幼馴染みがゲームを始めたようなので、やってみた (ぼいぼい)
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プロローグ

 ピンポーン

 

 午後5時頃、突如インターホンが鳴った。いつも大体この時間に来る人物に心当たりがある。だけど、念のためにビデオカメラを確認する。すると............

 

『やっほ〜、いつも通りもってきたよ〜』

 

 そこに映っていたのはいつも通りほわほわとした笑顔を浮かべている女子高生、本条楓だった。彼女は僕、佐藤剣也の幼馴染みだ。最近色々あって不登校となった僕に毎日プリントを持ってきて、さらには板書まで見せてくれる。そんな彼女には頭が上がらない。

 

「今日も来てくれたんだ、ありがとう。今開けに行くからちょっと待ってて」

 

『ん、わかった』

 

 すぐに鍵を開けると、お邪魔しますと言ってから戸惑うことなくすぐに家の中へ入っていって、僕の部屋へと入っていく。最初は幼馴染みとはいえ同年代の女子を自分の部屋に入れるのは何か恥ずかしかったけど、自分が不登校になった事がそもそもの原因だし我慢していた。それも毎日続けて数ヶ月ともなると流石に慣れた。慣れって怖いね......

 

「今日は.............」

 

 メイプルの話を聞きながら授業の板書を見せて貰って、写真を撮る。さらに、その間に課題を机へと置いていく楓。

 

「今日もありがとう。助かる!」

 

「気にしないで〜。自分がやりたくてやってるんだから。」

 

 その後は、いつも通り楓の話を聞く。すると、珍しく楓の方からゲームの話をしてきた。

 

「そういえば、New World Onlineってゲーム知ってる?」

 

「ああ〜、確か最近発売されたVRMMOだっけ?」

 

「うん、それ。今、中々手に入らないらしいんだけど........」

 

 楽しそうにNWO(New World Onlineの略称らしい)のことを話し始める楓。普段、ゲームの話を彼女の方からすることが殆ど無いのに、そういった話をするって事は.......

 

「楓がゲームの話するのって珍しいね。もしかして、始めたの?」

 

「流石、剣也。バレバレか〜」

 

「でも、楓が自分からそういう物をやろうって言ってるイメージ無いけど、どうしたの?」

 

「えっと、最初は友達にやってみようって言われたからだったんだけど、やってみたら楽しくなっちゃって...........」

 

「それでドップリはまったって感じなんだ。」

 

「うぅ..........恥ずかしながら、その通りなんだよね。あはは.......」

 

「確かに、そういうのは友達と一緒にやると楽しいよね。」

 

「えっと、その........やろうって言ってた友達は次のテストまでちゃんと勉強しないとやらせて貰えないないらしくて、今は一人なんだよね。」

 

「あ、そうなんだ。ごめん」

 

「気にしてないし、全然いいよ。でも、もし剣也が出来るなら一緒にやりたかったんだけど、どう?」

 

「うーん、ちょっと待っててね。」

 

 予想外の答えが返ってきたからすぐに板書の写しを終えて、パソコンを使ってネットでNWOがどういったコンセプトのゲームなのかとそのソフトの入手方法を調べ始めた。その結果、自分が好きな剣と魔法を使うのほほんとした世界であること、明日明後日あたりに始めるならおそらく店舗に並んで買うのが一番いいということが分かった。

 

「なるほど。よし、僕も始めるよ、NWO」

 

「どう?一週間とちょっと後にイベントあるけど、間に合いそう?」

 

「う〜ん、そこは運もあるから何とも言えないけど、多分ある程度育つくらいまでは出来ると思う。無理そうだったら、イベントやらなきゃいいだけだしね。」

 

「それもそうだね。じゃあ、もしログインできる様になったら一緒にやろうね!一応ある程度は助言できる........と思う.........多分......」

 

 徐々に自信が無くなっていっているのか、喋るにつれてどんどん勢いが無くなっていく楓。そんな彼女を見て、一言。

 

「うん、頼りにしているよ、楓。」

 

 そう言っただけで、楓はちょっと元気よさを取り戻した。

 

「うん!」

 

 ちょろ...じゃなくて単純なんだよね、楓って。でも、わかりやすいから助かるし、だからこそ彼女には心を許せているところがあるんだよね。

 

 

「うわ、もうこんな時間!ごめん、勉強もしないといけないしNWOもやりたいからもう帰るね!また明日〜!」

 

 時間を見て驚いた楓はそのまま荷物をまとめて慌てて家に帰っていった。

 

「まぁ、楓らしいか。」

 

 どこか抜けていると言うことは長年のつきあいで分かっている。だから、話しすぎて時間が思っていたより経っていて慌てる彼女の姿を思い返して彼女らしいと思いながら、近くの店舗の中で明日NWOを入荷するのはどこかを探す。

 

「よし、見つけた!」

 

 運良くNWOを明日入荷するところが家の近くにあったため、思わずガッツポーズをしてしまう。そして、そんな自分の行動に気がついて思っていた以上に楓と一緒にゲーム、それも最近かなり人気らしいNWOをやれることにうれしさを感じていることを自覚した。

 そして、夜のうちに買いに行く準備をした。と言っても、せいぜい財布の中にちゃんと買えるだけの現金があるかを確認するくらいだけれども。

 

明日は朝早くに起きてお店の前で待っていないと多分買えない。勿論、開店と同時に入れれば手に入るんだろうけど、直前に行って最初に入れる気がしない。だから、目覚ましをかけて朝早くに起きるつもりだ。

 

「明日、手に入るといいな。違うな、手に入れられるように頑張るぞ!」

 

 次の日、僕は珍しく午前7時に起きて8時半には店の前にいた。そして、ネットでNWOの情報を見ながら時間を潰して開店時には最前列に居た。

 そして、今はそのままソフトを買って家へと帰っているところだ。ここ数ヶ月、学校どころか家から出ることもろくにしていなかったせいで、太陽の光がとても眩しかった。ただ、流石に外に何時間もいたおかげで慣れた。そして、家へと帰った後は、日課をこなす。まず勉強を3時間する。その後に筋トレをしてから身体をほぐして素振りをする。そして、それらが全部終わってからようやくNWOを始められる。ただ、それらを全てこなしてから情報を集めてキャラメイクをどうしようか考える。

 

 そうしているといつも通りの時間(午後5時くらい)に楓がやってきた。

 

『やっほ〜』

 

「空けるからちょっと待ってて!」

 

『はーい。』

 

 昨日よりも少しテンションが高いことが声から分かった楓は首をかしげる。まさか、もう一緒にNWOができるとは思っても居なかったため、思い当たることが無かったからだ。

 

「はい、これ今日の分の板書。後、課題は...........」

 

「今日もありがとう!」

 

「もう、気にしないでって言ってるでしょ〜」

 

「それでも、感謝の気持ちは伝えたいから何度でも言うよ。ありがとう!」

 

「何か今日テンション高いよ?何かあった?」

 

「ははは、流石にばれるか。」

 

 自分でもテンションが高いことは分かっていたため、苦笑いしながらそうなった原因(NWOのソフト)を楓に渡す。

 

「えっ、これって.........えっ?」

 

 流石に予想外だったようで、楓が固まった。

 ドッキリ大成功!だけど、このまま放置するのもな…とりあえず、起きてくれないと。話が進まないし、何よりすぐにでもやってみたいんだ。

 

「おーい、楓さ〜ん大丈夫?」

 

 そう言いながらこういったときのお約束通り、彼女の目の前で手を振る。反応無し。うん、どうやら屍のようだ…….

 って違う、この状況がずっと続くと流石に困る。楓の意識を戻すんだったら……..そうだ!

 

 

プニプニ

 

 彼女の頬を手でつつく。反応無し。じゃあ、仕方ない。恥ずかしいからあまりやりたくないんだけど、彼女の頬を今度はつまんで伸ばす。その後、少し元に戻す。後はこれを繰り返すだけ。しばらく続けていると、彼女に意識が戻ったようで、喋りながら手を掴んできた。ただ、頬を僕がつまんでいるせいで何を言っているのかはよく分からないけど。

 

はしゅかしいかあやえへ(はずかしいからやめて)!」

 

 何を言っているのかは分からないとは行っても大体どうして欲しいのかは分かる。だから、しょうがないと思いながら手を離すと頭をポカポカと叩かれる。

 

「もうっ剣也君のばか!」

 

 しばらくの間、おとなしく叩かれ続けていたけれど、落ち着いてきたのか叩くのをやめた。ようやく何が起こったのかを理解したようだ。

 

「えっと、今日から出来るって言うことだよね?」

 

「うん、ハードの方はもう持ってたし、キャラ作ったらいつでも出来るよ。」

 

「えっ?私が来るまでに時間あったでしょ?やってないの?てっきりもう始めているかと思ってたんだけど。」

 

「今日は午前中がこれ(ソフト)買うだけで結構つぶれちゃって、午後にいつもの日課と勉強終わらせたらすぐに楓が来たんだよ。」

 

「あ〜、なるほど。で、情報は集めたの?いつもやる前にある程度情報集めてるでしょ?」

 

 言ったことは無いはずのことを知られていたっていう事実に顔から血の気が引いたのが分かった。いつ、誰に聞いたんだ?

 

「集めたよ。でも、何でそんなことを楓が知ってるんだ?」

 

「内緒。」

 

 楓に直接問いただすも、内緒と言われてしまった。多分、この事を言った人から口止めされているんだろう。楓は口硬いから、言わせるのは骨が折れる。諦めるか。

 

「それはそうと、これで一緒に遊べるんだ!今日の夜出来そう?」

 

 楓はそう言いながら満面の笑みを見せる。

 楓、その笑顔は反則だよ。

 そう思いながらも、何とか返事を返す。

 

「そ、そうだね。」

 

「じゃあ、今日の夜21時にNWOの中で集合しよ?ある程度はサポートできると思うよ〜。」

 

「わかった。」

 

 その後、少し喋ってから楓は帰って行った。

 

「よし、じゃあNWO内で集合するまでには時間があるね。早めに夕ご飯食べてNWOにログインしよ。」

 

 確かに、さっき楓に言ったことは全て本当のことだ。ただ、集合するまでにキャラを作って少し試運転しても問題ないよね?



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1話 初戦闘!

「さて、ログインしよう!」

 

 NWOを早くやろうと意気込む剣也はいつもよりも早くかつ速攻で夜ご飯を食べ終えて、そのままお風呂まで終わらせた。そんな彼は早速NWOにログインすることにした。

 

 自分の使うハードは十数年前に人気があったらしい某VRMMOを題材にしたライトノベルのようにログインするために必要な言葉など無く、ただスイッチを押すだけだったけれど、NWOへの期待から胸が踊っている。そのため、特に意味は無いけれど、あの言葉を言った。

 

「リンク・スタート!」

 

 そう言ってから自分が寝そべったベッドの感触が無くなった時に目を開けると、周りが青一色の特殊な空間だった。事前にネットで見た情報で知っていたから、大して驚かずにそのまま目の前に開いているウィンドウに名前を入力する。

 

キャラクター名;スイケン

 

 名前はちょっと迷ったけど、僕が憧れた剣士から名前の一字を使わせて貰った。彼ぐらい強いプレイヤーになれるといいなって気持ちを込めて。

 名前を入力してOKボタンを押すと、武器選択に移った。

 

 武器の種類は《大剣》《片手剣》《双剣》《杖》などのオーソドックスなものから《大盾》といったようにいろんな種類があった。ただ、彼は迷うこと無く《刀》を選んだ。

 そして、選択したと同時に目の前にステータスを割り振るためのウィンドウが出てきた。そこには、下の方に大きく注意書きがされていた。

 

※割り振ったステータスはやり直すことが出来ません。

 

 実際にあの不殺を目指した剣士のようなプレイスタイルにしたい。そういう考えだったため、剣也は少し考えた。

 

「よし、これでいこう!」

 

ーーーーーーーーーー

 

HP 40/40

MP 12/12

 

【STR 30】

【VIT 5】

【AGI 40】

【DEX 25】

【INT 0】

 

ーーーーーーーーーー

 

 その後、見た目を少し買えることが出来たため、髪を黒色から茶色に変えて、OKボタンを押した。すると、スイケンはそのまま光に包まれて初期設定をする場所から消えていった。

 

◆◇◆◇◆◇

 初期設定を終えたスイケンは第一層の街の中央にある大きな広場に転送された。

 

(おお〜、これは!)

 

 そのグラフィックの良さに驚くスイケン。ただ、初心者装備のためそこまで目立っていなかった。初心者は結構そういった反応をするからだ。

 少しの間、驚きで固まっていたけど我に返ってすぐにステータスを確認した。

 

ーーーーーーーーーー

 

名前;スイケン

 

Lv.1

HP 40/40

MP 12/12

 

【STR 30〈+21〉】

【VIT 5】

【AGI 40】

【DEX 25】

【INT 0】

 

装備

頭【空欄】

体【空欄】

右手【初心者の刀】

左手【】

足【空欄】

靴【空欄】

装飾品【空欄】

   【空欄】

   【空欄】

 

ーーーーーーーーーー

 

「なるほど、空欄になっている箇所は初期装備になるんだね。後は.......正直、実際に体動かした方がいいっぽい。よし、じゃあ楓と会うまでに動きの確認をしよう。確か、一番近い森が難易度低くていいってあったような気がする。とりあえず、一回行ってみよう。」

 

 初期装備から何か少しグレードアップした装備に出来るかと思ったけど、所持金が初期値の3000Gだったため、そこまで魅力的な装備は買えなさそうだった。

 

「そっか.........。しばらくはこのままになるのかな........」

 

 ちょっとでもかっこいい装備にしたいというのは男子としては当然の欲求と言える。だからこそ、そういった物を身につけられるのは当分先と知ったスイケンは当然落ち込んだ。それはもうその場で四つん這いになってしまうくらいには。

 ただ、冷静になってよくよく考えると、イベントの時までには装備を《刀》にしたい。つまり、それまでに片手剣のいい装備を買ったとしても、結局無駄な出費となってしまう可能性が高いのだ。

 

「今は我慢するべき時だね。しょうがない、あの装備は諦めるしか無いかな。」

 

 装備に対しての惹かれる思いを振り切って一番近い森に向かう。

 

「さて、ここいらで少し試してみますか。」

 

 ちょっといくつか試したいことがあったから手始めにモンスターが何か出てこないかと思って大声で気合いを入れた。

 

「よし、かかってこい!」

 

 すると、元々近くに居たのか、近くの茂みからかわいらしい見た目をした兎が出てきた。

 

「最初からこんな小さくて素早そうなモンスター相手に当てるってかなり難しくないか?」

 

 兎は素早いと言う印象を抱かせる。そのため、いくらこっち現実よりも速く動けたとしても素早く動き回るモンスター相手に攻撃が当たるのかが不安になってきたのだ。

 

「最初から気弱になってちゃ駄目だ!いくよ!」

 

 そう言って気合いを入れ直す。

 見た目が可愛いとは言ってもこの兎もモンスターの一種だ、油断していい理由にはならない。そう気を引き締めて兎に向かって走り出す。

 

「はっ!」

 

 走りながらそんなかけ声と共に剣を振るうと、兎がちょうど向かってくるタイミングだったということもあってあっさりと兎を両断する。

 

「えっ?」

 

 思っていたよりも簡単に斬れたから思わず間抜けな声を出してしまう。

 そして、その間に両断された兎はそのまま光となって消えていった。どうやらHPも相当低かったようだ。

 

 ま、まぁ今回はこっちに向かってきてくれていたっていうのもあったし後は結構難易度が低いって書いてあったから多分あの兎もそこまでレベルが高くなかったんじゃないのかな?うーん、もしそうならもうちょっと奥に行ってもいいかも。

 

 そうしてまたモンスターを探そうとしていたけど、その前に確認することがあった。

 

「うーん、兎倒したときにレベルが上がったけど、上がったことで手に入ったステータスポイントが割り振れるようになってるみたいだけど割り振った方がいいのかな?」

 

 普通に考えたら割り振るべきなのかも知れない。ただ、彼は様子見をしようという結論に至った。スキルという存在を知っていたからこその選択だ。スキルによってプレイスタイルは変わる。だからこそ、スキルが多少は手に入った後に割り振るべきだと判断したのだ。

 

「よし、次の目標を見つけにいざ出発!」

 

 そして、更に森の奥の方に入っていくスイケン。そんな彼にモンスターが襲いかかる。先ほど倒した兎は当然のように出てくる。そして兎よりはVIT値が高いのか一撃では倒せなかった長さが身長と同じくらい大きいムカデも時折出てきた。ただ、兎はさっきと同じく一撃で、ムカデも二回ほど攻撃すれば倒せたため、そこまで苦戦することは無かった。

 

 順風満帆に行くかと思われたけれど、気がついたときには結構森の奥へと足を踏み入れていた。そのため、今までのモンスターよりも強いものと対峙することになっていた。

 

「うわぁ.......。あれ絶対簡単には倒せないでしょ。」

 

 スイケンの視線の先にあるのは、現実ではあり得ないほどに大きな蜂だった。救いがあるとすれば、リアルな感じでは無くてかわいらしい見た目をしていることくらいか。

 

「これは逃げないとヤバいでしょ!ってうわ、あぶな!」

 

 紫色の液体(多分毒)を後ろから掛けられそうになってそんな情けないことを言いながら森の中を逃げ回るスイケン。

 AGIの値がそこそこ高かったせいで逃げ始めたときは時々足が追いつかなくてこけたり思想になっていたけれど少し経つと慣れてきたのか軽快に森の中を走り回るようになった。

 速さでは蜂を振り切っていたスイケンだけど、今もなお結構大きな声を上げながら走っている。すると、当然のように周りに居るモンスターは反応して彼を追いかける。しかも、追いかけられる多さが何故か尋常じゃ無く多いのだ。反応するモンスターが少なければ一体ずつ一撃で倒せるのだけれども、流石に多対一となると少しずつ倒しながら何とか逃げ切らないと数の暴力で死んでしまう。

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

 結果、多くのモンスターに追いかけられて大声を上げながら倒し倒し逃げて、その声によってまたモンスターにおいかけられるという無限ループが成り立つかに思われた。しかし、この無限ループはスイケンがいくつかのスキルを習得したことによって終わりを告げる。

 

《スキル【挑発】【極限集中】を獲得しました》

 

 そのような音声が頭の中に流れる。

 この状況を打開できるスキルであることを祈って逃げながら確認する。

 

【挑発】

 モンスターの注意を一点に引き寄せる。三分後に再使用可能。

取得条件

 十体以上のモンスターの注意を一度に奪うこと。アイテム使用可

 

【極限集中】

 30秒間自分の思考速度を2倍にする。効果終了後から1分後に再使用可能。

取得条件

 30分以上一つのことに集中すること

 

 よし、このスキルならいけるかも!

 【極限集中】の効果を理解してそう思ってこのスキルを使うと同時に反転してモンスターも群れに突っ込む。

 

「【極限集中】!うぉぉぉぉ!」

 

 スキルを発動した瞬間、時間がゆっくりになった感覚が訪れた。少し驚くが、そのままモンスターの中でも一撃で倒せそうな所を狙って一撃一撃をしっかりと入れていく。その結果、彼を追いかけていた全てのモンスターを効果時間ギリギリの30秒で倒すことが出来た。

 

「ふぅ、ようやく終わった........」

 

 《スキル【刀の心得 Ⅰ】を取得しました》

 

 十数体との追いかけっこを体験して流石に疲れたスイケンはスキルの確認も後回しにしてその場に座り込みながらウィンドウを開いて時間を確認する。そうすると、そこに表示されていたのは

 

                     20:50

 

 という数字だった。見た瞬間、楓との約束を思い出して青ざめていく顔。

 

「やっば!遅れたら流石に怒られる!」

 

 すぐにマップを見て全速力で街まで戻っていく。途中で行く手を遮ったモンスターは全て彼の一撃で光となっていった。その甲斐あって、ギリギリ一分前には約束していた場所に着いた。

 

「ふぅ、何とか戻れた.........間に合ったよね?」

 

 ここはゲームの中。だから、特に汗が出ているとかそう言ったわけでは無いけれども結構息が切れているのを見てメイプルーー楓は苦笑いをしながらへんじをする。

 

「あ、あはは、間に合ってるけどもう疲れてるみたいだね。何があったかは分からないけど、お疲れさま。」

 

「うん、そっちはこれから夜寝る直前までNWOやってても大丈夫?こっちは大丈だけど......」

 

「うん!頑張ってやらなきゃ行けないこと全部終わらせてきたから!」

 

 そう言いながら勝ち誇ったような顔をしつつ力こぶを作るポーズをする楓。そんな彼女の意気込みにはこっちも答えないとね!

 

「よし、じゃあ今日はパーティ組んで眠くなるまでやる?」

 

「うん、あっそうだ、忘れる前にフレンド登録しておこう?」

 

「忘れてた。しておいたほうがいいね。」

 

 すると、すぐに目の前にフレンド申請されたことを表すウィンドウが浮かび上がる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 プレイヤー;メイプルからフレンド申請をされました。申請を受けますか?

            [Yes]   [No]

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「名前、メイプルで合ってる?」

 

「うん。」

 

「じゃあ、申請受けるね。」

 

 一応、メイプルっていう名前のプレイヤーが他のプレイヤーだった場合を考えて楓に聞いてからウィンドウのYesを押した。

 

「えっと、そっちはスイケンっていう名前にしたんだね。」

 

「そう。これからよろしく、メイプル!」

 

「こっちこそよろしく、ケン!」

 

 二人でそう言いながらハイタッチする。

 その音と光景で二人は多くの人から注目された。

 

 うわぁ、周りに居た人たちから結構注目された。慣れてないし結構恥ずかしい..................。



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2話  防御特化って強いんだね

お気に入りをしてくれた方々、ありがとうございます。結構モチベーションになります。


 恥ずかしさからその場をすぐに去ったスイケンたち。メイプルがAGI低くて全然走れなかったからスイケンがメイプルを背中に乗せるというハプニング(そう思っているのはケンの方だけだけど)もあったが、何とかその場から離れられた二人は、恥ずかしさから中々話そうとしなかった。そんな中、最初に口を開いたのはスイケンだった。

 

「メイプルってこのゲーム始めてからどれくらいなの?」

 

 そう、彼女の服装は聞いていたプレイ日数とは不釣り合いだと断言できるほどにトッププレイヤー間溢れる黒を基調として赤のラインが入っている格好いい装備だった。それを不思議に思った彼はまず彼女のプレイ日数から聞いたのだ。

 

「えっと、多分始めてから四日だったと思う。」

 

「えっ、そんな日数でそんな格好いい装備を手に入れたってことだよね?」

 

「う、うん。」

 

「その装備、どうやって手に入れたのか聞いてもいい?出来れば他の人に聞かれなさそうなところがいいんだけど。」

 

 そう言いながら目を輝かせる様子は小さい頃から一緒に居た楓でさえも殆ど見たことが無い興奮っぷりだった。

 

「ん〜、スイケンならいいか。言うから落ち着いて、スイケン。」

 

 ケンを落ち着かせてから当初の予定を変更して宿屋へと行く二人。勿論、入るときにお金はかかったけれどもメイプルからすればそこまでたいした金額では無く、スイケンにとっても先ほどのモンスターとの戦闘でそこそこ稼げていたため、そこまで高いとは感じなかった。

 

「じゃあ、私の装備の説明をするね。この装備は【ユニークシリーズ】って言うらしくて、ダンジョンのボスに挑戦したときに一人で最初に倒せた人が貰える物らしいんだ〜。今の私の装備は全部これだよ〜。」

 

「へぇ〜、それは知らなかった。ってことは、メイプルって一人でダンジョンのボスに勝った(・・・・・・・・・・・・・・・)ってこと!?」

 

「うん、そうだよ。」

 

「うーん、ステータスとスキル構成が気になるけど、今度あるって言ってたイベントで戦うことになるかもしれないし聞かないでおくよ。」

 

「じゃあ、綿の方も聞かない方がいいかな?」

 

「うん、そうだね。パーティで動くならそれでもいいけど、そうなると大盾装備のメイプルの方が対人戦はポイント獲得しづらいだろうから、申し訳なく思えるし、何より...........メイプルの話を聞いていると各自でやった方がいい気がするんだ。まぁ、別にイベントまで一緒にやるんだったら筒抜けになるかもだけど、隠そうと思えば隠せるしお互い詮索はなしってことで。」

 

「わかった。じゃあ、しゅっぱーつ!」

 

「お〜!」

 

 一緒に遊ぶことは決まっていたものの、何をするのかは全く決めていなかった二人。そんな二人はさっきまでスイケンがいた森より少し遠めの森、北の森に行くことに決めた。二人とも、スキルを獲得したいという考えが一致して、更にスイケンにとっては適わない敵が現れたとしても、メイプルが居るため大丈夫で、メイプルにとっては足が速いスイケンに乗せて貰うことで北の森まで行くのにかかる時間が短くてすむというメリットがあったからである。

 

「じゃ、じゃあこのまま行くよ。しっかり捕まっててね。」

 

「はーい。」

 

 メイプルの提案によってスイケンがメイプルを背中に乗せた格好で走ることとなったため、背中に何やら柔らかい物が当たって少し緊張しているスイケン。そんなことを考えているとは思いもよらないメイプルは普通通りだった。

 

「うわぁ、速い!」

 

「モンスターが出たら任せた!」

 

「わかった〜」

 

 そして、ほぼほぼモンスターに出会うこと無く森に近づいていたメイプル。ただ、そうそう上手くいくはずも無く、行く手を狼の群れが遮った。

 

「メイプル、対処できそう?」

 

「そのまま走り続けて大丈夫だよ。」

 

「わかった、信じるよ!」

 

「【パラライズシャウト】!」

 

 メイプルがスキルを発動すると、目の前の狼たちがばたばたと倒れていく。その倒れた狼たちに対して大盾を触れさせると、何故か狼たちが光となって消えていく。

 

「うわぁ、メイプルって思っていたより強いんだね。」

 

 その言葉を聞いて誇らしげに胸を張るメイプル。まぁ、それで落っこちそうになって慌てていたから威厳とかは全くなかったけれど。

 

「着いたよ。」

 

「ありがと〜。よし、頑張るぞ〜!」

 

 意気込んでいるメイプルに対して、スイケンはある提案をする。

 

「メイプルの強さを見て思ったんだ、今の僕じゃ足手まといだって。」

 

「でも、一緒にやるって.........」

 

「うん、そうだね。でも、メイプルも試したいことあるんでしょ?先にスキルとかを手に入れてからの方がいいんじゃない?僕も、イベントに向けてスキルを色々取りたいし。」

 

「う〜ん.........」

 

 メイプルは少し迷った後、僕の提案を受け入れてくれた。

 

「じゃあ、私はこっちに行ってるね。スイケンも気をつけて!もし、危なくなったらメッセージで呼んでくれたら駆けつけるから!」

 

「わかった。自分はじゃあメイプルとは反対方向に行こうかな。また後で!」

 

 そう言いながら、メイプルとは分かれて森の中へと入っていく。

 

「うわぁ、これは面倒くさいね........」

 

 森に入って最初に遭遇したのは、爆発するテントウムシだった。倒そうと思って近づいたら爆発したから、今はメイプルに『爆発するテントウムシの対処無理っぽいから逃げながらそっちに行こうと思う。』と連絡してメイプルの方に逃げている最中だ。遠距離で攻撃できる手段を持たない自分にとってそういう斬ったときにダメージを与えてくるタイプの敵は相性が悪すぎるんだっていうことを知った。これは結構いい収穫だ、ここに行こうと言ってくれたメイプルには感謝しないと。

 

 考え事をしているケンの目の前にゴブリンが2体現れた。

 

 ただ、ゴブリンであれば倒せるだろうと思ったため、そのまま走る。

 

「【極限集中】!」

 

 もちろん、一撃で倒すためにスキルを使うのも忘れない。

 

「ふっ!」

 

 そして、ちょうどゴブリン達の間に空間が出来たのでそこに飛び込んで首の位置で2回転する。すると、ゴブリン達はそのまま光となって消えていった。

 

《レベルが上がりました。割り振れるステータスポイントが増えました。》

 

「よし!って立ち止まってられない!速くメイプルと合流しないと!」

 

 立ち止まると爆発するテントウムシに追いつかれる。そのことを思い出したスイケンはまた走り出す。そして、フレンド登録したことでマップに表示されているメイプルの所に向かってひたすら走る。何度かゴブリンに出会ったけれども、数が少ないと言うこともあって十数秒で片をつけてそのまままた走って行く。そして、逃げ始めてから10分程走り続けて辿りついたスイケンはそこで衝撃的な光景を目にした。

 

「うーん、パチパチしてて何かお菓子みたい〜。でも、見た目昆虫だし、ちょっと抵抗あるなぁ。あっ、前に毒竜も食べてたし今更かな........」

 

 メイプルが爆発するテントウムシを麻痺させて、食べていた(・・・・・)。あまりの衝撃に、棒立ちで固まってしまう。しかし、すぐに復活して声をかけた。

 

「え〜っと、メイプル?」

 

()ふいへん(スイケン)てんほうふひはらはおふぇるはら(テントウムシなら倒せるから)、任せて!」

 

「う、うん。よろしく。」

 

「【パラライズシャウト】!」

 

 腰に差してある短剣を鞘から抜いて、鞘に戻すときのキンッという甲高い音と共にスキルを発動させるメイプル。すると、追いかけてきていたテントウムシ達がばたばたと倒れていった。そして、麻痺したテントウムシ達の方へ行くと、さっきと同じく食べていく。

 

「えぇ.............」

 

 テントウムシを食べる彼女を見て信じられないと思うスイケン。ただ、そのまま呆れ続けると言うことは状況が許さなかった。

 元々、スイケンがメイプルの所まで辿りついたときには既に近くにゴブリンの群れがいた。そして、さっきのメイプルが上げた声に反応したのか彼らはスイケンとメイプルの方へと一気に押し寄せた。

 

 ただ、この時は見栄を張りたかったのとメイプルがいるという安心感から、恐らく普段だったら言わないようなことを言ってしまった。

 

「メイプル、一回任せてくれないかな?いつまでもメイプルにおんぶにだっこは嫌だからさ。」 

 

わはっか(わかった)でほ(でも)あぶなふなったはこっひもはるはら(あぶなくなったらこっちもやるから)!」

 

「食べてから言って、わからないから.........」

 

「ん。」

 

 そんなやりとりの後、ケンはゴブリンの群れの中へと突っ込んでいく。

 

「【極限集中】!はぁぁぁぁ!」

 

 勿論、動きが早くなるわけでも無いけれども、首を出来るだけ最小の動きで斬っていく。本来、いくら急所である首を斬ったからと言ってスイケンのステータスは初期設定の時以降一切割り振っていないため、どうしても一撃で倒すことは出来ないはずだった、さっきまでは(・・・・・・)。実は、先ほど数回起こったゴブリンとの戦闘の時にスキル【刀の心得 Ⅰ】【急所への一撃】を獲得していた。

 

【刀の心得 Ⅰ】

 刀を装備時にDEXを1%上げる。

取得条件

 刀を用いて一定時間内に敵を一定数倒すこと

 

【急所への一撃】

 急所への攻撃時、STRを3倍にする。デメリット;急所以外に攻撃した場合、10秒間AGIが1/2になる。

取得条件

 一定時間以内に倒した敵の数が一定数以上かつすべて急所に当てていること

 

 これらのスキルによって、ゴブリン程度の敵であれば急所に当たれば一撃で倒せるようになっていた。勿論、AGIが高いわけでは無いため首を斬る前にゴブリンが攻撃してくることもあった。そのため、何度か攻撃が当たりそうになったけれども【極限集中】のおかげでそれも見えていたため、ゴブリンからの攻撃は全て紙一重で避けていった。その結果、ゴブリン十数体を一人で倒すことに成功した。

 

「お疲れ〜」

 

「倒せて良かった.....」

 

 そう言いながら、二人はハイタッチをする。その後、二人はすぐにスキルを手に入れたのか確認する。

 

「スイケンの方は新しいスキルあった?」

 

「無かった。そっちはどう?さっきモンスターを食べていたみたいだけど.......」

 

「う〜ん、まだ新しいスキルは無い、かな。」

 

 そして、一通りお互いに手に入れたいスキルの確認をした後にケンの方から提案をする。

 

「あのさ、僕ははゴブリンと戦う方がいい。それで、メイプルはバクハツテントウを倒せればいいんだよね?だったらさ、二人で別々に動くんじゃ無くて、二人一緒に動いて、バクハツテントウはメイプルが、ゴブリンは僕が倒すっていう感じでやらない?」

 

「いいよ〜!」

 

 そうして、結局二人一緒に動くことになった。

 



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3話 限界までやるのは普通?

「うーん、何かいい方法は無いかな?」

 

 二人で移動することとなったスイケンとメイプル。そうすると、どうしてもAGIの差というのは出てきてしまう。かといって背負った状態からすぐに二人が戦闘体勢に移れるかと言えばそれも無理である。そのため、二人は悩んでいた。

 

「あっ、そうだ!」

 

 どうやら、メイプルが何かを思いついたようだ。ただ、何故かスイケンは嫌な予感がした。

 

「スイケンはバクハツテントウから逃げてたよね。ってことは、ある程度AGIもあるってことでいい?」

 

「うん。少なくとも、爆発するテントウムシやゴブリンくらいだったら逃げ切れる自信あるよ。」

 

「じゃあ、こういうのはどう?」

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 メイプルの案を実行しているスイケン達。そんな彼らの後ろを追いかけているのは百数匹のテントウムシと数十匹のゴブリン(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)だった。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 メイプルの立てた作戦とは、ケンのAGIで森の中を走り回って、その時にメイプルが【挑発】を使うことで森に居るモンスターを大量に引きつけ、ある程度集まったらゴブリンをスイケンが倒してから残ったバクハツテントウをメイプルが倒すという作戦だった。

 

「もうこうなったらやけだ!やってみるしかない!モンスタートレインはしたくないし」

 

 そう言いながらメイプルを下ろすスイケン。

 

「よ〜し、頑張ろ〜!」

 

 メイプルのそのかけ声と共に動き出すスイケンとモンスターの集団。戦いの火ぶたが切って落とされた。

 

 【極限集中】を使ってゴブリンを斬って斬って斬り続ける。その全てが急所に入ることによって、【急所への一撃】の効果が発動して一撃で倒していく。本来、これだけの大群を一人で相手取る場合だと普通はどうしても攻撃を受けてしまう。しかし、スキルと言うよりも彼が元々持っていた才能がここで発揮される。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

 端から見ていたメイプルはその光景を信じられなかった。ゴブリン達に群がられても一体一体的確に急所に攻撃を入れて、攻撃されそうになると紙一重のところで避けて、避けると同時に一撃で倒す。とても普段接する運動音痴の剣也とは全くの別人に見えてしまうほどスイケンの動きは洗練されていた。

 

「何とか終わった.................。メイプル、後は....任せた..............」

 

 ゴブリンは全て倒したものの、そう言いながら、倒れていくスイケン。意識が失われていく彼の頭にスキルを取得したというメッセージが流れていたが、気がつくこと無くそのまま意識を手放した。

 

 スイケンは知らないことだったが、VRゲームに慣れていない人が速い動きを続けると脳に負荷がかかって脳に疲労がたまる。今回は、限界まで脳を酷使したため、気が緩んだ瞬間にその疲れが一気に押し寄せてきて気絶したのだ。

 

◆◇◆◇◆◇

「......きて!起きて、スイケン!」

 

 メイプルの泣きかけの声で起こされた。

 

「ん?たしか、僕はゴブリンと戦って..........、そうだ!メイプル、テントウムシは?」

 

「もう全部私が倒したよ。それより、もう!びっくりさせないでよ!」

 

「ごめんごめん、まさか倒れるとは思わなかったんだよ。」

 

「次からは無茶しないこと!いい?」

 

「元はと言えば、メイプルが言い出したことじゃんか..........」

 

「い・い?」

 

 メイプルの笑顔が怖い..........

 そう思ったスイケンはすぐに頷いた。ここで頷いておかないと後で大変なことになると本能が判断したためだ。そして、メイプルからこんなやり方はもうしないと言われた。そして、もうこの話題は終わりだというように話題をそらした。

 

「そういえば、スイケンは新しいスキルあった?」

 

 メイプルに言われて、新しいスキルが手に入ったのかを確認していないことに気がついた。そのため、すぐに確認するとまた新しいスキルを獲得していた。

 

【人斬り】

 人型のモンスターまたはプレイヤーに攻撃する際、AGIとSTRが1.5倍になる。

取得条件

 人型のモンスターを一定時間に一定数急所に攻撃を当てて一撃で倒すこと

 

「何か、どんどんPvP特化になってる気がする...........」

 

「新しいスキルあったんだ!今日はここまでにする?」

 

「メイプルがいいなら僕はいいよ。」

 

 スイケンはそのまま、街までメイプルを背負っていった。

 

 メイプルがログアウトした後、スイケンはスキルを獲得するためにスキルショップへ向かう、そのつもりだった。

 

「そういえば、スキルショップってどこ?」

 

 そう、彼はネットで調べたときにスキルショップという存在を知っていた。ただ、他にも調べることがあったということもあるが、どこにあるのかを調べることを失念していたのだ。流石に、場所を知らないのであれば探し当てるまでには結構時間がかかってしまう。そうなるのは避けたかった。だから、近くを通るプレイヤーに声をかけることにした。

 出来れば、生産職のプレイヤーと近づきたい。装備を作れるプレイヤーがフレンドにいるっていうのは後々得になることも多いし、何より自分の思った通りの装備が作れるのはでかいからね。

 そう思いながら探していると、装備が結構良いプレイヤーが居たため、声をかけてみる。

 

「すみません!少しお時間いいですか?」

 

「ん、俺か?いいぞ。」

 

 声をかけたのは、暗めの赤色一色の装備に身を固めた大盾使い。自分よりもちょっと背が高くて体もがっしりとしている。

 

「えっと、その大盾格好いいですよね。それって生産職のプレイヤーに作ってもらったんですか?」

 

「そうだ。この大盾は俺の知り合いのプレイヤーに作ってもらったんだが、どうかしたのか?」

 

「格好いいですね!まるでメイプルの大盾っ..........。」

 

 思わず、メイプルの大盾と比べて、メイプルのことを口にしてしまった。迂闊だと思って口をつぐむ。でも...........

 

「メイプルちゃん、どうやらいい装備を手に入れられたみたいだな。助言したのとはまた違った感じだったけど..........」

 

 むしろ、メイプルのことを元から知っていたようで、何やら保護者のような発言をする。そこで、自己紹介をし忘れていたことに気がついた。

 

「そういえば、自己紹介してませんでしたね。僕の名前はスイケン、刀使いです。今日、メイプルとパーティ組んでました。」

 

「そういえばそうだな。俺の名前はクロム、大盾使いだ。この前メイプルちゃんとはフレンド登録したんだぜ。そういえば、あの子はどこか抜けてないか?初対面の俺の言うことを完全に信じてほいほいと着いてきたから結構驚いたぞ。」

 

「ああ〜、それが彼女の長所でもあるので、何とも言えないです。」

 

「そうか。」

 

「はい。それで、その装備を作った生産職の方に会ってみたいんですが、会わせて貰えませんか?」

 

 本題からそれていたので、本題を切り出す。

 

「いいぞ。」

 

 こうして、スイケン達はクロムの知り合いの生産職プレイヤーのお店へと行くことになった。

 

◆◇◆◇◆◇

 

 クロムに連れられてやってきたのは、少し裏路地にある小さなお店だった。

 

「ここですか?」

 

「そうだ、入るぞ。」

 

 クロムさんが入ったため、少し遅れてお店の中に入った。

 すると、カウンターに青い髪と瞳の女性が居た。

 

「いらっしゃいませ!ってクロムじゃない。どうしたの?この前みたいにまた誰かを衝動的に連れてきたの?」

 

「ちげーよ!確かに連れてきたけど、むしろ生産職の人を紹介してくれって言うから連れてきただけだ。」

 

「そう。それで、クロムの後ろにいる子がそうなのかしら?」

 

「は、はい。スイケンと言います。」

 

「まぁ、可愛い(・・・)子ね。」

 

 ん?可愛いって自分のことをさしていってるんだよね?その発言を受けて、自分の格好を再び見る。最近切っていなかったため長くなっていた髪、中性的だと言われる顔立ち、運動をしないことによって痩せ細った身体。

 あっ、うん。これは間違われている可能性が高いな。

 

「すみません、勘違いしていると思うんですが、僕、男です。」

 

「「えっ!」」

 

 二人して驚かれた。イズさんは会ったばかりだからしょうが無いとしても、ここに来るまでに少し喋っていたクロムさんにもまさか間違われていたとは.............。

 少しショックを受けていたけれど、このままだと3人が無言の時間がただ過ぎていくだけだ。何か話題を、と思っていたときにイズさんから救いの手がさしのべられた。

 

「そ、それは置いておくとして、クロムに紹介してって言ったってことは、装備を作って欲しいということかしら?」

 

「いえいえ、まだ全然必要なお金が足りないので、必要な素材を教えて欲しいのと後は生産職の方と知り合っておきたかったからですね。」

 

「なるほど、そこはしっかりと調べているのね。そういえば、クロムとはフレンド登録したのよね?」

 

「は、はい。」

 

「なら、私ともしましょう!そうした方がメッセージでやりとりできるようになるしいいとおもうんだけど、どう?」

 

「こちらからお願いしたいくらいです!是非お願いします!」

 

 こうして、イズともフレンド登録をすることになった。そして、回り道に回り道を重ねたけれども、今一番聞きたかったことを改めて2人に聞いてみる。

 

「あの、そういえばスキルショップってどこにありますか?探してたんですが、近くには特に見当たらなかったので教えていただけると嬉しいです。」

 

「あら、本当に初心者なのね。えっと、それなら...........」

 

 こうして、スキルショップの場所は教えて貰えた。そのまま、イズさんのお店をでて教えてもらった通りのスキルショップに行く。

 そして、スキルショップでいくつか必要そうなスキルを取ってそのままログアウトした。

 

 時間はスイケンが街に戻る時まで遡る。その頃、メイプルが話題になっている掲示板で彼も取り上げられていた。

 

 

【NWO】ヤバイ大盾見つけた

 

568 名前;名無しの魔法使い

 さっき、北の森でメイプルちゃんが初心者装備の美少女に背負われた状態でモンスターを大量に引きつけて、それから殲滅してた。

 

569 名前;名無しの双剣使い

 ん?

 

570 名前;名無しの大剣使い

 は?

 

571 名前;名無しの大盾使い

 あ、多分それ俺も見たわ。二人の後を大量のゴブリンとバクハツテントウがぞろぞろと追いかけているのを見かけたときは思わず加勢しようかと思ったぞ。

 

572 名前;名無しの双剣使い

 結局二人で倒した感じ?

 

573 名前;名無しの大盾使い

 いや、ゴブリンは初心者の方が全部倒したな。ぱっと見50体くらいはいたと思うが、攻撃は全く受けてなかった。で、バクハツテントウの方をメイプルちゃんが倒していたな

 

574 名前;名無しの弓使い

 メイプルちゃんの友達が同じように始めたとか?

 

メイプルちゃん「極振りすると強いよ」

少女「じゃあそうしてみる」

  みたいな感じで

 

575 名前;名無しの大盾使い

 メイプルちゃんが二人とかになったら、もう手がつけられんだろw

 

576 名前;名無しの双剣使い

 もう一回よく読めよ、極振りだとしたら恐らくAGI極振りかDEX極振りだ。ただ、あまり強そうには見えないんだよな 

 

577 名前;名無しの大盾使い

 極振りだったとしても、初心者装備をしているようなレベルでゴブリンの攻撃を見切って紙一重に避けるなんて芸当出来るか?

 

578 名前;名無しの双剣使い

 出来る奴は人やめてるんじゃね?自分はそこそこAGIに振ってるけどそんなこと出来ないぞ

 

579 名前;名無しの大剣使い

 まぁ、来週のイベントですぐに分かるさ。それまではメイプルちゃん同様見守るということでいいか?

 

580 名前;名無しの双剣使い

 OK!

 

581 名前;名無しの大盾使い

 OK!

 

582 名前;名無しの弓使い

 OK!

 

583 名前;名無しの魔法使い

 OK!

 

      ・

      ・

      ・

      ・

 

832 名前:名無しの大盾使い

 さっき言ってた美少女とフレンド登録した

 プレイヤー名はスイケンで、本人が今目の前に居る

 一応許可は取ったから気にするな

 

 

 

 ちなみに、性別的には少女じゃ無くて少年だったぞ

 

832 名前:名無しの弓使い

 お前、メイプルちゃんだけじゃなくて他にも美少女とフレンド登録したのかよ、許せん

 

 えっ、つまり男の()だってこと?

 

832 名前:名無しの魔法使い

 えっ、あの見た目で男って.....嘘だろ

 

832 名前:名無しの大盾使い

 いや、本人は男って言っていたぞ

 自分も正直疑わしいと思うがな

 

 まぁ、彼(彼女)も初心者らしいし、見守って行くのは変わらないままでいいか?

 

832 名前:名無しの大剣使い

 そうだな

 

832 名前:名無しの弓使い

 そうだな

 

832 名前:名無しの魔法使い

 そうだな

 

832 名前:名無しの双剣使い

 そうだな

 

 

----------------------------------------------------------

名前;スイケン

 

Lv.12

HP 40/40

MP 12/12

 

【STR 30〈+24〉】

【VIT 5】

【AGI 40】

【DEX 25】

【INT 0】

 

装備

頭【空欄】

体【空欄】

右手【初心者の刀】

左手【】

足【空欄】

靴【空欄】

装飾品【空欄】

   【空欄】

   【空欄】

 

スキル

 【挑発】【極限集中】【刀の心得 Ⅱ】【急所への一撃】【人斬り】【連撃強化小】【筋力強化小】



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4話 どうしよう、普通のスキルが全然とれていない

 次の日、午前中にやることを全部終わらせた剣也は昼ごはんを食べた後、すぐにNWOにログインした。

 

「よし、今日も頑張るぞ!昨日はスキルを取ってからすぐにログアウトしちゃったから、今日は取ったスキルの確認して、ソロで行けそうだったらちょっといろんな所に行ってみますか!」

 

 一晩寝て元気もやる気も回復したスイケンは、まず昨日メイプルと一緒に行った森に行くことを決めた。

 

「さ〜て、どこかに練習にちょうどいい敵出てこないかな〜」

 

 平日の昼間ともなると流石にログインしているプレイヤーはかなり少なかったため、周りの目を気にする必要が無かった。だから、思いっきりスキルを試すことができる。そして、一番はスキル【体術】を取得することだった。ただ、その前に昨日獲得したスキルの効果の確認から入る。効果を見ていても実際に使ったときの感覚が分かっていないと場合によっては致命傷になり得る。

 

「よし、ここら辺でいいだろ。【挑発】!」

 

 昨日、実は逃げているときにメイプルの居たときに近づけば近づくほどゴブリンが多くなっていた。この事を考えると恐らく場所によってモンスターの出現する種類に偏りがあることが推測できた。だから、昨日メイプルと合流した当たりで【挑発】を使ってみる。すると、思っていた通り現れたのはゴブリンのみだった。ただ、ログインしているプレイヤーが少ないと言うことも関係あるのか現れた数は十数体と結構多かった。

 

「このくらいだったら、スキルの調整にはちょうどいいか。【極限集中】!」

 

 【挑発】を使って集めたゴブリン達の首を例外なく斬っていく。そして、同じことを繰り返す。斬って斬って斬って..........。斬った数を数えるのをやめてから一時間が経った。その結果.........

 

【刀の心得 Ⅱ】→【刀の心得 Ⅲ】

 

となった。また、新しいスキルも手に入れた。

 

急所判明(ウィークネス)

 急所判定が出る部分が赤く見える

取得条件

 一定時間内に一定数の敵を急所に当てて倒すこと

 

【一刀に懸ける思い】

 刀による一撃目のときにSTRを1.5倍にする。デメリット;連続で斬る時、二撃目以降はDEXが半減する。

取得条件

 Lv15になるまで刀しか使わず、一定時間内に一定数の敵を一撃で倒すこと

 

【切断 Ⅰ】

 近距離攻撃時にSTRを2%上げる

取得条件

 近距離攻撃で一定時間以内に一定数の敵を倒すこと

 

「よし、これくらいピーキーな性能のスキルの方が都合がいい。このゲームにおいて自分はまだまだ初心者なんだから、少しはこういうスキルが無いとイベントで勝ち上がれないだろうし。」

 

 もう既にプレイヤースキルによって初心者とは言えなくなりつつあるスイケンだが、レベルやで考えるとまだまだ初心者。そのため、彼自身はまだ初心者だと思っていた。

 

「まずは、スキルの確認だな。【挑発】!」

 

 スキルを確認するためにまた【挑発】を使う。そして現れたゴブリンをまた斬っていく。その結果、急所がわかりやすくなったことでゴブリンはスイケンの敵では無くなった。そのことを確認した彼は、次にやりたいことのために刀を鞘の中に入れた。

 

「よーし、じゃあ次は【体術】を習得しよう!」

 

 武器を使わずにダメージを与えられれば【体術】が習得できるんじゃないのかと考えて、素手でゴブリンと戦うつもりなのだ。

 

「とりあえず、攻撃する場所は【弱点判明】で狙えるから、とりあえずDEXとAGIを少し上げとこう。」

 

 流石に、数体のゴブリンが相手だと初期のステータスで殴ったらタコ殴りにされそうだから、今までのレベルアップの分のステータスポイント40の内いくらか使ってからにすることにした。

 

 DEX 25→30

 AGI 40→50

 (残りステータスポイント25)

 

「準備は出来た。【挑発】!【極限集中】!さぁ、来い!」

 

 【挑発】によって現れたゴブリン相手に素手で立ち向かうスイケン。【極限集中】によって考えることに割ける時間が増えて【弱点判明】によって弱点をピンポイントで狙えるようになったので、さっき上げたばかりのDEXとAGIを使って殴っていくと思っていたよりも速く数体倒せた。すると、想像通りスキルを取得した。

 

《スキル【身体捌き】を習得しました。》

 

「よし!って、え、【体術】じゃないの?」

 

 本来、スイケンのレベルでスキルなしの状態ではゴブリンを素手で倒すなどと言うことは不可能の筈だった。そのため、【体術】はオブジェクトを一定回数殴れば獲得できるものだった。しかし、それよりも遙かに難易度の高い事を成し遂げてしまったため、【体術】よりも強力なスキルを獲得することになってしまった。

 

【身体捌き Ⅰ】

 武器を装備していないときにAGI、DEXが2倍になる。また、敵が近距離攻撃のスキルを使う時に1秒前に攻撃の予測線が見えるようになる。

取得条件

 武器、スキルを使わずに敵を倒すこと

 

 スキルの詳細を見て思った。これ、プレイヤースキルが必須なスキルだと。ただ、そこに関しては他のスキルを取ることで補うことも可能だろうと思い直して、新たなスキルを求めに違う場所へと向かうことにした。ただ、理想的な敵がどこに居るのかは分からないため、一度ログアウトして情報を集めようと思っていた。だけど、このゲームはインターネットに繋がっていると言うことを今更ながらに思い出した。

 

「なるほど。西の草原を越えたところにある廃墟で剣を持った素早いスケルトンと盾を持った頑丈なスケルトンが出てくるのか。結構レベルも高いらしいし、そこでレベル上げとスキルを取ることを同時進行でやっていこうか。」

 

 その日の午後、西の廃墟で1人スケルトン達相手に刀を振るうスイケンの姿が目撃された。目撃したプレイヤーによると、彼の戦闘時の姿は視認できるものであるはずなのにもかかわらず気がついたらスケルトン達が倒れていたらしい。

 

 

 そして、夜になり、メイプルがログインした。

 彼と遊ぶ約束を今日もした彼女は前と同じ場所、同じ時間で待っていた。

 

「剣也、ーーあっこっちだとスイケンだっけ。どんな感じになったのかな?今日は午前中からやってたって言ってたし楽しみだな〜」

 

 彼女は現実であったときに剣也にどんな感じになったのか聞いてみたものの、NWOにログインしてからのお楽しみだと言われていたため、わくわくしていた。

 すると、すぐにスイケンがやってきた。

 

「ごめん、少し待たせちゃったかな?」

 

「ううん、さっきログインしたばかりだから大丈夫〜」

 

「そう、それはよかった。」

 

「今日はどうする?昨日のところに行く?」

 

「うーん、今日一日でかなりレベルも上がったし、自分の装備を作りたいんだよね。」

 

「じゃあ、私の知り合いに生産職の人居るから、会いに行こうよ!」

 

「えっ、自分の知り合いの人に聞けばいいかなって.......って聞いてないや。」

 

 スイケンを知り合いのイズ(・・)に会わせようと思って彼の手を引っ張るメイプル。そんな彼女に彼の言葉は聞こえていなかった。

 そのままメイプルの速度に合わせておとなしく連れて行かれることにしたスイケンだったが、メイプルがイズの店の前で止まったときに気がついた。メイプルの言っていた知り合いの生産職の人はイズさんだということに。

 

「こんばんは!」

 

 そうこうしているうちにさっさと入っていくメイプル。そして、彼女の後に続いて慌てて入っていくスイケン。

 

「こんばんは」

 

「あら、メイプルちゃん。こんばんは。どうしたのかしら?..............あら、スイケン君も一緒だったのね。2人はもしかして知り合いだったりするのかしら?」

 

「そうですけど、イズさんもスイケンのこと知ってたんですか?」

 

「そうよ」

 

「スイケン、何で言ってくれなかったの!」

 

「まさか、生産職の人っていうのがイズさんだったなんて思わなかったから。『イズさんっていう生産職の人知ってる?』って聞かれてたら知ってるって答えてたよ。」

 

「あの〜、2人ともいいかしら。」

 

「「はい?」」

 

「何か用事があって来たんじゃないの?」

 

「あっ、そうでした。今日はスイケンの装備についてなんですけど............」

 

 本題からそれていた流れをイズが修正した。それで、用事についてはメイプルが説明したけれども、具体的なことは知らなかったから、結局スイケンが話すこととなった。そして、スイケンの欲しい装備を聞いたイズは...........

 

「..........」

 

 驚きで固まっていた。作れることは知っていたが、使う人がいるとは思えなかったのもだったからだ。

 

「防具からでいいかしら?それだったら、素材さえ持ってきてくれればかなり安く出来るわよ?」

 

「武器の方からに出来ない理由は?」

 

「今度のイベントまでに作って欲しいのよね?そうなると、武器の方はドロップ率とお金のことを考えると厳しいと思うの。」

 

「わかりました。だったら、防具に必要な素材を教えてください。後で、武器の素材の方もメッセージでお願いします。」

 

「わかったわ。」

 

 その後、どんな素材が必要なのかを教えて貰った。

 

「欲しい二日前までには素材持ってきてね?それくらいは時間かかるから。」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「ありがとうございます、イズさん。スイケンがかなり無茶言ったみたいですけど、よろしくお願いします。」

 

「こっちこそ、やりがいのありそうな仕事になりそうで、今から楽しみだわ。」

 

 そう言って、イズさんのお店を出て早速素材を集めに行く。

 しばらくは素材集めになりそうだけれどもそっちの方がメイプルと一緒に遊べそうだし、ちょうどいいや。

 

「そういえば、メイプルは僕の素材集めについてくる?」

 

「行く!もちろん、出来ればスキルとか手に入ると嬉しいけど、スイケンと遊んで楽しみたいし。」

 

「ありがとう。メイプルが素材集めするときに手伝うから、その時は言って。」

 

「わかった。」

 

 そのまま、素材集めをしに西の草原へと向かう2人。その選択が吉と出るか凶と出るか........それはまだ誰も知らなかった。



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5話 素材集めは大変、はっきりわかんだね

 まず、集めたい素材の中でも比較的楽なものから集めていくことにした。スキルは結構充実してきたとはいってもまだ初めて数日。最初からレベルの高い敵と戦うのはキツイと思ったからだ。

 

「よし、メイプル。ちゃんと捕まっていてよ?」

 

「うん、痛くは無いけどスイケンの背中から落ちるのは嫌だからね。」

 

 前、一回手を離して落ちたことがショックだったようだ。ちょっと引きずっていた。だから、少し元気づけてから出発することにした。

 

        ・

        ・

        ・

 

「よし、準備も大丈夫だね。じゃあ、行こう!」

 

「お〜!」

 

 さっそく2人で草原まで向かう。すると、真っ先に目当てのモンスター、緋色の鳥が出てきた。ただ、こっちを見たかと思えば急に逃げ出した(・・・・・)

 

「ちょっ、嘘でしょ!メイプル、この前のアレやるよ!」

 

 アレといっただけだけど、どうやらメイプルには通じたようで、彼女はすぐに背中にしがみついた。

 

「【挑発】!」

 

 しっかりと捕まったことを確認して、走り始める。それと同時にモンスターが追ってくるように【挑発】を使う。

 すると、前回同様何種類かのモンスターが後を追いかけてくる。狙っていた鳥、大きなアルマジロ、手足の長い猿だ。ぱっと見で鳥と猿を自分が、アルマジロをメイプルが請け負うべきだと感じた。メイプルにはそう話して同意は得たから、アルマジロだけ動くのが遅いことを利用してアルマジロだけをなんとか少し後ろにいるようにした。その状況でメイプルを下ろして自分はまっすぐ走る。メイプルとアルマジロと自分が一直線上に並ぶように。

 

「よ〜し、やるよ!」

 

「準備は上々、やりますか!」

 

 2箇所で戦闘が始まった。

 

メイプルside

 

 スイケンからアルマジロと戦うといいって言われたけど、どういうことなんだろう?

 

「うわ!」

 

 ちょっと考え事をしていると、アルマジロが丸まった状態でぶつかってきた。そして、黒い大盾、【闇夜の写】にぶつかって消える。この大盾は、メイプルがこの前バクハツテントウを食べた時に覚えた【悪食(あくじき)】というスキルがスキルスロットに入っているため、触れたあらゆるものを飲み込む。そのため、【悪食】を取得後は普通の大盾のスキルを取るのが厳しくなっていた。ただ、この事をスイケンには言っていなかったことを思い出した。

 

「うん、いい感じ。とりあえず、ちゃちゃっと終わらせよ〜。【パラライズシャウト】!」

 

 周りに居たアルマジロたちを麻痺させてから短刀、新月のスキルスロットに入れたスキルを発動する。

 

「【毒竜(ヒドラ)】!」

 

 すると、毒耐性は持っていなかったのか、一撃で粒子へと変わっていくアルマジロ。そして、残ったのは毒の水たまりだった。

 

「ふぅ、こんな所かな。」

 

 一通り倒し終わったところでスイケンの方を見ると、そっちはまだ結構モンスターが残っていた。一瞬スイケンがどこに居るか分からなかったからやられたんじゃ無いのかという嫌な考えが浮かんだけれども、きちんと居た。しかも、結構余裕そうに攻撃を躱しながら数秒間に一回、猿か鳥が粒子になっている。

 

「へ〜、スイケンも結構強くなったんだ。じゃあ、私も頑張ろう!」

 

 そう言って、【挑発】を使うメイプル。そして、今度はアルマジロだけでなく猿や鳥も一緒に現れるが、【パラライズシャウト】で麻痺させて、そこから【悪食】で飲み込む。それによってMPを溜めることが出来るので、その後にまた【パラライズシャウト】してから【毒竜】をするというループでずっと戦うことになった。

 

 

メイプルside終了

 

 

「いや、多いって!」

 

 この前のゴブリンの時よりはいいと思うけれども、猿と鳥がどちらも十数体ずつくらいの多さで迫ってくる。今までは【極限集中】を使うのが普通だったから、使わずに戦おうと思ったけど、この数は無理無理!

 

「まだ使わないときついんだ、しょうがない。【極限集中】!」

 

 使うことで相手の動きがよく見えるようになる。さらに、新しく手に入れたスキル、【急所判明】のおかげで効率よく倒すことが出来ていった。一分以内には終わらなかったけれど、その一分の間に半数以上倒したから、残りのモンスターを倒すのも楽になった。

 

「よし、これで最後!」

 

 そう言いながら鳥の急所を斬る。斬った鳥が粒子になっていくのを見ながら周りを見る。すると、さっきまで斬っていた猿と鳥の素材が所々落ちていた。それを回収しながらメイプルを置いてきた方を見る。

 

「えぇ...........色々おかしなことになってる..........」

 

 スイケンが見たのは、メイプルが大盾にモンスターを飲み込ませている所だった。ちなみに、メイプルの周りが毒の湖になっているせいで、外からそこに足を踏み入れたモンスターは例外なく粒子に変わっていく。

 

「どんなことをしたら大盾であんなことが出来るようになるんだよ.......」

 

 呆れながらメイプルにメッセージを送った。

 

 ーー戻ってきて貰っていい?また同じことやるから

 

 すると、すぐにこっちへとやってくるメイプル。

 

「スイケンの方も終わったんだね。じゃあ、もう一回いってみよ〜!」

 

 この後、一時間くらいずっと同じことを繰り返した。さすがに疲れたから、素材を回収して街まで戻ってからログアウトした。



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6話 ダンジョンに行こう

遅れてすみませんでしたー!!
授業が始まったのと、久々にPS vitaで遊んでたら書く時間がなかったんです。
内容は薄いかもですが、とりあえずできた分投稿します。

ストック貯めておこ............


 メイプルと一緒に素材を集め始めてから数日が経った。さっきまでモンスター達と戦っていたけれど、素材がイズさんの言っていた量に到達したから今はイズさんのお店にいる。

 

「こんにちは、イズさん。」

 

「あら、スイケン君。もしかして、素材を集め終わったの?」

 

「はい。メイプルにも手伝って貰ったので。」

 

「それでも凄いじゃない!私、イベントに間に合うか分からないと思っていたの。よかったわね。じゃあ、素材を置いてくれる?お金はできあがった後でいいから。」

 

「分かりました。」

 

 そう言って、素材を置くとイズさんが息をのんだ。僕が置いたのは防具の素材だけじゃ無くて武器の素材も一緒に置いたかららしい。

 

「嘘........結構な量だった筈なのに、どうやって?」

 

「メイプルと2人で1つの素材を落とすモンスターを2人で200体くらいは倒したので。」

 

「それでも、時間が足りないはずなんだけどね.......」

 

「それは内緒で。」

 

 少し呆然としつつも、何とか平静を取り戻したイズ。

 

「じゃあ、出来たときにメッセージするわ。その時までに500万G集めておいてね。」

 

「それは大丈夫です、もう持ってますので。それより、」

 

「じゃあ、ダンジョンとかおすすめよ?ダンジョンごとに特徴ありそうだから、自分に合ったダンジョンだとスキル鍛えることにはいいと思うわよ。」

 

 その後、少しの間ダンジョンについて話をしてからお店の外へと出る。

 

「ダンジョン、ね。もしかしたら............」

 

 1人で素材集めをしていたときにダンジョンっぽい所を見つけたし、そこに行こう。

 

 思いついてからすぐに場所を思い出して向かうことにする。道中で少しモンスターに遭遇したけれども、立ち止まることも無く一撃で倒してダンジョン候補の場所へと向かう。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 入り口のドアっぽいところを押してみると道が開けていて、少し奥まで覗き込んでみる。すると、ダンジョンっぽかった。だから中へと入っていくけど、どうも様子がおかしい。

 

 どういうことなんだろう?その時、僕はふと少し前のイズさんの言っていたことを思い出していた。

 

『今見つかっている2つのダンジョン内にはボスの居る部屋に辿りつく前にある程度そのダンジョンに見合ったコンセプトのモンスターが居るらしいの。だから、クリアできるだけの強さがあれば挑戦してみるといいんじゃないかしら?』

 

 そう、今までに見つかった2つのダンジョンとは違うという状況を考えると、ここはダンジョンではない可能性が高くなってくる。ただ、何かがあるのは確実な気がする。流石に何もないのであれば、わざわざ隠されていないだろう。

 少しこのまま進むか迷ったけれども、結局自分で考えたことを信じて進むことにした。

 

 しばらく進むと、罠がたくさん襲ってきた。それも、わかりやすく糸が足下に張ってあったり足で何らかのスイッチを入れたりといった感じでは無く、何故か通ってから一定時間内に発動する罠っぽい。

 

 最初は全く気がつかないまま頭の横から衝撃が走って意識が一瞬飛んだ。意識が戻ってから周りを確認すると、鉄球が複数個転がっていた。気がつかなかったことが悔しくて、次から同じような罠が来たら避けてやると意気込んで一歩踏み出す。その後もそういった神経をすり減らす罠ばかりが仕懸けられていて、ボス部屋らしき部屋に辿りついた頃には疲労が凄い溜まっていた。

 

「よし、次でもう終わりだ.........」

 

 正直もう終わりにしたいところだけど、ここにとどまるとどんな罠が飛んできてもおかしくない。だから、さっさと扉を空けて中に入ることにした。中に入ると同時に扉が音を立てて閉まる。そして、閉まるとスイケンに近い方から遠い方へと徐々に青白い炎が灯っていく。その明かりによって部屋の中央に何か居ることが分かった。

 

『ナニヲシニキタ、ワカキサムライヨ。』

 

 自分たちと同じくらいの身長で刀を持ったスケルトンだ。しかも、今まで斬ったモンスター達とは違って喋っていた。

 これが、ボスモンスターか。

 雰囲気からして強いと分かる。今まで斬ってきたモンスターとは比べものにならないくらいに。それでも、挑戦する価値はある。

 

「あなたに挑みに。」

 

『ナラバ、コレイジョウノモンドウハムヨウデアルナ。カカッテクルガヨイ、ワカクユウカンナサムライヨ。』

 

「言われなくても、そうするつもりだ!」

 

 そう言いながら【弱点判明】で急所がどこかをを見ながらどうするのがいいか考えるも、急所は全てきちんと守られている。つまり、このボスモンスターを倒すためには攻撃することで隙を作らせてその隙を突いて弱点を斬る必要がある。

 

「うーん、だったら.........」

 

 戦略を考えながらお互いに隙を探して円を描く様に移動していく。

 

「コナイナラ、コッチカライクゾ!」

 

 そう言った瞬間、凄い速さで接近してくるスケルトン。接近すると言うより、一瞬で距離を詰められた感じだったけど。

 

「ヤバっ!」

 

 そう言いながらぎりぎり避ける事が出来た。後0.5秒遅かったら間違いなく斬られてていたから本当に間一髪だった。

 あの速さで距離を詰めてくるなら、距離を取ったところで意味はなさそうだ。

 

「遠距離攻撃は元々出来ないし、好都合!行くぞ!」

 

 ちょうど、敵の懐に入った状態だったから刀を振り上げる。だけど、一撃を与えたつもりだったのに手応えが全くなかった。悪寒がして一瞬でその場を離れると、スケルトンが自分の居たところを切り裂いていた。

 

 これって、もしかしてやばい?自分よりも遙かに上の速度で動くって、これももしかしてもっと上のレベルが適正の敵なんじゃ。こうなったら、PSで何とかするか新しいスキルを戦闘中に見つけるしか勝ち目無いじゃん。

 

「ふぅ.........すぅぅ.......」

 

 一度深呼吸をしてから刀を鞘に入れた。それから、目をつぶる。今までも全てを目で把握できない時何度か試してたことだけど、このゲームにはしっかりと足音や風切り音がある。だから、それらの情報から位置を把握できるようになっていれば、むしろ目で追わない分正確な位置を掴むことが出来る。

 

 

 ..........と思っていた時が僕にもありました。うん、速すぎてとてもじゃないけど位置の把握なんて無理!やる前に気づこうよ!結構テンパってるのかな?うーん、どうしよう?勝てる気がしないよ。

 

 流石に何か隙はあるはず。完全に隙が無いボスだったとしたら、運営が意図的にそうするしかないと思うけど、流石にそんなことしないと思うし。

 

 近距離に張り付くことで、出来るだけあの超速攻攻撃を封じながら隙を探っていく。

 

 ん?そういえば、確かに速いけれど力で押してきてるような気がする。これだったら、上手く力を利用して体勢崩せないかな?

 

「ふっ!」

 

 スケルトンが斬りかかってくるのを刀で受け止めるように見せかけて受け流す。

 どうだ?

 これは結構賭けだったけど、上手く体勢が崩せたのか初めて隙を見せた。それを逃さずに一撃を入れる。急所には当たったということもあってスケルトンの上にあるHPバーは今の一撃で3、4割も削れた。スキルの効果でSTRが合計4.5倍になっていたおかげなんだろう。

 

「よし、これなら!」

 

 叫びながら追撃をしようとするけれど、あの神速と言ってもいい速さで逃げられた。一瞬その姿を見失ったけれど、すぐにスケルトンを見つける。目を離した隙にまたあの超速攻をされてHP全損とかになったらバカみたいだし。とはいえ、想像していたよりも早く終わりそうで良かったと思う。

 

「やってやるよ!」

 

 自分を鼓舞するためにも大きな声でそう言う。ただ、結構HPを削ったから行動パターンが変化するのかどうかを探るために少しの間様子を見よう。さっきまでと同じだと思って痛い目を見たくないし。

 

「ナカナカヤルデハナイカ、ワレヲココマデオイツメルコトガデキタノハシヲノゾクトオマエガフタリメダ。」

 

「それはどうも。」

 

「ソノツヨサニケイイヲヒョウシテワレモオウギヲツカウトシヨウ。」

 

 奥義?どんな物かは分からないけれども受けたらまずいだろうことは分かる。何が来るのか......

 そう思った次の瞬間、無数の斬撃が飛んできて視界が埋め尽くされた。

 

 あっ、これは無理だ。そう思うと同時に斬撃が身体を貫いていく。そのまま、意識を失いつつある中、スケルトンが言った。

 

「ツギハサケテミヨ、ワレノコウケイシャヨ」

 

 意味が分からなかったけれど、その意味を考える前に意識が落ちた。




うーん、書いたはいいけれど、このあとどうしよう?全く決めてなかった...........
次の更新は出来るだけ早く出来るように頑張ります


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8話 新スキルと掲示板

遅くなりました............プロットないし、先の展開もうまく思いつかないし、どうしよう?


 閉じていた目を開けると、街に戻っていた。あのダンジョンに挑むにはまだ速かったと言うことなんだろうか?そう思っていると、スキルを習得した。

 

【剣聖の後継者】

 剣聖に挑み、試練を乗り越えることで特殊スキルの一種である《剣技》の中から該当する1つのスキルを取得できる。

取得条件

 ダンジョン《剣聖への挑戦》においてボスである剣聖に最初に強いと認められること。

 

「なるほど、負けイベントだったのか。」

 

 何故あんなに強いのかは分かったけれども、それでも釈然としない思いを抱えながら奥義と言っていた最後の斬撃の嵐をどうすればいいのかを考えた。

 あ〜、【極限集中】がいつでも使えたらな..........さすがに無理だということは分かってるけど。

 そういえば、新しく手に入れたスキルが突破口になる可能性ってあるのかな?だとしたら、あのダンジョンを周回するのが最適解な気がするけど。

 1つ気になることがあるとするなら、あのダンジョンって周回向きじゃ無さそうなんだよね。

 

「もしかして、あのギミックを出来るだけ速く突破出来るようにしろって言うことなのかな?まぁ、取りあえずもう一回行ってみよう!」

 

◆◇◆◇◆◇

 

 《剣聖への挑戦》という名前らしいダンジョンへと戻ってきた。さて、次はどれくらい速くボス部屋まで行けるかな?

 

「面倒な罠は踏みたくないな。一回通ったし、気をつけながら行けば大丈夫でしょ。」

 

 

 数分後、自分の考えが甘かったのかを思い知った。罠の種類が変わっていたのだ。位置が変わっていないことがせめてものの救いだった。どのタイミングで罠が来るかだけは分かるからね。

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ.......やっとここまで来れた。」

 

 ボス部屋に着いたのはそれから十数分後だった。さっきよりは速いけど、まだ大部罠の対処に時間がかかった。

 

「やっとボス戦か.......」

 

 試練がどういった感じなのかがかなり気になるということもあって勢いよくドアを開けた。

 

「キタカ、ワガデシヨ。サテ、コンカイノシレンハワレガゼンリョクデキリカカルユエフセギ、サケテミヨ。ソレゾレニジュッカイデキタラオワリダ。」

 

 どうやら今回は、全力(さっきの無数の斬撃じゃ無いことを祈る)の斬撃を防ぐ、避けることが二十回出来たらいいらしい。その前に倒されたらもう一回っていうことなんだろう。頑張ろう!

 

 言い終わったらすぐにすぐに斬りかかってくるスケルトン。神速の一撃がどんどん加えられるため、最初のうちは避けることに失敗して街まで戻らされていた。

 幸いだったのは、試練が終わるまでは罠は無くなっていたことかな。時間が大幅に短縮できるから、その点は助かった。

 しかも、慣れって怖いもので5、6回繰り返す内に段々と動きが見えてくる(・・・・・・・・)ようになった。

 それでも速いことには変わりなく、何とか武器で防御しようとするけれど中々上手くいかない。だから、必死になって避ける。それでも、何とか諦めずにさらに十分くらいギリギリ避けながら何とか攻撃を逸らせないか試し続ける。すると、中々出来なかったけど、刀を逸らす事だけ考え続けた末に初めて攻撃を逸らすことが出来た。

 

 よし!

 

 それまでとは違って完全に力をそらせたことが感覚で分かって嬉しかったけれど、このスケルトン相手に隙を見せたら一瞬でやられる。そんなことは前の一回で十分に分かっていたから、すぐに意識を切り替えた。そして、今の感覚を忘れないように攻撃を逸らし続ける。

 数分後、試練が終わったと言われ、そのまま街まで飛ばされた。

 

◆◇◆◇◆◇

 街に戻ると新しいスキルを取得したことがわかった。そのまま、すぐに確認しておく。

 

「新しいスキルは..........」

 

【《剣技》絶対領域】

 1分間、自分を中心とした半径2m以内での攻撃を全て弾き返す

 

「うーん、どういうことかな?」

 

 スキルの内容を見るけれどあまり理解できなかった。だから、スキルを確認しにモンスターを倒そうと考えてからふと思った。

 今、何時だ?

 時間を確認すると、16:48と表示されていた。

 楓が家に来るのは大体17時前後であることを考えると今からモンスターとの戦闘をするのは無理っぽいし、多分ここ数日と同じようにメイプルと一緒に遊ぶ(?)んだろうし、そのときでいいや。

 そう思ってその場でログアウトすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スイケンがメイプルと一緒に素材集めをしている頃まで(さかのぼ)る。初日の時点でメイプルと一緒に遊んでいたことから掲示板で少し注目されていたていたけれども、スイケン自身の行動でさらに注目されることになった。

 

【NWO】メイプルちゃんのパーティメンバーがヤバすぎる件について

 

 

1:名無しの弓使い

 スイケンがメイプルちゃんと一緒に鳥の集団と戦ってるところを見たけど、あの子はあの子でおかしかった事を再確認した

 少なくとも30対以上のモンスターに囲まれているのにほとんどダメージを全く受けてなかったっぽい

 

2:名無しの大剣使い

 は?

 

3:名無しの双剣使い

 訳が分からん

 どうやったらそんなこと出来るんだよ

 

4:名無しの弓使い

 一番やばいと思ったのは、数秒に一体消えていたことだな

 初心者装備だったから確実に急所に当ててさらにSTRがそこそこ高くないとできないぞ

 昨日始めたばかりだったとすると、レベルはそこまで高くないと思うからステータスはそこまで全体的に上げることは出来ないし、未発見のスキルか?

 

5:名無しの大盾使い

 メイプルちゃんとの相性がヤバいよな

 スイケンの攻撃力の高さとメイプルちゃんの防御力があれば無双できる気がする(メイプルちゃんがカバームーブとかの普通のスキルを覚えるならだけど)

 

6:名無しの双剣使い

 今回のイベント、荒れるかもね

 メイプルちゃんとスイケン君の底が知れない

 

7:名無しの片手剣使い

 メイプルちゃんもヤバいと思ったけど始めて二日でこれはヤバい

 皆始めてから二日でこんな事出来たか?

 

 

 ちなみに俺は無理だったな

 流石に30体を相手にして生き残るのは無理だわ

 今でも結構ギリギリな気がする

 

 

8:名無しの大盾使い

 無理だったな

 攻撃力がそこまで無いからそんなことやったら速攻で死んでるわ

 

9:名無しの双剣使い

 ステータス次第で始めて四日あれば出来るようになるかもだけど、二日目で出来るのはヤバイ

 勿論、自分も二日目だと出来なかったと思う

 

10:名無しの弓使い

 >9

 それな

 スイケンが相手していたモンスター、確か結構AGI高いっぽいから多分そこそこAGIに振ってないと一撃で倒せなかったら絶対に逃げられると思うぞ

 

11 :名無しの大剣使い

 >10

 何その無理ゲー

 何なら今でもAGIが低いからそこまで倒すのは簡単じゃ無い気がするけど、それを1人で30体以上って......どう考えても異常だろ

 

12 :名無しの双剣使い

 結論;スイケンは化け物

 

13 :名無しの大盾使い

 機動力ない分メイプルちゃんがましに見えてきた

 攻撃力そこまで無いと思うし

 

14:名無しの弓使い

 まとめるぞ

 

 恐らく的確に急所に当てることができる

 回避能力が異常なほどに高い

 ステータスを上げるスキルを持っている(?)

 

15 :名無しの双剣使い

 今後取るスキル次第で化けそうだな

 

16:名無しの片手剣使い

 イベントでどうなっているかが楽しみなキャラでもあるな

 メイプルちゃんと合わせてダークホースになる気がする

 

17:名無しの大盾使い

 ちょっと話した感じゲーム初心者って感じじゃ無かったから、多分イベントまでには装備そろえてくると思うぞ

 それ次第ではヤバいかもな

 

18 :名無しの大剣使い

 まぁ、もしまた情報が上がってきたら報告よろしく!

 

19 :名無しの弓使い

 了解!

 

20 :名無しの大盾使い

 了解!

 

21 :名無しの双剣使い

 了解!

 

22 :名無しの片手剣使い

 了解!



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新装備とイベント開始!

数ヶ月も更新停止していてすみません。
やる気が起きなかったんじゃ..........
誰か、ヤルキチョウダイ


 イベントの前日にメイプルとNWO内で集合して一緒にスキル集めをしに行こうと思ったときにメッセージが届いた。

 

『装備、出来たわよ〜。

       Fromイズ』

 

 メッセージ自体は1行で終わっていたけれど、今一番重要なことだった。

 

「メイプル、ごめん。今、イズさんから装備が出来たってメッセージがきたからイズさんのお店に行ってからにしてもいい?」

 

「いいよ〜」

 

「ありがとう。じゃあ、行こうか。」

 

 ちょっと申し訳なかったけど、本人がいいって言ってるし優先させて貰おう!

 そんな気持ちのままイズさんのお店へと入っていく。

 

「いらっしゃ〜い。あら、スイケン君、来るのが早いわね。もう少しかかると思っていたわ。」

 

「早く使ってみたいんです!」

 

「そうよね。あ、メイプルちゃんもいらっしゃい。スイケン君の装備を一緒に見るの?」

 

「そうなんです。スイケンがどんな感じになるのかが楽しみです!」

 

「じゃあ、渡すわ。」

 

 そう言いながら装備代として何G必要かが表示されたパネルを出すイズさん。そのパネルに手をかざすことで装備代を払う。

 

「装備代確かに貰いました。こんなに早くGを集めるなんて、何をすれば出来るか知りたいくらいだわ........」

 

 何故か遠い目をするイズさん。心当たりがなさ過ぎて、どう言えばいいのか..........

 っと、それよりも今は新しい装備だ。

 イズさんに払うと同時に装備を手に入れられたから、早速装備する。

 

「格好いいね!凄い似合ってるよ!」

 

 腕をブンブンと上下に振りながら感想を言ってくれるメイプル。

 

「スイケン君、そういう装備思っていたよりも似合うのね。良かったわ。」

 

 イズさんからも似合っていると言われた。

 上は赤と茶色の間くらいの色、下は白色の袴で刀は黒色基調で所々赤いラインが入ってる鞘に収まっていた。刀を抜くと、刀身が淡い赤色に光っていた。

 うん、どこからどう見ても侍って感じだね。これで髪をちょんまげにしたら間違いなく侍だ。

 

 しばらく、装備の見た目に感心していたけれど肝心のステータスがどうなっているのかを聞いていなかったから実際にステータス画面で見てみることにした。

 

Lv.20

HP 40/40

MP 12/12

 

【STR 40〈+30〉】

【VIT 5】

【AGI 65〈+20〉】

【DEX 50】

【INT 0】

 

 

 どうやら、要望通りSTRとAGIに絞って上昇値が大きくなるようにしてくれたみたいだ。思っていたとおりの性能でちょっとほっとした。

 これで、初心者装備からも脱却だ!かなり嬉しいな。さすがに初心者装備のままイベントを迎えたくは無かったからね。

 

「イズさん、ありがとうございます。完璧な出来です。」

 

「そう言ってくれると嬉しいわ。」

 

 その後、イズさんのお店を出てフィールドへと直行する。そこで、メイプルと一緒にモンスターと戦う。ここ数日の間、暇さえあればダンジョンへ行っていた結果手に入れたいくつかのスキルを上手く使いこなすための練習をしながら戦っていく。いつも通りメイプルと2人で大量のモンスターを引きつけてから戦うせいでどう頑張っても数分はかかってしまうけれど、少しずつその時間も短くなっている、と思う。

 

「ふぅ、今日も中々多かった...............。メイプルの方は....終わってるよね。」

 

 そのまま、今度は2人でモンスターの大軍と戦っていく。自分たちが戦っていたところの近くに居たモンスターを一通り狩り尽くしたところで終わりにして街へと戻る。

 そのままログアウトしようと思っていたけど、メイプルからログアウトする前に明日のイベントについてどうするのかを聞かれたから話していた。

 

「明日のイベントって個人戦でしょ?だったら、多分コンビを組んだ方がいいと思う。」

 

「でも、イベントのフィールドに飛ばされるのはバラバラでしょ?どうするの?」

 

「うーん、もしメイプルもそこそこのAGIがあればどこかで合流って言うことが出来るんだけど、メイプルのAGIを考えると無理だよな。」

 

「だったら、別々で頑張ればいいんだよ!それで、もし会えたらそこからコンビを組んでやればいいんじゃない?」

 

「それでいいか。コンビ組まなかったとしてもメイプルが途中で脱落することは考えられないし、そうしようか。」

 

 イベント中にどうするのかを考えて、そのままログアウトした。

 

◆◇◆◇◆◇

 

 次の日、午後になってすぐにスキル同士のコンボでどう使うのが効率的かをモンスター相手に試した後、イベントまでに使えるスキルを探そうとネットを見る。すると...

 

「へぇ、索敵系のスキルだと【気配察知】っていうものがあるんだ。」

 

 そのスキルを取るために少し準備(ビックをショップで買うこと)をしてから最初に行った森へと走っていく。

 数時間後、イベントの始まる前にスイケンは【気配察知】を取る事が出来た。

 

【気配察知 Ⅰ】

 半径5m以内の敵の位置を察知できる

取得条件

 プレイヤーと一定の距離がある、姿の見えないモンスターに規定数、弓矢や投石などででさもいることが分かっているかのように攻撃を当てること。

 

「ふぅ.....。よし、これでイベントの準備はいいかな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後、ログインしたメイプルと一緒にイベント開始少し前に街の一角にある木のある池まで来ていた。

 

「なんだか緊張してきた.........」

 

「イベントって言っても、メイプルは結構強いからいつも通りしてればいいよ。多分、それで大丈夫だから、そこまで気負わなくて大丈夫。」

 

「そっか。じゃあ、全力で楽しむよ!」

 

「うん、楽しんできな。」

 

「あっ、それなら競争するってどう?どっちが多く倒したかっていうので。」

 

「それ、面白そうだね。そうだね、やろうか。その上で目標は十位以内に入ることでいい?」

 

「うん!限定の記念品って言われるとどうしても欲しくなっちゃってね.......」

 

「メイプルは限定品に弱いからね。」

 

「うっ、そうなんだけど...そういうスイケンはどうなの?」

 

「勿論、十位以内には入りたいよ。自分の実力を知りたいし。」

 

 その後、イベント前に最終的なステータス確認をする2人。

 

ーーーーーーーーーー

メイプル

 

Lv.20

HP

MP

 

【STR 0】

【VIT 160〈+66〉】

【AGI 0】

【DEX 0】

【INT 0】

 

装備

頭【空欄】

体【黒薔薇ノ鎧】

右手【新月:毒竜】

左手【闇夜の写:悪食】

足【黒薔薇の鎧】

靴【黒薔薇の鎧】

装飾品【フォレストクインビーの指輪】

   【空欄】

   【空欄】

 

スキル

【シールドアタック】【体捌き】【攻撃逸らし】【瞑想】【挑発】【大盾の心得Ⅵ】【絶対防御】【極悪非道】【大物喰らい(ジャイアントキリング)】【毒竜喰らい(ヒドライーター)】【爆弾喰らい(ボムイーター)

ーーーーーーーーーー

スイケン

 

Lv.21

HP 40/40

MP 12/12

 

【STR 40〈+30〉】

【VIT 5】

【AGI 65〈+20〉】

【DEX 50】

【INT 0】

 

 

装備

頭【空欄】

体【紅羽織】

右手【霞桜】

左手【空欄】

足【白い袴】

靴【空欄】

装飾品【空欄】

   【空欄】

   【空欄】

 

スキル

 【挑発】【極限集中】【刀の心得 Ⅳ】【急所への一撃】【人斬り】【連撃強化小】【筋力強化小】 【急所判明(ウィークネス)】【一刀に懸ける思い Ⅱ】【切断】【身体捌き Ⅰ】【剣聖の後継者】(+【絶対領域】+【《剣舞》一ノ型 炎舞】+【《剣舞》二ノ型 神楽】)【気配察知 Ⅰ】

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 ステータス確認を終えた2人に話しかけるプレイヤーが1人居た。

 

「お〜、メイプルにスイケン。2人もイベント参加するんだな。お互い頑張ろうな!」

 

 赤い装備に身を包んだ大盾のプレイヤー、クロムだ。

 

「それと、もし戦うことがあっても手加減はしないからな。」

 

「もし、そうなったらこちらも全力で行かせて貰います。」

 

「私はクロムさんとは戦いたくないんだけどな..........」

 

「俺も、出来ればメイプルとは戦いたくないから、出来るだけ鉢合わせしないことを祈るよ。」

 

 クロムとメイプル、3人一緒に喋っていると突然、木の上に竜のぬいぐるみっぽい何かが投影された。

 

『それじゃあ、New World Online、第一回イベントを開催するドラ〜。制限時間は三時間、ステージはイベント専用マップドラ〜。それじゃあ、カウントダウンするドラ〜。3,,,,,,,2,,,,,,,,,,,1........イベント開始ドラ〜!』

 

 カウントダウンが終わると同時にイベントマップへと移っていく。

 

◆◇◆◇◆◇

 

 目を開くと密林の中だった。視界内には誰も居なかったからそのまま進もうとすると早速【気配察知】に反応があった。だから、とりあえずその方向に進む。相手には気がつかれないように後ろから回り込んで【弱点判明】で赤く見えたところを攻撃する。

 

「フッ!」

 

 すると、一撃で倒せた。一撃では倒せないと思っていたから、これは想定外だった。

 イベントは始まったばかりだ。気を抜かずにこのままやっていこう!




ここまででやっとイベントまでっていう内容の薄さよ。次は早めに出せる、かなぁ?気長に待っていてください


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10話 イベントⅠ〜遊ぶのって楽しいよね〜

間が空きすぎましたが、1話書けたのでとりあえず投稿します。次投稿できるのは、一体いつになることやら


 スイケンの一人目の犠牲者が出てから数分後、【気配察知】にプレイヤーの反応が数人同時にあった。

 

 うわぁ........想定内とは言っても、数人を同時に相手にするのは面倒くさいなぁ。

 しかも、更に近づくと前衛数人、後衛数人で全体のバランスもいい事が分かった。

 

「1人か、悪いが俺らの糧になって貰おう!」

 

「【狙撃】!」

 

 どう倒すかを考えながら進むとお互いに見える距離まで互いの距離が詰まった。すると、後衛の内、弓使いがスキルを使用してきた。さらに、魔法使いも魔法を使ってくる。

 

「【炎球】!」

 

「【プロテクション】!」

 

 さすがに、これと前衛の攻撃を全部無効化するのは難しい。とりあえず..........

 

「【極限集中】!」

 

 これで、少しは考える時間が確保できた。まず、魔法使いの攻撃は斬ることが出来る(・・・・・・・・)から問題ない。その後の隙は、【神楽】を使えばなんとかなるかな?

 

「ふっ!」

 

「「嘘でしょ!」」

 

 魔法使いの攻撃を斬ると、信じられないものを見るような目で見られた。ただ【弱点判明】で理解した弱点を斬っただけなのに、解せぬ.....。

 っとと、そんなことに気を取られていると【神楽】を発動するタイミングをミスりそうだ。

 

「うぉぉぉぉぉ!」

 

 タイミングを合わせて........ここ!

 

「【《剣技》二ノ型 神楽】!」

 

 すると、数人いた前衛全員が全員粒子へと変わっていく。

 

「「「「は?」」」」

 

 後衛のプレイヤーだけじゃなく、前衛のプレイヤーですら何が起こったのかを正確に理解している者はいなかった。

 スイケンのやったことは単純と言えば単純だ。

 まず、【極限集中】によって思考は加速することが出来る。それによって、【神楽】を使うタイミングを見切ってスキルを使用しただけ。

 他のプレイヤーがスイケンが何をしたのかを正確に理解できていなかった理由は【神楽】にある。【神楽】というスキルは踊るような動きに斬撃を乗せるスキルで、斬撃の速さはプレイヤーのAGIによって決まるというものだった。

 スイケンの素のAGIは65。そこに装備分のステータスを足すと85、さらにスキルの効果で1.5倍になるから結果としてAGIは85×1.5=127.5。NWOにおいて小数点以下は切り捨てなのでAGIは127となる。

 そのような値は想定されていなかったため、スイケンが【神楽】を使用したときの斬撃の速さは視認できないほどだった。さらに、全員一撃で急所を斬ったため、スイケンのSTRは70で、【急所への一撃】【人斬り】【一刀に懸ける思い Ⅰ】【切断 Ⅰ】によって6倍されるので、420。さすがにどのような防御力があろうとも、極振りではない限り一撃で倒すことが出来る値だ。

 

「くそっ、何をしたんだ!」

 

「こ、これは逃げた方がいいんじゃ..........」

 

 そう言っている後衛の数人が逃げる前に回り込んで斬る。

 

「くそ.........」

 

 もし、こんな事が何回もあると疲れるから嫌だけど、多そうだな。特に、目立つと即席でコンビ組まれたりしそうだし、目立たない方がいいかな。

 スイケンはそう考えていたけど、既に周りから様子をうかがっていたプレイヤー同士がその場限りのコンビを組み始めていた。コンビと言っても互いのことをよく知らないから、邪魔をしないという程度になるが、第三者による攻撃の心配をしなくていいだけでかなり楽になるからメリットはでかい。

 

「ん?.............居るのは分かってるよ。隠れてないで出てきたらどう?」

 

 スイケンも【気配察知】によって周りにプレイヤーが居ることが分かったため、一応声をかけると、ぞろぞろと十数人の集団がスイケンを取り囲むようにして出てきた。【気配察知】の範囲内の距離に複数のプレイヤーがいる。それも、自分とも距離よりも近い距離に居るプレイヤーには攻撃しないという事を考えると、恐らくコンビを組んでるのは間違いないと思う。

 

 

「かかれぇ!」

 

 おそらく指揮官的ポジションに居るのであろうプレイヤーが号令(?)をかけると、すぐに四方八方から襲いかかってくる。それに対応する為に【極限集中】を使う。

 すると、まぁよく見える見える。人数こそ多いものの、1人1人の連携はそこまでじゃない。攻撃のタイミングがバラバラだし、なにより前衛と後衛のバランスがおかしい。前衛が異常に多く、後衛は数人しか居ない。もし、最初から組んでいるとしたらもう少しまともなバランスになるはずだ。

 

 本来なら、考えているスイケンの動きには隙だらけなんだろう。ただ、【身体捌き Ⅰ】のおかげで攻撃が来る場所とタイミングは分かるし、刀を抜かないことでAGIとDEXが倍になるからむしろ、そっちの方が良かったのだ。

 

「ど、どうして当たらないんだ!」

 

「こいつ!」

 

 次々に叫びながら斬りかかってくる前衛のプレイヤー達。バカ正直に相手をするのも面倒なので、逃げることにした。有名な軍師の言葉に三十六計逃げるにしかずってあるしね。それ以外にも考えていることはあるけどね。

 

「逃げるな!臆病者!!」

 

 勿論、そんな言葉で止まることはない。そのまま、森の中を走り回る。モンスタートレインならぬプレイヤートレインって感じのことをしている気分だ。

 

「「「くそ、ちょこまかと!」」」

 

 

 

 

 

 

 そのまま逃げながらコンビの片割れだけを倒すことを続けていると、どうやらかなりのプレイヤーが追いかけてきているのか十数分後についに多数のプレイヤーに包囲された。これに関しては、自分が思っていた通りの展開すぎて笑いをこらえるのが大変なくらいだ。

 

「観念しろ。さすがにAGIが高くてもこの人数を1人で倒すのは無理だろ!」

 

「思っていたよりも簡単に釣れたね。よし、【極限集中】!」

 

 自分の本当に得意な戦いはメイプルと遊んでる内に多対一の戦い(・・・・・・)になっていたからそれを活かそうと思った結果、こういった形になった。

 

「からの、【神楽】!」

 

 スキルを使うとそれだけで結構なプレイヤーが倒される。

 

「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 比較的近くに居た両手剣を持ったプレイヤーがスイケンのスキル使用後の隙を狙って攻撃を仕掛ける。それに続いて弓使いや魔法使いも攻撃する。

 

「なるほど。【絶対領域】!」

 

 5秒間だけ一定領域内の攻撃を無効化するスキルを使用する。使いどころによってはこのスキルは化ける。全ての攻撃が5秒間に届くタイミングで使えばダメージ無効と同じ効果を発揮するのだから。

 実際、スイケンはそうすることでほとんどの遠距離攻撃を無効化した。

 

「うそぉ!」

 

 勿論、今までそんなスキルを使ってきていなかったから何が起こったのかを正確に理解しているプレイヤーはいないけれど、思ったことは一緒だった。

 

  このプレイヤー、異常だ!

 

 一方、そんなことを思われているとは少しも思っていないスイケンは両手剣のプレイヤーの攻撃を紙一重で避けてからカウンターで急所に攻撃を打ち込んで倒した。そのまま、スキルはほとんど使わずに次々とプレイヤーを倒していく。

 すると、十分と経たないうちに、その場に居たプレイヤーは全てスイケンによって倒された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、メイプルは廃墟でお絵かきをしながら襲ってくるプレイヤーを返り討ちにしていた。

 

「う〜ん、結構目立つようにしてるのに、スイケンこないな〜」

 

 彼女は戦っているという気持ちは全くなくて、どちらかというとスイケンに分かるように目印として襲ってきたプレイヤーの対処に【毒竜】を使っていた。

 ただ、その頃スイケンは本当に多くのプレイヤーを相手にしていたから気がつかれることは一切無かった。




うん、これ書いていて思ったけど、スイケン強すぎないか?なんでこうなった......(プロット段階ではここまでヤバイキャラにするつもりはなかった)


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