ゴブリンスレイヤー 実況プレイ (猩猩)
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盤外編
盤外 友人によるサクサク実況・前


どうして気分転換に書いた話の方が先に仕上がるんですか?(電話猫)


 よっ!(地球外生命体風挨拶)

 

 どうもどうも。普段実況やってる後ろで好き勝手言ってる友人です。

 今回はこの動画シリーズを見てくださってる皆様に、簡単かつ楽に出来る最初の剣士一党救済方法。その中の一つをお見せしようと思います。

 やり方はゴブリンの数ほどあるんですが、今回やるのは実績「危険って、何が?」を取得できる「ゴブリンスレイヤー抜きでゴブリン退治成功」のやり方です。

 

 それではやっていきます。

 

 難易度選択は当然逆位置、じゃなくてノーマル。失敗したくないんで一応ね?

 さてみんな大好きキャラメイクですが、今回は只人(ヒューム)男能力固定値で行きます。只人固定値は非常に安定する上に、ボーナスの振り方次第でなんでも出来るのでおススメです。

 今回はとりあえず技量にボーナス振っておきます。この能力値ボーナスは最終決定前に好きなものに変えられるので、この後の出目次第では変えます。

 見た目はこの最近追加された有料DLC「大刀(ダイ・カタナ)」から作れるようになった和風のキャラで行きます。

 着物に袴、あるいは着流しなんかで「侍」って感じの見た目に出来るので、和風なのが好きな人にはおススメです。

 はい、この本気出す時だけ目を開きそうな糸目で微笑んでる彼。彼にします。

 

 さて経歴設定ですね。ランダムでダイス振りましょう。

 一番大事なのは出自です。どれが出てもいいんですけど、一番いいのは冒険者です。次いで他の職業レベルボーナスが手に入る騎士・無頼・兵士・神官ですね。

 冒険者の職業レベル1を好きに選んで振れる、というのは実に大きいです。

 最初は本当に微々たるものですが、レベルが上がれば上がるほどこの時の職業レベル1の意味は大きくなってきます。

 資金が手に入る貴族や商人は序盤の安定度を大きく上げてくれますけど、後半はあまり意味無くなりますから。

 ロールプレイとか、出自の関係から特別な依頼やイベント発生したりはしますけど。

 

 出自騎士、来歴平穏、邂逅上司。すっごーい、君は穏やかな人生を送って来たフレンズなんだね!

 騎士引いたので【戦士(ソルジャー)】レベル1は無条件で確保ですね。幸先いいです。平穏を引いた事で【幸運】技能も手に入りましたしウホウホです。

 邂逅はあんまり気にしなくていいです。ある程度ゲームを進めないと関わってこないので。

 

 職業ですが、【戦士】に1振って【神官(プリースト)】に2振りましょう。今回は最初の洞窟だけプレイするので【斥候(スカウト)】はなくても何とかなります。

 そして信仰する神ですが、コレについてちょっと解説しますね。

 

 このゲームはどの神の信徒となるかで使える奇跡の種類、そして詠唱の長さが変わってきます。

 奇跡にもよりますが、少しばかり長いのが多いのは地母神。ずば抜けて短い、というか一言二言で済むのが戦女神です。

 例として《小癒(ヒール)》の詠唱を上げると、地母神は《いと慈悲深き地母神よ、どうかこの者の傷に、御手をお触れください》とそこそこ長い文句があります。

 対して戦女神は《我らに、癒しを》だけです。

 たまに詠唱中攻撃されてキャンセル入る場合もあるので、戦女神は戦いを念頭に置いているので実用性を重視してると言えますね。

 

 じゃあ戦女神でいいじゃん、となりそうなものですが四方世界ではどの神を信仰するかは結構大事です。

 何故かと言うと、神によって信仰している種族や職種の傾向や信徒の数が違うのです。そしてそれによって得られる恩恵も変わってきます。

 信仰している神が同じ、というだけで信頼が得られるとまではいきませんが、現実の「出身地が同じ人」ぐらいのとっかかりにはなります。

 あと【神官】レベルを1でも取得している場合、信仰している神の神殿に行けば一晩か二晩ぐらいならロハで泊めてもらえます。つまりいざという時頼れる場所が増えるんです。

 他にも情報収集がしやすくなったり、伝手が増えるので中々重要になって来るんですね。

 

 一般的に信用されやすく信徒が多いのは至高神、田舎に行くと多いのは地母神、鉱人(ドワーフ)蜥蜴人(リザードマン)、それに開拓村なんかに多いのは戦女神って感じですね。

 知識神は数こそ少ないんですが、神殿はだいたい書庫を兼ねてるので情報収集や知識が必要になる時は物凄く強いです。CoCで図書館技能持つぐらい強いです。

 

 ですが今回はそれらではなく、交易神を選びます。

 理由に関しては後で説明しますが、交易神の特徴は「金」です。助けて欲しけりゃ金を出せと明言します。

 金出さないと「ケチな背教者」として蹴り出されたりします。比喩ではなく物理的に。

 別に銭ゲバというわけではない……いやわりとそういう部分はありますが、「代償を払わず恩恵だけ受けれると思うなよ」という教えなのでそうなってるのです。

 その代わり取引には厳格なので、対価を出したのに恩恵を受けれないという事はないです。

 あとこの神は盗賊の信徒も結構いるので、そういう所との繋がりも期待できなくはありません。

 

 さて、神の説明はこれぐらいにして次は状態です。レッツダイスロール!……「12」「9」「11」!素晴らしい出目!君は滅茶苦茶優秀なフレンズなんだね!

 よし、決めました。呪文に「12」を振り、生命力に「11」移動力に「9」を振ります。

 これで新人ながら奇跡を3回使える上に、生命力20移動力27の前衛もやれて脚も速いつよつよ優秀神官戦士の誕生となります。

 ちなみに呪文や奇跡を最初から3回使うためには、「12」を振らないといけないので原作の女神官ちゃんがいかに優秀か分かりますね。

 さも「普通の新人です」みたいな顔してましたけど、奇跡の回数だけでも明らかに才能の片鱗を見せつけてるんですよ彼女。

 

 技能ですが、割と何取ってもやっていけるんですが今回は【受け流し】【武器:両手剣】にしましょう。

 【受け流し】はアクションゲームが得意な人なら、数値以上に活躍するスキルです。武器に関しては、この見た目なら使う武器は一つしかないでしょ?

 そう、パイルバンカーです。嘘です。

 本当に使うのは湾刀(イースタンサーベル)です。やっぱり和服には刀だよね。

 このDLCを導入している場合、湾刀だけでなく脇差や野太刀なんかも武器として追加されますが湾刀で行きます。

 みんな好きでしょ?侍スタイル。

 

 さて何の奇跡を取得するかですが、交易神を選んだのなら交易神信徒限定の奇跡《逆転(リバース)》一択です。このためだけに交易神を選ぶ価値さえあります。

 この奇跡の効果は簡単に言うと、「ファンブルを出した時、出目をクリティカルにする」というものです。

 正確に言うと骰子の出目を出した者の同意がある時のみ、裏返すという効果です。つまり出目が「1、1」なら「6、6」になります。

 戦闘中には使えないし使用するのに1分間かかりますが、詠唱さえすれば24時間持続します。

 つまり、安全な街中で使っておいて冒険の最中に効果を発揮するとか出来るわけですね。

 戦闘中こちらがファンブルを出したとしても、それをクリティカルに出来るチート級の奇跡です。

 

 まあ一日一回しか使えないという制限はありますが、それを差し引いても滅茶苦茶強いです。

 使える奇跡の回数が2回以上なら、とりあえず朝起きたら詠唱するぐらいの気持ちでいいです。

 

 もう一つは《聖撃(ホーリースマイト)》にしましょう。これは装甲値を無視してダメージを当てれる優秀な奇跡です。

 単純な火力が欲しい場合は戦女神の信徒になって、《戦槍(ヴァルキリーズジャべリン)》を覚えましょう。えげつない威力を出します。

 

 名前はシンプルに「湾刀使い」としましょうか。

 これなら万一名前取られても、『贅沢な名前だねえ!お前の名前はこれから刀だよ!』と言われてむしろ格好良くなります。

 勿論「い」だけ残される可能性もありますけど。

 

 動機と経緯はどうでもいいのでランダムで。

 ……英雄になりたい。すっごいまとも。

 纏めると騎士の家に生まれて平穏無事に暮らして来て、「オラ英雄さなりてえ!」とか言い出して冒険者になったある意味正統派の極みみたいな経歴です。

 英雄になろうとした段階で英雄失格ってスーパー弁護士が言ってたけど、大丈夫かな?

 

 年齢は17歳で。14歳と17歳って特別な感じがしません?

 学生だと中学2年と高校2年で、先輩という頼れる存在がいながらも後輩という頼って来る立場の存在もいる特別な立ち位置。

 まあ四方世界だと関係ないんですけどね。

 

 そしてこのDLC「大刀」による追加要素として、初期装備を選ぶ事が出来ます。

 どういう事かというと、設定的には「最初から装備持って冒険者になった」という事に出来るんです。

 田舎から何も持たずに飛び出してきたのではなく、家にあった武器やら防具やらを持ちだしてきたって事ですね。

 有利だと思うでしょ?でも装備の金額分、初期資金から引かれる仕様です。

 つまり基本的にはフレーバーとしての効果しかありません。後は最初に装備買うのかったるいって人向けですね。

 ですが今回の場合、実績解除条件を満たすためにRTA程ではないですが早さを求められるので結構重要です。

 

 今回は湾刀を選択。刀一振りだけ持って、英雄を志し冒険者になった湾刀使い君。設定的には滅茶苦茶美味しいですね。

 騎士の生まれなのになんで刀なのかとか、その和風の服装は何処から手に入れたのかとか疑問はありますが気にしたら負けです。

 彼岸島に突っ込みを入れるぐらい負けです。「あったよ、湾刀と和服!」「でかした!」ぐらいのやり取りで手に入れていいんです。

 それでは、ゲームスタートします。

 

 

 

 ムービー中暇なんで、ちょっと解説します。

 まず目的である原作最初の、女神官ちゃん達によるゴブリン退治。実はこのゲームだと、ゲーム内時間で一定の日数が経過するかフラグが立つまで発生しません。

 フラグに関しては登録した時、すぐに依頼を受けるかどうか聞かれるんですが「考え中」を選ぶと成立します。

 コレを選ぶとギルドの入り口に女神官ちゃんが湧いて出て来て、後は彼女に関わろうが関わるまいが原作の流れがスタートします。

 一切原作に関わらず自由に冒険者として生きる事も可能なので、無理に関わる必要はありません。

 おススメの依頼を聞いたり、すぐに依頼を受ける場合フラグが立たず女神官ちゃんはポップアップして来ません。

 これを利用して鼠や蟲を退治したり、ドブガチャ回したりしてレベルと装備をある程度整えて挑むのが洞窟攻略で一番安定するやり方ですね。

 ですがゲーム内日数にして大体一ヵ月過ぎると、フラグが立っていなくても女神官ちゃんは冒険者になって原作の流れがスタートするので関わりたい場合は気を付けてください。

 

 今回はその手法は使わず、即日洞窟を攻略します。尺足りなくなっちゃうもん。

 洞窟攻略するだけなんで関係ないんですけど、同じ日に冒険者になって洞窟攻略する場合女神官ちゃんからの好感度にボーナスが入ります。

 一緒に洞窟へ挑まなくても、同じ日に冒険者登録して会話するだけでボーナスは発生します。何かの縁って事ですね。

 そして【神官】レベルを取得しておくとさらにボーナスドン!同じ地母神ならさらにドン!会話の選択肢でわざと嫌われない限り、初日で友達ぐらいにはなれます。

 

 はい、ムービーが終わりましたね。親の顔よりは見慣れてないギルド前です。親の顔より見慣れたって人はもっと親の顔を見てください。

 最初にやる事は皆さんお察しの通り、装備の購入です。

 武器は持ってきたけど防具はない。うっかりさんかな?

 違いますよ、私が忘れたんじゃありません。湾刀使い君が忘れたんです。ええ、そうですとも。

 買うのはただの革鎧(レザーアーマー)です。硬い革鎧(ハードレザーアーマー)ではありません。硬い革鎧にすると解毒剤(アンチドーテ)を一本しか買えなくなるので。

 一本だと事故った時怖いですし、ギルドや工房で買う水薬は長期間保存出来るのでストックしておけるので後で役立ちます。

 防御力が不安?当たらなければどうという事はないです。

 

 兜はいらないです。初回の洞窟に限ればですが。バックアタックとかで頭に一撃食らわない限り問題ないです。

 でも他の場所だと上から来るぞ!気を付けろ!ってことがちょくちょくあるので、安物でいいので買っておきましょう。

 それと油も二瓶買っておきます。資金に余裕があるなら燃える水買うんですけどね。

 

 そして買い物が済んだら、《逆転》を詠唱しましょう。別に買い物前でも構いませんが、ギルドに入る前に済ませておくのが一番です。

 そうならないようにする予定ですが、万一剣士君が剣を壁に引っ掛けたとしてもコレを使えばあら不思議。

 都合よく引っ掛かった部分の壁が崩れ、デコピンと同じように「結果的に力を溜めて勢いよく剣を振った」という結果になり通常攻撃より高い威力の一撃となります。

 

 さてギルドに来ましたので、早速冒険者登録を済ませます。今回当たった職員は受付嬢さんですね。

 農民や無頼出身だとたまに読み書きが出来なかったりします。この時【礼儀作法】技能を取っておくと礼儀正しいけど字が書けない変な人が出来上がります。

 今回は騎士出身なので問題なく済ませて、速攻で解毒剤買ってクエストボードに移動します。

 ここでのんびり眺めてると、湾刀使い君が暇そうに刀の柄を弄り出した辺りで女神官ちゃんがやってきます。

 彼女に話しかけて、よほど変な選択肢選ばない限りは勝手にイベントが進んでいくので流れに乗りましょう。乗るしかない、このビッグウェーブに。

 剣士君達が声かけてきたので会話をボタン連打でパッパカ話を進めてますが、この時会話の選び方によってはもっと慎重にやれます。

 例えば【魔術師(ソーサラー)】レベルを上げておいて《水薬(クリエイトポーション)》の呪文を習得しておけば、彼らから金を巻き上げて薬草を買い解毒剤を作る事も出来ます。

 これやると時間経過+万一の時の備えが出来るので、剣士君一党はほぼ確実に助かります。助けるだけならコレが一番楽だと思いますね。

 ですが今回は実績解除が目的のため、あんまり時間かけていられません。

 

 受付嬢さんの忠告、無視してヨシ!それじゃ出発です。

 




どうして息抜きのはずが前後に分ける必要があるぐらい長くなるんですか?(電話猫)


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盤外 友人によるサクサク実況・後

本当は格好いい剣術とか使わせたかった。でもゴブリンは人間と体格が違うからまんま使える剣術は少ないんだ……
そもそもゴブリンスレイヤーという作品が「ファンタジーなら対ゴブリン用剣術とかあってもいいのでは?」って話から生まれたというのに……


 移動中暇なのでちょっと解説を。剣士君達についてです。

 

 まず彼らのゴブリン退治は無謀だったのか?と言えば、答えはNOです。

 別にゴブリン退治は絶対に死ぬような危険案件ではないですから。新人は確実に死ぬ、という難易度だったらギルドの方で新人には回さないように対応してます。

 というか、そんな危険な怪物だったらゴブリンは今頃絶滅してます。国が本腰入れて駆逐してます。

 運が良ければ成功する、ではなく「運が悪いと死ぬ」のがゴブリン退治なんで。ただしベテランでも運が悪いと死ぬ危険性はあるってだけなんです。

 

 辺境最高の重戦士さん達も、最初のゴブリン退治で結構危ない目に遭ってますからね。初心者のゴブリン退治は本当に運次第です。

 どっかの変なのですら最初のゴブリン退治は、一歩間違えれば死んでましたからね。

 でも無事ゴブリンを退治して、生還してる。変なのに至っては単独です。つまりゴブリン退治は新人でも充分やれる仕事なんです。

 そんな仕事に警戒して挑め、っていうのはちょっと無理があります。警戒しなくても成功しちゃう例もいっぱいあるんで。

 それを考えると、受付嬢さんの忠告を無視したりとちょっと迂闊な部分はあったのは確か。けれど彼らを無謀とは言えないでしょう。

 読者が彼らを無謀と言えるのは、神の視点を持っていて豊富な知識を得られる立場にあるからです。

 

 剣士君が剣を振り回した事に関しても、壁抜きの奇襲を食らって魔術師が刺されたせいというのがあります。

 つまり冷静さを失ったせいでああなったわけで、正面からやる分には彼はちゃんとやれます。

 というか正面からやると彼、ひいては彼らの一党(パーティー)は新人の平均より強いです。才能ある新人と言って構いません。

 才能があって、攫われた女性を助けようという義侠心があって、冒険に挑む気概もある。立派なもんです。無かったのは運です。あと金。

 

 壁抜きに気付かなかった点に関しては、そんなの怪物辞典(モンスターマニュアル)読んでも書いてないんで気付かない方が普通ですよ。

 そもそもそういう知恵持ってるやつが群れにいなければ発生しませんからね、アレ。

 

 つまりは、彼らが一番不運だったのは「村の女性を攫う規模の群れ」かつ「毒と罠を使う知恵のある長」がいた、という事です。

 例えば同規模の群れでも、田舎者が長なら毒はなかったりします。場合によっては罠すらないです。

 この場合楽、に見えて罠を逆手に取って敵の数を削るとかは出来ないので、人数やビルド、アクション苦手な人にとってはかえって辛かったりします。

 

 結論としては、剣士君一党は「知識と経験が足らず未熟ではあったが馬鹿ではない」ですね。

 とにかく運が悪かった。最大の敗因はこれです。逆に滅茶苦茶運のいい一党はもっとアホな事しても成功しますから。

 過去に一回だけですがゴブリン相手に「やあやあ我こそは」をやって、その上で成功した新人一党見た事ありますからね。

 逆になんで成功したのか不思議でならないんですが、運としか言いようがありません。

 

 

 

 さて、イイ感じに話で時間を潰している間に洞窟前へ到着しました。スレだけ立ててエタったやる夫スレの数ぐらいには見慣れた入口です。

 ここでやる事は話し合いでも時間潰しでもありません。エモートです。初期状態で所有している、みんな大好き武器を掲げるエモート。

 これを入口の近くで行います。傍目にはいきなり抜刀した狂人ですね。妖刀に魅入られてるのかな?

 ですがコレをやる事で、発言内容の選択肢に「中の広さについて」が加わります。そう、抜刀した事で武器の長さと洞窟の横幅を測った事になるんです。

 

 さっき言ったように彼らは決して馬鹿ではないので、広さについて言ってやれば武器が壁に引っ掛かる可能性や、並んで戦えない事について考えます。

 武道家はともかく剣士君の方は特にですね。というか彼は振り回して死ぬわけですからね。100秒後に死ぬ剣士君ですから。

 一応ここで振り回さず突いた方がいいとか考えるんですけど、運が悪かったり仲間がやられて冷静さを欠くとやっぱり振り回します。是非もないね!

 

 このイベントを起こしておくと、装備によってはプレイヤーキャラが自然と先頭に立てます。

 装甲の厚い装備をしているか、長大付きの武器、あるいは今回みたいに斬あるいは殴属性攻撃しか持ってない場合です。

 振り回すしかないから、お前1人で先頭な、となるわけです。勿論すぐ交代できるように後ろには剣士君と武道家ちゃんがついてきてくれます。

 最後尾が不安になるかもしれませんが、オルガポイント並みに危険なあのトーテム以外で奇襲は発生しないので大丈夫です。

 

 洞窟内ではこのように速度調整して隊列が伸びないようにしつつ、後ろ、というか女神官ちゃんにちょくちょく声をかけてあげましょう。

 声かけてあげると彼女の歩行スピードが一時的に上がります。なんで速度を気にするかと言うと、そろそろゴブリンだけを殺す機械がこの洞窟に向けて発射された頃です。

 なので追いつかれないよう急いでもらいましょう。

 それに先頭から後ろに声をかける事で、剣士君と武道家ちゃんが後ろを気にするようになってくれます。つまり隊列が伸びきってしまうケースを防げるんですね。

 

 はい、みんなのトラウマポイントことトーテム前に到着しました。

 今回運良く判定に成功したので湾刀使い君が気付いて勝手に立ち止まってますね。気付かなくても原作知識でストップ出来るので安心してください。

 立ち止まって静かにしてもらうと、ほぼ確定で女神官ちゃんも「音がする気がする」と言い出します。今回は駄目でしたが、たまに魔術師ちゃんも気付いてくれます。

 女神官ちゃんは非常に色んな可能性に気付くんですけど、剣士君達とは逆に自信が足りないので「気がする」ぐらいしか言ってくれません。

 そもそもこちらから聞かないとそれすら言わない場合もあります。

 ですがこの子は神のお告げでも受けているのか、重要な事に気付いているケースが大半です。なので積極的に話を聞きましょう。

 

 音に気付いたら壁に耳を当てると、大体どの辺に来るかを察知できます。まあ場所は固定なんでやる必要はあんまりないですが。

 壁を掘って来ている、と一党に言えば彼らは半信半疑ながらそれに備えてくれます。素直ないい子達です。

 普通に待ち構えていてもいいんですが、数多いので減らす工夫をします。使うのは油です。

 出てくるであろう箇所の床に油を一瓶ぶちまけておきます。原作履修済みの皆さんなら分かると思いますが、ゴブスレさんがやったのと同じ策ですね。

 本当は燃える水を使うんですが、まあ油でも効果はあります。ちょっと火力が足りませんが。

 

 ゴブリン達もね、汗水たらして穴を掘って来たわけですよ。夢と希望を胸に抱いてね。

 だから暖かく労ってあげるべきだと思うんですよ。

 と言うわけでお疲れさまでした。ゆっくり燃えていってね!

 

 ああ、油だから転んだ最初の一匹しか燃えてない。その一匹も半端に焼けて苦しんでいる。誰がこんな酷い罠を考えたんだ。

 ゴブリンは間抜けではないので、こうして最初の一匹が燃えていてもボーっと眺めてるだけじゃなくてすぐに動きます。

 こうやって炎の範囲外になる脇の方を通って、穴から出て行こうとするんですね。左右に分かれる辺り効率的です。

 なんでそこに剣士君と武道家ちゃんを配置しておくと、さっくり殺ってくれます。一対一になるのでスムーズに仕留めてくれます。

 落ち着いていればまず負けませんからね、彼ら。

 

 で、大体処理し終わる頃に田舎者がやってきます。

 これ実はランダムで来る方向が決定されてます。ゴブリンの数と同じですね。今回は挟み撃ちするつもりだったみたいで、奥から人数連れてやってきましたね。

 女神官ちゃんに《聖光(ホーリーライト)》で眼潰ししてもらってもいいんですが、確実に田舎者を潰す時は初手で油瓶を投げつけてください。

 こっちがコントロールをミスしない限り、確定で田舎者は腕を振って瓶を迎撃します。反射的に振ってるのかもしれません。

 まあどっちにしても油まみれになるので、魔術師ちゃんの《火矢(ファイアボルト)》で焼けます。呪文ダメージで死ななくても、火が消えずに勝手に死にます。

 

 残りは普通に始末します。慣れてない人は武器や技能の練習をここでやるといいんじゃないですかね。

 折角なので湾刀の解説入れながら戦いましょう。コレは結構現実の日本刀に近い使い方をすることになります。

 つまり、刃で敵の攻撃を受けると武器破壊される可能性があります。市販の数打ちだと折れます。

 じゃあ何処で受けるんだよ、というとこのように刃と峰の中間辺り、鎬と呼ばれる箇所で受けて流します。

 この鎬で斜めから受けるようにして【受け流し】を使うと、ボーナスが入り極端に出目が悪いとか実力差があるとかでないなら格上の攻撃も流せます。

 それと御覧の通り、受け流しに成功した瞬間は糸目が開きます。超格好いい。

 受け流した直後の攻撃はモーションが達人のようになります。腕を大きく振るんじゃなくて、すれ違ったら斬ってるみたいなこれです。

 湾刀だけでなく曲刀でも出来ますけど、湾刀の方がそれっぽいので私はこっちの方が好きですね。

 

 始末し終えたら、ゴブリンが身に付けてた布とかで刃に付着した血を拭いましょう。斬突属性武器はコレを怠ると後で酷い目に遭います。

 攻撃力が下がったり壊れやすくなっても私は一向に構わん!って人は別にいいんですけどね。

 そして大事なポイント。ここまでの戦闘が終わったら、休憩を入れてください。ここで水を飲んで呼吸を整えないと、次の戦闘が始まった瞬間剣士君達が一気に消耗します。

 アドレナリン出まくってて気付かなかったけど、実は疲労してて脳内麻薬切れたせいで一気に噴き出してきたって感じなんでしょうね。

 ここで休んでおくと普通にこの戦闘で消耗した分だけで済みます。

 

 奇襲部隊も田舎者部隊も帰ってこないので、ゴブリンの斥候が確認に来ましたね。これをチェスト関ヶ原したら休憩終わりの合図です。

 仕留め次第四の五を言わずすぐに横穴へ入って行きましょう。そろそろ変なのが到着してもおかしくない時間なので。

 変なのの動きについては後で解説を入れますが、ここまでで一党に死者が出ているかどうか、一党が洞窟の何処にいるかで大きく変わってきます。

 実績解除の条件は「ゴブリンスレイヤー抜き」つまりゴブスレさんと遭遇した時点で、子供のゴブリン以外を全滅させている事。そして仲間が誰も死んでいない事です。

 なので少しでも遭遇するタイミングは遅くしたいんですね。その為には横穴に全員で入り、通路に誰も残さないのが一番です。

 安全に倒すために通路へ誘き寄せたくなりますけど、我慢です。

 

 広場に来たら、大体原作に倣って動きます。《聖光》で目晦ましからのシャーマン狙いです。

 女魔術師ちゃんの呪文回数が残っているので今回は彼女に任せますが、もし使い切っていたら自分で《聖撃(ホーリースマイト)》あるいは他の攻撃呪文や奇跡を使用しましょう。

 仕留めきれなかったら?もう一発撃つか、始末したゴブリンの持ってた獲物の中から投擲適用付きの物を選んで持ってきておいて投げましょう。

 今回は湾刀使い君の奇跡使用回数が潤沢なので心配なかったですけどね。

 

 シャーマン仕留めた後は全員で斬り込みます。念のため横穴に後衛2人を残して、入り口に自分か剣士君が陣取って後は普通に戦うだけですぐ終わります。

 もしここに来るまでに毒消しを使いきっていたり、女神官ちゃんの奇跡回数を使いきっていたりしたら素直に通路まで逃げて待ち伏せしましょう。

 今回は剣士君に二人を守ってもらいながら、湾刀使い君と武道家ちゃんが始末して行きます。

 

 この半身に構えて肩を出して、相手の攻撃に合わせて動くの滅茶苦茶格好いいモーションですよね。

 コレ攻撃する時に身体を捻るので、攻撃のためのモーションが回避になってるんですよね。超格好いい。

 今回のDLCはこういうモーションに滅茶苦茶拘ってるらしくて、湾刀に限らず殆どの武器に格好いいモーションが追加されてます。

 鈍器系も東城会四代目がやりそうなヒートアクション系モーションが追加されてるので、力こそパワー!な人達にもおススメです。

 

 よし、全員殺しましたね。念のためにシャーマンの丸焼きも刺しましたがしっかり中まで火が通ってました。

 まだゴブスレさん来てないのでこれで実績解除完了……危ない危ない、今来ましたね。もうちょっと手間取ってたら失敗になるところでした。

 

 さっき言ったゴブスレさんの動きですが、誰か1人でも死んでいて誰も通路にいない場合「既に一党は壊滅」「生き残りは横穴から連れて行かれた」と彼は判断します。

 なので速やかにゴブリンを抹殺すべく横穴へと入ってきます。自分達が通路にいない場合、恐らくコレが最短遭遇コースですね。

 今回のように誰も通路にいないとどうなるかと言うと、彼はゴブリンの死体の数を確認した後「戦闘の音もゴブリンの声もしない」「恐らく新人は勝利したか、相討ちか」と判断します。

 その場合横穴から広場に行くのではなく、田舎者達が来た通路にゴブリンの生き残りが潜んでいないかどうかを確認してこちらの方向からやってきます。

 つまり真っ直ぐ横穴を通って来るよりも大回りになるため、遭遇するまでの時間が延びます。だからすぐに横穴に入る必要が、あったんですね。

 

 なおそちらの通路にはちょっと面倒で凶悪な罠があったりするのですが、ゴブスレさんは確定で看破して解除して来ます。そのくせ移動スピードはあまり落ちません。

 なので本当に距離分しか時間の猶予は増えません。もうちょっとゆっくりして来ていいんですよ?

 

 ゴブスレさんはこちらの人数を確認すると、「お前達がやったのか?」「そうか」とだけ言ってきます。

 素っ気ないにもほどがありますが、コレは例によって彼特有の圧縮言語です。この時点だと牛飼娘さんと受付嬢さんぐらいしか解読できません。

 コレを訳せるようになったらゴブスレ検定3級ぐらいですね。

 

 意訳すると「お前達だけでゴブリンの巣を壊滅させたのか?規模も種類もそれなりの群れなのによくやったな」「そうか。新人なのにお前達は凄いな」となります。

 もっと言葉数増やしてちゃんと褒めて、どうぞ。そんなんだから牛飼娘さんの誕生日に現金とか言う最悪の贈り物チョイスするんですよ。

 余談ですが独力で成功させるだけでゴブスレさんからの好感度は爆上がりします。具体的に言うと、この後一切ゴブスレさんと絡まなくても人喰鬼(オーガ)討伐の時に同行出来るぐらい上がります。

 これは見所のある新人として高く評価してもらえていると言う事ですね。

 

 子ゴブリンに関しては自由にしていいです。助けようとさえしなければ。

 今回は時間短縮のために、ゴブスレさんと一緒にころころしておきます。本当は小剣とかあるとこういう時楽なんですけど、お金がないので持ってません。

 ドブさらいで手に入るのを期待するのも手ですが、ゴブリンが持ってた武器を漁って使えそうなのを奪って行くのもおススメです。

 何を持っているかはランダムですが、運が良ければ通常の短剣や小剣、棍棒辺りが手に入ります。

 序盤にゴブリン退治をやる最大のメリットはそこだと私は思っています。報酬は安く手に入れた武器を売ってもまだ割に合いませんが、予備武器探しにはもってこいです。

 あとゴブリンは体格的な問題で大型武器をほとんど持たないので、必然的に投擲適用効果持ちの武器が非常に多いです。

 なので投擲キャラでやって行く場合、ゴブリン退治で弾を手に入れるという事も出来ます。かさばるので大量には持ち運べませんが。

 

 なお、ゴブスレさんが来る前に子ゴブリンを発見すると剣士君達は「見逃そう」みたいな事を言い出しますが気を付けてください。

 こいつらは所詮ゴブリンなので、人間が迷ったり背中向けたりした瞬間その辺の石や場合によっては隠し持っていた武器で襲い掛かってきます。

 ただ見逃すふりをして攻撃を誘い、カウンターを叩き込んで「自分を知れ……そんなオイシイ話が……あると思うのか?お前のような生物に」とジョルノムーブをかますのも一興です。

 ゴブスレさんも言っていますが、もし善良なゴブリンがいるとすれば人前に出てこないゴブリンだけです。

 

 子ゴブリンがいる部屋の隅には箱が置いてあり、ここには銀貨が入ってます。

 何枚入ってるかはランダムですが、最大で25枚程度、最低で4,5枚なので無視しても構いません。今回は無視します。

 

 さてこれでゴブリン退治は終わったわけですが、実績解除の通知が来ないので皆さん不思議に思われていると思います。

 理由は簡単。冒険に関わる、冒険中に達成した実績が実際に解除されるのはギルドに報告した時だけだからです。

 ギルドを介さず依頼を受けた場合は、依頼人に達成報告あるいは報告出来ないと判明した時ですね。依頼人が既に死んでるとか。

 

 はい、ギルドに報告したので実績解除されました。これで目的達成ですね。

 結局《逆転(リバース)》も使わず滅茶苦茶楽々で終わりましたが、出目が悪い時は最悪死ぬのがこのゲームなのはお忘れなく。

 見所がなかったって?それは普段実況している方の奴に作らせます。

 

 いや私もね、騙して悪いなーとか思ったりしますしたまに感動してウルってきたりするんですよ。でもやっぱり見所作ってあげないと動画としてマズイかなって。

 

 と言うわけで今回は剣士君一党救済コースでした。彼らはここさえ乗り越えれば順調に成長してくれます。

 どう成長するかと言うと、パワプロで慣れた人がやるサクセスみたいな勢いで成長していきます。なお女神官ちゃんはサクセスのRTAみたいな速度です。

 彼らと一緒に冒険者やって行くと結構王道な旅が出来ますよ。

 

 あと補足ですが、このやり方だと女神官ちゃんはゴブスレさんについて行く理由が無いように思えますよね?

 ですがご安心を。その場合ちゃんと託宣(ハンドアウト)が降りて来ます。まあ彼女いないと人喰鬼戦で全滅しちゃうしね?

 

 それでは今回はここまで。ご視聴ありがとうございましたー。

 




活動報告の方に今後について書いてあります。


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湾刀使い・裏

日曜に更新できなくなるから休日出勤は悪い文明。


「冒険者になりたっとじゃが、ここでよかろか?」

 

 訛りが強い。目の前の彼に対して受付嬢が最初に抱いた感想は、それだった。

 なろうとさえ思えば、なろうとさえするならば冒険者には誰でもなれる。ゆえにあらゆる種族があらゆる地域からやってくる。

 そして地域によって言葉には訛りや癖が存在し、強弱高低は様々なものとなる。

 冒険者の応対を職務とするギルド職員は当然それらの違いにも対応せねばならず、受付嬢もまた研修で厳しく様々な言葉の訛りについて教え込まれたものだ。

 

(ですが、これは中々……)

 

 この辺境の街に赴任して一番かもしれない。そう思うほど、目の前の彼は訛りが強い。

 真新しい革鎧に身を包んでいる所からすると、田舎から出て来て装備を整えてきたばかりという所か。

 だが腰に下げた湾刀(イースタンサーベル)は新品という感じではないし、何よりもしっくりきている。これは雰囲気とか格好と合っているということもあるが、それだけではない。

 通常、剣を腰に下げている新人冒険者というのは大半がその重みに引っ張られる。左腰に帯びるのが基本なため、たいてい妙に左側へと重心が傾いているものなのだ。

 というのに彼はその傾きが無い。これは湾刀を携帯するのに慣れており、昨日今日扱いだした素人ではないという事だ。少なくとも、湾刀の扱いに関しては。

 服装はかなり珍しく、数えるほどしか見かけた事のないタイプのものだ。確か遥か東方、湾刀が生み出されたのと同じ地域のものだったか。

 そちらの方から流れて来たのだろうか?だがそれにしては若く、肌や髪の色も一般的な只人と変わりない。

 また、首から細鎖で結ばれた金の車輪―――――交易神の聖印を首から下げている。神官か、あるいは熱心な信徒なのだろう。

 他に珍しい点と言えば、妙に目が細い。開いているのか開いていないのか分からないぐらいの糸目だ。

 まあこちらをハッキリと見ているのだから、盲目でもなければ閉じているのでもないはずだ。

 

「ああ、(おい)の言葉ば分からんか?すまんの、田舎者でんこげな喋り方しか出来ん」

「いえ、大丈夫です。ご心配をおかけして申し訳ありません」

 

 不安そうにした彼に対し、頭を下げ謝罪する。訛りがキツく分かりづらいのは確かだが、充分対応出来る範囲だ。

 であるならば、自分は職員として業務をこなさねばならない。新人を不安がらせている場合ではないのだ。

 

「文字の読み書きは出来ますか?」

「問題なか」

「それでは、こちらの冒険記録用紙(アドベンチャーシート)に記入をお願いします。あ、技量点と冒険記録の所はこちらで書きますので、空けておいてください」

「おうともさ」

 

 一つ頷くと、彼は流暢に必要事項を埋めていく。ある程度しっかりと読み書きを習っているのだろう。

 些か字にも癖があるが、充分読める。恐らく単純に彼本人の癖なのだろう。

 

(武器に慣れていて、読み書きも不自由ない。身体つきもしっかりしていて、農夫や鉱夫とも違う感じ……騎士の出でしょうか?)

 

 田舎の騎士の―――――恐らくは継ぐべき領地の無い次男か三男、場合によっては四男五男が己の才覚で成り上がらんと、あるいは単純に食うにはこれだと冒険者になる。

 珍しい事ではない。むしろ戦いに関しての知識と武具を扱う経験を持ち、時には良質の装備自体を持ち出せる彼らのような人種は向いているとさえ言える。

 知識、経験、装備、資金……それらは冒険者にとって生死を分ける重要な要素なのだ。新人であればなおさらに。

 そうして彼がさらさらと記入しているのを見ていると、予想外の箇所へ筆が走った。

 

「《逆転(リバース)》に……《聖撃(ホーリースマイト)》、と」

 

 驚いた。交易神の信徒である事は分かっていたが、奇跡まで使えるとは。

 別に信仰心が深ければ奇跡を使えるというわけではない。また、逆に信仰が浅いからと言って奇跡が使えない訳でもない。

 その辺りがどうなっているかはまさに「神のみぞ知る」だ。

 しかし、この年齢で奇跡を二つも授かり日に三度も奇跡を行使できるというのは神官職―――――冒険者における神官職においては、優秀だと言って差し支えない。

 無論、それが聖職者として優秀であることと同じではない。冒険者の間で求められる神官職としての役割と、聖職者としての役割は全くの別物だ。

 

「こいでよかか?」

「はい、書類に不備はありません。今後のご予定は何かありますか?」

「いんや、無か。とりあえずあの板眺めて、先ん事ば考えようと思っちょる」

「分かりました。では、これで登録は終わりです。今後のご活躍をお祈りしています」

「ありがとうごわぁた」

 

 こちらの言葉に合わせ、軽く一礼をしてくる。最低限の礼節は弁えており、訛りが強いからと言って粗野な田舎者という印象を与えてくる人物ではない。

 依頼書の貼られているコルク板の前に移動する彼の背を見送りながら、受付嬢はこの新人が無事に初めての依頼を終えて戻って来る事をそっと祈る。

 自分が担当した冒険者が行ったきり帰ってこない。よくある事ではある。だが、慣れるものではない。新人ともなればなおさらだ。

 だから、彼女は新人冒険者の登録を済ませると毎回こっそりと祈りを捧げる。成功させて戻って来るに越した事はないが、情けなく逃げ帰って来てもいい。

 無事でいればそれでいいと。

 

 初めての依頼が最後の依頼になる。それはよくある話だが、そうならないに越した事はないのだから。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「ぬしゃも新人か?」

「えっ、あ、はい」

 

 一瞬何を言われたのか分からず混乱しかけたが、文脈からおおよその意味を推測し女神官は言葉を返す。

 珍しい武器――――――多分剣の一種だと思うが――――――を腰から下げ、風変わりな服装をしている彼もまた自分と同じく真っ白な認識票を首から下げている。

 加えて交易神の聖印を身に付けており、信じる神こそ違うが自分と同じく神に仕える存在なのだと分かった。

 

「そん錫杖を見るに、ぬしゃ地母神様に仕えとる神官じゃな」

「はい!」

 

 思わず大きな声を上げてしまい、恥ずかしくなった女神官は慌てて自分の口を押さえる。自分と共通点のある人がいるというだけで少し舞い上がってしまった。

 

「気持ちばわかっど。俺も他ん神様とはいえ神職がおるんは安心すっど」

 

 ニッ、と笑いながら彼に言われ、ますます恥ずかしくなってしまう。

 だが同じ白磁の新人で、神は違えど同じく神を信じる―――――彼は神官ではなく、単に信者だそうだが。兎にも角にもその共通点は大いに気持ちを楽にしてくれた。

 見知らぬ相手には変わりないが、何か一つでも通じる点があるというだけで何となく親しみが湧いてくるから不思議なものだ。

 その後は幾分気安く雑談を―――――時々分からない訛り言葉も出てきたけれど―――――交わし、互いに今日登録したばかりの新人であると知った。

 ならばこれも何かの縁、一緒に新人向けの依頼でも受けようかという話になった時――――――

 

「なあ、君達新人だろ?俺達の一党に加わってくれないか?」

 

 不意に声をかけられた。二人揃って声のした方を見れば、鉢巻きを巻いて腰に剣を吊るした若者が近くに立っている。

 ゴブリン退治に行くのに、聖職者が欲しい。それゆえ神官服に身を包んだ女神官と、首から交易神の聖印をぶら下げている彼に声をかけた。若者はそう言った。

 思わず二人して顔を見合わせる。新人向けの依頼を受けようか、という話にはなっていたが、ゴブリン退治ではなく下水道に行こうと言っていた所なのだ。

 というのも、受付嬢がゴブリン退治について触れた時に何とも言えない雰囲気を発していた。それを女神官はハッキリ覚えていたからだ。

 彼は特に話を聞いてはいなかったらしいが、そういう事ならば避けるのが賢明だろうという流れになっていたのだが……。

 

「俺は構わんが、ぬしゃどうする?ぬしゃが受けんのなら俺も受けんが」

 

 若者の話を聞くうちにその気になったのか、彼がこちらを見て訊ねてくる。

 受付嬢の態度は気になるが、初依頼がゴブリン退治というのはよくある話だ。自分と彼が加われば、一党の人数は五人。充分な人数がいるように思える。

 女性も自分の他に二人いて、不安に思う所もない。今知り合ったばかりだが、彼も一緒で心細さもだいぶ薄れる。

 それになにより、若者の「村人のため」という言葉が心に響いた。他者のために危険に飛び込む事を厭わない。そう決心して自分は冒険者になったのだ。

 であるならば、受けるべきだ。そう考えた女神官は、頷いて了承の意を示した。

 その後受付嬢から忠告を受けつつも、「大丈夫」と快活に笑う若者に従って小鬼退治に赴こうとしたところで不意に彼が口を開いた。

 

「一つ確認ばすっど。この一党の頭目はぬしゃじゃな?」

「?そうだけど、それがどうかしたか?」

「いんや、そいでよか。頭目がはっきりしとればそいでよか」

 

 確かに頭目が誰であるかは聞かなかったし、向こうも言わなかった。だがはっきりさせておく必要はあるのだろうか?その理由はこの時はまだ女神官には分からなかった。

 とにかく、彼――――――湾刀使いとの出会いというのは、そういうものだった。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「壁ば掘って来ちょるな。穴攻めじゃ」

 

 洞窟の壁に耳を当てたままの姿勢で、湾刀使いがそう言ってくる。

 それを聞いても剣士にはまだ実感が湧かなかった。ゴブリンが本当にそんな事をするのだろうか?

 ゴブリンは最弱の魔物で、初めての冒険で蹴散らされる手合い。それが剣士の、いや剣士一党(パーティー)の認識だ。

 そんな存在が洞窟の壁を掘り抜いて来る?信じられない。そんな知恵や力があるのだろうか。

 只人の子供ぐらいの背丈で、力もそれぐらい。そんな生き物が土の壁を掘り進むなんてどれだけ時間をかけても―――――

 

(……いや、道具を使えばいいんだ)

 

 当たり前の事にようやく気付く。何故自分は相手が「手で掘っている」などと思ったのだろう?

 人から奪った物で武装している事がある、というのは聞いた事がある。なら奪った物の中に穴掘りに適している物が無いとどうして言えるだろう?

 なるほど、掘ること自体は可能だ。それは確かだ。

 だがそれでも剣士のゴブリンに対する認識では、それを行うとは思えない。杞憂ではないのだろうか?

 自分も壁に耳を当てて確認しようか。そう思った時、湾刀使いがさらに口を開いた。

 

「ぬしゃの好きにせい」

「え?」

「この一党ん頭目はぬしゃじゃ。備えるも備えんも好きにしてよか。どうするかはぬしゃが決める事じゃ。じゃっどん(しかし)―――――」

 

 湾刀使いはそこで一度言葉を切り、こちらを真っ直ぐ見据えた。

 

「ぬしゃの決断に、仲間の命ば懸かっちょるぞ」

 

 細い目をうっすらと見開き、思っていたより鋭い眼つきでこちらを見ながら湾刀使いはそう言った。

 それを聞いて剣士はハッと気付く。そうだ、自分はこの一党の頭目なのだ。一党がどう動くか決める。一党を引っ張る。それが頭目だ。

 つまり、自分が間違えれば仲間に危険が及ぶのだ。

 分かっていたつもりだった。だが、相手がゴブリンだから危険はないだろうと思い頭から抜け落ちていた。

 自分が「大丈夫だろう」と思って大丈夫でなかった時は、自分のせいで一党全体を危険に晒すのだ。

 不意に背中の辺りがズシリと重くなる。今さらながら、頭目がどういう物を背負わねばならないのかに気付いた。

 逃げ出したい。投げ出してしまいたい。そんな考えが頭をよぎる。

 いっそこちらを見ている湾刀使いに任せてしまいたい。彼は同じ新人とは思えないほど落ち着き、周りをよく見ている。任せてしまっていいのでは?

 

(いや、駄目だ駄目だ!いきなり逃げ出してどうする!)

 

 弱い考えに流されそうになった自分を叱責する。最初の冒険から逃げてどうする。責任から逃げてどうする。

 無理難題を相手にしているのか?いや違う。難しいし重大な事ではあるが、無理ではない。そこから逃げたら、二度と自分は何かに立ち向かえなくなる気がする。

 今やるべきは逃げる事ではない。腹を括って腰を据えて、しっかり向き合う事だ。

 考えよう。まず湾刀使いの言う事は信用出来る。洞窟の入り口でいきなり湾刀を抜いた時は驚いたが、それを使って天井の高さや横幅を測って剣を振り回せるかどうか確かめていた。

 しっかり状況を観察する冷静さと周到さは自分にはないものだ。適当な事を言う人間ではない。

 女神官も「音がしている気がする」と自信なさげではあったが言っていた。おどおどしているが、彼女はいい加減な事を言う人間ではないだろう。

 まだ出会ってほんの数時間だが、適当な人間ではない事ぐらいは分かったつもりだ。

 ならばあと確認すべきは――――――

 

「二人はどう思う?」

 

 女武道家と女魔術師の意見だ。一党である以上、全員の意見を聞くべきだ。

 正しいかどうかは分からない。だがそうすべきだと、自分は思ったのだ。ならやっておかない理由はない。

 

「ゴブリンがそんなことするかしら……まあ、備えるんなら備えるでいいわよ」

「あたしは備えた方がいいと思う、かな。ひょっとしたらって事もあるし」

「うん……じゃあ、念のために備えよう。少し待って何もなかったら先に進む。それでいいか?」

「おう、俺はそれでよかよ」

「わ、私もそれでいいと思います」

 

 二人が異論を挟まなかったため、剣士はまだ疑念を持ちながらも備える事を一党の方針とする。あくまで念の為だが、備えておかないと当たった時は大変な事になる。

 迎撃に関しても湾刀使いの提案を採用し、音のする辺りに油を撒いて待ち構える事になった。まさかこうなると思っていた訳ではないだろうが、随分用意がいい。

 

「もっと広く撒いた方がいいんじゃないのか?これじゃちょっとしか燃えやせないだろ」

「この狭い穴倉で大きな火ば燃やしたら、我らも巻き込まれっぞ」

 

 そう返され、剣士はハッと気付く。そうだ、ここは少し開けているが二人並んだら武器を振り回すのも危ない狭さなのだ。

 燃えるものは周囲にはないが、下手に燃え広がったらこっちも危ない。当たり前の事に気付かなかった自分の迂闊さに、羞恥で顔が赤くなる。

 そんな剣士を見て、湾刀使いはニカッとした笑みを浮かべる。その笑顔は馬鹿にしているとかではなく、好意を感じた。

 

「ぬしゃ、良か頭目になっぞ」

「え?」

「仲間ん話ば聞いて、己が頭で考え、決を下す。良か。良か頭目じゃ」

 

 剣士は一瞬ポカンとなる。褒められているのか?自分は何も気付かなかったというのに?

 

「いや、俺は……」

「知恵ば足りんなら人ん借りればよか。経験ば足りんはこれから積めばよか。じゃっどん、己で決めれんは話にならん。ぬしゃ、そいが出来とる。大将ん器じゃ」

 

 言葉に裏は感じられない。純粋に褒めてくれているのだろう。だが、嬉しさより戸惑いの方が大きい。

 そんな風に言われても、自分ではまるで実感が湧かない。単に不安だから全員の話を聞いただけだというのに。

 その事を言おうと口を開いて、剣士はすぐに閉じた。ベーコンを炙り焼き(フライ)するような音が微かに聞こえ、段々と大きくなっていく。

 聞き覚えがある音だ。子供の頃、幼馴染である女武道家と外で遊んでいた時。土遊びをして、地面をほじくり返していた時に聞いた音。

 

「当たりじゃな」

 

 己の推察が当たった事を誇る様子もなく、ただ単に事実を確認するという口調で湾刀使いが呟く。その言葉に一党は頷くと、飛び出してくるであろうゴブリンに備える。

 だからだろう。誰も湾刀使いの表情までは見なかった。

 彼が、まるで獲物を目の前にした獣のように獰猛な笑みを浮かべたのを見なかった。

 そして、彼がこう呟いたのを聞く者もいなかった。

 

「さあて、初陣じゃ。手柄首ばいただきもっそ」

 

 

 

―――――――

 

 

 

 

 小鬼が振り下ろしてきた棍棒を鎬で受け、止める事なく事なくそのまま流す。

 流した反動で刀身が跳ねる。その勢いを殺す事なく、そのまま振り下ろす。本来は小手を斬るのだが、小鬼との体格差から刀は腕ではなく首筋に叩き込まれた。

 斬った、という感触が伝わって来る。そのまま斬った小鬼には目もくれず次へと向かう。敵は多い。脚を止め思考を止め腕を止めれば死ぬ。

 

(こやつら、間抜けではなか)

 

 次を切り伏せながら湾刀使いはゴブリンという生き物をそう看做す。

 先程の奇襲もそうだが、戦力を二手に分けて挟みうちにしようとしたことといい、小鬼は何も考えていない訳ではない。

 今もそうだ。胴を空ければ胴に、腕を空ければ腕に、背中が開けば背中に向かって襲い掛かって来る。

 隙を見逃すほど間抜けではない。つまり、隙を見せればやられるのはこちらだ。

 

(じゃっどん、馬鹿じゃ。大馬鹿じゃ)

 

 逆に言えば、胴を打って欲しければ胴を空ければいい。腕を打って欲しいなら腕を空ければいい。意図的に背中を見せてやれば、こいつらはそちらから来る。

 何故敵が胴を空けるのか。隙が生まれたのか、敵が意図的に生んだのか。そんな事をこいつらは考えもしないのだ。

 小鬼の頭の中など考えた事もないが、恐らくは「自分は優れているから隙を見抜いた」とでも考えているのだろう。

 であるならば、先程のように習い覚えた―――――身体に叩き込んだ技を使う余地がある。己の拙い技ですら、充分に効果を発揮する。

 そして技を使えるならば、乱戦であっても刃筋を誤る事はない。すなわち、一振りの刀で五人十人を切り捨てる事が可能だと言う事だ。

 名人達人でなくば、乱戦においては一振りの剣で五人も斬れぬ。全くもってその通りだ。一々刃筋を確認し、正しい技など使っておれぬ。

 だがこちらはその名人達人になるべく、己が人生を刀に捧げている手合いなのだ。乱戦故に技が使えぬなど、未熟の一言で済ませるべし。

 

「はっはっは!鍛練ば無駄ではなかと知るは、愉快痛快じゃのう!」

 

 自分のやって来た事は、積み重ねてきた事は無駄でなかった。恐らく人生においてそれを知るのは最も幸せな事ではあるまいか。

 そういう意味では、今こそが湾刀使いの人生において最も幸せな瞬間なのかもしれない。

 手の皮が捲れるほど剣を振ったのは、雨の日も風の日も鍛練を怠らなかったのは無駄ではなかったのだ。そう知れた。

 半身になり、やや身体を鎮め左肩を突き出す。小鬼が手斧を振りかぶり、そこへ振り下ろす。

 腰を捻って肩を引く。斧は先程まで肩があった場所を通過して行く。捻りによって刀を振るう動きが生じ、回避が終わる頃にはこちらの攻撃が始まっている。

 斧の重みと振った勢いによって、前傾姿勢となっていた小鬼の首を刎ね飛ばす。

 

親父殿(おやっど)。お師匠。(おい)に刀法ば教えてくいて、ありがとうごわぁた。俺に剣術ば仕込んでくいて、ありがとうごわぁた)

 

 次の小鬼に向かいながら、湾刀使いは胸中で心からの感謝を呟く。教えてもらったからこそ今がある。鍛えてもらったからこそ今がある。

 

(俺が生きる道は、こいにごわす)

 

 剣に生きる。剣で生きていく。剣によって英雄となる。そして、いずれは剣に斃れる。

 己の生きる道を、己の歩むべき道を湾刀使いはこの日ハッキリと見出した。

 

 

 

―――――――

 

 

 

(おい)はこん一党(パーティー)ば抜けて、1人で行きもす」

 

 依頼を無事に終え、ギルドに戻る途中の道で。今後もこの一党でやって行こうと誘った剣士に対し、湾刀使いはハッキリとそう言った。

 理由を聞こうと剣士が口を開くより先に、湾刀使いが言葉を続ける。

 

「あん洞窟で見たじゃろ。俺は多少知恵ば出せるが、本質は己ん事しか頭になか。一党には向かん」

 

 その言葉に剣士は納得するしかない。横穴の先、ゴブリン達が攫った女性達を犯し弄んでいた広場に行った時、シャーマンを仕留めたと見るや否や彼は真っ先に飛び出した。

 敵の中に飛び込んで湾刀(イースタンサーベル)を振るう彼の姿は楽しそうで、生気に満ちていて。ゴブリンが許せないだとかではなく、ただただ剣を振るう事を楽しんでいた。

 その姿はまるで、心から遊びを楽しんでいる子供のようですらあった。

 

「じゃっどん、お主は違う。周りを見て、人を見とった。良か判断じゃった!」

「いや、そんな……」

 

 剣士を真っ直ぐに見据えながら、湾刀使いが称賛してくる。彼の言葉には気持ちが乗っており、それを正面からぶつけられるのは照れる。

 剣士がやったのは、湾刀使いが孤立しないように―――――残りのゴブリンは少なく、その心配はほぼなかったのだが―――――女武道家を援護に向かわせた事。

 そして自分は横穴の入り口を塞いで後衛2人が襲われないよう警戒した事と、攫われた女性の安否を確認したぐらいだ。

 剣士自身としては、何かしたという感覚がない。軽やかな身のこなしと鮮やかな太刀筋で、小鬼の大半を仕留めた湾刀使いこそが最も働いた人間だろう。

 

「他人を気遣えるがは立派なもんじゃ。後ろん仲間守るがは良か判断じゃ。そいすら出来んのが俺じゃぞ」

 

 確かに、そうかもしれない。彼はある程度なら自制が効くが、本質は敵中に突っ込んでひたすらに斬り結ぶ事を望んでいるのだろう。

 仲間の事すら頭から抜け落ちるほどに。

 そんな彼と一党を組むとしたら、自分達もそれについて行くか、彼を支援するか、彼を上手く操縦するかのどれかだ。

 残念だが、今の自分には―――――自分達にはそれは出来ない。彼が抜けるのは、彼なりに剣士達の事を考えてくれたのだろう。

 

「……わかった。残念だけど、ここで別れよう」

「おう。じゃっどん、これも縁じゃ。何かあれば呼んでくいや。力ば貸しもっそ」

「そっちも困った事があれば言ってくれ。力になるよ。仲間―――――友達だからな」

 

 剣士の言葉に、湾刀使いがニカッと笑う。彼はゴブリンを斬る時もこの笑顔を浮かべていた。

 友達の言葉を嬉しく思うのも、敵を屠る高揚感も。彼にとっては同じ楽しさなのだろう。

 

「俺ん神は出会いと別れも司るんじゃが」

 

 笑みを浮かべたまま、弾んだ声で湾刀使いが言う。

 

「こん良き出会いばくれた事に、感謝せねばならんの。初めて組んだ一党がこん仲間達で、頭目がぬしゃでよかったど」

「俺も、お前が最初の仲間にいてくれてよかったよ」

 

 そうでなければ多分死んでいた。生きていたとしても、こんなに多くを学べなかった。

 こんなに自分を評価してくれる友達がいるのだから、それに見合うだけの頭目(リーダー)になりたいだなんて思う事はなかった。

 交易神様に心から感謝を。そう剣士が心の中で呟くと、突然強い風が吹いた。

 

 交易神は姿なき風のような神。そう剣士が知ったのは、ずっと後の事だった。

 

 




Q.こやつ、薩摩武士じゃなかか?
A.四方世界に薩摩はありもはん。武士もありもはん。故に「薩摩(っぽい)騎士」にごわす。

Q.方言がおかしくなかか?
A.四方世界故に薩隅方言はありもはん。故にそれっぽい訛りというだけにごわす。

Q.チェストせんはおかしくなかか?
A.狭くなければチェストしもす。

Q.一つの流派でなく、色んな流派が混ざった剣術を習った事にするんは女々か?
A.名案ごつ


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盤の外の話

※注意 ここに書かれるのはメタ含む、本来最後まで書いてからやれと言われる類の雑多な裏話です。興味が無い方はブラウザバックをお勧めします。


【ゴブリンロード戦発生タイミングの理由】

 

《幻想》「新規歓迎ってことでたくさん冒険用意したよ!」

《真実》「あちこちに配置して些細な事から冒険に発展するようにしようぜ!」

 

《幻想》「結果、他の冒険者が大局を動かすような冒険をしまして」

《真実》「原作ルートのはずがかなり早く魔神王が討伐されまして」

《幻想》「残党が散らばるのが早まり、小鬼王のところに他の群れが合流したりしまして」

《真実》「予定よりだいぶ早く小鬼王戦になりました」

ジキヨシャ「どうして極端にばかり走るんですか?(電話猫)」

 

 魔法剣士君というか、槍ニキと魔女さんが捕獲したゴブリンみたいな貴族とそれを殺しに来た騎士。あれもこの影響で用意された冒険の一つです。

 

 

 

【判定あれこれ】

 

 宴会中の判定。

【目標値:4】2d6(6,5)→11 魔法剣士君、成功のため酒を飲まない。イベント回避成功。

 失敗していた場合の予定は女魔術師(ムッツリ)に判定をやらせ、【目標値:10】以上なら「彼女にとっての」ラッキーイベント発生でした。

 内容は「酔っぱらってふらふらになった魔法剣士君により密着し、鎧を着てない彼の筋肉堪能」です。

 なお彼女、もしくは魔法剣士君が個室に泊まっていた場合【目標値:11】の判定を女魔術師にやらせ、成功した場合ラッキーイベントが発生しました。

 内容はR-18ではありません。単に色々あって同じベッドで寝るだけです。

 

 新米戦士と見習聖女の勧誘判定

【目標値:5】

【判定に用いる数字:2d6+交渉:○○-(魔法剣士の等級-新米戦士の等級)】

 技能が無いために交渉の数値は0とする。

 2d6(4,2)-2=4 勧誘失敗 こういう時の為に皆さんは一般技能を用意しましょう。

 またこの数字を見れば分かるように、魔法剣士君が鋼鉄に昇級する前に声をかければ1足りてました。

 

 

 

【残念な斥候について】

 活動報告の方で募集した際の選択肢で、一番投票数が少なかった彼ですが。能力や出自を全てダイスで決めた結果こうなっていました。

 種族は只人。ボーナス込みで

 体力点2 魂魄点1 技量点2 知力点2

 集中度1 持久度3 反射度1

 

 これで合計が15以下となるため、集中度の出目を3に変更して、技量にボーナス1点を振り

 体力点2 魂魄点1 技量点3 知力点2

 集中度3 持久度3 反射度1

 です。だいたい気付いたと思われますが、1d3を合計7回振って3を1度も出せませんでした。2が1度出ただけで、後は全て1を出しました。思わずスクリプトのバグを疑いました。

 また、その後に生命力・移動力・魔法及び奇跡の使用回数を決める2d6を振った時も

 7(2,5)、6(3,3)、6(5,1)と非常に悲しい出目となりました。

 生命力に7振って残り二つに6だったので、呪文は一度も使えないし移動力も素で20に届かない。

 サイコロ振るとこういう事があるから困る。

 

 ゴブスレTRPGを持っていない方の為に説明しますと、只人を固定値でキャラメイクした場合

 体力点3 魂魄点2 技量点2 知力点3

 集中度2 持久度4 反射度2

 となります。生命力等に関しては固定値の場合「5」「7」「9」の三つを1つずつ割り振る形になります。

 

 お分かりいただけるかと思いますが、彼は技量と集中以外は全て平均以下という悲しい運命を背負いました。

 出自は職人、経歴は貧困、邂逅は宿敵とこれまたなんか悲しい雰囲気を持って誕生した彼。せっかく作ったんだしと先日、創造神がウェブ公開してくださったシナリオ「ある冒険者たちの挑戦」にリアルの卓で挑ませたところ、田舎者が大成功を出しやがったせいで大金棒で頭を潰されお亡くなりになりました。

 どうしてこんなことに、と友人は言っていましたが大成功出したGMお前だからな?

 あと完全に余談も余談なんですが、キャラ作った直後本来ゴブスレTRPGにはない容姿のポイントを何となくで振ってみたんですよ。クトゥルフ形式で。

 結果3d6で14(6,6,2)という出目が出て笑いました。何故こんな綺麗な揺り戻しが起きたのか。

 

 あとみんなも自分の中に「こうすればいいのに」「こういうのが見たいのに」って妄想があるなら、ルルブ買って書こうぜ。俺でもここまで書けて、色んな方に読んでもらって過分な評価をいただけたんだからさ。

 

 

 

【女魔術師ちゃんがギルド職員or故郷に帰っていた場合】

 一応これもプロット未満の「こんな感じで進むかな」みたいな想定はありました。サイコロ振って女武道家ちゃんと魔法剣士君が組むかどうか決めて、組むなら下水メインになるので確定で新米戦士&見習聖女と組ませようとか。

 単独の場合は原作ルート入る予定でした。というか1番最初に書き始めた時はこのルートで書いて行くつもりでした。

 結果的にはこうなって良かったと思ってます。

 

 あとこうなってた場合、原作でいう6巻辺りがちょっと面倒になるなと思ってゴブリンロード戦まで書きあげたら時間すっ飛ばしてそこ書くつもりでした。

 ゴブリンに殺されかけた姉が失意のうちに家に帰って来たらたぶん少年魔術師は原作に近い感じになるでしょうし、本人から組んでた仲間の事聞いたりしたらすげえ面倒というか厄介な感じになりそうだなって。

 ギルド職員コースでも口さがない人間が姉の事で何か言って、色々揉めて結局は似たようなコースを辿るんじゃないかなって。まあ原作より人当たりはマイルドでしょうけど。

 帰郷ルートなら女神官ちゃんにもガンガン絡むでしょうからゴブスレさんがだいぶ関わる感じに、ギルド職員コースなら魔法剣士君が自分なりに何とかしてやろうとする話になる予定でした。

 

 現在のルートは現在のルートでなんか揉めそうではあると思います。信じて送り出した優秀で自慢の姉がムッツリになってるなんて。

 



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魔法剣士√
魔法剣士・1


 何番煎じか分かりませんが、先駆者の方々に刺激されたので初投稿です。

 ※注意事項
 (RTAでは)ないです。
 (文才は)ないです。
 (たまにリアルでサイコロ振るので絶対に死なないとは言い切れ)ないです。



 はい、それではゴブリンスレイヤー初見プレイやって行きます。

 

 自分は原作未読なのですが、今回「まど○ギ見て!主人公が初めて変身するところまででいいから!」「仮面ライ○ーW見て!主人公が1人で変身するところまででいいから!」と過去にぬかしてきた友人が、「ゴブリンスレイヤーやって!ゴブリンと大規模な野戦するところまででいいから!」と言ってきたのでそこまでやります。

 なおその友人が後ろでやいやい言ってきますが気にしないでください。

 

 どうせ原作で言えば完結する寸前なんやろ。騙されんぞ。

 

 ではニューゲームを選択して、始めていきましょう。

難易度選択ですが、まあ自分アクションゲームにはちょっと自信あるんで、ここは男らしく……ノーマルで。

 

 キャラの性別選択ですが、友人が「女だと色々イベント多くなるよ!」って言ってたのでここは当然男にします。

 

 どうせ見ない方がいいイベントなんやろ。騙されんぞ。

 

 次はステータス設定ですね。えーと、よく分からないし只人でいいかな。なんだかんだで基本的なやつが一番安定するでしょう。見た目はランダムで行きます。

 ……取り立てて特徴はないですね。見た目が悪いわけではないですがイケメンとかでもなく、あえて言うなら女性のバストが豊満か平坦かだけ異常に気にしそうです。

 

 続いて経歴設定ですね。ランダムでいいかな、よく分からないし。さて君はどんな人生だったんだい。

 出自は学者、来歴は孤児、邂逅は婚約者。なんだてめえリア充か。

 恐らくは学者の家の生まれで、婚約者もいたけどなんやかんやで孤児になったって感じでしょうね。

 

 基本ステータスは固定値で行きます。固定値は正義。固定値は裏切らない。みんなも固定値教に入らないかい?

 

 職業は……だいぶ迷いましたけど、【戦士(ファイター)】2【魔術師(ソーサラー)】1と振り分けます。出自で【魔術師】1が振られてるので、これで【戦士】2の【魔術師】2となりますね。

 魔法剣士、浪漫があるじゃないですか。

 おい器用貧乏とか言った奴表に出ろ。俺は出ないから表に立ってろ。

 

 状態はサイコロを振りましょう。固定値よりやっぱ運だよね(テノヒラクルー)

 出目は……「7」「8」「9」と全て期待値以上ですね。やったぜ。固定値だと「5」「7」「9」なのでこの出目は優秀と言っていいです。やっぱ固定値って頼りにならんわ。

 

 この状態で生命力、いわゆるHPや移動力、魔法を使える回数なんかが決定するみたいで……えっ、ゴブリンスレイヤーって魔法の使用回数そんなに少ないの!?どの数値使っても一回しか使えないじゃん!

 え、えー……あー……

 

 決定。一番高い出目は生命力に使い、HPは16となりました。移動力は次に高い出目を使い24です。

 魔法はこのままだと一回しか使えませんが、技能で補います。

 

 さて、次は技能決定です。本当は戦士系技能を取るつもりでしたが方針を変えます。まずは【魔法の才】を取って魔法の回数を増やします。これで二回呪文を使えるようになりましたね。

 そして一般技能の【調理】【沈着冷静】【博識】【礼儀作法】【労働】を取ります。魔法(をたまに使う)剣士(剣術が使えるとは言ってない)。

 一般技能の効果はよく分かりませんが、この辺はなんか使えそうな気がします。礼儀正しくて物知りでちゃんと働ければなんとかなるでしょう。

 

 使用する呪文も選ぶんですね。この世界甘く見過ぎてたわ。魔法使えるからすげえ優位とかじゃなくて使いどころ考えないとただのお荷物ですね。

 ここは《粘糸(スパイダーウェブ)》と《察知(センスリスク)》を選びます。いざというときに頼れそうな呪文と、使いどころが多そうなやつです。

 

 名前はそのまま肩書きとか職業でよさそうなんで、【魔法剣士】で行きましょう。

 

 冒険者になった動機と経緯……これもランダムで行きましょうか。よく分からないし。

 一攫千金狙い。この上ないぐらい俗物的~。まあでも金がないと豪華客船に乗ってジャンケンしたり鉄骨渡ったりしないといけなくなりますからね。

 来歴と邂逅から考えると、孤児になった彼は婚約者関連で金が必要になったんでしょう。金のないやつに娘はやれんと言われたとかで。

 

 さあ、いよいよゲームスタートです!

 

 

 

 ムービー中暇すぎる。というかこんな世界観だったんですね。

 

 

 

 さて、操作可能になったのでまずはステータスをチェックしましょ……おおおおお!?

 待って、徒手空拳スタートなの!?最低限の装備とかあるもんじゃないの!?武器も防具もないじゃん!舐めてんのかてめえ!

 

 い、いや、ある意味正しいのかもしれない。理由もなく武器防具を所有してる人間は珍しいから……

 一般人として暮らしてるけど剣持って鎧着てます、って人間がいたら近付きませんからね。納得。

 

 目の前にギルド?らしきものがありますけど、シカトして武器防具揃えに行きましょう。こっちでいいのかな?

 合ってるみたいですね。予算と相談しながら装備を整えます。

 装備は小剣に革鎧、円盾にしましょうか。薬は売ってないみたいです。あ、聞いたら売ってる場所教えてくれました。

 

 どうやらこの世界、勝手に喋ってくれる人はおらずちゃんと自発的に聞かないとダメみたいですね。人の話を聞く、と言うより人に訊ねる事が大事なようです。

 

 さあ今度こそギルドに向かいましょう。いきなり因縁つけてくるチンピラとかいませんよね?

 うん、フラグ立てたつもりでしたけどありませんでしたー。カウンターに行って登録を済ませます。

 

 登録が終わって認識票を貰いました。受付の人のバストは標準的でした。

 いよいよ冒険者生活スタートです。うん?何やら受付の人との会話が続いてますね。

 今後の予定?全くの白紙ですので『考え中』と――――

 

 いや、違いますね。ここはちゃんとどんなクエストがいいのか聞いておきましょう。人に訊ねてその話を聞くのがきっと吉です。

 ドブさらい、巨大鼠(ジャイアントラット)退治、大黒蟲(ジャイアントローチ)退治……ひょっとしてお前なんぞ汚水に塗れてるのがお似合いだ、って言われてる?流石に気のせいですかね。

 

 まあここは素直に指示に従っておきましょう。全部下水関連ですし一緒に受けれませんかね。あ、駄目?じゃあ止めます。

 一番危険のなさそうなドブさらいにしておきましょう。そして流れるように治癒の水薬を――――

 

 ……押し間違えたぁぁぁ!解毒剤買っちゃった!待って、待って!もうお金ないの!両方買うだけのお金はないの!

 

 え、なにこんな時に……はぁぁぁぁ!?生活費とかかかるの!?いや当たり前なんだけどそういうのちゃんと必要なの!?

 じゃあもっと節約しとかなきゃいけなかったじゃん!もう銀貨5枚しかねえよ!

 

 ……返品するのもあれなので、ノーダメで行くぐらいの気概で行く事にします。出来る出来る出来る出来る諦めんなって!

 

 し、仕方ありません。ドブさらいで治癒の水薬を買う資金を貯めて、それから冒険をしましょう。

 

 何?ゴブリン退治がおススメ?タイトルにあるようにゴブリンを殺すのが王道?

 

 お前がそう言うってことは何か罠があるんやろ。騙されんぞ。

 

 さてドブさらいをしていくわけなんですが、初回からですがこれはカットしましょうか。画面が凄く地味。

 いやもう本当に頑張って掃除してるだけなんで。意外と様にはなってるんですが、これを延々と垂れ流すのは正直どうかと……ん?

 円匙(スコップ)の先端に何か当たったって出てますね。ちょっとそこの泥を掻き分けてみましょう。なんか出てくるのかな?

 

 ぶ、武器だ!武器が出てきました!短剣です!しかもこれ、自分の物になるみたいです!

 着服には当たらないみたいなので、ありがたく貰っておきましょう!やったぜ!武器の頭に「粗雑な」って付いてますけど、まあ問題ないでしょう。

 しかしこのドブさらい、こういう特典みたいなのがあるとしたらかなり美味しいですね!

 

 

 

 そう思ってた時期が俺にもありました。

 

 

 

 えー、一週間のドブさらいで得た給金は銀貨18枚。1日1食と大部屋での雑魚寝による生活費は1日あたり銀貨3枚。

 赤字じゃねえか!どうなってんだよ!

 

 依頼達成報告の際に受付さんに色々質問したのですが、悲しいかなこんなもんらしいです。というか一週間ずっとやる人は珍しいらしいです。そういうの最初に言ってもらえません?

 あと毎回下水道帰りは入口近くで水浴びしてたんですが、これは褒めてもらえました。臭いと不快だし不潔なのはよくないそうです。冒険者ってそういう部分も見られるらしいですね。はえー、考えてなかった。

 

 ちなみに一応ドブさらい中に拾ったものを報告したんですが、誰のものか正確に知ることは不可能なので自分のものにしていいそうです。やったぜ。というかこれないと本当に赤字でござる。

 あの後一度だけまた物を拾ったのですが、なんと銀貨入りの財布でした。流石にこれをガメたらいかんと思って報告したのですが、どうやらこういう特定できそうなものはギルド預かりになるらしいです。するんじゃなかった。

 ですが正直に届けた事のご褒美的な感じで、治癒の水薬を1本いただけました。ありがとうございます受付さん!天使!女神!

 

 なお、現在の所持金は粗雑な短剣を売った分を含めて銀貨3枚。いよいよ追い詰められました。

 一攫千金狙いのはずが文無しとかちょっと笑えないです。

 なのでいよいよ別の依頼に手をつけようと思います。タイトルにもある通り、遂にゴブリン退治に行こうと思います!

 

 あれ?ギルドでゴブリン退治受けたいって言ったら、受付さんが微妙な反応をしている。やっぱり「お前はドブさらいでもしながら朽ち果てていけ」とか思ってます?

 

 選択肢にあった『詳しく訊ねる』を選んだところ、厳しい現実を教えてもらえました。

 どうやら新人がイキった上に舐めて受けると、そこそこの確率で失敗して帰らぬ人となるらしいです。勿論普通に成功するのも多いそうですが。

 

 最低でもパーティーを組んで、出来れば経験者を1人か2人入れるのがいいと受付さん(女神様)に教えていただきました。ありがとナス!

 

 しかしそうすると仲間を探すか、大人しく巨大鼠(ジャイアントラット)大黒蟲(ジャイアントローチ)退治をするかの二択となりますね。正直ずっと下水道映すのは動画的にどうなのよって感じなんですが。

 

 おや?クエストボードの前でちょっとリアルに悩んでいたら、何時の間にやら同じように悩んでる女の子が現れてました。なんか神官っぽい。声かけてみましょう。

 本当に神官みたいです。バストは平坦でした。

何やら会話が続くので、無難な選択肢を選んで途切れてしまわない様にしましょう。考えてみると、受付さん以外と会話するのは一週間ぶりです。陰キャのぼっちかな?

 

 うん?なんか横から鉢巻き付けた男に話しかけられましたね。陰キャにそんなことしたらビックリして息が詰まるから止めてくださいよ。というか話に割り込むなよ失礼な男だな。だから鉢巻きなんだよ。

 しかも女の子2人も連れてるし。なんだてめえリア充か。

 連れてるのは武道家っぽい標準的なバストの女の子と、魔法使いっぽい豊満なバストの女の子ですね。

 

 ゴブリン退治の勧誘?陰キャ誘ってくれるとか、なんだ君イイ奴じゃん(テノヒラクルー)

 

 受付さんが何か微妙な表情してますね。そいつ下水臭いけどいいの?とか思ってます?違いますか。よかった。

 もう少し待てば他の人も来るって言ってますね。あー、確かに1人ぐらい経験者いるといいとついさっき仰ってましたね。そして考えてみたらこの鉢巻き君、まさにイキって舐めている新人なのでは?やっぱコイツ鉢巻きだわ(テノヒラクルー)

 

 やっぱ止めた方がいいのかな、と思い一応言ってはみましたが、なんかみんな乗り気なので陰キャは断れずついていくことになりました。こういう空気に逆らえないんや。

 受付さんが微妙な表情でこっち見てるのが気になりすぎます。これだから下水野郎は駄目なんだとか思ってます?

 

 まあでも鉢巻き君の人助けしたいって気持ちは分かるんで、文無し下水野郎ですが頑張って付いていこうと思います。メタい事言えばこれチュートリアル的なやつっぽいんで、まあ何とかなるでしょう。

 では初のゴブリン退治、行くぞオラァ!

 

 

 

 移動中のこの和気藹藹とした感じ、陰キャには辛いっすね。

 あと会話してて気付いたんですが、【礼儀作法】は常に働くみたいで品があるとか丁寧だとか言われました。受付さんとかギルドの人がわりかし印象よさげにしてくれてたのは、会話の選択肢以外にもコレの効果があったっぽいです。

 

 溝浚いの時も【労働】が仕事してたりしたのかな?一般技能は劇的ではないけどしっかり効果出してるみたいですね。

 

 そんなことを考えてるうちに、洞窟に着きました。女神官ちゃんが不安を口にしていますが、それギルドで言って欲しかったなー。そうしたら受付さんの意見と合わせてガッツリ反対してたんだけどなー。

 このタイミングじゃ同意しつつも慎重に行こうぐらいしか言えないよ。

 そして鉢巻き君曰く、薬買う金がないから女神官ちゃんに声をかけたそうです。こやつ正気か?オラすっげぇ不安になってきたぞ。

 

 鉢巻き君と武道家が先頭に並んで、女神官ちゃんと魔術師が後ろ。魔法剣士君はその中間にいることにします。

 いいか魔法剣士君、お前の位置は正面からヤバいのが来ても、後ろからヤバいのが来ても真っ先にやられることはない位置だ。安心して進め。

 

 待って、鉢巻き君待って!なんで君声かけてもズンズン進んでいくの!後ろ遅れてるから待って!歩調を合わせて!君が松明持ってるんだから!

 

 鉢巻き君は武道家とイチャついて、女神官ちゃんは怯えてて、魔術師はそれにイラついてる。なんだここ地獄か?魔法剣士君の胃を破壊したいのか?

 おっ、鉢巻き君が立ち止まりましたね。何かあって巻き込まれるのは嫌なので近付かないようにしつつ声はかけましょう。何?サメでも出た?

 

 何やら変なシンボルみたいなものがあるとのこと。なぁにこれ?触るとトラップ発動しそう。

 ……あ。そういえば折角覚えた《察知(センスリスク)》がありますね。緊張してすっかり使うの忘れてました。こういうのの近くでトラップやイベント発生しそうですし、ちょっと使っておきましょう。だから前2人待てや!

 

 何やら魔術師から文句言われてますけど気にせず発動します。さーて、何が分かるかなー……

 

 ……敵、すぐそこにいるやんけ!穴、穴開けられるぞ!前2人ぃぃぃぃ!戻ってぇぇぇぇじゃなくて前からも敵来るから頑張ってぇぇぇ!

 おわ、知らせた瞬間飛び出してきた!怖っ!仕方ない、やるしかない!

 

 死ねっ、ハゲ!ハゲ死ね!ハゲろ!あっ1匹抜かれたけど焼かれた。バーカハーゲ。すいません調子に乗りました痛ぇぇぇぇ!あっ、もう1匹そっち行きましたぁぁぁぁ魔術師刺されたごめぇぇぇん!

 自分は刺されはしなかったけど棍棒でちょっと殴られたし、魔術師が刺され……うわなんか凄い顔色になってる!腹刺されてるし!

 

 女神官ちゃんが回復を……待って魔法剣士君が何かに気付いた!下水っぽい臭いがする?ゴブリンの臭いじゃね?あ、毒?コレ毒の匂いなの?

 取り敢えず解毒剤飲ませよう!間違えて買っててよかったー!オラッ無理にでも飲むんだよ!

 

 傷塞がって顔色良くなったし安心、って思ったらなんか嫌な音。あれ、鉢巻き君なんで壁に剣を叩きつけてるんだい?

 

 

 

 あっ。

 

 

 

 ……ええぇぇぇぇぇ……こういう風になるの?容赦ねえ……今の振りすぎて壁に剣引っかけたのか……

 おっ、今度は武道家が行った。強いけどそのでかいのはちょっと無理だろあああ捕まった!間に合え!《粘糸(スパイダーウェブ)》!

 

 よっしゃ上手い事でかいやつを捲き込んで展開できた!通路の蓋みたいになった!これからどうするのか?決まってるだろ!

 逃げるんだよぉぉぉぉぉ!

 

 まだダメージが残ってるのか、立てそうにない魔術師は魔法剣士君が背負い先頭へ。

 すぐ後ろに女神官ちゃんが続き、頭に血が上ってるように見えるけど言う事を聞いてくれた武道家が殿となって撤退開始!すまん鉢巻き君!1人だけ犠牲にしてしまって!

 

 走れ走れ!1年走れぇぇぇぇぇ!俺らの頃はもっと走ってたぞ!ダッシュ!

 

 よっしゃ、入り口見えてきた!逃げ切れぇぇぇぇ!

 あれ?なんか人影が……まさか退路断たれてるとか……

 

 

 

 ……なんか変な奴が現れたぁぁぁぁぁ!

 

 




 剣士君ってどうやれば救えるんでしょうね?


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魔法剣士・裏 1

 春、それは新人冒険者がギルドへと集まって来る季節。だから新人がやって来ること自体は珍しくはないし、やってきた新人も珍しい存在と言うわけではなかった。

 真新しい革鎧に身を包み、同じく真新しい剣と盾を持っていて、どこにでもいそうな容姿と体格をしていて、緊張と期待からちょっと硬いが興奮した面持ちをしている。よくいる新人で、よくある反応だ。強いて変わったことをあげるとすれば、例年繁忙期となる時期より少し早く来た、ということぐらいか。

 

 だが極端に早いというわけでもなく、つまりは今年もこの時期が来て彼はその第一号と言うだけの話だろう。恐らく、いや間違いなくこの後大勢押し寄せてくる新人冒険者(追加業務)を想像し内心気合いを入れ直す。

 しかしそれを表に出すことはなく、三つ編みの受付嬢は営業スマイルを浮かべ応対を始める。

 

「ようこそ冒険者ギルドへ!本日はどのようなご用件でしょうか?」

「冒険者登録をしたいのですが」

「字は書けますか?」

「書けます」

「ではこちらの冒険者シートに記入を」

「分かりました」

 

 問題なく字を書けて、物腰は丁寧……というよりも、しっかりと礼儀を弁えているという印象を受けた。しかし育ちがいいのとはまた違った雰囲気を発している。表情から興奮は消えたが硬さが消えていないのを見て、ひょっとしたら魔術師や学者の類なのかもしれないと受付嬢は思い至る。

 身についたものを自然と行っているのではなく、知識としてあるものを活用している。そう思って見れば字も必要以上に丁寧かつ硬い印象を受ける文体で書かれており、それでいて書類の作成に馴れていない様子なのは、知識はあれど実務経験が少ない事の表れだろう。

 

「書けました」

 

 表情同様、落ち着いた声音と共に差し出された冒険者シートを確認する。書類に不備はなく、何か異常なことが書いてあるわけでもない。

 まだ若いのに呪文を二回も使える、というのにはちょっと驚いたが。やはり魔術師だったか、と思うのと同時にこの新人冒険者へ少し期待したくなる。

 

「はい、書類に不備はありません。今後のご予定は何かありますか?」

「何かおススメ、あるいは新人はこうすべきと言う指針はありますか?」

 

 白磁の認識票を渡しながら投げかけた質問の答えに、受付嬢はまた少し驚く。全くいないと言うわけではないが、自分からこういった事を訊ねてくる新人は珍しい。

 

「そうですね……やはり一党(パーティー)を組むのがよろしいかと。1人では出来る事が限られてきますので」

「なるほど」

「それと、個人的には下水道やドブさらいで慣れておくことをお勧めします。巨大鼠(ジャイアントラット)大黒蟲(ジャイアントローチ)退治も立派なお仕事ですので」

「わかりました、ありがとうございます」

 

 素直に頷き頭を下げた魔法剣士に、受付嬢は驚きと期待を抱いた。しっかり人に物を訊ね、話を聞き、それを聞き入れる。それで全てが上手く行くわけではないが、それを出来るだけで有望ではあるのだ。

 ドブさらいと一緒に巨大鼠(ジャイアントラット)退治も並行してまとめて受けようとしていたが、それもやんわりとたしなめると素直に聞き入れた。まだ実力のほどはわからないが、人間性に大きな問題を抱えているわけではなさそうだ。

 

解毒剤(アンチドーテ)を一本いただけますか?」

「はい、銀貨10枚となります」

 

 恐らくは下水道の依頼を受けるつもりなのだろう。それに備えて解毒剤を買う慎重さと必要性を理解している事もより期待を抱かせてくれる。必要がない場合も多いが、必要になることだって同じぐらい多いのだ。

 彼だけに限ったことではないが、どうか無事に成長していってほしい。クエストボードに向かうその背を見つつ、受付嬢は気持ちを切り替え次の仕事へと取り掛かった。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「ゴブリン退治、ですか」

 

 何とも言えない反応をしてしまったのに気付いたのだろう。怪訝な表情を見せる魔法剣士に、受付嬢は詳しい説明を行う事にした。

 ゴブリンは弱い。人間の子供程度の体格しかなく、知恵も力もその程度だ。

 逆に言えば、人間の子供程度には体格があり、知恵があり、力がある。それが多数集まればどうなるか。

 

 夢ばかり見て、現実を見るのを疎かにした新人冒険者を殺すぐらいは出来るのだ。

 

 勿論常にそうなるわけではない。何故ゴブリンが侮られるのか?それは新人冒険者でも退治できるほどに弱いからだ。

 だから一党(パーティー)を組み、初めての冒険としてゴブリン退治を選ぶのは何らおかしなことではない。

 だが、無思慮かつ不用心に挑んでいい相手ではない。最初のゴブリン退治で全滅というケースは決して珍しいものではないのだから。

 

 最低でも一党を組み、出来れば経験者を入れて挑むのがいい。そんな受付嬢の意見に魔法剣士は深く頷くと、クエストボードの前に移動し腕を組んで動かなくなった。きっと巨大鼠(ジャイアントラット)退治か、それとも仲間を探すか決めかねているのだろう。

 

(お金がないっていう切実な事情は分かりますけどね……)

 

 彼が冒険者になってから一週間。毎日休まず、真面目にドブさらいをする姿には好感が持てた。何よりドブさらい中に発見した拾得物を律儀に報告し、喉から手が出るほど欲しいであろう銀貨の入った財布まで届け出てきたのは本気で驚かされた。

 勿論そうしてもらうのが望ましいのは確かだが、ドブの中にあるものは掃除人が懐に入れても咎めない、という不文律がある。極端に安い給金で働く掃除人への給金の一部、とする向きすらある。

 

 魔法剣士はそれを懐に入れる事をよしとせず、キッチリと届け出てきた。銀貨50枚入りの財布を我が物とせず規則に従う。その誠実さに絆され、せめてもの代価として治癒の水薬(ヒールポーション)を一本自腹で渡してしまった。当然職員としては褒められた行いではないのだが……

 

 ――――不正や私情ではないです、よね。

 

 真面目に仕事をこなし、報告は正確かつ誠実に行う。ギルドに戻って来る前には必ず水浴びをして身だしなみを整え、単なるごろつきとは違うのだという姿勢を見せる。

 その慎重な性格と礼儀正しい対応も相まって、彼はギルドの注目新人――――とまではいかないが、他よりも少し気にかけられている新人なのだ。

 同僚が言うように、財布を届けた礼金を渡したのだと思えばいいだろう。

 

 そんな魔法剣士には、金欠だからといって焦って欲しくはないのだが――――

 彼は新人とはいえ冒険者。訊ねられたのならばともかく、職員があれこれ口を出すべきではない。彼がどんな依頼を受けようがそれは彼の自由であり、何があろうとそれは彼自身の責任なのだから。

 しかし出来れば巨大鼠か大黒蟲退治を選ぶか、ゴブリン退治をするにせよベテランと一緒に……

 

 ―――――それこそ、彼と一緒に行ってくれると安心なんですけど。

 

 薄汚れた鉄兜に、革鎧。安っぽくみすぼらしい装いの冒険者。

 その姿を頭に思い受かべ、自分の頬が緩みそうになるのを抑える。そして意識を切り替え、新しくやってきた新人冒険者の方へと向ける。やる事は山積みなのだ、1人にかかりっきりではいけない。

 

「ようこそ冒険者ギルドへ!本日はどのようなご用件でしょうか?」

 

 

 

――――――――

 

 

 

 静かで落ち着いた声と、丁寧な物腰。真面目で堅そうな人だな、というのが女神官から彼への第一印象だった。

 自分同様真新しい白磁の認識票を首からかけており、この人も新人なのだなと一目で判別がついた。

 

「失礼ですが、あなたも新人ですか?」

「あ、はい。今日登録したばかりで……」

 

 だが見た目に取り立てておかしなところもなく、所作は礼儀正しく丁寧なものだ。少なくとも悪い人ではなさそうだな、と思わせる程度には。

 

「そうですか。この後のご予定は?」

「いいえ、特にはまだ……そちらのご予定は?」

「こちらもまだです。文無しになる寸前ですので、多少なりとも稼ぎのいい依頼を受けなければいけないのですが」

 

 託宣(ハンドアウト)に従ったというのに一文無しというのはどうなのでしょうね、と小さく呟く。神に仕える身としてはその言葉は聞き逃せず、思わず反応してしまう。

 

「託宣ですか?」

「ええ。格別信仰している神がいるわけでもないのですが、ある日突然啓示を受けまして。聞いた事もない名前の神だったので、邪神の類かと思ったのですがそうでもないようですので。それに従い先週冒険者になったのですが……」

 

 冒険者になってから受けた託宣は、なんとドブさらいをしろというものだったと言う。それに従い一週間ドブさらいに精を出したそうだが、生活費の方が収入より高くもうすぐ素寒貧になるところだそうだ。

 ひょっとしたら邪神の類に騙されているのではないか?忠告してあげた方がいいのだろうか。

 

「なあ、俺達と一緒に冒険に来てくれないか?」

「ふぇっ?」

「うん?」

 

 そんな考えが浮かんだところで、不意に横から声をかけられた。声をかけてきたのは真新しい装備に身を包んだ若者。自分や今話していた彼と同じく、首から白磁の小板を提げている。つまり自分達同様新人だろう。

 

「君、神官だろ?」

「ええと、はい。そうですけれど」

「そっちの君は剣士か?」

「正式な剣術は学んだわけではないですが、一応。魔術の心得もあるので魔法剣士と言うべきでしょうか」

 

 どちらも半端の未熟者と言った方がいいかもしれません、という彼――――魔法剣士の言葉など聞かず、剣士は「そりゃ凄い!」と興奮した面持ちで声を上げる。

 

「二人とも俺の一党(パーティー)に是非来てくれないか?急ぎの依頼があるんだけど、人手が足りなくて……それにちょうど聖職者を探してたんだ!」

 

 見ると、剣士の向こう側に2人の少女がいた。恐らくは武道家らしき少女と、見るからに魔術師と思わしき少女の2人だ。

 

「急ぎの依頼とは?」

「ゴブリン退治さ!」

 

 それを聞いた瞬間、魔法剣士が微妙に表情を変えた――――ような気がした。どう変わったのか、そもそも本当に変わったのかさえ女神官には分からなかったけれど。

 

 剣士が早口で概要を並べ立てる。近隣の村でゴブリンに連れ去られた娘がいて、それを助ける緊急性のある依頼だと言う。

 一刻も早く助けねば、と気勢を上げる剣士に対し、元々人助けをするために冒険者となった女神官は同意する。いずれにせよ一党を組む必要はあるのだし、これも何かの縁だろうと。

 

 しかし魔法剣士の方は何やら渋る様子を見せた。その理由を補足するかのように、受付嬢が声をかけてくる。もう少しすれば他の冒険者も来ると。

 経験者が1人ぐらいはいた方がいい、と魔法剣士も言う。確かに自分達――――魔法剣士だけは一応ドブさらいをこなしているが――――は冒険の経験が全くなく、先達がいた方がいいのではないだろうかという気持ちになる。

 

「ゴブリンなんて、5人もいれば十分でしょう!」

 

 だがそれを口にするよりも早く、剣士が快活に笑いながら言い切ってしまう。「なあ!」と一党に同意を求めると、言葉にはしないが女武道家と女魔術師は肯定するような表情を見せた。

 その一方で受付嬢は何とも言えない表情を作り、魔法剣士は――――今度はハッキリと分かった――――眉を顰めた。それを見て女神官の中に得体の知れない不安が浮かんだが、攫われた女性が助けを待っているという事実がそれを口に出すことを阻んだ。

 そして結局、女神官も魔法剣士も一党に加わりゴブリン退治へと出発することとなった。

 

 

 

――――――

 

 

 

 滞りなく洞窟に到着すると、女神官が不安を口にしたものの剣士はそれを一笑に伏した。ゴブリンなど自分1人で追い払った経験もあるのだ。何を不安がる必要があるだろう?

 魔法剣士もそれに同意し、慎重に行こうと言い出す。一応は同意しつつも剣士は特に気にも留めなかった。

 剣士と女武道家が先陣に立ち、剣と呪文を使える魔法剣士がちょうど真ん中。そしてそれに女神官と女魔術師が続くという隊列を組み、一党は洞窟の中へと入って行く。

 幼馴染でもある女武道家と先頭に並び、剣士は松明を片手に洞窟内を進んでいく。魔法剣士が時折後ろが遅れているからペースを落とせと言ってくるが、言われた直後に立ち止まる事は出来てもどうしても先へ先へと進んでしまう。

 

(俺は臆病じゃない)

 

 そこには一本道なのだから敵は前からしか来ないとか、ゴブリンなど雑魚だろうという安心と余裕以外に魔法剣士への淡い反感があった。

 剣術を学んだわけではない、と言っていたがそれは自分も同じこと。そして自分と違い、呪文を二度も使えるという彼。素直に凄いと思う反面、軽い嫉妬を覚えずにはいられない。

 道中の会話で、隣を歩く幼馴染が彼の事を「品がある」と褒めていたのも面白くない。確かに丁寧な物腰と言葉遣いは自分とはまるで違うものだが……

 

(ちょっと慎重すぎるよな。たかがゴブリン退治に)

 

 過剰に不安がる女神官に同調するその様子は、剣士にとっては臆病に感じられた。なら自分は恐れる事なく進んでやろうという思いが、剣士の脚を動かし続ける。

 別に嫌っているというわけではない。少し、ほんの少しだけ面白くないだけだ。

 

 

 

 ある程度進んだところで、入口にもあったトーテムを確認する。少し脚を止めただけで剣士と女武道家はさっさと先へ進んでしまったが、魔法剣士は何か気になるのかそこで立ち止まった。

 

「ちょっと、置いていかれるわよ」

「……嫌な予感がする。《察知(センスリスク)》を使っておこう」

 

 苛立ちを隠さない女魔術師の声に対し、魔法剣士は貴重な呪文をこんなところで使うと言い出した。一本道で何故そんな呪文が必要だと言うのだろうか?

 先程から自分の前で祈りの言葉を繰り返す女神官同様、彼も臆病だという事だろうか。

 

「《フギオー(逃亡)……モルス()……アンテ(以前)》」

 

 そういえば今の受け答えは、先程までのように丁寧な喋り方をしていなかった。表情も心なしか硬くなっている。本当に余裕がないのだろうか?女魔術師の中にほんの僅かではあるが彼を侮る気持ちが生まれた瞬間、魔法剣士がこちらに駆け寄ってきた。

 まさか内心を見透かされたのか、などという考えが女魔術師の頭に浮かんだ瞬間、彼は剣を抜き離しながら大声を張り上げた。

 

「敵だ!後ろから横穴を開けられる!二人とも後ろにもどっ……前からも来るぞ!」

 

 女神官と女魔術師の横を通り過ぎた彼が横の壁に向けて剣を突き出す。それと同時に壁が崩れ落ち、醜悪な怪物が姿を現した。

 魔法剣士の剣先はおぞましい顔をした子供ほどの大きさの小鬼―――ゴブリンの首へと吸い込まれ、喉を穿ち鮮血を溢れさせる。だが後ろから何匹も続いて現れ、それで終わりではないと嫌でも理解させられる。

 

「ひ、ぃっ!?」

 

 引きつった悲鳴が女魔術師の口から漏れ出る。魔法剣士が剣を振るいもう一匹仕留めるが、いかんせん数が多い。一匹がその脇をすり抜け、こちらへと向かってくる。

 

「《サジタ()……インフラマラエ(点火)……ラディウス(射出)》!」

 

 もつれた舌が奇跡的に呪文を正確に紡ぎ、呪文を発動させる。放たれた《火矢(ファイアボルト)》がゴブリンの顔面に直撃し、肉を焼き嫌な臭いを発生させる。

 

―――― 一匹仕留めた!やれる!

 

 女魔術師の中に、自分が敵を仕留めたのだという達成感と高揚感が生まれる。だがそれもほんの束の間。さらに抜けてきたもう一匹が、今度は呪文を紡ぐより早くこちらへと接近してくる。

 

「あ‶……っ!う‶っ……!」

 

 ずぶり、と。見るからに粗雑で錆さえ浮いている短剣が、女魔術師の腹部へと突き刺さった。

 その直後に他のゴブリンを片付けた魔法剣士の剣が、勝ち誇る小鬼の頭に叩き込まれた。だが既に刃は肉を突き破っており、女魔術師はその場に崩れ落ちる。

 

「しっかり……しっかり!」

 

 女神官が駆け寄り身体を揺らす。血を吐き痙攣を繰り返してはいるが、まだ生きている。まだ間に合う、間に合わせてみせる。決意と共に女神官はまだ刺さったままの短剣を引き抜き、血が溢れ出した傷口を塞ごうと奇跡を使おうとする。

 

「待った」

 

 だが魔法剣士がそれを制する。ぜぇはぁと苦しげに息を切らし汗に塗れ、盾や鎧に殴打されたとおぼしき痕がある。切り傷こそないがいくらか負傷しているのは確かだろう。

 

「嫌な臭いがする。下水の臭いに似ている。――――毒かもしれない」

 

 何故止めるのか、と女神官が訊ねるより早く魔法剣士が理由を口にする。そして腰からぶら下げていた小袋から瓶を取り出す。

 そして蓋を開けると、強引に女魔術師の口へと中身を流し込み無理矢理飲ませていく。すると今まで気付かなかったが変色を始めていた顔色が回復し、僅かにだが女魔術師の痙攣が収まる。

 

「これでいい……と、思う。奇跡を」

「は、はいっ! 《いと慈悲深き地母神よ、どうかこの者の傷に、御手をお触れください》……!」

 

 《小癒(ヒール)》の奇跡が発動し、淡い光が女魔術師の傷口を包む。その光が消えるのと同時に、傷口は塞がって行き女魔術師の呼吸が安定していく。

 助ける事が出来た、と女神官が安堵の息を吐いた瞬間、ガッという鈍い音が響いてきた。

 

「あ‶あ‶あ‶あ‶あ‶あ‶あ‶あ‶ぁぁぁ!」

 

 そしてすぐ、聞くに堪えない悲鳴が続く。壁に剣を引っ掛けるという致命的失敗(ファンブル)を犯した剣士が引き倒され、切り刻まれ、叩き潰されていく。

 それを救うべく女武道家が拳を振るい、蹴りを放ち彼に群がる小鬼を屠る。だがあまりにも遅きに逸した。小鬼達が群がっていた場所に残っていたのは、人の原型こそ留めているが二目と見れないような――――

 

「うっ、ぐっ、ぇ……っ!」

 

 彼の近くに松明。それが燃え尽きる前だった事が災いし、ハッキリと見てしまった。堪え切れずその場にうずくまり、胃の中のものを全て戻してしまう。

 そんな女神官の視界の端で、ぜぇはぁと息を切らしていた魔法剣士が小袋に手を突っ込んだ。そして何かを取り出すと右手を前に突き出し、呪文を紡ぎだす。

 

「《アラーネア(蜘蛛)……ファキオ(生成)……リガートゥル(束縛)》!」

 

 迸った《粘糸(スパイダーウェブ)》が女武道家の蹴りを受け止めた巨大なゴブリンを束縛する。さらにそのゴブリンを中心に展開され、洞窟の天井や床にまで貼り付き通路全体を塞ぐ。

 ゴブリンの動きが止まった隙に女武道家は足を掴んでいた手を振りほどき、今度こそと打撃を繰り出そうとする。だがその背に声が投げかけられる。

 

「止めろ!逃げるぞ!」

「なっ――――」

「数が多すぎる!無理だ!」

 

 女武道家は憎からず思っていた男を殺した怪物たちへの憎悪に駆られてはいたが、その言葉が頭に入らないほど激情に支配されていたわけでもなかった。

 振り返れば女魔術師はぐったりとしたまま魔法剣士に担がれており、その魔法剣士も決して無傷ではなさそうだ。女魔術師の杖を拾って持っている女神官は無傷なようだが、彼女がゴブリンと戦うのは難しいだろう。

 

 仮にあのデカブツを仕留めても、多数のゴブリンとこの面々で戦うのは――――……

 

「……わかった!私が一番後ろから行くから、早く行って!」

「了解した!」

「すみません……!」

 

 女神官の言葉は自分ではなく、ここに1人残されていく男の躯に向けられたものだろう。自分も内心で詫びながら、女武道家は駈け出す。

 人一人を担いでいる魔法剣士の走りは決して早いものでなく、女神官の歩みはさらに遅い。それを追い越さぬよう、気をつけながら女武道家は最後尾で走り続ける。来る時は大した長さに感じなかった通路が、まるで果てがないのではと感じるほど長く思えてくる。

 《粘糸》の効果が切れればすぐにゴブリン達が追いかけてくるだろう。いや、そうでなくともあの横穴からまた湧いてくるかもしれない。もしそうなった場合、自分1人が残って食い止める。その覚悟を決めつつ走っていると、前方に光が見えてくる。あれは入口の光だ。

 

 ――――――――逃げ切れる!

 

 女武道家がそう安堵した瞬間、先頭を走っていた魔法剣士が急に足を止めた。つられて女神官が足を止め、女武道家も追いついたところで停止する。

 もうすぐ出口だというのに何故止まるのか。その理由を問う前に、前方から一党の誰のものでもない声がした。

 

「5人だと聞いていたが、4人無事か。上手くやったものだ」

 

 薄汚れた鉄兜に、革鎧。自分達の方がまだマシな装備をしていると言える、安っぽくみすぼらしい装いの冒険者が松明を掲げながら洞窟の中へと入って来る。

 だが首元で輝いているのは、銀色に輝く認識票。在野最高位とされる第三位、銀等級冒険者の証。

 何者なのか、という魔法剣士の誰何の声に、その男はこう答えた

 

 

 

小鬼を殺す者(ゴブリンスレイヤー)

 

 

 

 




補足:剣士君は別に魔法剣士君を嫌っていたわけではないです。ゴブリン退治を済ませて、一緒に飯でも食って、明日になればわだかまりなく仲間として接していました。

明日さえ来ていれば。


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魔法剣士・2

創造神のRTA見てきました。本当に些細なことで生死変わるんですね。
でも「ダメじゃないか!死んでなきゃあ!」って気分になるのはなんでだろう。


 ゴブリンスレイヤーって事は、タイトルにある通りこれが原作主人公なんですかね。さまようよろいみたい。って言うか、怖っ。夜道で出会ったら泣きそう。

 ヒェッ、後ろから声聞こえてきた!疲労度溜まってるけど逃げ切れるかな。

 

 と思ったらゴブリンスレイヤーさんがあっという間にやってくれました。でかいのいなかったとはいえ手際いいなぁ!というか松明も武器になるんですね。

 え?何匹倒したか?いやー覚えてないっす。5匹ぐらい殺った気はするんですけど。合計となるとさっぱどわがんね。

 えっ、治癒の小薬くれるんですか!?しかも魔法剣士君と魔術師の2人分も!?感謝……!圧倒的感謝……!オラッ、飲め魔術師!グイッと行け!一気だよ一気!先輩のおごりだぞ!(アルハラ)

 疲労は回復しませんが、生命力は回復しました。ゴブリンスレイヤー、いやゴブリンスレイヤー様のお陰です。マジ感謝。

 

 あ、選択肢出てきましたね。この後どうするか?鉢巻き君の遺骸か遺品回収したいんでついていきましょう。あとゴブリン退治もしたいんで。よくもやってくれたのう、覚悟せえやワレ!

 無傷の女神官ちゃんと武道家、それに自力で立ち上がれるまで回復した魔術師も付いて来るみたいですね。リベンジじゃゴラァ!

呪文?自分は使いきっちゃいましたね。ちょっと剣振り回せるだけっすね、できるのは。あっ、これリソース確認してるのか。当然ではあるけどすげえちゃんとしてるなこの人。

 

 えっ、何してるのこの人。

 

 ……はー、臭い消し。はぇー。ゴブリン倒して返り血浴びててよかったね、魔法剣士君。女性陣の眼が死んでますが見なかった事にしましょう。

 と言うかでかいの来る気配ありませんね。なんでだろ。

 田舎者(ホブ)は身体が大きいからよほど苛々させるか自分1匹しかいないという状況でない限り、狭い通路を走って追って来るような事はない?へー。

 

 というか質問するとちゃんと答えてくれるとか、すげえ親切だなこの人。

 

 あ、鉢巻き君のところまで戻ってきた。死体グロッ。エモートに黙祷あるし捧げとこう。

 認識票回収して、遺品の剣は……邪魔だから帰りにな!ごめん鉢巻き君、君が引っ掛けるところ見ちゃったからこれ使って仇討みたいなのはちょっと。ほら、ゴブリンスレイヤーさんも洞窟で振り回すには長すぎるって言ってるし。あれ、でも回収してる。

 あれ?横穴に入って行かないの?松明落として何を……おおおおっ!?

 おびき寄せて短剣投げて喉に当てて、声出せなくしてから接近して仕留めるとか超カッコいい!というか暗闇の中から出てきたのに良く見えたな!そして振り回さずブッ刺すのが正解なんですね。

 それもう血脂で使えない?じゃあこっちの小剣も厳しいのかな。まあ切れなくても鉄の塊なんで、頭ぶん殴ればイケるでしょう。

 

 足元になんか仕掛けてますね。ってことはこっち戻って来る?じゃあ僕ちょっと疲労度ヤバいんで待ってますね……足元にロープって絶対引っ掛ける系の罠じゃないスか。てことは多分走って戻ってくる感じのアレじゃないスか。

 魔術師も留守番を言い付けられて、3人で横穴入って行きました。行ってらっしゃい。

 

 女性と2人きりとか、陰キャぼっちにはしんどいっすね。セガサターンの話でもする?セガの話なら6時間ぐらい語れるんだけど。ドリームキャストでもいいよ。4時間は語れる。

 あれ、なんか謝られた。いやゴブリン1匹しか仕留めてないとか気にしなくていいんじゃ。魔法剣士君は5匹ぐらい仕留めたけどね。

 負傷したのもこっちがゴブリン止められなかったせいなんで、そんな気にするほどの事ではないと思うんだけどなあ。まあ魔法剣士君は負傷しながらも5匹ぐらい仕留めたけどね。

 解毒剤?それ用心深いんじゃないんですよ、押し間違いで買っちゃったんですよ。

 なんでこっちも詫びときましょう。ゴブリン止められなくてごメンチ。背負って走ったのも仲間を助けるのは当然と言っておきましょう。だいたいこういう事言っておけばなんかリターンがあるやろ。(打算)

 

 よし、もう話題ねえぞ。

 

 あれ、なんか穴の奥光らなかった?誰か鶴仙流使える?

 なんかダッシュでゴブリンスレイヤーさんが帰ってきました。軽やかに飛んでトラップ回避。すぐ後ろに武道家。これも飛んで回避。女神官ちゃんは……あっ、跳びはしたけど着地ミスってこけた。

 

 うおっまぶしっ。

 

 どうやら女神官ちゃんが太陽拳を使ったようです。そして目が眩んで足元がオルステッドになったデカブツはロープに引っ掛かり、即スレイされると。この人何?中身TASさんかなにかか?

 でも次がやって来る……えっ何かけてるの?あっ、死体蹴り転がした。で、その死体に向けて魔術師に《火矢(ファイアボルト)》撃たせて?

 

 うわぁぁっ!なにこれ!さっきこんなに燃えなかったじゃん!

 

 はっ、燃える水(ガソリン)?なんつーもん持ってんだこの人。めっちゃよく燃えてる。わー綺麗。

 あっ、まだ来る足音がする。来た奴を処理するのは手伝いましょう。主にこけた奴を。

 

 くたばれぇぇぇぇぇっ!あ、切れにくくなってる!でもなんとかなった!

 

 こけた奴を必死こいて一匹処理しました。武道家はその倍、ゴブリンスレイヤーパイセンはさらにその倍ぐらい殺ってますね。

 中に入る?今度は付いていきまーす。ゴブリン全滅したっぽいし。

 

 この作品、Z指定ついてたのグロだけが理由じゃなかったんやな……

 

 女性陣が思わずリバースしてますが、見て見ぬふりをする情けが魔法剣士にもあった。

 というか【沈着冷静】の効果なのか彼マジで落ち着いてるように見えますね。大丈夫?感情ある?

 ゴブリンスレイヤーさん?何をしてらっしゃ生きてたのソイツ!?槍が喉に刺さってんじゃん!怖っ、しぶとすぎて怖っ!

 

 えっ、まだやることあるの?あっ、隠し部屋……ゴブリンの子供?うわぁ、そういうのも(産ませられる)あるんだ……

 佐藤十兵衛こと殺人鬼ばりに容赦ないゴブリンスレイヤーさんが処理開始しとる。あっ、選択肢出てきた。

 

 時間制限出てるし、ここは速やかにゴブリンスレイヤーさんを手伝っておこう。選択肢で媚びる!

 

 女神官ちゃんの意見も分からなくはないけど、こういうのって根絶やしにするか徹底的に保護するかしないとロクなことにならないから。最近海賊漫画で学んだんだ。

 とはいえ武器がもう血塗れだし疲れ果ててるんで、一匹しか無理だけど。さあこの悲しい世界から救ってあげましょうねー。

 

 そんなことより隅にあるその箱、蓋が開いてんだけど中に入ってんの銀貨じゃね?

 

 

 

 中に11枚入ってました、銀貨。回収して後で分配しましょう。銀貨1枚を争う財政事情なんだよわかれよ。

 鉢巻き君の遺骸はどうしましょうかね。魔法剣士君背負える?あ、背負った。グロ耐性あるのかな。疲労度の方も走らなければ大丈夫みたいですね。

 武道家が剣を回収し、女神官ちゃんが捕まってた女性達を介抱。ゴブリンスレイヤーさんが巣穴全体をチェックして、ゴブリン討伐終了みたいです。合計何匹いたんよこれ。小鬼殺し氏が30ぐらいまで数えたのは覚えてるけど。

 

 えっ?原作よりゴブリンの数多いのコレ?

 

 流石に担いで帰るのは無理っぽいので、近くの村で鉢巻き君を埋葬してもらいます。埋葬って言うか穴掘ってもらって女神官ちゃんがお祈りするだけなんですが。

 このタイミングで武道家が泣き出しました。そう言えば幼馴染だっけ?でも特に何をすればいいか分からんから放置。

 さあ、遺品持って帰りましょう。初の冒険でこれってこの世界甘くねえな。おや、ここで選択肢?帰り道誰と話すか?そら勿論原作主人公よ。媚びよう。

 

 運が悪かった?へー、数匹しかいないパターンもあるんだ。女を攫ったり村を襲うということは数が揃っている証拠?あー、そういうの依頼内容から読み解くのも必要なんだ……

 鉢巻き君、善良さが仇になったんだなあ。お労しや。

 

 

 

 無事5人で帰還してギルドに報告です。5人で行って5人で帰ってきました。1人メンバー変わってる?クラスチェンジしたってことで。

 報酬は銀貨20枚。こんだけ苦労して20枚か。命の安い世界よのう。でもまあそんなもんなんでしょうね。

 詳細報告すると受付さんが沈痛な面持ちで労わりの言葉をかけてくれました。あったけぇ……

 ゴブリンスレイヤー氏に分け前渡そうとしましたが「いらん」とだけ言われて、感謝の言葉を伝えてる間に新しい依頼受けてどっか行っちゃいました。聖人か?

 箱の中で見つけた銀貨と合わせて31枚。均等に5等分して1人6枚が今回の収入です。ちゃんと鉢巻き君の分も分配してます。武道家が故郷に戻って家族に遺品と一緒に渡すそうなので。

 せめてもの気持ちとして、全員一致で端数の銀貨1枚は鉢巻き君の分に含めることとなりました。銀貨7枚で命を捨てた、とは思わず、攫われた女性を助けるために命を捨てたと考えたいですね。俺は尊敬するよ。

 

 これからについての話し合いになりましたが、武道家は故郷に戻って鉢巻き君の家族に報告してそれから考えるようです。魔術師は考えるとの事ですが、ちょっと心折れてるような表情してない?まあ腹ぶっ刺されたらそうなるのは分かるよ。

 女神官ちゃんは冒険者を続けるとのこと。え、ゴブリンスレイヤーさんに付いていく?ゴブリン相手にこれだけしんどい目に会ったのに、メンタル強すぎひん?

 あ、選択肢が出てきましたね。考えるか、冒険者続けるか、引退するか。当然続けます。但し下水へ戻ることになりそうですが。ギルドの人達に下水野郎とか汚水君とかあだ名つけられてないよね?

 

 あっ、冒険者レベルが上がりました。ギルドに報告するとレベル上がるんですね。その場じゃないんだ。

 でもレベル上がったからといって職業レベルは上げられないみたいですね。我慢じゃ。代わりに冒険者技能の【頑健】【武器:片手剣】【盾】を取得します。シンプルに役立ちそうな奴をチョイスしました。

 これで多少殴り合いが強くなりました。

 

 さて、疲労度ヤバいのでさっさと寝たいのですが先に武器防具の整備を頼みに行きましょう。洞窟での戦闘で小剣が切れにくくなったように、武器の状態が悪いのは結構なマイナスになるようですので。

 整備で半分、今日明日の生活費で報酬は綺麗に無くなりますね。わびしい。あっ、触媒使い切ったから《粘糸(スパイダーウェブ)》使えない。これも買うか集めないといけませんね。

 明日以降やる事が決まったので、今回はここまでにしましょう。ご視聴ありがとうございました。

 

 



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魔法剣士・裏 2

テンポ悪い気がしたので、結構端折って行きます。


 小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)。最下級の、最弱の魔物を殺す者。平素に聞けば滑稽にすら思えるその名を名乗った男――――おそらくは――――は、成程名に違わぬ動きを見せた。

 一党を追撃してきた小鬼を持っていた剣で、松明で、小鬼から奪った短剣で。躊躇も容赦も無駄もなく速やかに屠ったその手並みは殺す者(スレイヤー)と呼ぶに相応しい。まさしくゴブリンにとって「死」そのものであっただろう。

 魔法剣士と女魔術師に治癒の水薬を分け与え、飲み干すのを見届けた彼は問うてきた。

 

「俺は奴らを叩く。お前たちはどうする。戻るか、ここで待つか」

 

 その問いに対し、真っ先に答えたのは魔法剣士だった。

 

「行く。仲間が1人やられた、そのままには出来ない。死体も、連中も」

 

 その言葉を聞いた女神官は、無慈悲に惨殺された剣士の遺体を思い出す。記憶の中にある惨たらしいその姿に胃液が喉まで上がって来る。だがそれを飲み込み、ハッキリと自分の意志を口にする。

 

「私も……行き、ます……っ!」

 

 自分と魔法剣士を一党に誘ってくれた剣士。道中夢を語り、ゴブリンに攫われた女性を助けようとしていた彼。今日初めて会って、ほんの数時間行動を共にしただけだがあのままにしてはおけない。

 彼をあのままにして、彼をあんな風にした怪物をそのままにして帰るのも、ここにいるのも嫌だった。

 

「……あたしも、行くわ」

「わ……私、も……」

 

 悲壮な表情の女武道家も、辛うじて自力で立ち上がった女魔術師も進むことを選ぶ。

 

「何が出来る」

 

 お前達が来たところで何が出来る?そう言われたような気がして、女神官は言葉に詰まる。確かに自分は、自分達はあまりに出来る事が少ない。ましてや今まさにみっともなく逃げてきたところなのだ。

 

「剣を少し。呪文は使い切ってしまった」

「そうか。まだ動けるか?」

「疲れてはいるが、何とか動ける。一匹ぐらいなら殺れる」

 

 その応答を聞いて、自分が言葉を取り違えていた事を悟る。純粋に自分に何が出来るか、つまり技能や能力を聞かれていたのだ。

 聞かれるがまま、女神官たちは自分の持つ技能や呪文、奇跡について答える。

 

「わかった。それならまずやることがある」

 

 そう言うや否や、ゴブリンスレイヤーは短剣をゴブリンの死骸に突き刺しその腹を掻っ捌いた。そしてグチャグチャと内臓をかき混ぜる。

 

「なっ……!」

 

 女神官は思わず息を呑む。何故そんなことを。いくら魔物とはいえ、何故そこまでするのか。

 

「奴らは臭いに敏感だ。特に女の臭いはな」

 

 そう言うと彼はゴブリンの肝を取り出し、布で包んだ。何かを察したらしい魔法剣士が顔をしかめ、呟く。

 

「返り血を充分に浴びたから、俺は遠慮したい」

「そうだな。それだけ浴びていれば充分だ」

 

 その発言で女神官は遅ればせながら察する。女武道家も女魔術師も察したらしく、顔が引きつっている。

 

「臭いを消す必要がある。慣れろ」

 

 

 

「あのデカブツは何故来ないのだろう」

田舎物(ホブ)は身体が大きい。腹に据え兼ねているか、自分しかいないのでもない限り狭い場所で長々追ってきたりはせん」

「成程」

 

 各々の装束を赤黒く汚され、どんよりと曇った目をしながら女神官たちは前を行くゴブリンスレイヤーと魔法剣士に付いていく。魔法剣士の質問に答えるゴブリンスレイヤーは特に気にしている様子はないが、魔法剣士は意図的にこちらを見ない様にしている気がする。

 逃げる時はあれほど長く感じた通路はさほどの距離もなく、襲撃を受けた横穴まですぐに戻って来る。そこにはゴブリンの姿はなく、幾つかのゴブリンの死骸ともはや人の形を留めていない肉塊だけが残されていた。

 

「うっ……!」

 

 堪えなければ、と思うより先に胃液が喉を焼きながら込み上がり、その場で嘔吐してしまう。女武道家も悲痛そうな顔で顔を背け、女魔術師は口元を抑え後ろを向く。唯一魔法剣士だけは、静かに目を閉じ黙祷を捧げていた。

 ゴブリンスレイヤーはその様子にも死体の惨状にも気に留める様子を見せず、剣士の持っていた長剣と短剣を回収する。

 小鬼を殺す者――――そう名乗った彼がその名に相応しい姿を真に見せるのは、これからだった。

 

 

 

――――――――

 

 

 

「こちらこそ悪かった。ゴブリンを止めれず、危うく死なせるところだった。すまなかった」

 

 女魔術師の謝罪に対し、魔法剣士から返ってきたのはまさかの謝罪だった。

 

 自分はゴブリンを侮っていた。才能を認められ、研鑽を重ね、都の学院を優秀な成績で卒業した自分がゴブリン如きに遅れを取るなどあり得ないと。それがどうだ。この洞窟でやったのはゴブリンを一匹焼き殺しただけ。

 挙句腹を刺され、死にかけた。魔法剣士が解毒剤(アンチドーテ)を用意していなければ、女神官がいなければ。今頃自分は間違いなく死んでいた。

 今も傷は塞がったとはいえ、まだ少し足元が覚束ない事からこの横穴の前で待たされている。何の役にも立っていない。魔法剣士も疲労を理由に残っているが、戦闘以外にも自分を背負って走ったのだからそれが原因だろう。

 

 相手を侮り、準備を怠り、足を引っ張った。自分の至らなさに泣きたくなってくる。せめて謝罪ぐらいせねば、本当に涙が溢れてきそうだったのだ。

 

「それに、だ。今は一党(パーティー)を組んでいる仲間なのだから、助けるのは当然の事だろう」

「……」

「だから謝罪はいらん。するというのであれば、謝罪ではなく感謝だろう」

 

 特に傷を癒してくれた相手にな、という魔法剣士の言葉に女魔術師は頷いた。そうだ、謝るよりお礼を言うべきだったのだ。自分は命を救ってもらったのだから。

 

「ありが」

「奥が光ったな。走る足音も聞こえてくる。戻って来るようだな、備えるぞ」

「……ええ」

 

 確かにその対応は正しいだろう。だがせめて最後まで言わせてほしかった。後ですればいいというのも確かだが、こういうのは時間が経つほどに照れくさくなるではないか。

 この男には今ので言った事にしよう。その分、あの子に丁寧にお礼を言おう。きつく当たった事も謝ろう。女魔術師はそう心に決めた。

 同時に萎えて来ていた心を奮い立たせる。そう、ちゃんと話すためにも目の前の事に集中すべきだ。

 全ては生きて帰らねば出来ないのだから。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 罠で、ゴブリンから奪った武器で、女神官の奇跡を活用した戦術で、燃える水(ガソリン)と女魔術師の呪文で。ゴブリンスレイヤーは実に効率的に、速やかにゴブリンを殲滅していった。

 自分の蹴りを止めた田舎者(ホブ)も、呪文を使おうとした魔術師(シャーマン)も、他のゴブリン同様あっさりと処理された。ゴブリンは全て仕留め、攫われていた女性たちは――――無事だとは素直に言い難かったけれど――――助け出した。これで終わった。女武道家はそう思っていた。

 

「……子供も、殺すんですか?」

 

 女神官の問いかけに、「当たり前だ」と答えゴブリンスレイヤーは棍棒を振り上げる。隠れていた子供のゴブリンの頭蓋が砕かれる姿に女武道家は息を呑み、女魔術師もそっと視線を外す。

 確かに女武道家もゴブリンという存在が憎くはある。幼馴染であり、それ以上の淡い感情も抱いていた相手を無残に殺されたのだ。しかし、何の罪もない子供のゴブリンまで殺すのは躊躇われた。

 捕まっていた女性たちの悲惨な姿は見た。その結果生まれてきたのだということも分かった。だが、子供を殺すのはどうなのか。

 

「……自分がゴブリンだとしたら」

 

 女神官が問いかけ、女武道家と女魔術師は硬直する。そんな中でただ一人、魔法剣士が動いた。血塗れで切れ味の鈍った剣を握り締め、重い足取りでゴブリンの子供が屠殺されている倉庫へと近付いていく。

 

「許しはしない。生き延びたなら必ず報復をする。何が何でもやり返す(・・・・・・・・・)

「その通りだ」

 

 魔法剣士の言葉をゴブリンスレイヤーが肯定する。それを聞いて女武道家はハッと気付く。仮にここで殺さなかったら、ゴブリンの子供が生き延びたら。

 新しくこの巣が生まれる。新しい剣士が、攫われていた女性が生まれる。

 

「だからここで、この場の因縁は綺麗さっぱり終わらせる」

 

 そう呟いた魔法剣士が剣の柄に両手を添える。そして体重を乗せて、切っ先を泣き喚き命乞いのような所作を見せていたゴブリンの子供の喉へと落とす。

 

 それで、女武道家達の――――剣士一党の最初の冒険は、ようやく終わった。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 よくある話だという。

 ゴブリンによって村が襲われ娘が攫われるのも。そのゴブリン退治に新米の冒険者達が初めての冒険として赴くのも。

 そしてそれがゴブリンに追い詰められ、全滅してしまう事も。

 全滅に至らずとも仲間を失った冒険者、あるいは一党を失った冒険者の心が折れてしまいそこで未来を諦めてしまう事も。

 この四方世界ではありふれた、よくある話だという。

 

 だがそれでも冒険者を続けると言うのも、よくある話だという。

 自分はどうするのか。女武道家は故郷への道を歩きながら自問する。もう嫌だという気持ちはある。剣士の死に様が、死体が、ゴブリンの嬲り者となった女性たちの姿が。脳裏にこびりついて離れない。

 一歩間違えれば自分もそうなっていたのだろう、という恐怖が頭から離れてくれない。だからもう、そんな可能性からは離れていたい。それが女武道家の正直な気持ちだった。

 しかし――――

 

(そういう人達を助けたくて、役に立ちたくて。アタシは冒険者になったんじゃないの?)

 

 何故冒険者を志したのか。亡き父の残した体術で沢山の人を助けたかったからだ。それを一度失敗したから諦めるのか?憎からず思っていた幼馴染が死んだから逃げ出すのか?

 辞めるか、続けるか。どちらを選ぶのも自由だ。しかし自由に選べるという事は、自分が責任持って自分で決断せねばならないということでもある。

 

「……どっちを選んでも、きっと怒らないよね」

 

 痛いぐらいに晴れ渡った空を見上げ呟く。返事をする相手はいない。でも女武道家は剣士の笑い声を聞いた気がした。

 どちらを選ぶにせよ、今はただ帰ろう。そして彼の家族に伝えよう。

 

「彼は人を助けようとしたのだ」と。

 

 




悪いのはテンポではなく単純に己の文才のなさなのでは?ボブは現実から目を反らした。


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魔法剣士・3

(評価ゲージが赤い)

( ゚д゚)

(お気に入りにして下さった方が3桁)

(つд⊂)ゴシゴシ
 
(;゚д゚) ・・・

(狂戦士チャートニキから評価を頂いている)

  _, ._
(;゚ Д゚) …!?


 はい、じゃあ今回も頑張って始めて行きましょう。

 

 清々しい朝です。10時間ぐらい魔法剣士君には寝てもらったんですが、そんなに寝る必要ないみたいですね。6時間ぐらい寝た段階で疲労度の回復が止まったので、今後これを目安にしたいと思います。

 完全に回復したわけではありませんが、何かしらの依頼をこなしましょう。貧乏暇なしです。とはいえ討伐系は厳しいのでドブさらいですかね。ドブと円匙だけが友達さ。

 おや?受付さんではなく監督官さんに声をかけられました。お前向いてないから田舎帰れ下水野郎とか言われないですよね?

 

 代書・代読の仕事?ありがたくやらせていただきます!ありがてえ、ありがてえ……!

 この世界、決して識字率が高いわけではないようなのでこういう仕事もあるんですね。今回は本職の人が負傷したから緊急措置的な感じでギルドに仕事が来たようです。

 ちなみに魔法剣士君は読み書きが出来る上に【博識】があるので、ちょっと独特な言い回しや複雑でないなら訛り・方言的なものにも対応できるようです。すげえなお前。

 あっ、魔術師だ。君も一緒に仕事するの?同僚じゃん、よろしく。

 

 特に見どころないので仕事の様子はカットしました。二人でやった為か午前中だけで片付きましたね。給金は銀貨5枚で、本職の人の怪我が治るまでの間は出来れば受けて欲しいそうです。生活費稼ぐ目途が立ったな!

 飯食ったら触媒を探しに行くとしましょう。そう、蜘蛛の巣です。空き家や廃屋に行けば見つかるでしょう。

 折角だから魔術師と一緒に食事をしようとしたんですけど、さっさと一人で食べに行ってしまいました。いや別に?気にしてねえし。なにも気にしてなんかいねえし(震え声)

 

 蜘蛛の巣を求めて街を徘徊する様子はカットします。何かイベント起きたら話は別ですが。

 

 はい、起きませんでしたー。修理に出してた武器防具回収したぐらいですね。蜘蛛の巣に関しては、魔法剣士君曰く5回分ぐらいは集まったそうです。

 とりあえず今日寝れば昨日消耗した分は全快するので、本格的に活動していきたいと思います。方針としては午前中代書代読。これで生活費を稼ぎます。そして午後からは下水に潜って巨大鼠か大黒蟲退治。こっちは装備品や消耗品を買うための資金にします。

 ローテとしては3日潜ったら1日蜘蛛の巣集めですかね。勿論消耗した場合は適宜休みを挟みます。

 1人じゃ心もとないんで誰か仲間が欲しいところですが、魔術師はなんかこっちを嫌ってるような感じなので厳しそうです。かと言って知らない人に話しかけるの怖い。のでぼっちで潜ります。陰キャぼっち下水野郎ってあだ名が付きませんように。

 それじゃ本日は寝ましょう。おやすみなさい。いい夢見ろよ!

 

 おはようございます。いい朝ですね。

 今日も代書・代読の仕事から始めます。仕事の間は本気で暇です。仕事が相当忙しいのか、魔術師と会話してる様子がないんですよね。選択肢も出ないし。

 そして仕事が終わると魔術師はさっさと席を立ってしまいます。委員会の仕事で女子と一緒になった時を思い出して泣きたくなりますね。

 悲しみを背負いつつ昼食を摂り、いよいよ巨大鼠退治に出発します。防毒面買う余裕ないんで、布で口を覆います。

 

 行くぞオラァ!あれ?剣と盾と松明が装備出来ない。ああ?両手が塞がる?

盾を腕につけろ、腕に。出来ない?あー、改造とか必要なのかな?工房の改造ってこういうのもしてくれるんですね。仕方ない、松明で殴るぞ。ゴブリンスレイヤーさんもやってたじゃん。

 下水の地図買う余裕はなかったんで自力でマッピングします。大丈夫、俺はダンスやってたから。

 

 おっ、第一村人じゃなくて鼠はっけ……デカくね?もうちょっと小さいって話じゃなかった?1mぐらいない?

えっ、これがデフォ?

 

 お前がそう言うって事はなんか特別なんやろ。騙されんぞ。

 

 あっ、やべっ。気付かれた。怖い怖い怖い《粘糸(スパイダーウェブ)》使っちゃえ!

 

 何とか動き止めました。しかしデカい。下水にこんなのがいるとか安心して生活できないんですが。まあとりあえず殴り殺しましょう。お前もこの悲しい世界から救ってやんよぉ!

 うわぁぁぁぁぁぁぁぁなになになに!勢いよく燃えた!すげー燃えた!うおこっち突っ込んでくんじゃねえ盾ぶつけんぞ!

 

 ……ふう。ファイヤー鼠に噛みつかれるところでしたが、華麗に盾で防ぎ切りました。動かなくなったようですが念のために剣で刺して確認しておきましょう。

 うん、死んでますね。よし耳切り取って行きましょう。

 

 もし本当にこのサイズがデフォだったら即撤退します。次遭遇したやつがどの程度のサイズかで決めましょう。

 頼むから小さくあってくれよ。大きいのはバストとヒップだけでいいんだ。

 

 ……っしゃぁ!小さい!討伐続行しましょう。お前も!お前も!お前も!金の為に死ねぇ!

 危ない危ない危ない!複数は卑怯だぞヤメロォ!あっカウンターで松明に突っ込んでくる形になった。はいバーカザーコごめんなさい調子乗りましたぁぁぁぁ!

 

 相手にならねえんだよ雑魚が(震え声)

 

 えー、ビビりながらも松明で焼きまくり、複数に囲まれた際には切り札の《粘糸》で動きを止め全員焼くという焼き打ち戦術で無事切り抜けました。なんとノーダメクリアです。これで規定数討伐したので帰ります。

 松明の経費がかかるんでそこまで身入りのいい依頼ではないですが、まあ駆け出しで美味しい依頼とかまずないでしょうから仕方ないですね。

 

 帰り?迷うわけないだろマッピングは得意なんだ。

 

 

 

 言っただろ、迷わないって。無事帰って来たので水浴びしてギルドに戻りましょう。

 報告ついでに受付さんにでかいサイズの鼠について話聞いてみましょう。何あれ突然変異?

 

 へー、ほー。暴食鼠(グラトニーラット)って言うんですね。成程、鼠版田舎者(ホブ)みたいなもんですか。

 懸賞金ついてるんだ、へー。

 

 

 

 おい待て今なんつった。

 

 

 

 はぁぁぁぁぁぁぁ!?聞いてねえぞこの野郎!懸賞金ついてるんなら首でも何でも刈り取って来るわ!討伐の証拠の歯だぁ?持ってきてるわけねえだろこの野郎!

 今から引き返して回収……もう他の鼠や大黒蟲に食われてる頃?じゃあなんすか。あのドタバタは全部無駄だったってことすか。ふざけんなバーカ!畜生めー!

 

 後ろで笑ってんじゃねえ!知ってて黙ってたなこの野郎!殺してやるぞ天の助!

 

 

 

 討伐分はちゃんと貰えました。あと同情も貰えました。同情するなら金をくれ。報酬は銀貨10枚です。

 これ持って工房に行きます。おっちゃん盾改造してー。もしくは左腕をサイコガンにしておくれ。

 

 あれ、そういう改造項目ありませんね。なんでだ?おい隠してんじゃねえ!出せ!あるのは分かってんだぞ!

 うーん、見直したけどありませんね。なんか条件あるのかな?会話してみよう。

 

 会話でもヒントらしきものは出てきませんね。腰に角灯でも付けろ?金がねえんだよこっちは。髭むしるぞ。ガムテープでやるぞ。

 まあ仕方ないので盾と松明スタイルで行きましょう。なので整備だけ頼んで……あっ、あと油ください油。

 多分《粘糸》で捕まえた後、油浴びせれば大変愉快な事が出来る気がします。

 

 さて生活に余裕が出来たので、酒場に戻って夕食も食べます。一日三食生活です。

 魔法剣士君が食事してる間に目標を決めていきましょう。まずは治癒の水薬と解毒剤を最低3本は揃えたいですね。これは何があるか分からないので最優先とします。

 

 次は防具ですね。下水の住人を殺るのには充分な攻撃力を既に有していると判明したので、怪我をしないように守りを固めることを優先します。最優先は兜、次いで吊盾です。鎧は板状鎧が欲しいですが、これは武器の後にします。

 

 武器は広刃の剣が欲しいところです。小剣も予備武器としてそのまま持ち続けましょう。

 あと必要だと思った雑貨類は適時買って行きます。とりあえず松明補充しました。それと平均的な質の触媒も買いました。5回分。銀貨5枚の出費です。

 

 これら諸々含めて本日の収支は銀貨1枚の黒字。暴食鼠の報奨金があればなあ……

 とりあえずこれから先は延々と下水に潜り続ける事になるので、何か特別なイベントが起きない限り暫くカットしようと思います。

 

 

 

 はい。特別なイベントらしいイベントが発生しないまま、もうすぐ夫がオオアリクイに殺されてから一ヵ月になります。

 あの後ずっと代書業をやりつつ、下水に潜って鼠と蟲を殺し続けてました。その過程で三回ぐらい暴食鼠倒したんですが、《粘糸》で止めて油ぶっかけて焼き殺すだけでした。

 それと大黒蟲なんですが、見た目が完全にGなんで動画にすることは多分ないです。

 

 正確に言えばちょこちょこ小さいイベントはありました。朝女神官ちゃんに出会って挨拶とちょっとした会話するとか。鎖帷子買ったそうですけど何処にそんなお金あったの?

 魔術師とは一切会話がありません。心が、心が折れる……!まさかとは思うが、下水臭いのか?一応衣類買い換えたんですけど。

 受付さんを始めとするギルド職員ともたまに会話してます。槍使いさんよりは事務的ではない対応してもらってます。具体的にはこっちは軽い雑談ぐらいは出来てます。ゴブリンスレイヤーさんがいない時限定で。

 

 あ、あとバストが豊満というか凶悪な女性と出会いました。2人も。1人は槍使いさんの相方の魔女さん。テンポが独特ですね。魔法関連でお世話になれそうなので仲良くしていきたいです。

 

 もう1人は牛飼娘さん。ローテが休みの日に荷降ろししてるゴブリンスレイヤーさんを見かけて、挨拶した際に知り合いました。「奥さんですか?」って聞いたら「そうだよ」と即答されました。ただしゴブリンスレイヤーさんが同時に「違う」と否定してきたのでちょっと混乱しました。

 見かけた際は挨拶する程度の間柄にはなってます。顔見知り顔見知り。

 

 友達いねえなあ。

 

 装備の話に移ります。治癒の水薬と解毒剤は揃いました。あと強壮の水薬。これ試しに使ったら疲労が回復したので、栄養ドリンク感覚で一本は常備する事にしています。

 兜ですが、イタリア式ノルマンヘルムっぽい兜があったので購入しておきました。水滴みたいなダサ兜に、目の部分だけ開いてる顔面保護が付いてるこれですね。

 吊盾と広刃の剣も買えました。それと投石紐も。これ地味に便利です。遠距離から一発は先制攻撃出来るんで。

 板状鎧にはまだちょっと手が届きませんね。

 

 頭:イタリア式ノルマンヘルム

 鎧:革鎧

 盾:吊盾

 メイン武器:広刃の剣 サブ武器:小剣 投石紐

 所持品:治癒の水薬×3 解毒剤×3 強壮の水薬×1 死体袋 他色々

 所持金:銀貨44枚

 

 これが現在の魔法剣士君の状態ですね。

 背中に広刃の剣を背負って腰に小剣。左腕に吊盾。下水に潜る時は基本松明装備です。少しは様になってきました。

 

 レベルはあれから上がってません。ただプレイヤー的にはちょっと慣れてきました。

 油断するか運が悪いと容赦なく死にますが、運が極端に悪くなく気をつけてれば死にません。運が悪いと死にますが。

 所持品に書いてある死体袋買ったのはそれが関連してて、たまに白磁の認識票付けた無残な遺骸を発見するんですよ。可哀想なんで手間ですけど毎回回収してるんですが、死体背負うの面倒かつ動きを阻害するんで引き摺れる死体袋買いました。

 

 そして今現在なんですが、監督官さんに呼び出し食らいました。鼠とGしか倒せないならもうお前実家帰れとか言われないですよね?

 ちょっと重要なイベントっぽい感じがするので、今回はここまでにして次回はそのお話を聞くところから始めようと思います。

 ご視聴ありがとうございました。

 

 




感想返信は緊張に伴う指の震えが止まったらやりたいと思います。
嬉しくて吐きそうなんや……


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魔法剣士・裏 3

設定に無理や間違いがあったとしても、ここは別の四方世界なので問題ありません(予防線)


「代書・代読の依頼かあ……」

 

 春の夕日が差し込む冒険者ギルドの一室で、書類片手にうーんと監督官は唸り声を上げる。上の方から「適任者を見つけて斡旋するように」と言われた依頼は、本来ならば冒険者の領分ではないものだった。

 代書業に関して正規の業者が存在する以上、そちらに行くのが筋でありこのような依頼を認めればトラブルにすらなりえる。しかし今回、依頼を持ちこんできたのはその業者本人だった。

 

(まあ仕方ないよね)

 

 たまたま石畳の一部、その内部に外からでは見えないひびが入っており、たまたまそこを通りかかった馬車の重みで石畳が割れ、たまたま古くなっていた車軸がその弾みで折れ、たまたまその馬車に乗っていた業者が馬車の外に放り出され、たまたま大事な品を抱えていたために受け身を取り損なって利き腕を折った。

 致命的に運がなかった、以外の言葉がない。これだけ不運が重なるというのは何かしらの神の怒りを買ったのだろうか。あるいは神の御加護があったからこそこの程度で済んだのだろうか。

 いずれにせよ利き腕が使えなくては代書など出来るはずもなく、間の悪い事に代わりの人材も見つからなかったため急ぎの分だけでも出来ないだろうかと冒険者ギルドにお鉢が回ってきたのだ。

 やるのは急ぎではあるが重要度はさほど高くないものだという話なので、最低限信用出来る人間ならば誰でもいいという話だが……

 

「最低限じゃなくて多少複雑な読み書きが出来る教養があって、決して高くはない報酬で引き受けてくれて、適当な仕事をしない人間。簡単に言ってくれるなあ」

 

 ギルド職員ならその全ての条件を満たすのだが、残念ながらそちらに回す人手はない。むしろそんな人材がいるのなら臨時で雇って手伝ってほしいほどに忙しい。

 手数料を差し引いた報酬を考えれば、白磁ないし黒曜の仕事となる。だがその等級でしっかりした教養がありそうな人物と言うと――――

 

「……うん、二人ほどいるね」

 

 確実とは言えないが、しっかり教養が身に付いていそうな白磁の冒険者。二人ともまだ新人も新人だが、1人は仕事に対する真面目な姿勢と人格に関しては既にギルドの信用を得ている。ドブさらいでの拾得物報告は些細と言えば些細なことだったが、確実に信用へと繋がるものだった。

 先日赴いたゴブリン退治でも、一貫して善良と言える行動を取っている。それらの積み重ねはギルドから白磁等級としては格別の信用を獲得している。

 もう1人は能力において信用出来る。都の魔術学院を優秀な成績で卒業した才媛。つい先日冒険者登録をしたばかりであり人間性はまだよく分からないが、少なくとも前歴と照らし合わせて問題のある人物だとは思われない。

 

 量的にどちらか片方が受けてくれればそれでよし。二人とも受けた場合は多少安い給金でやってもらう事になるが、半日あれば終わる量なので決して割に合わないものではない。

 二人ともに断られた場合は仕方ない。もう少し上の等級から探すとしよう。そう結論付けると、監督官は次の書類へと手を伸ばす。

 今は春。冒険者ギルド最大の繁忙期。やるべき仕事は山積みで、しかも次から次へと増えていくのだ。過重労働(デスマーチ)はこれからが本番だった。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 女魔術師は何もかもが嫌だった。

 夜眠ると、ゴブリンに刺された時の事を思い出すのが嫌だった。毒が回って死にかけた時の事を思い出すのが嫌だった。剣士の惨たらしい死骸を思い出すのが嫌だった。慰みものにされた娘達の姿を思い出すのが嫌だった。

 

 そして何より、それらを思い出すと冒険者を続けようという気概が萎えてしまう自分が嫌だった。

 心が奮い立ってくれたのは洞窟の中だけで、外に出てしまえば恐怖に萎えてとてももう一度立ち向かう事などできはしなかった。ああなるのが怖い。もう一度死に直面するのが怖い。

 本音を言えばもう家に帰ってしまいたい。しかし今帰れば間違いなく笑いものだ。都の学院を優秀な成績で卒業した女魔術師が、ゴブリンに殺されかけて恐怖に駆られ逃げ帰る。優秀な人間に対する嫉妬も相まってさぞ愉快に囃し立てられるだろう。

 

 いや、それはまだいい。傷付きはするし心底嫌ではあるが、自分の行動が招いた結果だ。だが間違いなく学院に通う弟も笑いものとされるだろう。本人に非は何一つないというのに、だ。

 それらの事情が女魔術師を辺境の街に留まらせていた。そして留まる以上生きていくためには稼ぐ必要があり、ギルド側から持ちかけられた代書業は渡りに船だった。

 怪物とも冒険とも無縁で、恐怖を一切感じない。体力のない自分ではドブさらいは厳しく、日銭を稼ぐには最もよい仕事だと思ったのだ。

 

「それじゃ、2人で頑張ってね!」

「よろしくお願いします」

 

 魔法剣士と一緒の仕事だと知るまでは。

 

 正直に言ってしまえば、女魔術師は魔法剣士に対しあの洞窟に着いた段階で軽い苦手意識と対抗心を持っていた。

 自分は都の学院で努力を怠らず、魔術の修行に専念し続けた。その結果女魔術師は日に二度の術を行使できるようになり、これは己惚れでもなんでもなく客観的に見て優秀な能力なのだ。

 だが魔法剣士は魔術師だった親から習い覚えただけで、自分と同じく二度の魔術を行使できるという。しかも自分は《火矢(ファイアボルト)》しか使えないというのに、彼は《察知(センスリスク)》と《粘糸(スパイダーウェブ)》の二種類を使え、さらには剣を振って戦うだけの筋力まで持ち合わせていた。自分とそう変わらないであろう年齢で、だ。

 

 自分だけが才能があるわけでもなければ、自分だけが努力しているわけでもない。彼は彼なりに努力をしたのだろうし、それが自分より大変なものだった可能性も大いにある。

 だがどうしても面白くないという気持ちが捨てきれない。そしてそんな想いを抱える自分の小ささが嫌になる。

 

 加えてゴブリン退治でロクに役に立てなかった自己嫌悪が、女魔術師の気分をさらに暗くする。自力でやったことと言えばゴブリンを一匹焼き殺しただけ。

 その後の死体を火種として何匹か焼いたが、あれはゴブリンスレイヤーの指示と燃える水があっての話だ。別に松明でも充分代用可能であり、役に立ったとは言い難い。

 

 ゴブリンに殺されかけて心が折れてしまった自分が嫌だった。剣士の死に様を思い出して震えてしまう自分が嫌だった。ゴブリン退治で役立たずだった自分が嫌だった。逃げ出したいのにちっぽけなプライドに邪魔されてる自分が嫌だった。魔法剣士に嫉妬している自分が嫌だった。

 そんな嫌な自分を見られたくなくて、知られたくなくて。女魔術師は魔法剣士とロクに話す事も出来なかった。嫌な女だと思われてでも、醜い自分を他人に知られるのは耐え難かった。

 

 女魔術師は、本当に何もかもが嫌だった。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 所詮こんなものだ、と魔法剣士は自嘲の笑みを浮かべながら燃え盛る巨大鼠(ジャイアントラット)――――巨大すぎる気がするが――――を見やる。

 親から魔術を学び、棒振り遊びの延長で多少剣を振り回せるようになり、少しばかり物を知っている。貴族の家柄ではないが、父が貴族と付き合いがあったために自分も基本的な礼儀作法を身に付けさせられた。

 そしてある日、託宣(ハンドアウト)を受けて冒険者となった。

 

 自分はただそれだけの人間だ。

 

 1人で無数のゴブリンを倒せなどしない。相手がどんな罠を仕掛けてくるかなど分からない。窮地に陥った時的確な解決策(アイディア)を閃いたりなどしない。あらゆる事象の知識などありはしない。

 今もそうだ。《粘糸(スパイダーウェブ)》は火に弱い。火を近付ければ簡単に焼き切れる。親から飽きるほどに言い聞かされてきた。だから自分は《粘糸》について利用法も弱点も把握していると思っていた。

 だが「火に弱い」という事を利用し、「捕えた敵を焼く火種とする」などという事は思いもしなかった。あくまで敵を捕えるものという認識しかなく、その使い方しかしようとしていなかった。その呪文が使える、というだけで活用法など何も知らなかったのだ。

 

 《粘糸》で捕えた巨大鼠を松明で殴り付けた時、粘体が燃えて逃げられる可能性は考慮していた。だが粘体が燃えるという事は火の勢いが強くなり、鼠の身体を焼くなどとは想像すらしていなかった。

 無論常にこうなるわけでなく、この鼠が格別燃えやすい――――脂肪の塊であったからこそだ。そうでなければ油でもかけてやらねばここまでは燃えまい。

 だがそれに思い至ったのも実際に焼けるのを見てからで、勢いよく燃え上がるのを見た時は《粘糸》がここまで燃えるのかと思ってしまった。いくら火に弱いと言っても、単独でここまで燃えるわけがないというのに。

 

 つくづく考えが足らない。短慮で浅慮な間抜けだ。

 

 所詮自分はそんなものなのだ。自分を一党(パーティー)に誘ってくれた剣士を助けられなかった。そもそも素人同然の分際で助けられなかった、と考えること自体思い上がっている。

 特別な存在などではない。何処にでもいる只人で、たまたま託宣(ハンドアウト)が降りてきたに過ぎない。だというのに、心の何処かで己惚れていた。

 自分など燃え上がりながら飛びかかってきた巨大鼠に驚き、慌てて盾で防いでいる間抜けに過ぎない。下水道でこんな下級の怪物相手に四苦八苦しているただの新人冒険者だ。

 

 思い上がるな。忘れるな。鼠の歯を盾で受け止めながら自分に言い聞かせる。お前が真に特別だと言うならば、そもそも大金を求めて冒険者になりなどしない。特別であれば仲間を死なせなどしていない。

 

「一歩ずつだ」

 

 そう、一歩ずつ。一歩ずつ進むのだ。それならば自分にだって出来るはずだ。出来ないのなら死んでしまえ。そうして進み続ければきっと――――

 行くべきところへ、行けるはずだ。

 

 

 

――――――――

 

 

 

「その、暴食鼠(グラトニーラット)の報奨金は……」

「……出ませんね」

 

 心底魔法剣士に同情しながら、それでも受付嬢はきっぱりと言い切る。本来なら無表情で固まった彼を脇に退かすかそのまま放置して次の仕事に取り掛かるべきなのだが、気の毒すぎてどちらも出来ない。

 初めて巨大鼠駆除の仕事を請け負った魔法剣士は傷も負わず、下水の空気でやられる事もなく無事に戻ってきた。それはギルド職員として非常に喜ばしい事だった。冒険者が無事に依頼をこなして戻って来るのは何時でも嬉しい事だし、有望な新人ならばなおさらだ。

 おまけに彼は暴食鼠――――巨大鼠の亜種を討伐したという。暴食鼠は銀貨50枚の賞金がかけられている怪物であり、白磁の新人が1人で倒したとなるとちょっとした快挙だ。

 本来ならば受付嬢とて手放しで称賛し、報奨金を渡すところなのだが……

 

「その、討伐の証としての前歯がないと……」

 

 そう、暴食鼠を倒したという証。かの鼠に付いている巨大な前歯を持ってこない限り、報奨金は出せない。

 彼が嘘をつくとは思えないし、同僚に頼んで《看破(センスライ)》で確認すればより確実だ。しかしギルドの規定には沿う必要があるし、全ての冒険者の報告に《看破》を使っていたらキリがない。

 なので魔法剣士には心底気の毒ではあるが、報奨金を出す事は出来ないのだ。

 

「……今から戻って回収出来ますかね」

「たぶん他の巨大鼠や大黒蟲に死骸は食べられてしまっているかと……」

 

 騒いだりゴネたりしないのは評価出来る。厳しい事を言えばそういう生物がいるかどうかを確認するのも事前準備の一つと言えるし、それをしないのは冒険者側の責任なのだ。勿論それに納得がいかず、場合によっては暴れる者すらいなくもない。

 だがそんな事をしないからこそ、彼への同情が余計に募る。目に見えて落ち込んだ態度を出さないように堪えているのもまた哀れだ。

 駆け出しの白磁冒険者にとっての銀貨50枚といえば、生活費に充てるにせよ装備に充てるにせよ大袈裟ではなく生死を左右する大金だ。それが得られるはずなのに得られないというのは大声で喚きたくなるようなショックだろう。

 

「……次はちゃんと持ってきます」

「……お待ちしています」

 

 銀貨10枚を受け取り、頭を下げてギルドを後にする魔法剣士の背中に受付嬢は申し訳なさを込めて一礼する。

 次が、もし次があるのなら。その時は心から笑顔で渡してあげよう。そう内心で決意しながら、受付嬢は業務へと戻って行った。

 




人に話を聞くのは重要。


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幕間 新しく一緒に遊ぶ神がやってきた話

ラスト・ダンサー兄貴から感想をいただいて漏らしたりもしましたが、私は元気です。


 ここではないどこか。ずっと遠くて、すごく近い場所で。

 ころころ、ころころ、神々はサイコロを振っていました。最初は勝負だったはずなのですが、それは今や建前。愛しい世界で泣き、笑い、生き、死んでいく愛しい駒たちを眺めることの方がずっと大事で面白いのです。

 それに時々誰かが新しい遊びを考えたり、全然サイコロを振らせない変な駒が生まれたりするので飽きるという事はありません。気付いたらいつの間にかそこにいた外なる神も一緒になって、楽しく遊んでいました。

 

 そうして遊んでいたある日、アルティーエが新しい神様を連れてきました。連れてきた、と言うより遠くでこちらを眺めていたその神様にアルティーエが気付いた、と言うべきでしょうか。

 いつものように、サイコロの出目が悪くて叫びながら転がったアルティーエ。転がった先にいたその神様は、一緒に遊びたいけど遊び方が分からず遠くから眺めていたようです。

 

 遊び方も分からないし、みんなが楽しそうにしているという事しか知らない。ましてアルティーエみたいに凝った遊び方は無理だと言う新しく来た神様に、神々は笑いかけます。

 

 遊び方は教えてあげるし、遠慮せずその楽しそうにしているみんなの中に加わればいいのです。アルティーエみたいな遊び方を無理にする必要もないのです。大事なのはみんなで楽しく遊び、愛しい世界と愛しい駒たちを見守ることなのですから!

 

 こうして新しく加わった神様の為に、神々は四方世界を基にした別の四方世界を用意しました。この神様は遊んでる神々を見てはいましたが、盤の方は全く見ていなかったのです。

 駒たちの物語を見ずにいたなんて、なんてもったいない!そう思った《幻想》と《真実》はこの四方世界で、もう一度過去にやった冒険(セッション)を行うつもりでした。

 ただし、今度は新しい神様の作った駒を加えての冒険です。盤面を見てこなかったという事はこれから何が起きるか知らないと言う事です。そんな神の作った駒がいる事で、本来の流れとどんな変化が起きるのか。新しい英雄が生まれるのか、残念なことにすぐ死んでしまうのか。神々は今から楽しみでワクワクしてきます。

 

 おっかなびっくり駒やサイコロを眺めているだけのこの神も、いずれは冒険や英雄叙事詩(キャンペーン)を起ち上げてくれるようになるかも知れません。そうでなくとも、一緒に遊ぶ相手が増えるのは本当に嬉しい事なのです。

 

 そんな神々の気持ちを知ってか知らずか、新しく加わった神様は興奮した面持ちでサイコロを握りました。どうやら分厚い説明書(ルールブック)を読み終え、いよいよ駒を作るようです。初めて駒を作る時の緊張と興奮、初めてサイコロを振る時の期待と不安は周りの神様たちにもよく分かります。

 

 いよいよサイコロが振られる、というその時。不意に《幻想》が訊ねました。いったい何と呼べばいいのか、と。

 確かに呼び方がないのは不便です。アルティーエだって、誰も本当の名前は知らなくても呼び方はちゃんとあるのです。

 

 新しい神はちょっと考えた後、こう答えました。

 ジキヨシャ、と呼んでほしい。

 そう言うとドキドキとワクワクに満ち溢れた――――ここにいる神々みんなが、かつて一度はした事のある表情になるとジキヨシャはサイコロを振りました。

 

 ころころ、ころころ。こうして、また新しい駒が生まれます。つまりそれは――――

 新しい冒険の、幕開けです!




 初見という設定ですが、作者はちゃんと原作小説は全巻揃えてます。
 ので「お前初見じゃねえだろ」という部分が出てきても見逃して下さい。お願いします何でもしますから!魔法剣士君が!

 あと、みんなももっと輪に加わろう(強要)


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魔法剣士・4

※感想の方で指摘されましたが、幌馬車の屋根に乗るのはおかしいので修正しました。
なんか乗れそうなイメージしてましたけど、考えたらあるのは骨組み程度なんで厳しいですね。

追剥に関してはこれで正しいです。ゴブスレTRPGに出てくる怪物の名称なので。


 投石紐(スリング)で石を投げて、自分がいるのとは逆方向の通路で音を立てるじゃろ?

 暴食鼠(グラトニーラット)が気を取られたところで即《粘糸》使って捕えるじゃろ?

 すぐさまベルトポーチから油を取り出して投げつけるじゃろ?

 仕上げに松明投げつけるじゃろ?

 

 燃えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!

 

 はい、画面いっぱいに燃え広がる炎と共にこんにちは。実況プレイ始めて行きましょう。今後ろで流してるのは暴食鼠を焼いた時の映像です。

 松明一本と油一瓶、《粘糸》一回を使用する贅沢な行動です。燃えるというよりちょっとした爆発みたいになります。出来れば全員これで倒したいぐらいの光景ですね。

 フフ……中々いい眺めだぜ城之内……

 

 えー、これを見せているのは単純に見せたかったのと、投石紐の使い方について説明したかったからです。

 使ってるうちに気付いたんですが、相手に当てる以外にも音を出して誘き寄せたり注意を引くのに使えるみたいです。なんで使えそうな時はガンガン使って行きます。

 弾となる石はその辺で幾らでも拾えるんで、皆さんもプレイする時は是非購入してみてください。

 

 

 

 じゃあ続きやって行きます。前回監督官さんにツラ貸せって言われたところからでしたね。体育館裏に行くのかな?

 あ、普通に室内だった。談話室って書いてある。

 昇級の話?昇級ってなんだっけ……あ、等級が上がるのか。素で忘れてた。どうも功績点が一定になると上がるらしいんですけど、その一定点数が貯まったみたいですね。

 ふーん、人間性の評価もあるんだ。作中の行動で戒律(アライメント)が変化するんですけど、ステータス画面で見れる「魔法剣士君の戒律」ではなくマスクデータの「他者から見た魔法剣士君の戒律」が評価対象みたいですね。要するに表向きどう見えるかです。

 これ本人の戒律と他者から見た戒律は必ずしも一致しないそうです。表向きは善人だけど裏では混沌と繋がってる、みたいに。

 冒険者ギルドとしては秩序・善寄りの行動をしてれば高評価、混沌・悪寄りだと低評価というか最悪追放とかそういうのもあるらしいです。

 

 昇級するには実績は充分だけど、一党組んだのが一回だけなので団体行動できるかどうか怪しい。だからやってみて問題なければ昇級させてやるってことらしいです。

 そういえば一党組むの忘れてましたね。絶対に単独より効率いいのは分かってるんですけど、女神官ちゃんはゴブリンスレイヤーさんとゴブリンスレイに忙しいですし、魔術師は会話すら出来てないし、武道家は故郷から帰ってこないし……

 知らない人と話す?やだ怖い。魔法剣士君は大丈夫かも知らんけど、こちとらパリピアレルギーの陰キャやぞ。

 

 好きな人と組んでいいけど、見つからないようならギルドから紹介してくれるらしいです。

 これ知ってる。二人組作ってーって言ったら作れない子がいたから先生が組んでくれる奴ですね。うっ頭が。

 一党組むって言っても全然心当たりないんでどうしますかね。一回だけでいいんでって言ったらどっかの一党が入れてくれたり、誰かが協力してくれたりするんですかね。どうでもいいけど一回だけでいいんでお願いしますってなんかエロくありません?

 

 すいません忘れてください。

 

 正直組んでくれるなら土下座も辞さない構えなのですが、ここに来て友達どころか顔見知りすら数えるほどしかいない事が完全に足引っ張ってますね。どうしよう。とりあえずクエストボードの前行く?

 また鉢巻き君みたいないい人現れねえかなあ。彼、思い返すとイイ奴でしたね。次プレイする時は何とか生かしてやりてえなあ。

 あっ、この独特なテンポの喋り声は魔女さん。おはようございます。あれ?相談するってコマンドが出てますね。するのは無料なんでとりあえずしときましょう。

 

 ……えっ?組んでくれるんですか?槍使いさんも一緒に?

 いやめっちゃありがたいんですけど、銀等級2人と白磁が組むって無理なのでは?いや組んじゃないけないってことはないでしょうけど、レベル違いすぎてついて行けないのでは?ヤムチャが戦力ヅラしてセルゲームに参加するかの如き暴挙でしょ?

 

 こっちのレベルを考慮して依頼を受けてくれる?マジすか槍使いさん、いや兄貴!感謝の極み!はい、使える呪文も技能も装備もスリーサイズも全部教えます!あっ、冒険記録用紙持ってくればいいんですね。すぐ行ってきます!

 ありがとうございます、ありがとうございます!よろしくお願いします!とりあえず監督官さんに組んでくれる人が見つかった事と、準備とかあるかもしれないので今日は代書の仕事が出来ない事を伝えに行きましょう。

 ギルドとの関係が良好なせいか、一党組めたって言ったら応援してもらえました。用紙を貰う際、受付さんが素敵な笑顔で槍使いさんの事を「実力『は』折り紙付きですから安心してください」と言ってました。微妙に当たりキツくないスか。

 

 え?槍ニキはどう足掻いてもこの人とくっつく事はない?イベントが用意されてない?

 お前がそう言うってことは……あっこれマジなやつだ。悲しい。鉢巻き君が死んだ時の次ぐらいに悲しい。

 

 用紙見せて槍ニキの質問に幾つか答えたら、すぐに依頼決めてくれました。護衛の依頼です。街からだいたい半日の距離にある村、そこに続く道の途中の森で最近追剥が出没してるらしく、念のために馬車の護衛を雇いたいそうです。

 報酬は銀貨120枚。6人で受けた場合は1人頭20枚なんで、だいたい鋼鉄等級向けの依頼ですね。

 ふむふむ。逃げ延びたり身包み剥がされるだけで済んだ人の報告によると、追剥の人数は毎回5,6人で主に1人の旅人や行商を狙うと。そして武器や防具は結構新しく、兜なんかは装備していない。つまりどういうことかって?

……あっ、時間制限付き選択肢だ。

 青文字で「追剥は恐らく元新人冒険者」ってのと、いつものと同じ文字で「追剥はそこまで強くない」の二択か。なんかどっちも妥当。あ、こういう選択肢ってキャラの能力や経験で変化するしそもそも出てこなかったりするんだ。へー。

 文字色が変わるのは能力や経験が条件満たしてるから出てきたって証なのか。凄い凝ってるな。

 

 とりあえず「追剥は恐らく元新人冒険者」を選びましょう。わざわざ特別な選択肢出てくるってことはきっといい選択肢なんでしょう。

 あっ、褒められた。やっぱ正しいんですね。装備が新しいのと5,6人っていう一党の人数なのがヒントなんですね。あーなるほどね完全に理解した(わかってない)

 なるほどなるほど、だから白磁がいてもイケるって踏んだわけですね。相手は実質白磁、多少経験を積んでも黒曜相当の冒険者6人相手だと。

 そもそも襲われない可能性だって大いにあるわけですからね。討伐依頼じゃないのでそれならそれでよしと。ギルドの面子に関わるんで遠からず討伐依頼は出るだろうけど、深刻な被害が出てるわけでもないし少し先になるだろうとは槍使いさんのお言葉。

 護衛が見つかったなら今日にでも出発したいそうなので、急いで部屋に戻って装備整えてきましょう。あ、あと魔術師に声かけときましょう。会話した事がなくても同僚みたいなもんなんで。

 

 ……この一ヵ月で魔術師から初めて会話というか返事が貰えた。「気をつけなさい」の一言だけだったけど、大いに前進した。なんせスタートがマイナスだから。なのでヨシ!

 

 手早く装備を整えて、槍ニキと魔女さんと並んで商人のいる場所へ向かいます。新人にしては様になってるとお褒めの言葉をいただきました。もっと褒めてくれ。

 このデb……恰幅のいい……デブが依頼人みたいです。こんちわー冒険者ギルドの方から来ました。消火器買ってくださーい。

 

 いやー、反応面白いですね。槍ニキの認識票を見て驚きと安心が混ざった表情になって、魔女さんの豊満というか凶悪な部分へと目線を向けて頬を緩ませ、魔法剣士君の認識票を見てなんで場違いな奴がいるんだって表情になりました。

 失礼極まりないですが、まあ銀等級見た後白磁見たらこうなりますよね。気にしない気にしない。気にしないから後でちょっとツラ貸せや。

 幌馬車の周りを囲むようにしながら歩いていくそうです。半日歩くけど大丈夫かと依頼人から適度にイラッとするニュアンスで言われましたが、こちとら【忍耐】【長距離移動】持ちぞ。

 槍ニキの慰めが沁みる。まあ新人だとそんなもんですよね。

 

 へー。認識票や身だしなみ、容姿だけでなく装備とかによっては相手に与える印象が変わるんだ。隠しパラ?ふーん。

 革鎧ってそんな評価悪いの?あー、鎧だけ金属じゃないから微妙にちくはぐな感じになってるのか。兜もイマイチ?顔出さないのは自信なさそうに見られたりするんだ。色々あるんだなあ。

 ああ、ゴブリンスレイヤーさんが銀等級なのに微妙に侮られるのはその辺もあるのか。装備自体は新人と大差ないし、綺麗でもないから。

 

 まあこのファットマンの事は気にしない事にして、いざ出発しましょう。一ヵ月ぶりに下水以外での冒険です。予定では日が沈む前に村まで行って一泊、早朝出発して日のあるうちに街へ帰還するそうです。

 馬車の左側に魔法剣士君、右側に槍ニキ、荷台に魔女さんが乗って周囲を警戒していきます。魔女さんは《矢避》使えるんでよほどうまく奇襲されない限り、飛び道具の心配はないそうです。頼れるぅ。

 ……おぉ、槍ニキめっちゃ話しかけてくるやん。コミュ力高い。怖い。でも可能な限り応答しましょう。コネ作ろうコネ。こういう人と仲良く出来ないと、休み時間教室の隅でずっと寝てる事になるぞ。

 

 てか、会話の内容チュートリアルかってぐらい親切~。護衛依頼の経験がないのは確認済みだからと、護衛の際の注意点や疲れにくい歩き方、襲撃を受けやすいポイントまで教えてくれましたね。

 さてはこの人面倒見いいな?こういう人には寄生していきましょう。知識も経験も足りてないんで教えてもらえるなら全部教えてもらいます。

 聞く!教えてもらう!聞く!よーし向こうも適度に気分よさげに答えてくれてますね。馬車に乗ってるファットマンはギリギリアウトな発言を魔女さんにしてますが、スルーされてます。コイツ処されてほしいなあ。

 あ、槍ニキ受付さんの話を始めた。総員、気分を害さない程度に適当に付き合う準備!

 

 この人、人の美点見つけるの上手いな。なんでそんな次々受付さんの素晴らしい点が出てくるの?

 

 一通り槍ニキによる受付さん賛美を聞き流したところで、質問が飛んできました。いい人いないのかって?魔法剣士君出自で婚約者引いたからリア充ぞ?

 意外、って顔されました。というか言葉にされました。ですよね。おう馬車に乗ってるファットマンがそんな顔すんのは失礼だぞ。直で言われて特に何とも思わんのは槍ニキの人徳あってこそだぞ。

 

 お、森が見えてきました。槍ニキが話上手なのもあってか魔法剣士君は特に疲労していませんね。ですが入る前に見晴らしのいいポイントを見つけて小休止を挟むそうです。

 ちなみにこの作品、こういう休憩する時装備を下ろしたり防具の留め金を緩めたりしないとあんまり回復しません。一回装備付けたまま寝たら疲労度が全く回復せずビビりました。なんで休憩中は兜外して盾と広刃の剣を下ろし、防具の留め具を緩めます。

 槍ニキ曰くもっと遠出、それこそ遠征するような場合はこういう時や野営の際に食べたり飲んだりする嗜好品があるといいそうです。楽しみがないと人間やってられないし、疲労を取るのにいいそうです。めっちゃ勉強になるやんこの人の話。

 それと警戒するのは当然として、緊張しすぎるのも良くないと。油断はせず緊張もせずがコツだと。難しくね?

 お、小休止終わりましたね。さていよいよ森に入って行きます。追剥以外にも獣が出る可能性が0ではないらしいので、気を付けていきましょう。

 

 

 

 気を付けていきました(過去形)

 カット挟んだのでお察しだと思いますが、なんのイベントも得られませんでしたぁぁぁぁぁぁぁ!ずっと槍ニキと話してました。ちなみにファットマンは魔女さんに下心を隠そうとしてる、と思ってるのは本人だけな感じで喋りかけて流されてました。ざまあ。

 村に着いて善意で荷降ろし手伝おうとしたんですが「お前くすねる気だろ」みたいな目で見られたので止めました。

 自由時間となったので、魔法剣士君には槍ニキから教えていただいた心得をメモ帳に纏めてもらってます。文字が書けるとこういう事も出来るようです。やっぱ学問を身に付けるって大事。

 絶対この先「あ、これ槍使いゼミでやったところだ!」ってなりますからね。ちゃんと忘れないようにしておきましょう。

 

 そして本日の仕事が終わって宿に来たわけですが、宿って言うか村の酒場ですね。酒場の二階に何人か泊めれる部屋があるって感じです。

 二部屋しかないと言われた直後、魔女さんに部屋を譲り自分は廊下でいいと言ってのける槍ニキ。やだイケメン。はい、ご一緒します。

 食事は経費だけど、酒とか贅沢品は自腹だそうです。じゃあ食事だけにしときますね……えっ、奢ってくれるんですか!槍ニキ聖人か?

 一杯だけ?分かってます分かってます。明日も護衛ですもんね。

 

 ……あれ?なんかディスプレイ壊れた?それともバグった?なんだこれ。

 あ?右下に注目?なんか表示が……魔法剣士君、酔っぱらってますねぇ!マジかよ一杯飲んだだけだぞ!テニサーの飲み会みたいに一服盛られたわけじゃないのに!

 

 こういう所の酒はたまに悪酒に当たる?もっと早く言ってくれない?……また分かってて黙ってやがったな!鬼!悪魔!鬼舞辻無惨!……言い過ぎたごめん。

 それにしても酔いが早すぎない?え、多分酒に弱い?マスクデータでそういうのまであるんだ……厄介すぎる。

 

 槍ニキと魔女さんが気付いてもう休むように言ってくれました。申し訳ない。あれ部屋?ああ、ファットマンのセクハラから魔女さんを守るための方便で、実際は一部屋に三人泊るんですね。ベッド3つあるし。

 あ、二日酔いとかあるの?怖っ。そうならないよう祈りつつ本日はこのまま寝ましょう。キリもいいので今回の動画はここまでとします。

 ご視聴ありがとうございました。

 




槍ニキの事は好きです。でも相性的に受付さんとの可能性はないかなって……


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魔法剣士・裏 4

Q.槍ニキ都合よすぎない?
A.6巻で面倒見いいって言われてたから、拡大解釈しました。


「つまり、念のために適性を見るって感じだね」

 

 足を崩したり広げたりせず、行儀よく椅子に座っている魔法剣士に対し笑顔を向けながら監督官は告げる。

 昇級に関する話をしているというのに魔法剣士はいつも通り表情を変えずにいるが、まあ彼はそういう人間なのだろう。同僚の想い人である、いつもゴブリンゴブリン言ってる変な冒険者に比べれば普通の範疇だ。

 魔法剣士が冒険者登録をして一ヵ月と少し、白磁から黒曜への昇級速度としては中々に早い。だがこの一ヵ月で巨大鼠(ジャイアントラット)大黒蟲(ジャイアントローチ)退治の依頼をこなし続け、暴食鼠(グラトニーラット)を3度―――それも、全て単独(ソロ)で討伐した事を考えると妥当な判断だ。

 また実力だけでなく、下水で消息不明になっていた冒険者の認識票や遺骸を回収してくる人間性も評価対象にされていた。冒険者登録したばかりの頃にやっていたドブさらいでの行動や、ゴブリン退治に赴いた時の行動は紛れもなく善の戒律のそれであり文句の付けようがない。

 

 これだけ見れば何の問題もなく昇級させれるように思えるが、ただ一点懸念が残っていた。一ヵ月前に赴いたゴブリン退治、それ以外魔法剣士は単独で依頼をこなしており一党を組んでいないのだ。

 ゴブリン退治に関する報告を見る限り問題はなさそうだが、万が一という事もある。他人と歩調を合わせて行動できるかどうか、一度確認して問題なければ昇級させよう――――それがギルドの出した結論だった。

 

「一党を組む相手は誰でもいいし、どうしても都合がつかなかったり見つからない場合こっちから斡旋するから」

「分かりました」

 

 魔法剣士が丁寧に一礼して、静かに退出していく。その背中を見送りながら、監督官はふと思い当る事があった。

 

――――彼、一党組める相手いるっけ?

 

 最初の一党は頭目である剣士を失い解散。剣士の幼馴染である女武道家は、故郷に報告の為戻っておりまだ帰還していない。女魔術師は代書の仕事を彼と一緒にこなしているが、彼と違いこの一ヵ月他の依頼を受けておらず復帰するかどうかは微妙だ。

 女神官は冒険者を続けているが、変なのことゴブリンスレイヤーについて回っておりとても組む暇がないだろう。魔法剣士の方がゴブリンスレイヤーの一党に加わるなら話は別だが。

 

「……うん、まあ大丈夫だよね」

 

 この一ヵ月で誰かしら顔見知りの冒険者が出来ているだろうし、いないとしても誰かと組む事は出来るはずだ。本当に全くいないならギルドの方で何とかする。

本当はそういった知己(コンタクト)が作れるかどうかも冒険者としては大事なので、自力で何とかしてほしいのだが。

 いずれにせよ、魔法剣士がつつがなく昇級する事を願おう。中堅どころのベテランが不足する昨今、彼のように善良で真面目、かつ見所のある新人には順調に育っていって欲しいものだ。

 

 もっとも、どれだけ見所があろうとも、才能があろうとも、慎重で周到であろうとも。全ては神々の骰子(サイコロ)次第ではあるのだが。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「俺は構わないぜ」

 

 魔女の提案に対し、槍使いは承諾の意を示す。それを聞いた魔法剣士は少し遠慮を見せるも、丁重に頭を下げ感謝の言葉を述べる。頭を下げればいいというものでもないが、こうしてしっかり礼を言えるというのは大事だ。少なくとも槍使いはそう思っている。

 白磁の新人が昇級の為に一党(パーティー)を組んでくれる相手を探す。本来なら白磁同士、もしくは黒曜か鋼鉄辺りと組むのが普通だろう。自分も直接頼まれたならあまりにも実力が違いすぎるからよしておけ、と断っているところだ。

 

 しかし幾つかの要因が槍使いを引き受けても構わない、という気分にさせた。魔法剣士を誘ったのは相棒である魔女の方からであり、彼女が面倒を見てやろうというのならばそれに付き合うのはやぶさかではない。

 また魔法剣士は冒険者の間ではともかく、ギルド職員の対応などを見るに多少は期待されているようだ。そんな新人の面倒を見るというのは、意中の相手である受付嬢へのアピールになるだろうという打算がある。

 そして当の本人たる魔法剣士。彼の応答を見るに人格面で問題があるようには思えず、キッチリと礼も言えて変に跳ねっ返ったところもない。悪印象を抱くような人間ならお断りだったが、これなら一度ぐらい冒険に付き合ってやってもいいと槍使いに思わせた。

 

(盗賊団退治したばっかで少し休みを入れたいところだったしな)

 

 白磁等級に付き合って、軽い―――油断するわけではないが、簡単な依頼をこなす。気分転換にはちょうどいいだろう。

 

「礼はいいから受付さんに頼んで、冒険記録用紙持って来てもらいな。お前さんの技能を見てどんな依頼を受けるか考えなきゃならん」

「すぐに持ってきます」

 

 興奮や緊張した様子はなく、落ち着いた声で返事をすると魔法剣士は小走りにカウンターへと向かう。受付嬢と話す途中で魔法剣士がこちらを示すような素振りをし、彼女と目があったので笑顔で手を振る。スッと目線を外されたが挫ける事はない。こういうのの積み重ねが大事なのだと槍使いは信じている。

 受付嬢だけでなく監督官とも何やら話し、それから魔法剣士が用紙を持ってこちらへ戻って来る。職員の魔法剣士に対する対応は他よりも柔らかく、確かにギルドの方から期待されているのが槍使いには分かった。

 

「持ってきました、どうぞ」

「おう」

 

 手早く確認すべき項目を見る。前衛なのか後衛なのか。魔法や奇跡が使えるのか。どんな技能を有しているのか。どんな依頼をこなしてきたのか。

 

「お前、二度も魔術を使えるのか」

「はい」

 

 ほう、と槍使いは魔法剣士の顔を感心しながら見据える。この年齢で二度の術を行使できるのはかなり優秀な魔術師の資質があると言っていい。二種類の呪文を使えるというのも立派なものだ。

 加えて剣と盾を扱えるという。勿論新人の範疇ではあるだろうが、自分が思っていたよりも随分優秀な男らしい。勿論「技能がある」から「技能を活かせる」とは限らないのだが、あるとないとでは大違いだ。

 

(これなら多少難しい討伐依頼でも……いや、ゴブリン退治はしてるし下水で鼠や蟲を狩ってるからその辺の経験は多少積んでるか。ならもっと別の経験を積ませてやるべきだな)

 

 探索系を受けてやるか。いや、それだと自分や魔女がだいたいの事をこなしてしまい経験にはなるまい。少し遠くへ行く依頼にするか?それは体力差が出すぎてしまう可能性があるし、自分達も疲労が溜まりそうな依頼を続けて受けるのはあまり良くない。

 なら近場で、なおかつ一日か二日ぐらいかかるようなものがいい。長距離の移動や旅をする際の注意点を説明しながら体験させれるし、野営するにしても宿に泊まるにしても経験を積ませてやれる。

 となれば隊商か行商人の護衛か。そういった依頼の経験はないようだし、その辺の注意点も教えてやれる。勿論自分が教える事全てをこの一回の依頼で理解し吸収するのは無理だろうが、一度でも経験があればこの先役に立つだろう。

 

「よし、これにするぞ」

 

 クエストボードを眺め、あつらえたかのように条件に沿った依頼があったのを見つける。近くの村までの馬車護衛依頼。鋼鉄等級ぐらいが受けるべき依頼だが、魔法剣士なら問題はないだろう。

 魔女に依頼書を見せた後、魔法剣士にそれを渡す。そこに書かれている情報から何が読み取れるか、何に気付けるかのテストだ。

 

「……追剥(ブッシュワッカー)は恐らく、元冒険者――――それも、新人だと思います」

「ほう。根拠は?」

「まず装備が新しいというのは買ったばかり。新人冒険者の特徴です。勿論冒険者だけが買うわけではないですが……追剥をするためにわざわざ装備を整える人間がいるとは思いません」

「まあその通りだな。だが脱走して来た兵士って可能性もあるぞ?」

「兵士なら兜を被っているはずです。工房で冒険者は見栄えを気にして兜を買う人間が少ないと聞いたので、全員が兜をしていないというのは新人冒険者の可能性が高い……と、思います」

「なるほどな」

「また、5,6人で1人を囲んでも時々逃がしているというのは経験が浅い証拠になります。同じように経験が浅くても、兵士なら集団で囲むのは基本なのでもっと上手くやるんじゃないかな、と」

 

 いい読みをしている。素直にそう思う。まだまだ足りない部分は多いし、断定しきれないのも経験が足りていない。だが新人でこれだけ読み取って考えれるのは合格点をやっていい。

 

「5,6人ってのは一党の人数だしな」

「あっ」

 

 槍使いの指摘に、魔法剣士が期待通りの反応を見せる。ニヤリと笑いかけながら、槍使いは言葉を続ける。

 

「まあ読みはおおよそ合ってんだろ。理想とあまりにも違う現実に不平不満が溜まって、破落戸(ゴロツキ)や追剥になった新人だろうな」

 

 この手合いは毎年少なからず生じる。夢や理想、野望を持って冒険者になったはいいがやる事はキツくて汚くて安い仕事ばかり。

 あるいは簡単なはずの仕事でしくじり、自分の失敗を認められずに不貞腐れる。そして酒やら賭博やらで鬱憤を晴らすうちに金もなくなり、故郷にも帰れず悪事に手を染める。

 迷惑な話だ。旅人や商人は言うに及ばず、その道を利用する人間が少なくなれば村も困る。そして冒険者、特に魔法剣士のような白磁や黒曜といった駈け出しは風評被害を受ける。万人が迷惑を被るわけだが、この手の連中は自分達こそが最たる被害者だと思い込んでいるからタチが悪い。

 

「ま、そのうち討伐依頼が出されるだろうがもう少し先だろうな。もう少し被害の件数が多くなるか、大きな被害が出るか。誰かが依頼するかギルドが依頼を出すか、どちらにせよまだ先だ」

 

 放っておいていいわけではないが、他に優先すべき事が多すぎるというのが実情だろう。人的資源(リソース)は有限なのだから重要度の高いところから割り振られるのは仕方ない。

 

「つー訳で、この依頼受けるぞ。依頼人はすぐにでも出発したいようだからさっさと装備取ってこい」

「分かりました」

 

 早足で二階に駆け上がって行く魔法剣士の背中を見送っていると、魔女がクスクスと笑いかけてくる。

 

「随分、面倒見、いいの、ね?」

「元はといえばお前が持ちこんだんだろうが」

 

 そう、別に自分からやろうと思ってやっている事ではない。もう少し手を抜いたところでバチは当たらないだろうが、それは自分の矜持と経歴が許さないだけだ。

 何せ槍使いと言えば在野最高位の銀等級にして、辺境最強の冒険者なのだから。それが新人教育の一つもまともにこなせないなど、あってはならないのだ。

 それが、銀等級にまでなったものの責務というものだ。

 

 

 

―――――――

 

 

 

 どうすればいいのだろう。女魔術師は答えの出ない自問自答を繰り返す。

 彼――――魔法剣士は遂に黒曜級への昇格を控えているという。それに相応しいかどうかの依頼を受け、遠出をするので今日明日は代書業を受けれないという報告を直接受けた。

 それに対して自分が言ったのは「気をつけなさい」の一言のみ。知らぬ仲ではないのだから、激励ぐらいしてやるべきだろうに。

 

 片や同期の中では最も早く昇級を控え、今回限りとはいえ銀等級と組んで依頼に挑む。

 片や代書業で食い扶持を稼ぎ、日がな一日ギルドで腐っている。

 

 自己嫌悪で腐りきってしまう前にどうにか結論を出すべきなのは分かっている。だがその結論をどうすれば出せるのかが分からず、女魔術師はダラダラと日々を重ねてしまっていた。

 加えて先日受付嬢からもたらされた提案が、女魔術師の心を激しく揺さぶっていた。

 

「ギルドの職員になりませんか?」

 

 代書業をつつがなくこなす女魔術師の処理能力と教養、仕事に対する姿勢。そして経歴とそれに見合った知力。それらから適性があると判断されたらしく、もしよければ転職しないかと勧誘を受けた。

 決して悪い提案ではない。冒険者ギルドの職員とは基本的に教育を受けた貴族の子女、その中でも優秀な人材で構成されており、普段は意識されないが身分としては国家に仕える文官に当たる。冒険者である自分が採用されるというのは、それだけ優秀な人材であるという証明となる。

 この道を選ぶならば、恐怖と向き合う必要も無くなる。逃げ帰り他者からの嘲りを受ける事もない。弟にも迷惑はかからない。

 勿論採用されたからやっていけるとは限らないし、そもそも採用前の研修で落とされる可能性もある。だがそこは自分の努力次第だろう。

 

 もしも一日、たった一日この話を持ちかけられるのが早かったら。女魔術師は間違いなく喜んでこの話を受けていただろう。

 だが魔法剣士の出立を見送り、午前中の仕事を終えた所で出会った人物がこの話を受ける事を躊躇させる。

 

「あたし、冒険者続けることにしたんだ。上手くやれるかはわからないけど……やっぱり、人を助けたい」

 

 故郷から戻ってきた女武道家は、真っ直ぐな瞳でそう言った。怖くはあるが、逃げたくはないと。最初に抱いた夢を諦めたくはないと。

 まずは出来る事からやっていく。そう言ってドブさらいの仕事を受けた彼女の姿は、あるいは魔法剣士以上に妬ましく思えた。

 

 最初に組んだ一党の中で、立ち止まっているのは自分だけ。どうすればいいのだろう。

 いや、どうすればいいのかは分かっているのだ。もう一度歩き出すか、別の道を歩き出すか、後ろを向いて戻るか。どれも出来ない事ではない。

 どれを選ぶのも自由。どれを選んでも自分の責任。だがどれかは選ばねばならない。しかし、決める勇気がない。

 

 どうすればいいのだろう。結論が出ず振り出しに戻ってきた思考を振り払うように、女魔術師は頭を左右に振る。どうすればいいかは分かってる。問題は自分がどうしたいのか、だ。

 その時不意に――――それこそ、霊感(インスピレーション)というやつだろう――――脳裏に閃くものがあった。自分で決められないのならば、いっそ神々に任せようと。

 ある種の自棄にも思えるが、自分の意志で以って委ねるならばそれは選択の一つだ。どのような結果が出ようとも受け入れ、その道を歩く。たとえどれほど厳しい道だとしても。

 そう、それが自分の決断だ。決断はしたのだから、後は行動だけすればいい。女魔術師は確固たる決意を持つと、骰子を握り締め――――

 

 己の運命を委ね、振った。

 

 

 

――――――

 

 

 

 臭う、というのが槍使いの抱いた、依頼人に対する印象だった。

 物理的に臭って来るのではない。冒険者として積んだ経験と知識が、あまりにも胡散臭いと訴えかけてくるのだ。

 恰幅が良く、中年と言うべき年齢に差し掛かっている商人――――別に珍しくはない。ただ商人と言うには、あまりにもこの依頼人はおかしな点が多い。

 自分の認識票を見て安堵の表情を浮かべるのは分かる。その後に魔法剣士の認識票を見て訝しむのも分かる。魔女の容姿に見惚れるのも男として分からなくはない。

 だが、それを隠そうとせず態度に出し続けるというのは解せない。商人ならばそういった感情を――――隠しきれるかどうかは別として――――内側に秘めておくものだ。最初に出してしまうのは仕方ないとしても、その後は速やかに表面を取り繕うのが商人だ。

 

 だというのにこの依頼人は、未だに己の欲望を隠そうとしていない。一応丁寧な言葉使いこそしているが、その中に尊大な態度が見え隠れしている。

 そして自分が露骨に魔法剣士に対し新人指導を行っているというのに、気にする様子もない。鷹揚な性格でないのは既に見てとれており、これは単純にこちらへ興味を示していないだけだ。この男が見ているのはもっぱら魔女の容姿だけだ。

 銀等級の冒険者への信頼と言えなくもないが、この周囲への関心のなさと自分の感情の隠さなさはとても商人とは思えない。

 

(きな臭い、ってほどじゃねえけど)

 

 警戒はしておいた方がいいだろう、と心に留めつつ、槍使いは魔法剣士への講義を続ける。足手まといになられるのも嫌なので注意点を指摘し始めたのだが、相手が意外に聞き上手だったためについつい興が乗って本格的な指導になっていた。

 周囲を警戒しつつ歩きながらではあるが、聞き流さず一々相槌を打つ。ただ聞くだけでなく、時折自分の中で引っかかったであろう点を訊ねてくる。その質問に返答するついでに、関連した注意点などを教える。

 人の話をしっかりと聞き、ただ聞くだけでなく考える。そういう相手に物事を教えるのは存外やりがいがあるものだ。ましてやこの依頼の間は同じ一党、少しでも物の役に立つようになる方がいいに決まっている。

 

 馬車の荷台に陣取る魔女が何やら生温かい視線を送って来るが、槍使いはあくまで自分の利益になる事をしているだけだ。依頼が終われば魔法剣士が受付嬢に自分の事を良く報告するだろうという打算もある。

 彼女の姿が頭に浮かんだことと、そろそろ魔法剣士も一度に頭へ詰め込める量は限界が来ただろうという判断から槍使いは話題を受付嬢の事に移す。彼女のどんな点が素晴らしく、どのような事が魅力的かを思いつくがまま―――流石に言えないような事は言わず―――喋る。

 兜についた顔面保護の為に魔法剣士の表情は読めなかったが、おおよそどんな表情をしているかは分かる。だがこういう点を見せてやることで親しみやすくし、緊張をほぐしてやる必要もあるのだ。

 

 何より、彼女の素晴らしさを語ってやるのは楽しいのだ。

 

「そういや、お前はいい人いねえのかよ」

 

 一通り語ったところで、魔法剣士に問いかける。まだ駆け出しでそんな余裕はない可能性が高いが、いつも一緒にいるというあの女魔術師との関係は気になるところだ。

 

「一応、婚約者がいるにはいます」

「はぁっ?」

「父が親友と約束したそうで。子供同士の歳が近ければ娶せると」

 

 あまりにも想定外の返事に変な声が出る。婚約者だと?貴族や豪商の家柄ならそういうこともあるだろうが、この男は物腰こそ丁寧だがそういう家柄だという印象は受けない。

 勿論自分の見当違いという可能性はあるが、それならそれで何故冒険者などやっているのだという話になる。

 

「何だお前、家の決めた相手が嫌で逃げてきた口か?」

 

 槍使いが口にしたのは女性冒険者にはありがちな理由だが、男性の方にもないとは言えない。女が相手を嫌だと思う権利があるならば、男にもあってしかるべきだ。

 

「いえ、そういうわけではないのですが」

「ふうん」

 

 この男にはこの男の事情があるのだろう。興味は惹かれるが、あまり人の事情に立ち入るものでもない。

 そこでこの話題を打ち切ると、槍使いはまたこの新人への指導を再開していった。

 

 

 

――――――

 

 

 

「ったく、酒がダメなら先に言えよ」

「すまない……」

 

 たった一杯の酒で酔い潰れ、酩酊した魔法剣士に肩を貸しながら槍使いは部屋の戸を開ける。

 何事もなく村に着いた祝いと、適度に交流を深めるために酒を奢ってやった結果、魔法剣士は一杯飲んだだけで酔いつぶれたのだ。この村の地酒とやらが悪酒だった可能性もあるが、それにしても弱すぎる。

 

「おら、もう寝ろ」

「そうする……」

 

 ベッドに寝かせてやると、力のない声で返事が返って来る。二日酔いにでもなったら厄介だが、強壮の水薬(スタミナポーション)も持ってきているようだし問題はないだろう。

 あの丁寧な口調が無くなっているが、要は意識的にそういう言葉使いをする余裕がなくなり地が出てるのだろう。

 

「そういやお前、なんで許嫁がいるのに冒険者やってんだ?」

 

 別に返事を期待したわけでなく、半ば独り言のように槍使いは疑問を口にする。何がしかの事情はあるのだろうが、いい相手がいるのならば堅気の仕事に就くべきだろう。

 駆け出しの頃の自分のように読み書きすら出来ないような人間ならともかく、この男は代書屋が勤まる程度には学があるはずだ。仕事など多少選り好みしたとしても幾らでも見つかるだろうに。

 

「……金が要る。大金が」

 

 静かで堅く、淡々とした言葉が返って来る。この男には似つかわしくない俗物的な理由に少しばかり槍使いは驚くが、ある事に気付く。

 コイツは今「欲しい」ではなく「要る」と言ったのだ。言葉を大事にする呪文遣いは、こういった些細なところでも言葉を慎重に選ぶ。つまり「金持ちになりたい」とかではなく、「何かに使う金が必要」だという事だ。

 

「何に使うんだよ」

「……婚約者の父に言われた。持参金が要る、と」

 

 黙って続きを促すと、独り言のように――――実際殆ど独り言に近いのだろうが、魔法剣士が続ける。

 

「父が病で亡くなり、生前の借金を返したら財産など何も残らなかった。それを見た彼女の父に、親友の息子とはいえ何も持たない男に娘はやれないと言われた。もっともな話だ。だから金を稼ぐことで、能力がある事を示してくれと言われた」

「ああ。それで愛しいあの子と一緒になるために金が要るわけだ」

「違う」

 

 感情の籠ってない声ではあるが、ハッキリと否定してくる。槍使いが訝しんでいると、魔法剣士は言葉を重ねる。

 

「俺は――――愛だの恋だのが分からない。彼女を、婚約者を愛しているのかどうか分からない」

「じゃあなんで金稼ごうとしてんだ」

 

 命を賭して冒険者という職業で一攫千金を狙う。愛のない婚約者の為にそんなことをしているのだとすれば、コイツは狂人だ。

 

「待っている、と言われた」

「あ?」

「彼女は、待っていると言った。待ってくれているならば、応えてやらないといけない。そう思った」

「……」

「俺は、そういう……役割を果たすことしか、出来ない」

 

 魔術師の息子だから魔術を学んだ。「魔術師の息子」とはそういうものだと思ったから。父が許嫁を決めてきたから従った。「息子」とはそういうものだと思ったから。

 待っていると言われたから、命賭けで金を稼ぐ。「婚約者」とはそういうものだと思ったから。

 

「だから俺は……金を……」

 

 言葉は途中で途切れ、代わりに寝息が聞こえてくる。先程までとは打って変わって、年齢相応のまだあどけない寝顔を見せる魔法剣士の姿に槍使いはため息を吐いた。

 

「馬鹿が。お前自分の本心を分かってねえよ」

 

 恐らくコイツは自分の事を役割を果たしているだけだと、義務感で動いているだけだと思い込んでいるのだろう。だが槍使いに言わせればそうではない。人間、そんな義務感だけで動き続けれるほど単純には出来ていない。

 何故そんな道を選んでやり続けられるのか?答えは単純だ。

 

「楽しいから」だ。

 

 親の期待に応えるのが楽しかったのだろう。親の望みを叶えてやるのが楽しかったのだろう。そして今、婚約者の期待に応えようとするのが楽しいのだろう。

 そして命懸けで期待に応えようとする相手の事を愛しく思ってないなどとは、本当にコイツは自身の気持ちを分かっていない。槍使いに言わせれば、コイツがやってるのは最上級の愛情表現だ。

 賢い頭をしているくせに、驚くほどに馬鹿なやつだ。

 

「……ま、悪くねえんじゃねえの」

 

 愛する女の為に一攫千金を求め、命懸けで冒険に挑む。悪くない物語だ。少なくとも槍使いは興味を惹かれた。

 自分は自分の為に冒険に挑む。だからコイツの力になってやろうとか、尽くしてやろうなんて気はさらさらない。

 しかし――――コイツの物語が「めでたしめでたし」で終わるように祈ってやる事は出来る。多少知恵を貸して経験を伝えてやる事は出来る。そのぐらいはやってやりたい。

 

 自分は英雄になりたかった。どんな物事も1人で解決してしまえるような、強い英雄にはなりたかった。そしてもうそんな英雄にはなれないと、そんな物語は自分に与えられていないと気付いている。

 ならせめて、まだ可能性のある――――物語が与えられているかもしれない人間がやりたいことを、自分の力でやれるようにしてやりたい。

 

「……柄じゃねえのは分かってるけどよ」

 

 小さく呟いて、槍使いは魔法剣士を起こさぬようそっと部屋を出る。何だか無性に魔女と一緒に飲みたい気分だった。

 




Q.魔法剣士君酒に弱すぎない?
A.一ヶ月間酒飲む余裕なんてなかったので、久しぶりすぎて効きました。


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魔法剣士・5

ストック作って投稿してないので、そろそろ週一ぐらいの投稿になると思います。


 はい、じゃあ今回も始めていきましょう。

 

 宿酔(ふつかよい)になることもなく、万全の状態で目覚めました。しかしセットした時間に起きれる魔法剣士君はともかく、槍ニキも魔女さんも早起きですね。

 身支度整えて朝食摂ったら出発準備しましょう。行きは何もなかったけど帰りもそうとは限らないんでね。

 というか帰りの馬車には何も積まねえの?効率悪くね?さてはこのファットマン、大航海時代とかやってないな?二点間交易は基本ぞ?

 

 槍使いゼミ二日目を受けながら帰り道を進んでいきます。なんかご機嫌っすね、槍ニキ。いい事ありました?

 基本は昨日の復習で、時々問題出されますがメモを取ったのが功を奏したのか魔法剣士君が勝手に答えてくれます。賢ぉい。

 しかし本当に平和ですね。これは帰り道も特に何事もなく終わる感じですかね。撮れ高なさ過ぎてしんどい(本音)

 

 移動中やる事ないんで先の話をしますが、初回で言ったゴブリンとの合戦でしたっけ?そこまで行ったらこのシリーズは最終回です。それがどのぐらい先の話なのかは知らないんで、とんでもなく長くなる可能性はありますが。

 その先があるとしても個人的に続けはしますが、たぶんその後を動画にはしません。

 代わりに次のキャラ作ってまた最初からやろうと思ってます。とりあえず今度は鉢巻き君を救うのを第一目標とします。動画全体の目的はまだ考えてないんですが、何かしらの実績解除を目標にしてやるつもりでいます。

 出生で貴族選んでマネーパワーでごり押すとか、そういう手段を選ばないプレイになるかもしれませんが。金は力なり。

 

 さて森に入って行きます。実は行きの時も《察知(センスリスク)》使おうとしたんですが、槍ニキに止められました。今の魔法剣士君だと効果が長くて10分しか持たないんで、使うならもっと襲撃を受けやすそうなポイントで使えと言われました。

 襲撃を受けやすそう、ではなく襲撃を受けにくいポイントは入口と出口だそうです。理由は単純で、襲われたらそのまま進むか戻るかして道沿いに逃げられてしまうから。襲われて逃げてこれた旅人は入口か出口付近で襲われたらしいです。なので入る直前に使う必要性は薄いとか。

 また森が深いわけでもないので、ちゃんと警戒して観察すればさほど問題はないとのこと。熟練の盗賊相手なら斥候か野伏が必要だけど、今回は自分でも充分だそうで。頼れるなあ。

 ちなみに行きの時は行程の7割消化してから森だったんで小休止挟みましたが、今度は逆の配分になるんで休憩なしみたいですね。代わりに森抜けたら休憩だそうです。

 動画的には追剥が出てくれないと悲惨なんですが、魔法剣士君的には出ないのが一番なんですよね。というのもこの作品、敵倒しても殆ど経験値入らないんですよ。経験値はあくまで依頼や冒険をどれだけ達成したかが基準なんで。

 極端な話、全く戦闘が発生しないまま護衛や配達の依頼を成功させていけば、戦った事のない高レベル冒険者になるみたいです。童貞だけど知識だけは豊富、みたいなもんですね。違うか。

 ただ敵を倒すとギルドの評価が上がるので、戦闘しないでいると今度は昇級が遅れるらしいです。なので昇級したいなら積極的に敵を倒すのがいいみたいですね。

 

 おっ、槍ニキが何かに気付いた。気付いたというか、よく見ると草むらや木々の間に不自然な色が混ざってますね。かくれんぼ下手くそか。

 先制攻撃チャンスですけどどうするんでしょう。一本道だから戦闘はほぼ確定ですが。あれ、槍ニキが敵に声掛けてる。そんなことしたら折角の先手必勝チャンスが。

 

 ……えっ、えっ。全然気付かなかった!なんかすげえ巧みに二人隠れてた!

 

 よく気付いたな、ってホントだよ!敵の言う通りよく気付いたな槍ニキ!何、気配でも察知したの?

 分かりやすく隠れてる連中が不安そうにしてなかった?しかも道を塞ぐために近いところへ誰かいるべきなのに、そこに配置されてなかった?はー、すげえ。よく見てらっしゃる。さす槍。槍だけに刺す。なんでもないです。

 でも前の二人強そうだな。明らかに魔術師なのともう一人は……なんか騎士っぽくない?装備良さそうよ?

 えーと……ルルブルルブ……盗賊騎士(ローバーナイト)妖術師(ウォーロック)ですねたぶん。レベル7と6かー。ふざけんなハゲ。槍ニキと魔女さんいなかったら詰みじゃねえか。

 

 ……ファッ!?依頼人が逃げ出した!何やってんだお前!馬車も馬も置いて走って逃げだすとか何!逃げた!伊黒さん、無惨が逃げた!じゃなくて槍ニキ、依頼人が転がるようにして馬車の荷台の後ろから逃げた!

 呆気に取られて囲んでる追剥も反応出来てねえ!分かりました追いかけます!ここは槍ニキと魔女さんに任せてファットマンを追いかけます!待てこの野郎意外と足はええな!その体型ならもっとこうドスドス音鳴らしてゆっくり走れや!

 てか何で逃げるの!1人になる方が危ないだろ!百歩譲って逃げるとしても馬車走らせて前に逃げるだろ!確かに戻った方が森の出入口近いけど、マラソン大会でヒョロガリでメガネな同級生と「一緒にゴールしようね」って約束したのに最後の最後で裏切られてビリになりそうなこの体型じゃ無理だろ!

 よっしゃ追いついた、けど止まらねえ!その先に団長はいないんだから止まれ!

 

 あっ。

 

 ファットマンが転んで顔面ダイブしましたが俺は悪くねえ!俺は悪くねえ!実際何もしてないのに転んだだけだから悪くねえ!

 まあ止まったのでよしとしましょう。オラ起きろ!槍ニキ達のとこ戻るぞ!手は貸さないから自力で立てや!

 ……あれ?誰かいる。旅人さんですか?カッコいい剣ですね。刃が波打ってるの凄くオサレ。フランベルジュじゃん。旅に役立ちますそれ?

 いや分かってますよ。どうせ敵だろおめえ。旅人って言うか傭兵っぽいし。ほらもう構えてやる気じゃん。なんか追剥らしからぬ強キャラ感あるけどこれ何とかなるのかな。とりあえず広刃の剣と盾を構えて正面からやりあう姿勢を見せつつ躊躇なく《粘糸(スパイダーウェブ)》放ちます。

 

 はい成功~バーカザーコ。見かけ倒し~。コイツひっ捕えてファットマン連れて槍ニキの所に戻りましょう。おらその剣寄こせ。街に戻ったら売り払ってやる。

 

 うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!???

 

 何、なんなの!成功したじゃん!縛ってたじゃん!なんで動けんの!えっ、脱出判定に成功した?ああそうかそういうもんだった!鼠とGは一回も成功しなかったし速やかに焼いてたから忘れてた!

 あれ、兜がなんか……顔面保護の部分吹っ飛んでますねえ!血が出てますねえ!うわなんか画面が赤く染まって殆ど見えない!何これ!

 痛打効果?それって大成功した時にだけ出rこれ大成功してんのかよ敵の攻撃!血、血がヤバい!しかもなんか敵がゲスかつ小物っぽいこと言ってる!これはヤバい!

 ああああああああああグサグサ刺されてる!止めて止めて視界が悪いから盾で防げない!死んじゃう死んじゃう!ごめん謝るからやめてくださいお願いしますファットマン生贄として差し出しますから!過去一番ヤバい!呪文でなんとか、えっ対象選べないから使用できないの!?

 終わる終わるマジで終わる!あっ焦りすぎて変なウィンドウ開いちゃった!何これ!?真言入力画面?真言三つを自分で選んで使う?この画面なら呪文使える?

 えっえっ真言とか覚えてないよ。あっ焦ってボタン連打して同じ言葉二度選んじゃった!でもこれ発動するの?ならもう使うしかなああああああぁぁぁぁぁぁぁ自分に向けて使っちまったあぁぁぁぁ!

 

 あれっ?

 

 何、何が起きてるの?攻撃が止んだんだけど。敵の姿も見えないし何が起きてるか本当に分からない。なんだこれ?魔法剣士君もなんか動けてませんねえ。

 バグ?フリーズ?いやでも挙動がおかしくはないな。敵がなんか喋ってる。自分も縛ってどうする?

 あー、はいはいはい。分かってきたぞ。《粘糸》使おうとしたけど入力ミスってなおかつ対象を自分にしたせいで、魔法剣士君中心に蜘蛛の糸みたいなのが広がったのね。

 で見えないけどたぶん敵も巻き込んだんでしょう。やったぜ。でもこれ動けない上に出血でどんどんヤバくなっていきますね。ピンチを脱出できてない!おまけに敵が先に脱出した場合もう完全にやりたい放題される!

 脱出、脱出を!出来ない!これは結局ヤバいままだ!えっこれ詰んだ?

 

 こ、この声は!槍ニキ!

 

 槍ニキが来てくれた!ありがとう、マジでありがとう!心から感謝するから早く助けてください!何か視界が、視界がヤバい!死が迫ってる感ハンパない!

 解放された!ありがとうございます、ありがとうございます!治療してくれてる、よかった助かったぁ!今度ばかりは本気で死ぬかと思った。

 視界も徐々に戻ってきてますね。あれファットマンが縛られてる。何、槍ニキ遂に処すの?俺にもやらせてくれない?

 えっ、なに悪人なのコイツ。ほーん、成程完全に理解した(よくわかってない)

 いやダメージが大きいと視界だけじゃなくて聴覚にも影響があるらしくて、話が断片的にしか聞こえないんですよ。テキスト表示も途切れ途切れで。回復したら詳しく聞きましょう。

 

 はい、というわけで荷台に乗せられ市場に連れられて行く子牛こと魔法剣士君の帰還です。

 いえ治療してもらって荷台に乗せてもらった直後、負傷と消耗が本気でヤバかったらしく意識を失ってたんですよ。そして街に着いたところで今ちょうど目を覚ましました。

 槍ニキと魔女さんにめっちゃ心配されてる。まあ正直死んだかってこっちも思いました。

 とりあえずギルドに報告に行きま……あ、そっすね。先に寺院に行ってお布施積んで治療してもらいましょうか。医者も呼んでくれる?マジすか優しい。

 経費がかかる依頼になっちゃったなあ。

 

 傷も塞がり元気百倍シンナーの隠語マン!はい、今度こそギルドに報告しに行きます。細かい話も聞きたいので。えっ、報告は後?個室取ってやるから寝ろ?あっはいそっすね普通そうしますね。

 ただいま戻りましたー。あっ、なんかめっちゃ驚いた顔されてる。ああそうか照井竜ほどじゃないけど明らかに全身負傷してるもんな。

 とりあえず槍ニキに後の事任せて寝かせてもらいましょう。画面既に暗くなっててマジで気絶しそうなんで。おやすみなさい。

 

 おはようございます。ガッツリ消耗したままですけど、受付さんと監督官さんのところに報告へ行きましょう。

 槍ニキと魔女さんは所用でいないそうです。銀等級だもんな、忙しいもんな。

 ふむふむ。どうやらあのファットマンは商人ではなく、貴族だったらしいです。都の方でなんかやらかしてこっちに高跳びしてきたそうですが、その際あの盗賊騎士に「全部コイツの仕業です」と罪を擦り付けて来たとか。

 当然の事ながら盗賊騎士はブチギレて、魔術師と傭兵連れて官憲に捕まる前に逃亡したらしいです。

 逃げ延びてきてあの村に身を潜めていたら偶然ファットマンがやって来て、報復してやろうと森で待ち伏せていたという流れらしいです。その際追剥やってた元冒険者達を見つけて捕獲、協力しなきゃ殺すと脅して手下にしてたとか。

 

 なお騎士以外の敵は騎士が普通に強くて捕獲する余裕がなかったので、全員殺ったそうです。元冒険者の追剥も含めて。

 冒険者として夢は掴めず、盗賊としては突然現れた騎士に脅され……終いにゃあ絶対勝てない強敵相手に命を散らす。実に空虚な人生じゃあありゃせんか?

 騎士は手強かったけど槍ニキと魔女さんの連携で捕獲成功、その後こっちを追いかけてきて魔法剣士君が死にかけてるところを救出、騎士が敵NPC特有の事情語りをしてたのでファットマンの正体を把握してた槍ニキは何やら喚いてた奴を《粘糸》で捕獲した、というのがあの状況だったそうです。

 槍ニキと魔女さんがいないのはそれに関連して偉い人とお話してるみたいですね。

 

 えー、自分の報告ですけどだいたい先に槍ニキが報告してくれた通りだから言う事ないですね。死にかけたぐらいです。

 あっ、あの傭兵決して弱くはなかったんだ。冒険者で言えば青玉等級ぐらいの実力はあった?マジで?槍ニキがそう言ってた?

 機転利かせてよく粘ったって褒めてた?そうでしょうそうでしょうあの呪文は完璧な計算の上での作戦よ。ごめんなさい嘘です。

 受付さんめっちゃ褒めてくれてる。半分でいいからそんな感じで槍ニキ褒めてあげてくれません?今はなんて言うか温かみと言うか素の響きがあるんですけど、槍ニキ相手だと言葉の響きが全部業務用なんですよ。

 ……あっ、昇級。生きるか死ぬかの瀬戸際だったんで完全に忘れてました。ほぼ槍ニキと魔女さんのお陰だったんですけどいいんですか?集団行動出来たからOK?そういえばそんな話でしたね。

 というわけで黒曜級に昇級しました。いえーい。あっ認識票も変わるんだ。黒くてすげえカッコいい。

 

 そして今回の冒険結果報告により、冒険者レベルが上がりました。やったね。【戦士】と【魔術師】のレベルを3に上げましょう。

 そして技能の【鎧:軽鎧】【怪物知識】【追加呪文:真言呪文】を取得します。これにより新しく二種類の呪文が覚えれます。

 覚えるのは《惰眠(スリープ)》と《力矢(マジックミサイル)》にします。相手眠らせるのは普通に強いですし、必中攻撃は腐りませんからね。

 

 護衛依頼報酬に加えて、あの騎士お尋ね者になっていたらしくその報奨金もいただける事になりました。魔法剣士君は何もしてないのにキッチリ三等分で貰えるそうです。槍ニキと魔女さんがマザー・テレサかカイジさんに見えてきた……

 あとファットマンに関しては政治的なアレコレで手配の方は控えられていたようなので、報奨金等は出ないそうですがギルドの覚えは滅茶苦茶よくなるそうです。こっちもなんもしてないから、魔法剣士君はハイエナしたような状態ですね。美味しい!

 治癒と強壮の水薬を補充して、神殿で払ったお布施の代金を合計すると護衛依頼の報酬は飛びます。そしてぶっ壊れた兜の修理費用もしくは買い替え費用で確実に赤字です。そしてこの消耗具合だと数日休まないといけないので、分配してもらえなかったらまた文無しになるところでした。

 いやだ……またぺらっぺらの財布を眺めるのはいやだ……

 それで報奨金の額はお幾らで?三等分した時に銀貨50枚ぐらい貰えると嬉しい。

 

 ファッ!?三等分して銀貨400枚!?しかも安めな方なのコレ!?

 

 槍ニキと魔女さんには今度会ったら土下座せんばかりの勢いでお礼を言いましょう。ありがとうございました槍ニキ。惚れていいスか。

 工房行って修理頼んだら今日はどこにも行かず休みましょうか。おーう、兜は買い直した方が安いとまで言われました。仕方ありませんね。買い直すかどうかは後日決めるとして、他の装備の整備頼んでおきましょう

 キリがいいので魔法剣士君を寝床に突っ込んだところで、今回はここまでとします。

 ご視聴ありがとうございました。

 




どれぐらい早く槍ニキが助けに来るかサイコロ振ったら、クリティカル出してくれたので槍ニキは神。


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魔法剣士・裏 5

時々リアルダイス振って書いてるので、もしも「残念、魔法剣士の冒険はここで終わってしまった」ENDになってもそういうものだと思ってください。


 ―――――こんな、こんな事が許されるはずがない!

 

 転がるように森の中の道を走りながら、その貴族は内心で叫ぶ。こんな無法が、不条理が、理不尽が許されていいはずがない。

 貴族は傑物だった。親も兄弟も親族も揃いも揃って節穴だった故に見抜けなかったが、優れた才覚を持っていた。類まれな器量があった。誰よりも気概があった。他の誰一人とてそうは思わなかったが、彼自身はそう信じてやまなかった。

 だからあの冒険者崩れの暗愚な王に取って代わり、自分が王となってやろうと思った。それこそが世の為人の為というものであり、他者よりも優れた己に課せられた責務というものだった。

 そのために混沌の勢力と手を組んだからと言って、何故非難されねばならないのか。

 

 ―――――大義を成すためには犠牲が必要だと分からんのか!

 

 必要とあらば混沌とも手を結び、祈らぬ者達すら活用する。これこそが清濁併せ呑む器量というものであり、王者の資質だ。

 そんな自分が王となる事こそ万人にとっての大義であり、その過程で幾らかの死者が出る事は必要な犠牲(コラテラルダメージ)なのだ。それを理解できない愚物どもによって自分は都から逃げ出さねばならなくなった。

 その際に手駒の1人へと罪を被せはしたが、この国から己が失われるという損失を考えたならば何の問題があろうか?むしろ自ら進んで身代わりとなるべきだろうに。あの手駒も本当に使えない男だった。

 かくしてこの辺境の街へと落ち延びざるを得なかった貴族は、氏素性を隠し商人に化けた。財産は宝石に換えて持って来ていたし、こちらの方面にも幾らか伝手はあったのでそう難しい事ではなかった。

 あの愚王の治世など長くは持たぬ。いずれ貴族から民草に至るまでが立ち上がり、真に王足り得る人物を求め出す。その時自分が立つのだ。

 そんな妄想――――彼の中では予言に等しい未来予想に基づき、商人として雌伏の時を過ごす事に決めた。

 

 ―――――それが何故、こんな事になっている!

 

 自分の出した護衛の依頼に対して銀等級の冒険者がやって来た時、やはり自分は特別なのだと再確認した。もっと下位の冒険者が受けるような依頼であるのに在野最高位の銀等級が来るというのは、選ばれた証だと。

 しかも1人は見目麗しく魅惑的な肉体の持ち主であった。これはきっとこんな辺境へ不当に追いやられた己へのせめてもの慰めに違いない。彼はそう考えた。白磁の冒険者も付いてきたが、そんな木端など相手にする必要はなかった。

 銀等級の男は使えそうならば自分の家臣としてやってもいい。女の方は望むなら妾として寵愛し、いずれ王となった時も侍るのを許してやろう。他者から見れば傲慢を通り越して滑稽な、当人から見れば至極当然な考えに浸りながら村へと向かった。

 おかしなことになったのはそこからだ。あの女は自分が誘ってやっているというのに受け流し、槍を持った男はこちらへ媚びるでもなく白磁の冒険者にかかりきり。その白磁はただひたすら話を聞いて、依頼人である自分を気にする様子もない。

 よほど怒鳴りつけてやろうかと思ったが、辛うじて自制した。今の自分は気品と威厳を持った貴族ではなく、ただの商人なのだと己に言い聞かせた。

 村に着いた時あの白磁が荷物に手を出そうとしたのを一睨みして追い払った時のように、己の内側にある威風は必要な時だけ発揮するべきなのだ。

 そう考え直し寛大にもこの無礼者達を許してやり、後は街へと戻るだけ。それだけのはずだった。

 

 ―――――何故ここにいるのだ!

 

 帰り道の森で現れた追剥。その中に見知った顔を見つけた時、彼は心臓が凍りつくような錯覚に陥った。

 随分と汚れ凄惨な表情になっていたが、紛れもなく自分が手駒として使っていた騎士がそこにいた。憎悪と殺意に満ちた目を向けながら、間違いなくそこに立っていた。

 

 ―――――罪人1人捕まえられんのか、あの愚物め!

 

 騎士1人捕えて処刑出来ぬ無能な王を内心で罵りながら、彼は荷台の中を転がるようにして通り抜け逃げ出した。荷台の後ろに乗っていた女は意外な機敏さで馬車の前へと移動していたため、止める者はいなかった。

 財貨は懐の中にある。腕だけは確かだったあの騎士相手では、冒険者ごときでは勝てまい。だが足止めぐらいは出来るはずだ。

 偉大な王として名を残す自分の為に死ぬのだ、不服はあるまい。あの冒険者達が戦っている間に村まで逃げれば何とかなるはずだ。何の根拠もないが、彼はそう確信していた。

 何故ならそうでなければ自分が困るから。彼にとっては全てがそうだった。他者ならば願望と称するそれは彼にとっては正しい推測であり、彼が願った通りにならないのは理不尽であり不条理であり不当な事だった。

 

 何故なら、根拠がなくとも自分は正しいのだから。

 

 だから彼は生きねばならなかった。王となって理不尽な世の中を変えて正しい世にするために。すなわち、彼の思った通りになる国にするために。

 もしならないのだとすればそれは全て周囲のせいであり、自分のせいではない。彼は本気でそう信じていた。

 ところがそのために命懸けで足止めを行うべき冒険者が付いて来る。止まれだと?誰に向かって物を言っているのか。コイツにだけは慈悲を与えず後々処刑してやる。そんな風に思った時、走るという行為を長らく怠っていた足が縺れ、彼は顔から地面に倒れ込んだ。

 声をかけてきた冒険者が悪い。走りやすくない道が悪い。それはつまり自分が走る道を整備していないあの王が悪い。自分が走るのだからそれを整備していない村民も悪い。

 

 ―――――何故手を貸さない、愚図め!

 

 内心で毒づきながら立ち上がる。泥を払いながら役立たずを怒鳴りつけようとして、気付く。前方に何者かが立っている。

 

「こっちに逃げてくる事はないと踏んでたんだが、万一に備えておいて正解だったぜ」

 

 わざわざ遠い出口に向かってくるとはな、と立っていた男が嗤う。顔に見覚えはないが、手にしている炎紋剣(フランベルジュ)には見覚えがあった。あの騎士と組んで仕事をしていた傭兵(マーセナリー)だ。

 騎士ほどではないが腕は立つ事も覚えている。この白磁では勝つどころか相手にもなるまい。つまり、自分は―――――

 

 ―――――こんな、こんな事が許されるはずが……

 

 覆しようがない現実を―――――生まれて初めて、現実というものを見つめた彼はその重さに堪え切れず膝をついた。そしてそのまま昏倒したが、それを気に留める者は誰もいなかった。

 少なくとも、彼に構ってる暇がある者はこの場にいなかったのだから。

 

 

 

(俺では勝てないな)

 

 炎紋剣(フランベルジュ)を構えた傭兵(マーセナリー)と相対し、魔法剣士は素直にそう思う。隙のない―――――少なくとも自分では隙を見いだせない構えと、重量のある炎紋剣を持て余す素振りのない動き。技量も経験も自分などとは比較にならぬほど向こうの方が上だろう。

 ならば、やれる事はこれしかない。背負った広刃の剣を引き抜き正面から戦う姿勢を取るのと同時に、盾の持ち手に括りつけていた触媒に触れ意識を集中し真に力のある言葉を一気に紡ぐ。

 

「《アラーネア(蜘蛛)……ファキオ(生成)……リガートゥル(束縛)》!」

 

 迸った《粘糸(スパイダーウェブ)》が傭兵の身体に巻き付き動きを封じるのを見て、一か八かの賭けではあったが自分がその賭けに勝った事を確信する。一々触媒を取り出さずともいいように盾の持ち手と剣の柄に触媒を仕込む工夫は事の他上手く機能してくれたようだ。

 大きく安堵の息を吐きながら、依頼人の様子を確認する。外傷も―――――転んだ時の怪我を除けば見当たらず、傭兵が呪文を使った様子もない。単に卒倒しただけだろう。

 とりあえず傭兵から武器を奪い、ロープで縛るか何かして依頼人を連れて戻らねば。あの騎士と妖術師相手に自分が出来る事はないだろうが、周りにいた追剥(ブッシュワッカー)ぐらいなら相手になるだろう。いや依頼人を連れて行くと邪魔になるか?判断に迷う。

 強者相手に優位に立った、否既に勝利したという思い込みと安心は油断。幾度となく窮地を脱してきた自身の《粘糸》への信頼は慢心。そして油断と慢心が重なればどうなるか。

 

「――――――ッラァッ!」

 

 裂帛の気合いと共に一筋の閃光が走る。高い金属音が鳴り響く。何が起きたのか分からず、魔法剣士はたたらを踏んで後退する。

 目の上、額の辺りに冷たい何かが触れた。そしてそれが離れたかと思えば焼けた鉄を押し付けられたような熱さを発している。加えて視界が赤く染まり前が見えない。

 

「チッ……顔面保護がなきゃ一発で終わったのによ」

 

 傭兵の声でようやく理解する。斬られたのだ、自分は。

 《粘糸》は万能ではない。捕まったとしても脱出不可能と言うわけではない。そんな当たり前の事を見落としていた。あまりにも遅すぎる後悔が魔法剣士を襲う。

 

「まあいいさ。それならそれでお楽しみがあるから、な!」

「ぐっ……!」

 

 鎧の上から肩を刺され、痛みと衝撃に思わず剣を取り落とす。探そうにも前が見えずそもそもそんな余裕はない。

 

「出来れば女がよかったが……まあテメエで我慢してやるよ!」

「がっ!」

 

 盾に強い衝撃。魔法剣士は堪え切れず吹き飛ばされるように地面を転がる。傭兵がわざと防具の上から攻撃して、嬲り者にしている事に気付く。どうやら嗜虐(サディズム)癖があるらしい。いや、この場合快楽殺人者(シリアルキラー)と言うべきか。

 その推測を裏付けるように、倒れた魔法剣士に対し傭兵が繰り返し剣先で突いてくるが全て浅い。その気になれば自分など一撃で仕留めれるだろうに、急所を避け浅く傷つけていたぶるのを楽しんでいる。

 闇雲に盾を動かして防ごうとは試みるが、一度として上手くいかない。その無駄な努力と苦痛の声を上げる魔法剣士、そして肉を斬る感触に傭兵は上機嫌そのものの笑い声を上げる。

 術はもう一度残ってはいるが、血が目に入ってしまい前が見えない。何処に向けて撃てばいいのか分からない術は意味を成さない。

 

(―――――死ぬ、死ぬのか。こんなところで。待たせたままで)

 

 そんなものかもしれない。自分を冒険に誘ってくれたあの剣士とてあんなところで死ぬとは思っていなかっただろう。どれほど気を付けていても、辺境最強と名高い冒険者と一緒の依頼であっても、死は骰子(サイコロ)の出目一つでこんなにもあっさりとやって来る。

 託宣(ハンドアウト)を寄越した外なる神を恨みはしない。託宣を受けたから託宣に従う。役割を果たすとはそういう事だし、その結果死ぬのはそういう役割だったか自分が役割をこなす力量がなかったかだ。この場合は間違いなく後者だ。

 死への恐怖より先に諦念が魔法剣士の心を満たし始めた時、不意に脳内に閃くものがあった。その感覚は託宣を受ける時に似ていたから、恐らくこれは天啓というものだろう。

 いずれにせよ彼はその発想に従い、腰に残っていた小剣の柄に手を添え言葉を紡ぐ。

 

「《アラーネア(蜘蛛)……アラーネア(蜘蛛)……ファキオ(生成)》!」

 

 本来であれば蜘蛛の糸が迸り、対象を捕える。だが今回は拘束を意味する言葉がない。それはすなわち、ただただ糸が展開されるということだ。

 そして対象を見る必要もない。見ずとも何処にあるかは分かる。

 自分自身を見失うなど、精神的な話を除けばあるはずがない。

 

「なあぁっ!?」

 

 糸が魔法剣士を中心に四方八方に飛び散る。それに巻き込まれた傭兵もまた魔法剣士同様地面に転がり、糸によって動きが封じられる。

 手足を縛られたりはしないが、粘性の強い糸が全身に付着しそのまま地面に横たわったのだ。結果的に地面へと縫いつけられたような形となる。魔法剣士も傭兵も糸に塗れ、その場に倒れ伏すこととなる。

 

「こ、の馬鹿が!テメエ!」

 

 傭兵は怒鳴りながらもがき抜け出そうとする。自分自身を対象にして術を放ち双方を動けなくするなど、馬鹿の発想だ。

 確かに嬲り殺される未来は遠ざけたと言える。だがあの傷では抜け出すどころかまともに動けまい。そしてこの術は《粘糸》同様長く続く術ではないはずだ。

 精々1分か、2分か。それだけ寿命が延びたにすぎない。それを過ぎたなら、剣の柄で顎を砕いてやろう。仮に術が残っていたとしても使えぬようにした上で、じっくり死ぬまで切り刻んでやろう。

 

「楽には死なせてやらねえからな、覚悟しとけよ!」

 

 そう叫んだ瞬間、傭兵は強烈な衝撃を喉の辺りに感じた。何が起きたか、と思う暇もなく。痛みが伝わる時間もなく。急速に視界が暗くなっていく。抵抗しようとする猶予も与えられず、傭兵の意識は一瞬で闇に沈む。

 そしてそのまま二度と戻る事はなかった。

 

「お前は楽に死ねてよかったな」

 

 離れた位置から槍を投げ、寸分狂わず傭兵の喉を貫いた槍使いが小さく呟く。投槍は自ら槍を捨てるに等しい行為だが、槍を得物とするならば当然心得ておくべき用法の一つだ。

 殆ど使う機会はないが、だからといって投槍の技術を軽んじた事はない。少なくとも動かぬ的ならばまず外さぬ程度の技量を、槍使いは身に付け維持し続けていた。

 

「おい、しっかりしろ!」

 

 魔法剣士に駆け寄り傷の具合を確かめる。意識はおぼろげではあるが確かにある。頭部の傷以外は浅いが、その頭部の傷がマズイ。額を横一文字に裂かれている上に、波打った刃を持つ炎紋剣による傷口は塞がりにくい。

 舌打ちをしながらも水袋を取り出し、傷口を水で洗う。水精に病毒の素を流してもらい、それから軟膏を塗り付け包帯で強く縛る。

 そして治癒の水薬(ヒールポーション)強壮の水薬(スタミナポーション)を強引に飲ませる。今できる事はこれぐらいしかない。あとは魔法剣士の生命力と神々の思し召し次第だ。

 街へ戻り、神殿に駆け込むまで持つかどうか。《小癒(ヒール)》を使える神官がいるかどうか。すぐに治療してもらえる状況かどうか。そればかりは神のみぞ知るとしか言えない。

 

「気ぃしっかり持てよ!寝るんじゃねえぞ!」

 

 大声で意識の覚醒を促しながら槍使いは依頼人―――――元貴族である商人へと近付く。盗賊騎士から聞いた事情が真実だとすれば、逃がしていい男ではない。

 魔法剣士とこの男、そして盗賊騎士に魔女。四人を荷台に乗せ、自分が御者となり馬車を飛ばす。間違いなくそれが最も速い。

 自分が関与できない領域は仕方ない。だが、自分が出来る範囲の事はしてやらねばならない。

 

「ツイてたなお前!俺が馬術も達者でよ!」

 

 ある程度の熟練した冒険者は旅をする上での必要性から、馬に乗り馬車を運転する技能を身に付ける。加えて槍使いは個人的な事情で、習熟していると言える程度には技能を磨いていた。

 

 英雄ともなれば馬を颯爽と駆らねば格好がつかない。美姫を抱いて走らせる事が出来ねば物語にならない。

 

 誰が何と言おうが、そういうものだと槍使いは思っている。それに今まさに役立とうとしているのだから、決して無駄な努力ではなかったのだ。

 やはり技能とはどんなものでも身に付けておくものだ。改めてそう思いながら槍使いは魔法剣士と依頼人を肩に担ぐと、魔女の運転によりこちらへと戻って来る馬車へ駆け寄って行った。

 

 

 

「はい、それではこれが新しい認識票となります。昇級おめでとうございます、でも暫くは休んでくださいね?」

 

 有無を言わせぬ圧を込めながら、受付嬢は魔法剣士に黒曜等級の認識票を手渡す。素直に頷く魔法剣士の姿を見て、こちらも満足げに頷き銀貨の入った袋を手渡す。一つは小さく、一つはかなり大きい。

 

「こちらが護衛依頼の報酬、こちらが賞金首討伐の報奨金となります……ええ、平等に三等分でとの事でしたのでお受け取りください」

 

 驚き遠慮しようとしている魔法剣士に、押し付けるように報酬を渡す。槍使いと魔女が平等で構わないと言った以上、彼には受け取る権利と義務がある。

 何もしていない、と魔法剣士は言うが、護衛対象から離れず熟練の傭兵相手に一対一で時間を稼いだのは充分過ぎる働きと言える。槍使いや魔女も言っていたが、駆け出しの白磁では到底相手にもならないぐらいに差がある相手だったのだ。それを思えば素晴らしい活躍だったと言っていい。

 

「二人ともすっごい褒めてたよ。特に呪文の使い方はよく機転利かせたって!」

 

 監督官が「頑張ったね!」と魔法剣士を称賛する。確かにその辺りの機転の利かせ方は槍使いも魔女も共に褒めていた。

 本人は偶然のようなものだと言うが、偶然であっても結果に繋がったのだから評価の対象だ。

 

(これは、鋼鉄等級に上がるのもすぐかもしれませんね)

 

 今回の依頼人―――――都から逃亡してきた貴族を捕え引き渡したのは槍使いと魔女の活躍あってこそだが、魔法剣士がいなければ恐らく傭兵に殺されていた可能性が高い。そう考えると彼の功績は決して無視できない程度には大きい。

 そして混沌の勢力と手を組み国家転覆を目論んだ貴族を捕えた、となれば、功績だけを考慮すれば鋼鉄どころかその上の青玉になっていいぐらいと言える。勿論まだ魔法剣士は技量と経験がまるで足りていないため、そんな事にはならないが。

 逆に言えば依頼をこなし相応しいだけの実力を示したならば、問題なく昇級出来るだけの功績を今回稼いだということでもある。これで驕り偉ぶるような性格であったり、今回の事で傲慢になったりすればまた話は変わって来るがその心配はなさそうだ。

 

 そう言えばゴブリンスレイヤーと行動を共にしている女神官も昇級が近かった事を思い出す。彼とずっと一緒だという事に関してはちょっと思う所がないではないが、それ以上に懸命に彼についていこうとする彼女の姿を受付嬢は応援していた。

 一ヵ月と少しで1人が黒曜等級になり、もう1人もまもなく上がろうとしている。優秀な新人である、ということ以上に彼らが「冒険から帰ってきている」という事実が受付嬢の頬を緩ませる。

 どんな冒険者であれ、無事に帰って来る。それが一番いいことなのだ。勿論怪我もしないでいるのが望ましいが、冒険者の仕事内容を考えればそれは難しい。

 たとえゴブリンの血に塗れ、疲労困憊であろうが。たとえ全身に包帯を捲かれ、重傷を負っていようが。生きて帰って来てくれたなら、受付嬢は嬉しいのだ。

 

「改めて、昇級おめでとうございます。ますますのご活躍をお祈りしています」

 

 だから暫くは休んでくださいね、と。受付嬢は先程より強い圧を込めて魔法剣士に言うのだった。

 

 




※追記
活動報告の方で皆様のご意見を伺っております。


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魔法剣士・6

引き続き活動報告の方で皆様のご意見を伺っております。


 おはようございます。曇ってるけどいい朝、というかもう昼ですね。

 朝起きるように設定しておいたのですが、消耗度が一定を越えるとこうして寝坊が発生するようになるようです。まあ死にかけたばっかりだもんな!

 そして全快するまでは個室で寝泊まりします。大部屋と明確に消耗や疲労の回復度が違うので。ただその分ガッツリ金取られるので、全快したら大部屋に戻りますが。

 思いがけず大金が入ったので、半分ぐらいは使っちゃってもいいやと考えます。とりあえず新しい兜どうするかですね。

 あっ、前に板状鎧買いたいと言いましたが、あれは止めます。分類が重鎧になってるので。

 このゲーム武器防具の全てに軽重どちらかの分類がされてて、魔術師は重装備に適性ないので装備すると呪文使えなくなっちゃうんですよ。前は完全に見落としてました。

 なので硬い革鎧と鎧下で代用する事にします。それと真言呪文の発動体の一番安いものも買います。これがあると呪文行使判定にボーナスが加わり、難易度の高い呪文が発動しやすくなったり呪文の効果が高くなりやすくなるんですよ。

 あとこれが一番重要なんですが、槍ニキが耳飾りに触れて呪文遣うの滅茶苦茶格好良かったから真似します。

 これと宿代で報奨金半分使うのは確定するので、これ以上何か買ったりはしないつもr兜忘れてた。まあ前と同じでいいでしょう。

 

 金の使い道を決めた所で朝食兼昼食を摂りに行きましょう。あっ女神官ちゃんだ。元気ー?額の包帯?大丈夫大丈夫ちょっと死にかけただけだから。すげえ心配してくれてる。良い子か。

 そんなことより見て見てー。俺昇級したんだ。やだこの子すっげぇ素直に褒めてくれるじゃん。良い子じゃん。

 女神官ちゃんの方はゴブスレさんと一緒に砦ごとゴブリンを焼き払ってきたそうです。何それ怖い。でもすげえ頑張ってるのは分かる。それで疲労が溜まってきたので今日はお休みを貰った、と言うか強制的に休まされたそうです。分かるよ休むの大事だもんね。

 こなした依頼の数を考えるとこの子もそろそろ昇級しそう。君も頑張ってね。俺もこれから頑張って行くからさ。

 女神官ちゃんと和やかに会話して、お互いに激励し合って和やかにお別れしました。彼女は現状魔法剣士君にとって唯一の友達なので全力で仲良くする方向で行きます。ひとりぼっちは寂しいもんな……

 とりあえず飯食いましょう。給仕さん、シチューとパンにプラスして今日はチーズとベーコンもつけてくれな!血と栄養が足りねえんだ!

 顔見知りになった給仕さんが驚いてます。そうだよな長らく一日一食シチューのみ生活で、ついこの間ようやくシチューにパン付けて三食摂るようになった男がいきなりチーズに加えてベーコンまで頼んだんだもんな。

 認識票見て納得したように頷きましたね。ああそうか昇級祝いしてるように見えるのか。そんなつもりじゃなかったけどお祝いってことにしましょう。お姉さんレモン水も追加で!

 

 いやーご馳走(当社比)でしたね。もうこれで寝てもいいぐらいなんですが、魔術師探して挨拶と自慢しておきましょう。時間的に昼飯食ってるでしょうし。

 ……いたけど何か雰囲気が違くね?柔軟剤でも変えた?

 あっ、普通に挨拶返してくれた。ガワ同じで中身入れ変わったりした?なんか覇気があるぞ。覇王色ではないけど。包帯?ちょっとずんばらりんされただけだから大丈夫大丈夫。

 あと三日で業者が復帰するから代書業が終わる?ああうん、そう。それでこんな元気になってるの?そんな嫌だったかこの仕事。それともこれで下水臭い陰キャぼっちと別れられるから喜んでる?後者だったら泣くぞ。ちょっと本気で泣き叫ぶぞ。

 あっ、武道家じゃん。故郷から帰ってきたの?おかえりー。知り合いが元気そうでなによりよ。冒険者続けるの?お互い頑張ろうな。

 

 んっ?えっ、あっ、はい。

 

 えー、なんか力強く魔術師に頼まれ、というか断定的な感じで言われて、一党(パーティー)組む事になりました。武道家も一緒です。魔法剣士君の事嫌ってたんじゃないの?

 嫉妬?えっ何そのカミングアウト。あっ、はい。事情は理解しました。理解したから顔近付けるのやめてくれない?胸は密着させてもいいから。圧が、圧が凄い。

 ほら武道家も驚いてるじゃん。っていうかこういうキャラじゃなかったじゃん。何?ヤバいヤクでもキメた?クスリは止めた方がいいよ。何も生み出さないから。

 あっ、はい。代書業終わったら本格的に一党で動くんですね。分かりました。えっ魔法剣士君が頭目(リーダー)?なんで?いやどう考えても頭目は君じゃん。こんな強引に推し進めてるんだかrはい分かりましたやらせていただきます。

 

 なんなのこの人、怖ぇ……

 

 

 

 えー、なんか全く予想しない展開になりましたね。とりあえず自分の消耗が酷いので、代書業終わっても全快するまで本格的な活動は待ってくれることになりました。

 それまでは武道家はドブさらい、魔術師も代書業終わったらドブさらいするそうです。やる気すげえなあ……

 騎士討伐の報奨金の残り半分は彼女らの装備に使いましょうか。彼女らが鉢巻き君みたいになるのも洞窟の中でR-18されてた女性みたいになるのも嫌なんで。

 とりあえず装備買いに工房行きましょう。兜、前のと同じのあるかなー。ん?なんかおススメがあるって?

 おっ、前のと似てるけど顔面保護がちょっとカッコイイ。前のはちょっとバイキング感あったけど、今回のは空気穴が開いてホッケーマスクっぽくなってる。いいじゃん。ジェイソンじゃん。データ上の変化はないけど気分は変わる。

 お幾ら?銀貨20枚?買った!

 本音を言えばもうちょっといい兜買いたいんですけど、重兜分類になるものばっかりなんですよね。軽兜でいいものとなると3桁近くするのでやめましょう。

 発動体も買いました。耳飾り。呪文遣う時はこれに触れてから……触れ……

 

 ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 兜被るから耳飾りに触れられねえぇぇぇぇぇぇ!!!!!

 

 耳飾りは魔術師に渡す事にしました。彼女の方が魔術師としては優秀なので、達成値を上げて難しめの呪文も確実に発動するようにしましょう。

 予定通りです。何の問題もありません。ミスでもガバでもありません。

 お買い物済ませたらギルドに戻って……やることがない。怪物辞典でも読んでてもらいましょうか。

 特にトラブルやイベントが発生しなければ全快するまでバッサリカットします。

 

 カットしました(完了形)

 療養に5日もかけてしまいましたが、その間本当に穏やかな日々でした。槍ニキと魔女さんがお見舞いに来てくれたり、ギルドでボーっとしてたら受付さんや監督官さんに休むのも大事なのでゆっくりするよう言われたり、魔術師が朝気合い入れてドブさらいに行って帰って来た時疲労困憊になってるのを眺めたり。汗だくで息も絶え絶えで、ふらふらの魔術師はエロかったです。

 濡らした布で口塞ぐといいよ、ってアドバイスしたら素直に従ってくれたのは嬉しかったです(小並感)。武道家の方はドブさらいしてもまだ余裕ありますね。よし君と魔法剣士君は肉体労働担当な。

 

 とりあえず下に降りて行きましょう。あれ、なんか物理的に騒がしい。

 エルフだ。完全にエルフな人がいる。うん、エルフだ。いかにもエルフってエルフだ。胸は……山田!お前売れないマジシャンの山田だろ!天才物理学者上田はどこだ!

 おっ、いかにもなドワーフとリザードマンもいる。いやあ、完全にファンタジーって感じだ。こういうの大好き。

 オル……なんだって?かみきり丸?髭切なら知ってる。あっ、選択肢出てきた。ゴブリンスレイヤーさんの事?

 お、正解っぽい。ふーん、森人(エルフ)鉱人(ドワーフ)の言葉で小鬼を殺すみたいな意味なんだ。【博識】技能仕事するなあ。

 ゴブリンスレイヤーさんに用事みたいですね。ということはゴブリン退治でしょう。女神官ちゃんからずっとゴブリン退治してるって話聞いたから間違いない。俺は詳しいんだ。

 まああっしには関わりのねえことですんで、ごめんなすって。一党組んで本格的に活動再開せなあかんので。

 

 あっ槍ニキと魔女さんだ。好き!(挨拶) この間ありがとうございました!

 わぁお、返しもイケメン。好き!(定期) また何かあればお願いします。

 よし切り替えていこう。いたいた。魔術師と武道家だ。

 

 えっ包帯?あっ、癖で付けさせてた。外そう。

 一文字じゃなくて微妙にうねった傷跡が残ってる?そら(そういう用途で作られた武器で切られたら)そう(綺麗ではなく治りにくい形状の傷跡になる)よ。

 まあ塞がったんで気にしない気にしない。どうせ兜かぶってる間は見えないし、傷は男の勲章よ。あっはい、見る側に威圧感与えるといけないってのは凄く真っ当な意見っすね。隠すようにします。飛影になります。

 それでこれからどうするかって?決まってるだろ。装備買いに行くんだよ!お前ら二人のな!金?報奨金の残りあるから魔法剣士君が出すよ。何、そこまでされるのは気が引ける?

 

 うるせェ!!!いこう!!!!(どんっ!!)

 

 実際君ら防具足りてないじゃん。特に魔術師。君ゴブリン相手に腹ぶっ刺されたじゃん。ちょっと厚みのある服着るだけでも変わると思うんだ。それと近接武器と投石紐(スリング)買おうな。魔法しか使えないと不便極まりないから。

 武道家は機動力が命なのは分かるけど、それを殺がない装備考えよう。あと素手より絶対何かしらの武器持った方がいいよ。トンファー持ってキックするとか。

 無駄に時間食いましたが説得と言うか「じゃあ一党解散する」というめんどくさい彼女みたいな言葉を用いて言う事を聞かせました。もうちょっと厚かましく「金出してくれるの?ラッキー!」ぐらいの精神でいて欲しいもんです。俺の金で作った橋を感謝もせず使用する村民みたくなったらぶん殴りますが。

 みんなの為と言うならみんなで金を出すんだなも。

 

 はい、買い物済ませました。魔術師には短剣(ダガー)野伏の外套(レンジャーコート)を買い与えました。最低限に近いですがあるとないとでは大違いです。

 あと真言呪文の発動体も渡しました。お前の為に買ったんだからな!決して格好優先で兜の事忘れてたとかないからな!指輪とかにしとけばよかったとか思ってないからな!

 武道家には拳鍔(セスタス)綿鎧(パデッドアーマー)を買いました。彼女は魔法剣士君と組んで前衛やってもらいますので。頑張って避けて殴って(はあと)

 そして二人共通装備として投石紐。これないと一方的にアウトレンジからボコられる可能性ありますからね。逆に相手が飛び道具ないなら一方的にボコれるわけです。

 仕上げに二人にそれぞれ治癒の水薬(ヒールポーション)解毒剤(アンチドーテ)、強壮の水薬を一本ずつ買います。これ以上欲しかったら自腹な!これで報奨金綺麗に無くなったから!

 よし、買い物終了!昼飯食いながら次の相談すっぞ!

 

 とりあえずの方針として、どういう戦術が取れるのか、どういう連携が効果的か探るために明日から暫く下水潜りすることにしました。どうした魔術師。採算が合わない?

 まあ落ち付け。魔法剣士君が巨大鼠(ジャイアントラット)討伐を受ける。魔術師が大黒蟲(ジャイアントローチ)退治を受ける。武道家がドブさらいを受ける。そして個別で受けた直後に一党を組む。これで依頼受注制度の穴を突いて実質多重受けが出来るって寸法よ。

 怒られたら謝るから心配するな。謝るけど決して受けるのは止めない。

 投石紐の練習もしないといけないからね。暫く潜らないといけないけど、一個だけだと生活費にもならんからね。

 ところで魔術師君。君呪文幾つ使えるの?

 えっ、《火矢(ファイアボルト)》だけとか逆にラッキーじゃん!これから覚える呪文選べるんだぜ!可能性の幅が広がるなあ!えっ、このゲームNPCが何覚えるかはランダムなの?

 

 はーつっかえ(テノヒラクルー)

 

 しかも呪文書が必要とかやめてくれよ。金ないんだよ。魔女さんなら土下座して金払えば教えてくれるかな?

 無理なら金を稼ぎます。金が余ってるとか一度でいいから言ってみてぇな~

 

 隊列としては基本魔法剣士君が先頭で魔術師が真ん中。武道家が最後尾で戦闘になったら速やかに武道家と魔術師が交代。魔法剣士君が盾となるので隙を見て武道家が前に出て一撃離脱。こんな感じで。

 魔術師は切り札です。二回しか撃てない大砲。主に暴食鼠担当で。あと《粘糸(スパイダーウェブ)》+油に点火する係で。これから毎日、敵を焼こうぜ!

 あとドブさらいも三人で協力してやります。魔術師も体力つけないといけないからね。よし、方針決定!さあ行くぞ!何処へって?

 投石紐の練習と石拾いに郊外へ行くに決まってんだろ!ほら行くぞ!一年ちゃんと練習しろよ!三年がいないからってサボんなよ!

 

 

 

 おはようございます。魔法剣士君が寝てる間に雨降ってましたが朝までに止んでくれました。

 雨量が多いと下水道の水量も増えてちょっと怖い、というかうっかり足滑らせたら溺れ死にそうな感じになるんですがこの程度なら大丈夫そうですね。

 さあ本格的に冒険者稼業再開するぞ!まずは下に降りて二人と合流しましょう。ぼっち卒業の瞬間です。

 あ、いたいた。二人とも5分前行動するタイプっぽいですね。自分は5分前に間に合うように早めに行動して結果15分ぐらい早く待ち合わせ場所に着くタイプです。

 クエストボードからお目当ての依頼書を剥がして受付に行きましょう。受付さーん、元気になったんで仕事再開しまーす。

 ちっ、狙いに気付かれた。ダメ?一応規則違反ではないから見逃して下さいよー。あっすんなり認められた。功績と信用が高いとこういう対応してくれるんだ。真面目に働いて信用を勝ち取るって大事だね!

 よーし、三人での初依頼行くぞー!目標は全員ノーダメな!

 

 水量、ヨシ!装備、ヨシ!松明、ヨシ!よく分からないけど全部、ヨシ!さあ下水入りましょう。久しぶりだあ。

 他の新人も受けてるんですけど遭遇した事はないですね。まあ広いしなあ。

 おっ、早速鼠いるじゃん。まだこっちには気付いてませんね。よしガイア!オルテガ!マッシュ!ジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!……あれ、今指示出したの誰だ?

 そぉい!そぉい!そぉい!

 

 えー、完璧です。完璧すぎて運を使い果たした気分です。

 魔法剣士君が自分達がいるのとは反対側の通路に石を投げ、気を取られた鼠に二人が石を当てる。完璧なコンビネーションでした。

 しかし二人ともクリティカル出さなくていいのよ?勿体ない気分になるから。もっとほら別のところでさ。

 とりあえず耳切って次へ向かいましょう。見所なければまたカットすると思います。あれ?なんか音が。

 

 おおおおおおおおお!?

 

 

 

 えー、急にカットしましたが事情を説明します。大黒蟲が群れで出ました。しかも一際でかいのがいました。通常の倍ぐらい。

 幸い魔法剣士君が《粘糸》を放ち、武道家が油を投げ、魔術師が《火矢》を放って焼くというこの一党最強のコンビネーションが発動した為無傷で速やかに倒せましたが、凄まじい絵面になったためカットしました。信じられるか、人間サイズのGが燃えながら飛んで向かってきたんだぜ……

 まあ「じょうじ」って喋るようなタイプの敵でなかっただけいいと思いましょう。連載再開しないかなー。

 ちなみにこのGは討伐対象ではないようです。暴食鼠の時に懲りて話聞いたんですが、大黒蟲の方はそういう個体はないって言ってました。なんで遭遇するだけ無駄と言うか、消耗するだけの面倒な敵ですね。今回はコンビネーションの練習になるんでよかったんですが。

 とりあえずGの討伐ノルマは達成したんで、一度戻ります。別に消耗したとかではないんで継続してもいいんですが、どうしても戻ります。

 魔法剣士君は問題ないし武道家も問題ないんですが、魔術師がね?その、ちょっと姿勢がおかしくなってるのと理科の実験で嗅いだ事ある感じの臭いを漂わせてることに、魔法剣士君も武道家も気付いているので。

 ただし知らぬふりをする情けが二人にはあったようで、大黒蟲の体液が付着したから念のため一度戻って洗おうと揃って言い出しました。優しい。

 ところで一際でかいヤツの腹から剣が出てきたんですけど、何コイツどういう食生活してるの?鉄分足りないから鉄食べるタイプ?それとも何?天叢雲剣みたいな神剣がGの腹から出てくる世界なの?

 えっ?ランダムで出てくる安物だから捨てて構わない?

 

 お前がそう言うってことはそこそこ重要なんやろ。騙されんぞ。

 

 決めた。持って帰りましょう。身嗜み整えるついでに洗って持って帰ってギルドに預けましょう。ギルドに報告の為に帰るんであって他意はないんで皆さん魔術師の方を見ないであげてください。内股なのは気のせいです。

 受付さんただいまー。蟲退治の報告にきましたー。昼飯食べたら鼠倒してドブさらいしてきますんで心配しないでください。あと魔術師の方は見るなっつってんだろ!幾ら受付さんでも怒るぞ!

 あっ、察するの早い。露骨に話題切り替えてくれた。そうそうこの剣拾ったんです。拾ったって言うか腹から出てきました。洗ったから臭くないですよね?

 下水で剣無くしたって騒いでるやつがいた?あー、鼠ぐらいなら食いそうなでかさでしたね。鼠ごと剣食ってた可能性は高いと思います。鉄分タップリとれますからね。はい、渡しといてください。その代わり魔術師の事は見なかった事にしてあげて下さい。

 あ、魔術師戻ってきた。よし何事もなかったかのように昼飯食うぞ!そして少し休んだら今度は鼠退治のノルマこなすのとドブさらいな!

 お前魔法剣士君と武道家が全く触れようとしないんだから自分で触れてくるなよ!気遣いを察せ!お互いに損しかないだろ!ほら変な空気になった!

 中途半端なところですが、魔術師が変な空気にしたので今回はここまでにします。

 次回は大きなイベントが発生するか下水以外の依頼を受ける準備が整う所までこっちで進めておいて、そこから再開すると思います。

 

 ご視聴ありがとうございま……何?何かあった?

 えっ?かなり大きな原作イベントスルーした?おまけに原作イベントのフラグ一個潰した?えっ?

 

 ……初見プレイの醍醐味だから、ヨシ!

 




2d6で1ゾロ(何故かこちらがクリティカルだと思ってる)が出たら完全復活、6ゾロ(何故かこちらがファンブルだと思ってる)なら失意のうちに帰郷。他はギルド職員な!
→1ゾロが出る→ゴブスレTRPGはクリティカルが6ゾロ、ファンブルが1ゾロだったことを思い出す
→振り直し!でもそれだけじゃ悪いからファンブルはなくそう!→6ゾロ
→負い目とかトラウマ克服して乗り越えた状態で復帰な!

以上が女魔術師ちゃんリアルダイス判定の結果となります。


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魔法剣士・裏 6

ご意見ありがとうございました。
何か問題が無ければ次はゴリラになります。

※13:42
投稿ミスに気付いて修正しました。具体的にはコピペして投稿する際に最後の部分を忘れていました。なので千文字ほど最初の投稿から増えています。


「死にかけた……って、大丈夫なんですか!?」

「少なくともこの傷が原因となって死ぬ事はもうない、と言える程度には大丈夫です」

 

 包帯を巻いた額を指でコツコツと叩きながら、普段と変わらない落ち着いた声音と硬い表情で魔法剣士が応える。もう塞がりましたから、と付け加えてくるもののそれで心配が消えるわけではないと女神官は声を大にして言う。

 

「そんな大怪我をしたなら、その、安静にしてなくちゃいけないんじゃないですか?」

「寝てるだけというのはかえって身体に悪いそうなので。暫く依頼は休みますし、出歩くつもりもありませんが」

 

 それはそうだろう、と女神官は深く頷く。頭を剣で斬られて死にかけたばかりだと言うのに依頼を受けるなど、正気の沙汰ではない。

 偶発的遭遇(ランダムエンカウント)で遥か格上の相手と戦うことになる不運を引き当てて、重傷を負いながらも生きて帰ってこれたのは、彼は運がいいと言うべきか。それともそもそもそんな事になったのだからやはり運が悪いのか。女神官には判断がつかなかった。

 ただいずれにせよ、確かな事が一つだけある。

 

「そうしてください……あの、御無事で何よりです」

「ありがとうございます。そちらもご無事で何よりで」

「あ、ありがとうございます」

 

 丁寧に頭を下げながらお礼と共にかけられた言葉に、女神官も頭を下げながら返礼する。そう、彼は目に見える結果を引き当てたと言うだけで女神官だってそうなる……否、もっと悪い結果になる可能性だってあったのだ。

 それを考えれば、こうしてギルドでお互い無事に会話が出来るのは本当に何よりだった。

 魔法剣士が昇級した事に対しお祝いを述べ、彼の経験した冒険について話を聞く。そして自分もゴブリンスレイヤーと共に体験した――――ゴブリン退治しかないのだけれど―――――話を語り、互いの無事を喜び合う。

 そう長い時間でもなければ、そう大した内容でもない。しかしだからこそ大事なのだと女神官も魔法剣士も分かっている。

 無事に冒険から帰って来て、友人と他愛ない会話を交わす。これがどれだけ難しい事なのか、どれだけ得難い時間なのか。二人ともその価値を理解していた。

 

「それでは、また今度会いましょう」

「はい、また今度お会いしましょう」

 

 お互い元気で、頑張りましょう。そう言い交わし魔法剣士と別れる。そう、また今度。

 その約束を守るのがとても難しい事も、とても大切な事も。彼女も彼もちゃんと分かっていた。

 

 

 

―――――――

 

 

 

 この人はこんな性格だったっけ?というのが、今の率直な女武道家の気持ちだった。性格を知ったと言えるほど長い付き合いでもないのだが、その短い付き合いで受けた印象とあまりにも違いすぎて困惑ばかりが広がる。

 それは魔法剣士も同じようで、表情に大きな変化こそないが目をしきりに瞬かせ明らかに困惑の色を浮かべている。内面はともかく外面的にその程度で済ませている事に、女武道家は本気で感心した。

 

「いい?あと三日で代書の仕事は終わるから、それ以降本格的に一党(パーティー)組んで動きだすわよ!」

「……あ、ああ」

「それと、一党の頭目(リーダー)はあなただからね!」

「いや、それは」

「いいわね!私も彼女も認めてるし、あなたの指示には従うから!」

「……わかった」

 

 強要と言うよりもはや強制のようではあるが、一応嫌かどうかは聞いていたから問題ないだろうと女武道家は結論付けた。

 

 数日前に女魔術師から一党と組もうと言われた時は本気で驚いたが、同時にあのゴブリン退治で重傷を負った彼女がまた冒険者として再起出来るのを喜びもした。だから女武道家は二つ返事で了承をした。ここまでは問題なかった。

 直後に女魔術師が魔法剣士を誘ってもいいか、と言い出した時も驚いたが、彼の実力と冷静さ。そして剣士の遺骸を嫌な顔一つせず背負い、近くの村まで運んでくれた人柄。たった一度ゴブリン退治を一緒にしただけでそれらの事は充分理解できていたから、異論は全くなかった。

 断られなかったのならば魔法剣士を一党の頭目にする、という女魔術師の意見にも素直に頷いた。ゴブリン退治の時冷静に「逃げる」という選択をした判断力は女武道家にはないものだったし、自分が冒険者を続けると決心するまでの間に積んだ経験の差も考えればそれが妥当だと思えた。

 だが、勧誘でも提案でも懇願でもなく断定で一党を組もうとするのは想像していなかった。彼女の何処にこんな強引に話を進める力があったのだろうか。

 

(お酒は飲んだりしてなかった、よね?)

 

 昼食を一緒した時に見ていたから間違いないはずなのだが、自信が無くなる。それともあの時飲んでいた水に酒精が紛れ込んでいたりしたのだろうか?

 想像していなかったと言えば、女魔術師が魔法剣士に対し嫉妬や劣等感を抱いていたのも意外だった。そしてそれを告白した事も。理由を聞けば確かにそういった感情を持ってもおかしくはないとは思ったが、それを秘めず相手に直接ぶつけるというのは驚きを通り越して凄いとすら感じた。

 女魔術師曰く「一党を組む以上、今まであんな態度だった理由をハッキリさせないと不信感が残る」というのがその理由らしいが、女武道家がいなかった間どんな態度を取っていたのだろうか?

 何だか色々と頭の中が追いつかない。女魔術師が椅子に座っている魔法剣士に顔を近付けすぎているせいで後ろにひっくり返らないか心配だとか、体術を使う上では邪魔なのだが女としては羨ましくもある、女魔術師の豊かな双丘がもろにくっついているが魔法剣士はそれどころではないのだろうなとか。そんなことばかり考えてしまう。

 

「言いたい事は分かったが、傷と疲労が完全に癒えるまでは休ませてほしいのだが……」

「いいわよ、それは当然の事だもの。代書業が終わったら治るまでドブさらいかなにかしてるから、良くなったらちゃんと声かけるのよ!」

「了解した」

 

 満足のいく返事が得られたからか、女魔術師が魔法剣士から身体を離す。そして傍から見ても上機嫌でやる気になっているのが分かるほどに意気込んで、彼女の簡易的な仕事場と化しているギルドの隅に設置されたテーブルへと戻って行った。

 

「ごめんね、なんか……ごめん」

 

 なんと言えばいいのか分からず、とりあえず女武道家は魔法剣士に謝罪する。何に対して謝っているのかは自分でも良く分からないが、とりあえず謝るべきな気がしてならない。

 

「いや、別に……うん、別に」

 

 魔法剣士の方もどう受け取って何を言えばいいのか分からないのか、視線を天井へ向け曖昧に言葉を返してくる。

 

「あの、大丈夫?なんか無理矢理な感じになっちゃったけど……」

「ああ、いや……一党を組む事に関しては問題ない。単独行(ソロ)では限界があるし、そちらの人柄や能力は……把握しているとは言い難いが、問題が無いのは分かっている」

 

 頭を振り、疲れたように息を吐き出しながら魔法剣士が答える。

 

「それより本当に俺が頭目でいいのだろうか」

「あっ、うん。それに関してはあたしも異論はないよ」

 

 一番物事をよく見て正しい判断を下せるのはあなただろうから、と女武道家は理由を口にする。自分には無理な事だし、今の態度を見る限り女魔術師も若干無理がありそうだ。

 それに―――――彼の指示にならば従えると思える。その時になってみないと実際のところは分からないが、もし万一彼の指示が間違いで、窮地に陥ったとしても。それは彼に判断を任せた自分の責任だと思える、気がする。

 きっと、それは女魔術師も同じだろう。

 

「嫌ならあたしの方から彼女に言うけど……」

「いや……やろう。出来る限り、ではあるが」

 

 責任は重いが精一杯やらせてもらう。そう続ける魔法剣士に、女武道家は笑いかける。

 

「うん、よろしくね!あたしも彼女も、出来る限りだけど協力するから!」

 

 そう、出来る限り。絶対だとか、任せろなんて言えるほどの力が無いのは痛感している。だから出来る限りではあるが、己の持つ全力を尽くす。それしか自分には、少なくとも今の自分には出来ないのだから。

 それはきっと目の前の魔法剣士も同じで、だから出来る限りという言葉を使ったのだと女武道家は思った。自分の力の無さを把握していて、それでも一党の頭目としての責務は理解しているからあるだけの力は全て尽くすと。

 それを分かっていてくれるだけでも既に彼には頭目としての資質がある気がしてくる。勿論都合のいい思い込みに過ぎないかもしれないのだけれど。

 

「それじゃ、あたしは午後の仕事に戻るから。ゆっくり休んで養生してね?」

「ああ……うん。頑張って」

 

 こちらを見送る魔法剣士に軽く手を振り、女武道家は軽い足取りで歩み出す。一党を組んで活動すると決まっただけなのに、目の前が拓けたような気持ちになっていた。

 魔法剣士と女神官はずっと歩き続けていた。自分も大きく後れはしたが、また歩き出した。女魔術師も立ち上がり、歩き出した。それはきっと素晴らしく、尊い事なのだ。

 剣士が欠けてしまったのは残念な―――――残念で、悲しいことだけれど。だからこそ、余計に大事なのだと、女武道家は思った。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「オルクボルグよ」

 

 その声を聞いた時真っ先に魔法剣士の頭に浮かんだのは、亡き父の姿だった。何についての講義だったかは覚えていないが、確かに父はその言葉を口にした事があった。父はこんな涼やかな声ではなかったけれど。

 はて何について教えられた時に聞いたのだったか。たしかに何処かへ置いた、しかし何処に置いたかを思い出せない物を探す時のような気分になり何とも気持ちが悪い。自分には無関係だというのに、なんとか思い出そうと考え込んでしまう。

 

「『かみきり丸』に決まっておろう!」

 

 先程とは違う声の、違う言葉。最初の声よりはだいぶ父に近い声で発せられたその言葉を聞いた時、探し物が目の前に置いてあった事に気付いたような気持ちになり思わず声を上げてしまう。

 

「そうだ、森人(エルフ)の伝説に出てくる名刀だ」

 

 思ったより大きな声が出てしまい、騒いでいた森人と鉱人(ドワーフ)、それに一緒にいた蜥蜴人(リザードマン)や受付嬢までこっちを見てくる。ちょっと気恥ずかしくなり、軽く咳払いをすると魔法剣士は言葉を続ける。

 

「森人の伝説に出てくる名刀。鉱人が鍛え、ゴブリンが近付くと青白く光るという魔剣の名前がそれだったはずです。只人の言葉に直すなら……小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)

「ああ!ゴブリンスレイヤーさんの事ですか!」

 

 ポン、と受付嬢が手を叩く。その表情には喜色が見て取れる。きっとゴブリンスレイヤーにとってよい話なのだろうと魔法剣士は当たりを付けた。

 受付嬢が彼に対して特別な感情を抱いている事は、この街のギルドに出入りする人間ならばほぼ全員が知っている。無論魔法剣士も知っており、世話になっている事もあって応援もしていた。だから、彼女が喜ぶのであればゴブリンスレイヤーにとって少なくとも不利益な話ではないはずだ。

 

「ほほう、年若いというのに博識ですな。森人や鉱人の言葉に精通されておいでで?」

「いえ、たまたまです」

 

 森人達の連れらしき蜥蜴人の言葉に首を横に振る。自分が幼かった頃、父が語って聞かせてくれたものをたまたま覚えていたにすぎない。

 しかも伝説の内容はまるで覚えていないのだから、思い出せたのは奇跡的偶然(クリティカル)と言っていい。外なる神の啓示かとも思ったが、頻繁に啓示を下しやたらどうでもいい事を語りかけてくる外なる神は何の反応も示さなかった。

 神であるから尊い存在であろうし様々な助言に対して感謝もしているが、女性の胸の大きさに一々反応するのはやめた方がいいと魔法剣士は本気で思っている。ヤマダというのはいったい何なのか、ウエダとは何者なのかと気になって仕方ない。外なる神に連なる存在なのだろうか。

 

「ありがとうございます、助かりました」

「いえ、大したことでは」

 

 受付嬢が折り目正しく頭を下げながら礼を述べる。こちらも軽く頭を下げて言葉を受けると、その場から離れる。友人である女神官がゴブリンスレイヤーと一党を組んでいる事もあり少し気になるが、自分がどうこう出来るような話でもないだろう。

 

「よう。もう良くなったのか?」

 

 離れた直後、不意に声をかけられる。声の主が槍使いである事を認めると、魔法剣士は頭を下げる。

 

「はい、お陰様で。今日からまた依頼を受ける事にします」

「そいつは何よりだな。また単独行か?」

「いえ、一党に誘ってもらえたので組んで動く事になりました」

「ほー。ま、仲間がいれば出来る事は多くなるしな」

 

 やらなきゃいけないことも増えるけどな、と言う槍使いに対し魔法剣士は深く頷く。確かにやらねばならない事は大いに増える。頭目の立場を抜きにしても、他者と行動を共にするという事は他者の事を気遣わねばならないという事だ。

 

「ま、頑張れよ。命助けた借りも返してもらわにゃならんからな」

「はい。御恩には必ず報います」

「とはいえ、今のお前さんじゃ俺に何か返す事は出来んだろうからな」

 

 そこで言葉を切ると、槍使いは魔法剣士の革鎧に拳を当てる。そしてニッ、と笑顔を見せる。

 

「急かしゃしねえから、借りを返せるぐらいになるまで死ぬんじゃねえぞ」

「……はい。そちらもお元気で」

「おうよ」

 

 実のところ槍使いは借りなど全く気にしていないのだろう。だがこちらが必要以上に気にしないよう、あえて軽い口調でそれに触れているのだ。

 格好いい、とはこういう人の事を言うのだろうと魔法剣士は素直に思う。そしてそんな格好いい冒険者に借りを返すためには、容易なことでないとも。

 金を稼ぐまで死ねない。仲間を死なせてはならない。借りを返すまで死んではならない。実に色々な物を背負ってしまったものだ。しかし、その重みは決して嫌な重みではなかった。

 軽々しく背負えるほど軽いものでもないのだけれど、たまに愚痴でもこぼせば背負っていけるだろう。まだ背負ったばかりだというのに、魔法剣士は不思議と確信していた。

 

 

 

―――――――

 

 

 

 よくもまあ、あんな強引な行動が上手く行ったものだ。我ながらどうかしていたと女魔術師は振り返る。

 どう考えても魔法剣士を勧誘する態度ではなかったし、一党(パーティー)頭目(リーダー)になってくれと頼むのならばまだしも決定事項のように押し付けた。自分でやっておきながら今思うと正気だったかどうか疑わしくなるような行動だ。

 そんな行動に至った元凶をベルトポーチから取り出し、手に乗せて眺める。しかしこれもとんでもない結果となったものだ。

 

「何それ?骰子(サイコロ)?……割れてるけど」

「ええ、骰子よ。割れたから……割れたおかげで、私の宝物になったの」

 

 女武道家が不思議そうな顔をする。それはそうだろう。ただの骰子ならまだ分からなくもないだろうが、割れた骰子など何の役にも立たない。それを宝物などと言うのは普通なら理解出来まい。

 だが、女魔術師にとっては紛れもない宝物だった。あの日、己の運命を委ね振った骰子。その結果はあろうことか「二つに割れる」だった。

 勿論ない事ではない。形あるものは生まれた瞬間から少しずつ痛み傷付き劣化していく。その結果割れる、というのは道理ですらある。だがこのタイミングで割れるというのは、あまりにも出来過ぎていた。

 おまけに割れて出た目は、「1」と「6」。女魔術師はそれが神々から「自分で決めろ」と言われたような気がして、人目も気にせず笑ってしまったものだ。

 

 こんな結果が出たのだから、いっそ開き直ってやろう。全部ぶちまけて、その上で進もう。出目を見て女魔術師はそう決意した。

 後衛職である自分が単独(ソロ)でやっていくのは難しい。なら一党を組む必要がある。その時真っ先に顔が浮かんだのは魔法剣士と女武道家だった。どうせやり直すならあの2人と一緒にやり直そう。そう思った。

 女神官の事も気にはなったが、彼女がゴブリンスレイヤーと組んでいるのは女魔術師も知っていた。銀等級というだけでなく、あの洞窟での彼を思えば付いていくだけでも大変だろう。余計な負担はかけたくない。そう思い、声をかけるのは止めた。

 代わりに、また賭けをする事にした。魔法剣士と女武道家。どちらか片方にでも断られたなら、キッパリ諦めて帰ろうと。弟には迷惑をかけるし笑い者にもなるだろうが、それを甘んじて受け入れてやろうと。

 これが上手く行くかどうかで割れた骰子の出目が本当はどちらだったのかも分かる。そんな風に女魔術師は考えたのだ。結果から言えば、これ以上ないぐらいいい出目だったようだが。

 他人からすればただの割れた骰子。だが自分にとっては掛け替えのない物。きっと宝物というのはこういう風に出来て、増えていくのだろう。

 暫くはこれが一番の宝物となるのだろうな、と思いながら女魔術師は骰子をそっとポーチにしまい込んだ。

 

 

 

 数時間前まではそのはずだったのに何故こうなるのか。女魔術師はそっと、もらったばかりの耳飾りに触れながら呟く。

 あの後魔法剣士と合流し、三人は一党として再出発した。そして正式に頭目となった魔法剣士の第一声は―――――

 

「装備を整えに行きましょう」

 

 だった。ちょっと肩すかしを食らいはしたが、確かに大事な事ではあったから女魔術師も女武道家も異論はなかった。ただ多少の蓄えはあったが、装備を買うには不安があると二人が告げると魔法剣士は事もなげに言った。

 

「先日の依頼で貰った報奨金がまだ残っているので、それを使います」

 

 それを聞いて、二人は声を揃えて遠慮と言うより反対をした。その銀貨は魔法剣士が命を懸けて働いた結果手に入れたもので、自分達が使っていいものではない。額に痛々しく残った傷跡と引き換えに得た銀貨であろうから、余計にそう思った。

 だが魔法剣士は頑として譲らなかった。自分は大したことはしておらず、槍使いと魔女のお陰で幸運にも得られた報酬に過ぎない。だから遠慮はいらないし、惜しくもない。何より一党の為に使うのは結果として自分の為になるのだから問題ないだろうと。

 経済的にロクな余裕が無い駆け出し冒険者の一党が、銀貨の使い道について譲り合い半ば言い争う。そんな奇妙な光景を生み出しギルドの注目を集めていたのだが、三人はそれに気付かないほど全力で譲り合っていた。

 

「……頭目が決めた頭目の資産の使い道について納得できないのであるなら、一党を解散するしかありませんね」

 

 最終的に魔法剣士のその言葉で、女魔術師も女武道家も黙らされた。一党の解散を盾に取られたら従うしかないし、確かに彼の手にした金なのだから彼がどう使おうが本来口出しする権利はないのだ。

 そして明確な誤りでもなく理不尽でも無理難題でもない頭目の決定に従わない、というのはどう考えてもこちらに非がある形になる。ましてや自分達は彼を強引に頭目として戴いたのだから。

 そうして―――――何とも不毛で無駄だった気がするし、そうでもなかったような気がする言い争いを終え工房へと三人は移動した。一党の中で最も経験を積んだ魔法剣士の言葉を参考にしつつ、実際に使う者が自分で考えながら装備を選ぶ時間は有意義であったし何とも楽しかった。

 それぞれ武器と防具を購入し、自分の体格に合わせた調整もしてもらった。それで買い物は終わり、ギルドに戻って今後についての相談をする。そのはずだった。

 

「これを」

 

 だったのだが、魔法剣士から差し出された耳飾りが予定というよりも女魔術師の調子を狂わせた。

 

「最も安いものですが呪文の発動体ですので、呪文を行使する際は触れてください」

 

 困惑する女魔術師に対し、いつもの調子で魔法剣士は言った。要するに装備品の一つであり、確かに魔術を専門とする自分にこそ最も必要となるものだ。それだけであり他の何かは一切ないのだろう。

 だが女魔術師は頬が緩むのを止められない。別に魔法剣士に対してどうこうという気持ちはない。ないはずだ。だが男から贈り物を―――――弟を抜きにすれば―――――貰うというのは初めての事であり、気持ちが湧き立つのを抑えられない。

 魔法剣士は特に気にする様子もないが、女武道家が何とも生暖かい視線を送って来る。それに対して何か言い返してやろうかと思ったが、さっきから何度も耳飾りに手をやっている現状では何の説得力もないだろう。

 仲間から初めての贈り物。家族以外の男から初めて貰ったもの。魔法剣士から貰ったもの。それらの要素が相まって、あの骰子より大事なものが出来てしまった。

 何だかその事実がとても嬉しくて、女魔術師は頬が緩むのを止められなくなってしまった。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「さて、装備は大丈夫ですか?もう一度確認をお願いします」

 

 魔法剣士の言葉に、女武道家と女魔術師はもう一度自分の装備を見直す。破損箇所などはないか、防具がほつれてはいないか。ベルトポーチにしっかりと水薬の類は入っているか。何か忘れてはいないか。

 単純で当たり前な事ではあるが、大事なことだと魔法剣士は言った。その通りだと女武道家も思う。何かあってからでは遅いのだ。

 

「それでは行きましょうか」

「待って」

 

 ふと思う事があり、女武道家は魔法剣士を止める。些細なことではあるが、どうしても気になってしまったのだ。

 何か不備があったのか、と訝しげに見てくる二人に対し、女武道家はその気になった点を素直に口にする。

 

「話し方。それ素じゃないって言うか、意識して変えてるんでしょ?」

「……ああ、はい。失礼が無いよう、意識的に丁寧な話し方にしていますが」

「それちょっと他人行儀かなーって。固定で一党(パーティー)組んでやって行くんだから、自然な感じでいいんじゃない?」

「……そうね。私もそう思うわ。そうした方がいい、というか楽にしなさい」

 

 女魔術師も自分の意見に賛同し、二人でジッと魔法剣士を見つめる。彼はちょっとたじろいだが、小さく頷いて見せた。

 

「そうだな。その方が楽だ」

「うん」

「よし」

 

 口調を改めた魔法剣士に対し、二人は「それでいい」と頷く。本当にささやかな事ではあるが、これでちゃんと一党としての距離になった気がする。

 

「では改めて。行くぞ」

「ええ。これが私達の」

再出発(リスタート)、ね」

 

 迷宮に挑むのでもなければ、怪物退治に行くわけでもない。街の下水道に潜り、巨大鼠(ジャイアントラット)大黒蟲(ジャイアントローチ)を相手取るだけ。

 だが女武道家は緊張と高揚、不安と期待で心臓が大きく脈打つのを感じていた。小さな一歩ではあるが、三人で歩き出す最初の一歩なのだと。

 今度こそ誰も失わず、一歩ずつでいいから長く歩いていきたい。女武道家は心からそう願いながら、下水道へと降りて行った。

 

 

 

―――――――

 

 

 

大黒蟲(ジャイアントローチ)退治の報告に来ました。巨大鼠(ジャイアントラット)退治とドブさらいの方はまだ達成していませんが、必ず後ほど報告に上がります」

 

 昼食時になる少し前、不意に戻ってきた魔法剣士から受付嬢は報告を受けていた。

 一応規約違反ではない―――――しかしあまり推奨される行為ではない―――――やり方で下水道関連の依頼を三つ受けて、朝から向かっていた彼とその一党が意外と早く戻ってきた事に驚きつつもその報告を受理する。

 全てこなしてから報告に来るかと思っていたのだが、何かあったのだろうかと訝しむ受付嬢に対し魔法剣士はまるで視線を遮るように身を乗り出して報告を続ける。大黒蟲の体液を浴びたため単に洗い流しただけでは不十分と感じ、着替えを取りに戻ったのだと。

 その背後で彼と一党を組んでいる女魔術師が妙に不自然な姿勢で部屋に戻ろうとしているのが一瞬見えたが、同じ一党の一員である女武道家がそちらを遮るように立ちはだかり魔法剣士の意見を肯定してきた。

 彼らの行動と女魔術師の姿勢、そしてギルド職員としての経験から理由を察した受付嬢はそれ以上視線を向ける事なく魔法剣士の持ってきたものへと話題を切りかえる。

 

「その剣はどうなされましたか?」

「今言った一際大きい大黒蟲……巨大黒蟲(ヒュージローチ)の腹から出てきたものです」

 

 犠牲者のものだろうか。そう考えた所でふと受付嬢は思い当る。そう言えばつい最近下水道で剣を無くしたという報告を受けたばかりではないか。

 

「その蟲……巨大黒蟲はどのぐらいの大きさでした?具体的には巨大鼠の死骸を剣ごと食べれるぐらい、だったりします?」

「ああ、そういえばそのぐらいの大きさでした」

「確かにこの剣ごと巨大鼠を食べても不思議はなかったわね」

 

 魔法剣士と女武道家が頷くのを見て、受付嬢の中で答えが繋がる。恐らくは間違いないだろう。

 

「たぶんこの剣、つい先日鼠退治に行った冒険者さんの物ですね。巨大鼠に刺した剣が回収できずに戻って来てしまったと仰ってましたから……」

「ああ、持ち主が分かるのならば返却しておいて貰えますか?」

「はい、勿論。ギルドの方で責任持ってお預かりして、返却しておきますね」

 

 受付嬢がそう言うと、魔法剣士は「お願いします」と頭を下げながら惜しげもなく剣を提出してくる。彼のもっとも善い点はこういう所だなと受付嬢は思う。

 その彼と一党を組むのであれば女魔術師も女武道家も人間性に問題はないだろう。特に女武道家は「持ち主わかって良かったね」と魔法剣士に話しかけている事から、彼同様善に属するはずだ。

 

(こういう人たちが順調に成長していってくれるといいんですけどね)

 

 勿論どんな冒険者も無事かつ順調に行ってくれるのがいいのだが、受付嬢も人間である以上どうしても贔屓目というものが出てきてしまう。

 特に女魔術師は今日の出来事を笑い話に出来る程度には成長してほしいな、と内心祈りつつ、受付嬢は次の業務へと取りかかっていった。

 




女魔術師の感情についてはまだ単純に「初めて異性から贈り物を貰ってはしゃいでいる」だけです。まだ。


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幕間 彼と彼女の話

「困った」

 

 思わず口から出てきた言葉に、自分が思っていた以上に悩んでいた事を魔法剣士は自覚する。しかし言わずにはいられないほど困っているのもまた事実ではあった。

 幸いギルドに併設された酒場は常に一定の賑わいを見せており、独り言を聞かれた心配はなさそうだ。別に誰かに聞かれたからといって差しさわりがあるわけではないが、何となく気まずい。

 

「おう、どうしたよ」

 

 背後からかけられた声に反応して振り返ると、そこには槍使いが―――――珍しく、槍も持たず鎧も着ずに―――――立っていた。立ち上がり挨拶しようとする魔法剣士を制すると、槍使いは対面の椅子に腰をかける。

 

「うんうん唸ってたが、悩み事か?」

 

 そんな唸り声まで出していたのだろうか。それとも言いそうに見えるぐらい悩んでいたのだろうか。どちらか判断がつかない。

 いずれにせよ他者に悩んでいるのが分かる程度に、態度には出ていたのだろう。

 

「はい」

 

 であるならば元より隠すほどの事でもないので、魔法剣士は素直に頷いた。

 

「手紙を書こうと思いまして」

「手紙?……ああ、例のあの子にか」

 

 槍使いが俄然面白そうだと興味を惹かれたように、身を乗り出してくる。魔法剣士は首肯し、悩みの種を打ち明ける。

 

「それで、何を使って何を書こうか悩んでいました」

 

 羊皮紙を何枚も買う余裕はないもので、と魔法剣士は懐事情を正直に話す。羊皮紙の値段は1枚当たり銀貨1枚。郵便にも金がかかる事を考えれば、今の魔法剣士ではせいぜい2,3枚買うのがいいところだ。が、当然それだけとなると書ける量は限られてくる。

 時節の挨拶と無音を詫び、簡単な近況報告をするだけならそれでも充分だとは思う。だが婚約者に送る手紙はそれでいいのだろうか、婚約者とはそういうものなのだろうかと魔法剣士は思う。もう少しこう、書くこともあるはずだ。

 なら安価なパピルス紙にするか、となるとこれまた問題がある。銀貨2枚も出せば10枚ほど買えるので量は充分となるが、パピルス紙はその安さに相応しく脆い。別に触れたら崩れるとかではないが、ちょっと力を加えたりすればあっさり破れる。

 おまけに羊皮紙と比べた場合見た目にも安っぽく、一般人同士ならともかく貴族の令嬢である彼女に送る紙としては相応しくなかろう。彼女は一向に気にしないだろうが、身分に相応しいものというのはある。

 少ない枚数で短く纏めるべきか。それとも見目を気にせず、現状を詳しく記して伝える事を優先するか。どちらを選ぶべきか。

 

「ま、金がねえのは仕方ねえわな」

 

 話を聞いた槍使いが、駆け出しなんてそんなもんだしよ、と実感を込めて呟くのを聞いて、魔法剣士は深く頷いた。

 無理に捻出しようと思えば出来なくはないのだが、その結果装備や生活に支障をきたしては意味が無い。冒険者はその辺りを損なえば命に繋がるのだ。

 

「数はどうしても必要なのか?」

「頭の中で文面を練ったのですが、詳しく伝えようと思ったらある程度はどうしても必要な量の文章となってしまうので……」

「ふうん」

 

 腕を組んで槍使いは考え込む。だがすぐに何か思いついたらしく、腕を解いた。

 

「折衷案でどうだ?羊皮紙1枚に挨拶だのなんだのを纏めて、細かな事はパピルス紙に書きゃいいだろ」

「ああ。それは……いいですね」

 

 確かにそれならば丁度いい塩梅な気がする。自分は無理なく手紙を送れるし、一応の格好も付く。伝えた方がいいと思う事も全て伝えられる。

 

「そうする事にします。ありがとうございました」

「おう、気にすんな」

 

 ひらひらと手を振る槍使いに頭を下げると、魔法剣士は酒場を後にする。早速紙を買って手紙を書かねば。思えばこの街に来てから初の手紙だ。着いてからすぐに書くべきではなかったか。

 己のあまりに婚約者らしからぬ行動によくよく詫びねばならぬと思いながら、魔法剣士は紙とペンを―――――冒険者になってから、初めて冒険者稼業以外で必要なものを求め街へと繰り出して行った。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「近況報告と業務連絡の区別がお出来にならないのですね」

 

 仕方ない人、とクスクス笑いながら彼女―――――ある貴族の令嬢は高価で脆い硝子細工に触れるような手つきで、大事そうに安いパピルス紙を捲る。

 婚約者から送られてきた手紙は、丁寧ではあるがあまりにも形式的すぎる挨拶と久しく連絡を寄こさなかった事への謝罪文が羊皮紙に。近況報告という名の業務連絡のような文章がパピルス紙に書かれていた。

 ひとかけらも情熱だの情調だのを感じられない手紙だが、だからこそ婚約者らしいと令嬢は思う。恐らくはこれを書くために相当頭を悩ませ、その結果辿り付いてこうなったのだ。

 

 彼が自分の為に時間を割いてくれた。彼が自分の事を考えてくれた。彼が自分へ何かを送ってくれた。

 

 ただそれだけで令嬢の胸は高鳴り、暖かなものが全身に満ちる。思わず手紙を豊かな胸に埋めて抱きしめたくなるが、崩れてしまうかもしれないとギリギリで自制する。

 彼が自分を気にかけ、連絡を寄こしてくれた。さらに彼なりに考え彼の事を伝えようとしてくれた。なんと素晴らしいことか!令嬢は今すぐ外に出て街行く人々全てを抱擁し、幸福を分かち合いたい気分になっていた。

 

「彼から手紙が着いたのかね?」

「あら、お父様」

 

 不意に声をかけられ令嬢は我に戻る。声のした方向を見れば、気品を損なわぬ程度に威厳を、威厳を損なわぬ程度に気品を漂わせている父が部屋のドアを開けて立っていた。

親とはいえ女性の部屋に入るならノックぐらいはしてほしかったが、恐らくノックをしても自分が気付かなかったのだろうと思い直す。

 どう考えても彼から手紙を貰い浮かれていた自分が悪い。内心で理不尽な思いを抱いた事を陳謝しつつ、父にもこの幸福な気持ちを分け与えるべく令嬢は微笑みながら頷いた。

 

「ええ、今朝届きましたわ。相変わらず画一的で面白みなど一片もない、本当にあの方らしいお手紙でしたわ」

「そうか……元気そうかね?」

「一度死にかけたそうですけれど、もうお元気なようですわ。手紙が届くための日数を考えれば、もう冒険を再開しているのではないかしら」

 

 事もなげに婚約者が生死の境を彷徨った事を伝えると、父が絶句した。表面上は何ともないように取り繕っているが、令嬢にはその心中が手に取るように分かる。

 

「それは大丈夫とは……いや、まあ、冒険者には付きものではあるが……」

 

 流石10年前にかの『死の迷宮』に挑んでいただけの事はある。父は冒険者には危険が付きものだと理解しているらしい。いや、自分などより遥かに理解していてそれは体験が伴っているのだろう。

 そんな父が絶句したのは、婚約者が死にかけたというのに平然としている自分の態度に対してだろう。

 

「私が取り乱さないのが不思議なのですね、お父様」

「うむ。生半な事で驚いたりする女ではないのは承知しているが……」

「あの方が冒険者になった時から……いいえ、ならざるを得なくした時から覚悟の上ですもの。今さら驚きませんわ」

 

 そう。彼が冒険者になるより他無くなるように仕向けたのは他ならぬ令嬢自身だ。冒険者という職業がいかに危険で困難なものであるか父からよく教えられ、その上でそう仕向けた。

 そんな自分が彼の生死に対し取り乱していいはずがない。それをするぐらいなら最初からしなければよかったのだから。

 

「しかし、これで本当によかったのだろうか。やはりお前の口から伝えるだけでも良かったのではないかね?」

「それでは意味がありませんわ。言って伝わったとしても実感が伴わなければ理解ができませんもの。やはりご自分で理解していただかなくては」

 

 首を横に振り、父の言葉を否定する。そう、自分が言っては意味が無いのだ。

決められた役割を果たすしか能の無い、決まった事しか出来ない人間。彼は自分自身の事をそう考えて―――――そう思い込んでいる。だがそれは違う。彼自身が否定したとしても、令嬢はそうでないと声を大にして言う。

 彼は人の期待に応え、人の望みを叶え、人の為に動く事を喜びとする人間なのだ。その上で規則や規範を尊び、それを守ろうとする。出会ったときから変わらず、彼はそういう人間だ。

 だが彼自身はそれに全く気付いていない。それは彼にとって不幸であり、彼の人生を狭めてしまう。ならその事を伝えるべきか?否、伝えたとしても彼がそれを理解し受け入れられるとは思えない。

 やはりこういうことは自分で気付かねば認められないものなのだ。そしてそれに気付く事が出来れば、きっと彼の人生は豊かで幸福な物になるはずだ。

 

「しかしだな、お前は本当にこのままでいいのか?その、彼が誠実な人間である事は私も承知しているが……冒険者というのは出会いと別れがつきものでな……」

「仰りたい事は分かりますわ。誰かと心通じて私の下へ戻って来る事を止めてしまわないか、という事ですわね?」

「うむ……そうなったらどうするのだ?あの時はお前に押し切られて聞けなかったのだが、聡いお前の事だ。想像していないわけではないのだろう?」

「ええ、勿論!もしあの方が誰か愛しく思う相手が出来て、そちらと添い遂げるのを選ぶのであれば―――――」

 

 そこで一度言葉を切ると、令嬢は満面の笑顔を見せた。

 

「心から祝福いたしますわ!この上なく素晴らしい事ですもの!」

 

 は?と間の抜けた声を上げる父を他所に、令嬢は言葉を続ける。

 

「愛や恋といったものが理解できてないあの方がそれを理解して、添い遂げたいと思える相手が出来る!ああ、なんて素晴らしい!あの方は間違いなく幸福になる事でしょう!」

 

 彼が愛を知る。彼が恋をする。彼に伴侶が出来る。彼が幸福になる。なんて、なんて素晴らしい事か!もしそうなったら自分は心から彼を祝福し、彼の伴侶となる相手に心から感謝することだろう!

 彼が幸福になるというのならば、自分との婚約などどうでもいいことだ。令嬢は本気でそう思う。大事なのは彼であり、決して自分ではない。

 

「私はあの方が己自身を知り、多くの事を知り、今以上に素敵な方になっていただくため冒険者になっていただきました。でもそれはあくまで「あの方の幸福」の為であって、私の為ではありませんわ」

 

 そう。令嬢は彼に幸福になってもらいたいのだ。幸福で、豊かで、実りある生涯を送ってもらいたい。そこに自分がいる必要はない。彼が1人だろうが、他の誰かと一緒だろうが、彼が幸福でさえあればいい。

 彼女にとって、「愛」とはそういうものだった。この愛の形が世間一般(スタンダード)からかけ離れているのは充分承知している。だが、だから何だと言うのだ?世間一般など知った事か。自分の愛を世間だの何だのに歪められてたまるか。

 一々形に拘り、世間に合わせないといけない愛などあってたまるものか。

 

「あの方が幸福になるように、あの方の幸福が続くようにする。私にとって人を、あの方を愛するとはそういうことですのよ、お父様」

 

 再び絶句する父親に構わず、彼からの手紙を武骨で頑丈な金庫にしまい込む。巨人(トロル)が殴っても壊れないと出入りの商人が言っていたその中には、これまで彼から貰ったものや彼との思い出の品が整理整頓されて眠っている。

 彼はきっとまた手紙をくれる事だろう。いや、手紙を貰ったのだから自分から返事を出してもいい。彼はそれに対してどんな反応を返すだろうか?

 同じように面白みのない返事が来るのだろうか?それとも何か変化が起きるのだろうか?あるいは返事をする暇が無いぐらいに忙しいのだろうか?彼がどう過ごしているかを考えるだけでも令嬢の心は湧き立つ。

 心底疲れたように父がため息を吐く。それに対し令嬢は心の底から浮かび上がって来る高揚感によって金剛石のように輝く笑顔を見せた。

 

「今日もこうしてあの方を想い、愛せる―――――人生は美しい(ライフイズビューティフル)ですわね、お父様!」

 

 

 

 

 

 

 令嬢

 只人 16歳

 魔法剣士の婚約者であり、都の伯爵の三女。愛が重い(ヤンデレ)。バストは女魔術師以上牛飼娘以下。魔法剣士に自身の性格や性質を自覚し、成長してもらうために父親に頼み込んで彼が冒険者になるよう仕向けてもらった。つまりはある意味での元凶。

 彼が幸せな人生を送る事を何より優先しており、彼の幸せこそが彼女にとっての最大の幸せ。彼が幸せなら別に自分の事を忘れてしまっても構わないと思っている。ただし魔法剣士の気が変わった時の為に生涯待ち続けるつもりでいる。

 自分が異常である事はよく理解しており、その上で自分を変えようとせずにいる。なお魔法剣士は彼女の性格と性質を理解しており、その上で厭うこともなく婚約者として受け入れている。

 魔法剣士を愛するようになった理由はほぼ一目惚れ。「愛に一々理由はいらない」というのが本人の言い分。

 冒険者が危険な事は父親から聞いてよく知っており、魔法剣士がもし帰らぬ人となった場合責任を取って即座に自害する決意を固めている。

 魔法剣士への愛の重さを除けば自分の狂気的な愛を客観視できる程度には理性的で、自分が世間一般から逸脱している事を理解できる程度に常識を持ち合わせている。特技は人間観察で、特に魔法剣士の内面を本人以上に把握している。

 父親や近しいものからは「愛を大金棒(モール)のように振り回してる」と思われている。ただし本人と魔法剣士だけは「愛を鎧通し(エストック)のように貫いているだけ」と思っている。

 

 

 伯爵

 只人

 令嬢の父親。令嬢の口車に乗せられた結果、魔法剣士にとんでもない苦労を背負わせた事を後悔している。

 最近はそもそも婚約自体彼にとってよくなかったのではと思い始めている。

 10年前に親友でもあった魔法剣士の父親と組んで「死の迷宮」に挑んだ経験がある。なので冒険者の実情は充分承知しており、魔法剣士が冒険者になるのであれば支援するつもりだった……のだがジキヨシャの託宣により魔法剣士は辺境へ赴いたために空振りに終わった。

 




相手がマトモだと何時から勘違いしていた?


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魔法剣士・7

令嬢が人気で嬉しい。邂逅で婚約者引いた瞬間からキャラ固めてた甲斐があった。


 はい、それでは今回も始めて行きましょう。

 

 前回は魔術師が変な空気にしたのをスルーしたところまででしたね。大人の対応したのに自分で触れてくるのは勘弁してほしいです。

 あの後鼠退治もして分かった事が一つ。武道家、普通にダメージソースとして魔法剣士君より優秀ですね。一発あたり魔法剣士君の1.5倍ぐらいダメージ出して行きます。あと速度速いんで、ガシガシ殴って行きます。

 自分が操作下手くそっていう問題もありますけど、ちょっと別ゲーみたいな動きになりますね彼女。いいなあ。いつか武道家作ってプレイしよ。

 魔術師の方は出目が期待値以下でない限り、暴食鼠(グラトニーラット)巨大黒蟲(ヒュージローチ)でも一発で仕留めてますね。マジで切り札になってます。

 そして下水マラソンを1週間ほど行った結果、二人ともレベルが上がりました。上がりましたが、このゲーム自キャラ以外の成長とかビルドには介入できないので「たぶん強くなった」ぐらいの感覚です。というのも、技能を取得するタイミングがレベルが上がったら即時ではなくランダムなようなので。

 あ、でも明確に分かることがあります。呪文と奇跡です。これは一党を組んでいる場合情報共有してないとヤバいので、必ず教えてくれます。

 その結果女魔術師が《力場(フォースフィールド)》と《吹雪(ブリザード)》を習得してくれました。前者は簡単に言うと見えない壁を生み出す呪文ですね。現状壁役いない一党なんで非常にありがたいです。良い仕事してくれんじゃん魔術師。俺は最初から信じてたよ。

 後者は分かりやすく言うと範囲攻撃呪文ですね。半径10m、高さ20mの円錐状に名前通り吹雪を巻き起こします。ダメージも高めで、食らった相手に凍結や凍傷による判定へのペナルティを付与します。殲滅力高めな上に、生き延びてもデバフかかる非常に強力な魔法です。

 勿論欠点はあります。このゲーム、呪文難易度というものがありまして《力場》は15、《吹雪》は20に設定されてます。彼女が最初から習得してた《火矢(ファイアボルト)》や魔法剣士君の切り札である《粘糸(スパイダーウェブ)》は10です。

 魔法や奇跡を使用する時は、その度に毎回達成値判定が行われます。そして個々の呪文や奇跡ごとに設定されてる難易度に届かないと使用できません。発動に失敗します。

 そして発動に失敗しても、「1回使用した」とカウントされます。つまり完全な無駄打ちになります。魔法剣士君はその辺を考慮して彼の能力値なら大失敗しない限り絶対発動する呪文のみ習得してるんですが、魔術師はどうなんでしょう。まあでも彼女達成値にボーナス貰える装備してるんで、こういう呪文を習得するのは全然アリです。

 

 そして1週間の収支なんですけど、一回だけ暴食鼠倒してその報奨金も含めて銀貨197枚。これを一党(パーティー)の人数+共有財布の4で割って、共有財布に1人1枚ずつ供出する形にしたので魔法剣士君の懐には銀貨49枚が入りました。共有財布には50枚です。

 ただしこの1週間で解毒剤を2本、軟膏を1つ消費したので共有財布には銀貨20枚しか残っていません。

 そして生活費を差し引くと、魔法剣士君の懐には銀貨9枚しか入ってきませんでした。ええ、暴食鼠が出てこないと赤字でした。

 ここから分かる事は、下水道は最低限の生活費と練習に行く場所であって稼げる場所ではないってことですね。単独ならまた話は違うんですが。まあ誰にでも出来る仕事ってそんなもんですね。

 つまり何が言いたいかというと、そろそろ次の段階に進みます。金の為に。勿論ここで粘って稼ぐのもアリと言えばアリなんですけど、あまりにも歩みが遅いです。

 

 というわけで!休日を利用して第171回魔法剣士一党会議を始める!(初開催)

 

 議題は次の段階に進むにあたって一党に足りないものと、足りないけど補えそうなもの。あるいはすぐに手に入りそうなもの。そしてそれらが手に入った場合と手に入らない場合それぞれで今後どうしていくかです。

 さあ二人ともどんどん意見を出してくれ。まずは褒める構えでいるから。はい女魔術師速かった。索敵役が足りない?斥候(スカウト)野伏(レンジャー)が必要?うん、実にいい意見だ。今のままだと探索系の依頼は厳しいからね。

 魔法剣士君が《察知(センスリスク)》使えばいいんだけど、2回しか使えない上に持続時間が決して長くはないからね。達成値が良くても魔法剣士君だと10分しか持たんからね。

 女武道家は何かある?後衛を増やすなら前衛がもう1人欲しい?確かに魔法剣士君は前衛やるには少し防御力に不安あるからね。これもいい意見だ。

 リアルな話になりますが、皆さんもとにかく意見が欲しい時、つまり会議を始めたばかりの時はどんな意見であっても褒めまくってください。ありきたりな意見や明らかな欠点が見えていても美点を見出して褒めてください。そうすることで「発言への抵抗感」が薄れ、会議の参加者が積極的になりどんどん意見が出てきます。

 逆に意見を求めてるのに否定すると、否定されることへの忌避感から意見が出づらくなります。そしてそれを2,3回も続けると参加者は会議そのものへのやる気を失い、時間を浪費しモチベーションを下げるだけの会議になります。

 そしてだいたいの場合、会議の結果が思わしくないからもう一度会議を開くのですが今度は最初からやる気を失った状態で参加してきます。既に悪循環が始まってます。そうなると盛り返すには大変な手間がいります。

 否定をするなら一通り意見を出してから、「ここはいいのだけれど」ともう一度美点を強調しつつ問題点を指摘してください。すると指摘される側は抵抗感を覚えにくくなります。

 ちなみに最悪なのは会議の結果を否定したり却下する事です。じゃあ何のためにやったんだ、となるので。もし自分の上司が結果を却下したなら、速やかに左鉤突きを叩き込みそこから煉獄に繫げてください。連打が終わるころには上司も受け入れてくれます。

 最後にモノを言うのは暴力。ハッキリ分かんだね。

 

 いやーいい会議でした。第69回に匹敵するレベルの実りある会議でした。初めて会議したんだけど。

 とりあえず斥候か野伏を探す、もしくは兼業でいいからそれが出来る人を探すのを最優先という事になりました。次に優先するのは前衛やれる人です。理想はガチタンですが、別に殴り屋でも構いません。神官職も欲しいところなんですが、これは先に言った二つと比較した場合優先度は落ちます。

 依頼に関しては、索敵係が見つからない限り迷宮とかガチの探索系は受けないということで一致しました。万一受けた依頼でそれ系の技能が必要になった場合は大人しく撤退、キャンセルします。作戦:いのちだいじに。

 この二つは並行してやっていきますが、生活費とかの問題があるので当然何がしかの依頼は受け続けます。

 というわけで斥候を探しに行きま……あれなんか話しかけられた。誰だ君達は。テレビ無いんで受信料は払いませんよ。

 お礼?ああ、あの剣の持ち主か。いやいいよいいよ気にしなくて。ところで誠意は言葉ではなく金額って言った人がいてね。いや別に関係はないけどね。

 本当にお礼だけで終わりました。ちっ。まあ君らも頑張ってね。

 

 

 

 はい、例によってイベントが起きなかったので会議の翌日までカットしました。

 つまりどういう事かというと、斥候も野伏も見つかりませんでした。1人ぐらい余ってるかなって思ったんですが、みんな既に一党入ってましたね。これはもうラフテル辺りにまで捜しに行くしかないのでは?

 まあ普通に考えて一回冒険すれば探索係の大事さに気付いて、みんな勧誘しますからね。仕方ありません。ソロで探索も戦闘もこなすゴブリンスレイヤーさんとか、探索係置いてない槍ニキとかは知恵を絞るか依頼を選ぶかしてるんでしょう。

 下水は注意深くしてれば足音にプレイヤーか魔法剣士君本人が気付いたんで何とでもなったんですけどね。特にGの方。カサカサ音がしたら人間はすぐ気付くように出来てますからね。

 

 見つからないものはもうしょうがないので、依頼を絞る方向で行きましょう。「何かに気付く」判定には知力集中を使うので、高知力で平均レベルの集中力がある人材が二人いる魔法剣士君の一党はゴブリンの罠程度なら見破れる可能性が結構あります。なので他に選択肢が無ければゴブリン退治も視野に入れます。

 さーて、何か依頼がないかなーっと。アンブレラ社の治験のバイトとかないかなー。絶対行かないけど。

 物資の輸送依頼?おっ手頃なのあるじゃーん。報酬も銀貨60枚と中々。問題があるとすれば距離的に1泊2日コースな事ぐらいですが、遠征の練習になると思えば金額的にはともかく経験的には全然お釣りが来ますね。

 これにしようぜー、って言ったら二人とも賛成してくれたので決定です。受付さんも笑顔で「頑張ってください」って言ってくれました。マジ女神。

 余談なんですけど、配達とかこういう物資輸送は等級以上に信用が受けれるかどうかの条件になるそうです。自力で信用を稼ぐ、貴族や騎士、神官みたいな身分的に信用される出自を引く、礼儀作法を身に付けておくなどで条件をクリアできます。

 タイマンで傭兵を倒せるぐらい強くても普段の言動がアレだと受けれないらしいです。要するに持ち逃げするんじゃねえのって疑われるわけですね。その点魔法剣士君は信用あります。カプコン製のヘリだから落ちるだろ、ぐらいの信用です。

 さて、初の遠征なので準備整えましょう。みんなで買い物行くぞー。おやつは銀貨3枚までな!

 冗談めかして言いましたが、あるとないとでは大違いなので買いますよ、おやつ。槍ニキゼミで必要だって習ったので。辺境最強が言ってたんだ、信じろ。

 

 寝袋……銀貨1枚 テント……銀貨20枚 調理道具……銀貨5枚 携帯食3日分……銀貨15枚 調味料セット……銀貨5枚 各種香辛料1袋ずつ……1袋辺り銀貨3枚 干した果物……銀貨5枚 マント……銀貨10枚 

 みんなでワイワイ言いながら買い物した時間……Priceless お金で買えない価値がある。

 

 共有財布からとみんなの貯蓄から出したお金で装備を整えました。どうせこの先遠出する事があるなら使うものなので、割と奮発してます。武道家が思ってたよりお金持ってたんですが、彼女最初のゴブリン退治の後で故郷に戻った時に私物の大半を処分して金作って戻って来たらしいです。覚悟決まりすぎじゃね?

 その結果マントは彼女の奢りで人数分買えました。移動力落ちるんですけど、これあると日光や風が強い時に消耗せずに済むそうなので。今の時期はともかく夏や冬、あるいは風の強い日なんかは必須になるので買っちゃいました。

 調味料と香辛料は魔術師の奢りです。代書業で作った貯蓄だそうで。これないと飯が味気なくて士気が下がるんで助かります。あと携帯食は1日分余分に買いました。何かあるといけないので。

 前回魔法剣士君が金出して装備整えたのも効果あったみたいです。ライダーは助け合いでしょ!みたいな精神で一党の為なら自分の余剰金出そうぜ、という空気が三人の中で産まれてきてます。

 これそれ自体は非常にいいことではあるんですが、後から入ってきた人が馴染めない場合があるのでちょっと不安でもありますね。早いとこ新メンバー入れて空気の入れ替えした方がいいかも。

 まあそれは後に置いておくとして、みんな荷物は持ったな!行くぞぉ!

 

 依頼品である食料や薬品類は魔法剣士君が持ちます。彼は忍耐があるので消耗に強いのと、一番適任だからです。

 武道家の方が体力自体はあるんですが、彼女に持たせると移動中何かに襲われた時荷物を気にして素早く動けない可能性が出てくるので。機動力が命な彼女に持たせるのはNGです。

 魔術師に関しては単純に筋力と体力の無さです。胸と尻に反比例するかのように筋力と体力がないんです、彼女。ただでさえ長距離移動するのが確定してるのに体力のない人間に持たせてはいけません。行程が遅れる可能性が出てくる上に、何かあった時疲労困憊で対処できない可能性すらあります。

 その点魔法剣士君は必要な体力と筋力はありますし、多少消耗しても何とかなります。前に出れなくても呪文でサポートしたり魔術師守って彼女が呪文使うのをサポートしたり出来ますからね。

 移動中は会話の内容なんかで好感度や信頼度を上げれるんですが、今回は彼女達にも槍ニキゼミを受講をしてもらいます。メモっといた内容を話すだけですが、絶対役に立つ内容なので。

 まずは口を開く前と後に「槍ニキバンザイ」と付けるところから始めるぞ。もしくは「辺境最強は最高です」だ。視聴者(読者)もな!

 

 

 

 何事もなく初日の予定通り、正確に言うと予定よりちょっとだけ長く進む事に成功しました。野営地も問題なく見つけられたので、ここをキャンプ地とする!

 【調理】持ちの魔法剣士君が無難な食事を作り、みんなでちょっとした楽しみとして干した果物を摘まんで和気藹藹と夜を過ごします。テントは一個しかないので男女共用です。ちょっと距離は離すから勘弁してくれな!

 見張りのローテも組んで、いよいよ冒険者らしいことしてるなって気分に浸りながら魔法剣士君が最初の見張りを務めます。

 時計なんて便利なものはないので、月があの辺まで来たら交代みたいな感じです。この時期はどのぐらい月が傾いたらどのぐらい時間が経過した、みたいな知識系は知力で判定するので、この一党はその辺有利です。高知力が二人いるので片方がしくじってももう片方が成功すれば何とかなります。

 時間割ですが、キッチリ三等分ではなく夜明けまでの時間の半分ほどを魔法剣士君が。その後は最初の半分を武道家がやって、魔術師はずっと眠らせます。

 これは魔術師の体力不足もありますが、彼女は万全の状態でこそ有効な運用が出来るので。知力系の判定任せたり、いざという時に難易度高い呪文使って貰うかも知れないので。

 個人的に期待してるのは《吹雪》です。コレ発動に成功さえすれば、期待値のダメージが出ればただのゴブリンなら即死します。追剥(ブッシュワッカー)盗賊(シーフ)破落戸(ゴロツキ)は死にはしませんが体力を半分は持っていきますしデバフかかるんで楽に倒せるはずです。

 つまりいざという時、具体的には多勢に囲まれた時は彼女の呪文にかかってるわけです。その辺を説明したので見張りローテに特に不満は出ませんでした。

 

 そして特に何事もなく朝です。新しい朝です。希望の朝だ。

 日の出と共に起床して朝食摂ったらさっさと出発しましょう。料理番は魔法剣士君に任せろー(バリバリ)

 目的地まではあと少しなので、特に問題が起きなければ遅くとも夕暮れには街まで戻れるはずです。野営と長距離移動経験が積めて非常にいい依頼でした、で終わる事を祈りましょう。

 さあ行くぞ。遠征二日目だ。体調不良とかはないな。ヨシ!

 

 はい、大きなトラブルもなく目的地到着!依頼人に物資を渡して、受取証貰ってミッション達成です!

 さあ街に帰りましょ……ん?なんか依頼人が言ってる。この先の遺跡にゴブリンがいる?退治してほしい?お断りしたい。

 槍ニキゼミ通り休憩挟んで歩いたから消耗はないんですけど、探索系いないのにゴブリン退治はちょっと。数は5,6匹しかいない?ギルド通さないから評価の対象にはならないけど、代わりに急な依頼という事もあって少し多めに報酬を出す?是非やらせて下さい(テノヒラクルー)

 武道家はともかく魔術師がちょっと表情硬くなってますね。気持ちは分かる。殺されかけたわけだし。大丈夫大丈夫、数少ないし今度は大丈夫。僕らも経験積んだし。

 苦手意識克服のためにもここで殺ろう。受験本番前の夏に苦手科目克服するようなもんだよ。今度はちゃんと守るから。トラストミー。よし説得できた。

 というわけで依頼受けまーす。もし数が予想より多かったり、何かあればすぐに戻って来て欲しい?分かりました。何かあればマジですぐ逃げてきます。我々は逃げる事に躊躇いはありません。というかこの念押し、フラグじゃないよね?

 

 というわけで近くにある遺跡にやってきたのだった。

 トーテム……ありますね。またシャーマンいるのか。魔術師が足跡見つけたんでゴブリンがいるのは確実です。ですが、足跡多いよね?絶対20ぐらいいるよね?依頼人はなんなの?海のリハクなの?

 まあ数が多いのはもう仕方ないので、奇襲(アンブッシュ)に気をつけながら入って行きましょう。隊列は先頭魔法剣士、真ん中魔術師、最後尾に武道家です。後ろから来ないとは言い切れませんし、前から来ても魔法剣士君なら武道家が前に出るまでの1手番粘るのは難しくないんで。

 あと逃げる際に魔法剣士君が速やかに魔術師を抱えてダッシュ出来る隊列なんですよこれ。ヤバかったら逃げる。我々は逃げる事を躊躇わない。

 しかし結構雰囲気ありますねコレ。現実だったら肝試しスポットになってそう。生きてる人間のが怖いパターンの舞台になりますよこれ。

 そして事前情報通り、ゴブリンが6匹いたので速やかに殺します。

 

 殺しました。

 

 いやほんと効率よくスパッと行きましたね。集団で寝てるのを発見したので、みんなで石投げて見張りみたいなことしてたのを抹殺して、そいつが倒れる音で起きたやつを武道家がライダーキックで抹殺。その音で残りも起きましたが、魔法剣士君と魔術師が石投げの第二射でさらに一匹仕留めました。

 二匹は武道家に襲いかかって返り討ち、もう一匹はこっちに突っ込んできたので魔法剣士君がずんばらりんしました。それでもまだ生きてたんですが、斬られた勢いでスカートの中を覗くような位置に倒れ込んだのがよほどムカついたのか魔術師が短剣でグサーってやりました。

 無傷で完全勝利です。鼠やG相手以外にもやれますね、この三人。それが分かったので今回の依頼は本当に金銭面以外での収穫が多いです。

 とりあえず武器に付着した血を拭ったり、水飲んだりして小休止挟んでから探索を再開します。まだこの倍ぐらいはいるはずなんで。

 

 

 

 いませんでした。ゴブリンは。

 今遺跡の一番奥まで来たんですけど、ゴブリンの姿は確認できてません。数に関しては依頼人の言うとおりだったんですが、じゃああの足跡はなんだったんだろう。どっかに移動したのかな?

 ただですね、今目の前に明らかにヤバげな魔法陣があります。そして今光り輝いてます。起動してますねコレ。魔神(デーモン)の類の召喚陣?魔術師よく知ってるじゃん。ちゃんと勉強した人は知識あるなー(現実逃避)

 逃げれる気がしないから迎え撃つしかない?ワイトもそう思います。武道家は頼りになるなあ。とりあえず出てくるのに備えようか。同時に祈ろうか。出来るだけ弱い奴が出てきますように!ほら、小悪魔(インプ)とかかもしれないし!

 

 

 

 ……魔神だな、コレ!

 




追記:誤解を生んでしまったようですが、別に魔法剣士君が死ぬからアンケート取ってるわけではありません。
単純に活動報告で聞いた、魔法剣士君の次のキャラがどのルート行くのを皆さんみたいのかなと思っただけです。
紛らしい形になってしまい申し訳ありませんでした。


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魔法剣士・裏 7

誤字報告ありがとうございます。滅茶苦茶助かってます。
ただ「殺がれる」は誤字じゃないので大丈夫です。自分が「削がれる」よりこっちのが好きなだけです。


「では、思いつく限りの問題点や改善点、不足な点を挙げていってほしい。なんとなく程度でも一向に構わないし、言わなくても分かっているだろうと思っている点でも構わない」

 

 パピルス紙を広げペンを持ちながら、魔法剣士が発言を促す。積極的に意見を言わないとこういった話し合いは進展しないし無意味だろう。そう考えた女魔術師は全員が言わずとも認識しているであろうことを口にする。

 

「探索や索敵が出来る人が欲しいわね。斥候(スカウト)野伏(レンジャー)がいないと罠や待ち伏せがあった時どうしようもないし、今のままじゃ迷宮(ダンジョン)なんかにはとても行けないわ」

「うむ、実に正しい意見だ。必要を通り越して必須な人材だな」

 

 大仰に頷き、魔法剣士が意見を紙に書き止める。こちらをいい気にさせて発言をどんどん引き出そうとしているのは丸分かりだが、褒められればやはり悪い気はしない。

 そしてこの程度の、一党(パーティー)の誰もが分かっているような事でも言っていいのだと、そう認識したであろう女武道家も口を開く。

 

「斥候や野伏って、多分後衛になるよね?ならもう1人前衛が欲しいかな。前衛専門か、重装備出来る人」

「そうだな。俺は前衛としては技能も筋力もやや不安がある。必要な人材を指摘してくれてありがとう」

 

 半ば分かっていて乗っかった部分はあるが、発言の度に褒められれば人情として悪い気はしない。二人はその後思いつくまま、あるいは考えつく限りの意見を出していった。

 勿論全てが的確な意見と言うわけではなかったが、魔法剣士は頭ごなしに否定はせず何かしら良い点を見つけ、それから問題点を指摘する。故に二人も不快感や否定された事での萎縮を覚えず、むしろ自分の出した意見の問題点を見つけ修正していった。

 

「では纏めるぞ。まず一党に必要な人材を集める。必須なのは斥候もしくは野伏。次いで前衛。必須ではないが必要なのが神官職」

「戒律にも気をつけないといけないわね。善とまで行かなくても中立が欲しいところね」

 

 この場合、女魔術師が口にした戒律とは善人か悪人かではなく利己的か利他的か、好戦的かどうかを指す。また、積極性も一部含んでいる。

 この一党の場合魔法剣士と女武道家は善、自分は中立に属すると女魔術師は見ている。中立ぐらいなら上手くやっていけるが、悪が入ると最悪仲間割れ、そこまで行かずとも不和の種になる可能性がある。それは避けたかった。

 とはいえ斥候や野伏はその性質上、よくて中立。大半は悪と言うのが実情なのだが。

 

「それと依頼。探索が必要になりそうなのは徹底して避けた方がいいね」

「知識を求められるようなものならともかく、罠の解除等が必須の迷宮に入るようなものは俺達では無理だからな。まあ駆け出しが受けられる依頼にそんなものがあるのは珍しいだろうが」

 

 しかし金を稼ぐ必要があるから、そろそろ下水以外の依頼を受けねばならない。魔法剣士の言葉に二人は頷く。

 ギリギリで収支はプラスになっているが、暴食鼠(グラトニーラット)という偶発的遭遇(ランダムエンカウント)の産物あってこその黒字だ。それに頼り続けるのは何とも不安が残る。

 とりあえず今日一日は探索役を探すのに専念。明日以降は条件を満たす依頼を受けつつ、空いた時間で出来る限り探索役を探す。また、ギルドの受付嬢などにももし一党を探している斥候や野伏がいるならば声をかけてくれるように頼む。

 

「あ、あのさ!」

 

 方針が決まり、会議を終えて斥候か野伏を探しに行こうとなったところで不意に声がかかる。見ると面識のない―――――正確に言えば、同じ街の白磁冒険者として顔だけは知っているが会話はした事のない二人が立っていた。

 

「剣、見つけてくれたって受付さんから聞いて……その、ありがとう!」

「ああ。あの剣の持ち主でしたか。たまさか見つけただけですので、お気になさらず」

 

 男―――――新米戦士が頭を下げ礼を言う。天秤剣を持った見習聖女も頭を下げてくる。それに対し魔法剣士はいつものように丁寧に対応し、「気にするな」と恩を着せたり謝礼を要求する事なく持ち主が見つかった事を喜ぶような態度を見せる。

 女武道家も「よかったよかった」と言っているが、ほんの少しだけ二人を危惧する気持ちが女魔術師の中にある。二人とも世間知らずのお人好しというわけではないが、善良すぎる言動が多い気がする。それ自体が悪い事とは思わないが、視点がそれだけになるのは危険であると思ってしまう。

 彼や彼女よりも少し引いた目線で物事を見て、その視点から発言しよう。女魔術師はそう心に決める。一つの視点からでなく複数から見る事は決して悪い事ではないはずだ。彼らが善であるならば、自分は中立で。それが自分が一党の為にやるべきことだと思い定める。

 それと同時に、ほんのちょっとだけ胸の中に不思議な気持ちが生まれる。新米戦士と見習聖女に限らず、殆どの人間は魔法剣士の丁寧な対応しか受けない。だが自分は、一党の仲間達は違う。彼の素の、飾らない対応を受けれる。

 それが他者に対する優越感であるとは気付かず、女魔術師は仲間とはいいものだとちょっとズレた喜びを内心で味わっていた。

 

 

 

―――――――

 

 

 

 あれが必要、これが必要だとか。なにそれはあった方がいいだろうだとか、これそれはいらないだろうとか。何とも未熟で無知ではあるが、冒険者ならば一度は通る話し合いをしながら必要な荷物を魔法剣士一党(パーティー)は工房で買い漁っていた。

 そんな駆け出し冒険者達の様子を好ましげに見つめながら、妖精弓手は胸を張るようにしてすぐ傍にいる「変なの」に声をかける。

 

「あれよ。ああいうのが冒険の準備って言うのよ。ああしてワイワイ言いながら準備して、ドキドキしながら冒険に行くわけ!」

「そうか」

 

 だがその声をかけられた「変なの」―――――安っぽい鉄兜に、薄汚れた革鎧を着けた男、ゴブリンスレイヤーの返事はあまりにもそっけない。

 その返事にムッとしながら、森人弓手は言葉を続ける。

 

「ああいう冒険してみたくないわけ!?」

「ゴブリンがいなくなれば考えよう」

 

 取りつく島もない返事に、近くで話を聞いていた鉱人道士と蜥蜴僧侶は顔を見合わせ笑い声を漏らす。まだ浅い付き合いではあるが、この男の事は何となく理解できていた。そして、妖精弓手がこの男に何をさせたいかも。

 だが残念ながら、目下やろうとしているのは妖精弓手の願いとは真逆のことだ。と言うより、この男と組んでいるのならばやる事は一つしかない。

 

「確か次は街道に出たんじゃったか」

「然り。巫女殿が戻り次第、出立となりますな」

 

 街道近辺に出没し始めたゴブリンの退治。つい先日人喰鬼(オーガ)と戦った事を考えると随分落差が激しいが、そもそも先日のそれも最初はゴブリン退治だったので気は抜けない。

 とはいえあのような事がそうそうあるはずもない―――――あんなことがよくあるのであれば、とっくに秩序の勢力は崩壊し世は混沌に満ちている。故によくあるゴブリン退治となる事だろう。

 所用で神殿に寄っている女神官が戻って来たらそれを退治に出発し、その足で同時に受けたゴブリン退治の依頼を幾つかこなす。これを5年間、休まず続けてきたというのだからゴブリンスレイヤーという男の異常さがよく分かる。

 

「あの金床がやりたい冒険、やる機会が来ると思うかや、鱗の?」

「はてさて、拙僧は先を見通す目を持たぬ身なれば」

 

 しかし、と蜥蜴僧侶は続ける。

 

「ありえぬことはありえぬ、と言うのが世の摂理なれば」

「金床の願いが叶う事もあろう、ってか」

 

 然り、と笑う蜥蜴僧侶に鉱人道士も笑みを見せる。あれだけ必死にギャアギャア騒いでゴブリンスレイヤーを冒険に連れ出そうとしているのだ。一回ぐらいは叶ってやってもいいではないか、とそう思う。

 ふと見やればあの新人達は荷物を整え、出発するところだった。良き冒険となり、無事に帰って来るといい。鉱人道士も、蜥蜴僧侶もその背に向かって幸運を祈った。

 それが難しいと知っているからこそ、ベテランほど駆け出しの無事を祈る。そしてその祈りは結局のところ祈り以上の役割を果たさない事も、ベテランだからこそ知っていた。

 つまるところ冒険者とは、自分達で何とかするしかないのだと。

 

 

 

―――――――

 

 

 

 学院に入学する前日、これからの期待と不安で胸が高鳴り眠れなかったのを女魔術師はよく覚えている。心臓が大きく速く脈打ち、その音が身体を伝って自分の耳にまで届いていた事も。

 そして今、あの時以上に心臓が脈打っている事に女魔術師は気付いていた。

 

(……隣ではないけど、一緒のテントで男と寝るって……!)

 

 資金不足からテントは一つしか買えないので、寝袋を極力離してその中で寝るということは三人全員が納得した事だった。別に一緒のベッドで寝るわけでもないのだし、そこまで問題ないだろうとその時は思ったのだ。

 夜テントに入った時も問題はなかった。最初は女武道家と一緒であったし、初めて旅らしい旅をしたことで疲れてもいた。故に女魔術師はすぐ眠りに落ち、後はこのまま朝になるまで眠るだけのはずだった。

 しかし、見張りの交代の為に魔法剣士が女武道家に声をかけた時。思ったより眠りが浅かったのか、気を張っていたせいか女魔術師は起きてしまった。もしテントの中に入って来るのが同性であったなら、そのまま寝なおして終わりだったろう。

 だが相手が魔法剣士であると、男であると意識してしまった瞬間女魔術師の眠気は吹き飛んでしまった。彼が何かしてくるような不埒な男でない事は充分承知しているが、異性と一つのテントで寝ているという意識がおかしな想像を掻き立ててくる。

 身体を休めるために魔法剣士が装備を外している音に耳を澄ましてしまい、まるで盗み見るようにそっとそちらへ視線を向けてしまった。

 

(見るんじゃなかった……!)

 

 単独で下水に潜り、剣を振るい盾を構えて前衛も務める彼の身体は意外に筋肉がついており逞しくて。それを見てしまった事で想像に具体性が加わってしまい、女魔術師の脳内はありえない妄想にすっかり支配されてしまった。

 彼の方はと言えばすぐに使えるよう枕元に小剣(ショートソード)広刃の剣(ブロードソード)を置き、もう寝息を立てている。何とも思ってないと態度で示されているようで腹が立ったが、本来これは安心すべき状態であるのだから文句も言えない。

 自分も寝なければ。わざわざ二人が自分の体力と魔法の重要性を考慮して、見張りを免除してくれたのだ。しっかり眠って明日に備えねば。目を瞑って、呼吸を落ちつければ眠れるはずだ。

 最初は枕が無くて難儀したが、外套を丸めて枕とすることでそれも解決した。眠れるはずだ。

寝袋だけで何とかなると思っていたが甘かったのは確かだ。こんなに硬いとは思わなかった。そう言えば魔法剣士の腕は筋肉がついて硬そうだった。同じ硬いならまだ彼の腕の方が―――――

 

(あああああぁぁぁぁぁぁっ!)

 

 またいらぬことを考えてしまい、女魔術師は内心で絶叫する。

 しかしながら疲労とは偉大なもので、彼女はこの後さほどの時間をかけず再び眠りに落ちる事となる。だが眠った時にどんな夢を見たかは―――――彼女のみぞ知る。

 

 

 

―――――――

 

 

 

 焼けた村の跡地で調査をしていた依頼人―――――魔女狩人に品物を届け、受け取り証を貰う。これで依頼は終わりのはずだった。

 だが魔女狩人から追加で頼まれたゴブリン退治。一党(パーティー)はこれを引き受けてしまった。いや、引き受けた事に対して女魔術師は何も思う所はない。

 無計画に受けたわけでなく、ゴブリンの数が少ない事や先の遺跡は迷宮のような罠が存在しないであろうこと。ゴブリンの数に対して報酬額がいいこと。自分達が疲労も消耗もしておらず、ほぼ万全な状態であること。持ってきた食料に余裕がある事から、ゴブリン退治で帰還が遅れても問題ないこと。想定外の事態が起きたら速やかに引き上げてくれと依頼人が言ってくれたこと。

 それらの要素全てをひっくるめて、一党で相談して決めたのだ。女魔術師に異論はない。魔法剣士が自分の事を今度こそ守ると言ってくれたのは嬉しかったが、それは前衛として後衛を守る以上の意味が無い事も分かっているしそれに浮かれて受ける事に同意したわけではない。問題ない。

 問題なのは、今目の前の光景から得れる情報だった。

 

「この数の足跡は、5匹や6匹じゃすまないわね……」

「そしてトーテムがある。シャーマンもいるな。大きな足跡はないから、多分田舎者(ホブ)はいないだろう」

 

 女魔術師と魔法剣士は頷き合う。正確な数は分からないが、下手をすると20かそれ以上いるのではなかろうか。

 女武道家が怯んだ表情になっているが、自分もそうなっている自覚がある。いや、自分の方が酷い顔をしているかもしれない。どうしても多数のゴブリンと聞くと嫌な思い出が脳裏に甦る。そうでなくとも、この数がいるとなれば脅威だ。

 

「どうする?依頼人が言っていたのとは数がだいぶ違う。引いて伝えるか?」

 

 どちらでも問題はない、と魔法剣士は言う。その言葉に二人は少し考え込むが、女魔術師は意を決して口を開く。

 

「いえ、行くわよ。最悪逃げるのも仕方ないけれど、何もせずに引いたら……」

 

 もう二度と立ち向かえない気がする。覚悟を決めて再起したが、その覚悟が砕けてしまう気がする。

 流石にそこまでは言えなかったが、魔法剣士も女武道家も察してくれたのか黙って頷いてくれた。

 

奇襲(アンブッシュ)に気をつけながら中に入って、10匹以上が同時に来るようなら即座に撤退。それでいいか?」

「そうだね。あたしはそれでいいと思う。後ろから来た時の為にあたしが一番後ろでいいかな?」

 

 二人の意見に女魔術師は頷く。そして一つ深呼吸すると、遺跡を睨むように観察する。

 

「あの材質なら横穴の心配はないと思うわ。かなり頑丈そうな石組みだし。もしやるならつるはしだの金槌だのがいるから、すぐ音に気付けるはずよ」

「なら音にだけ注意しながら、進んでいけばいいわね」

「あとは罠だな。馬鹿だが間抜けではないそうだから、鳴子ぐらいはあるかもしれん」

 

 三人で意見を出し合い、纏める。そうして方針と覚悟を決めると、魔法剣士を先頭に一党は遺跡の中へと入って行く。

 何に使われていたのかは分からないが、遺跡には窓らしい穴があちこちに空いておりまだ日が高い事もあって松明が要らない程度には明るかった。とはいえ暗がりが無いわけでなく、ゴブリンが潜んでいるのではないかと注意深く観察しながら進んでいく。

 神経を張り詰めながら進んで行くために緊張から徐々に疲労していくが、魔法剣士が適宜小休止を挟むため一党はさほど消耗せず奥へと足を進める事が出来た。

 魔法剣士曰くこれらの事も槍使いから習ったらしいが、たった一度冒険を共にしただけの相手にこれほど懇切丁寧に教えるとは彼はよほど人がいいのだろうか?

 喋った事もない銀等級冒険者に内心で感謝しつつ、一党は奥へと進んで行く。するとある部屋の入口まで来た時、魔法剣士が急に立ち止まり後列を手で制した。そして振り返って静かにするよう仕草で伝えると、奥にある何かを指差す。

 

「ゴブリン……!」

 

 女魔術師は小さく息を呑み、小声でその生き物の名前を呼ぶ。無警戒で眠りこけている小鬼達を見た瞬間、以前刺された箇所が疼いたような錯覚が女魔術師を襲うが何とかその感覚をねじ伏せる。

 寝ているのは5匹で、1匹が船を漕ぎながらも見張りのような動きを見せており、これ以上接近するのは難しい。周囲を見る限りあそこにいる6匹以外は何処にもいないようだがどうするか。

 

「投石でアレを仕留めよう。その後は―――――」

「あたしが突っ込んで注意を引き付けるわ」

「なら気を取られたゴブリンにもう一度投石、かしら」

 

 魔法剣士の言葉に女武道家が意見を足し、さらにそこへ女魔術師が次の方策を足す。

 

「もしゴブリンがもっと出てくるようならすぐにあたしは引くわ」

「囲まれないように俺達はそれを呪文で援護、合流してすぐさま撤退だな」

「決まりね」

 

 三人は顔を見合わせ頷き合う。そして深呼吸をひとつすると、石弾袋から石を取り出し投石紐(スリング)を巻き付け振り回す。

 そして練習通り石弾を放つと、空気を切り裂きながら飛来した石弾は3つともゴブリンに命中しその命と身体を吹き飛ばす。

 その結果を見届けるよりも前に女武道家が勢いよく駆け出し、ゴブリンの死体が倒れる音で目覚めたゴブリンへと勢いを殺さぬまま飛び蹴りを繰り出す。足刀が喉へと叩き込まれ、鈍い音と共にゴブリンの首をありえない方向へと曲げる。

 流石にこの音でゴブリン達は全て目を覚ましたが、起き上がった1匹に魔法剣士と女魔術師が石を投げつけ頭と胴に一発ずつ命中させる。石を受けたゴブリンはそのまま倒れ込み、起き上がる様子を見せなかった。

 

「GRUUU!?」

「GAAAA!?」

 

 前にも後ろにも敵がいる。それに気付いたゴブリン達は慌てふためき、明らかな隙を晒す。それを見逃してやる理由はなく、女武道家が踏み込み拳鍔(セスタス)を使って殴り付ける。

 円状の金属がゴブリンの顔面にめり込み、容赦なく打ち砕く。それを見た一匹はこれを隙と見て女武道家に飛びかかり、もう一匹は殺された間抜けな仲間を見捨てて逃げ出すべく魔法剣士と女魔術師の方へと走り出す。

 あいつらは石を投げていた。男は背中に剣を背負ってるし、女の方は杖しか持っていない。他の武器を取り出すには時間がかかる。自分ならその間に上手く逃げられる。根拠のない確信を抱き、そのゴブリンは走って魔法剣士の脇をすり抜けようとする。

 無論わざわざ広刃の剣(ブロードソード)を抜いて相手をする義務はなく、魔法剣士は腰の小剣(ショートソード)による抜き打ちでゴブリンを切り捨てる。

 

「……ッ!」

 

 その死骸―――――否、まだ僅かに息のあるゴブリンの身体が足元に飛んできた瞬間、女魔術師は自分の心の奥底からゴブリンという存在への恐怖が甦って来るのを感じた。自分が殺されかけた事、剣士が惨殺された事、洞窟の中で慰みものにされていた女性達と一歩間違えれば自分もそうなっていたかもしれないという事。

 それらがない交ぜになって女魔術師の胸中に湧き上がり、恐怖で一瞬全身が硬直する。

 だが同時に思う。ただそれだけのことだと(・・・・・・・・・・・)。怖くはある。そうなったら耐えられないだろうとも思う。だが今自分はそうなっていない。仲間もそうなっていない。

 しかし、ここで動かなければ。動けないなら。本当にそうなってしまう。それは自分が想像しているより、見てきたものより怖い。

 

「―――――やっ!」

 

 短剣(ダガー)を抜き放ち、ゴブリンの喉を刺し貫く。一度大きく身体を痙攣させたが、それっきりゴブリンは動かなくなる。

 そうだ、殺せる。この生き物は自分がそうであったように、刺されれば死ぬのだ。刺せば殺せるのだ。それ以上の何かではない。

 怖さは消えない。だがもっと怖い事になるのを防ぐため、立ち向かう事は出来る。自分はそれが出来る。

 一生恐怖は消えないだろう。だが、もうその恐怖に負ける事はない。女魔術師は今、自分が乗り越えるべきものを確実に乗り越えた事を感じた。

 

 

 

―――――――

 

 

 

 ゴブリン達を全て仕留めると、一党(パーティー)は武器に付いたゴブリンの血を拭い小休止を取る。そして探索を再開したが、他のゴブリンの姿を認める事は出来なかった。

 幾つかあった小部屋も全て確認したが、足跡こそあれど隠れ潜んでいる様子も、待ち伏せている様子もない。罠が仕掛けられているのも確認できず、彼らは訝しみながら最奥にある小部屋へと到達した。

そしてそこにあるものを見て、三人は何故ゴブリンがいなかったのかを理解することとなる。

 

「成程。これを見つけるか感じるかして、ゴブリン達は逃げ出したわけか」

「さっきのゴブリン達は逃げ遅れた……じゃないわね。他所から流れてきてここに住み着いたから、まだ見つけてないわけね」

 

 広刃の剣を抜き放ちながら魔法剣士が言う。女魔術師も納得がいったと頷く。

 

「あたし達も逃げ出すべきなんだろうけど、もう手遅れだよね……!」

 

 拳鍔を握り締めながら女武道家が苦笑いを見せる。その通りだと二人は頷いた。

 

「ええ。もうこれ動き出してるから、下手すると背中から襲われるわよ」

「それぐらいならまだ準備が出来ている方がマシだな」

 

 落ち付き払っているように見えるが、そうではない。自分も仲間も怯えている事を、三人全員が理解している。

 だがここで慌てたり恐怖を見せたりすれば仲間に伝播してしまう。そうなれば助かる可能性が下がるどころか、無くなるかもしれない。それはやってはいけないのだと、まだ短く浅い経験の中から三人は感じ取っていた。

 魔法陣が光り輝き、その中心から異形が姿を現す。羽根と爪を持つその怪物を見た瞬間、誰かが、あるいは全員が怪物の名を口にした。

 

魔神(デーモン)……!」

 




Q.女魔術師ちゃんはなんでこんな風なキャラに?
A.気の強そうな顔+メガネ+発育良好→ムッツリ。日本書紀にもそう書いてある。


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魔法剣士・8

アンケートありがとうございました。
それを受けての今後の予定(と言う名の希望的観測)を活動報告に乗っけてます。


 魔神ゴー!魔神ゴー!魔神ガーZ!

 いや現実逃避してる場合じゃないですね。もうどう足掻いても絶望って言うか逃げられないのでやるしかないです。よっしゃこいやあああああああ動き速えええええ!

 何もかもが今までと違いすぎる!Gより綺麗に飛ぶし速いし強い!盾でガードしたのにダメージ通ってるし!

 ちょ、ちょっ!動き早くて反撃の機会がない!魔術師守らないといけないし考えてる余裕もない!飛んでるから動き読めないし!

 あっ、武道家何処行くの!?挑発してくれてんの!?ありがたいけどちょっとそんなすぐにナイスなアイディアは浮かばんよ!?現実は非情よ!?

 ああああああああああ武道家にダメージ入った!ヤバいどうするって言うかどうすればいいんだコレ!

 

 ふう。

 

 えー、まあほら。ポーズボタン押すのはずるくないからね?セーブとポーズは罪ではないよ?いやホント焦りすぎて操作も考えも滅茶苦茶になりそうなんで。ちょっと水飲みます。

 とりあえず分かるのは、敵は恐らく下級魔神(レッサーデーモン)ですね。他の奴はもっとこう火を噴くとか、飛ばないけど力強いとかそんな感じらしいです。早い話、初撃で防御ごと叩き潰されて殺されるとかしてます。ザク3機でガンダムに挑むようなものです。

 下級魔神なんで勝てなくはないステです。でも正直、ゴブ一回……今回入れて二回か。それと後はGと鼠しか殺ったことが無い一党(パーティー)が三人で戦うには結構厳しいです。なので、ポーズ中に知恵を絞ります。あと手に変な汗かいたんで拭きます。

 とりあえず地面に落とさない事には話になりませんね。滑空に近かったGと違ってバリバリ飛んでるんで。これで屋外だったらもっと高く飛んでたでしょうから、その時点で下手すれば詰んでましたね。今は天井より高くは飛ばないので。

 どうするかな。《粘糸(スパイダーウェブ)》で縛るか。でも呪文抵抗で抜け出されたら嫌だな。《力矢(マジックミサイル)》は必中だけど、当たる場所は大雑把だからなー。羽根撃ち抜けないと落ちてこないだろうなー。

 魔術師と協力して《火矢(ファイアボルト)》も一緒に当てたら落ちてこないかな。ダメかな。どうするか。

 

 よし決めました。とりあえず《力矢》ぶっぱしましょう。それで落ちるようならよし、落ちなくても動きは止まるでしょう。たぶん。止まらなかったら魔法剣士君が捨て身で動き止めます。具体的には挑発して突っ込んでこさせて、傭兵の時のアレでターンXを金縛りにします。

 動きを止めたら女魔術師ちゃんの出番です。《力場(フォースフィールド)》で自分達を守るのではなく、敵を優しく包み込んで逃げれらないよう閉じ込めてもらいます。そうして動きを封じ込めたらいつもの奴で行きます。

 

 そう、敵の丸焼き~《粘糸》の拘束と油を添えて~です。

 

 《力場》ごと糸で包んで、油ぶっかけて点火!火が付いたら《力場》を解除して、下級魔神を温めてあげましょう。我々の愛で。遠慮するな今までの分も燃えろ……

 《力矢》食らわせておけばそれで死ぬとは思いますが、死なないようなら魔法剣士君と武道家で殴り殺す、あるいは残り一回の魔術師の呪文を叩き込んでこの悲しい世界から下級魔神を救ってあげます。

 よし決定!上手く行かず死んだらごめん!さあポーズボタン解除して行くぞ!

 

 っしゃあ落ちた!はい包んで!急いで!決して走らず急いで僕らを助けて!よーしよしよしいいぞ魔術師!気に入った!後でウチに来て魔法剣士君をファ○クしていいぞ!

 そんでこの壁に向かって糸を射出!はい武道家肩痛いの分かるけど油かけて!料理は手際が大事だよ!OK!じゃあ魔術師、この松明に点火して!違う違う、真言一個で出来るから!魔女さんがやってたから!出来る出来る!俺が信じるお前を信じろ!違うな!辺境最強と組んでる魔女さんを信じろ!あとその耳飾り信じろ!妖怪1足りないを追い払えるから!

 ほら出来た!俺は信じてたぞ!魔女さんを!よっしゃくらえぇぇぇぇぇ!燃えろおおぉぉぉぉぉぉこっちくんなぁぁぁぁぁぁ!

 

 魔神なんて言っても大したことねえな(震え声)

 

 燃えながら突っ込んできたのをガードしたんですがそのまま押し倒され、魔法剣士君の命か貞操を持って行かれそうな雰囲気だったんですが武道家が横から助けてくれました。

 燃えてる相手に右ストレート叩き込むって凄い度胸だと思います。そして金属の塊で首を殴るのは凄い殺意だと思いました。エグイ音したもん。

 首がゴム人間以外では曲がってはいけない方向に曲がってるんで死んだとは思うんですが、怖いから首を切断しておきます。いや本当に怖いから。……あと心臓刺しとくか。

 これで流石に死んだでしょう。王大人死亡確認!

 しかし下級でコレってどういう事なんでしょうね。魔神の中では兵卒クラスでしょ?勇者はこれを無双ゲーみたいに蹴散らす?何それ怖い。1人だけ別ゲーじゃん。

 とりあえず治療しましょう、治療。武道家に軟膏塗って、魔法剣士君と一緒に治癒の水薬(ヒールポーション)飲ませます。あと戦闘が長引いたからみんな強壮の水薬(スタミナポーション)飲んで。命に比べれば安いんだからケチらず行こう。そして少し休もう。

 おっ、宝箱みたいなのが奥にありますね。早速開け……調べて罠とか鍵がありそうだったら止めようか!ウチの一党その係いないもんな!辛うじて下級魔神倒したのに罠で全滅とかコントローラー投げるもんな!

 鍵はなさそうですね。罠も無さそう?よし、俺は高知力二人を信じるぞ。

 

 ……セーフ!何もなかった!でも心臓に悪いわコレ!もうやらねえ!

 

 中にはなんか黄色い、というか金色の液体が入った瓶がありますね。これ分かる人!あっ、魔法剣士君の【博識】が仕事したわ。

 賦活剤(エリクシル)?なんか凄いの?治癒と強壮の水薬を合わせた強化版みたいなもん?へー。なんでこんなところにあるかは分からんけどそれはいいんだ。重要じゃない。確実に金になる事が重要なんだ。

 武道家が毒受けてる様子もありませんし、魔法剣士君も重傷というわけでなし。女魔術師は無傷。よし、大勝利!

 さあ帰るぞ!水島!一緒に日本へ帰ろう!

 

 

 

 入り口まで戻ってきましたけど、特に何もありませんでした。あっ、もう夕方になってる。入った時は昼前だったのになあ。

 これはもう一泊確定ですね。食料余分に持ってきておいてよかった。いやー大冒険でした。あっ、イライニン=サン。迎えに来てくれたのかな?違うなコレ。明らかにそういうスピードじゃねえな。荷物ないし。

 ……ゴブリン?なんで?ゴブリンナンデ?いきなり集団で襲ってきた?あーはいはい、それから逃げて来たわけですね。勘弁して下さいよホント。いやマジで。もうプレイヤーも疲れて叫ぶ元気がないんすよ。

 逃げたいけど既に囲まれてますねえ!しかも結構数いますねえ!……何?下級魔神倒したから戻って来たとかそんなん?

 依頼人さん戦えます?投矢銃(ダートガン)持ってる?ありがてえ、後衛が1人増えた。正直数的に嬲り殺される感じですが、何とかなる可能性を捨ててはいけない。

 魔術師呪文一回残ってるよね?よし、《吹雪(ブリザード)》行こうか。少しだけど数減らせるだろ。そうそう敵が集まってきたから、GO!

 ……あっはい。失敗しましたか。まーしゃーない(遠い目)

 後はもう薩摩兵士になった気分で力の限り戦いましょう。入り口近くなら囲まれないし一斉には来れないから少しは勝ち目もあるだろ。詰んだな、って感じ凄いけど。

 あれ?魔術師何してんの?

 

 ……おおおおおおおおお!?

 何それ!何これ!限界突破(オーバーキャスト)?へー。限界超えても呪文使えるんだ。そして今度は成功した上に、調子こいて突っ込んできたゴブリンが多数《吹雪》に巻き込まれてる!ざまあ!

 プトティラに挑んだ敵の如く凍り付いてる!すげえ!あれ魔術師どうしたの。あっ、限界突破って物凄く消耗するんだ。成程。気絶してないだけいい方なのか。

 分かった休んで!希望が見えてきた!サンキュー魔術師フォーエバー魔術師!この数なら武道家と魔法剣士君で何とかなるかもしれないし、最悪魔法剣士君も限界突破で《惰眠(スリープ)》使う!

 来いよゴブリンども!武器なんて捨ててかかってこい!……おや?

 突っ込んで来ようとしたゴブリンが頭から矢を生やしましたね。何これバグ?それとも依頼人さん何かした?してない?じゃあなんだろ。

 

 あっ。

 

 

 

 えー、気合い入れて「やってやるぜ!」って感じでしたが、特に何もせず終わりました。はい。

 こちらを包囲するゴブリンをさらに包囲する形で救いの神が来て下さったので、ゴブリン達は無事皆殺しとなりました。

 ええ。このさまようよろいを見れば分かると思いますが、ゴブリンスレイヤーさん達です。ありがてえ、ありがてえ……!

 土下座してお礼を言いたいところですがそんなエモートが無いので、もうひたすら感謝しておきます。感謝……!圧倒的感謝……!

 女神官ちゃんがこっちの一党の無事を心から喜んでくれてて泣きそう。完全に偶然らしいですけど、多分君が信心深いからこっちにもご利益来たんだと思うよ。魔法剣士君感謝を込めて改宗しようか。割とマジで。

 ところでゴブリンスレイヤーさん。助けてもらっといてなんですけど、その、あなたテキストが「ああ」「いや」「そうか」しか用意されてないんですか?まあいいけど。

 とりあえず誠意は言葉ではなく金額なので、何かお礼を渡しましょうか。あっ、そういえばさっきいいもん拾ったじゃん。みんなも別にかまわんよね?命に比べれば安いもんだし。

 賦活剤をお礼として渡しました。おっ、山田(妖精弓手)知ってるのかこれ。ああそうか森人(エルフ)の秘薬なんだ。どうぞ受け取ってください。拾っただけで元手は0なんで。

 しかし助けてもらったのコレで二度目ですね。この人ゴブリンに襲われてると助けてくれるの?あっ、違うの?完全に運?ってことは一歩間違えればここが14になってたわけか。怖っ……

 

 もう夕方ですし、動く元気もないんでこの近くで野営しましょう。幸いゴブリンスレイヤーさん達がご一緒させてくれるそうですし、お言葉に甘えましょう。

 魔法剣士君は男性メンバーのテントに入れてくれるそうです。わーい。えっ、見張りしなくていいんですか!何この人達は聖人の集まりか何か?

 あ、ちなみに魔法剣士君の一党のテントは魔術師と武道家、そして依頼人さんが使います。この人女性だったんですね。

 依頼人さんですが、明日魔法剣士君達と一緒に街に戻るそうです。逃げる時身軽になるため荷物を放棄した結果、ゴブリン達に荒らされて一部が使いものにならなくなったので戻らんとどうにもならないようですね。

 護衛依頼として受けるかどうかの選択肢が出ましたが、どうせ帰り道が一緒なだけなので依頼ではなく普通に同行者として受け入れました。護衛対象じゃないから、いざというとき後衛として戦ってもらえますし。

 依頼ではないのでお金はもらえませんが、無事だった荷物の中から治癒の水薬と強壮の水薬を貰えました。これで消費分が埋まったぜ。

 本当はゴブリンスレイヤーさん一党とお話したりしたいんですが、プレイヤー的にも魔法剣士君一党的にも消耗が上がってるので丁重にお礼だけ言って夕食食べたらすぐ寝ます。死ぬかもしれない→なんとかなった→これは死んだ→助かったのスリリングジェットコースターの高低差が酷くて、耳キーンってなってますからね。

 というわけでおやすみなさい。おやすみのあいだ悪魔に肉体を乗っ取られぬようお気をつけて・・・

 

 

 

 おはようございます。若干消耗は残ってますがだいたい回復しました。

 野営の時は快適に寝れるかどうかの工夫と、道具の質、周囲の環境で大きく疲労や消耗の回復量が違うっぽいです。この辺もおいおい考えないといけませんね。

 ゴブリンスレイヤーさん達へのせめてものお礼に朝食作りを手伝いましょう。魔法剣士君は初歩ですが【調理】持ちかつ技能が平均程度にあるので、邪魔したりすることはまずありません。

 自キャラが武道家でこういう技能なかったら、1日1万本の感謝の正拳突きぐらいしか出来ないところでした。一般技能って意外と大事。

 朝食が済んだら速やかに出発を……あれ、魔術師どうした。どうしたって言うか、消耗が回復しきってないなコレ。移動には影響なさそうですけど、彼女の分を魔法剣士君に持ってもらって少しでも負担を減らしましょう。一党で一番移動力低いの彼女なんで、彼女のペースが落ちると一党全体のペースが落ちちゃうんで。

 もう一回丁重にお礼を言って、ゴブリンスレイヤーさん一党とお別れして帰還開始です。2年後にシャボンディ諸島でまた会おう!

 帰り道で偶発的遭遇(ランダムエンカウント)起きませんように。起きませんように。フリじゃないんでホント勘弁して下さい。

 

 起きませんでした。まあトラブルは起きたんですが。

 魔術師が「もう疲れたよパトラッシュ」気味になってきたので、途中から荷物を武道家に渡し、魔術師を荷物扱いで魔法剣士君が背負ってきました。なんでテントとか調理器具とか諸々の装備より重いんだお前。胸部装甲と安産型のせいか。そうか。

 おかげで魔法剣士君もちょっと消耗しましたが、すぐ回復するレベルなんで大丈夫です。榛名と魔法剣士は大丈夫です。

 わりとギリギリですが、何とか日が沈む前に街に入れました。まだギルド開いてるはずなんで急いで行くぞ!

 うん、開いてますね。まあ酒場隣接してるし二階が宿なんで開いてないってことはよほど遅くならないとないんですが。あっ受付さんだ。ただいま!魔法剣士二等兵恥ずかしながら帰ってまいりました!

 えっ?あっ、魔術師背負われたまま寝てやがる。子供かオノレは。オラ起きろ!報告するぞ!報連相だけはサボっちゃいけないからやるぞ!魔法剣士君が護衛依頼やった時みたいに、死にかけてるわけでもないんだから、今日のうちに報告するぞ!

 はい、依頼達成しました!依頼人の受取証もあります!本人横にいるけどな!

 

 えー、色々詳しく報告したところお金貰えました。下級魔神のくだりは監督官さんに《看破(センスライ)》使われましたけど、無事嘘ではないと認定されました。

 なんでわざわざ精度100%嘘発見器を、って思ったんですけど、コレ嘘だった場合ちょっと洒落にならんレベルで危険人物ですよね。単なる嘘つきじゃなくて、混沌側のスパイ活動に等しいですからね。

 実際もし魔神が出たとか出ないとかで嘘ついたら即お縄だそうです。おっかねえ……

 ですが今回は本当だったので、魔神情報提供ボーナスをいただけました。銀貨300枚も。下級魔神でもこんなくれるんすね……ヤバさが伝わって来る。

 依頼人さんからは危険手当やお礼諸々含めて銀貨を100枚もいただきました。下級魔神出てきたのは完全に運が悪かっただけなのにこんなに貰っていいんでしょうか。貰うけど。

 元々の護衛依頼の報酬も加えると、今回だけでなんと銀貨460枚の収入!一党の共有資金全部使ったのと、みんなの貯蓄切り崩した分を考えても過去最大の黒字です。

 お金の使い道等々は次回にして、今回はコレで終わります!マジで疲れた……それじゃご視聴ありがとうございまし……なんか変な笑いしてるな。おい吐け。何か隠してるだろ。

 

 えっ、ここまで厳しいイベントじゃない?なんで?相当きつかったよ?下級魔神戦だけでもかなり。

 ……はあぁぁぁぁぁ!?あの新米戦士と見習聖女仲間にするフラグ立ってたからあそこで一党に勧誘するのが正しい!?知らねえよそんなの!じゃあなんだよ、このイベント本来5人で挑むのかよ!5人で挑めたってだけで正解はない?うっせーばーか!

 しかも見習聖女が《聖撃(ホーリースマイト)》使えるから、この一党なら呪文連発だけで押し切れてた?早く言えや!知ってて黙ってたなこの野郎!野郎、ぶっ殺してやらぁ!!

 殺したいだけで死んでほしいわけじゃないから無事でよかった?サイコか貴様は!

 




Q.なんで都合よくゴブリンスレイヤーさんが来たんですか?
A.逆に何でゴブリンがいるのにゴブリンスレイヤーさんが来ないと思ったんですか?


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魔法剣士・裏 8

《幻想》「ここで新米戦士と見習聖女勧誘するよね!親切から繋がる縁って素敵だし!」
《真実》「5人PTなら下級魔神じゃちょっと物足りないな!魔法とかは追加しないけど、HPと攻撃力を強化しよう!」

二人「な ん で 勧 誘 し な い の ! ?」
ジキヨシャ「な ん で 初 対 面 の 人 を 勧 誘 出 来 る と 思 う の ! ?」


 下級魔神(レッサーデーモン)。恐るべき魔神の中では名前通り最下級に位置し、軍勢として見たならば雑兵に過ぎない存在。

 ならば恐るるに足らないか。そんなはずが無い。敵が下級と言うならば、こちらもまた冒険者として最下級の白磁が二人とそれに僅かばかり毛の生えた黒曜が一人だ。

 まして只人(ヒューム)と魔神の種としての差を考えれば、同じなのは最下級という括りだけで彼我の間には大きな実力差があるのは明白。

 本来ならば尻尾を捲いて逃げ出すのが正解だ。だがそれが出来ない以上、窮鼠となって猫を噛む以外に生き延びる道はない。

 故に三人は覚悟を決め、陣形を組んで立ち向かう。

 

「速い……!」

「ぐっ!」

 

 しかし、当然の事ながら強いのは相手の方だ。滑空しか出来ぬ大黒蟲とは違い速く自在に空を飛び、巨大鼠の歯などとは比べ物にならぬほど鋭い爪を振りかざし、暴食鼠(グラトニーラット)巨大黒蟲(ヒュージローチ)より遥かに強い力で襲いかかって来る。

 魔法剣士はその一撃を何とか盾で受けたものの、盾とそれを構える腕が弾き飛ばされそうなほどに強い衝撃で腕が痺れてしまう。のみならず腕が強い力で引っ張られた事により、行動に支障をきたすほどではないが筋か骨を痛めてしまった。

 一撃を加えた下級魔神は天井まで飛び上がり、くるりと旋回して今度は女魔術師へと襲い掛かる。その鋭利な爪は広刃の剣(ブロードソード)と盾とを構えて立ち塞がった魔法剣士によって弾かれるが、下降してきた下級魔神の勢いに負けた彼はそのまま転倒してしまう。

 二人のうちどちらかが次の一撃によって切り裂かれる。それを防がんと女武道家が軽やかな身のこなしを以って下級魔神に殴りかかるが、再び飛び上がった魔神にあっさりと避けられてしまう。

 その間に魔法剣士が立ち上がり女魔術師を庇える位置に移動するが、状況が良くない事は三人ともが既に察していた。飛び上がられれば攻撃手段がない。投石紐を取り出すにしてもその間に襲われれば致命的な一撃を貰いかねないし、そもそもこの速さで飛ぶ相手に当てれる自信がない。

 魔術も同様で、女魔術師の《火矢(ファイアボルト)》では外すかもしれない。必中を約束されている《力矢(マジックミサイル)》なら当てれるが、下級とはいえ相手は魔神だ。小鬼だの鼠だの蟲だのとは違い、人並み程度には考える知能がある。詠唱中の相手を優先して襲って来るだろう。

 それでも魔法剣士が襲われるならば対処出来なくもない。だがもし女魔術師がその隙を突いて襲われれば、取り返しのつかない事になりかねない。

 しかしこの状況が続けば、魔法剣士達は徐々に消耗して行き程なく反応が遅れるようになるだろう。そしてその時が彼らの最後となる。

 それが分かっているだろうから下級魔神は下手に深追いせず、一撃離脱をひたすら繰り返してくる。一党の中で最も近接戦に長けた女武道家ですら捉えられぬその動きは、追い詰められていく彼らには心底禍々しいものに思えた。

 

「……あたしが、引き付ける!」

 

 突如として女武道家が声を上げると、部屋の中央、魔法陣の描いてある辺りへと躍り出る。仲間の援護が貰えぬ場所まで来ると、彼女は再び声を上げた。

 

「その間に何か作戦出して!」

 

 無茶を言ってくれる、とその言葉を投げかけられた二人は思う。

 だがそれをしなくてはならないのは確かだ。彼女は前衛として果たすべき役目を果たそうとしてくれている。ならば自分は頭目(リーダー)として、この状況を何とかしなければならないと魔法剣士は考える。後衛である自分は何か策を出さねばいよいよもってお荷物だと女魔術師は思考を巡らせる。

 しかしそんなすぐに名案が浮かぶはずもなく、二人の脳内は焦りばかりが先に立つ。

 下級魔神は盾を持った魔法剣士と彼が守る女魔術師は面倒だと考えたのか、それとも孤立した相手から先に叩こうと決めたのか。ひたすらに女武道家へと攻撃を繰り返す。

 それを2度3度と繰り返すうち、遂に下級魔神の爪が彼女の肩を抉る。それを見た魔法剣士はもはや運を天に任せ無策で挑むしかないと覚悟を決める。

 そしてそれを女魔術師に告げるべく口を開いた瞬間、己の口が固まった。否、口だけではない。腕が、脚が、指が。己の全てが固まって動かない。

 

(違う)

 

 自分だけではない。この場に存在するもの全てが固まって―――――止まっている。何故かは分からないが、今この瞬間は世界全てが止まっていると確信した。

 いったい何が起きているのか。何故こんな事になっているのか。思考がそちらに持って行かれそうになるが、すぐにそれを止める。そんな事は後からいくらでも考えればいい。今やるべきはそうではない。

 全てが止まっているが思考だけは動く。ならやるべきはこの窮地を打破出来る策を考える事だ。今自分に課せられた役割を果たせ。

 

(手札は何がある。何があって何が無い。何をすれば勝ちが見える)

 

 相手に攻撃を当てる手札はある。確実に当てれる切り札が。だが当てた後はどうする?当てる相手は選べても場所は選べない。当たったとしても落とせる保証はない。

 撃った後に拘束するか?いや、拘束は確実と言うわけではない。過信して油断した結果は額に刻まれている。もっと確実に動きを封じれるだけの役を作らねばならない。

 

(……ある!)

 

 今自分は一人ではない。一党(パーティー)なのだ。であるならば自分の手札だけでなく、全員の手札を使って役を作ればいい。

 何を使うべきか。何を使ってもらうべきか。失敗した時も含めどう動くべきか。それら全てが急速に頭の中で組み立てられて行く。

 そしてその道筋が完成した時、何の前触れもなく周囲が動きだす。またそちらに思考が引っ張られそうになるが、瞬きするよりも早く切り替える。

 

「引き付けてくれ!」

 

 女武道家に向けて声を張り上げる。そして返事を聞くよりも早く、呪文の詠唱を開始する。

 

「《サジタ()……ケルタ(必中)……》」

「あんたはこっち!」

 

 詠唱に気付いた下級魔神がこちらへ向かって来ようとするが、女武道家がそれを妨げるべく右手の拳鍔(セスタス)を投げ付ける。投擲用の武器ではないため余裕を持って回避されるが、それによって必要な時間は稼がれた。

 

「《ラディウス(射出)!》」

「GUUREE!?」

 

 放たれた矢は二本。一本は下級魔神の左腕に、もう一本は右の羽根に刺さる。否、右の羽根を貫き左の羽根にまで刺さる。

 思わぬ痛痒と羽根に穴を開けられた事によりバランスを崩した下級魔神は落下し、石の床へと着地する。もっと高所にいたならばこれでカタがついただろうが、そんな高さから攻撃出来ていたらとっくにこちらが殺られていただろうからこれでいい。

 

「《力場(フォースフィールド)》だ!閉じ込めろ!」

「!……分かったわ!」

 

 下級魔神から目線を切らず、女魔術師に指示を飛ばす。一瞬彼女が戸惑うような気配がしたが、すぐにこちらの意図を察してくれる。

 魔法剣士が見る事はなかったが、彼女は繊細な硝子細工に触れるかのように丁寧かつ大事そうにそっと耳飾りに触れてから、杖を構えて力強く真に力のある言葉を唱える。

 

「《マグナ(魔術)……ノドゥス(結束)……ファキオ(生成)!》」

「GREEEEE!?」

 

 女魔術師の《力場》によって不可視の壁が形成される。ただし、下級魔神の周囲に。丸屋根上に展開されたそれは下級魔神の身体をすっぽりと覆い尽くし、完全に閉じ込める事に成功した。

 下級魔神は壁を爪で切り裂かんと幾度も引っ掻きまわすが、よほど術が上手く行ったらしく壁は―――――魔法剣士達にも見えないのだが―――――揺らぐ気配すらない。

 その様子を見て、三人はホッと息を吐く。まだ倒したわけではないが、とりあえずひたすら追い詰められていくだけの状況は脱した。

 

「油の用意を」

 

 投げた拳鍔を回収していた女武道家に声をかける。首をかしげる彼女に対し、魔法剣士は言葉を続ける。

 

「いつもの手で行こう」

 

 

 

―――――――

 

 

 

 下級魔神(レッサーデーモン)は見えない壁を打ち破るべく、遮二無二爪を立てていた。

 一種の変異体(ユニーク)である自分に取って、あの脆弱な三人の只人(ヒューム)など相手にもならぬはずであった。それが小癪にも策を弄し、あろうことか自分を魔術で閉じ込めた。

 許せん。許せん。男はバラバラに切り刻み、女どもにはその肉を食わせてやる。そのためにもこの壁を切り裂かねば。

 憎悪と力を込めて壁を引っ掻く。そうしていると、不意に何か白い物が目の前に広がった。それは見えない壁を包み込み、下級魔神に外の様子を分からなくさせる。

 何をしたいのか、と下級魔神が思うより早くその答えはやってきた。

 何かが砕ける音。液体が降りかかる音。そして壁全体を覆い尽くす炎。連中、この壁を何かで包んで火を放ったのだ!

 下級魔神が自分でも分からない何かに突き動かされて声を上げようとするのと同時に壁が消失し、炎が自分を包み込む。自分の全身に纏わりついた炎の熱に、下級魔神はもはや自分の命運が尽きた事を悟る。

 ならせめてあの男を。指示を飛ばし自分を追い詰めたあの男だけでも道連れに。全身を焼かれながら最後の力を振り絞り、下級魔神は兜を被った一党の頭目らしき男へと飛びかかる。

 突き出した右手の爪は盾で防がれた。だが爪が盾に食い込み、互いの自由を奪う。これでいい。下級魔神は男を押し倒し、残った左腕を振り上げる。これでその兜もろとも頭蓋を貫き、脳漿を掻き回してやる。

 風切り音が下級魔神の耳に響く。まだ自分は左腕を振り下ろしていないのに何故だ、と思う間もなく、枯れ木が折れるような音と共に男の身体がおかしな角度に移動し吹き飛んで行く。なんだ、何が起きている。

 何故視界が暗くなる。何故だ、何故―――――……

 

 女武道家の一撃によって首を折られ、自分の身体が横に吹き飛んだのだと下級魔神は最後まで理解出来なかった。出来ないまま、下級魔神の意識は永遠に闇へ沈んだ。

 

 

 

―――――――

 

 

 

 ほぼ間違いなく死んだはず。であるがどうしても不安が拭いきれず、魔法剣士が広刃の剣で首を落とし、さらに念のため心臓を貫く。

 そこまでやってようやく三人は大きく息を吐き、その場にへたり込んだ。「勝った」という実感や達成感はまるでなく、「生き延びた」という安堵だけが全身に満ち渡っている。

 勝利に湧き立つ事も、お互いの無事を喜び合う余裕もない。全員が呆けたように座り込み、少しの間何も言わず呼吸を整えるように大きく息を吸っては吐く。ただそれだけを繰り返す。

 

「……治療をしないとな」

「……そうね。その傷大丈夫?」

「……いたたたた。気抜けたら痛んできた」

 

 女武道家の傷に軟膏を塗り、包帯を巻く。攻撃を受けた二人はさらに治癒の水薬(ヒールポーション)を飲み、全員が疲労度合を考慮して強壮の水薬(スタミナポーション)を飲んでおく。

 その後一党は部屋の片隅に置かれていた箱を見つけ、魔法剣士と女魔術師があれやこれやと保有している知識から色々と意見を出し合い、最終的に「罠はないはず」という結論に至りおっかなびっくり箱を開いた。

 中に入っていた無数の封がなされた瓶には黄金の液体が入っていた。魔法剣士が昔読んだ本の内容を思い出し、それは賦活剤(エリクシル)という森人(エルフ)の秘薬である……恐らくはそうであると結論付け、一党は冒険の成果としてそれを得る。

 それで終わるはずだった。終わると思っていた。思わぬ依頼を受け、思わぬ敵と戦い、苦戦しながらも何とか乗り切り、宝を得る。正しく「冒険」であり、それはこれで終わったと。一党の誰もが思っていた。

 

 それが間違いだと気付いたのは遺跡の入口まで戻ってきた時だった。

 荷物も持たず、必死に駆け込んでくる依頼人。それを追いかけるかのように飛来する粗雑な作りの矢。ギャアギャアと耳障りな多数の声。

 

「ゴブリン……」

 

 依頼人が何かを言うよりも早く、三人はその声の主が何者であるかを理解する。ここを捨てたはずの群れが戻ってきたのか、別の群れなのか。いずれかはハッキリしないが、結構な数が遺跡の入り口を取り囲んでいる。

 

「引きつれてきてしまう形になって、申し訳ありません」

 

 これほどの数がいるとは思わなくて、と震える声で依頼人が言う。その言葉に対し、三人は誰一人責める事なかった。ゴブリン達は最初からこの数で囲んだわけでなく、4,5匹ずつ姿を現しこの数になったのだと言う。

 恐らく依頼人を徐々に追い詰めていく過程を楽しんだのだろう。そういう生き物だと、魔法剣士はあの洞窟でゴブリンスレイヤーから聞いていた。

 

「……この入り口近くなら、囲まれる心配はない。ここで迎え撃つぞ」

 

 囲みを突破しようとすれば袋叩きに合う。そう判断した魔法剣士は少しでもマシな場所で戦う事を決意する。女武道家と女魔術師、そして依頼人も黙って頷く。

 多勢に無勢。逃げ道はない。依頼人は術も奇跡も使えないとの事なので、術的資源は女魔術師の一回のみ。四人のうち軽傷ではあるが二人は手負い。そして三人が間違いなく疲労し消耗している。対してゴブリンの数は正確には分からないが、声の騒がしさからして20は下るまい。

 目を覆いたくなるような現状である。だが魔法剣士は―――――魔法剣士一党は諦めない。諦めたくなかった。最後まで足掻いてやると、僅かでもある可能性を手繰り寄せてやると腹を括る。

 楽観的に何とかなると思っているわけではない。ただ自分達の持つ全てを使ってやる。そう思っていた。

 

「……《吹雪(ブリザード)》で少しでも数を減らすわ」

「頼む」

「お願いね」

 

 女魔術師の言葉に一党の二人が頷く。もしこの三人がもう少し経験を積んでいたならば、もう少し引き付けてから呪文を使っていただろう。残り一回の呪文を少しでも効果的に使うため、可能な限り巻きこめる瞬間に使っていたはずだ。

 だが三人には覚悟があっても経験がなく、腹を括るので精一杯で頭は充分に動いていなかった。先程のように世界全てが制止して頭だけが動くのならまた違ったかもしれないが、そんな都合のよい何かが二度も訪れる事はなかった。

 

「《グラキエス()……テンペスタス()……オリエンス(発生)》!」

 

 女魔術師の口から真なる力のある呪文が発せられる。しかし、それによって何かしらの現象が起こる事はない。

 思わずその場にいる全員が女魔術師の顔を見る。杖を構えた彼女は何が起きているのか分からないという表情をしていたが、すぐに何が起きたかに気付き絶望に満ちた表情になる。泣き出さなかったのは小さな奇跡かもしれないと思えるほどだ。

 そしてその表情を見た瞬間魔法剣士も何が起きたか気付く。彼も魔術を行使する者の端くれであり、術を使うとはどういう事なのか知っている。

 

「仕方ない。万全の状態でもなければ、落ち着いていられる状況でもない」

 

 呪文を使う、というのはそれだけで難しいものだ。そして術によってその難易度は変わり、女魔術師が使おうとした《吹雪》はかなりの難易度を誇る。

 それでも彼女なら発動体の補助と、生まれ持った才能。そして重ねた修練によって行使出来ていただろう。万全の状態ならば。

 下級魔神との戦闘で疲労し、多数のゴブリンに囲まれ窮地に陥っている。冷静に集中して術を行使できる環境ではない。失敗するのもやむをえまい。

 誰が悪いでもない。強いて言うならば、彼女が万全な状態で術を行使できるように出来なかった自分にこそ非がある。

 

「やれることをやれるだけやろう。後衛二人は援護を頼む」

「……そうね。あたしには出来ない事をやってくれてたんだし、今度はあたしがやる事をやる番!」

 

 魔法剣士の言葉に女武道家が頷く。女魔術師の術の失敗を悟り、それを責めず切り替えてくれる彼女が仲間でよかったと心から思う。

 自分に足りないものを補ってくれた女魔術師もだ。二人は各々自分にしか出来ない事を出来る限りやってくれた。そして今もやってくれようとしている。感謝しかない。

 その仲間を生かすため、出来る事をやれるだけやる。可能性は限りなく低くはあるが、やらないで終わるのは違う。

 そう腹を括ると、魔法剣士は向かってくるゴブリン達に対し広刃の剣を抜き放った。

 

 

 

―――――――

 

 

 

 術の行使に失敗した瞬間、女魔術師は自分の足元が崩れ底の無い奈落に落ちていくような感覚に陥った。失敗してはいけない時に失敗してしまった。

 自分の命だけでなく、仲間の命に関わるのに。全員の命に関わるのに。絶対に失敗してはいけないのに。

 だと言うのに、魔法剣士は仕方ないと受け入れた。女武道家は自分を責めずに切り替えた。こんな仲間達を、自分の失敗のせいで死なせてしまう。

 

(―――――嫌!)

 

 ゴブリンに腹を刺され、死にかけた時よりも。ゴブリンに囲まれ、自分があの洞窟にいた女性達のようになる想像よりも。この二人が死ぬのが怖い。そんなのは耐えられない。ならばどうするか。どうすればいいか。

 決まっている。やれることをやれるだけやるのだ。

 

「《グラキエス()……テンペスタス()……》」

 

 己の魂から力を振り絞る。使える限度を超えて真なる力のある言葉が紡がれ、意味を成して行く。

 自分の才と努力の証であり、誇りの象徴たる杖が力の行使を助けてくれる。魔法剣士から貰った耳飾りは、発動体としての役割以上に女魔術師の心に力をくれる。出来る。出来ないはずが無い!

 

「《オリエンス(発生)》!」

 

 限界突破(オーバーキャスト)による、本来行使できない三度目の術。それが使用されたのは、一党の全員が想定していたタイミングではなかった。一党は誰もが「ゴブリンが遺跡に入って来る前」に使い、数を減らそうと考えていた。

 だがそのタイミングでの術は失敗し、既に遺跡に何匹か入って来てからの詠唱となった。それはつまり、限界以上に引き付けてからの発動。

 

「GRUUUUU!?」

 

 急速に温度が下がり、遺跡の入り口付近に吹雪が吹き荒れる。巻き込まれたゴブリン達は体温を奪われ、動きを奪われ、命を奪われる。

 既に何匹かは遺跡の中に入って来ていた。すなわち、先頭の数匹に続いていた後続が巻き込まれることとなる。

 

「GAAAAA!?」

 

 獲物を一番に得ようと遺跡に躍り込んだ先頭のゴブリンは思わず後ろを振り返る。ゴブリンが仲間の心配などする事はないが、自分達の身に危険が迫るかもしれないという心配はする。

 どうやらあの吹雪は遺跡の中までは来ないらしい。自分達は安全だ。そう思い凍り付いて行く馬鹿な仲間を嘲笑おうとして―――――

 彼の首が飛んだ。

 

 

 

―――――――

 

 

 

 遺跡に入り込んだのは数匹。つまり、数匹のゴブリンを多少の経験を積んだ三人――――― 一人は術の行使に忙しいため二人の冒険者と、一応の心得がある依頼人とで迎え撃つこととなる。

 その結果は言うまでもない。

 ゴブリンは一匹二匹なら、素人でも殺せるほど弱いのだ。

 

「助かった……!」

「凄い、凄いよ!」

「お見事です!」

 

 ゴブリンを始末した三人が興奮を隠さず女魔術師を褒め称える。彼女は疲労困憊となりその場にへたり込みながらも、それを受けて笑顔を見せる。

 それは自分の挙げた成果を誇るとかでなく、単純に仲間の役に立てたという安堵が産んだ笑顔。一党を助けることが出来たという安心から生じる笑顔だった。

 

「まだ何とかなる、諦めるなよ!」

「ええ!ここまでしてくれたんだもの、やってやるわ!」

「半数ほどは減ったはずです、やりましょう!」

 

 まだゴブリンが全滅したわけではない。形勢が逆転したわけでもない。だがハッキリと見えてきた希望に三人の士気は上がる。

 対してゴブリン達は仲間の死に怒り、憎き冒険者共を血祭りに上げようと気勢を上げる。そして残ったゴブリンの一匹が真っ先に遺跡の入口へと殺到し―――――

 

 頭から矢を生やし、その場に倒れ込んだ。

 

 何が起きたのか、魔法剣士達もゴブリン達も理解できない。理解出来ないでいる間にも矢は次々と飛来し、ゴブリン達を射抜いて行く。

 ゴブリン達からすれば、これは理不尽かつ不条理な事だった。自分達は何もしてないのに殺されている。何もしてないのに虐げられている。何もしてないのにありえない事が起きていると。

 

 だがもし事情を全て知る者がいたら、これは必然だと言っただろう。

 巣穴を持たない放浪部族であるこの群れは、この近辺で食料と娯楽、仲間を増やす孕み袋を得るべく街道の旅人を襲った。だから当然討伐依頼が出された。

 その討伐依頼は当然の事として、この近隣で最も大きな拠点―――――辺境の街の冒険者ギルドへと出された。

 そしてその街のギルドで、ゴブリン退治の依頼が出されたならば。

 

「小鬼めら、何者かを囲んでおるようですな」

「遺跡に立て籠って凌いでるっつーとこかの。あの入り口の様子を見るに術師がおるようじゃが」

「でもこの数に襲われたんじゃ厳しいわね。ギリギリ間に合ったってところかしら!」

「は、早く助けないと……!あっ、でもゴブリンは逃がしてはいけない、ですよね?」

「当然だ」

 

 彼が来るのは、当然の事だ。

 

「ゴブリンどもは皆殺しだ」

 

 

 

―――――――

 

 

 

 疲労でボーっとした頭のまま、女魔術師は魔法剣士の背で揺られていた。

 何となく全てに現実感が無い。ひょっとしたらこれは自分の見ている都合のいい夢で、現実はゴブリンに慰み物にされていて耐えかねた脳が幸せな幻覚を生んでいるのではないかと疑ってしまう。

 ゴブリン退治の依頼を受け、ゴブリンを追跡してきたゴブリンスレイヤー一党に助けられたことも。女神官が襲われていたのが自分達だと気付いて、涙を流すほどに無事を喜んでくれた事も。彼らに半ば保護されるようにして、遺跡近くで一晩過ごした事も。全てが夢のように感じる。

 そして一晩明けて戻る途中、限界突破(オーバーキャスト)による疲労の影響で足が遅れがちになってきた自分を魔法剣士が背負っている。これはやはり幻覚な気がしてくる。

 旅の初日、彼の意外に筋肉のついた身体を見てしまった夜に見た夢。あの夢の続きだと言われた方がしっくりくる。あの時は見えなかった背中の筋肉がやけにリアルだが、夢とはそんなものかもしれない。

 回した腕が当たっている肩の筋肉は少し盛り上がっており、夏場だらしない格好をしていた時に見えた学院の男子達のそれとはまるで違う。この肩から伸びて自分の脚を抱えている腕もさほど太くはないが力強さを感じさせ、確実に支えてくれるだろうという安心感がある。

 革鎧越しではあるが身を預けている背中はがっしりとしており、幼い頃自分を背負ってくれた父の背中を思い出させた。

 彼のうなじに顔を埋める形となっているため、汗と血の匂いが漂ってくるが自分も似たようなものの為に気にならない。それ以上にその匂いに混じって僅かに感じる、少し独特な匂いの方が気になって仕方ない。きっとこれが彼特有の、彼の匂いというものなのだろう。

 夢とはいえはしたなく嗅いだりはしないが、呼吸の過程で自然に吸い込む分は楽しんでも構わないだろう。そう結論付けると、女魔術師は口を閉じ静かに鼻だけで呼吸を行う。

 どうせ都合の良い夢なら鎧越しではなく、彼の背中を直に感じたい。そんな風に女魔術師が思い始めた頃、急に彼の感触と体温が消え失せた。

 

「起きたか?」

 

 何が起きたのか混乱する女魔術師の顔を魔法剣士が覗き込んでいる。顔はそれなりに離れてはいるが、顔を直視されている。さっきまで見ていた夢の内容を見透かされているような錯覚にわたわたとしてしまい言葉が返せない。

 そこでふと周りを見渡して気付く。ここは冒険者ギルドだと。そして魔法剣士と女武道家、依頼人、それに受付嬢がこちらを見ていると。

 女魔術師は―――――我褒めになるが―――――頭がいい。今いる場所とここにいる人間、魔法剣士が言った言葉から状況を推測出来る程度には。そして、その状況に至るまでの流れを推測できる程度にも。

 つまり自分が背負われていたのは夢でも何でもない。単に自分の疲労を見兼ねた魔法剣士が、ここまで背負って運んで来てくれたのだろう。つまり背負われたまま街に入り冒険者ギルドまで、もっと言えばつい先程まで背負われたままだった。

 当然その姿は大勢に見られたわけで、さらに言えば彼や女武道家、依頼人等は自分が彼の匂いを嗅いでいた事に気付いているかもしれないわけで……

 

「――――――――――!!!!!」

 

 

 

 その時その場にいた者達は、後に女魔術師の様子をこう語った。

 

 一党の女武道家曰く「寝顔見た時は起きたらからかってやろうと思ってたけど、起きた時の慌てぶりを思い出すと可哀想が先に来てからかったり出来なかった」

 ギルドの受付嬢曰く「自分と彼に置き換えたら、幸せそうに寝てた気持ちもその後の恥ずかしさもとても良く分かるから何も言えない」

 依頼人たる魔女狩人曰く「天国と地獄をこの上ない速さで行き来したようだった」

 そして当人たる魔法剣士曰く「あの時彼女が上げた声より大きな音は、どんな怪物も出す事はなかった」と。

 




正直女魔術師ちゃんのムッツリパート書いてるのが一番楽しいかもしれない。


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魔法剣士・9

また活動報告でご意見を募集してます。
どれにしようか迷うとすぐ人に聞きたくなる。僕の悪い癖(特命係顔)


 はい、それじゃ今回も始めて行きます。が、その前にちょっと報告を。

 なんとですね、前回録画終わって再開するまでの間にアプデが来まして。ついうっかり適用してしまったので、仕様が変わってる部分とかが出てきてるかもしれません。

 今のところ大きな変化は見られないんでこのまま進めて行きますけど、何か違いを発見したら指摘して行きますね。

 

 えー、とりあえずですね。魔術師の疲労が全快するまで冒険には出ません。というか彼女、風邪引いてます。体力とか疲労の度合いでどのキャラも体調崩す事はあるみたいです。

 老齢だったり若いと言うか幼い年齢だとなりやすくなるようです。あと女性は女性特有のもので体調崩したりします。この辺考えるとやっぱ男性の方が楽ですね。

 まあ深刻ではないようなのですが、念のために医者呼んだり薬処方してもらいましょう。あと他人に感染すといけないので強制的に個室行きになってます。まあ個室が一番疲労とか消耗回復するから構いません。

 幸い前回お金をたくさん稼いだので、ゆっくり休んでもらいましょう。ハンターハンターぐらい。

 

 魔法剣士君も武道家も消耗はしてませんが疲労が溜まってるのと、装備全部整備に出してるので下水潜りも出来ないので大人しくしてます。

 えっ?魔術師の看病すればメリット大きいイベントが発生する可能性がある?

 

 その目は何か企んでる目やろ。騙されんぞ。

 

 まあ後で果物でも持って行ってあげましょう。看病は武道家がやってくれるみたいです。そうだね女の子同士の方が気がねないもんね。後で君にもおやつ持っていくからね。

 魔法剣士君は……やることないっすね。槍ニキと魔女さんは冒険中。女神官ちゃんもゴブリン退治中。仲のいい友達どころか知り合いすらいねえ。

 やることが……やることがない……!

 

 いやありました。会計です。

 細々と計算してあの二人が今回の冒険に出してくれた分を算出してもいいんですが、それやると魔法剣士君が二人の為の装備買った分を蒸し返されかねないのでやめます。

 なので非常にざっくりとした計算で行きます。まず銀貨100枚ずつ一党(パーティー)全員に配布。残りは一党の共有財布に入れて、魔術師が回復するまで全員の宿代含む生活費や治療費は全てここから出します。

 魔術師へのお見舞いとか武道家への差し入れは魔法剣士君の財布からです。これを共有財布から出すのはなんか違うよなあ?

 一党の誰かが困ったら共有財布から出して助け合おうぜ!というのは基本方針とします。保険みたいなもんだと思えば、今後報酬を共有財布に入れる事に関して文句はなくなるでしょう。

 頭目な上に会計も魔法剣士君の担当なので多分文句は言われないと思います。この一党のメンバーは基本他のメンバーの為に身を削れる素晴らしい人間ばっかなので。

 

 またやる事なくなりましたね。ギリギリレベルが上がらないところで経験値が止まってるのでビルドも出来ません。武器防具ないんで冒険もできません。オルガ、何をすればいい?誰を殺せばいい?

 一党のメンバー勧誘も受付さんに「今のところ一党を探してる斥候(スカウト)野伏(レンジャー)はいない」って言われてしまったので望み薄なんですよね。マジでどうしよう。

 ……あっ!閃いた!この間会った二人!あの二人誘おう!前衛と神官だし!探索役いないのは不安だけど、他の足りないポジション埋まるじゃん!

 でも勝手に勧誘するのはあれだな。魔術師治って一党で相談してからにしよう。

 とりあえずやる事ないので魔法剣士君にはボーっとしててもらいましょう。このゲーム自キャラにランダムで、一定時間操作してないときに取る固有モーションがつくらしいんですよ。

 どんなモーションになるかはキャラの特技や性格、戒律や出自経歴なんかで決定されるみたいです。初期だけでも10種類ぐらいあるらしいですが、DLCで倍以上に増やせます。安心してください、購入して適用済みですよ。

 それを見てみたいので放置します。立ちっぱなしの時と何かに座ってる時で違うらしいですが、今回は椅子に座らせましょう。

 

 モーション取るまでの繋ぎとして、ちょっと小話を1つしますね。

 ある晴れた日の午後、ある人が道を歩いていると向こうから赤い洗面器を頭に乗せた男が歩いてきました。

 洗面器の中には水がたっぷり入っています。男はその洗面器の中の水をこぼさないよう、慎重にゆっくりと歩いてきました。

 それを見た人は聞きました。

 

「失礼ですが、何故頭に洗面器を乗せているんですか?」

 

 すると男はこう答え……おっと、モーション見る前より先に監督官さんに声をかけられました。

 なんすか。仕事なら数日休みますよ。えっ、昇級審査?一党全員?

 あー、魔神関連は功績が評価されやすいんですね。あの依頼人さんからも評価高かった?ああ、過剰に報酬請求するとかしなかったのがよかったんですね。

 でもせっかくならみんなで一緒に上がりたいんで、後日でいいっすか。OK?ありがとうございます。優しいなあ。

 とりあえず魔術師回復したら昇級審査受けて、その結果でまた少し方針変わるかもしれませんね。ダメなようならダメな部分を直せねばならんので。

 それじゃ特に大きなイベントが起きない限り、魔術師が復活して昇級審査受けるところまでカットしまーす。

 

 

 

 復ッ活ッ!魔術師復活ッ!魔術師復活ッ!

 というわけで特に大きなイベントもなかったのでカットして、魔術師が完全回復するまで飛ばしました。日付見てもらえば分かると思いますが、二日で回復しました。

 それでは各々方、準備はよろしいか。昇級審査へと赴くぞ!あれ、なんか二人とも緊張してる?あっそうか二人はこれが初の審査か。大丈夫大丈夫力を抜いて。審査だって聞いてたのに何故か脱がされるみたいなイベントはないからさ。

 1人ずつ談話室に通されるみたいですね。成程複数人が審査される時はこういうシステムなんだ。最初は魔法剣士君からとのことで、行ってきまーす。

 礼儀作法あるとオートでノックしたりしてくれるのいいですね。無いと一々自分でやらないといけないので。

 こんにちわー。あっ、今回も受付さんと監督官さんだ。これ固定なのかな?ランダム?ふーん。まあ悪くないかな(蒼い顔)

 

 固定の一党を組んでみてどうか?やっぱり数は正義、数は力っすね。あとみんな一党の為に躊躇なく資金を出したり身体張ってくれるのは素晴らしいと思います。共産主義の申し子みたいな一党ですよ、同志スターリン。

 えっ、今の質疑応答で終わり?昇級決定?随分呆気ないっすね。はー、功績自体はもう充分で下級魔神(レッサーデーモン)倒して力量も証明したから実質決定だったと。じゃあ今の質問は?あ、一党組んだ時に他者をどう見るかで人格を測ると。なるほどなあ。

 とにかく無事昇級しました。やった!やった!夕飯はドン勝だ!

 ……認識票、微妙にダサい……ダサくない?いやドッグタグぽくてこれはこれで良さがあるのは認めますけど、黒曜のあのオサレ感から比べるとなんか……なんかこう、ねえ?

 これ兵士ならいいと思うんですよ。装備や役職といったものに相応しい感じがして。冒険者、それも革鎧着てる男が付けるには、ねえ?まあ文句とか言わず付けますけど。鉄の鎧ならまた違ったんだろうなあ。

 とりあえず次が待ってるんで挨拶したらさっさと出ましょう。ただいま皆!祝え!新たなる鋼鉄級冒険者の誕生を!

 普通におめでとうって言われた。嬉しい。じゃあ次魔術師ね。頑張って。

 

 

 

 二人も無事白磁から黒曜へと昇格しました。駆け出し一党に毛が生えたぜ!

 鋼鉄まで来ればチンピラとは一線を画した眼で見てもらえるようになるそうなので、ようやく職業:冒険者と言っていいところまで来た感じですかね。

 冒険の打ち上げも含めてみんなでお祝いしようと言う話になりましたが、ちょっと待ってね。女神官ちゃんも誘いたいから。

 ほら、最初の仲間だし同期なんだしさ、ね?彼女も黒曜に上がってたし、みんなでお祝いしようよ。あと一党のメンバーを除けば魔法剣士君唯一の友達だから、大事にさせて(切実)

 あ、すんなり同意してくれました。むしろ乗り気ですね。いい人揃いでよかったー。これで女神官ちゃんから「銀等級と肩を並べてる自分と一緒にしないでくれる?」とか言われたらデータ消すところですが、彼女は普通にいい人なのでそれはないはずです。

 問題は女神官ちゃんが戻って来ていて、なおかつ休みかどうかなんですが……おっ、いたいた。この間はありがとね!お礼に何でもするから!魔術師が!

 無事と元気そうな事を心から喜んでもらえました。いい子。あっ、気付いた?そうそう昇級したんだ。褒めて伸びるタイプだから存分に褒めて。

 ところでこの後暇?暇だよね?暇って言え。よし本当に暇らしい。今日休み?空手の稽古があっても今日は休め。

 はい、休みらしいので今夜はみんなで無事と昇級を祝う宴です。お礼を兼ねるのでゴブリンスレイヤーさん一党もお呼びします。お礼なのでこっちの奢りです。共有財布は犠牲となったのだ、宴の犠牲にな……

 

 さて次。新米戦士君と見習聖女ちゃんを探しに行きましょう。勧誘の時間だあああああ!

 受付さん、居場所知らない?ちょうど下水潜りに行くところ?あっ、今まさにギルドから出て行くところだ。教えてくれてありがとナス!おーい待ってくれ!……行ったかと思ったよ。

 とんでもねえ、待ってたんだという返事は貰えず普通に訝しまれました。まあその返事されたら殺されるからそっちの方がいいんだけどな!

 そうそう、用事だけれど。アイドルに興味はありませんか?違った、うちの一党入らない?今なら入会料無料だよ?このチャンス逃すと二度とないよ?

 

 えっ?断る?

 

 全然違うじゃん!言ったよね!「仲間にするフラグ立ってる」って!

『鋼鉄と黒曜に昇級して彼らより上の等級になり、下級魔神まで倒した一党相手だと気が引けて断られる可能性が生じる。当然の結果です』?もういいよ私みくにゃんのファンやめる!

 

 えー、というわけでまさかのお祈りメールを食らったので怒りの撤退となりました。キャラによってはこういう事もあるらしいです。まあ確かに黒曜に昇級する時、槍ニキ達と一時的に組むだけでもだいぶ気後れしたので分からなくはないです。

 でも白磁に毛が生えた程度なんだからええやん。あ、コレ確率なの?どのぐらい?えっ、今回そんな低い確率引いたんですか?今低い確率を引ける波が来てるってことですか?ちょっとガチャ回すわ。

 

 ガチャ勝利したから許す!

 

 まあそれは置いといて、まさか断られるとは思ってもみませんでした。でもまあ仕方ないのでこのまま三人で行きます。いずれ誰かが見つかる事でしょう。

 この後夜まで自由行動なんですけど、どうしましょうかね。工房行って何か掘り出し物でもないか見て回りましょうか。

 あ。そういえばさっき話のオチ言う前に終わっちゃったんで、工房に移動するまでの間にもう一回その話しましょう。

 

 水の入った赤い洗面器を頭に乗せて歩いて来る男に、その人はこう尋ねました。

「何故頭に洗面器を乗せているんですか?」

 すると男はこう答えましt

 

 

 

 えー、大変申し訳ありません。原因は分からないんですけど録画ミスで、暫く録画出来てなかったみたいです。今セーブして気付きました。

 データ上書きしちゃったんでやり直しとか出来ないのでこのまま進みます。本当に申し訳ない。

 今は宴会始める直前ですね。あの後ですが特に大きなイベントはありませんでした。アイテムや装備を購入したりもしませんでしたし、新しい誰かに出会う事もありませんでした。なので特に問題はないです。

 何故か山田が音頭を取って、乾杯して宴会開始です。ルネッサーンス!

 新米戦士君と見習聖女ちゃんも加入してれば歓迎会ということでもっと盛り上がったのになー!あーあ!(陰湿)

 まあそれは置いといて皆さん楽しくやりましょう(ヤン提督風)。足りなかったら魔法剣士君が自腹切るからさ!

 蜥蜴僧侶さんはチーズ好きなんですね。いやその見た目からチーズ好きは意外すぎる。もっとほら、テンプレドワーフしてる鉱人道士さんみたいな感じかなって。

 山田も森人(エルフ)のイメージとはだいぶ違うけどな!あ、この実況においては彼女、妖精弓手は山田で通します。

 ゴブリンスレイヤーさんは不参加ですが、あの人は牧場に帰ったそうです。牛飼娘さんが待っているそうなので。あの人意外と気を使いますよね。

 あと何気に受付さんと監督官さんが参加してますが、この人達は単に仕事ハケて一緒になっただけです。不正の温床になりかねないので奢ってはいません。

 なんだ山田。もう酔ってるな貴様。ええい、絡んでくるな!こっちの冒険の話を聞くのは構わないが、ゴブリンスレイヤーさんと結び付けて騒ぐな!騒ぐにしても近くで騒ぐな!

 なんですか受付さん。ここにいる新人はギルド側も期待してる?ありがとうございます!コンラッドやメンチぐらいは期待していいですよ!

 監督官さん曰く、魔法剣士君の昇級ペースはかなり早い方だそうです。へー。でも調子に乗ると危ない?分かってます分かってます。調子に乗らなくても死ぬって分かってます。だから斥候か野伏をですね……誰かいたら教える?本当にお願いします。あ、前衛職か神官職でもいいです。その条件を満たす二人に今日フラレたんで。しかも同時に。

 勧誘の厳しさに挫けました。

 

 あれ、武道家がなんか考え込んでる。何どうした?飲み会ダメなタイプ?こっそり帰っても怒らないよ別に。誰かがアルハラかセクハラしたなら、そいつの喉仏を親指で押していいよ。

 あー、鉢巻き君の墓参りかー……よし、一党全員で明日にでも行こうか。思い立ったら行こう。そもそも供養頼んでから一回も行ってないからな。

 魔術師も異論はないようなので決定です。女神官ちゃんは……モッピー知ってるよ。明日もゴブリン退治だって。その次の日も次の日もそうだって。

 個別で行くそうです。いずれ休みが重なったらみんなで行こうな。

 

 死者を悼むにしても沈まずにするのが冒険者?山田いいこと言うじゃない。よし奢りだ。葡萄酒を飲め。飲んで黙れ。デフォルトで音量がでかいんだよお前。バストと声の大きさが反比例するのやめろ。

 魔術師も酔ったのは分かったから絡むな!若干物理的に絡んできてるじゃないかお前!いやこれ若干じゃねえな!魔法剣士君に過重行動アイコンが出るってことはだいぶ体重預けてきてるなお前!

 魔法剣士君はお酒にそこまで強くないので止めてください!この火酒は危険そうだ、って魔法剣士君が危険判定出しちゃってるじゃん!助けて武道家!本当に助けてくれた!

 何?こういう時度胸を決めて飲めば一枚絵が見れたり特別なイベントが起きたりする?

 

 起きるのは恐らくロクでもないイベントなんやろ。騙されんぞ。

 

 ワイワイ楽しく騒いで、いい時間になったので解散と相成りました。武道家と魔術師は同じ四人部屋に泊まってるんで、物理的に絡んでくる酔っ払いは彼女に任せました。

 お前明日二日酔いだとしても甘やかさないからな。冒険の時は一党の為に頑張ってくれたから背負ったけど、今回は鉢巻き君の墓がある村まで歩かせるからな。覚悟しとけよ。

 魔法剣士君?大部屋で雑魚寝ですが、何か?

 とりあえず今日はもう部屋戻って寝ましょう。おやすみなさい。

 

 

 

 おはようございます。魔術師が二日酔いを訴えてきますが、解毒剤飲ませて終わりです。あ、お前後で買い足しとけよ。自腹な。

 今日は鉢巻き君の墓参りなので、花を買ってテクテク歩いて行きます。魔術師は昨日の事が記憶にあって必死に触れない様にしてるのか、記憶が飛んでいるのか分かりませんが情けをかけてそれに付き合ってあげましょう。でも次はない。

 偶発的遭遇(ランダムエンカウント)もなく無事村に到着しました。村の墓地に作ってくれたっていう墓は……おっ、案外綺麗になってる。

 お墓に花供えてお参りして、村長さんにお金渡して帰りましょう。金やるからこの墓の世話しろよ、って言うやつです。丁寧な言い方すると、永代供養料。

 1人ずつ銀貨30枚を出し、共有財布から10枚加えて合計100枚。これでたまには草むしりぐらいはしてやってくれ、と頼みます。快く受け入れてもらえました。

 これで共有財布の中身はなんと!空です!馬鹿か?って思うでしょうが、昨日の宴会でビックリするぐらい使いました。まあ7人分出した事を考えるとむしろだいぶ抑えれたと思いますが。

 所持金はみんな5~60枚ぐらいですかね。あれだけ儲けたのにもう貧乏に戻ってるわけですが、あれだけしんどい思いをした反動と考えれば安いもんです。

 さて帰りましょうか。暫く休んだから、明日からリハビリ兼ねてまた下水潜るぞ!

 

 あ、そうそう。アプデで変わった点なんですが。下水依頼が少し変化ありました。一党で受けやすいようなそうでないような感じに。

 単独で受ける分には変化ないんですけど、一党で鼠もしくは蟲退治を受ける場合は一人当たり金貨一枚となった代わりに、ノルマも人数に比例して倍増します。

 つまり二人で受けるなら合計で金貨2枚貰える代わりにノルマ二倍。六人なら六倍です。バランスがちょっと、いやだいぶおかしいので修正入るのは間違いないと思いますが、今はこうです。長くいると病気になるリスクと討伐数を考えると、三人ぐらいまでが赤字にならないギリギリの範囲です。

 あと巨大黒蟲(ヒュージローチ)も報奨金50枚がかけられました。これは素直にありがたいです。でも暴食鼠(グラトニーラット)の方がおいしいです。蟲は飛ぶ分厄介なんで。

 なので今後はドブさらいを止めて、鼠×2と蟲×1退治、もしくは蟲×2か鼠×1退治でやって行きます。だいたいは前者ですね。

 とりあえず3日やって1日休むローテで、10回ぐらい潜ります。ハッキリ言って暴食鼠と巨大黒蟲の報奨金狙いです。潜ってる時間と戦闘回数にもよりますが、5回も潜れば1回は出てきます。体感ですけどね。

 その報奨金を共有財布に全部入れて、余裕が出たらまた別の冒険にって感じです。なので次回は目標額稼いだところまで飛ばしてそこから始めると思います。

 では今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 えー。すいません。予定外の事態が起きました。

 予定額を稼ぐまで飛ばそうと思ったんですが、稼いでる途中で想定外のイベントがやってきまして。

 結論から言います。当初の最終目標だったゴブリンとの大規模戦。そのイベントが発生しました。

 正確に言うと朝起きて依頼選んでたら、ギルドにゴブリンスレイヤーさんがやってきまして。ゴブリンの群れが来ると仰いまして。で、後ろで見てる邪悪の化身(友人)が言うには「原作よりもだいぶ早いけどこれゴブリンロード戦だ」と。

 幸い毎朝セーブしてたのでいったんゲームを中断して、当日朝の起きた所からやり直すこととします。つまり、次回が最終回になる予定です。長ければパート分けますけど、多分最終回だと思います。

 というわけで、このシリーズもいよいよ終わりのようです。是非とも最後までお付き合いください。

 それでは改めまして、ご視聴ありがとうございました。

 




Q.魔法剣士君が看病してたらどうなってたんですか?
A.個室、ベッド、熱で理性の薄れたムッツリ。何も起きないはずがなく……

なんでこのタイミングでゴブリンロード戦になったのかとか、酒飲んだらどうなってたかとかは補足みたいなの上げようと思います。

あと一応次回で最終回(長くなったら分割)です。


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魔法剣士・裏 9

皆様このような拙い作品をご覧いただきありがとうございます。
お陰様で通算UAが10万を突破いたしました。本当にありがとうございます。
これからも可能な範囲で頑張らせていただきます。


 こほこほと咳き込みながら、女魔術師は毛布に包まり寝返りを打つ。頭まで風呂の中に浸かったような熱気が意識を朦朧とさせ、時間の感覚が非常に曖昧になっている。

 風邪を引くなど何年ぶりであろうか。少なくとも学院では引いた覚えが無い。やはり旅の疲れと、限界突破(オーバーキャスト)による疲労が大きいのだろう。

 大恥をかいた熱が引かないのでは、などと一瞬考えたが流石にありえないだろう。

 

「起きてる?」

 

 小さくドアがノックされ、女武道家が顔を覗かせる。女魔術師が頷くと、彼女は静かに部屋の中へと入ってきた。

 

「一度身体拭いて着替えた方がいいよ」

 

 もうお昼だしね、と手に持った桶と手拭をベッドサイドの机に置きながら女武道家が言ってくる。女魔術師は素直に頷き、身体を起こす。つい先程魔法剣士が医者を呼んできたばかりの気がしたが、無自覚のうちに眠っていたのだろう。

 眠る前―――――女魔術師の感覚からするとつい先程まで―――――は起き上がるなどとても出来ない気がしていたが、今は酷く億劫ではあるがベッドサイドに自分で座る事が出来た。やはり眠ったことで少しは体力が回復したらしい。

 

「……悪いわね。迷惑掛けて」

 

 服を脱ぎ、女武道家に汗まみれの身体を拭いてもらいながら女魔術師は小さく呟いた。体調を崩したことで彼女にも、魔法剣士にも、一党(パーティー)全体にも迷惑をかけてしまった。

 仕方が無いと言えば仕方が無い事だろうが、医者代にせよ薬代にせよ無料ではない。他者に感染さないために個室を借りねばならなくなったし、この代金も決して駆け出しであるこの一党にとっては安くない。折角稼いだ報酬が大きく目減りする事になってしまうだろう。

 

「迷惑だなんて思ってないよ。あたしも彼も」

 

 みんなを助けるために無理した結果なんだから、と女武道家は言うが、女魔術師はどうしても気にしてしまう。

 そもそも最初の時点で術が成功していればこうはならなかった。結果的に失敗したことで成功した時よりも成果は上がったが、あれがもっと失敗してはいけない場面だったら?

 魔法剣士が最初から一部を遺跡の中に入れて後続を断ちきる、という作戦を取っていたら、自分が失敗した時点で終わりだったのではないか?魔法剣士も、女武道家も、依頼人も、みんな自分のせいで死んでいたのではないか?

 病気のせいで弱気になっているのは分かる。だがその考えに女魔術師は囚われ、抜け出せずにいた。

 

「彼も似たようなこと言ってたよ」

 

 自分の考えている事を正直に打ち明けると、女武道家は苦笑いをしながらそう口にした。

 

「もっと上手くやれたんじゃないかって。高度な呪文なんだから呪文が失敗する可能性は頭に入れておくべきだったし、せめてもっと声かけて、落ち着いて呪文を使ってもらうべきだったって」

 

 あの状況でそこまで頭が回らないのは仕方ないだろう。むしろ焦ったり自棄になったりせず、冷静に囲まれない場所で迎え撃とうとしただけでもよくあの状況で判断出来たと思う。

 そして目の前の彼女もだが、失敗した自分を責める事なくすぐに切り替えたのは立派だったと思う。彼と彼女は間違いなく出来る事を全て出来る限りの力でやっていた。

 

「そうは言うけどさ、それはあなたもじゃない。あたし達から見たら出来る限りやってくれたんだよ。だから、感謝しかないよ」

 

 女武道家は言う。自分ももっと上手くやれたと思っていると。下級魔神(レッサーデーモン)相手に、無傷で二人が策を思いつくまで粘れたのではないか。自分が負傷した直後に策が出てきたという事は、あの一回さえ凌いでいればよかったのではないか。

 自分が無傷であるなら精神的な余裕はもう少しあったろうし、そもそも戦術を立てたり知識で役に立てない自分はもっと強くなければいけないのではないか。

 そんな事はない、と女魔術師が言うと、彼女はこう返した。

 

「みんな自分以外に対してきっとそう思ってるよ。自分以外はよくやってくれていて、自分だけがもっと上手くやれるのにやってないって。でもさ」

 

 それは凄い傲慢な考えだよね。女武道家にそう言われ、女魔術師はハッとした。一見謙虚に思えるが、それは「自分以外はそこが限界だが、自分はもっと出来る人間だ」と考えているのと同義なのだ。

 

「勿論もっと上手い方法があったんじゃないか、って考えるのは大事だと思うよ。でも、あの時もっと上手くやれてたはずだって思いこみ過ぎるのは違うんじゃないかな」

 

 あたし達そんな特別な人間じゃないでしょ?と言う彼女の言葉に、女魔術師は頷く。そうだ、もうとっくに鼻っ柱は折られ自分の身の程は知っているはずだった。なのにまた何処かで驕っていた。

 

「まあ、彼の受け売りなんだけどね、これ!」

 

 アハハ、と笑う女武道家につられ思わず笑みをこぼす。さっきまで自分を雁字搦めにしていた考えが氷解して行くのを感じる。

 自分達は特別ではない。悩んでいるのは自分だけではない。そして、みんながみんな一党の為にもっと上手くやろうとしている。

 それらはきっととてもいい事なのだ。だから、悩み過ぎず気楽にやっていけばいい。

 そう思うと気分だけでなく、身体も楽になったような気がした。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「よかったの?悪い話じゃない……って言うかいい話だったと思うんだけど」

「ああ」

 

 見習聖女の言葉に、新米戦士は頷く。確かにいい話だとは思った。

 つい先日下級魔神(レッサーデーモン)を撃破し、冒険者になった時期は大差ないはずであるのに早々と鋼鉄まで駆け上がった魔法剣士。その一党(パーティー)に誘われるというのは確かに魅力的ではあった。

 ちょうど前衛と神官職を欲していて自分達はその必要性を満たす存在であり、魔法剣士もその仲間も昇級したばかりでまだ駆け出しと言っていい力量であるからそこまで引け目を感じる必要もない。

 剣をギルドに届けてくれたことや短期間での昇進が認められる事から分かるように、魔法剣士の人間性も問題ない。そしてその彼と一党を組んでいる残り二人もまた性格に難を抱えているような事はないだろう。

 さらに5人の一党となれば依頼の選択肢も広がり、下水での鼠や蟲退治からも卒業できる。こう考えれば間違いなくいい話ではあったのだ。

 だが新米戦士はその話を断った。

 

 別に魔法剣士やその一党に思う所があったわけではない。自分や見習聖女のような鼠退治にあくせくしている駆け出しに声をかけてくれた事は感謝すらしている。

 もっと言えば勧誘された時は素直に嬉しかったし、見習聖女がいいとさえ言えば喜んで加入させてもらうつもりだったのだ。

 しかし、ふと自分の腰の剣に目をやった時思ったのだ。本当にそれでいいのかと。自分は彼らの一党に見合う人間なのかと。

 目の前の彼は同時期に冒険者になった者の中では最も早く昇級し、鋼鉄にまでなっている。その仲間二人も彼の話では黒曜になったという。

 そしてその一党は結成して一ヵ月かそこらだというのに、先日は―――――経緯は詳しく知らないけれども―――――下級ではあれどもれっきとした魔神を撃破したと聞く。駆け出しとしては破格とまでは言わないが、目を見張る働きをしている一党だ。

 一方で自分と見習聖女はと言えば、やったことがあるのは巨大鼠(ジャイアントラット)退治と大黒蟲(ジャイアントローチ)退治だけ。先日はその鼠退治でしくじり、剣を紛失した。

 剣は戻ってきたがそれは幸運に恵まれたからであって、新米戦士の力によるものではない。つまり、今の自分は自らが犯した失敗の後始末すら出来ないのだ。

 そんな自分が彼らと一党を組んでも、身の丈に合わないのではないか?足を引っ張るだけなのではないか?

 そう考えた時、新米戦士は自然と魔法剣士の勧誘を断っていた。

 

「その、ごめんな。勝手に断って」

 

 だが一党である見習聖女と相談もせず、勝手に断ったのはよくない―――――と言うよりも、やってはいけないことだったろう。

 彼女も断ったが、自分が断ったために受けづらくしてしまったのではないかと今さらながら思う。

 

「もし入りたいんなら別に俺の事は気にしなくても……」

「いーの。あたしがいなかったらあんた野垂れ死んじゃいそうだし」

「逆だろ」

 

 素早く突っ込みを入れるが、1人になると心細いのは確かだ。元々は単独でも功成り名を遂げるつもりだったが、流石に冒険者となってからの日々で現実的にそれが難しい事ぐらい理解している。

 

「それになんて言うか、あの人達の一党に入るのは気後れするって言うか……胸張って一党組めないのはちょっと」

「張るだけないだろ」

「うっさい!」

 

 脇腹―――――鎧の継ぎ目へ的確に肘を叩き込まれ、思わずうずくまり身悶える。

 彼女も自分と同じような気持ちを抱えていたという事実は、新米戦士の心を少し軽くしてくれた。代わりに身体は痛みを抱えたが。

 

「無理に急いでも転んで怪我するだけ!あたし達はあたし達で一歩ずつ進んで行きましょ!」

「……そうだな」

 

 確かに彼女の言う通りだ。身の丈に合わない事をしても仕方ない。

 まずは足元の一歩ずつから。そう思い直すと今日の分の一歩を進むべく、新米戦士は立ち上がり見習聖女と共に下水の入口へと向かって行った。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「それじゃ冒険の成功とみんなの無事、それに昇級を祝って!乾杯!」

「なんでお前さんが仕切っとるんじゃ」

 

 乾杯の音頭を取った妖精弓主に鉱人道士が突っ込むが、彼女は気にする様子も見せない。卓を囲む面々も気にせず乾杯をし、杯を口に運びくつろいだ様子で各々料理に手を伸ばす。

 魔法剣士一党に丁重な感謝を述べられ恐縮した以外は、女神官もこの宴を楽しんでいた。自分と友人達―――――己惚れでなければ、たぶん―――――の昇級を祝い、ここにいる全員の無事を祝い、冒険の成功を祝う。それは女神官の心を浮き立たせ、葡萄酒の酒精よりも強く陽気な気分にしてくれる。

 ゴブリンスレイヤーの姿がないのは女神官にとっていささか残念ではあったが、それが不満と言うわけではない。理由が牛飼娘の待つ牧場に帰るため、というのは少々思う所がないでもないが……

 注文した料理も普段食べているものとそう変わりないはずなのに、とても美味しく感じられる。楽しい食事の席というのは、空腹に勝るとも劣らぬほどの調味料なのだろう。

 

「もっと何か好きな物を頼んでも大丈夫ですよ」

 

 自分の頼んだ品が質素なのを気にしてか、魔法剣士が声をかけてくる。確かに宴の席にしてはやや控えめな注文ではあるだろう。

 

「ありがとうございます。でも、あんまり過度な贅沢もいけませんので……」

 

 相手の感謝の気持ちなのだから受け取らないのは失礼に当たるが、かといってあまり奢侈が過ぎるのはもってのほか。そうなるとこの辺が妥当な線なのだ。

 

「それよりもちょっと気になる事があるんですけれど」

「何か?」

「喋り方。意識的に変えてます?」

 

 魔法剣士が一党(パーティー)に話しかける時と、女神官も含むそれ以外に話しかける時は口調が違う。別にどうという事もないのだが、一度気付くとどうしても気になってしまう。

 

「ああ、これですか。失礼がないように変えていますが」

「私に対してもその、楽な感じで構いませんよ?その……」

 

 友達ですし、と女神官はちょっと勇気を出して続ける。二か月少々の付き合いだが、それなりに話す間柄であるし友人と言っていいはずだ。少なくとも女神官はそう思っている。

 とはいえ、向こうはそう思っておらず一方的に友人だと思っているだけの可能性もあるのだが。

 

「……そうだな。友達相手なのだから、楽にしていいか」

「そうですよ」

 

 ホッと内心胸を撫で下ろしながら女神官は頷く。思うだけなら楽なのに、友達と口にして関係を確かめる事のなんと緊張する事か。

 表情は変わらないが口調だけは砕けた魔法剣士とそのまま会話を交わしていると、不意に彼が何かに気付き話を切り上げる。その視線を追うと女武道家が言葉もなく手にした盃に視線を落としており、何かを真剣に考え込んでいた。

 

「……お墓参り。行っておきたいな、って」

 

 冒険者続ける事を言いには行ったんだけど、と女武道家は言う。誰の、と聞くまでもなく女神官には―――――いや、魔法剣士も近くの席にいた女魔術師にも分かった。

 最初に組んだ一党。初めての依頼で赴いたゴブリン退治。その時唯一帰って来る事の出来なかった彼。退治を頼んだ近くの村で眠ることとなった、あの剣士。

 忘れた事などないが、あまりにも日々が忙しく一度も訪ねた事がないのは確かだ。

 

「そうだな……明日も休みにして、皆で行こうか」

「賛成。こういう機会を逃すと中々行けないもの。毎日が必死だものね……」

 

 女魔術師の言う通り、皆毎日必死なのだ。駆け出しのみで一党を組んでいる彼らと、銀等級ばかりという分不相応な一党にいる自分。どちらが大変かは比べようがないが、どちらも大変で必死になるしかない。

 だから中々墓参りに行く余裕も生まれない。それは事実だ。しかし、だからといって行かないでいいわけではない。機会があるならば行くべきだ。

 

「私もご一緒したいのですけれども、その……」

「ああ、うん。分かる」

 

 魔法剣士が頷くと、女武道家と女魔術師も揃って頷く。ゴブリンスレイヤーの存在と彼が何をしているかは昨日今日冒険者になったばかりという新人を除けば誰もが知っている。

 そして彼と組んでいる女神官や他の面々が主に何をしているかも、当然知られている。ほぼ毎日のようにそれを行っている事も。

 

「なになに、なんの話?」

 

 自分は個別で行くことと、いずれ余裕が出来るようになったら全員で行こうと話したところで妖精弓手が話しかけてくる。恐らくは宴に似つかわしくない雰囲気となったこちらが気になったのだろう。

 積極的に話したい事ではないが、隠す事でもないので女神官は素直に事情を打ち明ける。

 

「成程ね……仲間失うのは辛いわよね」

 

 まして最初の仲間だもの、と言う妖精弓手の言葉に一同頷く。決して後の仲間は大事ではないとかそういう事ではないが、最初と言うのはやはり特別なのだ。

 

「でも暗くなりすぎるのは無しよ!」

 

 弔いを兼ねて騒ぐのが冒険者だ、と彼女は言う。自らの意志で「冒険」に身を投じる以上、明日は我が身かもしれないのだから。

 確かに、と納得し女武道家と女魔術師が一気に杯を空ける。女神官と魔法剣士は少し遅れたが、ゆっくりとではあるが手元の杯の中身を飲み干す。

 そういうものなのだろうか、と疑問は残ったが、納得する部分はあった。確かにもしも自分が帰らぬ者となった時、残された人には嘆くよりも楽しんでいてもらいたいと思う。

 忘れられたりしたら寂しいが、何時までも悲しんでいて欲しくはない。女神官はそう思うし、きっとあの剣士もそう思うだろう。

 

「と言うわけでもっと飲んで!さあさあ!」

 

 だから、今は騒いで楽しむのが正しいのだ。耳元で妖精弓手に騒がれている魔法剣士は若干顔をしかめている気がするがきっと気のせいだろう。

 そうして妖精弓手が騒いでいると、彼女と魔法剣士との間にさり気なく―――――いや、全然さり気なくなかった。強引に女魔術師が割って入り、女神官が思わず自分の薄い胸と見比べて羨ましくなる立派な双丘を押し付けている。

 押し付けると言うより甘えるように身を預けていると言うべきか。その顔が真っ赤なのはきっと酒精のせいなのだろうと女神官は思ってあげる事にした。

 割り込む前に意を決した顔で葡萄酒を瓶から一気に煽っていたから、きっとそのせいだ。

 珍しくハッキリ分かるぐらいに魔法剣士が困った顔をしていて、鉱人道士が面白がって火酒を勧めて、女武道家が助け船を出して。

 受付嬢が楽しそうにそれを見て微笑んで、監督官は声を出して愉快そうに笑って。妖精弓手もケラケラ笑いながら騒いで。蜥蜴僧侶はチーズを齧りながらそれを眺めて。

 ここにゴブリンスレイヤーがいればどうしていただろうか。そんな光景を眺めながら女神官はそんな事を考えて。

 そうして彼らは楽しく騒いで、時を過ごして行く。

 

 

 

―――――――

 

 

 

 次の日には魔法剣士達は墓参りの為に村へと足を運び、女神官はゴブリンスレイヤー達と共にゴブリン退治へと赴き。

 その次の日から魔法剣士一党は勘を取り戻すためと生活費稼ぎの為に下水で鼠や蟲を相手取るようになり、女神官は変わらずゴブリン退治で。

 そうして各々必死ではあるけれどもどこかのんびりとした明け暮れが過ぎていき、程なく一人の新人冒険者が冒険の末魔神王を討ち果たして。

 都では盛大に祝典が催され、辺境の街でもささやかながら祭りがあって。

 そんな日々がいつまでも続くのだろうと殆どの人間が思っていた。

 

 だが二十日ほど経ったある日、終わりは突然告げられることとなった。

 牧草地に現れた、足跡。その持ち主達によって。

 




Q.魔法剣士君は女魔術師に当ててんのよされて何も思わないんですか?
A.彼も多少酔ってるので物事を多く考えれなくなっており、「コイツ意外と重い」「バランス崩したら彼女も危ないから気をつけよう」ぐらいしか考えれなくなってます。

Q.じゃあ素面なら効いたんですか?
A.素面で必要もないのにこんなことされれば流石に多少は効きます。でも素面だったら回避します。


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魔法剣士・10

原作1巻を読み直したらオーガ戦の後、ゴブスレさん1カ月休養取っててそれから小鬼王戦でした。つまり下級魔神の後のゴブリン戦で彼が来るのは本来ありえませんね。
でもここは別の四方世界なので、大きなダメージを受けずに倒したとかそういう事になるのでセーフ。予防線が活きたな。皆さんも予防線は張っておきましょう。


 はい、それではいよいよ締め括りとなるイベントです。始めて行きましょう。

 朝起きて魔術師と武道家と合流して、ギルドで依頼を探してると……はい、来ました。ゴブリンスレイヤーさんです。

 ゴブリンの群れが来る、と言う所までしか見てないのでこの先は初見です。どんな流れになるのかな?えっ?

 百以上ってそれもう群れと言うより軍なのでは?しかもそれを統率してるロードがいると。怖っ。

 手が足りない。まあそうですよね。平野だと数が大正義。色んなゲームで学びました。大軍は平押しが一番強い。

 その大軍を相手にする手助けをしてほしいと。うーん、その数はだいぶ勘弁してほしいですが、まあ当初の目的ですしやりましょう。二回命救ってもらってますし。でも魔術師と武道家納得してくれるのかなコレ。

 何よりやらないと動画にならない(本音)

 じゃあ名乗りを上げ……えっ何?槍ニキの見せ場があるから少し待て?よし信じるぞ。万一なかったら指をコキャッってするぞ。コキャッって。

 お、槍ニキが絡みに行った。報酬寄こせと。ごもっとも。誠意は言葉でなく金額。黄金銭闘士は本当に正しい事を言う。

 それに対する返事が自分の持つもの全てって中々凄いなこの人も!困った時の苦し紛れとかでなく、コイツは「やる」と言ったら「やる」凄味がある!

 槍ニキはこれでどうするんだろう。あんまガメついとカッコ悪いけど、タダ働きは出来ないだろうしなあ。

 

 これはカッコいいわ。

 

 いや、カッコいいと感じるかどうかは人それぞれでしょうけど俺は痺れたよ。火炎属性付与(エンチャント・ファイア)で焼け死ぬ信長公ぐらい痺れたよ。

 後で一杯奢れとか、相場だろうとか、銀等級がゴブリン退治してやるんだから喜べ依頼人とか。相手の覚悟を汲みつつ最低限の報酬で助けてやるっていう槍ニキの心意気と優しさが滲み出てるわ。

 おっ、山田(妖精弓手)も続いた。ゴブリンスレイヤーさんの一党はまあそりゃ参加するか。姿見えないけど女神官ちゃんも参加するのは確定でしょう。

 魔女さんも行くのかー。出遅れた感はあるけどこっちも行きたいけどその前に相談と。おっ、選択肢出てきた。

 参加は当然として、報酬かー。命救われてるしなー。二回も。二回目はお礼渡したけど一回目は何もしてないし、無料でいいよね?よくないなら個別で要求してもらえると……

 おお、武道家はノータイムで賛同してくれた。魔術師も仕方ないなって感じだけど異論はないようです。じゃあゴブリンスレイヤーさん、僕らも参加します!銀等級ばっかの中に駆け出しが参加するの気が引けるけど!

 役に立たなくても許してクレメンス。あっ、また選択肢出てきた。なんかいい人っぽい事言っておけばまあええやろ。

 これで9人、女神官ちゃんも頭数に入れて10人?敵の十分の一とはたまげたなあ。でも一緒に戦ってくれそうな知り合いいないしなあ。

 あれ、なんかでかい人が名乗り出てきた。重戦士さんだっけ?ちょくちょく見かけはするけど絡みは全くないからよく分からない。

 あっ、協力してくれるんですね。ゴブリンスレイヤーさんに田舎救ってもらったことがある?成程、ゴブリン退治が活きたな。おっ、チラホラ同じような人が名乗り上げてきた。

 おや受付さんどうしました?えっ報酬?ゴブリン1匹につき金貨1枚?ボーナスタイムか何かか?

 おお、報酬出るとなったら続々名乗りを上げてきた。なんかみんな武器掲げ始めたぞ。エモートにある?真似しとこう。テンション上がるのは確かだし。

 いやあ、しかしいいイベントですね。こういうみんなで「やるぞ!」ってなるのは本当にいい。現実の行事でこれを強要された時は酷く萎えますが。自発的にやるからいいんだよ……

 はいはい、なんですかゴブリンスレイヤーさん。準備?まあそれは大事でしょうけど。えっ、ゴブリンが使う戦術と対策?そんなのあるんですか?

 はい注目!ゴブリンスレイヤーゼミ聞く姿勢取れー!銀等級の人のゼミは間違いなく役に立つぞ!俺は槍ニキゼミに助けられたから詳しいんだ!コレ必修だからな!単位落としたら命落とすぞ!

 

 まず人の盾使ってくると。あー、モンゴル軍が得意だった奴ですね。元寇の時にも使用されましたが、鎌倉武士は特に気にせず人質ごと撃ち抜いたそうです。あいつらホント狂ってる。

 今回そんなことするわけにもいきませんしやりたくないので、ゴブリンスレイヤー先生に対処法を聞きましょう。魔法で眠らせてその間に回収、眠らせた奴は起こすと面倒だから放置しておけと。

 騎兵?そんなのいるんすか。狼に乗って来る?強そう。はいはい、騎兵には当然槍衾ですね。馬と違って低いから姿勢を低くしろと。分かりました。

 呪文使いを真っ先に潰せとか、武器で殺せるから殺すのは武器にして呪文は呪文でしかやれないことをやれとか、背中を取られるなとかゴブリン以外にも応用できそうな事も多いですね。ゴブリンスレイヤーゼミもためになるわあ……

 で、その傾向と対策を元に準備を進めろと。了解しました!でもその前に装備と所持品確認しとこうか。

 薬ヨシ!装備の整備ヨシ!体調ヨシ!道具ヨシ!……いやよくないな。催涙弾でも買っときましょう。

 鼠や蟲相手には使ってませんが、視界を奪われるのは大きなデバフになるので絶対有用だと思うんですよ。大きなイベントっぽいのでボス的なのいそうな気がしますし。一党全員一個は持っておこうぜ。

 ここからは準備みたいですね。へー、キャラの能力によってやれることが違うんだ。武道家は力仕事で魔術師は頭仕事か。魔法剣士君は頭脳労働にしておきましょう。君の知力ボーナスはこの時の為にあったんだ。たぶん。

 

 事務処理とかクッソ地味っすね。プレイヤーが関与できる事もないし。カットカット。

 

 というわけで無事迎撃準備が整いました。なんということでしょう。ただの牧場が匠達の手によりまるで野戦陣地に。

 いやただの牧場ではなかったな。ある程度要塞化されてましたね、最初から。この世界の牧場ってこんなものかと思ってたらゴブリンスレイヤーさんが要塞化してたらしいです。どれだけ備えてたのこの人。

 あと商人とか土木作業員らしき人達の姿がちらほらありましたね。冒険者だけかと思ったら随分色んな人が関わってくれました。意外と人脈広いなゴブリンスレイヤーさん。

 違う?このイベントってそういうものじゃないの?えっ、フリーキャラのお陰?ちょっと詳しく教えて。ふむふむ。

 

 後ろの人類悪(友人)の話によると、このゲームは作成したキャラをフリーキャラとして開放する事が出来るそうです。

 そして今回は他のプレイヤーさんが解放しているフリーキャラを反映させていただいているので、そのキャラが独自に動いた結果こうなっている、と。へー。

 ということは大量に反映すればするほどヌルゲーに?あ、動くかどうかもランダムだから決してそういうわけではないんだ。覚えておく。

 

 ともあれ余裕を持って迎撃準備が完了したので、時間まで休ませましょう。それまでカットしまーす。

 

 

 

 はい、それではいよいよ。戦の時間だあああああああああああ!

 魔法剣士君の仕事は呪文係です。人間を板に括りつけてゴブリンが進んできてるので、そこ目掛けて《惰眠(スリープ)》を使用します。

 こいつらを死なせたくなければ抵抗するな。OK?OK!(ズドン!)みたいなことはやってはいけません。

 他の呪文職の人も《酩酊(ドランク)》や《惰眠(スリープ)》を使って眠らせてますので、滞りなく盾回収できてますね。悪いなのび太、その戦術はゴブリンに詳しくない人用なんだ。

 どうでもいい話ですけど、古代エジプトだとこの戦術を猫でやったらしいです。猫は卑怯だろ、猫は。

 この時シャーマンが呪文で追い打ちかけてくるかもしれないらしいですが、弓持ちの冒険者がそれを始末してるらしいです。夜目利かないんで見えませんが。そういうキャラならもっとはっきり見えるのかな?

 さて、呪文も使い切ってゴブリンの姿も見えてきましたのでここからは近接戦闘です。見渡す限りゴブリンだらけ。テーマパークに来たみたいだぜ。テンション上がるな~。

 とでも言うと思ったか!食らえ!

 

 接近戦に入る寸前に投石紐で石を投げて一匹仕留めました。悪く思うなよ、これも生活費のため……

 さて本当に接近戦に入ります。でもこれ、画面が忙しい!みんな好き勝手動くし、このゲームフレンドリーファイアあるからうっかり攻撃に巻き込まれたり巻き込んだりが怖い!一発だけなら誤射かもしれないけどその誤射で死にたくない!

 軍隊で槍が基本装備なのも頷けるわ!隊列作って前に突き出すか上から殴り付けるだけならあんまり味方同士で傷つけ合わないからな!

 さてどうするか……おっ?なんかバケツヘルム被ってでかい槍をブン回してる人がいますね。よし、この人の攻撃範囲の外で戦いましょう。

 背後を取られないよう気を付けつつ、ゴブリンを軽い攻撃で追い詰めて……はーい、そこ槍が通りますよー。おっ、いい当たりした。

 コレいいですね。自棄になって突っ込んできたら盾で防いでからカウンター。向こうに気を取られてるなら後ろからグサー。周囲の人達もそうし始めたので処理が早いです。

 ん?何か叫んでる。騎兵が来る?麒麟じゃなくて?

 あ、来た来た。狼に乗ってパカラってる。成程馬に乗るほど背が高くないから狼か。いい考えだ。感動的だな。だが無意味だ。

 

 超カッコいい……(恍惚)

 

 槍ニキ号令の下、前衛職の人達が準備しておいた手持ち馬防策みたいなやつで槍衾を形成して迎撃してるわけですが画像の迫力が凄い!

 そして狼から落ちたゴブリンの首はいただいておきますね。救ってやらな、この悲しい世界から救ってやらな……

 ヘイ新米戦士君。目の前に落ちて来たらとりあえず刺しといた方がいいよ。死亡確認にもなるし。

 あっ、武道家だ。乱戦の真っ只中だけど合流出来るの嬉しい。魔術師もいるじゃん。よし、こっからは一党単位で動こうか。

 とりあえずいったん下がろう。今ステータス確認したら消耗カウンターが溜まって来てたから。魔法剣士一党休憩入りまーす。

 

 後方は後方でちゃんと支援担当がいるんすよ。水くれます。水飲んで一息ついてからまた前線に戻りましょう。

 ところで目分量なんだけど、敵、100より多くね?これも多少ランダムで増えるし敵の種類の割合も少し変わる?大筋は変わらないけど、プレイする度に微妙な変化があるってことね。

 さて休憩終わったしまた前線に……何?ゴブリンがはぐれ、あるいは少数の群れで出現するポイントが幾つかある?

 んー、どうすっかな。魔法剣士君は呪文使いきったけど魔術師は《力場(フォースフィールド)》1回使っただけらしいのでまだ呪文1回使えるし、全員ノーダメで消耗もそんなにしてないし……

 よし行ってみるか。金貨……ゴブリンの数が5,6匹なら美味しいし。はい行くよ二人とも。金貨……ゴブリンがこの悲しい世界からの救済を待ってるから。

 

 

 

 騙したな貴様ぁぁぁぁぁ!嘘をつかず騙したなぁぁぁぁぁ!

 少数だけどシャーマンと田舎者(ホブ)2匹含んでるじゃねえか!しかも1匹はデカイ剣持って鎧着てるじゃん!剣持ってる方は田舎者(ホブ)ではなく小鬼英雄(ゴブリンチャンピオン)?知らねえよそんな違い!田舎者(ホブ)より強い?なお悪いわ!

 小鬼英雄(チャンピオン)は個体差でかいから弱いかもしれない?強いかもしれないしそっちを期待してるのは分かってるぞ!目と口元が笑ってるって言うかもう笑い隠してねえじゃねえか!

 田舎者もなんかでかい金棒持ってるし、確実に強いぞこいつら!

 シャーマン1、田舎者(ホブ)1、英雄(チャンピオン)1、武装した雑魚5って中々だぞ!万全ならともかくこっちは魔法剣士君の呪文の残りが0で、魔術師が残り1回だぞ!

 やるよ!やってやるよ!逃げる途中で気付かれたら魔法撃たれた上に追撃されるの確実だからやるしかねえんだよ!ゴブリン退治終わったら次はお前だからな!

 とりあえず森って言うか林?の中に入ってしまったので、いつもの《粘糸(スパイダーウェブ)》からの孔明の罠は無し!呪文の回数残ってないし、限界突破(オーバーキャスト)で使うにしても戦闘がまだ続くなら消耗は避けたいし、延焼したら大変な事になる!バイトテロやった馬鹿のツイッターになる!

吹雪(ブリザード)》やっとくか?いや万一失敗したら魔法無しでやりあうことになるからそれも無し。

 落ちつけ、まだ慌てるような時間じゃない。優先順位を考えよう。最優先はシャーマンで、まだこっちには気付かれていないから奇襲(アンブッシュ)可能。ただし接近し過ぎると気付かれるかもしれないから、投擲か呪文で奴を潰す。

 その後出来れば雑魚を先に片付けて、次に田舎者(ホブ)。最後に英雄(チャンピオン)をみんなで囲んで金貨にする。これだな。

 

 あっ、僕らいいもの持ってるじゃん。

 

 お待たせしましたー。ご注文の催涙弾です。えっ頼んでない?これは奢りだから遠慮せずに目に入れろや!

 綺麗に命中しましたね。奇襲成功!提督の教え通り叫べ!トゥラトゥラトゥラー!

 これで雑魚以外は一時的に目を潰したので、残りの雑魚を狩るべく突撃を……おおおお!?

 英雄(チャンピオン)がなんか武器振り回して、勝手に雑魚が一掃されました。何これ?あっ、敵もフレンドリーファイア判定あるんだ。で、彼はなんで突然クラウドごっこを?リメイク発売されてテンション上がったの?ジェシーめっちゃ可愛かったよね。

 振り回すことで突っ込んで来るのを防ぐのと、たぶんイラついたから?えっ、あっ、はい。そういう生き物でしたね、ゴブリン。

 でもあれ当たったらよくて瀕死、普通に死にそう。ヤベーイ!のでお前じゃなくてまずシャーマン処理するわ。

 

 いつぞやの魔法剣士君同様、よく見えないんで回避も防御も出来ずブン投げた小剣(ショートソード)が喉に刺さりました。たぶん死んだでしょう。

 武道家が田舎者(ホブ)に殴りかかって引き付けて、魔術師には《火矢(ファイアボルト)》を英雄に叩き込んでもらいます。このぐらいの火力なら火事にはならないでしょう。ウチの大砲の火力を味わえ!

 

 はっ?

 

 ……えー、御覧の通りです。小鬼英雄の首から上が消失しました。バグかな?って思ったけど普通に彼女の火力のようです。

 恐らくは【呪文増強:威力】とか【火の遣い手】とか【呪文熟達:攻撃】のいずれか、あるいはその中の複数を取得して威力を上げつつ大成功を出やすくしたり達成値そのものを増やした結果とのこと。そして小鬼英雄は抵抗判定に失敗したんだろうと。

 彼女の胸部についてる大砲に絡めてセクハラ発言しようと思いましたが、怖いんで止めます。皆さんも魔術師の胸の主砲に触れるとこうなりかねないので止めましょう。

 というわけで悪いな田舎者(ホブ)。この場にはあとお前だけなんだ。そして僕らは格好よく一気に仕留めようとか思わないからジワジワ死んでもらう。

 冒険者の成長には小鬼(ゴブリン)の犠牲ハツキモノデース。

 

 というわけで仕留めました。ええ。おい後ろで舌打ちすんのやめろ。拍手と舌打ちを同時にやるな。どういう感情なんだお前は。

 武道家が膝とか脛を殴るというもう見るからに痛そうな事をして、魔法剣士君は金棒持ってる腕狙って切りつけて。一発入れたら一度下がって魔術師が投石紐(スリング)で石を投げつけるというパターンを2回程繰り返したら死にました。

 これで終わり……じゃないな。忘れるところだった。えい。

 念の為シャーマンの顔に剣ブッ刺したら跳ねたんで、コイツまだ生きてましたね。ゴブリンスレイヤーさんが最初の洞窟で念押ししてたのを思い出してよかった。経験が活きたな。

 さあて、戻る前にこいつらの武器カッパぎましょうか。杖も剣も金棒もそこそこの値段で売れるの知ってんだぞ。寄越せ。

 さて奪う物奪ったし、一度後ろに引いてコレ置いてまた前線に……あれ、何この演出。終了演出?えっ、このイベント終わり?ボス倒してないけど?

 他の冒険者が倒すなりなんなりすると終わり?へー。

 

 

 

 まだ見所ないんですけど!?シャーマンとか倒すのは盛り上がりに欠けすぎるんですけど!?これで終わりならもう少し何か考えたわ!

 いや、本当に終わりなの!?どうすんだよ最終回なのに見所が薄すぎるわ!計画通りじゃねえんだよ地味だけど一番効くトラップ止めろ!動画そのものへのダメージは止めろ!

 あああああ待って待って場面切り換わ、あー!なんか祝勝会的なやつ始まった!ちくしょおおおおおおお!

 

 

 

 はい、というわけで最後なんか凄いアッサリとしてしまいましたが、これにて当初の目的を果たしたのでゴブリンスレイヤー実況プレイは最終回となります。

 ゲームとしては大変面白かったですし、キャラも魅力的でイベントも多く何回も遊びたくなるゲームですね。この後も個人的に遊んで……何?〆てるんだから後にして。

 なんで因果点使わなかったのか?因果点……?

 ……あっ、これか!ごめん完全に忘れてたわ!素でド忘れしてたわ!まあでも使わないなら使わないで何かあるでしょ?

 使いすぎても経験値減るけど使わなすぎても経験値減る?じゃあはよ指摘してくれや!縛りプレイやってると思った?初見で縛りとか不可能だわ!何が必須なのかも分からんのに!

 

 ま、まあクリアしたからよしとしましょう。それじゃ改めて〆の挨拶を……だから何。

 ……えっ、コメントでリクエスト多かったから目標立てて別のキャラで?まあいいけどさ。原作読むからちょっと時間開けるよ。魔法剣士君でこの後も遊んで行きたいし。

 はっ?知らない方が面白いから原作読むな?いやちょっと待って小説も漫画も全巻大人買いしたけど、動画撮り終わるまでは見ない方がいいって我慢してるんだけど?

 いや読ませてよ!ずっと我慢してたんだよ!動画撮り始めてすぐ買ったから1カ月ぐらい積んでるんだよ!早く読みたいから休み中ずっとゲームしてたまであるんだよこっちは!

 わかった、わかったから!せめてイヤーワンだけでも読ませて!本棚の肥やしにさせないで!なんでだよ畜生!イヤーワンなら関係ないだろ!

 多少は関係あるし本編読んでからの方が楽しめる?じゃあ本編読ませろってんだよ!この目隠しして魔術師より凶悪なボディしてる人とか気になって仕方ないんだよ!

 あれ?ちょっと待って、今……今笑ったよな!?魔法剣士君笑顔見せたよな!?なんだ山田うるさいzゴブリンスレイヤーさんが素顔見せとる!

 ちょっどっち見ればああちょっと待って魔法剣士君!スクショ撮らせろ!君にそんな顔パターン用意されてたとか知らんかったから!もっかい見せてぇぇぇぇぇ!

 

 

 えー、撮り損ねたので諦めます。というわけで次回からは新しいキャラでやっていくので、魔法剣士君の話はこれで一応終わりとなります。

 それでは長らくご視聴ありがとうございました。また次回お会いしましょう。さようなら。

 




くぅ疲。もう裏書かなくていいんじゃないかな。
俺は女魔術師ちゃんのガッツリ(R-18)スケベとか、1年経って姉の様子を見に来たら姉は同業者から生温かい目で見守られてる上にムッツリで
自分もなんか生温かい目で見られるせいで原作とは別の方向で拗らせそうな少年魔術師の話とかが書きたいんだ……

今回ラスト・ダンサー様の作品「ゴブリンスレイヤーRTA 小鬼殺し√」より作者様がフリーキャラとして解放している「疾走戦士」を出演させていただいております。
原作者にRTA走らせる切っ掛けになったり、色んな人にRTA走らせる切っ掛けになったりした凄い人の名作だからみんな読もう!読め!読んで来い!



※追記
どうして本当に書いちゃったんですか?(自問自答)


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魔法剣士・裏 10

彼らの積み重ねたものはそう軽くない、という話。


※前回に引き続き、ラスト・ダンサー様の作品「ゴブリンスレイヤーRTA 小鬼殺し√」より作者様がフリーキャラとして解放している「疾走戦士」を出演させていただいております。


 夢と現実の境目が曖昧になる、という経験そのものは何度もあったし誰もが経験するものだ、とは聞いていたが、その日のそれはとびきりだった。

 あらゆるものの感覚が明確に伝わり、輪郭もはっきりしていた。女魔術師や女武道家と一緒に摂った朝食の熱や味もしっかり覚えているし、ギルドにいた人々のざわめきとその言葉の内容もハッキリ耳に残っている。

 故に夢などとは全く思わず、間違いなく現実なのだと思っていた。夢でよくある不確かな部分が何処にもなく、自分が見た覚えのない同業者の顔もハッキリ見えていたのだから。

 

 ところがどうだ。ゴブリンスレイヤーがギルドにやって来て口を開いた直後、自分は宿の大部屋に戻っているではないか。

 思わず腕に爪を立てるが、ハッキリと痛みが伝わって来る。しかし先程見た夢もこのぐらいは出来た気がする。

 今見ているのが夢なのか現実なのか判断がつかなくなり、何とも言えない不安が襲ってくる。何処からが夢で現実はどこなのか分からなくなる。

 

(大丈夫、今見せたのは……予知夢!予知夢みたいなものだから!)

 

 少しばかり狂気に陥りそうだった魔法剣士の脳内に、冒険者になった時からの付き合いである外なる神の声が響く。その内容に成程と納得がいき、大きく息を吐く。

 予知夢を見せた理由は分からないが―――――まあ神のすることであるし、所詮ただの凡人に過ぎない自分がその心を推し量れるはずもない。何か神にしか分からない意味があってのことだろう。

 つまり後でゴブリンスレイヤーがギルドにやって来て、ゴブリンの群れが来ると―――――何故だ?何故彼はそんな事を言った?

 ゴブリンの群れがあの牧場を襲う。これは不思議な事ではない。ゴブリンというのはつまりそういう生き物であるし、たまたまその対象があの牧場になったとしてもそういうもので済む話だ。

 だが問題は彼がそれをギルドにわざわざ言いに来た、という事である。付き合いと言えるほどの付き合いはないが、女神官から聞いた話と実際に話した印象から言えば彼は無駄な事はしない。何か必要性があるから言いに来たのだ。

 ゴブリンの群れが来る。彼は間違いなくそれを迎え撃つだろう。それで話が終わらない、ということか?だとすれば何故だ?10や20程度なら彼はあらゆる手を使い迎え撃ち小鬼を殲滅するだろう。

 

 ―――――それが出来ないのか?

 

 ふと思い当ったその考えに得心が行くと同時にゾッとしたものが背筋に走る。あのゴブリンスレイヤーが殺せないゴブリンが来ると言う事か?それはどんな怪物なのだ。

 いや、違う。そんな怪物はいるかもしれないが、それはゴブリンではない。ゴブリンにそんな存在がいるとすれば怪物辞典(モンスターマニュアル)に書かれているだろうし、そんな危険な存在が生まれるのであればゴブリンはもっと危険視されている。

 ゴブリンの恐ろしさとはなんだ。多少知恵が回り、学べば人の真似が出来て、罠を仕掛けて、多数で囲んで……

 

「数か」

 

 声に出して小さく呟く。向かってくる相手が罠を仕掛ける事はない。多少知恵を使おうが人の真似をしようが、それを熟知しているゴブリンスレイヤー相手には通じまい。

 なら何が脅威となるのか。数だ。恐らく「殺せないゴブリン」ではなく「殺しきれない数のゴブリン」が来るのだ。

 具体的な数は想像出来ないが、あのゴブリンスレイヤーが殺しきれないのだ。30,40……恐らくは50以下という事はあるまい。

 それの手助けをしろ、という事だろうか?それとも巻き込まれる前にさっさと逃げろと言う事か?

 前者だろうな、と魔法剣士は少し考え結論付ける。逃げろと言うならばゴブリンに襲われ悲惨な目に遭っている姿まで見せるはずだ。想像もしたくないが、女魔術師や女武道家があの洞窟で嬲り者にされていた女性達のようになっている姿を見せてくるだろう。

 それを見せられれば彼は彼女達を引き摺ってでも連れて逃げる。それがないと言う事は、ゴブリンスレイヤーと共に戦えという啓示だろう。

 勿論これはただの深読みで、神はただ夢を見せただけで選択は自由という可能性もある。だが魔法剣士はこれを託宣(ハンドアウト)として受け取り、もし助力を求められたならば戦う覚悟を決めた。

 きっとそれが、今ここで神が自分に割り振った役割なのだ。それに命を助けられた―――――それも二度も助けられた恩がある。自分だけでなく一党全員がだ。手助けせねばなるまい。

 腹を括って下へ降りると、全てが夢の通りとなった。女魔術師と女武道家、二人と合流して朝食を摂る。そして依頼を―――――もう受ける気もなく、ただ眺めているとゴブリンスレイヤーがギルドへとやって来た。

 そして件の言葉を発し、夢では見れなかったその先の言葉も紡ぐ。

 

 曰く、ゴブリンの数は百を下らない。

 曰く、それを統率する小鬼の王(ゴブリンロード)がいる。

 曰く、敵は単なる群れではなく小鬼の王が率いる軍隊である。

 曰く、自分一人では手が足りない―――――……

 

 ギルドにいる冒険者達はざわつきだす。それはそうだろう。ゴブリンは弱い。だが数が集まったならば侮っていい相手ではない。それでいて何匹殺そうが所詮は「ゴブリン」なのだ。

 誉れにはならない。命の危険はある。報酬は安い。そんな敵を百、それも統率された軍隊となった群れを相手取るなどごめんだろう。

 だから報酬を要求する槍使いの態度は至極当然であるし、それに同調する周りの冒険者も正しい。対価は出さないが命懸けで戦え、と言うのは何がどうあっても通らぬ言い分だろう。

 自分のように既に対価を貰っているならば話は別だが。

 

「俺はやるつもりだが、二人はどうする?」

 

 女魔術師と女武道家に訊ねる。ただそれだけを言うつもりだったが、魔法剣士は自分でも信じられないほど自然と言葉を続けた。

 

「一緒に来てくれると、有難い」

 

 言い終わってから気付く。自分は二人を頼りにしているのだと。1人でもやるつもりではあるが、既に一党(パーティー)で動くのが自然になっているのだと。

 だから自分は、出来る事なら二人にも来て欲しいのだ。勿論命懸けになる以上強制は出来ないが。

 

「報酬はどうするのよ」

 

 槍使いとゴブリンスレイヤーのやり取りを横目で見ながら、女魔術師が逆に訊ねてくる。命以外の持ち物全てを報酬として差し出すと言っているが、確かに彼なら本当に差し出すだろう。だから、妥当な線の報酬を求めるべきなのだろうが。

 

「命を救われた恩があるからな。俺は求めない」

「じゃああたしも、かな。恩返ししないといけないってずっと思ってたし」

 

 魔法剣士の言葉に女武道家が賛同すると、女魔術師が大きくため息を吐く。呆れられているのかもしれない。まあそれは当然と言えば当然だろう。

 

「私も同じ立場なんだから、1人だけ要求は出来ないじゃない」

 

 まして銀等級が一杯奢る、って妥当な額で受けてるんだもの。顔をしかめながら女魔術師はそう溢す。顔と口調は苦々しく感じるが、目が笑っているのが魔法剣士にはちゃんと見える。

 いい仲間を持った。自分には勿体ないぐらいの一党を率いている。心からそう思う。

 

「自分達もやります」

 

 ならその一党の頭目(リーダー)に相応しい振る舞いを。一党の頭目としての役割を果たそう。自分の役割を果たさねば。

 いや違う。やらなければいけないというのは確かだが、それだけではない。自分は今、役割を果たしたいのだ。恩を返し、彼を助けるというのは「やらねばならないこと」であると同時に「やりたいこと」なのだ。

 

(ああ、そうか。俺はそれが―――――そういう事が好きな人間なのか)

 

 そんな事も分かってなかったのか、と自分の間抜けさに噴き出しそうになりながら、魔法剣士はゴブリンスレイヤーに向かって言う。

 

「鋼鉄と黒曜二人では大した助けにはなれないでしょうが」

「いや。すまん、助かる。報酬はどうする」

「いえ、いただき……いただけません。先に命を助けてもらったのはこちらの一党です。それも、二回も」

 

 頭を下げて礼を言うゴブリンスレイヤーに対し、彼より深く頭を下げる。仲間が大事になればなるほど、どれだけ頭を下げても足りない気がしてくる。

 だからせめて、言葉に感謝を込める。心の内から溢れてくる感謝を少しでも伝えたい。

 

「自分の命と、大事な仲間の命を救ってもらいました。せめてものお礼をさせてください」

「わかった。ありがとう」

 

 彼もきっと同じような気持ちで礼を言ったのだろう。少なくとも魔法剣士の耳には、ゴブリンスレイヤーの言葉はそう聞こえた。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「お、行くのか?鋼鉄と黒曜に手本を見せられて」

「うるせえ」

 

 女騎士の揶揄に顔をそっぽに向けながら、重戦士は立ち上がる。

 全員で頭を下げ、感謝の意を伝えながらゴブリン退治に名乗りを挙げたあの一党(パーティー)。その頭目(リーダー)の言葉が耳に痛かった。

 大事な物を救ってもらったら礼をする。それは当然のことであり、大事であれば大事なほど感謝の意をちゃんと示すべきだ。

 素直にそれをやるのは照れ臭い。だが、素直に感謝を示す人間を見たらやらざるを得ない。やらなければいたたまれないし、照れどころか恥になる。

 まして自分は銀等級。冒険者の等級が全てではないが、鋼鉄や黒曜がちゃんとやれている事が出来ないというのは沽券に―――――否。そういう問題ではない。

 

 要するに、感謝して礼をするのに切っ掛けが欲しいなどと思っている自分は彼らと比べ、人間としてどうなのだという話だ。

 

「おい、ゴブリンスレイヤー」

 

 等級だとか力量だとか年齢に関係なく、それは大事な事だろう。ならうだうだせずやるべきだ。

 

「俺もやるぞ……前に俺の田舎に出たゴブリンを退治してくれたらしいからな。その礼だ。だから俺も報酬はいらん」

 

 照れ臭かろうが女騎士にからかわれようが、恩知らずになるより何倍もマシなのだから。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「成程。実に胸糞悪い」

 

 《惰眠(スリープ)》でゴブリンを眠らせながら、魔法剣士は舌打ちをする。話には聞いていたが、実際に「盾」を見ると胃の奥底辺りに鉛を流し込まれたような気分になった。

 まかり間違えばあそこに女魔術師や女武道家が括られていたのかもしれない。そう考えると小鬼(ゴブリン)という種そのものに対して侮蔑と憎悪が湧きあがって来る。

 成程、ゴブリンどもは皆殺しにするに限る。生かしておいて知恵を付けた結果がこれなのだから。

 敵も味方も多数であり、乱戦が始まってしまえば自分の習得している呪文は使いどころがない。故に魔法剣士は術を全て使い切る。

 そして剣ではなく投石紐(スリング)を取り出し、勢いよく振り回す。単純に感情で言えば剣を抜いて斬りかかりたいところだが、生憎まだ自分は怒りや憎しみに任せて暴れてやっていけるほど強くない。

 紐から放たれた石は綺麗にゴブリンの顔面を捉え打ち砕いた。それが合図―――――となるわけではなく、単純に「盾」の回収が済んだのを見計らい冒険者達が一斉にゴブリン達へと襲い掛かる。

 石を投げた分一歩出遅れることとなったが、結果的にそれがよかった事を魔法剣士は痛感する。戦は勿論多人数での乱戦すら経験のない彼では、どう立ち回るべきか分からない。

 投石紐で援護するにしても味方に当てるのは怖い。とするなら後ろに位置して、背中を守るべきだろうか。

 

「ん?」

 

 無理せず可能な範囲で立ち回ろうとしていると、前方から風切り音が聞こえてくる。何事かと目を凝らせば、グレートヘルム(バケツヘルム)を被った盗賊騎士のようなベテラン―――――少なくともその風格を持った冒険者が、戦槍(パイク)をこれ見よがしに振り回していた。

 思いっきり目立つためにゴブリンが彼―――――彼女の可能性もあるが―――――の近くに集まっているが、唸りをあげて旋回する長柄武器の前に手出しできずにいる。

 ふと先日ゴブリンに囲まれた時の事を思い出し、魔法剣士はバケツ頭の冒険者を囲むゴブリンの後方に回る。誰かを囲んでいるというのは優位に立っているという事であり、その時後ろ側には意識を向けない。だからあの時自分達を囲んだゴブリンは綺麗に背後を取られた。

 そして背後に意識を向けると、今度は囲んでいた方向が一気に疎かになる。少なくともあの時はそうだった。

 なので仕留めるよりも反撃を受けぬ事に留意しながら軽く切り付け、ゴブリンを後ろに――――― つまり、先程まで前だった方向に進ませてやる。

 

「GAAA!?」

 

 勇気ある一歩を踏み出したゴブリンの頭蓋を、遠心力の付いた戦槍が捉える。砕かれながら勢いよく飛んでいく小鬼の頭蓋と身体を見て、魔法剣士は父が存命だった頃に連れられて見に行った魔球(ウィズボール)を思い出した。

 婚約者を連れて見に行くのは、それらしい行いだろうか。何時か余裕が出来たらやるべきかもしれない。いや、あの競技は女性向きではないか?自分が見たいものに付き合わせるのは婚約者らしくないか。

 余計な事に気を取られた、と自分を戒める。今はただ目の前の敵に集中せねばならない。

 ましてや折角やりやすい状況を生み出してくれている者がいるのだ。この機を逃してはならない。

 まだまだゴブリンは沢山いて、それを皆殺しにしなければならないのだから。

 

 

 

―――――――

 

 

 

 全体的に言って、冒険者達は優勢だった。

 百を超えるゴブリン。その数に手間取ってはいるものの、ゴブリンスレイヤーが立てた対策によりゴブリン側の戦術はことごとく潰された。

 盾は呪文によって効果を発揮する事なく回収され、小鬼騎兵は槍衾で防がれ、正面から戦えば所詮ゴブリンは冒険者の敵ではない。

 おまけに商人や土建屋によって後方陣地が構築されているため、負傷や疲労した者はそこへ戻り治療や補給を受けてまた戦線に復帰する。限界を迎えた冒険者を数で押し潰す、という小鬼最大の強みを生かせる戦術すら有効性を発揮できなくなってしまっていた。

 

 遂に小鬼英雄(ゴブリンチャンピオン)率いる田舎者(ホブ)の集団が投入されたが、あんな図体がでかいだけのウスノロどもが勝てるはずがない。

 (ロード)だなんだと威張っていたあの間抜けもだ。優秀な自分が群れと知恵を貸してやったのに、結局負けたではないか。

 自分なら今頃冒険者共を皆殺しにして、女どもは孕み袋にしていたのに。なんて無能な王だったのだろう。そのシャーマンは侮蔑と共に唾を吐き捨てる。

 彼にはこんな大きな群れを統率するだけの才覚も、あれだけの戦術知識もないが自分は上手くやれていたと信じている。彼はまさしくゴブリンだった。

 確かに彼は―――――他のゴブリンと比較してだが―――――賢くはあった。呪文を覚えたのは彼がそれだけの知力を有していたからだし、巣穴としていた遺跡で下級魔神(レッサーデーモン)の復活を察知して早々に群れごと逃げだしたのも彼の知恵あってのことだ。

 そして今、敗北を察知し自分に従うゴブリンを率いて逃げ出そうとしているのも彼の頭脳あってのことと言っていい。

 20を超える群れを率いていたのに、今いるのは自分を含めてたった8匹。しかも自分が率いていた群れではなく、自分同様たまたまこの群れにいた連中だ。図体がでかいだけで知恵の回らない2匹と、知恵も力もない普通の5匹。

 こんな馬鹿どもを率いて行かねばならない。何故自分ばかり苦労するのか。シャーマンは内心の苛立ちを隠そうともせず荒々しく音を立てながら歩を進める。

 まあいい。あんな馬鹿だって王になれたのだ。もっと賢い自分はもっと大きな群れを率いる王になれるはずだ。そうなったら今度こそあの牧場を落としてやろう。そして勿論自分が一番苦労しているのだから、当然女も餌も自分が一番多く得るのだ。

 そんな妄想、彼からすれば遠くない未来を見据えながら進んで行く。そんな彼の耳に風切り音が響き―――――

 彼の未来は視界ごと不意に閉ざされた。

 

 

 

―――――――

 

 

 

 シャーマン、小鬼英雄(チャンピオン)田舎者(ホブ)。厄介な三匹全てに催涙弾が命中した事を確認すると、魔法剣士一党は各々の獲物を取り出す。

 運のいい事に視界を塞がれた小鬼英雄が大剣で暴れたため、雑魚は全て同士討ちとなる形で片付いた。おかげでこちらは大物だけに集中出来る。魔法剣士が受けた託宣(ハンドアウト)に従いやってきた場所で思わぬ大物と遭遇した時は舌打ちをしたくなったものだが、これならば何とかなりそうだ。

 魔法剣士が小剣(ショートソード)を投げ、女武道家が田舎者に殴りかかるのを見ながら女魔術師は小鬼英雄に向けて杖を構える。

 思えば最初に思い描いていた理想とは随分違う道を歩んできたものだ。楽勝で終わるだろうと舐めてかかった結果死にかかり、助かったはいいが進むも引くもならず停滞し、最後は腹を括ってもう一度歩き出した。

 冒険者になってからまだほんの3ヵ月かそこらだというのに、今までの人生を全て濃縮してもこうはならないというぐらいに濃い冒険者生活だ。良い事も悪い事もあった。

 これからもそれを続けていきたい。続いて欲しい。大切な仲間と、惚れた男と一緒に冒険者として歩んで行きたい。いや、歩んで行くのだ。

 そしていつか夢見た未来へ辿りつくのだ。竜を倒すという夢を叶え、好きな男と一緒になる。前者は実力が足りず、後者は想いを伝えるどころか表に出す勇気すらないが。

 それでも、道程がどれだけ遠くとも、どちらも手にしてみせる。その道に立ちはだかるならば小鬼英雄だろうが人喰鬼だろうが―――――

 

(―――――消し飛ばしてやるわよ!)

 

「《サジタ()……インフラマラエ(点火)……ラディウス(射出)》!」

 

 杖は力強く握りしめ、彼から貰った耳飾りには丁寧に大切に優しく触れ。心身を集中し真に力のある言葉を紡ぎ、世界を改竄する。

 杖の先端に埋め込まれた拳大の柘榴石から《火矢(ファイアボルト)》が迸り、女魔術師の決意と覚悟を体現したかのように真っ直ぐ勢いよく小鬼英雄の顔面目掛け飛んでいく。

 そして命中した《火矢》は小鬼英雄の顔面を―――――焼かなかった。正確に言うならば、それはもはや「焼く」という言葉の範疇に収まらなかった。

 顔を貫き、頭部を消し炭に変えるのは焼くとは言えないだろう。

 致命的一撃(クリティカルヒット)により、一度しか残っていなかった呪文は最高の成果を挙げた。高揚感と達成感から笑みが浮かびそうになるが、それを抑え再び投石紐(スリング)を握り締める。

 敵はまだ残っているのだ。ここで喜んでいる暇はない。喜ぶのはやるべき事をやり、勝利してからでいい。

 最初に挑んだあの洞窟。あの中では自分は学院で積んだ経験と知識しか使えなかった。今は違う。冒険者として積んだ経験と知識がある。

 それを駆使して、勝つのだ。全員で、全員無事で。

 

 

 

―――――――

 

 

 

 田舎者(ホブ)が大金棒を取り落とし、目の前で目を抑え悶え苦しんでいる。それを見て女武道家はあの洞窟の中での戦闘を思い出していた。

 この個体ではないが、種としては同じ田舎者に自分の蹴りは苦もなく止められた。魔法剣士が《粘糸(スパイダーウェブ)》で援護してくれなかったら、恐らく自分は無防備な状態で一撃を貰って死ぬか、重傷を負って動けなくなったところをゴブリン達の玩具にされるかのどちらかだったろう。

 その記憶を振り切るためにも、あの時からどれだけ成長しているか試すためにも蹴りを打ち込みたい。経験を積んで強くなった自負はあるし、死線を潜ったことで技は間違いなく磨かれている。きっと通じるはずだ。

 己の成長を知らしめたい。己の実力を確かめたい。もうお前などには負けないと、記憶の中の田舎者に見せつけてやりたい。そんな想いを抱えながら女武道家は田舎者へと一気に駆け寄り―――――

 

 膝を思いっきり殴り付け、すぐに距離を取った。

 

 確かに蹴りを出したい。恐らく今の自分の力量なら、跳び上がって頭に蹴りを叩き込んで強烈な痛痒を与えることが出来る。

 だがそれは「恐らく」だ。確実ではない。そして何らかの不運によって蹴りそのものが当たらない可能性だってある。

 自分一人の事ならそれでも構わない。己の矜持のためだけに戦い、その結果が己だけに振りかかるなら。だが女武道家はこの一党の一員なのだ。

 大事な事は自分の蹴りが通じるかとか、研鑽した武術が田舎者を倒せるかとかそういうことではない。一党が全員無事でいるかどうか、この場にいる敵を全員倒しきれるかどうかだ。

 大金棒を拾おうとした田舎者の腕に、魔法剣士が刃を切り付ける。彼も深追いせず一撃を加えるとサッと引き、それを援護するかのように女魔術師が投石紐(スリング)から石を放つ。これも一発で仕留めようとしているのではなく、的の大きい胴体を狙って放たれている。

 これだ。自分が積み重ねた強さとはこれなのだ。一撃で敵を倒すというような強さではない。仲間と協力すること。戦術を使うこと。なにより、それが出来る仲間を得たこと。

 単に力量が上がったとか、技能が磨かれたとかではない。言葉にはしづらく分かりづらいが、それらよりもっと大切なものを自分は身に付けた。

 だからもう、試す必要も確かめる必要もない。間違いなく今の自分は、自分達は―――――

 あの時よりずっと、強くなった。

 

 

 

―――――――

 

 

 

 バラバラに吹き飛ばされた小鬼(ゴブリン)たち。喉に小剣(ショートソード)を突き刺されたシャーマン。頭部を消し飛ばされた小鬼英雄(ゴブリンチャンピオン)。膝と脛を拳鍔(セスタス)で殴りつけられ、腕を切られ指を切り落とされ、胸と頭に石を食らって動かなくなった田舎者(ホブ)

 自分と仲間以外に動く者はいなくなったが、魔法剣士は油断することなく周囲を見渡す。もし自分がゴブリンなら、「勝った」と思って気を抜いた冒険者を狙うからだ。気が緩んだ瞬間こそが最も無防備で、最も狙いやすい。

 故に気が緩んだように見せかけて敵を誘うという手もあるが、少なくとも今の自分にはそんな事をする技量も余裕もない。

 どうやら敵はこれだけのようだ。ホッと一息つくと、おもむろに田舎者の胸に剣を突き刺す。反応はない。完全に死んでいるようだ。

 そして振り返り、小剣の回収と確認を兼ねてシャーマンに近付いていく。

 魔法剣士は知っている。あの洞窟で、ゴブリンスレイヤーが油断しなかった事を。油断しなかった理由を。そしてその結果を。

 身じろぎ一つせず、小剣を喉に受け仰向けに倒れているシャーマン。その顔面目掛け、魔法剣士は剣の先端を突き刺す。

 

「GYAA!?」

 

 跳び起きようとするがもう遅い。死んだふりをしていたシャーマンは顔に剣を突き立てられ、ビクンと大きく痙攣し今度こそ動かなくなった。

 

「上位種は無駄にしぶとい、か」

 

 広刃の剣(ブロードソード)と小剣。両方の血を拭い、鞘に収めながら魔法剣士は呟く。

 これまで積んだ経験に、何一つ無駄はなかった。心からそう思う。自分の積んだ経験が、見た光景が、教えて貰った知識が全て活きている。

 冒険者になる前から積み重ねてきたものと、冒険者になってから積み重ねたもの。一党(パーティー)の仲間を含むそれら全てがこの結果へと繋がったのだ。勿論、運が良かったのもあるだろうが。

 

「……終わりかな?」

「ええ、ここのゴブリンは、だけれど」

 

 女武道家の呟きに女魔術師が応える。そう、少なくともこの場のゴブリンは全滅だ。極めて局地的な戦いだったが、ここだけは自分達の勝利だ。

 

「水を飲んで一息ついたら向こうに―――――」

 

 戻ろう、と言おうとして魔法剣士は言葉を切る。少し遠くから聞こえる歓声。様々な声音の入り混じったそれは小鬼の耳障りな叫びではなく、冒険者達の勝鬨だ。

 それが意味する事を悟ったのだろう。女魔術師と女武道家が表情を緩める。魔法剣士も頷き、安堵の息を漏らす。

 

「終わったようだ」

「あたし達の……」

「勝ち、よ」

 

 三人の間に弛緩した空気が流れる。こんな大勢で、こんな大量の敵と戦うのは―――――戦に参加するなどというのは全員が初めての経験だったのだ。緊張し、張り詰めていた神経がようやく解放され三人一斉に大きく息を吐いた。

 殊更勝鬨など上げはしないが、安堵した表情で顔を見合わせていると自然と笑いたくなってくる。だがそれはもう少し後にせねばならない。

 折角余裕があるのだから、やることはやらねば。

 

「……何してるの?」

「略奪」

 

 女武道家の怪訝そうな声に、魔法剣士は端的に答える。大金棒(モール)大剣(グレートソード)も少し古いが状態は悪くない。中古扱いにはなるだろうが、充分売れるだろう。

 シャーマンの杖は比較的新しく、これならば中古ではなく普通に売れそうだ。女魔術師の物同様先端に柘榴石が嵌まっているから、多少なり値がつくもののはずだ。

 これまでは武器や防具を持たない相手だったり、とても相手の装備を回収している余裕がなかったり、持ち主のあるものだったりしたから出来なかったが今回は問題ない

 こういった装備は持ち主などもう分からないし、奪って使おうが捨てようが売ろうが何の問題もないという事は受付嬢から確認を取っている。奪って、売って、金貨に変える。

 本当はもっと早くこうしたかった。何せ自分達は駆け出し―――――そろそろそれに毛が生えた程度の冒険者だ。このぐらいはせねばとてもとても金策など追いつかない。

 

「……ゴブリンが使ってたものよね?」

「誰が使おうとも道具の本質は変わらんだろう。呪いがかかるわけでもない」

 

 女魔術師の問いかけにそう返すと、彼女は女武道家と顔を見合わせる。そして疲れたように―――――まあ今日は心底疲れているだろうが―――――笑うと、呆れと感心を交えた口調で言った。

 

「意外と逞しい……がめついのね、貴方」

「抜け目ないって言うか……悪いとは言わないけれど」

「何とでも言ってくれ。何を言われてもこれを売って一党の資金にするのは止めないが」

 

 はあ、と殊更大袈裟に二人がため息をつく。苦笑いしている二人に―――――女武道家には大金棒を、女魔術師には紅玉の杖(ガーネットスタッフ)を渡して持つように言う。

 そして自分は大剣を背負い、来た道を戻り出す。

 

「どうしても嫌なら捨てて行くのも構わない。仲間の意見を無視する気はないからな」

「はいはい。嫌じゃないわよ。お金は大事だし、私達にないものだもの」

「早くこんなことしなくてもいいようになりたいね」

 

 あははは、と笑う二人に全くだ、と魔法剣士は頷く。そういう身分になれるのは、一攫千金を得るのは何時になる事やら。

 ともあれ戦には勝った。今日も自分達は生き残った。全員無事だった。小鬼の首も―――――正確には数えてないが、一党で合計すれば10近く獲った。そしてこの武器も売れる。

 これ以上望めば贅沢が過ぎるというものだ。そう自分に言い聞かせながら、魔法剣士はふと空を見上げた。

 双つの月が綺麗だった。魔法剣士は幼い頃、父親から「あの月からゴブリンは来る」と教えられたために緑の方はあまり好きではなかったが、綺麗なのは否定出来ない。

 これで何やら叫んでいる外なる神の声さえなければいいのに。実にうるさい。不敬ではあるが心底そう思いながら、魔法剣士は仲間と共にゆっくりと帰路を進んで行った。

 




小鬼王戦における魔法剣士一党の稼ぎ

乱戦中に倒した数(落馬したゴブリンライダーを仕留めた数も含む) 魔法剣士:3 女武道家:3 女魔術師:1
シャーマン率いる群れの討伐数:3 

雑魚は小鬼英雄が勝手に仕留めたため、自分達が倒したわけでないと正直に申告したので稼ぎには入らず。女武道家は普通に賛同したが女魔術師は呆れた(でも納得はした)

戦利品(全て銀貨換算):大剣(中古) 14枚 大金棒(中古) 15枚 紅玉の杖 17枚

合計収益:銀貨146枚


魔法剣士の達成実績

【帯に短し】
戦士系と呪文遣い系の職業レベルを3にした

【よくあることだ】
仲間に被害を出しながらもゴブリンの巣を攻略した

【下水の掃除屋】
下水路に出現する怪物を累計50体討伐した

【暴食に打ち勝ちし者】
暴食鼠を討伐した

【帰還報告】
死者の認識票を回収し、ギルドに報告した

【明日は我が身】
冒険者の遺体を回収し、ギルドに報告した

【必ず連れ帰る】
認識票と遺体の回収数が10を越えた

【恋の詩】
NPC1人から恋愛感情を向けられた

【旅は道連れ】
固定の一党に加入した

【舵を取れ】
固定の一党の頭目となった

【責任重大】
自分が頭目の一党の仲間を誰も失わず依頼を達成した

【魔神殺し】
魔神を討伐した

【お前の帰る巣はない】
小鬼王戦で被害を最小限に留め、大勝利を収めた

【あるがままに】
因果点を使用せずに小鬼王戦をクリアする



次回はエピローグ兼最終回となります。


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終章 彼の話

彼は普通の只人だ、というお話


 妖精弓手の音頭で何度目かの乾杯が行われる。冒険者達は何度目だろうが気にせず歓声をあげ盃を空けて行き、魔法剣士とその一党も例に漏れず盃を掲げる。

 もっとも魔法剣士が乾杯に合わせて飲み干したのは最初の一杯だけで、あとは一口ずつ舐める程度だ。気分が高揚しているのは確かだがそれに身を委ねた時、だいたいは酒精の悪戯で大変な目に遭うと相場が決まっている。

 

「なによぉ、もっとグイッと行きなさいよぉ……」

 

 具体的には、今まさに自分に全体重を預けて絡んできているこの女魔術師のように。

 小鬼英雄を呪文一発で葬り去ったのだから彼女の気分は殊更上がっているだろうし、そうでなくてもめでたい上にたっぷり稼いだため金の心配はない宴なのだからハメを外してしまうのは分かる。だがこの酔態はちょっと行きすぎではなかろうか。

 装備の類を全て外し、肩と豊かな胸の谷間を晒しながら男にしなだれ―――――寄りかかっているのはあまりにも無防備かつ危険すぎる。

 魔法剣士も男である以上―――――弁えているつもりはあるが―――――感じるものはあるし、周りの男性冒険者の視線が微妙に集まって来ているのだから止めた方がいいと思うのだが。

不思議と女性冒険者は厳しいものではなく、何処か優しい視線を送って来るのだが。特に自分ではなく女魔術師に注がれているように思う。

 女武道家はと言えば楽しそうに笑ってこちらを見てくる。彼女も気分は高揚しているだろうしこの酔っ払いほどではなくとも飲んでいるから、まあ楽しい見世物に感じるのだろう。確かに自分も他人事なら同じような反応をする。

 

「私のお酒が飲めないって言うのぉ……ならもっと美味しくしてあげるわよぉ……」

「言葉も行動もマズイから止めろ」

 

 およそ酒の席で最も嫌われる言葉を吐きながら、女魔術師が葡萄酒の瓶を手に取る。その口を自分の豊満な谷間に持って行きワインを注ごうとするのを、魔法剣士は制する。

 流石にマズイと判断したのか、女武道家も素早く立ち上がり葡萄酒の瓶を女魔術師の手からもぎ取って回収する。いざという時はしっかり助けてくれる心強い仲間だ。

出来ればそうなる前に何とかしてほしいが、そうなるまで動く気はないらしい。なんともいい仲間を持ったものだ。やれやれ、と魔法剣士は肩を竦める。

普段は知的で冷静なくせに、酒に飲まれてこんな醜態を晒す女魔術師。

 お人好しで―――――女魔術師曰く、自分も大概とのことだが―――――真面目だが、こういう時に悪乗りを見せる女武道家。

 実力だとか能力に関係なく、すっかり大切な友人であり掛け替えのない仲間となった彼女達。そして知った顔も知らない顔も飲んで騒いで楽しんでいるこの空間。

 誰も彼も無事でよかった。勝ててよかった。そういう安堵もあり、魔法剣士は自分の心が湧き立つ―――――いや、もっと単純に言おう。

 魔法剣士は今、本当に楽しかった。

 自然にフッ、と口元が緩むほどに。

 

「……」

「……」

 

 気付くと女魔術師が顔を真っ赤にして、女武道家は目を丸くしてこちらの顔を凝視している。何かついているだろうかと手を顔にやると、女魔術師が絶叫した。耳元で。

 

「笑ったぁーーーーっ!!!今、笑ったでしょう!!!笑顔、笑顔になった!!!!!」

「いや、それは当然楽しければ笑うぞ。俺をなんだと思っているんだ」

「いつも表情なんてないじゃない!!!笑顔なんて初めて見たわよ!!!!!」

 

 そう言われればそんな気がする。決して彼女達と過ごして楽しくなかったとかそんなことはないし、むしろ今までも楽しんではいたのだが笑顔を見せた気はしない。

 魔法剣士としては別に理由はなくただ何となくぐらいのものだったのだが。そんなことより女魔術師は何故耳元で大声を出すのか。聞かされる方の身にもなって欲しい。

 

「もう一回!もう一回見せなさい!」

「笑顔は強要されるものじゃないだろう。ましてや耳元で喚かれて笑顔になれると思っているのか」

「いいから!」

 

 笑顔になれない原因を今まさに耳元で女魔術師が作っているのだが。流石にそうまでは言えず、半分わざと顔をしかめてみせる。

 女武道家は強要する気はなさそうだが期待を込めた目でこちらを見てきている。実によくない流れだ。

 

「おっ、なんだなんだ。笑顔になったって?」

 

 女魔術師が騒いだせいで興味を引いたらしく、槍使いが話しかけてくる。実によくない。恩もあり尊敬もある彼に要求されたら断りきれない。

 ふと見ると周りの冒険者達が少しざわつきながらこちらを見ている。「そういえばアイツが笑ってるの見た事ない」だの「何の表情もないか兜被ってるもんな」だの「顔は悪くないのに彫刻みたいだものね」だの好き放題言ってくれる。

 ええい、どいつもこいつも。《粘糸(スパイダーウェブ)》で口を塞いでくれようか。

 助けを求めて周囲を見渡すが、どう見ても味方がいない。ギルドの受付嬢と監督官ならばと期待したが興味深そうにこちらを見てくるだけだ。魔女も楽しげにこちらを見ながら杯をちびちび舐めている。

 孤立無援になった魔法剣士がふとゴブリンスレイヤーの方を見ると、彼は騒ぎの様子を見て楽しげに少し口元を緩め―――――緩め?

 一瞬脳内で処理が追いつかなくなった。薄汚れた鎧を着て、安っぽい鉄兜を傍らに置いて。冒険者達の輪から離れた所に座っている青年は誰なのだろうか。いや、誰かと言われれば該当するのは一人しか思い当らないが。

 

「あぁーーーーッ!!オルクボルグが兜はずしてるー!?」

 

 それに気付いたのだろう。妖精弓手が先程の女魔術師より大きく、よく通る声で叫ぶ。

 その声に反応し、ギルドの注目が一斉にゴブリンスレイヤーへと集まる。それはそうだろう。この街に来たばかりの駆け出しが笑顔になったならないより、5年もいて全く鉄兜を取った事のない男の方が気になるに決まっている。

 かくいう魔法剣士自身、正直近寄ってよく見たいほどだ。折角向こうが注目を引いてくれたのだからやらないが。

 槍使いもこちらから離れて、何やらぶつくさ言いながら顔を見に行っている。女魔術師は向こうとこちらを見比べてどちらに注目すべきか迷っていたが、女武道家に「貴重だよ!」と言われ猫のように首根っこを掴まれて引き摺られて行った。

 その時女武道家がこちらを振り返り目配せをしてきたので、魔法剣士は軽く頭を下げておいた。どうやらこちらが本気で困っているのを感じて助けてくれたらしい。ありがたいがもっと早くやって欲しいと魔法剣士は心から思う。

 

 非力ではあるが、自分はゴブリンスレイヤーの、牛飼娘の、あの牧場の主のために働いた。自分一人がやったわけではないしむしろ自分の力などあってもなくてもいいようなものだが、力を尽くし守りたいと、守って欲しいという願いは叶った。

 その事実が魔法剣士の胸の中に染み入り、全身に何とも言えない満足感として広がっていく。

 そして仲間が、友達が、恩人が、知り合いが、知らない誰かが。楽しげに騒いでいる。自分もその輪の中にいる。それは本当に楽しくて、幸せで、嬉しい事だ。

 

 

 

 ゴブリンスレイヤー。西方辺境の街を拠点とし、街外れの牧場に住み、ゴブリン退治のみを行いゴブリン退治のみで在野最高位の銀等級になった変わり者。

 彼が冒険者となって5年。鉄兜を外した素顔を見た同業者など皆無であり、ギルドの職員であっても稀。兜の中が男か女かで賭けが成立するほどに貴重なものが見れるとあっては、ギルドの中の注目は全て彼に集まるのが必然で。

 

「……はははっ」

 

 だから、笑顔を見せた事がない駆け出しの冒険者がギルドの片隅で。

 大人びた雰囲気の普段とは違う、春の日差しのように穏やかで暖かな笑顔になって。

 硬い印象を与える声ではなく、優しく楽しげな声を出して。

 心から楽しそうに笑ったのを見たのは、神々も含め誰もいなかった。

 




これにて「ゴブリンスレイヤー 実況プレイ」は一応の完結となります。
少なくとも魔法剣士君の話は。前に言ったように書きたいネタは続けるかも知れませんが。

この後は少し間を空けて、活動報告の方で上げたキャラで別√を書いて行こうと思います。

拙い文章にも関わらず、ここまで読んでいただきありがとうございました。感想や過分な評価、見てくださる人がいるという事でモチベーションとなり最後まで書きあげる事が出来ました。
この場を借りてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。



Q.これで女魔術師ちゃんは好意を隠してるつもりなんですか?
A.誰が何と言おうと本人は隠してるつもりです。

Q.以前魔法剣士君は酔ってる場合こういうの効かないって言ってなかった?
A.効かないから女魔術師ちゃんは脱いで攻撃力を上げて、強引に通じさせました。


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女闘士√(打ち切り)
女闘士・1


新章なので実質初投稿です。


 はい、それでは前回で魔法剣士君の物語は一段落という事で。新キャラを作成してまた最初からプレイして行きましょう。

 えー、今回ですね。コメントの方で多くリクエストを貰った「目標を立ててそれを達成する事を目的としてプレイする」というスタイルでやっていこうと思います。

 なお自分はまだ原作未読です。少なくとも今回のキャラでクリアするまで読ませてもらえません。俺の買った本なのに。

 そっちの方が面白いからって言うのは凄く分かるんですけど、酷くない?そのくせ微妙に情報は寄越すんだよ。ゴブスレさんが萌えキャラだとか。女神官ちゃんの胸は作中どれだけ時間経過しても成長しないとか。

 アニメも見てません。つまりゴブリンスレイヤーの原作に関する情報は全くありません。前回プレイして手に入れた情報が全てです。

 そんな状態で今回挑むのは、「原作死亡キャラを可能な限り救済する」です。

 勿論原作で誰が死ぬのか、何時死ぬのかを知らないので友人に誰がどのタイミングで死ぬか、どうすれば助けれるかのナビゲートをしてもらいます。

 

 でも絶対何らかの罠仕掛けてくるんやろ。騙されんぞ。

 

 今回やるのはあくまで「本来死亡するタイミング」で助けるという事だけです。このゲーム存在するキャラ全て、特に冒険者は冒険に行くごとに骰子が振られて全てのキャラに死亡する可能性が存在するそうです。

 なので助けたキャラがすぐ次の冒険で死ぬ、みたいな事も発生しますがそこまでは流石にカバーできませんので、そうなっても「お労しや……」で済ませます。

 あと「可能な限り」なので無理だったら、ごめん!先に謝った!ヨシ!

 まあ失敗したらあれですよ。俺は悪くねえ!俺は悪くねえ!って言いますよ。ナビゲートに問題があるって言い張ります。もしくはこれも乾巧ってやつのせいです。後ろで薄汚いオルフェノクがなんか言ってますが無視します。

 じゃあニューゲームを選択して、また始めて行きましょう。

 さて難易度選択ですけど、まあ自分一回プレイしたわけですし。操作もだいぶ慣れてかなり自信あるんでここは思い切って……ノーマルで行きます。

 

 種族は只人(ヒューム)。自分は基本これで行きます。

 性別選択ですが、ここは当然だんせ……何? 女性でやれ? 女性に起こるであろうマイナスイベントは把握したから嫌だよ?

 どうせ負ければ男でも殺されるから変わらない? まあ一理あるけどさ。なら女性の方がまだ生き残る可能性はあるって、メンタルやられるやんけ。再起の可能性はある? でも絶対トラウマとか残るじゃん。

 今回ほぼソロで行動するから、長時間ひたすら男の尻眺めるより女の子の尻眺める方がいいに決まってる?確かにミギーの言う通りかもしれない。どうせ男女で能力値の違い出ないし。よし、女性にしよう。

 さて次ですが、見た目は一応デフォルトを選択します。特に取り柄のないちょっと可愛い女の子の見た目ですね。バストも平均的です。

 見た目と名前は他の項目が決定した後変更する事も出来るので、弄るかもしれません。

 続いて経歴設定ですが、ランダムで行きます。どんな人生だったのか教えてくれ!

 

 ファッ!?出自貴族!?君いいとこのお嬢様やったんか!?しかも王族ないし公爵ってどういうことやねん!

 この四方世界だとどうなってるかは知らんが、公爵って実質王族の爵位やんけ!君血筋良すぎるだろ!

 ……ま、まあ、この国、つまり基本的に舞台となる国の貴族とは限りませんしね。四方世界には幾つも国があって、ゴブリンスレイヤーの舞台となるのはそのうちの一つの国に過ぎないそうです。

 来歴は……牢獄!?ナンデ、牢獄ナンデ!?貴族、それも王族か公爵の生まれからの牢獄って高低差激しすぎて圧かかり過ぎで死ぬわ!なんで恵まれた出自からクソみたいな来歴引くんだよ!

 か、邂逅は取引相手か。うん、なんか納得いったよこれは。牢獄から出るのに取引したんだろ?

 えーっと、出自が貴族や商人の場合初期資金に追加が入るんですが、これもダイスで決まります。せっかくなら高目高目……8か。期待値より上、悪くないですね。

 これにより銀貨400枚が支度金にプラスされます。うーん、金欠に悩んでた前回のプレイから考えると夢のような額。

 

 さあ気を取り直して、基本ステータスの設定に入ります。今回は目標があるから、ステータス高くなる事を期待してダイス振るよ!さあ、君の力を見せてみろ!

 

 ……俺グラサイ振ったっけ?

 

 えー、出目ですが筋力が3。魂魄と技量と知力が1。第一能力値の結果脳筋……いや、ハッキリ言います。

 ゴリラです。

 種族補正で筋力と知力に1足されるために只人、それも女性でありながら鉱人(ドワーフ)蜥蜴人(リザードマン)の固定値と同値の筋力を持つメスゴリラです。

 彼女は王かそれに近しい血筋の身分なので、ロイヤルメスゴリラです。

 第二能力値ですが、全てにおいて3を出しました。つまり最高と最低の出目しか出ませんでした。俺の振った骰子に2はなかったのか?

 ボーナスはもうこれどうしようもないので、筋力に振ります。ほーら鉱人や蜥蜴人の平均よりパワーのある女性が出来上がった。

 うん、完全にゴリラです。ゴリラか不破諫かのどちらかです。兄貴ないし姉貴と呼ばれるタイプのパワーですよこれ。プログライズキーを力で開けますよ。

 これで大丈夫?何とかなる?マネーパワーでゴリ押し出来るから貴族引いたのは悪くない?そらそうだけど、完全筋力ゴリラ押しじゃなくてゴリ押しで何とかなるゲームじゃないだろコレ。

 アッハイ。プレイヤー側のスキルで何とかするんですね……要は俺次第か……立ち回り変わるから不安なんだよなあ。

 

 じゃあ次は状態ですね。これもダイス振ります。そろそろ暴れるの止めてくれよ。なんかもう疲れて来たよパトラッシュ。

 「9」「9」「4」か。かなりいい感じですけど、それ以上にダイスが落ち付いてくれた感じで嬉しい。もうこのロイヤルメスゴリラは呪文捨てる、というか使わせる意味もないので呪文に一番低い数字を割り当てます。

 決定。HPは20。移動力は27で、呪文は一回も使えません。ゴリラにはちょっと魔術とか難しいですからね。バナナ投げるぐらいしか出来ませんから。もしくは呪文でチーズ蒸しパンになろうとしますから。

 

 職業は……【戦士(ファイター)】2だけでいいですかね。技量低いし。戦う事しか出来ない悲しきゴリラ。

 えっ?【斥候(スカウト)】も取っておけ?いやでもこの技量だと腐らない?第二能力値が高いから平均ぐらいはやれるし、判定の時にあるとないとでは違ってくる?分かったよ。

 というわけで【戦士】2と【斥候】1となりました。

 

 続いて技能はとりあえず【頑健】ですかね。もう一つは……うん?【鉄壁】取れって?ああ、壁になって相手を進ませないわけね。OK。

 一般技能が出自と来歴で貰える【統率】と【犯罪知識】しかないけど大丈夫かな?前回一般技能はちょくちょく仕事してくれるって痛感したんだけど。少し手間がかかるだけで詰みはしない?本当に?もしも無いせいで詰んだらどうするよ。

 無関係の義勇さんに腹を切らせようとするな。みくにゃんのファンは元から違うだろ。お前ちゃんみお推しなの知ってるんだぞ。

 もうちょっと社交的になる?いやそれはお前の決意表明であってこっちには関係ないだろ。あと社交的になられる方の身にもなれよ。

 まあいいや。詰んだらあれな。マインドシーカーRTAで世界最速出してもらうからな。

 

 名前は今回どうするか……名前でゴリラは流石に可哀想だな……女の子だし……

 決めました。君の名前は女闘士!学名はロイヤルメスゴリラな。

 

 さて冒険者になった動機と経緯ですが、これも前回同様ランダムで行きます。この辺はランダムで決定して想像するのが一番楽しいです。

 ……故郷が何らかの理由で失われて、生き残ってしまったので生きるために冒険者になったと。うーん。牢獄との繋がりが見出せそうで見出せない。身分もあるしなあ。

 何らかの理由で捕まってる間に故郷が滅んだんでしょうか。まあそんな感じだと思いましょう。

 

 さてゲームスタート、と言いたいところですがちょっと見た目を弄りますね。

 

 

 

 よし出来た。やっぱりここまでステが極端ならそれに合わせたいですよね、見た目。と言うわけで色々弄りました。

 DLCのお陰でこんなイケメンな女性の顔も存在するわけです。そして見てくださいこの肉体美。UFCに出れそうでしょう。

 それでいてバストは普通の女性と同じような感じで豊満。しかも尖った感じのロケット型ですよ。ファンタジー故の素晴らしさですよこれが。

 あと年齢は18歳にしました。こんな15歳がいるわけないだろ!まあ20代半ばぐらいに見えるから18でもおかしいけどさ。

 

 それでは改めて、ゲームスタート!

 

 

 

 はい、ムービーカットしました。一回見せたからいいよね?

 当然のように徒手空拳です。懐かしいなあ。でも金はある。金は力。

 色男、金と力はなかりけりと言うがこのイケメン女は金も力もあるぞ。他はない。

 では早速工房に……えっ、ギルド入るの?まだ装備買ってないけど?この状態だと円匙(スコップ)借りてドブさらいぐらいしか出来ないよ?

 依頼受けてから買いに行けばいい?それで大丈夫なのか?徒手空拳で冒険者登録するって舐めてると思われない?所詮ゴリラかって思われない?

 装備買わずに来る奴も少ないから問題ない?わかった。

 

 はい、登録済ませました。今回登録してくれたのは監督官さんでした。これランダムなんですね。装備ない事には突っ込まれませんでした。確かに登録だけ先にして、装備は後から買いますってパターンは珍しくないとか。

 えっ、ゴブリンスレイヤーさんもそうだったの?なんか意外。でもそうか。顔隠して登録出来ないから装備無しで登録する方が考えて見れば普通か。

 まあ確かに冒険者になってからの方が高いテンションで買い物行けますね。完全装備で登録しに行く意味もないですし。

 あとこれ完全にどうでもいい事なんですけど。前回プレイで時間かけて仲良くなった人が当たり前ではあるんですけど初対面の対応してくるって寂しくないですか?これから仲良くなる楽しみがあるっちゃあるんですけど。

 これが極限まで行くとゲームクリアしたくなくなるんですよね。この仲間達と別れたくないというか、あまりにも別れが辛すぎて。ペルソナ4クリアする時とか本当に辛くて辛くて。

 ああ、終わる。終わっちまう。終わらねェでくれろ。俺ぁ一人にしねぇでくれろ。ってなるんですよ。みんなこの世界に残るのに俺一人だけ現実に戻らないといけないとか、明日仕事だとか学校だとか考えないといけないのが辛い。

 まあそんな感傷はどうでもいいので、監督官さんにすぐには依頼を受けない事を伝えて早速工房に行きましょう。ん?周囲の確認?はいはい。

 

 あっ、入り口に女神官ちゃんがいる。話しかけろ?はいよ。ちょりーっす元気ー?そういえば彼女ともまた一から関係築き直しかあ。また友達になりてえなあ。

 ん?ああはいはい、これから装備買いに行く事と良ければ新人同士協力しようって事を伝えるのね。わー相変わらず素直でいい子。今回も仲良くしようね。

 それじゃ彼女と別れて今度こそ工房に行きます。来ました。

 さあ装備選びましょう。金あるからなー!何買おうかワクワクするなー!湧き立つような気持ちになりますね兄上!

 

 うん?まず防具に金を使え?あー、まあ危険度高い行動しそうだしそれもそうか。わかった。と言うか今回普通に役に立つアドバイス多いんだけど何?悪い物でも食べた?

 おっと、それより防具だな。まずは兜だ。おっ、バシネットあるじゃん。鼻先が尖ったバイザー付きの兜ですよ。これバイザー上げ下げすると勇士って感じがしてカッコいいんです。採用。

 この兜空気穴がたくさん空いてるんですけど、左側は空いてないものが多いんですよね。理由として騎士の馬上槍試合に使われる事が多くて、その時左半身に攻撃するのがセオリーなんで左側の強度は少しでも上げておこうって事で空気穴開けないらしいです。

 でもこれ普通に全体に空いてるんで歩兵用か、この世界では馬上槍試合は流行ってないんでしょうね。

 鎧は隠密性が悪いのだけは避けろ?胴鎧系と革鎧系を組み合わせるのがおススメ?ふうむ。

 よし。胸甲(ブレストアーマー)鋲付きの革鎧(スタデッドレザーアーマー)にしましょう。このゲーム重い装備は回避や移動力にマイナス修正がかかるんですが、筋力と筋力持久、過重行動の合計によってそのペナルティを半分に出来るんです。

 この二つはゴリラの筋力により半分に出来る装備です。かなりの防御力を誇るのにそこそこの速さで移動してくる事になります。力こそパワー!

 鎧下(ギャベゾン)も折角だから買っておきましょう。

 盾は……ん?盾じゃなくて大籠手(ガントレット)を買え?へー、大籠手ならマイナス修正受ける代わりに両手武器や二刀流出来るんだ。採用。

 

 武器はなんか注意点ある?長大武器は洞窟とかでペナルティあるから買うなら二種類買え?分かった。後は?ああ、種類は統一しとけば取る技能が少なくて済むのか。分かった。

 よし、戦槌で統一しよう。パパ戦嘴(ウォーピック)大金棒(モール)買っちゃうぞー。大金棒は長大だから開けた場所用だ。え?大金棒はいいから槌鉾(ヘビーメイス)を買え?でも大金棒の方が……後で手に入る?本当に?分かった。

 おっと忘れるところだった。投擲武器投擲武器。奮発してこのパチンコ、じゃなかった投石杖(スタッフスリング)買っちゃうか!石も拾うんじゃなくて石弾(ストーンブリット)買っちゃう!

 これだけ買って合計340枚。追加資金が60枚残った上に、初期資金の銀貨100枚がそのまま残ってる!金があるっていいなあ!

 後は薬を買って……うん?誰かに声をかけられましたね。まだ知り合いはいないはずなんですけど。

 

 鉢巻き君!鉢巻き君じゃないか!生きとったんかワレ!

 いや違うか。君まだゴブリン退治行く前だな。行くよ、一緒に行くよ。今度こそ何とかしてやるからな。

 でもごめん装備の調整時間あるから待って。このゲーム、サイズの調整とか改造してもらう場合普通に時間かかるんだ。ごめんな。お詫びに治癒の水薬(ヒールポーション)解毒剤(アンチドーテ)2本ずつ買って行くから。これがみんなの命を救うから。あっすいません化膿止めの軟膏もください。

 お待たせ!戦闘技能しかないけど、一党(パーティー)入っていいかな?

 ゴリラだからと差別することなく受け入れられました。よかった。見た目はいいもんね。中身ゴリラだけど。

 あ、女神官ちゃんと入り口で会話したから誘ってもらえたんだ。あー、だからこれから工房行くよーって言ったのか。って言うか同じ新人だからってだけでそんなに気にかけてくれたの?超いい子じゃん。

 それ聞いて普通に声かける鉢巻き君もだけど、基本いい人だよねこの一党のメンバー。生かしてやりてえなあ。

 今回はほぼ確定で大丈夫?言ったな?もしダメだったらほしをみるひとRTAやらせるからな?

 そして装備の調整終わりました。おお、カッコいい!

 バシネット被って胸甲付けて、鋲の付いた革鎧と籠手装備。傭兵っぽい。背中に戦嘴背負って、腰に槌鉾。戦争で略奪してそう。

 そして胸甲越しにも分かる豊満なバスト。見てくださいこの谷間。これを専門用語でサ胸用画像と言います。お尻の方は次回のサムネにしますね。

 それじゃ気合い入れて、ゴブリン退治イクゾー!

 

 

 

 

 行く途中はバッサリカットしました。ダラダラ話しながら歩くだけだからね。

 隊列は女闘士ちゃんが先頭で行きます。剣士君が行きたそうでしたけど、この重装備を見たら理解してくれました。そうだね、堅いやつが先頭は基本だからね。次君ね。

 出来れば武道家を最後尾に配置したいんですけど、それは理解してもらえませんでした。まあ横穴開けるって知識がないと、バックアタック警戒するのは無駄って思うのは普通だから仕方ないね。

 なので先頭に女闘士ちゃんが入る以外は前回と同じフォーメーションです。コレ本当に大丈夫?魔術師死なない?前回のパーティーメンバーが死ぬとか嫌なんだけど。大丈夫?

 ここでダラダラ話してたからそろそろ?何の話?

 

 あっ。あーあーあー、はいはいはい。そういうこと。

 

 女闘士ちゃんの装備調整時間と、ここで隊列について話してる時間。それで前回来た時よりずっと到着が遅くなったわけですね。で、鉢巻き君一党の到着が遅くなるってことはつまり。

 見ての通り、ゴブスレさんと合流する時間が早くなるってことですね。

 まさかの洞窟前合流ですよ。装備調整時間がかかってたからほぼ確定って言ったわけか。成程なー。

 あ、みんながちょっと引いてる。まあ俺も初見でこれから初めての冒険に挑む、って寸前でこのさまようよろいが現れたら引く。怖いもん。

 まあ見ろよ。この認識票を。ゴブリンの命を刈り取る形をしてるだろ?

 ゴブスレさんはどうでもいいからとりあえずゴブリン退治に行くって感じですが、こっちの一党は相談中です。まあ見た目の信用が全くないのは分かります。人は見た目が9割です。

 女闘士ちゃんは最初から従う派ですが、意外にも鉢巻き君も銀等級の人なんだから従おう的な発言しました。君意外と話分かるんだな。それに女神官ちゃんと武道家が賛同して、女魔術師だけがちょっと渋ってたけどまあ納得してくれました。

 そしてゴブスレさんによる技能と呪文、奇跡のリソース確認が行われいよいよゴブリン退治開始です。

 そして隊列ですが、全部一人でやれそうなゴブスレさんが先頭。次に女闘士ちゃん。そして鉢巻き君。その後から女神官ちゃんと魔術師と続いて、最後尾に武道家です。

 ゴブスレさんから横穴の説明してもらったのでみんな納得してます。やっぱり経験って大事。

 

 因縁のトーテムが見えてきましたが、ゴブスレさんが既に音に気付いて停止してます。ゴブリン側からするとたまったもんじゃねえな。

 ゴブリンになってゴブスレさんと戦うゲーム。ジャンルはホラー。絶対やりたくねえ。

 だって今、横穴貫通予定地に油撒いてんだもん。

 問.奇襲するつもりで飛び出したら足元に油が撒かれていて足を滑らせたゴブリンの気持ちを答えよ。なお敵は松明を持っているものとする。(5点)

 

 よく燃えるなあ!アハ!

 さあて連ちゃんパパより邪悪な……いや向こうの方が邪悪だわ。

 まあとにかく邪悪なゴブリンどもをこの悲しい世界から救いましょう。剣抜いた鉢巻き君ですが、振り回すなって忠告受けたんで大丈夫でしょう。あと女闘士ちゃんとゴブスレさんが並んでるんで、君物理的に入って来るスペースがないから安心しろ。

 女闘士ちゃんは戦嘴で戦います。さあいよいよ初陣ですよ。ゴリラの鉄槌を受けろ!

 おお、ダメージでかい。流石。使えるモーションが少ないのは攻撃が刺属性しかないからか。でもゴブリン相手だからへーきへーきぇうぉぉっ!

 あっぶねえ!気ぃ抜いてて普通に攻撃受けた!胸甲に当たらなかったらもう薬飲まないといけないところだったわ!それ毒塗ってあるだろ!

 悪い子にはお仕置きしないとねえ!

 

 フゥ、これで終わっ……てない!お代わり来た!あっそうか前からも来るんだった!

 はいゴブスレさんの指示に従って!交代だよ剣士君!そう、振らずに刺して!

 うおっまぶしっ。

 

 はい、皆殺しにしました。いやあ、装備いいからって調子に乗ってましたね。リアルラックに助けられました。

 横穴から来たのを手早く全滅させて、本来挟み撃ちするつもりだった田舎者率いる前から来る連中を万全の状態で迎え撃ってブチ殺しました。女神官ちゃんの《聖光(ホーリーライト)》による眼潰しからの速攻、そして魔術師が田舎者に《火矢(ファイアボルト)》ブチ込んで死にはしなかったものの即ゴブスレさんに殺られました。

 しかしゴブスレさん、指示を飛ばしつつ本当に手際よく殺して行きますね。馴れれば馴れるほどこの人凄いって分かるわ。ん?

 あっ、忘れてた。

 

 女闘士ちゃん一人だけ兜で表情が見えないので分かりませんが、たぶん一党全員の眼が死んでます。

 匂い消しの存在をすっかり忘れてました。買ったばっかりの装備がゴブリンの肝絞りに塗れてどんな気持ち?

 大量の所持金で万全の装備を整えたはずの初依頼で、ゴブリンの血と汁塗れになるロイヤルメスゴリラ。出自と来歴からしてそうだけど、すげえ人生だなあ。ジェットコースターすぎる。君の明日は何処向いてるの?

 




Q.何を悩んでたんですか?
A.出自貴族かつ王族か公爵の出とか、このパラとか出目が出来過ぎな気がして。
 でも考えてみたらそんなの読む人にとってはどうでもいいなって気付いたのでそのまま採用しました。
 あと来歴が牢獄なのでバックストーリー思いつかなくて……

Q.友人はなんでちゃんとしたアドバイスを?
A.騙すためにはまず信用が必要なんですよ?警戒を解くために餌が必要なんです。

Q.友人はつまるところどういう感情なの?
A.困難に立ち向かって死ぬギリギリまで追い詰められて頑張る姿が見たいんであって、死ぬところが見たいわけではないんです。
 でもそれを見るためには殺す気で行かないといけないなって思ってるだけです。


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女闘士・裏 1

ご都合主義に関しては「首都を一時的に奪われるぐらい追い詰められたけど、新しく即位した敵国の君主が自分の大ファンだったので講和してくれた」
「占領した自国の領土を無償で全て返してくれた」
「さらに同盟まで結んでくれた」
という創作でも絶対やらないレベルの出来事が現実にあるんでどれだけやってもいいと思います。

どういう事かと言うと、都合良すぎるとかおかしいと思う点が出てきても見て見ぬフリをしてください。作者の頭ではそれが限界なんです。


 彼女は、ある小国の王女として生まれた。

 生まれてから暫くの間、少なくとも彼女が成人である15歳を迎えるまでは、特筆すべき事はない平穏な人生だった。国は概ね―――――何処の国家もそうであるように、幾つかの問題を抱えながらも、その問題が深刻にならぬよう上手く回っていた。

 父は名君ではなかったが王が務まらないというわけでもなかった。母もまた父を補佐するほどの才覚はなかったようだが、負担になりもせず己の役目をつつがなく果たしていた。だから彼女はこの生活が続いて行き、いずれ自分はしかるべき所に嫁ぐのだと疑いもしなかった。

 だがある日、その人生は終わりを告げた。なんて事はない。王になりたい、自分こそが王に相応しいと考えた叔父とその叔父の元で好きなように振る舞いたい貴族。その二人が手を組んで、謀反を起こし成功しただけだ。

 それだけならまだよかった。王である父や後継者となる兄や弟は殺され、母や自分は宰相となった貴族に弄ばれた。

母はそれを苦にして自ら命を断ち、自分は―――――もうどういう思惑でそうなったのかは分からないが―――――牢に繋がれた。酷い物ではあるが、国を奪われるとはそういうことだ、で済む話だった。

 

 問題は、国を奪うにあたり叔父らが混沌の勢力と手を組んでいたということだった。

 

 自分達なら上手くやれると、混沌の勢力を利用し操り国を強大に出来ると信じ込んでいたのだろう。気宇壮大な―――――気概だけは見事な叔父であったから、四方世界に覇を唱えるぐらいは妄想していたのかもしれない。

 その目論見にどの程度の勝算が存在したのか、彼女には分からない。ただ一つ分かるのは、叔父と宰相の治世はそう長く持たなかったという事だけだ。

 混沌と手を組んで先王を弑した簒奪者。これを倒すのは紛れもない正義であり、打ち倒すことで己が新たな王になる。そう考える者がいると叔父も宰相も思いつかなかったらしい。

 大義名分を掲げ隣国からの援助も受けた反乱軍と、祈らぬ者(ノンプレイヤー)と化した簒奪者。その戦いは実に物語的な結末を迎えた。すなわち、正義の剣の前に悪の君主とその臣は倒れ、新たな王が生まれた。

 問題は反乱軍が一枚岩どころか一つの軍ですらなく、複数の勢力が存在しそれぞれの背後に違う国がいた事だ。

 平和だった小国は群雄割拠となり、近隣諸国の代理戦争の場と化した。新王も長らく都を保持する事は出来ず、数か月で他の勢力に奪われた。その勢力もまた短期間で都を奪われ、国の支配者は次々変わった。そんな状態がずっと続いた。

 その間、彼女は牢獄にあった。新王は彼女を牢から出さず、王女は牢で病に没したと公式に発表した。そして彼女を名も無きただの罪人として扱い、その身体を慰み物とした。そして飽きると牢へ送り返した。

 新王の後も支配者が変わる度、彼女はそんな扱いを受けた。公には死んだ事になった彼女はもはや人ではなく、権力者の玩具だった。

 

 そんな生活を送るうち、彼女は何時からか牢内で己の身体を鍛え出した。

 彼女は思い知ったのだ。信じれるものは、頼れるものは己だけだと。誰かが何とかしてくれるなどという期待を抱くのでなく、自分の力で何とかしなければならないのだと。

 お転婆だった少女時代、剣奴上がりの騎士団長から習った鍛練法。それをひたすら繰り返し、看守達に身体を許すことで代価として充分な食事を得、筋肉を付けて行った。

 何時か必ずここから逃げ出せる時が来る。その時鍛えた身体は役に立つ。そう思って鍛える事が彼女の精神を守る事にも繋がっていた。

 日に日に逞しい体つきになって行ったが、看守達は構わず彼女を慰み物としていた。戦乱の最中に牢番などさせられる者達だ、兵士として役に立たぬと看做されたのだろう。それ故に鍛えられた肉体となって行く彼女の身体を穢すことで、何か鬱屈していたものを晴らしていたのだろう。

 支配者が変われば看守の顔触れも変わる。だがやる事は変わらなかった。それは、彼女も看守達も。

 そうして月日と支配者、彼女を犯す者達の顔触れが移ろっていたある日の事。彼女は行動を起こした。

 

 神々の骰子の出目がよほど良かったのだろう。あるいは極端に悪かったのだろう。その日、都で大火事が起きた。

 炎は監獄の近くまで広がり、看守達は取るものも取らず逃げ出そうとしていた。こういう時は牢を開け放ち罪人も逃がすのが定法であるが、彼らはそれを守らず逃げ出そうとした。罪人の女を犯すような連中だ、そんな決まりを守るはずもない。

 そして牢の外で慰み物にされていた彼女は、待ちに待った機会(シーン)を逃さなかった。

 慌てふためき、着の身着のままで逃げ出そうとする看守達。彼女はそんな看守達とは対照的に落ち着いて行動した。

 自室に連れ込み、自分を組み敷いていた看守長。騒ぎを聞いて自分の上から跳ね起き逃げようとする彼の髪を掴み、後ろに引っ張ると同時に足を払って倒す。そして―――――

 思い切り首を踏みつけた。

 鈍い音がしておかしな方向に首が曲がり、大きく痙攣して動かなくなった看守長。彼の死体に構う事なく、彼が着ていた衣服と装備、そして財布を奪うと外に出た。

 外に出ると右往左往する看守達を、看守長から奪った長剣で片っ端から斬ってやった。血脂で斬れなくなっても鉄の塊であるそれで殴れば痛痒(ダメージ)は生まれるし、彼女の筋力ならば致死の一撃となった。

 そんなもので気が晴れない事は承知の上だった。だが、そうしなければならなかった。そうせねば自分の魂が救われなかった。

 無論皆殺しになど出来る訳もなく、近くにいた数人を斬って捨てると彼女はその場から逃げだした。炎が強くなる中、彼女を追って来る者はいなかった。

 自由になれた喜びなのか、家族を失った悲しみが今さらやって来たのか、耐え忍んできた苦しみが噴き出したのか。彼女は涙を溢れさせながら、燃える都から逃げ出した。

 

 都から逃げ出した彼女は、都近くの王墓へと向かった。

 そこは無残に荒らされ、副葬品の類は全て持ち去られていたけれど。万が一の時の為、王族としてはささやかな、一個人としては結構な額の金貨が隠されていた箇所は無事だった。

 そうしてそれを手にすると、彼女は一目散に走り出した。遠く、遠くへ。

 育った都も、生まれた国も、過ごした過去も。振り返りはしなかった。

 

 ある国の都で起きた火事は混沌の手合いによるものだった。

 それに乗じて当時都を占領していたのとはまた別の勢力が強襲をかけ、都を占拠した。

 混沌に与する勢力は許せぬと、幾つかの勢力が手を結んでまた都を落とした。

 しかし落とした直後内部分裂を起こし、結局また混沌と手を組む輩まで出てきた。

 遂に見兼ねた大国が軍を発し、混沌の勢力もろとも割拠していた勢力全てを駆逐した。

 大国はそのままそこを自領とし、かの国は滅ぶ事によって混乱が収まった……

 

 遠く離れた国の、そのさらに西方の辺境の街で。そんな話を聞いても、彼女の心は揺れなかった。もうあの国には未練も郷愁もなかった。

 小国は、彼女の心の中からすら滅んだのだ。

 もう逃げる必要もない。むしろ彼女はそんな安堵を感じた。追ってくる者もいなければ自分は追う価値も無くなったのだから。

 次いで彼女は気付いた。自分には活計がない。当たり前だ、15までは王女として育てられそこからは牢にいた。自分で稼ぐ術など身に付けてはいない。

 持ち出した金貨も無限にあるわけではない。これを元手に何かせねばならない。しかし自分にあるものと言えば―――――

 あるではないか。牢にいる間鍛え続けたこの肉体が。この身体を生かせる職業は何か。傭兵か?いや、もうあの看守共と似たり寄ったりの連中に囲まれて過ごすのはうんざりだ。ならどうする。いっそ剣奴にでもなるか。

 どうしたものか、と思い悩む彼女。その時突然耳に―――――否。耳ではない。脳に直接声が響いた。

 

『君、ゴr……見事な身体してるね!冒険者になってみない?』

 

 それが初めて、彼女が――――――女闘士が受けた託宣(ハンドアウト)だった。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 綺麗な女性だ。女神官が女闘士に抱いた、率直な第一印象だった。

 次いで背の高さと鍛えられた肢体に目が行く。只人の女性としては高い―――――平均的な只人(ヒューム)の男性とほとんど同じぐらいの長身に、自分の細腕などとは比較にならないぐらい逞しい腕。戦士と言う言葉が非常にしっくり来る、筋骨隆々とした体躯。

 それでいて出るところは出ている。思わず自分の貧相な胸と見比べてしまうほどには。

 

「君も新人かい?」

 

 声音は女性としてはやや低めの声で、それもまた彼女に良く似合っていた。

 

「あっ、はいっ。これから登録するところで……」

「そうかい。私も今登録してきたばかりでね」

 

 そう言って首から下げている真っ白な認識票を見せてくる。てっきり熟練だと思っていた彼女が自分と同じ、それどころか今なったばかりだという事に女神官は驚きを隠せない。

 

「私はこれから装備を買いに行くところなのだけれど、君はそれが装備なのかな?」

「えっ、はい。私は地母神様にお仕えしている身ですので……」

「成程。いやすまない、どうしても冒険者と聞くと鎧姿を想像してしまってね」

「ああ、わかります」

 

 二人してクスクス笑い合う。確かに冒険者と聞いて真っ先に浮かぶのは、眩いばかりに輝く鎧と燃えるような光を放つ剣を持って竜や魔神に立ち向かう勇者のような姿だ。

 錫杖に神官服という女神官の姿は、パッと冒険者の姿とは結びつくまい。

 

「同じ日に冒険者になる、というのも何かの縁だ。新人同士、困った事があれば助け合おうじゃないか」

「はい、そうですね。よろしくお願いします」

 

 正直なところ、この時の女神官には自分が彼女の助けになれるなどとは全く思っていなかったのだけれど。

 それでも同期の知り合いが出来るというのは何だか心強くて、笑顔で握手に応じたのだった。

 

 

 

――――――――

 

 

 

「この兜をくれないかい……ああいや、失礼。一式装備を揃えるからちょっと待っていてくれないか」

「おうよ」

 

 バシネットを抱えて声をかけてきた女性に対し、工房の親方は軽く頷いた。見目の良い女だが、身体の方はもっと良い。装備をこれから揃える事といい首の認識票といいまるっきり経験のない初心者だが、鍛えられた肉体は立派な戦士のそれだ。これならどんな武器でも筋力が足りていない、などと言う事は無いだろう。

 しかし兜から選び出すとは、何とも変わった新人だ。普通は武器から―――――自分に扱えるかどうかすら考えず―――――買って行く。そして機動力重視と嘯いて、歯抜けの鎧を着て冒険に臨むのだ。

 だがそれを馬鹿だと思っても、嘲笑しようとは親方は思わない。いや、誰にも嘲笑う権利などあるはずがない。

 自分の意志で冒険に踏み出した者の第一歩を、誰が笑えると言うのだ。

 

胸甲(ブレストアーマー)と……うん、この革鎧……革鎧で合ってるかい?」

「ああ。鋲が付いちゃいるが革鎧だ」

「ではこの二つと、鎧下(ギャベゾン)を頼むよ」

 

 見栄えが良く比較的安価だからと胸甲を買う。それ自体はよくいる新人だ。だが鋲付きの革鎧(スタデッドレザーアーマー)も合わせて使う気なのは珍しい。

 それはそういう工夫をする者がいないのではなく、筋力が足りている新人が滅多にいないということだ。他の新人はやるとするなら、鋲付きではなくただの革鎧(レザーアーマー)かハードレザーでやる。

目の前の彼女なら筋力に問題はないだろうが、鉱人(ドワーフ)蜥蜴人(リザードマン)ならまだしも只人の新人がここまで見事な体躯を持っているのは本当に珍しい。

 そしてやらない理由はもう一つある。これはやれない理由と言うべきだろうか。

 

「お前さん、金はあるのかい」

「これで足りないかい?」

 

 差し出された袋の口を開く。その袋自体相当に上等な布だが、中には結構な額の金貨が入っている。およそ新人の持っている額ではない。

 所作が洗練されている事も考えると、恐らくは家から抜け出してきた貴族の令嬢と言う所か。

 

「充分だ。ひとまず防具の代金だけ抜くか?」

「いや、すぐに武器も選ぶから待っていてくれたまえ。それとこの籠手も買うよ」

 

 飾り気のない武骨で頑丈な籠手を選んだのを見て、おおよそ察しが付いた。買うのは恐らく両手で扱う武器だ。

 彼女は自分の筋力を理解していて、それを最も暴力的に活かすつもりなのだろう。その考えは悪くない。力押しは野蛮で単純だが、単純ゆえに効果的な戦術だ。究極的な事を言えば、押し切るだけの力があれば技術や知恵に走る必要性などないのだから。

 

「これと……あとこれを」

 

 彼女が選んだのは予想に相違なく、両手で扱う戦嘴(ウォーピック)だった。これを彼女が振り回す姿はさぞ見物だろう。そしてもう一つ選んだものは槌鉾(ヘビーメイス)。恐らく片手でも振り回せる予備武器が欲しかったのだろう。

 また戦嘴は刺すだけ、槌鉾は殴るだけの武器だ。この新人がそこまで考えているかどうかは分からないが、敵に合わせて変えれるよう複数の武器を持つのは悪くない。

 

「これで全部か?」

「ああ……いや、すまないもう一つ。これをくれたまえ」

 

 そう言って投石杖(スタッフスリング)を手に取った彼女を見て、親方は今度こそ驚いた。全く経験の無い状態で、前衛でありながら遠距離攻撃の手段を求める新人は殆ど見かけた事がないのだ。

 弾も売ってるかい、と聞かれた親方は無言で石弾(ストーンブリット)の入った袋を差し出す。自分で拾えば安上がりだが、売っているかどうかと聞かれた以上あるなら出してやるのが店の務めだ。

 

「これで幾らだい?」

「全部で……まあこんなもんだな。体格に合わせて調整するのはサービスでやってやる」

 

 頭の中で算盤を弾き、銀貨一枚の過不足も無い額を算出しその分の金貨を袋から取り出す。新人だからと安売りする訳も無いし、物を知らぬ素人だからとふっかけるのも論外だ。

 この新人は体格に恵まれている。準備をするための資金にも恵まれている。だから無事に帰って来るとは言い切れないが、他の新人よりはずっとマシなのは確かだ。

 それを一党(パーティー)に加えようとしている連中もまた恵まれていると言えるだろうな、と親方は彼女に声をかけてきた他の新人の一党を見て思う。良くも悪くも新人らしい新人の連中だ。

 忠告も幸運を祈りもしない。ただ自分の責任として、いい加減な仕事をしない。武器が鈍らなせいで敵を倒せないだとか、止め具が緩いせいで動くと防具がバラバラになるなどといった不幸だけは決して起こさない。

 その点だけは保障してやる、と胸中で呟きながら、親方は彼女―――――女闘士の防具の調整をするのだった。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 その女性を見た時、剣士はあらゆる意味で圧倒された。

 村では見た事が無いぐらいに凛々しく美しい容姿―――――幼馴染である女武道家には悪いが―――――な上に、背も自分より高い。おまけに自分より逞しい体格で、見るからに「戦士」という感じの女性。

 一党(パーティー)に誘った女神官が「同じ新人になったばかりの女性がいるから、彼女にも声をかけてあげたい」と言い出したのを一党全員が承諾し―――――女性ばかりになる事をからかわれたりはしたのだけれど―――――工房に来たのだが、女性は想像とは色々な意味でだいぶ違った。

 確かに年上で戦士の女性と女神官は言っていたが、こんな歴戦の勇士のような風格を持っているとは想像するはずがない。そもそも本当に自分と同じ新人なのだろうか。

 

「え、えと、君は新人、だよね?」

「ああ。そこの彼女と同じで登録したばかりの新人さ」

 

 そう言って自分達と同じ白磁の認識票を掲げる。間違いないようだ。

 女武道家と女魔術師も気圧されるというか少し気後れのようなものを見せている。無理もない。自分だってそうだ。

 しかし、だからこそ。一党の頭目(リーダー)として自分が話を進めねば。

 

「冒険の準備中かい?」

「その通り。装備を揃えて、調整してもらう所さ。それで、何か私に御用かな?」

「ああ、俺達ゴブリン退治に行くところなんだけど……他にも声かけてみようって話になって」

「ふむ。察するに君が先程話した私の事を気にかけてくれたのかな?」

 

 そう言って彼女は女神官の方を見る。その視線を受けて余計なお節介でしたでしょうか、とわたわたする女神官に彼女は微笑んで首を横に振った。

 

「いや、ありがたいよ。少し話しただけの私を気にかけてくれるとは、君は心根の優しい人だね」

「い、いえ、そんなことありませんよ。同じ新人だから助け合わなくちゃって思っただけで……」

「そう考えること自体が善良さの表れなのだがね」

 

 フフッと楽しそうに笑うと、彼女は剣士に視線を戻す。正面から見据えられて少し心臓が跳ねたが、脇から女武道家に肘で―――――そこそこ威力のある肘で小突かれ正気に戻る。

 

「見ての通り経験のない新人だが、私で良ければご一緒させてもらえるかな?」

「あ、ああ!こっちも初めてのゴブリン退治なんだ!よろしく!」

「ああ、よろしく。ただ防具の調整が終わるまで待ってもらえるかな?」

 

 無論それを拒否する理由は無い。剣士一党は頷き、彼女の装備調整が終わるまで待つ。

 その間に軽い雑談を交わすことで気後れに近い感覚は無くなったし、資金不足から購入を諦めた治癒の水薬や解毒剤も彼女が購入してくれて助かりはしたのだけれど。

 

「貴方、随分お金持ちなのね……」

「ん?ああ、まあ多少の蓄えは持っているよ。とはいえ今持っているのが全財産であるし、稼がねば減る一方だ」

 

 なら稼げるようになるため、惜しまず使うべきだろうと彼女は言う。その通りではあるだろう。ケチって安物を買うより、高くとも良い装備を。買えるなら剣士だってそうしたかったし、誰もがそうだろう。

 ただ装備一式を身に付けた彼女を見た時は少しやり過ぎだとは思ったけれど。冒険者、と言うより傭兵か装備のいい盗賊のようだ。

 折角の綺麗な顔も隠れてしまい勿体ないと剣士は思ったのだが、彼女はこれでいいと言う。これが命を守ってくれる事もあるのだと。

 確かに兜があれば安心な場面はあるだろうと思う。だが折角冒険者になったのだ。物語の英雄のように格好良く振る舞いたい。そして兜にまで資金を回す余裕も無い。だから剣士は兜を使わない。

 だが彼女は使う。それだけの話だ。殊更他人が口を出す事じゃないなと剣士は納得した。

 しかし、と剣士は失礼と思いながらも彼女の胸に目をやる。胸甲越しだと言うのに立派な膨らみが付いているのが分かる。これも鍛えた成果なのだろうか。

 いや、同じように鍛えている幼馴染と比べると。そこまで考えた所で再び肘が―――――先程よりだいぶ強めに―――――叩き込まれる。女武道家に「失礼よ」と言われ頭の中を読まれたのかと混乱するが、単純に女性の胸に視線をやった事に対する指摘だと気付く。なるほど、確かに失礼と言うより侮蔑させる行為だった。

 女魔術師と女神官の視線も若干厳しい気がする。いやこれはハッキリ厳しい。

 やらかした。これは良くない。どうすればいい。どうする。

 

 即座に地面に頭を擦りつけて謝ったのは英断だった。あの時自分に出来る最善の判断だった。

 彼は後々、酒の席でしばしばそう語る事になる。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 面白くはない。だが学ぶべきところは山ほどある。それが女魔術師の心境だった。

 

 彼女―――――女闘士の装備が整うのを待って、ゴブリンの巣穴まで来て。入る前に隊列について話し合った時、そこから面白くない事が起き出した。

 女闘士が先頭に立つ。これは一党の誰も異論はなかった。彼女の筋力が見かけ倒しで無い事は重装備にも関わらず、ここまで歩いてきて一切疲労の色が見えない事からも明らかだった。筋力のある重装備の前衛、つまり壁役(タンク)が先頭というのは誰がどう考えても正しい。

 その後に剣士が続く。これも納得がいった。だが問題は次だった。

 誰もが武道家が続くものだと思った中、女闘士だけが女魔術師を候補に挙げたのだ。

 彼女曰く、後ろから襲われた時の為に女武道家を最後尾におくべきだとの事だったが女魔術師は反論した。明らかに一本道の洞窟の何処で後ろから襲われるのかと。

 女魔術師の意見に一党(パーティー)の皆が同意し、女闘士もそれで納得―――――兜で表情は分からなかったが、少なくともそれ以上食い下がりはしてこなかった。

 意見が無いのなら、と隊列を組んで洞窟に入ろうとした時、それはやって来た。

 

「先に入っているものだと思ったが、遅かったな」

 

 薄汚れた鎧と安っぽい兜に身を包んだ男。洞窟の中で出会ったならば動甲冑かと思うような格好のその男は、ゴブリンスレイヤーと名乗った。

 小鬼を殺す者。思わず笑ってしまうような名前だが、首から下げられていた銀の認識票の前には笑う事は出来なかった。少なくとも在野最高の銀等級を笑える程、女魔術師は傲慢でも不遜でもない。

 ギルドの受付嬢から頼まれて新人の様子を見に来たのと、ゴブリンを殺しに来たと言う彼、ゴブリンスレイヤー。彼に協力してもらいゴブリン退治をするか、それとも独力でやるか。それを一党は話し合う事となった。

 女闘士は銀等級の助力を得られるなら心強いと言い、剣士もまた賛同した。女神官や女武道家も異論はないようで、女魔術師も反対と言う程の事はしなかった。ただ、折角の初陣であるのに最初から他者に頼るのは良くないと―――――

 いや、違う。本音を言えばまさに「面白くない」だった。ゴブリン程度自分達の力で華麗に蹴散らし、華々しく初陣を飾りたかった。自分の自尊心を満たしたかった。

 だが彼女は自尊心を最優先するほど愚かではない。確実と言えばこの上なく確実になる道を選ぶのに否はなかった。

 そして彼女達は、ゴブリンスレイヤーに助力を願い出た。彼はどっち道ゴブリンを殺す――――― つまり、自分達がしくじるか討ち漏らす可能性を考慮して同道するつもりだったらしく引き受けてくれた。

 そこからはひたすら面白くなく、しかし学ぶべき場面の連続だった。

 

 まずゴブリンスレイヤーがやったのは、一党の装備、技能、呪文や奇跡の有無と回数の確認。これは自分達もやった事だが、彼はより徹底していた。

 そしてゴブリンは横穴を掘って奇襲をかけてきたり、その小さい体躯を活かして物陰に潜む事もあるが故に、後方警戒も怠ってはならないという理由から呪文職を中列に置いた隊列を取り洞窟へと入った。

 洞窟に入って暫く進むとトーテム―――――女魔術師の知らない奇妙な飾り物があり、そこでゴブリンスレイヤーからこれはシャーマンがいる証左だと教えられた。

 入り口にもあったろう、と言われた時、女魔術師は屈辱に唇を噛みしめた。あったかどうか彼女は覚えていない、否、気付かなかったのだ。

 魔術の才があり、学院を首席で卒業した。魔術のみならず見識にも自信があった。だからゴブリン退治で学ぶ事など何もないと思っていた。

 だが実際にはどうだ。トーテムの事など知らなかった。そもそもゴブリンが魔術を使うなど思いすらしなかった。

 物陰に潜むだとか、横穴を掘って来るという事もそうだ。全く知らなかったし想像もしなかった。ゴブリンは弱い。実のところはそれぐらいしか知らず、自分達に退治されるだけの生き物だと思い込んでいた。

 もっと言えば、自分達の初陣を飾るために間抜けにもノコノコ正面からかかって来るような雑魚を想像―――――いや、これはもう想像などではない。都合のいい妄想だ。

 馬鹿な自分に腹が立つ。そんな現実を突きつけられて面白くない。だがここで学ばねば本当の馬鹿だ。だから彼女はゴブリンスレイヤーの話を聞き、必死に飲み込む。自分は賢い。だから覚えさえすれば次に生かせるはずだと信じて。

 学院でもそうだったように、学びさえすれば自分はやれるはずだ。自分は優秀なのだから。

 彼女はそう信じていたし、事実そうだった。少なくとも学ぶ機会を逃さない程度には。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 戦嘴(ウォーピック)の先端が欠けてないかどうか確かめながら、女闘士は己の不甲斐なさに嘆息した。

 鎧兜を貫くために作られたそれでゴブリンの頭蓋を砕き、胴を貫き、大籠手(ガントレット)で殴りつけて顔を砕く。攻撃に関しては己の鍛えあげた肉体と買った装備は見事な働きを見せた。

 だがそれによって油断し、ゴブリンに懐へ飛び込まれた。幸い胸甲(ブレストアーマー)の上だった事と小鬼の使った短剣が粗雑なものであった事から怪我はなかったが、身を守る事を疎かにしたのは確かだ。なんと無様な事か。

 

「装備があってよかったな」

 

 ゴブリンスレイヤーから言われた言葉が身に沁みる。全くもってその通りだ。彼の言によれば小鬼どもは武器に毒を塗る事が多いらしい。糞尿や毒草を混ぜ合わせた粗雑なものらしいが、猛毒だというのは良く分かる。

 こういった不意の一撃を食らわぬために防具を整えたのは確かだが、防具があるからと油断したのもゆるぎない事実だ。なんと間抜けな事か!

 

 それに引き換え、彼―――――ゴブリンスレイヤーのなんと優秀な事か。小鬼の戦術を読み、備え、油断も躊躇も一切なく淡々と殺していく。処理して行く、と言ってしまってもいいぐらいに鮮やかな手並みだ。

 横穴から出てくる小鬼達の足元に油を捲いておき、火をかけて焼き殺す。自分の武器だけでなく小鬼からも武器を奪い、必要ならば投げ、捨て、次々使って行く。

 さらに戦いながら自分を含む周囲の者に的確な指示を飛ばす。剣士には武器を振らず刺すように、女魔術師には呪文を軽々に使わぬように、全員に対しては必要に応じて隊列を入れ替えるように。

 女神官の《聖光(ホーリーライト)》を目晦ましとして活用する姿も、女魔術師の《火矢(ファイアボルト)》を撃ち込まれた田舎者(ホブ)に対し即座に追撃を行う姿も。見事の一言に尽きた。これこそが経験を積み、技量を磨きあげた者の姿なのだ。

 小鬼とは女性を凌辱し、子を産ませる醜悪な生き物だと聞く。それを颯爽と殺して行く姿に―――――身勝手は承知で、女闘士は憧れを抱いた。小鬼がかつて自分を穢した者達と重なって見え、それを殺していく彼の姿は救いの神のようにすら思えたのだ。

 もっと彼の活躍を見ていたい。彼と共にゴブリンを退治したい。女闘士はそうすることが救いだとすら思い始めていた。

 その彼はと言えば、何やらゴブリンの腹を切り裂いている。よほど憎いのだろうか?そう思っていると彼はゴブリンの肝を取り出すと、布に包んでこう言った。

 

「奴等は臭いに敏感だ。金物や女の臭いには特にな」

 

 そしてそれを持って、こちらに近付いて来る。ゴブリンスレイヤーの言葉と行動から、何をするつもりか一瞬で察した女闘士だけでなく全員が身を竦める。

 

「臭いを消す必要がある」

 

 

 

 痛みや魂を汚されるような屈辱が無いだけマシ。マシではあるが、これほど酷い臭いは初めてだった。

 必要なのだから仕方ない。それは理解できる。今までの経験から我慢もできる。不快であると感じる事と耐えられない事は全くの別物だ。

 しかし臭い消しが終わる頃には、女闘士がゴブリンスレイヤーに感じた胸の高鳴りのようなものはそれこそ臭いより先に綺麗さっぱり消え去っていたのだった。

 




女闘士ちゃんの外見というか体格のイメージに関しては、漫画版やアニメ版に出てきた女戦士さんが一番近いです。
でもそういう体型が苦手なら脳内で別な感じに補完しちゃっていいと思います。文字だけの小説だとイメージの齟齬は良くある事だからさ!


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女闘士・2

毎回下水でイキって直後に逆襲される様式美。


 ロイヤルメスゴリラのゴブリン汁まみれ。言葉だけだと凄くマニアックなプレイに聞こえますね。なお画像。

 ただでさえ傭兵のような装備だったのが血に塗れて、戦闘と言うか虐殺をした直後のように感じる。体格がいい分ゴブリンスレイヤーさんより怖い。武器も殺意高いし。

 結構な数処理したけど、前回まだまだいたんだよなあ。今回30以上いたりしたら嫌だな……ん?それ以上はいない?あーあーあー。これ以上いたら直で村襲うレベルだもんな。

 上限30下限20ぐらいがこの巣穴のゴブリンの総数か。まあ巣穴の大きさの問題とかあるしね。

 それじゃ軽く一息ついたし、横穴入って行きましょう。一息ついてる間にゴブリンの斥候(スカウト)をゴブスレさんが殺ってますがもう慣れました。どうやら今回は罠張らず一気呵成に行くらしいです。数多いからね、こっちも。

 先程同様、一列縦隊ですが今度は真ん中に女神官ちゃんと魔術師を置いてます。どうやらゴブスレさんと重装備の女闘士ちゃんで斬り込んで、鉢巻き君と武道家は二人を守る役割みたいですね。

 よーし、サクサク終わらせましょう。突撃じゃあぁぁぁぁぁうおっまぶしっ。

 

 はい痛かったら手を上げてくださいねー。大丈夫痛くないですよー。痛いって思う前に召されますからー。

 緑のゴブリンが軒並み天に召されて行く。召されるって言うか強制的に送ってるんだけど。

 おうわっ!?何コレ、横から頭に戦嘴(ウォーピック)叩き込んだら首がもげるってなんで?多分クリティカル?いや力強すぎない?人かコイツ。ゴリラか。

 

 サクサク終わりました。《聖光(ホーリーライト)》で眼潰しして、シャーマンに魔術師が《火矢(ファイアボルト)》を発射。ゴブスレさんと女闘士ちゃんが斬り込んでこの場にいるゴブリンを悲しい世界から救いました。10いませんでしたね、ここには。

 上で倒したのと合わせて24だから、まあ少ない方だったのかな?

 でもとにかく無事にゴブリン退治は終了です。みんな無事だ。よかったよかった。前の周回で仲間だった二人は勿論、鉢巻き君も無事で心のしこりがなくなったよ。前回救ってやれなかったからな。

 おかげで18年もののコリが取れたわ。

 あ、終わりじゃなかった。そうそう子供がいたんだよね。今回はどういう反応にするかn間違ってボタン連打しすぎたわ。まあいいや、どっち道殺すのは確定だもんな。

 さあて今度こそ終わったので帰りまsyそうだそこに銀貨あったよな。覚えてるぞ。

 

 

 

 銀貨17枚も入ってた!前回より多いぞ!この中身もランダム?へー。

 まあありがたく頂戴して帰りましょう。新人の内は銀貨1枚たりとも無駄に出来ないからね。

 うん?どうした鉢巻き君。あっ、村娘の安否確認か。ごめん死んでないの確認したからもういいやってなってたわ。何もされていないようだ?それはよかった。そういうの真っ先に確認する辺りいい奴だな君。こっちゴブリン殺すのに夢中になってたわ。

 今回誘拐された村娘より先に捕まってた女性は、まあ、うん。ゴブリンの子供がいるってことはそういう事だからね。

 それでも全員命があったから、ヨシ!さあ帰還だ!鉢巻き君の死体じゃなくて女性背負って帰れるのは正直嬉しいぞ!

 

 

 

 祝え!ゴブリン退治を遂行して全員無事に帰って来た新人一党(パーティー)を!

 本当に祝ってくれた。やっぱ受付さん天使!女神!全員無事で何よりですってホントそれよ。

 ではお待ちかね報酬分配の時間です。まずゴブリン退治の報酬が銀貨20枚。ゴブリンの巣で入手した銀貨と合わせて合計37枚。ゴブスレさんは相変わらず分配とか受け取らないのでこれを5人で分けます。一人当たり銀貨7枚で余り2枚ですね。

 端数どうするかな、って話になりましたけど一党の共有資金に入れるという話になりました。それがよかろ。

 そして今後の方針なのですが、剣士君に「このまま一党でやって行こうぜ」と言われましたが今回のプレイ目標上一党を組んで動くよりフリーで動ける立場の方がいいので断りました。ちゃんと角が立たない様に断った……断ったよね?選択肢に「承諾する」「断る」しか出てこなかったから不安。

 まあ多分音楽性の違いとかそういう仕方のない理由を言ってくれたと思いましょう。

 女神官ちゃんは何か引っかかったのか、ゴブスレさんについて行くようです。でも時々剣士君達のお手伝いもするとの事。過労死しない?前の周回で君の動き見てたけど、結構ブラックな働き方してたぞ。

 あ、端数を餞別として女闘士ちゃんと女神官ちゃんに譲ってくれた。分かってたけど、本当にいい奴らだな君達。あんまり関わる事はなくなるだろうけど、死ぬなよ。

 

 で、次は?オルガ、次は何をすればいい?誰を助ければいい?

 どのルートかどうかの見極めが必要になる?詳しく。出来れば悔しい感じで詳しく。もしくはやらしく。

 

 俺が悪かったからピー音大量に入れないといけない感じの説明はやめろください。普通に詳しくお願いします。

 おいピー音入れてるからって言ってはいけない言葉を言うな!なんで下ネタになると活き活きしだすんだよ!

 

 つまり原作版、漫画版、アニメ版で微妙に内容が違い、このゲームではどのコースになるか毎回ランダムだと。で、どのルートかによって死ぬ人間や死に方、そこに至るまでの流れが変わって来ると。

 ちなみにここまでの流れでどれか分かる?あ、場面場面で違ったりするパターンもあるからその時にならないと判断付かないんだ。把握。つまり疑問を持つな、ただ祈れと。

 祈祷力あんまり高くないんだけど大丈夫かな。応募者全員プレゼントを外した事があるんだぜ俺は。

 

 で、次のイベントまでの最短はゲーム内時間で言うとどれぐらい?おおよそ一ヵ月位?それまでは自由行動か。何かやっとくべき事ある?

 レベル上げと金稼ぎね。了解。とりあえず下水行くかな。立ち回りの練習もあるし。

 それはまあ明日以降!装備を整備に出して今日は寝るぞ!

 

 ……泊まるのは寝台のある4人部屋にしておくか。1日銀貨5枚もかかるけど、一応女性だし……

 

 

 

 はいおはようございます。ごらんくださいこの大きくも引き締まり全然垂れてないヒップを。そしてそれを支える太く強靭な太腿を。これ今回のサムネ用です。

 上半身鍛えてばっかりで足が細い人の事をチキンレッグと言いますが、彼女は全然そんな心配はないですね。ガード不能の蹴りとか出しそう。横綱以外には止められないやつ。

 腕とか腹筋とかは鍛えるとすぐ大きくなったり割れたりするので、モチベーションが上がりやすくみんなやるんですよね。見た目がすぐ変わるから効果を実感できるので楽しいって。あとほら、重い物持ち上げるのが楽になったりしてああ鍛えられてるなって。

 脚は中々効果実感できないんですよね。大きく太くするには時間かかるし、効果実感するには長距離歩いたりしないと分からないんで。あと脚鍛えるのって地味で時間がかかるトレーニング多いんですよ。なんでみんなすぐ止めちゃう。

 でもその結果出来上がるのは、上半身逞しいのに脚が文字通り鶏の脚(チキンレッグ)みたいに細いバランス悪い身体ですからね。筋トレは下半身も大事って言うか、下半身の方を重点的にやった方がいいです。歳取った時下半身がしっかりしてないとすぐ生活に支障きたしますからね。

 医者から痩せろと言われた時下半身がクソ雑魚だと、まず運動するための身体作りからやらないといけないのでそれがめんどくさいと挫ける事になります。下半身しっかりしてればすぐ運動に移れますからね。ちゃんと鍛えておくと本当に違いますよ。

 

 俺は何を話そうとしてたんだっけ?

 

 ああ、そうそう。今日の予定についてです。張り出された依頼を見て田舎者(ホブ)がいそうなゴブリン退治があればそれを受けて、無ければ下水に潜って鼠か蟲を退治します。立ち回りの練習と資金稼ぎですね。なんでゴブリン退治かは受ける時に説明します。

 魔法剣士君だと盾で防御したり呪文使うための間合い取りなんかが操作のメインだったんですが、女闘士ちゃんは防御よりいかに先手を取って攻撃するかを重視した方がよさそうです。あと槌鉾(ヘビーメイス)も使って動きを確認しておきます。

 よし依頼の張り出しが始まった。見に行きましょう。狙い目は村娘を攫うぐらいの群れか、デカイやつがいたという報告です。

 うーん、よさげなゴブリン退治はありませんね。仕方ありません。下水に行きましょう。とりあえず鼠退治にしますかね。受付さーん、これにしまーす。

 あ、大丈夫です装備はちゃんと行く前に回収して行きますから。そうですね、あのガチガチな装備なら歯は通らないでしょうけど油断せずに行きます。

 あ、一応初回だけ鼠退治の様子は見せますね。ゴリラの暴れる様子と槌鉾のモーションを見せたいので。次回からは単調な映像になるんでカットします。

 それじゃ工房に寄って装備回収もしたので、張り切ってイクゾー!

 

 

 

 はい、どうも両手武器を使う場合松明が持てないので灯り確保出来ない事を忘れていた馬鹿です。けじめとして角灯(ランタン)買ってきました。

 いやもう完全に忘れていました。メガトンコインを誰に持たせたかぐらい忘れてました。

 調子に乗って初期資金使い果たしたりしてなくてよかった……

 それじゃ角灯と心に火をともして、腰から吊るして入って行きましょう。ゴブリンの汁塗れの次は下水か……ロイヤル(臭い付き)になりそうだな。

 

 よしいた。普通サイズが二匹だ。さあて練習台になってもらおうかああああああ!?ちょっ、まっ、抜けねえ!強くやりすぎて胴ブチ抜いた戦嘴が抜けねえ!ヤバい来る来るあああはあああああ!?

 えっ、いや、うん、何コレ?いや何コレって言うか、何コレ?見たまんま?それはそうだけどさ、巨大鼠(ジャイアントラット)突き刺したまま戦嘴振り上げて、巨大鼠の死体をハンマーみたく使ってもう一匹を叩き潰すとかちょっと理解を越えてますね。

 筋力こんな強いの?あ、でもあれか。只人(ヒューム)の平均となる固定値が3で女闘士ちゃんが5だから、単純計算で平均の7割増しぐらいの力があるってことになるのか……なら不可能ではないか。実際出来たわけだし。

 うわあ、死体から戦嘴引き抜く様がもうプレデターか何かに見えてきた。大丈夫?ホラーゲームになって来てない?

 まあこの調子で依頼を遂行してしまいましょうか。とりあえず取れ高のために槌鉾に持ち替えますね。

 

 そぉい!そぉい!あっまた盾構える動作しちゃった籠手があるから歯が通りません~。はい雑kすいません前後から挟み打ちは止めてください調子乗ってすいませんでしたぁぁぁぁ!

 

 重装備相手に勝てるわけ無いだろうが鼠ごときがよ(震え声)

 

 とりあえずこの装備だと鼠の歯が通らない事が判明しました。ノーダメージで勝てるよ!やったねたえちゃん!

 たぶん大黒蟲(ジャイアントローチ)も同じでしょう。問題は暴食鼠(グラトニーラット)巨大黒蟲(ヒュージローチ)がどうなるかですが。

 あと純粋に俺が下手くそなので、戦嘴でのガードが出来ません。一応柄で受けたり出来る仕様なんですが。

 そして槌鉾の方ですけど、ダメージがデカイ代わりに相手が燃えない松明みたいな感じですね。モーションもそんな感じで特に変わり映えはしませんね。

 あと大籠手(ガントレット)が盾扱いなんで普通に攻撃防げるんですけど、なんて言うか強い攻撃受けたら「腕の骨が折れた……」ってなりそうです。人体には215本以上骨があるんで一本ぐらい何よって言われるかもしれませんが、腕の骨が折れたら腕が使えなくなるからね?

 さてこの後ですが、午前中だけで鼠退治終わった上に消耗もほぼしてないので、身体と武器洗ってギルドに報告したら昼飯食べて午後からは蟲退治します。

 あ、蟲の方は当然カットします。大量のGを槌鉾で叩き潰してその体液に塗れながら、時々巨大なGに纏わりつかれる重装備の女性とか見たくないでしょ?あとほら、もう大量のGが画面に映る段階でヤバいし。

 でもこれをむしろ見たいって人も中にはいるんだろうから世の中って広い。性癖は海より広く深い。

 

 

 

 そんな人の為に全カットではなく、体液まみれになったシーンまでカットしました。鎧兜姿なんで色気はありませんが。

 下水で稼ぐ事を考えたら防毒面は買ってもいいかもしれませんね。こういう退治の時口に血や体液が入るの防げますし。長時間いても病気にならないのは大きいです。

 あと女闘士ちゃん、冒険者二日目でゴブリンの汁と巨大鼠の汁と大黒蟲の汁塗れになったんですけど彼女がいったい何をしたと言うのか。前世で何かやらかした?人のエクゾディアを船から海に投げ捨てるとか。

 まあ可哀想なんでさっさと身を清めに行きましょう。剣だともうちょっと血液や体液の飛散は控えめだったんですけど、鈍器類じゃ流石にダメですね。

 そういえば汁って言いましたけど、Gのアレは体脂肪らしいですね。必要な時はアレ燃焼させてるから長期間活動できるし食わなくても死なないみたいなことをテラフォーマーズで読みました。

 液体ではありません。液体だから速いとかではないです。そもそもなんで液体だから速くなるのか分かりません。ああまた話が脱線した。

 

 とりあえず今後の予定ですけど、田舎者がいそうでなおかつ数が決して多くない、具体的に言うと人を攫うぐらいの規模ではないゴブリン退治依頼を探して引き受けるつもりです。

 田舎者に拘る理由を先に言ってしまうと、田舎者は基本的に大金棒(モール)を装備しているそうなので殺して奪う(ハックアンドスラッシュ)のが目的です。大金棒は両手武器かつ長大過ぎて狭い所で使用する際はペナルティが発生し、攻撃手段としては殴るしか出来ず、投擲も不可で普通に買うと銀貨90枚もするデメリットの多い武器です。

 ですが当然大きなメリットも存在します。まずは威力です。このゲームの性質上ダメージは出目次第なところはありますが、初期作成冒険者のお供小剣(ショートソード)の攻撃力が1d6なのに対しなんと3d6もの攻撃力があります。

 加えて命中修正にプラス修正がかかります。剣・槍・斧の大半がマイナス修正なのに対し戦槌や棍棒、格闘系統はプラス修正のものがそこそこあり大金棒もその一つです。

 そしてこれが一番大きいのですが、技能の【強打攻撃・殴】を使用した時のプラス補正がなんと4もあるんです。これはシンプルに強いです。

 レベルが上がったら【強打攻撃・殴】を取得する予定なので、開けたところでのメイン武器となります。手に入ったらの話ですが。

 なので次回はその丁度いいゴブリン退治依頼が見つかるか、死亡予定の誰かを助けるところまで進めてそこから始めようと思います。

 では今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。また次回よろしくお願いします。

 




幾ら美女でもこんなムキムキな女性をナンパする物好きはおらんやろ、って思ったけど性癖ストライクな人もいる事に気付く。
あと最新刊を見るに槍ニキはナンパするかどうかはともかく「俺から見ればお嬢さん」「それでも美しい」って本気で言うだろうから、やっぱあの人魂がイケメンなんやなって。


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女闘士・裏 2

全然関係ない話なんですけど、自分プロレスとかMMAとか大好きなんですよ。
全然関係ない話ですけどね。


 剣士も、女武道家も、女魔術師も、女神官も。彼女の突然の行動に言葉を失っていた。

 小鬼退治は順調そのものだった。ゴブリンスレイヤーは実に的確かつ効率的に指示を飛ばし、率先して自らが動き小鬼を殺して行った。

 広場に残っていた集団は女神官の《聖光(ホーリーライト)》で視界を奪われ、直後この群れの長とおぼしき杖を持ったゴブリンが女魔術師の《火矢(ファイアボルト)》で焼かれる事で完全に統率を失い混乱するだけになった。

 その中に斬り込んだゴブリンスレイヤーと女闘士は次々と小鬼を屠って行き、程なく広場の生き残りは殲滅された。後衛の護衛として横穴の出口を固めていた剣士と女武道家の出番がないほどあっさりと終わった。

 一党(パーティー)の被害は全くなく、完璧な勝利と言ってよかった。無論それは自分達の力ではなく、ゴブリンスレイヤーあってのものだとは分かっている。だが初めての冒険を無事に乗り切った事で、剣士達は高揚感と達成感に満ちていた。

 あとは攫われた村娘や、哀れにもゴブリンの慰み物となっていた女性達を連れて戻るだけ。剣士はそう思っていた。いや、この場にいる誰もがそう思っていたはずだ。

 唯一、ゴブリンスレイヤーを除いて。

 

「お前達は運が良かった」

 

 ゴブリンの玉座、その裏に隠されていた倉庫の中を見ながら彼は言った。

 隠れていたのはゴブリンの子供達。身を竦めて震える彼らを前に、ゴブリンスレイヤーは言葉を続けた。

 

「奴等はすぐ増える。もう少し遅ければ五十ばかりに増えて襲ってきただろう」

 

 その言葉に剣士は自分の顔が青ざめるのが分かった。五十。それが何を意味するかぐらいの事はこの洞窟で学んだ。

 倒しても倒してもやって来る小鬼。いや、それは正面からだけの話だ。後ろからも横からも来られたら。到底倒しきれるわけがない。自分も、一党の仲間もあっという間に囲まれて蹂躙されていただろう。

 自分は殺され、仲間は捕まっていた女性達と同じ目に遭う。それをきっと理解したのだろう。女武道家も女魔術師も女神官も身を震わせていた。

 彼女が行動を始めたのはその時だった。兜によって表情は分からないが、少なくとも身体は震えていなかったのは確かだ。彼女はしっかりした足取りで倉庫へと近付くと、半ばゴブリンスレイヤーを押しのけるようにして中に入り――――――

 

 槌鉾(ヘビーメイス)を振り上げ、ゴブリンの子供を叩き殺した。

 

 一発、二発と連続で。確実に殺しきるため、万一にも息が残らないようにするため。躊躇なく、丹念に殴殺していく。

 ゴブリンの子供の泣き声が聞こえる。だが女闘士の手は止まらない。滅多打ちにするのではなく、冷静に冷酷に狙って振り下ろして行く様子がかえって彼女が何か激情に駆られている事を示していた。

 何か言わなくては。何か声をかけなくては。何でもいい。子供まで殺す必要があるのか問いかけるだけでもいい。なのに剣士は何の言葉も発する事が出来ない。

 初めて会った時などよりずっと、彼女の姿に圧倒されてしまっていた。自分などが何かを言っていい光景ではないと思ってしまった。

 だからせめて、出来る事をしたくて。彼は攫われた村娘に近付いて声をかけた。彼女もまた目の前の光景に顔を青くして震えていたが、衣服は乱れているものの破かれたりはしておらず怪我もないようだった。

 つまり、彼女は間違いなく無事だ。それが唯一の救いだ、と何故か思えて。剣士は心の底から安堵の息を漏らした。

 

「攫われた人は無事だった、よ」

 

 その救いをこの場にいる全員に分け与えたくて。彼は自分が思った以上に大きな声で安否を伝えた。それを聞いたからか、ゴブリンの子供を殺し終えたからか。返り血に塗れた女闘士がこちらを振り返った。

 

「それは何よりだね」

 

 昂ぶりも冷たさも無い、工房で話した時と変わらない声音。たった今まで小鬼の子供達を殺していたとは思えない声。それがかえって剣士には恐ろしかった。

 そのまま女闘士はこちらではなく、慰み物とされ茫然と横たわっているだけの女性達へと近付いていく。そして武器をその場に置くと、しゃがみ込んでこう言った。

 

「殺したよ。君達を穢した奴らも。その証拠も。もう、殺したよ」

 

 労わりの籠った、優しく暖かい声。

 

「もう君達をこんな目に遭わせる奴はいない。その結果ももう何処にもいない」

 

 女闘士がそう言うと、力無く倒れ伏しているだけだった彼女達はすすり泣きを漏らし始めた。大声で泣き叫ぶだけの体力が無いという所までは剣士には分からなかったけれど、それが悲痛な叫びである事だけは理解できた。

 何を言っていいのか分からない。何を言う資格があるのか分からない。自分などでは踏み込んではいけない領域がそこにはあるように感じた。

 視界の端で女神官が祈りを捧げているのが見える。剣士自身は格別何らかの神を信仰してはいなかったけれど―――――

 この時だけは、彼も神に祈りたかった。何を祈ればいいかも分からないが、祈らずにはいられない。そんな気分だった。

 

 

 

――――――――

 

 

 

「お誘いはありがたいのだけれど、私は遠慮させてもらうよ」

 

 兜を外し素顔を晒した女闘士は、丁寧に頭を下げながら剣士達の誘いを断った。

 ゴブリン退治を終え無事ギルドに帰還し、報酬を分配したところでこれからもこの一党(パーティー)でやって行こうと言われたのだが、戻って来る前から単独でやって行く腹を決めていた女闘士はハッキリと断った。

 正直ありがたい誘いだとは思っている。ゴブリン退治の際―――――ゴブリンの子供を殺す時の姿を見てもなお自分を誘ってくれる彼らは本当に良い人なのだろう。

 あるいはあの姿を見て放っておけないと思ったのかもしれない。いずれにせよ自分のような人間には勿体ないぐらい善い人々だ。

 だからこそ、一緒に一党としてはやっていけない。自分があの時何を思ったのか、何をしたいのか気付いてしまったから。

 生きていくために、金を稼ぐために冒険者稼業をする。それが根底にあるのは変わりない。だがそれ以外にもう一つ動機が出来てしまったから。

 

「詳しくは言うつもりはないけれど、私は―――――」

「いや、いいよ。何か事情があるのは分かるしさ」

 

 力無く笑いながら剣士が女闘士の言葉を制する。何かを言いたいが何を言えばいいのか分からないのだろう。ただ、こちらを気遣おうとしてくれている事だけは分かる。

 

「あたし達が嫌いだから組みたくないとか、そういうことじゃないんでしょう?」

「それは勿論。むしろ人間としては好意すら抱いているよ」

「ならそれでいいじゃない。絶対に一党を組まないといけないとかそういう決まりはないんだし」

 

 女武道家の言葉に女闘士以外の全員が頷く。どうやら自分が思っていた以上に彼らは人がいいらしい。

 いや、当然と言えば当然か。攫われた村娘を助けたいという素朴な正義感を持ち、一度会話しただけの自分を気にかけた女神官とその言葉を受け入れた一党だ。善良でないはずがない。

 

「まあその……何かあったら頼りなさいよ。力になるから」

「ああ、そうさせてもらうよ。ありがとう」

 

 笑顔で女魔術師に礼を言うと、彼女は軽く顔を逸らした。きっと照れ臭いのだろう。

 彼らと一緒に冒険をしたい気持ちはある。ゴブリンスレイヤーについて行くという女神官もまたその気持ちは同じだろう。だから出来る限りの範囲でなら手伝うと言ったのだろう。

 だが自分は彼女と違う。力になりたいという気持ちも当然あるが、それ以上に女闘士は自分の事を優先したいと思ってしまっている。

 あの小鬼達のような――――――自分を弄び、穢した連中の同類へ報復をしたい。いや、()()()()()()()

 それをしない事には自分の新しい人生を始められない。都を焼いたあの焔のように自分の中で燃え盛る激情が鎮まらない。

 

 そうでもせねば、あまりにも惨めではないか。神に縋ろうが、怒りを堪えて生きようが、せめて応報せねば救われないではないか。

 復讐の意味など知った事ではない。だが意義はある。少なくとも自分の気持ちが晴れる。哀れな自分の魂は救われる。

 せめてそうでもせねば、自分は何処へも行けず何も始められない。ずっとあの牢の中にいるのと同じだ。

 

 報復が全てにおいて最優先だとか、一生を捧げるだとかそういう事ではない。きっと自分のこの思いは消えはしないが、ある程度のところで折り合いがつくはずだ。

 ただそれが何時になるのかは分からない。どれだけやればいいのかも分からない。だから彼らとは一緒に行かない。それだけだ。

 ただもし、もしも満足できずとも納得できて。自分の事ではなく、他の人の事を優先出来るぐらいになったなら。

 その時はただの冒険者として、彼らと一緒に冒険をしたい。

 心からそう思いながら、その日が来る事を祈りながら。女闘士は初めての一党を離脱した。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 装備に不備が無いか。腰に付けた角灯(ランタン)が外れて落ちたりしないか。水薬はしっかり入っているか。それらを確認すると、女闘士は下水道へと入って行く。

 生活費を稼ぎ、今はまだ力任せに振っているだけの武器の使い方を覚え、根本的に足りてない戦闘経験を積む。

 それら必要な要素を満たす依頼がないか、とギルドの受付嬢に相談したところ勧められたのが巨大鼠(ジャイアントラット)退治や大黒蟲(ジャイアントローチ)退治だった。

 初心者向けで練習にいいのだが受ける人がどうしても少ない、とも言っていたが、成程現地に来てその理由がよく分かった。

 

「確かにこの臭いは嫌だろうね」

 

 汚水の流れる場所である以上当たり前ではあるのだが、悪臭が酷い。冒険者として活躍する事を夢見る新人が働きたいと思うような場所ではないだろう。

 女闘士としては不快ではあるが、充分過ぎるほど耐えれるものだが。牢の臭い、男どもの汚らわしい臭いに比べれば何ほどのものでもない。

 そう考えると別の意味でも自分にお似合いの依頼だな、と自嘲する。もうこれ以上ないぐらい穢れている女だ。今さら下水の臭いが染み付いたとして気にする事もあるまい。

 そんな事を考えていると、前方に巨大鼠の姿を認める。まだこちらには気付いていない。ならばと一気に駆け出し、その勢いそのままに一匹の胴体目掛け戦嘴(ウォーピック)を振り下ろす。

 弾力のある脂肪の塊。それを貫く手応えがハッキリと伝わって来る。完璧に打ち抜いたと思うのと同時に、容易に引き抜けないほど深く刺してしまった事に気付く。

 一瞬混乱した様子を見せていた鼠がこちらに向き直る。戦嘴を手放して槌鉾(ヘビーメイス)を構えるべきか。大籠手(ガントレット)で立ち向かうべきか。どちらにすべきか判断がつかない。どうする。

 結局どちらも選べないまま、女闘士は―――――

 

「む、ぅうん!」

 

 巨大鼠の死体もろとも戦嘴を振り上げる事を選択した。重い。だが持ち上がらない重さではない。

 腕でなく背中を意識する。持ち上げるために腕だけを使うのではなく、その腕が付いている胴体を、特に背中を意識して全身を連動させる。腕の力だけで足りないのなら他と協力させれば持ち上がる。

 

「せぇぇえい!」

 

 自分の脚が地に根を張った姿を想像して動かぬようにしながら、死体がついたままの戦嘴を大戦槌(ウォーハンマー)の如く振るい向かってくる巨大鼠へと叩きつける。

 ぐちゃり、と肉の潰れる嫌な感触と音が伝わって来る。ゴブリンを叩き潰した時も同じだったが不快感はなかったな、とそんな事を考えながら、女闘士は鼠が動かない事を確認する。

 ああいう時に咄嗟の判断が出来るようになるまで経験を積まねばな、と明確な課題を己に課す。いささか漠然としていた戦闘経験を積むという目標だが、今の戦闘で具体性を帯びてきた。

 鼠の死体を踏みつけて固定し、一気に戦嘴を引き抜く。今の無茶な使い方にも拘わらず欠けたりヒビが入ったりした様子はない。何とも頼れる武器だ。

 これの使い方はこれでいいだろう。問題はこちらだ、と戦嘴を背負い槌鉾を腰から外す。取りまわしは戦嘴よりもいいだろうが、間合いが短い事と片手で振るう事から持っていない手の活用法を考えねばならない。

 大籠手を装備しているのだから盾として使うか。鼠の歯や小鬼の非力な腕力で振るわれる粗雑な武器の一撃ならば問題ないだろう。だが大物や強敵相手にそれはどうだろうか。

 経験を積んでその辺りも考えていかねばならないな、と思いながら女闘士は歩を進める。いずれにせよやる事は決まっている。

 殴って、潰して、殺すだけだ。

 

 

 

 槌鉾を振り回し、頭蓋を砕く。大籠手は防具として使うのみならず、殴りつける武器としても使う。首を狙って飛び上がった鼠を兜の硬さを活かし、頭突きで持って迎え撃つ。

 前二つはともかく、頭突きは非常手段だなと女闘士は結論付ける。衝撃が頭に響き少し目が眩んだのだ。下手に使えば自滅する。どうしようもない時の相打ち覚悟で使う手札だろう。

 大籠手の方は問題ない。強いて言うならばもう少し厚みを増すか、筋金を増やすか。あるいは金棘(スパイク)を付けて打撃力を上げるか。その辺りは工夫していいだろう。

 後は靴だな、と巨大鼠の頭を踏み潰しながら女闘士は考える。靴底に鉄板でも仕込めば、強力な武器となる。殴って殺せずとも体勢を崩し寝かせれば必殺の一撃になるはずだ。

 鼠の返り血に塗れながらそんな事ばかりを考えている自分に、女闘士は思わず失笑してしまう。血に塗れ悪臭に満ちた下水道で、敵を殺す工夫だけを考える。元とはいえ一国の姫がこれか。

 だがそれでいい。もう国は滅んだ。王女としての自分はとっくに死んだ。なら冒険者としての自分はそれでいいだろう。

 敵を殺す事だけを考え、あの看守達や小鬼のような生物を片っ端から殺していく。それで金を得て生きていく。自分はそれでいい。

 返り血だろうが汚水だろうが、何に塗れようともそうして生きていく。自分はそうやって進んで行く。その先に何があろうとも。

 

 

 

 そう誓い心に決めた数時間後、彼女は自分が叩き潰した大黒蟲の体液に塗れながら思った。

 何に塗れてもいいとは言ったが、これは流石にあんまりではないか、と。自分に託宣を寄こした外なる神に試されているのだろうか。

 そして一つの恐ろしい考えが浮かんだ。何に塗れてもいいと言ったせいで、こういう運命を用意されてしまったのではないかと。

 

「……いや、自分で言ったのだ。受け入れようじゃないか!」

 

 そう言った直後、女闘士は大黒蟲の群れに襲われることになるのだが―――――

 無論それは神々が仕組んだわけでなく、ただの偶発的遭遇(ランダムエンカウント)。骰子の出目によるものにすぎない。過ぎないのだが。

 その時外なる神が出目に頭を抱えていた事だけは確かだった。

 




実況パートだと滅茶苦茶気楽なのに何故裏はダークになってしまうのか。



今週で自宅待機も解けるので、来週からは更新は夜のみ。それも頻度と速度が間違いなく落ちると思います。


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女闘士・3

女闘士ちゃんの話書いてる時は魔法剣士君関係の話が頭に浮かんでます。
魔法剣士君関係の話書いてる時は女闘士ちゃんの話が頭に浮かんでます。

この現象なんとかしたい。


 はい、それじゃ今回も始めて行きます。胸の谷間をドアップにしてますがこれはサービスなのでじっくり眺めてください。

 尻と胸は露骨に再生回数伸びるので、シリアスな場面しか存在しない回とかでない限り交互にサムネにしていきます。みんなも好きだろう?

 はい、巨乳タイム終了。依頼書を見てください。ごらんの通りよさげなゴブリン退治の仕事が見つかったのでこれを受けます。

 大柄な個体の姿アリ。盗まれたのは鶏と野菜。倉庫を襲撃されたわけではない。完璧ですね。数はそこまで多くなく、田舎者(ホブ)がいる理想的依頼です。そうそう、こういうのでいいんだよこういうので。

 前回のシリーズではゴブリン退治がやたら鬼門でしたけど、今回は流石にないでしょう。おい後ろ、フラグじゃねえよ。

 あ、ちなみに受付さんにはやんわりと「白磁が1人でゴブリン退治は止めとけ」って言われました。特に女性は止めておいた方がいいと。

 まあ確かに群がられて押し倒されたら一巻の終わりですからね。彼女も動画も。だが断る。大金棒(モール)が女闘士ちゃんを待っているんだ。

 

 硬くて大きくて立派な棒を持っている相手と戦う女闘士ちゃんって言うとエロいですよね。すいません忘れてください。

 

 あと稼ぎ中にレベルが上がりまして、冒険者レベル2となっています。職業レベルは上げれないので据え置きですが、技能の方は【武器:戦槌】【強打攻撃・殴】【薙ぎ払い】をそれぞれ初歩で習得しています。

 これでシンプルに殴りが強くなり、大金棒を手に入れた場合それをフルに生かす準備が整いました。【薙ぎ払い】は両手武器を装備している時、命中修正にマイナスかかる代わりに複数体攻撃が可能になります。

 資金の方も順調です。具体的にはなんと貯金が銀貨171枚もあります。三食しっかり食べて寝台付きの4人部屋に宿泊してこれです。

 装備の方もちょっと改造しまして、このようにですね、籠手の拳部分にスパイクが加わってます。殴った時に僅かですがダメージ増大する改造です。

 あと靴底に薄い鉄板も入れました。これは相手を攻撃する際に踏みつけモーションが発生した時、ボーナスが入ります。もっと頑丈な靴、それこそ鉄靴とかならボーナスもでかいんですがあれは移動力や回避修正落ちるので止めました。

 これらの改造やって残り銀貨171枚ですよ。お金持ちですよ。暴食鼠(グラトニーラット)巨大黒蟲(ヒュージローチ)未討伐でこれですよ。

 理由としてはまず装備がいいのでダメージ殆ど受けないので薬代が浮くことと、装備がいいのと筋力が高いのでドンドン敵を倒せる事。そして1日で2つの討伐依頼をこなしてる事です。

 やっぱり初期資金の多寡は大きいわ。一度味わうとやめられなくなりそう。

 まあ報告する事はその程度ですね。さてそれじゃゴブリン退治張り切って行くぞオラァ!

 

 

 

 半日ほど歩いて、依頼先の村に寄って住み着いた場所を教えてもらって、到着するまでカットしました。

 期待してる人もいるかもしれませんが、移動中走ってもフル装備だと(バルンバルン揺れないんでサービスシーンは)ないです。

 一応話だけは聞きましたが被害状況に変化はないんで、数は増えてないと考えていいっぽいです。増えてても二桁はいないと思います。

 そんなこと言ってたら巣穴見えてきましたね。見張りが一匹立ってます。トーテムはないんでやっぱりシャーマンいませんね。よーしパパあの見張りを狙撃しちゃうぞー。

 投石紐(スリング)と比較すると投石杖(スタッフスリング)は威力も飛距離も倍増しているため、そこそこの距離から狙撃出来ます。値段は30倍しますけどね。

 というか投石紐が安すぎるんですよ。銀貨1枚ですからね。皆さんもプレイする時はとりあえず余った初期資金で買っとくといいです。特に最初から投擲適性ある只人(ヒューム)は。

 さーて、狙って狙ってー。食らえ、ウソップ輪ゴーム!!

 頭に命中!いや、顔面か。あー顔面抑えて悲鳴上げてる。これはバレたな。まあいいやもう一発撃ち込んで見張りだけでも殺しておこう。よし殺った。

 ぞろぞろ出てきてしまった。1、2……4匹か。田舎者はいないから中かな?

 とりあえず飛び道具持ってるやつがいないので一方的に撃ちましょう。食らえオラァ!

 

 まあほら、あれですよ。遠距離から一方的に撃つとか卑怯なんでね?騎士道精神ってやつですよ。

 

 あーはいはい外しましたよ!判定失敗とかじゃなくて純粋にプレイヤースキルの問題で外しましたよ!こちとらFPSやると至近距離でショットガン外すクソエイムだぞ!

 だいたい石撃っても死なないって分かったんだからこれでいいんだよ!撲殺するのが確実なんだよ!戦嘴(ウォーピック)で抉ってやるわ!

 ゴブリン殺すのに石なんて必要ねえ!野郎ぶっ殺してやるぁぁぁぁぁ!オラァ薙ぎ払ったるわ!

 

 加減しろ莫迦!

 

 多分今度はすげーいい出目だったと思うんですけど、横薙ぎに振った戦嘴がゴブリンの首に命中して首を刎ね飛ばす形になり、勢い殺さないまま横にいたもう一匹の首も刎ね飛ばしました。戦嘴って刺す武器だよね?

 あっ残りが逃げるヤバい待てコラ!逃げるなぁぁぁぁぁ!冒険者から逃げるなぁぁぁぁぁ!

 洞窟に逃げるのはヨシ!だが他は逃がさんぞ死ねぇ!何処へ逃げようというのかね!よし、死んだな。

 洞窟の中に一匹逃げ込み、一匹が群れを捨てて逃げようとしたので追跡して後ろからザクッてやりました。敵前逃亡は士道不覚悟だぞ。

 多分洞窟に逃げ込んだ奴らが田舎者呼んでくると思うんですけどどうでしょう。中で待ち構えられると厄介だな。あ、出てきてくれた。

 わぁい、大金棒!大金棒大好き!だから寄こせ。貴様の首と大金棒を寄こせぇぇぇ!

 いや待てそれは卑怯だろあっぶねぇ!ちょっ押し倒すのは待って!やっべマウント取られた!武器も落としたしこれはヤバい!女闘士ちゃんブリッジ!ブリッジして相手のバランス崩して!

 やっべマウントパンチはマズイいや別の意味でマズイ行動してんじゃねえ!お前完全にこれお前動画上げられなくなるだろうが!

 おおギロチン入ったボタン連打ぁぁぁぁぁ!くたばれぇぇぇぇ!高橋名人俺に力をぉぉぉぉぉ!

 

 舐めんじゃねえぞ田舎者風情がよ(息切れ)(震え声)

 

 仲間のゴブリンを盾、と言うか投げつけるようにして体勢を崩して、その隙に殴って来るとか君は実に藤木君だな。籠手でガードしたのにダメージ入ったぞ普通に。

 何故か大金棒ではなく素手で殴って来たんですけど何だったんでしょうね。殺すと楽しめないとかそんなん?押し倒した後もパンチ打ってきたし、殴って弱らせてR-18展開するつもりだったんでしょうか。

 まあ動画とシリーズの危機は去りました。帝王ことアレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラを彷彿とさせる女闘士ちゃんのギロチンチョークで。純粋な筋力勝負になった時はボタン連打とか出るみたいです。はー疲れた。

 おっとトドメ忘れてた。

 

 首の骨を踏み折るってなんてえげつない仕留め方を……

 

 まあ確実に死んだのでよしとしましょう。後は治癒の水薬(ヒールポーション)飲んで、洞窟の中に生き残りが隠れてないかチェックしたら帰りましょう。

 お邪魔しまーす。あのすいまーせん。皆殺しに来たんですけど誰か残ってませんかー?

 残党確認、ヨシ!いやちゃんとやりましたよ。まあ隠れる所無いんで大丈夫でしょう。

 これにて目標達成!よし村に寄って退治完了報告して、ギルドに戻りましょう!

 

 その前にちょっと素振りを。うわあ似合ってる。漫画とかゲームだと噛ませにされそうなぐらい似合ってる。

 唸りを上げながら大金棒を振り回す重装備のロイヤルメスゴリラ。うーん、強そう。一つだけ難点を上げるとするなら……

 冒険者じゃなくて戦場で戦う傭兵にしか見えないってことぐらいですかね。まあ些細な問題です。ジェロニモの名前がアパッチに変わってるぐらい些細な事です。

 

 イケメンロイヤルメスゴリラが硬くて大きくて立派な棒を手に入れたって言うと全然違う意味に聞こえますよね。すいません忘れてください。

 なんか今日下ネタ多いな。疲れてんのかな。

 

 

 

 はい、またカットしました。

 と言うのもですね、本当に変わり映えしないんですよ。報告してイベント起きたりもしませんし何か特別なイベント発生もありませんし、何故か下水で暴食鼠や巨大黒蟲も出ませんし。

 貯金額が増えた以外何の進展も得られてないです。プレイしてる方としては充分楽しんでますが、動画としては退屈です。

 あ、でも特別なイベントってほどではないんですが朝と夜の会話イベントで鉢巻き君達と会話はしました。彼らも下水の退治依頼で下積みやってるらしいです。

 鼠と蟲退治はいい練習になるから是非頑張ってほしいです。アプデのお陰で続ければ最低限食っていけるだけの稼ぎも得れるので。

 

 でも暴食鼠と巨大黒蟲倒したって凄いと言うかずるくない?儲かってるやん。こっちはエンカウントすらしとらんのやぞ。

 

 それでそろそろ最初のゴブリン退治から約一ヵ月なんで、何日かは朝ギルドで待機してイベントフラグチェックしろと言われたのでこうして張り込みを続けます。

 兜だけは外して脇に抱えてますけど、背中に大金棒と戦嘴背負って腰に槌鉾(ヘビーメイス)ぶら下げて、熟練の傭兵みたいな風格出してるんでナンパとかはされた事ないです。威圧感凄いから。

 ちなみに聞きたいんだけど、次のイベントってどのルートでも発生する?原作ルート以外なら発生しないから楽?よし祈っておくか。

 祈ってたらゴブリンスレイヤーさんが来ましたね。牛飼い娘さんも一緒だ。ん、これでイベントフラグ立った?この後の会話次第でやる事が極まる?OK。

 あれ、監督官さんが来た。はいなんでしょう。談話室に来い?なんだろうなんかマズイ事やったかな。ゴブリン退治ソロはそんな問題行為ではなかったはずなんだけど。

 あ、ちなみにですけど出自が貴族や神官、騎士に商人辺りだと高確率でノックをオートでするようになるみたいです。技能として使えるレベルの礼儀作法はなくても、生まれと育ち的に最低限は身に付けてるだろうってことですね。

 昇級審査?あー黒曜に上がるのに必要な功績とかもう溜まったんだ。そうか一日二回仕事受けてるから早いんだ。魔法剣士君より、ずっとはやい!

 今回も変わらず、お前ほぼ単独でやってるから一党組んで一度適性見るぞって感じですね。まあまた適当に誰か探しますか。前回は槍ニキと魔女さんが優しかったからなー。

 うん?まだ話してる最中なんだけど。はい?そろそろロビーに戻らないとイベント内容が分からなくなる?お前それはもっと早く言えよ!いやわざと黙ってたな貴様!

 すいません話の途中だけどワイバーンだ!じゃなくて急用なので早退します!

 

 ロビー戻って来たけど何もなくない?ゴブリンスレイヤーさんが依頼受注してるだけだよ?

 受付に行って話を聞け?すいません受付さんちょっとお話聞かせて下さい。ほらゴブリン退治の依頼割り振ってるだけだって。新人が受けてないかどうか聞け?はいはい。

 南の森の小規模な巣を退治しに行ってるって。三人で。小規模とはいえ三人の新人かあ、辛そう……

 ……あっ(察し)

 

 うん、分かった。これだな?この三人が死ぬんだな?了解。

 ところでこれ救出依頼とか出てないけど大丈夫?報酬が出ないだけで基本行動は自由?その気になれば拠点を別の街に移したりするのもアリなんだ。はー。自由度高いゲーム。

 あー。最初にマネーパワー云々言ってた意味が分かって来た。単に初期装備だけじゃなくて、金にならない救出を行っても資金が枯渇して詰まないから貴族がよかったのか。

 とりあえず話は後にしよう。走って行けば追いつける……いや走ると消耗するかも……スタポキメて回復する程度の消耗までは走ろう。

 依頼書見せてもらって、位置確認ヨシ!行ってきます!

 なんか受付さんや女神官ちゃんが言ってるけどすいません急いでるんで!トイレ我慢して身体がくの字に曲がり始めた人ぐらい急いでるんで!

 トイレ我慢する時とギャンブルやる時とスポーツ見る時は人って信心深くなりますよね。無神論者ですら神に祈るって聞きました。つまり宗教の勧誘はトイレの個室を全部埋めて入信するなら使わせてやるって言えばいいと思います。

 実際にやられたらその宗教に対するアンチになりますけどね。トイレが限界の時に個室が埋まってたら絶望でファントムになるか、怒りでデーモンになりますよ。

 というわけで急いでトイレに、じゃねえ南の森に行きましょう。走って女闘士ちゃん!先生がいないからってサボらず走って!

 こういう時に移動力やら持久力やらが重要になるんですね!単に遠い場所に行くだけでなくそこに着くまでの速度が求められる時!こんな状況で知りたくなかった!

 っていうか全然見当たらねえんだけど!そんなに出発した時間違わないはずだろ!どんだけ脚早いんだよ!もっとダラダラ歩けよ!新人だろ!?先輩に叱られる程度にだらけろよ!

 あれ、って言うかこれ女闘士ちゃんが速度遅くなってない?普段もっと速いよね?なんだろう体調管理はしてたから風邪引く要素は……

 

 あっ。

 

 はい、えー、はい。単純にチェック不足と言うか俺が間抜けでした。あれです、女性特有の日。体調不良になってマイナス補正かかってます。

 これは流石にマズイのでは?だってもう走らせるわけにはいかんもの。消耗するから。消耗して突っ込んで囲まれるコースは嫌だよ?

 乗合馬車使うか歩いていくかか……都合よくあればいいんだけど。いったん引き返すぞ。

 南の森方面、南の森方面……あった!すいません乗ります!

 とりあえずこれに乗って近くまで行って、後は降りて移動ですね。なんかのトラブルでゆっくり行っててくれよ……決して走らずゆっくりゴブリンを退治しに行ってて……

 はい着いた!代金払ってすぐ向かう!キツイだろうけど走って!頑張れ!

 森の中だとさらに速度落ちるな!畜生!確か話聞いた限りだとこの辺に……あった!入り口で一匹死んでる!これは……弩だな!弩で殺られてる!矢ではなく弩のボルトだ!

 とりあえず遠距離持ちが1人いると分かったところで、さっさと中に入りましょう。ここまで来て間に合いませんでしたはちょっとあれだから。

 いや待った中からなんか来るぞ。ここなら大金棒使えるから迎撃するか。体調悪いけどゴブリン相手ならなんとか……

 

 ナンデ?鉢巻き君ナンデ?愉快な仲間達もおるやんけ。

 

 向こうも驚いてる。こっちはほら、あれだよ。今日の占いで鈍器使ってる女性は森でゴブリンを殺すと運気アップって言ってたから。

 え、この占いの名前?ゴブリン殺し占い。ゴブリンの殺し方とか数で運気占うの。

 

 それより鉢巻き君達の方よ。なんでここに?君らの後ろにいる短パン小僧とクリフトみたいな服装の少年と、ちょっとお洒落な格好してる少女が本来ここで君と同じ運命を辿るはずだった一党でしょ?

 うん?彼らだけじゃ心配だったから着いてきた?いやでも受付では三人って話でしたよ?

 依頼受注した後で声かけた?報酬はどうしたんよ。暴食鼠と巨大黒蟲の報奨金でちょっと余裕あるからロハ?はー、はいはいなるほどなるほど。

 君めっちゃいいやつだな!それに付き合う一党も!いや一党のメンバーがいい人なのは分かってるけど!

 

 まあそれはそれとして一発殴っちゃダメ?籠手外すからさ。

 

 はー、めっちゃ焦って損した。と言うか損しかしてねえぞこれ。昇級審査ブッチしたし。まあ無事でよかったのは確かだけどさ。

 そして後ろで首かしげてるから、本気で偶然の産物っぽくて騙したなと怒る事も出来ない。感情の行き場がない。鉢巻き君を本当に殴るわけにもいかないし。

 疲れたし、キリもいいので今回はここまでにします。次回はどうなるんだろ。

 滅茶苦茶ヒロイックな場面がほぼ確実に来る?じゃあ次回はそのイベントが始まる辺りからになると思います。

 それではご視聴ありがとうございました。

 




女闘士ちゃんは太くて硬くて暴れっぱなしな棒を手に入れた!

今回救出した相手は原作1巻でゴブスレさんの装備が汚い、って言ってた新人たちです。
章の最後で「ゴブリン退治に向かった新人達はついに帰らなかったのだと聞いた」って言われるやつですね。
漫画版だとその描写はなかったので、無事成功したかそもそも向かわなかったものだと思われます。


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女闘士・3 裏

Q.スクライド好きなの?
A.大好きさ!漫画版が!


「ゴブリン退治の依頼を単独で受けるのは、ちょっと……危険ですので、一党を組む事をお勧めしますが」

「いや、1人で受けるよ。規定違反と言うわけではないのだろう?」

「それはそうですが……」

 

 渋る受付嬢の言葉に、女闘士は断定するように単独(ソロ)での受注を主張する。そう、彼女の言う通り規定違反ではない。

 これを規定違反とするなら、ギルドはあの小鬼殺しに対して五年間も規定違反を見逃した揚句、銀等級にまで昇級させたということになってしまう。

 だから彼女が単独で受けた所で何ら悪い事はない。しかし、問題は彼女が新人だと言う事だ。

 群れの規模や運次第では6人の新人一党(パーティー)が全滅する事も珍しくない。それを1人、しかも女性がこなそうと言うのだから……

 

(とはいえ、それも前例はいっぱいあるから止め難いんですよね……)

 

 それこそゴブリンスレイヤーなどは初依頼からしてゴブリン退治、それも単独で受けてやりきったのだ。しかもシャーマンやホブのいる、20を越える規模の群れを。

 その時に依頼の受注業務をこなしたのは他ならぬ自分だ。つまり、受付嬢は前例をこの目で見るどころか関わってすらいるのだ。それを考えれば忠告は出来ても拒否など出来ない。

 そもそも冒険者とは自己責任の生業だ。どんなに無謀な冒険であっても、本人がやろうというのなら職員に―――――否、何人にも止める権利などは存在しない。

 無論信用が重要となる依頼となれば話は別だが、これはゴブリン退治だ。ゴブリン退治なのだ。新人にこそやらせるべきと言ってしまえばそれまでの依頼なのだ。

 

「危険な事は承知しているよ。初めての依頼で経験しているしね」

 

 だからこれでも群れの規模を厳選したのだよ、と言う女闘士の言葉に受付嬢は内心で同意する。確かにこの依頼内容からしてどんなに多くても10もいない群れだろう。

 大柄なゴブリンというのも恐らく田舎者(ホブ)だろう。新人が単独で討伐するのに危険はあるが不可能という程の規模ではない。

 しかしそれでも、と思ってしまう。どんな依頼でも危険はつきものではあるのだけれど、ゴブリン退治、それも女性が……

 

「……分かりました。でも、くれぐれも気を付けてくださいね?」

「勿論。失敗した時は良くて死ぬだけと言うのは理解しているからね」

 

 思う所はあれど、結局冒険者の意志を尊重するしかない。受付嬢は忠告こそしたが、結局は女闘士に依頼を割り振る。

 実のところ、心配なのはゴブリン退治の危険性だけではない。女闘士自身にも―――――こう言うと語弊があるが―――――懸念があるのだ。

 先日のゴブリン退治において、彼女の働きはかなりのものだった。装備がいい、ということもあるだろうが優れた筋力を活かし見事な働きを見せた。そう彼からも一党の仲間からも報告を受けている。

 だが問題となる点がどうしても一点ある。彼女はゴブリンの子供達を率先して―――――あのゴブリンスレイヤー以上に速く、躊躇なく殺した。そう報告を受けている。

 その行動といい、その後の救出された女性達への対応といい、彼女の過去に何かあった事は想像に難くない。正確な内容は分からないが、恐らくはそういう過去があるのだろう。

 当たり前だがその過去そのものは問題ではない。問題はその過去が彼女の行動に及ぼす影響だ。

 冷静さを欠き、窮地に陥りはしないだろうか。感情に振り回され、過激すぎる行動に走らないだろか。それは彼女の身のみならず、冒険者という職業全体への評判や近くの集落に住む人々の安全にも繋がる。

 退治すればいいのだろう、と考えなしに火やら水やらを使い、周辺の環境そのものをダメにしてしまう冒険者も稀にいるのだ。

 消火の事など考えず己に秘策ありと火攻めを行い、危うく森を焼け野原にしかけた冒険者だっていなくはない。

 そんな事をされるぐらいなら、被害の規模で言うならまだゴブリンを放置した方がマシですらある。

 

「くれぐれも気を付けてくださいね?」

「ああ。ありがとう」

 

 ありとあらゆる心配事が積み重なってはいるが、結局出来るのは見送って無事戻って来るのを祈り出迎えるだけ。

 偉丈夫の如き彼女の背中を見ながら、受付嬢は深いため息を一つ漏らす。だがそれに構っている暇も無く、すぐ次の業務へと取りかかった。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 そういえば投石杖(スタッフスリング)の練習は怠っていたな、とあらぬ方向へ飛んで行った石弾を見ながら女闘士は兜の下で舌打ちをする。

 棒立ちだったり倒れ伏して動かぬ相手には当たるが、動く相手―――――自分に向かって突撃してくるゴブリン相手には狙いが定まらない。

 これも鼠や蟲相手に練習しておくべきだった。自分の怠慢を呪いながら戦嘴(ウォーピック)を両手で握り締め、ゴブリンに背中が見えるほどに身体を大きく捻る。

 そして両足をその場に根を張るように強く踏みしめると、腰から動かし始め背中を伝って肩、そして腕と身体全体の動きを意識しながら一気に振り抜く。

 遠心力と筋力によって生き物の咆哮の如く唸りを上げながら戦嘴が振るわれる。その一撃は間近に迫っていたゴブリンの首を貫くとそのまま刎ね飛ばし、隣にいたもう一匹の小鬼の首も抉り取って見せた。

 それを見た小鬼達は、こちらを獲物ではなく恐ろしい怪物を見る目になる。そして躊躇う事なく武器を捨て悲鳴を上げながら逃走しようとするが、女闘士はそれを見逃してやるつもりはない。

 少なくとも彼女の中に、この生き物を生かしておこうと思う気持ちは欠片もない。

 

 否、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 無言で走り出し、小鬼を追いかける。洞窟に逃げ込んだ方には目もくれず、健脚と体力によって装備の重さも感じさせぬほどの速さで小鬼に迫る。

 体格がいいと言う事は、脚の長さが違う。脚の長さが違うと言う事は一歩の大きさが違う。であるならば脚の回転によほどの差が無い限り、大きい方が速い。

 当然の理屈に従い女闘士はゴブリンに追いつくと、躊躇なく逃げるその後頭部に戦嘴を振り下ろす。鋭い切っ先を持つそれは確かな手応えをもって小鬼の頭蓋を砕き、その命を容易く奪い取った。

 後は洞窟の中の相手だけだ、と振り返った女闘士の眼に映ったのは、群れの長と思しき巨漢のゴブリン――――――田舎者(ホブ)が洞窟から出てくる姿だった。

 肩に大金棒(モール)を担いでいる姿は正しく野蛮そのもので、どういう生き物なのかを全身で主張しているように見える。

 その足元では先程洞窟に逃げ込んだ小鬼がまるで喧嘩に年長者を連れ出してきた子供のように騒いでおり、強者の―――――少なくともその小鬼にとっての強者の威を借る姿は女闘士の殺意を煽った。

 殺してやる。大金棒の一撃は強力だ。武器で受けることすら危険だろう。殺してやる。籠手で受ければ命は助かるだろうが腕は無事では済むまい。殺してやる。殺してやる。

 相手の一撃を何とか避けて、殺してやる。あるいは先手を打って相手が大金棒を振るより早く接近して、殺してやる。

 頭は戦い方を考える。心は殺意に満ちる。それでいい。

 いずれにせよある程度間合いを詰めよう。ギリギリの間合いで先手を取るか取らせるか決める。そう考えて歩を進め、距離を詰めていく。

 大金棒の間合いまであと一歩。そこで脚を止めようとした瞬間――――――

 

 突如、ゴブリンが勢いよく飛んできた。

 

 反射的に戦嘴を振り、迎撃する。小鬼の顔面に猛禽の嘴を思わせる鋭い切っ先が叩き込まれ、顔を貫き脳を破壊する。

 それと同時に田舎者がこちらへと踏み込んできている事に気付き、反射的に戦嘴を手放し腕を顔の前へと掲げる。ギリギリで防御が間に合ったが籠手の上から強かに腕を殴られ、女闘士は吹き飛ばされるようにして地面へと倒れ込む。

 起き上がろうとするより早く相手が自分の上に圧し掛かって来る。馬乗りになられ、マズイと思うのと同時に顔面へ再び痛烈な一撃が入る。

 目の前で火花が散って視界が歪む。それは彼女にとっては馴染み深いとすら言える状態。女闘士は知っている。この後どうなるかを。

 男と言う生き物がこの後女性をどうするかを、女闘士はよく知っていた。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 押し倒した雌に馬乗りになりながら、群れの長たるホブゴブリンは下卑た笑みを浮かべ舌舐めずりをした。

 役に立たない部下を使い捨てたおかげで、頑丈で肉付きのいい雌が手に入った。いい装備も持っている。長である自分に相応しい装備だ。

 部下は皆殺しにされたようだがあんな奴らはどうでもいい。大きくて強い自分がこの雌に優秀な子供を沢山産ませて、またもっと立派な群れにしてみせる。

 それに自分は仲間を殺されたのだ。この雌に子供を産ませて使えなくなったら食べる権利がある。つまり自分の行いは全て正当なものだと、田舎者(ホブ)は心の底から信じていた。

 もっともそれはゴブリンという生き物全てがそうなのだが。

 まずは鎧を剥ぎ取らねば。本来ならこんな面倒な事は部下にやらせるのだが、全員殺されてしまった。本当に使えない奴らだった。

 とりあえず抵抗されないよう、死なない程度に殴り付ける必要がある。2、3発も殴ってやれば雌は大人しくなるはずだ。

 そう考え腕を引いた瞬間、田舎者は突如自分の背中が何者かに押された―――――ように感じた。少なくとも彼の主観では間違いなくそうだった。

 腕を振り上げたせいで姿勢が不安定になり、その瞬間女闘士が腰を跳ね上げたせいで自分が前のめりに投げ出される。そんな技術などゴブリンは知らない。

 あくまで「誰か」のせいで雌の上から退かされたと思い込んでいる彼は怒りながらも、もう一度雌を組み敷こうと振り返る。

 

 だが振り返った瞬間、雌が飛び付き腕と脚とを自分の身体に絡めてきた。

 

 馬鹿な雌だ、とほくそ笑んだのも一瞬。首に回された腕によって気管が圧迫され、呼吸が出来なくなる。身体を離そうにも雌の脚が胴に巻き付き、逃げる事が出来ない。

 何が起きたのか。何故こんな事になっているのか。田舎者には理解が出来ない。どうすればいいのかも分からない。

 とにかく首を絞める腕を引き剥がそうとするが、尋常ではない力で締め上げられており容易に剥がす事が出来ない。

 なら地面に叩き付けてやろう、と考えた所で、グチッという音が彼の耳に響いた。

 それが気管の潰れた音だと知る事なく―――――

 彼の意識は急速に遠のいて行った。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 大きく肩で息をしながら、意識を失い倒れ伏した田舎者(ホブ)を女闘士は見下ろす。

 自分を犯そうとするものに圧し掛かられた時にどうするか、素手でどう殺すかをあの牢の中で考えていたのが役に立った。これほど体格の良い相手に使う事になるとは思ってはいなかったが、考えていた以上の効果を発揮してくれた。

 本来使おうと思っていた相手ではないが、どちらも抵抗出来ない女を犯し己の欲望を満たす下衆だ。そこに何の違いもない。

 であるならば、やる事はただ一つ。

 

 底に鉄板を仕込んだ靴は考えていた通りの効果を発揮してくれた。

 田舎者の首は枯れ木を踏んだ時のような音を立てて容易く折れ曲がり、あらぬ方向を濁った瞳で見つめるだけとなる。

 この手合いの命を奪う事が面白いとは思わない。その代わりに生命を奪う事への呵責もない。ただ、ほんの少しだけ自分の中の何かが満たされる。

 だから確実に死んだ以上、攻撃する気はなく。田舎者の死体にはすぐに興味を失い、女闘士は視線を外す。それはもうどうでもいいものだ。

 大事なのは次だ。次の同類を、自分の感情が敵とする相手を。まだ生きているそれを殺すのだ。

 

「先走り過ぎているな……」

 

 心だけでなく頭の中まで殺意で染まりかけている事に気付き、女闘士は首を横に振る。頭の中までそれに支配されたら視野が狭くなる。

 それで自分が死ぬのは構わないが、相手を殺し損ねるのは困る。頭の中は冷静でなくては。

 周囲を見渡し、敵がいない事を確認してから兜を外す。唇は切れたが歯は折れていない。これならば問題ないだろうが、念のために治癒の水薬(ヒールポーション)を飲んでおく。

 その時フッと田舎者が持っていた大金棒(モール)に目が行った。自分に対して使われる事はなかったが、間違いなく強力な武器だ。そして古いわけでも作りが雑で使用に耐えられない訳でもない。

 地面に打ち捨てられていたそれを両手で掴み、軽く振り回す。重くはあるが自分の筋力ならば充分使える。二度三度振って体力が尽きるような事はない。

 そして唸るような音を上げながら空気を裂く大金棒は何とも頼れる武器に思える。いや、実際頼れるはずだ。

 大物過ぎて洞窟や閉所で振り回すには不都合。重く持ち運びも楽ではない。だが、それを補って余りある武器だ。少なくとも自分にとっては。

 頭の中にゴブリンを、下劣な男を大金棒で打ち砕く自分の姿が浮かぶ。それが現実味のあるものだと判断した時、彼女の心は決まった。

 きっと神は自分にこれが合うと、これを使えと言いたくてこの依頼を選ぶよう託宣(ハンドアウト)を寄越したのだろう。

 であるならばこれで敵を殺す事こそが神への感謝の証となるだろう。なんとしても使いこなさねばならない。そう思いながら、女闘士は慎重に洞窟の中へと入って行く。

 一匹たりとて生き残らせはしない。生き残りがいる可能性を潰さねばならない。

 それだけは頭も心も意見が一致していた。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 つむじ風か何かのようだ、と監督官は女闘士の奇行を見て思った。

 昇級審査の為に談話室で話をしていたはずが、突如立ち上がり託宣があったと部屋を飛び出す。気になって後を追えば受付で何やら話を聞き、一目散に何処かへ駆け出した。

 受付をしていた同僚に話を聞けば、ゴブリン退治に向かったという新人一党(パーティー)の話を聞いて突如出て行ったそうだが……

 

「神様のお告げじゃ仕方ないなあ」

 

 本来なら論外に近い行動ではあるのだが、託宣(ハンドアウト)の重みは至高神に仕える神官でもある彼女には痛いほど理解できる。

 世の決まりや人と人との関係を疎かにしていい訳はないが、さりとて神の言葉を無視するというのもありえない。そう考えると彼女の行動は褒められはしないが、咎めるわけにもいかない。

 後日改めて話をして、軽く注意するのが適当なところだろう。

 

「大丈夫でしょうか、彼女」

 

 受付をしている同僚が憂鬱そうに呟く。その言葉には様々な心配が詰まっているのが感じられる。

 女闘士は明らかに体調が思わしくなさそうだった。風邪とはまた違う―――――恐らくはそういう日なのだろう。同じ女性である監督官には察せられた。

 それに加え、明らかに女闘士はゴブリン―――――と言うよりも、小鬼のように「女性を穢し楽しむ相手」への憎悪を持っている。

 それは同性として許せないだとかそういったものでなく、もっと深い何か―――――それこそ己がそういう目に遭ったから許せない、生かしてはおけないという類の憎悪だ。

 先日のゴブリン退治においても、報告する態度こそ淡々としたものだったが内容の端々から怒りや憎しみに近い物が発せられていた。

 そこから憎悪に囚われて判断を誤るのではないか、と心配されるのは当然の事で。まして体調が思わしくない状態で、恐らくは新人一党を助けるために飛び出して行く。

 目の前の事も、この先の事も。二重三重に心配になって来るのは大いに分かる。

 

「気にはなるけど、気にしたって仕方ないでしょ」

 

 冷たく思われる事もあるが、ギルド職員と冒険者の関係はこれが全てだ。相手の過去など知らないし、聞き出す義務も無ければ権利も無い。

 よほど等級に見合わぬ依頼でもない限り、依頼を受けさせない権利も無い。自分達はただ依頼を斡旋し、多少の忠告や助言を行う。それだけなのだ。

 ましてや今回女闘士は依頼を受けたわけでもなく、自分の意志で―――――恐らくは新人一党の元へ向かったのだ。誰が止める権利を持つと言うのだ。

 自己責任と引き換えに冒険者は自由意志を持っているのだから。

 これが気に入らない、もっと何とかしてくれと言うのならば冒険者はこちらの言う事に従うのが義務になる。

 自由という権利を保持したまま義務は増やすな、世話は焼けなどとふざけた事が通るわけがないのだから。

 そんな甘ったれはハナから冒険者になどなるな、と熟練の冒険者達なら拳骨の1つや2つも落としながら言うところだろう。

 冒険者は自己責任。こちらはこちらの仕事をきちんとやって、その範囲の中でしてやれることをしてやるだけ。

 それが冒険者とギルド職員の間での黄金の約定(ゴールデンルール)というものなのだ。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 上手く行ってよかった。心から剣士は安堵し、大きく息を吐きながら洞窟の出口へと歩いて行く。

 

「上手く行ってよかった……」

「罠にも気付けたし、今の私達の力量(レベル)からすると完璧だったんじゃないかしら」

 

 女武道家が自分と同じようにホッとした様子を見せ、女魔術師は少し疲れた表情をしながらもその豊かな胸を誇示するように胸を張る。

 罠に気付いたのもシャーマンを仕留めたのも彼女なのだから、そのぐらいはしたくなるのも分かる。

 その後ろ、自分達より3歩ほど後ろを歩いている新人の一党―――――自分達も新人なのだが―――――は気落ちした様子を見せ言葉も発しないが、無理もないと剣士は内心同情する。

 剣士一党はたまたまギルドで彼らがゴブリン退治の依頼を受けているところを目撃し、どうしても放っておけず今回無理に随行した。

 決して報酬が高くないことと、自分達だけでも出来るという自信から彼らには同行を渋られた。しかし先日暴食鼠(グラトニーラット)巨大黒蟲(ヒュージローチ)を退治したことで懐が温かった事が幸いし、自分達の取り分はいらないと言う事で何とか臨時の一党を組む事が出来た。

 彼らからすれば余計な世話を焼く連中、しかも自分達と同じ白磁の癖に何を先輩面しているのかと面白くなかったことだろう。

 こちらの力など借りず上手くやってやる。自分達の力を見せつけてやる。そんな風に考えていたのだろう。実際神官戦士が見張りのゴブリンを弩で仕留めた時は、明らかに表情にそれが出ていた。

 だがそこまでだった。彼らはゴブリンの仕掛けた簡単なトラップに気付かず引っかかりそうになり、頭目である新人戦士は武器を壁に引っ掛けゴブリンに袋叩きにされかけた。

 神官戦士は焦ってゴブリンと近接戦になっているのに弦を引き上げようとし、魔術師は考えなしにすぐ呪文を撃って使い切ってしまった。

 もし自分達がいなければ、彼らはそれで終わりだったろう。その現実を認識したなら、気落ちするのは無理もない。

 それを笑おうとは思わない。いや、笑う事など出来ない。自分達もそうだったから。

 ゴブリンは最弱の魔物。そんなものに負けるなどありえない。すぐに、楽に終わるはずだ。そう考えていた。

 

(知らなければ、そうなるよな)

 

 いや、最弱の魔物というのは間違っていないのだ。一匹二匹なら村にいた頃の自分ですら追い払えたのだから。

 だが、その認識が全てではないのだ。

 ゴブリンは罠を仕掛ける、毒を作って使う事もある、複数で囲もうとしてくる、洞窟なら横穴を掘って奇襲をかける事もある、体格の大きなホブや魔法を使うシャーマンもいる……

 そんな事は、新人冒険者は知らないのが当たり前なのだ。一々ゴブリンに対してそれほどの知識を得ようと思う冒険者などいない。

 自分達だって女神官を誘っていなかったら。彼女の頼みで、女闘士を誘っていなかったら。彼女が装備を調整している時間と、洞窟前で相談をしている時間がなかったら。ゴブリンスレイヤーが来るのがもっと遅かったら。

 恐らく―――――いや、間違いなくあの洞窟で全滅していた。それぐらいの事は剣士にだって解っている。

 だからこそ彼らの事が放っておけず無理矢理についてきたのだ。

 自分達のようにゴブリンを侮り、何とかなるとタカをくくり、回復も出来る神官戦士が一党にいるからとたった三人でゴブリン退治に挑もうとしていた彼ら。

 それはまるであの日の自分達を見ているようで、どうしても声をかけずにいられなかった。

 きっと女武道家も女魔術師もそうだったのだろう。彼女達も自分の行動に文句を言う事なく、何の利益も得られないというのにゴブリン退治についていく事に賛成してくれた。

 自分達は運良く生き残った。運良く助けてくれる「誰か」に出会えた。なら次は自分達がその「誰か」になるべきだ。

 勿論ゴブリンスレイヤーのように経験や知識があるわけではなく、女闘士のように優れた筋力や良い装備をしているわけではない。ほんの少し経験を積んで身の程を知った新人冒険者に過ぎないのだけれど……

 少なくとも剣士は、剣士一党はそう思ったのだ。自分が助けてもらったのだから、次は自分が助ける側に回るべきだと。

 今後ろで沈んでいる彼らもきっと、そうなってくれるはずだと剣士は信じている。気持ちの整理さえつけば自分達が未熟である事をハッキリ認識し、自分達のようにそこから成長して行こうとしてくれるはずだと。

 そしていつか、誰かを助ける側に回るはずだと。

 

(きっと彼女もそうなんだよな)

 

 洞窟の出口で鎧兜に身を固めた女性―――――女闘士の姿を見た時、剣士はそう確信した。何故いるのかと驚きはしたけれど、彼女が来ている事に不思議と納得した。

 きっと彼女も助けたくて来たんだろう。救いたくて来たんだろう。

 あの洞窟での行動もそうだった。彼女はきっと、人を救いたいのだ。

 その中にはそうあって欲しい、という自分の願望も入っているけれど―――――

 間違ってはいないはずだと、剣士は確信していた。

 




活動報告の方で皆様の意見をお伺いしています。

Q.退治のための無茶な行動はゴブスレさんもやってるのでは?
A.エルフの砦焼いた時は消火の算段はあるって言ってたので、考えなしにやってはいないはずです。
水の都でも《隧道》は水路に問題を発生させると聞いて断念してましたし。

Q.女闘士ちゃんはどういう体勢でホブの首絞めたの?
A.いわゆるだいしゅきホールド状態でフロントチョーク極めました。


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女闘士・4

作中の友人のモデルとなったリア友と「女闘士ちゃんの胸と尻、どっちで殺されたいか」で喧嘩したので初投稿です。


 なんだろう、魅力的は魅力的なんだけど雄々しさを感じる。

 

 はい、それでは今回も始めていきます。このロイヤルメスゴリラ尻のドアップはサービスなのでじっくり眺めていってください。

 ちなみに有酸素運動では尻は引き締まらないそうです。引き締めたいならやっぱ筋トレ必須。おススメのトレーニングはスクワットです。

 この尻の下敷きになりたいとか思った人は友人の同類なので、あの世で女闘士ちゃんに詫び続けてください。サービスで彼女が希望した技で仕留めてくれます。

 

 さて今回はですね、前回の最後に言ってたイベントの前に練習とお披露目を兼ねて大金棒(モール)を振り回しに行こうと思います。

 行き先は勿論下水ですよ。ゴブリン退治はですね、依頼内容の厳選が必要になるんで面倒です。内容選ばないとなると、ソロ以外だと本当に割に合わないです。

 下手すると一日二日移動しないといけなかったりする上に、シャーマンの有無や数次第で危険度が跳ね上がるんですよ。報酬額は上がらないのに。

 ソロでやる分にはそれなりの稼ぎではあるんですけど、移動時間と危険度を考えたら断然下水です。

 このゲーム、やればやるほどゴブスレさんの異常さが分かって来るな……

 

 

 

 う~練習相手練習相手。今練習相手を求めて彷徨っている彼女は下水に通うごく一般的なロイヤルメスゴリラ。

 強いて違う所をあげるとすれば大金棒の性能に興味があるってとこかナ―――名前は女闘士。

 そんなわけで初心者御用達である巨大鼠(ジャイアントラット)退治にやって来たのだ。

 

 ごく一般的なロイヤルメスゴリラってなんだよって?ロイヤルメスゴリラはロイヤルメスゴリラだ。それ以上でもそれ以下でもない。

 ジャスタウェイだってジャスタウェイであってそれ以上でもそれ以下でもないだろ。

 

 しかし鼠出ないな……もっとエンカウント率高かった気がするんだけど。出て欲しい時に限って出てこない。物欲センサーの亜種かな?

 あ、下水依頼に関して一個だけ注意点が。稀になんですけど、Gは上から来ます。天井に張り付いて滑空してきます。ビジュアルが凄いアレな事になるので気を付けてください。

 あっ、鼠いた!しかもお前暴食鼠じゃねえか!今回のプレイでは初だな!

 よーし大金棒試すのに格好の相手だな!女闘士ちゃんの太くて硬くて大きい棒でブッ潰sああああああファンブル出したァァァァァ!外したぁぁぁぁぁ!そして転んだぁぁぁぁぁ!

 やっべまたマウント取られた!今回はシンプルに命がヤバい!うおおおおお耐えろおおおおお!あっそうだ頭突き!オラァ!

 よっしゃ怯んだ!死ねぇぇぇぇぇ!

 

 鼠がゴリラ相手に勝てるわけねえだろうがよ。(震え声)

 

 頭突きで迎撃して辛うじて脱出して、槌鉾(ヘビーメイス)でタコ殴りにすることで勝利しました。大金棒?奴はこの戦いにはついてこれなかった。

 思いっきり頭突きしたんで視界が揺れてますね。ちょっと待機しましょう。はー疲れた。俺、毎回下水で苦戦してる気がするんだけど何?俺と下水の相性が悪いの?プレイヤーに問題があるの?

 よし、視界戻った。暴食鼠の歯を回収したら次行きましょう。今度こそ、今度こそ大金棒を試すんだ。

 鼠、鼠ー。千葉県なのに東京って名前の施設にいるアレー。

 あ、いた。よし今度こそ頼むぞマジで。【強打・殴】を使用して、食らえ!

 

 さっきまで鼠だったものが辺り一面に散らばる!

 

 いや、多分揺り戻しで今度はすげえイイ感じの出目だったんでしょうけど、なんて言うか鼠が弾け飛びましたね。威力強すぎない?

 テラフォーマーズでイザベラがやられた時みたいな感じになってます。

 あまりにあれなのでモザイクかけてます。ちょっとこれはセンシティブ過ぎる。

 あ、今後もこっちの判断でセンシティブ過ぎるなって思ったらその都度モザイクかけますのでご了承ください。あんま見たくないけどゴブリンにアレされてる女性とかね。

 とりあえずまあ、一回見せたからいいですよね。それじゃ前回言った次の救出イベントまでカットします。

 

 

 

 はい、と言うわけでイベント発生直前まで進めました。

 あの後蟲退治の依頼で巨大黒蟲も倒しまして、ソロでゴブリン退治成功プラス変異種二体討伐なら功績充分ってことで黒曜に昇格しました。イエーイ。

 昇級試験は絶対にあるわけじゃなくて、功績が充分なら一党で動いた事なくても昇級可能みたいです。ちょっと必要な功績が多くなるとかその程度で。

 あとレベル上がりました。これで冒険者レベル3です。貯めておいた経験値で戦士レベルを一気に4まで上げました。

 技能は【頑健】を習熟にしました。これで生命力が30となり、かなり死ににくくなりました。

 今後どういうイベントをこなすにせよ、多分盾になる機会があると思うので生命力は大事。じゃあなんで【護衛】取らないのかって?

 ほら、努力目標と言うか……正直女闘士ちゃん死なせてまでNPC救う気はないから……

 

 それでどの依頼を受ければ?ん?依頼を受けずに最近のゴブリン退治の依頼だけチェックしろ?

 言えば受注済みの依頼も見せてくれるんだ。ふーん。

 

 受注済み(依頼受注者:ゴブリンスレイヤー)

 受注済み(依頼受注者:ゴブリンスレイヤー)

 受注済み(依頼受注者:ゴブリンスレイヤー)

 受注済み(依頼受注者:ゴブリンスレイヤー)

 受注済み(依頼受注者:ゴブリンスレイヤー)

 受注済み(依頼受注者:ゴブリンスレイヤー)

 

 うん、知ってた!たぶん視聴者も全員知ってた!

 

 あ、別の人が受けてるのあった。えーと、攫われた女性の救出とゴブリン退治か。人攫うってことはそこそこの規模の群れだな。

 あ、これ?受けたの新人じゃないけどコレなの?まあそうか、新人じゃないから危なくないってわけではないもんな。

 えーと、只人(ヒューム)戦士、只人僧侶、森人(エルフ)魔術師、圃人(レーア)野伏の一党か。全員女性だけどまあこのゲーム男女で能力値の違いはないもんね。

 出来れば前衛がもう1人欲しい所だけど、バランスいい一党じゃん。

 

 うん?この一党助けて上手く立ち回ればハーレム作れる、って公式が言ってた?ふーん。

 でも今回プレイヤーキャラが女性だから関係ないな。

 

 でもこの一党で死ぬって事は中々ヤバい案件なのでは?数が多いだけじゃなくてヤバいのいない?数だけ?本当?

 まあ数だけなら何とか……別に倒しきらなくても救出して逃げていいわけだし。で、依頼は……あ、依頼じゃなくてまた勝手な行動か。了解。

 すいませんね受付さん。依頼見るだけ見て受けないとか面倒なことして。じゃ失礼します。

 目的地は……うん、歩いて行けるな。そこそこ懐暖かいから馬車でもいいけど節約しよう。

 今回は体調も万全だし、問題ないでしょう。それじゃ目的地までカットします。

 

 

 

 着きました。着きましたけどちょっと待って。なんか騒がしくない?

 いや戦闘してるから騒がしいのは分かるけどさ、これはヤバくない?砦中騒いでない?今からここに突入するの?割と暴挙じゃね?

 ところで彼女らはどこいるの?最奥?致命的じゃね?

 ほうほう。罠発動させてしまって砦中のゴブリンに襲われてる状況だと。ふざけんなバーカ!絶対そうなる前に何か出来たパターンだろコレ!

 漫画版だと厳しいけど原作ルートっぽいから、ここから小一時間ぐらい粘るはずなので作戦考える暇はある?うっせバーカ!あばばばば!

 突っ込んでも一緒に囲まれて犠牲者が1人増えるだけじゃねーか!何とかゴブリンをこっちに引き付けて脱出してもらわないと話にならねー!

 単独だからこっち狙ってくるか?いやでも向こう魔術師とか僧侶いるからそれが狙われたら危ないんだよな。もっと確実に……

 

 あー、閃いた。閃いたけどこれいいんだろうか。二重の意味で。いやでもこのゲームだしな……最悪モザイクかけるか。迷ってる時間はない、やるぞ!

 

 ほらこうなると思ったよ!胸甲外して鎧下脱いでシャツのボタン外したらこうなるよな、このゲームだと!

 まあ一応R-15の範疇ではありますが、モザイクかけます。消されたくないので。って言うか、胸丸出しで兜被ってるとかどういう嗜好だよ。

 女闘士ちゃんは今回胸と恥を晒したまま戦う事になるが、これも葦名のため……イクゾー!

 胸に一撃食らったらアウトとかひでえ難易度だけどな!

 

 オラア!見世物じゃねえぞゴルァ!大金棒ぶつけんぞ!

 胸以外の箇所と尊厳へのダメージは覚悟して突っ込んで来てんだよこっちは!多少石ぶつけられた程度じゃ怯まんわ!

 そして予想通り肉に惹かれてこっちにヘイトというか欲望が集まってる!タゲ取れてる!肉は肉でも筋肉から生み出される一撃を食らえ!

 罠にかかってゴブリンに囲まれた冒険者を助ける者はいない?

 

 いるさっここにひとりな!!

 

 ゴブリンの頭部にヒューッ!っと音を立てて大金棒をシューッ!超!エキサイティン!

 はい君ら助けに来たからさっさと逃げるよ!一見すると痴女が乱入してきたように見えるだろうけど逃げるのが先!考えるのは後!

 そうはよ逃げて!こいつら目先の巨乳しか見えてないからこっちばっか集まって来るから!とりあえずそっち先に逃げて!

 あああああジワジワ生命力削られていく!そりゃそうだよな胸以外の部分も食らえば多少ダメージ通るもんな!衝撃は通るもんな!

 すいません引き分け、引き分けで手を打ちませんか!ゴブリンさん引き分けで手を打ちませんか!お互いここで停戦しませんか!和解出来ませんか!

 出来ませんよねえええええ!ちょっやめてくださいよ、ムカつくんじゃ、殺すぞ!

 ほら大量に仲間死んでるんだよ!命を大事にしようよ!大事にしろって言ってんだろぶっ殺すぞ!(錯乱)

 シン!!!!!この馬鹿野郎!!!!!ゴブリンは俺を殺そうとしている!!!!!ゴブリンは敵じゃない!!!!!鉢巻き君を洞窟で自爆させる!!!!!(アスラン)

 

 入り口、砦の入り口まで逃げれた!結構ヤバいけどここまで来れた!でも正直これは逃げ切れないかもしれnありがとう名前も知らない人達ぃぃぃぃぃ!

 助けに来たはずが助けられた!あっ、《小癒》ありがとうございます!死なずに済んだ!はい、いったん逃げます!あーばよー銭形のとっつぁん!追って来るんじゃねえよぶっ殺すぞ!オラァ!

 考えずに追いかけてきて隊列が伸びてるから、一対一どころかこっちのが多数で囲めるんだよ!勝手に幕末式戦闘法にハマってんじゃねえか!馬鹿かお前らは!

 さっきはよくもやってくれたな!命乞いなんか聞かねえよ!さっき停戦を申し込んだ?記憶にございません。

 

 ハン、他愛ねぇ奴らだったな(過去最大級の震え声)。

 

 ゲホッ!すいませんちょっと、グェッホ、ゲホッ!叫びすぎて喉痛い。

 多分大部分は殺したっぽいです。少なくとも向かってくる奴はいないんで、ちょっと装備つけ直します。

 さっき外す時はカットしましたが、軽鎧はゲーム内時間で10分、重鎧は30分着脱にかかるんですよ。ごめんちょっと君達見張りしてて。襲われたらヤバいから。

 よし。装備し直したのでモザイクを外せますね。ありがとうモザイク。時給はちゃんとスイス銀行に振り込んでおくからな。

 それじゃ治癒と強壮の水薬飲んで、態勢整えたら残党狩りします。本当はすぐしないと逃げるらしいんですが、流石に今回即掃討戦は無理!

 

 あ、それとモザイク取って女闘士ちゃんのゴリラ成分のないロイヤルなメス部分が見たいと思った人。

 俺が某SNSでかけられた「ボイジャー君の宝具の台詞が途中からクルーゼに変わる呪い」をかけておくので反省してください。

 

 僕は導く、人の夢、人の望み、人の業!他者より強く、他者より先へ、他者より上へ!競い、妬み、憎んでその身を喰い合う!

 

 よし、無駄話で落ち着いた。俺が。それじゃ張り切って残ったゴブリンを皆殺しにしていきましょう。そこの君らも手伝ってね。

 まだ逃げようとしてないといいな。

 

 3匹ほど逃げ遅れを殺しましたが、どうも何匹か逃がしたっぽいですね。しくじったなあ。

 ゴブスレ先生からゴブリンは皆殺しにしろと習ったのに。

 まあでも今回救出そのものには成功したので、ヨシ!逃げたゴブリンはいずれゴブスレさんにスレイされることでしょう。

 後ろの邪悪の化身(友人)も満足そうですし。お前本当に適度な窮地で他人が必死こいてるといい表情になるよな。

 自分が格ゲーで同じ状態になるとゲーミングお嬢様になるくせに。

 

 いや格ゲー中は今回の俺の比でないぐらい口悪いからね?反省して?

 格ゲーのプレイヤーに対して、物凄い偏見を抱くぐらい口悪いからね?大学のテニスサークルと同じぐらい偏見を抱いたからね?

 

 さて救った人達の名前は……貴族令嬢って表示されてますね。めっちゃお礼言ってくる彼女達と一緒に帰還します。

 彼女達からすると、ゴブリン退治に来たら攫われた娘はもう息が無く、罠にかかってゴブリンに囲まれ絶体絶命。

 そこに現れたのは胸丸出しなのに他はフル装備で大金棒振り回すロイヤルメスゴリラ。彼女に助けられ何とか全員無事で終わる。

 

 なんだこの状況。イカれてるのか。

 

 

 

 というわけで無事帰還しました。いやークッソ疲れた。

 これだけ疲れたのにロハな上システム上経験値も入らないってのはどうなの、って思ったけど普通は依頼で救出するんですよね。終わってから知らせやがってこの野郎。

 それじゃ依頼達成の報告をする、というか報告に付き合いましょう。こっちは依頼受けたわけではないんですけど、内容確認の為に付き合う必要があるみたいです。

 これ外から見たらどう見えるんだろうなー。ある種の狂人かよくてすげえ変な奴だよなー。

 報告終わったら装備を整備に出して、2日ぐらいは休みですかね。消耗してるし。金稼いどいてよかったー。

 あ、宿泊先ですがギルドの個室に変えてます。消耗や疲労の回復が早いので。あと女闘士ちゃんは個室に泊まっても収支が黒字なので。

 宿の部屋は料金と回復量のバランスで考えた時、どれを選ぶのが一番いいんでしょうね。同性4人の一党なら多分4人部屋を一党で借りるのが一番なんでしょうけど。

 馬小屋?ハハッナイスジョーク。アレ一回泊まりましたけどマジで回復量微妙でしたよ。

 

 それで次は……えっ、後は小鬼王戦での死者を抑えるだけ?じゃあ後は実質自由行動時間か。

 あ、でもアニメルートとかだと何か変わったりするんじゃ……どのルートでも特に死者が増えたりはしない?マジで?やったぜ!

 今回みたいな戦いがまた延々続くのかなって思ってたから……

 いやホント今回このゲームに慣れてたから操作で何とかなったけど、初見だったら胸にナイフとか食らって死んでたよ?兜してなかったら投石紐(スリング)でやられてたろうし。

 

 次どうするかな。小鬼王戦までカットするのは流石になー。

 まあいいや。自由行動と言うなら自由に色々依頼受けましょう。いざとなればゴブリン退治の依頼を受けて、フロントチョーク以外にどんな技があるかを確認してそれを見せます。

 それでは今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 




CERO:C指定(R-15)でトップレスは許されるって聞いた。

Q.この一党の一番いい救出方法は?
A.キャラの性別を女性にして、この時点で黒曜等級以上にしておいて彼女達が依頼を受ける際に臨時の一党として加えてもらう事です。
 問題行動をしたり、よほどアレな態度を取らなければ問題なく加えてもらえます。

Q.なぜ未帰還冒険者の捜索依頼が出るまで待たないの?
A.そこまで待つと捕まってから多少時間が経過してしまうので、死者が出たり最悪到着する頃に全滅してる可能性があるからです。
 決してその方がギリギリの戦いになって心が躍るからではありません(by友人)

Q.戦闘中凄い事になってなかった?
A.そりゃ女闘士ちゃんのロイヤルメスな部分がバルンバルン大暴れですよ


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女闘士・4 裏

初の大金棒での攻撃でファンブルを出したかと思えば、二回目で11を出す。
砦での戦闘における判定で2回もクリティカルを出す。その上d6振って9以下を一度も出さない。

全く厄介な存在だよ、君は!


 大金棒(モール)の柄を握り締め、感触を確かめる。その場で軽く振り無理な重さではない事を再度確かめ、女闘士は歩を進める。

 この獲物を使っていくならば、実戦訓練は不可欠。そう判断して巨大鼠(ジャイアントラット)退治を引き受けて下水へと来たのだが……

 

「いないな……」

 

 少し歩けば巨大鼠、あるいは大黒蟲(ジャイアントローチ)が現れると思っていたのだが今日に限って見当たらない。まさか他の冒険者が全て退治してしまったわけでもないだろうが。

 いや、そもそも退治しきれるものではないだろう。あれらの繁殖力はそれこそゴブリンをも凌ぐという話だ。

 もっともゴブリンと違って女性を襲い増えない分まだマシではあるが。しかし人を襲って食べる以上退治すべきでもある。

 幾度か角を曲がったところで、鼠の足音を耳にする。視線をそちらへ向けると通常の巨大鼠の倍はある体躯を持ったそれが、こちらをジッと睨みつけている。

 暴食鼠(グラトニーラット)というのだったか。初めて退治依頼を受けた際の説明を思い出す。巨大鼠や大黒蟲の中で稀に誕生する変異種(ユニーク)。確か懸賞金もかけられていたはずだ。

 大物相手ならば試しにはもってこいだろう。大金棒を構える女闘士に対し、暴食鼠は逃げる様子も怯む様子もない。身体が大きい分他の鼠より度胸もあるらしい。

 ならば、と女闘士は一気に踏み込む。そして力強く床を踏みしめ大金棒を振りかぶり―――――

 

「!?」

 

 濡れた床に足を滑らせ、空振ってその場に尻持ちをついた。

 その隙を暴食鼠が見逃すはずもなく、女闘士の首に噛みつかんと飛びかかって来る。その巨体に組み敷かれながらも、咄嗟に腕を掲げ籠手で歯を防ぐ。

 痛みはあるが皮や肉が貫かれるような痛みではない。籠手が機能している。それでも噛みついたまま離れようとしない暴食鼠の鼻先目掛け、女闘士は思いっきり頭をぶつける。

 

「GURYI!?」

 

 鼻から血を噴き出し女闘士の上から暴食鼠が転がり落ちる。今度は女闘士が獣の如く飛びかかり、馬乗りになると槌鉾(ヘビーメイス)を腰から抜き思い切り振り下ろす。

 

「GYARURURU!?GURYUU!?」

 

 2発、3発。躊躇なく、油断なく。敵の声が止まり、動きが止まるまで振り下ろす。頭突きの衝撃で視界がチカチカするが、この姿勢なら外す事はない。

 そうして殴るうちに動かなくなった鼠の上から退くと、女闘士は大きく息を吐き出す。危ないところだった。油断したつもりはなかったのだが、つもりだけだったようだ。

 またしても装備に救われた。そのための装備ではあるのだが、頼りきりというのも決して良い事ではない。もっと気をつけねば。

 

「色々焦り過ぎたね」

 

 槌鉾に付着した血を拭い、大金棒を拾い直しながら呟く。新しい武器を試そうという気持ちが先走り過ぎ、地面にまで注意が行かなかった。

「たられば」を考えても仕方ないが、これで敵が罠を仕掛けるような知恵を持つ相手だったら。今頃あの世行きか、またあの牢の中と同じ状況に逆戻りだろう。

 もっと冷静にならねば。どうにも自分は気分の高揚や感情の起伏に引っ張られ過ぎる。

 落ち着いて。間合いを測って。触れるだけの広さがあるか、足元が不安定でないかを確認して……

 力一杯、振り切る。

 

「よし」

 

 新手の巨大鼠が吹き飛んだのを見て、女闘士は頷く。大金棒が直撃した巨大鼠の上半身は爆ぜるようにして弾け飛び、辺りに臓物や血が飛び散っている。

 期待通りの威力と言っていい。振るのに四苦八苦するでもないし、一度振ったら精根尽き果てる事もない。継続して使っていける。

 もう何度か試し、馴染ませれば戦嘴(ウォーピック)や槌鉾同様使いこなせるようになるだろう。そうすれば―――――

 

 もっと効率良く、敵を殺せるだろう。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 どうしたものか、と受付嬢は頭を悩ませる。悩みの種はつい最近黒曜等級に上がったばかりの新人―――――女闘士についてだ。

 昇級が認められるだけあって、素行に関して問題はない。実力に関しても、小規模とはいえゴブリンの巣を単独(ソロ)で潰し、田舎者(ホブ)を仕留めたり暴食鼠(グラトニーラット)を討伐してくる程度には高い。

 外なる神からの託宣(ハンドアウト)を受けている、というのは少々不安要素ではあるが、邪神の類ではないようだし《看破(センスライ)》によって彼女の言が嘘ではない事も確認済みだ。

 だが行動に関して問題、と言うよりも不安がどうしても拭いきれない。託宣に従っている、というのもあるだろうが、あまりにも衝動に突き動かされた行動が多すぎる。

 今のところ人を害するような行動ではなく、むしろ人を助けようとしている様子が見られるのだが同時に無謀が過ぎるようにも見えるのだ。

 つい先程の行動もまさにそれだ。既に受注済みのゴブリン退治の依頼を見せてくれるよう頼んできたかと思えば、鋼鉄等級の一党が受けた依頼を指して「託宣があった」と言い放ち外へ飛び出して行った。

 恐らくはその一党の支援か何かに向かったのだろうが、鋼鉄等級の一党が危機に陥ると言う事はそれだけの危険が待ちかまえているという事だ。

 そこに迷うことなく向かい、危地に飛び込み、ゴブリンを殺し人を救う。何かタガが外れてしまっているようにすら思えてきてしまう。

 それこそ彼―――――小鬼殺しの専門家、自身を「ゴブリンにとってのゴブリン」とまで言い切ったゴブリンスレイヤーのように。

 

(あまり踏み込んではいけない事は分かっているんですけど……)

 

 それでも何かしてやれる事があるのではないか。どうしても受付嬢は考えてしまう。正直ギルド職員としてはよろしくない傾向である事は理解している。

 入れ込み過ぎれば公平性を欠くようになるし、そうでなくとも冒険者という職業の性質上精神衛生的によろしくない。

 新人、それも冒険者になったばかりの一党をゴブリンの巣に送り出すだけでも胃がキリキリするのだから、親しくなった相手が戻ってこないとなれば……

 思わず頭によぎった考えを、ぶんぶんと首を横に振って追い払う。そんなことは想像すらしたくない。

 自分に何が出来るかをもう一度考え直す。

 依頼を斡旋しない?論外。ギルド職員としてありえない行為だ。

 大丈夫そうな依頼のみを斡旋する?却下。不公平に過ぎるし、確実に大丈夫な依頼など存在しない。

 一定のリスクがあるからこそ、依頼人は冒険者に対し代価を払って依頼するのだ。

 何がしかの忠告をする?既にやっている。忠告まではしてやれるが、それ以上踏み込んで行くのは職務を逸脱している。

 では何が出来るか―――――……

 

「……ううん」

 

 一応の案はある。だがこれは人任せになる上、任せる相手と女闘士本人の意思次第となってしまう。

 もっといい方策はないだろうか、と頭を捻るがどうにもこれ以上の考えは浮かばない。そして決して悪い案ではないのだ。

 

(とりあえず提案だけはしてみましょうか……)

 

 悩んだ挙句、受付嬢はそう結論付ける。結局のところ、こちらがあれこれ考えた所で最後は当人達の意思が最優先となるのだ。

 こちらはこちらの領分で出来る限りの事をやるだけ。それしか出来ないのが歯がゆい時もあるが……

 それはそれで自分の選んだ道なのだ、と己に言い聞かせ、受付嬢は頭を切り替える。

 やる事は山ほどあって、職員がそれをこなさねば冒険者も依頼人もギルドも、大袈裟に言えば国だって困るのだ。

 他者にアレコレ言うのなら、まず自分の責務を果たしてから。それは職員とかでなく、人としての約定(ルール)なのだから。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 遅れたか、とゴブリン達の騒ぎ声が木霊する山砦を見上げながら、女闘士は兜の中で舌打ちをする。追い越したりしないよう徒歩で来たのが裏目に出たようだ。

 だが騒ぎ声に女性を嬲る男特有の、あの下卑た歓びがない。恐らくは侵入に気付き、内部で戦闘が行われているのだろう。つまり、猶予は少ないが手遅れではない。

 ならばすぐに突入すべきか。いや、この状況で突入したとしても間に合うかどうか分からない。

 間に合うとしても何処にいるか分からない彼女達の所に辿りつくまでに消耗してしまい、最悪救援に来たはずが餌が一匹増えただけ、ということになりかねない。

 一番いいのはこちらがゴブリンを多数引き付け、彼女達が自力で脱出する事を支援する事だ。

 一党に軽装備であろう魔術師や僧侶がいる事を考えると、引き付ける数は多ければ多いほどいい。だがゴブリンは間抜けではない。

 単独(ソロ)のこちらには少数で、多人数の一党(パーティー)である向こうには大勢で。そう対処してくるはずだ。引き付けるためには単に突っ込むだけでなく、何かが必要だ。

 どう引き付ける?火でもかけるか?いや、それでは中にいる彼女達まで危ない。音を出しても意味はない。もっとゴブリン達が無視出来ず、群がって来るような何かが要る。

 

「……ゴブリンは馬鹿だが間抜けではない、か」

 

 それは裏返せば間抜けではないが、馬鹿だと言う事だ。そしてゴブリンの頭の中は奪う事と犯す事、自分が一番偉いという傲慢さしかない。

 なら欲望を刺激してやればいい。簡単だ。

 問題があるとすれば自分の羞恥心や自尊心だが、そんなものは今さらだ。他者の命や小鬼を殺す事と比較した時、どちらが重いかなど考えるまでもない。

 それに見られる相手は同性なのだ。さほど恥ずかしがる必要もない。我が物顔で好き勝手されるわけでもない。嫌な事など何もない。

 小鬼の方は―――――どうせ皆殺しにするのだから何も問題ない。決まりだ。

 

「少しの間、耐えてくれたまえよ……!」

 

 どうするかは決めたが、実行のためにはどうしても少し時間がかかってしまう。故に女闘士は顔も知らぬ一党の武運を祈りつつ―――――

 躊躇う事なく、装備の止め具に手を伸ばした。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 どうしてこうなったのだろう、と一党(パーティー)を率いる貴族令嬢は心中で呟く。

 まだ戦闘の最中であり、そんな事を考えている暇はないのは承知している。だがどうしても思わずにはいられないのだ。

 幾度かの冒険を経て、一党の誰もが経験を積み成長していた。白磁や黒曜とは違うと言えるだけの実力はある。

 ゴブリンが多勢である事も承知していた。だから油断せず装備を整え、慢心なくゴブリンの眠る真昼時に潜入した。

 野伏が慎重に罠を解除し、隊伍を組んで警戒を怠らず進んで行く。間違いはなかったはずなのに。

 

「……くそっ!」

 

 ゴブリンを切り伏せながら毒づく貴族令嬢。今は考えるよりも身体を動かし、何とか脱出せねばならない。だが頭からは「何故」が離れてくれない。

 彼女だけでなく一党全員が頭の片隅でその「何故」を考えているのだが、冷徹に事実を告げるならばたった一言。

 

 彼女達は、運が悪かったのだ。

 

 もしここが森人(エルフ)の砦でなかったら。

 以前ここを住居としていた森人達が、その器用さでもって緻密な罠を仕掛けていなかったら。

 野伏がそれを解除しながら進んだために、消耗していなかったら。 

 きっと彼女達は最後の最後で警報に引っ掛かる事なく、上手くやれていたはずだ。そのはずだった。

 だがそんな「たられば」は意味がない。罠によって砦中のゴブリンが目を覚まし、囲まれてしまっているのが現実なのだ。

 何とか切り抜けねばならない。だがどうやって?

 貴族令嬢の体力は無限ではない。野伏の矢は限りがある。魔術師の術は―――――五回と破格の多さではあるが、それっきりだ。僧侶の奇跡も祈りを保てなくなれば終わる。

 向こうも数に限りはあるだろうが、それでもこちらが力尽きるよりは多いのではないか?

 何とかその考えを振り払って必死の防戦を続けるが、一党の誰もが薄々気付いていた。その推測は恐らく当たっていると。自分達がどのような末路を辿ることになるから。

 だからと言って諦めるわけもなく、彼女達は全力を尽くし防戦を続ける。諦めさえしなければ、何かが起きるかもしれない。戦い続ければ、活路が見えるかもしれない。

 骰子を振らず投げ出してしまったら、逆転の一手(クリティカル)が起きる奇跡すら手放す事になってしまうのだから。

 

「GARUUA!」

「GAAUUAAA!」

 

 そうして防戦を続けていると、小鬼達の包囲網に変化が生じる。自分達が侵入してきた方角、つまり入口の方に向かって何匹かが駆け出していく。

 その数は徐々に増えていき、貴族令嬢がその薄くなった包囲を突破せんと号令をかけようとした瞬間―――――

 

「えっ?」

 

 飛び込んできた光景と人物に思わず間の抜けた声を出してしまった。

 来たのは多数のゴブリン。恐らく自分達を囲み、突如として移動して行った者たちだろう。それは分かる。

 それが何者かを取り囲み、戦いながら引いてきた。これも分かる。新しい侵入者を迎え撃つためにこちらに数を割いたのだろう。問題はその侵入者だった。

 頭全体を覆う形状の兜を被り、鋲の打たれた革鎧を着て、大金棒(モール)を振り回す彼女―――――顔が見えないにも拘わらず、間違いなく女性だと言い切れる。

 

 何故なら彼女は、()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

 

 ゴブリンが自分達ではなく、彼女に群がっていった理由もこれで分かった。1人だから狙いやすい、という事ではなく、単純に肉付きのいい雌を捕まえたくなったのだろう。

 目の前に餌があるならば、飛び付かずにはいられないのがゴブリンなのだから。

 そして女性ながら大金棒を獲物としている彼女。格好こそ異常だが、その戦いぶりは見事の一言に尽きる。

 激しく上下左右に揺れ弾む豊乳に一撃でも受ければ命取りになりかねないというのに、構えるのすら一苦労しそうな大金棒や腕に付けた籠手で巧みに防いでいる。

 それだけでなく大金棒をまるで金属の重みが無いかのように振り回し、ゴブリンの頭に当たれば頭蓋を粉々に打ち砕く。

 胴に当たれば小鬼の身体を押し潰し、臓物を溢れさせながら吹き飛ばす。

 懐に飛び込まれれば籠手で殴り付け、ゴブリンを地に沈める。

 兜に、鎧に、剥き出しの胸に返り血を浴びながら、さながらトロルの如く暴れ回る。

 棍棒で打たれ、投石を兜に受け、刃が通らぬとはいえ剣での攻撃を鎧に受けるが怯む事も止まる事もない。

 そうしてゴブリンの中を突破してきた彼女だが、胸以外の部分には幾度となく攻撃を受けており、傷付いているのは間違いない。

 まさか再生力までトロルと同じなはずがないだろう。

 

「助けに来た!殿は任せて逃げたまえ!」

 

 助けねば、と思った矢先乱入してきた彼女が大声を張り上げる。この異様な風態の女性は、理由は不明だが自分達を助けに来たらしい。

 言いたい事も聞きたい事も山ほどあるが、好機な事だけは確かだ。数が減り、包囲が薄くなっている今を逃したらもう脱出は叶うまい。

 

「突破して退くわよ!」

 

 それを見逃す事なく、貴族令嬢とその一党は行動に移す。

 魔術師の術で一角を切り開き、野伏が先頭に立ち駆け出す。その後から魔術師と僧侶が続き、貴族令嬢が殿を務める。それを確認した女性もまた、徐々に退き始める。

 目指すは正面の出入口。そこまでの道ならば罠は解除してある。小鬼を蹴散らしそこまで辿りつければ、逃げ切れる可能性が出てくる。

 その希望に縋るようにして、一党は必死に脚を動かす。あと少し、あと少しで入口に辿りつく。

 もう野伏は外へ出た。魔術師も僧侶もだ。自分も、あとほんの数歩―――――

 

「……やった!」

 

 まだ砦の中から脱出したと言うだけで、窮地から完全に脱した訳ではない。だがここまで来れば囲まれる可能性はグッと低くなり、走って逃げ切れる可能性も大いに上がる。

 後ろを振り返れば、あの助けに来てくれた女性がこちらに向かって駆けてくる。

 こんな状況だというのに羨ましくなるほど立派な双丘を弾ませながら必死に走っているが、そのすぐ後ろをゴブリンが追いかけて来ている。このままでは追いつかれてしまうだろう。

 このままなら、だが。

 

「援護!」

「ほいきた!」

 

 野伏が矢を番え、弦を引き絞る。放たれた矢は狙いを外す事なく彼女に掴みかかろうとしていたゴブリンの喉を射抜き、確実に仕留めてみせる。

 

「《いと慈悲深き地母神よ、どうかこの者の傷に、御手をお触れください》!」

 

 僧侶が残った奇跡で《小癒(ヒール)》を唱え、女性を癒す。確かに誰もが多少の手傷を負いはしているが、一番危険なのは単独(ソロ)で突っ込んできた彼女だろう。

 

「助かったよ!このまま撤退だ!」

 

 砦の外へと駆け出してきた女性の言葉に頷くと、貴族令嬢達も再び走り始める。まだまだゴブリンの数は多い。一度引いて態勢を立て直す必要がある。

 だがゴブリン達は執拗に追いかけてくる。徐々に砦から離れて行っているというのに、仲間を殺された怒りなのか雌を逃したくない欲望なのか。はたまたその両方か。

 遮二無二追って来るゴブリン達を後ろに見ながら走る貴族令嬢と仲間、そして助けに来た女性。その最中、ふと貴族令嬢は気付く。

 当たり前ではあるが、ゴブリンにも個体差はある。力の強い者弱い者。多少知恵の回る者回らない者。そして、足の速い者遅い者。

 走る距離が長くなるにつれ、その差が顕著に現れて来ている。数匹はすぐ後ろをついてきているが、その数匹ですら纏まっておらず散らばり始めている。

 さらにその後方となると、散り散りバラバラで多くとも3,4匹ずつしか固まっていない。

 つまり、総数こそ変わりはないが一つの集団ではなく複数の小集団になっている。

 その事実に気付いた貴族令嬢は一党に声をかけようとするが、それより早く一緒に最後尾を走っていた女性が立ち止まる。

 そして彼女は振り返り、追ってきたゴブリン達に近付くと―――――

 

「せ、えぇぇい!」

 

 大金棒を振りかぶり、横薙ぎの一撃を放った。

 先頭を走っていたゴブリンと、そのすぐ後ろにいたもう一匹がその直撃を受ける。足は速いが運の悪かったその二匹は、衝撃によって上半身を飛び散らしながら吹き飛んで行った。

 あまりの光景に一瞬呆気に取られるが、すぐに気を取り直し貴族令嬢は号令をかける。

 

「一時停止!近いゴブリンを仕留めます!」

 

 言葉を発しながら、近くにいたゴブリンに斬りかかる。疲労によって剣筋が鈍っているのは自覚したが、それでも小鬼程度ならば苦もなく斬り捨てれる。

 さらに後方にいたもう一匹は野伏の矢によって絶命する。これで最も近い追手は撃破した。今なら確実に逃げ切れるだろうが―――――

 

「絶好の機だね」

「ええ。逃すつもりはないわ」

 

 乱入してきた女性の言う通りだ。疲労し消耗もしているが、これはこの上ない好機だ。今こちらが襲いかかれば、もう一度小鬼達が集結する前に7、8匹は取れる。

 そして討ち切れない小鬼が集結したとしても、もう10前後しか残らない。その程度の数と正面からやるならば、こちらの負けはない。

 ゴブリンは多勢で囲んでくるからこそ脅威なのだから。

 

「全員、反転!分散したゴブリンを討ちます!」

 

 号令より早く女性が駆け出す。それに遅れじと貴族令嬢も続き、近くまで来ていたゴブリンを仕留める。

 各個撃破される危険性に気付いたゴブリン達は一か所に集まろうとするが、それよりも早く分散したゴブリンを仕留めていく。

 すると勝ち目が無くなった事に最も早く気付いた一匹が、武器を捨て逃げて行く。残ったゴブリン達も次々とそれに続き、ある者は砦へ、ある者は全く違う方角へと逃げ出す。

 逃がしてはならない。追わねばならない。だが―――――

 

「流石に追いかけるのは厳しい、ね……」

 

 大金棒を地面に突き立て、杖のようにしながら女性が呟く。その通りだ。自分達も女性も無傷ではないし、疲労と消耗が激しい。

 逃亡したゴブリンを追跡して仕留めるだけの体力は流石にない。少し休めば別だが、休んでいる間に逃げ延びられてしまうだろう。

 野伏が矢で数匹は仕留めたが、やはり全てを討つのは不可能だった。

 

「逃したくはなかったけれど、仕方ないわね……」

 

 そもそもあそこから助かっただけでも上等なのだ。ここで欲をかいて逃げる相手を追撃して、また反撃を受けるとも限らない。

 呼吸を整え、水薬を飲んで出来る限り態勢を整えて砦に残った残党を討つ―――――残っていれば、だが。

 この戦闘であの群れの数は激減した。砦の内部に残っているのはおよそ10前後というところだろう。その数でまだ砦に残っているとは思えない。

 逃がした雌―――――冒険者達がまた襲いに来ると考え、あの砦を放棄して何処かへ逃げ延びる。恐らくはそうするはずだ。

 一党と女性にそう話すと、全員がそれに頷いた。そうして一応は周囲に警戒しつつ、休息に入る。

 

「すまないが装備を付け直す間、周囲を警戒していてくれないかい。流石にこのままというのは、ね」

 

 女性がそんな事を言ってくる。至って当然の言葉に、一党は異を唱える事なく承諾する。その豊かな胸を晒し、揺らしながら戦うのは防御面でも精神面でも辛いだろう。

 その間の警戒はこちらでやっておくから気にせずやって欲しい、そう伝えると女性は声音に安堵を滲ませながら礼を言ってくる。

 

「そういえば、何故ここに?」

 

 自分達が危機に陥った事など誰も知れるはずがない。知ったとしても来るには早すぎる。

 自分達が新人で、彼女と面識があれば心配でやって来ることもあるかもしれない。だがこの一党は全員が経験を積んだ鋼鉄等級で、彼女とは初対面。そのはずだ。

 助けてもらったのだから感謝しかないが、どうしても不思議ではある。

 

「ああ、神―――――外なる神なのだが、その神から託宣(ハンドアウト)があってね。このままでは助からないが、私の働き次第では救えると言われたら来ない訳にはいかないだろう?」

 

 そう言いながら女性が兜を外す。その下に隠されていた顔を見て、貴族令嬢は―――――否、貴族令嬢とその一党は思わず息を呑んだ。

 あんな戦い方をする女性なのだからさぞかし豪傑のような、いかつい風貌なのだろうと勝手に思っていのだがさにあらず。

 凛々しい顔立ち。意志の強さを感じさせる瞳。森人である魔術師にも見劣りせぬほどの美貌であり、顔に滲ませた汗さえも輝いて見える。

 鎧下を着るために露わになった上半身は見事に鍛え抜かれており、蜥蜴人の戦士のようで。それでいながら胸は女性的な意味で見事な豊かさを持っている。

 ありえない、と言いたくなるのと同時に、彼女ならば当然とも思える。確かにこの精悍で整った容姿には、この肢体こそが相応しい。

 容姿に、肢体に、豊かな胸に視線が釘付けとなる。それは貴族令嬢だけでなく一党も同じで、もしこの瞬間ゴブリンの逆襲があったなら大変な事になっていただろう。

 

「さて、待たせたね」

 

 結局彼女が兜を被るまで一同は注視していたのだが、女性の方はそれを気にする様子もなく。その堂々とした様子が何とも雄々しく、頼もしい。

 

「では、残りのゴブリンを皆殺しに行こうか」

 

 平然とそう言ってのける様子に少しだけ恐れを感じたりもしたのだけれど―――――

 それはそれで偉大な蛮人のようで、彼女達にとっては恐れよりも憧憬の方が勝るのだった。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 報告書。

 

 0506案件。

 鋼鉄等級4人の一党が森人の砦に巣食ったゴブリンの掃討、及び攫われた村娘の救出に向かう。

 森人が砦に残した罠の解除に失敗し、ゴブリンに包囲されるも黒曜等級冒険者の救援により脱出に成功。その後反撃を行い、砦からゴブリンの駆逐に成功する。

 ただし全滅させる事は叶わず、10匹前後が逃走。また村娘は既に事切れており、救出は叶わず。

 冒険者側には死者は無し。依頼そのものは成功とする。

 なお、近隣の村から森人の砦の処分要請あり。依頼として受理すること。

 

 補足事項:黒曜等級冒険者が救援に行った理由は「外なる神の託宣」に従った為。この冒険者は過去にも同様の発言をしており、《看破》によって真実であると確認済。

 

 




この僧侶って何の神官なんだろう?と思って小説と漫画を見返す。
→特に描写がない
→格好からして戦女神ではない。持ってる杖が天秤剣ではないからたぶん至高神とも違う
→女神官ちゃんの杖に似てるし地母神でええか……

貴族令嬢の口調ってどうなんだろう?と思って小説と漫画を見返す。
→小説では騎士というか武人とか軍人っぽい
→漫画だと最初女性口調で、後に丁寧語
→もう適当でええか……

ロイヤルメスな部分を晒しながらゴリラな暴れっぷりを見せた女闘士ちゃんへの印象ってどうなるんだろう?
→ダイス振ってみるか
→クリティカル
→もう百合でええか……


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女闘士・5

机に向かうのが辛いレベルの肩凝りが、ストレッチやったら20分で治ったので初投稿です。



 はい、それじゃ今回も始めて行きます。

 今回は趣向を変えて、腹筋アップにしてます。たまにはゴリラ成分もね。なのでシックスパックをバックに、今後の方針についてお話します。

 小鬼王戦まで全カットでもいいんですけど、それは味気ないんで色々イベント探しながら依頼受けて行きます。

 まあだいたい戦闘依頼なんですが。シティアド系はどっちかって言うと知力高いキャラか、一定の人脈築いて情報収集出来るようになってないと面倒なので。

 でないと推理ADVとかプレイしてて、推理パート中「犯人もトリックも分かったけど、証拠回収してないからそれを指摘する選択肢が無くて捕まえられない」みたいな状態あるじゃないですか。あれになります。

 

 あ、今の状態についても説明します。前回結構な勢いで消耗と疲労が溜まってたので、3日ほど休んでもらいました。2日でいけるかと思ったんですが、ダメでしたね。

 その間前回助けた一党(パーティー)とか、鉢巻き君なんかと交流はありましたがイベントまでは発展しませんでした。ちょっと残念。

 あ、そう言えば鉢巻き君は鉢巻きに鉄板を巻き付けて鉢金にしてました。鉢金君にランクアップですよ。でも君はあくまで鉢巻き君な。

 本当は兜欲しいけど金が無いそうで。つれえなあ。気持ちは良く分かる。

 そう言って同情しつつ、目の前でアーメットを修理に出すのは最高に気持ち良かったです。格差社会で上に立ったようで。

 まあ初期資金で兜買わなかった君の責任だからね。武器を小剣(ショートソード)にしておけば買えたはずだからね、兜。

 

 それじゃ依頼を物色しに行きましょうか。出来ればこう、人生舐めた感じの依頼があってほしい。誰にでも出来る簡単な仕事で拘束時間が短くて報酬がいいやつ。

 まあ現実にはそんな美味しい話ないんですけどね。誰にでも出来る簡単な仕事なら、大金出す理由がありませんから。

 だいたい虚偽の謳い文句か、物凄いリスクを秘めてるのにそこは黙ってるやつです。

 ACで言えば「簡単な任務ですね」「すぐ終わるでしょう」みたいにミッション前のブリーフィングでやたら強調してくるやつ。

 じゃあ「難しい」「厳しい」って言われてるのが楽かって言うと、こっちは本当に難しいし厳しいです。

 どのぐらい厳しいかと言うと、金田一の前で連続殺人を犯して完全犯罪達成して逃げ切るぐらい厳しい。

 ちょっとミスしたり違和感のある行動を取るとそこから一気に核心に迫ってきますからね。昔犯人側で物語を進めて行くゲームやりましたけど、本当にアイツ怖いですよ。

 多分ゴブスレさん敵に回して、ゴブリン視点で戦うぐらい怖いです。絶&望ですよ。

 

 さて下に降りて来ましたけど、今日はあの貴族令嬢一党も鉢巻き君もいませんね。特に貴族令嬢一党はいるとかなり積極的に話しかけて来てくれて、勝手にコミュが発生してたんですが。

 確かにこの反応見る限り、男キャラならハーレムいけそうですね。選択肢間違えなければ。

 昔そういうゲームありましたからね。女の子がチンピラに絡まれてるのを助けた後、女の子に名前聞かれて「貴様に名乗る名などない!」って選択肢が出てくるゲーム。

 当然フラグ折れますよ。というか言い方もっとあるだろ。せめて「名乗るほどのもんじゃございやせん」とか。

 まあ今回は関係ない話でしょう。

 

 おん?受付嬢さんに呼ばれましたね。なんでしょう、問題行動はしてないはずなんですが。やってる事は人助けだし。

 まさか露出狂疑惑とかかけられたりしてませんよね。違うんですよ、あれは他に方法が浮かばなかっただけなんですよ。

 変態仮面に変身しないと人の命が助けられないってなったら、誰でも葛藤はあれど変身するでしょう?あれと同じですよ。

 もう二度とクロスアウッ!しないんで許して下さいなんでもしますから!

 

 あ、全然違う話だった。

 要するにソロでやって行くのはただでさえ危ないのに、お前はさらにエキセントリック(頭沸いてる)な行動取るからせめて一党組めって話ですね。

 継続の固定ではなく臨時の単発でいいから、一党を組んで冒険して知識や経験ある人から学べ。そしてもうちょっと慎重に動けと言いたいようです。

 まあ実際だいぶおかしな事してきたから仕方ないね。誰だって注意する。俺だってそーする。

 強制ではなく提案って形ですけど。まあこの世界の冒険者ギルドって基本的に強制はしてきませんからね。

 とりあえず了承しておきますか。この後は自由行動ですから、何の理由もなくどっかに行く事は無くなるんで一党組んだ方がやりやすいですし。

 何より戦闘を行う上で、当然の事ながら一党の方が圧倒的に強いですからね。戦いは数だよ、兄貴!

 はい?一党組んでくれる人に心当たりがあるか、ですか?

 

 たぶんですけどあの様子見るに貴族令嬢の一党なら入れてくれると思うので、ちょっと頼んでみます。大丈夫だよね。「悪いなのび太、この一党は四人用なんだ」とか言われないよね。

 断られても鉢巻き君の所なら……あ、いや、彼らまだ白磁だからなあ。一緒に経験積んでいく事は出来るけど、今回のケースだとどうだろ。

 あ、女神官ちゃんの伝手を頼ってゴブリンスレイヤーさんのとこ行けばいいのか。行ければだけど。

 さまようよろいとロイヤルメスゴリラに挟まれた女神官ちゃんという、なんか大変な絵面になるとは思いますけど。

 ゴブリンを殺す事にしか興味がない変人と、胸丸出しにして大金棒(モール)振り回して暴れる狂人。この二人と冒険って客観的に見たら何の罰ゲームだって話ですよ。

 それでOK?はい、じゃあそういうことで。失礼します。

 いやあ、穏便な話で良かった。偉い人とか役所の人に呼び出されるのは怖い。先生に指導室へ来いと呼ばれた感じの恐怖がある。

 

 さて貴族令嬢かその仲間を探しに……いた。というか向こうから来ましたね。

 えーと、一党への加入はどうやるんだっけ?勧誘はコマンドあったけど加入はどう……操作説明開かないとダメだな。ちょっと待って下さいね。

 自分、地球の重力に魂を引かれたオールドタイプなんで。紙の説明書じゃないとすぐに調べられないんですよ。

 分かった。これでよし。入れてもらえるかな?

 

 いや、こっちが引くぐらい食いついてきたな。何?実はちょっとヤベー人だったりする?

 

 ちょっと早まった感はありますけど、とりあえず入れてもらう事には成功ですね。

 固定になるか単発かは分かりませんけど、一党のメンバーに挨拶してなるべく早く馴染みましょう。

 どうも、女体化ヘラクレス通称メスクレスです。大嘘です。

 うん、みんな好意的な反応ですね。胸丸出しで暴れ回ったヤベー奴の印象よりは、命の恩人という印象の方が強いんですね。

 これならハブられたりする心配はなさそうです。

 

 さて早速依頼選び、と思ったけどもう彼女らは選んであるんですね。え、自分の意見ですか。

 そうか、一党の頭目じゃなくてメンバーだから勝手が違うんだ。意見出したり相談したりがメインなんだ。

 えーと、村を襲う騎士の撃退?どういうことやねん工藤。

 村に難癖付けて、決闘状送って襲ってくる……フェーデじゃん!そうか、この世界そういうの現役なんだ!

 やべえオラワクワクしてきたぞ。強盗騎士とか中々珍しいぞ。

 つまり形式的には決闘代理人となって、襲ってきた騎士どもをチェスト関ヶ原(ぶち殺せ)ってことですね。了解。

 毎回騎士1人が従者2人を引き連れてやってくると。それなら数でボコれるしなんとでもなりそう。報酬も銀貨150枚と中々ですからね。

 はい、異論ないです。これにしましょう。

 えーと、この街から徒歩で4日ぐらいかかる村か。乗合馬車もないと。なら旅支度が必要だな。買いに行かないと。

 あ、色々アドバイスするために買い物付き合ってくれるんですか。優しい。じゃあ行きましょう。

 

 全員で来る必要は何処にあるんですかね?

 

 まあプレイヤーとしては旅の経験あるんで、買う物だいたい決まってるんですけどね。

 テントや調理器具は貴族令嬢一党が既に保有してるので、マントと食糧、調味料や香辛料に着替えとかですね。

 このゲーム、ずっと着替えずにいると段々清潔のパラが下がって行きます。まあ当たり前ではあるんですけど。そして不潔だと印象が悪くなるのみならず病気になったりします。

 後は濡れたら着替えたり乾かさないと風邪引きやすくなるとか、気温によっては凍傷になるとかですね。

 雪山に行く際は八甲田山の小説を読むとか、遭難事故についての本を読むとかして予習していくことをおススメします。あの辺で学べる知識や対策は本当に役に立つので。

 後は順当に経験のある人から話を聞くとかですね。ベテラン勢はだいたい実体験に基づく知識を有しているので、そこそこ親密なら教えてもらえます。

 さて、これでだいたい買い物は済んだかな?あ、蜂蜜とビスケットがありますね。買っておきましょう。

 資金に余裕があるので嗜好品もちょっといいものにします。量も多めにね。それと催涙弾を。コレ旅じゃなくても役に立ちますよ。

 必要なものは全部買ったな。ヨシ!それじゃ出発しましょう。

 

 重い荷物は女闘士ちゃんが率先して持ちましょう。そのための筋肉。まあ大金棒と戦嘴(ウォーピック)背負ってるんで平均よりちょっと多めぐらいですけど。

 一党の皆さんが色々アドバイスしてくれるんでありがたいこってす。なるべく木陰とか通って上からの襲撃を避けやすくするとか、適宜休憩入れるとか。

 やっぱりこういう先輩から話を聞くって大事ですね。何も知らなかったら適当に歩いて消耗しそう。

 ただ移動に時間かかるので、何かイベント起きるか到着するまでカットしようと思います。

 

 

 

 到着!はい、何も起きませんでした。

 野営すると確率でゴブリンが襲撃してくるとか、追剥(ブッシュワッカー)が襲撃してくるとか、野生動物とこんにちわとか起きるんですけどね。

 まあ道によって危険度違いますし、確率なんでこういう事もあるでしょう。

 とりあえず村長の所へ挨拶に行くんですけど、何かこの村凄くね?建物はちょっと古臭いんだけど作りがしっかりしてると言うか、いい家な感じがする。

 他の村ってもっとこう、みすぼらしいと言うか貧しさを感じるんですよ。この村はなんか豊かさが見えてる。

 ああ、だから狙われるのか。納得。

 

 こんにちわー。騎士殺しに来ましたー。いや殺すとは限らんのだけど。

 あ、ちょっと微妙な顔された。まあ女性オンリーの一党かつ傭兵みたいな恰好してるのもいるからね。こっちの方が強盗っぽいからね。

 一党から突っ込まれたので兜脱ぎます。すいません素で忘れてました。あ、村長が見惚れてる。まあイケメンだからね。

 さて事情聞いて交渉をするわけですが、あんまり喋る事ないんですよね。喋れないというか。基本こういうのは頭目が話を進めるので。

 こういう立場によってやる事が変わって来るのも面白い所ですね。

 

 お、貴族令嬢が相手の紋章について突っ込んで聞いてる。あー、貴族出身だから場合によっては相手に心当たりあるのか。

 相手に心当たりがある?どんなん?

 伯爵家の四男だけど、宮仕えも傭兵稼業も務まらなかったと一時評判になった男?落ちぶれっぷりが悲しい。

 ちなみに務まらなかったのは人間関係とか?あ、単純に実力不足ですか。悲しいなあ。3年ぐらいで自由契約になるプロ野球選手ぐらい悲しい。

 ってことはそこまで強くはなさそうですけど、腐っても騎士ですから警戒は必要ですね。

 それにほら、ROCK YOU!の主人公みたいな従者がついてる可能性もゼロではないですし。普通に騎士より強い平民。

 

 で、その自由契約騎士は何時頃来るの?だいたいの周期的に5日後ぐらい?ふーん。

 おお、その間の滞在費は村持ちだって。やったね。至れり尽くせりじゃん。まあ贅沢すると反感買いそうだから普通にするか、必要な金は払いましょうね。

 金を払わない奴は信用出来ないんだなも。

 

 滞在してる間に迎撃用の罠とか仕掛けちゃダメ?行商人とか村人が引っかかるかもしれないからNG?しゃーないか。

 まあ村の入り口がだいぶ拓けた地形なんで、シンプルに正面からぶつかるしかなさそうですね。形の上では決闘って事になるからまともにやらないと難癖つけられそうだし。

 ゴブリンとか賊の襲撃に備えて村の若者が交代で見張りはやってるそうなので、こっちは最低限の警戒するだけでいいでしょう。本番前に消耗してはいけませんからね。

 じゃ、またイベント発生までカットします。

 

 どうでもいいけどコレ、普通は領主に相談する案件じゃね?

 まあ政治的なアレコレで、相談したけどダメだったとかそういうのかもしれないけど。

 

 

 

 

 なんも起こらねえでやんの。

 録画してる時はイベント起きないのに、録画してないとイベントが向こうからやって来る。なんだこの法則。

 バター塗ったトーストが、床に落ちる時バター塗った面から落ちるのと同じ?それ一応理由あるよ。

 バターの分だけ片面が重くなって重心が傾いてるから、落下の際にそちらが下に来るようになるんだよ。

 

 現在の状況は従者引き連れた騎士を村に来る途中で見た、と行商人が教えてくれたので自由契約騎士の入り待ちです。

 村の入り口で女性が5人も、それも全員中々顔のいい女性が待ってるんだから早く来て欲しい。メギャッてしてやるから。

 もしくは精神に何らかの異常をきたす行為をしてやるから。

 ……来た来た。馬に乗って板金鎧(プレートアーマー)着て、長剣(ロングソード)……いや片手半剣(バスタードソード)かな?とにかく剣を腰に帯びて従者を引き連れてる。

 うーん、騎士だ。いかにも騎士って騎士だ。雑にかませにされるタイプの騎士だ。

 従者は片方が槍持ってますね。もう1人は弓矢だ。二人とも胸甲(ブレストアーマー)付けてる。金あるなあ。

 おーう。後で可愛がってやるから武器を捨てろですって。三下ムーヴのお手本みたいな事を言うなあ!感動した!

 こういう分かりやすい敵役って凄く貴重ですよ。容赦なくぶっ飛ばせるので。

 おお、貴族令嬢がフェーデを申し込んだ。そうか、彼女も自由契約……じゃなかった。自由騎士だから権利があるのか。

 これで形の上では一応騎士同士の決闘になるわけか。実態は盗賊vs冒険者なんだけど。集団戦なのに関しては現実のフェーデも割とそうだったから。

 向こうも受けたので戦闘開始!おお、自由契約騎士が勇ましく剣を振りかざして突っ込んでくる……

 ……のはいいんだけど、真っ直ぐすぎてこれ、ただの的では?ボブは訝しんだ。とりあえず催涙弾撃とう。

 

 見てて悲しくなる。

 

 催涙弾食らって落馬、野伏から矢、魔術師から《力矢(マジックミサイル)》を撃ち込まれて、こっちに突っ込んできた馬は貴族令嬢と僧侶が落ち付かせて奪う。

 流れるようにボコられた結果、降伏を申し出てますね。従者が。主人の方はまだやる気みたいですけど。

 あー、流石に諦めた。まあこのままだとボコボコにされるだけだからね。仕方ない。

 はい、依頼達成です。完璧と言っていいぐらいアッサリですが、まあ上手く行く時はこんなもんです。

 

 さて一応形の上では決闘なので、身包み剥いで身代金要求とか出来ると思うんですけどこの一党だとそういうのはなさそうですね。

 会議の結果、騎士達が持ってた所持金や物資は元々村の物なので返納。装備も奪って行商人が買い取って、代金は詫び料として村に渡す事になりました。

 無一文になった上、装備まで剥ぎ取られる自由契約騎士主従。悪い事はするもんじゃないですね。リスクとリターンが見合わない。

 貴族令嬢、というかこの一党は基本方針として善良な行動を取るみたいです。そのうちゲスい一党でのプレイもしてみたいなあ。

 そしてその代金の一部が追加報酬としてこちらに渡されました。銀貨100枚。滅茶苦茶美味しい仕事になりましたね。

 おっ。なんか行商人がえらくこっちの事気に入ってくれてますね。一杯奢ってくれるって。

 さらに自分も辺境の街に戻るので、帰路は馬車に乗せてくれるそうです。その代わり護衛を頼みたいと。この辺はちゃっかりしてますね。

 とりあえず祝宴ですね。依頼をこなして金稼いで酒を飲む!これぞ冒険者!

 

 ん?あれ、コレ酔った時の反応だ。女闘士ちゃん酒に弱くはないはずなんだけど、悪酒に当たったかな?

 あれ?なんか周りの仲間も同じような反応になってない?なんかおかしいぞこれ。

 待って待って何かにサインするように勧められてる。断れ。この商法見た事あるぞコレ。あれ、断る選択肢が無い。というか段々画面がフェードアウトして……

 

 コレ一服盛られてるわ!

 




Q.この世界にフェーデはあるの?
A.決闘裁判があるならきっとあると思います。

Q.領主はなんで介入してこないの?
A.多分村一個に構ってる暇はないんだと思います。もうちょっと騎士が派手に暴れたりすれば別でしょうけど。



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女闘士・5 裏

だいたいの哺乳類ってホモが存在するらしいですね。


 御伽噺の―――――要素だけ抜き出せば、御伽噺のようだ、と貴族令嬢はギルドの自室で物想いに耽る。

 怪物の群れに囲まれて、絶体絶命の姫。

 そこに颯爽と現れ、伝説に謳われる名剣を振るい、魔物を次々と斬って捨て、最後は姫を救い出す強く逞しい勇者。

 救われた姫は勇者の腕に身を寄せ、二人は結ばれる。古典的だがそれ故に万人に親しまれる物語。

 もっとも今回の場合、怪物はゴブリンで自分は姫ではなく冒険者なのだが。

 勿論自分は貴族の娘なのだから姫と言ってもいいはずだが、救いを待つ可憐で美しい姫君と言うのは些か不遜が過ぎる。

 そして見事救い出した勇者はと言えば―――――文句なしに強く逞しくはある。さらに言えば目を見張るほど美しい。

 

 ()()()()()()()

 

 物語であれば凛々しく若い男性なのだろうが、現実となるとまた話は違ってくるらしい。凛々しさに関してはまさに物語の人物の如きではあるのだが。

 また、振るう獲物は光輝く名剣魔剣の類ではなく武骨で重厚な大金棒(モール)。その質量と己が膂力を使い頭蓋を砕き、胴を抉り、小鬼を叩き潰す様は悪鬼さながら。

 おまけに小鬼の注意を引く為ではあったのだろうが、その豊満で艶やかな乳房を曝け出して暴れるというとても物語には出来ぬ格好で戦った。

 他者にその時の様子を話せば引くか、笑うか。そのどちらかであろう。自分達とて当事者でなければそういう反応をする。それが当然だ。

 つまり今回の出来事は、要素だけならば御伽噺さながら。

 しかし実態はゴブリンに囲まれた冒険者達を、別の冒険者が恥を晒しながらも決死の覚悟で助けた。ただそれだけに過ぎない。

 その上助けた冒険者も助けられた冒険者達も女性だ。恋の物語になるならば男女の組み合わせでなければならない。

 

「何か問題ある?」

「ない」

「ありません」

「ないね」

 

 ()()なら、だが。

 

 部屋ごと借りている寝台付きの四人部屋。そこで貴族令嬢と一党(パーティー)の面々は顔を見合わせ、頷き合う。

 自分達は冒険者だ。いつか自分達の冒険が物語になるかもしれないが、物語の中を生きているわけではない。

 であるなら、物語のように行動し、それに沿う必要などない。全ての責任を自分で負う代わりに、自由意思で生きる事が出来るのが冒険者だ。

 つまり、女性同士であっても何の問題もない。一分の隙もない完璧な理論だ。

 そもそも己の危険も尊厳も顧みず、身体を張って命を救ってくれた相手に惹かれるなと言う方が無理な話だろう。あのように美しく逞しい女性ならなおさらだ。

 強いて誰の責任かと言うならば、全員の心を射止めてしまった女闘士の責任だろう。間違いない。

 あの格好と戦いぶりから強面の女傑を想像していた所に、涼やかで気品すら感じさせる美貌を見せてくるのが悪い。油断しきったところにその一刺し(スティング)は的確すぎた。

 それまで一党は誰一人そのような(百合)嗜好を持っていなかったというのに、その日のうちに全員が道を踏み外す事を決意してしまったのだから。

 

「地母神様も、純粋な愛なら女性同士であろうともお認めになられます。多分」

 

 僧侶も胸を張って――――――最後の呟きは聞かない事にした―――――言い切る。地母神の神官のお墨付きがあれば心強い。

 相手は1人でこちらは4人と人数は問題かもしれないが、当人達の同意があるのだからそれで良い。事にする。

 万事問題ない。ないのだが。

 

「だから早く勧誘して迎え入れるべき」

「装備もいいし実力もある。見た目もあの通りなんだから、絶対他の一党も狙ってるよ」

「分かってる、分かってるわよ!けどこう、目の前にすると勇気が出ないの!」

 

 問題はその対象である女闘士本人に対して、何も話せていないという事だ。

 受付嬢から彼女が単独である事を聞き出し、ならまずは一党に勧誘しようと全員の意見が一致した。ここまではよかった。

 しかしいざ勧誘しようと彼女の前に行くと、緊張と「もし断られたら」という不安から言葉が出なくなってしまう。結局は丁重に礼を述べ、当たり障りのない会話しか出来ない。

 

「というか皆そうじゃない!私だけ非難の的になるのは断じておかしい!」

 

 貴族令嬢の言葉に、一党の全員が目を逸らす。自分だけがこの体たらくならアレコレ言われるのも仕方ないが、他の面々も似たり寄ったりの反応になっているのだ。

 頭目としての役割と責任から自分が勧誘するのが筋ではあるが、ここまで言われる筋合いはない。

 

「でも早く勧誘しなくてはいけないのは確かです。あれから3日、私達同様疲れが抜けてそろそろ動き出す頃でしょうから……」

 

 神官の言葉に「ぬぐっ」と呻いて、貴族令嬢は言葉を詰まらせる。女闘士はまだ黒曜等級、決して財政状況が豊かではないはずだ。

 所作から感じる育ちの良さや、新人にも拘わらず良い装備をしている事から女闘士は自分同様貴族階級の出身であると貴族令嬢は踏んでいる。

 なので多少の余裕はありそうだが、確実にそうだという保証はない。

 冒険者稼業を再開してしまえば、自分達も依頼を受けない訳にはいかず確実に顔を合わせる事が出来るとは限らない。

 その間に他の一党が勧誘するかもしれないし、場合によっては拠点とする街を変える事だってあり得る。そうなればもう勧誘どころか会う事すらままならない。

 

「……決めた!今日こそ何が何でも勧誘する!女は度胸、何でもやってみるものよ!」

「よく言った!」

「流石です!」

「頼むよ!」

 

 褒めてはくれるが、一党全員が自分に丸投げする気である事を貴族令嬢はちゃんと理解している。

 だが頭目の責任ではある。仕方のないことだ。そう思いながら、貴族令嬢は一党の面々と共に自室から出て下へ向かう。そろそろ依頼の張り出される時間だ。

 女闘士が依頼を受けるならば来ているだろうし、来ていないなら朝食を酒場で取っているだろう。

 そう考えて一階に降りると、読み通り女闘士はそこにいた。兜こそ外しているが胸甲と革鎧を身に纏っている事を考えると、やはり依頼を受けるつもりなのだろう。

 もう猶予はない。意を決し歩み寄ると、まずは挨拶を交わす。

 

「おはようございます」

「ああ、おはよう」

 

 低めの落ち付いた声が心地よく耳朶を打つ。それもまた彼女の魅力だ。

 いや、今はそちらに心を奪われている場合ではない。落ちつけ。後ろで仲間が圧を送って来ている。

 無様を晒す事なく、不審な様子を見せる事もなく、至って冷静かつ普通に誘えばいい。それだけのことだ。深呼吸をしたら、3つ数えたら今日こそは言う。

 ゆっくり心の中で数えて、数え終えたら言う。1……2……s

 

「ちょっといいかな?お願いしたい事があるのだけれど」

「ひゃい!?」

 

 数え終える寸前に向こうから声をかけられ、思わず変な悲鳴を上げてしまう。

 女闘士が怪訝そうな顔をするが、何とか取り繕い「どうぞどうぞ」と先を促す。彼女から何か頼みがあるというのなら、可能な限り力にならねばならない。

 感情のアレコレは脇に置いたとしても、彼女は自分達の命の恩人なのだから。恩を返さないなどという選択肢は存在しない。

 

「実はその、受付さんから叱られると言うか心配されてしまってね。あまりにも無茶と言うか、無謀に近い行動が多すぎると」

「それは……」

 

 救われた身ではあるが、実際その通りだとは思う。ゴブリンの気を引くためとはいえ、面積が大きく狙いやすい箇所を曝け出して多数を相手取るのは本来自殺行為だ。

 相手が欲望のままにそこへ引き付けられていたから功を奏したが、もう少し考える相手ならば胸に意識が行く事を見越して他の部位を狙って来たかもしれない。

 そうでなくとも一撃も貰えない状態で戦う以上、それを気にして動きに制限がかかる。決してやるべきではない行為だ。

 上手く行ったのは彼女の装備が良かったことと、筋力に優れて体力があったこと。

 相手がゴブリンという最弱の魔物だったこと。目先に餌がぶら下がれば食いつかずにはいられない種族だったこと。

 そして、何より神々の骰子の出目が良かったであろうこと。

 これらの要因が重なってたまたま上手く行った、と思うべきだ。何度も同じ結果が出せるものではない。

 

「それで経験のある冒険者と組んで、色々と学んだ方が良いと勧められてね。そこでもし迷惑でなければだけれど、一度でいいから君達の一党に加えてもらえないかと―――――」

「ふつつか者ですがよろしくお願いします!お姉様!」

 

 女闘士の言葉を最後まで聞かず、深々と頭を下げて大声で叫ぶ。

 なんという幸運だろう。向こうの方から来てくれるとは!きっと僧侶の祈りを通して、自分達一党の純粋な愛が地母神に伝わり認められたのだろう。

 だいぶ都合のいい考えなのは分かっているが、貴族令嬢はそういう事にした。そして、それで押し切る事にした。

 無理が通れば道理が引っ込み、無理を通し抜けばそれが道理となる。世の中とはそうしたものなのだから。

 

 

 

――――――――

 

 

 

「木陰を通ったりすることで、上空からの襲撃を避ける事が出来るんですお姉様」

「長旅の場合、そういった所で適宜休憩を入れて進むのが基本。お姉様のように重装備なら特に」

「水を飲んで、お姉様の場合装備の止め具を緩めないと身体は休まりません」

「野営の場合は日が暮れるよりもっと早く野営地を決めて、準備を始めないと間に合わないよお姉様」

 

 依頼先の村へと向かう、その道中。

女闘士に対し貴族令嬢とその一党が口々に旅する際の注意点を教えてくれる。彼女らはきっと自分の経験不足を心配してくれているのだろう。

 その親切は非常に有難いし、そうして気遣ってくれる優しさは嬉しくもあるのだが……

 

「君達、その呼び方はどうにかならないかい。さっき言った通り私はまだ18なんだけれどね」

 

 冒険者として先達である貴族令嬢達に「お姉様」などと言われるのは少し、いやかなり抵抗がある。

 最初は女闘士の年齢を外見から20半ばと判断し、そう呼んだらしいのだが実年齢を教えた後も彼女達は呼び方を変えようとしなかった。

 いや、年齢の事だけならば良いのだ。女闘士は自分の見た目が実際の年齢よりずっと上に見える事は自覚している。だからそう勘違いするのは理解できる。

 その勘違いを正した後も、一度始めた呼び方が定着するというのはままあることだ。これも分からなくはない。

 ただ彼女達のその呼び方からは、こう、一種の欲望のようなものが感じ取れるのだ。

 女性同士でまさか、とは思うが、女闘士は―――――遺憾ではあるが―――――経験からその手の感情には聡い。故に気のせいとは言い切れなかった。

 

「お姉様はお姉様ですから!」

「その通り」

「ですね。お姉様はお姉様です」

「そういうことだよ」

「いや、どういうことだい」

 

 思わず突っ込まずにはいられない答えが、一党の全員から返って来る。

 これで単純に欲望だけを差し向けられているのならば対処は幾らでも浮かぶのだが、同時に彼女達からは好意を向けられているのも感じ取れる。

 好意とそれに端を発する欲望に対し、どう対処すればいいのか女闘士には分からなかった。そんな感情を向けられるのは初めてなのだ。

 敵意や害意、下衆な欲望なら殴ればいい。だが好意を向けられた時、それは蔑ろにしてはならない。

 少なくとも女闘士はそう育てられてきた。まだ3年ほどしか経っていないのに、もうずっと遠い思い出のように感じるが。

 

「……まあ、好きに呼んでくれたまえ」

「「「「はい、お姉様!」」」」

 

 溜息と共に吐き出した言葉に、貴族令嬢達が一斉に返事をする。その声にげんなりすると共に、自分の頬が自然と緩むのも感じる。

 勘弁してほしいとは思っているが、この賑やかさを楽しく感じているのも事実だ。

 それに自分が助けた相手が、こうして無事冒険者を続けているのを実感できるのは素直に嬉しい。助かってよかったと素直に思える。

 同時に、この輪の中に自分がいてもいいのかとも思ってしまう。

 怒りや憎しみといった負の感情が収まらず、殺意が何時だって心の中に居座っている。そんな自分がこんな明るい人々と共にいていいのだろうか。

 彼女らと共にいるべきなのはもっと別の人なのではないだろうか。ここは、これは自分に相応しくないものではないだろうか。

 あるいはこういった場所にいることで、自分の中の感情を鎮めるのが正しいのだろうか。それで鎮まるのだろうか。

 いや、どうしてもあの男達や小鬼の面影がちらつく。であるならば、やはり自分は心が、感情が敵とみなす相手を殺しに行くべきだろう。

 この一党とは今回限りだ。そうでなくてはいけない。巻き込んではいけない。

 彼女らが自分の報復に付き合ってくれるというのならば話は別だが、そんな物好きがいるはずもない。

 

 自分の心が敵だと、憎いと感じる相手を殺すために依頼を受ける。そんな人間はもう、冒険者とは呼べないだろうから。

 

 彼女らはあの剣士達同様、冒険者だ。自分は違う。そんな綺麗な存在ではない。

 だから、今回限り。だけど、今回だけは。

 

(冒険を楽しんでも、構わないよね)

 

 いつかは自分も、冒険者になりたいのだから。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 兜を被り、大金棒(モール)戦嘴(ウォーピック)を背負い、胸甲と革鎧を着たまま枝にぶら下がる。

 背中の筋肉を意識しながら、ゆっくりと身体を持ち上げて行く。何処の筋肉を使っているのかを意識しながら、正確な動きを心がける。

 持ち上げ、その姿勢を保ち、またゆっくり元に戻す。おざなりに100回やるのではなく、集中して10回やった方が遥かに効果はある。そう習った。

 また、実際に身体を使う時は装備をしている。だから重い装備を付けたまま動く事を前提とした方がいい。

 これは習ったのではなく、女闘士が自分の経験から学んだことだ。

 だから、こうして身体を鍛える時は基本的に普段使う装備を付けたままやる。場合によってはそれ以上に重りを付けてやる。

 これ自体は何時もと変わらない鍛練だ。これ自体は。

 

「……見ていて楽しいのかい?」

「はい!」

 

 鍛練を始めた時からジッとこちらを見ている貴族令嬢に訊ねると、彼女は輝かしい笑顔で以って返事をする。

 そう言われれば何も言えず、女闘士は黙々と鍛練を続ける。

 依頼先の村に来てから五日。盗賊騎士を待っている間、滞在費や食費は村側が負担してくれている。そういう契約だ。

 その間何もしないでいるのは外聞が悪く、また身体も鈍るため相手が来た際に支障が出ない範囲で各々訓練や見回りをしていたのだが……

 

(何が面白いのだろうね)

 

 女闘士が鍛練をする時、一党で手が空いている者は必ず見に来ていた。そして終わるまで飽きることなく、ジッとこちらを見ているのだ。

 貴族令嬢はまだ分からなくもない。彼女も前衛であり、鍛練のやり方について質問してきた事を考えると自身を鍛えようとしているのだろう。

 だが他の三人が来る理由はないはずだ。いや、彼女達が自分に抱いている感情が理由なのは分かっているが。

 村人から時折向けられる好色な視線。それよりもっと熱っぽいが、不快ではない好意を孕んだそれを彼女達は自分に向けてくる。

 流石にそれが5日も続けば、どういう感情を抱かれているか嫌でも気付こうというものだ。

 他者の感情をどうこう言う権利はないし、自由にすればいいとは思う。襲われでもすれば別だが。

 しかしこうして鍛練を見つめられるのは、不愉快ではないが不可解だと思わざるを得ない。何も得るものはないはずだ。

 

「お姉様!リーダー!」

 

 いっそ直接理由を聞いてみようか、と思った矢先、野伏が走って来る。声音から何かが起きた事を察し、枝から手を離す。

 そういえば「お姉様」と呼ばれるのにも慣れたな。そんな事を不意に考える。いずれはこの視線にも慣れて行くのだろうか。

 いや、時間をかければ慣れて行くのだろう。どんなことだってそうだ。只人は適応していく種族なのだから。

 そう考えれば未来に少し希望が見える。心の有り様にだって慣れて、折り合いがつくはずだと。

 しかしこの視線に慣れていくのはちょっとだけ怖い。女闘士はそう思わずにいられなかった。

 

 

 

――――――――

 

 

 

「中々見所ある嬢ちゃん達だってのに、勿体ねえな」

 

 馬車の荷台に女闘士達を乗せながら、行商人は小さく呟く。盛った薬はよく効いているらしく、酩酊した彼女らは起きる気配もない。

 数で有利だったとはいえ、完全装備で騎乗した騎士を苦もなく打ち倒したのは立派だと言える。たとえ相手が騎士として二流以下だったとしても、だ。

 そんな彼女らではあるが、恐らくコレが運のツキだろう。少なくとも自分がこうして嵌めた冒険者達は、誰一人として生き残ってはいないのだから。

 

「やめときな」

 

 その二流以下の騎士が荷台に乗り込もうとしているのを制する。

 表情と普段の言動、決闘に敗れ屈辱を受けたという事実。そして相手が見た目の悪くない若い女性達と来れば、何をしようとしているのかは容易に察せる。

 

「大事な商品に手を出すんじゃねえよ」

「煩い!貴様ごときが私のやる事に口出しを―――――」

 

 騎士はそこで口を閉ざす。やはり言って聞かせるよりも、投矢銃(ダートガン)を額に突き付けてやる方が手っとり早い。

 

「村のモンなら構わねえけど、商品に手を出していいなんて契約だったかい」

「い、いや……」

「アンタの仕事は冒険者を誘き寄せる餌になる事。その報酬は充分貰ってるだろうし、村から金や物せしめていい思いしただろ?」

「あ、ああ……」

「じゃあそれで満足してろ。女欲しけりゃ娼館いきな」

 

 無言で頷く騎士に笑いかけ、投矢銃を下ろす。全くもってふざけた手合いだが、この仕事をやっているとしばしば遭遇するから困ったものだ。

 騎士や盗賊に村から金品物資を捲き上げさせ、討伐依頼を出させる。

 冒険者がそれに勝てるようならば祝宴にかこつけて薬を飲ませ、罠に嵌める。

 それが成った時点で餌役の仕事は終わりだと言うのに、相手が女だと負けた腹いせか単に下衆なのかは知らぬがこうして犯そうとするやつは多い。

 自力で勝ったならまだしも、負け犬の分際でふざけた話だ。第一そんな事をされたら自分の「商品を無事に運ぶ」という仕事が台無しになるではないか。

 

「アンタの仕事は終わったんだ。アンタ見捨ててどっかに行った従者よろしく、とっとと失せろよ」

「……追加報酬を寄越せ」

「ああ?」

「そこの女達の誰か1人でいい。私に寄越せ。そのぐらいの働きはしたはずだ」

 

 本心からそう思っているらしいその顔を見て、行商人は苦笑した。成程、これでは宮仕えも傭兵もままならぬはずだ。

 自分のやった仕事の成果を過大に評価し、過剰な俸給を請求する。そのくせ「私は寛大だから、このぐらいで我慢してやる」と本気でのたまう。

 能力の有無に関わらず、人間として二流のまがいもの。

 

「装備と馬は返してもらったが、あの不忠者が逃げたせいで大損だ。これは私の正当なけんがひゅっ」

 

 投矢銃にだけ注視していた騎士の喉を、逆の手で隠し持っていたナイフで掻っ切る。深手を受けて反撃するでも逃げるでもなく、騎士はただ喉を抑えその場にうずくまる。

 この手の連中の要求は際限がない。仮に1人女を譲渡しても不平不満を抱え続け、報酬の不足を埋めるという名目で契約を破りこの仕事について誰かに喋って小銭を稼ぐだろう。

 どころか身の程知らずにも自分の雇い主を脅しかねない。別にそれでコイツが始末されるのは構わないが、自分にも火の粉が飛んでくる可能性もある。

 そんなのはまっぴらごめんだ。

 

「ほら、追加報酬だぜ」

 

 延髄の辺りを狙って、ナイフを振り下ろす。首の骨に刃が当たり硬い感触が伝わって来るのと同時に、糸が切れたように騎士は顔から倒れ込んだ。

 それなりに愛用した品ではあるが、大量に流通してる安物だ。コイツにくれてやるにはちょうどいいだろう。

 

「余計な手間食ったぜ」

 

 事切れた騎士の死体には目もくれず、行商人は馬車に乗り込む。

 言われた通りの仕事をして、言われた通りの報酬を貰う。何故それで良いとしないのか。つくづく理解に苦しむ。

 まあどうでもいいことだ。

 

「俺は契約結んで、あそこに運ぶ。それだけの仕事だからな」

 

 契約書にサインした以上、彼女らは()()()に剣奴となった。そして契約に従い、主人の元へ赴きそこで戦う。

 行商人は剣奴となった者を、主人の元へ運ぶ。それだけの話だ。

 後の事など知った事ではない。運ぶ先がどのような場所だったとしても、だ。

 

「そんじゃ新人剣闘士様5名ご案内、っと」

 

 行商人の小さな呟きと共に、馬車が動き出す。かくして―――――

 かの悪名高き闘技場にまた1人―――――否、5人の新人剣闘士が送り込まれていくのだった。

 




Q.なんでお姉様呼びに……?
A.百合が年長を呼ぶ時はお姉様と呼ぶ。ニュートンが発見した法則だ。

Q.村はグルなの?
A.村はグルではないです。村は。でも誰か繋がってる奴はいるよねきっと。



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女闘士・6

極端な出目しか出なくて頭を抱えたりするけど、私は元気です。

(女闘士ちゃんの)パイ食わねぇか!(ヤケクソ)


 待って待って!これ薄い本でよく見る奴じゃん!勘弁して!動画が上げられなくなる!

 そういうことが起き得るゲームだとは知ってるけど、俺はこのゲームとそういう付き合い方するつもりはないから!

 このゲームとはもっとプラトニックな関係で行くつもりだから!

 

 ヤバい、完全にブラックアウトした。これ画面元に戻ったらR-18状態とかないよね?

 いや、動画を上げてるならなってないのは確定なんだけど、録画してる今だと本当にわからん……

 お、画面に明るさ戻って来た。頼むよマジで。何事もない状態でいて。そのままの君達でいて!

 ……ヨシ!手枷足枷首輪と完璧に奴隷ルックだけど、とにかくヨシ!フル装備だし!

 たぶんこう、見せられないよ的な事は起きてないはず!

 

 ところでここどこ?明らかに活火山の近くなんだけど。見た事ないぞこんなとこ。

 あの闘技場も見た事ない。って言うかもっと立地条件いい所建てようよ。なんで活火山の麓なんだよ。他に土地いっぱいあるだろ。

 あれか?不動産屋に適当な土地売りつけられたのか?もう新しい土地買う余裕ないから諦めたのか?

 

 ああ、はいはい。進みます進みます。鞭で奴隷を叩かず地面を叩いて音でビビらせてるんですねそれ。賢い。

 鞭で殴ると人は最悪死にますからね。勘違いされがちですけど奴隷ってのは資産なんで、死なない様に使うのが基本なんですよ。

 正確に言うと無駄に死なない様に、ですね。古代ローマの奴隷とか、今の社畜より恵まれてますから。主人によりけりではあるんですけど。

 どうでもいいけどこう、枷嵌められて首輪付けてる女闘士ちゃん滅茶苦茶いいですね。趣味に目覚めそう。

 あ、中入ったら手枷足枷は外してくれるんだ。まあ歩きにくいからね。

 装備を取り上げないって事は何か暴れた時の備えとかあるのかな。まあ大人しくしておこう。

 多分下手に暴れると首輪が爆発したりするんだろ。俺はデスゲームもの読んでるから詳しいんだ。

 

 魔術師が何か言ってる。ここは火吹き山の闘技場?知っているのか、雷電!

 恐ろしい悪の魔術師によって築かれた闘技場で、余興と闘技場に《死》の力を満たして自分の力とするために殺し合いをさせてる?デスゲームじゃん。

 貴族や商人と繋がりがあるから罰せられないし奴隷は合法的に集めてる、と。合法的とはいったい。

 あ、あーあーあー。あれか、意識失う前に書かされてたやつか!あれが契約書で、サインあるから合法ですよーって馬鹿!あんなん明らかに違法や!

 自分の意思で書いたから合法?くそっ法制度が未発達過ぎる!もっと整備して!

 でも生き延びたら多額の報酬を得る?やっぱデスゲームじゃん!運営が人生を変えてみないかとか言うやつ!

 金を得ても人間性が変わらないなら大した変化は起きねえよ!

 

 って言うかよく見たら周りに結構人いるな。バトルロワイヤル感凄い。

 奥の高いところ、絶対主催来るだろ。ほら来た。現れ方がワープだけど。黒霧かよ。

 明らかに魔術師って格好。ローブとフードで何故か顔が影になって見えなくなる仕様。その衣装何処で売ってるの?しまむら?

 それとも魔術師とか悪役専門のそういう店あるの?着ると何故か顔が影になるやつ。

 ちなみに魔術師、って言いにくい人は「まじつし」って言うような気持ちで発音するといいですよ。

 お、利根川先生より丁寧な説明してくれてる。えーっと、要するに1日1回戦って3回勝ったら自由にしてやると。

 1勝すると1人につき銀貨100枚。生き延びたら魔法の武具を贈呈。コレ美味しい話なのでは?強制的に連れてこられた事を除けば。

 あと間違いなく3勝させる気が無いパターンなのを除けば。絶対3試合目に無敵の王者とか出てくるパターンじゃん。

 1試合目がカナディアンマンで2試合目がブロッケンJrだからイケると思ったら、3試合目でアタル兄さんとか悪魔将軍出してくるパターンだよ。

 

 ざわついてんなー、周り。ウチの一党(パーティー)は緊張しつつも勝ち抜いてやろうみたいな感じですね。意外と腹座ってんな。

 まあ何とか勝ち抜くしかない感じかな?でもこういうパターンだと推奨レベルとかが分からないから不安。

 オープンワールド系あるあるで、高レベル向けの所へ低レベルで突っ込んだ可能性もありますから。最終戦でドラゴン出てくるとかね。

 ちょっとお隣さん!その台詞はヤバいって!「こんなところにいられるか!」「俺は帰るぞ!」って完璧な死亡フラグだって!

 これ絶対デスゲームで見せしめというか「拒否すると死ぬ」って分からせるための見せしめ的なやつになるパターンだから止めた方がいいって!

 あーほら言わんこっちゃない。コナンの犯人並みに黒くなっちゃって。逆隣の人が言うように、逃げなきゃ生き延びれたかもしれないのに。

 あの魔術師、ウチの魔術師じゃなくてフード被ったアレ。アレの台詞からして首輪が何かしてるっぽいですね。外せない首輪が何かしてくるのもお約束。

 はーい、素直に従いまーす。

 

 控室に連れてこられたんですけど、豪華だなここ!ギルドの個室より内装が綺麗!すいませんここ拠点にさせてもらえませんか。

 結構大きめの音出して鍵かけたな。脅しかな?あ、お隣さんも同室なんだ。よろしくお願いします。ルームメイトにはちゃんと挨拶しよう。

 すいませんけどお話いいですか?具体的には情報ください。なんか知ってるだろ絶対。

 あ、ここの生活長いんですか。やっぱ三回勝つのキツイんですね。で?絶対3戦目の相手の事は知ってますよね?

 獅子みたいだけど獅子じゃない怪物。山賊打線のことかな?確かにあの打線抑えて勝つのは厳しいな。中継ぎを打つしかない。

 と言う事は、ここは所沢の可能性が微レ存……?だからアクセス悪そうな所に建設されてるのか。この闘技場、ドームなのに雨が降ると濡れたり冬寒くて夏熱かったりしない?

 まあそれは置いといて、多分人頭獅子(マンティコア)だよなあ、相手。やだなあ。戦った事ないけど大体のゲームで強いじゃん。

 今回の興業にはあの魔術師も気合いが入ってる、って嫌な情報。何?今回はCSか何かか?

 あ、はい。話はこのぐらいにして寝るんですね。まあ豪華な寝台だこと。食事も願えば出てくる?

 本当だ。食べ物の名前打ち込んだらすぐ出てきた。すいませんここ幾らで拠点にさせてもらえますか。

 敵の強さ次第ではもうここに就職した方がいいんじゃないかな。

 

 とりあえず寝る前に、逃げられないかどうかだけ確認しておきましょう。いざという時のために。

 まずは野伏に解錠試してもらいましょう。多分専用の鍵が無いと開かないパターンだとは思いますけど、一応ね?

 難しそう?まあ試してみて。最悪女闘士ちゃんの手にマスターキーあるからそっち使うから。

 そんなもの持ってないって?知らんのか。マスターキーとは斧とかバールのようなものの事を言うのだ。

 鍵、あるいは扉そのものを破壊してどんな所でも開ける。だからマスターキー。

 最終的には力による解決よ。そのための大金棒(モール)。そのための筋肉。

 

 ……カチャ、って言わなかった今?カチャって。

 

 開きましたねぇ!やるじゃん野伏!気に入った、家に来て女闘士ちゃんをファ●クしていいぞ!

 あ、いややっぱお前、というかお前らの一党はダメだ。ジョークで済まない可能性がある。

 でもこれどうしよう。逃げれるっぽい?でも逃げても首輪外れないんだよなあ。個人的にはもはやファッションとして完成された感じがあるからいいんだけど。

 あの魔術師を暗殺?何か策があるのか貴族令嬢!あ、ダメだコレ特に策はないけど出来るんじゃねってやつだ。

 だけど実際鍵開けて抜け出して暗殺ってルートとしてアリな気はする。わざわざ開く鍵になってるっていうのはそういう事だよねきっと。

 あー、意見割れてるな。どんな危険があるかも分からないから、抜け出すのも反対なのが魔術師。このまま逃走が野伏と神官で、暗殺が貴族令嬢か。

 女闘士ちゃんが逃走選べば多数決で決まり。他二つなら貴族令嬢が決定する感じかな。どうしよう。

 んー、逃げようか。暗殺するって言ってもここ相手のホームグラウンドだし、勝ち目薄いでしょ。

 貴族令嬢と魔術師もそれでいいって納得してくれました。まあ正直どれ選んでもリスクはあるからね。

 あ、同室の人どうしようか。誘うだけ誘ってみようか。一緒に来なくても見逃してもらえればそれでいいし。騒がれるのが一番困る。

 

 おはようございます。寝起きドッキリです。誰かバズーカ持ってない?

 すいません寝ようとしてたところ。あの、なんか鍵開いちゃいまして。開いちゃったもんはしょうがないから逃げようって話になりまして。

 ホラ、逃げる気はなかったんだけど開いちゃったら逃げないのは失礼だから。それで一緒に逃げようかなって。

 ざっくり言うと、ヘイ彼女!脱獄しない?ってわけです。いや牢獄じゃねーけど。いや、似たようなもんだなここは。

 

 あ、すんなり同意してくれた。交渉判定上手く行ったっぽいな。

 それじゃ脱出しましょうか。スネークになった気分で行こう。どれだけ敵いるか分からんし。

 まあ6人で隠密行動とか不可能なんですけどね、常識的に考えて。

 また扉とかあったら基本は野伏が解錠、失敗したら大金棒(マスターキー)で解錠だ。困ったら暴力で解決。

 しかしこの廊下、めっちゃ豪華だな。鹿の剥製が壁にかかってるタイプの富豪の屋敷じゃん。

 奥の方に誰かいるな。あ、最初に会った奴隷頭だ。あとアレは……用心棒(エンフォーサー)か。

 3人しかいないけど、戦闘になったら面倒だよなあ。絶対次から次へとやって来るよね、コレ。

 さあどうすっかな。奇襲で殺るのが一番早いか?でも確実にやれるかなあ。

 選択肢出てきたけど、知力とかの問題で殺す以外の選択肢が選べなくなってますね。パワー系選択肢以外も選ぼうよ、ロイヤルメスゴリラだからってさあ。

 ほら窘められた。貴族令嬢の言う通り、一応忍び寄って行って上手く通過できないかどうかだけ試しましょう。

 失敗したら?戦って勝つしかなかろう。

 

 はい、まずは野伏から……OK、無事通過した。次は貴族令嬢。よしよし、忍び足で……今音立てたな!気付かれたか!?いや、セーフか……連中がマヌケで助かった……

 魔術師は……めっちゃ余裕そう。なんなら野伏より余裕じゃん。はい次、同室の人。そーっと行って、そーっと。よしよし、上手く行った。

 次、神官。女闘士ちゃんは最悪1人取り残されても何とかなりそうだから最後。はい行って。どんどん行って。そうそうその調子……また音立ててるじゃない!

 ……いやお前ら気のせいで済ませるなよ!敵だけどさあ!間抜けにも限度があるだろ!

 これ気付いてるけど泳がせてるとかじゃないよね?逃げれると思ったら出口で待ち構えてるとかじゃないよね?怖ぇ……

 さあ、ラストだ。お願いだからマヌケでいてくれ。そのままの君達でいてくれ。物音がした気がするけど気のせいだな、ヨシ!とか言っててくれ。

 ……OK!抜けれた!あーマジでドキドキした。よし急いで離れよう。決して走らず急いで離れよう。あばよ、マヌケども!

 

 確か入って来た時はこの階段降りて、ちょっと進めば入り口だったはず……ホラあった!

 でもこの首輪外れねえな。この首輪したまま外に出ると大変な事になりそう。

 最悪誰か1人が外に出てみて、実験するしかないのかコレ。嫌だなあ。

 ……BGM露骨に変わりますね。これは来るかな?来るな?来たよ、フード。

 大人しく戻るなら見なかった事にしてもいいって、中々に寛大。許せる!でも戻らない、ってこっちが言う前に他のみんなが言っちゃった。いやいいんだけどさ。

 勝てる気はあんまりしないけど、出会ったらやるしかないもんな。あ、なんか呼び出した。何コレ、スケルトン?竜牙兵(ドラゴントゥースウォーリァー)?へー。まあ殴れるなら一緒一緒。

 よし、やるぞ!貴様の首は柱に吊るされるのがお似合いだ!(パパパパパウワードドン)

 

 真っ直ぐ突っ込んで、大金棒で強打!竜牙兵くぅん、大金棒食らわねぇか!僕はどぉんどんおみまいしていくぞぉ!

 この程度なら一撃よ。よしよし、貴族令嬢と同室の人がもう一体も仕留めたから後はボスだkなんですかそれ。

 《小鬼(クリエイトゴブリン)》の呪文?ずるいぞゴブリン生み出すとか。まあ所詮ゴブリンよ。野伏の攻撃か魔術師の呪文ですぐ死ぬでsyなんですかそれ。

 えーっと、何?何コレ。ボス死んだ?

 ゴブリンを無視してボス狙った野伏の矢と魔術師の《力矢(マジックミサイル)》が当たって、死んだ?クリティカルでも出たのか?いやそれにしても呆気なさ過ぎない?

 だってこれだけ大仰に出て来てアッサリ死ぬって、噛ませキャラじゃん。いくらなんでもこれはないだろ。ホラ周りのみんなもボブも訝しんでる。

 

 うわっ!なになになに!なに、何が起きたの?何この部屋?場面が一瞬で切り替わったんだけど。

 あ、奴隷頭だ。どうやってここに来たって?わからん、俺達は雰囲気でここに来た。

 野伏が何かに気付きましたね。今日すげえ調子良くない?何に気付いたんだい。

 おわっ、なになんなの!?イリュージョンやるなら事前連絡して!

 ……あ、あのフード!フードだ!あれか?なんかよく分からない魔術で化けてた系か?部屋も変わってるし。

 さっきのは影武者とか幻影か。まあそうだよな、弱かったもん。何もせず1ラウンドで死んだもん。あ、ゴブリンは出したか。

 面白いモノを見せてくれて感謝しているって、凄い大物っぽい台詞。マジで強い大物はこういう余裕ある。

 えっ、解放してくれるんですか!望むなら決勝に出してもいい?滅茶苦茶寛大じゃん。騙して奴隷にした事を除けば。

 どれだけ寛大でも、もう最初の一歩がダメ。

 とりあえず全員で相談タイムと。あ、選択肢出てきた。えーっと、赤い文字は危険とかじゃなくて、キャラのパーソナリティやアライメント的に推奨される選択肢だっけ?

 でもここでこの魔術師を倒すって、中々厳しいと思うんですけど。絶対クソ強いじゃん。

 

 だけどここまで来たら倒したいなー。これにしよ。あ、これで決定じゃなくて周りと意見の擦り合わせがあるのか。そりゃそうか。

 うん、みんな解放を望んでおられる。ですよね。

 また選択肢だ。1人でも戦うが赤文字で、引き下がるのがいつものか。あー、どうするかな……

 まあ引き下がりますか。1人だとまず勝てなさそうだし、みんながこう言ってる時に1人だけ意見通そうとするの気が引けるし。

 すいませんね、自分根っからの日本人気質なんで。リカオンズの出口並みの日本人気質ですよ。

 というわけで解放してください。土日出勤と残業から。

 すげえ!指パッチンで全員の首輪が全部取れた!物凄い強キャラ感。あ、見料までくれるんですか?銀貨100枚も?しかもこれ1人につきって太っ腹過ぎる!

 ダメだ、お金貰うと悪感情が抱けない。でも捨て台詞だけは吐いていこう。あ、爆笑された。負け犬の遠吠えですもんね。

 うーん、三下の気分。敗北感、俺の心に敗北感。

 

 ……だからこの一瞬で場面切り換わるの止めろって!せめて事前に何か言え!そしてここどこ……いや、見覚えあるな。辺境の街の近くだなここ。

 何、一瞬でワープさせられたってこと?6人纏めて?どれだけ凄い力あるのあの魔術師。戦わなくてよかった。

 いや、今回本当に「負けた」って気分だわ。コレ見てる人爽快感ゼロでしょうけど、やってる本人もめっちゃ悔しいですよ。

 サッカー日本代表にじゃんけんで負けた上に、負けた理由を明日までに考えといてくださいって言われた時の8倍ぐらい悔しいですよ。

 本当に悔しいのでいずれリベンジはしたいです。いずれ。今は無理。

 さて、かなり長時間プレイしてきたので今回はここまでにします。ご視聴ありがとうございました。また次回、お会いしましょう。

 




解錠判定で野伏が10出したり、同室の人の説得をしたら魔術師がクリティカル出したり
用心棒は隠密の対抗判定で3しか出さなかったり、戦闘で《力矢》撃ったら魔術師はまたクリティカル出したり
中間という物を知らないのか君達は。


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女闘士・6 裏

チェンソーマンで精神をやられたのでボーボボを読んだら、精神が復活した代わりに頭がやられました。
メケメケメケメケメケメケメケメケメケ。


 火吹き山の闘技場。

 悪名高きかの魔術師によって築かれ、そこでは剣奴達が殺し合いを強制されているという。

 魔術師はそれを余興として楽しみ、同時に闘技場へ《死》を満たしそれを己の力としている。

 その力と力に基づいて築いた財力、そして豪商や貴族との繋がりを活かす事で至高神の天秤剣の前に連れ出される事もない。

 剣奴達を殺し合わせれば合わせるほど魔術師は力を増し、力を増せば多くのものを得る。そうして得たもので剣奴を増やし、また力を付ける。

 今やかの魔術師は莫大な財と強力な縁故を持ち、また力も強大で比類なきものとなっている。

 幾人もの冒険者――――――その中には武勲詩に謳われるほどの者もいた―――――が暗殺を企てたが、魔術師は今もこうして健在だ。

 また殺し合いを強制する一方で、優れた武勇を示した者には惜しみない報酬を与える。そして報酬を手に出来る者は、真に勇士であると四方世界に名を轟かせる。

 

 

 

「……というのが、世に知られている火吹き山の闘技場」

「なるほど」

 

 魔術師――――――貴族令嬢の一党(パーティー)の魔術師の言葉に、女闘士が頷く。

 貴族令嬢も一党の他の面々も火吹き山の闘技場については知っていた。冒険者として活動していれば、自然と耳にするほどに悪名高い場所だからだ。

 だがまだ冒険者になって日の浅い女闘士は知らなかったらしく、魔術師から熱心に話を聞いている。

 

(落ちついてるのはいいこと、よね)

 

 欺かれ、剣奴として売られてしまった。その事実を一党の誰もが冷静に―――――内心焦りはしたが――――――受け止め、恐慌(パニック)を起こしてはいない。

 死地に置かれたのは確かだが、それでも冷静さを失わなければ打開策を考える事が出来る。

 浮かぶかどうか、浮かんだ案が実現出来るかどうかは別としてだが。

 

(聞いた話によれば問答無用で殺される事はないみたいだし……もう少し情報を集めてから動くべきね)

 

 下手に動けばどうなるか分かったものではない。逆に動かない限り、闘技場で戦わされる以外の危険はないはずだ。

 この状況でどれだけ情報を集める事が出来るかは分からないが、無策で動くよりもずっといい。だから今は動くべきではない。

 それは貴族令嬢が鋼鉄等級になるまでに積んだ経験に基づく判断であり、一党の皆も言葉にするまでもなく同じ考えだと確信出来た。

 

(つまり、お姉様の首輪姿を堪能するのは正しい選択よね)

 

 凛々しく、美しい女闘士。その女性としては太い首に、飾り気はないが異様に黒光りする首輪が付けられている。

 自分達の首にも巻かれている忌々しい首輪だが、女闘士の首に嵌まるとそれは一種の装飾品のように見えてくるのだ。

 勇壮という色で統一された女闘士。その一か所にだけ存在する背徳的な色。それは凛々しさの中に妖艶さを含ませ、魅力を引き立てているように思える。

 そして同時に、首輪は女闘士の凛々しさを損なう事なく増しているのだ。

 自分と一党の仲間が付けているのは奴隷の証でしかないが、女闘士が付けているとまるで優れた猟犬に相応しい高価な首輪が付けられているように見える。

 女闘士が堂々と「衣装の一部」と言ってしまえば、彼女の風格も相まって皆納得してしまうだろう。

 

(……眼福!)

(いいモノを見た)

(役得だね)

(素晴らしいです!)

 

 全員が内心で、拝むような心持ちで呟く。

 決して彼女達はただ女闘士の首輪姿を眺めているわけではない。兵士達や慌てず落ち着いている、つまりここに「慣れて」いそうな剣奴達が変わった動きを見せたり何か言葉を漏らさぬかと注意を払っている。

 さらには入り口からここまでどれほど歩いたか、部屋の位置や廊下の作りはどうだったかなど必要な事を記憶し、頭の中で整理して動く時に備えているのだ。

 

 ただ、それらと並行して彼女達は自分の煩悩に対しとても忠実だっただけだ。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 女闘士は激怒した。必ず、かの魔術師を殺さねばならぬと決意した。

 人を騙して奴隷とする事も、その命で遊ぶ事も、何もかも。この闘技場の全てが彼女の怒りを燃え上がらせる。

 ここはあの牢獄と同じだ。あの魔術師は看守達と何も変わらない。

 自分を、自分達を騙したあの行商人も。あのローブに身を包んだ魔術師も。必ず殺さねばならない。

 この激情の赴くままに、己の魂が叫ぶままに。自分は動かねばならない。殺意に依って自分は立つのだ。

 あの魔術師は間違いなく自分よりも強いだろう。よほど運が味方しない限り、勝つことどころか相打ちもおぼつくまい。それでも、戦わねばならない。

 女闘士の心はそう叫んでいるし、彼女は心に、感情に従う。しかし。

 

(彼女達を巻き込むのは、違う)

 

 自分と共に騙され、剣奴とされた貴族令嬢一党(パーティー)。彼女達にも戦いを強いるのは違う。

 自分がただ一人で挑み、敗れ、死ぬのはいい。選んだ道だ。だがそれに彼女達を引き連れて行くのは違う。

 

「私もここは逃げるべきだと思うよ」

 

 だから一党での話し合いにおいて、彼女はそう主張する。

 本心を言うなら貴族令嬢同様、あの魔術師を暗殺すべきだと、生かしてはおけないと感情は叫んでいる。

 だが一党全員で挑んでも勝てる可能性は低いと、勝つにしても誰かしらが犠牲になるだろうと思考が訴えている。

 もしもここで自分が暗殺を主張すれば、恐らく意見は通る。主張する人数の数で言えば逃走と同じだが、その場合頭目(リーダー)の決定が優先されるものだ。

 それに彼女達が自分に対して抱いている好意を考えれば、否定する理由がない場合女闘士の意見を尊重してくれる事だろう。

 しかしそれを女闘士は選ばない、否選べなかった。

 どうして彼女達の想いを利用して、無謀にも近い危険な行動に付き合わせる事が出来るだろうか?

 

(挑むなら私だけで、だ)

 

 もう一度来る事が出来るかどうかは分からない。だが、自分の意思で来ている者も中にはいるようだし何かしらルートはあるのだろう。

 であるならば、彼女達と別れ単独でもう一度挑むべきだ。

 

(私一人で、か)

 

 この賑やかで愉快な一党と別れ、一人で戦う。生きるにせよ死ぬにせよ、一人で。それが自分には相応しいし、そうでなくてはならない。

 だが、彼女達との別れに名残惜しさを感じてしまっている自分がいる。最初に組んだ剣士達もそうだったが、日数が多くなった分より名残が惜しい。

 いや、それだけではない。貴族令嬢達から、女闘士へと向けられ続けた好意。それは戸惑いを伴いつつも、心地よさを感じるものだった。

 それを手放す事を自分は嫌がっているのだ。

 

 報復をしようと、せねばならぬと。復讐へと自分を駆り立てる激情が鎮まったわけではない。

 むしろここへ連れてこられた事で、再度火が付いたと言える。

 だが同時に、この一党の中にいたいと思ってしまっている。そういう自分に、女闘士は気付いてしまった。

 ここで仲間と共に冒険をして、冒険者となって。「楽しく」生きていきたい。そう考えてしまっている。

 とても両立できるものではない。なのに、どちらも自分は欲している。

 

 いっそ全てを打ち明けて、彼女らの理解を得た方がいいのだろうか。打ち明けたとして、理解は得れるのだろうか。

 穢された過去を知ったら、彼女達は自分から離れて行ってしまうのではないだろうか。

 

(……いや、それでいいんだ)

 

 それならば望み通り、女闘士はまた一人になる。自分に相応しい環境で、心の赴くままに動ける。それでいい。

 だがもし、もしも。この一党の仲間達が受け入れてくれたのなら。自分の想いを理解して、付き合ってくれるとしたら。

 どこまでも強欲になってやろう。復讐を続けながらも、楽しく生きる。そんな許されざる存在になってやろう。

 

 そのためにも、今は逃げる。今はあの魔術師と戦わない。それでいい。それがいい。

 いずれ挑む。いずれ殺す。それでいいのだ。

 

 

 

――――――――

 

 

 

「逃がしてよかったんですかい?」

 

 滅多にない―――――彼に雇われてから初めてかもしれないというぐらいに上機嫌な魔術師に対し、行商人は疑問を投げかける。

 部屋から抜け出し、見張りの目を掻い潜り、魔術師の幻影と竜牙兵(ドラゴントゥースウォーリァー)を撃破した新人剣闘士達。

 確かに魔術師が気に入るのは分かる。最近では根性が無いのか賢しいのか、魔術師を狙うどころか逃げようとする者すらいなかったのだ。

 ところが彼女達は逃げ出すどころか、一部の者は魔術師と戦おうという姿勢さえあった。仲間との兼ね合いでそれは避けたようだが。

 行商人としても自分が運んできた「商品」がこれだけ良質だった事は喜ばしいのだが、彼女達の中の一人――――――逞しい体躯と凛々しい美貌を持った女が最後に残した言葉が引っ掛かっていた。

 

『今は逃げるけど、何時か私は必ず戻って来るよ。君を殺すためにね』

 

 あの奴隷―――――――女闘士はそう言った。それによって機嫌を損ねてしまう可能性や、警戒される可能性を考えなかったわけではないだろうに言い切った。

 仲間さえ慌てる中、魔術師を見据えて断言して見せたのだ。それを聞いて魔術師は声を上げて心底楽しそうに笑い、ずっと機嫌がいいままだ。

 

「はははは!いいではないか!あんなに愉快な奴隷は久しぶりだ!」

 

 行商人の言葉にも、魔術師はひたすら愉快そうに笑って答える。確かに彼の実力と権力から言えば、気にする事の程はないのだろう。

 あんなものは単なる負け惜しみ、取るに足らない強がりだ。しかし、行商人はどうにも不吉な予感が拭えずにいる。

 あの女のあの眼。あれは一種の狂人の眼だった。まだ完全にはイカれていないようではあったが、あのまま行けばいずれタガが外れ一線を越えていくのは間違いない。

 今回は仲間や一緒に連れていた奴隷という枷があったから引き下がったが、もし一人なら躊躇なく魔術師に襲い掛かって来ていただろう。

 勝算があるだとか、何か策があるとかではない。返り討ちにされようが何をされようが「やる」と決めたらやるという人種だ。

 どこか旅の空で力尽きなければ、彼女は本当にこの火吹き山の闘技場へ帰還するだろう。今度こそ魔術師を殺すために。

 

「彼女が戻って来る時が待ち遠しいな。一人か、あるいは仲間も一緒か。いずれにせよ盛大にもてなしてやらねばなるまい!」

 

 魔術師もそれは分かっているのだろう。理解した上で楽しんでいる。気持ちは分からなくもない。

 自分が雇われる前には何人か逃げ出した者や闘技場を勝ち抜いた者がいたらしいが、その中にもう一度ここへ戻って来ようなどとする者はいなかった。

 運良く助かったのだから、もう命を危険に晒したくない。そう考えるのは普通の事だ。

 だがその普通など糞食らえとばかりに危険に飛び込んでくるのなら、それは馬鹿ではあるが愉快極まりない馬鹿だ。

 それを見物できるのはさぞかし楽しい事だろう。しかし。

 

(次来る時は、本当に殺すかもしれねえな)

 

 仕掛人(ランナー)として、それなりの経験を積み多少は修羅場も潜って来た。その勘が告げている。

 あの女の牙は、この魔術師にも届き得る、と。

 無論可能性があるというだけの話だ。骰子を振れば100回連続で同じ出目が出る時もあるとか、そういう類だ。

 そもそも自分の勘が外れている可能性だってある。所詮は勘なのだから、百発百中などあり得ない。

 しかし、魔術師が殺されるかどうかまでは分からないが、殺される「かも」しれないと行商人の勘は告げている。それは予感と言うより確信に近かった。

 

(……まあ、今日明日の話じゃねえだろうけど)

 

 多少経験を積み、技術を磨き、肉体を鍛えた程度で埋まる差ではない。戻って来るとしても何年も先の話になるだろう。

 だが、その時が来たならば。それが頃合いだろう。魔術師には随分儲けさせては貰ったが、それだけの働きもした。

 魔術師が勝つにせよ、あの女闘士が勝つにせよ。戻ってきたならば、手切れの時だ。

 間違っても見届けたい、などと思ってはいけない。そう肝に銘じると、行商人は雇い主たる魔術師に一礼すると部屋を出ていく。

 その時が来るまでは忠実に働く。それが給金を貰う身としての義務であり、契約と言うものなのだから。

 

 




些細な事ですが、軽度の熱中症になったので皆様も日中外で作業する際はお気を付け下さい。


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女闘士・7

今度こそ完結まで書き切ろうと決意を新たにしたので初投稿です。


 はい、それでは今回も始めていきましょう。

 前回はまごころ込めて育てた割り箸畑からメルヘンチック遊園地が獲れたけど、そこは毛狩り隊Aブロック基地になっていたところまででしたね。違いますね。

 敗北感塗れで帰って来たところまででしたね。あの後ですが、同室の人とはすぐに別れました。

 いや、彼女絡みでイベントは発生しそうではあったんですが今回それやってると、ほら。小鬼王(ゴブリンロード)戦の時に街にいないとかありそうで。微妙に長そうなので。

 なのでさっくりお別れして、ギルドに依頼達成報告と一服盛られて危うく薄い本展開になるところだった事を報告しました。いや本当に動画の危機でしたよ。

 受付さんの反応を見るに、やっぱり闘技場に手出しするのは難しいみたいですね。一応合法的に契約させられているのと、あのフードのコネが強いので。もっと法整備して。

 つまり鍛えて自力で殴り殺すしかないって事ですね。いつか絶対厚さ3ミリぐらいになるまで大金棒(モール)で殴ってやるからな。やはり最後は暴力よ。

 依頼してきた村の方には手入れが入るっぽいですけど、協力者がいたとしてもう逃げてるんじゃねえかな。まだいるんなら殴りたいんですけどね。大金棒で。

 あ、貴族令嬢一党とは行動を共にしていきます。彼女らは中々に優秀なので、依頼の幅が広がるので。

 

 本当はレベリングして闘技場リベンジと行きたいんですけど、小鬼王戦までにやりきるのは無理です。たぶん。

 でも個人的に殺しに行くのは決めているので、小鬼王戦まではひたすらレベリングに励む事にします。よりビルドアップして筋力を増そう。

 というわけで、今回は帰還してから二日ほど休み取って、万全の状態になったところからの再開です。

 さて依頼決めですが、一党組んでると基本的に頭目が選んで持ってくるシステムなんですよね。それをみんなで相談して受ける受けないを決める、と言う感じです。

 つまり女闘士ちゃんはこの一党の頭目ではないので、貴族令嬢に任せて待っている所です。

 こっちから「これ受けようぜ」って提案したり、他のメンバーが提案してきたりする事もありますが。

 それとギルドを通さない依頼もたまにあります。たまたま訪れた村とか、偶然出会った人から直接依頼されるパターンですね。

 この辺の依頼はギルドに手数料取られないので身入りはいいです。いいですが、ギルドが精査していないので裏があったり情報が極端に少なかったりします。

 事務所通さない営業はやっぱりやっちゃダメって事ですね。

 

 あ、戻って来た。どれどれ?獣の討伐?

 南の方で四足の獣が出没して、旅人や近隣の村人が襲われて何人も被害者が出ているから退治してくれと。

 群れではなく一匹だけか。いいんじゃない?あれでしょ、狼とか山猫とかでしょ。野生動物は舐めてはいかんけど充分対処可能よ。

 熊だったらヤバいけど、熊なら熊って書くだろうし。熊ではないでしょ。

 熊は本当にヤバいよ。某所のお陰で熊とスズメバチの生態と危険性には詳しいから。

 あれだからね。拳銃ぐらいではダメージは通っても一発二発では到底仕留められないからね。口径のデカイ銃で頭か心臓を撃ち抜かないと死なないからね。

 その辺のモンスターよりよほど怪物だからね、熊。格闘漫画だとだいたい強さアピールの為に素手でやられるけど、素手だとダメージすら通らんからね。

 熊を素手で追い払ったってニュースが流れるけど、熊からすると「自分より小さいし力もないのになんか攻撃してくる生物と遭遇した」と言うだけの話よ。

 あっちとしては「何コイツ毒とか持ってるのかな。得体知れないし怪我したらヤバいからとりあえず逃げるか」と判断してるだけよ。

 野生動物はリスクを嫌がるから逃げるだけで、一度「コイツ弱い」「コイツ食えるし食う箇所多いな」ってなったら人間はただの餌だから。

 人間同士でも「力無いから殴られても痛くないけど、いきなり殴りかかって来るヤベー奴」がこっちに来たらとりあえず逃げるでしょ。そういうことよ。

 

 うん、他のメンバーも特に反対は無いようなのでコレに決まりです。報酬も銀貨120枚とまずまずですし。

 そういえば人型の相手以外って珍しい気がする。立ち回り変わって来るかも。まあ、振り回せばいずれ当たるでしょう。

 近距離パワー型の良い点は大概の相手に対してシンプルなゴリ押しが出来る事です。彼女の場合ゴリラ押しですが。

 どうでもいいけど、日本だと赤木キャプテンのあだ名みたいに「ゴリ」をゴリラ的な意味で使いますが、海外だと「リラ」の方を使うらしいです。

 それはさておき、工房行って準備してさっさと出発しましょう。距離的にどのぐらい?五日ぐらい?そこそこの距離あるな。

 えっ。被害が割と広範囲?待ってそれは聞いてないよ。長距離移動する獣って結構ヤバいのでは?

 ……まあ、多分何とかなるでしょう。メイビー。でも万一に備えて何か切り札的なものを持ちたいな。何かないかな。

 あっ!能力上昇の秘薬!アレ買おう!

 これ特定の判定に+2もしてくれるんですよ。しかも効果が1時間も続く。まあ一回飲んだら3時間は服用できない上に、銀貨50枚もするんですけど。

 今回のプレイではそこそこ資金に余裕があるので買っちゃいましょう。筋力上昇の秘薬でいいかな。

 やっぱり長所伸ばすのがいいよね。ん?筋力系の判定の数値を上げるだけで体力点が上がる訳じゃないから、攻撃力が伸びたりはしない?

 ……買う前に言えよ!今購入決定するまで待ってただろ!チクショーメ!

 ま、まあ買ってしまった物は仕方ない。それに持ってればいずれ何かの役に立つでしょう。

 何かってそりゃあ、あのほら、あれだよ。部屋のカーペット取り替える時とか、コレ飲めばテーブルを一人で持ち上げられるとか。

 とにかくこれでいいんだよ!はい準備済ませたし出発!

 

 

 

 到着。いやー道中は平和でした。

 これだけ襲撃が発生しないって事は、こういう所でいい出目出してるんですかね。まあ楽でいいです。

 睡眠中断して襲撃に対応すると、消耗がどんどん溜まって行くんでありがたいです。要するに夜中いきなり仕事に呼び出される訳なのでそりゃあ疲れる。

 そうでなくとも長距離移動は疲労しますから。この一党は森人や圃人いるから特に。能力値的にこの二つは長距離・長時間の移動は不向きです。

 長い距離を歩く、という点において只人はやっぱり最高ですね。

 まずは村長の所に話を聞きに行きましょう。こんにちわー。

 ……その挨拶は止めた方がいい。というか止めろ。一部の人から警戒と殺意が向けられるから。「私が村長です」は今日限りで廃止!

 さて、情報聞きましょう。オラ吐け。なんか知ってんだろ。もしくはお前が黒幕だろ。挨拶的に。

 あ、普通に情報くれた。最初に襲われたのは牧場の娘で、牛を放牧してたら襲われたと。彼女は無事?牛がたまたまそっち側に突っ込んで追い払った?運が強い。

 え?獣は炎を纏っているようだった?火を噴いていたと娘は言っていた?何それ怖い。というかそんなモンスターいるの?

 とりあえずそれは後で聞くけど、最初の犠牲者は誰?この辺に良く来る行商人?近くの村に行こうとしたら、襲われて……頭噛み砕かれた?

 怖っ。確実にデカイ獣のやる事じゃん。

 おん?魔術師が知識判定に成功してる。何?獣は頭を狙わない?そうなの?

 はえー。柔らかくて食べやすく、逃がすのを防ぐためにも脚を狙うんだ。あ、あと仕留めるために喉ね。硬い頭を狙う奴は基本いないと。

 詳しい事は村の猟師に聞いてくれ、と。はーい。あ、みんなで手分けして情報収集ですね。了解。

 終わったら酒場に集合、と。OK。じゃあ女闘士ちゃんはこの村長からお話を聞きます。

 オラ、絶対まだ何か隠してるだろ。吐け。まだ俺はお前が黒幕と言う可能性を捨て切ってないからな。俺の眼は誤魔化せんぞ。

 海のリハクやキングダムのリーボックにも匹敵する節穴と評判だからな、俺の眼は。

 

 今明らかに何か言い淀まなかった?女闘士ちゃんは判定失敗して気付いてないけどこっちは気付いたぞ。

 獣とは関係ないと思われる話?いいから聞かせろ。関係ないかどうかはこっちが決めるんだよ。おらあくしろよ。

 お、選択肢出てきた。交換条件を持ちかけるか無理矢理聞き出すか?ここはスマートに交換条件出そうか。

 無理矢理聞き出してもいいんだけどね。大金棒で「素直に……素直になぁれ……!」って殴って喋ってもらう。ちゃんと「ユーアーヒューマン……!」までやるよ。

 色仕掛け……イケメンで巨乳で巨尻だけどこの筋肉では無理だろ。魂魄低いし。

 ここはやっぱり金ですね。お金様に物を言わせれば命だって助かる。金は万人に共通の価値があるからね。

 いくら出すか?銀貨10枚ぐらいでいいんじゃね?ちょっと話してもらうだけだし。ほぉら、皆大好きなお金様だ。喋れ。

 うんうん、秘密にする。Y●utubeでしか喋らないから。

 

 領主が獣退治に乗り出した?いやそれは普通なのでは。仕事してるだけじゃん。え?今まで訴えても無関心だったのに急にやる気になった?それは怪しい。

 具体的には何時頃からよ。近隣の村々で金を出し合って冒険者に頼むと決めてから?うわあ、ますます怪しい。絶対何かあるじゃん。

 もうちょっと詳しく聞かせてよ。領主の素行とか性格とか性癖とか。知ってる事を洗いざらい吐いて。銀貨もう5枚あげるから。

 ふむふむ。最近領地と爵位を継いだばかりと。素行は?狩りと女と酒が好きで、田畑に馬で乗り入れて荒らす事もあった?

 あまりに遊びすぎて一時廃嫡される噂もあったと。うん、だいぶ言葉濁してるけど要するに馬鹿息子じゃん。ボンクラだぞ間違いなく。

 領主になってからもあんまり変わってないと。これはもう確実に何かあるな。高額の情報教材より胡散臭い。

 なんなら獣の仕業に見せかけてシリアルキラーの領主が殺してるまである。

 いやこれは有益な情報が聞けましたね。まだ村長の疑いは晴れてないけど。まだ俺は疑ってるけど。

 しかし有力な容疑者は領主になりましたね。この一件の黒幕は領主という可能性に、『魂』を賭けよう!花京院の。

 ちゃんと銀貨も支払って、それじゃちょっと早いけど酒場行きますか。酒は飲まないけど。飲むとしても一服盛られないかどうか警戒するけど。

 女闘士ちゃんが一番早いっぽいですね。女闘士一番乗り!振り回す用の鉄球は今度買おう。

 お、続々集まって来た。結構皆早いな。じゃあ情報共有しようか。

 猟師の話だと被害者は軒並み頭を噛み砕くか、腹を食われていたと。野生の獣としてはやっぱりおかしいの?そうか。

 後は?周りに放牧されてる家畜がいても無視して人間を襲ってた?これはもう怪しいを通り越して完全に黒ですねえ。

 それに被害者は女か子供ばかりで、男は殆ど被害に遭ってないと。確実に相手を選んでるじゃん。

 ……あっ、そういえばこの一党女性のみでしたね。これは誘き寄せ楽そう。

 他に何かある?活動は広範囲だけど全てここの領主の領地内で、夕方頃に襲撃される事が多い、か。これ確実に領主やってんな。

 最初に襲われた娘の話だと火を噴いて身体が光っていた?何、炎系なの?でも娘は火傷していないし熱かったとも言っていなかった?どういうことなの。

 こっちの情報?領主が完全にボンクラな事と、怪しい行動しかしてない事ぐらいかな。あとエアコンは室外機が熱くなると性能が落ちるってことぐらい。

 つまり情報を纏めると

 

・頭部を狙う、家畜を狙わないなど野生の獣としては行動がおかしい

・明確に人間、それも襲いやすい女性や子供をターゲットにしている

・領主の行動が怪しい

 

 ってことですね。うーん、動機が分からんだけで犯人がすげえ明らか。

 まあでも領主相手に下手な手出しは出来ないし、依頼通り獣を退治するだけになるのかな。獣の死体から何か証拠が出れば別だけど。

 うん、そういう方向で話が進んでますね。そうだね、まずは獣を仕留めないと。話はそれからだ。

 とりあえず今晩はこの村の宿、というか酒場の二階に泊まって、明日から夕方~夜にかけて獣狩りか。OK。

 野生動物相手に夜、しかも森で戦うのはヤバい気もするけどまあウチは森人いるし。

 森人は【暗視】技能があるので、暗闇でも先が見えるんですよ。それに探索役もちゃんといるから何とかなるでしょ(慢心)

 それじゃまたイベントが発生するまでカットします。

 

 

 

 はい、翌日の夕方までカットしました。

 村で食料も補充したので、獣が出てくるまで近隣の村々を回るって形になりそうです。あ、ちゃんとお金払って食料買いましたよ。

 支払いをちゃんとすると信用してもらえる。基本ですね。

 それじゃ出発しましょうか。夕方の移動ってそういえば珍しい気がする。基本この時間には野営ポイント見つけて準備してる頃ですからね。

 夜の移動?自殺行為ですよ。道は分かり難いわ休めないから消耗がジワジワ溜まるわ最悪襲撃受けるわで。

 森人(エルフ)とか鉱人(ドワーフ)蜥蜴人(リザードマン)ならまた違うのかもしれませんけど。

 ……喋る事が無いな。あ、隊列。隊列について話します。今回は野伏が先頭ですぐ後ろに女闘士ちゃん、中央に魔術師と神官が並んで貴族令嬢が殿です。

 戦闘については言う事は無く、暗くなっても視界が確保できる魔術師が中央から前後左右を警戒するという形です。貴族令嬢はバックアタック警戒。以上。

 また喋る事が無くってしまった。フリートークとか大の苦手なんですよ。一番苦手まである。ゲーム実況者がそれでいいのかって?

 知らんのか。ゲーム実況者の8割はフリートークは苦手なんだ。だいたいみんなゲーム内容とそこからの話の広がりで繋いでるんだ。

 女闘士ちゃん達の会話も言葉数は少ないしなー。獣の足音とか聞く為なんだろうけど。どうしよう。獣見つかるまでカットする?

 あ、野伏が何か見つけた。よかった。空気の読める出来る奴だなお前は。前回も役に立ったし本当に出来る奴だ。後で蜂蜜塗ったビスケットあげよう。

 獣の足跡?見せて見せて。

 

 ……デカァァァァイ!説明不要!

 

 いや本当に大きいよこれ。人の頭より大きいじゃん。大型犬とかのサイズじゃないよ。ライオンとかそういう感じだよ。

 俄然怖くなってきた。嫌だなあ。バイオで犬の相手をする時ぐらい嫌だ。もうすぐ日が完全に沈むしなあ。怖い怖い。

 夜の暗さと夕焼けの僅かな灯りが混じる時って、なまじ真っ暗になるより怖いんですよね。怪異が顔を出し始める感じがして。

 ……なんか向こう光って無い?ほら、道の向こう側。うっすらだけど。なんかすごい勢いでこっち来てない?

 あ、やっぱり獣なんだ……って速い速い速い!遠距離攻撃する前にもう来てるじゃん!ちょ斥候危ない!

 うおおぉ!あぶねえ!斥候庇ったはいいけど籠手無かったらコレ腕食いちぎられてるとこr籠手がぁぁぁぁ!メキメキ音出してるぅぅぅ!

 離れろこの野郎!密だから!ソーシャルディスタンス!

 っしゃぁ!頭突き入れて引き剥がしたけど動き速っ!他のメンバーが攻撃するより早く距離取られた!しまったコレ引き剥がさずあのままボコればよかったか!

 あれ?イベント入って操作が出来なくなってる。なんだ?あ、誰か来た。誰だお前ら。名を名乗れ。

 この辺の領主?にしては連れてる人数少なくない?兵士5人と魔術師っぽい人が1人だけって。もっと大勢引き連れてくるもんじゃない?

 あ、コレあれだ。悪役特有の「何故か目的や動機をペラペラ喋ってくれる」シーンだ。喋ってる間に動けってやつだ。

 あーはいはい。要するにマッチポンプが目的だった訳か。獣を使って領民を不安にさせて、自分が獣退治してヒーローになると。

 冒険者が来るまで待ってた?ああ、冒険者は返り討ちに遭ったけど自分は勝ったぞーってアピールするのか。無駄な手間を。

 それやるぐらいなら獣を使って、領内の盗賊とか魔物を狩った方が支持されるんじゃないかって思うのは俺だけ?

 あとお前が調教したんじゃなくてお前の隣の森人が調教したんかい。自分の力じゃないのにイキリすぎでは?

 というかこのパターンって、モンスターパニックものでよくある気がする。ほら、モンスターを生み出した科学者が色々喋った直後に犠牲になるやつ。

 

 ほら言わんこっちゃない!うわー痛そう変な音した!怖ぇぇぇ!

 

 うわぁ……頭を噛み砕かれる音とか聞きたくなかったわ。耳に音が残る。かつて領主だったものがその辺に転がっている。

 あ、やっぱりそっちの森人が黒幕なんだ。まあだいたいお約束だよね。権力者ではなく権力者に取り入った科学者が黒幕パターン。

 え?森人じゃなくて闇人(ダークエルフ)?そんなこと言われてもこの暗さじゃ肌の色とか分からんよ。白粉落としても分からないって。見えない見えない。

 とにかくこいつらを殺れば事態は解決するわけだ。うん分かりやすい。やはり暴力が分かりやすくていい。

 よっしゃタマ取ったらぁ!二重の意味で物理的に!

 




ヒグマとスズメバチを恐れるのはNJ民の嗜み。


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魔法剣士・番外編
魔法剣士と一党


ラスト・ダンサー兄貴の疾走戦士を作品に出させてもらった以上
「此方もデータ公開せねば…無作法というもの…」と思ったので公開します。

数字はともかく、設定はゆで先生の設定みたいなもので忘れたり変えたりするかもしれないので適当だと思ってクレメンス。
つらつら書き連ねただけなので読みにくいし読まなくても全く問題ないので、興味無ければブラウザバックしてください。


 魔法剣士

 種族:只人 性別:男 年齢:16

 経歴:学者/孤児/婚約者

 等級:鋼鉄等級

 身体的特徴:中肉中背。無表情。額に微妙に波打つ傷跡が横に走っている。

 髪:黒

 瞳:黒

 冒険者レベル:3(小鬼王戦前)→4(小鬼王戦後)

 職業レベル:戦士3 魔術師3→戦士3 魔術師5(小鬼王戦後)

 

 冒険者技能

 頑健/初歩(小鬼王戦前)→習熟(小鬼王戦後)

 魔法の才/初歩(小鬼王戦前)→習熟(小鬼王戦後)

 武器:片手剣/初歩

 鎧:軽鎧/初歩

 盾/初歩

 投擲武器/初歩

 過重行動/初歩

 忍耐/初歩

 追加呪文:真言呪文/初歩

 怪物知識/初歩

 

 一般技能

 長距離移動/初歩

 文献調査/初歩

 調理/初歩

 沈着冷静/初歩

 博識/初歩

 礼儀作法/初歩

 労働/初歩

 

 習得呪文

 《察知》

 《粘糸》

 《力矢》

 《惰眠》

 《停滞》(小鬼王戦後)

 《石壁》(小鬼王戦後)

 

 能力値

 

     集中2 持久4 反射2

体力3   5   7   5

魂魄2   4   6   4

技量2   4   6   4

知力4   6   8   6

 

 生命力:18+5 (小鬼王戦前)

     18+10(小鬼王戦後)

 移動力:24

 

 装備

 ノルマンヘルム:装甲値1

 硬い革鎧:装甲値3 回避修正-1(筋力持久を満たしているので半減)

 鎧下:装甲値1 移動修正-2

 吊盾:盾受け値3

 広刃の剣:威力1d6+3

 小剣:威力1d6

 投石紐:威力1d3+1

 

 

 

 都在住の魔術師の息子。父親が亡くなったので生前の借金を整理したところ、家も家の中の品も全部売り払ってキッカリ銀貨100枚しか残らないという綺麗さっぱりした状況に置かれた男。

 生前父が取り決めた婚約者の父親であり、亡父の親友でもあった伯爵から「流石に文無しのところに娘はやれない」という売れないバンドマンと役者には娘はやれない並みの正論を言われたため、稼ぐ能力がある事を見せてくれと言われたので冒険者になる事を決意。

 なお伯爵としては「堅気の仕事に就いて、社会経験積んで人並み程度に稼げるようになってね。そうしたら娘あげるから」ぐらいの気持ちだったのだが、魔法剣士に自分自身の性格を把握して成長し、幸福な人生を送ってもらいたい婚約者の口車によって冒険者になるよう仕向けられていた。

 この時ジキヨシャの介入が始まったため、伯爵に「都ではなく辺境の街で、後ろ盾も何もない所から稼いでみせる」と言って餞別として旅費だけ貰って旅立つ事になる。

 

 なおもしもジキヨシャの介入がない場合、都で冒険者登録をして貧乏貴族の三男坊に気に入られたりたまたま同じ日に冒険者登録をした小太りの白饅頭ともども太陽の聖騎士や女剣士、シックスレイヤー治療師の一党に入っていた。

 ハッキリ言ってこっちの方がドラマチックな運命。

 

 生まれて程なく母を亡くし、父が男手一つで育ててきた。ただし10年前に父が伯爵と共に「死の迷宮」に挑んだため、その間は伯爵の家に預けられていた。婚約者である令嬢と出会ったのもこの頃。

 本人は「規則に従うしか出来ない」「決められた役割に従って行動する事しか出来ない」というつまらない人間だと自分の事を思っている。

が、実際には「お父さんこうして欲しいの?じゃあ僕そうするよ。お父さんに喜んで欲しいから」「ルールは守らないといけないよね。お父さんがそう言ってたから」という考えが長じて「こうして欲しいと望まれてるならそうしよう。喜んで貰いたいから」「ルールはみんなの為にあるんだから守ろう」となっただけ。

 最初から習得していた一般技能も「魔術師の息子なんだから冷静でないと」「お父さん料理出来ないから僕がやらないと」「魔術師の息子なんだから物知りでないと」「貴族と付き合いあるし婚約者が貴族なんだから礼儀作法は出来ないと」という考えから身に付けた。

 ただし労働に関しては「働くのたーのしー!」という単に本人の性質である。

 無表情なのは父がそういうタイプだったから。単純に親の模倣。

 小鬼王戦後は自分のそういった性質をかなり理解しており、どんな依頼でも楽しんでこなしている。

 

 知識は広いが恋愛感情の理解が出来ない。理由は母を早くに亡くした為に夫婦間で育まれる愛情を目にする事がなかった事が理由のうちの5%程度。

 残り95%はそんな状態で初めて自分に向けられた好意が「愛が重い」婚約者からだった事。「愛とか恋ってこういうものなんだな」と思ってしまったため、基準がぶっ壊れてしまい「ここまでならないと愛とか恋ではない」と思い込んでしまった。

 流石に成長するにつれて「あ、これおかしいわ」と気付いたが一般的な基準に触れる機会が少ないまま来てしまったため、結果的に理解力が低いままになってしまった。

 

 性格的に判断は出来るが決断はやや鈍いタイプ……だったが、一党の頭目になったため「頭目の役割は決断すること」と考え必死になった結果ある程度克服した。

 本質的には情報を整理してどんな選択肢があるかを導き出し、どれを選ぶかの決断は他者に委ねる参謀型の人間。

 基本的に依頼の達成よりも「一党の仲間を生かして返す」と言うのが頭目の役割だと考えているため、常に退路の事を考えながら動く。無理だと判断したらさっさと逃げの一手で場合によっては依頼放棄も厭わない。

 幸い依頼を受ける前に厳選するタイプなので、今のところそれはない。

 

 戦闘時は一党の構成的に前衛を務めるが、一応出来る程度で本来は魔術師型。バランスのいい6人の一党なら基本は後衛で必要な時に前衛に出るタイプ。

 補助系の呪文が大半なのは前述の通り仲間を生かす事を最優先にしているため、敵を倒すより逃げにも活用できるものを選んでいる。

 ただし《停滞》に関してのみは役に立つからと言うだけでなく、「尊敬する槍使いが使っているから」という理由も込みで習得した。

 

 戒律は秩序・善。どんな場合で