ノーブル・ブラッド (korotuki)
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【洋館事件】
-1998年(バイオ1)-001


(RE:3をプレイして衝動的に書いた)小説、はっじまっるよー!


○月▼日

 

 今日から日記…というか、活動報告を付けてみたいと思う。理由は特にない。強いて言うなら『形になる物を残したいから』だろうか?……いや、らしくない。みんなから女々しいと言われそうだ

 俺の名前はブラッド・ヴィッカッーズ。ラクーンシティ警察の特殊部隊S.T.A.R.S.のアルファチームの一員で、日夜テロリストだが人質とって立て篭もった凶悪犯から市民の皆様を守るお仕事をしている。

 そんな俺だが、今日確保したテロリスト供から謎の銃を拝借した。形からしてハンドガンの類らしいが、明らかに普通のものではない。

 まず銃中部の()()()()()()()()()()()()()()。少なくとも俺が知っている銃に電気を使うものは存在しない。あぁいや、エアガンがそうか?

 マガジンにあたる部分から電池が出てきた。俺にも見覚えのある大手メーカーのいたって普通の単三電池だった。デスクの中からオフィスの時計用のと同じ物が出て来たので試しに叩き込んでみると銃本体から電子音がなった。

 試しに射撃場にてぶっ放してみると軽く電気が出て来ただけで、的には傷一つなかった。

――――暴徒鎮圧用の威嚇用兵器?

 一瞬そう思ったが、まさかテロリストがそんな甘ちゃんな武器を持つ訳がない。まあ多分何かの役に立つこともあるかもしれないから、お守り代わりだと思って持っておくとしよう。

 

――職権濫用?生憎と、()()()()は得意でね。

 


 

○月■日

 

 最近、妙に暴徒に関する事件が多い気がする。元々このラクーンシティは血の気の多い奴が一定数いる町だが、そこを加味しても多すぎる。中には人を()()()()()()などと言う猟奇じみたような内容もあり、『アークレイの食人鬼』という命題でラジオのトークやジャップ達の噂話に使われていたりもしている。

 

――そもそもここ最近。なんかキナ臭い

 

 というわけで行動を起こすことにした。一先ず先輩警察官のマービンさんやバリー。後は日夜酔っ払いや小悪党と戦う現場主義の皆様から署名を集めた。題名は『非常時に備える為の物資補給』である。暴徒鎮圧用の警棒は勿論。非常食からマインスロアー弾まで幅ひろく、且つ多く備蓄しておくための署名である。

 

 何故か署長が渋ったがそこは数の暴力でカバーした。『これで無駄になったら貴様に責任を取ってもらうぞ』と脅しつけられたが、そうなったら、まぁ、クリス兄妹の家政婦にでもなるとしよう。

 

―追記―

 

 この事をクリスさんに話したら何とも言えない顔をされた。解せぬ

 


 

○月◇日

 

 今日、アークレイ山地での複数の猟奇事件を調査する為俺達アルファチームの“同僚”に当たるブラボーチームがヘリで派遣されていった。レベッカからは『ブラッドさん操縦のヘリじゃなくて残念です』などと茶化された。

 一応、ヘリ操縦には自信がある。俺の操縦テクに勝てる奴はラクーンどころかアメリカ全土にだっていないと断言できる程度には自信がある。

……いずれ俺達アルファチームにもお呼びがかかる可能性もある。愛銃達の手入れもしといた方がいいかもしれないな、こーゆうのは日本の諺で『備えあって憂い無し』っていうんだったか?

 


 

「…ようやく、終わったか」

 

 ラクーン市警のS.T.A.R.S.オフィス。夜も更けて市警内に残ったのは夜間の番を任された者や()のように今ようやく書類仕事を終わらせた者ぐらいだろう。

 

「いつになく遅くなってしまったな。明日も早いというのに……」

 

 

 S.T.A.R.S.アルファチームポイントマン、クリス・レッドフィールドは今ようやく片付いた書類達を恨めしげな目で見つめた後『帰るか』と眠気覚ましように噛んでいたガムをゴミ箱に吐き捨ててからオフィスを後にした。

 

タァーン、タァーン……

 

 そんな時、銃声がきこえた。一定で規則的に

 

(射撃場に誰かいるのか?こんな夜更けにいったい誰が……)

 

 好奇心に惹かれ射撃場に向かうクリス。肉体的にも精神的にもタフな彼だが流石に書類の山はこたえたらしく、少し脚をフラつかせながらも射撃場の扉を開けると――

 

「…?クリス先輩。どうも」

 

 見慣れた後輩が自前の愛用ショットガン【AA-12】を構えていた。彼の前にある人を模した的に例外なく頭部を中心に穴が多数開いていた。中には頭の部分がとれているものもあった。

 

「ブラッドか。こんな時間までどうしたんだ?」

「…別に、いやな“予感”がしたので自主訓練ですよ」

 

 そういうとリロードを済ませた愛銃を構え直し、絶え間なく撃ち続ける。銃に詰めた一発と専用のドラムマガジンから撃たれる32連射が容赦なく火を吹き、的の空白比率を更に高くした。

 

「“予感”…か。お前の勘はよく当たるが、それは何に対してだ?」

「【アークレイ】と【ブラボーチーム】って言ったらどうします?」

「……それは、胸中穏やかじゃないな」

 

 ブラボーチームとアルファチーム。ラクーン市警が誇る二大特殊部隊で、ごく稀に雑誌やテレビで『何方が強いのか』などの企画が組まれる事から世間からはライバル的な見方をされている節があるが、この二部隊の仲は至って良好である。合同の訓練はよくやるし、互いに書類仕事にたいする愚痴を言い合うし、なんなら二部隊主導のキャンプや釣り大会を開く程度には良好である。特にブラボーチームの一員であるレベッカはクリスにとっては妹のクレアを思い出す存在で、よく可愛がっていた。そんな彼ら彼女らに危機が迫るかもしれないと言われると、先の発言通り胸中穏やかではなかった。

 

「それに備えているのか?」

「えぇ。今回のヤマは、絶対大きくなりますよ」

 

 そう言うと背中に背負っていた狙撃銃【Steyr SSG 69】を構え、一番遠くの的を狙う。

 

パァン!

 

 放たれた弾丸は一直線に的へ飛び込み、その頭部を撃ち抜き、ついでに的の背後にあったラクーンシティのマスコット【ラクーンくん】の人形を吹き飛ばした。

 

「…オイ」

「害獣駆除って事で」

 

しれっとシラをきりながら次弾の準備をするブラッドを見てクリスはハァとため息を吐き、自分の腰から自らの愛銃『サムライエッジクリスモデル』を取り出し構え、()()()()()()()()()発砲した。

 

「――ヒュウ。相変わらず俺とバリーさんのお株を奪いそうな腕前ですね」

「付き合おう。次いでにスコアも競うか?」

「…ッ。いいでしょう!勝った方は空薬莢の片付け役で!!」




因みにその晩「拳銃で散弾銃よりも高いスコア出してんじゃねぇよ…!」と呻きながらモップを操る若い男性の姿があったとかなかったとか。


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-1998年(バイオ1)-002

因みにブラッドくんはクリスやバリーと言った男性陣にはタメ口ですが、ジルやウェスカーといった女性や直属の上司には敬語です。

修正:エンリコさんは別の人でした。ジョセフに変えました。
  :誤字を直しました。指摘してくれてありがとうございます


○月☆日①

 

 先程、ブラボーチームからの連絡が途絶えた。アークレイの調査は俺達アルファチームが引き継ぐ形となった。

 

 今日の夕暮れ、俺達アルファチームが事件究明のため派遣されるそうだ

 

 隊長からは『不測の事態を予測し、しっかりと装備の点検をしてくるように』と言われた。

 

――あぁクソ。今日ほど自分の勘の良さを呪った事はない

 

(ページが少し湿っている)

 

…そろそろ時間だ。操縦者の俺は早めに準備しとかないと。

 

レベッカの奴。乗せられたらよかったのに

 

(ここから書き殴られた文章で書かれている)

 

―追記①―

 

 隊長からの指示で現在上空にてホバリングしているが、この森は明らかにおかしい。

 

 途絶え途絶えに聞こえていた悲鳴混じりの無線も、今はもう完全に沈黙してしまい。俺は今端的に言えば孤立状態にある。

 

 取り敢えず無線から聞き取れた要素を纏める

 

・ブラボーチームのヘリを発見。

 

・ヘリ内部で“喰いちぎられた”ような遺体を発見。警戒態勢へ

 

・突如ジョセフの無線機から悲鳴と銃撃音。

 

・“何か”に襲われているかの様な焦燥したクリスとジルさんの無線。

 

・『洋館が見え――』の辺りで無線の反応が消失(ロスト)

 

・隊長であるアルバート・ウェスカーは終始沈黙。いつの間にか無線も切れていた

 

・現在アークレイ上空をホバリング中。丁度ヘリの下辺りから犬のような“唸り声”が聞こえる

 

 一先ず様子を見てみようとヘリの操縦をオートに切り替え、双眼鏡片手に辺りを見渡してみた。……のだが、まるで見えやしない。夜間の為視界が悪いのもあるが、そもそもここアークレイ付近は深い霧が出てくることでも有名である。

 

 それと…下に陣取っている野良犬ども、双眼鏡で見ただけでもおかしな点が見えたので、愛銃のスコープで覗いてみたんだが――なんだアレは

 

 肉は爛れ、胸骨が少し見える肉体。

 

 目は白目を剥き、片目にいたっては腐敗し溶けている。

 

 口は今まで何を()()()()()()()。血に塗れていた。

 

――SANチェック物だぞこれは。

 

 取り敢えず犯人確保用に渡された麻酔銃を撃ってみたが、全然効く気配がない。というかその一連の行動で俺を完全に敵と見なしたのか今もヘリの下でワンワン吠えている。

 

 取り敢えず任務に支障を齎しそうだし、何処かにやってもまた誰か襲いそうな気しかしないから、射殺した。

 

 クリスさん達が心配なので、取り敢えず無断ではっ付けておいた小型発信器から発せられた信号の履歴を頼りにヘリで向かったが、最後の反応から少し行ったところで謎の洋館を発見した。どうやら電気部品に対するなんらかの対策が施されているようで、発信器の信号も拾えなくはないが限りなく微弱だった。地図を確認したが、少なくともこの地図にはこの地点に洋館があると言う記載はなされていない。

 

 バカな金持ちが無許可で建てたのか、それとも………

 

 一先ず死体や先程の犬。洋館を写真に写しラクーン市警への救援を発信した。これできっと数時間もしないうちに応援が駆けつけて来てくれるだろう。

 

 取り敢えず、数分置きで無線で生存者がいるかどうか聞き続けることとしよう。

 


 

『……オイ!誰か――てるか!生き――――応答を!!』

「ッ…!ブラッド!ブラッドなの!?」

 

 凶暴化した野犬に襲われたまらず逃げ込んだ洋館の中。アルファチームの一員『ジル・バレンタイン』は、物音がした為単独で偵察するとブラボーチームの一人を貪り喰う狂人を発見。その人物は皮膚は爛れ血塗れで……まるでホラー映画の“ゾンビ”のような姿だった。

 自衛のための発砲は許可されていたが一応人だったので念の為警告するが、予想通り応じず襲ってきたので銃にて撃退。報告と、不気味さにやられてロビーへと戻るが、そこは既にもぬけの殻。待機していたはずのクリスやウェスカー達の姿は消えていた。

 そんな中どうしようかと思い始めた頃、彼女の無線機からノイズ混じりの声が聞こえて来た。その声は間違いなく任務開始直後にウェスカーからの指示によってヘリにて待機することとなった同僚ブラッドのものだった。

 急いで耳元に無線機を持って行き大声で叫び返す。ブラッドに言われ無線機の整備をしていた事が功を奏したのか、此方の声は無事ブラッドの元へと届いた。

 

『ジルさんッ?――ですか!―――が――報告を!!』

「こっちは無事よ!そんなことよりクリスとウェスカー、バリーと逸れてしまったの!!」

ザザザッ……整備完了。今は洋館にいるんだよな!?』

「その通りよ!でも扉が開かないのよ」

『……成る程、了解しました。扉から離れて下さい――()()()()()()()()()()()()()

「え?」

 

 何か嫌な予感が脳裏を過り、鍛えられた肉体の赴くままに後ろへと飛び退いた。

 

ズガァァン!!

 

 飛び退いた瞬間。凄まじい爆音が響いた。音からして爆発物の類だろうか?なんとか受け身をとりノーダメージで済んだジルが顔を上げると、眩しい光が飛び込んできた。

 

「怪我はありませんか?S.T.A.R.S.アルファチームRS(リア・セキュリティ)、ブラッド・ヴィッカーズ只今参上……っと」

 

 光に慣れた目をゆっくりと開けると、そこにはヘリを超低空にてホバリングさせながら四連装ロケットランチャーを構えたブラッドの姿があった。

 

「って、そんな危ないおもちゃ。どこで拾ったの?」

「なんかヘリの格納部にしれっと置いてありました。たぶんバリーさんのかと」

 

 そう言うと、ロケットランチャーをヘリへぶん投げた。

 

「他の人達は?」

「ジョセフは、外の怪物に殺されたわ、バリーとは洋館に入る前からはぐれていたわ。クリスと隊長とは一緒に居たけど、私が偵察してきて、帰ってきた時にはもう――」

「…そうですか」

 

 そう言うとブラッドは自分専用の軍用ランドセルを背負い、己の武器【Steyr SSG 69】【AA-12】、そして一番付き合いの長い愛銃【サムライエッジブラッドモデル】―――と、謎の銃を取り出した。

 

「じゃあ探しに行きますか?一応応援は呼んどいたのであと数時間で来ると思います。それまで待機を?」

 

 どこか挑発的にそう言った彼はごそごそと格納庫の中からショットガン【M500A2】…ついこの前ロケンドから購入した銃をジルへと投げ渡した。それを華麗に取り、弾が入っていることを確認してフフッ微笑んだ。

 

「冗談、私も行くわ。ヒロインなんて柄じゃないし…それに私は、市民を救う警察官(ヒーロー)ですもの」

「それでこそです!なーに弾もハーブも手榴弾も、しこたま持ってきました!ハリウッドごっこと行きましょう」

 

 目的は【クリス達アルファチームの救出】。

 

 ミッション・スタート



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-1998年(バイオ1)-003

レジスタンス楽しいのだけどマスターとサバイバーの比率が偏り過ぎてて困る。でもマスターやりたい人たちの気持ちは死ぬほどワカル。


○月☆日②

 

 ジルさんと洋館に突入したあと、色々と衝撃的な事態に立て続けに遭遇した。特にゾンビとの邂逅は久々に“恐怖”を感じたが、幾たびも遭遇、撃退を繰り返すうちに今ではすっかり平気になった。慣れって恐いな!

 

 鍵のかかった部屋は弾薬が腐るほどあるのでショットガンにて蝶番を破壊して回り、時折出てくる謎かけの類は二人で知恵を出し合って解決。基本的に苦戦することはなかった。

 

 最初は強張っていたジルさんも今ではすっかりいつもの姉御肌の頼れる先輩へと戻り、道中手に入れた火炎放射器でゾンビ達が万が一再生しないように丹念に燃やしていた。どうやら一度倒したゾンビ をそのままにしておくとその内強化されて復活してくるそうだ。死んでるのに“生き返る”なんでとんだ皮肉だな

 

 …というか、謎解きの際にそこいらの資料とかを調べて回ったのだが、なんかこの洋館。汚い大人の陰謀が渦巻いているらしい。

 

 所々で散見される【ゾンビ】だが【ハンター】だが、【t-ウィルス】と言った単語がいい証拠である。

 

 取り敢えずその手の書類は写真に撮ったりしている。というかなんでこんな重要そうな書類をファイルに入れもせず裸のまま放置しているのだろうか?

 

 なにやら自然と不自然が混濁しているような現場を疑問に思いながら探索していると、途中でバリーと出会うことが出来た。俺たちは一通り再開を喜び合った所で情報交換をした。大体バリーと俺たちも持っている情報は同じ程度で正直あまり意味はなかったが、有意義ではあったと思う。ジルさんが一緒に行動しようと言ったが、バリーは『他にやることがあるから』と言って別行動することとなった。その時マグナムの弾をいくつか渡すとどこか苦しそうな表情と共に受け取った。

 

 なにか“ある”と勘が囁いた。

 

 バリーは去り際に『ジルのことをしっかりと守れよ?ナイト様』茶化しながら合流した部屋を出てった。……正直、仲間のことを疑いたくはないが、ここ最近の的中率を考えると従っといた方が身のためかもしれない。『バリーには注意』覚えておこう。

 

 そんな不穏な出来事も起こりつつ再び探索を開始していたら、思わぬ人物と再開することが出来た。

 

 なんと行方知らずとなっていたブラボーチームのリチャード・エイケンと、レベッカ・チェンバースである。

 

 何故か電子ロックでガチガチにロックされていた。二階の鍵を謎解きで手に入れた鍵で入りしばらく進むと唸り声が聞こえて来て、最初はゾンビかと思い緊張しながら進んでいたのだが、途中から女性の声も聞こえたので急いで急行したら顔色悪くして呻いているリチャードとそれを看護するレベッカがいたというわけだ。

 

 感動の再会に抱き合うジルさんとレベッカが女の園を築き上げている間に、俺はリチャードの容態の確認と、そうなるにいたった経緯を聞いた。

 

 容態はかなり深刻である。今は先ほど渡した四種配合ハーブやレベッカの賢明な延命治療で生き長らえているが、正直持って後数時間。目測と経験則だけなら、喰らったのはヘビの毒だろうか?

 

 因みに経緯だが、レベッカと二人で探索中でかい蛇に襲われてしまってこうなったらしい。

 

 一応蛇のサイズを大体で聞いてみたが――俺はその蛇のサイズを聞いた瞬間リチャードがくらった毒が幻惑剤の類なのではないかと訝しんだ。幸いレベッカからの修正によってそのサイズが真実であることが判ったが……普通にアナコンダの世界最大記録を上回っていた。

 

 取り敢えずその巨大ヘビの名前を【ヨルムンガルド(仮称)】として、何とかしてリチャードを助ける為、洋館のどこかにあると言う血清を探すことにした――のだが、俺はジルさんに言われてレベッカ達の護衛として待機することとなった。

 

 何でも常時はともかく毒に侵され瀕死に陥っているリチャードや、俺と同じポジションではあるが後方支援(リア・セキュリティ)と言うよりは看護兵(メディック)と言った方が適任のレベッカ達では自衛できるか怪しいとのことだそうだ。

 

 一理あるので、俺は大人しくコレに従う事とした。

 


 

「周囲に敵影無し。暫くここは安全地帯の筈だ」

「ウゥ….すまねぇな」

「…今は寝といた方がいいぞ?なーに寝て起きたらサンズリバーなんて事はねぇよ」

「ハ、ハハッ……そうさせてもらうぜ」

 

 リチャードはそう言うと、もともと疲れが溜まっていたためか、直ぐに寝息を立て始めた。眠り始めたリチャードを見てブラッドはフッと息を吐き出し、仮眠室に設置されたベッドに座っていたレベッカの隣に座り込んだ。

 

「レベッカちゃんも、今の内に寝とけ。こっから先何があるが分かったもんじゃないから寝れる時には寝といた方がいい」

「いえ、あの……」

「…さっきからそんな感じだけど、何か言いたいことでもあるの?」

 

 レベッカは今悩んでいた。

 

 だがそれは彼らを裏切ろうとしている事への葛藤とかそうゆう類のものではなく、自身が洋館に来る途中にあった列車での出来事と、そこで一緒に行動した元海兵隊員で現脱走兵。ビリー・コーエンについてだった。

 

 彼のことは基本黙っておくことが最善だが、これまでのことを詳しく話すには彼との出来事を話さざるを得ない。

 

 だがそんなことをしてみれば彼を逮捕せずに見逃した事は直ぐにバレてしまう。特にブラッドは“勘”という意味不明なシロモノで即座に人の隠し事とか、そうゆう物を暴くことにかけてはS.T.A.R.S.イチと言ってもいい。

 

 どうしようかと悩んでいると……

 

「所でそのドックタグは何だ?ウチにドックタグなんてものはない筈だけど…」

 

 思考に没頭していたせいか、周囲の景色と気配に注意が向かなかったらしく。ブラッドがこちらに顔を近づけレベッカの首に下げられたドックタグ――別れ際にビリーから貰ったお守り代わりの物だ――をマジマジと見つめていた。

 

「ん?ビリー…コーエン……海兵隊所属って……!」

 

 ドッグタグに刻まれた名前と所属を読んだ瞬間顔色を変えた。ブラッドも列車にて輸送されていたビリーについては承知しており、名前もきちんと記録していた。

 

「えっ――あぁいや、先輩これは……!」

 

 レベッカは咄嗟に誤魔化そうとするが、元々嘘をつくのに向かない性格のレベッカと人の機敏に聡いブラッドとの相性は最悪であり、そのまま嘘をつけば即座にバレるだろう。有り体に言うと拙い。

 

 が、そう彼女(レベッカ)が思うよりも(ブラッド)の“勘”は冴に冴え渡っていた。

 

 ブラッドの灰色の脳細胞がトップギアに活性する!彼の脳裏に浮かんだのは、レベッカからビリーに対する親愛の感情と、ビリー・コーエンの基本的には優秀かつ仲間意識に溢れた経歴の記憶だった――!

 

「成る程、協力感謝しないとな」

「え、えっえっ?」

 

 目を白黒させるレベッカを他所に云々と肯き『なーに報告書の偽造は手伝ってやる!』と勝手に協力を申し出たブラッド「あ、ありがとうございます…?」と言いながらも、未だ早過ぎる展開にあたふたするレベッカなのであった。

 

 そんな何処か腑抜けた雰囲気の中―――

 

 ヒタリ……

 

 何かの足音が静かに鳴った。

 




正直に言うとこの小説は時間軸メチャクチャです。


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-1998年(バイオ1)-004

今回は流れの都合で行動パートから開始です。

追記
アンケート始めました。
今後のテンポについての事なので、深く考えずに直感で選んでくれると助かりますm(_ _)m


「――ッ!!ここで大人しくしてろ」

 

 何かを感じたのか弾かれる様に臨戦態勢へと移ったブラッドは自身の腰から愛銃のサムライエッジを携えドアに張り付いた。

 

 レベッカの前に護身用兼お守りの閃光手榴弾を幾つか転がし、『俺になんかあったと感じたら部屋の外にそれ投げ込んですぐにジルさんの方へ行け』と言い。ドアをゆっくりと微かに開けた。

 

(それっぽいのは見えないけど、たしかに聞こえた…!アレは獲物を仕留めんとして気配を殺した音だ)

 

 近接にも対応出来るようコンバットナイフも構え、一気に外へ飛び出した。

 

 廊下に出た後素早く前後左右の確認。だが、前後はおろか左右にすら足音を発しそうな者はいなかった。気のせいかとも思いそうになるがそれをグッと堪える。そうなれたのはここに来る道中で見てきた数々のゾンビ やクリーチャー。それに元々この洋館で研究していたと思われる集団が記したと研究記録だった。ゾンビの他にも記されていた空恐ろしい程の種類のクリーチャー達への警戒を強めながらも、彼は周囲への警戒を怠らない。

 

(ハハッ…心情的には“助けに来た”つもりだったが――この状況じゃ逆だったのかもな)

 

 彼の異様な冷静さと極限状態にも関わらず平時と同じような状態で軽口や冗談を言えたのは、ひとえに探索を共にしたジルの存在だった。

 

 タッグで行動していた時は冷静にゾンビ達の足を撃って地面に押し付け、その後は無防備かつ動かない頭部に銃弾をプレンゼントするという動作を、探索から1時間経ったときには半ば“機械的”に熟せるようになっていたが、今の彼は右へ左へ忙しなく、まるで今日が初任務といわんばかりの新兵の如く動き回り、その額にはタラリタラリと疲労の汗とはまた別の汗を流しながら警戒していた。

 

(あぁクソ喉が渇く。視界が狭い、緊張しているのか?)

 

 頭の片隅でそんな事を考えながら辺りを見渡す。吐く息すら騒音に分類されるのではと言うほどの静寂になった。ところで視界が狭くなったという事はそれ程一つ一つの物事に集中するという事であり、普段ならマイナスなだけだが今だけはプラスに働き、ブラッドはそれに気付いた。

 

――なんか血の量多くないか?

 

 戦闘行為をしているのなら血が出るのは当たり前だが、それにしては多過ぎる気もした。なんなら壁に至ってはペンキをぶちまけたような――それこそ、()()()()()()()()()()()………………

 

「まさかっ!?」

 

 一介の不安が脳裏をよぎり、すぐ様ブラッドは天井に目を向けた。

 

シュウウ………

 

 そこに居たのは“赤いナニカ”だった。

 

 血を纏ったような体にまるで標本のような剥き出しの脳味噌。

 

 目の類は見えないが、その耳は発達しているのが一目で分かる程肥大化していた。

 

 四肢の先には長く伸びた爪が見え、その爪はなんでも切り裂きそうな印象を受ける。

 

 口の辺りからチラチラと見える舌がその不吉性を表しているようにも見えた。

 

「――――ッ!」

 

 先手を打ったのはブラッドだ。長年の職務で培われた彼は軽いパニック状態でありながらも体に染み付いた動作を正確になぞり、手に持っていたサムライエッジを手に取り三点撃ち。

 

 見事謎の赤いナニカ――後に【リッカー(舐める者)】と呼ばれることとなる――に弾を撃ち込むことに成功する。しかし胴体に撃った銃弾は敵を貫通したが、頭はその脳によって弾かれた。

 

「嘘だろ!?」

 

 驚愕の声に反応したのかリッカーがブラッドの方を向き、その肢体をしならせ爪を一閃する。

 

「シィ!」

 

 軽い戦闘高揚(コンバットハイ)に陥ったため分泌されたアドレナリンによって引き伸ばされた体感時間と微かに上昇した身体能力を持ってこれを回避した。

 

「チッ!…ならこっちだ!!」

 

 銃を構える時間すら致命になりうる距離と判断し、ブラッドは片手に構えていたコンバットナイフで躍り掛かった。

 

 爪の一閃で硬直している隙を見逃さずに、山岳任務の為履いてきた丈夫なブーツの底部で頭部を蹴り飛ばす。

 

 蹴りによって浮かび上がり一瞬己と同じ目線になったので予め構えていたナイフを一閃。

 

 しかし一瞬の内だったのでナイフの一撃は擦るに終わり、リッカーの首に小さな切り傷を付けるだけで終わってしまった。

 

「ッ………ガアァ!!?」

 

 体制を立て直したリッカーが飛び掛かり、ブラッドを押し倒す。飛び掛かられた際に爪によってサムライエッジが弾かれ、ナイフは使った際に敵の血で滑り床に突き刺さった。リッカーは獲物の前で舌舐めずりするように右手でブラッドの肩をしっかりと押さえ立ち上がれないようにし左手を掲げた。

 

 直ぐに腰をまさぐりなにか使えないかと探すと―――ちょうどハンドガンのような形状の物に手が触れた。

 

(予備のハンドガンなんて持ってたか…?いや、何れにせよナイス俺!)

 

 その感触を“自分が持ち込んだ予備のハンドガン”と判断し、なんとか動く左手を閃かせリッカーの前へ突き付け――――

 

「えっ」

 

 しかし手に握られていたのはこの前入手した謎の銃だった。

 

(………終わったな)

 

 自分が試した限りでは殺傷力皆無の銃。これが一般人相手ならまだ飛び出るイナヅマで驚かすこともできるが、相手は銃弾やナイフに当たりながらも突っ込んできた化け物である。到底怯むとは思えない。

 

「――もおどぉにでもなれぇぇぇぇぇ!!!」

 

 最早ヤケクソの領域で銃のトリガーを引いた

 

 バシュウ!!

 

 …が、彼が覚悟した結末は良い意味で裏切られた。

 

 なんと、銃から飛び出したイナヅマはリッカーの頭部へ丸で矢印があるかのように集中。リッカーの頭を電子レンジでチンした卵のように吹き飛ばした。

 

 頭部という生物としての最重要器官を失ったリッカーは重力に引かれゆっくりと廊下にバタリと倒れる。

 

「………へっ?」

 

 それを呆けた様子で見ていたブラッド。彼としては撃っても効果無しでそのまま切り裂かれるとばかり思っていたので、悪く言えば“肩透かし”よく言えば“急死に一生”という感じである

 

「――大丈夫ですか!?」

 

 そんな中、戦闘音とブラッドの叫び声で閃光手榴弾片手のレベッカぎ仮眠室から出て来た。取り敢えず無事な彼の姿を見て安堵した後、その服が血塗れなのを見て青ざめながらもこちらに駆け寄った。

 

「そんな…!怪我の場所は!?分かりますかッ!!」

「あぁいや、これは…返り血」

 

 必死に看護兵として責務を全うしようとするレベッカに対し、ようやく困惑状態から立ち直ったブラッドが手で制しながら無事を伝えた。半ば不意を突かれたような形で始まった戦闘だが、終わってみればブラッドの完勝で終わっていた。

 

 その事に深い安堵を感じながらも、撃った後も握り続けていた謎の銃に視線を向けた。

 

(助かったのはよかったんだが…さっきの異常な威力はなんだ?バリーのマグナムでもあそこまで粉々には出来ないぞ)

 

 突如として出現した新種のクリーチャー。威力皆無と思われていた銃による一撃必殺(ワンショットキル)。湧いて出てきた謎に首を傾げるが、彼は一旦それらを頭の隅に追いやる。

 

(取り敢えず。ありがとな…)

 

 一先ずその銃に命を助けられたのは確かなので、彼は謎の銃を額に着け――そしてふと気付いた。

 

(いつまでも【謎銃】呼ばわりはいけないな)

 

 仮にも命を救ってくれた銃をいつまでも異物のように謎謎言うのは忍びない。

 

 どう名付けようか考えながら俺はレベッカ、そして未だ眠り続けるリチャードと合流する為腰を上げた。

 


 

○月☆日③

 

 真っ赤な四足歩行のクリーチャーに襲われたが、なんとか撃退できた。今は毒の苦しみによって無理やり目が覚めたリチャードの傍らで看病しているレベッカを尻目にコレを書いている。

 

 『そんな事してないで見守れ』だって?リチャードだってハンサムとは言え野郎な俺よりも美人なレベッカに付き添われたほうが嬉しいだろ?

 

 ――いや、正直なところ見ていられないというのが本音だ。リチャードと俺は同期で、出世の時期もS.T.A.R.S.への加入時期もおんなじだったのだ。あいつとは新人時代はコンビを組んだこともあり、アイツの撃った弾が偶々建設現場の鉄骨の六角ナットに当たり、それが引き金となって建設途中のビルが丸ごと崩れたのはお笑いだ。さらに愉快だったのはその建物が企業に偽装した反社会的組織の新アジトの予定地で、リチャードがクビを恐れて黙った結果行われた調査でそれが判明し、それがS.T.A.R.S.選出の足掛かりとなった事である。

 

 本人は先週もバーでその事を(やらかした事は省いて)自慢げに語っていたが、その度に俺は崩れ去った建物を見てブルブル青ざめたアイツの顔を思い出し笑いそうになり困ったものだった。―――いや、現実逃避は止めよう。現実問題としてアイツは死にかけている。

 

 しかし現実に今取れる手段はジルさんが持ってくる血清を待つということし

 

―追記―

 

間に合った!

 

 

 

 …前述通り、血清はなんとか間に合った。今は四人揃ってリチャードの無事を祝っている所だ。あの野郎両手に花でニマニマしてて気持ち悪いことこの上ないが…まぁ、助かってよかったと思う。

 

 それと、謎銃の名前が決まった。

 

 日本で【サンダー】を意味する【稲妻】からとって、この銃の名前は今日から【INA-DUMA】だ。我ながら安直な名前である。この任務から帰ったらケンドに命名してもらうのも一興――いや、渡したら永遠に帰ってこないような気がするから止めよう。

 

 一先ずこれからよろしくな、【INA-DUMA】。




話の流れが遅い気がする……
因みにバイオ1では登場しなかったリッカーですが、あそこまでゾンビ とか実験動物が多いなら生まれてもおかしくないなと思って書きました。最初はハンターにしようと思いましたが、そうなったら黒幕グラサンとの絡みも書かなきゃいけないので断念しました。


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-1998年(バイオ1)-005

ヘルシングっていいよね…デビルメイクライもいいよね……

あ!それとそれと!!
駿河さん 涙月さん type00さん 
大羽志則さん キリストさん メータールーさん 
たくむすさん ラーズグリーズの悪魔さん
レイ・スカーレットさん Remonさん 
アリビオさん 藤崎さん ふぉれすとさん
べあさん いんふぃにてぃさん 空手マンさん 
凍結の狐さん 斎藤元さん ゆきぞらさん 
島田武長さん イベリコ豚EXさん 
火のない灰さん 
銃人3678さん 昼夜逆転裁判さん 
たっちゃん(´・ω・`)さん 
青雲忠敬さん 坂寄さん ラビットフットさん
お気に入り登録ありがとうございます!!!……へへっ、こーゆうお気に入り登録者を羅列するの、憧れてたんだ……!


○月☆日④

 

 書く事が多過ぎる為分割で書いてきた○月☆日も、ついに4ページ目に突入した。このままだと生き残った時には日記帳が一冊丸ごと残っているような気がする。その時はちょちょいと編集して【恐怖の洋館。不死身の怪人達!】ってタイトルで自伝でも出すか。

 

 鍵を例の如く撃ち壊し、洋館の外へ出た。広場のゾンビ を一掃し、その後裏手にあった寄宿舎のような場所へ到達した。

 

 外では主に、自然脅威とも取れる存在が俺たちに牙を向けた。

 

 中庭はデカい蜘蛛だが蜂だかがたくさんおり、少し虫嫌いのきらいがあるジルさんは少し冷や汗を流しながらも火炎放射で燃やした。

 

 少し進んでいくと巨大な蜘蛛の巣が散見され、そのまま進むと今までの巨大蜘蛛よりも更にデカい蜘蛛が出て来た。全身真っ黒だったのが特徴的なその蜘蛛は、糸を飛ばすわ手下の蜘蛛を呼び出すわワサワサ動いて生理的嫌悪感を煽ってくるわ散々な戦いとなった。

 

 最後は俺のショットガンにて足を止めさせながらジルさんがありったけの焼夷手榴弾をしこたま投げて決着。母親だったのか腹辺りにいた子蜘蛛たちにも引火し燃えていった。

 

 巨大蜘蛛の最後の行動が、生命維持の為の逃走ではなく引火した子蜘蛛を助けるための消化活動だったのが少し印象的だった。

 

 その後残った巣を焼き払っていると鍵をゲット。どうやら古小屋の鍵のようで、特に躊躇する事となく進入。

 

 その中で化け物を見かけた。

 

 その際は偶々窓のガラスに反射したことで先に発見できその異様な気配から潜伏を決め込む事でなんと回避できたが、明らかにヤバそうな雰囲気がビンビンする。

 

 探索がまるで済んでいないがアレとやり合う必要性もないのでそのまま出て行った。

 

 あそこを調べるのなら応援が到着してからだ。最低でもアルファチーム総出で立ち向かわないといけない相手だと思う。

 

 新たな脅威を感じつつ、古ぼけていた寄宿舎の鍵を打ち壊し、内部へ侵入する。

 


 

「何だこれ……」

「見た所()ね。流石に脈打ってるのは見た事ないけど」

 

 寄宿舎内部に侵入した二人が見たのは、壁――いや施設全体が植物の蔦で覆われた一面緑の風景だった。

 

 その蔦は縦横無尽に壁や天井を埋め尽くし、もはや壁の柄や天井を見つける事が難しくなるほど覆っていた。

 

 時折見える隙間からは、白茶の棒状の何か…恐らく【骨】が所々にひっ付いていた。

 

「ゾンビにゾンビ犬……おぉリッカーもいる。養分目的か?」

「ゾッとしないわね。クリス達を探すことを含めても、早く終わらせましょう」

 

 そう結論を出し二人は足早に探索を続ける。

 

 

 

――背後から忍び寄る。植物の蔓と、ダクトの間を這い回るナニカの気配には気付かずに

 


 

○月☆日⑤

 

 この蔦まみれの不気味な寄宿舎――長いから【植物屋敷】とかでいいか。植物屋敷に突入した。

 

 途中『密室に閉じ込めた上で天井を落とし対象をペチャンコにする』というこれまでと比べると無駄に殺意の高いトラップにかかった。ジルさんを駆けつけたバリーさんと救出するという(因みにその時はバリーさんがマグナムで扉の鍵を吹き飛ばし、俺がそこら辺で調達した鉄パイプを突っ張り棒にして時間稼ぎをして救出した)こともありながらも探索は無事進んだ。

 

 道中のレポートからどうやらこの植物群は謎のウィルス【t-ウィルス】で変異し、最近見た日本の怪獣ビオランテ染みた事になってしまったらしい。

 

 というか仮にも植物なのだから()()()()()()()()()()。初めて見たぞ蔓が鞭みたいにしなって襲って来るの!

 

 生きてる植物だから火炎放射を浴びせてみても可燃性が低いからあまり効果は無いし…

 

 道中で可燃性の液体(ガソリンか薬品?)を拾ったお陰で何とか撃退出来ているが数に限りがある。しかもレポートを見る限り寄宿舎地下にいる本体を倒さない限り蔦は無限に這い出てくるらしい。厄介なことこの上ない相手である

 

 何かその“本体”を仕留める策はないかと植物屋敷内を歩き回っていると、植物に取り込まれ蔦塗れと化した職員と思われる人間の手に握られていた手帳からそれらしい手掛かりが見つかった。

 

 どうやらこうゆう事態を想定して特注の“除草剤”を作っていたらしい。

 

 手帳から手がかりを発見し希望を見つけたオレ達は悠々と部屋の外へ出た。

 

 …出たのだが、俺たちはそこで巨大植物とはまた別の脅威に遭遇した。

 

 ソレはダクトの蓋をブチ破り外へずるずると這い出てきた。

 

 測るのも馬鹿馬鹿しくなる程の長さの胴体。

 

 皮は爬虫類特有の鱗ではなく、カエルのような皮膚。

 

 大きく開いた口は、まるで欠伸をしているように見えた。

 

 レポートを読んだ限りでは、あの化け蛇は動物実験用の毒蛇がこのウィルス騒動に乗じて逃走してしまい、件のウィルスに適合する形で変異したと書いてあった。

 

 個体名【ヨーン】。巨大な蛇の化け物――いや、B.O.W(バイオ・オーガニック・ウェポン)である。

 

 

 

 【ヨルムンガルド】じゃない訟訴

 

 

 

 …失礼、関係のないことを書いた。

 

 冗談はさておき、ダクトの蓋をこじ開けて入ってきたヨーンは俺たちを品定めするかのように蛇特有の細長い舌をペロペロ出し入れし、やがてお眼鏡にかなったのか甲高い咆哮を轟かせながら突進してきた。

 

 急な奇襲だったが、俺やジルさんは腐っても特殊部隊所属のスーパーコップだ。難なく避けてヨーンと距離を取る。

 

 次いで、俺とジルさんはありったけの焼夷手榴弾を辺りにばら撒いた。

 

 資料によると、あのヘビ野郎は単にデカくなっただけでヘビ特有の温度を感知する器官――たしかピット器官。を頼りに獲物を探していることは変わらないらしいので、それを撹乱させる為に高熱の炎を発する焼夷手榴弾を辺り一面にぶち撒けた。

 

 流石に新陳代謝が高いといっても精精35〜40度程度の俺と数百度の熱を発する焼夷手榴弾という比べる事すらバカらしい程の熱量の差がある。

 

 アイツが感じている状態をサーモグラフィーで例えると視界が今頃ホワイトアウトしている頃だろう。

 

 俺たちはその隙に逃げ出す―――ことはせず俺はショットガンを、ジルさんはグレネードランチャーを構え狙いを付けた。

 

 実はと言うと、この巨大蛇型B.O.W【ヨーン】との遭遇は獲物を仕留める為に来たと()()()して来たアイツと同様に、俺たちもまた奴を待ち構えていた。

 

 何を?そりゃあ当然………

 

 

 

 

 仇討ちに決まってるよなぁ?

 

 

 

 

 星なったアイツの為にも…!あの化け蛇はここでぶち殺してやる!!

 

 ジルさんも俺ほどではないにしろ義憤に駆られているようで、奴に有効な焼夷弾と威力に優れた爆榴弾を交互にセットすると言う殺意の高いリロードを俺たちを見失いキョロキョロと周囲を見渡す【ヨーン】の目の前でゆっくりと、一発一発確実に装填していた。

 

 かと言う俺も仮眠室で発見ダクトテープを利用してチョチョイと作った手榴弾で出来たイカしたベルトと、しっかりフル装填され、普段は指切りで撃つ【AA-12】をフルバーストで撃つ人差し指に力を込めた。

 

 あぁ、そう言えばジャパンのサブカルチャー文化にこうした状況に最高に適した台詞があったな。この時点で日記の内容が大分とち狂っているがもはや今更なので気にしない気にしない。

 

 

 今からブッ殺しに行くぜ

 

 小便済ませたか?

 

 神様にお祈りは?

 

 部屋のスミでガタガタふるえて命ごいをする心の準備はOK?

 

 じゃあ、死のうか

 

 

―追記―

 

 さっき書いた上記のやつ、後日作れたジャパニーズフレンズに言わせると悪役の台詞らしい

 

 あと日記を覗き見て来たジルさんに大笑いされた。改めて見ると…うん。恥ずかしいな

 

 ったく、ティーンエイジャーって年でもないだろ……!

 

 ゲッリチャードも来やがった。見られる前にこれはそこらに隠

 

『ここから先のページは途切れている』




↑これはバイオあるあるの『かゆい、うまい』とかじゃなくて『同僚の誰かに掠め取られた』って言う解釈で大丈夫です

それと、アンケートへの投票ありがとうございました!有り難く反映させてもらいます!!


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-1998年(バイオ1)-006

いつもよりチョイ長めです。


○月☆日⑤

 

 【ヨーン】でBBQをした直後途中でこちらと合流し、少し引いた様子のレベッカとリチャードと一緒に探索を再開。二手に分かれる手もあったが不足の事態に備えて四人揃って行動することにした

 

 これまでの二人一組(ツーマンセル)でも安心出来たが、リチャード達も加えた四人一組(フォーマンセル)の安心感は段違いだった。

 

 一方向しか見てなくて済むので労力は少なくていいし。

 

 なにより左右後ろに味方が構えていてくれると言うのが心強い。

 

 時折こちらを向かって振るわれる植物の鞭を避けて燃やして踏み潰しながら、研究員が作ったと記されていた除草剤を求めて寄宿舎内を歩き回る。そもそもここは植物によってゾンビやゾンビ犬が植物達によって粗方排除、及び吸収されており、探索の労力はとても少ない。

 

 途中研究室への扉を開ける為に設置されたピアノを楽譜通りに弾くという実用性と利便性に喧嘩売ってるような仕掛けがあったのだが、何やら鬼気迫った様子のレベッカが『私にやらせて下さい!』と言い挑戦。見事撃沈。その後指先が器用なジルさんが普通に成功しさらに沈んでいくレベッカという珍事もありつつも、無事(?)研究室に到着した。

 


 

「………………………」

「どうかしら――何か手掛かりになりそうなものはあった?」

 

 無事侵入した研究室にて資料を読み漁っていたブラッド一行。両名とも難しい顔をしながら解読を進める。床はマルやバツなどとペンで書かれたと思われる印の入った資料で白く埋まっており、ここまでの作業の量が窺い知れる。

 

 時折目頭を揉み疲れを紛らわせながらも資料を読む手は止めず。たまに出てくる有力と思われる情報をカメラや手帳に写し記録していく。

 

「――――コレって」

 

 そんな時、ふとブラッドが声をあげた。

 

「嘘だろ嘘だろ嘘だろ……!」

 

 急に狂人の戯言のように同じ単語を繰り返し、手に持った彼の物とは別の()()()片手に空いた手で頭を掻き毟る。その目は『見たくはないが見なくてはならない』物を見るように目を絞らせながらも次々と目を通していくというとてもではないが正気のものとは思えない行動をとり始めた。

 

「ちょ、おいブラッド!?どうした!!」

 

 リチャードがそんな彼を見かねて肩に手を置き、そのまま彼が見てきた書類を覗き込もうと顔を近づけ―――

 

「――ッ!見るな!!」

 

――る前に、ブラッドが咄嗟に持っていた日記帳を背中に庇うように回し隠すと部屋の角へ即座に移動する。彼はそのままそこから一歩も動かずに静止した。

 

「ど、どうしたんだよブラッド。俺はただお前のことを心配してだな…」

 

 そう彼を宥めながらもリチャードは一瞬目を鋭くし、彼の後ろにある日記帳をロックオンした。アレに何が書かれてあるかは分からないが“彼しか知らない情報”はマイナス要素になり得るし、なによりリチャードは先程己の仇を討ってくれた彼があんな顔をしているのは同僚として、友として見逃せないものなのだ。

 

 街角で偶々出会った友人のように、自然な動作で彼に近づきながらも万が一脇を抜けられないようにブロックしながらジリジリと近づいて行く。ブラッドはリチャードの狙いに薄々気付いたのか手持ち無沙汰気味に宙に浮かばせていた左手をニギニギして温め、ブラッドも腰を落とし臨戦態勢をとり警戒を強める。

 

 そのまま二人とも高まった気力を爆発させようと――

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい二人とも。それまで!」

 

 パァン!とジルの猫騙しによって一瞬で正気に戻った。

 

「熱くなりすぎよ。ブラッド!」

「――ッ…でも、コレは流石に」

「いいから見せてみなさい!貴方が背負い込む必要はないわ。私達、チームでしょ?」

 

 その言葉と共に接近したジルに対応が追いつかず、抵抗する間も無く背後の日記帳を毟り取られる。

 

「ジル、俺にも見せろ。ブラッドの野郎だけが知ってるってだけで気にくわねぇ」

 

 奪った日記帳を臆する事なく読み始めたジルと、それに便乗する形で横から覗き見たリチャードもその文章に目を走らせた。

 


 

◯月☆日⑥

 

 寄宿舎を覆う植物B.O.W。通称『プラント42』を打倒するための除草剤を捜すため。俺とレベッカは辿り着いた資料室にて資料を漁っていた。

 

 探している途中に、俺は研究員のものと思われる手記を発見した俺は、自分も日記帳を付け入るものとして好奇心が湧き特に何も考えずそれを開き読んだ。

 

 

 

 

 結果後悔した

 

 なんだあの日記…内容はどうやら一飼育員のもののようだが、中身はなかなかハードな内容だった。日記の前半は飼育員の日常についてだ。動物実験用の犬だが蛇だが蜘蛛だがの不穏な単語が散見されたが大旨普通の、日常を記した日記だった。

 

 異変が起きたのは日記が6割を超えた頃から。

 

 どうやら日記の主は逃げ出した実験用動物の一匹に噛みつかれたらしく、その日の内容は罵詈雑言に満ち溢れていた。

 

 いやそれはいい、それはまだいいのだ。

 

 問題はその噛みつかれてから(日記の日付表記)から三日ほど経った頃の記述だ。

 

 その日に飼育員――が感じたのは、軽い飢餓と、肌の痒み。

 

 そしてその日を境にして、ドンドン日記の文章が乱れてくる。

 

 先ずは文字が点線をはみ出し

 

 続いて文脈が安定しなくなり

 

 文章の間に間隔が開き始めて

 

 遂には単語の羅列と成り果て

 

 内容は、徐々に不穏となって

 

 最後の一文には――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――かゆい うま

 

 あぁ…今思い出しても吐き気がする。いまその日記はジルさんやリチャード達が回し読みしている。少し錯乱していたが、その間に俺の考えをまとめることが出来た。

 今回の事件は、大規模な組織…恐らくどこかの巨大企業の陰謀によってなりたったものだ。最初は規模の大きなテロ組織かとも思ったがそれにしては規模な人手、金がかかり過ぎている。恐らくはここで生物を化物に変えるウィルスを研究中、不慮の事故によってこの洋館内にウィルスが散布。警備員や研究員、その他諸々の職員がゾンビと化してしまったというのが大まかなことの顛末だろう。

 憶測だが洋館外部で出会った巨大蜘蛛や蛇、そして犬っころ共はそのウィルス――t-ウィルスによってゾンビ化してしまったのだ思う。流石に自然界にあんなB級ホラーみたいな進化を遂げた奴はいないだろう…いないよな?

 

 

 いかん話が脱線した。

 

 

 そんでブラボーチーム達が派遣された際に先程の犬達に奇襲され、その後オレ達アルファチームも………って感じだろうか?

 

 ううん……辞めだ。いちいちこんなこと考えてたら止まらないし考えるのやーめた。

 

 さて、向こうももう読み終わったらしい。予想通り青い顔をしているがみんな俺以上の化け物メンタルだし俺よりも立ち直るのは早いだろ

 


 

「取り敢えず、除草剤の在り方見つかったな」

「ああ……そうだな」

 

 寄宿舎の廊下にて拳銃を構えつつ進むむさい男二人組、そう何を隠そう我らがブラッドとその相棒リチャードである。彼らはあの後件の除草剤が兵器庫にある事という情報を入手。ジルとレベッカの女性陣には引き続き資料の精査、及び資料室の警護を任せ、男性人二人は兵器庫へと向かっているところなのだ。

 

「ってオイオイ。お前も見たんだろ?噛まれたりしても四色配合ハーブなら治療が出来るって」

「そ、それは理解してるけどよ」

「…まぁ心配になるのは分かる。俺だって“ああ”はなりたくないからな」

 

 そう言いつつ顎で指した先には、この寄宿舎内には珍しく動くゾンビ達だった。

 

「ッチ!ようやく見慣れてきたのに、まーた悍しく思えてきちまったぜ……」

「同感――いやバーで言い寄ってくる綺麗なねーちゃんだと思えばいけるか…?」

「オイオイ勘弁しろよ。あんな如何にも病気持ってそうな奴俺は御免だぞ!?」

「――――構えろリチャード。来るぞ!!」

「ってオイ誤魔化すな!」

 

 右手に【サムライエッジ】左手にナイフを構えたブラッドがゾンビへ向かって走る。置き去りにされた形のリチャードも急いで走った。

 

「数は六体。互いに三体ずつ!危なくなったらカバー頼む!」

「応!バーの高級酒一本で請け負うぜ!」

「俺の月給をなくす気かよ!」

 

 途中までは互いに軽口を叩くが、流石にゾンビ達が目前まで迫ってきていたので二人とも黙りこくり、互いの敵に集中した。

 

 リチャードが敵の目前で止まり【サムライエッジ】を構えたが、ブラッドは対照的にゾンビ達へと向かって行く。

 

 自ら近づいてきた獲物()に向かって手と口を伸ばすゾンビ。このままでは彼はt-ウィルスによって新陳代謝を活性化されたゾンビによって掴まれ、そのままガブリといかれてしまうだろう。

 

 だが流石に二桁以上のゾンビを屠ってきたブラッドはそんな簡単にはやられない。

 

 抱き付くように腕を伸ばしたゾンビ の凶碗を姿勢を低くする事で躱し肩を起点としたタックルを繰り出した。

 

『ッググウ!?』

 

 流石にタックルは予想外だったのか悲鳴のような声を上げた。密集状態にあったため後方のゾンビを巻き込みながら倒れ込むゾンビを尻目に【サムライエッジ】を構え最後尾のゾンビへ向かって発砲。

 

 運良く喉に命中し崩れ落ちるゾンビ。それを見て安堵する間も無く構え直し倒れ込んだゾンビの内一体へ向け再び発砲。頭を前後左右へフリフリ振るゾンビとは違い倒れ込み大人しくしているゾンビには簡単に当たり、頭蓋骨が弾け飛ぶ。

 

「おっしまいと」

 

 最後に此方へと手を伸ばした最後のゾンビを踏み付け頭蓋を砕いた。

 

「…これ帰ってきたらPTSD患いそうだな」

 

 そう呟きつつリチャードの方へ向くと丁度最後の一体を蹴り飛ばし、両手に構えたアサルトライフルを乱射しているところだった。

 

 丁度マガジンが空になったのか入れ替えたリチャードもチラリと此方を振り返り、不満げな顔をした。

 

「流石に近接戦闘を仕掛けるとは思わなかったぞ」

「一応人型だし、近接は結構有用だと思うぞ?」

 

 そう言うと互いの肘をぶつけ合いハイタッチの代わりとした彼等は再び進み出した。




正直自分でもここまでプラント42を長引かせるとは思わなかった。次回には燃やします!


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-1998年(バイオ1)-007

今回は文と文の間を長くしてみました。以前の方が好きだというのが来たら戻します。
修正:薬の名前をオリジナルのものから原作通りのものはと変えました



○月☆日⑧

 

 あの後特に問題なく武器庫にたどり着いた俺たちは、武器の補充や装備の点検を済ませた後。除草剤を探し、見つけ出した。

 

 除草剤は弾の中に注射の機構が埋め込まれた―資料には【アンプル弾】と書かれている―銃弾として、信号銃のようなデカい単発銃に装填されていた。

 

 予備も合わせて合計五発。資料には威力検証済みとの事なので銃の操作を一通り確認。後方支援として射撃術がアルファチームの中では二、三番目には高い俺が持つ事になった。

 

(因みに一位はバリー。二位は同率でウェスカー隊長とクリス(ハンドガン限定)と俺)

 

 帰り道に犬っころに襲われたりもしたが、ブラボーチームのリチャードが隊全滅の要因を見てただで済ませるわけもなく。ラン◯ーばりに怒りの連射で仕留めていた。

 

 ジルさん達と合流した後お化け植物の親玉。資料によると通称【プラント42】が根付く踊り場へと向かった。あとこの単発銃――これじゃ分かりにくいな、『駆除銃』とかでいいか――散布タイプではないのが少し気になるんだが…スプレーガンみたいなやつじゃダメだったのか?除草剤って――普通撒くだろ――

 

『ここからは銃に対する愚痴が綴られておる』

 

 …っと。日記のページ量にも限りがあるし、これ以上は辞めとくか。

 

 そんなこんなで俺たちはエントランスへと到着。大量の蔦の洗礼を乗り越えながらもあの植物達が集う場所へと辿り着いた。

 

 そんなこんなでここからはクソデカ植物駆除だ…日曜にアパートの大家さんに頼まれた時みたいにチャチャっと済ませてしまおう。このぐらい気楽な風が丁度いいかもしれないな、うん

 


 

【巨大植物駆除作戦】

 

記入者:ブラッド・ヴィッカーズ

作戦日:☆日○月1998年

責任者:アルバート・ウェスカー(無許可)

 

参加者:ジル・バレンタイン

   :ブラッド・ヴィッカーズ

   :リチャード・エイケン

   :レベッカ・チェンバース

 

注意!:本作戦は正式な順序を経てする類のものではなく、危機に陥った隊員達が独自に組んで行使する作戦です。何か人的被害があった場合は責任者のアルファチーム隊長。ポジションLDRのアルバート・ウェスカー様へお問い合わせください。

 

【作戦内容について】

 本作戦の目的はラクーン市警特殊部隊【S.T.A.R.S.】アルファチームとブラボーチームが派遣され、その地で発見された洋館の敷地内に存在する寄宿舎に巣食う巨大植物型B.O.W(生物兵器)通称【プラント42】を倒す事である。未だ謎に包まれ調査の済んでいない洋館の探索にこの化け物の存在は不要であり、早急に駆除しなければならない。

 

【作戦概要】

 先ず今作戦は二手に分かれ、それぞれ役割分担する事で任務を遂行する形をとる。

 片方はプラント42の陽動。奴に有効な火炎放射や硫酸弾を用いて気を引いてもらう。

 もう片方はプラント42への有効打となり得る除草剤【V-JOLT】を利用してプラント42を枯らされる事、此方が本作戦のメインとなる。

 

 なお組分けは以下の通りとする

 

【陽動班】

 ジル・バレンタイン

 リチャーズ・エイケン

【駆除班】

 ブラッド・ヴィッカーズ

 レベッカ・チェンバース

 

【最後に】

 この作戦はたった四人で神話上の生物のような化け物と戦うという一見オカルトのような話だ。だがこれを書いてる俺は、作戦が完了することを確信している。何故ならここにいるのは無力な一般人ではなくそれぞれが狭き門をブチ抜いて来た精鋭揃いの特殊部隊員なのだから。

 我々には鍛え上げた強靭な肉体と、現場で作り上げた折れない心と、やり遂げるという勇気がある。それを忘れずに、本作戦を完遂せよ

 

【補遺】

 作戦文書を見た者は作戦完了後即座にこの作戦文書を廃棄、そして脳内から抹消するように。くれぐれも『またブラッドがはっちゃけてイタイ文章書いた』なんて酒場のネタにしないように!

 


 

「…なんて書いてたら、絶対二人とも大切に保管するに決まってるじゃないですか」

「それを言わないでくれ、任務放棄したくなる」

 

 悪戯めいた表情でそう言うレベッカと、どこか虚無めいた顔で駆除銃を構え続けるブラッド達。彼らは二階の手摺り付近でひたすら機会を窺っていた

 

 かというのも、プラント42と接敵し戦闘を始めた直後すぐ様ブラッドは除草弾を打ち込んだのだが何故か効果は薄く、精精プラント42本体の触手を数本機能停止させるに留まってしまったのだ。

 

 その後の観察でプラント42は一定量のダメージを与えた後本体上部にある“花”のようなものが開き、そこが急所だということが発見されたため下のジル達が一定ダメージを与え再びプラント42が花開く機会を待ち構えているのだ

 

 彼らに出来る事は効果の薄い通常弾での微力な援護のみであり、それで敵の狙いが此方に向くよりはと物陰に潜んでいた。

 

「という訳で頑張ってくれ」

『ふっざけんなよお前!?あんなこと書いといて他力本願はカッコ悪いぞ!!』

『あら、いいじゃない。後で揶揄う話が増えたわね』

「あ、一応救急キット渡しときますね」

『ナイスだレベッカ!』

 

 重要な戦いだというのに気の抜けた会話を続けるが、戦闘のプロたるリチャードら二人は迫る触手を火炎放射でなぎ払い、本体へ向かって焼夷弾や硫酸弾といった有効な攻撃を的確に続けていった。

 

『――――――――ッ!!!!』

 

 声にならない絶叫をあげるプラント42を尻目に、彼等は一気に畳み掛ける為ジルが腰のポーチから取り出した大容量のメスフラスコをそのしなやかな腕を鞭のようにしならせ投擲した。

 

 見事なコントロールで命中し、割れたフラスコから流れ出たのは――引火性の薬品である。

 

「リチャード!あとはお願い!」

「ナイスコントロールだ!任せろ!!」

 

 そう力強く言ったリチャードの手には、ブラッドが作成した蛇腹状に纏められた複数の焼夷手榴弾の塊だった。

 

「いい加減に駆除され……ろッ!」

 

 ハンター投げの要領でぶん投げられた手榴弾達は円を描きながら向かっていき、プラント42にぶつかった衝撃で雷管が作動。そのまま薬品に引火し――――

 

ボワッ!

 

 派手な爆発を引き起こした。赤を通り越して青のブルーファイヤな綺麗な色が弾けた

 

「オイ!これでどうだ!」

『十分だ!こちらも開花を確認した!』

 

 プラント42が熱を逃すかのように、その醜悪な見た目からは裏腹に綺麗な赤い…血のような紅い花を咲かせた。

 

「ハッ!まるでこれまで()()()()()()()()みたいな綺麗な色だな」

「さ、さすがにそんな事はないと思いますっ!」

 

 チャンスを逃さず物陰から一気に飛び出し走り出す二人。戦闘の余波やプラント42の本体を支える太い幹のような蔓をパルクールの要領で飛び越えながら近付いて行く。

 

「その銃をあの花内部にある蕾みたいな所に撃てば大丈夫なはずです。頑張って!」

「了解ッ!外したらレベッカのソレ(焼夷手榴弾)。代わりに投げ入れてくれ」

 

 少ない言葉を交わし、レベッカはその場で頷きながらも立ち止まり腰の手榴弾に手をかけ、ブラッドはゴトリと重めの銃器を床に置きながら前傾姿勢をとり一気に加速した。

 

 利き手の右手には切り札の駆除銃。左手にはお守り代わりの次弾を握り占め、ぐんぐんスピードを上げて行く

 

『――ッ―――ッッ!』

 

 植物には無いはずの、本能的な物で迫るナニカを感知したのか未だ無事な触手を三本ブラッドは向け伸ばした。

 

「ここまで来て止まるかよ!」

 

 1本目。一直線に伸ばされた触手を横手へ飛ぶように回避。

 2本目。薙ぐ様に横へ広い範囲のなぎ払いを、スライディングで床の材木を散らしながら躱す。

 3本目。上から振り下ろされた最後の触手を1本目と同じ様に回避し、最大限にスピードの乗った瞬間を“今だと”判断し右足で()()()()()()()()()()()()()

 

『失敗するなよ。ブラッド!』

「当然だ!こーゆう時は決める人間だぜオレは!」

 

 空中というある意味安定する場所に数瞬だけ居座る事に成功したブラッド。後方支援のスナイパーとしてのプライドを見事に発揮し、花の蕾へ狙いをつけ、迷う事なく切り札を発射した。

 

 ほのかに緑色の弾丸は、真っ直ぐに目標へ向かって飛んで行きパスンと突き刺さった。

 

『――…――!……―!?』

 

 効果は研究員の言い分通り即座に現れたらしく。プラント42の瑞々しく太い蔓達が、蕾を中心として水分がなくなった様に干からび、乾き、細くなっていった。因みに発生した毒ガスは小型のガスマスクで回避した。

 

「はー…よし。これで任務完了だな」

 

 飛び上がった勢いで反対側の手摺りへ手が届き、なんとかよじ登ったブラッドは枯れてゆくプラント42を見つつ息を吐いた。




尚ブラッド君の作戦書は後世に渡って受け継げられて行く模様。
あとネプチューンくんはスルーです。どうせ倒しても倒さなくても洋館大爆発で死にます。


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-1998年(バイオ1)-008

転生主人公の利点って元ネタのゲームのクリーチャーとか重要施設の名前知っててもなんらおかしくないことですよね


○月☆日⑨

 

 あのあと無事プラント42と枯らした俺たちは、遅れて援護にやって来たバリーと遭遇した。ジルさんを除いた他3名からジトーっとした目を喰らい、申し訳なく思ったのか気まずそうに後頭部を掻きながら来たのが印象的だった。

 

 『流石にもう五人いる事だし』とバリーにリチャードレベッカを預け、その後は当初の様にジルさんとの二人一組(ツーマンセル)に戻った。リチャードの野郎とは別れる前に互いに『死ぬなよ』と激励を掛け合った。

 

 寄宿舎の捜査もプラント42が放り巡らせた蔓達が枯れたり焼けたり溶け落ちたりしたお陰で捜索範囲が一気に広がり、そのままの勢いで終わらせることが出来た。まぁ新たな手がかりは無かったが、精精ここ付近の生物に対するデータぐらいだった。

 

 情報の精査も兼ねて洋館にある即席バリケート等で出入り口を補強したセーフルームへ戻る為、俺たちは今一度洋館の中へ戻ることを決心した。

 

 たまたま拾った洋館裏口の鍵を使い洋館内部へ入ると、そのすぐ側で意外な人物と再開した。

 

 我らがアルファチーム隊長のアルバート・ウェスカーさんである。

 

 金髪グラサンと中々に怪しい風貌だが、プライベートでは案外付き合いも良く。この前街のラグビーチームに混じってイイ笑顔でトライしていたのを目撃している。

 

 そんなウェスカー隊長から『あの館にはまだまだ謎が残されてそうだから探すのを手伝ってくれ、私はこっちから行く』と言われ、そのまま行ってしまった。

 

 …極限状態で余裕がないと思えばまぁ。納得できなくもない、か?

 

 どこか気味の悪さを感じながらも洋館内へ戻ると、又もや愉快なゾンビ達が俺たちをお出迎え……かと思っていたのだが。

 

――何故か洋館内が静か過ぎる。

 

 生存者がいる気配が無いとかそうゆう意味ではなくただ単純に静かなのだ。

 

 道中動かなくなったゾンビ達も多数見て来たのだが、そのどれもが首を掻っ切られた状態だった。綺麗な断面と、ゾンビ達の返り血から判断するに恐らくは背後から一撃…まるで()()のような印象を受ける。オレを窮地に追いやった脳味噌裸ゾンビの死体もあり、それは抵抗したのか全身ズタボロの状態だった。まぁ甚振った可能性もあるが。

 

 後、洋館内のカーペットに印された足跡も可笑しいのだ。生憎とウェスカー隊長のように生物学には詳しくないが、それでもこの足跡が俺たち人間やゾンビ、犬っころ達とは違うことだけは分かった。

 

 …そういやあの『かゆうま日記』に気になる記述があったな。

 

 確か『皮をひんむいたゴリラのような奴』だったか?

 

 そうそう確かそのすぐ後の記述には『生きたえさがいいってんで、豚を投げこんだら、奴ら、足をもぎ取ったり 。内臓を引き出したり遊んだあげくやっと食いやがる。』って書いてあったなーアッハッハッハッハ……

 

 

 

 

 いやコイツじゃん。

 

 

 

 

 すぐさまジルさんにこれを報告。真剣な顔で頷いたあとこれまで以上の周囲の警戒を開始してくれた。一先ず俺も両手にショットガンをしっかりと構え待ち受ける皮剥ゴリラ(仮称)を待ち構えた。

 


 

「…成る程、確かゾンビよりかは明らかに強いわね」

「っすね。まさかショッガンを3発も耐えるとは思わなかった」

「何より厄介なのはあの俊敏性ね。射線を見切って銃撃を回避するなんて…」

「最悪、範囲の広いグレネードでなんとかなりそうだが数に限りがあるし……」

 

 二人が警戒を始め窓ガラス付きの廊下に差し掛かったところで、件の皮剥ゴリラ――後のハンター――と遭遇した二人。その容姿や耐久や俊敏性に驚きながらも何とか倒し、二人は今セーフルームへと到達していた。

 

「道中の鳴き声から察するに、この洋館内にはアイツらがウロウロしているみたいね」

「マジですか?それは中々……」

 

 情けなくも壁に寄りかかる形で座り込みながら話し合う二人は、少し息を整えるとスクッと立ち直った。

 

「でもあの皮剥ゴリラ。なーんか他の奴らと敵対してるみたいなんですよね」

「か、皮剥ゴリラ?いや敵対って…どうゆう事なの?」

「何というか、誰彼構わず“獲物”として向かってくみたいです…まぁゾンビ達は共食いしてますけど」

 

 ブラッドの脳裏に映ったのは此方を追いかけてくる皮剥ゴリラ――(作)あぁもうめんどくさい!こっからハンターとします!奴の日記じゃ無いし大丈夫ですよね?(確認)――達が、自分達の通行の邪魔となったゾンビ達を片っ端から切り裂いていた光景だった。

 

 一応ゾンビ達は腹が減りすぎて極限状態の様なものに陥った際は、人間やゾンビお構いなしに食い付くのを見ているが、アレはどう見ても“食べる為”というより“退かす為”の殺傷だと確信した。

 

「取り敢えずこれからの探索は、硫酸弾とか焼夷弾を積極的に使った方がいいな…アイツら相手には、むしろ悪手だ。下手したら傷を押して突っ込んでくるし」

「一応、ショッガンやアナタのライフルとかのストッピングパワーの高い物なら、有効でしょうけど……まぁ安全には変えられないものね」

 

 二人とも渋々と愛銃【サムライエッジ】を取り出し中の弾薬を全て捨て、代わりに特殊弾薬を詰め込み直した。

 

「あー…それとですねジルさん」

「ん?なにかしら」

「じ、実はショッガンとかライフルとか、特殊弾薬以外にも有効打を当たらられそうなのを所持していまして……」

「そうなの?いつの間にそんな便利な物を…」

 

 何処となく居心地が悪そうに腰のポーチを弄り始めたブラッドと素直に感心してその“武器”とやらに興味を持つジル。

 

「一応、これなんですけど」

 

 何故さ恭しく彼が持っているという謎の銃を受け取ったジル。

 

「ふーん…なんかコレおもちゃみたいね。形といいこの真ん中の機構といい」

「まぁそれは否定しない。色々検証したんですけど、コレはどうやら急所に当てないと効果がないっつー特殊な銃です」

「へぇ。変わってるわね……出所は?」

「…………………………」

 

 ダラダラと冷や汗をかき始めたブラッドを見て半ば察しながらも、流石になにも言わないのはナシなので通級を始める。

 

「…この洋館で拾いました」

「アナタと別行動をとったのは、解毒薬を取りに行く数十分のみだけど?」

「ス、スポンサーから渡された試作兵器で」

「あのねぇ…確かにブラッドは優秀だけど、流石にそうゆう類のモノはクリスやウェスカーに行くに決まってるでしょ?」

「――ケンドから貰った」

「ケンドは研究者(リサーチャー)じゃなくて銃職人(ガンスミス)よ」

「――――――」

「――――――」

「―し、真相を話させてもらいます」

「ここで黙秘権とかいい始めたら軽く殴るところだったわ」

 

 青年説明中……

 

「という訳で借りパクしました」

「…もういいわ。帰ったらちゃんと返すように、ね?」

「…………………」

「……返事は?」

「ハイ………!」

 

 まるで『聞き分けの悪い息子に言い聞かせる母親のような』構図になっていた二人は、ひとまず帰還した際にキチンと説明と弁明(おそらく無意味)してその銃を返せという結末に落ち着き、廊下のゾンビで威力証明も済ませた為。取り敢えず今この時は“お咎めなし”という結論を下した。

 

 そしてブラッドへの処遇が決定し、次の話題は未だ二人が探索していない領域……すなわち洋館の地下空間へと移っていった。

 

「…こんな場所だから絶対何かあるとは思うのだけど」

「いや、流石にアソコはヤバイですよ。ジルさんだって分かるだろあんな呻き声出してたら…」

「だとしても、私達は行かなくちゃいけないわ。だって警察官(ポリス)だもの」

「役職出されたら反論できないッ!」

 

 『後回しにするか、見なかったことにするべきだ』という後ろ向きな意見のブラッドと、『例え恐ろしいナニカがあるとしても調査するべきだ』というエンジンフルスロットルなイケイケ意見のジルの論争は、ジルの方へと傾いていた。というかそもそもブラッド自身が舌戦の類は苦手であり、しかも彼は“世話になった人には強く出れない”性分(しょうぶん)のためジルやクリス達相手には強く出れないのだ。

 

 その後も数分間論争は続いたが、常時ブラッドがジルに押され気味で幕を閉じた。当然結果は『ジルの勝利』である。

 

「〜〜ッ!分かりました!分かりましたよ!!でも条件があります!」

 

 理論と根性に根負けしたブラッドは観念したように絞り出すように声を上げ、しかしその後真剣な表情でジルへ向き直った。

 

「地下の敵と上のゴリラ!挟撃されても嫌なので、地下に行くのはゴリラを殲滅してからだ。これだけは受け入れてください」

 

 言い負かされたことが悔しいのか少しストックを持つ力を強めながらショットガンを構えるブラッド。

 

「それは私も賛成よ。いくらアナタと一緒とはいえ、未知の怪物二種類に挟み撃ちなんてされたくもないもの」

 

 肩を竦め提案に乗ったジルと、何とか聞き届けてくれたことに安堵したブラッドの両名は、休憩もそこそこに洋館内のハンター殲滅へと乗り出した。




*ネタバレ
リチャードレベッカはこの後グラサンと妻子持ちに捕まってクリスと一緒に投獄されるのでしばらく出番なしです


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-1998年(バイオ1)-009

深夜テンションで書いたので結構おかしな事書き連ねてるかもしれません。ご了承ください

後ブラッド命名の上に公式の命名を載せときますので各B.O.Wの種類はそこで判断して下さい。


○月☆日⑩

 

 地下にいると思われる未知の敵と、現在洋館内を徘徊中の皮剥ゴリラ(ハンター)の殲滅をしてから数十分。最初こそ今までの敵とは一線を画す機動性と残虐性に恐れ驚きもしたが、だんだんと目が慣れて来たので今は大して怖くない。

 

 というかアイツら最終的には突っ込んでくるのでショットガンを構え近づいて来たところを大口径の得物かショッガンでズドン!する戦術が有効だと判明したので下手すると脅威度犬っころ(ケルベロス)以下かもしれ――いや流石に複数隊が絶え間なく、しかも一斉に来たら犬っころ以上だな。

 

 後、あの皮剥ゴリラ達が他のB.O.W…特に犬っころに喧嘩を売りまくっていたのが幸いした。

 

 どうやら犬っころ達全体で皮剥ゴリラ=敵と見なす方程式が出来上がったようで、俺たちに不意打ちを仕掛けようとした個体に犬っころ達が窓を突き破って襲撃をかけていた現場もあった。犬が仲間思いなのはゾンビになっても変わらなかったらしい。

 

 そんなこんなで『皮剥ゴリラVSゾンビ犬』というZ級モンスターパニック映画の撮影現場を荒らしながら皮剥ゴリラを撃破していき、1時間ちょいぐらいで全滅させることが出来た。

 

 …うんまぁ、約束なので俺とジルさんは今地下への扉の前に立っていた。

 

 風が吹いてるのか『ヒュオオオ――』という風切り音と共に微かに聞こえる何かの呻き声と()()()…金属だろうか、硬質な音が聞こえてくる。

 

 正直今すぐにでもありったけの手榴弾やC4、プラスチック爆薬を使ってこの地下への扉を埋めてしまいたいが、その場合お隣から苦情が来るのでグッと我慢しながらも道中の謎解きで入手した“地下への鍵”を鍵口へ差し込み、回した。

 

 そんな訳でやって来ました洋館地下。てっきり洞窟だか牢獄だかハイテク研究室でもあるかと思ったが、どうやら中庭の一部に繋がっていたらしい。

 

 古びた小屋を発見したので入ってみたが…一見すると、普通の小屋だった。生活用品が毛布や机といった必要最低限のものしか置かれていないが、それでも人一人が生活する分には申し分ない程度の場所だった。

 

 そこで何故かクランクを手に入れた。どうしてこんな小屋の中にあるのかはわからないが、外の噴水にクランクを回すところがあったのを覚えている。使えるかもしれないな

 

 探索場所が増えた事に嘆息しながら小屋から出て行こうとすると―――

 

 見覚えのある化け物に遭遇した。

 

 体躯は俺やジルさんよりは低い程度、異様に細い手足に、腕には頑丈そうな鎖付きの手錠。何より特徴的なのは、その香りだ。乾いていて判別が効かないが、普段から()()()()()()()間違えようがない。

 

 アレは人の皮…それも、顔面のだ。

 

 そんな化け物(リサ)が突如として現れたのでもちろん俺たちは混乱の渦に呑まれる…ハズなのだが

 


 

「「ッ!!」」

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!?

 

 突如として出現した化け物に二人も一瞬呆然とするが、直ぐに正気を取り戻し己が持ち得る最大火力で迎撃を始めた。

 

 ジルはグレネードランチャーを、ブラッドは背中に背負った【AA-12】をそれぞれ構え一気に発射。堪らず地面に蹲った化け物の脇を抜け、二人は一気に小屋の外へと飛び出し脱出した。

 

「背後から追って来てないでしょうね!?」

「見えません!追って来てはないみたいです!」

 

 今更ながら恐怖を感じ冷や汗をブワッと大量に出しながら一気に噴水近くまで走る。背後からは呻き声こそ聴こえるものの、こちらに走り寄るような音は聞こえてこなかった。

 

「…フゥー。ここまで来りゃ大丈夫でしよ」

「そう、信じたいわね…」

 

 息も絶え絶えに噴水近くまで辿り着き、縁に体を預け呼吸を整える。

 

「そういえば……」

 

 ふと何かを思い出した様子のブラッドが、噴水の脇へと近付いた。

 

「ブラッド?どうしたの」

「いえ、さっきクランク手に入れたじゃないですか」

「ええ。途中であの化け物と出会って、使う場所の推理どころじゃなかったけど」

 

 蔦柄のカーテンをナイフでバッサバッサと切り払い、見えた壁には丁度クランクを嵌め込まなそうな穴を発見した。

 

「多分ここ、使えると思います」

「…よく見つけたわね。前ここ来た時は少し見ただけで通り過ぎたような気がするけど」

「後方支援なんで、情報把握には自信ないとやってけません」

 

 ジルからクランクを受け取り、穴にはめ込みギーコギーコと回し始めた。

 

「この先に、クリスがいればいいんだが…」

「そういえば、アナタやバリー、ウェスカーとは再開できたけど、未だにクリスとは会えてないわね」

「まぁ生きてるとは思いますよ。アイツは銃撃や近接格闘共に我がチーム随一ですからね。俺が生きてるなら、きっと無事ですよ」

 

 そのまま回していると、噴水が変形して中から階段が現れた。

 

「なんかこーゆう仕掛け多いですね」

「持ち主のシュミかしら?」

 

 さりげなく洋館の仕掛けをディスりながらも階段を降りてった。

 

 降り立った先は天然の洞窟を整備したらしく、鉱山のトンネルのようになっていた。梯子を降りきった二人は、いったん小休憩とし談笑を交わす途中で……

 

「あっ、そろそろ状況報告しときますか」

「そうね。お願いできる?」

 

 ブラッドは通信機をピピっと弄り、リチャードの周波数に合わせたが――

 

「…………?何も聞こえない」

「電波が悪いって事?」

「いや、多分繋がってないんだと思う…けど周波数はこれであってるしなぁ」

「…壊したのかしら」

「ですかねぇ…あっレベッカのも通じない。うーんどうにもイヤな予感が」

 

 そう言いながらも周波数を弄るブラッドを尻目に、油断なくハンドガンを構え周囲を警戒するジルは。ふとかすかな人気(ひとけ)を感じた。

 

「ん…こっちから気配を感じるわ。先に行っても?」

「いや単独行動は不味いです。俺も行きます」

 

 作業を中止し。不満げな視線を無線機に送りながらもジルの跡へついてった。彼はそもそも単独行動が嫌いな質ではあったが、この洋館事件という緊急事態においてもそれは変わらない……いや、寧ろ少し強まったようである。

 

「にしても、人気ですか…他のメンバーならそれこそエンリコ辺りか?」

「まぁ私の気のせいかも知らないし、期待はしないでおくわ」

 


 

○月☆日⑩+①

 

 なんとブラボーチームの隊長、エンリコと再会出来た。正直この極限状態でこの人と合流出来たのは非常に頼もしい。近接戦闘から長距離射撃までこなす正に“戦闘のエキスパート”と呼ぶにふさわしい人物であり、推薦枠でもあるウェスカー隊長がいなければそれこそアルファチームの隊長に就任する予定だった人物だ。

 

 と言うのもこの人は俺とリチャードがS.T.A.R.S.に所属する直前に俺たちヒヨッコの指導を請け負ってくれた人でもあるので個人的に恩義を感じる人物でもある。

 

 にしてもあの人いつの間にか銃弾をナイフで弾けるようになったのか、『お前達のおかげで射線がかなり限定されてたからな』と言ってるが明らかに人間業ではない。

 

 …そう、先の記述で言った通り。エンリコに銃撃を試みた人物がいた。もちろん俺やジルではないぞ?

 

 まぁ姿を直接見れた訳ではないが。

 

 一先ずエンリコに治療を施しいったん地上で戻る事にした。これまでの出来事をエンリコに伝えると、驚いた顔をしながらも『どうやらもうヒヨッコなんて言えそうにないな』と言ってきた。

 

 ――討ち漏らした皮剥ゴリラ(ハンター)をたったスリータップで倒した後に言われても馬鹿にされたようにしか聞こえなかったが。

 

 予め確保した中庭の広いスペースにヘリを着地させ、エンリコはそこで待機してもらう事にした。本人は戦わせろと言っていたが流石に怪我人を無理して戦わせるほど切羽詰まっているわけではない。

 

 結局エンリコは『じゃあちょっと周囲の偵察してくる』と言い出しそのままヘリを駆り行ってしまった。というかあの人ヘリの操縦も出来たのか……

 

 少しエンリコ師匠の異常っぷりに怖さを感じ、同時にエンリコから入った『ヘリポートを見つけた』と言う連絡に戦慄を受けた。

 

 エンリコの『そこまでヘリで行ってしまおうか』という提案は、断った。確かに近道(ショートカット)は大歓迎だが、道中にどんな証拠や出来事、なにより生き残りを見過ごすわけにもいかない。

 

 上空でホバリングを続けるというエンリコと別れ、俺たちは再び地下道へと向かった。

 

 

 

 

 

 ――インディ・ジョーンズごっこすることになるとは知らずに




ウェスカーいなかったらアルファチーム隊長確実って結構凄くねと思い書きました。後悔はしてない!


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-1998年(バイオ1)-010

最近内容がつまんなくなってる…もっかい原作やるか?


「岩が転がってくるとかコミックかよ……」

「同感。現実で遭遇するとは思わなかったわ」

 

 エンリコを救助した場所からしばらく進むと、突然目の前のよく転がりそうな大岩がガコンッという音と共に迫ってくる古典的通り越して非常識なトラップを避け、その先へと歩を進める。

 

 先はまるで坑道のようになっており『なんで森奥深くの洋館にこんな施設が…』と彼ら二人により一層の疑念を抱かせた。

 

「エレベーターがあるわ。乗ってみましょう」

「ホントこうゆう時のジルさんって躊躇ないですよね…いや俺は慎重派なんで頼もしいですケド」

 

 ため息をつきながらもジルと共にエレベーターに乗り込むブラッド。そんなブラッドの耳朶を、一つの大きな足音が打った。

 

「んー…このスリムな俺やクリス、ウェスカー隊長とは違うドスンドスンと響くメタボリックな足音は………バリーか!!」

「おいおい、随分なご挨拶じゃないか」

 

 ブラッドの言う通り物陰から姿を現したのはS.T.A.R.S.アルファチームで一番の体重があると専らの噂の持ち主、バリーだった。男二人はニヤリと笑い合うが唐突に真顔に戻ったバリーはジルのいる方へ向かい――

 

「バリー!無事でよかったわ」

「ジルこそな。物音がしたもんで来てみたが、まさかこんな場所があるとはな…後ブラッドは二度とウチのミートパイ喰うな」

「そんな御無体な!?」

 

 切り札(絶品料理)を切られたブラッドはニヤついた顔をすぐさま青ざめさせ、情けない声を出した。

 

「ハッ……冗談だよ。そう本気にすんな」

「よ、よかった…」

「今度アイツらとも遊んでやってくれよ?」

「あぁ勿論!料理の対価としては安いもんだ!」

 

 和平公約を結びガッチリと握手を交わす男連中にジルがため息を溢すというなんでもない一幕もありながら、彼らが乗ったエレベーターは下へ向かって降って行った。

 


 

○月☆日⑩+②

 

 下の階層は降り立った俺たちを待っていたのは、呻くような少女の悍しい呻き声だった。

 

 あの後道中の資料で判明したが、あの化け物は元々一人の可憐な少女だったらしい。俺たちがあの化け物――“リサ”と遭遇した古小屋にあった少女の姿絵は、彼女自身ものだったそうだ。少し後ろで彼女の両肩に優しく手を置いていたのは、おそらくご両親なのだろう。

 彼女の父親がこの洋館を設計した設計者で、父親とリサ、そして母親は洋館の建築完了とともに口封じも兼ねて監禁。父親は一筋の希望を求め脱出を敢行したが失敗に終わり死亡。

 彼女とその母親は研究段階にあったゾンビ化ウィルス『t-ウィルス』を投与され実験台にされ、母親は耐性がなかったため速やかにゾンビ化し処分。だがリサは幸運(不運)にも『t-ウィルス』への耐性があったらしく生存。

 その後も様々な実験を施された後結局“役立たず”の烙印を押され焼却処分。しかし彼女の家族への想いと生への執着が死ぬことを許さず。彼女は夜な夜な母の面影を求め、女性職員の顔を剥ぎ自身へ貼り付け、その寂しさを慰めていた。

 

 …あぁ反吐が出る。

 

 彼女のしたことは間違いなく猟奇的かつ残虐性に富み、まず間違いなく大罪人だ。だが、彼女をそう変えたのは間違いなく『t-ウィルス』を開発した企業――我らがラクーンシティの経済的支配者【アンブレラ】である。

 

 成る程奴らにとって我らの街は程のいい実験都市だったらしい。だから最近街の行方不明者とアンブレラの新薬開発による利益向上が比例していたのかこん畜生が。死ね

 

 そんな訳で【アンブレラ】に対するヘイトを溜めながら俺とジル。そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()バリーと共にリサへと対峙した。

 

 …そうなのだ。バリーが俺達を裏切ったのだ

 

 当たって欲しくない感ほど当たるとはこれいかに。鎖付きの四本の石柱と上に吊るされた棺桶が配置された意味ありげな場所で『生きていたのか!?』と瞠目するバリーと合流…いや接敵(エンカウント)した。

 

 幸いにも此方にその凶悪なマグナムを突きつけようとした瞬間にジルがマグナムを奪い。バリーの生死与奪権は此方で確保したが問題はその後。

 

 空気も読めず場にリサが乱入してきた。

 

 しかもバリーの『一旦休戦してアイツを倒そう』と言う懇願をジルさんが瞬時に快諾。プラスして44口径のマグナムを返してしまうというイエスも褒めちぎりるような善性を披露した。

 

 抗議の意も込めたジト目をジルさんに送ったが、当の本人は既にバリーに背中を預け、リサへとハンドガンを撃っていた。

 

 バリーも『背中は俺に任せろ!』なんていうし…背中から撃ったら崖から落としてやる。

 

 正直ここでバリーを拘束し直してもよかったが、それではジルさんはバリーとの共闘が“正しい”と信じたので、ひとまず俺も従うことにした。

 

 まぁ俺も多少は信じたいから、この場は黙っておこう。

 


 

「生命力が異常なのは知ってたけど…これは流石にウンザリするわね」

「俺もマグナムも効かないな。まさか…不死身か?」

「…………………………」

 

 すでに彼ら三人の足元には大量の空薬莢があるが、リサの様子は以前変わらず、此方に向かって気味の悪い声を上げながらゆっくりと向かっていきている。

 

「うーん…」

「どうしたブラッド?」

「いや、なんか思い出せそうなんですけど…」

 

 そうこう言っている間にも、鈍足ではあるが止まりはしないリサの攻撃が放たれた。

 

 「アァア――!」

 

 何の捻りもないシンプルな振り下ろし、だが彼女のソレはt-ウィルスによって大幅に強化された膂力から放たれる破壊の一撃だった。

 

「クッ…攻撃自体は単調だけど、このままじゃジリ貧よ!?」

「――!ジルさん。四方の石柱を崖に落としてください!!」

「え……!了解!!」

「お、おい!何をする気だ!?」

「バリーはそこでマグナム撃ってて!44口径は伊達じゃないんだろ!」

「あぁクソ!後で説明しろよ!?」

 

 二人の行動は早く、ジルは【サムライエッジ】をホルスターに仕舞い。全体重を載せ石柱を押し始め、バリーは地に自分を縫い付けるように地面を踏み締めしっかりと愛銃をホールドした。

 

 かというブラッドは――

 

「さて、リサ――()()()()

 

 シャッドガンやライフルを取り外し身軽に格好になり恭しく頭を……丸で、ダンスに誘うかのように軽く下げ、手を差し伸べる。

 

Shall we dance(俺と踊らない)Prima donna(お姫様)

 

 そういうと足の力を爆発させ、一気にリサへと迫った。

 

ヴァアアア!!!

 

 見える物は全て敵というように、再び両腕の殴打をブラッドへ向け放つ。

 

「フッ!」

 

 が、ブラッドこれを道中の柱を蹴り三次元的な動きで回避。リサを飛び越える瞬間に脳天にかかと落としを喰らわせ、距離を取った。

 

「ッ熱烈だな!がっつくような子は嫌いじゃないぜ!!」

ヴァァァ――『BANG!!』ッ!?」

 

 煽るような言動に憤りでも覚えたのか、ブラッドの方へ向き直った所でバリーからの援護射撃。ジルやブラッド達が使用する【サムライエッジ】とは桁違いの威力を持つ【サムライエッジ バリーモデル】から放たれる弾丸は見事にリサの後頭部へと命中。貫通こそしなかったがのけ反らせることに成功した。

 

「ナイスショット!――羅ァ!」

 

 その隙を見過ごす訳もなく、再びリサへと接近したブラッドは体を捻りその回転を全て掌へ伝えた渾身の掌底を放つ。膂力と耐久は人外のそれでも、体重だけは通常のものと大きな鎖に手錠。後貼り付けられた人の皮程度のものしかないリサの体は少しだけ宙に浮く。

 

「まだまだ行くぞ」

 

 怯む瞬間を見逃さずすぐさま肘や膝裏と言った関節部を中心にダメージを蓄積させて行き動きを阻害させる“仕留める”為ではなく“止める”為の攻撃を展開する。

 

 勿論リサもタダでやられる訳もなく。その腕を振ろうとするが――

 

「そうらもう一丁!」BANG!!

 

 バリーのマグナムによる援護射撃がそれを拒む。同じ部隊に所属する二人のコンビネーションは伊達ではなく、阿吽の呼吸とまではいかないが、即席とは思えないほど無駄のない連携を続けていった。超回復能力があるとはいえ度重なる急所への打撃と銃撃は効いたのか、呻くような声を出し蹲った。

 

「これで……終幕!」

 

 少し下になった――蹴り易い位置に配置された頭は向かって、渾身の回し蹴りを放った。

 

ゴシャア!

 

 骨を砕く感触を鉄板仕込みのブーツから感じ取りながら、開幕と同じように三次元的なムーブでバリーのそばへと戻る。

 

「ちょっとは効いたか?」

 

 少し期待するブラッドだったが、無情にもリサは数秒後何ともない様子で立ち上がった。

 

「なにが『終幕だ!』だよ。全然効いてる様子じゃないぞ!?」

 

 茶化し4割焦りが6割ぐらいの分配で声をかけるバリーに対し、手応えのあった蹴りが無意味と化していたことに残念がっていたブラッドは、特に動じることなく返答した。

 

「いや、これで終わりだ――ジルさん!」

「えぇ…コレで、最後よっ!!」

 

 最後の石柱をジルが崖下へと落とし、それによって中央に鎮座していた()が開かれた。

 

「――マぁマ?

 

 ふと棺の中を見たリサの口から溢れでた発言に、ブラッドは口を顰め、ジルとバリーは驚愕した。

 

ア゛ァ…ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!

 

 何かを悟ったような声の後、絶望したような絶叫を上げながら谷底へと()()()()()()()()

 

「…まさかとは、思うけど」

「大体合ってますよ。あの中にいたのはあの怪物の…リサの、母親の亡骸です」

「おいおいマジかよ…」

「研究資料で、此処にソレがあるのは知ってました。――活用するとは思わなかったけどな」

 

 後味の悪さをヒシヒシと感じながら、ブラッドはリサの落ちていった谷底を見遣ると、軽く十字を切り、小さく『アーメン』と呟いた。




まぁ崖から転落しても生きてるんですけどね初見さん!


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-1998年(バイオ1)-011

今回は一気に行きます。
…まぁ行くも何ももうラスボスしか残ってないんですケド!


○月☆日⑩+③

 

 バリーに『此処は俺に(調査を)任せて先に行け』という死にそうなのか死にそうにないのか判別しにくい発言を受け、俺とジルさんは先に進むことにした。

 

 因みにジルさんはそのままバリーを信じる方向にシフトしたそうだ。決めたはバリーの懐から出てきた家族写真だそうで。

 

 『家族を思う人に悪い人はいない』ねぇ…逆に『家族を思うからこそ』悪事に手を染める人が多いような気がするが……まぁ今は気にしないことにしよう。そもそもバリーは一人で俺達は二人だ。裏切り者枠がもう一人出てきて前後で挟み撃ちにされない限りは大丈夫だろう。

 

 そんなこんなで先に進み地上へと出ると、何故か噴水の水枯れていた。何故か内部に下へと続く階段があったため降ってみると、エレベーターを発見した。

 

――なんか急にハイテクになったな、今まで一昔前の絡繰屋敷みたいだったのに。

 

 そんなことを思っているとエレベーターが下に着いたためあたりを見渡してみると、なんとビックリ鉄とコンクリによって舗装された立派な通路が広がる地下研究施設だった。

 

 安全確保のため掃討した為近頃なかなかみなかったゾンビ達を蹴散らしながら少し進むと、懲罰用なのだろうか?独房のような場所に閉じ込められたクリスやリチャード、レベッカを発見した。

 

 束の間のラブ…はないロマンスを堪能している二人の隣で何とか扉を壊せないかと試行錯誤してみたが、てんでうまくいかなかった。鉛と火薬で出来た贅沢な()()()()()()も通じない。

 

 一先ず洋館の玄関にて回収しておいた【サムライエッジ クリスモデル】と数十発分の弾丸を格子の隙間から投げ入れといた。

 

 リチャードが『俺にはなんかないのかよ』と言ってきたので刃渡り30cmの大型アーミーナイフを渡した。あぁ勿論レベッカには救急スプレーに救護箱と()()道中で入手した【レミントンM870】を渡しといた。クリスやリチャードから白々しい視線が突き刺さるが気づかないフリをした。

 

 再び進んみながら道中のレポートと思わしき書類を精査出るわ出るわ怪しい研究成果。

 

 特に実験室と思わしき場所にあった【各B.O.Wについて】という資料はヤバかった。何が【人間に爬虫類の遺伝を組み合わせてウィルスに感染させた本格的な戦闘用B.O.W】だよ人体実験なんて軽々と書くな。

 

 あぁあとはあの化け物…B.O.W達の正式名称が知れた事が辛うじてプラスだろうか。いちいち俺の絶妙に微妙なネーミングの名前を書くのは少し恥ずかしかったので、そこだけは感謝しよう。

 

 資料の最後に『究極の生物兵器』と銘打たれていた暴君を表す【タイラント】という化け物の記述だけはみなかったことにした。道中で見かけなかったしきっと未完成で、妄想の産物だったのだろう。そう思うことにした

 

 そんなこんなでも一つ隣の部屋へと歩みを進めるが、明らかに勘が“ヤバい”と言っているので行きたくはないが、ここにいても何も出来ないので意を決して()()()()()()()()()して此方に向かって挙動不審気味に歩み寄るバリーを迎える。

 

……早撃ちは苦手なんだけどな。

 


 

「ウェスカー!」

「ッ!………ガァ!?」ガギィン!

「…フン。この前の射撃大会で私に惨敗したことを忘れたのか?おめでたい頭だ」

「だからといって無抵抗なのは別だろ…!」

「ジル。銃を捨てろ…おいブラッドお前もだ」

「バリー……!」

「――あークソ」

 

 その一瞬で様々な事が起こった。ブラッドが銃を構える前にウェスカーの早撃ちによってブラッドの銃がはじき飛ばされ、そのやり取りの隙に二人の背後に回ったバリーがジルの頭に銃を突き当てた。

 

 流石にこうなっては2人ともなす術なく大人しくバリーの指示通りに武器を手放すしかなかった。

 

「まぁバリーを責めてやるな。アイツは私の指示に従わなければ可愛い妻や娘の命がないそうだぞ?」

「よく他人事みたいに言えるわね」

「ウェスカー隊長も地に堕ちたか…」

「…まぁ気にするな。じき全てから解放される」

「S.T.A.R.S.を潰す目的は何?」

「信じなくてもいいが、アンブレラの意向でな」

「資料に思いっきり“脅威になるから潰す”って書いてあったけど?」

「……まぁ“私個人”は違うが“上の人間”はそうじゃなかったらしい」

「まるで、アンブレラの奴隷ね!」

「君は頭がいい「俺は?」………だが勘違いをしている。この館にいるバケモノなどクズ同然。屋敷ごと焼き払ってくれる…!」

「その癖ハンターのサンプル持ってるな」

「――ええい黙れ!貴様は何なのだ一体!!」

「疑問点を提示しているだけの健全な人間『パチュン!』……OKOK。黙ろう」

 

 一瞬気の抜けたようなやりとりを見せるが、ウェスカーの銃撃によって元凶(ブラッド)を黙らせた為。再び引き締まった空気へと戻った。

 

 サングラス越しでもわかる程の怒気を滲ませていたウェスカーも気を取り直すように咳払いをしバリーへ向かって「地上で待機していろ」と言い渡し、バリーを地上へと向かわせた。

 

「来たまえ」

 

 銃で方向を指し示しスタスタと歩いていくウェスカーに、ジルとブラッドは大人しくついていった。

 

「これぞ究極のB.O.W…【タイラント】だ」

 

 案内された先の大型の倍容器に入っていたソレは、一見すると筋骨隆々の大男にも見えるが、3メートルを越すであろう巨躯と、歪に肥大化した心臓とその周りを覆う血管がソレが人外という事を知らせる。

 

「実に美しい……」

 

 恍惚とした表情を微かに浮かべるウェスカーに対し、ジルとブラッドの両名は思い切り顔を顰めた。

 

「あなたは…こんな物のために……」

「…想像の産物だと思ってたのに」

 

 己の隊が滅茶苦茶になった元凶とも言える存在に対し敵意を剥き出しにするジルと、つい先程『いるわけないだろ』とたかを括っていた存在が目の前に現れたせいで軽くショックを受けているブラッドだが、そんな2人――正確にはブラッドを無視しウェスカーが腰の【サムライエッジ ウェスカーモデル】へ手を伸ばした。

 

「さて、悲しくはあるがそろそろお別れといこう……」

 

 ゆっくりと見せつけるように此方に銃を向けるウェスカーに対し身構える。

 

「あぁそれと、冥土の土産に一つ教えてやろうブラッド」

「…なんだよ」

「貴様の使っている雷撃を撃ちだす銃は、アンブレラが開発した対B.O.W用兵器だ。本来はそれよりも大型の【RAI-DEN】の小型化と利便性を向上させたバージョンなのだよ」

「」

「どんな気持ちだ?これから憎むべき企業が開発した銃に命を救われた感想は」

 

 呆然とした顔を晒すブラッドを嘲笑うように口角を上げる。

 

「アナタ悪趣味ね」

「フン、なんとでも思うといい。どうせ君たちはこれから死にゆく者なんだぞ?そんなことよりもだ。…どう思ったんだブラッド?」

「え?いや別に…銃に罪はないじゃないですか」

「」

「」

 

 続いて阿保面を晒すことになったウェスカーを見遣り、呆れたように言葉を紡いだ。

 

「いや流石にコレがウィルスを研究していた研究者ならともかくそれによって開発された武器は憎むような要素ありませんよ。あとそこまで何でもかんでも怒っても疲れるだけでしょう?」

「――フン。貴様は最後までつまらん奴だったな」

「そいつは光栄だな」

 

 気を取り直しサングラスを直し、ジルに向けていた銃をウェスカーに構え直した。

 

 

BANG!!

 


 

○月☆日⑩+④

 

 あの後ウェスカーを裏切り俺達に寝返った…いや元鞘に戻ったというべきなのか?バリーがウェスカーの銃を弾き俺たちを救ってくれたが、執念で【タイラント】の起動ボタンを押し。ウェスカー曰く最強のB.O.Wが起動してしまった。後ついでに施設の()()カウントダウンが開始した。

 

…そう、自爆のカウントダウンである。

 

 あの野郎の差し金なのか【タイラント】が起動した時の緊急処置なのかは判らないが、ともかく施設の自爆カウントダウンが開始された。

 

 取り敢えず【タイラント】の相手は俺とバリーで押さえ込むことにして、ジルには未だ独房に閉じ込められているであろうクリス達の救出へと向かわせた。

 

 一先ず互いの最大火力を【タイラント】へ向け撃ち込んでみた。

 

 ウェスカーの言った通り道中遭遇したどんなB.O.Wよりも強大で、素早く、そして硬かった。

 

 コンピューターや研究用の音型ビーターやメモリの付いた巨大な装置をその伸びた爪でバッサバッサと掻っ捌く様を見て冷や汗を書きながらもなんとか膝を着かせることに成功し、入り口を手榴弾で埋めた後脱出口へと向かった。

 

 何とかクリスやリチャード等と合流し、無線機から施設上空のヘリポートでホバリングしているエンリコへ施設のヘリポートは着陸してもらう事にした。

 

 ヘリの操縦士である俺と、看護兵のレベッカが先に行くべきだと言われたので、それに甘えて先に上へと行くとにした。

 

 エレベーターが閉まる直前に見えたのは、ようやく相棒と合流できた事だテンションがハイになったジルとクリス両名が、ハンターやクラムゾンヘッドなどの強力なB.O.Wが纏めて吹っ飛んでいく光景だった。

 

 そんな有り得ざる光景を見ながら上昇していくと既に着陸したという連絡をエンリコから受け取り、そらと『その後の運転は任せる』という連絡も受け取った。

 

 『信頼されているんですね!』とキラキラとした目をしているレベッカをかわしながらもヘリポートへたどり着き、合流したエンリコに俺の【Steyr SSG 69】を渡し万が一の援護を頼み、操縦桿を握り目盛を確認する。

 

 あぁ…なんか一晩握ってなかっただけなのに一月ぶりに操縦桿を握ったような気もするが、やはり操縦桿は手に馴染む。

 

 やはり俺のポジションはココなのだと確認してエレベーターから出てきたリチャードとバリーを出迎えた。

 


 

『ブラッド!早くヘリを離脱させろ!』

「へ?」

『説明してる暇はないわ!早くヘリを出して!!』

「えぇ…あぁもう!」

 

 急に怒鳴り声にて入った通信に混乱しながらも、クリスとジルの指示に従いヘリを発進させた。

 

「血迷ったかブラッド!?」

「まだクリスとジルがいるんだぞ!」

「そのクリスとジルからの指示だ!俺だってわかんねぇよ!!」

 

 『だが現場の指示には従うべきだ』と言うと高度を上げ、ヘリポートを中心としたホバリングし始める。

 

「おい二人共!何があったか報告しろ!!」

『あのタイラントとか言うバケモノが復活した!慌てて逃げたが、あれは多分追ってくるぞ!!』

『私達は今エレベーターに乗っているわ!ブラッド達は上空から援護して!ここでケリをつけるわ』

「ハァ!?」

 

 そう言うと言葉通りにエレベーターから二人が飛び出てきて、直後に2人の側の床が割れ。そこから【タイラント】が突き破り登場した。

 

「あの野郎まだくたばってなかったのか…!」

 

 ブラッドと2人でタイラントを足止めしたバリーは未だ倒し切れていなかった事を悔やむ様に手を強く握り込む。

 

「…話は後だ!バリーは備え付けの【ブローニングM2重機関銃】で、エンリコは貸した奴で引き続き援護を!!」

 

 ブラッド自身も操縦桿を強く握りながら鋭い声で指示を飛ばし、自身もヘリを操り【タイラント】を狙い易い位置へと移動した。

 

「こっちから援護射撃を開始する!当たるなよ!!」

『すまん感謝する!ジル。行くぞ!』

『えぇ…行くわよクリス!』

 

 二人が【タイラント】の前後に陣取り、片方が狙われている隙にもう片方が背後から狙い撃つという単純ながらも効果的な戦術を展開していく。

 

 万が一片方が追い詰められているとしても上空からの援護射撃によって足止めを喰らい、その隙に体制を立て直すというローテーションを続けていくと、徐々に【タイラント】の動きが鈍っていく。

 

「よし止めだ。バリー後ろの格納庫から()()のロケットランチャーを下に投下してくれ」

「なんでお前が知ってるんだ!?」

「あ、後弾が一つ足りないと思うけど気にするな」

「おいそりゃあどうゆう事だ」

「――――――」

「まさかお前使っ」

「おいジル!クリス!」

『どうした!』

「コレをッ!」

 

 バリーが投下準備したままだったロケットランチャーをその手からひったくり、地上の二人の側へ向かいぶん投げた。

 

「『いったぞ ジル!』」

「『そいつをブチかましてやれ!』」

 

 ガコンッ!という重々しい音と共に投下されたロケットランチャーをクリスとジルが飛び付き、互いを支え合う様にして構える。

 

 無論【タイラント】も撃たれまいと突進攻撃を見舞おうと二人に向かってダッシュするが――

 

ドガガガガガガガガ!!!

 

「ぬ、ぬぉぉぉぉぉ!」

 

 バリーの掃射によってまず足を止められ、

 

パァン!!

 

「…借りは返したぞウェスカー」

 

 エンリコの狙撃によって膝裏を撃ち抜かれ強制的に膝をつかされた。

 

「ようやく夜が明けたんだ!悪夢(バケモノ)はさっさと覚める(死ぬ)のが道理だぜ!やっちまえクリス!」

「ジルさん!お願いします!!」

 

 リチャードとレベッカからの声援によって、二人が握るロケランの引き鉄に力が籠る。

 

「やるぞジル!」

「ええ。コレで終わりよ!」

 

 ポシュという最終決戦にしては気の抜けそうな音と共に飛翔したロケット弾は真っ直ぐ【タイラント】へ向かって直進して……………

 


 

○月☀︎日

 今俺は『いい加減休め』とエンリコに言われ、ヘリのプロペラ音をBGMにしながらこの日記を書いている。因みにみんなは疲れているのかぐっすりお休み中…クリスとジルさんは分かるのだがリチャードの肩にレベッカが寄りかかっているのは解せぬ。あとバリーは端っこで家族の写真を抱いて寝てる。起きてるのは俺と操縦中のエンリコだけだ。

 

 …話を戻そう。

 

 この一晩だけで色々とあった。

 

 人間を貪り食うゾンビ達

 

 この世のものとは思えない怪物達

 

 巨大製薬企業【アンブレラ】の醜悪な陰謀

 

 S.T.A.R.S.隊長『アルバート・ウェスカー』の裏切り

 

 そして何より……今まで生死を共にして来た仲間達の死。

 

 勿論人を看取るのが初めてというわけではない。凶悪な犯罪者やテロリスト、流れ弾に当たって死んでいった同僚達をこれまで散々見て来た。

 

 だが、これは余りにも……

 

 …止めよう。こんな辛気臭いのはキャラじゃないし、シリアスはつい先程やったのだ。いつまでたってもしんみりしてちゃ逝ったジョセフやケネス、フォレスト。そして何故か遺骨が見つからなかったエドワードに申しわけが立たない。

 

 リチャードも言っていたが、夜はもう明けたのだ。

 

 …まぁクリスとジル。そして他の奴らは【アンブレラぶっ潰す】と息巻いていたので、これでハイおしまいには絶対にならないと思うが

 

 あぁそれとウェスカーから来歴を聞かされた【INA-DUMA】だが、これからも使い続けることにした。なんだかんだ言っても威力は絶大だからな。射程が短いのが玉に傷だが、これからも使わせてもらうとしよう。

 

 ――帰ったら帰ったらでこれまで集めた証拠を、一定の信頼性が持てる資料に仕上げる作業があるのだが、それには目を瞑ることにする。




という訳で1998年(バイオ1)編完結です。次のヤツを書くのは暫くかかりそうなので幾つか短い番外編描いてみよーかなと思ってます。


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-1998年(バイオ1)-番外編

短い話を書き連ねているだけの短編集です。時系列は【洋館事件】後です。

―追記―
とあるお二人から誤字報告を受け、修復しました。


《対抗策》

【洋館事件からしばらくして】

 

 あの悪夢の様なバイオハザードから生還してから初めての休暇に。ブラッドは一人ホームセンターから購入した木箱の中に様々な物を詰め込んでいた。

 

(…やっぱり、信じてはもらえなかったな)

 

 つい先日提出したアンブレラの陰謀についてまとめた資料を提出したが、やはりというかなんというか。上の陰謀やらなんたらが働いていたらしく【空想の産物】だとロクに受理されなかった。今事件に遭遇した主なメンバーは自宅待機を命じられており、それぞれが行動を起こしていた。

 

 クリスとエンリコは調査のため海外へ飛び、ジルは町に残り独自の調査を。

 

 バリーは家族の亡命手続きを終えた後。せめて一人でも多くに事の危険性を知ってもらおうと今も場末の酒場や自身の友人達に声を大にして伝え。

 

 レベッカは洋館内で手に入れたウィルスのサンプルと共にワシントンでのワクチン開発を決意し、リチャードはそれについて行った。

 

 そんな中ブラッドがしていたのは、ある意味での“対策”だった。

 

(やっぱり最近“感染者”――ゾンビの数が確実に多くなってる)

 

 ニュースや新聞紙を見ても、最近よく見る『人を食する恐怖の人喰』の記事を最低一件は見かけるようになっていた。

 

(絶対に【洋館事件】のような…“バイオハザード”は確実に発生する)

 

 確信めいた事を思いながらもブラッドは木箱の中に『銃器や医療品』を入れ蓋をし、釘で蓋をしていった。

 

(まぁコレで助かる人なんて、数十人いるかいないか程度だろうがな)

 

 彼がしていたのは“セーフハウス”ならぬ“セーフボックス”作りだった。

 

 木箱で安価の木箱を買い、ガンショップや住宅街を回り手に入れた故障した銃器を修理し遠くの山から乱獲して来たハーブや自前の救急スプレーを詰め込む。後は地図やタオル、アンブレラの証拠といった彼が気紛れに思い付いた物資を適当に詰め込み完成した。

 

 後は深夜になったら木箱を地図にマークした場所に設置するだけである。

 

(フゥ…日曜大工とすら言えないけど、結構疲れるもんだな)ムシャムシャ

 

 三時前という事でおやつ代わりのサンドイッチを摘んでいると…

 

ユーメーデーオーワラセナイ♪

 

「ん?」

 

 携帯電話の着信が来たためサンドイッチをフガフガ咥えながらも後ろポケットのケータイを取り出す。

 

「ふんふん…ゴクン…クレアちゃんからのメールかぁ………ってゲ」

 

 その着信がクリスの妹クレア・レッドフィールドからの物だと認識し一瞬顔を綻ばせるが、メールの文面を見た瞬間顔を顰め直した。

 

 内容は要約すると『兄がどこにいるのか知りませんか?』という内容だった。因みに彼女の兄は絶賛海外へ高飛び(死地)中である。

 

 クリスは今回の一件の一切を妹には話していなかった。因みに酒場でベロベロにして聞き出したら『クレアをそんな危険な目に遭わせられる訳ないだろっ!』と泣きながら言っていた事をブラッドは脳の端で思い出した。

 

「うーむ…ど、どう答えたらいいんだ?」

 

 頭を捻り何とかこの事態に的確な返事を考えるが、なかなか出てこなかった。

 

(…ヨシ!当たり障りのない内容にしよう!)

 

 思考停止し『いやー俺も最近見てないんだよねー』という皆のメールを送り返……

 

「あっそうだ折角だし例のマップも送っとこう」

 

 『確かラクーンシティのマップ持ってなかったよね?コレあげる!なんかあったら印の場所行ってみてね!!』と追記し送信した。

 

「…まぁ行動力の化身のような彼女でも、不穏なニュースばっか流れてるここ(ラクーンシティ)にはこないだろ」

 

 サンドイッチによって適度に満たされた腹を撫でながらも、彼はそうしんみりと夢想した。

 


 

《確認》

【洋館事件から少し経った後】

 

「フムフム…ハンドガン80丁にショットガン50丁。アサルトライフルが30丁でそれぞれの弾が数千ダースと少しに、テーザーガンとスタンロッドが充電器合わせてそれぞれ100個で警棒が全職員分………戦争の用意かな?」

 

 ラクーン市警の武器庫にて武器の在庫を確認していたブラッドは呆然とした様子でそう溢した。

 

 確かに『武器の増加案』を出したのはブラッド自身だが、精精武器が数丁増えるのが関の山だとタカを括っていた為、この有り様には度肝を抜かれた。

 

「一体なんだってこんな様に……」

「そりゃあ、役に立ったからだろう?」

「……おっ誰かと思えばまたまたS.T.A.R.S.認定試験に落ちたケビン・ライマン先輩じゃないですか」

「ほほう?S.T.A.R.S.所属にも関わらず一般勤務警察官に射撃技術で負けてるチキンハート君がなんか言ってやがるぜ」

「………………」

「………………」

「…止めよう。虚しくなって来た」

「だな。喧嘩するのは酒場だけで充分だわ」

 

 互いに数秒睨み合うもすぐさま無益だと察し、いつもの気軽なやりとりに戻った。

 

 ブラッドに話しかけて来た彼の名前は【ケビン・ライマン】射撃の腕はジルやクリス、果てにはウェスカーやエンリコを凌ぐ署内No. 1の実力を誇るが、いい加減な性格や態度が災いし遅刻や無断欠勤が多い為。これまで二度S.T.A.R.S.の試験に落ちた悲しい男である。

 

 ついでに言うとブラッドとは酒をよく飲む飲み仲間でもある。

 

「…それで?『役に立った』ってのはどうゆう事なんだ?」

「あぁいや…ほらお前も知ってるだろ?最近よく出没する【食人鬼】の話さ」

「………ッ」

「ん?おいおいどうした。顔色が悪いぞ?」

「い、いや…大丈夫だ。続けてくれ」

 

 一瞬洋館での悪夢がフラッシュバックしたブラッドだがなんとか飲み込み、ケビンに続きを促した。

 

「おう。それで彼奴らを射殺したり拘束したりする為に武器の需要が激増してな。お前が主導した例の署名の後押しもあって、今はこんな有様って訳さ」

「なるほど……」

「いやーお前には感謝してるぜ。あの署名がなかったら絶対今頃マリア様の元に行ってる奴も多いだろうからな!」

 

 ハッハッハッハと笑うケビンの横で何となくでとった行動がいつの間にか大事に膨れ上がっていることに少し驚きながらも、『殉職者が出ていない』ことにブラッドは深く安堵した。

 

「そりゃあよかった。気紛れでも先導した甲斐があったってもんだ」

「だな!ブライアンの野郎も上がる経費と実績の書類を交互に見て震えてやがったぜ!いやーアレは傑作だった」

「あ、それは見てみたかったな」

 


 

《警告》

【洋館事件から少し経った後】

 

「マービン警部補」

「ん?あぁブラッドか。もう体はいいのか?」

「えぇ。もうすっかり」

「ウェスカーやジョセフの件は…残念だったな」

「……そっすね」

 

 ラクーン市警のエントランスでは、噴水の近くでマービン・ブラナーとブラッドが缶コーヒー片手に挨拶を交わしていた。

 

 ブラッドはやる事がなかった為何となしに警察署へ来たが、そこで昔面倒を見てもらったマービンがいた為声をかけた形となる。二人はしばらくの間和やかに会話していたが、話す事が粗方終わった後に。急に神妙な顔となったマービンが話し始める。

 

「所で、お前達の言っているアンブレラの陰謀の話は……」

「やっぱり、信じられませんか?」

「…それは」

「まぁそうだろうとは思いましたよ。俺でも話してて信じられませんし」

「……………………」

「――まぁ、資料には目を通しといて下さい。暇潰しの、SFホラー小説程度には読み応えがあるはずですよ」

「…わかった」

「……帰ります。話したいことは話せましたし」

「送っていくか?」

「平気です。これでもS.T.A.R.S.メンバーですよ?そのらのチンピラよりは強い」

 

 そう言い会話を打ち切ったブラッドはベンチから腰を上げると、少しフラフラしているがしっかりとした足取りで警察署から出て行った。

 

………すまん

 

 そんな微かな声を背後で聞き取り、その言葉に後ろ髪を引かれるように一瞬止まるが、また再び歩き出した。

 

「ハハッ。気にしてませんよ」

 

 返答のような、独り言のような声は。彼が思っているよりも掠れていた。

 


 

《取材》

【ラクーンシティバイオハザード発生前】

 

「特集!恐怖の洋館事件!!」

 

 本誌はラクーンシティ市民の間でまことしやかに囁かれている【洋館事件】の真相に迫る!取材を受けてくれるのは【洋館事件】の自称生き残り。B・V氏だ!

 

記者兼インタビュアー: アリッサ・アッシュクロフト

 

――それでは、取材を開始させていただきます。

 

B氏「分かりました。所でこれってどこまで話していいんだ?」

 

――話していい…とは?

 

B氏「いや、自分で言うのもなんだが結構荒唐無稽な内容だぞ?全部真実ではあるが。雑誌は本当だと思い込ませてナンボだろ?」

 

――その点については問題ありません。どちらかというとオカルティック方に載せるので

 

B氏「…あっそう。じゃあ話すぞ」

 

――お願いします。

 

B氏「事の発端は俺の所属している部隊とは別の特殊部隊が、山中で失踪したことから始まる――――

 

 

〜男性女性会談中〜

 

 

――以上で取材は終わりです。ありがとうございました

 

B氏「此方こそ。荒唐無稽な与太話に応じてくれてありがとうございました」

 

――…底意地が悪いって言われたことない?

 

B氏「ハハッ。バレたか」

 

以上で取材は終了。最後まで陰鬱げに話してくれたB氏に感謝!

 

 

ラクーンプレス社掲載

 

 

 

 

 

 

「おおう…ある事ないこと書かれてやがる。やっぱ雑誌はクソだな!」



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【ラストエスケープ】
-1998年(バイオ3)-001


という訳で新章です!拙くて表現下手で誤字多めの文書が続くけどそれでもよければお願いします!


「ッ!?なんなんだこいつ……」

『スタァァァァァァァァズ!!』

 

 洋館事件から二ヶ月後、我らがブラッド・ヴィッカーズはアンブレラの新たなる証拠集めに尽力していた所、突如アパートの壁を破壊してダイナミック入室をかまして来た全身黒包帯の大男から逃げている所だった。

 

「なんだあの服防護服かなんかか!?ハンドガンをロクに受け付けやしない!!」

 

 今は偶々手元にあった閃光手榴弾を投げつけての目潰しで時間を稼ぎ。廊下を全力疾走していた所だった。

 

「だぁくそ、このリュック捨て…いやでもこの中には重要なもんが……クッソもう来るのかよ早いなぁ!?」

『グオオオオオォォ!!』

 

 アパートの扉は通れなかったのか、又もやダイナミックリフォームをかまして廊下に現れブラッドの方を視認するなり突撃してきた大男。

 

(絶対アンブレラの刺客じゃねえか!)

 

 愛銃の【サムライエッジ】をリロードし背後へ向けて適当に撃つ。相手の図体はでかい為全弾当たるが、相手が頑丈なのか纏っている服が特殊かはたまた両方か。応えているような様子は見受けられない。寧ろ挑発と受け取られたのか更にスピードを上げてくる始末である。

 

「チッ!」

 

 一先ず撃退は不可能だと判断し、腰のポーチから通常の手榴弾を取り出しピンの紐を口で引っ張り作動、背後へ向かってぶん投げる。

 

 ドゴォン!!

 

 爆発音が背後から聞こえたが、ブラッドは成果を確かめることもなく更に歩みを速める。

 

(あの【タイラント】はロケットランチャーを喰らってようやく死ぬような奴だった。それと同じサイズのあの大男がこれしきで死ぬわけがないっ!)

 

 ある意味ではB.O.Wへの()()とも言えるような知識を元に走り続ける。

 

 やがてアパートの端が見えてきたので扉を蹴飛ばし、そのまま身を投げ出した。

 

 数メートル以上ならただの自殺行為だが、そもそも彼の住んでるアパートは二階建てでありそこまでの高さはないので無事に着地した。

 

「あーもうホンット勘に頼って装備しといてよかったわ……!」

 

 彼の姿は【洋館事件】の時の身軽な格好からは打って変わりフル装備と言っても差し支えないもので、S.T.A.R.S.にのみ配布されるアミラド繊維で編まれた服上下に自前の防弾チョッキを着込み、肘と膝には彼の趣味であるパルクール用のプロテクターを身につけ、山岳用のブーツを改造し鉄板を仕込んだ改造靴。後ろに背負い込んだ軍用リュックサックには、この日のために溜め込んだ様々な物資が入っていた。

 

 そんなフルアーマーブラッドは辺りを見渡し、顔を顰める。

 

「起きるとは思っていたが、こうも早いとは…」

 

 火に包まれた建物に逃げ惑う人々。

 

 これだけでも大災害と形容してもいいが、今回はこれにもうひと要素プラスしなければならない。

 

「キャアアアア!!?」

「くそっ、なんなんだお前ら!」

 

 人々に噛みつく()()の存在である。皮膚は爛れ溶け落ち、目を白目を剥いている。そのくせ妙に力が強く、体は頑丈。そうつまりは………

 

 

 

「バイオハザードか……!」

 

 

 

 そう呟くと、彼は重い体を押して走り出す。目的は人命救助。先程目の前で悲鳴を上げた若いカップルの救護に向かった。

 

「こっちだゾンビ共!」

 

 そう大声で叫ぶと、音に反応したゾンビたちが此方を向く。カップルを襲っていたゾンビも同様だ。

 

 先ずはカップルの直ぐ近くにいたゾンビをショルダータックルで突き飛ばし強制的に距離を取らせ、ヘッドショットで仕留める。

 

「おいアンタら立てるか!?」

「は…はい!」

「大丈夫です!」

「いい返事だ!ここから歩いて暫くするとラクーン市警がある!そこまでなんとかして行け!」

「で、でも貴方は!」

「これでも特殊部隊員だ!」

 

 啖呵を切りリョックから【AA-12】を取り出し構える。しかもそれは先日購入した専用のドラムマガジンによって弾の容量が32発と化したものとなっていた。

 

ズガンッ ズガンッ ズガンッ ズガンッ

 

 きっちりゾンビ一人につき弾一発で殲滅したブラッドは、背後を振り向き誇示するように胸に刻まれた【S.T.A.R.S.】の紋章を見せ付けた。

 

「とまぁこんな感じだ。理解できたらさっさと行け!」

「「ありがとうございます!」」

「…あぁそれと!そこの彼氏!!」

「は、ハイ!!」

 

 そのまま見送ろうとしたが、先程のカップルの――特に彼氏の先程の行動を思い出し、呼び止めた。

 

「さっき彼女のこと庇ってたろ?ナイスガッツ!」

「へっ…見てたんですか!?」

 

 そう、ブラッドが声を張り上げゾンビの注意を此方に向ける直前。青年はせめて彼女だけでも守ろうと身を投げ出そうとしていたのだ。

 

 そんな勇者に向かってブラッドが差し出したのは…………

 

「お守り代わりだ!ナイフ一本持ってきな」

「へっ?えっえっ」

 

己が携帯していたコンバットナイフ()を渡した。青年が慌てながらもなんとか受け取ると、それを茫然と見つめ――

 

「――ゾンビたちにあったら、それで喉を切り裂いてやれ。それだけであいつらは死ぬ」

「えっ……」

「本当なら警察署まで護衛してやりたいんだが、それは出来ない。俺にはやるべきことがある」

 

 そう言うと、ブラッドは次の言葉に想いを載せるため一瞬のためを作ってから言い放った。

 

「だがら、彼女はお前が守るんだぞ?青年(ヒーロー)!」

「――ッ!ハイ!分かりました!!」

「ならば良し!そぅら行ってこい…地獄でタップダンスなんて中々できないぞ!!」

「ハイ!ありがとうございました!!」

 

 そう言うと青年は「行こう!」と彼女の手を取って走っていった。

 

「……さて、俺はジルさんを迎えに――ッ!」

 

 道案内と勇気付けを行ったブラッドは、携帯を手にジルに連絡を取ろうとしるが、その瞬間。彼のいたアパートから爆発が起こった。

 

 そしてそのアパートの屋上には大きな影が…

 

『スターズゥゥ……』

 

「アパートの落盤にも耐えるかよ…!」

 

 呻くように呟くが、油断なく【AA-12】を構えるが――

 

『…………………』

「…なに?」

 

 大男は此方を少し見やると、興味を失ったように視線を外し、大ジャンプして去っていった。

 

(なぜ急に見逃した…さっきまで俺の事をストーカーみたいに追いかけ回してたってのに…)

 

 急に追跡をやめたことに疑問を覚えるがそれは一先ずやめにしてジルへ連絡をとろうと携帯を取るが、画面を起動する直前にふと気付く。

 

(そういやあの方向ってジルさんのアパートが……まさか!?)

 

 脳裏で再生されるのは、あの大男が事あるごとにつぶやかれていた『スターズゥ』という単語。

 

 すたーず………

 

 スターズ………?

 

 S.T.A.R.S.……!?

 

(…気のせいだと思うが)

 

プルルルル……

 

『ブラッド?どうしたの』

「ジルさん。バイオハザードが発生した」

『なんですって!?』

「窓の外を見てください。懐かしい奴らが居るはずです」

『…こんなに嬉しくない再会は初めてだわ』

「同感です。あと真っ黒な大男がそっちに向かいました。さっさとアパートから離れる事をお勧めしときます」

『分かったわ。直ぐ準備する』

「いやー俺の時は大変でしたよ。なんたってアパートの壁ブチ抜いてくるんですもん。度胆を抜かれましたよ」

『嘘でしょ!?本当に?』

本当(マジ)です。【タイラント】以来の衝撃でした」

『…合流した方が良いみたいね』

「っすね。じゃあジルさんのアパートの下で合流しましょう」

『了解。下で合流ね』

 

 ブラッドは通話を終了させ、ショットガンを構え直しながら、小走りにその場を後にした。




【ブラッドのリュックサック】
・調合ハーブ(瓶詰め)×20
・救急スプレー×5
・■■■■■×5
・グレネード各種×10
・弾薬数十ダース
・スタンロッド
・テーザーガン
・大型ナイフ×4
・レーションやお菓子

《修正》
■■■■■の数を3→5に変更しました。


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-1998年(バイオ3)-002

いつもよりも短めです。


■月○日①

 

 あの後ジルさんのアパート前でボロボロになったジルさんと合流。再開と治療を済ませた後俺たちは一旦脱出するために軍やら警察やらが出している脱出用のヘリに乗るため、とある商業施設の立体駐車場を目指していた。

 

 道中には【洋館事件】とは比較にならない程の数の感染者達がいたが、元々の装備が潤っていたこともあってなんとか突破することが出来た。

 

 途中頑固なご老人がコンテナに引きこもるというので、せめてもの気遣いにと多少の食料を融通すると、自決用なのだといって【ベレッタM92F】をわたしてくれたのでお返しに手榴弾を渡した。 人間の頭蓋骨というのは意外と固いもので、下手に撃つとその固い頭蓋骨が弾を弾いてしまい上手く自殺出来ないのだ。その点手榴弾なら文字通り一発である。妙に引きつった顔をしているご老人から激励の言葉を貰った俺たちは現場を後にした。

 

 とりあえずベレッタはジルさんに渡して最低限の武装をさせた。というか何故装備をしていないのだろうか?ジルさん曰く『上を脅して自分の装備を家に置いてるアナタがおかしいのよ』と言われたが、そりゃあ命の危機が迫ってるのに自分が出来る最大限の対策を取るに決まっている。ハリネズミだってそうするし俺もそうする

 

 呆れ顔を此方に向けるジルさんの視線を躱しながら進んでいく。

 

 どうやらリッカーやハンターといった特殊なB.O.Wの類はおらず、今ここにいるのはゾンビだけだったのでヘリの着陸場所には比較的早めに着いた。

 

 立体駐車場のエレベーターが日本製のせいでゾンビの腕がちょっと触れただけで閉じかけていた扉が開いてゾンビが雪崩れ込ん来るというトラブルも有りながらも何とか屋上に辿り着いた。

 


 

「よし、着きましたね」

「何とかね。助かった……あ」

「――へ?」

 

 

ドゴーンッ!!!

 

 

 ホバリングしていたヘリが横手から飛んできた飛翔体によって爆発。姿勢を崩してそのまま墜落していった

 

「「――――」」

 

 飛翔体――恐らくロケット弾――が飛んできた方に目を向けると、先程まで此方を追っていた大男が何処から調達したのかテロ組織や戦争映画御用達の武器【RPG-7】を持っていた。

 

『…………』

 

 大男はゆっくりとした動作で、撃ち終わった【RPG-7】を捨てると、自身の得物なのか手から伸びた触手を伸ばしたり縮めたりするとシュルリと手に収納(?)して……

 

『スターーズゥゥゥゥ!!』

 

 耳が壊れるかと思うほどの雄叫びをあげた。

 

「ジルさんはなんか武器になるものがないか探して下さい!おれは足止めを!!」

「ッ!危険過ぎるでしょ!?私も――」

「ショットガンすら持ってない人間が出しゃ張らないでください!」

 

 そう言うとブラッドはこの間ケンドから買った【M4カービン】を構えながら大男はジリジリと近づいて行く。

 

スパパパパパパパッ!

 

 様子見の為に数発程撃つが特に効いた様子も無く、大股で此方に向かって近付いてくる。

 

(やつの攻撃手段は手足による近接攻撃に、あの意味ありげに出してた触手…アンブレラが作ったB.O.Wだと考えれば高濃度のt-ウィルスを持っている事も考え得る――()()()を考えても、ここでの感染は避けたいもんだな!)

 

 小刻みにセミオートで撃ちながら近付く大男を見据る。

 

『ウォォ!!』

「シッ!」

 

 右の振り下ろしをサイドステップで避け、膝に向かって集中攻撃を与えるが、そのほとんどが服によって弾かれる。

 

『グォォォォ!』

「あぁクソが!」

 

 ハエでも払うように薙がれる右手をバックステップで回避し再び射撃。今度は何処か脆い部分がないかと全体に広がるように撃つが、大男は有効打が与えられたような反応はせず。

 

「やっぱその服を何とかしなきゃダメか!?」

 

 悪態をつきながらもヤケクソになるとこはなく、冷静にリロードする。

 

『……グォォォォ!!!』

「…いいぜこいよ!愉快に踊ってやるさ!!」

 

 長身の部類に入るとはいえあくまで常識的な背丈のブラッドと、3メートルを超す大男の戦いはまるで大人と子供のようであったが、そこはブラッド持ち前の“勘”と戦闘経験でカバーしている。

 

 既に武器をアサルトライフルから近接向けかつ威力の高いショットガンに切り替え、隙を縫って攻撃を仕掛ける。

 

 大男も手足を振り回すだけではなく手から触手を伸ばしブラッドを串刺しにしようとしてくるが、直撃した一回目は側面だったため貫通はせず弾かれ、それ以降は片手に構え出したスタンロッドの電撃によるショックで強制的に触手を引っこめさせられた。

 

 だが、そんな完璧な戦闘を人間であるブラッドが永遠と続けられるはずもなく――

 

「チッ!流石にそろそろ……マズッ!?」

『スターズゥゥ!!』

 

 疲れを一瞬でも和らげる為に手榴弾で敵を怯ませようとするが件の手榴弾が触手によって弾かれ、遠くの方へ飛ばされ。続いて振り払われた左手に直撃。ストレートではなかったがその威力は絶大で軽く数メートル程吹き飛んでいった。

 

「ゴホッゲホゴホッ!〜〜ッ痛ってえ!!」

 

 思わず口から悪態をつきながらもポケットの中にある軽度の痛み止めのカプセルを飲み込み噛み砕く。苦味と共に体の痛みが少し引くのも感じながらも恨めしげに大男の方を見やる。

 

『…………!』

 

 大男はブラッドを吹き飛ばした手を不思議そうに見た後その手を握り締めた。

 

(…やっぱ一人での足止めは無理か)

 

 そう確信したブラッドは背後から聞こえる()()()()()に何処か安心感を覚えながらも、未だ余韻に浸っている(と思われる)大男は向けてシャッドガンを構え、発砲した。

 

『グウォォォ!!?』

「ッ!ハハッ!暴れん坊だな!」

 

 32連射というもはや使用用途の分からない機能をフルに発揮させる愛銃に顔を歪ませながらも片手で制し、大男は標準を向け続ける。

 

 全ては今置いてけぼりにされた車に(エンジン)を入れている信頼する味方のためである。

 

「――ジルさん!!」

「えぇ!待たせたわね!!!」

 

 次の瞬間車でこれまでの仕返しとばかりに大男へ向け車でダイナミック突撃をかますジルの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 そしてそのまま大男と共に立体駐車場から落ちてった。

 

「………………えっ」




最近ネタが出てこない…元ネタがあるからそのまま通りに書けばいいんだろうけど、それだと二次創作の意味ないし………


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-1998年(バイオ3)-003

クロスオーバータグ「ちょっと本気出す」

あ、あと今回試験的に脚注を付けてみました。


■月○日②

 

 あの後黒い大男と一緒に地面へ向かってランデブーして行ったジルさんを、俺は追おうとしたのだが、それは叶わなかった。

 

 勿論俺が自分可愛さに仲間を見捨てるクズ野郎だから…というわけではなく。ただ単にジルさんを迎えに行こうとしたところ()()がはいったからだ。俺がジルさんを追おうとした時に急に俺の周囲が明るくなった。

 

 上を見上げるとどうやら俺の事を上空のヘリがスポットライトで照らしているようだった。

 

 最初は追加の救護ヘリかと思ったのだがどうやら違うようで、俺に向かって棺桶のような、真っ黒い円柱型の物体を投下して来やがった。

 

 脇目を振らずに全力で跳んだのでペシャンコにならずに済んだが、もし回避できなかったらと思うと…ゾッとした。

 

 文句の一つでも言ってやろうと上空のヘリに目を向けたが、そのヘリに刻まれた()()を見た瞬間俺は凍り付いた。

 

 そのヘリのロゴはまるで傘を思い浮かべる八角形で、一つ一つの三角形には赤と白と交互にカラーリングされいた。

 

 そのロゴは『自分の傘下の物を守る』ようにも見え、また『後ろめたい事をその傘で隠している』ようにも見えた。つまりは……

 

 【アンブレラ】である。

 

 一般市民だったら救いの蜘蛛の糸とでと思ってヘリか投下された物体に縋るのかもしれないが、俺はそうはいかない。数日前のエンリコからの連絡を思い出しながらも俺はヘリに見えないようにしながらアサルトライフルをリロードした。

 

『どうやらアンブレラはS.T.A.R.S.の生き残り――つまりは私達を殺そうと躍起になっいるらしい。注意してくれ』

 

 あんな言葉を言われてアンブレラに対し無警戒で居られるほど能天気ではない。

 

 ヘリから重機関銃が飛び出て来ても不思議ではないので警戒していると、ふと隣の黒い物体から『プシュー』という空気が抜けるような音が発生した。

 

 隣を見ると黒い棺桶――というより()()の蓋が火薬でも使ったかのようにバンッ!という轟音と共に吹き飛ばされ、中から赤く大きな手がヌゥっと現れた。

 

 中から出て来たのは、先程まで戦っていた黒い大男に勝るとも劣らない体格をした。真紅のトレンチコートを着込んだ一角の()*1だった。

 

 そいつはヘリの方を見上げると何事かを察したかのように俺の方を向き、次いでを拳を天へ高々と振り上げ俺へと振り下ろした

 

 

 …何故だろう。最近よく『振り上げ』と『振り下ろす』という単語をよく見かける気がする。

 

 

 そんなアホな事が脳裏を過ぎったが、目の前に迫る高速の拳をなんとか避け距離を取る。因みに奴が拳を振り抜いた地面には深いクレーターが出来ていた。んな強力な打撃を成したにも関わらず二撃三撃と繰り出される連打を軽いフェイントを織り交ぜながら躱していく。

 

 あの鬼のような奴から繰り出される攻撃は苛烈かつ強烈だが、動き自体は素人のそれだった。路地裏のチンピラにも劣るような『駆け引き』の引き出しの少なさは、確実に俺と奴との間にある(アドバンテージ)だ。

 

 これなら大男によって付けられた傷を加味しても逃走は可能だと判断した俺は腰の閃光手榴弾をぶん投げ鬼奴と未だ上空でホバリングしていたヘリの目をつぶし、その間に立体駐車場から数メートルしか違わず、さらには高さも大して変わらないショッピングモールの屋上に飛び乗りそのまま逃げ去った。

 

 …先ずは大男にやられた傷の手当てをしなきゃいけない。何処かに落ち着いて傷の修復ができる場所はないだろうか?

 


 

「…特殊な奴が居ないのはプラスだが、数が居るのも考えものだな」

 

 そういうブラッドの足元には、通常のゾンビ の死体が山の様に積み重なっていた。

 

 こうなった経緯は至極単純。街中にいた負傷した人々の治療を行なっていると血につられたゾンビ たちが殺到ブラッドは『ここは俺に任せて先に行け』といいフラグを回収する事なく殲滅。狭い路地裏なら兎も角広い一本道であった為特に苦戦する事なく周囲のゾンビ を一掃した。

 

(こんな事なら銃器とかよりもスプレーとチャッカマンで即席の火炎放射器でも作った方がよかったかもな……)

 

 そう思いつつも歩を進める。現時点のブラッドの目的は大男にやられた傷の手当てである。怪我自体は皮膚が青くなっておる程度で、ペースト状に擦ったグリーンハーブを患部に塗りつける*2だけで済む様な傷なのだが、ここでブラッドの重武装が尾を引いてしまう。

 

 一人での着脱が可能な程度の装備ではあるが着るにも脱ぐにも一定の手間と時間が必要であるため、ゾンビの蔓延る大通りや街中では回復のために患部である地肌を晒すことが出来ないのだ。

 

 なのでせめて屋内でできないかと建物を探すのだが―――

 

(ダメだな。大体の建物がゾンビが多いし何より()()()()()()()()。これじゃあセキュリティも何もないし、客を招き放題だ)

 

 ホームパーティーのような状況になっている店やレストランを見ながらため息をついていると、ふと視界の端に巨大な十字架が見えた。

 

「教会か…よし!行ってみるか」

 

 少ししょぼくれそうになっていた己を鼓舞するように大声を張り上げ、教会へその足を向けた。

 

武装員移動中…

 

 無事教会前へ辿り着いたブラッドは、少し緊張した雰囲気で教会のドアを叩いた。因みにブラッドは特定の宗教には属していない無教徒タイプである。

 

「誰かいるかー?」

 

 ギィィ…という老朽化ぎ目立つ音をたてるドアを開き、中へ入る。先ずブラッドの目に入ったのは……

 

「フム。こんな時にここに来るとは珍しいな」

 

 聖職者特有の白くヒラヒラとした服を着た老神父のゾンビの死体と…

 

「待て。あんたリッカー倒したのか?」

 

 ブラッド自身も遭遇し、初戦時には死すら覚悟したB.O.W【リッカー】の()()と…

 

「これはリッカーというのかね?成る程、確かに長い舌だったな」

 

 血がついている両手を手拭きで拭いていた黒い服をきた日系の顔立ちをした神父だった。

 


 

「えーっと…俺の名前はブラッド。一応このラグーシティの警察機関の特殊部隊S.T.A.R.S.に所属している。――今は謹慎中だけど」

「これはこれは、丁寧に……私の名前は。まぁ【コトミネ】と呼んでもらいたい」

「分かった。コトミネ神父…でいいのか?」

「あぁそれで構わない」

 

 ブラッドと謎の若神父『コトミネ』は向かい合って自己紹介をしていた。因みにブラッドの傷はコトミネの快い快諾によって得られたスペースでの治療により完治済みである。

 

 如何にも『怪しい』という概念が服を纏って歩いているようなコトミネだが、ブラッドは一応一定の信を置いていた。理由は二人が出会った直後の一幕である。

 

『済まないが、飲料水か何かを持っていないか?』

『喉が乾いてるのか?まぁあるからどうぞ――』

『あぁいや、私が飲むわけではないのだ』

『え?じゃあなんで――』

『ここにいる神父様の遺体を、清める為だ』

『………………………』

『阿呆な願いだとは自覚している。だが、どうか頼む』

『…どうぞ。まぁここに不衛生なソレは似合わないだろうからな』

『感謝する』

 

 そういいブラッドが差し出したペットボトルの水で神父の遺体を清めるコトミネの姿は、服装や態度、腐った目である事を除いても立派な【聖職者】のソレだった。

 

(少なくとも悪い奴では無い…と信じたい)

 

 そう思いつつもコトミネを見ながらもブラッドは内心彼に対し確かな恐怖心を抱いていた。

 

 少なくとも彼の知っている中であのリッカーを素手で撃破できる人物は初めてで*3、はっきり言って【未知との遭遇】を思い浮かべていた。

 

「フム…どうやら警戒されているようだな」

「まぁそりゃあな…リッカーって素手で倒せるような相手じゃ無いような気がするんだが」

「…私は東洋の八極拳を習っていてな。肉弾戦には多少自信があるのだよ」

「そのハッキョクケンって凄いんだな。街から脱出したら習ってみるか……?」

「私のようにはなれないと思うぞ?」

「……そうかい」

 

 可もなく不可もない会話を続けること数分後、二人は自然と別れることとなった。

 

 ブラッドは勿論街からの脱出と自負との合流。コトミネ自身も独自の目的があるようで、ブラッドからの同行の提案を丁重に断っていた。

 

 まずは面の路地までは一緒に行くことになった二人は、肩を並べて歩いていた。

 

 ガチガチに武装したブラッドと、引き締まった肉体をしているとはいえ聖職者の格好をしたコトミネがともに歩いている様子はひどく(シュール)だった。

 

 そのまま歩き続け表に出た二人は自然とそのまま別れる流れとなったが……

 

「…む?」

「どうしたんだ?忘れ物でも?」

「…イヤ。向こうから何かが走ってきているようだぞ?此方――というより、()()へ向けて走ってきているようだ」

「――まさか……コトミネ離れろ!」

 

 ブラッドはコトミネを庇うように前へ飛び出しリロードを済ませた【Steyr SSG 69】を構える。

 

 すると遠くの方からではあるが、軽い地響きが鳴り響いていた。イヤな予感が現実味を帯びてきて軽く青ざめたブラッドは腰から単眼鏡を取り出し、地響きと砂煙を起こしている張本人を見遣った。

 

「…しっつこいなぁ!」

 

 それが(タイラントC)だと認識すると、立て続けにライフルで鬼へ向けて集中砲火を浴びせた。

 

 大抵の弾丸が鬼のトレンチコートや顔面に着弾するが、大したダメージでもないと言うように加速し始めた。

 

「いい加減…くたばれよ!」

 

 直接叩き込んでも効果がないと判断し、ブラッドは鬼の周囲の廃車…特にガソリンが漏れている車へ向かって集中的に発砲した。

 

ドガンッッッ!!!

 

 結果大爆発。赤だか黒だかオレンジだか分からない爆炎が上がり、ブラッドの視界を極彩色に染め上げた。

 

「――()()()()!?」

 

 

 

 

オイやめろ

 

 

 

 

「………ガァァ!!!?」

 

 爆炎から飛び出してきた鬼によって、ブラッドは思いっきり吹き飛ばされた。

 

 近くにあった車に叩きつけられ、思わず肺の中の空気全てを吐き切った。

 

「…グフッ……ハハッ!」

 

 砂埃が晴れた先にいたのは、鬼が両足と片手で華麗な三点着地をしている光景だった。

 

「…Whoo! Superhero landing! You know, that's really hard on your knees.*4

 

 思わず最近見た映画のセリフを吐きながらも、彼の体はなかなかにボロボロだった。

 

(これ下手すると骨にヒビ入ってるかもな…)

 

 そう思いながらも、ブラッドは手元に転がっていた【サムライエッジ】を持ち、鬼へ向け発砲した。

 

『………………』

 

 此方に気付いた鬼がゆっくりとした足取りで此方へ向かって来る。

 

(…来いよ。射程範囲に来た瞬間ドガンだ!)

 

 ブラッドはいたずらに発砲したわけではない。

 

 己のリュックサックに詰め込まれた大量の手榴弾で、自分諸共鬼を消し飛ばそうと画策した。

 

(…ジルさんには悪いことしたなぁ)

 

 彼に満ちるのは揺るぎない決意と、ほんのちょっぴりの後悔だった。

 

 そんな事を思いつつも、彼が射程範囲に収まりに来た鬼を見つめ手榴弾を起爆させようとピンを引っ張り――

 


 

「おっと。流石に神父の目の前で死ぬのは感心できないな」

「……………なっ」

 

――きる前に、その手はコトミネによって止められた。

 

「なっ、ななっ……」

「おや、随分と面白い顔じゃないか…愉悦

「あんたまだ逃げてなかったのか!?」

「当然だ。迷える仔羊が目の前にいるのに導く神父が逃げるとでも?」

「フツー逃げるわ!つーかあんたにはあの化け物が見えてないのかっ!?」

「ん?いやいや見えてるとも、あそこにいる大男だろう?何とも恐ろしい事だ」

「だったら逃げろ!」

「なぜだ?」

「…ッ!俺は警官だ!市民を守るのが仕事なんだぞ!!」

「……『私は神父だ。一人間であるキミは見捨てない』」

「あーもうっ!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……ほう?」

 

 最後のブラッドの台詞に、少し面白そうに口を歪めたコトミネは、ゆったりとした動作で鬼に対して向き直った。

 

「それでは。私があの化け物と対等だったらいいのだね?」

「――そうだな!その通りさ!!できたらの話でな!!!」

「フム」

 

 そう言うとコトミネは、徐に地面に足を振り下ろし――

 

ズシン

 

 地面を揺らし――

 

「フゥ………」

 

 息を吐き――――

 

「フンッ!」

 

 鬼を、化け物を5()()()()()()吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

「へっ……….?」

 

 理解が追い付かないとばかりに目を白黒させるブラッドに対し、コトミネは手を差し伸ばし。立ち上げらせた。

 

「そう言えば、フルネームは伝えていなかったな」

 

 そう言うとこれ見よがしに十字架を持ち、名乗った。

 

「私の名は言峰綺礼。*5宜しく頼むぞ」

*1
タイラントC。OB(アウトブレイク)2の裏ボス的存在。本来は両腕が大きな鉤爪になっているが作者の手でオミットされた

*2
ファンの間では『食って回復しているのでは』と言われているが真偽は不明。因みの救急スプレーは全身に吹き掛けるタイプ

*3
ちなみに約十年後程度にはほぼ全ての登場人物が出来るようになる

*4
スーパーヒーロー着地!膝に悪い。

*5

出典は【Fate stay/night】から。時速50キロで走り剣を銃弾並みの速度で投げ付け拳で成人男性を吹き飛ばしクレーターを作り、とある分野の師匠を後ろから突き刺した我らが愉悦部副部長




因みにこの神父さんはSN時空ではなくどちらかというとCCC的な神父です。


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-1998年(バイオ3)-004

短めです。後懲りたのでこれからしばらくクロスオーバーはしません


「…君も立ち上がってはどうだ?“一般市民”が“化け物”に応戦しているこの状況。“警察官”は見逃すのかね?」

「んな“無辜の一般市民”がいてたまるか…」

 

 言峰が差し出した手を握り、いまだに困惑気味の声を出しながらも立ち上がった。

 

「あーっと…取り敢えず一緒に戦ってくれるって事でいいのか?」

「その認識で構わない。それに…あの化け物を打倒することは、私の“目的”とも一致する」

「因みにその“目的”を聞いても?」

「“守秘義務”があるのでな。黙秘権を行使しよう」

「…まぁ追求はしないでおくさ。命の恩人だしな」

 

 鬼*1は受けた傷以上に『自らが吹き飛ばされた』事に衝撃を受けたのか、しばし放心していた。

 

「さっきぐらいの攻撃ってあとどのくらい出来る?」

「フム?アレが私の“通常攻撃”だが?」

「――前衛を頼む。アイツの攻撃を引き付けてくれ、俺は後ろから援護射撃する」

「了承した。精精拳で語り合うとしよう」

 

 そう言った言峰は人間とは思えない程のスピードで鬼へ向けて直進して行った。先程の殴打と合わせて信じられない光景に目眩を起こしそうになるブラッドだが……

 

「…成る程、あれがジャパニーズニンジャってやつか」

 

 そう思う事で自信を無理矢理納得させた。

 

「っとと、こうしてぼうっとしてちゃいけないな」

 

 援護射撃すると言った手前しないわけにもいかなくなったブラッドは、近くに転がっていた【Steyr SSG 69】を回収。無理して保持し続けず直ぐに手放したことが功を奏したのか、部品や機構に故障は見受けられなかった。

 

「よし。それじゃあ援護を……って言ってもなぁ」

 

 先程の戦闘から分かる通り、彼が使う狙撃銃【Steyr SSG 69】の弾丸【7.62mm×51 NATO弾】では効果が薄い事が先程証明されてしまった、

 

(…どうしたもんか)

 

 服の縫い目や、顔面でも目や口といった急所中の急所を狙えば違うのかもしれないが、棒立ちなら兎も角。今鬼は言峰と戦闘中で、大きく体を動かしている最中だった。

 

 少なくとも彼に近接戦闘中の大男をヘッドショットできるほどの腕前はない。

 

「まぁ背後とか側面に回って射撃すればいいだろ」

 

 先程花壇から毟ってきたハーブを気付けの酒がわりに噛み締める。生薬特有の強烈な苦さと青臭さに顔を顰めるがお陰でブラッド確実に目を覚ます事が出来た。

 

(…よし。行くか!)

 

 狙撃銃を背後へ格納し、代わりにアサルトライフル【M4カービン】を取り出し言峰の方へと駆け出した。

 


 

■月○日③

 

 そうゆう訳で、俺は気合を入れ直して戦闘現場へと向かった……そう、向かったのだ。

 

 あの時の俺は間違いなく気合に満ち溢れていた。

 

 明確な目標も、それを実行する為の決意にだって満ち満ち溢れていた。

 

 そう、そうなのだ。そうなんだが…………

 

 

 戦いの規模がデカ過ぎて中々介入出来なかった。

 

 いや拳の激突でさも当たり前のように大地を砕かないでほしい。初めて見たぞ激突の衝撃で広がる衝撃波とか

 

 なんかもう常識とかそうゆうのが音をたてて崩れ去っているような気がする。あと口調が変になってる。具体的に言うとキャラ崩壊してるわオレ

 

 それでもなんとか援護しようと、彼らが戦っている真正面を避けて前術の通り背後や側面からの攻撃を敢行したが、やはりと言うかなんと言うか、あの鬼相手には豆鉄砲ぐらいしか効果がない。

 

 手榴弾の類なら怯ませることをできるかもしれないが、それは今も拳を振い続けている言峰ごと吹き飛ばす事になりかねないので出来なかった。

 

 仕方ないので、首筋などの神経が集中していそうで尚且つ“当たったら『煩わしい』と思わせられる”箇所へ向けて発砲し、ふと此方にヘイトが向いたら煙幕手榴弾や閃光手榴弾で見失わせるという。言峰へ向かうヘイトを多少分散させる程度のことしかできなかったのは『できらぁ!』とばかりに啖呵きった身としてはこのザマなので大変誠に遺憾だった。チクショウ

 

 俺が言峰と鬼の戦闘…というか闘争を見ていると、言峰の強烈な蹴りが鬼の頸椎を捉え行動を止めた。

 

『…ほう。私の蹴りをもってしても、事切れぬか』

『――フム』

 

 少し考え込むような顔をした言峰は、俺に向かってこう言った。

 

『少し下がっていてくれ。そこだと()()()()()?』

 

 そう、本気(マジ)の目で言われては従うしかなく。俺は片手に【INA-DUMA】を構え弄びつつ言峰から距離をとった。

 

『感謝する』

 

 そう言うと、言峰は深く息を吸い込み始めた。

 

 これだけだと先程の拳打と同じ予備動作に見えるかもしれないが、今回のは違った。

 

 なんというかこう、()()()()

 

 先程の拳打の呼吸を普通の…普段から意識せずにやっている呼吸と考えると、言峰が今やっているのは深い深いため息の様な長さだった。

 

 あとなんか言峰の付近の空気が曲がっている。

 

 怪力(スーパーパワー)衝撃波(ソニックムーブ)の次は闘気(オーラ)だろうか?もう何が来ても驚かない自信がある。

 

『…本来は私の技ではないのだがね。まぁ“同門”ではあるのだ。許してくれるだろう』

 

 息を吸い、そして吐き切った言峰はこれまた目にも止まらぬ速さで一気に鬼へ近づくと、思い切り地面を踏みしめる。

 

『…“我が拳は无二打(にのうちいらず)!”』

 

 そう…『これで終わりだ』という宣言をした言峰は、爛々と目を光らせその一撃を放つ

 

『“七孔噴血”撒き死ぬといい』

 

ズ……ドンッ!!

 

 軽い一言から放たれた一撃は、確実に鬼の心臓を仕留めたらしく。鬼はゆっくりと地に沈んでいった

 

 てっきりこの後スーパー化*2するかと思ったが、そのままピクリとも動くこともなかった。言峰曰く『心臓とかそこら辺の臓器機能を完全に停止させたから』と言っていた。なんかもう慣れた。

 


 

成る程、どうやら完全に生物学や科学のみで出来たもののようだな…ところで、君はこれの正体を知っているのかね?」

「知ってるっつーか…知りたいか?」

「あぁ、私の目的にも。これも知識は必要でね」

「いや、でもなぁ…」

「では、君の命を助けた対価としてならどうだ?」

「……それ言われちゃ言わざるをえないな」

「フッフッフ…」

「なんの笑い声だよ…ソイツは恐らく、アンブレラの最高最悪の別名“究極のデキソコナイ”【タイラント】のバリエーションだ。」

「成る程。できればどの様な手順で開発されたのか聞いても?」

「――アンブレラが開発した人を怪物に変えるt-ウィルス*3を感染させる事によって作る。俺はそれしか知らない」

「そうか…それでは最後に」

「なんだ?」

「“オド”や“マナ”、それに“魔術”という単語に聞き覚えは?」

「…?ないな。オカルトの話か?」

「――いや、知らないなら結構。助かったよ」

 

 そう言うと言峰は踵を返し、そのまま歩いて行った。

 

「…なぁ言峰!」

「…なんだね?」

 

 相変わらず胡散臭げな笑みを浮かべる言峰に向かってブラッドは声をかけた

 

「そんなに強いんだった…無理にしろとは言わないから。せめて目についたやつは助けてやってくへないか?」助けてやってくれないか

「!――フフッ……無論だ。私は神父だからな」

 

 そう言うと、言峰はその場で高く跳躍し、夜中の街へと消えて行った。

 

「…一体なんだったんだか」

 

 夢か現かの境界すら無くなりそうな非現実的な戦いに、ブラッドは軽く目眩を覚えつつもその場を後に――

 

「あ、一応木っ端微塵に吹き飛ばしとくか」

 

 ――する前に、アンブレラに再利用されないように鬼の残骸を爆破解体するためプラスチック爆弾を仕掛け。近くの車から回収したガソリンをたっぷりと振り掛け後に天高く手榴弾を上空にぶん投げ、ブラッドもその場を後にした。

 

 

ドゴーンッ!!!

 

「「フム、派手に過ぎたか*4」」

*1
タイラントC

*2
タイラント各種に共通(例外有り)に取り付けられているリミッターが外れる事。エヴァ風に言うと『暴走』的なアレ

*3
感染した人物や生物の新陳代謝を上昇させる代わりに脳機能を破壊し生物の原始的な行動。即ち食事しか考えさせなくするウィルス(諸説あり)

*4
とある無双ゲームのアサシン系サーヴァントが自分の一撃を見て言った台詞。因みに背後では大爆発が起きている




これにて外道神父とはお別れです……え、中途半端だって?そりゃこのまま言峰同行させたら原作まんま描くより大味に…あぁヤメて!石とトマト投げないで!トマト祭の季節はまだだしジョークも言ってない!!

…と言うのはさておきこれからは原作モードです。
クロスオーバータグ「オヤスミー」


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-1998年(バイオ3)-005

少し原作改変です。


「ようやくたどり着いたな」

 

 ブラッドは道中ゾンビに襲われつつも、つい先ほどラクーン市警*1に到着していた。来た目的はただ単に『職場だから』である。

 

「にしても――」

 

 彼が見上げたラクーン市警は、明かりすら疎らな薄気味悪い廃墟――ではなく。流石に平時と比べるまでもなく活気はないが、それでも人の営みが感じられる程度の活気はあった。

 

「予想ではもうゾンビが蔓延る幽霊美術館にリフォームされてると思ってたんだけど…みんな頑張ったんだな」

 

 そう溢しながらも、自らの案や忠告が無駄にならなかったことに少し安堵し、ラクーン市警の扉を開ける。普段は開けっぱなしにされている思い木製の扉をギィィと年季の入った音と共に開いた。

 

 

 

 

 瞬間、いくつもの拳銃が彼に向けられた。

 

 

 

 

「待て待て人間…と言うか俺だ。ブラッドだ」

 

 可及的速やかに手を上げ声を上げ、自らは人間であるとアピールする。

 

「なんだブラッドか」

「てっきり遂に扉を開けるゾンビでも出て来たのかと思ったぜ」

「そもそもアイツら扉蹴破ってくるだろ」

「違いねぇ」

 

 拳銃を向けていた五人の警官が、思い思いのことを言いながらも銃を下ろしそれぞれの持ち場へと戻って行った。ブラッドはそれを見て『詫びは無しかよ』と愚痴を言いながらもエントランス内へと入っていった。

 

「やぁマービンさん。楽しんでる?」

「…そんな訳ないだろ。人生最低の夜だ」

 

 広げられたパソコンの監視カメラの映像を睨んでいたマービンへ声をかける。黒い肌の上からも分かるハッキリとした隈は、彼が今まで過剰労働(オーバーワーク)に身を置いていたことを察せらせる。

 

「……すまなかった。お前達のこと、もっと信じてやれていれば…!」

「まぁ気にしない方がいいですよ。昔よりも今に目を向けましょう」

「それも…そうだな。よし、今の状態を伝えよう」

 

 ブラッドからの慰めによって少し調子を取り戻したマービンは、ブラッドに対して今現在の状況を説明した。

 

「今回の騒動が起きた時俺たち警察官は、まず民間人の保護を行った」

 

 そこは街で大規模なテロなどが起きた際の対策マニュアルにも書かれているので、ブラッドも知っていた。

 

「問題は、その受け入れた民間人の中に奴らに()()()()人がいてな。幸い犠牲者を出すことなく撃退できたんだが、その後は大パニックになった」

 

 ただただ悲鳴を上げる者。親密な者と身を寄せ合って震える者。疑心暗鬼になって周りに罵声を浴びせる者。中には『傷が付いている奴は全員追い出せ』という過激なことを言い出す輩もいたらしい。

 

 無論市民を守る事と犯罪者を捕らえる事に心血を注ぐ警察官がそんな世迷言を受け入れることはせず、寧ろ【名誉毀損(でっち上げ)】罪で留置所に叩き込んだらしい。

 

「その後州軍の増援が来てな。州軍のトラックや軍用車、それと俺たち市警が保有している護送車や、志願者から提供された一般車による一大避難作戦を開始した」

「幸い、武器は揃ってたのでな。何とかゾンビの大群を食い止めて、無事送り出した…という訳だ」

 

 作戦は無事遂行。なんとか数百人に及ぶ市民の避難に成功した。その時()()()マービンを筆頭とする警察官は諸手を挙げて喜んだという。

 

「…なんで残ったんだ?」

「まだ残ってる市民がいるかもしれないからな。それの受け入れと――まぁ有体にいうと囮りの役割を承ったんだ」

 

 そうどこか誇らしげにも言ったマービンは、ブラッドを見てクシャッと笑った。

 

「ある意味ではお前のおかげだ。お前の署名によって集まった武器と、お前の警告のお陰で俺たちは迅速な判断と行動が出来た。武器なんて余ったくらいだぞ」

 

 そう言い気丈に笑って見せるマービンを、ブラッドは無言で見つめる。マービンの瞳の中に明らかな疲労の色を垣間見たブラッドは、内心憂鬱な気持ちになりながらも声をかけた

 

「…無理はするなよ。アンタ結構歳だし、何より今の警察官達の精神的支柱はアンタ自身なんだからな」

「分かっているさ。それよりも、ジルはどうした…一緒に行動してたんじゃないのか?」

「実はここに来る途中で逸れちまってな。何か、手掛かりはないかとここに来たんだけど……」

 

 チラリとホール全体を舐め回す様に見回したブラッドだが、ジル本人どころがその姿形すらも見当たらなかった。

 

「…残念だが、こっちにジルに関する情報は来てないな。スマン」

「いや、俺も半ば当てずっぽうで来たからな。大丈夫…また地道に探すだけだ」

 

 目的のものがなかったため、ブラッドは一旦警察署から出ていくことにした。ここにいすぎると先程の黒コート大男*2や真紅の鬼*3といったアンブレラの刺客達の襲撃に、ここにいるマービンを初めとした警官達を巻き込みかねないのだ。

 

「じゃあ俺はこれで。頑張れよマービン、みんな」

「…行くのか?」

「あぁ。ここに居ても情報はあんまなさそうだからな、無駄に蹈鞴踏むのは嫌な性分なんだ」

 

 そう言い立ち上がったブラッドは、椅子に座り多少かたくかなった体を思いっきり伸ばした。ポキポキと歯切りのいい音を響かせながら、彼は背中の背嚢からショットガンを取り出し構えだす。

 

 

 

「…こうして会ったのも何かの縁だし、一応。渡しとくか」

 

 

 

 1番近くにいたマービンにも聴こえるか聴こえないかのギリギリの声量でそう呟くと、ズボンのポケットから数個の薬剤と、無針注射器を取り出しマービンへ手渡した

 

「ん?これはなんだ」

「…まぁ治療薬みたいなもんさ。怪我負ったりした時は活用してくれ」

 

 歯切れが悪そうにそう言い押し付けた薬剤箱には【黒く塗りつぶされたアンブレラ社のロゴ】が刻まれていた。それを見たマービンは、そのロゴに対する思いをほんの微かに読み取り思わずといった風に聞いた

 

「……これは“皮肉”なのか?」

「まぁな。まぁこの救急箱、サイズと携行性共に優れてるから使ってるだけで、特に思い入れもないやつだし」

 

 肩を竦めそう言ったブラッドは今度こそラクーン市警を後にした。

*1
美術館を改装して出来たため、見てくれはいいが内部構造はとても複雑

*2
ネメシス

*3
タイラントC




因みに時系列的にはちゃんと原作通りです。マービンが言っていた『脱出作戦』はアウトブレイクの警察署シナリオ【死守-desperate times-】の事です。


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-1998年(バイオ3)-006

お、お久しぶりです…くっそ久々の投稿です。

あと最近後学の為にバイオ二次創作小説を読んでいたのですが、オリ主やオリキャラの《AA-12》の使用率結構高いですね。まぁ32連射のショットガンとか明らかに化け物向けの威力と装弾数ですしね


■月○日④

 

 ラクーン市警を後にした俺は、ジルとの合流を目標にしつつ悪夢と化したラクーンシティ内を散策していた。

 

 ゾンビがいれば狩り。

 

 生存者がいれば手を差し伸べ。

 

 無法者と化した暴徒をとっちめた。

 

 そんな事をしていて思ったことが一つあった。

 

 

 

 

 ……生き残り多くね?

 

 

 

 

 いや別に人の死を願っているわけではない。勿論生存者が多いというのは喜ばしいことだ。生存バンザイ!

 だがそれはそれとして、やたら生存者が多いのだ。俺は今頭の中の地図を頼りに地区から地区を練り歩いているのだが、三分に一回ぐらいの頻度で生存者と遭遇している。

 無論窮地や危機に瀕している奴らは積極的に助け、渡しても問題のない範囲の物資を分け与えていたのだが、いい加減物……特に弾薬が足りなくなっていた。

 

 というかなんでどいつもこいつも俺の使っている銃と同じ規格の銃使っているんだよ!!

 

 

 

 …ン゛ン゛ッ!!スマン話が脱線した。

 

 

 

 そうゆう訳で、俺は弾薬の補給の為『ケンド鉄砲店』に向かう事にした。…というかアイツ根は優しい奴だから武器を求めて来た客に『全品100%オフだ!好きに持ってきやがれ!』とか言ってそうで怖いんだが。

 


 

「お邪魔しまーす……ってうわ荒れ放題だなコリャ」

 

 最早明かりすらつかなくなった寂れたガンショップ【ケンド鉄砲店】に辿り着いたブラッドは、まず店の惨状を見て思わずといった風に声を上げた。

 

 普段は数多くの弾丸ケースが並ぶ商品棚はその多くが空、若しくは空き箱が並ぶ散々な状態となっていた。

 実銃が並び立てされていた壁からは嘗てここに銃が置いてあることを示す値札が所在なさげにヒラヒラと風に浮かされている。

 何より驚いたのは――

 

「……マジか、バリーの“アレ”。売り払ったのか」

 

 威力を重視するマグナムの狂信者バリー・バートンが『象をも仕留められる威力を』と無茶振りし、つい去年完成したもののその規格外の値段によってバリーの気概を挫き、金が揃うまで見せ物として陳列されていた極悪銃【キラー7】*1が、その勇姿を影形もなく失っていた事である。

 

 ブラッド自身も金に余裕ができたらバリーより先に買ってやろうと企んでいたので、それが達成できなかったことに少々残念な気持ちを覚えたが、内心とは裏腹に、その口を三日月型に歪めていた。

 

(アイツらしいな。予約されてた品を本人の了承なく売っ払うなんて商人失格だろうに)

 

 そう呆れつつも感心すると言う奇妙な感情を追い出し、引き締め直した顔を撫でながらブラッドは店内を歩き始める。

 

 築数十年を経て()()が来ているのか一歩進める度にギシギシ音が鳴る廊下を進む。デパートや大手企業の直営店の様に広くはない個人経営店の狭い空間はあっという間に“既知”に塗り潰され、ブラッドはあっという間にカウンターへと着いてしまった。

 

 店を一回りして店主のケンドや他の人間が見当たらなかったため何か伝言や、せめてどこへ行ったのか分かる様な物は無いかとカウンターの奥へと進んだ途端………店の奥の曲がり角から、敵意を感じた。

 

「ふぅ…………!!」

 

 一息付き心を落ち着かせ、曲がり角へと身を躍らせる。ライフルはしっかりと眼前に構え、腰のナイフの位置を意識しつつもブラッドは自身へ敵意を向けて来た奴に向かって銃口を――

 

 

 

 

 

 

「ってなんだケンドか」

「なんだとはなんだこの野郎」

 

 決して高いとはいえない身長に、日系人としての血を窺わせる少々平たい顔。

 中年特有のビール腹をカーキ色のジャケットで押さえ込み、淀みない動作で此方にショットガンを構えるその姿は正しくこの鉄砲店のオーナー《ロバート・ケンド》だった。

 

「逃げてなかったのかよ。警察署が避難場所になってたのは知ってるだろ?」

「バカ、銃求めてる客がいるんだ。そいつら置いて店を畳むなんざガンスミス失格だぜ」

 

 互いに銃口を下ろし合い軽口を叩く。そんな気軽なやり取りは彼らについ数日前まで流れていた日常を思い出させた。

 

「…これで分かったろ?嘘じゃないってさ」

「まぁなあ…こんな状況じゃイヤでも信じるしかねぇな。悪かった」

 

 複雑げな様子で酒場で話した事が嘘ではないことをブラッドが指摘するとハハッと力無く笑いながらも此方に軽く頭を下げるロバート。

 

「正直。謝られてもな…こんな事実現しない方がよかったよ」

 

 吐き捨てる様に視線を虚空に向けたブラッドに乾いた苦笑いを溢しながらも、ロバートは優しくブラッドの肩を叩く。

 

「なっちまったモンはしょうがねぇさ。それよりも大事なのは“今をどうするか”…だろ?」

「…そうだな。――ッヨシ!もう一つや二つ、次いでに三つぐらい頑張りますかね!」

「おいおい…過労死とかするなよ?」

 

 多少下向きとなっていたブラッドの心持ちがケンドの発破によって回復し、急に元気とやる気を取り戻した友人にケンドは思わず苦言を呈した。

 馬鹿馬鹿しく、なんの生産性もない無駄な会話だが、それでも“非日常”の只中にある中でこのような“日常の様な”会話は彼らの心身ともに癒していった。

 

「まぁそれはそれとして……嫁さんと娘さんはどうした?」

「…アイツは今、タイミングよく実家に顔を出しててな。ここにはいないぞ」

「ふーん…エマちゃんはどうした?」

 

 ブラッドにそう聞かれると、一瞬背後の倉庫を見遣ると再び彼の方へ向き直る。

 

「そ、それより弾の補充だろう?ちょうどお前が使ってる規格の弾丸が数ダース分ある。今から穴蔵決め込む俺が使うより、お前に使ってもらったほうが弾も浮かばれるってもんだ。好きに持ってってくれ」

「お、おう……どうしたんだ?なんか様子が変だぞ?」

「大丈夫だ。大丈夫に決まってるだろう?」

 

 一気に言い切るケンドの様子に違和感を覚えるが、それを尋ねる前に本人は弾を取りに店の裏側へと引っ込んでってしまった。

 

(パニックによる錯乱かなんかか…?)

 

 予測する判断材料が無くなっては心理学に明るくないブラッドは素人目による診療するぐらいしか出来なかった。

 

(…嫌な予感がする)

 

 しかし《洋館事件》辺り異常なほどの的中率を誇るブラッドの“勘”は、ケンドの挙動不審な行動と言動から「なんかあるわコレ」と嗅ぎ分ける。

 

(来たら問い詰めるか)

 

 そう静かに決意し店の裏から弾をどっさりと持って此方に歩み寄ってくるケンドを見遣った。

 


 

■月○日⑤

 

 あのあと問い詰めた俺に対し何度も何度も――それこそ狂気じみた物すら感じさせる程に「大丈夫なんだ。何でもないんだ」と続けるケンドから、俺は半ば無理矢理吐かせる様に事情を話させることに成功した。

 

 

 

 

 …その話を聞いた俺は、その時ほど自分自身の()()()()を祝ったことはなかった。

 

 話の内容は、今現在のこのラクーンシティではありふれた様な話。つまりは自身の血縁者若しくは自分自身がゾンビ化ウィルス《t-ウィルス》に感染したというものだ。ケンドの場合のソレは自分の娘、「エマ・ケンド」が感染したというものだった。

 バレたことで観念したケンドが裏手の倉庫にいたエマちゃんと出会わせてくれた…軽くみてみたところ感染から数時間、意思疎通も可能だったが意識の混濁が認められもう数十時間もすれば食人衝動に支配されたクリーチャーに成り下がるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 が、対抗策なら…(アンブレラ)を焼く日の光(デイライト)なら。この手にあるのだから―――要するに、《t-ウィルス》の特効薬である。

 

 因みに開発した経緯は、《洋館事件》時に俺が証拠集めとして《t-ウィルス》に関する資料や、何らかの体液と思われる試験管をいくつか拝借しそのまま事件を一部解決。

 その後俺は証拠として一連の事件の資料や写真を提出したがでっち上げの捏造物としか思われず、そのまま丸ごと返却された。

 あまりにも納得いかなかったので、俺は自らの人脈を使い《“アンブレラに関連”しておらず“正義感の強い”医療従事者》を数人探し出した。

 

 …こんなことをした理由はただ単に自分が遭遇した事件が夢幻の類ではなく間違いなく現実で起こった事態だと証明したかっただけなのだが、これが正しく大当たり(ジャックポット)だった。

 

 まず最初に資料を見せたのは町医者のジョージ・ハミルトン*2だった。ハミルトン氏は自分自身でも“食人鬼事件”について独自の調査を進めていた様で、事件の核心に触れたと言ってもいいS.T.A.R.S.の一員から情報提供は願ってもないものだったらしい。

 正直ヘリと銃とパルクールの知識ぐらいしかない俺には所々意味を深く理解できない箇所もあったが、要するに「貴方が持ってきた資料とこのサンプルならワクチンと治療薬の生成が十分可能だが、ここの設備じゃ無理。というかこの街だともう大学行くしかない」との事だった。

 

 俺は勿論ハミルトン氏も大学の研究施設を使用できるほどのコネはなかったが、そこは二人目のピーター・ジェンキンス*3によって解決された。

 

 ジェンキンス氏は大学へのコネがある…というかモロ関係者だった。それも研究室勤務というドンピシャである。事情を話した所ハミルトン氏の友人だったということもあって快く許諾してくれた。

 さぁいざワクチン開発!と意気込む俺たちに声をかけてきたのは「グレッグ・ミューラー」と名乗る大学教員だった。

 何処からか俺たちの為そうとしたことを嗅ぎつけて来たらしく。研究に協力するというのだ……そう()()()()()きたのだ。

 

 なんかもうこの時点で怪しいぞと俺のゴーストが囁いてきたが、念の為と言うことで1日の行動を監視していたがアイツよりにもよってアンブレラの研究員だった。

 

 もしかしたら下心なしの善意の協力者という可能性が無きにしも非ずだが、俺たち三人にはそれの低い確率を信じれる程に寛容ではなかった。何とか引き払ってもらおうとしたが異様にしつこく食い下がってくるので、俺たちはここで4,5人目の人材を招集した。

 

 両名の名前はリンダ・パールとエド・サンダース*4。其々女医とコンピューター技師で、恋人同士だそうだ。二人……というかパール女医は実はジルさんの友人で、定期連絡の際に「今こんなことやっててー、なんか心当たりのある人物いませんかー?」と軽く聞いてみた所この二人が紹介されたのだ。

 

 パール女医には女性特有のネットワークを使っての黒い噂を集めてもらい、サンダース氏にはその技術を用いサイバー方面からグレッグに対する情報を集めてもらうことにした。

 

 その間は“表向き”グレッグの研究への参加を許可しながらも、重要な証拠や奪われると変えが効かないサンプルは絶対に奴の手に渡らない様にした。

 

 

 

 そこから数週間経った日に、連絡を受けた俺は改めてグレッグの“排除”に踏み切った。

 

 報告ではアイツは“元”アンブレラ職員であり今ではアンブレラとの関わりはないとの事だが、アイツのパソコンや研究室に忍び込んで見るともう…いろいろヤバかった。

 《t-ウィルス》のサンプルや培養液内で揺蕩う数体のクリーチャー。極め付けは一際巨大なビーカー内に鎮座していたあの《タイラント》に酷似したクリーチャーである。

 

 状況証拠としては十分過ぎると他の四人は警察官の俺がラクーン市警に報告する様に詰め寄ってきたが、俺はそれを拒否させてもらった。

 理由としては三つ。一つ目は単純に謹慎処分中で尚且つ《洋館事件》とかいう本人たちはともかく側から見たら狂言癖を患っているのでは?と思われかねない俺が通報した所で適当に流され無意味に終わる可能性がある事。

 二つ目はは万が一信じてもらえて部隊を派遣してもらいアイツの研究所に踏み込んだ際に恐慌をきたしたグレッグがウィルスとそれを持ったクリーチャーを拡散させかねない事。

 最後に、アンブレラ本体にこの件を嗅ぎつけられ。事件を揉み消さされ挙句このワクチン開発を強制的に停止させられるという最悪のシナリオが起こり得るからだ。

 まだ推測の域を出ないが、どうにもラクーン市警の上層部にはアンブレラと共謀している奴がいるっぽいのだ。

 

 ここら辺の理由から、俺はアイツを“ウィルス”の件では摘発不可能だと言った。だが、少々意気消沈する四人の前で「確かに“ウィルス”の一件では摘発不可能だが、“他の件”なら充分可能だ」と続けた。

 

 実はアイツの情報を集めている過程で、アイツが今までやってきた“大学での悪事”の証拠が大量に見つかったのだ。罪状は上げ始めるとキリがないので割愛するが、もしコレを公表すればアイツがこの開発に着手出来なくさせることはおろか、アイツをこの大学から叩き出すことも可能な筈だ。

 

 という訳で善は急げとばかりにグレッグの証拠や目撃者及び被害者の話をまとめた物を、一流大三流問わず数々の出版社へその情報群を横流し(リーク)した。

 

 そのままグレッグ*5の奴は流れる様に大学から追放――される前に奴が「貴様らも道連れだ!」とタイラントの亜種…《タナトス》*6を起動されられたのだが、亜種どころか原種との交戦経験がある俺と、この日のために呼び寄せた出発前のクリスとエンリコ隊長の数の暴力によって地面にキスさせてやった。あとタナトスの血液はワクチン開発に必要不可欠な液体、通称《t-ブラッド》との事だったので爆散させる前に採血させてもらった。

 

 その後なんやかんやあって特効薬“デイライト”が開発完了した訳だ。命名理由は「日の光があれば傘(アンブレラ)は要らない」というイカした皮肉である。

 

 という訳で開発された“■■■■■(デイライト)”を、俺は五つ所有している(因みに協力者四名はレベッカとリチャードがいる大学まで高飛びしてもらった)ので、俺はコレ幸いとばかりにエマちゃんに撃ち込んだ。

 

 完全にウィルスが回りきった場合は全身のウィルスを死滅させそのまま治験者を死亡させてしまうのだが、どうやらエマちゃんの場合は軽度の症状だったことに加えそも侵入したウィルスが軽量だったこともあり、なんとかこちら側に戻すことが出来た。

*1
《バイオハザード4》の隠し武器。威力が強いのは確かなのだが隠し武器内に明確な“格上”がいるので周回プレイヤーにはまず使われない不遇武器

*2
《バイオハザード アウトブレイク》から。医者、渋面、紳士的というハイスペックのくせして離婚歴がある可哀想な外科医

*3
同じく《バイオハザード アウトブレイク》から。ゲーム内だと主人公たちにワクチン開発の手掛かりを残して死亡する

*4
二名とも番外編というかIF的な立ち位置にあたる《バイオハザード ドラマアルバム『運命のラクーンシティVOL.2』》より。リンダは正義感溢れる女医だが過去に親を安楽死させた事がある。エドはその恋人で、ニューヨークの病院からスカウトが来る程のコンピューター技能の持ち主。因みにバイオのドラマCDシリーズは“主人公補正がない主人公”達が主役なのでどれもこれもバットエンドな結末が待っている。勿論上記の二人とも作品内で死ぬ

*5
《バイオハザード アウトブレイク》から。シナリオ内で主人公達に好意的に接しワクチン開発に協力してくれるが、だが正体は追放された元アンブレラの研究員。兵器…というかB.O.Wに異様な愛情を抱いており、ゲーム内で「オタク特有の早口」を披露してくれる

*6
同じく《バイオハザード アウトブレイク》から。《タイラント》の亜種の様な見た目だがパクった訳ではなく。同じアプローチで作られた兄弟種の様な存在…ゲーム内では余り書かれないが、《t-ウィルス》の完全適応者であるセルゲイ大佐のクローン以外で作られたタイラント系列の存在は割と奇跡の産物




キリがいいので今回はここまで、次回投稿をお待ち下さい。


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-1998年(バイオ3)-007

い、いやちゃうんす。別の小説書いてただけで決して書くのをサボってただけで―― ――!!?(ここから先は血に塗れている)


「まっ、俺はそろそろ行くよ。あとシャワーありがとな」

「本っ当に感謝するぜ!何言ったらいいか……!」

 

 〈ケンドの鉄砲店〉の入り口では、軽く湯気立つ体と、それによって柔らかくなった髪を纏め防護服を着込むブラッドと、それを見送るクシャクシャになった顔が印象的なケンドがいた。

 彼らの後ろからはソファーに寝そべりスウスウと寝息を吐く女の子がおり、数時間前までは土気色だったその顔も大分人らしい紅潮した頬に戻っており、その様子から峠を越したことは想像に難くなかった。

 

「だから礼はシャワーと追加物資で充分貰ったっての。これ以上は過剰になる」

「そうか…いや、そうだな。分かったぜブラッド」

 

 二人は顔を合わせて頷き合うとブラッドはそのまま踵を返して家を出ようと……する前にケンドに再び向き直り、徐に懐のラクーン市のミニマップを取り出した。

 

「あと、今から数時間後にここにヘリが来るハズだ。パイロットは現地についてからのお楽しみだが信頼できる奴だから…少しでも“勇気”があるなら、行ってみてくれ」

 

 頷いたケンドを見たブラッドは、今度こそ本当に踵を返し〈ケンドの鉄砲店〉を後にした。

 

「………………」

 

 彼は店から出て暫く歩いた後ポケットから如何にもな無線機を出し、とある人物との通話を開始した。

 

「あぁ俺だ……ウンそのことなんだけど、俺の座席はキャンセルで頼む。代わりにお前とそう変わらない体型のやつと小さいお姫様(プリンセス)が乗るから……俺は大丈夫だし、別行動中のジルさんも平気だ。別口の脱出経路を探してみるさ」

 

 ふとブラッドが空を見上げると、何処の組織の引き金なのかわからない黒塗りの艶消し軍用ヘリ達に混じって、赤と白でカラーリングされた輸送ヘリが、漆黒の夜空を少々危なげに飛翔していた。

 

 

 

 

 

「アンタだって早く家族に顔見せたいだろ?だから頼むよ…………バリー」

 


 

■月○日⑥

 

 …カッコつけようとしたらつい勢い余って緊急脱出用のヘリまで送ってしまった。

 

 ま、まぁ警察官として民間人を避難誘導したと考えよう。

 

 しかしこの先どうしたものか…正直このまま街をぶらついているだけでは事件の究明とラクーンからの離脱という二大目標が達成できるとはとてもじゃないが不可能だ。何とかしてジルさんと合流したいところではあるのだが、いかんせん手がかりがない。

 

 ジルさんもどうやら探索中に無線機を落としたらしく連絡つかないし、どうしたもんか……

 

 信号弾を打ち上げてもいいのだが、これにみよがしに軍用ガトリングを取り付けたヘリが飛び回るヘリ相手にそれはやりたくない。下手するとコッチを撃ってくる可能性もある

 あぁそうそう探索している内に面白い人と遭遇した。

 

 少しくすんだブロンドの短髪が特徴的な伊達男兼俺からしたら後輩にあたる【レオン・ S(スコット)・ケネディ】君である。

 

 数体のゾンビに囲まれていた所を俺が通り掛かり、レオンが近くに居て尚且つ距離が極めて近かったので、アサルトライフルやショットガンといった長物を自主的に封印し助けた。握手の際にバケモノを見るような目をしていた事は見逃してやった……まぁ俺たちS.T.A.R.S.程B.O.W戦に特化した人間はそうそういないとは思うが、それでもちょっと傷付いた。 というか俺S.T.A.R.S.の中なら遠中距離からの支援が主だからまだ人間らしいと思うのだが――ジルさんとクリス辺りなら体術だけで仕留めてる。

 

(ここから先は自らの誇りのようにS.T.A.R.S.の仲間自慢が書き記されている……)

 


 

「クソ! どうなってるんだこの街は……!?」

 

 そう零しながらも手元の愛銃――マチルダ*1を連射する。 一般的な警官としてはかなりの腕前を誇るレオンの凶弾は此方へ向けて呻き声を吐露しながらもゆっくりと進んでくる爛れた人間(ゾンビ)へ向かって命中。内数弾は頭部や内臓部分といった人体の急所に当たる…が、彼等はそんなものは知らんとばかりに歩調を乱す事なくゆっくりとレオンに向かって進み続ける。

 

「本当になんなんだ!?」

 

 堪らずマチルダを腰のホルスターに仕舞い込みゾンビたちに背を向け走り出す。 数回の戦闘から自分に襲いかかってくるゾンビ達が全員例外なく足が遅い事を学習したレオンは、こうして気持ち程度の足止めをしてから逃走という勇ましいのか小賢しいのかよく分からないこの行為を数回繰り返し、つい先ほどまで行動を共にしていたクレアという女性との集合場所であるラクーン警察署へ()()()に向かっていった。

 本来今日付けでラクーン市警に配属(尚彼女にフラれヤケ酒し泥酔。現在大遅刻かましている最中)され、街一帯どころかラクーン警察署近辺の地形もロクに把握していないはずの彼がゾンビを避け続けながらという極限下でも淀みなく走り続けていられているのは…大きな理由があった。

 

(本当に、さっき道端で見つけた木箱がなかったらどうなってたやら…!)

 

 レオンが自身の胸中でそう独白した通り、クレアと共に搭乗していた車が背後からのトラックの追突事故による炎上。 そこから流れるようにエンジンとガソリンに引火し大爆発からの命懸けの脱出。尚且つ二人はバラバラの方向に脱出した為別行動に――となりレオンが走り出した瞬間。レオンは街の景観維持のため植林されたと思わしき常緑樹の根元にそこそこの大きさの木箱が置いてあるのを発見した。

 

 何の変哲もないはずの木箱だったが、妙に引き寄せられる“ナニカ”を感じたレオンは木箱の側まで近付いた。

 

 木箱の上部には、書類仕事で鍛えられたのであろう小さくも整った字でこう書かれていた。

 

If you are in trouble, open it!(困ったら開けてね!)

 

 短かくもシンプルに、かつコレを見る相手の緊張を解すためユニークな言い方のソレに、レオンが思わず頬を緩めていたが、自身の状況を顧みえ今の自分は間違いなく『困っている』と判断。 作った誰かに感謝しながらも木箱を開ける。

 

「コイツは…ありがたい!」

 

 そこにあったのは数十発分の弾丸に三本のエネジーバーにスポーツドリンク。周辺の物と思わしき手書きの地図と……一通の手紙が入っていた。

 周囲の炎上(物理)によって流れ出た汗の分水分を摂ろうと一息でスポーツドリンクの半分を消滅させ、弾丸を雑に掴むと自身のズボンのポッケに収納し、地図はハンドガンを持つのとは逆の手に掴み………最後にメッセージカードを軽く読む。

 

『コレを読んでるってことは、少なくともアンタは今危機に陥ってるってことだよな?

 ここはラクーンの玄関口だから、来るのは余所者だと仮定して書かせてもらう。

 今アンタが持っている地図に、赤い点があるだろ?

 そこはラクーンで災害とかの非常事態が起こった時の“指定避難場所”だ。

 ラクーン一の大病院 “ラクーン総合病院”

 火が上がった時は最強の “ラクーン第一消防署”

 んで、アンタのいる場所から一番近いと思われる “ラクーン警察署”

 個人的な意見になるが、行くとしたら警察署に行くことをおススメする。

 普段は“無気力”が服を着て歩いてる様な奴らだが、ここ一番ってときはクソ程頼りになる

 あそこなら水も食料も、そして自衛用の武器もたくさんあるからな

 ………最後に一つ。窮地に一足早く陥った俺からアドバイス。

 こーゆう状況で一番大事なのは、腕っぷしの強さでも、

 手にした情報量でも、ましてや人脈でもない

 絶対に折れない鋼の(ハート)だ。

 手紙越しだから伝わらないかもしれないが、俺はアンタに生きてほしいと思ってる。

 だから、どうか折れないでくれよ?』

 

 その短いメッセージから、再び元気と…『折れないでくれよ?』というどこか挑発的な言い方から、『やってやる』という気概を貰ったとばかりにその目に強い意志の光を輝かせ走り出す。複雑怪奇な迷宮のような裏路地も、入手した地図による案内によって楽々と進むことが出来た……が、それも裏路地までの間。大通りにでたレオンを待っていたのは……

 

「なっ…いつの間に!?」

 

 表通りに出た瞬間。レオンの目の前には大量の亡者どもが犇めいていた。

 

「――――クソっダメか!!」

 

 今までと同じように隙間を見つけようとゾンビたちを見回すが先ほどと同じようにはいかんとばかりに、隙間なくレオンは彼らに包囲されていた。

 

(折角元気付けてもらったってのに…どうする…!)

 

 頭の中から絞り出したこれまでの経験や知識から今の状況を打開できないかと記憶を探るが、生憎ベテランならまだしも新人警察官(勤務先はバイオハザード)であるレオンの経験と、まだまだ浅い知識では状況を抜け出せるイカした名案は出てこなかった。

 

(出来るのは辛うじて数が少ない場所に集中攻撃してからの一点突破ぐらいか…だが出来るのか……?)

「……やるしかないか」

 

 木箱から補充された弾丸をマチルダに装填すると、レオンは無数のゾンビの群れに向かってハンドガンを向ける。

 

「よし…やってやる!」

 

 “覚悟”と“決意”を固めたレオンは、マチルダの引き金を引こうと――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BANG!!!

 

「…やたらと集まってると思ったら、人がいたのか」

 

 レオンの先――()()()()()()()から響いた爆音と共に、数体のゾンビが倒れこんだ。

 

「おぉ、見慣れた制服だけど見慣れぬ顔……新入りか! ようこそ絶賛進行中の地獄ラクーンシティへ!!」

 

 倒れたゾンビの先から見えたのは、ショットガンをその手に構えたレオンと同じぐらいの背丈の青年だった。獰猛に笑う口角とは裏腹にその相貌は理性の光が爛々と灯っており、決してこの非常事態に飲まれた狂気のソレではなく……歴戦のモノを感じさせる。 若い外見のその格差(ギャップ)にレオンは目を白黒させるが――

 

『UVAAAAAAA……』

 

 喘ぐような声を上げながらも、のろのろとゾンビ達が起き上がってきた。

 

「オ、オイ危ないぞ――!」

 

 レオンが警告の声を上げる前に、青年がホルスターから抜き撃った弾丸が立ち上がろうとしたゾンビの頭部を正確に撃ち抜いた。

 

「ここまで頑張ったんだろ? ちょっと休んどきな」

 

 そう言うと、青年――ブラッドは背負っていたリュックサックを降ろすと、リュックのサイドポケットから引き抜いたスタンバトンを左手でクルクルと手で弄び「ギュウウ…」と第三者が見ても伝わる程しっかりと握り締める。 レオンとゾンビ達の間に立ち塞がるような位置に立つ。

 

「新人の前だ……エリート部隊員としていいとこ見せてみようか?」

 

 先ほどレオンにかけた友好的な声とは比較にならないほどに低い声を出すと、浅く腰を下ろした体勢となり――一気に突っ込んだ。

 

「――――――シッ!!」

 

 元の距離が短かったのもあるが、それ以上に彼の強靭な足腰から放たれた爆発的な加速によりブラッドとゾンビ達の距離は瞬時にゼロとなる

 

「羅ア!!」

『UGAAAA!!?』

 

 加速をのせた状態から、スタンバトンを横に思い切り振り切る。 進路上にいたゾンビ三体に当たり、平時は暴徒鎮圧用に使われるそれは問題なく普段通りの威力を発揮し亡者達に電撃を這わせる。

 

「……ッ!!」

 

 痺れた隙を見逃さずに、バトンを握るその手をそのまま拳として用い、正面の一体を真正面から殴り倒す。 右の一体は振り抜いた手を銃の安定させる足場として放たれた曲芸じみた射撃によって頭部を破裂させ、最後の一体は――――

 

『AAAAA――』

「フンッ!!」ゴキャリ

 

 コチラに掴み掛ろうと向かってる最後の一体に対し、カウンターの要領でバトンで首筋を強かに打ち抜く。嫌な音と共にゾンビの首が本来曲がらないような方向に捻じ曲がり、ゆっくりと崩れ落ちていった。

 

『『『………………』』』

 

 瞬く間に同族(彼/彼女達がそう認識してるのかは謎だが)が三人も()られたゾンビ達――t-ウィルスの効力によって彼等の中に“怯え”や“恐怖”の感情は無いはずだが、その時彼等は確かに()()()()()様に一歩下がった。

 また三体をほぼ同時に倒したブラッドだが、彼自身ゾンビの恐ろしさは数ヶ月前の任務で骨の髄まで染み付いているため、油断する事なく素早くバトンと拳銃を持ち直すと、再びゾンビ達へと向かい直る。

 

「…………次!!」

 

 続けて地を蹴り再びの加速を得た彼……ブラッドの右肩には、彼が選ばれた隊員である事を如実に示す。星を模したエンブレムが炎に照らされ確かに輝いていた。

*1
バイオRE2のレオン編初期武器。 小説や漫画などで彼の初期武器は大きく変わるが、本作ではコレとする。




伊達に地獄は見てねーぜ。な話


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-1998年(バイオ3)-008

レオン合流から警察署脱出目前まで行きます。

雑なチャートだとこのままブラッド君はカルロス達と一緒になってもらう予定です


「んで、えっーと…年上の後輩?名前を聞いても」

「あ、あぁ…レオン。レオン・S(スコット)・ケネディだ…そうゆうアンタは?」

「おっと失礼?ラクーン市警特殊部隊【S.T.A.R.S.】アルファチーム所属のブラッド・ヴィッカーズだ。よろしくレオン」

 

 そう言い右手――はゾンビの血や体液塗れで汚いので流石に自重し左手を差し出したブラッドと、その一連の様子と右手を見て「(ブラッド)ってまさかそうゆう意味なのか…?」と内心戦いていたレオンの二人は、互いにがっしりと握手を交わした。

 

「にしてもアンタすごいな!こんな状況になるのは()()()だろ?ゾンビ達だって数体倒してる。いいガッツだよホント」

「め、目の前で数十体を打ちのめしたアンタに言われるても嬉しくないな……だが、ありがとさん」

「…どういたしましてってね。ところでここから先はどうするつもりだ?」

 

 脳内知識の【処世術】の欄に、「初対面の相手は取り敢えず褒める」と書かれているブラッドは、それに従いレオンの勇気ある行動を喝采した。書き方に悪意を感じるかもしれないがブラッド自身は本心から言っており、「装備が整っていて基本二人(コンビ)で行動していた自分とは大違いだ」と内心感嘆していた。

 しかしレオン側から見ればブラッドは「ピンチの時急にやってきたと思ったら素手と拳銃(とスタンバトン)で瞬く間に敵を全滅させたやべー奴」という認識であるため、少々引き気味に対応されてしまった。しかしここでめげては(割と)変人集団【S.T.A.R.S.】*1の一隊員ではいられないとばかりにスルー。レオンに対して“先”の行動を聞いた。

 

「ひとまず、さっき逸れた()()()と合流したい。警察署で合流予定なんだが…道筋は知ってるか?」

「任せろ。流石に職場の場所ぐらいは覚え……クレア?」

 

 道を尋ねたレオンに対し、ある意味「自分が絶対に覚えておかなきゃいけない所」なので快く教えようと―――としたところに聞き覚えのあり過ぎる名前が聞こえたため、思わず聞き返した。

 

(い、いや。流石に人違いだろ ありふれたというほどでは無いけどクレアなんてよくある名前だ……!)

「不躾だが、そのクレアって人。フルネームは…?」

「ん?別にいいが…確かそう――レッドフィールド。【クレア・レッドフィールド】*2だ」

「…………oh」

 

 ブラッドは思わず天を仰いだ。

 

(そっかークレアの奴コッチ(ラクーンシティ)に来ちゃったかー…そういや『兄を探してます』っていう感じのメール来てたなぁ…)

 

 ブラッドは脳裏に「俺の妹を何に巻き込んでいる!!」と言いながら渾身の右ストレートを構えながらこちらに走ってくるクリスの姿が映し出され、軽く呻くが直ぐに止めた。ビークール、びーくーる。心はホットに頭はクールに――

 

「知り合いか?」

「まっままっまぁな。同僚の妹ってところだ」

 

 ダメだったらしい(呆れ)だらしねぇな?

 

「…取り敢えず、警察署まで案内するよ。脱出作戦をした後で同僚や避難してきた市民は粗方居なくなったから、新人歓迎のホームパーティは出来ないけどな」

「いや、今はきっと()()()だろうから構わないさ」

「「HAHAHAHAHA!!!」」

 

 笑っていいのか悪いのか、よく分からないジョークで大袈裟に笑い合った二人は、そのまま揃ってラクーンの夜を闊歩していった。

 


 

■月○日⑦

 

 職場(ラクーン市警)に向かう途中でレオンに言われた「俺の職場っみんなアンタみたいな奴らばっかなのか?」とはどうゆう意味だろうか! いや、〈意味と意図〉は分かる。分かるけどさ……その言い方はないだろう!?

 因みに「いや俺が特別なだけ」と言ってどこか安堵した様子のレオンに続け様に「でも俺が所属している部隊は俺と同等かそれ以上のやべー奴が沢山いる。因みにクレアはそんなヤベー奴の実妹」と言ったら顔を青くして軽く震えていた。ザマみろ(ゲス顔)

 

 …いけないいけない、コトミネ化してる

 

 取り敢えずあの後は何事もなくラクーン市警についたと言っておこう。残った警官達にもみくちゃにされて汚い高音の悲鳴を上げるレオンを他所に、俺はマービンに頼み込み監視カメラの映像を見させてもらった。

 

 理由は勿論クレアの捜索である…あ、因みに呼び捨てなのは年が近いのと時たまレッドフィールド兄妹の鍛錬に混じり共に汗を流した仲だからだ。 話を戻して、俺は警察署付近の監視カメラを操作しクレアの姿を探した。

 レオンの言葉から推測して多く見積もってもレオン&クレアの二人が来たのは2時間前程度。という事で2時間前まで映像を遡り虱潰し探してみたが――生憎とそれらしい物は見当たらなかった。

 強いて言うなら映像を見始めて数分した時に監視カメラの集音範囲ギリギリから微かな爆発音が聞こえたぐらいだろうか?その時未だもみくちゃにされていたレオンに「なんか事故なかったか?」と聞くと、息絶え絶えな声で「ココ着いて直ぐ運送トラックにピンボールの球にされた」と返してきた為、それだと思われる。

 

 再びクレアの居場所についての操作を始めようとしたが、その時マービンから興味深い話を聞いた(閑話休題)

 

 我らがラクーンシティ市民の偉大なる父(笑)なアイアンズ署長が作った――放置した隠し通路が生きている可能性があるとの事だった。なんでもこのエントランス中央にある。如何にもな三つの窪みが怪しいとのこと。

 

 ……フム。

 

 窪みの大きさと深さからして何かを嵌めるタイプ。角一つない完全な円形からして恐らくはメダル…でも大きさからして通常の硬貨じゃないな。記念メダル?いや、この警察署が元々は美術館だった事も考えると――なんらかの美術品か。

 

 警察署内、美術館時代由来の品、メダル……

 

 …そういや昔――つっても俺が中高生頃の話だけど、とある警察のお偉いさんが「市民達に俺達の事をもっと知ってもらおう!」とかいって毎年開催されていた【ラクーン市警見学ツアー】の時俺と一緒に見学していた男の子が、何かの像に付いてるメダルを取ろうとガチャガチャしてた結果ポロリした記憶がある。メダルの大きさはその時の子の手を軽く上回る程度の大きさだから…うん。目の前の窪みとジャストサイズ。

 それとその時一般市民とマスコミ用のアルカイックスマイルを浮かべていた署長がひどく慌てふためいていたのが印象的だった……あれから見学ツアー中止になったんだったか。

 

 明らかに怪しい。というか確定か?

 

 メダルが三つある事から三種類あると仮定して…

【一階階段の上にある像】

【二階ラウンジのユニコーン像】

【三階西倉庫の乙女像】

 

 うん。三つあるな

 

 試しにとばかりに早速【一階階段の上にある像】に向かい。当時の記憶を参考にガチャガチャ弄っていると、これまた当時の記憶通りポロリとメダルが地面に転がった。

 自分の推理通りに運ぶ事に対して軽い優越感を抱きながらも、台の窪みに一つガコンとメダルを嵌め込ませる。

 するとなんという事でしょうか、「ズズズズ…」と如何にもな感じの重点音をたてながらも、石像が音を立てて少し動いた。ちょっと見えた隙間を覗き込むと――ビンゴ 少々埃っぽいが、隠し通路とその先にエレベーターがお目見えした。

 

 …ひょっとしてここは元々美術館じゃなくてリアル脱出ゲームの現場だったのかもしれない

 

 あまりに実用性を損なっており、しかし男心を擽ぐる…俗に言う「ロマン」を十二分に詰め込んだ荒唐無稽な仕掛けを前にそう思った俺は多分悪くない。

 

 しかし、そうとなると話は速い。

 

 ようやく解放され地面に倒れ伏すレオンと、軽めの歓迎会(という名の新人いびり)という一大任務を成し遂げ心身共に充実した同僚達に仕掛けを見せ、「二階と三階に同じ感じのメダルがあるらしいから取りに行こうぜ」と誘いをかける。

 

 ノリのいい彼等/彼女等は直ぐ様頷き、武器庫から取り出したショットガンやらライフルなどの武装の点検を始めた。

 雰囲気を「お気楽」なそれから「仕事人」に瞬時に切り替えてみせた同僚達に、レオンは驚きながらも自身も付いていくために奮起し始めたが……

 

『新人研修すらしてない新人は座って見学してろ。荒事は俺達の仕事だ』

 

 という先輩の鶴の一声によって現在マービンの横で監視カメラの操作方法を学んでいる。

 先程までのゴタゴタが無ければかっこよかった()

 

 という訳で二階の捜索を担当するX隊と、三階を捜索するY隊。最後にエントランスにてセーフゾーンの死守を担当するZ隊に分かれ行動する事になった。

 

 作戦開始。

 


 

『こちらX隊。ユニコーン像のメダル確保。これより帰投する。どうぞ』

『こちらZ隊。エントランスに異常なし。しかし新人が監視カメラで知り合いを見かけたから迎えに行かさせてくれと希望している。どうぞ』

「こちらY隊。現在乙女像の目前まで到着。しかし何故が壁で封鎖されている。C4を発見したため発破を試みる。それと新人の知り合いは恐らくクリスの妹さんだ。迎えに行くとしたら丁重にもてなす様に!オーバー」

 

 そう言い報告を終えたブラッドは、手で他の警察官達を離れさせると手元の信管と電池でC4を起動。直ぐ様自分も距離をとった。

 

バゴーン!!

 

 秩序と安寧を司る警察署内では余りにも似つかわしくない轟音を轟かせ、壁は崩れ去った。

 

「…耳が痛い。キーンとする」

「そこはもう慣れだ。俺は慣れた」

「取り敢えず俺はメダルの確保を。先輩方は周りの安全確認を頼みます」

「了解。アリ一匹…は無理かもしれんが、アンデット一体ぐらいなら通さねぇよ」

 

 ブラッドからの指示を聞いた彼等は、各々の愛銃を構え周囲一帯を警戒し始める。

 

「うっし。X隊は既に終わったみたいだから、俺等も急がないとな」

 

 そう言う乙女像の周囲を舐め回す(犯罪臭がするのは気のせい)ように見ると、あちこち触って仕掛けの構造や解除方法を理解。幸運な事にそこまで複雑な物では無かったので、()()()()()()は使わずに正攻法で解除。無事最後のメダルを獲得した。

 彼はサイドポケットから無線機を取り出すと、他の隊やマービンに対して連絡を送る。

 

「こちらY隊。無事最後のメダルを確保した。これより帰投する。オーバー」

『『了解』』

 

 無線機を仕舞い。ブラッドは同僚たちへと向かいなおる。

 

「そんなわけで、無事全メダル回収完了。エントランスに帰ります」

「「了解」」

「ちょっと物足りないな。制圧が終わっていたとはいえ一匹も出てこないとは」

「不謹慎なこと言うな。アイツ等だって元を辿れば仏様なんだぞ」

 

 Y隊――というか脱出作戦後に残った警官全体に言えることだが――の中でも特に血の気が多い彼はそんな少々好戦的な台詞を吐き、またそれを東洋人系の顔立ちをした警官が諫めた。

 

「そういうなよケン。お前だって消化不良だろ?」

「そーゆう問題じゃ――――」

 

 なお軽口を叩くことをやめない警官に対し、ケンと呼ばれた警官が声を荒げようと、一食触発の空気となりかけるが……

 

「――俺は、ケンさんに同意です。知らない人ならともかく…友人や、仲間の奴らとは戦いたくありません」

「でも、消化不良なのは否定しませんから、もし名前も顔も知らないやつがいたら、その44口径を思い切りぶちかましてください」

 

 それを諫めるのが、リーダーであるブラッドの仕事だった。

 

「取り合えず。今の俺たちの敵はゾンビとそれに連なるクリーチャーです」

少なくとも――――人間同士じゃない

 

 最後にそう締めると、ブラッドは静かに口論を交わしていた二人に一瞥をかまし、背を向け帰り道を進んで行った。

 普段は陽気でとっつき易いブラッドの冷徹な一面に、思わず我に返った二人は自分達が余りにも的外れな行動をしていた事に気づき年甲斐もなく赤面し合うと、二人同時に小さな声で謝り合った。

 

 その様子を傍観していた女性警官は、小走りで一人先行していたブラッドへと駆け寄っていった。

 

「随分と勇敢になったじゃない。【チキンハート】君?」

「……俺は今でも小心者(チキンハート)です。ただ単に、今は勇敢者(ブレイブハート)でなくちゃいけなかったからなっただけです」

 

 そう言うと、両手で持っていた自身専用のカスタムハンドガン<サムライエッジブラッドモデル>を片手で持ち直すと、その手を女性警官へと見せてみせる。

 

「…あらら」

 

 女性警官が見たブラッドの腕は、武器を問題なく扱える程度の僅かなものだが、微かに震えていた。

 

「見ての通り、恐怖は常々感じてます」

 

 徐に片手を振ると、すっかりその震えは収まっていた――しかし、彼の心中にはしっかりと“恐怖”が刻まれている。

 

 ゾンビに噛まれたら、銃器が壊れたら、アンブレラの刺客が来たら。

 

 ブラッドの心の中は常にそんな“不安”が渦巻いている。

 

 そんな心を殺し――しかしその“不安”と、昔から鋭い己の“直感”を繋ぎ合わせ“対策”と“準備”を講じ。立ち塞がる“恐怖”に打ち勝つのが、ブラッド・ヴィッカーズという人間(キャラクター)だった。

 

(そんな俺を引っ張ってくれるのが、クリスだったりジルさんだったりするわけだけど……今はいない)

 

 仮にジルやクリスという“人種(主人公)”を、巨悪の心臓を突き破る銀の弾丸(シルバーブレッド)だとすれば、ブラッドはその射手だ。弾丸たちがちゃんと飛び、正しい相手を撃ち抜くためにメンテナンスを行い、オプションパーツを取り付け照準を定めるのが彼の仕事だ。

 しかし、今のブラッドの様子からわかる通り、そんな彼らは()()いない。

 

(だから今は……俺が“弾丸”にならなくちゃいけない)

 

 心の中でそう決意を固めると、ブラッドは他の隊員を先導。中央エントランスへと歩みだした。

*1
アルファチームブラボーチーム問わず

*2
【バイオハザード2】【CODE:Veronica】【リベレーションズ2】のメイン主人公。ゴリ…ではなくクリス・レッドフィールドの実妹。女子大生とは思えない戦闘能力と兄譲りの勇気を持ってバイオハザードと立ち向かう女傑




 はい。そんな訳でなんだかんだ弱虫で臆病なブラッド君の内面描写でした。
 どのくらい怖がっていると言うとリベレーションズ2の腕輪をつけた瞬間レッド三歩手前ぐらいの色になります(ニッコリ)

〜閑話 歓迎会()〜

「貴様は何者だ!」
「レ、レオンだが……」
「そうか!馬鹿みてぇな名前だな!!」
「なんなんだいきなり!?」
「貴様は何しにここ(警察署)へ来た!」
「し、市民の安全を守る為だ!」
「そうかそうか!そいつは立派だなぁ!…だが」
(市民)は初日から遅刻する貴様の守護なんぞ欲しくはない…!」
「なっ……!?」

「ようこそおいでくださいました!そうかそうか君はレオンと言うのか」
「あ、あぁよろしく頼む」
「ハイ!此方こそお願いします!」ガッチリアクシュ
(よかった。この人はマトモそうだな…)
「試してあげよう、お前の力を」(^U^)
「は?」
「フッ、いい反応だ。感動的だな……だが無意味だ」ズドム
「グフゥ!?」
「で、出たー!カイドウさんの無意味パンチー!!」
「“ラクーンで警察官やるならこのぐらいは必要だぞ”という気遣いパンチだけどその言動とアルカイックスマイルのせいで圧倒的な勘違いを齎すやーつ!」

「大変だったわねぇん」ルナ!
「ヒェ」
「イケメンで。しかも強いのね!嫌いじゃないわ!!」
「う、うわああああ!!!!?」

「ひ、酷い目にあったぜ……」
「まぁまぁ。あんなに変わってんのはアイツらぐらいさ」
「…アンタは?」
「おう。俺はケビン・ライマン……お前の先輩さ。ところで腰のソレ、いい得物だな。よく手入れされてるのが分かるぜ」
「アンタのソレこそ。凄いな手入れこそ少し怠ってるみたいだが……使い続けた“凄味”みたいなのが見えるようだ」
「ハッ。お前とは、いい酒が飲めそうだな?よろしく頼むぜ後輩」
「此方こそ、いろいろ頼むよ先輩」


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-1998年(バイオ3)-009

???「フンッ!」
???『シェリーーー!』
???「ウム。細胞片も回収…次いでに叩き落としてしまったが些細な事だろう」

(ボス戦なんて)スキップじゃスキップ!!!


■月○日⑧

 

 作戦終了。

 

 ん?何言ってるか分かんないって?そうゆう奴は前話を見ろ(唐突なメタ)

 

 冗談はともかくとして、俺とレオン。そして脱出作戦後囮となる為にラクーン警察署に残留していたマービンを筆頭とした10人前後の同僚達と共に、エントランスの秘密の通路の仕掛けを解くための3枚のメダルの回収が完了した。道中ちょっとしたトラブルと、俺の()()()もあったりしたが。人的被害はゼロで、この作戦は無事任務達成(コンプリート)とあいなった。

 その後、俺が所属するS.T.A.R.S.の【クリス・レッドフィールド】の妹【クレア・レッドフィールド】とも合流――因みに開口一番「ブラッド!丁度よかった…兄さんがどこか知らない!?」と聞かれた。生憎現在クリスはエンリコ元隊長と共にアンブレラの証拠探しの為海外を飛び回っているので詳しい居場所は俺も知らない。それを正直に告げたらクレアのやつは少々落胆した様子を見せながらも、「こんな地獄じみた騒動に巻き込まれてなくて何よりだわ」と言って瞬時に切り替えていた。……既にその『地獄じみた騒動』に巻き込まれている、若しくは首を突っ込んでいる事は暫く黙ってた方が良さそうだな?

 

 その後再開を喜ぶレオンとクレア。そしてそれを羨ましげな視線で睨む()()警官と、更にそれを敵意を通り越した半ば殺意じみた視線を二人…というかレオン単体に向ける男性(独身)警察官という構図に笑いながらも、謎解きの報酬である隠しエレベーターを出現させた。

 

 調べた限りでは罠の類はナシ。見た感じ一世代前の4~5人乗りの標準的なエレベーターだな。にしても扉が骨組み剥き出しとはこれまた古典的(アンティーク)な……

 

 取り敢えず「俺が先行してみます」と言って先に行こうとしたら、「どうせこの警察署引き払うからみんなで行こうぜ」という結論になり、結果数十人の大所帯でエレベーターを活用することとなった。

 

 …その時「どうゆう組み分け(グループ)で行くのか」という決め事で多少ゴタゴタしたんだが、まぁ些細な事だろ?

 付け加えるなら俺の時は俺とマービンとクレア。そして警察署残留組の中でも俺やクリスと親交のあった奴二人で、中の空気は極めてフラットだったとだけ

 

 んでもって俺たちはエレベーターの行き先の地下駐車場へと辿り着いた。中にはかなりの数の車が残っており「脱出作戦の時に粗方使ったんじゃなかったのか?」と俺が聞くと、実働部隊として活動していた内の一人が「いや普通に行こうとしたけどゾンビ共が大量に徘徊してたし、しかも扉に鍵かかってたんだよ」と返事が返ってきた。

 因みにだが地下駐車場への鍵を持っているのは交通部の幹部、後はアイアンズ署長。

 

 ………………………

 

 最早アイツ裏切り者では?

 

 い、いや待て早合点はいけない。

 こうゆう非常事態は人の心と思想を捻じ曲げることがある。ここは主観的にではなく俺と周りの人間が知る限りのアイツの行動をコレに記して客観的に署長を………

 

・バイオハザード発生時に署のマスターキーを持って失踪。

・「署長の独断」によって署内の防衛網に複数の「穴」が発生。

・署内に多数の銃痕。またその四割がアイアンズ署長専用の銃弾による物と推定。

・避難してきた市民の数人から「署長らしき人が人(生存者)を襲っているのを見た」との報告。

・ラクーン市長の娘さんがアイアンズ署長に連れられそのまま行方不明。

 

 …………………ウン

 

ちょっとでも擁護した俺がバカだった。

 

 確信が持てたなら話は早い。

 

 Fack Y○U!!!

 

 失礼、取り乱した。

 話を地下駐車場へと戻そう。

 

 探索して暫くしたのち駐車場の端に大人数で乗れる装甲車を発見した俺たち。レオンと俺を除く警察官達と車の修理には一家言あるクレア(俺の趣味に付き合わせた結果)が装甲車の点検兼試運転に向かった。

 俺とレオンは隠しエレベーターの付近で周囲の警戒である。所でついさっき上からスゴイ音聞こえたんだが大丈夫だろうか?政府の質量爆撃かなんかか?

 

 ん?あっちょっとレオンケルベロス相手に油断はマズいてアイツら基本集団行動―――

 

(ここから先のノートはやけに皺くちゃだ)

 


 

「こんのアホ!!」

「ヒンッ」

 

 誰かに言われるまでもなくジャパン式の正座しているレオンと、明らかにキレ見本のような仁王立ちでレオンの真正面に立つブラッド。

 

「なぁ俺ここに来るまでに俺が知る限りのゾンビとかクリーチャーの解説したよね!?俺の記憶が正しければケルベロ――ゾンビ犬は「基本集団行動してるし見た目以上に耐久力があるから絶対に油断するな」って!!言ったよなぁ!!?」

「す、スマン…つい死んだフリに騙された」

「……素直に謝れる人間は好きだ。だがそれはそれとして油断する人間は凄く嫌いだ!」

「ヒエッ」

 

 説教するブラッド相手に、素直に自分の非を認め「油断してしまった」と謝るレオン。それによって少々沈静化――したかと思ったら【油断大敵】が座右の銘の一つであるブラッド相手には逆に燃料をブチ込む事となる。そのままブラッド主導による対クリーチャー講座が始まった。

 

 ………………………

 

「ゾンビとの戦闘に必要なのは頭部狙撃(ヘッドショット)ではなく脚部破壊(レッグブレイク)!これ基本!」

 

 ………………………

 

「ゾンビ犬は素早いから(S.T.A.R.S.とかは問題ないが)ハンドガンだと戦い難いからショットガンがサブマシンガンで戦う事!!あと数が多いから余程切迫した状況じゃない限りは壁を背に戦うのもいいぞ!」

 

 ………………………

 

「リッ――人間から皮を剥いだみたいな四足歩行の奴は身体能力が高いから至近距離での戦闘は避ける!もし近づかれたら惜しまず強力な銃器を使う!!あとアイツらは音には敏感だけど目が全く見えてないから遠距離からのライフルでの狙撃も有効!」

 

 ………………………

 

「ゾンビカラスは閃光手榴弾で散らせ!下手に啄まれてゾンビの仲間行きは笑えないよな?」

 

 ………………………

 

「茶番はそのぐらいにしてくれないかしら?」

「まぁ命の恩人にそう言われたら中止せざるを得ないな!今度からは注意しろよレオン!!」

「あぁ………」

 

 数十分後。少し燻んだ肌色のロングコートにサングラスという如何にもな風体の女性――本人曰く名前はエイダ――によって講義が強制終了。因みにケルベロスに押し倒され絶体絶命の状況だったレオンを救ったのは彼女である。

 文字通り後輩の命の恩人の発言を無碍にする訳にもいかず、ブラッドはすぐ様中止する。

 

「レオン。この先の調査を頼んでいいか?この先には独房があるから…まだ囚われている奴がいるかもしれない」

「……アンタはどうするんだ?」

「ここにいる調査官殿と話がある。一段落したら合流するさ」

 

 ブラッドの提案を承諾しその場を離れるレオンを他所に、腕を組みフンスと鼻を鳴らすブラッドの側へエイダが近づく。

 

「所で、矢鱈とゾンビ達との戦い方に詳しいのね。流石は【S.T.A.R.S.】といったところかしら?」

「……へぇ、其方は随分と()()()の事情に詳しいと見える。流石は【自称】FBI」

「あら。この手帳が見えなかったのかしら?」

「おっとすまないな?口火(マズルフラッシュ)の所為で見えなかったんだ」

「「……………」」

(やっぱ明らかに怪しいなコイツ)

(やり辛いわね…でもウィルスの情報は欲しいわ)

 

 持ち前の直感にてエイダを怪しみ情報を出し渋り牽制するブラッドと、【洋館事件】の生存者であり一般人ながらもB.O.Wへの高い知識と対処法を知るブラッドから情報を入手したいエイダ――表向きはFBIだがその正体は今回の騒動の大元であるt-ウィルスやG-ウィルスの回収を目的とする産業スパイ――の平和的な()会話は、互いに険悪な雰囲気になりつつも尚続いていく。

 

「私はFBIのエイダよ。例の件の生き残りである貴方には、聞きたい事があるんだけど――」

「ほっほー?一応報告者は上に提出したはずだが?まさか天下の国際警察サマがたかが一地方警察の報告書が閲覧出来ないと?」

「こんな状況よ?できると思ってるのかしら」

「ウチの報告書はアナログだけじゃなくてデジタルにも対応してる。ココの発電所とネットワークは完全独立型(スタンドアローン)だから()()()()()()()読めるぞ」

 

 FBIという立場を利用し情報を聞き出そうとするエイダ。しかしそれに対してブラッドも「立場があるなら既に手に入れられる」という“事実”を基点に反論する。

 

「…………ッチ」

「オイ今舌打ちしただろ」

「してないわよ?……生憎と、携帯機器がダメになってしまっていたから貴方から聞こうと思ってたのけれどね」

 

 「コホン」と気を取り直すようにせきばらいをしたエイダは、踵を返しどこかへ向かおうと歩を進める。

 

「調査の手伝いは必要ですか?捜査員殿」

「不要よ。お気持ちだけ受け取ってくわ」

 

 そう締めたエイダはその足先を独房…先程レオンが向かって方向へと進む。

 

「一応言っとくがレオンは数時間前に出会ったばかりだ。俺が【洋館事件】の生存者ということはおろかS.T.A.R.S.所属ってのも知らない」

「別に聞きに行くわけじゃないわ。アチラに協力者がいるの」

 

 会話を終えた二人はそれぞれの行動に移る。ブラッドはレオンを待つ事と当初の予定通り周囲の捜索。エイダは独房内の協力人物――フリーの記者ベン・ベルトリッチの元へ向かっていった。

 

「…今は証拠がないから見逃す。でも次は――逮捕する」




エイダさんとはコレからも歪みあってもらいます(暗黒微笑)


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-1998年(バイオ3)-010

最新作が発売間近なので初投稿です。(?)
イーサンお前なんでそんなモテモテなん………?


■月○日⑨

 …とりあえず、ジルと行動を共にしたと名乗るアンブレラの救助隊員達と合流した。

 

状況説明

 

 あの後、俺は見つけた装甲車で街からの脱出を画策する同僚の前で、俺は「やることがあるんだ」と言い残ることを宣言した。もちろん「何言ってんだバカ」「お前まで失いたくない」「人間辞める気かよDI○じゃあるまいし」「ちくわ大明神」と散々止められ……誰だ今の?――とまぁ凄い剣幕で詰め寄ってくる同僚に、俺は(アンブレラの事などは伏せながら)至極丁寧に説明して…あとマービンさんが「コイツにも何か考えがあるんだろう」と年長者の貫禄で止めてくれたお陰で、俺は何とか脱出への切符を破くことに成功した。

 

 因みにレオンやクレアも脱出から手を引いた。原因は駐車場で迷子になっていたシェリーちゃん。

 「お母さんを探してるの」と言うシェリーちゃんに下手な男よりも男らしいと話題のクレアは見事にその姉貴肌属性を発揮。お母さん探しについて行く事になったそうな。

 

 あ、あとそのシェリーちゃんを追いかけて来た様に現れたクソ豚署長がいたが容赦なく捕縛させてもらった。裏切り者は控えめに言って死ね

 


 

「右か左の何方かに一発。腹に二発入れてから甚振って、最後にドタマ一発……お前がここに来るまでに殺した13人の殺害手順だ」

「グァアアアァ!?!?」

「トドメはささない。ゾンビに喰われて死ネ」

 


 

 それにレオンも同行する形…つーかなんだろな。多分あの似非エージェントが気になったのもあるのか?取り敢えずレオンとクレアはシェリーの母親探しを手伝う事になっていた。

 

 んで俺は、勿論ジルさんとの合流が目的。当然可愛い後輩と苦楽(トレーニング)を共にしたクレアを助けたいのと山々だったが、泣く泣く彼らを見送った。

 後押しというにはなんだが、あのクソ豚(署長と呼ぶことすら不快だ)から押収した謎の鍵をレオンとクレアに渡しといた。

 

 レオンは引き気味に、クレアは「相変わらずね」と言いたげな呆れた顔で俺が渡した鍵を受け取った。

 

 

 ……んで、別れた。

 

 

 

 死ななきゃいいけど、まぁ大丈夫だろ?

 クレアの実力と兄譲りの胆力はよく知ってるし、レオンも会って数時間しか経ってないが、アイツの射撃技術には目を見張る物があった……それに、こんな極限状況下で女の尻追えるならまぁ生き残れるだろ。

 

 そんな訳で、俺は1人でラクーン警察署に居残りエントランスでパソコンを弄り、ジルさんが行きそうな場所に当たりを付けていたところ、カルロスとタイレルの二人組が警察署内に入って来た。

 最初はアンブレラの部隊ということで「すわアンブレラの刺客か」と思い腰のサムライエッジに手が伸びかけたが、チリチリ髪のパーマが特徴的なカルロスが「アンタがブラッドか?ジルって奴がアンタのこと探してたんだが…」と言った瞬間何事もなかったようにかつフレンドリーに接する事を決定した。カルロス、マイ=フレンド。

 

 なんでもラクーンのどこかにいる科学者を探すためラクーン住民のデータが余すことなく載っている警察署のデータベースを求めて来たらしかったので、信用を勝ち取る意味も込めてS.T.A.R.S.隊員である俺が案内することにした。

 

 今は何事もなくS.T.A.R.S.オフィスに到着し、情報担当らしいタイレルがPCを弄っている途中でこの日記を書いている。

 道中カラスゾンビが窓を突き破って入ってくるなどのトラブルはあったが、開幕閃光手榴弾で目を塞ぎ、地面に落ちた時に踏み潰した。2人には「そんな方法があったのか」と仕切りに感心され、なんだがむず痒い。

 

 というか明らか目が腐れ落ちた個体でも閃光手榴弾が効くのはなんで……。いや、これ以上は止めとこう。

 

 にしても、ジルさんよくコイツらに協力できたな。俺は結構薄情な方だから割り切れるが、人情堅いあのジルさんには難しいことだったろうに……と、どうやらタイレルの情報収集が終わったようだ。この二人の目的は街からの脱出のようだし。このまま協力するか?

 

 


 

 

「で、その件のヤツは病院にいるのか?」

「あぁ。コイツを保護して隊長と一緒と合流して地下鉄にてオサラバって訳さ」

「成る程…まぁ確かに一般市民確保して行くってんならそれが一番か」

「そうなるな。んで路線だが……」

 

 ブラッドとカルロスは尚もPC作業を続けるタイレルを尻目に顔を突き合わせて脱出計画の手順を確認していた。ブラッドはともかくとして、実行側であるカルロスも戦闘力と冷静さに長けたブラッドが作戦の概要を理解しているのは悪くないことだと思い丁寧に説明していた。

 

(俺とジルさんだけなら最悪車での脱出も行けるが……まぁ市民を見捨てるなんて、ジルさんも、勿論俺も出来るわけないか)

 

 カルロスからの説明を聞く中一瞬「自分たちだけ生き残る」という選択肢が浮かび上がるが、それを瞬時に否定した。

 

『ppppp……』

「ん?トランシーバー鳴ってるぞ?お仲間からじゃないか」

「マジか、定期連絡の時間…じゃあねえな。なんかあったか?」

 

 『ちょいと失礼』とブラッドに礼を入れてからトランシーバーを耳に当てるカルロスから目を外し、ブラッドはふとPCに写っている初老の男性を見やった。

 

(この男は確かバード博士か…アンブレラとの繋がりの疑いがあった研究者だな。ここで繋がってることが確認できたのは僥倖なのかねぇ)

 

 バイオハザード災害が起こる前なら有益な情報になり得たが、今の状況だとあまり利用価値が無いことに密かにため息をつきながらも視線をカルロスへと戻した。

 

「……は?全滅だと?」

 

 そんな時、カルロスから聞き逃せない単語が聞こえた。

 

「ニコライ?アイツがどうし――おいジル!?説明しろ!オイ!!――――ッチ!切れやがった……」

「どうしたカルロス」

「なーんかやべぇ単語が聞こえたが…」

「……ッ!!」

 

 データを一通り端末に入れ終えたタイレルと共にカルロスへ問い掛けるが、カルロスは黙ったまま走り出してしまった。

 

「お、おいカルロス!!」

「とりあえず追おう。説明は落ち着いてから聞けばいいだろ」

 

 狼狽えるタイレルを宥めつつもカルロスの後を追うためブラッドも走り出した。元々かなり素早いブラッドは程なくしてカルロスに追い付いた。

 

「おいカルロス、なんかあったのか?」

「ニコライの奴が裏切って!電車を脱線させやがった!!」

「ハァ!?マジかよ…!」

 

 カルロスがトップを貼りブラッドが真ん中でタイレルが最後方という典型的なスリーマンセルを組みながらも進む。 

 

「取り敢えずどう行くんだ?こっから結構距離あるぞ」

「走りで行くしかないだろ!」

「いやバイク使おうぜ。地下駐車場に幾らか予備はあるだろ」

「マジか?なら案内してくれ!」

「了解、こっちだ」

 

 玄関に向かっていた足を急遽変更し、3人はドタバタと地下駐車場へと向かおうとする。エントランスを抜けエレベーターで早速駐車場に――

 

バタン!!

 

「「「?――っ!!」」」

 

 行こうとした時、大きな音を立てて警察署のドアが勢いよく開いた。

 これだけなら「生存者かな?」と思うだけで終わるのだが…その後中から出て来たのは3m程とあるのではないかと思わせる程の巨漢だった。青白い見事な禿頭に全身を包むトレンチコート、この時点でブラッドのみならずカルロスとタイレルの脳内ではレッドアラートが大音量で鳴り響く。

 

「なんだアイツ!?あのストーカー野郎の仲間か!!」

「頼むから出て来るのはゾンビだけにしてくれよ……!」

「タイレルは後方から援護射撃。俺と…カルロス。お前も前に来てくれ」

 

 混乱しつつも銃を構えたカルロスとタイレルに、ブラッドは素早く指示を飛ばした。

 タイレルは戦闘力というよりかはコンピューター技能が買われたため戦闘力に関しては並程度のタイレルを援護射撃に徹させ、B.O.W戦に慣れている自分と、射撃の腕もよくまたその鍛え上げた肉体を利用しての近接戦にも長けたカルロスを前方に配置する。

 

「なんか知ってんのか!?」

「ひとまず足止めするぞ!安心しろお前とジルさんが会ったアイツほどじゃ無い!!」

 

 暴君(タイラント)は3人の男――抹殺するようにプログラミングされている【生存者】の姿を認め、手近なブラッドに向かって大振りの右フックを放った。

 

「よっ――まあ強いのは確かだけどな!アドバイスとしては化け物じゃなくて熊だと思え!幾分かは気が楽になる!!」

 

 ボクシングのスウェーの要領でその拳を避け、ショットガンをぶっ放し足の一部分を削り敏捷性を僅かに減らした。

 

 即座に離れ油断なくショットガンを構え続けるブラッドに対し、直ぐに殺せるような人間に一矢報いられた事が彼の中で消えかけていた人間性に火をつけたのか先ほどまで能面のようだった顔を僅かに歪ませ、敵意の赴くままに再びブラッドへ……というところで、後ろに控えていたタイレルが構えたアサルトライフルの銃口から発射された鉛がタイラントの顔に直撃する。

 

 顔面は視覚聴覚嗅覚と生物が活動するのに重要な感覚器が多く集まる箇所である。そこを撃ち抜かれたタイラントは堪らず顔を抑え――

 

「ヌオリャア!」

『!!』

 

 二人が気を引きつけている間にタイラントへ走り寄ったカルロスが強烈な左パンチを放つ。

 ウェイト差があるといっても不意打ち気味に放たれた打撃はタイラントを軽くのけぞらせ、その一撃で許容範囲を超えたのか跪きスリープに入った。

 

 トドメの一撃(ファイナルブロウ)をおみまいしたカルロスは手をブンブンと振りだす。

 

「〜〜ってえっ!?なんだコイツ肌っつーより鉛殴ったみてぇだ!」

「いやお前クマって言ったよな?お前クマ相手に殴りかかんのか?」

「んなことより早く逃げるぞ!!?」

 

 痺れた左拳を仕切りに振るカルロスに呆れるブラッドと、その二人を諌め先頭に立ってエレベーターへと逃げ込むタイレル。

 3人を睨みつけながらもスリープ状態から立ち直れないタイラントを他所に3人を載せたエレベーターは下へ下がり、そこで警察用のバイクを3台パクった3人はササッと病院へと向かうのだった。




【ある日のブラッドとクリス】
「…………」
「?どうしたブラッド」
「いや、なんか。またアンタを殴らなきゃいけない日が来そうでさ」
「…今でも思うんだが。態々試作の腕部エクソスケルトンで殴る必要あったのか?」
「バッカお前裸の俺の拳がアンタに通じるわけないだろ」
「まぁ実際。お前のお陰で目が覚めたのもあるから強くは言えんが……」
(実地試験の最終テストに乗じたのはだまっとこ)


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-1998年(バイオ3)-011

短めです。


■月○日⑩

 

 病院に着いた俺とカルロス、そしてタイレルは病院の門の前で倒れていたジルさんを発見した。

 軽い血液検査を行なったが、なんとt-ウィルスに感染していた。

 

 ……俺達S.T.A.R.S.は全員が大なり小なりt-ウィルスの耐性を持っている。あの地獄へ招待した運命とやらからのギフトなのかはしらないが、俺やクリス、そしてジルさんはそんじょそこいらのゾンビに噛まれても感染することはない。そんなジルさんが感染…かなりの濃度の汚染である。少なくともタイラントレベル……。

 

 

 

 

 とまぁ深刻そうに書いたものの、その後俺は腰にある白いアンプルを迷わずジルさんへ向けてぶっ刺した。

 驚くタイレルと「何してんだ!?」とこちらに声を荒げるカルロスを尻目に青いジルさんの顔色はみるみると血色を良くし、勢いよくガバリと立ち上がった――アンプルを刺した俺の頭を強く打ち付ける形で。

 

『『〜〜〜〜〜ッ!!』』

 

 流石に性別差もあって俺が押し負けることはなかったが不意打ちのような形で食らった俺とジルさんはのたうち回った。

 

 復活した俺はタイレルに事情を説明。「それありゃアレ止められんじゃね?」とテレビ画面を指さすタイレル。釣られてみるとテレビジョンから『政府からラクーンシティ爆撃のお知らせ(超意訳)』というニュースが流れて来た。ニュースによるとあと一日でラクーンを新型爆弾が襲うらしい、流石は我が国。武力行使に躊躇ない。

 流石にこんな地獄と運命を共にするのは御免であると、俺達は急いで目的を果たし脱出を図る事にした。

 

 正直ジルさんと合流出来たので俺としてはさっさとバイクなり何なり調達して脱出してもいい。一般市民ならともかくここにいるのはプロの部隊員だし。……しかし人情に厚いジルさんはカルロスの目的に付き合う気満々らしい。『先に脱出してもいいわよ』と言われたが、ここで一人で脱出したらジルさんとお天道様が許してもS.T.A.R.S.(特にクリス)のみんなが許さないだろう。

 

 バイオテロでくたばる前にフレンドリーファイアで死ぬ事となる。HAHAHA

 

 そんなこんなでジルと俺、そしてカルロスとタイレルは病院内で後者二人の確保対象であるバード博士を確保――といきたかったのだが、病院内を駆けずり回り突破したセキュリティの先には死体と化したバード博士と、アンブレラの真実について記されたビデオメッセージに資料である。

 

 ショックを受けるタイレルとカルロスを他所に、俺とジルさんは慣れたものだ。まぁそもそも知ってたし

 

「ジルが言ってのは本当だったんだな、信じなくて悪かった」

「いいわよ。私が初めて知ったときも信じられなかったもの」

 

 頭を下げるカルロスと気前よく許していたジルさんが印象的だった。・・・・・・まぁその後「これ仮に帰投出来ても殺されるだけじゃ」と呟いたタイレルに対して俺は無言で肩を叩いた。

 


 

「――ッシィ!」

『・・・・・・!!』

 

 ラクーン病院の受付場。そこには突如鳴り響いたアラームに群がり集まったゾンビ達のナイトパーティーの様相を呈していた。BGMは亡者の呻き声でミラーボールは今も天井でその存在を強く主張する赤いサイレンである。

 そんなゾンビ達の中で一際目立っていたのは。爬虫類のような見た目が特徴的ではあるがジルとブラッドが洋館で出会ったハンターαとは違い、昆虫のような外殻とより爬虫類らしい鱗を持ったハンターβ*1を、その強靱な爪による攻撃を掻い潜ったカルロスの世界を狙える右ストレートがぶっ飛ばしたところである。

 だがハンターβは一体だけではない。受付場の物陰に隠れていた二体目が一息つくカルロスの首を刈ろうと走り出す。

 

「させないわよ!」

 

 しかしどこからか入手してきたグレネードランチャーを構えたジルの榴弾がそれを防いだ・・・しかしそれでもハンターβは未だ複数体存在。ジルとカルロスが知るよしもないが、このハンターβは実戦投入の最終試験として二十体程がこのラクーンシティに投入されたが、その8割弱――おおよそ15体ほどがこの病院内になぜか殺到していた。通常のゾンビもいるなか二人は劣勢になるはずだが・・・・・・

 

BANG!!

「あー・・・・・・なんか久々に後方支援らしい仕事してる気がする」

『お前狙撃手だったんだな、ショットガン持って突撃するからポイントマンかと思ったぜ』

「自分でも自覚してるからやめてくれ」

 

 三階の手すりに腰掛けたブラッドは、座った姿勢で保持した【Steyr SSG 69】で病院外のゾンビと、こちらに向かって走り寄るハンターβを淡々と狙撃していた。忘れがちだがブラッドの本来のポジションはヘリでの輸送や狙撃手を主とした後方支援役である。背に背負われ続けられたいた本来の愛銃はこれまでの鬱憤を晴らすかのような精度と威力を発揮し、亡者と狩人の頭を次々と撃ち抜いていった。

 

「的を~狙えば~~・・・・・・外さねぇよ?」

 

 αチーム内なら一位のスコアを誇る名実ともに「射撃の名手」であるブラッドは、その能力をフルに発揮し続けて敵を撃破し続けジルやカルロスにかかる負担を減らし続けた。

 

『カルロス!あとちょっとでサイレンが止まるぞ!さっきヤツで入り口を吹っ飛ばせ』

「了解だ!!」

 

 戦線にこそいないが政府との交渉と病院内のシステムに侵入してサイレンの解除という優先度(プライオリティ)が極めて高い二つの任務を同時に熟すタイレルの号令により、カルロスは一際大きな支柱に爆弾を仕掛けるため奔走する。

 

「ブラッド!私のことはいいからカルロスに援護!!」

「了解」

 

 ジルからの要請により普段よりも数段低い声で短く返答したブラッドがカルロスに走り寄る集団に向けて腰のポーチから取り出した閃光手榴弾を放り投げ目潰しし足止めをする。

 

「――っうし設置完了だ!退避するぞっ」

 

 カルロスの報告とともにジルとカルロスはその場から退避。ブラッドも病院内へ舞い戻り受付場にいるのは殲滅されたハンターβの死体と大多数が撃破されてもなお生き残っていた()()なゾンビ達である。

 

ドゴォォォン!!!

 

 ・・・・・・頭を撃つ抜かれるか、爆発に巻き込まれるか。どっちがマシなのかは本人達にしか分からないことだが。

 

 

 

 

「でもって、政府との交渉はどうなってんだ?」

「サンプルがあるってこと自体に疑心暗鬼だったが・・・・・・ブラッドのヤツが持ってたデータ見せたら一発だ。もうちょっとだけ待ってくれるらしい。しかも保護した後は要人プログラムで保護してくれるらしい」

「えっ」

「・・・どうしたんだ?渡りに船だろ」

「あーイヤ・・・ウン脱出した後は別行動しようか俺たち。ねぇジルさん」

「まぁ、そうね」

「どうゆうことだ?」

「シンプルに身動き取れなくなるんだよ。政府に保護されるのは監視されるのと同意義だからな。これで終わりなら飛びつくんだが――俺たちはまだやんなきゃいけないことがある」

 

 強い決意の光を宿した瞳をカルロスに向けたブラッドはそう言い切った。カルロスがふと横にいるジルを見ると、彼女はまたこれまで通り強い意志を感じさせる鋭い目していた。

 きっと彼らはこの事件が終わってもその腰の得物片手に地獄に挑んでいくことが容易に想像出来た。

 

「…まぁ取り敢えず、目先の目標は街からの脱出ですかね。ニコライとか言うのが邪魔なんでしたっけ?」

「そうね、あのクソ野郎は街から出ようとする限り必ず邪魔をしてくると思うわ」

「成る程…まぁ四人もいますし、囲んで叩けば一発でしょう。戦いは数ですよ数」

 

 自身の右手の親指を、左手の人差し指から小指を使ってガッチリとホールドし邪悪に笑ったブラッドに対して、ジルは「元の調子になってきたわね」と笑い返し。カルロスとタイレルは「やべー奴と手を組んでしまったのかもしれない」とタラリと冷や汗をかいた。

 

「許容時間は夜が明けるまで。俺たちの目標はウィルスワクチンのサンプルの死守と、次点でニコライの排除若しくは無力化です」

 

 ニッコリと笑ったままそう言ったブラッドは各々の準備を進めさせた。戦闘員として派遣されたカルロスとタイレルはともかくとして薄手一枚のジルには職員ロッカーの中にあった革製のコートを羽織らせた。

 

任務開始(ミッション・スタート)です。せいぜい四人で馬鹿言い合いながら帰りましょう」

 

 気楽に言い放つブラッドには妙な安心感があったと後年のカルロスは語った。

*1
『バイオハザード3』に登場。ハンターαをより安価かつ大量に生産することを目的として作られたB.O.W.の一種。耐久性と攻撃性は通常のハンターよりも落ちるが、神経系の強化により飛来する弾丸を回避するほどの敏捷性と鋭い爪を武器に襲いかかる。ゲーム内では即死攻撃『首刈り』をしてくる雑魚敵最強筆頭格。わかしコンセプト通りに開発し戦闘能力も中々の高い完成度のB.O.W.なのだがその後のシリーズでの登場が一切ない不遇。




バイオ8見て意欲がヤバいので巻で行きます。(真顔)


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-1998年(バイオ3)-012

いっそのことRE:3終わったら試作的に8の冒頭部分書いてしまおうかと思った作者です。
余談だけどTwitterの一部フォロワーに小説の存在がバレました。


 復帰したジルを含めたカルロス、タイレル。そしてブラッドの四人は脱出手段を求め病院内にあると記載されていた地下施設を目指していた。

 一同はブラッドが事前に持っていたt-ウィルスの治療薬である【デイライト】によって政府からの条件を満たしていたが、それはあくまで爆撃までの時間を先延ばしにしただけに過ぎない。

 

 彼らが生還するには街からの脱出が必須である。

 

 しかし病院はラクーンの中心地にある立地なため、ただでさえゾンビの妨害が予想される陸路での移動は却下。郊外に繋がる川がほぼないラクーンでは必然的に空路になるわけだが、そんな折にブラッドが見つけたのがバード博士の研究室から見つけた【地下施設の地図】だった。

 

 他の3人は「こんな時に地下行ってどうする」と早々に地図を手放したのだが、()()()()()()に精通するブラッドは地図に記された一つのマークを見逃さなかった。

 

 丸で囲まれた「H」の記号…即ちヘリポートの地図記号を。

 

 意図せず本職のブラッドと心得があるカルロスという隙を生じぬ二段構えの陣形だった四人は即座に目標地点を再設定し、向かっている最中だった。

 

「こっちでこっち…んでここの空調施設を【EXIT】の標識がある場所を抜ければ……」

「成る程。地下駐車場の立体駐車場が、実は機械式駐車場だったってオチか」

 

 地図を持ったブラッドとタイレルは時に仕掛け扉時に声紋認証時に使用用途不明の謎解きを解きながらズンズン進んでいた。途中タイレルがハンターβに襲われかけ窮地に陥る場面もあったが横にいたブラッドのショットガンが火を吹き難を逃れた。

 

「よく考えたらココ【スペンサー記念病院】よね。確かにアンブレラの施設や一つや二つ。あって然るべきね」

「スペンサー…あぁ、アンブレラの創設者か。成る程確かにな」

 

 一方で探索型の二人が次々と謎や道を切り開いているのでヒマしているのが戦闘型――いやまぁジルもカルロスもそれなりに頭の回転が早い部類ではあるのだが、いかんせん前者二人には一歩劣る――の二人である。武力に関しても問題ないため暇を持て余して雑談に興じている最中だ。

 

「……というか一つ思ったんだが、ブラッドの奴結構若いよな?」

「そうね。確か今年で…19だったかしら」

「19!?」

「別のチームにレベッカって子がいるんだけど、その子を除けばS.T.A.R.S.最年少ね」

「実力は身を持って知ったが…親のコネかなんかか?」

 

 その言葉に、ジルは「ムッ」と口を尖らせた。

 

「違うわよ。彼元々クレー射撃の名手なのよ?それをエンリコがスカウトした形ね」

「ヘッドハンティングって訳か」

「えぇ。それに『操縦出来るのがクリス一人なのはダメだろ?』って言葉でヘリの免許まで取ってくれた。今ではヘリだけならクリス以上よ?」

「スーパーボーイって訳か……」

 

 誇らしげにするジルと予想以上に奇抜な経歴を聞いて唸っていたカルロス。

 

「…………あのですねジルさん」

 

 とその時、タイレルと交互に地図を見ていたブラッドが耳を僅かに赤く染めながら二人に振り返った。

 

「確かにヘッドハンティングされたのは事実ですけどエンリコ隊長にはボロ負けでしたし、ヘリの操縦だって元空軍のクリスがマンツーマンで教えてくれたから出来たことです。俺の力じゃないですよ」

「あらそう?でも努力はアナタの力でしょ」

「あーもう…押し問答ですね。諦めます」

 

 ジルからの言葉が“揶揄い”ではなく“善意と信頼”から来るものだと察したブラッドは舌戦をするだけ恥ずかしい思いをするだけだと察し、目を逸らした。

 恥ずかしがっているブラッドを揶揄うためか脇腹を肘で突くタイレルを、ブラッドは少々強く突き飛ばした。

 


 

「…いや凄いな。こんな物まであるとは」

 

 そんなこんなで、四人は地下への扉を見つけ昇降機を降り地下研究所へ降り立った。

 

「いやラクーンってこんかに地下建築盛んだったか……?」

「アンブレラで流行ってたんじゃないかしら」

「まぁ悪の組織っつったら“地下施設”だからな。妥当なんじゃないか?」

 

 緊急時の非常灯のみで薄暗かった地上の病院とは違い、その地下研究所はしっかりと照明が灯っていた。

 

「取り敢えず地図通りに行ってみますかね」

「そうだな、そうするか」

 

 地下研究所の二階(B0.5階…?)に移動するため昇降機を操作しようとした瞬間――

 

バチンッ!!

「うおっ」

「ヒューズがイカれた!?」

『ハッハッハッハッハ!』

「!?その声は……!」

 

 小さな火花を伴ってヒューズが爆裂。プスプスと焦げ臭い匂いを放つと同時に研究所一帯の照明が消える。

 それと同時にジル――それとカルロスとタイレルの耳に少し聞き慣れた嘲笑が響き渡った。

 

『やぁジル・バレンタイン、まさかウィルスを克服してここまで来るとは驚きだ。まだまだいいデータが取れそうで安心したよ』

「ニコライッ!」

 

 ジルが叫ぶと同時に視線を上に向け、他の3人もそれに釣られて上を見上げた。強化ガラスの向こう側、そこに居たのは少し白がかった銀髪と狐のような目。そして何より人を小馬鹿にしたような笑みが特徴的なニコライ・ジノビエフ当人の姿があった。

 

『久しぶりだなぁカルロス・オリヴェイラにタイレル・パトリック。おや?君達には確かナサニエル・バード博士の保護任務があった筈だが……博士はどうしたのかね?』

「しらばっくれるな!お前が殺したんだろうが!!」

「明確な裏切り行為だぞ!?何考えてんだ!」

『ハッ。裏切る?私が?……何も知らないと言うのは罪なモノだなぁ。まぁ懇切丁寧に説明してやってもいいが………』

 

 そこでニコライは一人黙っているブラッドを見遣ると、片眉を吊り上げ矛先を向けた。

 

『なんと!そこにいるのはジル・バレンタインと同じS.T.A.R.S.のブラッド・ヴィッカーズではないか。お目にかかれて光栄だよ』

「そりゃどーも」

『貴殿も大変だなぁ。ジル・バレンタインは貴殿と離れた後に連携のための行動を取らずチームメイトを放っといての単独行動。部隊員としては落第だ。更には警察官の本分である「市民の警護」すら出来ていない。しかもウィルスに感染した始末と来た』

「――ッ、テメ」

「待ってカルロス」

 

 間接的どころか直接的な原因である自分の存在を棚に上げての物言いに思わず憤怒したカルロスが怒声を上げようとした瞬間。当の本人であるジルに引き止められる。

 

「――――――」

 

 肝心のブラッドは口を一文字に結び不動の姿勢。目と耳こそは演説じみた中傷を行うニコライを捉えて離さないが、逆に言えばそれ以外は極めて平坦(フラット)。相棒への誹謗中傷へ何の感情も抱いてないように見受けられた。

 

「おいブラッド!お前も少しは言うことあるだろ!!」

「―――――。」

『ほお、聴衆(オーディエンス)としては優秀なようだな、安心したよ。』

 

 確かに司会(プレゼンター)のような大仰な声音と態度で話すニコライに対し口を挟むことなく、そしてカルロスに肩を掴まれ話しかけられた時にも微動だにせずにニコライの話に耳を傾ける姿勢はまさしく聴衆(オーディエンス)のソレだった。

 

「〜〜〜ッ!クソッ」

 

 恐らくこの状況はニコライの話が一区切りつくまで終わらない。そう予感したカルロスは手近な壁を叩き頭を落としたままジルの近くへと戻っていった。

 

『待たせたな。続けよう』

 

 そこからつらつらと語り出した内容はジルを徹底的に扱き下ろす内容だった。

 ラクーンシティの出来事から洋館事件のこと。そして更にはどこから調べたのかS.T.A.R.S.として活動していた頃の内容もあった。そしてタチが悪いのはニコライの話に“誇張”はあっても“捏造”はないことだ。

 元よりブラッドの担当は後方支援。災害やテロ、そして彼女の本分である爆弾解除の際などに前線に立つ事が多いジル(とクリス)はその分危機に陥りやすく、またそれを支援するのはブラッドの仕事だった。

 良く言えば「フォロー」、悪く言えば「尻拭い」。

 当の本人にも思う所はあるのか、ジルはその気丈な目をニコライから離すことこそ無かったが、その拳は微かに揺れていた。

 

『……とまぁ、こんな所かな?どうだろうか。貴殿としてもより良いモノだったのではないかな?』

「――それで終わりか?」

 

 そう言うとブラッドは「ふぅ」と軽く息を吐き足を軽く広げ右足を少し後ろに下げる。体にかかる体重を片方の足へ集約させ軽くリラックスする形だ。と同時に、彼にとっては普段から使うもう一つの姿()()と同じモノだが…今は割愛しよう。

 

「それで、()()()()()()

『なんだ、言い足りなかったか?だったらもっとBANG!!!――』

 

 ――次の瞬間、ニコライの顔面が粉々になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――急に何だ?」

 

 いや正確には、ニコライの顔面の位置にある()()()()()が粉々になった。

 先程までは音響装置を通じての響きような声が、今はニコライ自身の肉声で十分聞こえる程度には風通しがよくなっていた。

 

 ブラッドの両腕には愛銃の【Steyr SSG 69】が握られており、その銃口からは白い硝煙が漏れ出ていた。

 因みに先程言いかけた「もう一つの姿勢」の意味は彼が近中距離で銃を発砲する際に取る「立射」の構えである。如何にも「話を聞き疲れた聴衆(オーディエンス)」のような格好だが、その実「獲物が一息付く瞬間を見て牙を剥いた狩人(ハンター)」のそれだったと言う事だ。

 

「さっきから黙って聞いてれば、何だお前」

 

 スコープから目を離したブラッドの口から放たれたのは先程の異常な行動とはあまりにもかけ離れた平坦(フラット)な声だった。

 

「――巫山戯るなよ?」

 

 しかしその声音は、聴く人全てに威圧感を与えるような憤怒に彩られ、カルロスやタイレル。そしてニコライでさえも顔が強張る。

 

「市民を守れなかった?それはお前の仕業だろう。ウィルス感染した?原因であるネメシスを誘導したのもお前だ」

 

 ニコライが言った一言一言に反論するように、ブラッドはゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。

 

「洋館事件での危機?あんなの予測できてたまるか。俺と合流しない?通信系はどれもお釈迦だったし、ジルさんの行動のおかげで俺は合流出来た。」

 

「作戦中の援護?アレは任務で、俺の仕事だ。ゾンビになり掛けの死に損ないにトドメすらさせない臆病者?ハッ――覚えとけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジル・バレンタインは確かにゾンビになる可能性がある人間を終わらせてやれない『お人好し』だが、お前みたいな外道相手にも躊躇う程『慈悲深く』はないぞ?」

「――――そうか、覚えておこう」

 

 強い視線を浴びせるブラッドに耐えかねたようにニコライは少し早足でその場を後にした。

 

「ッチ、やっぱ撃ち抜けなかったですね。これだったらジルさんのグレネードランチャーのマインスロワー弾で「ブラッドォォ!!」おおお!?!?」

 

 ブラッドが振り抜き3人を方を向こうとした瞬間。彼の目の前に広がったのは3人の仲間と暗くなった地下研究所ではなく視界一杯のむさ苦しいナイスガイ(カルロス)だった。

 

「お前っ!冷淡な奴だとは思ってなかったがお前…お前えええええええ!!」

「えっえっえぇ!?なんだよカルロス離せって……ジルさんも助けて下さいよっ!」

「…ごめんなさい、今は無理そうよ」

「チームメイトに恵まれたなジル」

 

 泣きながら怒るカルロスに困惑するブラッド。手の甲で顔を隠し天を仰ぐジルに爽快げな顔をするタイレル。

 彼らがこの後無事替えのヒューズを見つけ、昇降機を再起動したのは言うまでもないだろう。

 

 


 

【今週のビ○クリ○ッキリメカ】

 

 はいやってまいりました今週のビ○クリ○ッキリメカのコーナー。司会進行とレポートを取るのはブラッド・ヴィッカーズ、ブラッド・ヴィッカーズですどうぞよろしく。

 

 さて今回のコンセプトは【強力な獣(B.O.W)に確実にダメージを与えるトラップ】。依頼者はジル・バレンタインとなります。

 ジルさんがいうには己にウィルスを注入した変異した怪物(写真を拡大した所コートの端にネメシスと記載されていた)がまだ生きており、この地下研究所内に自分達と同じようにに侵入している可能性が高い。そのためソイツの足止め、また奴の頑強な皮膚にも問題なく通用する強力なブツが欲しいとのことです。

 

 そんな訳で用意するのは俺たちよりも前に突入したと思われるどこぞの特殊部隊が遺したと思わしきラペリング用のワイヤーと縫合用のちょっと太めの糸。そしてトラップの本体となる手榴弾です。

 

 まずは此方の糸と手榴弾をチャチャッと繋いで糸を引っ張るだけでピンが抜けるようにします、コレでお手軽高火力の完成です。

 

 次にワイヤーと手榴弾に繋げた糸をダクトテープでしっかりと連結させます。

 

 最後にワイヤーの端と端をターゲットが通りそうな場所にコレまたダクトテープで固定します。流石日曜大工にそのまま流用できるダクトテープだなんともないししっかり固定させてるぜ!*1

 

 これで「対象に複数個の爆発物を一気に浴びせる高威力のワイヤートラップ」の完成です!

 

 ………え?「それだとターゲットが掛かる前に普通のゾンビやハンターが引っ掛かって無為に終わるんじゃないか」って?

 

 チッチッチ♪ 此処までは対人にも流用できるトラップ、こっからがB.O.Wに特化した工夫よ。

 

 そもそも疑問に思わなかったか?「なんでワイヤートラップの(ワイヤー)部分にマジもんのワイヤーを使うのか」と。「普通の糸でいいじゃないか。そっちの方が態々ダクトテープで連結させる手間もない」ってさ。

 

 理由は俺が使ったワイヤー、前述の通り鍛え上げられた軍人+装備の重量を楽々支える立派な物だ。人間一人が引きちぎれる代物じゃない。それこそ車にも負けないような膂力の持ち主じゃない限りはないはな。

 ハッキリ言うとこのトラップ。ゾンビやハンターそして俺が引っかかったとしてもワイヤーとダクトテープの耐久性が高過ぎて()()()()()

 

 つまりこんなトラップを機能させられるのは野生のクマか()()()()()()()B().()O().()W()だけって事である。

 

 そして最後に、この地下研究所には件のネメシス以外の巨大B.O.Wはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 命名【キミだけが切れるゴールテープ】

 

 因みにゴールテープの先は生命的な意味ではないとは無きにしも非ず。

 そしてビ○クリ○ッキリメカは作るだけじゃダメだ。実際に仕掛けてその効果を確かめるまでが【今週のビ○クリ○ッキリメカ】なのだ。

 

 

 

 


 

「オーニさんこっちら!手ーの鳴ーるほーうへー!!!」ガシャン!!

『GAAAAAAAAAAAAッ!!』

 

 ブラッドがそう言い放ち、『パンパン!』と一拍分の手拍子が終わった瞬間隔離壁が完全に落ち切る。

 哀れブラッドのビッ○リドッキ○メカによって機動力の要である足を潰され、またトラップ起動時の爆音によって奇襲すら出来なかったネメシスくんの困惑とも激昂ともとれる咆哮は、隔離壁越しの四人の耳にもシッカリと届いていた。

 

「ハンッ!デカけりゃ強いんだったら人間サマはここまで栄えてないんだ!!有史以来人間は生粋の大物喰らい(ジャイアントキリンガー)なんだよ覚えとけ!」

「「「………………」」」

 

 勝ち誇ったように中指を隔離壁越しのネメシスに向けるブラッドに対して3人が思ったことは一つ。

 

(((色々と台無しだぜ/よ)))

 

 ニコライとの遭遇時に見せた顔と現在の顔。どちらがブラッドの“素”なのか分からなくてなった3人だった。

*1
さすゴック




A.両方とも“素”です。
評価、感想お待ちしています!!
追記: UA30000突破しました。これからも頑張ります


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-1998年(バイオ3)-012

バイオRE:3編最終話です。ニコライ関連でやりたいことは前話でやりきったので今回で終わらせます。短いし内容も薄いので最悪読まなくていいです(オイ)


■月○日⑩+①

 

 モノの見事にネメシスを出し抜き研究所部分からに到達した。

 テンションがあがりFワードを連発する俺をジルさんがぶっ叩くことによって強制終了(シャットダウン)再起動(リブート)を瞬時に経験し目を白黒させながらも研究所内にあった地図と施設の案内書を捥ぎ取り再びタイレルと共に読み込み始める。

 

 地図の把握は元から得意なのでいいが、問題の施設の方だ。やはりアンブレラの中でも特大に黒い部分を取り扱う為かセキュリティがかなり厳重、電子錠に指紋認証生体認証当たり前らしい。……まぁ緊急時用の全ての扉を解除できるアクセスキーがあるらしいので先ずはそれを作るところから始まりそうだ。

 

 なんだよカルロス……フムフム。「ニコライの野郎は置いてった書類を見る限りウィルス本体よりもジルとネメシスの戦闘記憶を重視している可能性が高い。アイツの思惑通りになるのは気に食わないなんかないか?」だって?

 いやいや俺達の主目的はあくまで【ワクチンを死守しての街からの脱出】だ。んな妙な手間を取る訳には……タイレル?

 

 え?「アイツが自分の脱出手段を用意してないとは思えない。上手くいけば()()でヘリとかの脱出手段が増えるんじゃないか?」

 

 …………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 よし作戦はこうだ(手のひら返し)。

 

 まずニコライは俺達が“既にワクチンを持っている”という事を知らない。だが“脱出にワクチンが必要”ということは知っている。

 今回はこの情報の行き違いを利用したいと思う。

 

 具体的に言うと今からこの地下研究所でワクチンを作る。

 

 バード博士の研究資料の一部と研究所内のワクチン精製の手順と完成品の写真を見るに、ここで出来るワクチンは教授達が作った「デイライト」のような日光の如き白いワクチンじゃない。寧ろグレープジュースを思い浮かべる………濃い紫色だ。

 

 そしておそらくだが、ニコライがイメージしているワクチンは後者だろう。

 アイツは俺たちより先にこの研究所に辿り着き、尚且つ破棄する前のバード博士の完全なワクチン資料を読む機会があったはずだ。元チームメイトのカルロスがタイレルがこぞって「目敏い」と評価したのならほぼ確定と思っていい。

 

 故に俺たち四人の誰かがこれ見よがしにこの研究所印のワクチンを持っていたら「あのワクチンがアイツらの頼みの綱なのだろう」と思い、あわよくば……と企むはずだ。そこを叩く。

 

 まずは二手に分かれる。仮名Aチームはワクチンの精製を出来るだけニコライに見せつけるように行い、仮名BチームはAチームの後を追いながらも隠密に徹し、ノコノコ出てきたニコライをぶっ潰すという作戦である。

 

 そして最後にそのチーム分けだが――

 

 

 

 Bチームは俺、タイレル、()()()()

 A()()()()()()()()()()()という塩梅で行く。

 

 ニコライは優秀な狩人(ハンター)だ。それはこれまでの行為や出立ちを見れば大体分かる。奴を引き出すのなら、こちらもそれ相応にリスクヘッジを捨て置かなきゃいけない。

 

 ジルさんは納得してくれたし、カルロスとタイレルも納得はしてくれた。さてさて、後はうまく釣れるかどうかだが……………

 


 

「クッ――」

 

 ジルは現在足場の端っこから転落しかける所をなんとかギリギリで持ち堪え、現在己の握力だけで自身の体重を支えていた。

 こうなる経緯としてはネメシスに追われながらもなんとかワクチンを精製。拘束具が外れ成長限界がなくなったことにより一層苛烈になったネメシス改め獣化ネメシスの攻撃を躱しながらも、つい先程廃棄施設も思わしき円形のドームの足場を移動。通り過ぎようとした所で獣化ネメシスが襲来し、人外の膂力を見事に発揮し足場の留め具を破壊しその衝撃でジルは体勢を崩し現在の状況へと陥っていた。しかも悪い事に精製したワクチンは彼女のサイドポケットから零れ落ち現在彼女が掴まっている足場のギリギリで均衡を保っている状態だった。

 

「…おっと、これは何だ?拝見しよう」

「ニコライやめて!街にはそのワクチンが必要なの」

「俺よりもか?…ふん」

 

 そしてジルの目先には不運なことに嫌らしい笑みを浮かべたニコライがいた。ニコライはジルの片方の指を蹴飛ばすと同時にもう片方の指を軽く踏み付ける。ジルは小さく苦悶の声を上げると、満足げな顔をしながらも拾ったワクチンを手で弄んだ。

 

「この俺がせっかく知恵を授けてやったというのにまるで活かしてないとはな」

「お前にとって命とは値段がないものだろう。だが俺はその命で、カネを稼いでいる」

 

 出来の悪い生徒に言い聞かせる様にゆっくりと顔を上げると大仰に手を広げた。

 

「そこで取引だ」

「お前は下で、ネメシスと戦い俺はそれを記録し戦闘データとして売る」

「お前がいいショーを見せてくれれば、俺はワクチンで儲ける必要なくな「じゃあお前がここでどうにかなればそもそも儲ける必要性すらない訳だ」――――。」

 

 言い切る直前にニコライの頭の後ろに冷たいモノが当たる。温かみのある人の手とは違う…殺傷力だけを突き詰めた冷たい「銃の銃口」だと、いつも銃とともに生きてきたニコライは気付いた。

 

「先ずは手を上げろ。その汚い足を離せ、勿論蹴飛ばせば……分かるな?」

 

 カチャリという音ともに有無を言わせぬ強い口調で言われ、ニコライは一先ずジルを踏み付けていた足を退けゆっくりと手を上げた。

 

「私の手にはワクチンがあるが?失えば困るのではないかい」

「ハハハハハ。お前俺の資料も見てたんだろ?――俺は用意がいいんだ。既にワクチンは持ってる」

 

 場のイニシアチブを取るために上げた手に握ったワクチンを見せるが呆気なく一蹴される。

 

(チッ、揺らぎなしか。狂ったな……)

 

 内心で舌打ちをしつつも自分のホルスターにある拳銃とナイフに意識を向けつつ、ゆっくりと手を下げ始める。

 

「言っとくが、仮にお前が変な行動をしたら俺の後ろにいるカルロスとタイレルがすぐさまお前を撃ち抜くことになっている。抵抗しない方が寿命は延びるんじゃないか?」

 

 そう言うと共にブラッドは空いた片腕で角の先を視認する際や反射光で合図を送る際に使用するための小型の手鏡をニコライの視線の端に置くと、その先にはブラッドの宣告通り上階の踊り場とモニター室にそれぞれの銃を構えた二人が油断ない顔でスコープを覗いていた。

 

「――で、俺は何をすればいいんだ?お前達に謝る?」

 

 諦めた様子で要求を聞くニコライ。その瞬間ブラッドは悪どい笑みを浮かべた

 

「あぁそうだな。先ず武装解除……()()()()()()()

「なに…?」

「ところでニコライ。お前ネメシスの戦闘データが欲しいそうだな?」

 

 突拍子もない発言にニコライは思わず目を瞠目させる。

 

「確かに俺の目的はそうだが…いやまてお前はまさか――」

「だったら自分の実体験込みでクライアントに報告出来るモノ取ってこい!」

 

 瞬間ニコライの頭から銃口の冷たさが消えるとともに、背中に衝撃が走り。その足からは地面がなくなっていた。

 

「キッサマァァァァァァァァァ!!!」

「ビデオテープはここに置いとくから回収しとけよー!」

 

 ニコライの断末魔の声に返答すると宣言通りニコライが持っていたビデオテープの録画開始ボタンを押し足場のすぐ脇に置いた。

 

「囮役お疲れ様です。手をどうぞ……っと!」

「ハァー…肝が冷えたわ」

 

 ジルの手を握り上げ足場に復帰させた。

 

「タイレル。五分後に廃棄用の硫酸流す様にしといて」

『ハ?いやそこまでしなくてもいいだろ』

「多分だけどアイツはネメシス打倒するぞ。どちらかと言うと死んだふりが得意なネメシス用だ」

『成る程。そうゆう事なら了解だ』

「あと硫酸流すちょっと前にクレーン下ろして上げるようにも出来るか?」

『?まぁ出来るが…』

「頼む。まぁ強敵倒したら報酬は必要だろ?」

 

 先程までニコライの後頭部に突き付けていた「サムライエッジブラッドモデル」のセーフティをロックしホルスターに納め軽く微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

「……芋虫の出来損ない?」

「それは芋虫に失礼でしょ」

 

 先程の廃棄場を過ぎた辺りで、硫酸で溶かしたにも関わらず再生してきたネメシスが現れた。体の大部分はゼリー状を通り越して半ゲル状になっており、ノソノソとした緩い速度で現れた。

 それは最早進化というよりも退化を思わせる変化だった。*1

 

「いやなんかもう銃とか効きそうにない外見ですけど。どうします?飛べはしなさそうですしほっといて逃げますか?」

「……いや、立ち向かうわ。丁度効きそうなモノもあるわ」

 

 そう言いアゴで指し示した先は、研究所内の兵器資料で見かけた試作大型レールガン【パラケルススの魔剣】だった。確かにあれなら現在のネメシスにも通じそうだった

 

「あーまぁ確かに……っと!?」BANG!!!

 

 賛同の声を挙げようとした瞬間に刺す様な殺気を感じたブラッドは本能のまま上体を逸らすと、一発の銃弾が頬を掠めて飛び去って行った。

 

「貴様だけは殺してやる…!」

「っと、まぁ無事だとは思ってたが……」

 

 現れたのは返り血などで汚れつつも目立った損傷はないニコライの姿だった。

 発砲した拳銃を携えブラッドを見るその目はジルやカルロス達が見知った姿からは想像できない程の爛々とした獣の様な目をしていた。

 

「…カルロスはこっち来てくれ。タイレルは中央エレベーター辿って屋上でヘリ起動しといてくれ」

『ニコライの野郎だな。今すぐ行くぜ!』

『了解だ』

 

 無線機から口元を離すと拳銃と大型ナイフを構えニコライへ目線をやった。

 

「じゃあジルさん。そっちのデカブツを頼みます」

「了解!貴方こそ頼んだわよ!!」

 

 互いに互いへ“託す”と、二人はそれぞれの敵は向き直る。片や一夜から始まった因縁に終止符を打つ為、片や仲間を侮辱した外道に制裁を下すため。ジルはパラケルススの魔剣を構え、ブラッドはサムライエッジをニコライへ向けた。

 


 

■月○日⑩+②

 

 ハッキリ言おう。ニコライ滅多クソに強かった。

 シンプルに総合力が高いし一見怒り狂っていた様に見えたけど実際はかなり冷静で、仕掛けたフェイントは大体無視されるか逆にフェイントされ返される場面もあった。

 

 カルロスの助けがなかったら……勝率はおおよそ三割と言った所だろうか。流石は秘密任務を任せられた奴とでも言えばいいのだろうか。前述した通り飛ぶ様に現れたカルロスの不意のラリアットによって沈めたニコライを拘束し、その後ジルさんもネメシスを完膚なきまでに滅殺したのも確認した。いやレールガン口にぶち込んでゼロ距離で撃つなんて相変わらず変な所でエグい人だ。

 

 ニコライの命乞いを無視して(ジルさんの「そのぐらい自分で明かして見せるわ」という発言には痺れた)屋上へ行くと、タイレルがヘリのプロペラをあっためながら待機してくれていた。

 側にはニコライの脱出用であろう小型ヘリもあったが、元々あった方が四人乗りであったので無視して乗り込んだ……操縦桿を握るのはもちろん俺だ。

 

 …………資料映像と、戦争映画で見たことはあったが。まさか「街一つが新型ミサイルで吹き飛ばされる」シーンを生で見るとは思わなかった。衝撃波も中々だったが、あの程度なら俺にとってはそよ風に等しいものだったので問題なしだ。

 

 取り敢えず、これからどうしたもんか。アンブレラの陰謀を砕くための活動は今後やめる気は勿論ないが、まさかこんなに早く街から出る羽目になるとは思わなかった。今クリス達はヨーロッパに居ると聞いたがセーフハウス空いてるか?生活空間の確保って意味ならスイスにあるバリー家を訪ねてもいいけど………

 

 まぁ取り敢えず言えるのは「俺たちの戦いはこれからだ」ってことぐらいか。

*1
二足歩行の通常形態から四足歩行の獣化形態、そしてアメーバのような這いずりをする最終形態。戦闘能力って意味なら進化かもしれませんけど生物学や進化論からしたら退化だよなってプレイ中思いました




これみて一区切り、ありがとうございました!
前回の様に小話と軽い予告をしてからバイオ4編を書き始めます。
感想くれると喜びます


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キャラクター紹介&嘘予告&本予告

キャラクター紹介です。


名前:ブラッド・ヴィッカーズ

年齢:19歳

身長:180cm

体重:64kg

血型:AB型

役割:後方支援、ヘリ操縦

 

概要:元S.T.A.R.S.アルファチーム所属のRS。クレー射撃の大会で卓越した成績を収め、それに目を付けたエンリコによってスカウトされ「操縦できるのがクリスしかいないから」という理由でヘリの免許も取得した期待の新人。銃の扱いに精通し、また趣味でやっているフリークライミングやパルクールを駆使した踏破力にも優れている。性格は表面上飄々としているが、本来はかなり臆病な性格。そのため入念な準備を怠ることはないし強力な銃火器を使う事に躊躇いがない。

 現在はBSAAオリジナルイレブンの遊撃隊として活躍しており、ヘリ操縦の腕前と仲間の生還率の高さから【不死鳥】の異名を持ち【英雄】クリスと共にBSAAの顔となっている。また周囲に溶け込んだり建物の侵入が得意なため潜入任務や偵察任務も任されることが多い。

 

戦闘能力:狙撃銃やグレネードランチャーなどの強力な銃火器を用いての後方支援、ヘリでの輸送や火力支援がメイン。

 

使用武器一覧

【サムライエッジブラッドモデル】

後方での支援射撃を意識し射程距離の延長を目的としてロングバレルを採用し専用の小型化ドットサイトが取り付けられている。ロングマガジンも採用しているため全体のシルエットが大型化している。

【大型コンバットナイフ】

刃渡り18センチの大型ナイフ。

【Steyr SSG 69】

ボルトアクションスナイパーライフルの一種。詳しいことは知らん。タグにもそう書いてある

【M4カービン】

M16自動小銃を小型に改良したアサルトライフル。コンパクトでフルサイズのM16と比べて取り回しがし易いので市街戦や室内戦でその威力を発揮する。

【AA-12】

バイオオリ主御用達の化け物ショットガン。注目すべきはその連射速度と装弾数にあり、専用のドラムマガジンによる最大32連射と毎分300発の連射速度で敵を肉塊にする。控えめにいって何を思って開発したのか分からないショットガン。まぁ軍で真面目にゾンビ対策考える国だしそうゆうこともあるのだろう。

【INA-DUMA】

ブラッドが逮捕したテロ組織(に偽装したアンブレラの実働部隊)から押収した特殊銃。胸や手足に撃ってもまるで威力がないが頭部やコアに撃つ事によって殺人的な威力になる。

単四電池がマガジン代わりで一本につき6発程度。現在影が薄いが後で活躍させるので期待してね。

 

登場人物達から互いに一言

【クリス・レッドフィールド】

ブラッド 「頼りになるけど物落とすのは勘弁してくれ。始末書書くの俺なんだぞ」

クリス「ヘリの腕では、もう抜かされてしまったな。支援射撃の腕もいいから安心して背中を任せられる」

【ジル・バレンタイン】

ブラッド「精神力がヤバい。なんなのあの人多分神話生物の類にあっても平然としてるよ」

ジル「洋館の時もラクーンの時も、凄い助けてもらったわ。ビビリなのが玉に瑕だけどね」

【バリー・バートン】

ブラッド「マグナムジャンキーが悪いとは言わないけどお前それ人間相手に撃つもんじゃないだろ!?あと銃は子供の手の届かないとこに置け!!」

バリー「可愛い後輩だな。モイラの件もあるし、恩義ばかりだ」

【レベッカ・チェンバース】

ブラッド「最年少記録破られた憎きライバル……冗談だ。見た目に似合わず胆力があるよな。海兵とはどうゆう仲なのかちょっと気になる」

レベッカ「すごく良い人ですよね。ビリーの書類偽装にも手を貸してくれて、ありがとうございます!」

【リチャード・エイケン】

ブラッド「よき同僚」

リチャード「悪友だ」

 

メタ設定:作者の「バイオで小説書きたいな…でも一からキャラ作るのはな……」という怠惰から生まれ年をずらされた半オリジナルキャラクター。コンセプトは「リアクション担当」と、そのままバイオハザード自体やクリスやジルに突っ込む機会が多くなった。

 実はTとG両方に耐性がある稀有なウィルス耐性の持ち主、そのため老化が少し遅く。肉体年齢マイナス五歳ぐらいされている

 


 

……思ったよりも文字数少ないな。

せや思い付きで書いた嘘予告でも垂れ流そ(間抜け)

 


 

【嘘予告1】

時系列:4のちょい後ぐらい

 

「よぉブラッド。早速なんだが……【魔剣教団】という組織を知ってるかな?」

 

 とある日に、ブラッドはBSAAから引退したクライヴ・R・オブライエンから開口一番そう質問された。

 

「…は?組織単位じゃなくて俺単独で?」

「酒馴染みから聞いたんだが、そこできな臭い企み行われてるらしい。元上司の頼みで行ってくれないか?」

 

 半信半疑で指定されたポイントに向かったブラッドは、懐かしい人物と遭遇する。

 

「久しぶりね。バイキン退治の専門家さん?」

 

 いつぞやの任務先で会った黒髪の麗しき女ハンターから、【魔剣教団】なる物達の陰謀を聞くブラッド。

 

「悪魔だの天使だの……冗談はそのランチャーだけにしてくれ」

 

 荒唐無稽な話に辟易するブラッドだが、彼女の言葉通り街には人外の…しかし彼が知るB.O.Wとはまた違う化け物達が街に現れた。

 

「このっ…銃が効くだけ幸いか」

「おいオッサン!下がってな!!」

 

 偶々遭遇した青い青年と行動を共にするブラッドは、教団の計画の全貌や街で現れた化け物……()()について知っていく事となる。

 

「魔界があるってだけでも驚きなのに悪魔の力を利用した天使てお前…聖書には書けないな」

 

 青年とその愛する人の別離、兄のように慕っていた人物の裏切りと精神的に打ちのめされる青年。

 

「なんで、なんでだよクレド!」

「分かるぞ。俺も元上司に裏切られたからな」

 

 そして現れる赤き半人半魔

 

「いやお前刺されてたよな?」

「いつものことでな。慣れっこさ」

 

 彼は使われるものこそ違うものの根底にあるのは同じ“人災”にどう立ち向かうのか。

 

devils must cry(泣き喚け悪魔共)

 

 

 

「なぁ今なんか仲間割れしてそうだったから悪そうな方単射砲でブチ抜いたけど大丈夫!?大丈夫だよな!!!?」

 

コラボ元:Devil May Cry 4

進捗:進捗ダメです。

 


 

【嘘予告2】

時系列:リベレーションズ2の後、6の直前

 

「日本支部から伝達?」

「ああ。まったくもって健康体だった学生が意識不明の重体になったり、急にガス爆発が起こっているようでな。他にも不可思議なことが起こっているらしい」

「で、俺に調査をって事ですか」

「そうだ。今のところ日本にB.O.Wが密輸されたという情報はないが…万が一のこともある。俺も行きたいところだが、生憎と中東での任務もあるからな」

「はいよ。まぁ【英雄】サマはガンガン前線立って威光を示してくれ」

「ハハハ。【不死鳥】が駆るヘリに乗れないのは、残念だがな」

「ヤメロォ!」

 

 司令に従うまま、ブラッドは日本へ飛ぶ。

 

 時期は二月と、寒さが厳しい雪の日に、ブラッドは―――「冬木市」の土を踏んだ。

 

「日本に来るのは、何だかんだ初めてだな…多少は話せるが……」

 

 図書館や被害のあった学校などで調査を進めるブラッド。

 

「誰も近づかない幽霊屋敷に、森の奥の古城…如何にもって感じだな……」

「被害は隣町まで広がってるのか。貧血みたいな症状ではあるけど血は抜かれてないか」

「十年前の大火災といい、呪われてるみたいなトコだな」

 

 そして、その夜は訪れる。

 

「――アンタに恨みはないが、まぁ運が悪かったと思ってくれや」

「ザケんなよ時代錯誤野郎…!」

 

 側にいた少年の体を引き摺り、なんとか逃げおおせるブラッドと。その家の蔵で運命(Fate)と出会う少年。

 

「俺の名前はブラッド・ヴィッカーズ。BSAAから派遣された調査員だ」

 

 彼は己の身分を明かし、事態の解決へと乗り出す。

 待ち受けるは稀代の英雄、魔術師、化け物達

 

「猛犬の異名は伊達じゃねぇ」

「やっちゃえ、バーサーカー」

「アナタは、優しく殺してあげます…」

 

 強敵に立ち向かうべくブラッドはある決断をする。

 

『――――――』

「あぁそうだ。依頼料はそうだな…ネオンの手直しでどうだ?」

 

 やがて少年は己の夢の果てと向かう合う。

 

「正義っつーのは、俺がもたらすものじゃない。ましてやお前でもない」

 

 ブラッドの呼び声に応えた者も加わり、事態は混迷を極めていく。

 

「ノックアウト!」

「■■■■■――ッ!」

「英霊でもないのに…どうなってるのよ!?」

 

 この聖杯戦争(グレイル・ウォー)を制するのは誰か―――――。

 

【Fate stay/night F×B×D】

 

「久しぶりだな、ブラッド君」

「コトミネ……」

「早速で悪いが――――麻婆でもいかがかね?」

 

コラボ元:Fate stay/night

進捗:創造の範疇を出ません(泣)

 


 

【予告】

 

「大統領の娘の奪取?」

「そうだ。お前が適任だと報告した」

 

 降って沸いた一見の依頼が、ブラッドを新たな地獄へ呼び寄せる。

 

「協力者の名前は…大統領直属エージェント。レオン・S・ケネディだ」

 

 覚えのある名前の協力者と共に、ヨーロッパの一部へと飛ぶブラッド。

 

「アーアーアーアアアーアーアアー(OP)」

「どうした急に?」

 

 襲い掛かる村人達。

 

「コイツらt-ウィルスじゃないな…」

 

 女スパイの暗躍とそれによって軽く意見が割れる二人。

 

「殺すとまでは言わないが……」

「だが、俺が今ここに居るのはエイダのおかげだ!」

 

 レオンとアシュリーの体内に植え付けられた寄生虫。

 

「頭の中に、寄生虫が!」

「頭の中にはいないわよ!!」

「ボケだから気にすんな」

 

 怪しげなキザ男に村の長。

 

「大統領は自分の娘の胸にミサイルを搭載してるのか?」

「そんなに羨ましいなら今すぐお前の胸をダイナマイトボディ(物理)にしてやろうか?」

 

「貴様はよそもの以前の問題だ…ここで死ね」

「焼き討ちじゃー!」

 

 武器商人や若作り城主

 

「ウェルカム…ヘッヘッヘ」

「あっ俺武器の類は自前であるから弾とハーブだけくれ」

「」

 

「いま私の右腕と、その五指が行きますからね」

「右腕が外れるのか?」

「フィンガーバルカンかな?」

 

 立ち塞がる壁や強敵を前に、彼らはどう立ち向かうのか。

 

「お前は気に食わないが…今はレオンのためだ」

「えぇそうね。私もアナタが嫌いだけどそこだけは同意するわ」

 

【バイオハザード4】

 

「クリスが行方不明て――行ったの雪山でしょう?電波途絶して繋がらないだけでは?」

 

進捗:現在鋭意執筆中。乞うご期待!




あとは軽い小話書くか、書かずにそのまま本編ですかね。あと嘘予告の内容はヴィレッジ終わったら書くかもです(遠い未来)


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【アシュリー・グラハム救出作戦】
-2004年(バイオ4)-001


新章開始です。


 とある日。ブラッドは警察の紋章入ったワゴン車に揺られヨーロッパのとある地域に赴いていた。

 窓から見える景色は季節柄かそれともこの地域の植生が成せることなのか、緑は少なく寧ろ「灰色」という印象を抱かせた。

 

(折角だったら地中海とか見に行きたかったな……任務じゃなかったらだが)

 

 そう思いながら自分の上腕部の袖にある意匠を見て、ブラッドは微かにため息をついた。

 地球を囲うような猛禽類のマーク……対バイオテロ部隊【BSAA】のシンボルマークが、ブラッドの腕で陽光を跳ね返しながら輝いていた。

 

「…にしてもアメリカ様のエージェントだけじゃなく、BSAAの調査員までとは。この先の山奥に何があるってんだ?」

 

 ふと運転席で車を動かしていた現地の警察官が、揶揄う様な口調で言ってくる。

 

「悪いが俺からは言えないな、上に行ってくれ。エージェントからはなんかあるか?」

 

 軽快な口調で返すと、ブラッドの隣で腕を組んで座っていたプラチナブロンドの髪をした細身の男性が口を開いた。

 

「…迷子の娘の捜索だ。そう聞いてるだろ?」

 

 そう簡素に言い終えると目を軽く伏せて先程のブラッドと同じように窓の外を眺め始めた。

 冷たい態度に少々腹が立ったのか助手席の警察官が口を開こうとするが、その前にブラッドが口を挟む。

 

「まっ。そうゆう訳だ……口止め料込みでそこそこ高い金渡してるんだ。分かるだろ?」

「…ハァー、ヘイヘイ詮索はしねぇでおくよ。俺らも首切られたくはないからな」

「まぁ「野郎四人でパーティに来た」って報告書には書いておくさ」

「それ【報告書】じゃなくて【始末書】の間違いじゃないか?」

「違いねぇ!」

 

「取り敢えず例の村までのドライブ。頼むよ」

「任せとけ。まぁ安全はともかく安楽は保証しないけどな」

「頼りにしてるぜ」

 

 険悪な雰囲気から一転陽気な空気になった警察官達を見て、ブラッドの隣の男が彼にだけ聞こえる音量で話し始めた。

 

『助かった。俺は生憎と皮肉屋だからな』

『…強く在らないといけないのは理解できるが、協力者にまで発揮することないと思うぞ?前会った時はまだ素直だったろうに』

『この数年間で変わったってことさ…寧ろアンタは全然かわってなくて驚いた』

『そりゃどーも』

 

 金髪の男……今回ブラッドと一緒にアメリカ大統領の娘である「アシュリー・グラハム」を救出するために派遣されたエージェント、レオン・S・ケネディと目配せをし合い会話を打ち切った。

 

(アメリカの情報部とBSAA(ウチ)の諜報部が掴んだ情報によると、アメリカでアシュリー嬢を攫った奴らがこの地域で目撃された。だから捜査員として機動性と継戦能力に定評にあるらしい俺が選ばれた……か)

 

 アメリカはともかく対バイオテロを専門とするBSAAが同じ情報を掴んだということは、この一件は間違いなくB.O.W絡みだとブラッドは半ば確信しながら車に揺られた。

 

『俺たちには別任務がある。同行したいのはやまやまだが……』

『アナタはアナタの、私たちは私たちの任務をやり遂げるとしましょう。元後輩にもよろしく伝えて頂戴ね』

 

 本部を発つ前にクリスとジルに言われた言葉を反芻していると、不意に車が止まった。どうやら警察官のうちの一人が尿意を催したらしい。

 

「ここだけだとただの寂れた片田舎って印象だけどな」

「俺もここ迄は来たことねぇな…タバコどうだ?」

「先輩なら貰ったかもな。レオンは?」

「俺もいい」

「二人ともか、外で吸った方がいいか?」

「いや別に」

 

 そうかと相槌を返しさも旨そうにタバコを吸い出した警察官を横目に、ブラッドは窓の外を見る。

 

「……ん?」

 

 するとある一点に違和感を感じ、ブラッドは窓を開けポーチから単眼鏡を取り出し違和感を感じた方向を注視し始めた。

 

「?どうしたんだブラッド」

「――あー成る程。()()()()()

 

 

「すまねぇ、待たせたな」

 

 単眼鏡から目を離した瞬間丁度用を足し終えた警察官が車に乗り込んでくる。

 

「んじゃあ出発するぜ。シートベルトは?」

「スマン。運転手さん」

 

 ブラッドは唐突に謝罪を投げかけるとシートベルトを外し車のドアラックを解除し外へとその身を乗り出した。

 

 

 

 

()()()()()()()

 

 そう言い後ろのトランクへ向かい自身の胸より下程度の大きさのトランクケースを取り出した。

 

「はぁ?何言ってんだよ。まだ結構あるぞ?」

「…俺も此処まででいい」

「お前もか!?」

 

 粛々と「下車準備」を始めたブラッドに困惑する警察官だったが、同乗者のレオンも同じ事を言い出しより一層困惑した。

 

「遠いっつっても歩きで行ける程度だろ?ここまでありがとうな!」

「だな。此処でお別れってことだ」

「オイオイ!俺たちは任務で――――」

「上にはちゃんと目的地まで送って貰ったと報告しておく。ここは二人で帰ってくれ」

 

 当然二人を止めにかかった警察官の腕に手を置き、ブラッドは真剣な目でそう伝えた。

 

「…なんかあるんだな?」

「あぁ」

 

 ブラッドの態度から剣呑な物を感じ取った警察官はため息を吐き、二人を残し車へと踵を返した

 

「わぁーた。おいブルーノ帰るぞ」

「いいのか?」

「元より俺たちは雇われただけだ。お客の要望には答えないとな」

「た、確かにそうだけどよ…」

 

 狭い山道ながらも見事にUターンし、来た道を戻りレオンとブラッドと擦れ違う――直前に窓から顔を出し、二人の顔を交互に見た。

 

「何の任務かはよく知らないが、頑張れよ」

「勿論」

「お前らこそ、帰り道で駐禁取られるなよ?」

 

 激励の言葉にブラッドは真剣に、レオンはニヒルに返すと、警察官達は強気に笑いながらも来た道を去っていった。

 

 

 

 

 

 

「……で、説明はしてくれるんだような?」

「当然。黙ってコッチに合わせてくれたからな――これ見てくれ」

 

 訝しげに…と云う程でもないが顔を顰め疑問を呈するレオンに、ブラッドは先程まで自分が覗いていた単眼鏡をレオンに渡した。

 

「……どこを見ればいい?」

「二時の方向。一際大きい針葉樹の下」

 

 受け取り指定された場所を見ると…やけに高く積まれた木の葉の少し上の部分にキラリと光る反射光をみた。

 

「なんだアレは?」

「たぶんだけど望遠鏡。それもご丁寧に隠蔽されてる」

「狩猟の為じゃないか?ここら辺では珍しくないらしいが」

「閉散期の今にか?狩猟期間終わったら撤去するもんだろ」

「……成る程。余所者用って訳か」

 

 PrrPrrPrr!

 

 納得した瞬間レオンの腰の通信機が鳴り出す。レオンはブラッドを見て「出てもいいか?」と視線で訊くと、ブラッドは軽く目を瞑り手をレオンの方へ軽く向けて「どうぞ」とジェスチャーを送った。

 

「こちらレオン」

『貴方がレオンね?私は今回貴方をアシストするハニガンよ』

「あぁよろしくハニガン…思ったより若いな」

『ありがとう。所で、もう目標地に到着してると思ったから掛けたのだけども……大分遠いわね。道草でも食ってたかしら?』

「いや。アチラさんが俺達を待ちきれないとクラッカー片手に準備してたからな。脇役のポリスには退場して貰って二人でブロードウェイを歩いてた所だ」

『……ブラッド・ヴィッカーズに変わってもらっていいかしら』

 

 僅かばかりの嘆息と共に目を窄めたハニガンからそう申請されたレオンは、通信機をブラッドの方へ向ける。

 

「だそうだ。いいか?」

「ハイハイ……どうもハニガン女史。BSAAから派遣されたブラッド・ヴィッカーズだ。長いからブラッドでいい」

『よろしくブラッド。こちらこそハニガンでいいわ……要約してもらっていいかしら?』

「例の村のものと思われる監視設備を発見。

 排他的な村の可能性あり。

 無駄な犠牲を出す訳には行かないため現地協力者の警官達には帰って貰って現在村までの山道を徒歩で移動中」

『あぁ成る程そうゆう事ね…レオンには「ユーモアも大事だけど報告は簡潔かつ明瞭に伝えて」と言ってもらっていいかしら?』

「ハハ!気持ちは分かるけど、お堅いままだと息が詰まる。いざとなったら自分が翻訳するからここままでいいと思う」

『……分かったわ。確かにこれから一仕事するのだから歩み寄る姿勢は大事ね』

「だってさレオン。理解あるオペレーターでよかったじゃないか」

 

 その後ブラッドから通信を返されたレオンはハニガンとニ、三言話すと通信を切った。因みにブラッドも通信用の小型インカムをつけてはいるがレオンのようにオペレーターの類はナシ。

 ブラッド直属の上司であるオブライエンによると「向こうに専属のオペレーターがいるならそっちからついでにナビしてもらえ。…俺か?別件で忙しいから無理だな」らしい。詰まるところ「人員不足」である。

 

「ウッシ。じゃあ気合入れてハイキングと洒落込むかね」

「サンドイッチ入りのランチボックスはないがな」

「まぁ携帯食料がそれってことにしよう」

 


 

▲月○日①

 

 いやぁこの日記付けるのも久々だな、最近はもっぱらデスクワーク用のパソコンに打ち込んでたから新鮮な気持ちだ。

 

 っとと、まぁ懐かしむのはこのぐらいにして……ある意味では予想通りの状況になった。

 

 ハニガンとの通信が終わった後に、俺とレオンはしばらく歩き、崖の上に建造された「老朽化が進んでます」と音と見た目で第六感(シックスセンス)に直接殴りかかってくるような橋を渡り“例の村”へと辿り着いた。

 橋から少し歩いた場所に民家があったので、比較的軽装のレオンに行ってもらうことにした。制服のみとは言えゴリゴリのミリタリー風の俺よりも一見スカしたイケメンに見えるレオンの方が最適だろうという采配だ。

 

 レオンが民家に入りしばらくして、()()で異変が起こった。

 

『止まれ!』

テ、ボイヤ、マタル…!*1

「レオン何が……ッ」

ウン、フォラステ!*2

ドンデ、エスタ*3

『アァー……』

 

 発砲音が響くと共に、どこからか現れた村人三人が俺ににじり寄ってきた。

 いずれも鍬や草刈鎌を持っており少なくとも館外の雰囲気ではなかった。

 

 最初こそ話し合いでなんとかしようとも思ったが、相手方が敵意満々で攻撃して来たこととハニガンとの会話でレオンから聞いた「発砲許可」の知らせから腰のベルトからサムライエッジを取り出して村人三人の足を撃った。

 

 普通の人間なら…という軍人や特殊部隊員でもない限りは痛みに悶絶し足が止まるはずなのだが。その村人達は少し痛がった素振りをしたと思えばすぐに立ち直り、再び武器を振るってきた。

 流石にやられる訳にも行かないのでその後一人頭を撃ち抜き威嚇してみるも、まぁ予想通り残った二体は変わらず向かって来たのでこれも撃破した。そして村人達が残した慰留品の小銭――それも現在は廃止されているはずのペセタ通貨である――を拾い。同じく中の村人を倒したレオンと合流した。

 

 すると倒してそのまま残す筈だった村人達の死体が黄色い泡と共にグズグズに溶けてなくなった。

 その時点で俺たちは今回の敵が尋常なものではない事を悟った。という中の村人に掴み掛かられた時異様な腕力を持っていたらしい。

 

 ……ワンチャンカルト集団かと思ったが、やはり今回の敵もB.O.Wの類らしい。こりゃアシュリー嬢の身も思ったより危ういな。

 

 したくはないが単独行動も視野に入れるべきだろうか。

 

*1
ぶっ殺すの意

*2
よそ者だの意

*3
どこだの意




作中にもありますが4の裏でリベレーションも進行しています。

ブラッド・ヴィッカーズ
・今年で(作者の年齢計算が正しければ)25歳。
・本来ならヴェルトロの基地にクリスと共に行く予定だったがアメリカ政府からの要請で今回の作戦に参加。
・レオンの顔馴染みかつBSAA内でも高い踏破力と継戦能力を見込まれての人選。
・スーツケースの中身は次回のお楽しみ。
レオン・S・ケネディ
・「バイオハザード4」の主人公。
・2ではなよなよな優男だった彼もエージェントのための特殊訓練で強いイケメンになったが、女運がないのは相変わらず。
・ブラッドは元先輩だが年齢的には年下になるのでどう接すればいいか悩んでいる。


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-2004年(バイオ4)-002

最初に謝っておきます。ブラッドも多少なりとも()()()()です
あとレオンの口調意外と難しい…


「互いに無事そうで何よりだよ」

「そうだな。にしても排他的だと予測してたが……」

「いやぁ排他的でもここまではしないだろ。今法整備が施された21世紀だぞ」

「まるでここだけ中世だな」

 

 合流したレオン(2階を捜索中にブラッドが襲撃された事に気付いたため2階の窓から飛び出して来た…が。既に戦闘は終わっていた)とブラッドは軽口を叩き合いながらも先程撃破した村人の家に再び上がり込みその場でスーツケースを開いていた。

 

「….それにしても、相変わらず準備がいいな」

「まぁ今回の相手がB.O.Wの可能性は予測してからな。…逆にハンドガンとナイフしか持ってないお前に驚いてるんだが?」

「いや普通要人救出の任務でそんな戦争しに行く格好はしない」

 

 レオンはブラッドが持参したスーツケースの中身を見て呆れた様子で息を吐いた。「調査道具です」と言い張って持ってきたケースの中身は銀が眩しい最先端の調査器具――な訳もなく、むしろ鈍色に輝く無骨な銃と戦闘用具の数々であった。

 

 規格こそBSAAの正式採用弾を使う為に拵えられた別物だが、その姿形はブラッドがS.T.A.R.S.に所属していた時から愛用していた【M4カービン】【AA-12】と同じ形をしている。しかし【Steyr SSG 69】だけは容量の問題かBSAAの正式ライフルとなっていた。折り畳み式で更には精度も以前の物とさほど変わらないという逸品である。

 

「前に比べたら軽装な方だぞ?まぁそれはそれとして……っよし準備完了だ」

 

 そうして立ち上がったブラッドはBSAAの軽戦闘服に肘や膝などの関節部を意識した追加プロテクター。タクティカルベルトには交換用の弾丸を納めるためのマガジンポーチがぶら下がり。辛うじて「調査員」と言い張れたその姿は、すっかり「戦闘要員」の姿となっていた。

 最後に同じくベルトから垂れ下げらせていた青色の特殊警棒をクルリと回しその手でガッシリと握った。無論握ったその手もしっかりと滑り止めの効いたオープンフィンガーグローブである。

 

「お前の近接武器はそれか?警棒にしては短いな」

「んな他人行儀な呼び方しなくてもいいぞ?あとこれ可動式な」

 

 レオンにそう返し柄の部分についた()()()()()()()()の内のボタンを押すと「カシャン!」という音を立てて棒の部分が伸びた。

 しかしレオンの目にはまだ伸びる余地があるようにも見えた。

 

「ガムより根性ないんじゃないのかそれは」

「ハハッ、言うな?まぁお楽しみだ」

 

 ニヒルなレオンな言葉に同じように笑ってみせブラッドは怪盗ドラマの悪役看守のように掌を軽く警棒でパシンと叩いてみせた。

 

「さぁて検挙のお時間だ。手錠のかけ方は分かるかな配属一日目で辞めた新人クン?」

「さてな。ご指導頼むぜ先輩サマ……いや、ブラッド」

「応ともさ、まぁ今回アイツらがかけるのは手錠じゃなくて生死の狭間への崖*1かもだけどな」

 

 互いに軽口を叩くと民家を出て、二人は村の中心部へと移動を始めた。

 


 

 クゥーン……

「犬だな…助けてもいいか?」

「いいぞ。ウィルスの類にもかかってなさそうだからな」

 

 レオンが犬を罠から解放すると、犬は尻尾を千切れんばかりにふりながら何処かへ去っていった。

 

「にしてもトラバサミ…今の時代合法だったか?」

「あれ一個とは思えない。他にもあると考えてとこう」

 

 そう言い進んでいると、視線の先には多くの村人たちがいた。一様に此方を見ると一葉に赤い目を輝かせ手に取った農具を持って二人に向かって走ってきた。

 

「歓迎って雰囲気じゃ…無さそうだな?」

「じゃあコッチは致死性のクラッカーで歓迎してやろう」

 

 二人は互いに拳銃を構えそれぞれの近接武器を携え村人に向かう!

 

PAN! PAN!

ガアッ!

 

 レオンとブラッドはラクーンの悲劇後更に磨かれた射撃技術を用い正確に頭へ鉛玉を撃ち込む。堪らず怯む村人達に、二人は追加の弾丸を撃たず村人達に()()()()()

 脳裏に浮かぶのは、民家から出て直ぐに交わした二人の会話。

 

『ラクーンやバイオハザード発生地なら兎も角、こんな僻地で追加の弾薬が確保できるとは思えない。俺も相当な数持ってきているが、持つかどうか……』

『だったら、弾を消費しない戦い方をしないといけないな』

『しかないか・・・アイツらは見た目以上にパワーがある。下手こくなよ?』

『大統領のエージェントに銃の腕だけでなれると思ってるのか?』

 

「ハアッ!」

 レオンのそのモデルの如き長い御見足から放たれた回し蹴りは見事に村人の側頭部を捉え、頭だけではなくその体ごと持って行った。

 

「おお、凄いな・・・んじゃあオレも――羅ァ!!

 

 レオンに追従せんと警棒を順手に持ち、腰の捻りと腕の筋力に任せ振り抜く、疾く強かに打ち据えられた村人は仰け反る・・・・・・が、()()()()()()()()()()。足と腕の筋肉の差が如実に表れた結果である。

「まぁんなもんか・・・まだだぞ!」

 そう言うと未だよろめく村人を見据えニヤリと笑いすぐ側の小屋の壁を蹴り跳躍。蹴った反動で体を村人の方へ向き直ると鞭のようにしなった左足から放たれた蹴り――俗に言う【三角跳び蹴り】――は村人の頭部を捉えレオン以上の勢いを持って錐もみ回転を描き吹っ飛んだ。

 

 片や政府に保護されてから少女のため、己のため自らを鍛え上げ大統領直属のエージェントまでにのし上がり、また片や諸悪の根源たるアンブレラを打ち倒し、戦いが終わってもなお世界中で巻き起こる生物災害に立ち向かい続けた英雄の一人である。本人達がそう望んだわけではないのだろうが、培ってきた経験則と戦闘技術は“並”ではすまない領域に達していた。

 

「昔なら近接戦闘なんてイヤでもしなかったな・・・・・・」

「・・・いや確か最初に会ったときにやってなかったか?」

 

 そうだったか?と疑問の声をあげるブラッドにそうだぞ。と返答しながらもレオンは自然とラクーンのことを思い出していた。

 

 自らに襲い掛かるゾンビやB.O.W。複雑怪奇な仕掛けが目立った警察署や地下研究所。今の自分と同じように政府の監視下に置かれているシェリーに、同じ地獄を生き延び以前「テラセイブ」という組織に所属したことを知らせて来たクレア。

 そしてクレアよりも親密に関わり合い、現在生死不明という扱いになってはいるが自身の中では半ば生存を確信している女スパイ。

 

「エイダ…………」

「エイダ?…あぁ、産業スパイの」

 

 口に出した事に気づき急いで口に手を当てるが、時すでに遅し。ブラッドは言葉を反芻しその意味を瞬時に理解した。

 

「確かお熱だったよな?」

「まぁな。生きてるかどうかは分からないが」

「生きてそうだよな。生きてたら確保するだけだが」

「え?」

「え?」

「……あ、あぁそうだな」

「…お前逮捕の時に邪魔したら公務執行妨害だからな?」

 

 変な沈黙を伴いながら二人は石製の大仰な扉の前にたどり着いた。

 

「……どうやら、ここから先が村のようだな」

「今まで以上に村人がいるだろうな。あまり接敵はしないように行こう」

 

 互いに頷くと、物音を立てないよう静かに扉を開け突入、村への入り口と思われる石柱にその身を滑り込ませた。

 

 レオンは双眼鏡、ブラッドは単眼鏡と其々の索敵道具を用い村の様子を観察し始めた。

 

「村の構造自体はよく有る感じだな、村の中心部である広場を中心として蜘蛛の巣の縦糸みたいに道が広がり横糸のように建造物が建っている」

「蜘蛛の巣か…なら差し詰め俺たちは今から態々その巣に囚われに行く哀れな蝶か?」

「どちらかと言うとそのまま巣の主人刺し殺す雀蜂でありたいもんだな」

 

 鋤や鍬を持った男手達

 

 藁を所定の場所から台車に移す女性

 

 村人たちの足の隙間を走り回る鶏の鳴き声

 

 ……村の中心の祭壇じみた場所で焼かれるダレかの体。

 

 “日常”と“非日常”が混在する空間に軽く眉を顰めつつも、二人は村人からの袋叩きを回避するために中心部を避けグルリと回るルートで進もうとした。

 

パキリ

「あっ」

「…マズイな」

『『『『『『………』』』』』』

 

 注意して歩いていた二人だったが、ブラッドが足元にあった小枝を踏み抜いた。大元から切り離させ適度に乾燥された枝は小気味のいい音を立て、その最後を当事者のみならず村の周囲一体に知らせた。

 こちらを見つめる村人達の目が加速度的に吊り上がっていくのも見た二人は背中に冷たいものが走る感覚を覚え………

 

「生憎とサインと握手はNGでな!」

「整理券も予約券もないから悪しからずッ」

 

 脱兎の如く走り出した。

 

ウン、フォラステロ!

オスボイヤ、ロンベル、ア、ペソーダス…*2

ドンデ、エスタ!

「ここからどうする?」

「ここの地理もよく分からんから、籠城戦かな!」

 

 走り寄る多数の村人を尻目に一件の家に転がり込んだ二人は迅速にドアに鍵をかけドア近くの窓ガラスの前にタンスを倒し封鎖した。

 

「二階の様子見てくる!」

「あぁ分かっ――チェンソーまで持ち出して来たぞ!!」

「伐採でもして…いや木製だからある意味正しいのかもな!?」

「言ってる場合か!」

 

 二階へ上がったブラッドが窓ガラスを突き破り設置された梯子を蹴落とすと同時に、チェンソーを持った村人がドアの切断を開始した。

 

「レオンも二階に!ベランダ広いし隣の屋根が近いから高所で戦える」

「見せ物じゃないんだけどな俺たちは!」

「そう言うな…ほら、ショットガン」

「助かる!」BANG!

 

 上がって来たレオンに壁に立てかけてあったショットガンを投げ渡し、レオンもそのまま階下の村人の足に一発叩き込み外へと出た。

 

「家から来るのは任せろ!」

「なら俺はステージに上がってくるマナーの悪い客を叩き落とす!」

 

 二人は言葉通りに村人への迎撃を行う。ブラッドは特殊警棒とハンドガンを用い窓枠やドアから踏み込もうとしてくる村人を牽制し、レオンも言葉通りに二人が居座る屋根(ステージ)に登ろうと村人達が掛けた梯子を蹴り落とし屋根伝いに迫ろうとする村人はハンドガンでで、数が多い場合はショットガンのパワーで無理矢理押し戻した。

 

 拳銃が、散弾銃が、足が、拳が、警棒が。

 

 それらが何かしらの動作を起こすたびに村人派吹っ飛び、また倒されていく。

 

 しかし村人の数は甚大で、対して立ち向かうのはたったの二人。しかも村人達には一定の知恵もあるようで……

 

「…ッ。マズイな広がり出したぞ」

 

 レオンの方では正面突破が難しいと察した村人達が浅く広くの人海戦術へと切り替え。

 

「だーもう!そのやたらとタフなチェンソー男を前線に出してくんなッ」

 

 またブラッドの方では逆に出入り口が限定されており数で攻めるのが困難なため、一回に繋がる入り口で一塊となり、その先頭には先程から何度もブラッドにやられながらも立ち上がってきたチェンソー男が担当する一点突破を実践していた。

 

「オラァ!」ドガン

ア゛ア゛ア゛ア゛!』ギュウイン!

 

 階段の近くにあった収納机を階下に向けて投下し、チェンソー男は手に持った電動工具で迎撃。次いでコレを放った下手人を抉り裂こうと前を見据え――

 

「遅い!」

――――!

 

 切り裂いた机の向こうからブラッドが接近し、チェンソー男の胸元に向かって鋭い突きを放つ……直前に、ブラッドは口元を歪めると特殊警棒のトリガーを勢いよく引く。

 

ズ ガ ン !

 

 弾丸が発射されたかのような轟音と共に警棒が更に延長。凄まじい速度で伸びた警棒の先端がチェンソー男の胸元に直撃し勢いよく吹き飛ばした。

 

「さぁ次はどいつだ!実戦運用も兼ねてるからドンドン来てもいいぞ!!」

 

 硝煙が立ち込める特殊警棒――内部の擬似 撃鉄(トリガー)を作動させることにより瞬時の火力上昇を目的とした試作近接武装【ネイルバトン】を携えたブラッドはそう高々と宣言した。

 

*1
崖の端に手をかける的な

*2
八つ裂きにしてやるの意




・ブラッドの体術
『一閃』
 頭を撃ち怯んだ相手に発動可能。手に持った警棒を横に振り強く叩く、ダメージは低く吹き飛ばすことも出来ない。
『三角跳び蹴り』
 『一閃』にて敵を攻撃した後に周囲に壁や障害物がある際に発動可能。自身の脚力と体重を乗せた勢いのある蹴りを放つ
『ネイルストライク』
 足を撃ち怯んだ相手に発動可能。警棒の特殊機構を起動させ敵を打ち飛ばす。威力は高いが発動毎に【ネイルバトン】の起動可能回数が一つ減る。これはメニュー場面の『組み合わせ』にてネイルバトンと何かしらの銃弾での調合で回復可能。

【ネイルバトン】
 BSAAがオリジナル・イレブンの一人であるブラッドからの要請に応え作られた特殊武装。本人からの要望は「耐久性があり携帯性があるもの」だったが、舞い上がった技術班によって「取手部分のトリガーを押すことによって内部機構が作動し火薬を爆発させ対象を穿つ」というトンデモ特殊警棒。試験運用ではコンクリートの壁に罅を入れる威力を見せた。命名はブラッド。

・ブラッド
 近接時の武装は特殊警棒とパルクールを活かした三次元的な格闘術を軸としている。それなりに仕上がっており訓練時はキースやジルと互角に渡り合う。市街地や都市部でのバイオテロも経験しているので籠城戦に心得がある

・レオン
 何の変哲もない蹴りでガナードを数体纏めて吹き飛ばすヤバいエージェント。作者は昔極真流という流派の空手をやっていたので人一人が飛ぶ光景は理解出来るが、複数体纏めてはチョットナニイッテフカヨクワカンナイ。トランクケースを持っていないのでショットガンは最中にかけている。


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-2004年(バイオ4)-003

すんません。白状すると別小説に首ったけでした。リハビリも兼ねて今回は短めです!!!


「このままやってて弾薬持つか!?」

「知らん! とにかく目の前の奴らに集中しろ!!」

 

 現在二人は立て篭もった家を飛び出し屋根伝いに戦っていた。無尽蔵に現れる村人達に防衛線は徐々に後退しつい先程決壊、籠城戦の体をなし切ることは出来ずにその様子は足を撃ち抜いては距離を離し梯子を掛けてきては叩き落とす逃走劇へと移行していた。

 

(感染者にしては足も速いし、武器も使ってる……極め付けは“言葉を用いている”事だ。ただの暴徒? だが―――)

「ッ!? ブラッド!」

 

 今戦っている村人にこれまでのゾンビ達の相違点を考え込むブラッド…そう、()()()()()()()()()彼は屋根の下から斧を振るう村人に気付かなかった。

 

THUD!!

 

「〜〜〜〜〜っ!? クソ!」

 

 鈍い打撃音により漸くその存在に気付いたが時既に遅し。プロテクターにより足と泣き別れする展開は阻止できたものの足に迸った衝撃は走っていたブラッドの走りを止めるには十分すぎるほどで思わずその場に蹲る。

 すかさずサムライエッジで頭を撃ち抜き村人への借りを返すが……

 

「ブラッド!?」

「足元不注意…建設業者の人に注意出来ないなこりゃ。大丈夫――って言いたいが」

 

 足元を庇っていた手を離しショットガンを構え一発放つ。背後からは未だにレオン達を追う村人の群れが押し寄せており、いくら強力とはいえ村人の村を押し寄せるには少々火力が足りなかった。

 

「チッ、おいレオン先行ってろ」

「バカ言うんじゃない一緒に――」

「2人共倒れはゴメンだろ?」

 

 言葉と共に手榴弾のピンに手をかける。冗談めかした物言いだがその目自体は怪しげな光を灯したものとなっており、前を目据えていた目は今は村人達を捉えて離さない。

 

 「さぁ行け」そう言うと共に手に持った手榴弾を村人達へ向けて投げようとして――

 


 

▲月○日②

 

 いやなんなんだろうな今回のB.O.W.。

 

 武器は使うわ言語は用いるわなんか耐久力高いわ鐘が鳴った瞬間帰ってくわで……不明瞭なことばっかりだ。あっ投げかけた手榴弾は取り敢えず生存成功の祝砲として上空に放り投げといた。

 

 そう、あいつらは目の前に俺という手負いの獲物がいた癖に鐘(音と反響音からしてそこそこ高い建物・・・村の教会とかだろうか)の音が響き渡った瞬間俺たちの方向を見向きもせずに散っていった。

 

 諦めた訳ではない・・・と思う。どちらかというと一種の催眠、それか刷り込み。まるでそうあるべしと定められているようだと俺は感じた。

 

 恐ろしいというよりかは不気味だった。これまで戦ってきたB.O.W.やそれらを運用するテロリスト共も勿論恐ろしいが、それはあくまで直接的な脅威から来る物理的な物。だがこの村は・・・それらとはまた違った薄気味悪い物を感じ取れて、背中に何か冷たいものを感じた。そんな悪寒に耐えかねて思わず周囲を見回した俺たちだけが、この村に取り残された。

 

 

 ひとまずはハニガンに連絡を取り現状と先ほど起こった不可解な現象を報告した。「まともじゃない」と言うレオンの声に内心激しく同意しながらもハニガンからのその位置にとどまるのは危険だから北側のルートから行って村から脱出するようにと指示を受けたが、俺はそれに「まった」を掛けた。

 

 何もかも分からないこの状況で動くのは俺の性分に合わないし、何よりBSAAとしてはこの不明点しかない敵方の情報を精査したいと主張した。

 

『・・・どうするかは現場側に任せるわ』

 

 一長一短の意見を自分の一存では決められないと通信を切った(新人とのことなので逃げたとも言える)ハニガンの言葉を皮切りに俺とレオンの口論が勃発する。

 

「アシュリーに何が起こっているか分からない。例え罠があるとしても無視していくべきだろう!」

「アシュリー嬢の心配をするのは最もだがその結果“ミイラ取りがミイラになる”になったらどうするっ?」

 

 合衆国のエージェントとして多少の危険があろうともアシュリー救出を優先するべきだと主張するレオンとそんな俺たちに万が一がないようにするためにも、そして何より未知の敵は一にも二にも調査をするべきだとBSAAの実行部隊として主張する俺の口論は平行線の一途を辿った。

 

 故にきっと、この結論は仕方なかったとも言える。

 


 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・

 

『こちらレオン。立ち入った民家の中で“例の男”という謎の存在の資料を見つけた。俺と合わせるなとのことだから逢いに行ってみようと思う』

「了解・・・・・・・・・言うまでもないけど、油断するなよ」

『分かっている。それじゃあ』

「あぁ…さて、ここのお宅はと」

 

 ブラッドは現在、レオンと別れて村全体の家宅捜索(無断)を行っていた。

 家の蝶番を壊して家の中を探索。キッチンから寝室に至るまでの隅々を調査し情報を集めようとしていた。

 

 そこで手に入れた情報は…あまりにも精巧な“生活感”を彼らが持っている事だった。

 

(よく考えたら村の中には鶏に豚もいた。本能的にタンパク質を求めるt-ウィルスの感染者とは有り体からして異なるのか…?)

 

(だが村人達からは戦闘時以外での感情は見当たらなかった。又はそうなるようにプログラムされているのか……)

 

 考え込む内に最後の一件。村の中でも少しだけ大きなその家のコテージには絵を立てる土台と……完成途中だったのだろうか黒を基調としたローブを羽織った男性の油絵が立てかけられていた。

 

「村の有力者…もしくは鐘がある教会の聖職者ってところか」

 

 絵を一瞥してそう判断したブラッドは、一応玄関前で軽く一礼をしてから家の敷地内へと踏み込んだ。

 家はどうやら五人以上の大家族でも暮らせるように設計されているらしく、食材がない事を除けば至って普通の生活をしているように感じられた。

 

(まるで、中世にタイムスリップしたみたいだな。こんな異常事態さえなけりゃ文化遺産にでも登録されてたろうに)

「……ん?」

 

 一部屋一部屋探索していたブラッドだが、そこで気になるものを発見した。

 

「スケッチ。つぅか日記の類か……すまねぇ、スペイン語はさっぱりなんだ」

 

 それはコテージの油絵を描いていた本人とよく似たタッチで描かれていた数十枚の紙束だった。

 最初のページでは村の牧草的な雰囲気が柔らかなタッチで見事に表現されており、絵に疎いブラッドでも素直に「いい絵だな」と思った程の逸品だった。

 

「前は平和な村だったのか? 一体全体何が…ん?」

 

 村の様子を探るため、そして気晴らしも兼ねて読み進めていたブラッドだったが。ある1ページを見て固まる。

 

 その絵に描かれていたのは、とある村人が他の村人達に取り押さえられやたらと太い注射を刺されそうになっている絵だった。

 一つ後ろの絵に描かれていた明らかに怪しい黒ずくめの男(大仰な動作からして扇動家か宗教家の類か)とその横にいる車椅子の男性の仕業かとブラッドは当たりをつける。

 

(新興宗教が“聖水”だとか“神の血”とかいって依存性のある麻薬や、でっちあげの栄養剤を投与するのは珍しくないが…どちらにせよ穏やかじゃないな)

 

 続く二枚を見ると明らかにおかしくなった様子の村人が描写されており、書き手も疑念や恐怖感からか絵のタッチが少々荒いものに変わっていた。

 

「ほーら言わんこっちゃ…………は?

 

 『成る程今回の騒動は(ヤク)漬け新興宗教による集団一揆か』と一種お気楽な思考になっていたブラッドのそんな思考は、次の一枚を見た時冷や水を叩きつけられたように冷え切った。

 

 手に取ったままワナワナと数秒そうしていたブラッドは青くなった顔を勢いよく上げた。

 

「アシュリー嬢に、下手すればレオンも……! クッソ俺の馬鹿野郎!!」

 

 紙束をぶん投げたブラッドはレオンの後を追うために獣の如くその場を走り出した。

 

 彼が最後に見たページが地面に落ち、そこに描いてあったのは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――首がその薄皮一枚を残して垂れ下がり、千切れたその根本からは無数の触手が蠢いている異形の人体だった。




因みに今回の行動によってブラッドもプラーガを埋め込まれるルートを排除しました。


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-2004年(バイオ4)-004

えぇー…大変遅れたことをここにお詫び申し上げます。ウェルカムトゥラクーンシティ楽しみですね。123の内容総まとめって感じですけど尺とかそこんとこどうするんでしょうか?
あっ今回はシリアス多めです(当社比)

遅れたので前回のまとめ
レ「はよアシュリーたん迎えに行くぞ!」
ブ「そんなことより情報収集だ!」
レ・ブ「けっ!勝手にしとけ!」

レ「捕まったンゴ(捕虜爆誕)」
ブ「さては新種のB.O.W.だな!……ヒュ」


「………む」

 

 レオンはふと目に差し込んだ明かりによって目を覚ました。

 

 両腕を動かそうとするが、自身が麻縄で雑に拘束されていることに気付き。その後周囲の観察へと移る。

 

 場所は村の建物よりも一層ボロくさく感じる納屋のようであり、周囲の物はクローゼットや机のみとかなり簡素なものだった。

 

(俺は…そうだ確か謎の男を助けたら村のボスというやつに会って……)

 

 記憶を遡るうちに、タイラントを思わせるほどの長身の村のボスだという男に渾身の後ろ回し蹴りが易々と受け止められぶっ飛ばされた光景を思い出す。

 

(まさかあんかヤツがいたとはな…ブラッドは大丈夫だろうか)

 

 自分から見てもかなりの戦闘能力をもつブラッドといえどもあの大男に抵抗する術は少ないだろうと、レオンは彼が大男に遭遇していないことを願った。

 

「ウゥム……」

 

 そこまで考えた時に、ふと自分の後方から苦しげな呻き声が聞こえてくるのは。

 

「…目が覚めたか?」

「――あークソ、俺を助ける筈じゃなかったのかよ」

 

 呆れたような声音で言いながら男は天を仰ぐ。この男は村の中でも正気を保っているらしくレオンを見ても敵意を見せることはなかった。

 

「この村はどうなってるんだ?」

「あんた…アメリカ人だろ?何しに来た?」

「…………」

「オワ――ってーな、誰だよオマエ」

 

 縄を解こうともがくついでに無言のノーを突きつけ、レオンは自分の要件を伝える為何とかポケットからアシュリーの写真を取り出し見せた。

 

「俺はレオンだ。この子を探しに来た、知らないか?」

「……。アンタ何者だ?警察にしちゃ泥臭くないし」

 

 男は写真を一瞥し考えること素振りを見せるが、再びレオンに質問を飛ばした。

 

「ちょっとな…」

「ハァ。オッケーあててやろうか?大統領の娘だろ」

 

 平行線な会話に嫌気が差したのか、男は一つ間を空けてからレオンにとって重要な情報を開示した。思わず目を見開いたレオンは男を鋭く睨みつける

 

「なぜ知っている?教えてもらおうか」

超能力(サイキックパゥワ)……冗談だよ。そう睨むなって」

 

 戯けたように答えた男を思わず睨むレオンだが、視線に臆したのか思った反応を得られず白けたのか即座に取り消し話を続けた。

 

「本当は奴らが大統領の娘を教会でどうこうって言ってたのさ」

「教会か…地図にもあったな」

「行くのかは止めないが、直近でボスが来るらしいからやめといた方がいいじゃないか?」

「ボス?あの大男のこと――ッ」

「あーあ、お迎えが来やがった…!」

 

 探り合う二人の耳に、ふと足音と何かを引きずる様な異音が聞こえた。

 男からすればマトモな人間は己を除けば隣にいるレオンだけ、またレオンからしてみても協力者のブラッドがわざわざ自分の位置を知らせる様な音を出すような人物とは考え辛く。二人は揃って「敵が来た」のだと結論を出し、なんとかしようと身じろぎする。

 

 だが彼らを縛っているのは残念かな。多少の錆びはあるものの立派な鉄鎖であり、猛獣の抵抗にも耐え得るそれを成人男性二人で解くというのは中々に酷であった。

 

「なんか持ってないのか?」

「だったらタンスから出る前に脱出してるぜ!」

「そうか…チッ役に立たない

「聞こえたぞ!名誉毀損の現行犯でパクってやろうか?」

「警察官だったのか?」

「マドリッドのな、“元”が付くけどよ!」

「なら、同じだなっ!」

 

 軽口を交えながらも互いに身を反対側に捻らせ鎖を破損させようとするも、甲高い不快な擦れ音が響くだけで特に成果はない。

 

「そうかい!あぁそうださっき自己紹介してなかったなオレはルイス!!因みに退職理由は憎まれ役に飽きた事だ、正義の味方は割に合わなくてよッ」

「俺の場合は出勤初日にデカい()()が起きてな。職場どころか、街一帯でホームパーティをしてほっぽり出された」

 

 体より口が回る“サガ”なのか焦燥感に振り回され混乱しているのか、先ほどよりも更に早回しで喋りまくるルイスを他所に、外からの足音は徐々に二人に近付いて来ていた。

 

「アアァァア……」

「来やがった…!」

 

 遂に二人の小屋に、外からの足音の主が現れる。予想した通り小屋に入って来たのは村の狂った村人だった。両手で握る斧は錆びてはいるが鎖で固定された身動きの取れない男二人をぶった斬るには十分な切れ味があるだろう。

 引き摺っていた斧を持ち上げ二人の前に翳し始める村人。彼らが持つt-ウィルスの感染者を想起させる膂力はレオンも体感した直後であり思わず背中に冷たいものが這う感覚を覚え――

 

 

 

「レオンッッッ!!」

 

 直後今にも斧を振り下ろさんとする村人の背後から雷鳴の様な声が響く。

 

「ガアア!?」

「邪魔だァ!!!」

 

 レオン達と一拍遅れて振り返った村人の顔面に顔面蹴りが炸裂、道中急いだこともあって勢いもついたソレを喰らった村人は地べたに座り込んでいた状態のレオンとルイスの頭上を通り過ぎ、反対側の壁に勢いよく激突した。

 コンバットブーツ特有の幾何学的な模様がクッキリと顔に付き、心なしが陥没したように見える村人は体をガクガクと痙攣させ力無く崩れ落ちる。

 

 先程とは別の冷や汗を掻くレオンに酷く慌てた様子のブラッドが駆け寄り、その肩を勢いよく揺さぶり出した。

 

「無事が!?アイツらになにか…注射で打たれたりとかは!!」

「お、落ち着けブラッド。気絶していたから分からないが……」

「………!」

 

 肩をガクガクと揺らし普段の冷静な態度がなりを顰めたブラッドに目を白黒させるレオンと頻りにレオンの首筋や腕を見遣るブラッド。

 そんな二人のすぐ横でルイスはブラッドの発言に目を見開いていたが、互いの安全確認と精神分析に必死だった二人はついぞ気付かなかった。

 

 

 

 

「――だから、俺の体には今のところ不調はない。一先ずコレを解いてくれないか?」

「…そう、だな。分かった」

 

 数分間の問答の末いくらか険がとれた顔となったブラッドは、そこで漸くレオンを拘束する鎖と…その隣で繋がれたルイスに向き合った。

 

「一応聞くけど、解いた瞬間襲い掛かったりしないよな?」

「外の奴らと一緒にしないでくれよ。この端正な顔と理知的な眼を見てくれ」

「あーハイハイ今ので理解した」

「ところで、どうやってコレを解くんだ?工具はないぞ…金属腐食液も持ち合わせがないんだが」

「いやこんな近くに人がいるのにエッチング液使う程バカじゃないが?」

 

 そう言うとブラッドはふと自分の近くにあった斧を拾い上げ、更に自身の腰にマウントされたネイルバトンを持った。

 

「レオンの言う通り。近くにチェーンカッターでもあればよかったんだがなぁ…動くなよ」

 

 ブラッドはそう二人に声をかけ慎重な手つきで斧の刃を二人を拘束する鉄鎖の中心点に配置する。その時点でイヤな予感を感じたルイスが身を捩ろうとするが「動くなって言ったよな?」と有無を言わせないブラッドの底冷えした声に硬直した。

 

「おーのは切れるが手元がブレるー、バトンは馴染むが切れはしなーい」

 

 気の抜けたアカペラを口ずさみながらネイルバトンの先端を斧と鎖の直線状に配置する。

 

図にすると

バトン

斧の刃部分

鉄鎖

となる。

 

「んじゃあどうするこうしよー…う!」ドンッ!!

 

 一呼吸置いてからネイルバトンのスイッチを押し込み打突の勢いで鎖を断ち切った。

 

「………ッ」

「あ、オイ――」

「待てレオン。一旦ハニガンに連絡しよう」

 

 鎖が解けた瞬間にルイスは立ち上がり小屋を後にする。当然止めようとしたレオンだが、それを遮りブラッドはレオンの腰の通信機を指差した。

 

「それはそうだが…珍しいな」

「何が?」

「アンタは不確定要素はなるべく潰しておくタイプだろ、話が通じるとは言え抜け抜けと逃がすなんてのはらしくない」

「…まぁ、な。心変わりってヤツさ」

「…………」

『こちらハニガン。聞こえてる?レオン』

「…通信、繋がってるぞ」

「あぁ。こちらレオン、少し手が離せない状況だった」

『大丈夫なの?』

「多分な」

 

 澄ました顔でそう言うレオンとそんなキザな態度に呆れたハニガン。そんな二人の会話に耳を傾けながらブラッドはふとルイスが走り去った扉を見遣る。

 

「連中に捕まっていた男からの情報だが、アシュリーは教会に捕らわれているらしい」

『その男は?』

「ここから逃げた」

『教会への道はわかるの?』

「詳しくは、だが村に隠し通路があるらしい。一度村に戻ることにする」

『分かったわ。ブラッドからは何かある?』

 

 話を振られ我に帰ったブラッドは少し考え込んでから口を開いた。

 

「…これからは別行動ではなく協働して進んでいくつもりだ。レオンによると手に負えない奴もいるらしいし、奪還に来た俺たちが倒れる訳にはいかないからな」

『成る程ね。了解したわ…他に何か?』

「いや、特には」

 

 通信終了のボタンを押したレオンにブラッドの二人は、引き続きアシュリー救出のため動き出した。

 

 …ブラッドだけは、胸に一介の不安を抱いたままだったが。

 

「さて、行くか」

「村の状況顧みてもゆっくりは出来ないしなぁ」

 

 二人並んで小屋から出ようとした瞬間――

 

「こっちに来な、余所者さん方」

「「!?」」

 

 廊下の小窓から見えた黒ローブのくぐもった声の男がそう二人に声をかけ、家の裏手へと歩いていった。

 

「…どうする?」

「敵意はなかったが…いや、話が通じるなら一旦話すべきだ」

 

 互いに顔を見合わせそう結論付けたレオンとブラッドは銃だけは構えつつもドアを開け家の外に出て、男が向かった裏手へと足を踏み入れた。

 

「へへっ、よく来たな」

「…アンタは、他の奴らとは随分と違うな」

「あんなのと一緒にしないでくれ、それよりもいい武器があるんだ」

 

 スペイン訛りの英語を話す男の目は濁ってはいるが理知的であり、徐にローブを開いた彼の内側にはその言葉通り大量の武器や弾丸があった。

 

「つまり…アンタは武器商人?」

「その通りさ。さぁどうする余所者供(ストレンジャーズ)

「俺は武器は一通り持ってるからな…まぁレオンはいるんじゃないか?拳銃とシャッガンしか持ってないし」

「そうだな、店主。品揃えを見せてもらっていいか?」

「ヘッヘッヘ…幾らでも見てってくれ」

 

 その後所持金(巻き上げた金)と売却した宝石類(村人の遺品)と相談してハーブや弾薬を始めとした消耗品にライフルを購入した。あとで武器商人が真に信頼できるのか後でブラッドが解体(バラ)したところ品質は非常に良かったという。

 


 

AG作戦(正式名称:アシュリー・グラハム救出作戦)

第四通信記録

通信者:ブラッド・ヴィッカーズ

   :イングリッド・ハニガン

再生開始

 

『わざわざ自前の通信機で連絡してきてどうしたのかしら?』

『レオンにはちょっとな。写真を送るから見てくれ』

『……これは?』

『村の一軒家で見つけたスケッチ。村で起きたことの顛末だと思われる』

『私、新人なんだけど…』

『諦めてくれ。任務に就いた以上は責任を果たそう』

『分かってるわ…私はどうすればいいのかしら?』

『資料としてはそれしかない。BSAA(ウチ)のデータベースに、オブライエン頼ってもいいからコレがどうゆう型のやつなのか調べてほしい』

『出来るだけやってみるわ。レオンには言わない方がいいのかしら?』

『そうさせてもらえると助かる。いずれ伝えるが今じゃない』

『了解よ。まぁ期待しないで待ってくれると助かるわ』

『頼んだ…通信終了する』

 

再生終了




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-2004年(バイオ4)-005

お久しブリブリブリ大根ですわ!!!


▲月○日③

 

 俺とレオンは武器の手入れと入念なストレッチを終わらせてから村へと戻るルートである峡谷へと向かった……正直な話レオンを今すぐふんじばって精密検査に連れて行きたいが状況がそれを許さない。しょうがないので逐一レオンを観察しながら行動するしかないようだ。

 

 まぁ手負いのヤツを庇いながらの行動は慣れているしな。

 

 因みに購入品はライフルに武器収納が可能なケース(拡張可能らしい)ぐらいだな。

 

 場所は変わって峡谷、ここは一種の砦のようになっていて。スコープ越しでもエラい数の村人がいた。その手には斧だかピッチフォークやら、中にはダイナマイトを持っている奴もいて明らかに警戒態勢である。

 

 さらに峡谷の出口らしき門には何かが嵌まり込みそうな六角形の窪みがあり、数年前の洋館を思わせる香りがプンプンした。たぶん紋章的な何かを嵌め込むんだろうなアレは。

 

 何処にあるかは定かではないそれを、敵と戦いながらというのはゴメン被りたいが……

 


 

「そっちはどうだブラッド?」

『視界良好極めて微風、絶好の狙撃日和だな』

 

 レオンはインカムから聞こえてきた返事に小さく頷きながらも壁際に身を潜める。

 

『作戦を再確認する。俺はレオンの進路上の敵を狙撃により排除、レオンは俺が処理しきれなかった村人からの自衛とあの門を開けるためのキーアイテムを探し出す。何か問題は?』

「問題ない」

『OK、そっちのタイミングで初めてくれ』

 

 一度息を吐き、再び吸ったレオンはその手に握る拳銃の存在を強く意識した。

 

「――行くぞ!」

『了、行動開始』パァン!

 

 その言葉共に峡谷の砦入り口近くを巡回していた村人の頭が吹き飛び、それを合図としてレオンは砦内へと突入する。

 

「「オォォオ!?」」

『手前2、下1、奥5。下のは俺がやる』

「あぁ!!」

 

 階下の村人が握っていた手斧が持ち主ごと砕け散る様を視界の端を納めながら手前の村人の足に銃弾を撃ち込み、動きを封じすかさず蹴り上げる。

 次いで蹴り上げた村人にぶつかりよろけた二人目の村人の頭部に肘打ちを叩き込み、痛みに耐えかね顔を下げた瞬間膝蹴りで迎え入れ打ち砕く。

 

 飛び散った血肉に多少の嫌悪感を抱きながらも奥にいる五体の村人達に目を向ける。

 

「せめて半分ぐらいは減らせないか?」

『無理だ――いや、()()()のも持ってるな。そのまま進め』

パッァン!!

「「「「「―――ッア!?!?」」」」」

 

 そう言うなり一発の弾丸が一人の村人が持っていた細長い円形の筒に導線がついた投擲物――ノーベル賞の語源であるアルフレッド・ノーベルが開発した爆薬――ダイナマイトに直撃し、大爆発を引き起こした。

 

「…倒す手間が省けた」

『応、それと増援6。右手の梯子を登って高所からの攻撃を推奨する』

 

 溌剌とした声とは裏腹にブラッドの無線機の先からは常にライフルの発射音と排莢音が交互に鳴り響いており、そのサイクルが一つ終わるたびに村人達の頭が一つずつ吹き飛んでいく。

 レオンがそれなりに長い梯子を登る間何も障害がなかったのが彼の高いエイミング能力を表すいい証拠である。

 

『今みたいに全員が爆発物でも持ってればいいんだがな』

「それは物騒だな…丁度ハマりそうな物体を手に入れた。形的にもう一つあるようだ」

『…あとはまだらなもんだな、ゆっくり探索するといい。俺も合流する。オーバー』

 

 その言葉と共に通信が途切れる。ふとレオンが彼が狙撃場所に選んだ崖上を見ると、立ち上がったブラッドがライフルを担ぎラペリングで崖から降りている様子が見えた。

 

「いっそ恐ろしい先輩だな」

 

 そう溢したレオンは先輩(ブラッド)に内心で肩を竦め、もう一つの紋章の欠片を探すため再び歩き出した。

 

 

 

 

「意外と広い地下道だったな…」

「構造的には谷の下から上がる形だからな。排水溝もあるから元は下水処理場とかだったんじゃないのか?」

 

 レオンとブラッドは砦の先にあった地下道を進み続け、現在は出口付近の階段のそばで火を付け休憩を取っていた。

 

「成る程…にしては臭くないな」

「水が流れてないからな…村の井戸も腐ってたし、機能が死んで久しいみたいだ――にしてもデカいなこの()()

 

 ブラッドは自身の身長の半分近くある巨大な“ランカーバス”*1を焼いており、皮の表面がパチパチと焼き焦げ出していた。

 

「おっ出来た…うん美味い、やっぱバスは焼きに限るわ」

「もっといただろう?なんで一匹なんだ」

「腹一杯になったら眠いし動きにくいだろ。アチチッ」

「それと…なんで調味料一式なんて入ってたんだ?」

「サバイバルには必須だからな、塩は勿論塩分の確保だが。香辛料は食い難いヤツだってかっこめる」

 

 その言葉と共に押しつけられたカレー粉の瓶を振りかけ、レオンも腹が空いていたこと自体は事実なので大きく齧った。素材がいいのか料理人の腕がいいのか、複数の香辛料が絶妙に配合されたカレー粉の匂いとふっくらと焼き上がったバスの味は満足が食事が取れていなかったことを除いても十分美味だった。

 

「……美味いな」

「だろー?BSAA(ウチ)は結構料理と補給面に力入れてるからな。同僚がどいつもこいつも食に頓着しないのが玉に瑕だけど」

「俺のところは基本的に護衛任務だったからな…テーブルマナーは仕込まれたが」

「部隊運用の用途が違うから、当たり前だろ?んじゃそろそろ行くか」

 

 腹拵えが済んだブラッドは立ち上がり、火が消えかけた焚き火をブーツで踏み潰し念入りに消火をした。小気味のいい音を立てながら地面を黒く染める木炭を眺めつつ、同じく腹の膨れたレオンはアシュリー救出への心持を新たにした。

 

 

*1
初見時攻略のお供。入手出来る機会がそこそこあり、またハーブと同程度の回復量があって売ってもよしの万能アイテム



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-2004年(バイオ4)-006

別小説に浮気しすぎたぜ!!!!!!!!


 二人は地下道から脱出し、村ではなかなか御目にかかれなかった立派な屋敷へと辿り着いた。

 

「鍵が特殊すぎる…なんだこのバカキー……!」

 

 ブラッドはそう最後に水晶を上に向けると『ガシャン』という重々しい音を立て扉が横にスライドした。

 

「というかコレ村でちょくちょく見た紋章じゃねぇか!防犯意識は!機密性は!?」

「そこまでにしとけブラッド…多分ここは――ボスとやらの家だ」

 

 悪態をつきながら不機嫌そうに中に入ったブラッドを諌めたレオンの脳内には、自分の後ろ回し蹴りを諸共せずに受け止め投げ返された小屋での風景を思い出す。

 

「強いからセキュリティは要らないってか?そりゃあ……こわーい空巣が入って来ても文句は言えないな」

「違いない」

 

 渦中にありながらも笑みを絶やさないブラッドの悪童の様な笑みにレオンも口端を吊り上げ、二人は油断なく銃を構えながら部屋へと入った。

 

「…調度品の類が多いな。流石はリーダー、いや村長と言うべきか」

「これが“教祖サマ”とやらの似顔絵か?如何にもって感じだ…」

 

 思いも思いの感想を言い合いながらも探索を続けていると、ふと日記らしい羊皮のノートを見つけたブラッドは一応相方のレオンが部屋の探索にまだ夢中であることを確認してから日記を開く。

 

「……………」パラパラパラ

(ルイス――確かレオンと一緒に監禁されてた気障()がそんな名前だったな。逃がすってことは元々アッチ側なのか?しかも第三勢力がいて、サドラーとやらはルイスと俺達をわざと泳がせることでそいつらを燻り出そうとしてる…考えることが多い)

 

 読み終えた本を…元の場所に戻すことなく仕舞い込んだブラッドは疲労感を覚え目を揉み込み目の皺を取ってからレオンに向き直る。

 

「情報は取った。家主と事を構えるのも疲れるし、離れるか?」

「賛成だ」

 

 レオンの言葉を聞いたブラッドはドアノブに手をかけ部屋の外へと出る。

 ひとしきり周囲を確認し後方のレオンへ声をかけようと顔を―――

 

「っ!?」

 

 ――振り向いた瞬間、強烈な殺気が全身を突き抜ける感覚を察知したブラッドは反射的に飛び退いた。

 

 次の瞬間、先程まで自分が立っていた場所に拳大の穴が開く。

 

「――チッ、外したか」

 

 パラパラと家屋の欠片を落としながらも尋常ではないパンチを放った。牧師を思わせる格好の大男はブラッドをまるで子どもを見遣るような角度で見下ろした。

 

「ゲェーッ!村長!?」

「なにッ!?」

 

 轟音に反応し部屋から飛び出たレオンと共に驚きの表情を浮かべ、しかし体は冷静に銃器に手を伸ばし構える。

 

「………フゥ」

 

 緊迫感溢れる二人とは対照的に、村長と呼ばれた大男は溜息をつくと拳を下ろして口を開く。

 

「血が混じった者と…論外のが一人づつ。サドラー様は何を考えて不干渉などと……」

 

 口元に手を当て嘆く姿は商業会社の中間管理職のソレだが、その隙間から覗く瞳はドロリとした暗い物に染まっている。

 

「血が混じった?どうゆう事だ」

「まさかのハーフ?」

「バカ言え混じりけ無しのアメリカンだぞオレは」

 

 いつものクセで軽口を叩くブラッドにレオンが返し幾分雰囲気が軽くなるが、大男が握り拳を上段に構えた瞬間目つきが鋭くなる。

 

「エージェントの方は言いつけ通り殺しはしない。だが――お前はダメだ」

 

 床を蹴り、瞬く間に距離を詰めた大男の拳が振り下ろされる。体躯も相まって迫る壁を思わせるものであった。

 

「ッ――ゲホッ!?」

 

 ブラッドは咄嵯に標準を頭に合わせ引き金を引こうとするも、そうする間もなく横殴りに吹き飛ばされた。

 

「ブラッド!」

「ぐぅ……う……ゴホォ……!大丈夫!!」

 

 壁に叩きつけられながらもすぐに起き上がるブラッドにレオンは一瞬安堵するも、目の前に立つ村長の姿を視界に入れ再び臨戦態勢を取る。

 

「…とはいえ此処は私の家。あまり荒らすのもな――今は諸共見逃してやろう」

「既に大穴を一つ拵えてるのに荒らすのもというのな如何に…イテテテ」

 

 殴られた痛みに思わず呻くが不敵な笑みと共に茶化すが、大男はブラッドを一瞥した後にブラッド達か出て来た自室へと入って行き消えていった。

 

「ブラッドお前…ツナか?」

「泳ぐならぬ喋らないと死ぬってか?うっせぇ」

「……」

「……まぁ、なんだ。アイツはヤバい。アレは人間じゃねぇな」

 

 そう言ってブラッドは村長が消えた扉に視線を向ける。レオンもそれに釣られる様にして同じ方向へと顔を向けた。

 

「……行くぞ」

「ああ、も一度ちょっかいかけに行くか?」

「あんなの見せられてまで行くのはな」

 

 ブラッドは肩をすくめながら答えると、レオンは苦笑いを浮かべながら歩き出した。

 

 

 

 

「あら、レオンなら追うと思ってたのだけど…()がいるなら仕方ないわね」

 

 家を出て周囲に沸いた村人達と戦う二人を見ながら、長いスリットがかなり扇状的な特徴的なチャイナドレスを身に纏ったアジア系の美女が村長の家の屋根から二人を見ていた。

 

「フフ…レオンは兎も角、BSAAもいると厄介かしら?」

 

 そう言う彼女だったが、その口元は妖しく。蛇の様に歪曲していた。

 

「…!相変わらず勘がいいこと」

 

 掃討が終わった二人、レオンはブラッドに声をかけるが。当のブラッドは唐突に周囲を見渡し始めた。

 

『ブラッド?』

『……なんか嫌な予感がすんだよ。こう、背筋がゾクッとくる感じの』

『何だと?』

『蛇っつーか何か…観察されてるというか』

『…ゾッとしないな』

 

「蛇ではなく蝶って言ってほしいわね」

 

 女性は不機嫌そうにそう呟くと、ブラッドが本格的に自身を補足する前に逃げるべくワイヤーガンを木に打ち込みその場から離脱した。

 

「ふぅ――あら?噂をすればってヤツかしら」

 

 木々を伝い二人から暫く離れた所で、女性の腰の通信機が鳴り始めた。

 

「はいもしもし?」

『私だ。そっちの状況はどうなっている?』

「定期連絡は済ませた筈だけど?珍しいこともあるのね」

 

 無機質で冷たい声が通信機越しに女性の鼓膜を叩き、彼女は口元に手を当てクスリと笑う。

 

「ええ。予定通り、予定外は一人だけよ」

『……何?調査に来ているのはエージェントだけの筈だ』

「どうやら密約の類いでも結んでたらしいわ。アナタの元同僚だと言えば分かるかしら」

 

 その言葉を聞いた通信機越しの男は、一瞬うめくような声を発した。

 

『クリスとジルはアビスの件でここにはいないはずだ。となると――ブラッドか』

「もうちょっと見てたら危うく発見されるところだったわ。どうする?」

『……ヤツにはあまり手を出すな』

 

 憎々しげにその名前を呟いた男だったが、女性に対処の方針を求められ。一瞬黙った後普段通りの平坦な声で“傍観”を指示した。

 

「意外ね。『殺せ』とか言われると思って他のだけど」

『不用意に手を出してどんな痛手を負うか分からん。故に傍観がベターな選択だ』

「そう……。…?」

 

 今は雌伏の時だと現在裏から暗躍している彼らしい発想だと納得していた女性だったが、連絡が終わったのにも関わらず通信も切らない男を不思議に思った彼女は通信機に耳を近づけた。

 

『そもそもヤツはこの手で二人と同じように私自身で殺してやる……』

 

 集音器にもギリギリ拾えた程度の音声。しかしその声は普段の男からは想像もつかないほどの黒い感情に満ちた声をしていた。

 

「レオ…エージェントの方はどうするの?」

『利用するだけ利用して殺せ。と言いたいがヤツがいるのなら…まぁ別れた所で隙を突け、努力目標で構わん』

「了解したわ。切るわよ」

『あぁ』

 

 通信を切ると同時に女性が見たのは、敵地にいるのにも関わらず談笑を始めるブラッドと。それにあきれながらもなんだかんだ付き合うレオンの姿だった。

 

「私とレオンは腐れ縁だけど、あの二人は因縁ね。ちょっと妬けるかしら?」

 

 女性…エイダ・ウォンは二人の後ろ姿を見ながらそう呟き、再び木に飛び移るとレオンの後を追うように移動を開始した。

 


 

▲月○日④

 

 やっぱ気のせいだったか?今こうして日記を書いていてそう思う。

 村人達のような見ため敵意に満ちているようで感情自体が欠落しているようなガラス玉のような視線。村長とという大男の上位者が下等生物を見下ろすような威圧感のある視線とはまた違ったが、今こうして日記を書ける程度には落ちついている。

 にしても、宗教団体ロス・イルミナドスに第三勢力。それに血が混じったか…………

 

 あの後暫く歩いたあとにハニガンと通信をし、先ほど日記に書いた教団の名前と。レオンに対して話していた「血が混じった」という話題が出てきた。

 

 十中八九、感染のことなのだろう。本人は自覚症状はないらしいがいつ出て来て本人や俺に被害が来るとも分からない。速めにさっさとルイスというあのキザ男研究者(仮)を見つけて予防策――はもう遅いか、治療法やせめて症状を遅らせる方法を聞き出す必要があるな。

 

 ……せっかくの後輩なんだ。この手で撃つような結末にはしたくない。

 

 ひとまずアシュリー嬢が囚われているらしい教会にさっさと向かわないと、救出に来たレオンにも感染されたのだ。アシュリー嬢にも()()()可能性は十分に高い。大統領の娘がバイオテロに巻き込まれたなんてことがあったらこの寒村だけの問題ではなくなってしまう。

 

 考えることが多い。




男もといウェスカーからのブラッドへは「クリス・ジルとは別方向に同じくらい厄介なヤツ」という評価。銃弾避けまくって貫手する気まんまんです

ブラッドがウェスカーにやったこと一覧
・ウェスカーのネット銀行の預金を一部差し押さえ
・黒ずくめのウェスカーの写真を指さし「チューニビョー」と発言
・盗撮したレベッカの写真をS.T.A.R.S.元メンバー全員(レベッカ以外)に共有。
・ウェスカー愛用のサングラス会社をBSAAのお抱えにし軍用サングラスオンリー化、オシャレサングラスの販売を停止。


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