デジモンマイソロジー~Myth reboot into the future~ (テイリュウ)
しおりを挟む

プロローグ

まことに勝手なことですが、デジモンアドベンチャーの2020年アニメRebootに乗っかって、自分が以前から投稿してたけど更新が停滞気味になってしまっていた小説をRebootすることにしました。
文章をじっくり修正しながら再投稿していく形にするつもりで、新しい話もその間に書いていければと考えています。
修正をして再投稿するこの小説が、読んでくれる皆さんにも面白い作品になっていければ幸いです。


今から数百年前、地球を、いや太陽系全てを覆う規模で起こった大災害、デジタルハザード(・・・・・・・・)

 

現実空間と電脳空間の狭間が突如として壊れ互いにぶつかり合い、それによって起こった衝撃は地球上の生命の約3分2を死滅させた。

 

更に、その凄まじい衝突の余波は地球だけに収まらず宇宙にまで達し、他の太陽系の星々の環境までも激変させてしまう。

 

生き残った人々は被害の大きかった地球を捨て、環境の変化により生活が可能となった他の星々に望みをかけ、太陽系の星々へ散って行くことになる。

 

そしてそこで人々は出会ったのだ。

 

 

 

デジタルモンスター(・・・・・・・・・) 通称 デジモン(・・・・)

 

 

 

デジモン達は、環境の変化した星々に当たり前のように居住していた。

 

何故彼らが環境の変わった星々に住んでいたのか、何故存在しているのか、何故産まれたのか、あらゆる面で理由の何一つも分からないなかで、人間は彼らの研究を始める。

 

デジモンは電子的情報により身体を構成しており、進化と言う形で驚異的な成長をしていく不思議な生物だった。

 

人間はその力を欲し、なんとかデジモンを支配しようと試みるが、デジモンの力は凄まじくその目論みはことごとく失敗に終わる事となり、逆に高い戦闘本能を持ったデジモン達に恐怖する日々が続いた。

 

しかしそんな状態が続いてた中で突然、彼らと心を通わせられる人間たちが現れ始めたのだ。

 

彼らはデジモンと絆を結ぶ事で、そのデジモンに自らの(こころ)の力を送り、デジモンにより強い力を引き出させる事ができた。

 

そこから一気にデジモンと人間との距離は縮まっていく事になる。

 

人間はデジモンを力強い仲間(パートナー)と思う様になり始め。

 

デジモンも自分達の力を増幅させるなどしてて戦いをサポートしてくれることや、更には彼らと同等の力を発現することが出来る人間が登場したことによって、人間を大切な(パートナー)と考えるようになっていった。

 

そしてようやく人々の暮らしが落ち着き始めデジモンとの共存関係もしっかりとしたものとなったことで、各地で文明といえるものができ始めた頃に、それは起ってしまった。

 

 

 

デジモンを使った 戦争(あらそい)

 

 

 

切っ掛けは、国と呼べるまで大きくなった枠組みの内の何人かと強力なデジモンが悪に染まり、国を荒らし回った事だった。

 

事件を起こした者たちは罰せられたが、デジモンの力を使った戦いの後は凄まじく、国土は荒れ果ててしまう。

 

疲弊した土地では国は維持出来ない。

 

その国は他の国々に助けを求めるが、どの国もまだ自国を維持することが精一杯で、誰にもどうしようもなかった。

 

しかし、その国で生きる者はそんなこと言ってられない。

 

 

 

そして悲劇は起きる。

 

 

 

デジモンの力を用いた最初の戦争(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

其処からは事態は急速に良くない方向へと動きだしていく。

 

荒れた国は他の国を襲い自らを潤し、国が持ち直してもなお他国を荒らし続けるのを止めずに、悲劇を撒き散らし続ける。

 

そして荒らされた国もまた荒らした国を復讐として襲うが、今度はその国が襲ってきた国と同じ理由で他の国々を襲うことで、悲劇が繰り返された。

 

更にある国は多くの利益を得るため、デジモンの能力を研究しより優れた技術と強いデジモンを産み出すことに成功。

 

そして、それを見た他の国々も対抗するためにさらに優れた技術とデジモンを、そしてそれに対してより優れたものをと、世界中でより相手に勝る力を生み出す事が繰り返され続けた。

 

それによって当然のように、争いの規模も其によって生まれる悲みや憎しみも、加速度的に大きく激しく成っていくことになる。

 

 

そして、とうとう惑星間における戦争

 

 

第一次宇宙大戦(・・・・・・・)が始まることになった。

 

 

長きに渡る戦いと、激戦の中で次々と現れる強大なデジモン達。

 

その力がぶつかり合った戦いは、大地を割り、空を裂き、最後には星々に消えない大きな爪痕を残すまでに至る。

 

だが、そんな数十年にも及んだ大戦は勝者の無いまま終わりを迎え。

 

それからの人々やデジモン達は大戦の傷を癒すのに時間を費やした。

 

その間にも幾度か戦争は起きたが、不幸中の幸いか大きな戦争に発展ことは無く。

 

今より5年程前に一度だけ起き、危うく第二次宇宙大戦(・・・・・・・)を起こしかけた最後の大戦(・・・・・)と呼ばれる戦争を切っ掛けに、世界中の戦禍は火が勢いを無くすように大幅に減り文明も再び大幅な発展を遂げた。

 

世界は、ようやく一時の安定(へいおん)を謳歌していた。




読んでもらうと分かるように、かなりオリジナル要素がつよいです。
登場する原作のキャラもいろいろ設定を変えているところが多い作品ですが、それでも面白いと思って下さった方は感想やアドバイスなどをお待ちしてます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

冒険者

自分はデジモンシリーズでは初代デジモンアドベンチャーが一番好きです。
なので、令和になって2020年に時間設定がアップデートされたデジモンアドベンチャーのリメイクが決定したことは嬉しくもありましたが、同時に今までの経験から凄く不安に感じました。
だけどまたデジモンのアニメが観られることには違いないので、今まで公式の出してきたデジモンアドベンチャーシリーズの作品をこれを機会にそれぞれがIFやパラレルの話なんだと割り切って考えていくことにして、新たなデジモンを長い目で見ていきたいと思ってます。
そしてこの小説の主人公が彼なのは、思い切り自分の趣味です。


此処は、太陽系 第五惑星 木星。

 

かつては太陽系一の大きさの惑星で、ガスを主成分とするガス惑星であった。

 

とても人の住める環境の星ではなかったが、デジタルハザードの影響により木々や草花といった緑で覆われた文字通り緑の星と化したっことで、現在は比較的多くの人が住んでいる星である。

 

その星のとある草原を、一人の少年がバイクに乗って走っていく。

 

彼の目指すその先には大きな森があり、少年は森の前でバイクを停めてから降りヘルメットを脱いだ。

 

その下から表れた少年の素顔は中々整った精悍な顔立ちをしていて、ヘルメットの中に隠れていた茶色い髪はボリュームがあり所々飛び跳ねているがそれが活発そうな彼には似合っていて、更に腰には剣をさし首回りから太股までを覆うマントを着ている。

 

そしてその目には力強さがあり、彼の意思の強さを感じさせた。

 

 

少年はポケットから手のひらサイズの装置を取りだし起動させると、ソレから画面が映し出されてその画面に別の少年が写る。

 

その少年は知的なタイプの整った顔立ちで、赤みがかった茶色い髪をツンツンとした形に短めにサッパリと切り揃え、小柄な体格に学者が着ているような大きめの白衣を羽織り手袋を着けている、如何にも理知的な印象を与える恰好をしていた。

 

少年は画面に向かって

 

「光子郎、この森で間違いないのか?」

「はい。観測したデータと依頼を受けた町の人の情報からして、その辺りで間違いありません太一さん」

 

太一と呼ばれた少年は、モニター越しに映る少年、光子郎に確認をとると彼はその場所で合っていると返事をした。

 

その答えに頷いた太一は、これからの行動について話しはじめる。

 

「じゃあ俺は此処ら一帯を調べてみる。なにか見つかったら知らせるし、何も見つからなくても1時間後には連絡するよ」

「分かりました。取りあえず何があるか分からないので、気を付けてください。後、くれぐれも無茶(・・)をしないよう」

 

無茶の部分を強調しつつ、太一に注意するよう促す光子郎。

 

「大丈夫だって、調べてみるだけだし」

 

軽い口調で心配ないと笑って返す太一だが

 

「そう言ってトラブルに巻き込まれて、そのたびに無茶するのは誰ですか?」

「..........」

 

半目で指摘するその言葉に太一の顔がひきつり、あからさまに目をそらした。

 

「じゃあ、ちゃんと連絡はしてくださいね。では後で」

「あ!おい、光し..........」

 

言いたい事をグサッと言ってきた光子郎に太一は言い返そうとしたが、その前にプツンと通信は切られた。

 

「ちぇっ、光子郎のやつ一言多いんだよ」

 

少し愚痴をこぼす太一だが、気を取り直して目の前の森の中へと入っていく。

 

 

太一は辺りを見回しながらどんどんと森の奥へ進む。

 

彼、太一は様々な依頼を受けながら世界中を冒険している冒険家なのだが、今回この森の付近にあった村の住人から数日前にこの辺りで空に向かって伸びる光の柱を見たという話しがあり、それを調べて貰いたいと依頼されたのだ。

 

更に昔からの仲間である光子郎からも、その場所で同じ頃に、未知のエネルギー反応を観測したのでそれの調査もして欲しいと頼まれたため、太一はこの依頼を受けた。

 

しかし、30分程森の中を散策してみたがいっこうに何も見付かる気配はない。

 

太一は本当にこの辺りで光の柱を見たとか奇妙なエネルギーを観測したとかの話しが疑わしく感じはじめていた。

 

「たく、本当にこの辺りでそんな.....ッ!?」

 

刹那、急に太一がその場所から飛び退くと其処で大きな土煙が上がる。

 

「!!」

 

煙が晴れると、さっきまで太一がいた場所に巨大なハサミ、いや顎が刺さっており、その持ち主は3~4メートルは有ろう巨体に赤く固い甲殻に覆われた身体を持つクワガタのようなデジモン、クワガーモンがそこにいた。

 

クワガーモン/ レベル 成熟期/ タイプ 昆虫型/ 属性 ウイルス/ 必殺技 シザーアームズ/

 

ガキンッガキンッガキンッ

 

クワガーモンは顎を地面から抜くと、威圧するように顎を鳴らしながら太一を見据え、しかもその一体だけではなく

 

 

メキッメキメキメキィィィ ガサガサガサァァァ

 

 

木々の後ろや茂みの間から更に二体のクワガーモンが出てくる。

 

計三体のクワガーモンに対し、太一は腰の剣(D-arms)を抜いて構える。

 

すると最初に太一を襲ったクワガーモンが、勢いよく太一に飛びかかり必殺技を放つ。

 

「ギィィィィィ!シザーアームズ!!」

 

それを素早い動きで避ける太一。

 

ガッキィイイン

 

その攻撃で後ろにあった大木が切断されるが、太一は構わず懐に潜りこみ、手にしているD-armsにデジソウル(エネルギー)を込め

 

「ハァッ!!」

「ギィガアッ!?」

 

鋭い剣撃を無防備な胴体に叩き込み、それが直撃したクワガーモンは倒れ気を失う。

 

あっという間にクワガーモン一体を無力化した太一を見た他の二体は怯むが、彼はその隙を逃さず、二体目のクワガーモンと素早く距離を詰め頭を撃ち抜くように

 

「ギャァッ!?」

 

下から上に剣を振り抜き、またも一撃で昏倒させる。

 

しかしそこを三体目のクワガーモンが、宙に浮いて身動きがとれない内に太一を仕留めようと飛びかかろうとする。

 

ガクンッ

 

「!?」

 

だが、足が何かに引っ掛かりバランスを崩してしまう。

 

クワガーモンが足元を見ると、足に布の様なものが絡み付きそれが後ろの木に繋がって、更にそこから太一の背中のマントへと延びているのが見えた。

 

気付いた時にはもう遅かった、クワガーモンには目の前にまで迫った太一の姿が映り。

 

ドカアァァンッ

 

太一がデジソウルを込めて振り下ろした剣から放たれた爆発によりクワガーモンは気絶するのだった。

 

 

クワガーモンたちを無力化した太一は剣とマントを戻しながら考える。

 

(クワガーモンは凶暴で、基本一体でしか行動しないのに。それが三体も集まって行動するなんて......)

 

やっぱり何か在るのかと考えている途中、突然

 

ドゴオォォォオオオオンッ

 

森の奥から大きな爆発音が鳴り響く。

 

「何だ!?」

 

音のした方向を見ると遠くでなにやら森の奥が光っており、急いでそこに向かって進むと、太一は大きく開けた場所にでる。

 

「何だ...コレ.....?」

 

そこにあるものを見て太一は驚いた。

 

そこには、神々しい光を放っている巨大な建造物が堂々とその場に建っていたのだ。

 

「こんな所にこんな建物(モノ)が在ったなんて.......」

 

太一は驚きを隠せない。

 

こんな所で巨大な遺跡を見つけたこともそうだが、何よりそれは神々しい光を放ち続けていてこれほど目立ているにもかかわらず、そんな遺跡が今まで誰にも発見されることがなかったということに。

 

この世界には数多くの不思議な場所や建物が存在しているが、これ位の規格のモノは太一が知る中でもそうは無かった。

 

「もしかして、光子郎や町の人が言ってたやつの原因はこれか?」

 

そう推測を建てながら太一が遺跡に近づいていくと

 

「・・・・・・・・」

「!?」

 

彼の耳に何か話し声らしき物が聞こえ、静かに耳をすます。

 

「・・・・・・・・・・!」

 

太一のいる場所からは影になって見えないが、どうやら遺跡の正面らしき所から話し声は聞こえるようで、彼は静かに相手の見える位置まで移動し、物陰からそっと覗いた。

 

そしてそこには、全身を機械化した恐竜のようなデジモンと戦車のようなデジモン三体が大声で何かを話しているのが見えた。

 

メタルティラノモン/ レベル 完全体/ タイプ サイボーグ型/ 属性 ウイルス/ 必殺技 ギガデストロイヤーⅡ ヌークリアレーザー/

 

タンクモン/ レベル 成熟期/ タイプ サイボーグ型/ 属性 データ/ 必殺技 ハイパーキャノン/

 

「えぇい!まだ扉は開かんのか!」

 

メタルティラノモンがタンクモン達に激を飛ばしているようだが

 

「でも隊長、あれだけの火薬を使って傷ひとつ付かないのに」

「オレらの火力じゃあどうしようもないですよ」

「この扉、頑丈すぎますって」

 

なにやら既に諦めムードのタンクモン達が、隊長と呼ばれるメタルティラノモンに疲れた様に返事をしている。

 

「ぬぅぅ。この中にアレ(・・)があるのは間違いないと言うのに」

 

苦虫を噛み潰した表情をしているメタルティラノモンの視線の先には、先ほど大量の爆薬を使って爆破したにもかかわらず傷ひとつ付いていない大きな扉があった。

 

だからといって、彼らは諦める訳にはいかないようで。

 

「なんとしても扉を開けろ。必ずアレ(・・)あの方達(・・・・)にお渡しするのだ!」

 

メタルティラノモンの命令でタンクモン達が再び作業を始めるていく、そのようすを物影から見ていた太一は

 

(アレ(・・)ってなんだ?それにあの方達(・・・・)て、いったい.........)

 

会話の中の気になる単語について考えるが、これだけの情報で答えがでるはずもない。

 

「取り敢えず、光子郎に連絡を...」

 

通信機を取りだし光子郎と連絡を取ろうとしたその時。

 

「おい、貴様!!」

「!?」

 

突然、後ろから怒鳴られ振り向くと、其処には両腕と頭部が機械化された竜のようなデジモンが空中から太一を睨んでいた。

 

メガドラモン/ レベル 完全体/ タイプ サイボーグ型/ 属性 ウイルス/ 必殺技 ジェノサイドアアタック アルティメットスライサー/

 

メガドラモンは、明らかに敵意のこもった眼差しで太一を見て

 

「どこかの組織の者か!まさか我々の動きを察知して送り込まれた調査員!?」

 

何やら見当違いな事を言っているが、太一はとにかく見つかってしまったこの状況でどうしようか考えようとした。

 

 

しかし

 

「なんにせよ、見られたからには生かしておけん!」

 

メガドラモンは何の返事も待たずそう言うと、両腕を太一に向け其所からミサイルを放つ。

 

「なっ!?」

 

チュドドドォォォンッ

 

いきなり過ぎるその攻撃を間一髪で避ける太一。

 

転がる様に受け身をとりながら立ち上がって、すぐさまこの場から退却しようとするが

 

「ほう、ネズミが一匹いたのか」

 

今の攻撃でメタルティラノモン達にも気付かれてしまった。

 

すでに相手は、太一の逃げ道を塞ぐように包囲しており、そこから太一が下がりながら離れようとすると、相手も彼を逃がさないように包囲を狭めてくる。

 

そして、とうとう遺跡の扉の前まで追い詰められてしまう。

 

「隊長、こいつどうしますか?」

 

部下のタンクモンの質問に、隊長と呼ばれるメタルティラノモンが太一をどうしようか考えているが

 

「どうするもこうするも、見られたからには始末するだけだ!」

「まあ待て、なんの情報も聞かず消してどうする」

 

そう言って捲し立ててくるメガドラモンを、メタルティラノモンが落ち着くようたしなめる。

 

「だが!」

 

納得がいかない様子で反論するメガドラモンに対し、メタルティラノモンは相変わらずせっかちなやつだと小さく呟くが

 

「なに、逃がすつもりはない」

 

そう言ってメタルティラノモンは鋭い視線を太一に向けた。

 

 

一方で太一は、扉に背中を預け情報を整理していく。

 

まず、相手は自分を逃がすつもりはないということ。

 

救援を呼ぶにも通信機はさっきの拍子で落としてしまっていて、それに第一として間に合わない。

 

戦うにしても、完全体が二体に成熟期が三体ではまず勝ち目が無いだろう。

 

しかし、そんな危機的なこの状況で太一は諦めてはいなかった。

 

(何とかしてこの包囲を突破しないと)

 

どうにかこの状況を打破しようと、考えを巡らせる太一。

 

その時、ふと彼の手が扉に触れ

 

 

 

スウウウゥゥゥッ

 

強固そうな扉が空間に溶けるように消えた。

 

「え?」

「「「「「なっ!?」」」」」

 

太一は背中を支える感覚が無くなり疑問に思い、メタルティラノモン達は今までどうやっても開かなかった扉が開いたことにあっけにとられた。

 

その間にも支えを失った太一の身体はどんどん後ろ倒れていき。

 

更に後ろに続く道は下へ下る階段のようになっていたため

 

「えっ!?う、うわああぁぁぁ.........................」

 

ゴロゴロゴロゴロゴロ.....................

 

太一はそのまま重力にしたって一気に下へと転げ落ちていった。

 

「「「「「....................」」」」」

 

暫くあっけにとられていたメタルティラノモン達だったが

 

「はっ!?なにをしている貴様ら!我々も早く突入するぞ!!」

 

いち早く我に返ったメガドラモンが一喝し

 

「そ、そうだな。全員、遺跡へ突入するぞ!一刻も早くアレ(・・)を、紋章(・・)を手にいれるのだ!!」

 

メタルティラノモン達も急いで遺跡の中へと突入していった。




太一がデジソウルを使える理由はというと、この世界にはデジモンに関係した色々な能力(チカラ)が存在していて誰もが使えるという訳では無いのですが、その素質があるならそれらの能力(チカラ)を人間達は使うことができる設定です。

D-armsはこの世界のアイテム(武器)の1つで、人間の放出するデジソウルの変換や増幅等のサポートをするものという設定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

運命の出会い

メインヒロインが登場しますが名前はまだ出ません。
オリキャラではないと明言しますが、こちらも自分の趣味が強いです。
話の中でヒロインの特徴は描いてみたのですが、初めて読んだ皆さんは分かりますか。


太一は依頼を受けて調査に来ていた森の中で不思議な遺跡を発見するが、その遺跡を襲う謎のサイボーグデジモン達に見つかり遺跡の扉の前まで追い詰められしまう。

 

しかし突然、謎の遺跡の扉が消えるように開き、太一はそのまま遺跡の中へと落ちていってしまった。

 

 

「アアァァァァアッ!誰か止めてくれ~~~!!」

 

物凄い勢いで、まだ階段を転げ落ちていく太一。

 

悲鳴をあげながらしばらく階段を転げ落ちて行くと、ようやく階段が終わり

 

ドグシャッ

 

「ぐぎゃっ!?」

 

何かが潰れたような音と悲鳴をあげて太一は床にぶつかって、ようやく止まることができた。

 

「痛たた。急に転げ落ちるなんてなにがどうなってんだよ」

 

起き上がり辺りを見回すとそこは広い空間(スペース)になっているようで、壁などに人工の灯りが設置してあるが周りはかなり薄暗く、そんな空間がずっと奥の方へと続いてるようだった。

 

痛みも引き始め、考える余裕ができた太一は

 

(今落ちてきた階段は奴らが追って来ているだろうし。別の道を探したほうが良いな........)

 

そう結論づけて彼は遺跡の奥へと進み始める。

 

「かなり広いな…」

 

かなり進んだのだが、ずっと薄暗い空間が続くだけで出口らしき物は見えず、どうしたものかと太一は悩み始めていた。

 

「?何かあるな」

 

しかし、ようやく先の方に何かが有るのを見つけて早足になって近づいて行く。

 

 

 

するとそこには大きな装置(カプセル)のような物が置かれていて、その中には

 

 

 

安らかな表情で眠る一人の少女が入っていた。

 

 

 

中に入っている少女を見た太一は

 

「綺麗だ.....」

 

ただじっと見つめながら一言、そう呟く太一はその少女に見とれていた。

 

歳は彼より少し下位だろう、愛らしく整った顔立ちをしていて、薄茶色でサラっとした髪は肩口まで伸ばしており、白いシンプルな布を羽織ったような服の下の身体はスラっと細いが確かに少女だと分かる身体つきをしている。

 

思わず太一は手をのばし、そっと装置(カプセル)に触れる。

 

 

 

 

 

プシューーー―ーッ

 

すると急に煙が噴き出すと共に装置(カプセル)が開きだす。

 

「うわぁっ!?」

 

驚いた太一は思わず後ろに下がるが、装置(カプセル)が開き切ると、少女が目を開けた。

 

少女は、ゆっくり装置(カプセル)から降りるとボーッと意識の定まらない様子で辺りを見回し。

 

そこで余りの状況に完全に固まっている太一を見つけると、ふらふらとした足取りで近づいて行き固まっている彼の目の前まで来て

 

「誰?」

「え?」

 

少女の呟いた一言で太一の脳は再起動した。

 

「えっ...!?あの...!?その.....!?」

「あなたは、誰?」

 

変わらない調子で太一に誰と尋ねる少女は、その夕陽色の瞳にじっと太一を写している。

 

余りの事態に混乱していたが、太一は出来るだけ頭を冷静に働かせようとして

 

「あっ、ああ...俺は太一っていうんだ!」

「タ...イチ.....?」

「そお、太一。じつは俺、依頼でこの辺りを調査してたんだけどイロイロ有って此処に落ちちゃってさ」

「???」

 

なるべく冷静に話をしようと少女に話しかける太一だが、それに対し少女は解らないといった風に首をかしげるばかりだ。

 

「えーっと、じゃあ君の名前は?何でこんな所に居たんだ?」

 

困った太一が今度は、少女の身元に関しての質問をしてみるが

 

「私?私...は.....」

 

少女が何かを言おうとしたその時、太一が歩いて来た奥の方の暗がりから小型のミサイルが彼らのいる場所に飛来してきた。

 

ズドドドォォォン

 

着弾の瞬間、咄嗟に少女を抱えミサイルを回避した太一だが、それを追うように更に複数ミサイルが向かって来る。

 

太一は少女を抱えながら、ミサイルを避け、避け切れないものは抜いた剣で切り裂いていく。

 

(これで最後!)

 

最後のミサイルを切り裂いて、それで太一は全てを対処し切ったと思い。

 

それが一瞬だが彼の気を緩めたその瞬間、小型ミサイルで死角になっていた場所からそれより一回り大きなミサイルが飛来し

 

「しまっ.....!?」

 

ボッゴオォォォォン

 

二人を爆炎が飲みこんだ。

 

「流石だな!メタルティラノモン!」

「なに、お前が気を引いてくれたからだ。 何故か一匹増えていたようだが」

 

そう言いながら、暗がりからさっきのサイボーグ型デジモン達が姿を表す。

 

その視線の先にいる二人の姿は爆炎によって上がった煙で姿は見えなかった。

 

「一応、手加減はしたから死んでいないと思うが」

 

まあ、もう動け無いだろうとメタルティラノモンは結論付け、そこから視線を外すと

 

「今は紋章を探すのが先決だ」

 

メタルティラノモンは後ろに待機していたタンクモン達に指示を出す。

 

「タンクモン部隊、手分けして遺跡をくまなく調べろ!紋章を探し出せ!!」

 

命令を受けて、遺跡を調べようとするタンクモン達だが、その内の一体が急に煙の上がる方を指して叫ぶ。

 

「た、隊長!アレを!?」

 

メタルティラノモンが何事かと思い振り向くと、徐々に煙が晴れていった先に、ボロボロの姿になり同じように罅の入った剣を支えにしながらも立っている太一と、その後ろに隠れた無傷の状態の少女の姿がそこにあった。

 

「何だと!?」

 

手加減をしていたとはいえ自身の技をまともに受けて、それでも太一が立っている事や少女が全く無傷なことにメタルティラノモンは驚いた。

 

 

あの時太一は、爆炎も防げるマントを全て少女を守るために使い、自身はデジソウルを全力で身体に纏わせ剣を盾にすることでミサイル攻撃を凌いだのだ。

 

それでも、今立っている事がやっとのダメージを受けた事に変わりはない。

 

そんな状態の太一は後ろに目を向けると、其処には恐怖に身体を震わせる少女の姿が見えた。

 

この状況で怯えるなと言うのが無理な話だろう。

 

そんな少女に向かって太一は

 

「大丈夫」

 

力強い声で、一言そう言葉を発する。

 

少女が顔を向けると其処には見るものを等しく安心させるような力強い笑みをした太一の顔があった。

 

「君は、俺が必ず守る」

 

そう言ってまた前を向いた太一はその自分の言葉に一瞬、少女に見えないように自傷染みた笑みをしたが、直ぐに顔を引き締めメタルティラノモン達を見据える。

 

「なかなかやるな小僧。しかし、その身体ではもう何も出来まい」

 

自分の攻撃を受けてなお立ち続けその目に闘志を燃やし続ける太一を素直に認める言葉をこぼすメタルティラノモンは

 

「大人しく捕まれ。そうすれば二人とも命だけは助けてやる。 だが抵抗するなら」

 

そう言いながら相手は全員、二人に身体に取り付けられた重火器を向けた。

 

「生憎こんなピンチはなれっこなんだよ。 絶対に諦めるもんか」

 

それに対し太一は不敵な笑みを浮かべ、明確な拒絶の意思をしめす。

 

「そうか........」

 

一言そう呟くとメタルティラノモン達は二人に攻撃を放とうとした。

 

その時、急に少女が太一の手を取って走り出す。

 

「!?」

「逃がすな!」

 

それに直ぐ反応してメタルティラノモンが追撃を指示すると、タンクモン達が太一達を追いかける。

 

「おい、どこに行くんだ!?」

 

太一の声に答えず、その手を引いてひたすら走る少女だが、その先はもう壁で行き止まりになっていた。

 

「そっちはもう行き止ま...!?」

 

構わず少女は壁の前まで来ると手を壁に当てる。

 

するとまた、太一の時と同じ様に壁が溶けるように消え、奥に更なる空間が存在していた。

 

「!?」

 

驚く太一をつれ少女はその奥に向かうが

 

「させるか!ハイパーキャノン!」

 

そうわさせないとタンクモンの必殺技が放たれる。

 

ドゴーーーンッ

 

しかし、消えた壁が再び元通りに現れてタンクモンの必殺技を阻んだ。

 

それを見てメガドラモンは

 

「攻撃を続けろ!奴らを逃がすな!」

 

太一と少女を逃がすまいと、攻撃続行を指示した。

 

 

壁の奥に逃げこんだ太一達だったが、そこにあったのは不思議な部屋だった。

 

壁一面に何か模様が刻まれていて、一番奥には一際大きくオレンジ色で太陽のような形をした模様が刻まれている。

 

少女はその前まで太一を連れてくると、その模様の下を指差す。

 

その下には、掌に収まるサイズの小さな機械がはめ込まれていた。

 

その名前を知っている太一は、それを見て小さく名前を呟く。

 

「デジヴァイス......」

「アレを使ってください」

「!?」

 

突然、口を開いた少女の言葉に太一は驚くが、少女は構わず続けた

 

「アレを使うことができれば、この状況を切り抜けられる筈です」

「でも、俺は.........」

 

少女の言葉に何かを迷っている太一だが、後ろで爆音が何度も響き、振り向くと壁が崩れ始めているのが見える。

 

迷っている時間は無いと、太一は壁に嵌まっているデジヴァイスに手をかけておもいっきり引っ張るが、しかっり嵌まっているのかなかなか外れない。

 

その間にとうとう壁が崩れてしまいメタルティラノモン達が侵入してくるが、メタルティラノモン達は部屋の奥の模様を見てその顔が驚愕と喜びに変わる。

 

「紋章!?こんな所に有ったのか!」

 

しかし、その前に太一達がいるのに気付くと、それが焦りに変わった。

 

「急げ!?紋章を奴らに渡すな!!」

 

全員が太一達に向かって突っ込んで来る。

 

太一はそれを見て更に力を込め

 

「うぅおああぁぁぁあっ!!」

 

叫びと共に全力で力を込めるとデジヴァイスは壁から外れ、その瞬間、壁に刻まれていた紋章が眩い閃光を放ちだして全員の視界を塞いだ。

 

「「「うおおぉぉぉ!?」」」

「し、しまった!?」

「ま、眩しい!?」

 

 

 

 

 

そうして閃光が収まり太一が目を開けると、

 

「何だ、コレ.....」

 

自分の手の甲に、壁に刻まれていた紋章と同じものが刻まれていたのだ。

 

更に良く見ると壁に刻まれていた紋章はキレイに無くなっている。

 

「こ、小僧!貴様、紋章を!?」

 

その事に紋章を狙っていたメタルティラノモン達も気付くと

 

「貴様ァァァ!許サァァァン!!」

「待て、メガドラモン!?」

 

激昂したメガドラモンがメタルティラノモンの制止の声も聞かず猛スピードで突撃して来る。

 

「ッ!!?」

 

さっきのダメージで反応が遅れた太一に向けメガドラモンがその鋼鉄の腕を降り下ろそうとしたその時。

 

「ヌゥオォッ!?また....ッ!!?」

 

今度はデジヴァイスが強い輝きを放ち、それがメガドラモンの動きを止めると

 

ドガァァアアンッ

 

その光の中から巨大な影が飛び出しメガドラモンを後ろの瓦礫まで吹き飛ばした。

 

「お、お前は......」

 

太一は自分を助けてくれた何者かのその姿を確認する。

 

それは、オレンジ色に青いラインが入った大きな身体に、頭部を覆う茶色い鎧殻とそこから生えた三本の角を持つ、恐竜のような姿のデジモン

 

グレイモン/ レベル 成熟期/ タイプ 恐竜型/ 属性 ワクチン/ 必殺技 メガフレイム メガバースト

 

「グウオオォォォォッ!!!!」

 

偉大なる竜へと進化する素質を持ったデジモン、グレイモンがそこにいた。




小説の流れは以前に投稿をしていた小説としばらくは同じですが、読みやすいようにそれらの話を一話分にまとめたり文章の修正をしっかりとやってから、話を投稿したいです。
とは言え自分は遅筆なので、以前の投稿分に追いつくまでは一週間~二週間の間隔で一話ごとの投稿しながら新しい話も少しづつ執筆していこうと考えています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

デジモンバトル

令和のデジモンアドベンチャーを観てると、ところどころに平成版を彷彿とさせるシーンがちりばめられてるのが分りますね。
しかしそれを思わせるシーンからの展開は、全く新しいストーリーとなっているので何度も、おぉ!?と思わされてワクワクしてます。


謎の遺跡の中へと落ちてしまった太一は、その奥で、カプセル型の装置に入り眠っていた一人の少女との出会いを果たす。

 

それは運命の出会いであり、現在(いま)、再び彼の物語が始まろうとしていた。

 

 

 

太一と謎の少女は襲いかかるサイボーグデジモン達に追い詰められ、その凶腕が太一に向けて振り下ろされそうになったその時、彼が手に入れたデジヴァイスから成熟期デジモン、グレイモンがリアライズして彼を救けてくれた。

 

グレイモンに吹き飛ばされたメガドラモンはそのまま後ろの壁に激突し、さっき穴を開けられた時に脆くなっいたのか一気に壁は崩れ、メガドラモンは瓦礫の下に埋まってしまう。

 

突然起こった一連の事に太一が呆けていると

 

「タイチ、大丈夫か?」

 

グレイモンが心配した様子で声をかけてくる。

 

「あ、ああ大丈夫だ」

「良かった...。タイチは下がってて」

 

戸惑いながらもちゃんと返事をした太一を見て安心したグレイモンは目線を前に向け、メタルティラノモン達に対して向き合い戦う姿勢をとる。

 

その様子を見ていたメタルティラノモンはタンクモン達に向け

 

「排除しろ」

 

短くただ一言で、冷徹な命令を下した。

 

「「「ラジャー!!!」」」

 

命令に従ってタンクモン達は陣形を組みながらグレイモンに向けて突撃し、それを迎え撃つ為にグレイモンも前へ飛び出す。

 

「待て!一人じゃ...!?」

 

同じ成熟期でも三対一の状況、にもかかわらず向かって行くグレイモンを太一は止めようとするが

 

「ハイパーキャノン!」

 

それよりも早くタンクモンの一体が顔の砲身から必殺技の砲撃を放つ。

 

強力な砲弾がグレイモンに向かっていくが

 

「はっ!」

 

それをグレイモンはその身体に似合わない素早い動きで楽々と避けてみせる。

 

「「まだまだ!!」」

 

ドカン ドゴオォン ドガァン ドカァァァン

 

それを見たタンクモン達が今度は連続で必殺技を間髪なく放ち続けるが、それすらもグレイモンは難なく避けながら前進していき、タンクモン達と距離を詰めていく。

 

「ウソだろ!?」

 

その事に驚き隠せなかった一体のタンクモンが動揺し隙を見せると、グレイモンはそのタンクモンに一気に接近して

 

「ホーンインパルス!」

 

ズガァァァァンッ

 

自身の頭部に生えた角を使った突撃で突き飛ばす。

 

「グアァァァ!!」

 

その威力に叫び声をあげ後退するタンクモン。

 

その隣にいたタンクモンはこの距離で必殺技を撃つのは危険だと判断したのか、接近戦に持ち込もうと今度は自分からグレイモンに突っ込む。

 

それをグレイモンは真っ正面から受け止め

 

「ウオオォォォオ!」

「オ、オォォォッ!?」

 

気合いの掛け声と共に、グレイモンは立ち上がろうとしていたさっきのタンクモンに向けてそのタンクモンを投げ飛ばした。

 

そこまでの動きを流れるように行ったグレイモンはそこで大きく息を吐いて呼吸を整えるが

 

「うおッ!?」

 

その場でとっさに頭を伏せると、さっきまで頭のあった辺りを死角から振られた銃器のような腕が過ぎていく。

 

「チッ!」

 

攻撃を避けられ舌打ちするのは死角に周っていた三体目のタンクモンで、直ぐに次の一撃を放とうとするが、それより先にグレイモンが身体を旋回して尻尾による強い一撃を叩き込む。

 

「ガァァァアッ!?」

 

ドゴォガァァァン

 

他の二体のところまで吹っ飛び一ヵ所に固まったタンクモン達に向けて、グレイモンが

 

「メガフレイム!!」

 

口から巨大な火炎弾を放った。

 

ボオォォォオオオ

 

「「「熱ヂヂヂヂヂヂイイッ!?」」」

 

火だるまになってあまりの熱さから辺りを転げて走り周るタンクモン達は

 

ゴチーーーン

 

三体とも正面からお互いに頭を思い切りぶつけ、その衝撃で火は消えるがタンクモン達はそのまま気絶してしまう。

 

「すげぇ!」

「ほう、やるものだな」

 

あっという間に三体のタンクモンを倒したグレイモンの高い能力に太一は驚き、その様子を見ていたメタルティラノモンもグレイモンを素直に評価する。

 

するとメタルティラノモンはゆっくりとした足取りでグレイモンに近づいていく。

 

メタルティラノモンが足を踏みしめる度に微かに部屋は揺れ、グレイモンはそうして近づいてくるメタルティラノモンの姿から滲み出る威圧感から強さを感じとったのか、さらに集中力を高め身構えた。

 

お互いが攻撃を当てるのに十分な距離に入り睨み合うグレイモンとメタルティラノモンは相手の動きをうかがっているようで、そこから辺りに充満するピリピリした空気は後ろにる太一にも伝わってきた。

 

 

 

「今度はオレが相手だ!来い!!」

 

メタルティラノモンのその言葉を皮切りにお互い動き出すと、飛び掛かるグレイモンに対してメタルティラノモンはそれを受け止めようと腕を伸ばす。

 

更にその腕をグレイモンが掴み返し、お互い力比べをする形を取るが

 

「ぐッ!ウオォッオォォオオ!!」

 

しかしグレイモンがいくら力を込めてもメタルティラノモンはビクともしない。

 

「成熟期が、パワーでオレに勝てると思うな!!」

 

元々の基礎能力の差に、体格や圧倒的体重の違いもあり、力ではグレイモンが圧倒的に不利だった。

 

メタルティラノモンはグレイモンを軽々と持ち上げて投げ飛ばす。

 

「うあぁあッ!?」

 

そこからメタルティラノモンはすかさず、倒れたグレイモンに右腕を向けると

 

「ギガデストロイヤーⅡ!!」

 

先ほど太一が受けたのと同じだが、威力は桁違いの本気のミサイルを撃ってきた。

 

発射されグレイモンに向かっていくミサイルを見て太一が叫ぶ。

 

「避けろ!!」

 

それに反応したグレイモンはその場で横に転がることでなんとかミサイルを回避したが、ミサイルが着弾するとさっきとは比べ物にならない爆発が起きる。

 

ドッガアアァァァアンッ

 

「くぅっ!?」

 

余りの威力に太一のいる場所まで爆風が吹き抜けるが、グレイモンは立ち上がると怯むことなく再びメタルティラノモンに向かって行く。

 

「ふんっ!!」

「うわァッ!?」

 

だが、またも簡単に弾き飛ばされてしまい、メタルティラノモンはそのまま再度ミサイルを放つ。

 

ドッゴォォォォォオン

 

グレイモンも今度は避けきれず、爆風によって身を焼かれ

 

「グッアァァァア!?」

 

激しい痛みがグレイモンを襲う。

 

「ぐ...ッ、ウオオォォォッ!!」

 

しかしグレイモンは立向かうのを止めない、いくら同じように吹き飛ばされようと、ミサイルの爆炎で体が焼かれようと、何度も、何度も、グレイモンは諦めず立ち上がってメタルティラノモンと戦おうとする。

 

「クソッ!!なんとか為らないのかよ!?」

 

それを見ていられ無くなった太一は、自分に出来る事はないのかと必死に考えていると

 

ドクン......

 

(タイチ..........)

(此れは!?)

 

彼の頭に直接、誰かの声と、そして何か脈打つような音が伝わってくる。

 

ドクン...

 

(タイチ.....!)

(解る。デジヴァイスから伝わってくる)

 

段々とそれは大きく鮮明になり、太一がハッキリ感じられるようになっていく。

 

ドクンッ

 

(タイチ!)

(此れは、グレイモンの...!!)

 

それは、デジヴァイスを通して繋がった、グレイモンの心の声と魂の鼓動だった。

 

「タイチ!ボクに力を!」

 

グレイモンがどうして欲しいのか、どうすれば良いのかが、デジヴァイスから直に太一へ伝わってくる。

 

「分かった!グレイモン!」

 

グレイモンの声に応えるように太一はデジソウルを掌に集めると、それをデジヴァイスの中へ注ぎ込む。

 

すると、デジソウルはデジヴァイスを通してグレイモンに送られていき

 

「ウオォォォオオオッ!!」

「!?」

 

グレイモンが今まで以上のスピードでメタルティラノモンに近づいて、身体を下に潜り込ませ持ち上げようとする。

 

「何度も無駄なことを!!」

 

メタルティラノモンはさっきまでと同じようにグレイモンを弾き飛ばそうとするが、どういうわけか今度はグレイモンの身体の方がビクともしない。

 

更に徐々にだがメタルティラノモンの鋼鉄の体が持ち上げられていく。

 

「バ、バカな!?急にこれほどの力が!!」

「ウゥオオオォォォォォォオ!!」

 

そしてグレイモンが叫びながら全力で力を込めると、メタルティラノモンが宙高く放り投げられた。

 

「うおおおぉぉぉぉッ!?」

「今だグレイモン!!」

「応!!」

 

空中でバランスの捕れない今が勝機(チャンス)だと、太一の声にグレイモンが応える。

 

二人の心がリンクすることで、デジソウルが二人の間でどんどん高まり続け、それが送られるグレイモンの口内に凄まじいエネルギーが集まると

 

「「メガバースト!!!」」

 

空中で身動きがとれないメタルティラノモンに向かって強力な熱線が放たれた。

 

辛うじて反応したメタルティラノモンは

 

「くッ!?ヌークリアレーザー!!」

 

左腕から強力なレーザーを放ち、迎え撃つ。

 

二つのエネルギーは正面からぶつかり合い始めは拮抗していたが、徐々に太一とグレイモンのメガバーストが押し勝って行き

 

「バカな!?」

 

ドッゴォォォオオオン

 

ヌークリアレーザーを吹き飛ばし、そのままメタルティラノモンを飲み込んだ。




今回から早速ですが公式設定からの設定改変して通常のグレイモンにメガバーストを使わせました。
他にもデジヴァイスの強化によるグレイモン無双などもありましたが、これは自分の中では序の口のことなので、先に進むにつれていろいろ設定の追加や改変による強化をしていきたいと思ってます。
小説の感想やアドバイスがもらえるとやる気が出るので、よかったらお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

進みだした運命

コロナウイルスの影響でデジモンアニメを含むほとんどのテレビ番組が放送延期となり、全てのイベント企画も自粛状態といった具合で寂しく辛い時期となっています。
それでも感染拡大を防ぐことに全力を入れるのが、自分に出来る一番効果のある一番最短で事態を回復させる方法だと信じ、今は耐えていきましょう。
ですが実際はストレスがすごく溜まるのも事実なので、家の中で気分転換出来ることを見つけたいですね。
自分の書いた小説も、そんな誰かにとっての気分転換になれれば幸いです。


太一の手に入れたデジヴァイスからリアライズしたグレイモンは彼を守るため、襲い掛かるサイボーグデジモン達と激しい戦いを繰り広げるが、自身よりもレベルが上である完全体のメタルティラノモンにまるで歯が立たずに追い詰められていく。

 

それでも諦めずに立ち向かうグレイモンの姿を見ていた太一が何かできないかと必死に願うと、頭の中に突然グレイモンの声とデジヴァイスの使い方が伝わってくる。

 

その声に応じた太一は、デジヴァイスを通し自身のデジソウルを送ることでグレイモンをパワーアップさせると、それを受け取ったグレイモンはメタルティラノモンへ反撃を始め、そして太一とグレイモンが共に力を合わることで放った必殺のメガバーストがメタルティラノモンのヌークリアレーザーをふっ飛ばして、メタルティラノモンを打ち破った。

 

空中でメガバーストの直撃を受けたメタルティラノモンはそのまま下へと墜ちて行き、轟音をたて床に叩きつけられる。

 

その直後

 

「ガアァァァアアア!!」

 

ガァゴォォォォン

 

瓦礫を吹っ飛ばし、今まで気を失っていたメガドラモンが復活した。

 

状況を確認しようと辺りを見回し、床に倒れたメタルティラノモンを見つけ急いで側に寄るが

 

「メタルティラノモンッ!?」

 

メガドラモンが近付いて見ると、メタルティラノモンが受けたダメージの大きさが直ぐに解った。

 

全身に火傷を負い、機械部分は所々ショートして左腕は大破してしまっている。

 

「オノレェェェッ!!貴様ラアァァァァアッ!!」

「「ッ!?」」

 

相棒がやられたことで、一気に怒りで激昂したメガドラモンが太一達に襲いかかろうとした瞬間(とき)

 

「待.....て...メガ...ドラモン」

 

それを止めたのはメタルティラノモンだった。

 

「メガドラモン......、一時...撤退だ」

「なんだと!?」

「状況が.....、変わった...。ここは...引くぞ.....」

「!?.......くそっ!!」

 

メタルティラノモンの言葉で、冷静になって辺りの状況を見るメガドラモン。

 

味方は負傷者ばかりで中でも相棒のメタルティラノモンはかなりのダメージ負っているうえに、目的の物だった紋章は今は太一の手に刻まれてしまっている。

 

このまま戦闘を続けるのは得策ではないだろう。

 

「分かった.....。お前らいつまで寝ている!撤退するぞ!」

 

メタルティラノモンの言うことを理解できたメガドラモンは気絶していたタンクモン達を叩き起こし、そしてなにやら丸い形をした装置を取りだすと、何もない場所へ投げた。

 

するとなにもなかった空間に黒い大きな穴(ゲート)が開き、タンクモン達がその前まで近付くと吸い込まれるように、(ゲート)の中に消えていく。

 

「待て!逃げるのか!」

「勘違いするな!一旦引いてやると言っているのだ!」

 

グレイモンの言葉で抑えていた怒りに、また炎がつきそうになったメガドラモンだが

 

「グウゥッ!?」

 

メタルティラノモンが痛みに呻くのを見て、メガドラモンは怒りを飲み込んで肩を貸しながら黒い穴(ゲート)へ向かう。

 

「大丈夫か、メタルティラノモン!?」

「かなり、損傷が大きいな......。小僧、その右手の紋章は...いつか.....必ず手にいれる。我らの目的のために...覚えておけ.....」

「この借りもその時返してやるからな!首を洗って待っていろ!」

 

メタルティラノモンとメガドラモンは(ゲート)へ進みながらそう告げ、二体が(ゲート)の中へと入ると(ゲート)は閉まり、そこに誰もいなかったかのようにメタルティラノモン達の姿は消えてしまっていた。

 

 

 

それを確認して

 

「はあぁぁぁ....」

 

ようやく緊張が解けた太一は大きく息を吐く。

 

彼自身はあのまま戦って無事に勝てると思っていなかったので、内心ホッとしていたのだ。

 

そんな時、急にグレイモンの体が光りに包まれる。

 

「!?」

 

光りはどんどん小さくなって行き、それが消えると、そこには小さくてどこか愛嬌のある黄色い恐竜のような姿のデジモンがいた。

 

 

アグモン/ レベル 成長期/ タイプ 恐竜型/ 属性 ワクチン/ 必殺技 ベビーフレイム ベビーバーナー/

 

 

グレイモンから退化したアグモンは太一に向かって駆け寄って来ると嬉しそうに飛び付く。

 

「タイチ~、やったよボク~」

「ああ、お前スゲーよ!」

 

太一もアグモンとハグしながら頭を撫でて褒めるが、しかしそこで気付いた。

 

「そういやアグモン。お前何で俺の名前知ってるんだ?」

 

初めて会ったばかりのアグモンが自分の事を何故か知っている。

 

今さらその事に気づいた太一はアグモンに尋ねるが。

 

「う~ん、分かんない。でもボク、タイチを待ってたんだ」

 

爪を口に当て考える仕草をして本人も分からないといったアグモンの答えに、太一はアラッと転けそうになる。

 

意味不明なことを言われて太一は更に混乱していく。

 

「俺を......待ってた?」

「うんそう、タイチ待ってた」

「それってどういう意味だ?」

「だ~か~ら~タイチを待ってたんだって」

「あ~~もう、なにが何だってんだよーー!」

 

ガシガシと頭をかきながら上を向いて叫ぶ太一だが、いつまでも此処で考えていても仕方がないと取り敢えず割り切る。

 

「は~~、とりあえず外に出るか。光子朗とも連絡取らなきゃいけないし」

 

太一がそう考えていると、ふと気付く

 

「なあ、君も一緒に......?」

 

ずっとそばにいたが先ほどから全く喋らくなった少女に、太一は一緒に外に出ないかと聞こうとしたが、違和感を覚えた。

 

「........」

 

少女は立ったまま虚空を見つめていて、目も焦点があっておらず、意識が定まっているように見えない。

 

「な、なあ、大丈夫か?」

 

心配になった太一は少女の傍によろうとすると、フッと糸の切れた人形のように少女の体が倒れそうになる。

 

「お、おい!?」

 

間一髪で太一は少女の体を受け止めるが

 

「おい大丈夫か!?しっかりしろ!!」

 

必死に呼び掛けるものの少女に反応はない。

 

「ねえ、その子大丈夫なの?」

 

アグモンも側に来て少女のことを心配するが

 

「分からない。とにかく急いで外に出よう!」

 

そう言うと太一は少女の身体を両手で優しく支えるように抱えると、アグモンと一緒に急ぎ出口へと向かった。

 

 

 

この時、太一はまだ知らなかった。

 

これが彼の、いやこの世界の真実(ほんとう)の物語の始まりになるということを。

 

しかしそれでも、運命は動き出してしまった。

 

彼等の過去(キズ)も癒えぬままに。




小説タイトルの前書きにもあるように太一達の過去は重要な要素なっていきます。
ですが書けるのはもっと後の予定なので、そこまで到達できるように頑張っていくつもりです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人にはそれぞれ抱えている問題がある

令和最初の夏はコロナ終息のめどが立たないままで大変な状況ですが、デジモンを通して知り合った沢山の人達と画面越しのイベント等で遠くからでもはちぶんのいちの日を無事に祝って迎えられたことを本当に嬉しく思います。
コロナが少しでも早く収束し、大きなイベント会場でデジモン好きの人達と皆で一緒に盛り上がりたいですね。
今回のストーリーは会話メインですが少しシリアスな雰囲気です。


遺跡での一件から少し時間は経ち、太一達は森から一番近い場所に造られている村へやってきていた。

 

「治療を受けさせてくれてありがとうございます村長さん。おかげで助かりました」

「いやいや何をおっしゃいますじゃ。何があったかは存じませぬが、あなたにあの森の調査を依頼したのはこの村に住むわしらじゃ。なればこれくらいするのは当然のことじゃよ」

 

そこは太一が森に訪れるきっかけになった森の調査依頼を彼に頼んできた村でもあり、村と呼ばれてはいても技術の進んだこの世界では大型施設の他に対デジモン用装備や非常時のための設備も備えたその場所は自分たちの価値観からすれば小さな町程度の生活水準を備えていたので、太一は少しでも早く医者に少女の容態を診てもらうためにアグモンを再びグレイモンへと進化させて村へ自身と少女を運んでもらい、そのまま村で運営している病院に駆け込んで治療を受けさせてもらっていたのだ。

 

「それにしてもあなたがグレイモンに乗って村にやって来たときは驚きましたぞ」

「すみません、急を要する状況だったんで」

「分かっておりますとも。しかしいったいあの森で何があったのですじゃ?」

「そのことなんですが...」

 

村の住人達も最初は成熟期デジモンのグレイモンが村に向かって来たのを警戒したが、その頭の上に森の調査依頼を申し込んだ太一がボロボロの状態で乗っているのを確認すると直ぐに村へと入れてそのまま病院まで通してくれた(と言うよりも大急ぎで運び込まれた)。

 

そして

 

「というわけで、あの森には凶暴なデジモンが何体かいましたがこちらが何もしなければ危険はないと思います。だけど出来ればあの森には近づかないように気を付けてください」

「分かりましたですじゃ。村の者たちにはわしからくれぐれも伝えておきますゆえ、心配なさらんでくだされ」

 

治療が終わった太一は自身の見舞いに来てくれた村長に依頼である森の調査結果の(危険な状況だっただけに、万が一の場合がないよういろいろ誤魔化して)報告をしていた。

 

「この度の件については村の者を代表して礼を言わせて下され。本当に感謝申し上げますじゃ」

「いやこちらこそ、村にいきなり押し掛けた俺たちを快く治療してくれて本当に感謝してます」

「ホッホッホッそう言ってもらえると気持ちが楽になりますじゃ」

「それでその話とは別に一つお願いがあるんですけど」

「?」

 

感謝の意を伝える村長に謙遜する太一だが、そこでふいにあることをお願いする。

 

 

 

太一が村長への報告を終えて

 

「タイチ何してるの?」

「通信、仲間に連絡しようと思ってな。それにしても光子郎のやつ怒ってるだろうな~」

「コウシロウって?」

「俺とは昔から付き合いがあるやつでさ、頭がすごく良くて頼りになるんだ」

「へぇ~」

 

アグモンと話す太一は、身体のあちこちに包帯が巻かれた状態のまま村長に頼み貸してもらった通信装置を操作し光子郎に連絡を取ろうとしていたが、本当なら遺跡から出てすぐに彼は光子郎と今回の事件について相談するための通信を入れるつもりだった。

 

しかし太一の使っていた通信機は遺跡での戦闘時に壊れてしまっていたため、光子郎と連絡が取れずに困っていた太一は村に設備されている通信装置を借りることを思い付き、村長に頼んで特別に現在いる病院に備え付けてあった通信装置を使わせてもらっていた。

 

「えっと、光子郎の端末につなげるには.....」

「タイチ~まだ終わらないの?ボク眠たくなってきちゃった」

「しょうがないだろこういったこと苦手なんだから。たぶん話にも時間がかかるから、暇ならアグモンはそっちのソファーで休んでて良いぞ」

「う~ん、じゃあそうする~。おわったら呼んでねタイチ~」

「ああ、分かったよアグモン」

 

慣れない装置の操作を頑張る太一だがなかなか通信が繋げられず、そうしてるうちに彼の横で付き添っていたアグモンも暇を持て余しだして、とうとう待ちくたびれてソファの上でぐっすりと寝てしまう。

 

「.....よし、やっと繋げられた」

 

アグモンが寝た後も一人で頑張っていた太一だが、ようやく光子郎が専用で使っている通信装置へ通信を繋げられると、画面に段々と映像が映り始め

 

「あ、光子ろ...」

「太ぁぁアアア一ぃぃぃイイさァァアアァんッ!!!!?」

 

通信が繋がったとたん、画面の向こうから光子郎がものすごい大声で太一に怒鳴りかかってくる。

 

「なにすんだよ光子郎、そんな大声なんか上げて。言っとくけど此処は病院なんだぜ?」

 

あまりの大声にキーンとなる耳を抑えながら怒り心頭といった様子の光子郎に太一はいつものように話すが

 

「大声も出しますよ!!いったい今まで連絡も寄越さないで何してたんですか!?こっちから連絡をしようとしても繋がらないし!それに病院って...、あぁッ!?しかもまたそんな大怪我をして!」

「まーまー、そこは俺が悪かったから、いったん落ち着けよ光子郎。何があったかちゃんと説明するから」

 

此処が病院だと教えても全く収まる様子のない光子郎に、太一は落ち着くよう促すが

 

「いえ、その前に今回の太一さんの問題についてしっかり言わせてもらいます!!」

「...マジかよ」

 

そう言い放つご立腹な光子郎の顔を見て、付き合いの長さから今回は本気(マジ)の説教だと悟った太一は手を顔に当てて項垂れたのだった。

 

 

 

それから小一時間ほど光子郎に説教を言われ続け太一がもう勘弁してくれという状態なってようやく光子郎も渋々説教を止めて、そうして二人は今回の事件について話をしだす。

 

「...ってことがあったんだよ」

「なるほど、それは確かにいろいろ気になりますね」

 

太一から事件の詳しい内容を教えられ、光子郎は興味深いといった様子で思考をし始める。

 

「だろ?それでさ、頼みなんだけど...」

「分かってます。太一さんを襲った奴らや紋章のことについて、こちらでいろいろと調べておけば良いんですね」

「流石は光子郎、話が分かるぜ」

 

だてに付き合いが長い訳ではないということか、太一の頼もうとしたことを詳しく言わずとも即座に理解してみせた光子郎は、ただと一言続け

 

「そうなると調べることが多いので、少し時間をもらいたいですね」

「分かった。何日くらいかかりそうだ?」

「だいたい...、一週間くらいは欲しいですね」

「一週間って、ちょっと長くないか?」

「こっちだっていろいろ忙しいんです。太一さんは暫くその村で安静にして過ごしていて下さい」

 

光子郎が提案した期間に、なるべく早く情報が欲しい太一は自分がそっちまで戻って手を貸そうかとも言ったのだが、調べるのが終るまでは村で療養しているようにと強く釘を指す光子郎に押しきられ、暫くこの村で療養することにした。

 

 

 

話しも終わって太一が通信を切ろうとするが

 

「それで、良いんですか?」

 

その前に光子郎が彼に声をかける。

 

「何が?」

「アグモンの事ですよ」

 

光子郎が言ったその一言によって太一の顔は曇り、自分の後ろでずっとソファに寝そべって鼻ちょうちんを作っていたアグモンに目を向けた。

 

しかし、その目はアグモンではなくどこか遠くのものを視ているように見える。

 

「やっぱりまだ割り切れないですか」

「.....」

「仕方がないですよね、あんなことがあったら........」

 

その様子に光子郎は気まずそうな顔をし、太一は普段の彼には似合わない弱々しい声で

 

「ああ、アイツはどう思っているか解らないけど。俺なんかが、アイツのパートナーで良いのかなって.......」

 

そう弱弱しく言葉をこぼす太一の目には、深い悲しみの色が宿っていた。

 

そんな様子の太一へ

 

「太一さんがどう思っていたとしても、僕は太一さんならアグモンと良いパートナーになれると、そう思っていますよ」

「......ありがとな」

 

光子郎が送った励ましの言葉に、太一は一言だけ礼を言うとそこで通信を切った。

 

暫くそこで苦しげな顔で立っていた太一だが、両手で頬を何度か強めに叩くと気持ちを切り替えたのか何時もの彼の顔に戻り、そこにちょうどアグモンが起きてくる。

 

「タイチ~話し終わった~?」

 

半分寝惚けた状態のアグモンに太一は何時もの調子で

 

「ああ、待たせて悪かったなアグモン」

「いいよ~べつに。それでこれからどうするの?」

「暫くはこの村に滞在するよ。いろいろ用意しようと思ってるし、それに.....」

「それに?」

「あの子の事も心配だからな」

 

太一の頭には遺跡で出会った少女の事が浮び、そうして話ていると二人に突然、病院の看護婦が駆け寄ってくる。

 

「居た居た!ちょっと君良いかな!?」

 

慌てた様子で太一に話しかけてきた看護婦に彼はどうしたのかと尋ねると

 

「実はあなたが連れてきた女の子、ちょっと困ったことになってて」

「!!?」

「取り合えずちょっとアノ子の所まで一緒にきてくれないかしら?って、ちょっと君!?」

 

看護婦が話を言い終わる前にすでに太一は走り出していた。

 

 

 

看護婦から話を聞いた太一は直ぐに少女のいる病室へ向かうと、病室の前に太一の治療をしてくれた女医と看護婦が二人で困ったような顔をして立っているのが見えた。

 

「どうしたんですか!?」

「ああ、貴方ね!ごめんなさい急に呼んだりして」

 

急いで病室の前まで来た太一は自分の治療を担当してくれた女医に何かあったのかと尋ねると

 

「実は、あの子が目を覚ましたんだけど.....」

「本当ですか!」

 

太一は思わず大声を出して話しを遮って女医に詰め寄るが、女医はそれを落ち着くように促してから話を続け。

 

「でも私達が近づこうとすると怖がって、全然話が出来ないのよ」

 

ほとほと困ったという顔で話している女医は、それでねと太一へ要件を話す。

 

「貴方あの子と顔見知りなんでしょ?だから貴方から話を聞いて、できれば説得してくれないかしら?いろいろ検査もしなきゃいけないから」

 

女医の頼みに太一は少し考えてから頷くと、試しに病室の扉を数回ノックしてみるが、返事はない。

 

少し迷ったが構わず中に入り中を見回すと、部屋の隅で毛布にくるまってうずくまっている少女の姿があった。

 

「...っ!?」

 

少女は部屋に人が入って来て怯えるように警戒したが、顔を見てそれが太一だと分かるとゆっくりと顔を出してくれた。

 

その様子を見て太一はゆっくり少女に近付き、しゃがんで視線を少女に合わせて

 

「あ...えっと.....、太一...さん?」

「うん」

 

おずおずと口を開いた少女に太一は頷いて優しい声で話しかけた。

 

「目が覚めたんだな。良かった」

「えっと.....その...はい...」

「そんなに畏まらなくてもいいって。普通に話してくれれば」

「あ...う、うん」

 

しっかりと自分の言葉に返してきてくれる少女に太一は内心でホッとする。

 

「それにしてもいきなり倒れたからビックリしたぜ」

「ごめんなさい.....、迷惑をかけたでしょ?」

「気にすることないって、それより体は大丈夫か?どこか痛む所はないか?」

 

太一が少女に体に異常はないか尋ねると

 

「ううん、大丈夫」

 

はっきりそう言った少女の顔色を見て太一は取りあえず一安心するが、少女は太一の姿をよく見ると辛そうな顔になり。

 

「ごめんなさい........」

「え?」

「私を庇って、太一さん、そんな大怪我を」

 

急に謝られて何かと思う太一だが次の少女の言葉で、あ~と自分の中でなんのことか納得した。

 

彼女は自分がいたせいで太一が怪我をおってしまったと自分を責めているのだと

 

「これは別に君のせいじゃないよ。もうかなり平気だし」

「でも.....!」

「あれは、俺の不注意が招いたことだ。だから君が気にする必要なんてないよ」

 

それが解って太一は少女に優しく諭すように話し、それにと続け

 

「俺が勝手に君を守りたかったからやったことなんだ。もしあの時、俺が無事で代わりに君が無事じゃなかったら、俺は自分で自分を赦せなかった。だから、君が気にする必要なんて無いんだ」

 

確かにあの時、少女を庇わなければ太一はこれ程の怪我をせずに済んだかもしれなかったが、だからといって少女を見捨てるなんてことは太一には出来ない。

 

いや、そんなことは認められない。

 

そんな太一の言葉を聞いていた少女の顔は少しづつ明るくなるが

 

「それに、君がいなかったらあの状況を切り抜けられなかった。ありがとな」

 

その言葉で、少女が顔を曇らせたのに太一は気付かなかった。

 

「そういえば、あのとき結局聞けなかったけど、君の名前は?」

 

太一が少女の名前を尋ねると、少女は暫く黙っていたが

 

「...わからないの.....」

「え?」

「わからないの。自分が誰なのかも、なんであんな所に居たのかも......」

「え?でも、あのとき....」

「あのとき...、太一さんを助けたいって思ったら急に、どうしたら良いのか頭に浮かんできて......。でも本当に私、自分が誰かもなにもわからないの」

 

不安そうな顔で少女が話してくれた彼女の予想外の現状に、太一なにを言えば良いのか分からなくなってしまう。

 

少女は、自分自身のことについての記憶すら全く無い、いわゆる記憶喪失と呼ばれる状態だった。




メインヒロインにありきたりな設定したなとは言わないで下さい。(願)
また少しだけ登場できた光子朗ですが、次回からまた暫く登場予定は有りません。
次回は少女と太一との関わりがメインとなります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。