立海のルーキーズ (桜日和)
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一年生
入学


俺は前世でハンターをしていたが任務中に殺され、今世では異常なまでに平和な世に生まれた。

 

おかげで性格も大分丸くなり、もともと本を読むのが好きだった俺は学校の成績でも優秀で運動も得意だった為学校では生徒からも先生からも信頼を集める優等生となった。

 

対して同級生の切原赤也というやつは、運動神経がよく明るい性格から友達は多かったが、成績が悪く、よく先生に怒られていた。

 

どちらかと言うと大人しい優等生の俺とトラブルメーカーの切原は関わり合いになることもなかったのだが

 

「なっ?頼むよ!!」

 

「・・・まぁ、いいけど」

 

切原はどうしてもテニスが全国区の立海大附属中学校に行きたいらしく、勉強を教えてほしいと頼まれた。

 

「じゃあ、とりあえず切原の学力知りたいからこの間あったテスト見せてよ。」

 

「まじか!?あんがとな!意外と桐生って優しいんだな。あ、えっとテストは、これこれ!」

 

そう言って切原は笑顔でテストの答案を渡してくる。

 

「じゅっ、15点・・・・?」

 

「おう!」

 

「立海ってついでに頭いいの?」

 

「はぁ?当たり前じゃん!バカだったら桐生に勉強教えてなんて頼まねーよ」

 

そこからは2人で学校の先生に立海の過去問を貰い、毎日のように放課後居残り、時には土日に家を往き来して勉強を教えてやったり、休憩としてたまにゲームをして遊んだりした。

 

そういうしていく内に俺と切原は段々仲良くなっていった。

 

「なぁお前も立海行こうぜ!」

 

そう言われて、悪い気はしない。

 

「それもいいかもな」

 

学力は問題ないから先生と親に言ってみればあっさりとOKが貰えた。

 

中学校の入試は勿論学年トップで、入学してからの全国模試でもトップだった。赤也とは同じクラスになって、切原と桐生だから出席番号も近い為、ずっとつるんでいた。

 

「なぁ、お前部活はやんねーの?」

 

「部活かー、めんどいな」

 

「ってかさ、お前いつも体力テストとか手を抜いてるだろ。」

 

「おー、赤也なのによく分かったな。」

 

「馬鹿にすんじゃねーよ!!だって体力テストの時いつも俺の方見て大体俺と同じ結果出すじゃねーか。しかもお前が息切れしてるところ見たことねーし」

 

「へー、お前そういうところは鋭いんだな」

 

「へへっ、まぁな!なぁ、一緒にテニス部入らねー?お前運動神経いいしさ!頭いいからルールだってすぐに覚えられるって!」

 

「まぁ、赤也が覚えられるくらいだからなぁ」

 

「おいっ!どういう意味だよ!!」

 

「まぁでも、それもいいか。」

 

こうして赤也に誘われるままテニス部に入り、球拾い、トレーニング、素振り、周囲のペースに合わせてこなしていく。

 

まぁどれもハンターの頃に比べたら朝飯前のトレーニングだけど。

 

「集合!」

 

そう言われて俺達は駆け足で副部長と部長の元へ駆け寄る。

 

「よし、では今から1年の実力を測る為1年と2年で試合を行う。まず経験者とそうでないものに分かれろ!」

 

赤也は経験者だから別々になるな。

 

「じゃ、また後でな赤也」

 

「おう」

 

未経験者組は最近ようやく球に触らせてもらえるようになったばかりだし、それで試合って正直キツくね。

 

まぁ、1年から下手に目立つのもアレだし、無闇に点取ったりせずにとりあえず打ち返してればいいか。

 



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試合 (ジャッカルside)

「お前どうだった?」

 

「全然ダメ」

 

「俺もだよ、1ポイントも取れなかった」

 

「流石王者立海だよなぁ」

 

「俺たちなんてまだいいさ、三強と当たった1年はズタボロだぜ?」

 

「大方な、でも見ろよ切原の奴は2年と互角に打ち合ってるぜ。いやむしろ切原が優勢だな」

 

「まじかよ、流石仮入部で三強に挑んだだけのことはあるよな」

 

「あれ?あそこもまだ試合があってる」

 

「あそこまだやってんのかよ」

 

「2年の桑原先輩と、あれ誰だ?」

 

「1年の桐生 葵だよ!今年の入試トップの!」

 

「あいつら1ゲーム目の1ポイント目に何分かける気だよ」

 

「えっ!嘘だろ!?まだ1ポイント目なのか!?試合始まって何分たってんだよ」

 

「もうそろそろで1時間だな。」

 

「桑原先輩は流石、まだ余裕って感じだな。」

 

「いや、それは桐生もだよ、全然息を切らしてない。それに桑原先輩からの攻めも難なく返してる」

 

「あれ、幸村部長が2人の試合を止めに入ったぞ?」

 

桑原side

 

毎年する1年と2年との試合。

 

俺とやるのは未経験者の桐生葵という奴らしい。

 

まぁ、さすがに未経験者相手に負けはしないだろう。

 

そう思っていたが、桐生は俺がどこに打っても打ち返してきやがる。

 

フォームも乱れがないし、息も乱れていない。これで未経験とはな。

 

全く切原といい、こいつといい今年の1年は大した粒揃いだ。

 

しかし、切原と違ってこいつは攻めのコースが甘い。そんなんじゃ俺からポイントは取れねぇぜ

 

そう思った矢先、思ったより手前でボールが落とされて、何とか拾ったものの足元が滑り態勢を崩してしまう。

 

くそっロブが上がりすぎた!これじゃ相手からスマッシュがくる!!

 

だが予想とは裏腹に桐生は俺の所にロブを打ってきた。

 

おかげで俺は態勢を整え、再び試合はラリーに戻ることができた。

 

今何故スマッシュを打たなかった?未経験者だからか?

 

いや、未経験者にしても何故俺のところにロブを?普通なら俺のいない所に打つはず。

 

・・・もしかしたら俺はとんでもない思い違いをしていたのかもしれない。

 

未経験者だから攻めのコースが甘いのかと思っていたが、こいつ、今までもずっとわざと俺の返せるレベルで打ち続けていたのか!

 

「そこまでだ」

 

その声で俺と桐生の動きが止まる。声の主を辿るとそれは幸村で、右には真田、左には柳が立っていた。

 

こいつら、一体いつから観戦してたんだよ。

 

「桐生、10分休憩した後俺と試合をしないか?」

 

幸村が桐生を見つめて、不敵な笑みを浮かべる。

 

「分かりました」

 

あーあ、よりにもよって幸村に目をつけられるなんて、こりゃ大変。

 

ご愁傷様ってやつだな。

 



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試合2 (幸村side)

桑原先輩との試合に夢中で気付かなかったが、いつの間にか俺と桑原先輩以外の試合が終わっていてほぼ全員が俺たちの試合を観戦していたらしい。

 

まぁ幸村部長の一声でその試合も終わってしまったけど。

 

「10分休憩後に俺と試合をしよう。」

 

気づいたら1時間も桑原先輩と試合をしていたらしく、桑原先輩も驚いていた。

 

幸村部長との試合ということもあって周りの注目度も一気に上がる。

 

周りが戸惑う中、試合を終えた赤也が俺の元へ寄ってくる。

 

「おいおい桐生大丈夫か?1時間試合した後に幸村部長と試合だなんて」

 

「まぁ、体力的には。そういえば赤也は幸村部長とやったんだっけ?どうだった?」

 

「あぁ、正直あの人の強さは化け物並みだぜ、6-0のストレート負けなんて俺久しぶりだったし。あと、幸村部長と試合してるとさ段々目が見えなくなって、耳も聞こえなくなっていくんだ。後で先輩達に聞いたんだけど、幸村部長って人の五感が奪えるらしい」

 

赤也でストレート負け、化け物並みの強さか。

 

つーか、五感奪えるってどういうことだ?

 

念能力者には見えないし、念を使わずに五感奪えるのか?何だそれ凄すぎだろ。

 

まぁそんなに強い人相手なら俺のやることは決まっている。

 

幸村side

 

桐生との試合が始まり、俺はワクワクしていた。

 

俺の相手の一年は経験者だったけど、赤也みたく潰しがいがなかったし。

 

ほとんどの試合が終わっていく中、ジャッカルとある1年の試合だけは終わってなくて暇つぶしに覗いてみて俺はすぐに分かった。

 

1年が全力でないことに、手を抜いたプレーをしていることに。

 

ジャッカルはまだ発展途上の選手だけど準レギュラーとしての実力は持っていて決して弱い選手ではない。

 

その後もしばらくラリーが続いた所でジャッカルが自分が手を抜かれたと気づいた。俺はそこで試合を無理やり2人の試合を切り上げた。

 

無理に俺との試合をこじつけたはいいものの、あっという間に桐生とのゲームは6-0で終わってしまった。

 

勿論俺のストレート勝ち。

 

この1年、さっきの桑原との打ち合いでは考えられない程の凡ミスをわざと繰り返してきた。

 

周りは期待していた分落胆していたが、俺からしたらただただ苛立ちが募るだけだった。

 

あぁ、どうやらこの子にもお仕置きが必要のようだ。

 

「ありがとうございました」

 

そう言って1年は俺に握手を求めてきた。仮にも後輩で試合相手、握手を求める手に応えないわけにはいかない。

 

でもそのまま握手して終わり。なんてあまりにつまらないから、彼が手を引こうとした瞬間に強く彼の手を握りしめ、腕ごと引っ張る。

 

「俺との試合で手を抜こうだなんていい度胸だね。明日から俺がいいと言うまで朝練前にグラウンド100周して柳から受け取るトレーニングを終えておくこと。終わるまでコートに入ることもラケットとボールを触ることも許さない。いいね?」

 

「はぁ」

 

彼の耳元でそう告げると俺は手を離し、コートから立ち去る。普通あそこまで無茶を言われたら困惑するか、苛立つか何らか感情が出るはずなんだが。

 

・・本当、生意気な子だ。赤也みたいに目に見えるバカだったらどんなにやりやすいか。

 

「蓮二、彼の名前何だっけ?」

 

「桐生葵だ。俺としたことが全くマークしていなかった。不覚だ。」

 

蓮二に彼用のトレーニングを今日中に渡すことを告げるとさっそく蓮二は彼の元へ駆け寄っていったのだった。

 

 



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試合3(柳蓮二side)

展開ノロノロしてすみません。今回までジャッカルとの試合の話です。


1年と2年の試合結果をまとめ、それぞれデータを集めていく。

 

今年の1年で有望株である切原赤也の試合を観戦しデータを取る。準レギュラーの川崎相手にあそこまでの差を見せつけて勝利するとはな。予想以上だな。

 

切原のデータを集め終えた後、次に目に入ったのはジャッカルと桐生という1年の試合だった。

 

確か桐生はテニスは未経験だった筈、なのに準レギュラーのジャッカル相手にあそこまで打ち合える1年が赤谷の他にもいたとは。

 

「蓮二、試合は終わったのか」

 

「あぁ、とっくに終えてデータを取っている所だ。弦一郎も試合を終えて試合観戦しようとしているようだな。」

 

「あぁ、その通りだ。にしても桐生という1年は未経験にしては筋がいい」

 

「お前もそう思うか。持久力は勿論、反射神経、動体視力、ポテンシャル事態は俺より高いだろう」

 

桐生のデータを取る為にジャッカル達の試合を目を向けると桐生のボールに段々違和感を覚えてくる。

 

さっきの球はもう少し角度をつければ点は取れたはずだ。

 

今の球はもう少しスピードを速くすればジャッカルは追いつけなかったはず。

 

やがて俺はその違和感の正体に気づいた。

 

・・・そうか、この1年生は手を抜いて試合をしているのか。

 

未経験だった者がジャッカル相手に手玉に取るとは信じられない。

 

やがて精市が2人の試合を取りやめて、次に精市と桐生の試合が始まった。

 

流石に精市相手に手を抜いて戦えないだろう。データを取るチャンスだと思ってペンを強く握りしめる。

 

だが、その試合は俺の予想を遥かに上回る結果となった。

 

「ゲームセットマッチ ウォンバイ幸村6-0」

 

桐生は先程の何倍にも手を抜きわざと精市に負けたのだ。

 

精市もそのことにご立腹らしく機嫌を悪くして俺の方へ近寄ってくる。

 

「蓮二、彼の名前何だっけ?」

 

「桐生葵だ。俺としたことが全くマークしていなかった。不覚だ。」

 

「明日の朝までに彼に厳しめのトレーニングメニューを用意しておいてくれ。明日から蓮二のメニューとグラウンド100周を終えるまで練習には参加させない」

 

「・・・分かった」

 

これは相当怒っているな、無理に諌めるとこちらに飛び火するだろうから日を改めてから話をしよう。

 

まずはトレーニングメニューを作らなければ。そう思い、桐生のデータを取りに向かう。

 

「あとあの子結構食えないから気をつけてね」

 

「あぁ、わかった」

 

精市からそう言われたものの桐生は誰かと言い争いになったり、先生に反発したことのない優等生だ。

 

先程の精市との試合で本気を出さなかったのも恐らく下手に目立って反感を買いたくないからだろう。

 

早速俺は試合を終えた桐生にデータを取らせてもらえるように話しかけに行く。

 

「桐生、すまないが今からデータを取らせてもらえないか?」

 

「まぁいいですけど」

 

「テニスを始めたのはいつからなんだ?」

 

「立海のテニスに入部してからです。」

 

「ふむ、そういえばお前は赤也に誘われて入部したんだったな」

 

「はい」

 

「赤也からはお前が体力テストなどで本気を出した所を見たことないと聞いたが本当か?」

 

「まさか、そんなことないですよ。たまたまです」

 

「・・・・そうか。ところで先程のジャッカルと精市との試合だが、わざと手を抜いていたのは何故だ?」

 

「別に抜いてませんよ。あれが俺の実力です」

 

「嘘だな、ジャッカルの試合はともかくとして精市との試合はありえないミスを連発しすぎだ。」

 

「桑原先輩との試合で疲れていましたから」

 

「ほう、表情や呼吸を見ていた限りでは何も変わらないように見えたが」

 

「「・・・・」」

 

「まぁいい。とりあえず精市からお前用のトレーニングを渡すように言われた。4月に行った体力テストの結果は確か今日返却された筈だ。用紙は持っているか?」

 

「・・・はい」

 

桐生の渡された用紙の数値を見て、それが全く当てにならないことをすぐ様察する。

 

なぜならその数値は全て切原と全くといいほど同じだったからだ。

 

「じゃあ、俺そろそろ行きますね。」

 

追究しようとする俺を面倒くさがったのか桐生はすぐにその場を離れてしまった。

 

 

『あの子結構食えないから気をつけてね』

 

頭の中で先程精市から言われた言葉が反響する。

 

「ふ、もう少し精市からの忠告を聞くべきだったな。」

 

そうして、俺はとりあえず桐生の体力測定結果に基づきトレーニングメニューを考えることにした。



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いざこざ

幸村部長から朝練前にグラウンド100周と柳先輩から貰ったトレーニングをこなすように言われた翌日。

 

「遅い!!」

 

朝練2時間前に来たら先に真田副部長が待っていた。

 

「貴様!こんな時間に来てあの量のトレーニングがこなせると思うか!」

 

「はぁ」

 

「ちゃんと返事をせんか!早く準備運動をして走れ!」

 

「はい」

 

真田副部長の叱咤激励?を受けながらゆったりトレーニングをこなしていき、朝練が始まる30分前には言われたトレーニングを終えた。

 

幸村部長も短時間で朝練前にこなしたことに驚いていたけど、真田副部長の口添えもあってズルをしたんじゃないかなどの言いがかりはつけられなかった。

 

でもまだ幸村部長からやめてもいいとのお達しは受けていないのでトレーニングは続行中だ。

 

ついでにこのことを知っているのは幸村部長、真田副部長、柳先輩に赤也だけ。

 

隠しているわけではないが、言う必要もないし、朝練前に終わっているから皆知らない。

 

「うへーお前よくそんなん続けられるな。俺なんて朝練でもギリギリなのに」

 

「まぁ、準備運動にはちょうどいいし、柳先輩がせっかく俺のために考えてくれたトレーニングだしな。」

 

そんな中今週末レギュラーと準レギュラーは他校の練習試合に行くこととなった。

赤也は唯一1年レギュラーなので、他校に行く予定だ。

俺たちは学校で自主練。

 

「へへっ♪じゃあな桐生!練習サボんなよ?」

 

「お前にだけは言われたくない。いってら」

 

「おうっ!!」

 

レギュラー陣達が行った今残ったのは一年とレギュラーになり損なった2年と3年。

部の空気はいつもより緩く、先輩達は後輩に雑用を押し付け練習もサボっていた。

1日くらい、サボるだけならいいかと見過ごそう思っていた。

 

だが、何人かで部室内を掃除していると先輩達が入ってきて折角綺麗にした場所をまた汚しはじめる。そして運悪く赤也の私物に目をつけたのだ。

 

「おい、なぁこれ切原のラケットじゃね?」

 

「くそっ、1年のくせに何本も持ちやがって、どうするよ?」

 

「ぶっ壊そうぜ、調子に乗ってレギュラーになりやがってムカつくんだよ」

 

「どうせ今頃他校の前で無様な試合を見せつけて立海の恥晒しをしてるに決まってるぜ」

 

4人の先輩達が赤也の悪口を次々口にする。

 

「おい、1年!告げ口したらゆるさねぇからな」

 

俺達を睨みつけそういうと先輩達は赤也のラケットを持って行く。

 

「お、おい。どうする?」

 

「どうするったって・・・」

 

「ねぇ、先輩方、無様な試合ってどんな試合なのか教えてくださいませんか?」

 

正直、普段の俺なら見て見ぬ振りをしているだろう。でも赤也のことは何だかんだで気に入っている。気がついたら俺は先輩達を挑発していた。

 

「あ?お前何だ?」

 

「こいつ、幸村にストレートですぐに負けた桐生とかいうガキだろ」

 

「1年がしゃしゃるんじゃねーよ」

 

「まぁまぁ、いいじゃねーか。何お前俺たちと試合したいの?」

 

「えぇ、もし良ければ」

 

「いいぜ、もし俺ら4人全員負けたら切原のラケットは返すぜ。もしお前が負けたらお前がこのラケットを壊せ」

 

こいつ結構エグい提案をしてくるなと思ったが、俺が負けるわけない

 

「分かりました。」

 

「けっ、生意気なガキだぜ」

 

4人の先輩は勝利を確信していた。

自分達はレギュラー入りは果たしていないが最近テニスを始めたばかりの歳下に負けるわけがないと。

だが、その考えは試合が始まった瞬間に掻き消えた。

 

全身に浴びる見えないプレッシャー、恐怖、それらを本能で理解した。

 

ボールを追わなければ、リターンを返さなければならないのに恐怖で体が動かない。

ここで立つだけで自分は精一杯で、逃げたいのに逃げられない。

 

気がつけば祈っている。この試合が早く終わることを。自分が彼の視界から消えることを。

 

早く終われ、早く・・・

 

「げ、ゲームセット マッチウォンバイ桐生、6-0」

 

その言葉がコートに響いた瞬間、身体にのしかかっていた重圧が一気に消える。

 

「先輩、見るに堪えない無様な試合を見せて頂いてありがとうございました」

 

そういうと桐生は切原のラケットを俺達から取り返し、去っていく。

 

もしこれが試合が始まる前の自分ならブチ切れていた言葉だろう。でも今は試合が終わったことへの安堵の気持ちが勝っていた。

 



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中体連開始

先輩方は俺が発する念に恐怖し、一歩も動けないまま試合は進んでいった。

 

勿論俺は4人に完勝。

 

赤也のラケットも無事に回収することができた。先輩方は今でも顔を青ざめて、体を震わせている。

 

まぁ、こっちの世界で念能力者見たことないし、10分以上は浴びてたからそりゃ怖かっただろうなーあの怯えようで明日から俺と一緒に部活できるかな?まぁ、どうでもいいけど

 

いつの間にか他の先輩達も集まっていたが、あいつらに何が起きてるかなんて分かりはしないだろう。

 

実際会話を少し聞いたが、何であいつら動かなかったんだ?と話はそればかりだった。

しばらくすると練習試合を終えた赤也達が帰ってきて、その日はすぐに解散となった。

 

「あのさ、桐生、さっき玉川達から聞いたんだけどさ俺のラケット先輩達から守ってくれたんだってな。その、サンキューな」

 

「・・・おう」

 

「へへ、じゃあさ今から俺がジュース奢ってやるよ!桐生何がいい?」

 

「緑茶」

 

「・・・じじくせ〜」

 

「うるせー」

 

赤也と軽口を叩き合いながら帰り、翌日部活を終えた後俺は幸村部長に呼び出された。

 

心当たりがあるとしたら昨日の試合の件だけだ。

 

「聞いたよ、あいつらと試合したんだって?」

 

「・・はい」

 

「あぁ、事情は4人とその日君たちといた1年生に聞いたから、今回はお咎めなしにしてあげる。俺が興味あるのは君の試合内容だよ。」

 

「・・・・・」

 

「テニスを初めてたった2か月の君が4人もの先輩から1ポイントも取られずに勝つなんて、ね。しかも聞いたところによると彼ら1歩も動かなかったんだって?あ、動けなかったの方が正しいかな?」

 

「さぁ、忘れました」

 

「俺だって五感は奪えるけどさすがに身動きを封じることはできないのに、君は彼らに何をしたんだ?」

 

念もなしに五感奪えたら充分すぎるけどな。

 

「別に俺は何もしていませんよ。」

 

「へぇ、しらを切るんだ?・・・まぁ、いいや。じゃあ近い内に見せてもらうよ」

 

もっと追究があるかと思ったし、何なら今から俺と試合しようとか言われるかと思ったがその日はもう帰っていいよとあっさり解放された。

 

まぁ助かるけど。

 

幸村部長の近い内に見せてもらうという言葉が引っかかりはしたものの、俺は大人しく引き下がることにした。

 

それから何故か部内では俺とテニスをすると動けなくなるだの、部活を辞めることになるだの言われるようになってしまった。

 

バカ也はそれを面白がって俺にもそれやってみてくれよとか言ってくるが。

 

そんな中いよいよ中体連が始まった。今日は地区大会の開催日である。

 

オーダーは当日の朝に部長から発表された。

確か地区大会は準レギュラーメインだったはず。

 

まぁどっちにしても俺には関係ないけど。

そう思って大人しく発表されるオーダーに耳を傾ける。

 

「シングルス3 桐生」

 

え???俺がシングルス3?

 

何かの冗談だろ?それか聞き間違い?

 

オーダーが一通り発表された後で幸村部長に確認に行くとやはりシングルス3は俺だった。

 

柳先輩によると対戦相手は去年地区大会で準決勝まで行った中学で特に俺が当たる予定の進藤という男は勝てればいいという主義で、相手チームの顔や身体にボールをぶつけて楽しむ趣味があるそうだ。去年も当たった時執拗に幸村部長の顔を狙っていたそうだ。

まぁ顔に当てることもできず五感も奪われてボロボロだったらしいけど。

 

にしてもどっちもサディストな戦い方だよな。まぁ俺はボールぶつけられるくらいじゃ何ともないけど。

 

他の部員が行くよりかは安全か。

 

「おい、桐生気を付けろよ。あいつ・・」

 

「知ってる。柳先輩から聞いた。ってか赤也も知ってるんだ。」

 

「あー、テニススクール一緒で、よく狙われたからなぁ。まぁ俺もやり返したけどな」

 

あいつ立海部員に散々にボコられてんじゃん。そうこうしてるうちにも俺の出番が回ってきて試合が始まった。

 

なるべく温厚な試合したいけど

 

「よろしくお願いします」

 

「俺の相手が1年かよ、お前無傷で終われると思うなよ。」

 

うわ、温厚にとか無理そうだな。

 




時期とか適当です。ごめんなさい。


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地区大会(試合相手side)

去年、俺は立海大附属中学校の幸村精市という男に地区大会準決勝で負けた。

 

それまで俺は部活内でも負けなしで、どんな手を使っても勝ちにこだわってきた。

 

相手が有利な時にはそいつの身体や顔に傷を作り棄権させてやった。

 

卑怯?それまではあっちが勝ってた?

 

んなもん知るか、ボールを避けれなかった奴が悪いんだよ。それに棄権だろうが勝ちは勝ちだ。

 

でも立海大附属中学校の幸村はそれまでの奴らとは違って、どんな球にも柔軟に対応し、平然と返してきた。そしてとうとう俺はあいつに五感を奪われ、1ポイントも取れなかった。

 

去年の屈辱を晴らす為に前よりも練習やトレーニングにも励んだ。

 

今年は地区大会初戦で立海大附属中学校とあたる。だけど、当日に立海のオーダー表に目を通すと幸村の文字はない。

 

俺はこの一年あいつを倒すことを目標にしてきた。だが、あいつにとって俺なんて眼中にないんだ。

 

ふざけんな。

 

しかも相手はレギュラーでもない1年だと?

 

舐めやがって・・・見てろよ、お前の前でお前の可愛い後輩をボロボロにしてやるからな。

 

そう決意して試合が始まり、俺は最初のサーブから相手の顔面を狙う。

 

我ながらいいサーブが打てた。よし、これなら顔面的中間違いなし!!

 

初戦から俺みたいな奴と当たってかわいそーにトラウマになっちまうかもな。でも恨むならオーダーを組んだ先輩とお前の運の悪さを恨めよな。

 

口角が上がり、相手が地面に伏せるのを楽しみにしていたが相手の1年はいとも簡単に俺のサーブを返してきた。

 

予想外だったが、すぐに俺もボールの元へ駆け寄りリターンを決める。

にしても相手の1年、思ってるより打球が重いし、スピードも速い。

 

くそ、やはり腐っても王者立海ってことか。

 

でも流石に足元狙われたら返せねぇだろっ!

 

そう思い次に奴の足元を狙うが、それも普通に返してきた。

 

何処に打っても平然と返してきやがる。こいつ、本当に1年かよ。

 

あっという間にそのまま相手リードを取られて試合は3-0を迎えた。

 

ちらりと立海のベンチを見ると余裕な態度の幸村精市が目に入った。

 

だが奴は1年生から1ポイントも取れない俺のことなど見てもいない。不安そうな顔も、あの顔つきは自分の後輩が俺相手に負けるわけがないと確信しているんだ。

 

何の、何のために俺はこの1年も頑張ってきたんだ。

 

このままじゃ終わらせねぇ・・

 

ラケットのグリップを強く握りしめ、歯を強く食いしばる。

 

 

 

 

そうだ、いいこと思いついちゃったぜ。

 

 

 

せいぜい俺を舐めてかかったことを後悔するんだな。幸村精市

 



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思惑(幸村sideあり)

後半少し幸村side入ります


相手は柳先輩や赤也の警告通り俺の身体を狙ってきた。

 

まぁあの程度の打球とスピードくらいなら返せるけど。

 

だが、試合が3-0で迎えたところで相手の雰囲気が変わった。というか俺にボールを当てようとしなくなった。

 

俺の体にぶつけることを諦めたのか?

 

何だ?この違和感は・・

 

違和感に気づいたのは4ゲーム目のマッチポイントの時だった。その時相手のコースは明らかにアウトだった。

 

だが、コースの先には立海のベンチがあり恐らくこのままいけば幸村部長の顔面に当たるだろう。

 

部員達もそのことに気づき、周りの1年が幸村部長に声をかける。

 

「危ないっ!幸村部長!」

 

「避けてください!」

 

だが、幸村部長は微動だにしない。避ける気はないってことだろう。

しょうがない、恐らく俺の脚力なら余裕で間に合うだろう。足に力を入れて瞬時に幸村部長の前に行き、相手のコートへ打ち返す。

 

相手はボールが返ってくるとは思えなかったのかそのままこちらが4ゲーム目を取ることができた。

 

「大丈夫でしたか、幸村部長」

 

「うん、まぁね。助かったよ、ありがとう。・・ところで桐生そろそろ彼にはお仕置きが必要だと思わないかい?」

 

幸村部長が微笑みながらそう告げる。

 

恐らく俺に2年の先輩達と試合した時と同じことをしろということなのだろう。

 

近いうちに見せてもらうってそういうことだったのか。恐らく彼と当たるのも計算のうちで俺と彼を当たらせたんのだろう。

 

「・・・・了解です」

 

コートに戻った俺は試合相手にだけ念を飛ばす。

 

すると相手は身体を動かすことができなくなり、試合はそのまま6-0で俺の勝利となった。

 

「お疲れ様。まぁまぁ楽しめたよ、あと朝練前のトレーニングはこれで免除にしてあげる」

 

「ありがとうございます」

 

そう言って、幸村部長は俺の頭を撫でると去っていった。

 

 

幸村精市side

 

 

 

全ての試合を終え、地区大会初戦にて立海大の勝利は確定した。

 

「柳、彼のことどう思う?」

 

「ふむ、見ていたところ精市のように相手に精神的プレッシャーを与えているように見えたが、精市からのサインを受けた瞬間から相手は身動きが取れなくなった。つまり——」

 

「つまり彼は俺と違って自分の意思で相手の身動きを封じることができる、ってことだね。」

 

「あぁ」

 

「・・・今年の1年生は、俺を困らせてくれるね」

 

「ふっ、楽しんでいるように見えるが?」

 

「それは柳もだろう?」

 

この年、三強とスーパールーキーである切原赤也と桐生葵が立海大を全国へと導き、見事全国大会優勝を飾ったのであった。

 




とりあえず1年時はこれにて終了としてこの作品は一旦完結としようかなと思います。書けそうだったら原作沿いも書きたいなと思います。

ご愛読ありがとうございました。


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閑話

ジャッカルとの試合後くらいです。


年時、ジャッカルとの試合後くらいです。

 

 

切原side

 

俺は立海大で男子テニス部の次期エースの切原赤也!

 

同学年では1番テニスが強い自信がある。そんな俺は今同級生で赤丸チェックつけてる奴がいるんだ。

 

そいつの名前は桐生 葵

 

最初はただのクラスメイトで成績優秀で真面目なやつって思っていた。

 

でも立海大を受けようとしていた俺は桐生に勉強を教え貰うようになって、一緒にいる時間が長くなる程俺達の仲は良くなっていった。

 

こいつ頭いいけど周囲を見下すような発言はしないし、俺が悪魔化しても全然動じなかったし、こいつといると居心地いいんだよなー。

 

立海に入学してからも同じクラスで切原と桐生だから席も近くてよくつるんでいた。

 

ある日、部活で1年と2年で試合することがあった時、俺はさっさと先輩を倒して休憩しようかと思ってた時にこいつとジャッカル先輩の試合が目に入った。

 

1年の頃からテニス始めたばかりの癖に桐生はすぐにジャッカル先輩と打ち合える程の腕前を身につけていた。

 

最初は才能あるんだなーくらいに思ってたけど、結局桐生はその試合も幸村部長との試合も手を抜いてあいつの本気は見られなかった。

 

俺はと言うと1年でレギュラー入りしたことで同級生や先輩達から睨まれて居心地が悪くなっていった。レギュラーの先輩達とか、何人か仲のいい奴らは俺の味方だったけど。

 

でも居心地が悪いからって三強を倒すと決めたからには練習をサボってなんかいられねーし、サボったら余計に風当たり強くなるだろうから毎日出てたんだ。

 

その甲斐あって俺はどんどんまた実力をつけていくことができた。だからレギュラー陣だけの遠征に参加していくことになった時張り切って放課後も練習してた。

 

練習を終えた後部室に戻ると俺以外の1年生が部室の掃除をしていた。

 

あ、そっか、レギュラー入りした俺以外は今日は部室の掃除するように言われてたんだっけ。

 

何か入りづれーなと思って扉の前で悩んでいると不意に室内から皆の声が聞こえだした。

 

「あーあ、切原はいいよなぁ部室の掃除しなくてよくて」

 

「本当だよ今日なんて練習張り切ってたぜ」

 

「三強、三強うるさいしな」

 

「大体ちょっとテニス上手いからって調子に乗ってんだよ」

 

「あいつ、先輩達と俺達から嫌われてるの気づいてないんじゃねーの」

 

その言葉は俺と仲のいい青田から発せられたものだった。

 

あいつ、俺のこと、嫌ってたのか?

 

「それなー、昨日なんて今度ゲームして遊ぼうぜって誘われたけど、あいつと2人きりなんて嫌だから断ったぜ」

 

「えー、お前それ用事があるからっていってたじゃん」

 

「あんなん嘘だよ、ウソ!」

 

中野まで・・・

 

「うける、お前らてっきり切原と仲良いんだと思ってたわ」

 

「うぇっ、変な勘違いやめろよ」

 

「あんな、うるさくてすぐキレるしよ。しかもキレたら目が充血してキモいし。あんな奴と友達とか恥ずかしくて学校来れねーよ」

 

耳を塞ぎたくなる内容だ。ここから立ち去りたい。でも何でか身体は動かなくて、どんどん中から聞こえる声も大きくなるような感じがした。

 

「ん?赤也どうかしたのか?」

 

「丸井、先輩・・・とジャッカル先輩」

 

「俺はついでか」

 

いつのまにか俺の後ろには丸井先輩とジャッカル先輩がいた。そういえば先輩達も放課後に練習してたっけ。

 

「何でい、中に入らねーの?」

 

「あ、えっと、」

 

どうしようか迷っている時にまた中から声が聞こえ始める。

 

「まじで、切原うざいわ。調子乗りすぎ」

 

「声もデカくてうるせーしな」

 

「ってか、話変わるけどさ、立海って意外と大したことないよなー。2年の準レギュラーの桑原先輩とか未経験の桐生に対して1ポイントも取れないしさ」

 

「あー、確かに。あれはダサかったな」

 

「ってか桑原先輩って親無職らしいじゃん」

 

「ありえねー、よくここに通えるよな。」

 

「本当それ、父親失格だな」

 

部室内の楽しげな雰囲気とは裏腹に外の俺達の雰囲気は最悪だ。

 

さぁーと血の気が引いていく。だってジャッカル先輩俺の目の前にいるし、ちらりとジャッカル先輩の方へ目線をやると、傷ついた表情をしていた。

 

そしてその横には髪と同じくらい顔を真っ赤にしている丸井先輩がいて、今にも中に入っていきそうな勢いだった。

 

丸井先輩がドアノブを掴もうとすると、ジャッカル先輩が丸井先輩の肩を掴んで止めた。

 

「ブン太、落ち着けって」

 

「はぁ!?お前あんなこと言われて黙ってろって言うのかよ!」

 

「ずっと部室の掃除してくれてたんだし、あいつらだって愚痴くらい言いたくもなるさ。」

 

「だからって言っていいことと悪いことがあるだろ!」

 

「大声出すなって、中に聞こえちまうだろ?」

 

「聞かせてやるよ!」

 

「だから落ち着けって、ブン太がそうやって怒ってくれるから俺もちょっと気分晴れたし」

 

「俺は晴れねーよ!」

 

そう言って再び乗り込みそうな丸井先輩を俺と桑原先輩で嗜める。

 

すると中からはまた声が響き始める。

 

「あ、いいこと思いついたー。」

 

「何だよ?」

 

「切原のロッカー荒さね?」

 

「うけるwww乗った乗った!なぁ桐生、お前頭いいし、どうせお前も切原のこと嫌いだろ?なんか案くれよ」

 

「ねーよ。」

 

「は?もう一回言ってみろよ」

 

「だから、ないって。一回で聞きとれよ。どうせ切原のロッカー荒してもテニス部としてはあいつに練習させる方が大事だし、犯人見つからなかったら片付けさせられるのは俺達だぜ?考えたらわかるだろ」

 

桐生のその言葉に中の奴らが全員黙る。

 

だが、桐生はイライラが止まらないのかさらに言葉を続ける。

 

「つーか、切原と桑原先輩のことばっか言ってるけどさ、テニス上手くもねーのに、全然掃除しない奴の方が調子乗っててウザいんだけど」

 

「あっそ、じゃあお前だけ切原と仲良しごっこしてれば?」

 

「仲良しごっこしてたのはお前らだろ。俺を巻き込むな」

 

桐生!!!つまり桐生は俺とごっこじゃなくて仲良しだって思ってるってことだよな!!

 

普段こういうこと言う奴じゃないのに!

 

でもだからか嬉しくて思わず口元がにやけてしまう。さっきまで傷ついた心が嘘みたいだ。俺ってやっぱ単純なのかな。

 

丸井先輩も桐生の反論を聞いて少しずつ落ち着きを取り戻してきた。

 

だが、穏やかな雰囲気になってきた俺達とは裏腹に中の様子は段々険悪になっていく。

 

「お前さ、1対3で勝ち目あると思ってんの?」

 

「そーそー、困るのは桐生だぜ?」

 

「お前らがいないくらいで何で俺が困るんだよ。困るのはお前らだろ。いつもいつも小テストと宿題の範囲とその答え聞いてきて、今日の宿題の範囲だって把握してねーくせに」

 

「「「・・・・・・」」」

 

「じゃ、俺ゴミ捨て行ってくるから。」

 

あ、やば!桐生がこっちに来る!!

 

そう思って隠れようとしたけど、ドアが開く方が早くて、普通に俺達と桐生がばったりと出会す。

 

なんか、気まずいそう思って目線を逸らす。

 

「お疲れ様です」

 

でも桐生はそんなこと微塵も思っていないのか、普通に挨拶してきた。

 

あいつメンタル強すぎだろ。

 

そう思ってゴミ袋を抱えた桐生を見送る。次に部室に目をやると、さっきまで悪口言ってた奴らと目があった。

 

あいつら、さっきまであんなにボロクソに言ってた癖に俺と桑原先輩を前にしたら顔青くしてやんの。ダッセー

 

桑原先輩は、何も言わなかったけど、丸井先輩は

 

「お前ら陰口とか人の親のこととかあんま言うもんじゃねーぜ」

 

ってちゃんと注意してた。

 

その場にいるのも気まずいし、丸井先輩の言葉でしゅんとなった奴ら見てたら、傷ついた俺がバカらしくなって、桐生の元へ行くことにした。

 

「桐生ー!ゴミ捨て手伝うーーー!!」

 

「おう」

 

「桐生さっきはサンキューな」

 

 

「・・・・おう」

 

ふだんあんまし表情変わらねーから分かりにくいけど、本当はこいつって優しい奴なんだよな。

 




桐生君は無意識に赤也のこと大好きです。友情的な意味で。
私原作持ってないのでものすごく書くの時間かかります。でもこんなにお気に入りに登録して頂けてすごく嬉しいです。やっぱテニプリっていいな笑


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