起きたらソ連軍将校 (YJSN)
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目覚めたらトイレの中

 

ウゥゥー...ウゥゥー...

 

 

耳に規則的なサイレンが鳴り響く。

 

「ん...?」

 

目の前が真っ暗だ...瞼を開けていないからだろうか。

 

だがぼくは今めちゃくちゃ眠い...

 

何せ昨日の深夜まで、つい面白くなりMGS あの大人気スパイゲーム メタルギアソリッドの2をやり込んでいたのだから...

 

「誰かいるのか。」

 

ドンドンッ

 

うるさい!僕は今絶賛睡眠中なのだ!

 

どうしても起こしたかったら水でもぶっかけるんだな!

 

「ムニャムニャ...。」

 

昨日やったメタルギア 略してメタギアではなーんか雷電とかゆー奴を操作してたなぁ...

 

なんかこう、銀髪でイケメンで

 

しかも彼をサポートする通信相手が恋人のローズだって...恋人持ちかよ...つくづく羨ましい

 

「開けるからな、いいな!」

 

ピピッ ガシャッ

 

ん?

 

何やら最新鋭の機械のロックが外れたような音が響き渡り、扉が開かれる音が聞こえる。

 

「もお!ぼくの部屋に勝手に入ってこな...い...で...。」

 

あれ?

 

見ると、自分は便座の上に座り込み(もちろん服は着ている)

 

銀髪...イケメン...そして見慣れない緑色の軍服...

 

そんな風貌の男がぼくの目の前に立っていたのだ。

 

「何をいってるんだ。さっさと出て...お?」

 

ジィ〜っ...

 

相手はぼくを見据えている。

 

「...美しい...おぉ...。」

 

「あ...え...ぼくは...あいぇ?」

 

相手はぼくの顔を覗き込んでいるままだ。

 

 

 

 

「えええええぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

「おわっ...貴様ッ、叫ぶな!俺は何も...。」

 

雷電が...雷電が...あの銀髪がぁぁぁ!!

 

「目の前にいるううううう!!」

 

 

 

「少佐!いかがなされましたか!」

 

「少佐!」「少佐!」

 

ダッダッダッダッ

 

大勢の人達がぼくの方向に走ってくる振動が地面を伝わってくる。

 

そうして、ぼくはトイレの中で目を覚ました...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁ!心臓が飛び出るかと思ったぁ!」

 

ぼくは今、先ほどのトイレを出たすぐ隣にあった階段に座り込んでいる。

 

何せ雷電が、昨日遊んでたメタルギアの主人公が目の前に居たんだから...。

 

先程のあの一件 雷電...もとい彼 ライコフ少佐と名乗った なんとソ連軍将校のお偉いさんが

 

ぼくをトイレに連れ込み、ムリヤリ酷い事をしようとしたとして彼の部下達に白い目で見られながら ぼくは彼から解放された。

 

ぼくの身長は彼よりも20cmほど小さく、子供っぽい。

 

が、しかし 解放されてこうやってうなだれてるワケにはもう一つある。

 

「なんでぼくが同じくソ連軍将校なんだよぅ...。」

 

なんと今現在、ぼくはソビエト連邦軍 ここグロズニィグラード要塞の守備隊に配属されたシェルド中佐だと言う。

 

ぼくの服装は、寝る前に来ていたパジャマとは打って変わって

 

緑色の軍服 階級が示された肩... そして制帽...

 

どこからどう見ても チビ 将校だった。

 

「はぁ...けど言葉が通じるのはよかった。」

 

そう、なぜかぼくは相手のロシア語の会話が果たせた。

 

完璧、とは言い難いかもしれないけど相手には不審がられてなかったようだ。

 

そしてロシア文字が読めることによって

 

ここ 改めて紹介するとして、グロズニィグラード要塞

 

この場所に保管されてある資料や情報書類が閲覧可能になった。

 

これは本当にありがたい。

 

そして今、ぼくは更衣ルームでぼく専用のロッカーを開けて中を見ている。

 

「うわぁ〜...ぼく、こんなの初めてだよ...拳銃...予備の制服でしょ?それに...あ、手帳?」

 

ぽいっ

 

ロッカーから手帳らしきものを拾ったぼくは、更衣ルームに隣接しているソファーに腰掛けながら読み始める。

 

「ふむふむ...1950年 ボルゴグラードで生まれ、1962年 ソ連軍に入隊。1964年までに大出世を繰り返し、中佐にまで昇進...。」

 

って、すっげーお偉いさんじゃないですか...やだー...。

 

ぼく、まだ14歳だよ!?子供だよ!?

 

こんな少年兵 いちゃダメでしょ。

 

とは思いつつも、ぼくは腰にかけてあるホルスターに仕舞われた将校用のPMピストル 通称マカロフを握りしめる。

 

「...何かあれば、これで身を守ろう。」

 

と、一応は護身を思い返しておく。

 

まあ使うことはないと願いたいけど...。

 

で、だ。

 

ぼくはなんでこんなとこに来ちゃったんだ?

 

状況把握は全然だし、グロズニィグラードなんて聞いたこともないとこだ。

 

寝てたら勝手にソ連に飛ばされました〜、ってか?

 

今すぐ家に帰らせてくださいお願いしますzzz

 

と、思い悩んでいたら

 

「シェルド中佐じゃないか。ここで何をしている。」

 

重苦しい声が更衣ルームに響き渡る。

 

「あ、え?誰です...って、え...。」

 

展開が早すぎてあまり読み取れないが、僕の目に写ってることは言える。

 

目の前に巨大大男が立っている。

 

一難去ってまた一難。

 

うぅぅ、平和な日本とは大違いだ。

 

「あ、いえ!えっと...ヴォルギン大佐!」

 

スタッ

 

ぼくは足を綺麗に揃え、右手を制帽の斜め上にあげた。

 

いわゆる敬礼というやつだ。

 

これまでの情報収集の中に、ぼくはどうやら軍内部のヴォルギン大佐という一派についてるらしい。

 

大まかに分けて、ソ連は今二つに分かれてるそうだ。

 

一つはブレジネフ派の現政権打倒を掲げるヴォルギン大佐。

 

もう一つは、現政権を担っているものの、権力基盤は弱くなりつつあるフルシチョフ派。

 

そしてぼくは前者に位置する...。

 

死亡フラグビンビンに立ってますね...はい。

 

「中佐...そうだな、やる事がないというのもわかる。ならばソコロフの監視をさせようか。」

 

と、目の前の大男 ヴォルギン大佐はそう言う。

 

「そ、ソコロフ?」

 

「そうだ...まさか中佐は奴がここに移されたのを知らんのか?」

 

「え、えぇ、まあ。」

 

「まったく、そんなことでは諜報戦に負けてしまうぞ。まだ我々の中にスパイがいると言うのに...。」

 

スパイ...?

 

「ヴォルギン大佐?一体なにが...。」

 

と、ぼくが怪訝な顔をして心配そうに見上げると、

 

「...ザ・ボスのコブラ部隊が全滅...残すはザ・フューリーのみ...

 

ある男が...ザ・ボスの最期の弟子 と言われる 奴が!!このグロズニィグラードに迫ってきているのだ。

 

あいつ1人でできることはたかが知れている。誰かが内部から手引きしているのだ...。

 

中佐も気をつけるんだ。」

 

と、怒気のこもった声でぼくに警戒を促してくる。

 

「は、はっ!」

 

「ところで、ライコフの奴がお前に手を出そうとしたというではないか。私が可愛がってやるぞ?」

 

と、この大男は あろうことかぼくの股間に右手を接近させてくる。

 

ぼくは確かに、銀髪で、背も小さく顔も童顔だ。

 

ライコフ、にはまったく あの変態にはこれっぽっちも似てないが(ヴォルギン大佐とほも達であることは部下の将兵から聞いた)

 

それでもこのぼくに、手を出そうとしてくる大佐...

 

「えっ...?」

 

 

 

 

 

 

ガバッ

 

「や、やめてください!こんなところでっ...!」

 

ぼくにその趣味はないんだぁぁぁぁ!!

 

このほも大佐め!

 

と、両手をすかさず股間に手を当てて、ガードの体制に入った。

 

「なんだ、中佐はまだだったのか。」

 

「まだもなにも、そんなことしません!」

 

「ほう、残念だな。はっはっは!!

ではソコロフの監視を頼むぞ、中佐。」

 

「は、はぁ...。」

 

と、彼は大笑いしてその場を去っていった。

 

 

 

 

なんなんだ一体。

 

 

 

 

 

 

ぼくはここ、ソ連領内 グロズニィグラード要塞の東棟で目を覚ましたらしい。

 

そしてどうやら、あのヴォルギン大佐は何やら最新鋭の兵器を開発させてるとかなんとか。

 

その開発責任者のソコロフが彼から逃げ出そうとして、

 

そのために送られてきたアメリカのエージェントが、ヴォルギン大佐が言ってた あの男 らしい。

 

残念ながら、ソコロフはヴォルギン大佐と、ザ・ボスのコブラ部隊によって奪還され、

 

引き続きグロズニィグラードの西棟でヴォルギン大佐の兵器を開発させられてるという。

 

 

 

ザ・ボスとコブラ部隊...ここの資料にも載っていた、何やら第二次大戦で連合軍を勝利に導いた英雄 とか。

 

まだ会ってはいないが、彼女とその部隊は先々週にソ連に亡命したらしい。

 

彼女はもともとアメリカの兵士だ。

 

その英雄がソ連に、だなんて。アメリカは相当困惑してると思われる。

 

 

 

 

で、今はソコロフ この目の前にいるおじいちゃんが逃げないように見張ってるってわけさ。

 

まぁ、目が覚めたらこんな場所にいるってのも変だけど、適材適所 やれることをやろう。

 

元のぼくの家に帰りたいのは山々だけど、少しはここで将校ライフを楽しむのもいいかも。

 

「おーい、ソコロフだっけー?真面目にやれよー。」

 

「ひ、ひぃぃ...。」

 

と、彼は怯えてばかりだ。

 

特にぼくが目付役の将校だとわかった瞬間には、チビでも容赦が無いことをわかったかのように。

 

頑張って設計してるんだなー、と図面に書き込んでいる物に目を移す。

 

見ると、そこにはデッカい設計図が描かれていたが、ぼくはそれが何かわからなかった。

 

「おいー、ソコロフ?」

 

と、彼に聞いてみようと試みると

 

「な、何の用かは知らんが、開発の邪魔だ!出ていってくれ!」

 

と、せがむ。

 

「な、なんだとー?ヴォルギン呼んじゃうぞ〜!」

 

「な、そ、それだけはやめてくれ!頼む!!」

 

「なら質問に答えてよ〜。何作ってるの?」

 

と、不意にそのよくわからない、大佐が言っていた謎の兵器について聞く。

 

「?...なんだ、あんた知らないのか。」

 

「しらないよ、なんかすっげー兵器作ってるってのは聞いたけど。」

 

「ふむ...。」

 

と、ぼくが西棟まで抜けてくるまでの渡り廊下で見た

中央の兵器廠と呼ばれる場所に保管されてあったデカイ物体...

 

あれを思い出しながらソコロフの話を聞く。

 

「あれは...核搭載型戦車だ...。」

 

「核 搭載型...?」

 

と、頭にハテナを浮かべて聞く。

 

そんなもの見たことも聞いたこともない。

 

「そうだ。核搭載型戦車。味方の支援無しで、どんな地形からでも核を発射できる独立型の核発射システムだ。」

 

「どんな地形からでも...って、それ危なくない!?核だよ!?」

 

「そうだ...だがお前達ヴォルギンは、この私にその核搭載型戦車...シャゴホッドを作らせようとしてるではないか!」

 

「え、そ、そんなこと一切聞いてなかったんだもん!知らなかったんだよ!」

 

そう、ほんとに知らなかった。核兵器開発...元は日本人だからか、ぼくは核兵器に少し嫌悪を覚える。

 

「あれが完成して仕舞えば...新たな戦争の火蓋が開かれるだろう...。」

 

「うんうん...そうだね。」

 

「...あんた...随分と気前がいいな。他の将校はまったく怒鳴り散らしてばかりだ...。」

 

と、ソコロフはうなだれる。

 

「でーも、事情はあれど、ぼくは君の見張りに着かなきゃダメなんだ。逃げようなんて思わないでよ?」

 

「...やはりそうか。」

 

と、残念そうに彼は再びそのシャゴホッド開発を再開する。

 

「...あ、でも。ぼくがついてる間は 少し【改良】を加えてもいいよ。」

 

「...?」

 

彼 ソコロフはなんのことかと首をかしげる。

 

「例えばさ、ほら、ここみて。」

 

と、ぼくが彼の引いた図面を指差す。

 

「ここのキャタピラの長さを、左っ側より2mほど短くするんだよ。そうすれば重量比でブレーキをかけた時、横転しやすくなる。」

 

「...なるほど、だがそれくらいわかっておる。問題はそれをお前さんに監視されてることだ。」

 

と、しわがれた声でソコロフはそういう。

 

「だーかーら、ぼくは見逃してやるって言ってるの。核兵器はぼくもあんまり好きじゃないし。」

 

「ほ、本当か!」

 

「うん。」

 

「よし...なら出来ることをやってやる...。」

 

と、ソコロフはこれまで引いていた設計に大きな修正を加え始めた。

 

ヴォルギン大佐...怒るだろうなぁ...。

 

 



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研究室への来訪者達

今回は少し短めです




「ふむふむ...ここか...それともここか...。」

 

カキカキ...

 

「なかなか凝った作りにするんだね...。」

 

と、ぼくが不意に水を差すと

 

「シャゴホッドは、設計上まだ量産体制にはない。

部品数も多く、既存の戦車との互換性もない...。

 

故に、慎重にならざるを得んのだ。」

 

と、この爺さん ソコロフが言う。

 

そんなこんな、西棟の研究棟で開発の監視をしていると

 

ピーッ ガシャッ

 

研究室のセキュリティのロックが解除され、中に誰かが入ってくる。

 

「っ!誰だ!」

 

と、ぼくがホルスターに手をかけるが、

 

「あぁ、ターニャ...。」

 

と、ソコロフが知人のように声をかける。

 

「あら?いきなり警戒されては困るわ、おチビさん。」

 

と、目の前に現れた...胸が異様におっきー女の人が佇んでいる。

 

ターニャ...愛称か...それに金髪...

 

色々と思案していたが、ふと我に返って

 

「ち、チビじゃないし!てかあんたこそ誰なんだよ!

いきなり研究棟に入ってくるなんて、相当な階級なんだろうな。」

 

と、問い詰めると

 

「いいえ、坊や。私はただのKGB工作員よ。」

 

と、目の前の女は、ぼくらが敵対しているフルシチョフ政権の支配下にあるKGBのスパイだと告白した。

 

「け、KGB?KGBがなぜここに。」

 

やはり訳がわからなくなり、この女を怪しむ。

 

「話せば長くなるわ。それに、そんなに警戒することでもないわよ。

私も今は大佐のとらわれの身だもの。」

 

「そ、そう...って、そうか。あんたが...。」

 

と、思い出したかのようにぼくはヴォルギン大佐からの告知を思い出す。

 

 

 

 

 

『そういえば、ソコロフ奪還時にいい女がいたのだが、お前も楽しむか?

どうやらKGBのスパイらしいが、まだ役立ちそうだ。』

 

『け、結構です!!女の人なんてまだぼくには早すぎます!!』

 

『ふっはっは!早く大人になれ、シェルド中佐。』

 

 

 

 

 

 

「何よ、何か言いたいことでもあるのかしら?」

 

目の前の金髪女はぼくをじっと見てくる。

 

「何も...ただ、あんた大佐に、その...ヤられてるんでしょ?アレを...。」

 

と、心配の目を向けるが、

 

「?...あぁ、何、そのこと?平気よ、まだね。」

 

余裕っぽく笑顔をぼくに見せるが、体は少し痛んでいるのがうかがえた。

 

それに...

 

スンスン...

 

ガソリンの匂い...?一体どこから...

 

「それよりも、ターニャ。これが例の物だ。」

 

と、ソコロフが何かの小型フィルムを渡す。

 

「いいのかしら?こんなお目付役の、仮にも将校さんの目の前で渡すなんて。」

 

「ぼくは気にしないよ、ヴォルギン大佐にはそこまで深い思い入れはないし。」

 

と、ぼくは彼女の疑問を払拭する。

 

「そ...なら、もっとサービスしてくれてもいいのよ?」

 

と、ソコロフから渡された小型フィルムを胸ポケットにしまい込み、ぼくに近寄ってくる。

 

「なッ...!」

 

ズザザッ

 

ぼくは後ろのめりになり、ずり下がるが、彼女はポケットから何かを取り出し、ぼくの方に近づけてくる。

 

「ッ 警備兵を呼ぶぞ、子供だからといって手を出せると思うなっ!」

 

ぼくは最後の警告を発するが、彼女はどこか優雅な場違いの雰囲気で、取り出した何かを口のあたりに持っていった。

 

 

 

 

「あら?女の人には優しくしなさい、ボウヤ。」

 

「ぼ、ボウヤっ...ふんっ!」

 

彼女はただ単に口紅を塗っていただけだった。

 

色気で誘うとは、やはりKGBのやりそうなことだ。

 

「ぼく...何か食べてくる...食料庫にレーションでもあったでしょ。」

 

と、ソコロフに食事のことを伝えて、少しの間離れることにした。

 

「あら、なら私もお暇するわ。長居して悪かったわね。」

 

と、この金髪女 ターニャもこの部屋を出ていく。

 

はぁ、あの女はいったい...。

 

ぼくは大佐が持ち込んだ厄介ごとに巻き込まれたのであった...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おげぇぇぇ〜〜っ...あのレーションくそまずかったな...ちくしょぉー...。」

 

全く食う側のことを考えていない軍用糧食に腹を立てながら、ぼくは西棟に戻るために向かっていると

 

「む...?シェルド中佐貴様いったい何をしている?

ソコロフの監視はどうしたっ!」

 

と、運悪くヴォルギン大佐に見つかった。

 

「あ、は、はっ!ヴォルギン大佐!こ、小腹が空きましたので...その...食事を...。」

 

「ふむ...まぁそんなところだと思って、私も奴を見に来たところだ。一緒に来いッ。」

 

「はっ!」

 

スタッ

 

と、ぼくは敬礼してから、彼の後ろに立ち添う。

 

ウィーン ガシャッ

 

ロックが解除された扉が開く音がする。

 

そして研究室の中に入ってみると、

 

「なっ...変態...(ボソっ)。」

 

「中佐、...聞こえたぞ。」

 

ヴォルギン大佐がぼくの小声を聞いたらしく、重圧感のある声で戒めてくる。

 

「も、申し訳ありません!」

 

こんなことを口漏らしたのは至極当然。

 

中には先程はいなかったソコロフと一緒にいるイワン... ライコフ少佐が佇んでいたからだ。

 

「(こんなところで何をしてるんだ?まさかライコフはソコロフにまで手を...ヴォェ...。)」

 

こみ上げてくる吐き気を抑えながら、ぼくは彼らを見据える。

 

そうすると、ヴォルギン大佐はライコフ少佐に近づいていき、

 

「少佐?ここで何をしている。部屋で待っていたんだぞ。」

 

と、彼に問いただしていく。

 

スタッ

 

「ッ...。」

 

だが、不自然なことに彼は直立で敬礼したままだ。

 

そんなヤツを見ていると、不意にヴォルギン大佐はあり得ない行為に出る。

 

ガシッ...

 

「え...。」

 

「ッ!?」

 

ライコフ少佐も流石にぼくやソコロフの前で股間を握られるとなると、戸惑ったらしくヴォルギン大佐の手を払いのける。

 

が、

 

ガシッ

 

再度ライコフ少佐の股間に手を伸ばし、グッと掴み、

 

再びライコフ少佐が手をはねのける。

 

「あ、あのヴォルギン大佐っ...ここは研究室でもありますので、その...。」

 

と、ぼくが鎮めようとすると

 

「っ...お前は誰だ!!」

 

 

 

 

 

 

と、目の前のライコフ少佐に...いや、少佐らしき人物に問い詰めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(ええええええぇぇぇぇぇぇぇ!?)

 

 

まさかの、大佐は股間で人を見分けるという奇怪な行為に出たのだ。

 

しかもそれで相手が少佐じゃないことを当てた...。

 

嘘だろ?

 

「とぼけなくてもいい...。騙し通せるとでも思ったか。

 

少佐のことは誰よりもよく知っているからな...。」

 

呆然としている間に、事は進んでおり、目の前の侵入者の正体が何なのか ぼくは気になった。

 

が、

 

カチッ

 

と、ヴォルギン大佐はなんと、目の前の侵入者にホルスターから引き抜いたマカロフ自動拳銃を向けた。

 

「っ。」

 

侵入者も少し動揺したようで、身構える。

 

が、

 

 

 

 

パァンッ パァンッ

 

 

 

二回の乾いた銃声が研究室に響き渡る。

 

「ひぃぃ...くっぁぁ...。」

 

撃たれたのは、ソコロフの方であった。

 

バタッ

 

足を二本とも撃ち抜かれた彼は、その場に倒れ伏した。

 

その時、その隙を見計らったかのように目の前の侵入者...おそらくヴォルギン大佐が言っていたであろう

 

【あの男】が動き出した...。

 

 

 

 

 



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