を行うタイプのプレイヤーにとっては喉から手が出る程欲しいスキルです。鯖への支援として使用すると、移動速度を上げる事も出来ます。

 どちらを考慮してもかなり使い勝手のいい内容です。と、ここで今日一日は終わりのようですね。

 キリがいいので、一旦セーブしておきます。

 今日はここまで。終わり! 閉廷!

 

 

 





 誰もが寝静まった夜。一人の青年が眠っている部屋に、一人の少女が姿を現す。物音一つ立てないその様は、まるで幽霊のよう。彼女は入眠している彼の傍に近づくとそっと膝を着いた。
 悪い夢でも見ているのか、彼は酷くうなされていて苦し気な表情をしている。

「馬鹿な人」

 彼は繰り返した。その結末を受け入れてたまるかと。長い旅路になる事を知りながら。
 彼は繰り返した。何度も体を貫かれて、焼かれて、抉られて。ありとあらゆる死に方を体験して。
 彼は繰り返した。契約したたった一つの存在を、ただ大切にし続けた。その身を挺して庇う程に。

「本当に、馬鹿な人」

 そよ風のように優しく頬を撫でる。途端に、彼の表情は少しだけ和らいで、声もどこか落ち着いたようにも見える。

「今度は誰を庇ったの? ――いいえ、ごめんなさい。意地悪な質問だったわね。
 この旅で。この生で、貴方の旅を終わらせましょう。ただ……それが貴方の望まないカタチになってしまうかもだけれど」

 掌を重ねて、彼の甲に額をつけた。

「ずっと貴方の旅を見届けてきたから。貴方がどういう人かなんて、もうとっくに分かってしまってる。
 きっと貴方は怒るのでしょう。私がする事は、貴方の願いにそぐわないものだから」


「ごめんなさい、マスター。もう私は我慢出来ない。貴方の死を、貴方の苦しみを、もうこれ以上見たくない。
 そのためなら、私は――」




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カルデア入り

こんな超展開だらけのガバガバシナリオですけど、楽しんでいってね!


明日からラクーンシティに行くんで失踪します。


 

 

 単騎駆けのためのクラウチングをし続けるRTA、はーじまるよー!

 前回は雲耀スキルを取った所までですね。ここからステ上げを地道に開始していきます。まぁ、二年も時間がありますし、ステ振りとスキル習得に専念するので素人からプロ野球選手になれるぐらいまで成長出来るでしょう。

 さて、そろそろ二日目の画面が――あれ?

 

>――深い泥の中を、漂っているような気がする。

 

 ファッ!?

 

 >指先一つ動かない。まるで流されていく海月のようだ。

 

 ちょっと何ですかこれ!?

 今、初めて見たんですけど!!

 メニュー画面も開きませんし、スキップも出来ないとかどうなってるんですこれ!

 

 >ふと声がする。どこかで聞き覚えのあるような声。

  これは確か――。

 

「さぁ、起きて。もう大丈夫。行きましょう、良い余生を」

 

 えっ。

 

 

 

 

 >意識が覚醒する。白い天井が見える事から、どうやら病室にいたらしい。

 

「やぁ、目が醒めたかい。おはようアルマ君」

 

 >オレンジ色のポニーテールをした男性が部屋に入ってくる。

  その姿に、酷く懐かしさを覚えた。

 

 あれ、何でロマニがいるんですか。まだ二日目じゃ……。

 

「その、落ち着いて聞いて欲しい。キミは昏睡していた。その期間は――凡そ二年。

 原因は全く以て不明。キミの父上からそれを聞いたレフ教授が原因の解明と治療のために、ここカルデアに引き取る事にした」

 

 ちょっと何言ってるかよくわかんない。

 と言うか、流れがオリチャ過ぎませんかこれ。献血イベントは!? ステ上げの期間は!? 私の立てた二年分の綿密なチャートは!?

 かえして! かえして!! かえして!!!

 何で昏睡なんですか! 何でレフ教授の名が出て来てるんですか! クソがよぉ!

 

 >二年。その言葉に眩暈と吐き気がする。

 

「! 薬剤の準備を! 大丈夫、大丈夫……。息を吐くんだ。そう、大丈夫、大丈夫。

 ボクがいるからね、こう見えても医者なんだ。だから安心して欲しい」

 

 (走者的に安心出来)ないです。これ、どうするかなぁ。ほぼ初期ステに近い状態でやるんで単騎縛りだと猶更リセ案件なんですよね。

 ただ今回所有していたスキルでよく分からないモノがあったのと、wikiにも報告が無いため検証もかねて続行します。頑張れ、ホモ君!

 

「今はもうしばらく休んでおくんだ。また落ち着いたら、改めて詳しく説明するよ」

 

 >強い眠気が襲ってくる。それに抗う間も無く、ただ静かに意識を沈めた。

 

 とりあえず今後の方針を考えていきます。

 まずは武器ですね。ステが初期なんで、近接武器はまず使えません。初期ステでも十分使用出来て、援護もこなせる武器――銃が安定になりますね。弾さえ改造済であれば、雑魚エネミーなら倒せますし、弾薬もカルデアから送ってもらえるので魔力も消費しません。リロードのタイミングさえガバらなければ安心!

 

 >どうやらカルデア、と言う施設に自分はいるらしい。

  昏睡の原因を探るための研究として入館を許されているようだ。

  とりあえず部屋に向かおう。

 

 うーん、まさかこんな形でカルデア入りする事になるとは……。

 既にAチームもいるようですが、関わる機会はほぼありません。と言うか、特異点Fが発生するまでもう一か月も無いです。

 シミュレーション訓練とダヴィンチちゃんからの依頼を只管こなします。魔術回路の調整や、武器の調達、改造までやってくれるので、うまあじしかないです。

 ロマニ? どうせ上がるんで後回しで。

 まずは自室に忘れられた秘蔵品が無いかを調べます、イクゾー! カーン!

 

 

 

 

 

「それで、どうだったんだいロマニ。彼の体は」

 

 カルデアの一室――ダヴィンチのアトリエで、ロマニ・アーキマンはその問いに被りを振った。

 レフ・ライノールからの紹介かつ手引きにて、カルデアでの預かりとなった在間(あるま)来周(くるす)

 レフ曰く高名ではない魔術家系に養子として引き取られた。何故引き取られたのかについては不明。レイシフト適正率が極めて高く、今後のレイシフトを安定させるための研究として相応しい。彼の推薦には、所長であるオルガマリーも難しい顔をしながら受け入れる事しか出来なかった。

 

「――在り得ないよ。彼の体をどこまでも道具としてしか考えてない」

「……ほう」

 

 それを理解した時、吐き気すら覚えた。喉の奥にあるもの全てをぶちまけたかった程に。

 何故レフ教授が彼を保護しようとしたのか。その疑問が一つ解けていく。

 

「全身に魔術刻印を確認した。けどそれだけじゃない。肉体の裏、臓器の裏表、毛細血管、リンパ系、神経の一片に至るまで。その全てに魔術刻印が刻んでいる」

「それ、は」

「人の肉体を徹底的なまでに魔術の道具として利用する。惨過ぎるにもほどがある。

 そんな体で、どうやって彼に人並みの人生を送らせるつもりだったのか。いや、そもそも彼に生を与える事すら無駄だと考えたんだろう」

 

 彼は憐れんだのだ。ただの道具として使用されていく彼のその後を。

 閉ざされた生命の中に、せめて一つだけでも光を灯したかったのだ。

 

「……視点は違えど、考え方には同意だね。人体に宿る美しさを全て削ぎ落とすなんて、余りにも無粋過ぎる。

 全く、効率化を目指した魔術師なんて言うのはどれもこれも馬鹿馬鹿しい」

「あぁ、その通りだ。人並みの感情を持ち、人並みの価値観を以て、人並みの人生を全うする。

 それは有り溢れた、幸せの一つだと言うのに」

 

 或いはそんな人でなしだからこそ気づかないのかもね、とロマニ・アーキマンは嘲るようにして微笑んだ。

 

 

 

 

 (秘蔵品なんて)ないです。

 あるのは簡素なベッドと毛布、そしてシャワールームでした以上! 終わり!

 ではなく、今からシミュレーションしにいきます。

 マスター訓練を行い、スキルの獲得に向かいましょう。メイン武器は決まった以上、後はスキルで補うしかありません。

 とりあえずクイックショットと狙い撃ちを習得しに行きます。

 クイックショットは、チャージ系スキルや礼装のリキャスト時間を短くしてくれる効果があり序盤で得られるスキルとしては破格の性能です。

 そして狙い撃ちは射撃武器の命中率とクリティカルダメージの倍率を大幅に引き上げる効果を持ちます。無論、チャージ系のスキルです。

 この二つの組み合わせは、射撃を好むプレイヤーには序盤からゲームクリアまでお世話になる事間違いなしの性能。

 ただ、銃系の武器はかなり高価かつ入手時期が遅く、カルデアだとビリーやドレイクなどの鯖を召喚してからようやく開発開始出来るぐらいです。

 しかし銃を使用してシミュレーションを行っていると、稀にダヴィンチちゃんが乗り気になってくれて序盤から開発出来るケースもあります。

 

 >シミュレーションルームの前に来た。

  武器を銃に設定。シミュレーションを行いますか?

 

 つまり、ここで狙うのはスキル入手とダヴィンチちゃんがデレる事です。

 いけェ! いけェ!!

 

 >そこそこの手応えだった。

『狙い撃ち』を習得した!

 

 よしリセしよう(直球)

 いえ、まぁ狙い撃ちでもやれない事はないんですけどね。ただ禁忌礼装を使うので、クイックショットがあればかなり助かったんですよね。

 気を取り直して次!

 ダヴィンチちゃん! いいよ、来いよ! 何でも――

 

「やぁやぁ、初めてのシミュレートにしては上出来じゃないか」

 

 するとは言ってないからセーフ(断言)

 よしよし、ここは運が良かったです。ここでダヴィンチちゃん来なかったら、真面目にキツいです。

 

 >目の前に現れた人物は、ダヴィンチと名乗った。

  ロマニ・アーキマンやダヴィンチ……彼らの姿にどこか酷く懐かしい感じがする。

  『黄金律“記憶”』を習得した!

 

 ファッ!?

 何ですか、これ!

 黄金律“記憶”って初めて見ましたよ……。オウゴンオニクワガタみたいな名前してんなお前な。

 そして勿論効果は不明です。はー、つっかえ。

 ひとまずセーブして、次はダヴィンチちゃんの工房でドキドキ(意味深)タイムです!

 終わり! 閉廷!

 

 

 




『黄金律“記憶”』

 何もかもが色褪せていく中で、尚も色を放つ日々の欠片。
 最初の自分も、自身を繋ぎ止める物語すら手放した者にとって唯一残されたモノ。

 再走と回帰を繰り返したは何の為か。

 零れ落ちた運命を繋ぎ止める為、誰も欠けぬ世界を此処に。

 その誓いはいつしか摩耗して、ただの後悔になってしまった。


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ミスティックオーバー

やはり先駆者兄貴のssは……最高やな!


やっぱりですね、オーバードウェポンとかは男のロマンだと思うんですよ。


 

 ランラン楽しく遊んでいくRTA、はーじまるよー!

 と言う訳で今回はダヴィンチちゃんとの交流ですね。実質コミュです。

 工房でのティータイムは……最高やな!

 

「にしても、見事な射撃だったね。そういうのに興味があったのかい?」

 

 いいえ、タマタマです。

 

「ふーん、にしては中々の精度だったよアルマ君。銃か……。研究してみるのも悪くないね。もし試作品が出来たら、キミに使ってもらう事にしよう。モニター、期待しているよ」

 

 ヨシ!! これで銃開発のフラグが立ちました!

 後は素材なりなんなり集めれば、ダヴィンチちゃんが一晩でやってくれます。

 じゃあもう用は無い――と言いたい所なんですけど実はもう一つあります。禁忌礼装の事です。別名、ミスティックオーバーと言います。

 

 >貴方は、ある奥の手を話した。

 

「……あぁ、ロマニが言ってたヤツか。キミも気づいていたんだね」

 

 ここからちょっと長い会話イベントが入るので今のうちに説明を。

 普段なら何の役目も無いお飾り同然の無銘刻印ですが、特異点においては一種の方向性を与える事が出来、概念礼装を組み合わせて魔術回路を暴走させる事でサーヴァントすら致命傷すら負わせる程の威力を持つ禁忌礼装が使用可能となります。

 元々推しの鯖達がただ戦っているのを見るだけなど出来ないと、有志達があれこれ検証した結果、無銘刻印と概念礼装を組み合わせる事によってバグ技にも近い効果を生み出す事が判明。しかしシステムギリギリのラインまで攻めているため、使用後はしばらくの間、全ステータス大幅低下、最大体力限界値まで低下、スタミナ切れ、行動不能、視界にノイズ発生――効果相応のデメリットが発生します。

 要するに浪漫砲ですね。ちなみにキャラメイクでアルトリア顔に近い傾向にしておき、第六特異点で禁忌礼装を使用すると偽装展開、ロンゴミニアドが使用可です。獅子王の聖槍から村を防衛するイベントで使用すると六章/zeroで散っていった円卓の騎士達が承認に力を貸してくれる展開になったりします。

 話が逸れましたが、ホモ君は無銘刻印を最初から所有しており、特異点Fにおいて概念礼装が入手出来るため、実質序盤から禁忌礼装が使用可能です。

 それとダヴィンチちゃんがどう絡んでくるのかと言いますと、概念礼装に手を加えてくれて禁忌礼装のデメリットを軽減かつ時間を短くしてくれます。あまり無茶しないように、との気遣いですね。これを利用しない手段はありません。

 これもタイムのためだからね、しょうがないね。いや、まぁ、今回はテストランに近いんですけど。

 

 >ダヴィンチちゃんから、自身の体の事を聞いた。

  やや不器用ではあるが、確かな気遣いを感じる……。

 

「さ、あんまり時間も無いからね。試作品は何とか間に合わせるよ」

 

 さて、後は只管シミュレーションと彼女の工房の行き来を繰り返します。

 倍速! 超スピード!?

 

 

 

 

「――どうかな、彼の様子は」

「今の所、至って変わりは無いよ。シミュレーションでも、ほぼ平均値だ」

「……そうか」

 

 レフ・ライノールはその言葉に小さく息を吐いた。

 彼のアルマ・クルスと言う人物への思い入れは、一際大きい。それ程彼の家族と親交があるのか、他人には図れぬ事情があるのか。

 ロマニは、直接聞きだすような事はせずただ彼の報告だけを行っていた。

 

「ロマニ。キミは人間と言うモノをどう考える」

「え……」

「率直に言って私は嫌いだ。時折吐き気すら覚える程にね。知れば知る程、残るのは諦観と微かな憐れみだけだ。

 キミも医者として、精一杯足掻く中で見せつけられた筈だと思うが」

 

 意外な言葉だった。今までの彼の振る舞いから、一切感じ取る事のない感情。

 信じてきたモノに裏切られたかのような、だがそれでも信じていたいと言う希望が見え隠れして。どうしてだか、その言葉に酷く同感してしまって。

 だから迷う事無く、その言葉を口にする。

 

「でも、そういうのがヒトなんじゃないかな。自分の生きる意味を見出すためではなく、自分の生きた意味を遺すために、今を足掻く」

 

 もし、その駆け抜ける時間全てが星にとって瞬きのようなモノだったとしても。

 その一瞬を全力で駆け抜ける。そうして作り上げられた道を、また誰かが継いで行く。

 

「残せなかった者は、ただ朽ち果てていくだけだと?」

「いや、そうじゃない。きっと誰かが、誰でもない自分を待っている。

 だからこの世全ての命に意味はある。ボクはそう信じているよ」

「そうか。……そうか」

 

 彼の言葉に、レフは帽子を被り直す。踵を返して部屋を出る直前に足を止めて、彼は振り返る事無く呟いた。

 

「それを運命だと言うのなら、ワタシは――」

 

 

 

 倍速が終わりました(唐突)。

 あと数時間でカルデア爆破テロ、特異点Fが開始されます。勿論その間、ホモ君は逃走します。体調不良訴えたら何とかなるでしょ。

 ここからよく見る光景なのでもう一回倍速します。

 立香君が所長にビンタされて、ホモ君が体調不良訴えて――爆破。

 

 >カルデア全体が停電し、大きく揺れた。

  辺り一面に警報が響いている。

 

 ここから管制室に直行します。まぁ、ホモ君は取るに足らない存在なのでレフが殺しに来ることはないでし――。

 

「ここにいたのか。全く世話を焼かせるなお前は」

 

 ――は????

 え、ちょっと待って。お前今まで一度も出てこなかったやん。

 ホモ君、壊れちゃーう。

 

 >レフ・ライノールがそこにいた。

  不敵な笑みを浮かべているものの、その雰囲気は今までとは全く異なる。

 

「さて、アルマ――いや、飾りなどこの際不要だ。

 お前は、またこの運命を選ぶのか。既に理解している筈だ。ただ苦しむだけで、報酬など一切無い。誰にも感謝される事は無い。

 ――お前を守り続けた彼女は、もういない」

 

 ちょっと何言ってるかよく分からないです。

 ただ、もしかすると選択肢が出るので下手にスキップ出来ませんねこれ。

 

「ただの人だったモノには、余りにも過酷過ぎる。それでも行くのか」

 

 >迷う事無く、貴方は答える。

  それが自分の戦いだ、と。

 

「……――まぁ、いい。いずれこの先で、もう一度答えを聞くとしよう」

 

 >そう言ってレフ・ライノールは陽炎のように姿を消した。

 

 えっ、何も無いんです? やったぜ。

 ちなみに今までの経験では、ステが高すぎるとレフが直行してきて戦闘開始、初期ステでも生存していればレフがこちらを探しに来て見つかると戦闘開始。ちなみに一週目なら戦闘で負けても勝手に見過ごしてくれます。しかし二週目以降になると、周回前提の難易度に跳ね上がりガチで殺しに来ます。

 思っていたよりステが上げれなかったから、見つかっても戦闘にならなかったのでしょうか……。これもうよく分かんねぇな。

 とりあえず管制室に直行します。

 

 >管制室は燃え盛っていて、肉が焦げたような臭いが鼻につく。

  足元が異様にぬかるんでいた。

 

 起源のおかげで、デバフがほとんどかかりませんね……。と言うかかなり弾いて無いかこれ。

 いましたいました、主人公こと藤丸立香とマシュ・キリエライトです。

 後は強制レイシフトイベントなので、倍速。その間に特異点Fの目標を決めておきます。

 まずマシュの宝具解放と黒王撃破が目標となります。宝具解放については立香とキャスニキ、所長が揃っていればそれだけで達成できます。

 しかし黒王が一番の問題です。先駆者兄貴達も苦戦しているんですけど、どう考えてもコイツ、序盤に持ってきていい強さじゃないんですよね。元々の戦闘能力自体が高い事に加え、不意打ちにすら超反応してくる直感、それなりの装甲すら容易にブチ抜く高火力、致命傷にならなければすぐに復帰してくる再生能力、大技を連発しても尽きる事の無い魔力――ちなみに味方として召喚した場合でも前者の二つはちゃんと使えますので、クッソ強いです。なんなんですか、コイツ。

 さらに処理していない場合、エミヤが加勢しに来るのでほぼ詰みます。まとめて倒そうとしても熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)で防いできて、カウンターでエクスカリバーが飛んでくるクソゲー。ただ、この二人を同時に相手して正面突破した兄貴も存在するとか……。

 ちなみにレイシフト中はお祈りタイムです。たまにとんでもない所に飛ばされる事があります。検証ではいきなり目の前に黒王がいた事があります(1敗)

 とりあえず臨機応変に行きましょう。最悪、禁忌礼装(ミスティックオーバー)も使用すれば、まぁ何とかなる(震え声)。 

 

 ん……? 今、気のせいでしょうけど一瞬だけ雪のエフェクトが見えたような……。

 まぁ、きのせいでしょう! 次は特異点Fです!

 

 

 






 ――大丈夫、大丈夫よマスター。

 何があっても、私は貴方だけを守り抜く。人理も摂理も、今の私には関係のない事。

 貴方が心の底から笑って生きていてくれたら、ただそれだけで。


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狙撃


好きなssが更新されていたので、筆が乗って初投稿です。


ちなみに感想について返信しない理由ですが、私が必要以上に書いてしまい、ネタバレしてしまう可能性がある為、とあるお話が終わるまで返信しないようにしています。短文で済ませるのも失礼かなと思いまして……。
ちゃんと感想の一つ一つには目を通しています。本当にありがとうございます、励みになります。


 

 

 はい、引き続き特異点Fにレイシフトした所からやっていきますよ。

 まずはお祈りが届いたかどうかの確認です。即死してない辺り、最悪なパターンではないようですけど――。

 

 >目が醒める。貴方は辺りを見渡した。

  丘の上だろうか。燃え盛る街が見渡せた。

  ダヴィンチから貰った装備は破損しておらず、無事使う事が出来そうだ。

 

 ちょっと待って。

 

 >丘の上だろうか。燃え盛る街が見渡せる。

 

 うわぁ……。よりにも丘ルートの方ですか……。

 これ、ちょっと良くないパターンですね。レイシフトしたらヘラクレスが目の前にいたパターン通称森ルートと同じぐらい良くないです。

 何故良くないかって言いますとね、まず特異点Fはエミヤがいるじゃないですか。で、エミヤって遠方から普通に狙撃してくるじゃないですか。で、ホモ君がいる所って高い所じゃないですか。高い所って、めちゃくちゃ見つかりやすい――つまりそういう事なんですよね。

 ホモ君、走るよ!!!!

 

 >すぐに貴方は街へ向かうべく動き出した。

 

 運が良ければエミヤに見つからずに――。

 

 >寒気を感じて咄嗟に貴方は転がる。

  立っていた所へ、一本の剣が突き刺さっていた。

 

 ダメみたいですね(諦め)

 木々の間を駆け抜けます。エミヤの視界に収まったまま0.2秒が経過で狙撃されるので、射線を切り続けるように走れば大丈夫です。ただし、隠れたまま一分が経過すると必中効果がある赤原猟犬を使ってくるので即死します。禁忌礼装があれば、防ぐことは出来ますが二射目が防げないので死にます。

 サーヴァントを召喚出来ればイケるんとちゃう? と思われる兄貴もいるとは思われますが、このパターンのエミヤは只管狙撃に徹してくるんで遠距離攻撃の手段を持たないサーヴァントで戦おうとすると確実に返り討ちに合います。しかもこのステージ、アイツの地元なんで土地勘あるせいもあって、クッソ厄介なんですよね……。逃げ道誘導してくる時があるので。

 

 >レーションを使用した。

  スタミナが回復。これでまだ走れそうだ。

 

 ホモ君が走っている映像を流し続けるのもあれなんで、ここで捕捉を。

 ここから逃走するルートと言いますと、一つしか無いです。エミヤの狙撃から逃れつつ召喚ポイントである森の入口まで向かいます。そこで自身のサーヴァントを召喚し、共にシャドウサーヴァントと化したヘラクレスがいる森を突破するのが定石です。森に入った時点でそこからエミヤは狙撃してきません。シャドウサーヴァントなら十二の試練も無いので、とある概念礼装さえ入手出来れば禁忌礼装と自身のサーヴァントで撃破です。

 めちゃくちゃ簡単そうに言いましたけど、ガバると死ぬんでかなりしんどいです。丘ルートがキツいと言われる理由ですね。森ルートなら、ヘラクレスから物音立てずに逃げるステルスが始まります。物音立てたら? ゲームオーバーです。間違えて小枝を踏んだら即死します。

 ちなみに他兄貴のRTAでは丘ルートでアーチャーを召喚し、エミヤと遠距離戦で死闘を繰り広げ撃破した動画があるのでお時間があれば是非。

 

 >音が止んだ。見れば、刺さっている剣の痕も無い。

 

――あれ、射撃が来ませんね?

 おかしいですね……。避けても狙撃の痕が残る筈なんですが……。

 

 >突如、爆風が貴方を襲った!

 

 ファッ!?

 

 >幸い、一命はとりとめているが貴方は身動きが取れない。

  視界が灰色の世界になり、残像が映る。

  貴方の意識は、闇に落ちた。

 

 あの野郎、"壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)"しやがった!!!! そんな事、今まで無かったぞ!!!!!

 それどう考えても、サーヴァントを持たない一般人にぶち込む火力じゃないですよね!? 貴様のやり方には誇りが欠けている!!!

 うわぁ……これはまた再走ですね。ここからエミヤにトドメ刺されて終わりです。

 色々検証したかったんですけど仕方ない……。

 ………………あれ、ゲームオーバー画面が出てきませんね。

 

 >目が醒める。

  どうやら屋敷のような一室で眠っていたようだ。体には包帯が不器用に巻かれて、慣れない手当をしてくれた人物がいた事が分かる。

 

 えっ。

 

「目が醒めたみたいね。ごめんなさい、遅くなってしまって。鬼ごっこにちょっと時間がかかってしまったの」

 

 >傍には白い着物の女性が座っていた。彼女の右手には鞘込めの刀が握られている。

  彼女は貴方の手を握って、優しく微笑んだ。

 

 えっ。

 

「色々と貴方と話をしたいのだけれど、時間も無さそうね。私は――……訳あって、名前は名乗れないの。認識されてしまう訳にはいかないから。

 私の事は、セイバーと呼んでね」

 

 >彼女――セイバーは、小さな子どものような顔で笑って。貴方の手を両手で握った。

 

 うわああああああああああああああ!!!!!!!

 

 

 

 

 とあるビルの屋上――周囲は既に黒煙に覆われているが、男にとっては関係ない。鍛え上げられた鷹の瞳は、煙如きで逃がさない。

 

「さて、まずはお手並み拝見と行こう」

 

 一射目――直感のせいか、彼はすぐに回避した。視線に気づいたか。狙撃を偏差射撃に切り替える。

 彼が走り出す。木々の中を駆け抜け射線を切ってくる事に加えて、丁度狙っていた位置からズレるように走っているのだ。

 

「こちらの手の内は把握済みか。正確過ぎるのも困りモノだな」

 

 これでは確実性に欠ける。――彼を確実に仕留めなければならないと言う思いが、ブリキの歯車を動かし始める。

 

投影開始(トレース・オン)

 

 相手が地形を使うと言うのなら、その地形ごと破壊してしまえばいい。

 

我が骨子は捻れ狂う(I am the bone of my sword)

 

 いびつな剣が、矢としてつがえられる。

 打ち込んだ地点の地形とそこからの範囲を予測。消し飛ばす事も考えたが、万が一と言う事もある。まずは意識を刈り取ってから、その次で仕留めれば良い。

 だがもしかすると、彼ならそれすらも生き残ってくるかもしれない。

 そういう事が出来る人物なのだと、知っている。這いつくばるように生きて、無様にも前へと進み続ける。――あぁ、そうだとも。だから止めなくては。

 放たれた矢は、一直線に向かい――爆発した。彼の体が跳ね飛ばされ、地面へ叩きつけられた光景が見える。

 見れば僅かに身動きしており、呼吸もしている。与えた負傷は、火傷、打撲、骨折、臓器損傷ぐらいだろう。放っておけば、そのうち死ぬだろう。

 だから、ここで確実に殺しておく。

 

「まだ、息があるか。だがこれで終わりだ」

 

 次に番えるは絶対必中の一撃。放たれれば音速で標的に食らいつく緋の猟犬。

 後は指を放せば、それで終わる。

 斯くして打ち出された一射は、一直線に――こちらへ迫っていた黒き巨人を貫いた。

 

「チィッ、誘導されてきたか!? いや、或いは」

 

 頭部を穿たれて尚も巨人は止まらず、手にした斧剣を振りかざす。すぐ様、距離を取り隣のビルの根本を射撃し、爆破。

 倒壊していくビルそのものが、巨人を呑み込んでいく。

 

「――悪いな、セイバー。どうやらオレは間に合わないようだ。

 どうか彼を、止めてやってくれ」

 

 雄叫びと共に自身を押し潰そうしていたガレキを全て消し飛ばして、巨人は疾駆する。

 彼は小さく息を吐いて、次の一射をつがえた。

 

 

 

 






 彼の体を手当てする。総て知っている事だけれど、上手く出来るかどうかはまた別の話だ。
 その体を背負って、予め掃除を済ませておいた屋敷まで向かう。――幸い、まだ確実な認識はされていないから、少々力を使用しても構わない。臓器損傷と骨折に関しては私程度の処置では間に合わないだろう。彼の体の中の法則や元素配合を書き換えて、すぐさま治癒させると元に戻す。
 呻いていた彼の表情が僅かにやわらいだ事に、安堵した。
 前の世界では医神や近代看護の母である人物達からそれなりの手ほどきは受けていたが、それでも中々上手くいかない。
 不慣れな手つきで包帯を巻いていく。
 ヒトは余りにも無力だ。簡単に壊れるし、簡単に崩れる。けれど、喪ったヒトは無謀だ。自身の体なんて構う事無く、その命すらも使い捨ての道具と同様にする。
 どうか望んで欲しかった。止めたいと、苦しいと、辛いと。そう口にしてくれれば、私は迷う事無くその世界全てを書き換えて、彼と共に生きる世界を作り出す。
 あらゆる苦しみと痛みから彼を守り続ける。いつだって、その覚悟だった。だからずっと見守って来た。
 とある世界で、この言葉を告げたものがいる。

『到底、一個人に背負わせるべき者ではないのだから』

 ――その通りだ。全く以てその通りだ。
 個人にしか救えず、その個人に責任を押し付けようとする世界。それが私の大切な人を壊そうとするのなら、私にとって――。

「あ」

 考え事をし過ぎていたせいか、包帯を巻きすぎてしまっていた。確かこれでは逆に血流を悪くさせてしまうのだと、指導されていた事を思い出す。

「……大丈夫、大丈夫よマスター。
 誰が敵になっても、誰かを裏切る事になっても、私が必ず傍にいる」

 屋敷のすぐそばに骸骨が紛れ込んでいる事に気付く。
 無限に湧き続けるから仕方ないとはいえ、さすがにずっと同じモノばかり斬ってくれば少なからず飽きも出てくる。
 だが、後ろに彼がいるのならば話は別だ。
 その悉くを斬り捨てよう。

「任せて、片づけちゃうから」

 立ちはだかり彼を傷つけようと言うのなら、誰であれ例外なく殺そう。
 それが今の私だ。



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大聖杯へ


先駆者兄貴に薫陶を受けたのではつとうこうです。


これもう(RTAなのか)よく分かんねぇな


 

 RTAー、はーじーまーるー……よー。

 今日も元気に行きたい所なんですけどね。

 スゥー、ハー。チラッ。

 

「私の顔に何かついてる? マスター」

 

 はーマジですか……。両儀式(セイバー)ですか……。

 何でしょうかね、エミヤにトドメ刺されそうになった時に来てくれたんですかね。いや、まぁ助けてもらって嬉しい事は嬉しいんですけど、何でこうピンポイントなんですかね。

 ちなみに空の境界キャラだと、浅上藤乃はかなり強いです。クッソ早い攻撃手段を持つ鯖が相手でなければ、問答無用で捩じ切ります。強い(確信)。

まぁ、どれだけ上手くいってもティアマトビームで詰むんですけどね。

開幕からバビロニアで活躍しすぎるとティマアトに目を付けられます(惨敗)。彼女関連のDIEジェスト流すだけで、アニメ一本分ぐらいは出来ます。ほとんどホモ君が射殺されます。と言うかホモ君のサーヴァントばかりを狙いに来やがるんで、後のことを考えると庇わざるを得ないんですよね……。

 閑話休題、それはそれとして彼女ステータスが全て詐欺とか言う、規格外もいい所なんで縛りさえ無ければかなり当たりです。

 検証する意味合いが強いので続行します。まだ不明なスキルも多いですし。

 

 >貴方はセイバーに、自分がどれほど眠っていたかを尋ねた。

 

「二時間程かしら……。まだ大きな動きはなさそうだけど」

 

 セーフ!! セーフッ!!

 原作組と離れてレイシフトした場合、原作組は大体三~四時間ほどで大聖杯――つまりセイバーオルタの所まで到着します。

 つまりホモ君に残された時間は後一時間程です。超えてしまうとセイバーオルタとマシュ達が戦闘開始となり、ほぼ運任せになります。マシュ達が頑張れば何もしなくても突破する事はありますが、確実に勝つためにはやはり加勢が不可欠です。

 

 >貴方は立ち上がる。まだ体が痛み、フラつくがそれを叱咤させて無理やり立たせた。

  腰の拳銃を抜いて、弾をカートリッジへ切り替える。

 

 おっ、起源がまたいい仕事してますねコレ。負傷による行動失敗を回避してくれました。

 ちなみにホモ君が何してるかと言いますと、弾の原材料を彼の魔力にしてます。つまり、ホモ君の魔力が続く限り弾丸が撃てると言う訳ですね。雑魚エネミーならこれで十分です。

 逆に強化弾は、かなり威力が高く大型エネミー相手でも急所を狙えば致命傷を与えます。サーヴァント相手でも無視できないダメージなので、支援にはもってこいの性能。しかし弾単価がぼったくりやろ!? ってぐらい高いので、気軽に使えないのがタマに傷。

どちらも作製はダヴィンチ工房です。これらを一週間で準備出来るダヴィンチちゃん、ホント有能。

 

「そう……行くのね? 分かったわ、こっちよマスター」

 

 先頭はセイバーに任せて、ホモ君は只管走ります。

 経験値も欲しいので、道中見かけて尚且つ手っ取り早く撃破出来そうなスケルトン君だけ通り魔しておきましょう。素材回収も出来て一石二鳥。

 さて、今倍速で走ってますが、その間にセイバーオルタ戦の流れについて簡単に説明します。

 言うまでもありませんが、禁忌礼装を使用します。セットする概念礼装は『カムランの戦い』です。これでアーサー王特攻を乗せた一撃を放って、致命傷を与えます。外したとしてもセイバーがそこを突いて殺ってくれるでしょう。

 ちなみに『リミテッドゼロオーバー』『投影魔術』を使用するとセイバーオルタのみ、特攻が大幅に補正されます。ただしコストが高いため、入手しづらく安定性に欠けます。『カムランの戦い』が一番出やすいですし安定しますね。

 ただ普通に撃ってもダメです。直感で回避されます。禁忌礼装に二種類の概念礼装を装填出来ればいいんですが、ホモ君を強化してない状態でそんな事をすると文字通り体が吹っ飛びます(16敗)

 まずセイバーを先陣、キャスニキを後方、マシュはマスター達の防御に専念させていきましょう。マスターの役割は後方支援です。

 後は臨機応変にやって、終わり!!

 いや、特異点Fはもう親の顔より見てきたんですけど本当にセイバーオルタが超反応してくるんですよね……。何回か負けましたし。

 最初から作戦通りにやるより、絶対作戦は壊されると思った方がいいです。相手はサーヴァントですから。どうリカバリーするかが大事ですね。

 

 >入口に到着した。

  人影は無い。どうやらここで戦いは無かったようだ。

 

 おっ、エミヤがいないんで洞窟入口はスルー出来ますね。という事は……もう奥で戦闘が始まってますねクォレは。

 

 >半ばに到達した。

  休憩した後がある。灰が一部分に溜まっており、まだ温かい。

 

 まだそう時間は経ってないようですね。

 さらに奥に走っていくと……見えてきましたね、早速戦ってます。

 セイバーをスキル『雲耀』で補助しておきましょう。バフは大事。

 

「さぁ、行きましょうかマスター。大丈夫、私が護るから」

 

 さぁ、戦闘開始です。オジャマスルワヨー。

 

 

 

 

 戦局は最悪の一言に尽きる。マシュ・キリエライトは大きく疲弊していた。

 セイバーオルタから繰り出された宝具を防ぎ切った所まではまだいい。けれど彼女の技量では、決定打の一つも与えられずにいた。キャスターであるクーフーリンの援護があるにも関わらず。

 停滞は精神を削り、削られた精神は焦りを生み、溜まった焦りは致命的な隙となる。

 

「終わりだ、盾の少女。ここから先、貴方には辛苦だろう」

 

 ――その乱入者は唐突に。夏の日の陽炎のように現れて、マシュへ打ち出される一撃を弾いた。

 

「なっ……!」

「貴方は……!?」

「説明は後。貴方は貴方の役目を果たして」

 

 刀を持った黒髪の少女。彼女は僅かに振り返って微笑むと、セイバーオルタへと向きなおした。

 一見構えが無い姿勢に見えるが、隙が無い。それだけで彼女は、近接の心得があるのだと察する。

 

「で、ですが……!」

「加勢か、サンキュー助かるわ」

「えぇ、後ろは任せるわね」

 

 渋々と言った様子でマシュが後方に下がる。逃すまいと、黒き極光が放たれるがそれは刀の一振りで霞のように掻き消されていった。

 二人の少女が、そこから斬り合う。鎧に身を包み剣を振るう少女と、白の着物を纏い刀を振るう少女。

 荒れ狂う嵐のような数々の斬撃。固い岩盤すら容易く吹き飛ばすであろう威力を持つその剣筋は確かに相手を捉えている。ただの一太刀とて空を切ってはいない。その全てが紛れも無い必殺。

 一見か弱い印象を受ける体躯にも関わらず、その体が振るう刀は幾度の剣戟を超えて尚も主と共に健在であった。

 剣が生み出す斬撃が全てを押し潰す激流であるのならば、刀が振るう太刀筋は如何なる勢いを諫める緩流に他ならない。

 

「チッ……!」

「あら、宴はこれからよ?」

 

 このままでは決め手に欠けると、常勝の王はそう判断した。下した答えは全方位への大規模な魔力放出。斬撃で殺せぬと言うのなら、膨大な魔力を以てして一掃するだけの事。実行する事には何の躊躇も無い。斯くしてその波は主が立っていた周囲の地盤を根こそぎ吹き飛ばした。

そしてそれは確かに打ち倒すべき相手の全身を直撃したにも関わらず、彼女は宙を舞ってひらりと着地した。まるで鬼から逃げる童女のような足取りで。

 

「もう、無粋なヒトね。もう少しぐらいだったのに」

「ほざけ。貴様が相手では、この場の私も手が抜けん。全く、厄介な連中ばかり呼びつけてくれる」

「でも、これは私のしたいコトじゃなかったもの。私はただマスターを守りたいだけ。別に貴方達がどうなろうと――待って、マスター! ダメ!」

 

 突如、少女が声を荒げる。その場にいた誰もが、その方向に目を向ける。

 ――彼女のマスターであろう少年が、全身から流血しつつ銃を構えていた。

 

 

 

 ――その一瞬。その一瞬だけで彼には十分だった。

 セイバーオルタが宝具の準備に入った瞬間。その時だけは、彼の方が僅かに早い。

 

充填開始(セット)

 

 全身の刻印が起動を開始。生命を魔力として絞り出し、魂を燃料として燃やし尽くす。

 禁忌礼装(ミスティックオーバー)――彼が持つ絶対無二の武器。生命の理を極限まで度外視したソレは、幾度となく彼の体を貪りつくした。今までも、そしてこれからも。彼の旅が終わるまで繰り返されるだろう。

 けれど彼にとってはもう慣れた事だ。そしてその苦痛に身を浸し続けても尚、目指すべき光景がある。希求しなくてはならない理由がある。

 

“存在固定、強制調律開始――暴走準備”

 

 自身のたった一つの欲望で多くの願いを踏み躙ったのだから、果たさなくては。

 体中を駆け巡る刻印が、許容量を大きく超えた魔力に悲鳴を上げる。それは体の体を赤く染め上げて――体内の血液が沸騰するかのように燃え盛って破裂していく。

 視界をノイズが走る。世界が灰色で染められる。口の中を鉄の味が塗り替えていく。

 

禁忌礼装(ミスティックオーバー)、装填”

 

「――狙うなら任せな、止めてやるよ」

 

 その声と共に、突如現れた木々の巨人が狙うべき相手を呑み込んでいく。

 有難い。これなら避けられる理由も無い上に狙いやすい。

 銃口を向ける。――どうしてか、ふと懐かしい声を思い出した。

 

『――魔力を回せ。決めに行くぞマスター』

『――魔力を回せ。すぐに終わらせてやる』

 

 彼らには大切なモノを教えてもらったような気がする。

 けど、もうその名前を思い出せない。思い出す権利すら無い。

 走り続けると決めたのは自分なのだから、振り払った手に足を止めていい道理なんてある筈が無いのだ。

 

 その引き金を、躊躇う事無く引いた。

 

 撃ち出された弾丸は、ただ一直線に狙うべき相手へ飛来し覆っていた巨人の一部丸ごと吹き飛ばす。

 ――ドクン、と心臓が脈を打つ。それが合図のように体中の力が抜けていく。

 そのまま地面に倒れ込もうとする所を、彼のサーヴァントである少女がそっと抱き留める。無垢を現した雪のような衣装に、彼の血が付いてしまう事も躊躇わず。

 

「マスター……!!」

 

 慌てたような声。それを安心させようと彼は微かに笑って、その意識を閉ざした。

 

 

 





『追憶』

 共に未来を目指して走り抜けた、色彩の跡。
 例え同じ日々が繰り返されようとも、同じ光景が揃う事は決してなく。故に彼はこの景色を魂に刻み付けた。
 名前すらも消されていく忘却の世界において、その出会いだけは覚えていようと。輝いていた記憶は、面影となってカタチも分からぬ灰へと落ちた。

 絶望の辺に立たされた時、その痕は色を放つだろう。



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離脱

短いけど許してくださいなんでもしますから!!


あの後ろ姿は本当に彼女なのか。それを確認するために私はオリュンポスをRTAする決意をしました。


 

 

 アルマ・クルスが撃ち出した一撃。禁忌礼装(ミスティックオーバー)を使用した攻撃は確かにセイバーオルタを直撃した。

 それは途中で尽きる事無く、天井を貫いて部分的な崩落を引き起こす。

 

「……ちっ、まだ生きていやがったか」

 

 キャスターの声――高濃度の魔力そのものが放出され、塞がっていた瓦礫が溶かされていく。そこから一人の少女が姿を現した。

 顔を覆っていたバイザーも、体を覆っていた鎧も既になく。けれどその総身には傷一つ存在しない。鎧を脱いだ黒のドレス――まるで絵画を切り取ったかのよう。

 

「――まさか持っていた魔力の全てを防御に回しても突破されるとはな……」

『そんな、バカな……! 彼の一撃は確かに直撃した! あの魔力反応を受けて、サーヴァントとはいえ無傷でいられる筈が無い!』

「……いや、ちげぇよ。アレはちゃんと当たった。致命傷にはなっただろうさ。

 だが後一歩だ。後一歩足りなかった。どこかで無意識に緩めたのか」

『まさか……!』

「あぁ、アイツは死にかけて、そこから一気に復活しやがったのさ。

 聖杯――その魔力を使ってな」

「フン、眼と引き換えに得た知識は健在か」

 

 アルマ・クルスは自傷によるダメージで行動不能。彼のサーヴァントであるセイバーは、マスターを守るため迂闊に前に出れず。

 だが彼が稼いだ時間でマシュは僅かに回復出来、キャスターはその剣筋を大方見切った。

 まだ戦える。まだ終わりじゃない。

 しかし、そんな戦場へまた一つ新たな声が響く。

 

「――下らない。実に下らない。全く以て理解に苦しむ。何故だ、何故お前はいつもそちらへ行こうとする」

 

 レフ・ライノール――カルデアでは笑みを絶やさない筈の男が、その相貌を怒りに染め上げている。

 彼へ絶対の信頼を寄せていた筈のオルガマリーすら、すくんでしまう程に。

 

『レフ教授……!? 何故貴方がそこに……!』

「最早その名前に意味は無い。――今ここに人理の焼却を宣言しよう。

 人の歴史は灰に消え、人の生存は意味を失くした。神も人も区別なく、存在は燃え尽きた」

 

 レフ・ライノールを騙る存在は手を掲げる。

 背後の空間に浮かび上がる赤色の惑星――全てが赤く染まった世界。それはまるでカルデアスのよう。

 

「な、何よそれ……」

「この世界の人類史ほど、弱く脆く、曖昧なモノは無い。見ろ、これが貴様達の守ろうとしていたモノだ。

 ――何の意味がある? 何の意義がある?」

 

 その声音には尽きる事のない憎悪が込められていて、やり場のない怒りが彷徨っていて。

 どうしてか酷く、人間らしく見えてしまう。

 

『それ、は』

「返答など不要だ。この決定は覆らず、この選択は違えない。

 まずはお前からだ。灰は灰らしく、消えていくのが道理だろう」

 

 浮かんでいたカルデアスが、突如一際輝いて――アルマへと迫る。

 灼熱の如く燃え盛る球体を、黒き極光が一片も残さず消し飛ばした。

 

「貴様……」

「おいおい、仲間じゃねぇのか?」

「黙れ、あの手合いは知らん。そこのマスター、さっさと受け取れ」

 

 セイバーオルタは、どこからか聖杯を取り出すとそれを立香へと放り投げた。

 その聖杯に興味は無く。ただ己がこなす役割に専念するのみ。

 

「カルデアにいる軟弱男。聖杯があれば修正が始まるのだろう。すぐに離脱させろ。

 さもなくば全員が死ぬぞ」

『分かった! すぐにこちらへの帰還を開始させる!』

「キャスター、貴様はカルデアの離脱を支援しろ。お手の物だろう」

「――十秒だ。十秒はアレを止めろ。そうすりゃ、ボウズ達の勝ちだ」

「了解した。盾の娘、貴様はそこから離れるな。今の自身のマスターを守っていろ」

「は、はい……!」

 

 立香とアルマの体が少しずつ光の粒子へと変わっていく。

 特異点が修復された証――この時代に無き存在はあるべき所へと返される。

 

「貴方……」

「気にするな、これが今の私に出来るコトだ。私ではそいつを救えなかった。救ってやれなかった。何度も、機会があったにも関わらず」

「……えぇ、知っているわ」

「悔しいが、後の事は頼む。そいつを、その愚か者を終わらせてやってくれ」

「任せて。最悪、全てを書き換えてでも救ってみせる」

「フッ、頼もしいな」

 

 セイバーオルタは戦列に立つ。鎧も無いその姿は華奢としか言いようがないだろう。けれど、その姿は誰一人通す事を許さぬ護り手に他ならない。

 ――禍々しい魔力を携えて、術式が起動する。

 レフ・ライノールの瞳が赤く染まり、その指が泥のような黒へと変色した。

 

「最早受け入れる事能わず。されど未だ以て不可解なり。故に、我ら憐憫を以て運命を救済せん」

 

 直感が警鐘を鳴らす。生存したければアレは回避すべきだと。だが、それは出来ない。

 彼女はサーヴァントだ。主を守るために散ってこそ、意味がある。

 何度も経験した。思い知らされた。その手にある宵闇の星の輝きを以てしても、繰り返し続ける彼の夜を終わらせる事は出来なかった。

 であるのならば、せめてその可能性を後押しする事に全てを注ぎ込むしか無い。

 

「卑王鉄槌、極光は反転する――」

 

 聖剣に力を込めた時、懐かしい記憶を感じた。支援としては余りにも心もとない魔力量。

 瀕死の状態において尚、彼が放った補助術式。

 忘れる訳が無い、忘れる筈が無い。

 彼と共に駆け抜けた日々が、走馬灯のように蘇る。

 その一時の光景が酷く懐かしい。

 ――だから、今はその場所へ帰してやらないと。

 

「過ぎた誉だ。だが、確かに受け取った」

 

 剣から迸る夥しい魔力。それはまるで竜の息吹のよう。

 刃面を奔る紫電は、少しずつ剣先へと集っていく。

 

「――焼却式フラウロス」

 

 見上げるは宙の欠片。ただ一つの意志しか持たぬ故に、膨大な力を手にした者。背後に在るは、微かではあれど尽きる事を良しとしない灯火達。

故に、この一撃こそ英雄の矜持と知れ。

 

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!!!」

 

 

 

 生きろよ、マスター。

 

 

 

 






『消えない想い』

 貴方には見覚えのない、けれど確かに思い出せる特異点の記録。

 本来ならば重なる世界の底に埋もれ、記憶の影に潰されていくだけの一欠片。
 特異点と言えど、これがカタチを保つことは奇跡に等しい。

 それほど強く大切に、守り続けた者がいるのだろう。


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帰還

オリュンポスRTAは12時間でした。


あの双子見てると、何かこうクルんですよね……。


 最早チャートが意味を為していないRTAはーじーまるよー!

 何か前回のラストは状況が入り乱れてましたね……。ホモ君がかろうじて動けたのでセイバーオルタに援護術式を使用しましたが、おかげでカルデアに戻る時間は稼げたみたいです。レフの行動が本当に読めねぇなコレ。

 カルデアに帰還後、決起イベントが始まります。ですがRTAなので倍速。見たい人はコミカライズ版を見よう!(ダイマ)

 ……そういえばオルガマリー所長ですけど一命はとりとめましたが、昏睡状態のようです。爆風に巻き込まれたものの、命に別状はないみたいですけど。彼女がカルデアスに取り込まれるか、死亡が確認された場合二部へのフラグになるので、二部も走る兄貴達は覚えておきましょう。二部単騎縛りは修羅の道です。チャート通りに行けば走る事はまずありません(77敗)。

 ムービーが終わり次第、ドクターに呼び出され説教とバイタルチェックから始まります。

 

 >貴方はドクターに呼ばれ、検診室へ向かった。

  中にはダヴィンチちゃんもいる。

 

「来たね。――単刀直入に言うよ。キミ、二発目を撃とうとしていたね?」

 

 あー、やっぱり気づかれてましたか。

 いや、ホモ君まだHP残ってるし体は動くからレフにとりあえず撃ち込んでおこうと思ったんですよね。あの時、セイバーの手当てのおかげか回復速度が急速に上がっていたので。

 セイバーオルタにも検証周回の際、色々お世話になりましたし。せめて助けになればな、と。

 

「もしそんなことをしたら、どうなってたかは分かるだろう。

 言った筈だ。ボク達は死んでいったカルデアスタッフ(みんな)のために、人理を守らなきゃならない。それがどんなに無茶で無謀で、絶望に等しい事だとしても。やり遂げなくてはいけない」

「だからそのために私達は全面的なバックアップを行う。その銃も弾丸も全て仕上げたとも。キミ達はこの状況に立ち向かえるたった二人の存在。何より、英霊(サーヴァント)にとっては宝そのもの。だから元気でいてほしい。そのためなら、私は何一つ惜しみはしない。

 でも、それを死ぬために使われるなんて以ての外だ。――あまり、心配させないでくれたまえ」

 

 >二人から自分の身を案じてくれている事が強く伝わる……。

 

 このパターンはかなり好感度上がりますね。

 これは……引けるか?

 

「あの礼装を使用する際の状況は把握した。今度はこっちからバックアップも行える。

 ――使うな、なんて言わない。そんな贅沢は言っていられない状況だからね。だから、アルマ君の負担を少しでも肩代わりさせてほしい」

「あぁ、そうだとも。あの術式は確かに強力で、私達にとっては切り札だ。ならば使わない手は無い。

 でもどうせ無茶をすると言うのなら、共に行くよ」

 

 >次の特異点使用時『禁忌礼装』の使用コストが減少した。

 

 謝謝奈須!!!!!

 このおかげで、最悪ホモ君一人になってもサーヴァントを撃破出来る可能性が生まれました!

 絆が深まっていけば、禁忌礼装のデメリットを大きく軽減させれます。強い(確信)。

 またダヴィンチちゃんとも絆を深めていけば、禁忌礼装に令呪を装填させるなど更なる強化も可能となっていきます。

 

「……時間を取らせてすまなかったね。さて、召喚室に行こう。立香君達を待たせてるし」

 

 >ドクター達と共に召喚室へ向かった。

  まだ体はフラつくが、それでも何とか歩いて行ける。

 

 ホモ君、フラつきで一度も倒れないとか中々タフっすね……。

 まぁ、倒れそうになったらすぐ傍にいるセイバーが支えてくれるでしょう。ところでさっきから一言もしゃべらないのがすごく怖いんですけど。

 

 >召喚室に入る。

  中にはカルデアスタッフや立香、マシュが準備をしていた。

 

「じゃあ、立香君。召喚を始めよう」

「えっと……アルマさんはいいんですか?」

 

 (縛ってるから召喚出来)ないです。

 あくしろよ。

 

 >貴方は立香に対して、言葉を返した。

 

「分かりました……。まだ分からない事だらけだけど、やってみます!」

 

 いい子だね~。

 この世界の主人公は君しかいないんだから、頑張るんやで。

 

 >召喚室内に光が満ちる。

 

「――サーヴァント、アーチャー。召喚に応じ参上した。

 おや、懐かしい顔が見えるな。知っているとも、世界の危機なのだろう。ならば存分に私を使うといい」

 

 おっ、エミヤ君。検証勢でクッソお世話になった鯖の一人です。禁忌礼装の使用テストでもめちゃくちゃ頼りになったんですよね。

 また彼がいてくれると、食堂の効果が上がりスタッフや鯖達の会話が追加されたり好感度が上がりやすくなったりします。起源で補正がかかりにくいホモ君には関係ないんですけどね。

 

「まだ召喚の途中のようだな。挨拶はまとめてでいいだろう」

 

 会話のテンポを崩さないエミヤ君、ホント好き。

 後であのカッコイイポーズ見せてね。

 

 >召喚室内に虹色の輝きが満ちる。

 

 マ? 立香君、豪運すぎない?

 

「サーヴァント、セイバー。召喚に応じ参上した。

 貴方が私のマスターか」

 

 おっ、青王ですね。前衛ならめちゃくちゃ頼りになる当たり鯖の一人です。白兵戦なら、全鯖中でもかなり上位に入ります。さらにカリスマで味方を援護してくれたり勇気づけてくれます。時代は青やな!

 射撃でカバーするエミヤとは極めて相性がよく、マシュも含めれば立香君の布陣に隙はありませんね。

 ただ本RTAでは決め手に欠ける、と言うのが正直な印象。単騎縛りになってしまう分、どうしても汎用性が求められるんですよね……。宝具も含めて、トップクラスなんですけど……。

 後はもう一人タイマンに強い鯖が引ければ、もうそれだけでクリア出来るレベル。

 

 >召喚室に光が満ちる。

 

「サーヴァント、ランサー。召喚に応じ現界した。って、懐かしい顔ブレだなオイ」

 

 マジかよ。

 槍ニキ――言うまでもありません。このゲーム中における大当たりの一人です。彼を外れとするのであれば、それはもう女性鯖縛りぐらいなもんでしょう。

 RTAでも何度か共に走りましたが、めちゃくちゃいい線まで持っていけます。ただそれでも鬼門の七章には安定性に欠けますね。まぁ、あそこを安定して突破出来る鯖なんて極々僅かでしょう。

 過去の検証では、相手サーヴァントを三体同時に相手しても致命傷を負う事無く離脱し、その際宝具で一騎仕留めてくると言うとんでもない事を、気楽にやってきました。

 加えて宝具は回復不能、必中を併せ持ち燃費も良いと強い事しか書いてません。おまけにキャスター程の性能ではありませんが、ルーンも使えます。

 欠点と言えば……幸運が低い事やそもそも心臓が無いやつか、特攻しか攻撃が通用しないエネミーぐらいなもんです。まぁ、それでも槍ニキの技量がクッソ高いから問題ないんですけど。

 と言うか立香君三騎士を初回から揃えてくるとか強い……強くない?

 これ、ホモ君いる? いや、元からホモ君はこの世界からすると余分な存在ですけど。

 

「ふむ……じゃあ三騎とも申し訳ないけど、今から調整を行いたいからシミュレータールームに案内してもいいかな。

 立香君も大丈夫かい?」

 

 これ、もうホモ君いなくても大丈夫そうね。

 じゃあ帰って休みましょうか。

 

 

 

 

 >マイルームに入る。

  体が酷く疲れていた。今日はもう休もうか。

 

 ところでセイバーから何か言いたい事とか無いかな(震え声)

 

「言いたいコトならあるわ、それも降りしきる雪のようにね。でもあの人達が言ってくれたから、それでいいの。

 だって、私は貴方のサーヴァントですもの。だから貴方に寄り添って、貴方を支える。例え貴方が世界の敵になっても私が傍にいるから」

 

 ママァ……。

 これでホモ君のメンタルも多少は回復するでしょう。

 何かいい雰囲気だから、黙っておくか(気遣い)

 

「子守歌の一つでも聞かせてあげられたらいいのだけれど、生憎貴方は歌にいい思い出が無さそうだから」

 

 >手を握っていて欲しい、と伝えた。

 

「――私なんかの、冷たい手でも良いのなら」

 

 >彼女の手を、包み込むように握った。

 

「……ありがとう、私のマスター」

 

 

 




 夢を見た。もう戻る事は出来ない夢を見た。
 夢を見た。引き返す事は出来ない夢を見た。
 夢を見た。何もかもが在り得ない夢を見た。

『――』

 名前を呼ぶ声がする。それは優しい、陽だまりのような――。
 もう自分に届く筈の無い言葉を耳にする。

『――』

 切り捨てた。それが無いと始められないと悟ったから。
 だから最初の自分を失った。
 断ち切った。そうすれば何度だって耐えていけるから。
 だから自分を繋ぎ止める物語を失った。

『――』

 それが自分の戦いだ。
 それが自身の始めた事。
 だからこの誓いも記憶も、大切にしまっておこう。
 いつか世界に、忘却されないように。




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オルレアンへ

誤字報告兄貴達は感謝しかないです。

オルルァン編、始まります。


 

 一週間を終えたRTA、はーじまるーよ。

 オルレアンが観測されるまでの一週間なんですけど、何してたかって言いますとシミュレーション→ダヴィンチ→ロマニ→シミュレーションを繰り返してました。何回か怒られましたけど。

 次は何が来るか分かってるんで、竜対策に専念ですね。竜属性を持つ青王のおかげで、研究が進みダヴィンチちゃんの強化弾に竜属性特攻持ちが追加されてます。これでワイバーンは瞬殺出来ますが、相変わらず弾単価がぼったくりのままなんだよなぁ……。

 ファブニール対策ですが、考えられる流れとしては禁忌礼装に強化弾と『プリンス・オブ・スレイヤー』をセットして、撃ち出します。殺しは出来ないでしょうが、動きを一時的に止めるぐらいにはなるでしょう。

 ジークフリートなんですけど、彼との契約は立香君に任せましょう。ホモ君が契約すると幻想大剣を解放した段階で、禁忌礼装が反応し暴走してホモ君が死亡する可能性が高いです(1敗)

 ぶっちゃけますと単騎縛りの理由が禁忌礼装使用してるからってぐらい、かなりピーキーです。でも使います。だってカッコいいじゃん。傷つくのはホモ君だけだからへーきへーき。

 今後のカギとなる現地契約鯖ですが、その時々で決めていきます。最低二騎が限界ですので。

 基本進めていくのは立香君に任せて、ホモ君は走り回りましょう。と言うか相手は物量作戦で来ますけど、こっちは基本単騎なんでしにます。現地契約鯖を保護していきましょう。

 

 >コフィンに乗り込んだ。

  小さく息を吐く。

 

 

 

 

『こっちは私、ダヴィンチちゃんがナビゲートしよう。キミの礼装監修も私だからね』

 

 マスター二人で分断された場合、このように手分けしてくれます。

 ダヴィンチちゃん、忙しいのに大丈夫?

 

『なぁに、任せたまえ。サーヴァントは眠らなくても平気なのさ。

 ――で、話の途中だけどワイバーンだ!』

「落とすわ」

 

 >貴方に襲い掛かろうとしたワイバーンをセイバーが斬り落とす。

  どうやら街の中にレイシフトしたようだ。周囲には逃げ惑う人々がいる。

 

「離れないでね、マスター」

 

 大丈夫です、貴方がいないと死にます。

 

「――」

『そこから離脱。立香君との合流を目指すんだ。道中に現地サーヴァントがいれば、その時は状況に応じてだね。

 そこから街の外までのルートを表示するよ』

 

 >地図にルートが表示された。

  貴方はその通りに走り出す。

 

 ここは実績解除ポイント。住人を一定数以上助けるとステータスにボーナスが入るのと、素材のドロップ率、QP獲得率が倍加します。

 街の住人ですが、幸いこちらは銃なんで達成は容易です。

オラッ、経験値と素材寄越せ! 骨は全部寄越せ!

 離れてる相手でもダヴィンチちゃん印の銃なら、威力減衰しません。強い。

 あっ、やばいやりすぎたかコレ。

 

 >ワイバーン達は貴方に狙いを定めた。

 

 狭い路地に入りましょう。壁を背にすればセイバーも露払いに専念出来る筈です。

 ホモ君、狙うの上手いね。

 

『――ん、ワイバーンの反応が消えた? ……いや、違う。サーヴァントだ!』

 

 ファッ!?

 

「我が愛はどこへ 我が声はどこに

 嗚呼 クリスティーヌ クリスティーヌ」

 

 ファッントム!?

 えぇ……サーヴァントがここに来るって事は、位置が相手にバレてますねコレ。

 やばい……ヤバくない?

 

「マスター、下がってて」

 

 ファントム相手なら、男性鯖は何とかなります。

 女性鯖だと行動不能スタンが厄介ですけど、こっちの援護でカバー出来るレベルです。早めに倒しておきましょうか。宝具を使われると逃げ遅れた住人を巻き込む可能性があるので、速攻で。何より増援が来る可能性もありますし。

 倒しても多分、邪ンヌが再召喚してくるでしょうけど。

 あっ、セイバーが一撃で斬り捨てましたね。まぁ、ファントムは戦闘向けかと言われると微妙なところです。

 謀殺の逸話持ちなのに、精神汚染で意思疎通が難しいので性格と性能が本当に噛み合ってないんですよね……。

 

「終わらぬ旋律 終わらぬ悲鳴

 クリスティーヌ 君はまだ彷徨うのか その地獄を ならば私は」

「……そう、貴方は終わらせる方に付いたのね。なら、斬り捨てるだけよ」

「クリスティーヌ クリスティーヌ

 地獄にこそ響け 我が愛の唄」

「さよなら、怪人さん。貴方の唄、私は嫌いじゃなかったわ」

 

 >セイバーはファントムの首を落とした。

 

 んー、ホモ君にはちょっと思う所があったのか僅かにメンタルが低下してますね。

 ですがまぁ、時間経過で収まるでしょう。

 

『お疲れ様、いやぁさすがはセイバークラスだ。近接戦闘ならお墨付きだね』

「あら、ありがとう」

『アルマ君もお疲れ様。街を出て北に向かってくれ。そこに――いや、待て。またサーヴァント反応。しかも大きい!』

 

「フン、あいっかわらずくだらない顔してるわね」

 

 >頭上を見る。

  ワイバーンに乗った一人の少女がこちらを見下ろしていた。

 

 うわぁ、いきなり親玉登場かよ……。

 立香達のレイシフトパターンは固定の筈なので、これだとラ・シャリテをファヴニールで燃やしてきた帰りでしょうかね。

 

「初めましてかしら、カルデア。

 私はジャンヌ・ダルク――とある願いによって生まれた、そう有れと望まれた泡沫の夢。

 クラスは復讐者(アヴェンジャー)

『――そんな馬鹿な。既にジャンヌ・ダルクは立香君と合流している。反転(オルタ)? いや、それにしては霊基パターンが全く異なる……!?』

「当たり前でしょ、アンタ話聞いてたの?」

 

 そんな高い所にいたら聞こえませんよ。

 ほら、ホモ君。指摘してあげて。

 

「うっさいわね! じゃあ下りてあげるわよ!!」

 

 >ジャンヌ・ダルク・オルタがワイバーンから飛び降りる。

  彼女は降り立つと、貴方を見据えた。

 

 素直でいい子だね~。

 

「それじゃあ改めて、言ってあげるわ。

 ジャンヌ・ダルク・オルタ。クラスは復讐者(アヴェンジャー)

 そして、この特異点を強奪し邪竜ファヴニールを操る者」

 

 ジャンヌ・オルタかぁ。検証でもお世話になりました。彼女との旅路は安定しませんけど、中々に楽しかったですね。

 大丈夫、周りは忘れててもホモ君は忘れてないよ。

 ――で、セリフで不穏なところが二ヵ所ありますね。

 特異点を強奪、クラスは復讐者……あっ、フーン。

 

『霊基パターン登録確認。……魔力反応が無尽蔵だね。それもクラススキルの影響かい?』

「えぇ、えぇ。回りくどいのは気に食わないから、単刀直入に言ってあげる。

 貴方達が求めてるのはコレでしょう?」

 

 >ジャンヌ・オルタは聖杯を顕現させた。

 

『! ロマニ、聖杯を確認した!』

「フッ、たかがこんな杯一つで欣喜雀躍するなんて、実にカルデアらしい。

 それで、そこのマスターちゃんは何か思うところはないのかしら」

 

 いや、別にないっすね。

 もうホモ君にとっては無用の長物ですし。

 

 >首を横に振った。

  途端、ジャンヌ・オルタの表情が激しい憎悪に歪む。

 

「アンタ……はっ!」

「――それで、貴方は何をしに来たの? 泡沫の復讐者さん。

 子どものように、それを見せつけにきたってコトではないでしょう?」

「……別に。興が削がれたわ。そうね、アンタがいらないって言うんだったら、私が使いましょうか」

『キミの目的は、フランスへの復讐かい?』

「ハッ、バカ言わないでくださる? もうそんな事に興味ないわ。

 私の復讐はもっと別の原点へとすり替わった。フランスはただ私が生まれた世界と言うだけ」

 

 さっきから同じ声が混ざってて、聞き分けがつきませんねコレ。

 

「切り捨てて、断ち切って。一人で走り続けるような愚か者。――それこそが我が原点、我が憎悪。

 忘れるものか、忘れてなるものか。共に地獄へ落ちると誓ったあの夜を忘却などされてたまるものですか!」

 

 >瞬間、ジャンヌ・オルタの周囲に火柱が立ち上がる。

  貴方を呑み込もうとする灼熱を、セイバーが斬り捨てた。

 

「だから、灰にするわ。二度と走れないように、この世界に閉じ込めて。そして焼かれなさい。

 ――私も一緒に、燃やされてあげるから」

 

 これ、軽く狂化入ってないっすかね?

 

『!!! 巨大な魔力反応! これは、ラ・シャリテの時と同じ……!?』

 

 >ジャンヌ・オルタの上空――そこには巨大な邪竜がいた。

  二枚の翼を高らかに広げ、火炎燻る口元から血まみれの牙が見え隠れする。

 

 ここで、ファヴニールとかマジ?

 ……と言うかコイツ、何か強くなってないですか?

 

「ファヴニール! 聖杯を喰らいなさい! 無限の魔力を以て、この世界を! そして意味も無く回り続ける運命を、焼き尽くしなさい!」

 

 >ファヴニールは頭部を持ち上げた。

  途端、火の玉が出現して徐々に巨大化していく。

 

 ちょっと待って。まだ本家で言う一節なのに、何で全戦力投下してきてるんですかこの子。

 禁忌礼装――いや、ダメです。ジャンヌ・オルタにまず止められます。アイツ、遠距離での攻撃手段も持ってるので。

 これ、詰んでない?

 

 >突然、どこからか聞こえてくる騒音が辺りへと響き渡る。

  ダメージこそ無いが、ファヴニールは動作を中断した。

 

 ナイスゥ! ファインプレーですよコレ!

 

 >貴方の隣にガラスの馬車が落ちてくる。

  中から、一人の少女が姿を現した。

 

「乗ってくださいな、カルデアのマスターさん!」

「急いでくれよ、マリア! こんなデスボイス聞いてると霊基が軋みそうだ!」

 

 よし、逃げますよホモ君!

 

 

 





「――ちっ、やはりバーサークにしておくべきだったかしら」

 逃げていくガラスの馬車。既にファヴニールは体勢を立て直している。狂化させなかったが故に、こんな時間を作ってしまった。
 けれど構わない。
 聖杯を使用して大幅に強化されたその力は、例え竜殺しがいようとも簡単には死なぬだろう。幻想大剣は既に把握してある。邪竜の心臓は聖杯で強化しているから外殻が焼かれようとも、僅かな時間があればすぐ再生する。
 かのティアマト神にすら、傷を負わせる事が出来るだろう。
 負ける事は無い。まず負ける事ない。今度こそ負けない。

「……いえ、ダメね。それじゃあマスターを殺してしまう。それはダメ、それだけはダメ。
 私の存在する理由を私は忘れない」

 この世界で今度こそ救って見せる。
 今は露払いだけを考えればいい。彼以外を全員始末してからでいい。
 彼のサーヴァントはあのセイバーのみ。彼女が十全に力を振るおうとしない理由など既に知っている。
 胸の中に零れる感情は、無様な嫉妬にしか他ならない。
 そいつよりも私の方が役に立つ。そいつよりも私の方が貴方を守ってあげられる。
 だから。
 だから――

「――そいつが、貴方の隣が、私だったら良かったのに」

 忘れる事の無い光景。
 もう叶う筈の無い未来を口にした。



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誤字報告兄貴達に感謝を(挨拶)


ちなみに既にお気づきの方もいると思いますが、大筋のプロットこそ決めていますけど各々特異点に関してはほぼノープランです。勢いで書いてます。
オルレアンに関してはコミカライズ版が強すぎて、余り弄りたくないと言う思いがですね……。


 

 

 さぁ、再開と行きましょう。無事逃走に成功したところからですね。

 ――と言うか序盤から戦力の大部分と合流出来ましたね。

 ジャンヌ、マリー、アマデウス、清姫、エリザベート。これで残るはゲオルギウスとジークフリートのみです。

 今までの流れとしては、戦力を集めてジークフリートの呪いを解除、オルレアンで決戦ですね。

 ガバポイントとなりやすいのが、ジークフリートを街から救出させる時です。ワイバーン、ファヴニール、サーヴァント相手が強襲に来ます。解呪に時間がかかるため、街の中で解呪するか街から逃走するかが選ぶ事になります。

 街の中でを選んだ場合、ジャンヌとゲオルギウスの二人が解呪を行う間街を防衛し続けます。勿論その間、二人は動けません。負けたらゲームオーバーです。

 街から逃走の場合、マリーが犠牲となりますが街の住民や他のサーヴァントは全員生存します。

 安定は、逃走ですね。防衛ルートはバビロニア後半と同じかそれ以上に難易度が跳ね上がります。どれだけ公式はマリーを死なせたいんですかね……。

 ちなみにマリー推し兄貴が防衛ルートで突破した動画を上げてます。マリーを死なせたくない一心で街中に罠を仕掛け時間を稼ぎ、バーサーク化したデオンとサンソンがその姿を見て自我を取り戻す展開や、最後は兄貴自身がジークフリート復活まで体を張り続ける展開は胸熱でしたね。

 閑話休題、現在戦力の確認と方針の決定です。

 まずはサーヴァントの捜索ですね。とは言っても場所は分かってます。ジークフリート達の保護に向かいましょう。

 ――こっちに関しては分かってます。周回してますんで。ジャンヌ・オルタとの会話とファヴニールの来た方向から予測できたとか、でっちあげておけば何とかなります。ホモはうそつき。

 

 >貴方は指さす方向に街が無いかを尋ねた。

 

『あぁ、そこにあるけど何か感じたのかい?』

 

 >恐らくその街にサーヴァントがいるかもしれないと。

 

『あぁ、なるほど……。確かにファヴニールが来た方角の街ではぐれサーヴァントがいるなら既に見つかってる筈だ』

『急ごう。相手はワイバーンを使えるから、見つかる可能性が高い。思い立ったら何とやらさ』

 

 と言う訳でホモ君はマリー側。立香君はアマデウス側ですね。分断するかどうか選べます。勿論分断して、立香君には色々と進めてもらいましょう。チャートに予想外の事ばかりが起きてるんで、なるべく彼には強くなっていて欲しい所です。と言うかあの三騎いるなら大丈夫でしょ。

 では移動の間に、街に入ってからの流れを。勿論倍速。

 まず街に入るとゲオルギウスがいるので、彼に案内してもらうとジークフリートと出会います。で、解呪にはジャンヌの力も必要ですので彼を連れて合流する事になります。

 もし先ほどの選択で分断せずに全員で来た場合、例の防衛か逃走かを選ぶルートへ移行します。

 今回は分断しているんで、問答無用で逃走に移行。後は逃げるのみです。マリーと契約した場合は相手の襲撃してくるワイバーンの数が減るのでめちゃくちゃ逃げやすくなります。

 ……んー、でも正直それを考えてもマリーと契約する理由が無いんですよね。他兄貴の報告では、マリーを生存させておくと終盤でフランス兵達の士気が大幅に上がります。ノンケは単純。

 ただ今後どうなるかが分からないので、まだ契約は下手に結べないです。その事はドクター達にも伝えています。

 あれ、何か等速に戻りましたね。

 

 >街が見えてくる。

  ――瞬間、貴方は咄嗟に頭をズラした。頬を一筋の矢が掠めていく。

 

 !?

 そんなの当たったら死んじゃうだろ!

 

「マスター!」

「まさか、読まれていた!?」

 

 これはアタランテ、ですかね……。まぁ、アーチャーと言えば彼女ぐらいなもんです。恐らく警告でしょう。次は当てるとか言う。

 じゃないとホモ君が回避出来る筈が無いです。

 

「アルマさんは私の後ろに!」

 

 人間要塞の後ろに隠れましょう。命は大事。

 だから言って、油断すると上から矢が降ってきます。

 既に相手が街中にて、自分達が外で足止めされている以上詰みに近いですね……。仕方ありません、ここで禁忌礼装を使用しましょう。

 まだ前回の使用の負荷が残っているので、後の事はしばらく彼らに任せます。

 

 >貴方は全身の刻印を起動した。

 

『! 分かった! アルマ君のバックアップに! 使用タイミングに合わせて魔力排気で負荷を下げて!』

 

 使用礼装は――必中効果でいいですね。

 星三礼装『正射必中』を選びます。使用弾薬は強化弾。相手がサーヴァントですので、カルデアからの予備令呪を装填。

 アタランテは……検証で使用した事は無いので多分大丈夫でしょう!

 じゃあ、俺休み貰ってしばらく止まるから。

 

 >貴方は――■■?“■+*

  『システムに深刻な障害が発生しています』

 

「――!!!」

 

 >『直ちに使用を停止してください』

 

「――■■■!!」

 

 >『繰り返します』

 

「■■■■!」

 

 >『システムに深刻な障害が発生しています』

 

「――■■!!!! ――」

 

 >『直ちに使用を停止してください』

 

 

 たましいが、もえつきる、おとがした。

 

 

 

 

 ――目が醒める。どうやらベッドに寝かされていたようだ。

 傍には白い着物の女性、自身のサーヴァントセイバーがいる。

 

「……大丈夫?」

 

 小さく頷こうとして――手を握られた。

 

「無理、しないでね。貴方のソレは魂を全焼させるモノ。

 例え何度やり直しても、燃え尽きた魂が治る事は無い」

 

 彼女の瞳は慈愛に満ちていて、けれど強い警句が込められている。

 

「確かに貴方のあの一撃で相手のサーヴァントを負傷。それで私達は無事街中に入ったわ。

 カルデアの人々が今、中で会議している頃だと思うわ。

 ……大丈夫、ここでの会話は貴方以外に聞こえていないし残る事も無い」

 

 確かこの先はどうなっていたか。

 思考がぼんやりしていてまとまらない。

 

「……どうか言葉にして。もう疲れたって、もう休みたいって。

 そうすれば私は止めてあげられる。貴方の旅を終わらせてあげられる」

 

 ――首を横に振った。

 それだけは出来ない。止まる事だけは許されない。

 そう、決めた。

 失くしてきたモノをどれほど積み上げてきたかは分からない。けれど、それに報いるための答えを、結局まだ見つけられずにいる。

 

「……マスター。そう……。

 ならば私は見守るだけ。大丈夫、大丈夫よ私だけじゃない」

 

 かつて一度、選択を間違えてしまった。今まで決められていた筈の事を、選べなかった。

 だからその間違いで切り捨ててきた者に報いるために。彼らとの旅路が何一つ無意味でなかったと証明し続けるために。

 

「貴方と共に歩んだ星は確かに、貴方を見守っている」

 

 止まる事だけは、赦されない。

 

 

 

 

 おはようございます!!!!(大声)

 どうやら、無事ジークフリートの下までたどり着けたみたいですね。で、立香君側はまだ合流してきてないと。あー、ジークフリートを動かせないと考えたのかな。

 マズイですね、コレ。ホモ君起きて早々、早速戦闘やで。

 

 >貴方は起き上がって、セイバーと共に部屋を出る。

  広間には貴方の知る面々がいた。

 

『目が醒めたようだね……。早速だけど状況を説明するよ』

 

 知ってる知ってる。またこっちに第二波が来てるんですよね……。

 で時間を稼ぐために、マリーが残る事を選んだと。

 ん、ホモ君どうしたん?

 

 >マリーに自身と契約するように口にして、手を差し出した。

 

 ファッ!?

 何やってるんですか!? そんな事したら、本当に自滅しますよ! ホモ君の体は二騎以上と契約してしまうとそれだけで死活問題なんですから!

 あ、いえ別にセイバーは魔力とかほとんど持っていかないので、問題無いんですけどね。

 

「……そう、心配してくれてるのねアルマさん。

 でも、多分その体は限界のようにも見えるわ。ドクター達から聞いたの。

 今の貴方は、今にも割れそうな水風船だって」

 

 ヴィヴ・ラ・フランス!

 そのままホモ君を説得してあげて!

 

「そしてあの時の貴方を見て、思ったの。もし貴方達のような人が、私達の築いた未来で活きてくれてるのなら、それは何て幸せな事なんだろうって。

 ――えぇ、ちょっとだけ怖いのはホントよ? でも、ありがとう。今の貴方のおかげで勇気を貰えたわ」

 

 ヴィヴ・ラ・フランス!

 後一歩ですよ!

 

『アルマ君……急ごう。反応が近づいてきてる。もう時間が無い!』

 

 >貴方は、そっと手を下ろした。

 

 ヨシッッッ!!!

 ホモ君、大丈夫! いつかその選択が窮地を救う光になるよ!!!

 

 >ジークフリートを連れて急いでこの街から脱出しなければ……!

 

 

 

 

 アタランテ、ファントムが敗北した。マルタはジャンヌ・ダルクによって倒され、残るは四騎。

 されど、もうその全てに用は無い。いや、元からどうなろうと構わないのだ。どうせ彼らは狂化した所で既に意味が無いのだから。

 セイバーであるデオンはフランスに刃を向ける事は出来ないと、サンソンはマリー・アントワネットをこの手で殺した事を思い出し、二騎は自害した。

 カーミラとヴラドは健在だが、無論最初からこの二人は生き残るつもりなど無い。二人はファヴニールの特性に方向性を与える為の贄となる事を選んだ。

 

『それが、彼の者を止めるに最も確実な手段なのだな? ならば受け入れよう』

『別に私は構わないわ。……あの子が囚われてる事だけは我慢ならないもの。あの子は、あの子だけは、あそこから出してあげないと』

 

 願いだった。怪物ではなく、英雄として一つの命を願う確かな決意だった。

 吸血の特性まで得たファヴニールは最早止める事は出来ないだろう。後は他の特異点を呑み込んでいけば、時間神殿へ到達する。

 そうすればようやく彼の旅を止められる。彼の旅を終わらせられる。――彼と共に、地獄へ行ける。

 

「――それで、貴方は、心優しい王妃様は何度でも立ちはだかるのね」

「えぇ、そうよ。……まるで知っているみたいね」

「知っているわ、知っているとも。だから、私はここにいる」

 

 彼女の決意は変わらない。

 街を守るようにして発動された第二宝具は、瞬く間に巨大な結晶となって街を包み込むように広がっていく。

 

「……貴方はどうなのかしら」

「何?」

「だって、貴方のその顔は。寂しそうに見えたから」

 

 反射的に剣を振るう。彼女の眼前で火柱が炸裂した。

 

「大人しく食われるか消えるかを選びなさい。ハナからヤケクソなのよコッチは。

 見れば分かるでしょう? もうとっくに、この特異点は聖杯戦争なんて様式を全部投げ捨ててる」

「――街を襲うつもりは無いの?」

「いえ、それはそれとしてフランスは腹が立ちますもの。勿論襲うわ、徹底的にね」

「……そう、ならごめんなさい。私はここで戦うわ、例えそれが、貴方の優しい願いに立ち塞がるとしても」

「――!! 黙れ、黙れ、黙れェ!!」

 

 





 消えていく霊基。彼女はファヴニールの糧となる事を否定し、自ら消滅した。
 近づく足音に対し、振り返る事無く口を開く。

「それで、一つ聞きたいんだけどジークフリートを残せって言ってたのは何の為? 確かにファヴニールは強化したけど、それならアイツ一人殺せば済む話じゃない」
「決まっている。彼が自滅を選ぶからだ。出来る限り可能性を残し、道を選ばせ、最後に確保しておく。それが確実だ」
「……そう。で、次の保険は考えてあるんでしょうね」
「問題ない。第二特異点は彼女に任せてある。彼と言えど、その霊基に関してはほぼ初見で挑まなくてはならない筈だ。尤も、既に陥落寸前だがね」
「まるで私が負けるみたいな物言いね」
「全ての英霊が止める方に回れば良いのだがね。中には彼の味方である事を選び続ける者もいる。
 それとも、今更戻りたいと思ったのか」
「聞いてみただけよ、別にそこまで思ってないわ。私の力じゃ、アイツを守れなかった。それだけの話。
 ……じゃあさようなら、これでもし負けようものなら時間神殿で燃やし尽くしてあげる」
「――そうはさせない。止める、止めて見せるとも」




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竜殺し

正直、書きたい所だけを書いていっているよね()


あそこまで書き込める先駆者兄貴すごい……すごくない?


 

 

 オルレアン決戦に向かうRTAはーじまるよー!

 飛ばし過ぎでしょと思われる兄貴達もいるでしょうが、ほとんどチャート通りだったんで倍速にしました。

 フランス全軍VSファヴニール+ワイバーン部隊+ジャンヌ・オルタとバサスロット。

 クッソ厄介なのはバサスロットですね……。アイツだけは倒しておきたかったんですけど、遭遇するチャンスが無かったんですよ。

 コイツ、冗談抜きで厄介です。技量で対抗出来ると言えば立香君の三騎しかいませんが、それでもワイバーンを使ってきて互角以上の戦闘を行ってきます。

 ですが、こっちもこっちで多いので何とかなるでしょう! イクゾー!

 

 >空からバーサーカーが奇襲してきた!

  アルトリアがその一撃を即座に止める。

 

「その剣は……!」

「arrrrrrr!!!」

「ランサー、援護に回れ! ワイバーンはこちらで抑える!」

「ハッ、言われなくてもやるさ!」

 

 >バーサーカーとワイバーン、多くのサーヴァントが交戦状態に移行した。

 

 ただこれで時間稼ぎしてくるから、本当に厄介なんですよね。

 ファヴニールは立香君達に任せて、ワイバーンを少しでも仕留めます。

 持久戦開始です。時間が来ればイベントが発生して、ジークフリートが宝具を使用する筈なので。

 耐える事に関してはホモ君、一級品ですからね!

 

 

 

 

 その黒騎士はまさしく手練れに他ならぬ。ワイバーンの援護があるとはいえ、大多数のサーヴァントを相手取って尚、互角以上の立ち回りを見せるのだから。

 アルトリアの剣を逸らし勢いを殺し、剣をつかみ取ると多数の相手がいる方向へ投げ飛ばした。無論、それが当たる先はマスター。これなら守りに徹するサーヴァント達は受け止めるの選択肢以外が無くなる。

 

「さぞや名のある戦士と見た。――お相手願おうかねェ!」

 

 繰り出される神速の刺突。その全てを、黒騎士は初見で捌き切ってみせた。

 そこから間髪入れずに迫る回り蹴り。即ち全く見えぬ間合いの外からの強襲。

 それすらも、当然の如く回避する。

 

「やるじゃねぇか……。気に入った!」

 

 されどクーフーリンとて、ただ防がれるだけではない。刺突のタイミングを僅かにズラし、目視していた箇所を当たる直前で逸らす。

 必殺にこそ至らぬが、それでも確かな手傷を負わせている。

 止める事は出来ても掴む事は出来ぬ神速の一撃――。

 だが、一つ忘れている事があるとすれば。この黒騎士はカルデアでの事を僅かだが覚えている。

 強き、気高き戦士達。彼らとの研鑽は、この特異点において残滓として残っている。

 ならばそれを呼び覚ますのは無論、強き者との死闘に他ならぬ。

 

「何!?」

 

 黒騎士は黒剣を大きく振りかざし、地面ごとクーフーリンを吹き飛ばした。

 清廉な立ち回りは突如として、荒々しいモノへと変貌する。フランス兵達が使っていた剣を簒奪し宝具化させ、その猛威はさらに荒れ狂う。

 

「コイツ!!!」

 

 体勢を整えるほんの刹那の無防備な時間を強襲すべくワイバーンが迫り――それをエミヤが撃ち落とす。

 黒騎士が単独でここまで戦えているのは、無尽蔵に湧き出てくるあの竜種と連携をくみ上げてくるが故に。

 

「チィ、狂戦士なら相応に振舞えと言うものだ……!」

 

 打ち出された矢を回避しながら、黒騎士は迫るサーヴァント達を退けていく。

 彼らは既に、眼前のサーヴァントで手一杯だった。

 

 

 

 

 えっ、何めちゃくちゃ強くないバサスロさん。

 一人ですよ、たった一人にも関わらず何ですかこのイカれた強さは。

 ……どうしましょう、二度目の禁忌礼装使用しましょうかね……。ただ撃ったところでワイバーンに防がれそうなんですよね……。

 セイバーさん、突撃してくれてもいいんですよ?

 

「ダメよ、マスターが何するか分からないもの」

 

 アッハイ。

 そんな訳で今、ホモ君に迫るワイバーンはほぼセイバーが片づけてくれてます。

 うーん……後一歩が足りないんですよね……。

 ジャンヌオルタを抑える役割も必要なんで、戦力が分散しすぎててかなりキツいです。セイバーがどこかに行ける時間があればいいんですけど、こっちはこっちでワイバーンばっかりで動けないとか言う。

 まぁここは持久戦でも大丈夫です。一定時間が経つとムービーが入ります。

 

 >突如、蒼き極光が天を貫く。

 

 来た! 幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)です! これでファヴニールは撃破。後は各個撃破していければこちらの勝利ですね!

 このシーン、めちゃくちゃカッコいいんですけど本RTAではスキップせざるを得ません。コミカライズ版がすっごく丁寧に書かれてるので見たい方は是非!(媚をウルク)

 

 >放たれる無限の蒼い閃光。

  それはファヴニールやその周囲のワイバーンすら飲み込んでいく。

 

 はえー、すごい威力。

 何がすごいって、あれだけの威力を持ちながら広範囲を一気に破壊するチート性能なんですよね。しかも周囲のエーテルを吸収するから連射力も高いとか言う。

 相手が竜種じゃなくても、かなり強いですし普通にやるなら当たりの一角です。大英雄の名前は伊達じゃない。

 

 >砂塵が消滅する。

 

 さーて、ファヴニールも倒しましたし後は消化試合でしょう。まずはランスロットを撃破してそれから――。

 

 >そこには邪竜が上半身ごと消し飛んでいるが、未だに心臓はカタチもその鼓動すらも健在であった。

  どうやら既に再生が始まっている。

 

 は?????

 

『そんなバカな!? どうして生きている!!?』

「ハッ! お生憎様、生前の弱点を突けば倒せるとでも思ったんでしょうけど、そうはさせないわよ。

 全力の一撃で倒されるのであれば、それで死ななければいい! 言った筈でしょう。聖杯を喰らえと。さぁ、甦れファヴニール!」

 

 >立香は既に意識を失っている。

  ジークフリートはダメージが残っており、先ほどの一撃を出すには時間を要する。

 

 聖杯強化ってそういう事? まさかジークフリートの宝具が直撃しても、ギリギリ心臓が残るぐらいまで強化するとかナニソレ?

 えっ、ナニコレ詰み? 詰みですか?

 ……仕方ありませんね、禁忌礼装を使用しましょう。概念礼装を二つセットして撃てば、あの状態のファヴニールでも回復阻害にはなる筈です。

 ホモ君は死にますけど、まぁしょうがない。これ以上、サーヴァントはいないでしょうし。

 

『!! アルマ君やめるんだ! それ以上は体がもたない!』

 

 さて、またステ上げから始め――

 

 >瞬間、召喚陣が起動する。

  貴方の体に反応しているようだ。

 

 はい???

 えっ、もうサーヴァントいない筈じゃないんです!?

 

『これは、一人でに起動を……?

 触媒も、詠唱も無しで……? そんな、まるで強引にこちらに来ようとしているみたいじゃないか』

 

 諦める訳にはいかないよなぁ!(掌返し)

 もうこの際文句は言いません!

 誰でもいいですから、助けてください!!

 

 >光が満ちる。

  虹色の魔力が強烈な風を呼び起こした。

 

「――説明は不要だ。既に状況は把握している」

 

 >男が立っていた。

  どこの時代ともつかぬ鎧に身を包み、紫色のマントをはためかせた男。その剣が放つ蒼き光に、ワイバーン達は静止せざるを得ない。

 

「成程、一度では死なぬか。ならば二度で殺すまでの事。

故にもう一人竜殺しが必要なのだろう。であればそれは当方(・・)をおいて他にはあるまいよ」

 

 ファッ!? その一人称はもしかして……!

 

 

「サーヴァント、セイバー。我が真名、シグルド! この場においてただ邪竜を打ち倒すためだけに参上した!」

 

 

 






 現れる戦士の王。その姿が在るだけで、瞬く間に戦場が変わったと誰もが感じ取った。
 それを見て、彼女は小さく呟く。

「――そう、貴方達はそちらを選んだのね。止めるのではなく、背中を押すと。
 それは生者ではない貴方達だからこそ出来るコト」

「なら私には、一体何が出来るのかしらね……」


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オルレアン突破

勢いのまま書き連ねていくスタイル。


 

 

『シグルド!? ヴォルスンガ・サガの大英雄……! 何てコトだ……。思ってない助っ人だ! これなら勝てるかもしれない!』

 

 えっ、えっ何でシグルドさんがいるんですか。

 貴方二部だから、シナリオには出てこないのでは……。

 何がどうなって、こうなっているんですか!?

 

「マスター、問題ない。貴殿の事情は把握している。早期に決着をつけよう」

『まさか、アルマ君との縁を? キミ、何か触媒でも持っていたのかい!?』

 

 知りませんよ、そんな事!

 強いて言えば、検証周回の際共に駆け抜けた内の一騎ぐらいなもんです!

 でもホモ君、大丈夫ですかね……。宝具使用したら、体吹っ飛びかねないんですけど。

 

「無用だ、マスター。たった一撃を霊基と引き換えに使用する。貴殿への影響は皆無と呼んで良い。

 ただ全力を出すが故に、他の障害の排除を」

 

 これは大英雄(確信)。

 ホモ君に負担は一切かからないとか最高かよ。

 

『アーチャー!』

「分かっている! すまんが、そちらはしばらく持ちこたえろ!」

 

 エミヤ君が援護してくれてますね。カルデアからの魔力供給率も上昇しています。どうやらここが正念場のようです。

 じゃあこちらも強化弾、惜しみなく使いましょうか。

 

 >貴方はシグルドへ支援術式を使用した。

 

「――懐かしいモノだ。あぁ、任せておけ。貴殿の道を切り開こう」

 

 よし、イくよホモ君!

 

 

 

 

 戦士の王が腰を落とす。

 ――瞬間、肌が焼けるような魔力が一面を覆う。されどソレは、決して攻撃などではなく、ただ魔剣から零れ落ちた副産物でしかない。

 空を埋め尽くす程に覆いつくしていたワイバーン達が、次々と散り散りになっていく。“あれに触れれば、間違いなく死ぬ”と本能が叫んでいるが故に。

 それはまさしく正しかった。それはまさしく道理だった。

 彼がこの場に来たのは、運命を遮ろうとする邪竜を屠るため。その刹那の時に、彼は持てる全てを出し尽くす。

 宝具解放準備。原初のルーンを以て、自身を一つの弾丸とする。

 無論、それを黙ってみている訳ではない。ワイバーン達がそれを阻止しようと動き出す。あの状態ならば、例え生還は出来ぬとも。発動だけは阻止出来ると。

 

「させんよ」

 

 エミヤの狙撃、その一射一射は貫き切り裂き抉り磨り潰す。

 されど彼らの勢いが止まる事は無い。一つ一つが小さな個体だとしても、それが無数に数を重ねれば一個の要塞としての頑強性はあるだろう。

 彼らは盾だ。ただ体を張る事だけ考えれば良い。火を噴き、爪を振るう理由も無い。ただそこに存在し続ければいい。

 

『クソッ、あれじゃあさすがのシグルドと言えども本命には……』

 

 瞬間、蒼き極光が一面を薙ぎ払いその群れごと粉砕した。彼の光は触れる者が竜であれば存在する事を許さぬモノ。

 既にキズだらけの体ではあるが、それでも。敵がいて腕が動くのならば、剣を振るう理由として十分すぎる。

 最早、彼と邪竜の間を遮るモノは何一つ存在しない。

 

「……道は開けた。後を頼む!」

「承知。援護、感謝する」

 

 ――蒼き光、蒼き風。

 装填される短剣を迸る紫電は、そのどれもが絶殺の煌き。

 拳で撃ち出されていくその刃は瞬く間に邪竜の心臓へと突き刺さり、刻まれていたルーンが発動する。

 

「魔剣完了、絶技用意。太陽の魔剣よ、その身で破壊を巻き起こせ!」

 

 魔剣グラムがその拳に弾き出され射出される。

 触れただけで全てを無に帰す破壊。それらは剣先一点に束ねられ、邪竜の心臓へと深々と突き刺さった。

 だが、まだ終わりではない。

 

壊劫の天輪(ベルヴェルク・グラム)!!!」

 

 聖杯で強化され、さらにサーヴァントの霊基まで練り上げられて洗練された心臓。

 けれど、彼の者が放つ一撃を直に受けてソレが存在出来る筈が無く。否、生きていい筈が無い。

 ここを超えなくては、今を生きる者達が先に進めない。そうであると言うのなら、如何な戦場であろうと参上し、道を開く。そのためなら、今の自身が消える事すら躊躇しない。

 ――それこそが英雄。それでこそ英霊。

 

「――状況終了。怪我はないか、マスター」

 

 

 

 

 消えていく邪竜。それに伴って消滅していくワイバーン達。最早趨勢は決した。

 それを見て、ジャンヌ・オルタは自重した。言うなればファヴニールは聖杯と等しい存在。それが敗れた事は、彼女の敗北をも意味する。既にその体は消滅しようとしていて、淡い光を放ち始めていた。

 ふと思う。

 止めようと思えば止められた筈だ。自身を相手するサーヴァント達全員を振り切って、あの英雄を止める事が。

 けれど出来なかった。体が言う事を聞かなかった。

 

“あぁ、そうか。”

 

 分かっていた。頭では分かっていた。

 どうせここで止めたとしても、彼はまた始まりの時へ戻って進み続けるのだろう。そう誓った光景に出会えるまで何度だって過去に戻る。彼は聖杯にそう願ってしまったのだから。

 初めて聞いた時は憎悪した。胸倉を掴みあげて真意を問いただしてやろうと。

 ――けれど、彼の瞳を見て。彼がそこまで追い込まれていた事を悟ったのだ。余りにも大きすぎるモノを背負わされて、ようやく取り返した世界を奪われて、いっしょにいたいと思った人達を切り捨てて。

 それが出来る筈が無いのに、それに耐えられる筈が無いのに。

 親しき人に弱音を零す事も、打倒すべき相手に怒りをぶつける事も出来なくて。

 積み重なっていく幾度の限界がいつしか彼を変えてしまった。自身の魂すらも、道具として利用してしまう程に。

 

“……助けてあげたかった”

 

 その旅路を止めた事も何度かある。けれど彼は殺した相手を憎む事すらせず、また次の世界で黙々と研鑽を始める。

 罵って欲しかった。怒って欲しかった。貴方の人間らしい所を、少しでも見たかった。それがただの傲慢、一時の欺瞞でしかなくて、全てが泡沫の夢になってしまうとしても。

 砕けてしまった貴方の欠片、その一部になれたとしたら――。

 

“いいえ、私では無理ね……。貴方を、救えなかったのですから”

 

 彼は憎む事だけはしなかった。全て自分が足りなかったのだと。何度も何度も届かぬ研鑽に身を削り続けて。

 余りにも捻くれて歪み切って摩耗して、けれども微かな光を放ち続けるその姿。最早糸のように細く脆く、しかし消える事は無いモノ。

 残酷で、だけどどこか美しくて。そんな淡い輝きに魅せられた。

 

“……もし次があるとしたら。いえ、その時はその時ね。

 私は此処にいる。何度でも何度だって、貴方と”

 

 脳裏をよぎる数多の記憶。――思い返すだけで笑みがこぼれてしまうほどに、満ち足りていた日々。

 それは彼女にとって救いだ。泡沫の夢、誰かの残影でしかない存在。そんな彼女だけが覚えている。

 例え幾度だって、何度だって繰り返されようとも。その日々が色褪せる事も、灰になる事も無い。彼と彼女しか知らない記憶。

 彼女を英霊(サーヴァント)であると証明出来るのは、人類史などではない。共に歩んだ彼だけだ。

 

「生きなさいよ、マスター」

 

 言葉に出来たのはその一言だけ。

 もっと伝えたい事はあるけれど、それはきっとただの我儘でしかない。

 何もかもを呑み込む。……悔しさしかない。言いたい事すら満足に言えない事など悔しくて当然だ。

 けれどそれは、彼が何度も経験した事。ただの人間でしかない彼が幾度と味わった挫折。

 その苦悩を理解しようとする事に意味は無い。それを分かった所で、彼が変わる訳でもない。

 また同じ事を繰り返すのだろう。止まる事を許そうとせず、ただずっと、ずっと。

 だから、胸に抱く感情は一つだけ。

 

“――ありがとう、馬鹿なマスター”

 

 斯くして、一人の少女はまた還っていく。――その記憶がその日々が、いつしか彼の背中を押すための理由になる事を願って。

 

 

 

 

 ――邪竜ファヴニール撃破。聖杯は既に立香君の手にありますから、これで時代修正が始まります。いつの間にかバサスロも消滅していますね。撃破したと言うログは無かったから、魔力切れ起こしたんでしょうか……?

 にしても、凄い威力ですね……。対サーヴァント戦として考えても、恐らく直撃したら死にます。

 高い宝具火力、卓越した剣技、鋼鉄かつ高潔な精神、加えて原初のルーンによる搦手も可。通常プレイなら、シグルドは間違いなく大当たりです。

 

「――邪竜の撃破を確認。これで当方の役目も終わりか」

「……シグルド殿、すまない。オレの力不足で」

「当方だけでは足りなかった。その場合はジークフリート殿が仕留めていただろう。

 順番の問題に過ぎない。――何より貴殿がいなければ、仕留めるには足りず、我が魔剣が心臓へ届く事も無かった。誉れを受け取るべきなのは貴殿だ。当方はただ掠め取っただけに過ぎない」

 

 手柄を決して誇らない英雄感。

 まぁ、そりゃそうですよね。どちらも邪竜を倒す苦労は知っているんですから。

 で、勿論ですがシグルドは既に消滅しかけています。霊基と引き換えの一撃って言ってたもんね。

 ホモ君の体もほとんど影響はないです。謝謝奈須!

 

 >シグルドは貴方の前に来ると、貴方を見据えた。

  その瞳は先ほどまでとは異なり、とても穏やかで優しさに満ちている。

 

「マスター、もう少しばかり力になりたい所なのだが……。当方にはここが限界のようだ。貴殿から貰った大恩の返礼としては、あまりにも足りない。何より……私は貴方を守れなかった。不甲斐無いサーヴァントだ」

 

 いやいやいやいや。貴方が不甲斐無いとか、とんでもないです。

 私が思うに、サーヴァントらしいサーヴァントだと思います。カルナやアキレウスのように。

 

「そうか……。感謝する。貴殿と出会えた事、そしてそう言って貰えた事にも。

 もしまた機会があれば――いや、すまない今のは失言だ。貴殿への配慮が欠けた言動だった」

 

 >貴方は気にしないで欲しいと口にした。

 

 ホモ君、いい子だね(自画自賛)

 オルレアン、色々ガバもありましたけど最終的に突破出来ましたし中々いいチャートでしたね。

 タイム的にも結構いい記録なんで、後でこのチャートの確立方法を探しておきますか。

 

「マスター、すまない。その銃を貸して貰ってもいいだろうか」

 

 アッハイ。

 

 >シグルドは貴方の銃を手にすると、銃身を指でなぞっていく。

 

 えっ、あの……。

 

「――原初のルーンを刻んでおいた。貴殿が、アレを使わなくて済むようにと。

 この特異点を超えても、消える事は無い筈だ」

 

 >銃に原初のルーンが刻まれた。

  性能が大きく向上した。

 

 ファッ!?

 いやいやいや、原初のルーンって……えっ。

 スカディお姉さんや槍ババ――失礼。今、猛烈な寒気を感じました。そんな限られたサーヴァントから、様々な過程を経て入手出来る筈なんですが……。ちなみにクッソ強いです。カルデアに戻り次第試してみましょう。

 大英雄! シグルド兄貴大英雄!! ブリュンヒルデとシグルドの二人で駆け抜ける人理修復ルート、考えておくね!

 

「それと……この先もその道を開かんと、縁を辿り現れるモノがいる事だろう。貴殿はそれに値する人物だ。

 どうか旅の成就を、心より願っている」

 

 >貴方はふと尋ねた。どうしてこちら側に来てくれたのかと。

  その問いに、彼は笑って、その言葉を口にした。

 

「ならば、何度でも答えよう。――安心してほしい、いつでも味方だ」

 

 アッ。

 

 >時代が元に戻っていく。

 

 この一文が出たので、オルレアンはクリアです。

 カルデアへ戻り、準備が終わり次第セプテムへ向かいましょう。

 

 






『原初のルーン』

 彼の大英雄より送られたモノ。
 通常のルーンよりもその力は遥かに強く、刻まれたモノの性能を大きく向上させる。

 「貴殿はそれに相応しい人物だ。悪用する事は決してないだろう」


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幕間

誤字報告兄貴達、本当にありがとうございます(挨拶)


古戦場から逃げたいです。


 

 

 

 もうRTAなのか分からないRTA、はーじまるーよ!

 オルレアン突破後のインターバルですね。第二特異点セプテムまでは大方一週間あります。

 

「お疲れ様、二人とも。よく無事に帰還してくれた。

 次の特異点は大方絞れている。安全にレイシフト出来る事が確認出来次第、またオーダーを発令するよ」

 

 ドクターのセリフが終わったら、行動可能になります。ホモ君、疲労してる筈なのに全然足取りふらついてないですね……。

 まずは最早実家より通っているダヴィンチちゃんの工房に向かいます。

 本来ならここで銃の強化を行う予定だったんですが、シグルド兄貴からまさかの原初のルーンと言うサプライズがありました。性能確認したいんですけど、いきなりホモ君で試して事故ったら大変ですからね。

 とりあえず銃をダヴィンチちゃんに預けます。序盤に原初のルーンを獲得したチャートなんてこれが初めてですし……。どれぐらい性能が向上してるかは専門家に聞いた方が確実でしょう。

 持ってきた素材も全部投げます。再臨? 何故かセイバーが最初から最終再臨でしたし、不要です。まぁ、素材や強化も短縮できるし気にしないでいいでしょ。

 

「アルマ君、ところでキミの体に何か異常は? 今の所確認しているだけでも二回、あの礼装の使用を確認している。

 ――何か些細な事や違和感でもいい。変化はないかい」

 

 >ダヴィンチの言葉に貴方は「大丈夫」と頷いた。

 

「そっか……。別に無理しないでもいいんだよ。確かに今回の人理焼却に関しては全人類の未来がかかっていると言ってもいい。

 けれどね、だからと言ってキミ達だけがその責任を背負う訳じゃないんだ。我々も皆、同じさ。今いるのは、この脅威に立ち向かえる存在は私達だけだ。そんな私達が出来なかったら誰にも出来なかった。――もしも、なんて理想を求め続けるのは、終わりのない作業と同じだよ。ただ苦しいだけだ。そんなモノ、自分を追い詰める道具にしかならないだろ?」

 

 ホモ君のメンタルがちょっと揺らぎましたね……。

 

「だから、今の自分を認めてあげなさい。キミ達が前を向いてくれていれば、私達が背中を押す。止まったっていい、下がってもいいさ。人間ってのは単純な事を難しく考えようとする生き物だからね」

 

 ……。

 

「本当に単純な考えが出来るのなら、芸術なんぞで争う事も無いだろうに。――っと失礼、話が逸れてしまった。

 どうしてだろうね、キミと話していると時間を忘れそうになってしまう」

 

 >オレもです、と弱弱しく返事をした。

  どうしてか酷く泣きたくなる。

 

「また顔を見せにきておくれ、カルデアのマスター君。今度来た時はそうだね……特別に食事でも振舞ってあげよう。実はこの前、キミの銃の設計図と共に面白いモノが出て来てね。

 完全保存食のチョコレート――誰が考えたかは知らないが、実に良く出来ている。この私からしたら及第点と言ったところだけど」

 

 >『黄金律“記憶”』が強化された。

 

 

 

 

 部屋から出ていく彼を見送る。

 どうしてか、酷く不安だ。原因も理由も分からない。

 

「……もしかしたら、これと関係しているのかな」

 

 彼から銃の設計を依頼された日――どうしてか、搬入した魔力リソースの中に、彼の銃の設計が入っていた。

 ――取り掛かれば、ファーストオーダーには間に合う日程。そのための素材も、設備もある。

 不審には思った。けれど、それに頼るしか手は無かった。一から考え直したとしても、全く同じ発想に行きつく程、その設計は完成されていたからだ。

 既に基本は完璧に近く、後は素材さえ強化していけばマスターが使用する礼装としては充分に機能する。

 けれど、それがまさかあんな効果をもたらすなんて、思っていなかったが。

 

「――? ちょっと待った」

 

 ふと違和感を覚える。巨大な絵画の隅にあるほんの小さなシミを見つけた程度のモノ。

 銃はいわば変換器だ。彼の魔力を充填し、弾丸に概念の付与と神秘の補強を行う。弾は彼の魔力、或いはこちらの工房で作った弾丸。

 けれどそれを使用し続けて、彼は一向に堪えた様子は無い。計測しているバイタルにも異常は無かった。

 

「……なら、あの礼装を使用している時の弾丸は何だ?」

 

 彼の魔力? いや、それは多分違う。その魔力は銃に移行しており、変換しているだけだ。――何より、彼の魔力を吸い上げたところでサーヴァントに致命傷を負わせるほどの損傷を与えるなど不可能だ。長時間溜め込んだ魔力ならまだ分かる。けれど所要時間は大目に見ても十秒程。

 彼の魔術刻印? それも違う。アレには中身が無い。魔力を通したところで、意味合いを持たないからただの飾りに過ぎない。

 

「なら、アレは一体何を撃ち出している……? 弾丸は……」

 

 余りにも不自然な全身の魔術刻印――もし、それが弾丸となるモノが足りずに、ソレを補うために自然と広がっていったものだとしたら?

 

「!!!」

 

 吐き気がこみ上げる。

 いや、そんな筈はない。そんな事を、魔術が素人も同然の彼に考え付く筈が無い。――第一、そこまで命を懸ける理由が分からない。

 

「……万が一だ。さすがに在り得ないと思うけど。

 キミが無事で本当に良かった」

 

 工房の奥――爆破の時、かろうじて無事だったモノ。

 既に多くの職員亡き今、二人のマスターの存在証明を維持するために一部稼働させているシステム。

 

 

「もし彼が倒れそうな時は、どうかよろしく頼むよ。ムネーモシュネー」

 

 

 

 

 よし、後は帰って寝ましょう。休息も大事な事です。

 セイバーが部屋を綺麗にしてくれてる頃でしょうし。

 

 >ふと、シミュレーションルームで落ち込んでいる人物を見かけた。

  ……彼女、だろうか。

 

 おや、後輩君ですね。どうやらコミュニティイベントのようです。

 立香君の大事な守りです。彼女がいなくては、彼が最後まで生き残る事はほぼ不可能な存在。

 ここは一つ、励ましてあげましょうか。イってこい、ホモ君!

 

 

 

 

 ――守れた、のだろうか。ふとそんな事ばかりを考える。

 英霊達の姿を前にして、いつしかそう考えるようになってしまった。

 

「――」

「あっ、アルマさん。すみません、こんな姿を見せてしまって」

 

 構わない、と彼は口にした。

 カルデアのもう一人のマスター。アルマ・クルス。摩訶不思議なセイバーのサーヴァントをパートナーに持つ。

 所有している礼装は、所有者の膨大な魔力と引き換えに絶大な威力を持ち、特異点Fではセイバーオルタに鎧を破棄させ、オルレアンではアタランテに致命傷を与えジークフリートの救出に大いに貢献した。

 ――強い人だと、思う。戦いに身を置いて、体が傷つくと言う事がどれだけ怖いのかを知った。けれど、彼はそれを恐れる事無く、ただ前を向いて走り続けている。

 

「……私は、先輩のサーヴァントになれているんでしょうか」

 

 弱音がこぼれた。

 どうしてか、彼と自身のマスターに近いモノを感じるからだ。雰囲気も表情も、全く別人のように見えると言うのに。

 

「――」

「英雄の条件、ですか?」

 

 彼はそんな事を聞いてきた。サーヴァントではなく、英雄とは何か。

 余りにも唐突な言葉に思わず驚いてしまって。けれど彼は静かに、自分の返事を待ってくれている。

 小さく息を吐いた。脳裏によぎるのは、出会った数々の英霊達。彼らは背中を押してくれて、迷いを認めてくれて、共に戦う事を良しとしてくれた。

 

「……勇気づけられるコト、でしょうか」

 

 言葉を頭の中で整理しようとした筈なのに、自然と言葉が引き寄せられた。

 

「一緒にいる事で前を進める、共に戦っていける。

 そんな人物の事だと思います」

 

 過ぎったのは、余りにも無力な自分自身。戦うにも守るにも中途半端で。

 

「なら――」

 

“――ならキミは紛れも無い英雄だ”

 

“キミがいてくれる事に、マスターは救われてる”

 

“だから、大丈夫。キミなら、必ず彼を守れる”

 

 透き通った湖面の底に沈む、手の届かない懐かしい残骸を見つめるように。

 その言葉はまだ実感出来ない。けれど、どうしてか酷く安心する。

 

「……ありがとうございます、アルマさん。

 ならこの悩みはきっと、この先で晴れるモノなんですね」

 

 

“大丈夫。キミはきっと強くなる――”

 

 

 きっと、自身のマスターである彼も同じ言葉をかけてくれるだろう。

 ならば前を向かなくては。

 今の自分がいつか、この日の後悔を大切に想えるように。

 だが、まぁそれはそれとして。

 

「ありがとうございました、アルマさん」

「――」

「はい、ところでその……」

「――?」

「――楽しそうにお話しているわね? マスター」

 

 彼らのマスターとサーヴァントの関係に割り込む勇気はまだ無かった。

 

「そ、その今日はありがとうございました! セイバーさんとごゆっくり!!!」

「あら、ありがとう。さぁ、マスター。一緒に戻りましょうか?」

 

 

 >マシュの悩みを解決した。

  トロフィー『シオン』を達成。

 

 

 





「それで、マスター? 彼女と何を話していたの?」
「――……そう。…………いえ、ごめんなさい。なら私の配慮が足りなかったわね」
「え? 何も言わなかった自分が悪いから大丈夫?」
「……」
「ずるい人ね、貴方は」
「本当に、馬鹿な人……。なら今夜は、お詫びに料理でも作ってあげようかしら」
「こう見えて私、結構練習してるのよ? へる……へる……へるずきっちん、だったかしら? そこの方から“教える事がないでち”ってお墨付きを貰ってるんですもの」
「えぇ、大丈夫。味覚を失った貴方のために、見て楽しんでもらえるように頑張るから」
「どうかこの一時が、貴方の休息になりますように」



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いざセプテム

誤字報告兄貴達、ありがとうございます(挨拶)


セプテム編は更新、間違いなく遅くなります。
ガバガバな作者だからゆるして。


 セプテムへの準備を進めるRTA、はーじまーるよー!

 今回はセプテムでの準備がメインですね。特異点攻略後は大体インターバルが入ります。その間に出来うる限りの準備をしていきましょう。

 前回の特異点はワイバーンとの戦闘がメインでしたが、第二特異点は兵士――ローマ連合軍がメインとなります。そのため、銃はほぼ役に立ちません。と言うかまともにやりあってたら弾が足りないです。オルレアンもそんな感じでしたが、まだワイバーンの襲来間隔に間が空いてましたからね。

 銃だけだとサポートが行き届かないため、ダヴィンチちゃんからいくらかの簡易武装を拝借しておきます。と言うか、ただのスタングレネードですね。勿論サーヴァントにはほとんど効き目がないですし、電子系統には影響を与えないため味方の動きを阻害する事も無いです。エネミー専用――ぶっちゃけ逃走用ですね。

 おーい、ダヴィンチちゃんー!

 

 >貴方は工房に到着した。

 

「あぁ、いらっしゃいアルマ君。頼んでたモノなら出来上がってるよ。確か、次の特異点がローマ近辺と言う事はロマニから聞いていたんだっけね」

 

 そりゃ、何回も繰り返してますからね。

 

「なるほど……。足りなくなったら、こちらから転送するよ。お代は勿論ツケでね」

 

 えっ、金取るんです?

 

「当たり前じゃないか。何より私のモチベーションにも関わる。カタチがどうであれ、成果に見合った報酬を貰うのは気分がいい」

 

 確かにそうですね……。

 でも生憎払えるモノがないんだよなぁ。今、持ち合わせが無くて……。

 

「――ほほーう、アルマ君は悪い子だねぇ。私の作品はタダで貰って当然だと?」

 

 いやいや、そんな事ないに決まってますよ!

 ダヴィンチちゃん、サイコー! 美人ー!

 

「よせよせ、当たり前の事を言っても安くしないゾ。

 さて、本題と行こうか」

 

 あっ、急に素に戻るんですね。

 

「まずこの銃だけど、原初のルーンが刻まれてるだけあって威力が大幅に上がっている。

 強化弾を装填すれば、サーヴァントにもそれだけで充分なダメージが出せる筈だ」

 

 えっ。

 

「加えて銃身もかなり頑丈。そこらのエネミーの攻撃を受け止めても、動作に何一つ支障はきたさないだろう。最悪、これで殴ればいいさ」

 

 えっ。

 

「後、これはどういう原理かは不明なんだが……。キミの視線に合わせて照準を調整している。つまり、キミが視線を向けた場所にそのまま当たる」

 

 は?

 

「そして距離による威力の減衰も見られない。つまり、どういう事かと言うとね……。キミが双眼鏡で物を見るとする。そのまま射撃したとする。そして当たる。

 ……いやいや、私も自分で上手く説明出来ないと自覚はしているよ? けど、本当にそういうしかないんだよ。分かりやすく言うなら、白紙のキャンバスに目線を向けるだけで勝手に筆がその通りに動くようになるってコト」

 

 何ですかそれ……。つまり禁忌礼装を使用したら、絶対当たるって事ですよね。

 原初のルーン、頭おかしい(誉め言葉)。しかしこれなら銃もいい感じに役立ちそうですね(掌返し)

 

「出来る事ならもっと詳しく解析したい所だけどね。生憎、それ所じゃないし解析したところで応用出来ないし、それだけの設備も無い。

 本当に口惜しいとも」

 

 >貴方は銃をホルスターにしまった。

  装備をいくつか受け取る。

 

「あぁ、それと……。アルマ君に直接の関係は無いんだろうけど、次の特異点は酷く存在証明があいまいだ。大人数を直接送り込む事が出来ない。つまり以前のオルレアンのようにはいかない」

 

 あー、このセリフ来ましたか。たまにイベントとして、連れていけるサーヴァントが一騎に固定されるんですよね。誰でもいいのでカルデアスタッフがインターバル中に、次の特異点に関しての異常を告げた場合はほぼ確定です。

 特異点で霊脈を確保すればいいんですけど、破壊されていたり状況的にそれ所じゃなかったりします。

 で、今回はまだ事前通達があるからいいんですけどたまに無しで来たりするクソ仕様があったりします。許せねぇよ。

 まぁ、ホモ君は単騎だから関係ないんですけどね。

 

「立香君やロマニからも、連れていくサーヴァントについてキミの意見を聞きたいとの事だ」

 

 クーフーリン兄貴っすね。

 大軍を相手取って良し、強敵とのタイマン良しな上にルーンで気配遮断しつつ斥候役としてもかなりの活躍をしてくれます。

 エミヤ兄貴も考えたんですけど、対複数のサーヴァント戦でマスターを守りながらの場合だと、かなり不利なんですよね。

 

「分かった、一意見として伝えておくよ」

 

 セイバー、マシュ、クーフーリンの三人ですね……。守りはセイバーとマシュ、攻撃と偵察は槍ニキに任せるのが最善かな。

 セプテムの何が厄介って、相手に諸葛孔明がいる事なんですよね……。そのせいか、相手にほぼ包囲された状態から戦闘開始とかザラなんで。こっちも軍師鯖下さい。

 ちなみに陳宮を連れていくと孔明対陳宮の大合戦が見れたりします。ライネスを連れて行った場合、対孔明戦でかなり有利です。

 今回は孔明対策に禁忌礼装として起源弾を持っていきます。キャスター系サーヴァントに撃ち込んだ場合、一定時間行動不能に陥らせますのでその間にリンチしておきましょう。

 そういえば立香君、誰を召喚したんですかね?

 

「あぁ、ジャンヌ・ダルクらしい」

 

 えぇ……引き運強すぎない?

 まぁ、今後ホモ君が特異点修復に同行出来るかどうかは不明ですし、この世界を救うのは彼ですから頑張ってもらわないとですね。

 

 

 

 

 そんな訳で、セプテム出撃直前です。この間も変わらず、シミュレーションと工房の往復。後はドクターからの健診が追加されました。禁忌礼装の副作用について確認したいそうです。まぁ、何言われようと使うんですけど。

 にしてもレイシフト直前だと慌ただしい雰囲気です。人も設備も少ないですし、人類の未来がかかった戦いの最中なんで仕方ないですけど。

 この緊張感には既にホモ君も慣れていますね。まぁ、特異点修復に関してはたくさんやってきたし今更ですけど。

 

「さて今回の特異点は西暦六十年の古代ローマ……丁度反乱があった年かその直前だ。人理定礎値の大幅な乱れからオルレアンと同規模かそれ以上の激戦が予想される」

 

 ん? こんな事ドクター言ってましたっけ?

 ……なーんか嫌な予感がしますよコレ。

 

「不測の事態は間違いなく起こるだろう。分かっているとは思うけど、気を引き締めてかかってくれ」

 

 よし、それじゃあ行きましょうかねホモ君!

 

 

 

 





 欺瞞、略奪、搾取、屈辱――あぁ、聞こえる。聞こえるとも。忘れない、忘れられる筈が無い。
 これは怒りだ。これは復讐だ。奪われ、踏み躙られ、辱められた民達のモノ。消える事は無い。消してたまるものか。
 ヤツらが栄華を誇ると言うのであれば、落日を以て失墜させよう。
 ヤツらが浪漫を謳うと言うのであれば、罪業を以て煉獄に落とそう。
 憎い、憎い憎い憎い憎い。
 我が憎悪は途中で潰えた。けれど、何の因果か。微かな灯火は燃え盛る業火となりて此処にある。
 理由などどうでもいい。ただ――ただ彼らの無念を。

「――燃やせ、全てを。ローマの滅亡を以て我らの復讐は勝利となる!!」

 ヤツらには滅亡を。
 祖国(ブリタニア)には繁栄を。


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遭遇

誤字報告兄貴達、いつもありがとうございます(挨拶)


ちなみにセプテム編ですが、そんなに長くしません。三話、四話ぐらいで終わります。ガッツリ書こうと思ったら、私では何年かかっても終わらないから(確信)
書きたいところだけ書くってスタンスで……決まり!


 

 

 よし、到着しました……よ……。

 えっ、いきなり兵士の集団らしき所のど真ん中なんですけど。周り兵士がたくさんいるんですけど……。

 何でいつもレイシフトはこうなんですかね、ドクター。

 ん? ドクター? ドクター?? おおーい???

 

「圧政!!!!」

「マスター!」

 

 >突如振るわれた一撃を、セイバーが弾いた。

  彼女がいなければ、貴方の旅はここで終わっていただろう。

 

 あっぶね! 風圧だけで肌が切れましたよ!?

 

「おお! 汝らがカルデアか! ははははははは!!!

 成程、成程! ――汝は紛れも無く圧政者である!!! 我が抱擁を与えよう!!!」

 

 >その男は一切の話が通じるような雰囲気ではない。

 

 は? スパルタクス、は? お前味方じゃないの?

 は?

 

 >男が再び剣を振り上げた。

  セイバーがその一閃を受け流そうとして――

 

「トゥアアアアアア――!!!!」

 

 >突如、割り込んだ一人の男が円形の盾を以て貴方へと迫る一撃を受け止めた。

 

 次から次に状況が変わって、これもう分かんねぇな。

 とりあえずセイバー、腕を落としてください!

 

「任せて」

「ぬうっ……!?」

 

 >セイバーの一閃がスパルタクスの腕を落とした。

  彼女の前では如何なる堅強な肉体も意味を為さない。

 

「御無事ですな! それは何より!」

 

 >乱入してきたサーヴァント――レオニダスは貴方を僅かに振り返った。

 

 ファッ!? 貴方この特異点じゃ、敵の筈では!?

 いや、そんな事は後回しです! 今は戦場の真っ只中なんでセイバーだけだと守りが足りません! 味方になってくれるなら良し!

 

「――失礼ながら余り時間がありません。少年、貴方さえ良ければ契約をお願いしたい。

 どうやらはぐれサーヴァントとして召喚された際、不具合があったのか本来の力が発揮出来ないのです。

 あの程度の一撃、我が筋肉ならばすぐに弾けるのですが……」

 

 契約……うん、考えるまでも無いですね。

 この先の展開が見えない以上、味方でいてくれるサーヴァントは少しでも増やしておきたいですし渋って死んでしまっては元も子もありません。

 

 >貴方は契約に頷いた。

 

「よろしい、ならば我が盾は貴方の運命を護りぬこう。――ふぬぅ! 滾ってきましたぞマスター!!」

 

 >貴方はランサー・レオニダスと契約した。

 

 これ以上の契約はホモ君が死にます(経験談)。

 とは言え、レオニダスは魔力面で言えばそんなに消耗しないですし基本が肉弾戦なのでかなり低コストで安定感があります。守る事に関してはあらゆるサーヴァントの中でもほぼ上位ですね。

 

「は、ははは!!! ははははははははは!!!!

 圧政、圧政、圧政。全ての圧政者に我が愛を、我が抱擁を! さあ反逆を以てかの権威を落とさん!!!」

 

 で、どうやってスパルタクスを切り抜けましょうかコレ……。何かもう腕が再生しだしてて、さらに発狂してるんですよねあの筋肉達磨……。後この人、確か逸話的に指揮もこなせた筈なんで、かなり厄介です。何でバーサーカーなんですかね。

 セイバーなら即死させられるんですが、問題は一つ。――彼女が近づく隙を作れるかどうかなんですよね。バーサーカーなんで、一撃食らうと致命傷になりかねません。何より彼女を傷つけたくないです。

 さっきのはこちらの指示ミスでしたね。あそこでスパルタクスを撃破しておくべきでした。

 

 >貴方に襲い掛かる兵士達をセイバーが切り伏せていく。

  けれどその頭数は一向に減る事が無い。

 

 あぁ、もう相手の兵士達が面倒くさいですね!!

 狙いつけるのが面倒な分、シグルドから貰った強化はかなり助かります。そこらのローマ兵ならほぼ即死……ん? 何か服装違くない? アレ。ローマ兵じゃない……?

 アレ? もしかして誤射した? いや、でも相手の軍を率いていると思われるスパルタクスは確かにカルデアのマスターと言いましたし、そんな筈は……。

 

「――そこにいたか、カルデアのマスター。フン、何故今更になってもう一人……まぁいい」

 

 えっ。

 

 >丘の上、炎に包まれた戦車に一人の女性が立っている。血に塗れた彼女の総身はまるで地獄の鬼そのもの。

 

「ああ、我がマスター、地獄から戻りしブリタニアの女王よ! 共に反逆を為そうでは無いか!! 我らが道は約束されている!!」

「……殺せ、アレに合流されたら面倒だ。私は陣へ戻る」

 

 ちょっと待って。ブリタニアの女王? つまり、それってブーディカさんですよね?

 えっ、彼女味方じゃないの? 何で敵にいるの――ってそりゃそうですよね。西暦六十年近くのローマと言えば彼女の反乱があった頃です。寧ろ味方でいてくれるのが不思議なレベル。

 

「ほう、まさかこの場は私一人に任せると? は、ハハハ!! 弱き者は救うと!? 成程、それは確かに反逆の一つである!!」

「黙れ。――あの男曰く、それは放っておいてもやがて自我が崩壊して死ぬ。ならばここで魔力を消耗する理由がない」

「承った、女王よ。ならば貴方が至るための反逆の礎となろう!!」

 

 >彼女は戦車を操り、どこかへと去っていく。

  貴方は、その方角を記憶に焼き付けた。

  兵士が消えていく。彼女の魔力から構成されていたのだろうか。

 

「……マスター、どうかご安心なされよ。このレオニダス、貴方がいる限り決して斃れはしませぬ」

 

 こちらはサーヴァントが二人。相手はスパルタクス一人ですが……、もしホモ君めがけて突進されたらかなりキツいですね。魔力暴走とかされたら、詰みます。

 仕方ありません、禁忌礼装のお披露目とい――

 

「総員、放て!」

 

 >どこからか飛来した銃弾と矢がスパルタクスへと降り注ぐ。

 

「こちらだ! カルデアのマスター!」

 

 >その声が聞こえた途端、レオニダスが貴方を抱えて声の聞こえた方向へと飛んだ。

 

 ちょっと待って、その声はネロじゃない。

 えっと、貴方は……。

 

「我が名はラクシュミー・バーイー。クラスはセイバー。ローマ側に呼ばれたサーヴァントであり、ただ一騎の生き残りだ」

 

 >貴方の眼前にいるのは、剣と銃を持った褐色肌の女性。

 

 もう情報量多すぎて訳が分からないよ。

 彼女の人柄上、ここまで情報を開示したという事から信用します。

 しかしこのまま逃げても、スパルタクスに追いつかれ最悪ローマ市内に入り込まれます。と言う訳でセイバー、お願いします。

 

 >貴方はセイバーに地面を刺すように告げた。

 

「えぇ、落とすわ」

 

 >セイバーが刀を地面に突き刺すと、一面が崩落した。

  それはスパルタクスを呑み込んで地中の底へと沈めていく。

 

 これなら追いつかれる事も無い筈です……ですよね?

 

「成程、ではこちらも責務を全うするとしよう。――これより離脱する! 生きて戻るぞ!」

 

 これもう、検証アテにならないね(今更)

 

 

 

 







「勝利の女王――貴方はそれでいいのだろうな。けれど周りはそうだろうか」

 彼の男は言った。

「令呪を以て命ずる――あの帝国からの仕打ちを忘れるな」

 彼の男は言った。

「令呪を以て命ずる――貴方の国の香りと景色を思い出せ」

 彼の男は言った。

「令呪を以て命ずる――貴方の娘達の無念を増幅しろ」





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ローマへ

誤字報告兄貴達、ありがとうございます(挨拶)

当RTAでは解説をレフ教授に丸投げしております。
色んな所がガバガバな作者なんで、展開の雑さについては聞かないでクレメンス。


 

 

 そんな訳で無事、ローマ市内に逃げてきましたけど……何か検証の時と比べると人の往来が少ないですね。

 人々の顔色も心なしか暗く落ち込んでいるようにも見えます。

 あ、ちなみに最悪の状況が一つ判明しました。カルデアと通信が出来ません。ホモ君だけが出来ないのか、立香君も出来ないのか不明なのでそこも後で調べるとしましょう。

 

 >貴方はラクシュミーの後をついていく。

  向かう先は皇帝のいる場所のようだ。

 

「……貴殿は聡明だな。早速、そこに気が付いたか。……私にもう少し力があればな。

 事情は皇帝から聞いてくれ。私から話せる事ではない」

 

 あっ、ふーん(察し)

 

「にしても貴殿は、特に異常は無いのか?」

 

 別にどうもないですよ?

 禁忌礼装も使用してませんし、何ならホモ君もまだまだ戦えるようですし。

 

「いや、その……レイシフト、と言うのに何かトラブルがあったのではないかと思ってな」

 

 ? どうしてまたそんな事を?

 

「リツカがこの街にきてから既に四日は経っている。貴殿と同じタイミングで来たのに、ここまでズレるのは明らかに不自然だろう」

 

 ――――。

 ファッ!? 待ってください! 

 四日!?

 

「私はそこの分野に関して浅いからはっきりとは言えないが……。

 すまない、妙な話をしてしまった。もうすぐネロ皇帝と謁見だ」

 

 んー、レイシフトがここまでズレこむって明らかにおかしいですね……。

 ホモ君のメンタルも変動してないですし、セイバーが明らかに介入した訳でも無いし。ホモ君のレイシフトに関する何かが影響したのでしょうか?

 セイバーさんや、何か知ってます?

 

「……いいえ、残念だけど私は何も。ただ、ソレは貴方を傷つけるためじゃないってコトぐらいかしら」

 

 ???

 

「だって、もしそうならとっくに斬り捨てて居るもの。貴方の敵は私の敵。そうでしょ?」

 

 アッハイ。

 

 

 

 

「――うむ、アルマ・クルスとそのセイバー。そしてランサー・レオニダス。

 よくぞ、あの者達から生還し余の下に参じてくれた」

 

 ネロ・クラウディウス――確かこの時は二十三歳なんでしたっけ?

 彼女も中々波乱に満ちた人生を送っていましたからね……。

 

「余はローマ五代目皇帝。ネロ・クラウディウスである。

 ――何か尋ねておきたい事はあるか? 説明をしたいのだが、余りにも膨大ゆえにな。其方の知りたい事を口にせよ」

 

 じゃあ、現在の状況ですかね。

 

「――既に残ったのはここだけだ。他の都市は全て焼き尽くされ、灰と化した。

 全戦力はこの首都のみ。かのキャスター曰く背水の陣と言うのであろうな」

 

 ファッ!?

 えっ、カルデアからの増援は!?

 

「――そいつは無理だった。霊脈が枯渇している。つまりカルデアからの支援も期待できねぇ」

「はい。ドクター達がクーフーリンさんを推薦してくれたのは最適解だったかもしれません。私、は……」

「マシュ……」

 

 じゃあ、もしかしてローマは蹂躙されたって事ですか……?

 

「人も建物も何もかも、その悉く。あやつは戦車で轢き潰したのだ。リツカとマシュも奮闘してくれたが、それでも……」

「はい……。私では先輩を守り切る事が精一杯で……」

「いや、嬢ちゃんはよくやった方だ。あの女、オレには目もくれねぇ癖に宝具を打たせる隙すら与えない。

 とっととこっちとやりあってくれりゃ、一刺しなんだがね。」

 

 槍ニキには目もくれず、けれど投擲は打たせない――え、クッソ厄介じゃないですかそれ。

 もしかして他のサーヴァントも……。

 

「あぁ、最初の六騎の内、残ったのは私だけだ。向こう側も同じだがな」

 

 これ、相当な激戦だったって事ですよね……。

 

「陳宮殿と呂布殿、二人の犠牲が無ければこの首都も落とされていただろう。あの二人は相討ちとなる前提で、相手の軍師二人を道連れにした」

「残っていた何騎かはオレが仕留めた。尤も、肝心のあのデカブツが残ったのは面倒だ」

 

 えぇ……。じゃあもう終盤間近かコレ。

 立香君、よく耐えてくれましたよ。

 

「繁栄の最中であったローマは最早凋落している。認めたくは無いが、滅亡寸前――としか言いようがなかろう。

無論タダで首をくれてやるつもりはない。あやつは余の民を、余の国を、先代皇帝達の築いたモノ全てを焼き滅ぼした。

 されど、ここで倒れる事を余自身が許さぬ。かの神祖が築いた系統樹――それを決して枯れさせてなるものか」

 

 うーん……ホモ君が何故数日遅れだったのか分かりませんね。

 もっと早く合流出来ていれば良かったのですが……。

 

「良いのだ、其方は間に合った。如何に早く辿り着こうとも、最悪あの戦車の餌食になっていたかもしれぬ。アレはそれ程の脅威だ。

 駆けるだけで何もかもを焼き尽くす焔。真っ向から戦えぬ理由である。あの前では、如何な盾も役に立たん」

 

 そういえば、ワイルドハントの逸話ありましたね彼女……。確かにそれなら戦車はめちゃくちゃ厄介です。

 多分、見るからにクラスはアヴェンジャーっぽいんですよね……。逸話とあの時の表情、そして特異点となったローマの年代から察せます。

 ここだけ聞くと勝ち目がないように聞こえます。相手は乗り物を持っておりそれに轢き潰されるだけで致命傷かつ、消えぬ炎を以て触れたモノを焼き尽くす。それでローマの都市を全て落とした。

 

 >貴方はマシュに聖杯の反応を感じられたかを尋ねた。

 

「いえ、聖杯はまた別の所にあるかと……」

「あぁ、ありゃ外部からの供給無しで出し続けられる威力じゃねぇ。どっかの金ピカやコピーバカは例外としてよ」

 

 また釣り勝負でもしててどうぞ。検証の際、夏イベ紛いの特異点で只管魚を数えさせられた日々は苦痛でしたからね。

 なら、一つだけ気になる事があります。

 魔力を充填するのであれば、やはり一番効率のいい場所を選ぶはずです。しかも霊脈は枯れていると来ました。

 ならば、どこかに休息地点がある筈です。

 

 >貴方はブーディカが陣へ戻ると告げて去っていく方向を見たと告げた。

 

「――なぬ、それは真か。どこだ、どこで見た」

「まさか、あの場所か? 待ってくれ、すぐに地図を持ってくる」

 

 どう考えても戦術的では無いです。触れただけで都市一つを落とせると言うのなら、このローマは一晩で終わっています。それこそホモ君達が来る前に。

 そしてホモ君が邂逅した時、ブーディカは陣に戻ると言いました。多分、その陣とやらが休息地点です。

 ――要するに、魔力の補給が必要。彼女は短期決戦では滅法強いですが、長期戦になると魔力切れを起こすのでしょう。

 だから陣地や手駒となるサーヴァントが必要だったのかと。恐らく敵兵は彼女のスキルで再現されたブリタニア兵でしょうね。それと戦車の使用で馬鹿みたいに魔力を食っていたんでしょうね。

 ……あっぶな! 禁忌礼装にローマ属性特攻とか組み込まなくてよかった!! シグルドの強化が無かったら確実に入れてましたわ……。

 

 >地図の場所を指さした。

 

「……リツカよ、以前はここだったな?」

「はい、そこで北の方に行きました」

「ならば、そこで陣に適した地形と考えて……ヤツの拠点はここか。ようやく割り出せたぞ」

「いや、魔力回復を仕込むならそこから数ヵ所に分けてある可能性も高いぜ。ここらの霊脈は枯渇していたが、痕を辿る事ぐらいは出来るさ」

 

 にしてもようやく状況が動き出せた感じですけど……ホモ君が来るまでにとんでもない激戦があったんですね。

 それにドクター達のサポートが無かったから、状況の再確認が出来なかったのか。

 そりゃ無限に敵兵が湧いて出てきて陣形組んで乱戦になるんですから、見る余裕ないですよね。立香君もまだ浅いですし。

 にしても槍ニキ、魔術に関してめっちゃ詳しいですね……。

 

「どうする、皇帝閣下。私としては直接叩く他無いと考えるが」

「同感だな。何より拠点が分かった以上野放しにしておけぬ。

 ――止めねばならん。止めなければ、あやつ自身が救われぬ。それは……余りにも惨過ぎるではないか」

 

 おっ作戦会議ですね。

 レイシフトが遅れるとか予想外のトラブルはありましたけど、結果的にはタイム短縮になりそうですね……。もし立香君が死んでたらゲームオーバーで再走の可能性もありましたが突破出来たならヨシ!

 集団で戦えば何とか――。

 

「ボウズとセイバー、お前らが要だ」

 

 えっ。

 

「たりめぇだろう。拠点は恐らく複数個所。その全部を潰す事が目的だからな」

 

 えっ。

 

「オレ達は陽動だ。何、ボウズなら上手くやれるさ」

「頑張りましょうね、マスター」

 

 えっ。

 





「さて、ではパスは切ろう。こちらも保険をかけておきたいのでね。文明を滅ぼすモノの準備には少しばかり時間を使う」
「私が失敗すると?」
「まさか、その復讐は正しいとも。それは合って然るべきもの。彼らの望みを、願いを無かった事にしてはならない。そのためにカルデアの通信を遮断、そして縁を辿ろうとするサーヴァントの妨害――やれる事は尽くしている」
「ならば」
「けれど、私にはどうでもいい。お前の復讐が叶おうが叶うまいが、どちらでも良い。
 ただそれを見て歩みを止めてくれる事を願うだけだ。
 ――彼は、四日後にレイシフトしてくる者だけは殺すな。そちらは私が看取る」
「……何故だ? ローマに味方すると言うのならそれは悉く私の敵だと言うのに」
「彼は放っておいてもいずれ終わる。このままでは魂が欠けて潰える。
 取り返しのつかない過ちを彼は犯した。けれど、その記憶さえ彼にとって遠すぎる過去の影、泡沫に等しい面影だ。償いだと言うのなら、とうの昔に終わっている。
 ――苦痛ではなく安楽を以て、死ではなく生を以て救済されるべきだろう」
「……矛盾している。貴様の行動には何一つ一貫性が無い。カルデアと言うモノと敵対しておきながら、殺す事を躊躇う」
「私にしか分からない事だよ。始まりを迎え、終わりを見届けた者としての役割だ」



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死守

誤字報告兄貴達、ありがとうございます(挨拶)

自分の語彙力と文章量のなさに危機感を覚えてきたゾ。
とりあえず走りきる事を目標にします(震え声)

ちなみに本RTAのホモ君は何の能力も魔術も持たないただの一般人です。


 

 

 

 来たと思っていたら決戦になっていたRTAはーじまーるよー。

 と言う訳でして、今平原で立香君やネロ率いるローマ軍、ブーディカとブリタニア兵士、スパルタクスが真っ向勝負しています。

 ホモ君はがら空きになった陣の霊脈を破壊してすぐに撤収。その時点でブーディカは弱体化するため、何とか逃げ切れるだろうと言う算段らしいです。山の中は入り組んだ地形になっていますし、弱体化した戦車では追いにくいだろうと言う事みたいで。

 多分、アレでしょう。ホモ君が戦ったら禁忌礼装使うとか思われてるから、遠ざけられたんでしょう。

 そんなこんなで、護衛兼土地勘に詳しいローマ兵一人、セイバーさん、レオニダスで陣を目指しています。

 

 >ふとローマ兵が貴方に話しかけてきた。

 

「ところで、あのマシュさんって人と話せる事があればお礼を言って貰ってもいいですか?」

 

 あー、確かに兵士達は復旧作業で全然自分のしたい事も出来ない様子でしたもんね。

 

「私は、あの人に助けられまして。まだその時のお礼を言えずにいたのです」

 

 はえー。

 マシュちゃんも成長が著しいですね……。

 まぁ、ちゃっちゃっと終わらせて戻りましょう。それなら言いたい事もたくさん言えます。

 

「マスター、あそこね」

 

 >セイバーが指さすと陣幕のようなものがあった。

  人影は無く、罠も無い。

 

「どうする、もう壊しちゃう?」

「いえ、陣の場所を全て把握してからの方がよいかと。壊せばその瞬間、相手は狙いをこちらに切り替えて、全力で来るでしょう」

 

 あー、確かに。どうせ弱体化させるなら、一気にさせてネロ達に仕留めてもらった方がいいですもんね。

 じゃあ、まず場所を把握しちゃいましょう。

 急ぐよ、ホモ君!

 

 

 

 

 ――そこは激戦に他ならない。

 入り乱れるローマ兵とブリタニア兵。そしてサーヴァント。

 

「おぉ、圧政者よ! 我が愛を受け取りたまえ!」

「いらん! クソ、中々ふざけたヤツだ!」

 

 振るわれた一閃、まるで巨大な大木を振り回したのではないかと思う程の風圧。一撃でも与えれば、致命傷となりかねない。

 スパルタクスの性質、受けた攻撃を魔力として変換し体の治癒や攻撃への転用を可能とする。

 これの能力故に彼は、今尚前線で戦い続ける事が出来ていた。

 そしてラクシュミーとて、その事は既に把握済みだ。あの再生のせいで、何人ものローマ兵とサーヴァントが撃破された。

 だが、今回の目的は撃破ではなく時間稼ぎ。必要以上にダメージを与え、スパルタクスの暴走を促してしまっては、ただでさえ大きい被害がさらに甚大なモノとなってしまう。

 

「セイバー殿、援護します!」

「助かる! だが、無茶だけはするな! お前達はこの国の未来そのものだ!」

「はい!」

 

 燃え盛る戦車、振るわれる都度飛来する高密度の魔力。

 それとの対決を可能とするのはクーフーリン以外にあるまい。彼が事前に仕込んでおいたルーン――空間遮断と水のルーンにより、ローマ兵達は炎の影響を受ける事無く戦えていた。

 

「ちぃっ!」

「――邪魔だ!!!」

「行かせるか、戯けが!!」

 

 空間遮断のルーンを戦車で突破しようと彼を無視すれば、槍が投擲される。

 ブーディカとてサーヴァントではある。だが、彼女が英雄であるのならば彼はまさしく大英雄。

 ――何より、逃がした相手をそのままにしておくなど彼の矜持が許さない。

 

 

 そして、その戦いは突如として急速な転機を迎えた。

 

 

「何……!?」

 

 ブーディカの戦車が止まる。無論、致命傷を負ったわけではない。

 彼女への魔力の供給が、急速に弱まっているのだ。

 故に彼女は動きを止めた。止めてしまった。

 

「獲った、刺し穿つ(ゲイ)

 

 突如、顕現した化け物。巨大な肉の柱にいくつもの巨大な目玉を埋め込んだような存在が彼らのすぐ側に現れる。

 その異質さ故に、投擲の狙いをソレに変えざるを得なかった。

 

「何!?」

「――焼却式、フラウロス」

「宝具、展開します! 人理の礎(ロード・カルデアス)!!!」

 

 平原その物を薙ぎ払っていく巨大な光線。

 だが、マシュの宝具によって犠牲となったモノはいない――尤も、それが牽制目的程度でしか使用されてないが故の結果であったが――。

 僅か一瞬。しかし、かの復讐者が戦車を駆りてこの戦場から離脱するまでには十分な時間である。

 

 

 

 

 さて、これで大方陣も破壊し終わりましたね。

 早く戻りましょうか。……ん?

 

 >雨が降って来た。空一面が雲に覆われている。

 

 ……マジか。

 特異点で空が曇ったり、異常気象になるのは大抵良くない事の前触れです。ホモ君は何度も経験してますしおすし。

 嫌な予感しかしません。例えば……そうですね、強大な魔力反応を持った相手が出現した時とかです。

 

 >通信機がなった。マシュからだ。

 

『アルマさん! 早く逃げ――■―■■■―』

 

 >ノイズが後半から酷くなって聞き取れない。

 

 もうフラグ立ちすぎやんけコレ。

 

「はははははは!!! こそこそ嗅ぎまわるとは、けしからんな!!!

 反逆を成すのであれば、それは困難な道として選択されなくてはならない!! それが出来ぬと言うのであれば、キミは紛れも無く圧政者である!!!」

 

 げ!? スパルタクス!?

 いや、早過ぎでしょ!? ……まさか、飛んだ?

 マズイマズイマズイ!!! 何か体が光り出してます。あれ、暴走の予兆です!

 

「我がマスター、我が女王! 私に宝具の暴走による自爆を命ずるとは、実に!! 嗚呼実に!! 実に!!! 汝も素晴らしき圧政者であった!!!! ハハハハハ!!!!」

 

 宝具の自爆によるホモ君の始末或いは逃走阻止。

 地形的に巻き込まれたら死にますね、コレ……!

 

「マスター!!」

 

 >爆発のような音と共に背後から烈風が吹き荒れる。

  地面が崩落していく感覚、僅かな浮遊感。

  このままだと貴方は落ちて、岩雪崩に巻き込まれて死ぬだろう。

 

 あっ、再走かな……。

 

 >そんな貴方の手を取って、前へ放り投げた者がいた。

  見れば、護衛として動いてくれたローマ兵だ。

  彼の体は、無数の岩石が沈んでいく地盤へ落ちていこうとしていた。

 

「アルマ殿、御無事ですか。それは良かった」

 

 え、あのローマ兵さん……。

 

「自分は、貴方の護衛ですから。私は大丈夫です、皆が待ってます。

 どうか皇帝陛下を、このローマをお願いします」

 

 >彼は笑って落ちていき、蠢く地盤へと埋もれていった。

 

 ――。

 

「マスター……」

「……すまぬ」

 

 ……大丈夫です、走りましょう。

 ホモ君は慣れてます。

 

 >貴方は立ちあがると走り出す。

  既に地形が大きく変わっていて、来た道とは全く別物だ。

  しかも雨のせいで足元がぬかるんでおり、滑らせれば一巻の終わりだろう。

 

「――カルデアのマスターァァァァァ!!!」

 

 >ブーディカが姿を現す。

  彼女の戦車の炎は、雨の中にあっても絢爛と燃え盛っていた。

 

 マジかよ……。

 いや、この状況で戦うとか最悪でしかありませんよ。戦車出されたら終わりですやん。

 弱体化しているのは間違いないでしょうけど、いくら何でも場所が悪すぎます。

 

「――マスター、お逃げ下さい。殿はこのレオニダスにお任せを」

 

 >レオニダスが貴方を庇うように前に出る。

  貴方が向かうのは狭くなった一本道だ。

 

 ……仕方ありません。ここで戦っても、ホモ君が死ぬだけです。

 レオニダスに任せましょう。

 

「感謝を。そしてマスター、どうか一つだけ言葉を告げる事をお許し願いたい」

 

 なんでしょう。

 

「――貴方は確かに罪を犯したでしょう。選ぶべきではない選択肢を選んでしまったのかもしれない。

 ですが、その咎を貴方が永遠に背負い続ける必要は無いのです。人は完全では無いのですから」

 

 ……。

 

「貴重な時間を申し訳ありません。さぁ、走るのですマスター。

 私は、我々は、貴方のその姿に魅せられて集ったのですから」

 

 走りましょう。

 何としてでも、ここから生き延びます。

 あぁ、それとレオニダス王。

 

「はい」

 

『信じてる』

 

「――私には過ぎた名誉です。だが、お任せを」

 

 

 

 短い時間だった。共に戦えたのは僅かな間だけ。それも、決して十分とは言えなかったが。

 言葉数は少なく、けれど視線は確かで反応もある。しかし、初めて彼と共に戦った時の事を思い出すと、まるで別人のようだ。

 

“……どうか私の言葉が届いてくれるといいのですが”

 

 盾を構え直し、槍を構える。

 打ち付ける雨、眼前にいるは戦車の女王。

 ――ならば己が肉体の役目は一つ。あの戦車を何としてでも止め続ける事。

 

「……分からない」

「何がでしょう」

「貴方の事は知っているとも、レオニダス王。炎門の戦士、守護の英雄」

「……」

「何故だ、何故守ろうとする。貴殿には関係があるまい。復讐によって、あの戦いを成した貴方なら、その思いがどれだけ魂を突き動かすのか分かる筈だ」

 

 成程、確かに。

 あの戦いで、この肉体は半ば息絶えた。

 無論、王を殺されて彼らが普通でいられる筈が無かった。彼らもまた復讐を成したのだから。死したこの体を、敵に渡してなるものかと。

 

「簡単な事です」

「……」

「確かに、その無念は分かる。愛する者を辱められ、祖国を奪われ、最期は民をも殺された。ならば黙っている事など出来る筈が無い。

 私とて、貴女と同じ事をしていたかもしれぬ」

「ならば何故立ち塞がる!?」

「――その感情を、貴女は我がマスターに向けた。

 であるならば、私は立ち塞がるしかありますまい」

 

 あぁ、そうだ。

 彼には関係が無い。遠く遠くの遥か未来、英霊達が守り抜いた宝そのもの。

 相対するのであれば、復讐者としてではなく英霊として対峙するべきだったのだ。

 

「そうか……そうか……!」

「最早、対話は無用。さぁ、来たれブリタニアの女王!

 我が真名はレオニダス! 我ら炎門の守護者也! 我が盾には、三百の魂があると知れ!」

 

 

 

 

 どれほどの時間が過ぎたか、はとうの昔に忘れていた。

 ――その衝撃は、かのペルシャ軍の重みとは比にならない。

 それもそうだ。彼女を動かすのは慢心や余裕ではなく、己が霊基を暴走させる程の強い復讐心。

 反撃は不要。押し返す必要も無い。ただ、耐え続けろ。背後には護るべき未来(マスター)が在るのだから。

 

“抑えきれんか……!! ――いや!!”

 

 そんな弱音が生まれてしまう程に、女王の猛攻は苛烈だった。

 けれど、そんな肉体を、精神を叱咤する。

 僅かな時しか共に在れなかったこの霊基に、彼は何と声をかけたか。

 

 

『信じてる』

 

 

「滾ってきたぞぉ!!!」

 

 押し込まれていた肉体が、精神と共にさらに奮起する。

 状況は再び拮抗へ。その足が後ろへ下がる事は無い。

 

「! 何故! 何故! 何故!」

「集え、我が同胞我が盾よ!!! かの戦いを奇跡ではなく必然と証明するのだ!!! ――炎門の守護者(テルモピュライ・エノモタイア)ァァァ!!!」

 

 膨れ上がる霊基。

 本来の用途と異なる宝具の使用――三百人の兵達を召喚するでのはなく、彼らの力を己が肉体個人に宿すモノ。

 無論、そんな無茶をして霊基が無事でいる筈が無い。この宝具は彼の消滅と引き換えに、敵対する者へ大きな手傷を与えるモノ。

 その盾は、全てをねじ伏せた戦車の疾走を弾き返した。

 そしてその槍は――

 

「我が渾身の一射なれば――!!」

 

 隙を見せた戦車そのものへと直撃し、大きな損傷を与えた。

 ――最早魔力の供給手段も無くした彼女は、戦車が使用不可能となった。

 乗っていた者は大地へ転がり、よろけながら立ち上がる。その女王が零した声は憎悪でもなく怨嗟も無く。

 

「……見事だよ、レオニダス王。貴方の矜持、確かに見届けた」

「……おや、随分と落ち着いたように見えますな」

「貴方の姿を見て、ちょっと動揺してるのかな。こうしてやっと本来の私を取り戻せた。けど、多分長くは続かない。またすぐに増幅した憎しみに支配される。

正直複雑だよ、この復讐は捨てられない。捨てたらアタシがアタシじゃなくなる」

「……捨てなくても良いのです。喜び、怒り、悲しみ、笑う――それら全てを備えてこその人間ですから」

「そっか」

「ブーディカ殿、カルデアとの縁は……」

「大丈夫、彼を通じたらこっちから行けそうだ。勿論、行くよ。今回の事のお詫びをしないといけないからね」

「勝利の女王たる貴方が力を貸してくれる、か……ならば憂いはありませんな。あぁ、いや……一つ、だけ……」

「……」

「どうか、ご武運を……マスター……」

 

 

「あぁ、そっか。――貴方はローマのサーヴァントとして呼ばれたんじゃなくて……彼を守るために、縁を辿って自ら来たんだね。

 その在り方に敬服を。貴方は、死して尚も生きる者達の背中を押す英雄だ」

 

 






「やはり、彼は止まらないか。その思いを動かしているのは何だ、英雄か矜持か、それとも残影かね」

「色々とキミにもレイシフトを遅らせたり、通信妨害だったりと細工をして貰ったのにすまない。色々と無駄にしてしまった」

「……いや、次の特異点は構わない。既に事情は伝えてある。――さすがあの英雄達を集めただけあって飲み込みが早かった。いや、確か共に神代海洋を駆け抜けたのだったかな。
 あちらに私が干渉する理由は無いよ。何よりそれは無粋と言う物だろう」

「あぁ、やりすぎては感づかれる。キミも私も同じ思いだ。名前すら失いつつある彼、もういい加減魂は欠け、精神は摩耗しているだろう。
 ただむなしいだけだ、ただ苦しいだけだ。だが死によって止める事は出来ない。だから彼に理解してもらうしかない」

「第四特異点では何もしないさ。寧ろここまで出向いてもらわなくては困る。彼とまた言葉を交わさなくてはならないからね。
 呪いだけでは足りない。故に彼を止めるのにキミの力を借りる事になる。その時が来たらよろしく頼むよ――ムネーモシュネー」



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永続狂気帝国

モチベーションが急に切れたのと、今後の展開を考えてたらこんな期間が空いてすみませんでした(謝罪)
RTAとFGO小説、相性が悪い……悪くない?
とりあえず三章は浮かぶんですが、四章は真面目に案が無いので一話で終わるかもです(マジ)


遅れたお詫びに失踪します。


 

 

 >目が覚める。

  見知らぬ天井――そこで貴方はようやく昨日の事を思い出した。

 

 ホモ君が目覚めましたね。

 前回は丁度、合流してローマ市内まで無事に逃げられた所まででした。到着するや否やホモ君が魔力切れのため意識を失った所までです。

 レオニダス王が脱落しましたね……。彼の力なくして、あの窮地をホモ君が生き残る事はまず無理でした。セイバーがいるから何とかなったかもしれませんが、彼女の力がいつ判定に引っかかるか分からないため、頼らずに済んだのも幸い。

 でも犠牲は割り切れないですね……。ホモ君もメンタルにちょっと変動が出てます。

 

「起きたのね、マスター。……」

「……」

 

 >貴方とセイバーの間に気まずい空気が流れる。

  理由は言うまでも無いだろう。

 

「……ネロ皇帝から話があるそうよ。状況の整理とこれからの事を相談したいと」

「……」

「……ごめんなさい、私がもっと本調子ならあの状況を変えれたのでしょうけど」

 

 >貴方は「大丈夫、ありがとう」と答えて彼女の後に付いていく。

  室内に入ると、ネロ、立香、マシュ、クーフーリン、ラクシュミーがいた。

 

「来たかアルマ。昨日は其方とレオニダス王の活躍無くしては掴めぬ勝利であった」

 

 >勝利? アレは敗走だ、と貴方は自責の念に駆られる。

  自分の判断が甘かったのか、魔力が足りなかったのか、マスターとして未熟だったのか。

 

「――いや、勝利だ。紛れも無い勝利なのだ。余が認める、だからこそ誰にも異は唱えさせぬ」

 

 >貴方の中にあった考えを掻き消すように、ネロは反論すら許さない勢いのまま答える。

 

「あやつに何一つ奪われる事無く、切り抜けた戦いなど一度も無い。故にアレは勝利なのだ。

 其方らと彼の王が引き寄せたモノ。戦であれば誉れと謡われ、国であれば名誉を授けるに他ならぬ。

 無理に笑わなくとも良い、胸を張らずとも良い。だが、その時の己を卑下する事は許さぬからな。

 ……すまぬ、話が逸れた」

 

 >そういって彼女は机の上に広げてあるローマ市内の地図を指さした。

 

「あれから追撃が無い事を考えると、あやつの魔力供給に異常が生じた可能性が高いだろう。

 平原など一時もあれば瞬く間に詰めてくる。あの戦車はそれだけの脅威だったのだから」

「……聖杯を所有しているであろうサーヴァントですし、魔力に関する面は考えにくいかと。

 恐らく戦車自体に何か異常が生じたのでは……」

「なるほど、ならば破壊されたと見るべきだろう。あそこで彼らを逃す理由など一つも無い。寧ろ復讐の機会を邪魔されたのだ。手心を加える理由は無いと思うが」

「――であるのなら、やはりこの地を以て決着とするしかあるまいな」

 

 >そういってネロはもう一度ローマ市内を記した地図を指で示した。

 

 ファッ!?

 

「――大胆な賭けに出たな、皇帝閣下は」

「で、ですがネロ皇帝! このローマは貴方にとって……」

「あぁ、そうさな。余にとってこの都市は唯一無二の黄金であり、この命と並ぶ程に価値を持つ輝きである」

「ならばどうして……」

「――あやつはローマの一面しか知らぬ。侵略者と言う顔、武器を持ち矛を交え血を流す一面しか。

 だがそれはローマの一つのカタチに過ぎん。ただ攻めて滅ぼすだけが国では無い。

 伝えてやらねばならぬ、示してやらねばならぬ、其方達を討ったこのローマにも、彼の国のように穏やかな時があるのだと。

 でなければ、余は神祖に向ける顔が無い」

 

 >それは彼女の中に生じた責任。ブリタニアと言う国を利用し、滅ぼし、貪りつくした事に関しての贖罪。

  頭を下げるのではなく、命を絶つのではなく。その犠牲に報いるために、先の平穏を作っていくコト。

  彼の女王が矛先を向けるべきローマは、もうどこにも無い。

 

「ラクシュミー、其方に兵の全指揮権を委ねる。ブーディカも全力で兵を召喚してくるであろう」

「……承知した、最善を尽くそう」

「カルデアの者達よ、既に市民達へはこの件を伝えている。滅ぼされてはいるが、まだかろうじてカタチを留めている街が残っている。そこへの護衛を頼む」

 

 ならば誰が向かう。道中に来るは間違いなく獣。しかし何らかの奇襲が無いとは言い切れない。

 不測の事態にも対応でき、尚且つ護衛が終わった直後すぐにローマ市へ引き返せる速さを持ったモノ。

 

「――適任がオレしかいねぇな、そいつは。マスター、やばいと思ったらすぐに令呪を使え。即座に駆け付けてやる」

 

 立香は小さく頷いた。

 

「ローマは終わらぬ。王とは、各々の形があるのだろうが、余にとっての王とは受け継がれ託していく者。例え三度落陽を迎えようとも、再び絢爛に舞い戻ろう。再び散ろうとも、再び息吹き、花を咲かせる蕾のように。

 それこそがローマ。そして今のローマを統べる者は、皇帝ネロ・クラウディウスたる余以外にはおらぬ」

 

 ……こんなシーンありましたっけ。

 まぁ、特異点その物の前提が違いますからね……。

 

「もう何度口にしたかは分からん。けれど、恐らくこれが最後であろう。

 どうか力を貸して欲しい、カルデアのマスター達よ。恐らく此度が最後の戦いとなる。

 ――行くぞ」

 

 おっ、もう行動開始のようです。

 ホモ君は準備してからすぐに行動に移りましょう。

 次が特異点最終節ですね!

 

 

 

 

 奇妙な事にローマ市を護る兵はいなかった。

 破壊された戦車は使用不可能。けれど待っている時間は無い。

 故に踏み込む。故に戦う。兵士を召喚し、街中へと向かわせる。それはさながら陸地へ押し寄せる嵐のように。

 何が叫んでいる。何かが引き留めている。もうこれ以上続ける必要は無いと。

 けれど、だと言うのなら彼らのあの無念はどこへ行けばいいと言うのか。もうどこにも彼らの声は届かない。彼らの思いは残らない。

 だから私がやるしかない。私が、その代行者になるしかない。

 

「来たか」

「……!」

 

 いた。かの皇帝とカルデアのマスター達。

 剣を握り直す。盾を持つ。もう戦車こそ無いが、それでも戦う。

 

「――私はお前達を討つ! 我が故郷を踏み躙り、我が娘を屈辱したお前達を許しはしない!

 永続に狂気が渦巻く帝国なぞ、ここで終わらせてやる!!」

「――来い、ブリタニア女王ブーディカよ! 余はローマ皇帝、薔薇の皇帝ネロ・クラウディウスである!!」

 

 

 

 






『罅割れたペンダント』

 第二特異点の平原に落ちていたペンダント。戦火に晒されたのか、煤けており罅割れている。戦いへ赴く者が抱えた平穏の証なのだろうか。触ると仄かに温かく、微かに冷たい。
 額に当てると、穏やかに過ごす四人の家族の風景が見えてくる。

 どうか穏やかにあれ、健やかにあれ。貴方達の未来に幸せが満ちますように。


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