【FGOキャラSS】紡ぐ物語、続くこの時代【総集編】 (ねぎぼうし)
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【FGO】不可能に送る著莪【ナイチンゲールSS】
──もともと、ナイチンゲールという偉人が好きだった。
現実と真っ向から向き合い、戦い、医学を大きく進歩させた人。
カッコいいじゃないか。
ただ、実際の……俺が召喚したナイチンゲールは、少し凶化して、知性を失っていたが。
それでも、彼女はカッコよくて。
『すべての命を救いましょう。
すべての命を奪ってでも、私は、必ずそうします。』
その言葉を聞いた時、全身の鳥肌が立った。
コレだ。コレなんだ。俺が憧れたナイチンゲールは。
そう思った。思ったと同時に──
自分が情けなくなった。
今日も、俺は……病みながら生きる。
******************
「マスター、どうしました?」
「えっ、あっ、ごめん婦長。ボーッとしてた」
「ふむ……こんな真昼にとは不自然ですね。ちゃんと寝ていますか?」
「大丈夫、ぐっすりだよ」
「そうですか。念のため、メディカルチェックをしましょう。第六特異点はすぐそこです。それまでに体調を万全にしましょう」
そう言ってナイチンゲールは俺を引っ張り廊下を歩く。
「大丈夫だって。婦長は心配性だね」
「ええ、健康はなにより優先すべきものです。……失礼します!」
勢いよく扉を開けるので、医療室の中にいた職員が肩を浮かせて驚いていた。
「マスターのメディカルチェックをお願いします」
「立香くんの?いいよ。それじゃ座って」
「まぁここまで来たなら…お願いします」
それから、いくつか職員に質問され、(時々婦長が口を挟みつつ)聴診器などを当てられた。
「うん、健康!元気!大丈夫だよ立香くん」
「ふむ……身体異常なしですね」
「第六特異点近いからね。出来るだけ健康に過ごすようにしてるんだ。うーん、元気ってわかったら体動かしたくなったな!婦長、シュミレーター行こ!」
「いいですね。適度な運動は健康に繋がります。行きましょう」
シュミレーターの詳細は大体婦長決める。
これは、うまく設定することでマスターの俺も走るような内容にする為だ。
ちなみに今日は、
「マスター、木の上に避難を!」
「分かった!」
木登りらしい。
鍛えられた体で1m地点まで登る。
今回のシミュレーションは敵に囲まれた状況。
円形に猛獣が並んでいるので高台が安全というわけだ。
しかし、突破しないといけない。
気に登りながら指示を飛ばす。
「婦長、後ろっ!」
「はぁっ!」
素早く拳銃を捨て素手で猛獣を組み伏せ腹に蹴りを入れて吹き飛ばす。
猛獣も怒ったのか口から火を……火!?
「マズい!婦長!」
「分かっています!
我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)!」
瞬時に宝具を展開する。
それはあらゆる毒性、攻撃性を無に帰す。
宝具は人の生き様。嗚呼、いつ見てもやはり、この宝具は美しくて……そして……
「マスター!」
「…あっ」
次の瞬間、俺の意識は飛んだ。
******************
目が覚めると、知らない天井……ではなく、よく見なれた婦長の顔があった。
「目覚めましたか、マスター」
「婦長……?痛ッ…」
「先輩!大丈夫ですか!?」
どうやら今までベッドで寝ていたらしい。
起き上がると頭痛がしたので頭を抑えているとマシュが駆け込んできた。
「ここ……医療室?えっと……」
「先輩は、シュミレーターで強いショックを受けて気絶したと聞きました」
「木から落ちたのですよ。私の失態です。私の宝具は攻撃は弾けますが、自傷や事故は防げません。油断しました」
「いえ、婦長そんな……」
「もっと強くマスターに筋力をつけさせておくべきでした。これは説教ものですね」
「え、えっと、ナイチンゲールさん……?」
「ということでミスマシュ。申し訳ありませんが席を外してください」
「えっ、でも──」
「お願いします」
「はっ、はい!」
物凄い剣幕だ。これは怒ってる。
マシュは慌てて出て行き、扉の前で「また来ますね!」と言い残してから部屋を出た。
「さて……
「は、はい」
「何故、落ちたのですか?」
「うっ……筋力が足りませんでした」
「
「あー確かにそうだったね……」
露骨に目を逸らすと婦長は淡々と語り出した。
「……マスターは戦闘中は油断しない人です。いつでも的確に指示をもらえる。火の奇襲もそれで防げました.しかし……あの時、宝具を展開した時、あなたの指示が途切れた。ハッキリ言って、らしく無いです。どうしました?」
「────ははっ…凄いね……全部お見通しなんだ……。やっぱり凄いよ……婦長は……ナイチンゲールは凄いよ……」
「マスター……?」
「僕は……何も出来ないのに……婦長は全部出来ちゃうんだ……。凄い、凄いよ……!」
言葉にするたび、自分の気持ちが分かっていった。
言葉を紡ぐたび、頬に水滴が流れた。
いつだってあの宝具を見て思う。彼女は根絶を目指し戦った。
故に美しくて……そして、見るたびに劣等感を抱く。
「僕は……落ちこぼれなんです……!Aチームの皆なら…もっと早く特異点を修復していた!補欠なんです!何も出来ない!ソロモンも!何も!倒せるわけない!」
「マスター!!!」
「クリミアの……天使を知っていますか」
「……ナイチンゲール…でしょ?」
「ええ、私です。しかし、私の生活は天使とはかけ離れたものでした。全てが敵で、全てが間違っていた。周りからは病気の根絶は不可能と言われた。けれど、戦いました。そして天使と呼ばれました。ですが……私は天使などではなかった。ただの一看護婦でした。あなたと同じです。────"天使とは、美しい花を振り撒く者ではない"知っていますか?」
「はい……婦長の生前の言葉ですよね。"天使とは、美しい花を振り撒く者ではなく、苦しみあえぐ者のために戦う者のことだ"」
「つまり抗い、戦い、挫なかった先に、私は天使と呼ばれた。人々に感謝され……私は生きることが出来た。だから私は天使の名を自分で認めたのです。そして、天使のなり方を教えた。形は違えど、今はマスター、貴方が、地球上の、人類の天使なのです。不可能?無理?何も出来ない?いいですか、そんなもの、
「婦長、俺……足引っ張るかもですよ…?」
「スクタリの男よりはマシでしょう」
「俺、何も出来ないかもです……」
「それは許しません、何かはしてください」
「出来ますかね?俺でも……」
「特別な人間なんていません。やろうと思えば死ぬまでやろうとしてください。じゃないと殺します」
「……嗚呼、やっぱり……婦長は凄いじゃないですか……!!!」
「えぇ、何度も抗ってきましたから」
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────もともと、ナイチンゲールという偉人が好きだった
『すべての命を救いましょう。
すべての命を奪ってでも、私は、必ずそうします。』
その言葉を聞いた時、全身の鳥肌が立った。
コレだ。コレなんだ。俺が憧れたナイチンゲールは。
そう思った。思ったと同時に──
俺も、抗ってみようと思った。
今は昔より、ナイチンゲールが好きになっていた。
あぁ、今日も俺は──健康で、病はとうに治ったようだ。
随分心が軽くなった気がした。
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【FGO】女王と嫌いと俺【メイヴSS】
「だーかーらー!こっちの方が可愛いでしょ!?」
「はぁ!?見た目じゃなく性能で選べこの野郎!」
俺はメイヴが嫌いだ。価値観が違う。生き方が違う。
「大体、アンタが私の鎧を盗まれちゃうのが悪いんでしょ!?」
「小特異点を作ったのはお前だろうが!」
毎回面倒事を持ってきては悪びれもしない。
「お二人とも……喧嘩はほどほどに……」
「「マシュは黙ってて!!」」
「は、はいぃぃ……」
俺は本当に……コイツが嫌いだ。
******************
微小特異点、いつものごとく発生したそれは男性が権威を握る世界とダ・ヴィンチちゃんに聞いた。
ということで、不本意ながら男性に有利なメイヴにお願いしたところ、「男が権威を握ってるの!?信じらんない!」と憤怒し、マシュと2人で同行してくれている。
「さて、街が見えてきたな」
「というか何あのでっかい塔?」
「俺が思うに、政治の象徴だろうな。街のど真ん中だし、どこにいても見える」
「どうしますか、先輩?」
「ま、効率的に考えると、2人はここに隠れておいて俺が話をしくのがいいかな」
「効率効率って、そればっかりねアンタ。別に私が惚れさせればいいでしょ?手っ取り早いわよ?」
「男が覇権取る世界で女性が話しかけたら問題になるぞ。大騒ぎ待ったなしだ。サクッと聞いて……」
次の瞬間、遠くで声が聞こえた。
それは俺たちにとってとても都合が悪く、
「オイ!女がいるぞ!捕まえろ!」
最悪だった。
「見つけたら即捕縛って逆アガルタにも程があるだろ……っ!メイヴ!逃げるぞ!」
「私もそうしたいんだけどね」
「だけどね?」
「何故か後ろの方に見えない壁があるの。通り抜けられないわよ。コレ」
実際に下がってみると、後ろに行けない。なにか魔術的なものでも働いているのだろうか。何にせよ、逃げられないようだ。
「さて、あなたの回答を聞きましょうか。ここでは何が効率的?」
「最悪な聞き方してくんなお前。……宝具で突っ切る!チャリオット出せ!」
「了解!チャリオット…!」
「君たちがカルデアか」
「「「!?」」」
カルデア、という名を知る老いた声に宝具詠唱が止まるメイヴ。
あまりの驚きに俺たちが声の方向を見ると、軍を引き連れた仮面の男が立っていた。
「何者だ?なんでカルデアの名を知っている」
「コルホヴォンというしがない老人じゃよ。カルデアの名を知る理由は語れんが……」
「なるほど……わざわざ会いにきてくれたという事は話し合いでもしたいわけ?」
「いや……貴様らを逃げられんようにするためじゃよ」
次の瞬間、後ろから倒れる音がした。
(コイツッ!メイヴがライダーと見抜いて真っ先に!会話は注意を引くためかクソったれ!)
「捕まえろ」
「マシュ……は、流石に100単位で倒すのは無理だよね」
「ッ……!申し訳ありません…!」
マシュの今にも消えそうな小さな暗い声がツバメの鳴き声にかき消された。
こうして俺たちは捕まった。目隠しをされ地下監獄に念入りに別々に入れられた。
(幸い、念話は通じるらしいな)
(なんでこんな時にアンタの声なんて聞かなきゃいけないのよ。サーヴァントになったことを後悔するわ)
(どう?脱獄は出来そう?)
(無理ね、魔術的な結界がある。力づくじゃ出れないわ)
(自分の場所は分かるか?)
(分かるわけないわ)
(なるほど……)
(先輩もメイヴさんも、あの大きな塔の下らしいです)
(マシュ?なんで分かるの?)
(それは……)
ガシャン!
「既に脱出したからです」
「えぇ……!?」
念話に集中していた顔を上げてみるとマシュは微笑んで牢屋の鍵を開けていた。
「連れていかれる時、一瞬看守さんが油断してくれたので、倒して居場所を聞き出しました。不肖、マシュ・キリエライト、がんばりました」
「がんばりすぎ……メイヴ助けに行くぞ」
(早くしなさいよ馬鹿)
「……もうあいつほっといていいかな?」
「だ、ダメですよ先輩……!」
******************
トントン
「ん?グホォア!」
「コレで最後ですね、先輩」
無事、このデカイを出れた。
まだ出れてはいないが看守全員殴り飛ばしたので出れたってことでいいだろう。
「アンタその盾大きいんだからあんまり本気で殴ると死ぬわよ」
「一応受け身は取れるように肩叩いてやってんだから大丈夫だろ。まぁそれでも気絶はするけど」
「で、コレからどうするの?」
「それなんだが……ちょっと話がある」
******************
「脱獄したと聞いたときは驚いたがまさか自分から出てくるとはなぁ…」
「アンタを釣るにはちょうどいい餌でしょ」
この街1番と思える大広場にメイヴは、コルホヴォンと対峙していた。実際のところ、ホルコヴォンの後ろには100を超える兵士がいたのでこれを決闘と呼ぶには相応しくはない状況だ。
「じゃあ、殺り合いましょ!」
「今度は殺せ。捕まえる意味もない」
突如始まる乱戦。
(あの馬鹿……「サーヴァントなんだから100人倒すとまではいかなくとも足止めぐらいは出来んだろ」って……私は兵士じゃないのよ女王なの!)
「さて、戦いながらで悪いがワシの話を聞いてはくれんか娘」
「良いわよ!存分に聞いてあげるッ!」
「それでは……他の2人はどこへ行った?」
「知らないわよあんな2人!仲間割れよ!」
強気に応えるがメイヴはもう劣勢。満身創痍だ。
「抵抗しても無駄だよ。兵士240人の猛攻だ。いくらサーヴァントといえど、既にボロボロではないか。足が動いとらんぞ」
「やかましいわよ!」
コルホヴォンに向けての反抗というように震える足で回し蹴りをし、また1人、兵士を潰す。
「どうせ君は死ぬ。冥土の土産に君からも質問の権利を与えよう。なにが聞きたい?ワシの目的か?正体か?」
「ハァ……ハァ……あなたの目的は知らないけど、大体の理由は分かるわ」
「なに……?」
「うちのマスター、悔しいことに頭がいいの。疑問に思ったそうよ。穴がありすぎるって」
「は?」
「カルデアの名を知ってて、逃げる対策をしていたくせに念話のことは知らない。頭が回るのかと思いきやあっさり脱獄を許す……!先回りはできるのに詰めが甘いのよね。あなた、一瞬で看破されてたわよ。未来視待ちだって」
「だから?それが今なにかを覆すわけでもない」
「ええ。だから冥土の土産に語ってるのよ。貴方の真名をね」
「……!貴様、まさか私の正体を!」
「えぇ。そして、貴方の弱点を私が持っているとしたら?」
ポケットをまさぐるメイヴ。
「何ッ!?私の弱点…!?」
「くらいなさい!」
メイヴは待っていたかのようにポケットから小瓶を取り出し、それをホルコヴォンに向けてぶん投げた。コルホヴォンはあまりの速さに避けきれず、メイヴは見事…顔に命中させた。
「ハァ……ハァ……なんてね♪」
そう吐き捨てるメイヴ。小瓶の中身は……
「チーズよ。あの馬鹿、私を従えさせる秘密兵器として持ち歩いてたみたい。これを投げろだなんて本当ありえないわ。でもアンタの顔にお似合いじゃない。きっと美味しいわよ今の貴方。ヤギでも試食して貰えば?」
「…………ふふふふふ……ふはははは!小童!こんなものが弱点だと!ふざけるのも大概に…!」
ドォォォン!突如爆発音が響いた。
それはここから遥か遠く。故に、コルホヴォンは反応が
「何ッ!?」
「最初から気になってたのよ。あなた、聖杯どこに置いているのか。それを奪うのが特異点修復にもっとも手っ取り早い方法だしね。で、この場で満遍なく魔力供給できるとしたら……あの塔じゃないかしら?」
「………くはは!いい推理だ!だがあの塔には結界がある!」
「なるほどね……じゃあ
「…………は?」
******************
爆発音が鳴る。
音源の中心にいるこの身としてはやめてほしい限りだ。
だがしかし、爆発音を鳴らすほどのスタートダッシュ。完璧だ。
「それじゃあ飛ばすぜ!
『愛しき私の鉄戦車(チャリオット・マイ・ラブ)ッ!』」
宣言と同時、メイヴの戦車は45度の角度で空中を駆け抜ける。
急斜面の坂を登らされている感覚だ。
徐々に地面が遠くなり塔が近づいて来る。
「聖杯が置いてあるところ!魔力結界がないほうがおかしい!防衛手段は予測済み!」
俺はチャリオット・マイ・ラブで
「魔力結界!?さっき見たよ逃げられねぇやつだよな!?でも、ツバメがいたってことは!渡り鳥がいたってことは!つまりは結界は上まで届いてない!」
塔の完全な上空、俺はチャリオットから飛び降り、重力に身を任せ落下しながら右手を強く握った。右手には持っていた。何を?決まっている、この場を切り抜ける切り札だ。
「塔は全部ぶっ壊すのが
『愛しき人の虹霓剣(フェルグス・マイ・ラブ)!!!』」
────愛しき人の虹霓剣。生前、恋人であったフェルグスの宝具であるカラドボルグを一時的に召喚し、虹光を放ちながら天地天空大回転の範囲攻撃を起こすメイヴの第二宝具。
これこそが切り札。
俺の予想通り、塔は全壊した。
******************
「そんな……私の塔が……」
メイヴに背を向けショックをうけるコルホヴォン。膝から崩れ落ち、落ち込んで……
「なんてな……♪」
などはいなかった。コルホヴォンは振り向かないまま邪悪な笑いを塔に向かって投げる。
「ふはほははは!!!!塔に聖杯!!??見事にミスリードに引っ掛かりおって!そんなものはないわ!ざまぁみろ!これで貴様らの勝利は途絶え……!」
勝利の確信をして歪んで笑みのままホルコヴォンが振り向いた時だった。
口に瓶が突っ込まれた。それは、満身創痍になったメイヴの瓶。振り向くことを予想して、口に瓶を突っ込んだのだ。
そしてその中身は……。
「私、言ったことは実現させるタイプなの。言ったでしょ?
「これは…!この瓶は……!」
「『愛しき私の蜂蜜酒(マイ・レッド・ミード)』。濃いでしょ?サービスよ」
「ぐああああああ!べっ!ぺっ!」
「あら、女の子からの貰い物を吐くなんて、礼儀がなってないわね」
「なにやってるお前ら!この女を捕まえ…!」
「無駄よ。既に蜂蜜酒の餌食。この男どもはみんな私の下僕よ」
「浴びたものを……惚れさせ従属させる宝具…!」
「まだ意識があるのね。じゃあ語ってあげるわ。私のマスターがどれだけ見抜いてるのか」
「ハァッ……ハァッ……!」
「未来視待ちってだけで大分限定されるけど、特異点の目的が分からなすぎる上にチャリオットを知っていた。未来視を持っていても出して無い宝具は見れない。顔を隠す意味。あなた、私に縁ある英雄だと見抜いていたわ。そしてこうも言ってたわ。アナグラムでコルホヴォンはホンコヴォル。私の元夫、アルスター王コンホヴォル。それが貴方で、男だらけの政権。これ、私に対しての復讐のための餌ね?」
「ハァッ……まさか……初見の時に……!」
「えぇ。全部見抜かれてたわよ。そして、塔に聖杯がないのも見抜いてた。アレは貴方を油断させる大胆な策だそうよ。にしてもぶっ飛んでるわアイツ」
「私を油断させる為に……塔を破壊するなど……ありえなさすぎる!」
「……いつだってね、男は私の為に動くの。今回はアイツが私の為に動いただけよ」
「ぐ、ぐあああああああ!!!!!」
「さぁ、聖杯、体内にあるんでしょ?じゃないと未来視なんて強すぎる技、使えるはずないもの。出しなさい」
「……どうぞ」
コルホヴォン。いや、ホンコヴォルが完全に従属し、聖杯をメイヴに渡す。
受け取ったメイヴはホンコヴォルに、決別とばかりに
「生前でも思ったけどアンタ……私の男たちの中では下の下よ。最低、死になさい」
自害を命じた。
こうして、この特異点は収束した。
******************
「全く、宝具貸してくれとか次いったら吹き飛ばすわよ」
「お前なぁ……死にかけた相手にかける言葉じゃないだろそれ」
「なにが死にかけよ。マシュに受け止めてもらう前提でチャリオットから飛び降りたくせに。『着地任せたマシュ!』って声、街に響いてたわよ。兵士200人相手した私の方が死にかけてるわよ」
「ぐぬ……今回ばかりは立つ瀬がない……」
「まぁまぁ先輩もメイヴさんも、無事解決したので仲良くいきましょう。乾杯です!」
「「かんぱぁーい…!」」
互いに釈然とせずに乾杯をかける先輩とメイヴさん。
互いに飲み物を一杯揃ってガブ飲みして、私だけしか聞こえないような距離で、
「まったくこの女、理念は男どもを敷きたいとかいうクソ野郎なのに…」
「まったくこの男、効率ばかりで気の利いた提案一つも出来ない癖に…」
「「いざと言う時かっこいいんだよなぁ(いいのよねぇ)……」」
とため息。
「マシュ・キリエライトが思うに……2人は息ピッタリですよ♪」
「「それはない」」
ほら、やっぱりそうです。
先輩の嫌いも、メイヴさんの嫌いも、同じなんです。
2人の嫌いは、もしかしたら好きの裏返し……は、ありきたりで簡単すぎるのかもしれません。
もっと2人には2人だけの意味があるのでしょう。
「「はぁ……やっぱコイツ嫌いだ(だわ)……」」
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