エロ本こそ我がバイブル (Vergil)
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一章 出会い
1.俺スニーキングmission頑張る


早速投稿


 俺は今とある小さな建物の傍に来ている。これが、今回俺の狙う獲物か……彼は手元にある資料を見て、声に出さず、心の中で呟

いた。彼が侵入しようとしている建物は一階しかない建物で、狙っている獲物は侵入して右側約5m位先にある。しかし、今の彼がそ

れを手に入れるのは至難の技、いや無理に等しいと言えよう。色々な意味で……

 

 彼……いや、身長150cm位のまだ幼げな表情が残っている少年は、建物に中に入ろうとする男性の後ろを着いて行った。当然の事

だが、少年は気配と足音。息遣いを消して行く。緊張の為か、心臓がバクバク鳴っている。建物内を時折巡回する徘徊兵と敵に聞か

れないかが心配だ。だが、後ろに着いて行ったお陰かどうか分からないが、建物の中で徘徊している徘徊兵にはバレなかった。少年

は直ぐに獲物の所には行かなかった。それは、自分と同じ獲物を狙う敵が多く居たからだ。絶対にバレテはいけない。悟られてはい

けない。決して殺してはいけない。難易度の高いミッションだ!! こうなるんだったら、某蛇さん愛用のダンボールを持ってきてお

けば良かった。そう悔やんでも、悔やみきれない。無い物は無いから仕方が無いとしか言いようが無い。俺はそう割り切った。

 

 建物内の侵入に成功した俺はそのまま獲物に向かって直行せず、少しだけ大回りをして獲物を目指す。そうすれば、同じ獲物を狙う

敵にバレる確率は下がるが、此処を徘徊している奴らにバレる可能性は高くなる。だけど、同じ獲物を狙う敵にバレるより大分マシだ、

アイツらの方が戦闘能力は数段も高い。手に汗を握る。出来るだけ足音を消し、色々な物資を置いている横長の棚に、身を隠しながら

進んでいく。時折、物資を吟味したりする事を忘れない。必要な物があれば必要最低限の数だけ手に入れ、最小限の消費で済ます。そ

れこそ本物の某蛇さんになる為のスニーキングミッションだ。

 

 

 そんな少年に早速危機が訪れた。shit!! 目の前から徘徊兵が接近してきている。クソ!! 俺と接触まで約2m弱。だけど、まだ徘

徊兵は俺に気づいていないようだ。これはチャンスだ!! 俺は物資が置いてある棚にペタッと張り付いた。棚が揺れない様に慎重に、

だけど素早く。

 頼むからばれないでくれよ。俺はそう願い、じっと息を殺し気配を消した。コレでバレない筈だ……自信は無くは無いが、徘徊兵も

バカじゃない。バレル可能性もゼロじゃないんだ。

 

 額に冷たい汗が出て来て、下に向かい流れる。眉毛を伝い、目に入りそうなったが、俺は微動だにしない。するわけにはいかない。

少しでも動けば、完璧に消している気配が揺らぐ。それだけは阻止しなくてはならない。

 冷たい汗が目に沁み込んだ。沁みる、目が染みるぅぅぅうぅぅう!! 瞼が動きそうになったが、気合で我慢した。クソ、どんな拷問

SMプレイだ。俺はMじゃないんだぞ。どちらかというと俺はSだ……てそんなアホみたいな事を思案している暇じゃない!! 更なる汗が

少年の目玉を狙う。何ていう事だ!! これでは、バレテしまう。二発目の汗が目に入ろうとした時、徘徊兵が目の前を通って行った。

徘徊兵が俺の視界から消えるまで、一切動かなかった。

 危なかった。もう少しで汗が目に入り、気配をかき乱すところだった。

 

 俺は一息を着いた。コレで、第一関門は突破した。だが、関門はここだけじゃない。第二、第三の関門も待っている。安心している暇

なんて一切無い。何とかして、潜り抜ければならないが、容易な事じゃない。見つかったら即the end. 絶対に見つかるわけにはいか

ない戦いが今ここにある!!

 また俺は、気配と足音。息を殺して少しずつ時間をかけて徘徊兵の行動パターンを先読みしながらゆっくり進む。此処の角を右に曲が

れば目の前、要は一直線だ。しかし、この一直線には二か所だけ右に曲がる所がある。そこから徘徊兵、または俺と同じように獲物を狙

う敵が来る可能性が無いわけじゃない。どちらかというと相当高確率で出現する。接触は避けたい、先ほども言ったが徘徊兵に見つかれ

ば即the end.お縄頂戴されてしまう。

 俺は今まで以上に警戒心を強くし、緊張感を高めた。

 

 一発目の曲がり角。そこに差し掛かる前に一度止まり、周囲を確認してからその通路から徘徊兵または敵が来てないか顔を少しだけ出し

て確認した。良し、大丈夫だ。俺は静かに素早いロールをして先に進んだ。スグに二回目の曲がり角に差し掛かった。此処を抜ければ、目

の前に獲物……今日のターゲットがある。そこまで行き、無事に手に入れる事が出来ればミッションコンプリートだ。

 だが、獲物を手に入れる=敵兵に確実にバレテしまう。その時の為に、撤退する時の退路も確保しておかなければならない。なんという

鬼畜ミッションだ。これならまだ、敵を亀甲縛りをすて吊り上げる方が楽だ。

 

 俺は二個目の曲がり角の部分から少しだけ顔を出して確認……徘徊兵が持ち場からこちらの方へやって来るな。さて、どうしようか?

このまま出て行ったら確実に見つかる。だからと言って、引き返すわけにもいかない。だが、獲物は目と鼻の先にある。選択迫られる。

どうすれば良いんだ?! 仕方ないな。焦れば事を仕損じるからな、此処は一旦下がって立て直すか……何!? 後ろからも来ているだと!! 

そんなバカな!! 予測はしていたが、まさかのこういう時に来るとは思っていなかった。俺は、焦りのあまりに冷静な思案が出来なくなっ

ていた。

 

 

 

 クソ! このままでは、アウトだ!! 此処まで来て徘徊兵に見つかる訳にはいかない……クソ、仕方ない。本当はやりたく無かったがこ

うなったら最終手段だ。今になって思う、何で最終手段なんて馬鹿な事をしたんだろうな。戻れるなあの時に戻って自分をぶん殴りたいよ。

もっとしっかり冷静に周囲を見て、判断していれば良かった。今更後悔しても遅い俺。

 

 

 

 俺は床を力強く蹴り上げ、動いた。一般の人が初動を目視する事は出来ない早さで動く、気付けば既に獲物の前に立っていた俺。だが敵は

そんな俺の動きをキチンと捉えていた同じ獲物を狙う敵。やはり只者じゃ無かったか!! だが徘徊兵には気づかれていないし、敵からの距離

も1m位は離れている。これなら、何とかなる。俺の勝ちだ!!!!!

 

 

 「貰ったぁぁぁああぁぁぁぁぁぁあああぁ!!!!!」

 

 俺はターゲットに手を伸ばした。

 

 

 

 しかし、ターゲットを手に掴む事が出来なかった。誰かが俺の肩を力強くガって掴んで、俺の進行を止めた。誰だ?! 俺はユックリと首を後

ろに回して姿を確認した。俺の顔が某名画の叫びの様な顔になった。

 

 

 「また、お前か。懲りないな。」

 

 「HA! NA! SE! HA! NA! SE!」

 

 「何度言ったら分かるんだ。お前にはまだ早い。」

 

 「あああぁぁぁぁあああ、俺の、俺の!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「エロ本んんんんんんんんん!!!!! 我がバイブルぅぅぅぅぅううぅぅぅう!!!!!」

 

 「コレハ店の物で、未成年に売るわけにはいかない。」

 

 「クソォォォオオオォォオ!!!!!」

 

 俺の悲しみの声が店内に響き渡った。

 

 そう、俺のターゲットは成人雑誌。ザックリ言うならR18物の雑誌。世間一般ではエロ本に分類される物だ。ただし、只のエロ本では無い!!

クラナガン10冊限定のエロ本だ。それを手に入れる為に俺はここの店長が非番の日を狙って来店したというのに、どういう事だ。話が違うじゃ

ないか!! 店長に掴まり事務室に連行された。クソ、またダメか!!

 

 

 

 三島一也。

 13才。

 St.ヒルデ魔法学院中等科一年生。

 管理外世界97『地球』出身。

 父親と二人暮らし。

 

                                   mission failure



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2.変態(ライバル)現る

所々編集しています


 コンビニのスニーキングミッションが失敗した日の翌日。俺はもう一つの建物の傍に来ていた。此処は昨日行ったコンビニよりも

数が多く沢山の俺が求める我がバイブルが常備されている。だがな、俺の昨日悲しみを忘れる事は出来ない。クラナガン限定10冊エ

ロ本を手に入れることは出来なかった。もう何処にも売っていない……その悲しみを癒してくれるのは、新しく入荷されたバイブル

しかない!! 何!? 通販で買えば良いだと!! なめた口を聞くな何も知らない若造がぁ!! 全く何も分かっていないな。エロ本は

な未成年では買えないし、しかも買おうとしてレジに持って行って年齢認証しないと買えないのに、あえてその方法で手に入れてこ

その至高の一冊となるのだよ。どんなクソの内容のエロ本だろうとね。コレで分ってくれたかね、ワトソン君?

 

 今回はちゃんと某蛇さん愛用のダンボールを持ってきし、それには今日入荷してくる会社の名前も書いてある。問題無しだ。後は、

俺の腕次第だ。侵入するまではあそこのコンビニよりか楽だ。しかし、此処で働いている従業員の数はコンビニの比では無い。だから

こそ某蛇さん並みのスニーキング能力が必要とされるのだよ。

 

 早速入店した俺は、気配と足音を消し。息使いを殺して本棚の物陰に隠れ店員の行動を一人一人確認していく。これにより社員の行

動パターンを把握して行きつつ、前回みたいな予測していたが、予想していたよりも違う場面でその予想が来る可能性も考えられる。

こういうmissionは常に最悪の事態と予想外・想定外の事態を想定して行動しなければならない。特に社員と客(俺の敵)が多いとこ

ろではな……さて、今日の狙う物は、俺の大好きな。ハード物と触手物とSM物だ。虫、獣にやられる系も嫌いじゃない……俺って異常

かな? いや違う!! 断じて違う!! そう信じたい。

 俺は約10分間位社員の動向を探り、隙を見つつ少しずつながら進んでいく。今日こそ居ない筈だ。ここの書店の店長は、極秘の裏ル

ートから手に入れた物なんだ。信頼性はある物だから……昨日みたいなアホな失敗はしない。店長は非番だ。非番の筈だ。此処の店長

もコンビニ店長並みのチート野郎だから、見つかる訳にはいかない。

 

 来る!! 後ろから来ている気配を感じる。社員がそばまで近づいてくるのが分かる。俺はその場でひれ伏せ、匍匐前進で少しずつ進

んで、一瞬のダッシュからロールで、もう一か所の本棚の物陰に隠れる。ターゲットまでの直線距離は約10m弱。結構大きい書店だから、

道のりが長い。だからこそ手に入れた時の喜びも大きい。遣り甲斐があるぜぇ!!

 俺のテンションは最高潮に上り詰めるが、冷静さを欠いてはいけない。常に冷静に物事を対処しなければならない。たとえ、この手

を血に染めようとも!!!!! さぁ目指すぞ。我がバイブルを手に入れる為に!! 一番の難関はあそこだな、アダルティーコーナーはこ

この二階にある。というか、二階全部だ。その為か二階に上る為の階段には18歳未満は侵入禁止という暖簾がある。問題はその階段だ

な。

 あそこは客(敵)と徘徊兵(社員)の通りが意外に多いところで、階段前には警備兵(社員)が居て、1時間制で交代している。さて、

階段部分をどうやって切り抜けようか? あそこを抜ければ、ターゲットまで一直線だ。丁度交代中に潜入するのが一番の手段だが、先

ほど交代したばかりだ。さっき俺の目の前を通って行った。

 正直言えば、階段を切り抜くのは無理に近い。だが、困難が大きければ大きい程に乗り越えた時の喜びは大きなる。

さっきから色々言っているが、まずはそこまで行かなくては意味が無い。階段まではの道のりは約6m弱手程度で、行くまでの道のりも険

しい。

 

 さて、どうやって進んでいこうか? 匍匐前進も良いが、あれはあまり使いたくない。店内で匍匐前進する奴がいるわ、け、が……同類

が居ただとぉぉぉぉおおお!!!!! 誰だアイツは、白い衣服を上から羽織。紫色の長髪で、美形男性・だ・と・誰だ!? 更に右手には鞭・

だ・と!! しかもSMプレイで使用される物じゃないか!! うん? 左手には女性物の下着。しかもTバック物とオムツタイプの二つだと!!

クソ、俺よりもレベルが高い。あ奴は相当な手練れだ。 ……まぁ、只分かる事はアイツは俺の敵で、今世最強のライバルとなりえる存在

だ。絶対に負けるわけにはいかない。

 奴(変態)が俺(変態は変態でも変態という名の紳士)の方に気が付いたようで、コチラを見た。何のようだ? 俺は睨み返す。奴はニヒ

ルな笑みを俺に対して浮かべた。ゾクリっと背筋が凍るのが分かる。ヤバイ! アイツとは対峙してはならない。本能的に感じた。奴の方が

レベルが高いというのは見れば分ったが、只高いじゃない。俺とは天地の差がある。

 それでも、それでも勝つのは俺だぁ!! 俺も奴と同じようにニヒルな笑みで返した。奴は少しだけ、キョトンっとした表情になったが、直

ぐに楽しそうな笑みを浮かべた。上等!! ……それにしても、奴はアレと似ているよな。少し前にミッドチルダ全域を騒がせた。無限の変態

ジェイル・スカリエッティに似ている。非常に似ているな。だが、本人だろうと似ているだろうと俺には関係無い!! これだけは変わらない

からな……俺の最大の敵であり、変態(ライバル)になりえる存在という事だけだ。

 

 うん? 何をするつもりなんだアイツは? 匍匐状態から突然立ち上がって、周囲から視線を集めて一体何をしたいんだ? 周りは騒ぎ始めた

ぞ。「キャ―――!! 変態が居るわ!!」「何故アイツが居るんだ。ジェイル!! ジェイル・スカリエッティぃぃぃぃいいいぃぃい!!!」「今日の

私は変態すらをも超える!!」何だ何だ!? 何があったんだ? 俺は突然の出来事に動揺する。だって……

 

 

 

 奴が突然立ち上がって、左手に持ったTバックを頭から被り衣服を全部脱いで、オムツを穿いたんだ。そして、丁度奴の目の前に居たプロモー

ションの良い綺麗な金髪女性に頭を下げてこう言ったんだ。

 

 

 「この鞭で私を虐めてくれないかね?」

 

 俺は涙を流した。血の涙を、アンタは漢(おとこ)だよ!! 本物の漢(おとこ)だよ。それと同時に俺は奴の本当の意図を知ったんだ。奴は俺

に向かってサムズアップをしていたんだと。これが何を意味するのかすぐに分かった俺は、血の涙を流しながらも行動に移した。奴は敵(客)と

徘徊兵(社員)を自分に引き付けてくれたんだ……俺の為に、そして自分の欲求を満たすために……アンタ、マジで最高だよ。アンタの屍は俺が超

えて行くよ。だから、安心して任せてくれ。アンタの分も手に入れてみせるよ。俺の命に賭けてもな!!!!!

 

 俺は自分が出せるであろう最高速度で店内を駆け抜ける。只ひたすらに目指す。我がバイブル、そして奴のバイブルを手に入れる為に、俺は目指

す。我らの聖地を!! 絶対に手に入れてみせる。警備兵(社員)が居なくなった階段を一瞬にして駆け上がり、ターゲットを発見した。

 

 

 

 「我がバイブルぅぅぅうるるぅぅううぅぅあぁぁぁあぁぁぁぁあ!!!!!」

 

 少しだけ若本さんの無敵ボイスが入ったが気にしたら負けだ!! 俺は新作のハード物と触手物とSM物。虫、獣にやられる系の物を数種類手に入れ

た。後はあの人の分だ!!

 

 

 「そういえば、何が良いんだろうか? あんな恰好をしていたからSM物か? それともお医者さんごっこ物なのか? まさか、あえてのお姉さん物

か?! いや違うな。俺の本能がそう語りかける。なら、何なんだ? 奴が求めていたの物は何だ?!」

 

 そん時、俺の視界ある物が入った。それは……

 

 

 「娘だと、しかも実の娘をやってしまう。近親物だと?!」

 

 俺の本能がそう語りかける。だが、コレしかない。これ以外有りえない。俺はそれを手に取り天に掲げた。やったよ、名も知らない我が宿敵(ライ

バル)。手に入れたよ。アンタが求めていたのはコレだろう? そうなんだろう。なぁ、変態(ライバル)。

 ようやく物を手に入れた俺は、その場で変身魔法を使い。ジェントルマンに変身した。シルクハットを被り、片眼鏡のモノクルを着け、右手にはス

ティックを持ち、ジェントルマンスーツを着ている人物がそこに居た。只、左腕には先ほど手に入れたバイブルを抱えている為か、異色でツッコミ所

が満載である。

 

 

 「さて、レジに向かいましょうか。」

 

 こうして私はレジまで行って、手に入れる事に成功した。

 

 

 

 さて、どうやって奴に渡そうか? 私は変身した姿のままSM物を読みながらクラナガンを歩きつつ思案していた。当然の事だが、ブックカバーはし

ていますよ。透明のビニールブックカバーをね。

 するとどうだろう? 突然、肩をガって掴まれましたよ。

 

 

 「誰ですか? 私の邪魔をする無粋の人は?」

 

 私はそう言いつつ後ろに振り向きました。

 

 

 「よう。またアンタか。」

 

 そこには何時も私を捕まえる元管理局員。そして現在はここ等辺の地域を守っている警察官だ。そんな彼の通称《無駄にチートなおやっさん。》ま

たは《無駄にチートなとっつぁん。》がそこに居た。冷や汗がダラダラ流れているのが分かる。コイツから逃げるのは不可能。今までの経験上で分か

る。コイツに対応できる人物何て、いつも俺が行っているコンビニの店長か書店の店長か父さんしか居ない。

 くそ、ここまでか!! せめて、せめて我が変態(ライバル)の分だけでも!!!!!

 

 

 「逃げようとするなよ。間違えて発砲してしまうかもしれないからね。」

 

 ねぇ、それは質量兵器でアンタが捕まるんじゃないのかい?

 

 「何を言っているんだ? 此処では俺がルールだ。管理局だろうが何だろうがしらねぇよ。只ここでは俺がルールだ。只、平和を守るためにな変態に

は制裁を加える。」

 

 言っている事はカッコイイが、滅茶苦茶な事言ってるよ。

 

 「ちょっと、待ちなさい。」

 

 「戯言は聞かん。」

 

 

 アッ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!

 

 

 処務に連行され、変身魔法も解けました。俺とあの人のバイブルは、その場で処分されました。

 

 

 

 

 mission failure.



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3.クラスと紳士……いえ違います。変態です。

主人公は変態(笑)


 俺の変態(ライバル)出現から翌週の始め、今日は始業式。ようは今日から中等科一年と言う事だけど、面倒だな……学校

爆破されねぇかな? 学園長の話が無駄に長くて萎えるんだよ。全く困った学園長だぜぇ~。という事で、

 

 

 「親父。今日学校爆破するわ」

 

 「ちょっ! おま! マジで言ってるのか?!」

 

 リビングで一緒に朝食を食べている親父こと、三島平八。今年で33才になる。そんな親父ぃ~は俺の言葉を聞いて口に含ん

でいたコーヒーを吹き出しそうになったが、何とか堪えて飲み込んだ。やるな、親父。

 

 

 「だってさぁ~。学校行ったらアレがアレでアレされちまうからな。……最後に爆破……」

 

 「ちゅうか、あ?! 噛んだわ。まあいい、アレって何だ? それに最後に爆破って何だ?!」

 

 「まぁ、アレって言ったらアレしか無いだろう。親父」

 

 「そうなだ、我が息子よ」

 

 「「エロ本!!!!!」」

 

 今日もいつも通りのバカ親子の朝のバカ風景。そして、爆破は何処に行ったのだ? とそう言いたい。

 

 

 「一也。今日は午前中に帰ってくるんだろう?」

 

 「そうだよ、親父。ついでだから、新入荷されていないか。スニーキングして帰る予定だから、少し遅くなるかもしれんよ」

 

 「それなら仕方が無いな。進級祝いに、久々に外で飯でも食って帰ろうかと思ったんだ。今日は仕事休みだしな」

 

 「それマジ!!」

 

 気が付けば俺は身を乗り出して、親父に問うていた。外食……もう最高の響き、エロ本と対をなす存在だ。どうすれば良い? ど

うすればいいんだ?! 外食。親父の連れて行ってくれる外食は、絶対に最高級レストラン。だが、俺好みのエロ本が新入荷されて

いるかもしれない。出来るだけ、いや、出た日に快楽を得たい。どうすれば、俺は一体どちらを選べば良いんだ!!!

 

 

 「じゃあ――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ~面倒臭い。全くもって面倒臭い」

 

 登校中ずっと官能小説(内容は超ハード物)を読んでいた(当然ブックカバーは透明ビニール)俺は、危うく《歩くチート警察官》

ことおやっさんに掴まるところだったぜ。何? 二つ名が変わっているって……気にしたら負けだ。早速St.ヒルデ魔法学院中等部の方に

着いたのは良いが、生徒数が多すぎてクラス分けの表を見に行けない。お前ら浮き足過ぎだろ! 楽しみなのは分かっているが、俺の後ろ

にはまだクラス分けの表を見れてない奴が居るんだぞ。早く代われや!!

 

 「ちっ」

 

 舌打ちをした俺は、その場で飛び上がった。約3mの垂直跳びに、周りの生徒の視線を一気に集める。しかし、彼と一度でも一緒のク

ラスになった事のある奴だけが、「ああ、ヤッパリアイツ規格外だ。」とか「人外だろ」とか言っていたりする。その言葉はしっかり

俺の耳に入っていたりもする。何が、人外。規格外だよ。俺の親父とコンビニの店長と書店の店長の方がまだ規格外だぞ……アレはチ

ートだな。

 しっかり自分のクラスを確認した俺は、早足にクラスに向かった。只、彼にとっての早足は周りで言う肉体強化をしてやっと出せる

位の早さだったりする。当然だが彼は肉体強化なんてものはしていない、素でこの早さなのだ。彼も相当な規格外の存在である。

 

 

 「フラッシュ! フラッシュ! フラッシュ!!」

 

 彼が早足で行ったら、その場で突風が発生し女子生徒のスカートが捲れ上がる。それを見逃す一也ではない。片手に持った使い捨て

カメラで、スカートの中を撮って撮って撮りまくる。

 

 

 「今日も沢山の物(パンツの写真)を手に入れたぜ」

 

 ぐへへへへへっと悪代官みたいな笑い声を発している俺は、クラスから冷たい目線で見られている。特に女子からの視線が熱いぜ!!

実際は心を大分抉られています。Sはな攻めるのは好きだが、攻められるのには滅法弱いんだぞ。

 俺はカバンの中から、ソフトな官能小説を読み始めた。当然ブックカバーをしている……透明のビニールタイプの奴を…… 表紙は

言わなくても分かると思うが18禁ものだ。周囲の女子から「汚物」とか「変態」「死ね。エロがっぱ」とか色々言われているが、俺は

全く気にも止めない。俺は我が道をゆく、只それだけだ。

 

 

 でもね、13才の俺にはキツイよ。この状況。大半の女子が敵に回っていて、俺の事を知っている女子は半ばあきらめ状態にあるし、何

か色々と辛いよ。我が道を行くって言っても、女子から嫌われるのは辛い。

 それでも、コレだけは止められない!!!!!

 

 

 担任が来るまで俺は汚物を見る様な視線の集中砲火を喰らっていた。「もう止めて、一也のライフはもう0よ!!」っていう感じだよ。俺

の心理状態は……

そういえば、一応クラス全体を見回してみたけど、一人だけ別格クラスの奴が居たな。まぁ、それはこのクラスの中だけっていう事だけど、

名前は何だっけ? 結構有名なんだよな。たしか、素虎鳥栖(ストラトス)って名前だったよな……ああ、ダメだ。思い出せん!! もうIS

でいいやもう。

 

 

 

 

 

 

 本当に滅茶苦茶可愛くて、スタイル良いんだよな。本当に別格だよな。一度で良いから……手を繋ぎたいな。ああいう可愛い子と…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 丁度彼女は、一也の視線に気づいていた。

 

 「(何者ですか彼は? ……一応知っていますが、それはそれで。まるで私を観察するような視線。)」

 

 私は気が気では無かった。あの観察……いえ違いますね。アレは、まるで私の実力を測っているような視線です。やはり、彼は強い。クラス

の中で気付いて居る者は居ないでしょう。彼は相当な手練れです、あの歩き方。纏っている雰囲気を感じ取れれば一目瞭然です。私は気づかな

いうちに右拳を力強く握りしめていました。彼に私の拳は届くのでしょうか? 手合わせを願いたいです。

 ですが、何ですかあの本は!! あれはその……あまり言いたくないですが官能小説という物では無いですか?! アレは何ていう物を学校に持

ち込んでいるでしょうか?! 少しは女子の事も考えて下さい。

 

 

 

 運悪く表紙を見てしまっているアインハルトは、顔を真っ赤にして俯いていた。全く最悪です。



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4.お前ちょっとこっち来い

前書きに書くことが見当たらない。


 俺はやはりエロに抗えなかった。今の俺は下校中で、何時ものコンビニに向かっている最中。今日も店長は居るが、エロ本を

買う予定は無い。只の偵察に向かっている……そう新入荷されていないかどうかを確認するためだ。買おうとしたら事務室に連

行されるが、買わないのなら連行はされない。

 

 そう、まさに今の俺こそ―――――――

 

 

 「また、貴様か。今日の登校中に追い駆けたばかりだぞ。少しは俺の身にもなってみろ。」

 

 「だったら、捕まえるなよ。おやっさん。」

 

 一つの机をまたぎお互いに向かい合いながら座って居る。この密室空間に一人の男性と一人の少年。そう、何かが起こるに違

いない。……この二人だけの密室という魅惑だらけの世界によって、おやっさんの抑えきれないベーゼが暴走する。

 

 

 「おい、今いらぬ事を考えていただろう。」

 

 「いえいえ、そんなことナイデスヨ。」

 

 俺の口調が片言になるが気にしていないし、気にしても居ない様子だ。それにしても危なかった!! 俺の鼻の穴が三つになる

ところだったぜ。おやっさんの脅しマジで半端ねぇもん。だって、鼻の先端におやっさん自作の45口径の大型拳銃を突きつけら

れたんだぜ。冗談も言えなくなるよ……おやっさん、マジでやる時はぶっ放す人だから。

 だから、管理局を止めさせられたんだよ。

 

 

 カチャ―――

 

 

 「マンマボーイ。いい加減にしねぇと、鉛玉のキスをする羽目になるぞ。」

 

 「イエスマム!!」

 

 俺は椅子から立ち上がって、軍人もビックリするぐらいの敬礼をしたよ。だって、おやっさんの目がマジだったもん。

 

 

 「全くいい加減にしてくれよ。今日は折角の非番で、妻と娘と息子の四人で一緒に出掛ける予定だったんだぞ。いきなり上司

から呼ばれた。『また何時もの彼が、官能小説を読みながら現れたから対応をお願いする』ってね。どういう事だ!! ゴラァ!!」

 

 机を思いっ切りぶっ叩くおやっさん。

 

 「落ちつけよおやっさん。そんなに怒るとアレの血管が切れて立たなくなるぞ。」

 

 「うるせぇ!!!!! 俺のビックマグナムはそんな事で立たなくなるわけ無いだろうが!! 現在進行形で愛妻を喜ばしとるわと

ボケェェェェエェェ!!!!!」

 

 「何で俺が他人様の夫婦の夜の事情を聴いてんだよ。それを聞くだけでも結構興奮するんだけどぉぉぉおおぉぉおぉぉぉ!!!!!」

 

 何度かおやっさんの奥さんを見た事あるけど、滅茶苦茶美人だった。高身長で出るところは出ていてしまっている所はシッカリ

引き締まっている。性格も良いし、料理も完璧。おやっさんには勿体無い奥さん。一応おやっさんと俺の親父。そしておやっさん

とその奥さん、何時ものコンビニの店長とその奥さんと何時もの書店の店長とその奥さんは幼馴染。今でもこの人たちが我が家に

来たり、泊まりに行ったりしている。当然、家族ぐるみの付き合いだ。だからなのか知らないけど、俺に対して容赦がないんだよ。

まるで、もう一つの家族みたいなものだ。

 

 

 「おい。」

 

 カチャっと45口径の大型拳銃をおでこに押し付けられています。変な汗がダラダラ流れて、背中が冷たいです。メッチャ恐いで

す。オカシイよこの人……だって、守るべき一般市民に拳銃押し付けているんだよ。どう考えてもオカシイよ? ねぇ。

 

 

 「人様の妻をそういう目で見るんじゃねぇぞ。おかずにでもしてみろ……コイツの鉛玉が貴様の眉間をぶち抜くぞ。分ったか? 分

かったなら返事をしろ。」

 

 「は『ズドン!!』あぶねェ!!!!!」

 

 おやっさん、マジでぶっ放したよ。折角返事をしようとしたところでぶっ放したよこの人。俺がギリギリの所で避けたのは良いけど

マジで当たったらどうするの? 俺の頭ザグリッチになっちゃうよ? ねぇ頭イカレテんじゃねぇの? ねぇ頭大丈夫? 死んでみる? 

ねぇいっぺん死んでみる?

 

 

 「ちッ!! 避けんなよ」

 

 「コイツ、露骨に舌打ちしやがった!! しかも「避けんなよ」って本人の目の前で!!!! ありえねぇよコイツ!! 人に弾丸ぶっ放し

ておいて、舌打ちとか有りえねぇよ!!!!! 頭イカレテんじゃねぇの!!!!!」

 

 「貴様が言うな。町中で官能小説を読む奴が。」

 

 「何を言う。町中で官能小説を読むことに意味があるんだ!! それを分っていないなんて、なんて悲しい男なんだろうか。おやっさん

は……人生の10割してるぜ。」

 

 「貴様な「良いから聞けよおやっさん。」ぐぐ。」

 

 俺の真剣な表情に押し黙るおやっさん。

 

 「官能小説を町中で歩きながら読むって事はだな、俺達男子の夢なんだよ。只俺はそれを実行しているだけなんだよ。そしてここからが

一番大事な所だから良く聞けよ。俺が官能小説を町中で歩きながら読む。当然だがブックカバーは透明のビニールタイプを使用する。それ

により表紙が周りの人たちに見える。此処が重要なんだ。周りの人たちに俺が読んでいる“官能小説”の表紙が見える。此処に本当の狙い

があるんだよ。俺が読んでいる官能小説の表紙が見える事によって、免疫の無い女性が顔を赤らめる。そして、内容が気になるのか俺の後

ろに回りチラッチラッと内容を確認する。中には管理局員や警備員を呼ぼうとする者も居るが、そいつらはダメだ。本当に大事なのは、免

疫の無い女性または女子が、顔を赤らめながら俺の事を汚物の様な視線で見る。まぁコレに耐えるのは、相当キツイ。胃がストレスでシュ

ーマッハだからな、特にMじゃない俺には辛い。俺はSだからな弄られるのには弱い。おっとすまない話が脱線した。俺に対してそういう目

線で見るが、俺が読んでいる官能小説の内容が知りたくて仕方がなく、モジモジし、チラ見で中を読む。だが俺はあえて、なかなか読ませ

ない様にする。それにより必死になる姿は、滑稽で見応えがある。そして中には近づきすぎてクンカクンカ出来る時がある。これは至福の

時だな。これこそ俺が町中で官能小説(ブックカバーは透明のビニールタイプ)を読む理由だ。分ったか!!!!! おやっさん!!!!!」

 

 俺の熱弁を聞いていたおやっさんが無表情で一言。

 

 

 「死ね。」

 

 

 

 

 

 

 それから、俺はやっと解放された。やはりシャバの空気は良いねェ。

早速俺は官能小説を取り出して、歩きながら読み始めた。今読んでいるのは、触手物だよ。良いよね触手物って奴は、手足を縛られ身動き

が取れない女に一斉触手が襲いかかり、穴という穴を全てグチョグチョにする。ヤッパリ俺は触手物が一番良いな。興奮が収まらない。俺

様のビックマグナムが火を噴くぜ!!!!!

 当然だが、ブックカバーは透明なビニールタイプ。今読んでいる官能小説の表紙は今日一番の過激な物だった。



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5.変態と親父とレストラン

 やっと家に帰る事の出来た俺は、直ぐに自室に入り私服に着替えた。やっと堅苦しい制服から解放されたぜ。にしても親父はまだ

帰って居なかったな。何処に行ってんだ? 今日の夕食は一緒に食べに行くのにな。親子二人の久々の外食なだけあって、楽しみに

している一也。その辺はまだ、子供らしい所である。只……変態級のエロを持っているが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方の父親の平八はというと……

 

 

 「だからさ、何度も言うように俺はもう管理局に戻る気は全く無いですよ。」

 

 モニター越しに誰かと話しているようだ。その相手は見た目老婆というか、妖怪婆だ。

 

 

 『アナタの決意が揺らがないのは分かっていますけど、それでも今は彼方の力が必要なんです。』

 

 「そう言われてもな。正直困るよ。ミゼット義母さん……もう、俺は平和に過ごしたいんだ。」

 

 『ええ、それは分っています。それは分っているのですが……ゴメンなさいね。』

 

 バツの悪そうな顔で頭を下げるミゼットお義母さん。

 

 

 

 ミゼットお義母さん……俺もバツの悪い表情になった。

 

 

 

 

 それから、少しだけ世間的な談笑をして俺はモニターを切った。JS事件の影響がまだ続いている今の管理局が大変なのは重々分っ

ているが、俺は今の平穏を大切に過ごしたい。命に危機に関わる様な所に戻るなんて以ての外だ。

 俺は思案顔のまま、ビデオショップの18歳未満は立ち入り禁止という暖簾の向こう側から出てきた。さっきまでの会話は何処でし

ていたのかって? そりゃあ当然。

 

 

 

 ビデオショップの暖簾の向こう側だが、何か? 少しというか、大分呆れていたよミゼットお義母さんは……にしても、俺以外の客

が此方側に入ってこなくて助かった。もし来られたらある意味、大変な事になっていたからな。

 

 そんな事を考えながら、レジに向かった。

 

 

 

 

 

 「さて、今日も良い物を収穫できた。」

 

 俺の腕の中には暖簾の向こうで発見した俺好みのDVDを借りてきた。数はたったの10本位だ、何時もの俺に比べたら少ないだろう。

俺は腕時計で時間を確認した……ヤバイ!! 一也がもう帰っている時間じゃないか!! しまった。今日の夕飯は食べに行くから早め

に帰ると約束したのに、やらかした。

 

 俺は全速力でダッシュをした。帰る途中で警官に追われたが、気にしている暇はない。急げ、俺!!

 

 

 

 一方。取り逃がした警官は後日こう語っていた……

 

 『肉体強化の魔法を使わず。生身で車より早く走れる人間なんて、マンガだけの世界だと思っていたよ。』

 

 『生身で、車の速度を図るスピードメータがぶっ壊れたんだ。正直人間ワザとは思えないな。』

 

 『平八。あんなに全力で走るなと、言っておいたのに……マジで子供共々俺に仕事を増やす家系だ。全くコッチノ身にもなれって

んだ。』

 

 若干一名は、平八の親友である警官が語っていた。

 

 

 

 「ただいま。一也! 帰っているか?!」

 

 ドタドタっと二階から降りてくる足音が聞こえた。帰っているな。それが確認できた俺は早速借りてきたDVDを自分の部屋に持っ

て行って、服を着替えて直ぐにリビングに向かった。そこにはソファーに座って俺の事を待っている一也が居た。早く早くっていう

のが表情を見ただけで分かるし、目がキラキラしている……そういう所は似ているな。ティアに……

 

 「さぁ、行くぞ一也。」

 

 「うん、親父早く。見せてくれよ、今日借りてきたエロDVD。」

 

 「帰ってからじっくり見ような。」

 

 「うん、ヤバイ。超楽しみだ!!」

 

 本当に俺そっくりだ。コイツは……俺は一体何処で育て方を間違えたんだ!! ていう思いは当の昔に捨てている。今は一也の好き

なようにさせている。そのせいで、こうなってしまったんだがな。

一也が女性を痴漢や強姦、レ●プをして捕まる様な事になったら絶対に俺のせいだよな……まぁ、なる様になるか。

 

 

 「じゃあ、準備は良いか?」

 

 「イエッサー!」

 

 敬礼をする俺の息子。エロいがノリは良い。

 

 

 我が家のスーパーカーに乗り込み、一也を助席に乗せて発進させた。少しだけ、遠出になるから今回は車を使う事にした。久々に

乗る車の感覚は良い物だ。この人が急に飛び出して轢くか轢かないかの瀬戸際の緊張感が堪らない……俺は何を考えてるんだ。

 

 

 「なぁ、親父。ラジオがつまらないから何か流していい?」

 

 やっぱり子供にラジオは辛いよな。昔の俺がそうだったらか良く分るぞ。

 

 「良いぞ。」

 

 俺の了承を得た一也は一枚のCDを取り出して挿入し、再生ボタンを押した。車のスピーカーからは、

 

 

 「あぁん! 良い! もっともっと! あっあん! 激しく!! もっと奥まで!!」

 

 女性の良い声の喘ぎ声と生々しい音が大音量で流れた。俺はハンドル操作を誤り危うく反対車線に飛び出しそうになったが、持ち

直した。おいおい、此処まで持ち込んでくるか我が息子よ……筋金入りのエロだな。

そういう俺も人の事を言えないがな。

 そう思いつつ俺は、俺が用意していたCD(R18)を取り出すのを止めた。まさか、一也と考えていることが被るとは……思ってい

た事だ。流石俺の息子だ。

 

 

 

 「一也。流石に音量は下げてくれ、面倒な事になるのは避けたい。」

 

 「りょーかい。親父。」

 

 そう言って一也は半分ぐらい音量を下げて、こちらに視線を向ける。「この位で良い?」っと語っているのが分かる。それに向けて

俺はウィンクで返し、それを確認できた一也は子供らしい笑みを浮かべた。この笑顔を見れただけで、俺は十二分に満足していた。

 

 

 それから、約一時間後に目的のレストランに着いた俺は早速駐車場に車を止めた。車から降りた俺と一也のズボンが少しだけ湿って

いた事だけは割愛させていただこう。

 

 

 

 

 

 

 「予約していた三島です。って言っても仕方ないよな。」

 

 「いつもありがとうございます。」

 

 俺らはここの常連。月に最低でも二回は来ているお気に入りの所だ。最高級のレストランと言われたらそうでもないが、高級じゃない

わけじゃない。偶に雑誌にも載るし、人気も高く、料理の値段も張る。

 

 

 「何時もの席でお願いするわ。」

 

 「かしこまりました。ふふふ、もう空けていますよ。」

 

 「そうかい、分ってるじゃん。」

 

 「三島様はお得意様です。」

 

 ちょくちょく話をしながら何時もの窓際の席に着いた。

 

 

 「ご注文は何時もので宜しかったですか?」

 

 「ああ、それで良い。問題ないよな一也。」

 

 「モーマンタイ。」

 

 なぜお前がそんな死語を知ってるんだ?! そんな事は右から左に受け流す。

 

 

 

 

 

 「今のクラスはどうだ?」

 

 「いつも通りだった。」

 

 一也の発した「いつも通り」という言葉にはまた居なかったようだ。同年代で一也とまともに渡り合える人物が居なかった。だけど、

次の瞬間には俺の予想外の事を言い出した。

 

 「だけど、結構やりそうな人がクラスに一人だけいた。」

 

 「うお?! それはマジか。」

 

 「マジだよ。親父。まぁ、当然だが俺に敵うわけないが、鍛えれば相当なレベルになるよ。確信できる。」

 

 ほほう。一也に此処まで言わせるなんて相当な手練れのようだな。俺自身大分興味が湧いてきたぞその人物に対してだが、更に次の

言葉がどんな事よりも俺の度肝を抜いた。

 

 「しかも、学校内でも一位二位を争うぐらい美少女だよ。名前はあいーんなハルト・巣虎鳥栖(ストラトス)。」

 

 「それは、物凄いヤバそうな奴だな。」

 

 「そうだよ親父。」

 

 「「名前からしてヤバそうだ。あいーんなハルト・巣虎鳥栖(ストラトス)だなんてな。」」

 

 「どう考えても。」

 

 「狙ってるな。」

 

 「「絶対に強者だろう。」」

 

 

 こうして、一也の学校について話も終わり運ばれてきた料理を食べる。

 

 

 

 

 今日も一日平和に過ごせました。



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6.俺のバイブルを!! 許さん!!

 中等部に上がってから数日が過ぎた。

学校では俺の噂はとっくの昔に広がっている。そうだろうな、なんたって俺の「変態度数」に敵う生徒なんてこの学校に存在する

わけが無い。まぁ、当然と言えば当然だよな。だってこの学校は真面目ちゃんばかりだからな……中には結構な手練れの奴も居た

りするんだよなこれが、例えば俺のクラスに居る。名前が「あいーんなハルト・巣虎鳥栖」っていう美少女だ。彼女は相当な手練

れだ。俺位のレベルになると、相手を見ただけで素人か手練れかどうか直ぐに判断できる。俺の親父なんてな、写真とか実物を見

ないで判断できるから凄いんだよな。俺もそれぐらいのレベルまで行きたいな。

 そんな事を思いつつ、俺は今回狙う得物を置いてある建物に着いた。

 

 今回はちゃんと準備をしてきた。備えあれば憂え無って言うしな。

 

 準備物は、ダンボール箱。ナイフ(ペーパーナイフ)。手榴弾(という名の爆竹)。サイレンサー付きの拳銃(モデルガン)。

獲物までの建物の図面(手書きで、しかも幼稚園児が書いたような図面)など等の物を準備して、俺はいつもの書店に入って行っ

た。ちゃんと潜入する時は、周囲に気を配りながら潜入した。幸いな事に誰にもバレずに入れた。

 問題は此処からだ。情報によると建物の中を改装したらしく、俺が狙う得物の場所も移っている。全く面倒な事をしてくれたな、

書店のおやっさん。

 

 侵入に成功した俺は、早速本棚の物陰に隠れて社員の動向を探る。一人一人の行動パターンは大体決まっている筈だ……予想外の

自体が起きない限りな。只、相手は機械じゃない。考える事の出来る人間だ、そこも考慮して考えないといけないな。クソ!! 社員

全員をロボットにしてくれたら、もっと楽に進むのにな。

 俺はそんな淡い幻想を思い浮かべながら、一人一人の行動パターンを脳に焼き付ける。

 

 

 

それから約20分間観察をした。

 

 クソ!! やっぱり人間なだけあって、行動パターンが著しく変わっている。まぁ、幸いな事に基本の行動は変わっていない。これ

を見定めて、先に進むしかない。俺は書店の図面(手書きで、しかも幼稚園児が書いたような図面)を取り出して、自分の位置と獲

物の位置関係を確認する。

 誰だ。こんな糞みたいな図面を書いた奴は!! あっ! 俺か……俺ってヤッパリ絵心無いな? 絵心なのか? まぁそんな事はどう

でもいいか。

 

 俺は、本棚の物陰に隠れて引っ込めた顔をもう一度だして観察を始める。これが最終確認だ。これにより行動を開始する。俺は持

ってきた某蛇さん愛用のダンボール箱を取り出し広げて、その中に隠れた。そのダンボールの前後には周囲を確認するための細い穴

が開いている。そこから周囲を見つつ移動を開始した。約一分間に1m弱といった足取りだ。

 鈍いと言いたいだろうが、舐めるな!! こういう事を疎かにするとな、大変な事になるんだ。例えば、エロ本が買えないとか、エ

ロDVDが買えないとか、エロ雑誌が買えないとか、エロ小説が買えないとかなど等と色々問題があるんだぞ。分ったか!? 敵接近中!!

俺はその場で止まる。

 

 「あれ、こんな所に箱をおいてあったけ?」

 

 何て事だ!? 敵が俺が入っているダンボール箱を凝視し始めた。この状況はヤバいぞ! 今の俺は動くことは出来ないし、反撃す

ることも出来ない。反撃をしたらその場でオワタだ。頼む素通りをしてくれ!! 俺はダンボール箱の中で両手を合わせて天に祈った。

頼む!!

 

 

 「ちょっと、他の社員に聞いてみよう……こんなダンボール箱あったかな?」

 

 社員の足音がドンドン離れて行く。よし、何とか乗り切ったようだな。この調子で歩みを進めて行くぞ。

俺は周りに人の気配が無い事を確認して、ダンボール箱を脱いだ? それを折りたたんで、納めて、さっきの社員が戻ってくる前に

その場から離れた。

 

 これが不幸中の幸いってやつか? さっきのお陰で一人分の社員の動きを封じることが出来た。流石俺だ!! 意気揚々と先に進む。

 

 次の難関はこれか、俺は少し進んだところにある監視カメラに目を向けた。アレの死角に入って進まなければならない。しかし!! 

その方法をとった場合は社員に見つかる可能性が高い。そうなったらその場で試合終了だ。断じてそうなるわけにはいかぬ!!!!!

 俺はまず周囲に何人居るのかを気配で探り、どういう動きをしているのかを感じ取る。その動きに合わせて、監視カメラを潜り抜け

る。当然監視カメラの動きにも注意を払わなければならない。これを潜り抜けるには相当レベルの高い隠密行動を必要とするな。だか

らこそ!!!!! 手に入れた時の感動! 達成感が堪らない。そして、手に入れた物を見るという祝福!! だからこそを俺はエロ本を求

める!!!!! 周りから何と言われようともな!!!!!

 俺は社員の動きを見計らい動く。丁度社員と監視カメラの死角が重なる時が訪れる。それに合わせて俺も動くことによって先に進む

ことが出来る。だが、この方法一瞬でも気を抜けばその場で見つかる可能性が高い。

 

 そして、やっとの思いで通過することが出来た。だけど、相当精神を削った。だから今だけは少しだけ休憩を取りたい。故に俺はこ

の書店の唯一の休憩所である。身を清めし、異物を流す場所。そう!! トイレだ!!

今俺はトイレの個室に籠っている。いつ来ても良い香りのするトイレだ。常にお客様の事を考えられているな、トイレもピカピカで使

う方も気持ちが良い。

 俺は何時の間にか汚物を肛門から排出していたようだ。トイレットペーパーで肛門をキレイにする。相当良い紙を使用している。拭

き心地も最高だ。

文句なしに最高の☆三つを与えてあげたい。

 

 スッキリした表情でトイレから出てきた一也は、早速表情を変え、雰囲気もガラリと変わった。正に獲物を狙う猛獣の如く。

ターゲットまで約10mもあるか無いかぐらいの距離までやって来た。後は見つからずに手に入れるだけだ。

 

 

 

 でも、何か今日は上手く行過ぎているような気がするな……俺はちょっとした不安を抱えながら目指した。我が聖地に向けて、さぁ

エロ本まで後少しだ。

 

 

 

 

 

 「ウォォォォオオオォォ!! 凄い!!」

 

 俺は人目も憚らずついつい叫んでしまった。何デカって? そりゃあ、新作が沢山入っていたし、何よりも俺が今まで手に入れること

が出来なかったエロ本が沢山入荷されていたんだ。これを見て叫ばずに居れると思うか? 断じて否だ!! 欲しい物が沢山ありすぎて金

が心配になり、お財布様とご相談をした。

 

 「お財布さん。俺が欲しい物を全部買う事は出来ますかね?」

 

 「ちょっと待ってくださないね。ふむふむ。」

 

 「厳選した方が良いかもしれませんね。10冊ぐらいしか買えないですね。」

 

 「ぬぁにぃ~!!」

 

 地面に両手足を着けて、彼の背景にガーン!! ていう文字が見えないが見える。そんなくだらない一人芝居を終えた一也は一冊一冊吟

味しながら厳選した10冊を選んで行く。買う時は変身魔法を使って、長身でシルクハットを被り片眼鏡をして、右手にはスティックを持

ちスーツ姿の左わきにエロ本10冊を抱え込んでいるジェントルマン? がそこに居た。

 

 

 「それでは買ってきますかね。」

 

 私はエロ本10冊を左わきに抱えてレジに行きました。この人また大量のエロ本買ってるよっていう顔をされましたが、私は全然気にし

ていません。なぜなら、これが私という人間だからですね。さぁ早く読まなくてはいけませんね。

私はルンルン気分で書店を出ました。

 そして早速、公園の個室トイレに駆け込んで変身魔法を解いた。やっぱり何時もの状態がしっくり来るな。変身魔法でジェントルマン

になると口調とかその他もろもろが変わるから、違和感バリバリ何だよな。それはそうと、外は大分暗くなっていたな。書店に入ったの

がまだ、昼過ぎだったのに……時間が経つのは早い。今日の収穫は家に帰ってから楽しむとしようか。

 

 

 

 俺が夜道をルンルン気分で帰宅中に起きた事なんだ。曲がり角を曲がったら突然体に衝撃が伝わったんだ。

不意に一瞬だけ意識が遠くなる……手元を離れて宙に舞う俺の買ったエロ本をいれた紙袋。それが、道路にバタッと落ちた次の瞬間、走

ってきた車が見事にそれを跳ねて、エロ本を入れていた紙袋が吹き飛ばされて行き、べチャッという嫌な音とを出した。そう、飼い主が

拾って処分しなければならない犬の糞に向かって、見事にダイレクトアタックを決めた。しかも中身も飛び出していた為に、数冊が犬の

糞の被害にあってしまった。

 

 

 「アアアァァァアアァァァ……」

 

 「アアアアアアアアアアアアアアアァァァアアアアアアアアァァァァアアァァァァァァアァァァァァァアアアアアアアアアアァァァァ

ァァァァァァァアアアアアァァァァァァアア!!!!!!!!!!!!」

 

 「テメェら! よくも俺のバイブルをぉぉぉぉぉお!!」

 

 「許さん!!!!!!」

 

 目の前には防具服と武装を展開している。赤髪でショートヘアーでボーイッシュの印象を受ける美女と右目が紺、左目が青で微妙に色が違

うオッドアイで碧銀の髪の美少女が居た。その二人からは戸惑いの色が見えたが、全く気にも止める気にならない。

 

 

 

 

 

 

 

 「さぁ!! 覚悟は出来てんだろうな!!」

 

 今、戦いの火蓋が切って落とされた。



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7.最強(へんたい)降臨

コレで、移転は終わった。


 アインハルトside

 

 

 

 今わたしと先ほどまで手合わせ(無理矢理)していた彼女は臨戦態勢をとっています。それも、目の前に居るキレている少年に対してで

す。私は彼の事を知っています……エロで変態という事で有名で、わたしと一緒のクラスの男子生徒です。ですが、今目の前に居る彼があ

の『彼』……三島一也さんと同一人物だと言われても信じきる事が出来ませんし、彼の事を知っているクラスメイトに話しても、多分信じ

てもらえないでしょう。

 

 

 

 それ程までに今の彼から溢れ出ている威圧感が物語っています。

 

 

 流れる冷や汗が額を伝い、頬を流れ、下顎まで伝って来るのがハッキリと分りますし、両足が震えてまともに動いてくれるかが心配です。

更に拳を作っている手は、嫌な汗が溜まり悪い状態です。

 彼が一歩ほど足を動かした瞬間、場の緊張感が一気に高まり。そして、わたしとノーヴェ・ナカジマさんは、緊張感を高めていつ攻撃され

ても良いように構え彼の一つ一つの動きに細心の注意を払う。

 彼から一時も目を離すことが出来ません。もし、瞬きや視線を一瞬でも外したらやられてしまいそうな、そんな感じです。

 

 

 「!!」

 

 突如として、私の視界から彼の姿が消えた瞬間。

 

 

 「ガッ!」

 

 「え? いつ?!」

 

 強烈な打撃音と共に、ノーヴェさんの身体が私の真横を吹き飛んで行き壁に叩きつけられて地面に仰向けで倒れていました。わたしがそ

の事に気づいたのは、ノーヴェさんが壁に叩きつけられた爆音が聞こえてからでした。何時の間にかノーヴェさんが立っていた場所には、

彼が正拳突きをした姿があり、その足元のコンクリートが陥没していました。それはノーヴェさんも一緒のようで、痛みに堪えながらも顔

に『何時の間に?!』というのが表情に出ていました。わたしは疑惑の声が何時の間にか口から洩れていました。しかも無意識に……。

 彼の『入り』と『抜き』が早すぎて捉える事が出来なかったし、視界にも映らなかった。

 

 

 「構えを解くなぁぁあぁぁ!!!!」

 

 「ガハッ!!」

 

 ノーヴェさんの叫び声が聞こえた時には、もうすでに彼が何時の間にか目の前に居て、というより懐に入られていました。彼の繰り出し

た掌打がわたしの腹部に深々と突き刺さった瞬間、目の前が一瞬真っ白になり、身体が文字通り『く』の字に折れ曲がり防具服の背中部分

が吹き飛ぶのと同時に浮遊感が襲ってきた。内部からくる激痛により、曝け出された背中が壁に叩きつけられた感覚が無く、肺に溜まって

いた酸素が口から一気に吹き出て地面に倒れ伏せしまい、視界と意識がハッキリしない状況に陥ってしまった。

 わたしは恐怖と共に驚愕していました。たったの一撃で、此処までのダメージを負わされた。しかも、相手は魔法も、防具服。ましてや

武装もしていない相手にだ。

 

 視線を前に移動させた。未だにわたし達に向けて、重圧な威圧感を放っている彼の姿があった。

 

 

 ゾクリと背筋が凍え、手足の震えが誰が見ても分かる程震えているアインハルトの姿があり、ノーヴェは両膝に両手を着けて立ち上がる

姿が見受けられた。

彼女たちは完全に彼の先の一撃により、相当なダメージを負わされていた。

 

 

 「はぁぁぁぁ!!」

 

 立ち上がったノーヴェさんが、一吼えしどっしりと構えた時、ノーヴェさんの雰囲気がガラリと変わりました。そして、魔力が一気に高

ぶったのが分ります。本気になったのでしょう。わたしの時は、やはり手加減をされていたみたいですね……悔しい。彼の動きを見ただけ

で、彼に手足も出ないほど全く敵わないという事を自覚させられた事。そして、同い年の彼とこれほどまでの差があるのが悔しい。わたし

は、知らず知らずのうちに血が滲むほど両手を強く握っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 ノーヴェside

 

 

 立ち上がれたのは良いけど、大分足に来ている。たった一撃であんな重いのを喰らったのは初めての経験だった。姉貴達よりも一撃が重

く早い。いくらあたしが本気を出しても勝てるかどうか……いや違う。正直に言えば勝てる気が全くしない……でも、負けるわけにはいか

ない。あたしらのせいで目の前の少年が暴走してしまった?

 

 

 

 「今、あたしが落ち着かせてやるからな。ジェットエッジ!! 行くぞ!!」

 

 『Yes,my road.』

 

 一撃でボロボロになっていた防具服が修復され、しっかり地に足を着けて構え……力強く地面を蹴った。約5m程離れていた距離が一瞬に

して0になる。その速さにアインハルトは、完璧にとらえる事なんて出来ていなかった。ノーヴェは彼の間合いに入ったのと同時に懐に飛び

込んで、魔力運搬により肉体強化された渾身の右ストレートを放った。

 

 

 「な?!」

 

 しかし、それが決まる事は無かった。彼は彼女の放った右ストレートを防ぐので無く、彼女の拳を文字通り真正面から握っていた。それ

は彼女を驚愕させ、動きを止めるのに十分過ぎた。だが、それも束の間。もう彼は次の行動に出ていた。

 拳を掴んでいた腕を一気に振り上げた。それも、ノーヴェの身体ごとだ。彼女は正拳突きが真正面から握られたという事を脳内でシッカ

リ整理する前に、急激な浮遊感が襲ったためにパニック状態に陥ってしまった。彼は振り上げた腕をそのまま一気に地面に向けて振り下ろ

した。

 

 

 「ガっ!!」

 

 背中から叩きつけられたパニック状態のノーヴェは、受け身をとることが出来ず肺に溜まっていた酸素が口から一気に放出させた。更に

地面に叩きつけた瞬間、彼が手を放したために身体が地面に叩きつけられた反動によりバウンドして、宙に浮いた。

 視界が一気に狭まった。ノーヴェは何をされたのか全く分らないが、ヤバイという事だけは本能的に感じ取っていた。一也がノーヴェの

顔を掴んでいたのだった。彼はそれを、彼女ごと地面に叩きつけた。しかし、ノーヴェはギリギリの所で両手を頭の後ろに回したおかげで、

大事には至らなかった。

それでも、叩きつけられた部分は、完全に陥没し周囲に小さな亀裂を走らせていた。

 

 その瞬間、彼に大きな隙が出来た瞬間でもあった。それを見逃すほど余裕のある状況じゃないノーヴェは、顔を掴んでいる手を両手で掴

んで、更に両足をその腕に絡ませて地面に倒た。顔を掴んでいた手が外れた。腕挫十字固(うでひしぎじゅうじがため)を決める。コレで、

この少年は下手に動けないハズだ。そう、読んでの行動だった……そのハズだった。

 

 

 「う・そ・だ・ろ」

 

 体格的にも、身長的にもあたしよりも小さいコイツは、あたしの腕挫十字固(うでひしぎじゅうじがため)を決められている状態のまま

立ち上がった。あたしは開いた口がふさがらず、何も言えなかった。今あたしと戦っているこの少年は、あまりにも規格外すぎる。速いと

か、力があるとか、技があるとか、戦技能力が高いとかいう事ならどれだけ良かったものか。少年のその強さはそんな生易しい問題じゃな

い。何かが違う。そう、根本的な部分で違い過ぎる。

 

 

 「うおおおおぉぉぉぉおおぉお!!」

 

 「な?! 放すもんかぁぁぁあぁぁぁあ!!」

 

 吼えながら、あたしが彼に決めている腕挫十字固(うでひしぎじゅうじがため)の腕を無理矢理、力づくで剥がしにかかってきた。あた

しはフルパワーで剥がされない様にしてるが、無理だった。

 そんな事は分りきった事だった。あたしから離れた腕は、あたしの顔を掴もうと迫り来る腕に向かって電撃を帯びた拳『スタンショット』

を放った。あたしの反撃に獣並みの反射神経で反応して、空いている腕でガードした。その瞬間、彼の身体に電流が流れ一時的に彼の動きを

止めることに成功した。

 

 

 「喰らえッ!! リボルバースパイク」

 

 地面を力強く蹴って、地面を跳び回し蹴りを彼の側頭部にぶちこんだ。まともに喰らった彼は、棒切れの様に吹き飛んで壁に叩きつけられ

地面に倒れる。しかし、ノーヴェの表情は全く優れてなく、どちらかというと苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

 アイツ、あたしのリボルバースパイクが側頭部に触れた瞬間、真後ろにバックステップしたのと同時に、首を折る勢いで捻って威力を完全

に殺していた。完璧に見切られていた。

周りから見たら完全に決まっていたように見えるが、分る奴には分かる。何よりも決まった時の手応えが殆んど無かった。つまり、アイツは

そんなにダメージを負っていない。あたしは構えを解かない、解くわけにはいかない。もっと神経を集中させ、アイツを見る。

 

 

 「やっぱり、殆どダメージが無い。」

 

 アイツは何事も無かったようにムクリと立ち上がった。アイツにダメージが殆ど無いという事は分っていたけど、結構ショックだった。あ

たしの放った渾身の一撃がこうも簡単に見切られた上に、殆どダメージを負っていない。

 立ち上がった彼が、こちらを向いてニヤリと笑った。ノーヴェの背筋が凍り、鳥肌がブワッと総立ちになった。生物としての本能が勝手に

身体を動かした。両腕をクロスさせて防御の態勢に入ったのと同時に、あたしの視界から彼の姿が音も無く消えた次の瞬間。

 

 

 「!?」

 

 彼はすでに目と鼻の先に居て、凶悪な拳が高速で向かってくるのが見えた彼女は、物理魔法障壁を瞬時に展開して両腕をクロスさせた前に

張った。だが、それすらも凶悪な拳の前では、紙屑同然だった。彼の拳が彼女の張った物理魔法障壁に衝突したとき、言い表せない衝撃が全

身を襲った時には、パリンという鏡が割れたような音がやけに、耳に残った。

 

 

 「グアハァツ!!!」

 

 物理魔法障壁をぶち抜いた拳は、彼女が防御の為にクロスさせた両腕真上に弾き、拳は彼女の丁度左胸に突き刺さった。まるで、高速で走っ

ている重量級の車に轢かれたと思わせる様な吹っ飛び方をしたノーヴェは、何度も地面をバウンドし、壁をぶち抜いてやっとのことで止まった

が、完膚なきまでにボロボロにされた彼女は、それでも立ち上がろうとしていた。意識が混濁する中でだ。

そして、彼女は立ち上がり構えをとる。更にそんな彼女の隣先ほどまで、地面で倒れていたアインハルトが手足を震わせながらも構えを作っ

ていた。

 

 

 「ノーヴェさん。すいません。わたしも一緒に戦います。」

 

 「分ったけど、無茶はするな。」

 

 コクリと頷くアインハルト。心身ともにボロボロなノーヴェに、恐怖を刻み込まれているアインハルト。そんな二人の共同戦線が今張られ、

第二ラウンドの鐘が鳴った。



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