携帯怪獣地方 ジョウト (あたらんて)
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コフィンを開けるとジョウト地方であった
最初の方FGO要素薄いです。
俺がFGOの世界に転生してきてもう随分と経った。
ゴリゴリの根源目指してる系ぴーぷるの中でもヤバい人たちの家に生まれたおかげで毎日毎日魔術漬けの毎日。
(科学を嫌うため)テレビも無え!ゲームも無え!死の危険は1日1度来る!オラこんな家嫌だ!ということでカルデアの誘いにほいほい乗って南極に行くも原作開始と同時に爆破されてその後人理漂白というフルコースをご馳走されることに気付く。
やべぇよ…やべぇよ…ととにかくAチームになることを目指してオルガマリー所長にゴマをすりまくったらマシュの復讐を恐れていた所長に補欠として入れてもらうことに成功。
これで後はボーダーの捕虜になったら完璧よ!
「…と、思っていた時期がぼくにもありました」
「どうしたんですか?元気出して下さいますたー。私はこの世界が存続して嬉しいです!」
今喋ったのはミュウ。No.151のポケモン。全てのポケモンのルーツを持つという。
『へんしん』の力によって今はピンク色の髪の少女の姿をとって喋ったのだ。
この異聞帯にきてこのサーヴァントを召喚した辺りで俺は察した。あっ…これFGOちゃう…ポケモンや…って。
色々調べた結果ここはジョウト地方とカントー地方のみが異聞帯として成立していることがわかった。
つまり日本の真ん中らへん一帯ということだ。これ異聞帯への分岐の地点って世界の創造のときからだから異聞深度めちゃくちゃ高いんじゃないだろうか…?
まあそれはおいといて今現在の俺の状況だが、ミュウを除いて手持ちに6体の旅パ。いや、旅パっちゃ旅パなんだけど色々な世代がごちゃまぜになっている。1匹ずつ紹介していこう。
1体目!バクフーン!ソウルシルバーが最も好きだった俺にとって唯一無二の相棒!
2体目!ギルガルド!言わずと知れた厨ポケ!旅パとして使っていたのはYなので弱体化前!
3体目!バンギラス!ぶっちゃけ旅の間はサナギラスだったけど格好良いからヨシ!
4体目!カミツルギ!こいつに関しては旅終わった後に捕まえた厳選個体だから旅パじゃないと思うんだけど確かに色々連れまわしたからもういいや!
5体目!ボーマンダ!なんか厨ポケ多いな!マンダのりゅうせいぐんは強い(絶対王政)
6体目!エーフィ!正直ブイズではリーフィアが一番好きなんですけど(論争の火種)
絶対にジョウトに生息しないやつがいたりと中々にカオスである。特にウルトラビーストであるカミツルギ。こいつとか迂闊に外に出しても大丈夫なんだろうか…?
「あ、ますたー!今日はアルセウスの所にくうそうじゅ…?の確認に行く日ですよ!」
「あー…今日だったかー…」
当然、ここは異聞帯なので空想樹が根付いている。まあポケモンたちにも生存本能はあるのかコチラに協力的であるのは嬉しいんだけどアルセウスとの対面はとにかく緊張する。
少々重い気分になる。
「大丈夫ですよ、ますたー!アルセウスがちょーし乗ったこと言ったらぶっ飛ばしてあげますから!」
こんなことを言っているが、俺の胃が死ぬので本当に止めて欲しい。
というか、転生前も疑問だったがアルセウスとミュウの力関係がわからない。創造神と原初のポケモンだ。お互いに相手のことを軽視している感じがある。…同格、ということなんだろう。
まあ、それならそれでミュウを召喚できたことがめちゃくちゃ有り難く思える。
ちょっとは気が楽になったし、行きますか…。
相変わらず空想樹はデカい。もうちょい歩いたら着くエンジュシティのスズの塔とか比じゃない。
「ボーマンダ、ありがとう」
ボーマンダをボールに戻す。どうもポケモンたち、ゲームのように技が4つまでとかいう制限は無いらしい。だからこうして『そらをとぶ』なんかも問題なく使わせられる。まあ旅パだった故元々覚えていたんだが…。
まあそれはともかく、着いたのは『アルフのいせき』である。石板パズルとアンノーンといったら思い出すだろうか?
アルセウスを連れてきたらレベル1のギラティナ、パルキア、ディアルガが手に入る場所である。
ここの研究所の人たちは流石に空想樹の傍に住むのはやばいだろうと帰ってもらった。適当にアルセウスと話をさせただけで大満足して帰っていった。
「…さて、アルセウス。順調に空想樹は育っているようだね」
目の前にいるのはこの世界の創造神アルセウス。その姿に圧倒されながらも俺は言葉を絞り出す。
「来たか、並行世界の主よ」
そう。どうも、ゲーム時代のこともアルセウスレベルになると何となく把握しているようだ。
「空想樹は概念としては樹。故、草に分類されるものたちに世話をさせておる」
「ああ、それで構わないよ。そして君には必要ないかもしれないけど、あの組織――カルデアについて、警告に来た。彼らは主人公――かつての俺と同じ存在だ。決して油断しちゃあいけない」
「我の心配をするより自分の心配をしたらどうだ?貴様の今の手持ちなんぞよりもっと強い子らがおっただろうに」
俺の心配を一蹴される。
「いやあ、そりゃ伝説たちと比べられちゃそうだけどさ…強いポケモン、弱いポケモン。そんなの人の勝手…なんて、君に言ってもしょうがないか。俺は今の手持ちのことを信頼しているよ」
厳選だって、育成だって、そんなの抜きにしたってこいつらとは旅を共にしてきたっていう絆がある。たとえ絶対に勝利が約束された主人公だって、負ける気はしない。
「…フン。勝手にするがいい」
「…さっきから聞いていればアルセウス、私たちの世界を救ってくれた恩人、そして別世界とはいえますたーになんて口を!」
急にミュウが怒り出した。本当に心臓に悪いから止めて欲しい。
「なんだ、ミュウ。人の姿なんぞとって…そんなにこやつに擦り寄りたいか」
「は、はあああ!?アナタ、な、なんてことを!もういいです!ますたー帰りましょ!」
そう言うとミュウは人の姿からボーマンダに姿を変えて俺を上に乗せる。
「あっ…アルセウス、これからも空想樹のこと、頼んだよー!」
さて。今俺がどこに住んでいるのかというと、アサギシティである。何故か?
ミカンちゃんがいるからである。
ミ カ ン ち ゃ ん が い る か ら で あ る 。
ぶっちゃけた話、この街のジムリーダーであるミカンちゃん。ポケモンの女子キャラにおいてトップクラスに好きなキャラだ。
え?どこが好きかって?
そりゃあもうまずは見た目。まず見た目がかわいい。あの小柄な感じも良いし服も大好き。髪型もなんかもうあのピョコンって出てるところが可愛いしヤバい。そしておでこ。おでこ良いよね…。もう全身から清楚な感じを醸し出している。そして病気のアカリちゃんを気遣ってジム開けないとか天使かよ。天使だったわ。とにかく優しさに溢れている。おどおどした言葉遣いからも可愛さがうかがえる。敬語でこちらにお願いをしてくる時なんかもうたまらん。ん?今何でもするって言ったよね?(言ってない)ジム戦の前には『シャキーン!』とか言っちゃったりしてその後に恥ずかしがっちゃってんの。ヤバない?ヤバい(自問自答)そして使うのははがねタイプというギャップよ。はがねタイプへの愛が溢れてんのもう。ジム戦前にはがねタイプを地味に布教してくんの。『はがねタイプってご存知ですか?とっても硬くて冷たくて鋭くて、つ 強いんですよ?ほんとなんですよ?』は~?かわいいかよ。そしてバトル中はまたこれイケメンなのよこれが。追い詰められても『最後まで諦めない。鋼の心で!』とか言っちゃってんの。格好良すぎ。惚れるわ。惚れてたわ(再確認)そして実は大食いというね。ギャップにギャプよこれ。アサギ食堂で大量の空の皿を主人公に見つかって慌てて誤魔化そうとすんの。『あたしの前の人がお食べになった残りで…』とか通用するわけない嘘を吐いちゃうはいもう可愛い!実はこれ電話番号交換イベントなんだけど毎日起こるイベントなの。つまり毎日いっぱい食べちゃってんの。好き。電話番号交換できた時はもう嬉しかったね。電話交換すると道場に呼び出して対戦することができるんだけど呼び出したあとわざと話しかけないでずっと道場に残し続けてたなあ…そして毎日周りをぐるぐる回ってミカン成分補給してから冒険始めんの。あれは幸せな時間だった。そうして残し続けていると約束を忘れたんじゃないかって催促の電話がかかってくんの。そうしたら急いで道場に戻って周りをぐるぐるして忘れてないよーってことをアピールしてまた旅に出るの。幸せ。そしてポケモン交換のイベントも設定されてるジムリーダーなの。ゲーフリ最高かよ。こっちのポケモンに合わせたレベルのハガネールを交換してくれるんだけど当然色違いをプレゼントしたね。最初から育てたいだろうからレベル1色違いイワークを告白文のメールと共にプレゼントしたよ。あ、このころは持ち物にメールってのがあって文章を書けたのね。そういえばあれ受け取ってくれたってことはOKってことでいいのかな?やったあああああ!!!俺はミカンちゃんの恋人だあああ!!!
「ますたー、心の声がうるさいです…」
そんな訳で俺は今日もミカンちゃんの幸せそうな食べっぷりを見るためにアサギ食堂に向かうのであった。
「…あっ、カイさん!こんにちは、お元気でしたか?」
食堂に入る前にミカンンちゃんと出会ってしまった。これ運命じゃね?これ運命だね。結婚しよう。
ちなみに俺の名前はカイ。ポケモンやるときのユーザーネームである。思えば生まれたときからこの名前だったしそれで気付けということだったのかもしれない。無茶言うな。
「ああ。ミカンちゃんもジムの調子はどう?」
当然結婚しようなんて口に出したらドン引かれること間違いなしなので極めて冷静に言葉を返す。
「はい、昨日強い人がいまして、その人にバッジを渡しました!集め始めて3か月で3個目だそうですよ」
「へえ…そりゃスゴイね」
主人公たちのスピードが異次元なだけで3か月で3個というのはかなり早い部類に入る。このまま行けば今年のポケモンリーグに間に合うペースだ。まあ流石にそれは無理だと思うが。多くのリーグ挑戦者にとって壁となるのは3個目、5個目、8個目と言われている。まあその1つ目の壁を3か月で超えられたんなら十分可能性はあるが。
ちなみに某レッドさんは旅に出た年のポケモンリーグでそのまま優勝とかいうちょっと頭おかしい記録を出している。ジムを8つクリアした後挑戦者の9割を振るい落とすチャンピオンロードとかいう関門も軽く突破するとかヤベェよ…。
「あっ…それで、ギルガルドさんとカミツルギさんはお元気ですか?」
「ああ。ほら、出ておいで」
そう。彼女ははがね使い故にジョウト地方にはいないはがねタイプの2匹に興味満々なのだ。
カミツルギを人に見せていいのかみたいな心配してたけど『えー!?はがねタイプのポケモン持っているんですかー!?見たいです!』とか言われちゃったら見せるしかない。是非もないヨネ!
というか名前呼びするような仲になったのはどう考えてもこれのおかげなのでしょうがないったらしょうがないのだ。
「わー…すごい硬くて…カイさんの…」
ミカンちゃんは知らないはがねタイプに触れて幸せ。俺は幸せそうな顔を見れて幸せ。ポケモンたちもはがねタイプのエキスパートであるミカンちゃんに上手に撫でられて幸せ。あれ?この世界最高では…?
「あっ、すいません。つい夢中になっちゃって…。ごはん、ですよね?ご一緒して良いですか?」
「ああ、もちろん」
天使からのお誘いを断れる筈もない。即答する。
その後、見られることにもう慣れた幸せそうに空の皿を積み重ねていくミカンちゃんを眺めながら1人前を食べて、ミカンちゃんの分の代金もこっそり払って帰った。
後日、こっそりお金を払ったことに対してぷんぷんのミカンちゃんがお金を返しに来たが奉納金として受け取ってほしい。
まあ1食でまさか3万いくとは思わなかったが…。
~正直これメインはFGOじゃなくてポケモンなのでポケモン用語解説~
・ミュウ
全てのポケモンの遺伝子を保有し、ポケモンの先祖と言われている。
制作秘話としては開発者が余った容量で遊びとして作ったというものがある。
性能面で言うとその万能なステータスと覚える技の豊富さからポケモンの中でも随一の器用さを誇る。
そこ、幻はどうせ対戦では使えないとか言わない。
・ジョウト地方
ポケモン金銀の舞台。モデルは中部~近畿辺り。個人的にはエンテイ・ライコウを追いかけまわすのがめちゃくちゃ面倒だった思い出がある。
・カントー地方
まんま。関東地方。オーキド博士は何故少し西に行くだけで発見できる152匹目以降を登録しなかったのだろうか…?
・旅パ
ストーリー中に使っていたパーティーのこと。対義語として対戦パが存在する。御三家が最後までいることもあれば一瞬でサヨナラバイバイすることもある。どちらになるかはビジュアル次第であることが大きい。チャオブーの衝撃に共感できる人は多いのではないだろうか。
・厨ポケ
なんやこの厨パァ!
・マンダのりゅうせいぐんは強い
メモをしてある受講生は多いと思われる。
・ウルトラビースト
よくわかんないやつら。略称はUB。別世界からやって来たポケモンであり、当然その存在を知っているものは少ない。それを昔から狩っている国際警察は一体何なんだろうか…。リラさんカワユス
・アルセウス
世界を作ったやつ。ミュウの設定と矛盾するとか言ってはいけない。
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吾輩はトレーナーである
今日はクリプターの会議の日である。
俺の異聞帯については説明しても誰もよく理解してくれなかった。コヤンスカヤが俺の異聞帯に来たときに言った『あー…これは実際に目にしないと何が起こっているのかわかんないですね』という言葉が全てを物語っているのだろう。
まあポケモンが存在しないこの世界じゃ抱き締めて背骨をへし折る熊が闊歩するような世界の話なんか理解できないよな…。
知ってるか?マグカルゴの体温10000度あるんだぜ…そんな世界に対応している人間も人間だと思います、ハイ。
「さて、空想樹の発芽から90日が経過して、異聞帯の書き換えは終了した。まずは第1段階の終了を祝おう」
キリシュタリアのその言葉から始まった会議は雑談、口論を交えながら緩やかに進んでいく。
その内、デイビットとベリルの異聞帯のことに話が及ぶ。
「オレたちにその気がなくても向こうから殺されに来る。カイのとこもそうだろ?」
おっと、ベリルがこっちにも話を振ってきた。デイビットとベリルの異聞帯では原始的で殺し、奪うのが日常らしい。なんて野蛮なんだ。
「おいおい、一緒にしないでくれよ。こっちのはその生物たちの習性みたいなものだ。たまたま出くわしたら戦闘になるってだけだ」
「ハハハッ!そうだったな。そのポケモン?ってやつらを自分の手下を鍛えるために殺戮しまくってるんだってな!向こうから来るんじゃなくてそっちから行ってんのか!やっぱアンタイカれてるぜ」
あながち否定できないのが悔しい。あの世界において野生のポケモンというのは確かにそういう面もある。だって無限湧きするんだもん…。
まあただ、可愛いペットを瀕死になるまで戦わせるなんて他から見たら正気の沙汰じゃないだろう。しかし、あの世界ではそうしなければいけないのだ。
ポケモンたちは、強すぎる。あの世界の人間たちが野生のポケモンたちを殺戮する戦闘民族へと育っていくのもしょうがないことだろう。種としての本能だ。他の種と生存競争を繰り広げなければいけない。
キャタピーはオニドリルに食べられるし、ドヒドイデはサニーゴを狙う。ザングースとハブネークは日夜殺し合いを繰り広げている。
そんな中、人間が自分のポケモンを鍛えるために野生のポケモンを倒すことを問題視するやつがいるだろうか?
ロケット団がヤドンのしっぽを売りさばいていたことを咎められたのは倫理的観点からではない。密猟だったからだ。法律で禁止されていたから悪いことなのである。
あのミカンちゃんだってジムリーダーに至るまでに野生のポケモンの屍を幾つ積み重ねてきたか数えられないだろう。
「あれだよ、レベル上げ。ゲームの。やった事ある?お前だって殺したらわかりやすくレベルが上がって強くなるっていったら大喜びで殺すだろ?」
「ハハッ、ヤベエなこいつは…まあいいや。アンタがヤバい奴ってのは昔からなんとなくわかってたからもういいぜ」
実際にレベルという概念がコッチにはあるのだが…信じてないな。
まあ俺も昔だったらレベル上げなんてしようと思わなかっただろう。画面で見ていた可愛いポケモンたちを殺すのだ。しかし家での魔術師としての生活に慣れてしまった。時計塔の
その後も、話を続けていると、キリシュタリアが本題を切り出した。
「さて、今回の会議の目的は異聞帯の成長具合の確認などではない。1時間ほど前、私のサーヴァントがカルデアのものたちの出現を予言した」
その言葉に、クリプターたちは驚きの表情を見せる。表情を変えないのはデイビットと俺だけだ。…俺も驚いた方が良いだろうか?
「…カイ、ふざけないで。あなたが何かを知っているのは昔から皆わかっているのよ」
両手を上げて驚いた演技をしたらオフェリアに怒られた。
その後も、カルデアについての話が続くと、デイビットが出現場所をロシアだと理由と共に述べる。
…あれ?今気づいたけど、それって相当ヤバくね?俺の異聞帯は日本に位置するからそのままついでのようにコッチ来られたら困るんですけど。
…まあ問題ないか。カルデアには余裕が無い。彷徨海から連絡が来た時点でそっちを目指すのは間違いないだろう。東に来る余裕はない。
それにこういっちゃあなんだが俺の異聞帯は規模としては相当小さい。何せ小さい島国の地方2つ分だ。正直最後まで放置されるんじゃないか説もある。というか捕虜になるっていう俺の目的からすると捕まった方が良い。今の時点だと異星の神からの粛清的なものが怖いだけで。カルデアが十分に力をつけたら寝返る気満々である。
話が終わり、皆通信を切っていく。
「それじゃあ俺もここいらで。またな」
「ああ、カイ。君の異聞帯は非常に興味深い。君の異聞帯と戦うときを楽しみにしているよ」
ああ、わかってないなコイツも。あの人理焼却を乗り越えた
藤丸立香は主人公だ。どんな絶望的な状況からでも立ち上がってくるだろう。
彼らの前に立ちはだかっちゃいけない。その壁はぶち破られるだろう。主人公が負けるなんて有り得ないのだ。いや、負けることはあっても必ず立ち上がる。最後には勝つのだ。どんな犠牲を出したって。
「キリシュタリア…も含めて、オフェリア。元同僚として忠告だ。敵は誰か、しっかりと見極めることだ。…また、Aチームの皆でお茶会ができる日を待ってるよ」
「…ええ。わかったわ。アナタの忠告なんて珍しいものね」
こうしてクリプターの会議は終わった。
藤丸立香は思い出す。かつてカルデアにて解凍作業を待つ間にダ・ヴィンチが話してくれたAチームのマスターについて。
「…そして、8人目」
「8人目?」
Aチームは7人という話じゃなかったのだろうか。
「ああ、言っていませんでしたね。Aチームは私を含めた8人の他に、もう一人。補欠の方がいらっしゃったんですよ」
「カイ・ランフィール。補欠とはいえその能力は折り紙付き。根源を目指す魔術師の中でも特に狂気のように追い求めていたが故に時計塔からも少し敬遠されていたが歴史のある名家、ランフィール家の生まれで時計塔では
人柄としては非常に気さくな人物だ。誰にでも人当たりが良かったね。そして珍しくオルガマリー元所長と仲の良かった人物でもある」
「はい、よく2人で話しているところを見かけました。そして、功名心も薄い方でした。本来Aチームに入るなら誰かと入れ替わるところだったのですが、彼は自ら補欠を望んでいました。彼が言うにはマリスビリー所長にも意図がある…とのことでした。彼も中々の古参だったので、マリスビリー元所長とも面識があったのでしょう」
「もう少し彼について述べるなら…彼はどこか遠いところを見ていた。いや物理的な話じゃなくって、どこか先を見ていたのさ。これは感覚だけどね?『どうせこうなる』『これに備えて』みたいなことを考えている風に感じたのさ。彼の赤色の眼にはいつも諦観が浮かんでいた」
赤色の眼…思い出した。カルデアに来た直後、話しかけられた気がする。
確か、『頑張ってね』みたいなことを言われた気がする。もしかして彼は人理焼却のことを予感していたんじゃないだろうか…?
「ああ、その可能性もあるね。まあそれも、解凍後に聞いてみればいいさ。むしろ彼の方が特異点のことについて聞いてくるだろう。彼はサーヴァントに非常に興味を持っていたからね」
…少し考えに耽ってしまっていた。今は目の前の敵のことだ。
敵は強大。でも、やるしかない。そんな状況、慣れっこだ。
ついにロシア異聞帯へ浮上する。戦いだ――!
シャドウボーダーがそろそろロシア異聞帯に突入した頃だろう。
現在俺は、コガネシティで買い物を楽しんでいる。コガネシティは日本地図に置き換えると、大阪に対応する都市である。歩いていても十分楽しい。
唐突に現れた嵐の壁によってジョウト・カントー地方のみ隔離されたような状況に陥ったと人々は感じているだろうが、もう3か月も経つと人々は慣れる。
今でも様々なポケモントレーナーが外に出るのことを挑戦しているだろうが、カントー地方のエスパータイプのジムリーダーであるナツメが、『出ない方が良い』と言ったのだ。彼女はエスパータイプを叩き潰せる本物の超能力者、
その言葉は重く、脱出の動きが下火になった。
…彼女はどこまで見えているのだろうか?一度話を聞きに行った方が良いかもしれない。
そんなことを考えながら買い物を続けていると、甲高い声がこちらにかけられた。
「ああ!また出会ったなあんた!覚悟しとき。今度こそぶちのめしたるで!」
…アカネだ。2世代において3つめのジム、ノーマルタイプの使い手で多くのプレイヤーにトラウマを刻みつけた子だ。
てきの ミルタンクは ころがるを つかった!
こうかはばつぐんだ!
マグマラシは たおれた!
最初に出会ったとき、即座にトラウマが思い返され、ついポケモン勝負でLv100バクフーンを出してボコボコにしてしまった。
「何だ?このリーフィアのぬいぐるみが欲しいのか?やらんぞ」
「いや、いらんわ!ってか、アンタ中々可愛い趣味しとんな。…って、そんなことより!勝負や勝負!今度こそ勝ったるでー!」
一度目ボコボコにしたら泣き出してしまって、往来でそんなことをされると俺の社会的地位がダダ落ちなので慰めてるうちに勝つまで再戦を誓われた。
しかし俺もかつてはレートの海に潜っていたトレーナー。負けるなどプライドが許さず今までの戦績は32戦32勝。まあ全てポケモンのスペックによるゴリ押しなんだが…。
街のいたるところにあるバトルコートへ向かう。
「よし、ここでいいか。じゃあ始めるぞ」
「よーし、行っくでー!ピクシー、頑張ってや!」
「バンギラス、メガシンカ」
「え?ちょ、待っ、バクフーンじゃないっていうか、え、メガシンカって何?あ、ちょ」
“かたうでを うごかしただけでやまをくずし じひびきを おこすとてつもない パワーを ひめる”
――ポケモン図鑑より抜粋
「ふざけんなやあああああああ!!!!!!!!」
~結構FGO要素もあったけど本編での描写待ちであんまり絡みが書けないので結局ポケモンの小説になるからポケモン用語解説~
・超マサラ人
例:サトシなど
基本的にポケモン世界の人間は頭がおかしい。その異常さを表す出来事をいくつか紹介しよう。
・999kgのコスモッグを持ち上げる
・こうそくいどうだ!→トラックに追いつく
・俺に10万ボルトだ!
ここに上げたのもごく一部である。更なる伝説を知りたければ「超マサラ人」で検索すればいくらでも出てくるだろう。
・アカネ
みんなのトラウマ。コガネシティ(大阪)のジムリーダーということで関西弁を喋る。作者は関西圏出身じゃないため多少おかしくても許してクレメンス!
バトルにおいてはメロメロとふみつけのひるみによる行動不能、ミルクのみによる回復、そして極め付けのころがるの超火力に苦戦したトレーナーは数知れない。
苦労した末の勝利でアカネちゃんを泣かせてカタルシスを感じた人も多いのではないだろうか。
・レート
純粋なポケモントレーナーは知ることのない対人戦の世界。踏み入るには数々の関門を潜り抜ける必要があるだろう。
個人的な考えでは始めるときは実況者の動画を見て勉強してからが良いと思われる。オススメは某実況者の厨ポケを狩る講座。
今の剣盾ではランクマッチと名前を変えている。
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「おいカントーさ行ぐんだで!」
俺は今、風になっている。
「ちょとsYレならんしょこれは・・?」
今俺はボーマンダに乗ってヤマブキシティに向かっている。
図鑑曰くマッハで飛ぶガブリアスと空中戦を繰り広げるようなボーマンダに興味で『早くヤマブキに着けたらご褒美あげよっかな~?』とか言うんじゃなかった。
魔術でボーマンダと少し体を融合させたりとかちょっと細工してなかったら一瞬で死んでたんじゃないかと思う。
「あっ…もう着いたの…?早…てか吐きそう…ちょっと待ってて…」
「大丈夫ですかますたー…?」
少しスッキリしたら褒めて欲しいと言わんばかりにこちらに擦り寄って来るボーマンダをめちゃくちゃポケリフレしてあげた。
ボーマンダが一通り満足したところで切り上げてヤマブキシティに入ろうとすると、虫取り少年が勝負をしかけてきた。
「なんだよそのポケモン、かっけーな!ポケモンバトルしようぜ!」
…コイツ、メガボーマンダさんの『血に濡れた三日月』という異名を知らない…?
「ああ、いいぜ」
ポケモン図鑑にも乗っているその二つ名の所以、見せてやろうじゃねえか。
正直俺も申し訳ないと思うくらいボッコボコにしてしまった。ごめんな、レート戦じゃバタフリーに行動する隙を与えさせちゃだめなんだよ…。
そしてやって来たヤマブキシティ。モデルは新宿というだけあってメチャクチャ都会。人が多すぎて怖い(田舎者並感)
なんとかヤマブキジムに辿り着くも、ナツメと会う方法が無いことに気付く。この世界においてジムリーダーというのは国民的アイドルのようなもの。周りからすれば一般人である俺が会える筈もない。
ここまで来たがやっぱり諦めるか…とヤマブキ観光に洒落込もうとすると、ミュウが口を開く。
「ますたー、ジムに挑戦すれば良いのでは?」
「おーす!みらいのチャンピオン!」
最早懐かしさを覚えるセリフと共にジムに受け入れられる。
おいしいみずを受け取ると、まずワープパネルの仕掛けに挑む。
「よーし、その内辿り着くだろ!まずコッチ行くか!」
「ますたー、次こっち行きましょ!」
「…アレ?ここ見覚えあんな…まあいっか!こっちだ!」
「ますたーコレ楽しいですね!」
「…ここまでやって一人もジムトレーナーに会わないとかこの仕掛け大掛かり過ぎないか…?」
「ますたー疲れてきましたね…」
「あっ、どうもオジさん…ちょっとこの仕掛け中々難しいッスわ…」
「いやキミ、そのパネルさっきも使って…行っちゃった」
「ぬわああああああん疲れたもおおおおおおん」
結局1日かけて最後の方に1人のジムトレーナーと戦っただけで終わった。
ちょっと鬱憤が溜まり過ぎて出会ったジムトレーナーにエーフィでエスパーとしての格の違いを見せつけてもらったら相手の子の心が折れちゃったみたいで結局道はわからず仕舞いだった。
「マスター、このジム中々の強敵ですね…!」
「覚えてろよナツメ…!次こそはお前に挑んでやる…!」
「いやキミたち道を覚える努力をしようね…?」
「あれ…?今日彼が来る筈だったのだけれど…。未来視が外れるなんて、疲れてるのかしら…」
2日目の朝である。今日こそはこのジムを制覇する…!
「はーい、よーいスタート」
「よしよし、まだ誰とも出会ってない。調子いいな…」
「それは調子悪いのでは…?」
「アレ?何でまたオジさんが…?」
「キミら、まだ学習してなかったのかい…?」
「あっ君、昨日の…」
「ひっ、や、やめて!ご、ごめんなさい!エーフィ、あなたのマスターに手を出す気は無いの!ああ、だから止めて、お願い、私の心に入ってこないで…!」
「エーフィは一体何をしたんだ…ミュウ、忘れさせてやってくれ」
「……もういい。帰ろう、ミュウ」
本日10度目のオジさんとの対面で心が折れた。回数を重ねる度にどこか申し訳なさそうになるオジさんの表情に耐えられなかったよ…。
「…オウ、もし今度挑戦する気になったら来てくれや。いつでも歓迎だからよ…」
オジさんの慰めも耳に入らない。涙を流しながら俺は隣のかくとう道場に駆け込み、一心不乱に汗を流すのだった…。
「ふふ、今日こそ確実に来るわ………え?帰った?」
俺はまた一つ、強くなった。
「師範ッッッッッッ!!!!これが俺のッッッ一撃ですッッッ!!!!」
「来いィィィィィィ!!!カァァァアアイィィィイイイイ!!!!!!」
「フタエノキワミ、アッー!」
俺の渾身の一撃を師範は正面から受け止める。
「ふ…カイ…強く、なったな…合格だ…行け…!お前の強さは、この俺が保証する…!」
「はい!師範…ありがとう、ございましたッッッ……!」
「ますたー、何ですかこの茶番は…」
「茶番とは何だ茶番とは。いい汗かけたじゃないか」
失礼な奴だ。ミュウはスポ根嫌いなのだろうか…?
まあヤマブキシティでの用事は終わったし、愛しのミカンちゃんが待つアサギシティに帰ろうとボーマンダの背中に乗ると、女の子が猛ダッシュでこっちに来るのが見えた。
「うわあ…めっちゃ急いでるなあ…邪魔しちゃ悪いし、さっさと行くか。ボーマンダ、家に帰ろう」
「ちょ、ちょっと待って!アナタ、あの壁について知っているんでしょ!?」
…おっと。これはご目当ての人物があちらからやって来てくれたのかもしれない。
「…まったく。バトルじゃなくてあの仕掛けに2日間かかったあげく帰る挑戦者なんて初めて見たわ…」
そう言ってナツメはコーヒーを啜る。俺たちは今喫茶店で話をしている。思っていたより幼い少女だった。まあ別名がエスパー少女だったりするから確かに年取ってちゃダメだけれども。
「…さて。周りと音を区切ったわ。これで話してくれるかしら?」
ナツメが少し指で空中を撫でると、周りの音が聞こえなくなった。なるほど、超能力は伊達じゃないらしい。
「ああ。それでナツメは…どこまで知っているんだ?」
「…あの壁があなたと一部の伝説のポケモンによって維持されていること。あの壁というかその大本が無くなると私たちも滅びること。…その程度かしらね」
「なるほど…」
結構見えているらしい。中々核心をついている。というかぶっちゃけFGOプレイヤーと知識量そんな変わんねえな。クリプターのこととかぐらいしか話すことないんじゃねえの…?
そんなことを考えていると、情報を出し渋っていると見たのかナツメが口を開く。
「…アナタが知っているかはわからないけど、コチラも一つ良い情報があるわ。多分そちらに関係すると思うのだけれど…ヨシノシティに一人。恐らくこの世界と関係無いところからやって来た人物がいるわ。他にも数人、これから出現すると思う…」
「…!」
それは、サーヴァントのことじゃないか?情報を出し渋っていたつもりは無いが、もっと詳しく話を聞く必要性が出てきた。
「なるほど。世界はそんな状況に…」
「ああ。あんま言いふらさないでくれよ」
「ええ。わかっているわ。私もパニックを引き起こしたいわけじゃないの」
大体のことは話し終わった。早速、そのサーヴァントらしき人物に接触することにする。上手くいけば仲間にできるかもしれない。
「あ、それで…」
「ん?」
まだ話すことがあるのだろうか。
「連絡先を交換しないかしら…?ほら、私も新しいことがわかったら伝えるし…」
「なんだ、そんなことか。ほら」
ポケギアを差し出して電話番号を交換する。
「あっ…やった…連絡先が1つ増えたわ…!」
…思っていたより悲しい生活を送っているのかもしれない。そう思って俺は同情した。
~今回に至ってはFateのFも出てこなかったのでポケモン用語解説~
・ポケリフレ
XYのポケパルレがサンムーンで名前を変えたもの。ポケモンと触れ合ってごはんを食べさせることができる。ぶっちゃけ超かわいい。嫁ポケに虹マメを毎日食わせていた人も多かったんじゃないだろうか。
剣盾では似たものとしてポケモンキャンプがある。
・レート戦のバタフリー
ねむりごな→みがわり→ちょうのまい
というコンボが激烈にウザい。その代わり最速起きからの1撃突破の快感もエグい。
・ヤマブキシティ
ゲーム中ではロケット団に占拠されるイベントがあった。シルフカンパニーとかいう超巨大会社もある。
・かくとうどうじょう
かつてはヤマブキシティのジムであったがナツメ率いる現ジムのエスパーに負けてジムの座を奪われたという悲しい歴史を持つ。
どう考えても道場側に不利な勝負で奪われる辺り本当に可哀想である。
ちなみに中にある掛け軸の内容は「臥薪嘗胆」「因果応報」「四面楚歌」「複雑骨折」四字熟語であれば何でも良いってわけじゃねえんだぞ。
・ポケギア
ケータイ。RSではポケナビだったり世代によって持っている機械は違う。ラジオ・ケータイ・マップの機能がついているというかなり高性能なもの。ライコウ・エンテイを追う間何度ポケギアを開いたことか…!
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ポケモンもすなるバトルといふものを人間もしてみむとてするなり
ヨシノシティ。本気で何もない町である。イベントといえばランニングシューズをもらえる程度のもので、モデルとなった愛知県民は大激怒している。
「ますたー、お花がきれいですね!」
まあ主人公の来る順番の都合で何もないようにしなければいけなかったのだろうが、町の紹介文は『可愛い花の香る町』で名前の由来も桜の品種であるソメイヨシノからなどと言われている。花がとても綺麗に咲いている。
丁度今は春。花見の季節である。
「そうだな…花見なんていつぶりだったかな…よし、ちょっと休憩するか!」
思えば転生してから花見なんて一度もしていない。フレンドリィショップで少々食べるものを買って地べたに座り、ポケモンたちも外に出してポケモンキャンプ的にのんびりする。
久々に何も考えずのんびりしていると良い気分になってくる。シーズンというだけあって周りでもたくさん花見が行われているが、体が大きいポケモンを出す都合上、少し樹から離れたところでのんびりしている。
「はー…たまにはこういうのも良いもんだなー」
「そうですね、ますたー」
エーフィに取ってこーいとフリスビーを投げる。超能力でキャッチされる。そのまま手元に戻って来る。
こいつフリスビーの意味わかってんのか…?
そんな風に遊んでいるとまたお花見なのか、1人の女性がこちらにやって来た。
「お隣失礼するぞ」
「あ、どうぞー」
お隣さんもポケモンキャンプ的なことをやりたかったのだろう、ポケモンたちを繰り出した。
オコリザル、マッスグマにギャロップ。
ギャロップとオコリザルは置いといてマッスグマはジョウトでは珍しい。HGSSなら大量発生とかで確かに捕まえられるが…。
「よーしサル、タヌキ。良い子じゃのー。まあワシの躾のおかげなんだけどネ!」
というかさっきからなんかこう…すごい重要なことを思い出せない感じがする。主になんかこう…声がすごい印象的というか…。
「なんか世界がヤバいことになっとるらしいけどよくわからんし…こうしてノンビリしとっても良いんかのう…ま、是非もないヨネ!」
ノッブやん。
「ちょっと良いですか?」
「ん?どうしたんじゃー?」
「その…アナタって、サーヴァントですよね?」
「!?おぬし、なにやつ!?」
…ぶっちゃけ、ノッブはこの世界では知名度は無い。この世界の歴史はなんかもうめちゃくちゃなので、歴史上の人物とかいないのだ。
イコールでこのノッブは汎人類史のサーヴァントになる訳だが…。
まあ知名度補正が無いノッブ程度大したことはない…と言いたいのだがノッブの能力的に神秘が濃い相手には超強くなる。この世界のポケモンは動物みたいなものなので神秘無い判定なら圧勝できるが幻想種そのものみたいな判定を受けるとヤバい。
「あー、ちょっと場所を変えて話すか」
喫茶で今度はエーフィの力で音を区切る。
「まず俺は仲良くできるなら仲良くしたいと思ってる。そこを踏まえて話を聞いてくれ」
そして俺はクリプター関連の話をざっとする。というかこの話し合いは相手がぐだぐだ寄りかシリアスな気分かで大きく変わる。
ぶっちゃけシリアスノッブとか本気で止めて欲しい。ポケモンの軍隊とか作られて超絶強くなる未来が見える。
俺の最終目標はカルデアに寝返ることだ。それまでに汎人類史のサーヴァントを殺してたりするとそれも難しくなる。敵対はしたくない。するとしても相手から襲い掛かって来たという体じゃなきゃいけない。
「ふうむ…なるほど…。よし、わかった。ならばポケモン勝負じゃな!」
「へ?」
「何を呆けた顔をしておる。目と目があったらバトルなんじゃろ?これ、常識よ?」
あ、これぐだぐだノッブだ。
「よし、それじゃあ行け!エーフィ!」
「ぶっ潰して来るのじゃサルゥゥゥ!」
まさかこうなるとは思っていなかったが始まったポケモン勝負。エーフィに対して出されたのはオコリザル。
「エーフィ!『リフレクター』!」
「『かわらわり』じゃっ!」
エーフィが顕現させたバリアのような壁をオコリザルは軽く引き裂き、ダメージを与えてくる。
この世界のポケモンバトルはポケモンが勝手に動く。そしてここでやって欲しいと思った時にトレーナーが指示を出す感じだ。
だから動き次第ではタイプ相性なんかを覆して倒すこともできる。
今でも指示を出していないがエーフィはオコリザルから距離を取るように超能力を使って相手の動きを妨害して、ジワジワと削っている。
それに対しオコリザルはフットワークを使いフェイントなどを掛けて段々と距離を詰めていく。
「エーフィ、『すなかけ』だ!」
これまでの戦いを見るに、相手のポケモンはかなりレベルが高い。ノッブのトレーナー、ブリーダーとしての手腕がどちらも高いのだろう。
最初のかわらわりも見事と言わざるを得ない。今でも有利な場面ではあるが、更に追い込むためすなかけを指示する。夢特性なら不味いが、この世代では夢特性は存在しない筈である。
いや、でもこの世界ならそんな事情関係無いか…?
オコリザルの眼に砂が入り、動きが鈍る。
少々選択を後悔したが、まけんきでは無いようだ。
「戻れっ、サル!行くのじゃ、タヌキ!」
「ブチかませエーフィ、『サイコキネシス』!」
この世界においても交代は大きな隙になる。ボールから出てきた瞬間ポケモンはどうしても無防備になる。
出てきたマッスグマに強烈な一撃が入る。
「クッ…タヌキ、『すてみタックル』じゃ!」
その一撃ははっきり言って何が起きたのか全くわからなかった。
ノッブの傍にマッスグマがいたと思ったらエーフィがいつの間にか吹き飛んでいた。
普段から時速100㎞を出すというマッスグマのすてみタックルだ。目で追えないのも当然だろう。
「エーフィ!『リフレクター』だ!」
「もう一発じゃ、行け!『すてみタックル』!」
今度も目で追えないが生み出された壁で受け止める。エーフィはその隙に距離を取る。
リフレクターはゲームでは数ターンの間敵の物理攻撃を半減させる技。
この世界ではポケモンの周りを覆って同じ役目を果たす。
「ふむ…タヌキ、『れいとうビーム』じゃ!」
「なっ…!」
それ技マシンで覚える技だろ!どうなってんだ…。
慌ててエーフィが技を避けるも掠ったところが凍り付き、動きが鈍る。
「今じゃタヌキ!威力重視で『すてみタックル』じゃ!」
「『サイコキネシス』で迎撃しろっ!」
爆発的なスピードのすてみタックルはリフレクターでも防ぎ切れず、エーフィは瀕死になってしまう。
しかし合わせて放った一撃はマッスグマも倒す。
「相打ちじゃ、の…」
「そうだな…」
しかし強い。流石名将と言ったところか。ポケモンをいつ捕まえたのかはわからないがこの世界のポケモン勝負に手慣れてる。
俺みたいに変な前知識が無い分、吸収しやすいのかもしれない。
「よし、行ってくれギルガルド!」
「2度目の出番じゃサルゥ!」
「ギルガルド、『シャドーボール』」
「サル、『じしん』!」
ギルガルドは流石の硬さ。じしんは余裕を持って耐え、フォルムチェンジをしてシャドーボールを放つ。
既にエーフィに削られていたオコリザルは放たれた一撃で落ちる。
「…ギャロップは乗馬用じゃからのう…ここはやっぱり、行くのじゃ、かつぞう!」
…む?先程出していた3匹以外にまだポケモンがいたのか…?というか“かつぞう”って、森長可のことでは…?嫌な予感が…。
「Gaaaaaaaaa!!!!!!!」
何でサザンドラがいるんだよ…。
「かつぞう、『あくのはどう』じゃ」
サザンドラの馬鹿げた火力に耐える訳がない。ギルガルドも瀕死になる。
…地味にヤバい。サザンドラという時点でレベルは64以上なのは確実だ。
実を言うと、俺のパーティーはそんなに皆レベルが高い訳じゃない。レベル100なのは2体だけだ。まあそれでもそこらの相手には無双できるのだが、こんな奴が出てくるとは思っていなかった。
「サザンドラなんて、どこで手に入れたんだ…?」
「ん?こいつ、サザンドラって言うのか?わしが召喚されたときから持っておったんじゃ。ポケモンという存在に触れたのもこいつが最初じゃ。ただ中々凶暴でな、あまりわしの言う事も聞きゃあせん。じゃが、強いぞ?」
そんなのアリかよ…。まあレベルによってはやりようはある。俺はボールに手をかけた。
「行け、ボーマンダ。メガシンカだ」
繰り出されたボーマンダが光に包まれ、メガシンカする。レベル78。一撃で決める。
「「『りゅうせいぐん』」」
奇しくも指示する技は同じ。メガボーマンダとサザンドラ。お互いに体を震わせると、天から流星が無数に降り注ぐ。
その威力は実に140。並みのポケモンならば一瞬たりとも耐えられない。その技をお互いに実力がポケモンの中でトップクラスの2者が放つのだ。
1つ衝撃が放たれると共に大地が抉られ、樹々は吹き飛ぶ。とうに砂埃でポケモンの姿は見えないが、技が放たれている間もお互いに攻撃を放っているのがわかる。
それはまさしく竜と竜の頂上決戦。まるで神話上の戦いを再現したかのような戦いは、あまり時間をかけずに終わった。
砂埃が晴れたとき、そこに君臨していたのはサザンドラであった。
「Gaaaaaaaaa!!!!!!!!!」
全身に傷を残し、血を流しているものの、勝者は明白だった。
「…ありがとうなボーマンダ。ゆっくり休んでくれ」
敵のサザンドラは口に珠を咥えている。恐らく『いのちのたま』であろう。自身の命を削り、火力をあげる持ち物だ。
だがそれを考慮したってメガボーマンダに勝つなど強すぎる。
「ふぅ~む、おぬし、考えておるな?『俺のポケモンが負けるなんておかしい』と」
ノッブが声を掛けてくる。
「いいことを教えてやろう。わしのかつぞうのレベルは95じゃ」
…ふざけんな。これから召喚されるサーヴァントが全員そんなレベルのポケモンを連れてくるとか冗談じゃない。心の中で密かに異聞帯の拡大を決意する。北に進めば、あのポケモンたちがいる。
「もういい。行け、カミツルギ」
レベル100で金の王冠使用、ようき6V、ASぶっぱあまりH。もはや旅パというか普通にレートで使ったポケモンを出す。数字だけ見るなら俺のパーティの最高戦力だ。
「…む?なんじゃ、そのポケモンは?わしも見ただけでタイプは大体わかるようになったのじゃが…そいつは、明らかに違う。今までのポケモンと、違うぞ?」
流石の洞察力だ。UBの異質性を見抜いているらしい。
「…まあよい、何となく有効打はわかる。かつぞう、『だいもんじ』…」
「カミツルギ、『せいなるつるぎ』」
炎を放とうとしたサザンドラの懐に一瞬で潜り込み、一閃。サザンドラは崩れ落ちた。
「なっ…!」
カミツルギの特徴は何といっても
そして持ち物は相手と同じくいのちのたま。メガボーマンダとの戦いで弱ったサザンドラなぞ敵ではなく、一撃で突破する。
「ふ…ふふ、やるのう…わしの残りのポケモンはギャロップのみ…しかしこいつは騎乗用故レベル40。貴様のポケモンを倒せるとは到底思えぬ」
信長は笑っている。確かに俺が勝っているはずなのに俺はやつに底知れない恐怖を感じる。
「ならば如何する。降参か?否。ギャロップを出し奇跡に祈るか?否」
織田信長――日本人にとって、その名前は最も有名な名前である。首相の名より先にその名を知り、誰に教わるわけでもなくいつの間にか知っている。
「何故わしがあの凶暴なサザンドラとやらを従わせられておったのだと思う?」
戦国時代の代名詞、天下統一の礎を築いた英雄は笑う。
「わしの方が――強かったからじゃよ」
背後に巨大な骸骨が現れ、辺りを炎で真紅に染める。
「三界神仏灰燼と帰せ!!第六天魔王波旬 織田信長此処に在り!!!
いざ、いざ、いざ、いざ尋常にィィ!!!勝負!!!!!!!」
織田信長が、立ちはだかった。
~今回はFGO小説だったけど結局ポケモン勝負してるのでポケモン用語解説~
・フレンドリィショップ
ショップ。ちょっと前にポケモンセンターに買収されたらしい。
・大量発生
HGSSにて起こるイベント。一部地域で特定のポケモンが大量に発生してそのポケモンにしか出会わなくなる。本来生息しない他地方のポケモンも現れることがある。
・夢特性
ポケモンが本来持っている特性じゃない特性。第5世代(ポケモンBW)にて初登場。
実装当初はポケモンドリームワールドという夢の世界が主な入手手段であったため夢特性とプレイヤーからは言われている。
別名はかくれ特性。
・金の王冠
チートアイテム。後述。
・ようき
ポケモンの性格の一つ。ポケモンでは性格でステータスにかなり大きな補正がかかるため対戦では性格の厳選も必須。ようきなポケモンはとくこうが下がりすばやさが上がる。
・6V
ポケモンの個体値という隠しステータスが全て最大値であるということ。要するにステータスが同じポケモンの中で一番高い。前述の金の王冠を使用すれば誰でも6Vになれる。
・ASぶっぱあまりH
基礎ポイントの振り方。要するにどのステータスを高くするかということ。この場合こうげきとすばやさを最大まで上げ、余った基礎ポイントでHPを上げている。
類義語にCSぶっぱ、HAぶっぱなどがある。全部細かいステータス調整とかを考えないでとにかくアタッカーとしての適性を高めている脳筋の振り方。でも色々考えた結果こういった振り方が最強という結論に至ることも多い。
・種族値
ポケモンの種類によって設定されているステータス。ヒマナッツは低くてミュウツーは高いと言えばわかりやすいだろう。
この種族値の各ステータスへの配分によって合計種族値が同じでも使い方が全く変わる。個人的に一番美しい配分のされ方はガブリアス。てかそれは割と皆同意する。
やっぱレーティングの王者はガブリアスなんやな…って。
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今は昔、ゲームボーイといふものありけり
ツンデレって良いですよね。
べっ、別にアンタたちの感想なんて嬉しくないんだからねっ!(本編にツンデレは登場しない)
展開された固有結界は第六天魔王波旬――神性・神秘を持つものにとっては存在の維持すら難しい灼熱の地獄。
ポケモンは神秘を保有すると判定されているらしく、カミツルギが見てわかる程憔悴している。炎が4倍弱点というのもあるのだろうが…これでは戦えない。
「…安心せい。これなる地獄は我が身をも燃やす。故、今は限定的な解放状態というやつよ。そのポケモンも死にはせん」
「ははっ…そりゃ感謝…ってか」
カミツルギをボールに戻す。さて。俺の残る手持ちはバンギラスとバクフーンのみ。ミュウは神秘が特に濃いだろうから信長が固有結界を展開した瞬間にテレポートで遠くに逃がした。
「行くぞ、バンギラス」
メガシンカ――それは強い絆によってポケモンの限界を超えたシンカを行うもの。その性質上ポケモンにもトレーナーにも負担が掛かるため、メガシンカを行えるのは1度の戦闘につき1回のみ。
そんなものを、俺が放置するわけがない。
「バンギラス―――メガシンカ」
俺の専門は
先程のメガボーマンダは案外あっさりと倒されてしまったが、それはレベル差とタイプ相性、持ち物故。本来、メガシンカというのはそれだけでチームのエースと化す圧倒的な性能を秘めている。
ゲームシステム的に言うなら種族値が合計で100上昇。一部のポケモンは特性・タイプも変わり、多くは戦力が向上される。
そしてバンギラスは600族。メガシンカ後は脅威の700に到達する。これは伝説のポケモンに匹敵、凌駕する数字である。
「Guoooooooo!!!!!!!!!」
動くだけで山を崩し、川を埋め、地図を書き換える。
レベル93。脅威の化け物が神仏を滅する灼熱の英雄に対峙する。
「準備はできたか?ならば――行くぞ」
信長の背後に無数の火縄銃が浮かび上がる。
「
一斉に火縄銃が火を吹いてバンギラスに襲い掛かる。
「バンギラス、耐えてくれ…『りゅうのまい』」
バンギラスに耐久力が向上する魔術をかけ、りゅうのまいを指示する。
止むことのない銃弾を受けながらもその踊りは鮮烈で、勇猛で、荘厳なものだった。
「まだだ、まだだバンギラス…!『りゅうのまい』…!」
自身の魔力を限界まで絞り出し、バンギラスの体力を回復させ、魔術をかけ続ける。その間も一切銃撃が止むことは無い。
放たれる弾丸はバンギラスの身体を抉ってゆく。燃え盛る炎はジワジワと体力を削っていく。俺の魔術と持ち前の耐久力によって何とか耐えているバンギラスは、果敢に踊り続ける。段々と、段々とバンギラスの身に力が、熱が篭っていく。
銃撃が、止んだ。
そしてそれは、俺がもうりゅうのまいは十分だと判断した瞬間と同時であった。
「フム…随分とボロボロの体じゃな。よくぞ耐えた。わしもこれ以上宝具を展開し続けるのは辛い。この一撃で仕舞いとしようぞ」
そう言うと、信長の後ろに顕現していた骸骨が動き出す。
あれこそがこの限定的に開放された固有結界の本質。神仏を焼き尽くす魔王の化身。
「ああ。これで終わりだ」
敵の巨大な骸骨の右腕に力が収束していく。そのあまりの熱量に現代の人間である俺すらもが立ち眩む。
しかし、こちらのバンギラスだって恐ろしい程のパワーが溜まった。最早動くのもやっとといった感じだが、その力を開放せんと骸骨の目の前に立つ。
骸骨がその拳を振り上げる。
それに対しバンギラスは仁王立ちで向かい受ける。
「喰らえええええぇぇぇぇい!!!!」
「『ストーンエッジ』!!!!!!!」
神秘を殺す一撃が正面からバンギラスに襲い掛かる。
地面から引き剥がされるかの如く現れた巨岩が全てを破壊する勢いで信長を襲う。
天地が返るかのような衝撃。その衝撃波は大地を揺らし、空を波立たせた。
俺はあまりの衝撃に何もすることができず、ただ体を震わせていた。
恐らく僅かな時間であったのだろうが永劫にも感じる衝撃の最中突如、固有結界が解除された。
燃え盛る世界は消え、元々の光景が広がる。突然のことに驚いていると、声が掛かった。
「やるのうおぬしら!名を聞いておこう!」
見ると、ボロボロながらもギャロップに乗った信長がいる。
「カイ…カイ・ランフィールだ」
「そうか!覚えておくぞ!また会おう!」
そう言うと、信長はあっという間に去っていった。10歩で最高速である時速240kmに達するというギャロップに追いつける筈もなく、俺はポカンと立ったまま眺めることしかできないのだった。
「…お疲れ、バンギラス。ありがとう」
バンギラスをボールに戻すと、頬を叩いて気を取り戻す。
なんだか、釈然としない感じで勝負が終わってしまった。
まずはポケモンセンター行くかあ…。
今回は俺もかなり無理をした。ポケモンセンターの待合室でポケモンの回復を待っていると、ミュウがやって来た。
「もう!ますたー、わたし怒ってますよ?あの程度の小娘、わたしに任せて下さったらけちょんけちょんなんですから!」
どうだろうか。ノッブは相手の神性が高い程、神秘が濃い程真価を発揮する。ミュウとか伝説とかは最高に相手が悪いんじゃないだろうか。
「ああ、今度から頼ることにするよ…」
「わかったなら良いんです。ほら、ちょっと体を見せて下さい。すぐに治しますから」
言われた通りミュウに体を見せるとあっという間に調子が良くなった。流石はミュウ、ホント万能である。
…しかし、ノッブの力は予想以上だった。サザンドラもそうだが、本人の力が凄まじい。知名度補正は無いと高を括っていたが…恐らく別の方法でその補正に匹敵する力を手に入れている。
二つ、心当たりはある。まずは、抑止力だ。汎人類史の抑止によって知名度補正に匹敵する強化を受けている可能性は十分にある。
二つ目は、魔力である。この世界の大気のマナの濃度は、汎人類史の現代とそう変わらないのだ。これはおかしい。先程の戦闘から、ポケモンたちは神秘タップリの幻想種的扱いを受けていることがわかる。というかそれは大分前からわかってた。それならば、大気のマナの濃度も高くあるべきではないか?
そう思った異聞帯に来たばかりの俺は様々な調査を行った。すると、この世界ではマナが生物へと集まることがわかったのだ。それ故に凝縮されたマナを摂取して、世界からマナを供給されるポケモンたち、そして人間は汎人類史と比べて強靭なのだ。神というか伝説のポケモンが未だに存在していることも大きいだろう。世界に存在するマナの量が汎人類史と段違いである。
そしてこの世界に来てその潤沢な魔力を供給されれば、サーヴァントも確かに強くなるというもの。
この2つのことを考えると、知名度補正無しでもあの強さを誇ることに納得がいく。
「それにしても…俺、あの織田信長と勝負して、名前を憶えられたのかあ…」
「…ますたー、嬉しそうですね」
「えー?そんなことないってー」
「いや、めちゃくちゃ喜んでますよ。いいですか、あの人間は敵ですよ」
なんか、ミュウが不機嫌そうな顔をしている。
「いやいや、味方につけれるならそれに越したことはないってば」
「はあ…もういいです。ますたー、帰りましょう」
「ああ、そうだな。ちょっとこの異聞帯の経営方針を変更する。アルセウスのところに行こう」
まだまだやらなきゃいけないことだらけだ。
~Fate関係なく信長と関われて嬉しくない日本人なんていないよねっていう感じでポケモン用語解説~
・りゅうのまい
マンダは初手りゅうまいや!
こうげきとすばやさが一段階上がる。
・ポケモンセンター
神の施設。現実世界で言うなら年中無休24時間営業で完全無償の動物病院。
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春はポケモン
アルセウスに更に空想樹に魔力を注ぎ、異聞帯を拡大させるよう指示した。
これでカルデアに目をつけられて攻略に来られたら目も当てられないのだが、それよりもノッブとの戦闘で戦力不足を感じた。
戦力の拡充のほうを優先させるべきであろう。
そしてそれ以上に、俺のトレーナーとしての力量不足を感じていた。かつてはレートの海に潜って戦いに明け暮れる数多の戦士たちの一人だったが、この世界に来てからした戦闘といえば多少のレベル上げとアカネとの戦いと後は数える程しかない。
そしてそれらの戦いも全てポケモンのスペック差によるゴリ押し。これではいけない。
ポケモントレーナーとしての実力をつけるにはどうしたらいいのか。そんな疑問をポケモンバトルのプロであるジムリーダーに聞いてみた。
「え?カイさんが強くなるためには、ですか…」
ミカンちゃんは俺の質問に考え込む。ナツメは超能力者故明らかに例外だし、アカネとはそもそも連絡先を交換していない。今までのバトルは全て偶然に出会った結果なのである。その結果、頼る相手はミカンちゃんしかいなくなった。
天使に頼るのも申し訳ないと思ったが、天使はこんな男のために必死に考えてくれている。女神かな?
まあそういうわけでアサギジムにてミカンちゃんを頼っているのである。
「カミツルギさんとギルガルドさんは十分に強いように見えましたけど、そういうことじゃないんですよね?」
流石ははがねタイプのエキスパート。あの2匹の実力を見抜いているらしい。
「ああ、トレーナーとしての力をつけたいんだ」
「それならやっぱり経験あるのみですね。ジムバッジを集めるなんていうのはいかがですか?」
なるほど。異聞帯が目的のところまで拡大するのには多少時間がかかる。その間にジムを巡っていこうというわけか。
しかし、アカネとの戦いでも無双してしまったようにジムリーダーですら結構レベル差があるように感じたのだが…まあアカネとの戦いでは俺のパーティーの中でもレベルが高いポケモンたちを使っていたから、他のポケモンを使えばそんな事にはならないのかもしれない。
「ジムリーダーたちは挑戦者さんの持つバッジの数に合わせて使うポケモンを変えるのですが、挑戦者さんのお願いがあれば弱くすることはできなくても、強くすることはできるんですよ?」
なるほど。アカネも常に最強のパーティーで出歩いている訳じゃないだろう。ジムリーダーの本気というのがどれくらいかはわからないが、いい勝負になりそうだ。
「まあそれでもあのカミツルギさんなんかは私でもお相手できそうにはないのですが…。
あ!いいものがあるんでした。ちょっと待っててください」
そう言うと、ミカンはジムの奥にとたとたと走って行った。
戻って来た時には、手にギプスのようなものを抱えていた。
「これです!私もジムリーダーになる以前よく使っていたんです。『きょうせいギプス』っていうんですけど」
きょうせいギプス。素早さが半減されるが得られる努力値が2倍になるというもちものだ。
確かにこの世界じゃすばやさが半減なんていうハンデだけじゃ済まないだろう。
「これを使えばポケモンさんの力も大分制限されると思います。その分ポケモンさんも強くなっていくのでオススメですよ!どうぞ、使ってください」
「おお…ありがとう」
「いえいえ。あ、それじゃあ早速私とジム戦やっていきますか?私は準備万端ですよ!」
「いや…ミカンちゃんは最後にさせてもらうよ。色々してもらったし、集大成を見て欲しいんだ」
今戦って『えっ…カイさんのバトル、下手過ぎ…?』とか言われてしまったら自殺モノである。しっかりと7つのジムを制覇して実力をつけてから来ることにしよう。
「そうですか…。じゃあ最初はどこにするんですか?」
「ああ、それはもう決めてあってね…コガネシティにしようかと」
「そうなんですか?私、あそこのジムリーダーのアカネちゃんとお友達なんですよ!連絡しておきますね!」
「なんや…嫌な予感がするわ…」
「アカネさーん、挑戦者が来ましたよー」
「おっ、ミカンが言っとったヤツかな?稽古つけたってくれなんて言われたし軽く揉んだるか」
「オッスお願いしまーす」
「な ん で や」
コガネジムのジムトレーナーたちを軽く蹴散らし、いざアカネ戦と意気込んで目の前に立ったら『ちょっと待っとってな!』とか言って慌ててジムの奥へ行ってしまった。
数分後、アカネが奥から出てきた。
「ふ…ふふ…ここで会ったが百年目。ウチの最強パーティーを見せたるわ!」
何だか恐ろしい笑顔を浮かべている。
しかしここでジムリーダーの本気を見れるというのはありがたい。胸を借りる気持ちで行こう。
「行け、ギルガルド」
「行っくでーキリンリキ!」
相手はキリンリキ。レベルは如何ほどなのだろうか…?ギルガルドは指示を出さなかったら防御に徹する。様子見の意味も込めてまずは自身の能力をあげよう。
「ギルガルド、『つるぎのまい』」
「キリンリキ、『こうそくいどう』や!」
…キリンリキの動きがみるみる素早くなっていく。少し不味いかもしれない。これ以上速くなる前に攻撃すべきだろう。
「ギルガルド、よく狙って『アイアンヘッド』だ」
「『パワースワップ』や、キリンリキ!」
…は?パワースワップっておま、そんな技警戒するかよ…!
つるぎのまいによって超火力となったアイアンヘッドで吹き飛ばせるかと思えば、簡単に受け止められた。そして、何かを食べている。恐らくオボンの実。
「ふん!喰らえ、『じしん』や」
キリンリキが足踏みをすると同時に地面が大きく揺れ始める。
「っ…!ギルガルド、『キングシールド』だ!」
シールドフォルムに戻ったギルガルドはその一撃を防ぐ。
…パワースワップ。それは敵とこうげき・とくこうに関する能力変化を入れ替える技だ。今は、ギルガルドがつるぎのまいによるこうげきの2段階上昇を奪われてしまった形になる。
「無駄やで~?ほらもう一発、『じしん』や!」
「耐えて『ラスターカノン』!」
流石はギルガルドの耐久か。何とか一撃耐えて返しの一撃を入れるも、倒せない。
「ほいほい、トドメや。『じしん』」
先程のこうそくいどいうも影響して、相手のわざの発動を妨害できない。為す術もなくギルガルドが倒されてしまう。
強い…!自分の行動が完全に裏目に出た。
今までは理解していなかった本気のジムリーダーの実力に素直に感服していると、アカネが口を開く。
「あれ?1体倒してもうたな」
…確かに、アカネにポケモンを倒されるのはこれが初めてだ。今までは大体バクフーンで全抜きしていた。
そんな事を考えていると、アカネの顔がニヤつき始める。
「おや?おやおや?キリンリキはこうげきもすばやさも2段階上がってる、と。今優勢なのは誰なんかな~?ん?ウチ?あ、そうなん?いや~ウチはやっぱ強いなー。どこぞの誰かさんも遂に負ける時が来てしまいましたかー。
かーっ、残念ですわー。ウチ勝ち続けるカイさんが大好きやったんやけどなー。それがつるぎのまい!やって。つwるwぎwのwまwいwwwwwww
お相手さんにそのまま奪われちゃうんじゃあ意味ないですわなー。まあこれがジムリーダーの実力っていうやつ?本気を出せばこんなモンですわー。
いやまあ?全然恥ずかしいことじゃないんやで?だってこれは本来の実力差がハッキリしただけのことやから。よう今まで散々煽り散らかしてくれたなあ。いやー今思うとあれも憐れなものやな。実力差も理解しないであそこまで煽れるんやから大したモンやわー。
あれ?どうしたんですか?そんなに顔真っ赤にしちゃって。悔しい?もしかして悔しいんですかー!!??」
ブ ッ 潰 す
「バクフゥゥゥゥン!!!!!!ブッ潰せええぇぇぇぇ!!!!!」
「えっ、ちょっ、いきなりソイツ?ってか今までと迫力が違うっていうかえ、ちょま、キリンリキがなんかもう倒されとるんやけどそのバクフーンそんな強かったん」
「『ふんか』」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁっっっ!!!!!!」
~マイナーポケの怖いところって何してくるかわかんないところだと思いますということでポケモン用語解説~
・ジムバッジ集め
剣盾にてかなりジムリーダーについての描写がなされ、大会的な側面が強くなった。ジムチャレンジがガラルだけの風習なのかはわからないが都合の良い設定だけは使おうと思います。
・努力値
基礎ポイントの別名。ポケモンのステータスを自分の好きなように上げることができる。対戦においてはこの概念が非常に重要視される。
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アカネは激怒した
大天使から受け賜わったきょうせいギプスを装着したバンギラスを使うこともなくバクフーンのゴリ押しで勝ってしまった。まあ地味に最後のミルタンクも強かったのだが…レベル90ぐらいあるんじゃないか?あれ。
「そんな訳で大切なのは相手のポケモンの観察や。動くのか、攻撃してくるのか、はたまたトレーナーから指示が飛んでくるのか。その辺を見極めてウチらトレーナーも指示を出さなアカン」
ということで本来の目的を全く果たせなかった俺は、アカネにバトルの授業をお願いしている。
授業を頼まれた時のアカネはなんとも複雑な表情をしていた。
「ウチらジムリーダーは長年の経験でなんとなくそういうのがわかる。せやな、わかりやすく言うなら…ミルタンク」
ミルタンクが出てくる。
「ちょっと動いてみ。…単純やけどポケモンの目線で攻撃するのかだったりどっちに動くのか判断したりや。足なんか見てもわかりやすいな。動こうとする瞬間には力が篭るんや。まあウチはそこら辺も見越してフェイントなんかも仕込ませてたりするけどな」
なるほど。まだ俺には見極めるのは難しいが、視力などを強化すればできないこともない。やはりポケモンバトルのプロである。とても参考になる。
「まあほんで後はトレーナーを見るのも大事やな。案外人ってのは指示に癖が出るもんや。負け気味のとき賭けに出るか保守的になるかっていうとこだけでも見極められると良いで。ウチがアンタの1匹目を良いようにやれたんも今までの観察のおかげもあるな」
「ふむふむ」
「そんで…あれやな、ちょっと気恥ずかしいけどポケモンとの絆っちゅうんも大事や。まあアンタはそれを持っとる。そやから大丈夫やとは思うけど…」
アカネが頬を掻きながら少し恥ずかしそうに言う。
絆か…。確かに俺は自分の手持ちを信頼している。それは前世の魔術師の倫理観に染まってなかった俺を思い出せるからというのもある。本当の昔、俺は純粋にポケモンを楽しんで、この手持ちたちと旅をしてきたんだ。アカネの言葉に少し嬉しくなる。
「…何ニヤニヤしとんねん。もうええわ!はい、終わり!こんなモンでええやろ。元々いい感じの指示はできとるんや。すぐ強くなるわ。はい、じゃあもうバッジ渡すから帰ってや」
押し付けるようにバッジを渡されてジムを追い出される。
「お、おいおい…まあありがとな、アカネ!また何かあったら頼むよ」
「もう何もしてやらへんわ!また出会ったら今度こそぶちのめしたるからな!」
さて。1つ目のバッジを手に入れたが、次はどこの町に行くべきか。
ゲームの順番的に行くならエンジュシティが次のジムとなる。
エンジュシティ。京都をモデルとした古風な町で、ホウオウと強く関係する場所でもある。ジムリーダーはゴーストタイプ使いのマツバ。イベントも中々多く、印象に残っているプレイヤーも多いだろう。
「よし、じゃあ次はエンジュシティに行くか」
「あ、ついでにホウオウのところにも顔を出しますか!」
…ミュウはホウオウとも関わりがあるのか。伝説ポケモンを味方につけられて悪いことは無い。是非行かせてもらおう。
そしてエンジュシティ目指しギャロップに変身したミュウの背に乗って走る。炎と速度は抑えてもらった。
しばらく走ると、しぜんこうえんが見える。…少し道を変えると、1つの施設がある。
「…ますたー?急にどうしたのですか?」
ギャロップの姿のままミュウが喋る。恐らく喉だけ人間の形にしているのだろう。器用なやつだ。
「いや…ちょっと…血が、騒ぐんだ…」
「血、ですか?」
「ああ、いやしかし…今そんなことをしてる場合では…」
「…ますたー」
ミュウが真剣な顔つきになる。
「いいですか。自分がやりたいと思ったことは何が何でもやるべきです。もしそれが今の状況では難しいと思っているのなら私がサポートしましょう。ますたーのトレーナーとしての武者修行など必要ないくらいに私が敵を蹂躙してみせます。
大丈夫です、ますたー。何をされたいのかわかりませんが、やりましょう!」
「…!」
ミュウの言葉に胸を打たれる。自分のサーヴァントがこんなことまで言ってくれているのだ。やらない訳にはいかないだろう。
「よし、やるかポケスロン!」
「…へ?」
「俺もかつては熱き戦いを繰り広げたポケスリートだった…。あの戦いは忘れられない。多くのカップを制覇した俺もついぞ全ての記録を塗り替えることはできなかった…。
あのトップポケスリートのみが入れる部屋に置かれた乗せる物無き台座…それを見る度に俺は歯を食いしばり、次こそはとまた大会に挑んでいったものだ」
会場の受付の前でミュウにポケスロンについて語る。何で嫌そうな顔をしているのだろうか。
「…それでますたー、本当にポケスロンに参加するんですか?」
「ああ。この手持ちの中でもバクフーンはかつて全てのコースを制覇した経験を持つ猛者…俺とバクフーンならまたかつてのようにポケスロンの王者となり、あの『ゆうじょう』の部屋に俺たちの銅像を飾れることだろう」
「…そうですか。それなら私の言ったことですし反対はしませんよ」
「何をやる気が無さそうにしてるんだ?お前も一緒に参加するんだぞ」
「えっ」
「なんとなんとなんとぉぉぉぉっ!!!これは大番狂わせっ!!優勝はなんと赤チィィィィムッッッ!!!カイチームですッッッ!!!全くの無名ッッッ!!!本日選手登録を済ませたこの選手が優勝するなど誰が予想したぁぁぁっ!!??これからのカイ選手の活躍に目が離せなぁぁぁいっっっ!!!
というわけでポケスロンアマチュア部門テクニックコース優勝はカイチームでしたっ!!!
それではポケスローン…」
「「「「「「フォーエバー!!!!」」」」」」
久々に滾ってきた。ポケスリートとしての玉座、奪い返してやろう。
~段々解説する用語も少なくなってきたけどとりあえずやるポケモン用語解説~
・ポケスロン
ポケスロンの歴史は古く、大昔に1人の人と3匹のポケモンがとある島に広がった病気の治療法を伝えるために10の障害を乗り越えて島中を回ったことに由来する。その生涯を模したものを競技として作り、ポケモンと人間の友情を試すのがポケスロンである。
ゲーム内で登場するミニゲーム。ポケモンでスポーツ的なゲームを行う。どのポケモンでも活躍でき、ぶっちゃけ超楽しい。ちなみにダッシュハードル80秒切りってどうやるんですかね…。
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私は、そのポケモンの改造を3匹、見たことがある
「さあ皆さんお待ちかね!本日のオールスターカップ、ジャンプコースが開催されます!」
ついにこの時がやって来た。待機室でポケモンたちの最後のコンディションチェックを行う。
「初めての方に説明致しましょう!このオールスターカップとはポケスロンの誰もが参加できるアマチュアコースにおいて全ての競技で世界ポケスロン協会が定めた記録に達した一流のポケスリートのみが参加できる大会!
この大会に出場できるポケスリートは全ポケスリート人口のおよそ5%程と言われています!
そのため全国からレベルの高い戦いを味わうためにポケスリートが集まってきます。そのいつもは見ないポケモンたちの実力を見られるのもオールスターカップの魅力と言えるでしょう!」
会場は満席。周りで同じく待機している他のポケスリートたちもその熱意・敵意を隠そうともせず緊張が高まっていく。
「そのオールスターカップの中でも本日の大会は見ものです!何しろ今日の参加者たちは――おっと、ここまでにしておきましょう。それでは選手の入場です!!」
チームを率いて入場する。
「私のエンジンは友情!私のモーターは勝利!チーム カイッッ!!!率いるポケモンはバクフーン、ボーマンダ、ギャロップ!!!
なんとこの選手、1日で全ての出場条件記録を達成し、このオールスターカップに出場するという超・新・星!!!!!!しかも一部の記録では大会新記録を出すという化け物振り!!!今回もこの選手の活躍からは目が離せなぁぁぁいっっ!!!!」
ギャロップはミュウが変身した姿だ。ぶっちゃけこのジャンプコースではジャンプ力に匹敵する位スピードが必要になる。そのためギャロップになってもらった。まあそれにミュウのままこんなカメラもあるような場所には出せない。続いて他のチームも入ってくる。
「フワッフワッ!彼女の周りは重力ですら遠慮するッッ!!チーム アキッッ!!率いるポケモンはワタッコ、ポポッコ、ハネッコ!!!
そのジャンプは落ちるということを知らないッ!彼女はこのオールスターカップジャンプコースの常連ッッ!!本日はどのようなプレイを見せてくれるのかあああーーーっ!!??」
進化系列で纏められている…ああいったチームは連携が上手い。気を付けるべき相手だ。
「私たちはどこまでだって行ける。行こう一緒にどこまでも!!チーム アミッッ!!率いるポケモンはブーバーン ルージュラ エレキブル!!!彼女もこのジャンプコースには初参加!大番狂わせの優勝となるやも知れませんッッ!とても楽しみです!!!」
…?一見ジャンプ力はあまり無いチームに見えるが…確かにある競技ではあのポケモンたちも強いだろう。
ただ、それよりも次の選手に誰もが注目している。今までの選手たちは皆前座だと言わんばかりの歓声。
「さあそして皆さんお待ちかねっっっ!!!天を駆けるジムリーダー登場ッッッ!!!!父のポケモンを受け継ぎ空を飛ぶッッッ!!!チーム ハヤトッッッ!!!!!率いるポケモンはオオスバメ、ピジョット、ムクホーク!!!
このジャンプコースにおいての戦績はまさかの無敗ッッッ!!!!ジムリーダーという仕事があるが故に出ている大会の数こそ少ないもののその勝ち続ける姿はまさに空の王者!!!今回の戦いでもその無敗記録を更新できるのかぁーーーーッッッ!!??」
ジムリーダー、ハヤト。ゲームにおいて最初のジムリーダー、ひこうタイプの使い手。実況の持ち上げ具合といい観客の期待といい間違いなく今大会において最強の敵といって良いだろう。
心の中でハヤト打倒を決意する。空の王者、堕としてやろう…!
「それでは開催します!一番目指してレッツー」
「「「「「「ポ ケ ス ロ ン !」」」」」」
「それでは1競技目、バウンドフィールドです。この競技はそれぞれ1チームごとに行われるもの。床に敷かれた超巨大トランポリンをご覧ください。制限時間1分の間に、トランポリンを用いて空中にある光るランプに触ると点数が入ります。ランプは触れると光が消え、一定時間後にまた点灯します。連続で触ると得点も増えていき、1、2、3、4、5と増えた後は5点がずっと続きます。
ルールとしましては飛んだ後、一度降下したらトランポリンに落ちるまで上昇しては行けません。これは鳥ポケモンなどが常に滞空し続けるのを防ぐためですね。そのため一度落ち始めたらその高さを維持するもしくは降りることしかできません。
この競技では一度にどれだけ飛べてたくさんのランプを触ることができるかという点でジャンプ力と、どのコースで飛べばたくさんランプを触れるかという点でテクニックが問われます!
さて、それではカイチームからの挑戦です」
ポケモンたちが位置についたのを確認して、準備OKのサインを出す。
「それでは3、2、1、スタート!!」
ポケスロンにおいて競技中トレーナーのすることは特にない。事前に伝えた作戦を上手くやってくれることを祈るだけだ。
まず、このバウンドフィールド。実はこの競技、そこそこのジャンプ力があれば後はあまりポケモンの力は関係ない。一番重要なのは、
案外このステージというのは狭い。ポケモンたちがランプに触ることに集中する余りぶつかることは往々にして起こる。
「おおっとぉ!?これはカイチーム、良い連携です!!純粋に上手い動きをしています!!注目すべきはバクフーン!!ベテランポケモンの動きをしています!!ぶつかりそうになると炎の噴射によって急旋回、上手く味方を回避しています!」
バクフーンは昔ポケスロンで腕を鳴らしたから当然として、ボーマンダはひこうタイプであるから空中での動きには慣れていて、ミュウにはテレパシーを使って連携を滑らかにするように指示してある。
良いぞ、これなら行ける…!
「さあ半分を切った!そしてカイチームの得点はただ今200点を越した!ここからどんどん飛ぶペースが上がっていく!上手い!ただ今バクフーンが一度のジャンプで45得点!!!」
ボーマンダはその長い滞空時間を使い着実に点数を稼ぎ、バクフーンはとにかく多く飛んで得点の機会を逃さない。ミュウも要所要所で他の二人が取れないポイントを取り、どんどんと得点は上がっていく。
「さあスパートです!!おおっと一気に加速します!余ったスタミナをここで使い切る!!
どんどん点数を増やしていき…3、2、1、終了です!!!カイチームの得点、438点!!!これは素晴らしい記録です!!!私もここまでの得点は中々見ない!!」
良し、中々良い記録を出せた。ゲームならばまず越されない記録だが…果たしてどうだろうか。
「私、何でこんなことやってるんでしょう…世界の危機なのに…」
ミュウが非常に良くないことを呟いている。いけない。洗脳をかけなければ。
「いいか?ミュウ。ポケスロンは偉大で崇高で神聖なものだ…これは異聞帯のためにも必要なことだ…だからこれは何も間違っちゃあいない…」
5円玉をミュウの顔の前で振る。
「あ…そうでしたね!絶対に優勝しましょうますたー!」
チョロい。
「終了です!!さあ残念ながらアミチーム得点は306点、アキチームの344点を下回り暫定3位となりました」
ワタッコ系列のアキチームはそのポケモンの性質故の長い滞空時間を使い、しっかりと点数を稼いでいったが、このレベルの戦いとなると逆にその滞空時間が仇となることもある。トランポリンを用いてもう一度飛び上がりたい時もまだ降りられないのだ。ランプを触るコースは非常に綺麗で連携も出来ていたが、今一つ得点が伸びず、344点となった。
そしてアミチームはブーバーン、ルージュラ、エレキブルと見るからにジャンプが得意そうな面子ではなく、思った通りあまり点数は伸びていなかった。ジャンプコースは初めてと紹介されていたし、まだ上手く性質を把握できていないのだろうか…?
「さて、それではハヤトチームの挑戦です!」
さあ、来た。ハッキリ言ってしまうなら、ハヤト以外のチームはあまり警戒していない。このチームの得点が俺たちを超えるか、というところだ。
「3、2、1、スタート!!」
始まった瞬間、3匹の鳥ポケモンたちは一斉に飛び上がる。それではぶつかるのではないかと誰もが危惧するも、ギリギリのところでお互いを回避する。どんどんとそのスピードを用いて点数を稼いでいく。
…見事だ。単純に、上手い。普段からポケモンたちはよく訓練されているのだろう。連携が完璧と言っても良い。流石はひこうタイプのエキスパートと言うべきか。
「すごいっ、すごいぞ!!あっという間に点数を稼いでいく!!さあ3、2、1、終了!!!結果はなんと474点!!1位のカイチームを抜いて暫定1位です!!これで4チーム全て結果が出そろいました。
この競技では得たポイントを3.5で割って総合得点に加算されます。
まずカイチームは125点、アキチームは98点、アミチームは87点、そしてハヤトチームは135点です!
しかしまだまだ始まったばかり!次の競技も気を引き締めて!」
流石、というところだ。負けてしまった。
悔しさを噛みしめながらも闘志を燃やしていると、次の会場に向かう最中にハヤトに話しかけられる。
「やあ、カイくんと言ったかな?」
「ええ。そちらはハヤトさんですよね。どうかしましたか?」
「いや、こういうのもなんだが今回の敵は君だと思ってね。先程の競技も見事だった。ライバル宣言、というやつかな?俺は負けないよ」
「なんだ、そんなことか。勝つのは俺だ。楽しみにしてるといい」
そして、ハヤトと別れる。ますます燃えてきた…!
「さあお次はキャッチソーサー!このドームにステージが設置されております。そのステージが4つに区切られているのが見えますでしょうか。
この競技では前方から飛んでくるソーサーをキャッチすれば得点が得られます!そしてその得点はキャッチした地点の真下の床によって違います。前から1ポイント、2ポイント、3、5となっていまして前で待機していると他のポケモンに先んじてキャッチできますが得点は低く、後ろの方で待機するとキャッチは難しいものの得点は高くなっております!
また、このステージから落下してしまうと一定時間復帰できません!そのため他のポケモンを押しのけるパワーも必要となってくるでしょう!
それと先程もありましたがルールとして、一度降下を始めると上昇ができないというのと、空中に同じ高さで居続けるというのも禁止となっております。
制限時間は60秒。それでは4チームとも位置についたでしょうか?」
バクフーン、ボーマンダ、ギャロップの姿をしたミュウが並ぶ。
「それでは3、2、1、スタート!」
さて。この競技において求められるのは滞空時間を伸ばすジャンプ力、他を押しのけるパワー、そしてソーサーの元へ駆け寄るスピードである。
俺はスピードに優れ確実に点数を稼いでいくミュウ(ギャロップ)を前方に、前方のポケモンが取り逃したソーサーを高いテクニックで取っていくバクフーンを中央に、そして端に近いため押し合いが発生する後方にはボーマンダを配置した。
「さあポケモンたちが分かれました!注目すべきは数度のキャッチで大きく勝負を動かす後方でしょう!カイ選手はボーマンダ、アキ選手は中央にポケモンを固めており、ハヤト選手はムクホーク。そしてなんと、アミ選手は…全員っ!3匹とも後方に配置しております!!!」
…やはり。押し合いに強いポケモンを持ってくることで後ろの点を稼ぎ一気に差をつける算段だろう。なんだかんだで点数の配分的に後ろの点数を取れれば1位になることは十分可能だ。
「おおっと!?ソーサーも飛んできて早速押し合いが始まる中ハヤト選手のムクホークがハヤト選手を一度見たかと思えば中央に動いた!」
恐らくハヤトがサインか何かを出したのだろう。ルージュラのエスパーの力を用いて連携してくる3匹との押し合いには勝てないと判断したのだろう。
しかし俺はボーマンダを動かさない。
「さあ後方ではカイ選手のボーマンダが孤立無援!流石に落とされるか、と、思えば…!?取った!ボーマンダがソーサーを取っています!
3匹を相手に負けていないぞ!?何というパワーだぁーーーっ!?」
このボーマンダはコンディションをパワーが最高になるように調整した。この競技のためだ。それに…。
「おぉっと!?ボーマンダが高く飛び上がった!!流石に3匹相手は厳しいものがあるか!
さあアキ選手、ソーサーを取るチャンスで、す…!?」
飛び上がっていたボーマンダが突如急降下する。
「なんとおぉぉぉぉっっっ!!??上空からソーサーをキャッチしつつ飛び降りて眼下のポケモンに攻撃を仕掛けるーーーっっ!!!ブーバーン、衝撃で落下してしまいました!!これは凄まじい!ボーマンダ、大活躍です!!」
あの3匹は空中では自由に動けない。後方はしっかりボーマンダ稼いでくれた。前方、中央も数が多かったなりには頑張ってくれた。
「3、2、1、終了です!!興奮冷めやらぬうちに結果発表に参りましょう!
下から順に行きましょう。残念ですアミチーム13点、アキチーム16点、ハヤトチーム31点、そしてカイチーム40点です!!!
総合得点に換算すると順に92点、98点、116点、122点となります!!」
良し!ここで1位を取れたのは大きい。この調子で行こうとポケモンたちを励ましていると、ハヤトがやって来た。
「…やるね。俺はまだまだ君の実力を見誤っていたようだ。次の競技は、絶対に勝たせてもらうよ。この競技において俺のピジョットは1位以外の順位を取ったことは無い」
そう真剣な表情で言うと、去っていった。
ここまで来ると、負ける可能性のある相手はハヤトのみだ。俺はより一層心を引き締めて、最後のコンディションチェックに入るのだった。
「なあミュウ。俺、この大会で優勝したらエンジュシティに行くんだ…」
「それ予定通りですよね。むしろ負けたらまだ居座るつもりだったんですか?」
「さあ遂にやってまいりました最終競技です。この熱戦が終わるのは悲しいことですが最終競技です!果たしてどのチームが勝つのか。全てこの1戦で決まります。
そんな最後の競技はダッシュハードル!!内容は至って単純!ハードルの設置されているコースを走り抜けて3匹のタイムの合計で点数が決まります!
先程までと違って今回はずっと飛行し続けることも可能ですが、ハードルの直前には加速装置が設置されており、ギリギリまで飛ばずにハードルの直前で飛べば速度が圧倒的に上がります!飛行したままではこれを使用することはできません。
また、スピードを出し過ぎるとハードルの回避が難しくなります。どれだけのスピードを出すかは難しいところです!
では、選手の皆さん位置について下さい」
さて。これは作戦も何もない。ポケモンたちの力を信じるだけだ。
「頑張ってくれバクフーン、ボーマンダ、ミュウ」
「それでは位置についてヨーイ、ドン!!!」
一斉にポケモンたちが走り出す。
「さあさあさあ1位はピジョット!そしてバクフーンが続きます!その下にはカイチームとハヤトチームのポケモンが入り混じる!両者一度もハードルにぶつかっておりません!上手く加速装置を使い、どんどんと下位のポケモンたちを引き離していきます!」
僅かにバクフーンがピジョットに届かない。
しかし、俺はバクフーンのことを信じている。1秒、また1秒と時間が過ぎていく。
そこで、ある変化が起こった。
「おおっと!?バクフーン、背中の火の勢いが増します!!こ、これは…!ジェット噴射の如くスピードが増していきます!!なんというスピード!それでいてハードルもしっかり躱し加速装置も使っていくー!!!!
なんということでしょう!!1位が変わります!ピジョットもラストスパートとスピードを上げますが追いつきません!
バクフーン、辛そうな表情ですがミスを犯しません!素晴らしい!なんという実力!まるで何度も何度もこのコースを繰り返してきたが如く!体が覚えているとでも言うのか!2位を引き離し、ゴォォォォォォォォルッッッ!!!1位はバクフーンです!!!!!」
良く、やってくれた…!!ゴールしたバクフーンに駆け寄る。
「よくやった!!よくやったぞバクフーン!!」
「Gaa…Gaaaa!!」
「感動のハグです!!おっと、私も涙が出てきてしまいました…」
俺は実況の言葉に耳も貸さずバクフーンを抱き締める。
「うっ…。なんて感動的なのでしょうか…この1位は大きいです。しかし結果はまだわかりません!この第3競技の結果はまだ明かさずに結果発表へと参りましょう!元のアリーナに戻ります!」
「そん、な…俺のピジョットが負けるなんて…」
ハヤトが意気消沈した顔で呟く。
「…ピジョット、よくやってくれた。アリーナへ行こう」
「Quaa…」
その主従の足取りは重い。しかし、まだ結果はわからない。顔はまだ希望を持っていた。
「…ねえ、マスター。私も3位取りましたよ」
「バクフーン頑張ったなあ…あ、ボーマンダもよく頑張った!6位でも十分だぞ!」
「え、ちょ、怒りますよ?え、わざとですか?わざとなんですか?」
「冗談だよミュウ!お前もよくやってくれたなあ!」
そう言って頭を撫でる。
「あ……えへへ」
チョロい。
「選手の皆さんお疲れさまでした。激闘を制したのはどのチームか結果発表です!」
結果発表が始まる。競技成績だけでなく、様々な賞やポケモンの種類によって貰えるポイントもあるため、どんな結果になるかはわからない。
「まずは…チャレンジ精神あふれるポケモンとチームに送るチャレンジボーナスです」
これは、ポケモンの種族間にある能力の差を埋めるためのボーナスだ。単純に言うなら、能力が低いポケモン程もらえるポイントも多くなる。
「カイチーム25ポイント!アキチーム36ポイント!アミチーム30ポイント!ハヤトチーム27ポイント!」
ミュウとボーマンダの影響が大きいだろう。少しポイントは少ない。
ちなみにこういった点数を決める大会委員にはミュウを見せている。
そういったところで公平さを欠くのはポケスリートとしては不本意なのである。
「続いて個人賞…ノーミスボーナスの発表です」
これは競技によって設定されているミスの条件を全て回避したら得られるボーナスだ。
「カイチーム バクフーン、ボーマンダ、ギャロップ。ハヤトチーム オオスバメ、ピジョット、ムクホーク。以上です。両チーム 30ポイントずつ加算されます」
俺とハヤトのポケモンが受賞する。この賞は誰も受賞しないこともあればこのようにたくさん受賞することもある。
「さあ続いてポイント王の発表です!」
これは単純に一番ポイントを稼いだポケモンに配られるボーナスだ。
「カイチーム バクフーン!20点加算されます!」
これは大きい。バクフーンのゲーム時代の経験の賜物だろう。動きが他のポケモンと比べて群を抜いて上手かった。
「続いて努力賞です」
これは大会をやるごとに基準が変わる。失敗回数、ジャンプ回数など様々なことの回数が多かったポケモンに得点が配られる。
「最も体当たりしたポケモンは…ハヤトチームのオオスバメとムクホーク!合計20ポイント加算です」
体当たりができるのは2競技目のキャッチソーサーのみである。恐らく数の多かった前方・中央で小競り合いをしていたのであろう。
そしてたまたま最多の数が2匹いたというわけだ。
「それでは最後に…競技のポイントが加算されます!」
表示されている点数が目まぐるしく変わっていく。
最初に止まったのはアミチーム、299点。次にそう時間をおかずアキチームが320点で止まる。
「さあ注目の2人です!ついに数字は400を越えましたっ!なんということかっ、まだ止まりません!!」
数字が450を超えてすぐに、数字が止まる。そしてその瞬間は一瞬の差だった。
「な、な、なんと!!!カイ選手458点、ハヤト選手457点でカイ選手、優勝です!!!」
今まで静寂を保っていた空間に、大きな歓声が響き渡る。
「おめでとうございます!優勝したカイ選手にはメダルが贈与されます!
これからもポケスリートの高みを目指して頑張って下さい!それではポケスローン…」
「「「「「「フォーエバー!」」」」」」
勝利の余韻に浸るのも僅かな間で、ミュウに急かされてスタジアムを去る。
「全く…何でこんなことを…血が騒ぐなんて言ってたんで、もっと深い事情があるとばかり…」
「でも、楽しかっただろ?」
「いや、まあ…そりゃ少しは楽しかったですけど…」
そんなことを話しながら歩いていると、誰かポケモンに乗って飛んできた。
「…ハヤト?」
「やあ、カイくん」
どうしたのだろうか。もしや無敗記録を止めた俺に復讐とか…?
「そんな怖い顔をしないでくれよ。あの勝負は確かに負けた。1点差だろうがなんだろうがそこは認めるさ」
「じゃあどうしたんだ?」
「いや…君の実力に敬意を表して、ね。君、バトルも強いんだろう?」
「まあ、一応自信はあるな」
「そうだよね。それで…君って、ジムバッジを集めていたりするかい?」
「ああ。今はコガネジムのバッジしか持ってないが…」
そう言うと、ハヤトは少し驚いた顔をする。
「そうなのか。あのポケモンたちの実力から見るに最低でも5個6個は集めていると思っていたんだが…それなら丁度良い。俺のジムのバッジを渡そう」
そう言って、ジムバッジを俺に投げて渡してきた。
「なっ…。お前、こんなことして良いのか?」
「ああ。構わない。規約には『ジムリーダーが認めた人物に渡す』とある。別にバトルする必要はないんだ。俺がいつもジム戦で見ているのはトレーナーとポケモンの絆。それをしっかりと感じ取れて俺を打ち負かしたからには渡さなければと思ったからね」
そうだったのか…。
「そうか、なら有り難く受け取っておこう」
「よし、じゃあこれからもバッジ集め頑張ってくれ。今年のポケモンリーグで会おう!」
そう言ってまたハヤトは飛んで行った。
「…ほら、な?ポケスロンも無駄じゃなかっただろ?」
「ええ…」
~ポケスリートとしての誇りをかけたポケモン用語解説~
・オールスターカップ
ゲーム内にて全10競技のCPU記録を塗り替えると参加できる大会。参加するとたまにジムリーダーとかと戦える。
でもぶっちゃけ記録更新を目指すときは相手が弱い程良いのであんまり使わない。
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Call me Pokèmon.
5章をクリアしてちょっと設定を色々考え直すことになりました。
とりあえずもっと詳しい描写が無いと迂闊に過去話をできない…。
まあそれは置いといて5章すごく楽しかったです(小並感)
最後の1匹をきょうせいギプスに苦しみながらもバンギラスが倒す。
「お疲れさま、ゲンガー。さて、君の実力は十分にわかった。バッジを渡させてもらおう」
「ありがとう。リーグでの戦いを待ってるぜ」
エンジュシティジムリーダー、マツバ。俺の頼みで7つバッジを取得済みの相手に対する手持ちで戦ってくれた。
ゴーストタイプの相手というのは実体が掴めず中々やり辛いものがあったが、エーフィとギルガルドが頑張ってくれたおかげで、無事勝てた。
「ああ、それと…千里眼を持ってるって話だよな?ちょっと人探しを頼みたいんだが…」
実はジム戦の前にナツメから電話があり、俺の近くにサーヴァントがいると伝えてきたのだ。
しかしついでの雑談で30分潰すのは止めてもらえないだろうか…。ジムトレーナーがギャラドスを釣ったとかどうでもいいんだ。しかも俺の想像だがその情報は直接話で聞いたんじゃなくて能力で知った情報なんじゃないのだろうか…?
「ふむ。僕の眼で君を見る限り悪いことに使うんじゃないのだろうが…わかった。特徴とかを聞いてもいいかな?」
マツバの千里眼はどれ程の力を持つのだろうか。少々気になる。
ちなみにナツメは能力者繋がりで友人だったりするのだろうかと気になって聞いてみたら仕事などで会ったことはあるが友人という程ではないとのこと。ナツメェ…。
「多分めちゃくちゃ目立つ格好をしてて、人間として強い。これだけでわかるか?」
「ああ。それなら前から気になっていた人物が1人いるんだ。その人かな?着物姿というのはこの街ではあまり目立つものでは無いんだが非常に長い刀を所持している。見る限り悪事を為す人物では無いため放っておいたが彼を見張ろうとするといつの間にか見失っている。今は…繁華街にいるな」
「そうか、多分そいつだ。ありがとう」
真名の予想はついた。いやあれは真名というには少々複雑な事情があるのだが…とにかくまた面倒な相手が出た。
恐らくそいつは佐々木小次郎。技量に関して言うなら全サーヴァントの中でもトップクラスの化け物。剣技のみにて第二魔法の領域に至る最強の剣士の一角。
日本における伝承にて大剣豪宮本武蔵と最強を競い決戦を行った。
そんな奴が出てくるなど面倒どころの話じゃない。彼の性格的にポケモンを集めるような人物じゃないことだけが救いか。
とりあえず接触して仲間にすることを試みるしかない。
「ますたー!今度こそ私が倒してあげますからね!」
「いや、まずは話し合いからだから…むしろ絶対戦いたくないから…」
人の姿をとったミュウを連れて繁華街を歩く。使い魔を何匹か放ち、目的の人物を探させているが真名が予想通りなら気配遮断に類するスキルを持つためあまり意味は無いかもしれない。
とはいえ戦力増加に繋がる大事な作業。使い魔と視界を共有して辺りを探っていると、いつの間にかミュウと少し距離ができていた。
「おーい、ミュウ、こっち…」
「見目麗しきお嬢さん。こうして出会ったのも何かの縁。私と一緒にみたらし団子を一串でも、いかがかな?」
「私ますたー以外アウトオブザ眼中なんで…あ!ますたー!」
いるやん。
「ますたー、急に離れちゃダメですよ!私がますたーを守るんですから!」
「おや、連れがいらっしゃったか…これは失礼。邪魔者は疾く去ろう」
「ちょっと待ってくれ!アンタと話がしたいんだ!そ、そうだな。ミュウは俺の妹みたいなモンだ!一緒にみたらし団子を食べようじゃないか!」
「ますたー!!??」
「ふむ。兄同伴とは中々レベルの高い…相分かった。良い店を知っている。そこで食べよう」
「ふうむ、カイ殿は拙者を仲間にしたいと」
「ああ、そうだ。お前が汎人類史側なのは分かっている。しかし、この世界を滅ぼすのはあまりにも無惨だと思わないか…?」
中々高そうな茶屋に来た。今度もエ-フィの力で音を区切って話をしている。
この誘いに乗ってくれるなら非常に有り難い。護衛としてこの人物以上に優秀なサーヴァントは中々いない。かつての下総でも妖術師の護衛を行っていたのはこの男だ。
また、
俺の勧誘に少し小次郎は考え込むと、口を開いた。
「…誘って頂いて申し訳ないが、拙者も汎人類史の英霊として喚ばれた身。断らせて頂こう」
やはりダメか。正直汎人類史側のサーヴァントの勧誘はダメ元でやっている。敵対する意思が無いと伝えられただけで儲けものだ。
「そうか…それは残念だ。じゃあ、この世界を楽しんでくれ」
「む、拙者を殺さぬのか?味方にならぬ以上拙者を生かす意味は無いと思うが」
…のちにカルデアに寝返る予定なんてミュウの前じゃとても言えない。
カルデアの印象を良くするために殺さないのだが、適当に誤魔化すことにする。
「そういうお前こそいつ斬りかかってくるのか俺はヒヤヒヤしていたんだぞ」
「それはそこの女子が拙者が刀に手をかけた瞬間殺すかのような気迫を放っておったからよ」
見ると、ミュウは小次郎をめちゃくちゃ睨んでる。恐らく店に入った時からこうだったのだろう。
「それに…拙者実は、持ち合わせが無くてな…」
コイツ、女子にたかる気だったのか…?
「ますたー!何故あんな男を生かしておいたのですか!私に任せてくださればぼっこぼこのぼこですよ!」
「いやいや、佐々木小次郎を舐めちゃいけないって…」
怒っているミュウをなだめる。
…しかし、仲間にはならなかったが得る物はあった。一つ、貸しができたのだ。団子と茶を奢ったという本当に小さなものではあるが佐々木小次郎は借りは返す男だ。敵対したときの危険は非常に低くなっただろう。
それに、ただの軽薄そうな男に見えて全く底が掴めなかった。大体最初にミュウに話しかけたのだって偶然でない可能性もある。ただのナンパに見せかけてミュウの力を警戒したが故の行動だったのかもしれない。
話し合っている時だって、隙だらけのように見えてこちらから仕掛けることを考えると一太刀で首が飛ぶビジョンが見えた。
そういったことを考えると、しょうもなく見える貸しが非常に有り難く思えてくる。
「良いか?ミュウ。あの男はとてつもない実力の持ち主だ。お前であれば負けることは無いだろうが俺が傍にいたあの状況ではわからない。もしあの男を倒すことを考えるならもっと状況を整えてからだ」
「…わかりました。私はあの男に大した脅威を覚えませんでしたが…ますたーがそう言うなら信じます」
「よしよし、良い子だ」
そう言ってミュウの頭を撫でる。
「えへへ…」
ただ、織田信長が召喚時にポケモンを持っていたというのなら佐々木小次郎だってポケモンを所持しているだろう。それが見れなかったことは残念だ。
「あ!それじゃあ、ホウオウに会いに行きましょうよ!きっとあっちも私がいることを感じて待っていると思います!」
忘れていた。そのような予定もあった。
ホウオウ。ポケモン金における伝説のポケモンで、死んだエンテイ、ライコウ、スイクンを蘇生するなどすさまじい力を持つ。
名前からも明らかだが鳳凰など様々な不死鳥をモデルとしており、生命に関わる様々な力を持つポケモンだ。
しかし、その力故まともな手段で会うには非常に面倒くさい手順を踏まなくてはならない筈だ。どのようにして会う気だろうか…?
「じゃあ、ここに呼びますね!」
「いや、こっちから行こう」
こんな町中に伝説のポケモンが現れたらパニックどころの話じゃない。
「そうですか…ますたーのお手を煩わせるなんて、怒らなきゃいけませんね!」
やめてくれ。
「それじゃあ私の力でホウオウのところに行きますが…ちょっと失礼します」
そう言うとミュウは俺の体に何かし始める。
「あの子の住んでいるところはとても人が行けるような場所じゃないので…じゃあ、テレポートします!」
一瞬で辺りの景色が切り替わる。見渡すと非常に殺風景な景色である筈なのに、荘厳さを感じる。
「ホウオウ、久しぶりですね!」
声に振り返ると、そこには巨大な七色の羽を持つ鳥――ホウオウがいた。
「ミュウ殿…本日は、如何した?」
流石に伝説のポケモン。アルセウス程ではないが、とてつもない圧を感じる。
「今日は私のますたーの紹介のようなものです!本来ならあなたから伺いに来るべきですよ?ますたーのご慈悲に感謝しなさい!」
ホウオウがどこか呆れた雰囲気を出す。…言葉遣いからミュウの立場はかなり高いのだろうが、実際はあんまり敬われてないのかもしれない。
「ふむ。お前、は…」
ホウオウの意識がこちらに向く。それだけで凄まじい重圧が降り注ぐ。
「カイ。カイ・ランフィールだ。よろしく、ホウオウ。世界の状況は把握しているかな?俺が空想樹を持ってきたみたいな感じだ」
「…なるほど。消滅した筈のこの世界が蘇ったのはお前のお陰であったか…。
それに、カイと言ったな。なんとなく覚えがある。並行世界にて主だった男か」
ホウオウもゲーム世界のことを覚えているらしい。
「ああ。その認識で構わない。これから君に仕事を頼むことがあるだろうけど、協力してくれるかな?」
「無論。この世界を存続させることに何の憂いがあろうか。私に協力できることがあれば如何様にでも言うが良い」
そう言うと、目の前に透明な鈴が現れる。
「それを鳴らせば、私は駆けつけよう。いつでも呼ぶが良い」
…なんと。めちゃくちゃ良いものを貰えた。伝説ポケモンがやってくるなんて元の世界ではどれ程の価値があるだろうか。いや、ここの世界でも凄まじい価値を持つだろう。
「良い態度ですね!アルセウスとは大違いです。ホウオウ、褒めてあげますよ!」
「ああ、それは有り難い」
めちゃくちゃ適当にミュウがあしらわれているが、今回の行動には利益しかなかった。ホウオウと顔合わせをするだけの予定がここまで良いものを貰えるなんて…!
「よっし、やる気が湧いてきた!ミュウ、次の町へ行くぞ!」
「はい!それではホウオウ、また今度」
「うむ。いつでも呼ぶが良い」
またミュウのテレポートで元の場所へ帰る。
「…何で、アサギシティの方向に向かっているんですか…?」
「いやあ、ちょっとミカンちゃんの顔が見たくって…あっ、ちょっ、方向転換しないでー!?何で怒ってんの!?」
~5章の新事実でまたFGOを絡ませ辛くなったのでポケモン用語解説~
・千里眼
なんか持ってるらしい。ランクはBくらいのつもり。やっぱりポケモン世界の人類のスペックはおかしい。
・繁華街
京都の繁華街ってどんな感じなんでしょうか。やっぱり他の地域とは違うんですかね…?
・ホウオウ
ポケモン金の伝説。伝説故の単純な高スペックで、耐久とかやられたら手に負えない。対の存在としてルギアがいる。ホウオウ・ルギアを呼ぶための一連の流れの中にあるまいこはんの踊りは一見の価値あり。
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幕間の物語 その1
あとがきでポケモンの用語の解説を書くことにしました。今までのあとがきも変えたので宜しければご覧ください。
今回は過去話です。
随分と前のことだ。
「やあ、キリシュタリア。ちょっといいか?」
「おや、カイ。どうしたのかな?」
ラウンジで本を読んでいたキリシュタリアに話しかける。
「さっきまでオフェリアと話していたんだがAチーム皆でお茶会をやりたいと彼女が言ってね。俺は男子担当というわけさ。時間さえあったらどうだい?」
「ふむ。それはぜひとも一緒にしたいね」
キリシュタリアは悩む間もなく即答する。
「そうか。じゃあ先に食堂に向かっててくれるかい?」
「いや、それには及ばない。これから他のメンバーも呼びにいくのだろう?私も一緒に行こうじゃないか」
案外キリシュタリアは話してみると気安いところがある。話し相手ができるのは良い。
「それなら一緒に行くか。まずはカドックのところへ行こう。この時間ならマイルームにでもいるんじゃないかな」
「そうだったのか。案外オフェリアもお茶目なところがあるんだね」
「あれはペペに嵌められてって感じだったけどな。一発ギャグのお披露目の後は顔真っ赤にしてたよ」
キリシュタリアと雑談をしながら廊下を歩く。すると、英霊ダ・ヴィンチと出会う。
「おや、こんにちはお二人とも。これから訓練でもするのかい?」
「いや、Aチームの皆でお茶会をするんだ。そういうダ・ヴィンチちゃんは?」
「ちょっとロマンのやつが『仕事をするには糖分が必要だー!』なんて言うもんだからわざわざ食堂までみんなの分も合わせてお菓子を取りに行ってたんだ。君たちもどうだい?」
不満げな顔で地味に上手い物真似をする。流石は万能の天才か。差し出された菓子はチョコレートのようだ。
「いや、遠慮しとくよ」
「そうだね。私たちはこれからお茶会だから。そちらで味合わせてもらうよ」
「それもそうだね。それじゃあ楽しんでくれたまえ。あ、カイ君。君の魔術を頼りたいんだった。また今度時間が空いた時に私の工房に来てくれるかい?」
「ああ、わかったよ」
そう言ってダ・ヴィンチとも別れた。
「やあカドック」
「げ…」
カドックの部屋が見えたかと思うとカドック自ら部屋から出てきた。
そのまるでレート戦で初手出し負けたかのような表情はどういうことだろうか。
「嫌な予感がすると思えば…部屋から出ないのが正解だったか」
「おいおい、失礼な物言いだな。お茶会しようぜ!拒否権は認めんぞ!」
「ふざけるな!僕はこれからロックの…って、ヴォーダイムも参加するのか?」
キョトンとした顔でカドックはヴォーダイムを見つめる。
「ああ。カドックはロックミュージックが好きなのかい?」
「そうだが…なんだ、興味あるのか?」
「むっ…そうだな。これでも私はギタリストとしてかの偉大なロックミュージシャンである…」
「ああ、わかった。無理して僕の趣味に合わせなくていいから。…そうだな、せっかくだし参加させてもらおう。食堂に行けばいいのか?」
「おう。それじゃあ俺たちは他の面子も呼びに行くから」
「カドック。いいか?私は本当にギタリストだ。今度披露してみせよう」
「いや、本当にいいから…」
「あら、カイにヴォーダイム。メンバーは集まった?」
また歩いていると、マシュを連れたオフェリアに出会った。
「こんにちは、カイさんにキリシュタリアさん」
「やあ、マシュ。君も来てくれるんだね」
「うん、普段関わりが少ないからね。嬉しいことだ。こちらはカドックを呼んだよ」
「そうですか、ありがとう。じゃあ私はもう全員集めたから先に食堂で準備をしているわね」
「ああ、わかった。なるべく早くそちらに向かうよ」
そしてマシュとオフェリアは食堂の方へ向かっていった。
「そう言えばカイはオフェリアと随分仲が良いようだね」
「ああ、ちょっと色々あってね」
家を嫌うもの同士案外気が合うのである。まあそれ以外にも接点はあるのだが…。
「そうか…私ももっと皆と仲良くしなければいけないな」
「多分ちょっと皆と触れ合うだけで大分仲良くなると思うぞ」
「それならいいんだが…彼女も私に一発ギャグを披露してくれるようになるだろうか」
本人が聞いたら本気で怒られるかもしれない。
訓練室の辺りまで来ると、ベリルとデイビットがいた。
「やあ、ベリルにデイビット。訓練かい?」
「おお、カイにヴォーダイムじゃねえか!ちょびっとシミュレーションでキメラやらを殺してたんだが…そんなに面白くねえな」
「同感だな。命無き者を殺戮したところで何か得られるものがあるわけでもない」
「ふーん…そういうモンか。ああ、それでこれからAチーム全員でお茶会をするんだ。良ければ一緒にどうだ?」
「おっ、そうなのか。行くぜ行くぜ!誘ってくれてありがとうよ!」
ベリルは快諾してくれるであろうという予想はあったがデイビットはどうだろうか。ペペもいるし来てくれないだろうか。
「ふむ…。全員か、珍しいな。俺も参加させてもらおう。動いた後には休息が必要だ」
「そうか!そりゃあ嬉しいな!他のメンバーはもう食堂にいる。早速向かうか!」
「ああ。私たちも早く向かった方が良いだろう。ところでギターを誰か所持していないかい?」
まだそれ引きずってたのか…。
「やっと来たわねカイ。あと少しで準備が終わるから手伝ってもらえるかしら」
「アラ、本当に揃ったのね。とっても意外だわあ!」
相変わらずペペは元気だ。オフェリアは女子担当だがペペは女子判定でいいのだろうか…?
「ヒナコも来たのか。ヒナコとお茶を一緒にするのは初めてだな。好きな茶葉とかあるのか?あれか、やっぱ匂いの強いハーブティーとかは嫌いなのか?」
ヒナコに話しかけるとヒナコが本を閉じて何故か不機嫌そうな顔を露わにする。
「もう今更何であなたが私の秘密について知っているのかとかは問わないけれど、周りにまで示唆するのはやめてくれないかしら」
怒られてしまった。このAチームのメンバーなら既に知っているやつが数人に残りは知っても普通に付き合えるやつらばかりだと思うのだが…。
それにしても珍しく今日はAチーム全員とプライベートで言葉を交わした。
何だか嬉しいものだ。お茶会の準備をしながらまたこんな日が来る事を願っていた。
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今日、ママンボウを釣った
チョウジタウン。ロケット団アジトがあったりダンジョンに囲まれていたりと中々印象深い町である。
ジム戦は自分の手持ちが氷に強いからかあまり苦戦はしなかった。ボーマンダさんにはベンチを温めてもらっていたが…。しかし流石は最年長ジムリーダー。途中何度も痛い目に遭った。良い経験になったとも言えるだろう。着実に実力がついていくのを感じる。
ただ、オニゴーリが出てきた時はついうっかり殺意が漏れてしまった。その後ムラっけではないことがわかり一安心である。
「さて、ミュウ。この街での一番の観光名所はどこだと思う?」
「え…あれですか、少し先に進んだところにあるいかりのみずうみですか?」
唐突な質問にミュウが真面目に考えて答えを出す。
いかりのみずうみはゲーム中では赤いギャラドスが出てくるところだ。そこのモデルは琵琶湖であり確かに名所だが違う。
「それならやっぱり…忍者のなにかとかですかね?」
「お、惜しいな」
ここチョウジタウンのモデルは滋賀県甲賀市、忍者の里である。
「わかんないか?」
「…はい、出てこないです」
ミュウが残念そうな表情をしながら言う。
「正解は『ワタルが人に向けてはかいこうせんを撃った家』だ!」
「…はい?」
チョウジタウンにはおみやげ屋に扮していたロケット団アジトがあった。忍者のからくり屋敷を元としたアジトの偽装は完璧であり主人公も一度はそこへ辿り着くものの追い返される。
そしていかりのみずうみにてロケット団が出している電波によってポケモンを強制進化させるという所業を見た主人公とワタルは電波の元がそのお土産屋だとわかり共にアジトへ乗り込もうとした。当然ロケット団も無警戒ではなく、入り口にしっかりと用心棒を置いている。
さてどうするのかとプレイヤーが考えた時のことである。『カイリュー はかいこうせん』
その言葉と同時に吹き飛ぶ用心棒。そして何事もなかったかのように『遅かったね カイ君!』
あまりの容赦の無さに画面の外でプレイヤーは震えたものである。
「まあその一撃に耐えてる時点で人間の方もおかしいっちゃおかしいんだけどな…」
まあ冗談はともかくとしてロケット団のアジトについて調べたいというのもある。主人公のことについてはこの異聞帯に来たときにかなり調べたが、ロケット団についてはまだそこまでだ。もう壊滅からかなり時間が経っていて大した情報も無いだろうが、行って損は無い。
常識的に考えたら人の店の地下に入るのは無理なのでミュウの力でこっそりとおみやげ屋に潜入し、アジトへ乗り込む。
入るとすぐにペルシアンの像などが設置されている。監視カメラだったはずだが今は電源が切られているようだ。無人で音もなくどこか不気味な雰囲気の中歩いていると、目的であるコンピュータを見つける。
「ミュウ、データ抜き取れるか?」
「まっかせて下さい!」
そう言うと人の姿を取っていたミュウの桃色の髪が一本意思を持ったかのように動き始める。その髪がコンピューターに触れたかと思う勝手に起動を始める。
「はい!終わりました!」
「はやっ」
マジであっという間だった。こういう時本当にミュウの万能さを実感する。
「でもこれ末端の人間のコンピュータみたいですね。他のコンピュータにはまだまだ別のデータがありそうですよ」
「それならまだ探索するか」
コンピュータを発見してデータを抜き取ること数回。ついに最後のコンピュータに接続したミュウが表情を変える。
「あっ!コレ、かなり重要なデータがあるっぽいですね。かなり高度なセキュリティがありますよ」
幹部用だったりしたのかもしれない。そのデータはぜひとも手に入れたいところだ。
「そうか…解けそうか?」
「もう解けましたけど。でもこれは…とりあえず表示しますね」
高度なセキュリティとは何だったのか。ただミュウが案外深刻そうな表情をしている。
画面に現れたテキストの題名は、『現在のミュウツーについて』であった。
『現在のミュウツーについて』
この文書を入手している者にとっては既知の事実であろうがミュウツーは我々ロケット団の手を離れた今現在でも強力な力を保持している存在である。
この文書及びミュウツーに関するデータはレベル7の機密処理を行うこと。また、Aランク幹部以外にミュウツーの存在を知らさないこと。
これはかつて起こった捕獲隊の暴走を防ぐためである。
本文書ではミュウツーの概要などは省かせてもらう。これはミュウツーの基本情報などはAランク幹部であれば当然知っているからである。基本情報は別文書を参照のこと。
本文書では現在のミュウツーの動向について記す。かつて研究所を半壊させて脱走したミュウツーであるが、その後しばらくカントー地方を飛び回るものの、その強力過ぎる力故か中々安住の地を得られない中人の来ない奥地を好む傾向が見られていく。
ちなみにこの間24度捕獲隊を送ったが全て全滅に終わっている。一般構成員102名、Cランク幹部8名、Bランク幹部5名、Aランク幹部1名、計116名の死者を出してロケット団はミュウツーの捕獲から手を引くことが決定された。
そしてあの忌々しき事件の1月程前、ミュウツーが遂にハナダシティにある洞窟に定住を始める。その洞窟に地名は存在しなかったが便宜上『ハナダの洞窟』と呼称する。
ハナダの洞窟は元々強力なポケモンが住み着いている危険地帯として扱われており、チャンピオンが認めた者しか入れないという場所であり、ミュウツーとしても都合が良かったと思われる。
逃走・索敵に特化した調査隊を送った結果、ミュウツーはハナダの洞窟の最奥部に住んでいて、恐らく他のポケモンたちを力で従えて主のような存在になっているのだろうとの報告がある。これについてはハナダの洞窟調査結果という題で別に報告書があるためそちらを参照して欲しい。
(中略)
そして現在までハナダの洞窟に住み着いているミュウツーであるが、今の所外へ出ようとする試みは無い。定住の地を得た影響か、殺意も薄れているようであり命令を無視して単独で捕獲に向かった部隊も6名中1名、隊長のみが生還してしまっている。
ミュウツーの居場所が固定されたならば捕獲に向かうべきだと言う幹部もいるが、個人的な意見を述べるならば絶対に反対である。ヤツの能力は明らかに異常であり、人の制御できる領域に無い。ヤツがロケット団に自分から攻めてこないことを幸いと捉え、今後一切関わらないことが最良といえるだろう。
結論として、現在のロケット団の戦力ではミュウツーの捕獲は不可能であり、再興のための作戦には使用できない。かつてミュウツーに対峙した者の一人としてこれを読んだ他の幹部が同意してくれることを願う。
Aランク幹部 ラムダ
「これは…」
何というべきだろうか。言葉が出ない。
「ますたー、大丈夫ですよ。ミュウツーについては存在は知っていました。思うことは色々ありますが、今はますたーのサーヴァントです。他の機密データも入手しました。あの子をどうするかは全てますたーに任せます」
はっきり言って、ミュウツーは戦力としてめちゃくちゃ欲しい。ただ、この文書を見る限り仲間になるかどうか…。
「よし、わかった。対策が立ち次第接触に行こう。そのデータは俺の頭にブッ込んどいてくれ」
手に入れた情報にはミュウツーの生体情報もある。それがあれば対策も立てられる。案外良い拾い物をした。
中々良い結果でロケット団アジト探索は終わった。
「という訳でエスパーの専門家としてどう思う?」
「…一応、存在については知っていたわ」
困った時のナツメである。電話で喫茶店に呼んだ時は異常な程喜んでいてなんだか悲しくなってきた。
「あの洞窟はポケモンリーグ管轄なの。元々危険な地域だったからジムリーダーが特訓に使ってたりなんかもしたわね。そんな中、明らかに異質なポケモンが住み着いたっていうんだもの。カントーのジムリーダーは全員存在を知っているわ」
「そうなのか…捕獲とかの動きは無かったのか?」
質問をするとナツメの顔が曇る。
「…その、言い辛いのだけれどグレンタウンのジムリーダーのカツラさんが…」
「ああ、そのことか。多少は知っている」
グレンタウンのジムリーダー、カツラ。ゲーム内の様々な描写からロケット団と浅からぬ関係があると言われていたが…この世界ではそれは事実のようだ。ロケット団側のデータでもカツラの名は何度か見た。
「そうなの…。まあそれで危険性を知っていた以上誰も手を出さなかったっていうわけね。私も能力者としてあそこ一帯の力場が異常なのはわかっているの。アナタも手を出さない方が良いと思うわ」
そう言うと、ナツメはコーヒーに口をつける。ただ子供の舌にブラックは苦かったようで涙目になって口を離し慌てて砂糖とミルクを入れ始める。
まあ俺も甘党だから人のこと言えないんだが…。
「そっか…じゃあまだ手を出さない方が良いのかなあ…」
「そうね」
ようやく甘くなったコーヒーに満足したのかナツメが笑顔でコーヒーを啜っていると突然、思い出したかのように口を開く。
「そういえば、ハナダのジムリーダーが一度出会ったと言っていたわね。戦っては無いようだけれど、何か知っているんじゃないかしら?」
カスミか。洞窟がある町のジムリーダーとしては確かに関わらざるを得ないだろう。話を聞きに行くことにしよう。
「じゃあ、話を通しといてくれるか?」
「…ごめんなさい、彼女の連絡先は知らないの…」
…申し訳ないことを言ってしまった。お詫びにまた喫茶店程度なら付き合ってあげよう。
~ギャラドスは固定で色違いってよくよく考えるとめっちゃ有り難いよねということでポケモン用語解説~
・オニゴーリ
THE・害悪。ムラっけという能力がランダムに上昇・下降する特性により誰が相手であろうと運ゲーを仕掛けてくる。回避率・ぼうぎょ・とくぼう辺りが上がると絶望。
剣盾では特性が弱体化されてレートから大分数を減らした。
・ワタル
言わずと知れたひこう使いかつチーター。こおりがいないと地味に苦戦する。
2世代でチャンピオン扱いということはグリーンに勝利したのだろうか?
あのはかいこうせんの事件はポケモン世界の住人の異常さを端的に表していると言ってもいい。ポケモンの力で全てなんとかなるということと人間もある程度の力を有しているということがわかるのがあの事件だ。
・ロケット団
ポケモン世界のヤの付く人たち。それに加えてかなりの科学力を持っているためタチが悪い。2世代では残党が活動している。
・ミュウツー
初代の伝説。ロケット団によって人工的に生み出されたポケモン。ミュウを元に作られたポケモンであり、この小説ではカツラが研究に関わってる説を採用した。
性能としてもつよつよのつよで、伝説の中ではRSのチートたちには劣るとはいえ、メガすらも手に入れたその強さは凄まじいの一言。メガシンカをすると種族値の一部では1位を取る程の数値を誇る。
・ラムダ
ロケット団幹部。変装してたやつ。ロケット団の設定は色々捏造しました。
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美女ジムリーダーと野生の伝説
相も変わらずジムリーダーと接触する手段はジム戦のみである。
ジムトレーナーを跳ね除け、カスミと対峙する。それにしてもこのジムは水着の子ばかりで眼福だ。
「ますたー。どこ見てるんですか?次はジムリーダーですよ!」
おっと。みずタイプのジムリーダー、カスミ。ミュウツーについて聞くための挑戦だったが、ジム戦も修行になる。しっかりと戦おう。
「やっと来たわね!えーと、ジョウトのバッジを4つだったかしら?ヤナギさんを倒すなんて中々やるじゃない。あの人は私がジムリーダーになるずっと前からジムリーダーだった人でタイプも近いから色々とお世話になってたのよ」
今回は手持ちを強くする要請はしていない。お願いを聞いてもらうなら複数より一つの方が良いだろうというわけだ。
「まあさっきまでの戦いを見るにポケモンも相当強いし指示もちゃんとしてるからこの手持ちじゃ敵わないでしょうけど…全力で行くわよ!」
当然こちらも全力で立ち向かう。ミュウツーのことを聞くならある程度の実力を見せることは必要だろう。
「いやー…わかってたけどやっぱりやるわね!はい、ブルーバッジ。あんたなら今年のポケモンリーグに出てくるわね。そこで当たるのを楽しみにしてるわ」
ポケモンリーグ…正直ジムバッジは修行として行っているため出る気はあまり無かったのだが、ここまでレベルの高いトレーナーたちが集まるというのなら見てみたい。ミカンちゃんの応援でもしていようか。
「ありがとう。それで、結構重要な話をしたいんだが」
「人に聞かれたくない話?それなら奥に来なさい」
カスミに連れられてジムの奥へ入る。
奥はジムリーダーの仕事場のような感じで、結構乱雑な状態の部屋だったが用意された椅子に座り、本題を切り出す。
「ミュウツーのことについてなんだが」
「…!アンタ、その名前をどこで知ったの」
カスミの表情が一気に真剣になる。
「ナツメから教えてもらってな…俺はポケモンの研究とかもやってるんだが、話を聞きたくて来たんだ。勿論、捕獲しに行くつもりなんて全く無いし誰にも情報は漏らしていない」
「そういうことね」
勿論、嘘である。ナツメは俺に情報源なんて聞いてこないし、カスミもジムリーダーの名前が出れば信用せざるを得ないためどうとでも誤魔化せる。ポケモンの研究はミュウに隠れて確かにやっているが、カスミの想像しているようなものでは無い。捕獲しに行くつもりは全く無いわけ無い。情報を漏らさないのは多分本当だ。
「それなら話してあげる。私がミュウツーに出会ったことよね?あれは大分前のこと。ロケット団が壊滅した後のことよ」
そう言って、カスミはお茶を淹れながら話し始めた。
「もうその時はカツラとナツメによってミュウツーがハナダの洞窟にいることはカントーのジムリーダー皆がわかっていたわ。
私も当然ハナダシティのジムリーダーとして洞窟の立ち入り規制をより一層強化して見張るようにしていたの」
カップに注がれたお茶を受け取る。
「これ、エリカからもらったの。タマムシのジムリーダーね。すごい美味しいけど私お茶は普段飲まないから。ああそれで、話を続けるわね。
何故かしら、禁止されていることをやりたがるのが人なのよ。とあるエリートトレーナーがどこかからか強いポケモンがいるという噂を聞きつけて見張りの協会員を倒して侵入してしまったの。
その話を聞いて私は急いで洞窟に入って、探索を始めたわ。中は相当暗くって、スターミーがいなかったら歩くことすらままならなかったでしょうね。ほら、この子よ。私の自慢のポケモンなの。この子がいればアンタにも負けないわよ」
そう言ってカスミは当時を思い出すかのように傍にいるスターミーを撫でる。
「ああ、それで洞窟ね。久しぶりとはいえ昔はその洞窟に入り浸っていたから最奥部に辿り着くのにそう時間はかからなかったわ。おかげで、辿り着いた時はまだトレーナーは生きていたわね。周囲には恐らく彼のポケモンも横たわっていたけど、彼も一応挑む自信を持つ程度の実力を持っていたってことでしょうね。全員瀕死でまだ息を保っていたわ。
それで、恐らくミュウツーはトレーナーにトドメを刺すところだったんでしょうけど、私を見てトレーナーを離したの。新手に警戒したんでしょうね。
その時、ミュウツーが私に話しかけてきたの。ものすごく驚いたわ。多分あれが念話ってやつね」
なるほど。少なくともミュウツーは会話できる程の知能を有しているというわけだ。
「『何故貴様らは私を付け狙う!』…だったかしら。きっと今までその力を求めるやつらに追われてたのね。私それで可哀想になっちゃって。闘う意思が無いことを示すためにボールを全部地面に置いたのよ。その時のミュウツーの表情ったら…私ちょっと笑っちゃったわ」
恐らくミュウツーが言っているのはロケット団のことだろう。この世界のミュウツーは恐らく復讐などは考えていない。コピーやクローンのことについても気にしておらず、ただただ安寧を求めているのだろう。
「そしたら『何をしている!?何故笑っていられる!』…って。私が『敵意は無いわ。仲良くしましょう』って言ったの。そうしたらようやくあっちも敵意をなくしてくれたみたいで。
エリートトレーナーも私も帰してくれたの。
それから何回も会いに行ったりもして、結構仲良くできてる自信があるのよ?今じゃ週に1回は会ってるもの。あの子は全然仲がいいって認めてくれないけど。
…こんなものね。ごめんなさい、研究に役立つような話はできなかったかしら」
「いやいや、とっても参考になった。ありがとう、このお礼はまたいつかさせてもらう」
参考にはなった。古今東西、心を開き始めた怪物には苦難が襲い掛かるべしと相場が決まっているのだ。
作戦は決まった。
「ミュウ。これから3時間ぐらいかけてこのハナダ周辺のポケモンの分布を調べてきてくれ。調べられる限りで良い」
「ますたーはどうされるんですか?」
「ミュウツーの対策を行う。なに、危険なことはしないさ。危なくなったらお前を呼ぶ」
「そうですか。それならいいですけど…。じゃあ、行ってきますね」
そう言うとミュウはどこかへ飛んで行った。なら、作戦開始だ。ミュウツーへの対策はとっくに出来ている。これでもあの家での地獄を耐え抜いたのだ。そこらの魔術師とは出来が違う。
俺は、魔術を使い一人ハナダの洞窟へと入り込む。
道中に出会うポケモンは蹴散らして行く。肉体の強化など専門中の専門であるし、この世界に来てから体に魔力が漲るようになっている。この程度のポケモンなら自分のみで倒せる。
やがて、実力の差を分かったのか襲ってくるポケモンの数も一気に数を減らした。
ゆっくりと探索を続け、ようやく最奥部へと辿り着く。そこには伝説のポケモン、最強の一角であるミュウツーが存在した。
「何者だ」
ああ、その声の重圧は確かに凄まじいものがあるがアルセウス、ホウオウ、そして何より常日頃からミュウの声を聴いている俺にとってはまるで意味が無い。
「やあ、被検体五号。君を迎えに来たんだ」
俺がその名を口にすると同時、右腕が弾け飛ぶ。
「今すぐ引き返すが良い。さもなくば次はその首から上が消し飛ぶぞ」
…思っていたより優しい対応だ。これもカスミとの交流のおかげだろう。
「嫌だなあ、勘違いしてないか?俺はロケット団じゃないよ。痛いじゃないか」
そう言って右腕を拾おうとすると体の動きが止められる。
「ならば何者だ?その名を知っているという時点で奴等と関わりがあるのは事実だろう」
「ああ、単純な話だよ。俺はロケット団のアジトからデータを抜き取って君の存在を知っただけの話さ。いや何、君にとっても悪くない話を持って来たんだ。聞いてくれるかい?」
「黙れ。今すぐ引き返せと言ったはずだ」
急に金縛りが解かれる。しかし、随分と警戒心が強い。ただ、生まれてから数年のまだまだ赤ん坊だ。話さえ通じるならどうとでもなる。
「へえ~?良いのかい、君は随分とカスミと仲が良いようだけど」
その名前を出すと同時に、ミュウツーから放たれるプレッシャーが爆発的に増す。
「貴様、どういうことだ…!!」
「だから、俺はただ話を聞いてくれとしか言ってないんだってば。わかる?君」
ああ、簡単だ。適当なハッタリをかましているだけで大人しくなる。ミュウツーは世界のことを何もわかってない。その力があればそれこそ何でもできるだろうに、初めて優しくしてくれた存在を失う事への恐怖が、全ての判断を狂わせる。
生まれてから取ったコミュニケーションなど無に等しい。実に、簡単だ。
「君さあ、覚えてるでしょ?昔何回も何回も人間が君を追っかけまわしてきたこと。最近無いから大丈夫だと思ってた?そんなことはない。人間は力への欲求は一際凄まじいものがある。
君も薄々気づいてたんじゃないの?こんな日常が続くはずないって。あ、それとも誰も攻めて来なくって週に一回カスミと話すなんていう幸せな日常が一生続くと思ってた?」
「…!」
段々とミュウツーは俺の話に引き込まれていく。間違っている。これからもその日常が続いて欲しいと願うなら今すぐ俺を殺すべきだ。その力はミュウツーにはある。
「ロケット団は残党すらも倒されて、本当に苦しい状況に陥っている。そんな中自分たちが作り出した最強のポケモンを放っておくと思うかい?どれだけ犠牲者が出ても君のことを追い続ける。
君は大丈夫だろう。でも、やがてロケット団はカスミに目をつける」
「…カスミは、私が守る!それで話は終わりだ!!」
「本当に?」
「…!!」
ああ、本当に幼い。こちらの言葉を一切疑わずこちらが作った前提の中で考え続けてくれる。
「本当に、君が守れるとでも?この洞窟から出られない君が?出たらなおさら狙われる君が?」
「ならば、どうしろと言うのだ…!」
「力を与えよう」
心に深く、入り込むように言葉をかける。
「…!」
「力を、更なる力を。『最強』では足りない。『絶対』の力が必要なんだ。そうすれば誰も君に近寄らない。誰も君を傷つけない。君は誰も傷つけなくなる」
ミュウツナイトYを
「この石を手に取れ。そうすれば契約成立だ。君は『絶対』の力を手に入れる代わりに、俺のお願いを数回聞いてくれれば良い。ただ、それだけだ。
何、大したお願いはしない。カスミには絶対に迷惑はかからないし、その力を振るえばすぐに終わるようなものさ」
俺の手を取るのか、否か。結果はわかっている。
「おかしいわね、いつもは私が洞窟に入ったらすぐにやってくるのに…。
おーい!ミュウツー!いないのー!?……留守かしら」
「ますたー!全部調べて来ましたよー!何に使うんですか?」
「ああ、もう大丈夫だよ。思っていたより簡単だったんだ。予備の命も持って来ていたんだけど、無駄になっちゃったね」
ああ。実に、簡単だった。
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番外編 IN ガラル!その1
FGOの描写が欲しいので長めの番外編を挟んで時間を稼いでいこうと思います。
この話は主人公の夢の中のお話で本編には関係ない…予定です。
クリプターをやっていたと思ったらいつの間にかガラルに入国していた。
な…なにを言っているのかわからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった…。
「とりあえず手持ち無しでワイルドエリアはヤバい」
今現在、俺はキテルグマ3匹に囲まれている。
キテルグマは今まで数多くの化け物を登録してきた図鑑が「ヤバい」と連呼するぐらいヤバいポケモンだ。ぶっちゃけ命の危機である。
「馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!!」
渾身の強化魔術を自身にかけ、今までで最大の命の危機に立ち向かう――!!
「勝った…勝ったぞおぉぉぉーーー!!!!」
まさか途中で増援が来るとは…一瞬ヨノワールが見えた。二重の極みを習得していなかったら俺は今頃死を迎えていただろう。ここでかくとう道場での修行が活きるとは俺も思っていなかった。
「さて…これからどうするか」
ぶっちゃけ死にそうである。今すぐ何か腹に食べ物を入れたい。しかしきのみを取るにはまたヨクバリス辺りと戦う必要が出てくるだろう。
本気で困っていたその時、こちらに向けられた視線に気づく。かなり前から見ていたのだろうが戦いに必死で気が付かなかった。とりあえず声を掛けてみる。
「そこで見てるのは誰だ?」
「!」
出てきたのは小っちゃい褐色の女の子。何か見覚えがある気がする。
思い出そうとしている中その女の子から出てきた言葉はとても衝撃的なものであった。
「あ、あの!弟子にしてください!!」
「…は?」
「それでキテルグマの住処に入り込んでしまった私は隠れて震えることしかできませんでした…その時です!師匠がやって来たのは!」
サイトウちゃんだったでござる。それと同時に年代の特定も結構できたでござる。
どうやら今はダンデたちぐらいの世代がジムチャレンジするような時代であり、ララテルタウンの現かくとうタイプのジムリーダーはサイトウちゃんの父親のようだ。
「師匠のあの体さばきと言ったらもう!抱き着こうと腕を回すキテルグマにどう対応するのかと思えば目にも止まらぬ素早さで後ろに回り拳の一撃!あれには痺れましたね…」
何故唐突にガラルに来ているのかはわからないが、これからどうしていくべきだろうか…?とりあえずこの世界にもジョウト地方は存在するだろうが、そこに行ったところで状況が変わるとも思えない。
「特に最後に現れたぬしとの決戦を私は見れて本当に幸せですよ…ねえ、師匠聞いてます?」
いやむしろあのクリプターとしての立場から解放されたのなら元に戻る必要なんてないのでは…?後悔は割となくもないが、大令呪は消えている。
最早元の世界との繋がりは消えていると見ていいだろう。
「ねえ、師匠…グスッ、聞いでぐだざい゛よ゛お゛ぉ…」
「あーわかった!聞いてやるから、な?泣き止めよ。後俺は師匠じゃねえから」
「ありがとうございます師匠!」
「ダメだこりゃ…」
ただそれ以上にダメなのは今の俺の境遇である。
「ハー…これからどうすっかなあ…」
「もしかして師匠、流浪人ってやつですか!?」
流浪人…確かに今の俺はそう言えるかもしれない。
「まあそうかもな」
「じゃ…じゃあ!私の家に来てください!師匠の実力なら私の家の道場で先生とかやれますよ!」
それ、案外良いかもしれない。多少お金を稼がせてもらったらすぐに出て行こう。
そうすればポケモンを捕まえてバトルでお金を稼いでガラル中を旅できる。結構夢が広がるな…!
「カイ殿、改めて我が娘のサイトウを救って頂き感謝申し上げます」
「「「「申し上げます!!!」」」」
「アッハイ」
「つきましてはどうやら住居にお困りのご様子。道場なぞがある我が家でよろしければいくらでもご滞在くだされ」
「「「「ご滞在くだされ!!!」」」」
「アッハイ」
「そしてサイトウの話を聞くにカイ殿が扱われる武術はカラテのご様子。
厚かましいお願いではありますがそのキテルグマの群れを打倒したという武術の腕を見込んで我らが道場にて少々稽古をつけてくださればと」
「「「「稽古をつけてくださればと!!!」」」」
「アッハイ」
「聞いたか皆の者!カイ殿はご快諾くださった。急ぎお部屋の準備をせい!!!」
「「「「はい!!!」」」」
「アッハイ」
「それではカイ殿もお疲れでしょうからまずは風呂でもいかかがでしょうか。お連れいたしましょう。ついでに私にも少々キテルグマとの戦いについて聞かせてくだされ」
「アッハイ」
…はっ!思ったより大分家がでかくて門下生とサイトウのお父さんの重圧によってただ頷くのみのマシーンとなっていた。
俺の家は魔術一辺倒で時計塔からはちょっと嫌われているため実は貧乏だったりするのだ。そのためこういう重圧には弱い。
「ふむふむ、それは素晴らしい…カントーという地で培った技術だったのですね。
ところでカイ殿、サイトウをどう思いますかな。あれでも結構良い所があるでしょう?帰って来てからずっとカイ殿の話ばかりしていましてな…いやなに、あの子は器用ですから家事などもすぐ覚えるでしょう」
あの状況でちょっと金稼がせてもらってすぐ出ていきますなんて言える俺じゃなかった。
それにしても何か外堀を埋められている気がする。これ以上縛られるのはごめんだ。なるべくしがらみは解いておくに限る。
「そうですね、将来は良い旦那さんを見つけるでしょう」
「HAHAHA、ご冗談を」
一体どこを冗談と受け取ったのだろうか…。
「まあサイトウはカイ殿のことを師匠と慕っているご様子。稽古だけでもつけてやってくれませんかな?無論衣食住、そして月謝だって用意致しましょう」
む…それを言われると辛い。結局俺は今一文無しなのだ。…まあ、ちょっとくらいなら良いかな?
「それくらいなら喜んで」
「そうですかそうですか、それは良かった」
何だか笑顔が怖い。やっぱり断っておけば良かったか…?
「師匠、本日も稽古ありがとうございました!」
「「「「ありがとうございました!!!」」」」
まずい。何かずるずるとサイトウの家にお世話になり続けてしまっている。もう半年が過ぎた。皆からすっかり一門の仲間みたいな雰囲気を感じる。
「師匠のあの技はいつ見ても素晴らしいです!あの軽い一撃からどうしてそこまでの破壊力が生まれるのか…私にはわかりません。いつかその技を伝授して頂けるようになるまで、日々精進していきます!」
何か途中からもうこのままで良いかな~みたいなことを考え始めてしまっていた。
いや実際結構幸せな生活が続いているしこのままで良いのでは…?
「やっぱり師匠はすごいです…ところで師匠、つぶあんとこしあんどちらが好きですか?」
「こしあん」
いやいかん。俺はガラルを旅する生活に憧れていたんだ。俺は決意した。
「そうなのですか…私もこしあん派になりますね!」
「サイトウ!俺は決めたぞ!」
「ひゃっ!な…何をですか?」
「ポケモンを捕まえに行く!サイトウも着いて来てくれ!」
「…!師匠、ついにジムリーダーを継ぐ決心をしてくださったのですね!これで父も肩の荷が降りるというものです!」
何かものすごい勘違いをされている気がしないでもないが、旅にはポケモンが必須だ。ワイルドエリアに向かうことにした。
さてやって来たワイルドエリア。どんなポケモンを捕まえようか…。
「師匠は何のポケモンを捕まえるご予定ですか?ルカリオですか、ジャラランガですか?私のオススメはカイリキーです!」
何で候補がかくとうタイプばっかりなのかが気になるが、そういったポケモンたちも良い。
思えば異聞帯では新しいポケモンを捕まえようという試みはしていなかった。新しくポケモンのソフトを起動したような心持ちでなんだかワクワクする。
「よし、じゃあとりあえず色んなところを回ってみるか!」
「はい!」
「何でまたキテルグマに囲まれてるんだよ!!!」
「師匠、まだまだ来ます!」
何故かまたキテルグマの住処に迷い込んでしまったらしい。
「サイトウ!ポケモンは!?」
「はい!連れてきてないです!」
「なんでだよっ!!!」
意味が分からん。この子俺がいればどんなポケモンが来ても大丈夫とか思ってるんじゃないだろうか…。
「しょうがねえ、サイトウ!道を切り開くぞ、着いて来い!」
「はい、師匠!」
「お前…半年前の、ぬしか…その目の上の傷、覚えてるぜ」
「Guooo…」
「師匠…私、もう、限界です…」
「ああ、休んでろ。すぐにケリをつける」
キテルグマの謎の連携によって脱出を防がれた俺たちは結局全員倒すことになった。そして最後の一体。半年前に戦ったキテルグマのぬしである。
サイトウもよく戦ってくれた。やはりポケモン世界の住人である。幼いながらもかなりの力を有している。
「行くぜキテルグマ、毛皮の貯蔵は十分か――!!」
「Guoooooo!!!!!!」
「師匠、頑張ってください――!!!」
「ああ、キテルグマ。お前の言いたいことはわかってる。これから一緒に旅をしよう」
「Guoo」
「へへっ、何だよお前。案外良い奴なんだな。じゃあ、捕まえるぞ」
「うっ…殴り合いによって生まれる友情がここまで美しいとは…。特に最後の師匠自ら技術を捨てた殴り合いには不覚にもサイトウ、涙が零れました…!」
「おいおい、サイトウ。こんなところで泣いてちゃいけないぜ?まだまだポケモンたちを捕まえに行くんだから」
「はい、師匠…!
ふう…。何をしているんだろうか、俺。
結局この後もサイトウの案内に従ってポケモンを探していたらかくとうタイプとばかり出会って殴り合いによって捕獲するという流れが続いた。
「なあサイトウ、何でかくとうタイプばっか出会うんだ?」
「え?かくとうタイプのジムリーダーなんですからかくとうタイプを捕まえるのは当然じゃないんですか?」
なんかジムリーダーになって1年が経った。
「なあネズくん。俺、ジムリーダー止めて旅に出たいんだが」
「え…センパイ、何だかんだでバトルの時とか超ノリノリじゃないですか。去年のチャンピオンとの戦いの時とか本当に楽しそうでしたよ。
今年からジムリーダーになる俺なんかよりずっとジムリーダーに相応しいですよ。センパイのゴロンダとか本気でクールです」
去年俺は何故か流れでジムチャレンジに挑まされてそのままかくとう統一でチャンピオンカップに出場。
どうもダンデやらソニアやらルリナたちが挑む年と同じだったようで、チャンピオンカップの決勝戦でダンデと当たるもほぼかくとう統一の状態では勝てず敗北、そのままサイトウちゃんのお父さんからジムリーダーの座を引き継いだ。一体どこで道を間違えたのだろうか。
「大体俺一番好きなタイプっていったらでんきタイプなんだよね。次点ではがね。何でかくとうタイプのジムなんてやってるんだろう」
「それサイトウちゃんが聞いたらブチ切れますよ…」
この1年で大きくジムリーダーが変化した。
原作にいる今のメジャークラスのジムリーダーはキバナ、ネズ、ヤロー、ポプラ、メロンだ。カブさんは今マイナー落ちの時代でマクワはまだジムチャレンジに挑んで無いらしい。ルリナはまずはマイナーからスタート。10歳でチャンピオンになるダンデの方がおかしいのだ。オニオン君はわからなくてサイトウちゃんは何故か俺のジムのジムトレーナーを目指して今日も特訓している。
後10年弱でもすれば主人公たちの世代がやって来るだろう。
「うん。さっさとサイトウちゃんにジムリーダーを譲って旅に出よう」
「無理だと思いますけど…」
コイツ俺のこと舐めてんな。いざとなったら失踪してでも自由を手にしてみせる。
~番外編とはいえびっくりするぐらいFate要素無いのでポケモン用語解説~
・ガラル
ポケモンソードシールドの舞台。モデルはイギリス。リストラの件で発売前は相当アンチが多かったけれど発売後の評価はうなぎ登り。
作者はいつまでもバクフーンの登場を待ってます。
・ワイルドエリア
結構剣盾の象徴になっている。野生のポケモンがたくさんいるサファリゾーン的なとこ。
普通に危険なところであるということを作中でも匂わせており、断じて子供が1人で入るような場所ではない。
ストーリーを進めずにここで時間を潰した人は手を上げなさい。私です。
・ジムチャレンジ
これまた剣盾の象徴。今までの作品と違いスポーツの大会みたいな感じが強くなった。ジムリーダーについて結構掘り下げられてて嬉しい。この世界ではスポーツ選手的な感じなのであろう。
ぶっちゃけ小説書くにはこういう風に設定の描写があった方がありがたい。
・メジャークラス
剣盾のジムリーダーはメジャーとマイナーの二つのクラスに分けられる。ジムチャレンジにジムリーダーとして参加するのはメジャーである。結構シビアな設定であり、負けが込むとマイナーに落とされたりする。
剣盾の片方でしか出ないジムリーダーはもう片方ではマイナーに落ちていると考えられる。
昔のメジャーかマイナーかというのだったりジムリーダーのジムチャレンジ挑戦時期だったりは捏造です。ダンデ・ソニア・ルリナが同世代ということしかわからんよ…。
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さむらいのおんがえし
タイトルが思いつかなくなってきました。
たまには主人公の気分を味わおうとダンジョンも踏破してみることにした。
「森の中を歩くのって結構気分が良いな」
「はい!ここはセレビィの守護領域なのでその影響もあるのでしょうね。また挨拶に行きますか?」
今俺たちがいるのはウバメの森。セレビィに関わるほこらがある森だ。
「そうだな。セレビィの力についても知りたいし、会いに行こうか」
セレビィ。時の神様なんて言われてたりもするまぼろしのポケモンだ。実際時間を自由に渡れるようでその力は計り知れないものがある。
会っておいて損は無いだろう。ほこらを目指して歩いていく。
すると、見覚えのある人物と出会った。
「佐々木小次郎…?」
「げ」
「おやおや、これはカイ殿にミュウ殿ではござらんか」
つい先日出会った佐々木小次郎がいた。
「この森なんぞには何用で?」
「ちょっとした冒険と後は神様にご挨拶だな」
そう言うと、小次郎は難しい顔をして悩み込む。
「…それは流石に見過ごせませぬな。一つ恩があるとはいえ、拙者も抑止より遣わされた身。着いて行って宜しいかな?」
なんだかよくわからないことを言っているが本人が言うように一応貸しがある。警戒さえしておけば大丈夫だろう。
「別に良いぞ」
「…中々自信があるのですなあ。いや、それよりも度胸と言うべきであろうか…?」
「おー、結構虫ポケモンが多いな。ちょっと鬱陶しい」
「ますたー、バリアを張りましょうか?」
「いや、良いよ。これも醍醐味の一つだ」
「ははは、カイ殿はこういった所を歩く経験は少ないようでござるな」
小次郎はやはり気安いところがある。ミュウを間に挟んでいるとはいえ、随分距離が近く感じる。
「ああ。クリプターになる前はひたすらどこかに篭って研究していたからな。外に出ることすら珍しかったんだ」
前世まで遡っても山や森に入った記憶は少ない。インドア派だったのだ。
「ふうむ、拙者は山で育った故こういった所の方がむしろ落ち着くのであるが…」
そういえばそうだった。小次郎は心身ともにYAMA育ちみたいなことを言われている。
「おっと。この木が随分邪魔だな」
恐らくゲームだといあいぎりで切れるような木なのだろう。
「こういうところを頑張って通るのも醍醐味よ。ほら、こういう風に」
小次郎はひょいひょいと飛んでいく。まあ現実だと完全に道を閉ざす木なんて無いよな…。案外融通が利くものだ。
そこから少し歩くとすぐにほこらに着いた。
「セレビィ殿!セレビィ殿ー!」
なんと。小次郎はセレビィと知り合いだったのか。
ミュウと俺が驚いていると、急速な魔力の高まりと共に目の前の空間がゆがみ始める。
「…やって来て、しまったのですね」
空間のゆがみから現れたのは神というよりかは妖精という外見をしたポケモン。
時を自在に渡る幻、セレビィが現れた。
「やあ、セレビィ。俺のことは知っているかな?カイというんだが」
「無論、知っています」
「ますたー」
「それなら手間が省けて良い。今日は顔合わせみたいなもので特に用は無いんだが…」
「ええ、構いませんよ。むしろ用があるのはこちらなのですから」
「ますたー」
「何だよミュウ、今俺はセレビィと…」
「ますたー!!」
ミュウが大声を出すと共に俺を一歩後ろへ引き寄せる。
元々俺がいた場所の地面から鋭い蔦のようなものが生えてきた。掠ったその蔦は俺の肌を浅く切り裂く。
「ますたー!わからないのですか!?あの子は、セレビィは、
その言葉にセレビィを見ると、紛れもない敵意を感じる。
…油断があった。てっきりこの世界の住人は全てこちらに味方するものだと思い込んでいた。
「セレビィ!何故、ますたーに危害を加えるのです!あなたがますたーを攻撃する理由は無いはずです!今の世界の状況を知らぬあなたでは無いでしょう!」
セレビィはこちらを冷たい目で見下したまま口を開く。
「ええ。私もマスターを、世界を守りたいです。しかし、抑止に関わって世界を運営する身としては敵対せざるを得ません」
セレビィの魔力が急速に高まっていく。
神霊級を通り越す、これは間違えようもない、神の権能――!!
「あなた方がこの森に入って来なければこうなることも無かったというのに…本当に残念です」
視界が歪んで体が浮くような感覚と共に、一瞬で意識が消失する。
「さようなら、マスター。もう二度と、出会いませんように」
そこは、真っ白な空間であった。そこに在ったのは、俺と、真っ黒で醜悪な化け物と、何故かいる佐々木小次郎のみであった。
「む…セレビィ殿、拙者も一緒に飛ばしてしまわれたか…」
「なっ…小次郎、ここは何処だ!?どうなってる!?」
「カイ殿、そんな事を言っている場合かな?」
「■■■―――!!!!!!」
巨躯の化け物がこちらへ襲い掛かって来る。慌てて突進を躱し、ポケモンを出そうと腰に手をかける。
「――ボールが、無い…!?」
手持ちの入ったボールがどこにも見当たらないのだ。道具の入っていたバッグすら無くなっている。
「ふうむ、そこはきっちりとしているのでござるか…」
小次郎が何か言っているがそんなことを気にしている余裕は無い。
目の前の怪物は昔散々作った
「くそっ、こいつには勝てねえ…!」
見ればわかる。無理だ。大体俺はミュウと行動を共にしている時は基本油断している。
魔術の準備も碌にしていない。
恐らくこの仮称黒キメラは幻獣クラスの存在。俺の力ではまず勝てない。
ミュウを令呪で呼び寄せるというのも無理だろう。恐らくこの空間はセレビィが作り出したもの。時空間の隔たりを超える程の力は令呪には無い。
「■■―――――――!!!!!!」
「ガッ…!!」
体が生物としての形を取っていないため動きが読めない。爪のようなもので体が引き裂かれる。
血が噴き出す。返しに一撃入れるが少しのけ反らせて距離を取るだけの結果に終わる。
「ハー…ハァー…ゲホッ」
血が喉に絡まって気持ち悪い。しかも先程の一撃には呪いのようなものも込められていたようだ。本当にどんな生物なんだか…。
「はは…冗談、だろ…」
命が早速一つ消え、予備の命が宿り、体が回復して行く。この生物の情報は少しは手に入ったが、まるで勝ち目が無い。
「ふむう…拙者を送ったのは確実に殺せという意味であうが、カイ殿には一応恩もあり一体どうすればよいものか…。む。良い案が思いついたでござる」
軽く絶望していると小次郎がこちらに寄って来る。小次郎までも敵に回ったら本当に不味い。
大令呪をこんなところで使うのはものすごく嫌なのだが、使うしかないのか…?
「行くでござるよ、エンテイ」
驚きの名前と共に現れたのはほのおの準伝説ポケモン、エンテイ。
小次郎のポケモンはエンテイだったのか…!
「人の英霊よ。我が敵はどちらだ?」
「あの黒いやつだ。倒せるか?」
「フン。舐めるなよ英霊」
そう言うと同時、エンテイが灼熱の炎を黒キメラに向かって放つ。
黒キメラはその口?のようなもので炎を飲み込もうとするも、一瞬で塵と成り果てた。
「感謝するでござる、エンテイ。戻れ」
またエンテイは小次郎の持つボールに入っていった。
「…助けて、くれたのか?」
「まあおぬしもわかっているように一応借りがあったからなあ。裏切りにならん程度に助けたまでのことよ」
あの時奢った自分をめちゃくちゃ褒めてやりたい。
「それでは元の世界に戻るでござるよ」
そう言うと、また視界が歪んで、今度は町のような場所に出てきた。
「ここは…」
下を見ると、俺のバッグと手持ちのポケモンたちもいる。
「ここはヒワダタウンでござるよ。拙者はセレビィ殿の加護を受けていて権能を一部扱えるのでござる。スキルで言うなら…『時神の加護 EX』といったところであろうかな」
なんと。ますます小次郎が厄介な者になってくる。
「まあこれで貸し借り無しということだ。次に出会った時は問答無用で斬りかかるぞ」
…今回の出来事はいずれ起こったことであろう。小次郎が一緒に居てくれたのは幸運というしかない。
「ああ。今回はありがとう」
「それでは、これで私と貴様は敵同士よ」
小次郎は瞬く間に去って行った。すると、今度は別の気配がこちらにやってくるのを感じる。
「ますたー!!ご無事でしたか!!!」
ミュウだ。久々に本来の姿を見た気がするが、そんな事よりひどくボロボロになっている。
「おい、どうしたんだその傷は…」
「すみません、セレビィ相手に手間取りました。アレは本体の力こそ私より下ですが、何分権能によって呼び寄せてくる増援が厄介でして…アルセウスもどきにしてやられました。
ますたーこそご無事で良かった…時渡りの権能は『へんしん』しても一部をコピーするのが限界でして…」
なるほど。本当に先程は危機だったのだろう。
「それで、セレビィは?」
「…すみません、ますたーが戻って来たのを感知して戦闘を投げ出して馳せ参じました。
無論、倒して来いというのなら今すぐ戻って倒して来ますが…」
「いや、いい。ミュウこそ無事で良かったよ」
こうして追って来てないというのならセレビィも森の外でまで戦う気は無いということなのだろう。
「はい。アレの領域下であったからこそ後れをとりましたが、外であれば私が勝つでしょう。それを理解して追って来ないのだと思われます」
それは幸いだ。しかし、セレビィが敵だというのは本当に予想外だ。
今度戦う時には小次郎とエンテイも敵に回る。もっと戦力を持ってこなければいけない。
そんなことを考えてると、また莫大な魔力の高まりを感じる。
「これは…パルキア…!?いえ、恐らくセレビィが喚び出した
パルキアだと…冗談じゃない。一体何をする気なのか。
ウバメの森を眺めていると、森の周りの空間が歪んでいく。
「…!やられました…!」
ミュウが焦ったように呟く。
「どういうことだ!?何が起こっている!?」
「恐らくセレビィはパルキアと自身の力を用いてこの森を
…しまった。恐らくあそこを汎人類史側の拠点にでもするつもりなのだろう。
最終的にカルデアに負けるのが俺の目標ではあるが、カルデア無しで世界を滅ぼす力を持つポケモンもこの世界にはたくさんいる。ここまで完全に敵対されると流石に見逃せない。
急いで他のサーヴァントや伝説たちと接触をしなければいけない。
「…完全に時空間が断絶されました。もうあそこに侵入するのは私の力では無理でしょう」
「わかった。今日はもうミュウは休め。これからの作戦は考えておく」
「はい…すみません、少し休ませてもらいます…」
そう言うとすぐにミュウは霊体化する。本当にセレビィとの戦いは死闘だったのだろう。
ミュウにはああ言ったが、作戦はこれまでと変わらない。戦力を集めてカルデアの到着を待つだけだ。ただ、少し必死になる必要が出てきたが。
まあ、それはそれとしてミカンちゃんとの約束もあるしジムバッジ集めも続けるが。
~ちょっとずつ展開を進めていくけど原作に追いつくのは怖いため本当にゆっくり進める小説のポケモン用語解説~
・セレビィ
たまねぎの神様。何か時間を自由に動けるらしいっすよ。
時の神様なんて呼ばれてたりするので今作では権能持ちの神扱いとした。
・エンテイ
唯一神。ジョウトを駆け回る準伝説の1匹。本当にあれを捕まえる作業は辛かった…。
火事で死んだ後ホウオウに蘇生してもらったという伝説を持つ。
・パルキア
相棒と合わせてシンオウの伝説たちのチートっぷりを象徴するポケモン。
何か空間を自由に操れるらしいですよ。意味わかんねえ。
タイプも優秀なドラゴン・みずと強い。伝説らしく普通に強いポケモン。
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ポケモンたろう
難産でした。短めです。
―――ヒワダタウン某所にて。
「ふむふむ、それでその緑色の妖精のようなポケモンと着物姿の男が出てきた後気付いたら森の外にいたと…」
「ああ」
俺は今、ヒワダジムジムリーダーであるツクシに取り調べを受けている。流石に仕事場をウバメの森としている人たちもいる中進入不可能になったら動かないわけにはいかないだろう。
俺はクリプターとしての事情はナツメなどといった協力を要請する人間以外には話すつもりは無いため伏せている。
そしてついでにセレビィと小次郎のことも伝えた。もしポケモンリーグがセレビィたちと敵対すれば万々歳だ。セレビィたちの戦力は凄まじいものがあるが、ポケモンリーグも劣らないものがある。その実力は俺もまだ把握しきれていない。
「まあ君はマツバさんからバッジも受け取っているし信用できる人間なんだろうから…うん。とりあえずはこんな所で良いかな。ご協力どうもありがとう」
これで取り調べは終わったらしい。ならば早速ジム戦を挑みたいものだ。
「…え?ああ、ジム戦かあ…いや実はね、これから森の調査に向かうメンバーの隊長なんだ。ちょっと今は対応できないかな…。そもそもここのジムリーダーに僕が就任したのだって君の言う精霊、まぼろしのポケモンであるセレビィに万が一の時戦う相手として選ばれたのがむしタイプの使い手である僕だからなんだよ。セレビィのタイプはくさ・エスパーだからね。
まあその万が一が来たってことなんだろうけどさあ…気が重いよ」
「ならば今は挑むことが出来ないのか」
「うーん…確かにそれは申し訳ないなあ…あ!こういう時こそガンテツさんの出番だね」
「ガンテツ…?」
ガンテツというとぼんぐりからボールを作るボール職人のことだろうか。ガンテツが作るボールはいわゆるオシャボというやつで見た目やエフェクトが良いといった理由で好む人が多い。
俺はオシャボ厳選勢では無いものの、すごい人間ということはわかる。
「うん。この街にはガンテツさんっていうすごいボール職人さんがいるんだけどね、この街のジムリーダーとは深い関わりがあって今でもお世話になっているんだ。
それで先代が今みたいにジムを開けなくなった時の代理をガンテツさんにお願いしたことがあってね。彼はトレーナーの実力を見極めることに関してはかなりの凄腕でね。僕は今までお願いしたことは無かったんだけど…悪いね、ガンテツさんの所に行ってもらえるかな?
あ、結構気難しい人だから気を付けてね」
「わかった」
しょうがない。ガンテツのところに向かわせてもらおう。
「あぁ!?ジム戦じゃとお!?儂は今デカい仕事が入って忙しいん…じゃ、と…」
ガンテツのところへ向かうと突然怒鳴られるも、何故かまじまじと見つめられる。
「…お前さん、かなりのトレーナーじゃな。ふうむ…ならば、儂の頼みを聞いてくれればバッジをやろう」
「頼み?」
何の頼みだろうか。
「今請け負っておる仕事の材料が足りんくってな…本来依頼人に材料を集めさせるんじゃがそいつが材料の片割れを集めるので必死だと言うんじゃ。
儂も今回請け負った仕事は個人的にやりたくなっておるもんでな…。設計図を見るにかなり希少なとりポケモンのはねが必要なんじゃ。それもほのおに類するヤツの。じゃからそんなポケモンの羽根を適当に集めてきてくれんか?
無理ならまあ素直にツクシが帰ってくるのを待つんじゃな」
そう言われてしまうと弱い。別にジムバッジ集めは急ぎの要件でも無いし後に回しても良いのだが…正直簡単に依頼を達成できる方法が浮かんでいる。
「わかった。すぐに持って来よう」
ガンテツの家を出て裏の森に入る。
「ミュウ。ホウオウの羽根を作ってくれ」
「あ…はい。これで良いですか?確かにホウオウの羽根を上回る材料なんてそうそう無いでしょうけど…」
やはりミュウは便利過ぎる。ガンテツが欲しがっているポケモンが何かはわからないがホウオウの羽根に勝る材料は無いだろう。というか俺も研究のために欲しい。
ガンテツの家へ戻ってホウオウの羽根を差し出す。
「これでいいか?」
「む。お前さん、本当にすぐ戻ってきたな。どれどれ……む。むむむ。おお!まさしくこれならピッタリじゃ!」
むしメガネを取り出してホウオウの羽根をジロジロと見ると歓喜の声をあげる。
「おお、なんじゃ!依頼主も儂も頭を悩ませておった問題がこんなにもあっさりと解決するとはな!ええぞ、バッジなんぞ持っていけ!なんならこの仕事が終わったあとならお前さんのためにボールも作ってやるわ!」
ガンテツは歓喜に震えている。今の所ボールは欲していないがまあコネができて悪いことは無いだろう。
もうこの街に用は無い。さっさと出ていくことにしよう。
「それじゃあまた。ボールが欲しくなったらまた来るよ」
「おう!今回の件は感謝するぞ!」
「ガンテツ!スマン、やはり片割れの羽根を手に入れることは難しそうじゃ…」
「おお、信長!安心せい、つい先程何とかなったわい!これでお前さんの言うGSボールとやらも完成するわ!」
「なんと!流石じゃな、ガンテツ。これでルギアを捕まえたワシの苦労も報われるというものよ!」
誰かが力をつける間、他の誰かが力をつけないという保証はどこにもない。
~ハイパーボールはオシャボに入ると思っているのでポケモン用語解説~
・ウバメの森
ゲーム中でもカモネギと一緒に働いている描写が見られる。
途中のカモネギを捕まえるイベントは普通に難しかった記憶がある。
・ポケモンリーグ
この周りの設定は捏造します。殿堂入りってどういう概念なんでかね…?
・オシャボ
オシャレなボール。見た目とかエフェクトがオシャレ。その多くはガンテツの手によって作られている。
・GSボール
謎のボール。何故かロックがかかっていて使えない。その詳細は不明である。
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