チート持った痛(I)い奴らを俺がチートで成(S)敗する (憲彦)
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悪巫山戯の産物

どうせ誰も読まないし感想来ないし、ならはっちゃけちゃってありきたりな神様転生ものでも書こうかなと思って書いています。


「と言うわけで、貴方には異世界転生して貰います。転生先はISの世界ですが、色々と狂ってますのでお気をつけて」

 

「待ちやがれこの野郎。女神を自称するヤツは漏れなく頭がクルクルパーなのか?なに唐突に言ってくれてんだ?もう少し情報をくれ」

 

 何もない真っ白な空間。強いて言えば空気と女神を自称する不審者と、ソイツが座っているイス、ひじ掛けしかないこの空間に、学ランを着ている男が居る。

 

 何があったかを説明すると、馬鹿馬鹿しいにも程がある話なのだが、名前を書いただけで対象を殺害できるノートを持った頭の悪いサイコ野郎が、ノートに名前を記載して殺したのがこの男。そしてそのノートをサイコ野郎に与えたのが、目の前にいる自称女神の不審者。更に言うとそのノートを持ったヤツは元々は別の世界の住人で、必要のない力を持って転生した。因みに転生させた張本人は目の前にいる。

 

「いやね。悪かったと思ってるよ?世界の王様になりたいとか訳わかんない事言われたからさぁ、取り合えず適当な力持たせて転生させた結果がこれだからさぁ、うんゴメンね」

 

「いやそれで俺の人生パーよ?どうしてくれんのよ?つかなんで閻魔様とかじゃなくてアンタが対応してるわけ?家仏教徒だから普通ここにはこないよね?」

 

「まぁそうなんだけどさ、本来君、死ぬ予定じゃなかったんだよね。まだ先だったんだよ。具体的には、あと70年は残ってた。そんな予定に無い死だったからさぁ、そのまんま彼の世に持っていったら手続きが面倒なんだよ。だから、残りの人生を新に過ごして貰おうと思って呼んだわけ。OK?」

 

「この場に銃があったならOKと言いながらアンタに向かって引き金を引いてたところだよ。なんだよその面倒な理屈は」

 

「仕方ないだろ?地獄も天国も容量オーバーで人手不足。そこにミスで死んだ存在が来たらパニックだわ。と言うより、職員が過労死する」

 

 目の前の存在が本当に女神なら、一応信用できる話である。しかし聞いていて分かるように、内容が余りにも酷すぎる。こんなのが女神だと思うと胃が痛くなってきた。

 

「まぁ転生する理由はなんとなく分かったけど、なんでISの世界?なんで態々ラノベの世界に行くんだよ?普通の何もない世界で良いじゃん」

 

「そうも行かなくてね~。君が死んだのと似たような理由で死んじゃったのが沢山いて、最初は可哀想だと思って好きな世界に特典持って転生させてたんだけどさ、ISの世界への転生者が片寄っちゃってね。お陰で私の力を持ってしても監視・管理が不可能に近い状態になっちゃったの。しかも全員その世界じゃオーバースペック過ぎる特典ばっかり持っていっちゃったから、監視を辞めることができないのさ。世界崩壊しかねないからね。もう崩壊して新しい世界になっちゃったけど」

 

「結局はテメーの尻拭いかよ。と言うか、俺が行ったら更にチートややこしい事にならないのか?」

 

「なるだろうね。でも、私からしたら世界が見えないのは死活問題。だから君には、私の協力者として世界の様子を報告してほしい。難しいことはない。元々はISの世界。嫌でも学園と主人公と転生者の周辺で問題が起こる。それを報告してほしいのさ」

 

「……断る。以上」

 

 真面目な顔して女神に頼まれたが、少し考えるとキッパリと断った。しつこい訪問販売員も引いてしまう程に清々しい断りかただ。

 

「えぇ~……普通断る?」

 

「だって俺にメリット無いじゃ?そんなチートばっかり持ってる連中の中に入ったって、生半可な力じゃ勝ち目無いし、そもそもチート貰っていく転生者なんて話ができる連中とは思えない。どうせアレだろ?ハーレム作りたいとかモテたいとかでISの世界に行ったんだろ?整った容姿とバカみたいな力と学力持って。半紙みたいにペラッペラの正義感とプライドで主人公を否定しかかって、尻の軽いヒドインどもを自分の物にしようとしてる様子が目に浮かぶよ。一夏くん可哀想に」

 

「わぁお。驚くほど合ってるから言い返せない。うん。まぁ確かに、君の言う通りだね。辛うじて最後に見れた世界の行く末が、転生者女に囲まれてウハウハ。主人公の一夏くんは辛い人生を歩むENDだったからね」

 

「それにさぁ、チート転生者を同じくチートでしばいて世界まともにするって小説もう読み飽きてるんだよ。ありがちすぎて第1話の段階でどこに着地するか見えてるわ。そんな小説のキャラにはなりたくないんだよ」

 

「えぇ~……」

 

 恐ろしく的を射た考えを繰り返すこの男に、若干の気持ち悪さを覚えた。しかし、これだけ言えて冷静に物事が見えるのであれば、これ以上にない適任でもある。女神故に無理矢理チート持たせて転生させるのなんて造作もないのだが、そんな事をしたら協力してもらえる訳がない。駄女神でもそこら辺は理解している。

 

「と言う訳で、死んだ俺は通常通りに天国が地獄へ―」

 

「あ、そうだ!」

 

 男の言葉を遮りながら、ポンっと手を叩いて面白いこと思い付いたと言う様な反応を見せた。

 

「ねぇ、ありきたりなチート転生が気に入らないんでしょ?」

 

「ありきたりな展開が気に入らないんだよ。まぁ大体その通りだが」

 

「じゃあさ、これでもかってくらいのチート、その身に付けてみない?」

 

「は?」

 

 かなりありきたりな話にも思えるが、それはそれで興味をひかれる内容だ。

 

「だから、君をチートまみれにしてしまおうって言うわけさ。そうすればあっちで苦労することないし、私が頼んだ仕事も早く終わらせられるだろ?」

 

「まぁ確かにそれなら死ぬことも無さそうだな」

 

「よ~し!なら少し待っててくれ!すぐに特典拵えてくるからよ!」

 

 それから十数分後、A4サイズの紙にビッシリ文字が書かれた物を女神が持ってきた。特典の内容と言う事は容易に想像できたが、余りにも多いため少し気持ち悪い。

 

「沢山あるけど、取り合えず今覚えてほしいのは先見の明だ」

 

「なんだそれ?」

 

「言葉の通り、これから先のことを見通すこと能力だ。と言っても、正確には見通すではなく感じ取ると言う表現の方が合っているな。所謂第六感の様な物だ。有効に活用してくれ」

 

「株かFXでも始めるか。他には……バカみたいな技術力にありがちな高い身体能力に学力。イメージ具現化?なんだそれ」

 

「単純に、君がイメージした物を具現化してくれる能力だ。まぁ100%と言う訳じゃないけどね。君の想像力が物を言うから、中途半端なイメージじゃ具現化はできない」

 

「成る程……他はアニメの力バッカリだな。永遠の万華鏡写輪眼に普通の写輪眼。四次元ポケット。テレポート、分身、幽体離脱、アイアンマン一式ってなに?」

 

「アークリアクター始め、スーツにジャービス、フライデーの事だ。ただしスーツは君が具現化して、ジャービスとフライデーは君が説明書通りにパソコンで組み上げてくれ。アークリアクターも同様ね」

 

「ふ~ん。スーツ以外は作れってことか。後はまぁ気になるところは無いな」

 

「まぁ細々したのはオマケみたいな物だからね」

 

「んで?転生者に関してはどうすればいいんだ?」

 

「別に何もする必要はないよ。取り合えず君は学園生活を楽しんでればそれで良いから。私が連絡したときに報告してくれれば良いよ。はいこれ」

 

「スマホ?」

 

「そう。スマホ。それに私から連絡行くから。あぁ、スペックは普通のと変わらないからね。あと君の親に関してだけど、名目上君は私の協力者だし、特典だらけでたぶん家は目も当てられない程になってるだろうし、居たら居たで不都合な所が多い。どうしても必要な場合は私が行くし、取り敢えずは存在してるけど、海外で働いてるって事になってる」

 

「了解。大体分かった」

 

「じゃ、よろしくね~」




主人公の名前?その内書きます。タイトルももちろん募集です。では~


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異世界生活開始

転生直後です。まだ本編には突入してませんよ。すぐに入りますけどね。


「成る程……確かに家は目も当てられないな」

 

 転生後、目が覚めたのはこの世界の自宅と思われる場所。だが早速問題が発生している。場所はちょっとした林に囲まれている静かな場所。生活へのアクセスがめんどくさそうだが、道はしっかりとあるし、自転車さえあれば全く問題ない。そんな場所に建っている。

 

「人目に付きにくい場所で良かった……こりゃ確かに見られる訳にはいかんからな~」

 

 見た目は普通の家だ。玄関側から見るぶんには。問題はガレージと地下、自室だ。

 

「アイアンマン一式とかふざけたのが入ってるから仕方ないとは言え、地下が丸ごとラボみたいになってるってのはどう言う事だよ……それに俺の部屋……」

 

 備え付けられた棚には、女神が万が一の為にと置いていった旧式のアークリアクターと、大量の写輪眼が並べられていた。

 

「目が覚めて早々に視線を感じると思ったら……写輪眼棚に並べるとかどう言う神経してんだよ。人は入れられないな~」

 

 普通の写輪眼と万華鏡、そして移植することで得られる永遠の写輪眼などと、何故こんな雑に置いてるのか聞きたくなるレベルで管理が酷い。せめて棚に鍵を付けるか何かはしてほしかった。

 

「一種類足りないな……神威の写輪眼あると助かるんだけどな~。……まさか自分の目にはまってるなんて事はないだろうな?」

 

 そのまさかの可能性が頭を過り、急いで洗面所へと走っていった。鏡を覗き込むと、普通に自分の目に神威の写輪眼が収まっている。

 

「マジか……嘘だろ……」

 

 転生の特典である為、リスクは無いのだがこれでは人前に出ることができない。常にカラコン入れておくかサングラスをしておく必要が出てくる。

 

「あ、良かった。しまったり出したりできるのか……」

 

 ナルト本編で、本来の持ち主であるオビトですら描写されている範囲では常に出しっぱなしだった為、しまえないのかと不安になっていたのだが、いらない心配だった。

 

「こんな無駄な能力沢山付けやがって……今後悪巫山戯き乗るのは止めておこう」

 

 そう言いながら、分身を出して悪趣味な部屋を片付け始めた。場所がないため、写輪眼たちは容器にいれた状態で神威の空間に入れておき、いつでも出し入れ可能にしておく。

 

 そして人には見せられない物の数々はどうにかして目につかない場所へ移動。ガレージと地下ラボは厳重に鍵をかけて間違ってでも自分以外入れないようにする。

 

「なんとか普通の家になったな……取り敢えずの生活費として、銀行口座に100万か。分身その1、銀行で少し下ろしてから買い物よろしく。食材買ってきて」

 

「了~解」

 

 他の分身を消して、机の上に置かれてるパソコンを開いた。インターネットで調べてみると、ISは既に世界に普及している状態だった。

 

「白騎士事件は起こった後なのか……事件後に第1世代である白騎士を解析し、第2世代ISを世界中が製作。現在は量産されているか……つまり第3世代開発前の段階か。少し話が出ているだけみたいだな……」

 

 その後、ネットの至るところからISを製作している企業の情報を収集。良さげな場所の株式をいくつか買い漁ろうと画策した。

 

「しかし……口座に100万あるとは言え、株を買うには資金不足も良いところだな……まずはFXか。学校は分身に行かせて、しばらくは資金集め、集まった直後に株式を購入して様子を見るか。ジャービスとフライデーも作らないとな」

 

 分厚い説明書を読みながら、その通りにプログラムを組み上げていく。

 

「特典のお陰でスムーズに組めてるが、こりゃ特典ありでも時間かかりそうだな。アークリアクターは……」

 

 説明書をつかんで読んだがすぐに投げ飛ばした。正直言って今この場で作れるかどうか危うい代物だったからだ。特典のお陰で内容は理解できているが、だからと言って作りたいとか言う意欲が湧いてくる様な物でもない。説明書はジャービスとフライデーの物よりも分厚いし、行程がバカみたいに多い。今すぐに着手しようと言う気にはとてもなれなかった。

 

『お~い。聞こえるか~?』

 

「ん?あぁ女神か。なんの様だ?」

 

『無事に転生は済んだみたいだな。どうだ?そっちの世界は』

 

「全くもってふざけてるよ。部屋の棚に普通に写輪眼並べるヤツがあるか」

 

『済まん済まん。並べる所が無かったから取り敢えず設置したんだ。変な趣味持ってるヤツって勘違いされたか?』

 

「誰も家に入れてねぇから見られてねぇよ。今は資金集めとジャービス、フライデーの製作にかかってる。作るのに何ヵ月かかることやら」

 

『その特典ありなら半年もあればできるだろ。後、一応お前の現状を伝えておくぞ。今のお前は小学6年生だ。新年度から中1になるけどな。んで、両親は海外を飛び回ってるって状態だ。あぁ、名前は同じだから心配するな。なんか困ってることあるか?』

 

「別に。どうやって金を集めるか考えてるだけだ。原作に出てきた主要企業の株を買うには資金が足りないからな。FXとかで集めてからって考えてるよ」

 

『……お前、IS部品製造の中小企業は調べたのか?その時代なら、どの企業もIS事業をするために売り込んでるはずだ。新しく立ち上げようとしてる所もある筈なんだが?』

 

「それは盲点だった。だが、そもそも基本となる金が口座に入ってる分しかないなら変わらんだろ」

 

『お前さんがそんなに早く行動を開始するとは思ってなくてな。取り敢えず生活に困らない分を入れておけば良いと思ったんだよ。まぁ株を買うくらいの金はすぐに用意してやる。だから、今すぐ大きな利益になりそうなところを探せ。先見の明があれば容易いだろ』

 

「へいへい」

 

 電話を切って調べてみると、簡単に10社程この先成長しそうな企業を見付けることができた。だが、ザッと見ただけで1000社程あったのだ。その中で大きく成長する企業が僅か10社程度と言うこの状況。凄まじい競争率と言うか、考えもなしに全員同じことをやっていると言うか、ISに便乗してやっている感が強い。

 

「お~い。良さげな場所見つけたぞ~」

 

『速いな。まぁ先見の明があれば当然か。で?何百社見付かった?その時代なら沢山あっただろ?』

 

「それが残念な事に、10社しかなかった。他はISの時代に便乗して取り敢えず立ち上げたって感じで、長続きしないか中途半端に成長するかのどっちかだ」

 

『あらら……予想以上に酷いな。まぁ兎も角、見つかったなら良かった。もう口座に金は送ったから、さっさと購入するんだ』

 

「もう買ったよ。お前本当に感覚どうかしてんじゃねぇの?何を考えたら口座に一気に大量の9が刻まれるんだよ」

 

『お陰で大量に買えただろ?んで一応伝言なんだが、取り敢えずこの世界をまともな未来へ導く方法がさっきチラッと見えた』

 

「どんな方法だ?」

 

『お前が経済的にチートになれ。取り敢えず、目先の目標は大企業の株式を大量に購入することだ。どのタイミングで売り払っても構わないが、そうだな……最低でも1つの企業の6割以上の株をお前が保有するんだ』

 

「アンタが俺に金を送れば良いんじゃないか?その方が速いだろ?」

 

『それがそうも行かない。お前にバカみたいに大量にチート付けてだろ?それで既に容量オーバーなんだ。さっき送った金が最後。もうこっちから何かを送ることはできないのさ。物資と言う意味合いでのサポートはあれが最後だ』

 

「そう言う重要な事は最初に言いやがれ使えねぇな」

 

『私、これでも君のために色々やってるよね?』

 

「お前の尻拭いをこっちは手伝わされてるんだ。それくらい当たり前だ」

 

『クソッ。お前の立場が下なら殴ってるところだ。まぁ、目先の目標は伝えた。それは必ず実行しろ。その世界がそれ以上おかしくなったら、本格的に消滅してしまう。それだけは防いでくれ』

 

「善処するよ。じゃあな。早くジャービスとフライデーを完成させなくちゃならないんで」

 

『はいはい。仕事は忘れんなよ』




そろそろ本編入るか。


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計画進行中

活動報告にタイトル募集でも乗っけますかね。後は所謂踏み台転生者のチート特典も一緒に。

その内作ります。


 さて、女神から送られた金で新しい企業とIS部品製造の新事業を開始した中小企業の株を買い漁ってから1年が経過した。先見の明のお陰で、目星を付けた10社は大規模な成長をとげ、口座の中はえげつない事になっている。

 

「ふぁ~あ。そろそろ大手企業の株でも買うかな。取り敢えず倉持とデュノア社。あとはそうだな……アメリカの企業のでも買うか。ジャーヴィス。すぐに手続きを進めてくれ」

 

『畏まりました。ボス』

 

 マジで容赦なく大量の株を一気に購入していった。普通に考えたら破産まっしぐらなやり方だが、先見の明があるためその心配はない。作業をジャーヴィスに任せると、地下のラボへと向かっていく。

 

「アークリアクターの進捗どうだ?俺たち」

 

「ようやく3割ってところだ。旧式があるから兎も角、今作ってるのはとても実用できそうにない」

 

「まぁこれが完成すれば小型の発展タイプも作れるし、量産もできる。時間はまだあるんだ。気長に待とうぜ」

 

「全く……あのクソ女神め。1番肝心な物がこれじゃ意味ねぇだろ」

 

 全員同一人物だ。特典の1つである分身を使って円滑に作業を進めている。因みに、アークリアクターの製作には3人使って、学校にも1人いる。本体は株やらFXやらで資金を集め、たまにラボに来て作業の進捗状況を確認すると言う生活が続いていた。

 

『ボス。先程ハッキングを仕掛けてきた者が居るのですが』

 

「報告ご苦労フライデー。でどうしたんだ?」

 

『すぐに閉め出しました。対策プログラムを現在強化しています』

 

「一体どこの誰なんだ?今月に入ってから4回目だぞ?次仕掛けて来たらダミーファイルを掴ませろ」

 

『了解。どのファイルにしますか?』

 

「あぁそうだな~。沢山あるからな~」

 

 完成したジャービスとフライデー。ジャーヴィスはこの男のサポートと金銭管理。フライデーには家の事を任せている。こうやってハッキングを仕掛けてくる輩がいるが、それはフライデーが対応してくれている。

 

「じゃファイルその5を掴ませろ」

 

『了解。すぐに準備します』

 

 因みにダミーファイルだが、これは最初の外部からのハッキングが判明したときに作った物だ。中身はとても下らない物の詰合せで、今回準備させたファイルその5は無修正エロ画像の詰合せである。しかも並のパソコンでは重たくなる程の量が入っている。

 

 他にはグロいスプラッター画像や猫、犬動画の詰合せ、気持ち悪い虫の画像にデカデカと「スカッ」と言う文字が書かれた画像が入っている物がほとんどだ。特典を使えばそんな下らない物を沢山作ることができるので便利なことこの上ない。

 

「慎重に侵入してやっとの思いで手にいれたファイルがアレだったらどんな反応をするか。考えただけで笑えてくるな。お気に召したならそのままくれてやる」

 

 数日後、また懲りずに侵入しファイルを盗んだハッキング元から、悲鳴が上がったのは言うまでもない。

 

「なんか最近増えたよな?」

 

「この前、旧式のアークリアクターでのスペックを確かめるためにスーツ着て飛んだからだろ」

 

「それ見てハッキングしようって考えるヤツがこの世にいるか?ここまで割り当ててさ」

 

「ここはISの世界。心当たりはあるだろ」

 

「あぁ。成る程……札束で頬をひっぱたけば黙ってくれるかな?」

 

「札束1つじゃ無理だろ。ジェラルミンケースいっぱいに札束入れて後頭部を殴れば静かになるだろ」

 

「ナイスアイディア。目の前に現れたらそれやろう」

 

「相変わらず、本体は人間性がどこか歪んでるな」

 

「俺たちが言えた事かよ。その本体の分身なんだから」

 

 ここにいる全員(同一人物)は漏れなくどこかが歪んでいると言うことだ。

 

「んじゃ作業頼んだ。スーツはまぁ、いくつか具現化させておくか」

 

「マーク3だけで十分じゃねぇか?」

 

「いや。デザイン的にマーク7が好きなだけだ。フライデー、マーク7とマーク43出しておくから、整備と格納頼んだ」

 

『はいボス』

 

「おい待て。なんで43まで出した?」

 

「機能が便利そうだから」

 

「ならマーク50出せば良いだろ」

 

「デザインが気に入らん。悪くはないんだが……なんかくるものがない。ゴツい方が好きなんだよ」

 

「あっそ。じゃあマーク3はどうするんだ?マーク7もマーク43も出しちまったし、完全な性能不足のスーツになったぞ」

 

「データ取りに使えば良いだろ。あと練習」

 

「データ取りなんて必要ないだろ。まぁ練習に使うなら別にいいか」

 

 フライデーによって格納されていく2つのスーツを見ると、作業をしていた分身の1人があることを聞いてきた。

 

「なぁ本体。お前、神威の練習してるのか?」

 

「あぁ。一通り終わったよ。神の特典だから、あんまりバテないし、神威は使い勝手が良い。異空間に入ればやりたい放題だからな」

 

 この男は神威で異空間に入ると、スーツを着て盛大にミサイルや爆弾を爆破をしてみたり、ナルト本編でオビトがやっていたすり抜けを練習したり、分身作って自分の実力を普通に上げたり等々。神威の空間を有効に活用している。

 

「つっても、幻術はかける相手がいないから、練習のやりようが無いんだがな」

 

「だな。分身にかけたら消えたときに本体に返ってくるし」

 

「幻術はやるとなったら、ぶっつけ本番だな」

 

 笑いながら言っているが、自分についているチートの数々を見れば、幻術なんてものは必要ない様に思える。そもそも他の転生者たちもチートを持ってこの世界に来ている。そんな連中にはたして幻術が効くのかと言う疑問すらある。最強幻術である別天神であれば可能性はあるが、普通の写輪眼や万華鏡の幻術はあまり期待できそうにない。

 

「そう言えば、織斑一夏の事は良いのか?確か悲惨なエンディングを迎えるとか女神が言ってたな」

 

「あの女神が言ってたことだから信用できるか分からんが、どうやら俺のいる学校の生徒だったよ。んで執拗に嫌がらせしているのがいたから、たぶん転生者の1人だな。なんかドベだの木偶の坊だの色々言ってた。必然的に鈴音も居たんだが、別のヤツがなんかベタベタくっついてた。ソイツも転生者じゃね?」

 

「んで?学校に行ってる分身はなにしてんだ?」

 

「クラスがそもそも違うからな。それに現段階でどうにかしろと言う指示を受けてる訳でもない。分身が勝手なことしなけりゃ取り敢えず関わるつもりは―」

 

 ここで言葉が止まってしまった。本体と現在出ている分身たちに、学校に行っていた分身の情報が返ってきたからだ。時刻は既に下校後で、家に着いている時間だった。今現在、玄関を抜けた辺りにある地下への入り口で分身が消えた。その瞬間、厄介な分身の記憶が流れてきた。

 

「やりやがったな分身の野郎……!!」

 

「取り敢えず早く戻ってやれ。俺らに記憶が流れてきたって事は、本人は消えたってことだろ?上で待ち惚け食らってる筈だぞ」

 

「あぁ。お前らは作業しててくれ。音は出すなよ。ジャーヴィス!フライデー!客人が来ちまった。見つからないようにしろ」

 

 頭を抱えながら上へと上がっていき、客人を家に上げた。

 

「俺の部屋に来い。織斑。手当てもしてやる」

 

 玄関に居たのは、現状関わる気が全くないこの世界の主人公の織斑一夏が立っていた。




何故ジャーヴィスがボス呼びかって?主人公の名前をまだ明かしてないからです。

じゃ、感想よろしくお願いします!!

募集の活動報告です。皆さんの素晴らしいアイディアを待っています!
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=236565&uid=180457


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力試し

タイトル及び踏み台共のチート特典、募集しています。ただ、1つ言い忘れたことが。踏み台共の優れた容姿と頭脳、身体能力は標準装備です。可哀想な死にかたをした連中への女神からの慈悲とでも思ってください。なのでその3つは入れる必要はありません。では、よろしくお願いしますね。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=236565&uid=180457


分身の勝手な行動により、家にこのISと言う世界でもっとも重要な人物。と言うか主人公である織斑一夏が来てしまった。ただ、一夏は全身を酷く怪我していた。火傷のような傷まである。

 

(ひどい怪我だな……それにこの火傷、普通に熱を当てたって言うよりは火花の様な物を当てた方が合ってそうだな……)

 

「あ、あの、その……」

 

「あぁすまん。2階が俺の部屋だ。上がって寛いでってくれ。ゲームがテレビに突き刺さったままだから遊んでて良いぞ。救急箱もってくるから待ってろ」

 

自分の部屋に一夏をあげると、救急箱を取りに向かう。

 

「ったく。どう言う事だ?俺はまだ関わるつもりはねぇってのに……」

 

とは言ったものの、やはり気になる。一夏の怪我はどう考えても普通に生活をしている分には付きそうにない物ばかりだった。特にかすかに見えた火花を当てたような火傷。分身の記憶を見るからに、確実に転生者の1人による物であると考えられる。

 

「特典は炎を使う感じか?だとしたらあの火傷は説明が付かねぇな……」

 

そんなことを考えながら、救急箱や軽いツマミを用意して自分も部屋に戻っていく。部屋にいた一夏だったが、特に何かをしている訳ではなく、ただ床に座っているだけだった。

 

「ゲームやってろって言ったのに……」

 

「え?あぁ、勝手にやるのは悪いかなって思って。あと操作方法分かんなかった……」

 

「ん?あぁ~まぁ、無理もねぇな」

 

テレビにくっついてるのはスーパーファミコン。発売されたのは1990年。今の子供が知るはずがない。持ち主のこの男ですら、操作方法を忘れていた程なのだから、一夏が知らないのは仕方がない。

 

「後でつけてやるよ。それより服脱げ。傷の手当てしてやる」

 

「う、うん」

 

この手当てには2つほど意味がある。1つは単純な治療のため。分身が一夏を連れてきた理由は、このひどい怪我の手当てをするためだからだ。ただ、本当の理由はもう1つの方。転生者の持っている特典をハッキリさせるためだ。むしろこっちの方が理由としては大きい。女神から貰ったほぼなんでもアリなこの体と能力でも、相手の力を知らない限りは対策のしようがない。せめて本編とも言える学園に入学するまでに、せめて能力は把握しておきたいのだ。

 

(……エロい体してんなコイツ。どうしてくれようか)

 

なにもしません。この男、割りとオールマイティーである。襲いたいと言う欲求を押さえつつ、一夏が服を脱ぎ終わるのを待った。

 

「ほら。背中向けろ(前は目に毒だ)」

 

「ヒッ!?」

 

「こんなことで声出すな」

 

火傷用の薬を背中に塗っていき、塗っている時の触った感覚でその他の怪我の様子を探っていく。

 

(骨に異常があるな……怪我の影響か?いや。これは階段から落ちた感じだな。しかも突き落とされて)

 

女神が付けた膨大な知識のお陰で、割りとすぐに一夏の体の状態を理解することができた。早い話、病院に行けば真っ先に診察をした医者が事件性有りと判断するような状態だ。

 

「ありがとう。手当てしてくれて」

 

「別に。家の人に怪我の事は言ったのか?」

 

「いや。心配させたくないから……」

 

「そうか。まぁ、深くは聞かねぇよ(肌すべっすべだな~)」

 

骨まで行っている怪我に関しては、部分的に時間を巻き戻して怪我をする前の状態に戻し、その他の傷は跡が残らないように少し細工をする。

 

(医療忍術って便利だな~。流石に骨までは無理だったが。使い勝手がかなり良い。気に入った。倉庫に仙豆が大量にあったが、治療に使う必要は無さそうだな)

 

そんなことを考えながら、一通りの作業を終えた。そして救急箱を片付けてくると伝えて、一旦部屋から出ていく。

 

「さてと」

 

すぐに分身をもう一体作り、これからするべき事を伝える。

 

「これからあの怪我を負わせたヤツの所に行って、力試しと相手の能力を見てくる。その間、一夏の相手をしててくれ」

 

「良いのか?相手の特典はまだハッキリしてないだろ?」

 

「おおよその目星は付いてる。スーツを使う必要は今のところない。むしろ使わない方が戦いやすいかもしれないからな。取り敢えず、家の事は頼んだ」

 

「了~解」

 

一夏の事は分身に任せ、本体は地下ラボの入り口に置かれている独特な形をしたクナイを数本持ち、懐に忍ばせて家を出ていく。そして通っている学校の通学路へ。

 

「見つけたけど……分かりやすすぎるだろ。なんだよあの髪の色。日本人の癖に灰色に近いってなんだよ。つーな中学生の癖に容姿整いすぎだろ。もう少しあどけない感じが残ってても良いだろ」

 

ザ・転生者な見た目にツッコミと毒を入れつつ、早速準備に取り掛かった。準備と言っても、用意したクナイを2本手に持って投げるだけだ。

 

「ッ!?グッ!」

 

1本は転生者の背後。もう1本は目の前に投げ飛ばす。当然当てるためではない。このクナイには特別な仕掛けが施されており、柄に文字が書かれている。これは所謂マーキングで、これがある場所に瞬間移動することができるのだ。

 

「ちょっと面貸せ」

 

「誰―」

 

背後に飛ばしたクナイが転生者の後ろに来た瞬間に術で移動。言いきる前に背中に手を当てて飛んでいったもう一方のクナイの方に移動した。

 

「さてと。着いたぞ。で?さっきは何を言おうとしたんだ?ベタに誰だお前って言いたかったのか?」

 

「林の中!?この妙な力、お前転生者だな!」

 

「当たり前だろ。こんな珍妙な力を持ったヤツがこの世界にいるかよ」

 

人目に着かない林に移動。相手も混乱している感じはあるが、特典のお陰かすぐに臨戦態勢に入った。

 

「ヘッ!原作開始前に自分と同じ邪魔な転生者けそうって魂胆か?雑魚が考えそうな事だな。後悔させてやるぜモブ野郎!今お前の目の前にいるのはなぁ!この世界の主人公様なんだからよぉ!!」

 

言いきった瞬間、大爆発が起り辺りを震動させた。範囲的に考えて普通は回避できない。だが、それは普通の場合と言う話であって、この男の前で主人公の力と言うには、少々役不足と言える。

 

「ハッ!瞬間移動には少し驚いたが、その程度の力で俺に勝てるとでも思ってたのか!モブの分際で主人公様に喧嘩売ってんじゃねぇよ!バーカ!!」

 

「いや本当にビックリしたよ。まさか主人公様がこの程度だとはなぁ~。本当予想外」

 

「てめぇ……どうやって逃げやがった?」

 

「自分で考えなよ。主・人・公・様~」

 

顔を半分以上隠しているが、目元だけでも分かるくらいにバカにしている。それほどまでに手を抜いて良い相手だと判断したのだろう。

 

「なら吐かせてやるよぉ!死ねぇ!」

 

「バカなの?死んだら吐くもなにも無いでしょ。バカなの?ねぇバカなの?ねぇねぇねぇ」

 

ウザい煽りかたにイラッと来たのか、掴みかかってゼロ距離で爆発しようとした。しかし、伸ばした手は体を掴むことができず、すり抜けていった。

 

「お前の特典はヒロアカの爆豪の個性、爆破だな。広範囲戦闘に向いていて、破壊力も抜群。従って2つ目の特典は原作でもデメリットとして扱われていた汗腺の痛みの軽減。もしくはそれを消しているってところか?」

 

「テメェ……なにもんだ?」

 

「他人に物を尋ねるときはまず自分からって習わなかったか?なぁ、自称主人公様?」

 

「ハッキリ分かったぜ。テメェは面倒な存在になる。ここで殺さねぇとな」

 

「できる様になってから言えよ」

 

口許が完全にニヤけている。この戦いが楽しくなってきたからではない。圧倒的な実力差があるにも関わらず、今だに自分が勝てると思っているその滑稽な姿に笑っているのだ。だから、ちょっといたずらをした。

 

「死ねぇ!!!」

 

最初に撃った物とは比べ物にならないほどの爆発。それが辺り一体を包み込み吹き飛ばした……なんて事は起きなかった。

 

「ッ!?なんで!?」

 

「いやぁ~本当なんでだろうね~。上手く行ってたらここら辺が吹き飛んで、俺に傷くらいは負わせられたかも知れないのにねぇ~。主人公様の力ってそんなものなの~?ガッカリなんだけどぉ~」

 

何度も個性を発動させて爆発を起こそうとするが、全くできない。小さい爆発ですら出てきた瞬間に湿気った花火の様にすぐに消えてしまう。やったことは簡単。単純に出てきた爆破を神威で異空間に飛ばしていたからだ。当然やっている本人である為、仕掛けは知っているのだが、ウザいくらいに煽ってくる。それに焦ってか何度も個性を発動させようとするのだが、その度に飛ばして無力化している。

 

「もう飽きたから眠っていいぞ。螺旋丸」

 

螺旋丸(手抜き)を胸に押し付けて、意識を刈り取った。正直言って期待外れな感じが大きい為、不完全燃焼気味だ。とは言え、自身についているチート能力の数々。それを考えれば当然の過程と結果なのかもしれない。

 

「正体感付かれても面倒だし、記憶消しとくか」

 

目蓋を少し上げて、写輪眼で覗き込んだ。たったこれだけのことだが、コイツの頭の中からは戦いの記憶が綺麗さっぱり無くなった。

 

「この林、蚊がよく出るんだよな~。紫外線ライトでも置いて蚊を誘き寄せよ~。蚊の皆さん。ここに美味しい血がありますよ~」

 

誰も聞いていない中、そんなことを言いながらライトを設置。目が覚めたときに大変な事になっているのは確実だ。




初戦闘です。では次回会いましょう。
次回もお楽しみに!感想や評価、お気に入り登録と活動報告もよろしくお願いします!!

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厄介事沢山

活動報告で行ってる募集なんですけどね、これは言ってなかった俺が悪いんですが、キャラクターを募集してる訳ではないんですよ。募集してるのはキャラではなくチート特典なんです。

正直、キャラクターが来たとしても使えるか不明ですし、部分的に使えたり「あ、このキャラクター良いな」って思ったりもするんですけど、完成したキャラクターで応募されらと、使えるかどうかが怪しいです。と言うか恐らくほとんど使うことができないと思います。

なので、ありがたいんですけど、応募内容はキャラクターではなく特典のみでお願いします。後、現在最優先で募集しているのは小説タイトルですので、そちらもお願いします。
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一夏を虐めていたDQN転生者の相手をしていた頃、家の自室で2人はゲームを遊んでいた。まさかのスーパーファミコンでマリオカートではあるが。

 

「玲衣は一人暮らしなのか?中学生なのに」

 

「まぁな。親は海外飛び回ってて、1年に帰ってくる回数は片手の指が2本あればたりるくらいだ」

 

「それ、ほとんど帰ってきてないってことだよな?寂しくないのか?」

 

「全く。1人でいる方が落ち着くからな。収入も安定しているし、なんなら親と同じかそれ以上に稼いでる」

 

これは当然嘘だ。そもそも親はいない。ただ稼ぎに関して言うなら、想像でしかないが恐らく本当にそうなのかもしれない。株のお陰で毎月毎月入ってくる金が本当にえげつないのだ。中学生ではあるが、高額納税者の部類に入ることだけは間違いない。

 

「つかお前、よく俺の名前覚えてたな。クラス違うのによ」

 

「1年の時は同じだったから覚えてたんだよ。話す機会はなかったけど」

 

「あぁ。そう言やぁ居たな~。忘れてたわ」

 

会話終了と同時に玲衣の操るヨッシーがゴール。それから少しして一夏のルイージがゴールした。ゲームは割りと白熱している。

 

「なぁ、なんで虐められてる事を家の人に言わないんだ?お前の受けてる虐めは悪質その物だろ」

 

「俺、姉さんと2人暮しなんだ。姉さんは俺の為に色々と頑張ってるし、最近姉さんもストーカーされてるって言ってた。だから言えなくて……」

 

「成る程。お前の家系はトラブルに巻き込まれる様にできてるようだな。弟のお前が虐め。姉がストーカー被害。次はなんだ?女子校に転入か?」

 

「ハハハ。流石にそんなことはないだろ」

 

(いや、今後それが起こるんだよな~。可哀想に)

 

そんなこんなで、一夏の未来を哀れんでる玲衣の分身だが、本体の帰宅を感じ取って少し席を外した。

 

「どうだった?転生者は」

 

「持っていた特典はヒロアカの爆豪の個性爆破。それに合わせて爆破によるデメリットを軽減する体。他は不明だ」

 

「成る程。この世界じゃ持って来いの特典だな。対人戦がほとんどない分、全員生身の戦闘では大したことはない。千冬や束くらいだからな。生身の戦闘も強いのは」

 

「あぁ。ISやそれに似た物は下手に使えば犯罪者扱いで、原作に突入した段階で身元がバレる。転生者同士の潰し合いが始まったら、十中八九生身の戦闘だ。取り敢えず、物に頼らない強さをどうにかして身に付けなきゃならん」

 

「そこで1つ問題なんだが……」

 

「ん?何があった?まさか一夏に写輪眼やその他ヤバイもの見られてないだろうな!?」

 

「そこは大丈夫なんだが、問題は姉の千冬の方だ」

 

「なんかあったのか?」

 

分身は一夏が言っていた事をそのまま本体に伝えた。ただこのストーカー事件、転生者絡みかと聞かれると非常に答えづらい。なんせ、一応ここは小説の世界。千冬の容姿はかなり整っている。普通に考えてストーカーに会わない方がおかしい。いやストーカー被害があっていてもおかしいのだが、とにかく、主要キャラクターの身の回りに起きる事件全てが転生者絡みとは決めつけられない。とは言え、気になる事ではある。

 

「一応調べてくるか?」

 

「千冬なら1人でも解決できそうだけどな~」

 

「転生者相手だったら素手じゃ厳しいだろ」

 

「流石に専用機持ってそうだけどな~。まだ現役の日本代表なんだろ?」

 

「確かに時系列的にはそうだけどよ~。現役の国家代表がストーカー如しに専用機展開してぶった斬るってのも、とんでもないニュースだけどな」

 

「あぁそう考えると確かに……」

 

原作開始前におかしな事件が起きてしまえば、今後の生活全てに支障が生じる。なにより一夏の唯一の肉親が事件を起こしてしまえば、本当にこの世界が崩壊しかねない。女神が言うには、崩壊して新しい世界になったとのことだが、玲衣が思うに、一夏が存在していることで辛うじてISの世界と言う体を保っているに過ぎないと感じている。

 

もし、一夏及びその周辺、取り分け肉親である千冬になにかあったら、本当にこの世界が崩壊してなくなりかねない。玲衣としてはそれだけは絶対に防がねばならないと思っている。何故なら

 

「これ以上俺の平穏な生活が崩れる事だけは、何があっても防がなくちゃならない……!」

 

「あぁ~……じゃあもう少し時間稼いでおくから、取り敢えず解決してきてくれ」

 

「頼んだ」

 

また家を出て、一夏の自宅周辺に向かっていく。流石の玲衣でも千冬の帰宅ルートを知っているわけではない。だから探す。と言うのが普通の人間の考えだが、そんな面倒で非効率的な方法を玲衣が取るわけがない。従って、一夏の自宅周辺に待機することにした。勿論特典つかって全力で気配を消している。

 

「頼むから転生に関係ないストーカーであってくれ~。いきなり戦闘とか絶対に嫌だからな」

 

そんなことを考えながら、指に付けているゲルマニウムの指輪を外した。これも貰った特典の1つ。テレパシーである。この特典は常時発動型で、OFFと言う機能が存在しない。故に、半径200メートルの人間の思考が無条件で聞こえてしまう。それを唯一消してくれるのがゲルマニウムでできた物。これを付けないで日常生活を送ろうとすると、かなり辛いものがある。

 

(彼女ほしいな~)

 

(金が足りない~。盗んじゃおうかな?)

 

(明日のテストダルいな~)

 

(グヘヘッ!あのJK、良い尻してんな~)

 

(あ、あのおっさんカツラだ)

 

(今日恋人にプロポーズしよう!指輪も買ったし、大丈夫大丈夫!)

 

(はぁ~。この男、どうせプロポーズとか考えてるんだろうな~。別に本命じゃないから嬉しくないんだよね~。でも稼ぎ良いしな~。勝手に貢いでくれるから助かってるし)

 

(あ、ウンコしたい)

 

(帰りにエロ本買お~)

 

「グッ!頭が痛い……!この特典本当にいらないな……使いたくない……」

 

ブラックな物からどうでも良い話題まで全部聞こえてくる。本当に迷惑でしかないこの特典だが、千冬を狙っている存在が分からない限りこれを使うしかない。

 

「さっさと探そ……まず千冬はどこだ?」

 

どうでも良い話は全部無視して、目当ての千冬を探していく。帰宅時間はもう少し後かとも思ったが、意外にもすぐに見つかってくれた。

 

(はぁ。今日もつけられてる……一体誰なんだ?)

 

(グフフフ。今日も可愛いよ~千冬ちゃん。どこで誰に何をされるか分からないから僕が守ってあげないと~。グフフ。早く原作始まらないかな~?早く君に沢山触れたいよ~!)

 

(アウトぉぉぉぉぉお!!!!いろんな意味でアウトなのが出てきたよ!転生者だけどこの手のヤツは見たことないよ!!なんだよあれ!全員優れた容姿で来てるかと思えば全然違うじゃねぇかよ!!普通に太ってて髪の毛薄くて汗だくのオッサン来たよ!原作開始してもアイツには何も起きねぇだろ!!)

 

言ってる内容はスゴく失礼だが、流石に気持ち悪過ぎて原作開始前に別の事件で檻の中に入れられてもおかしくないような危ないのが出てきた。ほとんどの事に耐性のある玲衣だが、こればっかりは引いている。

 

(ん?なんだ?もう1つ気配が……かなり上手く隠せてるな……他国の刺客か?)

 

(アンタはなんで俺の気配にも気付けるんだよ!!どんだけ鋭い勘してんだ!!ストーカーくらいすぐに撃退しろよ!!)

 

もう、いろんな物が酷い。その一言である。今日1日で一生分のツッコミをした気分がする。

 

(あぁ~。可愛いよ千冬ちゃん!流石僕のお嫁さん!もう少し待っててね!必ず迎えに行くから!それまで変な虫が付かないように僕が守ってあげるからね!)

 

(お前が守らなくても自分の身くらい守れる力あるわ!もうツッコませるな!!)

 

頭を近くにある岩に打ち付けながらツッコミを続けているが、そろそろ限界に近い。

 

(近い未来、千冬ちゃんは僕のお嫁さんになるんだから、今すぐにその証を付けても問題ないよね!僕はもう我慢できないよ!千冬ちゃんもそうだよね!!お互いに初めてを迎えよう!!)

 

「千冬ちゃぁぁぁん!!!」

 

「ゲッ!?神威!!」

 

「ん?なんか居たような?あ、気配も消えてる」

 

男が千冬に飛び付こうとした瞬間、神威で男を異空間に飛ばし、自らも一緒に飛び込んでいった。

 

「あ、あれ?千冬ちゃん?僕の千冬ちゃんはどこ!?」

 

「いや流石にちょっと引くぞ……アンタ」

 

「誰だお前!僕の千冬ちゃんに何をした!!」

 

「別になにもしちゃいねぇよ。お前をこの空間に閉じ込めただけだ」

 

「お前転生者だな!僕と千冬ちゃんの邪魔をする気か!?だったら容赦しないぞ!千冬ちゃんは僕のだ!もう心と心が繋がった間柄なんだぞ!!」

 

「いや普通にアンタの事ストーカーって言ってたぞ。千冬自身、アンタの事知らないみたいだし。それなのに心と心が繋がった間柄っね言えるのかよ」

 

「うるさい!いずれそうなるんだ!僕らの愛の邪魔をするなら許さないぞ!」

 

(あぁ~。爆笑したい。なんであの女神こんなのまで転生させちゃったのさ。せめて完璧な容姿くらいサービスでも良いからつけてあげなさいよ)

 

「分かったぞ!お前も千冬ちゃんを狙ってるんだな!そうはさせないそ!!」

 

「いや強姦未遂犯がなに言ってんのさ。脳みそ筋肉でできたヤツの方がまだ話が通じそうだな」

 

「うるさい!殺す!殺してやるぅぅぅう!!!」

 

「ごめんなさい。あの世に帰って」

 

雷切で心臓を一突き。すぐに死んでくれた。頑丈な体をしてなくて心底助かったと思っている。絶命を確認すると、神威で外に出て女神を呼び出した。

 

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャ~ン。はい、毎度お馴染み女神です。どうした?」

 

「いやどうしたじゃねぇよ。見ろこれ」

 

「え?もう人殺しちゃったの!?バイオレンスが過ぎるよ~?少しは平和に生きようぜ?」

 

「誰のせいだ誰の!なんでこんなの転生させたんだよ!お前転生させるにも限度があるだろ!こんなヤベェの転生させんじゃねぇよ!だから監視ができなくなるんだろうが!」

 

「は?こんなの転生させた覚えないんだけどな~……」

 

「いやそれはないだろ。コイツ転生者のこと知ってたぞ?100%転生者だろ」

 

「ん~…30年くらい前に転生させたような……?」

 

「特典は?」

 

「あぁ~っと……なんだっけ?確か優れた容姿と、鍛えれば鍛えるほど強くなる体と学力と、高いIS適正と想像具現化とかだったかな?」

 

「いや優れた容姿も学力もねぇだろこれ。普通に頭悪そうだけど?千冬のこと強姦しようとしてたし」

 

「そんなこと言われても……まぁ転生者であることは変わりないから、こっちで回収しておくよ。あ、ギリギリだけど、監視できるようになってきたから、今後もこの調子で頼むよ。んじゃ」

 

気付けばもう夕方だ。一夏を家に帰さないとなと考えつつ、目先の厄介事が無くなった事を喜んでいた。




何気に初めて主人公の名前が明かされましたね。次回は現段階でのキャラクター紹介します。では、次回もお楽しみに!感想や評価、お気に入り登録と活動報告もよろしくお願いします!!
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キャラクター紹介(現段階)

はい。ただの紹介です。昨日の前書きでキャラクターは書くなと言ったのに、何故かその後2件キャラクターの投稿がありした。嫌がらせか何かなのかとツッコミを入れたくなりました。なのでもう一度言います。募集してるのは特典のみ。最優先募集内容は小説タイトルです。以上。

じゃ、キャラクター紹介行きま~す。

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・佐倉 玲衣(さくら れい)

今作主人公で転生者。本来はISとは全く関係ない世界で生まれ普通に生活していたのだが、デスノートを持った頭の悪いクレイジーサイコな転生者のお陰で死亡。

 

チート特典を持ったDQN転生者を同じくチート特典で締め上げる小説を沢山読んでいた為、最初は神様転生に抵抗があり、普通に断っていたのだが、女神の悪巫山戯に乗ってチートを大量に持って転生。女神の協力者と言う存在になる。チート特典がありすぎて自分ですらその全てを把握できていない。

 

IS企業の株を多数保有しており、未成年ながら企業の人間からは気を使われている。現在は倉持の株を8割。デュノア社の株を7割、その他企業の物も6割以上所有すると言うぶっ飛びっぷり。

 

二度と悪巫山戯には乗らないと誓っているが、本人が悪巫山戯したり面白そうな悪巫山戯には普通に乗ってしまう。

 

現在確認されている特典

・写輪眼(通常)

・万華鏡写輪眼(全種)

・永遠の万華鏡写輪眼(所謂 直巴の写輪眼)

・輪廻眼(使う気なし)

・医療忍術

・忍術いくつか

・忍具複数

・仙豆

・分身

・先見の明

・とんでもない技術力

・バカみたいに高いIQ

・アイアンマンのスーツ(自分好みのもの)

・ジャーヴィス&フライデー(自作)

・高い身体能力

・開発用のラボ

・テレパシー(ON/OFF不能)

・ISの適正(平均)

・衣食住

・高い回復力

・時間の巻き戻し

・アークリアクター(旧式)

・アークリアクター(新型開発中)

 

・女神

玲衣を含む複数の転生者をこの世界に送った張本人。そして玲衣が転生前に死ぬ直接的な原因を作った人物。複数の世界を監視・管理する文字通り全知全能の神なのだが、某水色の髪の毛をした水の女神とは別のベクトルでヤベェ神。

 

転生者を複数送った結果、ISの世界は一度崩壊して新たなISの世界へと変貌。お陰で監視等が行き届かなくなり、業務を再開させる為タイミングよく予定外の死亡をしてくれた玲衣に大量のチート特典を持たせて転生させた。チート特典を持たせた人間を送ったせいで監視ができなくなったと言うのに、懲りない女神である。

 

普段は天界から世界の様子を見ているが、たまに玲衣に事後処理担当として呼び出される。そして女神のくせに玲衣と同じく口が悪い。

 

悪巫山戯で玲衣に大量のチート特典を付けたが、面白くなりそうだし便利だからいいやと考えている。お陰で容量オーバーし、追加の物資的な支援はできなくなった。

 

・織斑 一夏

本来のこの世界の主人公。転生者共に虐められたり本来仲が深まってる筈のキャラと距離が離れたりなど、転生者のせいで今の段階でも散々な目に遭っている。その為か少し大人しい性格になっていた。能力的な部分は原作と全くの同じ。

 

虐められて怪我をしていた所を玲衣の分身が保護。家に招かれて玲衣と交流を持つことになる。玲衣の事は不思議なヤツだな程度にしか思っていない。必要以上に追求しないでくれる為、非常にありがたい。

 

万が一、一夏が死亡し世界が崩壊。それによって起きることの後始末や平穏な生活が崩れる事だけは絶対に阻止したい玲衣にとって、最優先保護人物である。

 

・織斑千冬

一夏の姉で現日本代表のIS操縦者。最近ストーカー被害に悩まされていた。こちらも特に変更点は無いが、最近大人しくなった一夏を少し心配している。

 

勘が鋭いのか、気配を全力で消していた玲衣をも感じとる事ができた。まさにこの世界の化物である。

 

・???

玲衣が遭遇した転生者その1。特典は僕のヒーローアカデミアでお馴染み爆豪の個性爆破。それに合わせて爆破によるデメリットを軽減してくれる体を持っていると思われる。他の特典は不明で、自身をこの世界の主人公と言い放っていた。学校で一夏を虐めていたのがコイツ。玲衣と戦闘を行ったのだが、終了後に記憶操作を受けたため覚えていない。

 

・???

千冬をストーカーしていた転生者。女神曰く、30年前に転生させたらしいが、記憶が曖昧なためほとんどの覚えていない。更に特典も不明で、オーソドックスな物は持っているとの事だったが、遭遇したときはそんな感じはなかった。

 

千冬を強姦しようとした寸前の所で、玲衣が神威で別空間に飛ばし事なきを得た。その後、雷切で心臓を一突きされて死亡。無事に天界へと還された。

 

・鈴

本来このタイミングでは一夏との距離が縮まっているのだが、転生してきた他の男との距離が縮まっている。何を吹き込まれたのかは不明だが、助けて貰ったくせに一夏の事を嫌っている。




はい。今回はこんな感じです。次回もお楽しみに!感想や評価、お気に入り登録と活動報告もよろしくお願いします!!

モチベーションアップする様な感想が沢山来ると投稿頻度が上がります。なので感想をよろしくお願いします。


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原作開始で介入

ようやく原作へレッツゴーです。始まりと言えばやっぱりこの事件。第二回モンド・グロッソから。じゃ、全員で行きますよ。はいルーラ!


『強い!圧倒的!圧倒的です!!日本代表、織斑千冬選手、他国の選手を一切寄せ付けず勝ち進んで行きます!』

 

『前回の大会やその他のISの大会でも圧倒的な実力をもつ絶対女王。ブリュンヒルデとして名高い千冬選手。今大会でもその実力を遺憾無く発揮してますね』

 

『国家代表と言う立場をてにしてから、公式非公式の試合含めて200戦200勝と言う前人未到のステージに立とうとして―』

 

薄暗くて埃臭い。なおかつ少しジメジメするゴキブリが好みそうな環境の廃倉庫の中。そんな場所には似つかわしくないスペックの高そうなパソコンと、小型のテレビ。そして拘束されて目隠しされた少年が1人と武装した集団。一瞬でこの場所にピッタリな風景が完成してしまった。

 

「日本政府には伝えたのか?ブリュンヒルデの決勝戦棄権と、その弟の身代金」

 

「ちゃんとしたよ。連中、かなり焦ってたぜ」

 

「へっ。そりゃ良い。見てみたかったよ」

 

「それより、ちゃんとブリュンヒルデに伝えるか?日本からしちゃ、弟の命より2連覇って言う名誉が欲しい筈だからな」

 

「大丈夫だっての。ブリュンヒルデは弟思いで有名だ。日本政府の意思なんて無視して助けに来るよ」

 

酒を飲みながら人質に聞こえるような大声でそんなことを話していた。仮りにも人質が居て銃があると言う状況なのに、酒を飲みながらと言うのはどうなのだろうか。

 

「ん……ッ!?」

 

「お?目が覚めた小僧」

 

「ッ!?ンッ!ンンッ!」

 

口にガムテープを貼られていて喋ることができず唸るしかない一夏。そんな一夏にニタニタと笑いながら男が近付いてくる。

 

「気分はどうだ?俺たちは最高にハッピーだ。なんせ、ガキ1人捕まえて、大量の金が入ってくるんだからな。今までにない簡単な仕事だよ。ブリュンヒルデの弟だって言うのに、あんな簡単な警備しか付けないなんてどうかしてるぜ?拳銃も持っちゃいねぇんだから」

 

この男が言うように、一夏の護衛は杜撰その物。国家代表の弟の護衛だと言うのに、政府の人間と言うわけではなく民間の警備会社で、持ってたのは警棒1つ。一応要人なのだ。にも関わらずこれ。まるでこうなる事を望んでいたかのようにも思える。

 

「お~い!日本政府は身代金の支払いを拒否したぞ。テロリストとは交渉しないだと」

 

「あっそ。まぁもうこのガキの誘拐で金は入ってる。今更いらねぇよ。ブリュンヒルデが棄権すれば更にたっぷりと貰えるんだ。損はねぇ」

 

『なら次は、金を使って遊ぶ体がねぇと、多額の金が入ったって無意味だってことを学ぶんだな』

 

「「「「ッ!?」」」」

 

自分達が口座の確認や情報を入手するために使っていたパソコンのスピーカーから、突然知らない男の声が流れてきた。

 

ガシャンッ!!

 

「だ、誰だ!?」

 

「うるさい」

 

「うわぁぁぁあ!!!」

 

赤と金の2色のなにかが屋根を突き破って降りてきて、一夏に近付いていた1人を殴り飛ばした。

 

「あ、IS!?」

 

「う、撃て!撃て!!!」

 

全員一斉に入ってきた何かに銃を向けて引き金を引く。後ろにいる一夏に弾丸が当たらないように体を屈め、盾のようになる。

 

「体に穴を開けたくないなら動くなよ」

 

その言葉に首を全力で縦に振り続けた。ある程度時間が経つと、マガジンが空になったのか銃声が止んだ。

 

「オウッ!?」

 

「アァァァァ!!」

 

キィーンと言う独特の機械音が短く鳴ると、光線の様な物が飛んで誘拐犯を吹っ飛ばしていった。

 

「ジャーヴィス。死んでないよな?」

 

『威力はセーブしているので問題はないかと思われます。しばらく動けないと思いますが』

 

「なら良いか」

 

「イッ!……その声もしかして、玲衣?」

 

「よう。お前は本当にトラブルに巻き込まれるな。次は一体なにに巻き込まれたら気が済むんだ?」

 

「もう巻き込まれたくないよ……それより何?それ」

 

「後で教えてやる。ほら立て。会場に帰って早く安心させて―」

 

「一夏ァァァァア!!!」

 

「千冬姉!」

 

「貴様が誘拐犯か!」

 

「は?…うわっ!?」

 

ドイツ軍と一緒に決勝戦を投げ棄てた千冬が一夏が監禁されていた廃倉庫にやって来た。扉を破壊すると、アイアンマンのスーツを着た玲衣に掴みかかった。瞬間加速で掴みかかられ、受け身を取ることができず床を抉りながら後ろへと飛んでいった。

 

「貴様!ただで済むと思うなよ!」

 

「話を聞けバカ!一夏なら無事だ!」

 

「黙れェェエ!!」

 

「うわっ!」

 

零落白夜を発動して斬りかかってくる。装甲はかなり頑丈に作っているのだが、普通に傷を付けられた。

 

「嘘だろ!?」

 

「鉄を斬るなんぞ容易いわ」

 

「マーク3じゃキツそうだな……なぁ、一夏は無事だなんだし、時間もまだある。決勝戦に戻ったらどうだ?一夏を誘拐した連中ならそこに転がってるから」

 

「問答無用!!」

 

「なんでだ!!?」

 

リパルサー・レイで千冬の動きを制限しつつ、両肩の装甲に仕込んでいるマイクロミサイルを撃ち込んでダメージを与えていく。

 

「ゼェリャア!!」

 

「マジかよ……!!」

 

ミサイルの爆煙の中から、大上段にブレードを構えた千冬が出てきて、反応するのもやっとのスピードで振り下ろしてきた。それを何とか白刃取りで受け止めて、話をする時間を設けた。

 

「勘違いしてるようだから言っとくが、俺は誘拐犯じゃないぞ!」

 

「信用できるか!言え!貴様の所属はどこだ!どこの国の者だ!」

 

「一夏そこにいる!お前の後ろにいる!!話聞きゃ良いだろ!頭に上った血を1回おそせ!!」

 

「ッ!?ウワッ!!」

 

胸部から放たれたユニ・ビームが千冬を捕らえ吹っ飛ばし、壁を突き抜けて外まで飛んでいく。そのまま動かなくなってしまった。

 

それを見ると、今度はドイツ軍の連中が銃を構えてきたのだが、保護された一夏が間に割って入って止めた。

 

「待ってくれ!あれは俺の友達だ!!」

 

「い、一夏……」

 

「千冬姉、その、本当にその人は誘拐犯じゃなくて、俺を助けてくれたんだ。だから攻撃するのを止めてくれ」

 

「い、いや。友達ってどう言うことだ?」

 

「あ……ごめん!」

 

「はぁ……こう言う事だよ」

 

一夏が勢い余ってやってしまった友達発言。もう誤魔化せないなと思い、仮面を開けて中の顔を千冬に見せた。

 

「玲衣!?」

 

「あぁ。本当はもっと速く到着して、アンタ達が気付く前に事態を終息させたかったんだが、空自のF15撒くのに時間かかってな」

 

「空自を撒いてきただと……!?」

 

「マジかよアイツ……」

 

「引くわぁ~」

 

空自を撒いてきたと言う発言にドイツ軍の人達はドン引きしている。まぁ理解できなくはない。日本の自衛隊の練度を知っている者達からすると、どうしてもその反応になってしまう。

 

「はぁ……俺に構ってたせいで、本当に決勝戦に出られなくなっちまったじゃねぇかよ……」

 

「それはどうでも良い。一夏誘拐の知らせが入った段階で、棄てる気でいたからな。それより玲衣、さっきは済まなかった。頭に血が上ってしまって……」

 

「まぁそこは別に良い。だが、俺の事は黙っておいてくれよ」

 

「そこのドイツ軍もな」

 

そう言うと、空を飛んで日本方面へと向かっていった。途中で千冬に連絡を入れて、自衛隊に戦闘機を飛ばさないように頼んでくれと伝えた。流石に2回も空自とは飛びたくないようだ。

 

「日本に帰ったら色々と教えてやるから待ってろよ!」




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やっかい事の嵐

前回は原作へレッツゴーと言ったな。あれは嘘だ。


「と言う訳で玲衣、一夏を頼む!この通りだ!!」

 

「断る。土下座で玄関の床を破壊したヤツの頼みなんて聞けるか」

 

玲衣の家の玄関で、千冬が土下座をして玲衣に一夏の事を頼んでいた。だが、当の玲衣は即答で断っている。

 

「そこを何とか!もう国は信用できないんだ!私は明日から1年間ドイツ軍で教鞭を取らなくてはならない。国のぼんくら共に一夏の事は任せられないんだ!だから頼む!」

 

「なんど頼まれても嫌な物は嫌だ。なんで俺が一夏と1年間同居しなくちゃならないんだよ。俺にメリット無いだろうが」

 

「一夏は家事が一通りできる。料理も絶品だ」

 

「全部俺1人でできる」

 

「話し相手ができるぞ!」

 

「もう1人に慣れてるから逆に疲れる」

 

「べ、勉強の教え合いとか……」

 

「学力に不満はない」

 

「せ、生活費を私が振り込もう」

 

「株で毎月毎月大金が入ってきて、口座の中には腐る程金がある」

 

利点らしい利点を上げていく千冬だったが、1つたりとも利点となっていない。アホみたいに特典を付けられている玲衣からしたら、確かに一夏がいることで利点になることは無い。何と無く分かっていた事だが、改めて言われると反論ができそうにない。

 

「まぁ早い話、一夏の護衛が欲しいってことだろ?」

 

「そうなんだよ~……もう国も民間企業も信用できないんだ……あんな誘拐拉致監禁をやってくれと言っているようなやり方をする連中をどうやって信じろと言うんだよ~。腹いせに国家代表を降りてきたが、借りを作ったドイツ軍に教鞭取りに行くわ、その後はIS学園で教師をやることになったわ、もう頼るところが無いんだ……」

 

眼から滝のように涙を流す千冬を不憫に思うが、それでも助ける気にはなれない。そもそも緊急事態に救出に向かって助け出すくらいなら兎も角、四六時中一緒にいるのは勘弁願いたいところだ。

 

「なら、一夏の家を要塞にして、不審者は問答無用で始末するように地雷と機関銃、大砲にレーザー兵器を付けて、玄関は指紋・声紋・網膜・掌紋を読み込むセンサーに、一夏には武装したドローンでも護衛に付けようか?機械だから容赦なく不審者を潰してくれるぞ」

 

「できれば、撃退でとどめて欲しいのだが……と言うかお前に守って貰った方が安心できる」

 

「はぁ……着いてこい」

 

ここまで頑なに自分が一夏の護衛を渋るのか。当然それには理由がある。それを見せるために自分以外は入ることができない地下ラボに千冬を招き入れた。

 

「この前のIS?」

 

「正確にはISじゃない。単なるパワードスーツだ。これは……まぁ最初は鉄で作ってたからアイアンマンと呼ぼうか。この前ドイツで使ったのはマーク3。ISとの戦闘に使うには充分な性能だが、アンタとの戦闘でかなりのダメージを負った」

 

「ウグッ!……済まなかった。まさかそれのせいで?」

 

「その通りだ。他のバージョンもあるが、性能が高くて扱うのが難しい(大嘘)。零落白夜をモロに食らったお陰で、中のシステムも破損した。エネルギー源であるアークリアクターも、使い捨ての試作品。予備がいくつかあるとは言え、無駄に使うことができない」

 

本当に最初は表面の装甲を新しいものに代えればそれで修理完了と思っていた。だが蓋を開ければ配線は切れてるはシステムは破損してるわで、かなり酷い状態だった。おまけに帰りも結局空自と追い駆けっこ。戦闘のダメージが影響して、機銃を何発か食らってしまった。お陰で今絶賛修理中である。

 

「他のもあるが、さっき言った通り使い捨てのアークリアクターを使うのは俺としては避けたい。それに、そんなに心配なら一夏もドイツに連れていけば良いだろ」

 

「いや学校が……」

 

「アンタと一緒の基地で講師を付けて勉強をさせろ。それなら問題ない。それにその方が守りやすいだろ。軍の基地内部で人攫いをするヤツなんかいないんだからよ」

 

「そ、それもそうだな」

 

「それにアイツ、アンタには黙ってたが、学校で虐めを受けてる。担任も見て見ぬふり。お陰で他の教師には伝わってない。そんな状況なら日本に置いておくより一緒に連れてった方がよっぽど安全だ」

 

「な、成る程。よし、向こうにもその旨を伝えよう。助かった」

 

「いや別に。まぁ、なんかあったらできる範囲で手伝ってやるよ」

 

「できる範囲……ほぅ」

 

できる範囲と言う発言が不味かった。空を飛んで国を渡ることができるIS以外のパワードスーツ。それを産み出し自在に操る技術をもった玲衣。そんな玲衣のできる範囲となると、ほぼ不可能はない。

 

「ヤベッ。変な所に食いつかれた」

 

「じゃあ何かあったら呼ぶから、その都度来てくれ。ドイツまで」

 

これは玲衣が悪い。できる範囲と言ってしまったのだ。そこに食い付かない千冬ではない。何かが起こるたびにドイツまで飛ぶ事になってしまった。

 

「空自とドイツ空軍には私から戦闘機を飛ばすなと伝えておくから安心しろ。じゃあ頼んだぞ~!あ、ちゃんと時差を確認した上で呼ぶから、そこは安心しろ。じゃまたなぁ~!」

 

「…………俺の平穏な生活が……」

 

ほぼ一方的な頼み方で、千冬は地下ラボから出ていき、満足そうな顔をしながら帰っていった。もちろん家に着いてからは一夏と共にドイツへ飛ぶ準備を始め、翌日には予定通り行ってしまった。

 

それから1週間はなにもなかったのだが、突然千冬から電話がかかってきた。しかもまさかの呼び出しだ。

 

「で何があった?一夏か?アンタか?今回は何をやらかしてくれた?」

 

『いやそれが私たちじゃないんだ』

 

「は?」

 

『何故かドイツ軍内でお前の事が噂になっててな。お前が口止めしてたのに、どっかのバカが漏らしたようで。個人情報までは漏れてないんだが……その…』

 

「分かった今からそっちに行く。連絡入れとけ」

 

千冬からの連絡を受けて、地下ラボへと走って駆け込んでいく。マーク3はまだ修理中で、飛行はおろか装着もできない。

 

「フライデー、マーク6を準備してくれ。あとハッチを開けててくれ」

 

『畏まりました』

 

「おい待て本体。急にどうした?」

 

「何故かドイツ軍で俺の事が噂になってるらしい。今からその現況を潰しに行く。そしてこれ以上噂が広がらないように釘を刺しに行く」

 

「マジで釘を刺す様な事はするなよ」

 

「善処する」

 

分身に注意されながらマーク6を着込んでいく。何故マーク6があるかだが、マーク7を神威の空間で試しに使ってみた結果、扱いに難ありと判断してマーク6も結局作り出したのだ。因みに、練習を重ねて今ではマーク7も普通に動かせる。

 

「ジャーヴィス、千冬は空自に連絡したそうだが、入ってるが調べてくれ」

 

『確認します……確かに連絡は行っているようです。安心して飛んでください』

 

ハッチから飛び出して一気に速度を上げてドイツに向かっていく。この分なら数時間後には到着しているかもしれない。

 

「このペースなら何時間で着く?」

 

『あと4時間です』

 

「結構かかるな……」

 

『直行便で12時間かかる距離ですので、ペースとしてはかなり速い方です』

 

「もっとスピードを上げて時間を短縮するぞ」

 

『スラスターにエネルギーを回します』

 

更にスピードを上げて行く。4時間かかると言われたが、3時間で目的に到着した。上空から千冬たちがいる広場が見える。安全面を考えると少し離れた場所に降りるべきだろうが、態々新しいスーツを自慢するために千冬の目の前に着地した。

 

「うわっ!?ビックリした!」

 

「よう。来てやったぞ。でどこの誰だ?口止めしたにも関わらず俺の事を言い触らしたバカは」

 

スーツ着てるから顔が分からないが、額に青筋を浮かべてキレている事だけは確かだ。

 

「済まん。そこまでは分からん」

 

「そうか。なら探し出せ。もしくは名乗り出ろ」

 

もちろん名乗り出る訳がない。故に、少し力業だがリパルサー・レイを撃って犯人探しを促す。それを見て、あの時現場にいた兵士と千冬が全力で動いた。リパルサー・レイで吹っ飛ばされたくないからだ。全員が動き出したのを見ると、スーツのまま近くに座ってくつろぎ始めた。

 

「れ、玲衣……見つけたぞ……」

 

「30分かかって漸くか。で?誰だ?と言うかどんな経緯で俺の事を話したんだ?」

 

「酒の席で話してしまった様だ……まさか軍にこんなのがいるなんて……」

 

「懲戒解雇待ったなしだな。酒でゲロっちまう様なヤツが軍人なんてやってられるか」

 

喋ったのが機密事項だったらマジで懲戒解雇になる。と言うか刑務所行きだ。

 

「よし。全員注~目!!」

 

近くにいるドイツ軍と千冬の教え子達を集めて、自分の事を話してしまった人を前に出す。

 

「良いか?秘密にしろと言ったことを他人に話すとどうなるのかを見せてやる。こうなりたくなかったら黙ってろ」

 

そう言いながら、自分の事を話した男の襟をガッチリとつかむ。軍用の服であるため、かなり丈夫だ。これは実に都合が良い。

 

「な、何をする気だ?」

 

「一生に一度、できるかどうかの体験だ」

 

「は?」

 

「上へ参りま~す」

 

「ワァァァァァァァア!!!!」

 

生身の人間が耐えられる限界の高度まで一気に飛んでいった。千冬を含め、見ていた全員がドン引きしている。

 

「こ、ここまで来たらどうするんだ?!」

 

「降りるに決まってるだろ」

 

「どうやって!?」

 

「パワーをOFFにして落ちるだけだ。良かったな。安全装置無しの逆バンジーと、パラシュート無しのスカイダイビングを楽しめるんだ」

 

「ま、待て!待ってくれ!悪かった!悪かったからそれだけは―」

 

「下へ参りま~す」

 

「アァァァァァァア!!!ウオァァァァァァア!!!」

 

地面にぶつかる直前に逆噴射した為、お互いにダメージは無い。が、ゲロった兵士は白眼を向いて気絶している。玲衣が掴んでいた手を離すと、力なく地面に倒れていく。

 

「さて。どうなるか分かった所で、俺に関することは一切口外を禁止する。破ったヤツは漏れ無くこの兵士と同じ運命を辿ることになる。むしろこれを見て破った場合は6往復くらいしてやる。分かったか?」

 

玲衣の言葉に、首が飛びそうな勢いで縦に振り続けた。生身での逆バンジーとパラシュート無しスカイダイビングは軍人でも勘弁したい様だ。

 

「さてと。せっかくドイツに来たんだ。少しここに滞在させて貰おう。良いか?」

 

「それは私が交渉しよう。だが良いのか?お前、私たちの手伝いをするの死ぬほど嫌がってただろ?」

 

「このまま帰ってもどうせ数日後にはまた呼び出される未来が見えてるんだよ。このトラブルメーカー姉弟」

 

「は、ハハハハハ……本当に済まない……」

 

否定できない。謝るしかない。そう思ったのか、光の無い目をしながら力なく笑い、玲衣に心の底からの謝罪をした。




はい。本日はここまで。次回もお楽しみに!感想や評価、お気に入り登録と活動報告もよろしくお願いします!!
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眼帯チビッ娘

ラウラって属性盛りすぎですよね~。銀髪に眼帯、オッドアイ、ロリ、変な知識。もう少し選定して属性つけろよ。

タイトルは現在募集中です。活動報告の方にお願いします。踏み台共のチートも合わせて募集しています。


「部屋は確保できたぞ。ただ立入り禁止の場所が当然ある。そこに入らないように気を付けてくれ」

 

「分かってるよ。ガレージは?」

 

「ちゃんと確保してある。工具も使えるようにして貰ったから、いつでも整備できるぞ。立入り禁止の場所以外は基本的に自由に使って貰って構わないそうだ。玲衣の事を軍内部とは言え、明かしてしまった事への謝罪だそうだ」

 

「それは助かる。クレジットカードしか持ってないから使えることを祈るばかりだが。早速ガレージに行って整備でも開始しよう」

 

千冬とそんな会話をしながら廊下を歩いていると、何かが自分にぶつかった感じがした。だが周りを見回してもなにもなかった。

 

「なにかにぶっかったか?」

 

「おい……!ぶつかっておいてその反応はなんだ?」

 

「ん……あぁ済まん。見えなかっ……千冬、何故軍の基地に子供がいるんだ?」

 

随分と失礼な反応である。ぶつかった上での反応な為、相手はかなり不機嫌になっていく。

 

「コイツはラウラ・ボーデヴィッヒ。私の教え子だ。子供である事に代わりはないが、お前や一夏と同い年だぞ?」

 

「ふ~ん。済まなかったなチビッ子。小さくて視界に入らなかった」

 

「謝る気ないだろ!!それに、私は貴様の目に写らん程小さくないぞ!」

 

「まぁまだ成長期だろうし、身長は伸びる。気にするな」

 

「貴様……私の事をバカにしているだろ!!」

 

同い年とは言え相手は軍人。軍人相手にそんなバカな態度を取っている人は見たことがない。そんな玲衣に、千冬は頭を抱えるのであった。

 

その後は夜までマーク6の整備をして時間を潰していた。玲衣の感覚的に、自分の部屋に戻るまでに小さいトラブルに巻き込まれ、数日後に巨大なトラブルに巻き込まれると感じている。そのトラブルを片付けない限り、日本に帰ってもまたすぐに呼び出される可能性が大きいのだ。

 

「俺の平穏な生活はどこへ消えたんだろうか……」

 

『元から平穏のへの字も無かったと思いますが』

 

「ジャーヴィス、ツッコミはありがたいんだが、ここはフォローを入れてくれた方が助かる」

 

ジャーヴィスと会話をしながら部屋への廊下を歩いていく。すると案の定、誰かが声を荒らげて怒鳴り声を上げていた。

 

「全く……こうも予想通りに事が起きると、少し悲しい気持ちになるな」

 

顔だけを出して様子を見てみると、昼間にぶつかったラウラと千冬と一緒にやって来た一夏がいた。どうやら、ラウラが一夏に噛み付いている様だ(実際に噛み付いている訳ではない)。

 

「ジャーヴィス、あれどう思う?」

 

『会話を聞く限り、モンド・グロッソでの誘拐事件の事を責めている様ですが……あれは仕方ないとしか』

 

「止めるの面倒だし、回り道して帰るか」

 

『どのみち、ここを通らないと部屋には帰れません』

 

「止めるしか無いのか……」

 

ガックリと項垂れながら、仕方なしに一夏とラウラのいる場所に歩いていく。

 

「織斑一夏、私は貴様の事を絶対に認めはしない!何故貴様の様な弱者があの方の弟なのだ!それだけでも腹立たしいと言うのに、前回のモンド・グロッソでの貴様の失態……!どれ程あの方に迷惑をかけるつもりなのだ!」

 

「そ、そんなこと言ったって……俺だって誘拐されるつもりは無かったし、それなりに努力して……」

 

「努力なんぞ実らなければ意味がない!それに貴様の言う努力は、あの方に届く物なのか?」

 

「そ、それは……」

 

「はいお子ちゃま2人、そこまでな」

 

「またお前か……私は子供ではない!!」

 

さりげなくラウラが自分に食い付きそうなワードを入れて、2人の意識を自分の方向へと持ってこさせた。ストレス発散の意味もあるのは内緒だ。

 

「子供じゃないって否定してる時点でクソガキだよ。チビ助。一夏を否定したいならして構わん」

 

「え?守ってくれるんじゃないの?」

 

「んな訳あるか。お前ら姉弟のお陰でドイツまで飛んできたんだからな。そこまで気を使えるかよ」

 

「ウッ……ごめん」

 

「何がしたいんだ貴様は?私は今コイツと話をしているんだ!用がないなら邪魔をするな!」

 

「まぁ落ち着け。眼帯チビ娘。否定したいならいくらでも否定しろって言ってるだろ?ただし、否定するからにはソイツを知らなくちゃならん。お前は、一夏の努力とこれまでの生い立ちを知ってるか?まぁ俺はお前の分も含めて知らんけどな」

 

「お前、やはり私をバカにしてるだろ……!知らないなら貴様に説教される謂れはない!!」

 

「だから落ち着け、銀髪ロリッ子オッドアイ。俺が言いたいのは、否定したいなら過去を知った上で否定しろって事だ。と言うわけで、俺が知ってる範囲で一夏の過去を教えてやる。否定しないならそれからだ」

 

一夏の目の前だが、自分が知っている今までの一夏の過去を話始める。勿論全部ではないが、幼少から千冬と2人で生きてきたこと、家事が壊滅的にできない千冬の為に家の事と家計を回していたこと、一夏が千冬の為に料理の研究をしてきたこと、過去の虐め、助けたクラスメイトからの裏切とも言える仕打ち、そしてモンド・グロッソでの誘拐事件の事を詳しく教えてやった。

 

「まぁこれが俺の知る限りの一夏の過去だ。前半は千冬から聞いたことだけど。モンド・グロッソでの誘拐事件はほとんど日本政府の責任だ。千冬が国家代表を腹いせに降りたくらいだからな。専門の訓練を受けて確りとした装備をしているSPじゃなくて、民間の警備会社の安いプランで行われ、誘拐の事実を一部のアホな議員が揉み消そうとしたくらいだからな」

 

「え?そうなの?!」

 

「あぁ。どこの誰とは言わんがな。まぁ真っ先に頭に出てきたヤツで間違いないが。いつも国民の血税で行われている国会で関係ないことをワァワァ叫ぶ連中だから、分かりきっていた事なんだが……でだ、そんな中で個人的に努力を続け、周りの朴念仁・唐変木・木偶の坊・若いくせに痴呆症でも起こしてるんじゃないかと言う頭の悪いアホ共に邪魔をされながら、千冬の世話と自分の努力をしてきた一夏だが、お前から見てまだ努力が足りないか?」

 

「うぅ……ヒッグ…エッグ……ご、ごめんなさい……ウゥ…知らなかった……」

 

何故か、泣きながら一夏に謝り始めてしまった。一応筋道通した上での否定なら、むしろ推奨している玲衣なのだが、この状況に少し戸惑っている。

 

「えぇ~……何で泣くの?」

 

「ウッ……ごめん……ごめんなさい……フェェェェン!!」

 

「よ、よ~しよしよし。大丈夫だから、泣かないで?」

 

一夏は幼い子供を慰めるように、しゃがみこんで泣いているラウラの頭を撫でている。こんなことになるとは流石の玲衣も思っていなかった。だが、こんな状態でも自分のペースを崩さないのが玲衣である。

 

「一夏、お前にも色々と言うことがある」

 

「この状況で!?」

 

「当たり前だシンプルバカ。お前は反論するならハッキリと反論しろ。タジタジになって小声になって小さくなってるから、自分が言いたいことも言えずに、周りからは好き放題言われんだよ。そのボンヤリしたのを少しは治せ。さ~てと、もうお子様は寝る時間だ。トイレに行って寝ろよ」

 

「ま、また子供扱い……」

 

「歯もちゃんと磨けよ」

 

実際、玲衣のトータルの年齢は既に成人している。一夏ラウラ、千冬でさえも玲衣にとっては子供でしかない。そんなことを考えながら自分の部屋に向かっていくと、何故か廊下の角に千冬が一夏とラウラの会話を盗み聞きしていた。必然的に、自分が言ったことも聞かれていると思われる。

 

「玲衣君、ありがとう……1番の不安要素が今消え去ったよ」

 

「気持ち悪ぃから手を放せ」

 

「ラウラと一夏が仲良くなるかが本当に心配だったんだ……一応一夏と同い年だから、仲良くなってくれればって……でもラウラあんなんだから、不安で不安でお前が来るまで平均睡眠時間が2時間を切ってて……肩の荷が降りた気分だ……ラウラが一夏の妹に見えるのは別として」

 

アニメキャラかって言いたくなるような涙の流し方をしている。やはりラウラの性格が、千冬にとっては不安でしかなかったようだ。それが一瞬にして消え失せた事で一気に安心感が出てきたのか、千冬はあくびをしていた。

 

「まぁ悩みが解決したんなら良かったな。じゃあ俺は寝るか―」

 

「所で、一夏の誘拐を揉み消そうとした議員とは誰だ?締め上げに行きたいんだが?」

 

「身代金の拒否には触れないのかよ」

 

「テロリストと交渉しないのは政府として当然の対応だ。そこに食い付くつもりはない。が、揉み消しに関しては話は別だ。一体どこのバカがそんな事をしたんだ?詳しく聞かせて貰おうじゃないか」

 

「寝るの4時間遅れるな……」

 

それから数年後、一部の議員達が政治家生命を絶たれて、国民から総スカンを食らい、SNSの公式アカウントは大炎上、釈明をしようものなら更に大炎上。国民に後ろ指を指されながら生きることになったのは、また別のお話。何者かに全員がブッ飛ばされたと言うのも別のお話。




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ドイツ最大の問題事

察しの良い人なら、平穏な生活を送るために全力を注ぐ玲衣が何をするのか、大体分かるでしょ?


玲衣がドイツに来てから1ヶ月が経った。学校は分身が行ってるため出席に影響はない。一夏も一夏で、特例と言う形ではあるが、こちらで勉強をしているため出席に影響しない。代わりに帰国後にテストが待っている。

 

「なんか、無駄に長くここに居た気がするな~」

 

『実際に1ヶ月が過ぎました』

 

「やっぱり国外は落ち着かないな。早く日本に帰りたい」

 

「なら帰れば良いじゃないか。もう問題は起きない筈だしな!ハハハハハ!」

 

何故か千冬が自信満々に根拠もなく言っているが、これ以上に信用できない言葉はない。玲衣もチベットスナギツネの様ななんとも言えない顔をして千冬に目を向けていた。

 

「な、なんだその顔は?」

 

「お前が言うとこれ以上に無いほどに不安になるんだよな。この後100%面倒な大事が起こると俺のサイドエフェクトが言っている」

 

「いつからお前は特徴的なグラサンを着けた実力派エリートのボーダー隊員になったんだ?」

 

「いや、実際なにかが起きそうだからな。お前らと関わると俺の平穏な生活が容赦なく消えていくからな。このまま何も起きないと言う方がおかしい」

 

千冬への信頼が0なのか、自分の運命が呪われているのか、はたまたその両方なのか、何か1つ大問題を片付けなければ帰ってもまたすぐに戻ってくる結果になりそうで、帰るに帰れないと言うのが実情だ。

 

「アンタは教官としての仕事が板に付き、一夏も一夏で平和にくらし、俺は小さい問題を片っ端から始末。あり得ないだろこれ。おかしいだろこれ?何で俺がここの問題を片付けてるんだよ」

 

「まぁそれのお陰で私と一夏は助かっているのだがな。見てみろ。険悪だったラウラと一夏が今では仲良く兄妹の様に一緒に料理をしたり勉強をしたり、見ていて実に癒される」

 

「勝手に癒されてろ。俺は疲れが溜まる一方だよ。アークリアクターのエネルギーを全てリパルサー・レイに回して撃ち込めばどれだけスッキリするか」

 

「この基地を消し飛ばすつもりか?」

 

次に何か1つでも玲衣にストレスになることを与えると、本当に人が大量に死にかけない。そう考えると、基地が消え失せる程度なら安いと思える。

 

「さてと、飯でも食いに行くか」

 

「おっと。もうそんな時間だったのか。確か今日も一夏とラウラが2人で作っていた筈だな」

 

「基地の外に行ってブラートガルストでも食いに行くか」

 

「おい待て。態々金を使わずに食事ができると言うのに、何故外に行こうとする?」

 

千冬の言葉を無視して、マーク6を着て外へ行ってしまった。スーツを着る直前、一夏とラウラが作っていたと言う言葉を聞いて、急激に食欲が失せたと言う顔をしていたのは内緒だ。因みに、ブラートガルストとは最も人気なソーセージの事らしい。

 

『良かったのですか?基地で食べなくて』

 

「向こうで食ったら疲れる。2人が作るたびにそれを食うと感想を求められるからな……俺は落ち着いて飯が食いたいんだよ」

 

『確かに、1人の時間も必要ですから、良い判断だったかと』

 

「久し振りに落ち着ける時間ができた感じだな。表に立ててるスーツが子供たちの遊び道具になってなければ完璧なんだが……」

 

神威の空間にしまえ。とツッコミたくなるが、できない理由があるのだ。今眼にはめているのは神威ではなく別天神。ナルト本編ではうちはシスイの万華鏡写輪眼として登場し、最強幻術を操る眼。故に神威を使うことができないのだ。

 

「まぁ壊されないなら良いか。おっちゃん、ブラートガルストおかわり」

 

「はいよ!姉ちゃん良い食いっぷりだねぇ!ほら大盛どうぞ!」

 

「サンキュー」

 

現在、アイアンマンはISと言う括りだ。それを男が乗ってるとなってみろ。ドイツどころか世界中が混乱して原作開始が早まってしまう。しかも一夏が原因ではなく自分が原因で。そもそも一夏がIS学園に無事入学ができたのは、織斑千冬と言う最強にして最大の後楯があったかとも言える。だが現在、玲衣の後楯は金のみ。持っている株を全て売却すると言えば脅しにはなるだろうが、国を揺さぶる程かと聞かれれば微妙だ。故に、多少面倒だが別天神で全員に幻術をかけて自分を女だと認識させている。なお、細かい規約の部分等も問題ないと思い込ませている為、聞かれることはない。

 

「はぁ~。腹がふくれた。おっちゃん、会計宜しく」

 

「おう。現金か?」

 

「クレジットカードで。今現金の持ち合わせはない」

 

「はいよ(ブラックカードなんて初めて見たな……)」

 

カードで一括支払いをし、子供達が遊んでいたマーク6の中に入って基地の方向に飛んでいった。

 

「今日は問題なく1日が終わりそうだな」

 

『イベント事もありませんし、無事に終わる可能性が高いですね。スーツの整備でもしますか?』

 

「だな。今日は邪魔されずに隅々まで整備してやる」

 

本当にこの日は何も起きずに心置き無くスーツを整備することができた。自分の身の回りで問題が起きないことのありがたさを噛み締めつつ、テレビを見ながら作業を進めていくと、気になるニュースが突然飛び込んできた。別に国際的なニュースを扱う番組では無いのだが、何故かイギリスの列車事故のニュースが報道されている。

 

『臨時ニュースをお伝えします。イギリスの国営鉄道で大規模な列車事故が発生しました。繰り返しお伝えします。イギリスの国営鉄道で大規模な列車事故が発生しました。多くの負傷者が出ており―』

 

「なんでイギリスのニュースがドイツで?」

 

『邦人が多くいた。とかでしょうか?』

 

「国が整備を怠っていたとかもありそうだな」

 

『従業員がストライキを起こしたが故の事故の可能性も』

 

ジャーヴィスと2人でここまでのニュースになる理由を考えていたが、どうやらどれも違っていたようだ。

 

『大規模な事故でしたが、死者は2名との事です。目撃者の証言では、黒いフルスキンのISが事故による被害を最小限に抑えようとしていたとの情報が入っており、捜査当局は該当するISが無いかと事故原因と共に調べを進めています』

 

「黒いフルスキンのIS……ジャーヴィス、画像はあるか?イギリスは監視カメラ大国だ。どこかに写ってないか探せ」

 

『畏まりました』

 

ジャーヴィスに黒いフルスキンのISの検索を任せて、ガレージの電気を消して部屋へと戻っていった。この日は本当に何も起こらず、朝まで平和に寝ることができた。ここに来て最初の1週間は酷かった。寝ていたにも関わらず夜中にリパルサー・レイをぶっぱなしたり、寝起きにユニ・ビームを撃ち込んだり、壁に穴を開けたり等々、それはそれは散々な日々を送っていた。特定のバカ2人が原因で。

 

「あぁ、久し振りによく寝たな。アホ2人に邪魔されないって最高だな~」

 

『玲衣様、黒いフルスキンのISの画像を入手できました。携帯と自宅のパソコンに送信しておきます』

 

「頼んだ」

 

『それと、千冬様から演習場に来るようにとメールも入っています』

 

「無視する」

 

「させないぞ。既にお前もエントリーされているんだ。諦めて手伝え」

 

「この厄災女が……いつ俺を何にエントリーした?」

 

「お前が整備している間にちょちょっと!IS部隊の模擬戦大会に」

 

「よし分かった。お前の上半身と下半身は今日でお別れだな」

 

物騒な事を言いつつ、諦めて千冬の後に続いて演習場へと歩いていく。この日はIS部隊の模擬戦。主に千冬の教育したラウラの隊の実力確認の様な物が大会として行われる。そこに千冬が玲衣の事を組み込みやがったのだ。

 

「俺は誰と……眼帯チビか」

 

「私の教え子とか。良かったな玲衣。ラウラの実力は私が訓練を付け始めてからメキメキと伸びていったからな!負けないように気を付けろよ!あ、身長はまだ変わってないぞ」

 

「本人の前で言ったらアイツ泣くぞ」

 

滝のような涙を流しているラウラの様子が頭の中に浮かんできた。何故かそれを慰めている一夏もセットで出ている。

 

そんなこんなで、ラウラと玲衣の試合が始まろうとしていた。正直言って、1番気になる組合せな為、他の連中が挙って2人に最初の試合を譲ってトップバッターになってしまった。

 

「最初に言っておくが、手加減はするつもり無いぞ」

 

「当然だ。私も全力で行くぞ!」

 

当然の事ながら、玲衣はマーク6を使う。と言うかこれしか持ってきていない。そしてラウラの方はと言うと、原作で使っていたシュヴァルツェア・レーゲンに似ている機体に乗っている。

 

「ほう。試作機とは言え、新型を渡されるとは。てっきり量産機に乗るのかと思ったのだが」

 

「はい!教官に教えてもらったお陰です!見ていてください!訓練の成果を12分に発揮して見せます!!」

 

そう意気込んでるラウラに一切の反応を示さず、試合の準備をしていく。

 

(新型の試作機……シュヴァルツェア・レーゲンの前進か?形は似ているが)

 

「さぁ玲衣!行くぞ!」

 

「分かったから早くこい」

 

「いざ尋常に、参る!!」

 

なんかワイヤーみたいなのが飛んできた。確信した。これはシュヴァルツェア・レーゲンの前進の機体だ。

 

「なぁ、その掛け声誰から聞いた?まさか一夏か?」

 

「む?一騎打ちの勝負をするときはこれが正式な物だと部下から聞いたのだが?」

 

「よ~し。その知識は間違ってるから直せよ。ほら見ろ千冬の顔。流石にキレているぞ。お前の隊の人を締め上げてるし」

 

「なら直そう。後で一夏に教わる」

 

「多分直せねぇなコイツ……」

 

「おい。何故そんな可哀想な物を見るような目でみるんだ?」

 

チベットスナギツネの様な顔をする玲衣を見て動きが止まったラウラ。当然それを見逃してくれる程、玲衣は優しくない。問答無用でリパルサー・レイを撃ち込みラウラをブッ飛ばした。

 

「グッ!やはり強力だな!だが次こそは受け止めて見せる!」

 

「訓練の成果を見せたいなら避けて反撃するくらいしろよ……」

 

若干呆れつつ、空中に飛んでリパルサー・レイを乱射してラウラの動きを制限していく。ついでに小型のミサイルを撃ち込んで更にダメージを与えていく。

 

「さてと……ここからどうやって巻き返す?」

 

爆煙や土煙でラウラの姿を目視で確認することはできないが、掌を向けた状態で空中で静止している。いつ出てきても撃ち落とせる様にだ。

 

「……ジャーヴィス。まさかとは思うが、あのチビ助ノックダウンしたか?」

 

『反応はまだあります。戦闘不能にはなっていないと思われます』

 

「じゃあ何故動かなッ!?」

 

突然、砲弾が飛んできて玲衣を掠めた。ギリギリで避ける事ができたが、あと少し反応が遅れれば直撃は避けられないコースだった。

 

「ジャーヴィス!ロックオンされてたか?!」

 

『反応はありませんでした。完全な目視によるものの様です』

 

「あの野郎……根本的な技術を詰め込みやがったな」

 

地上で千冬はしてやったりと言う顔をして玲衣を見ていた。そのニヤけ顔にリパルサー・レイとホーミングミサイルを撃ち込みたい気分になったが、ロックオン機能を使わずマニュアルで砲弾を撃ち込んできたラウラに集中する事にした。

 

「ウオッ!またか!?」

 

更に3発立て続けに砲弾を撃ってきた。しかも今度は玲衣の動きを先読みして、回避先にも砲弾が来るように撃っている。

 

『玲衣様!上です!!』

 

「ッ!?グワッ!!どう言うことだ?」

 

『時間差で着弾するように、あらかじめ1発を曲射で放っていた様です』

 

「小賢しい事を考えるな……被弾覚悟で突っ込むぞ」

 

近付いてもアウト。離れてもアウト。ならば最接近して肉弾戦にでも持ち込もうと考えて、薄くなった爆煙の中に突っ込んでラウラにしがみついて押し倒した。だがラウラもそれは予想していたようだ。玲衣がラウラの顔に掌を向けてリパルサー・レイを撃とうとするのと同時に、レールカノンの照準を玲衣に向けていた。

 

「どうする?お互いにここまでにするか?」

 

「一応トーナメント戦だ。そう言う訳にも行かん。負けを認めて欲しいんだが」

 

「最初圧されまくってたヤツのセリフには思えないな。後半になってようやくエンジンかかる様なヤツが、トーナメントを勝ち進めるとは思えないんだが?それよりお前、自分の機体に疑いの眼を向けた方が良いぞ」

 

「は?」

 

「ジャーヴィス。準備できたか?」

 

『いつでも大丈夫です』

 

「千冬、模擬戦大会を一旦止めろ。ラウラ、お前は今すぐそれを脱げ」

 

「ちょっと待て。何故急にそんなことを……」

 

「さっさとしろ。力ずくで剥がされたいのか?」

 

強目のリパルサー・レイを撃ち込もうとしているのが見えた為、急いでISを脱いでその場から離れた。突然の事に、全員困惑していたが流石軍人。いつでも動けるように構えている。

 

「特定データの転送開始。他に妙なのはつまれてないな?」

 

『このシステムのみの様です。切り取り転送後に取り外し可能メモリに入れます』

 

「よし。この機体の開発者を今すぐ拘束しろ!これには違法システムが組み込まれていた。逃げられる前に捕まえるんだ!」

 

普通なら玲衣の指令には動かないが、ここでの生活でもうある程度の立場が確立している様な状態だ。そしてその立場が割りと高い。

 

「違法システムって、何が積まれてたんだ?」

 

「VTシステム」

 

「積んだヤツを全力で捕まえるんだ!!妹を危険な目に会わせたヤツを締め上げるぞぉぉぉぉお!!!」

 

積み込んだ開発者に明日が無くなった瞬間である。




次回もお楽しみに!感想や評価、お気に入り登録と活動報告もよろしくお願いします!!

今日は募集箱に応募のあったキャラクターをすこし出しました。ご応募下さった龍牙さん、ありがとうございました。

登場キャラ
愛咲 真実(あいざき まこと)
詳しくは活動報告へ。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=236565&uid=180457


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楽しい取り調べの時間

玲衣のドイツ軍内部での立場はどうなっているのやら。


あの後、恐ろしく速いスピードで解決へと向かっていき、仕込んだのが開発主任のおっさんだと判明。証拠となるデータを破壊して逃げようとしていたが、データに関してはジャーヴィスが既に回収済み。

 

ならば自分の身だけでもと思ったのだろうが、自身の車は動けない状態にされており、逃げ道も全て塞がれている。更に千冬自らが乗り込み拘束し、取調室にぶちこまれた。

 

「いや~。本当にスムーズに解決したな~。流石軍隊」

 

「当たり前だ。妹に手を出したらどうなるか教えてやる!シャァァア~!!」

 

「キャラ崩れてるぞ」

 

「おっと失礼。じゃ、早速取り調べに行ってくる」

 

猫が相手を威嚇する時のような声を上げて、敵対心剥き出しの状態だったが、玲衣の一言でいつも通りの千冬に戻り、取調室へと入っていった。

 

取り調べの内容はいたって普通で、何故やったのか、単独での行動なのか複数での行動なのか、命令した者が居るのかどうか、どこでVTシステムを入手したのか等々。

 

だが男は一切喋ろうとしない。何をするにしても黙秘を貫き、何かの時間を稼いでるように様な感じがした。正直言って、証拠も確保し実行犯も確保。玲衣のやることは無くなったも同然である。

 

なお、現在ラウラは自身の機体には違法システムが積まれていたと言うことにショックを受け、精神的に参っている状況だ。だが1人にする訳にも行かないため、一夏を近くに置いている。

 

「帰りたい」

 

『また呼ばれますよ。多分』

 

「俺も思った」

 

それから1週間ほど、入れ替わりなから取り調べを行ったのだが、一向に口を割りそうに無いため、玲衣が自らが取り調べを行うことにした。

 

「大丈夫なのか?私たちでも口を割らなかったんだぞ?お前にできるとは思えんのだが……」

 

「まぁやりようは色々ある」

 

「手を出す気じゃないだろうな?」

 

「…………(フイッ」

 

「眼を反らすな!……今回は特別だぞ」

 

手を出す気満々の玲衣だったが、千冬はそれを咎めることなく、見ている他の人を追っ払って千冬と玲衣、仕組んだおっさんの3人のみだ。

 

「さぁ~てと。話して貰おうかな」

 

「ん?今度は子供か。言っとくが私は話す気は無いぞ。何を聞かれてもな」

 

「そうかそうか。まぁ、アンタは今から話したくなくても話すしか無くなるけどな」

 

「は?」

 

挟んでいた机を蹴り飛ばし、2人を隔てる物を無くした。これで今から自分が何をされるのか察したのだろう。露骨に怯え始めた。

 

「ま、待て!拷問で得た証言に信憑性は無いはずだ!」

 

「安心しろ。拷問で吐かせる訳じゃない!」

 

「アァァァ!!」

 

「お前から云いたくなるからな」

 

胸ぐらを着かんで投げ飛ばし、壁に叩き付けた。外まで音は漏れているが、全員何が起きているか理解しているため、駆け付けるような人は誰もいない。

 

「お、お前、私には黙秘権と人権が!」

 

「残念だったな。今日は無い」

 

「アガッ!!アァァァア!!!」

 

投げ付けられ叩き付けられ、酷い音が取調室一帯に響いている。時間をおうに連れて激しさを増している気がする。

 

「ま、待ってくれ!分かった!言う!言うァァァァア!!!」

 

「嘘の情報なんぞいらん」

 

「グハァ!?待て!言うと言っているだろ!!」

 

「事実以外はいらん」

 

もはや壁はボッコボコ。天井にまで穴が空いており、蛍光灯は根元から落ちかけている。

 

「話す!話す!!…何故こんなに早くVTシステムの事が……」

 

「おい。それはどう言うことだ?」

 

「は?」

 

「こんなに早く。とはどう言う意味だと聞いている!」

 

「ガバッ!」

 

よほど気になったのか、余計に壁に投げ付け始めた。取調室の修理費がえげつない事になりそうだ。

 

「ぶ、VTシステムは時が来たときに発動するようにプログラムを組んでいた。だが、こんなに早くにバレるとは……」

 

「テメェが単純にバカだっただけだろ。さぁ、続けてもらおうか?誰にシステムを渡された?開発者のお前でも簡単に入手はできないだろ?誰だ?お前に渡したのは。そして誰の指示だ?」

 

「私が1人でやったにアァァァァ!!!」

 

「下らねぇ嘘はつくな。早く言え。言わないならお前の指をバラバラの方向に曲げて、尻の穴に突っ込むぞ」

 

「い、言えない!それだけは!」

 

「間接を外してはめ直すと言うコースも付け加えてやろう。フンッ!」

 

「ガアッ!グッ!ウワァァァァア!!!」

 

「さっさと話そうか?時間が勿体ないんだ。俺は何事も無駄にしたくないんだよ。早く言え」

 

「ウゴァッ!」

 

因みに、何故こんな状況でも声が出るのかと言うと、バレない程度に男の体の時間を巻き戻しているからだ。つまり、嘘を付けば付くほど地獄が長引くと言うことだ。

 

「そろそろ話してくれないか?誰に頼まれて誰に渡されたシステムなんだ?」

 

「れ、連邦軍…副総監……グフッ」

 

「ふぅ。ようやく言ってくれたか。おら千冬仕事だぞ。早く取りかかれ」

 

黒幕を聞いたときはマジかと思ったが、その日の内に確保に動いた。逮捕直前、当然否定したし抵抗もしたのだが、玲衣がリパルサー・レイで壁に穴を開けると、静かに着いてきてくれた。玲衣も同伴で行われた取り調べだったが、何故か素直に全部吐いてくれた。

 

「意外とスムーズに終わってくれたな~。あの男と同じくらい粘ると思ったんだが」

 

「その男をボコボコにした状態のが目の前に転がってて、リパルサー・レイをいつでも撃てる状態で構えられてたら話すだろ」

 

「これでようやく帰れそうだ」

 

「あぁ。ご苦労だったな。日本の防衛省には私から連絡を入れておくから、早速戻っても大丈夫だぞ」

 

「この前のモンド・グロッソの時、お前が連絡を遅れさせてくれたお陰で、帰りも空自とドックファイトするはめになった。故に、お前が連絡したのを確認したら帰ることにする」

 

(2回も空自とドックファイトしたのに生き残ったのか。やっぱりキモいなコイツ)

 

(空自と2回もドックファイトは無理だわ~)

 

(あの異常集団と2回もか~。アイツ本当に生きてんのかな?)

 

(あのスーツ着てるからか?)

 

何やら色々と失礼な事を思われている気がしたが、ツッコムと面倒故に、後日ブッ飛ばす事にしてこの日は我慢した。




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さらばドイツ

前回はカウンセリング(笑)がスゴかったですね。効果覿面。


ようやくドイツとおさらばできる様になった。何せ、巨大な問題事であるVTシステムの件を片せたのだ。これ以上この時点で何かしらの問題が起きるなんて事は起こるはずがない。もうあの姉弟が起こせる問題は無いはずだ。

 

「これ以上の問題を起こすバカ野郎がいたら、問答無用で始末しよう」

 

『関わって更に面倒なことになる。と言うのが今までの流れですが……』

 

「なら無視するか」

 

ジャーヴィスとの会話をそれなりに楽しみながら、基地の中をブラブラと散歩していた。いつもならこれだけでも何か問題が起こるのだが、今のところいたって平和。本当に日本に帰っても良いかもしれない。

 

「あ、玲~衣~!」

 

「チッ。なんの用だ銀髪ロリチビ」

 

「いい加減、名前で呼んで欲しいのだが……」

 

「早く用件を言え。じゃないとその服剥ぎ取って基地の中1周させんぞ。千冬及び一夏関係の事だったら悪いが関わるつもりはない」

 

苦虫を噛み潰したような顔でラウラと話している。当然だ。もう帰ろうと言う感じになってきたのに、問題事を持ち込まれたら堪ったもんではない。単純に考えてもここにいる期間が2週間以上増える。

 

「別にそう言うわけではないが……仲間から聞いたのだが、空自と2回もドックファイトをしたらしいが、本当か?」

 

「あぁ。1回目は日本からドイツに飛んだとき。2回目はドイツから日本に帰ったときだ。帰りはあのバカが連絡を遅れさせてくれたのが原因だがな」

 

「そうか。どうやって逃げ延びたのだ?どう考えても空自から逃げられるイメージが浮かばないのだが……」

 

「……だった」

 

「は?」

 

「最初はF4とF2だった。だからスピードで撒く事ができたんだよ……実際にドイツに来た時はスピードでどうにかなったからな。ただ帰りはそうも行かなかった。F4とF2が出てきたと思ったら、別の基地からF15が飛んできやがった。どうにかなると思っていたが今度はF35……!!F15ですら相手にするのキツいっつぅのに、3機も相手にするはめになった!しかも途中でF35が消えたと思ったら、逃げ道に先回りされててミサイルぶち込まれたし、後ろから機銃食らったし、フレアを出してミサイル回避したと思ったら間髪入れずに撃ってきて吹っ飛ばされた!途中で引き返して行ったが、マーク3は結局今も修理中!外装だけじゃなくて衝撃や千冬との戦闘で受けた零落白夜で内部システムまでイカれた!!全部あの野郎が連絡遅れさせたのが原因だ!チクショォォォオ!!!」

 

「ウオッ!?」

 

空自は旧世代の戦闘機だとうと最新鋭の戦闘機だろうと関係なく似たような動きができる。基本的なスペックの違いが無ければ、まず逃げ切るのは不可能。マーク3のスペックは基本的にはF4とF2を上回っている。だからその2つからは逃げ切れるだろう。しかしF15やF35となれば話は変わってくる。片方は戦闘における撃墜記録0と言われる最強戦闘機。もう片方は最新のステルス戦闘機。マーク3では普通に考えて逃げられない。撃墜されない方がスゴいと言うレベルだ。

 

そんな話をするのだ。当然、死んだ魚の様な光の無い濁った眼をするのだが、後半に行くに連れて千冬への怒りを思い出したのか、握った拳を全力で壁に打ち付けた。

 

(解せぬッ!)

 

「お前も苦労しているのだな……と言うか撃墜しなかったのか?」

 

「日本の空を守ってる奴らを日本人が落とすかよ」

 

「そこは常識的なんだな……」

 

「当たり前だ。落としたら落としたで大問題になるし」

 

なお、読んでいる人を含めて玲衣は何処かブッ飛んだ考えと感覚を持っていると勘違いしてる人が沢山いるだろうが、意外にも普通な感覚をしている。

 

「あ、いた。玲衣~!千冬姉が呼んでたぞ~!」

 

「煩わしい1号……」

 

「お兄ちゃん!」

 

「お兄ちゃん?」

 

ラウラのお兄ちゃん呼びに反応した玲衣だったが、ツッコんだら面倒だと思い、必要以上に追求しなかった。しかし何故一夏が来ただけでパァッ!と表情が明るくなったのか聞きたい。

 

「お前までなんの用だよ」

 

「そろそろ日本に帰るんだろ?その前に千冬姉が「玲衣の実力を知っておきたい」って言ってて、今演習場で待ってる」

 

「断っといてくれ」

 

「来ないと日本の防衛省には連絡しないとか」

 

「あの野郎!マジで殺す!!」

 

全力でガレージ方向へと走っていき、マーク6を装着。千冬の待つ演習場へと飛んでいった。

 

「ラウラも行く?」

 

「うん!行こう!!」

 

一夏の手を掴み、2人も演習場へと向かっていく。本当にスゴい変わりようだ。2人が演習場につく頃には、既に玲衣も到着しており、千冬と対峙していた。

 

「テメェ、どんだけ俺に迷惑かければ気が済むんだ?マジで殺すぞ……」

 

「私も悪いとは思っている。だが、純粋にお前の全力を知りたくなったのだ!許してくれ!戦いに飢えている私を許してくれ!!」

 

「戦闘民族かよ……細胞1つ残さず消し炭にしてやろうか?」

 

スーツ着てるから、全力とは言いがたい。スーツ着ている状態では忍術も写輪眼が使えない為、仕方ないと言えば仕方ないが。

 

「血が沸き上がり肉が踊る戦いができるのなら、戦闘民族と罵られても構わない!むしろご褒美だ!!死をも喜んで受け入れよう!!」

 

「ならいっぺん死にやがれ!!」

 

スラスターを全力で吹かして千冬に接近し、拳を叩き付ける。当然の如くそれはブレードで受け止められたのだが、すぐに蹴りを入れ邪魔なブレードをへし折る。

 

「なんで専用機じゃなくて打鉄なんだよ!専用機はどこにやった!?」

 

「代表を辞めたんだ。その時に国へ返却した!性能は確かに不安が残るが、お前と戦えるんならなんだって構わない!!」

 

新たにブレードを出し、玲衣に斬りかかる。零落白夜は来ないが、マーク6の装甲でも不安に感じる斬撃が繰り返された。

 

『このままではスーツが持ちません』

 

「チッ!フレア出せ!」

 

本来ミサイルの目眩ましに使うのだが、千冬が接近しているため、怯ませるのに使うことができた。1秒にも満たない時間だったが、攻撃が緩んだ所で距離を取り、リパルサー・レイを乱射。だが意味をなしている様には見えない。

 

「なんでリパルサー・レイを斬れるんだよ!!」

 

「鍛えたからだ!」

 

「脳筋野郎!!」

 

ミサイル攻撃に切り替えて、ある分を撃ち込んでいく。勿論無駄に撃っている訳ではなく、有効になりそうな具合に撃ち込んでいる。

 

「あの物理シールドが邪魔だな」

 

『現状のミサイルでの破壊は不可能です』

 

「片方使うか」

 

千冬に腕を向けて、邪魔な物理シールドにレーザー・カッターを放ち破壊した。

 

「ほう。打鉄の物理シールドを真っ二つにするとは……そのレーザーはどんな出力をしているんだ?」

 

「あぁ~。確か200ペタワットだったか」

 

※テラの1000倍がペタである。

 

「それなら当然か……だがちょうどいい。少し邪魔だと思っていたんだよ。この物理シールド。これで動きやすくなった!!」

 

防御が消えた筈なのだな、動きが更に鋭くなりやがった。玲衣はギリギリで避けている状態だ。

 

「どうした!?お前の実力はそんなもんだったのか?!ガッカリだぞ!」

 

「イラッ!)オラッ!!」

 

「グハァ!」

 

渾身の右ストレートが千冬の顔面を捉え、地面に叩き落とした。かなりの勢いで落ちた為か、クレーターが出来上がっている。動けなくなっている内にリパルサー・レイを撃ち込み、この勝負をさっさと終わらせようとした。

 

「ジャーヴィス。打鉄のシールドエネルギーはあと何%だ?」

 

『残り20%です』

 

「もう少しかかりそうだな」

 

容赦なく残りのミサイルを撃ち込み、少し様子を見ることにした。物理シールドもなく、ブレードも1本折れている。そして残り20%のシールドエネルギー。普通に考えればこれ以上の戦闘は仕掛けてこない筈だ。

 

「これで満足か?そろそろ終わりに―ッ!?ウワッ!飛び道具!?」

 

『いえ。銃弾ではありません』

 

基本的に打鉄は接近用のブレードと中距離用のサブライフルが付いている。だが、飛んできた物は銃弾にしてはやけに大きく歪な形をしていた。

 

「物理シールドの残骸?チッ!アイツの周りにゴミを置きっぱなしにするのは不味かったか」

 

そんなことを言っていると、今度は2枚のシールド片と最初に折ったブレードの刃が飛んできた。その2つを撃ち落とし、千冬が投げてきた方向にリパルサー・レイを撃ち込む。だが、いまいち手応えがなかった。

 

「ん?爆煙と残骸を利用して移動した!?」

 

「フンッ!」

 

「ッ!?グッ!」

 

背後から現れ振り下ろされたブレードを白刃取りで受け止め、ユニ・ビームでKOを狙った。だが、

 

「2度もその手は食らわん!」

 

「ッ!?」

 

ブレードを離すと、隠し持っていたシールド片をアークリアクター部分に押し当てて離脱。玲衣を自爆させることに成功した。

 

「ふう。何とか勝てたな……どうだ?私も充分強いだろ?」

 

「自分の兵器で殺られるバカがいるかよ。予想外ではあったが」

 

「マジか」

 

吹っ飛ばされた玲衣だったが、立ち上がって再び千冬の元へと歩いて行った。ユニ・ビームの自爆を食らったせいか、胸部分のアーマーが少し黒くなっているが、まだ戦闘は可能なようだ。

 

「でどうする?まだやるのか?」

 

「楽しいからまだやりたい。が、ギャラリーが集まりすぎたな」

 

千冬の言うように、いつのまにか周りには沢山の人集りができあがっていた。最初は一夏とラウラの兄妹2人だけだったと言うのに、一体何故ここまで集まったのか不思議だ。

 

「派手にドッカンドッカンやり過ぎたか?」

 

「だな。屋外演習場だし」

 

「じゃあお開きだな。早く防衛省に連絡入れろ。帰りたい」

 

「分かった分かった。少し待ってろ」

 

携帯を取り出して電話を始めた。ようやくこれで帰れると安堵し、スーツから出てきた。少し整備が必要なため、工具を出して早速取りかかる。

 

「よし」

 

「連絡済んだか?」

 

「あぁ。30分後にピザが届くぞ!」

 

「死ねぇぇぇえ!!!」

 

手に持っているスパナを千冬に全力投球。避けられた為当たりはしなかったが、地面に突き刺さった。

 

「玲衣落ち着け!!」

 

「そうだ!落ち着くんだ玲衣!!そんなの当たったらお姉ちゃんが死んでしまうぞ!」

 

「うるせぇ!あんなのは殺した方が世界のためだ!俺の平穏な世界のために擬勢になりやがれ!」

 

「ちゃんと連絡してくれるから!きっとしてくれるから!むしろ俺からも頼むから!だからそんな物騒なもの下ろしてくれ!!」

 

「それより折れてるとは言え何故打鉄のブレードを片腕で持ててるのだ!?」

 

千冬を亡き者にしようとする玲衣を一夏とラウラが2人がかりで押さえ、どうにか事なきを得た。




試験的に題名を変えていきましょうかね。次回もお楽しみに!感想や評価、お気に入り登録と活動報告もよろしくお願いします!!

感想が沢山着たら更新頻度が上がります。よろしくお願いします。あと、マジでタイトルお願い。


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大事件勃発

ようやく、原作本編突入です。あ、今回はちゃんと突入しますよ。また回り道なんて事にはなりませんので、安心してください。


『世界初!男性IS操縦者発見!!』

 

『男性IS操縦者発見!世界中で一成検査!?』

 

『日本、10代~20代の男性全てが対象。今日にも検査開始』

 

『続々と発見される男性操縦者!?』

 

『Sランク適正の男性操縦者現る!!?』

 

新聞・テレビ・ネット。その全てが男性IS操縦者のニュースで持ちきりだった。チャンネルを変えてもページを捲っても、どれもこれも男性IS操縦者の事ばかり。同じ内容過ぎてつまらない。

 

「ついに始まったか……取り敢えず一夏を殴るか。他にも沢山動かせるのがいるのに、なんでコイツが1番最初に起動してんだよ」

 

自分の部屋で寛ぎながら、この世界の大事件を右耳から入れて左耳に流してポテチをかじっていた。原作通りにISを最初に動かしてしまった一夏に軽い殺意を覚えつつ、検査が始まるまでなにもしない事を決意した。

 

「……なにもしない事を決意したは良いが、大体このタイミングで来るんだよな……俺の決意と平穏をぶち壊してくれるトラブルメーカー2人が……」

 

フラグにも思える発言をすると、本当にインターホンが鳴り響き、聞きたくない聞き慣れた声の女性が玄関から玲衣を呼んでいた。

 

「ほら来たよ……グッパイ。俺の心の平穏」

 

近所迷惑にならない内に玲衣が出迎え玄関に入れる。意外なことに千冬だけではなく一夏まで来ていた。すると千冬はあの時と同様に、勢いよく土下座をして玄関の床を破壊した。

 

「頼む玲衣!私たちと一緒にIS学園に来てくれ!」

 

「うわぁ~。1年前と同じ光景」

 

「ISへの適正があれば勿論同じクラスにするし例え無くても私が無理矢理編入させる!だから頼む!どうせ私たちは厄介事に巻き込まれる運命なんだ!一夏を守ってくれ頼む!!」

 

「自分で言っている事が滅茶苦茶だって事に気付け」

 

どう考えても入学する事は間違いないのだが、必死すぎる千冬に少し玲衣は引いている。

 

「つか一夏。なに受験シーズンに面倒なこと起こしてくれんだよ。なんでIS動かしたんだよ。その前になんでIS学園の受験会場に行ったんだよ」

 

「それが……場所が似ててさ。俺の受けようと思ってた学校、ISの受験会場の隣だったんだ。それで間違えて……」

 

「なにをどうやったらそれを間違えるんだよ……そもそも、俺は検査がまだだし、適正が無かったら学園に入学なんてできないだろ。どう考えても動かすパターンだけども(ボソッ」

 

頭を抱える玲衣。千冬の頼みは検査を待ってからでも遅くはないんじゃないかとも思えるが、そもそも何故一々ここに頼んでくるのかが不思議だ。

 

「一夏、お前を殴るのは後だ。それと千冬。せめて明日から開始される一斉検査後にそれを言いにこい。適正があればお前のクラスに入ってやる。適正が無ければ……」

 

「無ければ?」

 

「一夏護衛システムでも開発して売ってやる」

 

「具体的にどの様なシステムで?」

 

「まずは防刃防弾の制服、夏用冬用を各々2着。GPSが埋め込まれたヤツな。それと見たものを録画してくれるコンタクトレンズ。メガネバージョンもあり。高所から突き落とされた時に衝撃を吸収してくれるクッション。もしくはパラシュートを出してくれるベルト。どんな環境でも滑らない靴。相手に密着させればスタンガン、離れた場所から撃てば高圧電流を流してくれるテザー銃になる腕時計。お洒落なピアスに見える小型の通信機。全部でそうだな……500万でどうだ?サービスで15年物のスコッチと、コイルガンでも着けてやろう」

 

「コイルガン?」

 

「小型のレールガンだと思ってくれ。電磁コイルが弾を加速させて撃ち出してくれる。弾の形状にもよるが、威力は精々、警察や軍隊が訓練や暴徒鎮圧に使う非致死性のゴム弾程度だ。火薬で撃ち出す訳じゃないから銃刀法にも触れない。勿論弾の形状も皮膚にめり込む程度の安全な物にする。当然射程も短いし、連射すれば集弾性も低くなる」

 

「安全の基準がおかしいような気もするが……どうせなら学園に入ってそれを作ってくれないか?」

 

「仮に俺に適正があって学園に入ることになっても作れって言うなら、迷惑料込みで800万を要求するぞ」

 

「なんだその程度か。安いものだ。ほれ」

 

こうなることを予想していたかの様に、懐から分厚い茶封筒を取り出して玲衣に渡した。中にはキッチリと金が入っている。しかも800万円ジャスト。

 

「俺がISを動かせるとでも?」

 

「多分動かせるだろ。私の勘がそう言っている」

 

「ふぅ……一夏。お前を殴るのは後だと言ったな。あれは嘘だ」

 

「は?グバッ!?」

 

一夏を殴ったあと、2人を家に返して地下ラボに入っていった。ドイツでの一件から時間が経っているためアークリアクターは完成して予備もいくつか作ってある。それ以降はほとんど使っていなかったのだが、久々に動かすことになってしまった。

 

「さぁ~て俺たち。作るものは分かってるな?」

 

「防刃防弾の制服を夏用冬用を各々2着だな。GPSを埋め込んだタイプの」

 

「録画機能付きのコンタクトレンズとメガネ」

 

「クッションとパラシュート付きのベルトと、スタンガン兼テザー銃になる腕時計」

 

「機能の高い靴とコイルガンだな。弾は鉄で良いか?」

 

「構わん。早く作ってくれ」

 

分身に各々作らせて、自分用の物も製作にかかる。

 

「おい女神。聞こえるか?」

 

『お~久し振りだな~。なんだ?』

 

「俺にISの適正ってあるか?起動させたら不味いと思って今まで触ってなかったからよ」

 

『なんだそんなことか。一応付けてるぞ。つっても、余り高くはないけどな。確かBランク程度の筈だ』

 

「サービスでもう少し高くしておいてくれよ」

 

『無茶言うな。お前に色々付けすぎて、最後の辺りでIS適正の事を思い出したんだ。その時点で容量限界で、高いのを付けられなかった。後々上げていけば良いやとも思ったが、金を送ったお陰でそれもできなくなった』

 

「まぁ動かせるんだろ?」

 

『勿の論。まぁ、アイアンマン持ってるお前にはIS適正なんか必要ないだろうけどな』

 

「学園に入るには必要だ。どう言う訳か、やたらと千冬と一夏に助けを求められて、無理矢理学園に編入させようと千冬がしてた」

 

『ソイツは大変な状態だな。まぁ適正はあるから安心しろ。主人公の身を守るためにはちょうど良い状況だし』

 

「まぁな。んで他の転生者どもは今どうなってるんだ?最初の戦闘以降は遭遇してないんだが」

 

『他のニュースで他国でも男の操縦者が出たってニュースあるだろ?あれ全部転生者だ。他にもいるけど、それは一成検査の後に分かる』

 

「やっぱ全員男なのか?」

 

『いや。女の転生者もいるぞ。数は少ないが。あと、まともな転生者もいるから、無闇に殺すなよ?今地獄も天国も拡張工事中で受け入れられないから。それに予定外の死者を転生させたのは、残りの寿命を使ってもらう為って理由もある。書類上、寿命が残った状態の人間を亡者にするのは面倒だからな』

 

「お前は俺を殺人鬼かなにかだとおもってるのか?元々俺がいた世界にお前が転生させた頭の悪いサイコ野郎とは違うんだよ」

 

『容赦のないお前ならやりかねないと思ったんだよ。まぁその辺わかってるなら良いや』

 

「あぁ。無闇には殺さねぇよ」

 

『是非ともそうしてくれ。殺すのは最終手段で頼む』

 

軽い約束を女神と交わすと、スマホの通話を切って自分の道具の製作に取りかかった。ただ、コイルガンは必要ない為、別の自衛アイテムを作り始める。

 

「拳銃型にするか刀型にするか……」

 

「お前には必要ねぇだろ」

 

「それな。でも一応欲しいだろ。ロマンでもあるし」

 

分身の1人にツッコミを入れられて冷静になってみると、確かに玲衣自身には何1つとして必要になるものが無い。写輪眼を始める1番使っているアイアンマンスーツ、強化された肉体やその他チートの数々。本当に自衛アイテムが必要ない。が、それでもやっぱり小型の自衛アイテムと言う物にはロマンを感じる。そんな理由だけで何かを作っていく。




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結局学園生活スタート

主人公以外の転生者キャラは後書きにまとめておきます。俺が忘れそうなので。正式なキャラ設定集は今後しばらくしてから書きたいと思います。

応募してくれたキャラなんですけど、全部使うことは俺の技術的に不可能ですので、この世界にいても違和感無いなと言う点と、扱いやすさと言う点を重視して選ばせて貰いました。その為、キャラクターの設定も少し弄らせて貰います。

応募してくれたキャラクターや設定を使ったキャラはアンチ対象として扱うつもりです。そしてヒロインキャラに付いてですが、ゲーム「アーキタイプ・ブレイカー」のキャラは登場させません。理由は単純に知らないからです。なので女子キャラはいつも通りのメンバーです。

んで、タグも追加する予定ですので、これあった方が良いんじゃね?と言うものがあったら、感想のついでにでも書いてください。必要と判断したら追加します。


 結局、玲衣は受けた検査でISを動かせる事が露呈。めでたくIS学園への編入が確定した。合格した高校の入学を辞退してだ。

 

「さてと。めでたくIS学園への編入が決まったところで、お前ら2人に色々と渡しておいてやる」

 

「おぉ!つまりあれができたのだな?一夏ディフェンスシステム。通称IDS!」

 

「変な通称を付けるな。取り敢えず一夏は着替えてこい。サイズの確認をする。着てみてキツい所があったら言ってくれ」

 

「お、おう」

 

 簡易的に作った着替え部屋に一夏を入れて着替えさせる。その間に、千冬の分も色々と作った為それの説明に入った。

 

「お前にもいくつか作っておいた。まずはこの革靴」

 

「ん?なんの変哲もないスーツ用の革靴にしか見えないが?」

 

「まぁ履いてみろ」

 

 玲衣に指示されるままに靴を履いて軽く動かしてみる。新品の靴のわりには足に馴染む感覚があり、靴擦れも起こりそうにない良質な靴。と言うのが素直な感想である。

 

「これがどうしとんだ?」

 

「物真似でドイツの支配階級の敬礼をやってみろ」

 

 右手を軽く握り口の前に持ってきて、左腕を45°程の角度にあげて見せた。

 

「違う。そっちじゃない」

 

 検討違いの方を見せた千冬に軽くため息を吐いて、自分がイメージしていた、胸を張ってつま先立ちになりかかとをぶつける方を実践して見せた。

 

「あぁそれか。どれどれ……うぉっ!?……ナイフ?」

 

 玲衣の真似をして同じ動きをすると、利き脚のつま先から鋭いナイフのブレードが出てきた。

 

「ブレードには即効性の神経毒が塗ってあるから、無闇に触ろうと……」

 

「済まん。言うのがもう少し速ければ助かった……」

 

「解毒剤だ。死にたくなかったら説明を聞く前にかってな動きをするな」

 

 ブレードで軽く指を切っていた千冬に解毒剤を飲ませて毒を無力化する。即効性にも関わらず、玲衣と少しだけ話せたのは千冬の体が規格外だと言う証拠だろう。

 

「んでこれが校章のピンバッチだ。コイツは緊急時に……あら。外しちゃったの?」

 

「不味かったか?」

 

「チッ。吹っ飛ぶぞ」

 

 千冬からピンバッチを急いで取り上げると、誰もいない方向に向けて投げ飛ばしてテーブルでバリケードを作った。この間、約1秒。テーブルの影に千冬も入れた。その直後、ピンバッチが大爆発。大きさに見会わない爆発が起きて、千冬は口を開けたまま固まってしまった。

 

「もう一度だけ言ってやるから良~~~く覚えておけ。死にたくないなら勝手なことするな。それともう1つ。壊した分は弁償しろ」

 

「あ、あぁ……分かった」

 

「今のは見ての通り小型の爆弾だ。大きさに反して威力がデカイから、さっきみたいに起爆ピンを外したらすぐに投げ飛ばせ」

 

「なぁ、これってどうやって着けるんだ?普通に考えて着けようと思ったら私が爆発するよな?」

 

「起爆ピンよりも浅い所に通常の固定ピンがある。そこを外して服に着けろ」

 

 実際に実演しながらやり方を見せて千冬のスーツの襟にピンバッチを着けた。意外にも目立たない物である。この2つが千冬の為に作った道具なのだが、恐らく使う場面は出てこないだろう。

 

「爆発音がしたんだけど大丈夫か?」

 

「いつまで着替えに時間使ってんだよ。でどうだ?窮屈な所はあるか?」

 

「サイズピッタリで大丈夫。動きやすいぞ」

 

「それは良かった。なら夏服も大丈夫だな。次はISスーツだ。肌を露出させたいと言うなら諦めろ。上は長袖で下は足首辺りまで丈がある」

 

「別に俺に露出癖は無いんだが……まぁ分かったよ」

 

 玲衣から投げ渡されたISスーツを受け取り、再び着替え部屋に入っていった。

 

「あれには何か仕掛けがあるのか?」

 

「特になにも。強いて言えば、何ヵ所かにプロテクターを入れて衝撃を抑える構造にして、電気信号を通常の物よりも多く増幅させてISに伝わりやすくした程度だ」

 

「それは~、だいぶ高性能になっているのでは?……それはそうと、アソコには何か付けているか?」

 

「アソコってどこだよ」

 

「分かるだろ?!一夏だって男だぞ!純粋で純心で清純だけど男なんだぞ!ISスーツなんて下着の様な物だ!それを着た女子が周りに沢山いるんだぞ!?」

 

「あぁ何と無く分かったよ。一夏なら大丈夫だろ」

 

「小さいとでも言いたいのかお前は!!!」

 

「この女面倒だな~。まぁそこに関しては何も付けてない。付けたら逆におかしいだろ。と言うか慣れてしまえば問題ない」

 

「……それもそうだな。アソコにいれば1週間程で慣れるか。むしろお前の方が心配だな」

 

「胸に脂肪があるかどうかだろ。体の違いなんて」

 

「お前は1度女子にブッ飛ばされた方が良いぞ。あと、それ絶対に女子の前では言うなよ?」

 

 下らない会話をしながら一夏が出てくるのを待っていた。少しすると一夏が出てきたのだが、ISスーツの方も特に問題らしい問題は無かった。結構薄い素材のため、少し肌寒いと言う事くらいだ。

 

 そんなこんなで、迎えてしまった学園生活初日。玲衣は特に特別な事を考えたりはしていなかった。ただいつもと同じように、平和に過ごせればと思っていた。ほぼ女子校であろうとそれは変わらない。平穏に過ごせればそれだけで良かったのだが、早速問題が発生しまくっている。

 

「なんでこのクラスに男子生徒集中してんだよ……」

 

 玲衣と一夏を含める7人全員が1年1組に集中していた。1回ブッ飛ばした覚えのある人もいるし、一夏はこの状態が苦しいのか縮こまっている。玲衣は自分の中にある平穏と言う壁が1枚1枚確実に破壊されていくこの状況に、怒りと殺意を覚えてしまっていた。

 

「皆さん揃ってますね~?それではSHR始めますよ~」

 

(あれが山田真耶……体のバランスおかしいだろ)

 

 物凄く失礼なことを思いながら、入ってきた教師を観察していた。サイズの合っていないブカブカの服に大きめな眼鏡。低身長・童顔・巨乳・眼鏡・左手に黒い手袋。属性過多な存在である。

 

(左手に手袋?そんなの着けてたっけ?)

 

 ちょっとした疑問が頭に浮かんだが、気にするほどでもないと結論付けて、これからの生活を考えることにした。

 

「このクラスの副担任を勤める山田真耶です。よろしくお願いしますね!あ、この手袋は火傷を隠すための物ですのでお気になさらず。けして厨二病とかそんなものではないので」

 

 その言い方だと、余計に厨二病だと思われてもおかしくない。この年頃の子供たちにそんな否定のしかたはナンセンスだ。現にクラス中でヒソヒソ話し声が聞こえてくる。

 

「それでは、出席番号1番の方から自己紹介お願いします!」

 

 それを合図に、自己紹介が始まり1人、また1人と出身中学と加入予定の部活、趣味を発表していく。そして全員が注目している最初の男子生徒の自己紹介に突入した。

 

「愛咲真実です。一成検査でISの適正があることが判明してこの学園に入学することになりました。よろしくお願いします。趣味は読書と機械弄りです」

 

「愛咲ってもしかして……」

 

「だよね。あの愛咲だよね」

 

「きっとそうだよ!会社のホームページにも乗ってたもん!」

 

無難な自己紹介が終わったあと、何かに気付いた生徒たちが愛咲について何かを話始めた。そして確信に変わると何故か興奮した様な感じになっている。

 

「ハハハ。もう気付いてる方も居るようですので、話しても問題ないですね。実は実家が会社を経営していまして、私はそこの息子なんです。愛咲ファンデーションと言えば分かるかな?」

 

「「「「キャァァァァア!!!イケメン!爽やかなイケメンよぉぉぉお!!!」」」」

 

「あのIS大企業の御曹子よ!」

 

「でも全然偉そうじゃないし!むしろ親の会社の御曹子としては高すぎるスペック!!」

 

「物腰柔らかい話し方と爽やかな表情!」

 

「「「「最高のイケメン来たァァァァア!!」」」」

 

「恋人は!?恋人はいるんですか!!?」

 

「いえ。まだ一度もそう言った経験はありません。恋人は募集中です」

 

「「「「ウオッシャァァァア!!!」」」」

 

クラス中の女子が一瞬にして節操のない獣に成り下がってしまった。IS学園に入る為に前知識を付ける学科がある女子中学校出身の生徒が多いため、こう言った反応になるのは仕方がないのかもしれない。

 

(耳栓しておいて良かった。一夏は……ディフェンスシステムの1つが発動して自動的に耳栓がはめられたのか。余計に付けたシステムが役に立ったか)

 

ネタで付けたシステムの1つだったのだが、思いがけない所で役に立ってくれた。一夏は何があったのか気づきておらず、首を傾げていた。

 

「外まで聞こえてきたぞ。何があった?」

 

「あ、織斑。会議は終わったんですか?」

 

「先程ようやく。SHRを押し付けて済まなかった」

 

「いえいえ。お気になさらず。ほとんど進んでいませんけども……」

 

「やっぱりか……はぁ、仕方ない。愛咲だったか?」

 

「はい」

 

「自己紹介が済んだんなら席に戻ってろ。他の男子生徒は前でろ」

 

教師らしく指示を出し、他の男子生徒全員を黒板の前に1列に立たせた。耳栓が原因で一夏には聞こえていなかった様だが、玲衣が一夏の横を通るときに耳栓を解除して前に来いと合図をだした。

 

「よし。もう面倒だし時間もない。右から順番に自己紹介していけ。他は休み時間に済ませるように。小野寺、お前からだ。一応言っておくが、声は上げるなよ?」

 

軽く生徒たちを脅しつつ、自己紹介へと突入させた。

 

「小野寺ユウスケです!ISの事はよく分からないけど、みんなと仲良く学園生活を送れたらと思ってます!よろしく!!」

 

眩しい笑顔とサムズアップで自己紹介を締めくくり、次の生徒にバトンタッチ。勿論女子たちは声をあげそうになっていたが、拍手をしたりも悶えたりで止めている。

 

「織斑一夏です。家事全般が得意です。よろしくお願いします」

 

「佐倉玲衣だ。以上」

 

全くの対照的な自己紹介だ。一夏は無難に終わらせて玲衣はダルそうに終わらせる。

 

「津田総司です。こんな眼と髪の毛してますけど、日本人です。よろしくね。因みに色が違う赤い方の眼は、幽霊を見ることができます」

 

「「「「えっ……!」」」」

 

「嘘です。特になにもありません!この学園は頭髪などについての規定が無かったので、入学と同時にカラコンや黒染めを止めてみました」

 

津田総司と言う男は、本当に日本人なのかとツッコミを入れたくなる容姿をしている。髪の毛は銀髪。眉毛も同じ色な為、染めた訳ではなく本当に地毛の様だ。そして本人が言っていた眼。片方が髪の毛と同じ銀、そしてもう片方が紅色だ。テンプレ通りの転生者と言う感じの見た目である。

 

「難波戦兎。趣味は運動と発明。専用機や装備も自分で作ってみた。よろしく頼む」

 

これまたとんでもない能力を持ったのが出てきた。玲衣もそうだが、専用機とそれ用の各種装備は自分で作ったと言うブッ飛び具合い。玲衣と良い勝負である。

 

「専用機や装備を自分で作ったって……何もないところから?」

 

「あぁごめん。爺ちゃんが会長やってる企業の工場と設備の一部を借りて作った。まぁよろしく」

 

「爆豪出久だ。最初に言っておく。俺はお前らと馴れ合うつもりはねぇ。誰よりも強くなるためにここにいる。邪魔をするヤツは消し炭にする。将来の夢は世界に名を轟かせるIS操縦者になり、高額納税者ランキングに俺の名前を刻むことだ」

 

今度は不良系男子。完全に滑った自己紹介にも思えるが、何故か顔を赤くして悶えている生徒が結構いる。見た目が良い上にその見た目とベストマッチな性格の相乗効果なのかもしれない。




・難波 戦兎(なんば せんと)
特典
1・桐生戦兎の頭脳と容姿
2・仮面ライダービルドシリーズの変身、補助アイテム全てとそれらの使用適正
3・難波重工(仮面ライダービルドでの大手の軍事産業)の会長の孫として産まれる
4・万城龍我並みの身体能力
5・IS適正(S)

・愛咲 真実(あいざき まこと)

使用IS ウルトラマンオーブダーク(漫画のウルトラマンスーツのオーブダーク版)
1・ウルトラマンの因子(ウルトラマンオーブ)
2・ウルトラマンスーツの開発施設
3・発明家としての才能
4・企業を経営するための才能
5・女性限定の好意を増幅させるタイプの洗脳能力→強力な洗脳能力に変更。

・津田 総司(つだ そうじ)

特典
1・オールフィクション
2・絶対遵守のギアス
3・王の財宝(ゲートオブバビロン)
4・一方通行(アクセラレータ)
5・ガンダム及びニュータイプ(ガンダムは募集中)

・爆豪 出久(ばくごう いずく)

特典
1・ヒロアカ爆豪の個性『爆破』
2・個性のデメリットを軽減する体
3・ワン・フォー・オール
4・生活に困らない環境
5・高い回復力(程度は調整可能)

・小野寺ユウスケ

特典
1・仮面ライダークウガ
2・クウガの力を使える専用機
3・高い戦闘力
4・精神攻撃無効化
5・高い順応能力

その他、憑依転生者あり。

次回からタイトルは「神楽 光」さんの公案してくださった『チート持った痛(I)い奴らを俺がチートで成(S)敗する』に変更します。

キャラも今後追加するかもしれませんが、基本的にはこれ以上増やさない方向で行きます。能力のみ募集って言ったんですけど、もういっその事キャラごと募集してしまおうかなって考え始めてます。前書きの条件に当てはまっている物が投稿されたら、何かしらのタイミングで登場させようと思います。

それでは投稿してくれた皆さん、提供ありがとうございました。今後もよろしくお願いします。

次回もお楽しみに!感想や評価、お気に入り登録と活動報告もよろしくお願いします!!
感想が沢山来たら次回の更新が速まるかも笑


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平穏な生活はまだ先

本日2本目

そろそろ幽霊が旬の時期ですね。無気力な救世主リメイクでやることやったらホラー回にでも入りますかね。怖い話を募集してる活動報告が1つ前にありますので、怖い話を持っている方は是非とも書き込んでください。小説内に登場させますので。


千冬の判断で男子生徒全員の自己紹介を終わらせて、1時間目の準備をするための行間休みに移っていった。と言っても大した準備はない。単純に必要な参考書とノートを机の上に出して終わりだ。

 

「玲衣。入学前に渡された分厚い参考書って持ってるか?」

 

「あ?この45口径の拳銃で弾を打っ放しても弾丸を受け止めそうな参考書の事か?」

 

「え?あぁまぁそれだけど」

 

「どうしたんだ?まさか、間違えて捨てたから貸してくれって言いたいのか?」

 

「うん。実はそうなんだ……昨日まで千冬姉と家の掃除してたんだけど、その時に間違えちゃって……」

 

「はぁ。お前ってヤツは……まぁ良い。俺は内容全部覚えてるからくれてやるよ」

 

「相変わらずスゲー……でも助かるよ。ありがとう」

 

ひきつった笑顔で参考書を受け取ると、残りの時間を利用して読み進めていった。当然玲衣は読み直す必要も無いため、自分の席に座って授業を待ち続けた。

 

「佐倉玲衣……だったよな?」

 

「ん?小野寺とか言うヤツか。何のようだ?」

 

「いや。数少ない男のIS操縦者だからさ。今年1年は一緒にこのクラスで過ごすんだから、挨拶でもしておこうと思って」

 

「そうか。よろしくするつもりはない。じゃあな」

 

「そんなこと言うなよ~!仲良くしようぜ?」

 

「他のに声かけてろ。俺は静かに暮らしたいんだ。耳元でギャアギャア騒ぐようなのには近付きたくない」

 

「冷たいな~。せっかくの青春を過ごす仲間なんだぜ?楽しくやろうよ~」

 

心底迷惑と言う顔をしながら、犬のように自分にまとわりついてくるユウスケにイラつきながら、授業が始まるのを待っていた。

 

「おい。なんでテメェがここに居やがる」

 

「い、出久……し、仕方ないだろ。IS動かしちゃったんだから」

 

「ふざけんな。お前みたいなのがここで何ができるってんだよ。とっとと消え失せやがれ……!」

 

玲衣の後ろから、爆豪と一夏の話し声が聞こえてきた。しかし内容は穏やかなものではない。爆豪は中学時代に一夏を苛めていた人物の1人であり、何故か一夏を毎回敵視していた。1年間離れていたし、高校生にもなったからそれも無くなると思っていたのだが、そんなことは無かったようだ。

 

「またアイツか……」

 

爆豪の貰った特典の事を現段階で把握しているのは玲衣のみ。その特典を使われれば、また一夏が傷付くことは明白。そんなことが起きる前に、玲衣が止めに入ろうとしたのだが、玲衣よりも早く爆豪に声をかけるヤツがいた。

 

「おい。何があったか知らないけど苛めは止めろよ」

 

ユウスケだ。さっきまで玲衣の周りをうろうろしていたユウスケが、爆豪と一夏の会話を聞いて、玲衣よりも早くに止めに入ったのだ。

 

「なんだテメェ?」

 

「なんでも良いだろ。それより止めろよこんなこと。嫌な気分になるだけだぞ」

 

「チッ。モブがでしゃばるんじゃねぇよ」

 

興が冷めたのか、そのまま自分の席へと戻っていった。

 

「全く……大丈夫か?」

 

「う、うん。ありがとう」

 

「あぁ。どういたしまして」

 

その直後、授業のチャイムが鳴って生徒全員が席に着いた。その直後、千冬と真耶の2人が教室に入ってきて、早速授業が始まる。

 

2人いるのだが、この時間は真耶がメインの授業であり、ISに関する基本的な条約や法律、コアのメカニズムについての授業が行われていく。この辺りの小難しい内容はどうしてもつまらない上に退屈な授業になるのだが、真耶の教え方は大変分かりやすく、不思議と頭の中に入ってくるものだった。

 

「ここまでで分からない方はいませんか?」

 

区切りの良い場所で一旦止めて、全員が内容に追い付けているか確認をとった。誰1人として手を挙げない。参考書を間違えて捨ててしまった一夏ですら、問題なく追い付けている。

 

「皆さん大丈夫そうですね。分からない所があったら聞きに来て下さい。いつでも教えますので!」

 

元気に意気込みながら授業を再開。なんの滞りもなく1時間目が終わりに近づきて行ったが、そのタイミングで千冬があることを思い出して声をあげた。

 

「済まん山田先生。授業をここで止めても良いか?」

 

「えぇ構いませんよ。予定以上に進みましたので。何かあったんですか?」

 

「あぁ。男子生徒の入学でバタバタしていたから忘れていたのだが、クラス対抗戦の代表を決めなくてはならなくてだな」

 

「そうですね……残り15分程で1時間目が終わりますが、決まりますかね?」

 

「決まらなかったら次の授業の時間も使う」

 

そんな訳で、うっかり忘れてしまっていたクラス対抗戦の代表選手を選ぶことになった。自薦他薦は別にどっちでも構わないらしい。だが、その発言のお陰で教室が一瞬にして荒れてしまった。

 

「愛咲さんを推薦します!」

 

「私は難波くんを!!」

 

「小野寺くんを!!」

 

「いやいや爆豪くんでしょ!」

 

「い~や!ビジュアルから考えても津田くんよ!!」

 

「私は織斑くんと佐倉くんを推薦します!!」

 

「なに1人で2人も推薦してんのよ!!どっちかにしなさい!ズルいわよ!!」

 

「そんなこと別に良いでしょ!」

 

当然こんなことが普通に起こってしまう。千冬もしまったと言う顔をしているが、取り敢えず話し合いはできてるため、止めることを放棄した。

 

「俺はヤル気ないんだがな~」

 

遠い目をした玲衣が呟くと、授業終了のチャイムが鳴り響き1時間目が終わった。つまり次の時間もこの騒がしい代表選出作業が起こると言うことだ。ノイローゼにならないことをいのる玲衣であった。

 

「全く……面倒なことになりやがったな」

 

「でも、玲衣ならクラス代表になっても大丈夫じゃないか?千冬姉と殴り合えるくらいに強いし」

 

「嫌に決まってんだろ面倒くさい。大体、物珍しいとか言う理由で推薦してる連中がほとんどだ。見世物小屋状態を受け入れられるバカがどこにいるんだよ?」

 

「相変わらず鋭い言い方だな。まぁ俺もできれば出たくは──」

 

「ん?どうした?」

 

話の途中だったが、突然一夏が話を止めて自分の近くを歩いていた生徒を視線で追っていた。

 

「箒……?」

 

「む?なんだ一夏か。なんの用だ?」

 

「い、いや別に。何も……」

 

「そうか。なら声をかけるな。迷惑だ。お前のような軟弱者と知り合いとは思われたくないんでな」

 

酷い言われようだが、それだけ言うと爆豪の元へと向かっていった。爆豪と話してる時はさっきとはうって変わって、穏やかな口調になり声も少し高くなっている。

 

「なんだアイツ。知り合いか?」

 

「まぁ一応。昔通ってた剣道場の娘だ。千冬姉が通ってたから俺も行ってたんだけど、やたらと千冬姉と比べてきて、練習も剣道関係なしにただ暴力振るってくるだけって感じだったし、親も親でそれを見てるだけで止める気は無しだったしで辞めたんだよ。その時も色々と文句を言われたけどな」

 

「親とアイツがバカって以外、なにも頭に入ってこなかったよ。爆豪とはなんか接点あんのか?」

 

「さぁ?俺が辞めた後に出久が入ったから、その時に何かあったんじゃないか?」

 

一夏と玲衣は2人で休み時間を過ごし、ユウスケは他の男子生徒の所を回り、爆豪は箒と何処かへと行っていた。ついでに言うと、オルコットと言う生徒が男子生徒に絡みに行っていたが、一夏と玲衣の所には来なかったため特に言うことはない。

 

「よ~しお前ら席に付け。2時間目を始めるぞ。クラス代表の件だが、先程山田先生と話し合って、男子生徒は全員推薦のため代表決定戦を行うことにした。できれば勝率が高い実力のある者が代表になることが好ましいが、勝ったからと言って代表になるわけではなく、クラス代表をやる意思があるかどうかで決めさせてもらう。つまり辞退をすると言えば無理強いはしないと言うことだ。その上で、他の生徒でこの代表決定戦に参加する者はいないか?」

 

千冬はそう言っているが、誰も手を挙げないし他に推薦するような声がない。このまま男子生徒7人で代表決定戦になるのだが、ここで愛咲が手を挙げて1人の生徒を推薦した。

 

「じゃあ、私はセシリア・オルコット嬢を推薦しよう。さっきの休み時間の発言が気になったので、その実力とやらを見せて貰いたい」

 

「オルコットか。どうだ?男子生徒はデータ収集しろと上が五月蝿いから代表決定戦には参加確定だが、お前には拒否権もあるぞ」

 

「いいえ。是非とも参加させて頂きますわ。格の違いと言うものを見せ付けるためにも」

 

「うむ。では、来週の金曜日の放課後に代表決定戦を執り行う。場所は第1アリーナ。後学の為にも、このクラスの生徒は全員アリーナに集合するように」

 

「「「「はいっ!」」」」

 

「それと、男子生徒の専用機についてだが、織斑以外は全員専用機所持者だ。しかし、取れるデータは多いに越したことはない。そこで織斑にも専用機が与えられる事になった。今日の放課後に学園に届けられる為、予定は空けておけ」

 

「は、はい」

 

「質問良いか?」

 

「珍しいな佐倉。何に対しての質問だ?」

 

「一夏の専用機についてだ。何処の企業が開発した?現在は何処も新規の専用機を作るほどの余裕は無かった筈なんだが」

 

一夏の専用機と聞いた瞬間、早速玲衣が質問を飛ばす。一夏の専用機となれば、確実に日本国内の企業が開発することになる。姉が千冬だからだ。だが、複数のIS企業の株主である玲衣が、一夏の専用機開発の情報を知らない筈がない。つまり、本来の企業の予定に無い計画と言うことになるからだ。

 

「あぁ~……最初に言っておくが、行動を起こすときはやり過ぎるなよ?」

 

「分かったよ。で?何処の企業だ?」

 

「倉持技研」

 

「…………臨時株主総会を開くか」

 

気不味そうに言う千冬だったが、遅かれ速かれこうはなっていた筈だ。どの道バレる事だから。

 

「まて玲衣。早まった行動は起こすなよ?本当にお前ならやりかねないから」

 

「何言ってやがる。別に特別な事はしねぇよ。一夏の専用機開発チームのメンバーと主任をクビにするだけだ」

 

「だからそれを止めろと言っている!お前が株主総会でそれを言ったら本当にシャレにならないんだよ!お前倉持の株何割保有してると思ってるんだ!?お前の行動1つで企業が大混乱に陥るわ!」

 

「元々ある日本の代表候補生の専用機開発をほっぽってコイツの機体を作った時点で論外だ。企業の信用を落とさないためにも適性な対応を取らせて貰う」

 

「言うんじゃなかった本当に……」

 

頭を抱えている千冬。なんのことか理解していない上に何故千冬がここまで困っているか分からない生徒たちだが、明確に千冬がここまで困る理由があるのだ。現段階で、玲衣が保有している倉持の株は全体の7割程。これが理由だ。

 

「1回真面目に倉持と話し合う必要があるな」

 

「なぁ玲衣。俺専用機受け取って大丈夫なのか?」

 

「安心しろ。そこは問題ない。少し株主集めて企業上層部と開発チームに話があるだけだからな」




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やって来ました白式

今度から更新は基本的に週1更新にしようと思います。で、週1更新と今までとは違うやり方に変更するため、お詫びとして更新日には基本的2話投稿します。今日は1話だけの予定ですけど。

ただ、2本目はかなり時間を置いての投稿になります。当然、リアルでの仕事上書いたら即上げるは無理ですので、予約投稿を使います。前回の更新も2話上げてます。感覚としてはそんな感じです。

理解した方は本編にゴー。読み終わったら感想お願いします。


一夏に専用機が与えられると言われた日の放課後、一夏は千冬と真耶に連れられて、普段はあまり使われない第3アリーナに来ている。専用機「白式」のフィッティングをするためだ。

 

「これが今日からお前の専用機になるわけだが……なんで玲衣がここにいるんだ?」

 

「倉持の株主である以上、予定外に開発された機体の事を知っておく必要がある。と言っても、機密情報に触れるつもりはない。作業が終わるまで待っておくから、終わったら呼んでくれ」

 

「株主も面倒なんだな~。黙っても配当が来るから楽な物だと思ってたんだが」

 

「7割も持ってるからではないでしょうか?大きくなればなるほど、責任は大きくなりますからね」

 

真耶の言うことはもっともだ。そんだけ持ってれば、下手すれば企業の役員よりもトンでも権力を持っていることになる。玲衣に頭を下げている社員や役員を想像すると、少し可哀想に思えてくる。

 

作業を始めたのを確認すると、玲衣はピットから出ていって扉の前で待つ。15分程だろうか。ようやくフィッティングやその他諸々が完了し入って良いと言われた。

 

「これが白式だが、どうだ?」

 

「……まず一夏。お前はどうなんだ?まとってみて何か感じるものはあるか?」

 

「ん~?なんて言ったら良いだろ……少し動きづらい感じはあるけど、手足が伸びた訳だからそれは仕方ないし……強いて言えばすぐに動いてくれない事かな?」

 

「すぐ動かない?」

 

「あぁ……なんかこう、ワンテンポ遅れて動いている様なそんな気が……」

 

それを聞いて、玲衣は頭を抱えてしまった。自国の代表候補生の専用機開発を勝手に凍結し、話題性タップリの男性操縦者の機体を短期間で開発。それが完璧であるならまだ救いようがあるのだが、機体の完成度は中途半端で、もしかしたら欠陥もあるかもしれない。そんな物をよく数少ない男性操縦者に渡せたもんだなと、ある意味尊敬してしまう。

 

「で武装は?その遅れる動きは第一次形態移行が完了すれば改善されるかもしれんが、そんな機体でもまともな武装は付いてんだろ」

 

「それが……」

 

「んあ?」

 

武装の話になった瞬間、千冬と真耶、そして一夏の顔が強張った。そして出された武装は、簡素なブレード1本。流石の玲衣も言葉がでなかった。

 

「……一応聞くが、他のは?」

 

「これ、1本です……」

 

「ふぅ……なんだこのゴミ機体は?」

 

「言いたいことは分かるぞ」

 

ここにいる4人全員が同じことを言いたいと言う顔をしていた。武装が多様化し、打鉄ですらサブマシンガンが基本で付いている。第2世代最後機であるラファールは大量の武装を積む事ができる。第3世代はレーザー等のエネルギー兵器が遠近バランスよく積まれている。

 

白式も分類として、書類上は第3世代となっている。にも関わらずブレード1本とか言うふざけた仕様。呆れるしかない。

 

「この機体の開発チームは、敵の銃弾やレーザーを掻い潜って、懐に潜り込んでゼロ距離で一撃を叩き込んで敵を倒せと言いたいのか?」

 

「こ、コンセプトとしてはそうなんじゃないか?」

 

「そんなことをできるヤツがいるならIS乗りじゃなくて剣豪を名乗って欲しいもんだ」

 

企業が持ってきたデータに目を通しながら愚痴る。それはこの機体の事を知っている人なら誰しも言いたくなることだ。遠距離や中距離での戦闘がメインとなっているこの時代に、これは酷すぎる。

 

「しかもこの機体、防御はIS標準装備のシールドバリアのみだし、射撃用のセンサーリンクシステムも無いってどう言う事だ?」

 

もう、鬼畜仕様過ぎて泣きたくなってくる。確かに現役時代の千冬もブレード1本で戦闘してきたが、それは千冬の類稀なる才能があってこその事で、更にその才能を開花させる適切な訓練があったからだ。

 

男性操縦者と言うイレギュラーにして、どの戦い方が得意なのか、操縦にはどの様な傾向があるのか等、圧倒的な情報不足の一夏に持たせる機体としては、かなり御粗末である。

 

「どうせ、開発陣は千冬の弟だからこれで良いだろうとか考えて作ったんだろ?武装の名前が雪片弐型だし、第一次形態移行してからの単一はどうせ零落白夜だろ?」

 

「その通りだ……」

 

「で?ブレードが1本しかないのに拡張領域全部使ってて、他の装備が後付けできないと?」

 

「その通りだ……」

 

膝を付いて泣いている千冬を尻目に、こんなのに乗らなくてはならない一夏が可哀想になってきた。零落白夜は強力だ。エネルギー兵器が主になってきている今、それらを無効化できる零落白夜は攻撃にも防御にも使える攻防一体の理想的な武器。しかし、使えば使うほど自身のシールドエネルギーをガリガリ削っていく。どう考えても初心者に使える訳がない。

 

「山田先生、整備室の一角を自由に使えるようにしてください。情報漏洩防止の為に、入れるのはここにいる4人のみ。鍵とかは全部俺が作りますので」

 

「何をするつもりで?」

 

「こんなのに乗ってたら、いずれ事故でも起きてコイツ死にますよ。なんで、大幅に改修を加えます。倉持のバカ共にはこっちから話を通しておくので」

 

「分かりました。準備しておきます」

 

「玲衣~!!ありがとうオオオオ!!私が、私がブリュンヒルデなんかになってしまったバッカリに一夏にもお前にも迷惑ばかりかけてるのに、こんなゴミの回収までして一夏を守ってくれるなんて!本当にありがとうオオオオ!!」

 

「抱き付くな離れろ!制服に鼻水が付く!!」

 

玲衣に号泣しながら抱き付く千冬。そんな光景を見ていた真耶の眼が、少し冷たくなった気がしたが、そんなの気にせずに改修案をスマホのメモ機能に書き込んでいく。

 

「なぁ玲衣。一応聞くけど、俺これに乗ってても大丈夫なのか?」

 

「取り敢えずすぐに墜落するような物にはなってないし、代表決定戦までミッチリ訓練すれば戦えるようにはなれる。それでも限度はあるが……仕方ないから訓練にも付き合ってやるよ」

 

「じゃあ、このアリーナはお前たち以外は使えない様にしておくから、頼んだぞ玲衣。それで、どんな感じに白式を改修するんだ?」

 

「取り敢えず、防御装備と飛道具を着ける。同時に射撃用のセンサーリンクシステムもいれて、零落白夜のエネルギー問題も解決させる。拡張領域どうにかしねぇとな~」

 

改修案としては妥当である。1番の問題は拡張領域だが、直せなかったとしてもいくつか代替案がある。つまりどうにでもなると言う事だ。

 

「取り敢えず一夏、今日はISに慣れろ。見ておいてやるから」

 

「分かった」

 

学園の訓練機の同じ場所に保管してもらっているマーク6を取りに行き、そのまま飛んで第3アリーナまで移動した。

 

「しばらくの間、マーク6はここに保管しておくか」

 

「それって大丈夫なのか?誰かに悪戯されたら……」

 

「千冬がしばらくの間俺たち以外に使えなくしたし、そもそも俺以外が使うことができない。どうやって悪戯するって言うんだ?」

 

「落書きとか?」

 

「随分と可愛らしい悪戯だな。油性マジックでも軽く拭けばすぐにインクが落ちるし、ペンキを被っても水ですぐに流せる。悪戯のしようがないだろ。下らない事言ってないで、さっさと訓練始めるぞ。取り敢えず歩行からだ。その次にダッシュ。それが終わったら飛行。何がなんでもISに慣れることを意識しろ」

 

「分かった」

 

玲衣に見守られながら、一夏は歩行していく。体制を崩しそうになると、玲衣が一夏の体制を直し、真っ直ぐ歩くことができるようになるまで続けた。歩くことができるようになると、すぐにダッシュができるようになり、すぐに飛行訓練に入る事ができた。

 

「どうやって飛べば良いんだ?」

 

「さぁな。俺のとは勝手が違うから分からん。まぁ、こう言う場合は大体やり方は決まっている」

 

「ん?ウワッ!?」

 

装甲の一部をつかんでアリーナのシールドギリギリの高さまで飛んでいく。察しのいい人なら、このあと何をするのか分かるだろう。そう。落とすのだ。

 

「ウワァァァァァア!!!」

 

ドンッ!と言う音と共に、アリーナの地面にクレーターができあがった。ISのお陰で痛みはないが、恐怖は相当のものである。

 

「これを繰り返す」

 

「いや無理だろ!こんなんで飛べるようになるかよ!」

 

「翼竜の子供だって親が崖から落として飛び方を教えるんだ。問題はないだろ」

 

「それ、あと何回落ちなきゃいけないんだ?」

 

「落ちたくないなら早く飛べるようになれ」

 

その後も、何度か上空から落とされ続けて、いくつかクレーターを作っていく。30個程のクレーターができあがった辺りで、フラフラとではあるが飛べるようになっていた。スゴい進歩である。

 

「今日はこんくらいで良いな。第一次形態移行も完了したし、もう帰るぞ」

 

こんな感じで1日目は終了。明日からの訓練を想像したのか、一夏の顔は少し青くなっていた。




今日はここまで。次回もお楽しみに!感想や評価、お気に入り登録や活動報告もよろしくお願いします!!


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白式改造計画

改造して全く別な物ができあがると笑えるんですけどね~


白式到着後すぐに行われた玲衣との訓練。特にハードと言うわけでも無いのだが、とてつもなく疲れたと言うのが一夏の感想である。内容が内容故に仕方ないと思う。

 

「あぁ~……疲れた……」

 

「なんだ一夏こんな所にいたのか」

 

「千冬姉……」

 

「どうした?そんなに疲れた顔して」

 

「いや~。飛行訓練がさ……」

 

そう言いながら、玲衣と行った飛行訓練の内容を詳しく千冬に話していった。と言っても、アリーナのシールドギリギリの高度まで運ばれて、そのまま落とされただけで、伝える内容としてはそれ以上はない。

 

「なんだその翼竜の親が子供を飛べるようにするために崖から突き落とす様なやり方は?」

 

「玲衣も似たようなこと言ってたよ」

 

「それで?飛べるようにはなったのか?」

 

「なんとか。まだフラフラだけど」

 

「なら、明日以降も気を引き締めて受けるんだな。アイツの実力はそこが知れない。戦ってみてこれ以上に厄介なのはいないと思えたからな」

 

「うん。分かった」

 

「それとこれ。部屋の鍵だ。急遽決まった為、荷物は私が家から持ってきた。3日分の着替えにパソコン、携帯の充電器、枕とパジャマ、玲衣が作った予備の制服とISスーツにその他諸々。全部部屋に置いてある。1人部屋だから安心しろ。それに私の部屋の隣だ。何かあったらすぐにこい」

 

「よく1人部屋確保できたな」

 

「本来は玲衣と2人の予定だったんだが、白式の整備の為にしばらく整備室で寝泊まりすると言っていてな、限定的だがしばらくは1人だ」

 

寮の部屋まで一夏を誘導し、千冬は仕事へと戻っていった。そしてその時、一夏から白式を預かり整備室まで行っていた玲衣はと言うと。

 

「では、ここの一角を自由に使って良いと許可が出ましたので、ここを使うようにしてください」

 

「どうも。これ鍵です。無くさないようにしてください」

 

壁で仕切られた整備室の角。玲衣の望み通りに真耶が使えるように学園に掛け合ってくれた。自作の鍵を取り付けると、カードキーの様な物を真耶に渡す。

 

「その鍵には1日1回、5桁のパスワードが送られてきます。それを差し込んだあと、ナンバーを入力して、網膜認証と掌紋認証が完了したら入れるので、ここに入るときはそれをやるように。千冬と一夏には別の番号が届くので、共有はしないでください。どれか1つでも一致しなかった場合、容赦なく直径5センチの鉄球が肋骨と喉、顔面目掛けて飛んできます。敢えて時速は教えません。あと時々爆発音が聞こえるかもしれませんが、気にしないようにしてください」

 

「分かりました。他にはなにか?」

 

「特には。それじゃあ」

 

過剰すぎるシステムの説明をすると、玲衣は早速用意された環境に飛び込んでいった。白式をハンガーにかけてパソコンにコードを繋いでいく。千冬から提供されたカタログスペックと実際の物を照らし合わせながら、どの様なカスタムが一夏に適しているのかを模索していく。のだが……

 

「ふぅ……開発チーム一斉解雇の方向で話を進めるか」

 

白式にアクセスして早々に、その方向で玲衣の意思が固まった。同時に株主総会に参加するメンバーにも事の経緯を説明して話を通しておいた。倉持が近々どうなるのか、非常に楽しみである。

 

「せめて数値くらいは誤魔化すなよ……操縦者を殺す気かコイツら」

 

覗いてみて分かったのは1つ。企業から提出されているカタログスペックは誤魔化しの塊であると言うこと。当然だ。専用機とは時間をかけて作る物。本来の期間や過程を無視して無理矢理作ればこうなるのは当たり前だ。

 

「ジャーヴィス。スペックを本来の数値にしてくれ。あとコイツに合ってるカスタムを考えて欲しい。俺のと合わせて、何が最適なのかを考えたい」

 

『かしこまりました。10分ほどで作業が完了します』

 

もはや何もかもが気の毒すぎる。10分経って実際のスペックが出てきたが、防御はカタログスペックの約半分程度で、攻撃も10%ほどダウン。にも関わらずスピードは60%アップ。機動力は倍以上。しかも調整された気配なし。

 

「本当、なんでアイツにこれ渡したんだよ……」

 

この世界でこの機体を完璧に操れる純粋な人間はただ1人。千冬だけだ。転生者共の技量をもってしても、すぐに扱うことは困難を極める。玲衣ですら扱える自信がないくらいだ。

 

「いくつか検証しよう。白式のパススロットを増やすことは?」

 

『不可能です。零落白夜で全て埋まってしまいます。ですが、他の機体とは違いアクセス許可なしでもその他の武装を装備することが可能です』

 

「射撃用のセンサーリンクシステムの搭載は?」

 

『システムの一部として盛り込む事は可能です』

 

「こっちで作った独自のシステムを搭載することは?」

 

『可能です。しかし、現段階では企業がうるさいかと』

 

「そこは後で黙らせる。次に唯一の武器である雪片弐型についてだ。現状での武器としての性能は?」

 

『打鉄で使われている標準的なブレードと比べて、切れ味と言う点では変化ありません。しかし、形状が形状ですので、重量があり破壊力はあります。零落白夜発動時は、相手のエネルギー攻撃やシールドバリアを無効化し機体に直接ダメージを与えることが可能で、やり方によっては防御に転用することも可能です』

 

「シールドエネルギー満タンの状態で零落白夜は何秒使うことができる?」

 

『最大時間使用するには出力を3%に抑える必要があります。その場合は4分です』

 

「最大出力の場合は?」

 

『20秒です』

 

「短いな……雪片弐型にアークリアクターを埋め込む事はできるか?」

 

『可能ですが、その場合大幅な改修が必要になりす』

 

「代表決定戦後の改造だな……白式の動力をアークリアクターに変えることはできるか?」

 

『不可能です。コアと機体は一心同体。白式はISとして完成しています。アークリアクターに変えれば安定はしますが、ISとしての進化はそこで止まります』

 

「つまり第二形態移行はしないと言うことか……それは痛いな」

 

『やはり、ここはISコアを使ったまま一部を改造する方がよろしいかと』

 

「射撃・防御用の追加装備も作らないとな……スペックも調整しねぇと……」

 

『でしたら、ISの訓練は少しお休みですね。調整には2日ほどかかります。その間は彼の基本能力を上げるのがベストかと』

 

「同じ意見だよジャーヴィス。すぐに取り掛かってくれ。アイツの訓練内容は雪片に合わせたものに変えるかな」

 

『剣道場は部活に加入していなくても申請さえすれば誰にでも使える様です。メールで申請しましょうか?』

 

「頼んだよ。追加する武器のイメージを固めたい。良さげな物をいくつか呼び出してくれ。そうだな~…コンパクトで扱いやすいヤツ。威力は……まぁ作ったときに調節すればいいとして、できればケース付きの物が好ましい。弾丸もいくつか出してくれ。破壊力の大きい特殊な形をした物を頼む」

 

『一般的な9m弾と5.56m弾はどうしますか?』

 

「今回はいらない。リボルバーなんかに使われるデカいのを頼む」

 

『かしこまりました』

 

玲衣の指示通り、口径の大きくて特殊な形状をした弾丸と、コンパクトで扱いやすいと言われる銃がいくつかピックアップされる。注文通りの物となると、やはりハンドガンが中心になってくる。

 

「ISに合わせて巨大にするとして……やっぱりリボルバーがいいか」

 

『弾詰まりもせず威力も大きく扱いやすい。ご注文通りの物ではありますが、初心者向けと言えるのでしょうか?』

 

「使えるようにするのが俺の仕事だ。機体にはセンサーリンクシステムと共に反動制御装置も付ければ、反動に負けて仰け反ったりはしないし、引き金を引くだけで的に当てられる。弾道計算とかも全部システムで片付ければ、下手でも問題ない。システムを信用して従えばと言う前提が付くけどな」

 

『その辺りは問題ないでしょう。彼は良い意味でも悪い意味でも素直ですので』

 

「だな」




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訓練その2

ただのチート主人公(笑)は、今後無双することはあるのでしょうか?


「ふぁ~あ……眠い……」

 

「あ、玲衣。白式はどうしたんだ?」

 

「調整に2日かかる。昨日は結局徹夜だったし、カタログスペックは出鱈目だったし、どう考えてもお前に扱える物じゃないしで、ISを使った訓練は危険と判断してその間は使えない」

 

「ごめん……本当ごめん……」

 

「謝ってる暇があるならさっさと授業の準備をしろ。あと1分で開始だ」

 

その直後、千冬と真耶が教室に入り授業が開始。特にISを使ったような実技等はなく、座学が中心の授業が行われていった。

 

「おい千冬」

 

「織斑先生だ。ってお前に言っても無駄か。なんか用か?一夏の訓練はどうした?」

 

「これから開始。それよりこれ。白式の正式なカタログスペックだ。今は一夏に合わせて調整中。初期状態の純粋なスペックを書いている」

 

「……なんか企業から提出されてたのと大分違う様な気がするんだが?」

 

「実際違ったからな。あと、授業は休ませてもらうぞ。早く調整を終わらせて、追加装備を作らないといけないんでな。おまけに一夏の訓練付き……過労死するわ」

 

「あぁ~……うん、すまん。まぁその、頼んだぞ。あとこれ。剣道場の使用許可書。剣道部の部長に出せば使えるから」

 

「はいはい」

 

千冬から許可書を貰うと、一夏がいる教室まで戻り、運動着の入った袋とガムテープ、一夏を持って剣道場まで歩いていった。

 

「ちょっと玲衣?!俺歩けるんだけど!?」

 

「お前とチンタラ歩くつもりはないんだよ。黙って担がれてろ」

 

一夏と袋を担いだまま剣道場へ突入。そのまま部長に許可書を出して使う許可を貰った。少し引かれたが、問題なく通してもらい、ついでに竹刀を数本も借りた。

 

「今日はここで何を?」

 

「お前のISは、悲しいことに今のところブレードしか武装がない。つまり、無理でも接近戦を鍛える必要がある。それでここと言う訳だ」

 

「なるほど……」

 

「今の内から気を張っておけ。練習前から怪我をすることになるぞ」

 

「は?ウオッ!?」

 

突然襟を引っ張られて玲衣に引き寄せられた。するとその直後、一夏の立っていた場所にとんでもない勢いで木刀が叩きつけられた。

 

「学園内で殺人事件を起こすつもりか?篠ノ之箒」

 

「黙れ。おい一夏、何故ここにいる?貴様のような軟弱者がいて良い場所ではないんだぞ!」

 

「べ、別に関係ないだろ?ここに来たのはISで戦うための練習で―」

 

「お前程度が一体何ができると?弱く才能もなく練習しても一向に上達しない。千冬さんの面汚しのお前が、強くなれるとても?」

 

「それはッ……!」

 

昔同じ道場にいたからか、一夏は反論できなかった。確かに、一夏は千冬ほど強くない。武の才能があるかと言われれば皆無だろう。だが、だからと言って、努力をしようとする一夏を否定する事が許される筈もない。会話を聞いていた全員がそう思っている。当然玲衣もだ。故に少し突っついてみることにした。

 

「ハッ。爆豪を訓練に誘ったけど振られたからって一夏に八つ当りすんなよ」

 

「なんだと?」

 

「おい玲衣!やめとけって!怪我するぞ!?」

 

「一夏。お前黙ってろ。ジャージにでも着替えとけ」

 

鎌を掛けるつもりで爆豪の名前を出したのだが、反応を見るからに事実だったようだ。それを面白いと思ったのか、更にそこを刺激する。

 

「おいおい。事実を言われたからって怒るのか?武道を嗜む人間がそんなんで良いのか?あぁ~、中途半端な事しかできないから良いのか。そう言や、さっきも一夏に木刀振り下ろした時、体の軸がブレッブレだったからな~。と言うか、防具も何も着けてないヤツに、木刀をしかも背後から振り下ろすヤツの方が、ここに居る資格はないんじゃないのか?」

 

「貴様ァァァァア!!!」

 

木刀を構えながら玲衣に突っ込み、全力で木刀を振るう。篠ノ之は腐っても全国大会優勝者。実力と言う点ではここに居る剣道部員の中でもかなりの物を持っているとも言える。更に体格にも恵まれており、一夏と並べると篠ノ之の方が大きい様にも見えるくらいだ。

 

そんな人が全力で木刀で攻撃を入れようとするさまは、直視できる様な物ではないし、止められそうもない。何度も木刀が床や壁に叩き付けられる音が響いている。

 

「避けるな!卑怯だぞ!」

 

「卑怯で結構。と言うか、避けられる程度の攻撃しかできないお前が悪い」

 

「なんだとォォォオ!!!」

 

「俺も暇じゃないんだ。さっさと黙れ」

 

誰にも気付かれないように万華鏡写輪眼を久し振りに発動。体の動きを一瞬止めてから全力で殴り飛ばした。かなりの勢いで飛んでいった為、4メートル先の壁に激突して気を失った。

 

(ヤベッ。月読も一緒にかけちまった……まぁすぐに解いたから良いか)

 

月読はイタチの使っていた幻術で、幻術世界の時間を自由に操る事ができる。玲衣は一々調節するのが面倒なため、現実世界の100倍と時間を固定している。術発動後2分で解除。つまり200分程むこうで苦しむと言うことだ。目が覚めてもしばらくは辛いだろう。

 

「お~い剣道部の人~。これ片付けてくれ」

 

固まっていた剣道部員達に声をかけて、気絶している邪魔物を持っていって貰った。ついでに言うとまだ着替えていなかった一夏だったが、見かねた玲衣がその場で一夏こ制服をひん剥いてジャージを着せた。当然周りの目があるため、一夏は恥ずかしそうにしていたが、そんなの玲衣には関係ない。周りの女子共が獲物を狙うような獣の目をしていたことも関係ない。

 

「お~し。さっさと始めるぞ」

 

そう言いながら、持ってきたガムテープで50センチ四方の正方形を作ってその中に入った。

 

「安直なやり方だが、お前が今からやることは1つ。この正方形から俺を出すことだ」

 

「いや……さっきの見てたから言うが、無理だと思うぞ」

 

「無理でもなんでもやれ。少しは坂道を上りやがれ。壁はその後に越えろ。まぁ全身を出せって言うのは無理だろうから、片足だけで良いぞ。あ、俺も反撃するからな」

 

最後の最後で難易度を上げやがった。とは言え、一夏にも向上心はある。目の前にいる玲衣には確実に勝てないが、少しでも近付きたい気持ちはあるのだ。そのチャンスが今だ。それを捨ててしまう程、一夏は愚かではない。竹刀を構えて踏み出し、玲衣に竹刀を当てようとする。

 

「……軽いな。フッ!」

 

「グハッ!……蹴飛ばすなんてアリかよ……!」

 

「誰も剣道やるなんて言ってねぇだろ」

 

その通り。玲衣は剣道場には来たが、剣道をやるとは一言も言っていなかった。つまりは剣道のルール何て言うものは一切通用しない。剣道場でやる。竹刀を使う。この2つから、一夏は勝手に剣道のルールが通用すると思い込んでいたのだ。

 

「良いか?今はルールなんて物は存在しない。強いて言うなら、お前はやれること全部やって、俺をこの正方形の中から外に出す。ただそれだけだ」

 

それが、この訓練に存在するたった1つのルールと言える物なのかもしれない。

 

「幸いにも竹刀は何本もある。長いのも短いのもな。何本へし折っても構わないぞ」

 

「ちょっと佐倉くん!?それは剣道部としては困るんだけど!」

 

「へし折った分は弁償する。それくらいの財力はあるからな」

 

そう言って、懐から通帳を取り出して最新のページを開いて部長に見せた。勿論、そのまま倒れたのは言うまでもない。

 

「さて、不安要素は消え失せた。続けるぞ」

 

立ち上がった一夏は再び竹刀を構える。周りには無数の竹刀が転がっている。それらに目を配らせてそれぞれの位置を確認した。

 

「行くぞ。玲衣!!」

 

竹刀を大上段に構えながら突っ込んでいく。全力でそれを振り下ろすが、当然それは玲衣に掠りもしない。直線的な攻撃は全部受け止められるか避けられるかで、その度に一夏は投げ飛ばされたり蹴飛ばされたりしている。

 

「どうした?良い案でも思い付いたんじゃなかったのか?それとも考え無しに突っ込んで来たのか?」

 

「だったら何だよ……!」

 

「賢いヤツかと思ってたんだが……期待はずれだッ!」

 

持っていた竹刀を一夏目掛けて投げ飛ばした。それは頬を掠めて壁に激突して砕け散った。

 

「予想通りに投げ飛ばしてくれてありがとう!」

 

「ッ!?」

 

玲衣が竹刀を投げ飛ばした直後、全力で走って竹刀を1本拾い上げて2本で攻撃する。竹刀が無くなったことで防御に余裕が無くなったのか、少しだけ動きが鈍くなった。

 

「成る程。これを狙ってたって訳か……だが、点数を付けるならッ!」

 

「ガハッ!!」

 

「39点だな。ギリギリ赤点だぞ」

 

「……それはどうかな?」

 

「あ?ッ!?」

 

仰向けに倒れ込んでいる一夏だったが、それでも何かを見ていた。その目線に合わせて上を見てみると、竹刀が何本が降ってきてた。

 

「チッ!」

 

腰のホルスターからリボルバータイプのコイルガンを取り出し、降ってきている竹刀に当てて軌道をずらす。だがそれだけでは終わらなかった。一夏は短い竹刀を手に取り、刺突をする構えで玲衣に飛び掛かった。それに気付いた玲衣は、一夏が自分に向けている竹刀の先端に照準を合わせて発砲。竹刀はパーツごとにバラけていく。

 

「オラッ!」

 

だがそれがちょうど良い目眩ましになってくれた。玲衣の視界を狭めてくれた竹刀を離し、渾身の体当たりをする。

 

「43点。及第点だ」

 

そんな一夏を足場にして上に飛んで回避。惜しいところまで行ったが、玲衣を正方形の中から出すことはできなかった。

 

「はぁ。危なかっ―ッ!?」

 

後ろに倒れている一夏に振り向くと、眼前に竹刀が飛んできていた。最後の攻撃すらも目眩ましに使ったと言うことだ。コイルガンを使うには距離が足りない。手を入れて防ぐ事もできない。結果、玲衣は後ろに倒れ込む様にして避けた。

 

「なぁ。正方形の中から上半身が出てるけど、それもOKか?」

 

「……勿論だ。よくやったな」

 

「点数は?」

 

「50点」

 

「よしっ!」

 

倒れて避けるしかない。そんな状況を一夏は玲衣相手に作り上げてしまった。ダメージを受けているのは一夏の方だが、玲衣から出された課題をクリアしたと言うことは大きい。

 

「はぁ……まさか今日の訓練で達成されるとはな。意外とやるなコイツ」

 

使ったものを片付けると、満足そうな顔をして眠っている一夏を担ぎ上げ、竹刀の代金は弁償する事を伝えてから剣道場を出ていった。

 

「訓練の内容を少し進めるか」




はいは~い。今回はここまでですよ~。次回もお楽しみに!感想や評価、お気に入り登録もよろしくお願いします!!


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VS副担任

もう読んでる人分かってるでしょ?あの人も転生者だって。


玲衣と一夏が剣道場で訓練をしていた頃、学園の裏側にある喫煙所に似合わない人物が立っていた。

 

「真耶、こんなところに居たのか」

 

「あ、織斑先生。お疲れ様です」

 

真耶がタバコを吹かしていた。完全に補導されてもおかしくない見た目だ。しかし、本人は手慣れた様子で吸っていた。

 

「織斑先生もタバコですか?」

 

「いや私は吸わないぞ。タイムカード押し忘れの報告と、学年主任が頼んでいた書類の進捗具合を聞きたいと言っていた」

 

「あぁ~。そう言えばそんなのありましたね。まだ期日まで余裕がありますし、ちゃんと進めてるので問題ありません」

 

「そうか。ではそう伝えておくよ。邪魔したな」

 

「いえいえ。あ、そうだ。織斑先生」

 

「ん?どうした?」

 

用事が済んだため帰ろうとした千冬を、何かを思い出したかのように真耶が呼び止めた。

 

「今夜空いてますか?」

 

「…………ふぁ?」

 

少しの間の後、千冬の人生史上もっとも間抜けな返事が出てきた。

 

「そ、それは~、どう言う意味で?」

 

「決まってるじゃないですか」

 

そう言うと、千冬の近くまで歩いていって、吸っていたタバコの煙を千冬の顔目掛けて吹いた。

 

「こう言うことです」

 

「な、なっ///!?」

 

「じゃ、2人分の食事とお酒。用意しておきますね~」

 

「ま、待て!君は遊女じゃないだろ!」

 

「意味を知ってるなら十分ですよ。その反応して来ないってなったら、ちょっとショックですけどね~」

 

「グッ!……き、君は私の事をそう言う目で?」

 

「えぇ。初めてお会いしたときからずっと」

 

「私たちが出会ったのはこの学園じゃないか!それに教師としてだし……」

 

「あぁ~、やっぱり忘れてたんですね。私たち、中学生の時に一度会ってますよ。織斑先生が家にお祓いに来たときに。まぁ、忘れてても仕方がないですけどね。私もこの学園で会うまで、その事を忘れてましたし。会ってようやく完全に思い出したって感じです」

 

「そ、そうなのか……」

 

「まぁ、今晩思い出させてあげますよ」

 

「あ、明日だって授業があるんだぞ!」

 

「ちゃんと寝かせますから安心してください。週末は分かりませんけどね」

 

それを伝えると、タバコの火を消してどこかへと向かっていった。千冬は頭から湯気を出し、顔が茹でダコみたいな状態になりながら地面にヘタっている。しばらくは起き上がれそうにない。

 

「そろそろ出てきたらどうですか?盗み見なんて趣味が悪い」

 

「驚いたな。気配を消してるのに隠れてることに気付くとは」

 

喫煙所から離れてしばらく歩き、人気のない所まで態々やって来た真耶は、自身の背後にある大きな木に目を向けながらそう言った。すると、その影から玲衣が現れた。

 

「佐倉くんでしたか。てっきり他の人かと思ってましたが、1番意外なのが出てきましたね。私の事をマークしていたんですか?」

 

「あぁ。その通りだ。アンタは俺たちと同じ転生者で、この世界の住人じゃない。だが、俺は山田真耶と言う登場人物を知っている。だから、最初は過去に転生者の誰かが何かをやらかして、アンタの性格が変わったのかと思ってた。さっきのあれを見るまではな」

 

「織斑先生を誘ったのを見て何故確信に?最初からそうだった。と言う可能性もあったのに」

 

「今日だけのじゃ判断できなかったよ。だが、アンタが千冬に対して特別な感情を持っていたのは知っていた。初日からやたらと千冬と一緒に行動してたからな。同じクラスの教師だからと言っても、少し多すぎる。極め付きは一夏の専用機が届いた時だ。千冬が俺に泣き付いた時、アンタ、一瞬だけど殺気を出したよな?」

 

「成る程。で?私が転生者だと確信したのは?」

 

確かに。玲衣の言っていることは真耶が千冬に対して特別な感情を持っていると言う事のみ。状況証拠にはなるが、確たる証拠にはならない。

 

「左手の手袋はどうした?四六時中着けてたのに今は着けてないのか?考えられる可能性は2つ。1つは実は隠す必要の無い物だったから。だがそれはあり得ない。今日までずっと着けてたのがその証拠だ。なら、必然的に俺が考えた2つ目になる」

 

「ほう。聞かせて貰いましょうか」

 

「2つ目の可能性は、今のお前は本体じゃないと言うことだ。千冬は騙せた様だが、俺は騙せないぞ。この眼を通してみれば、アンタが本体じゃない事ぐらいすぐに分かる」

 

写輪眼を通して見る世界は、様々な物が透けて見える。故にどこに隠れているかもすぐに分かってしまうのだ。無機物は半透明になり、人はエネルギーの塊の様に見える。だが、目の前の真耶は本来の人の見え方とは大分異なって見えているのだ。

 

「悪いが、分身と話すつもりはない。本体に出てきて貰うぞ!」

 

一瞬にして真耶との間合いを詰めて、雷切をかました。一切避けるような素振りをせずに、それを受けたのだが、やはり分身の為か当てたと言う手応えがない。すぐに写輪眼を使って辺りを探そうとするが、突然玲衣の動きが止まった。

 

(な、なんだ!?か、体から、魂が引き抜かれる!?)

 

突然動きが止まったかと思うと、今度は自分の肉体から魂が徐々に外へと引っ張られてる感覚に襲われた。ただの錯覚かとも思ったが、そうでもない。実際に上半身が体から飛び出て、自分を見下ろしていたからだ。

 

(不味い……!グッ!)

 

「ッ!?スゴいですね。幽体摘出を自力で抜け出すなんて」

 

「はぁ、はぁ、成る程。それの左手がお前の特典か……ドエラい物が来たな……」

 

玲衣が見た真耶の左手。それはおおよそ人間の物とは思えない物だった。

 

「知ってるぜ。その左手……確か、鬼の手だったか?随分と懐かしいのを持ってきてくれたな~」

 

「別に欲しくて持ってる訳じゃないですよ。ようやくあのふざけた一族から解放されたと思ったのに、この世界でも似たような所に生まれてしまいましたし」

 

「俺を見付けられたのは、その左手のお陰か?」

 

「いいえ。私は前世でも今も霊能力者の家系に生まれまた。貴方を見付けられたのは、力が大きすぎてすぐに感知できるからです。どんなに消していてもね」

 

流石の玲衣も霊能力相手ではかなり厳しい。しかもその辺に転がってる霊能力ではなく鬼の手。特典と言うことはそれを上手い具合に操れる術もあると言うことになる。鬼相手にどこまでやれるかも分からない上に、真耶自身の実力も不明。持っている手札の数で言えば、真耶の方がかなり有利だ。

 

(チマチマやるより、さっさと決めた方が良さそうだな)

 

再び右腕に雷を纏わせて真耶に突っ込んでいく。手加減をせずに全力でだ。スピードもさっきの分身に放ったのとはまるで比べ物にならない。しかし、真耶はそれを見切っていた。

 

「ッ!?グッ!」

 

ギリギリで避けたつもりだが、見事にカウンターを貰ってしまった。本来、鬼の手はこの世の物ではない。故に肉体に大きなダメージを与えることはほとんど無い。妖怪や幽霊ではない純粋な人間なら尚更だ。にも関わらず、脇腹の辺りがグサリと行っている。

 

「……成る程。避けても無駄な訳だな」

 

「まさか。本当はもっと深く刺さるはずでしたから。無駄ではありませんよ」

 

真耶の左手は、刀の様な物に変わっていた。紙一重で避けても傷が付く筈だ。

 

「これ、結構集中力使うんですよね~。それに本来は妖怪や幽霊に効果を発揮するもの。生身の人間には大きなダメージ与えられないんですよ。私が使うと」

 

「これで言ってるんなら、大分良い性格してるな。それに攻撃してるのは俺の肉体じゃないだろ」

 

「よく分かりましたね~。大正解です。幽体と一緒に斬らせて貰いました。治るのには時間がかかりますよ」

 

そう。真耶が攻撃したのは肉体ではなくその中にある幽体。普通に付いた傷と違って、治るのにはそれなりに時間がかかりそうだ。

 

「邪魔をしてこなければこんなことしなくても良かったんですけど、これ以上邪魔な存在になる前に消しておいた方が良さそうですね。貴方は他の転生者よりも強そうですから」

 

「悪いが俺は消される訳には行かないんだ。女神の協力者として、織斑姉弟を守る義務があるからな。お前に消えてもらう!」

 

写輪眼を万華鏡に変えて瞬身の術で真耶に接近。それを見て鬼の手を鞭の様な形にして玲衣に振るうが、神威でそれを回避。後ろを取って終わらせようとしたが、真耶が雷切を受けた直後にまた動けなくなってしまった。

 

「何故だ……これがお前の本体の筈……!?」

 

「陽身の術です。自身の霊力を練り上げて分身を作る奥義の1つ。貴方が最初に斬った分身は、私の全霊力の内20%ほど。日常生活に支障はありませんが、戦うことには向いていません。そしてついさっき倒した分身は残り霊力統べてを作りました。なので、戦闘でも高い実力を発揮してくれます」

 

「陽身の術は、使えば霊能力が使えなくなる筈……なのに何故術が使えるんだ?」

 

「決まってるじゃないですか。私がとびきり優秀な霊能力者だからですよ。修行を積んで陽身の術中にも使えるようになったんです。それよりも、もう止めませんか?私たち、争う意味が無いみたいなので」

 

確かに、真耶は別にこの世界をどうこうするとは言っていないし、何だかんだで千冬が好きだからあんなことをしていただけ。害がある存在ではないようだ。

 

「前世も今回も、一族がいたんじゃ幸せにはなれそうに無いので、ここで教師をやってるんです。織斑先生とは特別な関係になりたいですが、この世界が欲しいとは思ってませんよ」

 

玲衣の幽体をつかんでいた鬼の手を離し、手袋をはめて封印。玲衣もそれを聞いて納得したのか、戦闘体制を解除した。

 

「なら俺は特になにもしない。だが、妙な動きをしたら容赦なく斬るぞ」

 

「構いませんよ。織斑先生意外に興味は無いので起こすつもりも無いですけど」

 

「そうかよ。まぁアンタとは戦いたくないから、そうしてくれるとありがたいよ」




誰これ?

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白式version2.0

ウルトラマンZが始まりましたね。今回もボイスドラマアリですから、楽しみが尽きそうにないです。見た感想は、Zは取り合えず知能が残念そうだなと。駄女神アクアと良い勝負してるかもしれません。そう思えるくらいでした。だってボイスドラマでゼロに弟子入りしようとして持ち上げてたのに、然り気無くディスってますからね。しかも悪意なしに無意識で。

日本語に関してはまぁ、今までのウルトラマン達が流暢過ぎたのかな?と。あとセブンガー可愛かった。


真耶と一戦交えた後、玲衣は整備室に籠りっぱなしになり授業に出ていない。これは事前に千冬に言っていた為、特に問題視はされていなかった。理由は極々一部の人間しか知らないわけだが……。

 

「スペックはこんなもんで良いか……ところで、なんでここに居るんだ?授業の準備はどうした?」

 

「いや。次の時間は私の受持ちじゃないので。それに今日は私の担当は全部終わりましたから。仕事も全部片付けてますし」

 

「なら職員室で時間潰してろよ」

 

この日は真耶も一緒に整備室にいた。教師がこんなことで良いのかとも思うが、仕事が全て終わっているなら文句を言う輩もいないだろう。原作なら仕事押し付けられキャラだったが、中身が違うぶんそんなことは無いようだ。

 

「なぁ、アンタの前世ってどんなんだったんだ?」

 

「急にどうしたんですか?」

 

「霊能力者の家系って言ってたから気になったんだよ。今回も霊能力者一族ってのはあのアホ女神の悪巫山戯だろうが、前世はそうじゃない訳だ。気になって当然だろ」

 

「成る程。まぁ別に話しても良いですよ。前世の一族は滅びましたけど」

 

「は?」

 

「私が滅ぼしたんですよ。言ってはなんですが、かなり古い由緒ある家系なんでよね。だからと言うべきか、血と言う物を何よりも重んずる風習がありました。ですが時代が変わり、そんな考えでは一族は途絶えてしまう。力が弱くなろうとも一族の存続を考えるなら血の拘りを捨てようと言う派閥と、何がなんでも血を守る派閥に別れていました」

 

「また面倒な物に別れやがったな。まぁ後者は大体、頭の固い化石みたいな連中なんだろ?」

 

「えぇ。その通りです。私の曾祖母達の代は、何がなんでも血を守りたいと考える連中で、私のような若い世代にもそれを強制しました。色々と理由をつけてね。権力を持っているぶん、そっち側についているのも沢山いましたよ。本当、ろくな連中じゃないですよ。前者の派閥も問題は色々とありましたけどね」

 

代を重ねれば重ねるほど出てくる典型的な派閥争い。タイミング的に、真耶はその真っ只中にいたのだろう。

 

「まぁ私はどっちにもつかなかったんですけどね。滅ぶなら勝手に滅べ。人の人生を決めるなと。そう考えていました。なので私は、両者が用意した見合い相手と会うこともなく、普通に学校に通って友達と遊んだり、恋人を作っていました」

 

「家のことそっちのけで充実した生活送ってたのかよ」

 

「仕方無いじゃないですか。そもそも、私の家系の始まりは、見返りを求めず善意の気持ちで悪霊退治や妖怪退治をしてきたんです。しかし、時代の移り変わりと共に、そんな気持ちを持つ者は減っていき、最終的には金儲けしか考えなくなったんですよ。仕事の依頼が来なくなれば適当に選んだ人を呪いにかけて自分達の所に来るように誘導したり、除霊する振りをしてなにもしなかったり、定期的に通わせたり何て言うのもしょっちゅうです。その上で法外とも言える金を巻き上げてるんですから、滅んでも仕方無いですよ」

 

「ふ~ん。ん?じゃ何で派閥争いなんて始まるんだよ。その状態じゃ派閥もクソも無いだろ」

 

玲衣の言う通り、金儲けと言う共通の目的がある以上、派閥争いなんて起きる筈がない。

 

「金儲けに眼が眩んでるんですよ。両者共にね。私が生まれる頃には、強い霊力を持った霊能力者なんてほとんどいませんでしたからね。全員一般人と同じ程度に成り下がりましたよ。なので、範囲を拡大して広く浅く稼ぐ方と、名と血を守りつつ狭く深く稼ぐ。血だの一族だの言えば聞こえは良いですが、実際はそんなもんです。そんな中で強すぎる力を持って生まれたのが私なんですけど、正直家のことには興味なかったので、関わるつもりはありませんでした。あのアホ共が馬鹿なことをしでかすまでは」

 

急に声のトーンが下がった。恐らく、自身が一族を滅ぼすに至った理由が出てくるからだろう。一族皆殺しともなれば、強い憎しみなんかが出てくる筈だ。それが明かされるのかもしれない。

 

「私が大学生活を送っていたある時、血を守ろうとする老害共の派閥が、私の高校時代からの恋人に強力な呪いをかけてくれたんですよね。強力と言えども、私なら簡単にそれを解除できたのですが、彼は掛かってからと言うもの、私の前に姿を現さない様になってしまったんです。なので、気付くのが遅れて手遅れになりました。恋人だったと言うこともあって葬儀に参加したんですけど、帰ったら何故か一族全員がその事を知っていて、疑問に思ったので彼に掛けられた呪いの痕跡から私の霊力を送って呪いを逆流させてみたんです。呪いが成就した後ですので、掛けた連中に逆流させても死ぬことは無いんですけど、苦しめる位はできます。それで犯人を割り出そうと……」

 

「えらく強引なやり方だな……」

 

「犯人割り出すにはそれしか無かったんですよ。むしろまだ優しいやり方です。本来なら妖力と妖術、霊力の全てを使って無理矢理吐かせてましたよ。ただそれやると犯人判明前に4、5人は確実に殺すことになるので、より正確で確実な方法を取ったんです。ただ、呪いを逆流させた結果、一族全員が関わっている事が判明しました。理由は、力の強い私が一族と仕事の事にのみ目を向けさせ、他の事は考えさせない様にするためと。流石の私も憎しみが抑えられず、使える術全てを使って一族を始末して死にました。呪い殺したのですから当たり前ですね」

 

人を呪わば穴二つ。これは言葉通り他人を呪い殺すなら相手の墓穴と自分の墓穴の2つを掘れと言うこと。その呪いが自分にも帰ってくるからだ。

 

「こうして、私たち一族は全員めでたく地獄に落ちた訳ですが、それでも気が晴れなかったんです。と言うのも、彼に掛けられた呪いは死後も苦しめ続けると言うものだったからです。あのアホ共、使う術の内容を忘れてたとかほざいてましたけど、そんなの私には関係ありません。なので、地獄に落ちても私が一族全員を苦しめ続けてやろうとしてたんですけど、そこで女神に回収されましてね。彼に掛けられた呪いを私が解くことを条件に、向こうの頼みを聞くことにしたんです」

 

「あのクソ女神。俺には一方的に協力させておいて……今度ぶっ飛ばそう」

 

真耶の場合は自分の望みを叶えた上でだが、自分はほとんど一方的に手伝わされているだけ。そんな状態に殺意を覚えながらも、作業を進めていく玲衣であった。

 

「こっちに来てからはどうなんだ?また霊能力一族なんだろ?」

 

「えぇ。この人に憑依転生するから特典はいらないと言ったんですが、じゃあくじ引きで決めてくれと言われたのでくじを引いたんです。そしたら今持ってる物が出てきちゃって。それを適当なタイミングで渡すと言われたんですよ。そしたらまた生まれが霊能力一族でした。なので、前回の反省を踏まえて、一族の最大権力者を力で死なない程度に捩じ伏せて、文句を言ってかかってきたのに全員まとめて強力な悪霊を憑けて黙らせました。除霊は私にしかできないレベルの物ですし、圧倒的な力を見せれば歯向かうのはいなくなると思いましてね」

 

「生まれながらの霊力と特典の霊力使うとか……一族にトラウマでも覚えさせたいのか?」

 

「それ位しないと前回の二の舞いですからね。必要な手段ですよ。結果として、私にたいして口を出す者はいなくなりました。充実した生活を送ってましたよ」

 

「じゃあその左手はなんだよ」

 

「これは一族のアホ共が、私に痛い目を見せるために地獄の深いところから呼び出した鬼でして、それが取り憑いたのが中学時代の千冬さんです。無事に祓う事はできたんですけど、力が強すぎて強すぎて。地獄に戻すのも惜しいなと思ったんです。なら、いっその事自分に封印して使役してしまおう。丁度左手は戦ったときに吹っ飛んだし。と考えました」

 

「まてまてまて。何でそんな結論に至ったよ?」

 

「ただでさえ強大な私の霊力に、鬼の妖力が合わされば、もう誰も手を出そうなんて考えませんからね。左手を義手にするのも癪でしたので」

 

「よく中にいる鬼がそれを承諾したな……」

 

「最初は私の霊力で無理矢理押さえつけて、その上から封印術を掛けてましたが、色々と話していく内にお互いに納得して今では力を借りたり貸したりと、共存しています」

 

「そりゃスゲーな。たった1人で鬼とそんな関係になるとは」

 

この鬼の手が登場する作品「地獄先生ぬ~べ~」では、最初から主人公ぬ~べ~1人が鬼の力を制御した訳ではない。恩師である霊能力教師が、鬼の内側から力を抑えてくれていたお陰だ。そしてその上からぬ~べ~の霊力と白衣観音の力で封印していた。最終的には鬼と和解して1人で鬼の力を制御できるようになれた。ジャンプ主人公ですら長い時間を経て漸く制御した物を、たった1人で扱っている辺り、本当に滅茶苦茶である。

 

「白式、どうですか?」

 

「名称を白式version2.0として、一夏でも扱えるスペックにした。追加武装や現行装備の改造は時間的に不可能だから、それは決定戦後にやる」

 

「あ、それで思い出した。織斑くんの稽古は?」

 

「分身に行かせてる。同時進行で進めないと間に合いそうに無いからな」

 

今日で3日目。期限まであと4日。機体のスペックを底上げするか一夏の実力を底上げするか、悩ましいところであるが、装備の開発なんて4日でできる訳がない。更に言えば打っ付け本番で扱える訳がない。そんな事ができるのはガチガチにバトルで固められたバトル漫画の主人公位だ。

 

(どう考えてもアイツはそんな感じじゃねぇからな~。地道に練習させて漸くって感じだもんな~)

 

絶賛剣道場で分身に接近戦を鍛えられている一夏を想像しながら、そんなことを考えていた。千冬の様に1を見て1000を知ると言うタイプではなく、1を見て1を知るタイプ。もっと言えば、反復して漸く1を知ると言っても良い。

 

「明日からはISでの訓練再開だな」

 

「漸くですか。何か手伝いましょうか?」

 

「それは丁度良い。人手が欲しかったんだ。ラファールに大量の武装を付けて来てくれ」

 

「分かりました。ではまた明日」




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7時間後にもう1話出します


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白式version2.0起動

2本目で~すよ~


「じゃあ訓練始めるぞ。久し振りの白式はどうだ?」

 

「うん。前より動きやすいよ。この前よりも体に馴染む感じがあるよ」

 

「それは良かった。さて、今日お前がする事はただ1つ。俺たちの攻撃からひたすら逃げろ」

 

第3アリーナに一夏、玲衣、真耶の3人がいた。一夏の反応を見るからに、白式の調整はうまく行ったようだ。そんなこんなで今日出された訓練内容は逃げろ。どう言う事だと首を傾げているが、すぐに理解する事になる。

 

「ウワァァァァァア!!!」

 

「ほらほら。気合い入れて逃げねぇと当たるぞ」

 

「イヤ無理があるだろこれぇぇぇえ!!!」

 

上空から玲衣と真耶が一夏を全力で攻撃していた。主にミサイルを使った爆撃だ。一夏はそれから死ぬ気で逃げ回っている。

 

「これ本当に意味かあるんですか?」

 

「取り合えず、逃げる事を覚えれば死ぬことは無いだろ。考えもなしに突っ込む事も無くなると思うぞ」

 

そう言いながら、リパルサー・レイも撃ち込んでいく。ミサイルほど範囲のある攻撃はできないが、ミサイルよりも速く、威力も高い。それが連射されていく。

 

「どうしろって言うんだよこんなの!!」

 

「避けろ避けろ。使える物全部使って逃げろ」

 

「無茶言うなァァァア!!!」

 

そんな一夏を無視して、2人はドカドカ攻撃していく。一夏がダウンするのも時間の問題だろう。こんな無謀とも言える訓練だが、実は凌ぎかたはある。零落白夜を使えば、リパルサー・レイを完全に無効化することができる。エネルギー攻撃だからだ。通常のミサイルは雷管を刺激せずに破壊し、リパルサー・レイは零落白夜で切り裂く。このやり方なら自身へのダメージはほとんどない。

 

と言っても、それが一夏にできるかどうかは別だ。千冬なら兎も角、今の一夏には無理だろう。しかし、完全でなくとも攻撃無効化くらいは今の一夏でもできる。大量のミサイルと言う状況に混乱して、それができなくなっているだけだ。

 

「そろそろミサイル無くなってきたし、全力でやってみるか」

 

「では私は上から援護しますね」

 

「援護とはいったい?」

 

真耶は一夏の行動範囲を狭めるように攻撃をして、動きが鈍くなった一夏を玲衣が正面から殴り飛ばす。吹っ飛んでいった先を真耶が重点的に攻撃する。そんな作業を繰り返していた。

 

「ちっとは反撃してみろ」

 

「グハッ!に、逃げろって言ったのお前だろ!」

 

「抵抗するなとは一言も言ってないぞ?」

 

「は?」

 

「少しは考えろ」

 

拳骨を落として地面に叩き落とした。そのまま真っ逆さまに墜落していき地面に激突。一応立ち上がりはしたが、もう無理だろう。

 

「ま、初めてにしては粘ったかな?」

 

リパルサー・レイを叩き込んで終わろうとしたが、最後の最後で漸く気付いたのか、零落白夜を発動して玲衣のリパルサー・レイを切り裂いて見せた。

 

「よし!斬れた!」

 

「あぁ、良かったな。あれを忘れてなければ、だけど」

 

「へ?」

 

上空に待機していた真耶が、グレネードをありったけ撃ち込んできた。当然、リパルサー・レイを斬ったと言うことに意識が向いていた一夏はそれに反応できず、全弾食らってシールドエネルギーがゼロになった。

 

「性能は問題なし。零落白夜発動してもエネルギーを過剰に消費することは無かったから、改造は成功だな。後はお前の技術次第だぞ」

 

「は、はい……」

 

「じゃあクレーター直して帰るぞ。邪魔だからどけ」

 

一夏を真耶に持たせてピット内部に運ばせる。入ったのを確認すると、残ったミサイルを全てデコボコになった地面に撃ち込んでいく。衝突した衝撃で破裂するタイプの物でなく、時間で破裂するタイプの物の様で、地面に突き刺さっている。

 

「シュールな光景ですね~」

 

「一々掘り返して埋めるより、全体を解してしまった方が速いからな。そろそろ爆発だ間違って物を落とすような真似はするなよ」

 

「アハハハハ!そんなドジするわけ無いじゃないですか~」

 

「そう言いながら既に一夏を落としてるぞ~。シールドエネルギー無いから飛べないな」

 

爆発直前に落とされた一夏を回収して、ピットの床に放り投げる。その直後、突き刺さったミサイル全てが破裂。綺麗にとは言わないが、クレーターは全て無くなってくれた。

 

「意外と上手く行ったな」

 

「後は上から固めるだけですね」

 

「じゃあさっさとやるぞ~」




文字数少ないけど、今回はここまで。
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訓練最終日

休憩なしの10時間勤務。それが週5日間。仕事を放棄したくなりました笑


「ほらほら。逃げろ逃げろ。気合い入れて逃げねぇと死ぬぞ。俺は殺す気でお前を攻撃してるからな~」

 

「ウワァァァアァア!!もう少し手加減してぇぇぇええ!!」

 

「だが断る」

 

 クラス代表決定戦を明日に控えたこの日。玲衣と一夏はアリーナに籠っていた。因みに、千冬に許可は貰っているが、授業は全部サボっている。玲衣が現状の一夏では試合開始3秒も持たないと判断して、始業のチャイムと共に引き摺ってアリーナまで来たのだ。

 

「まずテメェは逃げることを完璧に覚えやがれ。今日は緑色の頭をした魔王がいねぇんだ。楽だろ」

 

「むしろ辛いんだけど!?」

 

 玲衣はマーク6の武装全部を使って一夏を攻撃している。アイアンマンに積まれているミサイルはどれもこれも小型。大きい物でも10センチあるかどうかと言うレベルだ。他は全部5センチにも満たない。それが休む暇もなく一夏を襲っている。

 

「ヘブッ!」

 

「あ、転んだ」

 

 ボコボコになったアリーナの地面に脚が引っ掛り、盛大にずっこけてしまった。言うまでもないが、ミサイル全部が一夏にヒットした。ギリギリシールドエネルギーが残っている。

 

「おい。今日5回目のダウンだぞ。さっさと回復させてこい。それまで休憩だ。その後は少し内容を変えるぞ。次の課題は20分は生き残れ、だ。10分以内にダウンしたら生身で逃げ回らせるぞ」

 

 一夏はエネルギーを回復させ、玲衣はミサイルの補給をする。この第3アリーナは千冬の計らいで2人専用の状態になっている。しかもほとんど使われない予備扱いのアリーナ。つまりは弄りたい放題と言うことだ。大部分が玲衣のラボになっている。ミサイルの補給もエネルギーの補充もやりたい放題できるのだ。

 

「なぁ玲衣。俺、大丈夫かな?」

 

「なにが?」

 

「クラス代表決定戦。俺、自信無いよ……」

 

「知るか。全部テメェ次第だ。無様に負けねぇ様に俺が訓練付けてやってんだろ。まぁ、クラス代表になりてぇなら応援はしてやる。決定戦じゃお前の事を叩き潰すけどな」

 

 不安げな一夏を励ます訳でもなく喝を入れる訳でもなく、自分が腹の中に思っていることを全部言った。と言うよりも、玲衣と一夏の付き合いはそれなりに長い。無責任に励ましの言葉を送るよりは、この方が効果的で良い薬になると思ったのだろう。

 

「クラス代表決定戦で無様な戦いをしたら、その時俺はお前の事を全力でブッ飛ばして壁にめり込ませる。が、そんな心配をするよりも、俺が教えたことをできるようになれ。訓練再開だ」

 

 充電が完了した白式と、ミサイル関係の補給を終えたアイアンマンがアリーナに降りた。準備が完了したのを確認すると、玲衣はこれから行う訓練内容の説明に入る。

 

「今からお前には、零落白夜を発動したまま逃げ回ってもらう」

 

「発動したまま?」

 

「あぁ。良いか?雪片弐型にはまだプロトタイプのアークリアクターしか埋め込んでない。つまり、長時間の発動は不可能。アークリアクターのエネルギー供給が間に合わなければ、シールドエネルギーを消費する様に勝手に変わる。取り敢えず調整して零落白夜の効果がでる最低限の出力をデフォルトにした。つっても、アークリアクターのエネルギーで10分。シールドエネルギーのみで4分が限界だ」

 

「それじゃ課題をクリアできないと思うんだけど……」

 

「だから、そこはお前が上手く調整するんだよ。今言ったのは、俺が設定した出力での話だ。それ以下にしたり動きを最小限にしたりすれば不可能じゃない」

 

 それは結構な無理難題だ。千冬の様な上級者ともなればそれくらい簡単にやってのけるだろう。だが、一夏は初心者。IS展開時間はようやく24時間を越えた所だ。普通に考えてできる筈がない。それは玲衣も分かっていることだ。

 

 今までの訓練は基礎能力の向上。武器を使った戦い方や動き回らせてISに慣れさせたりと、それらに限定していた。ミサイルやらを撃ちまくって逃げ回らせていたのだって無意味ではない。破壊されて滅茶苦茶になった地形、自分を延々と追いかけ回す追尾型のミサイル、アホみたいに重たい金属の塊の拳、巨大な地雷、突然襲ってくる変な精神攻撃。それらに慣れさせる事で技術とレベルを急激に上昇させていたのだ。だが、今出した零落白夜を展開した状態で20分逃げ回るに関しては、レベルが急に3つくらい上がった。

 

「よ~し。始めるぞ。まずは零落白夜を発動させろ。それを確認したら、また攻撃をする。捌けるものは捌け飛んで逃げるが走って逃げるかは指示しない」

 

「わ、分かった」

 

 玲衣の説明が終わると、一夏は零落白夜を発動。それを合図にまた大規模な爆撃が開始される。慣れてきたと言うのもあるのか、冷静に避けられるようになってきている。無様な叫び声をあげることも減ってきた。

 

「もう少し増やすか」

 

 様子や動きを見て、ミサイルの量を増やしていく。早くも量は倍になっている。今のところは順調だ。

 

「変り種。行くか」

 

 スラスターを一気に吹かして一夏の進行方向に回り込み、普通のミサイルと一緒に妙な形をした物を撃ち込んだ。形がおかしいせいか、空気の抵抗をモロに受けて不規則にフラフラとブレながら飛んでいっている。

 

「?グッ!?ウワァァア!!」

 

 妙な形をした物は、一夏に当たる直前に花火の様な音を立てて破裂したかと思うと、目の前が真っ白になるほどの強力な閃光を放った。当然なにも見えなくなり、飛んでいたミサイルが次々に一夏に直撃する。

 

「生きてるか?」

 

「だ、大丈夫だ……続けてくれ!」

 

「良い根性してらぁ」

 

 立ち上がった一夏を見て、またドッカンドッカン爆撃を始めた。結果から言うと、20分逃げ回ると言うノルマは達成できなかった。惜しい所まで言ったのだが、ギリギリの所で吹っ飛ばされてシールドエネルギーが0になった。何度か繰り返したのだが、結果は変わらず。最終的に一夏の体力も0になって眠ってしまった。朝からぶっ通しでやっているため無理もない。何故ならもう夕方だから。

 

「さてと……一夏ならもう眠ったぞ。しばらくは起きないぞ。こそこそされるのは好きじゃないんでよ。するのは好きだけど」

 

 アリーナの入り口に向かって言ったが、誰も出てこない。代わりにだが、何本かの剣がとんでもないスピードで飛んできた。

 

「ッ!?神威!グッ……!」

 

 ギリギリで神威を発動。異空間に飛ばすことができた。が、どう言う訳か玲衣はダメージを受けたようで、眼には激痛が走った。

 

「チッ…正体は分からずか……」

 

 異空間に飛ばした剣を取り出して、調べようと思ったのだが、何故か消えていた為それ以上の捜索は断念。一夏を担いでアリーナを出ていくことにした。

 

「おい千冬」

 

「ん?玲衣か。今日はもう終わったのか?」

 

「コイツが眠ったからできる訳ねぇだろ」

 

「まぁ、今日は朝の8時からずっとだったから仕方ないだろう。もう17時だ」

 

 9時間はずっとアリーナに籠っていた事になる。そう考えると、一夏が眠ってしまうのも理解できる。

 

「で?どうだった?」

 

「コイツは器用な方で、バカじゃねぇって事が分かった。お陰で追加装備も順調に作れそうだ」

 

「ほう。どうな物を作るんだ?」

 

「防御にも使えて、収納もできて便利なもの。取り敢えず特別な物を付ける予定はないが、それは代表決定戦の後に付けるかを考える」

 

 それを伝えて、一夏を千冬に渡すと一端部屋に戻りシャワーを浴びてから整備室に向かって色々と作り込んでいった。

 

「スーツケース型のシールド。我ながら面白いセンスしてるな。キャスターも付けようかな?」

 

『しかし、追加武器も収納可能で持ち運びができるので、悪くないかと。これなら拡張領域が無くても問題ないですね』

 

「まぁ、運ぶのにはIS展開してなくちゃならないけどな。持ち運びに関しては今後考えよう。今日はもう考えるのを止める」




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