幽霊に呼吸を習いました (星天さん)
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蘇る日の呼吸
プロローグ


出会いと修行パートに分けて投稿し直す事にしました。


ある春の日の夜......。

寝付きが悪かった俺は部屋を出て縁側の方に行き腰掛けていた。空を見上げるとそこには真ん丸の綺麗な満月が光を照らしながら浮かんでいた。

 

「眠れないのかい亮壱?」

 

しばらく満月を眺めていると隣にお盆の上に湯呑みを乗せたお祖母様が立っていた。

 

「はい、少し寝付けなくて月を見ていました」

 

「そうかい。お茶を持ってきたから飲みなさい」

 

お祖母様から湯呑みを受け取り、湯呑みに入った温かいお茶を一口飲んだ。

春とはいえ、夜は少し肌寒くお祖母様が入れてくれたお茶が冷えた体の温度を上げホッと一息が溢れ出た。

 

「少し肌寒かったので丁度良かったです。ありがとうございますお祖母様」

 

「ふふ、それは良かった。春とはいえまだ冷えるからちゃんと暖かくして寝るんだよ?それじゃ、婆はもう寝ますね」

 

「はい、おやすみなさいお祖母様」

 

お祖母様は自分の部屋に戻り、俺は縁側から動かずにしばらく月を眺めながらお茶を飲んでいた時だった...。

 

♪〜♪〜♪〜

 

突然、何処からか笛の音が聞こえてきた。

その笛の音は時々音を外す時があるが何か惹き付けるような音色だった。

俺はその笛の音は誰が吹いているのか気になりお祖母様を起こさないように草履を履き、藤の花の御守りを持って屋敷を出て音色の場所へと向かった。

 

♪〜♪〜♪〜

 

笛の音を頼りに走り続けいると近所にある桜が満開に咲きほこる場所に辿り着いた。

この近くで笛の音が聞こえ辺りを見回して探してみると周りの桜と比べ一際大きく満開に咲きほこっている桜の木の下に男が立っていた。

桜の木の下立っていた男を見ているとこちらに気付いたようで話しかけて来た。

 

『私が見えているのか?』

 

「はい、見えてますよ?俺はその笛の音を聞いて此処に来たんです」

 

『そうか見えているのか.....私はお前とは違い生きている者では無い』

 

男は自分の足元を指さして見るようにと言い、足元を見ると透けていた。

目の前にいる男は継国縁壱と言う名で戦国時代に亡くなったと言っていた。

最初は少しだけ驚いたが直ぐに驚きは引っ込み継国縁壱さんの事が気になり色々と話を聞かせてもらった。

継国縁壱さんは元鬼殺隊で全ての始まりの呼吸『日の呼吸』を編み出した凄い人だったり、兄が鬼になったりと色々語ってくれた。

 

「もし、よろしければ縁壱さんが心残りにしている事を俺に託してくれませんか?」

 

『亮壱?』

 

「俺は拾ってくれた祖母の為に夜脅えることの無い鬼の居ない平和な世界にしたいと思っているんです。祖母にはしっかり話して鬼殺隊に入る許可をもらったので明日、育手を紹介してもらおうと思っていたんです。それで今日貴方と話して思いを受け継ぎ...」

 

『日の呼吸を教えて欲しいと』

 

「はい!」

 

縁壱さんは自分が大層な人では無いとか言って渋っていたが何度もお願いをしていたら了承してくれた。

 

『教えるからには生半可には教えずに厳しく教えるつもりだが覚悟はいいか?』

 

「はい師範!」

 

明日から始まる修行に胸を躍らせ屋敷へと帰った。




読んでいただきありがとうございます!


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修行の日々

師範との修行は朝の走り込みから始まる。

走り込みの時間は、早朝五時から昼十二時までの七時間を休まずに全集中の呼吸を常に持続させ、途切らせること無く走り続けた。

失敗すれば師範に木の棒で腹に突きをお見舞されていた。

全集中の呼吸をしながらする走り込みが終わると、お祖母様が作ってくれた昼餉を食べる為に一時間休憩をもらい休憩が終わると次はまた全集中の呼吸を常にしながら木刀素振りを5000回して、夜は修行を行わずに師範から何処が駄目だったとか指摘してもらってから眠った。

最初の頃素振りは最高でも1500回だったのだが、全集中の呼吸の持続時間が伸びてから段々と素振りの回数も増えていた。

その修行を2年行い、今では七時間走っても息切れや汗をかくこと無く立っていられるようになり、素振りは10000回を一時間以内で出来るようになっていた。

それだけでは無く、表情は師範と同じく無表情になり、額には師範と同じ痣が現れたり人や物が透けて見えるようになり、この間、走り込みをしていた時、凛々しく美しい女性とすれ違った時に肺に何かが見えて病院に行くように言ったりと他人の健康状態も分かるようになった。

 

『この2年よく頑張ったな亮壱』

 

「ありがとうございます.....」

 

『これからお前に日の呼吸を教える。しっかり覚えてくれ』

 

「分かりました師範...」

 

師範から体力や全集中の呼吸を長時間維持出来ている事が認められ、遂に日の呼吸を伝授してくれると言ってくれた。

そして師範は木刀を構えて日の呼吸の型を一つ一つ見せてくれた。

師範が繰り出した型は鮮やかで力強くそれで優雅に見せ俺は一時も目を離さずに型の一つ一つを目に焼き付けていた。

 

 

壱ノ型 円舞(えんぶ)

 

弐ノ型 碧羅の天(へきらのてん)

 

参ノ型 烈日紅鏡(れつじつこうきょう)

 

肆ノ型 灼骨炎陽(しゃっこつえんよう)

 

伍ノ型 陽華突(ようかとつ)

 

陸ノ型 日暈の龍(にちうんのりゅう) 頭舞い(かぶりまい)

 

漆ノ型 斜陽転身(しゃようてんしん)

 

捌ノ型 飛輪陽炎(ひりんかげろう)

 

玖ノ型 輝輝恩光(ききおんこう)

 

拾ノ型 火車(かしゃ)

 

拾壱ノ型 幻日虹(げんにちこう)

 

拾弐ノ型 炎舞(えんぶ)

 

それぞれの型の名前を教えながら見せてくれた師範は木刀を下げて俺の方を見た。

 

『そしてこれが日の呼吸拾参ノ型......円環だ』

 

師範は木刀を再び構えると拾参ノ型を始めた。

師範が見せてくれている拾参ノ型は壱ノ型・円舞から拾弐ノ型・炎舞までの型を連続して繋げることが出来て拾参ノ型になると言った。

 

『亮壱。壱ノ型から拾弐の型、そして拾参ノ型・円環を午前12時から夜明けまで繋ぎ続ける事が出来き、ものにすれば卒業だ』

 

「分かりました師範。今教えてもらった型を必ずものにしてみせます」

 

俺は師範にそう宣言をした。




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日輪の後継者

主人公:(さかき) 亮壱(りょういち)

年齢:修行前 12歳 | 修行後 15歳

呼吸:日の呼吸

※炭治郎より三つ歳上

誕生日:7月9日


師範に宣言してから3年の月日が流れた。

師範に出会ってから3年間、師範が課した数々の修行を全てこなし、俺は師範が生前に使っていたと言う【日の呼吸】を使いこなせるようになった。

【日の呼吸】が使える様になった俺は、師範と初めて出会った頃と同じ満開に桜が咲きほこり満月の光が照らしている日の午前12時に俺は師範と対峙していた。

 

『この3年の成果を見せてくれ亮壱』

 

「分かりました師範」

 

木刀を抜き、肺いっぱいに空気を取り込み、肉体に何度も何度も叩き込んで覚えた日の呼吸の型を壱ノ型・円舞から拾弐ノ型・炎舞の全ての型を、一つ一つ繰り出して師範に見せた。

 

『壱ノ型から拾弐ノ型は合格だ亮壱』

 

「ありがとうございます師範」

 

師範から合格を言い渡され、あまり動かせなくなった表情を少し動かしながら、合格を貰えた事に心の奥底から喜んだ。

師範に壱ノ型から拾弐ノ型を認められ、遂に夜明けまで壱ノ型から拾弐ノ型を長時間繰り出す拾参ノ型・円環を見せる番になった。

 

「始めます師範.....」

 

俺は呼吸を整え、木刀を握り、軽く目を閉じ神経を集中させた。集中力を高めた俺は肺いっぱいに空気を取り込み、壱ノ型から拾弐ノ型を止まることなく繰り出した。

 

 

榊亮壱と言う少年はとても不思議な少年だと初めて出会った時にそう思った。

私はこの世を生きる生者では無いと伝えた時は少し驚いた表情をしていたが直ぐに表情が変わって私に興味があると言い色々と尋ねてきた。

尋ねてきた事に全て答えると次は自分の話を私に語り始めた。

亮壱は8歳の頃に親に捨てられ藤の家の者に拾われて住まわせてもらっていると引き攣った顔をして言っていた。

亮壱が自分の話を終わらせると真っ直ぐ私の目を見て私の未練を代わりにはらそうと言い出したのだ。

 

『何故会って間も無い他人に対してそう出来る?』

 

「それは俺がしてもらったからですよ。薄汚れていて赤の他人なのに拾ってくれたお祖母様がそうしてくれたように俺もそうしようと思ったからです」

 

その時の亮壱の目は今まで見てきたものよりも綺麗で美しかった。

そして私は亮壱に私の全てを教え込んだ。

亮壱は呑み込みが早く私が昨晩に指摘したものは翌日になったら改善されていたり動きが格段に良くなったり亮壱のどんどんと成長していく姿は見ていて楽しかった。

そして今夜は亮壱と出会って丁度三年目で卒業の日だ。

今目の前で亮壱は日の呼吸拾参ノ型・円環を夜明けまで途切らせずにやり遂げる課題を課した。

 

『合格だ亮壱...』

 

亮壱は見事に日の呼吸拾参ノ型・円環を日が登るまでやり切ったのだ。

 

 

師範が見ている前で拾参の型・円環を無我夢中でやり続けて何百何千と技を繰り出していると、暖かな太陽の光を感じ始めた。

 

『合格だ亮壱...』

 

師範から合格を言い渡された俺は円環を止め、木刀を下ろして周りを見ると、東から太陽が登ってきて、円環を始める前の夜空が徐々に明るくなっていた。汗を大量にかいている俺は、汗を手拭いで拭いながら師範のいる方に目を向けると、師範は嬉しそうに優しい表情をして労いの言葉をくれた…。

師範の労いの言葉に俺は、数々の辛い修行が身を結んだと思い、嬉しくて自然と瞳から涙が溢れ出てきた。

 

『よく頑張った亮壱』

 

「ありがとうございます師範...」

 

嬉しくて泣いていた俺は師範に三年間修行に付き合ってくれたお礼を言うとお日様の様に温かい手が俺の頭に触れた。

 

 

亮壱に合格を言い渡した瞬間だった、亮壱は綺麗な瞳から涙が溢れ出て静かに泣いていた。

悲しくて泣いているのかと聞くと私に認められた事に嬉しくて泣いていると言った。

それを聞いた時、亮壱を愛おしいと子を持つ親の気持ちを理解した私は人に亮壱に触れられないと分かっていても亮壱の頭に手を伸ばした時──触れる事が出来た。

 

『よく頑張った亮壱。もう私から教える事は何も無い、最終選別を受けて鬼殺隊士になり私の未練とこれからの未来をよろしく頼む』

 

私は労いの言葉を亮壱にかけながら触れられた頭を優しく撫でた。

 

『もし、日輪の耳飾りをした者に出会った時に手助けをして欲しい。その者は亮壱と同じ様に託したものだから』

 

「分かりました師範!」

 

 

「分かりました師範!」

 

師範は労いの言葉をかけながら俺の頭を優しく撫でて俺に色々と託してからスっと何処かに消えてしまった。

師範から託された思いを胸に3日後に行われる最終選別に向けてどう準備するかと考えながらお祖母様が待つ屋敷へと戻った。

 




読んでいただきありがとうございますm(_ _)m


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日輪の恐怖

親に捨てられ身寄りの無い主人公を救ってくれたのは、あの藤の家のマッハ婆さんです!


最終選別当日の早朝...。

日が登ってきたと同時に目が覚めた俺は最終選別に向かう為の身支度を始めた。

 

「おはよう亮壱」

 

「おはようございますお祖母様.....」

 

最終選別への身支度を済ませ、あとは鬼を倒す唯一の武器『日輪刀』はどうやって入手すればいいのかと考えているとお祖母様が細長い物を包んだ紫色の風呂敷を持って部屋に入ってきた。

 

「お祖母様、その風呂敷は一体なんですか?」

 

「これは私の夫が生前使っていた物だよ」

 

お祖母様はそう言いながら手に持っていた風呂敷を床に起き広げて包んでいた物を見せてくれた。

紫色の風呂敷で包んでいた物は鞘に納まっている一本の刀だった。

 

「私の夫は元鬼狩りだったんです。私の夫、生きていれば亮壱にとってはお祖父様だった人の日輪刀です」

 

「大事なお祖父様の形見を何故俺に持ってきたんですかお祖母様」

 

「これを最終選別へ行く亮壱に託したくて持ってきました」

 

「お祖父様の形見.....抜いてみてもいいですか?」

 

「どうぞ」

 

お祖母様から許可を貰い刀を鞘から抜くと刀身は普通の刀と同じ色だった。

鬼殺隊についてお祖母様から少し教わった時に日輪刀は別名、色変わりの刀と呼ばれているのだと聞いた。

だが、お祖父様が使っていた日輪刀に色がなかった。

お祖母様がお祖父様は呼吸の適正が無かったらしい、呼吸の適正がないと言われたお祖父様はそれでも諦めずに鬼殺隊に入り命尽きるまで鬼を狩っていたそうだ。

 

「その日輪刀は今日の為に使えるように打ち直してもらいました。あの人の想いも一緒に持って行って欲しい」

 

「分かりましたお祖母様。この刀有難く使わせていただきます」

 

改めてお祖母様から授かった日輪刀を握ると刀身の色が徐々に黒く染まっていき黒い刀身へと色が変わった。

これで全ての支度を終えた俺はお祖母様からお小遣いを貰ったり、最終選別場所である藤襲山までの道や街を通る際に日輪刀を見られないように隠し方を教えてもらった。

 

「それではお祖母様。行ってきます」

 

「行ってらっしゃい亮壱」

 

お祖母様は門の外まで見送りに来てくれ切り火で俺の無事を祈りながら見送ってくれた。

 

 

満月が暗い夜道を明るく照らしている夜に私は大事な二人の妹、しのぶとカナヲに行ってきますと言ってから蝶屋敷を出て花柱である私が管轄している地域の見回りをしていた。

 

「やあ!今日はとても良い夜だね!」

 

見回りをしている私の前に現れた白橡色の髪に虹色がかった瞳の屈託のない笑みを浮かべている男がまるで旧知の知り合いの様に話しかけて来た。

そして...その瞳には上弦ノ弐と書かれていた。

 

「俺の名前は童磨!可愛い君の名前を教えてよ!」

 

「上弦ノ弐に教える名前は持ち合わせてないわ」

 

私は日輪刀を抜き構えて上弦ノ弐の一つ一つの動きに警戒をしていた。

 

「へぇ〜、君、僕と戦うつもりなの?」

 

「私は柱として貴方を逃がす訳にはいかないもの」

 

「こんなに可愛いのに柱なんて凄いね!でも...俺には勝てないよ?」

 

上弦ノ弐が手に持っている扇を構えた瞬間に今まで戦ってきた鬼では感じた事がなかった緊張感がはしった。

先手必勝と上弦ノ弐へ攻撃を仕掛けようと一歩動いた瞬間...

 

「うん!凄く可愛いね!」

 

上弦ノ弐が何時の間にか目の前に接近されていた。

 

「花の呼吸弐ノ型・御影梅!」

 

接近してきた上弦ノ弐を倒そうと技を繰り出したが──

 

ガキィン!!

 

私の刀は上弦ノ弐が持っていた扇によって受け止められてしまった。

私の攻撃を受け止めた扇はただの扇では無く鉄で作られているものだと理解した。

 

「花の呼吸か〜可愛い君にはピッタリの呼吸だね!」

 

ザシュッ!!

 

上弦ノ弐は笑顔でそう言いながら鉄扇で素早い攻撃を放ち私は防ぐ事も出来ずに斬られ血を流し後ろに吹っ飛び仰向けに倒れた。

 

「ごめんね?痛かったよね?でも大丈夫!直ぐにその苦しみから救ってあげるから!」

 

「結構です。それに貴方には救われたくないわ!」

 

私は刀を地面に刺して杖の様にして立ち上がり再び構えた。

正直、目の前にいる上弦ノ弐には勝てないと分かっていても柱として責務を全うしなければならない。

余裕そうに笑っている上弦ノ弐に一太刀浴びせようと走り出し、花の呼吸を繰り出そうとした時だった。

 

「ゲホ!!ゲホ!!」

 

肺に違和感を感じ咳き込むと血を吐き出していた。

 

「あ!言い忘れてたけど俺の血鬼術は氷なんだよね!君が俺の方に来る前、血鬼術使ったからそのせいで血を吐いてるんだよ、俺の前で呼吸は使わない方がいいよ?って言っても遅いよね!」

 

呼吸も使う事が出来ず肺を血鬼術でやられ地面に膝を付き血を吐いている満身創痍の私にもう戦える力と戦う術を失った私は上弦ノ弐が殺しにくるのをただただ待っているしか無かった。

 

「哀れな君を救ってあげるね...」

 

上弦ノ弐が私に手を伸ばした時だった...。

上弦ノ弐は私に手を伸ばしていた手を引っ込めて勢いよく後ろへと下がっていた。

 

 

勝てないのに俺に向かってきた哀れな可愛い女の子を救ってあげようとした時だった。

俺が女の子を救ってあげようと触れた瞬間に首が斬られて飛んで行く様な映像が見えた。

その映像が見えた瞬間に後ろに飛び女の子から距離を開けて前を見ると女の子の後ろから腰に刀を提げてこちらに向かってくる額に黒死牟殿と似ている痣を持つ少年が居た。

さっきの首を斬られた映像は何かの勘違いだろうと決めて少年と女の子のやり取りを見ていた。

 

 

最終選別へ向かっている途中で妙な気配を感じてその場へ来てみたら屈託のない笑みを浮かべている男と血を吐き倒れている女性が目に入った。

屈託のない笑みを浮かべている男が女性に触れようと手を伸ばしていた時、殺気を飛ばすと男は焦ったように後ろへ飛んで距離をとった。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ...なたは?」

 

「榊亮壱と申します。最終選別へ行こうとしていたら妙な気配を感じたので此処にやって来ました」

 

「隊士じゃ...無い...の?」

 

まだ隊士では無いと答えると女性は血混ざりの咳をしながら直ぐに逃げるようにと言ってきたが、男として満身創痍で苦しんでいる女性を放って置ける訳が無く日輪刀を抜いた。

 

 

「そこを退いてくれないかな?俺は今からその哀れで可愛い女の子を救ってあげないといけないんだ!」

 

「哀れ?」

 

童磨がカナエを哀れとそう言った時、亮壱は怪訝な顔をして言葉の真意を聞いた。

 

「だって勝てもしないのに俺に向かって来て、今じゃ苦しそうに血を吐いて倒れてるんだよ?哀れで可哀想だから俺が救ってあげないといけないんだ!」

 

「そうか...」

 

ダッ!!ザシュッ!!

 

童磨が笑顔で亮壱に言った時だった、亮壱は誰も目に追えない速さで一瞬で童磨に近づき右腕を根元から切り落とした。

童磨の腕を切り落とした亮壱の刀は赫く色が変わっていた。

 

「びっくりしたよ!凄く速いね君!でも、腕を斬り落としても直ぐに再生するんだよね!」

 

亮壱の動きに驚きはしたが斬り落とされたのは腕だからと甘く見ていた童磨に動揺がはしった。

 

「う、腕が再生しない?」

 

「どうした?焦っているのか?さっきまでの屈託のない笑みが消えているぞ?」

 

童磨は何とも言えない恐怖を感じ距離を置こうと動いた瞬間に亮壱は残りの左腕、両足を斬り落とし、童磨を達磨に変えた。その光景に花柱であるカナエは驚きを隠せなかった。

 

「弱い...弱すぎる」

 

達磨にされた童磨は今までに感じたことが無かった感情が精神を支配していた。

童磨の精神を支配している感情は『恐怖』だ。

今まで自分の力に自信を持っていた童磨は手も足も出ずに一方的に斬られた事が無く、ただ斬られるだけでなく鬼の再生力が使えなく為す術もない状態に追い込まれたことが無かったからだ。

 

「先程の余裕ある屈託のない笑みはどうしたんだ?」

 

「バ、バケモノ!」

 

「俺は人間だぞ?バケモノはお前達鬼だろ?」

 

「な、鳴女殿!!」

 

童磨は大声で必死に仲間の一人である鳴女の名を叫ぶと

 

ベベン!!

 

三味線の音が聞こえてくると童磨の下に襖が現れて開き、達磨状態の童磨はそのまま落ちて行った。

 

「とどめを刺し損ねた.....」

 

 

私は目の前で起きた事が今でも信じられなかった。

上弦ノ弐がまだ隊士では無い、カナヲと歳が近い男の子に恐怖して逃げていった光景に思考が纏まらなかった。

 

「女性隊士殿。俺はもう最終選別へ行かないと行けないのですが肺が一部とは言え凍らされている貴女を置いて行くのは些か心苦しいので、文句等は俺が隊士になった時に聞きますので応急処置をさせていただきます」

 

「一体何を──!?」

 

上弦ノ弐に恐怖を与えた少年は私の前まで来て──唇を重ねてきた。

 

フゥー フゥー

 

唇を重ねてきた少年は私に人工呼吸をしていた。

少年が送り込んでくる空気は熱くて血鬼術の影響で体温がかなり下がった体に熱が戻ってきて、呼吸の方も楽に出来るようになっていた。

 

「血鬼術で凍っていた肺はもう溶けていますので後はちゃんと治療を受ければ大丈夫ですのでこれで失礼致します」

 

礼儀正しく頭を下げて少年は一瞬の内に私の前から居なくなっていた。

 

 

大して強くも無い鬼に時間を割いてしまい最終選別に少々遅れてしまったが藤襲山の麓に辿り着いた。

藤襲山麓に辿り着いたのだが最終選別を受けに来ている人達が見当たらなく、黒子の様な格好人達が数人と白髪の女性だけが居るだけだった。

黒子の格好している人達はどう見ても最終選別を受けに来たには見えず、白髪の女性は黒子達に指示を出しているようで最終選別を仕切る人だと思った。

 

「お話し中失礼致します。俺は最終選別を受けに来たものですが、諸事情で遅れてしまったのですがまだ受けられるでしょうか?」

 

「はい、可能でございます」

 

白髪の女性はあまね様と言うらしく、鬼殺隊の頭の奥方様と黒子の人達が教えてくれた。

あまね様から最終選別合格条件を聞き終わってから俺は藤襲山に足を踏み入れた。




御指摘や改善場所等ありましたら是非教えてください。
今回も読んでいただきありがとうございますm(_ _)m


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最終選別と裏側

現時点で524人の方達にお気に入り登録されるとは思ってなくてめちゃくちゃ嬉しいです!
ありがとうございます!



最終選別に遅刻してしまった俺はあまね様の寛大な御心で藤襲山に入れ最終選別を受ける事を許してもらえた。

遅刻した分の遅れを取り戻そうと、俺は鬼に気配を感じた場所へと片っ端から向かい鬼の首を斬って回っていた。

 

 

『キヒヒ、宍色の髪をした顔に傷のある餓鬼には逃げられたが、今回は逃がさないぞ鱗滝の弟子ぃ!!』

 

鬼の気配を感じた場所に走って来てみると、そこには体から手を生やしている鬼が雄叫びに似た大声をあげて、小柄な女の子の四肢を掴んでいた。

 

「誰か助けて──」

 

女の子から救いを求める声を聞いた瞬間──俺は日輪刀を抜きながら鬼へと向かって行き女の子の四肢を掴んでいた手、首を斬り落とした。

 

 

鱗滝さんや兄弟子達二人の厳しい修行の日々を送りようやく最終選別に行く事を許されて此処に来ていた。

最終選別に行く前に兄弟子の一人である錆兎から鱗滝さんに恨みを持っている異形の鬼が居る事を教えられ、その鬼の前では絶対に心を乱したり感情だけで行動しては行けないと忠告もらい最終選別に臨んだ。

 

「それでは皆様、ご武運を」

 

綺麗な女性から最終選別の説明を受けた後に私や私以外の受験者は藤襲山に足を踏み入れた。

最終選別が始まってから数体の鬼の首を斬り落とし、ちゃんと鱗滝さんや錆兎、義勇から学んだ事をしっかり出来ていると実感していた刹那──錆兎が言っていた異形の鬼が現れた。

錆兎の忠告を守り、異形の鬼が兄弟子達を殺して食べた自慢話に心を乱さないように常に平常心を保ちながら倒そうと行動していた。

 

「鱗滝は馬鹿だよな?自分が彫った厄除の面が弟子達を死に追いやっているのにまだ彫り続ける。奴が弟子を殺しているようなものだな!」

 

「鱗滝さんは....鱗滝さんは身寄りの無い私を大事に育ててくれた優しい人だ!!そんな鱗滝さんを悪く言うな!」

 

優しい大好きな鱗滝さんを悪く言う異形の鬼に怒りを覚え、鬼の首を斬ろうと異形の鬼に向かっていった。

鬼との距離を徐々に詰めて首を斬ろうと狙いを定めた時。

 

「!?、下からなにか来る!」

 

私の足元から異形の鬼と同じ匂いがしてきて上に飛び上がると私のいた場所から異形の鬼の手が何本か出てきた。

飛び上がったのだが、高さが足りずに両足を強く掴まれ、次は両腕を掴まれ動きを封じられた。

 

「キヒヒ、捕まえたぞ鱗滝の弟子ぃぃぃぃ!!宍色の髪をした男に逃げられたが今回は絶対に逃がさない!」

 

異形の鬼は私の四肢を掴んでいる手に力を入れる。

 

「痛い!!」

 

「そうか痛いか!!キヒヒ、お前はゆっくり四肢をもいで殺して食ってやるからな!」

 

左右に四肢をゆっくりと引っ張られ裂かれようとされている時、鱗滝さん、錆兎、義勇と過ごした日々が走馬灯の様に頭に流れた。

義勇と錆兎は鬼殺隊士で頻繁には会えなかったけど手紙を寄越してきてくれた事が嬉しかった時や風邪を引いた時に鱗滝さんが優しく看病してくれた日々がゆっくりと流れた。

 

「死にたくない.....」

 

私はまだ生きたいと、鱗滝さんに必ず帰ってくると約束した事や錆兎と義勇が水柱になったら継子になる約束を果たす為に、死にたくないという思いが強くなった。

 

「誰か助けて──」

 

自然とその言葉が口から溢れ出た。

 

──日の呼吸肆ノ型・灼骨炎陽

 

突然、お日様の匂いがしたと同時に私の四肢を掴んで拘束していた手が緩み拘束から解放された。

高い所で拘束されていた私は拘束が解かれてそのまま下へと落下した。

受け身を取ろうと体を動かそうとしたら鬼に掴まれていた部分に強烈な激痛がはしり上手く体を動かせず、このままでは地面に強く激突すると思った瞬間、さっき嗅いだお日様の匂いが私を優しく受け止めてくれた。

 

 

異形の鬼は何時斬られたのかと騒いだ後、徐々に体が灰へと変わってきた。

 

「兄ちゃん...兄ちゃん何処に居るの?」

 

異形の鬼から小さい子供の声が聞こえ、灰にまだなっていない手がこの場に居るはずのない自分の兄を探して動いていた。

 

「お前の兄はお前が今から行く場所で待っている.....」

 

「本当?じゃあ直ぐに行かないと!」

 

その言葉を最後に異形の鬼は灰となりこの世から消えた。

異形の鬼が消えたことで、地面に向かって落下を始めていた女の子を、落下地点で待ち構え、受け止めた。

体に異常は無いかと透き通る世界で女の子の靭帯や筋肉を見てみると異形の鬼に掴まれていた部分の筋肉や靭帯が切れそうになっていた。

 

 

お日様の匂いに受け止められて初めに目に入ったのが額の左側頭部に痣があって無表情で何を考えているか分からない顔をした男の子だった。

 

「あの、助けてくれてありがとう。もう大丈夫だから下ろしてくれる?」

 

受け止めてくれた男の子の顔が近くて恥ずかしくなり、下ろしてと頼んだが首を横に振って下ろさないと言われた。

 

「お前は今歩ける状態では無い。靭帯や筋肉が切れかかっているから、こういう風に運ばせてもらう」

 

男の子の言う通り、異形の鬼に掴まれていた部分にまだ痛みが残っていて歩けそうにも無かった。

でも、何でこの子は私の状態が分かるんだろう?気になって聞いてみたら......

 

「見えるから.....」

 

その一言だけしか言わずに私を横抱きにしたままスタスタと何処に移動を始めた。

 

「ねえ、何処に行こうとしてるの?」

 

「川だ...。川に行き、水の確保とお前のその怪我を冷やしに行く」

 

「ありがとう。それとまだ自己紹介してなかったね、私の名前は真菰だよ!よろしくね」

 

「俺の名は榊亮壱。その怪我では歩く事は出来ないだろうから、最終選別が終わるまでは面倒を見る予定でいる」

 

「え!最終選別の間、一緒に居てくれるの!私、少し心細かったから良かったよ〜」

 

「そうか...残り六日よろしく」

 

「こちらこそよろしくね亮壱!」

 

 

世にはこびる鬼達の頭である鬼舞辻無惨は、冷や汗をかき、四肢を斬られ横たわり怯えている童磨と、童磨にそれほどの恐怖を植え付けた亮壱に怯えていた。

 

な、何だあの子供は!あの顔、あの瞳、そしてあの痣、まるで奴ではないか!

 

鬼舞辻無惨は童磨を通して見た亮壱の、何も写していない瞳や何を考えているか分からない表情と、左側頭部にある痣に、何百年も前に死んだ継国縁壱を思い出していた。

 

「こんな悪夢があってたまるか!鳴女!」

 

「はい。此処に」

 

「童磨の四肢を再生させる為に稀血の女を食わせろ。童磨の再生が終わり次第、上弦を集めておけ!」

 

「畏まりました無惨様」

 

「頼んだぞ鳴女。私は少し休む...」

 

今まで見たことない無惨の態度に鳴女は何とも言えない表情をしながら目の前で横たわっている童磨を見やった。

その横たわっている童磨も......

 

「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い」

 

とブツブツ呟いてるのを見て鳴女は溜め息が溢れた。

 




今回も読んでいただきありがとうございますm(_ _)m
御指摘や誤字等ございましたら言ってください!


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最終選別を越えて

現時点での死亡キャラ生存

・胡蝶カナエ
最終選別に行こうとしていた亮壱に助けられた

・錆兎
異形の鬼と戦って刀が折れた時に鱗滝さんや兄弟子達の幽霊に言われた事を思い出し、顔を潰される前に回避して逃げ伸びた。

・真菰
錆兎と義勇の妹弟子設定
異形の鬼に手足を引きちぎられそうな所を亮壱に助けられた。





亮壱に異形の鬼から助けてもらってからあっという間に六日が経って、七回目の朝日が上り最終選別最終日を迎えた。

亮壱の手厚い手当てのお陰で痛みが大分引いて、今では支えがあれば何とか歩けるまでに回復する事が出来た。

亮壱に助けられて一緒に行動する様になってから、亮壱と友達になり、亮壱の過去や人柄を知る事が出来た。

亮壱の方が歳上と思ってたのに同い歳だった事、親に捨てられた所を優しいお祖母さんに拾われて大事に育ててもらった事、自己評価が低すぎる所。

亮壱の自己評価の低さは義勇より酷くて、異形の鬼を倒した事や私の怪我に対しての迅速な対応に凄いと言ったら──

 

『俺は何も凄くないぞ真菰。お祖母様が色んな怪我に対しての手当ての方法を教えてくれたから出来ただけだ、それに異形の鬼を倒す事が出来たのは、相手が俺に気づいていなかったのと、俺に呼吸を教えてくれた師範のお陰だ.....』

 

そんな事を表情を変えずに真顔で言うもんだから思わず顔が引きつっちゃった。

 

「そろそろ下山しようか真菰」

 

「うん、分かったよ亮壱!」

 

私は亮壱に背負われて藤襲山を下山した。

亮壱に背負われていると、やっぱり亮壱から優しくてお日様の様にポカポカして安心する匂いがして何だか眠くなってしまい瞼が自然と下に下がってきた。

 

 

真菰と過ごした六日間は中々面白く、退屈のしない楽しい時間を過ごさせてもらった。

鱗滝さんと言う育手の話や、二人の兄弟子自慢を聞かされながら真菰を背負って藤襲山を下山し、藤襲山の麓に辿り着くと最終選別で何度か見かけた受験者が全員集まっていた。

真菰を背負って藤襲山を下山し、藤襲山の麓に辿り着くと最終選別で何度か見かけた受験者が全員集まっていた。

 

「最終選別中、ずっと亮壱におんぶにだっこだったな...」

 

「酷い怪我だから仕方ない.....。無理に動いて一生治らない事になったら鱗滝さんや兄弟子達が悲しむぞ?」

 

「やっぱりそうだよね....。でも、鱗滝さんや錆兎、義勇から教えてくれた事を少ししか出来なかった」

 

「三人から教わった事は、鬼殺隊士になってから存分に発揮すればいい。焦る必要は無い.....」

 

俺なりに落ち込んで弱々しく話している真菰に言葉をかけた。

 

「ふふ、励ましてくれてありがとう亮壱!そうだよね、この悔しさは任務で晴らせばいいよね!」

 

俺のかけた言葉に真菰は小さく笑いながら礼を言ってきた。

落ち込んでいた雰囲気が変わり、試験中によく見せてくれた明るい真菰に戻った。

 

「皆様、最終選別お疲れ様でした。受験者全員が最終選別を乗り越えた事に心よりお祝い申し上げます。それでは隊服の採寸と日輪刀の玉鋼を選んでいただきますが、その前に...」

 

あまね様が手を二回叩くと空から鴉が飛んできて受験者全員の肩に1羽づつ止まった。

 

「これより、皆様に鎹鴉を付けさせていただきます。その鎹鴉は任務や隊士同士の連絡用です」

 

あまね様の話が終わると受験者の約半数が手を挙げ、隊士では無く隠になりたいとあまね様に言った。

隠になりたいと言った受験者は俺が来る前に鬼に恐怖して戦えないと言う理由だった。

隠の道を選んだ受験者達はあまね様の近くに居る、二人の隠に連れられて何処かに行ってしまった。

 

「あまね様....」

 

「どうかしましたか?」

 

「日輪刀の玉鋼選びの事ですが、俺は既に自分の日輪刀を持っているので、玉鋼選びはしなくてもよろしいでしょうか?」

 

「はい、日輪刀を持っているのでしたら榊亮壱様は隊服の採寸だけで大丈夫です」

 

「分かりました...。真菰、一旦下ろすぞ」

 

「うん、分かった」

 

真菰をゆっくりと下ろしてから、俺以外受験者は日輪刀に使う玉鋼選び、俺は隊服の採寸に分かれた。

隊服の採寸だけで直ぐに終わった俺は、真菰の玉鋼選びと隊服の採寸が終わるまで、近くにある岩場に腰掛けて待っていた。

 

 

「今年は全員が生き残ったのか、とても優秀な子達が多い様だね。また、私の剣士(こども)が増える。どんな剣士になるのか楽しみだ」

 

産屋敷邸の縁側に座り、鎹鴉から最終選別の合格者の事を報告された鬼殺隊の長、産屋敷耀哉は嬉しそうに言った。

 

「榊亮壱。鎹鴉が視認出来ない速さで鬼の首を斬るなんて、とても優秀な子だね」

 

産屋敷耀哉が受けた報告は最終選別の合格者の事だけでなく、最終選別中の状況についても報告を受けていた。

亮壱が真菰に安静にしていてもらおうと、真菰と亮壱の付近に居る鬼を狩り続けていたところを鎹鴉に見られていたのだ。

しかし、鎹鴉には亮壱が鬼の首を斬る時の剣筋が見えず、鬼の近くを通っただけで勝手に首が落ちているように見えていたのだ。

 

「もしかしたら、カナエが言った少年はこの子かもしれないね。時期を見計らって聞いてみよう」

 

 

真菰は玉鋼選びと隊服の採寸が終わったようで、岩場に腰掛けている俺の所にゆっくりと少しずつ歩いて来た。

 

「短い距離だったら歩けるみたいだけど、狭霧山まで自力で帰れそうにないよ〜」

 

「狭霧山まで送っていくと約束しただろ?だから安心して俺の背に乗っかれ」

 

真菰が背に乗っかれるように腰を落とすと、真菰は俺の肩に手を掛けて、ゆっくりと俺の背に乗っかった。

 

「私って重くない?」

 

「重くない...泡を背負っている感覚だ。軽すぎないか真菰?」

 

真菰をしっかりと背負った俺は、真菰の帰りをきっと心配して帰りを待っているであろう育手の下に向かおうとすると、あまね様に声をかけられた。

 

「亮壱様。もしよろしければ背負われている真菰様を鬼殺隊の治療所にお連れしますので、こちらでお預かりしますか?」

 

「真菰はどうしたい?」

 

「私は──狭霧山に一度帰って鱗滝さんに会ってからが良いです」

 

「分かりました。それでは今日では無く明日、迎えを送りますのでよろしいでしょうか?」

 

「我儘を聞いて下さりありがとうございます」

 

「いえ、大丈夫です。榊亮壱様、真菰様、改めて最終選別を乗り越えた事を、心よりお祝い申し上げます。隊士になってからのご活躍を楽しみにしています」

 

あまね様はそう言うとお辞儀をして隠達の方に戻って行った。

 

「行くか...」

 

「そうだね!」

 

藤襲山の麓から下り、最終選別前に来た道を歩き続け町に出た。

狭霧山への道順は真菰が指示してくれる為、いちいち人に狭霧山の場所を聞くこと無くすんなり狭霧山の麓にやって来れた。

 

「やっと鱗滝さんに会える!ありがとう亮壱!」

 

「あまり耳元で大きな声をあげないでくれ....」

 

狭霧山をしばらく登って行くと一軒の小さな小屋を見つけた。

真菰が鱗滝さん、兄弟子二人と暮らした場所だと言い、とりあえず小屋に真菰を休ませようと近づくと勢いよく戸が開けられて中から天狗の面をした男が出てきた。

 

「鱗滝さん!」

 

「真菰...よく戻った」

 

真菰を下ろすと、真菰は鱗滝さんに抱き着き、鱗滝さんは真菰が無事に戻ってきた事に涙を流しながら、おかえりと言った。

その後、鱗滝さんに俺の事を聞かれた真菰は最終選別の時の事を話した。

 

「儂は鱗滝左近次、真菰を助けてくれた事に感謝する。ありがとう」

 

「俺は榊亮壱と申します。俺は当たり前の事をしただけですので、礼は不要です」

 

「その当たり前を亮壱がやってくれたから、儂は大切なものを失わずに済んだ。本当にありがとう」

 

鱗滝さんの礼を受け取り、お祖母様が待っている屋敷に帰ろうとしたのだが、鱗滝さんに休んでいかないかと言われた。

 

「鱗滝さんのご厚意は大変有り難いのですが、俺はこのまま帰ります」

 

「もう帰っちゃうの?」

 

「ああ、鱗滝さんが真菰を待っていたように、俺にも待ってくれている人が居るから」

 

「そっか...なら、引き止められないね。亮壱を待ってくれているお祖母さんの所に帰ってあげて!」

 

「亮壱よ、狭霧山には何時でも来るといい。待っている」

 

「ありがとうございます鱗滝さん。それでは失礼致します、真菰、早く怪我を治してまた会おう...」

 

「うん!またね亮壱!」

 

鱗滝さんと真菰に別れを告げて狭霧山を下山してお祖母様が待っている屋敷へと走って帰った。

 

 

 

コンコンコンコン.....

屋敷前に着いてから戸を四回叩いた。

戸を叩いて少し待っていると直ぐに戸が空いてお祖母様の顔が見えた。

 

「亮壱.....」

 

「ただいま戻りましたお祖母様」

 

「無事に帰ってきてくれてありがとう亮壱。さあ、中に入りなさい」

 

戸を潜ってからお祖母様と一緒に屋敷の中に入って、お祖母様が今夜はお祝いとして夕餉に俺の大好物の天ぷらと鶏大根を作ってくれると言ってくれた。

 

「改めて、おかえりなさい亮壱」

 

「ただいまお祖母様.....」

 

俺はこの日から隊服が届くまでお祖母様と一緒に居る時間を大切にしながら日々を送った。




亮壱コソコソ話
亮壱は上弦ノ弐や最終選別の鬼を斬った時、お祖母様の手伝いで豆腐を切った時と同じ感覚だったらしい。



今回も読んでいただきありがとうございますm(_ _)m


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日輪と水

主人公の呼吸を錆兎、義勇、真菰に伝えるシーンを書いてなかったので再投稿しました。


最終選別を乗り越えてから一月が経った。

日向(鎹鴉の名前)から伝えられた任務をこなしながら、行く先々で出会う鬼達に鬼舞辻無惨と六つ目の鬼になってしまった師範の兄の行方を聞いて回っていた。

 

「あ!亮壱!」

 

今日の任務が無くなり、暇を持て余した俺は団子屋で、みたらし、小豆、三色団子を食いながら茶を啜り、近くの藤の家に世話になろうかとボーッと考えていると前方から俺に手を振りながら真菰がやってきた。

 

「久しぶりだな真菰....怪我はもう治ったみたいだな」

 

「うん!亮壱の処置が良かったから後遺症が残る事もなく治ったんだ!」

 

それから真菰は、俺と同じ団子と茶を頼んで隣に座った。

 

「亮壱、私ね!怪我が治ってから初任務をこなして兄弟子達の継子になったんだよ!」

 

「噂で聞いているから知っている...真菰の兄弟子二人は水柱だよな?」

 

「そうだよ!義勇は柔剣で錆兎は剛剣、互いに下弦ノ鬼を倒して、どっちが水柱になるか話し合った結果、御館様が錆兎と義勇を両方とも水柱にしたんだ!」

 

真菰は兄弟子二人の継子になってからの事を団子を食いながら楽しそうに話し始めた。

修行内容が鱗滝さんの所で学んでいた時よりも厳しい事や錆兎の作るご飯が美味しいとか全集中・常中を三時間維持できるようになったと、楽しそうに話していた。

 

「それとね亮壱、私に可愛いお友達が三人と妹が出来たの!」

 

真菰は怪我を治す為に隠に連れて行ってもらった蝶屋敷という所で、胡蝶カナエ、胡蝶しのぶ、神崎アオイと友達になり、蝶屋敷に俺たちより年齢が一つ下の栗花落カナヲが妹になったと嬉しそうに話していた。

 

「カナエちゃんはね、錆兎と義勇と同じで柱だったんだけど、私達が最終選別を受けていた初日に上弦ノ弐のせいで柱を降りる事になっちゃったんだって」

 

柱でも倒せない鬼が居るということは、豆腐みたいな体では無く、どんな硬さをしているのかが気になった。

真菰が言うには、上弦ノ鬼達は鋼より硬いらしい。

 

「今夜は任務ある?」

 

「今日の任務はない.....」

 

真菰に今夜の任務の有無を聞かれ、無いと答えると、突然真菰が自分の鎹鴉を呼び寄せて、何かを鎹鴉に伝えると鎹鴉は何処かに飛んで行ってしまった。

 

「任務が無く暇だったら水屋敷に行くよ亮壱!」

 

「水屋敷?」

 

「うん!水屋敷は御館様が柱に与える屋敷なんだ!」

 

「そうなのか.....だが、いきなり行ったら迷惑じゃないか?」

 

「全然迷惑じゃないよ?寧ろ錆兎と義勇が亮壱に会ってみたいって言ってたんだ!」

 

「迷惑じゃ無いならお邪魔します.....」

 

団子屋で会計(真菰の分も)を済ましてから、真菰に手を引かれながら水屋敷へと行く事になった、

水屋敷に行く道中で真菰に今夜の寝泊まりはどうするのかと聞かれて藤の家に世話になるつもりだと言ったら、水屋敷で泊まればいい(真菰に水一門が泊まると言うまで留まらせる)と言われ泊まる事になった。

 

 

「錆兎!錆兎!真菰チャンカラ伝言ダヨ!」

 

義勇と共に鍛錬をしていると真菰の鎹鴉が伝言を持って俺達の元にやって来た。

真菰からの伝言は最終選別で世話になった榊亮壱と一月ぶりに再会したらしく、榊亮壱は今日任務が無く、暇を持て余しているらしく水屋敷に連れてくると言う内容だった。

 

「榊亮壱...。真菰を救い、兄弟子達を殺してきた鬼を倒した恩人か.....」

 

「泊まっていく──というか、真菰が泊まらせるみたいだ」

 

「錆兎、今夜は鮭大根でもてなそう」

 

「それはお前が食べたいだけだろ義勇」

 

義勇との鍛錬を一時中断して、来客用の布団を一度、日に当てる為に干して、夕餉は何を作ろうかと屋敷にある食材を見て献立を考えていた。

 

 

真菰に連れて行かれている途中で、手ぶらで行くのは気が引け饅頭を買ってから水屋敷にやってきた。

 

「ただいま〜、錆兎!義勇!亮壱を連れてきたよ〜」

 

真菰は門を開けて中に入りながら大声で言った。

俺も真菰に続いて門の中に入ると玄関前で一人の男が立っていた。

 

「おかえり真菰....。後ろにいるのが榊亮壱か?」

 

「そうだよ義勇!」

 

「そうか....。最終選別で妹弟子を助けてくれてありがとう...俺は水柱の一人、冨岡義勇だ。呼び方は義勇でいい.....」

 

「階級、庚の榊亮壱と申します。今日は突然お邪魔してしまい申し訳ございません。口汚しになりますが饅頭をお持ちしました」

 

「迷惑では無い.....中に入れ」

 

義勇さんに饅頭を渡してから、中に入れと言いながら義勇さんが屋敷の中に入っていき、それに続いて真菰と俺も屋敷の中に入った。

 

「おかえり真菰、その後ろに居るのが榊亮壱でいいのか?」

 

「ただいま錆兎!。うん、そうだよ!」

 

「真菰が大分世話になったな。俺は水柱の一人鱗滝錆兎だ!錆兎と呼んでくれ!」

 

「階級、庚の榊亮壱と申します。今日はお世話になります」

 

水柱二人は顔立ちが良く、突然の宿泊でも迎えてくれた器量の良さに、絶対にモテているだろうと、錆兎さんと挨拶を交わしながらそう思った。

 

「亮壱は食べ物好き嫌いはあるか?」

 

「嫌いなものは無いです、好きな物は鶏大根です」

 

「!?」

 

好きな物を言ったら義勇さんが目を見開き反応して見てきた。何か気に触る事でもしてしまったのかと考えた時、義勇さんが語り出した。

 

「亮壱...鮭大根も美味いぞ」

 

「鮭大根って何ですか?」

 

「あれはこの世が生んだ奇跡の食べ物だ。鮭大根を食べた事が無いとは人生の半分を損しているぞ。亮壱、今度俺が通っている鮭大根の美味い店に連れて行く」

 

義勇さんが鮭大根を熱く語ってから何時の間にか今度一緒に食事に行く事になった。

 

「んん!義勇、お前の鮭大根への熱意は分かったから亮壱と話させてくれ」

 

「話とは?」

 

「真菰からお前の話を聞いた時!亮壱に会えたら手合わせをしたいと思ってな、無理にとは言わないがどうだ?」

 

「俺も....亮壱と手合わせを願いたい」

 

「────分かりました。今日泊めてもらう恩として受けさせていただきます」

 

「本当か!?なら、早速庭に行こう亮壱!」

 

嬉しそうに笑う錆兎さんの後ろに付いて庭に向かい、義勇さんは三人分の木刀を取りに行った。

 

 

錆兎と義勇が亮壱と手合わせするところを見ようと縁側に座って三人を眺めて見ていた。

錆兎と義勇がどちらが先に手合わせするか話し合いをしていたんだけど、義勇が鮭大根の誘惑に負けて錆兎が先に手合わせする事になった。

 

「真菰!手合わせの合図をしてくれ!」

 

「分かったよ〜!」

 

二人が木刀を構えてから合図を出す準備をした。

 

「始め!!」

 

手合わせの合図をしたと同時に最初に動き出したのは錆兎だった。

 

「水の呼吸捌ノ型・滝壷!!」

 

「日の呼吸伍ノ型・陽華突...」

 

錆兎の強力な滝壷に亮壱が突きを繰り出すと信じられない光景が目の前で起きた。

錆兎の滝壷が亮壱の突き、木刀の剣先で受け止められたのだ、この光景に私だけでなく義勇も驚きに満ちた顔をした。

 

「水の呼吸陸ノ型・ねじれ渦!!」

 

「日の呼吸拾壱ノ型・幻日虹」

 

滝壷を受け止められた錆兎は直ぐにねじれ渦を繰り出したけど、亮壱がもの凄い速さで錆兎のねじれ渦を回避した。

 

「はは!まさか攻撃が当たらないとは思わなかった!」

「現水柱に言われて光栄です。続きを始めますか?」

 

「いや、辞めておこう」

 

錆兎がそう言った時──

 

ピキッ!!ピキピキ......カランカラン・・・

 

錆兎の木刀の中心からヒビが入り、折れて地面に転がった。

そんな光景に唖然としていると錆兎が笑いながら木刀が何時折れたかを説明してくれた。

 

「亮壱が突きで滝壷を受け止めた時にヒビが入ったんだ。一月前に入ったばかりの新人隊士だと侮ってはいけなかったな!亮壱と手合わせして分かった事は亮壱の実力が底知れない事だな」

「褒めていただきありがとうございます」

 

「これからも時々、手合わせをしてくれないか?お前との手合わせはきっと俺がもっと強くなるのに必要だ」

 

「俺との手合わせなんかで強くなれるか分かりませんが、俺で良ければ御相手になります」

 

「よろしくな亮壱!」

 

錆兎は楽しそうに笑いながら言った。

 

 

錆兎さんと義勇さんとの手合わせが終わり、真菰が持ってきてくれた水で濡らした冷たいタオルを持ってきてくれて顔を拭いていた。

錆兎さんと義勇さんとの手合わせは楽しく、錆兎さんは荒々しく力強い水の呼吸で義勇さんはその反対で穏やかに流れる水の呼吸で中々出来ない体験が出来て、真菰と出会って良かったと思った。

 

「ねぇ亮壱!夕餉食べ終わったら私とも手合わせしてよ!」

 

「分かった......」

 

「本当!やったー!」

 

夕餉が食べ終わったら真菰と手合わせをする事になった。

本当に今日は中々楽しい日を過ごさせてくれた真菰に感謝をしながら、錆兎さんが作ってくれた夕餉を食べた。

 

「そう言えば、亮壱って何の呼吸使ってるの?錆兎と手合わせした時、炎が見えたけど炎の呼吸?」

 

「亮壱が使っている呼吸を教えてくれないか?」

 

「真菰、錆兎と同意見......」

 

三人から俺が使っている呼吸について聞かれ、食事していた手を一度止め、箸を置いた。

 

「俺が使っている呼吸は日の呼吸です」

 

「火の呼吸?火って紙を燃やす時に使う火?」

「その火では無く、日輪の日だ。炎、水、雷、風、岩の五大呼吸は日の呼吸から派生して生まれた呼吸で、日の呼吸は全ての呼吸の始まりだ」

 

俺の使っている呼吸と日の呼吸について説明し終わると、三人は日の呼吸について全く知らなかったみたいで唖然としていた。

 

「え、え、じゃあ!始まりの呼吸を亮壱が使えるって事だよね?凄いね亮壱!」

 

「日の呼吸と言う呼吸があったのか...」

 

「それを教えてくれた育手は今何処に居るんだ?」

 

「教えてくれた師範はこの世に(元々故人で)居ないです......」

 

「そうか...悪い事を聞いてしまったな亮壱」

 

呼吸の説明が終わってから再び食事に戻った。

育手である師範はこの世に居ないと言ってから、錆兎さんが時折、励ましの言葉をかけてくれたり、何時でも遊び来てもいいと優しい言葉をかけてくれた。



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原作開始
日輪と末裔


お気に入り件数1700人!!
UA数 56513!!

皆さまありがとうございます!!
まさかお気に入り件数が1700人も行くとは思わずビックリしています!!
現在、コロナによる自粛ムードで娯楽が限られる中で自分の投稿している作品が皆様の暇つぶしになれると良いなと思っています!


気温が高く、外を歩いていれば自然と汗をかいてしまう夏の季節になり、病や任務で傷や怪我を一つもする事無く五体満足元気に17歳になる事が出来た。

17歳になり何時もの様にお祖母様が祝ってくれたが、今年は少し変わって水の呼吸一門も祝ってくれて、お祖母様以外で祝ってくれたのが初めてで新鮮な気持ちになった。

 

『亮壱サマ!任務デス!景信山付近二鬼ガ出現シタトノ情報!今回ノ任務ハ景信山、ソノ付近ノ調査デス!』

 

「何時もありがとう日向」

 

『オ役ニ立テテ光栄デスワ亮壱サマ!』

 

日向から今夜の任務が言い渡され、景信山へと向かう。

景信山に向かう道中で冷たい物を食べたくなった俺は、日が暮れるまで時間がある事を確認してから、景信山付近にある甘味処に向かった。

 

「店主、イチゴとレモンのかき氷を一つずつ頼む」

 

「あいよ!すぐ出すから待ってな!」

 

元気の良い店主にかき氷を頼んでから席に座ると宣言通り、店主は二つのかき氷を直ぐに持ってきてくれた。

店主が持ってきてくれたかき氷は他の甘味処で頼んだかき氷より多くて山盛りだった。

 

「溶けるから早く食いなよ兄ちゃん!」

 

そう言うと店主は戻って行った。

店主が行ってから山盛りのかき氷を崩さずにスプーンで多く掬いながら頬張り、かき氷を減らしていった。

かき氷を頬張って行くと徐々に口内や体が冷えていき、キーンとした頭痛で痛くなり、温かいお茶を頼んで飲み、冷えた体温を戻しながらかき氷を食べ進めた。

 

 

四人で住んでいた家は父さんと母さんが死んでから俺と無一郎の二人だけになった。

二人だけになった家で、俺と無一郎は話さない...いや、俺が無一郎と必要最低限の事しか話さなくなった。

父さんと母さんが死んでから、あまねと言う女性が俺達の家にやって来て、この世に鬼と言う存在がいる事、俺と無一郎が『始まりの呼吸の末裔』と言う事を聞かされ、鬼殺隊に入ってくれないかと勧誘された。無一郎は前向きに考え鬼殺隊に入ると言い出した時、かなり揉め...

 

「人を助けるなんてのは選ばれた人間にしかできない!俺達にできることは犬死にと無駄死にだけだ!」

 

無一郎にそう言葉を浴びせ、あまねと言う女性を信用出来ず追い出した。

 

「そろそろ寝るぞ」

 

「うん.....」

 

蒸し暑い夏の夜。

無一郎に寝るように行ってから、風通しを良くする為に戸を開けてから自分の布団に寝っ転がった。

 

「おやすみ兄さん...」

 

「早く寝ろ」

 

素直におやすみと無一郎に言えない自分に腹が立ちながら目を瞑り眠りについた...。

 

 

兄さんの方から寝息が聞こえたのを確認してから閉じていた目を開けて、あまねさんに勧誘された鬼殺隊について考えていた。

兄さんから色々と言われてるけど、やっぱり僕は鬼殺隊に入って困っている人の役に立ちたいと強く思った。

 

ガサガサガサガサ......

 

何かがこっちにやって来る様な音が聞こえ、兄さんを起こそうと体を揺すろうと近くに行くと兄さんは目を開けていた。

 

「起きていたのか」

 

「うん...物音が聞こえて」

 

「動物か「キヒヒ!美味そうな子供が2匹だ!!」!?」

 

兄さんとは別の声が聞こえ、戸の方を見るとそこに人型の何か得体の知れない者が僕と兄さんを見て美味そうと言った。

 

「鬼?」

 

「キヒヒ!当たりだよ坊や!」

 

得体の知れない者の正体が鬼と分かり、兄さんを守ろうと立ち上がろうとした時だった。

 

「無一郎逃げろ!」

 

兄さんが斧を持って、僕を鬼から守る様に僕の前に立って斧を構えていた。

 

 

突然現れた鬼から無一郎を守ろうと斧を手に取り、鬼から無一郎を守る為に前に立った。

 

「キヒヒ!その斧で俺と殺り合う気かい?」

 

唯一の肉親で冷酷な俺よりも優しい無一郎を何としてでも生かそうと俺は命懸けで足止めをする覚悟をして斧を構えた。

 

「俺はあいつの足止めをする。お前は逃げろ!」

 

「嫌だよ!兄さんを置いていけないよ!」

 

「キヒヒ!良い兄弟愛だな!安心しろ、2人とも俺の腹の中に入れてやるから!」

 

鬼は舌なめずりをしながら俺達に向かって来た。

鋭い爪を俺達に向けて近づいて来る鬼に力いっぱい斧を振り下ろし腕を斬り落とした。

 

「キヒヒ!やるな坊や!だが、そんなもので俺は殺せないぞ!」

 

鬼がそう言うと力いっぱい斧を振り下ろして斬った筈の腕が直ぐに再生して元通りになってしまった。

 

「無駄な抵抗をやめて俺の養分になれ!」

 

鬼が再び俺達に向かって来た時──

 

「待て...」

 

「キヒヒ!また別のえ...さ...が...。な、何故、痣の剣士がここに!?」

 

透き通った声が戸の方から聞こえ、鬼は俺達を襲うのを辞め声のした戸の方に視線を向けると、突然震え出した。

無一郎と共に戸の方を見るとそこには額の右側に炎の様な模様の痣が出来ている男が立っていた。

 

 

日が暮れ、夜になってから任務先の景信山に足を踏み入れた。

景信山を駆け回りながら鬼を探していると...師範と少し似ている気配を感じた。

師範と少し似ている気配を辿りながらその場へ向かっていると鬼の気配を感じると、鬼は師範と少し似ている気配を感じた場所に近づいているのが分かり急いで駆けつけると、1軒の家に辿り着き中を見ると双子の兄弟と鬼が居た。

 

「何故、痣の剣士がここに居る!!」

 

「任務でこの山で鬼がいると言う情報を得て、ここに来た」

 

鬼の質問に答えながら、双子に視線で『こっちに来るように』と目配せをしていた。

双子は目配せを理解してくれたみたいで、ゆっくりと鬼に悟られないように移動して、鬼と距離が取れてから走って俺の後ろに来てくれた。

 

「な!?俺の餌を返せ!!」

 

「これからこの子達の命を奪おうとしている者に渡す訳が無いだろう.....それよりも、鬼舞辻無惨と六つ目の鬼が何処に居るか教えろ...」

 

「教える訳ないだろ馬鹿が!!貴様を喰らえば、あの方が十二鬼月と互角の力が手に入ると言った!それだけでなくあの方から更に血を頂ける!俺の為に死ね!!痣の剣士!!」

 

鬼はそう言いながら俺目掛けて飛びかかってきた。

飛びかかってき来る鬼に対して、俺は日輪刀を抜いて後ろに居る双子に少し離れるように言ってから飛びかかって来る鬼に技を繰り出した。

 

「日の呼吸肆ノ型・灼骨炎陽」

 

 

今、僕達の目の前で凄い事が起きた。

助けに来てくれた男の人が黒い刀を抜いて襲いかかってきた鬼を一瞬にして、首、腕、足を斬った時、綺麗な炎が出て、男の人が火の神様に見えた。

男の人に斬られた鬼は体が徐々に灰になっていき、跡形もなく消えて行った。

 

「二人とも怪我は無いか?」

 

優しい声色で僕達の安否を聞いてきた瞬間に、鬼が居た時の緊張感と恐怖が溶け、僕は返事をする前に膝を着いて泣いた。

僕の隣に居た兄さんも僕と同じ様に膝を着いて泣いていた。

 

「すまない....もっと早く来ていれば怖い思いをさせずにすんだ」

 

男の人は僕達を優しく抱きしめながらそう言った。

僕達が男の人に強くしがみついて泣いていると、頭を優しく撫でながら『もう大丈夫だ』と言葉をかけてくれながら僕達が泣き止むまで優しく抱きしめ続けていた。

男の人に抱きしめられながら頭を撫でられていると、小さい頃に怖くて寝れなかった時にお父さんとお母さんに抱きしめてもらっているような感覚だった。

 

 

泣くつもりは無かった....。

男が鮮やかに鬼を斬り終わり、俺と無一郎に目線を合わせて優しい声色で俺と無一郎の安否を聞いてきた瞬間に、鬼に対する恐怖と緊張の糸が切れて泣いた。

無一郎も泣いてしまい、俺がしっかりしなきゃと思い涙を頑張って止めようとしたら男に優しく抱きしめられた。

男が抱きしめた時、父さんと母さんに抱きしめられた時の事を思い出して涙を止める事が出来なかった。

 

 

日向に隠の人達を呼びに行ってもらっている間、双子が泣き止むまで胸を貸していた。

 

「俺達を助けてくれてありがとうございます」

 

双子の1人が涙を止めながら俺に礼を言った。

 

「礼は不要だ、俺がもう少し早く来れば怖い思いをさせずにすんだ。申し訳ない」

 

「ううん、そんな事ないよ。お兄さんが来てくれなかったら僕達は死んでたかもしれない、ありがとうお兄さん」

 

もう片方の方にも礼を言われた。

二人とも涙で目が濡れている為、擦って涙を拭こうとするのを止め、自前の手拭いで優しく傷つけないようにして涙を拭いた。

 

「二人の礼を受け取ろう。名乗り遅れたのだが、俺は鬼殺隊と言う、さっき見た鬼を滅する組織に属している榊亮壱だ」

 

「俺は時透有一郎。鬼殺隊についてはある程度知っています」

 

「僕は時透無一郎」

 

有一郎、無一郎と互いに自己紹介をしてから、二人に今後について話した。

 

「鬼殺隊について知っているなら、二人には選択をしてもらわねばならない。自衛の術を持たない有一郎と無一郎には藤の家で暮らしてもらうか、鬼殺隊に入るかだ」

 

藤の家で暮らす場合は、お祖母様の所で暮らしてもらおうと思っていると二人は...特に有一郎は決心した表情をしていた。

 

「亮壱さん、俺達は鬼殺隊に入ります!」

 

「兄さん....」

 

「無一郎、今までお前の邪魔ばかりしてごめん...。父さんと母さんが死んでからお前を守ろうと必死に考え酷い言葉をかけて悪かった」

 

「兄さんは....僕の事を嫌いじゃないの?」

 

「お前はこの世でたった一人の大事な弟だ、嫌う事なんて絶対に出来ない」

 

有一郎と無一郎は、どうやら仲違いをしていたらしく有一郎は無一郎に自分の思いの丈をぶつけて胸の内を語った。

有一郎の胸の内を知った無一郎は有一郎を抱きしめ、有一郎は無一郎を抱きしめ返した。

 

『亮壱サマ!連レテキマシタ!!』

 

隠の人達を呼びに行った日向が隠の人達を連れて戻って来た。

 

「よっ!昨日ぶりだな亮壱」

 

「昨日ぶりです後藤さん...」

 

後藤に有一郎と無一郎についた一通り説明して後をお願いした。

 

「また会おう、有一郎、無一郎」

 

「はい、また会いましょう亮壱さん!」

 

「僕も兄さんも頑張るからね!」

 

有一郎と無一郎に一声かけてから家を出て、藤の家に向かおうとした時だった。

 

「お久しぶりです亮壱様」

 

「貴女は...あまね様」

 

「名を覚えていてもらい光栄です」

 

「いえ、こちらこそ一隊士である自分を覚えていてもらい光栄です。あまね様は何しにこちらへ?」

 

日向には隠の人達を呼んできてもらった筈なのに、まだ見ぬ御館様の奥方であるあまね様がここに来ているのか疑問だった。

 

「私は時透兄弟の迎えに来ました」

 

有一郎と無一郎は『始まりの呼吸の末裔』である事を教えられ自分の中で疑問だった二人から師範と似た気配を感じていた訳が末裔だからと納得した。

元々、二人を鬼殺隊に勧誘していたらしいのだが、ことごとく追い出されていたらしく、どうしたらいいのかと考えていたら二人が鬼殺隊に入ってくれると聞いて、駆けつけて来たらしい。

 

 

「それでは、此処で失礼致します。有一郎と無一郎をよろしくお願い致します」

 

俺はあまね様にそれだけ言って景信山を下山して、次の任務を日向に聞くと今日はもう無いと言われ、近くにある藤の家を案内してもらい、その日の任務は終わった。




亮壱コソコソ話①
亮壱は甘味が大好きで任務が無い時は色んな甘味処をまわっていて、色んな店を知っているぞ!


亮壱コソコソ話②
時透兄弟を助けたあと、心配して声をかけたら泣き出し、表情は無表情のままだったけど内心すごく慌てていて、咄嗟にやった事が上手く行きホッとしていた。


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日輪と鬼

最新作
★呪われし魔神の少年
ハイスクールD×D × 七つの大罪のクロス作品です!
良かったら読んでください!!


最近、任務先で出会う討伐対象の鬼達に『痣の剣士』と言われ続けて腹が立っていた。

鬼達は俺の名前を知らないから言っているみたいだが『痣の剣士』って、俺が怪我を負っているみたいで嫌だ、普通に鬼殺隊の人間か鬼殺の剣士と言って欲しい。

 

「痣の剣士だぜ!お前を殺せばあの方がすぐにでも十二鬼月に──ってあれ?」

 

「話しが長い...。そして俺の名は痣の剣士では無く、榊亮壱だ」

 

「いつの間に首を────────」

 

痣の剣士と言った鬼の話が長そうだと思い、聞く義理は無い為、話の途中で首を斬らせてもらった。

斬った鬼が灰になるのを見届けてから、コソコソと俺の後を追い見てくる奴がいる方に向かって剣先を向けた。

 

「コソコソしていないで出て来たらどうだ?」

 

「やはり気づかれていましたか。私達に敵意はありません、貴方とお話をしたくて、貴方の後を追いました」

 

俺をコソコソして着いてきたのは鬼の気配がする大人の女性と子供の男鬼が木の影から出て来て、自分達に敵意が無いと言った。

女性鬼の言う通り敵意が全く感じらず、人を食った鬼特有の気配も感じられなかったから刀を収めて、俺の後を追ってきた訳を聞く事にした。

 

 

最近、鬼達の間で『痣の剣士』を殺せば十二鬼月になれると言う話が出回っていた。

こんな話が出回っているのは、あの屑…いえ、鬼舞辻無惨が鬼達にそう言ったに違いないと確信し、茶々丸にお願いをして、痣の剣士と呼ばれている方を探してもらい、見つけてもらった。

 

「愈史郎、私は今から痣の剣士と呼ばれている方と接触する為に出掛けてきますので留守を頼めますか?」

 

「待ってください珠世様!御一人で行かれるのは危険です!痣の剣士がどんな奴か分かりませんので俺もついて行きます!」

 

愈史郎も一緒に行く事になり、私達は茶々丸に先導してもらいながら後を着いて行って痣の剣士がいる所へ向かった。

茶々丸の後を着いて行くと林に入って行き、どんどん奥へと進んでいくと話し声が聞こえてきた。

バレないように愈史郎に血鬼術で私達が見えないようにしてもらい、鬼と痣の剣士を見ていた。

 

「縁壱様……」

 

私は痣の剣士を見て、糞臆病者…無惨から逃げ出した時に手助けをしてくれた、恩人を思い出していた。

顔、立ち姿、雰囲気、そして左側頭部を覆うあの痣がとても縁壱様にとても似ていた。

鬼が何やら痣の剣士に向かって何かを言っていると、痣の剣士は日輪刀を握っている腕を振り、鬼の首を斬った。

鬼の首を斬る際に痣の剣士が持っていた日輪刀が黒から赫くなり、鮮やかな炎を出していた。

 

『俺の名は痣の剣士では無く、榊亮壱だ……』

 

「愈史郎、あの方の事はちゃんと名前で呼びましょう」

 

「そ、そうですね珠世様……」

 

亮壱さんの話は他にもあり、痣の剣士と言った鬼の首を斬った後に名前の訂正をさせていると言う話を聞いていました。

 

『コソコソしないで出て来たらどうだ?』

 

愈史郎の血鬼術で見えない筈なのに剣先を真っ直ぐと私達が隠れている木に向けていました。

愈史郎に血鬼術を解いてもらい亮壱さんの前に姿を表しました。亮壱さんに敵意が無い事、人を食べない無惨の呪いを解いていること、話をしたいと亮壱さんに接触した理由を伝えると、亮壱さんは私と愈史郎を交互に見てから刀を収めてくれました。

 

「お前達二人は今まで出会って来た人喰い鬼とは違う……俺に話とは一体なんだ?」

 

「話を聞いて下さりありがとうございます。此処では他の誰かに聞かれてしまいますので私達が暮らしている屋敷に行きませんか?」

 

「分かった……」

 

「それでは帰りましょう珠世様!!それと鬼狩り、着いてこい」

 

「行くなら行くぞ。日の出が近い……」

 

亮壱さんとの接触に成功した私達は亮壱さんと共に屋敷に帰ることが出来ました。

 

 

亮壱は珠世と愈史郎、茶々丸の後ろに着いてしばらく走っていると立派な屋敷が徐々に見えてきていた。

屋敷の前に到着すると、亮壱は鬼の身である二人と茶々丸を日に当たらないように先に中に入れてから亮壱も入って行った。

 

「茶だ。珠世様以外には淹れたくないが、珠世様が呼んだ客人だから淹れてやった、感謝しろよ」

 

「わざわざすまない…。有難く飲ませてもらう」

 

屋敷に入ってから珠世に案内され居間に通された。

それから愈史郎が亮壱へ上から目線の物言いと共にお茶を出すと亮壱は愈史郎の上から目線の物言いに対して、珠世の事が好きだから手を出すなと牽制をされたと思っていた。

 

「愈史郎……」

 

「何だ?気安く名を『好いている女の前で他人にその様な態度をしてしまうと嫌われてしまうと友人から聞いた』────な、何を言っている!?」

 

愈史郎は名を呼んだ亮壱に気安く名を呼ぶなと言おうとした所、亮壱が愈史郎の言葉に被せ、真菰から以前に聞かされた恋愛の話の一部を愈史郎に伝えたのだ。

愈史郎は一瞬何を言っているのかとほおけて居たが、亮壱が自分に意中の相手である珠世に嫌われない為の立ち回り方を教えている事に気づき慌てて亮壱の口を塞いだ。

 

「貴様は何の話をしている!」

 

「愈史郎が珠世さんを好いているのは此処に来る道中と茶を出す時に気づいた……好いている相手の前であの態度は悪手になると友人が言っていたぞ?」

 

「さっきの態度は悪かった。だから、俺が珠世様を好いている事を本人の前で絶対に言わないでくれ」

 

亮壱は首を縦に降って了承をすると、亮壱が了承するのを確認した愈史郎は珠世の左斜め後ろに控えた。

 

「愈史郎、お客様に対して無礼な事をしないでください」

 

「はい珠世様!」

 

珠世は最初の亮壱にした態度の事を注意すると愈史郎は背筋を伸ばし元気の良い返事をした。

愈史郎の返事を聞いてから珠世は亮壱へ顔と視線を向けて呼び出した理由について話し始めた。

 

 

珠世さんが俺に接触したのは鬼達の中で出回っている『痣の剣士』がどんな人物かを確認したくて接触したと言った。

そして、珠世さんは俺を見て、継国縁壱つまり師範に表情や痣等がかなり似ていると言われた。

 

「珠世さんは師範を知っているんですね」

 

「縁壱様が師範?一体どういう事何でしょうか?あの方は400年前にお亡くなりになっている筈です」

 

俺は師範と出会った三年前の事と師範が心残りにしている兄と無惨を倒す為に日の呼吸を教えてもらったと言うと珠世様は先程のお淑やかな雰囲気からガラッと変わった。

 

「日の呼吸を縁壱様から教えられたんですか!これなら…これなら!あの臆病屑野郎を屠れる!!」

 

「興奮している珠世様も綺麗だ!」

 

 

うわぁぁぁぁ!!

 

珠世が喜んでいるその裏で、鬼舞辻無惨は突然起こった寒気と震えに悲鳴を上げていた。

 

「どうされましたか無惨様……」

 

「何でもない、ちょっとした寒気を感じただけだ。それより、榊亮壱についてだ、童磨を達磨にした時は取り乱してまともな判断が出来なかったが、よく良く考えれば、お前の弟、継国縁壱の様な人間が早々に生まれるわけが無いと思った、時期を見計らい、完全復活し鬼殺隊共を根絶やしにするぞ黒死牟」

 

「分かりました無惨様……」

 

無惨からはすっかり怯えが無くなり鬼殺隊を根絶やしにする事を手足が復活した童磨を含めた上弦ノ鬼達と企てていた。

しかし、無惨は自分が夏の虫のように火へと近づいている事に気づいていなかった。

 

 

珠世さんはご乱心してから少しして落ち着きを取り戻した。

 

「先程は失礼致しました。亮壱さん、私と協力関係を結びませんか?」

 

「協力関係ですか……」

 

「はい、私は200年前から鬼を人に戻す薬を作っています。そこで、亮壱さんには、十二鬼月から採血短剣で血を取ってもらいたいのです」

 

愈史郎から三本の短剣を渡された。

 

「亮壱さんが私達に協力してもらう見返りに、無惨の情報と縁壱様が心残りにされている鬼になった兄、黒死牟の情報を提供します」

 

珠世さんの魅力的な申し出に俺は直ぐに首を縦に降って申し出を受けた。

受けた瞬間にまた珠世さんがご乱心になったのは言うまでも無い。




亮壱コソコソ話①

珠世のご乱心状態を見て以外にも綺麗だと思い愈史郎が惚れる理由が分かったと同時に無惨の所に居た時期は亮壱が想像もつかない酷い仕打ちをされてきたに違いないと思い、無惨をどう殺すか考えていた。

亮壱コソコソ話②

珠世の屋敷から出る際に愈史郎から次来た時に真菰に聞いた女性に好かれる為の話を聞かせて欲しいと言われ仲良くなった。

亮壱コソコソ③

亮壱は鬼達に『痣の剣士』と言われ続けて、怪我しているみたいで言われる度に腹を立てて、鬼達に自分の名前を言い回っている。

最後まで読んでいただきありがとうございます!!
もし宜しければ評価お願いいたします。


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顔合わせ

編集して再投稿させていただきました。
再投稿の理由は、次回話を出すのに少し苦しい感じになってしまいましたので再投稿させていただきました。


珠世さんと出会ってから、あっという間に1年の月日が経ち、桜の花がひらひらと舞い散る春の季節になっていた。日向から任務の伝令が届かず、藤の家の縁側で暇を持て余していると、空から慌てた様子でこちらに飛んでくる日向が見えた。

 

『亮壱サマ!亮壱サマ!御館サマガ、オ呼ビデス!』

 

「御館様が俺を?」

 

慌てた様子の日向を心配していると、日向は一息整えてから喋りだした。日向は御館様から俺に産屋敷邸へ来て欲しいという伝令を預かって、急いで飛んできたみたいだ。御館様の事は一度も見た事は無いが、一体何の御用で俺を呼ぶのか皆目見当もつかないが、取り敢えず呼ばれたからには行こうと支度をする為に立ち上がった。

 

「直ぐに着替えるから待っててくれ」

 

『ワカリマシタ!』

 

急いで寝ていた部屋に戻り、浴衣から隊服に着替えて紺色の羽織を着て、出掛ける支度を整えていた。支度が終わり、部屋を出ると藤の家の娘さんと出くわした。

 

「もう、行かれるのですか?」

 

「はい...。御館様からの招集みたいで、一晩泊めていただきありがとうございました。楓さんのお母様にもお伝えください」

 

「分かりました。亮壱様、また来てくださいね!鶏大根いっぱい作りますので!」

 

「ありがとうございます。それでは失礼します」

 

俺は楓さんにそう言ってから玄関を出て、藤の家を出た。藤の家を出てから、日向に御館様の所へ案内をしてもらおうとしたら、隠の人がやって来た。

 

「おはよう亮壱くん!」

 

「おはようございます涼音さん」

 

俺の元にやって来たのは女性隠の涼音さんだった。

涼音さんは俺が最終選別を受けた時に居たらしく、隠になっていなかったら、真菰と一緒で同期になっていた。

 

「涼音さんは何用で此処に?」

 

「亮壱くんを御館様の元に連れていく為に来ました!」

 

涼音さんは元気良く、そう言いながら黒い目隠しを取り出して俺に渡してきた。

 

「これは?」

 

「御館様の所への道は、柱か隠以外に覚えては行けないので、目隠しをして御館様の元に行きます!」

 

「目隠しをすると前とか見えませんよ?」

 

「大丈夫です!私が亮壱くんを背負って連れていきますので!」

 

女性である涼音さんに背負われるのは、申し訳ないと思いつつ背中に乗った。涼音さんの背中に乗ってから目隠しをすると、涼音さんは走り出した。

 

 

目隠しをして涼音さんの背中で揺られながら運んでもらっていると涼音さんが急に立ち止まってゆっくりと俺を降ろして目隠しを取ってくれた。

 

「此処が御館様の御屋敷だよ亮壱くん」

 

「水屋敷より大きい...」

 

「じゃあ、私の仕事はここ迄だから」

 

「ありがとうございました涼音さん」

 

「いえいえ、また非番の日にご飯食べに行こうね!」

 

涼音さんはそう言ってこの場を走り去って行った。

涼音さんが走り去ってから、御館様の御屋敷の門に近づいて、門を三回叩いた。門を三回叩いてから直ぐに、門が開かれて中から、何度かお会いしたことがある、あまね様が出てきた。

 

「お待ちしておりました亮壱様」

 

「お久しぶりです、あまね様」

 

あまね様に軽い挨拶を済ませてから門の中に入った。屋敷内に入って、あまね様の後に着いて御館様のいる所へと向かった。あまね様の後ろに着いて歩いていると、人の話し声が聞こえる一室に着いた。

 

「失礼致します...。耀哉様、亮壱様をお連れ致しました」

 

「ありがとう、あまね...。中に入ってくれるかい?」

 

あまね様の後に続いて部屋に入った。部屋に入ると、部屋の中に居る人達の視線が全て俺の方に向いた。

 

 

亮壱は産屋敷耀哉の居る部屋にあまねと共に入ると、その部屋で柱合会議をしていた柱達が一斉に亮壱に視線を向けた。

 

「「亮壱?」」

 

「「亮壱さん!」」

 

柱達の中でいち早く反応したのは、双水柱である義勇と錆兎、霞柱の無一郎と補佐をしている有一郎だった。

亮壱との接点も関わりの無い者にとっては、一隊士が柱合会議場所である産屋敷耀哉の屋敷に居るのか不思議に思っていた。

 

「初めまして亮壱。私は産屋敷耀哉、今日は来てくれてありがとう」

 

「いえ、私の様な一隊士をお呼びいただきありがとうございます」

 

亮壱は膝まづいて産屋敷耀哉にそう言った。

 

「御館様!この隊士は一体誰なのでしょうか!」

 

柱の一人、煉獄杏寿郎が亮壱と関わりある四人を除いて、他の柱達の思っている事を代弁して、亮壱についての説明を産屋敷耀哉に求めた。産屋敷耀哉は、亮壱に確認したい事があるからと煉獄杏寿郎の問いに答えた。

 

 

「俺に確認したい事とは一体何でしょうか御館様...」

 

俺は御館様にそう尋ねた。日々の任務をこなして、隊律違反も起こさずに隊士として恥ずかしくない行いをしてきたつもりでいたから御館様が俺に確認したい事に全く皆目見当もつかない。

 

「2年前の最終選別に亮壱が遅刻してやって来たと、あまねから聞いてね、どうして遅刻したのか理由を聞かせてくれないかい?」

 

「分かりました」

 

最終選別に参加する前に、鬼が女性隊士を襲おうとしている所に割って入った事、鬼と戦闘した事で遅刻してしまったと御館様に伝えた。

 

 

亮壱は遅刻した理由を産屋敷耀哉に話終わると、亮壱を褒める者とそうでも無い者に別れた。

 

「南無...。御館様、この者の遅刻した理由を聞く為に呼んだのですか?」

 

「そうだよ行冥。亮壱の話を聞いて確信したよ、亮壱が遅刻の理由になった鬼は──上弦ノ弐だからね」

 

産屋敷耀哉の発言に柱達は唖然とした。

何人の柱達を屠ってきた上弦ノ鬼、それも上弦ノ弐を退けただけでなく、上弦ノ弐と戦って直ぐに最終選別を受けている事に、驚きを隠せなかった。

 

「それは本当なのですか御館様!」

 

「本当だよ実弥...」

 

納得出来ない風柱・不死川実弥に産屋敷耀哉は優しい声色でそう言った。他にも納得出来ない様子の柱達に産屋敷耀哉は静かに語り出した。

 

「1年前の最終選別の日、上弦ノ弐と戦闘を行った元花柱・カナエに上弦ノ弐の情報を聞いた時に、最終選別を受けようとしている少年に助けられたと言ってたんだ」

 

産屋敷耀哉はカナエからの証言と最終選別の案内を頼んだ、あまねの証言を元に調べて亮壱を特定した。しかし、産屋敷耀哉は、カナエよりも歳下が本当に上弦ノ弐を退けたのか、疑っていた為、亮壱が入隊してから自分の鎹鴉で亮壱の行動を見ていたと柱達に伝えた。

 

 

 

最終選別の遅刻理由を話したら、何故か話が大きくなった。なんでも、あの時の女性隊士は元花柱で、俺が四肢を斬り落とした鬼は上弦ノ弐だったらしい。

 

「御館様、お褒めの言葉をくださりありがとうございます。ですが、御館様のお褒めの言葉は俺には相応しくありません」

 

「どうしてだい亮壱?君は柱が苦戦する上弦ノ鬼を退けたんだよ?」

 

「あの時の鬼が本物の上弦ノ弐でしたら、弱すぎます...」

 

十二鬼月について、鬼殺隊に入ってから真菰や錆兎さん、義勇さんから詳しい話を聞いていた。十二鬼月の上弦は柱が何度挑んでも殺される程強いと教えられた。

 

「え...上弦ノ弐は弱かったのかい?」

 

「はい...。女性隊士にしか興味が無いようなので、女性隊士に気を取られている間に不意をついて四肢を斬り落としました」

 

斬り落とした時の感触が豆腐と似ていると付け足して言うと、御館様とあまね様は引き攣った笑みを浮かべていた。錆兎さん、義勇さん、時透兄弟の方にも視線を向けると御館様と同じ引き攣った笑みを浮かべていた。

 

「最後に亮壱は何の呼吸を使っているか教えてくれないかい?」

 

「俺が使っている呼吸は日の呼吸です」

 

「それは本当かい亮壱?」

 

御館様とあまね様は驚いた顔になり、日の呼吸を教えてある錆兎さん、義勇さん、師範の兄の末裔である時透兄弟以外は日の呼吸を知らないようで首を傾げていた。

 

「あの〜、日の呼吸ってどんな呼吸何ですか?」

 

「日の呼吸はね、炎、水、雷、風、岩の五大呼吸は日の呼吸から派生させた一番最初の呼吸だよ」

 

桃色髪の女性の質問に答える前に御館様が全て言ってしまった。俺の師範は日の呼吸を編み出してから、当時の鬼殺隊士達に日の呼吸を教えたらしいのだが、誰一人師範に着いていなかった。師範は透き通る世界で隊士の肉体を見て、一人一人に合った呼吸を教えて五大呼吸が生まれたと聞いた。

 

「亮壱、日の呼吸は誰に習ったんだい?」

 

俺は御館様に師範の名前と出会い、修行内容を話した。修行内容を話している途中で柱の一人が『幽霊に呼吸を習うなんてド派手に面白い奴だな!』や『ありえない...幽霊に呼吸を習ったなんて嘘に決まってる』とネチネチ言ってるのが聞こえていた。

 

「教えてくれてありがとう亮壱」

 

「今の話を信じてくれるのですか?」

 

「勿論だよ。この世に鬼が存在しているから幽霊だって存在していると思うからね」

 

御館様は微笑みながら信じてくれると言ってくれた。御館様が信じてくれると言ってくれてから、一部だけ信じられないと言った柱達は静かになった。

御館様から柱候補になって欲しいと言われたが、弱い鬼しか倒してこなかった俺を柱候補にしても、強い鬼と出会ったら直ぐに死んでしまうと御館様に伝えたら、引き攣った顔になっていた。

 

「会議はこれで終わりにするね。亮壱、今日は来てくれてありがとう」

 

「礼には及びません。俺はこれにて失礼致します」

 

御館様に頭を下げて部屋を退出した。部屋を退出すると、あまね様も部屋から出て来て玄関まで見送ってくれるらしく、一緒に玄関へと向かった。

玄関に向かっている途中で、あまね様と御館様の御息女様とご子息様達に出会った。顔立ちは五人とも、あまね様にそっくりで礼儀正しいしっかりした子供達だった。あまね様にご子息様は何故女物の着物を着ているのかと聞いたら全員に驚かれた。

 

「凄いです亮壱様!一目で男と見破られたのは初めてです!」

 

ご子息の産屋敷輝利哉様は見破った事に喜んでいた。あまね様から話を聞くと産屋敷家には代々伝わる呪いがあるらしく、男のみに御館様と同じ火傷跡の様な呪いが降りかかるみたいで、産屋敷家で男の子が産まれたら厄除けで13歳までは女の子として育てるらしい。

 

「ひなき様、にちか様、輝利哉様、かなた様、くいな様」

 

しっかりと顔を見て名前を呼んだら御息女様達に何故か驚かれた。驚かれた理由は御館様やあまね様でも時々間違える御息女様達を一人一人顔を見ながら名前を呼んだ事に驚いたらしい。

 

「俺はこれにて失礼致します」

 

「本日はありがとうございました亮壱様」

 

「お時間がある時、是非遊びに来てください!」

 

「亮壱様ともっとお話してみたいです!」

 

「蹴鞠で遊びましょう!」

 

「私は花札をしたいです!」

 

「今、お茶を淹れる勉強をしていますので飲みに来てください!」

 

あまね様達に見送られながら俺は玄関を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってください!!」

 

御館様の屋敷を後にして昼餉を食べに行こうと鶏大根の美味い食事処へと向かう為に歩き出すと、後ろの方で女性の声が聴こえると同時に俺の羽織が力強く掴まれ足を止めた。後ろを振り向き、羽織を掴んでいる人を確認すると御館様の屋敷に居た蟲柱様だった。

 

「強引に呼び止めてしまいすみません」

 

「蟲柱様ですよね?何か自分に御用でしょうか?」

 

「今から蝶屋敷に来てもらいたいのですが、何か御予定がありますか?」

 

蟲柱様に予定を聞かれて、これから昼餉を食べに行くと答えたら、蟲柱が所有している蝶屋敷で昼餉をご馳走すると言われた。何故、俺を蝶屋敷に連れていきたいのかと理由を聞いたら、俺が本当に蟲柱様の姉である元花柱様を助けたのか確認をしたくて連れていきたいらしい。

蟲柱様の真剣な表情に鶏大根定食を夕餉に回して、蟲柱様の隣を歩きながら蝶屋敷に向かった。

 

 

私は一つ歳下の男の子と蝶屋敷に向かって一緒に歩いている。

私に歩幅を合わせてくれている冨岡さんより無表情な男の子は上弦ノ弐に襲われ、絶対絶命だった元花柱・胡蝶カナエ...私の姉さんの命を救ってくれた恩人かもしれない男の子...。

姉さんが手も足も出ない上弦ノ弐を本当に退けたのか、榊亮壱さんを見ていました。隙あらば、脇腹に指で突こうと狙っているのですが──全く隙がありませんでした。他の柱達でも、多少の隙が出来るのに、榊亮壱さんには全く隙がないんです。

 

「どうかしましたか蟲柱様?」

 

「何でもありませんよ榊さん」

 

「蟲柱様である貴女は、俺より上の立場ですのでさん付けはお止め下さい」

 

「分かりました、それでは亮壱君と呼ばせてもらいますね」

 

亮壱君はコクリと首を縦に振って、再び黙ってしまいました。此処で会話を途切らせたら、この子は蝶屋敷に着くまで黙っているのかもしれないと思い、会話を続けようと蝶屋敷に着くまで質問をし続けました。




大正コソコソ話!!
亮壱はあまり異性と関わった事が無く異性である、しのぶの隣を歩いている時は心臓がバクバクさせていた。


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日輪と一輪の花

★最新作品

・月牙天衝ッ!!
(ハイスクールD×D ×BLEACH)

黒崎一護の斬魄刀・斬月を持ってハイスクールDxDの世界に神様転生した男の子話。

・逆柱は嫌われている
(鬼滅の刃 ×BLEACH)

鬼滅の刃の原作知識の無い少年がBLEACHの平子真子に成って転生する。そんな平子真子が同じ転生者である少女に陥れられても弱音を吐かずに鬼殺隊の為に働く男の話。

輪廻の瞳を宿す者...。
(最弱無敗の神装機竜 × NARUTO)

サスケの写輪眼と輪廻眼を転生特典としてもらった少年が最弱無敗の神装機竜の世界に転生する話。


しのぶ様(そう呼ぶようにと言われたので)の隣をドキドキと心臓の鼓動を聞かれないようにしながら歩いていると、少し先に水屋敷より大きい屋敷が見えてきた。

 

「あれが蝶屋敷ですか?」

 

「はい、蝶屋敷では怪我を負った隊士を治療する病院の様な役割をしています」

 

今日まで鬼との戦闘による怪我を一切受けた事の無く、蝶屋敷を知らなかった俺だったが、これからは増援に行った際に負傷している隊士を連れてこれる様に場所をしっかり覚える様に目に焼き付けた。

 

トントントン...トントントン...

 

しのぶ様は屋敷の門を6回叩くと、1分もしない内に門が開いた。門が開いてから直ぐにしのぶ様は門を潜った、俺も後に続いて門を潜り中に入った。

 

「おかえりなさいませ、しのぶ様」

 

「門を開けてくれてありがとうアオイ。姉さんは台所ですか?」

 

「はい、カナエ様は昼餉の支度をしてます。しのぶ様の隣に居る人は怪我人でしょうか?」

 

「いえ、違いますよ?私が無理を言って来てもらった御客の亮壱君です」

 

「はじめまして...。階級・甲の榊亮壱と申します...」

 

「私は階級・癸の神崎アオイです。蝶屋敷でしのぶ様の元で働かせてもらっています」

 

アオイさんと互いに自己紹介を終えてから、しのぶ様とアオイさんに案内され蝶屋敷の中に入った。

 

「私は亮壱君の分の昼餉を用意しに行きますので、亮壱君を居間に案内してくださいねアオイ」

 

「分かりましたしのぶ様、行きましょうか亮壱さん」

 

「よろしくお願いしますアオイさん」

 

しのぶ様は台所の方へと行ってしまい、俺はアオイさんの後について歩き居間に向かった。居間に着き中に通されると、部屋の隅に小さな女の子が置き物の様な感じで座っていた。

 

「アオイさん...この子は一体?」

 

「この子は栗花落カナヲと言います。カナヲ?この方はしのぶ様が呼んだお客様なのでご挨拶しなさい?」

 

アオイさんがカナヲと言う女の子に優しい口調で話すと、一枚の銀貨を取り出して、上に向かって銀貨を弾いた。上に弾いた銀貨がカナヲの手の平に落ちて、しばらくすると口を開いた。

 

「裏...。栗花落カナヲ」

 

「この子は自分の意思では決められず、さっきの様に銀貨を弾いて物事を決めるんです」

 

アオイさんはカナヲの頭を優しく撫でながら、先程の行動について教えてくれた。自分の事を自分で決められない事に、幼いながら酷い目に会ったのだろうと感じた。

 

「俺は...榊亮壱だ、よろしくカナヲ...」

 

アオイさんに習って、カナヲに優しい口調で自分の名前を名乗った。自分の名前を名乗り終わるとカナヲは何も言わないが、コクリと首をゆっくり縦に振ってくれた。

 

「え...」

 

カナヲとの挨拶が終わり、しのぶ様が戻ってくるまでどうしようかと考えていた時だった。居間にしのぶ様と同じ蝶の羽根の様な羽織を着ている女性が入ってきて俺と目が合うと驚いた顔になっていた。

 

 

今、目の前に感謝の言葉を伝えたい男の子が居た...。

今から2年前、見回り中に上弦ノ弐と出くわし討伐しようと戦ったのだが、上弦ノ弐はそこら辺の鬼や下弦ノ鬼より強く手も足も出ずに敗北した。血鬼術によって肺をやられ、鉄扇による攻撃で重症を負わされた私は、ただただ上弦ノ弐に殺されるのを待っているしか無い状況に、目の前に居る男の子が助けてくれた。

手も足も出なかった上弦ノ弐を退け、私の凍った肺を溶かそうと、じ、人工、こ、呼吸/////をしてくれた。人工呼吸をしてくれたお陰で、しのぶから奇跡的に前の様に最前線で戦うのは無理だけど短時間なら戦える事と日常生活には何の支障も無く過ごす事が出来ると言ってくれた。

 

「初めまして、胡蝶カナエと言います。君の名前を教えてくれるかな?」

 

「俺の名前は榊亮壱と申します...呼び方は好きな様に呼んでください」

 

一応、ちゃんと会うのは初めてだから自己紹介はきっちりと行った。自己紹介を終わらせてから、あの時の事に対してのお礼を言うと、首を傾げながら腕を組み始めた。

どうしたのかと尋ねたら、私の顔を覚えてなくて何処で会ったのかを思い出そうとしてたみたいだった。

 

「ふふ、私と亮壱君が出会ったのは1年前よ。最終選別に向かおうとしていた亮壱君が、上弦ノ弐によって重症を負わされた私を助けてくれたのよ?そ、それに...じ、人工呼吸/////をしてくれたの」

 

「あ──お、思い出しました/////あの時はすみませんでした」

 

あの時の事を鮮明に覚えている私は、きっと顔を赤くしながら言っていると思っている。ずっと無表情だった亮壱君は、表情はピクリとも動いてないけど、下を向いて薄らと顔が赤くなっていた。

 

────凄く可愛い...

 

「今の話を昼餉の後、詳しく聞かせてくれますか〜。亮壱君?」

 

しのぶがシュッシュッと拳から音を出してニッコリと笑顔で立っていた。こうなったしのぶは怖いから、アオイと一緒に居間を出て、人数分の皿に料理をよそいに台所へと避難した。

 

 

恐ろしかった...。

昼餉を食べ終えた後、カナエ様にした人工呼吸は下心があってしたのかと、シュッシュッと拳を振るいながらニコニコと笑顔でしのぶ様が聞いて来た。

 

「あの時は、急いでいたので顔を全く見ていませんでした。それに...顔を見ていたとしても下心など一切無しでやっていると思います」

 

我ながら完璧な返答だと思いながらしのぶ様を見ると、何故かむくれていた。しのぶ様だけでなく、しのぶ様の隣に座っていたカナエ様までもむくれていた。

 

「それは、姉さんに魅力が無いと言いたいんですか亮壱君?」

 

「下心一切無いって...女として傷つくわね...」

 

完璧な返答だと思っていたのだが...しのぶ様はカナエ様について語り、カナエ様は落ち込んでしまい、場が混乱状態になってしまった。アオイさん、昼餉の時に仲良くなった、なほ、きよ、すみ達によって事態を収拾してもらい事なきを得る事が出来た。

 

「今夜、亮壱君は任務ある?」

 

「いえ、今日は日向...鎹鴉から任務は無いと言われましたのでありません」

 

「なら、姉さんを助けていただいたお礼をしたいので今夜は蝶屋敷に泊まっていってください。夕餉に鶏大根を作ります」

 

泊まっていって欲しいと言われたが、女性の屋敷(なほ、きよ、すみ、カナヲを除く)で一晩過ごすのは気が引けて、断ろうと思ったのだが、鶏大根を作ると言われ悩んでいた。

 

「感謝の気持ちを受け取ってください亮壱君」

 

「亮壱君が居たから、私はこうしてしのぶや蝶屋敷の皆と過ごせているの...命を助けてくれたお礼をさせて!」

 

「私からもお願いします亮壱さん!」

 

「わ、分かりました...。一晩お世話になります」

 

三人の押しに負けて、今夜は蝶屋敷で過ごすことになった。

 

 

「俺と立ち会え、榊亮壱!」

 

蝶屋敷に一晩お世話になる事が決定してから数分後に──柱達に囲まれて、柱の一人、傷跡だらけの柱に勝負を申し込まれることになった。




読んでいただきありがとうございます!!

亮壱コソコソ話①

亮壱を初めて見たアオイは、亮壱とアオイが同い歳だとは思わず、歳上だと思っていた。

亮壱コソコソ話②

カナエ、しのぶに無表情=無口と思われていたが、自分は無口では無いと弁明をした。


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月下の語らい

アオイさんと亮壱のやり取りを書き忘れて投稿してしまいましたので、再投稿になります。


★最新作

・無個性だからって諦められるかよ!!
(ワンピース×僕のヒーローアカデミアオリ主)

・もう一人の煉合消防官
(炎炎ノ消防隊オリ主)


「俺と立ち会え、榊亮壱!!」

 

亮壱が蝶屋敷に一晩お世話になる事が決定してから数分後──亮壱は蝶屋敷にある道場に来ていた。道場の中心で木刀を持ち、体中が傷跡だらけの柱...風柱と向き合っていた。風柱と向き合っている周りには、霞柱(時透兄弟)、双水柱、岩柱、蛇柱、炎柱、恋柱、音柱、蟲柱、元花柱という錚々たる面々が亮壱を好奇な目で見ていた。

 

「御館様の話を疑う訳ではねぇが、ヒョロヒョロしてそうな奴が上弦ノ弐を退けたなんて信じられねぇ。だから俺は、お前と立ち会って見定める」

 

「ド派手にいいじゃねぇか!俺が合図を出してやるよ不死川!」

 

風柱の言葉に、岩柱、蛇柱、炎柱、音柱、蟲柱の五名は静かにうなづいた。それもその筈、鬼殺隊員の中でトップに君臨している柱が手も足も出なかった相手を、当時鬼殺隊員でも無かった亮壱が退けたなんて信じられる人間は居ないだろう。

 

(私より歳下なのに大人ぽくって凛々しい顔して素敵だわ!)

 

恋柱だけは、他の柱達とは違う事を考えていた...。

 

「あの時、俺は上弦ノ弐が油断をしていたので退けられただけです...。上弦ノ弐が本気を出せば、俺なんか吹けば飛ぶ様な脆弱な存在です...」

 

「ごちゃごちゃ卑屈言ってねぇで構えろ!本気でやらなかったらぶっ殺す!」

 

「殺したら隊律違反だぞ不死川!」

 

「プフッ...」

 

不死川のぶっ殺す発言を真に受けた炎柱・煉獄杏寿郎が隊律違反だと指摘した。そのやり取りを見ていた恋柱・甘露寺蜜璃は、笑いを堪える事が出来ずに吹いてしまい、亮壱を除く、この場にいる人達の視線が集まり、甘露寺蜜璃は小さく謝罪の言葉を呟いた。

 

「俺はお前を殺す気で行く...死にたくなかったら真面目にやれ」

 

「風柱様の御期待に応えられるか分かりませんが、胸を借りるつもりでやらせていただきます...」

 

亮壱の言葉を最後に不死川と亮壱は木刀を構え、試合開始の合図を出す音柱・宇髄天元を待っていた。宇髄天元は、両者が木刀を構えるのを見て口を開いた。

 

「ド派手にやりやがれ!」

 

変わった試合合図で、不死川と亮壱の勝負が始まった...。

 

不死川は亮壱が本当に上弦の弐を退ける力があるか、自分が先手を決めようとしたが...動かなかった──否、不死川は動けなかったのだ。

多くの鬼と戦い、風柱に登り詰めた不死川だったが...隙が一切無い亮壱にどう動けばいいのか攻めあぐねていた。

 

「風の呼吸壱ノ型 塵旋風・削ぎ!!」

 

攻めあぐねていた不死川だったが、このままでは埒が明かないと感じ攻撃を仕掛けた。亮壱は迫り来る不死川の攻撃を前にしても冷静で、呼吸を整えていた。

 

「日の呼吸...漆ノ型・斜陽転身」

 

風と日輪のぶつかり合いで、この立ち会いの勝負は一瞬で方が着いた。亮壱は不死川の攻撃を紙一重で躱し、不死川の木刀へ一閃...。

 

カランッ...

 

亮壱が一閃した不死川の木刀は中心から綺麗に折られ、折られた刀身は道場の床に音を立てて落ちた。

勝負は一瞬で終わり、一隊士が柱である不死川の木刀を折ったことに水柱、霞柱以外の柱達は唖然としていた。亮壱の実力を知っている水柱達は当たり前だと言わんばかりにウンウンと頷き、亮壱を追いかけて鬼殺隊に入った霞柱達は熱い視線を送っていた。

 

 

 

 

「俺の負けだ...。お前の動きが見えねぇ、お前が上弦の弐を退けた事を認めてやる」

 

風柱様との稽古は、風柱様が負けを認められて終わってしまった。あの時の弱い鬼を取り逃してしまった事を許してくださる様で、少し胸を撫で下ろした。風柱様から偶に稽古に付き合う約束をして、風柱様は何処かに行ってしまった。

 

「流石だな亮壱!」

 

「亮壱との稽古のお陰で少しだけ目で追えた...」

 

風柱様が居なくなってから錆兎さんと義勇さんが、わざわざ労いの言葉をかけに近づいてきてくれました。錆兎さんと義勇さんの後ろには、眩しい程の笑顔で近づいてくる時透兄弟が木刀を片手にやって来た。

 

「「亮壱さん!俺達にも稽古をつけてください!」」

 

「俺なんかで良ければ...」

 

「「よし!」」

 

時透兄弟の稽古を初めに、この場にいる全員と日がくれるまで手合わせをする事になった。

 

 

 

その日の夜...。

蝶屋敷の人達は寝静まっていたが、中々寝付けなかった俺は縁側で夜空に浮かぶ満月と満月の周りで輝く星を眺めていた。そんな俺の元に、誰かこちらに向かってくる足音が聞こえた。

 

「寝付けないんですか亮壱さん?」

 

「はい...ちょっと寝付けなくて夜空を眺めてました...。アオイさんも同じですか?」

 

「はい、私も少し眠れなくて星空を眺めに来ました」

 

こちらに向かってきた足音の正体はアオイさんだった。

アオイさんも寝付けない様で、俺と同じく夜空を見に来たらしい。アオイさんも縁側に座ると、儚げに溜め息をつき、星空を眺めた。何か落ち込んでいるアオイさんに、どう声をかけようか悩んでいると、アオイさんの方から声をかけられた。

 

「亮壱さんは...どんな思いを持って、鬼を殺しているんですか?」

 

「どんな思い...ですか?」

 

「はい」

 

この質問の意図を尋ねると、アオイさんは静かに最終選別を受けた時の事を話し始めた。アオイさんは最終選別を受けた時、目の前で同じ受験者が鬼に食われる所を見たらしく、鬼が怖くて戦えなくなり、最終選別が終わるまで隠れて過ごしていたらしい。

 

「俺は...誰かの明日を守る為に、鬼を斬っています」

 

「誰かの明日を守る為にですか?」

 

「はい。この考えに至ったのはつい最近なんです...」

 

師範の為に、師範の兄上、鬼舞辻無惨を倒す事を胸に修行をしていたが、師範から私の心残り以外に自分が刀を握る理由を見つけなさいと言われた事があった。師範の心残りにしている事を解消する事しか考えてなかった俺に、鬼殺隊へ入隊しても自分自身が刀を握る理由を見つける事が出来なかった..。

 

「呼吸を教わった師範から、自分が刀を握る理由を探せと言われたんです。俺は他の隊士とは違い、何も失ってません。そんな俺に理由なんて見つけられませんでしたが、自分が刀を握る理由を見つけたんです...」

 

「それが、誰かの明日を守る為ですか...」

 

「何日前か、鬼に襲われている村を発見した事がありまして、村を襲っていた鬼を斬ると、村の人達から【村を助けていただきありがとうございます!!貴方様のお陰で明日の朝日を拝めます】って言われたんです...」

 

「・・・・・・・」

 

「その言葉をきっかけに、誰かの明日を守る為に鬼を斬ると日輪刀に誓ったんです...」

 

俺が鬼を斬り続ける理由を話すと、アオイさんの表情が暗くなっていた。何か気に障る様な事を言ってしまったのか、恐る恐る、表情が暗くなってしまった理由を尋ねた。

 

「私...亮壱さんが羨ましいです。とても強くて、鬼を恐れずに立ち向かう亮壱さんがとても羨ましいです...」

 

アオイさんの表現が暗くなってしまったのは、不甲斐ない自分が嫌になっていたみたいだ。アオイさんの同期や俺や真菰等の後輩が鬼殺をしているのに、自分は怖くて縮こまって居ることに対しても苛立っていた。

 

「アオイさん...。俺は...アオイさんの思いを背負って、鬼と戦います...」

 

「亮壱さん?」

 

「アオイさんの色んな思いが...伝わってきました。自分では微力かもしれませんが、アオイさんの思いを背負って戦います...だから、笑顔で居てください」

 

アオイさんと話していて、いい感じに眠くなり始め、そろそろ眠りに着こうと思い立ち上がった。俺が立ち上がって直ぐに、アオイさんも立ち上がった。立ち上がった時に見えた、アオイさんの表情は暗く無かった。

 

「ありがとうございます亮壱さん」

 

アオイさんが御礼の言葉と共に、月光がアオイさんを照らし、その瞬間に見せた笑顔はとても美しいかった...。

 

 

 




読んでいただきありがとうございます!!


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浅草編
日輪を継ぐ者


大変お待たせしました!


鬼殺隊に入隊してから、四年の月日が流れた…。

病気や怪我を1度もする事無く、日向から言い渡される任務をこなしていた。任務をこなしながら師範の兄である六つ目の鬼、鬼を生み出した元凶・鬼舞辻無惨の両名を探し出す為に、任務の先々で出会う鬼達に聞き回る日々を送っていた。

 

「亮壱サマ!亮壱サマ!任務ハ浅草二居ル隊士トノ合流デス!」

 

何時でも任務に赴ける支度を整え、藤の花の家紋の家で任務を待っていると、日向が任務を持って帰ってきた。今回の任務は浅草にいる隊士と合流して、行動を共にするという長期任務のようだ。日向から任務内容を聞いてから直ぐに藤の花の家紋の家を出て、目的地である浅草へと向かった。

 

「そういえば...珠世さんから浅草に拠点を移したと文を頂いたな...」

 

つい先日、茶々丸が鬼の血を取りに来ていた際に、珠世さんから俺宛てへの文が添えられていた。直ぐに文を確認すると、浅草に鬼舞辻無惨が居るという情報を得て、鬼舞辻無惨に近づく為に拠点を浅草に移すという内容だった。

 

「日向...。合流する隊士の名を教えてくれないか?」

 

「カァー!合流スル隊士ノ名前ハ!竈門炭治郎デス!」

 

竈門炭治郎隊士について、日向に更に尋ねた。15歳の少年で、小さな子供一人入れる木箱を背負っているらしい。何故、木箱を背負っているのかを不思議に思いながら、竈門炭治郎隊士と合流する浅草へと急いだ...。

 

 

 

 

俺の名前は竈門炭治郎だ!

鎹鴉からの情報で、鬼が潜んでいると噂がある東京・浅草に来ていた...。浅草に来てみたものの、建物の高さ、人の多さ、夜なのに明るい都会に気疲れしてしまった。

 

「すみません....山かけうどんを一杯ください...」

 

明るい浅草を出て、静かな道に出た。少し歩くと屋台のうどん屋があって、山かけうどんを一杯頼んで長椅子に腰掛けた。長椅子に腰掛けると、禰豆子はウトウトしていると俺の肩に頭を乗せて眠っていた。

 

「山かけうどん出来たぞ」

 

「ありがとうございます」

 

禰豆子をそのまま寝かせて、出来たての山かけうどんの汁を飲んで落ち着こうとした時だった──浅草の方から家族が殺された時に家に残っていた知らない誰かの匂いがした。

 

手に持っていた、山かけうどんを地面に落としてしまったが、一刻も早くその匂いの元に行こうと日輪刀を持って走った。

 

人混みを掻き分けて走り続けて...匂いの元に辿り着き、匂いを発している人物を俺の方に強引に振り向かせると、青白い顔をして瞳の色が真っ赤な西洋の格好をした鬼舞辻無惨だった。

 

 

 

 

忌々しい...。

私の目の前にいる杓子の子供の両耳には、かつて私に屈辱を与えた者が付けていた花札の耳飾りをしていた。花札の耳飾りを見た私は、私の中で燃え滾っている怒りを抑えていた。

 

「月彦さんのお知り合いですか?」

 

「いいや?どうやら人違いで声をかけてしまったみたいだ」

 

人間に混じりながら青い彼岸花を探し出す為、私は仮初の結婚をしていた。妻になっている女は杓子の子供が気になった様で、知り合いかと聞かれ、知り合いでは無いと否定した。

花札の耳飾りの子供のせいで、女と子供に不信感を持たせる前にこの場から離れる事に決めた。

花札の耳飾りをしている子供に着いてこられては面倒しかないと考え、癪だが私の近くに居た人間を鬼に変えようと手を伸ばした時だった...。

 

「人が多く行き交う所で...手を無防備に出すのは危ないですよ?」

 

そう言って私の手を掴んだ者が居た...。

怒りが更に高まり、私の手を掴んだ穢らわしい人間の顔を見た瞬間──私の中にあった怒りは跡形もなく消え去った。

左側頭部にある痣、何も写していないような瞳、何を考えているのか分からない表情──私の手を掴んだ者は、かつて私に屈辱を与えた継国縁壱にとてつもなく似ていた。

 

 

 

 

ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!

 

浅草に到着してから直ぐに、私は竈門炭治郎隊士を探す為に透き通る世界を使い、探していた。呼吸を習得している鬼殺隊士は常人とは肺の大きさが違い、透き通る世界を使えば直ぐに見つける事が出来る。透き通る世界を使って探し歩いてから数分で、鬼殺隊士を見つけ出すことが出来た...だが、鬼殺隊士の近くにおかしな体の作りをしている者が居た。

心臓が七つ、脳が五つもあり、明らかに普通の人間がする様な体内構造では無かった。俺はその者に近づこうとすると、いきなり手をこちらに伸ばしてきたので掴んだ。

手を掴んだ事でその者が俺の方に振り返った瞬間、少し間があったが、抱いていた子供を宙に放り出して、奇声をあげながら一目散に逃げるが如く、何処かに走り去ってしまった。

 

「お怪我はありませんかお嬢様?」

 

「ううん、大丈夫だよ!」

 

宙に放り出された子供が地面に落ちる前に受け止め、怪我をしていないかと尋ねた。宙に放り出された子供に怪我は無く、逆に楽しかった様で、もう一度宙に放り出して欲しいと頼んできた。

 

「ご婦人...夜に女性とお子様が出歩くには危険な時間帯です。旦那様は探しておきますのでお送り致します」

 

「そう?ありがとうございます」

 

ご婦人とお子様を送り届ける事になり、今目の前にいる隊士が竈門炭治郎であろう少年に、何処かで待っていてくれるように頼んでから、ご婦人とお子様を送りに向かった。

 

「にゃ〜お」

 

「茶々丸...」

 

「あ!猫さんだ!」

 

ご婦人とお子様を送り届けている最中、茶々丸が俺の目の前に現れた。目の前に現れた茶々丸は一鳴きして、俺の足に頭を擦り付けてから何処かへと行ってしまった。きっと、俺が浅草に来ている事を珠世さんに報告しに行ったのだろうと考え、1度止めた足を動かし、ご婦人とお子様を送り届けた。




読んでいただきありがとうございます!


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日輪を継ぐ者…②

最新作

★無限な教師になりました
(ハイスクールD×D × 呪術廻戦[五条悟系オリ主])

是非、読んで見てください!


私は走った...。

あの場から...奴を視界から消す為に、何振り構わずに走り続けていた。走り続けていると、気づけば人通りが全くない浅草の路地裏に来ていた。その場で私は、乱している呼吸を整えて、冷静さを取り戻していた。

 

「あの瞳!! あの表情!! あの痣!! 間違いなく奴だ!! 」

 

私が浅草で見た奴の顔は数百年前、私に耐え難い屈辱を与えた継国縁壱そっくり──いや、瓜二つと言っていい程、似ていた。童磨、そこらの鬼達で何度か見てきた顔の筈なのに、奴を前にしたら体が震えだしていた。

 

「この私が!! 完璧な存在の私が2度にわたって人間如きに臆してたまるか!!」

 

私は直ぐに花札の耳飾りをしている子供、あの剣士を殺すべく、私の部下である矢琶羽、朱紗丸を刺客として送った。二人を奴らに送り込み、私は高みの見物をする為に無限城へと戻った。

 

 

 

 

ご婦人とお嬢様を送ってから、俺はさっきまで居た場所に戻っていた。合流する竈門炭治郎を探そうと、再び透き通る世界に入ろうとしたら、俺と別れた所で頭巾を被って竈門炭治郎が待っていた。

 

「待たせてしまってすまない…。此処では五月蝿すぎるから別の所に移動しよう」

 

「は、はい!!──ああ!? すみません!!妹を置いてきてしまったので妹を置いてきてしまった場所でも良いでしょうか!!」

 

「お前に合わせる…」

 

俺達は浅草から、竈門炭治郎が置いてきてしまったと言う妹の元に向かった。竈門炭治郎が妹を置いてきてしまった場所は、浅草から少し離れた静かな場所だった。

 

「改めて…。俺の名前は榊亮壱…鬼殺隊の人間だ」

 

「俺は竈門炭治郎と言います!! 同じく鬼殺隊に属しています!階級は癸です!」

 

お互いに自己紹介を終わった所で、竈門炭治郎が置いてきてしまった妹の元に辿り着いた。妹を置いてきてしまった場所は、屋台のうどん屋で、炭治郎はあの男の匂いを嗅いだ瞬間に店主が丹精込めて作ったうどんを目の前で地面に落として走り去った為、店主の誇りに傷をつけたらしく、激怒していた。

 

 

 

 

ズルズル──

 

ズルズル──

 

禰豆子を置き去りにしたうどん屋に戻って来ると、うどん屋の店主がカンカンに怒っていた。皿を割ってしまって金を払おうとしたら余計に怒ってしまった。皿を割った事よりも、うどんを食わなかった事に怒っていて、もう一度山かけうどんを頼んだ。禰豆子にも食べさせようとしてきた店主に亮壱さんが食べると言ってくれてその場は収まった。

 

「炭治郎…。お前の妹...鬼か?」

 

隣に居る亮壱さんから禰豆子が鬼であると見破られ、箸を止めて固まった。鬼殺隊の人間は鬼によって人生を狂わされていると鱗滝さんから聞いていた俺は、亮壱さんに何て言おうかと考えていた。

 

「慌てるな…。ただの確認だけだ、殺そうとはしていない…。それに、お前の妹は人を食っていないだろ?」

 

「は、はい…。禰豆子は鬼にされても一度も人間を襲った事はありませんし、食べようとした事は無いです!!」

 

禰豆子は鬼だけど、人間を襲った事、人を食べようとした事は無いと亮壱さんに懸命に訴えた。そんな俺に亮壱さんは何も言わずに、俺の頭に手を優しく置き、撫でた

 

「よく頑張った…。お前は良く頑張ったよ炭治郎…」

 

「はい...はい...ありがとうございます」

 

頭を撫でる亮壱さんの手は昔、俺の頭を撫でてくれた父さんの様な暖かく、優しい温もりを感じた。俺は、長男なのにその場で泣いてしまった。亮壱さんは、泣いている俺を抱き寄せて胸を貸してくれました。

 

「今は…溜まっている涙を流せ…。お前は良く頑張ってきた、だから…今は泣いても良い」

 

「あ…りが…とう…ございます…」

 

俺は亮壱さんの腕の中で、涙が止まるまで泣き続けた。亮壱さんの腕の中は、お日様の様に暖かく良い匂いがしていて、とても安心出来た…。

 

 

 

 

絶望的な状況でも、諦めずに前に進んだ炭治郎に労いの言葉をかけたら泣いてしまった。炭治郎の泣き姿に父性本能?みたいなのが働いて、気づいたら自分の胸元に抱き寄せて、泣き止むまで優しく頭を撫でていた。

 

「ムー!」

 

炭治郎を撫でていると、妹の禰豆子がジッと俺を見ていた。

 

「お前も来るか…?」

 

「ムー!」

 

ジッと見ている禰豆子に来るか?と聞くと禰豆子は、自分を殺すかもしれない俺の膝の上に、何の警戒もせずに座った。

俺の膝に座った禰豆子は、俺の手を自分の頭に置いて、上下に動かしながら撫でてと言わんばかりに見てきた。炭治郎と同じように撫でると禰豆子は嬉しそうにムームーと言いながら足をパタパタと動かして喜んでいた。

 

「良い子だ....。炭治郎の為に力を貸してやってくれ」

 

「ムー!」

 

当たり前だと言わんばかりに、禰豆子は胸を張って返事を返してくれた。俺は...この二人を命に変えても守らなければならない義務がある。

この義務は、俺と師範と交わした約束の一つだ。




読んでいただきありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o)))


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日輪を継ぐ者…③

しばらくの間、炭治郎は声を出しながら溜めていた涙を流していた。炭治郎の泣き声を心配そうに、うどん屋の店主が見ていたが、炭治郎の事は大丈夫だと一声をかけると、うどんの仕込みに戻って行った。

俺の膝に座っている禰豆子も、泣いている炭治郎の頭を一緒に優しく撫でていた。泣いていた炭治郎は、溜めていた涙を流しきった様だ。泣き終わった炭治郎は少し照れた様子で、真っ赤になっている目元に残っている涙を羽織の袖で拭いていた。

 

「長男なのにお見苦しい所を見せてしまいすみません…」

 

「気にするな…。ああいう時は満足するまで泣いた方がいい…溜め込みすぎるのは体にも心にも悪い…」

 

最近の長男は泣いてはいけないのかと不思議に思いながら、うどん屋の店主が煎れてくれた茶を啜った。俺が茶を啜っている間、炭治郎は食べ途中のうどんを一啜りで食べきった。炭治郎が食べ終わり、うどん屋から移動しようとした時…。

 

「にゃ〜ん」

 

「茶々丸…」

 

お子様と婦人を送っている時、俺の前に現れた珠世さんが飼っている猫の茶々丸が再び俺の前に現れた。突然現れた茶々丸を不思議そうに見ている炭治郎を他所に、茶々丸は[着いてこい]という感じで俺を見た後、多分珠世さんが居る場所へと案内をしてくれようと歩き出した。

 

「着いて行くぞ炭治郎、禰豆子…」

 

「は、はい!」

 

「ムー!」

 

俺達は、茶々丸の後を追って走った。幸いにも茶々丸は、俺達に合わせて歩いてくれているお陰で、茶々丸との距離は離されずに一定を保って着いて行けた。

茶々丸に着いて、しばらく歩き続けていると前方に見知った顔が腕を組んで、俺達を見ていた。

 

「久しぶりだな亮壱。相変わらず表情は無表情のままだな」

 

「事実だから何も言えないが、久しぶりに会った者にかける言葉では無いと思うのだが…」

 

久しぶりに会った愈史郎と言葉を交わしている他所で、炭治郎は愈史郎を見て困惑していた。炭治郎は嗅覚が常人より優れているらしく、色々な匂いを嗅ぎ分けることが出来る。だから匂いで愈史郎を鬼と認識しているが、人を食べず、珠世さんが作り出した鬼である愈史郎が他の鬼と匂いが違うと困惑しているみたいだ。

 

「亮壱さん、この方は一体…」

 

「匂いで嗅ぎ取れていると思うが…。目の前にいる愈史郎は、禰豆子と同じく人を食わない鬼だ…」

 

鬼である愈史郎が堂々と鬼殺隊の前に現れた事に対して困惑している炭治郎に、愈史郎は禰豆子と同じ人を食べず生活をしている鬼だと教えた。

 

「炭治郎…。愈史郎に聞きたい事がありそうだが、後にしよう。お前が聞きたい事は、俺達がこれから行く場所に答えてくれる人が居る」

 

「分かりました…」

 

愈史郎に何かを聞きたそうにしていた炭治郎にこの場は耐えてもらい、愈史郎の後に続いて歩を進めた。

 

 

 

 

愈史郎の後に着き、しばらく歩き続けていると愈史郎は何も無い所で立ち止まった。愈史郎は血鬼術を使い、打倒無惨を掲げながら珠世と茶々丸の三人で暮らしている隠れ家を隠している。愈史郎が一度だけ血鬼術を解くと、何も無かった場所に突然、大きな屋敷が現れた。

 

「さっさと入れ」

 

炭治郎と禰豆子を先に中へ入れてから、俺、愈史郎の順に珠世さんの屋敷内に入った。愈史郎は入って直ぐに血鬼術を屋敷全体に施してから、珠世さんが待っている場所へと案内をしてもらった。愈史郎の案内で屋敷内にある和室の中に入ると、珠世さんが俺達を待っていた。

 

「お久しぶりですね、亮壱さん」

 

「お久しぶりです珠世さん…」

 

一年ぶりの再会の挨拶を済ませ、用意されている座布団の上に座った。珠世さんは炭治郎達にも座る様に促し、炭治郎は戸惑いながらも座布団の上に座った。

 

「茶だ。一応、お前らは珠世様の客だからな…」

 

「丸くなったな愈史郎」

 

「うるさい…。黙って飲んでいろ」

 

愈史郎が出してくれた茶で一息ついてから、珠世さんが茶々丸を寄越してまで俺達を此処に呼んだ理由を尋ねた。珠世さんは視線を俺から禰豆子へと変えた。

 

「亮壱さん達を呼ばせて頂いたのは、そちらに居るお嬢さんについてお聞きしたくて呼ばせて頂きました」

 

珠世さんは炭治郎が浅草に入った時、鬼殺隊の人間が鬼を連れて居るのを不思議に思い、此処に連れて来ようと考えていた様だ。珠世さんは炭治郎に声を掛けようと近づいたら、炭治郎が突然走り出してしまい、炭治郎の後を追い、追った先で鬼の首領である鬼舞辻無惨、そして俺を見つけ、この隠れ家に俺と共に炭治郎達を来させる為に茶々丸を案内に出したと話した。此処に連れて来た経緯を聞いてから、珠世さんは炭治郎達に自己紹介をすると炭治郎は自身の自己紹介と禰豆子の自己紹介を行った。

 

「あ、あの!お聞きしたい事があるんですが!」

 

「何でしょうか?」

 

炭治郎は自己紹介を終えると、この屋敷に来る道中で愈史郎に聞こうとしていた事を珠世さんに尋ね始めた。

 

 

 

 

「人の怪我を手当して辛くありませんか?」

 

「人の怪我を手当していてもつらくないですよ?普通の鬼よりかなり楽かと思います。私は、私の体を随分弄っていますから鬼舞辻の呪いも外しています」

 

「かっ、体を弄った?」

 

亮壱さん、珠世さんから食人行動は無いと聞いているけど…鬼になった以上、人の血を見てしまったら人を食べたいと思うのが本能だが、珠世さんは自分の体を改造して飢餓状態にはならず、少量の血だけで満足して鬼舞辻無惨の呪いも外していると話してくれた。愈史郎さんも同じなのかと聞くと、愈史郎さんは珠世さんが200年の歳月と研究によって、たった1人だけ鬼にしたらしい。

 

「愈史郎を鬼にしたのは、死にそうだったこの子を延命措置の為にしました。私は鬼舞辻無惨の様に、鬼を増やそうとは考えていません」

 

この言葉を発した時の珠世さんからは嘘、偽りの無い清らかな匂いがしていた。その匂いで、珠世さんは信用出来る人だと判断した。

 

「珠世さんは鬼を人に戻す方法を知っていますか?」

 

「はい、鬼を人に戻す方法を知っています」

 

「本当ですか!?教えてください!!」

 

鬼を人に戻す方法──鬼舞辻無惨によって鬼にされた禰豆子を人に戻す方法を知っていると言った珠世さんに、その方法を聞こうと近づいたら愈史郎に投げ飛ばされた。

 

「愈史郎...」

 

「殴ってはいません!投げただけです!」

 

「それもいけません」

 

珠世さんから改めて、鬼を人に戻す方法について話してくれた。

 

「どんな傷にも病にも、必ず薬や治療方法があるのです。ただ、今の時点では鬼を人に戻すことは出来ない。ですが、私たちは必ずその治療方法を確立させたいと思っています。治療薬を作る為にはたくさんの鬼の血を調べる必要があります」

 

鬼を人に戻す薬を作るには多くの鬼の血を調べなくては行けないらしく月に2、3回、亮壱さんに鬼の血の採取を頼んでいると言った。

 

「禰豆子は、他の鬼と比べるとどうなんですか?」

 

「禰豆子さんは今極めて特殊な状態です。二年間眠り続けたとのお話でしたが恐らくはその際体が変化している。通常それ程長い間人の血肉や獣の肉を口にできなければ、まず間違いなく凶暴化します。しかし、驚くべきことに禰豆子さんにはその症状が無い。この奇跡は今後の鍵となるでしょう」

 

禰豆子の状態について詳しく教えもらった後、亮壱さんとは何時から協力関係になったのか聞こうとした時だった...。

 

「「伏せろ!!」」

 

 

ドンッ!!

 

 

愈史郎さんと亮壱さんの緊迫した声に全員が伏せた瞬間、突然家の中に毬が投げ込まれた。投げ込まれた毬はまるで生き物の様に暴れ回っていた。生き物の様に暴れ回る毱だったが、亮壱さんに近づいた瞬間、亮壱さんが刀を抜く所を見てないのに毱が細切れに変わった。

 

「キャハハッ、矢琶羽のいうとおりじゃ。何も無かった場所に建物が現れたぞ」

 

「巧妙な物を隠す、血鬼術が使われていたようだな。そして鬼狩り達は鬼と一緒にいるのか?どういうことじゃ。それにしても朱紗丸。お前はやることが幼いというか・・・・・・短絡というか・・・・・・汚れたぞ、儂の着物が丸暗記に頼らないで汚れた」

 

「うるさいのう、私の毬のお陰ですぐ見つかったのだから良いだろう。たくさん遊べるしのう。それに着物は汚れてなどおらぬ神経質めが」

 

愈史郎さんの血鬼術が施されていた札がヒラヒラと地面に落ち、俺達が入ってきた出入り口に二体の鬼が立っていた。




読んでいただきありがとうございます!!


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日輪を継ぐ者…④

★作品紹介

・五条先生になりました
(ハイスクールD×D × 呪術廻戦[五条悟系オリ主])


・無個性だからって諦められるかよ!!
(僕のヒーローアカデミア × ワンピース[覇気・剃・月歩を使うオリ主])



「皆…無事か?」

 

部屋の中に入ってきて暴れ回っていた手毱を細切れに変え、炭治郎、禰豆子、珠世さん、愈史郎の安否を確認した。この部屋に居る全員、傷一つ無い事を確認でき、少しだけ安堵をしつつ、出入り口に現れた二体の鬼に目を向けた。出入口に現れた二体の鬼の姿は、炭治郎位の背丈の子供の姿をしている男と女の二体だ。

 

「今この場で鬼を倒せるのは…日輪刀を持つ俺と炭治郎だけだ。出来るか炭治郎?」

 

「はい!出来ます!!」

 

珠世さんと出会ったばかりの頃、珠世さんに鬼同士の戦いには決着があるのかと尋ねた事があった。珠世さんから鬼同士の戦いの決着は、どちらかが鬼舞辻無惨の名前を言い、鬼舞辻無惨が鬼にする際に施してある呪いを発動させるか、相打ち覚悟で太陽が登るまで戦い続けるかの二つしかないと言っていた事を思い出していた。

 

 

 

 

「どっちを倒す?」

 

「俺は手に目が付いている鬼で!珠世さん達を庇いながら戦うのは、俺の技量では無理だと思うので手毱の鬼は亮壱さんにお任せします!」

 

亮壱の問に炭治郎は木の枝に腰掛け、目が付いている両手を此方に向けている鬼を選んだ。炭治郎が両手に目を付けている鬼を選び、亮壱は手毱を地面に弾ませながら遊んでいる鬼に視線を向けた。

 

「分かった…。矢印の鬼は炭治郎に任せる…」

 

炭治郎が両手に目を付けている鬼に向かう直前、愈史郎から炭治郎が戦う矢印の血鬼術を使う鬼と聞かされた。通常では目視する事が出来ないらしく、愈史郎は視覚を炭治郎に貸し与えた。

 

「炭治郎と言ったな」

 

「は、はい!」

 

「俺が視覚を貸したんだ…負けるなんていう無様な事だけはするなよ?」

 

愈史郎なりの激励を炭治郎に飛ばすと、愈史郎の言葉の真意を匂いで察した炭治郎は頷き、鬼へと向かって行った。こんな状況では不謹慎だと思っていても、珠世は愈史郎が他者に力を貸した事を嬉しく思っていた。

 

 

 

炭治郎が両手に目を付けている鬼の討伐に向かい、この場には俺、愈史郎、禰豆子、珠世さん、そして襲撃をかけてきた鬼だけになった。

 

「お前は[あの御方]が言っていた痣の剣士だな?お前を殺し、その首を持ち帰れば[あの御方]が血を御与えくれると仰った。[あの御方]の役に立ち、血を御与え貰う為に、その首を貰う!!」

 

鬼の言う[あの御方]というのは、浅草に居た鬼舞辻無惨の事だろう…。炭治郎に言われて、浅草に居た奴が鬼舞辻無惨だと知る事が出来た。俺は鬼舞辻無惨の容姿を思い出していると、どうしても〖乾燥させたわかめ〗の様な頭に、脳みそが三つある事しか思い出せなかった。

 

「鬼舞辻無惨は…頭に乾燥させたわかめを乗せるのが趣味なのか?」

 

「プフッ…。(無惨が…わかめ頭)

 

気になっていた事を鬼に質問をすると、何故か後ろで珠世さんの笑い声が聞こえてきた。おかしな事を聞いたのかと思っていると、手毱の鬼が顔を赤くし、手に持っている手毱を強く握り震えながら口を開いた。

 

「こ、この痴れ者が!!あの御方を馬鹿にする発言は万死に値する!!」

 

手毱の鬼が怒りながらそう言うと、手毱を俺に向けて投げた。ゆっくりと向かってくる手毱を斬ろうと、日輪刀に手をかけると禰豆子が俺の前に立った。俺の前に立った禰豆子は向かってくる手毱に蹴りを放ち、そのまま手毱を鬼へと蹴り返した。

 

「ムームー!」

 

「手伝ってくれるのか?」

 

「ムー!」

 

「手伝おうとしてくれる気持ちだけ貰っておくよ禰豆子…。だけど、此処からは俺の仕事だから珠世さんと一緒に下がっていて欲しい…」

 

「ムー」

 

渋々といった感じだが、禰豆子は珠世さんと愈史郎の元まで下がってくれた。手毱鬼は禰豆子が手毱を蹴り返した事に驚き固まっていたが、禰豆子が下がると再び戦闘態勢に入った。

 

 

 

 

「1つ聞く…。六つ目の鬼を知っているか?」

 

亮壱は毛毱鬼に、六つ目の鬼──継国縁壱の兄を知っているのかと尋ねた。しかし、敵対している者の質問に手毱鬼は答えるはずも無く、亮壱の問に答える事無く手毱を投げ攻撃を仕掛けた。

 

「知らないのか…」

 

亮壱は呟き、迫り来る手毱が間合いに入った瞬間、亮壱は誰の視界にも刀身を見せぬ速さで手毱を斬り落とした。周りからは手毱が亮壱に近づいた瞬間に突然斬られた様にしか見えず、驚いていた。

 

「な、何をした!! お前は柄に触れていただけで抜いていない筈、それなのに手毱が斬られている!!」

 

「ちゃんと日輪刀を抜いて斬った…。俺は長々とお前に付き合っている時間は無い…」

 

亮壱は地面を強く蹴ると、一瞬にして手毱鬼の眼前まで移動した。手毱鬼は突然目の前に現れた亮壱に反応出来ず、為す術なく亮壱に首を斬られた。手毱鬼は斬られたにも関わらず、痛みは無く、暖かな日の光に包まれているような感覚を体験していた。

 

 

「暖かい…もっと手毱で遊びたかった──」

 

「来世では、暖かな日の光が射す時間帯で遊べる様に祈っている…」

 

亮壱の一言を最後に、手毱鬼は灰となりこの世から姿を消した…。

 

 

 

 

愈史郎さんのお陰で、両手の平に目があり、血鬼術で矢印を飛ばしてくる鬼に辛勝する事が出来た。ただ、矢印の鬼が死に際に放った矢印の血鬼術で体はボロボロになり、這って動く事しか出来なくなった。

 

「辛そうだな炭治郎」

 

「亮...壱...さん」

 

「相当苦戦した様だな──よく頑張ったな炭治郎」

 

地面に這いつくばっていた俺を亮壱さんは、横抱きで持ち上げながら禰豆子の元に連れて行ってくれた。横抱きで運ばれている時は、とても恥ずかしかった。横抱きは女性がされるものだと思っていたし、それに亮壱さんの顔が近かった。改めて亮壱さんの顔を見ると、肌が白くて綺麗で、顔の造形が整っていて色男と言っても過言では無い。

 

 

 

 

 

 

日が登り始め、珠世さんと愈史郎は、眠りこけている禰豆子を連れて地下室に向かって行った。俺は、炭治郎を横抱きで運びながら続いて地下室に入った。地下室に着くと禰豆子は目覚めていて、珠世さんに抱きつきながら愈史郎の頭を撫でようとしていた。禰豆子の行動は鱗滝さんがかけた暗示で、二人が死んだ家族に見えているらしい。

 

「炭治郎を頼む…」

 

「分かりました。愈史郎、炭治郎さんの治療を行いますよ」

 

「分かりました珠世様!」

 

炭治郎は極度の疲労とあばら骨が折れていると診断され、愈史郎の治療を受けていた。炭治郎が治療を受けている間、珠世さん達が今後どうするのかについて聞いた。珠世さんは、鬼舞辻無惨に場所が割れてしまっているこの屋敷を手放し、別の場所に移動するらしい。

治療が終わった炭治郎に、珠世さんは禰豆子を預けないかと提案をした。珠世さんの提案に、炭治郎は禰豆子と互いに顔を見合わせて少しだけ考える素振りを見せて答えを出した。

 

「珠世さん、ありがとうございます。でも、俺たちは一緒に行きます。離れ離れにもなりません。もう二度と」

 

「わかりました...。では、貴方達の武運長久を祈ります。亮壱さん、新たな住居に移転次第、茶々丸に手紙を届けさせます」

 

「分かった…」

 

「じゃあな、俺たちは痕跡を消してから行く。お前らも、もう行け!!」

 

禰豆子を箱の中に入ってから、地下室を出ようと階段の方へと向かい、俺と炭治郎は珠世さんと愈史郎に再度礼を言ってから階段を登ろうとしたら、愈史郎が炭治郎の名前を呼んだ。 

 

「もっと強くなれ。今のままでは妹を守る事なんて出来ないぞ!」

 

「は、はい!! これからも精進します!」

 

俺達は地上へと向かった。

地下室から地上へと上がると、炭治郎と俺の鎹鴉達が待っていた。俺達を待っていた鎹鴉達から次の任務を言い渡され、炭治郎と共にその場へと向かった。




読んでいただきありがとうございます!!


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鼓屋敷編
鼓屋敷…前編


逆柱は嫌われているとサブタイトルが被りますが、ご了承ください!


「頼む!!頼む!!俺と結婚してくれよ〜」

 

俺と炭治郎の鎹鴉に付いて次の任務地へと向かっている道中、田んぼ道のど真ん中で珍妙な光景を目にしていた。田んぼ道のど真ん中で、たんぽぽの様な髪の少年が三つ編みで可愛らしい女の子にしがみついて、結婚してくれと泣きながら頼み込んでいた。たんぽぽ頭の少年から求婚を受けている女の子は困った顔をしながら、しがみついているたんぽぽ頭の少年を引きがそうとしていた。

 

「亮壱さん...あれは何でしょうか?」

 

「こんな光景は初めて見る…だが、現状を見ると、嫌がっている女性にたんぽぽの様な髪色の少年が迫っている様に見える」

 

俺は自分なりに目の前の光景について考え、炭治郎の質問に答えた。炭治郎も目の前で起こっている光景は初めての事だった様で、どうすればいいのかと俺と一緒に考えていた。どうすればいいのか考えていた時、小さな雀が俺達の所に飛んできて、俺の肩に止まった。雀は俺の肩に止まると、俺と炭治郎に何かを伝えようとして、鳴いたり、小さな体を一生懸命動かしていた。

 

「チュン!チュン!チュン!チュン!!」

 

「ふむふむ、なるほど...。亮壱さん!この雀はあそこにいる人の鎹雀みたいです!そして、さっきから女性を困らせてるから助けて欲しいそうです!」

 

「止めに行くぞ炭治郎…」

 

困っている雀の為に、俺達はたんぽぽ頭の少年に近づいた。炭治郎がたんぽぽ頭の少年を女の子から引き剥がし、俺は引き剥がした拍子で尻もちを着きそうになった女性の後ろに回り、支えた。

 

「道の真ん中で何をやっているんだ!!その子と雀を困らせるな!!」

 

「え、お前は最終選別の...」

 

たんぽぽ頭の少年は炭治郎が最終選別を受けに行った時に居たらしく、炭治郎の同期で今回の合同任務の相方のようだ。たんぽぽ頭の少年を炭治郎に任せて、俺は掴まれていた女の子に話しかけた。

 

「知り合いが迷惑かけて申し訳ない…。この場は私達が持ちますので、行ってください…」

 

「はい!ありがとうございました」

 

「ちょ!その子は俺と結婚するから勝手なことするなよ!その子は俺の事が好─グフォ!!」

 

たんぽぽ頭の少年は最後まで言い切る事無く...女性にビンタをお見舞された。女性は、頬に一発ビンタをしても満足してない様でビンタの嵐を浴びせ始めた。俺と炭治郎は、慌てて止めに入った…。

 

「お、落ち着いてください」

 

炭治郎はたんぽぽ頭の少年を、俺は女の子を軽い羽交い締めでビンタの嵐を抑えて少し距離を取ってから、羽交い締めを止めた。

 

「何時、私が貴方を好きと言いましたか!!道の真ん中で蹲る貴方を心配して声を掛けただけです!」

 

「ええ!?俺の事が好きだから声をかけてくれたんじゃないの!?」

 

「違います!!私には結婚を約束している人がいますので有り得ません!!それに結婚するなら私は貴方より、後ろの方と結婚しますよ!」

 

「ええ!?」

 

「そんなに元気ならもう平気ですね!さようなら!!」

 

一連のやり取りで俺も巻き込まれたが、怒って帰って行く女性を静かに見送った。見送ってから直ぐの事、たんぽぽ頭の少年が俺と炭治郎にしがみついて結婚出来なくなった責任を取れと泣き叫び始めた。

 

「お前らが邪魔するから結婚出来なくなったじゃないか!!いいか!俺は凄く弱いんだ!俺が結婚出来るまでお前達で俺を守れよな!」

 

「俺の名は、竈門炭治郎だ!」

 

「俺の名は…榊亮壱」

 

「俺は我妻善逸です!」

 

善逸は、女に騙されて背負わされた借金を育手が肩代わりする変わりに鬼殺隊の世界に足を踏み入れた様だ。善逸は、過激な妄想癖があるみたいで、鬼に生きたまま耳から脳髄を吸われて殺されると、体を大きく仰け反りながら泣き叫んでいた。

 

「どうして善逸は恥を晒すんだ?」

 

「言い過ぎだろ!」

 

炭治郎の中々の一言に、善逸は大声を上げた。俺が関わっている同期は真菰しか居らず、炭治郎と善逸のこういったやり取りが少し羨ましく感じていた。真菰との仲は良好だが、男と女では会話等で少し気を使って話す為、男同士でそういったやり取りをしてみたいと思っている…。

 

 

 

善逸を泣き止ませてから次の任務地へと向かっていた。善逸は今回の合同任務の相手だったみたいで、田んぼ道を三人並んで歩いていた。しばらく歩き続けていると、隣に居る善逸が腹の虫を鳴らした。

 

「はぁ...。落ち着いたら腹が減ってきた...」

 

「腹を満たすものを持ってないのか?」

 

「無いです...」

 

腹を空かせている善逸の前に、次の任務地に行く道中で買っていた笹の葉で包んでいる三つのおにぎりを差し出した。本当は二つだけ買ったのだが、気前の良い店主におまけと言われて三つになったから善逸に上げる余裕が出来たんだ。

 

「左から昆布、おかか、梅干しのおにぎりだ。好きなのを一つ選べ」

 

「いいんですか?」

 

「腹を空かしているのだろう?これから任務へ赴くのに腹を空かしては戦えない…」

 

「ありがとうございます亮壱さん!」

 

善逸は昆布、炭治郎はおかか、俺は梅干しのおにぎりを取り、何処か腰を下ろせる場所に行き、三人でおにぎりを食した。善逸がおにぎりを食い終わると、少しだけやる気を出してくれた様で、泣き言の数が減り、少しだけ静かになった。




読んでいただきありがとうございます!!


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鼓屋敷…中編

大変お待たせしてしまって大変申し訳ありませんでした!


任務前の腹ごしらえを済ませ、再び任務地へと足を進めた。先程までは泣き叫んでいた善逸は大人しくなり、俺の羽織の袖を掴みながら歩いていた。羽織の袖を掴んで歩くのはいいんだが...「死ぬよ〜死んじゃうよ〜」「亮壱さん、必ず守ってよ?」と、ブツブツ言うのを辞めて欲しい。声を震わせながら言っているから、耳に残って夢に出てきそうだ…。

 

「善逸!雀だけでなく亮壱さんを困らせるな!どうしてそんなにも恥を晒せるんだ?」

 

「言い方酷すぎだろ!?」

 

目的地がある山の中に入る前に、ずっと羽織の袖を掴んでいた善逸を炭治郎が純粋な毒を吐きながら引き剥がしてくれた。善逸は俺から剥がされた事で炭治郎に文句を言い、田んぼ道でやっていたやり取りを再び始めた。少し騒がしくなったが足を止めずに歩き続け、目的地である鬼の住処に辿り着いた。

 

「血の匂いがする...。それから嗅いだことない匂いも」

 

「何か匂うの?匂いは感じないけど屋敷から変な音が聞こえない?」

 

善逸は、炭治郎同様に五感の1つが優れている様だ。

俺は微かに屋敷内の音が聞こえているが、善逸は屋敷内の音が鮮明に聞こえている様で、聞こえてくる屋敷内の音で善逸は顔色を青くしていた。顔色を青くしている善逸を心配すると同時に、今年の隊士は質が良く、期待出来そうだ。

 

「鬼の根城よりも、あの子らをどうするかだ…」

 

俺達三人が鬼の根城に辿り着く前から、茂みに隠れて居たであろう兄妹に視線を向けた。嗅覚と聴覚が優れている炭治郎と善逸も兄妹に気が付き、兄妹が怯えないように優しい声色で、こんな所に居る理由を聞いた。

兄妹が此処に来た理由は、この兄妹にはもう一人兄がいるらしいんだが、その兄が鬼に連れてかれ、兄妹は兄を取り戻そうと鬼の後をつけてこの山にいると話してくれた。

 

「良く頑張った…」

 

頭を優しく触れながら、俺は兄妹を労った。

自分達が鬼に喰われるかもしれないのに、連れ去られた兄の為に行動した兄妹に労いの言葉をかけた時だった...。善逸が、さっきよりも屋敷から聞こえてくる音が変と言いだし、俺や炭治郎にも聞こえる鼓の音が屋敷から聞こえてくる。

 

パタンッ!!

 

屋敷の二階にある窓の開く音が聞こえた瞬間、服や体中が血に染まっている男が投げ出された。俺は直ぐに宙へと投げ出された男の元へ走り、男が地面と接触する前に落下地点に入り、男を受け止めた。血塗れになっている男を受け止めると、男は口をゆっくりと開きながら何かを呟いた。

 

「せっ…かく...外に...出られたのに...死ぬのか...死に...たく...ない...」

 

「すまない...。俺達がもう少し早く来ていたなら」

 

血塗れの男は、「死にたくない」と涙を少し流しながら俺の腕の中で息を引き取った。死んでしまった男をゆっくりと地面に下ろし、幼い子供に遺体を見てもらうのは酷だが、兄妹にこの男は二人の兄か?と尋ねた。俺の問いに二人は首を横に振り、自分達の兄では無いと答えた。この男が兄でないとすれば、屋敷内から感じる人の気配は、此処に居る兄妹の兄では無いかと考えていた時、屋敷の中から鬼の咆哮が響き渡り、善逸と兄妹は怯え、炭治郎は驚きの表情で屋敷を見ていた。

 

「亮壱さん、今のは…」

 

「鬼が吠えたのだろう…。それよりも、この屋敷の中で人の気配を二つ感じた。お前達の兄は生きてる可能性が高い」

 

「ほ、本当ですか!?兄ちゃんは、生きてるんですか!!」

 

「確実では無い…。俺は今から生存者を救出に向かう…」

 

まだ生きている人間を救出に向かうべく、屋敷の入り口へと一人で向かった。入り口に着き、中に入ろうと扉に手を掛けると炭治郎が小走りで俺の隣に来た。

 

「亮壱さん!!俺も行きます!」

 

「お前は怪我人だ…。大人しく待っていろ…」

 

「いえ!俺も行きます!」

 

肋を折ってる炭治郎には、兄妹達と共に留守番をしてもらおうと思っていたのだが、鬼殺隊士として責任を果たすと言って、聞いてくれ無さそうだから連れていく事にした。炭治郎は、善逸も連れていき、兄妹の兄を救う効率を上げようとしていたが、善逸がずっと拒否し続けていると般若顔になった炭治郎が怖かったのか、渋々着いてくる事になった。

背中に背負っていた箱はどうしたと尋ねると、箱は兄妹に預けたそうだ。

兄妹に禰豆子が入っている箱を預けてから、俺が先陣を切って最初に屋敷の中へ潜入した。俺が入ってから炭治郎、善逸の順に屋敷の中へ入り、屋敷中を散策しようとした時だった。

禰豆子が入っているの箱と共に待っているようにと言った、兄妹が走って屋敷内に入ってきてしまった。

 

「何故来た…。炭治郎が箱と共に待っていろと言った筈だ」

 

「だ、だって...。あの箱からカリカリと不気味な音が聞こえてきて」

 

兄妹は中からカリカリと禰豆子入り箱に怯え、外に放置して俺達の所に来たらしい。今すぐに引き返す様に言おうとした時、ポン...と鼓を叩く音が聞こえてきて──俺は一人何処かの部屋に移動していた。




読んでいただきありがとうございますm(_∞_)m


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鼓屋敷…後編

リアルの方が忙しくて中々投稿出来ずに申し訳ございません!


潜入した屋敷内に鼓の音が聞こえた瞬間、目の前に居たはずの炭治郎達の姿が消えた。炭治郎達が消えただけでなく、さっきまで居た場所とは、異なる内装の部屋に移動させられていた。全員と離れ離れになり、一人になった俺は兄妹が連れ攫われた兄を探しながら、炭治郎か善逸と合流する為に走った。屋敷内を探索しながら走っていると、この屋敷に入ってから鬼の気配を三つ感じていたが、一つ鬼の気配が屋敷内から消えた。

 

「人間だァ!!」

 

「体の大きな鬼か…」

 

鼓の音が聞こえて来る前に兄妹の兄を探すか、炭治郎か善逸と合流する為に廊下を走っていた。俺が居た位置から少し先の方に鬼の気配を感じ、走るのを辞め、その場に立ち止まった。その場に立ち止まって直ぐ、右側から巨漢な鬼がゆっくりと歩きながら現れた。

現れた巨漢な鬼を直ぐに斬ろうと日輪刀の柄に触れようとした時、俺の後ろから誰かが慌ただしく走りながら向かっているのを感じた。目の前の巨漢な鬼に警戒しながら後ろを振り返ると────頭は猪で上半身裸の珍妙な者が猪突猛進と大きな声で叫びながら此方に向かって走ってきていた。

気配は人間だが念の為に透き通った世界に入り、走ってきている者の体の構造を確認した。

確認した結果、正真正銘の人間だった。猪人間の腰周りを見ると、刃を鞘ではなく布で巻いている日輪刀を二振り持っていた。

 

「見つけたぜ鬼!!屍を晒して俺の踏み台になれ!!」

 

我流──獣の呼吸参ノ牙・喰い裂き!!

 

猪人間から聞いた事が無い呼吸の名と独特の呼吸音を発しながら、両脇に差している日輪刀に触れると、巻かれていた布が解けた。布が解け、刀身が顕になった日輪刀は、所々が欠け、大工が使うノコギリの様な形状をしていた。数々の隊士と任務に当たった事があるが、ノコギリの様な日輪刀を持ち、獣の呼吸を使う隊士を見たことは1度も無い。目の前に居る猪人間は、今年の最終選別を乗り越えたばかりの新人隊士ではないかと考えた。俺が考えている間に、猪隊士はノコギリの形状をした日輪刀で鬼の両腕を斬り飛ばし、首を斬った。首を斬られた鬼の体は灰に変わった。

 

「動きに無駄が多いが…中々の動きだ...」

 

猪隊士を評価していると、鬼を斬った猪隊士は俺の方に振り返り日輪刀の剣先を向けた。何故剣先を俺に向けたのか不思議に思っていると、突然走ってきて斬りかかってきた。迫り来る二振りの日輪刀を自分の日輪刀を即座に抜き、迫り来る日輪刀を弾いて距離をとった。

 

「いきなり何をする?隊律で隊士同士の争いは御法度だぞ…」

 

「お前から強い感じがする!俺と勝負しやがれ!!」

 

「待て…。今は屋敷内に居る鬼を討伐するのが優先、お前の相手はその後で受ける」

 

「はぁ!?今勝負って言ったら勝負だ!!」

 

制止も聞かずに猪隊士は、俺に向かって走り出した。猪隊士は俺に接近すると、独特の呼吸音と共に技を仕掛けようとした時だった...。ポン...と、しばらく聞こえなかった鼓の音が聞こえ、今いる位置から再び強制的に移動させられた。

 

「また移「亮壱さん!!」やっと合流出来た…」

 

次に移動させられた部屋で、炭治郎、てる子、屋敷に入る前には居なかった子供が居た。その子供は、正一、てる子の兄の様で、てる子が泣きながら兄の清にしがみついていた。てる子達の兄が鬼達の巣窟に居ても生きられていた理由は、この屋敷の主である鼓を体から生やしている鬼が落とした、強制的に移動させられる鼓を鬼が来る度に叩いて逃れていたらしい。

 

「屋敷内に感じる鬼の気配は残り一匹…。その鬼は徐々に俺達の方に向かって来ている様だ...炭治郎」

 

「はい!何ですか亮壱さん?」

 

「俺が残り一匹の鬼を倒す…。お前はその子達と一緒に居てくれ…」

 

 

────極上の稀血の匂いがする...

 

 

 

炭治郎に子供達を守る様に指示を出した時だった。

正面隣の部屋に眼球が裏返っている鬼が稀血の匂いを嗅ぎつけてやって来た。俺は迎え撃つ為に、炭治郎、てる子、清の居る部屋を出て隣の部屋に移った。隣の部屋に移り、清に鼓を叩く様に言おうとしたら、炭治郎が俺の方に来てしまった。この部屋に炭治郎が入った瞬間に清が鼓を叩いた。

 

「何故…来たんだ炭治郎?あの子達と居ろと言ったはずだ…」

 

「すみません亮壱さん!どうしても亮壱さんの戦いが見たくて!」

 

「はぁ...来てしまったものはしょうがない…。鬼の相手は俺がする…炭治郎はその場から動くな」

 

「はい!」

 

「稀血...。貴様を喰らい...俺は再び十二鬼月に戻るのだ!」

 

日輪刀を抜き、怪我が治りきっていない炭治郎を後ろに下がらせた。体の所々から鼓を生やした鬼は1歩1歩と近づき、部屋の中に入ってきた。鬼は部屋に入った瞬間、腹以外の鼓を手を素早く動かして叩いた。鬼が鼓を叩くと、左右上下に部屋が動いた。

 

「屋敷内を自由に操る血鬼術…。厄介だ」

 

「亮壱さん!俺も手伝います!」

 

「怪我人に手を借りる程…俺は弱くないと思っている。最初に言ったように…炭治郎は大人しくしていろ」

 

鬼殺を手伝おうとする炭治郎の申し出を断り、俺は呼吸を整えた。あの兄弟妹を家に返し、怪我をしている炭治郎を藤の家に連れて行く為に鬼の首を斬ろうと走った。俺が走ると鬼は腹に生えている鼓を強く叩いた。腹の鼓を叩いて直ぐ、嫌な予感がしてその場を飛び退くと、大きな獣が引っ掻いた跡のようなものが元いた場所に刻まれていた。鼓鬼の有する血鬼術を全て理解した俺は、肺に多くの空気を取り込みながら首を斬れる位置まで接近した。

 

「日の呼吸…漆ノ型・斜陽転身」

 

鼓を叩こうとする鬼の腕と共に首を斬った。首を斬ると、鬼の体は力無く倒れていった。鬼の首を斬り、日輪刀を鞘に収めると首だけになった鬼が俺に話し掛けた。

 

「小生の…小生の血鬼術はどうだった?」

 

「鬼にこんな事を言うのは鬼殺隊としてあるまじき行いだが…凄いと思った」

 

「そうか…小生の血鬼術は凄かったか──」

 

鼓鬼の体と首は灰に変わり、目の前から消えた。鼓鬼の首が転がっていた場所は、血では無い何かで濡れた跡が残っていた。




読んでいただきありがとうございますm(__)m


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我が家へ

次回からは那田蜘蛛山では無く、オリジナル章に入ります。


体から鼓を生やした鬼を倒した事により、屋敷内全体に影響していた血鬼術が解かれ部屋の位置などが元通りに戻っていった。屋敷内が元通りに戻ってから俺と炭治郎は、てる子と清の元へと向かった。

 

「てる子!清!鬼はこの人が倒してくれたからもう大丈夫だぞ!」

 

てる子と清は別れる前の部屋で、お互いを抱きしめ合いながら俺達を待っていた。二人がその場から動かなかったお陰で、直ぐに合流する事が出来た。部屋の中心で互いに抱きしめ合いながら居た二人に炭治郎が鬼を倒した事を伝えると、てる子と清は顔を見合せながら安堵の表情を浮かべた。

 

「炭治郎、二人を連れて先に外に出ていろ…」

 

「亮壱さんも一緒に行かないんですか?」

 

「この屋敷内で放置されている遺体を見つけた…。放置されている遺体を外に運び、埋葬する...。だから、俺は後から出る」

 

てる子と清の元に向かう途中で鬼に殺され、放置されていた七体の遺体を発見していた。てる子と清の事は炭治郎に任せて、俺は遺体のある方へ向かう事にした。

 

「てる子と清を外に連れて行ってから俺も手伝います!」

 

「頼んだぞ炭治郎…」

 

炭治郎達は屋敷の出入り口へ向かい、俺は七体の遺体を一箇所に集める為に1番奥から遺体を担いで炭治郎達と別れた場所に置き、それを六回繰り返した。

 

 

 

 

亮壱さんは不思議な人だ...。

てる子、清と共に外に向かいながら亮壱さんの事を考えていた。亮壱さんの事は同じ鬼殺隊員である事、とても優しい匂いがしていて禰豆子を受け入れてくれた優しい人という事しか知らない。

 

────オラァ!!さっさとどきやがれ!!

 

────絶対に嫌だ!!

 

徐々に出入り口へ近づいて行くと、外から騒がしい声が聞こえてきていた。外で一体何が起こっているのかが気になり、少しだけ歩を早く進め外に出たら──猪の被り物をしている鬼殺隊員が禰豆子が入っている箱を守っている善逸を殴っている光景が目に入った。

猪の被り物をしている鬼殺隊員に殴られた善逸の顔には所々から血が少し流れ、左目に青痣が作られていた。

 

「退かねぇなら!!お前事串刺しにしてやる!!」

 

「止めろ!!」

 

日輪刀を振り上げ善逸と禰豆子を刺そうとした瞬間、俺は呼吸で脚力を強化して二人を刺そうとしている奴へ一気に近づいた。懐に入り込み、日輪刀を振り上げて無防備になっている腹に固めた拳を叩き込み、殴り飛ばした。

 

バキッ!!

 

「骨折った!?」

 

鬼殺隊員の腹を殴り飛ばした時、骨が折れる音を聞いたみたいで、そう呟いた。流石にやり過ぎてしまったと思ったのだが、殴り飛ばした鬼殺隊員は笑いながら立ち上がった。

 

 

 

 

「これで全部だな…」

 

炭治郎達と別れてから一人黙々と七体の遺体を一箇所に運んでいた。七体の遺体を一箇所に運び終わり、あとは炭治郎が戻って来て一緒に外へ運び供養する流れなんだが、炭治郎がてる子と清を外に連れて行ってから中々戻って来なかった。

 

「中々戻って来ない...。何か問題でも発生したか?」

 

戻って来ない炭治郎が気になり、外に行く次いでに一体の遺体を抱えて出入り口に向かった。出入り口に近づいて行くと、外から、喧騒が聞こえてきたんだが──俺が外へ出た瞬間に静かになった。

 

 

 

 

「一体…何があった?」

 

外に出ると上半身裸の男が額から血を流し、額に大きなコブを作って仰向けに倒れていて意識を失っていた。半裸の男の横では善逸の顔に所々に血が出ていたり左目に青痣作り、炭治郎は顔から少し血を流していた。

 

「誰か…1から説明してくれないか?」

 

目の前の現状に説明を求めると、正一がこの現状に至った経緯をきちんと話してくれた。正一が説明してくれた事を要約すると、禰豆子が入った箱を伊之助から守っていた善逸が伊之助にボコされているのを炭治郎が見て、止める為に殴ったらそのまま乱闘になり殴り合っていたが、俺がその乱闘を見る前に炭治郎が伊之助に頭突きをくらわせて脳震盪を起こして気絶させた様だ。頭突きをした炭治郎は脳震盪にならず、普通に立っていた。

 

「全く…。炭治郎…これから八体の遺体を埋める穴を掘る」

 

「俺も手伝います!穴掘るくらいな怪我に響かないと思いますし!」

 

「あ、俺も手伝います!」

 

俺、炭治郎、善逸の三人で八体の遺体を埋める穴を掘り、外にある二体の遺体を埋めた。脳震盪を起こして気絶していた伊之助は二体の遺体を埋め終わったと同時に目覚めた。

 

「ウォオオオオオ!!勝負!勝負!」

 

「イヤァー!」

 

伊之助は、目覚めてから近くに居た善逸を追いかけ回していた。追いかけ回されていた善逸は俺の後ろに隠れて『苦手だぁ...』と震えながら呟いていた。

 

「あ?何やってんだ?」

 

「埋葬だよ」

 

俺達が今やっている事を聞いてきた伊之助に炭治郎が埋葬をしていると答え、埋葬の手伝いを伊之助に頼んだ。俺達がやっている事を聞いた伊之助は、『生き物の死骸を埋めて何の意味がある!』と言って手伝いを拒否した。

 

「そうか...。傷が痛むから手伝いが出来ないんだな...」

 

ピキ...

 

「は?」

 

埋葬の手伝いを拒んだ伊之助に対して炭治郎は、自分が伊之助に負わせてしまった怪我が痛んで手伝いが出来ないのだろうと勝手に解釈をした。

 

「傷の痛みは人それぞれだ、伊之助は休んでいるといい。埋葬は俺達がやっておくから!」

 

「はあぁぁぁぁ!!舐めんじゃねぇ!!人の100人!200人埋めてやらァ!」

 

伊之助は炭治郎の言ったことに太い青筋をぶっ立てながら屋敷の中に入って行き、残りの六つの遺体を運び出し掘った穴に埋めて行った。一悶着あったが、八体の遺体を埋葬する事が出来た。埋葬した遺体に俺達は黙祷を捧げていたが、黙祷を捧げている俺たちの後ろで伊之助は頭突きで炭治郎に負けたのが悔しかったのか、近くにある木に何度も何度も頭突きをしていた。

 

「カァー!カァー!モウスグデ夜ニナル!山ヲ降リロ!」

 

死者への黙祷が終わると、炭治郎の鎹鴉から山を降りるようにと指示が出た。蓮からも、山を降りるように言われ、三兄妹と新人隊士三人組を連れて山を降りた。

 

「本当に送っていかなくても大丈夫か…?」

 

「はい、大丈夫です!走っていけば、夜になる前には帰れるので!」

 

山を降りている途中で、三兄妹を家まで送り届けようとしたけど、自分達で帰れるらしく断られた。自力で帰る三兄妹に蓮に持ってきてもらった、藤の花の匂い袋、家で炊る藤の花のお香を渡した。鬼にとって、藤の花は毒らしく、藤の花の匂い袋やお香を炊くと鬼は絶対に寄り付かない。

それらを渡してから三兄妹と別れ、日向と炭治郎の鎹鴉に次の目的地の案内を頼んだ。

次の目的地は、お祖母様が居る藤の花の家だった。久しぶりにお祖母様に会える事を喜びながら向かった。

 

「何か嬉しそうですね亮壱さん!」

 

「無表情なのに嬉しそうな音が聞こえてくる…」

 

炭治郎は匂いで、善逸は音で俺が嬉しそうにしている事に気づいたようで、何で嬉しそうなのかを聞いてきた。お祖母様が居る藤の家まで距離があり、お祖母様の所に着くまで俺が嬉しそうにしている理由と過去について話した。

過去話をしたせいで炭治郎が申し訳なさそうに謝罪をしてきたが、俺が過去話を話してしまったせいだと炭治郎に言った。善逸も俺と同じ様で、善逸は雷の呼吸を教わった育手に拾われたと話してくれた。

 

 

 

 

 

「そろそろ目的地に着きそうだ…」

 

前方にお祖母様が待っている大きな屋敷が見えた。

久しぶりに会うお祖母様に、手土産の一つや二つ買ってくれば良かったと思いながら大きな門の前に立った。門を開けようと手を伸ばすと、俺の手が門に触れる前に、門が勝手に開いた。

 

「お久しぶりです、お祖母様」

 

「我が家に帰ってきた時には何を言うか分かるかい亮壱?」

 

「そうでした。ただいま帰りました、お祖母様…」

 

「おかえりなさい亮壱」

 

久しぶりに会ったお祖母様は元気そうで良かった。

とりあえず、疲れが溜まっている炭治郎達を休ませる為に、三人を空いている部屋に案内をした。お祖母様から風呂の準備が整っていると伝えられ、荷物を置いてから風呂場へ向かった。風呂場に着くと、ズボンしか履いてない伊之助は一瞬でズボンを脱ぎ、体を洗わずに湯船に飛び込もうとした所を止めた。

 

「何すんだよ能面!」

 

「俺は亮壱だ…。体を綺麗にしてから湯船に入れ、そのまま入ると湯船に溜まっているお湯が汚れてしまう」

 

伊之助は湯船に入る前の作法を知らない様だ。

俺は伊之助に湯船に入る前の作法を教えながら、頭を洗ってやったり、背中を流してやった。頭や背中を洗っている時の伊之助は、首根っこを掴まれて大人しくしている猫の様だった。

 

「伊之助、湯船に浸かっても大丈夫だぞ?」

 

「・・・ハァッ!?ホワホワさせんじゃねぇ!」

 

洗い終わり、湯船に浸かっても良いと伊之助に言ったのだが、何故か呆然としていた。呆然としていた伊之助だったが元の野生児に戻り、訳の分からん事を言って湯船へと飛び込んで行った。伊之助の事が終わらせ、自分の体を洗おうとすると炭治郎が背中を洗うと言い出した。炭治郎の申し出に断る理由も無く、炭治郎に背中を洗ってもらった。炭治郎に洗われている間、手元が留守になっている俺は善逸を前に座らせて、善逸の背中を洗った。

こうして誰かと一緒に風呂に入って背中を洗い合うのは初めてだが、とても嬉しく楽しいと感じた。

洗いっこの途中で湯船に居た伊之助が、自分も仲間に入れろと乱入してきて、四人で背中を洗いあった。

 

 

 

 

 

全員風呂から上がり、部屋に戻ると四人分の食事が用意されていた。それぞれの場所に着いてから、飯を食べ始めた。伊之助は用意されていた飯の中で、天ぷらを気に入ったらしく、ガツガツと素手で食べていた。野生児である伊之助は箸の使い方なんて分かる筈もなく、俺と炭治郎で伊之助に箸の使い方を教えていた。

食事の途中で炭治郎から俺の育手はどんな人かと聞かれ、俺は正直に最強の幽霊が育手と言った。普通の人間なら俺の話は嘘だと決めつけられていただろう…だが、炭治郎は俺の話を信じてくれた。善逸も半信半疑の視線で俺を見ていたが、俺から聞こえてくる音に、嘘を言ってないと理解した善逸は、幽霊って本当に居るんだと小さく呟いた。

 

 

 

 

 

「うん!君達三人とも重症だね」

 

 

 

食事を終わらせると、お祖母様が食事している間に呼んでいた医者が部屋に入り、炭治郎、善逸、伊之助を診察し始めた。診察の結果、三人とも重症で肋骨が折れていると診断をもらった。

 

 

善逸...肋骨二本

 

 

 

炭治郎...肋骨三本

 

 

 

伊之助...肋骨四本

 

 

「怪我をしてしまうのはしょうが無い…治るまでは安静にするんだぞ?」

 

絶対安静と言われてから寝るまでの間に、箱の中にいた禰豆子を見た善逸が、炭治郎に嫉妬して追いかけ回す等の一悶着があった。

 

 

 

 

 

 

散々走り回って疲れたのか、炭治郎、善逸はぐっすり眠りについた。伊之助は、二人が走り回る前に眠りについていた。

 

俺はというと騒がしい部屋を出て、縁側で満月を眺めながら静かにお祖母様が淹れてくれたお茶を飲んでいた。月を眺めながらお茶を啜っていると何かが俺の方に近づいてきた。

 

「ムー?」

 

「起きたのか禰豆子…?」

 

 

部屋を出る前に禰豆子を俺の布団に寝かしつけたのだが、寝れなかったようで、部屋から出てきて俺の所にやって来た。禰豆子は体を3〜4歳位の子供位まで縮ませて、胡座をかいている俺の足の真ん中にちょこんと座り込んだ。

夜は少し冷える為、禰豆子の子供体温がとても温かった。

 

「眠れるまで、一緒に月でも見るか…?」

 

「ムー!」

 

禰豆子は、竹を噛んでいて『ムー』しか話せないが、何となくだが言いたい事が伝わってくる。俺と禰豆子で月を眺めてしばらくすると、禰豆子がうたた寝をし始めた。

 

「眠くなったか禰豆子?」

 

「ムー...」

 

「布団まで運ぶぞ?」

 

「ムームー」

 

眠たそうにしている禰豆子を布団まで運ぼうとしたのだが、禰豆子は浴衣を掴みながら首を横に振って、まだここに居るという意思表示をしていた。禰豆子は俺の胡座の中で寝始め、俺は浴衣の上に羽織っていた羽織を禰豆子に掛けた。

 

「そのまま...。人を襲わず、人を守ってくれ禰豆子...俺はお前を斬りたくない」

 

すやすやと胡座の中で眠る禰豆子に、そう呟きながらサラサラの髪の毛を撫でていた。




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