前世の記憶が戻ったネブラ・シルヴァ (びーびーびー)
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私はネブラ・シルヴァ

 ああ、なんてこった。こんなことなら、ブラック・クローバーを読んでおくんだった。どうしてかって?もうわかるだろ?そう転生だ。ブラッククローバーの世界に転生してしまったらしい。こんなことってある!?私は前世オタクだった。アニメ、漫画オタクだ。だからこそ悔やまれる。毎週ジャンプを買っているのにブラッククローバーだけ読むのを飛ばしていたのだから。そう、私が今まで生きてきたこの世界はブラッククローバーという話の世界なのだ。そんなことってある!?私の知っている世界に転生してくれよ。ちなみに私の原作知識は主人公と魔導書を使ってなんかするくらいのことしか知らない。確かに興味はあった。いつか漫画もアニメも見ようとしていた。しかし、何故かジャンプは読み飛ばしていた。何故だ?わからんそんなこと。ただの気分だ。

 

 「ネブラ、その魔導書を見せてみろ。」

 

 ぐちゃぐちゃ同じようなことを考えているとノゼル兄様が話しかけてきた。私の魔導書がどうしたんだ?そういえば今日は魔導書の授与式だった。この世界では魔導書と書いてグリモワールという魔導書をつかって魔法を使うことができる。正確にはなくても自分にあった属性であれば単純な魔法は使える。魔導書はそれの幅や魔力を高めてくれるものだ。

 

 そんなことはどうでもいい。そう今私は魔導書を授かったのだ。年に一度その年の齢15歳になる者たちを全国各地に集めて魔導書を授かるのだ。魔導書の塔にはたくさんの魔導書があり、魔導書が授与者に向かって飛んでくる。自分にあった魔導書が自分の元へ飛んでくるのだ。ある意味魔導書が使用者を選んでいるといってもいいのかもしれない。

 

 私は確かに魔導書をもらい受けた。それはいい。その後が問題だった。魔導書をもらった瞬間頭が痛くなり、前世の記憶が呼び出されてしまったのだ。王家の私が頭を抱えて呻きだすもんだから周りは騒然としていた。前世の記憶が戻ったら痛みが引いてきたので付き添いに来ていたノゼル兄様に大丈夫だと伝えた。そして、今に至る。そういえば、ノゼル兄様のこと無視しているな。話さないと。

 

 「はい、どうぞ。」

 

 ノゼル兄様に魔導書を渡した。まじまじと私の魔導書をノゼル兄様が見ている。どうしたのだろう?私の属性は霧だからただの霧魔法だと思うのだが…

 

 私が不思議そうにノゼル兄様を見ているとノゼル兄様もこちらを向いて目が合った。凄い剣幕だ。とても怒っている時の顔だ。母が死んでしまった時くらいの怖さだ。あの時のノゼル兄様は怖かった。誰かを憎んでいるようなそんな目をしていた。

 

 何でだろう。どうしてそんな顔をするのだろう。わからない。その目は私にも向けられている。私何か嫌なことしたかな?わからん。とりあえず話してみるか。

 

 「どうしたのですか?」

 

 「帰るぞ。」

 

 「え?」

 

 「早くしろ!!」

 

 「は、はい!」

 

 何があったんだろう?わかんねえ。原作知識があればわかったのかもしれないけど私はわからんぞ。どうしてノゼル兄様が怒っているのか。あれか?ノエルみたいに私をいじめるつもりか?もしかして標的が私に変わったのか?私の魔導書があまりにも貧弱すぎて弱すぎたから、シルヴァ家の恥だとか思われたのだろうか。

 

 結局、家に帰るまでノゼル兄様と会話することがなかった。なんてこったい。しかも私の魔導書返されてもらってないんだが。今まで楽しみにしていたから返してほしいんだが。先程の件でいっきに精神年齢が上がった気がするがそれでも今まで自分の魔導書に憧れを抱いていたのだ。返してくれないかな。

 

 家に帰るとノゼル兄様は自分の部屋へこもってしまった。ちくしょう。魔導書返してほしいのに。でも、怒っている時のノゼル兄様怖いんだよな。まあ、後でいいか。私が自分の部屋に戻ろうとしていた時銀髪の小さい少女がこちらに向かってきた。

 

 「ネブラ姉さま、お帰りなさい。」

 

 ノエルだ。今ならわかる。この子はかわいそうだ。前世を思いだした私だからわかるかわいそうな子だ。なぜなら私はこの世界の価値観にのまれていたからだ。前世の価値観が今あるからこそわかる。この世界の社会はゆがんでいる。王族や貴族とその他の人たちの差別が酷い。そして、身内にも酷い。少しでもできないと役立たずだ。王族や貴族は努力をすることは才能がない奴がすることとしていて、魔力のコントロールができないノエルを出来損ないだとののしっている。しかもいろんな人たちから。本当だったら優しいお母さまがどうにかしてくれていたはずなんだけどノエルが生まれた後死んだからな守ってくれる人がいないんだよね。

 

 今も考えるとノゼル兄様は大好きな母が死んだのはノエルのせいだとでも思っているのだろうか。だからノエルのことを邪魔者扱いしているのだろうか。まあ、私はそうなのだが。あんなに凄かった母が死ぬなんて。それで生まれてきたのが出来損ないだ。そりゃもう怒り心頭よ。

 

 けど、そんなこと間違っている。前世の記憶が戻りそう感じた。ここの価値観がおかしいのだ。ノエルに罪はないのだ。しかも、こんな可愛いい妹なのだ。よし、謝ろう今までの事。そしてこれからは仲よくしよう。

 

 「ただいま。ノエル。」

 

 私は優しくノエルに微笑んだ。ノエルは目が点になって口をパクパクさせている。可愛いかよ。確かにノエルにこんな顔みせたことなかったな。本当にダメな姉だ。しかし、ここまでの反応をされると面白いな頭でも撫でてやるか。

 

 「え?ちょ、ちゅ、え?…」

 

 頭を叩かれると思ったのだろう。咄嗟に頭に手をのせて身を守るようにしていたので、手をどかし頭を撫ででやった。最初は抵抗していたけど頭を撫でると、ポカーンとしている。面白い反応で笑ってしまう。ノエルの顔はどんどん赤くなってきて今にも泣きそうな顔をしている。優しくされてうれしくなったのかな?

 

 「どうしたノエル?頭を撫でられると泣いてしまうのか?」

 

 「う~、な、何で今日は優しいんですか?」

 

 「ふふふ、いつもは優しくないと?」

 

 「そ、そんなことないです。ごめんなさいネブラ姉様。」

 

 「冗談だよ。今まで悪かった。ノエルにきつい態度をとってしまったな。これからは私の妹として大切にすると誓おう。だから、今までのこと許してくれないか?」

 

 ノエルは、姉の言っていることが本当のことか分からなかった。自分は夢を見ているのではないかとさえおもった。頭を撫でられた時最初何かされるのではないかと恐怖でいっぱいだった。だが、姉様の笑い声が聞こえると初めて見るネブラ姉様の笑顔がうつった。その顔がとても優しくきれいで見惚れてしまっていたのだ。今日の姉様は何かおかしい。魔導書の授与式から変だ。こんなに優しいはずがない。けど、本当に私を妹として見てくれるならとてもうれしい。あの姉様に優しくしてもらえるなら、嘘でもいい優しくしてほしい。

 

 「許すも何も、恨んでいませんよ姉様。でもこれからは優しくしてほしいです。」

 

 「もちろんだ。ノエル。」

 

 よっしゃー!なんとかなったぜ。こういうのは早く言っといたほうがいいんだよな。子どものときは許してくれても大人になると頑固だしなかなか許してくれないからな。ノエルと年が9歳離れててよかった。

 

 「やったーー!!」

 

 「じゃあ、私は自分の部屋に戻るよ。」

 

 もう一回ノエルの頭を撫でてあげて私は自分の部屋に戻った。いやー喜んでいた時のノエル本当にかわいかったな。確かあいつ魔力のコントロールが苦手だったっけ?いつも特訓してるもんな。6歳児がすることじゃないよ。今度ノエルが魔力コントロールの練習している時私も一緒に練習してあげよ。

 

 私は上着を脱いでベットにドサッと寝ころんだ。

 

 しかし、これからどうするかな。とりあえず現状の把握といこうか。私は転生的な奴でいいのか?オリ主ってやつか?あれだよな主人公が原作知識を使ってその世界を楽しむみたいなやつだよな。ちょい待て私は知らんぞ。どうなってやがる。どうせならBLEACHの世界がよかった。卍解したいもん。本当に何でブラッククローバーの世界なんだ。まあこの話はいいループする。仕方がない。来てしまったのだから。

 

 でも、運がいい方でもある。なんたって王族に生まれたのだから。このおかげで英才教育によってこの世界のことは原作の知識がなくてもわかる。おまけに王族特有の強大な魔力がこの身に宿っている。問題なのは私がどういう立場であるか。原作の世界に転生したのか、原作キャラが運よく前世を思いだしたのか。原作を知っていればわかることなんだが残念ながら知らないんだよな。もっと恐ろしいのはこの世界の時間が原作前や後の時代だった場合。前後10年くらいだったらまだいい。唯一知っている主人公に会えるから。それにアニメ化されたくらいだ、さぞかし面白い話があるのだろう。原作を体験してみたい。話を知らない分楽しめるはずだ。ただこれが前後100年以上の話だった場合私は主人公に会うこともなくこの世界を生きることになる。まあ、別にいいんだけど。この世界にもう15年も生きているわけだし。でも、できることなら主人公と一緒に原作を体験したい。物語なのだからきっと楽しいはずだ。そうに違いない!!頼む原作の時間軸でありますように。

 

 まあ、このことは考えても仕方がない。まだ、魔導書しか見てないのだ。よくよく考えるとそれだけでブラッククローバーの世界と決めるのはまだ早いような気がする。しかし、設定が似てるような気が…まあいい。主人公のアスタがいればいいのだ。ともかくいるのならば会いたい。

 

 ふと気付く。あれ?そういえば私の魔導書ノゼル兄様に持っていかれたまんまだな。返してもらおうかな。そろそろ、ノゼル兄様も怒ってないだろう。私も早く見たいのだ自分の魔法がどんな魔法が使えるのか。返してもらおう。というか何で勝手に持っていくんだ。ノゼル兄様は本当にダメな兄だ。返してもらいに行こう。

 

 ノゼル兄様の部屋についた。しかし、前世の記憶が戻って初めて思うこの家広すぎ。流石王族。いやー王族って本当に凄いわ。

 

 ノゼル兄様のドアをノックして返事が聞こえたので私は部屋の中に入った。

 

 「ノゼル兄様、私の魔導書を返してほしいのですけど…」

 

 「ネブラ、お前の魔導書をよく見てみろ。」

 

 「はあ…」

 

 何だか、ノゼル兄様はまだご立腹中らしい。顔を見ればわかる。仕方がなくノゼル兄様から渡された自分の魔導書をよく見た。

 

 そうよく見た。そんなはずはないと。またよく見た。冷や汗が止まらない。よし、大丈夫。ちゃんと声に出して数えてみるんだ。

 

 「いーち、にーい、さーん、しーい。おおーよつばだー。めずらしいー。」

 

 「ほう、お前には四葉に見えるのか。」

 

 「…」

 

 「本当に四葉に見えるのか?」

 

 「5つ葉です…」

 

 ノゼル兄様が私の魔導書を見て怒った理由が分かった。そう、私の魔導書は5つ葉だったのだ。

 

 魔導書の表紙には三つ葉のクローバーがある。それぞれに意味が込められており、誠実、希望、愛が宿っている。そして、極たまに四枚目が現れる。四枚目の葉には幸運が谷堂といわれている。さらに稀に5つ葉が現れる。5枚目には悪魔が棲むと言われている。

 

 悪魔はもちろんみんなから嫌われている。そんな魔導書を授かってしまったのだ。なんてことだ。五つ葉の魔導書なんて悪役のそれもとてつもない奴が持つ代物だろ。どう考えても!

 

 あ、気付いてしまった。もしかして私は原作にいたキャラクターなのでは?そして主人公と敵対した悪役なのでは?だって五つ葉だし。あり得る。私がボスなんだ。多分。だって五つ葉なんてとても珍しいものだと思うから。主人公はどうせ四葉なんだろうな。うらやま。

 

 でも、そうか五つ葉か。王族から五つ葉なんてそれこそシルヴァ家の恥か。これは下手すると勘当くるな。急すぎると思われるかもしれないが悪魔憑きなんてこんなもんだ。でもスペードの国は悪魔が大好きな国だって噂されているな。まあ、魔神国家って言われるくらいだし。勘当されたらスペードに亡命でもしようかな。

 

 「私は勘当ですか?」

 

 「わからんが、先程父上に連絡したときそのようなことを言っていた。覚悟しておいた方がいいだろう。」

 

 「わかりました。失礼します。」

 

 私は気付いたらまた自分のベットに戻っていた。マジか。なんとなく覚悟はしていたが展開早くね!?なんでいきなり家から出されようとしているの私。あーこの世界厳しすぎるよ。

 

 ノゼルはネブラが出ていった後から、自分の母親のことを思い出している。妹たちは知らない。本当の母の死の原因。そう母は悪魔の呪いで死んでしまったのだ。その同胞が今度は妹についている。悪魔どもめ!

ノゼルは父に必死に弁明した。妹の魔導書の悪魔は母を死に追いやった悪魔とは違うと何度もそう説明した。しかし、父は聞く耳を持たなかった。例え違っていてもだめなのだと。妻を奪った悪魔達が憎いと。自分の娘であるのに家から追い出すといっている。もうどうすることもできないのだろうか。

 

 ノゼルは静かな部屋の中、頭を抱えた。

 

 使用人からご飯ができたと来たが、今は食べたくないと追い返した。ノゼルはこれ以上家族を失いたくないのだ。ああ、今日はもう気分が悪いもう寝よう。しかし、ノゼルはこの行動をこの後ずっと後悔することとなる。

 

 「ネブラ様、夕飯の支度が出来ました。召し上がりますか?」

 

 「わかった。食べる。」

 

 「かしこまりました。」

 

 ふー、飯か。ここで食べる最後の飯になるのかもしれないな。この先どうしようか。自分でも思うが特に何も思っていない。前世の記憶が戻ってから別に何も思わなくなったのだ。本当だったら家を追い出さないでと泣き叫んでノゼル兄様にすがるのだろう。しかし、そんな気が起きないのだ。そもそも魔力が強ければ基本何でもできる何でもできるのだ。なんとかなるだろ。さあ、飯飯。

 

 私は食堂に行くと、ノエルとソリドがいた。ソリドは私の弟でノエルの兄になる。こいつらも仲が悪いんよな。まあ、私も悪かったのだが。というかノエルが嫌われていただけだが。特にソリドのノエルに対するあたりは強い。ほらまたやっている。

 

 「俺より先に食うんじゃねえ!!」

 

 「ごめんなさい、ソリド兄様!!」

 

 ソリドは自分より先に先に食べる出来損ないに腹が立ったのだろう。ノエルの料理が入ったお皿をぶちまけている。そして、ノエルの髪を引っ張っている。ノエルは泣きながら謝り続けている。かわいそうに。これは止めに行かねば。ソリドにも歪んだ価値観を正してあげないといけないな。

 

 「ソリド、何をしている?」

 

 「何って、役立たずに躾をしているのですよ。ネブラ姉様もなさいますか?」

 

 「ソリド今すぐ、ノエルを放せ。」

 

 「は、はい。姉様。」

 

 私は威圧するために魔を出しながらいった。

 

 ん?私ってこんな魔力あったっけ?何か魔の量がとてつもなく増えてんだけど!?しかも禍々しい。これは、魔導書を持つようになったからか?しかし、ソリドならずノエルまでおびえている。少々威圧を出しすぎていたかもしれない。気のせいと思いたいが。自分の体から出ている魔が悪魔の形をしている気がするんだが。

 

 余談だか魔とはマナとよみ、魔は大気中や自然の至るとこらに流れている。生き物に宿ったその魔が、他の物質に影響を及ぼすものが魔力。その魔力がより洗練されたものが魔法。そんな風にこの世界はできている。魔法主義社会だ。魔力のないものは淘汰されるようになっている。

 

 ともかく、少々やりすぎたようだ。私は魔を抑え。ソリドに話す。怖くないようにとびっきの笑顔で。

 

 「えらい、よくやめたね。」

 

 「は、はい。ねえさ、ま。」

 

 ソリドは震えが止まらず、泡を吹いて気絶している。そんなに怖かった!?ちょっとショックなんだけど。何でだろう。とりあえず、使用人を呼んでソリドの介護をしてもらった。呼んだ使用人たちも怖がっていた。まあ、あんなにどす黒くて強烈な魔を放っていたんだ。王貴界に住む住人だったら気付くだろう、この禍々しい魔を。今になって心配してきた。魔法騎士団の人とか来ないよね?

 

 ソリドは使用人たちに連れていかれた。まあ、大丈夫だろう。ノエルは先程からガタガタ震えながらご飯を食べている。私も席についてご飯を食べよう。かわいそうに。あ、そうだ。ノエルの元気を出すために子どもが喜びそうな魔法私覚えてないかな?ていうか魔導書渡されてから一回も見てないんだけど。ご飯食べながら見よ。行儀悪いから本当は怒られるけど今ノエルしかいないからいいだろう。

 

 魔導書を見る。やはり、私は霧魔法が使えるようだ。すらすらと読み進んでいくと途中から全く読んだことのない文字が出てくる。何の魔法なんだ?読めない。しかも、そこからずっと読めない文字ばかりだ。どのページをめくっても。何だこれ。仕方がないので読めるところの魔法を使うことにした。

 

 霧創成魔法 夢幻の蛙

 

 口からただ霧を出す蛙だ。見た目がリアルな蛙と違い、デフォルメされていてこ憎たらしくて可愛い顔をしている。これをノエルにあげよう。

 

 私は手のひらに置いたその蛙をノエルに見せた。

 

 「ノエル、見てごらん。」

 

 ノエルは怖くて姉の顔を見ることができなかったが声を掛けられ姉の方を見る。そこには世にも可愛い紫色の蛙がいた。頭に角が生えている。

 

 「わあ、可愛いです。」

 

 「そうだろう。これノエルに上げる。」

 

 「え、いいのですか?」

 

 「ああ。」

 

 「やったー。じゃあ、今日からあんたはシルヴァンタスシュナウザー。いいわね!」

 

 どうやら、元気が出てきたようだ。よかった。しかし、ノエルのネーミングセンスはどうなっているんだろう。ただただ凄い名前を付けられたなという感想しかない。まあ、目論見通り元気が出たので良しとしようか。

 

 私はノエルが蛙と戯れているのを見ながらご飯を食べた。

 

 「帰ったぞ。」

 

 どうやら、お父様が返ってきたようだ。やはり追い出されるかな?

 

 「ネブラはいるか?」

 

 お父様が呼んでいる。さあ行くか。私は食堂を後にした。

 

 「およびですか?お父様。」

 

 「ああ、来たか。話があるから私の部屋に来なさい。」

 

 「わかりました。」

 

 私はお父様と一緒にお父様の部屋に向かった。窓から見える景色は真っ暗だった。お父様は魔法で明かりをつけた。部屋に入るとお父様は椅子に座り話し出した。部屋には二人しかいなく、父の声がよく聞こえる。

 

 「ネブラ、我が娘よ。五つ葉だったようだな。」

 

 「はい。」

 

 「そうか。私は長々と話すのが好きではない。だから簡潔に言う。悪魔憑きはシルヴァ家にはいらん。家から出ていってもらう。そしてシルヴァ家を名乗るのも許さん。」

 

 やっぱりそうか。しかし、覚悟していたことだ。そもそも前世の記憶が戻った時からここにそこまでの執着はない。こうなったら早く出ていった方がいいだろう。

 

 「わかりました。なら今日家を出ていかせてもらいます。」

 

 「今日出ていくのか?」

 

 「ええ。」

 

 私はお父様がなにか言いたそうな顔をしていたけどそのまま背を向いて部屋から出ていった。

 

 自分の部屋に戻るとさっそく家出の準備をした。リュックにお金をたくさん詰め込んだ。まあ、お金と魔法があれば何とかできる世界だ。いけるっしょ。

 

 私は準備を終えたらさっそくこの中世の宮殿みたいな家から出ようとした。玄関には父がいた。私はどうしたのだろうとわからず首を傾げた。

 

 「五つ葉は四葉ほど有名ではない。知っている者も一部のもののみ。普通に生きるなら何も起きない。」

 

 どうやら、父なりに心配してくれたみたいだ。不器用な人だ。

 

 「わかりました。お父様。今までありがとうございます。」

 

 私はシルヴァ家から出ていった。この魔導書を抱えて。

 

 さあ、あたりは真っ暗だ。明日の朝に出ればよかったかな?でもまあ、いいか。どこへ行こう。ここだと私がシルヴァ家のものだと思われるしな。みんなに迷惑はかけたくない。どこへ行こう。

 

 そうだ。主人公探しもいいのかもしれない。そうしよう。町の人たちからアスタの名前を聞こう。聞き込みだ。

 

 そうと決まればまず宿だな。私は箒にまたがり、空へかけていった。

 

 宿はとりあえず平界の宿にした。王貴界だと私だと知られてしまうからな。明日にでも、シルヴァ家から放出されたことはみんなに知られるとは思うが。新聞とかで。

 

 とりあえず、宿の部屋に入り鏡を見て自分の顔をみる。どうせもうシルヴァ家ではないのだ。私がネブラだと知られると、私自身生きにくい。そりゃそうだ。追い出された王族なんて周りからすれば腫れものだ。私は覚悟を決めた。

 

 リュックからナイフを取り出し自分の顔をめった刺しにする。すかさず回復魔法を顔にかける。よかった本当に回復魔法を覚えていて。それをたくさん繰り返す。自分の美しい顔の原型を留めないくらいに。

 

 よし、顔はとりあえずオッケーだ。顔中傷跡だらけでもうネブラらしいところはない。せっかく美しい顔だったので少しもったいない気もするがこれはこれでかっこいいのでありとする。片目に傷跡とか、かっこよくね?かっこいいよね。それ以外にもたくさん傷跡があるんだけども。無理に回復魔法でづちゃぐちゃに名をしたから人相が悪い。まあ、それもかっこいい一つの要素という事で。

 

 次は髪だ。前世の記憶が戻ってから思う。この髪型おかしすぎる。さっさと結んだ髪を下ろし、前髪も中央に集めない。普通に下ろす。うん、だいぶ見た目が変わった。というか髪の毛何もしない方が可愛いんじゃないか?そんな風に思う。

 

 とりあえず見た目はこんなもんでいいだろう。後は服装だ。こんな綺麗で装飾のついた服、平民は着ない。明日は服屋で服を買うか。そうしよう。今日はもう寝よう。魔導書をもらってから怒涛の一日だったような気がする。

 

 ふと、目を覚ました。ここはどこだ?変な空間に出てしまった。夢か。

 

 『おい、こっちだ。』

 

 声のする方を見ると、角と羽が生えた大きな影が話しかけてきた。

 

 『お前の魔導書の中に入っている。悪魔だ。よろしく。』

 

 なんだか、予想よりフレンドリーな悪魔だった。以外だ。

 

 「よろしく。」

 

 『ああ、あと親切に俺の魔法を教えてやる。俺の魔法は干渉魔法。あらゆることに干渉、干渉させなくすることができる。どう使うかはお前次第だ。あと悪魔の力を引き出すと単純に強くなるぞ。今日呼んだのはそれだけだ。』

 

 「え?ちょっ」

 

 気付くと朝になっていた。私は魔導書を見つめた。本当に悪魔が宿っていた。しかし、疑問がある一人につき使える魔法の属性は一つだ。悪魔の言葉を信じるなら私は霧と干渉。それによく見れは私の魔導書は見た目もおかしい。半分が紫色で半分が黒色だ。五つ葉もその半分のラインに合わせて紫と黒になっている。予想だが。ふたつの魔導書が混じったのか?聞いたことがある。ダイヤモンド王国では魔導書を合体させると。それと似たようなものなのだろうか。

 

 考えても仕方がない。宿を出て服を買いに行こう。

 

 服を適当に買い終え見た目は完全に平民だと思う。髪はつやつやしているがそのうちバサバサになるだろう。この世界は前世のように文明が発達してないから、貴族や王族以外は髪の手入れなんてそんなにできない。まあ、魔法があるのでできないことはないが。私はやらないあえてばっさばさにする。

 

 さてと、これで完全にネブラではなくなったが、これからは聞き込みだ。まあ、この世界にアスタはいないかもしれないが暇なのだやろう。

 

 王貴界ではアスタの名前は聞かなかった。いるなら平界か恵外界だろう。でもさすがに恵外界はないだろう。主人公があんなごみどもと一緒なはずがない。いかんいかん、王族の暮らしが住み着いている。差別はいけない。魔力の少ないかすどもだって生きているのだ。そんなこと言ってはいけない。

 

 とりあえず平界を回るか。平界を回るついでに、魔法の特訓もしよう。当面の目標はアスタを見つけること。よし、頑張るぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めるとネブラお姉様はいなくなっていた。それどころかお兄様やお父様はもうネブラ姉様を家族ではないという。どうして?せっかく仲良くなれたのに。遊んでもらおうと思っていたのに。どうしていなくなるの。ベットの上で膝を抱えて泣いている私に誰かが足をなめる感触が来た。

 

 「ひゃあ」

 

 見るとお姉さまの作った蛙だった。可愛い。唯一お姉さまからもらったものだ。大切にしよう。私は紫の蛙を大切に抱きかかえた。この時幼い私は気付いていなかった。この蛙の異常性に。

 

 

 

 




 主人公は前世の記憶が戻ってから魔が変質しています。禍々しい魔は冥界からきたものではなく主人公自身のものです。なぜ禍々しいのかは主人公の前世に問題があるからです。本編には書きませんが主人公は悪いことをして死んでいます。


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新たな名前と仲間

 私が町を転々とある気ながらアスタを探して二か月がたった。中々見つからないもんだ。まだまだお金には余裕がある。仕事をしようと考えてみたけれど場所を転々と動きながら働ける仕事なんて早々にない。だからいったん仕事はあきらめて主人公探しに全力をかけている。

 

 「すみませーん。アスタって子知りませんか?探しています。」

 

 「しわないわねえ。ごめんなさいね。」

 

 「そこのおじさん、アスタ人知らないですか?」

 

 「すまん、わからんわ。」

 

 「アスタって人知らないですか?」

 

 「しらないわ~。」

 

 んんー。みんな知らない。聞き込みだと効率が悪いな。何かいい方法はないもんか。とりあえずこの町はいいかな?よし、次の町に向かおう。ネブラは箒に乗って次の町を目指す。

 

 ネブラが次の町へ向かっていると、後ろからついてくる魔力を4つほど感知した。振り向くと雷と炎と風と氷の矢が飛んできていた。ネブラは箒を急加速して旋回しながらすべての魔法を避ける。目の前にはフードを被った人たちが4人いた。

 

 「おお、あれを避けるのかたいしたもんだ。」

 

 「兄貴!よく見てくださいあの顔を!」

 

 「んん?ああ、確かにお前の言う通りだ。」

 

 「攫いましょう!」

 

 声でわかった。全員男の声だ。会話を察するにもしかして正体がばれたか?元王族だと。確かに元王族とか珍しいもんな。高く売れそうな感じはするよ。こいつらは私が目当ての人攫いだな。そうか返り討ちにしたいところだがどうするか。

 

 「確かに俺好みの悪人面だ。持ち帰って嫁にする!」

 

 ちがった!!そっちか!まさかこの顔で好きになるやつがいるとは。そっか悪人面が好きな奴にはドンピシャなのか。主人公探しで話す時たまにおびえられるときあるからかなりショックだったんだよな。自分でしたことはと言え。だからこれは少しうれしい。まあ、攫われるつもりなんてないけどな。

 

4人の人攫いは先程の魔法を打つ。今度は単発ではなく連射して打ってくる。どうやらそこそこな魔力量だったようだ。それでもネブラはスイスイスイとかわしていく。

 

 「兄貴!早すぎますぜ、あたりません。このままじゃ魔がつきて箒に乗ることも難しくなりますぜ。」

 

 「ちィ、しょうがねえなぁ。今日の所はやめておくか。せっかく灰色の幻鹿から逃げることができたのに。」

 

 四人の人攫いは私を攫うことは諦めたようだ。私もさっさと次の町に行こうとしていた時、

 

 「闇魔法闇纏・無明切り」

 

 黒い斬撃がこちらに飛んできた。その斬撃には引っ張られる力があり、私も巻き込まれそうになった。黒い斬撃は四人の人攫いにまとめて直撃して人攫いたちは落下していった。

 

 斬撃が飛んできた方から筋骨隆々の男がやってきた。どう見てもやばそうだ。あんな魔法見たことがなかった。そしてあの無駄についている筋肉。魔力で身体強化をすればいいものを何で鍛えているんだ?魔力量もノゼル兄様より少し少ないくらいだろう。相当強いぞこの男。

 

 筋骨隆々の男は地面に寝転がっている。四人の人攫いの所に行き、拘束魔法を使っていた。よし、今のうちだ。逃げよう。何かとてつもなくやばい予感かする。

 

 ネブラは魔力を大量に込めては箒を飛ばす。しかし、ここからがネブラの地獄の始まりだとは思いもしなかった。

 

 ネブラがとてつもない速さで逃げたことにより筋骨隆々の男はこの四人組と仲間だったのではないかと思ったからだ。

 

 筋骨隆々の男は現在、団長不在の灰色の幻鹿の副団長をしている。名をヤミ・スケヒロという。ヤミは人攫いの組織を捕まえている途中だった。昨日ほぼほぼの人攫いを捕まえたのだが四人だけ逃がしていた。そして、捜索していたのだ。そんなときに女性を追いかけまわして魔法を打っている奴らを見つけたのだ。そして今に至る。倒した四人組は探していた四人だった。これにて一件落着と思われたが突如ものすごい魔を放出して逃げたのだ。襲われていた女性が。ヤミはこれは何かあるのではないかとにらみ、拘束した四人を置いてあの女性を追いかけた。

 

 「くっ、あの女早すぎんだろ!なんちゅう魔力だ。軽く王族をこえてんぞ!待ちやがれ!」

 

 ネブラは必死に逃げる。どうしてこうなったかを考えても何も浮かばない。ただ、ひとつだけわかることがある。捕まったら殺される。いくら、離しても追いかけてくるこの筋骨隆々の男にネブラは恐怖していた。女だったら誰だってそうだ。あんな筋肉だるまの男に追いかけられて逃げないわけがない。

 

 ヤミとネブラの追いかけっこは平界から恵外界に差し掛かるまで続いた。あきらめたのはネブラだった。

 

 ネブラは箒を操り地面に降り立つ。ヤミもそれに合わせて地面に降り立つ。両者がにらみたつような形となった。

 

 私の覚悟はもう決まった。ここで生き残にはもう、あの男を殺すしかないと。あいつはずっと追ってくる、ここらでやらないとずっと追いかけっこだ。そんなのめんどくていやだ。別に殺すことには何も感じない。ただ、あの男に勝てるのか?それだけだ。対面してわかる。とんでもない魔力だ。凄い重圧を感じる。

こちらも負けじと魔力を放出して臨戦態勢に入る。

 

 この二か月で気づいたことがある。自分の魔の変質と魔力量が変わっていることを。魔は禍々しく。魔力量はいちゃあなんだが王族ですらごみのまめむしに感じるほどだ。とてつもなく体に魔力が満ち溢れている。下手をしたら世界で一番魔力が多いのではないだろうか。そんな風に思ってしまうくらい多いのだ。何を言いたいかというとこの威圧だけでびびって引いてくれないかなという事だ。ソリドの時のような遊びではなく、本気で威圧しているのだ。正直立っているでも辛いのではないだろうか。

 

 「なんて奴だ…」

 

 ヤミは戦慄を覚えた。なぜなら目の前の女性がとても大きな魔を有していたからだ。そしてとてつもなく禍々しい。

 

 あれは、やべえな。俺はとんでもない奴を相手にしているんじゃないのか?ユリウスの旦那よりも魔力の多い奴初めて見たぜ。こいつはやべえ。しかし、壁が大きいほど限界が超えれるってもんだ。ありがとよ!!

 

 「行くぜ!闇魔法闇纏・無明切り!」

 

 「霧魔法霧現分身!」

 

 ネブラはヤミが攻撃したとき、その瞬間に魔法を発動させた。今ネブラは霧魔法で分身を出している。その数は膨大な魔力を利用して10万体に及ぶ。ヤミが放った無明切りはあたりはしたがまだ数は健在だ。

 

「まじかよ…」

 

 ヤミの周囲、すべてにネブラがいる。外から見ればもうヤミは見えない。ネブラの分身はヤミを中心にドーム状になり空中を覆い尽くす。

 

 そして、

 

 全方向からただ、魔力を込めた球を打ち出す。

 

 ヤミは自分に向かってくる魔力弾に包まれる。分身一体一体が打つのだ計り知れない量の魔力弾が迫ってくる。ヤミはまずこのドーム状に囲まれるのはまずいと思い、ネブラの分身体と魔力弾を切りながら一点突破で走り抜ける。ヤミが走って抜けたおかげで、ほとんどの魔力弾はヤミには当たらなかった。

 

 「立ち止まるのはまずいな。」

 

 ヤミは動き続ける。こうすることで大量の魔力弾を避けながら更に攻撃魔法で防ぐことによってなんとか最小限のダメージで抑えている。

 

 「闇魔法黒穴」

 

 ヤミが出した魔法は名前の通りただ黒い穴だった。しかし、ネブラは気付く、自分の魔力弾が黒い穴に吸われていることを。そして、黒い穴に近い分身体たちも一緒に吸われていることを。ヤミは避けながら無明切り、黒穴を使って分身体の数を減らしている。

 

 このままでは負ける。殺されると思ったネブラは、もう一つの魔法、悪魔の魔法を使うことを決める。

 

 「干渉魔法○○○○」

 

 その魔法の名前はわからない。だが、何故かわかる。そして、どこの言葉かもわからない言葉を自分が話している。おそらく悪魔達の言葉なのではないだろうかとネブラは推測する。

 

 ネブラが発動した干渉魔法はこの空気中や地面あらゆる所に流れている魔に干渉することができる。魔法だった。ネブラは大気中の魔を操って分身体に混ざりながら空へ飛ぶ。

 

 そして、すべての自然からなる魔を集め、高圧縮で巨大な剣をだす。その大きさは、最果てにある魔神の死骸に匹敵するほどの大きさだ。

 

 「まじかよ。」

 

 奴の魔力量はいったいどうなってやがる。こんなバカでけえもんつくりやがって。確か奴は干渉魔法といったな。その後はよく聞き取れなかったが、これはうちの魔法帝が喜びそうな魔法だな。ってそんなこといっているばあいじゃねえ!!いまここで限界をこえろ!!

 

 「干渉魔法滅亡の剣」

 

 ヤミが蟻に見えるくらいのばかでかい剣を操り腕を振りヤミに向かって放つ。

 

 その瞬間何かに包まれたような感触がネブラを襲う。その感触がネブラに襲った瞬間。ネブラの分身体と滅亡の剣は消え去った。

 

 「マナゾーン黒月、ありがとよ。てめえのおかげで俺はまた強くなれた。限界を超えることができた。」

 

 ネブラは何が起きたかまでは理解できなかったがおそらくあの空に浮いている黒い球体に何かあることは理解していた。魔法は打ち消されたが、まだ魔に干渉はできるのでおそらく形としてなった魔法は使えないのだろう。

 

 ネブラは大気中の魔を操り、黒月の効果範囲から抜け出そうとする。しかし、それをヤミはさせない。

 

 マナゾーンとはあたりに漂う魔を味方につけ意のままにその領域を操る能力。その領域では本来の自分以上の魔力放出をどこからでも仕掛けられる。感知能力もずば抜けて高くなり超反応も容易になる。魔の力も借りて宙も自在に動けるようになる。

 

 ヤミは空を飛んで逃げようとするネブラを自身も宙を飛び高速でネブラを追いかける。そして、

 

 「闇魔法黒穴」

 

 「くっ、動ごけない。」

 

 「終わりだ。闇魔法闇纏黒刃!」

 

 黒穴に引っ張られ動けなくなったネブラは、最後のヤミの攻撃を受けて地面にたたきつけられた。ネブラの意識はそこで途切れた。

 

 躱していたとはいえ、10万なる分身体からの魔力弾は躱しきれない部分もあった。ヤミの体はたくさんの傷跡でボロボロになっている。

 

 「ハァ、ハァ、なんて女だ。流石にもう魔力が残ってねえわ。」

 

 ヤミはドサッと地面に座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネブラは目を覚ました。部屋だ。ここはどこの部屋だろう?結構綺麗な部屋だ。石造りの壁に天井にはシャンデリアが飾ってある。戸棚には本がいっぱい飾ってある。そして壁に見たことのない形の剣が置いてある。いや、ネブラの前世ではこの剣のことを知っている。顔にまぶしい光が当たる。窓からは綺麗な朝日がさんさんと差し込んでくる。

 

 現在自部のいる所はベットの上だ。私は起き上がった。すると隣に筋骨隆々の男が寝ているではないか!!

 

 そうだ。そうだった。私はこの筋骨隆々の男にやられたのだった。その後どうなったかは記憶がない。そうなんだ記憶がないのだ。私はてっきり死んだと思ったからだ。

 

 「ぐっ、、」

 

 思い出したら急に背中に痛みが襲ってくる。あの時の痛みだ。最後のあの一撃の痛みだ。私は霧回復魔法を使い自分の傷をいやした。しかし、おそらく傷跡は残るだろう。というか自分の体を見ると包帯がまいてある。こいつが手当てをしてくれたのだろうか。

 

 「ん、あー。よく寝た。」

 

 大きいいあくびをしながら、男は起きた。

 

 「ねえ、これどういう状況なの?」

 

 「あ?どういう状況って。普通、男がベットにいたら驚かねえのお前?」

 

 「そんなこと、どうでもいいわ。感覚でやってないことくらいわかる。さっさとはなしてくれない。」

 

 「全然可愛げのねえ女だな。まあ、その悪人面で驚かれても困るがな。ええと、お前と戦った後魔力がなくなってな。近くの町まで運んで手当てしてベットが一つしかねえとかほざきやがるから仕方がなく一緒に寝ただけだ。」 

 

 「どうして?どうして殺さなかった。私を助けた?」

 

 「どうしてって。お前が面白そうだったからだ。」

 

 「は?それだけ?あんた変わってる。名前はなんて言うの?」

 

 「ヤミ・スケヒロだ。職業は魔法騎士をやっている。」

 

 「そうか、ヤミっていうのか。てか職業まで聞いてねえよ。てか、え!?魔法騎士なの!?ローブは?ないじゃん!!さては嘘つきだな~。」

 

 「本当だし、ていうか魔法騎士の副団長なんです~。こう見えてもえらいんです~。部下をこき使ってやれるんです~。ローブは忘れただけなんです~。」

 

 「本当なの?信じられない。フフフ。」

 

 「証拠に今から魔法騎士団のアジトに連れってってやるよ。ま、強制だけどな。お前名前なんて言うんだ?」

 

 「……アンラ・マンユ。」

 

 「…そうか・・よろしくなアンラ。」

 

 私は咄嗟に嘘をついてしまった。これからこの男に魔法騎士団のアジトに連れていかれるからだ。私が元王族だと、私がばれたくないからだ。名前はこの二か月で仲良くなった悪魔の名前を使ってしまった。まあいいだろう。

 

 この後ヤミと私は身支度をした後、ヤミが所属している灰色の幻鹿のアジトに向かう。道中、昨日追いかけてきた四人組の男たちを回収した。回収された男たちはとても元気がなかった。拘束魔法で身動きも取れず一日放置されたのだ当然だ。

 

 道中ヤミと話す。

 

 「言っとくけど、私そいつらと何も関係ないからね。」

 

 「わかっている。ただ、お前が面白いから連れていくだけだ。」

 

 「そう。」

 

 「ああ、じゃあ、少し飛ばすぞ。掴まれ。」

 

 私はヤミの背中に掴まった。本気を出した私よりかは遅かったけどそれでも早かった。景色がだんだん変わっていく。大きな建物が見えてきた。どうやらついたようだ。

 

 大きな城の前につくとヤミは箒を下ろした。騎士団の団員達が寄ってくる。

 

 「ヤミ副団長!今度はどこ行ってたんですか!心配しましたよ!」

 

 「おうおう、ちょっとな。あ、こいつら例の人攫いの残り。後よろしく~」

 

 「ちょっ、副団長!」

 

 ヤミは部下に人攫いを押し付け城の中に入っていく。私もそれについていく。老いてかれた部下がかわいそうだ。てか、本当にヤミは団長だったんだな。よくよく考えたら、ユリウス団長が魔法帝になってから灰色の幻鹿は団長がいないと聞いたから実質ヤミがトップなのでは?

 

 ヤミについていくと様々な団員とすれ違った。みんなじろじろこちらをいている。そんなにおかしいだろうか?確かに顔は傷だらけだが。

 

 「ここだ。」

 

 ヤミが来たところは、大きいぴっぱな扉の前だった。

 

 「入るぞ、ヴァンジャンス。」

 

 ヤミはノックをせずに中に入っていく。それでいいのか副団長。もっと周りに気を使え。入ったらダメな時だってあるだろう。

 

 部屋の中は綺麗。それに尽きる。余分なものが一切ない。机と椅子だけだ。見たところ、書斎なのかな?この人は書類なんかを書く係なのだろうか?

 

 「どうしたんだいヤミ?その子は君の彼女かい?さっきから下が騒がしくてね。結婚の報告かい?」

 

 「ちげえわ、変な仮面マン。こいつは推薦だ。うちの団に入れたいと思う。お前も一様副団長だからな。話しておこうと思ってな。」

 

 「は?なんでそうなる。ツッコミたい所はたくさんあるが、これだけは言える。私別に魔法騎士団になろうと思ってないんだが?」

 

 急に何を言い出すんだ、この男は。私はアスタを探さないといけないんだよ。

 

 「ヤミ本人はそう言っているが?」

 

 「うるせえ、言っただろ。強制だ。ほい、これローブ。これでもうお前うちの団員だから。」

 

 ヤミはどこからか出したかわからないが灰色の幻鹿のローブを私に渡してきた。

 

 「別にお前がどう思うが勝手だがこのローブを渡しておく。」

 

 「ヤミ、今私にはやることがあるんだ。人を探していて。本当に申し訳ないがそれが片付いたらまた誘ってくれないか?魔法騎士団には前から興味があったんだ。」

 

 これは本当。私ネブラは魔法騎士を目指していた。銀翼の大鷲に入ってノゼルお兄様と一緒に活躍したかった。そんな未来はもうなくなったのだが。だから、ヤミが誘ってくれたのは少なからずうれしい。

 

 「それなら別に入ってもいいんじゃないか?」

 

 もう一人の副団長ヴァンジャンスが口を開く。

 

 「魔法騎士団に入ったらいろんなところに行けるようになるし、そのついでに探していい。」

 

 た、確かに…!どうして今まで気づかなかったんだろう。魔法騎士団に入ったらいろんなところに行けるではないか?そのついでに探せばいいんだ!それにお金も入ってくる!一石二鳥だ!入ろう、灰色の幻鹿に。

 

 「入ります!!」

 

 「意見変わるの早!もっと自分の意見ないのお前?」

 

 ヤミがあきれたようにいう。私は気にせず、

 

 「うん!ちょうど仕事探してたし、いろんなところに行けるなら別にいいよ。」

 

 「そ、そうなの。」

 

 ヤミが引き気味に言う。そして続ける。

 

 「お前の探している奴ってなんだ?」

 

 「アスタっていう人なんだ。」

 

 「なら、僕の方で各騎士団に捜索願も出しておくよ。」

 

 「本当ですか!?ありがとうございます!!ヴァンジャンス副団長!」

 

 「なんか俺と態度違うくない?俺も副団長なんですけどー。」

 

 「いや、ヤミは別に今までの態度でするんで、よろしく。」

 

 こうして、私のは魔法騎士団での生活が始まった。ヴァンジャンス副団長がアスタの捜索をみんなで手伝ってくれるといった時は嬉しかった。流石副団長。どうしてヤミはこうではないのか。同じ副団長でここまで違うとは。

 

 私はその後団員の人に部屋を案内された。ここがこれからの私の根城だ。清潔に保とう。私は片付けが苦手だからな。あと、部屋を案内してくれた団員に「ヤミ副団長の彼女さんですか?」と聞かれたのできっぱりと違うと伝えておいた。あんな筋骨隆々の野蛮人誰が好きになるか。背中に大きな太刀筋ができてんっだぞ。加減しろ!女の子だぞ。私じゃなかったら泣いていたな。

 

 しかし、騎士団に入ってよかったな。ネブラはそう考えながらベットに寝転がる。まさかこんな展開になるとは思わなかったけど騎士団の人たちが捜索してくれるんだ。意外と早く見つかるかもしれないな。しかし、アスタと自分の関係を聞かれた時が一番困ったな。

 

 ヤミによろしくした後ヤミと少しけんかになったんだよな。ヴァンジャンスの世界樹魔法で止められたんだけど。

 

 その後に聞かれたんだ。

 

 「ちなみに聞くけどアスタっていうこの姿とかわかるかい?年齢とかもわかるといいんだけど‥」

 

 「そうですね。髪は灰色か白色でー男の子です。年齢はわかりません。」

 

 「おいおい、年齢が分からないってメチャクチャじゃねえか。一体お前とアスタってやつはどういう関係なんだ?」

 

 そこまで考えていなかった。しくった。そうだ。どういう関係といわれても特にないもないな。これじゃあ怪しまれる。どうする?こうなったら適当に嘘をつくか。

 

 「家族です。」

 

 そう、家族この言葉の凄いところはどうとでもとれるという事。アスタがどんな年齢でも大丈夫なのだ。年寄だったらおじいちゃんに若かったら兄弟にと。

 

 「そうか、そんなに若いのに。」

 

 「生き別れてしまって…」

 

 いかにも何かありました。深くは聞いてこないでください風に装う。完璧だ。

 

 「わかった。辛かったね。」

 

 私はこの時ヴァンジャンス副団長がおバカな人だとは思っていなかった。あの時もっと別の言い方があったのではないかと、ネブラは後悔する日が来るという事をまだ彼女は知らない。

 

 ネブラはアスタの捜索の話を思い出しながら気付くとベットの上で寝てしまった。まだ、昼間だというのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アンラが部屋から出ていった後、ヴァンジャンスとヤミだけの二人だけの空間になった。沈黙が流れる。その沈黙をといたのは意外にもヴァンジャンスだった。

 

 「それで、どうして彼女を入れようと思ったんだい?」

 

 「面白い奴だったからな。それにあの魔力量、あれはただものではない。」

 

 「確かに、凄かったね。ねえヤミあの子のことはなしてくれないかい?」

 

 「ああ。」

 

 ヤミは、アンラとあった出来事をヴァンジャンスに話した。四人組に襲われていたこと。そして、自分と戦ったことを。

 

 「はは、すごいね、干渉魔法か。とんでもないね。よく勝てたねヤミ。」

 

 「ああ、土壇場でマナゾーンを習得できなかったらやられてかもな。あいつ殺す気満々だったし。ありゃ、人を殺してる目立ったな。まあ、面白そうだから何でもいいんだけど。じゃ、俺も自分の部屋に戻るわ。」

 

 「うん。お疲れ様。ヤミ。」

 

 ヤミはヴァンジャンスの部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日からネブラは騎士団として働くようになった。ネブラの噂は瞬く間に広まることになる。それくらいに破竹の勢いで活躍している。入って間もないが星の所得数は50を超える。一日星一つもらっているペースだ。活躍しすぎて星の授与が遅れてやってくるなんてこともある。ヤミには「お前頑張りすぎじゃね~」といわれるくらいだ。しかし、魔法騎士は活躍するほど臨時給料がもらえる。たまっていくお金に嬉しさを覚える。

 

 洗面台で顔を洗う。やっぱり朝起きたら顔を洗わないとね。起きた気がしないわ。

 

 「さあ、今日もがんばるぞー!」

 

 「あのー顔洗ったなら早くどいてもらえません?こっちは待ってるんですけどーー。」

 

 「うるさいな。ヤミは。少しはヴァンジャンス副団長を見習ったらどうなんだ?」

 

 「ああん?俺も副団長なんですけどーー。お前は俺を敬え。」

 

 「はいはい、ヤミ副団長。変わります。」

 

 この生活も慣れてきた。後はアスタだけだな捜索願いは出しているけどなかなか見つからないな。もしかしてこの世界にはいないのか?この時代にはいないのか?なんて考えてしまう。

 

 「アンラ仕事だ。行くぞ。」

 

 「りょーかい。」

 

 私は団員に声をかけられ、ローブを被り一緒に町の見回りに行く。このローブは気に入っている。フードがついているのだ。魔法騎士になったんだよりみんなに見られる。たまに私の顔を見て怖がる人がいるため顔を隠すようになった。

 

 しかし、町の見回りほど退屈なものはないな。何たって魔法騎士の前で犯罪を犯そうなんて考える奴は出れもいないのだから。とっとと終わらせて盗賊か何かを一網打尽にしていこう。

 

 私が歩いているとパンをもって走っている女の子がいた。

 

 「おい待て、クソガキ!!」

 

 奥の方からおじさんの声が聞こえてくる。少女は精一杯になって走っていたのか。前を見ていなかったらしい。見事に私にぶつかって転んでしまった。

 

 少女は魔法騎士団のローブを見てこの世の終わりというような表情をしている。おそらくこの女の子は貧しいのだろう。パンでも盗んできたのだな。お腹すいたらどうしようもなくなるよな。少女は観念したように座り込み動かなくなってしまった。

 

 「どうする?捕まえるか?」

 

 「私に考えがある。」

 

 団員に任せてくれと伝えると私は魔導書をだす。少女は魔法を放たれるのだろうと思っているのだろう。先程よりも震えが大きくなっている。怖いのだろう目を閉じながらも涙を流している。

 

 「霧魔法幻影の霧」

 

 少女に向けて魔法を放つ。団員は絶句していたがどうでもいい。私はパンを拾う。

 

 パン屋の主が走ってこちらにやってくる。

 

 「魔法騎士様こちらにパンを持った女の子を見ませんでしたか?あのガキ盗みやがったんですよ!」

 

 「あの女の子なら逃げていきましたよ?でも安心してくださいパンはここにあります。」

 

 「おお、ありがとうございます。」

 

 「ええ、どうぞ。」

 

 「あのガキ今度会ったらとっちめてやる。魔法騎士様も気を付けて。」

 

 パン屋の店主は怒りながらも帰っていった。パン屋の店主がいなくなった後私は魔法を解く。

 

 少女の姿がみるみる霧が晴れたように現れる。

 

 「何でこんなことをしたのか聞かない。なんとなくわかるからだ。君に一つ提案何だが魔法騎士団に来ないか。」

 

 「ちょっ、何言ってんだアンラ!」

 

 「いいから黙ってて。君の魔力量は王族に匹敵するよ私にはわかる。この世は魔力があれば何でもできる。一緒に来ないか?贅沢な暮らしがしたいだろう?」

 

 一目見た時からわかった。こいつは天才だと。たまたま起きた遺伝子の突然変異。こいつは化けると脳が直感した。

 

 「あ、あのう。私妹がいるの。妹も連れてってくれるの?」

 

 「まあ、いいだろう。妹に合わせなさい。」

 

 「俺は知らないぞ、そんな勝手なことをして。」

 

 後ろでぐちぐち言っているが私は少女とその妹を騎士団のアジトに招き入れた。ヴァンジャンス副団長とヤミに説明して私が育てるならいいと許可ももらえた。妹にあった時はがっかりした。なぜならごみだったからだ。なぜこうにも姉とは違うのか。魔力がほんの少ししかなかった。しかし、妹は連れていけないとなると少女が来たがらないと予想して仕方がなく妹も招き入れた。

 

 この少女は私が育てて将来私の団員にするつもりだ。今私は多大な活躍により二等上級魔導士となっている。ちなみに入って二か月足らずでこの階級はクローバー王国初らしい。鼻が高いな。

 

 もう直ぐ私の読みでは大魔法騎士になる。そして、いつかは自分の団を持つだろうその時のために強い団員は欲しいものだ。

 

 少女の名前はミラ。私はミラに魔力感知、魔力コントロールなどの訓練を仕事の合間にしてあげている。順調に進めば強魔地帯に一緒に行ってマナスキンを取得してもらおうと思う。私もヤミに負けないためにマナゾーン習得しないといけないしな。

 

 そんなこんなで私はミラを育てながら魔法騎士の仕事をして生活している。

 

 そして、更に一か月後私の星取得数は80を超えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「アスタ、町の人が言っていたけど今年の星果祭で発表された一番の魔法騎士団は灰色の幻鹿だってさ。何でも今年入ったアンラって人が一人で団の半分以上の星を取ったらしい。圧倒的だってさ。」

 

 「すげええええ!!!!俺もアンラって人みたいに強くて凄い魔法騎士になるぞ!!そして魔法帝になる!!」

 

 「ありえねー」

 

 「何だとユノ、コノヤロー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 灰色の幻鹿はユリウスが抜けてからの団長が分からなかったので団長不在という設定にしました。

 今回出てきたミラですが、オリジナルキャラではありません。キルシュとミモザの過去の話で出てくるモブキャラです。設定と名前は完全にオリジナルです。王族に匹敵するくらいの魔力は本来持っていないと思われます。


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ダンテとアスタ

少し話を変えます。


ネブラが灰色の幻鹿に入団して1年がたった。その間ネブラの評判は名声はまたとなく上がっていく。銀色の凶顔というあだ名がつくくらいだ。ネブラ個人はこのあだ名に対してあまりよく思っていない。外国では突如生まれた怪物、突然変異でできた化け物と言われている。それもそうだろう、ネブラはダイヤモンド、スペードといった侵略国家に対して多くの撃退成績がある。クローバー王国では英雄だが、相手からすると憎き悪魔のような存在なのだろう。

 

 そして、今辺境の恵外界までおりて、スペードの進行を止めないといけない。スペードは強魔地帯を挟んだところにある国だ。そして、強魔地帯が抜けると一番近いのは恵外界だ。恵外界は強魔地帯と隣接している。

 

 今、ネブラ達の目の前にはスペードの軍勢が横並びに迫ってきている。今回この場には二人の副団長はいない。ネブラがリーダーとしてこの部隊を率いている。

 

 「たっく、この朝っぱらから。攻め込んでくるとはスペードさんたちは元気ですね。私はまだ眠たいよ。」

 

 あくびをしながらネブラはそうつぶやいた。きれいな朝日が地平線から顔を出している。とてもきれいだが寝起きにこのまぶしさは辛い。それに私たちに向けて光が来るのでクローバー軍はみんなまぶしそうだ。反対に相手の軍は太陽の光を背にしているのでまぶしそうにはしていない。前世の記憶があるネブラは巌流島かよ!と心の中でツッコミを入れた。

 

 スペードの軍勢はみな箒を乗って空を飛んできている。徒歩でここまで来るのは大変だというのは距離的にわかる。おそらくほとんどが空中戦になるだろう。城壁から見ていたネブラは箒にまたがりクローバーの上空部隊と合流する。

 

 そこにネブラの元に団員が駆け寄ってくる。

 

 「ネブラ隊長!地上、上空すべての団員戦闘準備が完了しております。」

 

 「了解した。」

 

 ネブラは魔法道具の拡声器を使ってすべての団員に聞こえるように発言する。たった一言。

 

 「突撃!!」

 

 おおおおおーーーーー!!!!

 

 けたましい叫び声えとともに戦争が始まった。その声と団員たちの足音で地面と空気の振動が現れる。スペードの軍勢もその空気感を察し軍を動かした。

 

 ここはもう戦場いたるところに魔法が飛び交う。ネブラは霧魔法で分身をたくさん作りスペードの軍をタコ殴りにしていた。今のネブラはヤミと戦った時よりもたくさんの分身体を作ることができる。スペード軍はそのあまりの数の多さに驚愕する。「あれが化け物」「凶顔…」全くもって失礼な奴らである。

 

 「隊長!われらクローバー軍優勢であります。」

 

 「上々!」

 

 部下の言葉で今回もほどなくスペード軍が去っていくかと思ったその時、

 

 「重力魔法魔王の御前」

 

 悲鳴と共に大きい魔力を感じた方を見る。そして自分でも感じる。自分の分身が一気に数を減らしたのを。ネブラはその魔力の発生源に箒にまたがりながら高速で向かった。

 

 そこには一人の若者がいた。黒色の服されど見た目は豪華だ。おそらくどっかの偉い人なのだろう。向こうの貴族なのだろうか。ネブラの気配を察したのだろうか、その黒髪の若者はネブラの方へ顔を向ける。そして…

 

 「重力魔法魔王の御前」

 

 広範囲にわたる重力の奔流。周りの団員含めてネブラも押しつぶされる。上空から一気に地面へ。ネブラの体はバチンと嫌な音を出してたたきつけられた。

 

 (これは、肋骨逝ったかもな。私の膨大な魔力で身体強化をしているのにさすがに落下ダメージは堪えるか。つーかあの野郎、いきなり魔法打ってくんじゃねえ。しかし、まだまだ魔法が続いているな。このままじゃつぶされてぺちゃんこになるな。仕方がない。あれを使うか。)

 

 「干渉魔法○○○○」

 

 干渉魔法それは悪魔の魔法。ネブラが使いたくなかったのには理由がある。他国に自分の手の内をあまり見せたくなかったからだ。しかしそんなこと言っている場合ではないとネブラは判断した。

 

 ネブラの干渉魔法は相手の魔法にすら干渉することができる。自分がその魔法に触れていないといけないという条件があるが今その条件は満たしている。

 

 相手の重力魔法に干渉して魔法を編んだ毛糸をほぐすように魔に戻す、分解していく。黒髪の若者のこの魔法は広範囲だがネブラに触れているため干渉魔法が侵食していき魔法が解除されていく。

 

 その光景を見た若者は、ぷるぷる震えだし笑っている。そして小さく「冥域」と呟いた。お宝を見つけた子供のような表情をしながら。

 

 「そこの女素晴らしい、私の嫁にしてやろう。」

 

 「きもいん、ですけど!!!」

 

 大声で言うネブラの発言に、少なからず驚いたのだろうか重力魔法の青年はビクッと体を硬直させた。そしてぷるぷると震えだした。今度は眉間にしわを寄せて怒りを表している。

 

 「ならば、死ね。」

 

 その発言と同時に重力魔法の青年は空気中にたくさんの剣を作り、ネブラに向かって放つ。

 

 ネブラは霧魔法を使い姿をくらましながら避けていく。青年は剣を霧に向かって放つ。そして、霧を晴らすように剣を回転させる。

 

 あの、女の姿がない。青年、ダンテは晴らした場所を見渡した。しかし、どこにもいないのだ。きょろきょろと周りをうかがうダンテ。自身が適当に放った剣に刺さって死んだのかと考えたがどの剣にも血の跡はなく、地面に女が倒れているのも見つけられない。

 

 どこだ、どこにいった!私のものにならぬ物は私が壊す!!

 

 その時、ダンテの周りを囲むようにあの女の姿がたくさん出てきた。その大量に表れた女は一斉にダンテに向かって魔力の球を浴びせてくる。

 

 「チッ」

 

 舌打ちしながらダンテは避ける。避けながら空中にだだよわせた剣を操り魔力の球を防ぐ。

 

 あの、黒髪の青年強いな。しかし、あっていきなり求婚とはいかれてやがるな。普通はそんなことしない。あほだ。まあ、金持ちだったら考えてやらんこともない。ってそんなこと今はどうでもよくて、こいつなかなか強い。重力魔法か。幸い干渉魔法があったからうちの団員達は助かったけどなかった時のこと考えるとひやひやするな。冷や汗を垂らしながらもネブラは魔法を唱える。

 

 「干渉魔法 断罪の剣」

 

 大きいマナの塊を剣の形に変える。それをダンテ含めその後ろにいるダンテの部下たちもろとも吹き飛ばそうとする。

 

 ダンテはばかでかい魔を感じながら驚愕する。あの女が出したと思われる巨大な剣の大きさに。あれを食らえばひとたまりもないことは一目瞭然だった。

 

 「ルシフェロ40%」

 

 体から冥界の悪魔の力が流れてくる。黒いその魔はダンテを半分包む。目は赤くなり右半分の頭に角と牙が生える。そして背中には片翼が。

 

 急激にダンテの魔力が跳ね上がったことにより、ネブラは警戒する。そしてあの見た目。ネブラは理解する。ダンテと自分はおんなじなのだと。同じ悪魔付きなのだと。より一層警戒する。早くこの勝負に決着をつけようと決めた。

 

 手を振りかざす。その動作に合わせて、巨大な大剣が横なぎに払う。その見た目から想像できないほどの速さで薙ぎ払う。

 

 薙ぎ払った後の光景はそれはとてもきれいなものだった。誰もいない。何もない。この瞬間勝敗は決した。

 

 「隊長!やりましたね。」

 

 部下が私の方に飛んでくる。とてもうれしそうに、にこにこしている。その顔に思わず私も微笑んでしまう。

 

 「ああ、少し手ごわかったけどね。」

 

 「ですけど、さすがです。隊長がいなければ我々は全滅していたかもしれません。」

 

 「そうか、なら今日はお前に酒でもおごってもらおうかな?」

 

 冗談ぽく笑いながら言う。

 

 「ええ、是非とも!」

 

 部下は少し手にガッツポーズを決めていた。周りの部下からはにらみつけられていた。かわいそうに。けれどこれで家に帰れるな。そう思った時。

 

 ピシ

 

 音が鳴る。ネブラは大剣の方を見る。ピシピシと音を立てている。そして大剣にひびが入っていることに気づく。そしてみるみると大剣にひびが入り崩れ落ちた。

 

 そこに一人の血だらけの男が猛スピードでこちらに飛んできた。

 

 そして、私の顔を掴み。地面にたたきつけそのまま顔に地面を埋め込みながら引きずっていく。顔を地面でえぐられ続けられて、意識を失いそうだった。

 

 「はあ、はあ、よくもこの私にこんなみじめな姿を許さんぞ。この豚女が!!」

 

 ダンテは女の髪を引っ張り顔を浮かせてまた地面に叩きつける。ドン、ドン、ドンと叩きつけられる音が聞こえる。

 

 「ネブラ隊長ーー!!」

 

 その光景を見ていた団員達はネブラを助けるべく、ダンテの方へ向かう。

 

 「うるさい、ゴミ共めが!!重力魔法 魔王の御前」

 

 先程ネブラ干渉魔法で解いた重力魔法を使う。助けに来た団員全員が重力に押しつぶされる。動くこともできない。

 

 ドン、ドン、ドンとネブラが叩きつけられる音が聞こえる。団員達はそれを見ていても動くことができずに、助けに行くことができずに涙を流している。

 

 ダンテによってネブラの顔は血だるまとなる。本人の意識はもうとっくに消えている。にもかかわらずダンテは怒り狂ったようにネブラを叩きつける。

 

 「はははあはhっはは死ね!豚が!」

 

 ブチン

 

 何か音がした。

 

 腕が空を飛んでいた。何だこれは、ダンテは先程の怒りが急に収まり疑問を感じていた。そうだこれはなんだと。理解できないでいた。頭が真っ白になった。しかし、それも一瞬のことだった。すぐに冷静になり気付く。敵に切られたのだと。ダンテは振り返るするとそこには

 

 黒い太陽が浮かんでいた。そして、目の前には今すぐにでもかみつきそうな獰猛な獣、怒りを体現している鬼のような形相をした筋肉だるまの男がいた。

 

 この人間には少し記憶にある。スペード王国でも有名な人間。闇魔法使いのヤミ・スケヒロだ。我々の計画に必要な人間だったはずだ。

 

 すぐさまダンテは重力で押しつぶそうとしたが何故かヤミがつぶれない。おそらくあの黒い球体に何かあるのだろうとダンテは考えた。ダンテは球体の範囲から逃げるように走り出す。その時、、、

 

 「マナゾーン闇魔法闇纏居合切り」

 

 ヤミが展開したマナゾーンによって、必中の攻撃となった居合切りは瞬く間に逃げるダンテのお腹を切り裂く。そして、地に伏せる。糸が切れた人形みたいに。

 

 「ったく、ただでさえ、顔に傷のある女に傷を増やそうとするんじゃねーよ。いかれ男君。」

 

 ダンテがあっさり倒されたのを見たスペードの軍はたちまち自分の国へと逃げていく。

 

 刀を肩につけ、やれやれといった表情でヤミはネブラの方へ向かう。

 

 「こりゃあ、相当ボコボコにやられたな。」

 

 ヤミはそういいながら気絶して横たわっているネブラを背負い戦場から去ろうとした。

 

 その時、ドンと禍々しい魔力がヤミを襲う。急いで」振り返るとそこには倒れていたはずのダンテが起き上がってきている。

 

 彼のお腹をよく見ているとぐちゅぐちゅと切られた箇所が再生してきている。そして、この魔力ヤミはこの魔力をよく知っていた。

 

 そう、ネブラの魔力と似ているのだ。ヤミは気負引き締める。ネブラをそっと地面に置き、刀を構える。

 

 「どうやらお前は、ここで殺さないといけない見てえだな。」

 

 ダンテは両手を広げ高らかに嗤いながらヤミに語り掛ける。

 

 「フハハハハハ、うれしいよヤミ・スケヒロ。私にこの力をもう一つの魔法を使わせるとは。」

 

 ダンテが何かをしようとしたその時、ダンテの通信魔法道具から連絡が入る。

 

 ヤミは構えながらダンテを見続け目線をそらさないようにしていた。どうやら相手の方に何かあったみたいだ。

 

 ダンテは連絡を受け、舌打ちをした。これからが楽しいところなのに、いいところで終わってしまった物語を見た気分と同じ気持ちになりながらもヤミに向かって「またの機会に、ヤミ・スケヒロ。次は殺す。そうだ。そこの女に言っといてくれいつでも私の女になりたかったら来てもいいと。」そう告げて去っていった。

 

 ヤミは先程の魔力がネブラと似ていることや見たこともない魔法が気がかりだったが、魔法帝に相談すればいいかと思い、考えることをやめた。

 

 「とりあえず、今はこいつを安静な場所に運ばないと。」

 

 ヤミはネブラを担ぎながらこの地を去る。周りの団員達もみなぼろ雑巾のようにボロボロで満身創痍だったが、ひとまずスペードの軍を撃退したことと今まで戦っていたことで分泌されたアドレナリンの効果により元気だった。みなヤミの後に続き戦市場の地を去るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「んー。」

 

 目が覚める。ここはどこだ。木材の部屋を見る限り、団のアジトではないことはすぐにわかった。ちろちろと周りを見る。おそらく民家の家か何かだろう。そこまで豪華ではなく逆に小民的である。

 

 「っつ」

 

 顔を動かそうとするとすごい激痛が来る。そういえば倒したと思ったあの黒髪の青年にボコボコにされたんだっけな。でもここにいるってことは誰かが倒してくれたんだな。あとで礼を言おう。マジで死ぬかと思ったわ。あの野郎DVの素質がある。うんうんとネブラは首を縦に振る。     

 

 痛みが残ってはいるが誰かが回復魔法で傷をいやしてくれたらしい。また傷跡増えてんだろうな。いきなりぎゅっとお腹に力が入る。

 

 「んん。」

 

 ?私が寝ているベットから声がする。というか何か私に張り付いているのがいるんだが!?シートがこんもりしている。

 

 恐る恐るシートをはがしてみる。するとどこかで見たことのあるような少年が私の腹を掴んで寝ているではないか!?

 

 「何だこれ?」

 

 少年の姿を見る。ノエルと同じくらいの子どもだろうか?それにしてもどこかで見たことのある白髪の髪だな。

 

 「おーい、起きてー。」

 

 寝ている。少年を起こそうとする。いまトイレに行きたくて仕方がないのだ。しがみついている少年を引きはがそうとする。

 

 ぐぬぬぬ。つよ!!力強くない!?てか触ったからわかる。この子メチャクチャ筋肉ついてんだけど。こんなことってある?こんな小さいのに何で筋肉だるまなの?しかもよくよく見たらこの子魔力ないじゃん!

初めて見た魔力ないとかこの子終わってんな。ゴミ以下とか初めて見た。

 

 しかし、この見た目なんか引っかかるな。ええい。そんなことは後だ!今はトイレ!!

 

 「こら!!はなせ!小僧!丸焼きにするぞ!!」

 

 ぐいぐいとどかそうとするが、強靭な筋力で掴んでくる。そしてとても嬉しそうな顔をして寝ていることに気づく。

 

 そして衝撃な寝言を呟くのだ。

 

 「えへへ、お母さん。」

 

 「は!?」

 

 ガチャ

 

 「おいおいおい、朝からうるせえぞ。」

 

 私が困惑しているところにヤミがやってきた。聞きたいことがあるが今言いたいことは一つだけだ。

 

 「この子はがしてくれない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おおおおおおおお、ここが魔法騎士団のアジト!!!すげええええ!!」

 

 ハイテンションなこの子はなんとなんと私の子どもです。

 

 、、、

 

 ということになっている。

 

 額に手を当てて大きくため息を漏らす。何であんなテンション高いんだあの子。アジトにつくまでずっと私にでったりで可愛いいからいいけど。今も興奮しているが私の手をずっと握っている。

 

 あの男、ダンテというらしいがその男との戦闘から二か月たっていたらしい。私なすぎだぞ。その間ヤミは仕事の合間を縫ってはあの村に来ていたらしい。いや、私を騎士団に運べよ!

 

 「危ないから顔を出しすぎるなよ。」

 

 ヤミがそう注意する。

 

 今は馬車の中だ。遠くに見えるアジトに興奮して馬車の窓から顔をのぞかせていたアスタに注意する。

 

 そう、あのアスタだ。やっと見つけた。あの後どうやら暇だったヤミがなんとなく私の戦場に来たらしい。そこであの男を撃退したらしい。その後近くの村でボロボロだった私を団員、村の人たちで看病してくれたらしい。その後ヴァンジャンス副団長も駆けつけてきてくれたらしい。

 

 その時ヴァンジャンス副団長がアスタの件を村の人に聞いたところなんと!この村の教会にいたらしい。とち狂った副団長はアスタの母が私であることを告げたらしい。バカか!!

 

 その間私は教会で見ていてもらったため、アスタは寝るとき私の横で寝ていたらしい。私が目覚めたときには外堀が埋められていて実は違うとかいえなくなっていた。普通姉弟だろ!どう考えても!しかし、嬉しそうなアスタの顔を見るとこれはこれで悪くわないと感じてしまった。正直可愛い。

 

 そして、親子が離れ離れで暮らすのはおかしいとして私と暮らすことになった。そういえば私は何でアスタを教会に預けたんだ?という質問が来なかったことが今でも不思議だ。まあいいか。

 

 馬車に揺られながら考える。おそらくこのアスタは主人公のアスタで間違いない。理由はその特異性だ。魔力がない。いかにも訳ありな感じがする。この魔力がある世界で魔力がないんだ。主人公じゃなかったらゴミ以下だが、主人公ならそれは大きなメリットがあると思う。様々な物語を見てきた私ならわかる。こういうのは努力してなんとかする感じの主人公だ。そして魔力がないからこそのメリットがあるに違いない。多分そうだ。最初見た時の違和感は主人公に似ていたからだ。成長するとあの姿になるんだろう。という事は私は少なくとも原作開始前に来ていたということになるんだな。

 

 アスタは自分の母の顔をまじまじと見つめていた。いろんな所に傷跡があるが綺麗な顔をしている。自分のお母さんが美人で嬉しい。そしてお母さんの髪も自分と同じ色(ネブラの髪は現在手入れやわざと汚したりしていて灰色っぽくなっている。)で本当に母親だと感じる。そしてお母さんがあの灰色の幻鹿でいま一番有名な団員だったなんて!魔法帝を目指すアスタにはとてもうれしいことだ。憧れていた人物が自分の母親だったなんて。

 

 「着きました。」

 

 馬車をひいていた団員が報告する。

 

 「じゃあ、降りるか。」

 

 「アスタ、行こうか。」

 

 「うん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ここが食堂。」

 

 「すげええええ」

 

 「ここが訓練場。」

 

 「すげええええ」

 

 「ここが洗面所」

 

 「すげええええ」

 

 「ここが大広間。」

 

 「すげええええ」

 

 「ここがアスタと私の部屋。」

 

 「やったああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 今アスタに大体のアジトを案内させていたところだ。何を見てもすごい凄いというアスタに微笑んでしまう。あ、照れてる。そうだ聞きたいことがあったんだ。

 

 「アスタは私と一緒で嬉しいか?」

 

 「うん!うれしいよ!」

 

 「そっか、ならいい。この部屋なら自由に使っていいからな。」

 

 「うん。」

 

 「じゃあ、もう夜だし。ご飯食べに行こうか。今日はずっと馬車に乗っていたから疲れただろ?」

 

 「ううん、お母さんと一緒だったから楽しかった。」

 

 可愛い。何この生き物。可愛すぎる!!アスタをぎゅっと抱きしめた。アスタは苦しそうだったけど嬉しそうだった。

 

 食堂に向かうとたくさんの団員がいた。みんなこちらを向いてアスタを歓迎している。アスタアスタと聞こえてくる。そして私によかったなと団員達が話しかけてくる。

 

 「私の名前はミラ。将来アンラさんの元で騎士団員になるからよろしくね。アスタ。」

 

 ミラがアスタに向かって自己紹介をしていた。ここにミラがいてよかったと思う。大人たちの中だとアスタも遊び相手がいないからな。ミラが仲よくしてくれるだろう。逆を言うとミラも私と特訓する以外妹くらいしか気を許して話せる相手がいなかっただろう。お互いについていい関係になってくれと願う。

 

 「俺の名前はアスタだ。俺は魔法帝になる。」

 

 おおー、さすが主人公。もしかしてブラッククローバーは主人公が魔法帝を目指す話なのかな?だとすると私息子に一生養ってもらうことができるな。

 

 アスタの発言に周りの団員はにこやかな顔で頑張れよと応援する。灰色の幻鹿でよかった。おそらくノゼル兄様率いる銀翼の大鷲だったら大バッシングを食らっていただろう。

 

 団員と仲良くしているアスタをつまみに酒を飲んでいた。そこにヤミがいきなりドカッと隣に座ってくる。

 

 「よかったな。子ども見つかって。」

 

 「まあな。」

 

 「ヴァンジャンスの野郎には姉弟だろうと伝えたんだがあいつの言う通りお前らは親子だったんだな。」

 

 「ま、まあな。」

 

 動揺を隠すためにお酒を飲む。

 

 「ふーん。まあいいか。今日は飲もうぜ。」

 

 「おう。」

 

 ヤミとお酒をたしなんだ。

 

 

 これから主人公との暮らしかわくわくするな。はしゃいでいるアスタを見ながらそう思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 本当にお母さんに会えたことはとてもうれしいと感じる。しかも今一番クローバー王国で有名なアンラ・マンユだった。いや、アンラお母さんだった!

 

 しかし、ファミリーネームがあるという事は僕のファミリーネームもマンユのなるのかな?アスタ・マンユいい名前だ。ユノにはおかしいといわれたけど。

 

 俺の村に有名な騎士団がきてとても驚いたし嬉しかった。かっけええええってなった。そこに今有名なお母さんを担いできたヤミさんがうちの教会に来たんだ。

 

 最初、とても怖い顔だーと思いながら寝ているお母さんの顔をよく見ていたっけ。この時まだお母さんとは知らなかったんだけど。

 

 ユノには見すぎていてきもいといわれてしまった。でもこんなにあの憧れていた魔法騎士団の人に会う事なんてないんだから記憶に焼き付くためにもじっくり見たいとアスタは思っていた。実際にアスタはこの日から筋トレ、ネブラのサイクルを続けていた。

 

 ネブラが来て5日たった時、灰色の幻鹿のもう一人の副団長がきた。へんてこな仮面をつけた人だった。その時だ僕に人生で初めて雷が落ちたという表現ができるくらいのある意味での衝撃が襲った。

 

 今寝ているアンラ母さんは自分の息子を探していて名前をアスタというらしい。特徴も一緒で間違いなく俺だろうといわれていた。

 

 俺はとても嬉しかった。捨てられたわけではなかった。そのことに対してとても嬉しかった。ずっと俺を探してくれたことに対しても喜びを感じることができた。けど、どうして今まで離れ離れだったんだろう?そのことは副団長も教えてくれてないらしい。何でもお母さんの年齢と俺の年齢を考えるとただならぬことがあったことは確かだといっていた。俺にはよくわからなかった。今ではそんなことどうでもいい。お母さんが俺を愛してくれているのが分かるから。俺は幸せなんだ。

 

 その日から俺はお母さんと一緒に寝ることにした。周りの子供たちはうらやましそうだったが、神父のおっちゃんがいいよと言ってくれたので一緒に寝ることにした。お母さんは起きてなくて一日ずっと寝ているけど、肌が暖かくてとても気持ち良かった。

 

 そんなある日お母さんが起きた。俺はいきなり布団が動いたから何事かと思い見てみるとお母さんが起きていた。お母さんは何やら考え事をしていたようでうんうんと二階うなづいていた。

 

 いきなりお母さんを動いているお母さんをみてどうすればいいかわからなくなったため寝たふりをすることにした。そしてお母さんに気づいてもらえるようにぎゅっと力を込めて抱き着いた。

 

 驚いているお母さんにとても面白くなった。あの慌てぶりは本当に面白かった。俺はもっと構ってほしくてぎゅーとした。お母さんに「こら!!はなせ!小僧!丸焼きにするぞ!!」といわれても何故か嫌な気分にはならなかった。なんとなくお母さんが本気で言っているようには思えなかったからだ。逆にそのやり取りがお母さんと俺との初めてのやり取りでとても幸せな気分になった。俺にはお母さんがいるんだって。

 

 その日のお母さんはヤミお兄さんに説明を受けた後また僕の所に来た。その時俺は朝のランニング中だった。

 

 おーい、とお母さんが俺の方に向かって手を振りながら走ってくる。その姿が嬉しくて俺も走ってお母さんのところへ抱き着こうとした。勢いあまって頭突きをお母さんのおなかにしてしまった。お母さんは古傷がといってぴくぴくして倒れてしまったけど嘘だよーと言って俺を驚かした。本当にビビった。

 

 その後いつもだったら筋トレをしているんだけどお母さんが魔法を見せてくれるといっていつも筋トレしているところで魔法を見せてもらった。凄かった。お母さんが何人にも増えていた。触ると霧みたいな感触だった。お母さんがどれが本物かなッといってきたので手当たり次第にお母さんに突撃した。最後の一人になったお母さんに突撃しようとしたら抱きかかえられてハグをされた。お母さんのぬくもりがとてもあたたかかった。

 

 二日後お母さんは魔法騎士団のアジトに戻ることになったお母さんは俺に一緒に暮らそうといってくれた。置いてかれるかもと思ったがそんなことはなかった。本当にうれしかった。ユノと別れるのは少し寂しかったけどお互いにライバルで魔法騎士団に入ってまた会おうと約束した。

 

 お母さんの騎士団のアジトについていろんな所を回った。とてもわくわくして楽しかった。本当に幸せだ。アジトの食堂ではミラとその妹ナナにあって新しい友達になった。

 

 その後お母さんと一緒に風呂に入って一緒にベットで寝た。風呂は綺麗で豪華だし、ベットはとてもフカフカだ。

 

 本当に本当にあり得ないくらいの奇跡だ。これからの人生が楽しみでしょうがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ダンテご臨終←嘘をつくな、生きているぞ。
 そしてダンテの伝言を伝えないヤミ。


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アスタの教育

ダンテ生きてます。よかったら前の話から見てください。


 はれてアスタの母親になったネブラだ。みんなおはよう。今日もいい天気だ。相変わらずアスタは早いな。

 

 自室の窓からパジャマ姿でネブラは騎士団の広い庭を眺めている。そこには朝のランニングをしているアスタの姿がある。この世界ではあまりよく見かけない姿だ。皆、魔法のある世界で筋トレなんてしないし、体力をつける運動なんてしないものが多いからだ。

 

 ん?

 

 よく見るとアスタと一緒になって走っている人が二人いるな。

 

 目をよく凝らしてみると、そこにはミラとその妹がいた。二人ともアスタと一緒に走っていた。

 

 「よくやるなあ、ミラは魔力が多いのに。」

 

 ネブラは窓から離れ着替えをする。

 

 「しっかし、最初は顔だけだったが中々に体も傷だらけになってきたな。」

 

 腰を捻りながら全体を見渡しながら言う。ネブラはこれまでの戦いによっていくつもの傷跡がその体に染みついていた。

 

 着替えを終え、歯や顔を洗い、食堂へ向かう。そこにはいつもの筋骨隆々の異邦人がいた。

 

 「おはよう、ヤミ。」

 

 「おはよう。」

 

 眠そうにタバコを加えながら、椅子に腰かけて新聞紙を見ているヤミはけだるそうにネブラに挨拶をする。

 

 ネブラは朝食を持っていきヤミの隣に座る。

 

 「なんか書いてある?」

 

 「特に何もねえな、いつも通りだわ。どこかの魔法騎士団が盗賊を追い払ったとかそんなん。」

 

 ヤミはネブラに視線を合わさず新聞を見たまま答えた。

 

 「へ~どこの団?」

 

 「碧の野薔薇。」

 

 「シャーロットちゃんの所かー」

 

 もぐもぐと食べながらネブラは自分より年上の団長をちゃん呼びする。

 

 「おいおい、本人の前でそんな言い方すんなよ、何でか知らねえがただでさえお前が来るたびにシャーロットの氣が乱れんだからよ。」

 

 「気を付けるね。」

 

 そう、ヤミには氣というものが感知できる。これは魔法感知とかではなく、相手の行動やどこに落石が降ってくるなどが分かるらしい。これが分かると相手の感情もある程度読めるらしい。特にヤミの前では嘘はつけないと思っていいだろう。なんてチートだ。ちなみに私は習得できない。何故かわからん。ヤミ曰く才能がないらしい。

 

 ちなみにアスタはこの氣というものをヤミに教えてもらって一日でマスターした。何という事だこんなことがあっていいのか。仮にも私は王族だぞ。元だけど。これがモブと主人公差か、、、

 

 優しい朝日に照らされながら、手を休めずにご飯を食べる。食べながら考える。

 

 確かに主人公らしく、氣をマスターしたが一つだけ憂いがある。それは魔力がないことだ。これに関してはどうなるかがわからない。原作を知っていれば大丈夫なんだてどあいにく自分が知っている原作知識は主人公がアスタであるというだけだ。なんてこった。

 

 これからどうなるのだろう。ここで私が思ったのは、もう私がアスタを強くしていいんじゃね?という事だ。どういうことかというと、もう原作とはかけ離れているような気がするからだ。アスタが私の息子のはずがないし、そもそも灰色の幻鹿のアジトにも住んでないような気がするんだ。

 

 例えば力をくれる誰かがハージ村にきてアスタに力を渡したのかもしれない。そうなったらアスタは終わりだ。しかし!この私でも習得ができなかった氣をたった一日で習得できたアスタには何かがあると感じずにはいられない!

 

 だからこそ私はアスタを強くしようと考えているのだがどうしようか。

 

 そもそも、まだ魔導書がないので単純な魔法以外はできなくても問題がない。しかし、魔導書をアスタがゲットしたときに問題が起こるのだ。そう、魔法には魔力がいる。すなわち魔がないアスタでは魔法が使えないとか以前に発動すら無理なのだ。

 

 何とかしてアスタに魔力を持たせることができないか。

 

 、、、

 

 わからなかったらあそこだな

 

 

 

 

 思いたったが吉日。ネブラは急いでご飯を食べて王都へと向かう。そう、あらゆる知識の宝庫、王宮図書館に行くのだ。

 

 ネブラは早速、箒で王宮図書館まで行き受付に頼み込む。

 

 「魔力に関する本全て持ってきてくれ。」

 

 山積みになった本をみて気分が萎えるネブラであったがアスタのために頑張って読む。

 

 「魔力を増幅する葉、うーん。」

 

 魔力に関する本の中で最も多いのが魔力の増やし方だ。そら、この世界は魔力がすべてだ。需要があるわな。しかしな増やし方を見るに成功するか不安だな。なぜならアスタはいつもの筋トレの後にそのような魔力を増やす飲み物をいつも飲んでいるからだ。どういうこっちゃ。

 

 多分、もともとがないから増えないとかそういう事なんだろうか?0からは増えない、みたいな。

 

 ネブラはその日有給を取り、図書館に入り浸った。

 

 どの本を読んでもこれといったものがなく大変だ。

 

 昼頃になるとその図書館にある人物が訪れる。アスタとミラとその妹だ。

 

 「お母さん、ここにいた。」

 

 アスタが飛びついてくる。ずっと座りっぱなしで腰に来ていて、その腰めがけてダイブされたのでとてつもない痛みが腰に来た。多分やらかしただろう。しかし、このアスタの笑顔の可愛いことよ。純粋な子供は可愛いねえ。

 

 私はアスタを抱き寄せながら自分の膝へ座らせる。そして頭を撫でながらアスタに聞く。他の二人はうらやましそうにこっちを見ている。

 

 「何でここに来たのかな?」

 

 アスタがその問いに答えようとしたとき、いつも見ている筋骨隆々の男ではなく、もう一人の副団長が姿をあらわした。

 

 「私が魔法帝に報告するついでに子供たちをここに連れてきたのさ。君に会いたそうだったからね。」

 

 「はあ、そうなんですか。」

 

 なんて可愛い奴らだ。私に会いたいだなんて。

 

 「じゃあ、僕は行くよ。帰りは君が子供たちを連れってってね。」

 

 ヴァンジャンス副団長は早々と帰っていった。お仕事が大変なんだろう。ヤミとかなんもせんしな基本。

 

 「ねえ!ここの本なんでも読んでいいの?」

 

 ミラが興奮したように聞いてくる。まあ、こんな綺麗で本がいっぱいなところなんて見たことないだろうなこいつは。元ホームレスだし。妹の方もキラキラした目で私を見てくる。お前には期待してないんだがな。でも差別はいけないから優しくしようとは努力している。

 

 「そうだな、私は夜遅くまでここにいるから。必然的にみんなここにいることになるからみんな好きな本を読んでいいよ。ここには魔法の本がいっぱいあるからね。将来騎士団になるみんなにはいい勉強になると思う。」

 

 「本当?じゃあアスタとセラ一緒に最強になれるために凄い本探しに行こうよ!」

 

 「うん、俺は魔法帝になるからな。探しにいく!」

 

 「わ、私も、ま、まって。」

 

 子供たち三人は図書館を駆け抜けていった。しかし、ミラには気を使わせたかな?うまく一人にしてくれた。感謝しないと。それともたまたまかな?アスタも元気よく私の膝から飛び降りていったし、妹はなんとか食いつこうと必死な感じだな。

 

 まあいいか。私もさっさと見つけるぞ!

 

 数時間後

 

 見つかったーー!!

 

 いやー古すぎるからなかなか読みにくかったけどなんとかよめたわ。何でも初代魔法帝とその従者がつくったものらしい。これは期待できる。

 

 これだこれ、魔力を集めて渡すこの魔法道具。これだ。しかし、問題ができた。これ私じゃ作れないわ。封緘魔法とか知らんし。あああああ。こんなところでええ。しかし、この魔法道具作ることに成功したらしいからどこかにあるはずだ。それを探そう。

 

 ふふふふ、私に探せないものなどないのだよ。まあ、それは置いといて。帰るか。

 

 私はアスタ達を見つけて、騎士団アジトに帰ってきた。しっかしミラと妹は本を読んでいたけどアスタお前寝てたな。まあ、可愛かったが。

 

 

 

 

 

 私は明日も有給を取ろうと思う。いや明日だけではなくここ三日間取ろうと思う。さあ、一般市民ども悪いな。

 

 魔力をいただくぜ。

 

 翌日まず私は例の魔法道具を手に入れるためにある魔法使う。

 

 「干渉魔法、連続する探し物」

 

 これは空にあるもの以外ならすべてのものを感知できる魔法だ。私が立っているところを中心に液体が服にしみこんでだんだん輪が広がっていくように冥界の魔力が地続き広がっていく。よして自分の探している形状を感知してくれる。

 

 見つけた。

 

 ネブラは魔法を中断して飛んでいく。今度はヴァンジャンスにどう魔地帯で修業をするといってあるのでアスタ達も来れないだろう。

 

 例の探し物は森の中に草や木の枝などで隠されていた。中々大きいな。私と同じくらいかそれ以上の大きさだなあ。遠目から見たときはそう思っていたが、まじかで見るとふぉそうよりもっと大きい。それくらいに大きな球体であった。使い方は図書館で把握している。

 

 ただ一つ疑問なのはこの魔法道具に誰かの魔力と魔法が施してあることだ。何だろう。まあ消すか。私は干渉魔法を使い。魔法を紐解いていき消し去った。

 

 ここからは変装をしないとだめだな。私は霧魔法霧変身を使い、おばあちゃんの姿になった。よーし行くぞ!まずダイヤモンド王国だ。

 

 本当はクローバー王国もやろうとしたがダメであった。よくよく考えるとしてはいけないことがわかる。自分の国だしね。

 

 さっそく魔法道具を担いでいく。

 

 ダイヤモンド王国で狙うは警備が一番少ない村あたりだ。国境は流石に人がいるので、中間あたりでなおかつ人はいるけどそこそこ連絡が取りづらそうなところを狙う。

 

 さあ、さっそく開始だ。村一体に巨大な魔法陣が現れる。住民からは何か叫んでいる声が聞こえるが置かないなくだ。全部吸い取れ。

 

 悲鳴や叫び声が聞こえる。どんどん魔法道具から魔力が溜まっていく。でもまだ足りない。やはり一般人では魔力が少なすぎる。

 

 もっと他の村に行こう。

 

 次はもっと人が多い街に来た。流石にダイアモンドの戦士たちが来たがそんなこと関係ない。

 

 「アンラ5%」

 

 私の額に小さい角が生える。アンラの力を引き出している時、私はさらに強くなる。空気中の魔を凝縮していき無数の剣を生み出す。魔の剣たちだ。

 

 そしてそれを戦士たちにくし刺しにしていく。どんどん後ろからも戦士たちが来ているがくし刺しにしていく。楽しい。あの日々を思い出す。だから私は魔法騎士が天職だと思う人を殺しても許されるのだから。まあ、今の人殺しは売るされないと思うけどね。

 

 私はまた、町の人たちの魔を魔法道具で吸収した。楽しくなりすぎて他の町も襲撃して必要以上に魔力を吸い取った。

 

 次はスペードだな。

 

 スペード王国でもダイアモンド王国と同じように、魔力を吸い続けていた。しかし、ここは雪が降っているし、とても寒い。こんな国絶対誰もいたくないよな。国土は広いけど人口は絶対にすくないと思う。実際魔力の吸収率あまりよくないし。ここはあんまり意味がないかな。

 

 さっさとハート王国へ向かうことにする。

 

 またもや悲鳴が聞こえる。そんなに魔力が無くなることが恐ろしいのだろうか。笑えてくる。そう考えると主人公は今まで辛い人生だったんだろうか。魔力もなくて親もいない。ああいう性格してなかったら絶対に未来あきらめて腐っているよな普通。そこが魅力的だ。普通とは違うとこがいい。私はアスタのあきらめないところが好きなのだ。

 

 そろそろ魔力が溜まり次の本命の所に行こうとしたその時、大量の水に包まれる。

 

 「マナゾーン+魔言術式、水精霊魔法”巫水戯の聖域”」

 

 魔言術式と呼ばれる輪っかが水を更に増大させマナゾーンでいきなり出現させ更には水の頂点には精霊がいる。どういう現状かそれは私は広い範囲で水に囲まれているという事だ。もっとわかりやすく言うと。空中にたくさんの水が出てきて私が包まれていると思えばいい。っていつか、息しないとおぼれて死ぬ。

 

 干渉魔法を使い、強大な魔法を絡まった糸をほぐすように説いていく。

 

 「ハア、ハア。どこの誰だ。私に魔法を打ってきたやつは。」

 

 「私です。」

 

 声をする方を振り向いてみるとそこには王冠を被りいかに高貴のような服を着た女の子がいた。そして、直ぐに違和感に気付く。この子の腹から冥界の魔力を感じる。何だ?私と一緒か?

 

 「お前悪魔憑きか?腹から匂うぞ。」

 

 王冠の女は凄くうろたえたようにしたように見えた。だが一瞬にしてすぐ威厳のあるたち住まいをしてこう発言した。

 

 「私のお腹のことは関係ありません。貴方は私の民を傷つけました。なのでおとなしく投獄してください。」

 

 「フーン、いやだ。」

 

 「なら、仕方ありませんね。ここでおしまいです。」

 

 この女王の後ろにいる、水の精霊ウィンディーネをみて、話しながらもネブラは感動していた。初めて精霊を見たからだ。

 

 ネブラは女王が攻撃してくる前にたくさんの分身体を作りそれぞれ別の方向へと逃げるようにした。

 

 「まちなさーい!」

 

 女王の顔を見れば怒っていることくらい簡単にわかる。ネブラからしたらもうノルマ達成なのでわざわざ戦う必要がないのだ。いちもくさんにネブラは逃げた。

 

 そして、次は本命の強魔地帯だ。ここはあふれんばかりの魔がある。狂暴すぎるくらいに、そこに住んでいる生物たちから魔力を奪う。

 

 そして、魔法道具がはちきれそうになったくらいで魔力の吸収をやめた。

 

 

 

 

 ネブラは霧魔法を使い魔法道具をみんなに見えなくして魔法騎士団に帰った。勿論変身も解いた。早速ネブラはアスタに奪った魔力を入れるためにアスタがいつも特訓しているアジトの庭に向かった。

 

 「おーい。アスタはいるか?」

 

 「あ、ネブラさん。帰ってきてたんですね。アスタならあそこにいますよ。」

 

 団員が指さす方へ視線をずらすとアスタがスクワットをしていた。その隣ではミラと妹が魔力のコントロール訓練をしていた。

 

 ネブラはアスタの方へ駆け寄る。

 

 「特訓お疲れさまだなアスタ。」

 

 「あ、お母さん。帰ってきたんだね。3日ぶりだね。」

 

 「おう、ばっちりだよ。そういえば強魔地帯でいいもの見つけたんだ。」

 

 「えー何なの?」

 

 「いいから、部屋に戻るぞ。」

 

 強引にアスタを引っ張りながら、アスタと自分の部屋に連れていく。

 

 「じゃじゃーん!!」

 

 ネブラは手を伸ばしひらひらしながら透明な霧を晴らしていく。

 

 そこには、かつてエルフすべての魔力を宿した時以上の輝きを発する大きな球体の魔法道具であった。

 

 「これはね、いろんな生き物から魔力を吸収して。その魔力を別の人にあげることができるんだ。だから、アスタのためにやったんだよ。」

 

 ネブラは知らないが謎の球体をもって暴れまくる老婆のことはクローバー王国でも有名になっていた。魔力を奪う老婆として子癖再指名手配にされていたのだ。そして、目の前にある球体は老婆が持っていた球体に似ていた。

 

 アスタは気付いてしまったがそれでも自分の母親を信じたかった。だから聞いてみたんだ。

 

 「その生物って人は母言ってないよね?」

 

 恐る恐る聞いてみる。その半泣きの上目使いのショタアスタをみてネブラはとてもゾクゾクしていってみたくなったのだ。自分が母親が酷いことをしたことを。主人公であるアスタがどういう反応をするのか。好かれている者に一気に嫌われていくのか。だからネブラは真実を告げる。

 

 「人も含むよ。まずダイヤモンド王国からいって、スペード王国、ハート王国って順にやったんだ。その後はずっと強魔地帯にいたけどね。これもアスタの夢のためなんだよ。魔力は必要だからね。」

 

 アスタは信じていたものに勝手に裏切られた気持ちになった。

 

 「何でそんなことするんだよ!俺は頼んでない!!みんなに返してやってよ!!」

 

 泣きながらさけぶアスタに、ネブラは首をかしげてアスタに言う。

 

 「何で?魔力がないと魔法ができないよ?」

 

 「努力するからいい。」

 

 アスタは涙をぬぐいながら自身の母にそう強く伝える。しかし、ネブラは大きく手を額に当てながらため息をつきかわいそうなものを見るねで言う。

 

 「正直なことを言うよ。アスタには魔力のかけらもない。魔力自体がない。言っている意味がわかる?」

 

 「わかんない…」

 

 「はっきり言うね。障がい者だよアスタは。悪い意味で言っているわではないよ?魔力がない欠陥があるんだよ。これは病気なんだ。仕方がないことだよ。悪いことでもないよ。でも魔力自体がないから魔法騎士団になることも魔法帝になることもないんだよ。いいの?ここで諦めたら慣れないかもしれないんだよ?」

 

 ネブラの発言にアスタはとてつもない衝撃を受ける。そして、ある一つのことを思いつく。震えるように、呟く。俯きながら話したのでネブラからはアスタの表情が分からなかった。

 

 「も、もしかして俺に欠陥があったから、お母さんは俺を捨てたの?」

 

 「そうだよ。」

 

 冷たく透き通るような声でネブラは発言する。ここでの肯定は、別に本心ではない。障害を持っていようがなかろうが「ネブラには関係もないしどちらかというとそういう差別は嫌いだ。

 

 ならなぜ、そうといったのか。それは親に捨てられたアスタの境遇を考えてのことだった。アスタは愛情に飢えている。そこでまた自分の母に捨てられるようなことがあったとしたら。何としても回避したいはすだと。捨てられたくないからこそ。大事にされたいからこそ。相手にとってうれしいことをする。これは至極当然のことだとネブラは思っている。だから言ったのだ。

 

 アスタはプルプルと顔を上げてネブラを見つめる。母の顔は怖かった。捨てられたくない。その気持ちがアスタの良心を超える。

 

 「お母さん、捨てないで」

 

 「なら、魔力を受けてくれるよな。」

 

 「うん。」

 

 その日、アスタは強大な魔力を手にすることになったのだ。

 

 ネブラは、証拠隠滅のためさっさと魔法道具を壊した。

 

 

 

 

 次の日、ネブラが起きると。隣にはアスタがびっしりと引っ付いていた。昨日のあれはやりすぎだったかなと個人的に思った。

 

 捨てられたくないという気持ちが強く離れられなくなっている。そして、ネブラは考えた。主人公が体を鍛えているのには何か理由があるはず。このままではアスタは筋トレをしなくなる。これではいけない。

 

 「おい、アスタ起きろ!」

 

 バシバシと叩いてアスタを起こす。

 

 「う、うーん。何お母さん。」

 

 「走るぞ。」

 

 

 

 

 朝、起きる。昨日は酒を飲みすぎた。頭が痛い。ふと体を起こして窓の外を見てみる。

 

 相変わらずあいつらは体を鍛えている。朝のランニングなんてまんま聞かねえのに頑張ってやがる。将来俺が団を持つことがあったらあいつらをスカウトしたいおもんだ。まあ、あいつがそうはさせねえと思うがな。

 

 そこでヤミはあることに気づく。

 

 あれ?何か増えてね?

 

 そう、見知った顔。毎日見る顔がそこにあった。

 

 「あいつ何してんだ?」

 

 絶対に体を動かさない努力を嫌う貴族気質が強いあいつがどうしてガキたちと一緒になって走っているんだ?わかんねえな。

 

 ツーか、アスタの小僧今まで感じなかったがあのバカでけえ魔力は何だ?母親と同じがそれ以上だぞ。何か怪しいな。

 

 怪しいといえば例の老婆だな。あの老婆クローバー王国だけ襲わなかったことによって、うちが送り込んだ刺客ではないかと言われてるんだが。知らねえよこっちは。

 

 しかし、何か引っかかりやがる。あんなに魔力を集めて何がしたかったんだ?そして何故か俺の感がネブラとアスタに向いている。気のせいだと思いたいぜ。

 

 タバコをふかしながら、窓の外を見ながらヤミはため息をはいた。

 

 

 

 

 

 今年も星果祭の季節になった。みんなお祭りモード。ヤミは何故かふんどし姿だ。しかしまあ、去年と違うのは私の周りにこの子たちがいるからかな?

 

 子供たち三人は屋台で多で物を買ったり、遊んだりしている。私が渡したお小遣いで。楽しそうで何よりだ。

 

 「ユリウス魔法帝だ。」

 

 城からユリウスが出てくる。後ろには団長たちが出てきている。

 

 「今年最多星獲得数はこの団だ。212で灰色の幻鹿!」

 

 歓声が聞こえてくる。アスタもよかったねと声をかけてくる。私はアスタの頭を撫でてあげる。笑顔が可愛い。

 

 その後各々発表されていき、王様と魔法帝のお言葉があり、星果祭は終わりを告げる。

 

 私が帰ろうとしたときにヤミが声をかけてくる。後ろにはヴァンジャンスもいた。

 

 「魔法帝が来いってさ。」

 

 どうやら私は魔法帝に呼ばれたらしい。私だけかと思っていたがヤミとヴァンジャンスも呼ばれていたらしい。

 

 私は子供たちを団員に託し、ヤミとヴァンジャンスと共に魔法帝の所へ向かう。

 

 コンコン

 

 ヤミがドアを叩くと

 

 「どうぞ。」

 

 と魔法帝の声が聞こえた。三人は中に入り、手を折り曲げて胸に当てる。

 

 「楽にしていいよ。」

 

 自然体に戻る。

 

 「それで、話って何ですかい?」

 

 「そろそろ、君たちを自分たちの団を持ってもいいころだと思ってね。」

 

 三人は驚いたようなリアクションをする。中でも一番驚いていたのは意外にもヤミだった。

 

 「いいんですかい?よそもんの俺を団長何かにしてしまって。」

 

 「いいんだよ。実績があればね。アンラにしてもそうさ。君はたくさんの星を取っているね?騎士団を持つには十分さ。勿論ヴァンジャンスも。」

 

 魔法帝はにこやかな表情でそう伝える。

 

 「ヤミとヴァンジャンスには新しい団を立ててほしんだけど、そうすると灰色の幻鹿に団長がいなくなるだろ?だからアンラにお願いしたいのさ。」

 

 「なるほど、魔法帝に命じられたならば喜んでお受けするのみ。」

 

 ネブラは固い表情硬い口調で話す。

 

 「もっと楽にしていいんだけどね。」

 

 困った表情で頬をポリポリ書きながら魔法帝は言った。そして視線を変え、ヤミとヴァンジャンスに向かって話す。

 

 「二人は団の名前とか決めたかい?」

 

 「私は金色の夜明けで。」

 

 「俺は黒の暴牛。」

 

 二人は凛々しい顔でまっすぐ魔法帝の顔を見て答えた。魔法帝は嬉しそうに、

 

 「うんうん、とってもいいね名前だね。君たちにぴったりだよ。」

 

 こうして新たに三人の団長が生まれたのであった。

 

 

 

 

 

 「アンラ団長!」「アンラ団長!」「アンラ団長!」「アンラ団長!」「アンラ団長!」

 

 

 みんなが私のことを団長というのでうれしい限りだ。毎回うれしさのあまり顔がとろけそうになるので必死に我慢する。その顔がとても怖いらしいのだが。アスタ曰く。

 

 今何をしているのかというとアスタの魔力コントロールの訓練だ。アスタの魔力はとても大きいものでただの魔力弾でもとても破壊力のあるものになってしまっている。おかげでアスタと訓練するときは誰もいない荒野か強魔地帯だ。強魔地帯では私もマナゾーンを早く習得するためにマナスキンで修業をしている。アスタも一緒にね。

 

 「アスタ。もっと威力を抑えるんだ。このままでは周りにも被害が出るぞ。せっかくいろんな人からもらった力なんだ。ちゃんと使いこなせるようにならないと。それが責任ってもんだ。」

 

 「分かってる。お母さん。俺お母さんのために頑張るよ。」

 

 「母さんのためじゃないだろ?自分の夢のために頑張りなさい。」

 

 「…うん。」

 

 アスタが魔力弾を打つ。まだ駄目だな。どこの孫悟空だよ。かめはめ波バリに巨大なビームが手から出ている。少し調子に乗って魔力を集めすぎたのかもしれない。なんて言う事だ。まあ、贅沢な悩みか。

 

 「アスタ、わかった。威力は下げなくていい。その代わり圧縮できるか?力を圧縮して小さくするんだ。ほらこうやって、ぎゅって感じで。」

 

 「…」

 

 そんな目で見るな私は感覚タイプなんだ教えるには向いていない。

 

 「アスタは全身で思いっきり力んでいるからダメなんだよ。もっと自然体で、でも集中は切らさない。人差し指から糸が流れる感覚で撃ってみたら?」

 

 隣にいたミラの発言通りにアスタは人差し指を出して魔力弾を出す。すると人差し指から人差し指くらいの幅の魔力弾というよりビームが出た。その威力はすさまじく、山を削っている。

 

 「うん、魔力コントロールはミラに任せた方がよさそうだ。」

 

 「私に任せてください!!」

 

 笑顔で胸を張るミラ。もう直ぐ魔導書がもらえる年齢だ。少し大きくなったなとおもう。ミラが試験に来たてもし何かミスをしても絶対にうちの団に入れる。

 

 最近よくヤミがきて、勧誘しているからな気を付けないと。

 

 ふと隣を見ると妹の表情が暗い。

 

 「どうしたんだ?」

 

 私が声をかけるとあわててすぐに話し出す。

 

 「い、いえ。何でもないです。ただ、二人とも凄いなって。私だけいつも置いてけぼり。私も二人みたいに魔法騎士団になりたいから、どうしても心配なんです。なれなかったらっどうしようって。」

 

 何だそんなことか。確かに二人と比べたら才能はない。というか普通にない。しかし、いつもいた三人の中で自分だけが選ばれないとかなんかかわいそうなので期待はしてないが騎士団のテストに来たら私の団に入れてあげようと思う。

 

 「心配するな。私の団に入れてあげるさ。」

 

 「何でですか?」

 

 「お姉ちゃんが入れたのに自分だけはいれないなんてかわいそうだろ?」

 

 妹は俯いて

 

 「そ、そうですよね。」

 

 といってどこかへ走っていった。

 

 まあ、いいか。

 

 

 

 

 

 



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