最初のデートが風太郎の場合 (鱸のポワレ)
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最初のデートが一花の場合①

俺、上杉風太郎は、林間学校の最終日に五つ子全員から告白をされた。そして、俺はその中から一花を選び、恋人同士となったのだった。

 

 

一花と付き合うことを他の4人に伝えたとき、4人の反応は様々であったが、俺との関係は明らかにおかしくなってしまった。そこからニ乃、三玖、四葉の三人と話し合い、なんとか友人関係が元通りになったのである。

え?五月はどうしたって?アイツはパピコを半分渡したら上機嫌に「私たちは親友ですね」と言ってくれた。五月なりに気遣ってくれたのだろう。

とにかくなんだかんだあり、一花との待ちに待った初デートは付き合ってから2週間後となってしまった。

3日後、駅前に10時集合。

そう一花と約束してからの3日間は、これまでで一番長く感じる3日間であった。まあ、3日間単位で考えたことがなかったが。

 

「(にしても、早く来すぎたか…)」

 

時計を見ると8時50分。待ち合わせよりも1時間以上も早く来てしまった。

別に楽しみで早く来たわけではない。大事なことなので2回言おう、別に楽しみで早く来たわけではない。

まあ、確かにちょっとは楽しみかもしれないが……。ちょっとだけだ。

自分のツンデレぶりに呆れつつも、辺りを見渡すと、驚くことにもう一花が駅前のベンチに座っていた。

しかし、鏡を見て髪をいじったり、突然笑顔になったりと不審な行動をしている。自称お姉さん(笑)である。

数10秒眺めていると、流石にこちらに気がついたのか真っ赤になった一花が俺に近づいてきた。

 

「もう、来てたなら声かけてよフータロー君。恥ずかしいとか見られちゃったじゃん」

「まあ俺は一花の可愛いとこが見れて良かったよ。って、何言ってんだ俺……」

「……あ、ありがと」

「「……」」

 

なんだこれ、恥ずかしい。

お互い顔を真っ赤にして立ち尽くしていると、周りの視線に耐えられなかったのか、一花が焦った様子で喋り出した。

 

「ま、まあ、とりあえず行こっか。今日のデートはこの一花お姉さんにまかせて!」

「ああ」

 

一花の予定では、午前中に3ヶ所周りいい感じに小腹が空いたところで人気のカフェに行き、食事をするはずだった。

だったのだが、何もかもがうまくいかず最悪なデートになってしまっていた。

最初映画館に向かった。バスに乗って行こうとしたのだが、なかなか来なかったので確認してみたところ、今日は日曜日なのに一花は平日の時刻表を調べていたのだ。

結局歩いて行くことになり、見る予定だった映画も既に上映済み。替わりに見た『おっさんずハグ』という映画も何度もおっさん達がボディービルの大会で抱き合うという酷い内容のものだった。ちなみにこの映画の決め台詞は「上腕二頭筋と同じぐらい愛してる」だ。ノーコメント。

その後は、時間が予定よりも大きく押していたため、次に行く予定だった駿河屋は断念することになり、向かったのは水族館だったのだが、ここもかなり酷かった。改装中だったため魚は1匹もいなかったのだ。もう閉館すればいいのに。

俺たちはわかめやもなどを見て周った。

最初は「意外とわかめも可愛いね」とか「出汁出てるのかな」とか言って盛り上げてようとしていた一花だったが、終盤は「ももももももも」と1人で呟きながら歩いていた。

気を取り直して、次に行こうと俺が提案すると、一花は呪文を唱えるのをやめ「カフェのサンドイッチ絶対美味しいから楽しみにしててよ」と言い何とか正気を取り戻した。カフェに向かう途中、例のごとくバスは来なかったがそれでも3キロの道のりを2人で歩き、ついにカフェに着いたのだった。ちなみに店は休業。

 

「本当にごめんねフータロー君。これじゃあデートぶち壊しだよね。あはは」

「そんなことはない。俺はその、……一花と一緒ならそれで幸せだ」

「ふ、フータロー君!?」

 

一花の顔がみるみる赤くなっていく。当然俺の顔はもう真っ赤だ。

 

「ありがとねフータロー君。励ましてくれて」

「ああ」

「「……」」

 

気まずいと感じたのか一花があわてて話しを振ってくる。

 

「これからどうしよっか」

「ここからは俺に任せてくれないか?」

「別にいいけど行きたいところでもあるの?」

「まあな」

「じゃあエスコートよろしくねフータロー君」

 

少し申し訳なさそうに一花が笑顔になる。俺は恥ずかしくなり、無言で歩き出すと今度は口を膨らませて怒った表情をする。

 

「ちょっと待ってよフータロー君」

「ああ、悪い」

 

可愛い人はどんな表情でも可愛い。今日からこれをモットーにして生きよう。俺が人生最大の決断をした横で一花が疑問を浮かべていた。

 

「どうしたんだ?」

「どこ行こうとしてるのかなって」

「駿河屋だけど」

「え?」

「もちろん先に昼ご飯は食べるぞ」

「そういうことじゃなくて!」

 

一花が心底驚いた顔をした。なにこの子、さっきは自分が言ってたのに。なんで驚いてんだ?なんで驚いた顔も可愛いんだ?

 

「いやフータロー君?確かに私も駿河屋って言ったけどさ」

「まあ任せてくれ」

 

俺はドヤ顔で親指を立てた。

こっからは俺のターンだ。ドロー。




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最初のデートが一花の場合②

私、中野一花は5人姉妹の長女。

私は5人の中で一番しっかりしてなくちゃいけないと昔から思っていたし今も思っている。

だから、4人からフータロー君を奪ってしまっても、せめて諦めてくれた4人のために幸せになろうと決めた。

それなのに、初デートはまかせておけと言っておきながら失敗、失敗、失敗。

こんなダメなお姉ちゃん(笑)に想っていた人を奪われたとみんなが知っても納得しないだろう。

いや、みんなならデートの失敗を励ましてくれるかもしれない。

でもその優しさは逆につらいと思う。

フータローくんだって、がっかりしているかもしれない。その証拠に次の目的地は駿河屋。

あの優しいフータローくんも投げやり状態だ。

 

「駿河屋に着いたぞ。どうしたぼーっとして大丈夫か?」

 

こんなときにも、いや、こんなときだからこそフータローくんは優しく心配してくれる。

最高の彼氏。そんな人とダメダメな彼女がつり合ったいるのだろうか。

私が苦笑いを浮かべると、フータローくんはますます心配そうな顔をしていた。

 

「もしかして午前中のデートのことか?それなら問題ない。ああいう体験も貴重だしな。それにさっきも言っただろ、……俺は一花といるだけで幸せだって」

「ありがとう」

 

私は満面の笑みで答えた。

お世辞でフォローをしてもらっていると分かっていても喜んでしまうダメダメな彼女である。

それから私たちは駿河屋に入って行った。

数分間、フータローくんは何かを探している様子だったが、ポスターを見て急に立ち止まった。

 

「そのポスター興味あるの?」

「や、やめろ!見るな!これだけは見られたくない!(チラチラ)」

「……見て欲しいんだよね」

「し、しょうがないな。そんなに見たいなら、ほら」

 

フータローくんは、すごく嬉しそうにそう言ってポスターの前に私の手を引いた。

つまり、今私はフータローくんと手を繋いでいる。

あわわわわ。

 

「ふ、フータローくん。ちょっと恥ずかしい……、ってこのポスター!」

「ああ、五等分の花嫁のヴァイスシュヴァルツ参戦決定のポスターだ。これだけは見られたくなかったんだがな!」

「……嬉しそうだね」

「ちなみに隣のポスターは五等分の花嫁2期制作決定のポスターだ!みんなぜひ見てくれ」

「……誰に言ってんの」

 

フータローくんは楽しそうに語っていて、私は平然とツッコンでいるがまだ手を繋いだままでそれどころじゃない。

あわわわわ。

 

「一花!こっちに三玖がやってた戦国ゲームがあるぞ」

 

今度は別の場所にあったゲームを見てフータローくんは嬉しそうに騒ぎ出した。

 

「本当だ!昔これにハマりすぎてゲームするから学校行かないとか言い出したことあるんだよ」

「まじか。……すごいなあいつ」

「結局三玖だけずるいってなってみんなで休んだんだけどね」

「……はあ。そんなんだから成績が低いんだよ」

 

フータローくんはため息を吐きながら言った。

こうやって話していると付き合っているというより、友達の延長という感じがする。

手は繋いだままだけど。

あわわわわ。

 

「ちなみに俺はゲームとかトレカとかはやらないが、一花はゲームとかやるのか?」

「んー、最近は全くしないけど昔はちょっとだけやってたかな。マリオとか」

「今度一緒にやるか」

「うん!みんなも久しぶりにフータローくんと遊びたいだろうしね」

「いやそうじゃなくてだな。その、……2人で」

「え!?……う、うん。2人でマリオやろっか」

 

繋いでいる手を通じてフータローくんの緊張が伝わってくる。

頑張って誘ってくれたんだろう。そう思うと嬉しくてたまらない。

 

「じゃあほかの場所も見るか」

「うん」

 

それから、2人でカードやフィギュアを見て周った。

2人とも特別知識があるわけではなかったが、どうでもいいこと話をしたり、変なゲームを見たりして、いつも通り楽しく過ごした。

ちなみに私はずっと『あわわわわ』しっぱなしだったが、フータローくんは手を話してくれなかった。

こういうところは意地悪だ。

……手を離して欲しかったわけではないけど。

一通り駿河屋を周り、私たちはデュエルスペースで休憩することにした。

……カップルでデュエルスペースは前代未聞だ。

 

「本来デュエルスペースはデュエをする人が使う場所だ。今回は特別だがみんなはデュエルの邪魔にならないようにしよう」

「……さっきもだけど、誰と話してるの」

「読者の皆様だ」

「え?」

「コホン、そんなことより駿河屋はどうだった」

 

フータローくんは誤魔化すようにわざとらしく咳払いをした後、私に質問をした。

駿河屋はどうだったか。

そんなの決まっている。フータローくんと一緒ならどこでも……

 

「ま、まあまあだったかな」

 

本当は楽しかった。超楽しかった。

けれども、素直に認められないのがお姉さんの悪いところだ。

 

「午前中あんなひどいデートしたくせに」

「そ、それ言っちゃうかな!」

「まあ、俺が言わせればどっちも超楽しかったけどな」

「フータローくんやけに素直だね。あはは。ま、まあ実は私も楽しかったけど」

「なんというかな……」

 

フータローくんは人差し指を立ててドヤ顔で口を開いた。

 

「こんなデートに合わない場所でも俺と一花なら超楽しいってことだ。だからあんま気張ってデートプランとかガチガチにしなくていい」

「うん。本当にごめんね今日は」

「今日何度目か分からないが謝る必要もない。午前中だって超楽しかったし、実は困ってる一花は可愛くてそれはそれでよかったからな」

 

フータローくんはニヤッと笑い悪い顔をした。

今日はこうやって何度も冗談っぽく気遣ってくれている。

だからこそ、平然を装って答えるのが正解だと思った。

私はわざとらしく頬を膨らませて怒った。

 

「もー。そんなこと考えてたの」

「悪い悪い。あと悪いついでにもう一箇所俺に付き合ってくれないか」

「う、うん。別にいいけど、まさか今度はアニメイトとか言わないよね」

「……ま、まさか」

 

フータローくんの目が明らかに泳いでいた。

え、本当にアニメイト?私たちそんなにオタク系カップルだっけ。

 

「アニメイトじゃなくて、晩飯だ」

「そういえばそんな時間だね」

「もちろん予約なんてしてないし、ファミレスに行こうと思ってるがな。ジョナサンとバーミヤンどっちがいい?」

 

またもドヤ顔で質問してきた。なんかここまでくると可愛いような気がする。

 

「じゃあジョナサンがいいな。焼き立てデニッシュが美味しいんだよ」

「じゃあ行くか」

「うん」

 

私たちは駿河屋を後にして歩いてジョナサンに向かった。

が、しかし。

 

「こっちだっけジョナサン?」

「も、もう少しだ」

「本当に?」

 

私の知る限りでは、ジョナサンとは逆方向に向かってフータローくんは歩いていた。

しかも、全く目を合わせてくれない。実に怪しい。

 

「つ、着いたぞ」

「え、ここって?」

 

私たちの目の前にはジョナサン……ではなくなんと、お洒落そうなレストランがあった。

 

「ど、どういうこと?」

「つまりだな、……張り切ってデートプランを考えたのは一花だけじゃないってことだ」

「あんだけ言っといて!?」

「わ、悪い。……でも予約しちゃっててお金もったいないし」

「別に怒ってけどさ。……ていうか嬉しい」

 

フータローくんも一緒だったんだ。張り切ってくれていたし、緊張もしていた。

そう思えるだけですごく嬉しかった。

 

「いつもお姉さんとして頑張ってるからな。彼氏の俺ぐらいには、その、……甘えていいんだぞ」

「恥ずかしいくせに。お姉さんそれくらい分かっちゃうんだから」

「そ、そんなことは……」

「でもね、フータローくん」

「ん?」

「ありがと。今日はこの後、思いっきり甘えさせてもらうから覚悟してね!」

「ああ」

 

「大好きだよ」って大事なことは言えないヘタレなお姉さん(笑)だけど、それでもフータローくんは優しくしてくれる。

フータローくんだけには、お姉さんとしてじゃなく単純に好きな人として接しよう。いっぱいいっぱい甘えてやろう。

 




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最初のデートが二乃の場合①

俺、上杉風太郎は、林間学校の最終日に五つ子全員から告白をされた。そして、俺はその中から二乃を選び、恋人同士となったのだった。

 

 

俺たちが最初のデートに選んだ場所は、駅ビルのショッピングモール……

 

「フーくんやっと着いたわ」

「着いたな、……京都に」

 

……のはずだった。

最寄り駅の改札前で二乃と合流するやいなや、二乃の連れらしき黒服の男2人に誘拐され、新幹線に乗ること約2時間、訳の分からぬまま京都に到着していた。

 

「……なんで京都なんかに」

「フーくんとの1回目のデート記念だもん。盛大にやりたいでしょ」

 

二乃は髪を後ろになびかせながら満足げに答えた。

しかし、いくらなんでも京都は遠すぎるし急すぎる。

 

「と、とりあえず、らいはに伝えておこう」

「心配いらないわよ。らいはちゃんは私以外の4人と北海道に行ってるから」

 

らいはの奴、はやく帰ってきてねとか言ってたくせに共犯だったのかよ。

 

「あんたんちのパパとうちのパパも一緒だから大丈夫よ」

「……それ本当に大丈夫なのか」

 

すごいメンバーで北海道旅行に行ったな。2人きりの俺たちよりよっぽど心配なんだが。

 

「そんなこと気にしてないで3日間楽しみましょ」

「は?日帰りじゃないのか!?」

「当たり前でしょ。こんな遠くまで来てすぐ帰ったらもったいないわ。それに……」

 

二乃は恥ずかしそうに指を絡めながら呟いた。

 

「フーくんといっぱいデートしたいし」

「……お、おう」

「じ、じゃあ行きましょうか」

 

さっきの言葉が恥ずかしかったのか、二乃は先に歩いていってしまった。

こっちとしては積極的にこられるのは嫌ではない。だが正直、恥ずかしさが勝ってしまう。大事なことなので2回言おう。決して嫌ではない。

そんなことを考えていると俺の腹の虫が暴れ出した。

状況はいまだに理解できていないが、それでも腹は減る。

時刻は12時を過ぎていた。

 

「とりあえずご飯食べないか?」

「そ、そうね」

 

二乃はまだ恥ずかしそうにしていたが、ひとまず2人でご飯が食べられる場所を探すことにした。

それから店を探すこと数十分。気になったのか二乃が手織り寿司の店の前で立ち止まった。

 

「あ、ここいいんじゃないかしら。フーくんはどう思う?」

「手織り寿司か。京都らしくていいんじゃないか」

「じゃあ入りましょ」

 

二乃が腕を絡めてきたため、俺は引っ張られながら店に入った。

……む、胸があたってる。

とにかく、店の中はすごく落ち着いた空間になっており、まさに和食の店という感じだ。

少し抑え目の証明に古くていい味を出しているテーブル、俺の腕にあたる柔らかい胸。

どれも素晴らしいおっぱいだ。ん?おっぱい?

いや、落ち着けあたっているのはただの脂肪だ。

 

「……そう、脂肪だ。牛脂と同じだ」

「どうしたのフーくん?」

 

二乃が怪しむように俺を見ている。気づかれたら社会的に死ぬかもしれない。

 

「い、いやなんでもない。それより腕を離してくれ。椅子に座れないし、寿司も食べられないだろ」

「隣に座ればいいじゃない。それに私が食べさせてあげるわよ。か、彼女なんだし」

「でもな、そ、その……」

「なに?」

「いや、なんでもない」

 

「胸があたってて恥ずかしい」なんて言えるはずがない。元不良でも難易度が高い。富士山より高い。よっ、日本一。

しぶしぶ俺が椅子に座ると、二乃はメニューを広げだしていた。

 

「フーくんはどれにする?」

「俺はこの、1番スタンダードそうな手織り寿司の並を、……ていうか今気づいたが、俺全然お金持ってないぞ」

「それは任せてフーくん。誘拐もしちゃったわけだし」

「悪いな」

「別にいいわよ。フーくんにデート任せたら駿河屋とか行きそうだし」

 

二乃はさらりと言っているが、二乃にとっての俺のイメージってなんなんだ。デートで駿河屋なんて行くわけがない。たぶん……。

 

「それに新婚旅行みたいで楽しいし」

 

そう言って二乃は、さらに腕を絡めてきた。

な、なるほど、勉強だけしてても学べない柔らかさがここにある。すばらしい。

俺がおっぱ、……ではなく恋人の温もりを感じている間に二乃は注文を済ませ、五月の話を始めていた。

 

「五月ったらね、回転寿司に行ったとき20皿も食べたのよ」

「そりゃすごいな。男の俺でも15皿ぐらいしか食べないぞ」

「逆に一花なんかは……」

 

その後も二乃は、すごく楽しそうに姉妹のことを話し続けた。側から見ればただのシスコンにしか見えないかもしれないが、俺には愛情を持った優しいシスコンに見えた。結局シスコンは変わらない。

 

「……しかも四葉と三玖だったの。すごいでしょ」

「ああ、すごいシスコンだな」

「そ、そうじゃなくて!」

「じゃあなんだ?」

「た、確かにシスコンかもしれないけどフーくんが1番大切だから嫉妬しないでよね」

「なんでそんな話になったんだよ!?」

「私はフーくんが大好きだから」

「……話聞けって二乃。ま、まあ俺も二乃が大好きだが」

「フーくん」

「二乃」

「お、お客様。お料理をお持ちしました」

「「は、はい!」」

「ごゆっくりどうぞ〜」

 

店員は料理を置くと素早く去っていく。ニヤニヤしながら。

めちゃくちゃ恥ずかしいところを見られてしまった。低音ボイスで「二乃」とか言っちゃってた。

 

「わ、わー。おいしそうねふーくん」

 

いつも積極的な二乃もペッパーくんばりの棒読で感想を言っている。

こほん。

俺も気を取り直して料理に目をやる。

初めて生で見る手織り寿司は、カラフルで芸術作品のようだった。もし彦◯呂が見たら「魚介の宝石箱や」とか言うレベルだ。

 

「すごいな二乃。きれいだ」

「え!?あ、ありがとうフーくん……」

 

二乃は自分が褒められたと勘違いをしたらしく、顔を真っ赤にして照れだした。

こうなると訂正がしづらくなってしまうが、実際二乃はきれいだからいいだろう。

 

「ふ、フーくんはやく食べましょ」

「そうしたいんだが、お前が腕絡めてるんだろ」

「だ、だからほら、あーん」

「……うぐ!あ、あーん」

 

な、なんて恥ずかしいんだ。さっきの店員もニヤニヤしながら見ている。しかし、そんなことも知らない二乃は、恥ずかしそうにしながらも俺を見つめてさらに続ける。

 

「ふ、フーくん、美味しい?」

「あ、ああ。美味い」

「じゃあ今度は私が食べたいな」

「利き手が使えないんだが」

「あーん」

 

二乃は聞こえないフリをしてあーんをせがんでくる。

Q、この世で1番可愛い生き物は?

A、俺の彼女

 

「仕方ないなほら」

 

しかし、左手で箸を使ったからか寿司をうまく持てず落としてしまった。二乃のおっぱ、……豊満な脂肪と脂肪の間に。

 

「わ、悪い」

「もう。……とってよフーくん」

「だがそれだとお前のおっぱ、……胸に触れちまう」

「……いいよフーくん」

「二乃」

 

この後はご想像にお任せしよう。ただ1つ言えるのは、おっぱいは世界を救うってことだ。

そんなこんなで手織り寿司を食べ終え、俺たちは店を後にした。

 

「この後行くところは決まってるのか」

「もちろん。フーくんも絶対楽しめる場所よ」

「まさかおっぱ、……いやなんでもない」

 

ヤバイ、下手な麻薬より中毒性あるんじゃないか?

なにとは言わないが。

 

「じゃあ行くわよ!鳥居を見に」

「鳥居って意外と渋いな」

「そんなことないわ。フーくん知らないの?千本鳥居」

 

二乃がドヤ顔で言った千本鳥居とは、伏見稲荷大社にある鳥居のことだ。その名の通り大量の鳥居が並んでいる有名な観光スポット。

もちろん俺も知っている。……が、

 

「し、知らないな。なんだそれ?」

「鳥居がいっぱいあって綺麗なのよ。行ったら驚くわよ」

 

彼女のこんなに嬉しそうな顔を見れたのなら、バカを演じるのもいいもんだと思う。

 

「ふ、フーくん、それとね」

「どうした?」

「手繋がない?」

「腕絡めてるのとってくれたらな」

 

すると二乃は腕を離し、今度は自分の指を俺の指に絡めた。

さよならおっぱい。こんにちは暖かい手。

 

「これって恋人繋ぎじゃ……」

「当たり前よ付き合ってるんだから。は、はやく行くわよ」

 

こうして俺たちは、次の伏見稲荷大社を目指して歩きだした。

……手をつなぎながら。




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最初のデートが二乃の場合②

私、中野二乃は恋愛において決めていることがある。それは、絶対に引かないこと。後悔だけはしないように攻めて攻めて攻めまくる。

それが私だから。それこそが私だから。

もともと、フーくんと付き合えたのも、5姉妹の中で私が最初に1度目の告白をしたというのが大きかったと思っている。

だから、フーくんがいつ他の子を好きになってもおかしくないし、いつ嫌われてもおかしくない。

捨てられるのが怖かった。捨てられたくなかった。

私だけを見てもらうために、私は積極的に動いて京都まで来た。

2泊3日の京都デート。

フーくんには私をもっと好きになってほしい。一花でも三玖でも四葉でも五月でも他の誰でもなく私だけを。

攻めて攻めて攻めまくる。私はそう決意し、フーくんと共に伏見稲荷大社に向かった。

 

手織り寿司屋さんを出てから数十分移動をして伏見稲荷大社に到着した。

綺麗な赤色の鳥居が奥までずっと並んでいた。

 

「ねえ見て!鳥居がいっぱいあって綺麗だわ」

「すげえな……」

 

フーくんは感嘆の声を漏らした。

私はフーくんに気づかれないようほっと息をついた。よかった、喜んでくれてる。

いや、こんなことで安心してる時間は私にはない。

もっと攻めていかなきゃ。

 

「フーくん。一緒に写真撮りましょ」

「お、おお!いつの間に一眼レフのカメラを」

「ふふーん。準備は怠らないわ」

 

私は写真を撮ることを口実にフーくんに体を密着させた。

するとフーくんは、あからさまにたじろぎはじめた。

 

「二乃、近すぎないか……」

「だ、だってちゃんと写らないでしょ」

「だけど、いろいろあたって……」

 

フーくんは恥ずかしがっているが、これも作戦通り。私だって恥ずかしい、恥ずかしいけど、それでもフーくんには私の魅力を感じてほしいから。

私は控え気味にシャッターを切る。

 

「よし。じゃあ早く行くぞ」

 

写真を撮ると素早く私と体を離し、歩き出そうとした。

でも手は繋いだまま離さないでくれている。

私はフーくんのこういう優しいところが好きで好きでたまらない。

 

「ちょっとフーくん引っ張らないでよ」

「わ、悪い」

「もしかして照れてるの」

「べ、べつにそういうわけじゃ……」

「また照れてる」

「……」

 

いじられて怒っているのか、無言でそっぽを向いてしまった。

そんな怒っているフーくんも可愛い。

そんなことを思いながら再び歩き出した。

それからしばらく会話は無く、静かに千本鳥居の下を歩いた。でも不思議と嫌な沈黙ではなかった。

むしろ心地よい、親しい関係だからこそ、分かり合っているからこその沈黙。

そんな沈黙を破ったのはもちろん私だ。私の目標は攻めること、心地よい沈黙でも今の私には必要ない。

 

「フーくんってさ、他の4人のことどう思ってるの」

「そうだな……」

 

フーくんは口に手をあてて真剣に悩み出し、千本鳥居も終盤に差し掛かろうとしていたところで、何かを思いついたのか顔を上げて口を開いた。

 

「あいつらは人生の先生だな」

「人生の先生?どういうこと」

「俺はあいつらと出会わなかったら、友達なんか出来なかっただろうし、社会に適合もできなかっただろうしな。まあ、俺が勉強を教えてやってる代わりに、大切なものを貰ってるってことだ」

 

今日初めて見たフーくんの真面目な顔。私が1番好きな顔だ。

フーくんが真面目に私たち5姉妹のことを想ってくれるから。

 

「じゃあ、私のことは?」

「え?お前も同じだぞ」

「でも彼女なんだしーー」

「まあ二乃はお互いに支え合う同僚か」

 

フーくんは小さな声でポツリと呟いた。聞こえないような声だったが、聞き逃すはずがなかった。

お互いに支え合う、それが恋人とそれ以外の人との差。

素直に嬉しかった。フーくんはちゃんと私を恋人として他の人との線を引いてくれていたのだ。

 

「フーくん?同僚じゃなくてそこは家族でしょ」

「……聞こえてたのか」

「ナニモキコエナイー。ほら、次の場所に行くわよ」

「ちょまてよ」

「キ◯タクか!」

 

それから、さらに数カ所の観光スポットを周り、クタクタになってホテルに到着した。

某有名ホテル。外見も派手で高級そうな雰囲気を漂わせている。

 

「おいおい、なんだこのホテル」

「すごいでしょ。頑張って予約したんだから」

「ほんと悪いな何から何まで」

「いいわよ。私たちはもう家族なんだし」

「家族にはなってないぞ!?」

 

クタクタなはずのフーくんのツッコミのキレに感心しつつ、私たちはホテルに入った。

外見どころかロビーも廊下も部屋もトイレも何から何まで高級オーラが漂っていた。

 

「おい二乃見てみろ!琵琶湖がすごい綺麗だぞ」

「私たちのこの部屋は23階だから景色もいいのよ」

「は?今、私たちのこの部屋って言ったか?」

 

フーくんが驚いて質問をしてきた。

 

「言ったけど」

「え?同じ部屋なのか。だってベット1つしかないぞ」

「カップルなんだしいいじゃない。それよりお風呂に行くわよ」

「おいおい!」

「ナニモキコエナイー」

 

私が聞こえないフリをしてお風呂に向かうと、フーくんはしぶしぶといった表情でついてきた。

まだまだこんなの序の口だ。もっと攻めてやる。

 

「おいおい。なんで手繋いだままなんだ。脱衣所いけないだろ」

「心配ないわ。脱衣所一緒だから」

 

そこには、男とも女とも書かれていない脱衣所看板があった。

 

「は?」

「このホテルは部屋ごとにお風呂の時間が決まってるの。だから混浴もできるのよ」

「こ、混浴!?に、二乃は恥ずかしくないのかよ……」

「恥ずかしいけど、フーくんならいいよ……」

「二乃」

「フーくん」

「でも恥ずかしいから脱衣所では見ないでね」

「なんでやねん!!」

 

 

フーくんの芸能人もビックリなキレのあるツッコミから少し経ち、私たちは2人でお風呂に入っていた。

 

「いやー、いい湯だな」

「今日色んなところ行って疲れたわね」

「いやー、いい湯だな」

「伏見稲荷大社の千本鳥居も綺麗だったわね」

「いやー、いい湯だな」

 

フーくんは緊張で完全に壊れていた。

何を話しても「いやー、いい湯だな」しか返してくれない。

逆に言うとフーくんは私の体を意識してるってことだ。つまり攻めるチャンス。

 

「フーくん。いいんだよもっと近くに来ても」

「だ、大丈夫だ」

 

急に真顔になって答えた。フーくんの真面目さは時にあだとなるのかもしれない。

 

「フーくんは私の裸を見ても興奮しないの?」

「し、しなくもない、……な」

「だったらさ、2人きりだし、フーくんのしたいことしていいんだよ」

「し、シタいこと!?いやまて、そんなこと、したくなくなくないが、だが、……そ、そうだ、部屋でしよう」

「……やっぱり最初はベットがいいの?」

「それだと俺がめちゃくちゃシタい奴みたいに聞こえないか!?まあ、確かにシタいかもしれないが……」

「わかったわ」

「何がわかったんだ!?」

「フーくんのエッチ」

 

お風呂から出た後は、夜ご飯を食べた。普段とは違い、様々な料理が出されたが、味はほとんど覚えていない。無心で食べ続け、部屋に戻った。

ついに、フーくんとひとつになる。ここまで頑張って攻めた自分を褒めたい。

とりあえず私たちはベットに入っていった。それから電気を消して、そして……

 

「……フーくん、来て」

「……」

「焦らさないでよフーくん」

「……」

 

いくら話しかけても返事がなかった。

 

「フーくん?」

「Zzzzzz」

「ね、寝てる……」

 

そういえば私もクタクタだ。三玖と同じくらいしな体力のないフーくんは限界を超えていたのだろう。

私はがっかりしつつも、なぜか安らかな気持ちで眠りについた。

こうして、私たちの京都旅行の1日目は終わった。

私とフーくんのカップルは、大事なところでうまくいかない。それでもめげないで頑張ろう。

また明日がある。明日こそは攻めて攻めて攻めまくろうと夢の中で私は誓ったのだった。

 




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最初のデートが三玖の場合①

俺、上杉風太郎は、林間学校の最終日に五つ子全員から告白をされた。そして、俺はその中から三玖を選び、恋人同士となったのだった。

 

 

それから3日後、俺は三玖に呼び出され中野家を訪れていた。三玖以外の4人は気を使ったのか、家には三玖だけが1人ポツンと座っている。

 

「フータローいらっしゃい」

「お、おう」

 

部屋に2人しかいないためか、寂しさのような気持ちに襲われる。2人で過ごすにしてはこの部屋は広すぎる。

そんなことは気にしいないのか、普段通りといった様子の三玖は近づいてきながら言った。

 

「今日は家デート」

 

三玖は手を広げ、今日はここで過ごすよと言わんばかりに家をアピールをした。

ちょっも待て、2人きりで家デートと聞くとどうしても変な意味だと思ってしまうのだが……。

 

「と、とりあえず何するんだ?」

「フータローはやりたいことある?」

 

問いに対し俺は少し考えるが、人の家でやりたいことと聞かれても、何があるのかもよくわからない。

 

「別に俺は。三玖がやりたいことでいい」

 

俺がそう言うと、三玖は少し考えてから、

 

「……じゃあゲーム」

 

と小さい声で答えた。

ふむ、ゲームというのはやっぱり、いかがわしい感じのゲームだろうか。

負けた方が罰ゲームとしてあんなことやそんなことを……。

俺のそんな妄想を遮るように三玖が興奮しながら言った。

 

「信長の野望やろう」

「え、信長?」

「ダメだった?じゃあ三国志14?」

 

三玖は「え、こいつ信長で満足しねえの?」みたいな顔をした後、今度は三国志とやらを取り出した。

なるほど、いかがわしいゲームじゃなく、ガチゲームか、……変なこと考えてた自分が恥ずかしい!

こほん、と咳払いをし気を取り直す。

 

「お、おお。信長でいいぞ。い、いやー楽しみだなー」

「うん」

 

元気に返事をしてゲームを始める準備をする三玖。

テレビをつけ、ゲームのホーム画面に切り替わった。

ゲームのBGMが寂しく音を出す。それにしても静かだ……。

 

「ところで他の4人はどこ行ったんだ?」

「たぶんお父さんのとこ。だから今日は帰ってこない」

「そ、そうか。じゃあ俺も早く帰らなくちゃな」

「どうして?夜ご飯も一緒に食べよ」

 

三玖は先ほどまでと違い、少し焦ったように言った。

そんなに俺と夜ご飯を食べたいのか!可愛い、なんて可愛いんだ。もちろんこの可愛さの前に断れるはずもなく、

 

「そんなに言うならいただこう」

「やった。よかった」

「そんなに嬉しいのか?」

「うん」

 

嬉しそうに三玖ははにかんだ。

結論。

信長をやってるときも俺の彼女は可愛い。

それから1時間ほどゲームをしたところで、さすがに疲れたので他のことをすることにした。

 

「次は何する?家だとやれること限られてるからな……」

「テレビ見よ。お菓子持ってくる」

「い、一応デートだよなこれ……」

 

しかも三玖は、見たい番組があるわけでもなかった。

仕方なく2人で『第3回ビックリ仰天!老人変顔トーナメント』を見る。老人たちが睨めっこをするという内容のバラエティ。

しかもトーナメント形式で参加者は100人を超えているため、決勝まで残った人は7回も変顔をさせられるという。何より今回でもう3回目というのが驚きである。もはや老人虐待の域に達してる。

これをなんとか見終わり次は何をするか考えていると三玖が今度は、

 

「昼寝しよ」

「ひ、昼寝!?」

「うん」

「一緒にか?」

「うん。いや?」

「喜んで!」

 

これは今度こそ、そういうイベントだ。若い男女がしかも付き合ってる男女が一緒に寝るなんてむしろそれしかない。

 

「じゃあおやすみ」

「ああ、おやすみ」

「……」

「……」

「……」

「……あの」

「……」

 

ほんとに寝てる!デートで昼寝ってほんとにあるの?ていうかほんとに俺ら付き合ってるのか?

とかなんとか言いつつ俺も数分で、ウトウトと夢の中に入っていった。

 

俺と三玖は30分後に起きると、今度は三玖の「次は買い物」という一言でスーパーに行った。

スーパーの中は冷房が強くて肌寒かった。

薄着でスーパーに来たことを後悔しつつ、三玖の方を見る。どうやらナスと格闘中のようで色や重さを確かめている。

俺はナスの状態よりも気になっていることがあった。

 

「なあ三玖。なんで今日は俺を呼び出したんだ?」

「それはさっきも言った。デート」

「でもデートって言うには、変なことしかしてなくないか」

「そ、それは……」

 

子供が悪さをして見つかったときのような顔をする三玖。

これ以上何が言うのはかわいそうだと思ったが、三玖は意を決した顔をしてナスを置いた。

 

「……日常」

「は?日常?」

 

驚きのあまりついおうむ返しをしてしまう。

三玖は気持ちを紛らすためか今度はピーマンを手に取っていた。

 

「どういうことだ?日常って」

「……フータローと普通の家族みたいに過ごしたかった。それだけ」

「……家族ってお前」

「変なことばかりしてごめん」

 

三玖は真っ直ぐ俺を見てそう言った。

別に謝ってほしいわけではないのだが。もちろん怒ってなどいない。

 

「でも、なんで家族みたいに過ごしたいんだ?」

「そ、それは……」

「ん?」

「…………恥ずかしい」

 

今度は顔を真っ赤にしてそう言った。可愛い。

 

「言ってくれよ。気になるだろ」

「…………将来的にこうなるかなって思ったから」

 

もう三玖は、俺のことを見れないのか顔を隠してしまう。

可愛い。あと、可愛い。もう可愛い意外に思いつかない。

 

「そ、そうか……」

「……うん」

 

つまりこの買い物も、俺たちが夫婦だと想像しながらしていたのか。そう思うと俺も恥ずかしくなってくる。

結局、その後はあまり会話は続かず、夜ご飯の具材だけ買い、そわそわしながら俺と三玖は中野家に戻った。

 

家に戻ると、早速エプロンに着替えた三玖は、買ってきた具材を袋から出して並べている。

俺は何をしていればいいのか分からず相変わらずそわそわしていた。

 

「なあ三玖、俺も手伝うぞ」

「フータローは座ってて。これは妻の仕事だから。…………やっぱりなんでもない」

 

またも、恥ずかしがって顔を隠す三玖。

……妻って、なに妻って。

 

「俺の妻、可愛いな」

 

ぼそっと三玖に聞かれないように小さな声で呟き、俺はソファの上でゲームをやるかテレビを見るか、それとももう一寝入りするか考え、結局気づかないうちに寝てしまうのだった。

妻の野菜を切る音を聞きながら。




アドバイスや感想、お気に入りなど良かったらお願いします。


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最初のデートが三玖の場合②

私、中野三玖はスーパーで買った食材を並べながら意気込んだ。絶対に美味しい料理を作ってやると。

買ってきた食材は、ナス、ピーマン、豚ひき肉、キャベツなど全部で9種類。これで今から料理を作る。

私は1人で燃えていた。

なぜこんなに張り切っているのか、それには理由があった。

今日のデートは日常を過ごしたいとフータローには言ったが、私には1つだけ目標があったからだ。それは、フータローに料理を褒めてもらうこと。私はただ一言、美味しいとだけフータローに言ってもらいたいのだ。

 

「頑張ろう」

 

私は、フータローには聞こえないように小さく宣言をする。

だが、気になってそっとフータローの方を見てしまう。

フータローはいつのまにか眠っていた。

そんな姿を見ているだけで安心する自分がいる。

好きな人を見ながら好きな人のために料理をする。私にとって最高の時間なのかもしれない。フータローの寝顔も見れたし。

しかし、そんなことを長く考えているほどの暇はなく、私は焦って料理に取り掛かった。

今回作るのは麻婆茄子と味噌汁とサバ缶サラダの3皿。フータローに喜んでもらうために絶対に失敗はできなかった。

失敗はできなかったのに……。

料理を始めるやいなや、いきなり野菜をうまく切れずに苦戦。さらに調味料を入れる量を間違えてしまい麻婆茄子はすごくしょっぱくなり、挙げ句の果てには目を離しているうちに麻婆茄子がまるこげになってしまった。

 

「……なにこれ」

 

開始から1時間後、料理が完成したはずがお皿には黒い物体のみが乗っかっていた。しかも変な匂いがする。

 

「ん?おお、できたのか」

 

変な匂いに釣られてか、フータローが起きてきた。

でも、こんなものをフータローこのに見せるわけにはいかない。私は焦りながら言い訳を考えたが……

 

「これは違う」

「なにが違うんだ?」

「…………」

 

その問いに対して、いい答えは出てこなかった。

 

「……失敗しちゃったから、これは捨ててもう1回やり直す」

「捨てるなんてもったいないだろ。それに俺は、その黒い物体で満足だ」

「でも……」

「ほら、机に運ぶぞ」

 

嬉しそうにフータローは料理を運んだ。

フータローは絶対無理をしている。私のためにしてくれている。

そう思うと私は罪悪感に襲われた。でも、嬉しさもあった。

私のために。

結局、フータローに説得され、私とフータローは失敗した料理を食べることになった。

 

「いただきます」

「や、やっぱりやめたほうが……」

「心配すんなって、……ぐは!?」

 

料理がフータローの口に入ったのと同時にフータローは悲鳴のような声をあげ顔色が悪くなる。

 

「フータロー大丈夫!?」

「あ、ああ、問題ない。結構美味いぞこれ」

「嘘つかなくてもいい」

「本当だって。もう一口、……ぐふっ!?」

 

再びフータローが悲鳴をあげる。

なんで?なんでそんなにフータローは、私のために体を張って食べてくれるのだろうか。いくらなんでも見てられない。

私は立ち上がり料理を持って行こうとした。

 

「もういいよ。捨ててくる」

「待てよ三玖。俺は本当に美味いと思って食べてるぞ?」

 

フータローはそう言って私を引き止めて微笑んだ。

 

「嘘」

「まあ聞けって」

 

顔色が戻ってきたフータローは、自信に満ちた声で言った。

でも、いくらフォローしてくれてももう遅い。フータローに心から美味しいって言ってもらえる料理は作れなかったんだ。

私が人に料理を出すのはまだ早かった。

もういい。なにを言われても私は傷つくだけだ。フータローの優しさが私を追い詰める。

しかし、そんな私の気持ちはフータローに届くはずもなく、フータローは話を続ける。

 

「お前はなんで俺に料理を作ってくれたんだ」

 

それは、フータローに美味しいって言われたかったから。フータローに喜んでほしかったから。

そんなこと、今更言えるはずがなかった。

しかし、フータローは今度こそ私の心を読んだかのように言った。

 

「俺に喜んで欲しかったんだろ?だったら褒めてやるよ。すごく美味いよ」

「お世辞はいらない。フータローは気にしないでいい」

「お世辞じゃなくて本当だよ。本当に美味いよ三玖の作ってくれた料理は」

「でも悲鳴あげてた」

 

「ああ、だからな」とフータローは前置きをしてもう1度料理を食べた。そして再び悲鳴をあげながら言った。

 

「うぐ!?、た、たしかに味は不味い」

「だから、もうそれは……」

 

捨てよう。そう言おうとしたところをフータローは遮って話を続けた。

 

「でもな、味は不味くても三玖が俺のために作ってくれたっていう事実があれば、もうこの料理は美味いんだよ。味は不味いが料理は美味い」

 

そう言うとフータローは私を見つめ、答えを待った。だから、私はフータローを見つめ直し、そして、答えた。

 

「意味わかんない」

「え!?そ、そうか?」

 

さっきの自信はどこへやら、フータローは「マジか」という顔をしてしょんぼりしてしまった。

 

「でもフータロー」

「ん?」

 

フータローが美味しいって言ってくれただけで私はすごく嬉しい。今私は最高に幸せだ。だから、だから私は心を込めて言った。

 

「ありがとう」

「お、おお」

 

フータローの顔が真っ赤になった。たぶん私の顔も真っ赤になっている。

2人きりのこの部屋には今、恥ずかしくて心地よい雰囲気が流れている。

照れ隠しかのためか、頭をかきながらフータローは言った。

 

「それに料理作る前にお前言ってただろ『これは妻の仕事だから』って。だから、妻が作ってくれた料理はどんだけ不味くても食べるのが夫の仕事だろ」

「そっか」

「ああ」

「「…………」」

 

私たちは照れ臭くて沈黙してしまった。

それが気まずいと思ったのかフータローは、今度は焦りながら早口で言った。

 

「わ、わかったのなら冷める前に食べるぞ」

「でもやっぱり食べなくていい」

「な、なんでだ?」

「フータローには味も美味しいものを食べてほい」

「だからって……」

「大丈夫。次のデートまでには美味しい料理作れるようになるから。だから待ってて」

 

今できる限りの満面の笑みで私は言う。

この言葉に反応してフータローは少しだけうなずいた。

そして私たちは、私の失敗した料理を諦め出前を頼むことにした。

これでいい。今日ダメなら明日があるから。私とフータローの日常はこれからも続いていくから。

だから何年先かは分からないけど、いつか私たちが夫婦になった時、今度こそ味も美味しいと言ってもらえるぐらい料理を上手くなろう。

私は1人密かに誓ったのだった。




よろしければアドバイスなどお願いします。


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最初のデートが四葉の場合①

俺、上杉風太郎は、林間学校の最終日に五つ子全員から告白をされた。そして、俺はその中から四葉を選び、恋人同士となったのだった。

 

 

最初のデートは、恋人たちにとって特別なイベントである。

それは、俺と四葉にとっても例外ではなかった。そのため、俺は場所を決めかねていた。

しかし、四葉から遊園地がいいという強い要望があり、最初のデートは遊園地になった。

そして当日。最寄り駅前のコンビニに待ち合わせをしていたのだが、

 

「遅い。もう10時だぞ」

 

『9時集合です。遅れないでくださいね!』とメールを送ってきたあの日の四葉はどこへ行ってしまったのか。

あれだな、天国に行ったのかもしれないな。俺の彼女天使だし。そうなると彼氏である俺も天使なのかもしれない。大天使フタエル。

暇つぶしも兼ねて、そんなくだらない妄想をしていると、突然天使に声を掛けられた。マイエンジェル四葉ついに降臨。

 

「うーえすーぎさーん」

 

大きく手を振りながら俺に近づいてきた。今日もニコニコだ。可愛い。

 

「おう、やっと来たか」

 

俺は少しだけドスの効いた声で言う。別に怒っているわけではない。

しかし、俺の声にビビったのか、四葉は恐る恐るといった様子で質問をした。

 

「ま、待ちました?」

「待った。1時間待った」

「あはははは。す、すいません遅刻しちゃって」

 

勢いよく頭を下げる四葉を見て、やっぱり頭の上に天使の輪は付いてないんだなと、どうでもいいことを思いつつ俺はそっと四葉の手を握った。

 

「う、上杉さん!?」

「ほら、行くぞ」

 

こうして俺と四葉の初デートが始まった。1時間遅れで。

 

 

それから、さらに1時間電車に揺られ、目的地である横浜コスモスワールドに到着した。

ここは日本でも有数の広さで「子供だけでなく大人も楽しめる乗り物がいっぱい!!」というフレーズでお馴染みのテーマパーク。

なんと言っても目玉は、超巨大ジェットコースター「キオトン」だ。名前の由来は、これに乗ったら恐怖で記憶が吹っ飛ぶかららしい。

四葉はキオトンを見るとすぐに繋いでいた俺の手を引っ張って口を開いた。

 

「上杉さん、あれ乗りましょう!」

「わかった。じゃあ行くか」

「はい!」

 

俺たちは30分ほど並んだ後、お姉さんの説明を聞きながらキオトンに乗った。

ちなみに並んでいる時、四葉はずっと「楽しめですね〜」と言って笑顔だった。めんこい。

 

「いよいよですね上杉さん」

「おお、結構高いな」

 

今、ちょうど1番高い場所。ここからコースターが落下していくのだが、これ、多分やばい。

何がやばいって、乗ってみたらわかるのだが高さが異常だ。しかも落ちる角度が急すぎて前のレールが見えない。

俺の彼女たる四葉は、それはもう楽しそうに乗っているため彼氏の俺が怖いなんて言えなかった。

 

「落ちますよ上杉さん」

「ははは」

 

俺の苦笑いが合図となったのか(そんなわけない)、ジェットコースターは急激に角度を変え、落ちていく。

 

「楽しいですね上杉さあああぁぁぁん!!」

「うわあああぁぁぁぁ!!!」

 

そこからジェットコースターは落ちたり上がったり、不意に回転したりと大忙しだった。主に俺のリアクションが。

なんか体の体液という体液が全部飛んでいった気がする。

しかも、ジェットコースターから降りたときには、記憶が曖昧になっていた。キオトン乗ってみたーい。

フラフラしていた俺を心配そうに見た四葉は、お茶の入ったペットボトルを俺に差し出した。

 

「大丈夫ですか上杉さん?お茶飲みますか?」

「あ、ああ。悪い」

 

四葉からもらったお茶を俺は勢いよく飲もうとしたが、ふと思ってしまった。

これ、間接キスになるんじゃないか。

ペットボトルを確認すると蓋は開いており、お茶も少しだけ減っていた。

このお茶は確実に四葉が1度飲んでいる。

だが、何も恥ずかしがることはない。もう俺と四葉は付き合っているんだ、間接キスくらいなんでもない。

自分にそう言い聞かせペットボトルに口をつけた。

間接キスを意識して恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にしたのは俺、ではなく以外にも四葉だった。

 

「う、上杉さん。それ、私が先に少しだけ飲んじゃってたやつでした。ごめんなさい、か、間接キスに、うぅ」

「いや、別に大丈夫だぞ」

「き、気にしないんですか?」

 

上目遣いで四葉は言った。しかも顔はまだほんのり赤い。四葉 is スーパーウルトラミラクル天使。

やっぱり天使の輪が付いてるんじゃないか。

そんな妄想をしていると、四葉は、今度は俺を心配そうに見つめた。

やばい、何か言わなくては。

 

「俺はいつも四葉とのキスを妄想してるからな」

 

ミスったあああぁぁぁ!!

俺は焦って変なカミングアウトをしてしまった。

四葉はというと、俺が見たことがないような顔をして「はわわわわ」と言っていた。

 

「上杉さんは私とキスしたいんですか?」

 

小さく呟くように四葉は言った。

キスはしたいに決まっている。だがしかしだ。今、正直にそうやって言うことが正解なんだろうかと考えてしまう。

なぜなら、周りで俺たちを見ているやつが何人かいた。ニヤニヤと。

やっぱり、ここでキスする流れになるのはまずい。ていうか恥ずい。

 

「……したい」

 

しかし、俺の本能が勝ってしまった。9:1の圧勝だ。

嘘は駄目だからな、うん。

というか、天使の前で嘘はつけなかった。しょうがないさ、人間だもの。

 

「そ、そうですか。上杉さんがそう言うなら……」

 

四葉はモジモジしながらも目を瞑って顔を上げた。

やばい、キスの流れだ。

今なら四葉にキスができる。……ただし、くそギャラリーがいなければ。

 

「よ、四葉?もう1度乗ろうかキオトン。な?」

 

最善の一手を打った、……はずだった。

しかし、四葉は怒ったようながっかりしたような、どっちとも言えない顔をしていた。

 

「むー、意気地なし」

「わ、悪い。でもほら、みんな見てるし」

「いーですよーだ。もう1回乗りましょうキオトン。ふん。」

 

四葉は俺の手を、ここに来た時とは違い荒々しく引っ張る。

それを見て「怒らせた〜」とギャラリーの1人が笑った。おいコラ。

俺らは、もう1度キオトン待ちの列に並んだ。

しかし、四葉の機嫌は直っていないらしく頬を膨らませて終始むすっとしていた。

かくいう俺も、並んでいるうちに忘れていたキオトンの恐怖を思い出したため、足が震えてしまい四葉どころじゃなくなっていた。

結局、俺らに会話は無く、そのままキオトンに乗る。

 

「な、なあ。まだ怒ってるのか?」

 

ジェットコースターの1番高い場所、つまり落下する直前に俺は四葉に恐る恐る聞く。

ちなみにこれは、大きな恐怖の前だと小さな恐怖はなんともない作戦である。

 

「別に怒ってませんよーだ」

 

四葉は明後日の方向を見ながら言った。

どうやら機嫌はなかなか直らないらしい。

なら、俺は恥を捨てて言うしかない、四葉の機嫌を直すために。

 

「あの、四葉、……さん?」

「なんですか?」

「後で2人きりになったら……」

「なったら?」

 

「キスしよう」と俺が言おうとした瞬間、キオトンが俺に牙を向いた。ここでまさかの急降下。

 

「キスしようううぅぅぅぅ!!!」

 

俺は、ジェットコースターに乗りながらキス宣言をしたのだった。

 

 

「上杉さーん?大丈夫ですか?」

「あ、ああ」

 

キオトンから降りてから5分ほどが経っていた。

どうやら四葉の機嫌は直ったようだった。

その証拠に四葉は、俺のために走って水を買ってきてくれた。

ん?でもなんで四葉は怒っていたんだ?なんで四葉の機嫌は直ったんだ?

俺はキオトンに乗る前後の記憶が曖昧になっていた。

まあ、四葉が楽しいならそれでいいか。

俺は1人で納得し、安心した時だった。

 

「キス期待してますからね」

 

四葉は笑顔でそう言った。

キス。

その言葉で、俺は思い出した。

そうだ、ジェットコースターに乗りながら叫んだんだ。

「キスしよう」って。さて、どうしたもんか。

 

 

それから、俺と四葉はコーヒーカップやメリーゴーランドなど様々なアトラクションに乗った。なんでも、四葉は全てのアトラクションを制覇するのが目標らしい。

コーヒーカップに乗っている時も、並んでいる時も、俺の視線は四葉の唇に集まった。

どこでどうやってどのようにキスをするか。俺はそのことで頭がいっぱいだった。

気がつくともう昼の12時を過ぎており、俺たちは四葉が作ったおにぎりを食べながら休憩した。

そこで俺は1つ思いついた。キスをする絶好のスポットを。ベタかもしれないがあそこしかない。

俺たちは、俺が四葉に1つ提案をしてから、アトラクション巡りを再開したのだった。



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最初のデートが四葉の場合②

今日は私、中野四葉にとって上杉さんとの大切な初デート。なのに私は失敗ばかりだった。

まず最初の失敗は遅刻をしたこと。

上杉さんには、ずっと私を見てもらいたかった。だから1時間かけて服を選んだ。それで、気がつくともう9時半を過ぎていた。

遅刻なんて最低だ。優しい上杉さんも怒っているように見えた。

2つ目の失敗はキスをせがんだこと。

私たちを見てる人が何人もいた。それに気づいていたにも関わらず、私は上杉さんにキスをせがんだ。もちろん断られた。当たり前だ。

3つ目はキスをしてもらえなくていじけたこと。

これが1番最悪だ。デートの雰囲気を壊してしまった。

私のデートは最悪だった。

でもそのかわり、楽しみも1つできた。それは、上杉さんがキスをすると約束をしてくれたこと。

お昼ご飯を食べているときに上杉さんから、観覧車は最後にしようと言われた。

つまり、観覧車で上杉さんがキスをしてくれる。

これが私の楽しみ。これだけは絶対に成功させる。

午後は失敗しないことにだけ気を配って過ごすんだ。

普通に過ごせばいい。変なことはしない。変に考えたりもしない。ただ上杉さんと楽しく過ごす。

そうやって自分に言い聞かせながら、いくつかのアトラクションを周った。

それから時刻は7時を過ぎ、広場ではパレードが行われ人が集まる時間帯となった。

私たちはその様子を見ながらある場所を目指した。

それはもちろん観覧車だ。

私の今日1番の楽しみはもうすぐそこにある。

観覧車に向かう途中、私たちは一言も喋らなかった。

それでも手だけは繋いでいた。

それだけで十分だ。

上杉さんの温かさを感じるから。上杉さんとの幸せを感じるから。

私たちは、そのまま観覧車に乗った。

私たちを歓迎するように観覧車は動き始める。少しずつゆったりと。

私たちはお互いに見つめ合ったまま動かない。

観覧車は頂上に少しずつゆったりと近づいていく。

それに反比例するように私の心臓が跳ね上がる。

ドキドキ、ドキドキ。

それでもやっぱり観覧車はゆったりと、だけども確実に上へ向かっていく。

もう少しで頂上だ、そう思った瞬間上杉さんが私の肩に手を置き顔を寄せた。

上杉さんの顔がすぐそこにある。大好きな人がすぐそばにいる。

嬉しい。

私は上杉さんが好きだ。そして、上杉さんは私が好きだ。

それだけですごく嬉しかった。たった2人だけの感情で私は幸せだった。

私はそっと目を閉じる。

今私はどんな顔をしているのだろうか。すごく笑顔かもしれない、ニヤけちゃっているかもしれない、緊張で変な顔をしてるかもしれない。

それでも、例え私がどんな顔をしていても、感情だけは1つだと強く確信する。

私は今すごく幸せ。それだけはわかる。

でも、幸せな時間は突然終わりを告げる。

上杉さんは私の肩から手を離し私の涙を拭った。

 

「……大丈夫か四葉」

「あはは……」

 

私は観覧車の中で泣いていた。

 

 

 

私と上杉さんの最初のデートで、私は失敗ばかりだ。

観覧車の中で私は再び思う。

4つ目の失敗は大事な場面で泣いてしまったこと。

この場の雰囲気を、上杉さんの勇気を、私の1番の楽しみを全て壊してしまった。

なんで泣いてしまったのかはわからない。

幸せな気持ちに嘘はないのに。それなのに……。

観覧車は無慈悲にも降りていく。私たちを待ってはくれない。

大切な時間は壊れ、過ぎる。

それでも私たちに会話はない。

無言。

さっきまでとは違う嫌な無言。

上杉さんは私が泣いた理由を聞きたいかもしれない。

それでも何も言わない。いや、言わないで待っててくれている。

これが私のために考えた答えなんだろう。上杉さんの優しさだ。

しかし、私の答えは出ないまま観覧車は止まった。

係員の人が退出を促す。それと同時に上杉さんは私に目で確認をする。

私はやっぱり声が出ない。このまま今日のデートは終わるかもしれない。

でも本当にそれでいいのだろうか。

ふと4人のことが頭に浮かんだ。

一花と五月は言っていた。

「私たちの分まで幸せに」と。

二玖と三玖は言っていた。

「幸せにならなきゃ許さない」と。

自分が不甲斐ない。4人は悔しくて悲しい気持ちを抑えて私を応援してくれたのに。

それなのに私は、このままデートを終わらせていいのだろうか。

いいはずがない。終われない。

私は決心した。

何か言わなきゃ。上杉さんに言わなきゃ。

そう思うと心が軽くなった気がした。

みんなが私に勇気をくれたのかもしれない。

だから意を決して私は言う。

 

「係員さん、もう一周だけお願いします!」

 

 

再び観覧車は上に向かって動き出した。

ゆったりとだけども確実に。

私は上杉さんを見つめた。

上杉さんと目が合う。でも上杉さんは何も言わない。ずっと待っててくれている。

だから、私が言わなきゃ。言わなきゃ。言わなきゃ。

 

「う、上杉さん」

「どうした」

 

優しい声で上杉さんが言った。

私はその声を聞いただけで心が軽くなる。

やっぱり私は上杉さんが好きだ。これは自信じゃなくて確信。誰に邪魔されても揺らがない私の大切な気持ち。

それを上杉さんに伝えたい。

 

「私、上杉さんが好きです」

「俺もお前が好きだ」

 

温かい言葉が心に染みる。上杉さんの言葉が私を幸せにする。

もし、私にも上杉さんを幸せにできる言葉があるのなら、その言葉を掛けてあげたい。

だから私は言葉をつむぐ。

 

「さっきはすいませんでした。突然泣いて変な空気にしてしまって」

「ああ」

「それに、その前も急にキスをせがんだりとかいじけちゃったりとか」

「別に気にしてない。ただし遅刻は気を付けろよ」

「は、はい。ごめんなさい」

「でもまあ今日のことは水に流して、明日からまたちょっとずつ歩いていけばいい。その、なんだ、ふ、2人で寄り添い合いながら……」

 

やっぱり上杉さんは優しい。優しく私を包んでくれる。私はその優しさに甘えてばかりだ。

でも今日はこれで終わりたくない。私は私の楽しみを諦めたくない。

 

「上杉さん目瞑ってください」

「目瞑れって、まさかお前キス……」

「いいから早く早く」

「お、おい、まだ心の準備が……」

 

もう少しで観覧車は頂上に行く。あと少し。

私は上杉さんの肩に手を置いて顔を近づける。

今度は泣きませんように。

そう願いながら顔を近づけていく。

上杉さんの鼻息を感じる。上杉さんも私の鼻息を感じているかもしれない。

やっぱり2回目でもこの距離は恥ずかしい。

上杉さんはどう思っているのだろう。

一緒にドキドキしてくれてたらいいな。

そう思いながら、私は唇を上杉さんの唇に重ねる。

 

 

「上杉さん、帰りましょうか」

 

私たちは観覧車から出ると、手を繋いで歩き始めた。2人で寄り添い合うように。




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最初のデートが五月の場合①

俺、上杉風太郎は、林間学校の最終日に五つ子全員から告白をされた。そして、俺はその中から五月を選び、恋人同士となったのだった。

 

 

それから1週間後。

俺たちの記念すべき初デートは、五月の提案によって動き出した。

待ち合わせ場所は、中野家の近くの公園と前日に言われていたが俺はどこに行くかは知らされていない。

俺が公園に到着してから約5分後、とびっきりのオシャレをして来た、……ようには見えない五月がやってきた。

五月の服装は、下はダボダボなズボンで上はトレーナー。色合いも灰色と茶色で地味だ。

もうちょいデート感を出してはもらえないだろうか。

あえて軽い感じの服装で行こうとか考えてた自分が恥ずかしいから。

五月の服をマジマジと見ていると、五月も恥ずかしく思ったのか少し顔を赤らめた。

 

「な、なんですか、そんなに見ないでください。早く行きますよ」

 

そう言うと五月は1人で歩き出してしまった。

俺まだどこ行くのか聞いてないんだけど……。

 

「行くますよ上杉君!」

 

行き先がわからなくてもこれだけは言える。張り切っている五月は可愛い。

 

 

どうやら目的地は割と近場らしく、五月がスマホを調べながら歩いて向った。

それから数十分歩いただろうか、五月が急に立ち止まった。

 

「ここです上杉君」

 

外装が明るく、若い人が好きそうな雰囲気の店だ。まあ、俺も若いが。

 

「なになに、ケーキ屋すまいる?」

「おいしいって噂なんですよ!」

 

看板を指差しながら五月は言った。

看板には「ケーキバイキングでスマイルに!ケーキ屋すまいる」と書かれている。

なるほどケーキ屋か。

俺に事前に言ってなかった割には意外性のない場所のような……。

他にも看板には、テレビ取材があったことや名物メニューなどが書かれている。

 

「なになに、名物メニューのメガモンブラン……」

「……」

「おい五月」

「な、なんでしょう」

 

五月は、俺に全く目を合わせず冷や汗をタラタラ掻いている。

 

「もしかして食べるのか?」

「え、ええ」

「まだ朝の8時だぞ」

「一緒に頑張りましょう!」

「でも協力禁止って書いて……」

「当たり前じゃないですか。お互いに頑張ろうって意味です」

 

「ルールは守ります」と五月は少し怒り気味に言った。

いやなんでだよ。俺が悪いのか?

五月が早く食べたいと急かしてくるが、落ち着いてもう1度看板を見る。

ケーキ屋すまいる看板メニュー『メガモンブラン』。

総重量2キロ。6000キロカロリー越え。

値段は3000円。ただし30分以内に食べきれば無料。

食べ切れるか!

ここまでくると根本から勘違いをしている気がする。

 

「なあ五月。俺たちって付き合ってるよな?」

「え、ええ」

「今日はデートだよな?」

「まあ、デートとと言えばデートかもしれないですね」

「かもしれない?」

「ええ。いわゆるデートとは目的は違えど、一応2人きりで出かけているわけですしね」

「目的は違うってまさか……」

「もちろんこのモンブランが目的です!!」

「まじかよ……」

 

こうして俺たちの初デート(?)が始まった。

 

 

店員が両手で大きなお皿を運んでくる。乗っているのはもちろんメガモンブランとやらだ。

実物を見て俺はあらためてげっそりした。

思った通りでかい。食べきれる自信がないぞこれは。

でも30分で食べなくては。3000円も無駄にできない!

 

「それではスタートでーす」

 

ゆるっとした雰囲気の店員さんの合図でチャレンジがスタートする。

ここから30分の長い戦いだ。

 

「ではいただきましょうか上杉君」

「ああ。いただきます」

「いただきます」

 

フォークですくいあげて口にモンブランを運ぶ。

栗の風味が口の中いっぱいに広がって美味しいな、なんて思いながら横を見る。

五月も満足そうな顔をしてモンブランを頬張っていた。

満足ならそれでいいか。

なんて気持ちになるわけがなかった。

なんだよ彼女との初デートがメガモンブランって!

ていうかこれデートなのか?

だれか『デート中』ってテロップ貼り付けてくれ。

そうでもしなきゃただの大食い友達にしか見えない……。

俺は心の中で暴れながらモンブランをむさぼった。

そして30分間食べ続け、……られなかった。

というかまだ開始から10分しか経っていない。

それなのにもう手が動かなかった。

まだ4分の3ぐらい残ってるぞこれ……。

対する五月は、なんとのこり半分くらいまで減っていた。しかもまだ幸せそうに食べている。

バケモンだこの人……。

食べている時は真剣そのもので、話をするような雰囲気ではなかったが、突然何か言いたげに五月が俺を見た。

 

「どうした?」

「私は味変のためにカレーを頼みますが、上杉君はどうしますか?」

「え?追加注文すんの?」

「ええ。何かおかしなことでも?」

「いや……」

 

カレーは飲み物とはこういうことなんだろうか、と思いつつ再び俺は手を動かす。

それからまた10分が経過すると、五月はほとんど食べ終わっており名残惜しそうにモンブランを見つめていた。

対する俺は、さっきからほとんど減らないモンブランを睨みつける。

残り10分か……。3000円は惜しいがここは、

 

「ギブアップだ」

「え、まだ全然食べてないじゃないですか!」

「もういい。3000円は諦める」

「そ、そうですか」

 

五月はそわそわしながら言った。

これはつまり、そういうことだろう。

 

「もう俺は食えないから食べていいぞ五月」

「そ、そこまで言うならしょうがないですね」

 

目を輝かせながら五月はそういうと、食べ始めた時のペースに戻しとりあえずといった感じに自分の分を平らげた。

それからさらに10分が経ったころには、モンブランは綺麗になくなっていた。

結局五月はカレー1皿とメガモンブラン約1.7個を完食したのだった。

ちなみに俺の分も半分以上食べたということでお金も半分払ってもらった。

ああ、俺の3000円。1500円で済んでよかったなあ。

感慨深く1500円を払い、俺たちは店の外に出た。

 

「今日は付き合っていただきありがとうございました」

「いや、こっちこそ悪かったな半分払ってもらって」

「いえいえ。では、今日はこれで」

「ああ。じゃあまた」

 

そう言って俺たちは別れていった。

って、ちょっと待て。

今日は記念すべき初デートのはずだったよな。

それがいつの間にか大食い企画に変わったんだ。

このままじゃ終われない。

その思いが俺を自然と動かした。

 

「ちょっと待て五月」

「何か?」

「午前中はそっちに付き合ったんだ。午後は俺に付き合ってくれないか?」

「もしかしてお昼ご飯ですか?行きましょう!」

 

目を輝かせながら五月は言った。

まだ食べれるのかこいつ……。

だがもちろんお昼ご飯ではなく、俺は普通にデートをしたいだけだった。

 

「普通に映画でも行かないか?」

「映画ですか……」

 

あからさまに五月はガッカリする。

……俺と映画観るのそんなに嫌なのか。

だが俺はめげない。

 

「ほら、映画観にポップコーンとかもあるだろ」

「ポップコーンですか……」

「だ、だめか?」

「行きましょう!」

 

こうして俺たちの初デートは今から始まった。

『今から』ってとこが大事だ。今からだからな?



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最初のデートが五月の場合②

私、中野五月は今、人生最大の悩みに直面していた。

そう、それは……、

 

「やはり王道の塩味に、……いやでもキャラメル味も魅力的ですね」

 

ポップコーンの味決めだ。

私はかれこれ20分も悩み続けていた。

 

「うーん。やっぱり決められません」

「どっちでもいいわ!」

 

私の彼氏である上杉君はめんどくさそうに言った。

上杉君は分かっていない。ポップコーンの味が今後をどれだけ左右するか。

 

「おい、映画始まっちまうぞ」

「う、うぅ。分かってますよ」

 

そう、今回の目的はポップコーンではなく映画を上杉君と観ることなのだ。だからポップコーンで悩んでいて上杉君を待たせるのは悪い。

よし、ここは思い切って第3の勢力、チーズ味にしよう。

そう決意をして店員さんを呼ぼうとしたが少しためらってしまう。

やっぱり塩味とキャラメル味も食べたい。

 

「……はあ。どれも魅力的です」

「ならハーフ&ハーフにすればいいんじゃないか」

「そ、そんなものが!」

 

ハーフ&ハーフ。塩味とキャラメル味が半分ずつ入っているためどちらの味も楽しめる、とメニューに書いてある。

こんな素晴らしいものがあるなんて思ってもいなかった。

感動で涙がこぼれそう。

今度こそ店員さんを呼ぼう。

この素晴らしいハーフ&ハーフで塩味もキャラメル味も堪能できる。

ん?塩とキャラメル?

……塩とキャラメル。ん?

チーズがない!

私はすでに1度チーズ味を頼もうとしたいたから、もう舌がチーズ味を待っている。

それなのにチーズ味を食べられないなんて!

 

「……チーズ味も食べたいです」

「は?」

「チーズ味も食べたいです!」

「……えぇ」

 

私の大きな声にびっくりして上杉さんが引いていた。

で、でもこれはしょうがない。だってポップコーンの味は大事だもん。

 

「……はあ、じゃあ俺がチーズ味頼んで分けてやるから早く行くぞ」

「そ、それは悪いですよ」

「いいから。映画始まっちまうだろ」

「…….わかりました」

 

上杉君のお言葉に甘えてチーズ味とハーフ&ハーフのポップコーンを買い、シアターに向かった。

 

「そういえばなんて映画を観るんですか?」

「聞いてなかったのかよ」

「き、聞いてましたよもちろん。『おっさんずハグ』ですよね?」

「やっぱり聞いてなかっただろ。そんなんじゃなくて普通の恋愛映画だ」

「ポップコーンのことで頭がいっぱいでした」

「……はあ、着いたぞ」

 

椅子に座り、スクリーンに流れているCMを観た。

おっさんずハグ大ヒット上映中!、とナレーターが読み上げる。

今度みんなと観ようとか思いながらCMを観続けると突然パッと明かりが消え、カラフルなオープニングが始まった。

ありきたりであまり面白くない。

まだ始まってから20分程度しか経っていないがもう飽きてしまっていた。

やっぱり私の楽しみはポップコーンたちしかない。

塩味もキャラメル味もチーズ味も全部美味しい。

それから私はポップコーンを食べることに集中した。

映画が中盤に差し掛かろうとしたところで、塩味とキャラメル味を一緒に食べると甘じょっぱくてクセになることを発見した。

なんて素晴らしい発明を私はしてしまったんだろう。

この発明を上杉君にも教えてあげたいと思い、横をチラッと観ると、上杉君も何か言いたいことがあるのか私を見ていたため目が合ってしまった。

な、なんか気まづい。

しかし、そんな思いが上杉君に伝わるはずもなく、あろうことか顔を真っ赤にしながら私の手を握ってきた。

 

「う、上杉君?どうしたんですか?」

「手を握りたかっただけなんだがダメか?」

 

確かに私たちは恋人同士だし、こういうことをしてもおかしくはない。けど……、

 

「すいません。ポップコーンが取れないので離してください」

「あ、はい」

 

背に腹は変えられない。

勇気を出してくれた上杉君には申し訳ないが、ポップコーン食べたい。

私は映画の残りの時間もポップコーンを食べ続けた。

 

映画が終わると上杉君の提案により、私たちは公園のベンチで話をすることにした。

 

「いやー美味しかったですねポップコーン」

「映画観て最初の感想がそれかよ……」

 

ガクッと肩を落として上杉君は言う。しかし、すぐに真面目な顔になって私を見つめた。

 

「そんなことより、俺たち付き合ってるんだよな?」

「え、ええ。何を今更言ってるんですか」

「だって恋人っぽいことしてないだろ。……それにさっき手握るの断られたし」

「そ、それはポップコーンを食べていたからですよ!」

 

私がそう言うと上杉君は目を光らせた。

な、何か嫌な予感がする。

 

「じゃあ今ならいいんだな」

「い、今ですか!」

「ああ」

 

上杉君が私の手を握った。

う、上杉君の温もりを感じる……。

が、そんな恥ずかしいこと言えるはずもなく、

 

「ふ、ふん。別にこれくらいなんともありません!」

「なんでちょっと怒ってるんだよ……」

「別に怒ってないです!」

 

照れているだけ。

だって今、私は上杉君と繋がっているということで、それを考えるだけでドキドキするから。

これが恋愛、これが恋人ということなんだろうか。

 

「じゃあこれならどうだ」

「な、何を……」

 

上杉君の顔が近い。上杉君がすぐそこまで顔を近づけ、そして私の唇を触った。上杉君の唇が。

 

「むぐ!」

「わ、悪い」

 

キスした。上杉君と。

私のファーストキスが突然奪われた。

しかもこんな公園で。恥ずかしくて悔しいはずなのに、なのに。

 

「何するんですか!」

「ほ、本当に悪かった」

「だったら!……もう1回してください」

「え?」

「だ、だから、突然でよくわからなかったのでもう1回してください」

「わ、わかった」

 

私と上杉君が見つめ合う。

恥ずかしい、恥ずかしいけど上杉君の唇を見てしまう。

はやく、はやくもう1回キスしてほしい。

 

「……じゃあいくぞ」

「……はい」

 

今度はしっかり、目を閉じて心の準備をしてキスをした。さっきよりも長く。

上杉君の柔らかい唇の感触がする。

キスはレモンの味がするとか言うけど、緊張で味なんかわからない。

ただ上杉君がいて、上杉君と繋がれる。それが幸せということはわかった。

だから、唇が離れたときは寂しく感じた。

 

「じ、じゃあ、そろそろ帰るか」

「ま、待ってください。今日は上杉君の家にお邪魔してもいいですか?」

「どうしたんだ急に」

「い、一緒に居たいので」

 

まさか私がこんなことを言う日が来るとは思わなかった。

でも、それだけ上杉君が今の私には魅力的で愛おしい。

一緒に居ると楽しいしドキドキする。

そんな時間をもっと過ごしたいから。

 

「まあ、いいぞ。らいはが今夜はカレーって言ってたしな」

「カレーですか!楽しみです」

「じゃあ行くか」

「はい!」

 

私たちは、今度はどちらからでもなく、自然に手を取り合って歩き始めた。




いやーなんとか終わりました。
らいは編や零奈編、五姉妹全員編、変わり種だとマルオ編(笑)なども考えていたのですが他の作品がほったらかしなので予定通りこれで最後です。
よかったら、お気に入り、感想(アドバイス)、評価などよろしくお願いします。
これからは、他の作品を投稿していく予定なのでそっちの作品もよろしくお願いします。

あっというまに終わりました。キャラの中では風太郎を
理解するのが大変でしたね。後はデートの場所も考えるの
が大変でした。コロナのせい(おかげ)で時間もかなり
取れたので途中からは毎日投稿でできました。
うっかりした誤字もありましたが(上杉を上原と間違えた)笑。

見てくれた方、評価してくれた方、お気に入りに入れてくれた方本当にありがとうございました。




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