シンフォギア世界とデュエルモンスターズ (乾燥海藻類)
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響ちゃんとデュエルする話

久しぶりにGXを見てたら書いてみたくなりました。
現役のデュエリストには物足りない内容かもしれません。



まずは自己紹介をしよう。俺の名前は音羽遊蓮(おとわゆうれん)。どこにでもいる中学二年生だ。身長は同年代に比べれば高い方、体重はまあ普通、趣味は……。

「おーーい、遊蓮くーん。見て見て、これぇー」

「響、まずはおはようだろ」

「うん、おはよう。でさー、これこれ」

響は見せつけるように1枚のカードをこちらに向けた。

「へぇ、ギルフォード・ザ・ライトニングか」

 

《ギルフォード・ザ・ライトニング》

星8/光属性/戦士族/攻2800/守1400

このカードはモンスター3体をリリースして召喚する事もできる。

(1):モンスター3体をリリースしてこのカードのアドバンス召喚に成功した場合に発動する。

相手フィールドのモンスターを全て破壊する。

 

まあ強いっちゃあ、強い。光属性や戦士族はサポートカードも多いし、十分フィニッシャーになりうるカードだ。だが、やはり単体では使い難さが目立つ。一応響のデッキは戦士族主体だが、考えなしに差し込んでは活躍できまい。シナジーのあるカードを組み込む必要があるが……。

ここで響の顔を見つめて思い直す。

さすがに楊枝で重箱の隅をほじくるようなちゃちゃをいれて、太陽のような笑顔を曇らせるほど、俺は鬼畜ではない。

「強力なカードだな。こりゃあ、響のエースも交代かな?」

「えぇー、それはないよ。わたしのエースは不動だよ」

そう言って響は自分のデッキケースから1枚のカードを引き抜いた。

《E・HERO ジ・アース》のカードを。

世界に1枚ずつしか存在しない「プラネット・シリーズ」のひとつ。

ランクはもちろん【Lランク(レジェンド)】。

――そのレプリカである。

とはいえ、相当なレアカードなのは間違いない。封入率は明らかにされていないが、【Bランク】に指定されているからだ。

それを引き当てたのだから、かなりの豪運と言えるだろう。レプリカだがしっかりとシリアルナンバーが刻まれており、さすがの響も即日に所有者登録を行った。これを怠ると、響のような子供が持っているレアカードなど簡単に奪われてしまうからだ。

レアカード狩りは重罪だ。レプリカとはいえ【Bランク】のカードを強奪すれば、初犯であっても執行猶予なしの実刑は免れない。また捌くのだって闇ルートにしか流せない。基本的にリスクとリターンが釣り合っていないため、登録されたレアカードを強奪するやつはほとんどいない。噂ではそういった闇組織が存在するみたいだが、俺たちが関わることはないだろう。

「でも、召喚したことはないんだろ?」

俺がそう指摘すると、響は息が詰まったように押し黙った。融合素材である《E・HERO オーシャン》も《E・HERO フォレストマン》も響は持っていない。結構な高額カードだからな。パックから狙うというのもあまり現実的ではない。実際、響は最初そうしていたが、いつからか購入を控えて貯金するようになっていた。

「ねぇねぇ、今日もお昼休みにデュエルしようよ」

「なんだ、また俺の連勝記録を更新させてくれるのか? 響は本当にいいやつだなぁ」

「むー、そうはいかないよ。昨日、未来と一緒にデッキ調整したからね。遊蓮くんじゃ、すぐに役不足だよ」

自信があるのかないのか分かんねぇな。

 

 

 

 

 

「じゃあ、いつも通りエクストラデッキはなしでな」

「うん、いいよ」

この世界は融合、シンクロ、エクシーズといったエクストラデッキに入るカードは軒並み高額だ。

ペンデュラム? リンク? そんなもの、ここにはないよ。

響だって例の1枚しか持ってない。何故こんなに希少なのか、理由は分からん。流通量が少ないのは確かなのだが、メインデッキで勝負しろよというメッセージだろうか。

一度そういったカードを使ってボッコボコにしたら「なしなし、そういうのは全部なしッ!」と涙ながらに懇願された。それ以来、響とのデュエルではエクストラデッキは使っていない。

エクストラなしなら【帝】を使いたいが、あれも割と高いんだよな。

「じゃあ、響」

「うん、遊蓮くん」

 

『デュエルッ!』

 

「俺のターン、ドロー。俺は《アームド・ドラゴン LV3》を召喚」

 

《アームド・ドラゴン LV3》

星3/風属性/ドラゴン族/攻1200/守 900

(1):自分スタンバイフェイズにフィールドのこのカードを墓地へ送って発動できる。

手札・デッキから「アームド・ドラゴン LV5」1体を特殊召喚する。

 

「さらにカードを2枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドローッ!」

 

相変わらずの気合だ。あれで最後まで持つんだから大したもんだよ。

 

「魔法カード《増援》を発動。その効果でデッキから《切り込み隊長》を手札に加えて、そのまま召喚ッ! そして効果発動。手札の《E・HERO ワイルドマン》を特殊召喚ッ!」

 

ワイルドマンか……罠カードの効果を受けないヒーローモンスター。攻撃力は1500と高くないが、って1200のドラゴン置いてる俺が言えることじゃないな。

 

「まだまだいくよ。装備魔法《融合武器ムラサメブレード》をワイルドマンに装備、さらにフィールド魔法《ガイアパワー》を発動ッ!」

 

《切り込み隊長》 攻撃力 1200 → 1700

《E・HERO ワイルドマン》 攻撃力 1500 → 2300 → 2800

 

おお、攻撃力2800か。ギルフォード・ザ・ライトニングいらないじゃん。

ワイルドマンは罠カードの効果を受けない。装備状態のムラサメブレードは破壊されない。なかなか考えてるな。

 

「バトルッ! ワイルドマンでアームド・ドラゴンを攻撃ッ! ワイルド・スラッシュッ!」

 

「リバースカードオープン。《和睦の使者》を発動。このターン、自分のモンスターは戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは0になる」

 

アームド・ドラゴンの眼前に和服の巫女が現れバリアを張る。攻撃は弾かれ、ワイルドマンは悔しそうに引き下がった。

 

「ううー、バトルフェイズは終了。わたしはカードを1枚伏せてターンエンド」

 

立花響  LP4000 手札1 モンスター2 伏せ1

音羽遊蓮 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1

 

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズに《アームド・ドラゴン LV3》の効果発動。このカードを墓地に送り、デッキから《アームド・ドラゴン LV5》を特殊召喚」

 

《アームド・ドラゴン LV5》

星5/風属性/ドラゴン族/攻2400/守1700

(1):手札からモンスター1体を墓地へ送り、そのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ、

相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

この効果を発動するために墓地へ送ったモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ、

その相手モンスターを破壊する。

(2):このカードが戦闘でモンスターを破壊したターンのエンドフェイズに、

フィールドのこのカードを墓地へ送って発動できる。

手札・デッキから「アームド・ドラゴン LV7」1体を特殊召喚する。

 

さて、ひとつめの効果を発動したいが、あいにく攻撃力2800以上のモンスターは手札にない。せめて「元々の攻撃力」だったらなぁ。ま、愚痴っても仕方ない。

 

「魔法カード《ナイト・ショット》を発動。伏せカードを破壊」

 

「――ッ! チェーンして発動……はできないんだったぁぁッ!」

 

伏せカードの《収縮》が効力を発揮できずに墓地へと送られる。おお、危ないところだった。

 

「バトルフェイズ。アームド・ドラゴンで切り込み隊長を攻撃」

 

アームド・ドラゴンの尾撃で切り込み隊長が破壊される。

 

立花響 LP4000 → 3300

 

「カードを1枚伏せてターンエンド、そしてエンドフェイズに《アームド・ドラゴン LV5》の効果発動。このカードを墓地に送り、デッキから《アームド・ドラゴン LV7》を特殊召喚」

 

《アームド・ドラゴン LV7》

星7/風属性/ドラゴン族/攻2800/守1000

このカードは通常召喚できない。

「アームド・ドラゴン LV5」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1):手札からモンスター1体を墓地へ送って発動できる。

墓地へ送ったそのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ、

相手フィールドのモンスターを全て破壊する。

 

音羽遊蓮 LP4000 手札2 モンスター1 伏せ2

立花響  LP3300 手札1 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドローッ!」

 

さあ、モンスターの攻撃力は同じ。どうするかな。

 

「わたしは永続魔法《連合軍》を発動。この効果でワイルドマンの攻撃力がアップッ!」

 

《E・HERO ワイルドマン》 攻撃力 2800 → 3000

 

おお、攻撃力3000か。ギルフォード・ザ・ライトニングいらないじゃん。

ここで響の手が止まる。おそらく追撃のモンスターを召喚するか思案しているのだろう。俺のフィールドには伏せカードが2枚。昔は無警戒に突っ込んでくるばかりだったからなぁ、成長したもんだ。

 

「バトルッ! ワイルドマンの攻撃ッ! ワイルド・スラッシュッ!」

 

「リバースカードオープン。《攻撃の無敵化》のひとつめの効果を発動。アームド・ドラゴンはこのバトルフェイズ中、戦闘及びカードの効果では破壊されない」

 

「でも、ダメージは受けてもらうよッ!」

 

音羽遊蓮 LP4000 → 3800

 

「バトルフェイズは終了。わたしはモンスターをセットしてターンエンド」

 

立花響  LP3300 手札0 モンスター2 伏せ0

音羽遊蓮 LP3800 手札2 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。魔法カード《抹殺の使徒》を発動。セットモンスターを除外」

 

「ああ、わたしの《ネクロ・ガードナー》が……」

 

ネクロ・ガードナーか、ちゃんと防御面も考え始めたようだな。つかこいつで追撃しようと考えてたのか? まあ連合軍があるから、多少のダメージソースにはなりそうだが。

 

「続けて《ボマー・ドラゴン》を通常召喚」

 

《ボマー・ドラゴン》

星3/地属性/ドラゴン族/攻1000/守 0

(1):このカードの攻撃で発生するお互いの戦闘ダメージは0になる。

(2):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた場合に発動する。

このカードを破壊したモンスターを破壊する。

 

「バトル。ボマー・ドラゴンでワイルドマンを攻撃」

 

「確かボマー・ドラゴンの効果って……」

 

当然ようにボマー・ドラゴンはワイルドマンの剣で両断されるが、両手に抱えていた爆弾でワイルドマンを道連れにする。

 

「続けてアームド・ドラゴンでダイレクトアタック」

 

「えーと。アームド・ドラゴンの攻撃力が2800で、わたしのライフが3300だから、500残るッ!」

 

立花響 LP3300 → 500

 

「な、なんとか持ちこたえた……」

 

「それはどうかな? リバースカードオープン。《破壊指輪(はかいリング)》。自分フィールド上の表側表示モンスター1体を破壊し、お互いに1000ポイントダメージを受ける」

 

「え? お互いに? 1000ポイント?」

 

俺のフィールドにいるアームド・ドラゴンの指に破壊指輪がはまり、閃光を放つ。哀れアームド・ドラゴンは爆発四散。その衝撃波が互いのプレイヤーにダメージを与える。

 

音羽遊蓮 LP3800 → 2800

立花響  LP 500 → 0

 

デュエルデスクから試合終了を告げる無情のブザーが鳴り響いた。

「ううー、また負けたぁー」

「でも惜しかったじゃない。ライフは削れたし」

観戦していた未来がやってきて、響を慰める。

「そんな低い志でやってないよ。それに削れたのは実質200ポイントだし」

「それもそうね」

「未来ー、もっとちゃんと慰めて。わたしはすっごく落ち込んでるのッ!」

「はいはい」

未来は溜め息をこぼしながら、やれやれといった表情でこちらに向いた。

俺は何も言えずに肩をすくめるだけだった。

 

 

 



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ツヴァイウィングとデュエルする話

「デュエル大会?」

「うん、ふぁいこふぇ」

おにぎりをリスのように頬張りながら、響は一枚のチラシをこちらに手渡した。

ふむふむ、アイドルユニットのツヴァイウィングとコラボしたデュエル大会か。優勝者にはグッズセットとスペシャルパック。

「ね、いいでしょ? 一緒に出ようよ」

「未来は? 出ないのか?」

「未来はその日、用事があるって。あーあ、わたし呪われてるかも……」

どんな理屈か知らないが、それだとむしろ呪われてるのは未来じゃないか? まあ、あいつも色々と忙しいやつだからな。

「ふーん。ま、俺はその日予定はないから、つきあってやるよ」

「本当? よかったー、もうエントリーも済ませてあるから、断られたらどうしようかと思ってたんだー」

相変わらず無駄に行動力のあるやつだ。

 

 

 

 

 

というわけで、やってきました大会当日。

参加者は64人。かなりの倍率だったらしい。ふたりともがエントリーできたのは幸運だったな。

まずは32人がふたつのブロックに分かれてトーナメント方式で戦う。各ブロックの優勝者ふたりがタッグでツヴァイウィングとエキシビジョンマッチを行う。

トーナメントはともかく、即席のタッグで戦うというのはどうなんだろう。イベンターだかプロモーターだかの作為を感じる。正統派アイドルとして売っているツヴァイウィングがそんな小細工をするとも思えないし。

ああ、トーナメントは終了したよ。やりました、勝ちました、優勝です。

やったぜ。

まあ、お世辞にもレベルが高いとは言い難いやつらだった。デュエリストというよりはアイドルファンが必死でデッキを組んだって感じだったな。

響とは別ブロックに分かれたから、あいつと組めれば面白いデュエルになると思っていたのだが、とぼとぼと肩を落として歩いてくる姿を見て諦めた。分かりやすいやつ。

「……負けたのか? 響」

「うん、決勝まではいったんだけどねー」

ということは、響を負かしたやつとタッグを組むのか。

「どんなやつだった? どんなデッキ使ってた?」

「銀髪のかわいい女の子だったよ。使ってたカードはげんそうっていう、女の子カードだった」

……幻想……女の子……幻奏か。光属性、天使族。

だめだな。シナジーのあるデッキは持ってない。どうするか、勝ちに徹するなら、あのデッキを使うのも考慮すべきだが。

「わたしの代わりに頑張ってね、遊蓮くん。勝てば非売品の貴重なグッズとサイン入りのCDが貰えるんだからッ!」

俺はそういったものにあんまり興味がないから、グッズは全て響に譲ることになっていた。だから響も本気で俺を応援している。

「そうか、そんなに欲しいのか? ツヴァイウィングのグッズ」

「もちろんだよッ!」

響は鼻息を荒くしてそう言った。ならば仕方ない。今回限りは、勝利をリスペクトしよう。

鬼にならねば見えぬ地平がある!

 

 

 

 

 

「あんたがAブロックの優勝者か」

「ええ、音羽遊蓮。中二です」

「なんだ、あたしのいっこ下かよ。あたしは雪音クリスだ。よろしくな」

銀髪の女の子は、年齢のわりに豊満な胸を揺らしながら握手を求めてきた。

「よろしくお願いします。雪音さん」

「おう。で早速だけどよ、おまえはどんなデッキ使ってるんだ? あたしは【幻奏】デッキなんだけど、知ってるか?」

知ってます。てか組んだことも使ったこともあるし。こっちではないけど。

「ええ、天使族モンスターですよね。でも即席コンビで合わせようとしてもボロが出るだけです。今回はエキシビジョンですし、お互い好きにやりましょう」

「……へぇ。ま、いいか。あたしもごちゃごちゃと考えるのは性に合わないしな。けど、足引っ張るんじゃねぇぞ」

「ええ、その心配はありませんよ」

そのあと軽く雑談をしているうちに、アナウンスがあった。それに従い特設のデュエルフィールドに移動する。すでに観客は満員、ステージ衣装のツヴァイウィングのふたりが仁王立ちで待ち構えていた。これがエンタメデュエルか。

「よくきたな。勇敢なるデュエリストたちよ」

天羽奏がマイクを片手に口上を述べる。

「今宵は我らツヴァイウィングがお相手いたす」

風鳴翼がほほを赤らめながら、眼を伏せがちにそう続けた。

ちなみに、デュエル進行が速かったせいかまだ夕方と呼ぶのも少し早い。

「へッ! 面白れぇじゃねぇか。いくぜ、遊蓮ッ!」

「あ、はい」

 

『デュエルッッ!!!!』

 

四人の声がハーモニーのように重なり合う。観客の声がいっそう盛り上がった。

 

「がんばってー、ゆーうーれーんーくーんッ!」

 

最前列に陣取ってる響の声援が届く。デュエルディスクが点滅し、ターンの順序が決定した。

 

天羽奏 → 雪音クリス → 風鳴翼 → 音羽遊蓮

 

全員最初のターンはバトルできない。フィールド、墓地は各々で別。なのでタッグデュエルというよりは、バトルロイヤルに近い。できれば一番目がよかったが、妨害がないことを祈ろう。

 

「まずはあたしからだ、ドローッ! あたしは《激昂のミノタウルス》を召喚ッ!」

 

《激昂のミノタウルス》

星4/地属性/獣戦士族/攻1700/守1000

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

自分の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、

その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。

 

「カードを2枚伏せてターンエンドッ!」

 

天羽奏 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「あたしのターン、ドローッ! 速攻魔法《サイクロン》を発動。あたしから見て右側のカードを破壊するッ!」

 

「――チッ、《幻獣の角》が……」

 

「そして《幻奏の音女アリア》を召喚。続けて魔法カード《トランスターン》を発動。アリアを墓地に送り、種族、属性が同じでレベルがひとつ高いモンスターをデッキから特殊召喚する。来いッ! エレジーッ!」

 

《幻奏の音女エレジー》

星5/光属性/天使族/攻2000/守1200

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

自分フィールドの特殊召喚された「幻奏」モンスターは効果では破壊されない。

(2):特殊召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、

自分フィールドの天使族モンスターの攻撃力は300アップする。

 

「あたしはカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

雪音クリス LP4000 手札2 モンスター1 伏せ1

天羽奏   LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「次は私のターンね、ドロー」

 

「この瞬間、リバースカードオープン。《強化蘇生》、墓地のアリアを特殊召喚するッ!」

 

「――えぇ、このタイミングで?」

 

風鳴翼が困惑の声を上げる。これは鉄壁入ったな。

 

《幻奏の音女アリア》

星4/光属性/天使族/攻1600/守1200

(1):特殊召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、

自分フィールドの「幻奏」モンスターは効果の対象にならず、

戦闘では破壊されない。

 

「強化蘇生の効果でレベルがひとつ上がり、攻守が100ポイントアップ。加えてエレジーの効果で攻撃力が300アップだッ!」

 

これで幻奏モンスターは効果の対象とならず、戦闘では破壊されない。また特殊召喚された幻奏モンスターは効果では破壊されない。これはそう簡単には崩せないだろう。

風鳴翼も多少怯んだようだが、持ち前の舞台度胸でなんとか踏みとどまる。

 

「私は魔法カード《月光融合(ムーンライト・フュージョン)》を発動。手札の《月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)》と《月光紫蝶(ムーンライト・パープル・バタフライ)》を融合……ねぇ、奏。あれって本当に言うの?」

 

「当たり前だろ。礼儀だぞ、礼儀」

 

「う、うん、えーと。青き闇を徘徊する猫よ! 紫の毒持つ蝶よ! 月の引力により渦巻きて、新たなる力と生まれ変わらん! 融合召喚! 現れ出でよ、月明かりに舞い踊る美しき野獣! 月光舞猫姫!」

 

やや照れながらも、風鳴翼は眼前で腕を組んで口上を言い切った。彼女のフィールドに妖艶な猫娘が姿を現す。

 

月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)

星7/闇属性/獣戦士族/攻2400/守2000

(1):このカードは戦闘では破壊されない。

(2):1ターンに1度、自分メインフェイズ1に

このカード以外の自分フィールドの「ムーンライト」モンスター1体をリリースして発動できる。

このターン、相手モンスターはそれぞれ1度だけ戦闘では破壊されず、

このカードは全ての相手モンスターに2回ずつ攻撃できる。

(3):このカードの攻撃宣言時に発動する。

相手に100ダメージを与える。

 

これによって会場は大盛り上がり。響も目をキラキラさせて腕を振り回している。

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

風鳴翼   LP4000 手札2 モンスター1 伏せ1

雪音クリス LP4000 手札2 モンスター2 伏せ0

天羽奏   LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

ようやく俺のターンが回ってきた。手札は悪くない、どころかかなり良い。希望は持てる手札だ。

 

「俺は《クリッター》を召喚。続けて魔法カード《モンスターゲート》を発動。クリッターをリリースし、通常召喚可能なモンスターが出るまでデッキの上からカードをめくり、そのモンスターを特殊召喚する。それまでにめくったカードは墓地へ送る」

 

ゆっくりとデッキをめくっていく。それは9枚目に現れた。

 

「《トレジャー・パンダー》を特殊召喚。めくった8枚のカードを墓地に送る。そしてクリッターの効果発動。デッキから攻撃力1500以下のモンスターを手札に加える。俺は《封印されしエクゾディア》を手札に加える」

 

『エクゾディアッ!?』

 

三人が驚愕の声を漏らす。この世界でもエクゾディアは知名度が高い。だが人気は低い。エクゾディアに限らず、特殊勝利デッキの人気がないのだ。確かに殴り合った方が盛り上がるし、面白いだろう。響だってやたらと殴りたがるし。一度バーンデッキで焼き殺したときは、三日くらい口きいてくれなかったなぁ。

 

《トレジャー・パンダー》

星4/地属性/獣族/攻1100/守2000

(1):自分の墓地から魔法・罠カードを3枚まで裏側表示で除外して発動できる。

除外したカードの数と同じレベルの通常モンスター1体をデッキから特殊召喚する。

 

「トレジャー・パンダーの効果発動。墓地の魔法・罠カードを裏側表示で1枚除外して、デッキから《封印されし者の右腕》を特殊召喚。再度効果を発動して《封印されし者の右足》を特殊召喚。再度効果を発動して《封印されし者の左腕》を特殊召喚。再度効果を発動して《封印されし者の左足》を特殊召喚」

 

なんだか呪文でも唱えてる気分だ。三人のみならず、観客の目も点になっている。あれほど盛り上がっていたのに。

 

「魔法カード《ブーギートラップ》を発動。手札を2枚捨てて、自分の墓地の罠カードを1枚選択してセットする。そしてこの効果でセットしたカードは、セットしたターンでも発動できる。俺が選択するのは《撤収命令》」

 

その瞬間、単純な比喩ではなく本当に息を呑む音が聞こえた。

 

「撤収命令をセットして、発動。俺のフィールド上のモンスターが全て手札に戻ります。……ご無礼、エクゾディアの完成です」

 

デュエルディスクから無情のブザーが鳴り響く。皮肉にもそれは、これまでのどんな歓声よりも大きく響いた。

ツヴァイウィングよ、これが絶望だ。

 

 

 



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天羽奏とデュエルする話

あのデュエルのあと、微妙な空気を醸しながら、それでもドキドキワクワクしながらふたりでスペシャルパックを開封した。

スペシャルパックとは特別な場所、特別な大会でしか入手できないパックで、中身は5枚入り、その全てが【Cランク】以上という、文字通りスペシャルなパックだ。内容は統一性があり、人によっては大ハズレということもあるが、それでもレアカードだ。一財産にはなる。

そしてパックの中身は以下の通り。

 

《E・HERO エアーマン》

《E・HERO オーシャン》

《E・HERO フォレストマン》

《ミラクル・フュージョン》

《E・HERO Great TORNADO》

 

これが運命力か……。

響は苦虫を嚙み潰したような、いや苦虫を100匹くらい押し込まれたような表情で、それでも祝福の言葉を口にしてくれた。だがこれはさすがに……なぁ。

「やるよ、響。ちょっと早いけど、誕生日プレゼントだ」

「ええッ!? さすがに貰えないよ。こんなレアカード」

響はブンブンと首を振って遠慮した。だがにやけた顔でそんなこと言っても説得力ないぞ。

「男に二言はない。俺がしまっておくよりは、響に使ってもらったほうがカードも喜ぶだろう。あれだよ、こいつらがおまえのところに行きたがってる……ってやつだ」

 

 

 

 

 

その日もいつも通りに帰路を歩いていた。違うことといえば、家の前に見慣れぬ黒い車が停まっていたことだ。

「待ってたぜ、音羽遊蓮」

車から現れたのは赤い髪のサングラスをかけた女性だった。

「あたしを覚えているか?」

サングラスを外しながら、天羽奏はこちらに問う。

「もちろんですよ。ツヴァイウィングの天羽奏さん」

「なら話は早い。ちょいとつきあってもらうぜ。リベンジマッチってやつさ」

そう言って天羽奏……奏さんはハンドサインで車に乗れと指示してきた。よっぽど前回の負けが納得できないらしい。ここでごねても面倒だろう。俺はおとなしく車に乗り込んだ。

「悪いがこいつをつけてもらうぜ」

言われるがままにアイマスクとヘッドフォンを装着する。ヘッドフォンからはツヴァイウィングの曲が流れていた。

……新手の洗脳かな?

7曲目の中盤辺りで手を取られた。されるがままに車を降りる。しばらく歩いて、立ち止まる。一拍の間があって、地面が急速に落ちていくのを感じた。これはエレベーターか。それからまたしばらく歩いたあたりで、ようやくヘッドフォンを外された。

「悪いな、つれまわして。ここがゴールだ」

アイマスクも外される。俺が立っていたのはデュエルフィールドだった。

「はいはーい。初めまして、音羽遊蓮くん。私の名前は櫻井了子。人呼んでデキるオ・ン・ナの櫻井了子よ。よろしくネ」

「えー、はい。よろしくお願いします」

軽薄そうな口調だが、その視線はこちらを値踏みするようでもあった。

「早速だけどお願いがあるの。奏ちゃんとデュエルするときに、これをつけてもらいたいのよ」

黒服の男性が医療用ワゴンを押して入ってきた。その上にはバンドのようなものが置かれていた。

「お願いできる?」

白衣の女性、櫻井さんは鼻先が触れてしまうほどの距離まで詰め寄ってきた。反射的に一歩後退してしまう。

「危険はないんでしょうね?」

「大丈夫よ、ちょーっとデータを取るだけだから」

それを了承の言葉と受け取ったのだろう。手慣れた様子でバンドを装着していく。見た目はやや大きめのリストバンドだ。

「はいOK。奏ちゃん、あとはよろしく~」

そう言って櫻井さんと黒服の男性は出て行った。嵐のような女性だったな。

「悪いな、見ての通りの自由人なんだ」

「さっきから謝ってばかりですね」

「まあ、いろいろあるんだよ、こっちにもな。さて、じゃあ始めるか」

「ええ、安心してください。今日は普通のデッキですから」

「そうかい、そりゃあ安心だ」

奏さんはクスリと笑う。だがそれもすぐに霧散して真剣な表情となった。

 

『デュエルッ!』

 

「あたしの先攻だな。ドローッ! あたしは《激昂のミノタウルス》を召喚ッ!」

 

《激昂のミノタウルス》

星4/地属性/獣戦士族/攻1700/守1000

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

自分の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、

その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。

 

「カードを2枚伏せてターンエンドッ!」

 

天羽奏 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

立ち上がりは前回と同じか。なら伏せカードはやはり《幻獣の角》かな?

 

「俺のターン、ドロー。俺はモンスターをセット、カードを3枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮 LP4000 手札2 モンスター1 伏せ3

天羽奏  LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「随分とおとなしいじゃねぇか。あたしのターン、ドローッ! 《ジェネティック・ワーウルフ》を召喚」

 

《ジェネティック・ワーウルフ》

星4/地属性/獣戦士族/攻2000/守 100

遺伝子操作により強化された人狼。

本来の優しき心は完全に破壊され、

闘う事でしか生きる事ができない体になってしまった。

その破壊力は計り知れない。

 

「そのままバトルだ。ジェネティック・ワーウルフで攻撃。激昂のミノタウルスの効果を受けて貫通効果を得る。いけ、ラッシュ・クローッ!」

 

奏さんの攻撃宣言を受けて、伏せモンスター《ボマー・ドラゴン》が姿を現す。

 

「守備力0か、ならダメージステップに《幻獣の角》を発動。ジェネティック・ワーフルフに装備」

 

やはり幻獣の角か。戦闘後に破壊されるが、ダメージとドローを優先したのか?

 

《ボマー・ドラゴン》

星3/地属性/ドラゴン族/攻1000/守 0

(1):このカードの攻撃で発生するお互いの戦闘ダメージは0になる。

(2):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた場合に発動する。

このカードを破壊したモンスターを破壊する。

 

ボマー・ドラゴンが墓地に送られたことで効果が発動。ジェネティック・ワーフルフが破壊される。

 

「だがボマー・ドラゴンを破壊して墓地に送ったことで、幻獣の角の効果が発動。カードを1枚ドローするぜ。続けて激昂のミノタウルスでダイレクトアタックだッ!」

 

「リバースカードオープン。《ドレインシールド》を発動。その攻撃を無効にして、攻撃モンスターの攻撃力分だけライフを回復する」

 

音羽遊蓮 LP4000 → 1200 → 2900

 

「まあまあってところか。あたしはカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

天羽奏  LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2

音羽遊蓮 LP2900 手札2 モンスター0 伏せ2

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。魔法カード《予想GUY》を発動し、デッキから《サファイアドラゴン》を特殊召喚」

 

《サファイアドラゴン》

星4/風属性/ドラゴン族/攻1900/守1600

全身がサファイアに覆われた、非常に美しい姿をしたドラゴン。

争いは好まないが、とても高い攻撃力を備えている。

 

「さらに《アサルトワイバーン》を通常召喚」

 

《アサルトワイバーン》

星4/光属性/ドラゴン族/攻1800/守1000

(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、

このカードをリリースして発動できる。

自分の手札・墓地から「アサルトワイバーン」以外の

ドラゴン族モンスター1体を選んで特殊召喚する。

 

「バトル。アサルトワイバーンで激昂のミノタウルスを攻撃」

 

「リバースカードオープン。《炸裂装甲(リアクティブアーマー)》を発動するぜ」

 

「こちらもリバースカードオープン《強化蘇生》。今破壊されたアサルトワイバーンを攻撃表示で特殊召喚。さらにレベルが1上がり、攻守が100アップ。激昂のミノタウルスを攻撃」

 

「なら虎の子の1枚も発動するぜ、《次元幽閉》」

 

突如発生した黒い裂け目にアサルトワイバーンが吸い込まれていく。

 

「なら、サファイアドラゴンで激昂のミノタウルスに攻撃」

 

天羽奏 LP4000 → 3800

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮 LP2900 手札0 モンスター1 伏せ2

天羽奏  LP3800 手札3 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「あたしのターン、ドローッ! あたしは《レスキューラビット》を召喚し、効果発動。このカードを除外して、デッキからジェネティック・ワーウルフ2体を特殊召喚」

 

む、レベル4が2体、来るか?

 

「永続魔法《一族の結束》を発動。攻撃力が800アップッ!」

 

ジェネティック・ワーウルフ 攻撃力 2000 → 2800

ジェネティック・ワーウルフ 攻撃力 2000 → 2800

 

「バトルだッ! ジェネティック・ワーウルフでサファイアドラゴンを攻撃。ラッシュ・クローッ!」

 

先に攻撃してきたか。まあ、攻撃力は十分だが。

 

「リバースカードオープン。《神風のバリア -エア・フォース-》を発動。相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て持ち主の手札に戻す」

 

神風に吹き飛ばされ、2体のジェネティック・ワーウルフが奏さんの手札に戻る。

 

「――クッ! あたしはカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

天羽奏  LP3800 手札3 モンスター0 伏せ1

音羽遊蓮 LP2900 手札0 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。《アボイド・ドラゴン》を召喚」

 

《アボイド・ドラゴン》

星4/風属性/ドラゴン族/攻1900/守1200

このカードの召喚は無効化されない。

このカードが召喚に成功したターン、相手はカウンター罠カードを発動できない。

 

「バトル。アボイド・ドラゴンでダイレクトアタック」

 

「リバースカードオープン《スケープ・ゴート》。自分フィールドに「羊トークン」(獣族・地・星1・攻/守0)4体を守備表示で特殊召喚する」

 

「なら俺もリバースカードオープン。《竜の逆鱗》を発動」

 

《竜の逆鱗》

永続罠

(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、

自分フィールドのドラゴン族モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、

その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。

 

「んなッ!? 貫通効果だとッ!」

 

「アボイド・ドラゴンで羊トークンを攻撃。続けてサファイアドラゴンで羊トークンを攻撃」

 

天羽奏  LP3800 → 1900 → 0

 

デュエルディスクから無情のブザーが鳴り響く。奏さんは悔しそうではあったが、あの時のようなしかめっ面ではなく、むしろ納得したような表情だった。

 

 

 



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櫻井了子とデュエルする話

その日の俺はご機嫌だった。上機嫌だった。

先日の奏さんとのデュエルでいただいた「寸志」というのが、中学生にしてはなかなかの高額な謝礼だったのだ。それに釣られたわけではないが、あれ以降もたびたびデータ取りのバイトをしている。何のデータを取っているのかは教えてもらえなかったり、何故か他言無用と念押しされたり、毎度毎度アイマスクとヘッドフォンをつけられたりと、辟易することも多々あるが、それを差し引いても割の良いバイトだった。

「はむはむ、最近の遊蓮くんは羽振りがいいねぇー」

だからこそこうして、放課後に響に奢ってやることもできるわけだ。

「さてさて、お腹も膨れたことだし、そろそろ始めようか、遊蓮くん」

「なんだ、また俺の連勝記録を更新させてくれるのか? 響は本当にいいやつだなぁ」

「むー、そうはいかないよ。昨日、未来と一緒にデッキ調整したからね。遊蓮くんじゃ、すでに役不足だよ」

なんだこのデジャヴ。

 

『デュエルッ!』

 

――十五分後、そこには地面と濃厚なキスをする響の姿が!

「ずるいずるいッ! 封魔の呪印はさすがにずるいよッ!」

 

《封魔の呪印》

カウンター罠

手札から魔法カードを1枚捨てる。

魔法カードの発動と効果を無効にし、それを破壊する。

相手はこのデュエル中、この効果で破壊された

魔法カード及び同名カードを発動する事ができない。

 

「あそこでミラクルフュージョンを引けなかった響が悪いな。ちゃんとデスティニードローしろよ」

「ちゃんとデスティニードローするってなに!? そんなに都合良く引けないよッ!」

「都合良く引くのが主人公だろ。つまりおまえには主人公力が足りない」

「主人公力ってなにさ。それにわたしはどっちかっていうとヒロイ――」

「む、ちょっとまて、メールだ」

「今大事なとこだったのにッ!」

櫻井さんからか。えーと、今から? 随分急だな。

「悪い、響。急用ができた」

「また例のバイト? 何してるか教えてくれないけど」

「守秘義務があってな。まあ別にやましい仕事じゃないよ」

「……ならいいんだけど」

話してくれないのが不満なんだろうな。でも本当にやましい仕事じゃない……と思う、たぶん。

 

 

 

 

 

「遊蓮くんは主にドラゴンデッキを使ってるみたいだけど、やっぱり拘りとかあるのかしら?」

「これといって特には、強いて言うなら入手しやすさですかね」

櫻井さんの疑問に、迷いなく本心を告げる。この世界にも人気のカテゴリーというものがあって、ドラゴン族や戦士族は人気が高い。なのでカードが入手しやすいのだ。初心者は予算の問題もあって、大体この2種族から始めることが多い。俺も例外なくドラゴンデッキから始めて、今でもそれを使っている。響は戦士デッキだな。今ではちょっと中途半端なヒーローデッキだけど。

「そうなの? 実は、このデッキを使ってもらいたくてね。いいかしら?」

そう言ってデッキを丸々手渡してきた。それにざっと目を通す。ふむ、サイキック族か。でもなんか整合性がないような気もするが……まあいいか。

「いいですよ。知らないカードを使うのも面白そうですからね」

実際サイキック族ってほとんど使った記憶がないんだよな。

「よかった。それと、今日は私が相手するけど、手加減なんてしないでネ」

櫻井さんはウィンクしながらそう言った。不覚にもドキッとしてしまう。でもデュエルできたんだな、この人。

 

『デュエルッ!』

 

いつものようにバンドを装着しながらデュエルは始まった。

 

「先攻は私ね、ドロー。私は《先史遺産ネブラ・ディスク》を召喚。ひとつめの効果で《先史遺産クリスタル・スカル》を手札に加えるわ」

 

《先史遺産ネブラ・ディスク》

星4/光属性/機械族/攻1800/守1500

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。

デッキから「先史遺産ネブラ・ディスク」以外の

「オーパーツ」カード1枚を手札に加える。

(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドのモンスターが

「先史遺産」モンスターのみの場合に発動できる。

このカードを守備表示で特殊召喚する。

この効果を発動するターン、自分は「オーパーツ」カード以外の

カードの効果を発動できない。

 

「そして手札のクリスタル・スカルの効果発動。このカードを捨てて、デッキから《先史遺産ゴールデン・シャトル》を手札に加える。カードを2枚伏せてターンエンドよ」

 

櫻井了子 LP4000 手札4 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

さて、相手はオーパーツか。パターンに入れば瞬殺されるな。うーん、どう動くかな。

 

「速攻魔法《緊急テレポート》を発動。デッキから《サイコ・コマンダー》を特殊召喚。そして《シンクロ・フュージョニスト》を通常召喚。レベル2のシンクロ・フュージョニストにレベル3のサイコ・コマンダーをチューニング。《マジカル・アンドロイド》をシンクロ召喚」

 

《マジカル・アンドロイド》

星5/光属性/サイキック族/攻2400/守1700

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

自分のエンドフェイズ時、自分フィールド上のサイキック族モンスター1体につき、自分は600ライフポイント回復する。

 

「シンクロ・フュージョニストの効果で《ミラクルシンクロフュージョン》を手札に加えます。そしてバトル。マジカル・アンドロイドでネブラ・ディスクを攻撃」

 

「リバースカードオープン、《重力解除》。フィールド上の全ての表側表示モンスターの表示形式を変更するわ」

 

激突寸前だったマジカル・アンドロイドとネブラ・ディスクが水を差されたように後退する。

 

「俺はカードを2枚伏せてターンエンド。エンドフェイズにマジカル・アンドロイドの効果でライフが600回復します」

 

音羽遊蓮 LP4600 手札3 モンスター1 伏せ2

櫻井了子 LP4000 手札4 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。私は永続魔法《先史遺産-ピラミッド・アイ・タブレット》を発動。フィールドの「先史遺産」モンスターの攻撃力は800アップするわ」

 

先史遺産ネブラ・ディスク 攻撃力 1800 → 2600

 

「そして条件を満たしたので、《先史遺産アステカ・マスク・ゴーレム》を特殊召喚」

 

《先史遺産アステカ・マスク・ゴーレム》

星4/地属性/岩石族/攻1500/守1000

自分のターンに自分が「オーパーツ」と名のついた魔法カードを発動している場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

「先史遺産アステカ・マスク・ゴーレム」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

 

アステカ・マスク・ゴーレム 攻撃力 1500 → 2300

 

「ネブラ・ディスクを攻撃表示に変更してバトルフェイズに移行。まずはアステカ・マスク・ゴーレムでマジカル・アンドロイドを攻撃」

 

マジカル・アンドロイドがアステカ・マスク・ゴーレムのパンチで粉砕される。手札にはゴールデン・シャトルもあったはずだが、温存したのか?

 

「続けてネブラ・ディスクでダイレクトアタック」

 

音羽遊蓮 LP4600 → 2000

 

「メインフェイズ2に移行してネブラ・ディスクとアステカ・マスク・ゴーレムでオーバーレイ。《No.36 先史遺産-超機関フォーク=ヒューク》を守備表示でエクシーズ召喚」

 

《No.36 先史遺産-超機関フォーク=ヒューク》

ランク4/光属性/機械族/攻2000/守2500

「先史遺産」と名のついたレベル4モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、

相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターの攻撃力をターン終了時まで0にする。

この効果は相手ターンでも発動できる。

また、自分フィールド上の「先史遺産」と名のついた

モンスター1体をリリースして発動できる。相手フィールド上の、

元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つモンスター1体を選択して破壊する。

 

出たな攻撃力0にするマン。ちなみにナンバーズは特別なカードではない。持っていると精神が汚染されるとか、世界に1枚しかないとか、ナンバーズはナンバーズでしか倒せないとか、そういうのは一切ない。本当にごく普通のカードだ。冷静に考えてみれば、そんな非ィ科学的なことなんてあるはずないしな。

 

「私はこれでターンエンド」

 

「エンドフェイズに《強制脱出装置》をフォーク=ヒュークに発動」

 

「あらぁ、酷いわね、せっかく召喚したのに」

 

緊張感のない、大して残念そうでもない声が漏れる。

 

櫻井了子 LP4000 手札3 モンスター0 伏せ1

音羽遊蓮 LP2000 手札3 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。2枚目の《緊急テレポート》を発動。デッキから《クレボンス》を特殊召喚。そして伏せておいた《ミラクルシンクロフュージョン》を発動。フィールドのクレボンスと墓地のマジカル・アンドロイドを除外して《アルティメットサイキッカー》を融合召喚」

 

《アルティメットサイキッカー》

星10/光属性/サイキック族/攻2900/守1700

サイキック族シンクロモンスター+サイキック族モンスター

このカードは融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚する事ができる。

このカードはカードの効果では破壊されない。

このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、

その守備力を攻撃力が超えていれば、

その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

また、このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、

破壊したモンスターの攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。

 

「さらに《沈黙のサイコウィザード》を通常召喚。効果で墓地のサイココマンダーを除外します」

 

《沈黙のサイコウィザード》

星4/地属性/サイキック族/攻1900/守 0

このカードが召喚に成功した時、

自分の墓地に存在するサイキック族モンスター1体を選択してゲームから除外する事ができる。

このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、

このカードの効果で除外したモンスターを特殊召喚する。

 

これで総攻撃力は相手のライフを上回った。攻撃が決まれば勝てる。ってこれ、完全にフラグだよな。

 

「バトルフェイズ。沈黙のサイコウィザードでダイレクトアタック」

 

「リバースカードオープン、《和睦の使者》。効果は知ってるわよね?」

 

「……メインフェイズ2に移行して、魔法カード《サイコ・フィール・ゾーン》を発動。除外されているクレボンスとマジカルアンドロイドを墓地に戻し、シンクロ召喚。《サイコ・ヘルストランサー》を守備表示で特殊召喚」

 

《サイコ・ヘルストランサー》

星7/地属性/サイキック族/攻2400/守2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

1ターンに1度、自分の墓地のサイキック族モンスター1体をゲームから除外して発動できる。

自分は1200ライフポイント回復する。

 

「効果で墓地のクレボンスを除外して、ライフを1200回復します」

 

音羽遊蓮 LP2000 → 3200

 

これでライフにはかなり余裕ができたが、終わるときは一瞬だからな。

 

「ターンエンドです」

 

音羽遊蓮 LP3200 手札1 モンスター3 伏せ0

櫻井了子 LP4000 手札3 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。私は手札の《先史遺産クリスタル・ボーン》を特殊召喚。そして効果発動、墓地のクリスタル・スカルを特殊召喚」

 

《先史遺産クリスタル・ボーン》

星3/光属性/岩石族/攻1300/守 400

相手フィールド上にモンスターが存在し、

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、

このカードは手札から特殊召喚できる。

この方法で特殊召喚に成功した時、

自分の手札・墓地から「先史遺産クリスタル・ボーン」以外の

「先史遺産」と名のついたモンスター1体を選んで特殊召喚できる。

 

「続けて墓地のネブラ・ディスクの効果発動。自分フィールドのモンスターが「先史遺産」モンスターのみの場合、このカードを守備表示で特殊召喚できるわ。そしてゴールデン・シャトルを通常召喚」

 

《先史遺産ゴールデン・シャトル》

星4/光属性/機械族/攻1300/守1400

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。

自分フィールド上の全ての「先史遺産」と名のついたモンスターのレベルを1つ上げる。

 

あっという間に4体のモンスターが並ぶ。ああ、これは勝負あったな。

 

「ゴールデン・シャトルの効果発動。レベルがひとつ上がるわ」

 

《先史遺産クリスタル・ボーン》  レベル3 → レベル4

《先史遺産クリスタル・スカル》  レベル3 → レベル4

《先史遺産ネブラ・ディスク》   レベル4 → レベル5

《先史遺産ゴールデン・シャトル》 レベル4 → レベル5

 

「クリスタル・ボーンとクリスタル・スカルでオーバーレイ、《No.36 先史遺産-超機関フォーク=ヒューク》をエクシーズ召喚。続けてネブラ・ディスクとゴールデン・シャトルでオーバーレイ、《No.33 先史遺産-超兵器マシュ=マック》をエクシーズ召喚」

 

《No.33 先史遺産-超兵器マシュ=マック》

ランク5/光属性/機械族/攻2400/守1500

レベル5モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、

相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターの攻撃力と、その元々の攻撃力の差分のダメージを相手ライフに与え、

与えたダメージの数値分だけこのカードの攻撃力をアップする。

 

いやー懐かしいな。よく《ガガガガール》と一緒に使ってたわ。

 

「まずはフォーク=ヒュークの効果でアルティメットサイキッカーの攻撃力を0に、そしてマシュ=マックの効果でダメージを与えるわ」

 

音羽遊蓮 LP3200 → 300

 

「マシュ=マックの攻撃力は2900アップ。アルティットサイキッカーに攻撃。受けなさい、ヴリルの火をッ!」

 

音羽遊蓮 LP 300 → 0

 

デュエルディスクから無情のブザーが鳴り響く。

「参りました。強いですね」

「ふふ、まあそれなりにはね。それに貴方の本来のデッキじゃないんだから、自慢にはならないわ。ところで、身体の調子はどう? 気分は悪くない?」

「いえ、特には。まあちょっと疲労は感じますが、慣れないデッキを使ったからでしょう」

「……へぇ、なるほど、なるほど」

櫻井さんは得心がいったように何度も頷いた。ひとりで納得するのはやめてくれないかな。対応に困る。

「うんうん、これで研究も捗りそうだわ。じゃあ今日はこれまでにしましょう。つきあってくれて、ありがとネ。はいこれ、今日のお礼」

櫻井さんは俺に封筒を渡すと、上機嫌で去って行った。相変わらずよく分からない人だな。

ふぅっと息をついて、先ほどのデュエルを思い返す。なんとなく、決められたレールの上を走っているように感じたのは、きっと気のせいだろう。

 

 

 



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『M』とデュエルする話

いつものようにバイトへ行くと、通されたのはデュエルフィールドではなく応接室だった。視線の先には赤いシャツの偉丈夫がこちらを見下ろしている。

「挨拶が遅くなって申し訳ない。俺はここの責任者でな、名前は風鳴弦十郎という。よろしく頼む」

風鳴さんはにかっと笑って握手を求めてきた。

「どうも、改めまして音羽遊蓮です。風鳴ということは翼さんとは……」

「うむ。俺は彼女の叔父にあたる。同じ風鳴でややこしいだろうからな。名前で呼んでくれてかまわん。まずは色々と事情があって挨拶が遅れたことを詫びよう。そして、そろそろ君にもうちのことを説明してもよいだろうと思ってな」

「なるほど。まあ、多少は気になっていたので助かります」

本当は説明なんてされずに終わると思っていたが、そうでもなかったらしい。

「ここはS.O.N.G.という組織でな。簡単に言うとデュエル関連の国際警察のようなものだ」

さすがにそれは予想外だった。セキュリティみたいなものかな? ヤツをデュエルで拘束しろ、的な。何かの研究所だと思っていたが、警察だったとは。

「主にレアカードを強奪するような、悪質なレアハンター共を相手にしている。巧妙な奴らだ。なかなか尻尾を捕ません」

やっぱりいるんだな、そういう奴ら。

「データ取りと称して調査していたのは、君のデュエルエナジーについてだ」

そっちのほうが驚きだよ。俺はいつの間にか『デスクロージャー・デュエル』をさせられていたのか。

「ええと、何のためにですか?」

「うむ。実はデュエルエナジーについてはよく分かっていない。この未知のエネルギーを活用する方法を模索しているのが現状だ。詳しいことは了子くんに訊いてくれ」

「……はあ」

「まあ、彼女が暴走するようなら……むっ」

そこで弦十郎さんは部屋の入口に視線を移した。不意に訪れた静寂を裂いて、大音でドアが開け放たれる。

「大変よッ! 遊蓮くんッ!」

「噂をすれば、か。どうした了子くん。そんなに慌てて」

乱入してきた櫻井さんは、弦十郎さんには目もくれず、俺へと詰め寄ってきた。

「貴方のお友達の立花響ちゃんが、病院に運ばれたらしいわ」

……なんですと?

 

 

 

 

 

病室には寝息をたてている響に、未来が付き添っていた。容体を尋ねると、外傷はなく心身が衰弱している状態らしい。深刻ではないが、しばらくの入院が必要だと。

「おばさんもきてたの。入院の準備をするために一度帰るって」

「そうか」

とりあえず命に別状はないようで安心する。先ほどあんな話を聞かされたからか、少し気になってベッドの隣に置かれている響のデッキに手を伸ばした。

……なくなっているカードはない。

「遊蓮くん、少しいい?」

「ええ、ちょっと待ってください。――未来、響のこと頼むな」

「え、うん」

いつも以上に真面目な表情の櫻井さんに促されて病室を出る。休憩室に腰を下ろすと、櫻井さんはゆっくりと口を開いた。

「響ちゃんはね、デュエルエナジーを吸い取られたのよ」

「デュエルエナジーを?」

「最近増えてるのよ。過労や衰弱で運ばれる人が。そして、その人達はデュエルディスクを装着していたの」

「つまり、デュエルで敗北して、デュエルエナジーを吸い取られたと?」

まるでアニメだな。自分でも妄想じみた言葉だと思ったが、櫻井さんはにこりともせず頷いた。

「暴行のあともないし、何かを盗られたわけじゃないから、警察も動いていないわ。本人にしてみても、デュエルをして疲れたとしか思っていないでしょうね」

「……なるほど。襲った相手のことは?」

「覚えていないらしいわ」

うーむ。言っている意味は分かるが、何が言いたいのかが分からないので続きを待つ。櫻井さんはしばらく口を噤んだが、ようやく言葉を続けた。

「……嫌な予感がするの。何かの予兆のような。弦十郎くんも動いてはいるみたいだけど、あまり芳しくないみたいね。だから貴方も……気を付けなさい」

気を付ける……か。起こってもいないことに対して不安になるのはどうかと思うが、とりあえず生返事をするしかなかった。

櫻井さんを見送って、特にできることもないと気付く。

響のお母さんに挨拶をして、未来と一緒に病院をあとにした。バス停で未来と別れ、ひとり歩く。夕焼けに染まる空を眺めながら。辺りの色が茜色から薄闇色に変わり始めたとき、景色が動いた。

「……音羽遊蓮。貴方にデュエルを申し込むわ」

直観的に理解する。目の前の女が響を襲った犯人だと。嫌な予感ほど当たるものだ。

「申し訳ないけれど、貴方に拒否権はないの」

女のデュエルディスクから光が伸びてくる。それは俺のデュエルディスクと繋がった。

「デュエルディスクが、勝手にデュエルモードに!?」

「さあ、始めるわよ」

「――チッ」

 

『デュエルッ!』

 

「俺のターン、ドロー。俺はモンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンド。……なあ、名前くらい教えてくれてもいいんじゃないか?」

 

音羽遊蓮 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「いいわよ。どうせ忘れるでしょうけど、教えてあげるわ。私の名前は『M』」

 

さすがに本名は名乗らんか。

 

「マイターン、ドロー。魔法カード《デステニー・ドロー》を発動。手札の《D-HERO ディアボリックガイ》を捨てて、2枚ドロー。《D-HERO ドリルガイ》を通常召喚。そして効果発動、手札の《D-HERO ドローガイ》を特殊召喚し、ひとつめの効果を発動。お互いに1枚ドローする」

 

《D-HERO ドリルガイ》

星4/闇属性/戦士族/攻1600/守1200

「D-HERO ドリルガイ」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。

このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ「D-HERO」モンスター1体を手札から特殊召喚する。

(2):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、

その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

 

《D-HERO ドローガイ》

星4/闇属性/戦士族/攻1600/守 800

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが「HERO」モンスターの効果で特殊召喚に成功した場合に発動できる。

お互いのプレイヤーは、それぞれデッキから1枚ドローする。

(2):このカードが墓地へ送られた場合、次のスタンバイフェイズに発動できる。

このカードを墓地から特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

「バトル。ドリルガイでセットモンスターを攻撃」

 

「セットモンスターは《仮面竜》。この効果でデッキから2体目の《仮面竜》を守備表示で特殊召喚」

 

「ドリルガイは貫通効果を持っている。続けてドローガイで《仮面竜》を攻撃」

 

「効果でデッキから《アームド・ドラゴン LV3》を特殊召喚」

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 

『M』  LP4000 手札4 モンスター2 伏せ1

音羽遊蓮 LP3500 手札4 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズに《アームド・ドラゴン LV3》を墓地に送り、デッキから《アームド・ドラゴン LV5》を特殊召喚。さらに魔法カード《レベルアップ!》を発動。《アームド・ドラゴン LV5》を墓地に送り、デッキから《アームド・ドラゴン LV7》を特殊召喚」

 

《アームド・ドラゴン LV7》

星7/風属性/ドラゴン族/攻2800/守1000

このカードは通常召喚できない。「アームド・ドラゴン LV5」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1):手札からモンスター1体を墓地へ送って発動できる。墓地へ送ったそのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ、相手フィールドのモンスターを全て破壊する。

 

「アームド・ドラゴンの効果発動。手札の《アサルトワイバーン》を墓地に送り、その攻撃力以下の相手モンスターをすべて破壊する。ジェノサイド・カッター! 」

 

アームド・ドラゴンの放った風刃によって2体のD-HEROが破壊される。

 

「――クッ!」

 

「そして《アレキサンドライドラゴン》を通常召喚」

 

《アレキサンドライドラゴン》

星4/光属性/ドラゴン族/攻2000/守 100

アレキサンドライトのウロコを持った、非常に珍しいドラゴン。

その美しいウロコは古の王の名を冠し、神秘の象徴とされる。

――それを手にした者は大いなる幸運を既につかんでいる事に気づいていない。

 

「バトル。アレキサンドライドラゴンでダイレクトアタック」

 

『M』  LP4000 → 2000

 

「続けてアームド・ドラゴンでダイレクトアタック」

 

「それは通さない。《炸裂装甲(リアクティブアーマー)》を発動」

 

「――チィ、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮 LP3500 手札1 モンスター1 伏せ3

『M』  LP2000 手札4 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「マイターン、ドロー。スタンバイフェイズにドローガイを特殊召喚。ドローガイの効果は……発動しない。そして墓地のディアボリックガイの効果発動。このカードをゲームから除外して、デッキから同名カードを特殊召喚する。続けて魔法カード《融合》を発動。フィールドの――」

 

「それにチェーンして《崩界の守護竜》を発動。アレキサンドライドラゴンをリリースし、フィールドのカード2枚を破壊する。ディアボリックガイとドローガイを破壊。ディアボリックガイは墓地に、ドローガイはゲームから除外される」

 

「――な、くぅ!」

 

一度発動した融合は止まらない。不発にならないということは、手札に融合素材があるということだろう。ならば融合しなければならない。

 

「私は手札の《D-HERO ディバインガイ》と《D-HERO ダッシュガイ》を融合。来なさい、《D-HERO ディストピアガイ》」

 

《D-HERO ディストピアガイ》

星8/闇属性/戦士族/攻2800/守2400

「D-HERO」モンスター×2

「D-HERO ディストピアガイ」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、

自分の墓地のレベル4以下の「D-HERO」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

(2):このカードの攻撃力が元々の攻撃力と異なる場合、

フィールドのカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊し、このカードの攻撃力は元々の数値になる。

この効果は相手ターンでも発動できる。

 

「墓地のドリルガイを対象に、ディストピアガイの効果発動。ドリルガイの攻撃力1600のダメージを相手に与える」

 

「チェーンして《ダメージ・ダイエット》を発動。このターン自分が受ける全てのダメージは半分になる」

 

音羽遊蓮 LP3500 → 2700

 

「《D-HERO ディシジョンガイ》を通常召喚してバトル。まずはディストピアガイでダイレクトアタック。ディストピアブローッ!」

 

「リバースカードオープン、《因果切断》。手札を1枚捨てて、ディストピアガイをゲームから除外する」

 

「ならばチェーンして手札から速攻魔法《融合解除》を発動。ディストピアガイをエクストラデッキに戻し、墓地のダッシュガイとディバインガイを攻撃表示で特殊召喚。バトル続行よ。ディバインガイ、ディシジョンガイ、ダッシュガイでダイレクトアタック」

 

音羽遊蓮 LP2700 → 1900 → 1100 → 50

 

「ダッシュガイはバトルフェイズ終了時に守備表示になる。私はこれでターンエンド。エンドフェイズにディシジョンガイの効果で、墓地のドリルガイを手札に加える」

 

『M』  LP2000 手札1 モンスター3 伏せ0

音羽遊蓮 LP 50 手札0 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン」

 

手札は0。モンスターも伏せカードもなし。ライフは僅かに50。おそらくこれがラストドローになる。

デッキに触れる。カードから指先に熱が伝わってくる。今なら引ける。その確信がある。

響の声が、響の心が、響の魂が――。

 

「――俺に力を与えてくれるッ! ドローッ! これが俺たちの絆ッ! 魔法カード《ミラクル・フュージョン》を発動。墓地の《E・HERO エアーマン》と《アームド・ドラゴン LV7》を除外して融合召喚ッ!」

 

「エアーマンッ!? そんなカードいつ……そうか《因果切断》、あの時かッ!」

 

「繋がる絆が、新たな風を呼び覚ます! 疾風怒濤の力を見るがいい! 現れろ! 《E・HERO Great TORNADO》!!」

 

竜巻の中から風のヒーローが出現する。その衝撃波で3体の闇のヒーローがたたらを踏んだ。

 

《D-HERO ダッシュガイ》   守備力1000 → 500

《D-HERO ディバインガイ》  攻撃力1600 → 800

《D-HERO ディシジョンガイ》 攻撃力1600 → 800

 

《E・HERO Great TORNADO》

星8/風属性/戦士族/攻2800/守2200

「E・HERO」モンスター+風属性モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

(1):このカードが融合召喚に成功した場合に発動する。

相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力・守備力は半分になる。

 

「バトルッ! グレイト・トルネードでディバインガイに攻撃、スーパーセルッ!!」

 

『M』 LP2000 → 0

 

「――くうぅッ! まさか、私が負けるなんて。だが、目的は果たした。さらばだ、音羽遊蓮!」

 

「な、逃がすかッ!」

 

俺は慌てて追いかけようとしたが、それは叶わなかった。膝が笑っている。けっきょく俺は、風にたなびく鴇色の髪を、目で追うことしかできなかった。

 

 




響のデッキを確認したときに、3枚借りてましたというオチ。
もちろん書置きはしてます。
カードも後日返却しました。



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今回はデュエルをしない話

震える膝に活を入れて、なんとか自宅に辿り着いた。食事もとらずに、そのままベッドへと倒れこむ。母が出張だったのは幸いだった。さすがに説明するのは面倒だ。

どうやらそのまま眠ってしまったらしい。気づけば宵闇は抜け、払暁となっていた。まだだるさは残っていたが、寝込むほどではない。

シャワーを浴びて朝食をとった後、櫻井さんに電話をかける。コールが数回鳴ったあと、少し気だるそうな声が聞こえてきた。

「朝早くにすいません。今大丈夫ですか?」

「……徹夜明けでね、緊急じゃないのなら、後にしてほしいってところかしら」

「では結果だけ。昨夜、襲われました。おそらく響を襲ったやつだと思います。詳しいことは放課後にそちらで話します。迎えをお願いできますか?」

電話口で息を呑む音が聞こえた。それでも櫻井さんは平静を保とうとしたらしく、俺は黙って返答を待った。

「こうして会話してるということは無事だったのね。相手はどんなやつだった?」

「性別は女、鴇色の髪で整った顔立ち、身長は165cm前後、年齢は十代後半、おそらく日本人ではない。そんなところです」

「なるほど、こちらでも調べておくわ。じゃあ放課後に、いつもの場所に迎えをよこすわ」

「はい、お願いします」

 

 

 

 

 

授業中に身体を休めたおかげで、随分と体調は回復した。放課後にいつもの場所へ行くと、見慣れた黒い車と黒服の男性、緒川さんが待機していた。

車に乗り込むと、そのまま走り出す。

「あれ? 目隠しとヘッドフォンはいいんですか?」

「ええ、司令からはそのように伺っています。遊蓮くんは信頼を勝ち取ったということですよ」

司令……弦十郎さんか。司令ね、しっくりくる呼び方だな。俺もそう呼ぼうかな。

車はとある学校のような施設に入っていった。学校ではない、学校のような施設だ。

「まさかデュエルアカデミアの敷地にあったとは……」

思わず声が漏れる。デュエルアカデミアは世界に六校あるプロデュエリストの養成所だ。そしてここ、デュエルアカデミア-リディアン校はその下部組織のようなもので、簡単に言えば一種の予備校にあたる。

落ちるようなエレベーターに乗り込み、通されたのはいつかの応接室。すでに司令と櫻井さんがこちらを待ち構えていた。

「まずは、これを見て」

櫻井さんは手に持ったタブレットをこちらによこした。そこに映っていたのは間違いなくあの襲撃者だった。

「間違いありません。俺を襲ったのは彼女です」

「そう。その娘は『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』。数か月前に失踪した、デュエルアカデミアの姉妹校、アークティック校の生徒よ」

「失踪……ですか?」

「ええ、彼女は優秀な生徒でね。成績もトップクラス、少し真面目過ぎるきらいはあったけれど、皆から慕われていた生徒だったわ。中等部の生徒とも交流があって、彼らの憧れの存在だったとも聞いてる。だからこそ、失踪した理由が分からない。何かの事件に巻き込まれた……なんて噂もされてるわね」

「…………」

なんと返して良いか分からず押し黙る。

「デュエルしてどうだった? 彼女の印象は」

「……楽しそうではありませんでしたね。義務感というか使命感というか、そういったもので戦っている。そんな印象を抱きました」

「やはりこれは、単純な襲撃事件ではなさそうだな」

司令は唸るようにそう言った。

 

 

 

 

 

あれから十日ほど経ったが、襲撃はピタリと止んでいた。あのとき『M』……マリアは『目的は果たした』と言っていた。目的というのは、やはりデュエルエナジーだろう。櫻井さんに言わせれば、俺のデュエルエナジーは稀なものらしく、総量も純度もかなり高い数値を示しているらしい。それが関係しているのだろうか。

S.O.N.G.も調査を続けているが、司令や櫻井さんの表情を見るかぎりは、進捗がないことは明白だった。

響はすでに退院しており、いつもの元気を取り戻している。響にカードを借りたことは書置きを残しておいたのだが、最初はそれに気づかず大層慌てたらしい。

帰り道、響と未来と別れてひとり歩いていた。そちらに視線を移したのは本当に偶然だった。

直観に近い感覚で走り出す。考えるよりも早く、足は動いていた。背後から声を掛けようと思ったが、また逃げられてはかなわないと思い、腕を取った。

マリアが振り向く。

「――ッ!?」

俺が発しようとした言葉は空気に溶けた。マリアはこちらを振り向いたが、瞳は俺を映してはいなかった。ただ茫洋として、視線の焦点が定まっていない。

一瞬の間があって、マリアはようやく自分の腕が掴まれていることに気付いたのか、一度そちらを見やってから、茫然としたままこちらへと瞳を向けた。

「…………幻魔」

マリアはただ一言そう言い残して、意識を手放した。

 

 

 



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ドクターウェルとデュエルする話

「――幻魔……だとぉッ!!」

応接室に轟雷のような声が響く。司令は目を剥き、机を叩いて立ち上がった。

「知ってるんですか? 司令」

当然俺も知っているが、この世界ではどういう扱いなのか分からない。デュエルエナジーなんてものが存在している以上は、ただのカードではなさそうだが。

「幻魔、正確には三幻魔と呼ばれる三枚のカード。世界のどこかに封印されている古のカードだ。そのカードが地上に放たれるとき、世界は魔に包まれ、混沌が全てを覆い、人々にすくう闇が解放され、やがて世界は破滅し、無へと帰する。それほどの力を秘めたカードだと伝えられている」

「そういう伝説、伝承がいくつか残ってるのよ」

「正直、眉唾だと思っていたがな。ともあれ、まずは彼女の話を聞いてからだ」

そう言って司令は櫻井さんに視線を向けた。

「大きな外傷はないわ。よほど疲れているみたいだったけど、それと身体が濡れていたのは、海水ね」

「ということは――」

そこで卓上の内線電話が鳴った。

「俺だ。……なんだと? 分かった、連れてきてくれ」

ほどなくして、ふたりの女性が入室してきた。職員の友里さんに肩を借りながら、マリアが緩慢な動作でソファに腰を下ろした。

「我々に協力を要請したいと聞いているが、確かかね?」

「ええ、恥ずかしながらね」

「では説明してもらいたい。君は覚えていないかも知れないが、君自身の口から零れた『幻魔』という言葉。真実ならば捨て置くわけにはいかん」

「……幻魔の封印に綻びが生じた。それを補強し、より強固なものにするためにはデュエルエナジーが必要だった。だから私はこの手を汚した。踊らされているとも知らずに、それが真実だと信じ込まされていた」

マリアは苦悶の表情を浮かべ、呻くように言った。

「あの島には、まだあの男に騙され、利用されている仲間がいる。……もはや一刻の猶予もない」

「やはり島か。あの男とは?」

「私を唆した男よ。幻魔を復活させ、利用しようと考えている、危険な男。名をジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス。通称ドクターウェル」

 

 

 

 

 

「凄いものですね、これは」

「世界でも数隻しかない強襲揚陸潜水艦だからな。これで一気に攻め入り、制圧する」

潜水艦に乗るのなんて初めてだ。しかもこの潜水艦は窮屈なんて言葉とは無縁の造りだ。

だが好き勝手に動き回れる程の時間はなかった。潜航の時間はごく短いもので、すぐに招集がかけられる。

上陸した島の様子は不気味なくらい静寂に包まれていた。

「よし、まずは斥候として緒川を……」

そこで地響きが起こった。島の中心あたりから盛大に土煙が噴き上がる。

「そんなッ! もう遺跡が!?」

「おい! 待つんだ、マリアくん!!」

司令の制止を振り切ってマリアが駆け出した。

「あたしに負けねぇくらいの無鉄砲だな。追うぜダンナ」

続けて奏さんがあとを追った。俺と翼さんも頷き合ってあとを追う。

「まったくお前らはッ!」

司令が悪態をつきながら追ってくる。粉塵は収まる様子はなく、目印には事欠かなかった。

その発生源、七つの石柱の中心に白衣の男が立っていた。マリアは言葉を投げかけているようだが、一顧だにしていない。やがて白衣の男はこちらに振り向き、笑みを見せた。

「待っていましたよ、音羽遊蓮」

「……俺に何か用か?」

「貴方のデュエルエナジーは極上のものでした。この量と純度なら十分だと思っていたのですが、あと1枚というところでガス欠ですよ。なーのーでー、追加をお願いしたいのですよッ!」

白衣の男、ドクターウェルが構えたデュエルディスクから一条の光線が伸びてきた。

「待てッ! 相手なら俺が――」

「おまえに用はないんだよ! 筋肉ダルマがッ! さあ始めるぞ、音羽遊蓮!」

「司令、ここは任せてください」

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「僕のターン、ドロー! 時は満ちた、これより幻魔復活の儀式を行うッ! まずは魔法カード《名推理》を発動。さあレベルを推理してみなよ!」

 

《名推理》

(1):相手は1~12までの任意のレベルを宣言する。

通常召喚可能なモンスターが出るまで自分のデッキの上からカードをめくり、

そのモンスターのレベルが宣言されたレベルと同じ場合、

めくったカードを全て墓地へ送る。

違った場合、そのモンスターを特殊召喚し、

残りのめくったカードは全て墓地へ送る。

 

相手のデッキは間違いなく『幻魔』のデッキ。なら上級モンスターは多く投入できないだろう。普通ならレベル4を宣言するが……。

 

「俺はレベル1を宣言する」

 

相手のデッキが上からめくられていき、8枚目にモンスターが現れる。

 

「ふむ、まあまあ稼げましたね。出てきたのはレベル5の《暗黒の召喚神》。残念でしたねぇ、推理が外れたので暗黒の召喚神を特殊召喚」

 

《暗黒の召喚神》

星5/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードをリリースして発動できる。

「神炎皇ウリア」「降雷皇ハモン」「幻魔皇ラビエル」の

いずれか1体を手札・デッキから召喚条件を無視して特殊召喚する。

このターン、自分のモンスターは攻撃できない。

(2):墓地のこのカードを除外して発動できる。

デッキから「神炎皇ウリア」「降雷皇ハモン」「幻魔皇ラビエル」の

いずれか1体を手札に加える。

 

「そして、すぐさま効果を発動! このカードをリリースッ! デッキから《降雷皇ハモン》を守備表示で特殊召喚! さらに墓地に送られた暗黒の召喚神を除外して、デッキから《神炎皇ウリア》を手札に加える。そして《混沌の召喚神》を通常召喚し、効果を発動。手札の《神炎皇ウリア》を攻撃表示で特殊召喚!」

 

《混沌の召喚神》

星1/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードをリリースして発動できる。

「神炎皇ウリア」「降雷皇ハモン」「幻魔皇ラビエル」の

いずれか1体を手札から召喚条件を無視して特殊召喚する。

(2):墓地のこのカードを除外して発動できる。

デッキから「失楽園」1枚を手札に加える。

 

「まだまだ行きますよ。墓地の《混沌の召喚神》を除外して、デッキから《失楽園》を手札に加え、発動。その効果により、カードを2枚ドロー」

 

《失楽園》

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、

自分のモンスターゾーンの「神炎皇ウリア」「降雷皇ハモン」「幻魔皇ラビエル」「混沌幻魔アーミタイル」は相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。

(2):自分のモンスターゾーンに「神炎皇ウリア」「降雷皇ハモン」「幻魔皇ラビエル」

「混沌幻魔アーミタイル」のいずれかが存在する場合に発動できる。

自分はデッキから2枚ドローする。

 

「僕はカードを2枚伏せてターンエンド。ふふふ、はっはぁー、これが幻魔の力だぁぁッ!」

 

《降雷皇ハモン》

星10/光属性/雷族/攻4000/守4000

このカードは通常召喚できない。

自分フィールドの表側表示の永続魔法カード3枚を墓地へ送った場合のみ特殊召喚できる。

(1):このカードがモンスターゾーンに守備表示で存在する限り、

相手は他のモンスターを攻撃対象に選択できない。

(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。

相手に1000ダメージを与える。

 

《神炎皇ウリア》

星10/炎属性/炎族/攻 0/守 0

このカードは通常召喚できない。

自分フィールドの表側表示の罠カード3枚を墓地へ送った場合のみ特殊召喚できる。

(1):このカードの攻撃力は、自分の墓地の永続罠カードの数×1000アップする。

(2):1ターンに1度、相手フィールドにセットされた魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。

セットされたそのカードを破壊する。

この効果の発動に対して魔法・罠カードは発動できない。

 

ドクターウェル LP4000 手札4 モンスター2 伏せ2

《神炎皇ウリア》攻4000

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

その名の通り、降雷と神炎を体現したような巨体がこちらを睨んでいた。これまでのデュエルでは感じたことのない威圧を感じる。

S.O.N.G.の協力でかなりデッキは強化できたが、どこまで対抗できるか。

 

「俺は手札の《サンダー・ドラゴン》の効果発動。このカードを捨てて、デッキから《サンダー・ドラゴン》2枚を手札に加える。そして《竜魔導の守護者》を召喚して効果発動。手札の《サンダー・ドラゴン》を捨て、デッキから《雷龍融合(サンダー・ドラゴン・フュージョン)》を手札に加える」

 

《竜魔導の守護者》

星4/闇属性/ドラゴン族/攻1800/守1300

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、

このカードの効果を発動するターン、自分は融合モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、手札を1枚捨てて発動できる。

デッキから「融合」通常魔法カードまたは「フュージョン」通常魔法カード1枚を手札に加える。

(2):EXデッキの融合モンスター1体を相手に見せて発動できる。

そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター1体を自分の墓地から選んで裏側守備表示で特殊召喚する。

 

「さらに竜魔導の守護者のふたつめの効果を発動。EXデッキの《超雷龍-サンダー・ドラゴン》を公開し、墓地のサンダー・ドラゴンを裏側守備表示で特殊召喚する。そしてこのサンダー・ドラゴンをリリースして《超雷龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚。続けて魔法カード《雷龍融合》を発動。フィールドの《超雷龍-サンダー・ドラゴン》と墓地の《サンダー・ドラゴン》2体をデッキに戻し、融合召喚。《雷神龍-サンダー・ドラゴン》を守備表示で特殊召喚」

 

《雷神龍-サンダー・ドラゴン》

星10/光属性/雷族/攻3200/守3200

「サンダー・ドラゴン」モンスター×3

このカードは融合召喚及び以下の方法でのみ特殊召喚できる。

●手札の雷族モンスター1体と、「雷神龍-サンダー・ドラゴン」以外の

自分フィールドの雷族の融合モンスター1体を

除外した場合にEXデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)。

(1):雷族モンスターの効果が手札で発動した時に発動できる(ダメージステップでも発動可能)。

フィールドのカード1枚を選んで破壊する。

(2):このカードが効果で破壊される場合、

代わりに自分の墓地のカード2枚を除外できる。

 

「墓地のサンダー・ドラゴンがデッキに戻ったことで、俺は再度手札の《サンダー・ドラゴン》の効果を発動。このカードを捨てて、デッキから《サンダー・ドラゴン》1枚を手札に加える。そして《雷神龍-サンダー・ドラゴン》の効果で、失楽園を破壊」

 

「――フンッ、やってくれますねぇ」

 

「手札の《サンダー・ドラゴン》の効果を再び発動。このカードを捨てて、デッキから《サンダー・ドラゴン》1枚を手札に加える。《雷神龍-サンダー・ドラゴン》の効果で《神炎皇ウリア》を破壊」

 

紅い巨体が稲妻を浴びて崩れ去る。ドクターウェルは苦い顔でそれを見送ったが、まだ余裕は保っているようだ。

 

「魔法カード《竜の霊廟》を発動。デッキから《サファイアドラゴン》を墓地に送る。そして1体目が通常モンスターだった場合、さらに1体墓地に送ることができる。《巨神竜フェルグラント》を墓地に送る。カードを2枚伏せてターンエンド」

 

「おや、攻めてこないのですかぁ? まあ攻撃力3200ではねぇ。ああ、エンドフェイズに《終焉の焔》を発動しますよ。僕のフィールドに「黒焔トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚します」

 

あれは、ラビエルの準備か? 最後の1枚でガス欠といっていたが、まさか最後の1枚とは……。

 

音羽遊蓮    LP4000 手札2 モンスター2 伏せ2

ドクターウェル LP4000 手札4 モンスター3 伏せ1

 

――――――――――――

 

「僕のターン、ドロー! ふふ、さぁ、最後の幻魔をお見せしましょうッ! 僕は《暗黒の招来神》を召喚し、効果発動。デッキから《幻魔皇ラビエル》を手札に加える。そして、黒焔トークン2体と暗黒の招来神をリリースして《幻魔皇ラビエル》を特殊召喚ッ!」

 

《幻魔皇ラビエル》

星10/闇属性/悪魔族/攻4000/守4000

このカードは通常召喚できない。

自分フィールドの悪魔族モンスター3体をリリースした場合のみ特殊召喚できる。

(1):1ターンに1度、このカード以外の自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動できる。

このカードの攻撃力はターン終了時まで、リリースしたモンスターの元々の攻撃力分アップする。

(2):相手がモンスターの召喚に成功した場合に発動する。

自分フィールドに「幻魔トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守1000)1体を特殊召喚する。

このトークンは攻撃宣言できない。

 

「リバースカードオープン《強化蘇生》。墓地のサファイアドラゴンを特殊召喚。そして召喚成功時に《崩界の守護竜》を発動。サファイアドラゴンをリリースして、ハモンとラビエルを破壊」

 

「それは通しませんッ! 手札から速攻魔法《我が身を盾に》を発動。ライフを1500払い、それを無効にして破壊する」

 

ドクターウェル LP4000 → 2500

 

「ハモンを攻撃表示に変更して、バトルだ! ハモンで雷神龍-サンダー・ドラゴンを攻撃、失楽の霹靂ッ!」

 

雷神龍が巨大な雷撃を受けて崩れ去る。

 

「ハモンの効果で1000ポイントのダメージを受けてもらう、地獄の贖罪ッ!」

 

音羽遊蓮 LP4000 → 3000

 

「続けてラビエルで竜魔導の守護者を攻撃、天界蹂躙拳ッ!」

 

音羽遊蓮 LP3000 → 800

 

「メインフェイズ2にリバースカードオープン《転生の予言》。僕の墓地にある《神炎皇ウリア》と貴方の墓地にある《雷龍融合》をデッキに戻す。魔法カード《D・D・R》を発動。手札を1枚捨て、除外されている《暗黒の召喚神》を特殊召喚して、即リリースッ! デッキから《降雷皇ウリア》を特殊召喚! 僕はこれでターンエンド」

 

一気にライフを削られた。暗黒の召喚神のデメリット効果を破棄しつつ、雷龍融合のサーチも封じるか。狂っているようにみえて、なかなか強かだな

 

ドクターウェル LP2500 手札1 モンスター3 伏せ0

音羽遊蓮    LP 800 手札2 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

降雷を帯びて、神炎を纏いて、そして幻魔を従える皇が、こちらを見下ろしていた。とうとう三幻魔が出揃った。もはや威圧などというレベルではなく、畏怖の念すら感じさせる。

 

「モンスターをセット、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮    LP 800 手札1 モンスター1 伏せ1

ドクターウェル LP2500 手札1 モンスター3 伏せ0

 

――――――――――――

 

「くくく、打つ手なしですかぁ? 僕のターン、ドロー!」

 

「スタンバイフェイズに《ダメージ・ダイエット》を発動。このターン、俺の受ける全てのダメージは半分になる」

 

「はッ! ウリアの効果を恐れたか。だが、ついに三幻魔が集った。これで終わりだッ! ハモンでセットモンスターを攻撃、失楽の霹靂ッ!」

 

「セットモンスターは《仮面竜》だ。効果でデッキから仮面竜を特殊召喚」

 

「半分だったな、ならハモンの効果で500ポイントのダメージを受けてもらう、地獄の贖罪ッ!」

 

音羽遊蓮 LP 800 → 300

 

「続けてウリアで《仮面竜》を攻撃、ハイパープレイズッ!」

 

巨大な口から吐かれた業火によって仮面竜が破壊される。

 

「仮面竜の効果を再度発動。デッキから仮面竜を特殊召喚」

 

「しぶといヤツッ! ラビエルの攻撃、天界蹂躙拳ッ!」

 

「仮面竜の効果によりデッキから《アームド・ドラゴン LV3》を特殊召喚」

 

「ふん、僕はこれでターンエンド」

 

ドクターウェル LP2500 手札2 モンスター3 伏せ0

音羽遊蓮    LP 300 手札1 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー! スタンバイフェイズに《アームド・ドラゴン LV3》を墓地に送り、デッキから《アームド・ドラゴン LV5》を特殊召喚。さらに魔法カード《貪欲な壺》を発動。墓地の《仮面竜》《竜魔導の守護者》《雷神龍-サンダー・ドラゴン》《サンダー・ドラゴン》2体をデッキに戻してシャッフル。その後2枚ドロー」

 

――よし、いけるッ!

 

「魔法カード《レベルアップ!》を発動。《アームド・ドラゴン LV5》を墓地に送り、デッキから《アームド・ドラゴン LV7》を特殊召喚」

 

《アームド・ドラゴン LV7》

星7/風属性/ドラゴン族/攻2800/守1000

このカードは通常召喚できない。

「アームド・ドラゴン LV5」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1):手札からモンスター1体を墓地へ送って発動できる。

墓地へ送ったそのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ、

相手フィールドのモンスターを全て破壊する。

 

「アームド・ドラゴンの効果発動。手札の《魂食神龍ドレイン・ドラゴン》を墓地に送る。ドレイン・ドラゴンの攻撃力は4000。つまり4000以下の攻撃力のモンスターは破壊される。ジェノサイド・カッター!」

 

三体の幻魔が真空の刃によって崩れ去る。それを見た白衣の男は発狂するような勢いで狼狽した。

 

「ば、ばかなぁッ! ありえない、幻魔が、僕の三幻魔が、ぜ、ぜ、全滅ぅぅッ!?」

 

「幻魔といえどもモンスターだ。絶対無敵なわけじゃあない。バトル、アームド・ドラゴンでダイレクトアタック!」

 

ドクターウェル LP2500 → 0

 

白衣の男が泡を吹いて倒れる。

背後から聞こえてきた黄色い歓声が閉幕の合図となった。

「やったなー遊蓮ッ! 楽勝だったじゃねぇかッ!」

いやいや、残りライフ300だぞ。やっぱりライフ4000は心臓に悪い。

「大丈夫か? 遊蓮くん」

「大丈夫ですよ。あの男はどうしますか?」

「ああ、我々が責任を持って引き取る。幻魔のカードも、厳重に封印しておこう」

司令は胸を張ってそう言った。濃密に漂っていた邪気のようなものは、すでに霧散していた。

 

 

 



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月読調とデュエルする話

幻魔事変と呼ばれた一連の騒動から数ヵ月が経った。幻魔のカードは厳重に封印されたと聞いている。詳細は知らされなかったが、容易に手は出せない場所とのことだ。

マリアさんの罪は、正直判断が難しいところだった。デュエルの強要とデュエルエナジーの強奪。被害者の記憶も曖昧ということもあって、結局はうやむやとなった。本人は裁きを望んでいたが、司令の独断に近い形で、監視の意味も兼ねてS.O.N.G.の所属となるということで落ち着いた。

マリアさんが日本で居を構えるにあたって、一つの要望があった。家族を呼び寄せたいと。実は彼女は孤児院の出で、そこで一緒に育った実妹と、仲の良かった年少のふたりの計三人を呼ぶことを希望し、司令はそれを了承した。

俺は変わらずバイトを続けている。そして、響も了子さんにスカウトされて、ここでバイトをしている。響もなかなかレアなデュエルエナジーを持っているらしい。

デュエルエナジーについては、未だによく分かっていない。司令も言っていたが、いわゆる未知のエネルギーというやつだ。了子さんはなんとかそれを論文にまとめて発表したいと躍起になっている。なので、サンプルは多い方がいいのだろう。

さて、今日もバイトの時間だ。今日の相手はマリアさんが連れてきた年少のふたり組のひとり、月読調という少女だ。

「がんばるデスよ、調! ガッツデス、ガッツ!」

「うん。任せて、切ちゃん」

ふんす、といった感じで調が拳を握る。では、お手並み拝見といきましょう。

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「私のターン、ドロー。《ドラゴンメイド・ティルル》を召喚して、効果発動。デッキから《ドラゴンメイド・パルラ》を手札に加え、そのまま墓地に送る」

 

《ドラゴンメイド・ティルル》

星3/炎属性/ドラゴン族/攻 500/守1700

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。

デッキから「ドラゴンメイド・ティルル」以外の「ドラゴンメイド」モンスター1体を手札に加える。

その後、手札から「ドラゴンメイド」モンスター1体を選んで墓地へ送る。

(2):自分・相手のバトルフェイズ開始時に発動できる。

このカードを持ち主の手札に戻し、

自分の手札・墓地からレベル8の「ドラゴンメイド」モンスター1体を選んで特殊召喚する。

 

「魔法カード《ドラゴンメイドのお心づくし》を発動。墓地のパルラを守備表示で特殊召喚して、《ドラゴンメイド・ルフト》をデッキから墓地に送る。続けてパルラの効果発動。デッキから《ドラゴンメイド・フランメ》を墓地に送る」

 

《ドラゴンメイド・パルラ》

星3/風属性/ドラゴン族/攻 500/守1700

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。

デッキから「ドラゴンメイド・パルラ」以外の「ドラゴンメイド」カード1枚を墓地へ送る。

(2):自分・相手のバトルフェイズ開始時に発動できる。

このカードを持ち主の手札に戻し、

自分の手札・墓地からレベル8の「ドラゴンメイド」モンスター1体を選んで特殊召喚する。

 

「私はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

月読調 LP4000 手札2 モンスター2 伏せ2

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

相手はドラゴンメイドか、墓地に戦闘形態がばっちり揃ってる。迂闊にバトルフェイズには入れないな。

 

「魔法カード《竜の霊廟》を発動。デッキから《サファイアドラゴン》を墓地に送り、続けて《巨神竜フェルグラント》を墓地に送る。モンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンド」

 

「エンドフェイズに《崩界の守護竜》を発動。パルラをリリースして、セットモンスターと、私から見て右側の伏せカードを破壊。……やっぱり仮面竜だった。そのモンスターは面倒。続けて《戦線復帰》を発動。パルラを守備表示で特殊召喚。効果で《ドラゴンメイド・エルデ》を墓地に送る」

 

ガンガン動いてくるな。物静かで穏やかなイメージだったんだが、意外と攻めるタイプか?

 

音羽遊蓮 LP4000 手札2 モンスター0 伏せ1

月読調  LP4000 手札2 モンスター2 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。《ドラゴンメイド・チェイム》を召喚して、効果発動。デッキから《ドラゴンメイドのお出迎え》を手札に加える」

 

《ドラゴンメイド・チェイム》

星4/闇属性/ドラゴン族/攻 500/守1800

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。

デッキから「ドラゴンメイド」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

(2):自分・相手のバトルフェイズ開始時に発動できる。

このカードを持ち主の手札に戻し、

自分の手札・墓地からレベル7以上の「ドラゴンメイド」モンスター1体を選んで特殊召喚する。

 

「永続魔法《ドラゴンメイドのお出迎え》を発動。ふたつめの効果で、墓地の《ドラゴンメイドのお心づくし》を手札に加える」

 

《ドラゴンメイドのお出迎え》

永続魔法

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は、

自分フィールドの「ドラゴンメイド」モンスターの数×100アップする。

(2):自分フィールドに「ドラゴンメイド」モンスターが2体以上存在する場合、

自分の墓地の「ドラゴンメイドのお出迎え」以外の「ドラゴンメイド」カード1枚を対象として発動できる。

そのカードを手札に加える。

(3):このカードが墓地へ送られた場合に発動する。

このターン、自分フィールドの「ドラゴンメイド」モンスターは相手の効果の対象にならない。

 

「魔法カード《おろかな副葬》を発動。デッキから2枚目の《ドラゴンメイドのお出迎え》を墓地に送る。これでこのターン、私のドラゴンメイドたちは相手の効果の対象にならない」

 

殺意たけぇ! このターンで決めるつもりか。

 

「バトルフェイズに突入。突入時にティルルとパルラとチェイムの効果発動。この3枚を手札に戻し、墓地からフランメとルフトとエルデを特殊召喚」

 

《ドラゴンメイド・フランメ》

星8/炎属性/ドラゴン族/攻2700/守1700

このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードを手札から捨て、

自分フィールドの「ドラゴンメイド」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで2000アップする。

この効果は相手ターンでも発動できる。

(2):自分フィールドに融合モンスターが存在する限り、

このカードは効果では破壊されない。

(3):自分・相手のバトルフェイズ終了時に発動できる。

このカードを持ち主の手札に戻し、

手札からレベル3の「ドラゴンメイド」モンスター1体を特殊召喚する。

 

《ドラゴンメイド・ルフト》

星8/風属性/ドラゴン族/攻2700/守1700

このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードを手札から捨て、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。

このターン、その表側表示モンスターはフィールドで発動する効果を発動できない。

(2):自分フィールドに融合モンスターが存在する限り、

このカードは効果では破壊されない。

(3):自分・相手のバトルフェイズ終了時に発動できる。

このカードを持ち主の手札に戻し、

手札からレベル3の「ドラゴンメイド」モンスター1体を特殊召喚する。

 

《ドラゴンメイド・エルデ》

星7/地属性/ドラゴン族/攻2600/守1600

このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードを手札から捨てて発動できる。

手札からレベル4以下の「ドラゴンメイド」モンスター1体を特殊召喚する。

この効果は相手ターンでも発動できる。

(2):自分フィールドに融合モンスターが存在する限り、

このカードは効果では破壊されない。

(3):自分・相手のバトルフェイズ終了時に発動できる。

このカードを持ち主の手札に戻し、

手札からレベル2の「ドラゴンメイド」モンスター1体を特殊召喚する。

 

「バトル。エルデ、ルフト、フランメでダイレクトアタック」

 

「攻撃宣言時に《神風のバリア -エア・フォース-》を発動。相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て持ち主の手札に戻す」

 

強烈な風に煽られて、3体のドラゴンが調の手札へと戻っていく。

 

「――ッ! 私はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

月読調  LP4000 手札6 モンスター0 伏せ2

音羽遊蓮 LP4000 手札2 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。魔法カード《闇の誘惑》を発動。デッキから2枚ドローし、《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》を除外する。除外した雷獣龍の効果で、デッキから《雷源龍-サンダー・ドラゴン》を守備表示で特殊召喚する。続けて手札の《雷電龍-サンダー・ドラゴン》の効果発動。このカードを捨てて、デッキから同名カードを手札に加える。条件を満たしたことで、フィールドの雷源龍をリリースして、EXデッキから《超雷龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚できる」

 

《超雷龍-サンダー・ドラゴン》

星8/闇属性/雷族/攻2600/守2400

「サンダー・ドラゴン」+雷族モンスター

このカードは融合召喚及び以下の方法でのみ特殊召喚できる。

●雷族モンスターの効果が手札で発動したターン、

融合モンスター以外の自分フィールドの雷族の効果モンスター1体をリリースした場合に

EXデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)。

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

相手はドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加える事ができない。

(2):このカードが戦闘・効果で破壊される場合、

代わりに自分の墓地の雷族モンスター1体を除外できる。

 

「墓地に送られた《雷源龍-サンダー・ドラゴン》の効果発動。デッキから同名カードを手札に加える。そして――」

 

「メインフェイズ終了時にエルデの効果発動。このカードを手札から捨てて、手札のパルラを特殊召喚する。パルラの効果でデッキから3枚目の《ドラゴンメイドのお出迎え》を墓地に送る」

 

このままバトルフェイズに入れば、ルフトが出てくる。調の手札にはフランメがいるから攻撃すれば返り討ちだ。

……もう少し様子を見るか。

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1

月読調  LP4000 手札4 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー」

 

調は手札を眺めて考えている。超雷龍の効果はドラゴンメイドには結構刺さるからな。

 

「《ドラゴンメイド・パルラ》を召喚。効果でデッキからルフトを墓地に送る。バトルフェイズに移行。バトルフェイズ突入時に、2体のパルラを手札に戻して、手札と墓地からルフトを特殊召喚する。お出迎えの効果で攻撃力アップ」

 

《ドラゴンメイド・ルフト》 攻撃力 2700 → 2900

 

「ルフトで超雷龍に攻撃。フランメを手札から捨てて、攻撃力2000アップ。シュトゥルムヴィント!」

 

「墓地の雷電龍を除外して、超雷龍の破壊を無効にする」

 

「でもダメージは受けてもらう」

 

音羽遊蓮 LP4000 → 1700

 

「除外された雷電龍の効果でデッキから《雷龍融合》を手札に加える」

 

「この瞬間《強烈なはたき落とし》を発動。雷龍融合は捨ててもらう」

 

手にした雷龍融合がソリッドビジョンのハエたたきで、文字通りはたき落とされる。

 

「……2体目のルフトでは、攻撃しない」

 

雷源龍の効果で返り討ちにしようと思ったが、どうやら読まれたらしい。ま、手札にあるのはバレてるし、さすがに気付くか。

 

「バトルフェイズ終了時に、2体のルフトを手札に戻して、パルラとティルルを守備表示で特殊召喚する。メインフェイズ2にお出迎えの効果発動。墓地のフランメを手札に加えて、ターンエンド」

 

月読調  LP4000 手札5 モンスター2 伏せ1

音羽遊蓮 LP1700 手札3 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。《強化蘇生》を発動。墓地の仮面竜を蘇生する。《レスキューラビット》を召喚して効果発動。このカードを除外して、デッキから《アレキサンドライドラゴン》2体を特殊召喚する」

 

強化蘇生の効果で仮面竜のレベルは1つ上がっている。これで条件はクリア。

 

「アレキサンドライドラゴン2体と仮面竜でオーバーレイ。雷雲を突き抜け飛来せよ、ランク4《No.91 サンダー・スパーク・ドラゴン》!」

 

《No.91 サンダー・スパーク・ドラゴン》

ランク4/光属性/ドラゴン族/攻2400/守2000

レベル4モンスター×3

1ターンに1度、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●このカードのエクシーズ素材を3つ取り除く事で、

このカード以外のフィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。

●このカードのエクシーズ素材を5つ取り除く事で、

相手フィールド上のカードを全て破壊する。

 

「サンダー・スパーク・ドラゴンの効果発動。X素材を3つ取り除き、このカード以外の表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。デストロイ・スパーク!」

 

稲妻がほとばしり、己以外の全てをモンスターを薙ぎ払う。2体のパルラは吹き飛んだが、隣にいる超雷龍は平然としていた。

 

「墓地の雷源龍を除外して、超雷龍の破壊を無効にする。効果でデッキから同名カードを手札に加えて、バトルだ。サンダー・スパーク・ドラゴンと超雷龍-サンダー・ドラゴンでダイレクトアタック!」

 

月読調  LP4000 → 0

 

デュエルデスクから試合終了を告げるブザーが鳴り響く。

調は小さく溜め息を吐いて、こちらにペコリとお辞儀した。

「調ぇー。惜しかったデスッ! あとひと押しだったデスよッ!」

「うん。でもやっぱり色々足りない。シュトラールとかハスキーとか欲しい」

「それは、仕方ないデスよ。わたしたちのお小遣いじゃ厳しいデス……」

見る見るうちにふたりの表情が暗くなった。やはりどこも世知辛いな。

「まあ、限られた資金で色々と考えてデッキを組むのも楽しいもんだ。デュエリストとしての腕の見せ所だな」

「あ、それマリアも言ってました」

「わたしはお金もカードもいっぱい欲しいデスけどね。まあそれはそれとして、調のかたきを討たせてもらうデスッ!」

今度は切歌か。ま、つきあってやるか。

 

 

『デュエルッ!』

 

 

 ~十分後~

 

 

「――ありえないデェェェスッ!!」

 

暁切歌 LP4000 → 0

 

「やっぱりこうなった。切ちゃん大丈夫?」

「ちょっと待つデスよッ! 色々とおかしいデスッ!」

「まあ、発動したミラーフォースにサイクロン撃ってきた時点でおかしいとは思ったが……」

「そうデスよッ! なんで無効にできないデスかッ!?」

子供を叱るな来た道だ、とはよく言ったものだ。懐かしい勘違いだなぁ。

「サイクロンは破壊するだけで、発動と効果を無効にするわけじゃないぞ」

「……? でも孤児院のお姉さんとデュエルしたときは無効にできたデスよ?」

「そんなわけないだろ。デュエルディスクが弾く……いや、テーブルデュエルか」

デュエルディスクもそう安いものじゃないからな。室内向きでもないし。しかしそのお姉さんもちゃんと教えてやれよ。それは優しさとは違うぞ。

「とにかく、休憩室にデュエル関連の本はたくさんあっただろ? それを読め」

「本を読んでもいまいちしっくりこないんデスよ」

切歌はどう見ても感覚でデュエルするタイプだからな。理屈を押し込まれても身につかないんだろう。それよりは数をこなして、分からないことはその場で訊いたほうが上達するかもしれない。

「ま、何事も勉強だな」

とりあえずそう言って締めくくった。

 

 

 



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暁切歌とデュエルする話

言い出しっぺの法則と言うべきか、俺は切歌と休憩室でテーブルデュエルをしながら勉強会を行っていた。

「スペルスピードは重要だ。基本的にカウンター罠にはカウンター罠しかチェーンできない」

「なるほどデス」

「時と場合は常に意識しておけ。「~した時」と「~した場合」は違うものだからな。だからこの「時の効果」は発動できない。タイミングを逃すってやつだ」

「なる……ほど……」

「任意効果と強制効果、誘発効果と誘発即時効果、優先権も念頭に置かなければならない。つまりこの場合は……」

「…………」

切歌は項垂れるように机に突っ伏した。漫画的表現なら頭から白煙が昇っているところだろう。

「切ちゃん、大丈夫?」

様子を見に来た調があったかいものを差し入れてくれた。俺と切歌はそれを飲んで一息つく。

「なんとなくは分かったんデスよ、なんとなくは」

「その感覚は大事だぞ。処理自体はデュエルディスクがやってくれるんだから、何故そうなるのかが理解できてればいいんだ」

そもそも俺だって完璧に理解しているわけじゃない。というか完璧に理解できてる人なんているのかな。……了子さんならしてそうだな。

「焦らなくてもいいんだよ、切ちゃん。あ、そうだ。遊蓮さんはこれ、出るの?」

「ん? チラシ? ふむ、アマチュアの世界大会か」

「世界大会デスとッ!?」

どうやら琴線に触れたらしく、切歌は目を輝かせて肩口からチラシを覗き込んできた。

「おほー。島をひとつ丸々使っての大会デスか。こいつはどえれぇ大会デスよッ! 調、わたしたちも参加するデスよッ!」

「それは無理」

調はにべもなく言い放った。よほどに予想外だったのか、切歌は鳩が豆鉄砲を食ったように固まっている。

「切ちゃん、参加資格をよく見て」

「へ? 参加資格? えーっと、デュエリストレベル6以上……6以上デスとッ!?」

切歌は悲鳴じみた声を上げてのけ反った。デュエリストレベルというのは、柔道や空手の段位みたいなものと考えると分かりやすい。

デュエリストレベル4までは簡単な筆記試験に合格すれば取得できる。レベル5以上は公式大会に記録を残さねばならない。俺の身近な人たちのレベルはこんな感じだ。

 

風鳴翼   Lv5

天羽奏   Lv5

立花響   Lv6

小日向未来 Lv6

セレナ   Lv7

マリア   Lv8

 

翼さんと奏さんはアイドルが本業なので、公式大会に出る時間の確保が難しいらしい。勝率は足りているが、デュエル数が足りていないのだとか。

セレナさんはマリアさんの妹で、住所は日本に移したが、全寮制のデュエルアカデミアに通っているため、面識はない。

形だけとはいえ、俺の上司になったマリアさんは、元デュエルアカデミアのトップクラスだけあって流石のレベルだ。なんとか卒業が認められたため、晴れてレベル8となった。

ちなみに、俺のレベルは7である。

「クッ、デスが、我々は決して諦めてはいけないのデスッ! 司令なら、司令なら何とかしてくれるはずデスッ!」

なにやら妙なテンションになった切歌が突然駆け出した。溺れる者はなんとやら、か。

 

 

 

 

 

流石の司令も大会ルールを捻じ曲げることはできなかった。とはいえ、参加はできなかったが、同行は認められた。これだけ大きな大会だと、レアハンターなどのデュエル犯罪者が現れる可能性があるため、S.O.N.G.に出動要請があったのだ。

そしてS.O.N.G.が出立する前日、切歌が自信満々といった表情で勝負を挑んできた。

「マリアに色々と融通してもらって、ようやく新たなデッキが完成したデスよ。そんなわけで、勝負デスッ! わたしのレッドアイズが火を吹くデスよッ!」

ああ、確かにマリアさんはデュエルアカデミアのエリートで、様々な大会で優勝していると聞いた。つまりスペシャルパックの入手機会も多い。あの人も切歌や調には甘いからな。しかし、レッドアイズか……。

「デッキの最終確認をしたい。ちょっと待っててくれ」

「いいデスよー」

えーと、これとこれを抜いて、これを入れてっと、よし。

「じゃあ、やるか」

「やるデスッ!」

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「わたしのターン、ドローデスッ! 《伝説の黒石(ブラック・オブ・レジェンド)》を召喚して効果発動。このカードをリリースして、デッキから《真紅眼の黒竜》を特殊召喚デスッ!」

 

真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)

星7/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守2000

真紅の眼を持つ黒竜。

怒りの黒き炎はその眼に映る者全てを焼き尽くす。

 

切歌の呼び声に応えて、真紅眼の黒竜が飛翔する。

 

「わたしはカードを2枚伏せてターンエンドデス」

 

暁切歌 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。まずは魔法カード《闇の誘惑》を発動。2枚ドローし、闇属性の《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》を除外する。そして雷獣龍が除外されたことで効果が発動。デッキから《雷源龍-サンダー・ドラゴン》を守備表示で特殊召喚する」

 

この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに持ち主の手札に戻るのだが、まあ今回は関係ない。

 

「手札の《雷電龍-サンダー・ドラゴン》の効果発動。このカードを捨てて、デッキから同名カードを手札に加える。《雷源龍-サンダー・ドラゴン》をリリースして《超雷龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚。そしてフィールドから墓地に送られた雷源龍の効果を発動。デッキから同名カードを手札に加える」

 

「相変わらず、訳の分からない動きをするデッキデスね。雷電とか雷獣とか雷源とか、頭がこんがらがるデスよ。あとやっぱり融合なしで融合モンスターを出すのはズルい気がするデスッ!」

 

「それを俺に言われてもな。まあ、言いたいことは理解できるが……」

 

訳の分からないというが、サンダー・ドラゴンの動きはある程度パターン化されていると思う。問題はカード名だな。回している俺でも、サンダー・ドラゴンがゲシュタルト崩壊しそうになるし。あと融合なしで融合するのは、俺もどうかと思う。

 

「《仮面竜》を通常召喚して、バトルだ。超雷龍で真紅眼の黒竜を攻撃」

 

「リバースカードオープンデス。《メタル化・魔法反射装甲》を真紅眼の黒竜に装備するデスッ!」

 

真紅眼の黒竜 攻2400 → 2700

 

「これで返り討ちデスッ! ダーク・メガ・フレアッ!」

 

「墓地の雷源龍を除外して、戦闘破壊を無効にする」

 

「けどダメージは受けてもらうデスッ!」

 

音羽遊蓮 LP4000 → 3900

 

「メインフェイズ2に魔法カード《竜の霊廟》を発動。デッキから《サファイアドラゴン》を墓地に送り、更に《魂食神龍ドレイン・ドラゴン》を墓地に送る。カードを2枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮 LP3900 手札3 モンスター2 伏せ2

暁切歌  LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドローデスッ! 《真紅眼の飛竜(レッドアイズ・ワイバーン)》を通常召喚。そしてリバースカードオープン。《鎖付き真紅眼牙(レッドアイズ・ファング)》を真紅眼の飛竜に装備して、ふたつめの効果を発動デス。装備されているこのカードを墓地へ送り、超雷龍-サンダー・ドラゴンを装備カード扱いとして、真紅眼の飛竜に装備するデス。この効果でモンスターを装備している限り、装備モンスターはそのモンスターと同じ攻撃力・守備力になるデスよ」

 

真紅眼の飛竜 攻2600/守2400

 

「バトルデスッ! 真紅眼の黒竜で仮面竜を攻撃。メタル化の効果で攻撃力がアップデスッ!」

 

真紅眼の黒竜 攻2700 → 3400

 

特大の火炎弾を受けて仮面竜が爆散する。

 

音羽遊蓮 LP3900 → 1900

 

「仮面竜の効果で、デッキからもう1体の《仮面竜》を守備表示で特殊召喚」

 

「ムムッ、それを破壊したらアームド・ドラゴンを出すつもりデスね。そうはいかないデス。バトルは終了。カードを1枚伏せてターンエンドデス」

 

なかなか慎重だな。まああれだけ俺のデュエルを見てれば警戒もするか。

 

暁切歌  LP4000 手札2 モンスター2 伏せ1

音羽遊蓮 LP1900 手札3 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。魔法カード《封印の黄金櫃》を発動。デッキから《雷電龍-サンダー・ドラゴン》を除外する。その効果で、デッキから《雷龍融合》を手札に加えて、発動。除外されている《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》と《雷源龍-サンダー・ドラゴン》と墓地の《雷電龍-サンダー・ドラゴン》をデッキに戻して融合召喚。雷雲を切り裂いて現れろ、《雷神龍-サンダー・ドラゴン》!」

 

《雷神龍-サンダー・ドラゴン》

星10/光属性/雷族/攻3200/守3200

「サンダー・ドラゴン」モンスター×3

このカードは融合召喚及び以下の方法でのみ特殊召喚できる。

●手札の雷族モンスター1体と、「雷神龍-サンダー・ドラゴン」以外の

自分フィールドの雷族の融合モンスター1体を

除外した場合にEXデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)。

(1):雷族モンスターの効果が手札で発動した時に発動できる(ダメージステップでも発動可能)。

フィールドのカード1枚を選んで破壊する。

(2):このカードが効果で破壊される場合、

代わりに自分の墓地のカード2枚を除外できる。

 

「手札の《雷源龍-サンダー・ドラゴン》を捨てて、雷神龍の攻撃力を500アップする。そして――」

 

「おぉっと、雷源龍の効果にチェーンして《戦線復帰》を発動デス。墓地の伝説の黒石を守備表示で特殊召喚するデスよ」

 

チェーンを挟んできたか。これは俺のミスだな。ダメージステップに発動すべきだった。

 

「ならバトルだ。雷神龍で真紅眼の黒竜を攻撃」

 

暁切歌 LP4000 → 3000

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

音羽遊蓮 LP1900 手札2 モンスター2 伏せ2

暁切歌  LP3000 手札2 モンスター2 伏せ0

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドローデスッ! 魔法カード《闇の誘惑》を発動デス。2枚ドローして、《真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)》を除外デス。キターー、これで勝利の方程式が完成したデスッ!」

 

切歌は手札を眺めて、ニヤリと笑った。大丈夫か? 雷神龍の効果忘れてないか?

 

「魔法カード《真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)》を発動。デッキから《真紅眼の黒竜》と《真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン》を墓地に送り、融合召喚。飛翔するデスッ! 《流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン》!」

 

《流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン》

星8/闇属性/ドラゴン族/攻3500/守2000

レベル7「レッドアイズ」モンスター+レベル6ドラゴン族モンスター

(1):このカードが融合召喚に成功した場合に発動できる。

手札・デッキから「レッドアイズ」モンスター1体を墓地へ送り、

そのモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与える。

(2):このカードがモンスターゾーンから墓地へ送られた場合、

自分の墓地の通常モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

 

「融合召喚成功時の効果を発動するデスよ。デッキから《真紅眼の亜黒竜》を墓地に送り、元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与えるデスッ!」

 

音羽遊蓮 LP1900 → 700

 

「ニヒッ! タイミングを誤ったデスね。発動した効果は雷神龍でも止められないデスよ。魔法カード《黒炎弾》を発動デス。《真紅眼融合》で特殊召喚したモンスターのカード名は「真紅眼の黒竜」として扱うので、問題なく使えるデスよ。勝ったッ! このデュエルは早くも終了デスねッ!」

 

《黒炎弾》

通常魔法

このカードを発動するターン、「真紅眼の黒竜」は攻撃できない。

(1):自分のモンスターゾーンの「真紅眼の黒竜」1体を対象として発動できる。

その「真紅眼の黒竜」の元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

「良き力だ。だがそのコンボは想定内だ。《リフレクト・ネイチャー》を発動」

 

《リフレクト・ネイチャー》

通常罠

このターン、相手が発動したライフポイントにダメージを与える効果は、

相手ライフにダメージを与える効果になる。

 

「……へ?」

 

「俺が受けるダメージは、おまえが受ける」

 

「あーなるほど、そういうことデスか」

 

暁切歌  LP3000 → 0

 

「――ありえないデェェェスッ!!」

 

デュエルディスクから無情のブザーが鳴り響く。

終始余裕ぶってはいたが、実際のところ結構危なかった。やはりライフ4000だとバーンは怖い。

先攻で《真紅眼融合》と《黒炎弾》の2枚があればゲームエンドだからな。

あと切歌は勘違いしていたようだが、効果処理時に対象の《真紅眼の黒竜》がフィールド上に存在しない場合、ダメージは与えられない。

大会が終わったら、また勉強会だな。

 

 

 



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レイアとデュエルする話

当初は俺と響もS.O.N.G.の潜水艦で島へと行く予定だったのだが。

「私のせいだよね。ごめんね、響、遊蓮くん」

「未来が気にする必要なんてないよ。わたしだって、未来と別行動するよりは一緒にいる方が全然いいし」

「そうそう、どうせ現地で合流するんだしな」

一般人である未来をあの潜水艦に乗せることは、さすがに許可が下りなかった。なので俺たちは運営側が用意したフェリーで島まで向かっている。

未来は参加することにあまり乗り気ではなかったのだが、響に押し切られる形で出場することになった。

島までは三日ほどかかる。参加者に退屈させないように娯楽施設も整っていた。デュエル場もあるが、あまり使われてはいない。観戦ができるため、自分のデッキを晒すことを嫌っているのだろう。それでもデュエルする人間はいるが、おそらくサブデッキか、もしくはメタを張ってきたデッキにメタを返すとか、そんな思惑だと思う。

「デュエル場があるのにデュエルできないのは、なんだかもったいないなぁ」

中には響のような能天気な人間もいる。あるいは自分に絶対の自信を持っているやつか。

「そういえば、マリアさんにデッキを見てもらったんだって?」

「へへー、実はそうなんだ。マリアさんもヒーローデッキを使うって聞いたから、いつかお話ししたいと思ってたんだ。色々と相談に乗ってもらって、カードまで貰っちゃった」

響は、にへらっと相好を崩す。そのまま三人でデュエル談義に突入した。

翌日、翌々日は響と未来のデッキ調整に手を貸したり、娯楽施設や飲食店を回ったりで、船旅はあっと言う間に終わりを告げた。

島の港には各地からやってきたであろう客船が数隻ならんでいた。船を降りるときに、船員からひとつの腕輪を渡された。その腕輪には星の形をしたピースが二つ輝いている。

……なんかこれ見たことあるな。

全員の下船が確認されると、拡声器を持ったスタッフがルールの説明を始めた。

『これより予選の説明を行う。君たちには先ほど渡したスターチップをデュエルで奪い合ってもらう。スターチップを十個集め、島の中央にある館を訪れた者が予選を通過できる。先着で16名だ。また、一度デュエルを行った相手と、再度デュエルすることは認められない。開始時刻は約一時間後。それまでは休むなり、島を散策するなり自由だ。質問があれば身近のスタッフに尋ねてくれ。以上だ』

最短で三戦か。でもそれをやると、一度は全賭けをしなければならない。さすがにリスクが大きいかな。

「遊蓮くん。マリアさんだよ。おーい、マリアさーん」

「ようやく着いたのね。貴方たちで最後よ」

この口ぶりだと随分と早くに着いていたようだ。

「マリアさん、わたしも頑張って予選を通過しますから、本選で戦いましょうね」

響は意気込んでそう言ったが、マリアさんは困惑したように苦笑しただけだった。

「残念だけど、それは無理ね。私はオブザーバーとして参加しているから」

「オブザーバー?」

意味が理解できずに、響は小首を傾げた。

「簡単に言うと、中から不正がないか見回ったり、参加者同士の小さなもめ事を仲裁したりと、予選を円滑に進めることが役割なの。デュエルはするけれど、仮にスターチップを十個集めても、本選に参加する権利はないのよ」

「へぇー、そんな役割が。あ、紹介します。わたしの親友の未来です」

「初めまして、小日向未来です。いつもうちの響がお世話になっております」

「なんだか保護者みたいな挨拶ね。マリア・カデンツァヴナ・イヴよ、よろしく」

ふたりはにこやかに握手を交わす。

「じゃあ、私はそろそろ行くわね。予選を通過できるように頑張りなさい」

マリアさんの背中を見送りながら、俺たちはこれからの行動について話し合うことにした。その結果、響と未来はふたりで、俺はひとりで行動することになった。

 

 

 

 

 

予選開始から数時間、太陽はそろそろ中天に差し掛かろうとしていた。スターチップは現在七つ。流石にこの規模の大会になると、参加者のレベルも高く、一戦一戦が濃厚なものだった。

しかし予想以上に広い島だな。相手を探すのも一苦労だ。

島を丸々ひとつ使ってやる意味があるのかとも思ったが、まあ話題作りみたいなものだろう。参加者が口出しすることじゃない。

休憩をはさむか思案していると、近くの茂みがガサゴソと動いた。そこから飛び出してきたのは、小さな女の子だった。

最初は面食らったが、この年で参加条件を満たしたのなら、この子は相当の手練れだろう。ならば、相手にとって不足はない。

「おーい、ちょっとそこ行くお嬢さん」

「――ッ! 貴方は……音羽遊蓮さん」

「なんだ、知ってるのか。ま、ツヴァイウィングの件は、結構荒れたからな」

アレは色々な意味で盛り上がりを見せた。ルール的にも戦術的にも問題はなかったのだが、アイドルファンからは、ちょいとばかり叩かれることになってしまった。

「ふむ、兎を追っていたら獅子に出くわしたか。こんな早期に出会うとはな。これも運命だというのならば、この運命、派手に歓迎しよう」

少女を追ってきたように現れた女性は、いきなりデュエルディスクを構えた。この人も俺を知っているようだが。

「スターチップは七つか。ならば三賭けでいいな」

「あ、はい。じゃあそれで」

断る理由もないので、素直に了承する。その時――

「気を付けてください。レイアのデッキは……」

「ちょっと待ったッ!」

思いのほか大きく響いた俺の声に、少女は身体をびくつかせる。

「あー、気持ちはありがたいけどさ、デュエルの前に相手のデッキをばらすのはやめてくれ。マナー的にもよろしくない」

「ご、ごめんなさい」

「いや、気持ちは受け取っておくさ。えーと……」

「あ、ボクはエルフナインといいます」

「そうか。ありがとな、エルフナイン」

俺がそう言うと、沈んでいた表情がいくらか和らいだ。

「そろそろいいか?」

「ええ、始めましょう」

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「私のターン、ドロー。《古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)》を召喚し、効果発動。相手に600ダメージを与える。そして、古代の機械猟犬がフィールドにいる時、自分の手札・フィールドから、「アンティーク・ギア」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚できる。私はフィールドの《古代の機械猟犬》と手札の《古代の機械飛竜(アンティーク・ギアワイバーン)》を融合。派手に現れろ! 《古代の機械魔神》!」

 

古代の機械魔神(アンティーク・ギア・デビル)

星8/地属性/機械族/攻1000/守1800

「アンティーク・ギア」モンスター×2

「古代の機械魔神」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードは他のカードの効果を受けない。

(2):自分メインフェイズに発動できる。相手に1000ダメージを与える。

(3):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。

デッキから「アンティーク・ギア」モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。

 

「古代の機械魔神の効果発動。相手に1000ダメージを与える」

 

音羽遊蓮 LP4000 → 3400 → 2400

 

どんどんライフが削られる。ライフ4000では細かなバーンもバカにできない。時間をかけるのはマズい。

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

レイア LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。《雷電龍-サンダー・ドラゴン》の効果発動。手札のこのカードを捨て、同名カードをデッキから手札に加える。続けて《雷鳥龍-サンダー・ドラゴン》の効果発動。このカードを捨て、墓地の《雷電龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚する。そして雷電龍をリリースして《超雷龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚」

 

《超雷龍-サンダー・ドラゴン》

星8/闇属性/雷族/攻2600/守2400

「サンダー・ドラゴン」+雷族モンスター

このカードは融合召喚及び以下の方法でのみ特殊召喚できる。

●雷族モンスターの効果が手札で発動したターン、

融合モンスター以外の自分フィールドの雷族の効果モンスター1体をリリースした場合に

EXデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)。

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

相手はドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加える事ができない。

(2):このカードが戦闘・効果で破壊される場合、

代わりに自分の墓地の雷族モンスター1体を除外できる。

 

「さらに《サファイアドラゴン》を通常召喚して、バトル。サファイアドラゴンで古代の機械魔神を攻撃」

 

「リバースカードオープン《デモンズ・チェーン》を発動。対象は《超雷龍-サンダー・ドラゴン》だ」

 

超雷龍が悪魔の鎖に繋がれる。サファイアドラゴンの攻撃は続行され、その爪撃によって機械仕掛けの魔神が崩れ去った。

 

「古代の機械魔神が破壊されたことで効果が発動する。デッキから《古代の機械飛竜》を特殊召喚し、効果発動。デッキから「アンティーク・ギア」カードを手札に加える」

 

サーチ効果は封じたかったのだが、徒労に終わってしまった。

 

「私は《古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)》を手札に加える。そして《古代の機械箱》はドロー以外の方法でデッキ・墓地から手札に加わった場合に「古代の機械箱」以外の攻撃力または守備力が500の機械族・地属性モンスター1体をデッキから手札に加えることができる。この効果で《古代の機械騎士(アンティーク・ギアナイト)》を手札に加える」

 

「メインフェイズ2に、俺はフィールドの超雷龍と手札の雷電龍を除外して、EXデッキから《雷神龍-サンダー・ドラゴン》を守備表示で特殊召喚。カードを2枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮 LP2400 手札1 モンスター2 伏せ2

レイア  LP4000 手札5 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。再び《古代の機械猟犬》を召喚。効果で600のダメージを与える」

 

音羽遊蓮 LP2400 → 1800

 

「古代の機械猟犬の効果で融合を行う。フィールドの《古代の機械猟犬》と手札の《古代の機械箱》、《古代の機械巨人》を融合。派手に来い! 《古代の機械究極巨人》!」

 

《古代の機械究極巨人》

星10/地属性/機械族/攻4400/守3400

「古代の機械巨人」+「アンティーク・ギア」モンスター×2

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

(1):このカードが攻撃する場合、

相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

(2):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、

その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

(3):このカードが破壊された場合、

自分の墓地の「古代の機械巨人」1体を対象として発動できる。

そのモンスターを召喚条件を無視して特殊召喚する。

 

「バトル。古代の――」

 

「おっと、バトルフェイズ突入時に《崩界の守護竜》を発動。サファイアドラゴンをリリースし、《古代の機械究極巨人》と《古代の機械飛竜》を破壊する」

 

「古代の機械究極巨人が破壊されたことで効果が発動する。墓地の古代の機械巨人を特殊召喚する」

 

古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)

星8/地属性/機械族/攻3000/守3000

このカードは特殊召喚できない。

(1):このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

(2):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

 

守備力3200の雷神龍がいるのに、攻撃表示で特殊召喚した?

 

「特殊召喚成功時に《ダメージ・ダイエット》を発動。このターンに俺が受ける全てのダメージは半分になる」

 

「……ほう。バトルを続行する。古代の機械巨人で雷神龍を攻撃、そして手札から速攻魔法《リミッター解除》を発動。古代の機械巨人の攻撃力は倍になる」

 

《古代の機械巨人》 攻撃力3000 → 6000

 

「派手に喰らえ! アルティメット・パウンド!」

 

音羽遊蓮 LP1800 → 400

 

「私はこれでターンエンドだ。エンドフェイズに古代の機械巨人は破壊される」

 

レイア  LP4000 手札2 モンスター0 伏せ0

音羽遊蓮 LP 400 手札1 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。俺は墓地の光属性と闇属性のモンスターを1体ずつ除外して、このモンスターを特殊召喚する」

 

「光と闇、その召喚条件は、まさか……」

 

エルフナインが驚嘆の声を漏らす。だが期待には応えられないかもしれない。エルフナインが想像しているのは「あっち」のほうだろう。

 

「墓地の雷鳥龍と雷電龍を除外。迅雷の如く響動(どよ)めけ、《雷劫龍-サンダー・ドラゴン》!」

 

《雷劫龍-サンダー・ドラゴン》

星8/闇属性/雷族/攻2800/守 0

このカードは通常召喚できない。

自分の墓地から光属性と闇属性のモンスターを1体ずつ除外した場合に特殊召喚できる。

(1):1ターンに1度、モンスターの効果が手札で発動した場合に発動する。

このカードの攻撃力はターン終了時まで300アップする。

(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、

自分の墓地からカード1枚を除外して発動できる。

デッキから雷族モンスター1体を手札に加える。

(3):相手エンドフェイズに、

除外されている自分のカード1枚を対象として発動できる。

そのカードをデッキの一番上または一番下に戻す。

 

「除外した雷電龍の効果発動。デッキから《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》を手札に加える。そして手札に加わった雷獣龍を捨てて効果発動。除外されている雷鳥龍を手札に加える。手札でモンスター効果が発動したことで雷劫龍の攻撃力が300アップ」

 

《雷劫龍-サンダー・ドラゴン》 攻撃力2800 → 3100

 

「手札の雷鳥龍の効果発動。このカードを捨てて、墓地の雷獣龍を特殊召喚する」

 

《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》

星6/闇属性/雷族/攻2400/守 0

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):このカードを手札から捨てて発動できる。

自分の墓地のカード及び除外されている自分のカードの中から、

「雷獣龍-サンダー・ドラゴン」以外の「サンダー・ドラゴン」カード1枚を選んで手札に加える。

(2):このカードが除外された場合またはフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。

デッキから「サンダー・ドラゴン」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに持ち主の手札に戻る。

 

「バトル。雷獣龍と雷劫龍でダイレクトアタック」

 

 

 

レイア LP4000 →1600 → 0

 

 

 

「――クッ、ここまで……か」

「ふぅ、なかなかスリリングなデュエルでしたよ。お姉さん……ん?」

レイアと呼ばれた女性は膝をついたままピクリとも動かない。

「機能を停止したんだと思います。しばらくすれば回収されるでしょう。レイアは、キャロルの作った決闘人形ですから」

「……デュエル……ドール?」

うわぁ、なんだか凄いことを聞いちゃった気がする。

「お願いします。ボクと一緒にキャロルを……キャロルを止めてください!」

 

 

 



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エルフナインがデュエルする話

俺の眼前には次元の裂け目が広がっている。カードの《次元の裂け目》ではなく、本物の次元の裂け目が。

「よかった。まだ出入口が残ってて」

正直残っていてほしくなかったが、言葉にはしない。

キャロルという子が世界を壊そうとしているので、一緒に止めてほしいとお願いされた。てっきり拗らせた子の説得ぐらいに考えていたのだが、ここがちょっとアレな世界だというのをすっかり忘れていた。

幻魔がいるんだから、異世界やら亜空間くらいはあるよなぁ。

常日頃から響に男に二言はないとか、男の誓いに撤回はないとか言っている手前、軽々しく前言を訂正したくはない。

深呼吸をして、エルフナインにつづく。そこには見上げるような巨大な城塞があった。

「こっちです」

城の構造は熟知しているのか、エルフナインは迷うそぶりも見せずに歩を進めていく。無機質な回廊にふたりの足音だけが響く。抜けた先は、玉座の間だった。中央にある玉座には、エルフナインとそっくりの女の子が鎮座していた。

「せっかく逃げおおせたというのに、わざわざ舞い戻ってきたか」

「キャロル……もうやめましょう。こんなこと、ボクたちのパパは望んでなんかいない!」

「そんなこと、どうでもいい」

「ど、どうでもいい……?」

エルフナインは面食らった様子で押し黙った。それを見下ろしながら、キャロルが薄く笑う。

「世界の破滅はすでに決まっていることなのだ。それをオレが成す。オレの手で、オレの意思で」

「……違う。キミはキャロルじゃない。キミは……キミは誰?」

「おかしなことを言う。オレはキャロル。オレこそがキャロル・マールス・ディーンハイム」

その時、エルフナインは辛そうな表情を浮かべながら、それでも確かな意志を宿した瞳でこちらに振り向いた。

「遊蓮さん。デュエルディスクを貸してもらえませんか?」

「……ああ」

デュエルディスクからデッキを外し、エルフナインに渡す。エルフナインはそれを腕に装着すると、自身のデッキを差し込んだ。

「キャロル。本当のキミを、ボクが取り戻してみせる」

「――フッ、ならば教えてやろう。運命には逆らえないということを」

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「オレのターン、ドロー。フフッ、貴様はよほど運命に嫌われているらしい。オレは永続魔法《神の居城-ヴァルハラ》を発動。自分フィールドにモンスターが存在しない時、手札から天使族モンスターを特殊召喚できる。来い、《アルカナフォースXXI-THE WORLD》!」

 

《アルカナフォースXXI(トゥエンティーワン)THE WORLD(ザ・ワールド)

星8/光属性/天使族/攻3100/守3100

このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、

コイントスを1回行い、その裏表によって以下の効果を得る。

●表:自分のエンドフェイズ時に

自分フィールド上のモンスター2体を墓地へ送って発動できる。

次の相手ターンをスキップする。

●裏:相手のドローフェイズ毎に、

相手の墓地の一番上のカードを相手の手札に加える。

 

「ザ・ワールドは召喚・反転召喚・特殊召喚成功時にコイントスを行い、その結果によって効果が変わる」

 

デュエルディスクがコイントスの結果を示す。結果は『表』。

 

「続けて《創造の代行者 ヴィーナス》を通常召喚。ライフを1500払い、デッキから3体の《神聖なる球体》を特殊召喚する」

 

《創造の代行者 ヴィーナス》

星3/光属性/天使族/攻1600/守 0

(1):500LPを払って発動できる。

手札・デッキから「神聖なる球体」1体を特殊召喚する。

 

神聖なる球体(ホーリーシャイン・ボール)

星2/光属性/天使族/攻 500/守 500

聖なる輝きに包まれた天使の魂。

その美しい姿を見た者は、願い事がかなうと言われている。

 

キャロル LP4000 → 2500

 

「そして、エンドフェイズに《アルカナフォースXXI-THE WORLD》の効果を発動。神聖なる球体2体を墓地に送り、次の相手ターンをスキップする」

 

「ボ、ボクのターンをスキップ……」

 

「選ばれた運命からは誰も逃れることはできないッ! 貴様のターンは消し飛ぶッ! ザ・ワールドッ! 再びオレのターンッ! ドロー、そしてバトルだ。ヴィーナスで攻撃ッ!」

 

エルフナイン LP4000 → 2400

 

「――あああっ」

 

「運命にひれ伏せッ! ザ・ワールドでダイレクトアタックッ! オーバー・カタストロフッ!」

 

 

 

エルフナイン LP2400 → 0

 

 

 

ザ・ワールドの攻撃によってエルフナインが部屋の隅まで吹き飛ばされる。

「エルフナインッ!」

舞い上がった粉塵を振り払い、エルフナインのもとへと駆け寄る。幸いにして大きな外傷はなかった。それでも衝撃で脳が揺れたのだろう、瞳は虚ろだった。

「遊蓮……さん。キャロルを……本当のキャロルを……取り戻して……」

「――ああ、任せておけ」

少しの沈黙を挟み、エルフナインは笑みを浮かべてうなずいた。

振り返り、かつてキャロルだったものを正面に見据える。

「キャロル、いや……『破滅の光』。次は俺が相手だ」

 

 

 



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キャロルとデュエルする話

キャロルの形相は悪魔じみたものへと変じていた。

「――ククッ、貴様のデュエルエナジーは幻魔事変から目を付けていた。最後の仕上げにと、とっておくつもりだったが、これもまた運命」

景色が変わる。ここは……宇宙か?

「貴様のデュエルエナジー、魂を、チフォージュ・シャトーの贄としてやろう」

「そう簡単にいくとは思わないことだ」

「言ったはずだ。選ばれた運命からは誰も逃れることはできないと」

キャロルがデュエルディスクを構える。それに合わせて、こちらも構えをとった。

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「俺のターン、ドロー」

 

とりあえず先攻は取れたが、手札が悪い。サンダー・ドラゴンがダブってしまった。

 

「モンスターをセット。カードを2枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「オレのターン、ドロー。フフッ、運命は再びオレの手の中に。オレは永続魔法《神の居城-ヴァルハラ》を発動。来い、《アルカナフォースXXI-THE WORLD》!」

 

機械じみた巨体の天使が降臨した。ソリッドヴィジョンで映し出さえたコインが回転しながら舞い上がる。それが示した結果は――『表』。

 

「続けて《創造の代行者 ヴィーナス》を通常召喚し、効果を発動」

 

――ここで使うか? いや、まだ早い。

 

「ライフを1500払い、デッキから3体の《神聖なる球体(ホーリーシャイン・ボール)》を守備表示で特殊召喚する」

 

キャロル LP4000 → 2500

 

「バトルだ。ヴィーナスで伏せモンスターを攻撃」

 

「セットモンスターは《仮面竜》だ。効果によってデッキから《仮面竜》を守備表示で特殊召喚する」

 

「続けてザ・ワールドで仮面竜を攻撃」

 

「再度効果発動。デッキから《アームド・ドラゴン LV3》を特殊召喚」

 

「無駄な足掻きを。オレはこれでターンエンド。そして、エンドフェイズに《アルカナフォースXXI-THE WORLD》の効果発動。神聖なる球体2体を墓地に送り、次の相手ターンをスキップする」

 

「その効果にチェーンして《ブレイクスルー・スキル》を発動。ザ・ワールドの効果を無効にする」

 

「――ほぅ、足掻きもここまでくる清々しいぞ。改めてターンエンドだ」

 

キャロル LP2500 手札3 モンスター3 伏せ0

音羽遊蓮 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズに《アームド・ドラゴン LV3》の効果発動。このカードを墓地に送り、デッキから《アームド・ドラゴン LV5》を特殊召喚する」

 

「《サファイアドラゴン》を召喚してバトルだ。サファイアドラゴンでヴィーナスを攻撃」

 

キャロル LP2500 → 2200

 

「続けてアームド・ドラゴンでザ・ワールドに攻撃」

 

「……何を狙っている?」

 

「ダメージ計算前、手札から《収縮》を発動。ザ・ワールドの攻撃力を半分にする」

 

《アルカナフォースXXI-THE WORLD》 攻 3100 → 1550

 

キャロル LP2200 → 1350

 

「――チッ、やってくれる」

 

「俺はこれでターンエンド。エンドフェイズに《アームド・ドラゴン LV5》を墓地に送り、《アームド・ドラゴン LV7》を特殊召喚する」

 

音羽遊蓮 LP4000 手札2 モンスター2 伏せ1

キャロル LP1350 手札3 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「オレのターン、ドロー。魔法カード《馬の骨の対価》を発動。神聖なる球体を墓地に送り、2枚ドロー」

 

ヴァルハラを警戒して、わざと1体残したのが裏目に出たな。

 

「ヴァルハラの効果で《アルカナフォースXVIII-THE MOON》を特殊召喚」

 

《アルカナフォースXVIII(エイティーン)THE MOON(ザ・ムーン)

星7/光属性/天使族/攻2800/守2800

このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、

コイントスを1回行い以下の効果を得る。

●表:自分のスタンバイフェイズ時に自分フィールド上に「ムーントークン」

(天使族・光・星1・攻/守0)を1体特殊召喚する事ができる。

●裏:自分のエンドフェイズ時に1度だけ、

自分フィールド上のモンスター1体を選択し、

そのモンスターのコントロールを相手に移す。

 

「コイントスの結果は――『表』だ。続けて魔法カード《トライワイトゾーン》を発動。墓地の神聖なる球体3体を特殊召喚。そして――」

 

キャロルの端正な顔が更に歪む。悪魔じみたものから、まるで悪魔にとり憑かれたような凶相に。

 

「神聖なる球体3体を墓地に送り、《アルカナフォースEX-THE LIGHT RULER》を特殊召喚ッ!」

 

《アルカナフォースEX(エクストラ)THE LIGHT RULER(ザ・ライト・ルーラー)

星10/光属性/天使族/攻4000/守4000

このカードは通常召喚できない。

自分フィールド上に存在するモンスター3体を

墓地へ送った場合のみ特殊召喚する事ができる。

このカードが特殊召喚に成功した時、コイントスを1回行い以下の効果を得る。

●表:相手モンスターを戦闘によって破壊し墓地へ送った時、

自分の墓地からカード1枚を選択して手札に加える事ができる。

●裏:このカードを対象にする効果モンスターの効果・魔法・罠カードの

発動を無効にし破壊する。

この効果でカードの発動を無効にする度に、

このカードの攻撃力は1000ポイントダウンする。

 

「コイントスの結果は――当然『表』ッ! バトルだ。ザ・ライトルーラーでアームド・ドラゴンに攻撃ッ! ジ・エンド・オブ・レイッ!」

 

「――クソッ! 表ばっかり出すぎだろッ!」

 

巨大な閃光波を受けてアームド・ドラゴンが蒸発する。

 

音羽遊蓮 LP4000 → 2800

 

「ザ・ライトルーラーの効果で、墓地の魔法カード《トライワイトゾーン》を手札に加える。続けてザ・ムーンの攻撃! サファイアドラゴンを撃破!」

 

音羽遊蓮 LP2800 → 1900

 

「オレはこれでターンエンドだ」

 

キャロル LP1350 手札3 モンスター2 伏せ0

音羽遊蓮 LP1900 手札2 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

悪くないカードだが、これじゃない。

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮 LP1900 手札2 モンスター0 伏せ2

キャロル LP1350 手札3 モンスター2 伏せ0

 

――――――――――――

 

「オレのターン、ドロー。スタンバイフェイズにザ・ムーンの効果は発動しない。再び魔法カード《トライワイトゾーン》を発動。墓地の神聖なる球体3体を特殊召喚。そしてそれらを墓地に送り、《アルカナフォースEX-THE DARK RULER》を特殊召喚!」

 

《アルカナフォースEX(エクストラ)THE DARK RULER(ザ・ダーク・ルーラー)

星10/光属性/天使族/攻4000/守4000

このカードは通常召喚できない。

自分フィールド上に存在するモンスター3体を

墓地へ送った場合のみ特殊召喚する事ができる。

このカードが特殊召喚に成功した時、コイントスを1回行い以下の効果を得る。

●表:このカードはバトルフェイズ中2回攻撃する事ができる。

この効果が適用された2回目の戦闘を行った場合、

このカードはバトルフェイズ終了時に守備表示になる。

次の自分のターン終了時までこのカードは表示形式を変更できない。

●裏:このカードが破壊される場合、フィールド上のカードを全て破壊する。

 

居並ぶ3体の最上級アルカナフォースモンスター。かつての三幻魔と同じくらいの圧力を感じる。

 

「コイントスの結果は――ッ! 『裏』だとッ!」

 

キャロルの目が驚愕のために大きく見開かれた。予想外の結果がもたらされたかの如く。

 

「まあ、いい。バトルだ。ザ・ライト――」

 

「その前に《和睦の使者》を発動。このターン、自分のモンスターは戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは0になる。といってもモンスターはいないけどな」

 

「――ふん。最後まで足掻くか。ターンエンド」

 

キャロル LP1350 手札2 モンスター3 伏せ0

音羽遊蓮 LP1900 手札2 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン」

 

手札はサンダー・ドラゴンが2枚のみ。伏せカードもこの状況ではあまり意味がない。なかなかに厳しい状況だ。幸い相手のモンスターに破壊耐性はない。まだ希望はある。

 

「――ドローッ!」

 

 

『遊蓮くんのデッキってギチギチで「遊び」がないんだよね。だからさぁ、こういうカードを1枚くらい差しておいたほうがいいよ』

 

 

能天気な笑顔が脳裏に浮かぶ。半ば無理矢理差し込まれた1枚を、まさかここで引くとは。

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮 LP1900 手札2 モンスター0 伏せ2

キャロル LP1350 手札2 モンスター3 伏せ0

 

――――――――――――

 

「今度こそラストターンだ、ドローッ!」

 

「ああ、このターンで終わりだ。リバースカードオープン《運命の分かれ道》」

 

「――ッ!? そのカードはッ!!」

 

《運命の分わかれ道》

通常罠

お互いのプレイヤーはそれぞれコイントスを1回行い、

表が出た場合は2000ライフポイント回復し、

裏が出た場合は2000ポイントダメージを受ける。

 

このカードの効果処理は同時に行われる。つまり、引き分けもありうる。

 

「試そうじゃないか。俺たちの、運命ってやつを」

 

互いの眼前に巨大なコインが出現する。2枚のコインが俺たちの運命を乗せて、天高く弾かれた。舞い上がる運命が示したものは――。

 

「――バ、バカなッ! こ、こんなことがぁッッ!!」

 

 

 

音羽遊蓮 LP3900

キャロル LP 0

 

 

 



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決勝戦のデュエルを見る話

膝をついたキャロルの身体から、白い靄が立ち昇る。それは悲鳴のような甲高い音とともに空気へと溶けた。

宇宙が、晴れる。

「……キャ、キャロル」

意識を取り戻したエルフナインは這う這うの体でキャロルの袂まで来ると、優しく彼女の頬を撫でた。

「エルフナイン……。すまなかった。「破滅の光」に憑依されたのも、元はといえば、オレの心に世界を憎む邪な気持ちがあったからだ。そこに付け入られた。抑えきれぬ破壊衝動が、次第にオレの魂を塗り潰していった」

キャロルは沈鬱な表情で内面を吐露した。

「おまえの声は、確かに届いていた。おまえの声が、暗闇に沈むオレの魂を寸でのところで繋ぎ止めてくれたのだ。ありがとう、エルフナイン」

「うん……うん……キャロル……」

エルフナインは泣きながら、そして笑いながらキャロルの胸に縋りついていた。

「おまえにも礼を言わねばならんだろう、音羽遊蓮。エルフナインのことも、オレ自身のことも」

「別に、大したことじゃない」

潤んだ瞳を隠すようにそっぽを向く。だめだなぁ、俺はこういうのはだめなんだよ。

「そんなことより、事件が解決したなら島に戻してくれ。スターチップは集めたが、館に行かなきゃ達成したことにならないんだ」

「ああ、そういえば外では大会の途中だったな。では次元の扉を開こう。そのくらいの余力はある」

キャロルが右手を掲げる。それが光ったと思うと、次元の揺らめきが生まれた。そこから覗く景色は茜色に染まっている。

「もうこんな時間か。じゃあな、エルフナイン、キャロル、元気でな」

「は、はい。遊蓮さんもお元気で」

「いずれ改めて礼はする。達者でな」

 

 

 

 

 

「ほっほっ、よっと」

自然と足が急ぐ。もう陽も暮れかかっている。しかし、結構な距離を走っているが、誰ひとり目にしないのが気がかりだ。もしかして、もう予選は終わってしまったのではないだろうか。

とうとう館に到着するまで誰とも会わなかった。

「――遊蓮くん!?」

「ん? ああ、未来か」

買い物の帰りなのだろう。売店のビニール袋を提げた未来が驚いた様子でこちらに駆け寄ってきた。

「皆心配してたのよ。全然戻ってこないし、連絡もつかないし、どこでなにしてたの?」

「なにって……デュエルだよ。ほら、スターチップも十個集まったぞ」

「何言ってるの? 予選はもう終わって、本選もあとは明日の決勝戦を残すだけよ」

「……なん……だと」

思わず間の抜けた声が漏れる。まてまて、じゃあ俺はあの亜空間に丸一日以上いたってことになる。あれか、あの宇宙空間か?

「そんなことよりも、早く響に会ってあげて。すごく心配してたのよ。明日の決勝戦のプレッシャーもあって、ナーバスになってるの」

「ん、ああ。いや、ちょっとまて。響のやつ決勝まで残ったのか?」

「そうよ、遊蓮くんの分まで頑張るって張り切ってたのよ」

なるほど。それで決勝を前にして緊張状態が最高潮に達したというわけか。

未来に引きずられるように響の部屋に入る。そこにはベッドの上で体育座りをしている響の姿があった。相変わらず分かりやすいやつ。

「響、ただいまー」

「あ、未来。おかえ――」

俺の姿を視界に収めた響は、まるで幻影でも見たように、忘我の状態に囚われる。やがて溢れ出た涙とともに転げるように飛び込んできた。

「どこに行ってたんだよぉ。電話も繋がらないしぃ」

流れ出る涙を拭おうともせずに、こちらの胸へと顔をうずめる。まさか、亜空間でデュエルをして、世界を破滅から救ってきたとは言えるはずもない。

「ごめんな。でも響も頑張ったな。決勝まで行くなんて、大したもんだよ」

そう言って響の髪を撫でた。響は幾分か落ち着いた様子で、照れくさそうに笑みを零した。

「よし! じゃあ今日はみんなで寝よう。三人で川の字になって!」

何がよし、なのかは分からないが、響はとんでもないことを言い出した。

「いや、あのな。男女七歳にして席を同じくせずという言葉があってな」

「大丈夫! 席じゃなくてベッドだから」

「いや、席ってのはベッドと同義で……未来も嫌だろ? 俺と一緒に寝るなんて」

「んー、まあ、響が真ん中ならいいかな」

意外だった。てっきり猛反対すると思ったが。まあ、俺を端っこに追いやるあたりは未来らしい。

「それに、今まで何をしてたか聞きださないといけないし」

未来はにやけた表情でそう言った。

「……はぁ。分かったよ、俺が折れるしかなさそうだ。ちゃんと話してやるさ」

亜空間でデュエルして、世界を救った話を。

響に貰ったカードが命運を分けたのは、まあ言わなくていいか。

 

 

 

 

 

明けて翌日。元気を取り戻した響は朝食をぺろりと平らげて、意気揚々とデュエル場へと向かって行った。

響と相対するのは、見覚えのある女の子だった。銀髪をなびかせて登場したのは、いつかの幻奏の使い手。

「リベンジマッチだな」

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「わたしのターン、ドローッ! いくよ、クリスちゃんッ! 今度はわたしが勝つからねッ!」

 

「だから! その呼び方やめろ! あたしの方が年上だぞッ!」

 

「わたしは《E・HERO エアーマン》を召喚!」

 

「聞いちゃいねぇ……」

 

雪音さんは諦めた様子で手札を見やった。

 

「エアーマンの効果でデッキから《E・HERO オーシャン》を手札に加える。そして《融合》を発動。フィールドの《E・HERO エアーマン》と手札の《E・HERO オーシャン》を融合。来て! 絶対零度の支配者《E・HERO アブソルートZero》!」

 

《E・HERO アブソルートZero》

星8/水属性/戦士族/攻2500/守2000

「HERO」と名のついたモンスター+水属性モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

このカードの攻撃力は、フィールド上に表側表示で存在する

「E・HERO アブソルートZero」以外の

水属性モンスターの数×500ポイントアップする。

このカードがフィールド上から離れた時、

相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。

 

対象を取らない全体除去。さあ、相手はどうするかな。

 

「わたしはカードを2枚伏せてターンエンド」

 

立花響 LP4000 手札2 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「あたしのターン、ドロー。魔法カード《独奏の第1楽章》発動。デッキから《幻奏の音女アリア》を特殊召喚だ。続けて《幻奏の歌姫ソプラノ》を通常召喚。そしてソプラノの効果で「幻奏」モンスターの融合召喚を行う」

 

雪音さんは水のヒーローに目を向けながら、不敵に笑う。

 

「そっちが融合ならこっちも対抗するぜ。響け歌声! 流れよ旋律! タクトの導きにより力重ねよ! 融合召喚! 今こそ舞台へ!《幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト》!」

 

《幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト》

星6/光属性/天使族/攻2400/守2000

「幻奏」モンスター×2

(1):このカードがフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、

お互いの墓地のカードを合計3枚まで対象として発動できる。

そのカードを除外する。

このカードの攻撃力は、この効果で除外したカードの数×200アップする。

この効果は相手ターンでも発動できる。

 

「まずは効果発動。おまえの墓地の《E・HERO エアーマン》と《E・HERO オーシャン》と《融合》を除外する。コーラス・ブレイク!」

 

「それにチェーンして《融合準備(フュージョン・リザーブ)》を発動。わたしはエクストラデッキの《E・HERO ジ・アース》を見せて、デッキの《E・HERO フォレストマン》と墓地の《融合》を手札に加えるよ」

 

「だが2枚は除外される。マイスタリン・シューベルトの攻撃力が400アップだ。バトル。マイスタリン・シューベルトでアブソルートゼロを攻撃、ウェーブ・オブ・ザ・グレイト!」

 

立花響 LP4000 → 3700

 

「――クッ、だけど、ゼロの効果でマイスタリン・シューベルトを破壊する」

 

「それぐらいは想定内だ。あたしはカードを1枚伏せてターンエンド」

 

雪音クリス LP4000 手札3 モンスター0 伏せ1

立花響   LP3700 手札4 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドロー。《E・HERO ブレイズマン》を召喚して、ふたつめの効果を発動。デッキから《E・HERO シャドーミスト》を墓地に送る。墓地に送られたシャドーミストの効果でデッキから《E・HERO ワイルドマン》を手札に加える。そして《融合》を発動。手札の《E・HERO フォレストマン》と《E・HERO ザ・ヒート》を融合。来て! 太陽の使者《E・HERO サンライザー》!」

 

《E・HERO サンライザー》

星7/光属性/戦士族/攻2500/守1200

属性が異なる「HERO」モンスター×2

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。

デッキから「ミラクル・フュージョン」1枚を手札に加える。

(2):自分フィールドのモンスターの攻撃力は、

自分フィールドのモンスターの属性の種類×200アップする。

(3):このカード以外の自分の「HERO」モンスターが戦闘を行う攻撃宣言時に、

フィールドのカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

 

「サンライザーの効果でデッキから《ミラクル・フュージョン》を手札に加えて、そのまま発動。墓地の《E・HERO フォレストマン》と《E・HERO ザ・ヒート》を除外して融合。来て! 紅蓮の勇者《E・HERO ノヴァマスター》!」

 

《E・HERO ノヴァマスター》

星8/炎属性/戦士族/攻2600/守2100

「E・HERO」モンスター+炎属性モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合に発動する。

自分はデッキから1枚ドローする。

 

「バトル! ブレイズマンで攻撃! そして攻撃宣言時にサンライザーの効果発動。伏せカードを破壊する!」

 

「甘いんだよ、リバースカードオープン《強化蘇生》。墓地のアリアを守備表示で特殊召喚」

 

《幻奏の音女アリア》

星4/光属性/天使族/攻1600/守1200

(1):特殊召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、

自分フィールドの「幻奏」モンスターは効果の対象にならず、

戦闘では破壊されない。

 

強化蘇生は完全蘇生だ。パワーアップ効果は剥がれたが、アリアはそのまま残る。特殊召喚されたため、対象を取るサンライザーの効果では破壊できず、戦闘でも破壊できない。

 

「……バトルは中止。カードを1枚伏せてターンエンド」

 

 

立花響   LP3700 手札1 モンスター3 伏せ2

雪音クリス LP4000 手札3 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「あたしのターン、ドロー。速攻魔法《光神化》を発動。手札の《幻奏の音女セレナ》を特殊召喚。こいつは天使族モンスターをアドバンス召喚する場合、2体分のリリースにできる。セレナをリリースして《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》をアドバンス召喚!」

 

《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》

効果モンスター

星8/光属性/天使族/攻2600/守2000

このカードの効果を発動するターン、

自分は光属性以外のモンスターを特殊召喚できない。

(1):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。

手札から天使族・光属性モンスター1体を特殊召喚する。

 

「プロディジー・モーツァルトの効果発動。手札の《幻奏の音女エレジー》を特殊召喚!」

 

《幻奏の音女エレジー》

星5/光属性/天使族/攻2000/守1200

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの特殊召喚された「幻奏」モンスターは効果では破壊されない。

(2):特殊召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、

自分フィールドの天使族モンスターの攻撃力は300アップする。

 

「エレジーの効果で自分フィールドの天使族モンスターの攻撃力は300アップするぜ。バトルだ。まずはパワーアップ効果を持つサンライザーに攻撃。行け、プロディジー・モーツァルト!」

 

攻撃力は同じだが、アリアの効果でプロディジー・モーツァルトは戦闘では破壊されない。サンライザーが一方的に破壊される。

 

「続けてエレジーでブレイズマンを攻撃」

 

立花響   LP3700 → 2600

 

「あたしはこれでターンエンドだ」

 

雪音クリス LP4000 手札0 モンスター3 伏せ0

立花響   LP2600 手札1 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドロー!」

 

かなり苦しい展開だな。相手の耐性はこんな感じか。

 

《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》 攻撃表示

戦闘・効果では破壊されない。

《幻奏の音女エレジー》 攻撃表示

効果の対象とならず、戦闘・効果では破壊されない。

《幻奏の音女アリア》 守備表示

効果の対象とならず、戦闘・効果では破壊されない。

 

「バトル。ノヴァマスターでエレジーに攻撃」

 

雪音クリス LP4000 → 3700

 

「ヘッ、かすり傷だぜ」

 

「わたしはこれでターンエンド」

 

立花響   LP2600 手札2 モンスター1 伏せ2

雪音クリス LP3700 手札0 モンスター3 伏せ0

 

――――――――――――

 

「あたしのターン、ドロー。バトルだ。プロディジー・モーツァルトでノヴァマスターを攻撃」

 

立花響   LP2600 → 2300

 

プロディジー・モーツァルトのシャウトでノヴァマスターが破壊される。これで響のフィールドはがら空きになった。

 

「こいつでラストだッ! エレジーでダイレクトアタックッ!」

 

「リバースカードオープン《波紋のバリア -ウェーブ・フォース-》」

 

「――んなッ!? そいつはッ!」

 

「プロディジー・モーツァルトとエレジーはデッキに戻ってもらうよ」

 

「ふん、やるじゃねぇか。ターンエンドだ」

 

雪音クリス LP3700 手札1 モンスター1 伏せ0

立花響   LP2300 手札2 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドロー! わたしは《異次元の女戦士》を召喚。続けて魔法カード《平行世界融合》を発動。このカードを発動するターン、わたしはこのカードの効果以外ではモンスターを特殊召喚できない。除外されている《E・HERO フォレストマン》と《E・HERO オーシャン》をデッキに戻し融合召喚。来て! 地球の守護者《E・HERO ジ・アース》!」

 

《E・HERO ジ・アース》

融合・効果モンスター

星8/地属性/戦士族/攻2500/守2000

「E・HERO オーシャン」+「E・HERO フォレストマン」

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

(1):このカード以外の自分フィールドの表側表示の「E・HERO」モンスター1体をリリースして発動できる。

このカードの攻撃力はターン終了時まで、リリースしたモンスターの攻撃力分アップする。

 

「そして《フェイバリット・ヒーロー》をジ・アースに装備。そして、バトル。バトルフェイズ開始時にフェイバリット・ヒーローの効果発動。デッキから《摩天楼-スカイスクレイパー-》を発動する。それによってジ・アースの攻撃力は元々の守備力分アップし、相手の効果の対象にはならない」

 

《E・HERO ジ・アース》 攻 2500 → 4500

 

「――クッ、攻撃力4500かよ」

 

「バトルッ! 異次元の女戦士でアリアを攻撃ッ!」

 

「アリアは戦闘では破壊されない。だが――」

 

「うん。ダメージ計算後にそれぞれのモンスターを除外する」

 

激突によって発生した次元の狭間に、互いのモンスターが吸い込まれていく。

 

「ジ・アースでダイレクトアタックッ! アース・コンバスションッ!」

 

ジ・アースの胸から大口径のビームが放たれる。それは、デュエルの終焉を意味していた。

 

歌姫と英雄の激闘は終わり、デュエル場は歓声に包まれた。その後に行われた表彰式で、響には黄金の盾が、雪音さんには白銀の盾が送られた。

その時の太陽のような笑顔を、俺は生涯忘れないだろう。

 

 

 



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昼休みにデュエルを見る話

アマチュアとはいえ、世界大会優勝というのは思いのほか注目を集めた。テレビでも取り上げられたし、雑誌の取材も何件か来ていたな。

もてはやされるのは気分の良いものだったのか、響は律義にインタビューに答えていた。

そのお祭り騒ぎも、大体二週間程度で落ち着いた。

いつもの日常。いつもの昼休み。今日の俺は観戦だ。

戦うのは響と未来。

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「私のターン、ドロー。《成金ゴブリン》を発動。響に1000ポイントのライフをプレゼントして1枚ドロー」

 

「ありがとう、未来」

 

「どういたしまして。続けてもう1枚の《成金ゴブリン》を発動。響に1000ポイントのライフをプレゼントして1枚ドロー」

 

「またまたありがとう、未来」

 

立花響 LP4000 → 6000

 

「またまたどういたしまして。永続魔法《神の居城-ヴァルハラ》を発動。その効果で手札の《大天使クリスティア》を特殊召喚。カードを1枚伏せてターンエンドよ」

 

《大天使クリスティア》

星8/光属性/天使族/攻2800/守2300

(1):自分の墓地の天使族モンスターが4体のみの場合、

このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):このカードの(1)の方法で特殊召喚に成功した場合、

自分の墓地の天使族モンスター1体を対象として発動する。

その天使族モンスターを手札に加える。

(3):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

お互いにモンスターを特殊召喚できない。

(4):フィールドの表側表示のこのカードが墓地へ送られる場合、

墓地へは行かず持ち主のデッキの一番上に戻る。

 

先攻1ターン目に特殊召喚を封じるクリスティアか。響にはかなり厳しいカードだな。だが、こんなのはいつものことだ。響だって対策はしているだろう。

 

小日向未来 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドローッ! 《E・HERO エアーマン》を召喚して効果発動。デッキから《E・HERO シャドー・ミスト》を手札に加える。速攻魔法《月の書》を発動。クリスティアを裏側守備表示にするよ」

 

……通ったか。だがクリティアは破壊されてもデッキの一番上に戻る効果を持っている。このターンで決めるか、盤面を作るか、あるいはヴァルハラを破壊しないとまた繰り返しだ。

 

「魔法カード《融合》を発動。手札の《E・HERO シャドー・ミスト》と《E・HERO オーシャン》を融合。来て、絶対零度の支配者《E・HERO アブソルートZero》! 墓地に送られたシャドー・ミストの効果で、《E・HERO ブレイズマン》を手札に加える。続けて《置換融合》を発動。フィールドの《E・HERO アブソルートZero》と《E・HERO エアーマン》を融合。来て、暴風の先導者《E・HERO Great TORNADO》! この瞬間、ゼロの効果が発動するよ。フリージング・クラッシュッ!」

 

なるほど、クリスティアを裏側表示のまま破壊したのか。これならクリスティアは墓地に送られる。

 

「続けて墓地の《置換融合》の効果発動。このカードを除外して、ゼロをエクストラデッキに戻す。その後1枚ドロー。バトルッ! グレイト・トルネードで攻撃、スーパーセルッ!」

 

小日向未来 LP4000 → 1200

 

「わたしはカードを1枚伏せてターンエンドだよ」

 

立花響   LP6000 手札2 モンスター1 伏せ1

小日向未来 LP1200 手札3 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。うーん、かなりライフを削られちゃったなぁ。まずはヴァルハラの効果で《光天使セプター》を特殊召喚」

 

光天使(ホーリー・ライトニング)セプター》

星4/光属性/天使族/攻1800/守 400

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。

デッキから「光天使セプター」以外の「光天使」モンスター1体を手札に加える。

(2):フィールドのこのカードを含むモンスター3体以上を素材として

X召喚したモンスターは以下の効果を得る。

●このX召喚に成功した時、このカード以外のフィールドのカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊し、自分はデッキから1枚ドローできる。

 

「そして手札のスローネを効果で特殊召喚するよ」

 

《光天使スローネ》

星4/光属性/天使族/攻 800/守2000

このカードをX召喚の素材とする場合、

モンスター3体以上を素材としたX召喚にしか使用できない。

(1):自分が「光天使」モンスターの召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。

このカードを手札から特殊召喚し、自分はデッキから1枚ドローする。

そのドローしたカードが「光天使」モンスターだった場合、

そのモンスターを特殊召喚できる。

 

「スローネの効果で1枚ドロー。セプターの効果でスローネを加えて、そのまま特殊召喚。2体目のスローネの効果で更に1枚ドロー。レベル4のスローネ2体とセプターでオーバーレイネットワークを構築。光の使いよ、今、悠久の時を超え、輝きの衣をまといて降臨せよ! 《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》!」

 

《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》

ランク4/光属性/天使族/攻2500/守2000

光属性レベル4モンスター×3

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、

相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターの攻撃力を半分にし、その効果を無効にする。

フィールド上のこのカードが破壊される場合、

代わりにこのカードのエクシーズ素材を全て取り除く事ができる。

この効果を適用したターン、自分が受ける戦闘ダメージは半分になる。

 

「セプターのふたつめの効果で、伏せカードを破壊して1枚ドロー」

 

「甘いよ、未来。チェーンして《強化蘇生》を発動。《E・HERO シャドー・ミスト》を守備表示で特殊召喚。効果で《マスク・チェンジ》を手札に加えるよ」

 

「やるね、響。私はグローリアス・ヘイローのX素材を1つ取り除き、グレイト・トルネードの攻撃力を半分にし、その効果を無効にする。ライトニング・ジャッジメント!」

 

《E・HERO Great TORNADO》 攻撃力2800 → 1400

 

グローリアス・ヘイローの放った光の矢を受けて、グレイト・トルネードが弱体化する。

やっぱセプスロってスゲーな。サーチして3ドローして1破壊とか、最後までアドたっぷりだもん、キラやば。

ちなみに、この世界のデュエリストは意識が高いのか、拘りが強いのか、『出張』という概念があまりない。特にプロの世界はそれが顕著で、あまりにも自分のデッキイメージとかけ離れたカードは、どんな強カードであっても入れない。プロのデュエルはエンターテインメントでなければならないからだ。

大人の事情を言うならば、プロとは職業デュエリストであり、スターでもあり、この世界では大きな経済でもある。スポンサーがいて、ファンがいる。そういった人たちを見てデュエルを始めた子供たちは、やはり自分のデッキにも拘りを持つようになるわけだ。

 

「《コーリング・ノヴァ》を通常召喚して、バトル。コーリング・ノヴァでグレイト・トルネードを攻撃」

 

攻撃力はどちらも同じ、上手いな。

 

「戦闘で破壊され墓地に送られたことで、コーリン・ノヴァの効果発動。デッキから2体目のコーリング・ノヴァを特殊召喚。そのままシャドー・ミスト攻撃。続けてグローリアス・ヘイローでダイレクトアタック。ライトニング・クラスター!」

 

立花響 LP6000 → 3500

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

小日向未来 LP1200 手札3 モンスター2 伏せ2

立花響   LP3500 手札3 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドローッ! 《E・HERO ブレイズマン》を召喚して効果発動。デッキから《融合》を手札に加える。続けて《融合回収(フュージョン・リカバリー)》を発動。墓地の《融合》と《E・HERO オーシャン》を手札に加える。そして《融合》発動。フィールドの《E・HERO ブレイズマン》と手札の《E・HERO オーシャン》を融合。もう一度お願いッ! 《E・HERO アブソルートZero》!」

 

再び水のヒーローが降臨した。だが、そのヒーローもすぐに退場させられるとは思わなかっただろう。

 

「速攻魔法《マスク・チェンジ》を発動。ゼロを墓地に送り、《M・HERO アシッド》を特殊召喚。いくよッ! アシッド・レインとフリージング・クラッシュのダブルアタックだッ!」

 

「チェーンして《天罰》を発動。手札を1枚捨てて、アシッドの効果を無効にして破壊するわ」

 

「――ッ! でもゼロの効果は発動するよ」

 

「コーリング・ノヴァは破壊されるけど、グローリアス・ヘイローはX素材を全て取り除くことで破壊を無効にできる」

 

「う~、わたしはカードを1枚伏せてターンエンド」

 

「エンドフェイズに《戦線復帰》を発動。墓地のセプターを守備表示で特殊召喚。効果で《光天使スローネ》を手札に加えるわ」

 

立花響   LP3500 手札1 モンスター0 伏せ1

小日向未来 LP1200 手札3 モンスター2 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。魔法カード《テラ・フォーミング》を発動。デッキから《祝福の教会-リチューアル・チャーチ》を手札に加えて、そのまま発動」

 

周囲の景色が一変、讃美歌でも聞こえてきそうな荘厳な教会へと姿を変えた。

 

「ソリッドビジョンじゃなくて、いつか本物の教会で祝福されたいね」

 

「? そうだね!」

 

あれは意味が分かってないな。とりあえず返事をしとこうって顔だ。未来もほほを赤らめるな。

 

「……こほん。リチューアル・チャーチのふたつめの効果を発動するわ。墓地の《神の居城-ヴァルハラ》、《テラ・フォーミング》、《成金ゴブリン》2枚をデッキに戻して墓地のスローネを特殊召喚。効果で手札のスローネを特殊召喚して1枚ドロー。レベル4のスローネ2体とセプターでオーバーレイネットワークを構築。光の使いよ、今、再び、輝きの衣をまといて降臨せよ! 《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》!」

 

ヴァルハラ? ああ、天罰の時に捨てたカードか。

未来のフィールドに2体のグローリアス・ヘイローが並ぶ。

当然だが未来のデッキにはグローリアス・ヘイローが3枚入っている。つまり一貫性があるってことだ。一貫性があるってことは美しいってことだ。

光天使3体が集まって《ヴェルズ・ウロボロス》が出てきたら観客は戸惑うだろう。プロの世界ならブーイングが起こるかもしれない。

 

「セプターの効果で伏せカードを破壊して、1枚ドロー」

 

「チェーンして《死魂融合(ネクロ・フュージョン)》を発動。墓地の《E・HERO ブレイズマン》と《E・HERO シャドー・ミスト》を裏側表示で除外して融合。来て、漆黒の益荒男《E・HERO エスクリダオ》!」

 

《E・HERO エスクリダオ》

星8/闇属性/戦士族/攻2500/守2000

「E・HERO」と名のついたモンスター+闇属性モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

このカードの攻撃力は、自分の墓地に存在する

「E・HERO」と名のついたモンスターの数×100ポイントアップする。

 

勢いよく呼び出したが、守備表示だ。グローリアス・ヘイローの効果を考えれば当然ともいえるが。

 

「私は《ジェルエンデュオ》を通常召喚して、バトルよ。グローリアス・ヘイローでエスクリダオを攻撃」

 

黄金に輝く天使の放った光の槍に、漆黒の英雄が砕け散った。

 

「続けてジェルエンデュオと2体目のグローリアス・ヘイローでダイレクトアタック!」

 

これは、決まったか?

 

「まだだよ未来。わたしには、これがあるッ!」

 

響に向かっていったジェルエンデュオが、閃光に包まれて消え去った。そこには響を守護するように、ひとりの剣士が仁王立ちしていた。

 

《護封剣の剣士》

星8/光属性/戦士族/攻 0/守2400

(1):相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。

このカードを手札から特殊召喚する。

その後、特殊召喚したこのカードの守備力がその攻撃モンスターの攻撃力より高い場合、

その攻撃モンスターを破壊する。

(2):フィールドのこのカードを素材としてX召喚したモンスターは以下の効果を得る。

●このカードは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない。

 

「なら、グローリアス・ヘイローで護封剣の剣士を攻撃。ライトニング・クラスター!」

 

光の槍が護封剣の加護を撃ち抜く。

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンドよ」

 

小日向未来 LP1200 手札2 モンスター2 伏せ1

立花響   LP3500 手札0 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドローッ! 魔法カード《貪欲な壺》を発動。墓地の《E・HERO オーシャン》、《E・HERO Great TORNADO》、《E・HERO アブソルートZero》、《M・HERO アシッド》、《護封剣の剣士》をデッキに戻してシャッフル、その後2枚ドロー。来たッ! わたしは《ミラクル・フュージョン》を発動。墓地の《E・HERO エスクリダオ》と《E・HERO エアーマン》を除外して融合。もう一度お願いッ! 《E・HERO Great TORNADO》!」

 

再度、風のヒーローが疾駆する。グローリアス・ヘイローの攻撃力は半減している。

 

「グレイト・トルネードでグローリアス・ヘイローに攻撃、スーパーセルッ!!」

 

 

 

小日向未来 LP1200 → 0

 

 

 

デュエルデスクから試合終了を告げるブザーが鳴り響いた。景色が荘厳な教会から、いつものデュエル場へと戻る。

「あーあ、負けちゃったかぁ」

「あははっ、今回はわたしの勝ちだね」

「でも通算成績ではまだ私が勝ち越してるんだよ」

「えぇー、そうだったかなぁ」

最初の頃の響は負けまくってたからな。さすがに泣きそうになると未来は響にばれないように上手く負けてあげてたみたいだけど。

「そうだよー。私の393勝315敗だよ」

 

 

 



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サンジェルマンとデュエルする話

「つまり、重力子を使い異次元へと移動するのよ。すなわちデュエルの精霊たちの居る世界へ」

長々と説明されたことを纏めるとそういうことだった。デュエルエナジーを解析していたはずなのに、何故異世界に行くという論理にすり替わったのか、これが分からない。

分かることといえば、俺たちがこれから精霊の世界へ行く可能性があるということだ。

「それで私が呼ばれたということね」

いまいち納得していない表情でマリアさんが髪をかき上げた。

「でも面白そうです。異世界なんて」

いまいち事態を理解してない様子で響が軽口を零す。

そう、異世界に行くのはこの3人だ。ツヴァイウィングはアイドル活動で忙しいし、司令たちは業務があるし、調と切歌は色々な意味で論外だろう。

他にも職員はいそうなものだが、どうもデュエルエナジーが一定値以上ないと、次元の障壁に弾かれるらしい。

ますますデュエルエナジーがどういうものか分からなくなってきた。

マリアさんがどう丸め込まれたかは知らないが、俺と響はバイト代の上乗せで手を打った。だが、若干後悔中である。母親には泊りがけのバイトだといってある。夏休みだからか、許可はあっさりと取れた。

大荷物のリュックを背負い、特殊なワイヤーの命綱で結ばれ、目の前の次元の裂け目へと飛び込む。

漆黒のトンネルを抜けた先、そこは確かに精霊の世界だった。何故分かったかって? そりゃあ、上空にハーピィレディが旋回しているからね。まるで獲物を狙うように。獲物が何かって? それ答える必要ある?

「《サファイアドラゴン》を召喚!」

ハーピィレディの爪とサファイアドラゴンの爪がぶつかり合う。傷を負ったハーピィレディは逃げるように去って行った。

やはり攻撃力がものを言う世界か。しかし本当に実体化するとは。ソリッドビジョンと違って、確かな手触りがある。

おっと、関心を抱いている場合じゃないな。ワイヤーロープは切れている。同じ入口に入ったはずなのに、何故かふたりは見当たらない。次元の穴も見当たらない。通信機もダメだ。

……よし、ひとまず落ち着こう。こういう時は素数を数えるんだ。えーと。

《No.2ゲート・オブ・ヌメロン-ドゥヴェー》、《No.3ゲート・オブ・ヌメロン-トゥリーニ》、《No.5亡朧竜デス・キマイラ・ドラゴン》、《No.7ラッキー・ストライプ》、《No.11ビッグ・アイ》…………《No.101S・H・ArkKnight》、《No.103神葬零嬢ラグナ・ゼロ》、《No.107銀河眼の時空竜》、よっしゃ完璧。

「とりあえず探すしかないか。背中に乗せてもらうぞ、サファイアドラゴン」

横たわって眠そうにしていたサファイアドラゴンは、こちらの意思が通じたように大きく嘶いた。

 

 

 

 

 

探索しながらの飛行ということで、速度は抑えてある。小さな町がふたつほど見つかったが、どちらも廃墟だった。

ここらで現地人の誰かとエンカウントでもしそうなものだが、そんな気配はまるでない。もしかして違う世界か?

確か十二次元宇宙……だったよな。世界は12あるはずだから、そういうこともあるのか。

俺の視線と意識は、当然だが下に向いている。だから飛行中のサファイアドラゴンが急に傾いだことに慌てた。

蔵も手綱もない裸乗りだ。落下しなかったのは僥倖だった。

俺たちがいた場所を火球が通り過ぎる。誰だかしらないが、随分と手荒なファーストコンタクトだ。

見れば相手もドラゴンに乗っていた。漆黒のドラゴンだ。体躯はサファイアドラゴンよりも二回りは大きい。

アリスブルーの長髪を揺らしながら、男装の麗人は「ついてこい」と叫んで身を翻した。

ただ従うのは癪ではあったが、こちらも情報が欲しい。渋々ながらもあとを追う。

十五分ほど飛び、漆黒のドラゴンは下降を始めた。

丸い建物。まるで闘技場のようだ。

「音羽遊蓮。おまえは何のためにこの世界へ来た?」

なんで俺はこんなにも名前を知られているのだろう。キャロルの言っていたように、幻魔事変は結構知られているのか?

だが生憎とその問いに対する明確な答えは、持ち合わせていなかった。あの変わり者の研究者に付き合わされただけなのだが、強いて言うのならば。

「調査……ですかね?」

意図せず疑問形になってしまったのは仕方のないことだと思う。

「あの女たちもおまえの仲間か?」

「あー、響とマリアさんですかね?」

「やはりか。ならば、カリオストロとプレラーティの(かたき)、とらせてもらう」

「いや、何を……」

「私の名はサンジェルマン。構えろ、音羽遊蓮!」

あ、ダメだこの人。他人(ひと)の話を聞かないタイプだ。

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「私のターン、ドロー。手札のレベル8《暗黒の魔王ディアボロス》を墓地に送り、《ハードアームドラゴン》を特殊召喚」

 

《ハードアームドラゴン》

星4/地属性/ドラゴン族/攻1500/守 800

(1):このカードは手札のレベル8以上のモンスター1体を墓地へ送り、

手札から特殊召喚できる。

(2):このカードをリリースして召喚したレベル7以上のモンスターは

効果では破壊されない。

 

「魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動。手札の《黄泉ガエル》を墓地に送り、デッキから《イービル・ソーン》を特殊召喚。そしてこのカードをリリースして効果発動。相手に300ダメージを与え、デッキからイービル・ソーンを2体、攻撃表示で特殊召喚する」

 

音羽遊蓮 LP4000 → 3700

 

「2体のイービル・ソーンとハードアームドラゴンをリリースして《邪神アバター》を召喚する」

 

《邪神アバター》

星10/闇属性/悪魔族/攻 ?/守 ?

このカードは特殊召喚できない。

自分フィールドのモンスター3体をリリースした場合のみ通常召喚できる。

(1):このカードが召喚に成功した場合に発動する。

相手ターンで数えて2ターンの間、相手は魔法・罠カードを発動できない。

(2):このカードの攻撃力・守備力は、「邪神アバター」以外の

フィールドの攻撃力が一番高いモンスターの攻撃力+100の数値になる。

 

アバター!? 何故アバターがここに? さすがにそれは聞いてない! しかも先攻1ターン目で呼び出すとは。アバターはその特性上、戦闘破壊はほぼ不可能。ハードアームドラゴンの効果で効果破壊もできないときた。

 

「私はこれでターンエンドだ」

 

サンジェルマン LP4000 手札1 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。何故貴方が三邪神のカードを持ってるんです?」

 

「白々しい。アバターはドレッド・ルートやイレイザーとは違うぞ。容易く破れるとは思わないことだ」

 

やっぱり話が噛み合ってないな。察するに、マリアさんと響があの人の仲間のカリオストロとプレラーティってのを倒したってとこなんだろうけど。なんにせよ、邪神を放っておくわけにもいかないだろう。なんたって邪神だし。

 

「モンスターをセットしてターンエンド」

 

とはいえ魔法も罠も発動できない状況の今は耐えるしかない。

 

音羽遊蓮    LP3700 手札5 モンスター1 伏せ0

サンジェルマン LP4000 手札1 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズに黄泉ガエルが復活する。そして黄泉ガエルをリリースして《軍神ガープ》をアドバンス召喚」

 

《軍神ガープ》

星6/闇属性/悪魔族/攻2200/守2000

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、

フィールド上に存在するモンスターは全て表側攻撃表示となり、

表示形式を変更する事ができない。

この時、リバース効果モンスターの効果は発動しない。

また、1ターンに1度、手札の悪魔族モンスターを任意の枚数見せる事で、

このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、

見せた枚数×300ポイントアップする。

 

伏せモンスター《仮面竜》が強制的に攻撃表示になる。マズい展開だ。

 

「バトルだ。ガープで仮面竜に攻撃」

 

音羽遊蓮 LP3700 → 2900

 

「仮面竜の効果でデッキから2体目の《仮面竜》を守備表示で特殊召喚」

 

「無駄だ。仮面竜は強制的に攻撃表示になる。アバターで仮面竜に攻撃」

 

黒い球体からガープの姿に変異したアバターが仮面竜を粉砕する。

 

音羽遊蓮 LP2900 → 2000

 

「仮面竜の効果で《アームド・ドラゴン LV3》を特殊召喚」

 

「私はこれでターンエンドだ」

 

サンジェルマン LP4000 手札1 モンスター2 伏せ0

音羽遊蓮    LP2000 手札5 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズに《アームド・ドラゴン LV3》の効果発動。このカードを墓地に送り、デッキから《アームド・ドラゴン LV5》を特殊召喚」

 

まずはガープを破壊する。あの効果は厄介だ。

 

「バトル。アームド・ドラゴンでガープを攻撃」

 

サンジェルマン LP4000 → 3800

 

「俺はカードを2枚伏せてターンエンド。そしてエンドフェイズに《アームド・ドラゴン LV5》の効果発動。このカードを墓地に送り、デッキから《アームド・ドラゴン LV7》を攻撃表示で特殊召喚」

 

音羽遊蓮    LP2000 手札4 モンスター1 伏せ2

サンジェルマン LP3800 手札1 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズに黄泉ガエルが復活する。《悪王アフリマ》を通常召喚。そしてふたつめの効果を発動。このカード自身をリリースして1枚ドロー。自分フィールド上の闇属性モンスターがリリースされたことで、墓地の《暗黒の魔王ディアボロス》の効果発動。このカードを特殊召喚する」

 

《暗黒の魔王ディアボロス》

星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2000

このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが手札・墓地に存在し、自分フィールドの闇属性モンスターがリリースされた場合に発動できる。

このカードを特殊召喚する。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

相手はこのカードをリリースできず、効果の対象にもできない。

(3):自分フィールドの闇属性モンスター1体をリリースして発動できる。

相手は手札を1枚選んでデッキの一番上または一番下に戻す。

 

アバターの姿が漆黒のアームド・ドラゴンから暗黒の魔王へと変化する。

 

「バトルだ。アバターでアームド・ドラゴンを攻撃」

 

「攻撃宣言時に《ブレイクスルー・スキル》を発動。アバターの効果を無効にする」

 

「無駄だ。手札から速攻魔法《禁じられた聖槍》をアバターに発動。ターン終了時まで攻撃力が800ダウンし、このカード以外の魔法・罠カードの効果を受けない。だが、最終的にアバターの攻撃力は元に戻る」

 

「更にチェーンして《次元幽閉》を発動。アバターを除外する」

 

「――なんだとッ!?」

 

サンジェルマンの表情が驚愕に歪む。アバターは次元の穴に吸い込まれ、消失した。

 

「くっ! アバターは消えたが、まだバトルフェイズは続いている。ディアボロスでアームド・ドラゴンを攻撃。シャドウ・ディスペアー!」

 

音羽遊蓮 LP2000 → 1800

 

「私はこれでターンエンドだ」

 

サンジェルマン LP3800 手札1 モンスター2 伏せ0

音羽遊蓮    LP1800 手札4 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

ようやく自由に動ける。反撃開始だ。

 

「魔法カード《封印の黄金櫃》を発動。デッキから《雷鳥龍-サンダー・ドラゴン》を除外する。この効果で手札を3枚デッキに戻してシャッフル。その後3枚ドローする。魔法カード《闇の誘惑》を発動。2枚ドローし、《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》を除外する。効果でデッキから《雷電龍-サンダー・ドラゴン》を守備表示で特殊召喚。手札の雷源龍の効果発動、雷電龍の攻撃力を500アップする」

 

この強化自体に意味はない。重要なのは手札で雷族モンスターの効果が発動したことだ。

 

「フィールドの雷電龍をリリースして、EXデッキから《超雷龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚。雷電龍がフィールドから墓地に送られたことで効果発動。デッキから《雷龍融合》を手札に加える。そして発動。除外されている《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》と墓地の《雷源龍-サンダー・ドラゴン》と《雷電龍-サンダー・ドラゴン》をデッキに戻して融合召喚。現れろ、《雷神龍-サンダー・ドラゴン》!」

 

天上の雷雲を切り裂き、三つ首の雷龍が姿を現した。

 

「《レスキューラビット》を通常召喚。このカードを除外して、デッキから《アレキサンドライドラゴン》2体を特殊召喚する。バトルだ。雷神龍でディアボロスを攻撃!」

 

三つの首より放たれた雷のブレスを喰らい、暗黒の魔王が消滅する。

 

サンジェルマン LP3800 → 3600

 

「――クッ!」

 

「アレキサンドライドラゴンで黄泉ガエルを攻撃。続けて2体目のアレキサンドライドラゴンでダイレクトアタック!」

 

サンジェルマン LP3600 → 1600

 

「ラストだ! 超雷龍-サンダー・ドラゴンでダイレクトアタック、サンダー・パニッシャー!」

 

 

 

サンジェルマン LP1600 → 0

 

 

 

デュエルの喧噪は静寂へと変わり、サンジェルマンは虚ろな表情で膝をついた。

訊きたいことは色々とあった。アバターやこの世界についてもそうだが、それよりも響とマリアさんの動向を知る必要がある。

声をかけようと近づくが、唐突にサンジェルマンの身体が淡い光に包まれた。

「業腹ではあるが、最後の務めを果たす」

淡い光が強烈なものへと変わった。その閃光に目蓋を閉じる。

瞳を開いたとき、サンジェルマンの姿はなく、景色も変わっていた。そこは祭壇のようでもあった。その中心、つまりは俺の目の前に、美丈夫がひとり佇んでいる。

男は深く瞑想しているようにも見えた。その時間はごく短いもので、眠りから覚めるようにゆっくりと覚醒し、こちらへと視線を向ける。

「キミか、残ったのは。ならば仕上げをしなければね、この僕の手で」

 

 

 



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アダムとデュエルする話

「サンジェルマンは最後の仕事を果たしたようだ。歓迎しよう、音羽遊蓮」

「……どこだ、ここは? アンタは?」

「生贄の祭壇だよ、ここは。僕はアダム、アダム・ヴァイスハウプト。上司さ、サンジェルマンの」

アダムと名乗った美丈夫の視線がこちらを向く。顔立ちは整っているが、その男の表情は形容しがたいものだった。一言で言えば、不気味。

「障害は取り除く、それが些細な石ころであっても。あの女共のように」

「あの女……ども? 響とマリアさんのことか?」

「さて、そんな名前だったかな」

「――おまえッ!」

「良い憎悪だ。では、始めるとしよう」

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「俺のターン、ドロー! 俺は手札の《サンダー・ドラゴン》の効果発動。このカードを捨てて、デッキから《サンダー・ドラゴン》2枚を手札に加える。そして《竜魔導の守護者》を召喚して効果発動。手札の《サンダー・ドラゴン》を捨て、デッキから《雷龍融合(サンダー・ドラゴン・フュージョン)》を手札に加える」

 

《竜魔導の守護者》

星4/闇属性/ドラゴン族/攻1800/守1300

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、

このカードの効果を発動するターン、自分は融合モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、手札を1枚捨てて発動できる。

デッキから「融合」通常魔法カードまたは「フュージョン」通常魔法カード1枚を手札に加える。

(2):EXデッキの融合モンスター1体を相手に見せて発動できる。

そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター1体を自分の墓地から選んで裏側守備表示で特殊召喚する。

 

「さらに竜魔導の守護者のふたつめの効果を発動。EXデッキの《超雷龍-サンダー・ドラゴン》を公開し、墓地のサンダー・ドラゴンを裏側守備表示で特殊召喚する。そしてこのサンダー・ドラゴンをリリースして《超雷龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚」

 

と、そこで相手の反応を見る。白いスーツを着た美丈夫は余裕を崩すこともなく、こちらを見下すような笑みを浮かべていた。

 

「続けて《闇の誘惑》を発動。2枚ドローし、《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》を除外する。除外された雷獣龍の効果で、デッキから《雷源龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚する。そして《雷龍融合》を発動。除外されている雷獣龍と墓地のサンダー・ドラゴン2体をデッキに戻して《雷神龍-サンダー・ドラゴン》融合召喚。俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ。エンドフェイズに雷源龍は手札に戻る」

 

音羽遊蓮 LP4000 手札4 モンスター3 伏せ2

 

――――――――――――

 

「僕のターン、ドロー。まずは消えてもらおう、その厄介なモンスター共には。プレゼントだよ、キミに。超雷龍と雷神龍をリリース」

 

《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》

星8/炎属性/悪魔族/攻3000/守2500

このカードは通常召喚できない。

相手フィールドのモンスター2体をリリースした場合に相手フィールドに特殊召喚できる。

このカードを特殊召喚するターン、自分は通常召喚できない。

(1):自分スタンバイフェイズに発動する。

自分は1000ダメージを受ける。

 

俺のフィールドに炎を纏った巨体が出現する。くそっ! そういうデッキか。

 

「カードを3枚伏せてターンエンドだ」

 

アダム  LP4000 手札2 モンスター0 伏せ3

音羽遊蓮 LP4000 手札4 モンスター2 伏せ2

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズにラヴァ・ゴーレムの効果が発動し、1000ダメージを受ける」

 

「それにチェーンして《洗脳解除》を発動だ。返してもらうよ、僕のモンスターを」

 

炎の魔神がフィールドを移る。取り返したということは、《魔法の筒》や《ディメンション・ウォール》で返り討ちにするデッキではないか。

 

音羽遊蓮 LP4000 → 3000

 

「《サファイアドラゴン》を通常召喚。そしてレベル4の竜魔導の守護者とサファイアドラゴンでオーバーレイ。漆黒の闇より現れし反逆の牙! 舞い降りろ、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

 

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》

ランク4/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000

レベル4モンスター×2

(1):このカードのX素材を2つ取り除き、

相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターの攻撃力を半分にし、

その数値分このカードの攻撃力をアップする。

 

「ダーク・リベリオンのX素材を2つ取り除き、ラヴァ・ゴーレムを対象に効果発動。トリーズン・ディスチャージ!」

 

「そうはいかない。《デストラクト・ポーション》を発動。ラヴァ・ゴーレムを破壊し、その攻撃力分のライフを回復する」

 

アダム  LP4000 → 7000

 

「ならば攻撃だ。ダーク・リベリオンでダイレクトアタック。ライトニング・ディスオベイ!」

 

アダム  LP7000 → 4500

 

「メインフェイズ2に手札の《サンダー・ドラゴン》の効果発動。このカードを捨てて、デッキから《サンダー・ドラゴン》2枚を手札に加える。続けて墓地の《雷龍融合》を除外して、《雷電龍-サンダー・ドラゴン》を手札に加える。そして雷電龍を捨てて、同名カードを手札に加えて、ターンエンド」

 

「デッキ圧縮か、足掻くものだ」

 

音羽遊蓮 LP3000 手札6 モンスター1 伏せ2

アダム  LP4500 手札2 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「僕のターン、ドロー。《限界竜シュヴァルツシルト》2体を特殊召喚。このカードは、相手フィールドに攻撃力2000以上のモンスターが存在する場合、手札から特殊召喚できる。そしてレベル8のシュヴァルツシルト2体でオーバーレイネットワークを構築。《No.97 龍影神ドラッグラビオン》を守備表示でエクシーズ召喚」

 

《No.97 龍影神ドラッグラビオン》

ランク8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守3000

レベル8モンスター×2

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードは相手の効果の対象にならない。

(2):このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

自分のEXデッキ・墓地から「No.97 龍影神ドラッグラビオン」以外のドラゴン族の「No.」モンスター2種類を選ぶ。

その内の1体を特殊召喚し、もう1体をそのモンスターの下に重ねてX素材とする。

この効果の発動後、ターン終了時まで自分はモンスターを特殊召喚できず、

この効果で特殊召喚したモンスターでしか攻撃宣言できない。

 

「ドラッグラビオンの効果発動。《No.100 ヌメロン・ドラゴン》を特殊召喚し、もう1体をエクシーズ素材としてその下に置く。続けて発動だ、魔法カード《希望の記憶》。自分フィールドの「No.」エクシーズモンスターの種類の数だけ、デッキからドローする。よって2枚ドロー」

 

《No.100 ヌメロン・ドラゴン》

ランク1/光属性/ドラゴン族/攻 0/守 0

同じランクの同名「No.」Xモンスター×2

(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

このカードの攻撃力は相手ターン終了時まで、

フィールドのXモンスターのランクの合計×1000アップする。

(2):このカードが効果で破壊された時に発動できる。

フィールドのモンスターを全て破壊する。

その後、お互いは自身の墓地の魔法・罠カードを1枚選んでフィールドにセットする。

(3):このカードが墓地に存在し、自分の手札・フィールドにカードが無い場合、

相手の直接攻撃宣言時に発動できる。

このカードを特殊召喚する。

 

「ふむ。用済みだな、このカードも。《マジック・プランター》を発動。《洗脳解除》を墓地に送り、2枚ドロー。X素材を1つ取り除いて、ヌメロン・ドラゴンの効果発動だ。このカードの攻撃力は相手ターン終了時まで、フィールドのXモンスターのランクの合計×1000アップする」

 

《No.100 ヌメロン・ドラゴン》 攻撃力 0 → 13000

 

「攻撃力……13000か」

 

「ではバトルだ。ヌメロン・ドラゴンでダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンを攻撃。沈め! アルティメット・ヌメロン・ディザスター!」

 

聖光に包まれた黄金龍から無数の光線が放たれる。

 

「攻撃宣言時に《攻撃の無敵化》を発動。このバトルフェイズで発生する戦闘ダメージを0にする」

 

「だが破壊される。そのモンスターはね」

 

光の波状攻撃によって漆黒の竜は消え去った。

 

「僕はこれでターンエンドだ」

 

アダム  LP4500 手札3 モンスター2 伏せ1

音羽遊蓮 LP3000 手札6 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。魔法カード《打ち出の小槌》を発動。手札5枚をデッキに戻してシャッフル。その後5枚ドロー。《レスキューラビット》を召喚して効果発動。このカードを除外して、デッキから《アレキサンドライドラゴン》2体を特殊召喚。魔法カード《シャイニング・アブソーブ》を発動。選択するのはヌメロン・ドラゴン」

 

《シャイニング・アブソーブ》

通常魔法

相手フィールド上に表側表示で存在する光属性モンスター1体を選択して発動する。

自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する全てのモンスターの攻撃力は

エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力分アップする。

 

「シャイニング・アブソーブの効果で、2体のアレキサンドライドラゴンの攻撃力は13000アップ。バトルだ。ヌメロン・ドラゴンとドラッグラビオンを攻撃」

 

アダム  LP4500 → 2500

 

光の龍と闇の龍が崩れ去る。これでアダムのフィールドはがら空きになった。

 

「やってくれる。だが、僕はこのカードを特殊召喚する。条件を満たしたからね」

 

《異界の棘紫竜》

星5/闇属性/ドラゴン族/攻2200/守1100

自分フィールド上のモンスターが

戦闘またはカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、

このカードを手札から特殊召喚できる。

 

「メインフェイズ2に、2体のアレキサンドライドラゴンでオーバーレイ。ランク4《竜巻竜》を守備表示でエクシーズ召喚」

 

竜巻竜(トルネードラゴン)

ランク4/風属性/幻竜族/攻2100/守2000

レベル4モンスター×2

(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、

フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

この効果は相手ターンでも発動できる。

 

「竜巻竜の効果発動。X素材を1つ取り除き、伏せカードを破壊する」

 

「フッ、セットしたカードは《壊獣捕獲大作戦》だ。よって2枚ドロー」

 

「壊獣……ね。俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮 LP3000 手札3 モンスター1 伏せ2

アダム  LP2500 手札4 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「僕のターン、ドロー。《幻影王 ハイド・ライド》を召喚。レベル5の異界の棘紫竜に、レベル3の幻影王 ハイド・ライドをチューニング。魔神を束ねし蠅の王よ! 混沌より来たれ、《魔王龍 べエルゼ》!」

 

《魔王龍 ベエルゼ》

星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守3000

闇属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードは戦闘及びカードの効果では破壊されない。

また、このカードの戦闘または相手のカードの効果によって

自分がダメージを受けた時に発動する。

このカードの攻撃力は、そのダメージの数値分アップする。

 

「バトルだ。竜巻竜に攻撃、ベエルズ・カーニバル!」

 

「リバースカードオープン《聖なるバリア-ミラーフォース》」

 

「愚かだね。そんなものは通じない、ベエルゼにはね」

 

「百も承知だ。チェーンして《ブレイクスルー・スキル》をベエルゼを対象に発動」

 

「言っている、無駄だと! 手札から発動だ、《禁じられた聖槍》をね」

 

「くっ、またそれかッ!」

 

「砕け散れッ!」

 

ベエルゼの一撃で竜巻竜が吹き飛ぶ。

 

「――ハッ、カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

アダム  LP2500 手札2 モンスター1 伏せ1

音羽遊蓮 LP3000 手札3 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドローッ! 魔法カード《貪欲な壺》を発動。墓地の《超雷龍-サンダー・ドラゴン》、《雷神龍-サンダー・ドラゴン》、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》、《サンダー・ドラゴン》、《アレキサンドライドラゴン》をデッキに戻してシャッフル。その後2枚ドロー。《雷鳥龍-サンダー・ドラゴン》の効果発動。このカードを捨てて、墓地の《雷電龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚。雷族モンスターの効果が手札で発動したため、条件をクリア。再び現れろ、《超雷龍-サンダー・ドラゴン》!」

 

再び稲妻を帯びた雷龍が姿を現す。だが、まだ足りない。

 

「フィールドから墓地に送られた雷電龍の効果で、デッキから《雷源龍-サンダー・ドラゴン》を手札に加える。手札の《雷源龍-サンダー・ドラゴン》と、フィールドの《超雷龍-サンダー・ドラゴン》をゲームから除外して、《雷神龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚。除外された雷源龍の効果でデッキから同名カードを手札に加える。そして墓地の《ブレイクスルー・スキル》を《魔王龍 ベエルゼ》を対象に発動だ」

 

「あったな、そんなカードも。ならば発動だ《闇の幻影》」

 

「――ッ! 俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

音羽遊蓮 LP3000 手札3 モンスター1 伏せ2

アダム  LP2500 手札2 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「僕のターン、ドロー。まずは手札の《多次元壊獣ラディアン》を墓地に送り、雷神龍を対象に《禁じられた一滴》を発動」

 

《禁じられた一滴(ひとしずく)

速攻魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

(1):自分の手札・フィールドから、

このカード以外のカードを任意の数だけ墓地へ送って発動できる。

その数だけ相手フィールドの効果モンスターを選ぶ。

そのモンスターはターン終了時まで、攻撃力が半分になり、効果は無効化される。

このカードの発動に対して、相手はこのカードを発動するために墓地へ送ったカードと

元々の種類(モンスター・魔法・罠)が同じカードの効果を発動できない。

 

天から零れ落ちた一滴を浴びて、雷神龍の三つ首が項垂れる。

 

《雷神龍-サンダー・ドラゴン》 攻撃力3200 → 1600

 

「続けて発動だ。《龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)》。墓地の《No.97 龍影神ドラッグラビオン》、《No.100 ヌメロン・ドラゴン》、《異界の棘紫竜》、《限界竜シュヴァルツシルト》2体の計5枚を除外。刮目しろッ! これが究極のドラゴンだッ!」

 

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)

星12/闇属性/ドラゴン族/攻5000/守5000

ドラゴン族モンスター×5

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

(1):このカードは闇・地・水・炎・風属性モンスターとの戦闘では破壊されない。

 

「バトルだ。F・G・Dで雷神龍に攻撃、アルティメット・クインタプル・バースト!」

 

五つの首から螺旋のブレスが一斉に放射される。

 

「《ダメージ・ダイエット》を発動。続けて雷源龍の効果を発動!」

 

《雷神龍-サンダー・ドラゴン》 攻撃力 1600 → 2100

 

音羽遊蓮 LP3000 → 1550

 

「ベエルゼでダイレクトアタック!」

 

音羽遊蓮 LP1550 → 50

 

「生き残ったか。ターンエンドだ」

 

アダム  LP2500 手札0 モンスター2 伏せ0

音羽遊蓮 LP 50 手札2 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー! リバースカードオープン《戦線復帰》。墓地の《アレキサンドライドラゴン》を特殊召喚する。そして《アレキサンドライドラゴン》を通常召喚。レベル4のアレキサンドライドラゴン2体でオーバーレイ。再度舞い降りろ、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

 

漆黒の竜が、その牙を輝かせ再臨する。

 

「ダーク・リベリオンのX素材を2つ取り除き、F・G・Dを対象に効果発動。トリーズン・ディスチャージ!」

 

《F・G・D》 攻撃力 5000 → 2500

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》攻撃力 2500 → 5000

 

F・G・Dの力を吸収し、ダーク・リベリオンの牙に一層の力が漲る。ここで初めてアダムの相貌に歪みが見えた。

 

「バトルだ。ダーク・リベリオンでF・G・Dを攻撃、反逆のライトニング・ディスオベイ!」

 

 

 

アダム LP2500 → 0

 

 

 

「――クッ、ハハハハッッ! もう遅い、既に覇王の種は芽吹き、大輪へと至った。無秩序な世界はひとつの完全なる世界になり、復活する。彼女が、神に並び立てる力がッ! 神を超える力がッ!」

「……覇王? 彼女だと?」

「見ているぞ、次元の果てから。貴様の、世界の顛末を。フハハハハッッ!!」

怨嗟の言葉を吐きながら、男が笑う。それはとても哀れに見えた。最期にすら他人を呪う言葉しか残せないこの男が、滑稽な道化のように映ったのだ。

哄笑の中で砂塵が舞う。ほんの一瞬目を瞑り、再び開いたとき、そこには誰もいなかった。

 

 

 



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覇王とデュエルする話


ちょっとした原作リスペクトがあります。
そのため、実際のデュエルでは起こらない処理が入ります。
また今回に限り、オリカが登場します。
ご了承ください。



アダムが今際の際に残した言葉を、その意味を噛みしめていた。

磁石の異なる極が引かれ合うように、あるいは導かれるように、ふたりは出会った。

漆黒の髪に、金色(こんじき)の瞳、なにより今まで見せたことのない酷薄な眼差し。あれは本当に響なのか。

「みんな死んでしまった。未来も、マリアさんも、翼さんも奏さんも調ちゃんも切歌ちゃんも……遊蓮くんも。みんな、みんな死んでしまった」

「なにを……言っている? ここに来たのは3人だ。それに俺はここにいる。ここにいるぞ!」

「構えろ。おまえが最後の生贄だ」

――クッ、やるしかないのか。

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「俺のターン、ドロー。手札の《雷電龍-サンダー・ドラゴン》を捨てて、デッキから《雷電龍-サンダー・ドラゴン》を手札に加える。続けて魔法カード《闇の誘惑》を発動。2枚ドローし、《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》を除外する。そして除外された雷獣龍の効果で、デッキから《雷源龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚。雷源龍をリリースして、エクストラデッキから《超雷龍-サンダー・ドラゴン》を攻撃表示で特殊召喚」

 

《超雷龍-サンダー・ドラゴン》

星8/闇属性/雷族/攻2600/守2400

「サンダー・ドラゴン」+雷族モンスター

このカードは融合召喚及び以下の方法でのみ特殊召喚できる。

●雷族モンスターの効果が手札で発動したターン、

融合モンスター以外の自分フィールドの雷族の効果モンスター1体をリリースした場合に

EXデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)。

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

相手はドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加える事ができない。

(2):このカードが戦闘・効果で破壊される場合、

代わりに自分の墓地の雷族モンスター1体を除外できる。

 

「フィールドから墓地に送られたことで雷源龍の効果発動。デッキから同名カードを手札に加える。カードを2枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮 LP4000 手札5 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。サーチを封じる効果か、小賢しい。悪魔族専用融合カード《ダーク・フュージョン》を発動。手札の《E-HERO ヘルゲイナー》と《E-HERO シニスター・ネクロム》をダークフュージョン。出でよ、破滅を求めし英雄《E-HERO マリシャス・ベイン》!」

 

E-HERO(イービルヒーロー) マリシャス・ベイン》

星8/闇属性/悪魔族/攻3000/守3000

「E-HERO」モンスター+レベル5以上のモンスター

このカードは「ダーク・フュージョン」の効果でのみ特殊召喚できる。

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):フィールドのこのカードは戦闘・効果では破壊されない。

(2):自分メインフェイズに発動できる。

このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ相手フィールドのモンスターを全て破壊し、

このカードの攻撃力は破壊したモンスターの数×200アップする。

この効果の発動後、ターン終了時まで自分は「HERO」モンスターでしか攻撃宣言できない。

 

「マリシャス・ベインの効果発動。《超雷龍-サンダー・ドラゴン》を破壊する」

 

「墓地の《雷源龍-サンダー・ドラゴン》を除外することで破壊を無効にする。そして雷源龍が除外されたことで効果発動。同名カードを手札に加える」

 

「魔法カード《フォース》を発動。超雷龍の攻撃力を半分にし、マリシャス・ベインの攻撃力をその数値分アップする」

 

《超雷龍-サンダー・ドラゴン》   攻撃力 2600 → 1300

《E-HERO マリシャス・ベイン》 攻撃力 3000 → 4300

 

「墓地のシニスター・ネクロムの効果発動。このカードを除外して、デッキから《E-HERO マリシャス・エッジ》を攻撃表示で特殊召喚。バトル。マリシャス・ベインで超雷龍を攻撃。ベイン・ストームッ!」

 

ダーク・フュージョンで融合召喚されたマリシャス・ベインは、このターン対象には取れない。ならば――。

 

「リバースカードオープン《聖なるバリア-ミラー・フォース-》」

 

「マリシャス・ベインは戦闘・効果では破壊されない」

 

「だがマリシャス・エッジには退場してもらう。そして墓地の雷電龍を除外して超雷龍の破壊を無効にする」

 

「しかしダメージは受けてもらう」

 

音羽遊蓮 LP4000 → 1000

 

「――ガハッ!」

 

な、なんだこの痛みは……まるで魂が削られるような、痛み。しくじったな、守備表示で出しておくべきだった。

 

「……じょ、除外された雷電龍の効果発動。デッキから《雷龍融合(サンダー・ドラゴン・フュージョン)》を手札に加える」

 

「モンスターをセット、カードを1枚伏せてターンエンド。フォースの効果で増減した攻撃力は元に戻る」

 

覇王ヒビキ LP4000 手札0 モンスター2 伏せ1

音羽遊蓮  LP1000 手札7 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

「ドローフェイズに《砂漠の光》を発動。自分フィールド上に存在するモンスターを全て表側守備表示にする。セットしたモンスターは《メタモルポット》だ」

 

「――んなっ!? くっ、手札の雷源龍を捨てて、超雷龍の攻撃力を500アップする。更にリバースカードオープン《因果切断》。手札を1枚捨てて、マリシャス・ベインを除外する」

 

《超雷龍-サンダー・ドラゴン》 攻撃力 2600 → 3100

 

「――私は5枚ドロー」

 

「手札を全て捨てて、5枚ドローする」

 

やはりライフは『命』なのか? 負ければ……勝てば……。

 

「――クッ、響! 正気に戻れ! 戻ってこい、響! 心の闇に囚われるな!」

 

「愚かな。力こそすべてだ。この世界を改変するためには、心の闇こそが必要。勝利して支配する。それこそがたったひとつの真実」

 

駄目なのか……いや、ライフを削れば、覇王の殻を砕けば、声が届くかもしれない。

 

「手札の《サンダー・ドラゴン》を捨てて、デッキから《サンダー・ドラゴン》2枚を手札に加える。そしてフィールドの《超雷龍-サンダー・ドラゴン》と手札の《サンダー・ドラゴン》を除外して、エクストラデッキから《雷神龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚」

 

《雷神龍-サンダー・ドラゴン》

星10/光属性/雷族/攻3200/守3200

「サンダー・ドラゴン」モンスター×3

このカードは融合召喚及び以下の方法でのみ特殊召喚できる。

●手札の雷族モンスター1体と、「雷神龍-サンダー・ドラゴン」以外の

自分フィールドの雷族の融合モンスター1体を

除外した場合にEXデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)。

(1):雷族モンスターの効果が手札で発動した時に発動できる(ダメージステップでも発動可能)。

フィールドのカード1枚を選んで破壊する。

(2):このカードが効果で破壊される場合、

代わりに自分の墓地のカード2枚を除外できる。

 

「手札の《雷鳥龍-サンダー・ドラゴン》を捨てて、除外されている《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚。雷神龍の効果でメタモルポットを破壊」

 

次元の穴より雷獣龍が出現し、雷神龍の放った轟雷によってメタモルポットが砕け散る。

 

「バトル。雷獣龍でダイレクトアタック!」

 

覇王ヒビキ LP4000 → 1600

 

「――ククッ、この痛みが糧となる。聞こえるぞ、世界の声がッ! 新たな世界が、生まれたがっているッ!」

 

「もうやめろ! こんなものがデュエルであるものか! おまえは言ってたじゃないか、デュエルは楽しいものだって! おまえが教えてくれたんだ、響ッ!」

 

「わめくな。おまえが何度攻撃してこようが、私が勝つ。何故なら私は覇王だからだ。手札の《冥府の使者ゴーズ》を守備表示で特殊召喚」

 

《冥府の使者ゴーズ》

星7/闇属性/悪魔族/攻2700/守2500

自分フィールド上にカードが存在しない場合、

相手がコントロールするカードによってダメージを受けた時、

このカードを手札から特殊召喚する事ができる。

この方法で特殊召喚に成功した時、受けたダメージの種類により以下の効果を発動する。

●戦闘ダメージの場合、自分フィールド上に「冥府の使者カイエントークン」

(天使族・光・星7・攻/守?)を1体特殊召喚する。

このトークンの攻撃力・守備力は、この時受けた戦闘ダメージと同じ数値になる。

●カードの効果によるダメージの場合、

受けたダメージと同じダメージを相手ライフに与える。

 

「そして受けた戦闘ダメージ分、すなわち攻守2400の冥府の使者カイエントークンを守備表示で特殊召喚」

 

「くっ、雷神龍でゴーズを攻撃。そしてカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

音羽遊蓮  LP1000 手札2 モンスター2 伏せ2

覇王ヒビキ LP1600 手札4 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。《E・EHRO ワイルドマン》を召喚。なにかあるか?」

 

「いや、なにもない」

 

「そうか。ならば勝負は決した。手札を1枚捨てて、見せてやろう! 心の闇が作り出した、最強の力の象徴! 絶対無敵! 究極の力を解き放て! 発動せよ! 《超融合》!!」

 

天が蠢く。世界中の不吉を内包したような、悪魔の呼び声が響き渡る。

 

「このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。完全なる勝利を導く絶対的な力。その力の前には、あらゆるものは無力! 私のフィールドにいる《E・EHRO ワイルドマン》とおまえのフィールドにいる《雷神龍-サンダー・ドラゴン》を融合。現れろ《E・HERO The シャイニング》!!」

 

《E・HERO The シャイニング》

星8/光属性/戦士族/攻2600/守2100

「E・HERO」と名のついたモンスター+光属性モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

このカードの攻撃力は、ゲームから除外されている

自分の「E・HERO」と名のついたモンスターの数×300ポイントアップする。

このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、

ゲームから除外されている自分の「E・HERO」と名のついた

モンスターを2体まで選択し、手札に加える事ができる。

 

暗雲の中から1体の英雄が姿を現す。それは異様な光景だった。シャイニングの全身は黒く塗り潰され、強烈な光輝を発することもない。まるで闇を体現したような姿だった。その漆黒の双眸が、響の眼を悲し気に見つめていた。

 

「――何故、こちらを見る? おまえはただの(しもべ)だ。私に従っていればいいッ!!」

 

「響! 思い出せ! 思い出してくれ……おまえが『HERO』を選んだ理由を。おまえが見ている未来は何だ! そこには俺も未来もいないのか!」

 

「…………未来……未来(みく)……」

 

一瞬呆けたあと、響は自らの言葉を投げ捨てるようにかぶりを振った。まだ、足りないのか。

 

「――くだらぬッ! もはや貴様など必要ないッ! 《無情の決断》を発動。これで終わりだ、諸共に消え去れッ!!」

 

無情の決断(ヒーローズ・サクリファイス)

通常魔法

このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「HERO」モンスター1体をリリースして発動する。

リリースしたモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

「――クッ! リバースカードオープン《精霊の鏡》!」

 

「なにッ! そのカードはッ!」

 

《精霊の鏡》

通常罠

プレイヤー1人を対象とする魔法の効果を別のプレイヤーに移し替える。

 

シャイニングが破壊のエネルギーへと変じて天へと昇る。それは審判を下す精霊の持つ鏡へと吸い込まれた。

 

「……負ける? この私が、負けるのか?」

 

ふたりの距離は大したものではない。だが、今はそれが途轍もなく遠く感じる。駆け寄ることも、ましてや抱きしめることもできない。

だから、声を届かせるしかない。魂の奥底に眠る、本当の響に伝わるまで。

 

「響、覚えているか? 俺たちが初めて出会った日のことを。俺は世の中を斜めに見て、随分と冷めた子供だっただろう。そんな俺に、おまえは言ったんだ。友達になろうって、友達になるのに理由はいらないって」

 

「…………」

 

「俺にはずっと違和感があった。この世界で、俺だけが異物ではないかという思いが、ずっとあったんだ。響、おまえは俺がひとりぼっちじゃないってことを、そして勇気を教えてくれた、大切な親友だ」

 

「……ゆう……れん……く……」

 

「響、俺はおまえが…………大好きだ」

 

「……う……あ……」

 

デュエルディスクからアラームが聞こえる。タイムアップが近い。対象を選択しなければならない。

俺が勝てば、覇王だけが消えるのだろうか? 覇王と響は同化しているのだろうか?

……やはり確信が持てない。なら――。

 

「精霊よ、対象は俺だ。俺を攻撃しろッ!」

 

「……ああ、ああぁ、ダメだよッ! いやだッ! こんなのはいやだッ!! 望んでないッ! わたしはこんなこと、望んでないッ! サレンダーッ! なんで出来ないのッ!!」

 

天より光が降り注ぐ。

響、もう泣くな。おまえはもう、大丈夫だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――おまえに出会えてよかった。

 

 

 

 

 

音羽遊蓮  LP1000 → 0

 

 

 



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After all love you

「知らない天井……じゃないな。S.O.N.G.の医務室だ、ここ」

「あら、お目覚めかしら」

この声を聞くのも随分と久しぶりな気がする。ということは戻ってきたのか?

ベッドから身を起こす。途端、頭がふらついた。

「一週間くらい寝たきりだったから、軽い目眩かしらね。筋肉の方は大丈夫よ。低周波を流していたから、廃用症候群の心配はないわ」

「あー、それはどうも。で、俺はどうやって帰ってきたんですか? 響とマリアさんは?」

「はい、これ。まだ未完成だけど、今回の報告書よ」

軽い頭痛を意識の外に押しやりながら、了子さんから数枚の紙を受け取る。

ところどころ抜けているところは、俺が行動したところだろう。

なになに、そもそもはアダムがデュエルエナジーと精霊の力を使って、神を超える『力』(カード)を創造しようと企んだのが発端か。

そして次元を統合しようとしたのは、『もう一つの宇宙(ダークネス)』の発生を抑制するため……か。

確かダークネスは人々の「心の闇」が溜まりに溜まることで降臨する自然の摂理、いわば特異災害のようなものだったはず。だから「心の闇」の発生源、絶対数を減らすことで先送りにしようとしたのか。

次元を統合するために必要なエネルギー、必要な犠牲。それを許容できるかどうか。

いけ好かないヤツではあったが、あの男はあの男なりに、この世界を案じていたのかもしれない。

まあだからといって「なんだ、アダムって本当は良いヤツじゃん」とはならないが。

で、神を超える力ってのが《ユベル》か。

……この流れでユベルが出てくるのか。

異世界に到着したのは時間差があったようだ。時空間を渡った影響だろう。

あの世界で起こったことを時系列順にまとめると、おおよそこんな感じだ。

 

1.響がカリオストロ(イレイザー)とデュエルして勝利。その後アダムの元に送られて敗北。アダムは響を幽閉して覇王の種を植える。

 

2.マリアさんがプレラーティ(ドレッド・ルート)に勝利。その後アダムの元に送られて敗北、エナジー化される。

 

3.アダムが響を洗脳。現実世界の侵略を始めたアダムにS.O.N.G.が壊滅という幻覚を見せられる。自我が希薄になり覇王覚醒の兆し。

 

4.俺がサンジェルマンに勝利。その後アダムにも勝利。アダムを破ったことで次元の狭間に幽閉されていた響が解放される。覇王化した響が十二の次元を統合しようとする。(アダムの洗脳により、この次元の生物を全て生贄に捧げて、新たな世界が生まれれば全てやり直せると思い込んでいる)

 

5.俺と響がデュエル。響は正気に戻る。俺はエナジー化されユベルの元へ。ユベル覚醒。

 

6.ユベルが覇王の力を取り込むために響にデュエルを挑む。

 

7.響とユベルが超融合!

 

8.ユベルが響の意思を汲み取って、エナジー化された人々(アダム以外)を元に戻す。

 

9.全員帰還。全ての次元が元通り。

 

色々とツッコミどころはあるが、ユベルと何があった?

「友達になったらしいわ」

なるほど、さすが響だな。

「精霊って本当にいたのね。私にも見えたらよかったのに」

「見えるけど、見えないもの。ですね」

「う~ん? 研究者としては、そういう抽象的な表現は受け入れたくはないのよねぇ」

口をついて出た言葉だったが、反応は芳しくなかった。

 

 

 

 

 

簡単な検査と質疑応答を終えて、俺は解放された。自宅に送ってもらい、いつもの半分ほどの厚みになっていたデッキを広げた。

俺のデッキからはサンダー・ドラゴンが消えていた。

雷神龍だけではなく、サンダー・ドラゴン一式、まるごとだ。

理由はまあ、なんとなくだが分かる。当て推量に過ぎないが、超融合だ。

俺のエース《雷神龍-サンダー・ドラゴン》と、響が最初に選んだヒーロー《E・HERO ワイルドマン》。その結果、あの異様なシャイニングが生まれた。

俺と響と覇王の思惑がないまぜになった結果だ。超融合ってのは、そういうものなんだろう。魂まで融合させるようなものだからな。

なんにせよ、新たなデッキを組む必要が出来た。

同じデッキを組むつもりにはなれなかった。サンダー・ドラゴンは役目を終えたのだ。俺にはそう思えてならない。

随分と薄くなったデッキを眺めながら、次はどんなデッキを組もうかと思索を巡らせる。

やはり初志貫徹してドラゴンか。最初サンダー・ドラゴンをドラゴン族だと勘違いしていたのは、我ながら抜けた話だ。戦士族か天使族なら響や未来と共有できるカードも多いな。

ソリッドビジョンの関係上、人気の低い昆虫族やアンデッド族なら安く上がりそうだが。

――と、聞こえてきた玄関の呼び鈴に、思考は霧散した。

『遊蓮くーん、帰ってるー?』

続いて聞こえてきた声に懐かしさを覚える。

「――よう」

「えへへ、目が覚めたんだね」

「ああ。ま、上がれよ」

「うん。お邪魔します」

訪ねてきた響をリビングに案内する。

「オレンジジュースでいいか?」

「え? あ、うん。お構いなく」

なんとなく違和感を覚えながら、飲み物の準備をする。

響の前にコップを置き、対面に座った。

「いただきます」

響はオレンジジュースを一口嚥下すると、小さく息を零した。

「――うるさいなぁ。そんなんじゃないってば」

「ん?」

唐突に響が支離滅裂なことを言い出す。視線は右に向いていた。

「あ、ごめん。なんでもないよ、あはははっ」

「ユベルか?」

「あー、知ってるんだ」

「了子さんからな。一応社外秘扱いみたいだけど」

当然だけど俺には見えないし、声も聞こえない。了子さんが言うには、透過率がどうとか、空気じゃなく魂が振動してるとからしいが。

「礼を言うべきなんだろうな。全部、元に戻してくれたんだろ?」

「まあ、ユベルもアダムって人に利用されてただけみたいだからね。神とかどうでもいいみたいだし」

「そうか。そういえば、どうやって仲良くなったんだ?」

そのあたりは報告書にも詳しく書いてなかったんだよな。

「あー、話してもいい? うん、ありがとう。えっとね、存在理由とか、何のために生まれたのかとか、生きる目的とかが納得できないというか、よく分からないって言うから、じゃあ一緒に探そうよってことになった」

「お、おう」

分かるような分からんような、カウンセリングとか自己啓発みたいな感じか。

「最初はひどかったんだよ。「私は私を生んだ全てを恨む」とか言ってさぁ」

なんか人類に逆襲でもしそうな台詞だな。

「あれ? ねぇ、あれって遊蓮くんのデッキ? 随分と薄くない?」

「ああ、こうなったんだ」

デッキをテーブルの上に広げる。響はすぐに気付いた。

「サンダー・ドラゴンたちがいないね」

「あいつらは役目を果たしたんだよ」

「役目? あー、え? そんなことってあるの? へー、そうなんだ」

たぶんユベルが何か言ってるんだろうが、(はた)から見るとちょっとマヌケっぽいな。

「じゃあ新しいデッキ組むの? ドラゴン族?」

「考え中。一新することも考えてる」

「なら戦士族にしようよ。色々分けてあげられるよ」

「そうだなぁ。それもいいかもな」

こんな何でもない会話が、とても懐かしく、尊いものだと感じた。

深く考える必要はない。大げさに考える必要はないんだ。

奇跡などを願う必要はない。支えて、支えられて、そこに偶さか精霊がいてもいい。

思えばこの太陽のような笑顔が、自分の原点だったような気がする。

 

 

 

 

 

「響、やっぱり俺は、おまえのことが大好きだ」

 




というわけで、ご都合主義エンドで終了です。
やっぱり半端な気持ちでデュエルの世界に入るもんじゃないですね。
デュエル構成の難しさやルールの煩雑さを痛感しました。
ともあれ、最後までおつきあいいただき、本当にありがとうございました。



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キャロル来訪変:水

なんとなく番外編



キャロルが別れ際に言った台詞『改めて礼はする』、あれは社交辞令だと思っていたのだが、キャロルはエルフナインと共に、律義にも菓子折りを持って挨拶に来た。

「カードの方が良かったか?」

と、冗談交じりに言われたが、それは彼女なりの諧謔(かいぎゃく)だろう。

エルフナイン曰く、キャロルには凄絶な過去があり、一時は冗談ではなく世界を分解しようと目論んでいたとのこと。だが破滅の光が心の裡から消え去った時、同時に負の感情も薄れたらしい。今では正しい意味で世界を識ろうとしているようだ。

デュエルエナジーの可能性に気付いたのは随分前からで、それを錬金術と組み合わせることで、エネルギーに転用することを可能としたのだとか。

レイアさんたち決闘人形(デュエルドール)はそれによって稼働しているらしい。

なんだか理解の及ばない領域になってきたな。

歓談しているうちに遊びに来た響が合流して、どこから聞きつけたのか、了子さんの指令で緒川さんが迎えに来て、S.O.N.G.で歓迎会を開くことになった。

了子さんはその筋では有名らしく、キャロルも名前は知っていた。

で、ふたりはデュエルエナジーについて盛り上がり、親睦も兼ねて対抗戦を開催することになった。

招集された四人の決闘人形が並び立つ。

「初戦はガリィを出す。そちらは誰を選ぶ?」

「なら私でいいかしら? そのコとは因縁もあるしね」

名乗りを上げたのはマリアさんだ。そういえば、あの大会で一悶着あったと言ってたな。

確か、キャロル(破滅の光)の命令で目立たずにデュエルエナジーを収集するはずだったが、ガリィはちょっと吸い取り過ぎたようで、相手がぶっ倒れる事態になった。それを異変に思った司令が、マリアさんを調査に向かわせた、と。

「ふん。二度も遅れはとらないわよ」

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「アタシのターン、ドロー。モンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンドよ」

 

「あら、息巻いてたわりには、おとなしいのね」

 

「アタシは元来おとなしい性格なんですよぉ」

 

「……あなたのお仲間は、そう思ってはいないようだけど」

 

キャロルを含めた全員が苦笑いか呆れ顔だ。

 

ガリィ LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「マイターン、ドロー。《デステニー・ドロー》を発動。《D-HERO ディスクガイ》を捨てて、2枚ドロー。そして《フュージョン・デステニー》を発動。デッキから《D-HERO ディアボリックガイ》、《D-HERO ダッシュガイ》、《D-HERO ドローガイ》を墓地に送り、融合召喚。来なさい、《D-HERO ドミネイトガイ》!」

 

《D-HERO ドミネイトガイ》

星10/闇属性/戦士族/攻2900/守2600

「D-HERO」モンスター×3

このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分メインフェイズに発動できる。

自分または相手のデッキの上からカードを5枚確認し、好きな順番でデッキの上に戻す。

(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時に発動できる。

自分はデッキから1枚ドローする。

(3):融合召喚したこのカードが戦闘・効果で破壊された場合、

自分の墓地のレベル9以下の「D-HERO」モンスター3体を対象として発動できる(同名カードは1枚まで)。

そのモンスターを特殊召喚する。

 

「おおー、あれがマリアの新しいエースデスか! カッコイイデス!」

 

「1ターン目にエースを呼び出すなんて、やっぱりマリアは凄い」

 

フュージョン・デステニーで特殊召喚したモンスターは次のターンのエンドフェイズに破壊されるというデメリットがある。だがドミネイトガイなら後続のモンスターを呼び出せる。墓地に送ったモンスターも墓地効果を持ったものばかりだ。抜け目ないな。

 

「ドミネイトガイのひとつめの効果を発動するわ。私のデッキの上からカードを5枚確認し、好きな順番でデッキの上に戻す。続けて《D-HERO ディバインガイ》を通常召喚。バトルよ。ドミネイトガイで伏せモンスターを攻撃、ドミネイト・クラッシュ!」

 

「セットしたモンスターは《グレイドル・イーグル》よ。アンタのエース、いっただっきまーす」

 

《グレイドル・イーグル》

星3/水属性/水族/攻1500/守 500

(1):自分のモンスターゾーンのこのカードが

戦闘またはモンスターの効果で破壊され墓地へ送られた場合、

相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。

このカードを装備カード扱いとしてその相手モンスターに装備する。

(2):このカードの効果でこのカードが装備されている場合、

装備モンスターのコントロールを得る。

このカードがフィールドから離れた時に装備モンスターは破壊される

 

ガリィのデッキはグレイドルか。また厄介なデッキだな。

破壊されたグレイドル・イーグルの怨念がドミネイトガイに取り憑き、ガリィのフィールドへと移動する。

 

「くっ、だがドミネイトガイの効果で1枚ドロー。カードを1枚伏せてターンエンド」

 

マリア LP4000 手札4 モンスター1 伏せ1

ガリィ LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「アタシのターン、ドロー」

 

「スタンバイフェイズにドローガイを守備表示で特殊召喚。効果によってお互いに1枚ドロー」

 

「《グレイドル・コブラ》を通常召喚。そしてバトルよ。グレイドル・コブラでディバインガイを攻撃」

 

グレイドル・コブラの攻撃力は1000。ディバインガイには及ばない。当然のように破壊される。

 

ガリィ LP4000 → 3400

 

「さぁて、またまたいただきまぁす」

 

グレイドル・コブラの怨念に取り憑かれ、ディバインガイの瞳が怪しく光る。

 

「さあ行きな! ディバインガイでドローガイを攻撃。続けてドミネイトガイでダイレクトアタック!」

 

マリア LP4000 → 1100

 

「フフッ。どうかしら、自分のエースに裏切られた気分は。メインフェイズ2に永続魔法《グレイドル・インパクト》を発動。で、どうせ破壊されるんだから、アタシが破壊してあげるわ。《デストラクト・ポーション》を発動。ドミネイトガイを破壊して、その攻撃力分のライフを回復する」

 

ガリィ LP3400 → 6300

 

「ドミネイトガイが破壊されたことにより効果発動。私は墓地から《D-HERO ダッシュガイ》、《D-HERO ディアボリックガイ》、《D-HERO ディスクガイ》を特殊召喚するわ。ディスクガイの効果で2枚ドロー」

 

「アタシはこれでターンエンド。そしてエンドフェイズにグレイドル・インパクトの効果でデッキから《グレイドル・アリゲーター》を手札に加えるわ」

 

ガリィ LP6300 手札4 モンスター1 伏せ1

マリア LP1100 手札7 モンスター3 伏せ1

 

――――――――――――

 

「マイターン、ドロー。《デステニー・ドロー》を発動。《D-HERO ドゥームガイ》を捨てて、2枚ドロー。そして《融合》を発動。フィールドの《D-HERO ディアボリックガイ》と《D-HERO ディスクガイ》を融合。来なさい、《D-HERO デッドリーガイ》!」

 

《D-HERO デッドリーガイ》

星6/闇属性/戦士族/攻2000/守2600

「D-HERO」モンスター+闇属性の効果モンスター

「D-HERO デッドリーガイ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):手札を1枚捨てて発動できる。

手札・デッキから「D-HERO」モンスター1体を墓地へ送り、

自分フィールドの全ての「D-HERO」モンスターの攻撃力はターン終了時まで、

自分の墓地の「D-HERO」モンスターの数×200アップする。

この効果は相手ターンでも発動できる。

 

「魔法カード《融合回収(フュージョン・リカバリー)》を発動。墓地の《融合》と《D-HERO ディスクガイ》を手札に加える。そして墓地の《D-HERO ディアボリックガイ》の効果発動。このカードを除外して、デッキから同名カードを特殊召喚する。続けて《融合》を発動。フィールドの《D-HERO ディアボリックガイ》と《D-HERO ダッシュガイ》を融合。来なさい、《D-HERO ディストピアガイ》!」

 

《D-HERO ディストピアガイ》

星8/闇属性/戦士族/攻2800/守2400

「D-HERO」モンスター×2

「D-HERO ディストピアガイ」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、

自分の墓地のレベル4以下の「D-HERO」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

(2):このカードの攻撃力が元々の攻撃力と異なる場合、

フィールドのカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊し、このカードの攻撃力は元々の数値になる。

この効果は相手ターンでも発動できる。

 

「ディストピアガイの効果発動。墓地のドゥームガイの攻撃力分のダメージを相手に与える。スクイズ・パーム!」

 

ガリィ LP6300 → 5300

 

「《D-HERO ドリルガイ》を通常召喚して、デッドリーガイの効果発動。手札の《D-HERO ディスクガイ》を捨てて、デッキから《D-HERO ディバインガイ》を墓地に送る。私のフィールドの全ての「D-HERO」モンスターの攻撃力は1200アップする。」

 

《D-HERO ドリルガイ》   攻撃力1600 → 2800

《D-HERO デッドリーガイ》 攻撃力2000 → 3200

《D-HERO ディストピアガイ》攻撃力2800 → 4000

 

「ディストピアガイの攻撃力が変化したことで効果発動。あなたの伏せカードを破壊する」

 

「チェーンして《スケープ・ゴート》を発動。ざぁんねんでしたねぇ」

 

「ならバトルよ。デッドリーガイでディバインガイを攻撃、デッドリー・シュート!」

 

ガリィ LP5300 → 3700

 

「続けてドリルガイで羊トークンを攻撃、ドリルガイは貫通効果を持っている。喰らいなさい! ドリル・プレッシャー!」

 

ガリィ LP3700 → 900

 

「最後にディストピアガイで羊トークンを攻撃、ディストピア・ブロー!」

 

容赦のない一撃で羊トークンが砕け散る。

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

マリア LP1100 手札4 モンスター3 伏せ2

ガリィ LP 900 手札4 モンスター2 伏せ0

 

――――――――――――

 

「アタシのターン、ドロー」

 

「スタンバイフェイズにデッドリーガイの効果発動。手札の《D-HERO ディシジョンガイ》を捨てて、デッキから《D-HERO ダイヤモンドガイ》を墓地に送る。攻撃力が変化したディストピアガイの効果で《グレイドル・インパクト》を破壊するわ」

 

グレイドル・アリゲーターとのコンボを警戒したのか。ガリィのライフは僅かに900。自爆特攻も難しくなった。手札次第だが、一気に苦しくなったな。

 

「ふぅん、やってくれるじゃないの。アタシは《グレイドル・スライムJr.》を召喚。効果で墓地から《グレイドル・イーグル》を特殊召喚。その後、手札の《グレイドル・アリゲーター》を特殊召喚」

 

レベル2チューナーとレベル3が2体か。トークンと合わせてレベル10までいけるな。ああ、水属性縛りがあるのか。なら主なルートは2つかな。

 

「アタシはレベル3の《グレイドル・イーグル》とレベル3の《グレイドル・アリゲーター》にレベル2の《グレイドル・スライムJr.》をチューニング。深淵に潜みし暴龍よ、鎖錠を破り、浮上せよ! シンクロ召喚! 踊れ、《グレイドル・ドラゴン》!」

 

《グレイドル・ドラゴン》

星8/水属性/水族/攻3000/守2000

水族チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「グレイドル・ドラゴン」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがS召喚に成功した時、

そのS素材とした水属性モンスターの数まで相手フィールドのカードを対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

(2):このカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合、

このカード以外の自分の墓地の水属性モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 

「グレイドル・ドラゴンの効果発動。アンタのフィールドのモンスターを3体、すべて破壊する」

 

「リバースカードオープン《D-フュージョン》。フィールドの《D-HERO ディストピアガイ》と《D-HERO ドリルガイ》を融合。来なさい、《D-HERO ダスクユートピアガイ》!」

 

《D-HERO ダスクユートピアガイ》

星10/闇属性/戦士族/攻3000/守3000

「D-HERO」融合モンスター+「D-HERO」モンスター

(1):このカードが融合召喚に成功した場合に発動できる。

自分の手札・フィールドから、

融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、

その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

(2):1ターンに1度、フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

このターン、そのモンスターは戦闘・効果では破壊されず、

そのモンスターの戦闘で発生するお互いの戦闘ダメージは0になる。

この効果は相手ターンでも発動できる。

 

「ダスクユートピアガイの効果発動。融合召喚が成功――」

 

「効果は使わせないわよ! 手札から速攻魔法《禁じられた聖杯》を発動。そいつの攻撃力を400アップして、効果を無効にする!」

 

それを聞いて、マリアさんは多少ならずも驚いたようだ。普通ならデッドリーガイが効果を発した時、あるいはディストピアガイが効果を発した時に使ってもおかしくはない。

 

「くっ、ならばチェーンしてダスクユートピアガイのふたつめの効果を発動。対象はグレイドル・ドラゴン」

 

「はんッ! アンタとやるのは二度目だからね。あれが見せ札だってのは感づいてたわよ。続けて速攻魔法《エネミーコントローラー》を発動。羊トークンをリリースして、そいつのコントロールを得る!」

 

ガリィがソリッドビジョンのゲームコントローラーにコマンドを入力する。そこから伸びたコードがダスクユートピアガイに接続された。

 

「バトルよ。ダスクユートピアガイでダイレクトアタック!」

 

「リバースカードオープン《ガード・ブロック》。この戦闘によって発生する戦闘ダメージは0になり、カードを1枚ドローする」 

 

「チッ! 魔法カード《アドバンスドロー》を発動。《D-HERO ダスクユートピアガイ》をリリースして、2枚ドロー。カードを2枚伏せてターンエンドよ」

 

ガリィ LP 900 手札0 モンスター2 伏せ2

マリア LP1100 手札4 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「マイターン、ドロー。《死者蘇生》を発動。墓地の《D-HERO ディストピアガイ》を特殊召喚して効果発動。墓地のドリルガイの攻撃力分のダメージを相手に与える。スクイズ・パーム!」

 

「チェーンして《デストラクト・ポーション》を発動。《グレイドル・ドラゴン》を破壊して、ライフを3000回復。その後、グレイドル・ドラゴンの効果で、墓地の《グレイドル・イーグル》を守備表示で特殊召喚するわ」

 

ガリィ LP 900 → 3900 → 2300

 

「続けて魔法カード《オーバー・デステニー》を発動。墓地のドミネイトガイを対象に、そのモンスターのレベルの半分以下のレベルを持つ「D-HERO」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。私はデッキから《D-HERO ドリルガイ》を特殊召喚。そしてバトル。ドリルガイで羊トークンを攻撃、ドリル・プレッシャー!」

 

ガリィ LP2300 → 700

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド。エンドフェイズにドリルガイは破壊されるわ」

 

「エンドフェイズに《リミット・リバース》を発動。《グレイドル・コブラ》を特殊召喚」

 

マリア LP1100 手札2 モンスター1 伏せ1

ガリィ LP 700 手札0 モンスター2 伏せ0

 

――――――――――――

 

「アタシのターン、ドロー」

 

「スタンバイフェイズの《D-タクティクス》を発動。フィールドの全ての「HERO」モンスターの攻撃力は400アップする。そしてディストピアガイの効果で《グレイドル・コブラ》を破壊する。ノーブルジャスティス!」

 

ガリィが小さく歯噛みする。目論見を潰されたからだろう。暗黒世界の英雄を一瞥し、改めてドローしたカードに視線を向ける。そして、口角を上げた。

 

「魔法カード《サルベージ》を発動。墓地の《グレイドル・スライムJr.》と《グレイドル・アリゲーター》を手札に加える。さあ、これがラストターンよ。《グレイドル・スライムJr.》を召喚。効果で墓地から《グレイドル・コブラ》を特殊召喚。その後手札の《グレイドル・アリゲーター》を特殊召喚」

 

レベル2チューナーとレベル3が3体。対応レベルは5、8、11か。って、レベル11の水シンクロなんていたかな?

 

「アタシはレベル3の《グレイドル・コブラ》とレベル3の《グレイドル・アリゲーター》にレベル2の《グレイドル・スライムJr.》をチューニング。深淵に眠る大いなる勇魚。生と死を廻る大海原に目覚めよ! シンクロ召喚! 踊れ、《白闘気白鯨》!」

 

白闘気白鯨(ホワイト・オーラ・ホエール)

星8/水属性/魚族/攻2800/守2000

水属性チューナー+チューナー以外の水属性モンスター1体以上

(1):このカードがS召喚に成功した時に発動できる。

相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊する。

(2):このカードは1度のバトルフェイズ中に2回までモンスターに攻撃できる。

(3):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、

その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

(4):このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた場合、

このカード以外の自分の墓地の水属性モンスター1体を除外して発動できる。

このカードをチューナー扱いで特殊召喚する。

 

ガリィの頭上を飛び越え、白き巨体が跳ねた。その巨体から発せられる白き闘気が、暗黒世界の英雄を圧殺せんと放射される。

 

「白闘気白鯨の効果発動。《D-HERO ディストピアガイ》を破壊。そして、これがラストアタックだ! 喰らいなッ! ピアッシング・スノーライト!」

 

白き巨体が宙を舞う。質量さえ錯覚させるような圧迫感と共に、その身体ごとぶつかってくる。その咆哮を真正面から受け止め、マリアさんは流麗な仕草で手札のカードを引き抜いた。

 

「……本当に、紙一重といったところね。私は手札の《D-HERO ダイナマイトガイ》を捨てて効果発動。この戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になり、お互いのプレイヤーは1000ダメージを受ける」

 

「なん……だと……!?」

 

ガリィの表情が一転。愉悦が驚愕に歪み、諦念へと変わる。

マリアさんの手札から飛び出た破壊の力を内包した英雄が、フィールドの中央で爆散した。

 

 

 

ガリィ LP 700 → 0

マリア LP1100 → 100

 

 

 

「――クッ、このアタシが二度までも……。うぇぇ~ん。マスター、負けちゃいましたぁ」

「ああ、負けるだろうとは思っていた」

「ちょっ、マスター! それってば酷すぎません? 断固抗議します。抗議です抗議ぃ~」

「えぇい、すがりつくな! 次はおまえだ、ファラ。行け!」

「仰せのままに、マスター」

 

 

 



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キャロル来訪変:風

敗北したガリィがやいのやいのとはやし立てるのを斜めに見ながら、翡翠色のロングドレスを身に纏った女性が歩み出る。

優雅な立ち振る舞いで一礼。碧の風と蒼の風が向かい合う。

「ではよろしくお願いしますわ。風鳴翼さん」

「ええ、いい試合をしましょう」

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「私のターン、ドロー。魔法カード《神鳥(シムルグ)の来寇》を発動。手札の《ダークネス・シムルグ》を捨てて、デッキから《ダーク・シムルグ》と《死神鳥シムルグ》を手札に加えます。そして《死神鳥シムルグ》を召喚」

 

《死神鳥シムルグ》

星3/風属性/鳥獣族/攻1500/守 200

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。

デッキから「死神鳥シムルグ」以外の「シムルグ」カード1枚を墓地へ送る。

(2):このカードが墓地に存在し、相手の魔法&罠ゾーンにカードが存在しない場合に発動できる。

このカードを守備表示で特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

この効果の発動後、ターン終了時まで自分は鳥獣族モンスターしか特殊召喚できない。

 

「死神鳥シムルグの効果でデッキから《烈風の覇者シムルグ》を墓地に送ります。続けてフィールド魔法《神鳥の霊峰エルブルズ》を発動」

 

《神鳥の霊峰エルブルズ》

フィールド魔法

このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):フィールドの鳥獣族・風属性モンスターの攻撃力・守備力は300アップする。

(2):手札のレベル5以上の鳥獣族・風属性モンスター1体を相手に見せて発動できる。

このターン、自分は鳥獣族モンスターを召喚する場合に必要なリリースを1体少なくできる。

(3):自分フィールドに鳥獣族・風属性モンスターが存在する場合に発動できる。

鳥獣族モンスター1体を召喚する。

 

「エルブルズのふたつめの効果発動。手札の《霞の谷の巨神鳥》を相手に見せることでリリースを1体少なくします。そしてみっつめの効果で《霞の谷の巨神鳥》をアドバンス召喚」

 

霞の谷(ミスト・バレー)の巨神鳥》

星7/風属性/鳥獣族/攻2700/守2000

このカードの効果は同一チェーン上では1度しか発動できない。

(1):魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、

自分フィールドの「ミスト・バレー」カード1枚を対象として発動できる。

その自分の「ミスト・バレー」カードを持ち主の手札に戻し、その発動を無効にし破壊する。

 

「アドバンス召喚に成功したことで、墓地の《ダークネス・シムルグ》を特殊召喚します」

 

《ダークネス・シムルグ》

星8/闇属性/鳥獣族/攻2900/守2000

このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが手札・墓地に存在し、

自分が闇属性または風属性のモンスターのアドバンス召喚に成功した場合に発動できる。

このカードを特殊召喚する。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードの属性は「風」としても扱う。

(3):魔法・罠カードの効果が発動した時、

自分フィールドの鳥獣族・風属性モンスター1体をリリースして発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンドですわ」

 

ファラ LP4000 手札2 モンスター2 伏せ1

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー」

 

「いきなり大型のモンスターが2体か。翼のやつ、大丈夫かな」

 

「どうでしょうね。なかなかに厳しい盤面ですが……。加えてファラさんのデッキ、たぶんエクストラデッキに頼らないデッキだと思います。《月光融合》の強みが生かせません」

 

「相性が悪いってことか」

 

難しい顔で奏さんが唸る。一番厄介なのが、実は《霞の谷の巨神鳥》だ。フィールド魔法の効果で、実質1体のリリースで済む。あれに毎ターン出てこられると、かなり動きが制限される。

 

「私は《融合》を発動」

 

「それは止めます。《ダークネス・シムルグ》自身をリリースして、その発動を無効にして破壊します」

 

「なら《月光融合(ムーンライト・フュージョン)》を発動」

 

「それも止めます。《霞の谷の巨神鳥》自身を手札に戻し、その発動を無効にして破壊します」

 

融合は2枚とも止められたか。だがフィールドはがら空きになった。攻め込むチャンスではあるが……。

 

「《月光蒼猫》を通常召喚するわ」

 

月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)

星4/闇属性/獣戦士族/攻1600/守1200

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、

「月光蒼猫」以外の自分フィールドの「ムーンライト」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで元々の攻撃力の倍になる。

(2):フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。

デッキから「ムーンライト」モンスター1体を特殊召喚する。

 

「バトルよ。月光蒼猫でダイレクトアタック!」

 

ファラ LP4000 → 2400

 

「私はカードを2枚伏せてターンエンドよ」

 

風鳴翼 LP4000 手札1 モンスター1 伏せ2

ファラ LP2400 手札3 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。《闇の誘惑》を発動します。2枚ドローして《ダーク・シムルグ》を除外。《招神鳥シムルグ》を召喚。効果でデッキから《死神鳥シムルグ》を手札に加えます。エイブルズの効果で手札の《霞の谷の巨神鳥》を相手に見せ、そのままアドバンス召喚。そして墓地の《ダークネス・シムルグ》を特殊召喚します」

 

前のターンの再現だな。

 

「バトル。霞の谷の巨神鳥で月光蒼猫を攻撃します」

 

「《次元幽閉》を発動。霞の谷の巨神鳥をゲームから除外するわ」

 

「《ダークネス・シムルグ》自身をリリースして、その発動を無効にして破壊します。攻撃を続行、ミスト・フェザー!」

 

巨神鳥の羽ばたきによって蒼き猫が吹き飛ぶ。

 

風鳴翼 LP4000 → 2600

 

「月光蒼猫の効果発動。戦闘・効果で破壊された場合にデッキから「ムーンライト」モンスター1体を特殊召喚できる」

 

「《霞の谷の巨神鳥》自身を手札に戻し、その発動を無効にして破壊します」

 

次々と無効にされていくな。幸いなのはフィールドが空いていることか。ファラさんの残りライフは2400。十分に削り切れる数値だが、手札が1枚ではやはり厳しいか。

 

「私はこれでターンエンドですわ」

 

ファラ LP2400 手札4 モンスター0 伏せ1

風鳴翼 LP2600 手札1 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。《月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)》を召喚し、効果発動。エクストラデッキの《月光舞豹姫(ムーンライト・パンサー・ダンサー)》を墓地に送り、そのカードと同名カードとして融合素材にできる」

 

だが翼さんの手札は1枚しかない。次のターンへの布石か?

 

「バトルよ。月光彩雛でダイレクトアタック!」

 

ファラ LP2400 → 1000

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンドよ」

 

風鳴翼 LP2600 手札0 モンスター1 伏せ2

ファラ LP1000 手札4 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー」

 

「なんか、変な空気だな」

 

「そうですね。盤面を支配しているのは間違いなくファラさんですが、残りのライフは1000。あと一押しで決まる」

 

何より最初のターンから伏せているカードが気になる。あれは何だろう? ブラフとも思えないが。

 

「《死神鳥シムルグ》を召喚して、効果でデッキから《神鳥(シムルグ)の排撃》を墓地に送りますわ」

 

「チェーンして《サイクロン》を発動よ。《神鳥の霊峰エルブルズ》を破壊するわ」

 

「では、バトルフェイズに入りますわ。死神鳥シムルグで月光彩雛を攻撃、デス・フェザー!」

 

風鳴翼 LP2600 → 2500

 

「私はこれでターンエンド」

 

「エンドフェイズに《死魂融合(ネクロ・フュージョン)》を発動。墓地の《月光舞豹姫》、《月光彩雛》、《月光蒼猫》を裏側表示で除外して融合召喚するわ。出でよ! 月光の原野の頂点に立って舞う百獣の王! 《月光舞獅子姫》!」

 

月光舞獅子姫(ムーンライト・ライオ・ダンサー)

星10/闇属性/獣戦士族/攻3500/守3000

「月光舞豹姫」+「ムーンライト」モンスター×2

このカードは上記のカードを融合素材にした融合召喚でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。

(2):このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。

(3):1ターンに1度、このカードがモンスターを攻撃したダメージステップ終了時に発動できる。

相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを全て破壊する。

 

ここでエースを呼び出すのか。さすが翼さん、魅せるデュエルだな。

 

ファラ LP1000 手札4 モンスター1 伏せ1

風鳴翼 LP2500 手札0 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー」

 

「リバースカードオープン、《和睦の使者》。このターン、私のモンスターは戦闘では破壊されず、私が受ける戦闘ダメージは0になりますわ」

 

あれ和睦だったのか。随分とギリギリまで引っ張ったな。

 

「なら、私はカードを1枚伏せてターンエンドよ」

 

風鳴翼 LP2500 手札0 モンスター0 伏せ1

ファラ LP1000 手札4 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。私は墓地の《神鳥の排撃》の効果を発動しますわ。このカードを除外して、手札の《霞の谷の巨神鳥》を相手に見せることで、このカードのレベルを1つ下げる」

 

つまり《霞の谷の巨神鳥》のレベルが7から6になる。リリース1体でアドバンス召喚できるってことか。

 

「速攻魔法《帝王の烈旋》を発動。貴方の《月光舞獅子姫》をリリースして《霞の谷の巨神鳥》をアドバンス召喚。そして墓地の《ダークネス・シムルグ》を特殊召喚します」

 

「私の《月光舞獅子姫》が……」

 

「バトル。霞の谷の巨神鳥でダイレクトアタック!」

 

「……《聖なるバリア-ミラーフォース-》を発動するわ」

 

「最後まで諦めない姿勢、嫌いではありませんよ。ダークネス・シムルグの効果発動。《死神鳥シムルグ》をリリースして、その発動を無効にして破壊します。攻撃を続行、ミスト・フェザー!」」

 

 

 

風鳴翼 LP2500 → 0

 

 

 

「私の……負けよ」

「はい。ですが良いデュエルでしたわ」

ふたりが軽く握手を交わす。

「翼さん、負けちゃいましたね」

「まあ、そういうこともあるさ。次はあたしだ。さあ、かかってきな!」

 

 

 



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キャロル来訪変:地

次の対戦は奏さんとレイアさんか。

レイアさんはやっぱりそのまま《古代の機械(アンティーク・ギア)》かな?

奏さんの新しいデッキを見せてもらったけど、どっちもパワー型なんだよなぁ。どっちが押し切れるか、だな。

「アンタがあたしの相手か?」

「ああ、派手なデュエルにしよう」

「望むところだぜ!」

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「私のターン、ドロー。では開幕は派手にいくとしよう。まずはカードを2枚伏せ、フィールド魔法《歯車街(ギア・タウン)》を発動。続けて《古代の機械射出機(アンティーク・ギアカタパルト)》を発動。《歯車街》を破壊し、デッキから「アンティーク・ギア」モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。現れろ! 《古代の機械巨人》!」

 

古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)

星8/地属性/機械族/攻3000/守3000

このカードは特殊召喚できない。

(1):このカードが攻撃する場合、

相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

(2):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、

その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

 

「続けて破壊された歯車街の効果を発動だ。デッキから《古代の機械飛竜》を特殊召喚。特殊召喚時の効果でデッキから《古代の機械融合(アンティーク・ギアフュージョン)》を手札に加え、発動だ。フィールドの《古代の機械巨人》とデッキの《古代の機械素体(アンティーク・ギアフレーム)》と《古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)》を墓地に送り、融合召喚。派手に来い! 《古代の機械究極巨人》!」

 

古代の機械(アンティーク・ギア・アル)究極巨人(ティメット・ゴーレム)

星10/地属性/機械族/攻4400/守3400

「古代の機械巨人」+「アンティーク・ギア」モンスター×2

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

(1):このカードが攻撃する場合、

相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

(2):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、

その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

(3):このカードが破壊された場合、

自分の墓地の「古代の機械巨人」1体を対象として発動できる。

そのモンスターを召喚条件を無視して特殊召喚する。

 

「私はこれでターンエンドだ」

 

レイア LP4000 手札2 モンスター2 伏せ2

 

――――――――――――

 

「あたしのターン、ドロー。へへっ、いきなり飛ばすじゃねぇか。あたしもそれに応えねぇとな。フィールド魔法《走破するガイア》を発動。ふたつめの効果で《魔道騎士ガイア》を見せ、デッキから《呪われし竜-カース・オブ・ドラゴン》を手札に加える」

 

《走破するガイア》

フィールド魔法

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分のモンスターゾーンに「竜騎士ガイア」が存在する限り、

相手はバトルフェイズ中に効果を発動できない。

(2):以下の効果から1つを選択して発動できる。

●手札の「暗黒騎士ガイア」モンスター1体を相手に見せて発動できる。

デッキからドラゴン族・レベル5モンスター1体を手札に加える。

●手札のドラゴン族・レベル5モンスター1体を相手に見せて発動できる。

デッキから「暗黒騎士ガイア」モンスター1体を手札に加える。

 

「《魔道騎士ガイア》を通常召喚。こいつはあたしのフィールドにモンスターが存在しないか、相手フィールドに攻撃力2300以上のモンスターが存在する場合にリリースなしで召喚できる。そしてもうひとつの効果で手札から《呪われし竜-カース・オブ・ドラゴン》を守備表示で特殊召喚だ。もちろんこいつも効果を持ってるぜ。デッキから《螺旋融合(スパイラル・フュージョン)》を手札に加えて、そのまま発動だ! 魔道極めし騎士よ、その魔力でドラゴンの呪いを解き放ち伝説の竜騎兵となれ! 来い!《竜魔道騎士ガイア》!」

 

《竜魔道騎士ガイア》

星7/風属性/ドラゴン族/攻2600/守2100

「暗黒騎士ガイア」モンスター+レベル5ドラゴン族モンスター

このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードはモンスターゾーンに存在する限り、

カード名を「竜騎士ガイア」として扱う。

(2):自分・相手のメインフェイズに、このカード以外のフィールドのカード1枚を対象として発動できる。

このカードの攻撃力を2600ダウンし、対象のカードを破壊する。

(3):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時に発動できる。

このカードの攻撃力は2600アップする。

 

雄々しき翼を翻し、竜に乗った騎士が天を駆ける。

 

「竜魔道騎士ガイアは「竜騎士ガイア」として扱う。螺旋融合の効果で攻撃力が2600アップし、1度のバトルフェイズ中に2回までモンスターに攻撃できる」

 

《竜魔道騎士ガイア》 攻撃力2600 → 5200

 

「そして墓地に送られた《呪われし竜-カース・オブ・ドラゴン》の効果を《竜魔道騎士ガイア》を対象に発動。攻撃力5200以下の相手モンスターの効果はターン終了時まで無効化される。呪縛螺旋(カース・オブ・スパイラル)!」

 

「アルティメット・ゴーレムの攻撃力を軽々と超えてくるとはな……。だがやすやすと通しはしない。チェーンして《リミッター解除》を発動だ」

 

「このタイミングでか!?」

 

「どの道バトルフェイズには発動できないからな」

 

《古代の機械飛竜》   攻撃力1700 → 3400

《古代の機械究極巨人》 攻撃力4400 → 8800

 

「ハッ、凄ぇカードを伏せてたもんだぜ。じゃあバトルだ。古代の機械飛竜を攻撃、螺旋魔槍殺(スパイラル・メイジ・シェイバー)!」

 

魔槍の一撃を受けて、機械仕掛けの飛竜が分解される。

 

レイア LP4000 → 2200

 

「相手モンスターを破壊したことで竜魔道騎士ガイアの攻撃力は更に2600アップするぜ」

 

《竜魔道騎士ガイア》 攻撃力5200 → 7800

 

「ひや~、どっちもふごいほーげきりょくだねぇ~」

 

「響、食うか喋るかどっちかにしろよ」

 

「…………(もぐもぐ)」

 

食う方を選んだか。

 

「大した攻撃力だが、私のアルティメット・ゴーレムには及ばなかったようだな」

 

「悔しいがその通りだ。メインフェイズ2にガイアの攻撃力を2600下げて、伏せカードを破壊しておくぜ。螺旋業火(スパイラル・カース・フレイム)!」

 

《竜魔道騎士ガイア》 攻撃力7800 → 5200

 

「やらせんよ。チェーンして《競闘-クロス・ディメンション》を発動。《古代の機械究極巨人》を次のスタンバイフェイズまで除外する」

 

上手いな。リミッター解除のデメリットを無効にした。

 

「チッ、無駄撃ちだったか。あたしはこれでターンエンドだ」

 

天羽奏 LP4000 手札4 モンスター1 伏せ0

レイア LP2200 手札2 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズに《古代の機械究極巨人》が戻ってくる。そして攻撃力はこのターンの終了時まで元々の攻撃力の倍になる」

 

《古代の機械究極巨人》 攻撃力4400 → 8800

 

「まずはその厄介なフィールドを破壊するとしよう。速攻魔法《サイクロン》を発動。《走破するガイア》を破壊。続けて魔法カード《古代の整備場(アンティーク・ギアガレージ)》を発動。墓地の《古代の機械箱》を手札に加える。そして古代の機械箱がドロー以外の方法で手札に加わったので、デッキから《古代の機械騎士(アンティーク・ギアナイト)》を手札に加える」

 

少なかった手札が補充されていく。二の矢が来るのか?

 

「《古代の機械猟犬(アンティーク・ギアハウンドドッグ)》を召喚。召喚成功時に相手に600のダメージを与える」

 

天羽奏 LP4000 → 3400

 

「――ここだッ! 竜魔道騎士ガイアの攻撃力を下げて《古代の機械猟犬》を破壊する! 螺旋業火(スパイラル・カース・フレイム)!」

 

《竜魔道騎士ガイア》 攻撃力5200 → 2600

 

レイアさんの手札2枚はすでに割れている。これ以上の融合を嫌ったのだろうが、伏せカードの無い状態で攻撃力8800のアルティメット・ゴーレムを処理できるのか?

 

「……何を企んでいる? だが、引くわけにもいかん。バトルだ。《古代の機械究極巨人》で《竜魔道騎士ガイア》を攻撃、ハイパー・アルティメット・パウンド!」

 

「さすがに止めさせてもらうぜ! あたしは《竜魔道騎士ガイア》をリリースして《暗黒騎士ガイアソルジャー》を特殊召喚。そして効果により《古代の機械究極巨人》を守備表示に変更する」

 

《暗黒騎士ガイアソルジャー》

星8/闇属性/戦士族/攻2600/守2100

このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドのドラゴン族の融合モンスター1体をリリースして発動できる。

このカードを手札から特殊召喚する。

この効果は相手ターンでも発動できる。

(2):このカードが特殊召喚に成功した場合、

フィールドの攻撃表示モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを守備表示にする。

(3):このカードをリリースして発動できる。

デッキから「暗黒騎士ガイアソルジャー」以外のレベル7以上の戦士族モンスター1体を手札に加える。

 

「凌がれたか、私はこれでターンエンドだ」

 

レイア LP2200 手札2 モンスター1 伏せ0

天羽奏 LP3400 手札3 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「あたしのターン、ドロー! フィールドの《暗黒騎士ガイアソルジャー》の効果発動。このカードをリリースして、デッキから《魔道騎士ガイア》を手札に加える。そして《魔道騎士ガイア》を召喚して効果発動だ。墓地から《呪われし竜-カース・オブ・ドラゴン》を特殊召喚し、その効果でデッキから《螺旋融合》を手札に加え、そのまま発動。フィールドの《魔道騎士ガイア》と《呪われし竜-カース・オブ・ドラゴン》を融合。魔道極めし騎士よ、その魔力でドラゴンの呪いを解き放ち天空を舞う竜騎兵となれ! 来い!《天翔の竜騎士ガイア》!」

 

《天翔の竜騎士ガイア》

星7/風属性/ドラゴン族/攻2600/守2100

「暗黒騎士ガイア」モンスター+ドラゴン族モンスター

(1):このカードはモンスターゾーンに存在する限り、

カード名を「竜騎士ガイア」として扱う。

(2):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。

自分のデッキ・墓地から「螺旋槍殺」1枚を選んで手札に加える。

(3):このカードが相手モンスターに攻撃宣言した時に発動できる。

その相手モンスターの表示形式を変更する。

 

「《天翔の竜騎士ガイア》が特殊召喚に成功したことで、デッキから《螺旋槍殺(スパイラル・シェイバー)》を手札に加え、そのまま発動。そして天翔の竜騎士ガイアも「竜騎士ガイア」として扱うため、螺旋融合の効果を受ける」

 

《天翔の竜騎士ガイア》 攻撃力2600 → 5200

 

「バトルだ! 《古代の機械究極巨人》を攻撃、螺旋天槍殺(スパイラル・シャイニング・シェイバー)!!」

 

天高く舞い上がったガイアが、天槍を構えて突進する。天を突くような巨人はその一撃で砕け散った。

 

レイア LP2200 → 400

 

「くっ、《古代の機械究極巨人》の効果……は発動しない」

 

「これで決めたかったが、さすがに気付くか。《螺旋槍殺》の効果で2枚ドローし、1枚を捨てる!」

 

《螺旋融合》は特殊召喚した「竜騎士ガイア」に、攻撃力アップと2回まで「モンスター」に攻撃できる効果を付与する。2回攻撃できる効果じゃない。ここに気付かず《古代の機械巨人》を特殊召喚していたら、勝負は決まっていたな。

 

「――ッ! どうやらあたしの勝ちは揺るがねぇようだ。手札から速攻魔法《融合解除》を発動。《天翔の竜騎士ガイア》をEXデッキに戻し、墓地から《魔道騎士ガイア》と《呪われし竜-カース・オブ・ドラゴン》を特殊召喚!」

 

天空を舞う竜騎士が光とともに霧散し、騎乗の騎士と、闇の飛竜に分かたれた。

 

「あたしのバトルフェイズはまだ終わっちゃいねぇ! 《呪われし竜-カース・オブ・ドラゴン》でダイレクトアタック! 呪縛業火(カース・オブ・フレイム)!」

 

闇を纏った火炎弾がレイアさんを直撃した。

 

 

 

レイア LP 400 → 0

 

 

 

「申し訳ございません、マスター。不覚をとりました」

「いや、中々見ごたえのある試合だった。そう気に病むな」

「ちょっ、マスター、アタシの時と対応が違いすぎません? アタシだってがんばったんですよぉ~。マスターったらぁ~」

「ええぃ、すがりつくな! 次はミカだ、行ってこい!」

「お~、やっと戦えるゾ!」

 

 

 



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キャロル来訪変:火

跳ねるように進み出て、その場でバク宙。まるで曲芸師か軽業師のような身のこなしだ。

紅蓮のような髪に、同じく燃えるような瞳。何よりも無邪気で、デュエルを楽しもうとする姿勢には好感が持てる。

「オマエがワタシの相手か?」

「うん。わたし立花響。よろしくね!」

「おー、ワタシはミカだゾ。よろしくナ」

「じゃあ始めようか」

「おー、全力で行くゾー」

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「わたしのターン、ドロー! 《融合》を発動。手札の《E・HERO シャドーミスト》と《ユベル》を融合。来て、漆黒の益荒男《E・HERO エスクリダオ》!」

 

ん? 響のヤツ、ヒーローデッキにユベルを組み込んだのか。大丈夫かな? ユベルは専用デッキじゃないと動かしにくいと思うが、ちゃんと回るのか?

 

「シャドーミストの効果で《E・HERO エアーマン》を手札に加えて、召喚。効果で《E・HERO ブレイズマン》を手札に加えるよ。わたしはカードを2枚伏せてターンエンド」

 

立花響 LP4000 手札2 モンスター2 伏せ2

 

――――――――――――

 

「ワタシのターン、ドローだゾ。まずは伏せカードを破壊するゾ。《ツインツイスター》を発動。手札を1枚捨てて、2枚の伏せカードを破壊ダ」

 

ミカが捨てたカードは《BK(バーニングナックラー) グラスジョー》。ということはBKデッキか。

 

「そうはいかないよ。チェーンして墓地の《ユベル》を対象に、永続罠《リミット・リバース》を発動。更にチェーンして《融合準備(フュージョン・リザーブ)》を発動。EXデッキの《E・HERO ジ・アース》を見せて、デッキから《E・HERO オーシャン》を、墓地から《融合》を手札に加える」

 

「でもリミット・リバースは永続罠だから、呼び出してもすぐに破壊されるゾ」

 

「ユベルには破壊された時に発動できる効果がある。デッキから《ユベル-Das Abscheulich Ritter》を特殊召喚するよ」

 

ユベルの第二形態、ドラゴンのような双頭を持つ悪魔が出現する。ミカは怯える様子もなく、むしろ興味深げにユベルを見上げた。

 

「ん? 攻撃力0? あ、ガリィが言ってたゾ。攻撃力が0のモンスターは厄介なヤツが多いから気をつけろって。えーっと、攻撃しちゃダメなのか。あとは破壊、おお、そいつ強いナ!」

 

「うん。ユベルは強くて面倒なヤツなんだよ。――え? ち、ちがうよ。効果の話だよ」

 

「?? じゃあワタシは《BK スイッチヒッター》を召喚して、効果発動だゾ。墓地の《BK グラスジョー》を特殊召喚ダ。そんでこの2体でオーバーレイ。現れろー、《BK 拘束蛮兵リードブロー》!」

 

BK(バーニングナックラー) 拘束蛮兵リードブロー》

ランク4/炎属性/戦士族/攻2200/守2000

「BK」と名のついたレベル4モンスター×2

自分フィールド上の「BK」と名のついたモンスターが

戦闘またはカードの効果によって破壊される場合、

その破壊されるモンスター1体の代わりに

このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事ができる。

また、このカードのエクシーズ素材が取り除かれた時、

このカードの攻撃力は800ポイントアップする。

 

「バトルだゾ。リードブローでエアーマンを攻撃、バーニングレイン!」

 

リードブローの鎖がエアーマンを打擲する。鎖の一撃はエアーマンのガードをこじ開けて粉砕した。

 

立花響 LP4000 → 3600

 

「ワタシはカードを1枚伏せてターンエンドだゾ」

 

ミカ  LP4000 手札2 モンスター1 伏せ1

立花響 LP3600 手札4 モンスター2 伏せ0

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドロー! えーっと、エスクリダオでリードブローを攻撃、エスクリダオは墓地の「E・HERO」の数×100ポイントアップする。行け! ダーク・デフュージョン!」

 

ミカ  LP4000 → 3500

 

「リードブローはX素材を1つ取り除くことで破壊を無効にできるゾ。そして攻撃力が800アップするゾ」

 

《BK 拘束蛮兵リードブロー》 攻撃力2200 → 3000

 

「わたしはこれでターンエンドだよ」

 

やっぱり動きが鈍いな。ユベルを能動的に破壊するギミックがないから、テンポアドバンテージが失われてる。

 

「エンドフェイズにユベルの効果発動。このカード以外のモンスターを全て破壊する」

 

「リードブローのX素材を1つ取り除くことで破壊を無効にするゾ。そんで効果で墓地にいったグラスジョーの効果で、《BK スイッチヒッター》を手札に加えるゾ」

 

《BK 拘束蛮兵リードブロー》 攻撃力3000 → 3800

 

立花響 LP3600 手札5 モンスター1 伏せ0

ミカ  LP3500 手札3 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「ワタシのターン、ドローだゾ。《BK スイッチヒッター》を召喚して、効果発動だゾ。墓地の《BK グラスジョー》を特殊召喚ダ。そんでこの2体でオーバーレイ。現れろー、2体目の《BK 拘束蛮兵リードブロー》!」

 

拘束具を纏った戦士と、拘束から解放された戦士が並ぶ。

 

「魔法カード《エクシーズ・ギフト》を発動だゾ。リードブローのX素材を2つ取り除いて、2枚ドロー。うーん、ワタシはカードを1枚伏せてターンエンドだゾ」

 

ミカも攻めあぐねてるな。これは長期戦になりそうだ。

 

ミカ  LP3500 手札3 モンスター2 伏せ2

立花響 LP3600 手札5 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドロー! カードを1枚伏せてターンエンド。ユベルの効果で2体のリードブローを破壊するよ」

 

「ムムム、じゃあもう使っちゃうゾ。ガリィに貰ったカード《火霊術-「紅」》を発動だゾ。リードブローをリリースして、元々の攻撃力分のダメージをオマエに与えるゾ」

 

「えぇ!? 元々の攻撃力分ってことは、2200!?」

 

リードブローが炎へと変わり、響へと直撃する。

 

立花響 LP3600 → 1400

 

「熱っっい、気がする!」

 

立花響 LP1400 手札5 モンスター1 伏せ1

ミカ  LP3500 手札3 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「ワタシのターン、ドローだゾ。魔法カード《増援》を発動。デッキから《BK スイッチヒッター》を手札に加えて、そのまま召喚ダ。効果で墓地の《BK グラスジョー》を特殊召喚して、この2体でオーバーレイ。現れろー、《No.79 BK 新星のカイザー》!」

 

《No.79 BK(バーニングナックラー) 新星のカイザー》

ランク4/炎属性/戦士族/攻2300/守1600

レベル4モンスター×2

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。

自分の手札・墓地から「BK」と名のついたモンスター1体を選んで、

このカードの下に重ねてエクシーズ素材とする。

このカードの攻撃力は、このカードのエクシーズ素材の数×100ポイントアップする。

また、このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、

その時にこのカードが持っていたエクシーズ素材の数まで、

自分の墓地からレベル4以下の「BK」と名のついたモンスターを選択して特殊召喚できる。

 

「新星のカイザーの効果発動。墓地の《BK スイッチヒッター》をエクシーズ素材にするゾ。そんでワタシはカードを1枚伏せてターンエンドダ」

 

ミカ  LP3500 手札2 モンスター1 伏せ2

立花響 LP1400 手札5 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドロー! ここは攻める! 《E・HERO ブレイズマン》を召喚して、効果発動。デッキから《融合》を手札に加える。そして発動。手札の《E・HERO フォレストマン》と《E・HERO オーシャン》を融合。来て! 太陽の使者《E・HERO サンライザー》!」

 

深紅の衣装に身を包み、それとは対照的な紫紺のマントを翻して、一人の英雄が降り立った。

 

「サンライザーの効果でデッキから《ミラクル・フュージョン》を手札に加える」

 

一気呵成に攻めるつもりか。ミカのデッキに火霊術が1枚しかないという保証はない。ガリィの手が入っているなら、もっとえげつないカードが出てきてもおかしくはないからな。

 

「そうはいかないゾ。カウンター罠《エクシーズ・ブロック》を発動ダ。新星のカイザーのX素材を1つ取り除いて、そいつの効果を無効にして破壊するゾ!」

 

効果を発動しようとしたサンライザーは、新星のカイザーの一撃を受けて吹き飛んだ。

 

「――くっ、なら手札を1枚捨てて、《超融合》を発動。フィールドの《E・HERO ブレイズマン》とミカちゃんの《No.79 BK 新星のカイザー》を融合。来て、紅蓮の勇者《E・HERO ノヴァマスター》!」

 

ここで超融合か。新星のカイザーの効果を上手く封じたな。先にこちらを発動していたら《エクシーズ・ブロック》の妨害は避けられたが、まあ今さらだな。

 

「最後に《死者蘇生》を発動。墓地から《E・HERO シャドーミスト》を特殊召喚。効果でデッキから《マスク・チェンジ》を手札に加える。さあ行くよ、バトル! シャドーミストとノヴァマスターでダイレクトアタック!」

 

闇と炎、2体のヒーローの総攻撃力は3600。十分な威力だが、ミカに焦った様子はない。

 

「にゃはッ! かかったゾ! 《業炎のバリア-ファイアー・フォース-》を発動ダ!」

 

「――ッ! 《攻撃の無敵化》を《E・HERO ノヴァマスター》を対象に発動! ノヴァマスターはこのバトルフェイズ中、戦闘及びカードの効果では破壊されない!」

 

炎の障壁がシャドーミストとユベルを包み込む。影の英雄と双頭の悪魔は熱波に飲まれて焼失した。猛る炎がそのままふたりに襲い掛かる。

 

「赤い方は躱したカ! まずはワタシがダメージを受けるゾ!」

 

ミカ LP3500 → 3000

 

「そして返すゾ!」

 

立花響 LP1400 → 900

 

「ぐぅぅっ、だけどライフは残った。でもゴメン。キミがやられちゃった」

 

ギリギリ残ったか。ユベルはタイミングを逃したな。

 

「バトルを続行、ノヴァマスターでダイレクトアタック!」

 

ミカ LP3000 → 400

 

「よしッ! 続けて手札から――」

 

「おっと、その前にワタシは手札から《BK ベイル》を守備表示で特殊召喚するゾ。そして受けたダメージを回復ダ」

 

追撃を掛けようと手札に手を掛けた響に、ミカが待ったをかける。ミカの手札から盾を構えた屈強な戦士が飛び出してきた。

 

ミカ LP 400 → 3000

 

「ウソッ!? ……わたしはカードを1枚伏せてターンエンド」

 

立花響 LP 900 手札0 モンスター1 伏せ1

ミカ  LP3000 手札1 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「ワタシのターン、ドローだゾ。――オオ? ワタシがドローしたのはこれダ! 《RUM(ランクアップマジック)七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)》」

 

ここで引くか。凄いドロー力だな。

 

「《RUM-七皇の剣》を発動ダ。EXデッキから《No.105 BK 流星のセスタス》を特殊召喚し、その上に重ねて《CNo.105 BK 彗星のカエストス》をX召喚扱いとしてEXデッキから特殊召喚するゾ」

 

《CNo.105 BK(バーニングナックラー) 彗星のカエストス》

ランク5/炎属性/戦士族/攻2800/守2000

レベル5モンスター×4

このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、

破壊したモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える。

また、このカードが「No.105 BK 流星のセスタス」を

エクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。

●1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、

相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターを破壊し、

破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

効果を読み取った響が眉を顰める。

 

「彗星のカエストスの効果発動ダ。X素材を1つ取り除き、オマエのノヴァマスターを破壊! そしてその攻撃力分のダメージを与えるゾ。ペネトレイトロッド!」

 

「させないよッ! 伏せていた《マスク・チェンジ》を発動! ノヴァマスターを墓地に送り、EXデッキから《M・HERO 剛火》を特殊召喚!」

 

カエストスの渾身のストレートから発射された真紅の光線は空を切り、ノヴァマスターが消失した場所から、同じく赤い英雄が姿を現した。

 

「剛火は散っていった仲間たちの思いを受け継ぎ、それを力と変える!」

 

《M・HERO 剛火》 攻撃力2200 → 3000

 

剛火の全身から噴火の如くパワーが溢れ出す。

 

「オマエ、面白いナ。じゃあ攻撃ダ。カエストスで剛火を攻撃、バーニングハート・メカニクス!!」

 

「攻撃ッ!? くっ、迎え撃って、剛火!」

 

嫌な予感を抱きつつも、響は剛火に指示を下す。両者の拳が触れ合うその一瞬――。

 

「手札から《BK カウンターブロー》の効果発動ダ。このカードを除外して、カエストスの攻撃力を1000アップするゾ!」

 

カエストスの拳が一気に膨れ上がり、剛火のボディを貫いた。

 

立花響 LP 900 → 100

 

「そしてカエストスの効果発動! そいつの元々の攻撃力の半分のダメージをオマエに与えるゾ!」

 

剛火を打ち砕いた拳から炎が舞い上がり、それはそのまま響を襲った。

 

 

 

立花響 LP 100 → 0

 

 

 

特大の炎を浴びて、響は悲鳴を上げながら、大の字になって天を仰いだ。

うーむ。ユベルには悪いが、ユベルは抜いた方が良さそうだな。ユベル入りのヒーローデッキを回せるのは「あの人」くらいだろ。

ユベルには、そのうち専用のデッキを構築してやるか。

「これで二勝二敗、まさかオレまで縺れ込むことになるとはな」

思考を遮ったのは、歌うような声音。

胸が躍るといった様子で、金糸のような髪をなびかせながら、ひとりの少女が歩み出た。

 

 

 



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キャロル来訪変:光

金髪の少女が不敵に笑う。

最初の出会いは彼女ではない彼女だった。そのことがもはや遠くの記憶のように思える。

二度目の出会いは、つい先ほどだ。短い会話だったが、この少女が意外にも飾らない性格だと知れた。

ふたりの視線が絡み合う。特に言葉を交わすことなく、示し合わせたように構えをとり、自然な流れでデュエルが始まる。

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「オレのターン、ドロー。魔法カード《調律》を発動。デッキから《ジャンク・シンクロン》を手札に加えて、シャッフル。その後デッキの一番上のカードを墓地に送る」

 

今チューサポが落ちたような。

 

「《ジャンク・シンクロン》を召喚。その効果で墓地の《チューニング・サポーター》を特殊召喚。そして《機械複製術》を発動して、デッキから《チューニング・サポーター》をさらに2体特殊召喚する。レベル2扱いとした《チューニング・サポーター》にレベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング。集いし絆が新たな星を紡ぎ出す! 光さす道となれ! シンクロ召喚! 導け、《ジャンク・スピーダー》!」

 

《ジャンク・スピーダー》

星5/風属性/戦士族/攻1800/守1000

「シンクロン」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがS召喚に成功した場合に発動できる。

デッキから「シンクロン」チューナーを可能な限り守備表示で特殊召喚する(同じレベルは1体まで)。

この効果を発動するターン、自分はSモンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。

(2):このターンにS召喚したこのカードがモンスターと戦闘を行う攻撃宣言時に発動できる。

このカードの攻撃力はターン終了時まで元々の攻撃力の倍になる。

 

「チューニング・サポーターの効果で1枚ドロー。続けてジャンク・スピーダーの効果発動。デッキから「シンクロン」チューナーを可能な限り守備表示で特殊召喚する」

 

可能な限りって、相変わらずおかしい効果だよなぁ。

 

「オレが選択するのは《ジェット・シンクロン》と《ジャンク・シンクロン》。そしてレベル2扱いとした《チューニング・サポーター》にレベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング。集いし星が新たな力を呼び起こす! 光さす道となれ! シンクロ召喚! いでよ、《ジャンク・ウォリアー》!」

 

《ジャンク・ウォリアー》

星5/闇属性/戦士族/攻2300/守1300

「ジャンク・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがS召喚に成功した場合に発動する。

このカードの攻撃力は、自分フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分アップする。

 

「チューニング・サポーターの効果で1枚ドロー。続けてレベル1の《チューニング・サポーター》にレベル1の《ジェット・シンクロン》をチューニング。集いし願いが、新たな速度の地平へいざなう! 光さす道となれ! シンクロ召喚! 《フォーミュラ・シンクロン》!」

 

《フォーミュラ・シンクロン》

星2/光属性/機械族/攻 200/守1500

チューナー+チューナー以外のモンスター1体

(1):このカードがS召喚に成功した時に発動できる。

自分はデッキから1枚ドローする。

(2):相手メインフェイズに発動できる。

このカードを含む自分フィールドのモンスターをS素材としてS召喚する。

 

「チューニング・サポーターとフォーミュラ・シンクロンの効果で2枚ドロー。さらにジェット・シンクロンの効果で、デッキから《ジャンク・シンクロン》を手札に加える。さあ、いくぞ! 目をかっぽじって見るがいい! レベル5の《ジャンク・スピーダー》とレベル5の《ジャンク・ウォリアー》にレベル2の《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング。集いし星が1つになる時、新たな絆が未来を照らす! 光さす道となれ! デルタアクセルシンクロ! 進化の光! 《シューティング・クェーサー・ドラゴン》!!」

 

《シューティング・クェーサー・ドラゴン》

星12/光属性/ドラゴン族/攻4000/守4000

Sモンスターのチューナー+チューナー以外のSモンスター2体以上

このカードはS召喚でしか特殊召喚できない。

(1):このカードは、そのS素材としたモンスターの内、

チューナー以外のモンスターの数まで1度のバトルフェイズ中に攻撃できる。

(2):1ターンに1度、魔法・罠・モンスターの効果が発動した時に発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

(3):表側表示のこのカードがフィールドから離れた時に発動できる。

EXデッキから「シューティング・スター・ドラゴン」1体を特殊召喚する。

 

恒星と見紛うような強烈な光を放ち、1体のドラゴンが飛翔する。

 

「オレはカードを3枚伏せてターンエンドだ。さあ、かかってこい! 遊蓮ッ!」

 

キャロルが息巻いてこちらを見据える。てかクェーサー出して手札が増えてるってどういうことなの?

 

キャロル LP4000 手札6 モンスター1 伏せ3

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。《ライトニング・ストーム》を発動。相手の魔法・罠カードを全て破壊する」

 

「甘いぞ! 《スターライト・ロード》を発動。その効果を無効にして破壊する。その後《スターダスト・ドラゴン》を特殊召喚」

 

キャロルのフィールドに白銀の美しき竜が飛翔する。クェーサーの効果を使ってくれれば儲けものと思ったが、状況は悪化したな。

 

「俺は《幻影騎士団ダスティローブ》を召喚。そして《幻影騎士団サイレントブーツ》を特殊召喚。このカードは自分フィールドに「ファントムナイツ」がいる時、手札から特殊召喚できる」

 

「ここで《リミット・リバース》を発動。墓地の《フォーミュラ・シンクロン》を特殊召喚。そして、レベル8の《スターダスト・ドラゴン》にレベル2の《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング。集いし力が拳に宿り、鋼を砕く意志と化す! 光さす道となれ! アクセルシンクロ! 現れろ、《スターダスト・ウォリアー》!」

 

《スターダスト・ウォリアー》

星10/風属性/戦士族/攻3000/守2500

Sモンスターのチューナー+チューナー以外のSモンスター1体以上

(1):相手がモンスターを特殊召喚する際に、このカードをリリースして発動できる。

それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

(2):このカードの(1)の効果を適用したターンのエンドフェイズに発動できる。

その効果を発動するためにリリースしたこのカードを墓地から特殊召喚する。

(3):戦闘または相手の効果で表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に発動できる。

エクストラデッキからレベル8以下の「ウォリアー」Sモンスター1体をS召喚扱いで特殊召喚する。

 

膨れ上がった白光が、屈強な戦士を形成する。矮躯な少女を守護(まも)るように、白銀の竜と白銀の戦士が立ちはだかった。

う~む。特殊召喚無効に、あらゆる効果を無効、伏せカードが1枚か。『前』にクェーサーを3体並べられた時よりはマシだが、それでもなかなかにキツイ。

 

「レベル3のダスティローブとサイレントブーツの2体でオーバーレイ。戦場に倒れし騎士たちの魂よ。今こそ蘇り、闇を切り裂く光となれ! 現れろ! ランク3、《幻影騎士団ブレイクソード》!」

 

「だがしかし! スターダスト・ウォリアーの効果発動。このカードをリリースし、その特殊召喚を無かったことにする。クリア・サンクチュアリ!」

 

「ならば、墓地のダスティローブの効果発動。このカードを除外してデッキから「幻影騎士団」カード1枚を手札に加える」

 

「……それも止めておこう。速攻魔法《墓穴の指名者》を発動だ。対象は《幻影騎士団ダスティローブ》」

 

これで妨害カードはクェーサーだけか。……さすがに手札誘発はないだろう。ないといいな。

 

「なら《名推理》を発動だ」

 

「墓地肥やしか、それは看過できんな。シューティング・クェーサー・ドラゴンの効果で、無効にして破壊する」

 

さすがに止められたか。墓地を活用するデッキだということは看破されてるな。

 

「墓地のサイレントブーツの効果発動。このカードを除外して、デッキから《幻影騎士団シェード・ブリガンダイン》を手札に加える。そしてセットして、発動。このカードは自分の墓地に罠カードが存在しない場合、セットしたターンに発動できる。発動後、このカードは通常モンスター(戦士族・闇・星4・攻0/守300)となり、モンスターゾーンに守備表示で特殊召喚する」

 

燐光を纏った黒き鎧が、ゆらゆらと出現する。

 

「続けて《簡易融合(インスタントフュージョン)》を発動。ライフを1000払い、EXデッキから《暗黒火炎龍》を特殊召喚。レベル4のシェード・ブリガンダインと暗黒火炎龍でオーバーレイ。漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙! 今、降臨せよ! 現れろ! ランク4、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

 

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》

ランク4/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000

レベル4モンスター×2

(1):このカードのX素材を2つ取り除き、

相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターの攻撃力を半分にし、

その数値分このカードの攻撃力をアップする。

 

「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの効果発動。X素材を2つ取り除き、シューティング・クェーサー・ドラゴンの攻撃力を半分にし、その数値分このカードの攻撃力をアップする」

 

《シューティング・クェーサー・ドラゴン》  攻撃力4000 → 2000

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》攻撃力2500 → 4500

 

「バトルだ。ダーク・リベリオンでシューティング・クェーサー・ドラゴンを攻撃、反逆のライトニング・ディスオベイ!」

 

キャロル LP4000 → 1500

 

「だが、シューティング・クェーサー・ドラゴンが破壊されたことで効果発動だ。EXデッキから《シューティング・スター・ドラゴン》を特殊召喚する」

 

《シューティング・スター・ドラゴン》

星10/風属性/ドラゴン族/攻3300/守2500

Sモンスターのチューナー1体+「スターダスト・ドラゴン」

(1):1ターンに1度、発動できる。

自分のデッキの上から5枚めくってデッキに戻す。

このターンこのカードはめくった中のチューナーの数まで攻撃できる。

(2):1ターンに1度、フィールドのカードを破壊する効果の発動時に発動できる。

その効果を無効にし破壊する。

(3):1ターンに1度、相手の攻撃宣言時に攻撃モンスターを対象として発動できる。

フィールドのこのカードを除外し、その攻撃を無効にする。

(4):この(3)の効果で除外されたターンのエンドフェイズに発動する。

このカードを特殊召喚する。

 

「速攻魔法《グリード・グラード》を発動。カードを2枚ドローする。俺はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

「エンドフェイズにスターダスト・ウォリアーがフィールドに戻ってくる」

 

音羽遊蓮 LP3000 手札0 モンスター1 伏せ2

キャロル LP1500 手札6 モンスター2 伏せ0

 

――――――――――――

 

「オレのターン、ドロー。手札の《ボルト・ヘッジホッグ》を墓地へ送り、《クイック・シンクロン》を特殊召喚。そしてオレのフィールドにチューナーがいるので、墓地の《ボルト・ヘッジホッグ》を特殊召喚できる。レベル2の《ボルト・ヘッジホッグ》にレベル5の《クイック・シンクロン》をチューニング。集いし叫びが木霊の矢となり(くう)を裂く! 光さす道となれ! シンクロ召喚! いでよ、《ジャンク・アーチャー》!」

 

《ジャンク・アーチャー》

星7/地属性/戦士族/攻2300/守2000

「ジャンク・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上

1ターンに1度、相手フィールド上に存在する

モンスター1体を選択して発動する事ができる。

選択したモンスターをゲームから除外する。

この効果で除外したモンスターは、

このターンのエンドフェイズ時に同じ表示形式で相手フィールド上に戻る。

 

「ジャンク・アーチャーの効果発動。《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を除外する」

 

ジャンク・アーチャーの放った矢に撃たれ、漆黒の竜が次元の穴に吸い込まれていく。

 

「続けてシューティング・スター・ドラゴンの効果を発動だ。オレのデッキの上からカードを5枚めくってデッキに戻す。このターン、シューティング・スター・ドラゴンはめくった中のチューナーの数まで攻撃できる。いくぞ!

一枚目《ジェット・シンクロン》

二枚目《幽鬼うさぎ》

三枚目《サテライト・シンクロン》

四枚目《エフェクト・ヴェーラー》

五枚目《ロード・シンクロン》

よってこのターン、シューティング・スター・ドラゴンは五回の攻撃が可能! バトルだ。シューティング・スター・ドラゴンでダイレクトアタック! スターダスト・ミラージュ! グォレンダァ!」

 

当たり前のように五連撃とかやめてほしい。だが――。

 

「《波紋のバリア-ウェーブ・フォース-》を発動。相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て持ち主のデッキに戻す」

 

「――やるなッ! スターダスト・ウォリアーの弱点を突いてきたか。だが手札から《禁じられた聖槍》を《シューティング・スター・ドラゴン》を対象に発動だ!」

 

「さらにチェーンして《神風のバリア-エア・フォース-》を発動。攻撃モンスターを全て手札に戻す。シンクロモンスターはEXデッキに戻ってもらう。侮ったな、俺のバリアフォースは隙を生じぬ二段構えだ!」

 

「チィ、ならバトルフェイズは終了だ。メインフェイズ2に《太陽風帆船(ソーラー・ウィンドジャマー)》を特殊召喚。こいつはオレのフィールドにモンスターが存在しない場合、手札から特殊召喚できる。そして《ジャンク・シンクロン》を通常召喚。効果で《フォーミュラ・シンクロン》を特殊召喚。レベル5の《太陽風帆船》にレベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング。シンクロ召喚! 来い、《閃珖竜 スターダスト》! 続けてレベル8の《閃珖竜 スターダスト》にレベル2の《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング。光来せよ、《真閃珖竜 スターダスト・クロニクル》!」

 

《真閃珖竜 スターダスト・クロニクル》

星10/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

Sモンスターのチューナー+チューナー以外のSモンスター1体以上

このカードはS召喚でしか特殊召喚できない。

(1):1ターンに1度、自分の墓地のSモンスター1体を除外して発動できる。

このカードはターン終了時まで、他のカードの効果を受けない。

この効果は相手ターンでも発動できる。

(2):このカードが相手によって破壊された場合、

除外されている自分のドラゴン族Sモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

 

神々しさすら感じるほどの、黄金色のオーラを放つスターダストが飛翔する。

 

「オレはカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

「エンドフェイズにダーク・リベリオンが戻ってくる」

 

キャロル LP1500 手札0 モンスター1 伏せ2

音羽遊蓮 LP3000 手札0 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

このカードは……。多少賭けの部分は大きいが、キャロルのデッキを考えるに、勝機はある。

 

「俺はカードを1枚伏せ、ダーク・リベリオンを守備表示に変更してターンエンドだ」

 

音羽遊蓮 LP3000 手札0 モンスター1 伏せ1

キャロル LP1500 手札0 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「オレのターン、ドロー。魔法カード《ネクロイド・シンクロ》を発動。墓地の《ジャンク・スピーダー》と《ジャンク・ウォリアー》に《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング。この3体を除外して、《聖珖神竜 スターダスト・シフル》をシンクロ召喚扱いとして特殊召喚する。スターダストは倒れない! 何度だって甦る! 光臨せよ! 《聖珖神竜 スターダスト・シフル》!!」

 

《聖珖神竜 スターダスト・シフル》

星12/光属性/ドラゴン族/攻4000/守4000

Sモンスターのチューナー+チューナー以外のSモンスター2体以上

このカードはS召喚でしか特殊召喚できない。

(1):自分フィールドのカードはそれぞれ1ターンに1度だけ戦闘・効果では破壊されない。

(2):1ターンに1度、相手がモンスターの効果を発動した時に発動できる。

その効果を無効にし、フィールドのカード1枚を選んで破壊する。

(3):墓地のこのカードを除外し、

自分の墓地のレベル8以下の「スターダスト」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

 

白銀の翼を翻し、巨竜が舞う。その竜が鳴動するたびに星々が瞬くような光彩を放つ。

 

「ただし、この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。だが十分だ。バトル! スターダスト・クロニクルでダーク・リベリオンを攻撃、《流星煌閃撃(シューティング・シャイン・ブラスト)》!」

 

金色(こんじき)の竜が、その身体ごと激突し、漆黒の竜を貫く。

 

「――グッ、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンが破壊されたことで、条件はクリア! ライフを1000払い、《エクシーズ熱戦!!》を発動!」

 

《エクシーズ熱戦!!》

通常罠

自分フィールド上のエクシーズモンスターが戦闘によって破壊された時、

1000ライフポイントを払って発動できる。

お互いのプレイヤーは、破壊されたモンスターのランク以下のランクを持つ

エクシーズモンスター1体をそれぞれのエクストラデッキから選んで相手に見せる。

攻撃力の低いモンスターを見せたプレイヤーは、

相手が見せたモンスターの攻撃力と、

自分が見せたモンスターの攻撃力の差分のダメージを受ける。

相手がモンスターを見せなかった場合、

自分が見せたモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

「――ッ!! ……オレのEXデッキに、エクシーズモンスターは入っていない」

 

やはりか。あれだけポンポンとシンクロモンスターを出していたからな。エクシーズモンスターを差し込む余裕はなかったのだろう。

 

「故に、チェーンしよう。オレはこのカードを発動する。《運命の分かれ道》!」

 

「それはッ!?」

 

「再演だ。と言っても、あの時の記憶はおぼろげだがな」

 

互いの眼前に巨大なコインが出現する。2枚のコインが俺たちの勝敗をかけて、天高く弾かれた。舞い上がるコインが示したものは――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音羽遊蓮 LP 0

キャロル LP 0

 

 

 

「あんなカードを仕込んでおいたとはな」

それを聞いてキャロルが苦笑する。意趣返し、というわけではないだろうが、エルフナインとはまた違った愛嬌のあるコだな。

「これも一興だろう。だが二勝二敗一分けとは、臍下あたりがむず痒い結末ではある」

「あ、あの。じゃあボクもデュエルしたいなぁ、なんて」

俺たちの間に割って入ってきたのは、なんとも可愛らしい声だった。

 

 

 



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キャロル来訪変:闇

名乗りを上げたエルフナインを眺めながら、キャロルは感慨深げに口を開く。

「そういえば、最近は頻繁にデッキ調整をしているらしいな」

「そ、そうかもしれませんね」

「そういえば、以前に宝物庫の鍵を借りに来たことがあったな」

「ちょっと探し物があったので……」

エルフナインは俯いてモジモジし始めた。どうも力関係はキャロルが上らしいな。

「まあ、いい。せっかくだ、誰か相手を頼めるか?」

「はい、はい! じゃあわたしが相手するデスよ!」

切歌が元気よく手を上げる。じわじわと迫り来る気圧はたじろぐほどだ。みんなのデュエルを見て興奮したのだろう。

「いいか? エルフナイン」

「は、はい。よろしくお願いします、切歌さん」

「遠慮は無用デスよ! 全力でかかってこいデス!」

「はい、では」

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「先攻はわたしデスね、ドロー」

 

切歌の顔が愉悦に歪む。あのにやけ顔は見たことがある。

これは親睦も兼ねたデュエル会だ。切歌はその辺ちゃんと分かってるのだろうか?

大声を出すわけにもいかないので、必死にアイコンタクトで伝える。あ、ダメだ。あいつ全然気付いてねぇ。

 

「わたしは魔法カード《真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)》を発動デス。デッキから――」

 

「あ、手札から《灰流うらら》を捨てて、その効果を無効にします」

 

「……へ?」

 

切歌の愉悦顔が一瞬にして固まる。灰流うららか、珍しいカードが飛び出してきたな。

 

「随分と高ぇカード使ってんな、あの嬢ちゃん」

 

奏さんが感心したように軽口をこぼす。アイドルの稼ぎがあっても、あのレベルのカードは珍しいのだろう。

 

「ええ、【Sランク】のカードですからね。俺もプロのデュエル以外では初めて見ましたよ」

 

そういえばキャロルのデッキにもひっそりと《幽鬼うさぎ》や《エフェクト・ヴェーラー》が入ってたな。まあクェーサーだのシフルだのも、かなり値の張るカードだが。

手札誘発系のカードはデュエルの勝敗を左右するといっても過言ではないくらいに強力なカードだ。奇襲性が高く、相手の意表を突きやすい。それゆえにレアだ。プロならともかく、一般のデュエリストはそこに金をかけるなら、デッキ全体の完成度を上げる方に金を使うだろう。

サンダー・ドラゴンなんかも一式揃えるとなったら、結構な金額になる。俺は運よく主要パーツを入手できたが、そうでなければ組もうとは思わなかっただろうな。

 

「えーと、じゃあわたしは《レッドアイズ・インサイト》を発動デス。デッキから《真紅眼の黒炎竜》を墓地に送り、《レッドアイズ・スピリッツ》を手札に加えるデス。続けて《伝説の黒石》を召喚……ってあれ?」

 

デュエルディスクから警告音が発せられ、切歌は疑問を抱く。その答えは対戦相手から返ってきた。

 

「切歌さん、《真紅眼融合》を発動したターンは他の召喚・特殊召喚はできませんよ」

 

「へ? でも《真紅眼融合》は無効にされたデスよ?」

 

「《灰流うらら》は効果を無効にするだけで、発動を無効にするわけではないので」

 

「や、ややこし、いや知ってたんデスけどね! じゃあ、わたしはカードを2枚伏せてターンエンドデス」

 

召喚はできなくとも召喚権はあるからモンスターのセットはできる。手頃なカードがなかったのか、それともうっかりしたのか、さてどっちだろうか。

 

暁切歌 LP4000 手札3 モンスター0 伏せ2

 

――――――――――――

 

「ボクのターン、ドローします。ボクは魔法カード《コール・リゾネーター》を発動。デッキから《クリムゾン・リゾネーター》を手札に加えます。そしてこのカードはボクのフィールドにモンスターが存在しない場合、手札から特殊召喚できます。《クリムゾン・リゾネーター》を特殊召喚」

 

音叉を持った炎の小悪魔が、エルフナインのフィールドに出現する。

 

「続けて《スカーレッド・ファミリア》を通常召喚。レベル4の《スカーレッド・ファミリア》にレベル2の《クリムゾン・リゾネーター》をチューニング。来て下さい!《レッド・ライジング・ドラゴン》!」

 

《レッド・ライジング・ドラゴン》

星6/闇属性/ドラゴン族/攻2100/守1600

悪魔族チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがS召喚に成功した時、

自分の墓地の「リゾネーター」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

この効果を発動するターン、

自分はドラゴン族・闇属性Sモンスターしかエクストラデッキから特殊召喚できない。

(2):墓地のこのカードを除外し、

自分の墓地のレベル1の「リゾネーター」モンスター2体を対象として発動できる。

そのモンスター2体を特殊召喚する。

この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。

 

「レッド・ライジング・ドラゴンがシンクロ召喚に成功した時、墓地の「リゾネーター」モンスターを特殊召喚できます。《クリムゾン・リゾネーター》を特殊召喚。そしてボクのフィールドには、このカード以外のモンスターがドラゴン族・闇属性Sモンスターが1体のみなので効果を発動できます。デッキから《チェーン・リゾネーター》と《レッド・リゾネーター》を特殊召喚。レッド・リゾネーターの特殊召喚時の効果で、レッド・ライジング・ドラゴンの攻撃力分のライフを回復します」

 

音叉を持った小悪魔たちが、エルフナインを周囲を跳ね回る。その内の1体がエルフナインに音叉を向けて、癒しを与えた。

 

エルフナイン LP4000 → 6100

 

「ボクは手札の《シンクローン・リゾネーター》を特殊召喚。このカードはフィールドにSモンスターがいる時、手札から特殊召喚できます。レベル6の《レッド・ライジング・ドラゴン》にレベル2の《クリムゾン・リゾネーター》をチューニング。顕現しなさい《琰魔竜 レッド・デーモン》!」

 

赤黒い肌と翼を持つ悪魔竜が飛び立つ。

 

「レッド・デーモンは進化します! レベル8の《琰魔竜 レッド・デーモン》にレベル2の《レッド・リゾネーター》をチューニング。炎と共にその身を(さら)しなさい!《琰魔竜 レッド・デーモン・ベリアル》!」

 

切歌がおろおろしだしたな。伏せカード2枚の内、1枚はレッドアイズ・スピリッツだろうが、ここまで動かれたということは、もう1枚も妨害系ではなさそうだ。

 

「これでラストです。レベル10の《琰魔竜 レッド・デーモン・ベリアル》にレベル1の《チェーン・リゾネーター》とレベル1の《シンクローン・リゾネーター》をダブルチューニング。孤高の絶対破壊神よ! 神域より舞い降り終焉をもたらせ! シンクロ召喚! 《琰魔竜王 レッド・デーモン・カラミティ》!!」

 

《琰魔竜王 レッド・デーモン・カラミティ》

星12/闇属性/ドラゴン族/攻4000/守3500

チューナー2体+チューナー以外のドラゴン族・闇属性Sモンスター1体

(1):このカードがS召喚に成功した時に発動できる。

このターン相手はフィールドで発動する効果を発動できない。

この発動に対して、相手はカードの効果を発動できない。

(2):このカードが戦闘でモンスターを破壊した場合に発動する。

そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

(3):このカードが相手によって破壊された場合、

自分の墓地のレベル8以下のドラゴン族・闇属性Sモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

 

「レッド・デーモン・カラミティの効果発動。このターン相手はフィールドで発動する効果を発動できません。そしてこの発動に対して、相手はチェーンを組むこともできません」

 

「な、なんデスとぉ!?」

 

「ついでに墓地に送られた《シンクローン・リゾネーター》の効果を発動しますね。墓地の《クリムゾン・リゾネーター》を手札に加えて、バトルフェイズに入ります。レッド・デーモン・カラミティでダイレクトアタック!」

 

「ここで《聖なるバリア-ミラーフォース-》を発動デス! 《聖なるバリア-ミラーフォース-》を発動デスッ! 《聖なるバリア-ミラーフォース-》を発動デーーースッ!」

 

「発動できません! おとなしくやられちゃってください! 真紅の絶対破壊(クリムゾン・アブソリュート・ブレイク)!!」

 

炎を纏った竜王が飛翔する。生み出された巨大なエネルギー球が切歌に直撃し、大爆砕を引き起こした。

 

 

 

暁切歌 LP4000 → 0

 

 

 

「――ありえないデェェェスッ!!」

デュエルディスクから無情のブザーが鳴り響く。

このデュエルを一言でまとめるなら、1ターンキルをしようと思ったら、1ターンキルをされたでござる、ってところか。

ご愁傷様です。

 

 

 





というわけで、キャロル編終了です。
拙い文章にお付き合いいただきありがとうございました。
また番外編でも書くかもしれませんが、読んでいただければ幸いです。


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閑話-Endless Dream

雪音クリスは幼少の頃より、人の目を引く存在だった。それはハーフ故に日本人離れした顔立ちに加え、母親譲りの艶やかな銀髪も拍車をかけていた。

そしてそれは時として人々のやっかみの対象となる。いつ頃か、自分の周りには気の置けない友人というものがいないことに、クリスは気付いた。

明確ないじめというものではないが、自分が距離を置かれているということには幼心にも気付いていた。

そんなある日、クリスが学校からの帰り道、路地の陰にひとりの女性が血を流して倒れているのを発見する。クリスはまだ知らないことだが、彼女は『プロデュエリスト』であり、ある大きな大会の決勝戦前日、対戦相手の勢力からその身を狙われていたのだった。

「自分と同じようにひとりぼっちでさびしそうだな」と倒れている女に共感したクリスは、その女を探している黒服の男たちに尋ねられた時、恐怖も感じずに別の方向に逃げたと匿った。

およそ一ヶ月後、クリスの前に倒れていた女性デュエリストが現れ、こう言った。

「君がしてくれた事は決して忘れない。これはそのお礼だ」

クリスは手渡されたカードに目を向けた。

 

アリア(独唱)……あたしみたいだ」

 

「違う。アリアは独りじゃない」

 

それから、二人の奇妙な交流が始まった。彼女は会うたびに、クリスにデュエルの楽しさを語り、新たな仲間(カード)をプレゼントしてくれた。

ふさぎ込んでいたクリスは本来の活発さを取り戻し、彼女との交流を通じて「絆」を知った。

彼女はクリスの心をまっすぐにしてくれたのだ。もうイジけた目つきはしていない。クリスの心にさわやかな風が吹いた。

 

こうして「雪音クリス」は声楽家やヴァイオリニストにあこがれるよりも『デュエル・スター』にあこがれるようになったのだ!

 

その頃に知ったツヴァイウィングというアイドルユニットは、彼女の目標のひとつであった。

同年代でありながら、高い歌唱力とプロ並みの魅せるデュエル。いつの間にか、クリスは二人を追いかけるようになった。

立花響と出会ったのはそんな折のことだった。

ツヴァイウィングとコラボしたデュエル大会。参加者のレベルはおしなべて低いものだったが、彼女のそれは頭二つ分くらいは抜けていた。それでも自分には届かなかったが、印象に残るくらいの腕ではあった。

続いて出会った音羽遊蓮という少年は、良い意味でも悪い意味でも衝撃的だった。軽く話しただけでも自分以上の知識量だというのがうかがい知れた。この年代にありがちな生意気さもない。クリスは好印象を抱いた。

問題はその後に行われた、ツヴァイウィングとのデュエルだった。クリスは少なからずも、ツヴァイウィングの二人とデュエルできることを楽しみにしていたのだ。だがその機会は奪われた。

 

自分の1ターン目。布陣を整え、相手はどんな手を打つだろうかとわくわくしながらターンを終えた。そして一週目のラスト、少年にターンが回り、それがラストターンになった。

肩透かし、想定外、不完全燃焼、そんな言葉が浮かんでは消える。別に彼は悪いことをしたわけではない。言葉にできないモヤモヤとしたものを抱えながら、クリスは家路についた。

そんな小さな大会で出会った少年と少女。再会したのは、まるで規模の違う大会だった。

本戦に残った彼女に、「あいつはいないのか?」と尋ねると、表情を曇らせながら首を横に振った。それだけでクリスは察した。

彼の本来のデッキに興味はあったが、すぐに意識を切り替える。

 

一回戦の相手は、クリスよりも二つか三つは年下の赤い髪の少女だった。

用いるデッキは【ラヴァル】。

ストーリー設定によると、彼らは溶岩地帯に住む戦闘民族らしい。

ラヴァルで最も警戒しなけばならないのは《真炎の爆発》だ。たった1枚通すだけで場に最大5体ものモンスターが現れる。そのアドたるや狂気の沙汰である。

ラヴァルの基本にして神髄、それは《炎熱伝導場》による超速墓地肥やしと、《真炎の爆発》による大量展開。これに尽きる。

逆に言えば、それさえ止めれば良いということだ。幸いにして相手の構築は攻撃寄りであり、妨害札は少なかった。それでも墓地が肥えるたびに、クリスは冷や汗を流し、ギリギリのところで綱渡りをしている気分に陥る。なんとか相手のライフを削り切った時、クリスは大きくため息を吐いた。

 

二回戦の相手は【インフェルニティ】使いだった。インフェルニティとは、『手札が0枚の時』という特殊な条件下でのみ発動、適用できる効果を持つカード群のことだ。

条件が厳しい分、強力な効果を持っている。コンボが動き出すと途切れることなく延々とカードが回りつづけ、展開力と制圧力、そして抜群の瞬発力を発揮する。その時に溢れ出す脳内麻薬が、彼らを虜にして放さないのだ。

その反面、手札事故が起きやすいという弱点もある。

二回戦はまさしくそれだった。長期戦は不利と悟ったクリスは一気呵成に攻め立て、相手に何もさせずに勝利した。

 

三回戦の相手は【ガジェット】だった。これにはクリスも笑みが零れた。なぜならガジェットは後続のモンスターを補充しつつ、相手のモンスターを除去して殴るというシンプルなデッキだ。ランク4のエクシーズも多様できるため、対応できる状況も多い。

だがクリスの従える幻奏モンスターたちは、破壊耐性を持っていたり、対象に取られない効果を持っていたりと、除去には比較的強い。ピン挿ししていたライオウを引けたのも大きかった。結果、クリスは危なげなく勝利を収めた。

 

準決勝の相手は、クリスも見知った顔だった。デュエルアカデミアでも随一の腕を持つと名高いサイバー流デュエリスト。いくつかの大会で手合わせしたこともある。手強い相手だが、勝てない相手ではない。

クリスは両手でほほを叩き、気合を入れて相手と向かい合った。

結果から言えば、薄氷の勝利だった。相手の手腕に戦慄すら覚えたのは久方振りだ。それでもクリスは勝った。あの逆境で、切り札のブルーム・ディーヴァを呼び出せたのは僥倖というほかない。

クリスはこの昂ぶりと火照りを、噛みしめながら眠りについた。

 

決勝の相手は、意外な相手だった。クリスは彼女が決勝まで残るとは微塵も考えていなかった。

前日に会った彼女は、明らかに気落ちしていたし、調子も落としているように見えたからだ。

だが今日の彼女は気力が充溢し、やる気に満ち溢れていた。その理由は明白だった。観客席に、昨日は見かけなかった、かつての少年の姿があったのだ。クリスは苦笑して、鼻息荒くこちらを見据えている立花響と視線を交わした。

泣いても笑っても、これが最後の一戦。

クリスは手札を眺めて戦略を練る。相手は融合モンスターを呼び出したようだ。ならこっちも応えてやらねぇとな、とクリスは小さく笑う。

この年下で小生意気なスクリューボールを、いっちょ懲らしめてやろう。

 

「そっちが融合ならこっちも対抗するぜ。響け歌声! 流れよ旋律! タクトの導きにより力重ねよ! 融合召喚! 今こそ舞台へ! 《幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト》!」

 

やっぱりデュエルは面白い。クリスは改めてそう思った。

 

 

 



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閑話-太陽

小日向未来は激怒した。必ず、かの邪知暴虐の男を成敗せねばならぬと決意した。未来には男心はわからぬ。未来は、立花響の親友である。ピアノを弾き、カードと戯れて暮らしてきた。けれども友の心の機微に対しては、人一倍に敏感であった。今日未明、未来は街を出発し、海を越え、三日ほど離れた名もなき孤島にやって来た。

デュエル大会である。友に押し切られた形とはいえ、興味がないといえば嘘になる。それに聊かばかりの自信もあった。友人に鍛えられたデュエルタクティクスは同年代でも高い方だという自負もある。

アマチュアとはいえ、世界大会だ。レベルが高いことは知れた。それでも予選を通過し、親友と共に本戦へと駒を進めることができたのは望外の喜びでもあった。

やがて本戦出場者が出揃った時、彼女はようやく違和感に気付いた。

共に参加した友人、音羽遊蓮の姿が見えない。

彼のデュエルの業前(ワザマエ)は、未来も認めるところである。にもかかわらず、だ。自分と親友がここにいるのに、彼の姿がないというのは、不自然ですらあった。

よほどに相手が悪かったのか、あるいは引きが悪かったのか。カードゲームである以上、ある程度の運が絡むのは仕方のないことではあるが、それでも彼の予選敗退という事実は衝撃的であった。

そして自分以上にショックを受けているのが、隣にいる親友である。

パッと見ではそうでもないが、空元気なのが未来にはわかった。親友のそんな姿を見ていると、またしてもあの男に怒りを覚えてしまう。

未来はすぐさま自身の携帯端末を取り出した。だが、繋がらない。電源が入っていないか電波の届かない場所……などという無機質なアナウンスが流れてくるだけだった。響のバイト先のS.O.N.G.という組織なら、何か知っているかもと思い至ったが、誰の連絡先も知らない事に肩を落とす。

あの時、マリアと連絡先を交換しなかったことを、未来は今さらながらに悔やんだ。響ならば連絡先は知っているだろうが、もし、万が一、例えば、彼が崖から海に転落し、サメに喰われて命を落としたなどということがあったのなら、この心優しい親友は壊れてしまうかもしれない。

自分の想像力が存外に豊かだったことに鳥肌を感じ、未来は響と一緒に(とこ)へと就いた。

 

 

 

 

 

明けて翌日、ロビーの大型モニターに本戦のトーナメント表が映し出されていた。

まず、自分と響の名前が反対側に表示されていることに安堵した。両者が決勝まで残らないと、対戦することはない。

そして、自分の名前が最初に表示されていることに嘆息する。

とりあえず二人は朝食をとった。響がおかわりをしないことに、未来は若干の不安を抱いたが、語り合う時間もなく、自分の名前がアナウンスされる。

親友の力ない激励を受け、未来はデュエルフィールドに場所を移した。

未来の対戦相手は、大人びた女性だった。

翡翠色の衣装に身を包み、どことなくフラメンコを連想させるような女性デュエリストは【ガスタ】使いだった。

フィールドにクリスティアとアルテミスを維持しつつ、カウンター罠で相手の起点を潰す。重要なのはマストカウンターを見極めることだ。

友人の言葉を思い起こしながら、未来は終始有利にデュエルを進め、そのまま勝利を手中に収めた。

親友も危なげなく初戦を勝利で飾ったことに胸をなでおろし、二回戦に臨む。

相手はデュエルアカデミアの生徒だった。鮮やかなブルーの制服に袖を通し、意気揚々と登壇する。相手が年下の女子だとわかっても、侮ることの無い姿勢に、未来は素直に敬意を抱いた。

手札が悪かったというのは、単なる言い訳だろう。

相手の後攻1ターン目。ハーピィの羽根帚で魔法・罠ゾーンを一掃され、パワー・ボンドからのサイバー・エンド・ドラゴン。そしてリミッター解除。

戦闘破壊耐性を持つジェルエンデュオでも、攻撃力16000の、しかも貫通効果を持つサイバー・エンド・ドラゴンの前では無力だった。

二回戦敗退とはいえ、プレイングミスで負けたわけではない。十分に納得できる結果だった。

結局、その日の全ての工程が終了するまで、遊蓮は姿を見せなかった。

夕方、未来が彼と出会ったのは偶然だった。意気消沈している親友のために、何か甘いものでも買いに行こうと思い立ち、その帰りの出来事だった。

彼は一切悪びれた風もなく、どうだと言わんばかりに全てのピースが埋まった腕輪を見せてきた。

未来は怒りを通り越して、呆れてしまった。一発二発ひっぱたきたいところではあったが、目の前の男に傷を負わせれば、響はまたしても落ち込むだろうと、未来は必死に自制した。

努めて冷静に、平静を装い、未来は現状を説明した。彼は一瞬混乱したものの、心当たりがあるのか、小さく溜め息を吐いて納得した。

とりあえず、彼を一刻も早く響の元へ連れていかねばならない。未来は遊蓮の腕を掴み、勢いに任せて歩を進めた。

響の反応は一目瞭然だった。精神の均衡を破って、決壊したダムのように滂沱の涙を流す。それでも笑顔は戻っていた。

そして彼女が口にした言葉は、未来には到底看過できるものではなかったが、頑なに否定できるような空気ではないことは、持ち前の勘の良さで察した。

友人とは言え、男と同衾するというのは、未来にとっては慮外千万であったが、響を挟んで向こう側というのなら妥協できるラインであると、不承不承了承した。

自分には出来ない事が、彼には出来る。

なら、彼に出来ない事を、自分はやらなければならない。

そう決意し、未来は小さく拳を握った。

鼻先が触れてしまうほどの距離で寝息を立てる見慣れた顔。やはり彼女は泣いているよりも、笑っているほうがずっといい。

未来は響のほほを指でなぞり、くすくすと笑った。

 

 

 



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閑話-Wake Up Your Heart

「ところでさ、あいつの趣味は知ってるだろ?」

休憩室での雑談中、その相手である奏さんがふと思いついたように話題を転換した。

明るく奔放で姉御肌。身長は自分と変わらないくらいなので、女性としては高い方だろう。「可愛い」と「綺麗」とを絶妙に融合させたような容姿で、引き締まったしなやかな肢体は、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる理想的なプロポーション。

情熱的な性格をそのまま表現したような紅緋の髪が緩やかにたなびいている。

仕草が少々ガサツっぽいのは、逆に愛嬌ともいえるだろう。

あいつというのは言うまでもなく、相棒の翼さんに違いない。

「ええ、確かバイクでしたね」

奏さんはうんうんと頷くと、歯切れが悪そうに言葉を続ける。

「ああ。で、だ。まあ、なんていうかな。あいつは基本的にあたしなんかよりずっと頭が良いんだが、時たまおかしな方向に舵を切るというか、ラーメンとショートケーキを一緒に食べるみたいな発想をするんだ」

「バイクに乗りながらデュエルをするみたいな発想ですか?」

俺がさらりとそう言うと、奏さんは驚いたような、呆れたような表情を見せた。

「そういう発想があっさり出るあたり、やっぱりおまえも普通じゃないよな」

どうやら正解らしい。まあ俺の場合はカンニングのようなものだけど。というか、やっぱりってところが引っ掛かるが。

「さすがは翼さん。未来に生きてますね」

「そんな未来は来ないと思うがな。バイクで走りながらデュエルするって狂気の沙汰だろ。事故ったらどうすんだ」

奏さんは額に手を当ててため息を零した。

そうですね、そう思っていた時期が俺にもありました。

「"事故"る奴は……"不運(ハードラック)"と"(ダンス)"っちまったんですよ」

「なんだその言い回しは。んでまあ、その妄言を鵜呑みにしちまった人がいてな。バイクとデュエルディスクを合体させて、プログラムまで書き換えて、レース場まで借りちまった」

なんでもできるな、あの人は。そのうち永久機関(モーメント)とか開発しそう。当然だがデュエルディスクはスタンディングデュエルを想定して作られている。使用者が多少動いても問題ないが、バイクに乗ってデュエルすることなど想定外だろう。

「最近ふたりの姿を見ないと思ったら、そんなことをしてたんですね」

「ああ、翼も翼で『新境地が開けるかもしれない』つってノリノリだしな。あたしも時々つき合ってるんだけど、その内おまえにも話がいくと思うぜ」

「いや、俺は免許なんて持ってませんよ」

技術や金や時間の問題ではなく、年齢的に取得できない。国が認めてくれないのだからしょうがない。

「公道じゃないんだから必要ないさ。なに、バイクなんて自転車の延長みたいなもんだ。小一時間もあればバッチリだよ」

すごい暴論だな。感覚的にはそうなんだろうけど。

「ということは、実用段階までこぎつけてるってことですか?」

「一応はな。けど了子さんは、いまいち納得がいってないみたいだ。だからおまえに招集がかかるのも、時間の問題ってわけさ」

奏さんは肩をすくめてそう言った。実際、その予想は的中した。

 

 

 

 

 

ある晴れた昼下がり、了子さんに誘われて半ば強引にレース場まで連れてこられた。

別に断るつもりもなかったのだが、いつもよりも熱の籠もった声で誘われると、なんとなく警戒してしまう。

到着してすぐに軽い講習を受けてから、実際にバイクに跨る。そのまま発進し、緩やかな速度でサーキットを一周。戻ってきたら教官に拍手で迎えられた。

筋が良いと褒められたが、実を言うと『前』に中型免許を持っていたからだ。実際に乗るのは二十年以上ぶりだったが、感覚は覚えていたようだった。

これには了子さんも満足したようで、早速バイクを練習用のものからデュエル用に乗り換える。

「運転はセミオートになってるから、余程のことがない限りはクラッシュなんてしないわ。それとリミッターがかかってるから、時速80キロ以上は出ないからね。あとは、手札を飛ばさないように気をつけて」

ウィンクしながら肩を叩く。ピットに戻っていく了子さんを見送りながら、隣へと視線を移す。

「よろしくお願いします。翼さん」

「ええ、よろしくね」

ヘルメットのせいで、詳細な表情はうかがえないが、わくわくしているような雰囲気は伝わってくる。

カウントダウンが始まり、シグナルが赤から緑へと変わる。

レースが、いやデュエルがスタートした。

 

 

 

 

 

結論から言えば、ライディングデュエルは問題なく終了した。いや、問題がなかったのが問題なのだろう。それは俺も抱いた疑問だった。

「バイクに乗る意味がないですね。今のところは」

俺がそう言うと、全員が唸った。翼さんはちょっとショックを受けているようだ。少し心が痛む。

「だから、意味を持たせればいいんですよ」

「ふむ。その心は?」

了子さんが興味をそそられたといった感じで、身を乗り出してくる。これもまたカンニングのようなものだが、まあ仕方ないだろう。

「例えば、例えばですけど、フィールド魔法が発動している状態にして、スピードカウンターというシステムを組み込みましょう。これはお互いに持つ数値で、互いのスタンバイフェイズ毎に1つ増加します。それが一定値以上の時にしか発動できない、ライディングデュエル専用のスピードスペルという魔法カードを作るのもいいですね」

「ライディングデュエルというのは、このバイクデュエルのこと?」

翼さんが小首を傾げて訊いてくる。当たり前のように口にしたが、そういった名称はまだなかったんだっけ。

「いいじゃない、ライディングデュエル。これからはそう呼びましょう」

了子さんは諸手を挙げて賛成した。その後も覚えている限りで、ライディングデュエルのルールを、さも思いついたように説明する。

「……スピード・ワールドね。まとめるとこんな感じかしら」

 

《スピード・ワールド》

フィールド魔法

このカードは破壊されず、他のカード効果を受けない。

(1):このカードがフィールド上に表側で存在する限り、

Sp(スピード・スペル)」と名のついた魔法カード以外の魔法カードはプレイできない。

(2):お互いのプレイヤーはお互いのスタンバイフェイズ時に1度、

自分用のスピードカウンターをこのカードの上に1つ置く。(お互い12個まで)

(3):自分用スピードカウンターを取り除く事で、以下の効果を発動する。

●4個:自分の手札の「Sp」と名のついたカードの枚数×800ポイントの

ダメージを相手ライフに与える。

●7個:自分のデッキからカードを1枚ドローする。

●10個:フィールド上に存在するカードを1枚破壊する。

 

スピード・ワールドは色々と種類があったはずだが、さすがに細かいところまでは覚えていない。魔法カードもライフ2000を払えば発動できたはずだが、そこまでするならもう禁止にした方が差別化できると判断した。

……シンクロ次元? 知らんな。

「まだまだ詰める必要はありますが、商業ベースに乗せるならスタンディングデュエルとは、全くの別物にした方が良いですからね」

「……そこまで先を見てるのね。やっぱりあなた、面白いわ」

おそらくは了子さんも、これを新たな興業として打ち上げられないかと考えていたのだろう。

俺の説明を聞いているときの了子さんは、終始ご機嫌だった。それとは対照的に、どんどん気落ちしていったのが翼さんだ。

理由は明白、スピード・ワールドに記されたこの一文だ。

 

『「Sp(スピード・スペル)」と名のついた魔法カード以外の魔法カードはプレイできない』

 

大事なことなのでもう一度言おう。

 

『「Sp(スピード・スペル)」と名のついた魔法カード以外の魔法カードはプレイできない』

 

この一文で融合は死んだ。いや、《融合》を使わない融合や《死魂融合》などの罠融合もあるので、完全に死んだとは言えないが、致命傷なのは間違いない。

奏さんも融合デッキではあるが、以前に使っていた獣戦士族デッキを使えば、シンクロ・エクシーズのどちらにも派生できる。

だが翼さんは、今のデッキにかなり愛着があるらしく、ここで新たなデッキを組むというのが悩ましいのだろう。

一応、Sp(スピード・スペル)で融合関係を整備するという強引な手もあるが。

 

 

 

――ライディングデュエル。それはスピードの世界で進化した決闘(デュエル)

 

 

 

これが誕生するか、そして世に広まるか、受け入れられるかは、まだ誰にも分からない。

 

 

 



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閑話-限界バトル

俺は最近ひとりの女性のことについて考えている。

そう、ユベルである。正確にはユベルデッキについて、だ。

本人の意見も聞きたいところだが、俺には彼女の姿を見ることも、声を聞くこともできない。

なので通訳として響の協力が必要なのだが、それだとデッキの内容がもろバレになるので、最初の対戦相手にと約束している響にとってはカンニングのようで望ましくないというわけだ。

そんなわけで独り寂しく頭を悩ませていたのだが、ヒントは過去からやってきた。取っ掛かりが出来たことで構築は順調に進み、ようやくデッキが完成した。

「ということで、デッキ調整に付き合ってもらおう」

「望むところだよッ! はい、これ」

快い返事を口にした響から『ユベルカード』を受け取る。

その3枚のカードをデッキに差し込んで、準備完了。

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「先攻は俺か、ドロー」

 

初手にユベルがいないのは、運命力が足りないせいか? まあ、ユベルはデッキから呼ぶ方が簡単だから、助かるといえば助かるが。

 

「モンスターをセット、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮 LP4000 手札4 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドロー! 魔法カード《E-エマージェンシーコール》を発動。デッキから《E・HERO エアーマン》を手札に加えて――」

 

「チェーンして《相乗り》を発動だ。乗らせてもらうぞ、1枚ドロー」

 

サーチを多用するヒーローデッキには刺さるカードだ。サーチ自体を阻止できる《捕違い》もあるが、これは好みの差だな。

 

「うーん。いや、このまま突き進むッ!」

 

響は一瞬考えた後、答えを出した。どうやら展開は止めないらしい。

 

「《E・HERO エアーマン》を召喚して効果発動。エアーマンの効果で《E・HERO シャドー・ミスト》を手札に加えるよ。そして《融合》を発動。手札の《E・HERO シャドー・ミスト》と《E・HERO オーシャン》を融合。来て! 太陽の使者《E・HERO サンライザー》!」

 

相変わらず、初手融合率がハンパねぇな。とりあえず1枚ドローっと。

 

「シャドー・ミストの効果でデッキから《E・HERO ブレイズマン》を、サンライザーの効果で《ミラクル・フュージョン》を手札に加えて、そのまま発動。フィールドの《E・HERO エアーマン》と墓地の《E・HERO オーシャン》を除外して融合。来て! 絶対零度の支配者《E・HERO アブソルートZero》!」

 

太陽の使者と絶対零度の支配者、二人の英雄が腕を組んでこちらを睨みつける。それはそうと2枚ドロー。

 

「さあ行くよ、バトル! ゼロで攻撃、そしてサンライザーの効果でセットモンスターを破壊!」

 

「セットモンスターは《破械童子ラキア》だ。効果によってデッキから《雙極の破械神》を特殊召喚する。特殊召喚時の効果は発動しない」

 

雙極(そうきょく)の破械神》

星8/闇属性/悪魔族/攻3000/守1500

自分は「雙極の破械神」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):自分フィールドのカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。

このカードを手札から特殊召喚する。

(2):このカードが特殊召喚に成功した場合、手札を1枚捨てて発動できる。

フィールドのカード1枚を選んで破壊する。

(3):フィールドのこのカードが破壊され墓地へ送られたターンのエンドフェイズに発動できる。

このカードを墓地から特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に持ち主のデッキの一番下に戻る。

 

「ええー、絶対《キラー・トマト》だと思ったのに」

 

確かに《キラー・トマト》はデッキから《ユベル》を呼べる便利なリクルーターだが、戦闘という手間を挟まなければならないので、信用という点では一歩劣る。

 

「――なら、手札から速攻魔法《超融合》を発動。手札を1枚捨てて、ゼロと雙極の破械神を融合。来て、漆黒の益荒男《E・HERO エスクリダオ》! いけッ! エスクリダオでダイレクトアタック!」

 

「直接攻撃宣言時に《バトルフェーダー》の効果発動。このカードを手札から特殊召喚し、その後バトルフェイズを終了する」

 

「むっ、じゃあわたしはカードを1枚伏せてターンエンドだよ」

 

立花響  LP4000 手札1 モンスター2 伏せ1

音羽遊蓮 LP4000 手札7 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。フィールド魔法《闇黒世界-シャドウ・ディストピア-》を発動だ」

 

《闇黒世界-シャドウ・ディストピア-》

フィールド魔法

(1):フィールドの表側表示モンスターは闇属性になる。

(2):1ターンに1度、自分がカードの効果を発動するために自分フィールドのモンスターをリリースする場合、

自分フィールドのモンスター1体の代わりに相手フィールドの闇属性モンスター1体をリリースできる。

(3):自分・相手のエンドフェイズに発動する。

このターンにこのカードが表側表示で存在する状態でリリースされたモンスターの数まで、

ターンプレイヤーのフィールドに「シャドウトークン」(悪魔族・闇・星3・攻/守1000)を可能な限り守備表示で特殊召喚する。

 

「あー、なるほど。そのカードでわたしのヒーローをユベルのコストにするつもりなんだね」

 

「まあな。だが肝心のユベルはまだいない。だからぼちぼちやるさ。俺は《悪王アフリマ》を召喚。そして、おまえのサンライザーをリリースして効果発動」

 

アフリマから立ち昇る瘴気に捕らわれ、太陽の使者は闇となってアフリマの掌中に潜る。

 

「俺はデッキから《暗黒の魔王ディアボロス》を手札に加える。そして《トレード・イン》を発動。ディアボロスを捨てて、2枚ドロー。続けて《闇の誘惑》を発動。2枚ドローして、《ユベル》を除外する」

 

「えっ!? 除外するの?」

 

響が驚いて声を上げる。背中がピリピリするのはユベルの視線か?

だが手札の1枚を指でたたくと、納得したらしく、それは治まった。

 

「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ。エンドフェイズにフィールド魔法の効果でシャドウトークンを守備表示で特殊召喚する」

 

音羽遊蓮 LP4000 手札5 モンスター3 伏せ2

立花響  LP4000 手札1 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドロー。魔法カード《HEROの遺産》を発動。墓地の《E・HERO アブソルートZero》と《E・HERO サンライザー》をEXデッキに戻して、3枚ドローするよ」

 

「チェーンして《闇霊術-「欲」》を発動。おまえのエスクリダオをリリースして、2枚ドローする。おまえは手札から魔法カード1枚を見せてこのカードの効果を無効にできるが、今のおまえの手札はブレイズマン1枚。よって2枚ドローできる」

 

「甘いよッ! さらにチェーンして《融合準備》を発動。EXデッキの《E・HERO ジ・アース》を見せて、デッキから《E・HERO フォレストマン》を、墓地から《融合》を手札に加える。そして《闇霊術-「欲」》の効果処理時に《融合》を見せることで、その効果を無効にする。その後《HEROの遺産》の効果で3枚ドロー!」

 

響の手札が、一気に6枚まで増える。さすがに1:3交換は欲張りすぎたか。

 

「わたしは《E・HERO リキッドマン》を召喚して、効果発動。墓地の《E・HERO シャドー・ミスト》を特殊召喚。シャドー・ミストの効果で、デッキから《マスク・チェンジ》を手札に加えるよ。そして《融合》発動! フィールドの《E・HERO リキッドマン》と手札の《E・HERO フォレストマン》を融合。再度降臨せよ! 《E・HERO アブソルートZero》!」

 

響の手札には《マスク・チェンジ》がある。あのコンボはマズい。だがどの順番でチェーンを組むかで結果は変わる。タイミングを逃すのは仕方ないが、チャンスは残る。

 

「手札から速攻魔法《マスク・チェンジ》を発動。ゼロを墓地に送り、EXデッキから《M・HERO アシッド》を特殊召喚。いくよッ! アシッド・レインとフリージング・クラッシュのダブルアタックだッ!」

 

「《闇次元の解放》を発動。除外されている《ユベル》を特殊召喚する」

 

吹き荒れる氷の飛礫によって、俺のフィールドは全滅した。ユベルはタイミングを逃したが、狙い通り墓地に送られた。

 

「バトルッ! シャドー・ミストでダイレクトアタック!」

 

音羽遊蓮 LP4000 → 3000

 

「この瞬間、手札の《冥府の使者ゴーズ》の効果発動だ。ゴーズを攻撃表示で特殊召喚。続いて攻守1000の冥府の使者カイエントークンを守備表示で特殊召喚」

 

「くっ、アシッドでカイエントークンを攻撃!」

 

ゴーズの影、カイエンがアシッドの一撃を受けて破壊される。

 

「わたしはカードを1枚伏せてターンエンド」

 

立花響  LP4000 手札2 モンスター2 伏せ1

音羽遊蓮 LP3000 手札4 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。《悪魔嬢リリス》を通常召喚。そしてこのカード自身をリリースして効果発動。デッキから通常罠カード3枚を相手に見せ、相手はその中からランダムに1枚選ぶ。そのカード1枚を自分フィールドにセットし、残りのカードはデッキに戻す。俺が選ぶ3枚はこれだ。

《聖なるバリア-ミラーフォース-》

《神風のバリア-エア・フォース-》

《リミット・リバース》

さあ、選べ」

 

ソリッドビジョンのカードが大判になって浮かび上がる。

 

「なかなかに嫌な三択だね、じゃあ真ん中で」

 

「選んだ1枚をセットして、残りはデッキに戻す。そして自分フィールドの闇属性モンスターがリリースされたので、墓地の《暗黒の魔王ディアボロス》を特殊召喚」

 

《暗黒の魔王ディアボロス》

星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2000

このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが手札・墓地に存在し、自分フィールドの闇属性モンスターがリリースされた場合に発動できる。

このカードを特殊召喚する。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

相手はこのカードをリリースできず、効果の対象にもできない。

(3):自分フィールドの闇属性モンスター1体をリリースして発動できる。

相手は手札を1枚選んでデッキの一番上または一番下に戻す。

 

「バトル。ゴーズでアシッドを、ディアボロスでシャドー・ミストを攻撃だ」

 

立花響 LP4000 → 3900 → 1900

 

「シャドー・ミストの効果で、デッキから《E・HERO ソリッドマン》を手札に加えるよ」

 

「俺はさらにカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

「エンドフェイズに《戦線復帰》を発動。墓地の《E・HERO フォレストマン》を守備表示で特殊召喚」

 

音羽遊蓮 LP3000 手札3 モンスター2 伏せ2

立花響  LP1900 手札3 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドロー。スタンバイフェイズにフォレストマンの効果発動。デッキから《置換融合》を手札に加える。そして《E・HERO ソリッドマン》を召喚して、《R-ライトジャスティス》を発動するよ」

 

「俺は三分の一に勝ったぞ。墓地の《ユベル》を対象に《リミット・リバース》を発動。さらにチェーンして《ダメージ・ダイエット》を発動」

 

《R-ライトジャスティス》は《E・HERO エアーマン》と同じく「選んで破壊する」という効果だが、エアーマンとは決定的に違う点がある。エアーマンは「HERO」の数まで(・・)破壊する。ライトジャスティスは「E・HERO」の数だけ(・・)破壊する。

 

「ユベルが破壊されたことで効果発動。デッキから《ユベル-Das Abscheulich Ritter》を特殊召喚」

 

「ダメージ・ダイエットは想定外だけど、リミット・リバースは想定内だよ。魔法カード《置換融合》を発動。フィールドの《E・HERO ソリッドマン》と《E・HERO フォレストマン》を融合。来て、大地の王者《E・HERO ガイア》!」

 

大地を割って、鉱物めいた巨人が現れる。その巨体から漂うオーラに、冥府の使者が絡め捕られた。

 

「ガイアの効果発動。ゴーズの攻撃力を半分にして、その数値分攻撃力をアップする!」

 

《冥府の使者ゴーズ》   攻撃力2700 → 1350

《E・HERO ガイア》  攻撃力2200 → 3550

 

「続けてソリッドマンの効果発動。墓地のシャドー・ミストを守備表示で特殊召喚。効果でデッキから《マスク・チェンジ》を手札に加える。さらに《貪欲な壺》を発動。墓地の《E・HERO ソリッドマン》、《E・HERO リキッドマン》、《E・HERO フォレストマン》、《E・HERO アブソルートZero》、《M・HERO アシッド》をデッキに戻してシャッフル、その後2枚ドロー。装備魔法《フェイバリット・ヒーロー》をガイアに装備して、バトル!」

 

響の気勢が一気に高まる。フェイバリット・ヒーロー、攻撃力上昇はともかく、効果の対象にならないってのは地味に厄介だな。

 

「バトルフェイズ開始時に《フェイバリット・ヒーロー》の効果で、デッキから《摩天楼-スカイスクレイパー-》を発動。フィールドゾーンにカードが置かれたことで、ガイアの攻撃力が元々の守備力分アップする!」

 

《E・HERO ガイア》 攻撃力3550 → 6150

 

「いくよッ! ガイアでゴーズを攻撃、コンチネンタルハンマー!」

 

音羽遊蓮 LP3000 → 600

 

「手札から速攻魔法《マスク・チェンジ》を発動。シャドー・ミストを墓地に送り、EXデッキから《M・HERO 闇鬼》を特殊召喚。闇鬼は与えるダメージを半分にしてダイレクトアタックが出来る! ダークネス・ファング!」

 

「それを通すわけにはいかない! 手札から《虹クリボー》の効果発動。このカードを闇鬼に装備する。これで闇鬼は攻撃できない」

 

「届かなかったかぁ。わたしはカードを1枚伏せてターンエンド」

 

危ない危ない。なんとか耐えきったか。

 

立花響  LP1900 手札1 モンスター2 伏せ1

音羽遊蓮 LP 600 手札2 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。《強欲で金満な壺》を発動。EXデッキのカードをランダムに6枚、裏側表示で除外して、2枚ドロー」

 

元よりEXデッキはほぼ使わない構築だ。どれが除外されても大勢に影響はない。

よし、来たか。これでユベルを最終進化できる。が、仕掛けるにはまだ早い。伏せカードもあるし、響の墓地には序盤の《超融合》のコストで捨てられたあのカードがある。

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ。エンドフェイズにユベルの効果発動。このカード以外のモンスターは全て破壊される。フェロー・サクリファイス!」

 

「その効果処理後に《強化蘇生》を発動。墓地のシャドー・ミストを特殊召喚。効果でデッキから最後の《マスク・チェンジ》を手札に加えるよ」

 

音羽遊蓮 LP 600 手札3 モンスター1 伏せ1

立花響  LP1900 手札2 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドロー。まずは墓地の《置換融合》の効果を発動。このカードを除外して、《M・HERO 闇鬼》をEXデッキに戻す。その後、1枚ドロー。手札から《マスク・チェンジ》を発動! もう一度お願い、闇鬼!」

 

漆黒の鬼神が、再び姿を見せる。

 

「シャドー・ミストの効果でデッキから《E・HERO リキッドマン》を手札に加えて、バトル! 闇鬼でダイレクトアタック! 与えるダメージは半分になるけど、今はそれで充分!」

 

「ところがギッチョン! 《大捕り物》を発動だ! 闇鬼のコントロールを得る!」

 

「――うぇぇ!?」

 

攻撃態勢になっていた闇鬼は縛につき、こちらに場所を移す。

 

「とはいえ、見ての通りの状態だ。攻撃できず、効果の発動もできない」

 

「くっ、わたしはカードを1枚伏せてターンエンド」

 

立花響  LP1900 手札3 モンスター0 伏せ1

音羽遊蓮 LP 600 手札3 モンスター2 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。手札の《破械童子アルハ》の効果発動。フィールドのユベルを破壊して、このカードを特殊召喚する。そしてユベルの効果発動。デッキから《ユベル-Das Extremer Traurig Drachen》を特殊召喚する」

 

ユベルの最終進化形態、異形の悪魔が四枚の羽根を広げて飛び立った。

 

《ユベル-Das Extremer(ダス・エクストレーム・) Traurig Drachen(トラウリヒ・ドラッヘ)

星12/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0

このカードは通常召喚できない。

「ユベル-Das Abscheulich Ritter」の効果でのみ特殊召喚できる。

このカードは戦闘では破壊されず、

このカードの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが

相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、

相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与え、そのモンスターを破壊する。

 

「バトルフェイズに入り、手札から速攻魔法《神秘の中華なべ》を発動。闇鬼をリリースして、ライフを2800回復する」

 

音羽遊蓮 LP 600 → 3400

 

「自分フィールドの闇属性モンスターがリリースされたことで、墓地のディアボロスを特殊召喚」

 

墓地より漆黒の暴龍が舞い戻る。

 

「魔王はこのディアボロスだッ! 依然変わりなくッ! シャドウ・ディスペアー(闇の炎に抱かれて消えろッ)!」

 

「墓地の《ネクロ・ガードナー》の効果発動! その攻撃を無効にする!」

 

「まだだッ! まだ追撃の手は残っている。手札から《ジュラゲド》の効果発動。こいつを特殊召喚し、ライフを1000回復する」

 

音羽遊蓮 LP3400 → 4400

 

「ジュラゲドでダイレクトアタック!」

 

「……ライフで受ける!」

 

立花響 LP1900 → 200

 

響の視線が、一瞬だが手札に落ちた。何かあるのか?

 

「続けてアルハで攻撃!」

 

「手札から《護封剣の剣士》を特殊召喚! その後、アルハを破壊する!」

 

「チェーンしてジュラゲドの効果発動。このカードをリリースして、アルハの攻撃力を次のターン終了時まで1000アップする。アルハの攻撃力が護封剣の剣士の守備力を上回ったことで、護封剣の剣士の破壊効果は不発になる。アルハで護封剣の剣士を攻撃!」

 

漆黒の爪と光の剣がぶつかり合う。光の剣は砕かれ、剣士は爪によって引き裂かれた。

 

そういうことか。おそらく響の想定では、ジュラゲドの攻撃に護封剣の剣士の効果を発動した場合、チェーンしてジュラゲドの効果を発動され、破壊効果をかわしつつ、アルハの攻撃力をアップ。ユベルで護封剣の剣士を破壊。アルハのダイレクトアタックでゲームエンド。

咄嗟にそこまで思い至ったのだろう。が、それは早とちりというか、響の勘違いだ。

ユベルの効果は「戦闘を行ったダメージステップ終了時、相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与え、そのモンスターを破壊する」というものだが、護封剣の剣士の攻撃力は0。つまりダメージを与えられない。なので、後の処理である破壊効果が発動しないのだ。

ちょっとした盲点である。

 

バトルフェイズを終了し、改めて自分のフィールドを見渡す。

ディアボロスは効果の対象とならず、リリースもされない、攻撃力3000の最上級モンスター。

アルハは戦闘破壊のみならず、自身の効果以外で効果破壊された場合でも後続を呼び出せる優秀なリクルーターだ。攻撃力も1000アップしているので、上級モンスター並になっている。

そして最終形態のユベル。

さらに、墓地には虹クリボーもいる。

ライフも初期値超えの4400。

 

対して響は、伏せカードが1枚と、手札にはブレイズマンとリキッドマン。ディアボロスのハンデス効果を使うかは悩みどころだ。

ライフは僅かに200、嫌なラインではあるが。

 

「……俺はこれでターンエンドだ」

 

「エンドフェイズに《貪欲な瓶》を発動。墓地の《HEROの遺産》、《マスク・チェンジ》、《フォーム・チェンジ》、《ミラクル・フュージョン》、《超融合》をデッキに戻してシャッフル。その後、1枚ドロー!」

 

音羽遊蓮 LP4400 手札1 モンスター3 伏せ0

立花響  LP 200 手札3 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドロー! 魔法カード《HEROの遺産》を発動。墓地の《E・HERO エスクリダオ》と《E・HERO ガイア》をEXデッキに戻して、3枚ドロー! よしッ! このターンで決めるよッ!」

 

勝利の方程式が出来上がったのか、響は高らかに決着を宣言した。

 

「《E・HERO ブレイズマン》を召喚。効果でデッキから《融合》を手札に加えて、発動。フィールドの《E・HERO ブレイズマン》と手札の《E・HERO ボルテック》を融合。もう一度来て、《E・HERO サンライザー》!」

 

太陽の使者が再び姿を現す。これは大量展開の流れか?

 

「サンライザーの効果でデッキから《ミラクル・フュージョン》を手札に加えて、そのまま発動。墓地の《E・HERO ブレイズマン》と《E・HERO ボルテック》を除外して融合。来て、閃光の絶対者《E・HERO The シャイニング》!」

 

目もくらむような閃光を放ち、光のヒーローが降り立つ。

 

「シャイニングの攻撃力は除外されている「E・HERO」の数×300ポイントアップする」

 

《E・HERO The シャイニング》 攻撃力2600 → 3800

 

「さらに墓地の装備魔法《フェイバリット・ヒーロー》を除外して、このカードを特殊召喚する! 来いッ! ゴッドフェニックス! ギアフリィィィドッ!」

 

現れたのは、白銀の鎧と白銀の剣を携えた炎の戦士。これはちょっとマズいか。

 

《ゴッドフェニックス・ギア・フリード》

星9/炎属性/戦士族/攻3000/守2200

このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分のフィールド・墓地から装備魔法カード1枚を除外して発動できる。

このカードを手札から特殊召喚する。

(2):このカードが攻撃するダメージステップ開始時に発動できる。

このカード以外のフィールドの表側表示モンスター1体を選び、

攻撃力500アップの装備カード扱いとしてこのカードに装備する(1体のみ装備可能)。

(3):モンスターの効果が発動した時、自分フィールドの表側表示の装備カード1枚を墓地へ送って発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

 

「バトル! ゴッドフェニックス・ギア・フリードでディアボロスに攻撃。そしてダメージステップ開始時に効果発動! ユベルは返してもらうよ! 戻ってこいッ! ユベルッ!」

 

……その言い方はおかしくねぇ? 確かに借りてたけどさ。まるで俺で強奪したみたいに聞こえる。

 

「サンライザーの効果でみんなの攻撃力はアップしている! 不死鳥神剣(フェニックス・ゴッドブレード)!」

 

ユベルがフィールドを移し、ディアボロスが白銀の剣で両断される。

 

音羽遊蓮 LP4400 → 3500

 

「これでラストッ! シャイニングでアルハを攻撃、そして攻撃宣言時にサンライザーの第3の効果が発動。アルハを破壊する」

 

「破壊されたアルハの効果発動。手札・デッキから「破械童子アルハ」以外の「破械」モンスター1体を特殊召喚できる」

 

「ギア・フリードの効果発動。装備カードとなったユベルを墓地に送り、その発動を無効にして破壊する!」

 

まあそうなるよな。破械童子は共通効果でリクルート能力を持っている。それぞれにターン1の制限はあるが、壁としては優秀なモンスターだ。だが、無効にされれば意味がない。

 

「これでモンスターはいなくなった! オプティカル・ストーム(光になれぇぇぇッ)!!」

 

バトルステップの巻き戻しの範囲に「攻撃宣言」は含まれない。上手く虹クリボーの効果をかわされたな。

 

 

 

音羽遊蓮 LP3500 → 0

 

 

 

奔流のように溢れ出た光に押し流され、俺のライフは尽きた。

「完敗だな。やはりあの時ディアボロスで、いや、いいわけだな」

「そんなことないよ。ひやひやする場面もあったし、最後のドローが良かったからだよ」

「そこで引けるのが、おまえの強さだよ」

笑いながら、響の髪をくしゃりと撫でた。

 

 

 



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ドラゴンメイドはレッドアイズの夢を見るか?

放課後、いつものようにS.O.N.G.のデュエル場に行くと、いつもは水魚のように仲の良いふたりが口論をしていた。

「やっぱりあのコンボは反則。一度目はウケるかもしれないけど、二度目からは興ざめ。切ちゃんもプロを目指すなら、あのコンボは封印すべき、そうすべき」

これは《真紅眼融合》からの《黒炎弾》のことだろう。確かにライフ4000であのコンボは反則と言えなくもない。

調がプロ云々言っているのは、ほとんどのリーグで効果ダメージが付随効果ではなく、主目的なバーンカードは禁止されているからだ。

プロデュエルは興行なんだから、勝つことだけに囚われていては、プロとして大成しない。

要するに、空気読めってことだな。

「だったら調はシュトラールとハスキーを抜いて欲しいデス。あれだって反則級デスよ」

「さすがに1:2交換はありえない。なら切ちゃんも真紅眼融合と黒炎弾を抜いて欲しい」

「いやいや、真紅眼融合まで抜くのはキツいデスよ。じゃあ黒炎弾とシュトラールの1:1交換で手を打つデス」

「ハスキーとシュトラールはふたつでひとつ。表裏一体、知行合一、内剛外柔、同一人物。決して離れることのない私と切ちゃんみたいなもの。それを引き裂くなんて悪魔の所業。切ちゃんだって私と離れたくないでしょ?」

「し、調ぇー。そこまでわたしのことを……嬉しいデスッ!」

感極まった様子で切歌が調に抱きつく。確かにハスキーとシュトラールは同一人物だが。それにハスキーもシュトラールもぶっ壊れってほどのカードじゃないだろ。

「――ハッ!? ダメデスよ。そんなこと言っても折れるわけにはいかないデス!」

「むぅ。なら黒炎弾は使っていい。でも対象にできるのは本物のレッドアイズだけ」

偽物のレッドアイズとかあるのか、とツッコミたかったが、なんとか抑えた。

「その辺りが妥協ラインデスかねぇ。おろ? 遊蓮さん来てたデスか」

ようやくこちらに気付いたふたりが視線を向けてくる。

「ああ、これからやるんだろ? 見学させてもらうよ」

「ヌルフフフ、いいデスよ。わたしの雄姿をとくと拝むがいいデスッ! さあ、始めるデスよ、調!」

「うん。いくよ、切ちゃん!」

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「わたしのターン、ドロー! 魔法カード《レッドアイズ・インサイト》を発動デス。デッキから《真紅眼の黒炎竜》を墓地に送り、《真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)》を手札に加えるデス。そして発動。デッキから《真紅眼の黒竜》と《真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン》を墓地に送り、融合召喚。飛翔するデスッ! 《流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン》!」

 

《流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン》

星8/闇属性/ドラゴン族/攻3500/守2000

レベル7「レッドアイズ」モンスター+レベル6ドラゴン族モンスター

(1):このカードが融合召喚に成功した場合に発動できる。

手札・デッキから「レッドアイズ」モンスター1体を墓地へ送り、

そのモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与える。

(2):このカードがモンスターゾーンから墓地へ送られた場合、

自分の墓地の通常モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

 

「流星竜メテオ・ブラック・ドラゴンの効果発動デス。デッキから《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を墓地に送り、調に1400のダメージを与えるデス!」

 

月読調 LP4000 → 2600

 

「さらにモンスターをセット、カードを1枚伏せてターンエンドデス」

 

暁切歌 LP4000 手札3 モンスター2 伏せ1

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。魔法カード《トレード・イン》を発動。《ドラゴンメイド・ルフト》を捨てて、2枚ドロー。《ドラゴンメイド・チェイム》を召喚。効果でデッキから《ドラゴンメイドのお召し替え》を手札に加える。そして発動。フィールドの《ドラゴンメイド・チェイム》と手札の《ドラゴンメイド・エルデ》を融合。光輝燦然と現れよ、羽ばたけ、《ドラゴンメイド・シュトラール》!」

 

《ドラゴンメイド・シュトラール》

星10/光属性/ドラゴン族/攻3500/守2000

「ドラゴンメイド」モンスター+レベル5以上のドラゴン族モンスター

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分・相手のスタンバイフェイズに発動できる。

自分の手札・墓地からレベル9以下の「ドラゴンメイド」モンスター1体を選んで特殊召喚する。

(2):相手が魔法・罠・モンスターの効果を発動した時に発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

このカードを持ち主のEXデッキに戻し、EXデッキから「ドラゴンメイド・ハスキー」1体を特殊召喚する。

 

光と闇、2体の竜が睨み合う。いきなりエースのぶつかり合いか。

 

「続けて永続魔法《ドラゴンメイドのお出迎え》を発動。効果は色々あるけど、今適用できるのはひとつ。自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は、自分フィールドの「ドラゴンメイド」モンスターの数×100アップする」

 

わずか100だが、これで相手を一方的に破壊できる。相撃ちとは大違いだ。

 

「バトル。シュトラールでメテオ・ブラック・ドラゴンに攻撃、アブソリュート・プレシャス・バースト!」

 

シュトラールの口腔から放たれた閃光波によって、流星竜が崩れ去る。だがその魂は受け継がれていく。

 

「破壊されたメテオ・ブラック・ドラゴンの効果で、墓地の《真紅眼の黒竜》を特殊召喚するデス」

 

黒炎竜じゃなくて、通常のレッドアイズか。もしかして初手であのカードを引いてたのか?

調は効果を通したようだな。

 

「私はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

月読調 LP2600 手札1 モンスター1 伏せ2

暁切歌 LP3900 手札3 モンスター2 伏せ1

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドローデス!」

 

「スタンバイフェイズにシュトラールの効果発動。墓地の《ドラゴンメイド・チェイム》を守備表示で特殊召喚。効果でデッキから《ドラゴンメイドのお心づくし》を手札に加える」

 

「ここで満を持して《黒炎弾》を発動デス! フィールドの《真紅眼の黒竜》を対象に、元々の攻撃力分のダメージを相手に与えるデス!」

 

「やっぱり握ってたんだね。でもさすがにそれは通せない。シュトラールの効果発動。その発動を無効にして破壊する。そしてハスキーと交代」

 

撃ちだされた黒炎弾は、シュトラールの咆哮によって霧散した。シュトラールは白光に包まれ、メイド服を着た人間形態へと戻る。

 

「それは想定内デスよ。リバースカードオープン《レッドアイズ・スピリッツ》。墓地の《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を特殊召喚して効果発動デス。墓地の《流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン》を特殊召喚するデスよ」

 

状況は悪くなったが、調が逸ったとも言いづらいんだよな。黒炎弾を喰らった後で《真紅眼の鋼炎竜(レッドアイズ・フレアメタルドラゴン)》を出されると、残りライフ的にかなりキツくなるし。

 

「そして《アタック・ゲイナー》を通常召喚デス!」

 

「チュ、チューナー!?」

 

調が驚きの声を上げる。ということは、調も知らない新カードか。たぶん出てくるのは、エルフナインに1キルされて落ち込んでた時に貰っていたカードだな。

 

「レベル7の《真紅眼の黒竜》にレベル1の《アタック・ゲイナー》をチューニング。王者の咆哮、今天地を揺るがす。唯一無二なる覇者の力をその身に刻むがいいデス! シンクロ召喚! 荒ぶる魂、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》!」

 

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》

星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードのカード名は、

フィールド・墓地に存在する限り「レッド・デーモンズ・ドラゴン」として扱う。

(2):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。

このカード以外の、このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ

特殊召喚された効果モンスターを全て破壊する。

その後、この効果で破壊したモンスターの数×500ダメージを相手に与える。

 

「アタック・ゲイナーの効果で、ハスキーの攻撃力を1000ポイントダウンデス! そしてレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトの効果発動。このカード以外の、このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ特殊召喚された効果モンスターを全て破壊するデス。アブソリュート・パワー・フレイム!」

 

「その効果にチェーンして速攻魔法《ドラゴンメイドのお見送り》を発動。手札から《ドラゴンメイド・ティルル》を守備表示で特殊召喚し、ハスキーをEXデッキに戻す。この効果で特殊召喚したモンスターは次のターンの終了時まで、戦闘・効果では破壊されない」

 

ハスキーとティルルがハイタッチを交わして交代する。淡い光に包まれたティルルは炎の中でも平然としていた。

 

「そしてこの効果で破壊したモンスターの数×500ダメージを相手に与えるデスよ」

 

月読調 LP2600 → 1600

 

「――くぅ、ティルルの効果発動。デッキから《ドラゴンメイド・パルラ》を手札に加え、そのまま墓地に送る」

 

「むむ、じゃあわたしはこれでターンエンドデス」

 

暁切歌 LP3900 手札2 モンスター3 伏せ0

月読調 LP1600 手札1 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。《ドラゴンメイド・ナサリー》を召喚。効果で墓地の《ドラゴンメイド・チェイム》を特殊召喚。効果でデッキから《ドラゴンメイドのお召し替え》を手札に加える。続けてリバースカード《戦線復帰》を発動。墓地の《ドラゴンメイド・パルラ》を守備表示で特殊召喚。効果でデッキから《ドラゴンメイド・ラドリー》を墓地に送る。魔法カード《ドラゴンメイドのお心づくし》を発動。墓地の《ドラゴンメイド・ラドリー》を特殊召喚。その後、ラドリーと同じ属性でレベルが違う《ドラゴンメイド・フルス》をデッキから墓地に送る。そしてラドリーの効果発動。デッキの上からカードを3枚墓地に送る」

 

ラドリーが小走りに調に近づき、デッキから3枚のカードを墓地に投げる。が、その扱いが乱暴だったのか、カードはもっと丁寧に扱いなさい、とチェイムから叱責されているようだ。墓地に送られたカードの中にはフランメの姿もあった。

調に(かしず)くように、5人のドラゴンメイドたちが並ぶ。まだまだ止まる様子はない。

 

「永続魔法《ドラゴンメイドのお出迎え》の効果発動。墓地の《ドラゴンメイド・フランメ》を手札に加える。そして《ドラゴンメイドのお召し替え》を発動。フィールドの《ドラゴンメイド・チェイム》と手札の《ドラゴンメイド・フランメ》を融合。現れよ、光風霽月たる竜家令、《ドラゴンメイド・ハスキー》!」

 

《ドラゴンメイド・ハスキー》

星9/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2000

「ドラゴンメイド」モンスター+ドラゴン族モンスター

(1):自分・相手のスタンバイフェイズに、

このカード以外の自分フィールドの「ドラゴンメイド」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターよりレベルが1つ高い、またはレベルが1つ低い

「ドラゴンメイド」モンスター1体を自分の手札・墓地から選んで守備表示で特殊召喚する。

(2):このカード以外の自分フィールドの表側表示のドラゴン族モンスターが自分の手札に戻った時、

相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを破壊する。

 

まさしく淑女然とした佇まいで、メイドたちの長が再度、姿を現した。

 

「バトルフェイズ。ドラゴンメイドたちは真の姿へと変貌を遂げる」

 

手札を全て使い切った調は、司令官よろしく5人のメイドたちに号令をかける。

 

「ナサリーを手札に戻し、墓地からエルデを特殊召喚。そしてハスキーの効果で《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》を破壊」

 

ハスキーの指揮の下、見目鮮やかな薄紅色の鱗を持つ竜の咆哮を受け、悪魔竜は地に落ちた。

 

「パルラを手札に戻し、墓地からルフトを特殊召喚。そしてハスキーの効果で《流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン》を破壊」

 

ハスキーの指揮の下、見目鮮やかな若葉色の鱗を持つ竜の咆哮を受け、流星竜が崩れ去る。

 

「メテオ・ブラック・ドラゴンの効果で、墓地の《真紅眼の黒竜》を特殊召喚するデス」

 

無駄な抵抗と分かりつつも、切歌は後続のモンスターを呼び出した。ドラゴンメイドたちの蹂躙は続く。

 

「ティルルを手札に戻し、墓地からフランメを特殊召喚。そしてハスキーの効果で《真紅眼の黒竜》を破壊」

 

ハスキーの指揮の下、見目鮮やかな深紅色の鱗を持つ竜の咆哮を受け、飛び立ったばかりの黒竜は撃ち落とされた。

 

「ラドリーを手札に戻し、墓地からフルスを特殊召喚。そしてハスキーの効果でセットモンスターを破壊」

 

ハスキーの指揮の下、見目鮮やかな淡藤色の鱗を持つ竜の咆哮を受け、防御態勢の飛竜は砕かれた。

4体の巨竜と、それを指揮する家令によって、布陣は一息に破壊された。

 

「……切ちゃん。切ちゃんは強かった。でもそれは間違った強さなの。あんなお手軽抹殺コンボは、生み出すべきじゃなかった」

 

「いや、別にわたしが生み出したワケじゃ……」

 

切歌が冷や汗をかいて言いよどむ。

果たして悪いのは《黒炎弾》か、それとも《真紅眼融合》か、或いは《流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン》か。

《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》は間違いなく悪い。

 

「エルデ、ルフト、フランメ、フルス、ハスキーでダイレクトアタック! 正義執行! アブソリュート・アル・フェニックス!」

 

いつの間にか『悪』にされた切歌に向かって、ドラゴンメイドたちが襲い掛かる。四属性のブレスに加え、ハスキーの手より放たれた閃光波を喰らって、切歌は無残にも爆散した。

 

 

 

暁切歌  LP3900 → 0

 

 

 

「――ありえないデェェェスッ!!」

 

 

 

切歌の悲鳴がこだまする。完全にオーバーキルだな。よほどにあのコンボが許せなかったらしい。

まあ、気持ちはわかる。

 

 

 



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逆襲の錬金術師:前編

「おい、デュエルしろよ」

公園で休憩がてら、デッキ構築に頭をひねっていたら、いきなり喧嘩を売られた(デュエルを申し込まれた)

声の主に目を向けてみると、そこには眼鏡をかけた同年代くらいの、いかにも文学少女といった感じの可愛らしい女の子。

その後ろには保護者らしき女性がいる。親子にしては微妙な年齢差だ。姉妹にしても、あまり似ていない。

「というのは冗談なワケダが、久しぶりだな、音羽遊蓮」

口ぶりからして、以前に会ったことがあるようだが、どうにも記憶にない。これくらい可愛い子なら忘れないと思うのだが。

「ねぇ、プレラーティ。この子、あーしらとは面識ないんじゃない? ほら、あの時は気を失ってたし」

「ん? そうだったか、そうだったな。では改めて自己紹介なワケダ。私はプレラーティ。こっちがカリオストロ。サンジェルマンの友人なワケダ。サンジェルマンは知ってるだろう?」

「ええ、まあ」

そうか、サンジェルマン……さんの。言われてみれば、聞き覚えのある名前だ。

「で、えっと、俺とデュエルでしたか?」

「それは冗談だと言ったワケダ。S.O.N.G.に向かう途中で、目に入ったから声をかけただけだ。おまえに中まで案内してもらう方が、話は早いワケダからな」

「S.O.N.G.には何を?」

「ちょっとしたリベンジなワケダ。あの時に不覚をとったのは統制局長(人でなし)から使いたくもないカード(邪神ドレッド・ルート)を無理矢理押し付けられたからだ。今日は私の本来のデッキを持ってきた。というわけで、おまえには場を整えてもらう。マリア・カデンツァヴナ・イヴに連絡をとるワケダ」

「ついでに立花響ちゃんも呼んどいてね」

有無を言わせぬ圧力でこちらに迫ってくる。断っても面倒なことになりそうだし、ここは恩を売るとしよう。

了子さんに連絡を入れると、都合よくマリアさんも待機しているらしい。次いで響に電話すると、案の定あっさり了承した。

 

 

 

 

 

S.O.N.G.のデュエル場では、すでに準備は終わっていた。

適当に挨拶を済まし、たわいのない世間話を交わした後、勝負が始まる。

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「私の先攻なワケダ、ドロー。《トレード・イン》を発動。《ギミック・パペット-ネクロ・ドール》を捨てて、2枚ドロー。続けて《闇の誘惑》を発動。2枚ドローして《ギミック・パペット-シャドーフィーラー》を除外する。《ギミック・パペット-ギア・チェンジャー》を通常召喚し、《ギミック・パペット-マグネ・ドール》を特殊召喚。こいつは私のフィールドのモンスターが「ギミック・パペット」のみの場合、手札から特殊召喚できるワケダ。そしてギア・チェンジャーの効果で、こいつをマグネ・ドールと同じレベル8にする」

 

レベル8が2体。いきなりランク8エクシーズか。

 

「レベル8の《ギミック・パペット-ギア・チェンジャー》と《ギミック・パペット-マグネ・ドール》でオーバーレイネットワークを構築。闇の大河を貫き、現れるワケダ《No.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー》!」

 

《No.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー》

ランク8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

レベル8モンスター×2

(1):1ターンに1度、魔法カードの効果がフィールドで発動した時に発動できる。

その効果を無効にし、フィールドのそのカードをこのカードの下に重ねてX素材とする。

(2):相手の攻撃宣言時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

攻撃対象をこのカードに移し替えてダメージ計算を行う。

(3):自分フィールドの他のXモンスターが戦闘・効果で破壊された場合、

自分フィールドのXモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターの攻撃力は、破壊されたそのモンスター1体の元々の攻撃力分アップする。

 

「「「ギミック・パペットじゃねぇのかよ!」」」

 

何人かのツッコミが入る。想定よりも多かったのか、プレラーティさんは軽くほほを引きつらせた。

 

「う、うるさい! 先攻で出すならこっちの方が良いワケダ! 私はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

プレラーティ LP4000 手札2 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「マイターン、ドロー。まずはそのドラゴンを黙らせましょう。《禁じられた聖杯》を発動」

 

「ムッ、攻撃力400アップか。通してもいいが、いややはり無効にする。そしてそいつをタイタニック・ギャラクシーのX素材にするワケダ」

 

「続けて《デステニー・ドロー》を発動。《D-HERO ダイヤモンドガイ》を捨てて、2枚ドロー。そして《フュージョン・デステニー》を発動よ。デッキから《D-HERO ドレッドガイ》、《D-HERO ディアボリックガイ》、《D-HERO ディスクガイ》を墓地に送り、融合召喚。来なさい! 《D-HERO ドミネイトガイ》!」

 

《D-HERO ドミネイトガイ》

星10/闇属性/戦士族/攻2900/守2600

「D-HERO」モンスター×3

このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分メインフェイズに発動できる。

自分または相手のデッキの上からカードを5枚確認し、好きな順番でデッキの上に戻す。

(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時に発動できる。

自分はデッキから1枚ドローする。

(3):融合召喚したこのカードが戦闘・効果で破壊された場合、

自分の墓地のレベル9以下の「D-HERO」モンスター3体を対象として発動できる(同名カードは1枚まで)。

そのモンスターを特殊召喚する。

 

「チッ、本命を通したワケダ」

 

「ドミネイトガイの効果発動。私のデッキの上からカードを5枚確認し、好きな順番でデッキの上に戻す。そして、これが通れば私の勝ちよ」

 

「早々に勝利宣言とはな。何をするつもりなワケダ?」

 

「見せてあげるわ。私は手札を1枚捨てて、《一撃必殺!居合いドロー》を発動!」

 

《一撃必殺!居合いドロー》

通常魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

(1):手札を1枚捨てて発動できる。

相手フィールドのカードの数だけ自分のデッキの上からカードを墓地へ送り、

その後自分はデッキから1枚ドローし、お互いに確認する。

それが「一撃必殺!居合いドロー」だった場合、

それを墓地へ送り、フィールドのカードを全て破壊する。

その後、この効果で破壊され墓地へ送られたカードの数×2000ダメージを相手に与える。

違った場合、自分はこの効果でデッキから墓地へ送ったカードの数だけ、

自分の墓地のカードを選んでデッキに戻す。

 

なるほどな。普通に使えばほぼ成功の見込みはないカードだが、デッキ操作から発動すれば確実に成功するってことか。

 

「やってくれるワケダ。チェーンして《闇次元の解放》を発動。《ギミック・パペット-シャドーフィーラー》を守備表示で特殊召喚」

 

これでプレラーティさんのフィールドのカードが1枚増えた。あとはマリアさんの計算が狂うかどうかだが。

 

「では4枚のカードを墓地に送るわ。

一枚目《D-HERO ディバインガイ》

二枚目《D-HERO ドローガイ》

三枚目《オーバー・デステニー》

四枚目《一撃必殺!居合いドロー》

その後1枚ドローし、お互いに確認する。私がドローしたのは、《デステニー・ドロー》よ」

 

どうやら引っかけはなかったらしい。あのセリフは誘導かとも思ったが、さすがにそこまで悪辣ではないか。

 

「違った場合、自分はこの効果でデッキから墓地へ送ったカードの数だけ、自分の墓地のカードを選んでデッキに戻す。私は《デステニー・ドロー》、《フュージョン・デステニー》、《オーバー・デステニー》、《一撃必殺!居合いドロー》をデッキに戻すわ。そして墓地のディアボリックガイの効果発動。このカードを除外して同名カードをデッキから特殊召喚する。続けて《デステニー・ドロー》を発動。《D-HERO ディシジョンガイ》を捨てて、2枚ドロー」

 

次々と発動するドローカード。墓地もどんどん肥えていってる。

 

「まだまだいくわよ。《融合》を発動。フィールドの《D-HERO ディアボリックガイ》と手札の《D-HERO ダイナマイトガイ》を融合。来なさい! 《D-HERO ディストピアガイ》!」

 

フィールドに並ぶ2人の闇の戦士。それを見下ろす光のドラゴン。なかなか絵になる構図だな。

 

「《D-HERO ディストピアガイ》の効果発動。墓地の《D-HERO ディバインガイ》の攻撃力分のダメージを相手に与える。スクイズ・パーム!」

 

プレラーティ LP4000 → 2400

 

「《D-HERO ドリルガイ》を通常召喚。そして墓地の《D-HERO ダイナマイトガイ》を除外して、ディストピアガイの攻撃力を1000アップする! バトルよ。ディストピアガイでタイタニック・ギャラクシーに攻撃、ディストピアブロー!」

 

漆黒の稲妻を帯びた拳が巨竜へと突き刺さる。タイタニック・ギャラクシーは末期の嘶きを上げて倒れた。

 

プレラーティ LP2400 → 1600

 

「攻撃反応型のトラップではなさそうね。ならば、ドミネイトガイでシャドーフィーラーを攻撃」

 

戦士の一撃によって、青白い異形のパペットが粉々に粉砕される。

 

「ドミネイトガイの効果で1枚ドロー。これでラストッ! ドリルガイでダイレクトアタック!」

 

「調子に乗るなッ! 《傀儡葬儀(くぐつそうぎ)-パペット・パレード》を発動なワケダ! デッキから《ギミック・パペット-テラー・ベビー》を攻撃表示で、《ギミック・パペット-ビスク・ドール》と《ギミック・パペット-ナイトメア》を守備表示で特殊召喚。そして自分のLPが相手より2000以上少ない場合、さらにデッキから「RUM」通常魔法カード1枚を選んで自分の魔法&罠ゾーンにセットできる。私は《RUM-アージェント・カオス・フォース》をセットするワケダ!」

 

1枚から4枚出てきたぞ。相手に依存するみたいだが、アドの塊みたいなカードだな。

 

「くっ、ここまで展開するなんて。ドリルガイでビスク・ドールを攻撃」

 

プレラーティ LP1600 → 1000

 

「そしてディストピアガイの攻撃力を元に戻して、伏せてある《RUM-アージェント・カオス・フォース》を破壊するわ。私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

マリア    LP4000 手札0 モンスター3 伏せ1

プレラーティ LP1000 手札2 モンスター2 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー」

 

「スタンバイフェイズにドローガイの効果発動よ。このカードを特殊召喚して、お互いに1枚ドロー。続けて《D-タクティクス》を発動。私のフィールドにいる「HERO」の攻撃力は400アップする」

 

「ではありがたくドローさせてもらうワケダ。ふむ、まずは《アドバンスドロー》を発動。《ギミック・パペット-ナイトメア》をリリースして、2枚ドロー。続けて墓地のビスク・ドールを除外して効果発動。これでこのターン、私のフィールドの「ギミック・パペット」は相手の効果の対象にならないワケダ」

 

これでディストピアガイの効果がほぼ死に札になったわけか。

 

「ならチェーンしてディストピアガイの効果を発動よ。《ギミック・パペット-テラー・ベビー》を破壊するわ」

 

「その程度は想定内なワケダ。2体目の《ギミック・パペット-テラー・ベビー》を通常召喚。効果で墓地の《ギミック・パペット-ギア・チェンジャー》を守備表示で特殊召喚する。そしてギア・チェンジャーの効果でこのカードをテラー・ベビーと同じレベル4にするワケダ。条件はそろった。テラー・ベビーとギア・チェンジャーでオーバーレイネットワークを構築。運命の糸に繋がれし闇の傀儡よ、来いッ! 《ギミック・パペット-ギガンテス・ドール》!」

 

《ギミック・パペット-ギガンテス・ドール》

ランク4/闇属性/機械族/攻 0/守2000

レベル4「ギミック・パペット」モンスター×2

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードのX素材を2つ取り除き、

相手フィールドのモンスターを2体まで対象として発動できる。

そのモンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る。

この効果を発動したターン、自分は「ギミック・パペット」モンスターしか特殊召喚できず、

Xモンスターでしか攻撃宣言できない。

(2):このカードをリリースして発動できる。

自分フィールドの全てのモンスターのレベルはターン終了時まで8になる。

 

「ギガンテス・ドールの効果発動。X素材を2つ取り除き、おまえのドミネイトガイとドリルガイのコントロールを得るワケダ!」

 

「なっ!? コントロール奪取ですって!?」

 

ギガンテス・ドールから放たれた漆黒の糸に捕らわれ、2体のD-HEROがフィールドを移す。

 

「ギガンテス・ドールの更なる効果! このカードをリリースすることで、自分フィールドの全てのモンスターのレベルはターン終了時まで8になるワケダ! レベル8となったドミネイトガイとドリルガイでオーバーレイネットワークを構築。現れろ、運命の糸を操る堕天人形! 《No.40 ギミック・パペット-ヘブンズ・ストリングス》!」

 

破壊ではなく、X素材となったドミネイトガイの効果はもう使えない。相手のモンスターを奪取してX素材にするとは、凄まじい効果だな。

 

「自分フィールドにランク5以上のXモンスターが特殊召喚されたことで、墓地の《RUM-アージェント・カオス・フォース》を手札に加える。ヘブンズ・ストリングスの効果発動。X素材を1つ取り除き、このカード以外のフィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターにストリングカウンターを1つ置くワケダ。そして《RUM-アージェント・カオス・フォース》を発動。人類の叡智の結晶で、悪魔よ蘇れ! 《CNo.40 ギミック・パペット-デビルズ・ストリングス》!」

 

《CNo.40 ギミック・パペット-デビルズ・ストリングス》

ランク9/闇属性/機械族/攻3300/守2000

レベル9モンスター×3

このカードが特殊召喚に成功した時、

フィールド上のストリングカウンターが乗っているモンスターを全て破壊し、

自分はデッキからカードを1枚ドローする。

その後、この効果で破壊され墓地へ送られたモンスターの内、

元々の攻撃力が一番高いモンスターのその数値分のダメージを相手ライフに与える。

また、1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

相手フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターにストリングカウンターを1つ置く。

 

「デビルズ・ストリングスの効果発動。おまえのモンスターを全て破壊して、1枚ドロー。そして2800のダメージを与えるワケダ!」

 

悪魔の人形から放射された暗黒のオーラが2体のD-HEROを破壊し、そのままマリアさんへと伸びる。

 

「墓地のディシジョンガイの効果発動。このカードを手札に戻し、その効果で私が受けるダメージを0にする!」

 

「まだ終わりじゃないワケダ。墓地の《ギミック・パペット-ネクロ・ドール》の効果発動。《ギミック・パペット-マグネ・ドール》を除外して、このカードを特殊召喚。さらに《ジャンク・パペット》を発動。墓地の《ギミック・パペット-ナイトメア》を特殊召喚するワケダ。そしてレベル8のネクロ・ドールとマグネ・ドールでオーバーレイネットワークを構築。2体目だ! 《No.40 ギミック・パペット-ヘブンズ・ストリングス》!」

 

ランク8のヘブンズ・ストリングスにランク9のデビルズ・ストリングス。マリアさんの場にモンスターはいない。通ればゲームエンドか。

 

「バトル! ヘブンズ・ストリングスでダイレクトアタック!」

 

「攻撃宣言時に《アンクリボー》の効果を発動よ。このカードを捨てて、墓地の《D-HERO ディストピアガイ》を特殊召喚する!」

 

「そう何度も使いまわされてたまるかッ! 手札から《D.D.クロウ》の効果発動。そいつを除外するワケダ!」

 

マリア LP4000 → 1000

 

「――ッ! この程度でッ!」

 

「続けていくぞ! デビルズ・ストリングスでダイレクトアタック! デストロイ・バースト!」

 

「墓地の《ネクロ・ガードナー》の効果発動! このカードを除外して攻撃を無効にするわ!」

 

「チッ、居合いドローの時に捨てていたワケダ。私はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

プレラーティ LP1000 手札1 モンスター2 伏せ2

マリア    LP1000 手札1 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「マイターン、ドロー。《D-HERO ディシジョンガイ》を召喚して、カードを1枚伏せる。これで私の手札は0。墓地のディバインガイの効果発動。このカードとドリルガイを除外して2枚ドロー。伏せていた《死者蘇生》を発動。墓地からディスクガイを特殊召喚し、効果で2枚ドロー。《大欲な壺》を発動。除外されている《D-HERO ディストピアガイ》、《D-HERO ディアボリックガイ》、《D-HERO ダイナマイトガイ》をデッキに戻してシャッフル。その後、1枚ドロー」

 

これで手札は補充できた。さてどう動く?

 

「墓地のディアボリックガイを除外して、デッキから同名カードを特殊召喚。そしてディシジョンガイ、ディアボリックガイ、ディスクガイの3体をリリースッ! 来なさい! 《D-HERO Bloo-D》!」

 

漆黒の翼を翻し、天より「究極のD」が降り立つ。

 

「そしてレベル8以上の「D-HERO」が特殊召喚したことで《D-タクティクス》の第2の効果を発動するわ。相手の手札・フィールド・墓地のカード1枚を選んで除外する」

 

「――くっ、選んで除外か。とりあえず、そいつには消えてもらうワケダ。《深黒(しんこく)の落とし穴》を発動」

 

「ならば私は、もう1枚の伏せカードを除外する」

 

伏せられていたのは《パルス・ボム》。あれはフリーチェーンで発動できるカードだ。それをあえて発動しなかった。守りたかったのはモンスターか、それとも。

 

「……たとえ鎧をまとおう(人形を並べても)とも、心の弱さ(ライフポイント)は守れないのよ。《フュージョン・デステニー》を発動。デッキから《D-HERO ダッシュガイ》と《D-HERO ダイナマイトガイ》を墓地に送り、《D-HERO ディストピアガイ》を融合召喚。そして効果発動よ。墓地の《D-HERO ディシジョンガイ》の攻撃力分のダメージを相手に与える。スクイズ・パームッ!!」

 

「やらせんッ! 手札の《エフェクト・ヴェーラー》を捨てて、その効果を無効にするワケダ!」

 

「速攻魔法《融合解除》。ディストピアガイをEXデッキに戻し、その素材であるダッシュガイとダイナマイトガイを墓地から特殊召喚。これで《エフェクト・ヴェーラー》は対象を失い不発。ディストピアガイの効果が適用されるわ」

 

「――クッ、やはりディスクガイに撃つべきだったか。最後まで、そいつにしてやられたワケダ」

 

 

 

プレラーティ LP1000 → 0

 

 

 

「ねぇねぇプレラーティ。勇んでリベンジに来たのに返り討ちにあった気分はどう? ねぇねぇ、今どんな気持ち?」

「本当に嫌味なヤツだな、おまえは……」

「ここでわたしが大~登~場~! お久しぶりです。プレラーティさん、カリオストロさん」

陽気なヒーロー使いがようやくやってきた。

 

 

 



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逆襲の錬金術師:中編

丁度デュエルが終了したところで、響が能天気な挨拶をかまして登場した。

「はぁ~い、響ちゃん。元気してたかしら?」

「はい、カリオストロさんもお元気そうで」

「たった今面白いものが見れたからね」

プレラーティが舌打ちして視線を逸らす。さすがの響も察したのか、渇いた笑いを漏らした。

「見てなさい、プレラーティ。今から貴女の仇を取ってあげるから。相手は違うけどね」

「ふんっ。おまえもやられてしまえ!」

「相変わらずいけずねぇ。じゃあ響ちゃん、始めましょうか」

「はい、よろしくお願いします!」

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「あーしのターン、ドローっと。まずはフィールドね。《テラ・フォーミング》を発動。デッキから《ドラゴニックD》を手札に加えて、そのまま発動よ」

 

《ドラゴニック(ダイアグラム)

フィールド魔法

(1):フィールドの「真竜」モンスターの攻撃力・守備力は300アップする。

(2):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、

アドバンス召喚した「真竜」モンスターはそれぞれ1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない。

(3):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。

このカード以外の自分の手札・フィールドのカード1枚を選んで破壊し、

デッキから「真竜」カード1枚を手札に加える。

 

「永続魔法《補給部隊》を発動して、《ドラゴニックD》の第3の効果を発動するわよ。手札の《ベビケラサウルス》を破壊して、デッキから《真竜皇リトスアジムD》を手札に加えるわ。そして破壊された《ベビケラサウルス》の効果で、デッキから2体目の《ベビケラサウルス》を特殊召喚。続けて《魂喰いオヴィラプター》を通常召喚して効果発動。デッキから《究極伝導恐獣》を手札に加える。そしてオヴィラプターの第2の効果で、フィールドの《ベビケラサウルス》を破壊して、墓地の《ベビケラサウルス》を特殊召喚。《補給部隊》の効果で1枚ドローして、破壊された《ベビケラサウルス》の効果発動。デッキから3体目の《ベビケラサウルス》を特殊召喚よ」

 

ベビケラサウルスには同名以外だとか、同名ターン1などという制限はない。3枚体制でガンガン回してるな。

 

「さあいくわよ。フィールドの《ベビケラサウルス》2体を破壊して《真竜皇リトスアジムD》を特殊召喚よ!」

 

《真竜皇リトスアジム(ディザスター)

効果モンスター

星9/地属性/幻竜族/攻2500/守2300

「真竜皇リトスアジムD」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分メインフェイズに発動できる。

このカード以外の手札及び自分フィールドの表側表示モンスターの中から、

地属性モンスターを含むモンスター2体を破壊し、このカードを手札から特殊召喚し、

地属性モンスター2体を破壊した場合、

相手のエクストラデッキを確認してその中からモンスターを3種類まで選んで除外できる。

(2):このカードが効果で破壊された場合に発動できる。

自分の墓地から地属性以外の幻竜族モンスター1体を選んで特殊召喚する。

 

「《真竜皇リトスアジムD》の効果発動。なんと、相手のEXデッキを確認してその中からモンスターを3種類まで選んで除外できるのよ」

 

「ええっ!? じょ、除外ですか!?」

 

響が慄いて声を上げる。ガーンだな。出鼻をくじかれた。カリオストロさんは、デュエルディスクをチェックしながら感嘆の吐息を漏らしている。

 

「凄いわねぇ、15枚全部違うヒーローなんて。じゃあ《E・HERO アブソルートZero》、《E・HERO サンライザー》、《M・HERO ダーク・ロウ》を除外するわね」

 

「うう、わたしのヒーローたちが……」

 

「続けて破壊された2体の《ベビケラサウルス》の効果発動。デッキから《幻創のミセラサウルス》と《ジャイアント・レックス》を特殊召喚。そしてレベル4の《魂喰いオヴィラプター》と《ジャイアント・レックス》でオーバーレイ。現れなさい、《エヴォルカイザー・ラギア》!」

 

《エヴォルカイザー・ラギア》

ランク4/炎属性/ドラゴン族/攻2400/守2000

恐竜族レベル4モンスター×2

(1):このカードのX素材を2つ取り除き、以下の効果を発動できる。

●魔法・罠カードが発動した時に発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

●自分または相手がモンスターを召喚・特殊召喚する際に発動できる。

それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

「あーしはカードを1枚伏せてターンエンドよ」

 

カリオストロ LP4000 手札3 モンスター3 伏せ1

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドロー! 《E・HERO ソリッドマン》を召喚。効果で《E・HERO ブレイズマン》を特殊召喚して、その効果でデッキから《融合》を手札に加えます」

 

通したか。止めるべきは融合だと判断してるんだろうな。

 

「そして手札を1枚捨てて《超融合》を発動します!」

 

「超……融合? まあいいわ。ラギアの効果を発動――できないッ!?」

 

「このカードの発動に対して、他のカードは発動できません。フィールドの《E・HERO ブレイズマン》と《エヴォルカイザー・ラギア》を融合。来て! 紅蓮の勇者《E・HERO ノヴァマスター》!」

 

これで厄介なラギアはいなくなったが、フィールド魔法の効果でパワーアップしているリトスアジムDには届かない。

 

「続けて《融合》を発動。手札の《E・HERO オーシャン》とフィールドの《E・HERO ソリッドマン》を融合。来て、大地の王者《E・HERO ガイア》!」

 

なるほどな。攻撃力を上げつつ、下げる戦法か。ってこれ、この前俺がやられたやつじゃねぇか。

 

「ソリッドマンの効果でオーシャンを守備表示で特殊召喚。続けてガイアの効果発動。《真竜皇リトスアジムD》の攻撃力を半分にして、その数値分ガイアの攻撃力をアップする! ガイア・フォース!」

 

《真竜皇リトスアジムD》 攻撃力2800 → 1400

《E・HERO ガイア》  攻撃力2200 → 3600

 

「バトルです! ガイアでリトスアジムDに攻撃、コンチネンタルハンマー!」

 

カリオストロ LP4000 → 1800

 

巨岩のような拳が真竜皇に突き刺さる。その一撃で巨体は崩れ落ちた。

 

「《補給部隊》の効果で1枚ドローするわ」

 

「続けてノヴァマスターでミセラサウルスを攻撃、クリムゾン・シュート! 戦闘で相手モンスターを破壊したことで、1枚ドロー!」

 

「あっさりひっくり返されちゃったわね」

 

「わたしはカードを1枚伏せてターンエンドです」

 

立花響    LP4000 手札1 モンスター3 伏せ1

カリオストロ LP1800 手札4 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「あーしのターン、ドロー。《ダイナレスラー・パンクラトプス》を特殊召喚。このカードは相手フィールドのモンスターの数が、自分フィールドのモンスターより多い場合、手札から特殊召喚できるのよ。そしてこのカード自身をリリースして伏せカードを破壊」

 

「チェーンして《和睦の使者》を発動。これでこのターン、わたしのモンスターは戦闘では破壊されず、わたしが受ける戦闘ダメージは0になる」

 

和睦の使者は、俺のデッキにも入っている優秀な防御カードだが、この状況では効果も半減だな。

 

「へぇ~、じゃ、あーしは墓地の《ジャイアント・レックス》と《ベビケラサウルス》を除外して、手札から《究極伝導恐獣》を特殊召喚。そして除外された《ジャイアント・レックス》を自身の効果でフィールドに特殊召喚」

 

究極伝導恐獣(アルティメットコンダクターティラノ)

星10/光属性/恐竜族/攻3500/守3200

このカードは通常召喚できない。

自分の墓地の恐竜族モンスター2体を除外した場合に特殊召喚できる。

(1):1ターンに1度、自分・相手のメインフェイズに発動できる。

自分の手札・フィールドのモンスター1体を選んで破壊し、

相手フィールドの表側表示モンスターを全て裏側守備表示にする。

(2):このカードは相手モンスター全てに1回ずつ攻撃できる。

(3):このカードが守備表示モンスターを攻撃したダメージステップ開始時に発動できる。

相手に1000ダメージを与え、その守備表示モンスターを墓地へ送る。

 

「《究極伝導恐獣》の効果発動よ。フィールドの《ジャイアント・レックス》を破壊して、貴女のモンスターを全て裏側守備表示にする。《補給部隊》の効果で1枚ドローして、バトルよ! 《究極伝導恐獣》は全てのモンスターに1回ずつ攻撃できる。そしてダメージステップ開始時に、相手に1000ダメージを与え、その守備表示モンスターを墓地へ送る。これは戦闘破壊でも戦闘ダメージでもないわ。セットモンスター3体に攻撃、アルティメット・クルエルティ・ファング!」

 

裏側守備表示にされたヒーローたちが、反攻もできずに蹂躙される。

 

立花響 LP4000 → 1000

 

「――グッ、まだです。わたしはまだ戦えるッ!」

 

「そうこなくちゃね。あーしはカードを1枚伏せてターンエンドよ」

 

カリオストロ LP1800 手札3 モンスター1 伏せ2

立花響    LP1000 手札1 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドロー! 魔法カード《HEROの遺産》を発動します。墓地の《E・HERO ノヴァマスター》と《E・HERO ガイア》をEXデッキに戻して、3枚ドロー。《ヒーローアライブ》を発動。ライフを半分払い、デッキから《E・HERO シャドー・ミスト》を特殊召喚して、効果でデッキから《マスク・チェンジ》を手札に加えます」

 

立花響 LP1000 → 500

 

「続けて《融合回収》を発動。墓地の《融合》と《E・HERO ソリッドマン》を手札に加えて、ソリッドマンを召喚。効果で《E・HERO エアーマン》を特殊召喚して効果発動。魔法・罠カードを選んで破壊する効果を選択します」

 

「なら2枚とも発動するわ。《戦線復帰》で《魂喰いオヴィラプター》を守備表示で特殊召喚。《生存本能》で墓地の《ジャイアント・レックス》と《ベビケラサウルス》2体の計3体を除外して1200のライフを回復」

 

カリオストロ LP1800 → 3000

 

「じゃあわたしは《補給部隊》とフィールド魔法を破壊します」

 

「特殊召喚したオヴィラプターの効果で、デッキから《盾航戦車ステゴサイバー》を墓地に送るわ。そして除外された《ジャイアント・レックス》をフィールドに守備表示で特殊召喚」

 

「魔法カード《融合》発動。フィールドの《E・HERO ソリッドマン》と

《E・HERO シャドー・ミスト》を融合。もう一度お願い、《E・HERO ガイア》!」

 

本日二度目のガイア・フォース。《究極伝導恐獣》はパワーを吸い取られて、肩を落とした。

 

《究極伝導恐獣》    攻撃力3500 → 1750

《E・HERO ガイア》 攻撃力2200 → 3950

 

「ソリッドマンの効果で、墓地のブレイズマンを守備表示で特殊召喚。効果でデッキから《置換融合》を手札に加えます。そして――」

 

「むっ、メインフェイズ終了時に《究極伝導恐獣》の効果発動! フィールドの《魂喰いオヴィラプター》を破壊して、相手フィールドのモンスターを全て裏側守備表示にするわ!」

 

「ならフェイズ移行は中止してメインフェイズを続けます。《置換融合》を発動。フィールドの《E・HERO ブレイズマン》と《E・HERO エアーマン》を融合。来て、暴風の先導者《E・HERO Great TORNADO》!」

 

竜巻の中から風の英雄が悠然と姿を現す。吹き荒れる暴風に恐竜たちが騒ぎ出した。

 

《究極伝導恐獣》     攻撃力1750 → 875

《ジャイアント・レックス》守備力1200 → 600

 

「バトル! グレイトトルネードで《究極伝導恐獣》を攻撃、スーパーセル!」

 

「ダメージ計算時に、墓地の《盾航戦車ステゴサイバー》の効果発動。ライフを1000払い、このカードを特殊召喚する。そして、この戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になるわ」

 

カリオストロ LP3000 → 2000

 

「まだまだッ! 手札から《融合解除》を発動。グレイトトルネードをEXデッキに戻し、墓地から《E・HERO ブレイズマン》と《E・HERO エアーマン》を特殊召喚。エアーマンの効果でデッキから《E・HERO リキッドマン》を手札に加える。ブレイズマンでジャイアント・レックスを攻撃!」

 

炎の一撃を浴びて、ジャイアント・レックスは地に倒れた。

 

「続けて《マスク・チェンジ》を発動! ブレイズマンを墓地に送り、EXデッキから《M・HERO 剛火》を特殊召喚して、《盾航戦車ステゴサイバー》を攻撃!」

 

「自身の効果で特殊召喚した《盾航戦車ステゴサイバー》はフィールドから離れた場合、除外されるわ」

 

「最後にエアーマンでダイレクトアタック! エアーシューター!」

 

カリオストロ LP2000 → 200

 

「わたしはこれでターンエンドです」

 

立花響    LP 500 手札1 モンスター3 伏せ0

カリオストロ LP 200 手札3 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「あーしのターン、ドロー。さあ、とっておきを見せてあげるわ。墓地の《幻創のミセラサウルス》の効果発動。このカードと《究極伝導恐獣》、《ダイナレスラー・パンクラトプス》、《魂喰いオヴィラプター》の計4枚を除外して効果発動。除外した枚数と同じレベルの恐竜族をデッキから特殊召喚するわ。来なさいな、《ディノインフィニティ》!」

 

呼び出されたのは先の恐獣に比べれば、随分と小ぶりなサイズの恐竜だ。

 

「ディノインフィニティの攻撃力は除外されている恐竜族モンスターの数×1000ポイントになるわ。つまり――」

 

その小ぶりな恐竜のオーラがどんどんと増大していく。

 

「《幻創のミセラサウルス》と《魂喰いオヴィラプター》で2000パワー! 《究極伝導恐獣》と《ダイナレスラー・パンクラトプス》のジャンプが加わって4000パワー! そして《盾航戦車ステゴサイバー》と《ベビケラサウルス》3体分の回転を加えて、貴女のヒーローを上回る8000パワーよ!!」

 

「は、8000!?」

 

「さあいくわよ! ディノインフィニティで剛火を攻撃、インフィニティ・ファング!」

 

圧倒的な攻撃力を持つ恐竜が、猛烈な勢いで剛火に襲い掛かる。

 

「ようやくあの時の借りを返せるってわけよ。利子つけて熨斗つけて、存分に受け取ってちょうだいなッ!」

 

「――くっ、うわぁぁぁ!!」

 

 

 

立花響 LP500 → 0

 

 

 

「よしッ! リベンジ完了! 良いデュエルだったわ、響ちゃん」

「うう~、はい。負けちゃったけど、楽しいデュエルでした!」

差し出された手を取り、響は笑顔で答えた。

恐竜族ってのはダイナミックなわりに、なんとなく地味なカテゴリーだと思っていたが、結構おもしろそうだな。

素敵な結果(一勝一敗)で終われたわね。足を運んだ甲斐があったってものよ」

カリオストロさんはニコニコ顔、プレラーティさんは仏頂面、見事に明暗わかれたな。

「終わったようだな」

「ん? サンジェルマン? いつからいたワケダ?」

「つい先ほどだ。櫻井女史から連絡を受けてな。いや、休暇中の行動にとやかくいうつもりはない。ただ、な。こういうことなら、私にも一声ほしかったというか……」

「――フッ、どうやら気を回し過ぎたというワケダ」

「アハハハッ。サンジェルマンったら、意外とオチャメさんなのねぇ。ということは、お目当てはあの子かしら?」

三人の視線が一斉にこちらへと向く。まあ、リベンジが名目ならば、そうなるだろうな。

「キミには以前、恥ずかしいところを見せてしまったな」

騙されて利用されていたわけだからな。本人にとっては黒歴史ってところか。

「キミに再戦を申し込む。受けてもらえるか?」

「いいでしょう。受けて立ちますよ」

 

 

 



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逆襲の錬金術師:後編

憑き物が取れたような笑顔だった。

以前に感じられた鬼気迫る感じや寂寥感も薄れていた。涼やかになったというか、険が取れたというか。

色々と変わったのかもしれない。

いや、元に戻ったというべきか。

「では始めようか」

「ええ、よろしくお願いします」

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「私のターン、ドロー。まずは魔法カード《隣の芝刈り》を発動する」

 

初手芝刈りかぁ。これは面倒なことになりそうだな。

 

「私のデッキは54枚。キミのデッキは35枚。その差分19枚を墓地に送る」

 

凄まじい勢いでデッキから墓地にカードが送られる。デュエルディスクを操作して墓地情報を表示すると――。

 

《ワイト》

《異次元からの埋葬》

《死霊王 ドーハスーラ》

《ワイト夫人》

《ワイトキング》

《リビングデッドの呼び声》

《生者の書-禁断の呪術-》

《ワイトプリンセス》

《アンデッド・ワールド》

《隣の芝刈り》

《ワイトプリンス》

《ワイトメア》

《おろかな埋葬》

《アンデッド・ワールド》

《グローアップ・ブルーム》

《屍界のバンシー》

《身代わりの闇》

《アンデッド・ワールド》

《馬頭鬼》

 

「……ワイト?」

 

「……意外か?」

 

「え? いや、まあ、そうですね。もっと華やかなカードを使うと思ってました」

 

「華やか、か。確かに《ワイト》にそういったイメージはないな。だが、このカードは私にとっては特別なのだ。初めて、お母さんに貰ったカードだからな」

 

「お母さん……ですか」

 

「ああ。母はカードのことなど分からん。感性も独特だ。加えて言うなら、私の家はさほど裕福でもなかった」

 

サンジェルマンさんは昔を懐かしむように独白を続ける。

 

「カードは、平等ではない。生まれつき効果が強力なもの、イラストが美しいもの、サポートが貧しいもの、ステータスが貧弱なもの、みんな違っているのだ。そう、カードは差別される為にある。だからこそデュエリストは争い、競い合い、そこに進歩が生まれる。《ワイト》は弱い。最初は誰にも見向きされなかった。だが少しずつ、そう、少しずつ強くなってきたのだ」

 

なんか、複雑な事情がありそうだな。だが、初めて手にしたカードや、大切な人から貰ったカードが特別だというのは共感できる。

 

「ふっ、デュエルを続けよう。さて、《アンデッド・ワールド》が3枚全て落ちてしまったのは誤算だったが、効果処理に入る。《ワイトプリンス》の効果でデッキから《ワイト》と《ワイト夫人》を墓地に送り、《グローアップ・ブルーム》の効果でこのカードを除外してデッキから《火車》を手札に加える」

 

《火車》か、確か破壊耐性も対象耐性も無視したデッキバウンス。というかこの墓地は結構ヤバいぞ。悠長にはしてられんな。

 

「私は《ワイトキング》を召喚。そして墓地の《馬頭鬼》を除外して、墓地の《ワイトキング》を特殊召喚。最初のターンだからな。このくらいでいいだろう。カードを3枚伏せてターンエンドだ」

 

《ワイトキング》 攻撃力7000

《ワイトキング》 攻撃力7000

 

サンジェルマン LP4000 手札2 モンスター2 伏せ3

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

なんだこの手札は? オイオイこれじゃ……(ミー)の勝ちじゃないか。というのは大げさだが、上手く運べばこのターンで終わるな。

 

「魔法カード《ライトニング・ストーム》を発動。相手の魔法・罠カードを全て破壊する方を選択します」

 

「させんッ! 《身代わりの闇》を発動だ。それを無効にし、その後デッキから《ワイトプリンス》を墓地に送る。そして《ワイトプリンス》の効果でデッキから《ワイト》と《ワイト夫人》を墓地に送る」

 

3枚も伏せたのだから、防御札があるのは当然だろう。ここは通す。《神の宣告》なんかが伏せられていたら厄介だしな。それにしても、ついに攻撃力が10000の大台に乗ったか。

 

「《幻影騎士団ティアースケイル》を召喚して、効果発動。手札を1枚捨てて、デッキから《幻影騎士団ダスティローブ》を墓地に送ります。そして墓地の《幻影騎士団ダスティローブ》を除外して効果発動。デッキから《幻影騎士団サイレントブーツ》手札に加え、そのまま特殊召喚。レベル3の《幻影騎士団ティアースケイル》と《幻影騎士団サイレントブーツ》でオーバーレイ。来い《幻影騎士団ブレイクソード》!」

 

大剣を掲げた首なし騎士が黒馬に跨り駆けつける。二体の骸骨たちの王(ワイトキング)首なし騎士(デュラハン)か。合うと言えば合うのだろうか。

 

「ふむ。サンダー・ドラゴンではないのか」

 

「まあ、色々とありまして」

 

本当に色々あった。さて、すんなり着地できたことは僥倖だ。

 

「ブレイクソードの効果発動。X素材を1つ取り除き、このカード自身と、俺から見て右側の伏せカードを破壊します」

 

「チェーンして《針虫の巣窟》を発動。デッキの上から5枚を墓地に送る」

 

《ワン・フォー・ワン》

《ワイトメア》

《生者の書-禁断の呪術-》

《馬頭鬼》

《ワイトプリンセス》

 

これで《ワイトキング》の攻撃力は12000か。《禁じられた聖杯》などの効果無効じゃなくてよかった。《エフェクト・ヴェーラー》も飛んでこなかったようだ。

 

「ブレイクソードの効果で、墓地の《幻影騎士団サイレントブーツ》と《幻影騎士団ティアースケイル》のレベルを1つ上げて特殊召喚します。そしてこの2体でオーバーレイ。愚鈍なる力に抗う反逆の牙、来い《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

 

漆黒の翼を翻し、独特の牙を持つ黒竜が飛び立つ。

 

「ダーク・リベリオンの効果発動。X素材を2つ取り除き、《ワイトキング》の攻撃力を半分にし、その数値分攻撃力をアップする。トリーズン・ディスチャージ!」

 

《ワイトキング》 攻撃力12000 → 6000

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》攻撃力2500 → 8500

 

「8500まで攻撃力を上げるとは……。だがその程度ではッ!」

 

「当然まだ続きます。墓地の《幻影騎士団サイレントブーツ》の効果発動。このカードを除外して、デッキから《RUM-幻影騎士団ラウンチ》を手札に加えます。そして《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を対象に発動。ランクアップ・エクシーズ・チェンジ! 反逆の歌よ、響け《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》!!」

 

《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》

ランク5/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

レベル5モンスター×3

(1):このカードが「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」をX素材としている場合、以下の効果を得る。

●1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、

相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターの攻撃力を0にし、その元々の攻撃力分このカードの攻撃力をアップする。

●相手がモンスターの効果を発動した時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

その後、自分の墓地のXモンスター1体を選んで特殊召喚できる。

 

「《RUM-幻影騎士団ラウンチ》はそのままX素材になります。そしてダーク・レクイエムの効果発動。X素材を1つ取り除き、もう1体の《ワイトキング》の攻撃力を0にし、元々の攻撃力分このカードの攻撃力をアップする。レクイエム・サルベーション!」

 

《ワイトキング》 攻撃力12000 → 0

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》攻撃力3000 → 15000

 

「攻撃力……15000だとッ!?」

 

「バトルフェイズに入ります。《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》で攻撃力が0になった《ワイトキング》に攻撃、鎮魂のディザスター・ディスオベイ!!」

 

「《聖なるバリア-ミラーフォース-》を発動だ。そのドラゴンを破壊する!」

 

「ライフを半分払い、手札からカウンター罠《レッド・リブート》を発動。ミラーフォースの発動を無効にして、そのままセットします。その後、相手はデッキから罠カードをセットできますが、どうしますか?」

 

「……では《パワー・ウォール》をセットしよう」

 

サンジェルマンさんの表情は暗い。無意味だということは分かっているのだろう。

ステンドグラスにも似た翼から無数の閃光が走り、ワイトキングは消滅した。

 

 

 

サンジェルマン LP4000 → 0

 

 

 

「やられたよ。まさか1ターンキルをされるとはな」

「いえ、あの攻撃が通ると大体1キルになるので」

なんせ相手の攻撃力を0にした上で、攻撃力を加算するのだ。素の攻撃力が3000だから、相手の攻撃力が1000以上ならそれでゲームエンドになる。

「真っ向から叩き伏せられるとは思わなかった。まあ、面白いデュエルだったよ」

微妙な苦笑を浮かべて、サンジェルマンさんは右手を差し出した。

それを見て、俺も笑みが零れる。

最初の出会いは最悪に近い形だったが、少しは距離が縮まったようだ。

 

 

 



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加速する世界

レース場の観客席にはスーツ姿の企業関係者がまばらに席を取っていた。今から行われるのはライディングデュエルの最終調整を兼ねたプレゼンテーションだ。

翼さんの対戦相手には光栄にも俺が選ばれた。奏さんは本番までのとっておきらしい。

目の前に広げたデッキに潜む、緑色のカードたち。そのカード名の頭には、見慣れぬ文字が記されている。すなわち――Sp(スピードスペル)

「そろそろ始まるぞ、音羽。デッキを眺めるのもいいが、スタートの準備はできているか?」

ヘッドセットから弾んだ声が聞こえてきた。随分とご機嫌なようで。

「大丈夫ですよ、翼さん」

「ならばいい。そういえば、音羽もデッキを新調したと聞いている。互いにお披露目だな」

「そうなりますね。まあ、ライディングデュエルといえばシンクロですから」

「その理屈はよく分からないが――」

『はいはい、おふたりさん。そろそろ始めてちょうだい』

こちらもご機嫌な調子で、了子さんがスタートを促してくる。デッキをセットして、俺と翼さんは頷き合う。

 

 

『スピード・ワールド、セット・オン! ライディングデュエル、アクセラレーション!!』

 

 

まさしくロケットスタート。バイクの性能は同じはずだが、目の前の車体は躊躇なくアクセル全開フルスロットルで第一コーナーに突っ込んでいった。

 

「先攻はもらう。私のターン、ドロー!」

 

翼さんが流麗な仕草でカードを引く。ちなみに、先攻1ターン目はスピードカウンターは溜まらない。

 

「《ドラグニティ-クーゼ》を通常召喚。そしてクーゼを墓地に送り、手札の《ドラグニティアームズ-ミスティル》を特殊召喚」

 

翼さんが選んだのはドラグニティか。《竜の渓谷》も《調和の宝札》もなしは厳しいと思うが。

 

「ミスティルの効果で、墓地のクーゼを装備する」

 

「申し訳ありませんが、止めさせてもらいますよ。手札の《エフェクト・ヴェーラー》を捨てて、その効果を無効にします」

 

「むっ、なら仕方ないわね。カードを1枚伏せてターンエンドよ」

 

風鳴翼 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

音羽遊蓮 SC0 → 1

風鳴翼  SC0 → 1

 

「手札の《TG ストライカー》を特殊召喚。このカードは相手フィールドにのみモンスターが存在する時、手札から特殊召喚できます。そしてレベル4以下のモンスターが特殊召喚された時に、このカードは特殊召喚できます。《TG ワーウルフ》を特殊召喚。レベル3の《TG ワーウルフ》にレベル2の《TG ストライカー》をチューニング。リミッター解放、レベル5、カモンッ! 《TG ワンダー・マジシャン》!」

 

TG(テックジーナス) ワンダー・マジシャン》

星5/光属性/魔法使い族/攻1900/守 0

チューナー+チューナー以外の「TG」モンスター1体以上

(1):このカードがS召喚に成功した場合、

フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動する。

そのカードを破壊する。

(2):相手メインフェイズに発動できる。

このカードを含む自分フィールドのモンスターを素材としてS召喚する。

(3):フィールドのこのカードが破壊された場合に発動する。

自分はデッキから1枚ドローする。

 

「ワンダー・マジシャンの効果発動。伏せカードを破壊します」

 

「《デモンズ・チェーン》を発動。ワンダー・マジシャンの効果は無効よ」

 

掲げたロッドは悪魔の鎖に絡め捕られ、そのまま小柄な魔術師をも拘束する。

 

「ならば《TG ドリル・フィッシュ》を特殊召喚して、バトルフェイズに入ります」

 

「攻撃力100のモンスターでバトルを!? いや、そのモンスターは――」

 

「そう、こいつは相手フィールドにモンスターがいてもダイレクトアタックができます。いけ、ドリル・フィッシュ!」

 

ドリルのような嘴を持つ魚影が滑空し、翼さんを射抜く。

 

風鳴翼 LP4000 → 3900

 

「ドリル・フィッシュの効果でミスティルを破壊! 俺はカードを2枚伏せてターンエンドです」

 

音羽遊蓮 LP4000 手札0 モンスター2 伏せ2

風鳴翼  LP3900 手札3 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー」

 

風鳴翼  SC1 → 2

音羽遊蓮 SC1 → 2

 

「《ドラグニティ-ドゥクス》を召喚し、墓地の《ドラグニティ-クーゼ》を装備。そしてクーゼを自身の効果で特殊召喚」

 

レベル6シンクロ……いや違う。クーゼの効果は――。

 

「レベル4のドゥクスにレベル4扱いとしたクーゼをチューニング。風を裂き、旋風となりて敵を討て! 飛び立て! 《ドラグニティナイト-バルーチャ》!」

 

《ドラグニティナイト-バルーチャ》

星8/風属性/ドラゴン族/攻2000/守1200

ドラゴン族チューナー+チューナー以外の鳥獣族モンスター1体以上

(1):このカードがS召喚に成功した時、

自分の墓地のドラゴン族の「ドラグニティ」モンスターを任意の数だけ対象として発動できる。

そのドラゴン族モンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

(2):このカードの攻撃力は、このカードに装備された「ドラグニティ」カードの数×300アップする。

 

「バルーチャの効果でクーゼを装備し、クーゼを再度特殊召喚。レベル8のバルーチャにレベル2のクーゼをチューニング。風を裂き、天風となりて敵を討て! 飛び立て! 《ドラグニティナイト-アスカロン》!」

 

《ドラグニティナイト-アスカロン》

星10/風属性/ドラゴン族/攻3300/守3200

「ドラグニティ」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分の墓地の「ドラグニティ」モンスター1体を除外し、

相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを除外する。

(2):S召喚したこのカードが相手によって破壊された場合に発動できる。

EXデッキから攻撃力3000以下の「ドラグニティ」Sモンスター1体をS召喚扱いで特殊召喚する。

 

「アスカロンの効果発動。墓地のドゥクスを除外してワンダー・マジシャンを除外する」

 

「チェーンして《捨て身の宝札》を発動。デッキからカードを2枚ドローします」

 

アスカロンの咆哮を受けてワンダー・マジシャンが次元の彼方に消え去る。

 

「バトルよ、アスカロンでドリル・フィッシュに攻撃、天ノ逆鱗!」

 

音羽遊蓮 LP4000 → 800

 

ほぼダイレクトアタックに近い攻撃を受け、ライフが一気に持っていかれる。

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

風鳴翼  LP3900 手札2 モンスター1 伏せ1

音羽遊蓮 LP 800 手札2 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

音羽遊蓮 SC2 → 3

風鳴翼  SC2 → 3

 

「《Sp-エンジェルバトン》を発動。カードを2枚ドローし、1枚を墓地に送る。伏せていた《戦線復帰》を発動。今墓地に送った《TG スクリュー・サーペント》を特殊召喚。その効果で墓地の《TG ドリル・フィッシュ》を特殊召喚。レベル1の《TG ドリル・フィッシュ》にレベル4の《TG スクリュー・サーペント》をチューニング。リミッター解放、レベル5、カモンッ! 《TG ハイパー・ライブラリアン》!」

 

《TG ハイパー・ライブラリアン》

星5/闇属性/魔法使い族/攻2400/守1800

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがフィールドに存在し、自分または相手が、

このカード以外のSモンスターのS召喚に成功した場合に発動する。

このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、

自分はデッキから1枚ドローする。

 

「続けて《TG サイバー・マジシャン》を通常召喚。サイバー・マジシャンは「TG」と名のついたシンクロモンスターのシンクロ素材とする場合、手札の「TG」と名のついたモンスターを他のチューナー以外のシンクロ素材とする事ができる。手札のレベル4《TG ラッシュ・ライノ》にレベル1の《TG サイバー・マジシャン》をチューニング。リミッター解放、レベル5、カモンッ! 《TG スター・ガーディアン》!」

 

《TG スター・ガーディアン》

星5/光属性/戦士族/攻 100/守2200

チューナー+チューナー以外の「TG」モンスター1体以上

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、

自分の墓地の「TG」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを手札に加える。

(2):自分メインフェイズに発動できる。

手札から「TG」モンスター1体を特殊召喚する。

(3):相手メインフェイズに発動できる。

このカードを含む自分フィールドのモンスターをS素材としてS召喚する。

 

「スター・ガーディアンの効果で墓地の《TG サイバー・マジシャン》を手札に加え、ハイパー・ライブラリアンの効果で1枚ドロー。続けてスター・ガーディアンの第2の効果で《TG サイバー・マジシャン》を特殊召喚。手札のレベル1《TG ブースター・ラプトル》にレベル1の《TG サイバー・マジシャン》をチューニング。リミッター解放、レベル2、カモンッ! 《TG レシプロ・ドラゴン・フライ》!」

 

現れたのは巨大なトンボ。それがレシプロ機のように上昇し旋回する。

 

「ハイパー・ライブラリアンの効果で1枚ドロー。そしてレベル2の《TG レシプロ・ドラゴン・フライ》とレベル5の《TG ハイパー・ライブラリアン》にレベル5の《TG スター・ガーディアン》をチューニング。リミッター解放、レベルマックス! レギュレーターオープン・オールクリアー! 無限の力よ、時空を突き破り、未知なる世界を開け! GO! デルタアクセル! カモンッ! 《TG ハルバード・キャノン》!!」

 

《TG ハルバード・キャノン》

星12/地属性/機械族/攻4000/守4000

Sモンスターのチューナー+チューナー以外のSモンスター2体以上

このカードはS召喚でしか特殊召喚できない。

(1):1ターンに1度、自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動できる。

このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

(2):このカードがフィールドから墓地へ送られた時、

自分の墓地の「TG」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

 

「バトル! ハルバード・キャノンでアスカロンを攻撃、ボルティック・キャノン!」

 

風鳴翼  LP3900 → 3200

 

「破壊されたアスカロンの効果発動。EXデッキから2体目のバルーチャをシンクロ召喚扱いで特殊召喚。効果で墓地のクーゼを装備するわ」

 

……1体だけ?

 

「俺はカードを2枚伏せてターンエンドです」

 

「エンドフェイズに《逢魔ノ刻》を発動。アスカロンを特殊召喚」

 

――ッ!? そういうことか。

 

音羽遊蓮 LP 800 手札0 モンスター1 伏せ2

風鳴翼  LP3200 手札2 モンスター2 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー」

 

風鳴翼  SC3 → 4

音羽遊蓮 SC3 → 4

 

スピードカウンターが4つ溜まった。俺のライフは800。翼さんがSpを持っていたら俺の負けだ。

 

「アスカロンの効果発動。墓地のバルーチャを除外して、ハルバード・キャノンを除外する」

 

破壊ではなく除外ってところがキツいな。

 

「いくわよッ! バルーチャでダイレクトアタック!」

 

「《和睦の使者》を発動。このターン、自分のモンスターは戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは0になる。まあ、モンスターはいませんけどね」

 

「ふっ、なら私はカードを1枚伏せてターンエンドよ」

 

「エンドフェイズに《TGX3-DX2》を発動します。墓地の《TG ハイパー・ライブラリアン》、《TG ワンダー・マジシャン》、《TG レシプロ・ドラゴン・フライ》をEXデッキに戻して、カードを2枚ドロー」

 

風鳴翼  LP3200 手札2 モンスター2 伏せ1

音羽遊蓮 LP 800 手札2 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

音羽遊蓮 SC4 → 5

風鳴翼  SC4 → 5

 

「《Sp-シンクロ・リターン》を発動。このカードはスピードカウンターが5つ以上ある時に発動できる。除外されているシンクロモンスター1体を特殊召喚します」

 

「除外されているシンクロモンスター? まさか……」

 

「俺が選択するのは《ドラグニティナイト-バルーチャ》です」

 

「私のモンスターをッ!」

 

「続けて《Sp-デッド・シンクロン》を発動。墓地の《TG ドリル・フィッシュ》と《TG サイバー・マジシャン》を除外して、EXデッキから《フォーミュラ・シンクロン》をシンクロ召喚扱いで特殊召喚します。その効果によって1枚ドロー。この2体はエンドフェイズに除外されてしまいますが……」

 

「シンクロ素材にすれば関係ないということか」

 

「その通りです。レベル8の《ドラグニティナイト-バルーチャ》にレベル2の《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング。時空(とき)を超え更なる進化の扉を開け、カモンッ! 《シューティング・スター・ドラゴン・TG-EX》!!」

 

《シューティング・スター・ドラゴン・TG(テックジーナス)EX(エクスパンション)

星10/風属性/ドラゴン族/攻3300/守2500

Sモンスターのチューナー+チューナー以外のSモンスター1体以上

このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドのモンスターを対象とするモンスターの効果が発動した時、

自分の墓地からチューナー1体を除外して発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

(2):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。

その攻撃を無効にする。

(3):相手ターンに、このカードが墓地に存在する場合、

自分フィールドのSモンスター2体をリリースして発動できる。

このカードを特殊召喚する。

 

「さらに《Sp-ハーフ・シーズ》を発動。アスカロンの攻撃力を半分にして、その数値分ライフを回復します」

 

《ドラグニティナイト-アスカロン》 攻撃力3300 → 1650

 

音羽遊蓮 LP 800 → 2450

 

「バトル! シューティング・スター・ドラゴン・TG-EXでバルーチャを攻撃、シューティング・ミラージュ!」

 

「迂闊だな、音羽。私はバルーチャを対象に永続罠《追走の翼》を発動!」

 

「ゲッ、そのカードは!」

 

「どうやら心得ているようね。ダメージステップ開始時にそのドラゴンを破壊する」

 

光の翼を得たバルーチャがさらに上空へと舞い上がり、白亜の竜を背部から貫く。

 

「そして破壊したモンスターの攻撃力を、ターン終了時まで加算する」

 

「くっ、俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮 LP2450 手札0 モンスター0 伏せ1

風鳴翼  LP3200 手札2 モンスター2 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー」

 

風鳴翼  SC5 → 6

音羽遊蓮 SC5 → 6

 

俺が伏せたカードは《波紋のバリア-ウェーブ・フォース-》。これでこのターンは凌げるはず。次のドロー次第で勝機はある。

 

「私が引いたカードは《Sp-ハイスピード・クラッシュ》。このカードはスピードカウンターが2つ以上ある時に発動できる。私のフィールドの《ドラグニティ-クーゼ》とあなたの伏せカードを破壊するわ」

 

巻き起こった旋風が、フィールド上の2枚のカードを破壊する。フラグ回収が早すぎるッ!

 

「やはり起死回生の一手を伏せていたわね。バトルよ、バルーチャでダイレクトアタック!」

 

音羽遊蓮 LP2450 → 450

 

「続けてアスカロンでダイレクトアタック! 受けなさいッ! 神槍の一撃をッ!」

 

アスカロンが一本の槍となって飛来する。俺にそれを防ぐ術は残されていなかった。

これが絶望か。

 

 

 

音羽遊蓮 LP 450 → 0

 

 

 

ライフが0になり、バイクから白煙が上がる。まあ、演出の一環だ。実際に故障したわけじゃない。

白旗ならぬ白煙を上げて、無事にデュエルは終了した。

勝敗はともかくとして、一回も前に出られなかったのはちょっと悔しかったかな。

 

 

 



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スピードの向こう側

スタンドは満員御礼。午前中に行われたライブの熱は全く冷めていない。

現在俺は関係者席、というかピットにいる。テーブル上の右モニターには翼さんが、左モニターには奏さんが映っていた。

振り返ればよく分からない機材がところ狭しと並び、了子さんがスタッフたちに指示を出している。

俺はただのゲストなので仕事はない。だが若干の申し訳なさみたいなのはあるかな。

 

『皆さま、大変長らくお待たせいたしました。これより本日のメーンイベント、ツヴァイウィングによるライディングデュエルを行います!!』

 

MCの宣言とともに"ORBITAL BEAT"が流れ出す。それに呼応するように紅と蒼の2台のバイクが飛び出した。

本当なら『D・ホイール』と呼びたいところだが、言い出すタイミングを逃したので名称は『デュエルバイク』のままだ。

 

『風鳴翼が提唱し、奇才櫻井了子が実現させた『ライディングデュエル』! この場にいる全ての人が、歴史の目撃者となるでしょう!』

 

大げさだなぁ。まあMCなんてそういうものかもしれないけど。

 

「でもいいのかしら? 実際あなたの尽力は大きいところよ。名前すらないなんて、さすがに気が引けるわ」

 

ライディングデュエルが始まったことで一先ずは落ち着いたのか、了子さんが俺の隣に腰を下ろした。

 

「構いませんよ。どこの馬の骨か分からない俺より、名も実績もある了子さんや、華のある翼さんのほうが受けはいいでしょう」

 

俺がやったことなんて知識の横流しみたいなものだからな。それを高らかに自分の手柄と叫ぶことはできないでしょ。

 

「……まあいいわ。ならひとつ借りということにしておこうかしら。返してほしければいつでも言ってちょうだい。私にできることなら何だってOKよ」

 

「ん? 今何でもするって――」

 

『先手を取ったのは蒼のバイク、風鳴翼だッ! 猛烈な勢いで第一コーナーを回って行ったぁー!』

 

 

 

「私のターン、ドロー。《ドラグニティ-セナート》を召喚し、効果発動。手札の《ドラグニティ-クーゼ》を捨てて、デッキから《ドラグニティ-ファランクス》をこのカードに装備する。そして装備状態のファランクスを、自身の効果で特殊召喚」

 

「いきなりシンクロか。飛ばして来たな、翼ッ!」

 

「ええ、いくわよ、奏。レベル4のセナートにレベル2のファランクスをチューニング。《ドラグニティナイト-ヴァジュランダ》をシンクロ召喚。そしてシンクロ召喚時の効果で、墓地のファランクスを装備し、再度ファランクスを特殊召喚。レベル6のヴァジュランダにレベル2のファランクスをチューニング。神聖なる光蓄えし翼煌めかせ、その輝きで敵を討て! シンクロ召喚、《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

 

《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》

星8/風属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

チューナー+チューナー以外のSモンスター1体以上

(1):1ターンに1度、このカード以外のモンスターの効果が発動した時に発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

この効果でモンスターを破壊した場合、

このカードの攻撃力はターン終了時まで、

この効果で破壊したモンスターの元々の攻撃力分アップする。

(2):このカードがレベル5以上の相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時に発動する。

このカードの攻撃力はそのダメージ計算時のみ、

戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップする。

 

水晶のような翼を羽ばたかせ、美しき竜が空を舞う。観客席から一層の歓声が巻き起こった。

 

『先攻1ターン目から連続シンクロ召喚! 開幕から魅せてくれます、風鳴翼! まさしく風が鳴るような美しき竜だ!』

 

「その物言いは流石に照れるわね。私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

風鳴翼 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「あたしのターン、ドロー!」

 

天羽奏 SC0 → 1

風鳴翼 SC0 → 1

 

「くそっ、厄介だな。そいつの効果は」

 

奏さんの表情が歪む。通常の魔法カードが使えないライディングデュエルでは、モンスター効果を制限されるのはなかなかに厳しい。

 

「あたしはモンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

『打って変わってこちらは穏やかなスタートだ! いつもの激情はどうしたのか、天羽奏!』

 

「うっせぇな、まだ序盤だ! これからだよ、これから!」

 

MCに突っ込みいれるなんて、奏さんらしいな。

 

天羽奏 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2

風鳴翼 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー」

 

風鳴翼 SC1 → 2

天羽奏 SC1 → 2

 

「《ドラグニティ-ドゥクス》を召喚し、効果発動。墓地のクーゼを装備するわ」

 

「させるかよッ! トラップ発動《不知火流 (つばくろ)の太刀》。フィールドのアンデット族《不知火の師範(いくさのり)》をリリースして、《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》と伏せカードを破壊するぜ!」

 

「ならばチェーンして《戦線復帰》を発動。墓地の《ドラグニティナイト-ヴァジュランダ》を守備表示で特殊召喚」

 

「燕の太刀の効果はもうひとつある。カードを破壊した後、デッキから《不知火の宮司(みやづかさ)》を除外する。そして除外された宮司の効果でドゥクスを破壊だ!」

 

「くっ、私のフィールドを一瞬にしてここまで……」

 

『ここで天羽奏が動いてきた! しかし意外ッ! それはアンデット族ッ!』

 

アンデット族とはいっても『不知火』はそれほどアンデットっぽくはないけどな。

翼さんのフィールドに残されたのは、守備表示のヴァジュランダのみ。召喚権も消費したし、ここからの展開は苦しいか。

 

「私はこれでターンエンドよ」

 

風鳴翼 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ0

天羽奏 LP4000 手札3 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「あたしのターン、ドロー!」

 

天羽奏 SC2 → 3

風鳴翼 SC2 → 3

 

「《不知火の武部(もののべ)》を召喚し、効果発動。デッキから《妖刀-不知火》を特殊召喚。バトルだ! 《不知火の武部》でヴァジュランダに攻撃!」

 

和服の少女が一刀のもとに防御態勢のヴァジュランダを斬り伏せる。

 

「続けて《妖刀-不知火》でダイレクトアタック!」

 

風鳴翼 LP4000 → 3200

 

「これでバトルは終了だ。レベル4の《不知火の武部》にレベル2の《妖刀-不知火》をチューニング。赤く滾る炎を宿し、真紅の刃となりて敵を討て! シンクロ召喚、来なッ! 《刀神-不知火》!」

 

刀神(かたながみ)-不知火》

星6/炎属性/アンデット族/攻2500/守 0

アンデット族チューナー+チューナー以外のアンデット族モンスター1体以上

自分は「刀神-不知火」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):1ターンに1度、除外されている

自分のアンデット族モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターをデッキに戻し、

その攻撃力以下の攻撃力を持つ相手フィールドのモンスターを全て守備表示にする。

この効果は相手ターンでも発動できる。

(2):このカードが除外された場合、

相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターの攻撃力は500ダウンする。

 

『ファーストアタックは天羽奏! そして負けじとシンクロだ! 呼び出したのは日本刀を携えた偉丈夫です!』

 

「あたしはこれでターンエンドだ」

 

天羽奏 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ1

風鳴翼 LP3200 手札3 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー」

 

風鳴翼 SC3 → 4

天羽奏 SC3 → 4

 

「《Sp-エンジェルバトン》を発動。カードを2枚ドローし、1枚を墓地に送る」

 

『ここでSp(スピードスペル)の登場です。事前説明にあった通り、ライディングデュエルでは通常の魔法カードは一切使用できません。使えるのはライディングデュエル専用の魔法カードSp(スピードスペル)のみ。これが通常のデュエルとは違う、ライディングデュエルの醍醐味です!』

 

「手札の《嵐征竜-テンペスト》の効果発動。このカードと風属性モンスター《ドラグニティ-レムス》を墓地に送り、デッキから《ドラグニティアームズ-グラム》を手札に加える。そして墓地のドゥクスとセナートを除外して、《ドラグニティアームズ-グラム》を特殊召喚!」

 

《ドラグニティアームズ-グラム》

星10/風属性/ドラゴン族/攻2900/守2200

このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分の墓地からドラゴン族・鳥獣族モンスター2体を除外して発動できる。

このカードを手札・墓地から特殊召喚する。

(2):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターの効果は無効化され、その攻撃力は自分フィールドの装備カードの数×1000ダウンする。

(3):相手フィールドのモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。

そのモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

 

「バトルよ! グラムで《刀神-不知火》に攻撃!」

 

天羽奏 LP4000 → 3600

 

「グラムの効果発動。戦闘で破壊した《刀神-不知火》を装備カードとする!」

 

『ここで風鳴翼が一矢報いた! そして相手のカードを装備だ。本来の剣に加えて日本刀を装備の二刀流だぁー!』

 

「カードを1枚伏せてターンエンドよ」

 

風鳴翼 LP3200 手札1 モンスター1 伏せ1

天羽奏 LP3600 手札3 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「あたしのターン、ドロー!」

 

天羽奏 SC4 → 5

風鳴翼 SC4 → 5

 

「《不知火の隠者(かげもの)》を召喚し、効果発動。このカード自身をリリースして、デッキから《ユニゾンビ》を特殊召喚する」

 

『おおっと、ここで現れたのは肩を組んでユニゾンする愉快なゾンビ。まさしくツヴァイウィングのような……よう、な?』

 

さすがにアイドルとゾンビを同列に語ることには気後れしたのか、MCの語尾がだんだんと小さくなってきた。

 

「ははっ、MCってのも大変だな。《ユニゾンビ》の効果でデッキから《馬頭鬼》を墓地に送り、このカードのレベルを1つ上げる。そして今墓地に送った《馬頭鬼》の効果も発動するぜ。このカードを除外して、《不知火の隠者》を特殊召喚。レベル4の《不知火の隠者》にレベル4になった《ユニゾンビ》をチューニング。赤く滾る炎を宿し、戦場の刃となりて敵を討て! シンクロ召喚、来なッ! 《戦神-不知火》!」

 

戦神(いくさがみ)-不知火》

星8/炎属性/アンデット族/攻3000/守 0

アンデット族チューナー+チューナー以外のアンデット族モンスター1体以上

自分は「戦神-不知火」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、

自分の墓地からアンデット族モンスター1体を除外して発動できる。

このカードの攻撃力はターン終了時まで、

除外したモンスターの元々の攻撃力分アップする。

(2):フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合、

除外されている自分の守備力0のアンデット族モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを墓地に戻す。

 

「《戦神-不知火》の効果発動。墓地の《不知火の武部》を除外して、その攻撃力分を自身の攻撃力に加える」

 

《戦神-不知火》 攻撃力3000 → 4500

 

「さらに除外された《不知火の武部》の効果発動。デッキから1枚ドローし、1枚を捨てる。続けて墓地の《妖刀-不知火》の効果発動。レベル2のこのカードとレベル4の《不知火の隠者》を除外して、その合計レベルと同じアンデット族シンクロモンスターをEXデッキから特殊召喚する。もう一度出番だぜ、《刀神-不知火》!」

 

『凄い、凄い! ここで天羽奏が本領を発揮! 瞬く間に2体のシンクロモンスターが並んだ!』

 

「まだだッ! 除外された《不知火の隠者》の効果で、除外されている《不知火の宮司》を特殊召喚する。さあ、いくぜ翼ッ! バトルだ! 戦神-不知火でグラムに攻撃、炎刀一閃ッ!」

 

「まだ終わらないわッ! 《ダメージ・ダイエット》を発動。このターンに受ける全てのダメージを半分にする!」

 

風鳴翼 LP3200 → 2400

 

「続けて宮司と刀神-不知火でダイレクトアタックだ!」

 

風鳴翼 LP2400 → 1650 → 400

 

『風鳴翼、なんとか凌いだ! だがセーフティラインのライフ800を下回った! 依然としてレッドゾーンだ!』

 

「残念だがSpは持ってねぇ。カードを1枚伏せてターンエンドだ。エンドフェイズに《戦神-不知火》の攻撃力は元に戻る」

 

天羽奏 LP3600 手札2 モンスター3 伏せ2

風鳴翼 LP 400 手札1 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー」

 

風鳴翼 SC5 → 6

天羽奏 SC5 → 6

 

「墓地のグラムの効果発動。《嵐征竜-テンペスト》と《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》を除外して特殊召喚。そして除外された《嵐征竜-テンペスト》の効果で、デッキから《ドラグニティアームズ-ミスティル》を手札に加えるわ」

 

ドラグニティの展開力も侮れないな。墓地リソースがどんどん減っているのが気がかりだが。

 

「《ドラグニティ-ブランディストック》を召喚。そしてこのカードを墓地に送り、《ドラグニティアームズ-ミスティル》を特殊召喚。効果で墓地の《ドラグニティ-クーゼ》を装備。そしてクーゼを自身の効果で特殊召喚。レベル6のミスティルにレベル4扱いとしたクーゼをチューニング。風を裂き、嵐となりて敵を討て! 飛び立て! 《ドラグニティナイト-アスカロン》!!」

 

《ドラグニティナイト-アスカロン》

星10/風属性/ドラゴン族/攻3300/守3200

「ドラグニティ」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分の墓地の「ドラグニティ」モンスター1体を除外し、

相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを除外する。

(2):S召喚したこのカードが相手によって破壊された場合に発動できる。

EXデッキから攻撃力3000以下の「ドラグニティ」Sモンスター1体をS召喚扱いで特殊召喚する。

 

『ここでドラグニティの最上級モンスターが並んだ! これが風鳴翼のエースなのかぁー!?』

 

「アスカロンの効果発動。墓地のヴァジュランダを除外して《戦神-不知火》を除外」

 

「させねぇ! 《ブレイクスルー・スキル》を発動。そいつの効果は無効だ!」

 

ここで《ブレイクスルー・スキル》か。ミスティルに撃たなかったのはレムスを警戒したのかな。

 

「ならばバトルよ! アスカロンで《戦神-不知火》を攻撃!」

 

「攻撃宣言時に《聖なるバリア-ミラーフォース-》を発動! そいつらまとめて破壊だ!」

 

眼を覆うような閃光が発生し、グラムとアスカロンは露と消えた。

 

『ここでミラーフォース! 風鳴翼のモンスターが全滅! これは決まったかぁー!』

 

「まだよッ! アスカロンの効果発動。シンクロ召喚したこのカードが相手によって破壊された場合、EXデッキから攻撃力3000以下の「ドラグニティ」シンクロモンスター1体をシンクロ召喚扱いで特殊召喚する。来なさいッ! 《ドラグニティナイト-バルーチャ》!」

 

《ドラグニティナイト-バルーチャ》

星8/風属性/ドラゴン族/攻2000/守1200

ドラゴン族チューナー+チューナー以外の鳥獣族モンスター1体以上

(1):このカードがS召喚に成功した時、

自分の墓地のドラゴン族の「ドラグニティ」モンスターを任意の数だけ対象として発動できる。

そのドラゴン族モンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

(2):このカードの攻撃力は、このカードに装備された「ドラグニティ」カードの数×300アップする。

 

「バルーチャの効果発動。アスカロン、ブランディストック、クーゼ、ファランクス、ミスティルを装備。バトルを続行、バルーチャで《戦神-不知火》に攻撃、虚空烈風斬!」

 

天羽奏 LP3600 → 3100

 

「破壊された《戦神-不知火》の効果発動。除外されている《不知火の武部》を墓地に戻す」

 

「ブランディストックを装備したモンスターは2回攻撃できる! 続けて《刀神-不知火》を攻撃!」

 

天羽奏 LP3100 → 2100

 

「くぅ、やるじゃねぇか翼!」

 

「バトルフェイズを終了して、装備状態のクーゼとファランクスを守備表示で特殊召喚。レベル8のバルーチャにレベル2のファランクスをチューニング。風を裂き、烈風となりて敵を討て! 飛び立て! 《ドラグニティナイト-アラドヴァル》!!」

 

《ドラグニティナイト-アラドヴァル》

星10/風属性/ドラゴン族/攻3300/守3200

「ドラグニティ」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):相手がモンスターの効果を発動した時、

自分の墓地から「ドラグニティ」モンスター1体を除外して発動できる。

その発動を無効にし除外する。

(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したダメージ計算後に発動できる。

その相手モンスターを除外する。

(3):S召喚したこのカードが相手によって破壊された場合に発動できる。

相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

「カードを1枚伏せてターンエンド」

 

風鳴翼 LP 400 手札0 モンスター2 伏せ1

天羽奏 LP2100 手札2 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「あたしのターン、ドロー!」

 

天羽奏 SC6 → 7

風鳴翼 SC6 → 7

 

「スピード・ワールドの効果発動。スピードカウンターを7つ取り除き、カードを1枚ドローする」

 

『ここで天羽奏のスピードカウンターが7から0に、風鳴翼は一安心といったところか!?』

 

「だが攻め手は緩めねぇぜ! 墓地の《ブレイクスルー・スキル》を除外して効果発動。アラドヴァルの効果を無効にする。《逢魔ノ妖刀-不知火》を召喚して効果発動。このカードをリリースして、除外されている《妖刀-不知火》と《馬頭鬼》を守備表示で特殊召喚。レベル4の《馬頭鬼》にレベル2の《妖刀-不知火》をチューニング。最後の《刀神-不知火》をシンクロ召喚! 続けて墓地の《馬頭鬼》を除外して《ユニゾンビ》を特殊召喚。《ユニゾンビ》の効果でデッキから2体目の《馬頭鬼》を墓地に送り、《刀神-不知火》のレベルを1つ上げる。レベル4の《不知火の宮司》にレベル3の《ユニゾンビ》をチューニング。赤く滾る炎を宿し、撃滅の刃となりて敵を討て! シンクロ召喚、来なッ! 《妖神-不知火》!」

 

妖神(あやかしがみ)-不知火》

星7/炎属性/アンデット族/攻2100/守 0

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

自分は「妖神-不知火」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。

自分の墓地及び自分フィールドの表側表示モンスターの中から、

モンスター1体を選んで除外する。

その後、その種類によって、以下の効果をそれぞれ適用できる。

●アンデット族:自分フィールドの全てのモンスターの攻撃力は300アップする。

●炎属性:フィールドの魔法・罠カード1枚を選んで破壊する。

●S:フィールドのモンスター1体を選んで破壊する。

 

「墓地の《刀神-不知火》を除外して、《妖神-不知火》の効果発動。《刀神-不知火》はアンデット族・炎属性・シンクロモンスター、つまり全ての効果が適用できる」

 

「チェーンして《和睦の使者》を発動。このターン、私のモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージは0になるわ」

 

「だが効果破壊には対応してねぇ。そのデカブツには消えてもらうぜ」

 

和装の乙女が振るう炎刀の一撃を受けて、アラドヴァルは消え去った。

 

「そのちっこいのも片付けておくか。墓地の《馬頭鬼》を除外して《逢魔ノ妖刀-不知火》を特殊召喚。レベル7の《妖神-不知火》にレベル3の《逢魔ノ妖刀-不知火》をチューニング。赤く滾る炎を宿し、破邪顕正の刃となりて敵を討て! シンクロ召喚、来なッ! 《炎神-不知火》!!」

 

炎神(ほむらがみ)-不知火》

星10/炎属性/アンデット族/攻3500/守 0

アンデット族チューナー+チューナー以外のアンデット族モンスター1体以上

自分は「炎神-不知火」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。

自分の墓地のカード及び除外されている自分のカードの中から、

アンデット族Sモンスターを任意の数だけ選んでエクストラデッキに戻す。

その後、戻した数だけ相手フィールドのカードを選んで破壊できる。

(2):自分フィールドのアンデット族モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、

代わりに自分の墓地の「不知火」モンスター1体を除外できる。

 

「《炎神-不知火》の効果発動。墓地の《妖神-不知火》をエクストラデッキに戻し、《ドラグニティ-クーゼ》を破壊する。そんでカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

『風鳴翼、ギリギリのところで踏みとどまった! まだ勝負の行方は分からないぞ!』

 

天羽奏 LP2100 手札2 モンスター2 伏せ1

風鳴翼 LP 400 手札0 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

『さあ風鳴翼、フィールドはがら空き、手札は0。このドローで逆転のカードを引き寄せることができるか!? それともここで終わってしまうのかぁー!?』

 

「そんなタマじゃねぇだろッ! なぁ翼ッ!」

 

「私のターン、ドロー!」

 

風鳴翼 SC7 → 8

天羽奏 SC0 → 1

 

「墓地のグラムの効果発動。《ドラグニティナイト-バルーチャ》と《ドラグニティアームズ-ミスティル》を除外して特殊召喚! 三度(みたび)飛翔せよッ!」

 

大剣を携えた真紅の竜が、風と炎を纏って舞い上がる。

 

「《Sp-ファイナル・アタック》を発動。このカードはスピードカウンターが8つ以上ある時に発動できる。グラムの攻撃力を2倍にする!」

 

《ドラグニティアームズ-グラム》 攻撃力2900 → 5800

 

『なんと! なんとぉ! この土壇場で攻撃力5800まで押し上げた! これは決まるか! 決まってしまうのかぁ!』

 

確かに攻撃が通ればそのまま決まるだろう。だが奏さんの表情にはまだ余裕がある。どうやら翼さんも気付いているようだ。

 

「まだよッ! スピード・ワールドの効果発動。スピードカウンターを7つ取り除き1枚ドローする。ここが天王山、勝機を手繰り、引き寄せるッ!」

 

翼さんがデッキに触れる。モニター越しでもその指に熱がこもっていることは見て取れた。

 

「――見えたッ! 水の一滴(ひとしずく)ッ! ドロォォーッ!!」

 

引き抜いたカードを確認した翼さんから笑みが零れる。

むぅ、あれが世に聞く揺るがなき境地(クリア・マインド)

 

「《ドラグニティ-レギオン》を通常召喚。その効果により墓地の《ドラグニティ-アキュリス》を装備」

 

『まだ展開していきます! しかしアキュリスなんていつ送ったのでしょう……あ、エンジェルバトンの時ですね!』

 

「グラムの効果発動。《炎神-不知火》の効果を無効にし、攻撃力を1000ポイントダウンする。そしてレギオンの効果発動。アキュリスを墓地に送り、《刀神-不知火》を破壊。そしてアキュリスの効果で伏せカードを破壊するわ! バトル! グラムで《炎神-不知火》を攻撃! 炎鳥極翔斬!」

 

大剣と日本刀がぶつかり合う。それは拮抗勝負にすらならず、竜戦士の一撃で刀もろとも馬上の武士を切り裂いた。

 

 

 

天羽奏 LP2100 → 0

 

 

 

『き、きまったぁぁッー!! ライフ400からの大・逆・転ッ! 激闘を制したのは風鳴翼ッ! 天羽奏も十分に魅せてくれましたッ! 素晴らしい、素晴らしいデュエルでしたッ! 皆さま、もう一度両選手に拍手をお願いしますッ!!』

 

四方八方から喝采が巻き起こる。

MCの締めでデュエルは終わった。

勝者である翼さんと敗者である奏さんが、並走しながら観客に手を振っている。

拍手と歓声は収まる様子はなく、むしろ勢いを増していた。

 

 

 



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真実を語る者

日常は突然に崩れ去った。

異変を感じたのは登校途中だった。

街に誰もいない。

学生はもちろん、通勤途中のサラリーマンも、ゴミ出しをする主婦も、毎朝散歩をするお爺さんも、誰も見かけない。

ついに学校に到着するまで誰の姿も見えなかった。そして異変は続く。校門が閉鎖されている。俺が一番に登校したということはありえない。

額から冷たい汗が流れる。これは異様な事態だ。暗灰色の空を見上げ、遅まきながらにその可能性へと思い至った。

――と、そこでポケットの携帯端末が振るえた。

「響、無事か?」

『よかった、繋がったよ。遊蓮くん、今どうなってるか分かる?』

「……いや、まるで街中の人間がいなくなったみたいだ」

『ユベルが嫌な気配がするって。邪悪なものが蠢いているって』

「とりあえず合流しよう。学校までこれるか?」

『うん、すぐに行く!』

どうやら穏やかには終わらないらしいな。

了子さんは……繋がらない。

司令は……ダメだ。

緒川さん……くそッ!

「――ッ!?」

俺が端末をいじっていると、視界の端で空間がひしゃげた。空間を裂いて現れたのは、サングラスをかけた短髪の黒ずくめの男。

「誰だ、おまえは?」

「ふふ、私は真実を語る者(トゥルーマン)。ミスターT」

期待して誰何したわけではないが、相手はあっさりと名乗りを上げた。

「貴様を始末し、覇王の力を暴走させる」

「ほぉ、そりゃあ完璧な作戦だな。不可能だという点に目をつぶればよぉー」

「威勢がいいな、ならばこれからそれを証明してやろう」

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「私のターン、ドロー。《レスキューラビット》を召喚して、効果発動。このカードを除外して、デッキから《ヴェルズ・ヘリオロープ》2体を特殊召喚。そしてヘリオロープ2体でオーバーレイ。混沌と虚無の空間より現れよ、ランク4《ヴェルズ・オピオン》!」

 

《ヴェルズ・オピオン》

ランク4/闇属性/ドラゴン族/攻2550/守1650

レベル4「ヴェルズ」モンスター×2

(1):X素材を持っているこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、

お互いにレベル5以上のモンスターを特殊召喚できない。

(2):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

デッキから「侵略の」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 

「ヴェルズ・オピオンの効果発動。X素材を1つ取り除き、デッキから《侵略の反発感染》を手札に加える。私はカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

ミスターT LP4000 手札4 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

レベル5以上のモンスターを封殺か。以前のデッキならかなり厳しい戦いだっただろうな。これも巡り合わせか。

 

「俺はファント――」

 

目の前の男、ミスターTの姿はいつの間にか未来の姿へと変じていた。そして周囲が炎に包まれる。

 

「どうして私を見捨てたの? 響のことは助けたのに、私はどうでもよかったの?」

 

子供の頃、俺と響が未来の家で遊んでいた時に火事が起きた。俺は響と未来の手を握り、家の外へと避難した。だが外に出た時、俺が握っていたのは、響の手だけだった。

そんな記憶がよみがえった。

いや違う。流し込まれたんだ。そんな事実は、ない。

五感すべてを支配されたような、圧倒的な幻覚。

そう、これは幻覚だ。虚構だとわかれば、それは自制できる。

 

「無駄だ。そんな小細工、俺には通用しない。タネの割れた手品ほど惨めなものはないぜ」

 

「――貴様、ただの人間ではないな」

 

「ただの人間だよ。ちょっと普通じゃないけどな」

 

「精霊を視る力もない、凡庸な男だと思っていたが、認識を改める必要がありそうだ」

 

「そうかい、デュエルを続けるぞ。《幻影騎士団ラギットグローブ》を召喚。そして《幻影騎士団サイレントブーツ》を特殊召喚。このカードは自分フィールドに「ファントムナイツ」がいる時、手札から特殊召喚できる。レベル3のダスティローブとサイレントブーツの2体でオーバーレイ。戦場に倒れし騎士たちの魂よ。今こそ蘇り、闇を切り裂く光となれ! 現れろ! ランク3、《幻影騎士団ブレイクソード》!」

 

幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード》

ランク3/闇属性/戦士族/攻2000/守1000

レベル3モンスター×2

(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、

自分及び相手フィールドのカードを1枚ずつ対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

(2):X召喚されたこのカードが破壊された場合、

自分の墓地の同じレベルの「幻影騎士団」モンスター2体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターのレベルは1つ上がる。

この効果の発動後、ターン終了時まで自分は闇属性モンスターしか特殊召喚できない。

 

ラギットグローブの効果で、ブレイクソードの攻撃力は3000となっている。このまま戦闘破壊でもいけそうだが、試してみるか。

 

「X素材を1つ取り除き、ブレイクソードの効果発動。このカードとオピオンを破壊する」

 

「ふん、自爆特攻か。だがそうはいかん。《スキル・プリズナー》を《ヴェルズ・オピオン》を対象に発動。その効果を無効にする」

 

やはりか。侵略の反発感染で魔法・罠から守り、スキル・プリズナーでモンスター効果から守る。盤石な態勢といったところだが――。

 

「ならば上から叩く! バトルだ。ブレイクソードでオピオンを攻撃!」

 

ミスターT LP4000 → 3550

 

「――ふん。この程度、大した傷ではない」

 

「バトルフェイズを終了し、墓地のサイレントブーツを除外して、デッキから《幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)》を手札に加える。カードを3枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮  LP4000 手札2 モンスター1 伏せ3

ミスターT LP3550 手札4 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。《闇の誘惑》を発動。カードを2枚ドローし、手札の《ヴェルズ・ザッハーク》を除外する。《ヴェルズ・マンドラゴ》を特殊召喚。このカードは相手フィールドのモンスターの数が自分フィールドのモンスターより多い場合、手札から特殊召喚できる。続けて《ヴェルズ・ケルキオン》を通常召喚し、効果発動。墓地のヘリオロープを除外して、もう1体のヘリオロープを手札に加える。レベル4のマンドラゴ、ケルキオンの2体でオーバーレイネットワークを構築。闇の邪念は全てを侵喰する。闇に堕ちし姿を現せ! 《ヴェルズ・バハムート》!」

 

《ヴェルズ・バハムート》

ランク4/闇属性/ドラゴン族/攻2350/守1350

「ヴェルズ」と名のついたレベル4モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、

相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。

手札から「ヴェルズ」と名のついたモンスター1体を捨て、

選択した相手モンスターのコントロールを得る。

 

「フフフ、いただくぞ、貴様のモンスターを。ヴェルズ・バハムートの効果発動。X素材を1つ取り除き、手札のヘリオロープを捨て、《幻影騎士団ブレイクソード》のコントロールを得る」

 

「《ヴェルズ・バハムート》を対象に《幻影霧剣》を発動だ。そいつの効果を無効にする」

 

「無駄だ。《侵略の反発感染》を発動。これで私のフィールドの「ヴェルズ」モンスターは、ターン終了時までこのカード以外の魔法・罠カードの効果を受けない」

 

堕ちた氷龍の視線を喰らい、ブレイクソードがフィールドを移る。

 

「バトルだ。《ヴェルズ・バハムート》で攻撃、ダークネス・フリージング・ブラスト!」

 

音羽遊蓮 LP4000 → 1650

 

「終わりだ。己のモンスターで沈むがいい。《幻影騎士団ブレイクソード》でダイレクトアタック!」

 

「そちらは通さんッ! 《幻影騎士団ウロング・マグネリング》を発動。その攻撃を無効にし、その後このカードを効果モンスター(戦士族・闇・星2・攻/守0)として特殊召喚する」

 

「凌いだか。ならば効果を使わせてもらうぞ。ブレイクソード自身と伏せカードを破壊する。貴様の墓地の「幻影騎士団」モンスターは1体。蘇生効果は使えまい」

 

「ならばチェーンして《幻影騎士団ウロング・マグネリング》の効果を発動。このカード自身と《幻影霧剣》を墓地に送り、2枚ドローする」

 

「ほぅ、私はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

ミスターT LP3550 手札1 モンスター1 伏せ2

音羽遊蓮  LP1650 手札4 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー」

 

伏せが2枚に、墓地には《スキル・プリズナー》か。

 

「墓地の《幻影霧剣》の効果発動。このカードを除外して、墓地の《幻影騎士団ラギットグローブ》を特殊召喚。そして《幻影騎士団ダスティローブ》を通常召喚し、この2体でオーバーレイ。再び現れろ、《幻影騎士団ブレイクソード》!」

 

「この瞬間、《強制脱出装置》を発動。そいつはEXデッキに戻ってもらうぞ」

 

「ならば墓地の《幻影騎士団ラギットグローブ》の効果発動。このカードを除外して、デッキから《幻影翼》を墓地に送り、このカードの効果も発動だ。《幻影翼》を除外して、《幻影騎士団ダスティローブ》を特殊召喚。自分フィールドに「幻影騎士団」モンスターが特殊召喚されたことで、手札の《幻影騎士団ステンドグリーブ》を特殊召喚。この2体でオーバーレイ。ファントムナイツは倒れない! 来い、《幻影騎士団ブレイクソード》! そして効果発動。破壊するのはブレイクソードと伏せカードだ」」

 

「墓地の《スキル・プリズナー》を除外して効果発動。伏せカードを対象として発動したモンスター効果を無効にする」

 

使ったか。よほど伏せカードが大事らしい。チェーン発動しなかったということはフリーチェーンや召喚反応型の罠ではない。ということは――。

 

「魔法カード《おろかな埋葬》を発動。デッキから《幻影騎士団サイレントブーツ》を墓地に送り、効果発動だ。サイレントブーツを除外して、デッキから《RUM-ファントム・フォース》を手札に加える。そして墓地の《幻影騎士団ブレイクソード》を除外して、フィールドの《幻影騎士団ブレイクソード》を対象に《RUM-ファントム・フォース》発動。ランクアップ・エクシーズ・チェンジ! 来いッ! 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

 

叛逆の翼翻し、漆黒の竜は空を舞う。

 

「ダーク・リベリオンの効果発動。X素材を2つ取り除き、《ヴェルズ・バハムート》の攻撃力を半分にし、その数値分を攻撃力に加える」

 

《ヴェルズ・バハムート》 攻撃力2350 → 1175

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》 攻撃力2500 → 3675

 

「さらに墓地の《幻影騎士団ダスティローブ》の効果発動。このカードを除外して、デッキから《RUM-幻影騎士団ラウンチ》を手札に加え、発動。舞えッ! 《アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!!」

 

《アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》

ランク5/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

レベル5モンスター×3

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):X召喚したこのカードは効果では破壊されない。

(2):このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

このカードの攻撃力は、このカード以外のフィールドのモンスターの元々の攻撃力の合計分アップする。

このカードが闇属性XモンスターをX素材としている場合、

さらにこのカード以外のフィールドの全ての表側表示モンスターの効果は無効化される。

この効果の発動後、ターン終了時まで自分はこのカードでしか攻撃宣言できない。

 

「アーク・リベリオンの効果発動。X素材を1つ取り除き、このカード以外のフィールドのモンスターの元々の攻撃力の合計分アップする。オーバーロード・ディスチャージ!」

 

《アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》 攻撃力3000 → 5350

 

「バトルだ! アーク・リベリオンでヴェルズ・バハムートに攻撃、スパーキング・ディスオベイ!」

 

「《聖なるバリア-ミラーフォース-》を発動。貴様のモンスターを破壊する!」

 

「無駄だッ! X召喚したアーク・リベリオンは効果では破壊されない!」

 

「なんだとッ!? ――グァッ!」

 

 

 

ミスターT LP3550 → 0

 

 

 

「どうやら貴様は、油断ならぬ相手のようだ」

ミスターTはそれだけを言い残して消失した。

 

 

 



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破滅の未来

いつもは車が往来している大通りに、ふたりの少女が向かい合っていた。

ひとりは響。もうひとりは未来だ。だがその瞳からは未来ではない何者かの意思を感じさせる。

「操られてるのか?」

「そう、みたい。でもユベルが言うにはデュエルで勝てば元に戻るって」

色々と思うところはあるが、否定できる材料がない。ユベルの言葉を信じるしかないか。

「どうやらしくじったようだな。かまわん、ふたりまとめて相手をしてやる」

未来らしからぬ自信と口調だな。だが、ここは乗っておこう。

「……響、最初は俺は仕掛ける。おまえはなるべく手札を温存しておけ」

「……うん、わかった」

「作戦会議は終わったか? はじめるぞ」

「ああ、いくぞッ!」

 

 

『デュエルッ!』

 

 

「俺のターン、ドロー」

 

しばし手札を眺めて、響の方に視線を送る。それに気づいたことを確認して、軽く手札を振る。俺の意図に気づいた響は小さく頷いた。

 

「俺はカードを1枚伏せて、魔法カード《手札抹殺》を発動。手札を全て捨てて、その枚数分、4枚ドローする」

 

「わたしは5枚捨てて、5枚ドロー。そして《E・HERO シャドー・ミスト》の効果で《E・HERO エアーマン》を手札に加えるよ」

 

「我も5枚捨てて、5枚ドローだ」

 

未来の墓地を確認する。マズいな、堕天使か。あっちにも利があったようだ。

 

「墓地のサイレントブーツを除外して、デッキから《幻影霧剣》を手札に加える。続けて墓地のダスティローブを除外して、デッキから《幻影騎士団ラギッドグローブ》を手札に加える」

 

堕天使は高レベルモンスターがほとんどのはず。攻撃力で負けるわけにはいかない。

 

「ラギットグローブを召喚し、サイレントブーツを特殊召喚。この2体でオーバーレイ。来い、《幻影騎士団ブレイクソード》!」

 

幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ブレイクソード》

ランク3/闇属性/戦士族/攻2000/守1000

レベル3モンスター×2

(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、

自分及び相手フィールドのカードを1枚ずつ対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

(2):X召喚されたこのカードが破壊された場合、

自分の墓地の同じレベルの「幻影騎士団」モンスター2体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターのレベルは1つ上がる。

この効果の発動後、ターン終了時まで自分は闇属性モンスターしか特殊召喚できない。

 

「ラギッドグローブを素材にしたことで、ブレイクソードの攻撃力は1000アップする」

 

《幻影騎士団ブレイクソード》 攻撃力2000 → 3000

 

「更にカードを1枚伏せてターンエンド」

 

音羽遊蓮 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドロー! 《E・HERO エアーマン》を召喚して、効果で《E・HERO リキッドマン》を手札に加える。そしてカードを1枚伏せてターンエンド」

 

立花響  LP4000 手札6 モンスター1 伏せ1

音羽遊蓮 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「我のターン、ドロー。手札の《堕天使イシュタム》の効果発動。このカードと《堕天使ゼラート》を捨てて、2枚ドロー。《堕天使の戒壇》を発動。墓地の《堕天使ゼラート》を守備表示で特殊召喚する。そして効果発動。手札の《堕天使スペルビア》を墓地に送り、相手モンスターを全て破壊する。サンダー・ジャッジメント!」

 

堕天したゼラートの手から黒き雷霆がほとばしる。

 

「ブレイクソードの効果発動。墓地の《幻影騎士団ラギッドグローブ》と《幻影騎士団サイレントブーツ》を特殊召喚」

 

「効果を発動したな? 魔法カード《三戦の才》を発動。デッキからカードを2枚ドローする。続けて《死者蘇生》を発動。墓地の《堕天使スペルビア》を特殊召喚。そして効果発動」

 

「それは止める! 《幻影霧剣》をスペルビアを対象に発動」

 

「ふむ。ならばレベル8のゼラートとスペルビアでオーバーレイ。混沌の牙つき立て、暗黒の秩序を構築せよ、エクシーズ召喚。現れろ《No.97 龍影神ドラッグラビオン》! そしてドラッグラビオンの効果発動。X素材を1つ取り除き、EXデッキから《CNo.92 偽骸虚龍 Heart-eartH Chaos Dragon》を特殊召喚し、その下に《No.92 偽骸神龍 Heart-eartH Dragon》を重ねてX素材にする」

 

現れる2体の禍々しい巨竜。1体は対象耐性、もう1体は戦闘破壊耐性を持つ強力なドラゴン。

 

「カードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

小日向未来 LP4000 手札2 モンスター2 伏せ2

音羽遊蓮  LP4000 手札3 モンスター2 伏せ1

立花響   LP4000 手札5 モンスター0 伏せ1

 

――――――――――――

 

「俺のターン、ドロー。《おろかな埋葬》を発動。デッキから《幻影騎士団フライジャルアーマー》を墓地に送る。続けて伏せていた《異次元からの埋葬》を発動。除外されている《幻影騎士団サイレントブーツ》と《幻影騎士団ダスティローブ》を墓地に戻す」

 

響の伏せカードを巻き込んでしまうが、あの2体を残しておくよりはマシだろう。

 

「レベル4となったラギッドグローブとサイレントブーツでオーバーレイ。現れろ、ランク4《励輝士 ヴェルズビュート》! そして効果発動だ!」

 

ヴェルズビュートの掲げる剣より放出された閃光がフィールドを一掃する。

 

「では我も効果を発動しよう。まずは破壊された《運命の発掘》の効果で3枚(・・)ドロー。そして《やぶ蛇》の効果でEXデッキから《黎明の堕天使ルシフェル》を特殊召喚」

 

《黎明の堕天使ルシフェル》

星12/闇属性/天使族/攻4000/守4000

天使族・闇属性モンスター×3

このカード名の(1)(3)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):「堕天使ルシフェル」を素材としてこのカードが融合召喚に成功した場合に発動できる。

相手フィールドのカードを全て破壊する。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

自分フィールドの天使族モンスターは相手の効果の対象にならない。

(3):自分・相手のメインフェイズに1000LPを払って発動できる。

自分の手札・墓地から天使族モンスター1体を選んで守備表示で特殊召喚する。

 

くっ、やられた。どちらもブラフか、まさしくやぶ蛇だな。

 

「だがヴェルズビュートの効果にターン制限はない。X素材を1つ取り除き、もう一度《励輝士 ヴェルズビュート》の効果発動!」

 

「手札の《堕天使テスカトリポカ》を捨てることで、「堕天使」は破壊されない。これで効果は打ち止めだな」

 

「まだだッ! 墓地の《幻影翼》を除外して、《幻影騎士団フライジャルアーマー》を特殊召喚。そして手札の《幻影騎士団ステンドグリーブ》を特殊召喚し、このカードのレベルを1つ上げる。レベル4のフライジャルアーマーとステンドグリーブでオーバーレイ。《レイダーズ・ナイト》をエクシーズ召喚! そして効果発動。《レイダーズ・ナイト》のX素材を1つ取り除き、EXデッキから《アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》をX召喚扱いでこのカードの上に重ねて特殊召喚する」

 

《アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》

ランク5/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

レベル5モンスター×3

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):X召喚したこのカードは効果では破壊されない。

(2):このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

このカードの攻撃力は、このカード以外のフィールドのモンスターの元々の攻撃力の合計分アップする。

このカードが闇属性XモンスターをX素材としている場合、

さらにこのカード以外のフィールドの全ての表側表示モンスターの効果は無効化される。

この効果の発動後、ターン終了時まで自分はこのカードでしか攻撃宣言できない。

 

「攻撃力上昇はともかく、無効化効果は厄介だな。《黎明の堕天使ルシフェル》の効果発動。ライフを1000払い、墓地の《堕天使スペルビア》を守備表示で特殊召喚。そしてスペルビアの効果で《堕天使イシュタム》を特殊召喚」

 

先に動かれたか、気付くのが早い。

 

「アーク・リベリオンのX素材を1つ取り除き、効果発動。このカード以外のフィールドのモンスターの元々の攻撃力の合計分アップする。オーバーロード・ディスチャージ!」

 

「チェーンして《堕天使イシュタム》の効果発動だ。墓地の《堕天使の戒壇》の効果を適用する。《堕天使ゼラート》を守備表示で特殊召喚し、《堕天使の戒壇》をデッキに戻す」

 

《アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》 攻撃力3000 → 17100

 

「バトルだ! アーク・リベリオンで《黎明の堕天使ルシフェル》を攻撃、スパーキング・ディスオベイ!」

 

アーク・リベリオンの咆哮は漆黒の閃光波となってルシフェルを貫いた。だが、ヴェルズビュートの効果発動後のためダメージは発生しない。

 

「バトルフェイズを終了し、墓地のサイレントブーツの効果発動。このカードを除外して、デッキから《幻影霧剣》を手札に加える。俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

音羽遊蓮  LP4000 手札1 モンスター2 伏せ2

立花響   LP4000 手札5 モンスター0 伏せ0

小日向未来 LP2000 手札4 モンスター3 伏せ0

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドロー! 《E・HERO リキッドマン》を召喚。効果で墓地の《E・HERO シャドー・ミスト》を特殊召喚。シャドー・ミストの効果でデッキから《マスク・チェンジ》を手札に加える。そして《置換融合》を発動。フィールドの《E・HERO リキッドマン》と《E・HERO エアーマン》を融合。来て! 太陽の使者《E・HERO サンライザー》!」

 

そこで響はこちらに視線を向けた。俺に、そして俺のフィールドに。これはバトルロイヤルルール。相手(・・)に対する効果は、当然俺のフィールドにも及ぶ。

 

「――かまわん、やれッ!」

 

「うん、ありがとう。サンライザーの効果でデッキから《ミラクル・フュージョン》を手札に加えて、発動。墓地の《E・HERO オーシャン》と《E・HERO ブレイズマン》を除外して融合。降臨せよ、絶対零度の支配者《E・HERO アブソルートZero》! そして《マスク・チェンジ》を発動。ゼロを墓地に送り、EXデッキから《M・HERO ヴェイパー》を特殊召喚。この瞬間、ゼロの効果発動。相手フィールドのモンスターを全て破壊する。フリージングクラッシュ!」

 

「仲間もろともか。だが残念だったな。《堕天使テスカトリポカ》はもう1枚ある。このカードを捨てて「堕天使」モンスターの破壊を無効にする」

 

アーク・リベリオンの効果でフィールドのモンスターの効果は無効になっているが、それは手札にまでは及ばない。フィールドを覆った氷撃によって破壊されたのは、結局《励輝士 ヴェルズビュート》1体だけだった。

 

「――くっ、ならバトル! わたしはヴェイパーでゼラートを攻撃! そして攻撃宣言時にサンライザーの効果発動。イシュタムを破壊する!」

 

2体の堕天使が沈黙する。残るは1体。

 

「続けてサンライザーでスペルビアを攻撃!」

 

「――チッ、やってくれる」

 

「わたしはカードを1枚伏せてターンエンド」

 

立花響   LP4000 手札3 モンスター2 伏せ1

小日向未来 LP2000 手札3 モンスター0 伏せ0

音羽遊蓮  LP4000 手札1 モンスター1 伏せ2

 

――――――――――――

 

「我のターン、ドロー。《貪欲な壺》を発動。墓地の《黎明の堕天使ルシフェル》、《No.97 龍影神ドラッグラビオン》、《CNo.92 偽骸虚龍 Heart-eartH Chaos Dragon》、《No.92 偽骸神龍 Heart-eartH Dragon》、《堕天使テスカトリポカ》をデッキに戻し、シャッフル。その後2枚ドロー。《トレード・イン》を発動。手札の《堕天使ネルガル》を捨てて2枚ドロー。続けて手札の《堕天使イシュタム》の効果発動。このカードと《堕天使スペルビア》を捨てて2枚ドロー。ふむ、目障りな伏せを破壊しておくか。《ハーピィの羽根帚》を発動。おまえたちの伏せカードを全て破壊する」

 

ふわりっと真っ白な羽根帚が出現し、俺たちの伏せカードを攫っていく。

 

「ふふっ、《堕天使の戒壇》を発動。墓地の《堕天使スペルビア》を守備表示で特殊召喚する。そしてスペルビアの効果でイシュタムを特殊召喚」

 

マズいな。このまま一気に持っていかれるかもしれん。

 

「《堕天使スペルビア》と《堕天使イシュタム》をリリースして《堕天使ルシフェル》をアドバンス召喚」

 

《堕天使ルシフェル》

星11/闇属性/天使族/攻3000/守3000

このカードは特殊召喚できない。

(1):このカードがアドバンス召喚に成功した場合に発動できる。

相手フィールドの効果モンスターの数まで、手札・デッキから「堕天使」モンスターを特殊召喚する。

(2):自分フィールドに他の「堕天使」モンスターが存在する限り、

相手はこのカードを効果の対象にできない。

(3):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。

フィールドの「堕天使」モンスターの数だけ、自分のデッキの上からカードを墓地へ送る。

自分はこの効果で墓地へ送った「堕天使」カードの数×500LP回復する。

 

「《堕天使ルシフェル》の効果発動。デッキから《堕天使テスカトリポカ》、《堕天使イシュタム》、《堕天使ユコバック》を特殊召喚。ユコバックの効果でデッキから《魅惑の堕天使》を墓地に送る。まだまだいくぞ、《堕天使ルシフェル》の更なる効果発動。デッキの上からカードを4枚墓地に送る。

《堕天使の追放》

《闇の誘惑》

《叛逆の堕天使》

《堕天使マスティマ》

墓地に送られた「堕天使」カードは3枚。よってライフを1500回復する」

 

小日向未来 LP2000 → 3500

 

「《堕天使テスカトリポカ》の効果発動。ライフを1000払い、墓地の《魅惑の堕天使》の効果を適用し、その後デッキに戻す。いただくぞ、おまえの《アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を!」

 

堕天使の妖しい眼光に射抜かれ、アーク・リベリオンが未来の下へと羽ばたいていく。

未来のモンスターゾーンは全て埋まり、アーク・リベリオンと4体の堕天使が威圧するようにあたりを睥睨していた。

 

「バトルだ! イシュタムで攻撃!」

 

音羽遊蓮 LP4000 → 1500

 

「とどめだッ! 底知れぬ絶望の淵へ沈めッ! ルシフェルでダイレクトアタック!」

 

「墓地の《幻影霧剣》を除外して《幻影騎士団ブレイクソード》を特殊召喚!」

 

「まだ足掻くか! ルシフェルでブレイクソードを攻撃!」

 

2本の大剣がぶつかり合うが、ルシフェルの暴力的な剣撃の前にブレイクソードは切り裂かれた。

 

「続けてテスカトリポカでダイレクトアタック! 今度こそ沈めッ!」

 

「させないッ! わたしは――」

 

「やめろッ! 響ッ!」

 

「――ッ!?」

 

 

 

音羽遊蓮 LP1500 → 0

 

 

 

「――遊蓮くんッ!! どうして……」

 

「……一時の感情で判断を間違えるな。響、この戦いはおまえが最後に立っていればいいんだ。絆が残っている限り、俺たちで必ず未来を救い出すことができる。だから、諦めるな。響、ユベル」

 

「絆だと? くだらぬ。まだバトルフェイズは終わっていないッ! 《堕天使イシュタム》の効果発動。ライフを1000払い、墓地の《叛逆の堕天使》の効果を適用し、その後デッキに戻す。フィールドの《堕天使ルシフェル》、《堕天使ユコバック》、《堕天使イシュタム》の3体を融合。悪魔の心宿し大天使よ! その叛逆の剣で闇を切り裂き地上に光をもたらせ! 再臨せよ、《黎明の堕天使ルシフェル》!!」

 

曇天を貫いて、黒き翼を広げながら堕天使が降臨する。

 

「《黎明の堕天使ルシフェル》の効果発動。相手フィールドのカードを全て破壊する。黎明の鎮魂歌(ダウン・レクイエム)!」

 

「くっ、だけどヴェイパーはカードの効果では破壊されない!」

 

「ならば仲間のモンスターで沈むがいい! 《アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》で《M・HERO ヴェイパー》を攻撃だ!」

 

アーク・リベリオンの黒翼が漆黒の光を放つ。だがその光がヴェイパーに届くことはなかった。

 

「墓地の《ネクロ・ガードナー》の効果発動。このカードを除外して、その攻撃を無効にする!」

 

「最初のターンに送っていたか。ならば《黎明の堕天使ルシフェル》で攻撃! 断罪至高剣(ゾハール・シュレグ)!」

 

立花響 LP4000 → 2400

 

二度目の攻撃は防ぎきれず、ヴェイパーは光へと還った。

 

「カードを2枚伏せてターンエンドだ。エンドフェイズに《アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》のコントロールは元に戻るが、その相手はいないため、そのまま我のフィールドに残る」

 

小日向未来 LP1500 手札0 モンスター3 伏せ2

立花響   LP2400 手札3 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「わたしのターン、ドロー!! 手札から《HEROの遺産》を発動。墓地の《E・HERO サンライザー》と《E・HERO アブソルートZero》をEXデッキに戻し、3枚ドロー。続けて《融合回収》を発動。墓地の《E・HERO リキッドマン》と《融合》を手札に加える。リキッドマンを召喚して、墓地のエアーマンを特殊召喚。エアーマンの効果発動。わたしはフィールドの魔法・罠を破壊する効果を選択する」

 

「チェーンして《神属の堕天使》を発動。《堕天使テスカトリポカ》をリリースし、エアーマンの効果を無効にし、その攻撃力分のライフを回復する。続けて《黎明の堕天使ルシフェル》の効果発動。ライフを1000払い、墓地の《堕天使イシュタム》を守備表示で特殊召喚する」

 

小日向未来 LP1500 → 3300 → 2300

 

「《融合》発動。フィールドの《E・HERO リキッドマン》と《E・HERO エアーマン》を融合し、《E・HERO Great TORNADO》を融合召喚! そして効果発動。相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力・守備力を半分にする!」

 

「させんよ。イシュタムの効果発動。ライフを1000払い、墓地の《神属の堕天使》の効果を適用する。そいつの効果は無効だ」

 

小日向未来 LP2300 → 1300 → 4100

 

ライフが初期値超えまで回復したか。だが効果を使えるモンスターはもういない。残る懸念は伏せカードだけ。

 

「まだまだッ! 《E・HERO Great TORNADO》を対象に《融合識別(フュージョン・タグ)》を発動。EXデッキの《M・HERO アシッド》を公開し、対象のモンスターを融合素材にする場合、同名カードとして融合素材にできる。《ミラクル・フュージョン》を発動。フィールドの《M・HERO アシッド》となった《E・HERO Great TORNADO》と墓地の《M・HERO ヴェイパー》を除外して融合。光と闇の力を授けられた新たなHERO、Wake Up! 《C・HERO カオス》!!」

 

C・HERO(コントラスト・ヒーロー) カオス》

星9/闇属性/戦士族/攻3000/守2600

「M・HERO」モンスター×2

このカードはルール上「E・HERO」モンスターとしても扱う。

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードの属性は「光」としても扱う。

(2):1ターンに1度、フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。

そのカードの効果をターン終了時まで無効にする。

この効果は相手ターンでも発動できる。

 

「バトルッ! 《C・HERO カオス》で《黎明の堕天使ルシフェル》を攻撃! ファングジョーカー・エクスドライバー!」

 

「攻撃力の劣るモンスターで攻撃だと? 迎え撃て、ルシフェル!」

 

「攻撃宣言時、速攻魔法《決闘融合-バトル・フュージョン》を発動。戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップする!」

 

《C・HERO カオス》 攻撃力3000 → 7000

 

「やはりか、その程度は読めていたぞッ! 《スノーマン・エフェクト》を発動。全ての攻撃力をルシフェルに注ぐ!」

 

《黎明の堕天使ルシフェル》 攻撃力4000 → 9500

 

膨大なエネルギーがルシフェルを包み込む。くそっ、ここでアーク・リベリオンがあだになるとは。

 

「だとしてもぉッ!! ダメージ計算前に《オネスト》の効果発動! このカードを墓地に送り、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップする!」

 

《C・HERO カオス》 攻撃力7000 → 16500

 

「未来を、返せぇッ!!」

 

「――バカな。この、我が……」

 

 

 

小日向未来 LP4100 → 0

 

 

 

『おのれ……おのれ……よくも……』

未来の身体から黒いもやが溢れ出す。それはやがて獣のような形となり、蒼い双眸で響を睨みつけた。俺の目にもはっきりと見える。あれが、ダークネスか。

『滅びぬ……我はまだ……』

「逃がすかッ! ――くっ」

立ち上がった瞬間に目眩がした。どうやら思った以上にダメージがあるらしい。

「遊蓮くんは未来をお願い。あれはわたしが、わたしたちがなんとかしなきゃならないはずだから」

「響……。わかった、おまえたちに託す」

未来(みく)も救って、未来(みらい)も救う。両方やらなくっちゃならないのが、ヒーローの辛いところだよねぇ」

ニカッと笑って響は立ち上がった。そこに悲壮感はまるでない。

「だーいじょーぶッ! 待ってて、ちょーっと行ってくるから」

右腕を差し出し、フィストバンプを交わす。走り行く背中はいつもよりずっと頼もしく見えた。

それから幾ばくかの時間が流れた。長いようで、短いようでもあった。断末魔のような叫び声が響いた後、曇天を切り裂いて光の雨が降り注いだ。

それは魂の輝きのようでもあり、生命の瞬きのようでもあった。

響が駆けてくる。顔には満面の笑みが浮かんでいた。結果は語られずとも知れた。

この日、ヒーローに憧れた少女は、本物のヒーローになった。

 

 

 



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夢を見るなら君と一緒がいい

精霊をいつから信じていたかなんてことはたわいもない世間話にもならないくらいのどうでもいい話だが、それでも俺がいつから精霊などという見えもしない存在を信じていたかと言うとこれは確信を持って言えるが最初から信じていた。

実際に精霊がいるところを目撃したわけでもないのに精霊の存在を確信していたおかしい俺なのだが、運命力とかデッキとの絆とかエースが1体(1枚)なのは当然だとか、俺の知っている常識と少々ズレていると気付いたのは相当後になってからだった。

だがこの世界が俺のいた『前』の世界の延長線上の世界ではないことは、割と早い段階から察していた。

この世界でいうところの『デュエルモンスターズ』は数千年(・・・)の歴史をもつカードゲームだ。きちんとした形になったのは近年だが、大昔から石板や木板という形で存在自体はあったらしい。

基本的には『前』に触れたことのあるカードゲームとほぼ同じもので、俺も違和感なく始めることができた。

そして近所の子供たちと遊び始めて、ようやく思い出した。そこが魔境だったことに。

タイミングを逃す時の任意効果を発動するのはまだいい。収縮の効果処理が適切でないことも仕方ない。ミラーフォースの効果をサイクロンで無効にするのもまあ許そう。だが神の宣告をトラップ・スタンで無効にするのは勘弁してくれ。

当然、俺は優しく諭した。けんか腰にならないように、やんわりと理論立てて説明した。

だが子供というものは自分の過ちを認めたがらないのか、それともマウントを取られることを嫌ったのか、結局最後は「黙れッ! ドンッ!」でデュエルは強制終了されることになる。

そして「もうおまえとはデュエルしない!」と捨て台詞を残して去って行くのだ。

意外だったのは、これを大人たちが黙認していることだった。

いずれ戦いの舞台はテーブルデュエルからデュエルディスクへと移っていく。そうなれば間違った処理など起こさないだろう。

その時に知るのだ。自分の行為が間違っていたことを。いわゆる黒歴史というやつだ。そうして子供たちはルール把握に努めるようになる。

というのが、一応の理屈らしい。いまいち腑に落ちないが、それがこの世界の常識だというのなら従わざるを得ないだろう。

郷に従うならば、ここで俺が友人たちに頭を下げ、自分が間違っていたと謝罪すればよかったのだ。そうすれば問題は解決しただろうが、俺にはできなかった。

間違っていることを間違っていないとは言えなかったし、無法に対して無法で対抗するというのも、プライドが許さなかった。

転生者ゆえの精神の成熟が引き起こしたプライドの咆哮というわけだ。

そんなことを頭の片隅でぼんやり考えながら、俺はたいした感慨もなく小学生になり――。

 

 

 

 

 

立花響と出会った。

 

 

 

 

 

「ねぇ遊蓮くん。わたしたちって付き合ってるんだよね?」

「いきなりどうした? 俺たちはちゃんと付き合ってるだろ」

「最近『好き』って言われてない気がする」

少し口を尖らせながら響は言う。そういえば『言わなくてもわかる』ってのは、日本人の美徳でもあり、欠点でもあるって誰かが言っていたな。

「そうか、なら改めて言おう。響、俺はおまえが好きだ。響、俺はおまえが大好きだ。おまえの笑顔が好きだ。屈託のない笑顔はみんなの心を癒してくれる。おまえの手が好きだ。温かく、そして少し荒れた手は、人助けの勲章だ。おまえの優しさが好きだ。打算なく差し伸べる手は、多くの人の心を救っただろう。おまえの声が好きだ。楚々として、それでいて活力に満ちた声は、俺に勇気を与えてくれる。おまえの眼が好きだ。真っ直ぐで意志のこもった瞳は、迷った時に正道を思い出させてくれる。おまえの――痛いな」

照れ隠しだろうが、バシバシと叩くのはやめてくれ。地味に痛い。ひとしきり叩いて満足したのか、今度はにっこり笑って抱きついてきた。

軽く開かれた、健康的だがどこか艶っぽい唇から漏れてきたのは――甘ったるいムードを引き裂くような腹の虫の鳴き声だった。

それも「くぅっ」などと可愛らしいものではなく、「ぐるるるぅっ」といった感じのかなりやんちゃなものだった。

「――ふっ、ははははっ」

「い、いや、これは違くてッ! ほら、もうこんな時間だしッ!」

「ふっ、そうだな。もう昼過ぎか、どっか行くか。何が食べたい?」

「うーん、遊蓮くんに任せるよ」

「……ならサ店に行くぜ!!」

 

 

 

 

 

「イカにするか、ブタにするか……それが問題だ」

「エビという手もあるよ!」

「なるほど、一理ある。ならばここは《ふらわー焼き》にするか」

「結局それになるんだよね。おばちゃん、わたしもふらわー焼き。それとごはん大盛りで」

「はいよ、ふらわー焼き二つとごはん大盛り。すぐに焼いてあげるからね」

お好み焼きとごはんか。炭水化物と炭水化物の夢のコラボレーションだな。

注文を受けて、おばちゃんが忙しなく動き出した。この店は自分で焼くこともできるし、焼いてもらうこともできる。俺はもっぱら後者だ。素人が焼くよりプロに焼いてもらったほうがいい。

「そういや、進路は決まったのか」

「ううん、まだ考え中」

中三の夏休みも終わり、涼やかな季節から肌寒さを感じるようになってきた。響の進路は大きく分けて三つある。

 

一つめはデュエルアカデミアに入学する。忘れがちだが、響はアマチュアのワールドチャンピオンである。アカデミアは試験免除の特待生枠で響に誘いをかけている。

 

二つめはプロになること。プロに年齢制限はない。小学生でもプロ試験にクリアし、スポンサーと契約すればデビューできる。そのスポンサーを見つけることが普通は難儀するのだが、響の場合は了子さんが後押ししてくれるようだ。あの人は顔が広い。特許関係で多くの企業と付き合いがあるし、いざとなれば了子さん自身がスポンサーになってもいいと言っている。

 

三つめはS.O.N.G.に就職すること。精霊が見える人間というのは、この世界ではかなり希少らしく、手元に確保しておきたいのだろう。かなりの好条件を提示されたようだ。

 

あともう一つ、普通の高校に進学するという手もあるが、正直なところ響の学力では不安が残る。そもそもこの時期になって志望校すら決まってないのは、普通に考えてありえないことだろう。響自身もこの選択肢は外しているように思える。

 

「遊蓮くんはどうなのさ。もう決まった?」

「……俺か?」

俺の進路はもう決めてある。だが響には伝えていない。理由はまあ、自主性を重んじるというか、俺に依存させないためだ。

例えば俺がデュエルアカデミアに進学するとしよう。首尾よく合格すれば、俺はデュエルアカデミア本校に入学することになる。

デュエルアカデミアの本校は全寮制であり、洋上の孤島に存在する隔絶された世界だ。帰省できるのは長期休暇の時期くらいだろう。

また入島制限も厳しく、外部の人間が軽々しく訪れることはできない。

なので俺がデュエルアカデミアに行くと言ったら、響は自分を曲げてまでついてくるかもしれない。

自分がそこまで想われていると考えるのは自意識過剰かもしれないが、可能性はある。

だが状況は変わった。響と話をしていて、響の反応を見ていて、こいつのやりたいことは、実のところちっとも変わっていないのだ。

「俺は、プロになるよ」

「……本気?」

「ああ、了子さんには伝えてある。色々と動いてくれてるよ」

「わたしより先に了子さんに伝えてたんだ」

「色々と段取りがあるんだよ。おまえをないがしろにしていたわけじゃない。それに、おまえはS.O.N.G.に入りたいんだろ? だったら会える時間だって多いさ」

「……気付いてたんだ」

「おまえのやりたいことは、やっぱり人助けなんだよ。精霊の力を悪用している奴とか、精霊狩りみたいな輩がいるって聞いてから、随分と考え込んでたみたいだからな」

プロの世界は見た目ほど華やかな世界じゃない。勝負の世界なのだから、当然勝者と敗者が存在する厳しい世界だ。

そしてプロのデュエルが興行であることを忘れてはならない。観客はお金を払ってデュエルを見に来ているのだ。彼らを満足させ、お金を払った甲斐があった、また来ようと思わせる試合をしなければいけない。

観客を満足させ、スポンサーの意向に従い、興行主の意見を聞く。

華やかに見えるプロデュエリストも、隠れたところで苦労や努力をしているということだ。

プロの世界の実態を知れば知るほど、響に合っているとは思えなかった。

「ユベルもそう思ってるんだろ? ユベルの精霊としての力は、たぶんトップクラスなんだと思う。力を持つ者に伴う責任ってやつさ。もちろん強制するつもりはない。でも俺は、おまえとユベルが人間と精霊を繋ぐ架け橋になってほしいと思っている」

「…………」

沈黙のとばりが降りる。時折「うん」とか「でも」といった声が漏れるが、あれはユベルに対する返答だろう。

「待たせたねぇ。ふらわー焼き2つとごはん大盛り。ごゆっくりどうぞ」

「さて、食べようぜ。冷めないうちに」

「あ、うん」

焼きたてのお好み焼きは言うまでもなく美味かった。

 

 

 

 

 

少し遅めの昼食を終えた後は、適当に雑貨店やカードショップなどをひやかして回った。その後はカラオケに行って、気づけば2時間以上も歌っていた。

消耗したカロリーをたい焼きで補い、一緒に買ったカフェオレでのどを潤す。そろそろ影が長くなってきた。油断しているとあっという間だ。

ベンチの隣にあったゴミ箱にたい焼きの包み紙を放り込む。

「遊蓮くんが心配してたこと、たぶん当たってたと思う」

餡子とカスタードのたい焼きを食べ終えた響が、ぼそりと呟く。

「デュエルアカデミアに行くって言ってたら、わたしもついていったと思うんだ」

ああ、どうやら俺は自意識過剰の勘違い野郎にならなくてすんだようだ。

「わたしと遊蓮くんってさ、出会ってから大体ずっと一緒だったじゃない? だから怖いんだ。一度離れたら、そのままどっかに行っちゃいそうで」

離れたら、か。まさか俺の名前、遊「蓮」から連想したわけでもないだろうが。

「……俺の行くところが、他にあると思うのか? 俺がいるべき場所は、いつだっておまえの隣だ」

互いの視線が絡み合い、夕陽に照らされた影が重なる。

スピーカーから流れてきたパッヘルベルのカノンは、いつもより優しく耳に響いた。

 

 

 




今度こそ本当に終わりです。
最後までお付き合いありがとうございました。


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