ヒーリングっど♥プリキュア 〜プリキュアとドクターライダーズ〜 (鈴闇)
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第1話 遭遇

はじめまして。新参者の鈴闇と申します。基本的に厨二脳です
好きな作品を組み合わせたクロスオーバー物の作品をこれから書いていこうと思います。
記念すべき1作目は令和初のプリキュアであるヒーリングっどプリキュアと仮面ライダーエグゼイドのクロスオーバー作品となっております。
連載予定ですが具体的に何話書くかなどは未定です。
できるだけ原作の雰囲気を壊さないよう小説を書くことを心がけているので、プリキュアも仮面ライダーもどちらも好きな方にぜひ読んでいただきたいです。
筆足らずで拙い文章があるかもしれませんが、何卒よろしくお願いいたします。
それでは作品の方をお楽しみください


私、花寺のどか!少し前にすこやか市に引っ越してきていろんな事を経験したの!待ち望んでいた学校に通ったり、ちゆちゃんやひなたちゃんみたいな友達ができたり……

中でも1番驚いたのは喋るウサギさんことラビリンと出会って地球をお手当てするプリキュア、キュアグレースになったこと!

 

今まで誰かに守ってもらってた私が、今度は誰かを守って助ける番!今日もみんなと一緒に地球を狙うビョーゲンスに立ち向かって…るんだけどぉ…

 

???「フハハハハハ!そのようなしょっぱい攻撃でやられる私ではないわ!」

 

私たちの攻撃が全然通じないビョーゲンズ(?)が現れて大ピンチなの!

 

グレース「くっ…… やあっ!」

フォンテーヌ「はあっ!」

スパークル「えーいっ!」

 

3人のプリキュアが同時に攻撃を放つ

だが…

 

???「そんな攻撃が通じるか!今度はこちらの攻撃を喰らえ!」

 

謎の怪人はヒラリと身を翻し、それぞれの攻撃をいなしてゆく

そしてお返しと言わんばかりに反撃する

 

プリキュア「「「きゃあああ!!!」」」

 

電撃を伴う怪人の攻撃がプリキュアを襲う

怪人を浄化するため様々な手段を試みていたプリキュア達だったが、どれも不発に終わってしまっていた

 

スパークル「どうなってんのぉ!?なんでアタシ達の攻撃が効かないワケ!?」

ニャトラン「こうなったら、一か八かニャ!」

 

ペギタン「ちゆ!ひなたと一緒に隙を作るペェ!」

フォンテーヌ「分かったわ!スパークル!」

 

スパークル「オッケー!頼んだよ、グレース!」

 

グレース「う、うん!」

ラビリン「タイミングを合わせるラビ!」

 

スパークル「えぇーい!」

フォンテーヌ「やぁぁっ!」

バシイッ!ズドッ!キュイン!

 

???「ぬうぅ…」

2人は全力を振り絞り、目の前の怪人に肉薄し攻撃を仕掛ける。ヒーリングステッキから繰り出されるビームや全力の近接攻撃に、怪人は怯んだ

 

ラビリン「今ラビ!」

グレース「うん!」キュアッ!

グレース・ラビリン「「キュアスキャン!!」」

 

そこに間髪入れずキュアグレースが浄化技を放つための準備技を発動させる。キュアスキャンとはメガビョーゲンの体内にとらわれているエレメントさんと呼ばれる精霊の位置を特定することができる技だ。本来であればすぐに囚われている精霊を発見できるのだが…

 

グレース「な、なんで…?エレメントさんが見つからない…!?」

 

怪人の体からは精霊を発見することは出来なかった。

 

スパークル「うぇぇ!?ウソでしょ!」

フォンテーヌ「エレメントさんが見つけられないと浄化することが出来ないわ…」

 

プリキュアに動揺が走る。その隙を怪人は見逃さなかった

 

???「よくわからんが、スキだらけだ!最大パワーの攻撃をくらえ!」

バリバリバリバリバリ!

 

フォンテーヌ「しまっ…!」

 

バチィッ!バリバリバリバリバリバリ!

 

プリキュア「「「きゃあああああああ!!!」」」

 

怪人の電撃攻撃がプリキュアに直撃する。まともに攻撃を受けてしまった3人は変身解除まで追い込まれてしまった。

 

ちゆ「う、うぅ…」

ひなた「これ、めっちゃピンチなやつ…?」

のどか「ま、まだ……」グググ‥

 

ラビリン「」

ペギタン「」

ニャトラン「」

 

ちゆとひなたより少し離れた位置にいたのどかは2人よりダメージが少なく済んでいたのかなんとか立ち上がろうとする。しかしプリキュアへの変身にはパートナーであるヒーリングアニマルの協力が必要不可欠だが、先程の攻撃は体の小さいヒーリングアニマル達を気絶させるのには十分な威力だったようだ。

 

のどか「そんな…」

 

???「はっはっはぁ!ようやく静かになったか。お前たちもこれで終わりだ!」

バチバチ

 

怪人がトドメを刺そうと左腕の発電器官を地面に叩きつけ、ダメ押しの電撃を喰らわせようと動く。のどかはその瞬間ぐっと目を閉じ衝撃に耐えようと身構えた。

 

ガキィン!

 

???「ぬうっ!?」

 

だが、待っていたのは電撃による衝撃ではなく、怪人の動揺した声であった。のどかは恐る恐る目を開けると、自分たちを守るかのように立つ仮面の戦士が怪人の手を阻んでいた。

 

???「そこまでだソルティ!ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!」

ソルティ「貴様は…!」

 

仮面の戦士は怪人のことをソルティと呼んだ。それが怪人の名前なのだろう。それは同時にソルティがビョーゲンズでは無いという確証ともなる。

 

ちゆ「あの人は…」

ひなた「プリキュア…じゃないよね…?」

のどか「仮面…ライダー…」

 

気絶したパートナーを抱えた2人が困惑する中、のどかはその言葉をポツリと零した。

 

ひなた「かめんらいだー?」

ちゆ「知ってるの?のどか?」

のどか「う、ううん。私もよく知らないんだけど、ただその言葉をどこかで聞いたことがあるような…」

 

3人の疑問を他所に、ソルティと仮面ライダーはジリジリと間合いを詰める。

 

仮面ライダー「でも…なぜここにバグスターが…?今はほとんど沈静化してるはずじゃ…」

ソルティ「フッ!その様子だと我々が復活したことは想定外のようだなぁ!」バッ!

 

先に均衡を破ったのはソルティだった。マントを翻し、左腕の『ソルティナックル』を振りかざし肉薄する。仮面ライダーはそれを右腕でいなし、カウンター気味に左パンチを繰り出した。

 

ソルティ「ぐおっ!」

仮面ライダー「ともかく、今はバグスターを倒さないと!」

 

カウンターが炸裂し、大きく体制を崩したソルティに仮面ライダーが追撃する。反撃をいなしながら逆に連続攻撃を叩き込み、ハイキックを繰り出す。ボディを捉えたキックの威力でソルティは後方に大きく飛ばされた。

 

ひなた「なにアレ!め〜っちゃ強いじゃん!」

ちゆ「すごい…」

 

仮面ライダー「フィニッシュは必殺技で決まりだ!」

\ガッシュ-ン/

仮面ライダー「フッ」スチャッ

\ガシャット!キメワザ!/

 

ベルトからアイテムを引き抜き、腰に装着しているスロットへ装填する。雷撃のようなエフェクトが仮面ライダーの右足に集中し、必殺技のチャージが行われる。

 

仮面ライダー「行くぜ!」カチッ

 

チャージを終えた仮面ライダーはスロットのボタンをもう一度押し、必殺技を発動させた。

 

\ MIGHTY /

\CRITICAL STRIKE!/

仮面ライダー「ハァーーーーッ!」

 

空中に飛び上がり強力なキックを放つ。猛攻により短時間でダメージを負ったソルティに回避する術はなく、とっさにガードするも威力を受けきることは出来なかった。

 

\会心の一発ゥ!/

 

ソルティ「ぐおおおおおお!!!」

ドォオオオオオン!

 

必殺キックを受けたソルティはその場に倒れ込み、激しい爆発と共に消滅した。

 

\GAME CLEAR/

 

仮面ライダー「よしっ!後は早く患者さんの所へ行かないと…!」ダッ

ひなた「あっ、ちょっ、ちょっとぉ!」

 

怪人を倒したと思えばすぐに走り出した仮面ライダーをひなたは慌てて止めようとしたが、あっという間にどこかへ行ってしまった。

 

ひなた「行っちゃったぁ…」

ちゆ「私たちがあんなに苦戦した相手を簡単に…」

のどか「あの人は一体誰なんだろう…」

 

「う〜ん…」

 

すると気絶していたヒーリングアニマルたちがようやく目を覚ました。

 

のどか「ラビリン!よかったぁ…」

ラビリン「はっ!のどか!怪人はどこいったラビ!?」

 

ちゆ「落ち着いて、怪人はもういないわ。」

ニャトラン「いないって?逃げられちまったのか?」

 

ペギタン「もしかしてプリキュアにならずに倒しちゃったペェ!?」

ひなた「ううん、それがね」

 

3人はパートナーが気絶している間のことを話した。しかしながら3匹のヒーリングアニマル達も仮面ライダーについて全く知らなかったため、その日は解散し戦闘でのダメージを癒すことにした。

 

ーーーその晩、花寺家

 

のどか「ふうっ」

 

帰宅し、夕食などを一通り終え、ベッドに座り一息ついたのどかは今日の出来事を思い出していた。

 

のどか「考えてみれば、ラテの具合も悪くならなかったもんね。」

ラテ「わふ?」

 

ラテはヒーリングガーデンと呼ばれるこの世界のどこかにある場所の王女様だ。ラテは地球の生命力と自身をリンクしているため、地球を病気にしてしまうビョーゲンズが現れるとたちまち体調を崩してしまう。しかしながら今回はそのような症状が現れることは無かった。

 

ラビリン「けど仕方ないラビ。いきなり怪人が目の前に出てきて暴れだしたら放っておけないラビ。」

のどか「でも、一体なんだったんだろうね?あの怪人…また出てきたりするのかな…」

ラビリン「のどか…」

ラテ「………わふっ」ピョン

のどか「わ、わ!」

 

不安げな表情を浮かべるのどかの膝にラテが飛び乗る。のどかはラテが落ちないよう慌ててラテの体を支えた。

 

ラテ「くぅん」スリスリ

のどか「ラテ…元気づけてくれてるの?」

ラテ「わん!」

のどか「ふふふっ、ありがとう。」ナデナデ

ラテ「わふん」

のどか「そうだね。いつまでも沈んじゃられないよ!また明日から頑張ろう!」グッ

ラビリン「その意気ラビ!」

 

のどかは気持ちを切り替え、明日に向けての決意を新たに眠りについた。

 

ーーー同時刻、すこやか市 ハート型展望台

 

???「………」カチッ

\MIGHTY ACTION!X!/



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第2話 再会

お待たせしました。第2話です。
文才があると言える立場では無いので、所々違和感があるかもしれませんが、ゆっくりお楽しみいただけたら幸いです。


???「あぁ…」

 

その青年ー宝生永夢ーは休暇ですこやか市を訪れていた。目的は当然自身のリフレッシュである。というのも永夢はとある病院で小児科医を受け持っているのだが私生活はゲームに没頭するいわゆる『ゲーマー』であり、度重なるゲームによる睡眠不足と疲労が溜まり、更には小児科医としての責務がのしかかるなど、様々な要因が重なってしまったため、遂に永夢は貯まっていた有給を使い身体を休めることを決意した。そのために「癒しと健康」が評判となっているすこやか市に足を伸ばしたのである。

すこやか市に到着した途端に現れたバグスターのオペで体に鞭を打ったが、2日目となる本日は平和に過ごしている。

 

カポ-ン…

永夢「やっぱり…温泉って最高だ…」

 

永夢は宿泊している温泉宿「沢泉」自慢の温泉に浸かり、英気を養っていた。時間は白昼、正に悠々自適な休暇である。なお前日は先の戦闘のこともあり、宿に着くなり泥のように眠りについたため温泉に入るのは今日が初となる。

 

永夢「たまにはこうしてゆっくりするのも悪くないなぁ」ザパッ

 

温泉から上がった永夢は浴衣に着替え、部屋へ向かう。荷物を置き持ってきたカバンに手を伸ばす。そしておもむろに取り出したのは…

 

永夢「よ〜し!今日はソルティ伯爵をノーダメージ縛りでクリアするぞ!」

 

ゲームソフト、マイティアクションXが挿入された携帯ゲーム機だった。

 

永夢「毎日のようにパラドのゲーム相手になるのは流石に応えたなぁ…たまにはのんびりゲームするのも大事だよね。」

 

実際、仕事を終え帰宅した永夢を待ち受けるのはフカフカのベッドではなく、対戦相手の帰還を待ち望む永夢の相棒パラドであった。パラドはバグスターと呼ばれる『ゲーム病』から生まれた存在であり、そのためかゲームを愛してやまない。たまに永夢の所属する病院に着いて行きCRのメンバーと遊んでいたりするが、1番の対戦相手である永夢にひっきりなしに勝負を挑んでいた。

それが原因で今回の永夢の慰安旅行の際は留守番とCRへの協力が永夢から命じられていた。

本人曰く「心が踊らない…」だそうだ

 

永夢「まぁパラドにはたまにお灸を据えてもバチは当たらないよね。」ポチポチ

そんな訳で宝生永夢は自分のペースで、のんびりゲームに勤しんでいた。

 

ーーー6時間後

永夢「よし!これでゲームクリアだ!」

\コンコン/

ちゆ「失礼致します。お客様、お食事の用意が出来ました。お運びしてもよろしいでしょうか?」

永夢「もうそんな時間か…ハイ!お願いします!」

ちゆ「かしこまりました。」

 

ゲームに没頭する事6時間、目標のソルティノーダメージどころかラスボスまでノーダメージでクリアした永夢は伸びを1つした。すると部屋の扉がノックされ、中居の格好をしたお手伝い姿の沢泉ちゆが夕食を運び入れた。

 

永夢「あれ…?」

ちゆ「?どうかなさいましたか?」

永夢「いえ、どこかで会ったような気がしたんですが…気のせいかな…?」

ちゆ「いえ…申し訳ございませんが私に覚えは…」

永夢「あぁっ、ごめんなさい!変なこと聞いて…」

ちゆ「いえいえ、それでは失礼致します。どうぞごゆっくり。」

 

永夢の妙な既視感があったが、すぐさま興味は目の前の豪華な料理に注がれた。

 

永夢「すごく美味しそう…(ゴクリ)いただきまーす!」

 

すこやか市の海と山の幸をふんだんに使った料理の数々。サクサクの衣に包まれた山菜や海老の天ぷら、新鮮な海の幸を使ったお造り、牛肉やキノコなど大地の恵みがたっぷり入った鍋と言った料理が永夢の心と体を満たす。味も最高だったため、あっという間に食べ終えてしまった。

 

永夢「ご馳走様でした。なんだか久しぶりにご飯を食べたって感じがするなぁ。パラドとゲームしてる間はカ○リーメ○トとかウイ○ーとかで栄養だけ摂取してただけだったから尚更か…」

 

食べ終えた永夢は満足気な表情を浮かべたが、すぐにその表情が引き締まる

 

永夢「それにしても…なんでソルティがいきなり現れたんだろう…?確かライダークロニクルの時にクロノスに消滅させられたはずだったんだけど…」

 

先の戦いでの記憶を思い出し、今回のバグスター事件について思案する永夢。有給休暇で遠出しているとはいえ、念の為変身アイテムである『ゲーマドライバー』と『マイティアクションXガシャット』は持ってきている。本来なら沈静化しつつあるはずのバグスターであればLv2でも充分だが、この街で活発に活動しだしたと仮定するなら心許ないレベルの装備となる。

 

永夢「とりあえずCRに報告は入れておいたけどどうなるかはバグスターの動き次第かぁ…」

 

物思いにふけっていると不意に扉がノックされた

 

\コンコン/

永夢「はーい。」

ちゆ「失礼致します。お食事はお済みになりましたか?宜しければ食後のお茶を淹れさせていただきますが、いかがいたしましょうか。」

永夢「あっ、ありがとうございます。じゃあいただきます。」

ちゆ「かしこまりました。」ニコッ

 

ちゆはテキパキと後片付けをしながら永夢に話しかけた。

 

ちゆ「当旅館はいかがでしょうか?お気に召して頂けていたら幸いですが。」

永夢「温泉もご飯もとっても良かったです。普段の生活ではなかなか味わえないものだなって。」

ちゆ「ふふっ、ありがとうございます。」

 

スマホ「ピロロロロロ…アイガッタビリ-♪」(着メロ)

 

そんな話をしていると永夢のスマートフォンに着信が入った。

 

永夢「あ、電話だ。誰からだろう?」

ちゆ「では、ゆっくりとおくつろぎ下さい。」

 

スマホ「アロワナノ-♪」(着メロ)

 

永夢「ハイ!お気遣いありがとうございます。」

ちゆ「失礼致します。」パタン

 

永夢のスマートフォンへの着信により、会話と片付けを終えたちゆは電話の邪魔にならないよう部屋を後にする。

 

永夢「誰からだろ?あ、貴利矢さんからだ。」

スマホ「ワイワイw」ピッ

永夢「もしもし?貴利矢さんですか?」

貴利矢『よぉ〜永夢。どうだ?ひさびさの休暇は?』

 

電話をかけてきた主は永夢の仲間である九条貴利矢からだった。先の戦いで貴利矢は1度ゲームオーバーになり命を落としてしまった。しかしバグスターとして復活することで再び永夢の仲間としてCRで活動している。本職は監察医だ。

 

永夢「久しぶりに羽を伸ばせてるって感じですね。CRは問題ないですか?パラドが迷惑かけて無ければいいんですけど。」

貴利矢『あ〜パラドならポッピーを巻き込んでドレミファビートの筐体に入って音ゲー勝負してるぜ?かれこれ3時間くらいか?ここで永夢に差をつけてやるー!とか言って。』

\ピプペポパニックダヨ-!/

永夢「パラド…」

 

どうやらパラドは対戦相手を切り替えてゲームに勤しんでいるらしい。しかも自分への再戦のための練習代わりに。

 

永夢「これは戻ったらまた勝負の毎日かなぁ…」

貴利矢『ハハッ、そうだろうな。ところで…』

 

急に貴利矢の声色が変わる。普段はおちゃらけた軽い口調だが何かあった時の話は真剣そのものだ。

 

永夢「どうかしたんですか?」

貴利矢『前日に永夢が遭遇したソルティだが、ありゃマジで復活したみたいだな。確か我々がどうとか言ってたんだろ?』

永夢「ハイ。確かに我々が復活したのを知らないのだな!と。」

貴利矢『どんだけのバグスターが本格的に復活したのかまでは分からないが…1つ、気になることがある。』

永夢「?」

貴利矢『昨日転送してきたエグゼイドの戦闘データなんだが、それに映るソルティに微弱ながらゲムデウスウイルスの反応が見られた。』

永夢「ゲムデウス……!?」

 

永夢は目を見張った。ゲムデウスはライダークロニクルのラスボスであり、最強のバグスターウイルスとして存在する。しかしながら、このゲムデウスバグスターも先の戦いで消滅したはずの存在である。

 

永夢「それで!今ゲムデウスはどうなってるんですか!?」

貴利矢『落ち着け永夢、あくまでも反応があるってだけだ。俺とポッピー、パラドで電脳世界に潜ってみたがその中でも特に痕跡はなかった。』

永夢「それって…」

貴利矢『ああ、コイツはゲムデウスそのものと言うよりはただの残骸って見方が正しいだろうな。当然完全に放置はできねえが、早急に手を要するもんでもねぇ。安心して休暇を楽しむといいっしょ。』

永夢「…貴利矢さんがそう言うなら…。こっちでまた何あったら連絡します。」

貴利矢『おっけ〜。んじゃまた何か分かったら連絡する。じゃあな。』

永夢「はい!ありがとうございます!」ピッ

 

色々と衝撃な内容ではあったが、貴利矢の言うことにとりあえず間違いはないだろうと判断した永夢はゲムデウスのことを頭に留めつつ、干したてであろうフカフカの布団で今日の活動を終えた。

 

ーーービョーゲンキングダム

 

シンドイーネ「キングビョーゲン様?そのウイルスは一体…

?」

ダルイゼン「ナノビョーゲンとは違うみたいだけど?」

キングビョーゲン『人間界からコの地に流れ着いタ物だ…このウイルスを上手く使うことが出来れバ我の体ヲすぐに取り戻せるやもシれぬ…』

 

プリキュアと敵対する勢力、ビョーゲンズの本拠地『ビョーゲンキングダム』で幹部のダルイゼン、シンドイーネ、グアイワルの3人の前で首領であるキングビョーゲンが告げた。その眼前にはビョーゲンキングダムには存在しないとあるウイルスの残骸が集まっていた。

 

シンドイーネ「まぁ!」

グアイワル「それが本当なら忌まわしきプリキュアも太刀打ちできまい。遂に地球がキングビョーゲン様のものになる日も近いか…」

ダルイゼン「そんなに上手いこといけば苦労しないんだけどね…」

キングビョーゲン『このウイルスに我ヲ構成するナノビョーゲンを注ぎ、我の肉体として誕生させル…。ゆけい!ナノビョーゲンよ!』

\バサバサバサバサ/

 

ウイルスの残骸にナノビョーゲンが群がり、身体を構築して行く。そうして4人の前に誕生した肉体は、幹部たちと同じような等身の怪人の姿であった。

 

ゲムデウス「………………」

 

ーーー朝

チュンチュン

永夢「ふぁぁ…」

 

小鳥のさえずりと共に目を覚ました宝生永夢は朝食を終えた後せっかくだからと散歩をしていた。昨晩はぐっすり寝付けた為、疲れは取れているがそれでもあくびは出る。

 

永夢「気持ちいい朝だなぁ。」

 

などと言う感想を思いながら街を歩く。豊かな緑、目の前に広がる海、そして今日は晴れ晴れとした快晴となっている。永夢は爽快感と言うものをこれでもかと味わっていた。そんな街の風景が油断を誘ったのだろう。曲がり角に差し掛かる直前に再度あくびをした永夢に衝撃が走った。

 

ドンッ

永夢「うわっ!」ドタッ

???「いたぁっ!」ドタッ

 

どうやら別方向から来た人とぶつかってしまったらしい。永夢の方が派手に転んだところを見ると相手はどうやら走っていたようだ。

 

ひなた「うわぁ〜!めっちゃごめんなさいっ!大丈夫ですか!?怪我してませんか!?アタシ時計見ながら走っちゃってて!」

永夢「う、うん。こっちこそごめんね。よそ見しちゃってたから…」

ひなた「めっちゃいい人!しかもカッコイイ!」

 

互いに不備があったと認め謝罪しつつ、永夢は立ち上がりぶつかった相手、平光ひなたに向き直る。

 

永夢「………」

ひなた「?あのー?お兄さん?」

永夢「あ、ごめんね。なんかまたどこかで会ったことあるような気がした子だったから…」

ひなた「また?」

永夢「多分気の所為だから気にしないで。僕旅行でこの街に来てるんだ。だから見覚えある人はいないと思うし。」

ひなた「お兄さん旅行で来てるんだ!今度ウチのジュース飲みに来て!今日のお詫びにご馳走するし!って…もうこんな時間!さっきのは本当にごめんなさいっ!じゃあ!」ダッ

永夢「あっ…」

 

何か予定があるのだろう。永夢は改めて謝罪を述べ脱兎のごとく駆け出したひなたを見送った。

 

永夢「お店の名前、聞けなかったなぁ…」

 

とつぶやく永夢であった。

 

ーーー

 

散歩を終え1度宿に戻り、お昼時まで再びゲームをプレイした後、再び永夢は外を歩いていた。目的は先程ひなたに紹介されたジュース他観光である。

 

永夢「確かに凄い温泉の数だなぁ。旅館も沢山あるし。」モグモグ

 

道中で購入した温泉饅頭を食べながらすこやか市の街並みを見物する。足湯に浸かったり、芳香剤として用いられるハーブを眺めたりと、普段の生活では味わえない世界を満喫していた。ただ、朝方の女の子が勧めるジュースというのがどれかまでは分からなかった。

その後永夢はバスと電車を乗り継ぎ、隣町の商業施設『ゆめポート』を訪れた。ここでの目的は仲間へのお土産選びだ。

 

永夢「これなんかパラドにどうだろう?あっ、こっちのサングラスは貴利矢さんに似合いそう。飛彩さんにはやっぱり甘いものかな?大我さんは…」

 

それぞれの人柄に合わせた土産を物色し、永夢は次にアクセサリーショップに向かった。ここでは女性陣への土産物を選ぶのだが、男性である永夢1人だけだと如何せん浮いてしまうのは仕方がない。

 

永夢「ポッピーやニコちゃんってどんなのが好きなんだろ…?ポッピーは何となくイメージつくけど。」

 

様々なアクセサリーが並ぶ未知の世界にしどろもどろな永夢。一刻も早く場を離れたいというような感情はなかったが、それでも男一匹のこの状態でこの場に留まり続けていると考えると徐々に気恥ずかしさが出てきた。

 

永夢「う〜ん…悩めば悩むほど分からなくなってきた…」

 

渡す相手が笑顔になれるようなものを選ぼうとはしているが、ゲーム以上の選択肢の多さに流石の天才ゲーマーも頭を悩ませていた。するとそこに

 

ひなた「あーっ!朝のカッコイイおにーさん!」

 

朝に聞いた覚えのある活発な声が背後から響いてきた。永夢が振り返ると正に朝出会った少女とその友人がこちらに向かってきていた。

 

ちゆ「ひなた、いきなり大声出したら他の人たちが驚いちゃうわ。」

ひなた「あぁっ、ごめんちゆちー、アタシったらつい。」

 

突然大きな声を上げてしまった友人をクールに諭した少女にも見覚えがある。

 

永夢「あれ?君は確か中居さんの…?」

ちゆ「あら?うちに宿泊していただいてるお客様ですか?」

ひなた「なになにー?2人とも知り合い?」

ちゆ「ええ、うちの温泉宿に宿泊していただいてるお客様よ。昨日お手伝いでお夕食をお出ししたの。」

 

事情を知らないひなたにちゆが説明する。

 

ひなた「なっるほど〜!そういうことなんだ!」

永夢「2人は友達なんだね。僕は宝生永夢。今は休暇ですこやか市に旅行に来てるんだ。」

ちゆ「沢泉ちゆです。改めましてよろしくお願いいたします。」

永夢「硬くならなくて大丈夫だよ?普段通りにするのが楽だからね。」

ひなた「そーだよちゆちー!あ、アタシは平光ひなただよ!よろしく!」

永夢「よろしくね、ちゆちゃん、ひなたちゃん。」

ちゆ・ひなた「「よろしく!(お願いします)」」

 

のどか「ちゆちゃーん、ひなたちゃーん遅くなってごめんねー。」

 

自己紹介を終えた3人の元に、もう1人少女たちの友人がやってきた。

 

ひなた「あ、のどかっちー!こっちこっちー!」

ちゆ「目的のものは買えた?」

のどか「うん!無くなる直前で何とか買えたよ!…ってあれ?」

ひなた「あぁ!そうそう!のどかっち、こちら…」

永夢「のどかちゃん?」

 

ひなたの紹介を遮ってしまったが、永夢の口から零れたのはまだ自己紹介はしていない少女の名前だった。だが、それは相手の少女も同じだったようだ。

 

のどか「永夢…先生…?」

永夢「やっぱり…花寺のどかちゃん!?」

のどか「やっぱり…宝生永夢先生ー!?」

 

お互いが相手のことを確実に認識する。2人の意外な展開に置いてけぼりなちゆとひなたは唖然としている。

 

ひなた「ええええ!?2人とも知り合いだったのー!?」

ちゆ「世界って…狭いわね…」

 

もっともな意見を述べる2人。

 

のどか「永夢先生は私が入院生活をしてた時に私を診てくれたお医者さんなの。」

永夢「あの時はまだ研修生だったから直接的に治療したわけじゃないんだけどね。」

のどか「それでも、永夢先生はずっと私とお話してくれたの。諦めちゃダメだって、いつかきっと身体が良くなって笑顔になれる日が来るって。永夢先生や治療してくれた先生がいたから、私は今こんなに元気になってるんだよ。」

ちゆ「のどか…」グスッ

ひなた「のどかっちぃ…」ウルウル

 

のどかと永夢の関係に驚いていた2人は話を聞いて涙ぐんでいた。

 

永夢「のどかちゃん。さっき2人に話しかけていた時の笑顔は紛れもなく、『健康の証』だよ。辛いこともあったと思うけど、よく頑張ったね。素敵な友達もできたみたいだし。」

のどか「はいっ!ちゆちゃんにもひなたちゃんにも出会えて今私、すっごく生きてるって感じがします!」

ちゆ「のどか!」ギュッ

ひなた「のどかっち!」ギュッ

のどか「ええっ!2人とも!?永夢先生の前だよ〜!」

ちゆ「私たちも」

ひなた「のどかっちと会えて良かったとめ〜っちゃ思ってる!」

のどか「ちゆちゃん…ひなたちゃん…」ギュウ

 

のどかに感謝を述べられた2人は思わずのどかを抱きしめ、同じように感謝を伝える。最初は驚いたのどかだが、2人の気持ちが伝えられると、ありがとうの言葉と共に優しく抱きしめ返した。

 

のどか「…………ハッ!と、ととところで!えむせんせーはどうしてゆめポートに!?」

 

若干夢見心地だったが、微笑ましく3人を見ていた永夢に気づいたのどかは慌てて永夢に話を振る。

 

永夢「あはは、それはね…」

 

永夢は先程ちゆとひなたに話した内容を説明する。

 

のどか「つまりお休みを取ってちゆちゃんの所の温泉宿に泊まっていて、今は病院の皆さんにお土産を選んでいるって事ですね!」

永夢「そういうこと!」

ひなた「でも、おにーさんアクセサリーショップ初めてなんじゃない?なんかめっちゃ悩んでるっぽかったし。」

永夢「うっ…」

ちゆ「そうね。ひなたが声をかけるまでは頭を抱えているように見えましたが…?」

永夢「ソウデスネ…」

ひなた「急にカタコト!?」

 

永夢は悩みの種を3人に打ち明ける。お土産を渡す相手の特徴、性格などを大まかに伝え、その相手に合ったお土産を選ぶうちに混乱してきていたのだと。

 

のどか「それなら!私たちと一緒に選びませんか!?」

 

のどかが提案する。

 

ひなた「のどかっちそれ名案!プレゼント選び、アタシたちに任せてよ!ね!ちゆちー?」

 

ひなたももはや決まりだと言わんばかりに賛成する。

 

ちゆ「そうね、私たちもアクセサリー選びに来たとこでしたし、良ければご一緒しましょう。」

永夢「いいの?」

3人「「「もちろん!」」」

 

ちゆも賛同しここに1つのパーティが誕生した。

 

ひなた「そうと決まれば!早速めっちゃカワイイアクセサリーを選びに行こー!」

3人「「おー!」」「お、おー…!」

 

ちゆは若干恥ずかしそうだが、それでも皆の掛け声に合わせてくれた。

 

ひなた「あーっ!これもいいんじゃない!?あ!こっちはニャトランに合いそうー!」

ちゆ「私的には…これも。ふふっ、ペギタンに似合うかしら?」

のどか「ふわぁ〜すごい沢山!、ええっと、これはラテに、こっちがラビリンに…。あっ!永夢先生ー!こっちにもかわいいのがありますよー!」

永夢「みんな凄い元気だ…それに次々にオススメのアクセサリーを勧めてくれる。ちゃんと自分たちの分選べてるのかな?」

 

矢継ぎ早に進められるアクセサリーに目を通し、少々くたびれた様子の永夢に対し、3人は元気にアクセサリーを品定めしていた。永夢自身まだ若い部類だが、今をときめく中学生には適わないようだ。

 

永夢「みんなありがとう!お陰で決めることが出来たよ!」

のどか「どういたしまして!」

ひなた「これは喜ばれること間違いなしだよー!」

ちゆ「この後はどうなさいます?」

 

30分後、ようやく渡すものを購入し、店を後にした4人はとりあえずモール内を歩いていた。永夢の用事は全て済んだが、プレゼント選びに協力してもらってそのまま解散。と言うのも大人としてどうかと思った永夢は小休止することを提案した。

 

永夢「みんな、今日はありがとう。本当に助かったよ。」

ちゆ「いえ、こちらこそお茶をご馳走して頂いてありがとうございます。」

ひなた「めっちゃ太っ腹だよね〜!ありがとうおにーさん!」

のどか「ふわぁ〜このドーナツ、真ん中が星型だよ!」

 

飲み物を買って小休止という永夢の提案だったため、飲み物とお菓子代は永夢が持つことにした。今日のお礼も込めているため、永夢としては当然である。

 

ひなた「それ知ってる!スタードーナツだよね!?今め〜っちゃ流行ってるやつ!」

ちゆ「そうね、ゆめポートにも出張店舗がオープンして人気になってるわ。」

のどか「なんだか宇宙でも流行りそうな味だよ〜」

ひなた「宇宙人っているのかな!?」

ちゆ「ふふっ、どうでしょうね。」

 

会話を弾ませる3人とそれをまた微笑ましく見ながら飲み物を飲む永夢。穏やかなひと時だが、それは嵐の前の静けさだった。

 

のどか「ケホッ…」

ちゆ「のどか?大丈夫?」

のどか「う、うん、ちょっと疲れちゃったみたい…」ケホコホ

ひなた「大丈夫のどかっち!?横になる!?」

のどか「あ…りがとうひな…たちゃん…でも、だいじょうぶ…だから…」ケホッケホッ

ひなた「全然大丈夫じゃないし!」

ちゆ「先生!のどかを診て貰えませんか!?」

 

急に体調を崩した友人を心配し、医者である永夢に助けを求める。当然永夢はそれに応じ応急で診察を行う。

 

永夢「疲労による発熱…?前の病気が再発した?………いや…これは…!?」

 

熱を測り、容態を見る永夢は何かに気づいたようにカバンから聴診器アイテム『ゲームスコープ』を取りだし、のどかに向け起動する。そこに映し出されていたのは…

 

永夢「ソルティの…ゲーム病…!?」

 

人間がバグスターウイルスに感染したことを示す、ゲーム病の反応であった。それもつい先日倒したばかりのソルティのゲーム病だ。

 

ちゆ「ゲーム病…!?」

ひなた「なにそれ!?」

永夢「新種のコンピュータウイルスが人間に感染することで発症する病気だよ…早く治療しないと…!」

 

その時だった。

 

のどか「はぁ…はぁ…」ザザッ

ちゆ「!?今、身体が一瞬…!」

永夢「マズイ!?もう発症するのか!?みんな!1度離れて!」バッ

ちゆ「きゃ!」ドサッ

ひなた「うわっ!」ドテッ

 

発症の兆候を察知した永夢が2人をのどかから引き離す。その瞬間、のどかの身体からウイルスが溢れ出した。

 

のどか「きゃぁぁあああああ!」ブワアアアアア

ソルティ「ウォォ…」

 

ちゆ「あれは…!」

ひなた「こないだの怪人!?」

 

のどかの身体から分離したウイルスはバグスター、ソルティ伯爵を形成していく。しかしその姿は所々に白色化が見られ、以前の姿とは異なっていた。更に患者であるのどかから分離し、実態化したソルティはところ構わず暴れだした。そしてあっという間にゆめポートは悲鳴に包まれた。

 

ソルティ「オオオオオオオオ!」

ドォン!

ガラガラガラ!

 

壁の一部や備え付けのベンチが音を立てて崩れる。

 

「か、怪人が出たァァァ!」

「逃げなきゃ!早く逃げろぉ!」

 

一瞬にしてモール内はパニックに陥る。辺りは逃げ惑う人々で溢れかえった。

 

ひなた「ゆめポートが滅茶苦茶に…!」

ちゆ「のどか!大丈夫!?」

 

あちこちで瓦礫の山を作り出すソルティの隙を見て、2人はのどかに駆け寄る。そしてのどかをソルティから遠ざけるように移動させた。

 

ソルティ「ウゥ…オォ、ショッパイぞぉ…!」

永夢「なんだ…様子がおかしい…?」

 

いつもなら軽快な口調でこちらに敵対するソルティだが、何故か口数が少なく、と言うよりは何かに取り憑かれているようであった。

 

永夢「もしかして…」ピッ

 

何かを感じとった永夢はゲームスコープを人間ではなくバグスターであるソルティへ向ける。そこにはなんとあのゲムデウスのウイルス反応が出ていた。

 

永夢「貴利矢さんの言ってた、ゲムデウスウイルスの反応って言うのは…!」

 

永夢は確信する。

 

永夢「まさか…バグスターにゲムデウスウイルスが感染してる…!?けど、その力を制御できてないのか!?」

のどか「うっ…うう…」ザザザッ

ひなた「のどかっち!?コレ…どういうこと…!?なんでのどかっちの身体が透けてるの…!?」

ちゆ「私たち…今日はペギタンたちにサプライズする為にここに来てるからプリキュアにもなれない…」

のどか「ちゆ…ちゃん…ひなた…ちゃん…永夢…先…生…」

ちゆ・ひなた「「のどか(っち)!」」

 

元々身体が強くなかったためか、喋ることもままならないのどかはちゆとひなた、2人の腕の中で精一杯3人の名前を呼んだ。

 

のどか「わた…しね、病気が治ってからすこやか市に来てすっごく楽しかった…みんなと出会えて…いっぱい色んなことして…生きてるって感じがしてた……でも、また…戻っちゃうのかな…?」ポロッ

 

のどか「また…病気になって…ずっと病院のベッドで過ごしていくのかな…?」ポロポロ

 

のどか「嫌だよ…せっかくみんなと仲良くなれたのに…まだまだやりたいこと…沢山…あるのに…ヒック…うぅぅ!」ボロボロ

 

消え入りそうな声で想いを口にするのどか。その目からは大粒の涙が零れ落ちる。友人が苦しんでいるのに何も出来ない自分たちに歯噛みしながら、2人は永夢の方に振り返る。

 

ちゆ「先生!どうにかならないんですか!?」ポロポロ

ひなた「お願い!のどかっちを治してあげて!」ボロボロ

 

涙しながら2人は医者である永夢に助けを求める。その永夢の目にはドクターとしての覚悟が既に宿っていた。

 

永夢「僕はドクターだ…。そして、目の前に助けを求める患者がいる。」

 

永夢「だったら…患者を救うのが、僕の役目だ!」スチャッ

カシュッ!バシュウゥ!ガチャン!

 

永夢はカバンから変身ベルト『ゲーマドライバー』を取りだし装着する。そして右手にはネオンピンクの変身アイテム『マイティアクションXガシャット』が握られている。元々はただのゲームであるが、永夢や他のドクターが持つガシャットは変身能力が備わっている特別製だ。永夢はガシャットを起動させた。

 

カチッ

\『マイティアクション!エーックス!』/

 

永夢がガシャットを起動すると、永夢の背後にタイトル画面が現れ、専用のゲームエリアが展開される。チョコレートを模したブロックがいくつも出現した。

 

永夢「のどかちゃんの運命は…俺が変える!」ブワッ

 

永夢「変身!」スチャッ

 

\ガシャット!/

\レッツゲ-ム! メッチャゲ-ム! ムッチャゲ-ム! ワッチャネ-ム!?/

\アイムア カメンライダ-/

バシュゥゥゥゥン!

 

ガシャットを差し込むとキャラクター選択画面のようなセレクターが発生、永夢はそのうちの1つ、エグゼイドのパネルを選択し、変身する。永夢はバグスターから人々を守るため、『仮面ライダーエグゼイド』となってバグスターと戦うドクターであるのだ。

 

エグゼイド「大変身!」

 

\ガッチャ-ン!レベルア-ップ!/

\MIGHTY JUMP! MIGHTY KICK!MIGHTY MIGHTY ACTION!X!/

 

エグゼイド「ハッ!」

 

ゲーマドライバーのレバーを開き、強化形態のアクションゲーマーLv2へとレベルアップする。ずんぐりとしたボディを脱ぎ捨て、スラッとした等身大の姿へと変わることで変身を完了させる。しかし、のどかたち3人がその姿を見るのは初めてではなかった。

 

ちゆ「あの姿は…」

ひなた「前に助けてくれた…」

のどか「永夢先…生…」

 

エグゼイド「ノーコンテニューで、クリアしてやるぜ!ハアッ!」

ソルティ「グ…ガ…グ…」

 

決めゼリフを放ったエグゼイドは速攻で間合いを詰める。様子がおかしいソルティはエグゼイドを捉え、向き直った。

 

エグゼイド「はあっ!」ビッ!

ソルティ「…………」ガシッ!

エグゼイド「なっ!?うわあっ!」

ドカァ!

ちゆ「先生!」

ひなた「なんかこないだの奴よりめっちゃ強くなってない!?」

 

間合いを詰めたエグゼイドは先制パンチを繰り出したが、あっさりと受け止められてしまい、そのまま投げ飛ばされてしまった。

 

ガラガラ!

エグゼイド「クソッ!ゲムデウスの力で無理やりレベルアップしているのか!」

ソルティ「オオォ!」

 

起き上がったエグゼイドはゲーマーとしての観点から前日に対峙したソルティと、眼前のソルティはレベルが変化した別物の強さであると見抜いた。

 

エグゼイド「レベルアップにはレベルアップで対抗するのが定石だけど…」チラッ

ホルダー「」カラッポ

 

エグゼイドは最初に刺したガシャットで変身し、その後もう1つのスロットに別のガシャットを刺すことでレベルアップし、自身を強化することが出来る。だが、元々休暇で訪れていた永夢の手元にあるガシャットは応急手当用のマイティアクションXのみであった。

 

エグゼイド「さしずめ今のソルティはレベル20ってとこか…」

 

レベル2のエグゼイドとレベル20のソルティバグスター。単純に10倍のレベル差があるため、与えるダメージと受けるダメージに大きく差が開いてしまう。実際、さっきの攻撃でエグゼイドの胸にあるゲージは半分近くまで減っていた。

 

ソルティ「ウオオオオオ!」ダッ

 

エグゼイドにトドメを刺すべく、今度はソルティが肉薄する。

攻撃次第ではあるが、次の攻撃がエグゼイドにとって致命傷にもなりかねない。

 

エグゼイド「なら!レベル差はプレイングとアイテム、それに武器で埋めてやる!」バッ

 

バシュウウウウウウ、ジャキン!

\ガシャコン、ブレイカー!/

 

エグゼイド「よっしゃ!」

 

エグゼイドが手をかざすとハンマーを模した専用武器『ガシャコンブレイカー』が出現する。武器を手にしたエグゼイドは突っ込んでくるソルティを躱し、その周りを飛び跳ねるように翻弄していく。躱しては叩き、躱しては叩きを繰り返しながら、ソルティの攻撃には注意を払う。

 

ソルティ「ウ…オノレェェェ!」バリッ

 

エグゼイドの攻撃に業を煮やしたソルティは左腕のソルティナックルにエネルギーを溜め始めた。広範囲に電撃を流してエグゼイドを止めるつもりだろう。しかし、エグゼイドはその動きを見切っていた。

 

エグゼイド「させるか!」ドカッ

 

すかさず周囲のチョコブロックを叩く。その中からゲームエリア専用アイテムである『エナジーアイテム』が出現した。

 

エグゼイド「よっしゃあ!アイテムゲット!」

\高速化!/

エグゼイド「いくぜ!ハアッ!」

 

ゲットしたアイテムはその名の通り高速移動を可能とするエナジーアイテム『高速化』である。さっきまではジャンプの高低でソルティを翻弄していたが、高速移動が可能となった今は目にも止まらぬ速さでソルティを追い詰める。

 

ソルティ「ウヌゥ…!」

 

チャージした電撃攻撃を放つのは簡単だが、いくら広範囲といえども限度があるため、技を撃っても高速で動くエグゼイドには命中しないと考えたソルティは電撃を直接与えようと手当り次第にエグゼイドを攻撃し始めた。しかしどの攻撃もエグゼイドを捉えることは出来ない。

 

エグゼイド「ここだ!」ダッ

ソルティ「ヌゥオ!」

フッ

ソルティ「ナニ…!?」

 

ソルティの背後を突いたエグゼイドに反応し、振り返るソルティだが、そこにエグゼイドの姿はなかった。慌てて周囲に目を配る。

 

エグゼイド「吹っ飛べ!」ドカァン!

 

周りの空間が突然眼下へ広がった。そこでようやく、エグゼイドは身を屈め、自分を下から思い切り殴りつけたのだと分かった。

 

エグゼイド「もう一丁!」ドカン!

\ジャンプ強化!/

エグゼイド「よし、これで!」ポチッ

\ジャッキ-ン!/

 

エグゼイドは再びチョコブロックを叩き、中からエナジーアイテム『ジャンプ強化』を取得する。更に、ガシャコンブレイカーのボタンを押し、ハンマーモードからブレードモードへと変形させる。

 

エグゼイド「はぁぁぁぁぁ…」ググッ

ソルティ「ウオオオオ…!」(落下中)

エグゼイド「いくぜ!」ダンッ!

 

ジャンプ強化のアイテムの力で、ブレードを構えながら高く飛び上がったエグゼイドは、そのままの勢いを利用してソルティの胴体にブレードを一閃させる。ソルティ自身も落下していたため、大ダメージを与えた。

 

エグゼイド「ハァーーッ!」

ズバアッ!

ソルティ「ウヌオオオオオ!」ドカァン!

 

追い打ち攻撃をまともに喰らい、ソルティは体制を崩しながら広場に落下した。

 

スタッ

エグゼイド「どうだ!?」

 

着地したエグゼイドが手応えを確認すると、ソルティはよろめきながら立ち上がろうとしていた。そしてソルティはゲームに基づいたキャラクターとは思えぬ叫びを上げ、またも建物や広場へ無作為に攻撃を始めた。

 

ソルティ「グオオオオオオオオ!ガァァァァァァォァッ!」

バリッ!ガキィン!ガラガラガラ!

 

暴走気味のソルティの無差別攻撃は以前のどかたちが写真を撮ったフォトスタジオにも向けられた。それを見たのどかは目を見張った。

 

のどか「だ…め、、そこだけは…やめ…て…」

ちゆ「あそこは…」

ひなた「前にアタシたちで写真撮ってもらったとこ!?」

のどか「わたしの…大切な…思い出…の…場所…なの….。やめて…こわ…さないで…」ケホケホ

 

その言葉を聞いたエグゼイドはのどかのストレスの原因に気づく。

 

エグゼイド「そうか…のどかちゃんはやっと普通の生活に戻れたんだ…。友達ができて、その友達とたくさんの日々を過ごす。それはのどかちゃんにとってかけがえのないものなんだ。その思い出の場所を奪われたら…」

 

バグスターは感染している人間のストレスが許容を超え、存在を奪っていく。そうして完全体となっていくのだ。暴走してもバグスターの本能として宿主の記憶を得ているのだろうか。

 

エグゼイド「うぉお!」ズバッ!

ソルティ「グ…ウッ!」ガクッ

 

直前でソルティの攻撃を防ぎ、ブレードで押し返す。ソルティはこれまで受けたダメージにより膝を着いた。ソルティを阻んだエグゼイドはフォトスタジオを背に叫んだ。

 

エグゼイド「ソルティ!お前を攻略する!」ガシッ

\ガッシュ-ン/

 

ベルトからガシャットを引き抜き、手に持っているガシャコンブレイカーのスロットに装填する。

 

\ガシャット!キメワザ!/

以前に放ったキックと同じエフェクトが、ガシャコンブレイカーの刀身に集まる。充分に溜めを作り、必殺技を放つ。

 

エグゼイド「ハッ!」カチッ

\MIGHTY CRITICAL FINISH!/

 

ガシャコンブレイカーのトリガーを引き、ソルティに目掛け目にも止まらぬ早さで斬撃を繰り出す。

 

エグゼイド「ハッ!ハアッ!ハァァッー!」

スババババババババ!

 

\会心の1発ゥ!/

 

トドメの一太刀を打ち込むと、ソルティは体から火花を散らし、倒れ込むように膝から崩れ落ちた。そしてそのまま大爆発を起こす。

 

ソルティ「グゥオオオオオオーーーッ!」

ドォォォォォォォン!

 

\GAME CLEARー!/

 

ーーーその後

目を開くと、眼に沢山の涙を浮かべて私の名前を呼ぶ大切な友達の姿があった。

 

ちゆ「のどか!」

ひなた「のどかっち!」

のどか「ちゆちゃん…ひなたちゃん…」

ピピピ…ピッ

永夢「もう大丈夫だよ、のどかちゃん。ゲーム病は治療できたよ。」

 

ゲームスコープをかざし、病状を確認した永夢が告げる。

 

のどか「永夢…先生。ありがとうございます。」

ちゆ「私からも…先生、大切な友達を救ってくださって本当にありがとうございます!」ペコッ

ひなた「アタシもアタシも!どんどんのどかっちが透けてくからホントに怖かったよ〜!うわーん!」

 

安堵したのか、遂にわんわん泣き出してしまったひなたをちゆが慰めらゆめポートでの騒動は収まったが、永夢はこれで終わりではないと思いつつも、今は患者の完治を喜んだ。

 

のどか「うん!みんな、ありがとう!私今、すっごくす〜っごく、生きてるって感じ!」

 

ーーーーーー

 

のどかの全快をみんなで喜びつつ帰路についていると、不意にひなたが疑問を投げ込む。

 

ひなた「それにしても、まさかおにーさんが変身してカッコよく戦うのめっちゃすごかったね!あのカッコなんて言うの!?」

永夢「あぁ、あれはね…」

のどか「あーっ!思い出した!」

ちゆ「どうしたののどか?なにか忘れ物?」

 

エグゼイドのことを説明しようとした永夢の言葉を、のどかの声がかき消した。

 

のどか「先生!先生が仮面ライダーだったの!?」

 

のどかの口から飛び出したのは以前にも漏らした一言だった。

 

ひなた「のどかっち分かるの!?」

のどか「私が入院してる頃、よく永夢先生がお話し相手になってくれてた時にね、たまに永夢先生に連絡が入ることがあって、その時に仮面ライダーって言葉が聞こえたの。それでその連絡があると永夢先生はまた今度お話しようって言ってどこかへ駆け出していくことが多かったから…」

ちゆ「それってつまり、さっきのゲーム病が前から存在したということよね?」

 

ちゆの指摘にのどかとひなたが頷き、永夢がそれに答える。

 

永夢「確かにゲーム病はもっと前から存在していたけど、あの時はまだ衛生省もゲーム病の全貌を発表してなかったから、みんなが知らなくても無理はないよ。それにまだ幼かったと思うし。」

 

そこまで話すと、ちょうど3人が別れる場所まで着いたようだ。ひなたは途中まで一緒だからとのどかを自宅まで送ると2人に言い、ちゆ、そして永夢と別れた。永夢はちゆの両親が経営する宿に宿泊しているため、帰り道はちゆと共に行く。

 

ちゆ「先生、今日は本当にありがとうございました。改めてお礼申し上げます。」

永夢「僕の仕事は患者の命を救うことだからね。当然のことをしたまでだよ。」

ちゆ「お医者さんとしての使命…」

 

永夢の心構えを聞いたちゆは何かを決意したように真っ直ぐな眼をしていた。その眼には覚悟の光が灯っていた。その間に、温泉宿沢泉に到着した。

 

永夢「あ、着いたね。今日はありがとう。バグスターのこともあったけど、すごく楽しい1日だったよ。」

ちゆ「こちらこそ、とても貴重な経験をしたと思います。今日もゆっくりしていって下さい。では。」ペコリ

 

永夢「ただいま戻りました。」

ちゆ「ただいま!」

 

永夢は宿泊している自室へ、ちゆは自分の部屋へそれぞれ戻っていった。

 

ーーー同時刻

 

ひなた「のどかっち、今日はホンットお疲れ様!めっちゃ大変な思いしたけどほんとにもう大丈夫?まだ痛いとこない?しんどくない?」

 

のどかを無事送り届けたひなたは帰る前にもう一度のどかの体調を気遣う。

 

のどか「ありがとう、ひなたちゃん。けど、私はもう大丈夫だよ。このとおり!」ピョンピョン

 

万全な状態であることを示すためその場で軽く飛び跳ねるのどか。それを見たひなたは安心した表情を浮かべる。

 

ひなた「よかった〜!じゃあアタシも家に帰るね!また何かあったらいつでも連絡して!じゃあ!」

のどか「ありがとう!気をつけてね〜!」

 

走り去るひなたが見えなくなるまで手を振って見送ったのどかは玄関の扉に手をかける。

 

のどか「ただいまっ!」

 

ーーー

 

ひなた「ほっほっほっ、アタシも早く帰ろっと。んぅ?」

 

自宅に向かうべく小走りで道を進んでいくと、正面から白衣を着た男がこちらに歩いてくるのが見えた。ちょうど永夢と同じくらいの背丈だったので、一瞬永夢に見えただけだったが、人違いだと気づいたひなたはそのまま男の横を走り去った。

 

ひなた「今日のご飯はなっにかな〜?たっだいまー!」

 

そしてひなたも無事家にたどり着いた。

 

こうして、4人の一日が終わった。

 

ーーー海岸

???「………」カチッ

\タドルクエスト!/

第2話 [完]

 

 

 

 

おまけ

ーーー別日の3人

のどか「ふわぁ〜みんなすっごく可愛いよ!」

ちゆ「ええ、とても似合ってるわ。」

ひなた「めっちゃ悩んだかいがあるってものだね!」

 

3人はパートナーのヒーリングアニマルとラテにそれぞれプレゼントを選び、手渡していた。

 

ラビリン「ラビリンたちにプレゼントを選んでくれたとはいえ、ラビリンたちを置いていくのは今後ぜ〜ったいにやめるラビ!でも、アクセサリーはありがとうラビ!」

ニャトラン「まぁそう硬いこというなよ。どうだ?オレサマイケてる?」

ペギタン「ちゆ、ありがとうペェ!ぼく、ずっと大事にするペェ!」

 

3匹のヒーリングアニマルはとても満足そうにアクセサリーを身につける。

 

のどか「ラテには…はいっ!ティアラ型のアクセサリー!」

ラテ「わふぅ〜!」キラキラ

 

ティアラ型アクセサリーを被ったラテは目を輝かせて喜びを表した。

 

ひなた「今度はみんなでいこうね!」

ちゆ「ええ!ペギタンたちも一緒にね。」

ペギタン「ぼく達はあんまり目立っちゃいけないけど、もちろんだペェ!」

ニャトラン「ん〜別にバレても大したことなさそうだけどなぁ〜

ラビリン「絶対にダメラビーっ!」

のどか「あははは。そうだね、今度はみんな一緒に、たくさん思い出を作っていこう!」

全員「「「「「おーーー!」」」」」

ラテ「わんっ!」



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第3話 共闘

お待たせしました
第3話です。
コロナウイルスでの外出自粛要請中の中、少しでも楽しんでいただけたらと思います。



???「お前たちの存在は、ノーサンキューだ。」

バグスター戦闘員「グゲーーーーッ!」

 

バグスター戦闘員を蹴散らしたのは、シアンをメインカラーとする鎧に身を包み、剣を一振携えた騎士をモチーフとする『仮面ライダーブレイブ』だ。

 

\ガッシュ-ン/

 

ブレイブはベルトに装填されているガシャットを引き抜き、変身を解除する。変身者は『鏡飛彩』。宝生永夢と同じ聖都大学附属病院に務める天才外科医である。

 

飛彩「片付いたな…ん?」

スマホ「prrrrrr♪」

飛彩「親父からか。」ピッ

 

通信機能を備えたゲームスコープではなく、飛彩のスマホに直接かけられた電話の相手は実の父であり、聖都大学附属病院の院長を務める『鏡灰馬』からであった。電話の内容を聞くと、飛彩は颯爽と身を翻しその場を後にした。

 

ーーー次の日のすこやか市

ひなた「おーにーいーさーんー!はーやーくー!」

永夢「待ってよ〜!というか、前見て歩かないと危ないよ!」

 

ひなたの明るい声が響き渡る。彼女におにいさんと呼ばれているのは休暇ですこやか市を訪れている宝生永夢である。永夢は昨日、ゲーム病に感染し、消滅の危機にあった花寺のどかを仮面ライダーに変身し治療したため、その友人の1人である平光ひなたから「友達の命を救ったお礼がしたい」と誘いを受けたのである。

 

のどか「それにしても、永夢先生が仮面ライダーだったなんてビックリしたよ〜」

ちゆ「そうね、私たち昨日も一昨日も助けられてるもの、お礼のひとつくらいは当然よね。」

 

もちろん、のどかともう1人の友人、沢泉ちゆも同行している。ちゆとひなたはのどかの大切な友達であり、2人ものどかのことを大切に思っている。そして、永夢には明かしていないが3人はプリキュアとして地球を守る戦いに身を投じている1面を持っている。

 

永夢「のどかちゃん。今日は体調に問題ない?昨日みたいな感覚がもしまたあったらすぐに言ってね。」

のどか「はい!バッチリ元気です!本当にありがとうございます!永夢先生!」

ちゆ「そういえばひなたは?」

永夢「あぁ…それが…」

 

永夢が目をやった先には頭を抑えてこちらへ歩いてくるひなたがいた

 

ひなた「うぅ〜…電柱に頭ぶつけたぁ〜…」

ちゆ「まったく…しっかり前を見て歩かないからよ。」

のどか「大丈夫?ひなたちゃん」

ラテ「わん!」

 

ひなたに駆け寄る2人と1匹。そしてのどかの提げているカバンの中の…

 

ニャトラン(inカバン)「大丈夫か〜?ひなた?」ゴニョゴニョ

ラビリン(inカバン)「あんまり動いちゃ駄目ラビ!のどかのお医者さんにバレるラビ…!」ゴニョゴニョ

ペギタン(inカバン)「ホコリがたっちゃうペェ…」ゴニョゴニョ

 

ヒーリングアニマルたちもひなたを心配し声をかける。ラビリンたちは空を飛んだり言葉を話すことが出来るが、プリキュアと自分たちのことは他人には秘密としている為、永夢にバレないようコッソリとのどか達に同行しているのだ。

 

永夢「あれ?なんだか今変な声が聞こえたような…?」

3人・3匹「!」ドキ-ン!

 

そんな努力を無慈悲に打ち砕くように、永夢はどこからが聞こえた声に疑問をもったようだ。

 

ひなた「そそそそそうかなー!?アタシは聞こえなかったけどなー!」

のどか「気のせいですよ!永夢先生!気のせい!」

永夢「そ、そう?」

ちゆ「そうです!」

ラテ「わふ」

 

3人が必死に誤魔化す中、、、

 

ペギタン(inカバン)「クシュン!」

3人・2匹「!!!!!」ビックゥ!

 

カバンの中に隠れているペギタンがホコリに鼻をくすぐられたか、小さくくしゃみをしてしまった。

 

永夢「…?今誰かくしゃみを…」

ひなた「は、はーくしょん!はくしょん!あー、花粉かなー?ちょっちくしゃみがー」

のどか「お花さんの季節だもんね!」

ちゆ「あ!そろそろ着くわよ!」

ひなた「んじゃー誰が1番に着くか勝負!」ダッ

のどか・ちゆ「おー!」ダッ

永夢「ええっ!?待って!待って!」

 

早口でまくし立て、目的地まで走り出す3人に慌ててついて行く永夢。程なくしてひなたの姉、平光めいが経営しているワゴン式カフェに到着した。

 

ひなた「とうちゃーく!」

永夢「ここは…カフェと…動物病院?」

ひなた「そ!正しくはアタシの実家なんだけどね!」

のどか「ひなたちゃんのお姉さんがお店開いてるんだよね〜」

ちゆ「今日は私たちがご馳走させていただきます。」

 

カフェの隣には動物病院があり、そちらはひなたの兄、平光ようたが獣医として務めている。店に到着した4人をめいは快く迎えた。

 

めい「いらっしゃいませ。ひなたからお話は聞かせてもらいました、ひなたの姉のめいです。ゆっくりしていって下さいね。」

永夢「ありがとうございます。」

ひなた「お姉ー!特製ジュース4つお願いー!」

めい「はいはい、少々お待ちをー」

 

妹からのオーダーを聞き、キッチンに向かうめいを別の方向から呼び止める声がした。

 

飛彩「すまない、ブラックコーヒーをひとつ。」

めい「ありがとうございます。少々お待ちください。」

永夢「あれ…今の声…」

 

永夢はその声に聞き覚えがあった。ワゴンの影に隠れて見えなかったがどうやら向かいにも席があるようだ。永夢は回り込み、先客の姿を見る。

 

永夢「飛彩さん!?」

飛彩「小児科医?なぜここにいる?」

永夢「僕は休暇で…飛彩さんはどうして?」

 

そこには、年齢こそ永夢と変わりはしないが永夢の先輩にあたる、鏡飛彩の姿があった。お互い、すこやか市に来ることなど伝えあってはいないため、顔を合わせたことに驚きの声を上げる。

 

飛彩「俺は出張だ。衛生省から依頼があってな。」

永夢「衛生省から…?」

 

衛生省は永夢らCRのドクターのバックアップなどを手がけており、そこの衛生大臣官房審議官を務める『日向恭太郎』から飛彩に向け今回の出張の依頼が来たようだ。スーツ姿も出張という飛彩の言葉を裏づけている。

 

ちゆ「先生のお知り合いですか?」

ひなた「この人も仮面ライダー???」

 

永夢が飛彩と話す姿を見て、ちゆとひなたが話しかける

 

飛彩「何?どういう事だ小児科医。」

永夢「実は…」

 

永夢は先日あった出来事を話した。バグスターがレベルアップして復活したこと、のどかの治療をしたこと、そのため少女達と行動を共にしていたということを順序だてて説明した。その後、3人に飛彩のことを説明した。

 

永夢「という訳なんです。」

飛彩「なるほど。話は分かった。」

ひなた「おにーさんの先輩で天才外科医だってー!めっちゃすごい人だね!」

ちゆ「そういえば、雑誌やテレビで聞いたことがあるわね。失敗しない外科医って呼ばれることもあるそうよ。」

のどか「ふわぁ〜、そんな人があの病院にいたなんて知らなかったよ!」

 

永夢「それにしても…」チラッ

 

ひととおり説明し終えた永夢は飛彩の座っている席のテーブルに目をやる。そこには数々の甘味が並べられていた。

 

永夢「なんですかこの甘いものの量…」

飛彩「長距離移動は疲労が溜まりやすいからな。疲労回復の為の糖分補給だ…。」

永夢「それでも多すぎるでしょう!?」

 

実際、テーブルは隙間がないくらいの甘味で埋め尽くされていた。ドーナツやバームクーヘン、アップルパイ。更にはカステラやごま団子と言った和洋中の菓子が勢ぞろいしている。効率良く疲労回復するための糖分補給とはいえ、普段の飛彩が摂取する倍の量は軽く超えている。

 

ちゆ「確かに…見てるだけで胸焼けしそうではあるわね…」

のどか「こ、これ、全部一人で食べるんですか?」

ひなた「というかフォークは分かるんだけどナイフが置いてあるのはなんで?」

 

のどかとひなたがもっともな疑問を投げかける。

 

永夢「飛彩さんはナイフとフォークを使って食べるのが普通なんだ。やっぱり、いくら飛彩さんでもこんな量一人で食べきれないでしょう?何があったんですか?」

飛彩「実はだな………」

 

ーーー回想

 

灰馬『遠方への出張は疲れが溜まるだろうからな。これを持っていくといい。』つバームクーヘン

ポッピー『飛彩〜!はいコレ!疲労回復の為の甘いもの!向こうで食べてね!』つドーナツ

みずき『先生、出張とお聞きしたのでこちらをお持ちしました。』つアップルパイ

さつき『長旅では知らずのうちに疲れが溜まってしまいますので、お持ちになってください。』つカステラ

貴利矢『ゴマは体にいいぜ〜』ニヤニヤ つごま団子

 

ーーー回想終了

 

飛彩「ということだ。ここは持ち込み可能ということなので休憩させてもらっている。」

永夢「それ、貴利矢さんは絶対面白がってますよ…。」

飛彩「とにかく、この量を一人で食べきるのは無理がある。日持ちはある程度するが…もし良ければ君たちも消費に協力してくれないか?」

 

1人では減らしきれない膨大な量の菓子。そこで飛彩は永夢と共に現れた3人の少女達に助けを求めた。

 

ひなた「いいの!?めっちゃラッキー!」

ちゆ「このままじゃダメになっちゃうものね、協力させていただきます。」

のどか「ふわぁ〜!ありがとうございます!」

 

甘いお菓子に目を輝かせる少女たちは思い思いに手を伸ばす。

ちょうどそこにドリンクを用意しためいがやってきた。

 

めい「お待たせしました。ブラックコーヒーです。それと、特製ジュースです。」

永夢「ありがとうございます。あっ、このジュースグミが入ってるんですね。」

ひなた「それアタシのアイデアなんだ〜!あ、次はドーナツ食ーべよ!」モグモグ

ちゆ「このカステラ、フワフワで美味しい…!」モグモグ

のどか「サクサクのパイに甘いリンゴ…はむっ……ふわぁ〜、とっても美味し〜い!」モグモグ

 

永夢たちのテーブルはちょっとしたお菓子パーティーだ。

 

飛彩「」スッ

ごま団子「スパッ」

 

ちゆ「一瞬でごま団子をナイフで4等分に!?」

ひなた「今のどうやったの!?」

のどか「すごい…!」

 

飛彩「俺に切れないものはない。」

 

ーーーテーブルの下

ラビリン「甘くて美味しいラビ…!」モグモグ

ペギタン「やっとカバンから出られたペェ…」モグモグ

ニャトラン「まぁいいじゃねーか、こうやってお菓子も食べれるんだし!」モグモグ

 

テーブルの上も下も含め、みんなでお菓子をつつく中永夢がふと思い出した。

 

永夢「そういえば出張って言ってましたけど、飛彩さんが呼ばれるくらい難しい手術があるんですか?」

 

そう、すこやか市を訪れた飛彩の目的である。飛彩はコーヒーを飲む手を止め、説明する。

 

飛彩「オペの依頼じゃない。この街に出現した怪物のことで衛生省から調査を頼まれた。怪物が出現した報告を受けてから出動するのでは衛生省の対応が間に合わないらしくてな。」

永夢「怪物…?バグスターじゃないんですか?」

飛彩「ああ。衛生省から預かった写真が1枚ある。まだ名称も決まってないらしいが…」スッ

 

そう言って飛彩はスーツのポケットから1枚の写真を取りだした。

 

永夢「これは…」

 

そこに写っていたのは周囲の木々よりも背丈が高く、赤黒い体躯を持つ怪物『メガビョーゲン』だった。

 

飛彩「その怪物は不定期に現れるのだが、いずれも職員が到着する頃には姿を消してしまっている。それに再び現れた時には姿形が変化しているとも聞き込みによる証言が出ているらしい。」

永夢「姿を変える能力があるのか…元から別の個体なのか…」

飛彩「それを調べるのが俺の仕事だ。」

 

と、ドクター2人が話していると

 

ひなた「あ、メガビョーゲンじゃん!」

ちゆ「!?」

のどか「あえ!?」

 

ふと写真を横目で見たひなたが反射的にその名を口にしてしまった。驚きの表情でひなたの方を向く。

 

永夢「ひなたちゃん、この怪物を知ってるの!?」

飛彩「メガビョーゲン…それがこの怪物の名前なのか…?」

 

当然その名前に食いついた2人に慌ててちゆとのどかが話を合わせる。

 

のどか「急に現れて街で暴れる怪物だよね!!!めがびょーげーーんっていつも言ってるからそういう名前になったのかな!」

ちゆ「そうね!いつのまにかいなくなってるから私たちも詳しいことは分からないです!」

永夢「そっか…でも、名前が分かっただけでも良しとしましょうか。」

飛彩「そうだな、調査するにしても情報が少ない。しばらくはこの辺を探索し土地柄を見ておこう。」

 

今後の方針を固め、飛彩はのどかたちの協力のおかげで残り僅かとなった甘味を食べ進めていく。一方その頃…

 

ーーービョーゲンキングダム

キングビョーゲン「我が仮初の肉体トなるボディは完成シた…後ハこの身体に力を注グのだ…」

ゲムデウス「……………」

 

ビョーゲンキングダムに流れ着いたバグスターウイルスを元に生成された最強のバグスター、ゲムデウス。その体をスペアの肉体とし、キングビョーゲンは自身の復活を目論んでいた。

 

シンドイーネ「かしこまりましたぁ!キングビョーゲン様!」

グアイワル「なら一丁、オレ様が出向いてやろう!」

シンドイーネ「ちょっとグアイワル!私が真っ先に行くって言ったでしょ!黙って見てなさいよ!」

グアイワル「そんなことは知らん!先に行ったもの勝ちだ!」

 

ダルイゼン「ギャーギャー言いあってるのを見てるのもダルいし…オレがさっさと終わらせてくるか…」シュン

 

どちらが人間界を蝕みに行くかで口論となっている2人を後目に、抜けがけのような形でダルイゼンが出撃する。残った2人がそのことに気づくのはもう少し後であった。

 

ーーーカフェ

 

のどか「ごちそうさまでしたー!」

ちゆ「しばらく甘いものは控えないとね。」

ひなた「糖分は当分いい?なんちゃって〜」

ちゆ「フフっ!ちょっ!ひなた!急にやめて!」

 

永夢「今のでウケるんだ…」

 

飛彩の持ち込んだ菓子は綺麗に無くなっていた。今はジュースや紅茶を嗜みながら小休止といった時間となっている。

 

飛彩「ふぅ……サンキューだ。君たちがいてくれて助かった。」

ちゆ「いえ、こちらこそごちそうさまでした。」

ひなた「うんうん!めっちゃおいしかったです!」

のどか「この後はどうするんですか?」

飛彩「ひとまず宿泊施設に荷物を預けに行く。その後はこの街を見て回る予定だ。…すまない、会計を頼む。」

めい「かしこまりました。」

 

出張とはいえ、今日すこやか市に到着したばかりの飛彩には土地勘がないため、まずは街を見ておくらしい。会計のために飛彩は席を立つ。

 

飛彩「コーヒー代と、彼女らのドリンク代もまとめて計算してくれ。」

めい「よろしいんですか?」

飛彩「ああ、持ち込ませてもらった菓子は彼女らがいたおかげで全て消費できた。その礼とさせてもらいたい。」

めい「ふふっ、わかりました。」

 

コーヒー代とのどかたちのジュース代を支払った飛彩は荷物をまとめる。

 

永夢「そういえば飛彩さん、宿泊施設って言ってましたけどどこに泊まるんですか?」

飛彩「沢泉という温泉宿だ。」

 

飛彩の答えはテーブルを囲んでいた4人にとって馴染みのある場所であった。4人は驚嘆の声を上げる。

 

ひなた「おにーさんと同じ所じゃん!」

飛彩「何?」

永夢「しかもそこは…」

のどか「ちゆちゃんの…」

ちゆ「実家ですね。」

 

どうやら飛彩も永夢と同じくしてちゆの実家が経営する温泉宿『沢泉』への宿泊を予定しているようだ。

 

ちゆ「よろしければ、私がご案内しましょうか?」

 

そこへ、ちゆが実家への案内を提案する。飛彩にとってはありがたい話だ。

 

飛彩「それはありがたいのだが、君たちは予定があるのではないのか?」

ひなた「確かに…今日はおにーさんへのお礼する日だし…」

永夢「ありがとう、ひなたちゃん。僕は大丈夫だよ。こんなに美味しいジュースをご馳走してもらったからね!」

 

たくさんお礼はしてもらったと永夢は伝える。その上で、ちゆに飛彩の案内を永夢からも頼んだ。

 

ちゆ「ありがとうございます、先生。では参りましょうか。」

飛彩「ああ、すまないがよろしく頼む。」

 

ちゆも自分のカバンを持ち、2人は沢泉に向けて歩き始める。ちゆのカバンの中にはヒーリングルームバッグが入れられており、ペギタンはその中に隠れている。

 

ーーー永夢・のどか・ひなたサイド

 

ひなた「それじゃーアタシたちもそろそろ行こっか!お姉ー!お会計お願いー!」

めい「ふふっ、もうひなた達の分のお代は頂いてるわよ。さっきのお医者様からね。」

永夢「飛彩さんが?」

のどか「ええっ!?私たちの分もですか?」

めい「ええ、お菓子を食べきってくれたことへのお礼ですって。サラッとそういうことが出来るのってカッコイイわよね。」

ひなた・のどか「「大人だぁ…」」

ラテ「わふぅ〜」アクビ

 

ーーー飛彩・ちゆサイド

 

ちゆ「こちらの丘を越えればもうすぐです。」

飛彩「ああ。」

 

よく晴れた昼下がりの空の下、2人は並んで沢泉へと向かう。

ちゆは飛彩のクールな振る舞いを見てあまり話に花を咲かせるタイプではないと判断し、最小限の会話で留めている。

そんな矢先、飛彩が口を開いた。

 

飛彩「いい街だな…ここは。この街では誰もが明るく笑っていた。それは身体だけでなく、心も健康な証だ。」

ちゆ「ええ、私もとても大好きな街です。みんなと一緒に過ごしていく1日1日が大切な思い出です。」

 

この街に来てから感じたことを飛彩は述べた。ちゆは自分の想いでそれに答える。

 

飛彩「だからこそ、俺はこの街で暴れ出す怪物を調べ、対策を打たなければならない。それが俺の仕事だからな。」

ちゆ「鏡先生…」

 

決意を新たに、飛彩は歩みを進める。すこやか市の人々に触れ、飛彩の心にはこの街を守りたいという強い思いが備わっていた。永夢がずっとそうしてきたように、飛彩もまたドクターとして人々の笑顔を守ろうとしている。

 

ちゆ「見えてきました。あれが当温泉旅館、沢泉になります。」

飛彩「立派な宿だな。これからしばらく世話になる。」

ちゆ「ええ、ご利用ありがとうございます。私は中居の手伝いもしてますので、何かわからないことがあったら聞いてくださいね。」

飛彩「ああ、サンキューだ。……む?」クンクン

ちゆ「あら?何かいい匂いがしますね。」クンクン

 

旅館に近づくにつれ何かが焼ける香りが漂う。近くで家族連れがバーベキューでもしているのだろう。時折子どものはしゃぐ声も聞こえてくる。

 

ちゆ「ふふふっ、とても楽しそうな雰囲気ですね。」

飛彩「ああ。」

 

その時だった。突如として木々が震え、鳥が一斉に羽ばたいた。

 

ちゆ「な、なに!?」バッ

飛彩「地震…!?いや、違う!」バッ

 

2人が振り返るとそこには…

 

メガビョーゲン「メガ!ビョーーゲーン!」

 

飛彩が衛生省から調査を依頼された対象である怪物、メガビョーゲンが前触れもなく出現していた。

 

ーーーほんの少し前、キャンプ場

 

父親「ほーら焼けたぞ〜!」

男の子「わーい!いただきまーす!あむっ!」

女の子「いただきまーす!はむ!」

子供「「おいしー!」」

母親「ふふ、美味しい?慌てなくても沢山あるからね。」

子供「「はーい!」」

 

沢泉からすぐの所にあるキャンプ場でバーベキューを嗜む家族がいた。火を起こし、肉や野菜を焼きながら家族団欒を楽しんでいる。そんな空間を面白く思わない影がひとつ。

 

ダルイゼン「なーんか生きてるって感じがするなぁ…オレたちビョーゲンズにとっては面白くないし、さっさと蝕んじゃおう」ファサ

 

ビョーゲンキングダムから出撃していたダルイゼンは髪を靡かせた。そこから紫色の球体にコウモリのような羽がついた生命体『ナノビョーゲン』が召喚される。

 

ダルイゼン「進化しろ、ナノビョーゲン。」

ナノビョーゲン「ナノー!」

エレメントさん「」

 

ナノビョーゲンは火を起こしている土台となっている石に寄生し、そこに宿る石のエレメントさんを瞬く間に蝕んでいく。そしてバーベキューセットを蹴散らしながらあっという間に巨大化し、メガビョーゲンへと変貌を遂げた。

 

メガビョーゲン「メガビョーゲン!」

 

進化したメガビョーゲンは赤黒い体躯に無骨な形をした手足を持っていた。その手足は石を模したような印象を受ける。更に胴体は巨大なバーベキューコンロのようなもので覆われている。周囲の物を取り込みながら進化した結果だろう。進化したメガビョーゲンは地球を蝕むため暴れだした。

 

メガビョーゲン「メガァ!」

 

父親「な、なんだコイツ!みんな、逃げろぉ!」

母親「こっちよ!早く!」

男の子「うわあああああ!」

女の子「あっ!」ドテッ

 

先程の家族もメガビョーゲンから逃げ出していたが、女の子が足を引っ掛けて転んでしまった。そこへ運悪くメガビョーゲンの攻撃が飛んでくる。

 

ちゆ「あぶない!」

 

駆けつけたちゆが間一髪で女の子を抱きかかえて攻撃を回避する。女の子がさっきまでいた場所は赤黒く蝕まれていた。

 

ちゆ「もう大丈夫よ、ここから早く逃げて。」

女の子「うん!お姉ちゃんありがとう!」

父親「ありがとうございます!さっ、行こう!」

 

女の子たち一家は父親に連れられ離れていく。あれなら巻き込まれる心配はないだろうとちゆはひとまず安堵する。

 

飛彩「大丈夫か!?」

 

遅れて飛彩が駆けつける。陸上部に所属しているだけあってちゆは飛彩より先に到着したのだ。

 

ちゆ「はい!それより、あの怪物を何とかしないと…!」

メガビョーゲン「メガビョーゲーン!」

 

そうしている間にもどんどん周囲を蝕んでいくメガビョーゲンの前に、飛彩が立ちはだかる。

 

飛彩「君も早く逃げるんだ。ヤツは俺が切除する。」スチャッ

ちゆ「は、はい!」

 

\タドルクエスト!/

 

ちゆが遠ざかるのを横目に飛彩はゲーマドライバーを装着しタドルクエストガシャットを起動する。ゲーム起動の音声とともに、ゲームエリアが展開される。タドルクエストは剣と魔法のファンタジーRPGゲームであるため、アイテムボックスは宝箱となっている。

 

飛彩「術式レベル2、変身!」

\ガシャット!/

\ガッチャ-ン!レベルアップ!/

\タドルメグル、タドルメグル、タドルクエスト〜♪/

 

ガシャットをゲーマドライバーに装填し、レバーを開いて一気にクエストゲーマーレベル2へ変身。ブレイブは専用武器『ガシャコンソード』を携えその切先をメガビョーゲンへと向ける。

 

ブレイブ「お前の存在はノーサンキューだ。はあっ!」

メガビョーゲン「メガッ!?」

ダルイゼン「何あれ?」

 

見慣れない相手に首を傾げているダルイゼンには気づかず、ブレイブは一気にメガビョーゲンへ接近し、ガシャコンソードによる斬撃を繰り出した。メガビョーゲンはそのスピードに驚いたのか反射的に手でガードした。

 

ガキィン!

ブレイブ「何っ!?」

 

ガシャコンソードの一撃は咄嗟に出された石の腕で弾かれてしまった。見た目にはただの石に見えるが、とてつもない硬度を有しているようだ。

 

ブレイブ「くっ、弾かれる……ならば!」

 

弾かれてしまうならとブレイブはさらに深く踏み込み、メガビョーゲンの胴体を狙った。だが…

 

メガビョーゲン「メガビョーゲーン!」

ブレイブ「ぐあっ!」

 

メガビョーゲンの胴体部分のバーベキューコンロから光線が発射された。攻撃モーションに入っていたブレイブは回避できず、光線を喰らってしまった。

 

ブレイブ「この程度…!」

 

ちゆ「鏡先生!」

ペギタン「ちゆ!僕達も変身してお手当てするペェ!」

 

飛彩がいた手前、少し離れていたちゆは木々に身を隠しながら戦闘の様子を伺っていた。メガビョーゲンが現れ地球を蝕んでいるということは、のどかたちと一緒にいるラテの具合が悪くなってしまっているはずだ。一刻も早くメガビョーゲンを浄化しなければ、ラテの命に関わる。

 

ちゆ「ええ、いきましょう。ペギタン!」

ペギタン「ペェ!」

 

ペギタン「スタート!」

ちゆ「プリキュア!オペレーション!」

 

掛け声と同時にヒーリングステッキが召喚され、ちゆはステッキに水のエレメントボトルを装填する。

 

ペギタン「エレメントレベル!上昇ペェ!」

ちゆ・ペギタン「「キュアタッチ!」」

\キュッ!/

 

ヒーリングステッキの肉球をタッチし、ステッキを掲げると白衣が出現した。その白衣を纏い、水色を基調としたコスチュームへと変化させる。髪も伸び、水色へと色が変わっていきハートや雫の形をしたシンボルが散りばめられる。

 

\キュッ!/

フォンテーヌ・ペギタン「「交わるふたつの流れ!」」

フォンテーヌ「キュアフォンテーヌ!」

ペギタン「ペェ!」

 

ブレイブに気づかれることなく無事に変身を終えたフォンテーヌはブレイブの元へ駆け寄る。

 

ブレイブ「少女…!?何をしている!ここは危険だ!」

フォンテーヌ「大丈夫です。私も戦います!それが私の使命だから!」

ブレイブ「使命…?」

フォンテーヌ「はあーっ!」

 

ステッキからビームを放ち、メガビョーゲンを牽制しながら隙を伺う。縦横無尽に周囲を飛びまわるフォンテーヌにメガビョーゲンは困惑していた。

 

ブレイブ「仕方ない…ならば、こちらは足元から切り崩す!」

\コ・チ-ン!/

 

ブレイブはフォンテーヌがメガビョーゲンの意識を空中に向けていることを悟り、ガシャコンソードのAボタンを叩いて刀身のモードチェンジを行う。モードチェンジ前は燃えるような赤い色の炎剣モードだったが、モードチェンジ後の刀身は凍てつくような薄い青色の氷剣モードとなる。

 

ブレイブ「はあっ!」ヒュオッ

 

ブレイブは氷剣モードに変化したガシャコンソードを振るい、メガビョーゲンの足元を凍結させる。

 

メガビョーゲン「メガッ!?メ、メガーッ!」

 

フォンテーヌに気を取られ、氷に足を取られたメガビョーゲンは滑って大きく転倒した。

 

フォンテーヌ「もらったぁ!」

ブレイブ「!?…待て!」

メガビョーゲン「メガビョーゲン!」カッ

 

仰向けに転倒したメガビョーゲンに追撃を仕掛けたフォンテーヌだったが、メガビョーゲンは胴体から先程と同じ光線を放った。回避が間に合わないと判断したペギタンが咄嗟にシールドを展開しダメージを抑える。

 

フォンテーヌ「きゃああっ!」

ダルイゼン「なーんだ、プリキュアも1人だけじゃん。これなら楽勝だね。」

 

後方に大きく吹き飛ばされるフォンテーヌを嘲笑するかのようにダルイゼンが呟く。フォンテーヌはアイテムボックスとして配置された宝箱にぶつかり、その場に倒れ込んだ。

 

ブレイブ「くっ…大丈夫か!?」

フォンテーヌ「う、うう…。あ、あら?」

ブレイブ「何…?ダメージはなかったのか?」

 

フォンテーヌを気遣い駆け寄ってきたブレイブの前で、フォンテーヌは一瞬苦しげな表情を見せたが、直ぐにその表情が和らいだ。その時、困惑するブレイブとフォンテーヌの背後から聞きなれた声が響いた。

 

永夢「『回復』のエナジーアイテムを取ったみたいですね。多分さっきの宝箱から出たんでしょう。」

ブレイブ「小児科医…!」

永夢「遅れてすいません。ここからは僕も戦います!」

 

永夢によると飛彩達と別れ街並みを見ながら散歩していると、突然爆発音が聞こえたという。おそらく、ブレイブが受けた光線だろう。フォンテーヌが『回復』のエナジーアイテムをたまたまゲットしたため、ダメージが回復したのだと説明した永夢は仮面ライダーへと変身する。

 

永夢「大変身!」

\MIGHTY MIGHTY ACTION!X!/

 

エグゼイド「よっしゃ!ノーコンテニューで、クリアしてやるぜ!」

 

エグゼイドへ変身した永夢はブレイブと並び立ち、メガビョーゲンへ向き合う。

 

ブレイブ「小児科医、ここからはチーム医療だ。お前はそのガシャットしか持っていないのだろう?」

エグゼイド「分かりました!お願いします!」

 

\ドラゴナイト!ハンター!Z!/

 

フォンテーヌ「あれは…ドラゴン…?」

 

ブレイブが『ドラゴナイトハンターZ』のガシャットを起動させる。ガシャットは起動と同時にゲームエリアとドラゴンを模したゲーマ『ハンターゲーマ』を召喚する。更に、ガシャットが2つに増え、エグゼイドとブレイブの手元へと舞い降りる。

 

\ファング!/ \ブレ-ド!/

 

2人のライダーはもう一度ガシャットのボタンを押し、モード選択を行う。そしてレバーを閉じ、ベルトの空きスロットへとガシャットを装填する。

 

エグゼイド「大・大・大・大・大変身!」

ブレイブ「術式レベル5!」

 

\ガッチャ-ン!レベルアップ!/

\ド・ド・ドラゴ!ナ・ナ・ナ・ナーイト!ドラ!ドラ!ドラゴナイトハンター!エグゼイド!ブレイブ!/

 

エグゼイドは頭部と胸部へ、ブレイブは右腕にそれぞれゲーマを纏う。1つのゲームを複数人で共有するのがドラゴナイトハンターZガシャットの最大の特徴となっている。

 

エグゼイド「行くぜ!」

ブレイブ「はあっ!」

メガビョーゲン「メガビョーゲーン!」

 

2人のライダーがメガビョーゲンへと立ち向かう中、フォンテーヌの元へのどかとひなたが駆けつけた。のどかの手の中には具合が悪くなっているラテが抱かれている。

 

フォンテーヌ「のどか!ひなた!」

ひなた「遅れてごめん〜!アタシたちも変身するよ!」

ニャトラン「やっと出番だぜ!」

ラビリン「その前に隠れるラビ!」

のどか「ラテ、もう少し我慢してね…すぐにお手当てするから!」

 

永夢と飛彩にバレないよう、木陰に移動してプリキュアへと変身する。手順はフォンテーヌの時と同様だ。

 

ラビリン「ここなら大丈夫ラビ!」

ラビリン・ニャトラン「「スタート!」」

のどか・ひなた「「プリキュア!オペレーション!」」

ラビリン「エレメントレベル、」

ニャトラン「上昇ニャ!」

 

のどか・ラビリン「「キュアタッチ!」」

ひなた・ニャトラン「「キュアタッチ!」」

\キュアッ!/ \キュン!/

 

グレース・ラビリン「「重なるふたつの花!」」

グレース「キュアグレース!」

ラビリン「ラビ!」

 

スパークル・ニャトラン「「溶け合うふたつの光!」」

スパークル「キュアスパークル!」

ニャトラン「ニャ!」

 

コスチュームを纏い、高らかに名乗りを上げた2人はフォンテーヌと共にメガビョーゲンへ対峙する。

 

ダルイゼン「なーんだ、結局全員集合じゃん。よくわかんないのももう一人増えたし…」

 

エグゼイド「えぇ!飛彩さん!彼女たちは!?」

ブレイブ「俺に聞くな!だが、ヤツと戦える力はあるらしい。」

スパークル「アタシたちも戦うよ!」

グレース「エレメントさんを救い出さなきゃ!」

エグゼイド「エレメントさん…!?というか、君たちは…!?」

 

プリキュアは仮面ライダーの2人に敵怪人の能力や目的を伝えた。自然の事象に宿る妖精のエレメントさんがいること、エレメントさんを助け出さないとメガビョーゲンを浄化できないこと、メガビョーゲンの目的が地球の侵略ということなど、知っていることは一通り共有した。当然、正体については伏せたままだ。

 

ブレイブ「なるほど、それなら俺達はサポートに回る。」

エグゼイド「そうですね、僕達の攻撃ではそのエレメントさんを救い出せなさそうですし。ここはプリキュアの援護を!」

グレース「お願いします!」

 

プリキュアを援護するため、エグゼイドはドラゴンファングからの火球で、ブレイブは右腕に装備されたドラゴナイトブレードを振るい応戦する。プリキュアはステッキからのビームや格闘戦でメガビョーゲンの体力を少しづつ、それでいて確実に削っていく。

 

スパークル「すごい!めっちゃ戦いやすいよ!」

フォンテーヌ「先生方の援護のお陰ね!」

グレース「このまま一気に!」

 

しかし、順調な展開はすぐに終わりを迎えた。これまで視界に捉えた敵を狙っていたメガビョーゲンが突然腕を振りかぶり、一気に振り下ろした。誰を狙っているのかと身構えたグレース達であったが、メガビョーゲンの狙いはライダーでもプリキュアでもなかった。

 

メガビョーゲン「メガァ!」ズドォン!

 

グレース「えっ…!?」

スパークル「うわっ!」

フォンテーヌ「腕を思い切り地面に…!?」

 

メガビョーゲンが腕を振り下ろしたのは自身の足元であった。強力な一撃を叩きつけられた地面は、衝撃で石や土砂を空高く巻き上げた。プリキュア達それぞれの足元も例外ではなく、5人はまとめて空中へと投げ出された。

 

ブレイブ「なんてデタラメな力だ!」

フォンテーヌ「くっ…!それなら!グレース!スパークル!」

グレース・スパークル「「うん!」」

エグゼイド「ダメだ!危ない!」

 

フォンテーヌの意図を察したグレースとスパークルが同時攻撃を仕掛ける。しかしそれは、メガビョーゲンの思う壺であった。メガビョーゲンの挙動に唯一気づいていたエグゼイドが警告するが、既に遅かった。

 

メガビョーゲン「メガァァァァ!!!」ギュルルル

 

メガビョーゲンはその場で高速で回転し始める。回転速度がどんどん上がり、巨大な竜巻のようになる。

 

グレース「きゃあああっ!」

フォンテーヌ「ううっ!」

スパークル「うわああっ!」

ブレイブ「ぐあああっ!」

 

エグゼイド「くうっ!飛彩さん!みんな…!ぐあっ!」

 

メガビョーゲンは回転しながらめちゃくちゃに光線を放ち、コマの要領で遠心力のついた腕を振り回しながら周囲を薙ぎ払う。舞い上がっていた石や土もつぶてとなり、エグゼイド達を襲った。

 

ドサドサドサッ

 

攻撃が止んだ直後、ダメージを受けボロボロになったプリキュア達が落下する。3人は近い位置にいたため、周囲にシールドを張っていたが、縦横無尽に襲い来るつぶてなどもあり、攻撃を防ぎきれなかったようだ。気絶しているのかピクリとも動かない。

 

ブレイブ「ぐっ…なんて威力だ…」

 

ブレイブもかなりのダメージを負い、ハンターゲーマの武装が強制解除されてしまった。胸のゲージも残り僅かというラインまで減ってしまっている。

 

エグゼイド「みんな…!大丈夫!?」

 

エグゼイドは攻撃を察知し、何とか最小限のダメージで食いとどめた。とっさにエナジーアイテム『鋼鉄化』を取得し、防御力を上げたが、それでもライダーゲージが半分近くまで削られてしまった。

 

ダルイゼン「ふーん、今回のメガビョーゲン、なかなかやるじゃん。今ので一気に地球を蝕んだみたいだし。」

 

高みの見物を決め込んでいるダルイゼンは周囲に目をやった。先程の回転攻撃の際に放たれた光線は広範囲に飛散し、周りの土地を大きく侵食していた。

 

ダルイゼン「んじゃメガビョーゲン、トドメやっちゃって。」

メガビョーゲン「メガビョーゲン!」

グレース「う、うう…」

フォンテーヌ「なんて、、力なの…」

スパークル「もしかして…今めっちゃ…ピンチ…?」

 

動けないプリキュア達へトドメを刺そうと、メガビョーゲンは胴体から高出力の光線を出すのか、溜めを作り始めた。プリキュアは意識を取り戻しつつあるが、ダメージが大きいのか動けない。

 

エグゼイド「!?…絶対にさせない!」

\ガッチョ-ン/

ブレイブ「小児科医!?」

エグゼイド「はあっ!」

\高速化!/

 

メガビョーゲン「メガ!ビョーゲーーーン!」

グレース「ああっ…」

フォンテーヌ「そんな…」

スパークル「嘘でしょ…」

 

チャージを終えたメガビョーゲンがプリキュアに目掛け特大の光線を発射する。光線がプリキュアに命中する寸前、高速化したエグゼイドがその間に割って入った。

 

\ド・ド・ドラゴ!ナ・ナ・ナ・ナーイト!ドラ!ドラ!ドラゴナイトハンター!ゼッート!/

エグゼイド「ぐぅぅぅぅ!」

 

ハンターゲーマを全て装着し、フルドラゴン状態となったエグゼイドは高出力の光線を正面から受け止める。更にそこからドラゴナイトハンターZガシャットを引き抜き、キメワザスロットホルダーへ装填する。

 

\キメワザ!/

 

エグゼイド「みんなは絶対に守る!守ってみせる!うぉぉぉぉ!!!」

\DRAGONIGHT!CRITICAL STRIKE!/

 

エグゼイドはキメ技を放つ。炎をまとったエネルギー弾がメガビョーゲンの光線を押し戻す。しかし、押し戻せたのは一瞬だけだった。ジリジリと押され始め、遂に光線はエグゼイドに直撃してしまった。

 

エグゼイド「うわああああーーーッ!」

ブレイブ「小児科医!」

 

\ガッシュ-ン/

 

永夢「ぐうっ…」ドサッ

ブレイブ「小児科医!」バッ

 

爆煙が晴れ、飛彩たちの目に映ったのは強制的に変身を解除され、ボロボロになりその場に倒れ込んだ永夢の姿だった。

 

フォンテーヌ「先生!」

スパークル「アタシたちを…守って…?」

グレース「そんな…」

 

ブレイブ「しっかりしろ!小児科医は死んではいない!」

 

絶望の表情を見せるプリキュアを叱責するように、永夢の元に移動したブレイブが叫ぶ。ブレイブは簡易的に脈を測り、永夢の状態を確かめていた。

 

スパークル「で、でも!またさっきみたいな攻撃が来たら…!」

ニャトラン「シールドも意味がなかったニャ…」

グレース「永夢先生…嫌…嘘…」

ラビリン「グレース!しっかりするラビ!」

 

スパークルとグレースは先程の攻撃と永夢の戦線離脱で戦意を根こそぎ削がれたようだ。スパークルは体の芯にまで響くような痛みに、恐怖を感じているのだろうか。体を抑える手が小刻みに震えている。グレースは永夢が倒れたことが余程ショックだったのか半ば放心状態となっている。

 

フォンテーヌ「それでも…私たちがやるしか…!」

ペギタン「フォンテーヌ…」

ブレイブ「ああ…それに、まだ手はある!」スチャッ

 

1人まだ闘志が折れていないフォンテーヌに応えるようにブレイブは新たなガシャットを取り出した。

 

\タドルファンタジー!/

\Let's Going King of Fantasy! Let's Going King of Fantasy!/

 

そのガシャットは2つのゲームを内蔵する複合型ガシャット『ガシャットギアデュアルβ』だ。ブレイブはダイヤルを回し、タドルファンタジーを起動する。

 

ファンタジーゲーマ『…………』

メガビョーゲン「メガッ!?メガァ…!」

 

起動すると共に召喚されたファンタジーゲーマがメガビョーゲンを牽制し、攻撃を向けさせないように務める。

 

ブレイブ「術式レベル50!変身!」

\デュア-ル!ガシャット!/

\ガッチャ-ン!デュアルアップ!/

 

その隙にブレイブはガシャットをドライバーに装填し、レバーを開く。十分な隙を作ったファンタジーゲーマがブレイブの元へと身を翻す。

 

\タドルメグルRPG!タドルファンタジー!/

 

ファンタジーゲーマを装着し、ブレイブはレベル50へとレベルアップを果たした。レベル2のボディに深紅や黒を基調とした鎧が追加され、まるで魔王が乗り移ったかのような姿をしている。

 

ブレイブ「これより、メガビョーゲン切除手術を開始する。執刀医は…君だ。」

フォンテーヌ「えっ…?」

 

オペの開始宣言をしたブレイブは、フォンテーヌがメインで戦うということを告げる。

 

ブレイブ「俺たちの攻撃ではヤツを倒せない。ならば、今ヤツを倒せるのは君だけだ。」

フォンテーヌ「………」

ブレイブ「出来るか?」

 

ブレイブの問に、決意を固めたフォンテーヌが答える。

 

フォンテーヌ「やります。それが今、私に出来ることなら!」

ブレイブ「よし!……いくぞ!」

フォンテーヌ「はいっ!」

ペギタン「ペェ!」

 

メガビョーゲンに向き直り、駆け出す。ブレイブは魔法でフォンテーヌを援護する。

 

ダルイゼン「また正面から来るだけ?メガビョーゲン、やっちゃって。」

メガビョーゲン「メガビョーゲン!」

 

メガビョーゲンは巨大な腕でパンチを繰り出した。しかし、その攻撃は空をかすめる。そこにはプリキュアの姿も仮面ライダーの影もなかった。

 

ブレイブ「どこを狙っている?」

メガビョーゲン「メガ!?」

 

ファンタジーゲーマーとなったブレイブは魔法を使用することが出来る。メガビョーゲンの攻撃を回避してみせたのは瞬間移動の魔法だ。

 

ブレイブ「はあっ!」

 

続けざまにガシャコンソードから無数の光弾を放ち、メガビョーゲンの注意をフォンテーヌから逸らす。

 

\キュッ!/

フォンテーヌ・ペギタン「「キュアスキャン!」」

 

その隙にブレイブの瞬間移動魔法でブレイブとは反対側に移動していたフォンテーヌがステッキの肉球を押し、キュアスキャンでメガビョーゲンに囚われているエレメントさんを見つけ出す。エレメントさんはメガビョーゲンの左胸の位置に囚われているようだ。

 

フォンテーヌ「あそこね!」

ペギタン「早くエレメントさんを助け出すペェ!」

 

その時、メガビョーゲンが再び腕を大きく振りかぶった。先程大ダメージを与えたあの攻撃の動作だ。

 

フォンテーヌ「あれはさっきの!」

 

先程の状況とは訳が違う。傷だらけの永夢にダメージが回復しきっていないプリキュアたち、それらを全て守りきることなど不可能だ。とフォンテーヌは愕然とした。

 

フォンテーヌ「ここまできて!」

メガビョーゲン「メガァー!」

 

フォンテーヌの叫びも虚しく、再びメガビョーゲンの両腕が地面目掛けて振り下ろされ、地面が抉れ舞い上がった。フォンテーヌはグレースとスパークルの元へと全力で戻り、ぷにシールドを展開したが足元を崩されてしまい、バラバラに飛ばされてしまった。メガビョーゲンは既に回転の動作へと移っている。

 

フォンテーヌ「そんな…私たち、勝てないの…?」

 

その時、フォンテーヌの体がなにかに受け止められたのか空中で静止する。何事かと思ったフォンテーヌが周りを見る。

 

ブレイブ「大丈夫か?」

フォンテーヌ「ええっ!?え、あ……はい…///」

 

フォンテーヌはブレイブに空中で受け止められてもらっていたようだが、受け止められている格好がいわゆるお姫様抱っこであるため、フォンテーヌは顔を赤く染める。その姿はまるで姫を守るナイトのような絵になっていた。

 

フォンテーヌ「ハッ!み、みんなは!?」

ブレイブ「案ずるな。全員無事だ。」

 

戦意喪失しているグレースとスパークル、戦闘不能の永夢を包むように球体のバリアが張られていた。このバリアもブレイブの魔法で生成されており、メガビョーゲンの攻撃からみんなを守っていた。

 

グレース「あ…あれ?」

スパークル「アタシたち…もうダメかと…」

フォンテーヌ「よかった…」

ブレイブ「このまま決めるぞ!」

 

ブレイブは瞬間移動で地上に降り、メガビョーゲンへのトドメのための隙を作る一撃を炸裂させた。

 

\ガッチョ-ン!キメワザ!/

ブレイブ「地球を脅かすお前の存在は…ノーサンキューだ!」

\ガッチャ-ン!/

\TADDLE CRITICAL SLASH!/

ブレイブ「はああああっ!」

メガビョーゲン「メガ!?メ、メガ…」

パキィン!

 

ブレイブは氷剣状態のガシャコンソードを振るい、冷気を増幅させてメガビョーゲンを一瞬の内に氷漬けにすることで動きを封じる。

 

ブレイブ「今だ!」

フォンテーヌ「はい!」

 

メガビョーゲン浄化のチャンスに、フォンテーヌはステッキをかざす。三日月形の模様を描き、浄化技のチャージを行う。

 

フォンテーヌ「エレメントチャージ!」

\キュッキュッキュッ!/

フォンテーヌ・ペギタン「「ヒーリングゲージ、上昇!」」

 

フォンテーヌ「プリキュアッ!ヒーリング〜!ストリーム!」

 

ステッキを突き出し、メガビョーゲンへ向けて螺旋状の水流を放つ。それは氷漬けのメガビョーゲンが捕らえているエレメントさんの位置を寸分違わず捉えた。

メガビョーゲンに命中した水流は形を変え、囚われのエレメントさんを包み込むように救出する。

 

メガビョーゲン「ヒーリン、グッバーイ…」

 

エレメントさんを摘出されたメガビョーゲンは浄化され、安らかな顔で消滅する。後には崩れたバーベキューセットと積まれた石が残っていた。

 

フォンテーヌ・ペギタン「「お大事に」」

ダルイゼン「あ〜あ、いいとこまでいってたんだけどな。」シュン

 

ダルイゼンは人知れず撤退する。メガビョーゲンから解放されたエレメントさんは再び石に宿り、辺りの蝕まれた土地を元に戻す。

 

ラテ「わふぅ〜!」

 

メガビョーゲンを浄化したことにより、地球とリンクしているラテの体調も元通りになった。

 

ブレイブ「はぁ…はぁ…」

\ガッチョ-ン! ガッシュ-ン!/

飛彩「やはり久々の使用は負担が大きかったか…」

 

変身を解除した飛彩は地面に膝をつき、息を荒らげている。レベルを克服しているとはいえ、最近は使用することのなかったファンタジーゲーマーへの変身は飛彩の肉体に相当な負荷をかけていた。

 

フォンテーヌ「先生!」

飛彩「サンキューだ…君のおかげで…」ドサッ

 

飛彩はそこで力尽きてしまい気絶した。変身に加えてゲーマーの能力である魔法を多用したフィードバックが襲ってきたようだ。

 

フォンテーヌ「先生…ありがとうございました…!」

ラテ「わふっ!」

ペギタン「ラテ様も元に戻ったペェ!良かったペェ。」

 

フォンテーヌの元にラテが飛び込んでくる。ラテを抱えたフォンテーヌが顔を上げるとグレースと少し離れた位置にいるスパークルがこちらに歩いてくるのが見えた。

 

グレース「フォンテーヌ…ごめんなさい!私…」

スパークル「アタシも…動けなかった…」

フォンテーヌ「グレース…スパークル…」

グレース「メガビョーゲンと戦わなくちゃいけないのに…動けなくって…」

スパークル「………」

 

フォンテーヌの傍に2人はメガビョーゲンとの戦闘をフォンテーヌに任せてしまったことへの謝罪を述べた。

 

フォンテーヌ「謝らないで、今回のメガビョーゲンはとても強かったもの。次は油断せず戦いましょう。」

グレース「フォンテーヌ…うん!」

スパークル「ハッ…!」

 

フォンテーヌの言葉にグレースは頷く。スパークルは「次」という言葉に強く反応した。その目に浮かぶのは困惑の表情だった。しかし、グレースとフォンテーヌはそれに気づかなかった。

 

フォンテーヌ「とにかく、先生たちをうちに運びましょう。」

グレース「う、うん!」

 

変身を解除した3人は永夢たちを抱え沢泉へと向かった。ちゆの母親の沢泉なおからは驚かれたが、永夢は階段から転倒、飛彩は貧血と言うことにしてなんとか誤魔化した。だが、1つ問題が生じた。

 

ーーー1日後。温泉宿沢泉

 

飛彩「なぜ小児科医が部屋にいる?」

 

飛彩はちゆたちに寝かされた布団の中で天井を見つめ呟く。その隣には同じように寝かされている永夢がいた。

 

永夢「実は…休暇は昨日で終わりだったんです。泊まってた部屋は次の予約があるみたいで…」

飛彩「……ノーサンキューだ…」

 

部屋は飛彩の予約した部屋だったが、永夢の部屋には次の利用客が入るらしく、2人まとめて同室に寝かされていた。永夢の体には至る所に絆創膏や包帯での治療の痕がある。

 

永夢「あのプリキュアの女の子たちが運んでくれたんでしょうか…?のどかちゃんたちは無事に逃げてくれてたし。」

飛彩「分からん。今までのメガビョーゲンは彼女らが全て倒してきたから衛生省も対応が間に合わなかったということになるのか。」

 

横たわりながら飛彩はゲームスコープを掲げ、通信を試みる。会話のために映像を映し出した先には永夢にも馴染みのある人物が映し出されていた。

 

恭太郎『待たせた。分かったことはあるか…?鏡先生。』

永夢「恭太郎先生!?」ガバッ

永夢「痛っ…」

 

通信の相手は永夢もよく知っている衛生省の役員。日向恭太郎だった。今回の飛彩の出張を依頼したのも恭太郎の采配である。

 

恭太郎『永夢…?なぜ君が?それにその怪我は…?』

永夢「それが…」

 

永夢は飛彩に説明したように恭太郎へ自身の動向を説明する。

 

恭太郎『そうか…分かった。バグスターの出現報告まであるならば永夢も出張としてすこやか市にとどまって欲しい。院長には私から説明しておく。』

永夢「はい!分かりました!」

飛彩「しかし、小児科医はレベル2のガシャットしか所持していない。1度戻った方がいいのでは?」

恭太郎『そこは心配ない。信頼できる者に依頼し永夢の装備を届けてもらう。』

 

素早く判断を下し、テキパキと今後の方針を決めていく恭太郎は本題に入った。

 

恭太郎『そして、あの正体不明の怪物…メガビョーゲンと言ったか。君たちの攻撃では完全に倒しきることは出来ないとのことらしいが…』

永夢「はい…メガビョーゲンを倒すには僕らを助けてくれたプリキュアでないと対処出来ないみたいです。」

飛彩「まだ年端もいかない少女達のように見えるが、その力は本物だ。だが、プリキュアの正体については分かっていない。」

 

正体不明の怪物の正体を暴くという飛彩の目的は半ば達成はしたが、ライダーの力では倒すことが出来ないとなってしまうと対応が難しい。

 

恭太郎『だが、このまま放っておくわけにもいかない。今後メガビョーゲンが現れた際に浄化自体はプリキュアに任せ、君たちはプリキュアと連携し、被害の拡大をできるだけ早期に抑えて欲しい。バグスターの動向にも気をつけてくれ。対応が決まり次第、衛生省の職員もすこやか市に駐屯させる。それまで君たちで対応して欲しい。』

飛彩「了解した。」

恭太郎『では、よろしく頼む。』ピッ

 

メガビョーゲンに対しての方針を伝え、通信を終える。一息ついた飛彩がおもむろに口を開いた。

 

飛彩「ところで…」

永夢「どうかしたんですか?」

飛彩「まさか小児科医と同じ部屋で生活することになるのか?」

永夢「あ…」

 

ーーー花寺家

のどか「永夢先生たち、目が覚めたかな?」

ちゆ「後でお見舞いに行きましょうか。ね、ひなた。」

ひなた「え…?う、うん!だよね〜!お見舞いしないとだよねー!」

ニャトラン「んん?」

 

3人はのどかの部屋に集まっていた。メガビョーゲンの事や永夢らの事を話し合っていた。のどかとちゆは普段通りだが、ひなたは考え事をしているのかいつもの明るさがない。ちゆに話を振られて無理に明るく振舞っているような印象になっている。

 

ちゆ「ひなた…なにか無理してない?」

ひなた「うぇ!?いや全然ぜーんぜん無理してないよ!あ、アタシちょっと用事思い出しちゃった!ごめん!行ってくるね! 」ダッ

のどか「あっ!ひなたちゃん!」

 

ひなたはニャトランも連れず花寺家から飛び出していった。のどか達が止める間もなくあっという間の事だった。

 

ニャトラン「なんか…ひなたの様子が変だぜ…」

ちゆ「何があったのかしら…」

のどか「ひなたちゃん…」

 

ひなた「はぁ、はぁ…」

 

花寺家を後にしたひなたは芝生の上に腰を下ろし膝を抱えた。

 

ひなた「アタシ…プリキュアやめようかな…」ジワッ

 

瞳を滲ませたひなたの口から零れた言葉は風と共に消えていった。

 

ーーーゆめポート屋上

???「………」カチッ

\バンバンシューティング!/

 

第3話 [完]



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第4話 救済

電車「ガタガタゴットンズッダンズダン!ガタガタゴットンズッダンズダン!」

 

大我「ったく…なんで俺がこんなこと…」

 

列車内でそうぼやいたのは黒髪に白髪の混じった髪色が特徴のドクター『花家大我』だ。彼もまた衛生省から依頼された任務ですこやか市に向かっている。

 

大我「だが…ゲムデウスウイルスの反応ってのは放っておけねえな…」

 

大我もバグスターウイルスと戦うドクターであり、『仮面ライダースナイプ』へ変身する。ゲーム病治療に従事する以前は天才放射線科医として活躍していた。

 

大我「また…パンデミックなんて起こさせてたまるか…」

 

過去の災厄を思い出し、目を細める。過去に起こったゲムデウスウイルスによるパンデミックは数々の人々を苦しめた最悪の事件として記憶に新しい。

 

大我「そろそろか…」

 

そうしている間に列車はすこやか市に到着した。大我は荷物をまとめ、列車から降りる。穏やかな街並みからの出迎えのように吹いたそよ風が大我の体を撫でるように吹き抜けていった。

 

大我「聞いてちゃいたが、本当にのんびりしてそうな街だな。……ん?」

ひなた「………」

 

乗ってきた電車が出発したホームを見渡すと、うつむきがちにベンチに座る平光ひなたがいた。大我はもちろん初対面であったが、なんとなく放っておけずに声をかけていた。

 

大我「おい、電車行っちまったぞ。さっきのに乗るつもりだったんじゃねえのか?」

ひなた「え…?あぁっ!めっちゃボーッとしてたし!」

 

大我に声をかけられたひなたは慌てて荷物を抱えたが時すでに遅しだった。

 

ひなた「あぁ〜やっちゃった…次電車来るの20分後じゃん…」

大我「何考えてたかは知らねえが、気をつけてな。」

ひなた「………待って!」

 

立ち去ろうとした大我をひなたは呼び止める。

 

大我「ん?」

ひなた「なんで…アタシに声かけたの…?」

大我「さあな、強いて言うなら知り合いに雰囲気が似てたからかもな。そいつはお前よりもっと気が強くて口は悪ぃが。」

ひなた「そうなんだ…。ねぇねぇおにいさん。もし良かったらなんだけど…話、聞いてくれない?」

大我「………次の電車が来るまでなら、な。」

 

何かと面倒見のいい大我はひなたの隣に腰掛け、ひなたの話に耳を傾ける。少しの間ひなたは沈黙していたが、やがてぽつりぽつりと話し始める。

 

ひなた「アタシね…今友達とすっごく大変なことをしてるんだ。危ない目にあったりすることもあるし…」

大我「………」

ひなた「でも、アタシ迷っちゃってるんだ…このまま続けていっていいのかなって…普通の女の子の生活の方がいいんじゃないかなって…」

 

ひなたは一応プリキュアであることを隠しつつ、見ず知らずの大我に悩みを話す。1人で悩むより誰かに話を聞いて欲しかったのだろう。

 

ひなた「辛いことも苦しいこともめっちゃあるけど、アタシの友達は全然挫けたりしないんだよね。でも…アタシは…」

 

メガビョーゲンから受けたダメージのことを思い出し、肩をすくめる。先日のメガビョーゲンとの戦闘以来、ひなたはプリキュアとして戦うことに恐怖と戸惑いを感じている。ひなたの想いを聞き終えた大我は静かに口を開く。

 

大我「誰だって迷うことくらいある。何をしてるかは知らねえが、悔いのない選択をしろよ。自分の道は自分で決めるしかねえからな。……それに…失ったものは…もう二度と取り戻せなくなるかもしれねぇぞ…。」

ひなた「おにいさん…」

大我「大我だ。花家大我。じゃあな、今度こそ乗り遅れるなよ?」

 

立ち上がり、大我が歩き出した方向から隣町行きの電車がやってくる。ひなたはバッグを肩から提げると大我に向かって手を振りながら口を開いた。

 

ひなた「アタシ、平光ひなた!ありがとう、タイガー!」

大我「タイガー!?」

 

当たり前のようにあだ名で呼ばれた大我は振り返ったが、ひなたは既に電車に飛び乗っていた。踵を返した大我はやれやれといった表情でホームを後にする。

 

ひなた「悔いのない…選択かぁ…」

 

ひなたは車窓から街を眺め、呟いた。まだ悩みが解決した訳では無いが、1歩前進したと感じていた。

 

 

ーーー温泉旅館『沢泉』

 

 

のどか「そこですっ!えいっ、やーっ!あっ!危ない!」

ちゆ「のどか!頑張って!」

 

よく晴れている青空へ少女の声が吸い込まれた。何かと戦っているのか、切迫した表情をしている。

 

永夢「のどかちゃん!一旦退いて!ここは僕が!うぉおおお!」ズバァ!

 

その後に続いて青年の声が響く。青年は少女を後方へ下がらせ前線に立つ。そして激しい攻防の末に…

 

『メインターゲットを達成しました』

『あと1分で集会所に戻ります』

 

モンスターを討伐することに成功した。

 

のどか・ちゆ・永夢「「「やったー!!!」」」

飛彩「お前たち…何をしてるんだ…」

永夢「モ〇ハンです!2人でミラ〇レアスを狩りに行ってました!」

 

永夢たちは沢泉の名物のひとつ、庭園に備え付けられたペットと一緒に入れる足湯に浸かりながら解放的な空間でゲームを楽しんでいた。

 

永夢「足湯に浸かりながらゲームするっていうのもなかなか楽しいね!のどかちゃん!」

のどか「はい!私、誰かとゲームするのも初めてだったんですけど、永夢先生が色んなことを教えながらプレイしてくれたからすっごく楽しかったです!」

ちゆ「うちの自慢の足湯ですよ。鏡先生もよければご一緒にいかがですか?」

飛彩「いや、せっかくだが今は遠慮しておく。それより…小児科医。」

 

ちゆの誘いを断り、飛彩は永夢に向き合う。

 

飛彩「休憩時間は終わりのはずだか?」

永夢「えっ!?もうそんな時間ですか!?」

 

飛彩が冷ややかに告げる。永夢は元々休暇としてすこやか市に来ていたが、休暇は先日で終わっている為現在はバグスター事件やメガビョーゲンの調査をするために出張扱いでこの街に滞在している。当然、仕事の一環であるため休憩と退勤後の時間以外は業務としてみなされる。

 

飛彩「早く準備しろ。今日は診療の予定があるんだろう?」

永夢「ハイ!今すぐ準備します!……うわっ!」ツルッ

 

慌てて足湯から出た永夢だったが、足元が濡れていたため、滑って思いっきり転んでしまった。

 

のどか「だ、大丈夫ですか!?」

ちゆ「せっかく怪我も良くなってるのに、またどこか怪我しちゃいますよ…。」

 

のどかとちゆは休憩時間の合間に2人のお見舞いとして永夢達の部屋を訪れていた。最初は部屋で談笑していたが、永夢が足湯に浸かりながらのゲームをすることを思いつき、のどかとちゆもそれについて来ていたのである。飛彩はなかなか戻ってこない永夢を探しに来たのだ。

 

永夢「大丈夫大丈夫…。すぐ向かいます!」ダッ

飛彩「まったく…」

 

5分後、永夢はのどかとちゆも交え、永夢の派遣先の病院への道を歩いていた。飛彩には怪物たちの調査を永夢には同じくメガビョーゲンやバグスターの調査と現地の医療貢献が言い渡されていた。

 

永夢「そういえば、今日はひなたちゃんは一緒じゃないんだね。」

ちゆ「ええ、用事があるらしくて…」

のどか「最近、ひなたちゃんの様子が変なんです…まるで私たちを避けているような気がして…」

永夢「なにかあったのかな…?」

 

ひなたの心配をしつつ、永夢たちは目的地である地域の病院を訪れた。この病院にある小児科病棟の医師の手が足りないと恭太郎からの要望があり、午後から永夢が子供たちの診察を行うことになっていた。

 

のどか「それじゃあ永夢先生!お仕事頑張ってください!」

ちゆ「先生もあまり無理なさらないでくださいね。」

永夢「ありがとう。そうだ!もしまたゲーム病の症状が出た人がいたらすぐ僕に連絡して。これが緊急通報用の番号だから。それじゃ!」

 

2人に見送られながら、永夢は病院へと入っていく。

 

のどか「永夢先生、凄いなぁ…」

ラビリン「あんなに怪我したのに、前向きに生きてるラビ。」

ペギタン「仮面ライダーもプリキュアと同じくらい危険なはずなのにペェ。」

ちゆ「私たちも、もっと頑張らないとね!」

のどか「うん!」

 

ーーー同時刻 先日の戦闘場所

大我「………」ピッ

 

大我はすこやか市に着いた後、キャンプ場に赴きゲームスコープで戦闘の傷跡を調べていた。

 

大我「…どうなってやがる…?」

 

恭太郎から聞いていた怪物の暴れた形跡を調べた大我は困惑した。ゲームスコープに映し出されていた傷跡からはバグスターウイルスの反応が検出されていたためである。

 

大我「衛生省の話じゃここで暴れたのはメガビョーゲンとかいうバグスターとは別物のはずだ…」

大我「それなのになんで…ゲムデウスウイルスの反応がありやがる…!」

 

大我のゲームスコープが映し出した反応は微弱ながらもゲムデウスウイルスのものだったのだ。

 

大我「だが…感染力なんてもんはねぇな。『反応があるだけ』って感じか。」

 

そう、正に反応があるだけの存在としてウイルスはそこにあった。人に感染することはないと分かった今、問題は『どこからどう発生したのか』である。今は大丈夫でもウイルスはいつ変化するか分からないため、早急な解決が求められる。

 

大我「なんにせよ…本腰入れて詳しく調べねぇとな…」

 

大我は立ち上がり、キャンプ場を後にする。その後、誰もいなくなったキャンプ場に残っていたはずのウイルスはいつの間にか姿を消していた。

 

 

ーーー平光カフェ

 

 

のどか「ひなたちゃん…やっぱりいなかったね…」

ちゆ「街にはいないとなると、やっぱり隣町かしら…」

 

永夢と別れたあと、のどかとちゆの2人はひなたの姉が営むカフェに足を運んでいた。様子のおかしいひなたを心配して話を聞こうと考えていたのだが、肝心のひなたは留守のようだった。

 

めい「ごめんなさいね。私もてっきり2人と一緒にいるのかと思ってて。」

 

めいが飲み物を持ってのどかたちのテーブルに来る。ひなたは行き先を告げずにどこかへ出かけているらしく、手詰まりの状況となってしまった。

 

ちゆ「ありがとうございます。私たちも何も知らなくて…」

のどか「ひなたちゃん…なんだか元気がなかったから、心配なんです…」

めい「2人ともありがとう。もしかしたらすぐ帰ってくるかもしれないし、ゆっくりしていってね。」

\スイマセ-ン/

めい「はい。すぐ参りますね。それじゃあ2人ともごゆっくりどうぞ。」

 

めいは他のお客に呼ばれ、席を後にする。

 

のどか「はぁ…ちゆちゃん、ひなたちゃん大丈夫かなぁ…?」

ちゆ「きっと大丈夫よ。ひなたもきっと気分転換で出かけてるんじゃないかしら。」

ニャトラン「それでも、俺を置いていくかぁ?」

 

テーブルの上にひょこっと現れたのはひなたのパートナーであるニャトランだ。外見がネコであるため、周りの客にも違和感を持たれずに済んでいる。

 

ちゆ「それは…」

ニャトラン「ひなたのやつ、一体どこいっちまったんだよ…」

のどか「あれ?ねぇ2人とも、あそこにいるのってひなたちゃんじゃないかな?」

ちゆ・ニャトラン「「え?」」クルッ

 

振り向いた先には俯きがちに歩いているひなたの姿があった。ひなたは気分転換としてゆめポートへ行っていたが、気分が乗らず早々にすこやか市へ戻ってきていた。2人は慌てて会計を済ませ、ひなたの元へ駆け寄る。

 

のどか「ひなたちゃん!」

ちゆ「ひなた!」

ニャトラン「ひぃ〜なぁ〜たぁ〜!」

ひなた「うぇ!ぅうわぉ!」

 

やっと見つかったひなたの元へニャトランが飛び込む。ひなたは慌ててニャトランをキャッチした。

 

ひなた「……あ、のどかっち…ちゆちー…」

のどか「ひなたちゃん…」

ちゆ「ひなた…」

のどか「ねぇ、少しみんなでお散歩しよう?」

 

のどかの提案で森林公園を散歩している3人は沈黙に包まれていた。どう話を切り出そうかと目を合わせるのどかとちゆが話すより先に、ひなたが静寂を破る。

 

ひなた「あのね…アタシ………プリキュアやめようかなって思ってるんだ…」

ちゆ「えぇっ!」

のどか「ど、どうして!?」

 

ひなたの口から出た言葉は2人に衝撃を与えた。

 

ひなた「この前のメガビョーゲン…めっちゃ強かった…このままずっと戦い続けて、アタシたち無事でいられるのかなって…」ゾクッ

のどか「ひなたちゃん…」

ちゆ「もしかして…この間のメガビョーゲンから受けた攻撃がトラウマに…?」

 

ひなた「あの時だって…仮面ライダーのおにーさん達がいなかったらどうなってたか分からなかった!2人は戦うことが怖くないの!?」

 

プリキュアに変身する彼女らは元は普通の中学生だ。今まで支え合ってメガビョーゲンを打ち倒してきたが、先日の戦闘で危うく全滅しかけたことと迫り来る鉄球の様な攻撃のフラッシュバックがひなたの心に深い傷をつけてしまった。

 

のどか「ひなたちゃん…」ギュッ

ひなた「のどかっち…」

 

のどかがひなたの手を優しく包み込む。

 

のどか「大丈夫…。私も戦うことが怖くないって言っちゃうと嘘になるけど、2人がいるから今まで頑張ってこれたんだよ。だから…これからも…」

ひなた「それでもっ!」

のどか「ッ!」

 

ひなたの悲鳴にも近い声がのどかの言葉を遮った。

 

ひなた「いつアタシたちより強い敵が来るか分かんないじゃん!のどかっちだって、また病院に戻ることになっちゃうかもしれないんだよ!?」

ちゆ「!?ちょっと!ひなた!」

 

ひなたの言葉をちゆが咎める。ひなたは自分の言葉がのどかにとってどれほど辛いことを思い出させるかを失念し、感情のまま声に出してしまった。

 

ひなた「ご、ごめん…アタシまた……よく…かんがえずに………」ザザッ

 

その時、ひなたの体にノイズのような現象が現れ、顔色がどんどん悪くなっていく。それは以前、のどかの発症したゲーム病の症状と同じものだった。

 

ひなた「ううっ…!なに…これ…?」ドサッ

ちゆ「ひなた!」

のどか「ひなたちゃん!」

ニャトラン「おい!大丈夫かよ!ひなたぁ!」

 

ひなたは胸を抑え、その場に倒れ込んだ。2人は慌てて駆け寄ってひなたを抱き抱える。

 

ちゆ「これって…まさかゲーム病!?」

のどか「す、すぐに永夢先生に連絡しなきゃ!」ピッ

ひなた「うあああああっ!」

 

のどかが緊急通報用の連絡をすると同時に、ひなたの体からバグスターが分離し始めた。おまけにのどかがゲーム病を発症した時とは明らかに違った点があった。分離したバグスターは一体ではなかったのだ。

 

グラファイト「オォ…」

ラヴリカ「ガ……」

 

ソルティと同じく所々に白い斑点のあるゲムデウスウイルスに侵されている状態のバグスターが並び立った。

 

 

ーーー病院

 

 

永夢「食欲不振の原因は恐らく…おやつの食べすぎかな?」

男の子「食べてないよ〜」

母親「どうりで最近おやつの減りが激しいと思ってた!」

永夢「食べ過ぎには気をつけてくださいね。お大事に〜」

ゲームスコープ「ピピピピピ!」

 

診察を終えた永夢のゲームスコープが鳴り響く。そのアラームはゲーム病を発症した患者がいることを示していた。

 

永夢「緊急通報…!?すいません!あとはお願いします!」

看護師「は、はい!」

 

病院の看護師に後を託し、永夢は急いで現場へと向かう。途中で別行動をしている飛彩にも連絡を入れ、ひたすらに走った。

 

永夢「ここだ!患者は…!」

ひなた「うぅ…」ザッ…ザザッ

永夢「ひなたちゃん!…ゲーム病を発症したのはひなたちゃんだったのか…!でも、のどかちゃんとちゆちゃんは!?」

 

現場に到着し、ベンチに苦しげに横たわるひなたを発見した永夢は通報者であろう2人の姿を探す。しかし永夢が周りに目を配る前に近くで轟音が鳴り響いた。

 

永夢「なんだ!?」バッ

グレース「くうっ!」

フォンテーヌ「ううっ!」

 

永夢が振り返るとそこにはバグスターと戦う2人のプリキュアがいた。攻撃を受け飛ばされてきたのだろうか、2人は荒い息をついていた。だが、永夢は更に驚くことになる。

 

永夢「あれは…グラファイトとラヴリカ!?まさか!」バッ

\ピピピピピ/

ひなた「はぁ…はぁ…」

 

永夢は2体のバグスターを確認すると、急いでゲームスコープをひなたにかざす。画面にはグラファイトとラヴリカのゲーム病に感染したことを示すマークが映し出されていた。

 

永夢「やっぱり…一度に2つのゲーム病に感染しているなんて…すぐにオペしないと!」

飛彩「小児科医!」

 

そこへ永夢から連絡を受けた飛彩が駆けつけた。飛彩もまたバグスターの姿に驚いたが、すぐにオペに取りかかった。

 

飛彩「なぜプリキュアが…?それにアイツらまで復活しているのか!」

永夢「行きましょう!飛彩さん!」

 

\マイティアクションX!ドラゴナイト!ハンター!Z!/

\タドルファンタジー!/

 

永夢「大・大・大・大・大変身!」

飛彩「術式レベル50!」

 

\ドラゴナイトハンター!ゼーット!/

\タドルメグルRPG!タドルファンタジー!/

 

エグゼイド「うぉおおお!!」

ブレイブ「はああっ!」

 

変身したエグゼイドとブレイブはバグスターへと立ち向かう。プリキュアの2人も加わり、混戦状態となった。

 

\Miss!Miss!/

エグゼイド「くっ、ウイルスに侵食されててもゲームの特性は残ってるのか…!?」

ラヴリカ「グガグ…!」

 

ラヴリカは元々恋愛ゲーム『ときめきクライシス』のバグスターであるため普通の攻撃は一切通ることはなく、攻略のためには言葉による精神的ダメージか取り巻きのラヴリーガールズをなびかせる必要がある。

 

エグゼイド「けど!取り巻きのバグスターはじっとしているだけでこっちを見ようとはしないし、僕じゃラヴリカに何を言っても意味が無い…!」

 

現状、男性である永夢からラヴリカに対してダメージを与えることは不可能であった。それは飛彩が変身するブレイブとて同じことである。

 

エグゼイド「早くゲーム病を治療しないといけないのに…!」

グレース「やあっ!」

ラヴリカ「!?」

 

その時、横からグレースのパンチがラヴリカにヒットする。ラヴリカはパンチを受け止め後ずさるが、プリキュアの攻撃はバグスターにダメージを与えられていない。

 

グレース「やっぱり…私たちの攻撃じゃ…!」

エグゼイド「待てよ…それなら!キュアグレース!」

 

エグゼイドは何か閃いたようにグレースを呼び、何かを耳打ちする。

 

グレース「ええっ!?それで攻撃になるんですか!?」

エグゼイド「とりあえずこの手しか今はないんだ!お願い!」

グレース「わ、分かりました!」

 

グレースはラヴリカに向き直り、戸惑いながらラヴリカに向けて言葉を発した。

 

グレース「ええっと…その…デ、デザインがあんまりかっこよくないと思います!」

ラヴリカ「!!?」ガクッ

 

好感度が下がる言葉に弱いラヴリカは大きなショックを受けたように膝をついた。ゲムデウスウイルスに侵食されているとはいえ、ゲームの特徴通りダメージを受けている。

 

エグゼイド「思った通りだ!プリキュアでも女の子は女の子だからダメージになる!それにラヴリーガールズの好感度も下がるはずだから僕でも倒せるようになる…!グレース!悪いけどもう少しそんな感じでお願い!」

グレース「わ、私あんまりこういうの分からないんですけど〜!」

 

グレースもといのどかは良心が痛むのか慣れていないのか必死に考えて言葉を選んでいる。エグゼイドはのどかが変身していることを知りはしないが、少しばかりばつが悪そうだった。

 

ブレイブ「また、お前と戦うことになるとはな!はぁっ!」

グラファイト「ガァァッ!」

 

剣と剣がぶつかり合い、火花を散らす。グラファイトはレベル99の姿をしており、ファンタジーゲーマーとは2倍近いレベル差を有している。そのため鍔迫り合いでブレイブは押し負けてしまった。

 

ブレイブ「ぐっ!」

グラファイト「ドグァ!」

フォンテーヌ「危ない!」

 

ギィン!

 

体制を崩したブレイブに追い打ちを狙うグラファイトの剣は、フォンテーヌの放ったビームにより軌道をずらされ地面を切り裂いた。

 

フォンテーヌ「大丈夫ですか!?」

ブレイブ「すまない、助かった。」

フォンテーヌ「あの怪人は私の攻撃では倒せません…今回は私が援護します!」

 

ラヴリカにエグゼイドとグレース。グラファイトにはブレイブとフォンテーヌが相対し、各個撃破を狙う。2体はウイルス侵食により、パワーは増しているが半ば暴走気味な状態であるため、以前戦った理性ある個体よりは攻撃する隙が多く、ダメージを与えることは容易かった。

 

エグゼイド「よし!このまま行けば倒せる!」

グレース「あとちょっとで!」

ブレイブ「グラファイト!お前は俺が切除する!」

フォンテーヌ「ブレイブさん!私が足元を凍らせます!その隙に!」

 

仮面ライダーとプリキュアの見事な連携でバグスターを追い詰める。そして撃破まであと一息という所で、事態は急変した。

 

ズズズズズ

 

エグゼイド「なんだ!?」

フォンテーヌ「あ、あれは…!」

ブレイブ「こんな時に…!」

 

メガビョーゲン(水)「メガ!」

メガビョーゲン(光)「ビョーゲーン!」

 

グレース「メガビョーゲンが2体も!?」

 

水と光のエレメントさんを取り込んだメガビョーゲンが同時に2体出現したのだ。その2体を満足気に眺める影が2つ。

 

グアイワル「ふん、先日はダルイゼンの奴に抜けがけされたからな。今日はオレ様が暴れてやろうと思ったのだが…」

シンドイーネ「考えることは同じだったようね、グアイワル。」

 

ビョーゲンキングダムからやってきたシンドイーネとグアイワルが同時にメガビョーゲンを生み出してしまっていた。シンドイーネのメガビョーゲンは水から、グアイワルのメガビョーゲンは光のエレメントさんからそれぞれ生成されている。

 

シンドイーネ「こうなったら…どっちのメガビョーゲンがより多く地球を蝕むかでキングビョーゲン様へ貢献してやるわ!」

グアイワル「面白い。やれ!メガビョーゲン!」

 

メガビョーゲン(光)「メガビョーゲン!」

メガビョーゲン(水)「メガーーー!」

 

瞬く間に辺りを汚染する2体のメガビョーゲン。グアイワル達がバグスターとプリキュアが戦っていることなど知っていることなど知るはずもないが、最悪のタイミングである。

 

ひなた「う、うう…ひっ…!メ、メガビョーゲン…!?」ザザザッ

 

メガビョーゲンに対して恐怖心を持っているタイミングでメガビョーゲンを目にしてしまったひなたは強いストレスを受けてしまい、体がどんどん透明になっていく。このままストレスを受け続けていると消滅してしまう。

 

エグゼイド「くそっ!今グレースにいなくなられたらラヴリカを倒せない…けど…!」

グレース「急いでお手当てしないと…地球が危ない…!」

フォンテーヌ「どうすれば!」

 

その瞬間、ひなたがストレスを受けたことでより強くなったバグスターの2体はエグゼイドとブレイブに襲いかかる。それは先程までのスピードとパワーを大きく上回っていた。

 

ブレイブ「なんだと!?ぐああっ!」

エグゼイド「くうっ!」

フォンテーヌ「先生!」

 

エグゼイドとブレイブの2人はすんでのところでガードし、ダメージを抑えた。ブレイブがプリキュアに向かって叫ぶ。

 

ブレイブ「ここは俺達が抑える!お前たちは先にあの怪物を浄化するんだ!」

グレース「でも!それじゃあの子は!?」

ブレイブ「どちらか片方を倒せば、症状が和らぐはずだ…!その間に決着をつけるんだ!」

 

ブレイブにとっても苦肉の策だが、ドクターとしての判断を下した。

 

フォンテーヌ「…………分かりました…。グレース!行きましょう…!」

グレース「………うん!必ずすぐに戻ってきます…!」

ブレイブ「頼んだ…!」

エグゼイド「ひなたちゃんは僕達が絶対に守る…!」

 

グレースとフォンテーヌはバグスターとの戦域を離脱し、メガビョーゲンの元へ向かう。残されたライダーの2人は強化されたバグスターへ再び向き直る。

 

エグゼイド「飛彩さん…ラヴリカは僕達じゃもう倒せません。グラファイトに集中します。」

ブレイブ「了解した。ゲームはお前の方が得意だからな。」

 

グラファイトをターゲットとし、戦闘が再開される。バグスターも仮面ライダー目掛け突進し双方が激しくぶつかりあう。

 

ーーー

 

ひなた「アタシ…死んじゃうの…かな…めっちゃ透けちゃってるし…」

ニャトラン「諦めんな!今グレースたちが戦ってくれてるニャ!」

ひなた「ごめん、ねニャトラン…約束…守れなくて…」ポロポロ

ニャトラン「謝るニャ!俺はひなたからそんな言葉聞きたくないニャ!」ポロポロ

 

ストレスによる消滅の前触れで体が透けているひなたにニャトランが付き添い必死に声を掛ける。その時、ひなたの目にこちらに近づいてくる人影が映った。

 

大我「諦めることがお前の選んだ道なのか?」

ひなた「タイガー…」

ニャトラン「ニャ…」

 

人影は、朝に駅のホームで出会った花家大我だった。大我は会った時には身につけていなかった白衣に袖を通し、首からゲームスコープを下げている。

 

ひなた「タイガーも…お医者さんだったんだね…」

大我「………話を聞いた時に俺が言ったこと…覚えてるか?」

ひなた「え…?」

大我「お前にとって悔いのない選択が諦めることなら誰も文句は言わねえ。だが、お前は諦めたい訳じゃねえだろ?」

ひなた「それは…」

大我「お前のゲーム病は俺が治してやる。だから絶対諦めんな。その後でどうするかはお前が決めろ。」

 

大我はそう言うと、エグゼイドとブレイブが戦っている場所へ向かった。

 

ひなた「タイ…ガー…」

 

ーーー

 

グラファイト「グレンバクリュウケン…!」

エグゼイド・ブレイブ「「ぐあああああああああああ!!!」」

\ガッシュ-ン/

 

グラファイトの必殺技『紅蓮爆龍剣』が直撃したエグゼイドとブレイブは変身を解除されてしまい、ボロボロになって倒れ込んでしまった。

 

飛彩「くそっ…!」

永夢「まだ…まだだ…!」

 

変身を解除された2人は立ち上がろうとするが、受けたダメージが大きく膝をつくのがやっとだった。

 

永夢「諦めて…たまるかぁ!」

大我「相変わらず無茶してるな。」

 

その時、1人のドクターが現れ、傷ついた2人を守るようにバグスターに立ち塞がった。

 

永夢「大我さん!?」

飛彩「開業医…!」

大我「『患者の命を救うためにも、自分達ドクターこそ生き抜く責任がある事を忘れてはいけない』んじゃなかったのか?だったらさっさと立て!」

 

ひなたを励まし、戦場へと駆けつけた大我は永夢と飛彩を一喝し因縁浅からぬ2体のバグスターを睨みつけた。

 

大我「話は聞いてたが、まさかお前らまで復活するとはな。だが…俺が何度でもぶっ潰してやるよ!」

永夢「そうですね…僕達は…何度でも立ち上がってみせる!」

飛彩「バグスターウイルスは…俺達が必ず切除する!」

 

大我の増援に永夢と飛彩は気力を振り絞って立ち上がる。患者を救うためドクターとしての信念を胸に、再び戦おうと奮い立った。

 

大我「エグゼイド、ブレイブ。ほらよ。」ポイッ

永夢「これは…!」

飛彩「俺達のガシャット…!?」

大我「俺はお前らの宅配便屋じゃねえからな。次からは休暇だろうと調査だろうと肌身離さずしっかり持っとけ。」

 

大我は衛生省から依頼され、永夢と飛彩の使うガシャットを届けにすこやか市に来ていたのだ。CRへガシャットを受け取りに行った際にゲムデウスウイルスの存在を聞き、合流前に独断でウイルスの調査をしていた。

 

大我「行くぞ…!」

永夢「ハイ!」

飛彩「ああ!」

 

大我の号令に呼応し、同時にガシャットを起動する。

 

\バンバンシミュレーション!/

\タドルレガシー!/

\マキシマムマイティX!/

\ハイパームテキ!/

 

大我「第伍十戦術…」

飛彩「術式レベル100…!」

永夢「ハイパー大!」

 

3人「変身!」

 

\ガッチャ-ン!レベルアップ!/

\辿る歴史!目覚める騎士!タドルレガシー!/

 

ブレイブはレガシーゲーマーレベル100へ、

 

\ガッチャ-ン!デュアルアップ!/

\スクランブルだ!出撃発進!バンバンシミュレーションズ!発進!/

 

スナイプはシミュレーションゲーマーレベル50へ、

 

\パッカ-ン!ム-テ-キィ-!/

\輝け!流星の如く!黄金の最強ゲーマー!ハイパームテキ!エグゼイド!/

 

エグゼイドはムテキゲーマーへと変身する。ゲーム病専門の最高のドクターが揃い踏みとなった。

 

エグゼイド「まずはラヴリカを無力化します!」

\ガシャコンキ-スラッシャ-!ズキュキュキュ-ン!/

\マキシマムガシャット!/

エグゼイド「リプログラミング!はあっ!」

\MAXICIMAM MIGHTY ! CRITICAL FINISH! /

 

ラヴリカ「グガガガガ!?!?」

 

エグゼイドはマキシマムマイティXガシャットの力でラヴリカバグスターの特性を書き換え、無力化する。これで誰でもラヴリカを倒せるようになった。

 

エグゼイド「よし!これでラヴリカを攻略できる!」

スナイプ「待て!」

 

一気に攻めようとするエグゼイドをスナイプが制する。

 

スナイプ「ここは俺が引き受ける、お前らはあのバケモノを止めてこい。こいつらは俺がぶっ潰す。」

エグゼイド「え…!?」

スナイプ「患者の主治医は俺だ。アイツとは朝からの付き合いなんでな。」

ブレイブ「開業医…」

 

変わらず暴れ続けているメガビョーゲンはグレースとフォンテーヌが相手取っているが、浄化に至るまで攻めきれないでいた。

 

エグゼイド「でも!いくら大我さんでもグラファイトとラヴリカを同時に相手するのは無茶です!」

スナイプ「いいから行けって言ってんだよ!」

エグゼイド「ッ…!」

 

スナイプの強い意志が伝わり、エグゼイドは息を呑んだ。

 

スナイプ「アイツと約束したからな…」

エグゼイド「………分かりました。気をつけてください!大我さん!」バッ

ブレイブ「ヤツらを切除したらすぐに戻る。それまでここは任せたぞ。開業医。」バッ

スナイプ「はっ、誰に向かって言ってやがる。暴走してようがコイツらごとき、俺一人で充分だ。」ガチャン!

 

メガビョーゲンの元へ向かう2人を見送り、スナイプはシミュレーションゲーマーの照準をグラファイトとラヴリカに合わせる。

 

スナイプ「ミッション、開始!」

 

 

ーーー

 

グレース「くうっ!エレメントさんの位置は分かったのに!」

フォンテーヌ「浄化する隙が作れない!」

 

メガビョーゲンと対峙しているプリキュアは焦っていた。キュアスキャンによりメガビョーゲンが取り込んでいるエレメントさんの位置は特定出来たが、浄化のための必殺技を放つ隙が作れないでいた。

 

メガビョーゲン(水)「メガビョーゲン!」

 

ペギタン「フォンテーヌ!避けるペェ!」

フォンテーヌ「くっ…!」バッ

 

メガビョーゲンの水流攻撃を回避するフォンテーヌだったがその直後にある事に気づき、驚愕した。回避した水流の直線上にグレースがいたのだ。もう一体のメガビョーゲンに集中しているグレースは背後から迫る攻撃に気づいていない。

 

フォンテーヌ「グレース!危ない!」

 

フォンテーヌが叫んで危険を知らせる。グレースは声に反応し振り返るが、回避が間に合うタイミングではなかった。

 

グレース「ああっ…!」

フォンテーヌ「グレースっ!」

 

水流がグレースに命中する瞬間、一筋の光が走った。

 

エグゼイド「はああっ!」

\スパパパ-ン!/

ザンッ!

 

ムテキゲーマーとなったエグゼイドが水流を切り裂き、グレースを守った。

 

エグゼイド「大丈夫!?キュアグレース!」

グレース「あ、ありがとうございます!それより、ひな…ゲーム病の女の子は!?」

エグゼイド「大丈夫、僕らの仲間が戦ってくれているから!僕らは仲間を信じて目の前の敵を倒す!」

 

ひなたの安否を気遣うグレースにエグゼイドが答える。

 

シンドイーネ「はぁ!?何よアイツ!」

グアイワル「プリキュアではない…?メガビョーゲン!」

 

高みの見物を決め込んでいたシンドイーネとグアイワルは目を見開いて驚いていた。グアイワルは新たに出現した未知の相手にメガビョーゲンを差し向けた。

 

メガビョーゲン(光)「メガ!」

 

光を集め、光線を放つもう一体のメガビョーゲン。しかしその攻撃は命中する前に消失した。

 

ブレイブ「俺に斬れないものはない!」

フォンテーヌ「先生…」

 

グアイワル「何いっ!?」

 

メガビョーゲンの攻撃はレガシーゲーマーとなったブレイブが一閃し、消滅した。2人はメガビョーゲン浄化のためにプリキュアへと加勢する。

 

ブレイブ「奴らは一体…!?」

フォンテーヌ「メガビョーゲンを作り出すビョーゲンズの2人です!」

 

ブレイブはメガビョーゲンに指示を出したグアイワルとその隣のシンドイーネを見つけだした。

 

ブレイブ「奴らがこの怪物を生み出しているのか…!」

エグゼイド「待ってください!今はメガビョーゲンを倒すのが先です!」

 

ビョーゲンズを切除しようとするブレイブをエグゼイドが止める。エグゼイドは自分たちで動こうとしないビョーゲンズより暴れ回るメガビョーゲンに集中するという選択を取った。

 

ブレイブ「くっ…仕方ない…!」

 

エグゼイドはグレースと共に、ブレイブはフォンテーヌと共にメガビョーゲンへと立ち向かう。

 

グレース「仮面ライダーさん!」

エグゼイド「僕らであいつらを引きつける!」

ブレイブ「浄化のためのチャンスは必ず作ってやる。」

フォンテーヌ「お願いします!」

 

メガビョーゲン「メガビョーゲーン!」

 

メガビョーゲンの攻撃を回避し、2人の仮面ライダーは高速で動き回りメガビョーゲンを撹乱する。

 

ブレイブ「はああっ!」

メガビョーゲン(水)「メ、メガッ!?」

 

ブレイブは魔法を駆使し光の剣をいくつも作り出しメガビョーゲンに打ち込む。その圧倒的な物量でメガビョーゲンを地に伏せる。

 

エグゼイド「うおおおおっ!」

メガビョーゲン(光)「メガ!メガ…!?」

 

無敵の力を得たエグゼイドは超高速で動き回り、ガシャコンキースラッシャーでメガビョーゲンを切りつける。目にも止まらぬ斬撃に、メガビョーゲンはエグゼイドを見失う。

 

エグゼイド「ここだ!」シュルル

メガビョーゲン(光)「メガッ!?」

 

エグゼイドは頭部から伸びている『ハイパーライドヘアー』をメガビョーゲンへ絡ませ、動きを止める。

 

エグゼイド・ブレイブ「「今だ!」」

 

浄化のチャンスを作り、2人はプリキュアへと合図を送る。

 

グレース「フォンテーヌ!」

フォンテーヌ「ええ!」

 

満を持して、2人は浄化技を発動させる。

 

グレース・フォンテーヌ「「エレメントチャージ!」」

 

\キュアッキュアッキュアッ!/

\キュッキュッキュッ!/

 

グレース・ラビリン「ヒーリングゲージ!」

フォンテーヌ・ペギタン「上昇!」

 

グレース「プリキュアッ!ヒーリング、フラワーッ!」

フォンテーヌ「プリキュア!ヒーリングストリーム!」

 

ステッキから放たれた浄化技は2体のメガビョーゲンが捕らえているエレメントさんを救出した。

 

メガビョーゲン「「ヒーリン、グッバァイ…!」」

シンドイーネ「もーっ!なんなのよアイツら!」シュン

グアイワル「フン!余計な邪魔を…!」シュン

 

メガビョーゲンの浄化により、ビョーゲンズの2人も撤退した。

 

グレース「や、やった…」

フォンテーヌ「なんとか浄化できたわね…」

 

激しい戦闘を終えたプリキュアは地面へとへたり混んでしまった。

 

エグゼイド「2人とも本当によく頑張ったね。あとは僕らに任せて。」

ブレイブ「さっきの連中には逃げられたか…ならば残っているのはバグスターだけだ…!」

 

エグゼイドとブレイブはプリキュアを労わった後、1人戦闘を続けているであろう大我の元へ駆け出す。メガビョーゲンを浄化した今、残っている驚異はバグスターのみだ。

 

エグゼイド「待っててください…!大我さん!」

 

 

ーーー

 

 

スナイプ「おぉお!」

 

砲台から次々と弾を打ち出し、グラファイトらに突撃する。腕に装置されたシミュレーションゲーマは近接戦では文字通りの鉄拳となり、バグスターへダメージを与えていく。

 

スナイプ「グラファイト!てめぇは昔の方が断然強かった!」

グラファイト「ガ…!」

スナイプ「1度はゲムデウスウイルスを克服したんだろ!今度はいいように使われてんじゃねえぞ!」

 

スナイプの一撃がグラファイトの胸を捉える。グラファイトは胸を押さえ込んで後ずさった。

 

ラヴリカ「グゲ…ガガガ!」ガシッ

スナイプ「ぐっ…!この…!」

 

グラファイトを退けたスナイプにラヴリカが組み付いた。その瞬間、後ずさったグラファイトが必殺技を放とうとしていた。

 

スナイプ「くそっ…!」

 

\ガッチョ-ン!キメワザ!/

 

スナイプ「どきやがれ!」

 

\ガッチャ-ン!/

\BANGBANG! CRITICAL FIRE!/

 

ラヴリカ「グググ…ヴガァァァァァァ!」

 

砲台をラヴリカに押し当て、ゼロ距離でキメ技を撃ち込む。エネルギー弾はラヴリカを一瞬で爆散させ、グラファイトめがけ一直線に放たれた。

 

グラファイト「グレンバクリュウケン……!!!」

スナイプ「なっ…!?ぐああああっ!」

 

しかし、グラファイトの放った紅蓮爆龍剣はキメ技を撃ち破り、スナイプへと命中した。その威力は凄まじく、スナイプはひなたのいるベンチの近くまで吹き飛ばされてしまった。

 

\ガッシュ-ン/

 

大我「がはっ…!」

ひなた「タイガー!」

 

ラヴリカを倒したことで症状が少し和らいだのか、ひなたは立ち上がって大我に駆け寄る。大我はダメージにより変身が解除されていた。

 

グラファイト「……………」

 

変身が解除されたことなど意に介さないグラファイトがトドメを刺そうと静かに近づいてくる。ひなたは反射的に大我を庇う。その体は小さく震えていた。

 

大我「お前…震えてんぞ…怖いなら下がってろ…グラファイトは俺が…」

ひなた「怖くて当たり前じゃん!タイガーもみんなもそんなボロボロになってなんでまだ戦ってられるの!怖くないの!?」

大我「怖い…か…」

 

大我はよろよろと立ち上がると、着ていた白衣を脱ぎひなたに預けた。

 

ひなた「え……?」

大我「自分の命を懸けて戦うのは誰でも怖いかもしれねえよ。………けどな、何もせずに大切なものを失っちまうのが1番怖いんだ。」

ひなた「何もせずに…大事なものを失う…」

大我「だから俺は戦う。目の前で助けを求める患者がいる。そいつを救うまで、倒れる訳にはいかねえんだよ!」

 

白衣を脱ぎ捨てた大我は再び変身するためにガシャットを起動する。その両手に握られていたのは黒と黄緑を基調としたガシャットだった。

 

\仮面ライダー…クロニクル/

大我「ぐっ………変身!」

\ガシャット…/

 

ガシャットを差し込んだ瞬間、起動時とは比べ物にならない程の副作用が大我を襲う。

 

大我「うぅっ…!おおぉぉぉ…!」

 

\ガッチャ-ン…レベルアップ…/

\ライダー…クロニクル…!/

\アガッチャ…天を掴めライダー!刻めクロニクル!今こそ時は、極まれり!/

 

クロノス「ぐっ!うぐぅぅぅぅ…!」

ひなた「タイガー!」

 

苦しみながらもドライバーのレバーを開き、大我は『仮面ライダークロノス』へと変身を遂げる。しかし、クロノスへの変身は全てのバグスターの抗体を持っていない限り、変身者にとてつもない負担をかけてしまう。大我も例に漏れず、副作用で苦しんでいる。

 

クロノス「おぉぉぉ!!!ハァッ!」

 

だが、大我は5年分のバグスターウイルスの抗体を体内に蓄積していることと、ライダークロニクル騒動後に自身の体を用いた抗体作成を行っていたことで、副作用を抑え込むことに成功していた。

 

クロノス「よく見とけ。」

 

一言だけひなたに声をかけると、グラファイトへ向き合う。愛銃であるガシャコンマグナムを構え、引き金を引く。

 

クロノス「グラファイトォ!」

グラファイト「ウォォォォ!」

 

クロノスの銃撃がグラファイトの手元を撃ち抜く。

武器を弾き落とされたグラファイトは肉弾戦へと持ち込む。

 

クロノス「上等だァ!」

 

クロノスへ変身した大我はグラファイトへ接近し、拳を打ち込む。それと同時にグラファイトのパンチもクロノスにヒットしていた。

 

クロノス「ぐはっ…!」

グラファイト「グォォ!」

 

本来、クロノスはとあるゲームのラスボスへの対抗策として用意されたライダーであり、そのスペックは並大抵の攻撃を通さないが、大我は半ば無理やり変身をしているためそのスペックは大きくダウンしてしまっていた。それでも、暴走状態のグラファイトと互角に戦うだけの力は存在している。

 

クロノス「あの時のような事を…繰り返させてたまるかよ!!」

 

大我の脳裏にかつての痛ましい記憶が蘇る。グラファイトに敗北し、飛彩の恋人であった少女を救えなかった経験を繰り返させまいと大我は奮い立つ。

 

クロノス「だからこそ!お前は俺がぶっ潰す!」

グラファイト「ガガァ!」

 

飛びかかってきたグラファイトを飛び回し蹴りではじき飛ばしたクロノスはベルトからガシャットを引き抜く。そのままキメワザスロットホルダーへ差し込み、グラファイトへの手向けの一撃を放つ。

 

\RIDER CRITICAL CREWS-AID!/

 

クロノス「終わりに…しようぜ…」

グラファイト「グルァァァァァァ!!!」

 

クロノスの足元へ時計が投影され、キックの軌道と共にその針が動く。長針が一周した時、グラファイトに審判の時が下された。

 

グラファイト「グギャァァァァッ!」

\終焉の………一撃………!/

グラファイト「グ…う…」

 

クロノスの後ろ回し蹴りを受けたグラファイトの体から火花が上がる。エネルギーが溢れ、グラファイトは両膝をついた。

 

クロノス「はぁ…はぁ……ぐうっ!」

\ガッシュ-ン!/

大我「……」

 

クロノスへの変身は大我の体に相当の負担をかけてしまっていた。如何に大我と言えど負荷に耐えきれずにこれ以上変身を保てなかった。それでも、大我の眼は消滅していないグラファイトを睨みつける。

 

グラファイト「………礼を言うぞ、スナイプ。」

大我「グラファイト…?」

 

しかし、グラファイトから出た言葉は大我への礼の言葉だった。キメ技を受けたグラファイトはゲムデウスウイルスの影響から解放されたのか、元の誇り高き戦士の性格を取り戻していたのだ。

 

グラファイト「俺達の戦いには既に決着がついている。貴様のおかげで俺は誇りを失わずに済んだ。暴走させられて貴様を倒してしまっては敵キャラの名折れだからな。」

大我「はっ…言いやがる…。それならもう2度とゲムデウスウイルスに乗っ取られんじゃねえぞ。」

 

かつて死闘を繰り広げた2人は短く言葉を交わす。そして大我は振り返り、ゲーム病を治療したひなたの元へ向かう。

 

グラファイト「…さらばだ…」

 

大我を見送るグラファイトは静かに消滅した。時の戦士に封印されるドラゴンは満足気な表情で散っていった。

 

大我「…あばよ…グラファイト…」

 

大我は振り向くことなく、別れの言葉を呟く。視線の先には白衣を持ったひなたが立っていた。

 

ひなた「………タイガー、これ…」

大我「おう、もう大丈夫だ。」

 

ひなたは大我の白衣を差し出す。短いやり取りの後、ひなたは大我にあることを聞いた。

 

ひなた「あのさ…戦ってる時に言ってた『あの時のようなこと』って…」

大我「………」

ひなた「タイガー…」

 

ひなたは何も言わない大我を見つめる。大我はしばらくして話し始めた。

 

大我「俺は昔、患者を救うことが出来なかった。さっきのバグスターとの戦いに負けてな…そして俺は全てを失った。戦う力も、ドクターとしての資格も全て。」

ひなた「もしかして…それがさっきの…?」

大我「ああ。」

 

大我は自身の過去をひなたに話す。オペの失敗、仮面ライダーとして戦うことの影響などを全て。そしてその過去があるから今の自分があると続けた。

 

大我「だから俺は戦う。2度とゲーム病で患者が消滅することの無いように、2度後悔しないために、バグスターを残らずぶっ潰す。」

ひなた「後悔…しないため…」

大我「お前も、どうするかは自分で決めろ。」

ひなた「う、うん…!」

大我「じゃあな。」

 

話を終え、立ち去ろうとする大我。ひなたはその背中に向かって

 

ひなた「ありがとう!大我ー!」

 

朝出会った時より大きな声で大我に感謝を伝える。ひなたの顔は満面の笑みで彩られていた。患者の笑顔を取り戻した大我は振り向いて少し口角を上げ、そのまま立ち去っていった。

 

ひなた「アタシの…悔いの無い選択…!」

のどか「ひなたちゃーん!」

 

大我と入れ替わるようにプリキュアの変身を解いたのどかとちゆが駆け寄ってくる。

 

ひなた「のどかっち!ちゆちー!」

 

ひなたも2人に駆け寄る。のどかとちゆはひなたの無事を確認すると思いっきり抱きついた。

 

ひなた「ちょちょちょ!?のどかっち!?ちゆちー!?」///

のどか「良かった…治って良かったよぉ…!えぐ…」

ちゆ「ええ!無事で本当に良かった…!」

 

3人は涙ぐみながら無事を喜びあった。

 

ひなた「……のどかっち…さっきはごめん…」

 

そうしてひなたはゲーム病発足の一端となってしまった自身の発言をのどかに謝罪する。

 

のどか「ううん、私は大丈夫だよ。それにもし、戦いの中で怪我をしてまた病院に行くことになってもそれは私がやりたいことをやった結果だもん。それなら、きっと後悔しないと思う。」

ひなた「のどかっちも…強いんだね。」

ちゆ「ひなた…やっぱりもうプリキュアにはならない…?」

 

ここでちゆが核心に触れる。その問いかけにひなたは即答する。

 

ひなた「戦うことはまだ怖いけど…それでもアタシは………アタシは戦う!これからもプリキュアとして、地球をお手当てする!プリキュアの力があるのに何もせず地球が病気になっちゃうのを見てるだけなんて絶対後悔しちゃう!そんなのは嫌だから!」

ニャトラン「ひなたぁ!」パアッ

のどか「そうだね!私たちみんなで!」

ちゆ「ええ!地球をお手当てしましょう!」

 

ひなたのヒビの入った心は修復されていた。3人はビョーゲンズと戦い続け、地球を守ることを誓いあう。地球を守るプリキュアチームは完全に復活を遂げた。

 

ひなた「よーしっ!じゃあ今からみんなでゆめポート行こ!みんなに似合うこの時期の新作ファッション押さえるんだよ!」

のどか「うん!たくさんオシャレしちゃおう!」

ちゆ「ええ!」

 

3人は満開の笑顔で歩き出す。どこまでも晴れ渡る青空のような晴れ晴れとした笑顔で。

 

ーーー

 

大我「ぐっ…」ザザッ

 

ひなたが完全復活した頃、大我は無理やりクロノスに変身した副作用に苦しんでいた。

 

大我「もう少しマシな症状になると思ってたんだがな…」

 

胸を押さえてよろよろと歩く大我であったが、限界を迎えたのか木にもたれかかるように座り込んでしまった。少しの間目を瞑り、息を整えていた大我に声をかける者が現れる。

 

???「またクロノスに変身するなんて…無茶しすぎです、大我さん。」

???「全くだ。」

大我「………遅かったじゃねえか。エグゼイド、ブレイブ。」

 

大我が顔を上げるとにこやかに微笑んで手を差し伸べる永夢といつものクールな表情の飛彩が立っていた。

 

大我「だから言ったろ。俺一人で充分だってな。」

 

大我は永夢の手を掴み支えられながら立ち上がる。

 

飛彩「クロノスに変身するまで追い込まれておいて何を言う。」

永夢「そうですよ。そもそもなんでクロニクルガシャットを2本も持ってるんですか?ガシャットは衛生省が回収したはずですよ。」

 

大我が変身に使った仮面ライダークロニクルガシャットは1度起動した者は強制的にゲーム病に感染する恐ろしいガシャットだ。そのため衛生省はガシャットによって引き起こされる事態を公表し、世に出回るガシャットを回収していた。

 

大我「…うちのアルバイトの持ってる1本と、俺が抗体を作るために使ってた1本だ。」

永夢「ニコちゃんの…」

 

ゲーム病を専門に治療する大我の病院でアルバイトをする少女「西馬ニコ」は仮面ライダークロニクルに登場する全バグスターを大我や他のライダーと共に攻略している。そのデータが入ったクロニクルガシャットが今大我の手元にあるようだ。

 

永夢「とにかく、クロノスへの変身はもう控えてください。大我さんでもそう何度も副作用に耐えきれるものじゃありません。」

大我「考えといてやるよ。…それじゃあな」

 

大我はそう言うと立ち去っていった。副作用は抑えられたのか、足取りはしっかりしている。永夢たちもそれぞれのやるべき事をするために解散する。

 

永夢「じゃあ飛彩さん。また後で。」

飛彩「ああ。調査結果は夜に報告する。子供たちの相手は任せたぞ。」

永夢「はい!」

 

ドクター達はそれぞれのするべき事をするため歩き出す。しかし永夢たちはこの後最悪の事態に直面することをまだ知らない。

 

 

ーーービョーゲンキングダム

 

 

シンドイーネ「全くもう!なんなのよアイツら!せっかくいいとこまでいってたのに〜!」

グアイワル「プリキュアとも違う存在のようだな。いずれにせよ、オレたちの邪魔になる存在ということになるか。」

ダルイゼン「あれ?2人もよくわかんない奴に妨害されたの?……ん?」

 

キングビョーゲン「来タか…」

 

プリキュアだけでなく仮面ライダーにも地球を蝕む活動を妨害されたビョーゲンズの3人は口々に苛立ちを露わにする。そこに近づく影があった。

 

バテテモーダ「チーっス!キングビョーゲン様ぁ!ご命令通り!戦闘後に残っているウイルスの回収任務、終えてきましたー!」

 

現れたのはダルイゼンの作りだしたメガビョーゲンから生まれた新たなビョーゲンズ『バテテモーダ』だ。

 

キングビョーゲン「ヨくやっタ…」

バテテモーダ「いえいえ〜!キングビョーゲン様からのお褒めの言葉マジ光栄ッス!これでプリキュアも仮面ライダーも恐るるに足らず!ってヤツですねぇ!」

ダルイゼン「仮面ライダー…?ふーん、アイツらそう言うんだ。」

シンドイーネ「あんたねぇ!知ってたんなら教えなさいよ!」

バテテモーダ「いや〜申し訳ないっス姐さん!自分もあちこち回ってて忙しかったもので!」

グアイワル「忙しかった?」

 

バテテモーダはキングビョーゲンからの命令でメガビョーゲンが暴れたあとの場所から微量のゲムデウスウイルスを持ち帰ってきていた。ビョーゲンキングダムに流れ着いたウイルスがダルイゼンらを介し、メガビョーゲンへ付着し培養されたのだ。

 

キングビョーゲン「コレでこノ肉体は完成すル…」

 

キングビョーゲンはバテテモーダが集めてきたウイルスを仁王立ち状態のゲムデウスへ注ぎ込む。全てのウイルスが注がれた時、ゲムデウスの眼に禍々しい光が宿った。

 

ゲムデウス「我は生きとし生けるもの全ての命を破壊する者!最強のバグスター、ゲムデウス也…!」

 

 

ーーー沢泉

 

 

永夢「ふぅ…今日も疲れましたね、飛彩さん。」

飛彩「ああ。しかし流石は温泉旅館だ。」

永夢「はい!疲れが一気に飛んでいく気がします!」

 

1日を終え、宿泊する沢泉へ戻り温泉を堪能した2人は成り行きで同部屋となってしまったため同じ方向に向かい廊下を歩く。2人が自販機やマッサージチェアが置かれている休憩スペースに差し掛かった時、見覚えのある人物がいた。

 

大我「…ッ…!」

永夢「え?」

飛彩「何?」

 

そこには白髪混じりの黒髪を湿らせ、浴衣を着て首からタオルを提げながらマッサージチェアに座る大我がいた。

 

永夢「大我さん!?」

大我「なんでお前らがここにいんだよ!」

飛彩「こっちのセリフだ。開業医。」

 

慌ててマッサージチェアから立ち上がる大我。驚きの表情の永夢と少し呆れ気味の飛彩。バラバラの個性のドクター達は期せずして同じ宿へ集まった。

 

飛彩「流石に同じ宿というのはノーサンキューだ。」

大我「俺だって一緒になりたくて来たわけじゃねえよ!」

永夢「まぁまぁ!僕はいいと思いますよ。大我さんの新しい一面も知れましたし。」

大我「喧嘩売ってんのか!」

 

沢泉に響くドクター達の喧騒は次第に収まり、冷静になった大我も含めそれぞれの部屋へ帰っていく。その後は戦闘での疲労もあり、全員早々に眠りについた。

 

 

ーーー平光家

 

 

ニャトラン「ひなたぁ〜」ゴロゴロ

ひなた「めっちゃ心配かけてゴメンねニャトラン。アタシ、もう大丈夫だから!」ナデナデ

ニャトラン「おう!これからもよろしく頼むぜ!ひなた!」

ひなた「うん!」

 

改めてパートナーと一緒に戦うことを誓いあう。

 

ひなた「本当に…ありがとうね、タイガー…」ボソッ

ニャトラン「ん〜?なんか言ったかニャ?」

ひなた「なんでもないし〜!喰らえくすぐり攻撃〜!」

 

誤魔化す必要は別段ないが何となく恥ずかしくなったひなたはニャトランをくすぐりだす。その顔には眩しい笑顔が溢れていた。

 

 

 

 

 

ーーー次回予告

大我「どうなってやがる…?」

飛彩「この症状は…まさか…!」

永夢「ゲムデウス…!?」

ゲムデウス「忌々しい仮面ライダーよ!貴様らの命から破壊してやる!」

 

のどか「街のみんなが…!」

ちゆ「こんなの…どうすれば…」

ひなた「でも…諦められないし!」

 

永夢「あなたは…!?」

???「あれ?乗せられちゃった?」



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第5話 復活

5話です
次回最終回かなと考えてます


 

ーーービョーゲンキングダム

 

キングビョーゲン「フハハハハ!遂に我の肉体となる入れ物が完成しタ!」

シンドイーネ「いよいよキングビョーゲン様の復活なのですね!シンドイーネは喜びで胸がはち切れそうですー!」

グアイワル「これで地球も終わりだな。」

バテテモーダ「んじゃ、キングビョーゲン様の復活劇!始まりっスね!」

 

先日のゲムデウスウイルス投与により、ビョーゲンキングダムで復元されたゲムデウスバグスターの身体が完成した事で、キングビョーゲンの仮初の肉体による復活は目前となっていた。

 

キングビョーゲン「今こそ…復活ノ時…!」

 

復活を果たすべくゲムデウスの肉体に憑依を試みるキングビョーゲン………だったが

 

バチィン!

 

シンドイーネ「ええっ!?」

キングビョーゲン「ナんダト……!?」

 

ゲムデウスの肉体はキングビョーゲンを阻み、復活を果たすことは出来なかった。

 

ダルイゼン「………どうなってんの…?」

グアイワル「まだ完全な状態ではなかったのか?」

バテテモーダ「いやいやそんなハズは…」

 

復活失敗に驚くビョーゲンズを後目に、ゲムデウスは静かに目を覚ます。

 

ゲムデウス「我に取り憑こうなどと…思い上がったな!」

キングビョーゲン「ヌゥ!?」

 

ゲムデウスは目を覚ますと同時に、背後に身を置くキングビョーゲンを宝剣『デウスラッシャー』で振り払った。これでゲムデウスを縛る物は無くなり、復活を果たしたのはキングビョーゲンではなくゲムデウスそのものとなってしまった。

 

ゲムデウス「我は再び神として復活した!先ずは忌まわしき仮面ライダーを…ゲームオーバーにしてやろう!」

バテテモーダ「よくわかんねーっスけど、そうはさせるかっての!」

 

自由を取り戻したゲムデウスにバテテモーダが襲いかかる。しかしバテテモーダの放った拳は宝盾『デウスランパート』により防がれてしまう。

 

ゲムデウス「邪魔だ…!」

バテテモーダ「ぐぇーっ!?」

 

ゲムデウスはゲキトツロボッツのバグスター、ガットンの左腕の武装を模した装備を形成し、バテテモーダに強烈な一撃を見舞う。バテテモーダはダルイゼンらビョーゲンズの間隙を通るように吹き飛ばされた。

 

シンドイーネ「ちょっと!?嘘でしょ!」

 

ゲムデウス「我を阻むものには死…あるのみ。」

 

そう言うとゲムデウスは浮遊し、胸にカイデンバグスターの顔を浮かび上がらせその能力を使う。デウスラッシャーで空間を切り裂き、ゲムデウスはビョーゲンキングダムから姿を消す。切り開かれた空間は一種のワープホールのように人間界へと繋がっていた。

 

ゲムデウス「我は今度こそ、攻略不可能なラスボスとして世界に君臨するのだ!はぁーっはっはっは!」

 

完全に自己を取り戻したゲムデウスは永夢たち人間の住む世界へと突き進んで行った。

 

 

ーーー沢泉

 

 

チュンチュン

 

ゲムデウスの復活など知る由もない永夢と飛彩は鳥のさえずりでゆっくりと目覚める。起床した2人は身だしなみを整え、先程まで眠っていた部屋を後にした。

 

大我「………で…」

飛彩「…」カチャカチャ

永夢「…」モグモグ

 

朝早くから苦虫を噛み潰したような顔をする大我の前には、和洋それぞれの好みで用意してもらった朝食を食べている永夢と飛彩が座っている。

 

大我「お前らはなんで俺の部屋で飯食ってんだよ!」

 

そう、その一室は大我が宿泊のため借り受けた部屋である。先日のグラファイトらとの戦いから2日がたっていた。永夢と飛彩は用意された朝食を持ち込み、なかば無理やり食事を共にしていた。しかし、それには訳が存在していた。

 

飛彩「決まっている。開業医が調べたことの調査結果を聞きに来た。」

永夢「ホントは今日大我さんを探しに行こうと思ってたんですけど皆同じ宿に泊まってるなら探す手間が省けるなってことになって。あ、この煮物美味しい!」パクパク

飛彩「そういう事だ。出かけられたら探し出すのが面倒なんでな。」

 

2人は大我が独自で調査したゲムデウスウイルスの反応について何か分かったことがないかを聞くために大我の部屋を訪れていたのだ。

 

大我「ったく…」

飛彩「それで、なにか分かったことはあるのか?」

 

???「それについては、自分が説明するぜ〜」

 

話に入ろうとしたところで部屋の扉が開けられ、聞きなれた声がした。

 

永夢「貴利矢さん!?」

飛彩「監察医?」

貴利矢「よっ邪魔するぜ、永夢。…ってあれ?お食事中だった?」

 

話に割って入ってきたのはCRに所属する監察医『九条貴利矢』だった。彼は過去に一度ゲームオーバーとなり消滅している。その後の戦いでバグスターとして復活し、CRへ戻り仮面ライダーとしてバグスターやクロノスと戦った永夢たちの仲間の1人である。

 

大我「レーザー、頼んだもんはどうなった?」

貴利矢「おっ、いきなりそこ聞いちゃう?ま、隠すもんでもないしさっさと話しちゃいますか。」

 

大我は貴利矢が来ることを知っていたのか特に疑問を持つことも無く話を進めていく。

 

永夢「大我さん、何か頼み事をしてたんですか?」

貴利矢「院長先生が現地で採取したゲムデウスウイルスのデータを送ってもらってさ。そいつを永夢らが相手したソルティやグラファイトのデータと照合してみたんだよ。そしたら…」

永夢「そしたら…?」

 

貴利矢は勿体ぶったように溜め、データから得た結論を話す。

 

貴利矢「結論から言って、ゲムデウスが復活するかもしれねぇ。ってデータが出された。」

永夢「えっ…!?」

飛彩「ゲムデウスが…!?」

大我「復活するだと!?」

 

貴利矢からもたらされた衝撃の結論に、ドクター達の眼が見開かれる。

 

大我「どういう事だ!」

飛彩「ヤツは俺達が切除したはずだ!」

永夢「2人とも落ち着いてください!貴利矢さん、本当なんですか?ゲムデウスが復活するかもしれないって。」

 

声を荒らげる2人を制し、落ち着いた雰囲気で貴利矢に話を聞く永夢だが、その表情はその場にいる誰よりも険しかった。

 

貴利矢「永夢が戦ったソルティと、大先生らが戦ったグラファイト達とでは、ゲムデウスウイルスによる侵食率に大きく差があったんだよ。覚えあんだろ?永夢?」

永夢「そういえば…確かにソルティはまだゲームキャラとしての理性が残っていたような…たまにゲームに基づいたようにしょっぱいとか言ってました。」

飛彩「だが、それより後に戦ったグラファイトはその意識をゲムデウスウイルスに完全に乗っ取られていた。喋ることがあったと言えば必殺技を放つ時くらいか。」

 

貴利矢「そ。要は時間が経つごとにゲムデウスウイルスがバグスターを侵食していってるんだよ。グラファイトに感染してたウイルスはソルティより反応が強かった。だから…近いうちにゲムデウスウイルスがバグスターを乗っ取って復活するかも知んないって事。今は人間に感染するような事にはなってないけど、それもいつ変異しちまうかは予測できないって感じだな〜。」

 

飄々とする貴利矢の口から語られた予測はこれ以上ない最悪の展開だった。永夢らは神妙な面持ちでゲムデウスへの対抗策を考える。

 

永夢「…一体どうすれば…」

貴利矢「そんな難しく考える事じゃなくない?」

大我「あ?」

飛彩「なんだと?」

苦悩の表情を浮かべる永夢に貴利矢は軽いノリで呆気からんと言い放った。飛彩と大我は眉間に皺を寄せ反射的に貴利矢を睨みつける。

 

貴利矢「自分たちには虎の子のガシャットがあるっしょ。」スッ

飛彩「これは…!」

 

そう言って貴利矢が取り出したのはゲムデウスウイルスへの特効薬と言える最強のワクチン、『ドクターマイティXXガシャット』だった。このガシャットは過去に貴利矢と今は亡き天才ゲームクリエイターが正真正銘命を賭して作り上げた、バグスターに対しての切り札と言えるガシャットである。

 

永夢「確かに…これを使えばゲムデウスウイルスを抑制できます…」

大我「が、ゲムデウス本体を倒せる訳じゃねぇ。ウイルスに感染した人間を救える手立てになるだけだな。」

 

そう、ドクターマイティXXはゲムデウスウイルスを抑制する力はあるが、ゲムデウスそのものを倒すための力を持ってはいないのだ。

 

貴利矢「こんだけドクターがいるんだ。自分も楽観視する訳じゃないけど、チーム医療でゲムデウスを倒せるって信じてるからさ。」

永夢「貴利矢さん…」

 

口は軽いが、貴利矢もまたドクターとしての信念を持ち、人類のために戦う仮面ライダーの1人だ。

 

貴利矢「んじゃ、報告は以上ってことで。自分はそこら辺で朝飯食べてくるわ。あ、このガシャットは永夢が持っててくれ。こいつを挿せる武器持ってんのは永夢だけだからな。」

 

朝イチで駆けつけたため何も口にしていない貴利矢はドクターマイティXXガシャットを置いて足早に部屋を後にした。ゲムデウスについての報告を聞き終え、一息つく永夢と飛彩に大我は口を開く。

 

大我「…知りてぇことは知ったんだからさっさと部屋に戻れ。」

 

 

ーーー海岸沿い

 

 

同じ頃、朝早くからすこやか市の海岸沿いに集まる少女たちの姿があった。

 

ひなた「よーーーっし!それじゃ張りきって体力作りのジョギング!はじめよー!」

のどか「おー!」

ちゆ「2人とも、無理しすぎないようにね。」

 

ひなたの明るいかけ声と、それに同調するのどかの元気な声が朝日に向かって吸い込まれていく。

 

ニャトラン「ふぁ〜あ…ひなたの奴、あれからすげーやる気出してるぜ。」

ペギタン「でも、プリキュアとしても普通に生活するにしてもいい心がけペェ」

ラビリン「のどかはあんまり無茶しちゃダメラビよ。」

ラテ「わふ!」

 

当然プリキュアにいつでも変身できるよう、のどか、ちゆ、ひなたのパートナー達もそろい踏みとなっている。こうしてのどかたちの体力作りがスタートした。

 

のどか「はっ…ふっ…」タッタッ

ちゆ「はっはっはっ…」タッタッ

ひなた「ほっほっほっ…」タタタッ

 

3人は真っ直ぐな眼差しで走る。プリキュアとして、それぞれの決意が映し出されるかのように。そうして海岸沿いから30分ほど走り、高台にあるハート型の灯台へと到着したところで足を止める。

 

ちゆ「お疲れ様。はい、スポーツドリンクよ。水分補給はしっかりとしないとね。」

ひなた「ちゆちーありがとー!…んくっ…んくっ…ぷはぁっ!」

のどか「はぁ……はぁ……」

ちゆ「のどか…大丈夫?」

のどか「うん、大丈夫だよちゆちゃん。ふぅ…」

 

長い入院生活で体力が少なく、しばらく荒い息をついていたのどかだが程なくして息を整え、ドリンクに手をつける。

 

のどか「ぷはっ、ん〜っ!すっごく生きてるって感じ!」

ラビリン「のどか、前より長く走れるようになってるラビ!」

ちゆ「そうね。初めて会った時は私を追いかけるだけで息が上がってたけど、最近は30分ずっと走っていられるようになったもの。」

ペギタン「体力が付いてきた証ペェ。」

ひなた「あっ!皆見て見て!あそこにいるのってもしかしてクジラじゃない!?」

 

そう言ってひなたが指を指した沖合には、海面から尾ビレを出し潜水するクジラの姿があった。普段見れない光景に3人は目を輝かせる。

 

のどか「ふわぁ〜!私、クジラさんを見るのなんて初めてだよ!」

ちゆ「たまに見られるって聞いたことがあるけど、私も初めて見たわ。今日は運がいいわね。」

ひなた「よーっし!いいものも見れたし、トレーニング再開といこー!」

 

珍しい光景にテンションが上がった3人は続けてトレーニングを開始し、体力作りに励んだ。無理のない範囲で行っていたとはいえ、気づけば時刻はお昼時になっていた。

 

ちゆ「あら、もうこんな時間なのね。そろそろ帰りましょうか。」

ひなた「賛成!めっちゃお腹すいたし!」

のどか「私も沢山運動したからお腹ペコペコだよ〜」

 

タオルを首にかけ、荷物を持った3人は街へ戻る。しかし、3人を待っていたのは空腹を満たす料理の数々…ではなかった。

 

のどか「なに…これ…」

 

すこやか市へと帰ってきたのどか達が目にしたのは、崩れた植木鉢や倒れたカフェのテーブル、割れたガラスの破片が散乱する凄惨な光景だった。

 

ひなた「一体なにが…」

ちゆ「見て!あそこ!」

 

ちゆが示した先には何かから逃げ惑う人々の姿が見える。その『何か』を視界に捉えた時、3人は目を見張った。

 

感染した人々「………ウゥ…」

男性「たっ、助けてくれぇ!」

女性「来ないで!あっちいってぇ!」

のどか「街のみんなが…」

 

頭部が異形の形に変貌した人々が助けを求めるかのように大量に押し寄せていた。変貌を遂げていない人達は皆、パニックになり、がむしゃらに逃げ回っている。

 

男性「うわぁっ!」

 

その時、1人の男性が足をもつらせて転倒してしまった。慌てて起き上がったが時すでに遅く、感染者に接触されてしまい、たちまち二次感染を引き起こした。

 

感染した男性「…オォォォ……」

 

のどか「嘘…」

ちゆ「人から人へ伝染っていくの…!?」

ひなた「感染するのめっちゃ早くない!?ていうかこのままじゃ!」

 

そう。感染者も含めた集団はのどか達がいる方向に刻一刻と近づいてきている。

 

ラビリン「これはビョーゲンズの仕業じゃないラビ!のどか!早く逃げるラビ!」

ペギタン「仮面ライダーのお医者さんのところへ向かうペェ!」

ニャトラン「急ぐニャ!」

 

のどか「う、うん!」

ちゆ「きっと先生たちも手当のために戦っているはず…。ひとまず私の家に向かいつつ先生たちを探しましょう!」

ひなた「オッケー!」

 

パートナー達の警告で3人は駆け出した。街の人達は間違いなくゲーム病だと考え、オペを行える永夢たちの元へ急ぐ。プリキュアの力ではバグスターと戦ってもせいぜい足止め程度にしかならない。この状況を打破できるであろう仮面ライダーの力を求め、ただひたすらに走る。その時_

 

ドゴォン!

 

突如轟音が響き、のどか達が向かう方向から空中高く砂埃が舞い上がった。

 

ひなた「今度は何!?」

ちゆ「行ってみましょう!もしかしたら先生たちが戦っているのかも!」

 

3人は音の鳴った方へ向かう。 路地を曲がり、広場へと続く道を抜ける。

 

のどか「着いた!……そんな…先生!?」

 

程なくして広場へと出たのどか達の目に飛び込んできたのは、変身を強制解除された永夢たちの姿だった。

 

永夢「…ぐぅ…っ!」

飛彩「こんなことが…!」

大我「くそっ…!」

 

永夢たちの着ている白衣はボロボロで所々に汚れや破れがあり、戦闘の激しさを物語っている。

 

貴利矢「オイオイ…冗談キツイぜ…」

 

少し遅れてもう1人、のどか達には面識のない4人目のドクターが立ち上がった。永夢たちの例に漏れず、貴利矢も傷だらけになっている。

 

のどか「永夢先生!」

永夢「のどかちゃん…!?」

 

駆け寄ってきたのどかに驚く永夢。ちゆとひなたもそれぞれ飛彩と大我の元へ駆け寄る。

 

ちゆ「鏡先生!」

飛彩「…!ここは危険だ!」

 

ひなた「タイガー!大丈夫!?」

大我「離れてろ!」

 

近づいてくる2人を制止した瞬間爆煙が晴れ、中心から金色に輝く鎧に身を包んだ怪人が現れた。

 

のどか「あれは……!?」

永夢「ゲムデウス…!」

 

最強最悪のバグスター、ゲムデウスは再び仮面ライダーの前に降臨する。それはのどか達が帰ってくる少し前のことであった。

 

 

ーーー1時間前

 

 

貴利矢「そんじゃ、今日から自分も調査に加わるぜ。」

永夢「はい!よろしくお願いします、貴利矢さん。」

 

食事を終え、合流した貴利矢も加えて本格的にウイルスの調査を行っていた永夢たちの元に、緊急通報のアラームが鳴り響いた。ドクター達は顔を合わせ頷くと現場へと急行した。

 

永夢「大丈夫ですか!?」

娘「助けてください!父が急に苦しみ出して!」

父親「うぅ…」

 

永夢たちが通報を受け広場へ到着すると、娘と思われる女性とその傍らで胸を抑えて苦しんでいる父親と思しき男性の姿があった。辺りには心配そうに男性を見る人だかりもできている。

 

永夢「すぐに診察を!」

 

診察のためゲームスコープを装着する永夢。だが、飛彩・大我・貴利矢の3人は患者を一目見て驚愕の表情を浮かべていた。

 

貴利矢「コイツは…悪ノリが過ぎんだろ…」

大我「どうなってやがる…」

飛彩「この症状は…まさか!?」

 

永夢「ゲム…デウス…?」

 

ゲームスコープが映し出したバグスターウイルスの反応は、全てのバグスターの頂点に君臨するラスボス、ゲムデウスのゲーム病の診断結果だった。

 

飛彩「馬鹿な!?人間に感染する可能性はないんじゃなかったのか!?」

大我「レーザー!どうなってんだ!?」

貴利矢「自分にも分かんねえよ!…けど、永夢!」

永夢「ハイ!」

 

貴利矢の声と同時に永夢はドクターマイティXXガシャットを取り出していた。続けてガシャコンキースラッシャーを取り出し、ワクチンを患者に投与しようとしたその時。

 

ピシッ!パキパキパキ!

 

乾いた音が頭上から鳴り、反射的にその場にいた人々が天を仰ぐ。

 

飛彩「何だ!?」

永夢「空に…ヒビが…?」

 

永夢が空を見上げた瞬間、青い空がガラスのように砕け散り、中から最悪の存在が飛び出してきた。

 

男性「な、なんだあれ!?」

女性「怪物…!」

 

ゲムデウス「はっはっはっは!我は再びこの世界に君臨した!全ての命よ!我の力で希望もなく散っていくがいい!」

 

現れるや否やゲムデウスはウイルスをすこやか市中に撒き散らした。ウイルスは人々に逃げる暇を与えず次々に感染、発症していく。

 

男性「うぐっ…!なんだよ…これ…!うわぁぁぁ!」

女性「苦…しい…きゃあああ!」

 

感染者「グゲゲ…!」

 

人々「逃げろぉぉぉ!!!」

 

瞬く間に広場は感染者で溢れかえる。人から人へ、ウイルスは尋常ではない速度で広まり、すこやか市はあっという間にパニックに包まれてしまった。

 

永夢「感染速度が…!」

飛彩「ゲムデウスが現れたことでウイルスが活性化したのか…!」

大我「野郎…!」

貴利矢「ッ…!永夢!」ドンッ

永夢「えっ…うわっ!」

 

何かに気づいた貴利矢が咄嗟に永夢を突き飛ばす。身を起こした永夢がそれまでいた場所を見ると、さっきまで診察していた患者が発症してしまっていた。

 

発症した父親「ヴヴヴ…」

娘「そんな…お父さん!」

永夢「ダメだ!危ない!」

 

永夢の制止も間に合わず父親に駆け寄った娘だったが、ゲーム病を発症した父親は娘にも見境なく襲いかかり、ウイルスを感染させてしまった。

 

娘「お……父…さん………」

ドサッ

 

感染し、ゲーム病を発症した娘もゆらりと起き上がって周囲の人々にウイルスを伝染させて行く。

 

大我「エグゼイド!何してる!早くワクチンを打ち込め!」

永夢「ハッ…!わ、分かりました!…でも…」

 

キースラッシャーでワクチンを打ち込んで患者のゲムデウスウイルスを抑制することは出来るが、1度に治せる数には限りがある。そのため1人を治している間にも感染者はそれを上回るスピードで増えていく。

 

飛彩「それでも!何もしないよりマシだ!」

貴利矢「ゲムデウスは自分たちに任せろ!行け!」

 

過去のパンデミックでは、バグスターであるポッピーピポパポが自らの体にガシャットを挿し、その身を犠牲にして広範囲のウイルスを一気に抑制したが、今回はその手段は取れない。それでもやるしかないとドクター達は作業を分担した。

 

飛彩「術式レベル100!」

大我「第伍十戦術!」

貴利矢「爆速。変身!」

 

\レベル(デュアル)アップ!/

\タドルレガシー!バンバンシミュレーションズ。発進!/

\爆走バイク〜!アガッチャ!ぶっ飛び!ジェット!ドゥ・ザ・スカイ!フライ!ハイ!スカイ!ジェットコンバット!/

 

ゲムデウス「仮面ライダーよ!復活した我を、果たして攻略できるか…?」

 

ゲムデウスは地上に降り、変身した3人と戦闘を開始する。宝剣と宝盾を構え、仮面ライダーを迎え撃つゲムデウスは正にラスボスと呼ぶに相応しい出で立ちをしていた。

 

永夢「変身!」

\ハイパームテキ!エグゼイド!/

 

永夢もエグゼイドへ変身し、感染者の治療を行う。

 

\ダブルガシャット!…キメワザ!/

\DOCTOR MIGHTY CRITICAL FINISH!/

 

エグゼイド「はあっ!」

 

キースラッシャーにガシャットを挿し込み、ゲーム病の発症者に向けてワクチンを打ち込む。効果は直ぐに現れ、ワクチンを投与された人々のウイルスは抑制された。

 

男性「も、戻った!治ったのか!?」

女性「もうダメかと思った…」

 

エグゼイド「早く逃げてください!捕まったらまた発症するかもしれません!」

 

ゲムデウスウイルスの症状から解放された人々を逃がしつつ、エグゼイドは1人治療に奮闘する。すぐ側で仲間達がゲムデウスと激しい戦闘を繰り広げ、ゲムデウスを足止めしている。

 

ブレイブ「はあっ!」

スナイプ「喰らいやがれ!」

レーザー「おらぁ!」

 

地上でブレイブとスナイプがゲムデウスに取り付き、レーザーはプロトコンバットバイクゲーマーへ変身し空中での機動力を得たことで、空から一方的にガトリングガンをゲムデウスに浴びせ牽制する。

 

ゲムデウス「その程度か…?」

スナイプ「何…!?」

 

だが、ゲムデウスは3人の攻撃をものともせず、宝剣を振るいブレイブとスナイプを退ける。続けざまに宝盾デウスランパートの伸縮自在の爪を伸ばし、空中のレーザーを捕え地上に叩きつけた。デウスランパートの爪は石で舗装された地面を易々と傷つけ、元の位置に収まる。

 

レーザー「ぐああっ!」

ブレイブ「監察医!」

 

ゲムデウス「お前たちの攻撃など効かぬ。全ては無意味な攻撃だ。」

 

ライダー達の集中攻撃を喰らったにも関わらず、3人にはゲムデウスの言葉通りダメージが全く通っていないように感じられた。

 

スナイプ「攻撃を無効化してやがるのか…?だが、ゲムデウスと言ってもそんな能力無かったはずだ…!」

レーザー「そう簡単に倒せる相手じゃないってのは分かっちゃいるんだけどさ…」

ブレイブ「なんだ…この違和感は…?」

 

ゲムデウスに違和感を感じ取ったブレイブは周囲を見渡す。するとある事に気づいた。

 

ブレイブ「あれは…さっき監察医が攻撃を受けた時の…!」

 

先程のレーザーへの攻撃の際に付いた地面への傷。それが赤黒く変色し、広がっていたのだ。まるで地球を蝕んでいるかのように。

 

ブレイブ「まさか!?ヤツはメガビョーゲンと同じ特性を得たというのか!?」

 

ゲムデウス「ふふふ…ぬぅん!」

 

続けざまにゲムデウスがデウスラッシャーを横薙ぎに振るう。斬撃はエネルギーの刃となり、ライダー達に襲いかかった。

 

スナイプ「避けろ!」

レーザー「くそっ!」

 

飛ばされた斬撃を回避する3人。目標を失った刃は背後の家屋に命中し、大きな傷を残して消滅した。その傷痕は先程の攻撃と同様赤黒く変色し、家屋をどんどん蝕んでいた。

 

ブレイブ「やはり間違いない…!今のゲムデウスはバグスターでありメガビョーゲンでもある…!」

 

ゲムデウスはビョーゲンキングダムで大量のナノビョーゲンを媒体とすることで肉体を復活させられた。そして完全に復活するまでの間にナノビョーゲンをゲムデウスウイルスで侵食・順応し、自分自身の力としたのである。異世界での復活の為仮面ライダーに気取られることも無く、己の力を増幅させていた。

 

エグゼイド「この辺りはこの人で最後だ!はあっ!」

男性「ググガ…ッ!……ぐ、うぅ…」

エグゼイド「よし!早く逃げてください!…飛彩さん達は…!」

 

広場一帯から発生した患者をあらかた治療し終えたエグゼイドは広場から離れてしまった為、ゲムデウスを引き受けた3人の元へ向かう。程なくして広場に戻ったエグゼイドを待っていたのは、苦戦を強いられ膝を付く仲間の姿であった。

 

エグゼイド「飛彩さん!大我さん!貴利矢さん!」

ブレイブ「小児科医…!」

エグゼイド「これは…!?」

 

エグゼイドが駆けつけた頃には近隣の街並みのほとんどが蝕まれていた。その中央にゲムデウスが悠然と佇んでいる。エグゼイドは近くにいた飛彩に駆け寄り、ゲムデウスの状態を問う。

 

エグゼイド「飛彩さん!これって!?」

飛彩「ああ…ヤツはバグスターとメガビョーゲン。2つの力を得ているようだ…!俺たちの攻撃も通用しなかった…!」

エグゼイド「そんな……けど!ワクチンを打ち込めばゲムデウスウイルスだけでも抑制できます!」

 

\ダブルガシャット!キメワザ!/

 

エグゼイドはキースラッシャーにドクターマイティXXガシャットを装填し、ゲムデウスに狙いをつけて引き金を引く。

 

\DOCTOR MIGHTY CRITICAL FINISH!/

 

ゲムデウス「ヌウッ!?」

 

キースラッシャーから放たれたワクチンをデウスランパートで受け止めるゲムデウスだったが、受け止めた盾からワクチンが腕を伝い、ゲムデウスの体に広がっていく。

 

ゲムデウス「おのれぇ!だが…!以前と同じようにはいかぬわァ!」

バチィン!

エグゼイド「何っ!?」

 

ワクチンがゲムデウスを包むより先に、ゲムデウスがワクチンを打ち消してしまった。ゲムデウスは少しよろけているように見えるが、致命的な効果を与えるまでには至らなかったようだ。

 

エグゼイド「どうして…!?このガシャットはゲムデウスウイルスへの特効薬のはずなのに!」

スナイプ「まさかゲムデウスの野郎…ウイルスが変異してワクチンへの耐性が付きやがったのか…!?」

 

そう。インフルエンザが毎年性質を変異させる様に、ゲムデウスウイルスもまたビョーゲンキングダムでの環境により変異してしまっていた。ワクチンは全く効かなかった訳では無いが、力を全て削ぐことは出来なかった。

 

レーザー「だが、ラスボスを叩くのは今しかないでしょ!」

\キメワザ!/

 

ブレイブ「同感だ。倒せはしなくとも!」

\TADDLE!/

 

スナイプ「事態を沈静化させんのが先だ!」

\CRITICAL!/

 

エグゼイド「絶対に攻略してみせる!」

\SPARKING!/

 

4人は一斉にキメ技をゲムデウスに撃ち込む。レーザーとスナイプはそれぞれエネルギー弾を、ブレイブは炎剣モードのガシャコンソードから斬撃を、最後にエグゼイドがキックを叩き込んだ。

 

ゲムデウス「ぐおおおおお!!!」

ドゴォン!

 

デウスラッシャーとデウスランパートを弾き飛ばされ、防ぎきる事が出来ずにいたゲムデウスは爆煙に包まれる。

 

レーザー「どうだ!ちっとは効いたかこのヤロー!」

 

啖呵を切るレーザーだが、当然返答はない。むしろ爆発に呑まれたゲムデウスは不気味なほど静かだった。

 

ブレイブ「一体どうなったんだ…?」

 

ブレイブが呟いたその瞬間。煙を斬り裂くように何かが飛び出してきて仮面ライダー達を襲った。

 

エグゼイド「ぐあっ!」

スナイプ「何だと…!?ぐああっ!」

ブレイブ「小児科医!開業医!…ハッ!」

 

始めにエグゼイドが弾き飛ばされ、次に反応しようとしたスナイプが襲われた。2人が反応できない速度で攻撃してきたソレは伸縮自在の宝盾デウスランパートの爪の攻撃だった。ブレイブは思わず2人の名を叫んだが、その間が命取りになってしまった。

 

ガキィン!

ブレイブ「がっ…!」

 

レーザー「オラオラオラァ!……くそっ!やっぱ無理か!うぉあ!」

 

立て続けにブレイブも攻撃を受けてしまい、地面を転がる。レーザーはコンバットゲーマのガトリングガンを掃射するが、弾は弾かれてしまい自身にもゲムデウスの攻撃が直撃してしまった。

 

\ガッシュ-ン/

 

そして、変身が解除されたタイミングと同時に、のどか達が広場に到着したのだ。

 

 

ーーー現在

 

 

変身を解除された永夢の戸惑いが広場に響く。

 

永夢「どうして…ムテキゲーマーの変身が解けたんだ…!?」

 

永夢の変身するムテキゲーマーは『EXムテキアーマー』により、常にダメージを無効にすることが出来る。スーパーアーマーなどは無いため攻撃を受けて怯んだりすることはあるが、基本的に変身解除をされることはまず無い。とすれば、ムテキゲーマーの変身が解けた要因は一つしかなかった。

 

永夢「まさか!」

 

永夢は自分が巻いているゲーマドライバーを仰ぐ。永夢の考えを裏付けるようにドライバーにはマキシマムマイティXガシャットしか挿し込まれていなかった。ハイパームテキガシャットが無くなっていたのだ。慌てて周囲を見る永夢だったが、ガシャットはどこにもなかった。

 

飛彩「何…!?俺のガシャットが消えた…!?」

大我「馬鹿な…!俺のも無くなってやがる…!」

 

永夢だけでなく、飛彩のタドルレガシーガシャットと大我のガシャットギアデュアルβもゲーマドライバーから消えていた。

 

のどか「永夢先生!あれ!」

永夢「なっ…!」

 

のどかの指さした先で永夢たちが見たものは、永夢たちの失ったガシャットを掲げるゲムデウスの姿だった。

 

飛彩「俺たちのガシャットが…!」

ゲムデウス「ふはははは!これが無ければ貴様らは満足に我と戦えまい!」

 

ゲムデウスは先程の攻撃と同時に、ライダー達のベルトからガシャットを奪っていた。ガシャットを奪われてしまってはあらゆる攻撃に耐性を持つムテキゲーマーも変身を保つ事ができなかった。

 

大我「てめぇ…ガシャット返しやがれ!」

ひなた「タイガー!」

 

ガシャットを取り返そうと大我はゲムデウスへ突っ込む。しかし変身すらしていない生身の身体では無謀でしかなかった。大我は手も足も出せず、軽くいなされてしまう。

 

大我「くそっ!」

ひなた「大丈夫!?」

レーザー「院長先生ちょっと頭冷やせって!というか、自分のガシャットには見向きもしねえってかよ!」

 

大我と入れ替わる様に再変身したレーザーがゲムデウスを攻撃する。先程のコンバットバイクゲーマーではなくスポーツバイクゲーマーにレベルアップし、車輪をブーメランのように飛ばす。

 

ゲムデウス「こんなもので我を止めようなどと…!笑わせてくれる!」

レーザー「チッ!やっぱキツいか!」

 

スポーツゲーマの車輪を苦もなく弾き返し、ゲムデウスはレーザーに斬り掛かる。

 

永夢「貴利矢さん!危ない!」

ゲムデウス「グッ…」

カランカラン

ちゆ「剣を…落とした…?」

 

だが、その切っ先がレーザーを捉える前にゲムデウスは突然苦しみ始めた。剣を手放し後ずさっている。

 

ゲムデウス「おのれぇ…!」

永夢「どうして…急に…?」

 

レーザー「……ははっ」

\ガッシュ-ン!/

 

レーザーは状況を理解しているのか余裕綽々と変身を解く。貴利矢はしてやったりの表情でゲムデウスを見る。

 

貴利矢「あれぇ?乗せられちゃった?」

飛彩「どういうことだ、監察医?」

大我「説明しやがれ…!」

 

ゲムデウスの反応に戸惑っているのはゲムデウスだけではなかった。状況を飲み込めていないドクター達も貴利矢に説明を求める。

 

貴利矢「本来ワクチンってのは、病原体を弱毒化して体内に取り込んだりするもんだが、既にゲムデウスウイルスへの特効薬になってるドクターマイティにはちょ〜っと手を加えたんだよ。」

永夢「手を?」

貴利矢「ああ、遺伝子医療のスペシャリスト、八乙女先生と今の幻夢の社長さんのお力添えでな。」

 

貴利矢が挙げた八乙女という名前はドクター達には縁のある名だ。ゾンビクロニクルの騒動の際、紆余曲折を経て永夢たちに協力する姿勢を取っており、消滅した人達を甦らせるための研究に大いに期待される存在でもある。それに加え、ガシャットを生み出せる会社『幻夢コーポレーション』の現社長小星作も協力していたようだ。

 

飛彩「彼女が…!?一体ワクチンに何を施したんだ…?」

永夢「あれ…?よく見たら…」

 

永夢がドクターマイティのガシャットをよく見ると名前の最後に『II』の文字が付け加えられていた。

 

貴利矢「強力なウイルスに負けても再生医療で蘇ってウイルスを駆逐するゲーム。その名も『ドクターマイティXX II』だ!ゲームにナンバリングは付き物だろ?」

永夢「貴利矢さん!」

 

にっ、と笑う貴利矢に釣られ永夢も思わず笑みがこぼれる。ドクターマイティXX IIは復活した敵キャラを強化したワクチンで倒すゲームとなっている。このゲームの真骨頂は一度ウイルスに敗北したワクチンが変異したウイルスの情報を分析・再生することで自己を強化しウイルスを無力化することにある。

 

ゲムデウス「ぐぉぉぉぉ!」

大我「今ならゲムデウスをぶっ潰せる…!」

飛彩「同感だ…!ガシャットも取り戻しゲムデウスも切除する!」

 

弱体化しているゲムデウスを倒すため、手元にあるガシャットを取り出す。だがガシャットを起動するより先にゲムデウスが動いた。

 

ゲムデウス「ぐぅぅ…忌々しい…!我が背を向けることになるとは…ァ!」

のどか「え…!」

ちゆ「一体どういう事!?」

ひなた「空を斬ってる…!?」

 

ゲムデウスはビョーゲンキングダムから脱出したように空間に穴を開けそこに飛び込む。ゲムデウスが飛び込んだ後に空間は元に戻ってしまった。しかし、ゲムデウスがいなくなった為か、ゲムデウスの攻撃で蝕まれていた箇所は元通りとなったのがひとまずの救いだった。

 

貴利矢「あっ!逃げやがった!?」

大我「くそっ!俺たちのガシャットも奪われたままじゃねえか!どうすんだ!」

飛彩「ガシャットもそうだが、それより今は残ったゲーム病の患者を治療するんだ!」

 

のどか「そっ、そうだ!永夢先生!海岸線からの道にもゲーム病の人達がたくさん!」

永夢「くっ…僕は海岸線オペに行きます!飛彩さんたちは治療が終わった患者の避難誘導と他の場所にいる感染者を食い止めてください!」

 

それぞれの役割を瞬時に判断したドクターは直ぐに行動に移す。永夢はマキシマムゲーマーに変身し、時間がかかりながらもワクチンを撃ち込んでいく。残ったドクターは治療を終えた人々を屋内へと避難させた。

 

ちゆ「みんな!私達も手伝いましょう!」

ひなた「そうだね!このまま諦められないし!」

のどか「うん!行こう2人とも!」

 

ちゆの提案でのどか達も自分たちの出来ることを果たす。そうした尽力の末、永夢たちはすこやか市の感染者を全員治療することに成功した。

 

永夢「はぁ…はぁ…」

のどか「お疲れ様です。永夢先生!」

永夢「ありがとう。のどかちゃんも無事でよかった。」

 

治療を終えた永夢はみんなの元へ合流し、一息つく。ひとまずゲムデウスの驚異は去ったが、永夢たちもガシャットを失うなどの被害を受けてしまった。ワクチンがゲムデウスを完全に無効化すれば、これ以上の感染拡大は心配なくなるが、このままではガシャットも道連れにされてしまう。

 

飛彩「どうにかして、ガシャットを取り戻さなくては…」

大我「だが、ヤツはどこに消えた…?空間を裂くような事は前にはしなかった…」

貴利矢「調べようにも、手がかりがな〜…」

 

今後の対策を練り色々な可能性を模索するうちに時間が過ぎていく。

 

永夢「やっぱり、どこに逃げたのかを突き止めないと…」

貴利矢「でも自分たちにはアイツみたいに空間を割ることなんてできねえぞ?」

大我「対象がいなきゃエグゼイドのリプログラミングも意味がねぇしな」

飛彩「何時またヤツが戻ってくるか分からない…どうすればいいんだ…!」

 

と、対策会議が行き詰まってきた時

 

グゥ〜

 

のどか「あっ…」カァァ

ちゆ「そういえば…お昼から何も食べてなかったわね…」カァァ

ひなた「ご飯…食べに行こっか。」カァァ

 

朝から運動し、昼食を摂っていなかったのどか達から空腹のサインが出された。3人は顔を赤らめ思わずお腹を押さえた。

 

貴利矢「へへっ、若いねぇ〜」

飛彩「ふっ…そうだな。疲労回復の栄養補給も必要になってくるか。」

大我「んじゃ、ひとまず飯だな。」

永夢「のどかちゃん、良かったら一緒にどうかな?避難を手伝ってくれたお礼に僕達でご馳走するよ。」

 

のどか「ふわぁ〜!いいんですか!?」

ちゆ「あ、ありがとうございます!」

ひなた「タイガーの奢り?やったー!」

 

張り詰めていた空気が紐解かれるように皆の顔に笑顔が宿る。後からやってきた医師たちに避難場所や検査の受け入れなどを引き継ぎ、歩き出す。戦士たちの束の間の休息だが、戦っている彼らもまた人間である。

 

永夢「ゲムデウスは…必ず攻略してみせる。」

 

一瞬立ち止まり笑顔を引き締め、想いを口にする永夢。ゲムデウス攻略を胸に誓い、仲間と共に歩き出した。

 

 

第5話 終

 

 



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最終話 花と水と光

遂に書きあげました。
最終回です。
ここまで応援してくださった方々に感謝を込めて遅くなりましたが完成致しました。

書いてるうちにああした方がいいこうした方がいいと迷走気味になってしまいましたが、最終的には鈴闇の望む形にできたと思います。

ご期待いただいた方々に応えられたら幸いです。
それでは最終回をよろしくお願いいたします。


ゲムデウス「ぐぬぅぅぅ…」

 

人間の世界とビョーゲンキングダムの狭間。そこは赤黒い靄がかかった宇宙のような場所でどちらの世界の住人も与することの無い無人の世界となっている。その場所でゲムデウスはワクチン投与による苦痛に悶えていた。

 

ゲムデウス「おのれぇぇ…小癪な真似を…ぐぉぉ!」

 

撃ち込まれたワクチンは少量であり、普段なら難なく対応出来るはずであったが、進化したワクチンはウイルスに敗れる度に進化して蘇り、ゲムデウスを無力化するべく奮闘する。それはゲムデウスにとって永遠に続く痛みとの戦いである。

 

ゲムデウス「このような場所で終わる訳にはァ…」

 

苦悶の声を上げるゲムデウスが手を伸ばした先にあるのは、宙に浮かぶ金色のガシャットだった。

 

 

ーーー沢泉

 

 

温泉旅館『沢泉』の一室。そこには朝から集ったドクター達が先日起こったゲムデウスによるゲーム病感染拡大防止の対策会議が執り行われていた。

 

永夢「ひとまずゲムデウスウイルスの被害は収まりましたが…」

飛彩「余談は許されない。街の人々も何時またゲーム病が再発するか不安に思っている」

大我「やることは決まってんだがな。奪われたガシャットを取り返した上でゲムデウスをぶっ潰す。だが…」

貴利矢「ゲムデウスがまた出てくんのをひたすら待たなきゃなんないって現状だな。そもそも前のワクチン投与で消滅したのかもしれないって可能性もある」

 

先日の戦闘で街に大きな被害をもたらした最強のバグスター、ゲムデウスは改良を施したワクチンガシャット『ドクターマイティXX II』により撤退し、姿を隠してしまっている。

 

貴利矢「いつまた出てくるか分かんないってのは患者にとって結構なストレスになっちまうぞ。次出てくんのが10年とか20年後とかだったらシャレにもならねぇ」

大我「どうにかしてゲムデウスを引きずり出す方法を考えるしかねぇか」

 

ドクターたちを悩ます問題は、ゲムデウスの逃げ込んだ先である。彼は空間を裂き、ビョーゲンキングダムと人間の住む世界の境目と言うような場所へ逃げ込んでしまい完全に行方を眩ましてしまっている為、永夢達ドクターにその足取りすら掴ませることは無かった。

 

飛彩「それだけじゃない。奴は地球を蝕む力を手に入れてしまった。最早人間の命だけじゃない、地球上の全ての命を脅かす存在となっている」

 

飛彩の言う通り、ゲムデウスはバグスターと異なる存在『メガビョーゲン』の力を新たに有していた。メガビョーゲンは地球を蝕みビョーゲンキングダムの者にとって住みやすい環境へ変化させてしまう力を持っている。

 

大我「そのせいで俺達の攻撃もまるで通用しなくなってやがる」

永夢「今僕達の手元にある対抗策は…リプログラミング能力のあるマキシマムマイティXと」

飛彩「監察医が強化したゲムデウスワクチン。ドクターマイティXX IIのみか」

 

現状の永夢達の装備を軸に、メガビョーゲン化したゲムデウスへの対策を模索していく。リプログラミングとワクチン、2つのガシャットを上手く使わなければゲムデウスを攻略することはまず不可能であると言うのが、4人共通の見解となっていった。

 

貴利矢「とりあえずゲーム病発症の通報もないし今回は解散ってことで。少し頭切り替える時間も必要だろ。じゃ、お先に失礼するわ」

 

対策は2本のガシャット以外特に思いつかず、会議は行き詰まってしまった。貴利矢が部屋を後にし、大我もひとまず自室へ戻っていった。

 

永夢「プリキュアの力が必要なんでしょうか…」

飛彩「そうかもな…だが、彼女らの攻撃も恐らく…」

 

永夢はふとメガビョーゲンへ対抗できる存在の名を呟く。実際にプリキュアの戦いを見た2人はその角度からも対策がないか模索したが、バグスターにプリキュアの攻撃が通らない以上戦力として数えられる望みは薄い。何より彼女達を自分達の戦いに巻き込みたくないという気持ちが大きかった。

 

飛彩「俺達も少し気分を変えよう。」

永夢「そうですね。何か甘いものでも食べに行きましょうか。」

 

永夢も飛彩も頭を唸らせるだけとなってしまい、気分転換のため部屋を後にした。

 

 

ーーーのどかの部屋

 

 

のどか「とりあえず街のみんなも永夢先生たちが治してくれたけど…」

ちゆ「またあの怪物が出てきたら…」

ひなた「同じことが繰り返されるかもしれないって事に…」

 

その頃、のどかの部屋に集まった3人も永夢たちと同じ話をしていた。ゲムデウスウイルスによるゲーム病の症状はまだ年端もいかない彼女らにとってかなり衝撃的な光景だった。

 

ラビリン「それだけじゃないラビ!あの怪物の攻撃で地球が蝕まれていたラビ!」

ペギタン「エレメントさんが取り込まれてたとしたら…助けられるのは僕達しかいないペェ…」

ニャトラン「けどプリキュアの攻撃はあの怪物には効かなくて…仮面ライダーの攻撃ではメガビョーゲンを倒せなくて…あぁ〜もう!ごっちゃになってくるニャ!」

 

パートナー達も交えゲムデウスの驚異に対して話し合うが、永夢達ドクターと違い具体的な対策は何一つ浮かばなかった。ビョーゲンズが絡んでいたことには間違いなさそうだが、前回ビョーゲンズが誰も現れなかったことを考えるとあちらでも想定外の事態なのだろう。しかしこのまま放っておけばどの道ゲムデウスが地球を蝕んでしまい、最終的にキングビョーゲンの復活を許すこととなってしまう。

 

のどか「それだけは絶対に止めないと…!」

ひなた「でもでも、あの怪物どこに逃げたの!?」

ラビリン「多分、のどか達の住む世界とビョーゲンキングダム。ふたつの世界の狭間にいるんだと思うラビ…」

ニャトラン「一種のワープホールみたいなもんだな」

ちゆ「それを鏡先生達に伝えられたらいいんだけど…」

のどか「そうしちゃうと私達がプリキュアだって言っちゃうようなものだもんね…」

ペギタン「そもそも伝えられたとしても怪物を倒しに行く方法がないぺェ…」

 

ゲムデウスの逃げ込んだ先に手を出せるのはビョーゲンキングダムから人間の世界へやってくる者たち。すなわちビョーゲンズの面々だけであった。3人と3匹はうんうんと唸り続ける。

 

のどか「あ!そうだ!始めからプリキュアになって色々教えに行くって言うのはどうかな!」

ラビリン「ダメラビ!」

 

ちゆ「先生たちが宿泊してる部屋にこっそりメモを仕込んでおこうかしら?」

ペギタン「それもそれで怪しまれるペェ…」

 

ひなた「アタシ達がプリキュアと友達ってことにすれば!」

ニャトラン「絶対すぐにバレるニャ…」

 

三者三様に案を絞り出すが、身バレのリスクがどうしても付きまとってしまい、パートナー達から止められてしまう。案を出しては振り出しへ戻るのを何度も繰り返すこととなった。

 

ひなた「ダメだぁ〜…これじゃあどうやってもタイガーたちに詳しく教えられないよ…」

ちゆ「早くあの怪物を倒さないと…もしビョーゲンズが怪物と同時に地球を蝕みに来たらお手当てどころじゃなくなるかもしれないわ」

 

その言葉で3人の脳裏に最悪の光景が浮かぶ。地球全土が赤黒く蝕まれ、全ての命が死に絶えてしまった世界を想像するだけでその場にいる全員が肩を竦める。

 

のどか「地球は私達が守らないと…!」

ちゆ「ええ、でも今は1度先生達にお話を伺ってみましょう。もしかしたら先生達も何か作戦があるかもしれないし」

ひなた「さんせーい!」

 

ちゆの提案で3人は永夢達の元へ向かうことにした。最も誰も連絡先などを知らないため行き当たりばったりだが、永夢たちと同様気分転換も兼ねて3人は花寺家を後にした。

 

 

ーーー沢泉

 

 

貴利矢「たっだいま〜……ってあれ?永夢も大先生も出かけてんのか。飯でも食いに行ったのかね」

 

1時間ほどして一足先に帰ってきた貴利矢は我が物顔で永夢と飛彩の部屋へ上がり込む。頭を切り替え、ゲムデウスを攻略するためのプランを再び模索し始めた。

 

貴利矢「これがこーなってあれがそうなっからー……ん?」

 

資料を手に攻略の糸口を探っていると、不意に戸がノックされた。

 

貴利矢「どぞー」

 

資料に目を向けながら特に拒むことも無く来訪者を部屋に通す。資料から目を上げた貴利矢の前に3人の少女が部屋に入ってきた。

 

ちゆ「失礼します。先生、お忙しい中ですが少しお話をさせて頂いてよろしいでしょうか?……あら?」

のどか「永夢先生、昨日の怪物のことで聞きたいことが…!……あれ…?」

ひなた「タイガー!いるー!?」

 

貴利矢「え?なに?永夢達のお客さん?そしてタイガーって誰?もしかして院長先生?」

 

3人の少女と貴利矢とは特に深い関わりが無いため、両者困惑の表情を浮かべた。

 

ちゆ「確か、先日先生方と共に戦っていた…」

貴利矢「あー、そういえばお嬢ちゃんたち昨日の避難誘導手伝ってくれてたっけ。悪いね、あん時バタバタしてたし」

のどか「い、いえ!こちらこそ突然お邪魔してすみません!それで…永夢先生は今日はお仕事でしたか?」

貴利矢「永夢達はどこかに出かけたみたいよ?行き先までは聞いてないけど」

ひなた「タイガーも出かけちゃったのかな?」

貴利矢「院長先生は隣の部屋だから覗いて見たら?」

ひなた「うん!」

 

すっかり大我に懐いたひなたは言われるがまま隣の部屋へ駆け込んで行った。

 

\タイガ-!/

\ハ!?ナンデオマエガココニインダヨ!/

 

貴利矢「会えたみたいだね」

ちゆ「ひなたが騒がしくてすみません…」

 

それぞれの質問に答え、隣の部屋から聞こえる喧騒をスルーした貴利矢はひとまずちゆとのどかを招き入れ話を聞いた。

 

貴利矢「なるほどねぇ。そっちのお嬢ちゃんが永夢が研修生時代に診療してた患者さんで、こっちのお嬢ちゃんがこの旅館の看板娘さんって訳か。そういや昨日もみんなで飯行ってたっけ?自分は急用入っちゃって行けなかったんだよね」

 

のどか「はい!永夢先生には昔も今もすごく良くしてもらってます!」

ちゆ「バグスターから人々を守る。九条先生も命を賭して戦っているドクターのひとりなんですね。」

 

貴利矢「そんな大層なもんじゃないって」

 

互いの自己紹介を終え、ちゆが本題を切り出す。話の内容はゲムデウスがどういう存在かという事、先日からのゲムデウスの足取り、倒す手段など、とにかくゲムデウスに関する情報を集めている感じだった。貴利矢はとりあえずゲムデウスがどういう存在なのかということに話の焦点を当てた。

 

貴利矢「とまぁゲムデウスのことについてはこんな感じだな。幻夢コーポレーションの馬鹿社長が生み出しちゃった最強のラスボスってワケ」

のどか「そんな大変なことになってたのに私全然覚えてないや…」

ちゆ「それは仕方ないわよ。のどかも私もまだ小さかったんだし」

貴利矢「そうそう。幸いなことにウイルスに感染もしてなかったみたいだし、覚えてなくても仕方ないっしょ」

ちゆ「それで…あの怪物…ゲムデウスを倒す手段はあるんですか!?」

貴利矢「ん〜それは…」

 

ちゆが若干食い気味に貴利矢へ肝心な質問を投げかけたが、貴利矢が返答を出す前に部屋の扉が勢いよく開かれ、誰かが慌ただしく部屋に入ってきた。

 

ひなた「助けてちゆちー!タイガーがめっちゃ怒ってる〜!」

大我「待てっての!」

ちゆ「ひなた!?」

貴利矢「あれ?どったの院長先生?」

 

部屋に飛び込んできたのは先程隣室の大我の元へ飛んで行ったひなたとそのひなたを血相を変えて追う大我だった。

 

大我「どうしたもこうしたもねえ!さっさとガシャットとゲーマドライバーを返せ!」

貴利矢「は…?」

 

大我の怒号を聞き、貴利矢は反射的にひなたを見る。ひなたは腰にゲーマドライバーを装着し、右手には大我の持つガシャット『バンバンシューティング』が握られていた。

 

貴利矢「ちょっとちょっと、危ないからそれ返しなさいって」

ひなた「1回だけ!1回だけアタシも変身してみたいの!すぐに返すから!」

大我「やめろっつってんだろ!レーザー!引っ捕らえるぞ!」

貴利矢「相手は女の子だけどコレはしょーがねぇなぁ…よっとぉ!」

ひなた「うわわわわ!」

 

ひなたからベルトとガシャットを取り返さんと2人は身を乗り出しひなたに迫った。が、偶然か狙ったのかは分からないが、ひなたは2人の間を縫うようにすり抜け、難を逃れた。それと同時に大我と貴利矢は敷いてあった座布団を踏んづけて滑り、バランスを崩して転倒してしまった。

 

大我「しまっ…」

貴利矢「っつぅ〜…」

のどか「だ、大丈夫ですか!?」

 

ひなた「今がチャ〜ンス!のどかっち!ちゆちー!見ててね!アタシの変身!」

 

\バンバンシューティング!/

 

好機到来と言わんばかりに自信満々にガシャットを起動したひなただったが、待っていたのは変身した自分ではなくつい最近経験したあの苦しみだった。ガシャットがタイトルコールをした瞬間にひなたの体にノイズが走る。

 

ひなた「うっ…なん…で…」ザザッ

のどか「ひなたちゃん!」

ちゆ「ひなた!」

 

ガシャットを起動と同時にゲーム病に感染したひなたはその苦しみに耐えきれずガシャットを手放し床にうずくまってしまった。ひなたを心配し2人が駆け寄る。

 

貴利矢「ホラ言わんこっちゃない!」

大我「だからやめろって言ったんだよ!」

ひなた「うぅ…」

 

ひなたのゲーム病は貴利矢が持ち込んだリボルワクチンにより程なくして沈静化した。回復したひなたはそのまま無罪放免…とはいかず、畳の上で直に正座させられていた。ひなたの前には腕組みをして立つ大我と貴利矢。そして何故かちゆが険しい表情で並び立っていた。

 

ひなた「足、痺れてきたし…」

大我「足痺れんのとゲーム病で苦しむのはどっちがマシだ」

ひなた「足痺れるほうで…」

貴利矢「医者の忠告はしっかり聞いといた方がいいぜ?」

ちゆ「そうよ!大体なんで急に変身しようとしたの?」

ひなた「うぅ〜、それは〜…」

 

立て続けに繰り出される叱責の言葉にひなたがどんどん小さくなっていくような感じがする。

 

ひなた「変身してみたかったのと…変身できたらあの怪物と戦えるようになってみんなを守れると思ったから…」

のどか「ひなたちゃん…」

 

変身してみたいと言う言葉の裏には、ひなたなりの考えと思いがあった。誰かを守るために変身しようとしたひなたの気持ちは大我にはよく分かった。

 

大我「ったく、もうガシャット持ち出すんじゃねえぞ」

ひなた「は〜い…」

 

ひなたの気持ちを汲みとり、矛を収めた大我は自室に戻っていった。貴利矢はやれやれと言ったように座り直し再び資料を手に取る。

 

貴利矢「ま、そういうことだから。変身できんのは俺たちドクターだけなのよ。適合してないとガシャットの起動だけでゲーム病になっちゃうから」

ひなた「それならそうと言って欲しかったし…」

ちゆ「それを言う前に変身しようとしたんでしょう?」

ひなた「う…ごめんなさいぃ…」

 

ばつが悪くなったひなたは大人しくその場に座り、項垂れるようにテーブルに突っ伏した。それに続きちゆとのどかも座り直した

 

ちゆ「それで…ゲムデウスへの対抗策とは一体…」

貴利矢「その前に、自分からもひとつ質問させてもらっていい?」

のどか「な、何でしょうか?」

貴利矢「そもそもなんでそんなにゲムデウスへの対策を聞きたい訳?」

ちゆ「そ、それは…」

 

貴利矢からすれば当然の質問なのだが、ゲムデウスへの対策で焦っていたちゆたちはそのことを失念していた。貴利矢はその焦りに違和感を覚えたのだ。

 

貴利矢「ただゲムデウスの事知りたいだけならさっきの説明だけで充分なはずだ。けど君たちは自分たちがどうやってゲムデウスを倒すかって事まで踏み込んできてる。医療関係者とかならまだしも、君らは普通の学生さんでしょ?それってちょーっとおかしくない?」

のどか「う…」

 

貴利矢の疑問にのどか達は言葉を詰まらせる。自分達がプリキュアである前にただの中学生だということを思い知らされた。

 

ちゆ「先生方の対策を知っておけば、私達もお手伝いが出来ると思って…」

のどか「そうです!この前みたいに避難誘導したり、患者さんのお手当てを手伝ったりするために…!」

貴利矢「なーるほど。確かにこないだ手伝ってもらったのはホントに助かったよ。………けど、本当にそれだけ?」

ちゆ「え…?」

貴利矢「自分には他に理由があるように見えるんだけど。それもかなり危なっかしい秘密がさ」

のどか「……それは」

 

貴利矢は死因が分からない遺体を調べ、遺体に隠された嘘を暴く監察医だ。今まで幾度となく嘘を見抜いてきた経験がここでも遺憾無く発揮された。

 

貴利矢「なんかさ、似てるんだよ。永夢達に」

のどか「永夢先生達に…ですか…?」

貴利矢「ああ。自分の危険も顧みず誰かのために何かをしようってところが特にな。あんなバケモン目にして自分たちを手伝うって言えるのは絶対何かあるでしょ。例えば…」

ちゆ「わ、私たちは…私達に出来ることをやろうと話し合って決めたんです!」

ひなた「そうそう!確かに怪物は怖いけど!アタシ達にも何か手伝わせて!」

のどか「お、お願いします!」

 

ガラッ

 

プリキュアの事に勘づかれそうになり冷や汗を流すのどか達が身を乗り出して貴利矢に迫ると同時に、部屋の扉が開けられた。振り返ったのどか達の前に、外出から戻った永夢と飛彩が現れる。

 

飛彩「さて、これからの話についてだが…ん?」

永夢「戻りました。ってあれ?のどかちゃん?」

貴利矢「おっ、おかえり〜。お客さn…」

のどか「永夢先生!」

ちゆ「鏡先生!」

のどか・ちゆ「あ、甘いもの食べに行きませんか!?」

ひなた「おぉ〜!いこいこ!」

 

救いの手が現れたと言わんばかりに貴利矢が言い終わる前にのどかとちゆは帰ってきた2人を連れ出す。ひなたは状況を特に理解せずに2人について行った。

 

貴利矢「んが来てる…ぜ…。あ、あのー?」

 

気づいた頃には1人になっていた貴利矢は、仕方なく隣室の大我の元へ向かった。

 

 

ーーー平光カフェ

 

 

飛彩「それで、どうしていきなり俺たちを連れ出したんだ?」

ちゆ「九条先生からゲムデウスのお話を聞いたんです。それで次は先生方からその対策を聞きたくて」

永夢「ゲムデウスの攻略法…?」

のどか「はい!それで、私達も何かお手伝い出来ることがあると思って!」

ひなた「何でもするし!」

 

話し相手を切り替えた3人はカフェへ移動し、改めて永夢達から話を聞いていた。

 

永夢「攻略法…か。飛彩さん」

飛彩「ああ。彼女たちをこれ以上巻き込んではならない」

のどか「えっ…?」

 

ゲムデウスの攻略法を聞けると意気込んでいたのどか達は永夢と飛彩の言葉に目を丸くした。

 

永夢「ごめんねのどかちゃん。ゲムデウスはとても危険な相手なんだ。成り行きだったけど昨日は手伝ってくれて本当にありがとう。でも、ここから先は僕達でゲムデウスを攻略する」

飛彩「そういうことだ。君たちの気持ちはサンキューだが、これ以上俺たちの戦いに関わる事はノーサンキューだ」

ちゆ「あっ…」

ひなた「ちょっ…!」

 

永夢と飛彩はそう言うと会計を全て済ませて沢泉に戻って行った。3人の女の子の前に残ったのはそれぞれが頼んだドリンクの容器だけになった。

 

ちゆ「そう…よね。私達、普通の女の子だもの」

ひなた「うん…プリキュアになってないとただの中学生だし…」

のどか「永夢先生…」

ラビリン「のどか…」

ペギタン「ちゆ…」

ニャトラン「ひなた…」

 

ひなた(タイガーたちはアタシたちが邪魔だなんてこれっぽっちも思ってない)

ちゆ(むしろ私たちのことを考えてくれているからこそ、巻き込みたくなくて遠ざけようとしている…)

のどか(でも、やっぱり私達も力になりたい…)

 

3人は言葉にしないものの、同じ思いを心に秘めていた。しかし、沢泉に戻った永夢を追いかけることは出来なかった。出来ることをやろうとする思いと自分たちの身を案じてくれる永夢達の思いがぶつかり合うように足を止めてしまった。3人はこれ以上ゲムデウスのことを話せず、それぞれ帰路についた。

 

 

ーーービョーゲンキングダム

 

 

ダルイゼン「結局あの身体はほっといていいの?」

キングビョーゲン「構わヌ…ナノビョーゲンを媒体としタことで奴ハ地球を蝕ムことが出来るようだからな。地球を蝕み終えたその時、我は我ノ肉体を甦らせることが出来る」

 

ゲムデウスが復活したビョーゲンキングダムでは、ビョーゲンズとキングビョーゲンが人間界でのゲムデウスの動きに注目していた。

 

シンドイーネ「でも、アイツは仮面ライダーの攻撃で撤退しちゃいましたよ?そんなことで地球を蝕んでられるのかしら?」

グアイワル「それでやられるようならそこまでの奴だったということだ。その時は俺たちがメガビョーゲンで地球を蝕みに行けばいい」

ダルイゼン「んじゃ、わざわざ地球に行くのもダルいし俺は適当に傍観しとく。仮面ライダーもプリキュアも倒せたら一石二鳥だしね」

 

キングビョーゲン「ククク…奴の力はあんなモノではナイ…恐らく今頃更なる力ヲその身に宿シているダろう…」

 

ビョーゲンキングダムにキングビョーゲンの勝利を確信したような笑い声が響き渡った。

 

 

ーーー花寺家

 

 

永夢と飛彩を見送り、夕方になる前に自宅へと帰ってきたのどかを待っていたのはいつもとは違う騒々しい父と母の姿だった。

 

のどか「ただいま〜」

やすこ「のどか!おかえりなさい!あなたも直ぐに準備して!」

 

帰宅したのどかはキョトンとした表情を浮かべた。この後出かける予定などないはずであるのに、両親は慌ただしく荷物を纏めている。

 

のどか「ど、どうしたの!?お父さん!お母さん!」

たけし「ついさっき衛生省から通達があったんだ。バグスターとの大規模な戦闘が始まるから住人の僕達はあらかじめ避難してほしいって」

のどか「えっ!?」

 

衛生省は永夢達が打ち出したゲムデウス攻略に基づき、激しい戦闘とウイルス感染の被害拡大を懸念し街の住民を避難させることにした。避難先はのどか達の通う中学校を含め、学校や森林公園と言った広いスペースを確保できる場所が選ばれている。

 

のどか「永夢先生…」

 

住民を全て避難させなければいけないほどに今回の相手は強大で、恐るべき力を持っているのだと突きつけられた気がした。街の人間全員を巻き込まないようにする判断をしなければならないほど、途方もない存在なのだと。

 

やすこ「さ!早く!」

たけし「生徒とその家族はみんな学校に避難することになってる。のどかの友達にもすぐに会えるよ」

のどか「う、うん!」

 

急いで荷物をまとめ、ラテを抱えたのどかは両親と共に学校へ向かった。学校までの道のりでは衛生省の職員と思われるスーツ姿の人間が何人も避難誘導にあたっている。

 

のどか「こんなに…大勢の人が…」

ラテ「わん」

たけし「ああ。昨日の病気の原因になっている怪物を倒すために、これだけの人達が頑張っているんだ。」

やすこ「ええ。私達の命を守るために最善を尽くしてくれているのよ。」

 

衛生省職員の誘導もあり、避難はスムーズに行われた。すこやか市から聞こえる声は徐々に数箇所に集まりつつある。程なくして学校に到着したのどかはちゆとひなたと合流することができた。

 

のどか「ちゆちゃん!ひなたちゃん!」

ちゆ「のどか!」

ひなた「のどかっち!」

 

のどか「ちゆちゃん!永夢先生達は…!?」

ちゆ「それが…私が帰った時にはもう居なくて…!」

ひなた「タイガーたち…どうやってあの怪物を呼ぶつもりなんだろ…」

 

ひなたの疑問はここにいる全ての人間が考えていてもおかしくないものだった。人間があの怪物を無理やり引きずり出すことなど不可能ではないのかという声も周囲から聞こえてくる。

 

職員A「先日ゲーム病を発症された方はこちらでワクチンの再発予防摂取をお願いします!発祥されていない方々にも後ほど予防接種をお願いいたします!」

職員B「慌てずに!ワクチンは皆さん全員に行き渡りますので!」

 

衛生省は貴利矢たちが増産したドクターマイティXXガシャットを使い、ゲムデウス出現に伴う感染拡大予防に追われていた。

 

男性「だけど!本当にその怪物は現れるんですか!?」

女性「大切な打合せがあったんですよ!?もしこのまま何も起こらなかったらどう責任を取ってくれるんですか!」

 

突然の避難命令に不満を持つ者も中には少なからずおり、職員へ抗議している人々の姿も見受けられた。

 

ちゆ「みんな…不安に苛まれてるわ…」

ひなた「アタシたち…本当に何も出来ないんだね…」

のどか「うん…」

 

プリキュアとしてビョーゲンズと戦ってきた3人は無力感に包まれる。カバンの中のパートナーたちと抱きかかえているラテが不安そうにのどかたちを見つめていた。

 

のどか「あれ……?なんだろう……?」

 

その時、のどかは街の上空に違和感を感じ取った。何かが円盤のように宙に浮いており、それが空中で静止した瞬間、空に1本の線が出来たように見えた。

しかしそう思ったのもつかの間、その線は瞬く間に数を増やしていった。

 

のどか「も、もしかして…!」

ちゆ「ゲムデウスが…!」

ひなた「出てきちゃうの!?」

 

距離こそ離れているが、しっかりと目視で確認できるほどハッキリと空にヒビが入っている。気づけば喧騒は止み、誰もが息を飲んで青空に浮かぶヒビを見ていた。そして…

 

パリィン!

 

と破砕音が聞こえてくるように空が割れ、眩い光と共に最強のバグスターが姿を現す。

 

のどか「え…?」

超ゲムデウス「………」

 

しかし、現れたバグスターは先日とは比べ物にならないほどの大きさに変貌を遂げていた。夕焼けに映し出された巨影は幻のように揺らめいていた。

 

 

ーーー1時間前

 

 

ゲムデウス攻略作戦が遂行される1時間前、ドクターたちは再び集結し、作戦の最終確認をしていた。ゲームスコープの通信で日向恭太郎も会議に参加している。

 

永夢「という作戦で、ゲムデウスを僕達の世界に呼び戻します」

恭太郎『そうか…わかった。では作戦を始める前に住民の避難を衛生省で行う。広い敷地内にすこやか市内の人々を集め、街をできる限り無人の状態へしておく』

飛彩「了解した。しかし、ゲムデウスが出現するとゲーム病の再発とそれに伴うパンデミックが起きる危険性があるのでは?」

 

飛彩は人々を密集させることへのリスクを問う。人々を集めることでクラスターが発生することを懸念しているのだ。

 

恭太郎『その点については…』

貴利矢「自分たちが作ったゲムデウスワクチンの量産型ガシャットで対応する。でしょ?」

恭太郎『ああ。九条君と八乙女先生の研究で強化されたゲムデウスワクチンには劣るが、それでも強力な効果を発揮してくれるだろう。これを街の人々に予防として接種してもらう』

大我「そいつも衛生省の職員が何とか出来んのか?」

 

ガシャットはゲーマドライバーやガシャコンウェポンシリーズに装填して効果を発揮するアイテムだが、一般の医療では当然使用する場面も器具もない。

 

恭太郎『その点についても心配はいらない。衛生省と幻夢コーポレーションが共同で改良したバグヴァイザーを使い、ワクチンを散布する。ガシャット自体は1スロット分の使い捨てだが、大量生産が出来ているため数に問題はない』

大我「…そうか」

 

バグヴァイザーと聞いて一瞬思う所があったようだが、現在の幻夢コーポレーションは信頼するにおけると判断したのかそれ以上大我は何も言わなかった。

 

恭太郎『では、避難のことは我々に任せてくれ。君たちはゲムデウスの速やかな攻略を頼む』

永夢「ハイ!」

 

攻略法を定め、身支度を終えたドクターたちは沢泉を後にする。程なくして、すこやか市中に避難命令が下された。

 

飛彩「街の人々には申し訳ないが、今は耐えてもらうしかない」

大我「ゲーム病になるよりマシだろ」

貴利矢「そうそう。それに今回はこっちがゲムデウスを引きずり出すんだ。余計な被害が出る心配も幾分マシになるでしょ」

 

永夢「そうですね。準備のし過ぎということはありません。ゲムデウスはそれだけの相手です」

 

衛生省の避難命令によって静寂に包まれた街中を歩く4人は先日戦った広場へと到着した。それぞれゲーマドライバーを腰に巻き、戦闘準備を終えるのと同時に永夢のゲームスコープが呼び出し音と共に振動する。

 

prrrrr♪

 

恭太郎『住民の避難は完了した。永夢…みんな…始めてくれるか…?』

永夢「ありがとうございます。恭太郎先生」

大我「ゲムデウスは俺たちがぶっ潰してやる」

飛彩「ああ、これ以上ゲムデウスの脅威はノーサンキューだ」

貴利矢「んじゃ、いっちょやりますか。永夢!」

永夢「ハイ!」

 

ゲムデウスへの対策は打てるだけ打った。後はゲムデウスを攻略するのみ。その信念を胸に永夢がポケットからガシャットを取り出す。永夢は一瞬ガシャットを見つめたが、すぐに空へ目を向ける。そしてガシャットの起動ボタンを力いっぱい押し込んだ。

 

\KAMEN RIDER CHRONICLE/

 

起動されたガシャットから低音の電子音声でタイトルコールが行われる。永夢が起動したのは大我が持ってきていた仮面ライダークロニクルガシャットであった。

そしてクロニクルガシャットからドクターたちの手元にあるアイテムが光と共に放出される。それぞれが手を差し出すとそれはクロニクルのバグスター攻略の証、『ガシャットロフィー』へと姿を変えた。

 

飛彩「行くぞ…」

大我「ああ…」

 

4人は13本のトロフィーを掲げる。するとトロフィーが輪を描くように宙に浮かび、空高く浮上していく。一定の高さに到達した時、オレンジ色になりつつある空に一筋の線が浮かび上がった。

 

飛彩「よし!これならきっとゲムデウスを呼び出せるはずだ…!」

永夢「それにしても、ニコちゃんが攻略したクロニクルガシャットにバグスターのガシャットロフィーが残ってて良かったです。それにガシャットを持ってきてくれていた大我さんにも感謝しないと」

大我「感謝されることなんか何もねえだろ」

 

そう。永夢達のゲムデウス攻略法の第一歩はゲムデウスを引きずり出すことである。

その第一歩の為に取った方法とは、ゲムデウスを呼び出す本来の手順。すなわち「13本のガシャットロフィーを集めゲムデウスを降臨させる」というものであった。実際上手くいくかは分からなかったが、この方法しかなかったのだ。

 

貴利矢「さーて、後は神のみぞ知るってやつだな」

 

貴利矢が呟くのと同じタイミングで夕焼けの空に架かる光の線は瞬く間に空間にヒビを作り始める。先日ゲムデウスが逃げた時と同じような光のヒビ。それを見たドクターたちは成功を確信した。

 

貴利矢「よっしゃ!後はラスボスを攻略するだけだ!チェッカーフラッグは貰ったぜ〜!」

大我「覚悟しやがれ、ゲムデウス…!」

飛彩「短期決戦だ。迅速にオペを終わらせる!」

 

ガシャットを構え、ゲムデウスが現れるのを今か今かと待ち構える。その中でただ1人永夢は強烈な違和感を感じ取っていた。

 

永夢「おかしい…前にゲムデウスが現れた時には、こんなに大きなヒビじゃなかった…。ゲムデウスを呼び出すことにはおそらく成功してる…だったら…………まさか!?」

 

永夢は何かに気づいたが、その予感は的中することとなってしまった。ヒビはどんどん大きくなっていくが、10階建てのビルほどの大きさまで広がったところでピタリと止まってしまった。

 

飛彩「これは…どういう事だ…!?」

大我「ゲムデウスが出てくんじゃねえのか!?」

 

流石に飛彩達も違和感を覚え、数歩後ずさった。が、それと同時にヒビを突き破るように双頭の龍が勢いよく顔を出した。

 

貴利矢「オイ!コイツはまさか!?」

 

永夢が確信したゲムデウスの状態に貴利矢も気づく。龍は空間を食い荒らすように残ったヒビを砕き、その姿の全貌を現す。

 

永夢「超…ゲムデウス…」

 

空間の向こうから巨大な姿へと変化したゲムデウスが悠々と降臨する。永夢達は予想だにしていなかった事態にしばらく飲み込まれてしまった。

 

 

ーーー学校

 

 

超ゲムデウスの降臨に怯える人々は体育館や教室に移動していた。そんな中、のどかはゲムデウスの方を見て不安の表情を浮かべていた。

 

ラテ「クシュッ!!」

のどか「えっ!?」

ちゆ「ラテ!」

ひなた「早く診察しなきゃ!」

 

そんな中、ゲムデウスが現れると同時にラテの体調が悪化してしまった。のどかはちゆとひなたと一緒に校舎の影に移動し診察を行った。

 

のどか「ラテ!大丈夫!?」

ラテ『あの怪物の中で、3つの力が泣いてるラテ…』

 

聴診器をあて、心の声を聞いたのどかは思わずゲムデウスに振り返る。ラテを治すには、あの怪物に立ち向かわなければならないことを意味していたからだ。

 

ひなた「あんなのと…戦わなきゃいけないの…?」

ちゆ「バグスターに私達の力は通用しないわ…でも…」

のどか「このままじゃ…ラテが!」

 

バグスターに対しては例外なくプリキュアの力は効かなかった。更に昨日のゲムデウスウイルスによるゲーム病を発症した人々の症状が脳裏をよぎり、のどか達の身体を強ばらせた。

 

ラテ「クシュッ!クゥン…」

ラビリン「ラテ様!?」

ペギタン「早くお手当てしなきゃペェ!」

ニャトラン「けどどーすりゃいいんだよ!アイツに攻撃が通用しないとどうしようも無いニャ!」

のどか「ラテ………ッ!」

 

ラテの苦しむ姿を見て、のどかは決心する。弱っていくラテを抱きかかえ、ラビリンをカバンに入れて駆け出した。まず向かったのは両親の元だ。

 

たけし「のどか?どうしたんだ?」

やすこ「まぁ!ラテちゃん!どうしたの!?」

 

一目でラテの様子がおかしいと分かるほど今のラテは苦しそうな表情をしている。

 

のどか「お父さん、お母さん。ラテ、具合が悪くなっちゃったみたいなの。だから……私……お薬とってくる!」ダッ

やすこ「のどか!」

 

のどかはその言葉を絞り出すように伝えた後、両親の返事も聞かず脱兎のごとく駆け出した。もちろんラテに効くお薬を探しに行くわけではない。

ラテを治すため、地球を守るため、プリキュアとして戦うために走り出したのだ。

 

???「待ちなさいっ!」

のどか「っ!」

 

校庭を抜け、校門に差し掛かったのどかを呼び止める声がした。母親が追いかけてきたと思ったのどかは振り返る。だが、そこに立っていたのはのどかの大切な友達の1人だった。

 

のどか「ちゆちゃん…」

ちゆ「私も戦うわ!私だってプリキュアの1人だもの。それに、どんなに絶望的な状況でも諦めずに力を尽くすことを鏡先生に教えてもらったから…」

のどか「うん!」

ちゆ「行きましょう!」

???「ちょーっと待ったー!」

 

走り出そうとする2人を呼び止めた声に、思わず顔を見合わせ笑みを零しながら2人は振り返る。全力で走ってきたのか膝に手を当てて息を整えているひなたも顔を上げ、輝くような笑顔を見せる。

 

ひなた「アタシも行く!ここで2人と一緒に行かなかったら絶対ぜ〜ったい後悔する!タイガーと約束したの!アタシは後悔しない選択をするって!」

のどか「ひなたちゃん…うん!」

ちゆ「ええ!」

 

ひなたの選択をしっかりと受け止め、3人はゲムデウスに向けて走り出す。例え適わなかったとしても、最後の最後まで諦めない意志を持って。

 

のどか「待っててね…ラテ!永夢先生!」

 

 

ーーー広場

 

 

のどか達がこちらへ向かっていることなど知る由もない永夢達は予想外のパワーアップをしたゲムデウスに驚愕していたが、すぐに変身のためガシャットを起動する。

 

\マキシマムマイティX!/

\タドルファンタジー!/

\バンバンシューティング!ドラゴナイト!ハンター!Z!/

\爆走バイク!ジェットコンバット!/

 

4人「変身!」

 

\ジェットコンバーット!/

\ドラゴナイトハンター!Z!/

\タドルファンタジー!/

\マキシマームパワー!X!/

 

エグゼイド「行くぜ!」

超ゲムデウス「我に挑む愚か者よ…我の力、存分に思い知らせてくれるわ!」

 

夕暮れの中、最終決戦が始まる。4人は持ちうるガシャットをフルスペックで投入しゲムデウスへ立ち向かう。

レーザーは上空からの牽制

 

レーザー「オラオラァ!」

 

スナイプはフルドラゴンの火力を最大威力で打ち続ける。

 

スナイプ「喰らいやがれ!」

 

ブレイブは魔法と剣技を駆使しゲムデウスへ取り付こうと奮闘する。

 

ブレイブ「はあぁっ!」

 

エグゼイドは伸縮自在の両腕両足をムチのようにしならせながらゲムデウスへ立ち向かう。

 

エグゼイド「なんとかしてダメージを与えるかワクチンを撃ち込む隙を作らないと…!」

 

先日撃ち込んだワクチンは完全に効果を失っていたようだ。ワクチンを無力化した理由は分からないが、どの道攻略法に変更の余地はなかった。

 

超ゲムデウス「ふはははは!その程度か!?そんな攻撃ではラスボスを攻略することなど出来ぬわァ!」

 

超ゲムデウスの両腕『デウスファーブニル』が青白い炎を吐き散らす。辺りに飛び火した炎は瞬く間に赤黒く変色し地球を蝕む。

 

ブレイブ「やはりあの姿になってもメガビョーゲンと同じ特性を引き継いでいるのか…!?」

 

ブレイブは魔法で地面に瘴気を張り巡らせ、地球の侵食を防いでいた。しかし広範囲に渡るゲムデウスの攻撃を全て防ぎきれず、魔法が及ばない場所が侵食されてしまっている。それに長時間の魔法の使用は飛彩の体にとてつもないバックダメージを与えることとなってしまう。

 

レーザー「ちょっとはダメージ受ける素振りくらいしろっての!……ん?」

 

上空でガトリングガンを撃ち放つレーザーはゲムデウスのある異変に気づいた。デウスファーブニルの先端。つまり龍の頭部がボコボコと変異し始めているのである。

 

レーザー「あんなの見たことねえぞ…永夢!様子が変だ!気をつけ…ぐあっ!」

エグゼイド「貴利矢さん!」

 

レーザーは警告を言い終える前に激しい衝撃に襲われた。バランスを崩し落下する中で見た光景を貴利矢は信じることが出来なかった。

それと同時に地上でも不可思議な現象が起こっていた。ブレイブが地球侵食を食い止めるために張り巡らせていた魔法が消し去られてしまった。それもゲムデウスの攻撃で吹き飛ばされたという訳ではなく、初めからそこになかったようにこつぜんと消滅していたのだ。

 

ブレイブ「なんだと!?」

スナイプ「余所見してんじゃねえ!」

 

自身の魔法が消されたことに動揺したブレイブを狙った攻撃をスナイプが察知し、ブレイブを押し出すようにして攻撃から逸らす。さっきまでブレイブが立っていた場所は一瞬で蝕まれてしまっていた。

 

ブレイブ「なぜ俺の力が失われたんだ…!」

スナイプ「野郎…まさか…」

レーザー「院長先生の予想、多分当たってるぜ…」

 

スナイプが気づいた変化を肯定するレーザーはゲムデウスが振るうデウスファーブニルを指差す。その右腕は白い羽根が生え始めており、あっという間に腕を覆い尽くす。左腕には戦艦の砲台のような武装が増えている。先程貴利矢を狙撃したのは間違いなくあの砲台であろう。そしてその特徴を持つゲームをライダー達は知っている。

 

ブレイブ「タドルレガシーと…」

スナイプ「バンバンシミュレーションズを…」

レーザー「取り込んじまったって訳か…」

 

だが、永夢達が先日の戦いで奪われたガシャットはもう一本ある。どんな強敵にも打ち勝ち、逆境を乗り越えてきた奇跡のガシャット『ハイパームテキ』だ。2つのゲームの能力が発動した今、必然と言わんばかりにゲムデウスの身体が輝き始める。辺りはすっかり暗くなっていたが、ゲムデウスの輝きが周囲を照らし出す。

 

超ゲムデウス「我の無敵時間は…無制限なり!さぁ!第2ステージの幕開けだ!」

エグゼイド「ムテキの…ゲムデウス…」

 

無敵の輝きで広場は昼間のように明るくなった。永夢達はここでワクチンが無力化された理由をようやく理解した。ゲムデウスはハイパームテキを取り込みその力を使うことでワクチンを打ち消し、自身はどんなダメージも通さないムテキの力を得たのだと。それも時間制限の無い永遠の無敵時間と一緒に。

 

本来バグスターがガシャットを取り込んでパワーアップするという事は万に一つも起こりはしない。だが、ガシャットを取り込んでワクチンを無力化し、超ゲムデウスへのパワーアップを果たした要因はゲムデウスを構築するナノビョーゲンの存在だった。

身体中のナノビョーゲンがガシャットを取り込むことで、ガシャットに秘められた能力をゲムデウスへ与えてしまっていた。

 

ブレイブ「馬鹿な…!」

スナイプ「ラスボスが制限時間無制限の無敵になるだと…」

レーザー「無理ゲー通り越してクソゲーじゃねえか!」

 

右腕は魔法で、左腕からは砲撃が、ゲムデウスそのものはムテキとなって仮面ライダーに襲いかかる。

ライダー達は身構えたが、突如として浮遊感に襲われる。タドルレガシーの魔法の力で4人まとめて浮遊する魔法を使役されたのだ。身動きの取れない4人にバンバンシミュレーションズの砲台が照準を定める。

 

スナイプ「くそっ…!」

 

スナイプが悔しげに吐き捨てるのと同時に砲弾が雨のように発射された。ライダー達は必死に砲弾を弾いていたが、全てを捌くことは出来ずに直撃を貰ってしまった。身体の拘束が解かれ、地面に転がり落ちるライダーを見てゲムデウスは高らかに笑い声をあげた。

 

ブレイブ「ヤツの力をどうにかして奪い返さねば…!」

レーザー「けど、ムテキの力まで手に入れられちゃかなりの無理ゲーだぜ…!」

エグゼイド「何か…何か方法があるはず…!」

 

絶望的な状況の中、それでも希望を見出そうとするライダーたちを嘲笑うようにデウスファーブニルが大口を開け、火炎を放とうとした。

 

超ゲムデウス「終わりだ!仮面ライダー!」

???「はぁーーーっ!」

 

その時、何者かが乱入し、デウスファーブニルの双頭を蹴り上げ、火炎の軌道をエグゼイドたちから逸らした。難を逃れたエグゼイドたちの前にピンク、青、黄色のコスチュームを纏う女の子らが着地する。

 

エグゼイド「プリキュア…!」

グレース「大丈夫ですか!?」

 

ブレイブ「何故ここに来た!」

フォンテーヌ「私達も、ただ見ていることなんて出来ないんです!」

 

スナイプ「遊びじゃ…ねえんだぞ…!」

スパークル「分かってるよ!でも…アタシたちにも戦う力がある!」

 

グレース「私達も、地球をお手当てするお医者さん…ううん、プリキュアとして!」

 

3人「一緒に、戦う!」

レーザー「だってさ。しょうがねぇなぁ」

 

思いがけない増援に窮地を救われた仮面ライダーはプリキュアと肩を並べる。その目はしっかりとゲムデウスを見据え、攻略の糸口を探っていた。

 

エグゼイド「君たちの攻撃は元々通用しない。その上ムテキの力が今のゲムデウスには宿ってしまっているんだ」

グレース「分かっています。けど…私たちにも出来ることがあります!みんな!」

プリキュア「キュアスキャン!」

 

グレースの掛け声でプリキュアはゲムデウスの身体をスキャンし、ガシャットが取り込まれている位置を特定する。プリキュアはそれぞれの龍の頭部とゲムデウスの胸の一部に取り込まれた煌めきを見逃さず、ガシャットを見つけ出すことに成功した。

 

フォンテーヌ「あの位置に、先生方のガシャットが取り込まれています!」

ブレイブ「サンキューだ!アレをどうにか摘出する方法を…!」

スパークル「危ない!」

 

だが、スキャンし終えたのを見計らったのか再びゲムデウスが攻撃を開始した。

 

レーザー「くそっ!やっぱ空中には弾幕かよ!」

ブレイブ「やはり魔法は使えないか…!」

 

再び空中へ飛び立ったレーザーを狙う無数の砲弾、地上を守ろうとするブレイブが使う魔法の無力化。ゲムデウスは二つの力を遺憾無く発揮し、仮面ライダーを追い詰めていく。レーザーを捉えられなかった砲弾はすこやか市の街中に飛来し、着弾地点を蝕んでゆく。

 

スパークル「街が!」

フォンテーヌ「私たちはあの砲弾を撃ち落としましょう!」

グレース「うん!」

 

攻略の糸口が見えるまで地球が蝕まれるのを少しでも食い止めようとプリキュアはステッキからビームを撃ち出して砲弾を撃ち落としている。

 

スナイプ「エグゼイド!ワクチンが無力化されてる以上、俺たちの切り札はお前のガシャットだ!リプログラミングしかムテキになったゲムデウスに対抗する術はない!」

 

スナイプは仮面ライダーとしての経験とゲームへの理解から、今のゲムデウスに対抗できる手段はリプログラミングしか無いと考えていた。

以前プレイした永夢の過去を元に作られたノベルゲーム『マイティノベルX』の世界でパラドがムテキゲーマーに対して放ったリプログラミングの一撃が有効であったことがその裏付けになっていた。

 

エグゼイド「けど!リプログラミングできたとして、ガシャットを摘出する方法が……!」

 

激しい攻撃に晒される中、エグゼイドは思慮を巡らせる。ゲムデウス攻略の手段を、手持ちの能力、アイテムで見出すことは正にゲームと同じであった。

途方もない力を得たラスボス。言うなればエグゼイドたちはそれを倒さんとする勇者のような立ち位置にいた。

 

スナイプ「それは後回しだ!今は俺達があの野郎を引きつける!その隙に最大火力で撃ち込め!ブレイブ!レーザー!」

ブレイブ「了解だ!」

レーザー「空中はノリが悪すぎるぜ…こっちに乗り換えだ!」

\シャカリキ!スポーツ!/

 

コンバットバイクゲーマーが不利と悟ったレーザーはスポーツバイクゲーマーへレベルアップし直し、ブレイブ・スナイプと共にリプログラミングの隙を作る。

ブレイブは消されると分かっていながら魔法の力でバグスター戦闘員を大量に呼び出しゲムデウスの気を逸らす。スナイプは火球やドラゴナイトガンをゲムデウスの頭部目掛けて放ち続ける。爆煙が晴れたゲムデウスの視線を誘導するようにレーザーの車輪ブーメランが横切っていき、ゲムデウスを技で翻弄していく。

 

超ゲムデウス「小癪!そのようなものが我に通用すると思っているのか!」

 

当然、ムテキの力を得ているゲムデウスにダメージはないが、煩わしい攻撃にゲムデウスは苛立っていた。全ての攻撃を振り払うと空中で円を描くように一回転する。それは胴体部分に接続された大剣『デウスカリバー』を思い切り振り下ろそうとする動作だった。

 

超ゲムデウス「消しとべ!仮面ライダーよ!」

 

勢いよく振り下ろされたデウスカリバーは広場に易々と深い傷をつけ、ライダーを弾き飛ばした。だが、それこそが3人の思惑だったのだ。大技を振るうため一瞬視界が外れたその瞬間を狙い、エグゼイドが上空へ飛び立っていた。狙いはもちろんゲムデウスのリプログラミングだ。

 

\MAXICIMAM MIGHTY! CRITICAL BREAK!/

エグゼイド「リプログラミング!はぁーーーっ!」

超ゲムデウス「何ィ!?ぐおおああああ!」

エグゼイド「おおおおおお!」

 

マキシマムゲーマーの必殺キックがゲムデウスの胸にヒットする。ムテキ状態にも関わらず、強烈な一撃を受けたゲムデウスは驚きと困惑の声を上げ、爆発に包み込まれた。エグゼイドは攻撃を回避したライダーたちの元へ着地する。

 

レーザー「へへっ!どーよ、乗せられたろ!」

スナイプ「これでムテキの力が失われたはず!」

ブレイブ「あとはガシャットを回収し、奴を切除するだけだ!」

 

希望の一撃を叩き込み、戦意を上げるドクターたち。しかし爆煙が晴れる前にその上空に無数の光が浮かび上がった。

 

エグゼイド「何だ!?」

 

光は形を変え剣の様な姿になる。永夢達がリプログラミング出来たのはムテキの力のみだった。タドルレガシー及びバンバンシミュレーションの力をリプログラミング出来なかった為、黄金の輝きを失ったもののゲムデウスは超ゲムデウスの姿のまま健在である。

 

レーザー「マジか!?」

ブレイブ「くっ…!これは防ぎきれない!」

フォンテーヌ「なんて数…」

スパークル「できるだけ…数を減らさないと!」

 

超ゲムデウス「貴様らの希望など、全て蝕んでくれるわ!」

 

ゲムデウスはそんなエグゼイドたちの考えを浅はかと言わんばかりに、魔法の力で更に光の剣を何本も形成する。生み出された無数の剣は勇者の力とは呼べないほどどす黒い色をしていた。

 

グレース「ダメーーーっ!」

 

グレースの悲痛な叫びも虚しく射出された剣は仮面ライダーやプリキュアだけでなく、広場全体に襲いかかる。広範囲に際限なく作られる剣を撃ち込まれ、辺りは一瞬で蝕まれていった。

 

スパークル「そんな…」

ニャトラン「スパークル!大丈夫かニャ!?」

フォンテーヌ「私達…地球を守れないの…?」

ペギタン「諦めちゃダメペェ!」

 

フォンテーヌとスパークルは目の前に広がる光景に思わずへたり込んでしまう。あまりに強大な力の前にその表情には絶望が浮かび上がっている。

 

スナイプ「無事か!」

ブレイブ「まだだ!まだ終わってはいない!」

フォンテーヌ「先生…」

スパークル「タイガー…」

 

2人に駆け寄るブレイブとスナイプはまだ諦めていない。ガシャコンソードの切っ先を、ハンターゲーマの銃口を向け、ゲムデウスに突っ込んでいく。既にエグゼイドとレーザーはゲムデウスへ肉薄していた。

 

グレース「諦められない…」

 

俯いている2人はその言葉にハッと顔を上げる。ゲムデウスを見つめるグレースは振り返り、フォンテーヌとスパークルに想いを伝える。

 

グレース「永夢先生達は私達に大切なことをたくさん教えてくれて…ゲーム病やビョーゲンズからみんなを救い出してくれた!今も私達の大切な街や人を守るために戦ってくれてる…!だから…私は絶対に諦めない!」

ラビリン「グレース…」

スパークル「そうだよね…アタシたちの大切な場所だもん…」

フォンテーヌ「ええ…!」

グレース「フォンテーヌ…スパークル…うん!」

 

手を取り合い、プリキュアは立ち上がる。

 

グレース「行こう!」

フォンテーヌ「ええ!」

スパークル「うん!」

 

3人は一歩、また一歩と踏み出していく。それは次第に駆け足となり、最終的にプリキュアはゲムデウスへ向かい全力で疾走する。そして仮面ライダーの横をすり抜けた後、ゲムデウス目掛け大きく跳躍した。

 

エグゼイド「グレース!危ない!」

ブレイブ「君たちの攻撃は効かない!下がっているんだ!」

 

咄嗟にプリキュアを止めようとするが、受けたダメージが大きく、声を上げることしか出来なかった。

 

グレース「やぁーーーっ!」

超ゲムデウス「何…!?」

 

予想だにしていなかった攻撃にゲムデウスは防御をすることもなくプリキュアの攻撃を身に受けた。が、攻撃自体は命中したにも関わらずやはりダメージとなってはいなかった。

 

フォンテーヌ「くっ…!」

スパークル「やっぱ意味無いかもだけど…!」

 

レーザー「頑張りすぎだよお嬢ちゃんたち!」

スナイプ「俺達も行くぞ!」

ブレイブ「ああ!」

 

効果を認められないにも関わらず攻撃の手を緩めないプリキュアに仮面ライダーは突き動かされる。全神経を集中させゲムデウスの攻撃を回避し、ただひたすらに攻撃する。

 

グレース「たぁっ!」

フォンテーヌ「はあっ!」

スパークル「やあっ!」

 

超ゲムデウス「ぐっ…ぬぉぉぉ!」

 

プリキュアの同時キックがゲムデウスのボディに命中する。ムテキ同様にダメージこそ無いものの衝撃によるノックバックでゲムデウスの巨体が仰け反る形になった。エグゼイドはこのチャンスを見逃さず、リプログラミングによって初期化され、ムテキの力を剥奪されたゲムデウスにワクチンを撃ち込もうとガシャコンキースラッシャーを取り出す

 

エグゼイド「こんなチャンスはもう来ない…!ここで決める!」

\キメワザ!/

 

ガシャコンキースラッシャーにガシャットを装填する。

 

グレース「みんな!今だよ!」

フォンテーヌ「ええ!」

スパークル「うんっ!」

 

プリキュア「エレメントチャージ!」

 

エグゼイドに続き、プリキュアも3人同時にそれぞれの技を発動させる。しかし、ゲムデウスもそのまま終わるラスボスではなかった。

 

エグゼイド「よし!………えっ?」

レーザー「マズイ…!永夢!」

スナイプ「ブレイブ!」

ブレイブ「分かっている!」

 

ガシャットを装填し、狙いを定めるために顔を上げたエグゼイドは目を疑った。ノックバックによって体制を崩されているはずのゲムデウスはデウスファーブニルをこちらに向け、出力最大のエネルギー砲を今にも放とうとしていたのだ。体制が崩れているためまともな照準を付けてはいないだろうが、巨大な口から放たれるビームは狙いなどつけずとも充分こちらに命中するサイズだ。

 

スパークル「嘘でしょ…」

フォンテーヌ「もう少しなのに…」

グレース「永夢先生…!」

 

超ゲムデウス「今度こそ、貴様らは完全にゲームオーバーとなるのだ!」

 

回避が間に合わないプリキュアの3人は反射的に目を閉じる。目を閉じたグレースのまぶたの裏にはこの街で育んだ思い出が映し出されていた。プリキュアになった時のこと、3人で遊びに出かけた時のこと、ビョーゲンズから地球を守ってきたこと、そして永夢達と過ごした時間のこと、その全てが一瞬で蘇る。目を開けたグレースの頬に一筋の涙が伝った。

 

 

グレース「ごめんね…」

 

 

青白い光線が発射される。その瞬間、その場だけが朝を迎えたように明るくなった。グレースは誰に向けた訳でもない謝罪の言葉を呟き、迫り来る一撃を受け入れようと再び目を閉じた。だが…

 

グレース「えっ…!?」

 

襲い来るはずの圧倒的な熱量は感じられず、目を開いたグレースの目の前には、先程までエグゼイドが装備していたマキシマムゲーマがキュアグレースを守るように射線上に割り込んでいた。

グレースは安否を確認するためフォンテーヌとスパークルを見る。目を向けた先ではブレイブとスナイプがそれぞれ身を呈して2人を守っていた。

ブレイブとスナイプはファンタジーゲーマーの魔法でプリキュアの眼前に瞬間移動し、気力でゲムデウスから放たれた一撃を受け止めていた。

 

フォンテーヌ「先生…!」

スパークル「なんでアタシ達のこと…!」

ブレイブ「そんなことは決まっている…!俺たちはドクターだ…!」

スナイプ「あの野郎に…ぐっ…!誰も消滅させられる訳にはいかねえんだよ!」

 

フォンテーヌ「先生…」

スパークル「タイガー…」

 

マキシマムゲーマをグレースの救援に向かわせたエグゼイドはレーザーが庇う。レーザーはエグゼイドがマキシマムゲーマを自分ではなくプリキュアの援護に向かわせると信じ、自らはエグゼイドの盾となったのだ。

 

レーザー「無事か!?永夢!ぐぅぅぅ!」

エグゼイド「貴利矢さん!?」

 

グレース「みんな!」

 

グレースは物言わぬマキシマムゲーマの影から必死に呼びかける。しかし、マキシマムゲーマも仮面ライダー達もゲムデウスの攻撃を受け止め続けることは出来なかった。それどころか、ライダースーツが赤黒く蝕まれていき、防御力がどんどん低下していた。それでも歯を食いしばり耐え続けていたドクター達の体は遂に爆煙に包まれてしまう。

 

エグゼイド「飛彩さん!大我さん!!貴利矢さん!!!うわぁぁぁっ!」

 

\ガッシュ-ン/

 

その身を盾にしたブレイブ達は爆風で吹き飛ばされ、赤黒い地面を転がる。エグゼイドはレーザー諸共弾き飛ばされていた。受けたダメージで変身が解除されたのが不幸中の幸いとなり、ゲームオーバーとなった者はいなかった。

 

飛彩「ぐ…」

大我「まだ、だ………!」

貴利矢「ゲムデウスのやつは…!」

 

超ゲムデウス「やはり貴様らはゲームオーバーとなる運命なのだ…」

 

永夢「ッ…!」

 

ダメージを負い、身動きの取れない4人に重苦しい重圧を含んだ声が降り掛かってきた。土埃の中でもハッキリと見える体躯、こちらを悠々と見下しているその存在は邪悪な笑みを浮かべていた。

 

永夢「ここまで来たのに…」

大我「クロノスの力なら…!」

飛彩「よせ!その状態ではお前の身体がもたない!」

大我「じゃあ他に策があるってのか!?」

飛彩「それは…」

貴利矢「打つ手なしかよ…」

 

大我の身を案じ、悔しげに漏らした貴利矢の言葉通り、現状で持ちうる最大の力で立ち向かったがゲムデウスを仕留めるまでに至らなかった。ワクチンの刺さったガシャコンキースラッシャーは衝撃で後方の地面へと飛ばされていたが、取りに向かう余裕はなかった。第一、取りに行くことが出来る状態だとしてもゲムデウスがそれを許すはずがない。

 

超ゲムデウス「貴様らの迎えるエンディングは…バッド…エンドだぁ!」

 

ゲムデウスは勝利宣言のようにエンディングを宣告し、右腕を頭上へ持ち上げる。そのまま振りかぶった腕を一息に振り下ろして幕引きの一撃が繰り出された。砂埃を巻き上げ、衝撃で大地が揺れたかのような重い

 

超ゲムデウス「これで我を阻む者は誰もいない…!我はこの世界の頂点に君臨するラスボスとなったのだァ!ハァーッハッハッハ!」

 

???「そんなの…絶対に認めない!」

 

超ゲムデウス「何…?」

 

???「まだ私達がいる!」

???「これ以上…大我たちを傷つけることは許さない!」

 

ゲムデウスの腕は永夢達に届く前に肉球の模様が入った光の盾に阻まれていた。シールドの下でプリキュアがゲムデウスを睨みつけている。

 

永夢「プリ…キュア…」

飛彩「ゲムデウスの攻撃を…」

大我「受け止めやがった…」

 

キュアグレース「あなたは私達が攻略する!」

キュアフォンテーヌ「この街も先生方も、私達の手で守ってみせる!」

キュアスパークル「だってアタシたち…!」

 

3人「プリキュアだから!!!」

 

その瞬間、3人のステッキに新たな光が宿る。だがその光に誰も気づくことはなく、プリキュアはゲムデウスめがけ飛びかかっていく。

 

フォンテーヌ「絶対に一矢報いて見せる!」

グレース「永夢先生達が教えてくれたやり方で!スパークル!」

スパークル「オッケー!」

 

\発光!/

 

グレースの指示と共にスパークルはエナジーアイテム『発光』を取得し、その身を眩い光が包みこむ。輝きの意味を持つスパークルの名に恥じない閃光が辺りを照らし出す。

 

超ゲムデウス「うぬぅ!?」

 

予想外の展開にゲムデウスは閃光をまともに受け、目を眩ませた。その隙を逃さずガラ空きの胴体部分に飛び蹴りを3人同時に叩き込んだ。ゲムデウスの体が大きく後退する。

 

飛彩「なんという力だ…!」

 

超ゲムデウス「おのれぇ!小娘共ぉ!!」

 

眩んでいた目が回復したゲムデウスは怒りの雄叫びと共に魔法の剣と砲弾の弾幕を形成する。

 

フォンテーヌ「もうその攻撃は喰らうものですか!」

 

\挑発!/ \反射!/

 

その動きを見越していたフォンテーヌは新たに出現したエナジーアイテム『挑発』と『反射』の2つを組みあわせて発動させた。挑発の効果でゲムデウスの攻撃が全てフォンテーヌへと引き寄せられるが、フォンテーヌは微動だにせず受け止めた。だが、剣も砲弾もフォンテーヌに命中することなく、反射の効果で全てゲムデウスへと打ち返される。流れる水が全てを押し返すように跳ね返った攻撃がゲムデウスへと降り注いだ。

 

大我「エナジーアイテムを使いこなしてやがる…」

 

ゲムデウス「何故だ!?何故こんな小娘共に我が押されているのだ!?」

 

グレース「あなたと戦っているのは私たちだけじゃない!街の人達の願いやこの街に宿る命の力、それに仮面ライダーの信念が私たちに力をくれているの!」

 

\分身!/

 

グレースはエナジーアイテム『分身』を使い自身の分身を形成する。花が咲き誇るように次々と複数のキュアグレースが並び立つ。

 

キュアグレース「みんなであの怪物を抑え込むよ!」

分身グレース「うん!」

 

本体であるキュアグレースの号令に応え、分身したグレースは次々とゲムデウスに取り付き、遂にデウスファーブニルを地に伏せる。分身体のグレース達は力を振り絞り両腕を拘束する。そしてゲムデウス本体にも無数のグレースが取り付くことで完全にゲムデウスを押さえ込んでいた。

 

貴利矢「マジかよ…ゲムデウスの動きを止めちまったぞ…」

永夢「すごい…」

 

天才ゲーマーと呼ばれた永夢も驚嘆の声を漏らさずにはいられなかった。自然と笑みが零れた永夢はふらつく足を支え立ち上がる。

 

グレース「みんな…いくよ!!」

フォンテーヌ「ええ!」

スパークル「うん!」

 

プリキュア「エレメントチャージ!」

 

先程撃てなかった浄化技を再度発動させる。技の発動と同時に分身したキュアグレースは本体の元へ戻っていく。

 

スパークル「プリキュア!ヒーリング・フラーッシュ!」

フォンテーヌ「プリキュア!ヒーリング・ストリーム!」

グレース「プリキュア!ヒーリング・フラワーッ!」

 

3本のステッキから放たれた光と水と花のエネルギーはゲムデウスが捕らえているガシャットに寸分たがわず命中・摘出する。その瞬間、力の源を失ったゲムデウスの体からナノビョーゲンが勢いよく吹き出していく。宿主を失ったナノビョーゲンは光に包まれて消えていった。ビョーゲンを浄化されたことで、蝕まれていた地球も元に戻り、ゲムデウスも元の人型へと戻っていく。

 

ゲムデウス「ぐぉおおおおお!バカな!こんなことがァァァァ!?」

 

飛彩「あれが奴の力となっていたのか…!」

大我「だったら…今のアイツはただのバグスターってことになるな…」

貴利矢「永夢のリプログラミングがバグスターの特性を初期化したから彼女達の攻撃が通ったのか…?」

 

永夢に続いて3人も立ち上がり、力を失ってゆくゲムデウスを見つめる。だが、ゲムデウスウイルスそのものは健在であるためゲムデウスを消滅させるまでに至らなかった。プリキュアは立ち上がった永夢、飛彩、大我の前にそれぞれ歩み寄り、手を差し出す。

 

スパークル「はいっ!大事なもの、取り返したよ!」

大我「奪われていた俺たちのガシャット…!」

 

フォンテーヌ「私達にとっての希望を助け出すことができました…」

飛彩「…サンキューだ」

 

先程摘出したガシャットギアデュアルβとタドルレガシーを持ったスパークルとフォンテーヌからガシャットを手渡される。グレースも続いて永夢にハイパームテキガシャットを差し出す。

 

グレース「私、ずっと思ってたんです。今までたくさんの人に助けて貰ったから、今度は私が誰かの役に立ちたい、誰かを助けたいって」

永夢「グレース…」

グレース「だから…先生たちの力を取り戻すことができて私すごく嬉しいんです!」

 

想いを伝えたグレースはとびきりの笑顔を永夢に向ける。かつて自分と真剣に向き合ってくれたドクターが教えてくれたことを心に刻み、今日まで生きてきたのどかにとってそれが最高の恩返しとなった。

 

永夢「…その笑顔は、紛れもなく健康の証だよ」

グレース「先生…これを!」

 

グレースからハイパームテキガシャットを受け取った永夢は大我、飛彩の元へ駆け寄る。3人の腰にゲーマドライバーが巻き直される。

 

大我「今のアイツになら俺たちの攻撃が効くんだろ?」

飛彩「ああ、俺達が最後の切除手術を行えば…!」

永夢「ええ…!このゲームは終わりです!」

 

貴利矢「悪いね、このお兄さん達美味しいとこもってっちゃうから」

 

ゲムデウスとの最終決戦を前にしてもなお、飄々とプリキュアに声を掛けた貴利矢もゲーマドライバーを装着し合流する。街並みはすっかり元に戻り、夜の街に煌めく街灯がドクターを照らし出す。横並びに立つ4人はガシャットの起動スイッチに指をかけた。

 

\爆走バイク!/

\バンバンシミュレーションズ!/

\タドル・レガシー!/

\ハイパームテキ!/

 

貴利矢「ゼロ速」

大我「第伍十戦術!」

飛彩「術式レベル100!」

永夢「ハイパー大!」

 

4人「変身!」

 

ゲムデウスを見据え、ガシャットを起動した4人は同時に変身する。

 

\爆走!独走!激走!暴走!爆走バイク〜!/

\スクランブルだ!出撃発進!バンバンシミュレーションズ!発進!/

\辿る歴史!目覚める騎士!タドルレガシー!/

\輝け!流星の如く!黄金の最強ゲーマー!ハイパームテキ!エグゼェ〜イド!/

 

レーザー「クライマックスだからな!ノリノリでいっちゃうぜ〜!」

スナイプ「ラストミッション…開始!」

ブレイブ「これより、ゲムデウス切除手術最終工程を開始する」

エグゼイド「ノーコンティニューで、ラスボスをクリアーしてやるぜ!」

 

ゲムデウス「おのれおのれおのれぇ!力を取り戻したからと言って、我に適うと思うな!それはただの思い上がりということを思い知らせてくれる!」

 

ナノビョーゲンの排出が終わったゲムデウスは激昂し、デウスラッシャーを薙ぐ。しかし繰り出された斬撃は空を裂いただけで誰にも命中することは無かった。それどころか斬撃よりも早くムテキゲーマーに変身したエグゼイドがゲムデウスへと差し迫る。

 

エグゼイド「思い上がりなんかじゃない!」

ゲムデウス「何ぃ!?」

 

懐に潜り込まれたゲムデウスは左腕のデウスランパートをエグゼイドに向け突き出す。だがエグゼイドはその動きを見切り、右腕でデウスランパートを受け止め左の拳でカウンターを撃ち込む。スペックが極限まで引き上げられたムテキゲーマーのパンチにゲムデウスの体が一瞬くの字に曲がった。

顔を上げたゲムデウスを待っていたのは空中に浮かぶ無数の光の剣だった。ブレイブが生み出す光の剣は勇者の剣の如く純白に光り輝いている。

 

ブレイブ「はあっ!」

ゲムデウス「ぬぅぅぅぅ!」

 

ブレイブが剣先をゲムデウスへと向けると同時に光の剣が一斉にゲムデウスめがけ襲いかかる。ゲムデウスはデウスラッシャーとデウスランパートを駆使し弾き返していたが、圧倒的な物量に次第に押されていく。

 

ゲムデウス「何故だ!?何故貴様らごときに苦戦するのだ!?ハッ!?」

 

思わず上空へ飛び退ったゲムデウスはシミュレーションゲーマーの全砲門に狙われていると悟った。

 

スナイプ「テメェが俺たちにしてきたことを今度はテメェが味わいやがれ!!」

 

スナイプの砲塔が火を噴き、弾幕を作り出す。10門全ての砲塔から砲弾が飛び立ち、空中のゲムデウスに迫る。更にシミュレーションゲーマーに備わっているレーダー機能が否応なしに命中率を高めていた。放たれた砲弾がゲムデウスを爆煙で包み込む。ゲムデウスは文字通り撃ち落とされ、地に伏せる。

 

 

スパークル「すごっ!」

フォンテーヌ「なんてスピードとパワーなの!?」

グレース「あれが永夢先生たちの全力…!」

レーザー「ちょーっとごめんよ、お嬢ちゃんたち」

スパークル「え?」

 

戦いに思わず魅入るプリキュアの横にレーザーがやって来てしゃがみこむ。レーザーは何かを拾い上げ、しばらくそれを見つめる。

 

レーザー「今の自分にならこいつを使いこなせるんだよな…」

 

それは先程飛ばされたキースラッシャーに挿しっぱなしになっていたドクターマイティXX IIガシャットだった。レーザーはゲーマドライバーのレバーを閉じて爆走バイクガシャットを引き抜く。

 

レーザー「バグスターとしての自分も嫌いじゃなかったけどそれじゃ自分が消滅しちゃうからね」

 

レーザーは白いガシャットを起動しゲーマドライバーへ挿し込んだ。そして勢いよくレバーを開き、ガシャットの効果を引き出す。

 

\ガッチャ-ン!ダブルア-ップ!/

\私が君を!自分がお前を!We're!何度も何度も倒して!Hey!ダブルエーックス!/

 

レーザー「人間として、自分もお前を攻略してやるよ!神の恵みってやつでなぁ!」

 

レーザーの身体はゲーマドライバーから放出されるゲムデウスワクチンによってに白くグラデーションされ、青白い光がその身を包み込む。

 

レーザー「へっ…正直半分くらい博打だったけど、上手くいったみたいね」

 

レーザーこと九条貴利矢は1度ゲームオーバーとなり、消滅したがバグスターとして蘇った。その後の戦いの中で彼は人間としての肉体を取り戻しつつあったため、本来バグスターが使用すれば消滅が免れないドクターマイティを使用しても身体を維持することが出来たのである。

 

レーザー「いくぜぇ!」

 

白い粒子を振り撒き、レーザーはゲムデウスに迫る。3人のライダーを相手に手間取っていたゲムデウスは容易く接近を許してしまった。

 

レーザー「オラァ!」

ゲムデウス「ぐおっ!?」

 

走ってきた勢いのまま放たれたレーザーのキックはゲムデウスの胸部を捉える。攻撃と同時にワクチンが撃ち込まれ、ゲムデウスのステータスを大きく下げていく。

 

ゲムデウス「!?何故だ!?この僅かなワクチン如きで我のステータスが下がるなどと言うことはありえん!」

 

ゲムデウスの言う通り、攻撃時のワクチン投与は微々たるものであり、連続で攻撃を受けない以上は効果がすぐに現れるような量では無いと確信していた。だが、ゲムデウスの胸部にはレーザーのブーツの形になるようにワクチンの光がしっかりと刻み込まれていた。

 

レーザー「へへっ、乗せられちゃったろ?そのワケはちゃんと教えてやるよ。お前が自分で気づくまで何度でも攻撃してなぁ!」

 

言葉を切ったレーザーは続けざまに右回し蹴りを放ち、ゲムデウスの左腕にワクチンを再び送り込む。その攻撃でようやくゲムデウスはワクチンの異常な効力の謎を解いた。

 

ゲムデウス「レベル0の…ウイルス抑制効果か…!?」

レーザー「さっすがラスボス。気づくのが早いね」

 

そう。レーザーは本来レベルを上げパワーアップする仮面ライダーの定石の外である、仮面ライダーレーザーターボに変身しており、そのレベルは『0』となっている。

このレベル0にはウイルスの抑制効果があり、レーザーターボは攻撃の際、攻撃箇所のウイルスを抑制したため少量のワクチンでウイルスを抑え込むことに成功していたのだ。

 

レーザー「やっぱ近接戦ならこの姿のがいいねぇ!」

 

身軽なレーザーターボはスピードとパワーを活かし、ゲムデウスに連続攻撃をお見舞いする。2度目のキックが再度胸を打ち据えた時、外殻が崩れ、内部に陰陽珠のような球体が確認できた。

 

エグゼイド「あれは…!?」

グレース「ナノビョーゲンと…」

ブレイブ「ゲムデウスウイルスか!?」

 

珠は白いゲムデウスウイルスと黒いナノビョーゲンが集合し、ゲムデウスを形成する核となっていた。神々しくも禍々しい光を放つ弱点を覆い隠すように外殻が再び形成される。

 

スナイプ「あれをぶっ壊せば!」

スパークル「アタシたちの勝ち!?」

 

4人の仮面ライダーと3人のプリキュアはようやく見えた希望を掴むべく奮起する。追い詰められ、弱点まで晒してしまったゲムデウスは最後の力を解き放つように吼える。

 

ゲムデウス「それがどうしたというのだァ!貴様らはここで終わる運命なのだ!」

 

デウスランパートの爪をレーザーに巻き付け、周囲を振り払うようにレーザーごと振り回す。ブレイブとスナイプがその攻撃に巻き込まれてしまい、弾き飛ばされてしまう。

 

フォンテーヌ「先生!」

スパークル「タイガー!」

エグゼイド「ゲムデウスッ!」

ゲムデウス「ぬうっ!」

 

レーザーを投げ飛ばしたところでエグゼイドが割り込み、ゲムデウスと組み合う。エグゼイドは素手で格闘戦を持ちかけるが剣と盾を装備しているゲムデウスに攻めあぐねてしまった。

 

スパークル「まだあんな力があるの!?」

フォンテーヌ「私たちに…もう出来ることはないの…?」

 

ゲムデウスの底力に驚愕するプリキュアはたじろぐ。だがキュアグレースは1歩踏み出し、戦おうと歩み始める。

 

グレース「私達も…最後まで戦うって決めたんだもん。だから…諦めないよ!」

フォンテーヌ「………そうね。例え出来ることがなかったとしても、諦めないことだけは出来るから!」

スパークル「アタシ達の持てる力をぜーんぶ!あの怪物にぶつけちゃおう!」

 

プリキュアの諦めない気持ちに応えたのか、3人のステッキが輝き始める。それは先程気付かれなかったあの光だが、今の光は先程の比ではない輝きを放っている。ステッキの光は球体となって空中へ昇る。3つの光が1つになった時、3人の手元に新たな力が舞い降りた。

 

スパークル「何これ!?」

フォンテーヌ「新しい…エレメントボトル…?」

ペギタン「こんなボトルは見たことないペェ!」

 

グレース「でも、これなら私達も!」

 

ヒーリングアニマルも知らない新たなエレメントボトルの力を信じ、プリキュアはステッキにボトルをセットする。

 

エグゼイド「貴利矢さん!」

レーザー「任せろ!永夢!」

 

エグゼイドはプリキュアの動きを見て、ワクチンを所持しているレーザーに呼びかける。先程投げ飛ばされたレーザーは瓦礫を掻き分け立ち上がった。

 

\ガッチョ-ン!キメワザ!/

 

レーザー「ラスボス攻略の第1コーナーだ!きめるぜ!」

 

\ガッチャ-ン!/

\DOCTOR MIGHTY CRITICAL STRIKE!/

 

ゲムデウスワクチンを最大放出させ、ゲムデウスめがけてライダーキックを放つ。エグゼイドはハイパーライドヘアーでゲムデウスを拘束し、回避と防御を封じ込める。そして、レーザーのキックはゲムデウスを蹴り抜いた。ヒットの瞬間に大量のワクチンが流し込まれる。

 

レーザー「自分の声入ってるとなんか変な感じだな…ま、いっか」

 

ゲムデウス「ぐがぁぁぁぁぁ!!?」

 

ワクチンにより苦悶するゲムデウスに今度はブレイブとスナイプが仕掛ける。

 

ブレイブ「もう一度あの珠を引きずり出す!」

スナイプ「外殻破壊は俺たちでやる…!いくぞ!」

 

\キメワザ!/

ブレイブ「これで終わらせる!もうお前の存在はノーサンキューだからな!」

\TADDLE CRITICAL FINISH!/

 

スナイプ「今度こそ決着を付けてやる!」

\BANGBANG CRITICAL FIRE!/

 

レガシーゲーマーの魔法の力で増幅した強烈な冷気がゲムデウスの足元を凍てつかせる。更に氷剣でゲムデウスを斬り付け胸部外殻を氷漬けにして強度を下げる。続けざまにスナイプが身動きの取れなくなったゲムデウスの胸にシミュレーションゲーマーの砲台を押し付け、最大火力を撃ち込む。至近距離からの高火力の攻撃に外殻は再び崩れ去った。

 

ゲムデウス「こんな…はずはぁ…!?」

 

レーザー「今だ!」

 

再び姿を現した珠に狙いをつけ、プリキュアとエグゼイドは最後の攻撃を放つ。先程手に入れた力をプリキュアは3人で発動させる。

 

プリキュア「トリプルハートチャージ!」

エグゼイド「ゲムデウス…お前を攻略する!」

\キメワザ!/

 

グレース「届け!」

フォンテーヌ「癒しの!」

スパークル「パワー!」

 

エグゼイド「フィニッシュは必殺技で決まりだ!」

\HYPER CRITICAL SPARKING!/

 

プリキュア「プリキュア!ヒーリング・オアシス!」

 

新たなボトルの力で、背面にオアシスを作り出したプリキュアのステッキから3本のエネルギーが同時に放たれる。一直線にゲムデウスの核へ向かったそのエネルギーはナノビョーゲンの塊を根こそぎ浄化し消滅していった。

 

エグゼイド「ゲムデウス…!お前の運命もここまでだ!」

 

残ったゲムデウスウイルスの核めがけ、ムテキゲーマーのキックが炸裂する。一瞬のうちにすれ違い、ムテキゲーマーはゲムデウスの背面に着地した。

 

ゲムデウス「オォ…我は…まだ、まだ終わらんぞ…!……ぐぉっ!?」

 

\究極の…一発ゥ!/

 

エグゼイドに向き直るため振り返った直後、ゲムデウスに多数のHITエフェクトが浮かび上がる。その数は10を優に超え、やがてGREATのエフェクトが発生し、ゲムデウスの身体が崩れていく。

 

ゲムデウス「我が敗れるだと…!?最強のラスボスとして君臨するこの我が!?」

エグゼイド「ゲームは終わった。僕達の…勝ちだ!」

ゲムデウス「ぐおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

永夢の宣言の直後、ゲムデウスはPERFECTのエフェクトと共に爆散する。ナノビョーゲンを削り取られた核も消滅し、ゲムデウスは完全に崩れ去った。

 

\完全勝利ィ!/

 

ムテキガシャットの言葉通り、仮面ライダーとプリキュアの戦いは完全勝利で終わった。激闘の果てに希望を捨てず、戦い抜いた7人は胸をなで下ろし、ある者は喜びの笑顔を咲かせ、ある者は回復した仲間を抱きしめて安堵の表情を浮かべ、ある者は街を守りきれたことへの涙を流した。

悪夢は終わり、すこやか市のゲーム病騒動は収束を迎えた。

 

 

ーーー1ヶ月後

 

 

のどか「行ってきまーす!」

やすこ「気をつけていくのよー!」

 

元気よく自宅から飛び出したのどかはちゆとひなたとの待ち合わせ場所に向かう。今日は3人でゆめポートに行く約束をしていた。その前にふと、のどかは1ヶ月前の戦いがあった場所を訪れた。

 

のどか「ここで、永夢先生達と一緒に戦ったんだよね…」

ラテ「わふ!」

 

広場に付いた戦闘の傷跡はまだ全て修復されていない。それでも街の雰囲気には以前と変わらないままの穏やかな日常が戻っていた。のどかは心から永夢との出会いに感謝し、これからもこの街を守っていく決意をする。

 

のどか「ちゆちゃんにひなたちゃん。それにラテやラビリンと出会って、私もなにか人の役に立つことができた。永夢先生たちの力もあって、私たち全員でこの大好きな街を守ることができたんだ…」

ラビリン「そうラビ!のどかは最高のパートナーラビ!」

 

カバンの中から笑顔で顔を出したラビリンにとびっきりの笑顔を返す。それが私が永夢先生から教わったこと。

 

のどか「私もだよ!ラビリン!私ね、今すっごくすーっごく!」

 

健康の、証

 

のどか「生きてるって感じ!」



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