ロドス劇場 (ゆっくり妹紅)
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設定
オペレーター:ヤマト(随時更新)


ヤマトくんの設定を今更ながらあげるという、有るまじきスタイル。

随時更新なので、こまめに見ると更新されてるかも?

5/17 第2資料更新
6/14 第3資料更新
7/3 第4資料、昇進記録更新
11/1 ボイス追加
1/29 スキル2:ソードコンビネーション・アサルトの効果を変更。


プロフィール

 

【コードネーム】ヤマト

【レアリティ】☆5

【性別】男

【役割】前衛

【募集タグ】前衛/火力/爆発力

【戦闘経験】7年

【精通】近距離戦闘技能全般

【出身】不明

【誕生日】4/27

【種族】ループス

【身長】159.8cm(本人はほぼ160cmと言っている)

【鉱石感染状況】

メディカルチェックの結果、非感染者に認定

 

能力測定

【物理強度】優秀

【戦場機動】優秀

【生理的耐性】標準

【戦術立案】標準

【戦闘技術】卓越

【アーツ適正】標準

 

個人経歴

自称元傭兵の少年。彼が出した資料以外の経歴は不明で彼自身も過去を多くは語ろうとしない。元傭兵ということがあってか、戦闘経験は豊富で、身の丈程ある特殊な剣を使った戦闘の技術もかなり高く、ロドスでは前衛のオペレーターとして動いている。

 

健康診断

造影検査の結果、臓器の輪郭は明瞭で異常陰影も認められない。循環器系源石顆粒検査においても、同じく鉱石病の兆候は認められない。以上の結果から、現時点では鉱石病未感染と判定

 

【源石融合率】0%

鉱石病の症状は見られない。

 

【血液中源石密度】0.12u/L

各項の数値もほぼ正常、再検査の必要なし

 

潜在能力上昇物

ヤマトの潜在能力を高めるために使われる。

 

少し不格好な東方のお守りの形をした物。彼はこれを大事にしており戦闘に行く際も持ち込んでいる。

 

 

第1資料

ヤマトは多くの者から、他人とは全く馴れ合わない人物だと思われているが実態はその反対で、友好を深めたいという思いは人一倍ある。のにも関わらず、上記のような誤解が広まっているのはあがり症による無口とポーカーフェイスのせいであり、本人はどうすればいいかと日々悩んでいる。

 

第2資料

ヤマトがすべての近接武器に精通している理由は、至って簡単でヤマトを拾った者にとっての有能な◾◾になるための『教育』に過ぎなかっただけだ。しかし、ヤマトのアーツ適性は標準であり感染者にもならなかったことで捨てられたと、彼自身は語った。なお、ヤマトは『教育』に関してはそれだけではなかったとも言っているが、内容は教えなかった。

 

 

第3資料

ヤマトが遠距離武器にも精通していたのを隠していた理由、それは過去に恩人であり相棒でもあった人物を自身の力不足で死なせてしまったことによるトラウマのせいで全く扱えなくなったからというものだった。現在では、隠れて訓練したおかげもあって当時以上の腕前を持っているが変わらず前衛オペレーターとして活動している。

 

 

第4資料

ヤマトの原点は幼少期に【先生】に拾われたことだった。ヤマトは【先生】の指示により、同じ孤児院に住んでいた孤児たちと生き残りをかけた殺し合いに、唯一の生き残りとして無傷で生還してしまった。それ以来、彼は【先生】から武器の扱いや戦闘技術(ヤマト本人は戦闘技術とは認識したくなかったらしい)を始めに計算術やアーツコントロール、そして【感情の無くし方】を教わり、【先生】が連れてくる武装した大人たちと戦うという生活を暫くしていたが、ある日アーツ適正が上がらないヤマトに辟易していたのと、ヤマトより全ての項目が上である新たな育成対象の【駒】が出てきたため、ヤマトを【処分】させようと傭兵をけしかけた。ヤマトはその傭兵を退けてさまよっていた所をある1人の傭兵に拾われたことによって、彼の運命はさらに動きだしたのだった。

 

昇進2解放

都合のいい【駒】になるはずだったオオカミが無くしてしまったものを取り戻せたのは、彼を拾った恩人が一生懸命色んなことを教えたからだ。そして、それを奇跡的に取り戻したオオカミは友たちに新たな誓いを立てる。彼らを守る剣として盾としてこの身を捧げると──

 

 

見た目

顔はそれなりに整っているものの童顔で、髪や尻尾の色は白よりの茶色。(服装はFF7ACのクラウドと同じ)

 

 

*以下、ヤマトのゲーム的な性能

 

攻撃範囲

 

【初期】

◾□

【昇進1】

◾□

【昇進2】

◾□

 

 

【特性】

敵を2体ブロック、通常攻撃時、1回で2回ダメージを与える

 

【素質】

第六感(昇進1):敵の攻撃(術攻撃も含む)を10%の確率で回避

第六感(昇進2):敵の攻撃(術攻撃も含む)を15%の確率で回避

 

【スキル】

スキル1:ハードブレイク(攻撃回復、自動発動、必要SP7(最小5))

効果:次の攻撃で敵一体に攻撃力の180%(最大で300%)の物理ダメージを与え、1秒間(最大1.5秒間)スタンさせる

 

スキル2:ソードコンビネーション・アサルト(攻撃回復、手動発動、初期SP10(最大15)必要SP30(最小20))

効果:一定範囲内の最も近い敵一体に対して、攻撃力の200%(最大300%)の物理ダメージを5回と攻撃力の300%(最大400%)の物理ダメージを1回与える。最後の攻撃が出る前かつ範囲内に敵がいる場合攻撃し続ける。

 

【基地スキル】

標準化β(初期):製造所配置時、製造効率+25%

最適な手伝い(昇進2):一部キャラ(フロストリーフ、ラップランド、チェン、テキサス)と同じ場所に配置時、その場所の製造や貿易、捜査効率を+30%アップ、一部キャラの体力消費-0.5、ヤマトの体力消費+0.5。

 

 

ボイス集

 

秘書任務「ドクター、手伝います」

 

会話1「……何か用か?」

 

会話2「物好きな人だ」

 

会話3「少しは喋ったらどう、か…それが出来たら……いや、なんでもない」

 

昇進後会話1「ドクター、クッキー食べるか?」

 

昇進後会話2「ドクター、その、改めて言うけど俺みたいなやつを信じてくれてありがとう…笑わないでよ、らしくないってのは分かってるからさ」

 

信頼上昇後会話1「フーちゃんのことどう思ってるか?そうだなぁ…優しくて温かい人だと思うよ。あと、凄い安心するな」

 

信頼上昇後会話2「ラーちゃんのこと?ラーちゃんは一緒にいて楽しい人かな。いつも話しかけてくれるし、頼りになるしいい人だよ…ただ、尻尾を…あ、な、なんでもない!忘れて!」

 

信頼上昇後会話3「ドクター、今度一緒に料理しない?気分転換は大事だよ」

 

放置「…おやすみなさいドクター……とりあえず、毛布を持ってきて、書類は俺ができる内容はやっておこう」

 

到着「ヤマトだ。ループスの元傭兵だ、よろしく頼む」

 

作戦記録を見る「勉強になるな」

 

昇進1「…俺みたいなやつを昇進させていいのか?」

 

昇進2「ドクター、俺の過去を知った上で認めてくれてありがとう…これからはドクターやみんなの為に俺の命を捧げる。如何なる時も皆を守る剣として、盾として全力を尽くすことをここで誓います…うん、らしくないね…忘れて……」

 

編成「了解」

 

隊長任命「絶対に死なせない」

 

出発「出撃する」

 

行動開始「作戦通りに」

 

選抜1「どうした?」

 

選抜2「ああ」

 

配置1「問題ない」

 

配置2「了解した」

 

作戦中1「斬りさく!」

 

作戦中2「斬る!」

 

作戦中3「処理する」

 

作戦中4「こっちだ!」

 

4星行動終了「今度は…守れた…」

 

3星行動終了「任務完了」

 

非星3行動終了「負傷者の治療の手配を」

 

行動失敗「殿は俺がやる!撤退を急げ!」

 

建設施設「今日は何を作ろうかな…」

 

選択「うわっ!?…ドクター、尻尾は触らないでくれ…」

 

信頼タッチ「ありがとう、ドクター」

 

タイトル「アークナイツ」

 

挨拶「おはよう」




チェンに似ているスキル構成ですが、デメリットありという微妙に使いづらい感じにしたんですけど…ちょっと、強くしすぎたかな?

*小説上では上記のスキル以外の攻撃も繰り出しますが、そこは暖かい目で見逃してください.、何でもしますから(何でもするとはいっていない)

1/29追記:よくよく考えてみたら、ヤマトのS2がチェンのS3より出ないのに出したら自分がスタンというのは流石に使えなさすぎだと思ったので、「ダメージ量は劣るけど、お手軽さはヤマトの方が上」という感じの内容に変更しました。


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オペレーター:イカズチ

リクエスト欄にあった妹ちゃんこと、イカズチの設定です。


プロフィール

 

【コードネーム】イカズチ

【レアリティ】☆6

【役割】前衛

【募集タグ】前衛/火力/近距離/牽制

【戦闘経験】10年

【精通】ほぼ全て

【出身】不明

【誕生日】11/1

【種族】ループス

【身長】155cm

【鉱石感染状況】メディカルチェックの結果、感染者に認定

 

能力測定

【物理強度】優秀

【戦場機動】優秀

【生理的耐性】優秀

【戦術立案】優秀

【戦闘技術】優秀

【アーツ適正】卓越

 

個人経歴

とある出来事をきっかけにロドスへ来たループスの少女。戦闘においては並外れたマルチタスクと視界の広さ、そしてアーツ適正を駆使してエリートオペレーターと遜色ない動きをする。

 

健康診断

造影検査の結果、臓器の輪郭は不明瞭で異常陰影も認められる。

循環器系源石顆粒検査の結果においても、同じく鉱石病の兆候が認められる。

以上の結果から、鉱石病感染者と判定。

 

【源石融合率】16%

感染は中期に入り、上腕部に明らかな源石結晶あり。

 

【血液中源石密度】0.45u/L

ロドスに来てからは兄のヤマトの説得もあって治療を受けているため、直ぐに悪化することはないと思われる。

 

潜在能力上昇物

イカズチの潜在能力を高めるために使われる。

 

兄が作ってくれた極東のお守り。彼女はこれを何があろうと絶対に手放すことは無い。

 

第一資料

加入したきっかけがきっかけだったため、当初は周りからは警戒されていたが本人の年相応な性格とヤマトへの態度のお陰で今ではロドスの一員として受け入れられている。

 

第二資料

イカズチは彼女の生活を見ていればわかるが、基本的に兄と慕うヤマトにベッタリである。彼女の過去を考えれば仕方の無いことなのかもしれないが、正直それはブラコンの域を超えていると言っても過言ではない。

 

第三資料

勘違いをしている者もいるが、彼女は1対1ではヤマトを始めとした実力者達とは渡り合えるものの勝つことかなり難しく、タイマン向きではない。彼女が最も向いているのは並外れたマルチタスクと視野の広さ、そしてアーツを利用した多対一であり、実際に彼女は隊とはぐれた際に交戦した10人の敵勢力を無傷で圧倒した。

あの子のアーツは雷関係もので、こっちも武器にアーツを纏ったりしないと電気を武器越しに流されちゃうんだ。かといって、距離をとると銃撃やムチ、アーツの餌食になったりと混戦状態だと余計に驚異になると思うな──彼女の兄の感想。

 

第四資料

彼女が【家族】という形に縋る理由。それは彼女の過去が関係する。彼女は幼年のうちに生みの親から虐待を受け、挙句の果てには捨てられてしまったという過去があるからだ。だからこそ、彼女は自分のことを一度は否定したとはいえ、【妹】として自分を受け入れてくれる【兄】を心の底から慕っているのだ。

 

昇進2解放

彼女にとって、ロドスの生活は新鮮であった。基本的に彼女は叱られると言ったことを経験しておらず、チェンを始めとした生真面目なオペレーター達に叱られるというのは新鮮で、そして暖かった。最近はヤマトだけではなく、フロストリーフやメテオリーテなどのオペレーターに甘えている姿が目撃されている。そう、彼女はやっと穏やかに過ごせる時間を手に入れたのだ。

 

 

*以下、イカズチのゲーム的な内容

 

攻撃範囲

 

【初期】

□□

◾□□

□□

【昇進1】

□□

◾□□□

□□

【昇進2】

□□□

◾□□□

□□□

 

【特性】

80%の攻撃力で遠距離攻撃も行える

 

【素質】

雷撃(昇進1):攻撃した相手の移動速度を1秒間-20%

雷撃(昇進2):攻撃した相手の移動速度を1.5秒間-20%

イーグルアイ(昇進2):攻撃範囲拡大、前方1マスに入った敵のステルスを無効。

 

【スキル】

スキル1:飛雷刃(攻撃回復、自動発動、必要SP7(最小5)): 次の通常攻撃時、術攻撃になり更に攻撃力が150%(最大250%)まで上昇。

 

スキル2:ダブルバレット(自動回復、手動発動、必要SP40(最小35)持続20(最大30)):効果時間内の間攻撃力+10(最大40)、攻撃時間を大幅に短縮しドローンを優先的に狙う。攻撃力の100%で遠距離攻撃を行う。

 

スキル3:月下雷鳴(自動回復、手動発動、必要SP120(初期40P)、持続15(最大20))

:術攻撃になり防御力0、攻撃力+120%(最大200%)、攻撃範囲を拡大、攻撃範囲内の敵を全て攻撃(近距離攻撃とみなす)

 

*攻撃範囲

□□□□□

□□□□□□□

□□□■□□□

□□□□□□□

□□□□□

 

【基地スキル】

前衛エキスパートβ(初期):訓練室で協力者として配置時、前衛の訓練速度+50

兄贔屓(昇進2):訓練室で協力者として配置時、訓練者がヤマトの場合訓練速度+80

 

【ボイス集】

 

秘書任命時「事務作業かぁ…出来るけどやりたくないなぁ」

 

会話1「ねえねえドクター。お兄ちゃんの趣味知ってる?」

 

会話2「ねえドクター、お兄ちゃんの所に遊びに行かない?」

 

会話3「お兄ちゃん、今何してるんだろうなぁ〜」

 

昇進後会話1「このお守り?これはね、お兄ちゃんが私が無事に過ごせるようにって作ってくれたの!いーでしょ!…言っとくけど、あげないからね」

 

昇進後会話2「ここの人は皆暖かい人ばっかだなぁ…ここを先に見つけたお兄ちゃんがちょっぴり、羨ましいな」

 

信頼上昇後会話1「フロストリーフのことをなんでお姉ちゃんって呼んでるか?って?【お姉ちゃん】みたいに凄いしっかりしてるからかな?…おやつ抜きの刑はやめて欲しいけど」

 

信頼上昇後会話2「ラップランド?あー…あの人はなんか好きになれないんだよねぇ…いや、別に嫌いってわけじゃないし、根は良い人だとは思うんだけど…なんか、ね?」

 

信頼上昇後会話3「ドクター、あの時私たちのこと受け入れてくれてありがとう。お陰で私、すっごい幸せだよ」

 

放置「あれ寝ちゃってる…こういう時は…えーと、ドクター、まだ休んじゃダメですよ?…だっけ」

 

到着「コードネーム、イカズチだよ!あ、言っとくけど私はヤマトお兄ちゃんの妹だからそこんとこ、よろしくね!」

 

作戦記録「…zzz…っは!寝てないよ?」

 

昇進1「昇進かぁ…なんか、あんまり実感わかないけどやることは変わりないんだよね?」

 

昇進2「私の事認めてくれてありがとう。期待以上の働き、出来るように頑張るね!…あ、出来たらお兄ちゃんと同じ部隊に入れてくれると嬉しいな!」

 

編成「はいほーい」

 

隊長「死にたくなかったら私とドクターの言うこと聞いてね」

 

出発「出撃するよ」

 

行動開始「とっとと終わらせるよ」

 

選抜1「ん?」

 

選抜2「私の出番?」

 

配置1「イカズチ、現着したよ」

 

配置2「一瞬で終わらせるよ」

 

作戦中1「はっ!」

 

作戦中2「切り裂け!」

 

作戦中3「墜す!」

 

作戦中4「雷鳴よ、走れ!」

 

4星行動終了「お兄ちゃん見てたー?褒めて褒めてー!」

 

3星行動終了「疲れたー、早くお兄ちゃんのクッキー食べたい…」

 

非星3行動終了「ごめん、少ししくじった」

 

行動失敗「ちっ、殿は私がやるから撤退急いで」

 

建設施設「お兄ちゃんどこー?」

 

選択「ん、お兄ちゃ…なんだ、ドクターか」

 

信頼タッチ「ドクターに撫でられるのも悪くないや」

 

タイトル「アークナイツ」

 

挨拶「おはよ、ドクター」

 

 




…完全に兄を超えてますねえ、クォレハ…
てか、性能が完全に「ぼくのかんがえたさいきょうのおぺれーたー」って感じの仕上がりに…

とりあえず、一言で言うと「シルおじと同等の強さを持ったやべーやつ」って感じですかね


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各ルートのヤマトとイカズチについて(ifルートの一部裏話もあるよ!)

どうせなので各ifルートのヤマトの設定を今更ですが公開します。





4/5:死を振りまく白き殺戮者√(ヤマト闇堕ち√)の情報を更新。

3/29:休日威狼ヤマト(龍門チェンルート)の情報更新。


・ペン急ルート

 

設定:こちらのルートのヤマトは基本的に本編のヤマトが通った過去と同じです。そこで、なぜ彼がトラウマでもある遠距離武器を使えているのかというのは簡単で、「遠距離武器を扱えるようになれば、みんなの負担が軽くなるはず」という考えの元本編以上に遠距離武器の訓練(又はトラウマ克服とも言う)をガンガンやっていたからです。そのかいもあって、本編のヤマトより遠距離武器を早く扱えるようになり万能な感じとなりました。

 

ゲーム的には星5遠距離前衛となり、素質は「直感(破):(攻撃範囲に入った敵のステルスと敵の探査機を無効)です。そしてスキル1は強撃系列、スキル2が攻撃範囲縮小+攻撃力up+術攻撃となっています。

 

格好は本編も同じですが、武器は拳銃にシラヌイ特製連結できる源石剣、そして合体剣です。まあ、シラヌイ特製のは描写するのがめんどくさかったのもあってifルート中には出してませんが。因みにスキル2発動中は源石剣に持ち替えて攻撃します。

 

コチラのルートのヒロイン候補はペン急メンバー全員にラップランドとまさかのWです。「なんでW?」と思った方もいると思いますが、これは至って単純でこのルートのヤマトも本編同様ムサシが死んだ後にWと過ごした時期があったからです。ラップランドはテキサス案件で色々やったらヤンデレ1歩手前という形に…。あと、こっちのルートでも妹ちゃんの戦いはあり、勝利すると妹ちゃんは治療ということでロドスに送り込まれ、ヤマトは妹ちゃんに会うためにロドスに頻繁に訪れるという感じになります。

 

裏話:実は、当初の予定では本編の方書き終わったらそちらは完結にしてこのルートの新しい小説として投稿するつもりでした。最も、途中から本編の方に愛着が湧いてしまったのもあって没になりましたが。

 

 

 

・龍門ルート

 

設定:こちらのルートはムサシではなく、当時の近衛局特別督察隊隊長にその才能を買われ拾われた場合のヤマトです。拾われてからは学校にも通っていたため人と普通に話すことが出来ますが、変わりに天然と騙されやすさ(プライベート限定)が酷くなっており、事実チェン誕生日記念の話では、エクシアに丸め込まれ「男がやっても…」ということを実際に行動に移してしまっています。

そんな彼ですが、ifルート内でもあったようにデスクワークもそつなくこなし、戦闘力も抜群とかなり優秀です。

 

格好は近衛局特別督察隊の制服の上に拾ってくれた隊長プレゼントのコートを羽織っています。

 

武器は改造した二挺のFN Five-seveN、カスタマイズした狙撃用ボウガンと近距離用の刀となっています。

 

ゲーム的には星6狙撃で素質は1つは「鼓舞(狙撃タイプの攻撃力アップ)」、もう1つは「直感(感知):(敵のステルス無効)」です。

スキル1は攻撃力アップ+攻撃速度倍(二丁拳銃による連射)、スキル2は永続タイプの攻撃範囲拡大+攻撃力up(プラチナのS2)、スキル3は攻撃力アップ+相手の防御効果無効、デメリットとして攻撃速度低下となります。

 

こちらのルートのヒロイン候補はチェン、ホシグマ、スワイヤー、ラップランドの4人となります。

なお、このルートでは妹ちゃんは流石に龍門を敵に回すのは…というわけでヤマト君に接触しません。

 

裏話(もどき):この世界ではムサシとシラヌイはロドスのオペレーターとして動いています。因みにここでのムサシは大剣を振り回す範囲前衛、シラヌイは狙撃です。あと、こちらのヤマトの接近戦の腕は他のルートに比べると劣りますが、チェン隊長相手に刀1本でそれなりに粘れる(勝てるとは言っていない)ため普通に強いです。

 

・精神崩壊寸前ルート(タイトル:根本にあるもの)

 

設定:こちらのルートは簡単に言うとムサシの死に精神が耐えきれず崩壊しかけ、その上廃人1歩手前までになったものです。このルートに入る条件の大前提としてヤマトがムサシの死後Wと1度も会ってないことが必要です。…そう【幕間:女傭兵との因縁】でヤマトが最後の方で言及していたように、Wに会ってなければヤマトはただ胸の虚しさを埋めるために戦場に身を置くだけの人形になるだけではなく、【人の温もり】【人の優しさ】を忘れかけてしまいます。その最中であらゆる情報屋を使って見つけたのがシラヌイで、ヤマトを保護してからは自分の持てるあらゆる手段を使ってロドスにヤマトと一緒に入ります。

 

格好はロドスの制服にシラヌイが特別に作ったブーツと膝当て、指ぬきグローブを身につけている感じです。

 

武器は某ファイナル幻想8のガンブレードで、仕様は原作同様トリガー引いて振動させたり、DF○とD○FFみたいに爆発する感じの方に切り替えることが出来る感じになっています。

 

ゲーム的には星5生存火力前衛(ヘラグタイプ)で素質は「銃剣(攻撃時、一定の確率でその攻撃のみ攻撃力が上昇)」です。

 

スキルはまず1つは、永続タイプの攻撃力アップ+素質の確率アップ。2つ目はHP半減の代わりに攻撃力アップ+前方真っ直ぐ3マスの敵全てに術攻撃となります。

 

こちらのルートではヒロイン候補はプリュムとラップランドの2名、+‪α‬としてグレースロートの3名となります。グレースロートに関しては、任務をこなしていく度に放っておけない人に…という感じからって流れです。

 

妹ちゃんはこのルートではヤマトに襲撃をかましますが、色々な意味で危ういヤマトは見守られていたのもあって、救援に来た者たちの力を借りて妹ちゃんを倒し、そのまま普通にロドスに連れ帰って面倒見てます。

 

裏話:妹ちゃんを助けると、ヒロイン候補には彼女も参戦します。やったねヤマト!修羅場だよ!!あと、このルートのヤマトの戦い方は自分の怪我の具合は全く考えません。それこそ、下手すれば自分が死ぬ状況でも敵を1人でも倒せるor味方が1人でも助かるなら喜んで死に行くような考えの持ち主、という感じです。

 

 

・BSWルート

 

設定:こちらはムサシがたまたま生き残った場合のルートです。こっちではムサシ死亡というトラウマがないため普通に遠距離武器を何食わぬ顔で使っており、腕前は本編とペン急ルート以上となっています。またシラヌイのお叱りもあってヤマトとムサシはシラヌイ同行の元BSWに参入、そのままBSWで働くことになります。その中でヤマトはとある任務がきっかけで鉱石病を患いそれにはとある人物が関係しているようで…?なお、こちらのルートでは人見知りで初対面の人にはムサシやシラヌイが一緒にいる場合だと彼女らの後ろに隠れるという設定があったり。

 

格好は某炎印の風花雪月の男主人公の服装(上着の袖は大抵通してる)で、武器は大型の両刃直剣、サブにベレッタ92Fとトンプソン・コンテンダー(アンコール)を使用しています。

 

ゲーム的には星5遠距離前衛で素質は「速射(スキル回復が早くなる)」

スキルの1つは攻撃力アップ(近接攻撃のみ術攻撃に変化)で、もう1つは永続タイプの攻撃範囲拡大+攻撃力アップ(プラチナのS2まんまです)となっています。

 

こちらのルートのヒロイン候補はラッピー、レッド、ジェシカ、W、妹ちゃん、ヤマトの行動しだいではそこにリスカムとフランカもという形になっています。

 

このルートの妹ちゃんはムサシとヤマトの2人を相手に当初は優位に立ち回りますが、ヤマトが特攻して作った隙をムサシがついて彼女に気絶するほどのゲンコツをかましてロドスに連れ帰り、そこからはヤマトと話し合いをへて兄妹となります。

 

裏話:トンプソンコンテンダーを使用させたのは作者のただの趣味です。

 

 

 

・辺境の守護者ルート

 

設定:こちらのルートはもし【先生】が狂うきっかけになった事件が未然に防げた場合のルートです。こっちのヤマトは実の親がガーディアン本部まで来て【先生】ことマサムネとその妻カシマに預けたような形となっています。そしてこのルートのヤマトはマサムネの指導と多くの修羅場をくぐり抜けたこと、そして本人の努力によって才能を開花させていてアーツ適正以外は優秀、その中でも戦場機動と戦闘技能は卓越と屈指の実力の持ち主の設定です。彼の小隊のメンバーの内イカズチを除いた3人はヤマトより年上で尚且つ先輩で、幼少期は「お兄ちゃん、お姉ちゃん」と慕い、大抵はその3人の誰かの後ろをついていっており、それもあって3人は実力はヤマトにこそ及ばないですが、彼のことを大事な弟と見ており、今でも暖かく見守っています。なお、ヤマトは気を抜くとその3人のことを幼少期に呼んでいた呼称で読んでしまう時があるという設定もあったり。

こちらのルートではコミュ障ではない…と思いきや人見知りの気があり、自ら率先して友人を作ろうというタイプではないというオチ。ただ、お人好しなのは変わらずで、また子供が相手なら人見知りは発揮しないので子供たちから見たら「いいお兄ちゃん」なのかもしれないです。

 

格好は群青のコートを羽織っており、装備は推進機構がついた片刃の分厚い大剣、拳銃、源石剣、投擲用のピック、手榴弾3個、大型の盾(見た目は某機動戦士の自由のシールドです)となっています。因みにFA仕様だとそこにメテオリーテが使ってるようなハンドバリスタor爆弾矢と弓のセットと源石剣1本が追加されます。はい、盛りすぎましたね()

 

ゲーム的には星6遠距離前衛となっており、素質の1つは「小隊長(配置中5秒ごとに周囲8マスの中にいる味方の攻撃回復系、被撃回復系スキルのSPを1回復)」で、もうひとつは「直感(破・改):(周囲8マスの味方にステルス無効の効果を付与)です。

 

スキル構成として、S1は強撃系列で(術攻撃に変更)、S2は攻撃範囲縮小+防御力&術耐性up+自分にタゲ集中で、S3はHP半減、攻撃速度低下、攻撃範囲拡大(範囲内の敵全て対象)+攻撃力up+術攻撃となります。はい、装備してる武器を全て使わせようとしたらとんでもないことになってしまいました…因みに普段は大剣と銃で戦っていますが、S2ではその二つは閉まって源石剣と盾をとりだし、S3では某悪魔狩りのマキシマムベッ○を大剣と源石剣で再現してる感じとなります

 

こちらのルートのヒロインはフロストリーフ、ブレイズ、ラップランド、プロヴァンス、妹ちゃんとなっていますが、多分増えます。まあ、経歴よし、性格も悪くない、顔も悪くないの優良物件ですから多少はね?

 

こちらのルートの妹ちゃんは完全にヤマトを異性として見てます。それでもお兄ちゃん呼びなのは今更名前を呼び捨てで呼ぶのは気恥ずかしいから…という理由があったり。

 

裏話:ガーディアンの制服は某機動戦士種のザフ○の制服で、一般隊員は緑、特務隊と精鋭部隊の隊員は赤服、小隊長以上のクラスは白服となっていて戦いの場に出る時以外は基本的にこれを着てるという設定です。個人的な意見ですけど、ザ○トの白服は理由は上手く言えませんが結構好きです。

 

 

 

・死を振りまく白き殺戮者√(闇堕ち√)

 

設定:この√は「もしヤマトがムサシに対して異性に向ける愛情を持っていて更に自覚していたら」というのと「それで自分だけではなく、ムサシを奪った人と世界に恨みを持ったら」という場合の√です。この√は所謂裏ルートみたいなもので、普通ヤマトはムサシに対して異性に向ける愛情は持ちません(家族愛みたいなものは持ちますが)。そのため、この√は龍門√並に確率が低い√でもあります。そして、この√ではヤマトの本来の性格である優しい所などは鳴りを潜め、代わりに冷酷で殺すことを他の√以上に戸惑いなどがなく、戦っている者に関しては逃走していたり、命乞いしてくる相手も容赦なく殺します。その上、ムサシを戦争を亡くしたというのもあって戦争してる情報を取ると、すぐに乱入して戦争を止めるために両陣営に対して攻撃を仕掛けたりとやってることがめちゃくちゃであったりもします。

ここまで来ると、ただの快楽殺人者だったり戦闘狂に見えますが、実際はあくまで「ムサシを殺した戦争を止めたい」と「甚振る奴らを消さないといけない」という強迫観念でやっているだけで、快楽殺人者とかではないどころか、命を奪う度にストレスが溜まっていくというとんでも仕様になっています。味覚障害や記憶障害もそのストレスからきており、彼が味覚を取り戻すには戦いから遠ざけるしかないです。また、最初から戦う術が無い者に関しては何もしません。と言うより場合によっては本人すら理由がわからない状態でその人が怪我をしていれば手当をしたりと、根本的な優しい部分は完全になくなったわけではないです。因みに、行き倒れていた理由は「前の街で食料買い忘れた」というシリアスブレイクするようなもので、ケルシーと話してる時も実はめちゃくちゃお腹空いていたという。ポンコツな部分も消えないとか、キャラ濃すぎぃ!

 

格好はKHシリーズに出てくるクラウドのコスチュームから翼と左手の手袋(?)を無くした感じで、装備はGNバスターソー○Ⅲと刀剣タイプの銃剣をつけたCz75 SP-01(ヤマトカスタム)と小太刀。また、暗殺だったり諜報系統の任務の場合はFat○/Zeroの切嗣の服装になり、銃にはサプレッサーが付けられます。

 

ゲーム的には攻撃範囲が前方2マスタイプの星6生存火力前衛となっており、素質の1つは「死神」で敵を倒す毎にSP2(3)回復で、もう1つは「再復帰」で手動で撤退した場合にのみ再出撃時間-20秒という感じです。

 

スキル構成としてS1は攻撃回復自動発動型の強撃で、S2は術攻撃変更+攻撃力アップ+攻撃射程縮小(1マス減少)、S3はパッシブタイプで攻撃力アップ+術攻撃変更+攻撃速度up(効果時間終了後強制退場)というクセが強い感じになっています。

 

ヒロインはレッド、ラッピー、カッターの二名となっています。カッター参戦に関しては、満身創痍状態で賊に襲われた時にたまたまその場面に出くわしたヤマトが彼女を助け、更に気まぐれで傷の手当+ある程度回復するまで面倒を見られた+彼の過去を知って「自分が支えなくては」という感じになってという形です。まあ、助けたヤマト本人は忘れてますが。

 

 

裏話:趣味は寝ること+音楽を聴くことで、他の√に比べると昼寝をしたりする機会は多い上に、音痴でもなくレッドの前では偶に鼻歌歌う時もあります。まあ、常に警戒してる上武器は常に身につけているので寝込みを襲おうものなら銃弾か小太刀、ナイフが飛んできますが。なお、この趣味は某過保護守護霊が暗躍してる影響も実はあったり。

 

 

・天馬の守護騎士(カジミェーシュ亡命√)

 

設定:この√はヤマトの実の両親が我が子を守るために、数人の信頼できる人だけを連れてカジミェーシュに逃げた場合の√です。こちらの√では、ヤマトの父親がカジミェーシュで独立騎士として競技に参加し、ヤマトが5歳になるまでに起業するための資金を集め、目標金額までいったらさっさと引退して起業し、その中で家が近くということで二アール家と交流を持つようになった、というのが大まなかな流れです。

この√のヤマトは、二アールたちが言っていたように幼少期は人見知りが激しく、その上抜けてたりと残念な部分がありますが、気遣いはこの頃から人一倍出来ており、それでウィズラッシュ叔母さんを落としてたりしています。

そして、ひょんなことがきっかけで知り合った当時独立騎士であったクラウスをかなり慕っており、クラウスは自分が独立騎士というのもあって距離を置きたかったのですが、何故かヤマトの両親に気に入られ気がついたらヤマトの父親の会社の企業騎士(実際は競技には出させない肩書きのみ)として雇わられてたりと、クラウスからしたら頭を抱えたくなるようなことになります。が、呑気に慕ってくるヤマトや無駄にお人好しなヤマトのご両親とお付きの人と交流していくうちに考えるのがバカらしくなり、ヤマトの希望もあって剣を教えたりしていました。

が、事故で片腕を動かせなくなったこともあって、ヤマトの父親に一方的に辞めることとヤマトに伝言と自身の剣とマントを託すことのみを告げ、半ば夜逃げするような形でヤマトの前から去り、それがきっかけでヤマトはクラウスから教わった剣技(思い出)守るためというのと、強くなってクラウスに恩返しがしたい、自分を見つけて欲しいという動機から更に修行し、結果としては両親の反対を押し切って騎士競技の世界に飛び込んで、ヤマトを潰す気で送られて当たったベテラン相手に圧勝ということをして、期待のルーキーとして騒がれましたが、二アールを助けるためにルールを破ったため、競技界から追放。喧嘩別れした二アールを探すため、父親の会社の専属トランスポーターとして働き始めた、というのが流れです。

 

性格は、基本的に辺境の守護者√のヤマトに近い形ですが、違う点としては人当たりがいいと言うのと、実は女性慣れしておらず、一見普通に話してるように見えても内心では心臓バクバクというオチです

 

服装としては、異界のロイまんまです、はい()武器は大型の両刃直剣と打突出来るように先端が鋭利な盾と弓、そして腰に黒い刀を帯びてる感じです。

 

ゲーム的には星6のチェンタイプ前衛となっており、素質の一つは「第六感」で敵の攻撃(術攻撃も含む)を20%(30%)の確率で回避。もう1つが「高速復帰」で再出撃時間が-25%減というものです。

 

スキル構成としては、スキル1が攻撃回復の強打系スキル、スキル2が手動発動型の強打系スキルで発動後自身の防御力が一定時間-15%。スキル3が術攻撃変更の連続攻撃系スキルとなっています。

 

ヒロインは二アール家の3名のみです。この√のラッピーは、ヤマトは強いから気に入ってはいるけど、好意を抱けるほどヤマトの内面が汚くなってないためノータッチです。まあ、二アール家の反応が面白くてそれっぽい行動を取ることはありますが()

 

裏話:ヤマトの本当の全力は腰に差している刀と弓を使った近中距離の高機動戦闘であり、本人も自身はこの戦い方が一番合っているのを自覚している。それでも、クラウスの一撃に全てをかける剣術をメインにしているのはヤマトがそれほどクラウスへの思い入れが強いから。もっとも、その剣術の時でさえ並の騎士やオペレーターでは歯が立たないため、かなり洗練されているのが現実であったり。

 

 

 

・不殺を志した僧侶(僧侶ルート)

 

設定:この‪√‬のヤマトは他の‪√‬のヤマトより5年早く生まれており、その影響で「先生」に拾われるのも、ムサシに拾われるのも5年ほど早くなっています。そのせいもあってか、ムサシとは歳が近いせいもあって恋愛方向の想い持っていました。そして、白髪化から分かるように闇堕ちしかけるんですが、そこを例の「住職様」に保護され、山の中にある寺という自然に囲まれた所で比較的穏やかな生活をした結果、術師の才能が開花。以後は、自分が生き残った意味を考えながら過ごし、最終的には「人を殺さずに助ける」という志をもち、シラヌイがムサシの形見の大剣を利用して作った、アーツユニット兼武器でもある錫杖と刀が送られ、更に「住職様」から旅をして自分の答えが正しいかを見極めるように言われ、旅に出てその道中で会った賊モドキの人達をなんの意図もなく改心させ、旅の仲間として旅をしていたところ、とある感染者の団体の噂を耳に挟み、嫌な予感がしたためその感染者の団体に単独で潜入しようとしたところ、仲間たちが「一人でやるなんでアホかお前」って感じで着いてきた、という感じです。そして、旅の途中とあることがきっかけで感染者にもなっています。

 

性格は基本的に穏やかで大人びた感じでありながらも、他の‪√‬でのお人好しっぷりは残ったまま。ただ、ムサシの件もあって深い仲にならないために一線をしいており、危険なことは自分一人で解決するところがあります。そして唯一、コミュ障とあがり症がないルートでもあったり。

 

 

服装はモンハンライ○の重ね着防具のカムライシリーズを黒くした感じです。武器は、アーツユニット兼近接武器の錫杖とこれまた別用途で使うアーツユニットである本。そして腰に差してある逆刃刀を使います。ただ、刀は基本的に抜くことはなく、抜かなければ命を落とす者がいるという時のみ抜く、という感じになっています。

 

ゲーム的には、星6の単体術師となっており、素質としてはサガの勧善と、もう1つは「直感:守」で配置後20秒後に物理攻撃と術攻撃の回避率60%の2つを持っています。

 

スキル構成としては、スキル1は攻撃速度と攻撃力アップ、スキル2は発動後スタンのデメリットが無くなったアーミヤのS2、S3は攻撃速度低下+攻撃力アップ+敵の防御無視の攻撃スキルとなっています。

 

ヒロイン候補としては、姐さんやW、ラッピー、イカズチが入ります。姐さんは色々と気にかけてくれたこととお世話になったこと、Wはヤマトが気に食わないもののそれで変に気になってしまって、ラッピーはヤマトの志とあまりにも濃い血の匂いで気になって、イカズチちゃんは言わずもがな、ヤマトがあっさりと彼女の存在を受けいれるので陥落します。

 

裏話:ある感染者の団体の中では、飛び入りではあるもののその飛び抜けた実力や彼の人柄もあって短い期間で幹部になり、幹部たちとの仲も悪くはなく、またメンバーのメンタルケアやカウンセラー的なことしており、特にとある少年2人とは仲が良かったとか。

 

さらにオマケの追加情報:ヤマトのS3の攻撃モーションは、刀に手をかけ一瞬だけ動かすもの。そしてその直後に無数の斬撃が目標を切り刻むというもの。……某悪魔狩り4SEの鬼いちゃんのあの技をイメージしてくださるといいと思います。

 

 

 

・休日威狼ヤマト(龍門チェンルート)

 

設定:「決別(龍門チェンルート)」の世界線のヤマト。チェンへの想いを拗らせてはいるものの、その代償と言うべきなのか実力はかなり上がっており敵意や殺気だけで近距離ならば相手の位置を把握するという並外れた感性をも手に入れた。また、射撃武器を持って攻撃する際に全てがスローモーションに感じる(ゼルダの伝○ブレワイの空中スローモーション射撃みたいな感じ)という一種の極みにも達しており、遠距離に関しては間違いなく全ルートの中でもトップクラス。また、近接の方も二刀流に変えているものの一刀流の頃よりも洗練されている。

 

格好はマウンテンパーカーにジョガーパンツとラフな感じ。

 

装備に関してはドッソレスでエルネストから買い取ってそれを更に自分なりに改良したアサルトライフル型の水圧銃と拳銃型の水圧銃、シラヌイ特性の源石剣2本という構成。

 

ゲーム的には星6遠距離前衛となっており、素質は「直感(感知):敵のステルス無効)」と「龍の番:(種族:龍の攻撃力、攻撃スピードアップ)」。

スキル1は攻撃回復のスタン付与強撃。スキル2は途中切り替え可能な攻撃範囲縮小+術攻撃変更+攻撃力、攻撃速度アップ(シルおじS2を攻撃特化にした感じ)。スキル3は攻撃範囲を縦3マス前方3マス(要は普通の狙撃と同じ)に変更、通常攻撃の時間が大幅に短縮(80%)、攻撃力+100%で計25発の銃弾を撃ち切るとスキル終了(手動でスキル停止可能)

 

こちらのルートのヒロインはチェンのみで、ボイスとしては復縁後の内容がとび出てくるため急に惚気が一部ぶっ込まれます。

 

裏話:チェンと会えた日の翌日にはヤマトの首元には絆創膏が貼られている事がお決まりだったり。

 

 

おまけ

 

総合戦闘力

 

僧侶>守護者≧休日>BSW=闇堕ち>その他のルート

 

近距離戦闘

 

僧侶>守護者≧休日>闇堕ち=本編=根本=BSW=天馬=ペン急>龍門

 

遠距離

 

休日≧龍門=僧侶>天馬=BSW=闇堕ち>守護者≧ペン急≧本編>>>(越えられない壁)>>>根本

 

天然ぶり

 

根本>>>(越えられない壁)>>>天馬=龍門>>本編=休日>ペン急=僧侶>守護者=BSW=闇堕ち

 

ポンコツぶり(騙されやすも含む)

 

龍門=天馬>>>根本>本編=ペン急=休日>BSW>>>守護者=闇堕ち=僧侶

 

料理の腕前

 

闇堕ち√がダントツで最下位だが、それ以外差はほぼなし。強いて言うなら本編がギリ1番。

 

モフモフ度

 

守護者=天馬>本編=BSW>休日=龍門>その他のルート

 

女難の相

 

BSW>>(越えられない壁)>>ペン急=守護者>本編≧龍門>根本=闇堕ち=天馬=僧侶>休日




一応全ルートの設定を見たい方もいると思ったので公開しました。
最後のおまけはあくまでひとつの指標という感じで見ていただけたら幸いです。


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番外編
UA1万超記念話 ifルート~コミュ障狼とやべー配達員達のある一幕~


UAが1万超えましたのでその記念と、ペンギン急便メインイベントという訳で急いで書きあげました…記念話の癖に即興でやったせいで短い上に内容が薄いとはどういうことなのか()

それでも、「しょうがねえな…読んでやるよ」って方のみお読み下さい。


それではどうぞ!


今から語れる話は、ある元傭兵の狼が辿ったかもしれない道の一つ…

有り得たかもしれない未来のある一幕をあなた達に────

 

 

*****

 

ペンギン急便の新入社員である、ヤマトの朝は早い。

起きたら軽く身だしなみを整えて寝間着から、仕事服に着替える。

着替え終えた後にすることは、これから起きてくるメンバーと自分の分の朝食作りだ。

 

(冷蔵庫の中は…夕飯で使いたいものを考えると……うん、今日の朝食はパンを主食にしたものにしよう)

 

ヤマトはそう考えをまとめると冷蔵庫から生卵とベーコン、レタスとトマトを取り出して調理を始めた。

 

「ふぁ〜…おはよ〜ヤマト…」

 

「……相変わらず早いな」

 

レタスとトマトを切って器に持った時点で欠伸をしながらエクシアと少し眠たそうなテキサスが入ってきた。

 

「おはようエっちゃん、テキサス」

 

「ヤマトー、今日の朝ごはんはー?」

 

「今日はトースト、ベーコンエッグにサラダとインスタントのコーンスープだよ…とりあえず、あともう少しだから座って待ってて」

 

「はーい」

 

聞きなれたエクシアの間延びした返事を聞き流しながらも、ヤマトは調理を進めていく。

 

(まずは、ベーコンを…)

 

ヤマトは熱したフライパンに多めの油をひき、そこにベーコンを入れて焼き始め、ある程度火が通ってきたのを確認するとそこに卵を割って入れる。

 

(あとは空いてるペースに水を少し入れて蓋をすれば…)

 

「お、おはようございます!あれ、テキサスさん達がいるってことはもしかして…」

 

「おはよ〜、おっ、美味しそうな匂いがしとるな〜。タイミング良かったんちゃう?」

 

「ああ!やっぱり!ヤマトくん、手伝うから起こしてって言ったのに〜!」

 

「ご、ごめん…すっかり忘れてた…」

 

そこにバタバタと慌てた様子でソラが、ほんの少しの差で早くもベーコンが焼ける匂いに反応したクロワッサンがやってきた。

ソラは前日に朝食作るのを手伝うとヤマトに告げていたのだが、当の告げられた本人はすっかり忘れていたのだった。そんなヤマトに「次からは起こしてね?」とソラは言うと、台所に入ってサラダなどの配膳を始めた。

 

「あ、おn……ソラ先輩。もうすぐベーコンエッグもみんなの分できるからトースターにパンを入れてくれる?」

 

「ん、いいよー」

 

そんなこんなで、出来た朝食を食べ始めた彼らだが何故、ヤマトが朝食を作っていたのか?

これは別に当番制でなければ、4人がヤマトを虐めているわけでもなくヤマトが5人の中で一番適任でかつ本人が希望したからだ。

そもそも、なぜヤマトが適任だと判明したのかどうかは…女性陣4人の名誉の為に割愛させていただく。ただ、一言言えるのは彼女らの女性として何かが負けた感覚を味わせられたとだけは述べておく。

 

「さて、今日の仕事なんだが…私、エクシア、ヤマトで○✕にカチコミ、ソラとクロワッサンは荷物の配達業務だ。各自、20分以内に準備を済ませるように」

 

「「「「了解(!)」」」」

 

朝食を食べ終え、後片付けを終えた後にテキサスが今日の業務を告げると、それぞれ自室に準備をしに戻った。

 

***

 

ヤマトは部屋に戻ると、6本に分けて保管していた合体剣を取り出して土台であるファーストブレード、ハンドガードにまで刃が付いてるセカンドブレード、ギザギザの刀身をもつ2本の剣のバタフライソードと短めの剣である2本のルーンエッジのうち1本を残して合体させて1本の大剣にした。

防刃防弾加工された特別性のコートを羽織り、腰に剣を差すためのホルダーを着け、そこに組み込んでいないルーンエッジを差し、大剣を右肩の肩当てにくっつける。最後に()()()()9()2()F()にステンレス製のシルバーカラーバレル、鋭角的な形状のブリガディアスライドを備え付け、他にも連射性能を上げたりとヤマトなりにカスタマイズした新しい相棒を専用のホルスターに、予備のマガジンをポーチに入れると少しだけ目を閉じた。

 

 

(……………ムサシ、嫌だと思うが見守ってくれ)

 

「ヤマトー!準備できたなら一緒に行くよー!」

 

「うん、今行く!」

 

ドア越しからエクシアに声をかけられたヤマトは、目を開きドアを開けて1歩踏み出した。

 

自分をからかいながらも優しくしてくれる天使、色々と備品を壊しまくっているけど朗らかな先輩、自分なんかに気をかけてくれる姉のような先輩、そして──

 

「揃ったな…では、行くとしよう」

 

顔には出さないけど、新参者の自分を大事な仲間の1人だと認識してくれる人達と共に、元傭兵の狼は歩んでいく。

 

これはそんなもしもの世界の一幕…




キャラ紹介

ヤマト:本編とは違い、ペンギン急便のトランスポーターになった場合のヤマト。本編との違いはペンギン急便勢とは心から気を許していることと武器に拳銃が追加されたぐらい。なお、拳銃を持ち始めた理由はテキサスや皇帝が仕事の際にメンバーの組み合わせなどがやりやすいようにというヤマトなりの気遣い。あと、ヤマトの拳銃をもしかしてあの拳銃?と思った方、さてはバイオでハザードなゲーム経験者だな?(作者は未プレイ)

テキサス:本編との違いはさほど無い。強いて言うなら本編ではヤマトのことをほっとけないやつ、こっちでは大事な仲間の1人だと思ってるぐらい。

エクシア:うちの本編に出てない星6狙撃。彼女については本編で出た時に語るとして、こちらではヤマトのことを暇な時は終始からかったりしてる。尻尾をいきなり掴んだ時に、ヤマトが赤面+涙目で抗議してきた時は何かに目覚めかけたとか…

クロワッサン:うちの本編に出てない星5重装。彼女についてはエクシア同様本編で出た時に。こちらの世界線でも相変わらず備品を壊しまくっているものの、直せるものならヤマトが直しているためまだマシという…力加減を覚えましょう。

ソラ:ペンギン急便勢の中では1番本編との違いがあり、こちらではヤマトのことを初めての後輩というより、弟みたいな感じで見ている。まあ、ヤマトの本性は天然だからそう見てしまうのは仕方ないのかも…エクシアのしっぽお触り事件では1番キレた。


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UA25000&お気に入り250件記念!〜ifルート:近衛局の狙撃手~

今更ではありますが、皆様のおかげでUA25000&お気に入り250件を突破しました!
これからも、「ロドス劇場」の方をお願いします!

今回はその記念話というわけで、有り得た世界のうち最も辿る可能性が低い世界線のあるオオカミのお話を皆様に…


『…なるほど、苦戦していたところをこの少年が助けてくれた、と』

 

『ええ、信じ難い話ですが。自分の二回り以上も大きい大人をいとも容易く……』

 

『…ふむ、よし決めた。この子は私が預かろう』

 

『ええ!?本気ですか!?いくら子供とは言えど──!』

 

『言いたいことはわかるが、こんな逸材を放っておくのは勿体ない。それに──』

 

****

 

「……懐かしいな」

 

近衛局特別督察隊の隊員であるヤマトは、捨てられた自分を拾ってくれた育ての親と会った時の夢を見たことを噛み締めるように呟くと、すぐに意識を切りかえベッドから抜け出して、寝間着から隊服を着て、着任祝いに貰った特別性のコートを片手に朝ごはんを済ませようと台所へ向かった。

 

 

****

 

「おはようございます、ホシグマさん」

 

「おはよう、ヤマト。いつも通り早いな」

 

「その言葉、そっくりそのままお返ししますよ」

 

近衛局内の廊下でばったりあったヤマトとホシグマは喋りながら廊下を歩いていく。

ヤマトとホシグマは両者の戦闘スタイルの関係上、同じ任務に派遣されることが多く気がつけば2人には上下関係を超えた絆が出来ており、仲良さげに話していたり、一緒にお酒を飲んでいるところは今や近衛局の者たちにとってはよくある光景となっていた。

そんな中でホシグマは昨日から気になっていたことを聞くことにした。

 

「そういえば、ヤマト。昨日からチェン隊長の機嫌がすこぶる悪かったのだが…何か知っているか?」

 

ヤマトは最初聞かれた時こそ、疑問符を浮かべているような顔をしていたが「あっ」と何か思い出すと「多分あれかな…」と呟き、しどろもどろに話し始めた。

 

「あー、えーと。そのスワイヤー…さんだったかな?休憩中に飲みもの買いに行ったらそのスワイヤーさんが『書類終わらない…』ってブツブツ呟きながらフラフラ歩いてたから、つい手伝いますよって言っちゃって…」

 

「ああ……(察し)」

 

ホシグマはそこまで聞いて何となくそのあとの展開が読めて思わずため息を吐いてしまった。

ホシグマが内心想像したことは、ヤマトの事務処理の手際の良さを目の当たりにしたスワイヤーが「是非うちに!」と引っこ抜こうとして、それを休憩時間が終わったのにも関わらず戻ってこないヤマトを注意しようと探していたチェンがそれを目撃してしまい、そこから口論に発展し、終わったあともイライラが治まらなかったのだろうという事だった。

 

そしてホシグマの予想は全て的中していた。

なお、近衛局に勤める者の中でも茶目っ気と肝がかなり据わっている一部の猛者達はそれを「ヤマト争奪事件」という風に名付けていたのを当事者たちは知らない。

 

「…お前の優しさというか人の良さは美徳だが、やりすぎるとああいう事になるということをしっかり覚えておけ」

 

「はい…気をつけます…」

 

ちょっとシュンとした相変わらず色々と素直なヤマトの頭をホシグマはポンポンと手で軽く撫でたのであった。

 

「そういえば、今月の見回りはヤマトとチェン隊長がコンビだったな…」

 

「え」

 

…因みにヤマトは先程の戦闘スタイルの関係上チェンとも同じ隊になったり、見回りの組を組むことが多かった。

 

****

 

「ねーねー、オオカミのお兄ちゃん。りゅうのお姉ちゃんお兄ちゃんのことすごい見てるけどどうしたの?」

 

龍門のとある場所にて、ある子供が穢れが全くない純粋さ100%の目で聞いてきたないようにヤマトは内心、どう言うべきかと頭を悩ませていた。

バカ正直に話せばいい笑顔(目は笑っていない)を浮かべたチェンに八つ裂きにされる未来は考えなくとも分かるものの、変なこと言って彼女の琴線に触れてしまっても同じく八つ裂き。

 

(詰んでる)

 

ヤマトが「もう殺される覚悟で何とか誤魔化すしか…」と悲壮な決意を固めた中、一人の少女がチェンに近づいた。

 

「りゅうのお姉ちゃん、オオカミのお兄ちゃんと【ちわげんか】したの?」

 

「「!?」」

 

Q.痴話喧嘩とは?

A.男女間の愛情のもつれでおこる他愛のない喧嘩

 

(とんでもない爆弾を投下されたあぁぁぁ!?)

 

気まずそうにしているヤマトとチェンの為を思って女の子が聞いた内容は、正直やばいものだった。

 

「そ、そ──」

 

「あーとね、お兄ちゃんとお姉ちゃんはそういう仲じゃないんだ」

 

チェンが顔を赤くして何か言う前に、それを怒りで顔を赤くしていると感じたヤマトがすかさず女の子に一言入れてこの話を終わらせようとした時だった。

 

『ポイントX-502の銀行にて立てこもり事件発生!近くにいる隊員は速やかに急行せよ!繰り返す──』

 

「ヤマト」

 

「はい、すぐに向かいましょう」

 

緊急通信用のチャンネルで入ってきた情報にチェンとヤマトは先程までとは一変して、歴戦の戦士の顔になり互いの顔を見て頷きあった。

 

「…お兄ちゃん、お姉ちゃん。お仕事?」

 

急に顔を険しくした2人に、不安そうに聞いてきた男の子にヤマトはしゃがんでその男の子の目線に合わせると、優しい笑みを浮かべて彼の頭にポンと手を乗せた。

 

「ああ、俺らはこれから悪い人たちをやっつけに行かないといけない。だから、また俺らが戻ってくるまで皆のことを守るんだぞ?」

 

「…うん!頑張ってね!」

 

「ああ、じゃあまたね」

 

元気よく頷いた男の子の頭を軽く撫でると、ヤマトは先に現場へと向かったチェンの元へ向かった。

 

 

****

 

『ヤマト、そちらから中の状況は伺えるか?』

 

「…確認できる限りですが、数は10で武装はボウガン、ナイフ、あと鉄パイプです。あと動きからした素人と見ていいです。あと人質の傍からは3名ほど離れず近くにいますが、あまり距離をとっていませんね。結論としては、攻め込むなら一瞬でケリをつける必要があるかと」

 

『了解した。こちらから指示が新たにあるまで待機せよ』

 

「分かりました」

 

ヤマトは立て篭り犯がいる銀行から少し離れた狙撃ポイントにて、自分専用に矢倉を付け加え連射性を上げた狙撃用のボウガンから倍率スコープを覗きながら中の様子をひたすら観察していた。

 

『これより、裏口から突入を仕掛ける。ヤマトはこちらの合図と共に人質の近くにいる奴らを全員無力化させろ』

 

「分かりました」

 

人質に危害が加わる前に人質のそばに居る3名を無力化させろ、という無茶ぶりに対してなんて事ないように返事をし、照準を3名のうち1名の頭に合わせて合図が来るのを待つ。

そして──

 

『やれ』

 

チェンからの合図とともに引き金を引き、当たったかどうかを確認する前に矢が自動で装填された瞬間に残りの2人をすぐに射抜いた。その直後にチェン達が内部へ突撃したのをスコープ越しで確認したヤマトは、ボウガンを肩に背負うと人質を保護するためにその場から離れようとして──

 

「うわっ!ちょっと待って!私だよ私!」

 

「…なんだ、エっちゃんか……」

 

背後に気配を感じ、腰のホルスターから拳銃を抜いて振り向きざまに構えると両手を慌てて上げるペンギン急便のエクシアがいた。

ヤマトはため息を吐きながらも、抜いた拳銃を回しながらホルスターにしまった。

 

「それで、何でここに?」

 

「いやー、ちょっとテキサスに追われてて、それから逃げるためにショートカットで…あ!ヤマト、私の事──」

 

「職務中なのでムリですさようなら」

 

「うーん、淡白!でも仕事中なら仕方ないよね!それじゃ、私は逃げなきゃだからバーイ!…あっ、この前の約束通りその拳銃後で見せてねー!」

 

嵐のように去っていったエクシアにため息を吐きつつも、サンクタにとって拳銃っておもちゃみたいなものなのになんで見たいんだろう?とヤマトは自分で扱いやすいようにカスタマイズした拳銃を見て、息を吐くと自分の仕事を片付けに向かった。

 

 

****

 

「「「今日もお疲れ様(でした)」」」

 

あの後、無事に事件を解決し事後処理を終えたヤマトとチェンはホシグマの誘いでいつも世話になっている居酒屋に来ていた。

 

「ふぅ…あー今日も疲れた…」

 

「あれぐらいでへばるなんて、ヤマトらしくないな。一体どうしたんだ?」

 

「どっかの隊長さんが事後処理の書類の半分を俺に回してきたからですよ…」

 

「隊長…」

 

ジョッキを片手に机に突っ伏して疲れたように声を出しながらも、恨みを込めた目で見つめるヤマトと、呆れたように見つめてくるホシグマにチェンはぷいっとそっぽを向いてつぶやくように言った。

 

「…仕方ないだろう、私だけじゃ厳しかったのだから」

 

「そうですけど…いくら何でも俺が自分の分が終わった瞬間に回さなくても良かったじゃないですか…」

 

ジト目で見つめてくるヤマトに「うっ」と呻き声を上げたチェンは、やけくそ気味に酒を飲む。

ヤマトはそうやって相変わらず誤魔化そうとするチェンに苦笑しつつも、機嫌が治っていることに心底ホッとしていた。

 

その後はチェンが酔いつぶれて寝息を立てるまで酒を飲み続け、その後解散となったあとはヤマトはいつものように寝息を立てるチェンをおぶって歩いていた。

 

「……お疲れ様です、先輩」

 

ヤマトは寝ているチェンに、かつて呼んでいた敬称で彼女をいたわる言葉を告げてまた歩き出す。

 

──これは数ある彼が辿る可能性があった世界線でも、特に可能性が低い未来。

──彼は、信頼する者たちと共に自分を受けいれ育ててくれた龍門を守り続けるだろう

 




基本的にifルート系列はこういった記念系であげる感じになります。

それにしてもちょっと今回はやっつけ話っぽい感じになってしまった…
もっといい話をかけるように頑張らないとなぁ…

キャラ紹介

ヤマト:本編、ペン急ルートとは違いムサシに拾われることなく、ある偶然で当時の龍門特別督察隊隊長にその才能を買われ拾われたという経緯をたどったifのヤマト。拾われてからは、ある学校に通い様々なことを学び、卒業後は近衛局に入って地道に成果を上げていって龍門特別督察隊に入隊した。こちらの世界のメインウェポンはカスタマイズした狙撃用ボウガンでサブに刀と、グリップや連射性さらにロングマガジンと色々改造した二挺のFN Five-seveNを使っている。なお、射撃能力は本編ルートのヤマトよりも高く、逆に近接は本編より劣っている。なお、定期的にスラム街の子供達と交流しており、チェンとはそこでたまたま会ってからは2人で行くことが多くなったという経緯もある。
余談ですが、ヤマトの装備を見て成層圏を狙い撃つ男の機体を思い浮かべた人は何がとは言いませんが正解です。

チェン:書類仕事をテキパキとこなせる部下がいるおかげで、仕事が少し楽になった隊長。ヤマトとは一時的に先輩後輩の関係だったが、まさか部下になるとは思ってなかったとの事。ヤマトの人柄と戦闘力を信頼しており、傍から聞くと無茶ぶりな指示もヤマトなら出来ると信じているから。二日酔いの看病は本編とは違い20回目でやっと慣れた。

ホシグマ:ヤマトの上司にあたる。共通の上司に振り回される苦労人仲間として意気投合し、さらにヤマトが酒も自分と同じくらいイける口と判明してからはよく誘うようになったとか。ヤマトからみたホシグマは頼れる姉みたいな人。

スワイヤー:こっちにも事務処理出来るやつよこせぇぇぇ!

エクシア:ひょんな事でヤマトと知り合ってからは、たまにつるむ仲に。ヤマトが彼なりにカスタマイズした拳銃は銃マニア的に気になる模様。

元隊長:回想で登場。ヤマトの才能を実際に戦闘を見てもないのに見抜いたというとんでもない人。現在は退職しており、早く孫の顔が見たいとかつての友に愚痴ってる。


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UA50000突破記念話〜ifルート:根本にあるもの〜

今回はUA数が50000超えたので、その記念話となります!
これからも、精進してまいりますのでこれからもロドス劇場をよろしくお願いします!

そして今回のメインは今まで話に出したくても出せなかったあのオペレーターとなります。本編でヤマトと絡んでるキャラじゃないことはどうか皆様の海より深い寛大な心でお許しください…


「1人で突貫しないでくださいよ?流石にフォローするのも大変なんです…」

 

「……善処する」

 

プリュムは変わらぬ返事をする銃と剣を無理やりくっつけたような武器を扱う相方にため息を吐きながらも、未だに戦意を落としていないレユニオンに視線を向ける。

 

「……ある程度減らしたが嫌な予感がする。プリュム、お前だけ離脱して援軍を要請──」

 

「しませんよ。貴方のことでしょうから、他の人が傷つかないように一人で突っ込む気でしょう?それに、援軍の要請はついさっき無線でしましたし」

 

「…………」

 

「ですから、その礼はいつものチョコレートパフェで打ってあげます」

 

「……生きてたらな」

 

「死にませんし、貴方も死なせませんよ」

 

その言葉を皮切りに、プリュムは何かと死にたがる相方──ヤマトと一緒にお互いの得物を構えて駆け出した。

 

 

 

*****

 

プリュムがヤマトに対して抱いた最初の印象は恐怖だった。

それも、ヤマトと一緒に挑んだ作戦で彼が相手を倒した時も、逆に刃を向けられたりその身を斬られようともずっと無表情でいたからだ。

 

そしてその印象が変わったのはとある作戦で本隊とはぐれ、帰還することが出来ずに野宿をすることになった時だった。

当時、プリュムはこういったサバイバル術を持ち合わせておらずヤマトもそういった物に縁がなさそうだと思っていたため頭を抱えたのだが、そのヤマトが何食わぬ顔で簡素なサバイバルキットを懐から取り出してあっという間に火を起こして野宿の準備を終えた時は目を白黒させた。

さらに言えば、ヤマトが野生の熊を倒してそれで作ったご飯を食べた時に限っては女性として負けた気分を味わさられた程であった。

そして、2人きりなせいもあってプリュムが話を振ればたどたどしかったがヤマトはしっかりと返事をし彼なりにも話を広げようとしていたのもあって、この時プリュムはヤマトに対する印象を良い方向へと修正した。

 

そして、プリュムがヤマトに対する印象が決定的に変わったのは「火の番を寝ずにやる」と言って聞かなかったヤマトを仮眠をとった後に無理やり寝かせた時であった。

 

「……っ!うっ……あっ…

 

「ヤマト…?大丈夫ですか?」

 

急に魘され始めたヤマトをプリュムが彼に近づくと彼はプリュムにしがみついた。

 

「っ!?な、何を…!?」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい置いてかないで置いてかないで置いてかないで置いてかないで置いてかないで置いてかないで置いてかないで…」

 

「これは…」

 

涙を流しながらうわ言のように謝罪と懇願の言葉を繰り返すヤマトにプリュムは戸惑うも、自身の勘が命ずるままに彼の頭に手を置いて撫で始めた。

 

「大丈夫…大丈夫…」

 

安心させるように声をかけながら頭を撫でて暫くしてから、スースーと穏やかな寝息が聞こえてきたところでプリュムは息を長く吐いた。

プリュムとてロドスにいる人達の殆どが訳ありなのは何となく察していたが、ヤマトは予想以上に重い過去があるのだろう感じた。

 

(考えても仕方ない…とりあえず、いつでも動けるように離さないと…)

 

いかないで…

 

「……………仕方ない…ですね」

 

プリュムはヤマトを離すのを諦め、子供のように眠る彼に寄り添って火の番を続けたのであった。

この瞬間、プリュムはヤマトのことを『ほっとけない子』だと思い始めたのだった。

 

 

*****

 

 

「ヤマト、私がなんで怒っているか分かっていますか?」

 

「……?」

 

「いや、心底分からないと言った顔で首を傾げないでください…」

 

プリュムは医務室のベッドで絶対安静と言い渡されているヤマトに対してため息を吐いた。

ヤマトは先日の作戦で、プリュムと2人で援軍が来るまで持ち堪え、そして到着した援軍と共にレユニオンを撃破していったのだが、その最中でサルガスの女性が投げた爆弾にいち早く気づいたヤマトはその爆弾をガンブレードで()()()()()()()()()無効化し、相打ち覚悟でその女性に突撃し、彼女を撤退させた代わりに重傷を負ったのだ。

 

「いいですか、何度も言ってますがあんな無理無茶はしないでくださいよ?シラヌイさんからもあなたの事を頼まれてますからね」

 

「……?とりあえず善処する」

 

「はぁ〜……」

 

プリュムは今までと変わらない返事をするヤマトにため息を吐きつつも、何度もこうやってやっていくしかないと諦めていた。

 

(まあ、私自身が彼に死なずにそばに居て欲しい、というのがありますけどね…もう、私の相棒は残念ながら貴方しか務まりませんから…)

 

「?どうかしたのか?」

 

「いえ…とりあえず絶対安静ですからね?くれぐれも筋トレをやったり、こっそり抜け出して調理室に行かないでくださいよ?チョコレートパフェは治ってからでいいですからね?」

 

「…言われなくても、それぐらいは守れる」

 

「そう言って、筋トレやったり抜け出してクッキーを作ってたのはどこの誰なんでしょうかね…」

 

プリュムはムッとした様子で言い返してきたヤマトに疲れ気味にそう返しながら、部屋を出ようとしたところで。

 

「プリュム」

 

「?なんです…」

 

「いつもありがとう…俺みたいなやつを気遣ってくれて」

 

「…………」

 

「すぐに治して、チョコレートパフェ作るから待っててくれ」

 

「………はい、待ってます」

 

プリュムは病室から出てフラフラと歩いて壁にもたれかかってズリズリと腰を下ろして、先程の光景を思い浮かべる。

 

(今まで無表情か不機嫌な顔しか見せてこなかったのに、なんで急にあんな風に微笑むんですか…!?)

 

『プリュム。いつもありがとう…」

 

(〜〜〜〜っ!?)

 

初めて見たヤマトの笑みと優しい声音がフラッシュバックし、プリュムは顔に熱が集まるのを感じると共にその場で悶えている中、カシャっと何かのシャッター音が鳴り響いた。

 

「っ!?」

 

「へ〜、あのプリュムちゃんが顔真っ赤にして悶えてるなんて良いところ撮っちゃった☆」

 

プリュムが急いで顔を上げると、いい笑顔でカメラを構えるシラヌイの姿が。

 

「な、何撮って…!」

 

「もう、プリュムちゃんったらヤマトの笑顔と感謝の言葉で悶えちゃって〜。まあ、普段仏頂面の鉄仮面オオカミがあんなことしたら堕ちるのも仕方ないけどね」

 

「っ!!っ!!!」

 

「あ、ちょっ、顔真っ赤にしていきなり飛びかかってくんな!!こちとら筋力クソザコナメクジなんだから力比べじゃ負け…!あ、こら!カメラ盗ろうとするな!!」

 

(……チョコレートパフェ。いつものより豪華な感じのにしようかな……あと、他の人とも話してみるか……)

 

 

 

────大事な人を守りきれなかったことで心が折れかけた少年は、それを支えようとする者たちによって、再び立ち上がる。

 

────これは有り得た世界の一幕。かのオオカミが笑顔を浮かべられる日常が訪れる日が来ることを祈るばかりである。




キャラ紹介

ヤマト:ムサシの死に耐えきれず精神崩壊しかけ、さらにその状態で戦いに身を置いた結果鉱石病にかかった世界線のヤマト。本編や他のifルートとは違って、他の人と交流する気は全くなく心を閉ざしており自ら交流しているのはシラヌイ、ドクターを除けばプリュムしかおらず、死に場所を求めるかのように突貫する癖がある。が、根本の優しさは変わらず困ってる人がいたら体が勝手に動いて手伝う事がしばしば。そのため、周りからの好感度はそんなに低くなく「無口だけど優しいやつ」と思われている。武器はシラヌイが作ったガンブレードを使っており、性能としてはアーツを込める量によってFF8みたいに刀身を振動させたり、またはDFFシリーズのように爆風を撒き散らすことが出来る。最近は控えめではあるものの、他の人達、特に同族のループスに自ら話しかけにいく姿が見られ始めた。

プリュム:星3先鋒で、この世界線ではヤマトの保護者。個人的に結構好きなキャラでどうしても出したかったので、皆さんにツッこまれるのを覚悟でifルートで無理やり出すという…こんなんでいいのか。なお、ヤマトのことはほっとけない子として見ている。さらに余談だが、ヤマトは基本的にプリュムにベッタリであり、プリュムもそれに関してはあまり悪い気はしていない模様。

シラヌイ:ムサシの悲報を聞いてから、全くヤマトからの連絡が無いことに嫌な予感を持ち探し続け、そしてやっとの思いで見つけた時のヤマトは鉱石病の影響で身も心もボロボロの廃人寸前であり、急いで様々なアテを使ってロドスへヤマトを連れていった。
現在は、狙撃オペレーター兼開発部門のオペレーターとしてロドスに身を置きつつもムサシの代わりにヤマトを見守っている。
因みに、あの後プリュムにマウントを取られながらもカメラを守っていたところを教官に見つかり、経緯を聞いた結果めちゃくちゃ怒られた。
ヤマトのお嫁候補を勝手にランキング付け中…過保護か。

レッド:モフモフグランプリコンプリート…!

プロヴァンス:あれ、同族の中で赤いオオカミの次にヤバいと思ってたけど実は一番まとも…?

テキサス:……何故いきなりポッキーを差し出してきたんだ?いや、美味しかったし、やつも甘党なのはわかったが。

ラップランド:案外面白いオオカミかも?次からはもっと話しかけてみようか…


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お気に入り400件突破記念話〜ifルート:BSWの傭兵達〜

お気に入り400件突破しました!毎回言ってしまっているような気がしますが、400件突破はこれを読んでくださっている皆様のお陰です!
これからも引き続き皆様の期待に応えられるような話をかけるように頑張ります!

さて、今回は下手すると批判意見飛んできてもおかしくない話なのですが…自分としてはこの話はやりたかったので書かせていただきました。

そして、今回は大陸版アークナイツで実装されたオペレーターが出てきます!つまり、ネタバレがありますので嫌な方は直ぐにブラウザバックをしてください…



ここまで読んでる方は覚悟は出来ているということですね?

それではどうぞ!


──「もしも」あの時彼女がたまたま避けれていたら?

 

──「もしも」彼女が生きていたら?

 

──これはそんないくつもの「もしも」が重なった世界線で生きる者たちの話──

 

****

 

「やれやれ…まさか本隊と分断されるなんてな…今朝の星座占い当たってんじゃねーか」

 

女性は相棒と自分を取り囲むレユニオン達を見てため息を吐きながら、ラッキーアイテムを持っとくべきだったかと心の中で毒気付くと、彼女の相棒のループスの青年が驚いたように女性を見ていた。

 

「……占い、見てるんだ」

 

「おい、俺だってれっきとした乙女だからな?占いとか結構気にするタイプなんだぞ?」

 

「おと…め…?」

 

青年は心底疑問に思ったかのような声を出して、困惑した表情で女性を見つめる。

 

「いい度胸だ、帰ったらお前をふん縛ってラッピー、レッド、リーシーの前に『好きにしていいよ☆』って書いた紙貼っつけて転がしてやる」

 

「ごめんなさいそれだけは許して」

 

「冗談だ…さて、奴さんら待ちきれねえみてえだからそろそろやるぞ…背中は任したぞ。ヤマト」

 

「…そっちこそ頼むよ、ムサシ」

 

ムサシと呼ばれた女性は右腰に提げている刀を本来の利き手とは逆の左手で抜いて構え、ヤマトは左手に拳銃、右手にかなり長い柄と張り出した鍔が特徴的な大型の両刃直剣を持って互いに駆け出した。

 

 

****

 

(ああ、そういやこれってあの時と微妙に似てるな)

 

ムサシは振るわれた刃を刀で受け流し返す刃で敵を切り裂きながら、捨て駒として投入され利き腕に重い後遺症を残した戦いを思い出していた。

あの時、数的に不利な撤退戦の中でムサシは()()()()バランスを崩したお陰で本来であれば急所を撃ち抜いていた凶弾は彼女の右腕に刺さり、命を失うことは無かった。そしてその後はヤマトが奮戦したのもあり、何とか敵の追撃を逃れたがすぐに適切な処置をしなかったせいで右腕は武器を扱うことが出来なくなってしまった。

 

 

(それで、ヤマトが凄い自分のせいだって責めまくって、一時期は()()()()()()を見るくらい参っちまったんだよなぁ)

 

そして、その出来事は代わりの武器を作ってもらおうと訪ねたシラヌイにバレて説教をくらい、それを機にちゃんとした所に所属するように言われた結果BSWに所属した、というのが流れだった。

 

「っ!」

 

そこまで思い返したところで、ムサシは急に悪寒を感じ後方へ下がる。すると、その次の瞬間には巨大な武器が振り下ろされコンクリートの地面を砕いていた。

 

「おいおい…ここでクラッシャーかよ…」

 

ムサシは斧を構えてこちらを見据えるクラッシャーを見て面倒くさそうにため息を吐いた。

 

「いや、居るのは事前の情報で知ってはいたけどさ…よりによって分断されてる時にご対面ってなぁ…」

 

 

チラッとヤマトの方を見ると彼も別のクラッシャーと既に戦闘を開始しており銃と剣、そしてアーツを駆使して戦っているが、相手はレユニオンのエリート。そう簡単にやられるはずがなく、己の防具と耐久力を活かして強引に攻めているせいもあって、ヤマトは苦戦…というよりも有効打を与えられずに長引いている様子であった。

そして、事前情報であればクラッシャーは更に2体いる話なのだから正直、詰んでいる。

 

(こりゃあ、ヤマトからの援護は期待できねえし早くケリをつける必要がある…しゃーない、ちと疲れるしシラヌイに説教されちまうけどやるしかないな)

 

ムサシはそこまで考え、アーツを発動させ右手を刀の刀身に添えて軽く撫でる。

すると──

 

「っ!!」

 

「ん?なんでそんな驚いてんだ?炎をアーツとして使える奴なんざ、別に珍しくねーだろ」

 

ムサシの刀の刀身は赤く燃える炎に包まれ始めた。

「炎熱」それがムサシのアーツである。最も、彼女のそれはレユニオンのリーダーやイフリータに比べれば子供の遊び程度の代物だ。しかし、熱量はかなり高くクラッシャー…いや対峙する者としては脅威であるのは変わらない。

 

「あー、2人でこの大軍相手とらなきゃ上に、ヤマトが無理しないように立ち回りつつ、お前をさっさと片付けなきゃならんってハード通り越してルナティックだろ…」

 

とムサシが面倒くさそうに言った直後、立て続けに爆発音が戦場に鳴り響き、それに1歩遅れて悲鳴が響き渡ると同時にオペレーター達を連れたドクターの姿がヤマトとムサシの視界に入った。

 

「爆撃って…まさか…」

 

「ば、爆弾!?ど、どこから!?」

 

「落ち着け!まずは、固まらずに動──うぐわぁ!?」

 

「ヤマト、ムサシ!遅れてすまない!術士はクラッシャーに火力を注いでくれ!」

 

「了解!」

 

オペレーター達が奮闘していく中、ムサシは内心笑みを浮かべていた。

 

(ああ、そうだ。あの時と違うのは雇い主が信頼できる人であること。あと──)

 

「子犬ちゃん、私とラップランドで援護してあげるからちゃんと仕留めなさいよ?」

 

「おい、人のセリ──「分かった!」ヤマト、人の話は聞きなよ?全く…」

 

「ムサシさん!援護します!」

 

「オーケー、リスカム!合わせてくれよ!」

 

相棒以外の信頼出来る仲間達の援護の元に、ヤマトとムサシがクラッシャーを打ち倒すのに対して時間はかからなかった。

 

 

 

******

 

「それで?勢いよくやっちまった結果がこれ?」

 

「「…はい」」

 

「そろそろ怒るわよ?」

 

ロドスの基地内の装備開発関係の部屋にて、正座しているヤマトとムサシを見ながらシラヌイはため息を吐いた。

結論から言えば、武器兼アーツユニットである2人の刀と剣は過度なアーツの使用により、いつ壊れてもおかしくないくらいの損傷をしていた。

 

「あのさぁ…いつも言ってるけど耐えられないほどのアーツを流すなってヤマトは初犯だからともかく、ムサシは何度言えば分かるの?馬鹿なの?死ぬの?」

 

「何言ってんだ、馬鹿に決まってるだ──謝りますのでその手に持ってるヤマトの銃を額に当てないでください」

 

「全く、最初から謝りなさいよ?あと、毎回言ってるけど早くケリを付けようとしてアーツを込めすぎないでよ?」

 

シラヌイはそれだけ言うとムサシの額に突きつけていたヤマトの銃の一つである「トンプソン・コンテンダー」という銃を、ヤマトに手渡した。

 

「はい、要望通り倍率スコープを取り付けておいたわよ。あ、もう片方の拳銃もついでに見るわよ?」

 

「いや、流石にこいつだけは自分でやるよ…俺だけで武器3つも点検と修理してもらうのは申し訳ないから…」

 

「ムサシ、頼むからあんたも少しはヤマト見習って?」

 

「嫌でござ──待て待て!そのバチバチなってる警棒を今すぐ下ろせ!!ヤマト!お前も見てないで助け──」

 

「ヤマト、ジェシカ達があんたのこと探してたから会いに行ってきなさいな」

 

「え、いや、でも──」

 

「………」

 

「わ、分かった…それじゃ行ってくるね」

 

「お、お前!相棒を見捨てるのか!?この、薄情も──」

 

ヤマトはその直後に聞こえてきた悲鳴が聞こえぬように耳を塞ぎながら、先程目がイってる状態のシラヌイの姿を思い出さないようにしながらその場を急いで去ったのだった。

 

 

 

****

 

「ヴァルカン、毎度のことだけど手伝わせてごめんね…」

 

「なに、私と君との仲だ。気にしないでくれ」

 

「ツマミうめぇ」

 

「ムサシ、アンタは反省してくれない?」

 

ロドスの基地内にあるバーにて、その日の業務を終えたシラヌイ、ヴァルカン、ムサシはカウンター席に腰掛けながら話していた。

 

「あ、そういえばヤマトって結構モテんだな」

 

「そうなのか?私はそういった話題はあまり聞かないから知らないが…」

 

「おう、ここに来る前になんかラップランド、W、リーシー、ジェシカ、エンカクに囲まれててな!あと物陰からレッドも居てな…いやー、アイツがあんなにモテるなんて育てた身としては鼻が高いわ!」

 

「…その中で男が1人混ざってるし、しかもまともなのがジェシカちゃんしか居ないってのがもう…ヤマトは何で訳アリだったりやばい人に目をつけられちゃうわけ?お腹痛いわ…」

 

「…胃薬いる?」

 

シラヌイが弟分のヤマトがとんでもない目に合うのではないか、もしそうでなくても恋人ができてそれを報告しに来た時のことを考えお腹を痛めている友人を見て、ヴァルカンは真剣に心配した時だった。

慌てた様子のヤマトがバーへと転がり込んできた。

 

「ん?ヤマト?そんなに慌ててどうし──」

 

「ヴァルカンさんに、ムサシにシラヌイ!?誰か来たら誰も来てないって言っておいて!!」

 

「は?どういう──」

 

「ちょっと失礼するわよ〜」

 

ムサシが問い質す前にヤマトがバーのカウンターの裏に隠れると同時にWがバーの中へと入ってきた。

 

「おん?Wじゃねーか。一杯飲みにきたのか?」

 

「それも悪くないけど…生憎と今日は別件なのよ…子犬ちゃん見なかった?」

 

「子犬ちゃん?…ああ、ヤマトのことか。なんだ、あいつに用でもあんのか?」

 

「ええ…少しお話したいことがあるから探してるんだけど…こっちに来てない?」

 

ムサシはこの瞬間、ヤマトが何故逃げてきたのか何となく察した。

恐らく、先程の修羅場から何らかの手段で逃げ出し現在逃亡している最中なのだろうと、ムサシは考え。

 

「そこのカウンターの裏にいるぞ」

 

「「え?」」

 

「ちょっと!?何バラして…あっ」

 

バラしたムサシにシラヌイとヴァルカンが目を見開き、ヤマトが思わず隠れていた場所から体を出して突っ込んだところで、Wはニヤァと効果音がつきそうなぐらいに口角を歪ませた。

 

「あら、そこに居たの…もう、逃げちゃダメでしょ?」

 

「……っ!」

 

ダッ!(ヤマトが地面を蹴る音)

 

ガッ!(ムサシが出した足にヤマトの足が引っかかった音)

 

べしゃ!(ヤマトがコケて地面に倒れた音)

 

「はーい、捕まえた〜」

 

ムサシの邪魔によってコケたヤマトをWが見逃すはずがなく、ヤマトはがっしりと首根っこを掴まれる。

そしてヤマトは必死の形相で抵抗しながらもムサシに問いを投げ掛ける。

 

「む、ムサシ!なんで…!?」

 

「そりゃあ…やられたらやり返すが俺のモットー…つまりあの時見捨てた仕返しだ☆」

 

「やっぱり!ぐえっ」

 

ヤマトがやっぱりあの時見捨てるんじゃなかったと後悔している中、Wはヤマトの首根っこを掴んだ状態で引きずり始めた。

 

「はいはーい、それじゃお騒がせしましたーごゆるりとー」

 

「おう、あ、でもヤマトはウブだからお手柔らかにな?」

 

「な、何言ってんの!?む、ムサシのバカ!!行き遅れ!!」

 

「おいヤマト!!あたしは行き遅れてなんかないからな!?まだピッチピッチの20代だぞ!?」

 

が、ムサシの必死の反論はWがさっさと連れていってしまったためヤマトに届くことはなく…

 

「ムサシさぁ…私が言うのもなんだけどピッチピッチの20代はないわー」

 

「…素が出てるってことはお前も焦ってはいるんじゃないか」

 

「……泣くぞ?」

 

この後、めちゃくちゃお酒飲んだ。

 

 

****

 

「ふー…まさかムサシが結婚を考えてたなんてね…」

 

シラヌイは自室にて酔っ払った腐れ縁の友人が零した心からの叫びが未だに信じられず、ベッドに腰かけながら呟いた。

 

(いや、それよりも…)

 

そこでふと、シラヌイはムサシがヤマトが隠れていたのをWにバラした本当の理由を思い出した。

 

『アイツにはさ、もっと色んな人に囲まれて馬鹿みたいに騒いで欲しいんだ…今まで、そんな機会作ってやれなかったから、せめてロドスにいる間だけはな』

 

(あのバカがヤマトのことをあそこまで考えて、敢えてばらしたなんてね…すごい進化よね)

 

シラヌイはそこまで考えて、ヤマトが鉱石病になりロドスに行くことが決まった際にムサシが上層部に直談判して「自分もついて行く」と言い出した事も加えて思い出し。

 

(本当、人って面白いわよね)

 

クスッと笑みをこぼし、これからも彼らと一緒に過ごせることを柄ではないと分かりつつも祈った。

 

 

 

──これは彼女が生き残った世界。

 

──彼らがこれからも騒がしくも笑顔を浮かべられる日が続くことを祈るばかり──

 

 

 

 

 

 




感想や批評お待ちしてます!

キャラ紹介

ヤマト:ムサシが生き残ったifルートのヤマト。BSWに所属してからは、リスカム、フランカといった先輩やムサシのの指導の元メキメキと実力を上げ、剣にアーツを纏わせたり銃による狙撃が出来たりとオールラウンダーみたいな感じに。そしてある1件で鉱石病を患い、ロドスに行くことになったのだが、そこで過去色々とあった人達と再会し、更に後輩のせいで賑やかな日々を送る羽目に。暫くは「ムサシが自分の背中で息を引き取る」夢を頻繁に見ていたが、ある日を境に全く見なくなったとか。使ってる武器はメインに大型の両刃直剣、サブにベレッタ92Fとトンプソン・コンテンダー(アンコール)。ゲーム的には遠距離前衛で、S2がプラチナみたいな感じになる(この時はトンプソン・コンテンダーによる攻撃しかしない)。ヤマトの剣の特徴を聞いて某ソードワールド2.0を思い浮かべた人はいい話が出来そうですね?

ムサシ:今回の話の主人公と言っても過言ではないオリキャラ。この世界軸ではバランスを崩したお陰で急所は外したが、変わりに右腕を負傷、その怪我が原因で右腕が戦闘に使えなくなってしまった。そのため、大剣が使えなくなったので片手でも使える&使ってみたかった刀を新たな武器として使ってる。今年が20代最後の歳で彼氏募集中。なお、気を抜くと一人称が「俺」ではなく「あたし」になる。戦闘スタイルはゼ○ブレイドのダ○バンさん的な感じ…まあ、あの人は刀に炎を纏わせませんが。

シラヌイ:ifルートで出番が多い武器職人。ヴァルカンとは武器職人仲間として仲はかなり良好。時折、武器談義で夜更かしすることもあるとか。どんな無茶ぶりな武器でも、しっかり作ってくれるため、ムサシからはドラえも○扱いされてる節がある。ヤマトのことは弟、ムサシはほっとけないアホとして見ている。

ヴァルカン:星5重装にして、インドラと同じ公開求人しか来てくれない幻のツチノコオペレーター。性能は持っていないため、詳しくは言えないものの特性が「味方の治療効果を受け付けない」といったもののため、運用はかなり特殊そう(小並感)。また、今回のイベントにて武器職人と面倒見が良い面が描かれた。最高か?

ジェシカ:今回は名前のみだが、実はヤマトの後輩設定。厳しくも優しい先輩としてリスカムたち同様尊敬している。なお、ムサシ曰く「先輩以上の想いを抱えてるぜ、あれは」とのこと。真偽は定かではないが。


W:みんな大好き爆弾魔お姉さん。本編より先にifルートで登場。ネタバレになってしまうが、大陸版では1周年記念ガチャで登場。当小説では、ヤマトガチ勢の1人。何があったかは…本編でいずれ(恐らくW実装されるのが我慢できず、実装前に書くと思います)

バーのマスター:終始無言を貫き通した。


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ifルート:辺境の守護者達

という訳で、今回はとあるifルートの話となっております。
そして、今回のルートは今までのifの中じゃヤマトは1番救われてると思うルートでもあります。

そして余談ですが一言…大陸版のテキサスの新コーデエチエチですね…


──もしも、あの時彼が外出していなかったら?

──もしも、それがきっかけでとある武装集団が出来たら?

──もしも、その武装集団が感染者非感染者関係なく助ける組織だったら?

 

これはとある「もしも」の世界を辿った話である──

 

 

 

******

 

 

 

 

 

「ガルーダ2より各員、目標の確認はできたか?」

 

『こちらガルーダ1、ガルーダ4とポイントB2より目標を視認』

 

『ガルーダ3。狙撃ポイントA2より視認』

 

『こちらガルーダ5。狙撃ポイントC5より視認』

 

「了解した」

 

それを聞いたフェリーンの女性は頷くと、今回の討伐対象の突然変異をして凶暴化した巨大感染生物の狼を望遠鏡越しで改めて確認した。

その生物は元が狼とは思えないほど巨大で、そして頭から鋭利な角が、手足には頑丈な爪があった。

 

「改めて確認するが、今回の感染生物…仮称「狼竜」はその巨体からは想像できないフットワークの軽さを活かした近距離戦を得意とする…が、詳しい情報は不明だがアーツによる攻撃を行うという話もある。ガルーダ2とガルーダ3の両名は離れているとはいえ、奴のアーツ攻撃にも気を配れ」

 

『『了解』』

 

「ガルーダ1、ガルーダ4は狼竜がガルーダ2とガルーダ3の所へ行かないように食い止めるのが役割だ…それでは、行動を開始する!」

 

「了解…それじゃ行くよ。ガルーダ4」

 

「はーい、ヤマトお兄ちゃん」

 

「…行動中は本名で呼ばないでよ……」

 

相変わらずな妹分にため息を吐きつつも、群青のコートを見にまとっているループスの青年は推進機構がついた片刃の分厚い大剣を両手で持ち、丁度真下を通った狼竜の背中へ飛び降りた。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「ガーディアンの第1特務隊の小隊の一つがうちに?」

 

「ああ、そうだ。チェルノボーグの一件で向こうから提案されて決まった」

 

ケルシーから話された内容にドクターは「ふむ」と少し考える。

 

【ガーディアン】。その組織は現在ロドスと協力体制を結んでいる警備組織…という名の武装集団だ。最も、彼らはただの武装集団ではなく天災により被災した都市や地域への無償の救援を行ったり、感染者の保護と治療といった活動の方が多い。そのため、これだけを聞くと慈善団体と思われがちだが、それだと何故武装しているのかという疑問が出てくる。その答えは、彼らは突然変異を起こした危険な感染生物の討伐を第一に行っているからだ。

 

突然変異した感染生物は場合によって天災と同レベルで被害をもたらすこともあり、様々な国家もその対処をしてきてはいたのだが、正直な話そう何度も討伐隊を派遣するほど人員は足りていないところが多く、どの国家も悩みの種となっていた。

そんな時に現れたのが、報酬さえ払えば感染生物を討伐すると謳った【ガーディアン】であった。最も、どの国家も最初は胡散臭い彼らを信用をすることは出来ず、有用性を確かめるため当時最も脅威であった感染生物の討伐を後払いで依頼した。無論失敗したら0という条件付きで。

 

だが、そんな依頼を【ガーディアン】は「あ、いいっすよ」と軽く返事して、そしてその感染生物を人的被害無しの上、周りの被害も軍が対処した場合の予想を下回る被害で討伐を成し遂げた。それも予想を遥かに上回る早さで。

…余談だがそれを聞いた重鎮たちの語録は「ふぁっ!?」「やりますねぇ」「(やった事が)めちゃくちゃだよ」等と野獣になったとか。

結果として、【ガーディアン】は信用を得ることが出来、現在では「感染生物の討伐は彼らがいなければダメだ」と言われるほどに重用されている。

 

「そうか…しかし、特務隊というのは資料で先程で確認した限りでは【ガーディアン】の中でも最強と名高い第7精鋭部隊と肩を並べるほどの隊だろう?そこの一個小隊ということはこちらが払う対価もかなりの物じゃ…」

 

「いや、『対価は住み込みで預かってくれればおk☆』とゴリ押しされてそれで決まった」

 

「えぇ…(困惑)」

 

珍しく心底呆れ疲れたような表情で投げやりに言ったケルシーを見てドクターは困惑の声を上げた。

 

「…全く、トップが交渉役を制御しきれてないとはどういうことだ…」

 

「え」

 

ドクターはガーディアンの行く末が心配になった。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

「…なるほど、つまりカシマ代表がゴリ押し交渉したのと手違いで俺らがロドスに暫く住み込みで働くことになった、と?」

 

「……ああ、そういうことだ」

 

「先生………」

 

「本当に申し訳ないと思っている…」

 

威厳も何もへったくれも無い様子で机に突っ伏したヴァルポの青年(年齢は三十路を突破)…ヤマトにとって育ての親兼師匠、そして【ガーディアン】の総司令長…つまり総責任者のマサムネ総司令をヤマトは呆れた表情で見ていた。

 

狼竜を無事に討伐し帰還したらマサムネにすぐに執務室に来るように言われ、慌てて来たらこれなのだからヤマトのマサムネに向ける目は仕方の無いことだろう。因みに、カシマ代表はそんなマサムネの妻なのだが…とにかく押しが強い上に言うことははっきり言うタイプの行動派で、マサムネは結婚してから尻に敷かれている日々が続いている。しかも彼女がとった策は案外しっかりしたものの上成功してるのだから、余計にマサムネは口が出せないという始末である。…最も、夫婦仲は良好そのものでプライベートの時間では新婚夫婦か!と言いたくなるほどイチャイチャしてるのだが。

 

閑話休題

 

「それで、理由をお聞かせ願いたいのですが?」

 

「…チェルノボーグの一件は知っているな?」

 

マサムネの問いにヤマトは真剣な顔持ちで頷いた。レユニオンと呼ばれる感染者の集団がチェルノボーグを制圧した事件であり、その情報を受け取ったガーディアンも救助部隊を編成し、派遣。今現在も救助に追われているといったものだ。

 

「その救助には第7精鋭部隊のクロウ小隊からサルガズの傭兵部隊と最低でもイカズチクラスのアーツ能力を持った敵を確認したという報告が入った」

 

「サルガズの傭兵だけじゃなくイカズチ並の人物が…!?」

 

そしてマサムネの重々しい口調から告げられた事実にヤマトは驚愕し、そしてすぐに今回の出向の意味を予測した。

 

「…今まで以上にロドスとの提携を強めつつ、ロドスがやられないように守る必要がある、ということですか」

 

「ああ、ここでロドスを失う訳にはいかない…かと言ってあまりに大規模な人員を派遣すると、こちらがつけ込まれる可能性がある。」

 

「そこで、俺らの小隊が行く。という訳ですか…」

 

無言で頷いたマサムネにヤマトは納得したような表情をし、続けざまに質問をした。

 

「ところで、俺たちはいつロドスに出向すれば?」

 

「……今すぐ」

 

「……今なんて言いました?」

 

「……緊急性があるため、今すぐロドスへ出向して下さい……」

 

「……………………」

 

「………本当に申し訳ない」

 

先程までの重苦しい雰囲気があっさりと無くなり、残ったのは目を全力でそらすマサムネと諦めの表情を浮かべるヤマトであった。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

「…うん、暫くはロドスにいる感じになるから会えないかな……え?それなら父さんたちが来るって…もう、お忍びでも今の情勢じゃ危ないんだし、2人とも狙われてもおかしくない立場にいるんだからやめてよね?……うん、それじゃあまたね……ふぅ」

 

 

ロドス艦内の自分に宛てがわれた部屋にて、ヤマトは自分の本当の親と連絡端末で話し終えたところで息を軽く吐いた。ヤマトの両親は、父方の父親の親…つまりヤマトの祖父が残した負の遺産のせいでヤマトを守るためとはいえ、一度手離してしまったのを悔いてしまっており、それが過保護という形で出てしまっていた。最も、それには親バカがあるのもないことはないのだが。

 

「……そろそろ夕食の時間かあ」

 

時計を見たヤマトは、少し疲れたように呟いた。というのも、ヤマトはロドスに知り合いがそれなりにいる。最も、それだけだったら別に良かったのだが、何故か妙に自分のことを気に入ってるヴァルポの女性を始めに、酒が絡むとヤバいゴリラ猫フェリーンのエリートオペレーター、何故か自分を子供扱いしてくる天災土ランスポーターのループス、果てにはちょっとしたきっかけで因縁をつけてきたサルガズの傭兵と白黒のループス(こいつらに限っては今日来て初めて知った)等といった輩がいるからだ。

正直、自分の小隊の(色んな意味で)個性的な隊員の相手だけでも大変なのだから、そこに+αされると考えるときついものがある。

 

「お兄ちゃーん、一緒にご飯食べに行こー!」

 

(…まあ、うじうじ考えてても仕方ない)

 

タイミング良くドアを叩いて呼びかけてきたイカズチの声に返事しながら、ヤマトは頭を振って無理やり意識を切り替えるとドアを開けて部屋を出て、イカズチと一緒に向かおうとしたところで前方から2人の女性が歩いてくるのが見えた。ロドスの制服を来ているのもあって、ここのオペレーターなのだろうと考えながら、ヤマトはその女性とすれ違った時だった。

 

「────」

 

ヤマトは何故か懐かしさを感じ、思わず立ち止まってしまった。それに戸惑いつつも振り返ると、もう既に2人とはそれなりに距離が離れており、見えるのは後ろ姿のみで顔を確認することは叶わなかったところで、イカズチが慌てたようにヤマトに声をかけた。

 

「お、お兄ちゃん!?泣いてるよ!?」

 

「え…あ、あれ…なんでだろう…」

 

初めて会った人のはずなのに、何故か嬉しくて胸が苦しくて、そして無事に会えたことへの安心感がごちゃ混ぜとなって、それがさらにヤマトを混乱させ涙は一向に止まる気配はなかった。

 

 

 

 

****

 

 

「…安心した」

 

「?ムサシ、何か言った?」

 

「いんや、何でもねえよ…ただ、元気そうで安心しただけだよ」

 

「……頭大丈夫?」

 

「おい、ストレートに貶すな。こう見えて心は豆腐通り越してシャボン玉なんだぞ?」

 

「それ、自滅してるじゃない…」

 

 

 

 




キャラ解説

ヤマト:本編やどのルートとは違いやべえトラウマはなく、そして自分の実の親とも良好とめちゃくちゃ救われている。この世界での装備は本編1stシーズンの「再会」の話の装備に加え、手榴弾3個と投擲用のピック数本を持っている。因みに、FA仕様だとそこにメテオリーテが使ってるようなハンドバリスタor爆弾矢と弓のセットと源石剣1本が追加される。歩く武器庫かな?なお、そんな救われてる彼が戦いの場に身を投げているのは、とある事件が関係しているようで…?そして、たとえ世界が違っていても彼女との絆は決して断ち切られない。

イカズチ:この世界線でもヤマトのことを兄と慕うブラコン最強シスター。隙あらば誰にとは言わないが夜這いを仕掛ける。が、成功したことは1度もない。

マサムネ:ifで名前が明らかになった【先生】。こちらではたまたま孤児院に残っていたお陰で襲撃に気づき、奥さんと子供たちを守りきった。その後、なんやかんやあって【ガーディアン】を創立し現在に至る。妻のカシマには頭が上がらず、完全に尻に敷かれている。が、実力はかなりあり、具体的に言うとヤマトとイカズチが2人がかりでかかっても余裕のよっちゃんで倒せるぐらい。尻尾は妻のために手入れしておりかなりモフモフしてる。

カシマ:【先生】こと、マサムネの奥さん。この世界では【ガーディアン】の交渉関係を担当している。気が強く、言うことははっきり言う性格。「自分は傭兵だから」とウジウジしていたマサムネを襲って既成事実を作り、そして同時に彼のハートを鷲掴みしてゴールインという裏設定があったり。

ガルーダ2:フェリーンの女性医療オペレーター。ガルーダ小隊のブレインであり、そして副隊長。モフモフをこよなく愛している。

ガルーダ3:サンクタの男性狙撃オペレーター。基本武装はM24とキャリコM950と改造したベレッタ92F。任務によってはアンチマテリアルライフルを持ってくる。極度の銃オタクで部屋には使わないのに色んな銃がある。彼女募集中。

ガルーダ5:コータスの女性術士オペレーター。見た目はクールで仕事が出来るOLという感じなのだが、実態は天然ポンコツな上、急に変なことを言い出す変わり者。ロドスに着いた時の第一声は「おうどん食べたい」。

ムサシ:なーんか訳アリな発言をしてた姉御。こっちの世界で生きてる理由はヤマトとコンビを組んでなかったため、死ぬはずだった戦いに参加しなかったというもの。つまり、ヤマトとコンビを組んだ時点で…。



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天然タラシ狼とバレンタイン

ちょっと早いですが、バレンタインが近いということで投稿です。

それとアンケートを期間は短いですがやっておりますので、是非ご協力の方お願い致します。

あと、ヤマトくんの設定でS2を上方修正しました。いや、流石に最初の段階のやつだと使い所さんが全くない感じになってしまうので……


──バレンタイン。

 

それはお歳頃の男性諸君にとっては貰えるかどうかでソワソワしたり、中指を立ててFU○K!と心の中で叫んだり、「自分は義理すら貰えない」と予防線を張ってダメージを最小限にしようと試みたり、そして女性にとってもちゃんと渡せるかとソワソワするイベントでもある。

 

さて、今回は女装が似合い修羅場に巻き込まれることが多々ある、とあるループス(♂)とその周りが繰り広げるバレンタインデーを見てみましょう。

 

 

 

***

 

 

 

「アーミヤ代表主催の、バレンタイン料理教室のお手伝い?」

 

「ええ、料理が苦手な方のために開催することになったのですが、教えるための人員が足りていない状況ですの」

 

「なるほどね……」

 

アズリウスの部屋にて、女装させられている状態のヤマトは彼女の口から出た状況を聞き、思案顔になる。ヤマトの本音としてはアズリウスからの頼みというのもありすぐに了承したかったのだが、男である自分がその場には行っていいものなのか?という考えがヤマトを悩ませていた。

そして、アズリウスも同じことを予め考えていたのだろう、悩むヤマトに対してその悩みを解消させるために自分の考えを話した。

 

「大丈夫ですわよ。女装すれば男が混ざってる感は無くなりますわよ」

 

どこが大丈夫なのか聞きたい提案じゃねーか!と普通の人は思うだろう。だがしかし、ロドスに限っては、さらに言えばその対象がヤマトならば普通に問題ない案件であった。

 

というのも、以前にヤマトが女装をオペレーターたちの前で公開した結果、ヤマトはマスコットキャラ扱いになり、特に多くの女性オペレーターからはもはや男扱いされていないのが現状だ。因みにこの事を知ったヤマトは微かに残っていた男としてのプライドを粉砕された。

 

「だから、変に気にしなくていいのですよ」

 

「……うん、そうだね。それじゃあ手伝わせてもらおうかな」

 

「ありがとうございます……さて、それではその時に着るための服を今決めてしまいましょう!これとか私的には似合うと思うのですが…!」

 

結果として、総合的に考えて大丈夫だろうと判断したヤマトはアズリウスの頼みを了承し、それを聞いたアズリウスは感謝の言葉を述べつつも、興奮した様子でタンスから引っ張り出した服を見て、こっちが本当の目的ではないかとヤマトは思ったが、口に出すだけ野暮な気もしたので黙って着せ替え人形になるのだった。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

「という訳で、ヤマトが手伝いに来てくれました」

 

「「「「「うおおおおぉ!!」」」」」

 

「これでもう満足だわ」

 

「写メ撮ろっと」

 

「す、すごいテンションだね…」

 

「そ、そうだね……あとグムとしてはヤマト君が女装してるのが気になるんだけど……

 

「というより、助っ人ってヤマトさんだったのですね…」

 

そしてやってきたバレンタインの料理教室当日。アズリウスの紹介で現れたヤマトちゃん(服装は黒色のギンガムチェック柄のシャツ+キュロットスカート)を見て、盛り上がる女性陣(一部)を見たヤマトが引きつった笑みを浮かべる中、グムはヤマトの言葉に賛同しつつも、彼がなぜ女装しているのか首を傾げ、アーミヤはアズリウスが言っていた助っ人がヤマトであることに少し驚いていた。

 

「それでは、本日はバレンタインの料理教室ということで今回は比較的簡単なクッキーとカップケーキを作ります。レシピは皆さんのお手元にはありますか?」

 

一通り鎮まったところで、進行役であるアーミヤが今回作るお菓子を言い、そのレシピが行き渡っているのか確認し、特に不足の声が上がっていないことを確認すると話を続ける。

 

「えー、それで今回の料理教室では各指導員の人達の言うことをしっかり聞くようにし、又少しでも分からなかったり不安なことがあったら近くの指導員にすぐに聞くようにしてください……他に質問がなければ早速開始していきますがよろしいでしょうか?」

 

「バッチコイ!」(一部のガチ目のオペレーター達)

 

「それでは、作業を開始しましょう!」

 

「うおおおお!!」(一部のガチ目の(以下略))

 

こうして、ほんのひと握りのメンバー達が異様なやる気と熱気と共に雄叫びをあげる中、バレンタインの料理教室が始まったのだった。

 

 

 

****

 

 

 

先に結論を言ってしまうとヤマトを助っ人として呼んだのは大正解であった。だが、それは当初予期していた指導員の人手の少なさの補充という意味としては少し薄い。では、どういったことでヤマトが活躍したのかというと。

 

「わ、私が何も壊さずまともに作れたなんて…!」

 

「………」(目が死んでいる)

 

バレンタインということで特別にキッチン出禁を今回だけ解除された、カッターを終始付きっきりでフォローし、そして何の被害もなしに作り終えられたことだ。因みにヤマトは、既に料理は終わっているのいうのに真ん中にデフォルメされた狐がプリントされた自分のエプロンを外さず、ハイライトが消えた目で真っ白に燃え尽きているかのように椅子に座っていた。

 

さて、そんなヤマトの頑張りがどんなものだったのかをハイライトで見返してみよう。

 

その1:クッキーの生地を切るのに武器は使うな

 

「……切るように混ぜ合わせるということはコレでやれば案外いいのでは?」(カチャ)

 

「待て、何をどう考えたらそうなる」

 

「え?切るってあったんで……」

 

「……ここにゴムベラという文字があるだろう」

 

「そうなんですけど…なんか上手く出来なくて……そう考えたら、私の刀を使えば上手くできるかなって」

 

「……とりあえず、やり方を教えるから刀はしまって、ゴムべらを持ってくれ」

 

「は、はい……ひゃっ」(後ろからゴムベラを持ってる手を掴まれる)

 

「いいか、切るようにというのはあくまで例えだ。実際はゴムベラを差し込んで切込みを入れて、ボウルの底から生地をすくい上げるように混ぜるんだ。……こんな感じにな」

 

「な、なるほど……」

 

 

その2:火力あげる必要は無いんやで?

 

「170℃で焼く……そうだ、時短のために200℃でやればみなさんも早く使え…!」

 

「待て、勝手に温度をあげるな」

 

「え?何でですか?」

 

「そもそも、オーブンの余熱の段階で170℃だし、変に温度を変えると焦げる可能性がある。実際、俺も昔同じようなことをして焦がせてしまったことがある」

 

「そうなんですか……なら、やめときます」

 

 

他にも色々あったのだが、どれも大惨事になる前にヤマトの直感がすぐに察知し、ヤマトがすぐに駆けつけて解決といった感じになっていたため何とかなっていた。

 

「それでは、皆さんお疲れ様でした。明日、皆さんが渡したい人や皆さんにとって特別な人に無事に渡せられますよう、ご健闘を祈ります!」

 

「押忍!」(一部のガチ(ry))

 

こうして無事にバレンタイン料理教室終わった中、カッターは自分が作ったカップケーキを見て、あることを決めたのだった。

 

 

 

 

****

 

 

 

「ドクター!バレンタインだからこれあげるね!」

 

「ああ、ありがとうアンジェリーナ」

 

「どういたしまして!それじゃあ、後で感想教えてねー!」

 

「……モテモテだね、ドクター」

 

「この立場だからこそ貰ってようなものだからモテモテではないよ」

 

翌日のバレンタインデーにて、朝からひっきりなしにドクターにチョコを始めとしてクッキーやマカロンなどの多種多様なお菓子を持ってくる女性オペレーター達を見た、本日の秘書であるヤマトが思わず出した感想に対して言ったドクターの言葉にヤマトは戦慄した。

いつか、女性トラブルで背中からグサッと刺されるんじゃないだろうか?とヤマトが真剣に心配し始めた時、ドクターはふと気になっていたことを聞いてきた。

 

「なあ、ヤマト。ラップランドやフロストリーフ、Wとかからはまだ貰ってないのか?」

 

「ああ、それならもう貰ったよ。ラーちゃんからはチョコのミルフィーユ、フーちゃんからはバームクーヘン、リーちゃんからはマカロン、Wさんからはチョコのカップケーキ、チーちゃんからはマドレーヌ、イカズチからはチョコを中に包んだマシュマロで、ホシグマさんやメッちゃんからはチョコを貰ったよ」

 

「へー、因みに手作りはあったの?」

 

「えーとね、ラーちゃんとリーちゃん、Wさんとイカズチは手作りだったかな」

 

「ほー、もう食べたの?」

 

「ラーちゃん、リーちゃん、Wさんとイカズチは朝に貰ったからもう食べちゃったけど、ほかのは流石にまだ食べれてないよ」

 

(ガチ勢や……そしてそれに気づかないヤマト…なんて恐ろしい子……!)

 

ヤマトのバレンタイン事情を聞いてドクターは戦慄した。明らかに本命を渡しに来ている人物が4名いて、しかもその4人は朝から渡したというのにこの鈍感天然オオカミは先程の口ぶりからして、その事に全く気がついていない。

いつか、女性トラブルで刺されたり、バスターウル○叩き込まれたり、爆弾で吹っ飛ばされるんじゃないか?とドクターが考えた時だった。

 

「失礼ドクター、邪魔させてもらうね」

 

「ん?カッターか」

 

「今日はバレンタインということだから、他の人からも沢山貰ってると思うけど私からもあげるね」

 

入ってきたのはカッターであり、手には紙袋を持っていた。そしてそれを見た瞬間ヤマトはやはりドクターはモテるんだな、と思っている中、当の彼女は紙袋から昨日作ったクッキーをドクターに渡していた。

 

「おー…これってもしかして手作り?」

 

「うん、そこのヤマトが助けてくれたおかげで何もトラブルを起こすことなく作れたんだ……それで、その君には昨日お世話になったお礼としてこれを……」

 

少し恥ずかしげにカッターがヤマトに渡したのは、昨日作ったバニラ味のカップケーキの上にチョコのホイップクリームが付け加えられていた物であった。

 

「君は甘いものが好きということを聞いたから、少しでも甘くなればと思って付け加えさせてもらったんだが……」

 

「……ドクター」

 

「ん、いいよ」

 

「ありがとう…それじゃ、はむっ」

 

不安そうなカッターを見たヤマトがドクターに声をかけると、彼が自分に何を聞こうとしたのかすぐに察したドクターはただ肯定だけし、ヤマトはお礼を言うと、カップケーキを食べ始めた。

 

「……」(モグモグ)

 

「………その、味はどうだろうか?」

 

「……甘くて美味しい。俺好みだ」

 

「良かった……あ、そろそろ私も仕事に戻るよ、それじゃっ」

 

「あっ」

 

ヤマトの感想にほっとカッターは息を吐いたところで、さっさと部屋を出て行ってしまい、まだカップケーキを食べ終えていないヤマトは「しまった」というような表情を浮かべ。

 

「お礼言えなかった……」

 

(うーん、これってカッターがヤマトに対してもしかするともしかするのかな?)

 

お礼を言えなかったことに後悔しているように声を出し、一方でドクターはそんなことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

なお、ドクターはこの後アーミヤから手作りのケーキを貰え、気を利かせて2人きりにしてくれたヤマトのおかげで、いいバレンタインデーになったとかならなかったとか。




オチがなぁぁい!

因みに冒頭の2つ目と3つ目は実際にやってました()

キャラ紹介

ヤマト:なんかまーたフラグを建て始めてる天然タラシ。カッターとはこの一件以来それなりに話すようになり、密かに料理の特訓(変なことしないかの監視)に付き合うようになったとか。いつか刺されそう。そしてドクターにブーメランなことを考えてる。

アズリウス:料理お上手お姉さん。

アーミヤ:ドクターへの物は勿論本命ですよ♡

グム:あくまで体感だが、週に2日は女装してるヤマトを見てる気がしてる。

カッター:星4のチェンタイプの前衛。スキルの回転率が高いだけではなく、S2は対ドローンにおいてとんでもない火力を発揮する子。ただ、攻撃回復なためリスカムシステムは必須かも?そんなカッターちゃんですが、料理好きなのに料理下手だったり、日向で寝てしまったりと可愛い。今回はヤマトの全力のフォローのおかげで無事に料理が出来た。少し気になっている。

ヤマトガチ勢:全てヤマトの好みを計算して作ったため、ヤマトからしたらかなりの絶品であり、後日めちゃくちゃ感謝された。やったぜ。

フロストリーフ:バレンタインに送るお菓子に意味があることを耳に挟み、そして調べた上でのチョイスだった。可愛い。

ドクター:ヤマトと同じことを考えてるが、それがブーメランであることに気がついていない。

感想や批評がありましたら遠慮なく下さい!特に感想はモチベに繋がりますので…!
リクエストの方も全年齢版、R18禁版共に活動報告にて募集しておりますのでこちらも遠慮なく!

あと、アンケートの方ご協力お願い致します。


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UA10万&お気に入り500件突破記念:元相棒さんから見た今の相棒の環境

えー、突破してからかなり経ってしまいましたが、今回はタイトルの通りUA10万&お気に入り500件突破しましたので、記念話です。

さて、今回の話の主人公は……タイトルから察せると思いますがあの人です。そしてあの人の登場というわけで、いつも以上に好き勝手な感じになっておりますので、それでもいいという方は続きを読んでください。

あと、最近あげた「天然タラシオオカミとバレンタイン」は番外編枠の方がいいと思って、最新話に投稿したあと番外編の方へ移動させたため、もし「読んでないや」という人はお手数ですが、目次を開いて選んで読んでください…



おっす!俺、ムサシ!俺は、自分のアホみてえなミスで死んじまったんだがなんか分からねえけど幽霊として現世に来てる。にしても、幽霊の体って便利そうで不便なんだよな~。確かに壁とかすり抜けられるし、こうしてふよふよ飛んで移動することも出来るんだけど、如何せん物に触れられないせいで食べ物が食えなくてな……そのくせ嗅覚を始めとした五感はしっかりあるんだからきちぃ。具体的に言うと、めちゃくちゃ美味しそうな食べ物が目の前にあっても食えなくてきつい。

 

さて、話を戻すと俺はこうやって現世に来て暫くぶらぶらしてたんだけどよ……やっぱりどうしても会いたいやつ…というか心配な奴がいるんだよな。

 

けどなぁ…

 

「俺、もう死んじまってるからなぁ……」

 

今更死人の俺がいくら関われないとは言えど、あいつのことを見に行くのはなぁ…なんか、未練がましい気がするし。だけども。

 

 

『ムサシ…?ねえ、聞こえてる?…聞こえてるなら、俺の体のどこでもいいから手で触ってよ?……嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ…!俺を独りにしないでよ…!』

 

「……ちょっとだけ、様子を見るだけだ」

 

死ぬ直前に見たあいつの顔と耳に入った声。あいつは、俺が居なくてもちゃんと生きているだろうか、立ち直れているのか。それだけを確認するなら別に問題は無いはずだ。

 

「それじゃあ、行くとしますか……」

 

実は幽霊のメリットの一つにワープ的なものがある。これは簡単に言えば自分が行きたいところを想像して念じれば、そこに一瞬で移動できるというとんでもない移動手段だ。だが、これはもちろんデメリットがありこれを使うと暫く動けなくなるんだわ……ってこれ、考えてみたら欠陥ワープだな?

 

 

 

 

******

 

 

 

「ふぃ~、飛べたか……ってここはどこだ?」

 

先程までとは違う場所にいることからワープが成功したことは確かなんだろうが……感じからしてどっかの建物の中なんだろうが。

 

「うーん、近くにいるんだろうが……どうやって探そ──」

 

「ヤマト、この後お昼のシフト入ってるんじゃなかったのか?」

 

「あ、忘れてた…!フーちゃん、教えてくれてありがとう!」

 

お、噂をすればなんとやらだな。それにしてもシフトねぇ…?あいつ、今一体どんな生活をしてるんだ?お、足跡的にもう来るな。さて、あれから身長は伸びてんのか──

 

「は?」

 

そうして視界に入ったヤマトを見て、俺は思わず固まってしまった。何故かって?それはな、ヤマトが女装してたからだ。

 

「は???」

 

思わず目を擦ってみるも、そこにはウィッグを付けて軽くメイクをして女装してるヤマトの姿。な、なんてこった…

 

「わ、私が死んだばかりにヤマトが女装癖に…!?」

 

私のバカ!!なんであの時死んだんだよ!?私が死んだせいでヤマトがショックで変な性癖に目覚めちゃったじゃない!や、やばい…こんなのシラヌイにバレたら、あいつがこっちに来た時に私がボコボコにされる…!女装癖を直そうにも、今の私じゃ何も出来ないし…!頼む、ヤマト!シラヌイにバレる前に早く目を覚ましてくれ!!

 

 

 

 

****これから数十分後、ヤマトと他の人の会話でムサシの誤解は解けたのであった****

 

 

 

*****

 

 

 

「ふぅ…とりあえずヤマトが女装癖に目覚めてなくて安心したぜ…」

 

それにしても、こいつあのロドスに所属してるのか……ま、さっきドクターってやつの顔を見てきたが、あの感じが変わらないならばヤマトを任せられるな。まあ、少しでもヤマトに対して何かしようものならすぐに呪ってやるが。……っつても、私の力じゃ「タンスの角に異様に小指をぶつける」とか「急に恥ずかしくなる」ぐらいの地味ーな呪いしかかけられんが……そういや、前に「急に全裸になりたくなる」呪いを編み出したあいつは結局あの呪い誰にかけたんだ?やべっ、なんか気になってきた。

 

ってそんなことよりもだな…。

 

「お兄ちゃーん!」

 

「ん、どうしたのイカズチ?」

 

「この後暇なら、ラナさんとポデンコちゃんのところ行こー!」

 

「分かった分かった。俺は逃げないからそんなに急がないの」

 

まさかヤマトに妹…周りの話とか聞いてる感じ義妹が出来たなんてな……。俺としては、あいつは手のかかる弟みたいなものだったから、今のあいつがイカズチに対して兄っぽい行動してるのが嬉しいようで、なんかちょっと寂しく思えた。まあ、それにしても……

 

「あれ、完全に家族愛とか親愛のやつ超えてる感じの愛を持ってる目だぞ……」

 

なんかたまーに中々情熱的な目でヤマト見てるよな?狙ってるよな?お姉さんの目は誤魔化せないぞ。……けど、まあヤマトには恋愛をしてもらいたいし、イカズチも見てる感じはそんなに悪い子じゃなさそうだし、任せても問題はないかなー

 

「子犬ちゃん、この後暇なら私の買い物に付き合ってくれない?」

 

と私が思った直後だった。また別のところから今度はサルカズの女が出てきてヤマトに声をかけてきた。……こいつ、結構殺し慣れてやがるな…あと、こいつもヤマトにほの字っぽいな。

 

「……あのね、お兄ちゃんはこれから私と楽しくお喋りをするの。だからあんたは1人寂しく買い物行ってきなさいな」

 

「……ねえ、子犬ちゃん?正直に言って欲しいんだけど、私と一緒に買い物に行きたいわよね?」

 

「あ、えっと……」

 

おっと、まさか死んでから修羅場というものを見るとは思わなかったわ…それにしてもヤマトのやつめ、2人の女(しかもどっちも顔のレベル高い)から迫られるって…正に両手に花ってやつだな!はははっ!

 

ってこの時私はそう笑いながら思っていた。

 

「やあ、ヤマト。この後ボクとこのゲームを一緒に…」

 

「ヤマトー!クッキー作ってみたんだけど、良かったら一緒に…」

 

「「ん?」」

 

「「は?」」

 

「ひっ」

 

 

おいおい、嘘だろ。今度来た白黒のループスとまな板女もヤマトに惚れてるんかいいいぃ!!いや、なんでお前私が死んでる間にこんなにモテまくってんだよ!?私と一緒に行動してた時は、そんなにモテてなかっただろーが!いや、たまに「味見したい」とか「ああいう子好み」とか言って、お前に言いよろうとしてたやついたし、そいつらが出てくる度私は話し合い(物理)して帰ってもらってたけども……ってあれ?こいつ、私が生きてた時も普通にモテてたっぽいな?

 

ってことはつまり……

 

「ヤマト?」

 

「ねえ、ヤマト」

 

「お兄ちゃん?」

 

「子犬ちゃん?」

 

「「「「正直に答えて?」」」」

 

「ひえっ……」

 

今、この状況にヤマトが対応できてない原因作ったのって、もしかして私?

 

 

因みにヤマトは結局あの4人に一緒に遊ぶことを提案し、何とか場を収めてましたまる

 

*****

 

 

 

それから数日間、ヤマトの様子を見ていたわけなんだが。

 

「ヤマト君!ハンバーグ定食3つ!」

 

「分かりました!あと、エビフライ定食2つ出来ます!」

 

「分かった!」

 

ある時はこうやって、ロドスの料理当番として厨房にたって、フライパンを片手に料理を作ってたり。

 

「ふむ…玉ねぎを切るのか。なら私の刀で…」

 

「待って!普通刀は使わないから!この包丁使って!?」

 

「ご、ごめん…」

 

「……あのさ、料理する時だけ刀を置いてくるってのは「それはダメ」……そっか」

 

ある時はヴァルポの刀使いの女に料理を教えてたり。

 

「おにいちゃーん!早くー!」

 

「そんなに急がなくても、ちゃんと皆やってあげるから落ち着いて?」

 

「お兄ちゃん、手止まってるー!」

 

ある時は幼い子供たちにブラッシングをかけてたり。

 

「ひっぐ…わたじだっで…わだじだっでぇぇぇ…」

 

「あー…なんでチェンはお酒のセーブが出来ないんだ……」

 

「あ、あははっ……」

 

ある時はオニの女と龍の女と一緒に酒盛りしてたり。

 

 

「はははっ!やっぱりお前との戦いは心躍るなっ!」

 

「そう…かっ!」

 

「エンカクの野郎、先にやれて羨ましいぜ…」

 

ある時はサルカズの刀術士の男とフェリーンの格闘家(多分)と模擬戦をやってたり。

 

「ヤマト……お前、楽しくやれてるんだな」

 

どうやら、俺の心配しすぎだったみたいだ。こいつは、ちゃんと俺の死を乗り越えて歩き続けられてた。

そして、あれから成長したこいつが見られた。あの時より、近接遠距離共々格段にレベルが上がって、持前の勘の良さも圧倒的に良くなった。

 

お酒もあの時はまだ未成年だったから飲ませられなかったが、今じゃ飲める歳になって、一緒にお酒を飲む人が出来てた。

 

料理の腕前も、あの頃に比べたら段違いに良くなってて、思わず涎が出そうになった。

 

人と話すことに関しても、あの頃に比べたら普通に話せるようになって、年下の子供たちの相手をしたり、人に料理を教えられる位までには話せるようになっていた。

 

……そして。

 

「ヤマト、行くぞ」

 

「フーちゃん、分かった」

 

「ボクがいるのも忘れないでよ?」

 

「それは私もなんだけど?」

 

「フロストリーフお姉ちゃん、私のこと忘れてないー?」

 

「……全く、騒がしい奴らだ」

 

「まあ、逆にこんなテンションじゃなかったらおかしいと思いませんか?」

 

「……なんで私もなんだ」

 

「え、えっとドクターがストッパー役として一緒にと……」

 

ヤマトを支えてくれる奴が沢山いる。もう、こいつは独りじゃないんだ。

それがわかった瞬間、体が上に上がるような感覚がし同時にこの時間が終わるのだと、何となくわかった。

……よし、聞こえないと思うけど言いたいことだけ言ってから行くか。

 

「ヤマト、前に教えたように3食欠かさずにこれからもしっかり食べるんだぞ。それとお前、いくら甘いものが好きだからって食べ過ぎだぞ?ちゃんと歯磨きしてるけども、食べ過ぎは体に悪影響なんだから少しはセーブしろよ?あ、あと訓練に精を出すのは言いけども、やりすぎは体に毒だから程よくやるようにするんだぞ。あとは、女性問題に関してはもうなるようになるしかねえから、とりあえずお前自身が一生大事にしたい、自分の全てを投げ出してても守りてえって人と付き合って、結婚しろよ?後は……」

 

一旦休んで、思いっきり息を吸って。

 

「幸せになれよ」

 

それを言い終えた瞬間、タイミングが良かったのか段々と意識を保つのが難しくなってきた。……名残惜しいが、言いたいことは言い切ったからな…後は、死者の俺が見るべきものじゃない。そう思って目を閉じようとした瞬間。

 

「えっ…」

 

偶然だとは思うが、ヤマトが俺の方を向いてこっちが安心するような笑みを向けた。

 

 

 

 

 

 

──そうか、そんな顔が浮かべれるなら…もう、心配はいらないな。




今回の話はどっかのタイミングで書きたかった内容でした。たまにはこういうのもね?

キャラ紹介

ムサシ:今回の話の主人公にて、本編ルートでは既に故人。自分の知らないヤマトを見て最初は戸惑ってはいたが、弟みたいに手のかかる彼がしっかりと成長してるのがわかって一安心。幸せになって欲しいという願いを胸に彼女は──。

ヤマト:初手ヤマトちゃん状態で遭遇というとんでもない対面をした主人公。ここ数日、誰かに見守られていたような気がしていたとか。

感想や批評ありましたら遠慮なく下さい!特に感想はモチベの上昇にもなりますのでぜひお願いします!

また、リクエストの方もR18禁の方含めて、活動報告の方で募集しておりますので、遠慮なく!

あとアンケートのご協力もお願い致します!

追記:すみません、アンケートの締切なんですが12/14じゃなくて、2/14です…本当にすみません!


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とある配達員のバレンタインデー

アンケートの結果、ペン急ルートの話が選ばれたので投稿です。
因みにBSW八方塞がり済みルートが2位についてることに驚いていたり。やはり修羅場とラスボス化ジェシカを皆様ご所望という事なのか…!

あと、今回の話は個別ルートではなく、修羅場編のペン急ルートのお話となっております。いや、本当は個別ルートにしたかったんですが、アンケートの時間が足りなくて…いや、時間配分しっかりしろって話なんで、本当にすみません…

あ、あと関係ない話ですがアークナイツ公式Twitterでの、バレンタイン動画はまじで良かったです。やはり神運営でしたね。



──ん?ああ、君たちか。前に見せた彼とその周りが繰り広げたアレは楽しんでいただけたかな?……え?今度は別の平行世界の場合が気になる?まあ、気持ちはわからなくはないがそう簡単には……おっと、人の話は最後まで聞くものだ、だから早々に帰る支度をしないでくれ。今回はサービスとして彼がとある会社の配達員としての道を歩んだ世界の場合をお見せしよう。……彼女も気になってたみたいだしね。ん?ああ、すまない。こっちの話だ。さて、そろそろ待ちくたびれただろうし、見てみようか。丁度、面白いところから始まりそうだからね。

 

 

 

****

 

 

 

 

「……」

 

この日、ソラは……いや、ペンギン急便の女性陣は一様にソワソワしていた。それは何故か?それは至極単純で、今日がバレンタインだからである。

そしてそんな彼女らが渡したい人物は、今日に限って指名の配達依頼が何件もあったせいで、眠そうなのにも関わらず早朝から慌ただしく配達業務をこなしに行き、そして現在も帰ってきていない。

 

(早く帰ってこないかな……)

 

「ただいま戻りましたー」

 

そんなソラ達の願いが届いたのか、ドアが開く音と同時に待ち望んでいた人の声が彼女達の耳に届き、全員が椅子から立ち上がって入口の方へ顔を振り向かせる。

 

「ヤマト!おかえ…り……?」

 

「やあ、久しぶりだね」

 

が、振り返った瞬間全員が固まった。固まった理由には、ヤマトが片手に持っている紙袋から何かを包んだ包装用紙が溢れるほどに詰め込まれているのもあるが、問題はモスティマがそのヤマトと手を繋いでいる…しかもいわゆる恋人繋ぎをしていることであった。

 

(まさか、モスティマさんもヤマト君を狙ってるの…!?)

 

以前あった騒動後の会議において、モスティマがヤマトに気があるということはない、とエクシアから聞いていたのにと思ったソラがエクシアの方を見ると、その彼女も驚いたような顔をしてモスティマとヤマトを見ていた。

そしてそれを見たソラ、テキサスそしてクロワッサンはエクシアにとってもモスティマがこのような行動をしてくるとは全く予期していなかったことだと、把握した。

 

「帰りにたまたま会ってね。彼に渡すものを渡して早く退散しようとしたら、「エク姉が会いたがってるから来てください!」って言われて、逃げられないようにこんな情熱的な感じで、手を繋がれて連行されてきたのさ」

 

「な、なるほどね……うん?」

 

そしてそれを察したのであろうモスティマが、手を繋いでここまで来た経緯を軽く説明する。聞いてみれば案外単純な内容であり、恋人繋ぎもあのヤマトならば有り得ることでもある。というより、周りから視線を向けられている張本人が「?」を浮かべているような顔であるため、ほぼ間違いないだろう。なので、全員が納得しかけたところでエクシアがあることに気がつく。さっき、モスティマは説明の中で「彼に渡すものを渡して早く退散しよう」と言っていた。

そして今日はバレンタイン。その事から導き出される答えは…。

 

「ああ、忘れるところだった。ハッピーバレンタインという訳で、ヤマト君にはこれをあげよう」

 

「え、これって…!予約1ヶ月待ちで有名なあのチョコ…!?」

 

「ああ、君は甘いものが好きだとエクシアから聞かされていたからね。頑張ってる君のために奮発してあげたのさ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「「「「……」」」」

 

モスティマが差し出したのは龍門であまりの美味しさに予約が1ヶ月待ちまであるということで有名なチョコであった。甘党のヤマトからしたら、喉から手が出る程欲しかった代物でもあり目を輝かせて尻尾を物凄い勢いで振りながら受け取っていた。

 

が、それを見て面白くないのはテキサス達だ。彼女たちとしては、朝に渡せなくて待っていたのにも関わらず、当の待ち人は配達先でほかの女からチョコをもらった挙句、モスティマからのチョコであの態度をとる始末。正直、不機嫌になるなというのが無理な話だ。

というより、いくら鈍感と言えどこれではヤマトはただのドクズ野郎と言えるだろう。

 

しかし、ただのドクズ野郎では終わらないのがこの天然たらしオオカミことヤマト。彼は「あっ」と呟くと、「ここで待ってて」とモスティマを含む全員にそう告げると貰ったチョコを抱えながら奥へ引っ込んでいき、そして数分後、戻ってきたヤマトが持っていたのは数個の少し大きめのカップケーキだった。

 

「えーと、これがテキサスさんので、これがエク姉。クロ姉はこっちでソラ姉はこれ。それで、モスティマさんのはこれです」

 

「え、ヤマトこれってもしかして手作り?」

 

「うん、そうだよ。昨日、皆が寝てから作ったんだ……一応、みんなの好みに合わせて作ってみたんだけど……どうかな?」

 

しかもそれはただの手作りカップケーキではなく、それぞれの味の好みを考えて作った物であった。例えば、テキサスであればチョコチップが混ざった甘めのカップケーキであり、ソラであればしっとりとしたバナナカップケーキであったりと言った具合だ。

 

そう、ヤマトは別に今日がバレンタインという事を知っていた。ただ、彼としては自分にとって大事な人(+とある人物)に渡したかったというのもあり、変に勘づかれないようにと夜遅くにキッチンに忍び込みこっそり作っていた。その結果が、寝不足というのがあるのだが。

 

「…へぇ、エクシアから聞いてはいたけど中々美味しいね」

 

「……ああ、美味しい」

 

「んー、やっぱりヤマトはんの手料理は絶品やな~」

 

「うん、確かに…って、それより!」

 

「はい、これは私からのバレンタインのアップルパイだよー!」

 

「エク姉ありがとう!……これ、もしかして手作り!?」

 

「うん!そうだよー!」

 

そんなヤマト手作りカップケーキを堪能している中、ソラが声をあげたと同時に一足先に気づいていたエクシアがバレンタインのために作ったチョコが入ったアップルパイをヤマトに手渡し、それを見たヤマトはすぐにそれが手作りであることに気がついた。

 

「エクシア、抜けがけするな。……手作りではないが私からはこれを」

 

「ウチも手作りじゃないけどチョコのバームクーヘンあげるで〜!」

 

「私は被っちゃったけど、カップケーキだよ」

 

「うわぁ…!」

 

そして、エクシアに続くようにテキサスはマカロン、クロワッサンはバームクーヘン、そしてソラは手作りのカップケーキとヤマトは大事な人達から貰った物を大事そうに受け取り、嬉しそうに顔をほころばせ。

 

「Wさんだけじゃなくて、テキサスさん達からも貰えるなんて全然思ってなかったよ!」

 

テキサス達にとって劇薬となることを、ついうっかりこぼしてしまった。

 

「……ヤマト、どういうことか説明してくれるか?」

 

「え?テキサスさん?なんで肩をそんながっちり掴……痛い痛い痛い痛い!」

 

「なんであの女から貰ってるのか、私も気になるなぁ?」

 

「え、エク姉…?」

 

「せやなぁ……ウチとしてはその紙袋いっぱいに詰まってる物についても聞きたいところやなぁ」

 

「く、クロ姉まで……?」

 

「ヤマト君……」

 

「そ、ソラ姉、皆の様子がおかしいよ!助け──」

 

「OHANASHI…しようか?」

 

「ひいっ!」

 

テキサスに肩をミシミシと音が出るほどの強さで掴まれ、目のハイライトが消えたエクシアとクロワッサンに迫られた挙句、ソラから笑顔(目は笑ってない)で死刑宣告を受けたヤマトは、例えようのない恐怖に襲われ、何とか生還するためにもまだまともな先輩であるモスティマに必死に助けを求める。

 

「あ、ああ…モ、モスティマさん!お願いですっ、助けてください!何でもしますから!!」

 

「ん?今何でもしますって──「モスティマ?」……うん、すまないねヤマト君。馬に蹴られて死にたくはないから私は退散させてもらうよ」

 

「モスティマさん!?」

 

ヤマトの必死の救援要請を聞いてからかおうとした瞬間に、妹分のエクシアから初めて感じたとてつもないプレッシャーを受けたモスティマは、これ以上は危険と判断し、退散するための準備を始め。

 

「ヤマト君…生きるというのはそういうことさ」

 

「何決めゼリフっぽい感じに言って──あ、待って!本当に助け──」

 

ヤマトにそんな言葉を残したモスティマは、直後に聞こえたテキサス達の問い詰める声とヤマトの悲鳴をシャットアウトしながら、エクシア達をあんな風にさせるヤマトに興味を持ちながらもさっさとその場を去ったのだった。

 

 

「……ねえ、あの子助けなくて良かったの?」

 

「何、彼なら大丈夫だと思うよ……うん多分」

 

「いや、自分に言い聞かせる様な感じに言われてもね……」

 

「ところで、今日のコードネームは?」

 

「……リア充絶対爆破独身ウーマンよ」

 

数分後、腹を抱えながら走るモスティマを顔を真っ赤にして追いかけ回す女性が龍門内で目撃されたとかされなかったとか。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「──ということがあった」

 

「いや、それ100%君の過失じゃないか」

 

「!!」

 

「いや、そんな心外って顔されてもねぇ……」

 

深夜にて、いつもの場所にラップランドに「用事あるから来て」と呼び出されたヤマトはいつも通り1戦して彼女を打ち破った後、テキサス達にやられたことを愚痴ったのだが、まさかの返答が自分のせいだと言われたせいで、軽くショックを受け耳と尻尾を垂れさせ落ち込んだ。

 

そしてそれを渡されたカップケーキを食べながら聞いていたラップランドは相変わらずなヤマトを見て軽くため息を吐いた。正直な話を言ってしまえば、ラップランドとしてはヤマトが他の女に現を抜かす前に力ずくで自分のモノにしてしまいたい。しかし、結局1回もヤマトに勝ててないのが現実なためそれが実行できず、メラメラと嫉妬心が彼女の中で渦巻いていた。

というより、ボコボコにされた(実際はヤマトのギリ勝利)後にこんな話されたラップランドは大変不機嫌であった。

 

(ボクも何か持ってくるべきだったかな?……いや、それじゃあ周りとあんまり変わらないしな…ご馳走様でした。さて、周りの女たちに牽制できて尚且つ特別感を出すもの……あ)

 

「ラップランド?どうかしたの……っ!」

 

いつもであれば、聞いてもいないのにベラベラ喋るはずのラップランドが、食べ終わったのにも関わらず黙っていることに疑問に思ったヤマトは、急に心配になり彼女の顔を覗きこもうとした時、急に胸ぐらを掴まれ引き寄せられた。

あまりにも突然であったのと、警戒が緩んでいたせいもあってヤマトはその動きに対応出来ず、何か攻撃がされる前に離れられるように彼女の肩を掴もうとして、その動きを中断された。

 

何故ならば──

 

「はんっ…んっ…」

 

「っ!?」

 

ラップランドがヤマトの首筋に顔を近づけ、そこを思いっきり噛み、そして舐め始めたからだ。

 

「んっ、な、何を…?」

 

「ん、思った以上に君の血は美味しいね……病みつきになりそうだよ…って、危ない危ない。本命の方やらなきゃね」

 

「?何を言って…っ!うっ…」

 

ラップランドは恍惚な顔で血が着いた自分の唇を舐め、ヤマトが状況を正確に把握する前に再度ヤマトの首筋に顔を埋め、今度は音がなるほど強く吸う。

吸われたヤマトは初めて感じる感覚に戸惑い、そして腕に力が入れられなくなりろくな抵抗が出来ずラップランドにされるがままになる。

 

「ふぅ…うん、うまくついたね」

 

「はぁ…はぁ…?」

 

10秒、1分、またはそれ以上だったのか逆にそれより短かったのか、どれほどの時間そうしていたのか、2人にとって時間は曖昧であった。しかし、ラップランドはヤマトの首筋にしっかりと赤い痕が付いているのを確認して、満足そうに頷いていた。

 

「それじゃあ、ボクはそろそろ行くとするよ……ホワイトデーのお返し、楽しみにしてるからね?」

 

(……え、俺何か貰ったっけ?)

 

機嫌良さげに龍門の夜の闇に消えていくラップランドを見ながら、ヤマトはそんなことを考えたが、「まあ、ホワイトデーに何か作って返せばいいか」と自分を納得させ、首筋に赤い痕が付いているのに気づかずそのまま寮へと帰っていった。

 

 

 

****

 

 

 

 

 

次の日、ヤマトは首を隠さずに起きてきたせいで、鬼気迫る雰囲気のテキサス達から逃げるために龍門を駆け回る羽目になったのだった。




こんな感じでよかったですかね…?

キャラ紹介

ヤマト:ペン急ルートのヤマト。修羅場編での経験を全く活かしきれていないため、結局大変な目にあってしまう。因みに、彼女たちへの好意に気づかないわけは無意識にとあることを思ってしまっているせいで…?因みに紙袋に入ってたチョコは、配達速攻で終わらせた後に、イカズチにカップケーキを渡すために立ち寄ったロドスで貰ったもの。義理が大半を占めるが…?

テキサス:キャラ崩壊が激しいキャラその1。ペン急ルートではヤマトを何としても振り向かせたい一心でキャラ崩壊が激しい。当初は手作りにしようと思っていたが、中々思うような出来のもの(普通に店に出せるレベル)が出来ず結局市販になったという裏話があったり。因みに、失敗作はペン急組全員で美味しくいただきました(処理しきれなかったのを皆にバレた)

エクシア:ゴーイングマイウェイを行く天使さん。自身の料理スキルの高さをフル活用して、チョコ入りアップルパイを作り上げ、そしてヤマトの満点笑顔も貰えてご満悦。モスティマも狙ってるんじゃないかと警戒中。

クロワッサン:ちょっと影が薄かった金欠お姉さん。実は買ったバームクーヘンは美味しいと評判の店のを買ったもので、後にそれに気がついたヤマトが我を忘れて迫るという事件が起きてた。因みにヤマトの紙袋に入ってたチョコは女性組で分けて美味しくいただきました。

ソラ:そろそろパパラッチを気にした方がいい現役アイドル。なお、修羅場になると1番圧が強いのは彼女。良かったな、ヤマト。人気アイドルから愛されてるよ()あと、あくまで個人的な考えなんですが、料理上手そうな気がします。外部の女性に取られる前に自分らで囲ってしまうべきかガチで考え始めた。

モスティマ:掴みどころがないお姉さん。ヤマトには異性としての好意は持ってないものの、エクシア達の反応が面白いため思わせぶりな言動をとっている。だが、やりすぎるとマズイというのを今回の件で察した。

リア充爆破独身ウーマン:モスティマの監視役のお姉さん。彼女の春はいつ来るのか、それは誰にも分からない。

W:出番ほぼなしってどういう事かしら?(^ω^#)

ラップランド:独占欲が日に日に増していくヤベー奴。特にお菓子とか用意してなかったが、しっかりプレゼント渡したからモーマンタイ。ボコボコにされた後にあんな話を聞かされるのは嫌だが、カップケーキの献上は無問題。食べ物には罪はないし、美味しかったからね。

あと、ヤマト君を2頭身+アナログですが描いてみました。


【挿絵表示】


……はい、これが自分の限界でした(白目)
リアルなやつは……多分、無理ですのでそこはすみません(土下座)

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ifルート:死を振りまく白き殺戮者

今回は、後々の話の都合上申し訳ないのですが先にこちらのリクエストの方を消化します。先にリクエストを出してくださった方々、本当にすみません。

そして、アンケートにご協力して下さりありがとうございました!個人的に1位は予想通りだったのですが、3位にあの√が来るとは思わなかったのでちょっと驚きました。


 

「あっははははっ!!」

 

「な、なんだよあいつは!?」

 

「ま、待て!俺は味方だ、がふっ」

 

「た、助け…!ぎゃっ」

 

──ああ、私はなんて事をしてしまったんだろう。

 

とある戦場に広がる凄惨な光景を見てその女性は、悲しみのあまり涙を流す。その光景を生み出している人物は、()()()()()()が混じった茶髪のループスの少年で、彼は狂ったように笑いながら小太刀と大剣、そしてボウガンを巧みに使い分けながら、敵味方関係なく命を容赦なく刈り取っていく。

 

それを少年の背後から見ている女性は、自分の不甲斐なさのせいで本来は優しくて戦うのが本当は不向きな性格の少年を狂わせてしまったことを1人嘆く。

 

「わ、悪かった!お前たちを囮にしたのは謝るし、何でもするから殺さな…!」

 

「なら死んでくれるか?」

 

「ひ、ひいっ!だ、誰か!助けてくれ!助け…あぎゃっ」

 

ふふっ……くはははっ!あはははははっ!!…僕にあんなこと頼むなんて……あははははっ!僕からムサシを奪っておいて、よくそんなこと言えるな!」

 

「がっ!ぶっ!あがっ………」

 

「む?もう壊れたか……全くムサシが受けた痛みはこんなもんじゃないのに…根性ないやつだ……お前もそう思うだろう?」

 

「ひいっ!」

 

「そんなに怯えないでくれるか?……僕はただ、お前たちが僕ら…ムサシにしたことをやり返してるだけなんだ……ほら笑ったらどうだ?」

 

「う、うわああああああ!!」

 

しかし、過去をどんなに後悔しても時間は巻戻らない。少年は狂戦士となり、嗤いながら目に付いた人を殺していく。

 

 

──マズイ!このままじゃ、ヤマトが…!くそっ!

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

その日、争っていた二つの部隊は何者かの手によって壊滅寸前にまで追い込まれ、戦う所ではなくなり休戦に至ることになった。そしてそれ以来、戦場で争っていた両陣営が壊滅寸前に持ち込まれたり、村を襲った賊が見せしめのように皆殺しにされる事件が頻繁に起きるようになる。

 

しかしその元凶を見た者は殆どおらず、見たとされる者も負わされた傷が原因ですぐに引き取ってしまう中、ある日とある戦争で生き残ったある生存者が声を震わせながら次のように語った。

 

──馬鹿でかい2つの剣とナイフを拳銃に付けた白いループスが、嗤いながら全て殺していったんだ!男も女も関係ねえ!全て、全て殺したんだ!

 

その話から、傭兵や戦場に出向く軍人たちはそのモノにとある異名をつけた。

 

──白い死神と。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「厄介なものを拾ってしまったな……」

 

ケルシーは治療を終え、特別な部屋で穏やかな顔で寝ている少年を取り付けられている監視カメラから見て思わずそんな感想を呟いていた。

数時間前に、荒野で倒れている鉱石病を患っている少年を発見したと聞言う報告を聞いてから、医療オペレーターと共に急いで受け入れ態勢を整え、件の少年を見た時は思わず夢を見ているのかと自問自答したほどの衝撃を受けた。

 

ケルシーは白色の髪と尻尾、そして彼が持っている武器から戦場にいる者全てに死を振りまくと言われている「白い死神」の可能性が高いことを考慮に入れていた。

この「白い死神」についての情報は極端に少なく、集められた情報でも「白い死神は巨大な大男」だとか「1人で軍を壊滅させた」、「小さい少女」など、そんなものしかなく「白い死神」はケルシー自身都市伝説のようなものの1つだと思っていた。

しかし、1番有力な情報と同じ髪と尻尾、装備を持っていることと、彼から危険な雰囲気がすることからして、彼がその都市伝説の正体ではないかと、最終的に行き着いていた。

 

「ケルシー先生、本当にお一人で彼とお話するんですか?」

 

「ああ、あれが本当に例の死神だとしたら並のオペレーターでは瞬殺されるからな」

 

「だとしたら、1人だと余計に危険です!やはり護衛を何人か…!」

 

「大丈夫だ。彼一人程度なら私だけで対処可能だ……それに目が覚めたようだしな」

 

「え……?そ、そんな!予定時刻より1時間早いですよ!?って、あ!ケルシー先生!」

 

なおも食い下がるアーミヤにケルシーは、監視カメラからの映像を映し出してるモニターに目を移す。そこには、額に手を当てながら体を起こしている少年の姿があり、ケルシーはアーミヤがそれに気を取られている隙に紙とペンを持つと少年がいる部屋と足を進ませる。

 

「さて、白い死神は一体どんなやつなのか確かめてやるとするか」

 

 

 

 

****

 

 

 

 

『ケルシー、標的の排除に成功した』

 

「……ドクターが報告するはずじゃなかったか?」

 

『…ドクターは被害確認の方で忙しいとのことで、代わりに僕がやることになった』

 

「分かった。ドクターに被害報告は自分でするように告げてくれ。あとお前は怪我をしているなら今日は…ガヴィルの元へ行くように」

 

『…………』

 

「どうした?なにか不都合でもあったか?」

 

『いや、何でもない。これからレッド達と一緒に帰還する』

 

「ああ……ふう、まさかこんなことになるなんてな」

 

結局ケルシーは問答の末『白い死神』──ヤマトをS.W.E.E.P.に入れ彼を自身の私兵の1人として受け入れることにした。

理由として挙げられるのは2つ。

1つはヤマトが諜報活動、暗殺を始めに直接戦闘特に複数戦に長けているものの、人とのコミュニケーションが壊滅的に下手くそであったこと。

そしてもう1つは、レッドに対してループス特有の反応を全く見せないどころか、寧ろ相性がいいことだ。

 

最初の1つ目に関しては、戦力強化というのとほかのオペレーターとの衝突を避けるという意味が大きいが、2つ目に関しては偶然判明したものだった。

 

これはヤマトを受け入れることにした翌日、ケルシーが彼にロドスの案内をしていた所たまたまレッドと遭遇。この時、ケルシーは普段ならしない自分のミスに悪態を着いたものの、当のヤマト本人は全く無反応。これにはケルシーもレッドも驚き、特にケルシーは案内が終わってから詳しく問いただしたても「別になんにも感じなかった」としか答えず、彼が例外であることが判明。それどころか、何故かヤマトはレッドに対しては心を開いてるという始末。レッドも同様に心を開いているため、ケルシーは色々考えた末一緒にした方がメリットが大きいと判断していた。

 

だがヤマトがロドスの一員となって問題もあるのも事実。その1つとしてあるのが。

 

「ブレイズに対しての拒絶反応があまりにも凄まじい……ことだな」

 

ヤマトはエリートオペレーターの1人であるブレイズと話す以前に、彼女の姿を見るとか、聞くだけで頭痛を発し気絶してしまうのだ。

一応ブレイズにヤマトと面識があるかどうか聞いてみたが、当然あるはずもなく当初は謎に包まれていたが、最近になって自己防衛の一種なのではないかという見方が出てきた。

 

もし、自己防衛の一種ならばヤマトの重度な記憶障害も説明がつく。しかし、やれることはあまりないのも事実なためケルシーはなるべくヤマトがブレイズと接触しないように、レッドと一緒に目を光らせている。

 

「やれやれ……前途多難だな……」

 

ケルシーはため息を吐き、ふととあるオペレーターから言われたことを思い出すが、すぐにそれを頭の中から消す。正直、非科学的すぎる内容な上、それを言ってきた人物が人物だ。鵜呑みする気はなかったとはいえ、何故か頭によぎった。

 

(……()()()()()がずっとヤマトの背後に寄り添うようにいるなんて、科学的にありえん)

 

ケルシーはそこまで考えてから頭を振り、意識を自分がチェックしなければならない書類の処理に向け、早速取りかかったのだった。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「君が白い死神か?」

 

「…少なくとも僕は初めて聞いた名前だな」

 

「……では、お前の本当の名前は?」

 

「僕の名前?………ああ、思い出した。僕の名前はヤマトだよ」

 

「…?そうか。それにしても落ち着いているんだな」

 

「僕の最後の記憶から推測して、行き倒れてた僕を助けてくれたんだろう?それに敵意も感じないんだし慌てる必要は無いだろう。ところで、僕はいつになったらここから出られる?」

 

「……それに関しては、まだわからん」

 

「そうかでもなるべく早めに頼む。僕は早く……?」

 

「どうした?」

 

「……僕は何のために殺してるんだ?……?なんでだ……?どっちにせよ、僕はもっと殺さなきゃダメなんだ。だから早めに出してくれないか」

 

(……これは)

 

 

 

 

*****

 

 

権限記録

 

調査の結果オペレーター:ヤマトの記憶障害、味覚障害そして白髪化は鉱石病ではなく精神的なストレスによるものが原因であることが判明した。集めることが出来た情報から、彼のストレスの原因が彼のバディでもあったある女傭兵が死亡したことが原因だと判明。それがきっかけで彼の精神は崩壊、同時に僅かに残ったモノを守るためにその女性との記憶を奥底に封じ込めたものと考えられる。そうすれば、彼がブレイズの声や姿を聞いたり見たりしただけで、あのような反応をしてしまったのも説明が着く。そして彼の異様な殺人衝動は、恐らくその女性を失ったことの原因が雇われ主に最初から囮として仕組まれたことによる憎悪が振り切れてしまったのと、同じく自身の精神を保つための自己防衛の結果だと思われる。

なお、一部のオペレーターは「白い死神」がヤマトだと勘づいていたり、その時の彼に運良く救われたり又は一緒に仕事をこなした者もいるようだが、彼はその人物のことを全く覚えていないようなので、なるべくそのオペレーターとヤマトのかつてのバディに似ていると思われるブレイズには会わせないようにした方が全員のためになると思われる。

 

 

この記録は私の権限によってロックさせてもらう──ケルシー

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「へぇ……あの時の男の子がヤマトであの白い死神かぁ……ふふっ、通りでボクと同じ匂いがした訳だ!…ふふっ…ははははっ!やっと見つけた…!」

 

 

──大事な人を騙した雇い主を、大事な人を奪った人間を、大事な人を殺した世界全てへの憎悪に囚われ、殺戮者となった少年の行き着く先は──

 

 

 

 

──ボクと一緒に堕ちるところまで堕ちてくれないとね。

 

 

 

──破滅か、

 

 

 

 

 

 

──絶対に元の優しいお前に戻してみせる

 

──あの時の白いループスの人に礼を言いたいんだけど、いつ会えるかな…

 

 

 

──救済か。




こんな感じでいいですかね?

ヤマト:悪堕ち√のヤマト。髪の色も相まって正にオルタ化と言えるが何故かレッドに対しては心を開いており、基本彼女には結構甘く、彼女のために態々尻尾の手入れ用の道具を一式揃えたほど。なお、ガヴィルは1度治療という名のナニカを受けて以来苦手。使っている武器はGNバスターソー○Ⅲと刀剣タイプの銃剣をつけたCz75 SP-01(ヤマトカスタム)と小太刀。基本はKHのクラウドの左手の小手がない服装で、暗殺任務や諜報活動の時はFate/zeroの切○と使い分けてる感じとなります。
なお、ヤマト・オルタ√に行く条件は「ヤマトがムサシに対して異性に向ける想いを持ってる」のみ。ですが、ムサシの女子力()だったり、至近距離で過ごしたせいでその想いを持つのはかなり確率が低いので、ほぼ無いです。

ムサシ:ヤマトの守護霊(又は背後霊)として取り憑いてる姐御。ヤマトが完全にコワレないようにあれこれやってる。目標は元の優しくてどこか抜けてるヤマトに戻すこと。

ケルシー:行き倒れてたヤマトを成り行きでS.W.E.E.P.に引き入れた先生。ヤマトが「白い死神」の名以上の働きを見せて驚いているものの、予想以上に闇が深いことを知り変に詮索しないことに。

レッド:何故か自分を怖がらないヤマトが大好き。よくモフモフを強請る。因みに、ヤマトの味覚障害に1番早く気がついたのも彼女という裏設定。

ガヴィル:白い死神の天敵。ケルシーについでヤマトが絶対逆らわないと決めた存在でもあったり。

ボクっ娘:一体どこの白黒ループスなんだ……因みに馴れ初めは、泊まったホテルの手違いで相部屋になったこと。よく生きてたな、お前。

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あるオオカミさんのホワイトデー(ペン急‪√&近衛局‬‪√‬の場合)

はい、急遽仕上げましたが…まさかの間に合わないという大失態。いや本当にすみません……

あとペンギン急便‪√‬と近衛局‪√‬にしたのは前者はバレンタインデーの後日談、近衛局はこの前のアンケートで3位だったからという理由です。


──ホワイトデー。

それはバレンタインデーにチョコなどを貰った男性が女性に返す日のこと。一部の男性諸君は出費が凄まじいことなって財布の風通しが良くなったり、また一部は出費がほぼなかったり、又は手作りのものを渡して女性のメンタル悪気なく打ち砕きにいったりと、人によって違うのもこの日の面白いところでもあるだろう。

 

そして我らがヤマトはどういう風に過ごしているのかというと。

 

「お兄ちゃん!次あそこ行こうよ!」

 

「うん、分かった」

 

義妹であるイカズチとシエスタのショッピングモールを歩いていた。

ペンギン急便のトランスポーターであるヤマトとロドスの患者兼オペレーターであるイカズチの2人が何故、観光都市シエスタに来ているか?

それは至極単純で、イカズチがヤマトに「ホワイトデーのお返しはシエスタデートじゃないとやだあぁぁ!」と駄々をこね、それを身内には激甘なヤマトがあっさり了承したからだ。

そこからの流れを簡潔にまとめると、まずヤマトはイカズチの外出許可をドクター、アーミヤ、そしてケルシーの3人に懇願して何とか取り、そしてその後は自分の会社の恩人兼愉悦クソペンギン(byヤマト)に溜まりに溜まった有休を使うことを報告し、休みをゲット。それからはペンギン急便のメンバーとW、そしてラップランド達にシエスタに行く前に早めのホワイトデーという形で自身の手作りお菓子を渡し現在に至る、という感じである。

 

(……そういえば、ドクターと皇帝が言ってたことって本当に起こるのかな?)

 

「お兄ちゃんっお兄ちゃんっ!次はあっちに早く行こ!」

 

「もう、そんなに慌てなくても時間はたっぷりあるんだから…全く」

 

思案顔になったヤマトの手を引っ張って急かすイカズチに対して、彼は少し呆れているように言いつつも、どこか嬉しそうな雰囲気を隠せず笑みを零す。そして──

 

「………」

 

「テキサス、気持ちは分かるけど堪えて」

 

「そうやで、あの子はヤマトの妹なんやで?」

 

「そうですよ?なのでガチになってはダメですよ(青筋)」

 

「ソラ、笑顔で青筋はアイドルとして色々いけないと思うんだけど」

 

「…私もヤマトの義妹になれればいけるか……?」

 

「ダメだこりゃ」

 

社長に丁寧にお願いしてシエスタにやってきて、2人のデート模様を物陰から監視……もとい見守っているペンギン急便の社員達。

 

「あいつは子犬ちゃんの義妹よ。だから抑えなさいW。爆弾をここであのクソ娘に向けてブン投げて爆破したらヤマトに嫌われるわよ、私…!」

 

別の物陰からヤマト兄妹の様子を監視…もとい見守りながらも、爆弾が入っているポーチに手が無意識にいかないようにと、必死に己を抑えているW。

 

「は?何あいつ?何普通にボクのヤマトとちゃっかり手繋いじゃってんの?よし、ブッコロ案件だね…!」

 

また別の物陰から掴んでいる壁にヒビが入りそうな勢いで手をかけながら、仲睦まじく歩いているヤマト兄妹の様子を人を射殺せるような勢いで観察……もといストーキングしているラップランド。

 

──そう、このシエスタという土地にヤマトに思いを寄せるメンバーが特別番組みたいな感じで大集合してしまったのだ。

正直、現時点でもとてつもなくマズイことになっているのだがこれはまだマシな状況であり、もしもこのメンバーが全員顔を合わせた日には高確率で大乱闘が始まり、このショッピングモールは崩壊する。しかもそこにイカズチが混ざれば更にとんでもない事になるのは明白。

 

不幸なのか、幸いなのか分からないがヤマトは現在6名の女性に監視されているということに全く気がついておらず、彼の未来予知レベルの優れた直感も全く反応していない。

 

ヤマトのことになると、一瞬でポンコツ過激思考になる女性メンバーが集結している中、ヤマトは一体どう立ち回るのか?

 

シエスタ、ロドスとペンギン急便、そしてお前の貞操は全てお前にかかっている!

 

頑張れヤマト!負けるなヤマト!まずは6人の存在に気が付き始めてるイカズチを何とかするんだ!

 

 

 

次回予告、「わあああ!お兄ちゃんは私のモノなんだからぁぁぁ!」

デュエルスタンバイ!(大嘘)

 

 

 

 

 

******

 

 

 

【近衛局‪√‬の場合】

 

 

 

ホワイトデーの前日、ヤマトは龍門のショッピングモールにてとある人物と待ち合わせているのか、私服姿で腕時計を時折見る所作をしながらその場に立っていた。

 

「おー、ヤマト!悪ぃ、待たせたな」

 

そこへ手をおおきく振りながら走ってくる男性の姿がヤマトの視界に入り、彼は呆れ顔+ジト目でその人物を見やる。

 

「リュウ……誘った挙句時間を指定した俺が言うのはおかしい気がするけどさ、お前の遅刻癖はどうにかならないのか?」

 

「う、うるへー!仕事の方はしっかり時間守れてるから…!」

 

「それが当たり前なんだよ……全く、スーラが可哀想だよ……」

 

「おい、スーラの事は出すな……マジで」

 

リュウと呼ばれたこの男性はヤマトと部署こそ違うものの近衛局に勤める同期であり、そして学生時代、ヤマトが初めてできた親友でありこの2人は今でも時折2人だけで遊んだり、飲みに行く仲でもある。因みに、スーラというのはリュウの幼馴染兼恋人の女性であり、一言で言えばツンデレデレデレ(誤字ではない)である。

そしてリュウはスーラの名前を出されると一気に弱くなってしまうため、このままヤマトのペースに乗せられるのを回避するために話を変えるために急いで口を動かす。

 

「それにしても、急に力を貸してほしいってどうしたんだ?学生時代優等生のお前が俺に助けを求めるなんてな、正直冗談かと思ったぜ」

 

「仕方ないだろ。俺が優等生かどうかともかく、宿題やるの忘れたりテスト範囲が分からなくて俺やスーラに泣きついてたお前しか適任というか、1番力になれそうなのいなかったんだから」

 

「おい、明らかに無駄なこと言ったろお前」

 

サラリと学生時代の黒歴史を晒されたリュウは、そこでふと考える。リュウ自身も発言したようにヤマトは学生時代優等生であり、成績は首席…ではなかったもののトップクラスであり、リュウやスーラのお陰でそれなりに友人もいる。そしてその友人たちは近衛局にはいないものの、それぞれの方面で活躍している一癖あるものの優秀なメンバーだ。正直、リュウに頼るぐらいならそのメンバーを頼るだろう。というよりリュウがヤマトならそうしている自信がある。

 

にも関わらず、そのメンバーではなく自分に頼る。そこまできてリュウは明日が何の日かというのと、そのメンバーの共通点を踏まえた上で、とある答えにたどり着き、それを確認するためにヤマトに問いかけた。

 

「なあ、ヤマト。力を貸してほしいって、ホワイトデーのお返しか?」

 

「……流石リュウだね。推理に関しては右に出るものはいないってことだ」

 

ヤマトの賛辞を受け取りながらもリュウはやっぱりかと内心で呟く。実は、ヤマトを含めた彼の友人達は恋愛経験がまさかの皆無。その上ヤマトはともかく、他のメンバーはホワイトデーは家族だけという悲しい事実もある。だが、リュウは学生時代からスーラと付き合っているため力になってくれると思ったのだろう。

 

だが、ここでとある疑問が生じる。

 

確かにヤマトの恋愛経験は0でクソザコナメクジだ。だが、リュウの記憶では学生時代はバレンタインのチョコをそれなりに貰っており、ホワイトデーのお返しも何ら問題なく手作りお菓子という形で配り過ごしていたのだ。そのため、リュウの出番は本来はないはずなのだ。

ヤマトはリュウが何を考えているのか、何となく察すると少し気恥ずかしげに口を開いた。

 

「実はさ、スワイヤーさんにバレンタインデーのチョコ貰ったんだけど、ホワイトデーのお返し何がいいか分からなくてさ」

 

「へ?スワイヤーさんって、俺の上司の?」

 

「うん、そうだよ」

 

「あー、なるほどな。何となく話は分かった」

 

ヤマトの口から出た内容にリュウはこめかみを抑えながらも、思考を働かせる。

先程のリュウの発言のとおり、スワイヤーはリュウの上司だ。そのため、彼女が時折ヤマトをどこからか連れてきて書類仕事を手伝わせて、後からチェンと喧嘩するというのは知っていた。

だが、その上司がまさか自分の親友にバレンタインのチョコを上げていたなんて予想外だ。何せ、部下である自分たちも貰ってないのだから余計に。なので、スワイヤーがどういうつもりでヤマトにバレンタインのチョコをを渡したのかわかってしまったのだが、明らかに厄ネタなため心の内にしまうことにした。

 

だが、それとは別に学生時代とある女子生徒が立ち上げたファンクラブのせいで恋愛とは程遠い生活をしてきた親友にやっとこさ春が訪れそうなのだ。なんか忘れている気がするがここは精一杯フォローしてやろう、とリュウは考えてから軽い調子でふと気になった質問を投げかけた。

 

「そういや、他の人からも貰ってるなら一緒に買うか?」

 

「ん?ああ、それは大丈夫。向こうから手作りでってお願いされてるから」

 

ヤマトの返事にリュウは固まった。

 

(手作り?え?手作りお菓子を所望?いや、待て。そういえば、ある噂があったよな……)

 

「な、なあヤマト。他の人ってさ、もしかしてチェン隊長とホシグマの姐御か…?」

 

リュウはあの噂が嘘であること、そして自分の予想が外れることを祈ってヤマトの答えを固唾を飲んで待つ。

 

「?そうだけど」

 

(うそだろぉぉぉぉ!!あの噂、本当だったのかよぉぉぉ!)

 

だが、出されたのは「チェンとホシグマがとある隊員を狙ってる」という噂と自分の予想が正解という事実。正直、リュウ的には「何であんな色んな意味でやべー人たちから好かれてるんだ」と今すぐツッコミを入れたいところだが、それをしても結果は変わらない。

 

そしてリュウはあれこれ考えた末。

 

「ヤマト、悪いことは言わん。スワイヤーさんにも手作りのものをあげるんだ」

 

「え?けど、スワイヤーさんは高級店のお菓子とかの方がいい気が…」

 

い い か ら 俺 の 言 う 通 り に し ろ

 

「あ、うん。リュウがそこまで言うなら…」

 

(とりあえず、窮地は脱したか…?)

 

 

次の日、リュウは顔がゆるっゆるっの上司の姿を目撃し、何とか上手くいったことにほっと胸を撫で下ろしたのだった。




メランサの誕生日記念話書いたら読みます?(確認)


キャラ紹介

ヤマト(ペンギン急便):家族サービスをしっかりしている兄の鑑。だがもう少し女性関係をしっかりした方がいい。なお、あの後どうなったかは皆様のご想像のおまかせに…。

イカズチ:お兄ちゃん大好き義妹。シエスタデート中で、何やら不穏な気配を察知した模様。

テキサス:ヤマトのことになるとただのポンコツと化す。でも本人前ではクールでカッコイイという、ある意味詐欺をしてる。

エクシア:沸点はこのメンバーの中では1番高い方。つまりポンコツ化しにくいし、目のハイライトが消えにくい。つまり1番マシ()

クロワッサン:イカズチは義妹なのでヤマトは選ばないと信じてる。あと、髪を下ろすとめちゃくちゃ印象が変わる。

ソラ:ペンギン急便メンバーの中では思考だけは1番の過激派。もう1回彼女のR18話書きたいなと思ってたり(カミングアウト)

W:イカズチのことはロドスにいるので知っている。バーン!しないように己と戦闘中。

ラップランド(ペンギン急便):今回の話でヤンデレに片足踏み込んでるヤベー奴。

ヤマト(近衛局):学生時代の恋愛経験0だった理由がファンクラブのせいという事実が判明。まあ、顔よし!性格もまあまあ、優等生だったらモテるよね()てか、自分が作った設定なのに中指を立ててしまった。ごめんねヤマト。

リュウ:ヤマトの学生時代からの付き合いの親友。基本はだらしないが、頭の回転が早く推理力に関しては他を寄せつけない。現在はスワイヤーの部下として色々頑張ってるリア充。なお、身長はヤマトより15cm高い。

スワイヤー:危うく自分だけ高級店で買ったお菓子になりかけたお人だが、優秀な部下のおかげで無事手作りお菓子ゲット。因みに本人の前ではあたかも仕方ないわね感出してた。

チェン&ホシグマ:また料理の腕を上げたのか…?(絶望)

ラップランド(近衛局):ロドスにいることを前に伝えていたため、郵送でお菓子が送られてきてご満悦。チョコミルフィーユ美味しい。

感想や意見、批評などありましたら遠慮なくどうぞ!

またリクエストも活動報告の方で受けているのでそちらも是非!


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エイプリルフール話(BSWルートの場合+‪α‬)

お待たせしました!

今回はエイプリルフール企画ということで、前回とったアンケートで選ばれたBSWルート軸でのお話となっております。
そしてキャラ崩壊が凄まじいのでそれが構わない方は、続きをどうぞ!


あと関係ないですが、モンハンライズ楽しくてやばいです。チャージアックスと双剣、弓はいいゾ~


──エイプリルフール。

それは4月1日だけは、罪のない嘘やイタズラで人を笑わせていい日とされるもの。地域によっては、嘘やイタズラをしていいのは午前中だけで午後にはネタばらしというルールがあったりと中々面白い行事でもある。

そしてロドスでも可愛らしい嘘をついたり、イタズラをする子供がいたりと微笑ましい1日になる……

 

 

筈だった。

 

 

 

『………』

 

「アーミヤ、あれ何?」

 

お昼頃、ロドスの食堂にてヤマトの彼女計8名が互いに圧を発しながらテーブル席に陣取っており、それを見たドクターが思わず隣にいる少女に聞くも、フルフルと首を横に振るわれる。

 

「おっ、ドクターじゃねえか。どうしたんだ、こんな所で?」

 

「まあ、何となくどういうことかは想像できるけどね…」

 

「ムサシ、それにシラヌイ」

 

後ろから声をかけられた2人が振り返ると、そこには手をヒラヒラと振るムサシとどこか疲れたような表示のシラヌイの姿があった。

そして、シラヌイが吐き出したような言葉からして、どういう経緯であのヤマトの彼女たちがあのような状態になってしまったのか知っていることが伺えた。

 

「あの状況になった経緯を知ってるなら、ちょっと教えて欲しいんだけど…」

 

「ああ、そのことは俺も知ってるし飯を食いながらでも話すか。シラヌイもそれでいいよな?」

 

「……ええ、大丈夫よ」

 

「うっし!それじゃ、ドクターとアーミヤは席を取っといてくれ!あ、食うなら何がいい?」

 

「え?あ、俺は日替わりセットで」

 

「わ、私もそれで…」

 

「OK、すぐに持ってくるから待っててくれ」

 

ドクターとアーミヤは終始ムサシのペースにのせられ、気がついたら話があっという間に着いてしまい、ドクターとアーミヤはポカーンとしていた。

2人の中の戦闘以外でのムサシの印象は、ヤマトの保護者という面倒見のいい姐御というよりも、シラヌイにいつも怒られたりシバき倒されたりといった残念な面の方が強い。しかもドクターとアーミヤに至っては、最近武器を完全におじゃんにしたムサシが不気味に笑うシラヌイから逃げる姿を見ていたため余計に残念な印象が強くなっていたのも大きい。なので、急に姐御みたいなことをされたら戸惑ってしまうのは当然の理だ。

 

「……とりあえず、4人分の席取っておこうか?」

 

「は、はい。そうですねっ」

 

一足先に意識が戻ったドクターに声をかけられたアーミヤは、少し遅れながらも返事をして一緒に席の確保をしに行ってる最中であることを思い出す。

 

「ムサシ、片腕使えないのにどうやって持ってくるんだ…?」

 

 

 

 

****

 

 

 

「ドクター、待たせたな」

 

「あ、ムサシ……ああ、なるほどワゴンを借りたんだね」

 

「そういえば、サービスとして設置してましたよね。すっかり忘れてました」

 

席を何とか確保したドクターはアーミヤを席に残し、ムサシ達の手伝いに行こうとしたところで、件の彼女が定食が乗っかったワゴンを押してやってきたのを見て納得していた。

ロドスの食堂では何らかの事情で四肢に不自由な人のためにこういったワゴンや配膳ロボットが設置されており、実際これのおかげで助かっている人の声もあるため重宝されているのをドクターは忘れていた。

 

「さてと、ほいこれがドクターとアーミヤの日替わりセットだ」

 

「ありがとう…今日の日替わりは野菜炒めか…」

 

「そうですね…お味噌汁の具は豆腐とわかめ、長ネギですか…」

 

「おっ、これは俺が好きな具の組み合わせだな…ラッキー」

 

(ふむ…ドクターは豆腐とわかめ、長ネギの組み合わせが好き…と)

 

「さてと、早速食べながらヤマトのお嫁8人がなんでああなってんのか説明するか」

 

「ああ、頼むよ…その前にいただきます」

 

「あ、いただきます」

 

「律義だなぁ……」

 

ムサシは行儀がいいドクターとアーミヤにそんな感想を抱き、そして自身の醤油ラーメン(特盛+チャーシュー追加)を啜りながら話し始めた。

 

「簡潔に言うとアイツらはエイプリルフールの互いが着いた嘘を信じまった感じなんだわ」

 

「あんな険悪になる嘘ってどんな嘘なんでしょう…」

 

「てか、ジェシカやイカズチともかくW達が信じるってあるのかな?」

 

「ハッハッハっ!まあ、普通はそう思うよな」

 

ムサシの言葉に反応したドクターの言う通り、用心深かいWやリスカム達までもを騙せる嘘というのは正直そんなに無い。というより、あるなら是非教えて欲しいくらいの内容だ。

ドクターの反応が予想通りだったのかムサシは声を上げて笑う。そして鯖の味噌煮定食を食べているシラヌイに目配せし、それを受けた彼女は「私が残り説明するのか……」とため息を吐き、一旦お茶を飲んで一息ついて。

 

「あの娘達ね、「ヤマトの子供を妊娠したの」っていう嘘を同時についたのよ」

 

「「え」」

 

「いやー、あれは面白かったぜ?なんせ、同じタイミングで少しもズレずに言ったからな!」

 

「「ええ……」」

 

正直、本当かどうか疑わしい内容が飛び込んできて聞いていた2人は困惑の声を上げる。もし、これを言ったのがムサシだったなら嘘だと自信を持って指摘できるが、シラヌイがこんなしょうもない嘘をつくとは思えないし、それ以前に目が死んでいるのだから嘘とは全く思えなかった。

なお普通であれば、そんな誰でも見抜けるような簡単な嘘をあの8人が信じてしまったのか?という疑問が浮かぶはずなのだが、ドクターとアーミヤの2人はその疑問を全く持たなかった。

何故ならば、ヤマトの恋人達及びお嫁及び未来の妻8人は、ヤマトが関わると途端に思考がバグるというより、ポンコツと化してしまうのはロドスでは周知の事実だからだ。

 

因みにこれがロドス全体に行き渡ったのは、とある罰ゲームで女装する羽目になったヤマトの女装姿があまりにも似合いすぎて、それをムサシが冗談でジェシカに「ヤマトって本当は女の子なんだぜ?」と伝えた結果、あれよあれよとヤマトガチ勢8人全員が信じ込んでしまい、ヤマトが寝込みをあの8人に襲われるという事件が発生した…という頭を抱えたくなるような出来事がきっかけであった。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「それでもさ、なんであそこまで険悪になるの?そりゃあ、自分より先にってなったら多少は嫉妬はするだろうけど、普通はおめでた雰囲気にならない?」

 

「それに関しては、聞いた話によるとヤマトに無断で1番先に子供産んだ奴が正妻枠っていう風に決めたらしいからじゃね?」

 

「ツッコミどころがありすぎます」

 

「アーミヤちゃん奇遇ね、私もよ」

 

疲れたような顔をするアーミヤにシラヌイが心底同情したかのような声で返事をし、味噌汁を飲む。

 

「てかヤマトは?ヤマトならあれ収められると思うんだけど…」

 

「そのヤマトは今日の昼食のシフト入ってるから無理なんだわ」

 

「あ、そういえばそうだったわ……」

 

唯一この事態を解決出来そうな人物であるヤマトは昼食のシフトに入っているため、早急な解決は不可能。そのためドクターたちが出来ることは早くヤマトが仕事を終えて戻ってきて、あの8人を何とか宥めることを祈るしか出来ない。

 

「……ヤマトには頑張ってもらうしかないね」

 

「そうだな。多分、あいつ今日搾り取られると思うし」

 

「え?」

 

「ちょっとムサシ!食事中になんてこと言うのよ!」

 

「ん~?シラヌイさん、ナニを想像したんです~?俺は精神搾り取られるんだろうな~って意味で言ったんですけど~?」

 

「……ぶっ殺してや…!アーミヤ離して!私はこの行き遅れバカ猫を殴らないといけないの!!」

 

「よりによって私が気にしてること言うなんて、酷いわよ!私だって、好きで行き遅れてるわけじゃないんだから!!」

 

(……野菜炒めとご飯はやっぱりあうなー)

 

一気に混沌とかしたこの状況で、ドクターは現実逃避したところで。

 

「ムサシ、いくら図星だからって騒がないでよ…」

 

「……はっ!ヤマト、なんでお前ここにいんの?」

 

「なんか、食堂でやばい雰囲気になってるところがあるからどうにかしてくれ、って厨房から叩き出された」

 

「「あっ……」」

 

「「oh......」」

 

ムッツリスケベなことがバレそうになったシラヌイからの思わぬカウンターを食らって騒ぐムサシに、呆れた雰囲気を出しながらヤマトが声をかけた。一瞬、ここにいるはずの無い人物の登場にドクター達は固まる。が、一足先に復活したムサシがヤマトに理由を聞くと、完全にヤマトの彼女達のせいであることが判明。思わずアーミヤとシラヌイは声をもらし、ドクターとムサシは手を額に当てる。恋人たちが互いに着いた嘘(冗談にしてもネタにしても笑えない)のせいで苦労している青年を見て、なんとも言えない気持ちに4人はなってしまった。

 

「あ、丁度いいや。ムサシ、やばい雰囲気になってる所ってどこか教えてくれる?」

 

「あー…えーとだな……」

 

「早く厨房戻らないといけない」というのががっつり出ているヤマトを見てムサシは詰まる。正直、さっさと解決して欲しいのは本心なのだが、「あそこにいるお前の彼女達」なんて馬鹿正直に言える訳がないのも事実。もし、そんなことを言えば純粋なヤマトは傷つく…は無いかもしれないが複雑な気分になるのは長年の付き合いからして容易に想像できることであり、彼の相棒でもある彼女には到底できず、かといって放置する訳にもいかないことなので、目線をジェシカたちの方へ向け、それに釣られてヤマトも視線を向けて、何となく察したような顔になった。

 

「…うん、なんで俺が行くことになったのか分かったよ……ドクター、アーミヤさん。俺の彼女たちがご迷惑をかけてしまいすみませんでした。あとは俺が何とかするので」

 

「え、あ、いや」

 

「それじゃ、失礼します」

 

流れるようにヤマトはドクターたちに頭を下げ謝罪し、彼が戸惑っている間にその場を離れジェシカたちの元へ行き話しかけ、そこで少しだけ話すと彼女たちを連れて食堂を出ていった。

 

「……行っちゃいましたね」

 

「そうだね……なんかヤマトってあの8人に振り回されてるから手綱握りきれてないように見えたけど、なんやかんや握れてるみたいなんだね」

 

(いや、あの8人……特にジェシカとラップランドの表情からして、ヤマトは自分を犠牲にしたんだろうなぁ…)

 

(……後でヤマトに体力がつく食べ物持って行ってやるか)

 

アーミヤとドクターがヤマトがあの8人の手綱をしっかり握れていると誤解している中、シラヌイとムサシは残りの半日ほどをベッドで過ごし搾り取られるであろうヤマトに合掌をした。

 

因みに次の日、先日のような険悪な雰囲気とは打って変わって幸せそうな女性8人と、疲れながらもその光景を満足気に見ている青年が見受けられたと見受けられなかったとか。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 

── そうか、そんな顔が浮かべれるなら…もう、心配はいらないな。

 

その人物は未練でもあったかつての自分の相棒が、自分の死を乗り越えて今を生きていること。彼の傍に支えてくれる人達がいること。そして、彼が笑えるようになっていることを見届けた彼女は、安心して眠りについた──

 

「むにゃ……もう食えね……あいたっ!?」

 

 

はずだった。

 

「……は?何で、私実体持ってるん…?てか心臓動いてるし、生きてる……ってことなのか?」

 

気がつくと、心臓があり物にすり抜けることが出来ない実体をもった状態で目を覚ました彼女。訳が分からないながらも、傭兵として生きてきた経歴を持つ彼女は情報を集めるために街を歩き回る。

 

(……なんだここは?俺が知ってるどの町とも雰囲気も何もかもがちげぇ…それに、背負ったりしてるアレってサンクタの奴らが使う銃だよな?拳銃はともかく、それ以外の銃をなんでサンクタでもない奴らがそれを持ってるんだ?)

 

「……って、今気がついたけど俺もなんか背負ってんな……これって、PDWってやつだよな…よく見たら、なんかシラヌイが使ってやつに似てんな…」

 

彼女は自分が持っている知識とは全く違う光景、そしていつの間にか背中に親友がかつて使っていた銃に酷使している物があること。その事実に彼女は驚き、戸惑いながらも足を進め色んな人から話を聞く。

 

その中で彼女はここは自分が住んでいた世界とは全く世界、いわゆる異世界というものでは無いかという考えにたどり着き困惑する中、彼女はとある少女と会う。

 

「?そこの人、変な唸り声だしてどうしたの?」

 

「え?俺、変な唸り声みたいな声出てたの?」

 

「うん」

 

「オーマイガー」

 

「それでどうしたの?」

 

「えーとだな…」

 

砂狼シロコ、と後から名乗った少女にその女性は異世界に来たことなど混乱するであろう内容を話す訳には行かず、ただ簡潔に一言言う。

 

「お金も家もなくて途方にくれてる」

 

「……なるほど」

 

こうしてなんやかんやありながらも、彼女は自分の体が17歳ほどの頃に若返っていることが判明したり、シロコが通う高校に入学したりと色々する。

たまに襲撃してくるヘルメット団との戦闘、対策委員会との交流や衝突を繰り返しながらも、彼女はある決意を固める。

 

(大人であった、俺がこいつらが守りたいものを守ろう)

 

廃校させない為にあの手この手で頑張るシロコを含めた対策委員会の姿を見て、彼女は自分がなぜこの場にいるのかを何となく理解し、そしてアビドス高校にとある人物が来たことで彼女の物語は大きく動き出す。

 

「ムサシ、これより迎撃に向かうぜ!」

 

 

──転生したら銃もった女子高生だらけの世界だった

 

近日公開予定!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(この未来()を読んでるかのような正確無比な狙撃…まさか!?)

 

──そしてこの世界で彼女は再会する。

 

 

「アコ、お前のためを思って()()()は自ら銃を取ったんだ…分かっているとは思うが、しっかり謝罪するように」

 

「そう、でしたか……ヤマト、ごめんなさい。()()()()()な貴方に銃を取らせてしまって…」

 

「……ううん、アコさん謝らなくていいよ。貴方をしっかり止められなかった()が悪いんだから…」

 

「ちっ…お前がそこまでの腕があるなんて思いもしなかったぜ……」

 

「なんで、なんでっ!お前がここにそんな髪で居るのよ!?」

 

「ムサシっ!?急に声を荒らげて…!」

 

 

 

 

 

 

()()()ッ!!」

 

 

──変わり果てたかつての自分の相棒にして、大事な弟分と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

ムサシ「エイプリルフールだからな?マジで受け取らないでな?お姉さんとの約束だぞ!!」




前半のヤマトガチ勢とヤマトの間にあったナニはR18の方でリクエストの件も踏まえて一緒に書く予定ですのでもう暫くお待ちを…



キャラ紹介

ヤマト(BSW):8人の彼女を持つロドスのハーレムキング候補の1人。彼女達が互いに牽制し合っているのを何とかしようとあの手この手でやっていたが効果はなく、今回の騒動に至ったという経緯が実はある。つまり、ヤマトがさっさと8人をいい感じに纏めておけば今回の騒ぎはなかったという…ヤマトォ!

ヤマトの彼女たち:多いので一纏めに。後日談として、軽いじゃれ合いみたいな口喧嘩は起こるものの、以前に比べたら本当にお互いへの態度が軟化し、仲が良くなったように見えるとのこと。なお、とあるオペレーター曰く「ヤマトを見てる時の目に、なんかハートマークみたいなのが見えた」とのこと。

ドクター:味噌汁の好きな具はわかめ、とうふ、ネギ。そしてロドスのハーレムキング候補の1人でもある。頑張れドクター、ヤマトの二の舞には絶対になるな!

アーミヤ:密かに料理をする時間をちょっとずつ増やしている乙女アーミヤ。なお、自分が告ればすぐにゴールインという事実に気がついていない。

感想や意見などありましたら遠慮なくどうぞ!
R18の方も含めて活動報告で募集していますので、そちらも遠慮なく!


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1周年記念話if:ペガサスの目を持つ女性たちから見たとある狼騎士さん

えー、お待たせしました…。

まず、皆さんのおかげで「ロドス劇場」が1周年迎えられました!色々と未熟な面ばかりが目立つと思いますが、これからも宜しくお願い致します!

…そしてその1周年記念の話がなんでこんなに遅くなったかと言うと、書くべきことが多すぎて、中々話が進まないということで行き詰まってしまった、というのが原因です。

というわけで、少し読みづらいかと思いますが、本編の方どうぞ!


 

──これは父親になったばかりの男性が、我が子の未来をとり、会社とかつての身内を捨てる道を選んだ世界軸でのとある1幕。

 

 

****

 

 

 

え?ヤマトお兄ちゃんについて私が持ってる印象とか知ってることを話して欲しい?……まあ、今はやることないから別にいいけど…。

 

そうだね、まずヤマトお兄ちゃん…いや、お兄ちゃんの御家族は訳あってお兄ちゃんが生まれたばっかの時にカジミェーシュに来たらしくて、詳しいことは分からないけどお兄ちゃんのお父さんが立ち上げた会社の関係で私たちの家と交流を持つようになった…らしいの。

ただ、あの頃のお兄ちゃんは…その、ものすごく人見知りでご両親の後ろに隠れてばっかでとても内気で頼りない男の子という印象があった。

 

──『僕に戦い方を教えてください!』

 

けど、何時からかお兄ちゃんはひょんなことでチンピラに絡まれた私たちを助けてくれた当時独立騎士だったとある人に弟子入りした。…そういえば、私達はよくあの人のところに訪ねて遊んで貰った記憶があるな。あと、お兄ちゃんは「(せんせい)!」ってよく呼んで懐いてて、あの人は「うるせー!バカ弟子!」ってよく言ってたけど、顔は笑顔で親子なんじゃないかってレベルで仲が良かった。

 

──『(せんせい)(せんせい)!!せんせえぇぇぇぇぇっ!!』

 

けど、あの人はお兄ちゃんの目の前で事故に巻き込まれて腕を失って騎士としての生命を絶たれただけではなく、鉱石病を患った。そして、暫くしてからヤマトのご両親にだけ今まで世話になったことを告げて、あの人が使っていた剣とマントをお兄ちゃんに託してこの地から去っていった。

 

劇的に、お兄ちゃんが変わったのはあれがきっかけだったんだと思う。それ以来、お兄ちゃんはあの人からの剣技だけではなくお兄ちゃんのお父さんが使っている剣術を教わり、それだけではなく弓の鍛錬もし始めて、最終的には「師とお父さんが立ったあの場に立ちたい」と無理言って競合騎士にもなっていた。そして、その初めての試合であの人の形見の剣でベテランの騎士をものの数十秒で倒したあの姿を見てから内気で頼りない印象は消えて、代わりに心強くて頼もしい印象がついた。そして、私はそんなお兄ちゃんのことを「お兄ちゃん」としては見れなくなって、淡い想いを抱くようになり始めた。

 

でもそんなお兄ちゃんは、お姉ちゃんがこの地を去ることになったと同時に会社の競合騎士を止めて、ロドスとお兄ちゃんのお父さんの会社の橋渡し役として働くようになり、こっちにいる時間はほぼ無くなってしまった。そう、お兄ちゃんは私がこの想いがどんなものなのかわかる前遠くへ行ってしまった。…まあ、そのおかげで自分がどんな想いを抱いていたのか自覚できたんだけどね…

 

 

だからね、お姉ちゃんが助けに来てくれた瞬間にルール変更で3vs3になって、また数的不利になった時に現れて「よく頑張ったな」って言われながら頭を撫でられた時は、久しぶりに会えた嬉しさと褒められた嬉しさ、凄い安心感とかでごちゃ混ぜになっちゃったんだ。…あと、あんな風に助けに来られたら、余計に好きになっちゃうよ…。

 

 

まあともかく!最近になって私とゾフィア叔母さんもお姉ちゃんが所属しているロドスに来れたから、そのおかげでこれまでみたいにお兄ちゃんやお姉ちゃんといつでも会えるようになったの!それで、私のことを見てくれるようにいっぱいアピールしてやる!って思ったんだ!

 

でもさ…

 

「やあ、これからボクと一緒に訓練所にでもどうかな?」

 

「ヤマトさん、料理を教えてくれませんか?」

 

「ヤマトさん、そのよろしければ訓練に付き合って…」

 

「あ、ヤマトさん(ry」

 

なんで、そんなに色んな女性と仲いいの?(ハイライトオフ)ドクター、出来たらお兄ちゃんのこれまでの生活教えてくれる?(ニッコリ)

 

 

 

 

****

 

 

 

──最初、ヤマトを見た時の印象を言うならば「頼りない」の一言に尽きるわね。多分、マリアやマーガレットからも聞いてると思うけど、幼い頃のあいつは人見知りな上に弱気な子だったのよ。そのくせ、ぼーっとしてる時が多いわ、目を離したらフラフラどっかいってる時があるわ、変なところで転ぶわでもう次第に手のかかる弟って感じになったわね。…今思うと、仲良くなった相手にはとことん無防備な点は全然変わってないのね(呆れ)

 

──『………』

 

ヤマトに対する印象が変わったのは、なんでかは忘れたけど凄い落ち込んでた時に何も言わずにそばにいてくれた時かしらね。

普通は相手がそういう時になってると、つい「どうしたの?」とか「何かあったの?」って聞いちゃうじゃない?多分、私も気をつけないと聞いちゃうんだけど、あの子はねただ何も言わずに傍に居てくれたのよ。それが私にとっては凄い嬉しかったのよね。

それ以来、「根は優しいやつ」って印象が加わったわね。手のかかる弟っていうのは変わらずだったけど。いや、寝ぼけてシャツを前後ろ反対に着るとか、宿題の範囲間違えて先の内容やったりとか…もう、ね?(呆れ)

 

劇的に印象とかが変わったのは、ヤマトの剣の師匠だったクラウスさんが騎士をやめてどっか行っちゃったあとね。ここから先は多分マーガレット達にも聞いたでしょうけど、強くなることに貪欲だったわね。吸収できるものはなんでも自分の中に取り入れて、逆にそのまま取り入れられないことは工夫して自分なりのモノにしたりと、気迫が凄かった。

ただ、1度だけあのバカ自己鍛錬中にぶっ倒れたことがあるのよ。あの時は本当にびっくりしたわよ…様子を見に行って声をかけようとした瞬間に倒れ込んだんだから…。それで急いでヤマトを木陰に移動させて暫く寝かせてたんだけど、起きて早々あのバカ何しようとしたと思う?私にお礼を言ったあと、まーたすぐに鍛錬しようとしたのよ!?

 

──『僕は、早く強くなって(せんせい)に恩返しがしたいんだ!!』

 

多分、それが最初の口喧嘩だと思うのよね。知ってるかもしれないけどヤマトって人の意見は素直に聞くし、最後まで聞いてその意見のことを自分なりに噛み砕いた上で自分なりの考えだとか意見とか言うんだけど、あの時のヤマトはそれをしないどころか、私の話も聞かずに自分の意見…というか溜め込んでたモノをぶつけてくるだけだったのよ。けど、私としてはクラウスさんが居なくなってから、ヤマトは自分の心の内とか全然教えてくれなかったから、嬉しくて途中で笑っちゃってね。

まあ、なんやかんやあってヤマトはちゃんとペースとか守るようになったし、無理することは格段に減ったわね。

 

え?いつヤマトのことを好きにな…っ……!そ、そこまで話す必要はないで…答えたらヤマトに関することならなんでも教えてくれる?…………えっと、実を言うと最初の方に話した、落ち込んでる時に黙って傍にいてくれた時からその、結構気になってて…え?当時2人は何歳だったか、ですって?…………答えたから、私の質問に答えてもらうわよ!いい!?いいわよね!!(必死)

 

──うん、よろしい。それで、質問っていうのは…なんでヤマトってここだとあんなに色んな女性に話しかけられてるの?私の知ってるヤマトって、女の子と話すの結構苦手だったはずなんだけどなんか知ってる?ねえ?(ハイライトオフ)

 

 

 

 

****

 

 

 

ヤマトについてどう思ってるか…だと?マリアやゾフィアに聞くならまだしも、何で私に?…まあ、時間が空いてるから少しであるならば話すが。

 

…それで、ヤマトのことをどう思ってるかといえば、大事な幼なじみでありそして愛する人だな。ん?何故そんなに驚いているんだ?「そんなドストレートに言うとは思わなかった」?…こういう時でこそしっかり言えないと本番で詰まって何も言えなくなってしまうからな。そのめの…「その言い草だと失敗したことがあるように聞こえる」……この話は聞かなかったことにしろ、いいなドクター?

 

…折角だし、少し昔話をしようか。ヤマトは今でこそ頼りになる心強い奴なんだが、子供の頃は正反対で頼りない子供だったんだ。当時の私が血が繋がっていないのにも関わらず、庇護欲というかそういうのを持つレベルぐらいな。だが、中々心を開いてくれなくてな…先に心を開いたのがマリアの時はめちゃくちゃ落ち込んだな。まあ、最終的には「お姉ちゃん!」って言いながらトコトコと私の後を着いてくるようになって、本当に弟みたいだったよ。ただ、ぼーっとする時間があったり、ふと目を離したら迷子になってたり、何も無いところで転んでたりと結構マイペースでドジな子だったな。まあ、私としてはそれが余計に可愛く思えてゾフィアとよく面倒を見てたな。……ゾフィアからは「甘すぎます!」ってよく言われてたが。

 

劇的にヤマトを見る目が変わったのは、私が競合騎士として参加したとある試合で3対3の戦いで私と組む騎士が行方不明になって、数的不利で劣勢になった時にヤマトが加勢しに来てくれた時だな。そして私の隣に来ると。

 

『来るの遅くなってごめん。フォローは僕がやるから、マーガレットは自分のやりたいように動いて!』

 

そう告げてきたんだ。……あの時、ヤマトは私が思っていたよりもずっと成長してたというのが分かって、凄い誇らしかったしちょっと寂しかったな。その試合は、ヤマトの弓による援護や剣術のお陰であっさりと勝てて、お礼を言ったら「お姉ちゃんの助けになれて良かった!」って笑顔で言ってのけてな…多分、その頃から私はヤマトに想いを向けるようになったのだろうな。

 

だが、その矢先で私はあの土地を追われて暫くしてからロドスに来たわけなんだが…実は、ヤマトには一方的に別れを言って、そのせいで喧嘩別れみたいな形であの地を去って…いや、仕方ないだろう!好きになったと思ったら、鉱石病に身を侵されてるせいで非感染者のあいつと共に過ごすなんて出きっこないし、生まれ故郷を追い出されたショックとかで正気じゃなかったんだ!だから、ロドスでヤマトと再開した時は正直私は気まずかった。でも、あいつはそんなのお構い無しに。

 

──『言ったでしょ?何があっても見つけてみせるって』

 

…別れる前にあいつが声を大きくして言われたことを言われてな、柄ではないが泣いてしまったよ。私は私が思っている以上にヤマトに慕われているってことが分かって、嬉しかったよ。

それに、ロドスでクラウス殿とも再会できたのは本当に良かった。……前衛オペレーターのムサシ殿と結婚してると聞いた時は心底驚いたがな。まあ、そのヤマトはそのムサシ殿とも仲良くやれているみたいだし、クラウス殿との仲も良好だから安心しているよ。

 

ただ、1つ懸念材料をあげるならば…私の勘違いでなければヤマトに対して色っぽい視線を向ける女性が多い気がするんだ。その、ヤマトは自分に対して全くと言っていいほど自信が無いから、自分がそういう目で見られてるなんて全然考えないだろうから、まだいいがもしガンガン攻める人が出てきたら?……なあ、ドクター。実はマリアとゾフィアもヤマトのことを好いているみたいでな、これは相談なんだが盗られる前に私たち3人で囲った方がいい気が──

 

 

 

 

*****

 

 

 

「──っていう感じでした」

 

「うん、予想以上にとんでもない事になってるな」

 

ドクターの疲れたようなため息を聞いてクラウスは苦笑いを浮かべ、自分の愛弟子が目を離した隙に天然タラシになっていることと、かつての妹分3人が2名がやべー方向、もう1人が頭のネジがぶっ飛んでしまっていることに頭を抱えた。ヤマトの両親に近況を、ついでにあの3人がヤマトのことをどう思っているのかをも伝えておこうと思ったら、とんでもない爆弾を投げ込まれた感じとなってしまった。

 

(伝えたら多分、奥さんの方は笑ってマーガレットの嬢ちゃんに「やっちゃえ!」って唆すだろうし…だめだ、頭が痛くなってきた)

 

「…ヤマトの天然タラシはどうすれば治るんだ…?」

 

「治せたらとっくのとうに俺が治してるよ…」

 

 

「「……はぁ」」

 

 

結局、クラウスはヤマトの両親に自分と妻であるムサシの間に子供が出来たことと、ヤマトがマーガレットたちと仲良くやってるということだけのみを伝え、やべー事実だけは何とか伏せたのだが、マーガレットがヤマトの母に相談してしまったせいで一悶着起きるのだが、それはまた別の話。




実は、このルートだけで5話分は軽く書けるという事実()
そして暫くはR18に力を注ぎたいので、投稿頻度落ちると思います…大変申し訳ございません()

キャラ紹介

ヤマト:実の両親からの愛を満遍なく注がれて育ったルートのヤマト。一人称は父親とおなじ「僕」で性格は今でこそ人当たりのいい優しい青年だが、子供時代は内気で人見知りという真反対な性格。服装としては、異界のロイまんまです、はい()武器は大型の両刃直剣と打突出来るように先端が鋭利な盾と弓、そして腰に黒い刀を帯びてる感じです。
因みに、ロドスではどちららかというと男性オペレーターとの友好関係が広く、ミッドナイトニキを始めにノイルホーンやアンセルらや後方支援の男性オペレーターとも仲が良く、お酒が飲めるメンバーで酒盛りすることもしばしばあるらしい。

ブレミシャイン(マリア):マリア・二アールイベントの主人公ポジの子で、星6回復型重装。作者は引くことが出来なかったのでよく分からないが普通の回復盾として使うのは難しいとかなんとか。このルートではヤマトとは家族ぐるみの付き合いであったものの、一人の男性として意識してしまい、結果天然タラシ狼のせいでヤンデレ化しかけてる()

ウィスラッシュ(ゾフィア):マリア・二アールイベントの配布前衛。彼女がマリアやマーガレットとの血縁関係的な意味で叔母さんということから、スズランなどの子供系のオペレーターから「ウィスラッシュおばさん!」と呼ばれて、ショックを受けるイラストなどがよく見られる、悲しいお人()このルートでは、ヤマトのことを手のかかる弟から1人の異性として見たのが誰よりも早い。そしてヤマトが唯一弱音をはける人でもあったり。個人的には性格なども含めて結構好きなオペレーターです(カミングアウト)

二アール(マーガレット):我らが星5回復盾。序章などでは結構真面目な堅物系の女騎士なのだが、ストーリーを進めるとおっちょこちょいな面も。そして極めつけは水着コスでの基地の待機モーションで突然踊り出したりと、ツッコミどころがある人でもある。このルートでは、ヤマトに助けられてから異性として好意を持ち、そして他の人に盗られる前に囲ってしまうべきかと頭のネジが1本ぶっ飛びました。

クラウス:ヤマトの師匠。片腕を事故で失ってからは、各地を片腕で刀をぶんぶん振りながら転々として、ひょんなことで知り合ったある女傭兵と知り合い、なんやかんやあってロドスにはいり、そして押し倒されてなんやかんやあって結婚した。イメージ的にはザック○を想像してくれたらいいと思います。なお、現在は後方支援のオペレーターとして働いており、愛妻家として知られている。

ムサシ:三十路前に結婚出来て、心底ホッとしてる。なおヤマトのことは初めて会った時、どこか懐かしさを覚えたことに驚くものの、夫の弟子ということもあって可愛がっている模様。最近、お腹に新しい命が宿った。

ヤマトのご両親:本編や他のルートとは違って、我が子の未来に全てをかけた。

感想や批評などありましたら、作者のモチベや作品の質の向上にも繋がりますので、ありましたら遠慮なくお書きください、お願い致します!

そしてリクエストの方もR18含めて募集しておりますので、そちらもぜひ!


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ifルート:不殺を志した僧侶の日々

えー、今回はリクエストなんですが……すみません、大変申し訳ないのですが、書きやすいものから先に消化させていただきます……。そして今回のリクエストはifルートなのですが、絡むキャラの関係上この√のヤマトは他の√とは根本的に違う点が何点かございます。
詳しい内容は、後書きと設定の方で書きますのでご了承ください。

そして、先に言っておきますと原作の死亡キャラを救おうという描写があるため、それが苦手な方はブラウザバックをお願いします。

それでは、行きます。


 

───分からなかった。何故、自分みたいなゴミが生きてて、彼女のような良い人が死んでしまっているのかが。

 

 ──彼女を死なせてしまった自分が、世界が、他人が憎くて、全てを恨んで壊そうとした。実際、それを実行した時は少しだけ気持ちが楽になれた。

 

 ──でも、同時に辛かった。結局、自分は誰かを助けることも、守ることも、救うことも出来ず、ただ壊すしか出来ない存在だと突きつけられてるようで。

 それでも、そうしなければいけないという強迫観念の元、歩みを止めることは出来なかった。

 

 ──『……君は後悔してるようだな』

 

 ──あの日、あの人に会うまでは。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

「はあっ!」

 

 とある寺の裏庭にて、ペッローの少女と()()のループスの青年が木で作られた薙刀で打ち合っていた。いや、正確に言えば少女が打ち込みにいき、青年がそれを全て躱したり防いでいると言った方が正しいだろう。

 

「せやっ!」

 

「ん、今のはいい踏み込みだったね……けどっ!」

 

「うわっ!?」

 

 少女が放った渾身の一撃を青年はいとも容易く受け止め、賞賛の言葉を送り、そして続いて放たれた攻撃を自身の薙刀の柄を使って受け流しつつ、体を逸らし前にツンのめった少女の頭に手刀を軽めに落とす。

 

「体重をかけて威力を上げるってのは間違ってないけど、そればっかりだとこういう風に受け流されたら隙を晒すことになるよ」

 

「なるほど!兄者の言う通りですね!」

 

「さて、それを踏まえた上でもう一度…といきたいけど、そろそろお昼時だからね。ここまでにしよう」

 

「分かりました!付き合って下さり、ありがとうございました!」

 

「どういたしまして。それじゃ、薙刀は片付けてくるから汗を流してきて」

 

「はい!」

 

 ぺこりと頭を下げて礼を言う少女に向かって、ニコリと微笑んでから青年は彼女から薙刀を受け取り、走っていく彼女を見届け、自身は薙刀を早く倉庫にしまうために急ぎ足で倉庫へと向かう。それもそのはず、今日の昼ご飯の準備の担当は青年だからだ。

 

(本当は稽古を断るべきだったんだろうけども……)

 

 彼が考えてるように、昼ご飯の準備を考えれば薙刀の稽古を断ればここまで急ぐ必要はなかった。しかし、青年の性格上断るというのは出来ず、結局稽古をしてしまい、少し急ぐ必要が出てしまったのだった。

 

(さて、何を作るか考えておかないと)

 

 倉庫につき、薙刀をしまい台所へ向かう中青年は頭の中で寺にある食材を思い出しながら献立を考えてる最中、とある件のお礼として沢山貰った油揚げをそろそろ消費しないといけないことを彼は思い出した。

 

(よし、今日はいなり寿司と沢庵、味噌汁にしようかな)

 

 青年は献立を決めると、頭の中でこれからの行動をシミュレーションし始めるのだった。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 寺での生活の中には勿論修行がある。最も、この寺には護身術という名目で、武器を使った稽古やアーツ術の研鑽もあり一般的な寺の修行にはないものがある。

 だが、言わずもがな普通の寺で行われるようなものもやっており、そして昼ご飯の後の修行が今まさに行われている坐禅を組むことであった。

 

「……………」

 

「……………」

 

 身寄りのない子供を引き取り、今彼らが住んでいる寺を建てた「住職様」を除いた全員が坐禅を組み、精神を統一させている中、「住職様」は警策と呼ばれる木で出来た棒をもち、雑念が混ざっているもの、又は睡魔に負けそうな者がいないかを見ながら歩く。

 

「…………」

 

「……………」

 

 しかし長年やってきた賜物なのか、雑念が混ざったり、睡魔に襲われたりするどころか全員が姿勢をしっかり伸ばし、精神をしっかりと統一させていた。

 

「…………」

 

「住職様」は、子供たちの成長に感心している中、ふと視界に()()()()()()()()()がいるのが目に入り、そしてその人物が誰なのか分かると、「住職様」はため息を吐きそうになるのを堪えながらも、その人物の背に近寄り、肩に警策をそっと乗せ。

 

「……!」

 

「………」

 

 パシンッ!と少し痛そうでありながらも身が引き締まるような音が鳴り響き、叩かれた者は一礼してすぐに背筋を伸ばして意識を集中させ始める。

 

(…………)

 

「住職様」はそれを見て少しだけ思案するも、ふと視界にカクンと船を漕いでいる者の姿を見つけると、内心でため息を吐きながらその者へと足を進めたのであった。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 坐禅が終わったあとは、護身術の修行が始まる。最も、この修行では各々が自身の得物の扱い方や戦い方を互いに教えあったり、又は己が決めた師匠に教わったりと結構自由な形式で行われていた。

 だが、その中で1人だけ異色を放つ者がいた。

 

「…………」

 

 その人物は、昼食の前にペッローの少女に薙刀の稽古をしていた白髪のループス族の青年であり、彼は少し古めかしい書物を片手に持って熱心に読んでいた。周りが木でできた薙刀や木刀、又は杖で打ち合っている中、ただ本を読む青年は明らかに浮いている。

 しかし、それを見ても周りは一切気にするどころか、まるで当たり前かのように、一向に武器を持って稽古をしない青年に対して誰も口を挟まなかった。寧ろ、それが青年にとっての修行ということにして敢えて距離を取っているようにも見える。

 

「…………」

 

 と、ここで青年は本を閉じると近くに置いてある別の本を手に取り、いかにも手作り感が満載な案山子が立っている所へ行くと、そこからまた歩き出して、30m程離れた位置に立つと手に持っている本にアーツを込める。

 すると、本から青白い光が発せられ再度アーツを込めた瞬間、本から青い発光体が6つ飛び出し、青年の近くにふよふよと飛びながら停止。

 

「セット……ファイア」

 

 青年が呟くように小さな声でそう告げると、発光体は凄まじいスピードで案山子の近くへ飛ぶと、なんと青白い光線を放ち案山子を蜂の巣に──

 

「……よし」

 

 することはなく、ただ光線が当たった衝撃で()()()()()()()であり、普通であれば威力が弱すぎたと反省する場面であるはずなのに、青年の顔はまるで、長年の研究がやっと成功した科学者のように晴れやかなものであった。

 

(……ようやく、調整の具合がわかった。あとは他のパターンや瞬時に出来るように──)

 

「兄者!お手合せをお願いしたいのですが、よろしいですか?」

 

 が、それを打ち破るかのように青年に声をかけたのはペッローの少女。周りはそれを視界に収めると「ああ、またか」と言わんばかりに呆れ顔を浮かべたり、「本当にあいつの事を慕ってるんだな」と心が温まっている者と、稽古には無縁な反応を取っていた。

 

「……うん、いいよ。丁度キリが良かったしね」

 

「ありがとうございます!今度は兄者の本気を見たいので、これ持ってまいりました!」

 

 思考を遮られたことに対して、少しだけ思うところはあるのか青年はちょっとだけ間を置いてから、本をパタンと閉じる。

 そしてペッローの少女が渡したのは、木で出来た長さ130cm程の木製の棒。青年は礼を一言告げて受け取ると、少女から少し離れて感覚を確かめるかのように、太刀のように振るったと思えば、薙刀を扱うかのように薙ぎ払い、そして槍で相手を刺すように突きを放ってから、さらに軽く振るうと少女の方へ向き直る。

 

「お待たせ。いつ、かかってきてもいいよ」

 

「それでは……参る!」

 

 少女が自身が持っている薙刀を構えて距離を詰めてきたのを冷静にみながら、青年は迎撃の構えを取った。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

(……懐かしいな)

 

 とある廃屋にて、眠りから覚めた白髪のループスの青年は夢で見た内容に懐古の念に駆られていた。

 青年にとって、寺で過ごした時間は己を見つめ直し、自身が本当にやるべきことを考えられたものでありながら、同時に今までの人生で最も穏やかな時間でもあった。

 

(……住職様や、他の皆はどうしているのかな)

 

「ヤマト!ここにい……どうした?」

 

 過去に想いを馳せている中、かつてひょんな事でボコボコにしてから旅仲間でになり、そして今となっては自身の親友とも言える人物が部屋の中に飛び込むように入室。その人物は、自分がヤマトと呼んだ青年がいつもの微笑みとはどこか違う笑みを浮かべていることに驚き、思わず声をかける。

 

「……いや、何でもないよ。それで、そんなに慌ててどうしたんだい?」

 

「……お前が予想してた中で、1番最悪なパターンが起こりそうだ」

 

「……そう」

 

 親友から告げられた最悪の報せに、ヤマトは1番可能性があると考えていたとはいえ、起こってしまったこと、そして防げなかった事実に苦虫を潰したような顔を浮かべる。

 

「……どうするんだ?」

 

「……皆はここで待機して、ここの住民に危害が加えられないように守って欲しい」

 

「……一人でいくのか?」

 

「うん、1人の方が動きやすいからね。……それに皆を連れてくと、悪い事が起こる予感もする」

 

 ヤマトは親友にそう告げると、よっこいせといいながら先程までベッド代わりにしていた窓辺から自身のアーツユニットでもある錫杖を杖代わりにして立ち上がると、壁に立てかけてある、彼が知る中で世界一だと胸を張って言える鍛治職人が鍛え上げた最高の刀を腰に挿す。

 が、ヤマトがただ刀を腰に挿したという単純な行動を見ただけにも関わらず、彼の親友は驚いたように声を上げた。

 

「お、おい!それを持ち出さなきゃいけないほどなのか!?」

 

「……うん。出し惜しみをしてられるほど甘くはないみたいだからね……それに恐らく彼女と……」

 

「……?」

 

「いや、何でもないよ。それじゃ、僕が留守の間よろしく頼むよ」

 

「あ、おい!」

 

 ヤマトは自身のつぶやきが追求される前に、足早に部屋を出てすぐに組織のバイクが保管されている場所へ歩き出した。

 

(……予想が正しければ、僕が行くべきなのは龍門の近衛局。そこに向かう途中で彼らに撤退するよう説得しつつ、尚且つ撤退が完了するまで時間稼ぎをする必要があるわけか……)

 

 正直な話、今からやることはかなり無謀で恐らく自分が命を落とす可能性はかなり高いだろう。

 

(これが僕の戦いだから、やらなきゃダメだ)

 

 しかし、ヤマトはそう自分を鼓舞しキーが差しっぱなしのバイクを見つけると、それに跨りエンジンをかけると同時に、錫杖にアーツを込めて弱めの光弾を生成し、それをシャッターの開閉ボタンへ飛ばしスイッチを入れ、錫杖を背中に回してアーツで固定すると同時にアクセルを捻ってバイクをふかす。

 

「な、なんだ!?シャッターが勝手に…うわっ!?」

 

 外に見張りがいたのか、その見張りはシャッターがひとりでに動いて空いたことに驚き、そして次の瞬間凄まじい勢いでバイクが飛び出してきたことでさらに驚き、腰を抜かしてしまった。

 

(おっと、これは悪いことをしてしまったかな……)

 

「な、なななな……ば、バイクドロボー!!」

 

 ──そういえば、許可申請出してなかった。

 

 見張りの声が耳に入った瞬間、ヤマトはそんなことを思いつつも、今は時間との勝負なため仕方ないし、そもそも自分は完全に仏門に入った身ではないからと、寺で修行した者とは思えない言い訳をあれこれ考えながら、盗んだバイクで龍門へと向かうのだった。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 ──これは大事な人を失い、自暴自棄になった少年がある住職の元、とある志を胸に、自分の戦いを貫き通す世界の話。

 

 

 




今回の話を書く中で、「あれ、これいけるのでは」と思って書いてしまいました……リクエスト主さんには本当に申し訳ないです……

キャラ紹介

ヤマト:ムサシを亡くし、ショックで白髪になった挙句闇堕ち仕掛けたところを「住職様」に保護され、そこから悟りを開いた‪√‬のヤマト。……だが、時系列な関係で他の‪√‬とは違い、出産のタイミングから5年ほど早く生まれている。つまり、ヤマト関連に起こった出来事が5年分早く起きたということになっており、他の‪√‬に比べて大人っぽくなっている。が、やっぱりどこか抜けてる。
服装はモンハンライ○の重ね着のカムライシリーズの頭以外を黒くした感じ。
山の中の寺で修行という、自然パゥワーのおかげなのか不明ではあるがアーツを使った術攻撃が出来、基本的にアーツユニットである錫杖を使った術攻撃がメインをとした戦い方をするが……?

ペッローの少女:察しのいい方はわかったかと思いますが、スキルを使う度に「納豆ご飯!」「油揚げ!」と叫ぶ彼女です。何故、赤ん坊の頃から住職様の元で育って来た彼女が、後から来たヤマトを兄者呼びしていたのかというと、向こうが年上というのと、ヤマトに色々と教わることが多いからという理由です。出番少なかったのはユルシテ

住職様:何年生きてるんやろ、この人。

ヤマトの親友:元々はとある感染者の小さなグループの首領であり、旅人や小さい村を襲って生計を立てていたが、たまたま襲った村にヤマトが滞在したせいで、仲間諸共、ヤマトの術と錫杖による肉弾戦でボコボコにされ、メンタルもボロボロにされた後、彼らを殺そうした村人を説得した挙句、「行くあてがないなら自分の旅に付き合ってくれないか?」と言われ、それ以来仲間と共にヤマトと旅をしていた。ヤマトの本当の全力の一端を知る数少ない人物ですが、恐らく出ることはもうないでしょう。

感想や批評などあればぜひお願いします。


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年末年始の過ごし方(天馬ルート)

えー、というわけで散々悩んだ挙句天馬ルートの年越し話です。まあ、たまには団欒系の話もいいですよね?ってことで上げさせていただきました。

それでは本編の方どうぞ。


早速であるがヤマトの両親は自身の運営する会社の社長とその秘書ということもあって、かなり多忙だ。愛息子であるヤマトが幼い頃は年末年始だけは何とか休みを取っていたが、その彼がトランスポーターひいてはロドスのオペレーターとなってあちこち行くことになってからは、子離れをする時期だろうと2人は考えて休みを取ることは無くなっていた。

 

だが、今年は違った。何故かというと──

 

「まさか、あの子に嵌められてしまうとはな」

 

「その通りね……」

 

端的に言うとこの2人は実の息子であるヤマトと自身の会社の社員、ひいてはドクターを始めとしたロドスの人達によってロドスのヤマトが借りている部屋にぶち込まれたのだ。もう少し掘り下げると、この2人はドクターから「ロドスとの提携について再確認として直接話し合いがしたい」という旨をヤマトから伝えられ、社長であるユウキと秘書であるムツキは何の疑いも持たずノコノコとロドスに行き会議終了後、ヤマトに「それじゃ年末年始はここで過ごしてもらうから」と告げられ、その直後に自社の幹部から「暫くはご子息とゆっくり休んでください。こちらは大丈夫ですので」という電話が入り、ヤマトの部屋で過ごすことになってしまったという訳である。そしてこの計画を発案者が自分らの愛してやまない息子だというのだから、余計に2人は驚きどこで育て方を間違えたのか、と真剣に悩ませたほどだった。

 

が、ユウキとムツキにとってこのヤマトの罠は悪いことばかりではなかった。まずその1つとしてかつて自社の競合騎士として雇い、そして友人として接していたクラウスとその妻であるムサシにちゃんと顔を合わせられたこと。クラウスは強引に去ったということをした手前若干気まずそうにしていたが、ユウキとムツキにとってはやっと友人に会えたということで抱きついたお陰で気まずい雰囲気は無くなり、その日は3人で夜中まで積もりに積もった話が出来、そしてムサシは先輩お母さんのムツキとの連絡先を交換したりと充実した時間を過ごした。

 

2つ目としては、自身の息子であるヤマトが思っていた以上にロドスのオペレーター達と打ち解けていたことが分かったことであった。元来ヤマトはかなり内気な性格であり、今ではかなり仲がいい幼馴染とも言えるマーガレット達と打ち解けるのにも時間がかかったほどであり、そんな息子が知らない人だらけのところで上手くやれているか心配であったのだが、色んな人物と廊下で楽しそうに談笑している姿を見て心底安心した。なお、これを知ったヤマト本人は不貞腐れてしまったが。

 

そして3つ目は──

 

「それじゃ今日は年越しそばってことで、僕が作るから2人はのんびりしてて」

 

「いや、でも──」

 

「い い か ら」

 

「「はい……」」

 

「あはは……お兄ちゃんの圧凄かったね」

 

「そうね……あそこまでプレッシャー与えるほどなのかはわからないけど」

 

「まあ、ヤマトとしてはユウキさんとムツキさんのお2人にはのんびりして欲しいんだろう。力が入っても仕方ないかもしれないな」

 

久しぶりにヤマトと家族同然の付き合いである二アールの3人と過ごせることだろう。欲を言えば、ムリナールやクラウス達とも過ごしたかったがムリナールの方は「仕事があって忙しい」と辞退され、クラウスは「久しぶりの団欒を邪魔するほど腐ってねえよ」と言われてしまい残念ながらいない。マーガレット達も最初こそ渋っていたが、ヤマトらカグラ一家のお願いということで了承しこの場に来ていた。なお、この3人は料理ができるアピールもしくはヤマトと一緒に調理というのを夢見ていたのだが、残念ながら「久しぶりだしゆっくりしててよ」と言われてしまい撃沈している。

 

「それにしても……マーガレットちゃんたちちょっと見ない間に本当に綺麗なったわね~」

 

「ムツキさんこそ、相変わらずお綺麗です」

 

「あら、嬉しいこと言ってくれるわね〜」

 

「本当に若いままだよね。僕はちょっと老け込んじゃったよ……」

 

(いや、正直言って、ユウキさんとムツキさんのお2人ってヤマトの兄姉って言っても通用するぐらい見た目若いままなんですが……)

 

(なんか、秘訣とか……いやこの人たちの場合はないだろうなぁ)

 

「皆ー、年越しそば出来たよー」

 

見た目が20代前半にしか見えないカグラ夫妻の容姿に3人は戦慄としている中、丁度年越しそばの方が出来上がったらしくヤマトはそれを置いていく。

 

「さて、それじゃあ……」

 

『いただきます』

 

 

 

****

 

 

 

「玉ねぎと紅しょうがのかき揚げにかしわ天、美味しかったな~」

 

「前にちょっとしたトラブルの解決に手伝ったところの村の人達からお礼にって玉ねぎが大量に送られてきてね。ロドスに寄付してもちょっと量が多くて困ってたんだけど、消費する機会が出来て良かったよ」

 

「あー、それでやけに最近スープの具に玉ねぎ入ってたんだね」

 

「そういえば、蕎麦の汁ってさもしかして……」

 

「うん、今日は父さんたちに食べてもらうから自作だよ。流石に麺の方は市販のだけど……」

 

「本当にやると決めたら徹底的にやろうとするわよね、あんたは……」

 

「ふふ、そういうところも可愛いでしょ?」

 

「親バカだなぁ……」

 

「……可愛いはなんか複雑だなぁ」

 

食後、実は麺以外は全てヤマトの手作りであったりそこからムツキの相変わらずな親バカにマリア達が苦笑いを浮かべながら会話をしていた。そこでふと、ユウキはこんなにゆっくりと穏やかな時間を過ごすのは何時ぶりなのかという考えが頭によぎった。自身の幼少期や学生時代は実家の家庭環境的にそんな時間は存在せず、企業してからはヤマトの子育てのために時間をなるべくはとってはいたがそれでも少なかった。そしてそのヤマトが自分らの反対を押し切って競合騎士になり、ロドスと自社の橋渡し役のトランスポーターになってからは全く無かった。

そしてその様子に気がついたゾフィアが声を潜めてユウキに声をかけた。

 

「ヤマトの奴、ユウキさん達が最近仕事漬けで全然休めてないの凄い気にしてたんですよ。まあ、あいつの事ですから久しぶりにユウキさん達と一緒にのんびりしたかった、っていうのもあるでしょうけど」

 

「そっか……」

 

それがヤマトが今回の計画を立てた理由であった。彼の記憶の中でも両親であるユウキとムツキが自分と過ごす時間はあっても、ゆっくりと過ごしていることはなく、そして最近に至っては自分がトランスポーターとして働き始めたのもあって余計に休みを取らなくなっているのを知ってからは、ロドスの幹部陣や自社の社員や幹部たちにコンタクトを取りどうにかして両親を休ませたい、と懇願した。結果として、ヤマトの人柄などもあってこの計画は無事に遂行された。なお、これに関してドクターはかなりノリノリであったことをつけ加えておく。

 

「ゾフィアさんに父さん?何を話してるの?」

 

「……何でもないわよ」

 

「うん、何でもないよ。それよりヤマト」

 

「?何、父さん?」

 

「ありがとう。僕とムツキのためにこの時間を作ってくれて」

 

急にユウキからお礼を言われたヤマトはキョトンとした顔を浮かべていたが、暫くして意味が分かったのか顔を少しだけ赤くしてそっぽを向き。

 

「……どういたしまして」

 

「お兄ちゃんが珍しく照れてる!」

 

「確かに中々珍しいな……ちょっとこっちに顔を向けてくれないか?」

 

「きゅ、急になん……ゾフィアさん!?なんで羽交い締めしてくるの!?」

 

「いや、こうでもしないと見せないでしょーに。マリアー、写真よろ」

 

「任せてー!」

 

「マリアちゃん!?」

 

「その、撮ったら後で私にも……」

 

「マーガレットさんまで!」

 

「ヤマトの照れ顔1つでここまで騒がしくなるなんてなあ……」

 

「ふふっ、それほどヤマトのことを慕っているんですよあなた」

 

照れ顔を取らせまいと必死に抵抗しようとするも、羽交い締めしてるのがゾフィアというのもあって本気の抵抗が出来ないヤマトから遠慮なくパシャパシャと携帯端末のカメラのシャッターを切るマリアとそれを見て微笑むマーガレット、そして故意的に胸を押し付けてヤマトの動揺を更に狙うゾフィアという地獄絵図を「慕っている」の一言で済ませる妻にユウキは苦笑いを浮かべ、ふと時計を見てもうすぐ年越しであることに気がついた。

 

「もうすぐで年越しだから、止めてあげようか」

 

「そうですね……ふふっ、私としては3人ともあの子と結ばれて欲しいものです」

 

「ムリナールさんが胃痛で倒れそうなことを簡単に言わないであげて……」

 

思った以上に賑やかな時間となったが、改めて息子とその幼馴染との時間を過ごせることにユウキは改めて感謝しつつ、未だに騒いでいる4人を止めるために声をかけるのだった。

 

なお、ヤマトが寝た後に二アールの三人娘はムツキからとあるお言葉を貰うことになるのだがそれはまた別の話である。




改めて、ロドス劇場を今年もよろしくお願い致します。

キャラ紹介

ヤマト(天馬ルート):親をロドスに連れ込んで仕事をさせないということをやってのけたヤベー奴。なお、天ぷらも全て自作であり結構こだわったとの事。なお次の日朝起きたら、何故かマーガレット達に挟まれている状態になっており、宇宙ループスになっていた。

ユウキ:ヤマトのお父さん。家族のことを心の底から大事に思っているのだが、その分自分に対して厳しく自分のために休んだことは全くなく、そのせいでロドスに連れ込まれた。息子がハーレムルートに進んでしまいそうなことにちょっと心配。

ムツキ:ヤマトのお母さん。ムサシとは先輩お母さんとして色々助言をしている模様。そして二アールの三人娘を焚き付けてしまった。

二アール三人娘:母親公認で3人で囲っていいというのを貰った。

ムリナール:近い未来、胃痛で倒れることが確定した。

感想や批評お待ちしております。


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誕生日記念話
テキサス誕生日記念〜時にはこんな甘い夜を~


テキサス誕生日おめでとう!

というわけで、連続投稿になってしまいましたがテキサス誕生日記念の話です!


そして今回の話はUA1万越え記念話のifルートの更にifルート時空となっております。

なんのこっちゃって思いますが、簡単に言えばペン急ルートのヤマトとペン急メンバーの話ってことです。

それではどうぞ!


その日、テキサスは疲れていた。

というのも、彼女には単独で長距離の仕事が5日前に言い渡され色々と面倒な目にあい、本来なら昨日の夜には龍門に着いているはずなのだが、結局龍門に着いたのはつい先程でもう日が沈んでいる時間帯だったからだ。

 

(……後であいつに付き合ってもらうか)

 

テキサスがそんなことを考えながら道を歩き、ペンギン急便の基地のドアを開けた瞬間──

 

「「「「「テキサス(さん)!誕生日おめでと〜!!」」」」」

 

クラッカーの音ともにヤマトを初めに仲間達がテキサスに祝いの言葉をかけた。

予想だにしてなかった出迎えにテキサスは驚いてポカーンとした様子で立っているとヤマトが近づいて声をかけた。

 

「今日は6月1日…テキサスの誕生日だよ?もしかして今日の日付把握してなかったの?」

 

「あ……そうか、今日が……」

 

テキサスはヤマトに声をかけられてやっと納得がいき、同時に今日の日付が6月1日であることにもやっと気がついた。

その反応を見て、ヤマトは「やっぱり今日が何日か分かってなかったんだね」と苦笑したが、すぐに切り替えて彼女の手を握ると手を振っているエクシアたちの方へ足を向ける。

 

「さ、もう誕生日を祝うための準備はもう出来てるから行こ?」

 

「……ああ、そうだな」

 

テキサスは「早くー!」と手を振ってこちらを呼ぶエクシア、と自分の手を握ってくれるヤマト、そして自分を祝うためにあれこれ準備してくれた仲間たちに穏やかな笑みを浮かべるのだった。

 

 

****

 

そこからは、もう普段通りの食えや飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎだった。エクシアが作ったアップルパイやヤマトとバイソンが作った数々の料理の食べながら、クロワッサンが買ってきたソフトドリンクやお酒を飲み、ソラがテキサスのためにその場で歌ったりといつも通りの騒がしさ。そして、最後にはエクシア、ヤマト、バイソン3人の合作の誕生日ケーキを食べた後には残ってる酒を消費するために、全員飲み始め気がついた頃には、エクシアとクロワッサン、ソラは寝落ちしていた。

バイソンとヤマトはいつもの光景に苦笑しながらも、2人で手分けして彼女たちを部屋へと運んで行った。

 

テキサスは1人残った部屋でぼんやりと考え事をしていた。

ソラが入って少ししてからヤマトが入り、最近になっては一時期だけだったがバイソンが加入した。

そしてバイソンが入った日に起こったあの出来事のおかげで、今となっては大事で愛おしい彼の全て知れた。

 

「テキサス、ぼーっとしてどうしたの?」

 

テキサスが思い耽っている中、全員を各部屋に寝かせて終えたであろうヤマトが戻ってきた。

ヤマトは「よいしょ」と声を出しながらテキサスの隣へ座る。

 

「いや、少し考え事をしていただけだ。バイソンはどうした?そもそも、なんであいつは…」

 

「ここに来たのか?でしょ?」

 

テキサスは、聞こうとしていたことを先に言われて少しムッとしたがヤマトはそんなことを気にせずに彼女の疑問に答える。

 

「バイソンからね、テキサスさんの誕生日を自分も祝いたいって連絡が来たんだよ」

 

ヤマトが答えた内容に、テキサスは少し驚いたが悪い気はせず「そうか」と一言だけ返事を返した。

 

「あ、それとバイソンはさっき執事さんが迎えに来たらしくて裏口から帰っていったよ」

 

「…そうか、ではこの中で起きてるのは私とヤマトだけだな?」

 

「そうだよ」

 

テキサスの問いかけにヤマトが頷きながら答えると、彼女は少し顔を赤くしながらも、ヤマトの手に自分の手を重ねると指で彼の手を軽く2、3回なぞった。

ヤマトは、そのあることをして欲しい時の彼女からのサインを受け取ると、微笑みながら彼女の頬に手を添えて、自身の唇を彼女の唇に重ね合わせた。

 

実は、ヤマトとテキサスは恋仲である。

想いを告げたのはヤマトからで、テキサスは最初こそ驚いていたが彼に対してどこか惹かれていたのもあって了承、というのが背景だった。

その後は、色々と大変なことがあったが…結果的には丸く収まったので気にしなくてヨシというのが2人の考えである。

そして、「キスがしたい」と中々口に出せないテキサスのためヤマトが何かしらの合図を作ればいいのでは?と提案した結果出来たものが先程の、「手を重ねてヤマトの手を2、3回なぞる」だった。

 

触れるようなキスをした後に、ヤマトは「そうだ」と言うと1回その場を離れたと思ったら、手に何かを包んだものを持って戻って来ると──

 

「はい、誕生日プレゼント」

 

と言ってテキサスに差し出した。

テキサスはお礼を言いながら、彼の了承も得たのもあって包みを開けると、中にはカスミソウが刺繍されたハンカチだった。

 

「これは…」

 

テキサスはカスミソウが自分の誕生日花というのをひょんなことから知っていた。そして、ある地域のカスミソウの花言葉には──

 

「テキサス、前から使ってたハンカチダメにしちゃったって聞いたからさ…どういうのがいいか分からなかったけどいいかな?」

 

「ああ…大事に使わせてもらう」

 

ヤマトがどこまで知っているのかをテキサスは知らない。だが、それでも心が温かくなるようなむず痒い感覚を味わいながらも、テキサスは目の前の何よりも愛おしい少年のことがもっと欲しくなってしまった。

 

「ヤマト…」

 

「何、テキサ──んんっ!?」

 

テキサスに声をかけられ、彼女の方へ顔を向けた瞬間ヤマトは唇を奪われた。

そしてそれだけではなく──

 

「ん……んん…ちゅ…れろ……」

 

「!!!??!?」

 

テキサスはヤマトの口の中に強引に自分の舌を入れると、そのまま彼の舌を絡ませた。

ヤマトは最初こそ、驚きのあまりされるがままにされていたが徐々に彼からもおずおずと舌を絡ませた。

 

どれぐらいキスをしていたのか、10秒、1分あるいはそれより長かったのか分からないが、2人が口を離した時には銀色のアーチが出来ていた。

 

「はぁ、はぁ……」

 

息を荒らげながら互いに見つめあっている中、テキサスが懇願するように口を開く。

 

「ヤマト、私はお前も欲しい…ダメか?」

 

ヤマトは初めて聞いたかもしれないテキサスからの個人的なお願いに驚くも、すぐに顔を綻ばさせた。

 

「いいよ…今日はテキサスの誕生日なんだから、俺はあなたのお願いなら何でも受け入れるよ」

 

ヤマトの優し気な笑みにテキサスは心が温まるような感覚を味わいながら、ヤマトの背中に腕を回す。

 

「ヤマト、愛している…これからもよろしく頼む」

 

「こちらこそよろしく…そして俺も愛しています、テキサス…」

 

────「everlasting love」

 

カスミソウの花言葉のように、彼らの互いを思う気持ちが永遠に続いていくだろう────




番外編で恋愛タグを回収していくという、お前そんなんでいいのかムーブをかます作者は自分です(白目)いや、デレデレなテキサスが書きたかったんだ…

キャラ紹介

ヤマト:テキサス争奪戦を勝ち抜いた(無自覚)ヒロイン。実は、カスミソウの花言葉の中にあの意味があることは知らなかったので、あのハンカチを彼女のプレゼントとして買うと言った節を店員に行った時に微笑ましい目で見られた理由がわからなかった模様。実は、普段は意外にもヤマトの方が攻めるらしい

テキサス:ヤマトを堕とし堕とされたイケメンループス。この時空の喧騒イベでヤマトの過去を全て聞き、その上で彼を1人の仲間として受けいれたという設定がある。ヤマトのことをいつ何故好きになったかは自分でもよくわかってないが、今では自分以外の女性とヤマトが仲が良さそうにしてるのを見ると嫉妬してしまう当たりガチ惚れしてる。昨夜はお楽しみだったらしい。

バイソン:ヤマトとテキサスの邪魔にならないよう直ぐに撤退。ヤマトは色々世話になってるし、数少ない常識人なため幸せになって欲しいと思っているめっさいい子。

寝落ち組:後日、同じタイミングで出てきたヤマトとテキサスに対してめちゃんこ質問しまくった。


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チェン誕生日記念話〜プレゼントは…??です!〜

チェン隊長ハピバ!というわけで今回は近衛局ルートでの誕生日記念話です!

設定としては…
・上記の通り近衛局ルート
・ヤマトとチェンは恋仲
・それを知ってるのはホシグマとペンギン急便勢
・天使の玩具にされる純情なオオカミ

の4つでも良いという方はどうぞ!



「………」

 

「ねえ、お母さん。あのお兄ちゃんずっとあそこにいるけどどうしたんだろう?」

 

「……大丈夫よ、ユウくんにもいつかわかる時がくるから」

 

龍門のとあるアクセサリーショップの店頭にて、かれこれ1時間ほどそこに居座っているヤマトは店員や周りから生暖かい目で見られながらもひたすら頭を悩ましていた。

戦闘おいてはその類まれなる才能で多くの困難を乗り越え、デスクワークも下から這い上がった経験を駆使してそつなくこなすヤマトを悩ましているもの。それは────

 

(チーちゃんの誕生日プレゼント…一体何がいいんだ……!?)

 

恋人への誕生日プレゼント選びであった。

 

恋人への誕生日プレゼントは上手くいけば互いの仲が更に深まるものでもあるが、変なものをチョイスすればオワコンというもの…だとヤマトは学校に通っていた頃に頬に紅葉のような痕をつけた男友達から聞いていた。

その時彼の愚痴やらプレゼント選びの注意点やらを、自分には無関係だとテキトーに聞き流していたツケがここで回ってくるとは、とヤマトは絶望のあまり頭を抱えていた。

一応、前回は散々考えた挙句チェンが新しい髪留めが欲しいとボヤいていたことから、髪留めを買ったのだが今年に限ってはそういうことを全く聞いていない。

更に、ヤマトにとって初めて付き合った人がチェンなため、彼の恋愛経験はクソザコナメクジであることも拍車をかけていた。

 

(チーちゃんはどういうのが…)

 

「わあっ!!」

 

「ピャアアアっ!?」

 

考え事に没頭していたヤマトは、いきなり肩を掴まれたのと大声を出されたことによって変な悲鳴を上げすぐに後ろを振り返ると、「イタズラ大成功☆」と言わんばかりに満面の笑みを浮かべるエクシアと、笑いをこらえるように口元を手で抑えているソラがいた。

 

「え、エッちゃん!!急に驚かさないで!それに、ソラさんも笑わないでよ!」

 

「ご、ごめんね…で、でもヤマト君の反応結構新鮮で…そういえばヤマト君がさっきから唸ってたけど良かったら相談乗るよ?」

 

ヤマトはそう提案してきたソラを一瞥し、彼女なら自分がチェンと付き合っているのは知っているし問題ないかと判断し、先程までの悩みを包み隠さず話した。

 

「なるほどね…そしたら力になれるか分からないけど手伝うよ、ヤマト君」

 

「ありがとうございます!ソラさ──」

 

「ちょっーと待った!話は(盗み)聞かせてもらったよ!…待って、ヤマトくん、そのゴミを見るような目で私を見ないで?流石に傷つくよ?」

 

「だって…エッちゃんに今までされたことを思い返したら…」

 

そこまで言ってヤマトはエクシアのされたことを思い出す。

ある時はいきなり尻尾を触られて変な声を出してしまったり、テキサスに追われている事を知らずに匿ったら何故か自分も一緒に追われる羽目になったり、「シュークリームあげるねー!」と言われて貰ったものを食べてみたら中身は激辛クリームソースだったり、と散々なことにあった記憶が半数を占めていた。

 

「うーん、ド正論!だけど、今回のこれはあの隊長さんもぜっっったい喜ぶよ!私の給料2ヶ月分かけてもいいよ!」

 

 

「ヤマト君、エクシアの言うことは聞かなくていいから早く私とプレゼント選ぼっか」

 

「……話だけ聞きます」

 

「ヤ、ヤマト君!?」

 

「そーこなくっちゃ!」

 

そしてエクシアに耳打ちされたとんでもない内容にヤマトは顔を真っ赤に染めた。

 

 

****

 

「ご馳走様…やはり市販の物より、ヤマトが作ったものの方が断然美味しいな」

 

「それは言い過ぎだよー」

 

そしてチェンの誕生日当日、ヤマトはチェンの好物料理と自作ケーキを振る舞いお皿を洗い終わった現在、ヤマトはチェンと向かい合って話していた。

 

「あ、チーちゃんお風呂はいってきなよ。俺はもう入ったからさ」

 

「ん、分かった。それでは入ってくるとしよう」

 

チェンがヤマトの提案をなんら疑うことなく浴室へと向かったのを、見届けるとヤマトはいそいそとある準備を始めたのだった。

 

 

****

 

「ヤマト、出た…む?」

 

風呂から上がったチェンがタンクトップと短パンジャージというラフな格好で部屋に戻ると、ヤマトの姿はそこには無かった。

 

(考えてみれば、私と一緒に早く上がるために自分の仕事をいつもの倍のスピードで片付けて、周りの仕事を手伝いつつも私の分のものも他より多めに手伝ってくれたらしいからな…)

 

だから、疲れて先に寝てしまったのだろうと結論づけたチェンはベッドがある寝室の扉を開けて、そのベッドに不自然な膨らみがあることに気がついた。

 

(疲れすぎてうっかり私のベッドで寝てしまったのか…?まあいい。今日は私の誕生日なのだしプレゼントとしてヤマトを抱き枕にでもして寝てもバチは当たらんだろう…)

 

内心ムフフと思いながら、掛け布団を捲るとそこには──

 

 

た、誕生日、お、おめでとう…プ、プレゼントは俺だよ……ううっ……

 

顔を真っ赤にして自分の頭にリボンを乗っけたヤマトがそこにいた。

そう、エクシアがヤマトに提案したものとは「プレゼントはボ☆ク☆」という物だった。

最初聞いた時こそ、そんな恥ずかしいことできるか!というのとそんなんで喜ぶわけないだろ、とエクシアを顔を赤くしながらも胡散臭いものを見るかのような目で見ていたが、そのエクシアに「隊長さんが自分にやったら…って想像してみ?」と言われ想像した結果…案外良いかもと思った所をソラが止める間もなく言いくるめられた、というのが事の真相だった。

 

(ううっ…やっぱりやるんじゃなかった……チーちゃんさっきから黙ってるし……)

 

今からでも冗談でしたと言って、ソラと一緒に選んだものを早く渡さなければとベッドから抜け出ようとした瞬間にガシッとチェンに手を掴まれて押し倒される

 

「ち、チーちゃん?その手を離してどいてくれると助かるなーって…」

 

「………」

 

何故かこちらの言い分を全く聞かず顔を俯かせてどんな顔をしているのか分からないチェンに、ヤマトの本能が「はよ逃げろ」と警鐘を鳴らす。

 

「ち、チーちゃん?そのどいて──」

 

「却下だ。お前から誘っておいて今更なしというのは受け付けん。さて…誕生日プレゼントをしっかりと堪能しようか…」

 

妖艶な笑みを浮かべてペロッと唇を舌で舐めてこちらを見下ろすチェンにヤマトはただ戸惑うばかり。

 

「え、あ?ち、チーちゃん…?」

 

「今日は寝かせないぞ?ヤマト」

 

「へ?あっ、ちょ──」

 

 

……肉食動物であるオオカミが龍には敵わないのは当然の理であって、こちらでもそれは変わらないようであった。

 

 

 

*****

 

後日、やけに肌艶が良く、首にルビーが付けられたネックレスを掛け、スワイヤーに突っかかれても余裕な態度で受け流し終始機嫌良さそうなチェンとは対象に、やけに色素が薄く疲れ気味なヤマトが目撃されたとか。

 




ヤマトはおもちゃじゃないんだぞ!

キャラ紹介
ヤマト:かなりレアなケースを辿ったifルートのヤマト。翌朝、チェンに抱き枕にされていてしかも顔が豊満な所にあったため色々大変だった。なお、ソラとエクシアにお礼の品として手づくりシュークリームを数個あげた際にエクシアにプレゼントの件を聞かれて誤魔化しきれず終始からかわれた。ちなみにネックレスを異性に送る意味を知らない。

チェン:ヤマトガチ勢。ネックレスをプレゼントされた際、ヤマトがそういう意味を知っていない上でのチョイスだとは分かっているものの結構嬉しい。自分の誕生石でもルビーというのも大きなポイント。人がいないところでは顔がゆるっゆるだった。

エクシア:ヤマトにとんでもないことを吹き込んだやべーやつ。またからかうネタができてご満悦だったが、あるオフの日にとある龍に追っかけ回されたとか。なお、チェンとヤマトが恋仲と知った時は驚きのあまり芸人バリのリアクションで椅子から転げ落ちた。

ソラ:ヤマトのプレゼント選びを手伝うという、お世話ムーブをかました。なお、ネックレスのプレゼントの意味は知らない。ヤマトの事は抜けてる可愛い弟みたいに見ている。チェンとヤマトが恋仲と知った時は心の底から祝福した。

ホシグマ:実は撮影外でヤマトから相談を持ちかけられていたが、専門外のため辞退していた。チェンが終始機嫌が良さそうなのを見て上手くいったのだと安堵していたが、その後に色素がやけに薄いヤマトを見て両手を合わせた。

スワイヤー:こいつ…本当にチェン……なのか…?



















ヤマトとチェンの続きがみたいにという方は、7/7 0:10に追加DLCが配信されますのでそちらをご覧下さい…あ、未成年は見ちゃダメですよ?


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プリュム誕生日記念話~こういう日もたまには~

プリュムちゃんハピバ!ということで、今回の話は~根本にあるものは~ルートの世界軸での話です。
前段階の設定として
・ヤマトのことが異性として気になっているプリュム
・けどそれを認めたくない乙女
・それに気づいてるシラヌイ
・プリュムのことを大事な人だと認識してるヤマト

以上でもいいという方は本編どうぞ!


あらすじ
プリュムへ恩を返したいヤマトだったが、何をしていいか全く分からない。そこで、プリュム以外で頼れる人物であるシラヌイを訪れたのだが…?


「プリュムちゃんにお礼がしたいけど、何をしたらいいか分からない?」

 

「………」

 

「ふむ、なるほど…」

 

シラヌイが聞き返した内容にヤマトは無言でコクっと首を縦に振り、それを見た彼女は口元に手を当て考えているような素振りを取り──

 

(やばいやばいやばいやばいやばい)

 

心のうちではめちゃくちゃ焦っていた。いや、ただ単にお礼としてなにかするというのなら、まだ彼女でも相談に乗れた。だが──

 

(プリュムちゃんの誕生日にそれがしたいって、何をしたらいいか分からないわよー!)

 

そう、ヤマトの場合はそこに誕生日にお礼をしたいというものであった。誕生日というのはその人にとって特別な日であることはシラヌイとて分かっている。つまり下手なことは出来ないわけであって、武器職人として人生を生きてきた彼女にとってはかなり厳しいものだった。

正直に言ってしまえば、他の人に丸投げしたいのがシラヌイの本音だ。しかし──

 

「………」

 

(他にヤマトが頼れる人がいないんだよね…)

 

ある時からヤマトはシラヌイやプリュムだけではなく、同じループスのオペレーターと話すようになっていたのだが、まだそこまで仲良くなってはいなかった。なので残念ながら彼女達に丸投げすることはできず、プリュムは考えるまでもなく除外。それ以外の人物と言うとドクターが上がるのだが、今頃山積みの書類の中に埋もれていることを考えると相談しに行くのは流石に…という訳で却下。そうすると必然的に自分が何とかするしかないのだが…。

 

(プリュムちゃんが欲しそうなものとかマジで分からないわよ…)

 

シラヌイはプリュムが欲しそうなものが全くわからなかった。そもそもプリュムがそういったものにあまり頓着しないというのもあるのだが。

 

(あー、もうどうすれば…ん?)

 

シラヌイが半分ヤケになってポケットに手を突っ込んだ時だった。手に紙のような感触が伝わったところで彼女は先程それなりに仲のいい人物から、あるペアチケットを貰ってポケットに突っ込んだのを思い出し──

 

(…これならプリュムちゃん的にもいいのでは?あの子、ヤマトのこと──)

 

シラヌイはそこまで考えるとポケットの中に入っていたチケットを取り出しヤマトに渡し、説明を始めた。

 

 

 

 

****

 

 

 

(来てしまった……)

 

数日後、休暇をドクターから与えられていたプリュムは、黒いバスクベレー帽を被り、白いブラウスの上にジャンパースカートという服装でロドスと提携しているテーマパークに来ていた。というのも、この数日前に友人と話しているところにヤマトがやって来て、「この日空いていたら付き合って欲しい」と言ってチケットを渡してきたからだ。

思わず二つ返事で了承してしまい、気づいた時にはヤマトは用件は済んだとばかりにその場を去り、残されたプリュムは「デートのお誘い!?」「プリュムにも春が…!妬まs…嬉しい!」と湧き上がる友人達を抑える羽目になった。その後も、ヤマトとはそういう仲ではないと主張しても聞く耳を持ってくれなかった友人達はプリュムに色んな服を着させてその中で特に良かったものを着させて彼女をこの場に送り出していた。

 

プリュムは集合時間の10分前に来てヤマトを待っていた。が時間になってもヤマトの姿は見えないため、携帯端末でヤマトに連絡を取ろうとした時だった。

 

「ねえねえ、お兄さん1人?」

 

そんな女性の声が聞こえ、イマドキは女性もナンパするのかと呆れ半分でつい視線を向けるとそこには。

 

「いや、連れが…」

 

「まあまあ、お姉さん達と一緒に遊ばない?」

 

「えっ!?」

 

若い女性に囲まれて困ったような雰囲気(プリュム視点)を醸し出しているヤマトがいた。プリュムはその光景に思わず驚いて思わず声を上げ、そしてこれは仕方の無いことなのか、と考え始めた。というのも、ヤマトは童顔寄りではあるものの容姿は整っている上に、雰囲気が落ち着いておりかっこよく見えるからだ。

だがそれよりも、プリュムとしては困ったような顔ヤマト(プリュム基準)は結構新鮮であった。なので、そんな珍しいヤマトをもう少し見てみたい気がプリュムに少しだけあったのだが。

 

「その…」

 

「いいからいいから!退屈はさせないから!」

 

「……」

 

断ろうにも女性たちの勢いに押されて本当に困ったような顔をしているヤマトが可哀想なのと、見た目でヤマトのことを判断する女性たちに少しムカついたのもあってプリュムはため息を吐きながらヤマトを救出しに行くのだった。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「すまない、助かった」

 

「気にしないでください。私も助けて貰ってることありますし」

 

ナンパされていたヤマトは助けに来たプリュムのお陰で無事にその場を脱することが出来ていた。なお、女性たちはプリュムがヤマトは自分の連れということを告げると、申し訳なさそうにあっさり身を引き「ごゆるりと…」と2人に告げて悲しそうに去っていった。

 

なお、この時ヤマトの優れた聴覚は「これで10人目だよ…」という女性の声を聞き取っていた。

 

閑話休題。

 

どっちにせよ、自分を誘った張本人と無事に合流出来たプリュムは早速テーマパークの中に入ろうとして、ヤマトがじっと自分のことを見つめていることに気がついた。

どこかおかしい所があるのだろうか、もしかしたら似合ってないのだろうかとプリュムが少し不安に思い始めると、ヤマトはそんな彼女に近づいた。

 

「とても似合ってる」

 

「っっっ!?(な、なんであの時みたいな感じでそんな…っ!で、でも似合ってるって言ってくれたのはなんか嬉し…いやいや!落ち着け私!)」

 

ただ一言だけだったが、いつの日か見たような優しげな微笑みで告げられたことにプリュムの心臓の鼓動は早くなり、顔は熱くなってしまった。プリュムはそれを抑えるためにすぐに自分に暗示をかけ始めた。

 

(ヤマトは子供ヤマトは子供ヤマトは子供ヤマトは子供ヤマトは子供…よし、大丈夫)

 

「…とりあえず、早く中に入って「グ~」…………」

 

「………」

 

「…………」

 

お腹がなる音が響き渡る中、努力虚しくプリュムの顔の熱は収まるどころか余計に悪化したのであった。

 

 

 

 

 

*ここからは作者の頭の至らなさの都合上、ダイジェストでお送り致します。ほんとうに申し訳ないです…

 

その1

 

「ヤマト、ジェットコースター乗ってみませんか?」

 

「俺は構わないが」

 

「ありがとうございます。実は入ってから楽しそうだなって思ってまして…」

 

(悲鳴が上がってるが…なるほど、楽しくて悲鳴をあげるというのもあるのか)

 

~アトラクション後~

 

「思った以上にスリルがありましたね!」

 

「ああ…(落ちる時のフワッとした感覚は慣れなかったが、景色も良くて結果的に)よかった」

 

「そう言って貰えると、選んだ身としては嬉しいです」

 

「…落ちてる時の写真が貰えるらしい」

 

「…あ、あの時なにか撮られてるような気がしましたがそういうことでしたか。それでは、それを貰いに行きましょうか」

 

「……」(コクッ)

 

 

その2

 

「お化け屋敷行かないか?」

 

「……どうしてですか?」

 

「…色々調べたら、男女で来たらここがオススメとあったからだ」

 

「……それ、恋人とかの意味なんですが……」

 

「……そう、なのか」

 

「……もしかして、入りたかったのですか?」

 

「……」(コクッ)

 

「……分かりました、それなら行きましょう」

 

「……大丈夫なのか?」

 

「大丈夫ですよ。ええ、ヤマトは純粋ですからそういう理由で選んだ訳では無いこともわかってますし、そもそもお化けなんて存在しないです。ええ、怖くないです」

 

「……?」

 

「さ、さあ行きますよ」(ブルブル)

 

「寒いなら、上を貸すが…」

 

「いえ、お構いなく」

 

 

〜彼女の名誉のために結論だけ述べると、色々な意味でドキドキした~

 

 

その3

 

「次はあれに乗ってみましょうか」

 

「…あれは、水の上を走っているのか」

 

「ええ、そうですけど…もしかして、苦手なのですか?」

 

「……泳げないんだ」

 

「……どういう思考をすればそんな答えが出てくるかは分かりませんが、ヤマトにも苦手なことあるんですね」

 

「…苦手なものは沢山ある」(心外)

 

「…正直、興味深いですがそれは後で聞きます。それじゃ行きますよ」(グイグイ)

 

「………いくから引っ張らないでくれ」

 

「~♪」

 

~アトラクション後〜

 

「プフっ…泳ぐことにならなくて良かったですね…プクッ…」

 

「…………」(ムスッ)

 

「ふふっ…すみません…貴方の驚いた顔が珍しくて…ふふっ…」

 

(…楽しめたのなら別にいいか)

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「ヤマト、今日はありがとうございました」

 

時刻は夕方、2人は既にテーマパークから出て帰路についておりその最中プリュムはヤマトに礼を告げた。

 

「……俺の案じゃない」

 

「分かってますよ…多分というよりシラヌイさんの案でしょう?」

 

「……ああ」

 

やっぱりとプリュムは思った。最初、誘われた時は周りの勢いもあって深く考えられなかったが、よくよく考えてみればヤマトはこういったものには疎く、自分を遊びに連れ出そうなんて思えないはずだ。では、なぜ彼が自分を誘ったかとなるが、それはヤマトの保護者であるシラヌイが1枚噛んでるということは容易に想像が着く。

プリュムは自身の予想が当たっていたことに少しだけ残念な気持ちになり、視線を落としたところで。

 

「でも、プリュムにお礼をしたかったのは俺の考えだ」

 

「…え?」

 

プリュムが驚いてヤマトに視線を向ける中、彼は気にせず滅多に動かさない口を動かし続けた。

 

「いつも、助けてくれたからその礼がしたかった。だが、どうすれば喜んでもらえるか分からなかった。それでシラヌイに聞いたら、2人でテーマパークで遊ぶことを提案された。……あと渡すものがある」

 

「…開けてもいいですか?」

 

「構わない」

 

プリュムはヤマトから手渡された包みを開けると、中に黒色のリボンモチーフのヘアピンが入っていた。

 

「…前髪伸びてきてただろう」

 

「え、そうですけど…いつ買ったんですか?」

 

「ここに来る前に」

 

「そうでしたか…」

 

プリュムはここでヤマトが遅れてしまったのがナンパされていただけではなかったのだと、何となく察した。恐らく、シラヌイの提案をそのままやるだけでいいのかと不安に思って、急遽雑貨店かなんかに入り、だがそういったものに疎いがために何を買えばいいわからず、そして店員に声をかけることも出来ず、その中で悩むに悩んでこれを買ったのだろう。

 

(全く…変に気を回さなくても…)

 

だがそんな不器用なところがヤマトらしいと感じ、プリュムは軽く笑みを浮かべながらヘアピンを早速着けた。

 

「…どうですか?」

 

「………ああ、想像以上だ」

 

「そうですか」

 

「…プリュム、伝えたいことがある」

 

「なんですか?」

 

「いつも助けてくれてありがとう。そして誕生日おめでとうプリュム」

 

 

 

夕日に照らされながら微笑んでいたヤマトの頬は、夕日の光のせいか少しだけ赤くなっていた。




たまにはこういうデート系の話もいいかなと思って。(恋愛要素入れないと詐欺になっちゃうし…)

キャラ紹介

ヤマト:~根本にある物は~ルートのヤマト。当初はプリュムの好きな食べ物を作って食べてもらおうと考えていたが、それはいつもやってる事なのでシラヌイに頼った。プリュムの事は「守りたい人」とのこと。
因みにヤマトの服装は、黒い長袖シャツ+グレーのパーカー+デニムパンツです。なお、カナヅチ設定はどの世界線のヤマトは共通です。(イヌカキで10m泳げればいい方)。作中の「泳げない」という発言に至った経緯は、「もし落ちたらどうしよう」というわけで発言。


プリュム:このルートの実質的なヒロイン。今回のデートは訪れたことの無いテーマパークということもあって結構楽しめた模様。ただしお化け屋敷、おめーはダメだ。ヤマトのことは異性として意識してしまっている部分があるが、本人はそれを認めておらず、意識しそうになる度に「ヤマトは子供ヤマトは子供」と言い聞かせて抑えている。ヘアピンは出撃する以外は着けるようにしてるが、後日友人にバレた際に「髪留め系列を送るって、求婚の意味あるらしいよ!」と言われた際はテンパった。今回のデートでヤマトが子供舌だったり、カナヅチだったりと色々と知れたため収穫はかなりあった模様。

シラヌイ:頼りになるおねーさん()プリュムがヤマトのことを意識しているのは看破しているものの、肝心のヤマトが愛だの恋だの全然分かっていないため、そこをどうするかで頭を悩ませている。

ナンパ女性:15連敗した上で勝利を掴んだ。


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ラップランド誕生日記念話~あるカップルの誕生日の過ごし方~

ラッピーハピバ!ということで、今回は本編で最もヒロインしてるラップランドの誕生日話です。
今回の話は

・R18版の「ボクのキミの馴れ初め」よりあとの話です(読まなくても今回の話は分かるように書いてます)
・11/11は○○○の日
・相変わらずのキャラ崩壊

の以上でもいい方はぜひ続きをお読みになってください。
それではどうぞ


「んっ………」

 

「…………」

 

ヤマトは困惑していた。

というのも、彼の目の前にはテキサスがよく食べているポッ○ーなるお菓子を1本の端っこをくわえて目を閉じている寝巻き姿の恋人がいるからだ。

ヤマトは天然で世間知らずな面がある。しかし、どんなに分からない場面でもは必死に考えるという行動だけは今までしなかったことはあまりなかった。

 

そのため、今も困惑しつつも必死に考えていた。

 

(えーと、まず朝から思い返そう)

 

ヤマトはまずこうなるまでの今日の一日の流れを思い返した。

まず、起きてそうそう何故か自分のベッドの中にいつの間にか潜り込んで丸くなって寝ていた恋人であるラップランドを起こし、食堂で一緒に朝食を食べた。午前中は貿易所でテキサスとラップランドと一緒に注文の整理と金塊の納品を行い、昼食は珍しくたまたま鉢合わせたフロストリーフ、リーシー、チェンと一緒に食べ(無論ラップランドもいたが圧が凄かった)、午後はヘラグと模擬戦をしていた。

 

…最も、それを見て戦闘欲が我慢できなくなったラップランド、そして某サザエなアニメに出てくるメガネの少年のように「模擬戦しようぜ」とやってきたエンカクともやる羽目になったのだが。

 

閑話休題。

 

その後は厨房を少しだけ借りてラップランドの誕生日を祝うための料理を作り、そしてそれを自分の部屋で二人で食べ、自作の誕生日ケーキも一緒に食べて彼女がお風呂から出たあとに入って、出たら「ちょっとやりたいことあるんだけどいい?」と言われ、少し待つと先程の状況になっていた。

 

(うん、さっぱり分からない)

 

思い返してみたがやはりなぜこんな状況になったのかが分からなかった。いや、正確に言えばラップランドが何をして欲しいのかご分からない。

 

「……」

 

ふとヤマトは視線を未だにお菓子を咥えているラップランドに目線を向けた。ラップランドの顔はよく見ると仄かに紅潮しており軽く震えている。

 

(かわいい)

 

「…ヤマト、いつまで焦らすんだい?」

 

ヤマトが脳死したような感想を持ち始めた中、ラップランドはなんのアクションもしてこないヤマトに声をかけた。

ヤマトは何も悪いことはしてないのに体を大きく震わせ、それを見たラップランドは怪訝そうな顔で見て、その後ニヤッと意地悪そうな笑みを浮かべた。

 

「もしかして、ボクに見とれてた?」

 

「?うん。かわいいなぁって思って…」

 

「っ……」

 

ラップランド、ヤマトをからかおうとするもあえなく撃沈。因みにヤマトは何も考えずに答えており、この返しも「実際にかわいいと思って見てたから」と理由の元で出てきている。

 

しかし、ラップランドもそこで終わらずゴホンと軽く咳払いして自分を落ち着かせつつ、本題を持ち出し始めた。

 

「それで、なんで○ッキー食べなかったんだい?」

 

「え?」

 

「え?」

 

ラップランドはここであることに気がついた。

正直、意外と有名なあのゲームを知らないとは思えないが、どこか抜けているヤマトのことなので知らない可能性は否定できない。そのため、ラップランドは念の為ヤマトに質問を投げかけた。

 

「ヤマト、ポ○キーゲームって知ってる?」

 

「?いや、はじめて聞いたかな…」

 

「やっぱり…」

 

予想通りの展開にラップランドはため息を吐きつつも、件のゲームについて説明を始めたのだった。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

「な、なるほど…そんな遊びがあるんだ…ふふっ」

 

「なんで聞いただけなのに嬉しがってんのさ…」

 

ラップランドの説明を受けたヤマトは嬉しそうに呟いていた。説明をしたラップランドは気づいていないが、彼女はポッキ○ゲームのことを最終的に「恋人がするゲームかな」とあっさりと纏めた。ヤマトにとっては自分たちが恋人関係ということを彼女の口から遠回しではあるものの、聞けたことが嬉しかっただけなのだ。

 

「さて、それじゃ説明は終わったから実際にやろうか…んっ」

 

「う、うん…ん」

 

ベッドの上に座ったラップランドはヤマトが端っこを咥えたのを見るとサクサクと食べ進んでいき、同じくベッドの上に座っているヤマトも遅れながらもサクサクと食べ始めた。

 

「…………」

 

 

「………」

 

部屋にはポッキ○を食べる音だけが響くだけであり、そしてそれは中々折れることなく徐々に2人の距離を近づいていき、そして0になった。その直後だった。

 

「んちゅ………れろっ…」

 

「んんっ!?、んんっ…んっ……」

 

ラップランドは強引にヤマトの口の中へ舌をねじ込み、不意打ちをくらって反応出来ずにいるヤマトの口内を蹂躙するように舌を動かした。

 

「んんっ…んっ…ちゅ…はあっ…はあっ…」

 

「はあっ…ら、ラーちゃん?いきなりなにをっ…?」

 

目がトロンとし完全にスイッチが入っている状態のヤマトを見て、ラップランドは妖艶にニヤッと歯を出して笑って彼を押し倒した。

 

「○ッキーゲームは今日のメインディッシュ(ヤマト)を頂くの建前でね…本命はこっちなんだ」

 

「……えっと?」

 

「つまり、誕生日プレゼント。頂くね?」

 

「え、あっ、プ、プレゼントはちゃんと用意して、んんっ!!」

 

ラップランドはスイッチが入ってる癖に中々ノッてくれない相変わらずな恋人の口を強引に奪って、1番欲しいプレゼントを貰ったのだった。

 

 

 

余談ではあるが、次の日如何にも新しそうな手編みのマフラーをつけていつも以上に上機嫌そうな白黒のオオカミと、そんなオオカミに振り回される茶色のオオカミが見受けられたようである。

 

 




キャラ紹介

ヤマト:ポッキ○ゲームを今回の話で初めて知った世間知らずなオオカミさん。最近の悩みはラップランドのスキンシップが人目を気にせずやるようになってきたこと。因みにプレゼントは次の日の朝にしっかりと渡した。

ラップランド:1番欲しかったプレゼントをいただけてご満悦。恋人自作のプレゼントされたマフラーはかなり気に入った様子で室内でもつけている姿が見受けられているとか。

エンカク:おーい、ヤマトー!模擬戦しようぜー!(実際はこんな感じではない)

テキサス:なんであいつポッキー買ってたんだ…?


実は、このあとの展開をR18の方で書こうか悩んでたり。


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メランサ誕生日記念話:大事な君へのプレゼント

今回は剣聖ことメランサちゃんの誕生日ということで、我慢できず書かせてもらいました。いや、攻略で何度もお世話になってますから、多少はね?

最近、ブルアカとapexにハマってしまって執筆する時間が減ってしまっているのを何とかしたい(白目)




突然だが、ヤマトには恋人がいる。

ヤマトはその彼女のことを心の底から真剣に愛しているし、何があっても守り通すと決めているし、全てを捧げたいとも思っている。

 

しかし、そんな決意を持つヤマトは到底1人では解決できない困難にぶつかっていた。ヤマトはどうすればいいのか、1ヶ月ほど悩んだ末──

 

「メッちゃんの誕生日プレゼントは何をあげればいいか分からないので、助けてください……」

 

((((((なるほど、そういう理由で))))))

 

ヤマトのSOSを受けて部屋にやってきたアンセル、アドナキエル、ミッドナイト、シルバーアッシュ、ドクターの計6名はヤマトの言い分を聞いて納得していた。

 

ヤマトの恋人が誰なのか既に察することが出来たと思われるが、ネタばらしすると行動予備隊A4のリーダーであるメランサだ。

そしてヤマトと付き合い始めてからの彼女は明るくなり、笑みを浮かべる機会が増え、元々良かった隊の雰囲気が更に良くなったりと良い意味で彼女とその周りの環境は良くなっていた。

そのため、アンセルら行動予備隊A4の男性メンバーとしてはそのお礼も込みでヤマトに協力しようと同じことを考えた。

だが──

 

「けど、私は女性はどういったプレゼントを好むか分かりませんよ?」

 

「オレもちょっと分からないかな~」

 

「僕もそういった方面はちょっと疎くて……」

 

「そんなぁ…」

 

「すまん、それに関しては俺もお手上げだわ……てか俺が聞きたい」

 

「そんなぁ……」

 

集まって早々戦力の三分の二が喪失。ヤマトにとっては予想外の展開となってしまったともいえ、彼の纏う雰囲気は明らかに悪い方面へと移り変わっており、誰が見ても落ち込んでいるのは明白であった。

だが、1人でその戦力を補う…いやそれ以上の活躍が期待できる男がこの場にいた。

 

「ヤマト、俺らのことを忘れられたら困るな」

 

「そうだ、ヤマト。私達を忘れるな」

 

頼りになるような発言をしたのは、ミッドナイトとシルバーアッシュのナイスガイ2人。そしてその二人を見たヤマトを除くメンバーがなるほどと頷く。まず、ミッドナイトは元ホストなので女性への理解はこの中では完全にトップクラスと言える。そしてシルバーアッシュは最早言うまでもなく、(色々と)頼りになるドクターの盟友。

正直、この2人がいれば今回のヤマトの相談が解決するのは時間の問題。なので、残ったメンバーはそろりそろりと退出しようとして。

 

「ま、これから女性にプレゼントを送ることになった時の参考になるだろうから、ドクターたちもこの場に残ってた方がいいよ」

 

「ドクター、特にお前はアーミヤへの誕生日プレゼントで苦戦するはずだから絶対に残るべきだ」

 

「ふぐぅ…!」

 

「それは俺も同感だね。ドクターは女心というのがヤマトと同じレベルで分かってないからね」

 

「待って、なんか凄い自然に失礼なこと言われた気がする」

 

「ヤマトレベルなんて心外だ!!」

 

「ドクター、あなたの次のお昼はコックカワサキが作ったカワサキスペシャルカレーということにしておくよ」

 

「ごめんなさい」

 

(((凄い手のひら返しを見た気がする)))

 

こうして、ミッドナイトとシルバーアッシュからヤマト達の5人は女心と女性にあげるプレゼント選びのコツなど徹底的に叩き込まれ、ヤマトは最早講義となっていたそれが終わると、早速プレゼントを買いに行くのだった。

 

因みに巻き込まれたアンセルら4名は疲れた表情を浮かべながら、呼ばれた意味があったのか?と自問自答を繰り返していたとかしていなかったとか。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「ヤマト、今日はありがとね」

 

「ううん、俺も祝いたかったから気にしないで」

 

あれから数日後、行動予備隊A4のメンバーと共に行ったメランサの誕生日パーティ終了後、ヤマトの部屋にて部屋の主とその彼女の2人はベッドに腰かけながら話していた。

 

誕生日パーティは「折角だから楽しくやろうよ!」という提案を出したカーディが主導の元、メランサに秘密で準備を進められていたもので、ヤマトもカーディ達に誘われてその準備に協力、特に当日のご馳走を作る方面でアドナキエルと共に働き、メランサ達のお腹を満たしたのだった。

……なお、張り切りすぎて当初は予定していなかったものを勢いで作ったヤマトの財布は少しだけ寂しくなったのだが(割り勘しようと周りは言ってくれたが、流石に申し訳なくて断った)

 

「……実はさ、ヤマトと付き合えるなんて全く思えなかったんだよね」

 

「え?」

 

「ヤマトってさ、ラップランドさんとかWさんとか色んな人に好意を寄せられてたでしょ?しかも、皆さん凄い綺麗で強い人たちだから自信なかったんだ」

 

「そう、だったんだ……」

 

メランサの口から明かされた内容に、ヤマトは戸惑った。まさか、メランサがそんなことを思っていたなんて思っていたなんて全く考えていなかったからだ。寧ろ、ヤマトは自分が想いを告げて、今のように恋人として過ごしていい人ではない、と引け目を感じていた。

 

それでも1歩を踏み出せたのは、ドクターやアーミヤ。そしてどこから聞きつけたのか分からないが、シラヌイが送ってくれた手紙のお陰だった。そしてその1歩がきっかけで、ヤマトとメランサは恋人になれた。

 

「だからね、ヤマトから告白された時凄い嬉しかったんだ。同時に、もう貴方に守られるだけの存在になりたくないって思えたの」

 

「……もしかして、それで俺に鍛錬付き合って欲しいって頼んだの?」

 

「うん、そうだよ。もしかして気づかなかった?」

 

「全然気づかなかった…」

 

少しだけシュンとしてしまった恋人を見て、メランサは任務の時の頼りになる姿とは違う彼を見て笑みを浮かべ、彼と一緒に鍛錬して完成させた技と一緒に彼女達と戦ったことを思い返して直ぐに苦笑いを浮かべた。

 

「あ、そうだ。メッちゃんに渡したい物があるんだ」

 

「え?もしかして誕生日プレゼント?」

 

「ゔっ、流石に分かるよね……」

 

「いや、それはともかく別に用意しなくて良かったんだよ?誕生日を皆に祝って貰えたし、それに私はヤマトとこうやって2人で過ごせられるだけで充分なんだから」

 

「それでも、俺がメッちゃんにあげたいんだ……だめ、かな?」

 

「……嫌とは言ってないもん」

 

(やばい、今のは凄い可愛かった)

 

ヤマトは最後のメランサがちょっと拗ねたような表情で言った言葉にK.O.されかけるも、理性と気合いで何とか持ちこたえロッカーから装飾された袋を持ってきて彼女に手渡す。

 

「俺からの誕生日プレゼント、受け取って下さい」

 

「……良いけど、そこまでカチカチにならなくてもいいと思うよ?」

 

「……女性に、しかも大事な人にプレゼントあげるの初めてなんだから仕方ないじゃないか」

 

(……ヤマト、そういう所だよ)

 

メランサは最後のヤマトが少しだけ拗ねたような雰囲気で言った言葉に精神を揺さぶられるも、息を軽く吐いて心を沈め、彼に一言断って袋を開ける。すると中には。

 

「これって……髪飾り?」

 

「うん、そうだよ」

 

入っていたのは真ん中に花の形があしらわれたべっこう風のヘアクリップ。そしてメランサは最近ヤマトに髪が伸びてきたことを零していたのを思い出した。

 

「もしかして、私が髪伸びてきたって言ったから…?」

 

「まあ、そういうことになるかな……安直だったかもしれないけど」

 

「ううん。ありがとう、嬉しいよヤマト……折角だからつけてほしいな」

 

メランサはそう言うと、髪飾りをヤマトに渡して背を向ける。手渡されたヤマトは少し呆けていたが、緊張しつつもメランサの髪の毛に手を伸ばし何とか髪飾りを付ける。

 

「……やっぱり、似合うね」

 

「そう?ふふ、そう言って貰えると嬉しいな」

 

「メッちゃん、改めて。誕生日おめでとう」

 

そうして2人は笑いあって互いに見つめあって、そして──

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「──っていう話なの」

 

「へー、ってことはお父さんから貰ったのがその髪飾りだったんだ……どうりでいつも付けてるわけだ」

 

「ふふ、思い出の髪飾りだからね。つい、付けちゃうの」

 

「ふーん。あ、そういえばさ。男の人が女の人に髪飾り送る意味に確か、求こ──」

 

「カスミ」

 

「?なにお母さん」

 

「それに関しての話は、また今度してあげるから変に言わないこと…いい?」

 

「はーい!」

 

「……お母さん、俺も気になるんだけど聞いちゃ──」

 

「だーめ。これは女の子の秘密の話だから、ヒビキには教えられません」

 

「……お母さん、女の子って歳じゃ……」

 

「お母さん悲しいよ。お父さんの似なくていいところをヒビキが似ちゃって」

 

「えっ?」

 

「ただいまー」

 

「あ、噂をすれば帰ってきたわね……それじゃあご飯にしましょうか?」

 

「はーい!」

 

「……助かった……のか?」

 

 

──そんな会話が、いつかの未来で交わされることをあの頃(現在)の2人は知らない。




最近、記念日や番外編系列しか投稿してない…?

キャラ紹介

ヤマト:限りなく本編に近い√を辿った上でメランサ√に突っ走った本作主人公。なお、髪飾りをチョイスしたのはミッドナイト&シルバーアッシュの講義の中で「最近の彼女の言動から推察する」と「髪飾りは櫛じゃなければ、プレゼントの中では定番な方ではある」という話から。なお、かんざしを選んでいた場合、その1ヶ月後にメランサのご両親と顔を合わせる羽目になっていた。

ドクター&行動予備隊A4男子ーズ:戦力外通告(自主報告)。なお、ミッドナイトとシルバーアッシュの講義は後々役に立ったということだけはここに記しておく。

ミッドナイト&シルバーアッシュ:この2人の万能感は凄いと思う。因みに普段からヤマトの悩み事をよく聞いてくれるいい兄貴分たちでもある。

メランサ:正妻戦争を勝ち抜いた剣聖。因みにメランサ√は実質裏√扱いでもあったり、この√だとメランサが魔強化されたりと結構凄いことになる。そしてヤマトから髪飾りを送られた時、ちょっとだけ極東風の求婚であることを期待してた。

シラヌイの手紙(一部抜粋):あなたが後悔しない道を、ムサシに胸を張って報告できる選択をしなさい。

ヒビキ&カスミ:一体誰の子供何でしょうかね(すっとぼけ)

メランサ父:娘はまだ上げられないよ?ヤマト君?

メランサ母:いい子ゲットできたのね~

*メランサのご両親は完全に捏造というかオリ設定ですので軽く流してください。


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本編(1stシーズン)
同じループスのやべーやつ(上)


初めましての方は初めまして。ゆっくり妹紅と申します。

普段はこのすば!を原作とした二次創作を書いていますが、中々上手く文章が進まないため、ちょっとした息抜きや小説の書き方の研究も兼ねて、書かせてもらいました。

あと、最初が走れメロスっぽいですがそこは許してください…


ヤマトは悩んでいた。

どうすれば、ロドスに属する他のオペレーターと仲良くなれるかと。

ヤマトはあがり症なうえ、それを悟らせないほどの無口さに加え、観察能力が極めて高くなければ彼の表情の変化や心情が読めぬ程のポーカーフェイスを標準装備という鉄壁ぶりだ。

だが、友好を深めたいという思いは人一倍あった。

 

 

「というわけで、助けてフーちゃん!」

 

「うるさいやかましいうるさい。あと、急に泣きつくな。コミュ障狼」

 

「辛辣ゥ!」

 

ヤマトに助けを求められたフーちゃんこと、フロストリーフはヤマトの救援をあっさりと切った。なお、この時のヤマトの表情はそれなりにコロコロ変わっており、現在は断られた為か元傭兵とは思えない泣きそう顔をしている。正直、戦場でヤマトと戦い散っていた者たちが唖然としたり、「こんな奴に負けたのか!!」とブチ切れてもおかしくないぐらいのレベルで。

 

そしてここで気になるのが、何故コミュ障狼ことヤマトがフロストリーフ相手にここまで普通に話せて、尚且つポーカーフェイスがサボっているのか?

これは、至って簡単で悲しくボッチ生活をしていたヤマトに対して、自分も距離を取っていた過去を思い出したフロストリーフが気遣ってヤマトに対して根気強く付き合ってあげたからである。

 

結果は、色々と残念なヤマトとの縁が出来上がってしまったというものだった。なお、フーちゃんはヤマトが「フロストリーフじゃ長いから、略してフーちゃんで!」という理由で付けた渾身のあだ名だ。

無論最初こそ、フロストリーフはそれを辞めるように言っていたが、「あだ名で呼ぶのって友達っぽいから…ダメ?」という聞いた側が色々と心にくる発言により、許してしまっている。

 

「フーちゃん……」

 

「………はあ、今度はなんだ。話ぐらいは聞いてやる」

 

「フーちゃん!」

 

パァと笑顔になるヤマトを見て、フロストリーフは結局彼の話を聞いたりしてしまう自分に呆れつつも、こんなやり取りが嫌いではないと密かに思っていた。

 

 

****

 

 

「それで、誰と友好を深めたいんだ?」

 

場所変わって、食堂の隅っこ。

フロストリーフは席に座ってコップに入れたいホットココアを飲みながらヤマトの返事を待つ。

 

対してヤマトは、辺りを不安げ(分かるのはフロストリーフのみ)に見渡してから、返事をした。

 

「同じループスのラップランドさん」

 

「ブッ!?」

 

フロストリーフはいきなりぶっ込まれた予想斜め上な発言に、飲んでいたココアを少し吹き出してしまった。

「フーちゃん!?大丈夫?」とアワアワしているヤマトに対して、何とか頭を冷静にする。

…あれだ、疲れているのだろう。最近は色々と出撃すること(貨幣集め)が多くて忙しかったし、幻聴が聞こえたのだろう。そう思い、フロストリーフは縋るように聞いた。

 

「なあ、もう一度言ってくれ。誰と友好を深めたいんだ?」

 

「え?ら、ラップランドさんだけど……」

 

「oh…」とフロストリーフは自分のキャラじゃないと分かっていてもそう零さずにいられなかった。それほど、ヤマトが仲良くなりたいと言った相手はやばいやつなのだ。

 

ラップランド。ヤマトと同じループスであり、戦闘経験も豊富でフロストリーフと同じように前衛という役割でありながら遠距離攻撃もできドローンも何食わぬ顔で落とせる。

 

が、そんな彼女は残虐な戦闘マニアだったとフロストリーフは記憶している。彼女はある作戦で、ラップランドと同じになった時、彼女は敵の死体でミルフィーユを作っていたのを目撃している。

そして、もう1つはあるペンギン急便のオペレーターにかなりご執心ということだ。正直、ストーカーレベルなのでは?とフロストリーフでさえ思う程だ。

 

ラップランドが如何にやばいかをこの、コミュ障狼…いや駄犬は知らないからこそ言えるのかもしれない。

今回ばっかりは相手が悪い。そう思い、フロストリーフが辞めるように口を動かそうとした時。

 

「もちろん、ラップランドさんが凄い残虐なことをしたのは知ってるし、やばい人なのか知ってるけど…俺はあの人と友好を深めたいんだ」

 

ヤマトがそう絞りだすように発言をした。

フロストリーフはそれを聞いて、暫く目を丸くしていたがため息を吐くといつの間にか空になったコップを持って席を立った。

 

「あ、ちょ。フーちゃん!?」

 

「きっかけは知らないが、それだけお前が友好を深めたいと思っているなら、私が協力するまでもない。勝手にやれ」

 

「フーちゃん……」

 

フロストリーフの突き放すかのような発言に、ヤマトはなんて声をかけたらいいのか分からず立ちすくんでいるのを察したフロストリーフは、つぶやくように言った。

 

「私の独り言だが…打算的だが彼女が好きな物を振る舞うとかどうだ?」

 

「フーちゃん…!」

 

「…じゃあな」

 

フロストリーフの独り言を聞いたヤマトは、自分のコップを返却口に置いてくると食堂を早足で出ていった。

 

 

「やれやれ…私はいつの間にこんなに世話焼きになったんだろうな…」

 

そういかにも呆れた、というふうに呟いたフロストリーフの表情は少し柔らかかった。




キャラ紹介
ヤマト:オリ主。性別は男で種族はループス。前衛オペレーター。武器は、6本の剣からなる特殊な合体剣。曰く、上手く使いこなせばあらゆる場面に対応できるとの事。無口+ポーカーフェイスと、更に戦闘能力の高さも相まって近寄り難い雰囲気を出してしまっている。
本編でもある通り、慣れてくればちゃんと話せる。なお、ビジネス会話なら交流が少ない相手でも頑張って話せる模様。

フロストリーフ:みんな大好き、星4前衛。昇進2まで行くと通常攻撃の範囲ならば、なんとあの銀灰お兄さんの攻撃範囲を超える。可愛いし、声もいいし…放置ボイスにやられたドクターも多いのでは?
当小説では、ヤマトの保護者ポジ。
あと、耳をモフモフしてみたい

ラップランド:生足へそ出しボクっ娘星5前衛。この時点でもう属性が多いが、そこに色々と属性が追加される多属性持ちループス。
個人的には、なんやかんや好きなオペレーター。


アークナイツなのに、ドクターとアーミヤが出てない…一体どういうことなんだってばよ…


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同じループスのやべーやつ(下)

やっとラップランドを昇進2にすることが出来ました…
これで、もうバクダンやろうとクラッシャーは怖くない!(フラグ)


彼の第一印象は変なデザインの大剣を持った変わった同族程度だった。

 

「やあ、キミが新しく入った人だね?僕はラップランドよろしくね!」

 

「…ヤマトだ。」

 

「…それだけ?」

 

「…あんたと同じループスだ」

 

「それは見ればわかるよ?アハハ!キミちょっと変わってるねぇ」

 

彼の印象が変わったのは一緒の任務受けた時だ。

 

「あれ、今回の任務は狭い場所で戦うからキミの大剣じゃうまく戦えないと思うのに、なんでいるんだい?」

 

「……ドクターに、俺もいた方がより安全だと言われたからだ」

 

「ふーん…まあ、ドクターの指示なら別にい……何やってんの?」

 

「…見ての通り解体しているだけだ」

 

「いや、それは見ればわかるよ。てか、その大剣解体できるんだね…ふふ、ちょっとキミがどう戦うか興味が湧いてきたよ!」

 

「……先に持ち場についてくる」

 

その任務で彼の戦い方を見た時はゾクゾクしたよ!

短めの同じタイプの剣を二刀流で使ったり、そのうち1本を背中に吊っている大剣に入れ直したと思ったら大剣と短い剣の二刀流を涼しい顔で振るってて、しかも戦闘の駆け引きや彼のアーツ?と思わしきものも中々凄かったね!

 

それ以来、彼に興味が湧いて結構話しかけてたんだけど、最近は中々見なくてしつこすぎたかなぁって思ってたんだけど…

 

「……食べてくれ」

 

なんで、僕は彼に料理を振る舞われてるんだろう?(困惑)

 

 

****

 

 

 

ラップランドが未知の体験をする数日前、フロストリーフの助言を聞いて食堂を出たばっかのヤマトは早速壁にぶつかっていた。

 

(ラップランドさんの好物って何…?)

 

このコミュ障狼、肝心なことを知っていないのである。

食べ物以外で彼女の好きなもがあるとすればテキサス(?)なのだが、あれは好きなものとカウントしていいのかすら怪しいし、そもそもそんなのテキサス本人が拒否するだろう。

 

なお、ここで「そもそもお前頼めるのか?」というツッコミは野暮である。

 

さて、こうするとラップランドの好物を調べなければならないのだが、正直これが1番の難関であった。

 

1番手っ取り早いのはラップランド本人に聞くことなのだが、友好を深めたいのに本人の口から好きなものを聞くのはなんか違う気がするし、そもそも聞けるほどの度胸もないので却下。

 

次は彼女を調べあげることだが…男が女性のことを調べるという行為は際どい上に、このロドスには元警備隊や龍門の近衛局トップまでいるので捕まりかねない。これも却下。

 

そして最終的に残ったのは、他の人に聞くことなのだが…フーちゃんことフロストリーフにこれ以上頼るのは流石にダメだろう。そもそも勝手にやれと言われたのもあるので彼女は除外。

では、他にラップランドの好物を知っていそうで尚且つ、ヤマトでも話せる人物はいるのかとなると、残念なことにいない。そもそも後者の条件の時点でもういないのだからどうしようも無い。

 

手詰まりとなり、捕まるの覚悟で調べるしかないのかとヤマトが途方に暮れた時、突然を声をかけられた。

 

「ヤマト?廊下で突っ立ってどうしたの?」

 

「……ドクターか(うわぁぁぁぁぁ!?ビ、ビックリしたぁ…)」

 

心の中で悲鳴をあげながらも、ポーカーフェイスで声をかけた人物に胸中の焦りを感じさせない声音で返事をした。

 

ヤマトに話しかけたのは、このロドスにおいて重要な役割を担っているドクターだった。

 

そして、ここでヤマトの頭に電流が走った。

ドクターなら、ラップランドの好物を知っているのではないか?と。

 

その考えにたどり着いたヤマトは、このチャンスを逃さないためにも、なけなしの勇気を振り絞ってドクターの肩をガシッと掴む。

 

「えっ、ちょ、ヤマト?」

 

突然肩を掴まれたドクターは、何かしてしまったのかと焦るがヤマトそれをお構い無しに用件を告げた。

 

「好物を教えてくれ」

 

「……へ?」

 

誰かと話す時は、しっかり主語を入れるようにしましょう。

 

 

****

 

「出来た…!」

 

それから数日後、ヤマトの姿は調理場にあった。

ドクターから、ラップランドの好物と思わしきものの情報を得たヤマトは、すぐさまそのレシピを片っ端から調べあげ、作るものを決めると外出許可をアーミヤ(アーミヤ本人は驚いていたが)から得て、材料を直ぐに買い揃えるという、行動力の高さを実現していた。

 

そして現在、ヤマトはラップランドの好物(だと思う)をいくつか作り上げたところだった。

味見も先ほどしてみたが、納得出来る出来のためそれを早速幾つかにわけて包むとその場を後にした。

 

──余談だが、調理場から鼻歌を歌いながら出ていくコミュ障狼の姿を見たものがいたとか居なかったとか

 

 

****

そして、話は冒頭のラップランドの困惑に戻る。

 

ラップランドは目の前に出された物──チョコレートのミルフィーユパイを見て色々と考えた。

 

何度もしつこく話しかけた僕を消すための準備期間として、僕との接触を断っていたのかな?

 

──無論、これは不正解である。正解は、何度も話しかけてくれるラップランドにちゃんとした会話もできなくて申し訳ないという理由で接触を断っていただけで、決してラップランドを消すための準備期間ではない。

 

「……苦手なものなのか?」

 

「え?」

 

「いや、ドクターに聞いたらミルフィーユが好きなんじゃないか、と言っていたから作ったんだが…」

 

その、苦手なものだったのか。とどこか雰囲気が暗いヤマトを見て、どこかいたたまれない気持ちになりつつも、普段の仏頂面とは違うヤマトの反応をもう少し見てみたい気持ちにもなってきた。

 

 

「別に苦手という訳では無いよ。ところで何で僕にこれを?それぐらい話してくれてもいいと思うんだけどな?」

 

「!?」

 

(お?)

 

自分が出した質問にヤマトが動揺した雰囲気をラップランドは感じ取った。

ここで、一気に責め立てて彼の内心を暴くか?いや、敢えて遠回しに聞いてみるのもいいかもしれない。

ラップランドが内心、どうやってヤマトの反応を見ようか考えていた時、ヤマトが小さい声でなにか言った。

 

「…………です」

 

「ん?よく聞こえなかったからもう一度言ってくれるかい?」

 

「その…ラップランドさんと仲良くなりたいから……」

 

「…今なんて?」

 

「だから、あなたと仲良くなりたい…」

 

顔を赤くして出されたヤマトの予想外な発言に、ラップランドは驚愕していた。

 

ラップランドは一瞬、嘘をついたのかと思ったがそんな風には見えない。むしろ、こんな顔で騙しているとしたらヤマトの演技力はとんでもなく高いことになる。

ここまできたら、ラップランドとて何故ヤマトが自分と距離を取っていたのかも気になってしまう。仲良くなりたいのなら、逆に距離を縮めようと接触を多くするはずなのだから。

そう、問い詰めれば先程の上手く返事などができなくて申し訳ないと思ったからという答えが返ってくる。

 

「ハア……」

 

この時点でラップランドはヤマトが無口な男ではなく、コミュ障を拗らせた奴だと何となく察した。

 

ラップランドは目の前に出されたミルフィーユパイを口に入れた。

噛むと、サクサクとしたパイの食感とチョコレートの甘さが広がった。

 

「へぇ…」

 

ラップランドはそのまま出されたミルフィーユパイをドンドン食べていき、完食するとフッと笑った。

 

「美味しかったけど、出来ればもう少し甘さを控えめにしてくれた方が僕は好きだな。それと…」

 

ラップランドは間を置いて、ヤマトを見ると。

 

「次からは、僕を避けないでよ?仲良くなりたいのは僕も一緒だからさ」

 

そう告げられた、ヤマトの表情は最初こそキョトンとした顔だったが、やがて柔らかい笑みを浮かべた。

 

 

 

****

 

「というわけで、フーちゃんとドクター。協力してくれてありがとう。これは、お礼なんだけど…」

 

「フーちゃん…?」

 

「…このコミュ障バカ狼が勝手に着けたあだ名だ。気にするな」

 

「色々と酷い!?」

 

後日、ドクターの部屋にヤマトは訪れていた。

部屋には、アーミヤから渡された大量の書類を捌くドクターと、その日の秘書であるフロストリーフがいた。

 

お礼を言いに来ただけなのに、何故あんまりな呼び方をされなきゃならないのかヤマトは困惑したがそれは後で詳しく聞くとして、用件を済ますために箱を1つずつ渡した。

 

「これは?」

 

「相談乗ってくれたお礼の、ミルフィーユパイだよ。口に合うかは分からないけど…」

 

「ヤマト、料理出来るんだ…」

 

「ああ、こいつは意外と手先が器用でな。正直、対人会話の才能は全てそっちに持ってかれたんじゃないとか思えるほどだ」

 

「フーちゃん、それは言い過ぎだよ…」

 

色々と謎が多かったオペレーターの意外な特技とその実態を知ったドクターは、休憩ということにしてミルフィーユパイを口に運ぶ。

 

「…美味い」

 

「本当?それは良かった」

 

「…美味しいのに、なんか負けた気分になるのは何故なんだ……」

 

ヤマトは2人が食べる様子を満足気に見ていたが、時計を見ると慌てた表情を浮かべた。

 

「その、この後用事があるので…その容器はゴミとして出せるので手数かけるけど捨てておいてください」

 

「それはいいけど…俺、なんかヤマトに出撃要請や基地運営の仕事頼んだ覚えないけど…」

 

ドクターの言葉に、ヤマトは「ああ、すみません」と言うと

 

「この後、ラップランドさんとお話するんです」

 

そう、楽しそうに言うと「それでは、また今度」と告げ、部屋を出ていった。

 

 




特にオチもなく終わってしまったが、思い浮かばなったので許してください(土下座)


キャラ紹介
ヤマト:やべーやつを困惑させたやべーやつ。実は手先が器用で、料理をこなせることが判明。何でも、傭兵時代にご飯を美味しく出来れば皆と仲良くなれるかも!と思い始めて練習したとか。なお、傭兵時代でそれが成功したかどうかはご想像にお任せします。

ドクター:アークナイツの主人公であり、プレイヤーのアバター。ゲームでは性格や素顔は不明だが、当小説では線は細いが鍛えられた肉体を持つ男性として扱う。なお、ヤマトがしっかり話せる人物の一人になった模様。

ラップランド:今回の話のターゲットにして、ヤマトの2人目の友人。初っ端彼女にした理由は推しキャラの1人だからという単純な理由。
ちなみに、ヤマトとのお喋りは基本自分から話を振る感じだったが中々楽しめた模様。

フロストリーフ:ああ言いつつも、ヤマトが作る料理は好き。ミルフィーユパイもしっかり美味しく頂いた模様

テキサス:ペンギン急便所属の星5先鋒。彼女のことについてはいずれ


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同じループスのやべーやつ(おまけ)

全然、このすばの方が書けん…
それと私事ではありますが、アークナイツシナリオの5-10をクリアすることが出来ました。
まあ、やったことはフレンドエクシアとアーミヤでゴリ押しという頭悪いやり方でしたが…困ったらフレンドエクシアに頼る癖、直さないとなぁ…


ヤマトがラップランドと友人になってからある日のこと。

その日、ヤマトは非番であったため自分に宛てがわれた部屋でシートをしいてその上で武器の点検をしていた。

ヤマトの武器は構造が複雑なためマメな点検は必要不可欠だ。点検や整備の仕方は、この武器を作ってもらった人にしっかりと教わっていたため、ヤマトがこの武器を使い始めてから何かしらの不具合や故障などは起こっていない。

 

「ヤマト、いるかい?」

 

 

そして、点検を終えて片付けをしている最中にノック音と共に彼の滞在を確認する声が部屋に届いた。

別に、拒否する理由もないため了承の声を出すとドアを開け、声の主が入ってきた。

 

「やあ、暇だから遊びに来t…取り込み中だったかい?」

 

「いや、今は片付けの最中だ。そこの椅子に腰掛けて待っててくれ。終わり次第お茶を出すから」

 

「ふふ、分かったよ」

 

入ってきたのは、冒頭に出た友人のラップランドであった。

あの日以来、彼女は暇さえあればヤマトのところへ行くようになった。ヤマトとしては、数少ない友人が来てくれることは嬉しい事なので特に嫌がったりする素振りは見せなかった。

 

ヤマトは片付けの最中、ふとラップランドの方を見ると彼女は足を組んで椅子に座った状態で点検を終え、依然1本に戻していない状態の6本の剣を興味津々と見ていた。

 

そこでヤマトは、この長年の相棒でもある武器の全容をロドスで見た人物がドクターと鬼教官しかいなかったことを思い出した。

ラップランドも、何度かヤマトの戦いぶりを見たことはあるが彼の扱う変わった武器の全容は知らない。

なので、ヤマトはいつも話を作ってくれる彼女のお礼としてある提案をした。

 

「良かったらだけど…この武器について話してもいいかな?」

 

 

***

 

「…説明聞いて改めて思ったけど、キミの武器って変わってるよね。これが1本の剣になるなんて想像しにくいや」

 

「実際俺もこんな変わった物を作ってくれるなんて予想出来なかったんだ。最初は俺自身も上手く使いこなせなかったし」

 

余談であるが、これを作った本人はこの武器を制作し終えたあと「今ならなんでも作れそうな気がする!!」といって、また変なもの(ロマン武器)を作ったという噂をヤマトは耳にしている。

 

ヤマトは6本の剣を専用のケースに入れ、手を消毒シートで拭って着いていた汚れを取ると、近くの棚からコップを2つ取り出して中に紅茶を入れて1つをラップランドに渡した。

 

「ああ、毎回ありがとうね。それで、今回のお茶請けは何かな?」

 

「今日は、プレーンとチョコレート味のクッキーだよ。出来はそれなりに自信あるよ」

 

「なら、ちょっと期待しようかな?それじゃ頂きます」

 

ラップランドは出されたクッキーひょいと摘んで、口に入れて咀嚼する。今、食べたのはプレーンだったが口の中には柔らかい甘さと言えばいいだろうか、その様な風味が広がった。

そして、そこに紅茶を飲んでみれば紅茶の風味をクッキーが引き立てさせた。

 

「…ヤマト、コックにでも転職したらどうだい?」

 

「それ、何回目だっけ?」

 

「うーんと…6回目ぐらいかな?」

 

そんなことを話しながらも、2人が会話しているとまたノック音が聞こえてきた。

 

「今日は来客が多いな…今度は誰だろ?」

 

「来客が多いって、僕とその人含めてまだ2人だよね?」

 

ヤマトはラップランドの厳しい指摘に内心呻きながらも、ドアを開ける。

 

「元気にしているか?どうせ1人で寂しくいると思ったからきてやったぞ」

 

「フーちゃん!開口一言目が酷いよ!?」

 

「フーちゃん呼ぶな、とりあえず失礼するぞ」

 

 

ヤマトの第1友人のフーちゃんことフロストリーフが中に誰もいない思って中に入ると、そこにはラップランドがいる訳であって。

 

「やあ、フーちゃん。予想とは違って、ヤマトは僕と楽しくおしゃべりしてたんだよ、それにしても、フーちゃんって…フフ」

 

「………マジか」

 

ラップランドにフーちゃんというあだ名がバレたフロストリーフは、そんな言葉を口に零した。

 

 

****

 

「別に取って食おうとは思ってないから、そんなに睨まないで欲しいな」

 

「…………」

 

「アハハ!聞く気全くないみたいだねぇ…」

 

先程、館内放送で呼び出しをくらったヤマトは、「終わったらすぐに戻るから、それまで部屋で寛いでなよ」とフロストリーフとラップランドに言い残して部屋を出ていった。

 

そしてこの2人の雰囲気はお世辞には良いとは言えなかった。

そもそも、フロストリーフはラップランドがそんなに好きではない。理由は色々あるが、一番の理由は捉えがたい空気を醸し出しているからである。

 

「ヤマトはなんで僕と仲良くなりたいって思ったのかな」

 

ヤマトももう少し、友好を深める人物を選んで欲しいとフロストリーフは内心でそう毒げ着いていた時だった。

ラップランドがクッキーを手に持ってそう呟いた。

 

フロストリーフは、この言葉の本当の意味をすぐに理解した。

ラップランド本人が気にする素振りがないので忘れがちだが、彼女は鉱石病を患っている。それも重度なレベルでだ。

ここ、ロドスならばそれはあまり関係ないのだが、ラップランドの凶暴さを知っていれば自ら仲良くなりたいと思う輩はほとんど居ないはずだ。

 

「それは、お前があいつに何度も話しかけ続けたからだろう」

 

「え…?」

 

フロストリーフは、気がついたらそう口にしていた。ラップランドの反応に自分が無意識に答えてしまったことに気がついた彼女は、やけくそ気味に咳払いをして続けた。

 

「んんッ!…あいつは、人との繋がりを求めているくせにその繋がりを作るのが壊滅的に下手くそだ。それはお前も知っているだろう?しかも、向こうから繋がりを作ろうとしても、アイツのあがり症による無口と無駄に高レベルなポーカーフェイスのせいので中々上手くいかない。そして、向こうはあいつが交友を結ぶ気がないと誤認してしまい、そこで普通は終わる」

 

フロストリーフはそこで、一旦切ってラップランドの顔を真っ直ぐ見つめた。

 

「だが、お前はどうだった?お前はあのボッチ狼が自分が不甲斐なく感じるぐらいに、何度も話しかけただろう?だからこそ、あのコミュ障ボッチ狼は何としてもお前と仲良くなりたかったんだろう」

 

「まあ、あいつはロドスの全員と仲良くなりたいって言ってたがな」

 

フロストリーフは最後に締めくくると、少し温くなった紅茶を口の中に運ぶ。

 

ラップランドは暫く、目を瞬かせると笑いだした。

 

「アハハハ!」

 

「…何がおかしい?」

 

「いや、まさかキミがそんなことを言ってくれるなんて思わなかったからね…ちょっとだけ気が晴れたよ。ありがとう」

 

「…フン、さっきのはたまたま口が滑っただけだ」

 

「な〜んて、言いながら顔を赤くしても説得力ないよ?フーちゃん?」

 

「コイツ…!」

 

「はー…呼ばれた用事があんな事だったなんて…あれ、何この状況」

 

お礼を言われたフロストリーフは照れているのを誤魔化そうとするも、ラップランドにすぐに見破られ、最後にからかうようにあだ名を呼ばれたためラップランドを殴りたい衝動に駆られたところで、ぶつくさ文句を言いながらヤマトが帰ってきた。

 

「ヤマト、折角だから僕にもあだ名を付けてよ」

 

「「え」」

 

ラップランドの突然の発言に、ヤマトとフロストリーフは同じ反応をした。

 

「急にどうしたの?」

 

「いや、だってさ…フロストリーフ…フーちゃんにはあって僕にはないって思ったらなんか嫌でさ」

 

ヤマトの質問にラップランドがそう拗ね気味に答えた。

これに、フロストリーフは目を見開いて驚き、ヤマトも驚いたもののすぐにパッと表情を明るくするとすぐにあだ名をつけた。

 

「それじゃ、ラーちゃんで!!」

 

「お前のネーミングセンスは安直すぎるな。ネーミングセンスの才能はどこに置いてきたんだ?」

 

「辛辣ゥ!」




実は、おまけ編は当初書く予定はなく、ふと脳裏に過ぎったので書いたという背景がある。

キャラ紹介
ヤマト:ネーミングセンスと対人会話能力を母体に残してきた主人公。ちなみに、呼ばれた理由は完全にドクターの私情。ヤマト本人は相談する相手間違ってるのでは?とおもったそうな。

ラップランド:最後あたりでヒロインムーブした生足へそ出し狼娘。こういうラップランドさんもありですよね?(真顔)

フーちゃん:ロドス内ではヤマトのことを1番理解している保護者役。実は、ヤマトが非番の日は休憩時間の合間を縫って訪問して、2人だけのお茶会をしてる。なんやかんや、ボッチ狼のことはほっとけないツンデレ狐。

鬼教官:一体、誰なんだ…。なお、ヤマトは初対面の時余りの怖さに泣きかけた。

ドクター:ヤマト本人が自分は不適切だと思うことを相談したやべーやつ。恐らく、理性が0だったのだろう


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コミュ障狼とシエスタ観光(上)

今回のイベントを見て、ふと思いついたので書くことにしました。
そして、言っておきます。キャラ崩壊がとんでもなく酷いです。

どんなキャラ崩壊でもバッチコイ!な方や、どんなに崩壊していても読む覚悟は出来ている、という方だけ読んでください。

それでは、どうぞ。



ドクターを含む、ロドスのオペレーター達でバカンスとして来たシエスタ。だが、そのシエスタでドクターはその都市の存亡をかけた事件に巻き込まれていった。

その中には、部屋で静かに読書をする予定だったヤマトの姿もあり、彼もロドスのオペレーターの1人として刃を振るったのだった。

 

 

****

 

事件が収束したあとも、ヤマトは相変わらず1人で行動していた。

本当だったら、フロストリーフやラップランドとも来たかったのだが彼女たちはそれを断ったため、することもないからとパトロールと称して散策していた。なお、ドクターはロドスのCEOであるアーミヤと仲睦まじく過ごしているため、前に相談された件もあるのでヤマトは近づかないようにしている。

 

そういえば、あともう少しでライブが始まるんだっけとヤマトはふと思い出し、ただ街の中を歩いてきただけでは友人二人に話すタネがないということにも気がついたため、ライブを見に行くことにした。

 

そして、結果として──

 

「お、お前は確か……」

 

「……(オワタ)」

 

いかにも、楽しんでますという服装のチェンと鉢合わすという、話のタネが出来たのだった。

 

 

****

 

 

「…意外だな、あんたみたいな人がこういうのに参加するなんて」

 

ライブが終わるまでチェンに腕を掴まれ、終わったら「ツラ貸せや」(ヤマト視点)と比較的人が少ないところのお店に連れてこられたヤマトは、第一声そんなことを言ってのけた。

チェンは「うぐっ」と小さく呻くも、仕返しとばかりに言い返す。

 

「私も、貴様のようなやつが来るとは思わなかった」

 

「…話しのタネとしてはライブはいいと思ったからだ」

 

が、ヤマトは内心テンパリながらも何とか返す。一方、チェンは普通に返事が返されたことに意外そうな顔をした。

 

「お前、普通に話せるんだな」

 

「……話そうと思えば、何とか話せる」

 

この時点で、ヤマトの心臓はバクバクとめちゃくちゃ早く鼓動を鳴らしており「フーちゃん助けて…」と内心助けを求めている。

 

「なら、丁度いい機会だ。お前には色々と聞きたいことがあったからな」

 

「(ヒンッ)」

 

お話続行というヤマトにとっては死刑宣告が出された…『お前、そんなんで友達できるわけねーだろ!』というツッコミはしないであげて欲しい。なお、ここまで来てもヤマトの表情はいつもの無表情であるが、尻尾は垂れ下がり、耳も親しい者が見れば元気がないようにも見える。

 

しかし、神はヤマトを見捨ててはいなかった。

 

「あれ?ヤマトにキミは…確か近衛局の隊長さんだったかな」

 

「ラーちゃん!」

 

そう、ロドスに残っているはずのラップランドが何故か、この場に来ていたのだ。

頼れる(?)友の登場に、ヤマトの表情は明るくなり尻尾も横に振っている。

チェンは、ヤマトの変わりように目を丸くするもラップランドに目を移す。

 

「お前は…確かラップランドか」

 

「あれ?ボクのこと知ってるんだ?」

 

「ああ、連携をすることを知らないどころか残虐な行動するとんでもない奴として知っている」

 

「へー…言ってくれるじゃないか」

 

──フーちゃん、助けて。

ヤマトは場の雰囲気が悪くなる中、心の中で叫んだ。

 

 

*****

 

 

「ところで、何故貴様のようなやつがここに来た?」

 

「別にボクが何をしようが構わないじゃないか。まあ、来た理由はヤマトを探しに来ただけなんだけどね」

 

「俺を?」

 

「うん、フーちゃんと話してたら、『今頃、帰るに帰れなくて1人寂しく観光してるんじゃないか』って思ったからそれじゃ可哀想だと思ってね」

 

場所は変わらず、ラップランドを交えての会話。相変わらず空気が重く、そのせいか、見てくれは良い女性が2人いるのにも関わらず、誰もヤマト達の方に視線を向けようとはしていない。

 

「心遣いは嬉しいけど、別に無理して来なくても…」

 

「確かに、ここに来るのは乗り気じゃなかったけど、友人が心配で探しに行くのはだめかな?」

 

「ラーちゃん…!」

 

そんな感動するヤマトを見て、「こいつ、そんなすぐに信じるのか…」とヤマトの評価を直すべきかと考えるチェン。

そして、そんなヤマトを見て心の内でラップランドは多少計画は狂ったが結果オーライだと思っていた。

 

実は、ラップランドがシエスタに降りなかった理由は乗り気じゃなかったというものではない。本当の理由は、しょんぼりしながら1人寂しく歩いてるヤマトに声をかけ好感度をあげようというものだったのだ。

 

ラップランドとて、何故そんなことをしようか思ったかはよく分からないが、ヤマトが自分よりもフロストリーフといる時の方がよく笑ったりと、感情をさらけ出す事が多いことにモヤモヤしていた。なので、こういう行動をすればコミュ障ボッチ狼のヤマトならコロッといくはずだと考えたのだ。

 

実際、先程の様子から分かるように「自分のため、わざわざ探しに来てくれるなんて…!」とヤマトの中のラップランドの好感度は爆上がりである。

チェンは、先程からほくそ笑んでいるラップランドを見てヤマトに口を出すべきかと考えたがやぶ蛇だと思い、スルーすることにした。

代わりに、思ったことを口にした。

 

「…ヤマトは実はよく喋るし、表情も動くヤツなんだな。いつも、無口で無表情だから人としての心をどこかに置いてきたやつなのかと思っていた。」

 

「え?」

 

「まあ、普通の人はそう思うよね。ボクも親しくなった初めはそう思ったし」

 

「ラーちゃん!?」

 

バッサリとチェンから言われ、更に肯定されたヤマトを後目にふと、ラップランドは考えた。ここで、ヤマトがただ単によく喋りながらも表情も動くという人物ではなく、本当はコミュ障を拗らせた残念なやつだとバラしたらどうなるだろうか?ヤマトのことを知る人物が増えるが、バラされたヤマトはフロストリーフに辛口発言された時のような涙目で抗議を自分にするだろう。だが、一時の欲望でヤマトのことを知る人物が増えるのは気に食わないのも事実。いやけども、ラップランドとてあのやり取りをやってみたいのもあるし、何より涙目になったヤマトを見ると背筋がゾクゾクするような気持ちいい感情も味わえるのもこれまた事実。

 

そしてラップランドは1秒であれこれ考えた末に──

 

「実はね、ヤマトはただのコミュ障ボッチ狼なんだよ」

 

「ラーちゃん!?」

 

「……は?」

 

──バラす事にした(欲望には勝てなかった)

 

予想通りヤマトは「そんなこと言うなんてひどいよぉ」と涙目でラップランドに抗議をし始め、そしてこちらは予想外だったが口を開け目を丸くするチェンの珍しい姿もみれたラップランドはご満悦だった。

 

「そう言うけど、まずはヤマト自身のことを知って貰えないと仲良くなれないよ?」

 

「そうだけど…今はボッチじゃないよ!」

 

「けど、隊長さんやボクに会えてなかったら1人でこの街を歩き回ってた予定だよね?」

 

「うぐぅ…」

 

「けど、ちょっと言いすぎたね。ごめんよ」

 

「…事実だし、謝ってくれたからいいけどさ」

 

「ふふ、許してくれてありがとう(やばい、想像以上に破壊力が…!)」

 

ラップランドは、子供みたいなヤマトを見て内心これを毎回普通に返せるフロストリーフの凄さに気づき、ふとさっきからチェンが何も喋ってないと思って、そちらを見ると。

 

「……………」

 

「チェンさん!?だ、大丈夫?」

 

鼻を抑えるチェンの姿があった。よく見ると、手から赤いものも見えていて、それが鼻血だと気がついたヤマトは、不安そうな声をあげながらもティッシュをチェンに渡していた。ラップランドは、こうしてチェンの意外な一面も知ることが出来たりと今回は大収穫であったのだった。




キャラ紹介
ヤマト:段々と化けの皮(故意ではない)が剥がれていく主人公。今回の話のとおり、いじられ体質が無いため弄られるといい反応をする。なお、シエスタに来た理由はドクターの護衛もあるが、1度は友人と訪れて遊びたかったという純情な理由。余談ながら、彼の性格などは某ぼっち柱と某ボッチ紅魔娘を参考にしている。

チェン:星6前衛。龍門近衛局特別督察隊の隊長、いつもお世話になってます。イベントでは観光客Cとして登場。何やってんですか隊長。当小説では、キャパオーバーすると鼻血が出るというギャグ世界ならではのムーブをかましてもらいました。星6キャラの中では1番好き。

ラップランド:引き続き登場。ヤマトのせいで新たな扉を開きかけているループス。そして、気がついたらヒロインムーブをかましている。指が勝手に動いたから仕方ないよね?

ドクター:アーミヤとビーチデート。羨ましい

アーミヤ:イベントの最後のストーリーで驚きの姿を披露。運営、やってくれるじゃねえか。ドクターと2人きりでビーチデートを満喫中。


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コミュ障狼とシエスタ観光(下)

今回は、ウチの先鋒のエースとアイドルが出てきます。

あと、珍しくシリアスです。

最後に一言…件のエースがちょっと悪い感じです。

それが推しキャラでも構わない人のみ読んでいっていてください。

5/7 加筆、修正


「良かったね、ヤマト。新しい友達ができて」

 

「うん!ラーちゃんのおかげだよ!」

 

「(1番のトドメはヤマトのとんでも行動なんだけどなぁ)」

 

ラップランドはそう思いながら、ヤマトの新しい友人となったチェンを見る。

チェンが鼻血を出して暫くして落ち着いてから、なんとあのあがり症コミュ障狼のヤマトから、友達になってください!と言ったのだ。

チェンは最初こそ、(色々と耐えかねないので)断ろうと思ったのだが、このコミュ障狼、大声で言ったのだ。それも周りの人が聞こえるぐらいの大きさで。

 

つまりどうなるかと言うと、周りからの視線が一斉に集中し、さらにはヤマト本人は顔を赤くしてプルプル震えているのも相まって断れない状況を作り出したのだ。

仮にチェンがここで断ったら周りからはいい視線は向けられないのは目に見えるし、まだシエスタを満喫したいのもあるので、彼女はその提案を受け入れたのだった。

 

なお、ここで頭に入れて欲しいのはラップランドが心の内で思った通りヤマトはなんも考えずに勢いだけであんな事をしたということ。決して考えてやった訳ではないということ。

ラップランドとチェンは『天然はやべーもの』ということをこの日、認識したのだった。

 

 

***

 

そんなことがあった次の日、ヤマトはまた1人でシエスタの街中を歩いていた。友人3人はそれぞれ別件があると言って、ヤマトの誘いを断ったためだ。なお、その時に耳と尻尾が垂れ下がりショボンとしたヤマトを見てチェンが悶えまた鼻から血を出しかけたというのも述べておく。

 

「あの、すみません。待ってる人がいるので…」

 

そんな聞いたことがあるような声が人気が少ない通りから聞こえ、そちらに足を運ぶと何人かの男性に囲まれている女性がいた。

別に正義の味方とかそんなものではないが、ヤマトは困った人を見過ごせない人物であるのは事実、なので。

 

「そこまでにしとおけ、嫌がっているだろう」

 

「あ"あ"ん?邪魔すんじゃねえよ」

 

女性を助けるために介入した。

邪魔された男の一人が、ヤマトを睨みつけながら低い声でそう言うが、傭兵として戦場を渡り歩いたヤマトにとってはそんなもの子犬が鳴いてるも同然だった。

 

「…あんたらじゃ話にならん」

 

「んだとゴラァ!!このチビ、痛い目に遭わねえと立場ってもんが分からねえのか!?」

 

まるで、煽るかのようなヤマトの発言に男たちはキレるが、その反応に、目の前の男性たちでは自分にはどう頑張っても勝てないから、降参して欲しいという意味で言ったのに、とヤマトは困惑していたが同時にチビと(気にしていることを)言われて少しカチンときていた。

 

「ちょっと寝てろ!!」

 

「ふっ!」

 

「どわぁぁぁぁぁ!?ガっ!……っててて、ぶっ!?」

 

ヤマトは、キレて殴りかかってきた男性の腕を掴むと、その勢いを利用して背負うように投げ飛ばし、地面に着いた男性に追い打ちをかけ気絶させた。

別に、この男性が自分のことをチビと言ったから追い打ちをかけた訳では無い。背後から襲われる可能性を無くすために致し方なかったのだ。決して、私怨ではない。決して。

 

「あ、相手はチビガキ1人だ!全員でかかれば問題ねえ!」

 

「…話にならない、と言っただろう」

 

〜1分後〜

 

「お、覚えてろよぉぉぉぉ!!」

 

そんな捨て台詞を吐きながら、ボロボロになった男達は走って逃げていった。ヤマトはふぅ、とため息を着くと女性に声をかけた。

 

「怪我はないか?」

 

「え、は、はい。大丈夫ですが…」

 

「そうか…」

 

ヤマトはそれだけ確認すると、何事も無かったのように立ち去ろうとして

 

「ソラ!ここに居たのk…お前は?」

 

「テキサスさん!」

 

「(…………最近、色んな人と会うなぁ)」

 

なんか、似たような展開にヤマトはため息をついた。

 

 

****

 

「ソラを助けてくれたこと、感謝する」

 

「私こそ、改めてありがとうね」

 

「……当然のことだ」

 

なんとなく早く立ち去った方がいいと判断したヤマトは、こっそり逃げようとしたのだが、それを察知したテキサスに掴まり、ソラからも助けてくれた礼がしたいと言われて、そのまま喫茶店に連行された。

何でも頼んでいいよー」とソラに言われ、ヤマトが頼んだのはアイスココアだった。なお、ヤマトがこれを頼んだ時、テキサスとソラは意外そうな顔をした。

それを見たヤマトは昨日、事の顛末を聞いたドクターから貰った「オリジムシでもできる友達の作り方」のテキストの内容を思い出した。

 

──確か、相手が反応したことを起点に話を広げるといいんだっけ?

 

緊張のあまり、バクバクなる心臓を抑えながらヤマトは必死に口を動かした。

 

「…意外だったか?」

 

「い、いや?そうでもないよ?」

 

「………」

 

慌てて否定するソラと無言のテキサス。そして、気まずくなる雰囲気。

それを見たヤマトは内心「そんなぁぁ!何で会話が弾まないの!?頑張ったのに!!」と泣き叫んでいた。

悲しいことにこのコミュ障狼は、会話が広がらず気まずい雰囲気になってしまった原因が、あがり症による無口or言葉足らず+ポーカーフェイスのせいだと自覚していない。

 

事実、先程の発言ももう少し感情の籠った声音で表情が動いていればここまで気まずくならなかっただろう。なお、ソラの発言に「いや、自分でも子供舌だと思う」などと付け加えれ良かったのでは?というのはコミュ障狼ヤマトにはまだレベルが高い要求である。

 

「…ひとつ、聞くが。何故お前はラップランドと行動を共にしている?」

 

「……?」

 

打開策を必死で探していたヤマトに、テキサスはおもむろにそう尋ねた。ヤマトはそれ聞いて内心首を傾げるが、彼女はラップランドのことを避けているのを思い出した。しかし、彼女がそう聞いてきた理由は分からない。けども、ここで答えなくてはダメだと自分の中の何かが訴えていた。

 

「……友達だから」

 

「え?」

 

「………」

 

突然の、ヤマトの発言にソラは驚きのあまり声を漏らし、テキサスは目を見開いているもののすぐに戻し、ヤマトを真っ直ぐ見る。

ヤマトはそれに怯み口を閉じてしまった。

それを見て、テキサスはふぅと息を着くと口を開いた。

 

「……悪いことは言わない、あいつとは適度に距離を取った方がいい。それがお前のためでもある」

 

「嫌だ」

 

「何?」

 

ヤマトのことを思って忠告したのに、それをすぐに拒否されたテキサスは怪訝的な視線をヤマトにぶつける。

ヤマトは、一瞬怯むも今度はそのまま口を開いた。

 

「俺は、人と喋るのが苦手だ。いつも、何を話してどう返せばいいか分からない」

 

──だから、皆、俺とは話さないようなる。

所々詰まりつつも、ヤマトは続ける。

 

「けど、彼女、ラーちゃんは。そんな俺でも、何度も何度も話しかけてくれた。俺と、仲良くなれる人はフーちゃん、しかいないと、思ってたから、嬉しかったし、暖かった」

 

心臓が破裂しそうだと感じるほどに鼓動が早く鳴り、頭は真っ白な上息をするのが苦しい。それでも、それを理由に止まる訳には行かない。

──ラップランドとの繋がりは(彼女は)──

 

「ラーちゃんが、危険な人物なのかは知っている。けど、それでも俺にとっては」

 

──大事なもの(友人)なんだ。

 

ヤマトは自身の想いを言い終えると、慣れないことをしたせいか肩で息をするも、テキサスのことを真っ直ぐ見つめた。

 

「……そう言うなら、私からはもう何も言わない」

 

「あ、待って…」

 

席を立ち上がろうとしたテキサスをヤマトは引き止めた。

 

「……何だ?」

 

「…あなたが、俺の事を気遣ってくれて、あんなことを言ったのは俺でも分かる。だから、お礼を言わしてくれ。ありがとう、テキサスさん」

 

「……ソラ、いくぞ。また今度な、ヤマト」

 

「え?あ、これお代ね!じゃあね、ヤマトくん!」

 

テキサスは、ヤマトの発言と最後に浮かべた穏やかな表情を見て目を丸くするも、背を向けてソラと共に店をあとにした。

 

「また今度…それなら、今度は明るい話が出来るといいな…」

 

ヤマトは、残っていたココアを喉に通した。

ココアの味は、柔らかく甘い味がした。

 

 

****

 

 

「……見ていたんだろう」

 

「……よくわかったね!流石テキサスだ!」

 

「え!?いつからって…あれ?あなた達は…」

 

「……あいつが心配だと、そこの駄犬がうるさいから、その付き添いだ」

 

「私は、この狼が何かやらかさないかための監視だ。」

 

「とか言ってるけど、本当は君たちもヤマトが心配でついてきたくせに」

 

「「………(プィッ)」」

 

「……変なやつだ。ヤマトってやつは」

 

「けど、良い子で面白い子だろう?悪いけど、いくらテキサスでもヤマトはあげないよ?」

 

「お前が、そこまで言うとはな…」

 

「て、テキサスさん…?」

 

「…行くぞ、ソラ。」

 

「あっはい!皆さん、失礼します」

 

 

テキサスはふと、最後ヤマトに言った言葉を思い返していた。

 

「また今度…か。らしくないな」

 

そう言いつつも、テキサスの表情や声音は穏やかだった。

 




なんか最終回っぽいけど、最終回じゃないからね?まだ、友達片手で足りるぐらいしかいないからまだまだ続くんじゃ。


ヤマト:チェンを勢いで落としたやべー主人公。やっと、自力で人と話すことが出来て成長したように見える。なお、今んところ女たらしの才能がある疑惑が囁かれている…でも、ハーレムだと、感じにくいのは彼の人徳のおかげ?なお、身長はギリギリ160cmとのこと(本人談)

テキサス:ペンギン急便所属の星5先鋒。範囲スタンコスト回復持ちという、とんでもないスキルをもっているウチのロドスのエースの1人。今回の話では、ヤマトにラップランドから距離をとるように言っていたが、あくまでヤマト本人のことを思ってなのを誤解しないで欲しい。
なお、今回の件でヤマトやその友人たちと話すことが多くなったとか。ラップランドは相変わらず避けているが…推しキャラの1人で、めっちゃデレさせたい、尻尾モフりたい。

ソラ:星5補助のアイドル。特性やスキル的に完全に大器晩成型。私は未だに育ちきれていない(白目)。今回は、あんまり出番なかったのでいずれは彼女メインの話も書きたい…

フロストリーフ:ヤマトの友人1号兼保護者役。ヤマトの誘いを断った理由は、ラップランドとチェンにヤマトについての講座を開いていたから。なんやかんや面倒見がいい優しいキツネさん。

ラップランド:ヤマトの友人2号兼ヒロインムーブをかます狼。ヤマト講座でヤマトのことを知れたけど、よく知ってるフーちゃんにジェラシー。なお、ヤマトの見守りはテキサスと彼が合流してから開始したとのこと。

チェン:ヤマトの友人3号兼被害者。でも、なんやかんや悪い気はしていない模様。ヤマト講座を受けて、彼の実態を再認識。なお、ヤマトの突然のギャップ萌え行動には、慣れろとしか言われなかった。

ドクター:後日、ヤマトにあのテキストよりいいの貸して!と言われて、マジであれを読んだのかと戦慄し、今度はちゃんとしたものを貸したそうな。


そろそろ、男性オペレーターと絡ませたいけど、誰にしよ


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コミュ障狼の謎行動を暴け!(上)

はい、遅くなってしまいすみません…

なんか長くなってしまったので区切ったのですが…中途半端になってしまった…

今回の話は結構無理やりな感じな上、あるキャラのキャラ崩壊が凄まじいという…それでもいい方はどうぞ!


「最近、ヤマトが調理室に行くことが多くなったんだ」

 

ある日、食堂の端の席にてヤマトの友人の1人であるラップランドは同じく彼の友人である、フロストリーフとチェンにそう言った。

 

「そんなおかしい事でも何でもないだろう。確か、ヤマトは部屋に来た人を毎回自分が作ったお菓子でもてなしているんだろう?最近はその回数が多くなったから調理室で作る機会も増えただけじゃないか?」

 

「いや、それを含めても回数が多いんだよ」

 

「ん?ちょっと待て。何でラップランド、お前がそこまで把握してるんだ?」

 

チェンの指摘にそう返したラップランドに、フロストリーフは何故そこまで把握してるのか気になって聞くも、ラップランドはそれを無視して続ける。

 

「絶対、ヤマトは何か隠してる。もしかしたら、変なやつに…!」

 

「待て、流石に話が飛躍しすぎだぞ!?取り敢えず落ち着け!」

 

「それより、お前はそんなキャラじゃないだろ!?」

 

ラップランドの暴走に驚きながらも、フロストリーフとチェンは彼女を止めようとするも、この時のラップランドはまさにバーサーカー。止まることを知らない。

 

「だってさ!気になって聞いてみたら、耳と尻尾をピンと立てて『そ、そそそそんなことないよ?』って目を逸らしながら言ってたんだよ!?絶対なにか隠してる!」

 

「あいつは…」

 

フロストリーフはその光景がありありと思い浮かんだ。恐らく、その後は用事があるから!とか言って逃げたのだろう。そんなことをしたら、ラップランドが怪しく思うのは当たり前だ。

正直、これ以上相手するのはめんどくさいのが本音なフロストリーフはさっさとこの話を終わらせるためにラップランドに聞いた。

 

「…取り敢えず、お前は何がしたいんだ?」

 

「ヤマトをびこ…ゴホン、ついせ…んんっ!監視…じゃなくて観察しようと思うんだ」

 

「……逮捕した方がいいか?」

 

「気持ちはわかるがやめろ。そんなことしたらコミュ障狼が騒いで余計拗れる」

 

チェンの発言に、フロストリーフは疲れたようにため息を吐きながらも止めるよう言った。

 

 

****

 

唐突だがヤマトの趣味は料理、特にお菓子作りだ。

彼が料理を始めたきっかけこそ、友好を深めるための手段としてだったのだが、やっていくうちに彼自身がハマってしまうということになっていた。そしてお菓子作りを好んでやるのには、ヤマト自身が甘いものが好きだからというのと、ロドスで(やっと)できた友人達が部屋に来た際のおもてなしのためというのもある。

 

「〜♪」

 

そんなヤマトは現在、調理室にてオーブンに入れたものが焼き上がるまでの間に、鼻歌を歌いながら洗い物をしていた。尻尾も横にブンブンと振っているので機嫌がいいことは明白である。

そしてそれをヤマトの死角から見つめる影が3つあった。

 

「(…あいつ、鼻歌出来たんだな)」

 

「(いや、何かしらの曲を何度か聴いたことあれば誰でも出来るでしょ?)」

 

「(いや、あいつは極度の音痴だからな…正直、鼻歌は出来るのは初めて知った)」

 

「「(マジか…って、なんでそれを知ってるの?(んだ?))」」

 

割とどうでもいいことをフロストリーフ達は小声で話していた。そう、結局フロストリーフとチェンもラップランドに着いてきていた…今回は、ラップランド(バーサーカー)の制御という割とマジな理由で。

 

「(…割とどうでもいい話だが、まだあいつとそんなに友好が深めきれてない時にあいつの部屋の前を通ったら…まずい、離れるぞ!)」

 

ヤマトがこっちに来ることを察知したフロストリーフは、2人を押して慌てて調理室から離れて隠れると同時に、バスケットを持ったヤマトがドアから顔を出し、辺りを見回した。そして、特に何も無いことを確認するとまた中に顔を引っ込めた。

 

「(間一髪だったな…)」

 

「(…そういえばヤマトが妙に勘がいいの忘れてたよ)」

 

「(そうなのか?気の所為じゃなくてか?)」

 

「(あれ?フーちゃん知らないの?)」

 

「(ああ、初めて知ったぞ)」

 

ラップランドはフロストリーフさえ知らないヤマトの一面を自分が知っていたことに内心喜びながらも、ドヤ顔でそのエピソードを話した。

 

「(ヤマトってさ、反応が凄いいいでしょ?それでさ、尻尾とかを急に触ったらどんな反応するかなって思ってやろうとしたら、気づかれちゃってね。その時は偶然かと思ったけど、今のとこ全部気づかれてるから勘がいいのかなって)」

 

「(……やっぱり、こいつ逮捕すべきなんじゃないか?)」

 

「(……私はノーコメントで)」

 

「(あっ!ヤマトが調理室から出た!!行くよ!)」

 

2人は、まさに犯罪行動を行っているラップランドに対して頭を抱えているとその件の彼女がヤマトが部屋から出たことを告げ、2人を催促する。2人は、ため息を吐きながらも足を進めた。

 

****

 

「あ、ヤマト。こんな所で奇遇だね」

 

「ミッドナイトさん」

 

「「「(!!?)」」」

 

追跡していた3人に、ヤマトが途中ではちあったミッドナイトとなんてことも無いように話をしているという、信じられない光景が飛び込んできた。夢ではないかと、自身の頬を抓るも痛覚は正常で、今見ている光景が夢ではないことを否応なく実感する。

 

「(お、おいヤマトはコミュ障なのになんで普通に話しているんだ!?)」

 

「(ボクが聞きたいよ!!それより、あいつって元ホストだよね…まさか、あいつヤマトをそっちの道に…!?)」

 

「(落ち着け、ラップランド!お前は混乱しているだけだ!!)」

 

セコム達が未だに信じられない光景に小声で騒いでいる間にも、ヤマトとミッドナイトの会話は、どんどん進んでいく。

 

「あ、これからドクターの所へ行くんだけどミッドナイトさんもどう?」

 

「そうだね…急ぎの用もないし俺も同行しようかな。ついでに、どれぐらい進歩したか確認したいからね」

 

「はは…全然ミッドナイトさん…いや、あのことに関しては先生のようにいかないけどね」

 

 

ヤマトはそのままミッドナイトを加えて談笑しながらドクターの仕事場へと歩いていく。その光景を見て、ラップランドはモヤモヤするようなイライラするような感覚に囚われながらも、2人に追跡続行の節を伝える。

 

「(!!いくよ!!)」

 

「(何となく、あいつが調理室に行く理由が何となくわかったから私は帰りたいが…)」

 

「(…寄りかかった船だ。最後まで見届けるか)」

 

キツネと龍は本日何度目か分からないため息を吐きつつも、跡をついて行った。

 

 

 

 

 

 

 




キャラ紹介

ヤマト:友人が相手だと無口+ポーカーフェイスが仕事しないので、隠し事ができないオオカミさん。なお、途中で調理室から顔を出したのは何となくそうした方がいいと思ったから。

ラップランド:キャラ崩壊が進んでいる、ヤマトのセコムその1。個人的にはラップランドは執着心だったり独占欲が強いイメージ。こういうラップランドさんを書きたかったんだ!!(反省してない)

フロストリーフ:苦労人キャラが定着し始めたヤマトのセコムその2。早く帰りたい

チェン:ヤマトのセコムその3にして苦労人2号。実は、自分も犯罪行動してることにはこれはもしものために仕方ないことだと、必死に言い聞かせている。

ミッドナイト:星3の遠距離攻撃が可能な前衛。元ホストながらも、人当たりがよかったり面倒見が良かったり(どちらも個人的な感想)と多くのドクターからの人気は高い。


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コミュ障狼の謎行動を暴け!(下)

分割しただけあってそんなに時間を空けずに投稿出来ました…

あと、アンジェリーナピックアップの星五以上確定ガチャでプロヴァンスが来ました。あとはレッドさえお迎えすればループス組はコンプリート(のはず)だ!

5/14 20:17にてあとがき含め加筆修正


「さて、これからどうするんだ?中に入った以上、私達がやれることは無いし、ヤマトが調理室に出入りする回数が増えたのも、ドクターに差し入れをするため、だと予想出来る以上やめた方がいいと思うんだが」

 

 

あれから、何のトラブルなどもなくヤマトとミッドナイトがドクターの部屋に入ってからは中の様子を伺えないため、チェンはフロストリーフが内心思っていたことをラップランドに告げる。

 

「いや、それだけならヤマトがボクらに隠す理由なんてないでしょ?明らかにすべきことはまだ残ってるよ」

 

「…すべきことってのは、中で何をしているかを把握することだろうが手段がないだろう」

 

ラップランドの言い分は意外とごもっともなものだったが、フロストリーフが言ったようにチェンとフロストリーフは中の様子を確かめる術など用意していない。それに、声にこそ出してないがこれ以上怪しい行動はしたくない。だが、ラップランドはそんな2人の考えを嘲笑うかのように含み笑いをすると、懐に手を伸ばし

 

「ふふっ、実はこんなこともあろうかとこれを持ってきてたんだよ!」

 

と言って、取り出したのは…

 

「……ガラスコップ?」

 

見た目は何の変哲もないガラス製のコップだった。まさか、これを使って聞くのかと2人はラップランドを見る。視線を向けられた彼女は特に気にせずガラスカップの口をつける部分を壁につけ、底を自分の耳に当てた。

正直、ツッコミどころ満載である。しかしそんなことをしてるラップランドの表情は真剣そのものだ。

本当に聞こえてるのか?と事実だったらロドスの防音性を見直さなければならないことをチェンとフロストリーフが思った時だった。

 

「何をしている?」

 

「「「!?」」」

 

部屋のドアから、その日のドクターの秘書であるシルバーアッシュが出てきて3人に声をかけた。そして、急に出てきたシルバーアッシュに3人が驚いている間に今度はヤマトが出てきた。

 

 

「シルバーアッシュさん、急に…あれ?皆なんでここに?」

 

「いや、えっと…これはだな」

 

ここで「ヤマトを観察(尾行)してました」なんて正直に言えば、その後の展開は容易に想像出来るため、なんと言えばいいか悩んでいるとシルバーアッシュは「フッ」と笑うと中へ入るように言った。

 

「ここで立ち話は酷だろう。今日の業務は終わっているため、中で談笑してもいいだろう」

 

「え、シルバーアッシュさん。それだと…」

 

「なに、別に構わないだろう。お前だって友人に隠し事するのは嫌だろう?」

 

「そうだけど…シルバーアッシュさんが言うなら…」

 

そんなやり取りを見たラップランドは少しムッとする。いつの間にカランドの主と仲良くなったかは知らないが、自分だってまだヤマトと2人だけの秘密なんて持ったことないのにと考えながらも、案内されるがままに中へ入っていった。

 

 

 

****

 

まず、ドクターが酒の席でシルバーアッシュにヤマトのコミュ障を何とかしてあげたいと零したのが今回の事の発端だった。シルバーアッシュはそれを聞いた時は驚いたものの、同盟相手でありながらも友人であるドクターの零した言葉に、元ホストであるミッドナイトならそういうのに詳しいのではないかと答えた。

そして、それを聞いたドクターは「それだ!!」と言い、翌日早速ミッドナイトにヤマトの実態を話した上で、そのことを頼んだ。それを面倒見がいいミッドナイトは二つ返事で承諾。

いざ早速ヤマトを呼ぼうとしたら、仕事を頑張っているドクターにと、差し入れ(手作りお菓子)を持ってきたヤマトが来たため、その日からはドクターの部屋にてミッドナイトによる、「パーフェクトコミュニケーション教室」が開催された。そして、それをドクターが「ある程度良くなるまではラップランドたちには隠しておいて、良くなったら教えて驚かせよう!」と言い、ヤマトは最初こそ3人に隠し事するのは渋っていたが、シルバーアッシュたちを巻き込んで男の同士の約束だ!と丸め込んだのが真相であった。

 

つまり

 

「ドクターが全ての元凶だったんだね?」

 

「うーん、そう言われると否定できないのが悲しい」

 

「その、俺も黙っててごめん」

 

ラップランドはジト目でドクターを見るが、その見られている本人は笑いながら謝罪し、ヤマトも仲が特にいい3人にこのことを隠していたのと、聞かれた時に誤魔化した罪悪感で謝った。

それを受けて、チェンとフロストリーフは元々そのことに関しては咎めようとは全く思ってなかったので特に普通に返す。だが、ラップランドは相変わらずむくれたまま。

ヤマトは、どうすればいいのだろうとミッドナイトに視線を向けるも、彼は「成果を見せてもらおう」と言わんばかりに笑うだけで、シルバーアッシュも同じ態度を取る。ドクターとチェン、フロストリーフに関しては3人でガトーショコラを食べながら談笑している。

 

 

「ら、ラーちゃん!な、なんでも言うこと聞くから許して…?」

 

手助けが望めなくなり、テンパりながらもヤマトは涙目上目遣い(無自覚)でそんなことを言ってのけた。正直、それでもミッドナイトから教えを受けたのかと突っ込みたくなるような発言内容だった。ミッドナイトも「やれやれ…」と言わんばかりに首を振るい、シルバーアッシュはフーっとため息を吐いた。

大抵、こんなことを言ったらさらに油に火を注ぐような発言であり、ラップランドは耳をピクピクさせながらヤマトに聞き返した。

 

「へー……?何でも?」

 

「な、何でも……」

 

「…そっか、この言葉忘れないでよ?今回はそれに免じて流してあげる」

 

ラップランドの反応を内心ビクビクしながら待っていたヤマトは、その言葉を聞いてホッと息を吐いた。

これを見て、他の面々は予想外な反応に少し驚いていた。ミッドナイトは経験上空気が悪くなるだろうと思っていたため、その驚きは他の者よりも大きい。

 

「それにしても、ヤマト。お前の作る菓子はどれもレベルが高いな、菓子料理人としてお前を雇いたいぐらいだ」

 

「お、大袈裟だよ…!これぐらいなら誰だって練習すれば作れるよ」

 

シルバーアッシュが空気を変えようと、ヤマトが作ったガトーショコラを褒め、それを受けたヤマトは口ではそう言いつつも嬉しそうに尻尾を振っていた。ラップランドはそれを面白くなさそうに見つつも、自分に切り分けられたガトーショコラの残りを食べ、紅茶をグイッと飲みきるとヤマトに声をかけた。

 

「さて、さっきの言葉の約束を守ってもらわないとね…」

 

「え…?い、今から?」

 

「それじゃ、そういうわけでヤマト借りるのねー」

 

「あ、うわ!?ちょ、ら、ラーちゃん!?」

 

ラップランドは紅茶を飲み終えて一息ついているヤマトを強引に肩に担ぐ(お米様抱っこする)と、突然の事態にポカーンとしているドクター達を後目に部屋から出ていった。

 

「ら、ラーちゃん!お、下ろして!自分で歩くからぁ!誰かに見られたら…!」

 

そんな声がドアが閉まる前に聞こえたが、ヤマトは下ろして貰えたかは部屋に残っている者たちに知る術はなかった。

そこで、ドクターがふと呟いた。

 

「ラップランドって、ヤマトにも結構執着心?持ってるんだね…」

 

「…まあ、ラップランドに対して自分から友達になりたいって言ったやつはヤマトが初めてだったのがあるんだろう」

 

「いや、あの者に関してはそれだけではないと思うが…」

 

「どういうことだ?」

 

「…彼女が自ら言える日まで待ってやった方がいい。それほど、彼女が抱えているものは大きい」

 

シルバーアッシュはそれで話は終わりだと言わんばかりに、紅茶を飲み始めた。またもや、微妙になった空気に今度はミッドナイトが変えようと口を開いた。

 

「そういえば、ヤマトが作るものは大抵甘さが少し控えめですよね。ヤマトなりのこだわりなんでしょうかね?」

 

ミッドナイトが口にした疑問は、誰もわからなかったがそれを起点にヤマトに関するはなしでドクターの部屋は賑やかになったのだった。

 

 

 

後日、やけに肌艶が良くスッキリしたようなラップランドと、そんな彼女に顔を合わせる度に顔を少し赤くするオオカミを目撃した人がいたとかいなかったとか

 

 




なお、ヤマトとラップランドはえっちいことはしてないですからね?
気が向いたらおまけ編として、どんなことをしていたかは書くかも?

キャラ紹介
ヤマト:愛され系コミュ障狼。お菓子の味付けが甘さが少し控えめな理由はある人がそれが好きだと言っていたかららしいが、一体誰なんだろう?(すっとぼけ)

ラップランド:ヤマトガチ勢になりかけてるループス。ガトーショコラは自分好みの味でそちらに関しては満足。

フロストリーフ:ヤマトが自分の知らないところで成長しようとしていたことを知って、涙腺が緩みかけた。

チェン:実は、ヤマトの涙目上目遣いの「なんでも言うこと聞くから許して」発言の際に鼻から血が出かけた。

ミッドナイト:ヤマトは真面目に自分の話を聞いてくれるため、教えるのは案外楽しいらしい。

シルバーアッシュ:遠距離攻撃が可能な星6前衛。ゲームにおいて、彼のことを語るなら「真銀斬」とイケボだろう。実際彼のせいで女の子にされたドクターは多くないと聞く。当小説では、ヤマトとは甘党仲間。

ドクター:全ての元凶。なお、シルバーアッシュとの酒の席ではアーミヤの話が大多数だとか。


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コミュ障狼の謎行動を暴け!(おまけ編)

気か向いたらおまけ編を書くと言ったな?

あれは嘘だ

はい、ぶっちゃけ自分が書きたい衝動を抑えきれませんでした。

あと、本編の前に書きますけど、これR-18じゃないですからね?この小説はあくまで未成年でも見れる健全なものですからね?(必死)




ラップランドはドクターの部屋から、ヤマトを肩に担いで運ぶという所謂お米様抱っこでロドスの通路を歩いていた。なお、ヤマトは最初こそ「下ろしてぇ!」と騒いでいたが、今では騒ぐと逆に目立つという考えに至ったのか黙って大人しくしている。しかし、先程からたまにモジモジしているのを見ると結構恥ずかしいのだろう。

そんなヤマトの心境は、誰にも合わないことを切に願うだけだった。というより、信じてはいない神にさえ内心祈っている始末なのだから彼の焦りっぷりは凄まじい。

 

「っ!すまない、考え事を…何をしているんだ?」

 

「!!!!」

 

だが、そんなヤマトの悲痛な願いは無常にも打ち砕かれた。通路の曲がり角で、考え事をしていてラップランドとぶつかりかけたテキサスと鉢合わせてしまったのだ。やはり、神はこの世に存在しないらしい。

 

「やあ、偶然だねテキサス。本当はキミとも色々話したいんだけど、ちょっと急いでるからね、失礼するよ」

 

「あ、ああ…」

 

テキサスは、普段とは違う態度で接してくるラップランドに戸惑いながらも道を譲る。そして、すれ違いざま見えたヤマトは手で顔を隠しているものの、隙間から見える肌は可哀想なぐらい真っ赤だった。

 

「(………罰ゲームかなにかだろうか)」

 

テキサスは、そんなことを考えながらも変に突っ込んで自分も巻き込まれるのは嫌なのでヤマトには悪いがラップランドを止めることはしなかった……正直、めちゃくちゃ気になるが。

 

 

****

 

「ふう…やっと着いた…ヤマト、下ろすよ」

 

「あ、う、うん…え?」

 

ラップランドは自分に宛てがわれている部屋の中に入ると、ヤマトに一声かけて彼を下ろした──自分が使っているベッドの上にだ。

当然、そんな所にポフンと置かれたヤマトは目を丸くする。ラップランドはそんなヤマトの隣に座る。ギシッと、ベッドのスプリングがいつもの倍の人が乗っかているためか音を立てる。

先程から、錯乱気味のヤマトに対してラップランドは自分の手を──

 

モフッ

 

「ヒャン!?」

 

ヤマトの尻尾に伸ばして触った。突然敏感なところを触られたのと、触られると全く気づけなかったヤマトは驚きと駆け巡った感覚に短い悲鳴をあげてしまった。

 

「予想以上に可愛い声で鳴くんだねぇ…それに、尻尾の毛並みとかもいいし、触り心地も気持ちいいや」

 

「ら、ラーちゃん!?な、何ひょっ!?」

 

ラップランドの行動と発言を問いただそうとヤマトは声を上げようとするも、そうする瞬間に尻尾の付け根…特に敏感なところを触られてしまい声が上ずってしまう。

 

「ふふ…ヤマト、さっきボクに『何でも言うこと聞くから許して』って言ってたから、その言葉の通りに尻尾を触らして貰ってるんだよ?」

 

「で、でも俺は…ッ!何でもする…って……言って、ない…ッ!」

 

「それじゃ、言うよ。ヤマトの尻尾と耳をボクが満足するまで触らせて?もちろん、言ったから反論はないよね?」

 

「そ、そんなぁ」とヤマトは零すも、言ったことは取り消せないのは分かっているため、このまま反抗せず大人しくされるがままにされるしかないというのは自明の理。それでも、ヤマトはせめてと懇願する。

 

「そ、その…っ…優しくしてよ…?」

 

「…そんな顔でそう言われちゃうと、煽ってるように受け取られるから気をつけなよ?」

 

「え、ちょ…」

 

その懇願は、ラップランドの勢いを増加させるだけの着火剤となっただっけだった。

 

****

 

「ふっ…んう…ふぁ……ひゃあ!?」

 

「……へー、ヤマトはここが触られるといいんだね…ここら辺はボクも触ってて気持ちいいから重点的に触ってあげるね?」

 

「は、ふっ……ッ!」

 

ラップランドに尻尾と耳を触られ続けてはや数分が経った現在、ヤマトは既に力が抜けていながらも、漏れでる声を必死に抑えている。そうすると、必然的に口ではあまり呼吸ができないため鼻で酸素を吸うことになるのだが、ラップランドはヤマトを後ろから抱き抱えている状態…所謂あすなろ抱きにしている為、両者の距離は近い。つまり、どういうことかと言うと、女性特有の香りがヤマトの鼻にダイレクトに入ってくるのだ。

 

「(ら、ラーちゃんの匂い…なんか甘くていい匂い…)」

 

ヤマトはそんなことを頭の隅で考えいる中、ラップランドはラップランドで今のヤマトの姿と反応を見てゾクゾクするような満足感と、もっとヤマトの色んな反応を見たいという欲求に駆られていた。

そのため、ラップランドは敢えて尻尾の触る手の動きを緩めた。すると、ヤマトは何処か催促するように涙目でこちらに顔を向け、尻尾も同じような反応をした。

 

「(っ!!)」

 

ラップランドは一瞬、ヤマトの要望通りに手を動かしかけたが寸のところで、それを抑え敢えて緩めたままにした。ラップランドはヤマトの今までの反応上、敢えてヤマトが望んだこととは反対のことをするといい反応をするのを覚えていた。そのため、今回も同じようなことをしたのだ。

 

「ら、ラーちゃん…ひど、いよ…」

 

ヤマトは、そんなラップランドに対して心の底からは思ってないが、そんなことを口にした。それも、涙目で上目遣い、拗ねるような声音で。

 

「ふふ…それじゃご要望通り…に!」

 

「ひゃあ!?」

 

ラップランドはそれを見て、先程から感じているものよりも更にいい満足感を感じると同時に、流石にいいだろうと思いヤマトのご要望通りにすると、ヤマトは先程よりも大きい声を出したと同時にラップランドに先程よりも強くもたれかかった。ラップランドはそれを無視して、尻尾と耳を触り続けるも、ヤマトは声を出すどころか耳や尻尾を動かさない。

 

「…?ヤマト?」

 

「…スゥ……スゥ……」

 

どうしたのかと、ラップランドがヤマトに声をかけると返ってきたのは静かな寝息。ヤマトは、度重なる経験したことの無い感覚に疲れ意識を失ってしまっていた。

 

ラップランドはもう少し味わいたかった気持ちもあったものの、こんなことになるまで触り続けていたことに少し罪悪感を感じていた。

そんな時、ラップランドは眠気を感じ欠伸をした。そういえば、昨日はヤマトが隠し事していたのを知ったせいであまり眠れなかったんだっけ、と思うと自分を困らせたのだからもう少しだけワガママを押し付けてやろうと、ラップランドは考えた。

 

ラップランドはヤマトを静かに寝かし、掛け布団を自分とヤマトの上にかけ、腕を伸ばしてヤマトを胸の内に抱くようにする。

目を閉じる前に、チラッとヤマトの顔を見る。その寝顔は彼の実年齢よりも幼く見え、自分らが居ない時のポーカーフェイスや戦場での立ち振る舞いからは考えられないものだった。

 

「不思議な子だな…キミは。ボクにこんなに暖かいものをくれたのは、キミが初めてかもね…おやすみ、ヤマト」

 

ラップランドは思ったことを口にすると、そのまま目を閉じた。

 

 

その後、ラップランドの後に起きたヤマトが先程の行為と抱き枕にされていたことで顔を真っ赤にして、ラップランドに恥ずかしそうに涙目で抗議したのは言うまでもない。

 




これ、セーフなのかアウトなのか際どいなぁ…でも個人的には満足()


キャラ紹介

ヤマト:圧倒的ヒロインムーブをかます草食系ループス(男)。実は元傭兵ながらそういったことには耐性がなく、それ方面の知識はかなり低い。でも、男の子だから興味はある模様。なおラップランドのMOFUMOFUのせいで、あの感覚が忘れられなくなったとか。あと、上目遣いになるのは、ヤマトが約160cmなのに対し、ラップランドは162cmでラップランドの方がヤマトより身長が高いという理由がある。ちなみにチェンは168cm。

ラップランド:ヤマトをいただきます(誤字ではない)した肉食系ループス。ヤマトの反応も良かったけど、尻尾と耳の感触はかなり良く、出来たらまた触りたいとある人物に零したそうな。

テキサス:結局、あの後何があったのか凄い気になってヤマトに聞こうとするも顔を真っ赤にして逃げられたため、かなり嫌だったがある肉食系ループスに聞いたらしい。なお、聞いた時は説教をかましたとの噂も。


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コミュ障狼×酒盛り=???

今回はやっと昇進2できたうちのオペレーターが出てくるお話をば。

にしても、全然このすばの方執筆進まねぇ…(白目)

それはそうとスカイフレアさんのメテオ強い(KONAMI感)

今回はいつもより長めです。そして、最後ちょいシリアス


「うぅ…私だって、龍門の全ての人のことを思って…ひっく…」

 

「ああ、もう。隊長にラップランド殿。飲み過ぎですって…」

 

「えへへ……やまとぉ……」

 

「………(あわわわ、俺はど、どうしたら?)」

 

ある一室にて、顔を真っ赤にして泣きながら心の内を吐き出すチェンとそれを対処しているホシグマ、明らかに酔っ払っているラップランドにそんな彼女に抱きつかれて慌てているヤマトの図が広がっていた。

 

何故こうなったのか?それを解明するには時間を少し遡ることになる。

 

 

****

 

「ヤマトは、お酒を飲んだことはあるのか?」

 

「え、いや、無いですけど…」

 

ヤマトの部屋にて。この時は珍しくチェンとヤマトのみしかおらず、話題が尽きたチェンが唐突に出した質問に、ヤマトは「?」を浮かべながらも首を振って答えた。

それに対し、チェンは「そうか」と呟くと、今度は飲める歳なのかどうかを尋ねた。これにはヤマトは首をこくんと縦に振って肯定の意を示した。

 

グッ…ンンっ!…それなら今夜ホシグマ、ああ私の部下なんだが彼女と私で酒を飲もうと思ってるんだが、どれぐらい飲めるかを確かめるついでに一緒にどうだ?」

 

「えっと……」

 

チェンの問いにヤマトはどうしようか迷った。ヤマトの傭兵時代は年齢的に合法ではなかったのと、ある事情で周りが飲んでる中、自分だけお茶やジュースというのが常であり、飲んだことは無かったためお酒を飲んでみたいという欲求があるのは事実だが、酔っ払って友人のチェンはおろか、見知らぬ人であるホシグマにまで迷惑をかけたくないという思いがあるのもこれまた事実。

チェンはウンウンと悩むヤマトを見て、彼がどう言ったことで悩んでいるかをすぐ察し、助け舟を出すことにした。

 

「別に、酔っ払っても迷惑だとは思わん。ホシグマだってお前が酔っ払ったところでなんとも思わんから、気にするな。まあ、私の言葉が信じられないなら断っても構わないが」

 

「そ、そんな事ないよ!それじゃあ、俺も参加させてもらうよ?」

 

「ああ、わかった」

 

チェンは最後の方に敢えてキツイ言い方をした。チェンとて、ヤマトと交流する機会はそれなりにあったので、どういう言い方をすればヤマトが納得するかは心得ている。その結果としてご覧の通り、ヤマトを参加させるところまで漕ぎ着け、その事実にチェンは内心ほっと息をつく。

 

ところで、なぜチェンはこんなことを提案したのかというと、とある案件でラップランドに説教をかました後に彼女が「今度は酔っ払った反応も見てみたいなぁ…」と呟いたのが耳に入り、このままではヤマトが(色んな意味で)危ないと感じ、止められなかった場合のことを考えて(本当はその前に阻止したいが)、ヤマトに自身のボーダーラインを把握させるためだ。

ボーダーラインを把握していれば、すぐに酔っ払うことはなくなり、ラップランドにいただかれる(意味深)可能性も低くなる。……無論、ヤマトと一緒に酒を飲んでみたいという欲がない訳では無いが。

 

「あ、おつまみ作ってこようか?」

 

「いや、別に……待て、お前は酒のつまみも作れるのか?」

 

「うん、作れるよ」

 

チェンはヤマトがお菓子以外のものも作れるのは知っていだが、まさかおつまみも作れるということまでは知らなかった。ヤマトの腕なら、どれぐらい美味しいものが食べれるのだろうか?チェンはそう考え、ヤマトに作ってくれるように頼み、頼まれた本人は笑顔で「任せて!」と言い、場所は参加する3人の中の部屋の位置的に、ヤマトの部屋が丁度中間のため、ヤマトの部屋になりこの場はヤマトがおつまみを作るため解散となったのだった。

 

 

****

 

『なるほど…件の彼が部屋だけではなく肴も用意してくれるのか…』

 

『ああ、急とはいえこんな話になって済まないな…』

 

『いえ、理由も理由ですし私は気にしませんよ。それに、個人的にも彼の人となりを見たいのもあるので』

 

ヤマトの部屋に向かいながら、ホシグマは夕飯の時のやり取りを思い出していた。ホシグマがこの話を受けた理由の大半は後者であったりする。ホシグマがロドスで聞くヤマトの評価は「無口な元傭兵」「近寄り難い存在」「何を考えてるか分からない」といった余り良くないものだ。しかし、自身の上司であるチェンは酒の席で彼について「ただ人との接し方が分からないだけで根はいい奴」「天然で騙されやすいやつ」「いい意味で精神的に悪いやつ」ということを零していたのだ。正直、こんなことを聞かされたら気にならないと言った方がおかしい。

 

「っと、確かここだったか」

 

ホシグマは伝えられていた部屋の前に着いたことに気がつくと、意識を切り替える。これからやることは酒を飲むことだが、本命はヤマトの人となりを見極めることなので、あまり気を抜いてはいけない。

 

「…よし、では入るか」

 

ホシグマはそう言って中に入り──

 

「…………(ニコニコ)」

 

「…………(青筋)」

 

「ら、ラーちゃんとチーちゃん、そそんなに睨み合わなくても…」

 

顔は笑っているが目が笑っていないラップランドと、青筋を立て明らかに怒っているチェン、そしてアワアワしながらも何とか剣呑な雰囲気を抑えようとするヤマトを見た時点で、何となくヤマトの人となりを察してしまったのだった。

 

 

****

 

あの後、ホシグマが仲裁に入ったのに加えヤマトが涙目上目遣い(伝家の宝刀)(無自覚)で懇願したおかげで剣呑な雰囲気はなくなり、何故この場にラップランドが居るかをヤマトが説明した。

何でも、調理室でおつまみを作っていたところをラップランドに発見された上、何故おつまみを作っているのかと聞かれ、隠す必要も無いかとヤマトは考えて正直に、今夜チェンとホシグマと一緒に酒を飲むためだと、話したところ、彼女は自分も混ぜろと言い出したため、ヤマトはチェンにそのことを伝えて彼女も加えてはダメかと聞き、その伝えられた本人はラップランドを加えない口実が思い浮かばなかったため、渋々了承しラップランドは晴れてこの場に参加できたとの事らしい。

しかし、ここで疑問が生じる。

 

「では、何故あんな状況に…」

 

「あ、えーとそれは…」

 

「そこのバカ狼がヤマトにセクハラしてたからだ」

 

「人聞きが悪いなぁ、ボクたちなりのスキンシップだよ」

 

「一方的にヤマトの尻尾を触ることがか!?私が来た時にはヤマトは際どい感じになりかけていただろうが!!」

 

「と言いながらも、隊長さん羨ましそうにも見てたよね?」

 

「見てない!!」

 

ホシグマはそれを聞いて何となく察した。恐らく、ラップランドはチェンが来る前にヤマトの部屋に来ており、何かしらの手段を使ってヤマトの尻尾を弄っていたのだろう。そして、尻尾というのは敏感であるためそこをチェンがやばいと判断するほど触っていたとなれば、それは注意はするに決まっている。

 

「も、もう俺は気にしてないからこの話は終わりにしよう?お酒飲む時間が無くなっちゃうし…」

 

「……仕方ない、この話はフロストリーフも入れて後でしよう」

 

「それって終わってなくない?」

 

「まあまあ、とりあえず皆さんはどれを飲む?あ、ヤマトは初めてだから最初は弱いやつでいいか?」

 

「う、うん。あ、おつまみ持ってくる」

 

そうして、始まった酒盛りは剣呑な雰囲気があったとは思えないほど盛り上がった。ヤマトは最初こそ、ホシグマにコミュ障っぶりを発揮していたが彼女やチェン達がヤマトに合わせて話を繋げたため、次第に打ち解けていった。

そして、ヤマトが作ったつまみがお酒と合う上美味なのもあって、酒がどんどん進んでいった結果…

 

「ひっぐ…私はぁ……うう…」

 

「やまとぉ…ふふっ……」

 

冒頭の酔っ払い2名が出来上がったわけである。チェンが酔っ払ってしまったことに関しては一重にヤマトのつまみが美味しすぎたからという、本人はあまり悪くない理由だ。しかし、ラップランドに関してはそうでは無かった。

なんと、このオオカミはヤマトを酔わすためにスクリュードライバーという、度数が高い割には飲みやすい酒をを自前で持ってきてそれをヤマトに飲ませていたのだ。ヤマトはそれをなんら疑うことなくクピクピと飲んでいたのだが、「ラーちゃんも飲もうよー」とラップランドに言ったのだ。ラップランドはなるべく素面でヤマトの酔っ払ったところを見たかったが、自分だけ飲まないのは怪しまれるのでカモフラージュ程度で飲んでいた。

 

しかし、それがラップランドにとってのミスであり誤算でもあった。彼女は勝手に『ヤマトは自分よりも弱い』と勝手に鷹を括っていたせいで、自分のペースより早いヤマトのペースに気が付かずに合わせて飲んでいた。結果として、ラップランドはヤマトより先に出来上がってしまったというわけだ。自業自得である。

 

さて、そんな酔っ払いオオカミに抱きつかれてるヤマトは内心穏やかではなかった。

現在、ラップランドはギューッという効果音が聞こえてきそうなほどヤマトの横に抱きついている。そうすると、必然的に女性特有の匂いや柔らかさが伝わってくるのだ。ヤマトは尻尾をモフられた時も密着していたがあの時は別の感覚でそれどころでは無かったので気にする余裕がなかった。

しかし、今はそんな事態には陥ってないため、自分の腕に伝わってくる柔らかいものの感触を感じてしまっていた。

 

「えへへ…やまとぉ……」

 

(ら、ラーちゃんのアレの感触が……ううっ…)

 

全く酔っていないヤマトにとって、これはかなり心臓に悪いものだった。しかも、女性特有の不快にならない甘い香りも来る始末で初心+思春期な男の子にとっては精神衛生上かなり悪かった。

 

「ラップランド、そんなにくっついてるとヤマトが酒飲めないから離れなさい」

 

そんな時、チェンの相手をし終えたホシグマがヤマトからラップランドを引き剥がした。ヤマトとしては残念な気持ちもあるが、助かったという気持ちの割合の方が多い。そして、引き剥がされたラップランドは元々酔っ払って意識が落ちかけていたのもあって、ホシグマに文句を言いつつもそのまま寝落ちしてしまった。

 

「あの、助けてくれてありがとう」

 

「いや、気にしなくていい。それより、掛け布団を隊長の分まで持ってきてくれるか?」

 

「え?あ…チーちゃんも寝ちゃったんだ…分かった、すぐ持ってくるよ」

 

ヤマトは、同じく寝落ちしているチェンを視界に入れると納得したように呟き、自分のベッドから掛け布団を2枚持ってきてチェンとラップランドにかけた。

ホシグマは酔っている様子がないヤマトを見てふと呟いた。

 

「…それにしても、ヤマトは全然酔ってないな」

 

「え?あ、でも度数が弱くて飲みやすいお酒をラーちゃんから飲ませてもらってたからかも?」

 

そんな訳あるか、とホシグマは言いかけてそれを飲み込んだ。実は、ホシグマはヤマトが掛け布団を取りに行っている間にラップランドが持ってきたお酒を飲んで、それがスクリュードライバーだと特定していたのだ。そして、それをラップランドが先に潰れるほどのペースで飲んでケロリとしているのだから、ヤマトはもしかしたらかなり強い体質、いわゆるザルということなのだろう。

まあ、どっちにせよ丁度2人だけで話せる状況が出来たわけなので、ホシグマはヤマトと酒を飲みながら、彼から色んな話を聞いたのだった。

 

 

 

*****

 

「……あ、頭が痛い………」

 

翌朝、二日酔いになったチェンは自分の部屋で目を覚ました。

昨日は、ツマミが美味すぎてつい早いペースで酒を飲んだことは覚えているが、それからのことを思い出せないということは、寝落ちしてしまったのだろうと結論づけ、何とかノロノロと誰かが寝かしてくれたのだろう、ベッドから出ようとしたところでドアが開き、そこからお盆の上に土鍋とスプーンと水をのせたヤマトが入ってきた。

 

「あ、チーちゃんおはよう。体調は大丈夫?あ、体起こさなくていいよ」

 

「や、ヤマト?なんでここに…」

 

「それは後で説明するから、とりあえず今の体調を聞かせて?」

 

「……頭が痛い」

 

チェンの返答にヤマトは「わかった」と返すと、近くから椅子をチェンのベッド付近まで運ぶとそこに腰かけた。

 

「はい、まずは水を飲んで」

 

「あ、ああ。ありがとう…」

 

手渡された水を飲むと、幾分か気分がマシになったチェンは先程流されたことを尋ねた。

 

「それで、何故ヤマトがここに…?」

 

「それなんだけど…昨日、チーちゃんを部屋に返す時にホシグマさんが、二日酔いになってるだろうから申し訳ないけど看病してくれないかって頼まれんだ。あと、俺の方が喜ぶだろうからって言ってたっけ?」

 

チェンはそれを知って色々と頭を抱えたくなった。恐らく、ホシグマは気を使ってくれたのだろうが、正直誘った身としては色々気まずい。

しかし、ヤマトはそんなことをお構い無しに土鍋の蓋を開けた。

そこからは、生姜と味噌の匂いが漂ってきてチェンの食欲をそそった。

 

「これは…?」

 

「これは、しじみ汁で作った卵雑炊だよ。二日酔いに聞くし、食べやすいって好評だったんだ」

 

ヤマトはなんてことは無いように答えたが、その言い方からすると今まで二日酔いになった人を看病したことがあるように伺え、チェンは慣れているのだろうかと考えていたところで

 

「はい、口開けて」

 

「ッ!?」

 

ヤマトの突然の行動に度肝を抜かされた。

 

「や、ヤマト、お、お前何を…」

 

「??何って、チーちゃんに雑炊を食べさせようと…」

 

違う、そうじゃないとチェンは言いたくなったが、ヤマトの目は全く邪なことは考えておらず一重にチェンのことを思っての行動のためだと分かったため、言い出すのをギリギリこらえた。

 

「じ、自分で食べれるから大丈夫だ。それより、ホシグマ…は大丈夫だろうからラップランドはどうした?」

 

「ラーちゃんは今俺の部屋で寝てるよ?」

 

「ぶふぅ!?」

 

これまたぶっ飛んだ発言に驚き、詳細を尋ねると、ラップランドを運ぼうとしたらたまたま目を覚まし、ここで寝るー!と駄々を捏ねだしたため仕方なくヤマトのベットで寝かしたとの事。

それを聞いたチェンは色んな意味で頭が痛くなってきたのだった。

なお、この後はそれを「やっぱり体調悪いんじゃん!」とヤマトが誤解し、結局押し切られチェンは結局ヤマトに食べさせてもらうはめになったのだった。

 

 

****

 

『俺は…俺を拾った拾い主にとって有能な◾◾になるために育てられたんだ。だから、一通りの武器が扱えるのはそういう理由だよ…結局、感染者にならなかったうえにアーツ適性も上がらなかったから、捨てられたけどね』

 

ホシグマは昨夜の酒盛りで少しだけ酔わせたヤマトから聞いた彼の過去の一部の話を思い出していた。

彼の過去は想像を超えたものであり、その過去のせいであんな人物になってしまったのだとホシグマは結論づけた。

 

「……彼の()()()()()としての年齢は幼いのだろうな」

 

ホシグマの呟きは誰にも聞かれることはなく、虚空へと消えていった。

 

 




タイトルの???に入るのは、介護役でした!まあ、分かるはずないよね…

キャラ紹介のコーナー

ヤマト:酔っ払った人を介護するのに慣れてる天然オオカミ。そしてザルということが判明した。なお、アーンは傭兵時代ではよくやっていたらしい。そしてそれなりにシリアスな過去がある模様。

チェン:アーンが終わったあとは、恥ずかしくて顔を見せられなかったとか。なお、チーちゃんはヤマトが着けた渾名でありつけてくれたことに関しては何気に嬉しい。あと、雑炊は美味かった。

ラップランド:ヤマトから介護&アーンもして貰えてご満悦。後日、フロストリーフとチェンから酔わせようとしたことに関してはきっちり怒られた。

ホシグマ:星6重装。純粋な防御力は他の重装に比べると低めなイメージがあるが、攻撃力が高く下手な前衛より強い。基本的には礼儀正しく冷静な人物だが、プライベートだとタメ口で一人称が私になる。面倒見がいい姉御肌。そして、当小説では一足先にヤマトの過去を知った人でもある。なお、今回の酒盛りでヤマトが酒に強いことがわかったので彼を酒飲み仲間認定した。


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コミュ障オオカミと赤いオオカミ

今回は感想の方でちらほら名前が出てたあのオペレーターの話です。

……喋り方、合ってるかなぁ()

それでは本編どうぞ!



「視線を感じる?」

 

「うん…」

 

ある日、ヤマトはここ最近どこからか視線を感じていた。その視線を向けた方向を見てみても誰もいないため、最初は気のせいかと思っていたのだが、それが続くためヤマトはドクターに頼った。

 

「フロストリーフやラップランドたちにはその事話した?」

 

「いや、何となくフーちゃんやラーちゃん、チーちゃんには相談しちゃダメな気がして…」

 

「そっかー」

 

ドクターは適当に返事しつつも、ヤマトが例の3人に話していないことにほっと一息ついた。仮に彼女たち、特にラップランドに相談していてたら、今頃とんでもないことになっていた可能性があったからだ。

しかし、視線を感じるとはどういう事なのか?しかも、何かと鋭いヤマトがそれを感じてその方角を確認しても何者かが分からなかったということは、相手は相当な手練だろう。その時点である程度は絞りこめるが、どの人物も理由が思いつかない。

ドクターとヤマトが互いに考えている中、その日の秘書であるテキサスが珍しく口を動かした。

 

「…ヤマト、どんな些細なものでも構わないからその時視線以外にも何か感じなかったか?」

 

「…えっと、その凄い情けない話なんだけど……その視線を向けられた時、理由は分からないけど恐怖を感じたんだ。抑え込めないほどではないけどね…」

 

テキサスの質問にヤマトは、自分のことを嘲笑するかのように答えた。

そして、その答えを聞いたドクターとテキサスはすぐに視線を向けた人物が誰なのかが分かった。

そして、ドクターはそのオペレーターとのある会話を思い出し、彼女がヤマトに対してそのような行動したわけを1人納得していた。

 

個人的には彼女とヤマトは仲良くなって欲しいとは思っている。だが、彼女の特性なのか不明だが、ループスのオペレーターは理由は不明だが彼女に対して恐怖の感情を抱いてしまう。事実、テキサスとプロヴァンスは彼女のことを避けている。それを考えると、今からヤマトに自分が頼むことはとても酷いものなのだろう。

 

「ヤマト、実は────」

 

 

それでも、ヤマトなら大丈夫だと思って頼む俺は何なんだろうな?とドクターは思いつつも、彼女──レッドについて話した。

 

*****

 

「………」

 

ヤマトはドクターに相談した翌日、早速視線を感じていた。ヤマトは湧き出る恐怖心を抑え込むと同時に、気が付かれないようにその視線がどういったものかを確かめていた。そして、ヤマトはその視線に込められたものが敵意や殺意などといったものではなく、友好的なものと興味(興味に関しては特に尻尾)的なものだと分かった。

 

「…………(じー)」

 

「………(な、なんて声かければいいんだろう…)」

 

しかし、その事が分かってもコミュ障オオカミヤマトはなんて声をかければいいかが分からない。結果として、ヤマトを物陰から見つめるレッドとポーカーフェイスで佇むヤマトという図が出来上がった。

 

「……そこにいるのは分かっている。(話がしたいから)出てきてくれ」

 

「………」

 

ヤマトは抑え込んでいる恐怖心とあがり症によるテンパリで肝心なことを言えなかったが、レッドはひょこっと顔を出すとトコトコと歩いてきた。

 

「……………」

 

 

「…………(……何話すか忘れたあぁぁぁぁ!?)」

 

ヤマト、ここで予め話そうと1晩かけて考えていたものが頭からすっぽ抜けるという痛恨のミスをしでかす。……なお、ここで『ついでにどう話しかけるかも考えておけばよかったんじゃ?』というツッコミはどうか抑えて欲しい。ヤマトだってこれでも精一杯頑張っているのだ。

 

「……ヤマト、変わってる」

 

「……?どういうことだ?」

 

ヤマトが内心焦っている中、レッドがそう呟いた。

いきなり変わってる発言されたヤマトは、なぜそう思ったのか不思議に思い聞き返した。

 

「ヤマト、レッド、怖がらない。変なオオカミ」

 

「(え、抑え込んでいるとはいえ恐怖心持ってんだけど…)」

 

レッドの発言にヤマトは内心驚いているが、彼女がそう感じてしまった訳はヤマトの無駄に高レベルなポーカーフェイスのせいである。そう、レッドから見たらヤマトは向けられる視線にこそ反応はしていたものの、それはどこから来るものかを探すだけで全く怖がっていないというものだったのだ。

そして、レッドの独白は続く。

 

「仲良くできる、思った」

 

「………!」

 

レッドのその言葉を聞いたヤマトは一瞬だけ目を見開き、そして昨日ドクターが自分に告げた言葉の意味が分かった。

なら、自分がやることは一つだけだ。ヤマトは覚悟を決めてレッドと向き合う。

 

「正直に言うと、俺はお前に対して恐怖心を抱いている」

 

「………」

 

「ただ、それでも俺は仲良くなれたらとと思っている」

 

ヤマトが最初に発した言葉に、レッドは悲しそうに顔を俯かせたがヤマトが続けて発した言葉を聞くと顔を上げた。

だが、その顔には疑問の表情が浮かび上がっていた。

それはそうだ、怖いのに仲良くなりたいなんて誰だっておかしいと思うのだから。

 

「どうして?」

 

「……俺がそうしたいと思うからだ」

 

「………!」

 

「それに、恐怖心を抑え込むのは慣れている。抑え込んでいればいずれはお前に対して、恐怖という感情は持たなくなる」

 

ヤマトの戸惑いも何も無い真っ直ぐな言い方に、レッドは彼が嘘をついてるようには見えなかった。

 

「……変なオオカミ」

 

「…………」

 

「これから、よろしく」

 

「……ああ、こちらこそ」

 

──なんとか丸く収まった。

ヤマトがその事実に安堵していると、レッドの視線が自分の尻尾に向けられていることに気がついた。

そういえば尻尾には最初から興味津々だったけ?とヤマトは思うとレッドにあることを提案した。

 

「触りたければ、触っていい」

 

「……!いいの…?」

 

「ああ、気になるのだろう?別に減るものでもない」

 

──まあ、ラーちゃんに触られた時みたいなことにならないでしょ。

 

ヤマトはそう思って、軽く提案したのだがこれが誤りだと気がつくのは今から数分後の出来事である。

 

余談であるが、「ヤマトが襲われてる気がする!」とキツネと龍に説教されてる中、そう叫んだ肉食系ループスが居たとか居なかったとか。

 

****

 

○月♪日

レッド、ヤマト、仲良くなった。しっぽ、ミミ、すごい気持ちよかった。もふもふグランプリ、1番なるかも。

 

 

 




キャラ紹介

ヤマト:レッドに(尻尾と耳を)頂きますされた草食系ループス。あの後、廊下を通りかかったテキサスのおかげで無事(?)生還。レッドには加減というものを教えようと心に決めたらしい。

レッド:星5特殊オペレーター。ヤマトの尻尾と耳は我を忘れかけるほど気持ちよかったらしく、ヤマトがあんな状態になるまで触る気がなかったと反省。なお、今回の一件以来ヤマトと一緒にいる姿を見かけた者がいるとか。

テキサス:実は心配で様子を見に行ったところ、レッドに(見せられないよ!)な姿にされたヤマトを見つけ、急いで救出した。この一件でヤマトからかなり慕われるようになった模様。悪い気はしない。

ドクター:レッドから相談を受けていたのを思い出して、カノジョがかつてのヤマトに似ているように感じ彼を諭した。なお、レッドがモフモフ厨だったのは忘れていたので、そちらへの注意はすっかり忘れてた。

どこかの肉食系ループス:説教からのらりくらりと逃げていたが、肝心な時に捕まって助けに行けないという失態を犯す。「あれ、ボクの出番あれだけ!?」


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YAMATO'S キッチン

前回の話で言い忘れてしまった&活動報告で既に言った通り、この「ロドス劇場」お気に入り100件突破しました!!こんな作品をお気に入り登録していただいた皆様、本当にありがとうございます!!これからも投稿ペースと作品の質を上げられるように精進していきたいと思います!


さて今回は初めての試みなので上手くいってるか不安です…なので読みづらいなど、あればバンバンお願いします!

そして今回の内容はタイトルから分かっちゃうと思いますけど…それではどうぞ!


「ふむふむ…基本的な所は出来てるし、全体的に手馴れているね…」

 

調理室にて、ヤマトはグムとドクターによってここに来るように言われた行動予備隊A4のメンバー、そしてテキサスに見られながら料理をしていた。

そして、見られているヤマトの表情は真剣で注がれる視線を物ともせず手を動かしていた。

 

 

何故、こんなことになったのか?それは今から時間を数時間ほど巻き戻す必要があった。

 

****

 

「食堂の手伝い?」

 

ある日、呼び出されたヤマトはドクターから唐突に頼まれた内容を思わず聞き返した。

 

「うん、実は最近ロドスに来たオペレーターが多くなってきた影響で食堂の人手が足りないってグムが言ってたからさ。ヤマトってお菓子以外の物も作れるって聞いたからお願いしたいんだけど…」

 

「手伝いはいいけど…俺の手が加わったものを食べたい人なんているかな…」

 

 

てっきり承諾してくれるだろうと思っていたドクターにとって、ヤマトの反応は予想外だった。しかし、ヤマトが言った言葉もよく考えれば納得できるものでもあった。

実は、ヤマトのロドス内の評価は前より多少は良くなった程度で「よく分からないやつ」や「近付きづらい」といったものは変わらずだ。

ヤマトはそのことを知っているからこそはあのような発言をしたのだろう。

 

それならこちらが取る手段は──

 

「そしたらさ、グムにはどれぐらい出来るか見たいって言ってたしそのついでに、他の人に食べて貰って率直な感想を聞かせてもらおうか。確か、この後なら行動予備隊A4のメンバーなら時間的に大丈夫だったな。あ、ヤマト1人だけだとあれだから…あー、テキサスしかいないけど…まあ、いないよりはマシかな?」

 

「ゑ??あ、ど、ドクター?」

 

自信をつけてもらう機会を与えることだ。

 

****

 

そして話は冒頭に戻る。

今回、ヤマトに出されたお題はロドスにおいて定番メニューでもある、ハンバーグ定食を作ることだ。

ヤマトはハンバーグの作り方はもちろんのこと、ロドスのハンバーグ定食も食べたことはあるため味付けや付け合わせがどういったものかは分かっているので後は自分の方法で作るだけだった。

 

ヤマトはまず、みじん切りにしたタマネギの半数以上の量をレンジで加熱。その加熱している間に、付け合わせの調理を開始。タマネギを切る前に固めに茹でておいたアスパラガスを3等分に切り、それらをバターを溶かしたフライパンで炒める。そして、味付けとして最後に塩コショウを少々振るう。

次は、同じくタマネギを切る前にくし切りにし水に晒してアクを取っておいたじゃがいもの水気を切り、中温の油で素揚げにし軽く塩を振って味付け。

 

想定した時間で、加熱し終わったタマネギを洗ったフライパンで弱火でじっくりとあめ色になるまで炒め、あめ色になったらお皿に戻し冷ます。

 

(次の作業はなるべく手早くやらないとね…)

 

ヤマトは頭の中で意識しながら次の工程に取り掛かる。次にやるのは、ハンバーグのタネ作り。

冷えたひき肉とひとつまみの塩をボウルに入れ、粘りが出るまで手早くよく混ぜ、粘りが出てきたらパン粉、卵、ナツメグ、胡椒、生タマネギと炒めたタマネギを加えて更に混ぜる。

それを終えたら、手のひらに軽く打ち付けるように空気を抜きながら形を整える。

 

「……ここまでの動作に全く無駄がありませんね」

 

「そうだね、包丁とかの扱いも上手かったし結構経験あるのかも?」

 

(……お菓子以外も作れるとは聞いていたが、ここまで手際が良かったのか)

 

ここまでの工程を見ていたアンセルが思っていたことを呟き、それに続く形でアドナキエルも思ったことを口に零す。そして口にこそ出ていないがテキサスもヤマトの手際の良さに感心していた。

 

一方、ヤマトのハンバーグ作りも大詰めとなってきていた。

形を整えたハンバーグを油を引いたフライパンの上に置き、弱めの中火で焼き始めた。

暫くしてヤマトは焼いてる面が固まってきたのを確認すると同時にタイマーをスタートさせ火を弱火にする。

この時点で調理室には既に美味しそうな匂いとハンバーグを焼く音が漂い始め、その場にいる者たちの食欲をそそり始めた。カーディに至っては目を輝かせていかにも「楽しみ!」といったオーラを漂わせていた。

ヤマトがそれを見て内心苦笑いを浮かべ、タイマーがなったと同時にハンバーグの側面が白くなっているか確認し、なっているのを確認するとひっくり返してまたタイマーをスタートさせた。

タイマーがなったと同時に、ヤマトは火を消して蓋を被せて暫く放置した。

ヤマトはその間に、タマネギとニンニクを使ったソースと卵スープを作り終えると今度は大根をすりおろし始めた。

 

「???」

 

(なるほど…ヤマトやるね…)

 

突然大根をすりおろし始めたヤマトに行動予備隊の面々とテキサスが不思議に思っている中、グムだけは彼がその行動の理由を見抜いた。

 

火を消して2分ほど経った頃、ヤマトは再びコンロの火をつけて2分ほど弱火で焼くと、竹串をそれぞれに刺して刺し穴から透明な汁が出てきたのを確認すると、数秒だけ強火にして焦げ目をつけると火を止めて更に盛り付け始め……

 

「……完成だ」

 

ヤマトは盛り付けたハンバーグとご飯、卵スープを行動予備隊とグムの所に配膳した。

 

「食べていい!?」

 

「……その前にサッパリしたハンバーグを食べたい人はいるか?」

 

カーディが待ちきれないとばかりに投げかけた言葉に、ヤマトは待ったをかけハンバーグを食べるものたちに目を向ける。

すると、ずっと静かに手を挙げたテキサスと、少し控えめに手を挙げたメランサを見つけると、ヤマトは先程すりおろした大根おろしとポン酢をテキサスとメランサに渡した。

 

 

「えっと…これは……」

 

「そのままハンバーグに乗っけて食べればいい」

 

ヤマトの発言に、行動予備隊の面々は驚きの表情を浮かべた。ハンバーグに大根おろしとポン酢という組み合わせをこの5人は聞いたことがなかったからだ。

メランサは戸惑いつつも、大根おろしとポン酢をハンバーグの上にかけて、そのハンバーグを口に入れて咀嚼し──

 

「……!美味しい……!」

 

「…確かに、これは美味しい」

 

驚いたように、けれど笑みを零してそう呟いた。

勿論、それを見て他の面々も気にならないはずがなく、ヤマトに少しだけ大根おろしとポン酢を掛けてみたいと頼み、ヤマトがそれに応じて彼らに渡し、彼らはそれを掛けてハンバーグを口に運んだ。

 

「美味しい!大根おろしとポン酢のお陰でサッパリしてて食べやすい!」

 

「確かに…大根おろしとポン酢ってハンバーグに合うんだね…」

 

「ええ…僕もこれは初めて知りました」

 

そして、食欲が刺激されていたせいもあってか彼らはハンバーグをすぐに平らげた。カーディとアドナキエルに至ってはお代わりをヤマトに要求したほどだ。

 

「「「「「「「ご馳走様でした」」」」」」」」

 

「皆、ちょっと聞きたいことあるんだけどいい?」

 

全員が食べ終え、一息ついている所にグムが声を上げ、それにテキサスを除いた5人がグムに視線を向けた。

ヤマトはそれを見て、ついに評価を下されるのかと身を強ばらせる。

そんなヤマトを無視して、グムは言葉を続ける。

 

「また、ヤマトが作った料理食べたいと思う?」

 

グムの問いかけに、5人は黙って顔を見合せた。ヤマトはそれを見て、やっぱり自分が作ったものはダメなのだろうか、と先程彼らが言葉にしていたことを忘れそう思った時。

 

「僕はまた食べてみたいな。作り方も丁寧だったしね」

 

「ええ、私も同意見です」

 

「俺も、ヤマトが作ったものをまた食べてみたいかな!」

 

「私も!食べててなんか、グムちゃんが作ってくれたものみたいに優しい味がしたし!」

 

「わ、私も……また食べてみたいです……」

 

「………!!」

 

行動予備隊A4のメンバーが出した言葉に、ヤマトは驚きのあまり目を見開き、同時に体のうちが温かくなるような感覚と目が熱くなるような感覚に襲われた。

 

 

「え!?ちょ、や、ヤマト!?」

 

「え、え???」

 

「だ、大丈夫!?なんか酷いこと言った!?」

 

(……!?)

 

周りのものは、突然涙を流し始めたヤマトにテキサスも含め全員がオロオロと狼狽える中、ヤマトは視界がぼやけながらもただ思ったことを口に出した。

 

「皆…ありがとう……」

 

「「「「「!?」」」」」

 

メランサ達は、ヤマトが涙を流しながらも穏やかで柔和な笑顔を浮かべたことに驚いたが、同時に自分らが何か不快なことをした訳では無いとわかってホッとし、それを見届けたテキサスはハンカチをそっとヤマトに手渡すのだった。

 

後日、ヤマトは正式に食堂を回す人物の一人として動くことが決定したのに加えて、行動予備隊A4のメンバーとも交流し始めたという、その結果にドクターは顔を綻ばせた

 

 

「そういえば、なんで今までロドスにはハンバーグ定食のソースに大根おろしとポン酢無かったんだ?」

 

「えーとね、人手がね…?」

 

「なるほど…けど俺が入ったから今日から解禁ってことか」

 

なお、ロドスのハンバーグ定食の選べるソースの中に大根おろし+ポン酢が加わったとか。

 

 

 




キャラ紹介

ヤマト:正式に食堂切り盛りメンバーとなった。ちなみに得意なジャンルは和風で得意料理は鮭大根。なお、冗談半分で他にできることを聞いたら家事全般出来るという…主夫かな?1家に1匹どうですか?余談ながら、赤いオオカミとへそ出し生足オオカミにそれぞれ違うタイミングでハンバーグを強請られたとか。

グム:星4重装。アークナイツで料理人といえば?と聞かれたら真っ先に上がると言ってもいいだろう人物。他の二次創作ではオリジム……ゲフンゲフン。ちなみに、素質が強いと思うのは自分だけだろうか?

メランサ:星3前衛。行動予備隊A4の隊長。性格や喋り方は控えめだが、戦場に出せば多くの強敵をバッサバッサ切り捨てるレア度詐欺の1人。ぶっちゃけ回復1人置いておけば敵の幹部クラスを刀のサビにするヤベー奴。その姿から「剣聖」とまで言われる始末。ちなみに信頼度上昇会話でドクターにあるものを渡すのだが…これ、ドクターが男性だと色々とやべー意味を持つ物。多分、知らずに渡してると思うけど…知ってたら恐ろしい。

カーディ:星3重装。行動予備隊A4のメンバーの一人。天真爛漫な女の子なのだが、メンバーからは機材に触らせないようにされるなどトラブルメーカーでもある。でもそこがイイ!!

スチュワード:星3術士。行動予備隊A4のメンバーの一人。こちらは落ち着いた感じの男性。なお、昇進すると硬い敵を優先的に狙うという特殊な素質持ち。上手く使えばハマるステージではハマる。

アドナキエル:星3狙撃。行動予備隊A4のメンバーの1人。個人的にはThe好青年というイメージ。低コストなので今でもお世話になってる低レア狙撃の1人。これからも頼むぜ…

アンセル:星3医療。行動予備隊A4のメンバーの1人。見た目に反して実は男という、アークナイツの男の娘枠。ただ、見た目と普段の口調とは裏腹に、放置ボイスでカーディに舌打ちをするという面も…でも可愛いからそんなの関係ないよネ!(

テキサス:最後の最後で泣いているヤマト(ヒロイン)にハンカチを差し出すというイケメンムーブをかます。もう、こいつが主人公でいいんじゃないかな?

ドクター:ちょっと強引だったけど、これを機にヤマトに対する周りの評価や印象が良くなればと思っている。…ってこいつ本当にドクターか?(他のドクターを見つつ)



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コミュ障狼のパーフェクト料理教室~相手を墜とすには胃袋から~(改訂版)

先程は大変申し訳ございませんでした。活動報告にも上げたのですが、何故か途中までしかかけていなかった物が投稿されており、それを先程気がついて慌てて書き直したという所存です…
折角読んでくださったり、感想を書いてくださった皆様に深く謝罪致します。次からはこんなことがないよう、気をつけて参ります。

それでは本編の方、どうぞ。


「~♪」

 

行動予備隊A4の面々と友好を深めたり、食堂で正式に働くことになったヤマトは、ここ数日機嫌が良かった。

どれくらい良いのかと聞かれたら、ヤマトのことをよく知らない人物が見ても機嫌がいいと分かるぐらいにだ。

 

そのせいだろうか、その日ヤマトは気が緩んでいた。

気が緩んでいるということは、気配の察知なども遅れるのは当然のこと。

つまり、何が言いたいかと言うと──

 

「ハア……ドクターの匂い……」

 

「(!!?!!??)」

 

ロドスのCEOがやべーことをしてるところを事前察知出来なくても仕方ないよね?ということである。

 

****

 

「(あ、アーミヤ代表がなんで洗濯場であんなことしてんの!?)」

 

自分の洗濯物を入れたカゴを抱えていたヤマトは半ばパニックになりながらも、反射的に入口の近くに身を寄せて中のアーミヤからは見えない位置に陣取った。

すぐに対処したおかげか幸いにも、アーミヤはヤマトに存在に気がついている様子はない。

それにヤマトは安堵するが、事態は悪い方向に進んでいく。というのも…

 

「ドクター…フゥ…好きですぅ…本当はもっと甘えたいし、一緒にいたいですぅ…んっ…」

 

アーミヤがドンドン自分の世界に突入していって、知ってはいけないことを色々とぶちまけてしまっているからだ。

ヤマトとて、早くこの場を離れなければならないと頭では分かっているものの、下手に動いて音を立てて見つかってしまえば、口が達者でないヤマトでは誤魔化したりしらを切ることは出来ない。

結果、どうなるかは…正直考えたくもないが、狼型のボロ雑巾が出来る(ボコボコにされる)のは容易に想像がつく。

どうすればこの場を切り抜けられるか、とヤマトが必死に脳をフル回転させていたその時だった。

 

「あれ?ヤマト、こんなに突っ立っててどうしたんだい?」

 

「ヒンッ!?」

 

「…そこまで驚くことか?」

 

突如、視界外から声を掛けられて驚き小さい悲鳴をあげてしまったヤマトに声をかけた人物であるラップランドと一緒にいたフロストリーフは怪訝そうな目でヤマトを見る。

 

ヤマトはめちゃくちゃ早く鼓動を打つ心臓を抑えるように深呼吸をして、ラップランドに返事をしようとした時だった。

 

「あれ、ヤマトさんにラップランドさん、それにフロストリーフさん。洗濯物を洗濯機に入れに来たのですか?」

 

アーミヤが部屋からひょっこりと顔を出してヤマト達に声をかけた。

その時の声や様子はいつも通りであり、先程までトリップしていた彼女とは全く様子が違っていた。

 

「ああ、ボクたちはヤマトがそこで立ってたから何をしているのかと思って声をかけただけだよ」

 

「!?」

 

「え…」

 

ラップランドはさも普通にアーミヤの問いに答えたが、ヤマトとしてはたまったものではない。これでは、ラップランドがくる前からそこにいたというのをバレてしまったも同然である。

 

(こ、殺される!!)

 

ヤマトが内心ガクブル状態の中、アーミヤは「そうでしたか」と言うと

 

「とりあえず、その洗濯物を洗濯機に入れたらどうですか?ずっと持ってるのも大変でしょうから」

 

そんなことを平然と言った。

もしかしてバレてない?助かった?とヤマトが思った時、アーミヤはすれ違いざまに小さい声で

 

「後で執務室に来てくださいね。聞きたいことがありますので」

 

「(ひぇっ…)」

 

ヤマトに死刑宣告をしたのであった。

現実は残酷である。

 

 

****

 

洗濯物を洗濯機にぶち込んだあと、ラップランド達とちょっとだけ話をしたヤマトは内心恐怖で発狂したくなるのを抑えながらアーミヤの執務室の前まで来ていた。なお、安定の無口+ポーカーフェイスのおかげですれ違ったオペレーター達はヤマトの心情を全く察していなかった。

 

(ああ…皆、せっかく仲良くなれたのにごめんね…俺はもうダメかもしれない…)

 

ヤマトは執務室のドアをノックする前に心の中で三人に謝罪した。

そして深呼吸を2、3回すると覚悟を決めて執務室のドアをノックした。

 

「ヤマトだ。アーミヤ代表、入ってもいいか?」

 

「はい、どうぞ」

 

「失礼する」

 

ヤマトはドアを開けて中に入る。なお、この時ポーカーフェイス+無口による言葉少なさは通常運転である。

 

中に入ると、アーミヤでニッコリと微笑んでヤマトを出迎えた。…最も、ヤマトからしたらその微笑みさえSANチェックものの恐ろしさを秘めているのだが。

 

「さあ、どうぞ。お座り下さい。これからお茶をお持ちしますので」

 

「いや、別に構わない。それより話とは?」

 

ヤマトはここであくまでしらを切ることに進路を転換した。

ずっと知らない、聞いてないを貫き通せば何とかなるとヤマトは考えたのだ。口がそんなに回らない自分でもこれならしらを切れる!とヤマト渾身の作戦は…

 

「嘘探知機もありますので、ちゃんと正直に答えてくださいね?」

 

「アッハイ(終わった…)」

 

無情にも、無駄に準備のいいCEOの前には無意味だった。

 

****

 

「そうですか…知ってしまいましたか…」

 

「(ふ、フーちゃん、テキサスさん助けて…)」

 

結局ヤマトはアーミヤの質問に全て正直に答えた。

その結果は、目のハイライトが消えたロドスのCEO爆誕☆という目を背けたくなるようなものだった

アーミヤから発せられる圧に、ヤマトが思わず助けを心の中で求める始末だ。

 

しかし、そんな状況でもふとヤマトはある事が気になった。

聞くかどうか、一瞬迷ったがここまで来たら全て聞いても結果は変わらないだろう、と開き直って聞くことにした。

 

「代表、何故あんたがドクターの服を持っていたんだ?」

 

「…今、聞きます?デリカシーというのをヤマトさんは知らないんですか…?」

 

「心外だ、それぐらい知っている」

 

アーミヤはそんなヤマトにため息を吐きつつも、やけくそ気味に口を動かす。

 

「ドクターの服などの洗濯は私がやるって自分から言ったんです。少しでも、ドクターの役に立ちたいですから」

 

>チーン

 

「………本当は?」

 

「……だってだって!最近ドクターは私のこと秘書にしてくれないんですよ!?お陰様で一緒にいれる時間が少なくなったから、つい魔がさしちゃったんですよ!!」

 

自らが用意した嘘探知機によって嘘だと暴かれたアーミヤは投げやりに本当のことを言うとわあっと机に突っ伏した。

それを見たヤマトは微妙な表情を浮かべていた。というのも

 

(ドクターとアーミヤ代表、両想いじゃん…)

 

という事だったからだ。

実は、ヤマトはいきなり呼び出された際に「アーミヤが好きなんだけどどうすればいいかな?」的なことをドクターに相談されたことがあったからだ。

恐らく、アーミヤを秘書に任命する機会を無くしたのはドクターが心臓がもたないからという理由からだろう。とヤマトは考えていた。

実は、この考えは当たっている。ヤマトは伊達にミッドナイトから教えを受けているお陰で察しも良くなっていた。

ヤマトは、そんなアーミヤにドクターの想いを告げようとして──嫌な予感がしたので辞めた。何故か分からないがヤマトの本能が危険信号を発していたため口を結んだ。

 

(でも、何もしないのままだと進展しないだろうし…)

 

ヤマトはそこまで考えて、ふと傭兵時代の相棒が自分に無理やり読ませたある本の内容を思い出した。

 

(あの方法を手伝うってことならセーフかな…?)

 

ヤマトはそう考えると、目の前のアーミヤに声をかけた。

 

「代表さドクターと恋仲になりたいか?」

 

「こ、ここここ恋仲!?そ、そんなこと望んでるわk「チーン」……はい、なりたいです…ううっ…」

 

ヤマトの質問に慌てて否定しようとしたアーミヤだったが、無常にも嘘探知機が反応したせいで、顔を赤くしながらも正直に答えた。

 

ヤマトはそれを見て、いたたまれなくなってきたのもあってさっさとある提案をアーミヤに持ちかけた。

 

「代表、良ければ手伝う」

 

「……へ?」

 

「昔、読んだ本によると惚れた相手を墜とすには胃袋からとあった。料理であれば、俺でも手伝えるが…どうだ?」

 

ヤマトの突然の提案に、アーミヤは考え──

 

「はい、お願いします」

 

「分かった、精一杯やらせてもらう」

 

その提案に乗ったのだった。




キャラ紹介
ヤマト:ドクターとアーミヤをくっつける為のキューピットとして頑張るぞい☆

フロストリーフ:実は、ヤマトが面倒事に巻き込まれたのを何となく察していたが、介入してもヤマトのためにならないだろうと敢えて放置。完全に保護者ムーブ

ラップランド:ヤマトの尻尾をモフる機会をじっくり伺っている…

アーミヤ:ロドスのCEO。今作ではドクターへの想いを拗らせているが、結構初心。何だこの可愛い生き物。ところで、ネットの検索欄にアーミヤって打ち込むと後ろにヤンデレが着くのはなんでだろう()


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コミュ障狼のパーフェクト料理教室~相手を墜とすには胃袋から~(下)

次のイベントでペンギン急便勢揃えたいなぁ…特にエクシアさん欲しい…

ところで、エクシアって聞くと某機動戦士の方を思い浮かべてしまうのは自分だけなんですかね?


翌日、ロドスの調理場にてエプロンとバンダナを付けてやる気十分なアーミヤとヤマトの姿があった。

 

「ヤマトさん、これから何を作るんですか?」

 

「少し手間がかかるが、スコーンを作ろうと思う」

 

「スコーンですか…でも、何故それに?」

 

「……休憩と称して、ドクターと2人きりでティータイム出来るだろう?」

 

「はっ、確かに!それは名案です!」

 

そうして、単純な理由でスコーンを作り始めることになったのだった。

…なお、これを実行するには秘書である人物をどうやって引き剥がすかなのだが…2人はそんなことに全く気づかず調理を始めたのだった。

 

****

ヤマト視点

 

 

「代表はバターを3cm角で切っといてくれ。」

 

「分かりました!」

 

俺は、代表がバターを切っている間にスコーンに入れるチョコなどをやるとしよう。

チョコは大きめに角切りにし、クルミは適度な大きさに砕く。そして紅茶のバッグから茶葉を取りだしたボウルに入れておく。この時使うチョコは、調理の都合上生クリーム入りのものだとすぐに溶けてしまうので、純正のチョコを用意する。

 

「ヤマトさん、切り終わりましたよ」

 

「分かった、では次からは一緒にやっていこう…ああ、切ったバターは冷蔵庫に戻しておいてくれ」

 

「分かりました」

 

次は、ボウルに薄力粉、強力粉、ベーキングパウダー、砂糖と塩を混ぜわせて粉ふるいを振るう。

 

「あれ?この段階で茶葉を入れるんですか?」

 

「ああ、粉系のものはここでまとめてやった方がいいからな…細かい理由は忘れたが」

 

それを終えたら、そこに冷えたバターを加え生地がそぼろ状になるまで混ぜ合わせる。

そしたら次はこれに牛乳とヨーグルトをヘラでこねないように切るように混ぜて、ある程度纏まったら手をつかって生地を纏めあげる。

 

「ヤマトさん、もしかしてチョコやクルミはここで入れるんですか?」

 

「その通りだ。ただ、あくまでこねずに中に入れ込んでくっつけるように加えて混ぜてくれ。あと、細かい塊は手を大きく使ってこねずに大きい塊にくっつけるように纏めてくれ」

 

「は、はい…ん、しょ…と……思ったより大変です……」

 

纏めあげた生地をラップで包み冷蔵庫に入れて30分ほど寝かせたら、打ち粉をした台に先程寝かせた生地を伸ばして折りたたむを2、3回繰り返し、2cm程の厚さにして4~6等分に切る。

それを180℃に余熱したオーブンで10~12分、更に200℃にして2、3分ほど焼き、最後に焼き色を見ながら綺麗なキツネ色に焼きあげれば…

 

「出来ました……!」

 

甘さ控えめのサクサクしたスコーンの完成だ。

 

「代表、午後のティータイムとしてならちょうどいい時間帯だ。早速行くとしよう」

 

「はい!……楽しみだなぁ…」

 

どうか、二人の仲が発展するよう願うばかりだ。

 

*****

 

「ドクター、アーミヤですが入っていいですか?」

 

「……!あ、ああ。入っていいよ」

 

ドクターの返答に、アーミヤは「失礼します」と言って中に入るとそこには本日の秘書でもあるフロストリーフもその場にいた。

 

(………あ、そういえば秘書の人もいるんでしたあぁぁぁぁ!?)

 

今更になって、アーミヤはその事実に気が付き当初の予定とは違う展開に、2人きりは諦めるしかないかと考えて──

 

「……ドクター、コミュ障狼にかなり重要な用事を思い出したから一旦出ていいか?」

 

「!!」

 

「え?ま、まあいいけど…時間も丁度いいし30分ぐらい休憩してきていいよ?」

 

「……ああ、そうさせてもらう」

 

突然の展開にアーミヤが混乱している中、フロストリーフはアーミヤにすれ違いざまに小声で告げた。

 

「……2人で楽しんでくれ」

 

「!!?!?」

 

「では、失礼する」

 

遠回しにアーミヤのドクターに抱いている気持ちに気がついているような発言をした、フロストリーフは手をヒラヒラと振って部屋から出ていった。

 

「えーと、アーミヤの用件聞いてもいい?」

 

「あ、えっとその…ス、スコーンを作ってきたので一緒に食べませんか!?」

 

ドクターに声をかけられ、思考がぐるぐるする中アーミヤは何とか声を出した。ドクターは最初こそ、キョトンとしていたがクスッと笑みを零した。

 

「そっか…それじゃご馳走になろうかな。そこ座って」

 

「は、はい!あ、紅茶入れましょうか?」

 

「いや、自分がやるよ。アーミヤは客人だから座ってて」

 

*****

 

「………で、何か言うことは?」

 

「………お気遣いありがとうございます……」

 

一方、フロストリーフは友人であるヤマトの元に赴き詰めが甘いと説教をしていた。

実はフロストリーフは前々からアーミヤがドクターを、ドクターがアーミヤのことを想っていたのは知っており、影ながら2人を応援していた。

そして、今回のアーミヤの突然の訪問も手に持ったバスケットから漂う匂いと、ヤマトとアーミヤが調理室に入っていったという話を聞いていたのもあってヤマトが協力していることを推理していた。

 

「…今回は、私だったから良かったものの他の奴だったらどうなっていたことやら……」

 

フロストリーフはもし、そうだった場合のことを考えて1人ぞっとしていた。

そこへ、ヤマトがフロストリーフに声をかけた。

 

「ふ、フーちゃん…その、俺もスコーン作ったから一緒に食べない…?」

 

お説教された後だからか、どこかビクビクと不安げなヤマトを見てフッと笑った。

 

「丁度、少しだけお暇貰ったんだ…頂こう」

 

「分かった!すぐに紅茶用意するね!」

 

尻尾を振りながら嬉しそうに紅茶を用意するヤマトを見て、フロストリーフは穏やかな笑みを浮かべた。

 

なお、この後にどこで匂いを嗅ぎとったのか不明だがラップランドと強引に連れてこられたチェンを含めて、こちらのお茶会は賑やかなものとなったのだった。

 

 




キャラ紹介

ヤマト:恋愛偏差値雑魚(今のところ)で詰めが甘いループス。久しぶりにフーちゃんと2人だけ(少しだけだったが)でお茶会出来て嬉しかった。なお、フロストリーフとチェンが帰ったあとは…?ご想像にお任せします(すっとぼけ)

アーミヤ:ヒロインムーブをかました原作メインヒロイン。なお、原作だとライバルが大勢いる模様だが、こちらだと味方が2人いるのが確定している。ドクターと2人だけでお茶会できて満足だったが、後日あんまり進展していないことに気がつく。

ドクター:あの場は冷静でいれたが、アーミヤが部屋を出てフロストリーフが戻ってくるまでは想い人の手作り料理を食べれたことに悶えていた。はよくっつけ(

フロストリーフ:保護者役が板に着いてきたキツネさん。帰ってきたらドクターが悶えていたので、1発入れて頭を冷やさせた。

ラップランド:なんとなーくチェンを強引に連れてヤマトの部屋に行ってみたらお茶会に参加出来たというとんでもない強運を見せる。そして、あーだこーだ付けてヤマトと2人っきりになってからは…あとはご想像n(ry

チェン:スコーン美味しいし、ヤマトに癒されたため残りのお仕事も頑張りきれたらしい。お疲れ様です。


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喧騒の夜に紛れる狼(上)

喧騒イベをやってる最中に、元々書こうとしていたネタといい感じに噛み合いそうなので急遽内容と1部展開を変更するという「お前は何やってるんだ」と言われても否定できないムーブをかましたバカはどこのどいつだーい?……自分です(白目)

反省はしてます。けど挑戦できそうならやるというのが今掲げている目標ですのでやりました()

あと、今回の話はロドス時空のヤマトでifルートのヤマトではありません。
それとシリアス+オリキャラ出ます。

なお、イベント攻略中は呆れ顔のテキサス可愛いくて悶えてましたまる



龍門の安魂夜が行われている日の夜。

裏路地のとあるバーに、身の丈ほどあろうアタッシュケースを持った1人のループスの少年が入ってきた。

 

「どうした坊主。本来なら、回れ右してママのところに帰って欲しいが、不幸なことに客が全く居ねーからな。好きなとこに行ってくれや」

 

「……………」

 

客がいないバーのバーテンダーと思しき男性がかけた言葉を無視して、少年はバーテンダーに小声である言葉を発した。

それを聞いたバーテンダーはため息を吐きながら呆れ気味に目の前の少年に言葉を投げかけた。

 

「……客が居ねーのにわざわざ言うなんて、相変わらず律儀なやつだな」

 

「そういうルールだろう」

 

「ったくこっちは気を利かせてそのまま直行していいように、遠回しに言ってやったのによん…ほら、行きな」

 

少年は彼に軽く会釈をすると「staff only」という文字が書かれたドアを開けて中に入ると、迷うことなくその部屋にある本棚の丁度1冊だけ入りそう隙間がある所に、懐から出した赤い本を入れた。

すると、本棚が1人でに動き出しその裏から金属製のドアが姿を現した。

少年がそのドアをなんてことがないように独特なリズムで叩くと、鍵が開くような音がしそれを確認すると少年はドアを開けて中に入った。

 

「やあ、久しぶりだね。ヤマト少年」

 

中に入ると、そこには様々な機材や武器を研ぐための砥石、そして色んな武器が所狭しと置かれており、作業台と思われる机の近くには1人の角が生えたサンクタ人の女性がいた。

その彼女が入ってきたヤマトにヒラヒラと手を振って挨拶をしたのに対し、ヤマトは無言でアタッシュケースを彼女の前に置いた。

 

「こいつの点検・修理を頼む」

 

「おおう…少しはお姉さんの話を聞いてくれてもいいんじゃない?……ふむ、確かにこの具合だと私じゃないと厳しいね。あ、てか、よく私がこっちに来てるって分かったね?」

 

「………たまたまそう聞いたからだ」

 

「うーん、素っ気ないなぁ…そのコミュ障ぶり早く治しなってあれほど…てか、私にはそろそろ心開いて欲しいんだけど?」

 

その女性は、ヤマトに対し色々言いながらも慣れた手つきでアタッシュケースの中にあった合体剣をバラして、一つ一つの不調な、またはもうすぐそうなりそうな箇所に手を加えていく。

彼女の話を聞きながら、ヤマトはふと思い出したように声をかけた。

 

「…そういえば、ここに来るまで何か騒がしかったが何かあったのか」

 

「ん?ああ、なんかシラクーザのマフィアとペンギン急便がドンパチやってるってh「本当か!?」おう!?」

 

女性の答えにヤマトは食いつき気味な反応を示し、それを見た彼女は驚いたように声を上げる。

 

「凄い食い付きだねぇ〜。もしかして、どっちかに因縁でも…そんな熱い視線向けられるとお姉さん困るんだけどな〜。まあ、理由教えてくれたら教えてあげるよ?」

 

「……ペンギン急便に、大事な人がいるんだ」

 

ヤマトがどこか優しさを含んだ顔で答えた内容に女性は、少し間を置いて声をかけた。

 

「………そっか。もう一つだけ聞くけどさ、さっきの話が本当ならヤマトはどうするの?」

 

「出来る範囲で助太刀する」

 

「はあー…、この剣は整備の途中だから使えないのにどうすんの?」

 

「………」

 

 

即答したヤマトに対して女性はため息を吐きながら現実を突きつけた。

合体剣を一時期預けるため、ヤマトは自前の投擲にも使える戦闘用のナイフを数本持っているが相手のマフィアの規模が不明な以上、これだけではいくらヤマトでも心許ないのは事実だ。

それに対し、気まずそうに黙っているヤマトに対し女性は呆れながらも2本の指をヤマトに示した。

 

「当初の2倍の額払うなら、ここにある武器をいくつか貸してあげる」

 

「………いいのか?」

 

女性が金や武器などにうるさいのを知っているヤマトは、遠回しにそんな安くていいのかと聞くと彼女はヒラヒラと手を振って答えた。

 

「昔からの馴染みというわけで今回だけのと・く・べ・つ、に許してあげる。ほら、さっさと武器選びなって」

 

「…すまない」

 

ヤマトは彼女にそう告げて武器を選ぶ。

今回の争いがどういったものかまではまだ不明だが、龍門の中での喧嘩ではなるべく殺傷能力が低めのものを選ばないといけないことを念頭にヤマトは候補を絞っていく。

 

そして、ヤマトが最終的に選んだのは特殊警棒と刀だった。この2つを選んだ理由は、特殊警棒は言わずもがな殺傷能力はここにある武器の中では低めであることで、刀は万が一警棒では対処しきれない相手がいた場合のものだ。

 

「……行ってくる」

 

「ヤマト、これも持ってきな!」

 

「これは…!」

 

武器を選び終えたヤマトが部屋から出ていこうとした時、女性はヤマトに向かってあるものを差し出した。

女性が差し出した物を見てヤマトは戸惑いの声を上げた。それも、彼女が差し出したのが長距離狙撃用のボウガンと殺傷能力がない矢と殺傷能力がある矢が入った矢筒だったからだ。

 

「ヤマトにとってはこの武器を…遠距離系統のやつを使うのは嫌なのかもしれない。でもね、選り好みしてる状況でもないだろ?」

 

女性の有無を言わさぬ態度に、ヤマトは少し考えを巡らせてい意を決したように()()()()()ボウガンと矢筒を受け取りそれらを身につける姿を見て、彼女は励ますように声をかけた。

 

「ヤマト、あいつが…ムサシが死んだのはお前のせいじゃない。あの時のメンツじゃお前以上の奴は──」

 

「…それでも、俺の実力不足でムサシは死んだのは事実だ…俺があいつを殺したようなものだ…」

 

「……ヤマト」

 

「……すまない、あと武器をありがとう。シラヌイ」

 

だがヤマトはそれを遮って自身を戒めるかのように言葉を発した。それを悲痛な目で見る先程まで話していた女性、シラヌイに顔を見せぬようにヤマトは謝罪とお礼の言葉を告げると部屋から出ていった。

 

 

 

「……ヤマト、前よりはマシになったけど…まだ引きずってるんだね…」

 

かつての弟分であったヤマトのことを思ったシラヌイの呟きは、闇に溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

本来であれば、介入するはずのない存在が混ざり合う一夜限りの喧騒はどうなっていくのか…

一つだけ予測できるのは、多少は賑やかになるであろうことぐらいだろう…

 

 




ちょっと待って、今回原作キャラ出てないって…


キャラ紹介

ヤマト:いつもとは違う武器でイベントに参戦。シラヌイの会話からして、かつては遠距離武器も扱っていたように伺えるが…?

バーテンダー:オリキャラ。おそらくもう出番はない(無慈悲)

シラヌイ:オリキャラ。ヤマトの合体剣を作った張本人。傭兵時代のヤマトを知っている人物の一人。なお、裏の世界では結構有名な武器商人という設定。

ムサシ:オリキャラ。ヤマトとシラヌイの会話で出てきた人物だが、会話の内容的に故人。ヤマトが遠距離武器を置いた理由に関係しているようだが…?



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喧騒の夜に紛れる狼(中)

というわけで続きです。

今回はちゃんと原作キャラ出てきます!けど代わりに文字数がいつもの倍に…本当に申し訳ございません。

それとエクシアガチャの結果なんですが…
き て く れ ま せ ん で し た

ナズェダ…socと金、素材は揃ってるのにぃ!(作者魂の叫び)


ヤマトはバーを出るとそのまま公園の方へ足を運んでいた。

ペンギン急便に助太刀しようにも、彼らが何処にいるかを明らかにしなければ始まならないため、人が多い場所で情報を得ようと考えていた。

しかし、その考えは空高く打ち上げられた花火によっていい意味で打ち砕かれた。

というのも、その直後にペンギン急便と盾を持ったフォルテの少年に襲いかかる集団を遠くから確認できたからだ。

 

「俗に言う汚い花火を見れただけじゃなく、テキサスさんたちを見つけれたのは幸先がいいな」

 

ヤマトはそう呟いて物陰に移動すると鏃の部分に布が何重にも巻かれた矢をボウガンにセットし構えようとしたところで、()()()()()()()()()気がついた。

 

(……今は、過去を振り返ってる場合じゃないんだろ……)

 

目を閉じて息を長く吐いたヤマトは震える手に、力を込めてボウガンを再度構え直してスコープを覗き──

 

「……狙い撃つ」

 

テキサスの背後からナイフを振りかざそうとした男の手に向けて引き金を引いた。

 

 

*****

 

その時、テキサスは背後から敵が自分に襲いかかろうとしていたのを把握しており、振り向きざまに攻撃しようとして──

 

「ぐ!?そ、狙撃!?どこか──うぼぁ!?」

 

テキサスはナイフを持っていた手を狙撃された男に驚きながらも源石剣を振るって無力化した。

 

「今のは……」

 

どこからの狙撃なのか?疑問に思ったテキサスの視界に、ソラがマフィアの男に接近を許されているところが入った瞬間、またしてもどこからか凄まじい勢いで飛んできた矢が男の眉間に当たり、男をひっくり返した。

 

「どういう事だ!?ペンギン急便に矢を使うスナイパーがいるなんて聞いてねーぞ!?」

 

「俺だって知らね──おう!?……お……あ………」

 

「モッブーのムスコがやられた!?」

 

「この人でなし!!」

 

「こんな惨いこと…男のやる事じゃねえ!」

 

「お前ら人間じゃねえ!!」

 

テキサスはどこからか援護してくれてるスナイパーに心の中で礼を言いながらも、突然の事態に混乱している向こうの隙をついて二手に別れてある場所に向かうように、エクシア達に指示を出したのだった。

 

 

 

****

 

「……なんとか逃がすことは出来たか……」

 

ヤマトはテキサス達がバイクを奪って公園から離脱したのを先程から動いていない物陰から、確認するとボウガンを下ろして、息を吐いた。

 

隠れて訓練していたとはいえ、実戦でスナイパーとしての動きをしたのは久しぶりだったヤマトにとって今回の戦闘は勘を取り戻す良い機会となった…途中、()()()()()()敵の()()()を撃ってしまったことに関しては心から謝罪の念を送ったが。

 

「さて…矢を回収して追いかけないと…」

 

ヤマトはそう呟きながら先程の戦闘場所へと足を動かそうとして────

 

「ぐぼあ!?」

 

「な!?気づかれて……!」

 

「……ここから動かなかったのがお前たちを何人かおびき寄せるものだと気づかなかったのか?」

 

ヤマトは油断したように見せかけたところに食いついた男を警棒で殴って気絶させると、同じく隠れて機を伺っていた数人の男たちに視線を向ける。

 

「クソ、数はこっちが上だ!囲ってやっちまえ!」

 

「………手短に済ます」

 

ヤマトは飛びかかってきた男の腕を掴むとその勢いを殺さずに引き寄せて警棒を男の鳩尾に一撃当てて、追加で蹴りを入れて地面に転がし、左からナイフを突き立ててきた男の顔面をナイフが当たる前に回し蹴りを食らわして意識を刈りとる。

 

「あと4…次は俺からいくぞ」

 

「へ?ごぶ!」

 

仲間の2人が瞬く間にやられたことに動揺し、動きが止まっているのを好機と見たヤマトは4人のうち1番動揺している者へ接近して、顔面に拳を叩き込みこちらも一撃で落とし、慌てて反撃しようとした近くの男の腕を掴むと、力任せにまだ健在な男の片方の方へぶん投げた。標的にされた男は、とてつもないスピードで投げられた男を受け止めることも出来ずそのまま近くの木まで飛ばされて、その衝撃で意識を落とす。

ここまでにかかった時間は僅か20秒足らずで残った男は、目の前の現実を受け止めきれずにいた。

 

「な…は……?」

 

「あとはお前だけか……」

 

「あ、へ……あ……」

 

男はゆっくりと近づいてくるヤマト(得体の知れないナニカ)が発する圧に、腰を抜かしていると──

 

「恨みはないが、恩人、友人でもあるテキサスさんのためだ。今回は運が悪かったと思ってくれ」

 

そんな言葉が耳に入ってくると同時に首に伝わる衝撃を感じた瞬間に意識を失った。

 

「……さて、どうやって追いつこうかな………」

 

ヤマトは男たちの武装を全て破壊するとため息を吐きながら、矢を回収しに今度こそ足を動かした。

 

 

****

 

「………見失った」

 

矢を回収し終え、テキサス達が乗っていったバイクのタイヤ痕で追いかけていたヤマトだったが、それが途中から色んなタイヤ痕があるせいでどれがテキサス達が着けたものなのか分からなくなってしまった。

一応、先程から適当な建物の上からボウガンのスコープを使って探しているのだが、よく分からないのが現状だ。

やはり人に聞くしかないか、という考えがよぎりそれを実行するためボウガンを仕舞おうとして──

 

「命が惜しいなら吐け!鼠王はどこにいる!?」

 

「し、知らないわよ!鼠王なんて言葉初めて聞いたわよ!」

 

近くからそんな怒声が聞こえ何事かと思いそちらの方を見ると、ペンギン急便と戦っていたマフィアと同じ格好をした3人の男達がスラム街の住人と思しき人を脅している場面だった。

 

(鼠王?なんで奴らがやつの居所を…?)

 

「くそ…このアマ!痛い目見ねえと分からねえのか!!」

 

ヤマトがマフィアの男たちの質問内容に疑問を抱いている中、中々答えない住人の女性に業を煮やしたのか、マフィアの1人が暴行を加え始めた。

 

(!!クソ、先に奴らを仕留めるべきだった…!)

 

ヤマトは自身の迂闊な行動に舌打ちすると、すぐに照準を頭に合わせて

引き金を引くと同時に、ボウガンを肩に掛けて刀を右手で抜刀、警棒を

左手で持って跳躍して住人とマフィアの間に入る。

 

「そ、狙撃…!?どこか…な、このガキいつの間に……!?」

 

「寝てろ」

 

「がっ!?」

 

「てめぇ…!ぐぶぉ!?」

 

「……これで全部か」

 

頭を布で巻かれた矢で撃ち抜かれた男は、あまりの衝撃に白目を向いて倒れ、残った2人のうち1人はナックルガードが着いたナイフを抜いて応戦しようとした瞬間にヤマトが振るった刀で刀身の半分を斬り飛ばされ、その隙に鳩尾を警棒による刺突で気を失い、残った1人は抵抗する前に顎に飛び膝蹴りを食らって後ろに倒れた。

 

「あ、あなたは……」

 

「動くな」

 

突然現れて、先程まで自分に暴力を振るっていた男たちを一瞬で片付けたヤマトに声をかけようとした女性を、ヤマトは声で制し自ら彼女に近づいて怪我の具合を確認すると応急処置の準備を始めた。

 

「染みると思うが、我慢してくれ……助けに入るのが遅くなってすまなかった」

 

「え、あ、はい……っ!」

 

ヤマトはアンセルからもらった応急キットを広げると、女性に一言断りと謝罪を告げて傷の手当を始めた。

幸いにも、すぐに介入したのもあって女性の怪我は酷いものではなく、ヤマトの知識とアンセルの指導、そして彼がくれた簡易応急キットでも対処できるほどのものであり、ものの数分で処置は終了した。

 

ヤマトはそれを確認し終えると、伸びている男たちを彼らの衣服を使って縛り上げて転がし、彼らの武装も念の為破壊していると先程の女性が声をかけた。

 

「あの…助けてくださってありがとうございました…」

 

「……先程も言ったが、俺が早く介入していればアンタは怪我することは無かったんだ。お礼を言われる立場じゃない」

 

「でも、助けてくださったのは事実でしょう?」

 

「……一つだけ聞きたい。ペンギン急便の者たちを見なかったか?」

 

「…ごめんなさい、見てないわ……」

 

「そうか…とりあえず、失礼する」

 

ヤマトはどこかバツが悪そうに上に跳んで屋根伝いに移動するようにその場を去った。

 

「………あの男の子、何者なんだろう……」

 

頬を軽く赤く染めた女性が急に現れて急に去ったヤマトのことを考えてながらボーッとしていると、ふと視界にマフィアの男達が持っていたであろう紙が入り、その内容を見た女性は驚愕の表情を浮かべると、その紙を持ってその場を急いで離れた。

 

 

****

 

「助けて頂いてありがとうございました、モスティマさん」

 

「いや別にいいよ。ところで他のみんなは?」

 

「………」

 

危うく殺されそうになったところを助けられたバイソンは、その助けてくれた恩人であるモスティマに痛いところをつかれて思わず顔を背けてしまった。モスティマはそれを軽く笑いながら話を続ける。

 

「その表情から察するに、随分と振り回されてるみたいだね?」

 

「いや、皆さんのテンポが速すぎて…」

 

「でしょ?それでどこに向かったか聞く前に…もう出てきていいよ」

 

「え?」

 

「…気配を隠すのは下手くそになったみたいだ」

 

モスティマが声をかけた同時にヤマトは相変わらずのポーカーフェイスで、高台から降りて2人の前に立った。

 

「な、いつから──」

 

「んー、少なくとも私がここに着く前にはあそこの高台にいた奴らと楽しくやってたみたいだよ?」

 

「……(あなたの言う通りあなたよりは早めに着いたけど、さっきの場所に予想以上に敵がいたのと連絡を取らせないように立ち回ったら)そこの彼を助けるのが遅くなってしまった」

 

「んー、なんか結構端折っているような気もするけど…ま、いっか」

 

「いやいや、その前にキミは何者なんですか?てかなんで僕を助けようとしたんですか?」

 

「………(これ、もしかしなくても俺がロドスの関係者ってバレたらまずいんじゃ?)

 

ヤマトはバイソンの疑問に答えようとした矢先に、重大なことを思い出した。以前のシエスタの件でドクターがアーミヤに叱られたように、【ロドスが何らかのトラブルに首を突っ込んだ】という事実がバレると、色々と厄介なことになるというのは、ロドスの全オペレーターに改めて注意喚起がなされていたのである。

 

にも関わらず、ヤマトはペンギン急便が争いに巻き込まれているという話でその事をすっかり忘れていた。

なので、バカ正直に答える訳には行かないため、どう答えるべきか悩むもバイソンはそんな間でも疑念の目で黙っているヤマトを睨む。

そして、ヤマトは散々考えた挙句──

 

「……テキサスさんに恩がある者だ。君を助けたのも、彼女への恩返しの一環だ」

 

正直、怪しさ満点な返事だった。コミュ障狼はどんな時どんな相手でも【誤魔化す】コマンドが100%失敗するというのが証明された瞬間でもあった。

そのせいかバイソンは胡散臭いものを見るかのような目でヤマトを見ている。なお、そんな目で見られたヤマトは信じて貰えないことに内心落ち込んでいる…なお、よく見ると尻尾と耳が彼の心情を表すかのように垂れ下がっている。

やはり自分は信じられないダメ人間なんだろうか、一緒にいたらテキサスさん達の印象が悪くなってしまうのではないか、とヤマトが考え始めた時モスティマが助け舟を出した。

 

「まあ、確かに怪しさ満点な答えだ。けど、私はたまたま目撃したけども公園の戦闘の時に君たちを援護してたのは彼だよ?」

 

「え?あの時の狙撃、君が……」

 

「その時は助けてたわけだし、とりあえずはその話を飲み込んでみたらどうだい?」

 

「………分かりました。とりあえず、キミが敵ではないと僕は信じます。ただし、敵対行動を取ったら…」

 

「その時は遠慮なくぶちのめして構わない」

 

今度は即答したヤマトにバイソンは軽く困惑した顔を浮かべるが、ペンギン急便の人達に比べればまだマシだろうと無理やり自分を納得させ、2人にペンギン急便の集合場所を伝えて、モスティマの案内の元移動を開始したのだった。

 

「そういえば、君はなんて呼べば?」

 

「………(まあ、名前ぐらいなら大丈夫かな)ヤマトだ」

 

「そっか、よろしくねヤマトくん」

 

「……言っとくが、俺はもう酒を飲める歳だぞ」

 

「「ウソォ!?」」

 

2人から勝手に子供認定されていたことに、ヤマトは心外!といった表情を浮かべるのだった。

 

******

 

「……ヤマト、本当に入らないの?」

 

目的地の【大地の果て(ただのバー)】の近くてバイソンが確認するようにヤマトに聞く。

というのも、ヤマトがバイソンとモスティマに自分は中には入らず外で警戒を続けると言ったからだ。

これは、ペンギン急便達にロドスが関与してるのでは?という風に思わせないためという重要な理由がある。

そしてもう一つが──

 

「店の中で戦闘になった時、外から攻撃出来るやつがいれば戦闘が楽になる」

 

ヤマトの懸念事項でもある店内での戦闘の為だった。ペンギン急便のメンバーは戦闘力は高いが、表と裏を固められたら外をに出るには強行突破しかなくなる。

もしそうなった場合いくら彼らだけでもキツイのは明白だが、そこに外から攻撃出来る人物がいれば突破は楽になるだけではなく、向こうの増援をすぐに潰す事ができるからだ。

 

「……安心しろ、俺の命にかけて見捨ても逃げはしないと誓おう。ただ…」

 

「分かってる、ちゃんとキミの存在は伝えておくから」

 

ヤマトがバイソンに頼んだのは、援護をする存在がいるということを伝えて欲しいということだった。

ペンギン急便の者たちも、狙撃してくる相手が敵がどうかを把握しきれてはいないだろうと判断したヤマトが、彼らを混乱させないようにと考えたのが理由だった。

 

「では、俺は狙撃ポイントに着く。よろしく頼む」

 

「うん、そっちこそね」

 

ヤマトは()()()が入った袋を持ったバイソンが大地の最果てに入るのを見届けると、いつの間にか居なくなっていたモスティマのことを頭の片隅に入れつつも移動し、その数分後には陣取った場所から店内にいるマフィアたちの頭に矢を撃ち込んで行くのだった。

 

****

 

「あ、報告なんですが敵を狙撃して僕らを援護してた人と会いました」

 

マフィア達に襲撃されるちょっと前に、バイソンがスナイパーの存在を伝えると、ゴム弾をマガジンにセットしているエクシアが少し気になったのか質問した。

 

「へー、どんな人だった?」

 

「えーと、何でもテキサスさんに恩があるっていう、ヤマトって名前のループスの男のk「「ヤマトだと(だって)!?」」え、どうしたんですかテキサスさんにソラさん」

 

「いや、…ひとつ聞くがそいつはどんな格好だった?」

 

急に食いついた2人の反応に驚きながらもバイソンはテキサスの質問に答える。

 

「えーと、髪や尻尾の色は白よりの茶色で服装は黒いコートに黒いズボンでした。あと、なんかずっとポーカーフェイスで喋るのが苦手そうな印象を受けました」

 

「そうか…アイツが…」

 

テキサスはそう呟きながらも、色々と疑問に思うことはあるけれど彼がこちら側にいるのなら立ち回りは楽になる。そして姿を表さないのもロドスが関係していると思われないようにしたのだろう、とテキサスは考えると少し肩の荷が降りたように息を吐いたのだった。

 

(……ただ、ヤマトの詰めの甘さには後で説教してやる必要があるな)

 

一方で、落ち着いたらやるべきことが増えたことには関しては疲れたようなため息を吐いた。




キャラ紹介

ヤマト:誤魔化すのが苦手&戦闘以外では詰めが甘い狼さん。狙撃の腕はかなり高く、基本的にワンショットワンキル。ちなみに、モブマフィア達は後遺症が残ったり顔が変形しないように手加減しているという優しさ()がある。ちなみに、サラッと相手のナイフの刀身を刀で斬り飛ばすという離れ業をやってる。これも【教育】の賜物だとか

モスティマ:星6範囲術士。作者は持ってないが、スキル的には相手を移動させることが出来たりと色々と戦略の幅広がりそう。イベントストーリーを踏まえた個人的な印象は、どこか捉えがたい人というイメージ。なおCVは水○奈々さんである…最高かな?

バイソン:星5重装で喧騒イベの配布オペ。彼の印象はまさに非常識人に振り回される常識人である。頑張れバイソンくん。そしてifルートのヤマトが気を抜いた時に「ソラ姉」と呼ぶ設定が、バイソンくんのソラの呼び方と被るという…なんてこった(白目)
なお、ヤマトより身長が約3cm上。ヤマトは泣いてもいい。

テキサス:ロドスは関わっておらず、ヤマトが単独で介入したということは察している模様。なお、ヤマトが精通しているものに遠距離武器は無かったことを覚えているため、疑問を抱いている。

ソラ:ロドスが介入してきてる!?と焦っていたが、テキサスがヤマトが単独で介入してると後で言ったため今は落ち着いている。ヤマトが介入してくれたことに関しては嬉しいのとなんで?という疑念が入り交じって複雑な気分。

モッブー:ヤマトによってムスコを撃ち抜かれた(事故)哀れなモブマフィア。後日、新しい自分として生きていく決心を固めたとかなんだとか。

マフィアに襲われていた女性:イベントでは男性(?)だと思われるが、色々やってみたい話があるので女性に変更。ここで質問なんですが、襲われているところを、まあまあ顔が整ってる男性に助けられただけではなく、手当もされた女性ってどうなるんでしょう?(露骨)

追記
アンセルくん:仲良くなったヤマトに応急処置を教えてくれと言われて、友人の頼みならと指導してあげた。しかも、簡易応急キットまでくれるというイケメンムーブをかます



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喧騒の夜に紛れる狼(下)

レッドが来たのでようやっとループス4人組揃ってめちゃんこうれしいです!

喧騒イベ、ラストの話です。それではどうぞ。

それと様々な関係上、とある記念話を番外編にこの話を投稿したあとすぐに乗せますのでそちらも見て頂けたら幸いです。


「非殺傷の矢が無くなるほど来るとはね………」

 

ヤマトはマフィア達が撤退した後、ため息を吐きながら散らばっている矢を回収していた。

正直、相手を見くびっていたというのが先程の戦闘でヤマトが持った印象だ。ここまで、数が多いとなれば人海戦術を取られればいつかはやられる。

 

(テキサスさん達にあまり負担をかけないように立ち回るとしたら…散らばっている奴らを探し出して各個撃破していくしかないな…)

 

このやり方で行くと、自分にかかる負担は大きいがこれがベストなのだから許容範囲だろう。

店外に散らばっている矢を回収し終え、店内のは後で回収しようと思いその場を離れようとした時、ソラの声が店内から聞こえてきた。

 

「テキサスさん!怪我してるじゃないですか!」

 

(!?)

 

ヤマトは聞こえてきた内容に対して反射的に、店内にいるテキサスの手当に向かおうとしてギリギリそれを抑える。

自分の今の格好はいくら合体剣をもっていないとはいえ、ロドスにいる時と同じだ。そんな状態で突撃すれば背中に背負っているボウガンのせいで援護射撃をしていたのが自分だと100%バレる。

それで、バレて今は遠距離武器を扱っている事を聞かれたら──

ヤマトは、それを考えると背筋が冷えるような感覚に襲われた。

怖い。自分の、1番忘れたくても忘れてはいけない過去をテキサスに聞かれたりバレたりするのが怖い。

けれども、怪我をしたという彼女をほっとけないのも事実。

何か手はないかと辺りを見回して、ヤマトはあるものを見つけそれを身につけると店内へと入っていった。

 

 

****

 

ところ変わって、店内ではソラがテキサスが怪我をしていることに気が付き手当てできるものを探しているときだった。

入口から、帽子にサングラスを身につけ、背中にボウガンと矢筒を、腰には刀と特殊警棒を着け、黒いコートと黒いズボンを着ているループスが入ってきたからだ。

こんな以下にも不審者という(職質されてもおかしくない)格好をしたヤマトを見て、バイソンとソラは吹き出しそうになり、エクシアとクロワッサンは新手かと思い身構え、テキサスは驚きのあまり目を見開いていた。

 

「ん?なんだお前」

 

「……先程の戦闘で、外から狙撃していたものだ。怪我人がいると聞こえたので、その治療をしに来た」

 

皇帝はいきなりズケズケと入ってきたヤマト(不審者)に対し、訝しげな目を向けた。

しかし、ヤマトはそんな視線を無視して怪我をしているテキサスに近寄ると傷の具合を確認すると応急処置を始めた。

 

「……感謝する」

 

「……恩返しの一環だ」

 

ヤマトはテキサスのお礼の言葉を一言で返しながらも、手当を進める。

すると先程まで黙っていた皇帝がヤマトに声をかけた。

 

「……なあ、そこの不審者狼。俺とお前、会ったことあるか?」

 

「……こうしてアンタと顔を合わせて話すのは初めてだ。それと、俺は不審者狼じゃない」

 

皇帝の問いかけにヤマトは内心疑問に思いながら答える。無論、自分は不審者では無いこともしっかり伝える。

 

「……矢を回収したら、散らばっている奴らを潰しに行ってくる。何か、連絡することがあったらこのチャンネルに繋いでくれ」

 

ヤマトは、自分の端末のチャンネルを教えるとその場を足早に去った。

 

 

 

*****

 

「ヤマトさん、僕らと足並みを合わせる気ないんでしょうか…」

 

「いや、あいつなりに私たちの負担を減らそうと考えた結果なんだろう。それに、自分の端末のチャンネルを教えたってことはこちらが要請すれば駆けつけるということでもある」

 

この後の方針を軽く決めたあと、バイソンは先程遠回しに単独行動をとると言って去ったヤマトに疑念を抱いたが、テキサスはヤマトの真意をしっかりと汲み取っていた。

 

「……よく、そんなことまで分かりますね」

 

「……まあ、あいつのことはそれなりに知っているからな……最も、知らないこともあるということも思い知らされたが」

 

「え?どういう……」

 

「それより、早く持ち場につけ。ゆっくりしてる暇はないからな」

 

バイソンは少しだけ、雰囲気が変わったテキサスに疑問を抱いたがテキサス本人に作戦開始を告げられたため、追求することは叶わなかった。

 

 

****

 

「……まさか、ここまで大事になるとは」

 

ヤマトは単独で動いてから2時間弱経った時、たまたま龍門市街の広場の屋外パーティ会場が見える位置に、何となくここにいなければならないと感じてそこに居座っていた。

結果として、それは正解でありテキサスたちをマフィアやスラムの住民と思しき者たちが襲い始めたからだ。

無論、ヤマトはその位置からテキサス達に牙を向けるもの達を一人一人撃ち抜いて無力化したり、テキサス達に攻撃が振るわれないように牽制射撃を行っていたのだが。

 

(数が多すぎる…!!)

 

正直数が多すぎて手が回らないのが事実であり、更にこの状況があの時と酷使しているのもあって精神的にもヤマトにとってはキツく先程から手が震え始めているのが現状だった。

 

「ちっ…矢がきれたか……」

 

そして、ヤマトにとっては最悪なことに先程ソラに向かって投げられた酒瓶を撃ち落としたのに使った矢が最後の一本だった。

 

(……仕方ない、か)

 

ヤマトは内心覚悟を決めると、移動時間の間に付けたフードを被るとマフィアから拝借したナイフを片手にそこから飛び降りた。

 

(ここ!)

 

凄まじい勢いで落ちていく中、ヤマトはタイミング見計らってナイフを建物に突き立てて落下の勢いを削ぐ。

そして、地面から1mほどに差し掛かったタイミングで、ナイフを抜いて地面に着地すると、アーツで身体能力を強化してテキサスたちを囲っているマフィアたちを飛び越えて、横からバイソンに襲いかかろうとした男の近くに着地すると同時に足払いを掛けて体制を崩し、顔面に一撃加えて気絶させた。

 

「あなたは…」

 

「吹っ切れたみたいだな」

 

「え?」

 

「雰囲気で分かる」

 

「…………」

 

「…突破は任せる」

 

「…分かった、代わりにカバーを頼むよ。ヤマト」

 

互いに目を合わせて頷きあうと、2人は行く手を阻む者たちを見据え、同じタイミングで各々の武器を構えて駆け出した。

 

 

*****

 

バイソンが持ち前の耐久力と力を駆使して立ちはだかる敵を押し破り、そんなバイソンを横から、あるいは後ろから狙おうとすればすぐにヤマトが割って入ってバイソンのカバーをする。

 

一見すれば、ただ突貫するバイソンをヤマトがカバーしてるだけのように見える戦い方だかそれは不正解だ。正解はなんなのか?それは彼らの戦闘スタイルを考えれば分かる。

まず、ヤマトは実力や経験的にも多対一でも何ら問題なく戦闘をこなせるが、彼の戦闘スタイルや今の装備では目の前に立ちはだかる者たちを蹴散らしながら進むには時間がかかる。

一方で、バイソンはヤマトとは違い持ち前の耐久力と力で強引に押し切ることが出来るため、ただ蹴散らしながら進むだけならヤマトより時間はかからない。だが、そうすると自分の周囲に気を配る余裕は少なくなる上に、盾という武器の都合上、多方面からの攻撃を一度に捌き切るのは至難の技である。

それを2人は理解して、敵を蹴散らしながら強引に進むのがバイソンの役割、そのバイソンを守るのがヤマトの役割というふうに分けていた。

 

つまり、互いに足りないものを補って戦っているが正しい解釈である。

 

「確か、あの少年たちは今日が初対面だったと記憶しておるが…ふむ中々息が合ってるではないか」

 

「そうだね、私もそう思うしああいうのは見てる側からしたら、なんかいいよね」

 

「同感じゃ」

 

それを見て鼠王とモスティマは互いにアーツを放ちながら思ったことを言う。

そして鼠王はフードを被ったループスの少年が、スラムの住民をマフィアから助けた人物でありながら、当初の予定では居ないはずだった存在であることも知っていた。

まあ、鼠王としてはそんなのは些細なことなのだが。

 

「と、そんなことを話している間にもお前さんの時間稼ぎは終わったようじゃな」

 

「うん、あのループスの少年のおかげで予想より早かったけどね」

 

鼠王は、自身の前にたどり着いたペンギン急便のメンバーとヤマトを見据えて色んなことを問いかけたり、又は色んなことを言ったが、最後に忘れていたものを聞くかのようにヤマトに声をかけた。

 

「さて、一つだけ聞いておこうかの。そこのループスの少年よ」

 

──やかましい相方はどうした?

 

「……」

 

「…そうか、それは残念じゃ……ワシはお主とあやつのコンビは個人的に見てて面白かったんじゃがの…」

 

鼠王の問いかけに、ヤマトは目を見開き顔を青くする。

その反応を見た鼠王は残念そうに呟いたが、すぐに表情を変えてテキサスたちを見据えると、アーツを解放し砂を起こした。

 

「うおわっ!どこから砂が!?」

 

「まだ余力あったの?あの人…」

 

「……そう。だから気を引き締めろ、これまでの小競り合いとは違う。気を抜いたら死ぬぞ」

 

「せっかくの安魂夜じゃ。盛り上がらんとのう?さて見せてもらおうか。エンペラーが一体どんな変わり者を飼っていたのかを」

 

堂々と立つ鼠王に対して、最初に仕掛けたのはテキサスだった。

彼女は手に持つ源石剣を鼠王に向けて振り下ろしたが、砂に触れた瞬間折れてしまった。

 

「チッ…厄介だな」

 

「なら、これならどうだ!!」

 

エクシアがテキサスをカバーするように鼠王に向かって銃弾を撃ち込むが、撃ち出された弾は鼠王には当たらず砂のバリアによって全て防がれた。

 

「やっぱり通じないかー!クロワッサン、任せた!」

 

「ダメや、うちのハンマーも、もう砂に絡め取られとる。ビクとも動かせへんわ」

 

「無駄なあがきじゃよ。これで終わりか?ペンギン急便」

 

「まだまだ、こんなものじゃないよ。それに…」

 

「…俺を忘れるな」

 

モスティマが鼠王に言い返しながらアーツを放った瞬間、彼女たちの後方から青い光が鼠王へ飛んでいき──

 

「……ふむ、これを破るとはな……ループスの少年よ」

 

「……今だ!ぶち込め!!」

 

砂の盾に当たると周囲に被害を与えない程度の軽い爆発を起こし、モスティマが放ったアーツも相まって鼠王の砂の盾を無くすことに成功し、そのチャンスを逃さないようにとヤマトは大声で告げた。

 

「ヤマトくんナイスー!弾幕射撃ターイム!」

 

「うむぅ…複数の守護銃だと?本当に面倒な天使だのう…」

 

エクシアは複数の銃を出すとそれを鼠王に向けて一斉掃射した。これには鼠王も放っておくとまずいと判断し、彼女にアーツを放ったが

 

「そうはいかない!」

 

「サンキュー、バイソンくん!」

 

「ほう、まさかこれを防ぐとはな…」

 

バイソンがエクシアの前に立ち、手に持つ盾で攻撃を防ぎきった。鼠王はまさか防がれるとは思ってなかったため、感嘆の声を上げる。

 

「ウチもいるで!お年寄りに容赦しひぃんでも、責めんといてや」

 

クロワッサンはその鼠王の隙をついてハンマーを振るったが、鼠王に当たらず、空気を震わすような重い音を出しただけで終わってしまった。

 

「ああ!やっぱ当たらんかったか!!テキサスはん!!」

 

「そうはいかんぞ?」

 

鼠王がテキサスに対してアーツを放とうとして、急遽それを飛んできた3本の矢の迎撃に使った。

 

「ふむ…このタイミングでそう来るとはな……」

 

「ヤマトくん、ありがとう!テキサスさん!」

 

「…ほう、声を使ったアーツか。変わったお嬢さんじゃの」

 

「よそ見している場合か?」

 

ヤマトはここに来るまでに回収していた矢を一斉に放った隙をついて、ソラが声を使ったアーツで鼠王の気をさらに逸らしたところを、テキサスが回避がかなり困難な角度が斬り付けたが、鼠王はこれを回避したが、その影響で着ていた外套が脱げてしまった。

 

「ふむ、ペンギン急便よ。このコートはなワシの娘が贈ってくれたプレゼントなのじゃよ。この長い間このコートに触れられたのはお主らが初めてじゃ。……さて、聞きたいことはあるが夜の時間はもう残されておらんからの。そろそろ──」

 

鼠王がアーツを作動させようとした瞬間、彼は2人のスナイパーによって撃たれた。

 

「え?今のって……」

 

「……ヤマトとあのスナイパーだ。さっきからずっとここにいる」

 

動揺するソラにテキサスは冷静に答える中、バイソンは通信で先程鼠王を撃ったスナイパーである、執事と会話していたが通信を切られ考え事をしていた。

が、それをヤマトが肩を叩いて中断させる。

 

「……考える前に、鼠王が遺したプレゼントやらを処理するのが先だ」

 

「爆弾かもしれないね。あのシラクーザ人は爆弾大好きでしょう?」

 

「爆発オチというやつか」

 

「いやいやボケてる場合じゃないでしょ?てか本当に爆弾だったらちょっとまずいんじゃない?」

 

ヤマトの天然発言にエクシアがツッコミをいれる中、ヤマト達は変わらず敵に囲まれており、向こうは彼らを待ち構えているようでもあった。

 

「全く反応がない…ふむ、そういうことか。二手に別れるぞ。ソラ、クロワッサン、エクシア、ヤ…そこの少年で残った敵を制圧する。バイソンとモスティマは置き土産の処理を頼む。もうすぐ日の出だ、時間は限られている」

 

テキサスは1人納得したような表情をすると、流れるように指示を出し、指示を出されたヤマト達は指示通りに散開した。

 

*****

 

「先程の戦いは安魂夜のイベントみたいなもの…だったのかな」

 

ヤマトは多くのキャンディが空から降ってくる中、そう呟いた。敵はあっさりと敵意を無くして散っていったため、ヤマトは気を抜いていた。

だからこそ、こちらに走ってくる存在に気づくのが遅れた。

 

「はぁ、はぁ…ねえ!そこのループスの人!」

 

「……?あんたは……」

 

「やっぱり!あの時助けてくれた人ね…やっと見つけたわ…」

 

走ってきたのは、マフィアの男達に絡まれているところを助けた女性であった。ヤマトは何故自分を探していたのか分からず頭の中に疑問符を浮かび上がらせていた。

 

「……何か、用か?」

 

「え、ええ。私、リーシーって名前なんだけど、名前聞かせてもらえる?」

 

「?ヤマトだが……」

 

「ヤマト、そうヤマトっていうの……」

 

女性は噛み締めるようにヤマトの名を何度も呟いた。一方、当のヤマトはいきなり自己紹介されるわ、名前を聞かれるわで訳が分からず困惑する限りだ。

 

「……それだけか?」

 

「あ、あともう一つだけ。ちょっと屈んで目も瞑ってもらえる?」

 

「?別にいいが…」

 

何をされるのだろうか。ヤマトは少し不安に思いながらも膝を少し曲げて屈み、目を瞑ると──頬に柔らかい感触が伝わった。

 

「────!?」

 

「取り敢えずはこれだけで勘弁してあげる!次会うときまで覚悟しててね?それじゃ、助けてくれてありがとう、ヤマト」

 

リーシーと名乗った女性は、「じゃーねー!」とヤマトに告げてその場を走って去っていった。一方残されたヤマトは、頬にキスされたことを処理しきれず固まっていると、急に飛んでもない圧が彼にのしかかると同時に両肩を誰かに掴まれた。

 

「へー、ヤマトくんって私たちが大変な思いしてる時にナンパなんてしてたんだー、へー……」

 

ヤマトは何で自分のことがバレてるのかと、疑問に思うがそれよりもとてつもない圧を発するソラに怯えながらも必死に弁解する。

 

「………ナンパした記憶はないし、俺はヤマトというループスでは……「フード邪魔だねー」あっ……」

 

「……やっぱりヤマトくんだねー。なんか、キミとはシエスタ以来話せてないし、どう話せばいいか分からなかったけど…今日はみっちり話そうか?」

 

目が据わっているソラに対し、ヤマトは頼りにしている人物でもあるテキサスに助けを乞うも──

 

「て、テキサスさ……」

 

「…ソラ、私の代わりに頼んだぞ」

 

あっさりと断られてしまい、退路を失ったヤマトはかわいた笑みしか零れなかった。

 




キャラ紹介

ヤマト:あの後、大地の果て跡地にてソラにこってり絞られた。なお、ナンパ云々についてはしっかり説明して許された模様。だが、勝手に独断で介入したことについてはエクシアから罰ゲームと称されて潰れるほど酒を飲まされた。後日、ロドスにて頬キス事件がバレた際は結構質問攻めにされたり、ラップランドが機嫌を損ねたりと大変だった模様。

テキサス:鼠王が言っていた、ヤマトのやかましい相方という言葉が気になっているが、深追いはしないでおこうと静観を決めた。

ソラ:シエスタ以来、話してなかったが今回の1件で説教したら吹っ切れた。そしてヤマトのコミュ障ぶりと天然ぶりを把握して頭を抱えた。

エクシア:星六狙撃。低装甲を一瞬で溶かすほどの火力を持つヤベー奴。コイツ置くだけでなんとかなるステージも多い。本編では、ロドスのルール守れない子にはペナルティ与えないとね!と言って早速ヤマトを弄り倒し、酔い潰した。なお、反応がいいヤマトのせいでこっちの時空でも何かに目覚めかけた。

クロワッサン:ヤマトが結構飲める口ということに驚く。これがギャップというものかと1人考えていた。

バイソン:なんやかんや、ヤマトとは相性がよく一緒に戦っている間は結構楽しかった。後日、話してみたら色々と気があったので仲良くなったとか。

リーシー:ヤマトに助けられたスラム街の女性。ラップランドにバレたらやべーことをしたやべー一般人。最後に意味深なことを言っていたが…?



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第1回!ロドススマブ○大会…これ大丈夫か?〜嵌められたコミュ障狼(前編)〜

修理に出していたSwitchが帰ってきて、久しぶりにスマブ○をやってたら思いついたネタ。ところで、オンラインのプレイヤーが全体的に強くなった気が…お陰様でガ○ンが逆VIPになりました(白目)ま、まあ本職ル○レも落ちたけど真ん中辺りで留まってるからセーフセーフ(震え声)

取り敢えず本編の方どうぞ。


ロドスにある娯楽室にて、ヤマトとアンセルは互いに鬼気迫る様子で、尚且つ真剣な表情でモニターを見て、動いてるものを一つ一つ、丁寧にかつ迅速に目で追っていた。

アンセルを除いた行動予備隊A4のメンバーとバイソンが固唾を呑んで2人の様子を見守り、ドクターは2人に見えないように手を組んでめちゃくちゃ祈っていた。

 

そして────

 

『ドリャアアア!』

 

「ああああああ!?」

 

モニターに映っている大男が振り下ろした大剣が丸っこいピンク玉のような物に当たり、同時に甲高い音が流れた瞬間、ヤマトはモニターを見ながら悲鳴をあげ────

 

『ゲームセット』

 

という無慈悲な機械音声が流れたと同時に手に持っていたコントローラーを持って、呆然としていた。

 

 

 

***

 

「ゲーム…?」

 

「ああ、行動予備隊A4とバイソン、ヤマトとやってみたいなって思ってな」

 

ペンギン急便とマフィア達による喧嘩の最後に起こったとある出来事で機嫌を損ねたラップランドに様々なこと(意味深)をされながらも、なんとか彼女の機嫌を元に戻した数日後、自室で謹慎中のヤマトはドクターにゲームをやらないかと通信で誘われた。

 

ヤマトはどうしようか考えたが、ゲームをろくにやった事がない自分が参加してもつまらないだろうし、そもそも謹慎中なのだから無理だろうと、断ろうとして──

 

「さっき、ケルシーからヤマトの謹慎は解いていいって言われたんだけど…まあ、俺たちとやりたくないなら無理にとは言わないから…」

 

「ぜひ参加させてください」

 

ドクターが少し残念そうな態度になった瞬間にヤマトは反射的にそう返していた。

ヤマトは返事をしてから「はっ!」と気がついたが、喜んでいる雰囲気のドクターを見ると今更「やっぱり参加しないはダメ?」なんて言う勇気もなければ度胸もなかった。

だが、ヤマトは念の為に釘を指しておくことにした。自分のせいで場がつまらない雰囲気になるのはヤマトの本意ではないからだ。

 

「けど、俺ゲームやった事ないから、下手くそすぎてつまらない雰囲気なる可能性が…」

 

「大丈夫だ。皆、まだそのゲームはそんなにやっていなくて全員初心者みたいなものなんだ。」

 

──嘘である。

この男、そして行動予備隊A4の面々はそれなりにやり込んでおり、今では所謂中堅クラスの腕前である。バイソンは事前にドクターが1vs1をやってみたところ、接戦になったため彼も中堅クラスの実力はある。

 

では、ドクターは何故こんな意地が悪い提案したのかと言うと、ヤマトの独断介入のペナルティを自然な形で済ませるためだ。

というのも、本来ならかなりきついペナルティがヤマトに課されるはずだったのだが、テキサスやソラを初めとしたペンギン急便のメンバーがヤマトを庇ったためだ。そのため、今回は初回というのもあって軽く済ませることになったのだが、そのペナルティをケルシーはドクターに一任した。

 

だが、任されたドクターは頭を抱えた。軽めのペナルティと言っても、変なペナルティを課したらセコムの1人(ラップランド)にミルフィーユにされかねない。かと言って、あまり軽すぎると他に示しがつかないのも確か。

そんなこんなで、容赦なく来る書類を理性を溶かしながらやり終え、息抜きで最近流行りのゲームをやっている中、ふとある案がドクターの頭に舞い降りた。

 

──そうだ、ゲームに負けた罰ゲームと称してあれをさせればペナルティになるのでは?

 

これならば、一般的な者の感性なら「うわぁ…これは惨い…」と思うのは間違いなしだからペナルティになるぞ!

 

そこまで考えついた後の行動は早く、行動予備隊A4のメンバーとバイソンに事情を説明し一芝居打ってほしいとDOGEZAをかましてまで、こちらに引きずり込んだというのが背景だった。

 

「ところでドクター、なんていうゲームやるの?」

 

「ん?ああ、大乱闘スマッシュb──」

 

「ドクターストップ!それ以上は言っちゃダメなやつ!!」

 

****

 

「ドクター、操作は分かりましたけどどのキャラが初心者におすすめなんですか?」

 

ドクターはヤマトと一緒に娯楽室にて、バイソンと予備隊A4の面々が来るまで操作説明と軽く練習をしていると、ある程度ゲームの趣旨や操作方法が分かってきたヤマトはドクターにこのような質問をした。

ドクターは、ふむ。と手を顎に当てて考えると──

 

「このカー○ィってキャラおすすめかな」

 

──嘘である。

この男、確実にヤマトにペナルティを負わせたいが為に自分が全く扱えないキャラを進めた。無論、ドクターはこのキャラが弱いとは思っていないし、寧ろ性能的には初心者向けなのだが今回参加する面々が使うキャラ達の多くはこのキャラに対して有利なカードなのだ。──ドクターが使うキャラから見たら五分かドクター側が微不利なカードなのだが。

 

「分かった!じゃあ俺このキャラ使うね」

 

──マジである。

流石、チェンに騙されやすいやつと評価されているだけあって、あっさりと騙されている。なお、ドクターは今更になってこの純情なヤマトを騙したことに対して罪悪感に苛まれている。

 

「ドクター!お待たせー!」

 

「お、やっと来たか」

 

そこへ、カーディを筆頭に今回誘った面々がやってきた…なお、この時点でバイソンはどこか申し訳なさそうな目でヤマトを見ている。

ドクターはそれにヤマトが気が付かないように、今回の偽物の趣旨を説明し始めた。

 

「さて、皆が集まったところで今回のス○ブラ大会(8人のみ)のルールと対戦形式を話そう。まずルールに関してだけど、ステージは終○でストック3の時間無制限でアイテムはなし。対戦形式は、4・4で別れてそこで順位を決めて、各上位2人で決勝。各下位2人はそこでまた下位2人を決めて、その2人でビリ決定戦を行うという形で行く」

 

「ん?待ってドクター。何でわざわざビリを決めるのにそんな手順を踏むの?」

 

ドクターの説明に、打ち合わせ通りにガーディが質問を入れる。

ドクターはそれに対し、待ってましたとばかりにその質問に答える。

 

「ああ、実はな。ただやるだけでもつまらんから、ビリにはとある罰ゲームをやってもらおうと思ってな」

 

「え?」

 

「ドクター…何をさせるつもりですか…」

 

素で驚くヤマトを後目に、アンセルがガチトーンでドクターに問いかける演技をした。

それに対し、ドクターは内心で計画通りとほくそ笑みながら、罰ゲームの内容を告げた。

 

「罰ゲームは、男子なら女装。女子なら男装して明日1日過ごしてもらう。あ、もちろんこれに参加してる人は明日の任務とかはいれてないからそこは安心して欲しい」

 

──そんなん安心できるか!

ヤマトはそう叫びそうになるもそれを押しとどめる。ここで変に自分だけ文句を言って場の雰囲気を悪くしてしまう訳にはいかない、と彼の理性が引き止めたからだ。

…因みに、この場のヤマトとドクターを除いた男子勢も予め聞いてなければヤマトが押しとどめた内容を叫んでいただろう。

 

「さて、取り敢えずはくじ引きで最初の組を分けよう」

 

そうして、組み分けが終わりゲームが始まったのだが正直いってヤマトはボコボコにされた。

 

始まって早々、最後まで生き残るために逃げ出したヤマトをメランサが操る剣を持った王子様みたいなキャラに早速掴まれてコンボを決められた挙句、ステージ外に出されたと思いきや、たまたまスチュワードが操る金髪リーゼントみたいな髪型をしたキャラの空中攻撃を食らって早速下に落とされた。

そして、その後も変わらず逃げ回ろうとするも今度はドクターが操る魔法剣士みたいなキャラにメランサ、スチュワード共々何度も燃やされ、そのキャラの定番撃墜コンボをくらってお星様にされて、ストックをあっという間に残り1つにさせられた。

最後ぐらいは一矢報いてやろうと、攻勢に転じるもメランサ、スチュワードで三つ巴みたいな感じになっているところをドクターのキャラが放った電気属性の光線を食らって最速でビリになった。なお、この試合の順位は上からドクター、スチュワード、メランサ、ヤマトとなった。

 

ヤマトにとっての2回戦目の相手はメランサ、アンセル、カーディだった。この試合では、アンセルとヤマトが残機が残り1の状態で、ステージに戻ろうとしたアンセルのキャラが放った技のルートに、追撃しようと近づいたヤマトのキャラが割り込んでしまったために、その技の関係上2人は一緒に死亡し、ビリ決定戦にコマを進める羽目になってしまった。

 

そして、話は冒頭のアンセルがヤマトを予定通りに倒したシーンへと戻る。

女装が決定して、呆然とするヤマトにドクターがポンと自分の手を彼の肩の上に置き──

 

「ヤマト、女装するための服を…えーとセンスが1番いいだろうメランサに選んでもらおうか」

 

「…………」

 

「…その、変な格好にはさせないから安心して…ね?」

 

「い、嫌だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

死刑宣告されたヤマトの恐怖心がこもった必死の叫びっぷりは、中々貴重なものだった。と後にその場にいた者たちは語るのだった。

 

 




書き終わってから言うのもあれだけど、これ大丈夫かな?()



キャラ紹介

ヤマト:ペンギン急便からの援護射撃がなかったら、女装よりも重いペナルティを食らっていたかもしれなかったという、ギリギリ首の皮一枚繋がった狼。頬キス事件がラップランドにバレた際にナニをされたのかは決して口を割ろうとしなかった。なお、友人たちが言ったことはホイホイ信じちゃうタイプ。

メランサ:使ったキャラはマル○。このキャラを選んだ理由は何でも使ってて一番しっくりきたからだとか。剣先ヒット率がやべー、流石剣聖といったところだろうか。

スチュワード:使ったキャラはリュ○。最初はネ○と迷ったが、最終的にステージに戻るのが楽なリュ○にした。総合3位。

アンセル:使ったキャラはガ○ンおじさん。混戦時にはドリャドリャめちゃくちゃやかましいことをしてた。なお、2回戦目でヤマトと一緒に場外へ落ちた時は叫んだ。

ガーディ:使ったキャラはベレ○。実は、行動予備隊の中では1番立ち回りが上手く、どの試合でも結構漁夫ったりワンチャン狙いに行って当てたりしてた。

アドナキエル:使ったキャラはピッ○。選んだ理由は天使だからという単純な理由。総合4位。

バイソン:使ったキャラはテ○ー。普段の様子に反して、ゲームでは結構ハチャメチャな行動をして場を掻き乱した。なお、ヤマトには後で騙したお詫びとしてチョコパフェでも奢ろうかと考えている。総合1位。

ドクター:使ったキャラはルフ○。めちゃくちゃ嫌らしい立ち回りをした。なお、途中のトロ○で3人同時吹き飛ばしたのは自分の実体験。あの後、3人からめちゃくちゃ言葉責めされた。総合2位。

ラップランド:頬キス事件が発覚した際、丸1日彼女を見かけた者はいなかった。最後彼女を目撃した人の話によると、ヤマトの部屋付近にいたとのこと。つまり…?


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ヤマトちゃんの1日〜嵌められたコミュ障狼(後編)〜

今回、『ヤマトちゃん』実装にあたってリア友にの助言を頂き、こうして話をあげることが出来ました。自分、ファッションセンスが壊滅的なのでリア友には感謝の言葉しか出ません。ありがとう、マイフレンド!

さて、本編の方どうぞ!



「ハア…本当にどうしよう…」

 

昨日の惨劇の翌日、今のヤマトの格好はちょっとサイズが大きめの半袖パーカーに、ショートパンツと黒のレギンスを穿いており、頭にはウィッグをつけてそれをポニーテールにして纏めているというものだった。しかも、意外と筋肉質ではない上に体の線が細いのと童顔なのが相まって、パッと見では男とはバレない具合に似合っていた。

にも関わらず、ヤマトは自室で項垂れていた。

というのも、ドクターから【演習や出撃以外の通常業務は行うこと】というのが追加されたからだ。

つまり、ヤマトはどんなに人と会わないようにこの日を過ごそうとしても、食堂で正式に働くことになった以上はグムとその他厨房メンバーとのエンカウントは避けられないものとなってしまったのだ。

そんなに嫌なら休めばいいじゃないか、とも言いたくなるが飯時の忙しさをヤマトは身をもって経験しているため、皆が頑張ってる中1人だけ個人的な理由で休むというのはひっくり返ってでも出来ないことなのだった。

 

(…悩んでても仕方ない。もう、腹を括って行こう!)

 

覚悟を決めて、いざこれから朝食で戦場と化す厨房へ行こうとドアを開けて───

 

「ヤマト、謹慎が解けたと聞いたから食堂まで一緒に行かない──」

 

「あっ……」

 

たまたま訪れたチェンとばったり会ってしまった。

固まる両者。そして、数秒時間が過ぎた後に先に行動したのは──

 

「わああああ!?」

 

胸を隠すように腕を交差させてしゃがみ込んだヤマトだった。

体をプルプルと震わせている様は正に紛うことなき小動物。

それを見たチェンは──

 

(え、女の子…?いやでもここはヤマトの部屋だし…まさか、ヤマトが連れ込ん…!?…でもさっきの悲鳴はヤマトの声だった…え?)

 

混乱していた。

さて、ここで質問。こういう可愛いものやギャップに弱いチェン隊長(当世界基準)が混乱した挙句、しゃがみ込んでプルプルと震えて涙目でこちらを見ている小動物を見たらどうなるか。

 

「──ゴフッ(か、かわええええええええええええ!)」

 

「え、ち、チーちゃん!?だ、大丈夫!?」

 

チェンは鼻から何かが流れる感覚を味わいながら、意識を落とした。

 

****

 

「……ん、ここは……」

 

チェンは柔らかいものの感触を後頭部に感じ、意識を戻した。

 

(確か、ヤマトと一緒に食堂まで一緒に行こうと誘ったら…)

 

「あ、やっと気がついた?」

 

チェンは上からヤマトの声が聞こえたためそちらを見上げると、先程の少女の顔がすぐそこにあった。

そこで、チェンは自分が置かれている状況を整理した。

まず、後頭部に柔らかい感触。次に今気がついたが今自分は横たわっていること。そして最後に、ヤマトの顔がすぐそこにあることから導き出される答えは──

 

(ひ、膝枕されてる!?)

 

チェンはその答えに辿り着くと、急に心臓の鼓動が早くなってくるのを感じた。普通、異性に膝枕をやられたら緊張するのは当たり前のこと。

それは、やっている側も同じはずであるが……

 

「良かった。前読んだ本で膝枕すると、軽い仮眠ぐらいなら癒されるって書いたあったのは本当っぽいや」

 

「……なあ間違ってたら済まないがお前はヤマト…なのか?」

 

「……ハイ、ソウデス」

 

「……色々聞きたいことはあるが、その読んだ本のタイトル聞いていいか?」

 

「?えーと『異性と仲良く過ごすための方法〜2人っきりの部屋でどうすればいいか分からない人向け!〜』って本だけど」

 

──それは恋人向けの本だ!この天然!

とチェンは突っ込みかけたが何とか飲み込む。

ここで、こんな突っ込みをすればヤマトもテンパり出して収集がつかなくなると判断したからだ。

チェンはため息を吐きながら起き上がり、時間を確認すると10分ほど気絶していたことが分かると、自身の失態に頭を抱えたくなった。

が、その失態を犯す羽目になった元凶になんで女装をしているのか聞かなければならない。

チェンはなるべく見ないようにしていたヤマトに、色々堪えながら聞くことにした。

 

*****

 

「……なるほど、そういうことか」

 

チェンは女装したヤマトの説明を聞いて、色々と頭を抱えたくなった。取り敢えず、今目の前にいる女装が似合いすぎているヤマトを見てどうしたものかと考えた。

 

まず、ラップランドに見せたら間違いなく100%お持ち帰りされて色々なこと(意味深)されるのは予想がつく。

次点でやばいのがエクシア。というのも、彼女の場合だと今のヤマトを見たら散々弄り倒した挙句、写真を撮る(黒歴史永久保存)というとんでもないことをしかねないからだ。

というよりも、ヤマトと交友関係がない者たちが今のヤマトを見たら余計に評判が悪くなるのはどんなアホでも分かる事だ。

 

かと言って、チェンだけで女装したヤマト…もといヤマトちゃんを他の人の視界に入らないようにするのは限界があるのも事実。なので──

 

「ヤマト、お前の女装姿をあまり他の者に見せないためにも、正直悪いと思うがホシグマとフロストリーフに話して協力してもらうぞ」

 

「え……見られたくないけど、仕方ない…よね」

 

(ん"ん"!)

 

普段からお世話になっている2人に女装していることがバレるばかりか、更に自分のせいなのに迷惑をかけてしまうことにシュンとしたヤマトの姿を見て、またチェンは鼻から何かを出しかけたが気合いで耐えきった。

 

こうして女装ヤマト…もとい『ヤマトちゃん』の一日が始まった

 

*以下、会話のみをダイジェストでお送り致します。

 

ケース1:グムの場合

 

「お、遅くなってすみません…」

 

「いや、大丈夫だ……あれ、ヤマト君の声が聞こえたと思ったんだけど…誰、キミ?」

 

「……ヤマトです」

 

「……今なんて?」

 

「……ヤマトです」

 

「……マジで?」

 

「……マジです」(ハイライトオフ)

 

「……皆ァァァァ!や、ヤマト君がヤマトちゃんにぃぃぃぃ!!」

 

「待ってグムちゃん!間違ってないようで間違ってる!!」

 

 

ケース2:フロストリーフとホシグマの場合

 

「……チェンから話を聞いた時は冗談かと思ったが、本当だったとは……」

 

「ええ…これには小官も驚きました…結構似合ってますよ、ヤマト殿」(ニッコリ)

 

「似合ってるって言われるとなんか複雑だなぁ…それとごめんね。俺の自業自得なのに迷惑かけちゃって…」(シュン)

 

「……なんだろうな、普段から保護欲というかそういうのはあるんだが、女装したこいつだと余計に……」(ウズ)

 

「……ヤマト殿、いっその事ずっとその姿で過ごしてみたらどうでしょう?」(真剣)

 

「2人はなんか俺に恨みでもあるの!?」

 

 

ケース3:ペン急メンバーの場合

 

「あははははwwやばいw腹筋がwwww」

 

「わ、笑わないでよぉ!すごい恥ずかしいのに…」

 

「それにしても、えらい似合っとるなぁ…本当は女の子なんちゃう?」

 

「正真正銘、男だよ!!」

 

「えーと…その、女性の私から見ても十分可愛いよヤマト君」

 

「……皆、それ言うけどさ…本当は似合ってないんでしょ…」

 

「そんな事ない!!可愛いよ!!例えば──」

 

「待て、お前ら。これ以上ヤマトを困らせるな」ヨシヨシ

 

「……やっぱりこの中じゃテキサスさんが1番頼りになるよ……けど、なんで頭撫でてるの?」

 

「…すまん、体が勝手に……」

 

(隠し撮り成功ー!それにしても、あのテキサスが気がついたらあんなことしちゃうなんて…そうだ!この写真は『魔性の天然狼ヤマトちゃん爆誕☆』ってタイトルにしよう!)

 

「エクシア、後で話がある」

 

(あ、終わった)

 

ケース4:アーミヤCEOの場合

 

「……ヤマトさん、もう一度聞きますが本当にあなたの性別はなんですよね?」(ゴゴゴゴ)

 

「…そ、そうです…」(プルプル)

 

「……女性として勝ってるのが胸しかないなんて……」(ハイライトオフ)

 

(ヒェッ……)

 

 

 

*****

 

「疲れた……」

 

夕食の仕事が終わり、自室でヤマトは疲労困憊といった感じでそう呟いた。

チェンを筆頭に、本日関わった人達の協力のおかげでヤマトは交友関係がない人物たちとのエンカウントは多少はあったもののかなり少なくすんだ。

ただヤマトの中で疑問に思っているのが、交友関係がない人達が自分を見た時、そんな気味が悪いものを見るようなもので自分を見なかったことと、会って話した人達が全員自分のことが分からなかったことだ。

 

(確かに女装してるとは言え、気づかないほどかなぁ…)

 

ヤマトがそんなことを考えていた中、来客を告げるインタホーンが鳴った。

この時、ヤマトは疲れていたせいもあってか誰が来たのかを確認するどころか、相手が用件を話す前にドアを開けてしまったのだ、

 

「はい、誰で──」

 

「ヤマト?」

 

「────」

 

訪ねてきたのは、任務に出撃していたラップランドであった。

彼女はウィッグを付けて女性物の服を着ているヤマトを見て、驚きの声を上げ、見られたヤマトはピシッと固まるも、直ぐにドアを閉めようとしたが、ラップランドがそれを間に足を挟んで阻止した。

 

「ちょっとなんで閉めようとしたいんだい?ボクはただ会いに来ただけなのに…」

 

「ご、ごめん…気がついたら体が勝手に…」

 

「まあ、いいや。取り敢えず詳しい話は中で聞かせてもらおうかな」

 

****

 

「なるほどね…それで女装して1日過ごしたと」

 

「はい、そうなります…」

 

「全く、ドクターも酷いことするねぇ」

 

──嘘である。

この狼、寧ろこのようなペナルティを課したドクターに心の底から賛美を送っていた。正直、鋼の理性がなければ今頃、ヤマトの耳と尻尾を触るために襲いかかっていただろう。

 

「やっぱり女装って酷いと思うよね?いや、負けた僕が文句言う筋合いはないと思うんだけどさ…」

 

「うん、そうだね」

 

目の前で不満ありげに零すヤマトにラップランドは適当に相槌をうちながら、どうやってヤマトを弄り倒そうか考えていた。当初は女装で攻めたかったのだが、残念なことに結構似合ってるためどこを弄ればいいか分からないのが現実である。

 

「でも、フーちゃんやチーちゃんのお陰で何とかなって良かった…」

 

ヤマトのなんて事がない発言にラップランドはピクっと反応した。

 

「ヤマト、それって…」

 

「ああ、なるべく他のみんなに見られないようにフーちゃん達が助けてくれたんだ…まあ、一部の人は笑って虐めてくるだけだったけど…」

 

ラップランドは何故かそれにムッとしてしまった。確かに今日は任務があったからヤマトの女装を隠すために色々出来なかったとはいえ、2人には話して自分には話さないというのは、面白くない。

ヤマトはそれを気にせず話を続ける。

 

「でも、初見で俺だって分かったのはラーちゃんだけだったよ」

 

「…え?そうなの?」

 

ヤマトの思わぬ発言にラップランドは素で聞き返した。

ヤマトはそんなラップランドに疑問符を浮かべながらもコクンと頷いた。

 

(皆ヤマトだって直ぐにわからなかったんだ…)

 

その事実にラップランドは自分でも単純だと思いながらも、機嫌が治ってしまった。

そして、ラップランドは調子に乗ってヤマトにこんな提案をもちかけた。

 

「ねえ、ヤマト。一目でキミだって分かったご褒美に、ヤマトの尻尾触らせて欲しいんだけどダメかな?」

 

「え!?」

 

ラップランドの突然の提案にヤマトは驚いた声を上げて、どうしようかと考え始めた。というのも、尻尾や耳を触られると色々と恥ずかしいし、気がついたら寝てしまうことあるからだ。しかし、ラップランドに触られるのは嫌いではなく、寧ろクセになってしまうほどなのも事実。

 

ヤマトは散々考えた上で出した結論は──

 

*****

 

余談ながら、ロドスの七不思議に『1日だけしか現れない美少女ループス』というのが追加されたとかされなかったとか。




キャラ紹介

ヤマトちゃん:1日限定実装され、色んな人を惑わした魔性の天然美少女()ループス。因みに、コーデしたメランサが言うには当初はレギンスだけだったのだが、ヤマトが恥ずかしいと言ったためショートパンツを追加した結果、逆にチラリズム的な意味で威力が倍増したとのこと。なお、女装があまりにも似合いすぎるせいでヤマトと交友関係がある者でさえ一目ではヤマト本人とは分からない程だったので、交友関係がない人たちはヤマトだと全く気が付かなかった。ラップランドに許可を出したどうかはご想像にお任せします()

チェン:危うく自ら出した血の海で死ぬところだった。できたら、もう1回なってくれないかなと思ってしまっている。

グム:ヤマトちゃんの違和感のなさぶりに度肝を抜かされた。自分が男だったら惚れてた可能性もあったかも、と後に零した。

フーちゃん:ヤマトちゃんに惑わされかけたものの、強靭な精神で耐えきった。でも今回の件で保護欲的なものが余計に強くなったとか。

ホシグマ:こちらも落とされかけたものの、頼れる姉御だからこそ耐えきれた。何気にヤマトを自分の身長で隠してあげるというファインプレーをしていた。

ボロ雑巾みたいな天使:カメラのデータは消されたものの、SDカードに写していたため何とか残すことに成功。でもバレたらあとが怖いため奥底にしまい込むことにした。

テキサス:保護欲が掻き立てられ気がついたら頭を撫でていた。なお隠し撮りしていた天使とのOHANASHI☆は上手くいったとか。

アーミヤ:落ち込んでいるところをドクターに励まされただけではなく、容姿をべた褒めされて顔を真っ赤にして撃沈した。

ラップランド:一目でヤマトちゃんをヤマトだと見抜いた唯一の人物であり、ヤマトのモフり方を熟知しているベテラン。自分がフーちゃん達に嫉妬していたと自覚できていない。


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修羅場不可避!リーシー参戦!

お待たせしました!


満を持して彼女の登場です。さあ、引っ掻き回してもらおうか…


ゲームのエクストラステージムズすぎて止まってしまいました…読者の皆さんは自分みたいに止まるんじゃねえぞ…


ある日、ロドスの食堂のとある一角のテーブルを他のオペレーター達は遠くから見ていた。というのも

 

「へー、キミはヤマトの追っかけ…ようはストーカーなんだね」

 

「人聞きが悪いわね、彼に恩を返したくて私は少しでも力になれたらって思って入ったんだけど?」

 

「ああ、自分がストーカーだと認めることが出来るほどの知力がないんだね、ごめんよ。気遣ってあげられなくて」

 

「は?」

 

「ん?」

 

「……(ニコニコ)」

 

「……(ニコニコ)」

 

(フーちゃん、チーちゃん、テキサスさん、ホシグマさん…いや、もう誰でもいいから助けて…)

 

ヤマトを挟んで2人の女性が互いにプレッシャーを放ちながらこんな会話をしているからだ。

なお、挟まれているヤマトは2人から発せられる空気に恐怖と謎の胃痛に襲われながらも、心の中で必死に助けを求めていた。

 

なぜ、こんなことになったのか?それは少し時間を巻き戻す必要がある。

 

****

 

その日、食堂でたまたま会ったヤマトとラップランドは移動するのも面倒臭いため、食堂のある一角のテーブルで談笑していた。

 

「そういえば、今日ロドスに事務仕事担当で新しく入った人がいるんだって」

 

「この時期に…?いや、ドクターのこと考えたら遅すぎるぐらいなのかな?」

 

ラップランドがふと思い出したように発言した内容に、ヤマトは今頃書類の山に埋もれているドクターのことを考えながら当たり障りのはない返事をした。

 

「それにしても、どんな人なんだろうね?」

 

「さあ?ボクもまだ見てないからなぁ」

 

「へー、ヤマトったらもう私があの時言ってたこと忘れちゃったの?」

 

「え?」

 

突如、背後から声をかけられたヤマトは首を後ろに向けると、服装はロドスの制服になっているものの、そこにいた人物はヤマトにとっては忘れることが出来ない人物が立っていた。

 

「リーシー…なんでここに…」

 

「何でって…あなたの事を追いかけて来ちゃダメかしら?」

 

「………」

 

リーシーの直球な言い分にヤマトは思わず黙り込んでしまう。リーシーはそんなヤマトに近づこうとして──

 

「待ってよ、ボクとヤマトが楽しく話してる時に急に割り込んでくるなんて非常識じゃないかい?そもそも、キミは誰なんだい?」

 

ラップランドが待ったをかけた。いきなり現れた何処の馬の骨か分からない女がヤマト近づくのは彼女としては、あまり心地のいいものでは無い。

リーシーはそんなラップランドを一瞥してから、自己紹介した。

 

「私はリーシー。今日からロドスで住み込みで働くことになった者よ」

 

「…なるほど、キミが話の新しく事務仕事担当の人か」

 

ラップランドは目の前の女性が件の新人という意味と、コイツがヤマトの頬にキスしたやつか、という意味で頷いた。

何故、わかったかと言うとラップランドはヤマトからキスした女性の名前を聞いていたのに加え、目の前のヤマトが少し顔を赤らめていることから察することが出来る。

 

──じっくり話す必要がありそうだ。

 

ラップランドはそう考えると目の前のリーシーを見据えた。

 

一方でリーシーは目の前のラップランドが自分の敵でないかと予想した。というのも、ラップランドがヤマトに向ける目には少なからず熱っぽいものが含まれているのを『スラムの恋愛番長(実経験なし)』と呼ばれていたリーシーは見破っていたからだ。

 

──じっくり話す必要がありそうね。

 

リーシーも同じことを考えながらラップランドを見据えた。

 

 

****

 

そして話は冒頭に戻る。

 

「それにしても、キミはヤマトとほんの少ししか話してないのに随分と馴れ馴れしいね?ヤマトのことを知ってれば少しは遠慮すると思うんだけど?」

 

「あ、そうなの…それは悪かったわね。ごめんなさい、ヤマト」

 

「いや…別にいい」

 

ラップランドはかつての自分がとった行動を棚に上げて、リーシーのヤマトに対する態度を指摘し、彼女に遠回しにヤマトと距離を取れと笑顔で告げるも、リーシーはそれをしっかり受け止めてヤマトに謝った。無論、ヤマトとしては邪険にする理由などありはしないので謝罪を素直に受け取った。

ラップランドはヤマトからリーシーを離すことに失敗したことに内心舌打ちしている一方、リーシーはラップランドがヤマトに向けている想いをしっかり把握しきれていないことを読み取っていた。

 

(これなら、うまーく言いくるめればヤマトをゲット(色んな意味で)できるわね)

 

リーシーはそう考えながらも、ヤマトと2人で過ごすために行動を起こすことにした。

 

「ヤマト、私まだロドスの中よく分からないから案内してほしいんだけど…いいかな?」

 

「構わないが…俺でいいのか?」

 

「ええ、てかあなた以外知っている人いないし」

 

「そうか…では、ラーちゃんも一緒に行こう」

 

「「!?」」

 

ヤマトの提案にリーシー、ラップランドだけではなく見守っていたギャラリーも驚愕のあまり驚いてしまった。

リーシーは予想に反して他の女性も連れて回ろうと提案したことに、ラップランドは自分も一緒にと言ってくれたことに、周りはさっきまで2人に挟まれて震えていたのに、ということでだ。

 

「えーと、ボクも一緒でいいのかい?」

 

「え?逆にダメなの?」

 

ここでリーシーにとっての誤算が2つ。1つはヤマトが天然だということ。もう1つは──

 

「ラーちゃん1人だけ残してなんてこと出来ないよ」

 

ヤマトにとってラップランドは恋愛的な意味こそ()()ないものの、大事な人だということ。だからこそヤマトは、2人から発せられる圧がどんなに怖くて、原因不明の腹痛が襲ってきてもラップランドを置いていくというのは出来なかったのだ。

 

「…ふふ、ありがとう。ヤマト」

 

「?どういたしまして?」

 

機嫌が少し良くなったラップランドに疑問符を浮かべるヤマトだったが、考えてもよく分からなかったので「ま、いっか」と流しリーシーに構わないかどうか声をかけた。

 

「リーシーもそれでいいか?」

 

「ええ、いいわよ。考えてみたら同性で話せる人も欲しいしね」

 

──半分嘘である。

後半の話せる云々は本心であるが、ラップランドが同行することに関してはあんまり良くないどころか、許されるなら言いくるめてヤマトと2人っきりでロドス内デートをしたかった。だが、変にここで意固地になってヤマトに悪い印象を与えるわけにはいかないため妥協すべきだと、彼女は冷静に判断した。

ヤマトがそんなリーシーの葛藤を知らずに呑気に「それじゃ行こっか」と言って立ち上がったところで、リーシーはヤマトの腕に組むように抱きついた。

 

「!?」

 

「…ねえ、敢えて聞いてあげるけど何してるの?」

 

「何って…はぐれないようにしてるだけだよ?」

 

ヤマトが腕に伝わる柔らかい感触に驚きながらも顔を赤くしている一方で、ドスの効いた声で質問したラップランドに対し、リーシーはなんて事ないように言ってのけた瞬間、ラップランドにビキっと青筋が入った。

 

「別にそんなくっつかなくても大丈夫だろ?それよりヤマトは初心なんだから、そんなことしちゃダメだって知らなかったの?」

 

「あら?ヤマトはこれぐらいで狼狽えるほど初心じゃないわよ?これより凄いこと…私のハジメテ上げたんだから」

 

「え!?」

 

突然の爆弾発言にヤマトが驚き、見守っていたオペレーター達がどよめく中、ラップランドは鼻で「フッ」と笑いながらそれを払いのけた。

 

「ハジメテって、頬にキスでしょ?ボクはそれより凄いこと…ヤマトのハジメテを貰ったからね?」

 

「なんですって!?あ、あなた、ヤマトと──!?」

 

「待って!!ラーちゃんもリーシーも変に誤解生む言い方しないで!?頼むから!!」

 

10数分後、騒ぎを聞き付けたフロストリーフを初めとしたヤマトの保護者が駆けつけて、大声で争い合うリーシーとラップランドを静か(物理)にさせた。なお、その時のヤマトは顔を可哀想なくらい真っ赤に染めて「もう…部屋に帰るぅ…」と呟いていたとか。

 

さらに余談ながら後日、ヤマトの本性をしったリーシーは「それはそれであり!」だと1人盛り上がっていたとか。




キャラ紹介

ヤマト:食堂で自分を巡って修羅場を展開された本小説のヒロイン。ラップランドのことはなんやかんや大事な人であり、これまでの話でもラップランドに対してはいろいろ甘いところが見受けられる。なお、自分がリーシーに好意を寄せられていることに気がついてないように見えるが…?

ラップランド:まだ自分がヤマトに抱いている物がはっきり分かっていないループス。今回、ガンガン攻めるリーシーに凄いイライラしていた一方で、何故こんなにもイライラするのか不思議に思っていたとか。

リーシー:オリジナルキャラにして、『喧騒の夜に紛れる狼(下)』から数話で満を持して登場。想像では恋愛に関しては無敵(自称)で、基本的な作戦はガンガンいこうぜ!。早速ラップランドと修羅場を展開させた。なお、ラップランドが言っていたハジメテが尻尾耳モフモフと言うことがわかって安心半分、羨嫉妬半分な気分になったとか。なお、ラップランドの方が自分よりある箇所が大きいことを知った時は舌打ちした。

保護者メンバー:今回のメンツはヤマトのオカンフロストリーフ、頼れる姉御肌ホシグマ、ヤマトが絡まなければ頼れる隊長チェン、無自覚イケメンテキサスの4人。正直、あの2人を止めるには過剰戦力。

見守っていたオペレーター達:今回の騒動で、大声で突っ込んだり最終的には顔を赤くしてちっちゃくなったヤマトを見て、色々考え直したとか。


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保護者たちの女子会

Q.間が空いたのにも関わらず低クオリティの話を投稿する馬鹿はどこのどいつ?

A.じ ぶ ん で す

はい、ちょっと間が空いたのにも関わらず低クオリティな話になってしまいました…

とりあえず、本編の方どうぞ。因みに結局モスティマもエクシアも来てくれませんでした(白目)

追記:6/11 2:03にてアンケートを実施します。ある程度票が集まり次第締め切りという形でいきます。御協力お願いします!


フロストリーフの部屋にて、チェン、ホシグマ、テキサスの4人がテーブルの上に並ぶ、色んな食べ物と飲み物を前に座っていた。

フロストリーフは、呼びかけた者が全員いることを確認すると「コホン」と咳払いし──

 

「これから、第1回ヤマト保護者の会を始める」

 

「「待て、いつから私はヤマトの保護者になったんだ?」」

 

チェンとテキサスはフロストリーフの第一声に思わずツッコミを入れると、フロストリーフは「何を言っているんだ」という視線を向けながら答えた。

 

「お前ら、なんやかんやヤマトが面倒事に巻き込まれたり、(色んな意味で)襲われてる時に助けに入ってるだろう。だから保護者枠だ」

 

少々強引ではあるものの、フロストリーフが言った前半の方は、正にそうなので2人は視線を逸らしたがチェンがあることに気がついた。

 

「なあ、ホシグマ。なぜお前は反論しなかったんだ?」

 

そう、チェンの部下でもあるホシグマが何も言っていなかったのだ。チェンはたまたま、突っ込むタイミングが分からなかったり敢えてスルーしたのだろう、と希望を持って彼女の返答を待って──

 

「まあ、保護者と言われて納得しちゃったので…」

 

「お前がそっち側についてどうする!?」

 

あっさり裏切られた。

なお、チェンがツッコミを入れている最中、テキサスはホシグマがヤマトのことを色々とフォローしている所を何度か見ていたことを思い出していた。特にヤマトが背伸びしても届かないところにあったものを彼女が取って渡していたのを見たのは、記憶に新しい。

 

「いや、なんか彼を見てると弟みたいな感じがして、つい…」

 

「いや、気持ちはわかるが…!」

 

「まあ、待て。今夜は皆のヤマトをどう思っているかを、酒でも飲みながら聞きたくて集めたんだ。ホシグマに物申すのはそれが終わった後にしてくれ」

 

フロストリーフは荒ぶるチェンを落ち着かせ、今回この会を開いた趣旨を話した。

正直な話、彼女はなんやかんやヤマトを助けている3人の本音が聞きたかったので、酒を飲みながらならば聞けるだろうと思っていた。

それに、彼女らとはこれからもヤマト関連で関わるので友好を深めておきたいのもある。

 

「まあ、別にいいが…ところでラップランドがいないようだが…」

 

「あいつはヤマト関連でトラブル起こすから保護者じゃないだろ…」

 

「あっ…(察し)」

 

こうして、保護者組による女子会が始まった。

 

*****

 

「気になっていたんだが、フロストリーフはどういった経緯でヤマトと交流ができたんだ?」

 

始まって早々、チェンが疑問に思いながらも中々聞けなかったことを聞いた。フロストリーフは「ああ、そういえば」と呟きながらもヤマトとの馴れ初めを話し始めた。

 

「あいつは入りたての頃、周りと全く交流しようという動きがなくて1人で1日を過ごしていてな。それが以前の私と同じに見えて、気がついたらお節介を焼いていたわけだ。最初はただ単に人と馴れ合うのが嫌いな奴だと思ってたんだが、ある日なんかそういう意味じゃないなって思い始めたんだ」

 

「そうじゃないって…なんでそう思ったんだ?」

 

「まあ、気づいたのは偶然だったんだが当時のアイツは誰かと話してる時は必ず、体が全体的に強ばっていたんだ。それで、もしかしたらって思って筆談で人と話す時どう思ってることを余さず書いてみてくれ、って言ったら…」

 

フロストリーフはそこで一旦切って、酒を一口飲んで続けた。

 

「『緊張してなんて話せばいいか分からない。何度も声をかけてくれた貴方にどうすればいいか聞いてもいいだろうか』って返事が来てな…あの時は思わずずっこけたな。その後は、とりあえず私と自然に話せるように、となるべくアイツといる時間を増やして話してたら、今みたいな感じになったわけだ。」

 

フロストリーフは疲れたように息を吐いて、グラスに入った酒を一気に飲んだ。

 

「その…ご苦労さま…と言うべきか?」

 

「……ありがとう…そういえば、チェンとヤマトがどういうきっかけで交流を持ったかは知っているが、ホシグマとテキサスは知らないから教えてくれないか?」

 

チェンが少し控え気味に労いの言葉をかけ、フロストリーフは疲れた目をしてそれを受け取った彼女は、苦笑いを浮かべているホシグマと変わらず無表情ながらどこか発する雰囲気が優しいテキサスに、ヤマトとの馴れ初めを聞く。

 

「私は…チェン隊長が企画した飲み会がきっかけだったな」

 

「ああ…ラップランドがヤマトを酔わそうとして返り討ちにあったやつか」

 

最初に答えたのはホシグマで、彼女が答えた内容にフロストリーフはそんなことがあったなと思いながら相槌をうつ。

 

「それ以来、彼と話したり見ているとほっとけなくなってしまって…気がついたら色々と彼に世話を焼いてしまっているな」

 

((わかる))

 

(最も、私の場合はそれだけではないけどな…)

 

ホシグマの発言にチェンとフロストリーフは激しく同意している一方、ホシグマは()()()()()は言わないことにした。この理由は、ヤマトが自分の過去を言うまで、もしくは自分が彼の過去を話さなければならない事態になるまでは胸の内に仕舞うことにしているのだから。

 

「次は、私か。私の場合は…」

 

次にテキサスの番となり、彼女はきっかけを話そうとして詰まった。

というのも、彼女がヤマトに慕われるきっかけとなったのが彼がレッドに尻尾と耳をモフられ蕩けていた所を助けた、というものだからだ。

 

正直、「これがヤマトと仲良くなったきっかけです」なんて言えば、ヤマトの男としてのプライドが…プライドが…

 

(……いや、言っても大丈夫か?)

 

テキサス、ここでヤマトに男としての尊厳は残っているのか?というとてつもなく失礼なことを考え始めた。というのも、ラップランドやレッドに襲われたり、すぐに涙目になったり、最終的には女装(しかも似合ってる)ことを考えると…正直残ってないと思ってしまう。

 

テキサスは少し悩んだ末…

 

「レッドに尻尾と耳を触られて、少し危うい状態のところを助けて以来慕われるようになったな」

 

「「「ブフっ!?」」」

 

正直に話し、それを聞いた3人は思わず吹き出してしまった。幸いにも、口には含んでいなかったので卓上が悲惨なことになるのは避けられたものの、いきなり吹き出した3人にテキサスは疑問符を浮かべた。

 

「どこか、おかしかったか?」

 

「「おかしいに決まってるだろう!?」」

 

キョトンとした様子で首を傾げるテキサスに、フロストリーフとチェンがすぐさまツッコミを入れた。

 

「レッドと仲良くなったという話は聞いてたが、なんでお前がその場にいたんだ!?」

 

「なぜと言われても、廊下でそんな状態だったからとしか…」

 

「廊下で!?レッドがいきなりやったとは思えんし…ってことはあのコミュ障オオカミは何やってんだ!?」

 

ここでレッド(加害者)ではなくヤマト(被害者)がそうなるきっかけを作ったのではないかと考えるあたり、彼女らはヤマトのことをよく理解していると言える。

 

「まあまあ、ヤマトのことだからそんな状態になるまで触られるとは思ってなかったんだろう」

 

「そう言われると…納得できるな」

 

ホシグマのヤマトをフォローする発言で、その場はとりあえず落ち着きそこからはヤマトに関する他愛もない話が…

 

「あいつは私を殺す気なのか…女装した時はあまりの可愛さに気絶したぞ…」

 

「気絶はしなかったが、正直チェンの言い分はわかるし、私の場合は余計に守ってやりたい感覚には襲われたな…」

 

「私としても、女装したヤマトは可愛かったと思うな…出来たら違う服でやって欲しいものだ」

 

「私は、気がついたら頭を撫でていたな…」

 

「てか、思ったけどヤマトって幼女みたいな感じするよな?」

 

「「「分かる」」」

 

……主にヤマトちゃんの話で盛り上がり結論は『今度はスカートをはいたヤマトを見たい』で纏まり、同時刻レッドと話していたヤマトは謎の悪寒に襲われたとか。

 

そして後日、話が進みすぎたせいで飲みすぎて、二日酔いになったフロストリーフとチェンがまたヤマトの世話になったのは別の話である。

 

 

 




キャラ紹介

ヤマト:本小説主人公なのに、出番が最後にちょびっとだけという…なお、レッドとは彼女のもふもふグランプリなるものの概要などで話し合っていた。

フロストリーフ:キャラ崩壊が進みつつある保護者その1。今回保護者の会を開いた理由は本編で述べた通り。ヤマトの過去こそ知らないものの、彼の人となりなどは彼女が一番知っている。なお、聞いてはいたもののヤマトの看病スキルの高さには脱帽した。

チェン:キャラ崩壊が1番激しい保護者その2。ヤマトLove勢と見せかけたヤマトポンコツ勢であり、ヤマトが子供みたいな行動をとる度に鼻から尊みが溢れ出す。ヤマトのアーンには慣れそうにないとの事。ヤマト『ちゃん』にスカートを穿かせたら?と提案した本人。

ホシグマ:面倒見がいい姉御肌の保護者その3。実は、この中ではヤマトに関しての理解度が2番目に高い。何やら意味深なことを考えているようだが…?

テキサス:ヤマトのピンチに颯爽と現れ助けるというイケメンムーブをかましている保護者その4。酒のせいで普段は考えない失礼なことを考えてしまったが、シラフに戻ってからも案外間違ってないのでは?と思ってしまった。ヤマト『ちゃん』のスカートを密かに楽しみにしている。

レッド:もふもふグランプリ開催中。あとはテキサスのモフり具合で順位が決まるとのこと。もふもふグランプリの話を聞いてくれるヤマトは結構好き。

ラッピー:ヤマト関連で騒ぎ(主にリーシーとの喧嘩)を起こしまくったせいで保護者クビに。なお、セコムはクビになっていない模様。


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元傭兵の懺悔(上)

今回はヤマトの過去の一部の話なので、シリアスです。

それとアンケートの方なんですが…正直、上位2人は予想通りだったのですが、3位であの二人で接戦というのに驚いています。
一応、まだアンケートはとっておりますので出来たらご投票の方お願いします。

それでは本編どうぞ!

P.S.危機契約思ったより難しい(白目)


その日の夜、チェンは中々寝付けず軽く体を動かそうとトレーニングルームへ足を進めていた。

この時間帯で利用しているものはいない、そう思ってトレーニングルームに入ろうとしたところで、狙撃のシミュレーションルームが使用中のランプが着いていることに気がついた。

 

(こんな夜中に狙撃の訓練?熱心なのはわかるが、寝る間を惜しんでやってるのだとしたら注意した方がいいかもしれんな…)

 

自分と同じく中々寝付けなくて軽くやってるならともかく、もし寝る時間を削ってまで自主訓練しているとしたら話は別だ。

チェンはいつの間にかロドスの連中にもこういう注意をしようとする羽目になるとは、と思いながらシミュレーションルームを覗き──

 

「え?………」

 

そこで現れてくる仮想の敵の頭や肩口、膝といった急所を次々に撃ち抜いていく人物に驚愕した。

 

****

 

「はぁ……」

 

「チェン?さっきから何度もため息吐いてるけどどうかした?」

 

「ドクター…いや、何でもない」

 

執務室にて、ドクターは今回の秘書であるチェンの様子がおかしい事に気がついていたが、先程から聞いても「何でもない」の一点張りで何が彼女にそんなことにさせてるのかを直接聞くことは出来ていなかった。

(うーん…チェンがこんなにため息を吐くと考えると…龍門で何かあったのか?いや、そしたらこっちにも話が来るし…)

 

ならばと、ドクターは最近習得したマルチタスクを利用して書類を進めながら、チェンがああなった根拠を考え始める。

 

(龍門や近衛局関連以外となると…ラップランドとリーシーのヤマトを巡る戦いのこと?そしたら疲れた顔でため息を吐いてるけど、今回はどこか悩んでる顔で吐いてたから違うと見ていい。そうすると…ヤマト関連でなんかあったとしか考えられないわけだけど…)

 

ドクターはそこまで考えたものの、正直これも先程の2つよりは可能性は高いがヤマトがなんかやらかしたり、修羅場以外で巻き込まれたという話は聞いていない。

 

(だとすると、他に考えられることは──)

 

「…ドクター、一つだけ聞いていいか?」

 

ドクターが再び思考の渦に呑み込まれそうになった時、チェンが少し控えめに声をかけた。

ドクターは考えるのを止めてチェンの方に視線を向けて返事をする。

 

「ああ、俺で答えられることであれば」

 

「…その、変なことを聞くかもしれないが、ヤマトが精通している戦闘技能は近距離系統全般で、弓術や射撃…特に狙撃はそうではないんだよな?」

 

「?ああ、その通りだが…」

 

「そうか…」

 

チェンが内容に、ドクターは疑問に思いつつもヤマトが入所した時のテストの結果を確認して答えた。

チェンはその答えを聞くと、今度は思案顔になってしまい結局チェンの質問の意図やため息を吐く理由をドクターは明らかにすることが出来なかった。

 

 

****

 

「………」

 

警備や一部の者以外が寝静まった時間、チェンはトレーニングルームへ向かっていた。

これから彼女がすることは余計な詮索であり、下手をすると()を傷つける可能性がある事なので散々悩んだが、彼女は覚悟を決めた。

そして、チェンは狙撃室のシミュレーションルームに彼がいるのを確認すると中に入り、仮想の敵を発生させるシステムを切った。

すると、そこで狙撃用のボウガンで仮想の敵を撃ち抜いていた人物は、スコープから目を離し、後ろを向いて──

 

「自主的に訓練をするのは感心するが、寝る時間を惜しんでまでするのはどうかと思うぞ?──ヤマト」

 

「ち……チーちゃん……」

 

システムを切った本人が自分にとって大事な人の1人であることを理解すると、ヤマトは顔を青ざめさせた。

 

「ヤマト…お前は確か遠距離武器は精通していないという話だったが、これ程の腕を持ちながら何故偽ったんだ?」

 

「……っ」

 

 

チェンの問いかけにヤマトは1歩後ずさる。チェンはそれを見て、やはりヤマトは何かしらの事情があって隠していたのだと判断した。

正直な話、遠距離武器も高いレベルで扱えることを隠していたことには驚いたし、何故か少しだけ裏切られたような胸に穴が空いたような痛みが襲ったのも事実だ。

だが、顔を青ざめさせ何かに怯えるような様子のヤマトを見れば元から無かったが責める気など湧いてこない。

それよりも湧いてくるのは、ボウガンを両手で握りしめて()()()怯えている様子のヤマトを安心させてやりたい、といったものだった。

 

「…とりあえず、何故こんなことをしてしまったのか話してくれないか?お前は私にとって大事な──」

 

「……っ!!」

 

「なっ、ヤマト!?」

 

チェンが優しい声音でヤマトに声をかけている途中で、耐えきれなくなったようにヤマトはボウガンを抱えて彼女の横を通り抜けて部屋から逃げるように出ていった。

突然の事態にチェンは驚くも、それよりも今の彼女は別のことで頭がいっぱいだった。

 

ごめん…

 

すれ違いざまにヤマトが小さい涙声で呟くように出た言葉と、目から出ていた水滴。

それが示すことにチェンは思考を埋め尽くされていた。

 

「ヤマト……お前は一体……」

 

──何があったんだ。

 

チェンの絞り出すように紡がれた言葉は、無機質な壁に吸い込まれ消えていった。

 

 

 

*****

 

「ふぅ……次の作戦の編成やっと終わった」

 

ドクターは自室で作業を終えると、固まった体をほぐすように手を組んで上に伸ばして息を吐きながら、次の作戦の編成を改めて見直す。

 

(各部隊の戦力のバランスは同じようにしたけど、不安があるとすれば…予備隊A4、A6、プリュムとヤマトを入れたところかな…)

 

当初、そこの部隊にはヤマトはおらず彼は初めの段階こそ、ラップランドとチェンがいる部隊に入れる予定だった。

しかし、途中で先程の部隊には戦闘経験が豊富な物がいないことに気がつき急遽、予備隊A4のメンバーとは仲が良くなってきたヤマトを起用した。彼は戦闘経験は豊富で戦闘能力もロドス内では上位の方に位置する上、彼の並外れた危機察知能力ならば万が一があっても撤退のタイミングを逃すこともないだろう、というのがドクターの見立てであった。

 

(…ちょっとヤマトに頼りすぎかな……あ、そういえばヤマトは結構色んな作戦で功績出してくれてるし、この作戦が無事に終わったら、ケルシーやドーベルマンにも2回目の昇進の是非聞いておこうかな)

 

ドクターはそこで思考を止めると、ベッドの中に入り目を閉じた。

 




キリがいいのでここで切って、下へと繋げます。なるべく早く投稿できるように頑張りますのでお待ちください…


キャラ紹介

ヤマト:実は遠距離系統…特に狙撃にも精通していることをロドス内で知っているのはペン急組とある人物のみで、ペン急組はヤマトにも事情があるだろうということで内密にしている。チェンに見られた時は顔を青ざめさせ何かに怯えていたが…?

チェン:あの後、暫く訓練室で色々考えていたがどうしようもないのでとりあえず部屋に戻った。

ドクター:ヤマトのことは友としても、1人のオペレーターとしても信頼しており、そろそろ彼の功績に報いてあげたいと考えていたらしい。


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元傭兵の懺悔(下)

どうもアンケートがとんでもない番狂わせを起こしていて、内心戦慄してる作者です。
これ、誰がなってもおかしくねえぞ……

あと、板タブ買ったので今絵の練習もしています。頑張ってリアルヤマトちゃん描くぞー!(いつ出来るかは不明…というより永遠にできない可能性の方が高い)

それと今回の話なんですが…ちょっと無理矢理まとめた感がありますのでご注意してお読み下さい。

あと、ヤマトのプロフィールも更新します。


「全く…何でボクとヤマトが別々の部隊なのさ」

 

「文句を言うな。全体的なバランスや相性の問題でもあるから諦めろ」

 

 

今回の作戦で、ラップランドはヤマトと別部隊になったことにぶうたれており、それをチェンが窘めて落ち着かせようと試みていた。

それでもラップランドの機嫌はそんなに良くはなかった。というのも、ヤマトと一緒の部隊の中に行動予備隊A4の面々という最近ヤマトと過ごしていることが増えてきたメンツがいるからだ。

ヤマトが自分達の前で笑顔になることが多くなったのは嬉しいことではあるが、どこか面白くないのもあるし一緒に過ごす時間が減ったのも事実だった。

 

だからこそ、今回の任務でヤマトも参加すると聞いた時は以前の任務で連携がかなり上手く取れていたのもあったので、一緒の部隊になれると思っていただけあって、別々と知った時はかなり落胆した。

 

一方でチェンは昨日の夜中にあった出来事から、顔こそ合わせられたものの、ヤマトは顔を逸らし彼女を避けるようにしていたため、1度もヤマトと話せなかったのを気にしていた。

 

 

「……念の為に先に言っておくが、その鬱憤を晴らすためにヤマトを襲うなよ?」

 

「………」

 

「おい、顔を逸らして黙るな」

 

今あれこれ考えても意味は無い、そう思考を切り替えたチェンの指摘が、正に作戦終了後計画していた事だったラップランドは、最終的にそれを口笛を吹いて誤魔化そうとしたが、上手くいかず後で保護者組によるお説教が確定したのだった。

 

この時、2人…いや1人例外はあれど、ヤマトと交流がある殆どの人物達は彼の実力なら怪我をしたとしても、精々かすり傷程度で済むと考えていた。

 

 

 

*****

 

「ヤマト、さっきは助けてくれてありがとね!」

 

「別にお礼なんていい──」

 

作戦が終了し帰投しようとしていた中、まだ息が残っていた敵がメランサに向けてボウガンを放とうとしていたのを、ガーディと話していたヤマトが気がついたのは偶然だった。

 

「っ!借りるぞ!」

 

「え!?ちょっ!?」

 

ヤマトは全ての剣を合体させた状態の合体剣からルーンエッジを外して投擲するという方法では間に合わないと瞬時に判断すると、近くにいたアドナキエルの手にあったボウガンを一言いれて取ると、敵に照準を合わそうとして──

 

(────っ)

 

「きゃ!?何を──え?」

 

それを中断してメランサを突き飛ばした、と同時に腹に何かが突き刺さる感覚と猛烈な痛みがヤマトを襲った。

メランサが突き飛ばされたことを抗議しようとして、目の前でボウガンの矢に貫かれたヤマトを見て言葉を失う中、ヤマトは照準を合わせてボウガンのトリガーを引いて、先程メランサを狙った敵の頭を撃ち抜いた。

 

「ごふっ」

 

ヤマトがそれを見届けると同時に、逆流してきた血を咳き込むように吐き出して膝を着いて横になるように倒れ込んだ瞬間、周りの者はようやく目の前で起こった事態を把握した。

 

「ハイビス!アンセル!すぐに治療を!」

 

「「は、はい!」」

 

「ヤマト!ヤマト!!聞こえてる!?絶対に目を閉じちゃダメだよ!」

 

「ドクター!聞こえますか!?ヤマトが…!」

 

フェンがすぐに医療オペレーターであるハイビスカスもアンセルに治療の指示を出し、ガーディがヒュー、ヒューと細い息をしながらも薄く目を開けて意識を保っているヤマトに必死に声をかけ、スチュワードが通信機越しで焦った声を上げながらドクターに緊急搬送の願いを出している中、メランサも必死にヤマトに声をかけていた。

 

「しっかりしてください!意識をしっかりと持って…!」

 

「……

 

「今は話さずに意識を保つことだけを──」

 

周りが声を掛ける中、ヤマトの口が動き掠れた声が零れた。

しかし、この状態で声を発するのは良くないことであるのは医療の知識がないメランサでも分かることだったため彼女はそれを止めるために声上げて──

 

けが…ない、か

 

「……え?」

 

血が喉に絡んで声が出にくく、その上力が入らない状態でヤマトが発した言葉はメランサを心配する声だった。

こんな時に何を言ってるのか、とメランサは声を出したかったがヤマトの何処か縋るような目を見るとそんなことは言えなかった。

 

「…大丈夫だよ、ヤマトが庇ってくれたから。ありがとうヤマト」

 

だからこそ、口から出たのは身を呈してまで助けてくれたヤマトへのお礼の言葉だった。

 

「よ…っ、た……」

 

ヤマトは今度こそ大事な人を守れた、という事実に安堵すると同時に瞼を開けているのが難しくなってきたのを感じた。

 

(もう、思い残しはないかな…ああ、でもチーちゃんを避けちゃったのを謝ってないこと、ラーちゃん達に結局隠してたこと怖くて全部話せなかったのは…)

 

──心残りかなぁ。

ヤマトは周りの声がだんだんと遠のいていく中、視界が真っ暗になった。

 

 

***

 

『やま、と……』

 

『喋らないで!あともう少しで本部に着くから…!』

 

雨が降り、周りに夥しい数の骸が転がっている道を俺は瀕死の状態のムサシを背負って歩いていた。

 

『も、う長くは…ゴホッ!』

 

『だから喋らないで!今は意識を保つことだけを…!』

 

『いい、から…聞け…』

 

ムサシの掠れているものの、どこか芯の通った声に俺は思わず口を閉じてしまい、ムサシはそれを確認すると口を開いた。

 

『悪い、な…俺がドジったば、かりに…お前を最期ま、で見てや、れなくて…』

 

『ムサシは悪くなんてない!むしろ、俺にもっと力があったらこんなことには…』

 

『…今より上を望むな、んて…意識たけえな…ゴフっ!』

 

『もう黙っててよ!お願いだから…!』

 

『ははっ…お前の口か、ら…お願い、って言葉…聞けるなんて、な…ヤマト、大事な人には、怖くても隠し事、するなよ…あと──』

 

俺が涙を流すのを必死に堪えて出した懇願にムサシはどこか嬉しそうに笑っていつもの様に小言を言い終えると、それっきり黙ってしまった。

 

『ムサシ…?ねえ、聞こえてる?…聞こえてるなら、俺の体のどこでもいいから手で触ってよ?』

 

考えないようしていた最悪なパターンが頭を過り、すぐにムサシを下ろして心臓に耳を当てて動いているかを確認して──

 

******

 

「はっ!は…はっ……さっきのは…?」

 

「ヤマト!?ああ、良かった目が覚めたんだね…」

 

ヤマトの視界には安堵したような表情を浮かべたラップランドが入り、彼女はそのままそっとヤマトを抱きしめた。

 

「ら、ラーちゃん?どうしたの…-」

 

「良かった、本当に良かった…」

 

「………」

 

ヤマトは声が震えているラップランドの背にそっと左腕を回し、右手は彼女の頭の上において優しく撫でて落ち着かせることにした一方、先程夢で見ていた記憶を思い返していた。

 

(…今になってあのときのことを夢で見たってことは…ムサシからのメッセージなのかな……)

 

ヤマトは気を失う前にとった行動のせいで自分が遠距離武器を扱えることがバレている可能性があることと、チェンにバレていることを踏まえて遠距離武器を置いた理由を話すべきか考え──

 

(大事な人には隠し事するな、だったよねムサシ…もし皆から拒絶されたらその時は──)

 

ヤマトは1つの覚悟を決めて、その十数分後に来たドクターに自分が遠距離武器を扱えることを隠していた理由を明かすことを話し、それを聞きたい者は聞きに来ていい節を伝えた。

 

 

***

 

「結構来たんだね…」

 

ヤマトが目を覚ました1日後、会議室には暫くは安静ということで車椅子に座っているヤマト、彼に交流があったもの全員とドーベルマン達が集まっていることに彼は驚いていた。

 

「それで、ヤマト。早速話してもらえる?何で遠距離武器にも精通していたことを隠していたのか…」

 

ドクターの言葉にヤマトは頷くと、覚悟を決めたとは言えど大事な人達に拒絶されることを恐怖して震える体を抑え込むように深呼吸をしてから、口を開いた。

 

「結論から言うと、俺は傭兵時代のある出来事が原因で遠距離武器にトラウマがあったせいで暫くは全く扱えなかったから隠していたんだ」

 

「トラウマ…?」

 

「うん、それには少しだけ俺の傭兵時代を話すことになるけど…いいかな?」

 

「構わないよ」

 

ヤマトの口から出た言葉にホシグマを除いた全員を首を傾げる中、彼はそのトラウマを持つ原因になった自身の中で最悪の記憶を話すため自身の傭兵時代の重要な部分だけを話す許可をドクターに聞き、彼から了承を得ると言葉を続けた。

 

「俺はムサシというフリーの傭兵に道端で餓死しかけていた所を拾われて、彼女から名前を名付けてもらい、それから長くなるから説明は省くけど、俺はフリーの傭兵となって彼女とコンビを組み、彼女が大剣を片手に切り込むスタイルだったのもあって、俺はスナイパーとして彼女を後ろからフォローする形になった」

 

ヤマトは「名前は?」と聞かれてかつて呼ばれていた番号を言った時に、彼女が唖然とした表情で色々聞きだしてきて、最終的に彼女が自分に名前をつけた上、「()()()()()()になるまでしっかり育ててやる!」と強引に連れてかれたことを思い出していた。

 

「…お前が傭兵になる経緯は分かったが、そこから何故トラウマを持つことになったのだ?」

 

ドーベルマンはある程度察しがつく中、敢えて続きをヤマトに催促させる。ヤマトはそれに気が付きながらも今回の核心へと踏み込むことにした。

 

「俺がムサシとコンビを組んで5年程経った頃、俺らはある戦いに参加した。俺らが配属された部隊は傭兵しかいなく、俺らへの指示はある地点で敵を迎え撃つといったもので、俺とムサシは嫌な予感はしていたものの既に契約していたから抜けるということは出来なかった。そして、俺らは指定通りの地点で敵を迎え撃とうとしたわけだが、そこにはこちらの部隊より2、3倍の数の敵がいた。無論、俺らはすぐに本部に救援を寄越すように連絡したが…」

 

「まさか…」

 

そこでドクターはその作戦の意図を察し、苦い表情を浮かべる中ヤマトは続ける。

 

「結論から言えば、本部からの救援は来ず俺らは数の不利がある中撤退戦を行うことになり、その中でも部隊の者たちは次々に死んでいった」

 

ドクターは自身の予想が当たっていたことに舌打ちを内心していた。

そう、ヤマト達は相手の戦力を削るための捨て石にされたのだ。傭兵は契約して金を事後払いにすればタダで来るのだからという考え方だった。

 

「それでも、確実に追っ手の数を減らしあともう少しで本部に辿り着くといった所で俺らは気を抜いてしまい、俺は敵がムサシに向けてボウガンを構えていたのに気がつくのが遅れ、狙いをつけるのも遅かったせいで彼女が矢に貫かれるのを防げなかった…そして致命傷をおった彼女を背負いながら本部に向かっている途中で彼女は命を落とした…」

 

ヤマトは声を震わせながら話した内容は、恩人であり相棒でもあったムサシを自身の力不足で死なせてしまったことだった。あの時、気がつくのが早かったり、もしくは狙いをもっと早くつけられていれば彼女は死ぬことは無かったのだからと、ヤマトは今でも悔やんでいた。

 

「それからだった。弓矢、ボウガン、拳銃を手に持つとあの時のことを思い出し、体が震え吐き気がして酷い時は意識を失うなんてことが起こり始めたのは…それ以来、俺は遠距離武器を置いて近距離武器…あの合体剣を使った戦闘方法に変えたんだ」

 

これでヤマトが何故遠距離武器に対してトラウマを持ち、遠距離武器に精通していないと書いた理由は分かったが今度は別の疑問が出てくる。

 

 

「じゃあ、何でお前はシミュレーションルームで訓練を…?」

 

「…それは、またあの時みたいに自分の未熟さが原因で大事な人を失いたくないから、ロドスに入り始めてしばらくしてからやり始めたんだ…気を失う、なんてことはなかったけど慣れるまではボウガンを持った瞬間に吐いてばっかだったな…」

 

チェンの疑問にヤマトが少し困った様子で答えた内容に、アンセルは荒治療にも程があると内心驚いていた。

 

「…これで話すことはもうないかな……ねえ、ドクター」

 

「…なんだ、ヤマト」

 

「かつての恩人であり相棒でもある人を未熟故に殺して、しかもそれを隠していた俺はロドスから出ていくべきだよね?」

 

「!?」

 

話し終えたヤマトがドクターになんて事ないように聞いた内容に全員驚きのあまり声を失った。

ヤマトは拒絶されるならこっちから最初にその案を出せばまだ耐えられる、と思いこの案を出した。

こんな最低な奴は皆から嫌われて拒絶されて当たり前だ、そう考えて出したヤマトの案は──

 

「は?そんなことするわけないじゃん」

 

「…え?」

 

バッサリとドクターに切り捨てられた。

予想と違った反応にヤマトは呆然とするも、すぐに彼の考えを変えるために口を動かす。

 

「俺は大事なことを隠してただけじゃなくて恩人を殺した最低な奴なんだよ!?そんなやつ、ここにいていいはずがないだろ!?」

 

「まあ、確かにそれだけ聞いたらやべー奴だよね」

 

「だったら…!」

 

「でも、ドーベルマンはともかく俺らはお前がそんな奴だなんて思えられない」

 

声を荒らげるヤマトにドクターはあくまで優しく寄り添うように言葉を掛け続ける。

 

「で、でも…!」

 

「第一、隠し事なんて大なり小なり誰だって1つ以上は持ってんだし、ヤマトはそのムサシさんを死なせないために彼女を背負って治療してもらおうとしてただろ?それに何より──」

 

ドクターはそこで言葉を切ると、車椅子に座っているヤマトに近づいて彼の視線に合わせるように屈んで彼の頭にポンと手を置いた。

 

「メランサを身を呈して守ったやつが最低な奴なわけがないし、それにお前はもう俺たちにとって大事な仲間の1人だ」

 

ドクターが告げたのは、ヤマトが最低な人ではないという事実。仮に最低な人であるならばメランサを自分が生死をさまよう怪我をしてまで庇うなんてことはしないのだから。

 

「あ、あれ…な、なんで……」

 

ヤマトは気がついたら目から大粒の涙を流し始めていた。悲しいわけでも辛い訳でもないのに、()()()()()()()()()()()()()時みたいに感じた、感覚のせいで目から流れる物は止まらないことにヤマトは狼狽えていた。

 

「全く、ヤマトは泣き虫なんだから…私の胸なら貸すわよ?」

 

「おい、待て。なにちゃっかりやろうとしてんの?」

 

「何って…そのまんまの意味よ?」

 

「……薄いくせに」

 

「な!?ラップランド、言ってはならないこと言ったわね!?表に出なさい!あんたの胸、もいで…!やめてホシグマ!私はあいつの無駄にでかいあれをもがないといけないの!!」

 

「ああ、もう!こんな時にまで喧嘩するのは辞めてくださいよ!」

 

「ヤマト、お前は自分で思ってるより周りの奴らから大事に思われていることを実感しろ。過去を忘れろとは言わんが、まずはその後ろ向きな考えを治さんとな」

 

目の前ですぐに騒がしくなる面々を見て驚くヤマトを見ながらフロストリーフは彼に近づいて声をかけた。

 

「…できる、かな…」

 

「できるさ、なんたって」

 

自信なさげに呟くヤマトにフロストリーフは目の前で荒ぶるリーシーを押さえつけようと行動する面々を見て──

 

「私達がいるんだからな」

 

そう言って、微笑んだ。

 

 




キャラ紹介

ヤマト:ちょっと重い過去を暴露した本作主人公。ムサシを死なせてしまった件に関しては、自分の力不足で死んでしまった=自分が殺したというとんでもない解釈をしており、また恩人兼相棒でもある当時は唯一無二の大事な人を失ったことでとんでもないトラウマを持ったという。あの後、結局リーシーとラップランドから交互に胸を貸された。

ドクター:イケメンムーブをかましたドクター。今回の1件でヤマトの過去についてもっと調査をする必要があるのでは?考え始めた。なお、ヤマトを昇進2させてロドスに縛り付けるか、とやべーことも考えている。

フロストリーフ:最後の最後で全て持っていたオカン。余計にヤマトに過保護になったとかならなかったとか。

ラップランド:いい話で終わりかけたところをリーシーと共にぶち壊した大戦犯の1人。なお、ヤマトが意識を失っていた間はずっと寄り添って看病していた。ヤマトの「出ていく」発言の際は反射的に彼を押さえつけて逃がさないようにと動き出そうとしたところを隣にいたチェンとホシグマに押さえつけられていた。

チェン:実は、ヤマトが重傷と聞いた時に1番焦った。前日にヤマトのことを動揺させちゃったのが原因か…と1人悩んでいた。あと、ヤマトと接する機会をもっと増やすことを決意したとか。

ホシグマ:実はシミュレーションルームで吐いてた以外は知ってた姉御。ヤマトが皆に大事な仲間の1人だと認めて貰ったのを見届けて安堵している。これからもヤマトが仲間に囲まれて穏やかな日々が過ごせるように。

リーシー:イイハナシダッタノニナーという空気を作った大戦犯の1人。ヤマトが重傷と聞いた時はぶっ倒れ、彼が目覚めなかったらどうしよう、という思い駆られていた。結果、もっと積極的になった。巨乳死すべし慈悲はない。最近牛乳をよく飲むようになったとか。

メランサ:ヤマトの過去を聞いて驚く一方、助けてくれた恩を返したいと思っている。まだ堕ちてない。

ペン急組:ヤマトが遠距離武器を置いた理由が、まさか過去のトラウマが原因と分かり、もしかしたら喧騒イベで自分たちを無理して援護していたのでは?と思い改めてヤマトにお礼などを述べた。なお、「出ていく」発言では喧騒イベの責任取ってウチに引き込むか?とあるオオカミとアイドルは思ったとか。

ドーベルマン教官:星4前衛で結構特殊な素質を持つお方。武器がムチという時点でドS感がヤバい。今回はロドスでも結構上の位にいそうという作者の偏見で幹部枠として参加。とりあえず、ヤマトはどれぐらい遠距離武器を扱えるかを再度試験させることにした

ムサシ:故人。捨てられて餓死しかけていたヤマトを拾い、彼に人間としてのあれこれを教えこもうとしていた傭兵。武器は片刃の大剣。なお、胸部装甲は平均的な大きさ(厚さ)だったとか

アンケートは6/16の23:55までとします。ご協力お願いします!


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コミュ障狼だってモフりたい!

えー、次の話投稿してないのに何かめちゃくちゃお気に入りやアクセス数が増えててビビった作者です。

まず多くの皆様、アンケート御協力ありがとうございました!
そして、皆さんのおかげでお気に入り200件突破しました!これからも精進してまいりますので暖かい目で見守って下さい!



今回からは暫くはシリアスは休暇をとります。
Q.シリアスが休暇をとったらどうなるんだ?
A.知らんのか?シリアルや日常系コメディ、またはR-15要素がメインになってなんやかんやでヤマトが散々な目に遭ったりする。

とりあえず、今回のイベントで一言。
ラッピーとチェン隊長のスキル2やっぱり強い(小並感)

それと最後にお知らせがあります。


「はぁ…まともにこうして話せるループスがヤマトしかいないって思うとなんか色々と考えちゃうなぁ…」

 

「まともって…ラーちゃんやテキサスさん、レっちゃんだって普通に楽しく話せるけど…」

 

「それはヤマトが変な感性してるか──ちょっと待って、レっちゃんってまさか…」

 

「?レッドのことだけど…」

 

「僕、初めて君のことすごいって思ったよ」

 

「待って、それどういう意味?」

 

ヤマトが無事に回復してから1週間が経った頃、彼はプロヴァンスと廊下で歩きながら話していた。

 

ヤマトがプロヴァンスと仲良くなったのは数日前で、最もきっかけこそズッコケて書類をばら蒔いたヤマトを通りかかったプロヴァンスが手伝い、シエスタで共闘したこともあってそれからよく話すようになったという在り来りなものであった。

 

この日は、プロヴァンスの荷物運びを手伝った後、互いにこの後に仕事は入ってなかったので食堂で時間を潰そうとなり、その道中で話しているということになっていた。

 

「…あの狼、いつの間にヤマトと仲良く……」

 

そして仲良く談笑しながら歩いている2人をラップランドは壁の影から見ていた。イラッとして手にかけている壁に力を入れたら少しヒビが入っているのを彼女は気がついていない。

 

「そういえば、ヤマトの尻尾って結構整えられているよねー、手入れとか凄く凝ってるの?」

 

(あ、それに関しては凄いボクも気になってた)

 

プロヴァンスがフリフリと揺れながらも毛並みや毛艶もいいヤマトの尻尾を見てふと思ったこと聞き、ラップランドも触った本人としても何故あそこまで手触りが滑らかでモフモフしているのか気になっていたので、内心プロヴァンスにファインプレーだと思いつつも耳に全神経を集中させる。

そして聞かれたヤマトは困ったような顔を浮かべながら返事をした。

 

「えっと…普通に手入れしてるだけなんだけどぉ(↑)」

 

──嘘である。

このコミュ障狼、使っているシャンプーなどこそ傭兵時代にムサシにオススメされた物を今でも使っているが、寝る前や朝起きたあとは念入りにブラッシングしたりと結構丁寧にやっている。なお、そこまでやる理由としては自分の尻尾をモフるラップランドやレッドが少しでも気持ち良くなれるように、という献身的なものである。

そして、それを隠したのは何となくそうした方がいいと思ったのと、言うのが何故か恥ずかしかったからである。

そんな、ヤマトが咄嗟についた嘘は──

 

((嘘かなー(だね))

 

最後に声が上擦ったのと、嘘をついた罪悪感で耳が少し垂れているせいであっさり見破られていた。

ラップランドであればすぐにそこを指摘する、もしくは(正直に言う)(モフモフの刑)で迫っていたが、プロヴァンスはそんなことはせず別の手段に出た。

 

「ふーん…ねえヤマト、それって本当?」

 

「え、ほ、本当だよ?」

 

プロヴァンスがジト目で改めて確認してきたことに、内心ドキッとしながらもヤマトは冷静に返した。そんなヤマトを見てプロヴァンスは「へー」と少しニヤつき

 

「あー、本当なら尻尾触らせてあげようと思ってたんだけどなー」

 

(!?)

 

自分の尻尾を見せつけるようにヤマトに言った。

ラップランドはプロヴァンスの突然の行動に驚くも、すぐに冷静になる。というのも、以前ラップランドが冗談半分で自分にもやっていいよ?と聞いた時にヤマトは顔を真っ赤にして即否定していたからだ。

だから、その程度の誘惑でヤマトが揺らぐわけがないとラップランドが確信して笑みを浮かべ──

 

「あう……」

 

(めちゃくちゃ迷ってるー!?)

 

予想に反し、プロヴァンスの尻尾をチラチラと見て迷うヤマトの反応に撃沈した。

一方プロヴァンスは予想通りの反応に内心ほくそ笑んでいた。

彼女は前々からヤマトが興味深そうに自分の尻尾を見ていたのを把握しており、そしてそれに遅く気づいた振りをしてヤマトを見ると彼が慌てて視線を逸らす、といったのを知っていた上での発言だった。

揺らぐヤマトを見てプロヴァンスは更に追い打ちをかけるように口を開き続ける。

 

「正直に本当の理由言ってくれれば触らせてあげるよ〜?」

 

「うぐぅ…」

 

(あ、やばい。何かに目覚めそう)

 

唸るヤマトを見て背筋がゾクゾクするような感覚を味わったプロヴァンスは、自分でも何か開けちゃいけない扉を開けかけていることに気がつくが、敢えて誘惑を続行することにした。

 

「ほらほらー、楽になりなってー」

 

「むぅ……」

 

ヤマトは目の前の明らかに触り心地がいい尻尾をモフりたい欲求に襲われながらも、今更「あれは嘘で本当の理由はこういう訳です」というのはいくら何でも…というもので板挟みを食らっていた。

 

モフモフかプライドか。

 

「えっと…」

 

ヤマトがあれこれ考えた上での決断を言う──

 

「やあ、ヤマト。楽しく話してるところ悪いけど、君にちょっと用事があるんだけどいいかな?」

 

「え?ら、ラーちゃん?用事って…」

 

「ごめんね、2人だけで話したいことだからボクの部屋まで来てくれる?」

 

前にラップランドが間に入ってきて、彼に用事があると言って連れ出そうとしたが、当の呼ばれた本人はチラッとプロヴァンスの方を見た。

視線を向けられたプロヴァンスは顔に柔和な笑みを浮かべて手を振った。

 

「僕のことはいいから行ってきなって。大事な人のお誘いは大事にしなきゃ」

 

「…分かった、それじゃまた今度ね」

 

ヤマトはプロヴァンスに別れを告げて、ラップランドと共に歩き出して角を曲がった所でプロヴァンスはブルりと体を震わせた。

 

「あー、怖かった…まさか、ラップランドさんがあそこまでヤマトに対して独占欲みたいなの持ってたなんて…これ、変にやり過ぎると身の危険があるな…」

 

闇討ちされたら堪らない、とプロヴァンスは震えヤマトを尻尾で釣ろうとするのは辞めようと誓ったのだった。

 

 

****

 

「それで用件って──」

 

「はい、触っていいよ」

 

「…え?」

 

ラップランドの部屋に入って早々、用件を聞こうとしたヤマトはベッドに腰かけたその部屋の主からいきなり尻尾を向けられて瞼をパチクリとさせた。

そんな反応されたラップランドは少しイラつき気味にヤマトを催促させる。

 

「だーかーら、触っていいよって言ったんだよ?」

 

「…いや、急にどうしたの?」

 

突然尻尾を触ってもいいと言い出したラップランドに、ヤマトはマジなトーンで心配し彼女の尻尾を触るどころか、熱がないかと彼女の額に手を合わせて体温を調べ出した。

 

「うーん、熱は無さそうだけど…」

 

「ああぁぁぁ!!もう、君ってやつは!!」

 

そこで思った通りに行かないことに業を煮やしたラップランドは、苛立たしげに声を上げるとヤマトを座らせて彼の手を掴むと、強引に自分の尻尾に触れさせた。

 

「!?ら、ラーちゃん!?」

 

「……尻尾、触りたかったんでしょ?」

 

「え、あ、いや…は、はいそうです…」

 

ラップランドが取った行動にヤマトは驚きながらも、変にここで断ると彼女の機嫌が悪くなるのは目に見えて分かる上、彼女に指摘されたことは事実なので気は乗らないもののぎこちない動きでラップランドの尻尾を触り始め──

 

(うわぁ…モフモフだぁ…)

 

思ったよりも手入れされてモフモフしている尻尾を堪能し始めた。

一方、触られているラップランドは声を必死に堪えていた。

というのも、最初はヤマトの触り方がぎこちないため、「触られてるなー」とか、「まだ遠慮してる感じだw」としか感じていなかったのが、段々とヤマトの触り方が遠慮がなくなってきたため、ヤマトを虐めていた時とはまた違った快感が背中に走っており、その影響で変な声が漏れそうになっていた。

 

(や、ヤマトはもしかしていつもこの感覚を味わってたってこと?そう思うと、気絶するまでって結構──)

 

「…っ……」

 

「あ!ご、ごめん!夢中になっちゃって…!」

 

ラップランドが耐えきれず声を漏らしたことで、ヤマトは自分が長い時間モフモフしていたのに気が付き、謝罪しながら慌てて手を尻尾から離そうとしたが、ラップランドはいち早くそれを察知するとヤマトの手を掴む。

 

「もうちょっとだけ触ってほしいな…」

 

「え、ら、ラーちゃん」

 

「お願いだから…」

 

(こ、こうなる可能性があったから尻尾は触らないって、あの時ラーちゃんに誘われた時断ったのにぃぃぃぃ!)

 

顔を赤くし息を少し荒らげているラップランドを見ながら、ヤマトは心の内で以前ラップランドから尻尾触る云々の時に断った理由をぶちまけていたが、普段とは違う彼女を見て心臓がバクバクと音を立てて鼓動しているせいで思考が上手く纏まらない。

 

「ね、早く…」

 

「……っ」

 

どうにでもなれ!とヤマトがラップランドの尻尾を更にモフろうと手を伸ばし──

 

「ヤマトー、プロヴァンスからここにいるって聞いたんだけど──あ」

 

「あ……」

 

「……?」

 

 

ヤマトに何かしら用があったであろうエクシアがドアを開けて、ピシッと固まった。

ベッドに腰掛ける男女、顔を赤くして息を荒らげるラップランドの尻尾の付近にあるヤマトの手。

エクシアはそこからこの状況がどういったものか0.1秒で推理して──

 

「……お邪魔しましたー」

 

スっとドアを閉めてその場をそそくさと離れ、これは他の人にも話さずにはいられない!とまずはテキサスに報告しに行ったのだった。

 

「あっ、ちょっと待っ、ぴゃああ!?」

 

一方、部屋に残されたヤマトはすぐにハッと気がつくとエクシアの誤解を解こうと立ち上がったところで、尻尾をラップランドに後ろからギュッと腕で抱きしめられた際に電流みたいな感覚が体を走り、力なく地面に伏せてしまった。

ラップランドは倒れたヤマトを仰向けにして、見下ろすように彼のお腹の上に女の子座りするように乗っかった。

 

「ら、ラーちゃん…?その、退いてくれると嬉しいなぁ〜……」

 

アカン、と自分の第六感が必死に警鐘を鳴らしているためヤマトはラップランドに一旦どいてくれるように顔を引きつらせながら懇願したが──

 

「ねえ、お預けくらったボクの身にもなってよ…そんな意地悪するヤマトにはお仕置きしなきゃだね…」

 

「え、あ、ら、ラーちゃん?あ、ちょま、や、やめ…アッーーーーーー!」

 

この後、めちゃくちゃモフり合った。

 

 

****

 

後日、先にエクシアから報告を受けたテキサスが何となく真実ではない気がしたため、他にも言いふらそうとするエクシアを留めていたかいが合ってロドスに変な噂が流れることはなくなり、ヤマトの必死の弁解によってエクシアの誤解も無事に解けたのだったが、その彼女がヤマトの後ろの首筋に赤い痕が付いているのを見つけたせいでまた一悶着あったのは別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こういう話しか書けなくて本当にすまないと思っている…いっそのことR18版書いた方が早いのか?(混乱)


えー、お知らせなんですが…アンケートで上位3名という話だったんですが、第3位が同率になったため、6/18 23:55を締切に決選投票を実施します!御協力お願いします(土下座)

キャラ紹介

ヤマト:モフモフの魅力を知ってしまったオオカミさんでラッピーやレッドのために尻尾の手入れは欠かさないという健気さを見せた正ヒロイン。なお、尻尾モフモフによる被害を1番受けているため、他人の尻尾はモフらない!と決めていたのだが、ラップランドの手で無事陥落。なのでプロヴァンスの所では断ろうとしていた。なお、首筋のはエクシアに指摘されてから初めて知り、絆創膏で隠してから顔を真っ赤にして心当たりがある人物に抗議したとか。

ラッピー:うちのロドスで今回のイベント大活躍中のオペレーターの1人。こっちの方では、「他の人のをモフらせるぐらいなら」とヤマトに自らの尻尾を差し出すという一途(?)さを披露。モフモフされる側の感覚は知ったが、ヤマトをモフる時はやっぱり自分のやりたいようにやる。モフり過ぎて意識が曖昧となったヤマトに、つい首筋に自分のものだという印をつけたおちゃめさん。

プロヴァンス:変わった素質とスキルを持った星5狙撃。彼女を語ることで欠かせないのは、あの顔をうずめたら気持ちよさに昇天しそうな程に大きい尻尾。モフモフグランプリの話の前に出したかったのでここで登場。新しい扉を開きかけたがラップランドのおかげで開けることは無かった。なお、ヤマトのことはおっちょこちょいな弟みたいな目で見ている。

エクシア:ヤマトと早撃ち勝負しようと思ったらあの場面に出くわしてしまった天使。ヤマトの首筋のマークを見つけた時は盛り上がったが、すぐに相棒のオオカミさんに鎮められた。

テキサス:エクシアを止めるというファインプレーを見せたイケメンオオカミさん。首筋のマークで盛り上がったエクシアを鎮めさせ(物理)、隠すための絆創膏を貼ってやるというイケメンぶりを見せた。なお、首筋に指が当たったヤマトが「っん」と声を漏らした時はちょっと驚いた。


リーシー:そんなことが起こってるとは露知らず、大量の書類と格闘していた。



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案外気が合う2人

アンケートの御協力、ありがとうございました!
近いうちにモフモフグランプリの話は書かせていただきますので、過度な期待はせずにお待ちしてくださると助かります!


そして今回は、件のモフモフグランプリの話が出るまでの間を埋めるため&私事ですが最近昇進2になった記念というわけで、数多い推しキャラの1人である彼女の話を投稿させていただきます。

あと、ウチのチェン隊長のスキル2を特化3まで何とかできたので宜しければお使いくださいお願いします(土下座)


彼と最初に会ったのは、中々寝付けなかったので気分転換に調理室でケーキを作っていたら見回りをしていた彼に見つかったというものだった。

 

「あんたは確か…」

 

「私は狙撃オペレーターのアズリウスと申します、ヤマトさん」

 

「…?俺、名前言ったか?」

 

「……首から提げてる社員証に名前が書いてあるでしょう?」

 

「!!」

 

口数が少なく無表情だけれどもどこか抜けている人、というのが第一印象でした。

 

 

そんな彼でしたけど、実は廊下で度々あって話す度に彼の印象は変わっていきましたのよね。

え?具体的に言うとどんな印象になったか?

そうですわね…正直色々とありますが一言で言うと…子供?でしょうか…(汚染済み)

 

 

****

 

「…最近、ヤマトがおかしいと思うんだ」

 

「……なあ、こういった切り出し方が前にもあったと思うのは私だけか?」

 

「奇遇だな、私もだ(ため息)」

 

食堂のある一角にて、ラップランドは目の前にいるフロストリーフとチェンに前にもあったようなことを言い出し、フロストリーフとチェンは既視感を感じながらもラップランドの話を一応聞くことにした。

 

「それで、どこがおかしいんだ?」

 

「どこがおかしいって、おかしい所ありまくりだよ!最近、部屋に遊びに行くと前には出てなかったケーキが出てくるし、最近寝る時間が減ったみたいだしさ」

 

「…後者に関して、なぜお前がそこまで把握してるのか聞きたいが敢えてスルーしよう」

 

「でも、確かに急にケーキがお茶菓子で出てきたのは事実だな」

 

フロストリーフはラップランドの後者の話にこめかみを指で抑え始めたが、前者に関してはチェンも同意したように事実だ。

 

「それでさ、気になって聞いてみたらさ、体をビクンと震わせて『け、ケーキに関しては最近作れるようになったから出してるだけで、寝る時間が減ったのはラーちゃんのき、きき気の所為じゃない?』って声を震わせて、しかも最後は声を上擦らせてたんだよ!?絶対に何隠してるよね!?もしかしたら、何かおどされて…!」

 

「やっぱり前にもこんなことあったよな?」

 

「奇遇だな、私もそう思っていた…」

 

ダン!と身を乗り出して話すラップランドに聞き手に回っていた2人は何がどうなれば脅される云々になるんだ、と片方はこめかみを指で抑え、もう片方は頭を片手で抑えながらため息を吐いた。

チェンはこの後に何をするのか何となく、予想がついている中念の為聞くことにした。

 

「…それで、そのことを私たちに話してお前は何をしようと考えているんだ?」

 

「ヤマトをびこ…ゴホン、ついせ…んんっ!監視…じゃなくて観察しようと思うんだ」

 

「「お前だけでやってくれ」」

 

「そんな!?」

 

秒で断られたラップランドは裏切られたと言わんばかりの表情と共に声を上げ、2人に掴みかかるような勢いで詰め寄る。

 

「ヤマトに何かあったらどうするのさ!もし、ヤマトがクズ野郎に襲われてることを隠してるってことだったら…!だめだ!耐えられない!ヤマトを誑かした奴をちょっと殺してくる!」

 

「何でお前はそう思考がぶっ飛ぶ…くそ、やっぱり力が強すぎる!!フロストリーフ、私がこいつを抑えている間にホシグマを呼んできてくれ!お前と私だけじゃ抑えきれん!!」

 

「ああ、了解した!呼んでくるまで耐えてて…」

 

「──話は聞かせてもらったわ」

 

混沌と化しかけた場に、リーシーが無駄にカッコつけながらその場に参戦し始め、チェンとフロストリーフは「あ、終わった」と内心思う中、ラップランドは早速リーシーに食いついた。

 

「なんだい?今は君に構ってる暇はないんだ。分かったらさっさとこの場から──」

 

「ラップランド、私は今あなたと争うつもりはないわ」

 

リーシーは交戦の意志をないことを示すように両手を上げてラップランドに近づき、決定的な一言を言った。

 

「そのヤマト観察、私も同行するわ。この場はヤマトの為にも協力すべきよ」

 

「リーシー…ふん、今回だけだからね?」

 

「そっちこそ」

 

──勝手にやってくれ。

フロストリーフとチェンは、グッと固い握手を交わした案外仲が良さそうな2人にそう思いながら疲れたようにため息を吐いた。

 

 

****

 

夜中、ヤマトは周囲を軽く警戒しながら部屋を出ると音を立てないように廊下を歩き出した。

そして、それを影ながら見る人影が2つあった。

 

「動いたね、これからヤマトの観察を始めるけど最初に言ったように…」

 

「ヤマトは勘がとても鋭いから気取られないように、でしょ?」

 

「分かってるならいいさ、さあボクらも移動しよう」

 

ラップランドとリーシーは黒い外套に身を包みながら、無駄にレベルが高い忍び足と気配遮断能力を駆使してヤマトの様子を見て色々推測しながらあとを着いていく。

 

「……尻尾がそれなりに元気よく振られていて、耳も垂れてないことから随分とこれからのことが楽しみみたいね」

 

「そうみたいだね…ますます何をしてるのか気になってきたね…」

 

2人は、頭のうちで色々考えながらもヤマトを追跡していると、彼は明かりがついている調理室の中に入っていった。

 

「く…部屋の中に入られてしまうとナニをしているのか分からないわね…」

 

「ふ、こんなこともあろうかと…ヤマトの靴の裏側にカフスボタン型スピーカーを付けておいたんだ…これで中の話し声が聞く事が出来る、はいイヤフォン」

 

「ぐぬぬ…手際が良くて悔しいけどそれに助けられてるから変に罵れない…!」

 

「それ、わざわざ言う必要ある?」

 

チェンかホシグマが居たら逮捕されているであろう事をしていることを2人は気付かないふりをしてイヤフォンに神経を集中させた。

 

『待った?アズリウス』

 

『いえ、今来たところよ』

 

「待って、ラップランド。相手が女だからってまだ突撃するタイミングではないわ」

 

「でも…!」

 

「明確なことが分かるまで突撃するのは控えるべきよ、じゃないと──」

 

『それじゃあ、いつも通り始めましょうか』

 

『うん、よろしくね』

 

「──上手く言い逃れさせてしまうかもしれないから(ギリィ…)」

 

「大丈夫?凄い震えてるけど…」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

そんなことを話していたせいか、2人はヤマトと中にいるであろうアズリウスの話の一部を聴き逃しており、気がついた頃には話は進んでいた。

 

『それで次は…ええ、これをそこに入れて』

 

((コレをソコに入れて!?))

 

「リーシー、待って。気持ちはわかるけどまだ確定したわけじゃ…」

 

『…ん、結構難しいんだね…』

 

『そんなに焦らなくても大丈夫ですわよ、ゆっくりでいいですから』

 

「「動くな!動いたら殺す(ドロップキック)!!」」

 

その会話を聞いた瞬間、リーシーとラップランドは無駄に連携が取れた動きで部屋に突撃した──!

 

 

*****

 

「…なーんだ、アズリウスからケーキの作り方を夜中に教わってただけだったんだ」

 

突撃してきたラップランド達に、ヤマトとアズリウスは驚きながらも荒ぶるラップランド達を、ヤマトが何とか抑えて根気強く説明&黙っていたことを謝罪したことで丸く収まり、現在は4人でケーキ作りをしていた。なお、ラップランドとリーシーが付けているエプロンと三角巾は、態々ヤマトが部屋に戻って取ってきた彼の予備であり、2人はご満悦であった。

 

「うん、アッちゃんから免許皆伝されるまでは修行中ですって何かカッコ悪くて言いづらくてさ…」

 

「何となく、ヤマトが隠してた理由って分かるわね…こう、言葉には上手く出来ないけど」

 

ヤマトの発言にリーシーが相槌を打ちながらも、手を動かしていく。

なおリーシーは周りに邪魔者はいるがヤマトと一緒に料理していることに少し感激している。

 

その後、ケーキを無事に作り終えたヤマトはアズリウスから色々アドバイスを貰い、作ったケーキはその日の昼に事務仕事に追われておるドクターとリーシー、その日の秘書であったソラのおやつとして振る舞われたのだった。

 

 

****

 

「バレてしまいましたね…」

 

私はヤマトとの2人だけの秘密の時間が2人にバレてしまったことに、少しだけ落胆していた。

ヤマトは、不思議な少年だ。彼は私の戦い方を知っていながらも普通に接してきて、偶然指が当たっても当ててしまったことに謝罪するだけで距離を取らなかった上、私が作ったケーキを普通に食べて「美味しい!次もまた食べたい!」と言ったほどだ。

 

1回だけ、彼に「どうして『毒物』である私と距離を取らないのか?」と聞いてみたことがあった。すると彼は

 

「別にアッちゃんは俺らと同じ人間でしょ?毒物だって一種の体質みたいなもの?なんだから気にすることじゃないでしょ?」

 

と首を傾げながらなんてことないように言ってのけた。

 

ドクター以外で私を受け入れたヤマトは純粋な子供みたいな子です。

 

本当はもう充分な腕前ですが、まだ免許皆伝にはせずもう少しだけヤマトと過ごす時間を楽しむことにしましょう…。

 

それにしても…

 

「…その、アッちゃん?何でその写真持ってるの…?」

 

この写真に写ってる女の子が、ヤマトだったなんて面影があるのは認めますけど、未だに信じられませんね(困惑)

 

 




R18むずかしいよおおおぉ!

キャラ紹介
ヤマト:新たにケーキ作りを本格的に学び始めたオオカミ。なお、彼的にはアズリウスのケーキの見た目は特に気にしないタイプで、胃袋を掴まれた。ヤマトが作るケーキの色は普通。

アズリウス:星5単体狙撃にして、エクシアについで殲滅力がやべーやつ(個人感想)というのも、彼女の素質が攻撃が当たる度に相手に毒というスリップダメージ的なものが入るため、攻撃だけで倒せなくてもその毒で敵が死ぬor虫の息になるということになるから。でも紙耐久なので昇進2をして体力を増やすのは必須とも言えるかも?こちらでは、ヤマトのケーキの師匠にして彼の胃袋を掴んだ。なお、ヤマトのことは自分を受け入れてくれた変わった男の子と思っている。ヤマトちゃんのコーディネートの野望を密かに…?ところで、アズリウスの昇進2画像可愛くないですか?

ラップランド:成長しないオオカミさん。なお、ケーキ作りは案外上手くいき、普通に美味しいものが出来てヤマトに食べさせたら美味しいと言って貰えてめちゃくちゃ喜んでいた。なお、例の道具は購買部のK氏が作ったとの事。

リーシー:恋は盲目というのを態々皆に知らせた優しい人でラップランドとは実は気が合う可能性が見受けられた。なお、ケーキ作りにハマり、アズリウスとはそれ以来よく接するようになった。最近、ある箇所のマッサージを始めたとか。

ヤマトのオカン:ちゃんと事情を説明してもらったので胸のつっかえは取れたが、何かまたややこしい事が起こる気がして戦慄した。

チェン:フロストリーフやホシグマ、テキサスと言った保護者組で呑むことが多くなった隊長。事情を聞いて「やっぱり」と呆れる一方、また新しい女性と仲良くなったことに少しムカムカした。

ドクター&ソラ:ケーキ美味しい(小並感)


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第1回!モフモフグランプリ!

予告したとおり、モフモフグランプリの話です。

なお、回答者の優勝者は1d3を4回振って決めたんですけど…まあ、これは後書きで色々と語ることにします。

それでは、誰が優勝したのか予測しながら読んでください!



「第1回!モフモフグランプリ〜!」

 

「何これ?」

 

「私に聞くな」

 

「えっと、ドクター?これは……」

 

何故かカメラが回っている娯楽室にて、ドクターがテンション高めに声を上げる中、クイズ番組で見るような席に座らせているラップランド、テキサス、メランサは戸惑いの声を上げるがドクターはそれを無視して話を続ける。

 

「まあ、『いきなり食堂のモニターに何か写り始めたけど何だこれ?』って思って見てるオペレーターもいると思うので、軽く説明させてもらうと…レッドがロドスの全オペレーターの尻尾のモフり具合を元に作られた【モフモフグランプリ】の順位を当ててもらうだけの簡単な催物だ!」

 

──何言ってんだろう?

この場にいる者だけではなくこれを見ている者たちは同じことを考え、ドクターを冷たい視線で見つめる。

 

「まあ、たまにはこういうホッコリしたものをやりたくてね。まあ、見てる人達はポケーっと見てくれればいいよ」

 

ドクターは少し苦笑いを浮かべつつ言ったこの内容に、変わらず胡散臭いものを見るかのようにラップランド達はドクターを見るが、彼が次に発した言葉に目を見開いた。

 

「えー、そこの解答席にいる3人は見事、順位当てで優勝した場合『俺が叶えられる範囲で何でも叶えてあげる権利』をあげまーす」

 

「テキサス、悪いけど本気でやらせてもらうよ?」

 

「絶対負けられない…!」

 

「……このメンツだと、その権利の矛先がヤマトにが向けられる気がするんだが?」

 

急に目がマジになったラップランドとメランサに、テキサスが少し呆れるような目でドクターを見るがドクターは構わず続ける。

 

「叶えられる範囲なら結果的にヨシ!(現場ドクター)まあ、さっき言ったように優勝した人はさっきの権利をあげるけど、逆に最下位だった場合は…このVTRを見てもらおうか」

 

ドクターが指を鳴らすと、大きめの半袖のパーカー、ショートパンツに黒のレギンスという服装で髪をポニーテールに纏めて恥ずかしげにしているループスの少女が写し出され──

 

『ど、ドクター?い、何時まで撮って──』

 

「おっと失礼、間違えた」

 

「「「ちょっと待て」」」

 

3人は今しがた映し出されたループスに見覚えがあり、ドクターに待ったをかけた。

 

「うん?何かな?」

 

「「後でボク(私)にそのデータ送って(下さい)」」

 

「……欲望に忠実過ぎないか?」

 

テキサスは欲望に負けた2人にため息を吐き、後でそのデータを破壊すればいいか、と結論づけツッコミを放棄した。

 

「まあ、それは後で…ゴホン、VTRだとまた放送事故が起こりそうなので口頭で言いますが、最下位になるとレッドが満足するまでモフられます」

 

「「「……今なんて?」」」

 

3人の心境と声がピッタリシンクロした瞬間だった。

 

 

****

 

「さて、それじゃあ最初はどんな感じかを練習問題をやって把握していただきましょう!モフグラ、ドン!」

 

「問題:モフモフグランプリ第4位と第5位は以下のオペレーターの中から誰か答えよ。二アール、ショウ、フェン、ヤマト。シンキングタイムスタート!」

 

「モフグラって…モフモフグランプリの略のこと?てか、問題文読むのさっきからドクターの隣にいるのに全く喋ってなかったアーミヤなんだね…」

 

ラップランドはそう呟きながらも、考える。4位と5位のオペレーターを答えなきゃいけないのにも関わらず選択肢に出てきたのは4名のオペレーター。先程渡された回答を書く厚紙にも【*1人ずつ】と注釈が書いてあるため、ダミーは2名いるということになる。

ならば、そこから導き出されるのは──

 

「はい、時間になりました!では、一斉に出してください!」

 

「4位:二アール 5位:ショウ」

 

「4位:ヤマト 5位:二アール」

 

「4位:二アール 5位:ヤマト」

 

ラップランド、テキサス、メランサの順に答えが出され、その回答を見たドクターはふむふむと頷いた。

 

「ほー、答えが丸かぶりはないですね…では、まずメランサ。なんでそのような順位に?」

 

「えっと…ヤマトの尻尾って触ったこと、ないですけど毛艶とかいいので気持ちよさそうとは思ったんですけど、流石に二アールさんの尻尾には敵わないかと…」

 

自信なさげに根拠を言ったメランサだったが、考え方としては何一つおかしい所はなく、モニターを見ていたオペレーター達は意外としっかり考えたメランサに感心していた。

 

「んじゃ、テキサスは?」

 

「私の場合は…実は、1回だけヤマトの尻尾に事故とはいえ軽く触れてしまったことがあってな…それを考慮すればこうなるかと思っただけだ」

 

ラップランドが「へー」と思っている中、最初の発言にモニターを見ていたある人物が椅子から立ち上がったが早急に取り押さえられたのを、この場にいる者は知る由もなかった。

 

「…因みに、ヤマトの尻尾はどうでした?」

 

「……ノーコメントで」

 

****

 

「さて、最後にラップランドは何故このような予想を?」

 

「んー、ボクはヤマトの尻尾を知り尽くしてるからね。あの4人の中では確かに1番モフモフしてるとは思うけど、フェイクのような気がしてね。それでヤマトを抜いた中で考えた結果、こうなった感じかな」

 

ラップランドの推測はかなりヤマト贔屓なもので、モニター越しで見ている者たちも当たってるわけないだろうと内心思っていた。

 

「ふむ、では正解を発表します!正解は〜…4位二アール、5位ショウ、でした〜!という訳で、ラップランドは全問正解!メランサは4位のみ正解でーす!」

 

「フッ…(ドヤァ)」

 

「……殴っていいか?」

 

「あわわわ…」

 

ラップランドのドヤ顔に、全て不正解だったテキサスは拳を握りしめ、それを見て慌てるメランサの図である。

 

「はーい、喧嘩しなーい。まあ、こんな感じで答えてもらう感じになるかな。さて、次が本題だから頑張ってね!モフグラ、ドン!」

 

「問題:モフグラ第1位から第3位のオペレーターは誰か?以下のオペレーターの中から答えよ。ヤマト、フロストリーフ、テキサス、プロヴァンス。シンキングタイムスタート!…やっぱり恥ずかしいです…」

 

「恥ずかしがってんじゃん…」

 

ラップランドはアーミヤが小声でボソッと呟いた一言に少し呆れながらも、また思考を回転させる。正直、この4人で優劣をつけるのはかなり難しい。尻尾の大きさでいえばプロヴァンス、モフモフしてそうなフロストリーフ、毛艶がいいテキサス、そして麻薬のようなモフモフのヤマト。各分野で見ても4人はどれもトップクラス。

 

(…まともに考えたらりキリが無いな。ここはあの赤いオオカミの考え方とかから推測しよう)

 

ラップランドはここでモフモフグランプリを纏めたレッドの思考を推測する方向へシフトチェンジした。彼女の思考なら、恐らく普段から仲良くしてくれるヤマトやフロストリーフは贔屓目で見る可能性が高いと見ていい。なので、ヤマトとフロストリーフは1〜3位に入るのはほぼ確定。そして、あともう1人の枠は変に考えず総合的にはテキサスよりモフり具合が上回っているであろうプロヴァンスと見ていいだろう。

 

(フフっ、ここまで考えれば後は単純な作業。さて、ドクターから貰った権利で何しようかな…ヤマトを一日中イジリ倒すのもいいし、テキサスと…いや、いっそのこと2人ともとって…)

 

「はい、では時間になりましたので回答を出してください!」

 

全問正解を確信したラップランドは、内心であの権利をどう使おうか考えながらも回答を出す。

 

「1位:ヤマト 2位:プロヴァンス 3位:フロストリーフ」

 

「1位:プロヴァンス 2位:フロストリーフ 3位:ヤマト」

 

「1位:プロヴァンス 2位:フロストリーフ 3位:テキサス」

 

上からラップランド、テキサス、メランサと順に出された回答はテキサスとメランサは3位こそ違うものの1位と2位は被っているものとなった。

 

「ふむふむ…では、まずはテキサスとメランサとは全く違う回答を出したラップランドに根拠を聞いてみましょうか?」

 

「まあ、レッドの主観的なものを推測した結果、1位は仲がいいヤマトになるかなって思ってね。2位と3位はどっちがモフモフしてそうかで決めた感じかな」

 

完全にヤマト贔屓な考え方ではあるものの、レッドの目線で考えるというものは確かに推測する手段としてはアリなものだ、と頷くオペレーターもチラホラいた。

「さて、テキサスは?」

 

「まあ、尻尾の見た目で判断したな。3位に関しては私よりヤマトの方がモフり具合はいいと思ったからこうなった」

 

「なるほど、シンプルに考えたというわけか…メランサも同じ考え方かな?」

 

「は、はい…3位に関しては最初は私もヤマトだったんですけど、何となく違う気がしたのでテキサスさんに変更しました…」

 

残った2人の考え方はまさにシンプルで、食堂にいるオペレーター達も同じように考えていた。

 

「それでは、正解の方を見てみましょう!

ドクターの指示で映し出された正解は──

 

「1位:プロヴァンス 2位:フロストリーフ 3位:テキサス」

 

「という訳で、全問正解のメランサが優勝で、最下位はラップランドで決定でーす!」

 

「そんな…バカな…」

 

全問不正解という事実にラップランドが打ちひしがれている中、メランサは内心でガッツポーズをし、テキサスは最下位を無事に回避出来てホッとしていた。

ドクターはorzとなっているラップランドを無視して、レッドから事前に聞いた各オペレーターのモフモフポイントを書き記した自前のメモを片手に解説を始めた。

 

「はい、さて。プロヴァンスが1位になった理由なんですが…まあ、お察しの通り、あの大きさから出される圧倒的なモフモフ感と抱き心地が群を抜いて良かった、という訳です。2位のフロストリーフはモフモフ感と抱き心地は惜しくもプロヴァンスには及ばなかったから、という感じですかね。3位のテキサスは…抱き心地はプロヴァンス達には及ばなかったものの、触り心地が段違いだったという訳で3位、だそうです」

 

「はい、では全問正解したメランサさんは後程ドクターにどういったことをしたいかを伝えて下さい、そして全問不正解のラップランドさんは…(パチン)」

 

「モフモフ…!」

 

「うわあ!?お、お前いつの間…や、やめろォ!」

 

アーミヤが話してる最中にドクターが指をパチンと鳴らすと、上からレットがラップランドの背後に音も立てず着地し、早速彼女の尻尾に飛びつき堪能し始めた。しかし、飛びつかれたラップランドは溜まったものではなく、抑えきれない恐怖心やら尻尾を触られることによる快感やら、どうせならヤマトにモフられたかったやら色んな感情がごちゃ混ぜになって悲鳴をあげるだけしか出来ていない。

 

((最下位にならなくて良かった…))

 

目の前で徐々に抵抗する力が失っていき、地面のヘナヘナと倒れ込むラップランドを見て2人は同じ感想を抱く中、今回の催し物は無事()に終わったのだった。

 

 

****

 

*ドクターのメモより抜粋

 

ヤマトのモフモフポイント:毛艶も良く、触り心地はまるで羽毛布団を抱いてるような感触とのことがランキング外。レッド曰く、「分からない、けどヤマトの良さ知ってるの、レッドだけで十分」とのこと。

 

 




これ、台本形式でやった方が良かったのでは?と思った(小並感)

それと裏話なんですが、1d3を4回やって決めたって言いましたけど、メランサに設定した出目が連続3回出て圧勝だったんですよね…一応、最下位決めの4回目でテキサスの出目が出たのでラッピーが最下位という…剣聖メランサ強し

キャラ紹介

ヤマトちゃん:ドクターの㊙︎映像から登場。この映像は、【嵌められたコミュ障狼(前編)】のヤマトの悲鳴の後にて、メランサがコーディネートし終えたものをお試し公開というわけでお披露目され、ドクターが何となく撮ったという経緯がある。なお、食堂でフーちゃん達と見てる時にこれが流れた瞬間顔を赤くして突っ伏した。更に余談ながら、レッドにモフられて蕩けたラップランドを助けるために、自らの尻尾をモフリストに差し出し、無事撃沈した。

ラップランド:練習問題では満点回答出したのに、本番でやらかした狼さん。あの後、ヤマトが助けに来てくれたお陰でなんとか助かった。

テキサス:何とか最悪の事態を回避出来た頼れるオオカミさん。㊙︎映像を破壊しようと画策中。

メランサ:女の勘か、剣聖の勘なのか不明だがその勘のおかげで勝利をもぎ取った剣聖。なお、ドクターに頼んだのは「ヤマトを一日中私に下さい」という聞いた側からしたら色々勘違いされそうなこと。その後、やりたいことをちゃんと告げてその場は何とかなった。

アーミヤ:協力してくれた礼として、ドクターにハグを要求した結果そこに頭ナデナデも勝手に追加されたため大満足。何気今回の話で得してる人物。

ドクター:全ての元凶。まあ、それなりに盛りあがったからヨシ!アーミヤにハグを要求された時は、理性が飛びかけた。

レッド:ラップランドだけではなくヤマトの尻尾もモフれてご満悦で、いい夢が見れたとの事。なお、ヤマトの尻尾の良さを周りに明かしたくない、と思ったことに自分の事ながら疑問符を抱いてる。

椅子から立ち上がったのを取り押さえられた人:一体どこのリーシーなんでしょうね…


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ヤマト着せ替え祭り〜ねえこれってコスプr~

というわけで、あんまり間を挟まずヤマトちゃん再登場回です。

今回はどんな感じになるんですかねぇ…





〜理性がなくてもわかる前回のあらすじ〜

モフモフグランプリの順位当てクイズで見事優勝したメランサは、ドクターに「ヤマトを一日中ください」というお願いした。ヤマトはひょんな事でレッドのMOFUMOFUを受けて気絶した次の日、嫌な予感がしつつもドクターの指示通りメランサの部屋の前まで来たのだが…

 

 

 

*****

 

(どうしよう…すっごい入りたくない……)

 

メランサの部屋の前にて、ヤマトは中々覚悟が決まらず中に入れないでいた。

というのも、先程から今まで自分の窮地を幾度となく助けてきた直感が警鐘をめちゃくちゃ鳴らしているからだ。

正直、今すぐ回れ右をしてバイソンやアンセル達とゆったり過ごしたいが、そんなことをしたらメランサが悲しむのは目に見えて分かる。

 

(覚悟を…決めるか…!)

 

「メッちゃん?ヤマトだけど入って大丈夫?」

 

「あ、入っていいよ」

 

意を決してヤマトは室内に入り──

 

「お待ちしておりましたわ、ヤマト」

 

「???????」

 

いつもより何故かやる気に満ちた顔を浮かべているアズリウスもいることによって、頭の思考回路はショートした。

 

****

 

「えーと、つまりアッちゃんはメッちゃんのアシスタントだと?」

 

「ええ、そうですわ」

 

「そして、メッちゃんは俺をまた女装させようと?」

 

「うん、そうだよ」

 

「……マジか」

 

事情を聞いて、確認するかのように聞き直したヤマトは天井を見た。

まさか、アズリウスまでもがノリノリでメランサに協力してくるとは全く思っていなかった。

 

(…まあ、別に外を出歩く訳でもないだろうしまだいっか)

 

ヤマトはそう1人で結論付けると、最初はどう言う服装にしようかと盛り上がっているメランサ達を見て息を軽く吐き──

 

「ヤマト!これ、着てもらっていい?」

 

メランサの差し出されたワンピースと黒タイツ、そして前の女装で使ったウィッグを見て固まった。

 

「……え、これだけ?」

 

「?そうだけど…」

 

「何かおかしいかな?」と首を傾げるメランサにヤマトは改めて差し出されたワンピースとタイツを見て、それを受け取るとジッとメランサとアズリウスを見つめる。

お気に召さなかったのだろうか?と不安になる2人にヤマトは少しいじけた声を出した。

 

「…着替えるから、こっち見ないでね」

 

「あ、うん」

 

「え、ええ」

 

2人が後ろを向いたのを確認してからヤマトはいそいそと着替え始めた。

 

「……着替え終わったからもういいよ」

 

ヤマトの声を聞いて振り返った2人は息を飲んだ。

ヤマトが今着ている真っ白なワンピースの丈は膝丈までのもので、恥ずかしそうに顔を赤らめワンピースの裾を掴むヤマトは、元の性別を知らなければ女性だと信じてしまうほど似合っていた。

 

「これは…想像以上ですわね…」

 

「はい!それにウィッグも特に結ばずに下ろしてるから清楚に見える…!」

 

(……凄い、スースーする……)

 

メランサとアズリウスが絶賛している中、ヤマトは「こういう服を着る女の子って凄いなあ…」と場違いなことを考えていた。

というよりヤマト的にはタイツを履いてるとはいえ、股関節の部分がスースーするのは凄い違和感しか無かった。

 

「ね、ねえ。いつまでこの格好でいれば…?」

 

「あ、ごめんね。すぐ次の服決めるから、もう少し待ってて」

 

「あ、分かっ…今なんて?」

 

「次に着てもらう服を決めるまでもう少しお待ちになってくださる?」

 

メランサとアズリウスの口から「次の服」というワードから、ヤマトは今日一日中色んな女性物の服を着せられるのか!と瞬時に理解し、男としてのプライドを守ろうと逃げ出そうとしたが、そんなことをすれば2人が悲しむ情景がヤマトの脳裏によぎる。

 

プライド大事な人か。

 

ヤマトは一瞬の間で思考を光のごとく回転させ──

 

「…ワカッタ、マッテルネ」

 

男としてのプライドを捨てた。

 

*以下ダイジェストで特に2人の反応が良かったもののみをお送り致します*

 

・メイドコスプレ

 

「えっと…お、お帰りなさいませ…お嬢様…」(ぺこり)

 

「おお…!こういうメイド服似合うね…!」(キラキラ)

 

「敢えてミニスカではなく、長い丈のものにしましたからね…。王道メイドって感じがしますわ」(カシャリ)

 

「……お、お嬢様?恥ずかしいので、次のに…」

 

(…なんか、いけないことをしてる気分になるのはなんでだろう)

 

 

*ツインテ+ベージュコート+縦セタ+ショートパンツ+黒タイツ

 

「ツインテールとベージュのコートって思ったより合いますね」

 

「ええ、ベージュ色のコートは少し地味っぽい感じですけどツインテールでポップさを合わせれば、また違う印象になりますのよ?」

 

(今度はズボンでよかった…)

 

*浴衣

 

「アズリウスさん!これ、すごい似合ってますよ!こう上手く言えませんけどなんかいいです!」

 

「最初こういう服があると聞いた時は驚きましたが、実際に着ている人を見るといいものですね…」

 

(この…オビ?だっけ?凄いきついけど…通気性は結構いいかも?)

 

 

 

****

 

「これで最後だよ」

 

時刻は夕方、途中休憩を挟みつつも行われたメランサとアズリウスによるヤマト着せ替え祭りもメランサが渡したもので最後と告げられたヤマトはようやく終わる、と安堵の息を漏らした。

途中、自分も楽しいと感じ始めた時は軽く絶望したがそれもこれで終わり、そしてメランサとアズリウスが楽しそうに笑顔を浮かべていたことを思い返せば、安いものだろうと考えながら着替えていく。

 

(うわぁ…またズボンがないタイプかあ…ってサイズあってるのにまた下の丈が短い…)

 

更にタイツも無いことにヤマトは少し顔を顰めるが、仕方ないかと割り切って着替えて最後に帽子をかぶってメランサ達に声をかける。

 

「はい、お待たせ…」

 

「…うん、やっぱり似合ってるよ!こういうの、ヤマトにも似合うと思ってはいたけど実際に見れたからすごい嬉しいなぁ…」

 

「今回はタイツとかで足を隠しませんでしたが…意外と綺麗な足をしてらっしゃいますのね…」

 

「…まあ、ちょっと男らしくないけどね……」

 

ヤマトの顕となったおみ足は白く、意外と細いものだった。確かに女性と比べれば流石に少し筋肉質な上太めだがムダ毛処理もしっかりしているためか、それほど違和感は無かった。

そして、着ている服は少し華美というか少し貴族っぽいような感じではあるがヤマトはそれをなんの違和感もなく着こなしており、なんも知らない人がどっかのお嬢様と勘違いしてもおかしくないほど似合っていた。

 

 

「えーと、それじゃあもうおしまいでもいい?」

 

「うん、いいよ…それにしても、私が中学に通ってた時に来てた学生服も着こなしちゃうなんてヤマト凄いなぁ…」

 

「あはは…喜んでいいの──ちょっと待って、今なんて?」

 

やっと終わったと息を吐きながら、着替えようと帽子をとったところで、メランサがぶちかました発言にヤマトはピクっと反応しすぐに聞き返した。その顔は何かの間違いだと信じて縋るように聞く顔だったが、それをアズリウスがなんて事ないように答える。

 

「メランサが中学に通ってらっしゃった時に着ていた学生服ですよ」

 

「──────」

 

瞬間、ヤマトの何かが砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、二日酔いでダウンしているヤマトをフロストリーフが小言も何も言わず、ただ黙って看病していたとか。

そして余談ながら、ホシグマ、チェン、フロストリーフは「ヤマトは泣き上戸と甘え上戸を足して2で割った感じ」と一部のものに話したとか。

 




キャラ紹介

ヤマト:着せ替え人形として女装させられまくった挙句、最後の最後に中学生だった頃のメランサの学生服がぴったしだったというトドメを刺された哀れなオオカミ。夜、ホシグマ、チェン、フロストリーフの飲み会に飛び入り参加して忘れようとヤケ酒した結果、二日酔いに。なお、酔った時のことは覚えていない。

メランサ:ヤマトを納得いくまで着せ替えしまくった挙句、故意ではなかったとはいえヤマトの男としての何かにトドメを刺した罪多き剣聖。そして何気なしに自分がかつて着ていた学生服を着させるというヤベー奴。色んなアドバイスをしてくれたアズリウスとは意気投合し仲良くなった。

アズリウス:ヤマトが訪れる前日に、何を着せようかと考えていたメランサと偶然に廊下で遭遇し、つい口を挟んでしまった結果彼女からアドバイスをしてほしい!と頼まれて流されるままに協力し、ヤマトちゃんコーディネーターとして覚醒。なお新たな扉を開きかけた。

フロストリーフ:大丈夫、男は身長だけじゃないから…

ホシグマ:大丈夫、お前は十分男らしいさ…

チェン:安心しろ、私はお前のことは誰よりも男らしいと認めている…

画面外のヤマトガチ勢×2:看病しようと互いに動き出した瞬間を取り押さえられた。

あ、余談ですがロドス劇場のR-18版も投稿しているので18歳以上で興味ある方は是非


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アイドルとコミュ障オオカミの特訓

アークナイツのアンソロジーコミックが発売されましたね…

二次創作書いてる身としても、プレイヤーとしてもめちゃくちゃ読みたいですね(まだ買ってない)

今回は前からメインとして書きたかったオペレーターなんですけど…色々書いてたらメインじゃなくなってしまった…どうしてこうなった()



ヤマトは振るわれる刃を右手に持つファースト、セカンド、バタフライソードまで合体させた合体剣で受け止める同時に左手に持っているルーンエッジを目の前の男に振るうが、それを目の前の男は鞘で受け止めた。

暫く、その状態が続いたがほぼ同時に彼らは後ろ下がって距離を取って相手を見据える。

ヤマトは目の前の格上の相手である男の挙動を見逃さないように目を凝らしながらも、ルーンエッジを合体剣に組み込んで両手持ちで構える。

 

一方で対峙している男──ヘラグは、自分が発する圧に全く屈しないどころか逆に戦意を更に上げたヤマトに感嘆した。なるほど、確かに多くの修羅場を乗り越えたようだ。しかし、

 

──この違和感はなんだ?

 

ヘラグは先程から感じている違和感が気になっていた。本来であれば、じっくりと考えてその正体を明かしたいのだが、今はそんなことをする余裕はないと切り替え、意識をさらに目の前のヤマトに集中させる。

 

「…っ!」

 

先に動いたのはヤマトで、彼は両手で持った剣を後ろに構えてヘラグに突進する。

ヘラグはそれを後ろに下がって避けようとして、半身を横に逸らしてヤマトが放った突きを躱しそこからの薙ぎ払いを刀で弾き、がら空きとなった胴体に一閃。ヤマトはその一閃を悪手だと理解しつつも剣を弾かれた勢いを利用して後ろに転がるようにして回避し、ヘラグが刀を振り下ろすのが視界に入った所で瞬時に片膝を着いた状態で合体剣でそれを受け止める。そして腕力と脚力を一瞬だけアーツで強化して、合体剣を振るいヘラグを強引に押し返すと、すぐに地面を蹴り接近して剣を連続で振るう。

ヘラグは振るわれる連撃を体術と剣術、そして多くの戦闘経験によって培われた眼を持って捌いていく。

そして、ヘラグはヤマトの一瞬の隙を突き、目も止まらぬ速さで袈裟斬り、斬り上げと刀を2回振るった。ヤマトはそれを自身の勘が命ずるがままに剣を動かし何とか防ぐが、威力を完全に抑えることは出来ず2撃目の斬りあげで体が浮いてしまい、ヘラグがそこを逃すはずがなく間髪入れずに突きをヤマトの体スレスレに放ち──

 

「私の勝ち…ということでいいか?」

 

そう告げながら愛刀を納刀したことによって、ヤマトとヘラグの模擬戦は終了したのだった。

 

 

****

 

「疲れた……」

 

ヤマトはフラフラと先程のへラグとの模擬戦によって疲れきった体をひきずりながらで廊下を歩いていた。

 

昼間に急にドクターに呼ばれ、何事かと思い向かってみれば「おい、へラグと模擬戦しろよ」といきなり言われ、気がついたらドクター、アーミヤ、ドーベルマン、ケルシーに見られる中へラグと模擬戦をしていたというのが一連の流れだ。

正直、何故自分みたいなただの元傭兵では話にならない程の実力者と模擬戦をやる羽目になったのかを小一時間ぐらいドクターに問い詰めてやりたい、というのがヤマトの心境だった。

 

(それでも…あの人相手に15分もったのと『満月』を引き出させないように立ち回れたのは良かったかな…)

 

ヤマトは格上であるへラグ相手に15分持ちこたえたこと、彼がもつ剣技の中でも射程距離が急に伸びる『満月』といつ脅威的な技を出させないように立ち回れたことに関してはよかったと思っていた。

あれを出されていたら、こちらの距離に詰めることが出来ず更に苦しい戦いを強いられていたのだから当たり前だろう。一応、ヤマトも合体剣を使った遠距離攻撃手段を持っていないことは無いが…剣の投擲はヘラグ相手ではそんな通用しないだろうし、もう1つの手段はアーツを込める時間を考えれば回転率は圧倒的に劣るせいでジリ貧は確定だったため、こちらの間合いで戦わなければならず、そしてそのように戦っていたが結果は惨敗であった。

 

(セカンドブレイドとバタフライソードの二刀流で立ち回るべきだったか?いや、片手でヘラグさんの攻撃を受け止めるのは厳しい…なら──って、あっしまった!)

 

ヤマトは脳内で1人反省会をしている中、ふと時計を見てこのあとすぐにソラの武器の訓練の付き添いをするというのを思い出し、ヤマトは急いで来た道を戻った。

 

 

 

****

 

「……えっと、大丈夫?」

 

「……大丈夫、ちょっと呼吸を整えれば大丈夫だから…うん、大丈夫」

 

「え?復活するの早くない?」

 

訓練室にて、汗を流しながら深呼吸をして息を整えて数秒後には復活したヤマトとそれを見て戸惑うソラの姿があった。

 

「それじゃ、早速やっていこうと思うけど…ソラちゃんは今まで何の武器を使って練習してたんだっけ?」

 

「えっと…これだよ」

 

ヤマトの質問にソラが見せたのは、何の変哲もない普通の刀だった。

ヤマトは、てっきりテキサスに倣って源石剣──そんなホイホイ作れるものではなかった気がするが──だと思っていたのもあって少し拍子抜けしていたのと同時に、源石剣の扱いを教えることがなくなって内心ほっとしていた。

その訳としては一応、ヤマトは何度か源石剣を手に持ち振るったこともあることにはあるのだが、それはシラヌイ特性のものでしかもあれはあれでゲテモノだったのもあって、普通の源石剣の扱いを教えられる自信が正直な話なかったからだ。

 

「それじゃ、とりあえず見てるから素振りを…とりあえず50回やってみて」

 

「うん、分かった」

 

残念なことに、ヤマトは見ただけでその人が才があるかどうかを判別できるほどの眼は持っていない。だが、基本的な部分…例えば刀を振るうだけでも力任せに振っているのか、重心をしっかり捉えているかなどといったものであれば、出来ているかどうかの判断はできる。

 

(うーん…重心はしっかりしてるし、身体も刀に振られているっていう風には見えないけど…ちょっと力任せに振ってる感じがあるかな?)

 

「49…50…!終わったよ、ヤマトくん」

 

「お疲れ様、それでとりあえず見た感じ──」

 

ヤマトはソラの出来ていたところと逆に改善すべきところを丁寧に教え、その後も彼女の指導を予定していた時刻まで続けた。

 

 

*****

 

「お疲れ様、はいこれ」

 

「あ、ありがとう…」

 

汗をかくソラにヤマトはスポーツ飲料とタオルを彼女に手渡し、労いの言葉をかける。ソラはタオルで汗を拭い、スポーツ飲料を飲む。

 

「ふーっ、ヤマトくんって案外教えるの上手いんだね」

 

「え、そうかな………そう言って貰えると嬉しいかな」

 

ソラがふと何気なしに言った言葉にヤマトはほんの一瞬だけ暗い表情を浮かべたが、すぐにバレないようにと笑顔を浮かべる。

無論、ソラはそれに気がついたが敢えて何も聞かないことにした。

 

「うん、お陰様で少しコツを掴めた気がする!」

 

「そっか…役に立てたなら良かった。それじゃあまた今度に」

 

ヤマトはソラに別れを告げて、よいしょと立ち上がると奥のシミュレーション室へと足を運ぼうとして…

 

「……えーと、なんで着いてきてるの?」

 

タオルを首にかけとスポーツ飲料を片手に着いてきていたソラに声をかけた。

 

「えーと、ヤマトくんの動きを参考に出来たらなーって思って着いてきたんだけど…やっぱり迷惑だよ…ね?」

 

ソラが申し訳なさそうに言った内容に関して、ヤマトは少し思考を巡らせる。確かに人の動きを参考にするというのは効果的ではあるが、ソラはまだ実践の動きを参考にする前の段階なのであまり意味は無いのだが、別に見せても問題はないと思う上、逆に彼女に自分の動きで何となくでもいいから直すべきところを見て貰えるチャンスでもある。

 

「…いや、迷惑じゃないよ。それじゃあ外から見ててね」

 

ヤマトはそう告げると中に入り、システムを入れ仮想の敵を…先程戦った相手であるへラグに設定しそれで起動ボタンを押す。

そして現れた仮想のヘラグに対してセカンドブレイドとバタフライソードを構えると、数秒後にはヤマトは斬りかかっていた。

 

 

 

*****

 

「ふー…やっとこさケルシーを説得できた…」

 

執務室にて、ドクターは先程までヤマトに2度目の昇進をさせてもいいか否かをケルシーと議論しており、何とか彼女を納得させることが出来たことに疲れを感じると共に息を吐いた。

 

「お疲れ様です、ドクター」

 

「ありがとうアーミヤ…お、ミルクティーか」

 

「その…疲れには甘めのものがいいかと思いまして…」

 

「そっか…ありがとうアーミヤ。うん、甘めでなおかつ好みの味だ…流石アーミヤ、と言ったところかな?」

 

「ど、ドクター!褒めても何も出ませんよ!」

 

さりげなくイチャつく(まだ恋人ではない上どちらも無自覚)2人に来客を知らせるインターホンが部屋に響き渡った。

 

「?誰でしょう?」

 

「うーん、来客の予定はなかった気がするけど…はい、誰で…ヘラグさん!」

 

ドアを開けると、そこにはヤマトの2度目の昇進を決めるための実力診断のために模擬戦を頼んだヘラグがそこにいた。

 

「急にすまないな、ドクター」

 

「いやいや、でも急にどうしたんですか?」

 

「ああ、ヤマト殿に感じた違和感が分かったのでその報告をな」

 

「……中で詳しく聞きます」

 

ドクターはヘラグを真剣な声音で中に招き入れて、来客用のソファーに座ったヘラグは早速切り出した。

 

──ヤマト殿の実際の戦闘経験と書類に書かれているものは、違う可能性がある。

 

 

 




活動報告にて、このキャラとの絡みがみたい!というのをリクエストしていますので、他力本願というか皆様に頼る感じになってしまいますが、是非ともよろしくお願いします(こういった話が読みたいでもOKです!)

キャラ紹介
ヤマト:何かまた厄介事が起きそうな感じになっている、本小説主人公。自分を一介の元傭兵にすぎないと考えている。あの後、仮想のヘラグには模擬戦よりは善戦したものの結局負けて、ソラには慰められるという締まらない感じで終わった。

ヘラグ:みんな大好き星6前衛おじ様。医療オペレーターの回復の対象にならず、敵を攻撃する度にHP回復&昇進2で未ブロック時HP回復という変わった素質の持ち主。攻撃速度が早く、スキルも全体的に使い勝手いい感じになっており、重装タイプじゃないボス系エネミー討伐にピッタリ。本小説ではめちゃくちゃ強い感じになっており、数々の死闘の経験とかで色々察せられる感じに。個人的にはヤマトからおじいちゃんと呼ばせたい…!

ソラ:みんな大好きアイドル。ヤマトと仮想ヘラグの戦闘は正直、速すぎてついていけなかったが、ヤマトが何かに頼りすぎているように見えた気が…?ヤマトに指導したくれたお礼としてチョコムースを奢ってあげた。

ドクター:ヤマトを2度目の昇進をさせるために、あれこれ手を尽くした人。ヘラグからヤマトについて話を聞かされたが…?


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オオカミの原点

リクエストを順次やっていく前にヤマトのもう一つの過去の話を。

あ、それとブレイズ当たって喜びのあまり雄叫びあげたら家族に怒られました()

あ、さきに言っときますけどヤマトは基本的に上の立場の人に対しては敬語です。


最近になって、あの施設で過ごした時期を思い出す。

 

──『今から24時間後にこの部屋の中に生きているものが10人以上だった場合は全員処分する』

 

突然、かなり広い部屋に通されて言われたことは無慈悲な宣告だった。

 

──『死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない』

 

死にたくないと壊れたラジオのように繰り返す同じ施設で過ごした人達。

 

──『僕のために死んでくれ…!』

 

生きたいがために俺に刃を向ける人。

 

──『…ふふふふっアーッハッハッハ!!こいつは凄い…!1人だけでしかも無傷だとは…!これは期待が持てそうだ……!!クヒャッヒャヒャヒャ!!』

 

今思えば、俺があの施設に…アイツに拾われた時点で俺の人生はほぼ決まったのだろう…いや、さっさと死んでいればそうはならなかったのかもしれない。

どちらにせよ、俺は多くの屍の上で生きているのは変わりないのだ。

あの夢を見るようになったからだろう、ソラさんに戦い方を教えてそれを感謝された時は凄い苦しいと感じた。それに出来れば彼女には──

 

 

****

 

「昇進…ですか?」

 

「そうだよ。ヤマト、色んな人達と議論を重ねた上での決定だ」

 

ヘラグとの模擬戦から数日後、ヤマトはドクターに呼び出され執務室に行くとそこにはアーミヤ、ドーベルマン、ケルシー、ヘラグそしてドクターがいた。5人中4名がロドスの幹部陣ということもあって、何かやらかしたかとヤマトは怯えていたが、ドクターから告げられた内容に驚きを隠せなかった。

 

「…議論を重ねた上で、と言いましたが俺より適任な人はもっといたはずです」

 

「確かに他に候補は居たが、君の能力やこれまでの戦果。そしてヘラグとの模擬戦の結果を考慮した上で問題ない、と判断した」

 

ヤマトの反論はケルシーの発言によって抑え込まれた。

そして続くようにヘラグがヤマトに声をかける。

 

「だが、昇進するに当たって1つ君に聞きたいことがあるんだがいいかな?」

 

「……?何でしょう?」

 

今更自分に聞きたいことがあるとはどういう事なのか?ヤマトは疑問に思いながらも、ヘラグからの質問を待つ。

ヘラグはドクター、ケルシー、ドーベルマンそしてアーミヤと顔を合わせるとヤマトに向き直り口を動かした。

 

「……君はいつから戦いを…いや、何歳の頃に命のやり取りをした?」

 

「……そう聞いてきましたか」

 

ヤマトはそれを聞くと下を向いて小さく呟くと、顔を上げてへラグたちに視線を合わせる。

 

「…そのことに関しては俺の過去を話す必要があるのですが……」

 

ヤマトはアーミヤの方に少し申し訳なさそうな視線を向けたのを見て、ドクターとケルシーはヤマトが言わんとしていることを受け取った。

 

「アーミヤ、俺がいいと言うまで部屋の外に居てくれるか?」

 

「え?でも…」

 

「ごめんなさい…アーミヤ代表には聞かせたくない話なんだ…分かってくれないか……」

 

「……分かりました」

 

 

ドクターの急な発言にアーミヤは残る意志を伝えようとするも、ヤマトが間髪入れずにアーミヤに懇願してきたのと、ケルシーが目でアーミヤに外に出るように告げていたのもあって、彼女は部屋を出た。

 

「……さて、それじゃあ長くなると思うだろうからソファーに座ろっか」

 

「…そうだな」

 

ドクターの提案にケルシーが乗っかたことでその場にいた全員がソファーに座ったのをケルシーは確認すると目でヤマトに話すようにと告げる。

 

「……今回の話は、俺の幼少期…いや生い立ちからの話になります」

 

ヤマトはそう言って言葉を一旦切り、そして続けた。

 

──自分の血塗られた幼少期の話を

 

 

 

*****

 

俺は産まれて早々捨てられた所を、俺の育ての親…というべきなんでしょうか、その人に拾われたらしいです。らしいって言うのは、俺も後から聞いた話なので真実が定かじゃないからです。

 

そして俺はその人に拾われたのですが…その人…【先生】は孤児院を営んでいて俺はその人の孤児院で生活していました。孤児院には、俺と同じ孤児が沢山いてそいつらと5年ほど過ごしました。

 

けど、そんなある日俺らは突然【先生】に孤児院の真っ暗な地下室に連れてこられて、皆が室内に入った瞬間ドアが閉められて部屋の電気が付けられると、そこは刀剣類、槍、斧、弓矢といった色んな武器が無造作に置かれている広い部屋でした。

戸惑う俺らに、スピーカー越しに【先生】はこう告げました。

 

──『今から24時間後にこの部屋の中に生きているものが10人以上だった場合は全員処分する。生きたければそこにある武器を使って周りのものを殺せ』

 

皆、何を言っているのか最初は分からず戸惑うばかりでしたが、その部屋の中にいたある1人の孤児が地面に置いたあったナイフを取って近くにいたやつを刺し殺しました。

悲鳴をあげるやつもいれば、蹲って死にたくないと呟き続けるやつ、触発されて武器を手に持って殺しにかかるやつと反応が別れる中、俺だけはあの時起こっていたことを受け止めきれずにただ突っ立っていました。

1人だけただボーッと立っているやつがいたら狙われるのは道理で、俺はナイフを持ったやつに襲われました。

 

俺はあの時ただ死にたくなくて必死に抵抗しましたが、相手が俺より背が上だったこともあって地面に組み倒され胸を刺されそうになった時、俺は近くにたまたまあったナイフをそいつの首に突き立てました。

 

それが俺が初めて人を殺した瞬間でした。

そこからはよく覚えていませんが、襲いかかってきたやつを返り討ちにして気がついたら多くの死体と血溜まりの中、立っていたのは俺だけでした。

 

そして【先生】はそこに立ちつくす俺を見て狂ったように笑ってこう言いました。

 

──これは期待が持てそうだ

 

それから、俺は【番号:079】と呼ばれるようになり、更に別の地下室の部屋で時刻が分からない中決まった時間に来る先生の元で武器の扱い方や戦い方、計算や言葉、そして感情を捨てろと【教育】されました。

 

そしてそんな生活が続いたある日、俺はかつて殺し合いがあったあの部屋にまた連れてこられました。

今度は、武器を持った数人の大人と殺し合えというものでした。

……普通であれば恐怖とか感じていたんでしょうが、俺は【先生】の教育のお陰で何も感じませんでした。そして、手に持った刀で大人を殺し、命乞いをした最後の一人もなんの感慨もなく殺しました。

 

その後も色んな【教育】や先程話したような殺し合いをする生活が続いて11歳の頃に、【先生】に呼び出されてこう言われました。

 

──『アーツ適正が上がらないお前には失望した。昨日、アーツ適正がお前より優秀で尚且つ全てがお前より優秀な駒が手に入ったからお前は用済みだ』

 

【先生】がそういった直後、急に武装した男たちが現れて俺に襲いかかってきて、あの時俺は武器を持ってなかったのもあって男たちの攻撃を何とか避けて地下室から何とか出て、孤児院の外に脱出しました。その後は追ってきた男たちを1人ずつ急襲して殺して武器や服を奪って、とにかく【先生】に見つからないようにとひたすら走り続けました。

 

*****

 

 

「──そして、数日間さまよい続けて餓死しかけていたところをムサシに拾われて、後は前に話した通りです」

 

ヤマトはそこまで話すと、息を軽く吐いて視線を下に向ける一方、ドクターとヘラグは幼少期のヤマトを…いや多くの子供たちの命を奪わせたり奪うようなことをさせた【先生】に対して怒りを募らせていた。

しかし、一方でケルシーとドーベルマンは別のことに疑問を抱いていた。

 

「ヤマト、その【先生】とやらは何故そのようなことをしたのだ?」

 

「…【先生】が時折呟いていたことから推測すると、どうやらあの人は優秀な兵士…いや、何でも言うことを聞く優秀な駒が必要だったみたいです…最も、なぜ必要だったのかまでは分かりませんが…」

 

「……その施設と【先生】がその後どうなったのかは?」

 

「…1度だけ、俺が前いた施設の場所を突きとめて現地に行ったんですが…施設があった場所は更地で地下室もありませんでした」

 

ドーベルマン、ケルシーの順で聞かれた内容にヤマトは淡々と答えていく。

ドクターはその中で、何故今のヤマトはこんなにも感情豊かなのか?という疑問が浮かんだが、すぐに自分の中で答えが浮かんだため聞くのを止め、ヤマトに感情を戻してくれた名前しか知らぬ彼の恩人に感謝の念を心から送りつつも話をまとめにかかった。

 

「…とりあえず、さっきの話を加味するとヤマトの本当の戦闘経験は13年になるってことでいいのかな?」

 

「…あれを戦闘と言っていいのか分かりませんが、命のやり取りという点で考えればそうなります……」

 

「そっか…」

 

「ドクター」

 

黙ってしまったドクター達に、ヤマトはソファーから立ち上がるとドクターのすぐ側まで近寄ると、跪いて右手の拳を自身の左胸に当てるという、かつて一緒に戦った傭兵団達が敬意と覚悟を示す動作を取った。

 

「今更こんなことを言われても信用出来ないかもしれない…けど、ドクターやみんなの為に俺の命を捧げる。如何なる時も皆を守る剣として、盾として全力を尽くすことをここで誓う」

 

ヤマトの突然の行動に全員目を丸くするも、その目と言葉から伝わってくる気迫から嘘でないことを彼らは感じ取り、そして彼が心の底からそうであることを決めたようにも見えた。

 

「プッククククっ……ヤマト、悪いけど似合ってないよ……フフっ」

 

「……俺が知っている中で1番相応しいものだと思ったんだけど……」

 

「けど」

 

ヤマトらしくない行動に吹き出すドクターに、ヤマトが少しムッとした表情をするもドクターはそれに構わず言葉を続ける。

 

「ヤマトの覚悟、しっかり伝わったよ。これからもロドスと共に道を一緒に歩んでくれ」

 

「ああ、これからもよろしく頼む。ドクター」

 

 

後日、ドクター直々にヤマトを2度目の昇進をさせることがロドスの全オペレーターに発表され、最初こそヤマトと交流を持たないもの達は疑問を抱いたが、ドクターだけではなくアーミヤ、ドーベルマンそしてヘラグ達の推薦もあったということでその疑問は直ぐにとはならなかったが、沈静化していったのだった。




キャラ紹介

ヤマト:人生の半分以上を戦いに費やして生きてきた狼。ヤマトとしては、幼少期のアレは戦闘ではなく全くの別物だと無意識に考えていたため、書類には傭兵であった期間の7年を戦闘経験のものとして提出していた。そして自分の原点を話したことにより覚悟が決まった。なお、今回の話は皆には他言無用にと頼んだ。曰く、「流石にこの話は刺激的すぎるから…特にソラさんやメッちゃんとかは特にね」とのこと。なお、昇進するに当たってドーベルマンに戦術立案や戦闘技術、他にもアーツコントロールやその他のスキル習得のためにどちゃクソ指導された。

ケルシー:ストーリーでは大活躍の先生。CVが某ドリームな音ゲーのソイヤと同じ。なお、中国版ベータテストで存在していたが余りの性能により星7とも言われ、現在では調整という名の出禁に…いつになったら実装されるんですかねぇ…?

ドーベルマン:星4前衛にて低レア縛り攻略動画でよく見かける教官。使い勝手としてはそんなに悪くはないと思われるが、正直フーちゃんやメランサの使い勝手が良すぎるせいで個人的にはあんまり…あ、教官!?なんでムチを(通信がとだえました)。ヤマトの再指導は彼の学習能力の高さのせいで初日は予定の2倍やってしまうという、うっかりミス☆をした。全力でデレたらどうなるんだろう?と密かに気になっている。

ヘラグ:前の話でヤマトと模擬戦しただけで、ヤマトの実際の戦闘経験が違うことを突き止めたやべーじっちゃん。なお、ヤマトにはあれから本人の希望もあってたまに手ほどきしている模様。

アーミヤ:ヤマトが「優しすぎるから」という理由で退席させられたが、耳を全力で押し当て断片的ながらもギリギリ聞こえてきた内容からヤマトに何があったかを推測していた(しかも合ってる)。けど、気遣ってくれたヤマトのためにもこのことは内密にしている。


【先生】:ヤマトを拾い、彼を【教育】した張本人。後のヤマトの証言から武器や戦闘技術(後者はヤマトも認めたくなかったが)の最初の師であり、今でも勝率は五分だと言わせるほどの猛者。アーツ適正が上がらなかったヤマトを見限って雇った傭兵たちをけしかけて以来、消息不明のようだが…


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第1回無口な狼について語ろうの会

本当はリクエスト順でいきたかったのですが…書きやすい方から順に消化していきます…本当にすみません…

さて今回の話はタイトル通りの話ですが…キャラ崩壊が激しいかも?

それとアステシアさんハピバ!前衛soc集めきったら昇進させるからね…!


「テキサスについて話そーよ!」

 

「「……?」」

 

「その『何言ってんだこいつ?』みたいな目で見ないで?流石に傷つくよ?」

 

ある日の食堂にて。

おやつを食べるのに最適な時刻に、たまたま会ったヤマトとソラはその場から近いということもあって食堂のある一角のテーブルで話に花を咲かせていたのだが、そこにエクシアが「あたしも混ぜてー!」と乱入してきて、暫くしてから冒頭の発言に至る。

 

「いや、実際そうでしょ…だよね?ヤマトくん」

 

「うん、いきなりどうしたの?」

 

「待って、あたしに対する扱いなんか酷くない?」

 

ソラはエクシアに怪訝そうな目を、ヤマトはガチトーンで(頭の)心配してくる始末で、エクシアは自分はそんなにヤベー奴かと少し自信を失くす。が、すぐに切り替えて冒頭の発言の意図を話す。

 

「いやさ、このメンツって何やかんやテキサスと縁があるからさ、あいつのことどう思っているのか、純粋に気になったんだよねー」

 

「あ、そういうこと」

 

「え?ヤマトくん、今ので納得しちゃうの?」

 

納得しにくいエクシアの言い分にあっさり言いくるめられるヤマトにソラは疑問の声をあげるが、実をいえばこんなことを言ってるソラもヤマトがテキサスのことをどう思ってるかは正直気になっていた。

なので──

 

「まあ、話題としてはいいかも」

 

「お、ソラも分かってくれたところで!第1回無口な狼について語ろうの会をやるよー!!」

 

「待って、テキサスさんに聞かれたら剣雨されそうな名称はやめて!?」

 

エクシアの案に乗ることにしたが、早速後悔するのであった。

 

 

 

*****

 

「それじゃ、最後はヤマトくんだね!」

 

テキサスの耳にエクシアの声が届いたのは食堂に入ろうとした瞬間であった。入口から気づかれないように覗き見ると、テーブルの一角でヤマト、ソラ、エクシアの3人が話しているのが視界に入った。

テキサスとしてはこの3人が話しているのを見るのは何度もあったため、そんなに驚きはせず、暇だから彼らの話でも聞こうと思い足を動か──

 

「ほら、早くテキサスのことどう思ってるかはゲロっちゃいなって〜」

 

す前に彼らの視界に入らないように身を隠した。

テキサスは基本的に大抵のことには無関心なのだが、何かと自分の中で大きな存在になりつつあるヤマトが自分のことをどう思ってるかは正直知りたい。

テキサスは耳に全神経を集中させ3人の会話に耳を澄ます。

 

 

「その…テキサスさんは一言で言えば大事な人かな」

 

「「ブフっ!?」」

 

「!?」

 

「うわっ!?ど、どうしたの2人とも!?」

 

ヤマトの爆弾発言にエクシアとソラは驚きのあまり吹き出し、テキサスは目を見開いた。いや、ただ普通に言っただけなら3人ともまだここまでの反応を示さなかったが、どこか優しい気な雰囲気というか、柔らかい雰囲気で言われたせいで色々と勘ぐってしまった。というより、その話題として挙がっているテキサスへの破壊力は凄まじい。

 

「だ、大丈夫だから、続き話してくれる?」

 

「いや、けど…」

 

「ソラの言う通り、大丈夫だから続き話して!」

 

「あ、うん…」

 

突然吹き出した2人を心配したらヤマトだったが、当の2人に大丈夫だと押し切られたため少し納得いかない表情を浮かべつつも、まさかテキサスが隠れて聞いているとは知らずに続きを話した。

 

「テキサスさんの第一印象は冷たそうで優しい人ってて感じだったんだ。いきなりラーちゃんと縁切れって言われた時はあまりいい気持ちはしなかったけど、 俺の事を気遣って言ってくれたようにも感じたから本当は優しい人なんじゃないかな、って思ったんだ。あ、今は優しくて頼りになる人って思っているよ!テキサスさんは俺が困ってる時はいつも助けてくれるし、前に俺が泣いちゃった時は無言でハンカチ貸してくれたし、後は、その…レっちゃんから俺を助けてくれたし、優しくてかっこよくて頼れるお姉さんみたいな人で──」

 

「〜〜〜〜〜っ!」

 

テキサスはヤマトのべた褒めになんとも言えない感覚に陥り、顔が熱くなるような感覚に襲われた。

テキサスとしては、ヤマトがそういう風に思っているとは予想外なのに加えて、話し方も柔らかい雰囲気で尚且つどこか自慢するような感じなのが余計に彼女の心を揺さぶらせる要因であった。

 

「あ、あと最近だと一緒に貿易所で働いてる時に『他の人には内緒だ』ってポッ○ー…確か昨日は期間限定のをくれて──」

 

「待て、その話は内密にと…!」

 

「「「え?」」」

 

「あ」

 

隠しておきたかったことを喋りだしたヤマトを止めるために思わず飛び出したテキサスを見て固まる3人と、その3人の前で固まるテキサス。

 

「て、テキサスさん…い、いつから…?」

 

「………ヤマトが話し始めた頃からだ」

 

声を震わせながら恐る恐ると言った様子で聞いてきたソラに、テキサスはバツが悪そうにそっぽを向きながら答えた。

無論、それをエクシアが見逃すはずがなく早速テキサスを弄りにかかった。

 

「へ〜?テキサスさんとあろう方が盗み聞きとはね〜?ヤマトくん、どう思う〜?」

 

「え!?え、えーと…そ、その盗み聞きはあまり良くないかと…」

 

「………」

 

エクシアはともかく、ヤマトの控えめでありながらもご最もな発言がグサッとテキサスの心にぶっ刺さり、ソラはどうすればいいのかとオロオロしている。

エクシアはそんな状況でも滅多にないテキサス弄り(反応よしver)を続ける。

 

「そーいえばテキサスさ〜ん?私やドクターが食べさせてーって言ってもくれなかった期間限定の○ッキーをヤマトにはあげたって聞いたけど〜、それってどうして──」

 

その瞬間、テキサスは顔を真っ赤にさせながらも無駄のない動きでエクシアに飛びかかった。

 

 

*****

 

「…その、内緒だって言われてたのにあの話しちゃってすみませんでした…」

 

「…終わったことだから別に気にしなくていい。だが、次からは気をつけてくれ」

 

「でも…」

 

エクシアがテキサスとの鬼ごっこの末ボロ雑巾にされた次の日、テキサスはヤマトの部屋にて彼と2人だけで話をしていた。

正直テキサスとしてはエクシアとソラにも口止めしたため気にしていないのだが、口を滑らせてしまったことでヤマトが昨日から謝ってくることが目下の悩みであった。

テキサスがこうしてヤマトと2人で話しているのも、自分は気にしていないというのを示すためであったのだが当のヤマトはあまり納得していないのが現状だった。

 

(どうしたものか…)

 

こういうのに慣れていないため名案が浮かばずテキサスは頭を悩ませている中、ふとヤマトがケーキも作れることを思い出した。

 

(……強引かもしれんが、やる価値はあるか)

 

テキサスはそう思いつつも、ヤマトを納得させるためにあることを頼んだ。

 

 

 

後日、テキサスに「ポ○キー頂戴!」と強請ってそれを食べたエクシアが市販のポッキーより甘い気がするとソラとヤマトに漏らし、それを聞いたあるオオカミがビクンと体を震わせたとか。




リクエスト通りの話になってかな…?


キャラ紹介
ヤマト:テキサスに餌付けされていたオオカミ。なお、ヤマトにとっての『大事な人』は異性的な意味はなく、『命に替えても守りたいひと』という意味を持っている。貿易所ではラップランド、テキサスと組むことが多く、ラップランドが注文書を整理してる隙にこっそりポッキ○をくれたとのこと。最初こそ、隠れて食べるなんてと反対していたが、テキサスに押し切られた+甘いもの好きというのもあって結局食べた。なお、甘い物を食べている時は幸せそうな雰囲気を出す。どんだけ甘いもの好きなんだ…

エクシア:珍しく反応が良かったテキサスを弄ろうとした結果、(物理的に)やり返された天使。ボコボコにされた次の日の夕方にヤマトがテキサスを止められなかったお詫びとして作ったミルクレープを貰ったとか。なお、市販のポッキ○とは違う味がした件に関しては明らかに分かりやすい反応をしたオオカミから色々聞かせてもらおうとしたがソラと途中から乱入したテキサスによって聞けなかった。

ソラ:テキサスガチ勢のアイドル。ヤマトの『大事な人』発言にくっそ驚いたが後々に彼にとっての意味を聞いてほっとした。なお、テキサスからヤマトの餌付けの件は口止めされているが、実はヤマトからも好きなお菓子を作るという条件でされており、その結果プリンを所望した。ちなみに最近やっと昇進2できたんですけど…石集めツラカッタ…

テキサス:今回の話で1番散々な目にあったオオカミ。ヤマトにこっそりポ○キーをあげていたのは、最初こそ彼がラップランドの注意を引いてくれているからそのお礼という理由であげていたのだが、サクサクと幸せそうな雰囲気を出すヤマトを見て、それからはつい小動物にあげる感覚でやってしまっていた。なおヤマトの『大事な人』の意味も後々しっかり聞けた模様。最近は市販より甘めのポッキ○をよく食べている。


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こう見えて大人です!

今回はリクエストからヤマトとあるオペレーターの絡みです!

現在、メンテナンスでアークナイツ出来ないので少しでも暇つぶしになればと珍しく昼間に投稿です。

そういえば今回の星6確定の有料パック、皆さんはどれにするか決めましたか?自分はエクシアがいるやつにします!スカジが来たらそれはそれでよしですし。


「メテオリーテ、こいつが前私が話していたヤマトだ。出来たら気にかけてやって欲しい」

 

「あー…この子が……」

 

「ねえフーちゃん?俺の事なんて説明したの…?」

 

「コミュ障拗らせた残念な元ボッチ狼」

 

「酷い!」

 

第一印象はコロコロ表情が変わる子供みたいなやつだった…まあ、フロストリーフがいなくなった瞬間に話で聞いてた通り、無口になって表情も動かなくなったけど、そういうことになるってのは事前に聞いていたためこの変わりようが逆に面白くて笑っちゃったわね。

 

「ヤマト!」

 

「了解、切りこむ!」

 

生活の場じゃポンコツというか、身長のせいもあってどこか抜けてる子供みたいな感じなのに、いざ戦闘になるとそんなことを微塵に感じさせない程の高い状況把握能力に判断力、そして戦闘技能。おかげでいつもより戦いやすかったのだけれども…ギャップが激しくて戸惑ったわ。

 

まあ、今ではヤマトも私と話すのは慣れたのかよく喋るし表情もコロコロ変わるようになったのだけれど…この子、何歳なのかしら?顔は童顔だし身長も高くないし…フロストリーフより年下の可能性もあるわね(名推理)

 

 

 

****

 

「〜♪」

 

ヤマトは廊下を機嫌良さげに歩いていた。

というのも、ヤマトの二度目の昇進の特別プログラムがやっと終わり、今夜は久しぶりにホシグマ達と飲み会が出来るからだ。

 

(おつまみも作り終えたしあとはお酒を購買部で見繕って──)

 

そう考えながら購買部に入ろうとした時、ホワイトボードに書かれた「極東で噂のオニ殺し数個のみ限定入荷!」という文字にヤマトの目は止まった。

ヤマトはそこで「そういえば」と前の飲み会でホシグマが「いつかはオニ殺しをヤマトと飲んでみたい」という発言をしていたのを思い出した。その時は「オニがオニ殺しを飲むの…?」と不思議に思っていたのだが、どっちにせよ普段お世話になっているホシグマへのお礼として買っておこうと思い、購買部の中に入ると──

 

「おっ、ヤマト君丁度いいところに!この時間帯ってあんまり客来なくて暇だからさー話し相手になってくれない?」

 

「オニ殺しってどこにあるの?」

 

「……ねえ、誰からそういう態度とれって教わったの?」

 

「フーちゃんに相談したらこうしろって」

 

「あのロリ狐め」

 

購買部のレジでだらけていたクロージャとやり取りを見てわかるように、ヤマトは彼女にコミュ障によるあがり症+ポーカーフェイスのコンボが発揮されない程度の交流を交わしていた。しかし、基本的に対応が丁寧なヤマトがクロージャに対しては何故雑な対応なのか?

これにはちゃんとした訳があり、ヤマトはクロージャに手伝って欲しいと言われて彼女が作った試作品の実験台にされたり、果てには『美少女ループス写真集』という名の『ヤマトちゃん写真集(データはドクター秘蔵の物)』を裏で販売していたことがあったからだ。

そして余談ながら、『ヤマトちゃんの写真集』を販売していたことをヤマトにバレてから暫くは得体の知れないものを見るかのようで見られたとか。

 

閑話休題(それはおいといて)

 

クロージャはゴホンと咳払いし先程の会話で気になっていたことをヤマトに問いかけた。

 

「まあ、いいや。それよりなんでオニ殺しを?」

 

「前にホシグマさんが飲んでみたいって言ってたから、普段のお礼と俺も興味あったから一緒に飲みたいなーって思って…はい、お会計お願いします」

 

「なるほどねぇ…あ、でもこれって度数…いや、ヤマトとホシグマさんなら大丈夫か。えーと年齢確認は…別にいいか。お会計は──」

 

 

*****

 

(おつまみも事前に用意してあるし、お酒はホシグマさん達も持って来てくれるから後は部屋で時間になるまで待てば──)

 

「あら、ヤマト。機嫌良さそうだけどどうしたの?」

 

鬼殺しを買い部屋を戻る道中でヤマトはメテオリーテに後ろから声をかけられた。メテオリーテとしてはここまで分かりやすくヤマトが上機嫌なのは初めてなので、つい声をかけてしまったという感じだがヤマトはそれに対して笑みを浮かべながら答える。

 

「実はね、この後ホシグマさん達と久しぶりに飲み会やるんだけど、そのホシグマさんが俺と一緒に飲んでみたいって言ってたオニ殺しが買えたんだ!」

 

「……へ?」

 

ヤマトの言葉にメテオリーテは思わずそんな声が出てきてしまった。

先に言っておくと、メテオリーテはヤマトのことを身長が低いことや童顔であることからまだ成人してないのではないかと思っているのに加えて、メテオリーテはオニ殺しというお酒がオニのような強い人でもあっという間に酔ってしまう程にやべー酒だということを知っていた。

 

(え?飲み会って酒を飲み会うやつの方よね?それで、ホシグマさんって確か凄い酒豪で、確かオニ殺しはやばい酒でそれをヤマトと一緒に…?)

 

「メテオリーテさん?どうしたの?」

 

「……ねえ、一つだけ聞いていい?」

 

先程から脳内で色々と思考がぐるぐる回っているメテオリーテに流石に様子がおかしいと感じたヤマトが声をかけると、彼女は恐る恐ると言った様子でヤマトに質問をしてもいいか尋ねる。疑問にこそ思うが、断る理由もないのでヤマトは頷いて肯定の意を伝える。

それをメテオリーテは確認すると声を震わせながら──

 

「ヤマトってさ、未成年じゃないの…?」

 

「………!!!!」

 

その一言を聞いたヤマトは最初こそポカーンとしていたが、意味を理解し始めるとメテオリーテに凄まじい勢いで猛抗議しだした。

 

 

 

****

 

「うぐっ…ヤマト、強すぎ……」

 

「……それに関しては私も同意する」

 

「うん、お陰様でボクはヤマトが酔ってるところ見たことないんだよなぁ…」

 

「というより、ヤマトが成人してて尚且つザルだってことを言うの忘れててすまないな…」

 

その後メテオリーテも加わった(強制)始まった飲み会にて、ヤマトがどれぐらい飲めるのかとメテオリーテは彼と同じペースでお酒を飲んでいたのだが早々にダウンし、それをラップランド、チェンそしてフロストリーフが介抱していた。

そしてそのヤマトはと言うと…

 

「結構これ美味しいですね」

 

「ああ、これは中々美味だ。こうしてオニ殺しを飲めるとは人生分からないものだ…」

 

ホシグマと2人で件の鬼殺しをまったりと味わいつつ飲んでいた。一応、フロストリーフ達も少しだけオニ殺しを飲んでみて美味いものの度数が強かったためギブアップしていた。

 

「……ヤマトって、本当にとんでもないやつね…」

 

メテオリーテはしみじみと呟いた。

 




*この世界のオニ殺しはやべー酒という設定です。

キャラ紹介
ヤマト:低身長&童顔がコンプレックスのオオカミ。密かに牛乳をよく飲んでいる。

メテオリーテ:星5範囲狙撃。何かとスキル2の守備力低下の方に目が行きがちだが、スキル1のやつも結構とんでも性能。というのも、強打系の攻撃回復スキルで敵に着弾すると爆発範囲がめちゃくそ広くなるため。個人的には、困ったらスキル1にしとけばモーマンタイだと思ってる。性格としては口が悪いというか、言い方がきついけど根は優しいという感じ。ヤマトを見た目で未成年だと判断していたが、今回の件でより見た目で人を判断してはいけないと学んだ。

クロージャ:お馴染み購買部の人。個人的には明るめのキャラだと認識。うちの小説では、裏ルートで『ヤマトちゃん写真集』をばらまいてたやべーやつ。ヤマトにバレた際は1度辞めたが、最近になってまたこっそり販売を再開した。

フロストリーフ:ヤマトが密かに牛乳を飲んでいることを知って、なんか可哀想というか悲しい気持ちになった。

ラッピー:『ヤマトちゃん写真集』購入済み

チェン:おつまみ美味しい

ホシグマ:自分と同等ぐらいに酒を飲めるヤマトとの飲み会は結構楽しみにしている。いつかは飲み比べもやってみたいとも思ってたり。



ifルートのヤマトの性能とかも一応考えてはあるんですけど、設定集に書いた方がいいのかな?需要あるか分からないけど…


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ヤマトのパーフェクト料理教室その2〜無知は罪なり〜

ハーフアニバーサリーの有料確定の10連はシージ(2体目)で、エクシアがピックアップ対象だった方の10連はモスティマ…そして諦めきれず50連してもそもそも星6すら来ないという…

なんでエクシア来ないのぉぉぉぉ!テキサス秘書にしてたのにぃぃぃ!!(魂の叫び)
この無念を晴らすために前回に引き続き連続投稿です。

それはさておき、今回の話もリクエスト回でとあるオペレーターとの絡みです。

せめて皆様が目当てのオペレーターが当たりますように…!


「料理を教えてください!」

 

「……?」

 

朝食の時刻がすぎたロドスの廊下にて、ヤマトが調理室に行こうとしているところにエイヤフィヤトラが彼に頭を下げてこんなことを頼んできた。

ヤマトは彼女の突然の行動に首を傾げる。というのも、ヤマトがエイヤフィヤトラと話したことはせいぜい小隊で一緒になった際に陣形の確認程度ぐらいしかなく、それ以外では皆無なため何故いきなりこんなことになっているかが分からないからだ。

とりあえず、ヤマトはエイヤフィヤトラに頭を上げるように告げて、調理室で詳しく話を聞くことにしたのだった。

 

 

****

 

「なるほど…そういう訳でか…」

 

移動した調理室にて、ヤマトは椅子に腰掛けた状態でこちらを見ているエイヤフィヤトラを見ながら先程聞いた話を思い返す。

 

簡単にまとめると、彼女はどうやら普段からお世話になっている『先輩』という人物にいつものお礼ということで、手作りのお菓子を作って渡そうと思いついたのだが、彼女の料理経験は乏しく誰かに教えてもらおうと思った矢先に、ラップランドとリーシーがフロストリーフに廊下でヤマトが作ったお菓子は凄い美味しいというのと、最近その彼からお菓子作りを教えて貰っているといった内容を話しているのが耳に入ったため、ダメ元でお菓子作りを教えて欲しいと頼みに来たというわけ、らしい。

 

そしてその話を聞いたヤマトは二つ返事でその頼みを了承しようと思ったのだが、何故か先程から自分の本能が「断らないと死ぬ」と警鐘を鳴らしているため頷けないでいた。

先程から黙りこくっているヤマトを見て、エイヤフィヤトラはなるべく彼が気分を害さないように明るい口調で言葉を発した。

 

「その…やっぱり自分でやってみます!お時間とってしまいすみませんでした!」

 

「…いや、手伝わせてもらう」

 

「え?」

 

「手伝うと言ったんだ。作る物に指定はあるか?」

 

しかし、ヤマトは自分の本能の訴えを無視してエイヤフィヤトラの頼みを聞くことにした。彼女が件の『先輩』のことを大事に想っているのは鈍感なヤマトでも伝わってきたのに加えて、彼女がこちらに気を使っているのを見て断る気が無くなったからだ。

エイヤフィヤトラは急に態度を変えたヤマトを黙って見ていたが、おずおずと自分が作りたいものを告げた。

 

 

****

 

(ヤマト視点)

 

「では作っていくぞ」

 

「はい、お願いします!」

 

予備の三角巾とエプロンを身につけて「気合十分!」と言った様子のエイヤフィヤトラに、初めてこういう風に交流するから緊張しちゃうけど…頑張って教えつつ手伝っていこう!

 

 

「エイヤフィヤトラはまず砂糖と水をこの分量で耐熱容器に入れて混ぜたら、電子レンジで──色になるまで加熱しといてくれ」

 

「分かりました!その間、ヤマトさんは何を…?」

 

「俺は少しだけ骨が折れる作業を先に済ませておく…終わったら声をかけてくれ」

 

「分かりました!」

 

さて、俺はエイヤフィトラちゃんがアレを作っている間に、耐熱ボウルに牛乳と砂糖を混ぜる。ある程度混ぜたら、それを電子レンジで加熱しその間に溶き卵を泡が立つまでよく混ぜる…本当は電動の泡立て器でやるのがいいが、今回は気分的に電動ではない方で。

するとそのタイミングでエイヤフィヤトラちゃんから声をかけられた。

 

「ヤマトさん!──色になりましたよ!」

 

「分かった…──色にしっかりなってるな。次は、熱湯を少しだけ加えたらそれを混ぜながらこの型に入れて、熱を取ったら冷蔵庫に入れといてくれ」

 

「はい!」

 

ここまで返事がいいと、なんか教えてる身としてもなんか嬉しいな…

まあ、それはともかくやっと溶き卵の方も泡が軽く立ってきた…やっぱり結構疲れるな、これは。

 

「入れてきました!…これは何をしてたんですか?」

 

「溶き卵に泡が軽く立つくらいまで混ぜていた…(エイヤフィヤトラちゃんがやるには)少しキツイからな」

 

「?」

 

「まあ、気にしないでくれ…ここから俺はやり方の説明とサポートしかやらないが…いいか?」

 

「は、はい!」

 

「では、この混ぜた卵を先程レンジで加熱しておいたこの牛乳に加えて混ぜてくれ」

 

「はい!」

 

さて、エイヤフィヤトラちゃんが混ぜている間に俺は最後の工程の準備をしておくかな…って言っても、少し底が深めのフライパンにさっき冷蔵庫に入れた型が半分浸かるぐらいの量の水を入れて沸騰させるだけなんだけどね。

 

「ヤマトさん!こんな感じでいいでしょうか?」

 

エイヤフィヤトラちゃんの横からボウルの中の感じを見る…うん、これくらいなら次の工程に入っても大丈夫かな。

 

「大丈夫だ。次は、それをザルで濾してくれ…ザルと下で受ける容器だ」

 

「ありがとうございます…っとと。えーと次は何を?」

 

「次は…ふむ、時間的にもう大丈夫だろう。先程冷蔵庫に入れてもらった型に漉したやつを流し入れてくれ」

 

冷蔵庫から中に入れられてある型を全てエイヤフィヤトラちゃんに渡し、彼女は少し危なげな感じではあったが無事に全て流し入れられた。

 

この後は、先程沸騰させたフライパンの水…いやお湯の中に入れて蓋をして8〜12分ほど待ったら、粗熱を取り冷蔵庫で暫く冷やす。

 

*時刻をしばらく飛ばします…*

 

半日時間が経った頃に俺とエイヤフィヤトラちゃんは冷蔵庫の前に戻っていた。彼女は無事にできているか不安気な表情を浮かべている…よし、ここは…

 

「自分で開けて出来てるか確かめるといい…不安かもしれないが、だからこそ自分で確認するべきだ」

 

 

「あ、は、はい…」

 

エイヤフィヤトラちゃんは冷蔵庫を開けると、恐る恐ると言った様子で確認しそして──

 

「プ、プリンちゃんと出来てるー!」

 

満面の笑みでそう俺に告げてきた。

そう、今回俺らが作っていたのはプリンで最初の方にエイヤフィヤトラちゃんに作って貰ってたのはカラメルソースだった。そして度々確認していた色というのは、カラメル色になっているかどうかだ。

さてと…

 

「さて、早くそのプリンを持ってその『先輩』に届けてくるといい」

 

「あ、はい!ありがとうございましたヤマトさん!それでは、失礼しますね!」

 

エイヤフィヤトラちゃんはそう言うと、プリンを2つ持って部屋を出て右手へ駆け出していった…走ってるところをドーベルマン教官に見つからなければいいんだけど…

 

「さて、俺も…ん?あ、スプーン忘れてる…」

 

…今からなら急げば間に合うかな。あ、あと余分に作ったプリンとついでに作ったクッキーもここにまた戻るの面倒くさいから一緒に持ってこ。

 

 

****

 

(あ、いたいた…って、え?)

 

ヤマトは早歩きで廊下を歩いていったところで、エイヤフィヤトラが丁度ある部屋に入っていったのを目撃して固まり、冷や汗を流し始めた。

通常であれば彼女が誰の部屋に入ろうと特に問題は無い、が。

その彼女が入った場所が、ここのCEOが想いを寄せている人が仕事をしている場所というのと、彼女が『先輩』のことを異性として意識しているとぶっちゃけたこと、そして今日の秘書がCEOであることを知っているならば話は別だ。

 

(やばいやばいやばいやばい)

 

正直な話、今すぐ回れ右してラップランドやフロストリーフといった面々とお茶会をしたい。が、ここでそんなことをしてしまえば部屋が更地となり、最悪死人が出る可能性もある。

 

(……俺が身代わりとなるしか……!)

 

ヤマトはいつ間にかガクガクと震えていた足に力を込め、エイヤフィヤトラが入っていった部屋…ドクターの執務室へと飛び込んだ。

 

 

****

 

「全く………」

 

夕方、ヤマトの部屋にてリーシーはこの部屋の主に正座をさせていた。

ヤマトが決死の覚悟でドクターの執務室へと飛び込んだ前、たまたまドクターに用事があったリーシーがいたお陰でその場が戦場と化すことはなく、そのリーシーが入ってきたヤマトが抱えていたプリンとクッキーを見て、「ヤマトがおやつを持ってきてくれたようだし、皆でそれを食べながら休憩しよう」と機転を効かせてくれたのもあってその場は無事に乗り切れた。

 

しかし、かといってエイヤフィヤトラの『先輩=ドクター』を知らなかったとはいえ、戦犯であるヤマトの罪は消えることは無い。

 

「たまたま私がいたからよかったけど、居なかったらあの場は戦場となって最悪ドクターが死んでたかもしれないんだから…」

 

 

「ごめんなさい……」

 

耳が垂れ下がり、尻尾も地面に着くほど下がっているヤマトを見てリーシーはため息を吐きつつも、彼の頭にポンと軽く手を乗っける。

 

「まあ、次からは気をつけなさいよ?」

 

「リーちゃん…」

 

「さて、と。珍しく今日はもう私がやるべき書類はなくて暇だから、2人だけでお喋りでもしましょ」

 

「あ、う、うん!」

 

(ふっ、悪いわねラッピー…今回は私がヤマトとイチャコラさせてもらうわよ!)

 

そうしてリーシーはヤマトと2人だけで暫く話に花を咲かせていたのだが、途中乱入してきたラップランドによってその時間は崩壊したとか。

 

 

 

なお後日、CEOに調理室まで連行されたループスが目撃されたとか目撃されなかったとか。

 

 




こんな感じで良かったかな…?

キャラ紹介

ヤマト:またまたやらかした鈍感オオカミ。フロストリーフにもしっかり絞られた模様。ラッピーが乱入してきたため、結局3人で軽いお茶会みたいなのを開き、そのラッピーからも今回の事件に関して注意されてショボン。最近、CEOに呼び出しを食らうことが多くなったと周りの人物にこぼしたとか。

エイヤフィヤトラ:星6術士で敵をドンドン灰にしていくやべーやつ。どのスキルも強く、ステージごとに違うスキルを試してみると案外楽にクリア出来たりすることも(実体験)。鉱石病の関係で聴覚がかなり低下している。そしてドクターガチ勢(多分)。なお、今回の料理の件でヤマトと廊下ですれ違ったら話すようにもなった。師匠呼びにしようか考え中。

リーシー:今回のMVP。修羅場が勃発する前にその場を収め、ドクターの命と執務室を守ったできる女。アーミヤとはひんぬー仲間として固い絆で結ばれている。

ドクター:お前はどんだけ攻略すれば気が済むん?

アーミヤ:ヤマトさん…もちろん、私に協力してくれますよね?

ラッピー:女心というか、乙女心に理解があるボクっ娘ループス。抜け駆けは絶対許さないウーマン(自分は除く)


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おーい、ヤマトー!ホラゲしようぜ!

待ってないかもしれませんが、待っていた方はお待たせしました!
ギリギリ1週間経つ前に投稿できた…!
今回もリクエストより頂いた回で、まあ内容は…タイトル通りですね。
それと、UAが4万超えました!ありがとうございます!
これからも読者の皆様が、また読みたい!とと思えるような話を作れるように精進して参ります。


それでは、本編の方どうぞ!


「あー、またやられちゃった…」

 

ラップランドは自室のテレビ画面に映し出された赤い文字にため息を吐いてコントローラーを置いた。

ヤマトが行動予備隊A4のメンバーやドクター、バイソン果てにはエクシアとゲームをやっていると聞いたラップランドはすぐさまゲーム機を買ったのだが、彼らがなんのゲームをしてるかを聞くのを忘れていたため、とりあえず何となく目に止まったゲームをダウンロードしてやっていたのだが。

 

「武器が限られてるし所々驚かしてくる要素があるなんてなぁ…」

 

ラップランドは先程までやっていたゲームは有名なホラーゲームのリメイクであったのだが、ゲーム初心者の彼女にとってはかなり難しく、当時の独特なカメラアングルに慣れないのは勿論、急に現れる敵にビックリするわ、敵と戦いすぎたせいで弾が無くなって袋叩きにされるわ、謎解きが中々解けないわと洗礼を受けていた。

 

(あー、なんかつまらなくなってきたけど…ここで諦めるのはなんかなぁ…)

 

ラップランドはそこまで考えて、ふとあることを思いつきニヤリと笑うと画面を一旦消して部屋を出た。

 

 

****

 

「誘ってくれてありがとうね、ラーちゃん!」

 

数時間後、ラップランドの部屋には彼女が連れてきたヤマトと嫌々付いてきたテキサス、そしてその3名が歩いているのを見かけて念の為付いてきたフロストリーフとチェンがいた。

 

「どういたしまして(おかしい…本当ならヤマトとテキサスに挟まれてたはずなのに…)」

 

ヤマトに礼を言われたラップランドは表面上では何ともないように振舞ってはいるが、予定外の人物達が来てしまったことに内心地団駄を踏んでいた。

ラップランドの当初の予定では、ヤマトを「今やってるゲームが難しくてさ、良かったら一緒にクリアまでするの手伝ってくれない?」と誘い出してホイホイと乗ってくるであろう彼をゲットし、あとはテキサスをヤマトを餌に釣り上げる、というものであり実際上手くいったのだ。が、それをフロストリーフとチェンに見つかってしまって今に至る、というのがここまでの流れだった。

 

(あー、確かに上手く行き過ぎてるとは思ってたけどさぁ…)

 

「ヤマト、随分と機嫌が良さそうだな」

 

「あ、そ、そうかな…?」

 

「ああ、私でも分かるほどにな…そんなに楽しみなのか?」

 

「うん…ラーちゃん、フーちゃんやチーちゃん、テキサスさんとゲームを一緒に出来る日が来るなんて思ってなかったから嬉しくて…」

 

(……ま、いっか)

 

フロストリーフ、チェンの問いかけに笑みを浮かべながら楽しそうにいうヤマトを見て内心ブウたれていたラップランドは穏やかに息を吐きながらゲーム機の電源をつける。

 

「………そういえば、なんのゲームやるんだ?」

 

「バイオハザー○シリーズの初代リメイク版ってやつ」

 

「「っ!?」」

 

テキサスが嫌々ながら聞いてきた内容をラップランドが普通に答えると、テキサスとチェンがピシッと固まり、ヤマトとフロストリーフはその2人を不思議そうに見る。

 

「どうしたの?チーちゃん。なんか、様子がおかしいけど…」

 

「…テキサス、大丈夫か?なんか違和感があるように思えたんだが…」

 

「「気の所為だろう」」

 

「……いや、でも」

 

「「気の所為だろう」」

 

冷や汗をダラダラと流しながらもテキサスとチェンは強引に2人の追求を強引にかわしながらも、どうしたものかと考え始めた。

 

この時点で何となく察して貰えるように、2人はこれからやるゲームがどういったジャンルかを理解しているのに加えて、そういうのが苦手な部類であった。

テキサスに関してはある日のエクシアのイタズラによって、チェンはスワイヤーの挑発に乗って1人で見てしまったそういう系統の映画によって苦手になってしまっていた。

正直行ってここから逃げたいのが2人の本音だが、そんなことをすればラップランドがからかってくるのは目に見えてわかる上、それにヤマトに苦手な物だからという理由で逃げるというのは憚れた。

 

「それじゃ、皆よく分からないと思うから最初から始めようか」

 

そして、そうこうしているうちにラップランドの一声で逃げるに逃げられなくなったテキサスとチェンは、恐らくビビるであろうヤマトの近くに腰を下ろしてオープニングムービーを見たのだった。

 

 

***以下、特に反応が出たところをダイジェストで音声のみでお楽しみください****

 

場面1:汚水抜きで出てくるあいつ

 

『栓を抜きますか?▶はい いいえ』

 

(ここでムービー?まさか…)ギュッ

 

「っ!?て、テキサスさん?その──」ビクッ

 

『ザバッ!ア”~』

 

「「っ!?」」ビクッ!

 

「ひゃっ!?て、テキサスさん!俺の尻尾に抱く力を強めないでくださいよ!?変な声でちゃったじゃないですか〜!」

 

「あ、す、すまない…」

 

「もう、テキサスったら〜驚いたからってヤマトの尻尾を触っちゃダメだよ〜?」

 

「………善処する」

 

「……なあ、ヤマト。私の膝の上に座らないか?」

 

「?いや、別に…」

 

「座らないか?」(必死)

 

「あ、座らせていただきます…」ポスン

 

(もしかして、チェンとテキサスは…全く苦手なら断ればよかったものを…というより、ラップランドが今のヤマトとチェンの状況にツッコミを入れないのが気になるな…)

 

 

場面2:有名なあの日記

 

『かゆい うまい』

 

「…凄い日記だった──」

 

『ア゙ア゙ア゙~』

 

「「うわぁっ!?」」

 

「ひゃっん!?い、いきなり大声出さないでよ…」

 

「「す、すまない…」」

 

「…それと、チーちゃん…その、尻尾を握る手を緩めてくれると…っ」

 

「!?い、今離す!」

 

「ちょっと!なにボクのヤマトの尻尾を…!って、何どさくさに紛れてヤマトを膝の上に乗っけてるのさ!」

 

「今気がついたのか!?って、おい!ゾンビから逃げてる最中にコントローラーから手を離すな!齧られてるぞ!?」

 

「あ、しまっ──」

 

You Are Dead

 

「「「「「あっ」」」」」

 

 

 

*******

 

「あー…やっと終わった…」

 

「そうだね…」

 

ラスボスをロケランで吹っ飛ばしたところでエンディングロールに入り、疲れたようにラップランドとヤマトは声を出した。

ラップランドは主にプレイしていたことに関しての感想であったが、ヤマトに関しては所々にあったドッキリポイントで毎回テキサスとチェンに抱きしめられたり、尻尾を力強く抱かれたりと精神的な意味での疲れだった。

 

「それにしても…ヤマト、お前ってこういうの平気だったんだな」

 

そこでふと、フロストリーフがプレイ中にヤマトが全くビビった反応などを示していなかったことに気が付き、何気なしに彼に聞いてみると、ヤマトは「あー」と頬をかきながら遠慮気味に答えた。

 

「ムサシに寝る前に怪談話をよく聞かされたからね…それで慣れちゃったかな」

 

((((なるほど))))

 

長い間ずっと寝る前に怪談話をされていれば、確かに変なところが図太いヤマトならば慣れてしまうのはある意味納得の結果であろう。

 

(怖がってボクにしがみついてくる…っていうのを期待してたんだけどなぁ…まあ、けどいいこと知れたから良かったかな)

 

「「っ!?」」

 

ラップランドの面白い玩具を見つけたかのような目線を向けられたテキサスとチェンは、悪寒を感じブルりと体を震わせたところで、そろそろ夕食時というわけもあってその場は解散したのであった。

 

 

次の日の朝、ヤマトの部屋から出てきたチェンをラップランドとリーシーが目撃したせいで修羅場になりかけたが、珍しくヤマトがガチ勢2人を「喧嘩しないで!」と叱り、チェンが自分の部屋から出てきた理由をしっかりと説明した上で納得させたのだった。

 

 

「……ソラ、眠そうだが大丈夫か?」

 

「い、いえ…大丈夫ですよテキサスさん(テキサスさんと一緒ベッドということで緊張してあまり寝れなかったなんて言えないや…)」




キャラ紹介
ヤマト:保護者組の予想とは裏腹にホラー系耐性EX持ちのオオカミ。数々のドッキリポイントも持ち前の勘の良さで何となく察してしまうというホラゲー開発者泣かせのことを実はしていた。ラッピーと交代してやった時は、ゾンビの行動パターンを読んでナイフで切り刻んでいた。

ラップランド:ホラゲーでヤマトをビビらすという目的は達成できなかったものの、いい反応をしてくれた2名を見つけてご満悦だったが、その1名がヤマトの部屋から出てきたことで荒ぶった。仕返しとして、めちゃくちゃ怖いホラー映画を一緒に見ようと企画中。後日、ヤマトを膝の間にスポンと挟んで、今回やったシリーズの4番目をやっていた。

チェン:スーお嬢様の挑発に乗ったせいでホラー系に弱くなってしまった隊長(オリ設定)。今回みたいに急に驚かしてくるタイプもダメになってしまい、少しでも和らげようとヤマトを膝の間に挟んだものの、要所要所でヤマトの尻尾を抱いていた。そのせいで夜眠れなくて廊下を歩いてたところをヤマトに見つかって…?そこから何があったかはご想像に。

テキサス:エクシアがやったガチのホラー系ドッキリがトラウマになっているオオカミさん(オリ設定)。ヤマトとフロストリーフの間に居座って、驚かしポイントが来る度にヤマト、又はフロストリーフの腕を軽く握っていた。寝付けなくて散々考えた結果、ヤマトとソラが色々とリスクはないだろうと考え、先に会った彼女と一緒に寝た。

フロストリーフ:ホラー耐性ありのロリ狐。意地を張って頑張っていたチェンとテキサスに関しては、意外な一面を知れてちょっと嬉しかった。最近、スマブ○始めた。


リーシー:実はホラー系苦手なヤマトガチ勢。そのため、チェンがヤマトの部屋から出た理由に関しては納得し、ホラー苦手同士で仲が深まった。

ソラ:寝不足以外では今回の話の中で1番得したアイドル。


感想や批評お待ちしてまーす!


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コミュ障にいきなり知らない人とお茶会はキツいよ…

ぬあああ!0:00投稿に間に合わなかったァァァ!

…失礼、取り乱しました。さて、今回もリクエストにあったものの中で、話を練りやすかったものからお出しします。

それとハーフアニバーサリーの生放送でアーミヤが3Dで動いていたことに、感動したと同時に技術の進歩を実感しましたね…

それと今回のメインとしてでる2人の口調ってこれで合ってるのかな…?片方は持ってないから余計に不安です…()


「っ!」

 

訓練室の一角にて、ヤマトはへラグと互いの得物で打ち合いながらも、シュヴァルツのボウガンから撃ち出される正確無比で尚且つ強力な狙撃を身を捩らせて躱し、更にそこへ振るわれたへラグの一撃を今の体制では受けれないと瞬時に判断し、へラグの後ろに回り込むように跳んで躱した。

しかし、それを狙っていたかのように空中にいるヤマトへシュヴァルツが放った5本の矢がが飛来していた

 

(誘われた…!)

 

ヤマトは自分の迂闊な行動を悔やみつつも、飛んできた1本目と2本目体をひねらせてギリギリで躱し、その後の2本を右手に持っている合体剣と左手に持っているまだ組み込んでいないルーンエッジで弾き飛ばすも、最後の1本は回避と迎撃が不可能と判断し剣をクロスさせて防いだが、矢の勢いまでは殺せず後方へと飛ばされる。

へラグとの距離を空けないためにも、ヤマトがルーンエッジを地面に突き刺して減速して着地したところで、へラグが刀を鞘に納めた状態でヤマトとの距離を詰めていた。

 

(しまっ──)

 

一呼吸で繰り出される2連撃をヤマトは合体剣とルーンエッジを振るって何とか防いたが、その直後に矢が自分に飛来してきたのを視界に入れ──

 

 

*****

 

「──最終的に、それを無理な体勢で避けたせいでへラグ殿の弦月という剣技を防ぎきれず負けて、5本勝負の結果は1対4で俺の負けだった」

 

 

「それでも、あのへラグ様とシュヴァルツの2人から1本取るだけでも凄いわ!もっと自信を持っていいと思いますわよ?」

 

「セイロン様の言う通り、お前はもう少し自信を持つべきだと思うぞ」

 

ロドスのシュヴァルツの部屋にて、部屋の主であるシュヴァルツとその主であるセイロン、そしてシュヴァルツに強引に連れてこられた誘われたヤマトの3人はシュヴァルツが淹れた紅茶とクッキーやマドレーヌをお茶菓子としたお茶会を開いていた。

 

そして話してる内容は、先程ヤマト自らが頼んで行われた5本勝負の模擬戦の内容であり、ヤマトはコミュ障とあがり症による言葉少なさを発揮しつつも、シュヴァルツが足りないところを細くする感じで何とか会話は成り立っていた。

 

──因みに、ヤマトが1本もぎ取った時の試合内容は簡潔に言ってしまえば、『先にシュヴァルツを倒して彼女のボウガンを使ってへラグを牽制しつつ、初見殺しの技で倒した』である。

最も、へラグに対して放った初見殺しの技はシラヌイが修理ついでに『ヤマトならいい感じに使いこなせるでしょ』と勝手に付け足した『対になる剣同士が一定量アーツを込めると引かれ合う』…つまりバタフライソード同士、ルーンエッジ同士はアーツを一定量込めてから離れると引かれ合うというとんでも機能を利用し、バタフライエッジとルーンエッジの二刀流で戦ってる最中にあたかも手から弾き飛ばされたように見せかけて投擲、残りの1本ずつを牽制として投げたように見せかけて後はそれがへラグを四方から囲んで戻ってくるようにし、それらを対処している間にファーストブレイドとセカンドブレードの二刀流で斬りかかったというものだった。

 

それは置いといて

 

しかし、いきなり連れてこられたヤマトとしては初めて話すという訳では無いものの、正直シエスタ以来話していないセイロン達といるという状況はかなり緊張するものであり、先程から心臓が爆発するのではないかと激しく動いている。

 

(というより、なんで俺連れてこられたんだろ…?)

 

「何で自分がここに連れてこられたのか?って思ってますよね?」

 

(バレて…!?)

 

セイロンが告げた内容にヤマトは内心驚いてる中、彼女は話は続ける。

 

「まずはシエスタの事件で解決に協力してくださり、ありがとうございました」

 

「私からも、セイロン様を守ってくれたことにお礼を言わせてくれ」

 

「…あの時、たまたまあの場にいたから協力できただけだ。(それに協力するのは当たり前だから)礼は別にしなくていい」

 

セイロン、シュヴァルツから礼を言われ更に頭を下げられたヤマトは脳内でパニックを起こしながらも、必死に返答する。…最もあがり症の弊害により大事な部分が抜けているのだが。

そんなヤマトの返答セイロンは短い期間とはいえ、ヤマトと共に時間を過ごし、更にドクターからも彼の人となりを聞いていたのもあって、ヤマトが何かしら省略してしまった返事なのだろうと予想するのと同時に、ドクターが念押しで言われたことが現実になっていることが可笑しくクスッと笑みを零した。

 

「…何かおかしいこと言ったか?」

 

ヤマトはパッと見では相変わらずポーカーフェイスではあるものの、よく観察すると何処かムスッとした拗ねたような雰囲気が出ていることにセイロンは気づくと、ドクターが言っていた通り素直な子なのだと笑みを隠しつつ思うと、咳払いをしてヤマトを呼んだ2つ目の理由…いや、本当の理由を話し出した。

 

「ごほん、それでヤマト。貴方を連れてきた理由なのだけど…貴方とこうしてゆっくりと話してみたかったのよ」

 

「……何故?」

 

「あら?仲良くなりたい人とゆっくり話したいというのに理由はいるかしら?」

 

「……!」

 

シュヴァルツがさも当然と言った様子で言った内容にヤマトは目を丸くし、そして自分もかつてラップランドと仲良くなりたいからとミルフィーユを振舞ったことを思い出し、納得した。

 

「…そうか」

 

そう変わらずポーカーフェイスでありながらも、自分からアプローチをかける前に初めて仲良くなりたいと言われたことをヤマトは内心喜んでおり、それをパタパタと勢いよく揺れる尻尾が表していた。

そして位置的にシュヴァルツからはそれは丸見えであり、ヤマトと対面に座っているセイロンでさえ、勢いよく横に振られる尻尾の先っぽが見えたため内心で彼が喜んでいることに2人はほっとしていた。

 

(近いうちに、ヤマトがドクターや他の方達みたいに話してくれるようにお茶会をやる機会を沢山設けようかしら?そのためにもまずはヤマトが好きなお菓子を把握しておかなければ──)

 

(と、考えておられるのだろうな…一応私の方で聞いてみるか)

 

(あ、このマドレーヌと紅茶と結構合うな…紅茶の方は後でシュヴァルツさんから教えてもらおうかな?)

 

シエスタ主従組がそんなことを考えている中、ヤマトは2人が考えをめぐらせているのを知らずに、更に自分の尻尾がブンブンと振られていることにすら気づかずに呑気なことを考えていた。

 

「あ、いい匂いがすると思ったら3人でお茶会してたんだね」

 

「皆さん、こんにちは」

 

「ドクター、それにアーミヤ代表」

 

すると、そこへドクターが顔を出し更に本日も秘書であるアーミヤもひょこと顔を出して挨拶をしてきた。

セイロンはふと、部屋の壁にかかっている時計の時刻を見てあることを思いつき、それを目の前の2人に提案した。

 

「ドクター、アーミヤさん。時刻的にはおやつ時ですし、折角ですから一緒にいかが?」

 

「え?俺としては有難いんだけど…」

 

ドクターはチラッとウトウトする度に「ドクター、まだ寝てはダメですよ?」と優しく告げてくる最愛の人(まだ想いは告げてない)であるアーミヤ目線を向ける。

そしてその目線を向けられたアーミヤは、フーっとため息を吐きながら。

 

「いいですよ。先程まで凄い集中して仕事してましたし、休憩は必要ですからね」

 

「ありがとう。それじゃ、というわけでご一緒してさせてもらおうかな?」

 

「ええ、いいですわよ」

 

「では、私は紅茶を淹れてきます…あ、アーミヤ殿は座って待っててください…ヤマトもだぞ」

 

(!?なんでバレて…!?)

 

「……流石に雰囲気でわかるからな」

 

そして新たに2人を付け加えたお茶会は先程より更に賑やかになったのだった。

 

「そういえば、ヤマトが使ってる剣にそんな機構ついてたっけ?」

 

「……この前、修理に出した時に勝手に付け加えられたんだ……」

 

「……そっか」

 




結構ゴリ押しちゃいました…クオリティをもっと上げられるように頑張らなければ…!


キャラ紹介

ヤマト:へラグ&シュヴァルツペアから1本もぎ取ったというとんでもない偉業を成し遂げていたやべー狼。そして、久しぶりのコミュ障+あがり症のコンボが出たようにそちらに関しては全く進展が見られない。よくある知識はあるものの実践で使えないというタイプ(但し一部に限る)。後日、シュヴァルツから紅茶の淹れ方を教わるヤマトの姿が見受けられたとか。なお、ヤマトがへラグに放った技は想像できた方もいるでしょうが、皆大好き某赤い弓兵さんの鶴○三連です。

シュヴァルツ:中距離高火力星6狙撃。スキルや素質的にも分かる通り1発の火力に優れ、手数のエクシアとはまた違った強さがウリ。なお、シエスタイベで何とあのへラグ爺と渡り合うというとんでもない実力の持ち主でありながら、紅茶を淹れるのが上手い。
ヤマトから紅茶の淹れ方を教えて欲しいと請われ、断る理由もなかったので教えている。それと酒が強いことも判明したので飲み友にもなったそうな。

セイロン:シエスタイベの配布医療。回復範囲が広くスキル2の味方にレジスト付与が強いオペレーター。有名な6-16ではそのおかげでギリギリ勝てたというレベルでお世話になりました。
ヤマトとはシエスタイベで一緒に解決に奔走した仲なのだが、コミュ障+あがり症と状況が状況なのもあって全然話せなかった。今回のお茶会でヤマトとはそれなりに話すようになり、無事彼の本性と甘党っぶりも知れた。

ドクター:当小説ではアーミヤとは両片思い中。はよ告れ。

アーミヤ:ハーフアニバーサリーの生放送で3Dで登場&使用回数オペレーターランキング1位&秘書ランキング2位になったCEO。おめでとうございます。こっちの世界では秘書に指名されることが多くなり、機嫌が良い。疲れたドクターにひざ枕してあげたいという密かな野望がある。

感想や批評なとありましたら、ぜひ遠慮なくお願いします!


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サプライズはやられる側としてはちょっと怖い()

今回はリクエストであったあのキャラとの絡みです!

皆さん、ニェンピックアップのガチャはどうでした?
私はアとウン、そしてすり抜けシルおじ、シャイニング、アンジェでした…月間スカウトパックと記念パック全て使ってニェン来ないってマ?
あ、それと公開求人でエクシアが来てくれたのでアップパイ難民は無事に卒業できました(コロンビア)



「初めまして!君がヤマト君でいいのかな?私はマゼラン、よろしくね!」

 

「…よろしく頼む」

 

マゼランさんの最初の印象は、とにかく明るくてグイグイ来る人って感じで、グイグイ来るってところはラーちゃんに似てるかも?って思ったかな。

 

「ヤマト君の作るお菓子って美味しいから作業後のおやつには丁度いいね…あ、それはそうと私の探検隊に──」

 

「ごめん、もうちょっと考えさせてくれないかな…」

 

「いいよー!ゆっくり考えてから決めてね」

 

それなりにマゼランさんと過ごすようになって、最近やっと普通に喋れるようになったけど、ことある事に探検隊に誘ってくれるけど…俺より優秀な人は居るのになんで誘ってくれるんだろう?

それはそうと、マゼランさんは甘めのお菓子が好きってことは覚えておかないとね。

え?一々皆が好みの味とか覚えてるのか?そりゃあ、皆には自分が好きなものを食べて欲しいから覚えてるよ。ラーちゃんは少し甘さ控えめで、フーちゃん、チーちゃんは少し甘さを強め。シルバーアッシュさんとテキサスさんはかなり甘さを…あれ?テキサスさん?そんなに顔を赤くしてどうしt──

 

*****

 

「ラーちゃん、良かったらこの後俺の部屋でお喋りしない?」

 

「もち…あ、ごめん。この後外せない用事があるんだ。また今度誘ってくれるかい?」

 

ヤマトからの誘いを断ったラップランドは足早に去り、その場にはヤマトが1人ポツンと残された。

外せない用事があるなら仕方ないと、ヤマトはトボトボと歩いていると今度はアズリウスが視界に入った。

最近、忙しくてケーキ作りの指導やお話が出来ていないことを思い出したヤマトは彼女にも声をかけた。

 

「アッちゃん。久しぶりにケーキの出来栄えを見て欲しいんだけど…」

 

「…ごめんなさい、この後が急用がありまして……また別の機会にして下さる?」

 

アズリウスは申し訳なさそうにそう告げると、足早にヤマトを通り過ぎて行き、またもやヤマトは1人ポツンと残された。

ヤマトは少し寂しいと感じつつも、忙しくて皆とゆっくり話すことはおろか、先程みたいに立ち話できる時間さえ無かった時期に比べればどうということは無いと言い聞かせながら廊下を歩いていると、今度はシルバーアッシュとミッドナイトの2人が話しているのが視界に入った。

今でも2人からのコミュ障脱却授業は継続しているものの、最初からゆっくりとお菓子をつまみながら話すといったことをしていないことに気がついたヤマトは早速2人に声をかけることにした。

 

「シルバーアッシュさん、ミッドナイトさん!この後お時間ありましたら、俺の部屋でお菓子食べながらお話でもしませんか?」

 

「ヤマトか…誘ってくれたことはありがたいが、この後私たちはドクターに執務室に来るように言われていてな。すまないが、また別の機会ということでいいか?」

 

「ごめんよ、この埋め合わせはちゃんとするからさ」

 

「そう…ですか…」

 

その後も、メランサを初めとした行動予備隊A6のメンバー、バイソンやペンギン急便のメンバー、果てには厨房メンバーといった交流がある人を誘うも尽く断られてメンタルが少し弱ったヤマトは、最近話すようになったある人物の部屋へと向かうのだった。

 

*****

 

「なるほど、そういう訳で私のところに来たってこと?」

 

「うん…そうなります…」

 

「まあ、別にそんな心配しなくてもいいと思うよ?1回時間を空けるってのも大事だと思うしね」

 

「そうなの?それじゃ明日に聞いてみようかな…」

 

耳と尻尾が垂れ下がり、(´•ω•`)といった様子で訪ねて来たヤマトからの説明を聞いて、尚且つ彼等がヤマトを避ける理由を知っているマゼランはそれっぽいことを言うと、親しい人に対しては疑うことを知らないヤマトはあっさりと信じた。

マゼランはそんなヤマトを心配になりつつも、色々考えているヤマトに気づかれないように自身の連絡用の端末を使ってある人物に向けて「手伝えない」といった節をチャットに送ると端末をしまって自分が先程入れたアイスココアを飲みながら、準備が終わる時間までの少しだけの時間を稼ぐため、以前聞いて保留された件について問い直すことにした。

 

「あ、そうだ!前聞いた探検隊の件は…」

 

「…ごめん、加えて欲しいのは本音だけど…ロドスのオペレーターとしている限りは入れないかな…」

 

間がそれなりにあってから申し訳なさそうに出されたヤマトの返事は、マゼランが予想していた通りの内容であった。

マゼランは他の者たちに比べればヤマトと交流した時間は短いものの、彼が今の立場をほっぽり出すと思えなかったからこそ、そんなに気落ちもせずすんなりと受け止めた。

一方でヤマトは浮かない表情を浮かべており、そして何か聞きたそうな雰囲気を出しており意を決したかのようにマゼランに顔を上げた。

 

「その…なんで俺をマゼランさんの探検隊に誘ってくれたの?」

 

「え?もしかして覚えてない?」

 

「え?」

 

マゼランは額に手を当てながら、自分が何度も誘ったきっかけを作ったことを覚えていないヤマトに、そのきっかけを話すか考えて、連絡用の端末が震えたことに気が付きヤマトに一言断りを入れてから開くと、そこには「完了」の2文字。

 

「ヤマト君、この後一緒に来て欲しいところがあるんだけど付き合ってくれる?」

 

「え?あ、この後は用事ないから大丈夫だけど…」

 

「よし!それじゃレッツラゴー!」

 

別の機会に話せばいっか、とマゼランは思考を纏めるとヤマトを連れてレクリエーションルームへと向かうのだった。

 

 

****

 

「ここってレクリエーションルーム?」

 

「まあ、取り敢えず先に入ってくれる?」

 

「え、あ、うん。それじゃ先に入らせてもらうよ?」

 

マゼランにいきなり連れてこられたヤマトは戸惑いつつも、レクリエーションルームの中へ入る。

 

「ヤマト!昇進おめでと〜!!」

 

ヤマトが中へ入った瞬間にエクシアが大きな声で祝いの言葉を投げかけると同時に、ラップランドを初めとしたヤマトの誘いを断ったメンバー全員がクラッカーを鳴り響かせた。

 

「……え?」

 

「ふっふー、どう?驚いた?」

 

予想外な展開についていけないヤマトに、エクシアは胸を張ってドヤ顔でそう告げる。

 

「…そこの頭ハッピーセットなエク姉が、『皆忘れてるけどさ、ヤマトが2回目の昇進した事って凄いめでたいことなんだから祝おうよ!』って発案してね…そこからブレーキをかける人が居なくてこうやってサプライズって感じになって、それで僕らがヤマトの誘いを断ったのもこっちの準備のためだったんだ」

 

「ねえ、補足してくれたのは助かったけどさ、頭ハッピーセットは流石に怒るよ?」

 

バイソンの補足説明の中にしれっと自分のことを貶される発言があったことにエクシアが突っかかり、取っ組み合いに発展しかける中ヤマトは次第に事態を飲み込み始め、何故ラップランドを始めとした友人たちが全員自分の誘いを断ったのかを理解した。

 

「なんだ…良かった……」

 

ヤマトは断られた理由が嫌われていたとかそういう訳でもないことに安堵し、ほっと息を吐きながら胸を撫で下ろした。

 

「ヤマト、これから乾杯の音頭を取るからボク特性のジュースでも…」

 

「待て、その前にその飲み物のアルコールチェックをさせてもらうぞ?正直、嫌な予感しかしない」

 

「いやいや、そんな疑わなくても大丈夫だよ?チーちゃん?」

 

「全くなにやってんのかしらねぇ…それより、ヤマトさ、あんなやつが用意したやつより私が先に紙コップに入れたオレンジジュースでいいかしら?」

 

「待てリーシー、お前のも念の為確認させてもらうぞ?」

 

「テキサス!?私はそこの頭パラダイスな白黒オオカミみたいなことはしないわよ!!」

 

「おい、頭パラダイスはリーシーの方じゃない?それに、さっきウォッカを持ってたのボク知ってるからね?」

 

「あ、なにバラしてんのよ!?あっ…」

 

「お前らは…そこになおれ!!その根性叩き治してやる!!」

 

「やれやれ…やっぱりこういう展開になるのか…」

 

まだ乾杯の音頭すらとっていないのに、一瞬で騒がしくなったレクリエーションルームの隅でフロストリーフは呆れ気味に呟く。

 

「予想出来てたんだ」

 

「まあな…それと、ヤマトの相手をしてくれたこと感謝する。正直、準備の方に意識を割いていたせいで、あいつ自身のことを蔑ろにしてしまったからな…」

 

苦笑いで話しかけてきたマゼランに対し、フロストリーフは感謝の言葉を述べつつも少し悔やむように呟いた。

 

「それは次から気をつければいいと思うよ?それに、ヤマトを見てみなよ」

 

マゼランに言われてヤマトの方へ視線を向けたフロストリーフの視界には、エクシアとバイソンの取っ組み合いに加えて、チェンに捕まって説教をされているラップランドとリーシーを見て困ったような笑顔を浮かべながらも()()()()()()()()のヤマトが入った。

 

「終わりよければ全てよし、って言うからさ。私はそこまで気にしなくていいと思うよ?」

 

「…そうだな」

 

「ハイハイ、みんなそろそろ乾杯の音頭取るから一旦飲み物が入ったコップを持ってー!」

 

珍しく顔を隠していないドクターの言葉にエクシアとバイソンは取っ組み合いを止め、チェンは物足りなそうな顔をしつつもラップランドとリーシーを解放し、コップを持つ。

ドクターはそれを確認すると頷き、ヤマトの方を向く。

 

「それじゃ、ヤマトの2回目の昇進を祝いのサプライズパーティーを始めまーす!かんぱーい!」

 

「「「「かんぱーい!!」」」

 

乾杯を合図に始まったヤマトの祝いパーティーはあまりの賑やかさにドーベルマンが確認しに来るほど白熱し、その主役であるヤマトは一部の者にもみくちゃにされながらも終始笑顔を浮かべていた。

 

「あ、このチョコレートケーキおいしい!」

 

「あ、それボクとアズリウスが作ったやつなんだ」

 

「ヤマト、甘いものが好きでしたから2人で作ってみましたの」

 

「そうなの?俺好みの味だよ!ありがとう!ラーちゃん、アッちゃん!」

 

「どういたしまして!」

 

「ふふ、お口にあったようで何よりですわ」

 

 

*****

 

「いつかは俺も色んなところを旅して、見て皆に話せるようになりたいな」

 

ヤマト君がそう言ったのは、私が今まで訪れた場所の話をした時だった。

その時のヤマトは、凄く羨ましそうで本当にそうしてみたいと感じ取れるほどの雰囲気でね…それが私がヤマト君を探検隊に誘うことになったらきっかけなんだ。

 

話の感想というかそんな感じで言った可能性も有り得たけど、あの時のヤマト君の雰囲気じゃそういう風には見れなくて、ただ本当にそうしたいように見えたんだ。

私が感じたような感覚を、ヤマト君にも味わって欲しい…ってのは少し思い上がった考えかな?

 

でも、いつかはヤマト君にも味わって欲しいな…

 

「えへへ…ラーちゃん♪」

 

「これが酔っ払ったヤマト…!」

 

…いや、その前に明らかにヤマト君を捕食者のような目で見てる人から助けるのが先かもしれないや()

 

 

────────────────────────────────

 

 

「へー、ここで所属してんだ」

 

ある一室にて、情報屋から貰った情報を読んでいたその者は愉快そうに言葉を漏らす。

以前から彼のことは育ての親──もう存在していないが──から聞いていたので知っており、そして彼は死んだはずだとも聞かされていた。

しかし、やはりその育ての親をして「惜しいことをしてしまった」と悔いるほどのポテンシャルを持っていた彼のことを気になり、こっそり調べていたら、何と特徴が類似する者が戦場に度々姿を現しているとのことが判明した。

そしてそれを教える前に育ての親は鉱石病ではない別の病気で死んでしまい、しかもある日を境にその彼の情報が入らなくなってしまってからは舞い込んでくる仕事を退屈だと思いながらもこなしていると、今日になってそ足取りが掴めたのだ。

 

「あー、どうしよう…凄いワクワクしてきちゃうな…」

 

彼はどんな戦い方をするのだろうか?自分とどれくらい張り合えるのだろうか?そもそも、どうやって彼と戦う場を作ろうか?などと考えながらその者は無表情でそう零す。

 

「会えるのが楽しみだよ、お兄ちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、出来損ないの最高傑作()():()0()7()9()

 




マゼラン回なのにマゼランの話が薄い…?てか、クオリティガガガ

因みにヤマトが最初から調理室に向かっていた場合、そこでパーティの準備をしていたメンバーの一人であったラッピーにふにゃふにゃになるほどモフられて後に部屋へ連行されていました。

感想お願いします!

キャラ紹介

ヤマト:落とされてから一気に上げられて、幸福感がカンストしてたオオカミ。結局、嬉しさのあまりお酒のセーブが出来ず途中で酔っ払ってしまい、へそ出しループスとリーシーにお持ち帰りされそうになった。フロストリーフやラップランドを初めに、友人全員の味の好みを把握している。ガチ勢かな?

マゼラン:皆大好き星6補助でドローンを使って戦う感じのオペレーター。作者は持っていないのであくまでフレンドから借りた時の感想でしか言えないが、クソ強い。特にスキル3の殲滅力は圧巻の一言。正直、こいつだけで何とかなりそうな気も…。こちらでは普通にいいお姉さんポジション。いつか、ヤマトも一緒に旅に連れて行って色んな景色を見させてあげたいと思っている。

フロストリーフ:考え方が完全にヤマトの保護者になっている。

ラップランド:ヤマトを酔わせようと企んだやべーオオカミ。結局、ヤマトが勝手に酔ったので結果オーライ!と言わんばかりに持ち帰ろうとするもマゼラン+保護者組に止められた。解せぬ。あとヤマトの好みの味を今回のパーティーで完全に把握した。

リーシー:ヤマトを酔わせようと企んだやべーやつ(オリキャラ)。持ち帰ろうとするもラップランドにバレて一緒に説教を食らう羽目に。でも酔っ払ったヤマトは眼福でしたとのこと。

*他は多くなってしまうので割愛です。


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看病日記(フロストリーフ)

シリアス回だと思いました?残念!もうちょい日常&ギャグ回が続くんじゃ。

そして今回はリクエストにあったものの中から筆が進んだものからです。

それではどうぞ!

あ、それとアンケートは8/22の0:00を締切としますので、ぜひご協力お願いします!

あ、これ良かったら自分のIDですので良かったらフレ登録お願いします。名前はホムラで秘書はラッピーです。ID:83559138

*追記:申し訳ございません!ID1桁だけ間違えてました…今、書いてあるのが本物です…


○月☆日

 

今日からコミュ障馬鹿オオカミ…数日ほどヤマトの看病をすることになりその経過観察的なものを含めて日記を書くことになった。

そもそも、なんでこいつを看病することになったのかというと、先日の作戦でヤマト、ジェシカ、ラップランドの3人の小隊で行動していた際に待ち伏せをくらってその際に敵が放ったアーツからヤマトがジェシカを庇って食らった結果、アーツで自身の視力を強化していたのもあって両目が見えなくなったからだ。

結局、その作戦自体はブチ切れたラップランドが暴れ回ったお陰で応援が間に合い何とか成功したのだが、ロドスに帰還して治療、検査を受けた結果ヤマトの視力は回復はするだろうが、いつ戻るかまでは現段階では分からないという診断が下された。

正直、その結果を告げられたときの状況は混沌していたな…ラップランドは項垂れるわ、リーシーはぶっ倒れるわ、ジェシカは「私のせいで…!ごめんなさい!ごめんなさい!」と泣きながらヤマトに謝り始めるわという感じでな…まあ、そういう私も結構動揺したし、あとから聞いたヤマトと交流がある奴らも結構心配してた。

 

さて、そこからヤマトは目が見えないため、視力が回復するまでは看病が必要になったのだが…

本来であれば医療オペレーターに任せればいいのにラップランドとリーシーが「私がやる!」とワガママを言い出したのだ。

正直、気持ちは分からなくもないが医療オペレーターに任せようと私やチェン、テキサスそしてホシグマで説得(メランサはオロオロしてた)していた所でドクターが乱入し、「別にいいと思うよ?ヤマトだって見知らぬ人より慣れてる人の方が精神的にも過ごしやすいだろうしね」とまともなことを言ったため、ラップランドとリーシーの意見が採用されたのだが「折角だし、当番制にしよう!」となり、くじ引き(何故か私達も巻き込まれた)の結果、私→メランサ→テキサス→チェン→リーシー→ラップランドというサイクルを1人3日間という形でやることになった(なお、ラップランドは最後になったことで尻尾と耳が垂れて落ち込むという珍しい一面が見れた)

 

さて、という訳で看病の1日目なのだがヤマトは先程から「俺のせいで迷惑かけてごめん」と謝ってくる。

まあ、気持ちは分からなくもないが少なくともあの場で看病することになったメンバーは別に迷惑だとは思ってないだろう。

経過観察としてはやはりまだ見えず、両目の違和感は拭えないとのこと。

早く、良くなって欲しいものだ。

 

 

 

 

○月♪日

 

今日はジェシカとそのBSWの上司にあたる2人の計3人がヤマトの面会に来た。

入って早々3人はヤマトに対して頭を下げて謝罪とジェシカを助けてくれたことに関する感謝のお礼を告げたのだが、等のヤマトは何故自分が謝罪と感謝の言葉を貰っているのか分からず困惑していた雰囲気を出していた。

そして、それのせいで空気が悪くなる前にヤマトに自分が思ってることを長くなってもいいから全部話せと言い聞かせたのだが…ヤマトの危うさを改めて実感させられた。

 

その後は私がヤマトがただのコミュ障拗らせただけのアホ狼ということを説明した(その際にヤマトに「酷いよ!」と抗議されたが)のもあって、彼女たちが話を振ればたどたどしくヤマトが返事をするという形で会話が成り立った…まあ、「俺と友人になって欲しい」と彼女たちに急に言い出した時は思わず吹き出しかけたがな。

そういえば、フランカが「今度は甘いお菓子持ってきてあげるから」と言った時に、ヤマトが尻尾をブンブン振り始めた時は言ったフランカ含めジェシカ達は驚いていたのはちょっと面白かった。いや、無表情であんな風に尻尾を振られたら普通は驚くか。

 

ヤマトの視力はまだ戻らないが、目の違和感は昨日よりは薄れたとの事。この調子で早く治して欲しいものだ。

 

追記:実を言うと、面会に来ている者の中にはリーシーとラップランドもいた。別々の時間帯に来たんだが、見舞いの品が2人とも同じ物だった時は正直アイツら息ぴったしだと思ってしまったな。…因みにヤマトは見舞いの品が自分好みのお菓子で純粋に喜んでたが。

 

 

 

○月→日

 

今日で私がヤマトの看病するのは最後の日だ。

今更であるが今のヤマトの状態とそうなった経緯を改めて纏めようと思う。

まず、ヤマトの一時的な失明の原因はあいつのアーツで視力を強化していたのと相手が放ったアーツの暴走を誘発させる効果を持った術攻撃を食らったことの2つが重なった結果だとされている。

これを診断した医療オペレーターがいうには完全に失明する可能性の方が高かったため、今回の結果はかなり運が良かったとのことだ。

そして、今のヤマトは極力目に刺激…いや、光を入れないように特別な目隠しを睡眠以外はつけている。

 

さて、そんなヤマトなんだが…あのバカ狼調理室でお菓子を作ろうと部屋を抜け出しそうとしたんだ…

すぐにとっ捕まえてベッドに叩き込んで寝させたが…こいつはたまに突拍子のないことをしでかすからな…本当に油断出来ない。

確か、次はメランサだったから彼女にしっかり言っておかないとな…

…そういえば、食事をとる時やトイレに行ったりするのは目が見えないから上手く出来ないのは分かるし、それを補助するのが私たちの役割だからその補助をしているのだが…あいつは人と話す時はその人の方向をしっかりと向いて話してる。

正直、目が見えない状態で聴覚だけで方向を完全に把握するのはまず難しいんだが…それだけあいつが空間把握能力が優れているということなのか?

 

追記:実をいえば、この3日間は私としては不謹慎ではあるが懐かしかった。何かと無理するこのバカ狼の世話を付きっきりでするのは久しぶりだったからな。早く元気になってくれよ。

 

 

****

 

ヤマトの小隊を襲ったレユニオンの部隊の作戦は順調に進んでいた。

待ち伏せで奇襲をかけ、更に最近ある術士が身につけた「相手のアーツの暴走を誘発させる」という力によって本来狙っていた狙撃手であるジェシカの代わりに、それを視力を強化して状況を確認しながら戦っていたヤマトが彼女を庇った。

 

「ぐっ、があっ……目が…っ!」

 

「ヤマトさん!?」

 

結果として、3人の中で一番厄介なの動きをしていたヤマトを戦闘不能にしたてあげた時はその場にいたレユニオンの者たちは順調に事が進んだと思っていた。

 

「君たち……生きて帰れるなんて思わないでよ…?」

 

が、それはあくまで彼らが勝手に考えていたことであり、実際はラップランドの怒りを買うという地雷を踏み抜いたも同然だった。

 

「うわあああ!て、撤退し──」

 

「な、なんだよアイツ!なんで、俺の攻げぶっ」

 

「逃げろ!早く逃げろ!!」

 

「逃げる?ははっ、逃がすわけないでしょ…?それ相応の報いを与えなきゃボクの気が済まないからね!!」

 

ラップランドは逃げ惑うレユニオン達をアーツに衝撃波、もしくは2本の刀で一人また一人と蹴散らしていく中で、ヤマトの視力を奪った術士は隠れながらラップランドにアーツを放つ機会を伺っていた。

 

(これ以上、好き勝手やらせるかよ…!)

 

そして、ラップランドの気が完全に自分が隠れている方向から逸れたのを確認し、アーツを放とうとして──

 

「せあっ!」

 

「うわっ!?…!?な、なんでお前動け…!?」

 

「…ラーちゃんはやらせはしない!」

 

術士の男が最後に見たのは、6本に分かればらまかれた剣を超スピードで取りながら自分を斬り裂く狼の姿だった。

 

 




感想や批評お待ちしてます…!

キャラ紹介

ヤマト:危うく永久的に視力を失いかけた主人公。看病してくれるフロストリーフにお礼するためにこっそり抜け出してクッキーを作ろうとしたがバレて強制睡眠(物理)を食らった。そして、目が見えなくても持ち前の勘の良さ、空間把握能力と聴力で確実に敵を仕留める…ヤバスぎぃ!最も、今回は相手が完全に油断していた+不意打ちだからすぐに仕留めれた。どっちかが抜けてたら苦戦は必須だった。

フロストリーフ:ヤマトの保護者番号:1。ヤマトと3日間過ごすことで、自分にべったり…とまでは行かなくても頻繁に自分のところに来ては一生懸命話す頃を思い出していた。なお、ご飯を食べさせる時は基本あーんだが、なんの抵抗もなくやってのけていた。

ラップランド:ヤマトがやられたことによる怒りで超サイ○人的な感じに。ゲーム的には攻撃力+50%と毎秒SP回復というバフがついた。なお、今のところ3日間全てヤマトの部屋にお見舞いの品を持って訪れては色々話している。

ジェシカ:星4狙撃手。ゲーム的にはシナリオで手に入るのに加えて、扱いやすいスキルなのもあって彼女にお世話になったドクターも多いのでは?こちらの方では、ヤマトに庇われたお陰で何とか助かったがそのせいでめちゃくちゃ罪悪感を背負う羽目に。まあ、その当の本人が全く気にしていない上に「友人になって欲しい」と頼まれたお陰で結構薄れてはいるが。

リスカム:星5重装にして「被弾する度に隣接してる4マスの味方にsp配布」というやべー素質を持つやべーやつ。ぶっちゃけ、リスカムのの横にチェン隊長、後ろにラッピーというのがうちの基本的なスタイル。
こちらでは、日記形式のため全然話してないように見えるが実際は話しており、背が低い同士でヤマトと意気投合した様子。

フランカ:星5前衛にしてまだうちのロドスに来ていない前衛。早く来てください(懇願)

ヤマトが最後に放った攻撃:これは設定にあるヤマトのスキル2にして、FF7ACの主人公の元ソルジャーさんが放った超究武神覇○ver5。イメージ的には、合体剣を全て解除すると同時に振ってばらまく→ファーストブレイドを上にぶん投げる→ばら蒔いた剣を適当にアーツで身体強化した超スピードで取りながら斬撃→次の剣をとって斬撃→5回それをやったら上にぶん投げたファーストブレイドで急降下斬り、という感じ。


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看病日記(メランサ)

日記形式って案外難しいですね…これをやってる先人方達はマジですごいですよ…崇めなきゃ(使命感)
今回は剣聖メランサちゃんの番です!
彼女らしさが出てたらいいなぁ…あと、最後にあの方が出てきますが、これがヤマトとうちのあの方の関係性って感じでご理解の方お願いします。

それではどうぞ!


○月¥日

 

今日から3日間のヤマトの看病は私が担当することになった。

実を言うと、あの時助けてくれた恩をヤマトの看病という形で返すことが出来ているため、ラップランドさんとリージーさんには感謝しています。

けど…その、ヤマトにご飯を食べさせる時は凄い恥ずかしかったな…ヤマトは普通に食べてたけど恥ずかしくなかったのかな?もしかして、もう慣れちゃったのかな…

あと恥ずかしかったことというか、気分が落ち着かないことはもう1つあります。それは、ヤマトに昨日できた目薬を指すとき。

この目薬の効能は目の違和感を少しでも抑えるのと、回復を促進させるというものらしく、朝と寝る前に左右1滴ずつ指すようにと言われているのですが、この時ヤマトは当たり前ではあるけれど目隠しを外して私の方をしたから見上げるような体勢をとる。

なんか…理由とかは上手く説明出来ないけど凄い緊張した。

…ヤマトって結構顔整ってるんだなぁ……

 

ヤマトの病状は本人曰く「目の違和感は前よりは感じない」との事らしいで、回復にしっかり向かってるようで安心した。

 

追記:ラップランドさんとリーシーさんがお見舞いに来て下さり、更に看護も手伝ってくれたんですけど…ボディタッチが多かった気がするのは気の所為でしょうか?ヤマトも気にする素振りなかったからやっぱり気の所為なのかな…

 

 

○月$日

今日はアズリウスさんがヤマトのお見舞いに来てくれて、彼女が来た時間がお昼時なのもあって少しだけ看護も手伝ってくれたんですが…何でそんな普通に食べさせることが出来るのかな…私が変に意識してるだけなのかな?

それはそうと、アズリウスさんのお見舞いの品は彼女のケーキで私の分まで作ってきてくれましたのて、3人でというよりヤマトは食べさせてもらいつつだけどお茶会っぽいのをやりました。

その中で、ひょんなことがきっかけでヤマトの思い出話の1つを聞かせてもらったんだけど…その、凄い苦労してたんだなって…

その内容が、傭兵時代の相方の人が「オリジムシって食えんのかな?」って言い出したのがきっかけで、その時一緒に隊を組んでいた人が「このオリジムシ研究家の俺の出番だな!!」と食いついてオリジムシのフルコースを食べる羽目になり、挙句の果てにヤマトはオリジムシの調理の仕方も教えこまれた、というものだった。

思わず、アズリウスさんと一緒にヤマトの頭を撫でてしまい、当のヤマトは最初は流石に恥ずかしかったみたいで「や、やめてよぉ…」と抗議してたけど、尻尾はパタパタ振られてたから本当は嬉しかったみたい。

アズリウスさんはその後、用事があったみたいでそこで帰ってしまったけど私としてもヤマトとしても中々有意義な時間を過ごせたから後で改めてお礼を言おう。

 

 

○月€日

今日が私がヤマトの看護をする最後の日だ。

今日は行動予備隊A4の皆がお見舞いに来てくれて、話のネタが尽きた際にヤマトが傭兵時代の話をいくつか話してくれた。

色々な話を聞けたけど、個人的に1番印象に残ってるのは…ヤマトはエンカクさんと戦場で2回戦ったことがあるということだ。

1度目狙撃手の時に奇襲された際に他の味方を逃がすまでの時間を稼ぐために刃を交し、2度目はエンカクさんとは敵対している陣営に雇われたことで戦場で戦ったというものだった。

「1度目は近接武器が短刀2本しか無かったから、正直危なかった。2度目は結局天災が来たせいで有耶無耶になった感じかな」とヤマトは少し疲れたように話していのも印象に残った理由の一つかもしれない。

一応、ドクターにもこのことは話しておくべきかな。うっかり同じチームになって空気が悪くなったらまずいし。

 

そして肝心の容態に関しては一向に視力の回復の気配はまだ見られない。早く、元のヤマトに戻って皆とご飯食べながらお話できる日が来た時、色んなことが話せるように私も頑張ろう。

早く元気になってね、ヤマト。

 

追記:最後になって目薬とご飯の補助は慣れたけど…もうちょっと早く慣れて欲しかったなぁ…

 

 

****

 

「入るぞ」

 

ヤマトの部屋に看病に着いている人が丁度留守をしているタイミングで、ある人物が彼の部屋の中に入ってきた。

 

「…あんたは、まさか」

 

「ほう、目が見えないのによく分かったな」

 

「あんたの声と気配はよく覚えている」

 

「はっ、そうかい」

 

部屋に入ってきた人物は目隠しをつけながらも警戒しているヤマトを見て、腑抜けるどころか寧ろ研ぎ澄まされた刃のような雰囲気を感じ安堵するように息を吐くと背を向けた。

 

「早く治せよ。お前との決着を早くつけたいからな」

 

「…模擬戦としてなら相手してやる」

 

ヤマトの言葉を受けた人物──エンカクは鼻でふっと笑うとそのまま部屋の外へ出ていきながら、かつて自分相手に1歩も引かぬところか自分の首を討ち取る1歩手前まで来た男へ思いを馳せた。

 

(…ドクターに、訓練室壊す可能性があること後で言っとこうかな…)

 

一方で厄介なサルカズに目をつけられてしまったヤマトは疲れたようにため息を吐いたのだった。




感想お待ちしております…!

キャラ紹介

ヤマト:オリジムシを食べた&調理した経験があることが判明した挙句、ヤベー奴に目をつけられてしまっていたが、色んな人がお見舞いに来てくれるという愛されてるオオカミさん。オリジムシを食べた感想は「食感も味も問題は無いよ…オリジムシだということを除けば」とのこと。頭ナデナデはどこか懐かしく暖かいように感じた。因みに、ヤマトが傭兵時代に死を覚悟したことは何度かあり、その大半がサルカズ関連。

メランサ:今回の話のメインキャラ。ウブなのでアーンと目薬指すのはちょっと耐えきれなかった。何気にヤマトの傭兵時代の話は他の人より知る形となった。

アズリウス:ヤマトちゃん専属コーディネーターにして、ケーキ作りの師匠。実は、ヤマトにアーンするのは恥ずかしかったが全力で顔に出さないように頑張っていた。ヤマトのオリジムシ話には思わず頭を撫でてしまい、後々異性の頭を撫でるという行為をしたことに恥ずかしくなって顔を手で抑えてた。

行動予備隊A4のメンバー:中々全員の予定が合わずお見舞いに中々これなかったが、メランサの担当日最終日にやっと予定があってお見合いにこれた。ヤマトの傭兵時代の話は彼がなるべく配慮したのもあってそれなりに楽しめた模様。

エンカク:星5配布前衛。作者は使ってないので詳しく彼の性能とかは言えないが、強いという話は結構効くのでへラグ爺を昇進2させたら育てようと考え中。こちらでは、過去にヤマトと2度対峙したことがあるが、1度目はフラッシュバン+スモークグレネードを使われて逃げられ、2度目は天災が来たせいでお預けを食らっている。ヤマトの戦闘能力を高く評価しており、ライバル的な目で見ている…かも。


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看病日記(テキサス)

満を持してテキサスの登場!
そして今週中に看病日記シリーズを投稿しきるためにペースを上げてます。これを読んでくださっている方、オラに力を…!


○月%日

今日から3日ほどヤマトの看病をすることになったので、観察日記…いや経過などを記すために3日だけではあるが日記を書くことになった。

正直、私は看病するのを止める側だったのだが…やることになってしまった以上はしっかりやるつもりだ。

今日は見舞いに来た人はラップランドとリーシーを除けばカランドの主と、元ホストのミッドナイトが一緒に来た。

私の記憶が正しければ、確か2人はヤマトのコミュニケーション能力を上げるための授業をやっている者たちだったはずだ。

そして今はその2人とヤマトが楽しげに話しているのを見ながらこれを書いている。それにしても、ヤマトはあのカランドの主とまで交流関係を結ぶとは…凄いや──(ここで文字が乱れている)

 

まさか、私もあの3人の会話に加わることになるとはな。お陰で途中まで書いていたところの文字が乱れてしまった。大したことを書いた訳では無いから別にいいのだが。

 

ヤマトの経過はメランサから聞いているのを踏まえて、現在の病状を聞くと変化はなし。目隠しをしているヤマトは見ていて違和感があるため早く治って欲しいものだ。

 

追記:カランドの主が持ってきた見舞いの品はあまりの人気っぷりで予約が中々取れないことで有名なお菓子だった。彼らが帰ったあと、ヤマトが「一緒に食べませんか?」と誘われて食べたが、予約が取れない程の人気が出るのも頷ける程の美味しかった。カランドの主に感謝しなければ。

 

○月°日

今日は昼時にバイソンが訪れたのだが、私がヤマトにご飯を食べさせているのを見ると「し、失礼しましたぁぁぁぁ!!」と言って部屋から出ていった時はよく分からなかったため、ヤマトに聞いてみたが顔を赤くして「気なしないでください…」と言われた。仕方ない、後でエクシア辺りに聞くとしよう…誰か来たようだな。少し書くのを止めよう。

 

来たのはロドスの厨房で料理の腕を振るっているグム、マッターホルン、クーリエらを含めた他の料理担当の者たちだった。

ヤマトは自分の不手際のせいで手伝うことが出来なくて申し訳ない、彼らに謝っていたが当の謝られた側は笑って「気にするな」と口々に言い、「最近頑張りすぎてたんだから、寧ろ今回は休むのにいい機会だ」とヤマトに言い聞かせる者もいた。

その日の夕飯は後に彼らがよりをかけて作ったヤマトの好物が中心となっており、ヤマトは嬉しさのあまり泣き始めてしまった。

こういうのを近くで見るのも、たまには悪くないかもしれない。

 

そして、そのお陰か分からないがヤマトの目の方は本の数秒だけ、しかもぼやけてほぼ何も見えなかったらしいが視力が回復した。

この調子なら、近いうちに目隠しを外しいつも通りに振る舞うヤマトの姿が見れるだろう。

 

 

○月#日

さて、今日が私が担当する最後の日だがエクシアを始めとしたペンギン急便のメンバーがお見舞いに来た。

お見舞いの品として、エクシアは食べやすいように切り分けたアップルパイ、ソラは自分のアルバム、クロワッサンはそれを聞くための携帯型の音楽機器、バイソンは彼のおすすめの曲を入れたCDだった。

ヤマトはすごい喜んでおり、特にソラのアルバムは中々買えなかったからと特に喜んでいた。そして、意外なことヤマトはパイソンが入れたCDの中で1部の曲を知っており、さらにその曲をかなりのレベルで歌えることが判明した。…だが、残念なことにヤマトはそれしかまともに歌えずそれ以外は聞くに絶えない程の音痴っぷりを発揮していた。

まあ、その中で誰もが何故あの曲だけまともに歌えるのか気になり、ソラが代表して聞いたところ、自分を助けてくれた恩人がよく歌っていたものらしく、彼女の熱烈な指導のおかげで歌えるようになった、との事らしい。

そして、今は彼女らが帰ったところでこれを書いている。この3日間を振り返ると…ヤマトには悪いが悪くない時間だった。ただ、誰かと話して、一緒にご飯を食べるだけでも案外居心地がいいと知れたのは悪くない。

 

さて、ヤマトの病状は昨日みたいに視力が戻る、ということは今日は起きなかった。その事にヤマトは落ち込んでいたが焦る必要は無いとしっかり言い聞かせた。

ヤマトは少しだけ耳を垂らしていたが、焦って変なことをしないようにチェン達にも言っておくか…それにしても寝てるコイツはとても実際の年齢には思えないほど幼い顔立ちをしているな。

…ラップランドが襲わないかすごい心配だ。

 

 

****

 

「ヤマト、思ったより元気そうでよかったねー」

 

「そうだけど…私としてはヤマトがあそこまで歌えるなんて初めて知ったよ」

 

「それはウチにも当てはまるんやけどな」

 

バイソンとテキサスを除いたペンギン急便メンバーの女子3人は今日のお見舞いで、ヤマトが披露した歌について話していた。

最も、厳密に言えばヤマトは自らその歌を歌ったのではなくエクシアが「ちょっと歌ってみてよ!」と言い出したのが原因である。

 

「力強いけど、どこか魅了されるような歌い方だったよねー」

 

「私はサビの最後の方の、試練は乗り越えられない人に襲いかかりはしないってところ好きだったかな」

 

「てか、よくバイソンはんもあの曲持ってはりましたな〜。ヤマトはんと趣味合いますんちゃう?」

 

「あー、確かに…てか、私のお気に入りも後で聞かせてあげようかな?」

 

「むー、個人的には私の曲を聞いて欲しいんだけどなぁ…」

 

後日、彼女たちがそれぞれのお気に入り又は自信作の曲をもってヤマトへ突撃することになるのだが、当のヤマトはこの時、テキサスに見守られながらスヤスヤと眠っていたのであった。

 




キャラ紹介
ヤマト:実は厨房で働けてないことが気に病んでいた狼。一時期的でしかもぼやけてほとんど見えなかったと言え、視力が戻ったのはかなり嬉しかった。そしてメランサが気にしていたアーンについては、本人はなるべく意識しないように頑張っていただけの模様。あと、彼が歌った曲は知ってる人は知ってる曲ってやつです。

テキサス:今回のメインにして、無自覚イケメンループス(女)。ヤマトの新たな一面を知れた。そして、視力が中々元に戻らないヤマトことに焦るヤマトを心配するというムーブもかます。個人的にはなんやかんや面倒みがいい人だと思ってます。

シルバーアッシュ:弟分のためにレアなお菓子をお土産として渡した頼れるアニキ。実は、ヤマトの憧れの人の1人であるが本人はそんなことは全く知らない。

ミッドナイト:弟子のために時間を作ってお見舞いに来てくれた頼れるイケメンニキ。ヤマトにまた時間を作ってお見舞いに来ることを約束した。

厨房メンバー:グム、マッターホルン、クーリエが個人的には食堂を切り盛りしているイメージがある。でも、流石にこの3人だけじゃキツそうですし、モブ料理人もいます。彼らもヤマトとの仲は良好で、彼のために時間を作ってヤマトの好物が中心の献立を組み、作った。

バイソン:あ、ありのままに起こったことを話すぜ!お見舞いとしてヤマトのところに行ったらテキサスさんがヤマトにアーンをさせてご飯を食べさせていた…正直、邪魔してしまったと思って逃げてしまった…

ペン急メンバー:後日、突撃した結果その日の担当であるチェンに「病人がいる部屋に突撃するな!」と怒られた。でも、ヤマトが取り直してくれたのでセーフ。


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看病日記(チェン)

戦友登録&手がかりの提供&フレオペありがとうございます!

なるべく情報共有会には顔を出すようにします&サポートに置いてるオペレーターも育てますので、ゲームの方でもよろしくお願いいたします!


○月+日

今日からヤマトの看護の担当になったが…ヤマトの見舞いには色んな人が来るみたいだ。

今日だと、行動予備隊A4のメンバーを始めにBSWの者たちや挙句の果てにカランドの主まで来ていたのだから、私と初めて会った時はフロストリーフとラップランドの2人としか交流していなかったことを考えると、何故か少しだけ感慨深いものがあった。

…いや、一応先程挙げた者たち以外にも来ていたものはいたがペンギン急便の奴らは少し配慮というものを覚えた方がいい。ヤマトは病人なのだから、その病人がいる所にいきなり突撃するのはどうかと思う。実際、いきなり入ってきた時はその音でヤマトはビックリして尻尾と耳を立てていたし。

それで奴らを説教していたら、ヤマトがベッドからフラフラと出て止めようとした時は肝が冷えた。お陰様で、ヤマトにも気をつけるように言い聞かせる羽目になった…私はいつから説教担当になったんだ?

 

肝心のヤマトの病状は目の違和感は無くなったが視力は戻っていない。テキサスから聞いた一時的な回復もなかった。私としてはリーシー…遅くともラップランドの番になるまでには治って欲しいと思っている。正直、あの二人は何をしでかすか分からんからな。

 

追記:ヤマトにご飯を食べさせる時はこちらから箸などを使って、ヤマトの口の中に食べ物を入れるのだが…こう、餌付けしている気分になるのは何故なんだ?テキサス達は何も思わなかったのか?

 

 

○月×日

*龍門スラング!*

くそ、何故こんな時に限ってスワイヤーが来るんだ!?いや、理由も聞いたが何故その理由が「チェン隊長さんお気に入りの男を見に来た」なんだ!?別に私はヤマトのことをそんな目で見ていないし、ヤマトだっていきなりそんなことを言われたせいで戸惑ってたじゃないか!

そして、挙句の果てには目隠しを外したヤマトを見て「ふーん、悪くないじゃない。もし、働き口なくなったら雇ってあげるわ」だと?

ホシグマが来るのがもう少し遅かったら取っ組み合いに発展しかけてたぞ…まあ、スワイヤーはそのホシグマに連行されて今はいないため少し落ち着けたが。一応、ヤマトにはやつについて色々説明したが「チーちゃんの友達ってこと?そしたら失礼な態度とっちゃったかな…」を言い出した時は頭を抱えたくなった。一体あの説明のどこをどう解釈したらそんな認識になるんだ…いや、ヤマトならそんな認識になってもおかしくないのか?

む、どうやら来客が来たようだ。書くのを一旦やめて対応するか…

 

 

来たのはホシグマで改めてお見舞いという形で来たようだった。ヤマトは彼女の来訪を結構喜んでいていつになく楽しそうに話していたな。

…ちょっとだけ羨ましいと思ったがこれはこの日記の中だけに留めておこう。

 

 

 

○月÷日

今日は来客はラップランドとリーシーしか来なかったが、かなり濃い1日となった。

というのも、ヤマトが寝る前の尻尾のブラッシングを終えた後に「触ってみる?」と言い出したのがきっかけだ。

いきなりのことで驚いて椅子から転げ落ちそうになったが、なんとか堪えて理由を聞くと「前にチーちゃん俺の尻尾触りたそうにしてたから…」と言った。うむ、過去の自分を殴りに行きたくなったな。

そして、珍しく押しが強いヤマトに押されて触ってみたんだが…あれだ、あれはダメだ。なんとかハマる前に自制できたが、自制するのが遅かったら夢中で触ってたかもしれない…ラップランドが触りたくなる気持ちも分かる。

が、絶対にこのことは奴に知られないようにしよう。知られたらからかわれるのは目に見えているからな。

 

さて、ヤマトの病状だが10秒ほど視力がぼやけているものの回復したようだ。今では、またその目は何も写せない状態であるが前回より見えている時間が増えているのと、近くにいた私の顔が見えたことを踏まえると少しづつではあるが回復に向かっているのは確かなようだ。

 

明日からはリーシーが担当することになるが…正直、ヤマトを襲わないか心配だ…頼むからラップランドの番が来るまでに視力が戻ってくれ…!!

 

 

****

 

「……っ!何かとても心外なことを言われた気がする!」

 

「はあ?何言ってんの?それより余所見していいのかしら?」

 

「あ、しまっ──」

 

『ファルコーン…パーンチ!』

 

『GAME SET』

 

「はい、私の勝ち!明日のお昼、ゴチになりまーす☆」

 

「…………自分のせいとはいえ、すっごいムカつく」

 

「ふ、5本勝負で2連敗してる時に余所見してるから負けるのよ。あー、それより何奢ってもらおっかなー?生姜焼きかな?いや、トンカツ定食もいいし…いや、カツ丼も…」

 

「…育たないくせに良くそんな食えるね」

 

「あ″あ″ん″?あんた、言ってはならないこと言ったわね…?私の苦労も知らずに!この巨乳が!!その乳もぎとってやる!!」

 

「おっと、君ごときにボクが倒せるわけないじゃないか…それより、ボクより大きい人いるんだけど?」

 

「シャーラップ!目の前に私をバカにする巨乳が先よ!!覚悟なさい!!」

 

 

チェンが日記を書き終わった丁度その頃に、とある一室でそんなやり取りが行われていたとか。




実は、最近ダクソのリマスター版をやってるんですけど…死にまくってますが案外楽しいです。なお、死因の半分が転落関連です。


キャラ紹介
ヤマト:なんやかんや顔が広いオオカミさん。密かにチェンがヤマトの尻尾を触りたそうにしていたのを覚えており、今回ついに触らせた。個人的にはやっとチェンに触らせることが出来たので満足で、その日は気持ちよさそうに寝ていた。

チェン:今回のメインにして、気苦労が耐えない隊長。スーお嬢様にヤマトの存在を認知されたため少し警戒気味。因みに、ヤマトの尻尾を触った時は目を丸くし軽く撫でたあとはそのモフモフっぷりに勢いのままダイブしかけた。我慢できたのは彼女の並外れた強靭な精神の強さのおかげ、とある人物は語ったそうな。

スーお嬢様:ヤマトをダシにしてチェンをからかえそう。

ホシグマ:ヤマトの保護者兼姉御。お見舞いの品は小さめのトレーニンググッズ。ヤマトは普通に喜んでいたのでこれにはニッコリ。

持たざる者:やっと私の番ね!!因みに、使ってたキャラはCF。インチキメテオをバカスカ決めてた。

持つ者:出番はまだ先。因みに、使ってたキャラはクラウ○。理由は偶数カラーがヤマトの使ってる武器に似てるからという…

感想や評価お待ちしてます!


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看病日記(リーシー)

待ちに待った彼女の回です!
今回の話で、彼女のキャラというか性格が分かって貰えたらいいなぁ…

あと、戦友欄はあと5人分空いてますので是非申請お待ちしてます!


○月<日

やっと私の番が来たわ!!

チェンやフロストリーフは凄い不安がってたけど、ここロドスに来てからは事務仕事の傍ら看病や看護系統の講習とかも受けてたから出来るのよね!ヤマトに聞かれて教えたら褒められて思わず顔がニヤケちゃったわ。

さて、そんなこんなで今日来た人はラッピーを除くとエイヤフィトラことエイヤちゃんが来たわね。

エイヤちゃんとはヤマトのやらかし事件*1以来、個人的にも仕事的にも色々関わりがあったから普通に対応できたわね。

てか、思ったけどヤマトも大概だとは思ってるけどドクターも色んな子を落としてる気がする。しかも、それが無自覚なのが余計に怖いのよね…いつか、背中刺される気がする。

まあ、ヤマトはそうなる前に私がGETするけどね!!けど、流石に独り占めはあれだから正妻ポジさえ確保出来れば他の人もいいかなーと最近は思っている。なんやかんや、ラッピー達は私も友人としては好きだからね。

 

ヤマトの病状はチェン隊長さんから聞いてたけど、今日も一時期的に視力が回復していた時があったわね。時間は10秒程度で、近くにいる私の顔はギリギリ見えたらしいから完全回復はもう少し先かしら?

 

追記:ヤマトにアーンできて私は幸せです。あと、人の奢りで食べるご飯は美味いわね!ラッピー、カツカレーゴチでした!

 

 

○月=日

今日はラッピーを除くと行動予備隊A4の子達とレッドちゃんが来た。

行動予備隊の子たちは事務仕事が基本の私とは中々会わないから気まずくなるかと思ったけど、カーディちゃんが話を回してくれたお陰で終始楽しく過ごせたわね。これが、巷で言う陽キャってやつなのかしら?いや、ただ単に元気いっぱいなだけだわ。そういうの私的には好きだけどね!

そしてレッドちゃんに関しては、尻尾をモフられて以来なーんか母性が掻き立てられてついついお節介を焼いてしまっている。いや、たまに物騒なこと言うけど基本的には良い子だし、尻尾をモフモフしてる時なんかこっちが微笑ましくなるような雰囲気出すから、つい甘やかしちゃうのよねー。

そんなレッドちゃんのお見舞いの品は、なんとあのケルシー先生からの助言の元、自分で作った練り羊羹だった。

その羊羹はレッドちゃんとヤマトが「一緒に食べよう」って言ってくれたから食べさせてもらったけど、初めて作ったとは思えないほど美味しかったわね。それもレッドちゃんが作ったと思ったら尚更、ね。

あと、レッドが自分も手伝いたいという節を言ってきたため、その羊羹をヤマトに食べさせてあげてと頼み、そしてそれをしているレッドと食べさせてもらってるヤマトを見ると、なんか兄を看護する妹みたいに見えてきて少しだけホッコリした。

その後はヤマトが感謝の礼としてレッドに尻尾をモフモフさせたぐらいかしら?

 

病状は昨日とほぼ同じで強いて言うなら、見えている時間が急に1分ぐらいになった事かしら?…まさか、尻尾モフモフしたら改善されるって訳じゃないでしょうね……

 

追記:今日の夕飯のハンバーグ定食は相変わらず美味しかったけど、出来たらヤマトが作ったやつが食べたいなぁ…そのためにご飯の時間をうまくズラして混み合ってない時にお願いして作ってもらってるから。……って、冷静に考えてみたらめちゃくちゃ迷惑なことしてるわね。次からはやらないようにしなきゃ…

 

 

○月>日

今日お見舞いに来た人はラッピーを除くとフロストリーフとテキサス、あとはプロヴァンスだった。

フロストリーフとテキサスは私がヤマトを襲ってないか心配で見に来たって言ってたけど、正直心外よ!確かに欲望にちょっと忠実な方かなーとは思ってるけど!流石に病人に手を出すほど落ちぶれてないわよ!!そして、それを言ったら信じられないものを見るかのような目で見られた時は、思わず飛び蹴りかましかけたわね。まあ、ヤマトの前というのと私は大人だから我慢したけどね。実際、近くにいたテキサスは気づいてなさそうだったし。

因みに、見舞いの品はフロストリーフはマイベストアルバム、テキサスは期間限定味のトッ○でヤマトはどっちも喜んでいて、特にフロストリーフのアルバムに関してはお気に入りの曲が増えたって喜んでたわね。そして、それを聞いたフロストリーフが一瞬だけ嬉しそうな顔になってたけど…私じゃなければ見逃してたわね。

そして、その後に来たプロヴァンスも実を言うとそれなりに交流がある。というのも、彼女は天災トランスポーターのため彼女からの報告書を受け取ることはそれなりにあり、あと服の趣味とかも合うため彼女が休暇を取れた時は2人で服を買いに行くということをやっていたからだ。なお、最初彼女のことをプーさ○、プーちゃ○と呼ぼうとしたら焦り気味に「それはダメ!」って止められて以来、普通にプロヴァンスと呼んでいるということがあったり。

 

さて、そんなプロヴァンスだがどうやらヤマトとも交流があったようで親しげに話していた。一瞬、またライバルが増えたのかと肝が冷えたけどプロヴァンスがヤマトを見る目は完全に、世話のかかる弟を見るかのような目だったのでほっとした。

そしてプロヴァンスのモフモフの尻尾を枕にした途端すぐに寝てしまったヤマトは可愛かったです。…って、今思ったけど普通、尻尾枕するだけであんなすぐに寝る?それほどプロヴァンスの尻尾がモフモフしてて良かったのか、もしくは安眠効果のフェロモンとか流してるのかしら?

 

……今度、プロヴァンスとお泊まり会開いてその真相確かめよう。

 

 

*1
ヤマトのパーフェクト料理教室その2〜無知は罪なり〜参照




キャラ紹介
ヤマト:交友関係の広さがどんどん暴かれていくコミュ障狼。レッドが作った羊羹はかなり美味しかったらしく、また食べてみたいなーと密かに思ってる。なお、プロヴァンスの尻尾枕はあまりのモフモフっぷりに耐えきれず寝落ち。モフモフの夢が見れたとか。

リーシー:言い出しっぺその1。やっと出番が回ってきたため、周りからは暴走してヤマトを襲うんじゃないかと思われていたが、彼女は大人ため普通に看病していた。何気、トランスポーター組とは顔を合わすことが多く仲は良好。なお、ご飯はロドスの男性オペレーター以上に食べるが全く太らない。そのためか、ある箇所の成長が全く見込めず彼女は絶望しており、1度ケルシーに頼ったがスっと目を逸らされた。そしてなんやかんや面倒見が良く、休み時間は子供の相手をしていることが多い。

エイヤフィトラ:中々お見舞いに来れなかったが、何とか時間を作って来訪。思ったよりも元気そうなヤマトにホッとした。

レッド:ケルシーに相談した結果、比較的簡単な羊羹を作りヤマトに食べさせた。実は、何度か味調整を間違ってしまっており、ヤマトに渡したのはその果てに上手くいったもの。だから美味しいと言われた時は凄い嬉しかった模様。ヤマトの妹ポジをさり気なく無自覚で取りに来てる。

プロヴァンス:みんな大好きモフモフのお姉さん。ぶっちゃけ、あのモフモフの尻尾を枕にしたら快眠できそうな気がする。

ラッピー:カツカレーよりハンバーグカレー派。これで戦争が起きてもおかしくはなかったが、幸いにもラッピーが突っかからなかったため不発で終わった。

ケルシー先生:無理なもんは無理…


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看病日記(ラップランド)

皆様、投票のご協力&フレンド申請ありがとうございました!
そして、投票の結果に関しては後書きでお話します。

今回の話は待ちに待った人も多かったであろうラップランド回です。
彼女の看病日記はどうなるのか…それではどうぞ!


○月〒日

ああ…やっとボクの番だよ…今更だとは思うけど言い出しっぺのボクが最後の方ってなんかおかしくない?

それはさておき、ヤマトの病状は今日になって急激に回復してきた。今まで視力が回復したとしても最大でも1分が限界だったのに今日は2時間ほど保ち、見える範囲とか視力検査の結果健康体のヤマトと変わらぬ結果になった。

でも、その代わりとしてまた目が見えなくなる瞬間は一瞬だけであるが目に痛みが走るようだ。そのため、目薬と目隠しは続行。看病も視力が回復してもいつまた見えなくなるか分からないため近くにいるようにと言われたので続行が決定した。

ヤマトは看病が続くことに関して凄い申し訳なさそうに謝ってきたけど、テキサス達はちょっと分からないけど少なくともボクとリーシーはそんな風には思ってない。

それに、ボクに関してはあの時ヤマトに助けられたんだからその恩返しにもなるわけだしね。

 

あと、今日はフーちゃんとチーちゃんが来たんだけど…その理由がボクがヤマトを襲ってないかの確認って酷くない?いくら何でもそんな事しないって言ったらフーちゃんがボクの額に手を当てて「熱は無いな…いや、別人の可能性も…?」って言い出した時は、どんだけ信用ないんだと思ったね。

ボクの普段の行いはそんなに悪くないはずなんだけどなぁ。

 

 

○月々日

今日はドクターとアーミヤがヤマトのお見舞いにやってきた。彼らは最初に来るのが遅くなってしまったのと、自分達の不手際でこのような事になってしまったことを謝ってきた。

ヤマトは突然の事態に慌てたのかベッドから転げ落ちそうになりながらも、「あれは小隊長を任されていた自分の不手際と相手が一枚上手だっただけでドクター達は悪くない」と必死に説明し始め、そこからはヤマト対ドクターとアーミヤによる謝り合戦が始まってね…ボクが止めなきゃ永遠とやってたよ。

何とか止めたところで、行動予備隊A4の子達が来てくれたのもあって変な空気は無くなったけど…カーディだっけ?主に彼女が場を明るくしてくれたから感謝しなくちゃね。

それでヤマトの傭兵時代の話を聞けたんだけど…中々興味深い話が聞けたね。特にヤマトの事を「甘い子犬ちゃん」と呼ぶサルカズの女傭兵がいて、そいつとばったり会ったら何故か追っかけ回されたりとか、気がついたら自分の近くに寝てたとかね…特徴は聞けたから今度会ったらヤマトのためにも××ないとね…。

ただ…オリジムシを食べた話をした時のアーミヤはすっごい怒ってたね…まあ、「ロドスで真似する人が出てきたらどうするんですか!?」って内容よりも話したことに関することで怒ってたけど。

それと、アーミヤの話に一つだけツッコミを入れるなら流石にオリジムシを調理する人はおろか、食べる人もいないと思うんだよなぁ…。いないよね?いるとしたら流石のボクでも引く。

 

そして今日になってヤマトの目は半日ほど視力が回復した。なんか、ボクが担当した途端に良くなってない?これ、もう少し回復するの早かったらボクが看病することは…いや、これ以上やめよう。これで、明日現実になったら嫌だしね。

 

 

○月〆日

えー、朝起きたら何故かヤマトの視力がほぼほぼ回復してました…

何で?

急展開すぎでしょ!?日記書いてる今でも信じられないよ!?

まあ、回復したと言っても夕飯すぎたらまた見えなくなったんだけどね…その時、ヤマトはてっきり治った思ってたせいもあって凄い取り乱してたね。今はもう時間が時間だから寝てる…というか寝させたけどあんな取り乱してたヤマトは初めてだったな…。

因みに、今日は視力がほぼ回復してた+時間も長かったのもあってボクがもしもの時に対応できるように近くにいることを条件で、ヤマトはロドスの中を歩いてたんだけど…ヤマトがロドスの中を歩いているのを久しぶりに見たのもあってなんか懐かしく感じた。

その後、訓練室で軽く動かしてシャワーで汗を流して夕飯というところでさっき言ったように目が見えなくなった、というのが今日の一通りの流れだ。

そういえば、へラグっておじさんはヤマトの師匠に当たる人なんだっけ?でも、今日の2人をみてると師弟関係というよりは、おじいちゃんと孫みたいに見える。

 

さて、ヤマトの看病を3日間やってみたけど…新鮮だったね。ボクみたいなやつが誰かをこうやって看病出来る…いやしようと思うなんて昔じゃ全く考えられなかった。少しだけ、ボクも変われてるって証拠なのかもね。

 

******

 

「皆さん、本当にご迷惑をおかけしてすみませんでした…」

 

それからフロストリーフの2度目の看病当番の最終日で、精密検査の結果無事にヤマトの目は元に戻り、後遺症も奇跡的に残らないという結果になった。

 

「いやいや、別にいいってことよ。少なくとも私とラッピーはヤマトの看病は苦じゃなかったし」

 

「おい、何勝手に言ってんだい?まあ、その通りだから別にいいけど」

 

「ははは…まあ、俺から見たら皆迷惑だとか思ってなかったと思うけどね」

 

「そうかな…?」

 

ドクターの言葉にヤマトは本当にそうなのか、と疑問の声を漏らす。

 

「迷惑だなんて思ってないさ。少なくともお前との付き合いは他の奴らに比べたら長い方なんだしな」

 

「わ、私も思ってないよ?助けてくれた恩をやっと返せたし…」

 

「…まあ、私も迷惑だとは思ってない。無論、大変だとか面倒くさかったとかも思っていない」

 

「そういう訳だ、勝手に決めつけるのはお前の悪い癖だ。少しは周りに頼るっていうのを覚えろ」

 

「それ、貴方が言うんですか…」

 

「みんな…」

 

フロストリーフ、メランサ、テキサス、チェンがヤマトの看病に対して思っていたことを口にし、それを聞いたヤマトは彼女たちを見渡す。

 

「……ほら、こういう時は謝罪の言葉よりもピッタリな言葉があるでしょ?」

 

「ドクター…」

 

後ろからヤマトの肩をポンと叩いてドクターは諭すように告げ、そしてヤマトは顔を上げて。

 

 

 

「…みんな、ありがとう」

 

感謝の言葉を投げかけられた彼女たちは優しく微笑んだのだった。

 

「ところで、チェン隊長殿?デスクの上にあった日記が風に煽られて見えてしまったページに…」

 

「おい、それ以上言うな。言ったら殴るぞ?」

 

「構えながら言わないでくれるかしら…」

 




という訳で、最後あっさりしてますが看病編はこれにて終了です。
さて、アンケートに関してなんですが…フロストリーフとラッピーが同率1位になりましたので、決選投票を行います。締切は8/26の23:55です!ご協力の方お願い致します!そして、感想やコメントもお願いします!(全力の土下座)


キャラ紹介

ヤマト:急に症状が収まり始めた本作主人公。なお、目が見えない間は見えなくてもできるトレーニングを欠かさずに行っていたため、筋力の衰えはそれほどない。なお、途中であった訓練室の軽くの内容は「・シミュレーションの敵100人斬り・ラッピーとの手合わせ・へラグからの指導+反省点の確認を含めた手合わせ」というもの。正直、変態の域に達している。サルカズの女傭兵さんとは何かしら因縁が…?

ラップランド:(今のところは)メインヒロインのムーブをかましているヤマトガチ勢の我らがボクっ娘オオカミさん。サルカズの女傭兵をロックオンした。なお、当小説で1番キャラ崩壊が激しいのも彼女。

ドクター&アーミヤ:基本的に2人で行動することが多く、一部ではデキてる説が流れている。

看病メンバー:全員に今回の看病生活に関しては全く苦じゃなかった模様。各々ヤマトの色んな一面を知れたのもちょっとあったり。


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悩む者達

皆様、アンケートご協力頂きありがとうございました!そして、お気に入りが400件超えました!本当にありがとうございます!
そして今回もリクエスト話となります!
シリアスを期待していた方は申し訳ないですが、まだまだ日常回となります。

さて、今回の話の内容は…どういった話になるかは何となくご想像できるかと。

それではどうぞ!


──身長。

それは、書いた字のごとく身体の大きさのことを指す。

そして、世の中は何かと身長が高い人物が有利になることが多く、それ故に悩んだり、それがコンプレックスになる者は多い。

そしてそれはロドスに属するオペレーター達も例外ではなく──

 

「「どうやったらそんなに背が大きくなるのですか?」」

 

「……え?」

 

ヤマトとヴィグナ(身長が低い2人)にいきなりこんな事を聞かれたホシグマは素で呆けるのだった。

 

***

 

「…なるほど、話は分かった」

 

ヤマトとヴィグナの話をまとめると、互いに身長の低さをどうにか出来ないかと調べ物をしていたところ、2人はばったり遭遇。そこから意気投合をし調べ物をしていたが、「実際に大きい人の話を聞くべきじゃ?」とヤマトが提案した結果、「確かにそうかもしれない」とヴィグナが受け入れたため、こうして実際に背が高い人に聞き込みを行うことになったというものだった。

 

「それで、ホシグマさんは背を伸ばすのにどういったことしてたんですか?」

 

「どういったこと……か…」

 

ヤマトとヴィグナの期待の眼差しを向けられたホシグマは思案する。

正直な話、ホシグマは特別なことをした記憶はなく気がついたらこんなに背が伸びていたのだからアドバイス的なことを教えてくれ、と言われてもぱっと言えるものは無い。

 

「「…………」」(期待の眼差し)

 

かと言って、純粋な眼差しでこちらを見つめてくる2人に対して「そんなものは無い」なんて言えるほどホシグマは非情ではなかった。

 

「…私は好き嫌いせずに沢山食べて沢山動いてよく寝ていたな」

 

「おー…やっぱり調べたものと一致してるね」

 

「くっ…やっぱり好き嫌いしちゃいけないのね…」

 

悩み悩んだ末に出したホシグマの一般的な答えにヤマト達が各々の反応を示している中、答えたホシグマは純粋な子供を騙したような気分になっていた。

 

「ホシグマさん、ありがとうございました!今度、いいお酒持ってきますから!」

 

「あ、ああ…楽しみにしとくとしよう」

 

「次行こうか」と言って去っていった2人を見送ったホシグマは疲れたように息を吐き──

 

「ん?次…?」

 

彼らが去り際に言った言葉に反応したのだった。

 

 

****

 

「ふむ…身長を伸ばすのに特別なことをしていたか…か」

 

「はい、シルバーアッシュさんは何をしていたのかなって」

 

シルバーアッシュはヤマトの質問にどう答えたものか悩み始めた。それも、彼も特にこれといったことはせず気がついたらこの身長だったのだからホシグマ同様なんて言えばいいか分からないからだ。

 

(どう答えるべきか…)

 

かと言って、弟分みたいなヤマトに向かって「そんなものはない」とはとてもでは無いが言えない、というより言う気になれずシルバーアッシュが珍しく考え込んでいる時だった。

 

「おや?シルバーアッシュ様にヴィグナ殿、それにヤマトの3人で何されてるんですか?」

 

「む、クーリエか」

 

そこにシルバーアッシュの部下であるクーリエが声を掛けてきた。そして、この瞬間シルバーアッシュの脳内ではこの状況を打破するための道筋が出来た。

 

「身長を伸ばすのに特別なことをしていたか、と聞かれてな。出来ればお前の場合も聞きたいのだが」

 

シルバーアッシュは自然にクーリエに質問の矛先を向けた。

そう、シルバーアッシュが考えた解決の道筋とは一言で言ってしまえば、他人の意見をそのまま借りる、という事だった。

最も、これは「クーリエならまともな答えを出してくれるだろう」という信頼のもと出されたものである。

 

「そうですね…僕の場合ですと、やはり好き嫌いはせずに沢山食べていたことでしょうか?後は、寝る前にストレッチなんかもやってましたね」

 

「ストレッチもですか…シルバーアッシュさんもクーリエさんみたいな感じでしたか?」

 

「ああ、私もそんな感じだ」

 

ヴィグナの質問に、さも当然かのようにシルバーアッシュが答えるとヤマトとヴィグナは「なるほどー」とメモを取る。

 

「お時間取ってしまいすみませんでした。それでは、失礼します」

 

「シルバーアッシュさん、後でお礼の品持ってきますね」

 

「ああ、楽しみにしていよう」

 

そうしてトコトコと去っていった2人を見ながらシルバーアッシュが息を吐いたところで、クーリエが思い出したかのように言った。

 

「そういえば、シルバーアッシュ様は身長を伸ばすのに僕と同じことをしていた、とそんな旨を言いましたよね?」

 

「ああ、そうだが。それがどうかしたか?」

 

「ということは、苦手な食べ物はもう残したりしませんよね?」

 

「いや、私はもう身長は伸びな…」

 

し ま せ ん よ ね ?

 

「う、うむ…」

 

このあと、ニンジンを目の前に唸るシルバーアッシュが見られたとか見られなかったとか。

 

 

 

*****

 

「やはり、皆さん同じようなことをして背が伸びているみたいですね」

 

「そうだね…やっぱりよく食べてよく動いてよく寝るが1番なのかなぁ」

 

ロドスに所属している高身長であるオペレーター達にある程度話を聞き終えたヤマトとヴィグナは、メモを見ながら結論を纏め始めていた。

 

「あとは、縄跳びをやってた、寝る前にストレッチ、朝起きたら寝たまま伸びをするとかも少数ではあったけど何人かいたよね」

 

「うーん、縄跳びとストレッチは分かるけど寝たまま伸びって意味あるかしら?」

 

「でも、それで身長高い人いるからなんとも言えないよね…」

 

「お前ら何やってんだ?」

 

ヴィグナとヤマトは後ろから声をかけられ、そちらを向くとヴィグナは「げっ」と言わんばかりに顔を顰め、ヤマトは面倒くさそうな雰囲気を出した。

 

「エンカク…」

 

「そうだが?それより、ヤマトいつも通りやるぞ」

 

「…………」

 

「やっぱりか」と思いながらヤマトは呆れた視線をエンカクへと向ける。というのも、実はヤマトの視力が完全に戻ってからエンカクがこうしてヤマトに勝負を吹っ掛けるようになったからだ。

無論、ヤマトとて約束したのだから「2、3度くらいならいいだろう」と思っていたのだが、勝負の結果もあるとはいえエンカクは全く満足せず、最近では3日に1度…酷い時は1日おきに「おい、やろうぜ」と某決闘者みたいな感じで来られたら話は別である。

なお、その2人の戦いは高レベルではあるものの学べる箇所が所々あるため、色んなオペレーター達が見物しに来たり、またはどっちが勝つかの賭け事をしたり、実況をし出す者までいるのを本人たちは知らない。

 

「そら、行くぞ…ああ、そうだ。偶には賭けでもするか」

 

「……必要あるのか?」

 

「ただ、勝敗を決めるのはつまらないからな。そうだな…勝ったら相手に何か命令できる権はどうだ?無論、その内容が無茶なものなら断ってもいいという条件でだ」

 

エンカクの提案にヤマトは思案し、エンカクを改めて見る。身長はヴィグナはもちろんのことヤマトよりも遥かに大きい190cmだ。そして彼はまだ身長が高い秘訣を聞いていない唯一の人物でもある。

 

(……聞いたところで素直に教えてくれないだろうし、乗っかるべきかな)

 

「分かった、それで受けよう」

 

「ふ、じゃあ行くぞ」

 

「あ、ちょっと…!もう!!」

 

トントンと話が進んでいき訓練室へと向かう男2人にヴィグナは苛立ちを隠せないまま後を付いて行ったのだった。

 

「…ところで、お前は俺に何をさせるつもりなんだ?」

 

「そうだな…お前とよくつるんでいる…確かフロストリーフとラップランドだったか?あいつらを紹介してくれないか?」

 

「……………」

 

ヤマトにとって負けられない理由が増えたのであった。

 

*****

 

「はぁ…はぁ…俺の勝ちだ…」

 

「はぁ…はぁ…これで、同点か…」

 

「数えなお、せ…俺が1点リードだ…」

 

「そういや、はっ…そうだったな…」

 

訓練室の演習場の真ん中で、武器を全て弾かれ首元にヤマトの合体剣を添えられたエンカクは疲れでその場に倒れるように横になり、ヤマトも座り込んだ。

 

「それにしても…今日は異様に気合い入ってな……今まで手加減してたのか?」

 

「……負けられない理由があった、それだけだ」

 

怒気を含めて聞いたエンカクに対しヤマトは短くそう答え、エンカクはそこまで命令できる権利が欲しかったのかと驚く中、ヤマトが声をかける。

 

「…勝負の賭けの報酬を使って構わないか?」

 

「あ?早速か…まあ、いいけどよ。んで、何をすればいいんだ?」

 

ヤマトがどういったことを自分に頼むのか分からず、内心身構える。

 

「……身長を伸ばすのに何かやっていたか?」

 

「…今、なんて言った?」

 

「…身長を伸ばすのに何かやっていたか?」

 

「……マジか(まさか負けられない理由ってこれなのか…?)」

 

エンカクは突然聞かれたことに思わず素で驚いたような声を出しながら、こんな理由でヤマトは必死になってて、そんな理由で負けたのかと落胆した。

 

「……教えてくれ」

 

「とは言ってもな…」

 

「ない」とエンカクは言いかけて、期待の眼差しを寝転がっている自分に向けるヤマトを見て口を噤んだ。

そして、考えた末エンカクは──

 

 

 

****

 

「ヤマトさ、最近なんか牛乳よく飲んでるけどどうしたの?」

 

ある日の朝食の時間帯にて。

ヤマトと朝食を一緒に摂っているラップランドが最近彼のお盆に乗っている牛乳瓶を見ながら聞く。

 

「身長を伸ばすのに良いって聞いたから飲むようにしてるんだ…一応、信用に足る人からの情報だからね」

 

ヤマトはラップランドに対してそう言うと牛乳をゴクゴクと飲み始め、そして1ヶ月後にヤマトが自分で測ったところ1mm伸びてたらしく世話になった人たちへお礼を言い回ったのだった。

 

 

 




お気に入り500件達成したら記念としてifルート書こうかなって思ってたんですけど、諸事情のため400件突破記念で書こうか絶賛悩んでます…

キャラ紹介

ヤマト:低身長であることがコンプレックスの狼さん。色んなオペレーターから話を聞いた結果、その全てを実行してのもあって1mm伸びたとかなり喜んでいた。エンカクにフロストリーフとラップランドを紹介するのはなんか嫌だったので、あらゆる戦法を使って辛くも勝利した。エンカクとの戦いは45戦中23勝22敗。そして紹介の意味はヤマトとエンカクの間で認識が違っているが、本人たちはそのことに気がついていない。

ヴィグナ:星4先鋒。レア度的な意味もあって入手しやすく、性能はプリュムの上位互換的な感じ。しかし、素質が一定確率でその攻撃の攻撃力アップというもののため、プリュムのステを超えるまでは少し不安定な部分がある。ツンデレ属性。本編では背が低いもの同士でヤマトと意気投合した。

ホシグマ:色んな意味で大きい姉御。

シルバーアッシュ:完璧そうに見えて苦手な物があったらなんかいいよね!ということでニンジンが苦手という設定をぶち込んだ…うん、怒られそう()

クーリエ:星4先鋒。購買部のフレンドポイントで交換出来るオペレーターのため、彼にお世話になったドクターはかなり多いはず。ステータスも星4のためそれなりに高いため高難易度でも活躍できる。こちらでは、ロドスの厨房組の1人。なお、たまにシルバーアッシュが抵抗できないほどの圧を出せる。


エンカク:絶賛アンジャッシュ中。なお、フロストリーフとラップランドと1度戦ってみたいと考えている。

ラッピー:年齢的にヤマトってもう伸びないと思うんだけど…言わないでおこう(優しさ)




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朝起きたら…

今回もリクエストものなんですが…ギャグ時空なら何してもヨシ!というわけで結構ハチャメチャな話となっております…

なので、それでもいいという方はお読み下さい。
それではどうぞ!


それとは別に、ゲームでは次のガチャで強そうな子が来てる…あの女傭兵さんは来ないだろうし10連だけやろうかな…あと、プロヴァンス完凸しました。やったぜ


9/9 4:10追記:活動報告の方で重要な内容をあげさせて頂きましたので、一読お願い致します。


チェンは現実逃避した。

目の前の現実はあまりにもおかしいと。

チェンは生真面目故にドッキリやいじりといったのもがよく分からぬ、しかし人一倍…かは置いといておかしいと思えることは思えた。

 

「……本当なんだな?」

 

「…はい、検査の結果この女性はヤマト本人です」

 

「……そうか」

 

朝起きて部屋を訪ねたら友人が女の子になっていた、という現実にチェンは遠い目をしながら目の前の不安そうにしているループスの女性…いや女体化したヤマトを改めて見た。

 

「…その、迷惑かけてごめんね……」

 

(ぐっ…!た、耐えろ!ここで出したら…!!)

 

髪が伸びているのと胸に膨らみがあることを除けば、普段のヤマトと一緒なはずなのだが女体化した影響なのか、涙目+上目遣いで謝ってくるヤマトはチェンにとってかなりのダメージを与え、彼女は鼻から(尊み)が出ないようにと反射的に鼻を手で抑え込んだ。

 

「…それで、ヤマトさんは元々は男性なので出来たら暫くの身の回りの生活はチェンさんにお願いしたいのですが…」

 

「は?」

 

「え?」

 

医療オペレーターの発言に、チェンとヤマトは同時に間抜けな声を発したのだった。

 

****

 

「…なるほど、分かりたくないが、とりあえずどういうことは分かった」

 

「つまり、ヤマトが朝おんということね」

 

「あさ、おん?」

 

「朝目覚めたら女の子になってたの略」

 

「リーちゃん物知りだね」

 

「ヤマトは少し危機感を持ってくれないか?」

 

検査の後、チェンはヤマトを連れて自分の部屋に戻るとすぐにフロストリーフとホシグマ、テキサスといったメンバーに自分の部屋に来るようにと連絡した。しかし、数分後には呼んでいないはずのラップランドとリーシーが「ここに来るべきだと感じたから」と、来てどうにかヤマトの姿を見せる前に帰らせようとするも、ヤマトが不用意に出てきてしまい、そしてそれを一目でヤマトだと2人が気づいたせいで止む無く参加させた。

なお、この場にメランサがいないのは彼女だとこの衝撃的な事実に耐えられない可能性があるのと、下手するとヤマトを一日中着せ替え人形する可能性があるからとチェンが考慮したからである。

 

(このラップランドとリーシーの2人が何もしなければいいのだが……)

 

チェンがそのように溜息をつきながら考えていると、何を思ったのかリーシーが突然ヤマトの胸を鷲掴んだ。

 

「ひゃっ!?り、リーちゃん!?いきな…んんっ」

 

「……!?私よりある上に、揉み心地が…!?」

 

「お前は何をやってるんだ」

 

「タコス!!」

 

ヤマトの胸にショックを受けたリーシーにテキサスが何処から出したのか分からないハリセンで彼女の頭をいい音を立てながら叩くと、リーシーは謎の悲鳴をあげて倒れた。

 

「…ねえ、テキサス。そのハリセン何?」

 

「これか?これは源石剣の仕組みを利用して、刃の部分をハリセンにした源石ハリセンだ」

 

「技術の無駄使いじゃないか!!」

 

「…?ああ、殺傷能力はないから安心してくれ」

 

「そうじゃない!!」

 

まともだと思っていたテキサスが変なものを所持していた事実にチェンは頭を抱えたくなり、フロストリーフとホシグマは諦めたような表情を浮かべ、そしてあのラップランドでさえ頬を引き攣らせ軽く引いていた。なお、ヤマトはオロオロしていた。

 

〜以下ダイジェストでお送りします〜

 

ケース1:お花摘み

 

「ち、チーちゃん…そのなんで目隠し?」

 

「……その、ヤマトも男だからな。女性の見るのはいくら自分の身体とは言えど問題がある気がしてな…」

 

「な、なるほど?そ、それで一体どうすれば…?」

 

「ボクに任せt─」(スパァン!!)

 

「え?な、何が…」

 

「気にするな」

 

「その声はテキサスさん?気にするなって──」

 

「気にするな」

 

「は、はい…」

 

「…とりあえず、フロストリーフとチェン任したぞ」

 

((あいつ、教え方が分からなくて逃げたな……いや、ラップランドを止めてくれたのは助かったけど))

 

☆この後無事にお花摘みは終えられました☆

 

ケース2:お風呂

 

「ヤマトの裸…」(ゴクリ)

 

「リーシー、襲うなよ?」

 

「だだだだ大丈夫だ、問題ない…ほ、ホシグマさんの般若並に硬い私の理性なら…」

 

「いや、明らかに大丈夫ではないような気がしますが…」

 

「てか、さっきのセリフフラグじゃ──」

 

「すまない、目隠しさせてるせいもあって着替えで手間取ってしまっ──」

 

「ぐはあっ!?」(鼻血ブー)

 

「もう、言わんこっちゃないじゃないか…」(ヤレヤレ)

 

「…気絶しているが、凄い幸せそうな顔してるな」

 

「アホは置いといてヤマトの方やるぞ…ほら、手を出せ」

 

「あ、うん…その優しくお願いします……」

 

 

*ラップランドが暴走しかけるも、無事終了*

 

 

 

****

 

 

 

「疲れた……」

 

夜中の11時、チェンは自分に割りあてられたベッドの上で倒れ込むようにダイブし、息を吐いた。

今日の疲労はリーシーとラップランドの暴走を抑えるのに肉体的に疲れたのもあるが、1番は鼻血(尊み)を出さないようにと精神的に気を張っていたのが理由であり、正直チェン自身よく出さなかったと思っているぐらいだ。

 

ピンポーン

 

チェンが再度ため息を吐こうとした時、来客を鳴らすベルが部屋の中に響き渡った。

 

(…?こんな夜中に誰だ…?)

 

チェンは不審に思いながらも、敵襲の可能性はロドス内なので皆無と考えながら少し警戒気味にドアのロックを解除し、皮肉でも言ってやろうかと開けると。

 

「…ヤマトか」

 

「こんな夜中にごめんなさい…」

 

寝巻き姿で何故か枕を抱えて不安そうにしているヤマトが立っていた。チェンは言おうと思っていた皮肉も引っ込み、とりあえず部屋の前で話すのも可笑しいのでヤマトを部屋の中に入れた。

 

「お、お邪魔します」

 

「とりあえず適当に座ってくれ…さて、こんな夜中に一体どうした?」

 

「あ、そ、その…」

 

チェンが自分のところに来た理由をヤマトに聞くと、聞かれた本人は落ち着かない様子で言おうとしては恥ずかしそうに口を閉ざす、を何度か繰り返した後覚悟を決めたようにチェンを見て──

 

「そ、その…一緒に寝させてくれませんか……?」

 

「…………は?」

 

チェンは衝撃的な発言に目を丸くし、本日二度目となる間抜けな声を発した。

 

 

 

*****

 

 

 

「チーちゃん、狭くない?」

 

「ああ…大丈夫だ」

 

結局、理由を聞いて自分も前に同じような理由でヤマトに一緒に寝させてもらったことがあったチェンは納得し、こうして自分のベッドに互いに背を向けてヤマトと一緒に入っていた。

そしてチェンはまるでなんてことないような態度を見せて…

 

(まずい、ヤマトの尻尾の感覚がダイレクトに背中に伝わってくる)

 

内心、めちゃくちゃ焦っていた。

というのも、ヤマトのモッフモッフの尻尾の感触が寝間着越しとはいえ伝わってくるのだ。

以前、ヤマトの尻尾を触ったことがあるため彼(今は彼女)のモフモフのやばさを身をもって知っているチェンは必死に自分の欲望と戦っていた。

すると…

 

(遠慮なく触るべきだ、私)

 

突如脳内にサルカズのような角を生やし、変な黒い槍と黒い服を着た自分がそう語り掛けてくるようなイメージが思い浮かんだ。

 

(い、いや流石に触るのは…)

 

(躊躇する気持ちは分かる。だがな、お前は我慢しすぎなんだ…たまには自分の気持ちに素直になるのも大事だぞ?それに、一緒に寝てる報酬としてヤマトの尻尾をモフれるという大義名分冴えあるんだぞ?)

 

(た、確かに…)

 

悪魔のような自分が語りかけてきた内容にチェンが傾き始め、体の向きを変えてヤマトの尻尾を抱こうとした時──

 

(だめですわ!!黒い私に騙されてはいけませんわ!)

 

突如、サンクタのように頭に輪っかと背中に翼を生やし、弓矢と白い服を身につけている自分が慌てたように止めに入ってきたイメージが思い浮かんだ。

 

(確かにヤマトの尻尾のモフモフは一級品ですわ…けども、まだ恋仲にすらなっていないのに異性の尻尾をモフるのは淑女としてはだめですわ!!もし、モフってしまえばラップランドと同類になりますわよ!)

 

(確かに言われてみれば…)

 

ラップランドの評価がとんでもない事になっているが、それはさておき白い自分に諭されチェンが伸ばしていた腕を引っ込めると──

 

(ええい!邪魔をするな、白い私!お前だって本当はヤマトの尻尾モフりたいくせに!)

 

(そ、そそそそそそんなことございませんわよ?)

 

(動揺してるのが何よりの証拠だ…それに、ヤマトは今同姓だぞ?モフってもなんら問題ないぞ?)

 

(……あ、確かに)

 

(おい、お前が堕ちてどうする!?)

 

白い自分が陥落したことにチェンが驚いている中、2人の白黒はチェンに語りかける。

 

((ゴーゴー!モフモフ!!ゴーゴー!モフモフ!!))

 

頭にそんな声が何回も響くような感覚を感じたチェンは、堪えきれなくなり──

 

 

 

 

******

 

 

 

「ええい!黙らな、い…か……?」

 

ガバッとチェンが起き上がると、そこは見慣れた景色…自分に割りあてられたロドスの部屋であり、ベッドにヤマトの姿は無かった。

 

「……………は?」

 

どういう事なのか、チェンが混乱している中来客を告げるインターホンが鳴り響き、チェンは戸惑いつつもそれを隠すために表情をつくりドアを開けた。

 

「誰だ、こんな朝か…ら……」

 

「おはよう、チーちゃん!一緒に朝ごはん食べよう!」

 

「……ヤマト?」

 

髪も長くなく、胸に膨らみもない男のヤマトがチェンの視界に入ってきた。

そこでチェンは自分にとって最悪な仮説が思い浮かび、それが本当かどうか確認するためにヤマトに声をかけた。

 

「な、なあヤマト…ひとつ聞いていいか?」

 

「?いいけど…」

 

「……お前、ここ最近女性の体になったか?」

 

「?いや、ないよ…てか急にどうしたの?なんか悪い夢でも…」

 

「………………」

 

 

次の日、チェンは二日酔いになった。

 

 

 




こんな感じで良かったでしょうか?あと、タグにTS入れた方が良いですかね?

あ、それのマイリア友が恋愛もののオリジナルの話を投稿したのでよろしかったらぜひ!作品名は「とある男子高校生の妄想」です!

キャラ紹介

チェン:やべー夢を見てしまった隊長殿。二日酔いになった次の日のヤマトの看病が心に染みた。

ヤマト:(夢の中の)被害者。女体化時のボイスは自分的には花澤香○でしたが、皆様はどなたを想像出来ました?いや、ボイスまで想像して読んでる人は中々いないと思いますが…(現に周りの人はしてなかったというリアル経験)

テキサス:源石ハリセンというツッコミ専用のアイテムを夢では持っていたが、現実では持っていなかったのでチェンは心底安心した。夢の中では暴走するリーシーとラップランドをハリセンでワンパンしてヤマトを守っていた。

フロストリーフ&ホシグマ:夢の中でも常識人。

ラップランド:夢の中でもヤマトへの想いは健在

リーシー:夢の中でですら胸部装甲の厚さを女体化ヤマトに分からされてしまった。なお、現実ではラップランドやチェン、ホシグマetcと多くの女性オペレーターに分からされている。


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幕間:女傭兵との因縁

投稿遅くなってしまい本当に申し訳ございません。

そして今回は、メインとなるキャラの情報があまりなく、そして自分が考察とか推理といったものが苦手なため、完全な妄想話となっております。

それが嫌だという人はブラウザバックして下さい。




……ここまで見ているということは了承したということですね?
それでは、本編へどうぞ!


Wが初めて彼と戦場を共にしたのは今から6年ほど前のことだ。

とは言っても、Wは途中から別働隊として動くことになっていたので彼と一緒に戦場を駆けたのはほんの少しだけであった。しかし正直傭兵をやっているのが不思議なくらいの射撃、狙撃能力の持ち主だと認めたほどの実力者だったため、彼女にとって彼は中々印象的だった。

 

が、それだけであった。

それでもなお、強いて言うなら──

 

「何処を探せば、剣士に堂々と剣で挑むスナイパーがいるんだ!?」

 

「……?ここにいる」

 

「あ″ あ″ あ″ あ″ あ″ !!そうじゃねえよ、この天然があぁぁぁぁ!!」

 

(騒がしいわね…この2人、本当に傭兵なの?)

 

感情が全く出ない不気味なやつというのと、バカでかい片刃の大剣を持った女性と仲が良さそうぐらいだった。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 

(あー、ドジったわね)

 

それから数年後、Wは物陰で痛む足を庇いながら身を潜めていた。

彼女はこの時参加したある戦いの撤退戦で足を挫いてしまい、何とか物陰にまでは移動したものの、部隊の仲間とははぐれてしまっていた。

撤退を決めた段階で本部へ救援要請をしてからそれなりの時間が経っているが、それでも来ないということは、応援が来るのは絶望的だと考え、Wはじっと息を潜めながら改めて自身の手持ちを確認していた。

 

(残ってる武装は、ナイフ、手榴弾2個、フラッシュバン1個に、榴弾砲の残弾は5個…詰んでる)

 

相手は自分がいた部隊が撤退を決断するほどまでの質と数があった。それを考慮すれば数人は倒すことは出来るだろうが、残っている武装的にも戦えば位置がバレて袋叩きにあうのは目に見えていた。

 

(でも無抵抗っていうのは癪だし、投降なんて以ての外なのよね)

 

「おい、いたか?」

 

そこまで考えていた時だった。

近くから声とそれなりの数の足音がなり始めた。

Wはさらに息を潜めながら、武器を静かに手に取り臨戦態勢を取りながら追っ手と思わしきもの達に攻撃を仕掛けるために、タイミングを計り始めた。

 

「いんや、いねーよ…本当に女がここら辺に行ったの見たのかよ?」

 

「ああ、確かに見たぜ…まあ、もしかしたらもう遠くに行っちまってるかもしれないが」

 

「有り得そうで笑えねえ」

 

(仕掛けるなら今…?いや、やるとしてももう少し近づいてから…)

 

「ぐわああああああっ!!」

 

「トム!?な、このガキいつの間に…!?」

 

「か、囲んで袋叩きにしろ!相手は1人だ!数はこっちが勝ってるんだ!」

 

Wがあともう少しで攻撃を仕掛けようとしたタイミングで、悲鳴と慌てる男たちの声が響き渡り、続けて金属音のぶつかり合いや発砲音がなり始めた。

 

(?何が起きてるの…?)

 

一体、何が起こっているのか。Wは様子を確認するために物陰から顔を少しだけ出すと──

 

「……は?」

 

10数人の男たちを、見たことがあるようなバカでかい片刃の大剣を片手に圧倒するループスと思わしき少年が目に入った。

少年は、飛んできた狙撃手の矢を躱すと、目の前の男が繰り出したハルバードの薙ぎ払いをその男を跳び超えるように躱しつつ、着地すると同時に横に一閃。そして、崩れ落ちる男の襟首を片手で掴み飛来してきた矢と術攻撃をそれで防いだ。

 

「ケイト!?てめえ、よくも…っ!!」

 

それを見た1人の剣士が激昂し、周りが静止する前に少年に得物であるロングソードを振り上げて斬りかかった。

少年はそれを感情が削ぎ落とされたような目で見て、剣士の一撃を大剣で弾き返して、がら空きとなった胴体にいつから出したのか、左手に持っていた源石剣にアーツを流しこみ、アーツでできた刃を突き刺した。

崩れ落ちる剣士から源石剣を抜いて、返り血を浴びた少年は自分を囲む男たちを一瞥する。

 

「く、くそがぁぁぁぁっ!!」

 

そこからは少年の独壇場であり、右手の大剣と左手の源石剣、そしてアーツの衝撃波によって追っ手達はものの数分で何も言わぬ骸へと化した。

 

「……………」

 

返り血で髪までもが赤くなった少年は、Wに背を向けている状態で骸の中央でしばらく立っていたが、急に源石剣を懐にしまい、大剣を背負うと、Wが隠れている物陰に真っ直ぐ歩き始めた。

 

(ちょっ、気づかれてたの!?まずい、今の私じゃあいつは流石に──)

 

「助けに来た」

 

「……え?」

 

内心焦っていたWはその少年が発した一言で固まったのだった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

「……はー、あんたって本っ当にあまちゃんというか、バカというか……」

 

ヤマトと名乗った少年からの話を聞いて、Wは思わずはそうこぼしてしまい、それを聞いたヤマトは返り血を水で流しながら「心外!」といったような様子でWを見つめた。

 

ヤマトから聞いた話の内容をまとめる…いや、必要も無いぐらいの内容であったが、要は彼はWの部隊の救援要請の信号をキャッチして急いで来た、ということであった。

最も、それだけであるならWとて先程のような発言はしない。

彼女がヤマトをあまちゃん、またはバカ呼ばわりした理由、それは周りはおろか本部にすら何の連絡もしないで単独で来たという事だった。

 

無断でしかも自分の勝手な判断で動いてしまえば、傭兵としての信頼はガタ落ちしてしまうのはどんなものでも分かること。傭兵としての最適解は、非情になって見捨てるというものだったのに、非情になれずに見ず知らずの他人を助ければあまちゃん呼ばわりも仕方の無いことであり、助けてもらったWが思わずそう零してしまったのは仕方の無いことだった。

 

「…とりあえず、戻りましょ…いっ!」

 

「…(足を)怪我しているのか(気づけなくてすまない)」

 

「い、いや歩けるから気にしなくて…っ!」

 

「……(歩くのは無理そうだから、いきなりで申し訳ないが運ぶために)抱くぞ」

 

「え、ちょっ、はあっ!?」

 

ヤマトは無理して立ち上がり歩こうとしているWを見ると、何を考えたのか急に片腕を彼女の脇から背中に回し、そしてもう片方の腕を両膝の下に差し入れて抱き上げる…いわゆる横抱き(お姫様抱っこ)をした。

そして横抱き(お姫様抱っこ)されたWはいきなり事態に戸惑うも、すぐに暴れだした。

 

「早く下ろしなさい!」

 

「(すまないが)近くに停めたバイクまで我慢しろ」

 

「…あのさバイクで来たなら、一旦私をここで待たせて、そのバイクにのって迎えに来ればよかったんじゃないの?」

 

「………!」

 

「え、まさか思いついてなかったの?」

 

これがヤマトと戦場を共にした2回目の出来事であった。

そして、Wは我ながら単純だと思いつつも、絶体絶命のところを独断で1人で助けに来たこと、そして戦闘していた時とのギャップの差にヤマトに対して、自分の知ってる男とは違うように感じ、少しだけ心を開いていた。

 

 

 

*****

 

 

「あら、ヤマトじゃない。こんな所で会うなんて奇遇ね」

 

「あんたは……」

 

「Wよ。私を抱いたのに忘れちゃったの?酷い男ね」

 

「!?」

 

(え、今の信じるの?)

 

3度目に彼らがあったのは、2度目の出会いの後に一言も告げずに去ったヤマトを見つけるために、Wが苦労して集めた彼の目撃情報を元に向かったとある平地であった。

ヤマトはそこで野宿するつもりだったのか、火をたいていた。

 

「それにしても、まさかまたあんたと会うなんてね〜。大抵、戦場で知り合ったやつと2度目も会うなんて中々ないのよね」

 

「…?3度目じゃないか?」

 

「…ちょっと待って、確かになんか見たことある顔ね……ってあんた、もしかして…」

 

ここで、Wはようやく目の前の少年が数年前のとんでも射撃能力を持った少年だと認識し、同時にあの時の連れの女性が持っていた片刃の大剣を彼が使っていたことで、何があったのかをある程度察した。

 

「…まあ、なんで今は遠距離武器使ってないかは聞かないわ。興味もないしね」

 

「………」

 

「…それにしても、あんた変な武器使ってるのね」

 

Wは話題を変えるようにヤマトの武器と思わしき剣を見る。

その剣はパッと見では機械仕掛けのデザインをしているだけの変わった剣に見えてしまうが、ちょっと目を凝らしてみればそれが複数の剣を合体させて1つの剣になっているものということが分かった。

 

「……知り合いに頼んだら作ってくれた」

 

「ふーん…よくこんな変わった武器作ってくれたわね」

 

「……優しい人だからな」

 

「そう」

 

そこで会話がピタリと止まり、沈黙がその場を支配した。

すると、ヤマトは何を思ったのかゴソゴソと自分のバックパックを漁り始め、しばらくして鍋を始めとした調理器具と、じゃがいもや人参といったいくつかの食材を取りだした。

そして、それを見て何も察せないほどWは鈍くなく、意外そうな目をヤマトに向けた。

 

「あら、夕飯作るの?」

 

「…最近はしてない(からあまり期待しないで欲しい)」

 

「へー?もしかして、私がいるから作ってくれるのかしら?」

 

「?そうだが(今日は冷えるらしいので、俺はともかく、Wが風邪引かれたら嫌だから温かいものを食べた方がいいだろう)」

 

「……っ」

 

少しニヤニヤしながらヤマトをからかったWは、下心なしで自分がいるから作る、というカウンターをもらい何故か気恥ずかしくなり黙り込んだ。

そうしている間にも、ヤマトは手際よく調理を進めていく。

 

「完成だ」

 

「……これって肉じゃが?」

 

「それと、けんちん汁と白米だ」

 

数十分後には、ホカホカと湯気が出ている暖かそうな肉じゃがとけんちん汁、そして飯盒で炊いた白米が折りたたみ式の机の上に置かれていた。

ちゃんと自分の分まで用意されていることに、改めてWは驚きつつも少し警戒していた。

見張っている限りでは薬を入れているような怪しい行動はしていなかったが、最初から食材に仕込んであった場合ではその限りではない。

これは助けてもらったとはいえ、そこまで親しくない人物が作った物の上、傭兵として生きてきたWの警戒は当然のことだ。

しかし──

 

「…すまない、いきなり出されても困るか」

 

「あっ…」

 

無表情ではあるものの、どこか落ち込んだような気配を隠しきれていないヤマトを見て、Wは普段であれば感じないはずの罪悪感を心に覚え、ヤマトが彼女の分のご飯を片付けようとした瞬間、ひょいっと盛られた肉じゃがを摘んで口の中へ入れた。

 

「………」

 

「………どうだ?」

 

「………」

 

Wはヤマトの問いかけを無視して、久しぶりに人が作った温かい料理(しかも美味い)ということもあり、夢中で箸を動かしていく。

 

「…ご馳走様。中々美味しかったわよ」

 

けんちん汁を胃の中へと味わいながら流し込み、Wは箸を置いて素直に感想を述べた。

ヤマトもいつの間にか食べ終わっており、Wの感想を聞いて最初は何も言わずに固まっていたが、次第にフッと表情を和らげた。

 

「そうか…良かった」

 

(……なんだ、笑えるんじゃない)

 

一瞬だけ、ヤマトが見せた表情にWは胸を一瞬だけ高鳴らせたが、彼も感情を持つ人間ということが分かり、何故かほっとしたのだった。

 

そして、食器を片付けいざ寝ようとしたタイミングでまた問題が発生した。

それは、2人というともあって交代で見張りをするという話になった際にヤマトが、自分が寝ずに見張りをやるということを言い出したからだ。

暫く、互いに譲らない言い争いが始まったのだが最終的に。

 

「私はまだあんたのこと信じきれてないの。そんなやつに、1晩中見張り任せられるわけないでしょ?」

 

というWの発言が正論すぎたため、ヤマトは渋々とその条件を飲み、Wの提案により先に寝袋に入り、その瞬間に寝息を立て始めた。

 

(寝るのはっや…)

 

Wはそう思いつつ、パチパチと音を立てる焚き火をボーッと見つめて数十分、いや1時間が経ち始めた頃だった。

 

「……っ……うっ……」

 

「……?ヤマト?」

 

苦しそうに呻き声を出したヤマトにWは訝しながら、近くに寄った。

 

「〜〜〜っ~~~~っ」

 

(?何言ってんのかしら…?)

 

声が小さくヤマトが何を言っているのか聞こえなかったWは、興味半分で何を寝言で言っているのか聞こうとを耳を近づけ──

 

「……なるほど、そういうこと」

 

ヤマトが零していた内容に、改めて自分の予想が当たっていたことが分かりため息を吐いた。

そして、ヤマトの本質も同時に見抜いてしまった彼女は、ヤレヤレと首を振りながらため息を吐き、手をヤマトの頭に手を乗せて、軽く撫で始めた。

 

「大丈夫よ、今は1人じゃないから…だから今は何も考えず寝なさいな」

 

そうして、撫で始めて暫くするとヤマトはスースーと魘されることなく穏やかな寝息を立て始め、Wはそれを確認すると「ふーっ」と長くため息を吐いた。

 

(……ま、命を助けて貰った礼として暫くは面倒を見てあげますか)

 

それに美味しいご飯も付いてくるのだから、とWは自分だけがヤマトの本質を知れたことへの感情を無視するように、そう言い聞かせながら見張りを続けた。

 

 

 

******

 

 

 

(懐かしいこと思い出しちゃったわね)

 

Wはヤマトから借りた源石剣の柄を見て、勝手に世話を焼いてしまったループスの少年のことを思い出していた。

 

『それは預ける。だから、いつの日か返してくれ』

 

自分にそう告げて最後別れて以来、会っていない彼はどうしているのだろうか?

今も変わらず傭兵として戦場を駆け抜けているのか?もしくはありえないと思うが既に死んでしまったのか?もしくは──

 

(……ま、死んでさえなければどうとでもなるわね)

 

Wはそこで思考を中断し、源石剣を無くさないようにと専用のホルダーにしっかりとしまい込んだ。

 

(毎回、いい所で逃げられちゃったけど、次会うときは──)

 

 

*****

 

 

──結局、俺はあの人にお礼を言えずじまいで別れてロドスに入った。

──最近までは、何で行く先々で会うことが多かったのか分からなかったけど、ロドスに来て色んな人と過ごしてきた今なら、あの人は俺が完全に壊れないように見守ってくれていたのかもしれない。

──だから、次会えたらお礼を言いたい。

 

 

「あなたのおかげで、俺は一人の人間として生きていけた」

 

 

 

──これは、ある傭兵たちにあったかもしれない話。

 

──近い未来、彼らが同じ戦場を仲間として駆け抜けられるの日が来るのを願うばかり──

 




完結後に出そうと思ってた、裏設定を遅くなったお詫びとしてサラッと出していくスタイルを貫くアホ作者は自分です(出頭)
皆は真似しちゃだめだぞ!(当たり前)

キャラ紹介
ヤマト:Wを無自覚でたらしこみ、更にムサシが亡くなってからの期間が少しだけ判明し、合体剣を使う前はある人物の形見の片刃の大剣と源石剣を使っていたことが判明。そして、自分が壊れなかった理由がある人物が世話を焼いてくれたことに気が付き、会えたらお礼を言いたいと考えている。なお、身長はこの時点では15な(この先は血が着いていて読めない)そして、この時点でコミュ障による口数の少なさは発揮していた。しかしこの時はまだあがり症は関係していない。まだあがり症は関係していない(大事なことなので2回言いました)

W:今回のメインキャラにて、こちらではまだ実装されていないのにも関わらず、こちらの勝手な設定で書いてしまったキャラ。絶体絶命なところを颯爽と駆けつけ助けられた挙句、乙女心が刺激されるようなことをされまくった結果こんな感じに…チョロインになってしまったことは本当に済まないと思っています…。因みに、お姫様抱っこは密かに憧れてたり。

皆様はバグパイプ当たりました?自分は当たりませんでしたが、前のピックアップでケオペ当てたからいいかなと思ってます。
さらに、Wガチャに向けてガチャ運をチャージしていると思えばダメージは少なかったり。


感想や批評、お待ちしております!


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ワタシノモノ

待っている人、いないと思いますけどお待たせしました!
いや、ちょっと中々納得出来る出来にならなくて結構時間がかかってしまいました…
そして、誤字修正の報告をしてくださった方、本当にありがとうございます!

さて、今回は短いですし内容薄いというゴミ仕様ですが、それでも良いという方は本編の方へどうぞ。


「うぐあっ!?…うっ…ぐっ……」

 

「はぁ…はぁ…勝った……?」

 

鎖のムチで腕を縛り、それから空中で振り回してから地面に叩きつけたループスの青年がピクリとも動かずに地面に倒れているのを見て、全身切り傷や打撲痕などでボロボロの少女は疲れたような声を出しながら、息を吐いて倒れた相手を見る。

 

ループスの青年は彼女の育ての親が遺していた予想データと自身の予想をはるか斜め上を行くほどの強さであった。正直、青年が別の方向に気を逸らしていなかったら負けていたのでは?と思う程だ。

最も、彼女としてはここまでギリギリの戦闘というのは初めてだったため、多少の不満はあれど初めて「楽しい」と思えた戦闘だったのだが。

 

「………ぅ……」

 

少女は痛みと疲れで悲鳴をあげている体にムチを打って倒れている青年の顔を覗き込む。

胸が上下していること、そして呼吸音がしていることからまだ生きているのは分かる。そして、それとは別に──

 

(──これが()()()()()()()かぁ…)

 

痛みで顔を顰めて気を失っている青年を見て、自分と戦っているのにも関わらず、他の有象無象を一瞬だけ気にしたという事実に対してイラつきを感じ始め、更に自分だけのものにしたいという欲求が少女の中でふつふつと初めて湧いて出てきた。

 

(そうだ!私のことしか考えられないようにして、ずっと一緒に暮らしてみよう!)

 

「お嬢!もう終わりやしたか!?正直、もうキッついですが!」

 

「あ、良いタイミングだね。今終わったから医療アーツ使える奴を私とお兄ちゃんの治療に回して!」

 

「お兄…?とりあえず、すぐに向かわせます……初めてお嬢の楽しそうな声聞いたな…

 

「ん?なんか言った?」

 

「い、いえ何も」

 

傭兵家業をしていくうちに、勝手に付いてきた者たちの中で1番気が利く男に少女は「よろしく〜」と言うと、「兄」と呼んだループスの青年の傷に簡単な処置を施すと、彼を担いでフラフラしながらもその場を去った。

 

そしてその場に残されたのは激しい戦闘があったことを示す様な痕と、そのループスの青年が使っていた武器である、バラバラに別れた6本の剣だった。

 

 

 

*****

 

 

「……捜査の進捗は?」

 

「…申し上げにくいですが、全くと言っていいほど進んでおりません」

 

「…ヤマトのエリートメダルからの信号は?」

 

「そちらもまだ…」

 

「そうか…とりあえず何か些細なことでも分かったら直ぐに報告を」

 

「分かりました」

 

あるオペレーターが部屋から出たのを確認すると、ドクターは机の上に置かれた数時間前に起こったある出来事の内容がまとめられた書類に改めて目を通しつつ、自分なりに出来事を簡潔にまとめ始めた。

 

「機密情報を護送し終えた、ヤマトを含めた部隊は帰還途中、突然武装した集団に奇襲をかけられて、当初は互角であったが後ろに控えていたループスの少女がヤマトに攻撃を仕掛け、部隊とヤマトを分断。当時、隊長を務め指揮を行いつつ前線に出ていたヤマトの強制離脱により、結果としてオペレーターの数人が負傷し、ヤマトは行方不明…か」

 

大まかな展開を確認したところで、ドクターは頭を働かせる。

 

(まずは、今回ヤマト達を襲った集団の目的だ。今回護送した情報が目的の可能性は0と見ていい。もしそれが目的なら護送している途中にするはず。次に考えられるのは何かしらを強奪する目的だけど…これも現場にヤマトの合体剣が6本バラされた状態で放置されてたから可能性は低い。…あと考えられるのも可能性は低いけど──)

 

「ドクター、アーミヤですが入っても大丈夫ですか?」

 

「ん、ああ。大丈夫だ、入ってくれ」

 

「失礼します」と言って中に入ってきたのは、先程まで今回の事件に巻き込まれてしまったオペレーター達から証言をさらに取っていたアーミヤだった。

 

「新しい情報は手に入ったか?」

 

「はい…その現場にいたオペレーターの1人がループスの少女がヤマトさんに対して、あることを言っていた思い出したそうなんです」

 

「あること?」

 

ドクターはそれに違和感を覚えるも、思考する前にアーミヤに続きを促した。

 

「それでそのあることって?」

 

「はい、それが『()()()()()()()()()()0()7()9()』、だそうです」

 

「!!」

 

アーミヤが告げた内容にドクターは驚き、そしてループスの少女達が襲撃してきた理由の仮説が一気に現実味を帯びてきたことに、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

「ドクター?どうかなさいましたか?」

 

「…件の武装集団の目的が分かった」

 

「えっ!?」と驚くアーミヤを他所にドクターは更に思考を働かせる。

 

(残る問題は2つ。1つはヤマトの位置の特定。もう1つは彼の過去を話していいかどうかだ。…それだけじゃない。仮にヤマトの位置が特定出来てもどういうメンバーでヤマトを奪還するかの問題もある…)

 

ましてや、相手にはロドスの中でトップクラスの戦闘能力を持つヤマトを破った猛者が最低でも1人はいるのは確定事項というのを踏まえると、自ずとメンバーは絞られてくる。

 

(…どっちにせよ、ヤマトの位置が特定できるまでは時間がある。じっくり考えて慎重に考えるべきか)

 

ヤマトを絶対に助ける。

ドクターはそう心に決意しながら、脳内でメンバーを選択し始めた。

 

 

 

 

*****

 

 

 

「あ″あ″あ″あ″…お兄ちゃんガード硬すぎだよ…」

 

育ての親が遺し、現在では自分と「お嬢」と自分を呼び慕うもの達の拠点のとある一室で、いかにも拗ねてます!といったオーラを隠しきれていない少女がテーブルに突っ伏していた。

 

「お嬢、年頃の女の子がそんな声を出したらダメですよ…」

 

「指図しないでよ…」

 

注意した男性を少女は睨むも、その睨まれた本人は慣れているのか気にしない様子でココアが入ったコップとクッキーを彼女の前に置いた。

 

「とりあえず、甘い物でもどうぞ」

 

「ありがと…」

 

程よい甘さのクッキーをサクサクと食べながらも、頭の中で少女は兄と呼ぶループスの青年のことを考えていた。

先程、目を覚ました青年を早速自分好みの感じにするために、あれこれやったのだが流石、一時期は育ての親に育てられたこともあってか手応えが全くと言っていいほど感じられず、相手をしていた少女が参りかけたほど精神が強かった。

最も、彼を連れてきた理由を答えた際は困惑したような雰囲気をしていたが。

 

「それにしてもさあ、お兄ちゃんったら酷いんだよ?【先生】の元で育ったもの同士の、所謂家族なのに私のこと認めてくれないんだ…本当に妹に対してとる態度じゃないよ」

 

兄というループスの青年を連れてきたから、人が変わったように感情をさらけ出すようになり、以前ではこんな風にぶうたれることは無かった少女に苦笑しながらも、男性は声をかける。

 

「お嬢、前に作っていた装置は使わないのですか?」

 

「確かにあれ使えばすぐに思い通りに動いてくれるけどさ…それはなんか違うと思うから使いたくないんだよね…でも、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──お兄ちゃんが私のものになる前に奪おうとするやつが来たら、使っちゃうかもなあ。

 

 

少女は不服な表情で、聞いた者の鳥肌が立つような冷たい声をだした。

 




今回から暫くキャラ解説のコーナーは休止します。

感想や批評お待ちしております!
あと、R-18の方もリクエストお待ちしています!


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再会

「ウルサス学生組の話かぁ…どんな話なんだろ」→「ぐわぁぁぁぁ!(SAN値減少)」

という6章でも経験した流れをまた味わう羽目になった上に、投稿が遅くなった駄目作者は自分です…
ああいう話見ちゃうと、どうしてもハッピーエンドにしたくなってしまいます…てか基本的にハッピーエンドにさせたいキャラが多すぎる…

そして分割と結合と手直しをしてたら予想以上に時間がかかってしまい、こんな遅くなってしまいました…本当にすみません。


さて、前書きはここまでにして本編の方どうぞ

あと、感想や批評お待ちしておりますので、遠慮なく言ってください!


『実は、お前より前に育てていた子がいた』

 

──ある日、【先生】がそんなことを少し懐かしむように言い出した時は少し驚いた。

私の驚いた表情に気がついたのか、その日から色々と話してくれた。

曰く、私ほどではないがかなりの才能の持ち主であったこと。

曰く、危機察知能力においては私を上回るほどであったこと。

曰く、捨てるべきではなかった子だった。

 

他にも、色々あったけど【先生】が病に侵されてからは、その育てていた子の話をする時は懐かしそうに、そして後悔しているような声音で話していた。

 

──あの日死ぬはずだった私を救ってくれた【先生】は、私にとってはお父さんみたいなものだから、【番号079】は私にとってのお兄ちゃんと見ていいはずだ…【先生】はお父さん呼びはやめて欲しいって言ってたから、呼ばないようにしてたけどね。

それからはお兄ちゃんのことが気になって色々調べて、【先生】が死んで暫くしてから、今こうして一緒に暮らすようになってからは【先生】に褒められた時みたいに胸が暖かいような感じがした。

 

 

──そう、これからはお兄ちゃんと一緒に暮らすんだから、私は■■じゃなくなるんだ。この先、私とお兄ちゃんは■■として一緒に生きていくんだ。だからさ──

 

 

 

 

 

 

 

 

──『俺はお前のことなんて知らない!』

 

 

 

 

 

 

────私のことを【■】って、【■■】だって認めてよ。お兄ちゃん。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「皆、集まったね」

 

ブリーディングルームに集まった、テキサス、ホシグマ、チェン、ラップランド、フロストリーフ、へラグ、シュヴァルツ、アーミヤ、ガヴィル、サイレンス、レッドを見渡しながら、ドクターは声をかける。

 

「今回ここに集まってもらった皆は、2日前に起きた襲撃事件で攫われたヤマトの救出作戦にあたって俺が厳選したメンバーだ。これから作戦概要を説明するけど、なにか質問がである場合はその都度してくれ」

 

ドクターは全員が頷いたのを確認すると説明を始めた。

 

「ヤマトのエリートメダルの信号がつい先程受信できて、彼がとある地点の地下にいることが分かった。その地下の詳しい構造までは不明だけど、あまり時間をかけられないのも事実。そのため、内部構造を把握してない状態で襲撃することになる。ここからは具体的な内容の説明に入るけど、この時点で質問がある者は?」

 

「ドクター、ちょっといいか?」

 

ドクターの呼び掛けに答えるようにガヴィルが声をあげ、ドクターは彼女に続きを促すように返事をする。

 

「どうしたガヴィル?」

 

「いや、ちょっと言いづらいけどよ。何でヤマトの坊主が生きてる前提で話が進めてるんだ?メダルの信号だけで生きてるとは限らねえし、私たちをおびき出すための罠の可能性だって考えられるだろ?それに、そもそもなんでヤマトが攫われたって断定できるんだ?」

 

「おま…!」

 

「まあ、確かにその可能性はあるけど…そうだね、ヤマトが殺されない、そして攫われたって思った根拠は勿論あるけど…これはヤマトの過去に関係があること含まれるから話せない…けど、俺が何もただ助けたいからだとかっていう理由だけで動いていないのは理解して欲しい」

 

「…分かったよ」

 

「ごめんね…さて、これから作戦内容を説明するよ。まず──」

 

ラップランドがガヴィルに食いかかる前に、ドクターは間髪入れずに堂々と答えた。ガヴィルはそれに対し納得した様子で返事をしたところで、ドクターは作戦の内容を話し始めた。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

作戦会議が終わった後、ラップランドは自室に戻り武器の点検をしていたが、それも普段からしていたのもあってすぐ終わってしまったため、ベッドに腰かけ考え事をしていた。

 

思い出すのはヤマトが行方不明と聞いた時のことだ。あの時、ラップランドはタチの悪い冗談かと思い、笑い飛ばしてからそう告げてきたフロストリーフに「そういう冗談はやめてよね」と言おうとして、彼女が体を震わせているのを見て、否応でもそれが事実だと自分に突きつけられた。そこからは、自分でもどうかと思うぐらい荒れて、そして後悔した。

実はラップランドは彼が行方不明になる任務に行く前にいつも通り話していたからだ。

他愛もないいつも通りの会話であったが、よくよく思い返してみればヤマトの雰囲気は少しだけ緊張していたような気がし、もしかしたらなにかと勘のいい彼はこの事態になることを感じ取っていたのではないだろうか。そして、それに気づきドクターに自分も同行する、といえばこのような事態にならなかったのではないだろうか?そのような考えがラップランドを支配する。

 

(……ちょっと歩いてこよう)

 

気が滅入り始めたところで、彼女は時間はまだあるため気分転換に少しだけロドスの中を歩き回ることにし、部屋を出ようと──

 

「ラッピー、うっす」

 

「リーシー…」

 

したところで、部屋の前にいたリーシーに少し驚いた様子を見せた。

 

「…なんでここに──」

 

「来たかって?簡単よ、あんたを激励しに来たの」

 

「は?」

 

「とりあえずちゃんとヤマトを連れて帰りなさいよ?それとヤマト連れ去ったやつは私の代わりにちゃんと懲らしめなさいよ!それじゃ、お願いね!」

 

リーシーはラップランドに言いたいことだけ言い終えると、突然の事態にポカーンとしているラップランドをおいてさっさとその場を去っていた。が、その時ラップランドはリーシーの拳が震え、そして去り際に歯を食いしばっているのが見えてしまい、なぜ彼女がここに来てあんなことを言ったのかを理解した。

 

(勝手に託されても困るんだけどさ……でも、気は紛れたからその礼として、そのお願いはちゃんとこなしてやるよ)

 

何かと絡むことが多い彼女の願いを心の中で受け取ったと同時に、ラップランドの連絡端末が音を鳴らした。

 

「ドクター?どうしたんだい?……うん、ああ確かに。ソレの構造とかは一通り知ってるけど……なるほどね。うん、分かった。それじゃ」

 

出撃前にやることが増えた、とラップランドはため息を吐きながら思うも、ドクターから頼まれたお使いを済ませるためにとある場所に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

「……その話は本当?」

 

「え、ええ…周囲を警戒させているステルスドローンからこちらに向かってくるロドス・アイランドのマークがついた車両が先程確認されました…」

 

「そう…」

 

報告を聞いた少女は湧き上がる苛立ちを抑えきれず壁を殴り付けた。ミシッと嫌な音共に壁にヒビが入る。

今、少女にとってロドスがこの場所を何故突き止められたかは問題ではない。問題は彼らが自分から兄を奪いに来た可能性があるということだけだ。

 

何故だ?何故自分の邪魔をする?確かに最初は兄と殺し会うために接触したのは認める。しかし、それでもロドスの者にはなるべく怪我を与えないように指示をしたし、兄に関しては今はただ■■として過ごせる日々を願っているのに、何故邪魔されなきゃならいのか?

そう、ただ一緒に過ごせればいいだけなのに

 

「お嬢…」

 

「うるさい黙れ」

 

が、今はそれよりどうやって邪魔者を消せばいいのかを考えなくてはならない。相手が精鋭で来るのは容易に想像できる。問題はこちらが保持する戦力で対応できるかどうかだ。正直、相手の精鋭が兄と同等レベルでは負ける。いや、周りの被害を考慮せずに戦えば勝てるが、そんなことをして自分を勝手に慕っている者たちを一緒に消し飛ばすのは流石に気が引ける。

 

「…いや、待てよ……」

 

少女は打つ手なしかとため息を吐いた直後、もう1人()()()()()()()がいるのを思い出した。そして、そこから思考を働かせ──

 

「ねえ、ちょっと頼みたいことがあるんだけど──」

 

 

上手くいけば、自分にとって全て良い方向に進むことが分かると、少女は笑みを浮かべながら近くの者にある指示を飛ばし、他の者にも邪魔者を消すための戦いをすることを告げるために歩き始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「…まさか、そっちから出迎えてくるなんてね」

 

エリートメダルの信号が発せられている地点の建物の近くで、進軍していたラップランド達は目の前で陣形を整えて待ち構えている武装集団と睨み合っていた。

 

「…以前、ここに連れてきたループスの青年がいるはずなんだが、彼をこちらに引き渡してくれないか?」

 

「悪いけど、それは出来ないよ」

 

睨み合ったままでは埒が明かないと判断したドクターが、争いを避けられることを告げた言葉に、奥からそれを否定する声が響いた。

と同時に、武装した者たちが道を開けるとそこから黒いコート羽織り、腰に巻いた鎖のムチを、そして背中に長い太刀を背負い両手に拳銃を持ったループスの少女と、青いコートを羽織り、背中に推進機構がついた片刃の分厚い大剣を背負い、右腰に銃のホルスター、左腰に源石剣のホルスターをつけて、左手に大型の盾を持ち、そして変わったデザインのヘルメットを被りバイザーで目元を隠した青年が歩いてきた。

 

「本当はさ、お前達のことはノータッチでいくつもりだった。腹は立つけど、お兄ちゃんがお世話になってたところだから。でもさ…こうして私の邪魔をしてきたんだから、そうはいかなくなった」

 

「…つまり、ヤマトは引き渡すつもりはない。そして、俺らを排除する…ってことかな?」

 

「お前みたいに話が分かる人は好印象を持てるよ…だから、特別に今から殺してあげるね」

 

「!ドクター!!」

 

とてつもない速さで接近した青いコートを着た青年が、腰から抜いた源石剣でドクターに斬りかかろうとしたのを、いち早く気がついたフロストリーフは間に割って入りその一撃を自身の斧の柄で受け止め、そしてその隙を着いてラップランドが死角から斬りかかったが、まるでそう来るのが()()()()()()()()()()()その者はその攻撃を躱し──

 

「逃がすと思ったか?」

 

シュヴァルツが放った攻撃を左手に持っていた盾で防ごうとするも間に合わず、顔面にまともに喰らい、ループスの少女の方に吹き飛ばされて倒れた。そしてそれを見たループスの少女は「あちゃー」と額に手を当て首を振り、そしてレッドは()()()()()()()()()()()()()()()()()()倒れている青年を呆然と見ていた。

 

「今のが先程言っていた奴か?はっ、拍子抜けだな」

 

「んー、ちょっと制限強くしすぎちゃってたかぁ…いや、でも最初からフルパワーだと()()()()()がもたない可能性あったし仕方ないか」

 

ガヴィルの挑発に耳を傾けずにループスの少女が発した言葉に、ドクター…いやその場にいたほとんどの者が凍りつき、そしてドクターが声を震わせた。

 

()()()()()って……まさか…!?」

 

──顔面を撃ち抜かれたはずの青年は何事も無かったのように立ち上がる。

 

「あら?流石に分かっちゃった?それじゃあ、改めて紹介してあげるね」

 

──目元を覆っていたバイザーは砕け散っており、青年の顔がドクター達の目に写り込む。

 

「え……?」

 

「この人は【先生】からつけられたナンバーは079」

 

──どこか虚ろな目で青年はドクターたちを見やり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤマ…ト……?」

 

 

 

「出来損ないの最高傑作にして、私の大事なお兄ちゃんだよ」

 

 

──青年…ヤマトは源石剣をしまい、銃を抜いて構えた。

 

 

 

 

 

 




次回「出来損ないの最高傑作」


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出来損ないの最高傑作

えー、今回の話なんですが普段より長めな上、少しごちゃごちゃしております。

なので、「まるで意味がわからんぞ!」となったら適当に流しながら読んでください…

それでは本編の方どうぞ!


「ドクター!!」

 

ホシグマは反射的にドクターの前に般若を構えて立つと、そのすぐ後に発砲音と共にホシグマの腕に衝撃が伝わり、弾道がドクターの頭であったが彼女の背筋を凍らせる。そして、何よりも

 

 

──ヤマトがドクターに向けて発砲した。

 

 

その事実が、いやヤマトが今なお自分たちに敵意をむき出していることに殆どのものが信じられずにいた。

 

「お前…!ヤマトに何をした!?」

 

ラップランドが怒りを隠しきれずに体を震わせながら少女に向けて声を荒らげながら、睨みつけた。

サイレンスとガヴィルはともかく、ヤマトと交流してきたラップランド達は彼がそう簡単に自分たちを裏切るとは思えなかったからこそ、あの少女が何かしたのではないか、と確信を持った問いだった。

 

 

「んー…まあ、どうせもうお兄ちゃんと会うことなんて無くなるんだから、特別に教えてあげる…お兄ちゃんには今、ちょっとだけ眠ってもらってるだけなの」

 

「は……?」

 

ループスの少女がわざと勿体ぶるような態度で告げられた答えに、その場にいる全員が固まる。それもそのはず、もし少女の言うとおりヤマトが眠っているというのならば、何故今彼はこうして動いているのか?

少女はその反応は予想済みだったのか、上機嫌そうに話を続けた。

 

「このヘルメットは【先生】が手駒を増やすために作った物でね、このヘルメットを被ったら精神崩壊するまでその被った人のトラウマやそのトラウマを元に作った映像を所謂夢みたいな感じで流し続けるの。そのためには意識がない状態にしないといけないから、特殊な方法で意識を無くしてて、今こうして動いてるのはヘルメットの内蔵されてるある装置がお兄ちゃんを動かしてるだけなの。まあ、それを最初からフル稼働させると確かにその人の能力を最大限使ってくれるけど、体のこと全く考えずに動いちゃうから、使い所難しいんだけどね」

 

「そんな…!」

 

今のヤマトの現状を知った者は絶句した。少女の話が本当であれば、ヤマトが見ているのはかつて自分を拾い育ててくれた恩人が死んでしまう光景を何度も見せられていることになる。しかも、それから暫くは弓やボウガンを持っただけで気絶してしまう程の傷を残したものだ。

その上、下手すると体が壊れてしまう程の動きをする恐れがあるのだから、驚きはかなりものだ。

 

「何故だ…何故、兄だと呼ぶヤマトになんでそんな事が出来る!?そんなことをすれば、ヤマトが…っ!」

 

あまりにも非道な行いにフロストリーフが怒りを抑えきれず、激昴しながら少女に問いかける。誰よりも、温もりを求めているフロストリーフだからこそ余計に理解しきれないことをしている少女の対する答えは──

 

「そんなの、お兄ちゃんと私がこれから一緒に暮らしてくために必要な事だからに決まってるじゃん」

 

更に混乱を招くようなものであった。

 

「なにを…いってる…?」

 

「そのまんまだよ。お兄ちゃんは何を言っても『知らない』の一点張りで私のこと全然認めてくれないし、挙句の果てには『皆ともう会えないのかな』って私がお兄ちゃんのそばにいない時に寂しそうに言ってたんだよ?それも【妹】が、【家族】がいるのにも関わらずだよ?最初はどうにかして私のこと認めてもらおうと思ってんだけど…お前達が来た時に思いついたんだ。私だけしか見れないようにお兄ちゃんを壊しちゃえばいいって!」

 

狂ったような笑みを浮かべながら上機嫌そうに言い終えると、少女は唖然とするドクターを後目にヤマトに告げた。

 

「さてお喋りはここまで。それじゃあ…お兄ちゃん、あいつらを殺そっか」

 

「…………」

 

その言葉を合図にヤマトは源石剣を抜いて、未だに呆然としているフロストリーフに斬りかかるが、それをラップランドが間に入って自身の剣を交差した状態でで受け止めた。

 

「ヤマト…しっかりしてよ!早く目を覚ましてくれよ!!」

 

「…………」

 

「くっ…!」

 

「ラップランド!」

 

ラップランドの悲痛な声にヤマトは感情を感じさせない顔のまま、ラップランドを押し込むように力を加え、彼女が苦しそうな声を出したところでフロストリーフは反射的に戦斧を振るい氷結のアーツが込められた衝撃波を飛ばした。

ヤマトはラップランドの腹を蹴って彼女を離すと、飛来してきた衝撃波を盾で防ぎ、2人の様子を観察するように盾を構えながら様子を伺い始めた。

 

「さて、私達も行くよ。私はお兄ちゃんのバイザー割った奴とおじいちゃん引き受けるから、それ以外は任せたわよ」

 

「了解!行くぞ、お前ら!!お嬢に続け!」

 

そして、当然の事ながら少女達も各々の武器を持ってドクターたちに襲いかかり始めた。

 

「ドクター!」

 

「…ヘラグとシュヴァルツは少女の相手を!テキサス、ホシグマとチェンは他の敵を抑えつつ、アーミヤとガヴィルで2人の援護を!フロストリーフとラップランドはヤマトの相手を!サイレンスは医療ドローンをメインで動いてくれ!」

 

 

「了解!!」

 

 

(くそ、これは完全に俺の失策だ…!)

 

指示を飛ばし終えたドクターは戦闘が始まった場を全体的に見ながら思考を働かせる。

当初の作戦では、レッドを除いたメンバーで相手を陽動し、レッドを内部に侵入させてヤマトを救出する、というものだったが予想以上に敵の数が多いことに加え、救出対象であるヤマトが敵側になってしまっていることが状況を悪化させていた。

 

(一人一人の実力はあの少女とヤマトを除けば、こちらが上だ。けど、あの二人を除いた奴らの相手をテキサス、ホシグマ、チェン、アーミヤ、ガヴィルで抑えるのは明らかに無理だ。突破されるのも時間の問題と見ていい。かといって──)

 

「あははははっ!!いいね!お兄ちゃんと闘った時ほどじゃないけどすごい楽しいよ!!」

 

「ちっ…思った以上に素早いし、勘もいい…」

 

「なるほど、ヤマトを破った実力は本物という訳か」

 

ヘラグとシュヴァルツはループスの少女の銃撃と鎖のムチによって間合いを保たれ、中々有効打が打てない状況であり。

 

「………」

 

「くっ…」

 

「…ボクら2人を相手に息切れしないって、本当にすごいよ……」

 

フロストリーフとラップランドは相手がヤマトということもあるが、容赦のなくなったヤマトの戦闘技能と身体能力によって段々と追い詰められていた。

 

(どちらも人数を割くことなんか出来ない。あと数人、もしくはヤマトさえこっちに戻ってくれれば…!)

 

ドクターはそこまで考えてたから、あることに気がつく。1人だけ自分の視界に入っていない人物がいる。

ドクターは目を凝らして戦場を見渡して、赤い影が気配を殺してヤマトの死角から飛びかかろうと機を探っているのが見えた。

そして、それにラップランドとフロストリーフはいつからか気づいており、なるべく自分たちに注意がむくように立ち回っており、それを把握したドクターはしめたと思い、彼もまるで押されはじめていることに焦っていることを悟らせないようにしている指揮官を演じつつ、思考を働かせる。

 

(正直賭けだ。これでヤマトをこちら側に引き込むことが出来れば、戦局はこっちに傾けられる。けど、もし不可能だった場合は撤退戦にすぐに移行しなきゃならない。そうなればヤマトの救出は不可能だ…レッド、頼むぞ…!)

 

ここでヤマトを救出出来なければ永遠に彼を助けられなくなる、とドクターは半ば確信めいたものを抱きつつ、レッドに全てを託した。

 

 

***

 

 

 

 

一方で、ヤマトと戦闘を繰り広げているラップランドとフロストリーフは改めて彼の戦闘能力の高さを実感していた。

距離をとってアーツによる遠距離攻撃を挑めば銃撃と源石剣の刃を飛ばされて無効化にされ、2人で連携をとった近距離戦闘を仕掛けてもその全てに反応し防いだり、避けきるのはもちろんの事カウンターをいれてきたりと、あらゆる場面に対応しきり、そして何よりも脅威なのは様々な武器を装備しているとは思えないほどの高機動戦闘と武器の切り替えを両立している事だ。

 

「このっ!!」

 

ヤマトはフロストリーフの戦斧の一撃を大剣で受け止め隙ができた彼女に蹴りを入れて離すと、大剣を上に投げ腰から銃を抜いて追撃として2発うちこみ、そして後ろから回り込んでいたラップランドの飛び込み斬りに対して、マガジンリリースのボタンを押して空となった弾倉が出始めたところで、マガジンがラップランドに飛んでいくように振るった。

 

「くっ…!」

 

反射的にそれに意識を向けて弾いたラップランドに、ヤマトは銃を瞬時にホルダーにしまい、左腰のホルダーから源石剣を抜刀し横に一閃。それをラップランドは攻撃を中断して双剣をクロスして受け止めるが、空中で防いだがために後ろに弾き飛ばされ、何とか着地し正面を見やると──

 

「っ!!」

 

上に投げたはずの大剣をキャッチし、それを両手で持って垂直に跳びながら縦に回転しながら剣を叩きつけようとしているのが目に入り、後ろに転がるように跳びギリギリ避け、ヤマトの追撃を防ぐためにフロストリーフは氷結の衝撃波を繰り出すと、ヤマトはそれを後ろ下がって避け、大剣を背中に背負うと銃にマガジンを入れた。

 

「死角からの攻撃もやっぱりダメか…」

 

「流石ヤマト…ってところだね(まあ、本命は赤いオオカミだから注意を引くのが優先事項なわけだけど)」

 

 

ラップランドがそう内心考えながら双剣を構えてヤマトにまた向かった頃、、レッドは気配を消しながらヤマトが被っているヘルメットのある箇所を破壊する隙を伺っていた。

当初、彼女はヘルメットを外す算段でいたのだがこうして身を隠してヤマトを観察していると、ヘルメットのある箇所が危機的な場面になった時に微弱であるが光っているのを見つけたからだ。

 

一か八かではあるものの、ヘルメットを外すよりも手間は省ける上、彼女の腕であればそこの箇所だけをナイフで切り刻んで破壊することは可能だ。

後は、ヤマトに隙ができるのを待つだけ。

そして──

 

(今…!)

 

ヤマトはフロストリーフのアーツの衝撃波をかわし、ラップランドの懇親の一撃を避けた体制で受けたせいでバランスを崩した。

その大きな隙をレッドが逃すはずもなく、彼女は素早くヤマトの死角から光っている箇所──ヤマトのヘルメットの頂点を狙って飛びかかりナイフを振るったのと、背後から彼女が飛びかかってきたのをヤマトが気がついたのはほぼ同時だった。

 

(間に合わない…!?)

 

そして、レッドは自身のナイフがヘルメットを貫くより、ヤマトの源石剣による斬撃が先に自分の体に当たると半ば確信めいた予感を感じたところで、ヤマトの手から源石剣が何かに弾かれたように抜けていった。

 

「!?」

 

ヤマトが視線を向けると、少し離れた所で剣を振り下ろした体勢でラップランドの姿が映り込み、遅れて彼女が絶妙なタイミング、そして綿密な狙いでヤマトの源石剣をアーツによる衝撃波で弾いたのだと理解し。

 

「今だ、やれ!!」

 

「っ!!」

 

ラップランドの叫びにレッドは心の内で感謝し、そしてヤマトの右腕の振り払いよりも先にナイフがヘルメットの光っていた箇所を斬り裂いたと同時に、ヤマトの腕がレッドに当たり彼女はその衝撃で後ろに倒れ込み、ヘルメットをナイフで斬られた衝撃で後ろへ後ずさりし──

 

「そ、そんな…」

 

背中の機械仕掛けの片刃の大剣を抜き、盾を背中に背負うと剣の柄をバイクのアクセルみたいに回し、排気音とともに炎を出し先程と変わらない虚ろな目を向け、剣にアーツを込めてその場で回転するように振り回して衝撃波を発生させ、レッド、ラップランドそしてフロストリーフをまとめて吹き飛ばした。

 

「うぐっ…!」

 

 

吹き飛ばされた3人は受身を取るのを失敗し地面を転がり、そのうちフロストリーフは痛む体を堪えながら立ち上がろうとして。

 

「フロストリーフ防げ!!」

 

「っ!?」

 

ドクターの声で反射的に斧を自身の頭の上に掲げると、両腕にとてつもない衝撃と重さが入り顔を上げると、虚ろな目で剣を押し込もうと力を入れるヤマトの姿が視界に入った。

 

「ぐっ……!」

 

「アーミヤ!フロストリーフに援護を!」

 

「ダメです!距離が遠くて…!」

 

「ドクター!正直これ以上は抑えきれない…!」

 

「くっ…!」

 

ドクター達の焦る声が耳に、そして視界には打ちどころが悪かったのか蹲っているレッドと、こちらに痛みを堪えながらも走ってきているラップランドの姿がフロストリーフの視界に入るが、彼女にそれを気にする余裕はなかった。

 

「ヤマト…!目を覚ましてくれ…!!」

 

無駄だとは分かっていても、フロストリーフは目の前の優しい心を持つ友に向けて声をかけるが、変わらずヤマトの目は見ると呑まれてしまいそうな程の虚無なままであり、フロストリーフが諦めかけ顔を下げた時時だった。

 

「……?」

 

ふと顔に何か水のようなものが当たり、そしてそれが断続的に当たっていることに気が付き顔を上げると──

 

「え……」

 

変わらず虚ろな目のままであるものの、しっかりとその目から大量の涙を流すヤマトが視界に入り、そして彼の剣がカタカタと震え両腕にかかる圧も和らいでいることがわかった。

 

「ヤマ…」

 

「ふ…ちゃ……」

 

「っ!ヤマト!?お前…!」

 

そして耳を澄ましても聞き取るのが難しいほどの声量でヤマトの声が聞こえ、フロストリーフは驚きながらも耳に神経を集中させ──

 

 

「お…がい…おれを……」

 

「────────」

 

「っ!!ヤマっ…!」

 

ある言葉が耳に入ったフロストリーフがヤマトに声をかけようとした時だった。

 

 

「ディオ・ヴォーレント!!」

 

 

 

掛け声と共にテキサス達を取り囲んでいた者たちにドクターの後方から銃弾の雨が降り注ぎ、そしてヤマトは反射的にその場から跳び下がり、によるラップランドの双剣に一閃を避けた。

戦闘を行っていた全員が、銃弾を放った者の姿を見て目を見開く。

 

「は………?」

 

「ギリギリセーフだったね!いやあ、間に合ってよかった!」

 

「エクシア!?」

 

「だけじゃないよ!!」

 

少女が予想外の展開に目を見開き、そしてドクターがこの場に現れたエクシアにに驚きの声をあげ、それを彼女がが否定した直後。

 

「行動予備隊A4現着しました。皆、チェンさんたちの援護にいくよ!」

 

「りょーかい!いっくぞ〜!」

 

「ちょ、ガーディ!!」

 

「あー、もう元気いいね〜。そうそう、ボクとマゼラン、エイヤフィトラもいるよ〜」

 

行動予備隊の面々、プロヴァンスにマゼラン、そしてエイヤフィトラが遅れてその場に現れた。

 

「みんな、どうして…」

 

「シルバーアッシュの野郎が、嫌な予感がするっつって俺らを集めてお前らのあとを追わせたんだよ…まあ、結果として正解だったみたいだな」

 

「はっ、エ、エンカク!?」

 

 

「おい、なんだその如何にも予想外って声は」

 

ドクターの無線越しの疑問に答えつつもエンカクは、先程から動かずにじっと見つめるヤマトを見る。

 

「事情は無線を盗ちょ……たまたま聞こえてきたから知ってはいるが、あんな小娘に堕とされるとは随分腑抜けたじゃねえか。お前の醜態を見るのは正直好きじゃねえからよ、さっさと終わらせて…」

 

「待ってくれ、ヤマトの相手は私一人がやる」

 

エンカクとヤマトの間にさも当然かのようにフロストリーフが割り込んだ。

 

「はあ?何を言ってるんだ?」

 

「そうだよ!ボクら2人がかりでもヤマトに押されてたんだ、君1人でどうにか出来るわけ…」

 

「頼む、絶対にあのバカ狼を正気に戻すと約束するから私一人にやらせてくれ」

 

否定してきたエンカクとラップランドにフロストリーフは真っ直ぐに見つめた。

そして数秒程見つめ合い──

 

「…しょうがねえ。今のあいつを倒してもそんなに楽しくないだろうからよ、譲ってやる」

 

「はあ!?マジで言ってんの!?」

 

「マジだよ。それに、こういう目をしてる奴は絶対に譲らねえんだよ。好きにやらしてやれ」

 

それだけ言ってその場を離れてまだ蹲っているレッドの方へ足を進めたエンカクにラップランドは盛大なため息を吐くと、フロストリーフに向き直った。

 

「分かったよ。その代わり、ダメだとボクが判断したらすぐに間に入るからね?」

 

「ああ、構わない。…安心しろ、ちゃんとお前の分まであのバカを説教してやるさ」

 

フロストリーフはそう不敵な笑みを浮かべながら、大剣を構えたまま微動だにしないヤマトへ先程彼が自信に告げた願いの意味を考えながら足を進める。

 

『────────』

 

(あの願いはその言葉通りに受け取るものじゃない。アイツの本当の願いは──)

 

フロストリーフはある一つの答えにたどり着き、ヤマトと少し離れた場所で歩みを止めて戦斧を構える。

この答えはどちらかと言うとこうであってほしいと、自分が望んでいるものだ。それでも──

 

「…行くぞバカ狼!!」

 

──間違いだとは言わせない。

その決意を胸に彼女は目の前の青年に戦斧を両手に突撃した。

 

 




実はヤマトの攻撃方法には某闇魂の狼騎士さんのモーションを入れてたり。



あと、この妹編(仮称)終わったらとあるifルートを番外編として出します(確固たる決意)


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救い

皆様、大変お待たせしました!書いてたら、予想以上に当初のプロットよりも手直しするところが多くてこんな遅くなってしまいました…次回はもっと早く出せるように精進しますので、見捨てないでください…!


今回はフロストリーフvsヤマト回。
果たして彼女はヤマトを正気に戻すことが出来るのか…?


「ヤマト…なんで引き金を引かなかったの…?」

「あなたが早く引き金を引けば助かってました」

「ヤマトのせいでメランサが死んだんだよ!」

 

──もう、限界だった。ムサシを死なせてしまったこと、引き金を引けなかったせいでメッちゃんを助けられなかったことが。

──そして、何よりも。今俺がラーちゃんたちに剣を向けてしまっている事実が俺の精神を抉った。

──やめてくれ、といくら願ってもラーちゃん達を傷つけていく俺。傷ついて倒れる皆。

 

「お前のせいだ」

 

──俺の下からそんな声が聞こえてくる。下を見れば、俺が今まで助けられなかった…いや見捨ててきた、殺してきた人達が恨めしそうな顔でこちらを見ている。

 

「お前がいたから死んだ」

「お前さえ居なければ」

「お前が死ねばよかったのに」

 

──そうだ。俺さえいなければこんなに死んでしまう人はいなかった。孤児院の皆だって、ムサシだってそうだ。俺が殺してしまった。

──生きるべき人を殺して築きあげた屍の上に俺は立って生きている。

──そして、俺は今大事な人達を傷つけて不幸にしている。

──結局俺は、生きてはいけない、皆に会わなければ良かった存在。

──そう思った時、何故か分からないけど張り裂けそうな痛みが胸を走った。痛い。何でだろう?何で怪我してないのにこんなに痛いんだろう?

 

──『ヤマト!早く目を覚ましてくれ…!』

 

──大事な人の声が聞こえた。

──俺みたいなロクデナシに気を使ってくれた優しくて、暖かいあの人の声だ。そしてその人を俺は傷つけている。

──もう嫌だ…嫌だ嫌だ!イヤだ!!これ以上皆を傷つけたくない!剣を向けたくない!!殺したくない!!どうすればいい?どうすれば俺は皆を傷つけない?どうすれば皆を殺さない?

 

 

 

────ああ、そうか。死ねばいいんだ。でも、体は動かせないから自分で死ぬことも出来ない。精々、今の俺にできるのは体が動かないように意識することぐらいしかできない。

 

 

 

──自分でも最低なことを頼む自覚はある。けども、これ以上皆を傷つけたくない。だから──

 

 

 

 

 

 

 

──フーちゃんお願い、俺を早く殺して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 

「ふっ!」

 

フロストリーフは明らかにキレが落ちた袈裟斬りを受け流し、返す刀で戦斧を振るう。

ヤマトはそれをバク宙で避けると突進しながら大剣を薙ぎ払うように横に一閃し、それをフロストリーフは戦斧の柄で受け止めその場に留まり、鍔迫り合いのような形へとなったところで、彼女はある確信を抱いた。

 

(ヤマト…お前なりに頑張ってくれてるんだな)

 

フロストリーフとヤマトの力の差はかなりあり、先程のような強烈な攻撃を受ければ普通フロストリーフはその場に留まることは出来ず、後ろへ押されてしまう。だが、そうなっていないということは動きのキレが落ちていることを踏まえるとヤマトの意識が戻りつつあることが考えられ、フロストリーフはそう確信していた。

 

(恐らく、レッドの一撃でヤマトの意識を奪っている箇所に不具合が起き始めたことが原因。だから狙う箇所は決まっている訳だが…)

 

「なあ、ヤマト。なんでお前は私に殺してくれって頼んだ?」

 

「…」

 

 

先程言われたヤマトから言われたことに疑問を持っていたフロストリーフの問いかけに、ヤマトは変わらず無表情なままであったが、彼女はそれに気にすることなく口を動かし続ける。

 

「前からお前の自分を犠牲にするかのような動きには気になってはいたんだ。でも、それはただお前が自己犠牲の気が強いってだけの危うい奴なんだと勝手に決めつけていたが、本当はそれだけじゃなかったんだろ?」

 

「……」

 

「お前は、心のどこかでは死にたいと思っていたんじゃないか?」

 

フロストリーフがその一言を言った瞬間、ヤマトは後ろへ跳んで距離を取り始めたが、フロストリーフは戦斧を構えて距離を詰めるために駆け出し戦斧を振るう。

ヤマトは大剣と体術を駆使してフロストリーフの一撃をいなしていくが、段々と反撃をする回数が減ってきており、それはフロストリーフに自身が思っていることをぶつけられる余裕を作り出していた。

 

「助けてくれた恩人を死なせてしまったことへの後悔、そして身近な人が死ぬ事への恐怖。それから解放されたいってのもあったんじゃないのか?」

 

「…………」

 

「ふざけるな!!

 

フロストリーフは怒りを隠さない様子で大声でヤマトを叱責し、互いの武器がぶつかり合い火花が飛び散る中、彼女はヤマトにも聞こえていること信じてを更に言葉を紡いでいきながら、自身の思いを乗せて力強く戦斧を振るっていく。

 

「それはただの逃げで、お前の境遇を聞いたらその逃げを肯定する奴もいるかもしれない。けど、私はそんなこと絶対に認めない!!」

 

「……………」

 

「ムサシがお前に死んで欲しいって言ったのか!?彼女を知らない私でも、そんなこと言わないのは分かるし、彼女はお前に生きて欲しかったはずってことも容易に想像できる!それに、私だってお前に生きて欲しいって思ってる!だから…!!」

 

「…………………」

 

「早く目を覚ませ!この大バカオオカミ!!」

 

「っ!」

 

 

ヤマトが大剣を振り下ろす瞬間に戦斧を思いっきり薙ぎ払うように振るい、彼が握っていた大剣を吹き飛ばしたフロストリーフは直ぐにがら空きとなった頭部のヘルメットに戦斧の柄の部分を思いっきり叩きつけた。

それを食らったヤマトは勢いを抑えきれずに顔面から地面に鈍い音を発しながら倒れ込み、そしてヘルメットは一部が破損した。

 

「はあっ…はあっ…」

 

「どう…し、て……?」

 

「!ヤマト、気がついて…」

 

「どうして、そう思えるの?俺はムサシや孤児院の皆、それまでにも色んな人を殺して、今はフーちゃんたちも傷つけてたのにどうして…?」

 

フロストリーフはヤマトの口から孤児院の者を殺したという新しい事実に少し戸惑った。しかし地面から顔をだけを上げて、涙を流しながらどこか縋るように問いかけるヤマトが、フロストリーフには彼が迷子になって不安になっている子供に見えてしまった。

 

 

「はあ…全く……」

 

ため息を吐きながらもしゃがんで壊れかけのヘルメットを取り外して、それを放り投げて彼と目を合わせた。

 

「私…いや、私たちにとって、お前は大事なヤツなんだよ」

 

フロストリーフはヤマトの上半身を起こしてぎゅっと抱きしめる。そして、ヤマトはやっと自分が最低だとは分かってはいたがどれほど酷いことを彼女に頼んでしまったのか、自覚し震え始めた。

 

「……フーちゃん、俺……!」

 

「どうせ、とんでもないことを頼んだとかそんなところだろ?別にいいさ、お前のことで苦労するのは慣れたからな」

 

「フーちゃん…うぐっ、うううう…」

 

「泣くな泣くな…全く無駄に世話のかけるやつっ…おい、鼻水つけるな!このアホオオカミ!!」

 

「だっでええぇ……」

 

泣き虫な弟をあやす姉のように、フロストリーフはどこか安心感を得ながらもヤマトの背を撫で落ち着かせ始め──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「走れ」

 

突如、雷鳴が鳴り響いた。

 

「!?何の…なっ…」

 

「そんな…!」

 

何事かと思ったフロストリーフが振り返るとそこには──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──殆どの者たちが倒れふしバチバチと音が鳴る太刀を地面に突き刺しているループスの少女が視界に入った。

 

 

 




1分でわかる(かもしれない)ヘルメットくんの軌跡


「ふむふむ…とりまこのムサシって奴が死んだ時の記憶垂れ流そ→お、ついでにメランサってやつをボウガンの引き金引けなかったから殺されちゃって周りから責められたことにしよ→外はなんかドンパチしそうだなぁ…せや、仲間と戦ってところをリアル体験させたろ→おまけに周りから恨まれる構図を追加しよ→赤いオオカミさんに刺されかけたけどヤマトくんのポテンシャルのお陰でギリセーフ→ん?(ゴロリ感)なんかこいつの意識強なってない?→狐ちゃん??ちょ、そこは強くしちゃらめええ!→オデノキノウハボドボドダ!→ヤマトの自我完全復活」

まるで意味がわからんぞ!って方はとりあえずヤマトは新しいトラウマを植え付けられるところだったことさえ把握してればヨシ!です(現場猫感)

そして妹ちゃん(自称)の様子が…?


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俺がすべきこと

ヤマト&フロストリーフvs妹ちゃん回

果たして2人は彼女を打ち破ることは出来るのか?


──何が起こった?

 

チェンは状況を理解するため、何とか残っている意識でこうなるまでの過程を順番に思い返していた。

まず、メランサたちが応援として入ったおかげで押され気味だったチェンたちは武装集団を押し返した。ラップランドはドクターのが念の為にという指示の元例の物を取りに行き、ループスの少女はエンカクが乱入したのもあって、何とか勝てるだろうと考えている最中視界にヤマトがフロストリーフに抱きしめられて泣いているのが入った。

それで何とかなったのかと安堵した直後、気がついたら倒れていた。

 

(本当に何が…?思い出せ、絶対にこうなる原因なったことがあるはずだ…)

 

『意識があるものは応答してくれ!』

 

「く…ドクター、無事だったのか…?」

 

無線から入ったドクターの声にチェンが痺れて動けない体を何とか動かそうとした時だった。彼女はあることに気がついた。

 

──何故、体が痺れたような感覚を受けている?

 

(…確か、あの時一瞬だけ光ととてつもない轟音が発生した。そして、体が痺れている…ということはヤツのアーツは…あの時起こったのは…!)

 

「チェン、大丈夫か!?さっきへラグたちのところで──」

 

そして、その後ドクターに告げられた言葉を聞いてチェンは自身の予想が当たってしまったことに苦虫を潰したような表情を浮かべ、意識が途切れる前に状況を報告した。

 

 

 

*****

 

 

 

 

「フーちゃん!!」

 

「ヤマト!?何を…っ!?」

 

ヤマトが自身の本能が命ずるがままにフロストリーフを抱きしめながら横に転がりこみ、突然の行動にフロストリーフが声をあげようとして先程いた位置にループスの少女が太刀を突き刺しているのが目に入り、ヤマトが助けてくれたのだと把握した。

 

少女は地面に突き刺した太刀を引き抜くと、ぐるんと顔をフロストリーフとヤマトに向けると恐怖を感じさせるような冷たい声音を発した。

 

「あのさ…お前、何してんの?」

 

「は…」

 

「お兄ちゃんのヘルメット壊したのはまだいいよ。また、新しいのを作ればいいだけどだからさ。けど、何で泣いてるお兄ちゃんを抱きしめてるの?おかしいでしょ?ねえ、私はお兄ちゃんの【妹】で、お兄ちゃんは私の【お兄ちゃん】なんだよ?普通は私が泣いてるお兄ちゃんを抱きしめるはずでしょ?なのになんで、お前がやってんの?おかしいでしょ?おかしいでしょおかしいでしょおかしいでしょおかしいでしょおかしいでしょおかしいでしょおかしいでしょオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイ!!」

 

「これは…」

 

頭を掻きながら狂ったように同じ言葉を連呼する少女を見て、フロストリーフが恐怖の感情を抱き始めた時だった。

 

「死ね」

 

「っ!」

 

少女が太刀を振るったと同時にヤマトとフロストリーフが横に飛び退いたその直後、アーツの衝撃波が先程2人がいた地面を抉りながらとおりすぎた。地面の悲惨な状況を見たフロストリーフは、もし避けられていなかった場合のことを考え冷や汗を流している一方、ヤマトはホルスターから銃を抜き、背中にかけていた盾を左手で持ってフロストリーフを守るように立った。

 

「フーちゃん、ここは俺に任せてみんなをお願い!」

 

「何を言ってるんだ!?私も…!」

 

「この子のアーツの対処法は俺しか知らないし、それに…あの子の相手は俺がしなきゃダメなんだ…!」

 

ヤマトはあの少女は自分と同じ境遇で育ち、有り得たかもしれない自分の未来であると確信めいたものを抱いていた。そういったほぼ使命感とも言えるものとある感情がヤマトを突き動かしていた。

フロストリーフはヤマトを1人で戦わせることに不安を感じていたが、彼の言葉の通りにあの少女のアーツを対処できるのがヤマトしかいないのであれば自分は足でまといなるのは明白。

それならば、自分はやられてしまった仲間たちの救助に向かい、援護に行ける人数を増やしに行く方がこの場合は正解かもしれない。

だが──

 

「悪いが、それは無理な相談だ」

 

フロストリーフが戦斧を両手で持ちヤマトの横に並び立つと、ヤマトは慌てた様子で彼女を説得し始めた。

 

「話聞いてた!?あの子の相手は俺が適任だって…」

 

「関係ない。私は後悔しない方を選びたいから勝手に選んだだけだ、アホオオカミ。それに…」

 

フロストリーフの目はコソコソとサイレンスとガヴィルの方へ向かっている赤い影がいることを捉えていた。

ならばこちらがやるべき事はその存在を気づかれないように囮に徹すること。

フロストリーフが戦斧を構えたの見て、ヤマトは説得は不可能(そもそも口で勝ったことは無いのだが)と判断すると、【妹】を止めるための策を練り始める。

 

「フーちゃん。あの子のアーツは雷系統で、雷のアーツを飛ばしたりそれを武器に纏わせてきたら、その攻撃は絶対に防御しないで避けて。防御したらそのまま感電するから」

 

「わかった。他には?」

 

「あの場にいたへラグさんやあの子の味方たちを含めた全員を倒したってことは、恐らく広範囲に及ぶ攻撃の手段を持ってるはずだから挙動全てを観察しないとかわしきれないと思う。とりあえず、フーちゃんは距離をとってアーツであの子の動きを阻害する感じでお願い。前は俺がやるから」

 

「…武器は銃しかないのにか?」

 

「盾とブーツにナイフもあるし、あの子の動きは分かるから大丈夫」

 

「分かった…いくぞ!」

 

フロストリーフがそういうや否や、ヤマトは発砲しながらループスの少女と距離を詰め始めた。

 

 

 

 

*****

 

 

(この子はなんでそこまで家族という形にこだわるんだろう?)

 

少女の雷が纏った斬撃を表面を自身のアーツを纏わせた盾で受けながら、ヤマトは疑問を持ち始めた。

ヤマトは知識では血縁関係はともかく戸籍としてそうであるものが家族であるというのは知っていた。だからこそ、血も繋がってなければ戸籍としても家族ではない自分のことをなぜ兄と呼ぶのかが分からなかった。

 

「なぜ、お前は俺の事を兄と呼ぶ?」

 

「…っ、急にどうしたの?」

 

無意識に疑問が口に出ていたことにヤマトは少し戸惑うも、自身の勘が引き下がってはいけないと言っているような気がしたため、攻撃を捌きながら彼女の本心を聞き出すことにした。

 

「俺はお前のことを知らない…いや、正確には俺の上位互換ということぐらいしか聞いていないし、会ったこともなければ血縁関係もない筈だ。それなのに何故俺を兄と呼ぶ?」

 

「っ、そんなの関係ないでしょ!」

 

「ぐっ…!」

 

「そんなの知って何がしたいの!」

 

少女の琴線に触れてしまったのか、彼女は語気を荒げて太刀を力強くヤマトへ振り下ろしていき、その猛攻をヤマトは盾で受け止めながらも引かずに言葉を紡いでいく。

 

「今更…何で…!私がどんなに話しかけても全然聞いてくれなかったくせに!!」

 

「っ……」

 

「自分勝手すぎるよ!!」

 

「っ…!」

 

「ヤマト!」

 

フロストリーフは押され気味となったヤマトを援護のために、少女に氷結の衝撃波を放つが少女はそれを舌打ちをしながら太刀で斬り払った。その一瞬の間にヤマトは浮かぬ表情のままフロストリーフの隣へと移動した。

 

「すまないヤマト。中々援護するタイミングが掴めなかった」

 

「…あの子の立ち回り的に多分多対一の戦闘が得意だと思うから、気にしなくていいよ……」

 

「はあ…言いたいことがあるなら遠慮せず言え」

 

「…なんで分かったの?」

 

「流石にわかるさ…」

 

フロストリーフの早く言えとばかりの視線に、全然敵わないなとヤマトが内心思い苦笑いを浮かべ、すぐに表情を真剣なものへと切り替えた。

 

「俺とあの子だけで戦わせてくれないかな?」

 

「…理由を聞いても?」

 

「あの子の本心を聞いて受け止めて、俺の本心をあの子にぶつけたいんだ」

 

「何で、そうしようと思った?」

 

「…そうするべきだと思ったから」

 

「…お前な。根の理由がそんなので1人で戦わせるわけ──」

 

「戦わせてあげなよ」

 

彼の根本的な理由がかなり曖昧なものであることにフロストリーフが否定しようとした時、2人の背後から声が聞こえ振り返るとそこにはヤマトの合体剣を両手で持っているラップランドが立っていた。

 

「ラーちゃん!それって…」

 

「ヤマトが連れ去られた場所にバラバラに散らばってたこれを一つの剣に戻すの結構疲れたんだよ?仕組みは知ってたけど、実際に組み込もうとしたら上手くハマらなくてさ…ま、何とか出来たけどね」

 

「…それよりも、お前は何で戦わせてもいいと言った?ヤマトが負ける可能性だって…!」

 

「うん、それはボクだって思ってるし正直な話戦わせたくないよ」

 

「え」

 

フロストリーフの発言に対し、ヤマトが1人で戦うことを肯定してくれたラップランドの口から飛び出したのは、フロストリーフの発言とほぼ同じ内容であり、ヤマトが素で声を漏らした。

ラップランドはそこで「けど」と一旦切り。

 

「ボクはヤマトを信じるよ。ヤマトのそういう理由って大抵はよく当たるしね」

 

「ラーちゃん…」

 

ラップランドの真っ直ぐな発言がヤマトの心に響く中、フロストリーフは手を顎に当て考え込み、そして数秒後にはため息を吐いた。

 

「はあ…仕方ない。お前のやりたいようにやれ」

 

「…フーちゃん、ありがと「ただし!」?」

 

「…危ないと思ったらすぐに割り込むからな」

 

「…わかった。ありがとうフーちゃん」

 

ヤマトはフロストリーフに礼を告げ、ラップランドから合体剣を受け取り感触を確かめるように軽く左右に振るい、全く違和感がないこと確信してループスの少女の方へ足を進めようとして、一旦立ち止まった。

フロストリーフとラップランドが怪訝そうな視線を向ける中、ヤマトは振り返り──

 

「ありがとう2人とも。絶対に戻ってくるから」

 

そう一言だけ、約束事を取り付けるように告げてループスの少女の方へ足を動かした。

 

「…ああ、戻ってこいよ。必ずな」

 

 

 

****

 

 

 

 

 

「作戦会議は終わった?」

 

「…ああ」

 

「つれないね…まあ、あの女たちを連れてきてないってことはもしかしてお兄ちゃんが1人で私の相手をするってこと?」

 

「ああ、そうだ」

 

多少冷静になったであろうループスの少女は、冗談半分で言ったことをヤマトに即答で肯定されたことに予想外だったのか目をぱちくりさせた。

が、それも一瞬ですぐに冷徹な目をヤマトに向けた。

 

「……舐められたものだね。私、サシでお兄ちゃんに勝ったんだよ?」

 

「…ああ、確かに俺は1度負けた。だが、今度は負けない」

 

少女の突きつけた事実にヤマトは少し悔しそうに肯定したが、視線を少女の目に真っ直ぐぶつけながら宣言するように言い放った。

少女はそれを聞いて少し呆れたように息を吐き、だがそれも一瞬でその後には笑みを浮かべて太刀を構え、ヤマトもそれに合わせるかのように合体剣を両手で持ち正眼の構えをとる。

 

 

そして、2人は示し合わすかのように駆け出し互いの武器を振り下ろした。




妹ちゃんの実力、今回じゃ判明しませんでした…じ、次回こそ次回こそ分かるはずですから…(震え声)


次回「兄として」



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兄として

関係ない話ですがエアースカーペくんのS2の名称聞いた時真っ先にGNソードビットが思い浮かびました(小並感)

あとWの実装まだですか?()


「ドクター、すまない。私が不甲斐ないばかりに…」

 

「いや、気にしないでください…でも、ヘラグさんとシュヴァルツ、エンカクの3人であの子を倒せないなんて、とんでもない実力をもった子だ…」

 

「いや、それはちげえよ」

 

「え?」

 

 

レッドの働きによって動けるようになったサイレンス達医療オペレーターの治療を受けたヘラグがドクターと話している中、同じく手洗い治療を受けたエンカクが口を挟んだ。ドクターはそれに驚きつつも目で彼に続きを促し、エンカクは息を吐いて話し始めた。

 

「めんどくせえから結論言っちまうと、あいつは()()()()()()したタイプだ…最も、個人的な実力はヤマトに少しだけ劣るかどうか程度ってのも追加されるがな」

 

「立ち回りが巧いんです。常に私の射線上にヘラグ殿がいるように動き、そして撃てる隙を見出しても陽動が限界レベルでした…」

 

「しかも、それはヤマトみたいな直感で動くようなものではなく、広い視野と戦闘をこなしながら様々なことを考えられる並行思考能力、そして頭の回転の速さによってそれを実現してやがる…まあ、多少は勘もあるだろうけどな」

 

彼らが語ったのは少女のバカげた能力。つまり、彼女はエンカクが加入する前からそして加入したあともへラグやエンカクの相手をしながらシュヴァルツの位置を把握し、シュヴァルツの援護射撃が通らない立ち回りを常に考えて動いていたのだ。

 

「そ、そこまでなのか…」

 

「それだけじゃねえ。お前も遠くから見えただろうが、俺らはあいつが放った広範囲高威力の雷のアーツを食らった。そして、あのガキはそんなアーツを使ったのに平然としてやがった…これの意味がわかるか?」

 

「…なるほど、彼女を倒そうとして人数を送りすぎると一瞬で全員無力化されるってことか……」

 

規格外。まさに、あの少女は規格外な能力を持っていることをドクターは実際に戦った猛者から聞いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

──思い出したことがある。

──それは俺にとっては思い出したくなかったことでもあったけど、同時に何であの子のことを頑なに認めなかったのかが分かった。

 

 

──何故だろう。理由が分かると、あの子のことをしっかりと見れた。

──そして同時に理解したんだ。まだ、はっきりと認めてはないし自覚できてないけど、俺は【■】としてこの子を受け止めないといけない。

 

 

 

 

****

 

 

 

ヤマトは目で捉えるのがギリギリな速度で振るわれた袈裟斬りを受け流し、それを見越した上で振るわれた2太刀目を身体を後ろに逸らしてかわしつつ、合体剣を振るった。

少女はそれを屈んでかわし、お返しとばかりに太刀を振るいヤマトもそれに合わせるように合体剣を振るう。2人は剣戟は既に数えるのすら億劫になるほどのスピードで展開されており、そこから2人の実力の高さが伺い知れる。

 

「なんで君のことを認めたくなかったのか、さっきまで分からなかった」

 

「…っ、それって、何となくで私の事無視してたってこと?」

 

「…ああ。ただ、決定的だったのは君が【先生】が言ってた子だと分かった時だった」

 

「くっ…!」

 

少女の斬撃を弾き返したヤマトは、嫉妬が入り交じった目線を彼女に向けながら剣を振るう。少女は思わず気圧されて、振るわれたなぎ払いを太刀で受け止めてその勢いのまま後ろに下がりながら、左手で鎖のムチを取り出し電気を流しながらヤマトの腕に向けて振るった。

 

 

「君が【先生】に認められたっていうのが羨ましくて、そして認めたくなかったんだ。だから、君が【先生】の話を楽しそうにしてくる度に嫌な気持ちになった」

 

ヤマトはそれをかわし、同時にその位置へ放たれていた雷の衝撃波をアーツを表面に纏わせた合体剣で切り裂きながら距離を詰め、少女が牽制として銃を抜く前に斬りかかり、鍔迫り合いの状態へと持ち込み、自分の中の答えを彼女に聞かせるために口を動かした。

 

「ちっ……!」

 

「あの人は今でも憎いとは思う。けどさっき思い出したんだ。演技だったかもしれないけど、俺は優しかった【先生】を知ってしまっていたから。だから余計に楽しそうに【先生】のことを話し出す君が嫌になったんだ」

 

それがヤマトが妹と名乗るループスの少女に対して、否定的な態度をとってしまっていた理由だった。最初こそ、理由はよく分からなかったが、少女がヤマトに着けたあのヘルメットのせいでヤマトはかつて自分が殺した孤児院の子供をの顔を見て思い出してしまったのだ。

 

──すぐに泣いてしまう自分を微笑みながらあやしてくれたこと。

──配膳を手伝ったら暖かい手で頭を撫でながら褒めてくれたこと。

──眠れない時に絵本を読んでくれたこと。

 

思い返せばキリがない。

結局あれが演技で偽りの暖かい優しさだったとしても、ヤマトにとっては初めて貰った人の温もりだった。

だからこそ、自分にとって間違いなく【親】であった【先生】から自分を離す原因となった少女に対して、無意識ながら嫉妬して、彼女のこと無視してしまっていたのだ。

 

ヤマトが自分のことを嫌っていた理由を知れた少女は納得できるかどうかは別として、胸の突っかかりが取れた。が、しかし。それとは別の新たな疑問が生じ始めた。

 

 

「そんなこと話して何がしたいの!?」

 

「…………」

 

「今更…!今更そんなこと聞かされたって、どうしていいか分からないよ!!」

 

少女は癇癪を起こした子供のように、感情をさらけ出しながらヤマトへ太刀を力任せに振るっていき、ヤマトはそれを避けることはせず剣でその全てを受け止め、防ぎながら言葉を発する。

 

 

「君のことを聞かせてくれないか」

 

「…っ!」

 

真剣でどこか温かさが入り交じった目を向けられた少女は、あからさまに動揺してしまった。

そしてヤマトがその隙を逃すはずがなく、鍔迫り合いの状態で合体剣を力強く振り抜いて少女の体勢を崩し、そこを狙うかのように太刀に強烈な一閃を加え、少女の手から太刀をはじき飛ばした。

 

「なっ…!?ちっ…!」

 

少女は自身の失態に驚き、舌打ちしつつもホルスターから拳銃を取りだしヤマトに向けて撃ちながら距離を取るために後退し、そしてヤマトはそれを致命傷になる部分だけ避けるようにして彼女に特攻した。

 

「君のことを否定した俺が言える義理じゃないのは分かってる」

 

「っ!」

 

銃弾が容赦なくヤマトの体を貫いていく中でも、彼は痛みを気にせずただ自身の覚悟と答えを伝えるために足と口を動かしていく。少女はヤマトの命を捨てるような行動を見て、それを止めるためにムチを何のフェイントもなしで彼の腕に絡みつくように振るってしまった。と同時に彼女は避けられると己の失策を悟ったが、それに反してムチはヤマトの腕に絡みついた。

 

「えっ…」

 

予想外の出来事に少女はアーツを流し込むのを忘れ、そしてそれがヤマトが欲しかったチャンスであった。

ヤマトはすぐさま、ムチが絡んでいない方の腕をムチに伸ばしアーツで自身の筋力を限界まで強化し、少女を自分の方へ引き寄せるように引っ張った。

 

(しまった!対応出来…!)

 

少女は自分に襲いかかってくるであろう痛みに備えて思わず目を閉じ体を強ばらせた。が、彼女が感じたのは身体を斬られたような鋭い痛みではなく、誰かに抱きしめられるような懐かしい暖かい感覚であり、彼女の嗅覚は血と兄の匂いを捉えていた。

そして少女は自分が、ヤマトに抱きしめられているのだと理解した。

 

「お、にいちゃん…?何で…」

 

 

「ごふっ…ろくに話を聞かずに嫉妬して、無視して、認めなくて、傷つけてしまった…でも、どうか君のことを聞かせて欲しい…」

 

 

 

 

 

 

 

「俺が君の【兄】…【家族】になるために…」

 

 

 

 

 

 

「あっ…」

 

それは1番言って欲しかった言葉であり、そして彼女が一番欲しかったモノ。手から力が抜け、カシャンとムチと銃が音を立てながら地面を転がった。

今、ヤマトが出来ることは少女が話してくれるまで意識を途絶えさせずに待つことのみで、彼はひたすら少女が口を開くのを待った。

 

「…捨てられたのを、拾ってくれたのが【先生】だった」

 

しばらくしてポツリと少女は話し出した。

 

「…女なんか産みたくなかった、産まなきゃ良かったって言われて、家を追い出されて、寒くて死にそうだった私を拾ってくれたのが【先生】だったの」

 

「【先生】は私を必要としてくれた。いらない子だって言われなかった。温かいご飯もくれた。訓練は厳しかったし、初めて人を殺した時は怖かったけど、【先生】は最期まで私を必要としてくれたの…」

 

「…【先生】が死んでから、2人の大人の男女と手を繋いで歩く子供を見る度にすごい胸が痛かった。独りが嫌だった」

 

「…そうか」

 

ヤマトは彼女が自分のことを【兄】だと呼んだ理由をようやく理解した。

ただ、寂しかったのだ。1人が嫌で寂しくて、そして【家族】というモノに対しての憧れを持っていたからヤマトのことを【兄】と呼んだ。

そして求めたモノこそ違うものの、ヤマトも同じであった。ムサシが死んで、暫くしてから独りが寂しくて嫌で怖くなって、その最中、ロドスのことを聞き自分の力が役立てるなら、というのとそこなら1人にならないはずだといった理由でで履歴書を書いて入った。結果として、そこでも独りだったもののフロストリーフのお陰で周りにはかけがえのない大事な人達が出来た。

 

(なら、俺がするべきことは──)

 

ヤマトは震える少女…自分の妹を抱きしめながらある決意を抱き──

 

「ドクター聞こえる?頼みがあるんだ」

 




次回、本編最終回(の予定)


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最終回「頑張るよ」

色々言いたいこと、すっごいありますがそれは後書きにて書かせていただきます。


「──結果として、ヤマトの救出は成功。加えて、彼の妹と彼女に付き従っていた者たちを引き取り、現在は監視下に置かれるのを条件としてロドスに住むことを許可。現在は全員にコードネームを配布し、オペレーターとしての講習を受けている…ふぅ」

 

あの作戦から数日が経ち、ドクターはケルシーに出すための報告書を作成に追われていた。

そして、それも今打ち込んだ内容で最後となり、それをケルシー宛てに送信したところで息をつき、当時のことを思い出す。

 

あの時、ヤマトに通信越しで言われたのは「彼女たちをロドスで引き取って貰えないか?」だった。さっきまで敵だった集団を引き取れと言われた時はどうしようかと考えてしまったが、正直な話ヤマトの妹の能力の高さは喉から手が出るほどのもので、彼女がいればこちらにとってプラスになるのは明白。その上、彼女に付き従っていた集団もそれなりの場数を超えてきたのか実力はロドスの中でも中堅クラスのものと見て良かった。

その結果、ドクターはヤマトの頼みを受け入れ彼女らをロドスに連れ帰り、「どういうことだ」と言わんばかりの厳しい視線を向けるケルシーやドーベルマンをヤマトと共に説得、こうしてロドスで暮らせるようになったのだ。

最も、帰還したら銃弾を避け無かったせいで包帯だらけのヤマトを見てリーシーが気を失いかけたり、グムが泣きそうになったりと一悶着あったのだが…

 

「まあ、結果オーライ…だったのかな」

 

ドクターはそう呟き、コーヒーでも淹れようと席を立ち上がり──

 

「「ドクター!ヤマトはどこに行ったの!?(お兄ちゃんどこ!?)」」

 

「…おい、被せるなよ」

 

「…こっちのセリフなんだけど?あーあ、お兄ちゃんもこんな明らかにも暴力的な駄犬に好かれちゃってかわいそー」

 

「……上等だ、表出ろ」

 

「…すまないチェン、フロストリーフ。すぐに執務室に来てくれ」

 

「ちょっとドクター!?フロストリーフお姉ちゃんとチェンさんを呼ぶのはなし!私、おやつ抜きにされちゃう!!」

 

「おやつはともかく、あの2人の説教は長いからやめてほしいな?」

 

「もう呼んじゃったから…ってか、ラップランドとイカズチもいい加減反省してよ…」

 

ドクターは休暇届けと書かれた書類を書いて出した人物に「はよ帰れ」と願いつつ、目の前で繰り広げられる現状に呆れながらも軽く笑みを零したのだった。

 

 

因みにイカズチはフロストリーフに、ラップランドはチェンにこってりと怒られ、更にイカズチはおやつ抜きの刑、ラップランドはモフモフの刑に処されたのだった。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「……」

 

ある地方の町外れの近くにバイクを停めたヤマトは合体剣を背負い、両手に花束を抱えてとある場所へ向かっていた。

道は前に訪れた時と比べると雑草がそれなりに伸びてしまっており、それは時間が流れてしまったことをヤマトに告げていた。それでも、ヤマトはただ真っ直ぐ迷うことなく足を動かし続け、そして。

 

「……皆、久しぶり」

 

かつて自分が暮らした孤児院が存在し、今では空き地となってしまっていた場所で足を止めた。

 

「……最後来た時、皆のこと思い出すのが怖くてお参りもせずに行っちゃって、本当にごめん…最近、やっと踏ん切りが着いたんだ。」

 

ヤマトは花束を地面において黙祷をした後、申し訳なさそうでありながらはっきりと話し出した。

 

「先生の事なんだけどさ、ロドスっていう会社の人が先生の顔を知ってて、そこから調べたところ先生は、名を馳せた傭兵だったらしいんだけど、ある日突然傭兵を引退してある女性と一緒に感染者と非感染者の平等を訴え始めたらしくてね…それから間を置かないうちにその女性と結婚して孤児院を作って、感染者非感染者関係なく子供を引き取って暮らしてたらしいんだ。けど、ある日何者かが孤児院を放火。その放火が原因でその時孤児院にいた子供達と女性は逃げ遅れて…そして、当時外出してて一人だけ難を逃れた先生はそれ以来姿を見せなかったそうなんだ…」

 

ヤマトはそこまで言って言葉を一旦切った。

初めにこれを聞いた時、ヤマトは驚いたと共に少しだけ安堵していた。

【先生】は元は悪人ではなかった。ただ、大事な人達を失ってしまって、それが誰かの仕業だと知って道を外してしまっただけなのではないか、と。

 

もう、ヤマトの中で【先生】への負の感情は残っていなかった。あるのは、もしその事件が無ければあの人や孤児院の皆…兄や姉たちと今でも笑って過ごせていたのだろうか、という想像だった。

 

ヤマトは「よいしょ」と言いながら地面に座り、懐から中にクッキーを入れた包装紙を花束の近くに置いた。

 

「話したいことが沢山あるんだ。良かったら聞いて欲しいな…お兄ちゃんお姉ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

 

「──それでね、その子イカズチって名前になってね、いつも俺のそばにいるんだ。…俺もあの子みたいに皆にベッタリだったって思うとなんか恥ずかしいな…。でもそれをラーちゃんやフーちゃん、リーちゃん、メッちゃん、レっちゃんがいい顔しなくてさ…兄離れしろってね…」

 

ヤマトはそこまで言うと、話疲れたのか息をついて黙りこくり少し寂しそうな表情を浮かべた。

 

「俺さ、皆や先生の分まで頑張って生きるよ。もう、死にたいなんて思わない。…見守って欲しい…なんて言える義理じゃないけどせめてイカズチのことは見守って欲しいな…それじゃあ、また来年来るね」

 

ヤマトはそう告げ、立ち上がってその場を去ろうとした時強めな風が吹き──

 

『────』

 

「え…」

 

一瞬見えた光景と聞こえた声に驚き、ヤマトは目を擦り改めて見るとそこは花束と「皆で食べてくれたら」と置いたクッキーだけでだった。

 

ヤマトは自分にとって都合のいい妄想だったのだろうか、と一瞬考えたがそれはしてはいけないことだと何となく感じ、ヤマトは笑みを浮かべて改めて歩き出した。

 

「ありがとう、皆、ムサシ…頑張るよ」

 

それだけ告げて、ヤマトは先程見た光景──孤児院の子供達とムサシが呆れながらも笑っていた──を胸にしまい込んで歩き出した。

 

自分を待ってくれている人達がいる家へ。

 

 




はい、という訳で「ロドス劇場」の考えていたプロットは今回で全て、終了致しました。まず、初めに今までこの作品を読んでくださった皆様に感謝の気持ちをお伝えします。皆様のおかげで、無事に予定していた話を出し切ることが出来ました。本当にありがとうございました。

さて、前にとったアンケート…特にこれといった理由を説明せずにオペレーターを選んでくださいってやつなんですが…あれはヤマトを洗脳を誰が解放するかを決めるやつでした。なのでフロストリーフがヤマトの相手をしたのはアンケートで1番だったから、と普通であれば収まるのですが…実を言うと当初の予定ではアンケートは取らず、フロストリーフが説得するという流れだったので、アンケートにしても同じ結果になったのは正直驚きました。

さて、これからに関してなのですが…最終回と言っておいて非常に申し訳ないのですが…投稿を辞めることはしないです。これからは、2ndシーズンとして最終回とか全く考えてない状態でほのぼのな日常的な話を投稿していきたいと考えています。そのため、基本的にネタが思い浮かんだら書く、という形になるので投稿は今まで以上に遅くなると思われます。下手すると1ヶ月も投稿しないなんてこともあると思います。それでも、いいという方はぜひ暇つぶしになるかわかりませんが読んで下さるととても嬉しいです。
そして、今日からまたリクエストの募集を再開させていただきます。リクエストの内容は本編にそった話だけではなく、ifルートのリクエスト…例えばペン急ルートでこういう話を読みたい!という感じのリクエストも募集するという感じにします。活動報告欄の方で改めてそれようのリクエスト欄を作りますので、ぜひ遠慮なく書いてください。送ってくだされば、なるべく早く投稿できるようにします。
そして、おそらくこの話が出てる頃には出てるであろうアンケートにも協力してくださると大変助かります。ただ、どっちもキャラ崩壊待ったナシなのでそこはご了承ください…いや、本当にすみません。

長くなりましたが、改めて読んでくださった皆様に感謝の言葉を送らせてください。
これまで読んでくださりありがとうございました!

あ、あとキャラ設定ところでヤマトくんのボイスを追加しました。


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本編(2ndシーズン)
体力テスト


セカンドシーズンの第1話はリクエストにあったこの話から!

これからもロドス劇場の方をよろしくお願いします!


「イカズチと一緒に身体能力テスト…ですか?」

 

「うん、イカズチが「やるならお兄ちゃんと一緒がいい!」って言って聞かなくてね…」

 

執務室にて困ったような笑みを零すドクターにヤマトは思わず額に手を当てた。ロドスに来てからというもののイカズチはヤマトにベッタリであり、そしてヤマト自身もそれを許容してしまっているからこそ、このようなワガママが出てしまったのだろう。

どっちにせよ、どういう経緯で身体能力テストをイカズチにやってもらうことになったのかを知るため、ヤマトはドクターに説明を求めることにした。

 

「それにしても何故テストを?」

 

「イカズチ本人の志望もあって彼女はオペレーターになることになったんだ。それで、オペレーターになるにはデータとか取るためにいくつかテストがあるんだけど…」

 

「あ、そういう…」

 

ここでヤマトも理解した。

ロドスではオペレーター志望した者にテストをいくつか実施することになっており、ヤマトも入った時は身体能力テストを初めとしたテストをやった記憶がある。そしてヤマト脳内では、彼が入った当初他にオペレーターに志望したものがおらず、テストは監督官が見ている中1人で黙々とテストをこなしていたことが思い起こされていた。

 

「……ドクター、イカズチと一緒にやるよ」

 

「え?いいの?」

 

「うん。1人でやるのは寂しいと思うから…」

 

「あっ…(察し)」

 

どこか哀愁漂うヤマトの様子を見てドクターは何となく察した。

 

「…とりあえず明日の朝から始めるからよろしくね」

 

「分かりました」

 

「…行ったね。さて、誰を誘おうかな」

 

ヤマトが了承の返事をして部屋を出ていったのを見届けてから、ドクターは連絡端末を弄り始めたのだった。

 

 

 

****

 

 

 

 

「...ねぇ、なんでフロストリーフお姉ちゃんたちまでいるの?」

 

翌日、訓練室のとある一角に如何にも不満ですといった雰囲気を垂れ流すイカズチ、困ったような表情を浮かべるヤマト、そしてドクターの呼びかけに応じたフロストリーフ、ラップランド、チェン、バイソンそして何故かリーシーの姿があった。

 

イカズチの反応は予想通りだったのであろう、ドクターは苦笑いを浮かべながら事情を説明しだした。

 

「2人だけでテスト受けるのも寂しいかなって思ってね。それで、お節介かもしれないけど彼らに声をかけてみたら、快く引き受けてくれたんだ」

 

「そっかあ…」

 

ドクターの言い分にイカズチは怒るに怒れず「ぐぬぬ」と歯を食いしばっている中、ラップランドは何故リーシーが呼び掛けに応じたのか気になっていた。それもそのはず、リーシーは事務関係の部署に入っておりオペレーターになるための身体能力テストを受ける必要は全くなく、寧ろこのあとの業務に支障をきたす可能性が高い。

そしてそれを考えているのはラップランドだけではなく、この場にいるドクターを除いた全員が疑念の目をリーシーに向けていた。

リーシーはその視線に気がつくと。

 

「ああ、私も非常用の戦闘オペレーターに志願したのよ」

 

とあっけらかんに告げた。

 

「「「「「はあ!?(え!?)」」」」」

 

「……へー」

 

周りが驚く中、イカズチは興味深そうにリーシーを見てそして笑みを浮かべた。

ドクターはこのままでは何時になってもテストが始められず、ドーベルマンにドヤされると考えると、手をパンパンと注意を自分に向けさせた。

 

「そのことは終わった後にね。とりあえずあまり時間かけたくないから始めるよー」

 

こうしてドクターの一言で身体能力テストが始まったのであった。

 

*ここからはダイジェストでお送り致します*

 

 

 

 

 

 

*その1:握力測定

 

「ふんっ……どう?お兄ちゃん?」

 

「えーと、右が32kgだね」

 

「えーと、左は30だったから足して割ると31ね…これってどうなの?」

 

「えーと、イカズチの年齢的には平均を普通に上回ってるね…さて、次は俺だね。…ふんっ!!」

 

「うわぁ…右55…」

 

「次は左だね…ふんぬっ!」

 

「……55だね」

 

(…ヤマトってループスなのに何で、力があるフォルテの僕より少し低いぐらいなんだろ?)←バイソン57kg

 

「…そういえばドクター。最高記録はいくつなんだ?」←フロストリーフ30kg

 

「えーと……えっと、ブレイズの75kgだね…」

 

「…マジか」←チェン隊長32kg

 

「……アイツ、絶対フェリーンじゃないでしょ」←ラッピー31kg

 

(あー、あの暑苦しい猫のお姉ちゃんかぁ…ゴリラ猫お姉ちゃんに改名しようかな…)

 

「……左右足して割って28……この中で1番最弱……」ズーン

 

「リーちゃん、それ一応平均値だからね?」

 

 

その2:反復横跳び

 

「はい、そこまで!!」

 

「ふぅ…イカズチ。俺は何回だった?」

 

「えっとね…66回だね…むう、また負けた」

 

「あはは…でもイカズチの60回も平均は上回ってるんだけどね…」

 

「ふっ…」←ラッピー62回

 

「お前はなぜ年下相手に勝ち誇ってるんだ…」←チェン62回

 

「……」←フロストリーフ50回

 

「……僕らが普通なんですよね?」←バイソン58回

 

「…そのはずよ……」←リーシー:49回

 

(ぶっちゃけ、その通り)

 

*その3:長座体前屈

 

「ふっ…くっ……」プルプル

 

「…48cm……ヤマトにしては平均的な数値ってなんか意外だなぁ」

↑ラップランド52cm

 

「そうですね…てっきり50cmは余裕で超えると思ってたので意外です」←バイソン51cm

 

「やっとお兄ちゃんに勝てた…けど…」ムスッ←イカズチ50cm

 

「ふっ……」ドヤァ←リーシー64cm

 

「意外な長所だな…」←フロストリーフ50cm

 

「…あ、ロドスの最高記録だ」

 

「…リーシー、初めておまえがすごいと感じたぞ」←チェン53cm

 

「なんか褒められてる気がしないんだけど?」

 

*その4:シャトルラン

 

「はあっ…はあっ…はあっ…」

 

「おー、リーシー以外は皆3桁かぁ…」

 

「…それ、わざわざ言う必要ある?ヤマト、はいスポドリ」←リーシー76回

 

「あ、ありがとう…あ、温くて飲みやすい…」←ヤマト136回

 

「ちょ……っと…!なに、おに、ちゃんに、いろ、めつかって…ゴホッゴホッ!」←イカズチ134回

 

「そ、れには…ボクも…ケホッ」←ラップランド115回

 

「ふぅ…やっと落ち着いてきた…」←フロストリーフ101回

 

「……結構自信あったんだけどなぁ」←バイソン125回

 

「…持久力の訓練の割合、増やすか…」←124回

 

 

 

*******

 

 

「ふむ…なるほどなぁ…」

 

時刻は夜。ドクターはイカズチとリーシーのテストの結果を見て感嘆の息を漏らした。

 

まず、イカズチは予想通り全ての項目においてロドスの基準値を超えており、今すぐにでも主戦力になれるほどの記録をたたき出していた。それに加え、ドクターの思いつきでやらせたヤマトとコンビを組ませてやらしたシミュレーションでの模擬戦の結果は歴代でもトップクラスの記録を出しており、状況によってはあの二人を遊撃隊として動かせることが出来れる可能性が出てきた。

 

これはドクターとしてはかなり嬉しいことであり、戦術の幅が広がったため大収穫ともいえるものであった。

 

「そんで、リーシーの方は予想外だったなぁ…」

 

続いて、リーシーの結果を見ながらドクターは苦笑いを浮かべる。彼女の記録は全体的に標準であった。アーツ適正は標準以上優秀未満といった形だったが、予想外だったのはそれではなかった。

 

ドクターにとって予想外だったこと、それはリーシーの戦闘能力が一般の戦闘オペレーターと同等、もしくはほんの少しだけ下回る程度ぐらいにあったことだ。

念の為言っておくと、ロドスの戦闘関係のオペレーターは厳しい訓練を受けているため、少なくとも普通の一般人よりは強い。

だが、リーシーはスラム街出身とはいえ元一般人だ。そんな彼女が訓練を受けた彼らと同等クラスだとは全く予想出来ていなかったためドクターはこの記録を見た時は思わず声に出してしまうほど驚いた。

 

『もう、無力感を感じたくないのよ』

 

「……想いの力、なのかな」

 

ドクターは彼女が非常用とはいえオペレーターに志願した時の理由を思い出しながら、呟いたのだった。

 

「…まあ、まさかステゴロで仮想敵とはいえレユニオンの軽装兵をぶっ飛ばした時は驚いたけど」




因みに、イカズチと一緒に来たモブ達は彼女とヤマトを一緒にさせるために何かしら理由をつけてテストの日にちをうまーくズラしてました。まあ、ドクターのお節介でその苦労は泡となって消えましたが。

キャラ紹介
ヤマト:身体能力がめちゃくちゃ高いことが判明したオオカミさん。学校とかだと普通にモテそう(小並感)

イカズチ:お兄ちゃん大好きブラコンシスター。全体的な身体能力は性別的なこともあって勝てなかったが身体能力はめちゃくちゃ高い。ヤマトとのコンビネーションはめちゃくちゃ噛み合っている。そのことでドヤ顔したらとある白黒と喧嘩になった。

ラップランド:このクソガキいい加減にしろよ…(╬´^ω^)

チェン:白黒ループスとブラコンシスターの抑止力として参戦。この人も何気身体能力やばそう(小並感)

フロストリーフ:チェンと同じく抑止力として参戦。何となく体が柔らかいイメージがあります。

バイソン:男一人では流石にという訳で強制召喚された苦労人。握力と長座でヤマトに勝てたことが嬉しかったり。

リーシー:身体能力一般ピーポーと見せかけてそれなりに戦闘能力があったお人。なお、戦闘能力が高かった理由はラッピーとよく取っ組み合いしてるのが主な要因だったり。武器は己の拳で「アーツを利用してバスターウル○うてるのでは?」と考えてたり。

ブレイズ:リンゴを割るのに道具なんて必要ないよ!それっ!(グシャッ)
*オリジナル設定です!

アンケートは今週の土曜日に締め切ります。
なお、リクエストはR18の方含めて活動報告の方で回数関係なく募集してるので、ぜひ遠慮なくどしどし送ってください!(バッチコーイ)


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ロドス館内バラエティ!大喜利大会(放送事故もあるよ!)

という訳でリクエスト回…なんですが自分のお笑いのセンスが壊滅的なため、正直面白いかどうか保証できません…なので、それでも構わないという心の広い方は本編へどうぞ!


「みんなを笑わせてみろ!大喜利大会〜!」

 

「「……なにこれ?」」

 

「…悪いが私の方に視線を向けるな」

 

娯楽室にていつの日か見たようなセットがある中、ヤマト、イカズチから縋るような目線を向けられたチェンは気まずそうに目を逸らし、恐らく…というより100%原因のテンション高めなドクターに説明しろ、と厳しい目を向ける。

 

「はい、たまにはこういうバラエティっぽいのをたまにやろうってことが会議で決まってね。んで、これは前回のモフモフグランプリ同様、食堂のモニターに生中継で送ってまーす」

 

「つまりどういうこと?」

 

「ドクターの気まぐれに私たちは巻き込まれたというわけだ…」

 

まさか、自分が巻き込まれるとは考えていなかったチェンは額に手を当てて疲れたようにため息を吐いた。正直、自分がここの舞台に立ってしまう羽目になるとは全く考えていなかったのもあって、彼女の気分はかなり落ちていた。

 

「回答者はヤマト兄妹とチェン隊長の3人なのですが、ここで採点係の3人にも入ってきてもらいましょう!それでは、御三方お願いしまーす!」

 

ドクターの声と共に入ってきた3人を見て、チェンはガチで驚いたような顔をした。それもそのはず──

 

「審査員その1のエクシアだよー!」

 

「審査員その2のクロワッサンやでー」

 

「審査員その3、スワイヤーよ」

 

彼女にとって、天敵又は犬猿の仲とでも言えるスワイヤーがいたからだ。因みにヤマトはこの場にクロワッサンが来ていることに驚いていて、イカズチは何が何だか分かってなさそうな表情を浮かべていた…余談であるが、そんなイカズチの顔を見て一部の者たちが食堂で盛り上がっていたとか。

 

閑話休題。

 

 

「スワイヤー!なぜお前が…」

 

「あら?チェン隊長とあろう方が私がこの場にいることが分からない?ふっ、案外頭が固いのねぇ」

 

「…………」(#^ω^)ピキ

 

「だんまり?まあ、特別に教えてあげると…チェン、あなたの無様な回答を間近で見たいからよ」

 

「*龍門スラング*!」

 

スワイヤーは無関係の者が見てもムカつくような笑みを浮かべてチェンの疑問に答えた。そしてそんな顔で答えられたチェンの怒りのボルテージは一瞬でMAXになり、彼女は放送禁止用語を叫びながらスワイヤーに飛びかかろうとして、ギリギリで気がついたヤマトによって羽交い締めされた。

 

「チーちゃん、待って!怒りたくなる気持ちは何となくわかるけど落ち着いて!」

 

「あ、チェン姉ちゃん!お兄ちゃんに羽交い締めされるなんてズルい!お兄ちゃん、ギューッ!」

 

「ちょ、イカズチ!?俺に抱きつく暇あるならチーちゃんを抑えるの手伝って!?」

 

「ぶふっ!あのチェンが年下の男の子に止められてるの…ふふっ」

 

「*龍門スラング*!*龍門スラング*!」

 

「頼むからチーちゃんを煽らないでぇ!…っふぁん!?だ、誰!?尻尾触ってるの!?」

 

(おお…もっと触ってたくなるほどのモフモフ感…!)

 

「あはっはっは!凄いカオス!」

 

「撮れ高は十分やなぁ」

 

「放送事故の間違いじゃない?…さて、時間もあまりないし収めてくるわ」

 

ドクターはヤレヤレと言った感じで首を振りながら、ヤマトに羽交い締めされながらも荒ぶる野生の獣と化したチェンとそれを見てさらに煽るスワイヤー、そしてどさくさに紛れてヤマトの尻尾を触り、更に堪能しようとしているイカズチを止めにかかった。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

数分後、ドクターとヤマト、そして他のスタッフのお陰で静まったスタジオでドクターは改めてマイクを握り企画の内容を説明し始めた。

 

「さて、今回のルールは簡単でこちらが出したお題に対して回答者は面白い答えを書き、その答えを見て審査員が点数を出し最終的に合計点数が1番多い人が優勝となり、優勝者には前回の反省を踏まえて、最近ヤマトが作ったスペシャルパフェの先行お食事券を贈呈します」

 

「あれ?結構普通?」

 

「私的には、いつの間にそんなものを作ってたのか気になるんだが…というより、それだとあまりヤマトにメリットがないのではないか?」

 

「うん。だからヤマトだけ俺が叶えられる範囲のことならなんでも叶えてあげる権利をあげます…まあ、ヤマトは色々と苦労してるから別にいいよね?」

 

そう告げてきたドクターに自覚があったイカズチとチェンは気まずそう目を逸らした。因みに先程の騒ぎを引き起こした原因のスワイヤーは何食わぬ顔であり、それを見たチェンは額に青筋を立て始めるのを見たドクターは、咳払いをしてスタジオ全員の意識を自分に向けさせた。

 

「それじゃ、いきなりやれ!って言われてもよく分からないだろうしまずは例題をやってもらうね…アーミヤ、例題のやつお願い!」

 

「分かりました、それでは例題です。『宿題を忘れた。先生になんて言い訳をする?』それでは、出来た方から手元のボタンを押して回答を見せてください」

 

「案外まともなお題だな…」

 

出されたお題への感想を呟きながらチェンは台紙を片手に「さて」と考え始める。チェンは娯楽といったものには疎いということは自覚しているが、流石に大喜利は流石に分かる。だが、どういったものかは知っていても面白い答えをかけるか?となるとそれは難しい。

大体自分はこういったものはあまり得意ではないのに…とチェンが内心愚痴っぽいことを考えている中、ポーンと間の抜けた音がスタジオに響いた。

 

つい職業柄で音がなった方を見ると、イカズチの回答席から変なパネルが出ており、恐らく先程の情けない音は効果音なのだろうとチェンは推測していた。一方でドクターはこのメンツだと初手はヤマトだと思っていたので、意外そうな雰囲気でイカズチを見た。

 

「お、予想外にもイカズチが早かったね…それじゃあ、アーミヤの後に続けて回答を言ってください!」

 

「おほん、『宿題を忘れた。先生になんて言い訳する?』」

 

「『お兄ちゃんと愛を確かめ合ってたので忘れました』」

 

「「ぶふっ!」」

 

「イカズチ…お前ってやつは…」

 

「ちょ、イ、イカズチ!?」

 

「いきなりブラコン全開の回答がくるとは思わんかったわ」

 

「は、ハレンチよ!あのオオカミ、ませてるわ!」

 

イカズチのあんまりと言えばあんまりな回答にエクシアとクロワッサンが吹き出し、ドクターは予想斜め上の回答に困惑した反応を、スワイヤーはナニを想像したのか顔を赤くして抗議の声を上げた…因みにヤマトはブラコン全開な回答による恥ずかしさから顔を真っ赤にしている。

 

そんな周りの反応を見て、先程までドヤ顔でいたイカズチが不思議そうな顔で自分の回答を見て。

 

「…あ、しまった。つい欲望が」

 

「欲望!?欲望って言ったわよね!?ちょっと、この娘やばいわよ!」

 

「多分、イカズチの言いたいことは一緒に過ごした、ということだと思うぞ」とチェンはフォローしかけたが、目の前で「ハレンチよ!」と勝手にナニ方面を想像しているお嬢様が面白かったのと、今のうちに面白く無難な回答を考えるために黙ることにしたのだった。

 

 

 

 

******

 

 

 

「えー、一旦何とか場が落ち着いたところで、ヤマトがボタン押したので回答見てみようか」

 

「それではいきます。『宿題を忘れた。先生になんて言い訳する?』」

 

「『通りすがりのヤギに上げました』」

 

「ヤマトにしては案外まともな回答だ!」

 

「まあ、意外性では定番な答えやな」

 

「…けど、さっきの回答のせいでインパクトが弱いわね」

 

「(´・ω・`)」

 

ヤマトの回答はイカズチの回答のインパクトが強すぎたせいで、3人からの評価は悪くは無いものの良いものとは言えなかった。

そして、そのヤマトの隣にいるチェンは鼻血が出ないように抑えながら、何とか書き終えた自身の回答を見て、正直自分的には面白いとは言えない上、つい自身のとある欲望を抑えきれていない代物だと感じていた。しかし、これ以上考えて面白い回答が出るとは思えないのも事実。

 

(仕方ない…これでいくしかない)

 

「お、ここでチェンも出来たか…それじゃあアーミヤ、お願いね」

 

チェンはため息を吐きながら手元のボタンを押し、情けない音が鳴ったと同時にドクターがアーミヤに前フリを頼んだ。

 

「ごほん。『宿題を忘れた。先生になんて言い訳する?』」

 

「『他の宿題に埋もれてた金持ちお嬢様の手伝いをしてたので…』」

 

「おー、この中で1番つまらなそうな回答しそうだと思ってたんだけど…思ったより回答は固くなかったね」

 

「せやけど、オモロいかどうかでいうたら…ん?スワイヤーはん、震えてどうし…」

 

「ねえ、チェン。あなたの回答、遠回しにその金持ちお嬢様のこと私だって指してない…?」

 

チェンの回答を評価している中、体を震わせていたスワイヤーにクロワッサンが声をかけようとして、その直後にスワイヤーは声を震わせながらチェンに自身が思った疑問を投げかけた。

そしてチェンはそれに対し──

 

「…さあ?まあ、お前がそう思うならそうだろう?書類の山に悪戦苦闘してるスーお嬢様?」

 

先程の仕返しだと言わんばかりに、挑発的な内容をイイ笑顔で返答した。

そしてその返事はスワイヤーの臨界点を突破するには十分なものであり──

 

「表に出なさい!愛しのヤマトの前でボッコボッコにしてやるわ!」

 

「お、おい!前にも言ったがヤマトのことはそう思って…!」

 

「……うそ、チェンお姉ちゃんもお兄ちゃんのこと狙ってたの…チェンお姉ちゃんは白黒の駄犬とは違うって思ってたのに…!お兄ちゃんが汚される前に成敗しなきゃ…!」

 

「お、落ち着け!あれはスワイヤーのじょうだ…」

 

「あら?でも案外満更でもなさそうな…」

 

「うわあああ!お兄ちゃんは絶対渡さないんだからぁぁ!あ、ちょっと、お兄ちゃん放して!チェンお姉ちゃんぶちのめせない!」

 

「落ち着いて!!とりあえず落ち着いてよ!!」

 

「スワイヤァァァァァ!」

 

スワイヤーの言葉を真に受けたイカズチがアーツを身にまといチェンに襲いかかり、スワイヤーは否定するチェンに追い打ちをかけ、そしてそれを聞いて更に荒ぶり始めたイカズチを兄であるヤマトは半泣きの状態で止めにかかり始めたりと、またもやドンパチ騒ぎが始まってしまった。

 

流石にマズいと感じたのかエクシアは額に手を当てて天井を見上げているドクターに声をかけた。

 

「うわっ!ちょ、ドクター!これ、大喜利やってる場合じゃないって!」

 

「放送事故系列好きなウチもエクシアはんの意見に賛成や!中止してあの御三方を止めた方がええで!ヤマトがもたへんわ!」

 

「そうだね……はい、それではリアル大乱闘が始まってしまったので、今回の放送はここまでとします!それでは、機会があればその時に!ご視聴ありがとうございましたー!……よし、アーミヤ!フロストリーフ、テキサス、ホシグマ、あと暇そうなオペレーターをとっ捕まえて連れてきて!」

 

 

 

「…カメラ、切れてないんだが……」

 

本来であればドクターが視聴してくれたことへの感謝を告げた時点で放送は終わっていたはずが、現場が混乱してるのもあってかスタジオの惨状は未だに流されており、ドクターの切羽詰まった声も一緒に流されていた。

 

「…とりあえずいきましょうか」

 

「「…そうだな」」

 

「それ、ボクも一緒に…」

 

「「「お前まで来たらややこしくなるからやめてくれ」」」

 

 

 

 

*****

 

 

 

後日、今回暴れたイカズチはフロストリーフに、その原因を作ったスワイヤーとチェンはホシグマにこってり絞られ、その主な被害者であったヤマトはドクターからお詫びとして食堂で彼が好きな物を奢ってあげたのだとか。




大喜利…難しかったです……

キャラ紹介

ヤマト:案外まともな答えを出していた本作主人公。今回の1件で苦労人だということが全オペレーターに知れ渡り、館内ですれ違う度に優しい目で見られたり、1度も話したことがないオペレーターから「色々溜まってるだろうから、1杯どうだ?」と誘われることが多くなったとか。因みにドクターの奢りで頼んだのはハンバーグカレー。

チェン:ついうちに眠るスワイヤーへの仕返し心が出てしまった隊長。後日、ヤマトにはしっかり謝ったもののちょっと気になり始めてしまった。

スワイヤー:書類に追われる頭が少しピンクなお嬢様(当作品設定)。鬱憤払いで参加した企画だったが、こんな大惨事になるとは思わなかったため反省。

イカズチ:ブラコンランクEXのヤマトの妹ちゃん。チェンとはしっかり和解できたものの、少しだけ疑っている。

ドクター:出演者よく考えないと…

アーミヤ:出番あれだけですか!?

セコム3人:悩みの種が増えた…

ラップランド:ヤマトの落ち込んだ顔見た時、背中がゾクゾクした。

感想や批評、リクエストお待ちしております!


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修羅場ですよ!ヤマトくん!(ペン急ルートの場合)

えー、今回から暫く続く修羅場編はとあるリクエストを実行するのが難しかったため、リクエスト主さんに代案を話して、その結果このような形となりました。リクエスト主さんには本当に感謝の言葉しか言えません。

それでは修羅場編トップバッターのペン急ルート、いつもの倍以上長い上にキャラ崩壊してますが、それでも大丈夫だという海より広い心でお読みください。どうぞ


「おい、ヤマト。ちょっと聞きてえことがあるんだ」

 

ある日の昼、ペンギン急便のトップでもあるエンペラーは書類仕事(主にエクシアとクロワッサンによる被害の後始末関連)を様々な理由で二徹で何とか終えデスクに突っ伏しているヤマトに声をかけた。

因みにこの時、エクシアとクロワッサンは「私は加減ができないバカな社員です」と書かれたカードを首から提げて正座、テキサスはポッキ○をモゴモゴと食べ、ソラは疲れているヤマトにブランケットをかけようとしていた。

 

この時、ヤマトの意識が半分飛んでいるのに踏まえ、自然の流れで聞かれたこと、そして聞いてきた人物が自分を拾ってくれた恩人ということで彼は無警戒で寝ぼけ眼で覇気がない声で応答した…してしまった。

 

「はい…なんですか…?」

 

「お前、この前一緒に歩いてた隣のサルカズの女は彼女なのか?」

 

瞬間、場が凍りつきヤマトは一斉に視線を向けられたことで眠気が一気に吹っ飛び、反射的に顔を上げてエンペラーに文句を言いかけたが、自身の勘が「それだけはするな」と警鐘を鳴らしたため、机に突っ伏したままでチラッとエンペラーを見ると…

 

「………( 'ω')b」

 

(初めてあの人に対して殺意抱いたかも)

 

やり遂げた!と言わんばかりにイイ笑顔(恐らく)でサムズアップする拾ってくれた恩人に対し、密かに復讐をヤマトは決意したが状況はよくならない。

 

ヤマトは傭兵時代で培ったスニーキングスキルを利用して周りの気づかれないように様子をチラ見する。

 

まず、ヤマトによって説教され正座しているクロワッサンはニコニコしている…が、よく見ると目が笑っていない。その隣にいるエクシアも同様に笑ってはいるが…目のハイライトは残念なことに出張中である。

 

次にペンギン急便の中でヤマトが個人的に1番頼りになると思っている先輩のテキサスは、一見興味がなさそうな素振りを見せているが、敏感なヤマトは彼女がハイライトが消えた目で自分の方に注意を向けて、さらに言うとどこかソワソワしているのを察知した。

 

(テキサスさん、それは貴方のキャラじゃないでしょ…!)

 

いつものクールで頼りになるかっこいいテキサスはどこに行ってしまったんだ、とヤマトは嘆いた。

 

そして最後に自身にブランケットをかけようとしてくれたソラは…何事も無いようにブランケットをヤマトにかけた。

 

(これは、ソラ姉はこの話題は気にしない感じ…?)

 

そう感じたヤマトはソラに助けを求めようとして、その瞬間ソラはヤマトの肩をぐっと掴んだ。そして、同時に感じる圧にヤマトは瞬時に彼女も助けを求めるのはダメだと認識した。

 

(まずいまずいまずいまずい)

 

助けてくれる人がいない。

ヤマトはその事実に冷や汗を流し、この雰囲気が重くなってしまった状況をどう切り抜けるべきか、頭を働かせ始めた。

 

その1:寝たフリをする。

…正直、バレてると思うし上手く通せたとしてもあの愉快犯なら起こしに来るはず。結局問題を先延ばすだけなので却下。

 

その2:逃げる

…逃げようと思えば逃げれるが、ソラ姉が肩をミシミシと鳴るほど力強く握っているため振りほどくみたいな拒絶するようなことはしたくない。なので却下。

 

その3:黙秘権の行使を宣言する。

 

 

(……いや、ちょっと待って)

 

その3が出た時点でヤマトの頭にふとある疑問が浮かび上がった。

何故、テキサスを含めた4人はエンペラーの質問にこんな反応を示しているのか?

 

(あの人とそういう関係じゃないけども、皆が気にするような内容でもないはずなんだけどなぁ…)

 

それに、あの時はたまたま会って「どうせ暇でしょ?ちょっと付き合いなさい」と強引に連れてかれたのだから、こっちに非はない。

ならば、自分が言うべきことは。

 

「あの人は傭兵時代にお世話になった人で、そういう関係じゃないですよ」

 

ヤマトは顔を気だるげに上げながら正直にその女性との関係を答える。

 

「ヤマト君、それ本当だよね?」

 

「本当だよエク姉」

 

「ホンマなんやろうな?」

 

「ホンマですよ…」

 

「嘘じゃないよね?」

 

「ソラ姉まで…嘘じゃないって」

 

「嘘だったら剣雨千本飲ますぞ」

 

「べつにい…ちょっと待ってください。それ、マジで実行したら俺死にますよね?嘘じゃないですけど」

 

「……そうか」

 

(何とかなった…のかな?)

 

何故かほっとした様子のテキサス達と肩から手をどかしたソラを見て何とかなったとヤマトは安心し、睡眠欲を満たすために目を閉じて意識を飛ばす──

 

「でも、あの後お前そいつに抱きつかれてたよな?」

 

エンペラーのその言葉が耳に入った瞬間、ヤマトは自身の生存本能が命ずるがままに席から転げ落ちるように離れた。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「はあ…!はあ…!」

 

龍門のとあるスラムのところでずぶ濡れのヤマトは壁によりかかって荒い息を出しながら、息を整えていた。

 

席から転げ落ちるように離れた瞬間、自分が座っていた席にテキサスの源石ハリセンverの剣雨といつ持ってきたのかエクシアのVectorから放たれたゴム弾によってズタボロとなったデスクを見て、命の危機を感じたヤマトは追ってくる彼女たちを振り切るために事務所を飛び出し逃走した。

 

普通であれば、ペンギン急便の中では1番の身体能力と未来予知レベルと言われるほどの直感を持つヤマトなら直ぐに彼女を達を撒ける…はずだった。しかしどういう事なのか、彼女たちはそんなヤマトの全力逃走に離されないどころか、彼の直感を掻い潜って先回りしていたりとヤマトからしたら泣きたくなるような事をやってのけていた。

 

最終的にたまたま下を通った観光関係の船に飛び移るというという奥の手を使う羽目になったのが。因みに飛び移った船の着地点がプールだった時は本気でヤマトは死を覚悟した。

 

その後はジタバタプールで溺れないように手足を動かしていたところを引き揚げられ、ヤマトの必死の弁護を聞いた飲み仲間の船長に「次からは飛び込まないこと」「暇な時娘と会って欲しい」の2つの条件の元許され、停泊した場所で降りそこからシラヌイのところでほとぼりが冷めるまで匿ってもらうために全力疾走したのがここまでの経緯だった。

 

「……よし、もう少しがんば──っ!」

 

「あら、レディにいきなり銃向けるなんて失礼じゃない?」

 

後ろに気配を感じ反射的にホルスターから拳銃を抜いてそちらに銃口を向けると、そこには今回の騒動の発端でもあるサルカズの女性、Wが余裕そうな顔で立っていた。

 

「なんだ、Wさんでしたか…驚かさ──むぐっ!?」

 

「悪いけど、ちょっと静かにして頂戴」

 

「おい、ヤマトはいたか?」

 

いきなり口を手で塞がれたことに抗議をしようとして、その直後にテキサスの声が聞こえた瞬間にヤマトは体を強ばらせ、口元に人差しを当てて「シーっ」と言うWにコクコク頷く。

 

「いや、いなかったよ…あの船の停泊位置とシラヌイ義姉さんの隠れ家の場所的にここら辺にいると思うんだけど」

 

ヤマトが何故そこまで予測されていたのか分からず困惑の表情をうかべる中、合流したのかクロワッサンとソラの声も会話に加わり始めた。

 

「いや、もしかしたらすでにシラヌイさんの所にいる可能性もありますよね?」

 

「そうやなぁ…ヤマトならもう既に行ってるかもしれんへんな」

 

「では、クロワッサンとソラはシラヌイお義姉さんの所に。私とエクシアはもう少しここら辺を探す。見つけ次第抜け駆けはせずに連絡しろ」

 

テキサスのその言葉を合図に足音が響き、そして次第に小さくなっていき音がヤマトとWの静かな呼吸の音しかしなくなった所で、Wはヤマトの口から手を離して仕方なさそうな雰囲気を出して話しかけた。

 

「全く…ちょっと目を離したら変なことに巻き込まれてるんだから…とりあえず事情を話してくれる?」

 

「え、えっと…実は」

 

恩がありそれなりに信頼している人物であるWが投げかけた質問だったため、ヤマトは戸惑いつつも警戒せずにここまでに至る経緯を伝えた。

 

ちっ、敵が増えたわね…

 

「Wさん?今なんて…?」

 

「いや、なんでもないわよ。それよりヤマト、これからどうするのよ?そのシラヌイって所には逃げられないんでしょ?」

 

「うっ…」

 

実際その通りであった。頼みの綱であるシラヌイのところはソラとクロワッサンに抑えられてしまっている。かといって、潜伏する場所の宛も無ければ、かといって闇雲に逃げ回るのも現実的ではない。というより後者に関しては体力が持たないだろうし見つかるリスクが高くなる。

 

だが、ヤマトとしてはもう諦めてしまった方がいい気がしてきていた。逃げてしまった手前、恐らくというより100%ボコボコにされるだろうが、逃げてしまったことを誠心誠意込めて謝罪し、ハグの件もWが自分をからかうためにしてきたということを説明した方がいいのではないか思い始め──

 

「あの、俺。皆のところに行って事情を説明しようと思うんです」

 

「…そう、なら私もそれは同行するわ」

 

「え?」

 

それを告げた結果、何故かWも着いてくる形となったのだった。

 

 

 

 

 

******

 

 

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

(く、空気が重い…!)

 

龍門のとある喫茶店の端っこのテーブル席でヤマトとその隣にW、対面側にテキサス達が座っていた。当初ヤマトに呼ばれたテキサス達は、逃げたこと、そして何故その女性にハグされたのか問い詰めようと意気込んで来たのだが、ヤマトの隣に座るWを見て固まった。

 

「あなた達が子犬ちゃんの仕事の先輩さん?とりあえず座ったらどう?」と余裕そうな顔でWが言った時はその場だけ温度が急激に下がったようにヤマトは感じ、直ぐにその場を離れたくなったが自分の不手際でWを付き合わせてしまっている以上逃げずにその場に残ったのだが。

 

「…とりあえずお前は何者だ?」

 

「私?私はそうね…この子犬ちゃん…ヤマトと深い関係にある女…って言えば分かるかしら?」

 

瞬間、4人からのハイライトがない視線と圧がヤマトとWに注がれ、ヤマトはあまりの怖さにカタカタと身体を震わせ始めた。そしてそれをチャンスと見たWは次の行動に出た。

 

「もう、あなた達が変な圧かけるから子犬ちゃん怖くて震えちゃってるじゃない…よしよし、怖くないわよ〜」

 

「「「「っ!?」」」」

 

「ちょっ、Wさん!?」

 

Wは自分の胸にヤマトの頭を引き寄せるように抱くとそのまま彼の頭をあやす様に撫で始め、驚くテキサスへ不敵な笑みを浮かべる。

瞬間、テキサス達は察した。

 

──この女、敵だわ

 

あんな風にヤマトを胸に抱いて頭を撫でるなど羨まし…一緒の空間で生活している自分たちでさえやったことがないことをしているWへの敵意は急激に高まり、最早内輪もめしている場合ではなかった。

 

(皆、ものは相談だけど…)

 

(分かっとるで。ここは一時休戦や)

 

(そうですね…まずはあのクソ×××からヤマトを離さないと…!)

 

(…それは同感だが、ソラ。せめてアイドルとしての最低限のメンツは保て)

 

一瞬のアイコンタクトで互いの心情を伝え合い、そしてやるべき事を共有すると早速エクシアが動いた。

 

「お姉さん、悪いけどヤマトは一緒に暮らしてる家族みたいなものだから、あまりヤマトを困らせることはしないで欲しいなー?」

 

「困らせる?私はそんなことしてないわよ?怯えちゃってるこの子を慰めてるだけよ?」

 

「…ヤマトはウブなんだ。お前のその無駄にある脂肪に挟まれて困惑しているのが分からないのか?」

 

「自分より私の方が大きいからってその言い方はないんじゃない?爆破するわよ?」

 

「野蛮やな〜。ヤマト、悪いことは言わんから今すぐウチらの隣に来た方がええで?」

 

「ヤマトを追いかけ回してたあなた達が言っても説得力ないわよ?」

 

「それ言われたら何も言えないですけど…でも、同じ会社で働く仕事仲間としてヤマト君が悪い人に引っかかってないか心配だったので…」

 

「へー?因みにその悪い人って誰かしら?私もそいつぶちのめ…話してくれたら手伝うわよ?」

 

(お、お腹が痛いしこわいよぉ…)

 

水面下で始まった女たちの戦いの余波を受けているヤマトはなぜ彼女たちがここまで殺気立っているのか、自分が原因なのは分かるものの肝心な所が分からずどう解決すべきなのか震えながら考えていた。

 

(まずはこの空気をどうにかしないといけない…なんか変な一発芸やって場を静めるのがベストなのかな…)

 

「〜♪〜♪〜♪」

 

「あれ、これ私の歌…」

 

その時だった。どこからかソラの代表曲が流れ始め、ヤマトはそれを聞いた瞬間この場を静める計画が鮮やかに脳内で書き上げられた。

そしてヤマトはそれを実行すべく防水仕様のおかげで無事で、今そのソラの曲を流している連絡端末を取り出し通話に出た。

 

「はい、もしもし!ヤマトです!あ、シラヌイ?」

 

『?いや、ちが──』

 

「あー!そういえば今日この後新装備のテストやるんだったね!忘れてたよ!」

 

『ヤマト?勝手に話を──』

 

「そういえば場所変えたんだよね!それで、俺だけで来るようにって話で集合場所はあそこだったよね!うん、今行くから!それじゃ!」

 

『ちょっと?ボクを無視──』

 

通話先の人物が何か言う前にヤマトはプツッと通話を着ると、歴戦の猛者でも見切るのが難しいほどの手腕で端末の電源を切ってポケットに突っ込むと、申し訳なさそうにテキサス達に振り返り。

 

「ごめん。そういう訳だから今日はお開きにしてまた今度話し合おう?」

 

明らかな話題転換で尚且つ露骨な解散を促すような動き。この場にいた全員はそれに気がついていたが、ここで変にそれを無視してヤマトを傷つけるような真似をしたくなかったため、テキサス達とWは腑に落ちないものの敢えてヤマトの言葉にのる形にした。

 

「子犬ちゃんいないなら仕方ないわねぇ…それじゃ、子犬ちゃん。しっかり場所作っといてよ?」

 

「…私達も戻るが、用事が終わったら真っ直ぐ帰ってこい。いいな」

 

そうしてテキサスが店を出ていったのを見届けたヤマトは安堵の息を吐き、強引に通話を進めたしまった人物に謝罪するために携帯端末の電源を入れ──

 

『○○時に****で待ってるから来てよ?』

 

「ひぇっ……」

 

数十件の着信歴と新しく受信したメールの内容に思わず悲鳴をあげたのだった。

 

 

 

******

 

 

 

それからこっそり自分が借りている宿舎の部屋に戻り、ある準備をしたヤマトは先程のメールの主が指定した場所に時間の10分前に来て、戦闘の時のように神経を張り巡らせ、そしてそれを悟られないように突っ立っている振りをしていた。

 

 

──そして、背後から飛んできた黒い衝撃波を腰のホルスターにしまっていた、テキサスのより2倍ほど長めの源石剣の柄を取り出すと、人を殺さないギリギリの量のアーツを流し込んで刃を出して斬り上げるように衝撃波を上に飛ばし、そしてヤマトから見て斜め前方の上空から振り下ろされた特殊なデザインの極東風の双剣を源石剣で受け止めると、その双剣を振り下ろした人物は狂った笑みを浮かべてヤマトに声をかけた。

 

「ハハッ!流石ヤマトだ!限界まで気配も殺気も消したのに気づかれるなんてね!」

 

「……」

 

「相変わらずだんまりかい?つまらないねぇ…」

 

ヤマトはアーツで身体能力を強化して力任せに源石剣を振るって、ラップランドを押し飛ばしたが、ラップランドは危なげなくまるで舞台の演者が観客に魅せるような動きで着地して楽しそうな笑みを浮かべる。

そう、先程の通話とメールの送信者はラップランドであり、ヤマトは月に彼女からの連絡がある度にこうして戦っていた。

 

何故このようなことが始まったのかを一言で言ってしまえば、ラップランドをテキサスと会わせないため。もっと分かりやすく言うならば、ラップランドはヤマトを負かしたらテキサスと会ってもいいという馬鹿げた契約をヤマトとしている──というのがヤマトの解釈だ。

 

 

 

ラップランドを挑発して自分の目の前に引っ張り出し、こちらの出した要件に従う気もなく去ろうとした彼女を、不意打ち気味に地面に倒して上に跨って彼女の首元に合体剣を添えたことで、ようやくやる気を出させてそのあとの勝負で打ち負かしたことでこの契約を取り付けることが出来た。

 

(今思えばテキサスさんには申し訳ないことしたなぁ…)

 

「ああ、そうだ。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかい?」

 

 

──という人生で初めて勝ち取った契約を思い出してヤマトは遠い目をしながら思い返したところで、ラップランドに声をかけられた。

 

「…なんだ?」

 

「さっき君の近くに行った時に、テキサスやそのお友達以外の女の匂いがしたんだけど…そいつ、誰?」

 

「………………」

 

ヤマトのついさっき見たような、聞いたようなやり取りに冷や汗を流し、そして急に腹痛が走るも、何故戦い合う仲の彼女がそんなことを聞いてきたのか疑問に思い、質問を投げかけた。

 

「…関係あるか?」

 

「関係あるさ。だって、キミはどちらかが死ぬまで一緒にいてくれるんだろう?」

 

「………?」

 

ヤマトは珍しくキョトンとした様子で返答したラップランドから目を離さずに最初彼女を倒した時のことを思い出す。

 

──確か、あの時「キミになら殺されてもいいかな」って言われて、でも俺はそんな諦めた感じのラップランドさんが嫌で、彼女の頭掴んで頭突きして「殺す気は無い。俺は俺かアンタが死ぬまで(最初に話した契約内容でいいならあんたにとって)一緒(に戦い合う相手)になる」って言って…──

 

確かに言ったことは言ったがどこをどうすれば、先程の話に結びつくのかヤマトには分からなかった。だからこそヤマトは言ってしまった。

 

「(どんな人と交友関係持ったとしても)俺の勝手だろう。そもそも(契約内容的に俺を殺すはずの)お前には関係ない話だ」

 

「…フッ、アハハハッ!アハハハハハ!…そう、テキサス達は仕事の関係上仕方ないからって許してたのがダメだったのかなぁ…いやでも…」

 

「………?」

 

顔を俯かせた状態でブツブツ呟くラップランドにヤマトが「?」を浮かばせ、それが2分ほど経った頃に流石に心配になって声をかけようとした時、ラップランドは顔を勢いよく上げ、ハイライトが消えた目でヤマトを見つめた。

 

「…やっぱり手錠使うか、四肢を斬り落として一生外に出れないようにするしかないみたいだね…!」

 

「いや、待て。そんなことされたら配達かできな──」

 

「最初からボク一筋にすればよかったのに…浮気なんか出来ないようにしてあげるよ!!」

 

(ダメだ、全然話を聞いてくれる感じじゃない…)

 

どっちにせよ、ラップランドとの戦いを自分の勝利で納めなければならなければ落ち着いて話すことは出来ず、負ければ大事な人であるテキサスに被害が及ぶ。

 

ヤマトは息を吐きながらサイレンサーをつけたカスタマイズベレッタ92Fを左手に、そして右手にもつ源石剣に更にアーツを流し込んで柄の反対側の方にも刃を出して構える。

 

「今日は月が綺麗だね…ヤマト。」

 

「……そうだな」

 

 

******

 

 

 

その後、ボロボロの状態で深夜に帰ってきた所を寝ずに起きていたテキサス達に見つかったヤマトはラップランドとの契約のことを誤魔化すのに悪戦苦闘したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




キャラ紹介

ヤマト:天然無自覚フラグメーカー。今回の話だけ見るととんでもないクズ野郎ですけど、ヤマト君は惚れただの恋だの愛だの全然分からないピュアな子なんです!だから、恋心なんて全く分からないんです!だから許してあげてやってください…!因みにテキサス達のことは「大事な人」、Wは「自分を助けてくれた大事な恩人」、ラップランドは「なんか放っておけない人」と思っています。なお先言っておくと基本的にヤマトは誰かに惚れた場合その人のことを死ぬまで一筋で浮気なんてしません。

テキサス:こちらのルートではヤマトガチ勢。基本的にはクールでヤマト的には頼りになる先輩なのだが、たまにポンコツになる。今回の話をきっかけにアピールするようになるも、ヤマトは「いっぱい話しかけてくれるようになってくれた…!」と勘違いしている。

エクシア:上に同じく。ヤマトとしては後処理的な意味で頭を悩ましている人物1号。今回の1件でヤマトと2人で一緒にガンショップに行ったり、アップルパイを食べに行ったりと2人だけの時間を増やしている。

クロワッサン:上に同じく。ヤマトとしては備品クラッシャー的な意味で頭を悩ましている人物2号。今回の1件でなるべくヤマトに迷惑をかけないように気を遣うようにし、気分転換にご飯を食べに行く機会を増やした。なお、備品が壊れる頻度は変わらなかった模様。

ソラ:上に同じく。ペンギン急便の良心だとヤマトは思っており、実際ペン急メンバーの中では1番教えてくれたのも彼女で、過ごした時間も長い。着信音に自分の曲が設定されてたことが嬉しくて、暫く顔がゆるっゆるだった。今回の1件をうけて、一緒にご飯を作る時間を増やしている。

W:まだ未実装だけど参戦。後々各ルートの設定は開示しますが、とりあえず「幕間:女傭兵との因縁」の話はペン急ルートでも通っています。ヤマトの前ではお姉さんぶってあれこれやってますが、実は大抵勢いに任せてやってたり。

ラップランド:なんやかんやあってこちらのルートでもヒロインとして参戦。こっちでは最初負かされた直後こそ「自分より強いヤツ」程度にしか思ってなかったが、コミュ障による言葉の省略によってプロポーズ紛いのことを言われ、しかも毎回(ギリギリの時が多いが)負かされてしまうため、ドンドン彼女の中でヤマトへの株が上がっていき気がついたらヤンデレ1歩手前に。因みに勝ったらヤマトを持ち帰れる上、自分が望むテキサスが戻ってくると考えてたり。
因みに話し合いはしっかり出来たため、誤解は解けた。(根本的なものは解けてないが)





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修羅場ですよ!ヤマトくん!(龍門ルートの場合)

というわけで、今回は修羅場編第2弾の龍門ルートとなっております。

そして相変わらずキャラ崩壊が激しいので、そこはご了承ください…


それではどうぞ!




初めましての方は初めまして。龍門近衛局特別督察隊所属のヤマトです。

突然ですが俺は今──

 

「ヤマト、悪いことは言わない。正直に言うんだ」

 

「ヤマト?あんなおっかない隊長さんより私と一緒がいいわよね?」

 

休暇で訪れた先のシエスタで死ぬか、死ぬかの2択という絶望的な状況に晒されています。

 

「…ヤマト、正直に「スワイヤーの所は嫌だ」と言うんだ」

 

「ヤマト、このおっかない隊長のことなんか放っておいて2人で行きましょ?」

 

周りを通る人達は遠巻きにこの状況を面白そうに見るか、男の人は羨ましそうな目で見てくるだけで助けてくれる気配はなさそうで…あ、俺と目が合ったからって顔を逸らさないで!本当に助けてください!

 

「「さあ、早く選べ(選んでちょうだい)」」

 

チェン隊長とスワイヤーさんは俺を急かすようにずいっと距離を近づけて圧をかけてくる。

もうだめだ…おしまいだぁ…どちらかを選んで死ぬしかないんだぁ…。

 

「え、えっと…そのt」

 

「隊長、スワイヤー。道のど真ん中で何やってるんだ…」

 

こ、この頼れる姉御的な声は…!

 

「ほ、ホシグマさん!」

 

「…ああ、なるほど。そういうことか……」

 

何故かホシグマさんは俺の姿が目に入った瞬間、額に手を当てて空を見上げた。いや、確かにこの騒動の原因は多分俺ですけど流石にそれ失礼ですよ?傷つきますよ?

 

けど、ここでホシグマさんが来てくれたのはラッキーだ。ホシグマさんは俺が知ってる中で隊長とスワイヤーさんに意見できる数少ない人。

この人ならいい感じに纏めてくれるはず…!でもなんで隊長とスワイヤーさんはそんな嫌な顔してるんですか?

 

「…とりあえず、場所を移そう。ここだと人目がありすぎるからな」

 

「…確かにそうだな」

 

「…ちっ、仕方ないわね」

 

た、助かったの…かな?

いや、でも結局場所を移すってことはさっきの2択についての話は終わったことにはならないはずだし…い、いやでもホシグマさんが間に入ってくれるはずだから何とかなるはず…!

 

 

 

*****

 

 

 

 

(そう思っていた時期が俺にもありました…)

 

現在、ヤマトはシエスタのビーチで水着姿の状態でホシグマ達を待っていた。

あの後近くにあった喫茶店に入った4人は、これまでの経緯などを話し合い、結果として「全員でシエスタ観光するのがベストなのでは?」というホシグマの意見にチェンとスワイヤーは苦虫を噛み潰したような顔をしながらも了承、ヤマトもそれしか逃げる先がそこしかなかったため泣く泣く了承。そして現在に至る。

 

(それにしても近衛局の主力メンバー3人が一斉に休暇取ってる状況って結構まずいんじゃ…)

 

「ねえねえ、そこのお兄さん」

 

「?はい?」

 

ヤマトが近衛局の現状を考えている中、背後から声をかけられ振り向くと水着姿の数人の女性が立っていた。

ヤマトは声をかけられたことに「?」を頭の中に思い浮かべながら、何用か尋ねた。

 

「えーと、何でしょうか?」

 

「私たちと一緒に遊ばない?」

 

「すみません、今一緒に来た人たちを待っているので…」

 

「そしたら、その人を待ってる間だけでもいいからさ!ね、お願い!」

 

「え、えっと…」

 

断ろうにも女性たちはズイズイとごり押すようにヤマトに詰め寄っていく。そしていい断りの文句が思い浮かばず、困惑したヤマトはどうすればいいのか焦っていると──

 

「悪いな、コイツはこれから私たちと遊ぶ予定なんだ」

 

「は?何よ、ちょっとこの人は私たち…が……?」

 

女性たちは後ろをむくと、そこには顔は笑っているものの額に青筋を浮かべるチェン達が立っていた。それも一般人が浴びたらチビりかける程の圧を放ちながら。

 

「悪いことは言わん…さっさと失せろ、小娘共」

 

「「「「ご、ごめんなさい〜い!!」」」」

 

「ふん、これぐらいで逃げるなら最初から声をかけるなって話よね」

 

涙目で逃げ出した女性たちを見て、「あの圧で逃げるなって言う方が無理な話では?」とヤマトは言いかけたものの、自身の直感がそれだけは言うなと警鐘を鳴らしたため言わないように気をつけながら、チェン達に声をかける。

 

「あの圧で逃げるなって言われた方が無理な話なのでは?(思ったより着替えるの早かったですね)」

 

「……そうか、お前のためにと思ってやった事なのに、お前はそう言うのか」

 

「え?着替えるの早いって言っただけなのに何でそんなこと言うんですか?」

 

「ヤマト…お前はさっき、あの圧で逃げるなって言われる方が無理な話なのでは?って言ったんだぞ…」

 

「!?」

 

「本音と建前が逆になるって本当にあるのね…というより、ヤマトって思ったよりポンコツなのね」

 

「うぐっ…」

 

スワイヤーのなんて事ないただの感想がヤマトの心にダメージを与えた。

すると、ホシグマとチェンはニヤッといいことを思いついたような表情を浮かべ。

 

「…そうだな、ついでにヤマトのポンコツぶりについて話すのもありだな」

 

「え?」

 

「なら、取っておきなのがある。確か、あれはこいつがまだ私のことを先輩呼びしてた頃の話なんだがな。ある筆記試験でヤマトは何を血迷ったのか、名前を書く箇所から回答を書いて──」

 

「ごめんなさい!謝りますからその話だけは辞めてください!!」

 

ヤマトは誠心誠意を込めた土下座を3人にかましたのだった。

 

 

 

 

******

 

 

 

黒歴史暴露を何とか回避することが出来たヤマトであったが、その後も上司3人に振り回された。

例えば…

 

「ヤマト、日焼け止めを背中に塗ってくれないか?」

 

「え?俺よりホシグマさんやスワイヤーさんの方がいいんじゃ…?」

 

「上司命令だ、早くしろ」

 

「ヤマト!チェンが終わったら私もね!」

 

「ふむ…そうなると私が最後か」

 

「え?俺が全員分塗るんですか…?」

 

日焼け止めクリームを全員の背中に塗る羽目になったり。

 

「ねえ、そこのおねえーさん達。そのちんちくりんなんかより俺らと遊ばなーい?」

 

「…ふむ、ヤマト。少し待ってろ。ちょっとこいつらと遊んでくる」(#^ω^)ピキピキ

 

「何、すぐに戻ってくるから心配入らんさ」(ポキポキッ)

 

「あ、喉渇くだろうから、私たちが遊んでる間にちょっと飲み物買ってきておいて頂戴」(ニヤリッ)

 

「「「ひ、ひいいいいい!」」」

 

「そんな殺気さらけ出しておいて何恐ろしいこと言ってるんですか!?お兄さん達、ここは俺が抑えるから早く逃げて!」

 

「す、すまねえ!逃げるぞ、お前ら!」

 

ナンパしたいいものの、チェン達の殺気に腰を抜かした男たちが何故かガチギレした彼女達から逃げる時間を作る羽目になったり。

 

その他にも色々と巻き込まれたのだが、ビーチバレーをしたり普通に海水浴(ヤマトは浮き輪装備)もやったりと普通に楽しめた時間もあったので、周りの男性からの嫉妬の視線に晒されたこと込みでも、尊敬する上司たちと遊べたので、ヤマト的には有意義な時間だったと言えるものであった。

 

だが──

 

「りゃからぁ!もっとわたひぃを頼れって言ってりゅだろぉ〜!」

 

「そうよ〜!甘えにゃしゃいよ〜!」

 

「隊長…スワイヤーさん…飲み過ぎですよ…」

 

「両手に花でいいじゃないか、ヤマト」

 

「酔っ払いに挟まれてるの間違いじゃ?」

 

夜、居酒屋で飲んでいたところ羽目を外しすぎたのかチェンとスワイヤーが早々に酔っ払い、ヤマトに絡み始めたのだ。なおホシグマは助ける気はあまり無さそうで、笑ってみている。

 

「いまぐりゃい名前で、呼び捨てで言え」

 

「そうよ〜!前から距離があるみたいで嫌だったのよ!だから敬語もやめなしゃ〜い!」

 

「ええ……」

 

「ついでだから私のこともプライベートの時は呼び捨て、敬語抜きにしてくれ。私だって、仲のいい後輩とはこういう時ぐらいタメ口で語りたいんだ」

 

「ええ…」

 

酔っ払った2人の上司とその酔っ払いの言葉に乗っかってきた上司に対して、少し嫌そうな目をヤマトは向けた。それもそうだ、ヤマトにとってはこの3人は尊敬し、目指すべき大事な上司。その人たちに対して呼び捨ての上にタメ口というのはヤマトとしては恐れ多いものだ。

だが、同時に呼び捨て+タメ口をやらないと解放されないというのも容易に想像が着くのも事実。

 

(…まあ、今日だけやればいいでしょ……)

 

ヤマトはため息を吐きながら覚悟を決めた。そう、今日だけ。今日だけやればいい。と自分を無理やり納得させ、ワクワクしてそうな雰囲気の3人に話しかけた。

 

「チェン、スワイヤー、ホシグマ…こんな感じでいいか?」

 

「…なんか、違和感がすごい」

 

「そうね…違和感が半端ないわ」

 

「同じく」

 

「えぇ…それじゃ戻しま…」

 

「「「お構いなく」」」

 

「ええ…(困惑)」

 

この後、異様にテンションが高いチェンとスワイヤーに絡まれながらも、ヤマトは何とかタメ口を継続しながら話すのだった。

 

 

 

*****

 

 

 

「…当初の予定とは違ったバカンスになっちゃったな……」

 

酔い潰れたチェンとスワイヤーをホシグマと共に偶然宿泊先が一緒だったのもあり、2人を予約していた部屋のベッドに寝かせたあと、ホシグマに2人だけで飲みに行かないかと誘われたものの、正直これ以上は酔っ払う自信しかなかったヤマトは丁重に断り、夜寝る前に飲む水と明日の朝に飲むココアを買いに行った。

 

「…次は、アイツらと行くのもいいかな」

 

「誰と行くのが良いんだい?」

 

「っ!?あ、貴方は…」

 

「やあ、ヤマト。こんな所で会うなんて奇遇だね」

 

 

ヤマトが学生時代の旧友達への想いを馳せながら戻ると、後ろから声をかけられ振り向くとそこには以前ロドスに出向した際に色々とお世話になったラップランドがいた。

 

ラップランドはヤマトに会えたことが余程嬉しかったのか笑みを浮かべる一方、ヤマトは乾いた笑みを浮かべた。

実を言うと、ヤマトはラップランドのことが少しだけ苦手であった。それは彼女が鉱石病を患っているからという理由ではなく、ひょんな事から彼女が異様に自分に近接武器を扱うポジション…特に前衛に変わることを進めてくるのと、ロドスで会う度に模擬戦を誘われるという2つの理由が主なものであった。

 

正直な話、さっさと戻りたいのだがここで「はい、さよなら」ということが躊躇なくやれるほど、ヤマトはラップランドのことは苦手ではあっても嫌いではないため渋々部屋に戻る途中までなら良いだろうと思い、会話に応じた。

 

「き、奇遇ですね。ラップランドさ「敬語。ボクにはタメ口で話してくれって言ったよね?」…ラップランドはどうしてここに?」

 

「うん、よろしい。それでどうしてボクがここにいるかどうかなんて、ボクの勝手じゃないか…って言いたいところだけど、正直に話せばバカンスに来て、宿泊先としてここを予約しただけなのさ」

 

「…ラップランドにもバカンスって概念あったんだね」

 

「はは!相変わらずたまに毒を吐くよね」

 

「あ、ごめん…」

 

「謝らなくていいよ?ボクは君のそういう所も好きだからさ」

 

「(相変わらずよく分からない人だな…)…あ、俺はここなので。それでは…」

 

ヤマトは余計にラップランドのことがわからなくなる中、自分の部屋の前に着いたため、彼女に別れを告げようとしたが。

 

「良ければさ、キミの部屋でもう少し話さないかい?」

 

「えっ」

 

「まだ話したいことが沢山あるし、それにキミと久しぶりに会えたからさ。ダメかな?」

 

「………」

 

率直な話、これまで幾度となく自身の命を救ってきてくれた生存本能、もしくは直感というべきものが「それだけはアカン」とめちゃくちゃ警告を鳴らしていたのもあって、ヤマトはこの誘いを断って早くオフトゥン(ホテルなのでベッドだが)にダイブして寝たかった。

 

しかし。

 

「…………」

 

こちらをじっと見つめてくるラップランドを見て、断るという選択肢を取るのも正直精神的にきつかった。

そしてヤマトは数分ほど悩んだ末──

 

「…まあ、ちょっとだけなら」

 

「…!ふふっ、やっぱりキミはボクを選んでくれたね。それじゃ、たくさん話そうか!」

 

ヤマトは愉快そうに笑うラップランドを「本当によく分からない人だなぁ」と思いつつも、彼女を部屋の中へと招き入れたのだった。

 

 

 

 

*******

 

 

 

「うん…?」

 

カーテンから差し込んだ日の光で目が覚めたヤマトは、眠気で頭が働かない中時間を確認するためにプライベート用の連絡端末を立ち上げて、時刻が昼近くというのと、何十件もの不在着信とメッセージの通知が来ていることに驚き目が覚めた。

 

「寝過ぎちゃった…!それに、この通知って…隊長達からの…!」

 

「う……ん……」

 

「……っ!!」

 

尊敬している上司たちからの連絡を寝てたせいで気づかなかったことに肝を冷やしている中、すぐ近くから助成の声が聞こえたところでヤマトは体を固め、首をゆっくり動かしながら声が聞こえた方向をむくと。

 

「すぅ…すぅ…」

 

「………」

 

気持ちよさそうに服を少しはだけさせた状態で寝ているラップランド隣におり、ヤマトは体だけではなく脳みそもフリーズしかけるも、咄嗟に自分の服装が乱れてないか確認する。

 

(…ズボンとパンツははいてるからセーフ…!セーフだよね…?)

 

「ヤマト!いい加減起きない…か…」

 

「え……」

 

そう思った直後、ガチャという鍵が開く音と共に若干怒り気味でチェンが入ってきたが、彼女は目の前の光景を見て固まり、そしてヤマトも固まった。

 

「ちょっと、何固まっ……て……」

 

「どうかした…の……か………」

 

そして固まったチェンと一緒に来ていたであろう、スワイヤーとホシグマも中に入り固まる。

全員が固まり、空気がどんどん冷え込んでいく中、ヤマトの隣で寝ていたラップランドが目を覚ました。

 

「う…ん…?あれ、キミたちはヤマトの……」

 

「おい、なぜ貴様がここにいる?そして何故ヤマトと一緒に寝ている?」

 

額に青筋をうかべ声を震わせながら聞いてくるチェンを見て、状況を何となく察したラップランドはニヤッとイイ笑みを浮かべ。

 

「そんなの、ボクとヤマトがそういった関係だからさ…昨夜も、たくさん(色々と話を)シたからね」

 

「「「………………」」」

 

(あ、終わった)

 

 

 

 

後日、シエスタから帰ったヤマトは同僚に感想を聞かれた際「暫くは街中を駆け回ったり、尻尾を触られたくないな…」と目が死んだ様子で零したとか。




因みにヤマトはそれなりに声も良いです。
ってか、これ修羅場というよりただのバカンス旅行なのでは…

キャラ紹介

ヤマト:全ルートの中では最もコミュニケーション能力がある。が、プライベートでのポンコツぶりは全ルートの中では一二を争うというオチ。今まで1番やらかしたことは、学校の定期試験で試験会場を間違えた挙句焦って迷子になったこと。感染者への差別などは持っていないという、この世界観の中では珍しい価値観の持ち主。なお、あの後何があったかはご想像にお任せします。因みにチェンのことは「力になりたい大事な人」、スワイヤーは「なんやかんや優しい人」、ホシグマは「頼れる大事な先輩」、ラップランドは「悪い人ではないがよく分からない人」とと思っています。

チェン:龍門ルートではヤマトガチ恋勢。ついついツンツンした態度をとってしまうのが悩みの種。ヤマトのことはとある任務で、彼が死にかけたせいで恋心を自覚したという設定。バカンス先と宿泊先がヤマトと被ったのは偶然だと本人は言い張っているが…?あと、誰の尻尾とは言わないが、触り心地は良かったとの事。

スワイヤー:このルートではドクターではなくヤマトにガチ恋。なお、堕ちた理由はは自分のことを「1人のスワイヤー」として色眼鏡とかなく見てくれたからとのこと。部下を使ってヤマトの休暇の旅行先や宿泊先を調べてはいない…らしい。因みに当初の予定では、ヤマトと偶然会ったところで2人でデートという感じだった。

ホシグマ:この話ではヤマトの保護者ではなくヒロインの1人。惚れた理由は特になく、気がついたらというパターン。因みにこの人はガチで偶然。ライバル2名に先を越されるのを何とか防ぐために、4人で遊ぶのを提案するという視野の広い方針をとったりと、龍門組の中では1番恋愛の立ち回りが上手い可能性があったり。

ラップランド:このルートでもヒロインとして登場したやべー白黒。こっちでヤマトに惚れ込んだ理由は、ロドスで模擬戦をした際に彼が奥底にある感情を世界に対して持っていること、そして自分も持っているある衝動を奥底に持っていることを把握したから。それ以来、彼の人となりを知った上で絡み、堕ちてほしい一心で色々行動している。なお、宿泊先が一緒だったのは直感。恋する乙女()は強いのだ…!
因みにヤマトに前衛への転向を進めているのは、彼の剣の才能があることを見抜き、それを磨ききった彼と戦ってみたいからというのもあったり。


感想や批評など、お待ちしておりますので遠慮なく書いてください!

p.s私事ですが.某大乱闘でやっとメインキャラがVIPに入れました。


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修羅場…かな?ヤマトくん!(根本にあるものルート)

というわけで修羅場編第3弾の根本にあるものルートなんですが…ちょっと修羅場要素はまた少なめです。

それでも大丈夫な方はどうぞ!


プリュムは激怒した。

必ずかの熱血なゴリラ猫を打倒せんと決意した。

プリュムにはヤマトの交流関係などわからぬ。だが、人一倍ヤマトが他の女性(一部を除く)と話しているのを見るとモヤモヤしていた。

 

「というわけで、あの人をギャフンと言わせる作戦を一緒に考えてくれませんか?」

 

「うん、プリュムちゃん一旦落ち着こうか」

 

シラヌイはヤマトの武器をメンテ&改良を終えて一息ついていた頃にいきなりやって来て早々変なことを言い出したプリュムに対して、ため息をつきながら詳しく話を聞くためにも、明らかにキャラ崩壊している彼女を座らせ、続きを促す。

 

「それで、どうしてそんなことをやろうと思ったのか詳しく聞かせてくれないかしら?」

 

「いや…その、それがさっきも言いましたけど…。なんかヤマトが他の女性と話しているのを見ると、落ち着かないというか、イライラするというか…モヤモヤするんですよ」

 

(うーん、完全に恋する乙女)

 

「それに…その、私の相方は彼しか居ませんし…)

 

(何だこのくそかわいい生き物)

 

恥ずかしそうに顔を赤らめながら自信なさげに話すプリュムを見て、シラヌイは思わず限界化しかけたが、彼女の話を聞く中で肝心なことを聞いていなかったことに気がついた。

 

「あのさ、そもそも誰をギャフンと言わせてやろうと思ってんの?」

 

そう、シラヌイはそもそもプリュムが誰をギャフンと言わせたいのかを聞いていないのだ。まだ、協力すると決めている訳では無いものの、正直気になってしまうのが人の性というもの。

そしてシラヌイの問いにプリュムも「そういえば」という感じになり、なんの疑いもなくその人物を挙げた。

 

「ブレイズさんなんですが…」

 

「………」

 

シラヌイは自身の耳を疑った。それもそうだろう、プリュムの口から飛び出したのはロドスではエリートオペレーターというのもあって、知らない人はいない人物であるからだ。

なので、シラヌイは聞き間違いである事を祈って再度聞き直す。

 

「ごめん、もう一回だけ言ってくれる?」

 

「その、ブレイズさんなんですが…」

 

「oh…」

 

「え、シラヌイさん!?」

 

シラヌイは色んな意味で頭を抱え込んだ。

プリュムが驚きの声を上げる中、シラヌイはどうしたものかと考え始めた。

正直、ブレイズはプリュムの恋敵ではないのはもちろんの事、ブレイズがヤマトに対して良い影響を及ぼしているから、ギャフンと言わせる必要が無いというのを上手く説明しなければならないこと。

これが武器職人の才女(自称)のシラヌイの頭を悩ませる理由であった。

 

(あー…なんであの子はこう厄介事を持ち込んだり、そのきっかけを作るんだか…)

 

シラヌイは今頃ブレイズ監修の元、グレースロートと訓練をしているであろうヤマトへ愚痴を零しながらも、どこか嬉しさを感じつつ目の前のヤマトの新たな相方を見つめる。

 

「な、なんですか?」

 

(ブレイズさんのことをどう説明するか…)

 

プリュムがヤマトに恋心を抱き、そしてそれを彼女が否定してしまっているのをシラヌイは知っている。なので、ドストレートに「ブレイズさんはヤマトのこと狙ってないからモーマンタイ」と言ってもこの面倒臭い恋する乙女と化したプリュムが納得するとは到底思えない。

 

かと言って、「ヤマトはブレイズのことなんも思ってねーから大丈夫!」なんて言ったところでそれを鵜呑みするとは思えないし、それもヤマトの傭兵時代の話を聞いた後なら尚更だ。

 

(あー、もう!なんで雰囲気どころか、ヤマトへの接し方もあのバカに似てるんだか……ん?いや、待てよ…)

 

この時ばっかりは、ブレイズの雰囲気や彼女のヤマトへの接し方がもういない自身の親友に似てしまっているのを軽く恨んだところで、シラヌイはある点に気がつき、その点から一気に突破口への道筋が彼女の頭の中で出来上がった。

 

「プリュムちゃん、まずブレイズさんをギャフンと言わせる必要は無いわ」

 

「どういうことですか?」

 

「それはね、ブレイズさんはヤマトのことを手のかかる弟としか見てないからよ!」

 

「…どういうことですか?」

 

怪訝そうな目で見つめてくるプリュムの視線に、少しだけ落ち込みながらもシラヌイは彼女を説得させるために口を動かし続ける。

 

「いい?ブレイズさんは面倒見が良くてお節介焼きなのは知ってるわよね?」

 

「ええ、それは…」

 

「それで、ヤマトって抜けてるところというか、見てられないところがあるでしょ?ブレイズさんは、それを見て多分世話焼きな性格が刺激されちゃって、ヤマトに声をかけたり、お節介を焼くようになったのと思うのよ。まあ、ここまで長々と説明したけど結論としてはね。」

 

シラヌイは真剣に聞いているプリュムを見て、そこで一拍おき。

 

「ぶっちゃけブレイズさんは、プリュムちゃんの相方ポジション狙ってないし、どっちかというと保護者みたいな感じだからギャフンと言わせる必要は無いわよ」

 

「…確かに言われてみたら……」

 

シラヌイの横暴な内容の説得にプリュムが納得しかけたのをみて、その説得をしている張本人はチャンスと言わんばかりに決定的な一言を告る。

 

「それに私はあの子の隣はプリュムちゃんであって欲しいって思ってるわよ」

 

「…そうですか」

 

(あ、ちょっと嬉しそう…てか、何とか丸め込めたかな?)

 

シラヌイの最後の発言はプリュムを丸め込ませるための文句ではなく、彼女の本心からの言葉であった。仮に、ただ丸め込ませるための言葉だとしても、ヤマトの実質的な保護者であるシラヌイの発言はプリュムにとっては認められたようなもので、彼女の心境は相談をもちかけた時に比べると明らかに良くなっていた。

 

「よし、それじゃあついでだしちょっとヤマトについて話し合わない?」

 

「え?」

 

「将来のお嫁さんから見たヤマトについて聞きたいからね♪」

 

「お、お嫁…!し、シラヌイさん!からかわないで下さいよ!」

 

「ん?結構本気よ?」

 

「〜〜〜〜!」

 

──やっといつもの流れになったわ。

シラヌイは顔を真っ赤にして悶えるプリュムを見ながら、自分はやはり苦労人として頭を抱えるよりもこうやって人を弄り倒すのが自分らしい、と考えながら彼女と自分の2人で飲むようにコーヒーを入れるために席をたち。

 

「シラヌイ、剣を取りに来た」

 

「ああ、ヤマト?メンテは終わったから勝手にとっていって──」

 

「やあ、キミがヤマトが言ってたシラヌイかな?」

 

「────」

 

シラヌイは今1番聞きたくない声が耳に入った瞬間固まった。

正直、シラヌイの頭の中は「そんな馬鹿な」や「幻聴よね?」と言った否定することばかり思い浮かび、そして油の切れたロボットのようにぎこちなく部屋の入口の方へ首を動かすと。

 

 

「やあ、ヤマトのことちょっと借りてるよ」

 

「………oh」

 

笑みを浮かべるラップランドがヤマトの隣に立っていた。因みにプリュムは予想外の出来事で呆然としている。

シラヌイは内心穏やかでない様子でありながらも、平静を装ってラップランドに声をかけた。

 

「えっと、とりあえずなんの御用件で?」

 

「んー、特にこれといって用はないつもりだったんだけど…まあ、ヤマトとはこれから仲良くやらしてもらうから、ご挨拶ってところかな」

 

「あ、そ、そうなの…は、ははは…」

 

──それはどういう意味のご挨拶なのよ!?

と本当のところは問い詰めたいところであったが、、話がややこしくなる+プリュムを刺激させる可能性が高いため、何とか飲み込み笑みを何とか浮かべる。そして、これはシラヌイは空気が読めるできる女だからこそできた芸当である。

 

「ふふっ…それじゃあ挨拶もできたところだし、ヤマト。そろそろ行こうか?」

 

「………」

 

「相変わらず無口だね…まあ、そういう所もボクとしては(ギャップがあって)好きだけどね」

 

「あ、あのちょっと待ってください!」

 

ヤマトとラップランドが部屋を出ていこうとしたところで、復活したプリュムが慌てて声をかけ、ヤマトが止まったことでラップランドも自分だけさっさと行くことは出来ないため、面倒くさそうにプリュムの方へ向き直った。

 

「何か用件でもあるのかい?」

 

「え、えっとその…2人は、これから何をするんですか?」

 

しどろもどろといった様子で聞いてきたプリュムを見て、ラップランドは何となく理由を察すると、ニヤッと笑みを浮かべ、それを見たシラヌイは嫌な予感がしたため何とかしようと急いで思考を働かせたところで。

 

「男女が2人ですることっていたら逢引だと思うんだけど、分からなかったかい?」

 

「────」

 

(やめて!プリュムちゃんを刺激するようなこと言わないで!?)

 

間に合わず、ラップランドの言った一言にプリュムが固まったところでシラヌイは心の中で悲鳴をあげていたところで、ヤマトが疑問に思ってるような顔(比較的)で首を傾げながら声を出した。

 

「ならば、前プリュムと遊園地に行ったのも逢引というのにになるのか?」

 

「え?」

 

「え」

 

(このアホオオカミイイィィィ!)

 

恋愛の「れ」の字も知らないヤマトからしたら、当然の疑問だったのだろうが今回ばかりは間が悪かった。空気が固まる中、ラップランドは驚いたような顔をし、プリュムは頬を軽く赤く染め、シラヌイは肝心な時に無口を発揮しないヤマトに心の中で全力の罵声を浴びせていた。

 

「や、ヤマト、あ、あれはただのお出かけ!そう、普通に遊びに行っただけなので逢引じゃないですよ!?」

 

「そうなのか…」

 

「…まあそれより、ヤマト。早く行こうか」

 

「ちょっと待ってください!話はまだ終わってないです!」

 

(──ああ、なんでこんなことに)

 

目の前でヤマトを挟んで展開される修羅場に胃がキリキリ痛み出したシラヌイはある決意した。

 

──絶対ブレイズも巻き込んでやろう。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「へっくし!」

 

「…風邪でも引いたの?」

 

「んー、熱っぽさとかはないんだけどねー…てか、ヤマトくんとラップランド遅いわね…訓練の続きできないじゃない」

 

(…誰か、こいつの噂でもしてたのかな)

 

そんな会話が訓練所のある一角であったとかなかったとか。




キャラ紹介

ヤマト:根本にあるものルートのヤマト。全ルートの中で1番ニブチンで、下手すると1番純粋な可能性も…。因みに自分を挟んでのプリュムとラップランドによる修羅場は「2人は仲良いのか」と見当違いなことを考えていた。因みに、プリュムのことは「優しくて一緒にいると胸が温かくなる人」、シラヌイは「自分を助けてくれた人」、ラップランドは「自分と話してくれるいい人」、ブレイズは「暑苦しいけど温かい人」、グレースロートは「優しい人」と思っている。


プリュム:このルートではヒロインの1人。ヤマトのことを異性として完全に意識しているものの、それを認められないという完全に忘れ思春期の恋する乙女ムーブをかましている。因みにこの話の後、ラップランドを要注意人物として認定した。

シラヌイ:このルートでは胃薬が手放せない苦労人天使となっている。それでも、彼女的にはヤマトの交友関係が広がっててちょっと嬉しかったり。彼女的にはヤマトとプリュムがくっついてくれると1番安心だったり。なお、彼女のクラスは狙撃で扱う武器は(どこからとは言わないが)こっそり持ち出したPDWとサブとしてS&W M29とUSPタクティカル、近接用として電撃棒を装備している。なお「私に警棒抜かせたのは今のところムサシだけで、ロドスだとヤマトとヘラグさんなら多分抜かせられちゃうなー」とプリュムに零していたり、訓練で相手を全員ゴム弾でボコボコにしたりと案外強いが、頭脳派or職人タイプと自称しているのであんまり戦場には赴かない。

ラップランド:ヤマトを気に入ってしまったやべーループス。気に入った理由はいくつかあるが、1番は彼の戦い方、特に敵の倒し方にあるようで…?自分好みに染めあげようと色々動いているが、プリュムの乱入やヤマトの天然ぶりのせいで尽く失敗しているっていうオチがあったり(なお、懲りるどころか余計に燃えちまってる模様)

ブレイズ:ヤマトの「自分の命を勘定に入れない戦い方」を見たせいで、色々介入してきたゴリ…エリートオペレーター。わずか3日でヤマトが心をプリュム並に開けるという快挙を成し遂げてたり。其の理由はヤマトの恩人にして相棒だった彼女と雰囲気が似ているからだとか。
なお、シラヌイの魔の手から逃げられたかはご想像にお任せします。

グレースロート:出番少なかった気がする。因みにヤマトのことは普通の人なら落ち込んだり怒ったりするようなこと言っても、表情を何も変えないどころか、何も言わない「変わったヤツ」程度の認識。実を言うと修羅場に参戦させたかったんですが、ダメでした()

感想や批評、一言だけでも絶賛募集しておりますので遠慮なくどうぞ!
あと、リクエストもまだ受け付けておりますのでこちらも遠慮なく…!


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修羅場ですよ!ヤマト君!(BSWルート)

リア友「今のうちにWの育成に必要なもの調べて集めておいたら?」
自分「せやな…wikiで調べるか」
結果
昇進1:初級源岩×12、初級糖原×5
昇進2:ナノフレーク×4、上級アケントン×7
ナノフレーク=上級合成コール×2+上級装置+400龍門pay
自分「やってやろうじゃねーかこの野郎!!」

という訳で、どうも結局1-7から逃げられず素材集めに奔走してる作者です。

さて、今回はBSWルートとなりますが…多分全ルートの中では1番ドロドロしてる気がします。


突然だが、BSWから来たヤマトはかなり優秀だ。

事務作業はBSWでリスカムから教えられていたのもあって報告書なども丁寧に書かれており、しかもスピードもまあまあ早い。

そして戦闘に関しては卓越した剣技と正確な射撃、そしてアーツを剣に纏わせて術攻撃を行えたりと正にオールラウンダー。

プライベートでは人見知り面が強いため、初対面だったりあまり話したことがない人の前だと、ムサシかシラヌイが傍にいれば自然な形で彼女らの後ろに隠れ、いない場合だと口数が少なくなるといった欠点もあるが、それも1度親しくなればかなり緩和される上、お酒の付き合いもかなりいい。それに人見知りとはいえど、困ってる人がいれば迷わず手伝ったりと性格も問題ない。

さらに言ってしまえば、家事スキルも高くその上甘やかし上手で彼でおぎゃってしまう一部の者も何故かいる始末で、顔もシルバーアッシュやミッドナイト、アンセルといった面々と比べると見劣りはするものの整っている部類であるため、正に優良物件である。

 

そんなモテ男だったり、勝ち組な印象を受けるヤマトはBSWの先輩二人に挟まれた状態で、顔を真っ青にして立っていた。

 

「ヤマト、フランカなんか放っておいて行きましょう?」

 

「あんな堅苦しい優等生といたってつまらないだろうから、私と一緒にお出かけした方が有意義よね?」

 

「え、えっと…」

 

──1人でゆっくり過ごすのはダメですか?

 

ヤマトはその言葉が喉から出かけたが何とか飲みこむ。うっかり口を出してしまえばとんでもないことになるのが流石に分かるからだ。

正直な話、ヤマトは何も言わずに逃げたかった。しかし、それを防ぐかのようにヤマトの両腕はがっちりとリスカムとフランカにホールドされているため、不可能だった。というより、答えを急かすかのように力を込め始めているのか、腕から変な音が出始めていた。

 

(こ、殺される…!)

 

色々飛躍した考えになってしまっているが、両側で圧を放ちながら牽制し合う、しかもそれが自分の上司というのもあってヤマトは真剣に自身の命の危機を覚え始めていた。

だが悲しいことに今のヤマトにこの状況を打破する手段はない。せいぜいあるとすれば、決死の覚悟でどちらかを選ぶか、第三者が助けに来てくれることを祈るぐらい。

 

(やっぱりどちらかを選ぶしかないんだ…)

 

そしてヤマトは散々考えた上で、これまで自分に対してイタズラなどをしてないリスカムを選ぼうとして──。

 

「ヤマト、ここにいたのか」

 

「マッターホルンさん!」

 

そこへマッターホルンが姿を現した。そして彼は嬉しそうに声を上げ、自分を救世主かのように見つめてくるヤマトと、その両脇にいるリスカムとフランカを見て状況を察すと、息を軽く吐き。

 

「非番なところすまないが、子供たちに出す焼き菓子を作るの手伝ってくれないか?」

 

「分かりました.!それじゃあリスカム先輩、フランカ先輩失礼します…!」

 

「「あっ…!」」

 

ヤマトは突然の乱入者に腕を組む力が抜けた二人の拘束を器用にとくと、マッターホルンから出された助け舟に全力で乗り込みその場を後にしたのだった。

 

 

 

****

 

 

 

「こんないい天気の日に、甲板で座りながらお喋りもたまにはいいわね〜」

 

「そうね…たまにはいいわね」

 

「でももっと言えば君たちさえ居なければさらに良かったんだけどね?」

 

「それは私のセリフ。お兄ちゃんも私と2人きりだけの方が良かったよね?」

 

「お、俺はみんな一緒の方がいいかな…って……は、はははっ…」

 

──助けてください。

 

現在ヤマトはロドスの甲板にて、W、リーシー、ラップランド、イカズチに囲まれた状態でココアを飲みながら話していた。

 

マッターホルンに助けてもらったヤマトは、彼がドン引きしかけるほどに感謝の言葉を送りまくった。そしてその後は子供たちにあげる焼き菓子と、途中から来たプラマニクスとクリフハートにお菓子の作り方をマッターホルンと教え、それが終わり彼女らが兄にそのお菓子を上手くあげられることを祈りつつ、自分に宛てがわれた部屋に戻る途中で、ふと冷蔵庫にアイスココアのストックが無いことを思い出し、今日はこれ以上誰にも会いたくないのもあって、ついでに自室で自炊するための食材を買おうと購買部に立ち寄った。そう、立ち寄ってしまったのだ。

 

結果として、購買部にいたリーシーとイカズチに見つかってしまい、そこからWとラップランドに鉢合わせて、あれよあれよと何故か甲板にまで連れてかれてしまい、先程の状況へと陥っていた。

 

「子犬ちゃんはやっぱり優しいわね〜。ほらあなた達も少しは見習いなさいな」

 

「お″ぉ″ん″!?W、あんた前の飲み会で「子犬ちゃんの優しすぎるところはどうにかして欲しいわね〜」って言ってたじゃない!あと巨乳なのムカつく!」

 

「癪だけどリーシーの言ってることは正しいよ。まあ、後者に関してはノーコメントだけど」

 

「殺すわよ?」

 

「そうよ!貧乳はステータス、希少価値っていう名言があるんだよ!それにお兄ちゃんは妹の私のことが好きだから、貧乳好きなの!」

 

イカズチがそう言った瞬間、Wとラップランド(持つ者)がヤマトへ鋭い視線を向けた。正直、ヤマトとしては色々弁解したい所なのだが、下手なことを口にしてしまえばやべー事になるのは簡単に思い浮かぶ。というより、このメンツの時に1回選択肢を間違えてしまったことがあり、大乱闘に巻き込まれたところか、どさくさに紛れて弱い所を触られて酷い目にあったのを体験していた。

 

(というより、イカズチが言ってる好きは前に「私の事、家族として好き」って聞かれて、実際そうだからってことで好きって言ったのに…!それに、む、胸の大きさの好みだって特にないのに…!)

 

最もそれを口にしてしまえば大惨事になりかねないので、ヤマトは震えながらココアを飲み込む。しかし、状況は変わらないどころか、何時になっても答えないヤマトに対して、イカズチは目のハイライトが消えかけ、W、リーシーとラップランドは完全に消えた状態で見つめてきているため、と悪化してしまっている。

 

「子犬ちゃん?」

 

「ヤマト?」

 

「…ヤマト」

 

「お兄ちゃん?」

 

「「「「早く答えて?」」」」

 

「ひっ…!ご、ごめん、ちょっと御手洗に行ってくる!」

 

4人から発せられる圧があまりにも恐くて耐えきれなくなったヤマトは、早口でそう告げるとアーツで身体能力を限界まで上げてその場を逃げ出した。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

「はあっ…はあっ…!後、もう少し…!」

 

ヤマトは時折後ろを振り返りながらロドスの中を全力で走り、自分に宛てがわれている部屋へと急いでいた。

 

「ついた…!」

 

そしてヤマトは急いでロックを解除して部屋の中に転がり込み、急いでロックをかけ直す。

 

「はあっ…はあっ…」

 

ドッドッと心臓がかなり早く動いているのを自覚しつつも、ヤマトはそっとドアに耳を当て、アーツで聴力を強化して外の音を聞く。

それを十数分したところで、ヤマトは外から誰かが来るような音がしないのを確認すると、ペタンと地面に座り込んだ。

 

「…なんで、こんなことに……」

 

「そんなの、先輩が誰も選ばないどころか、最近は自分の命を捨てるような戦い方をするからに決まってるじゃないですか」

 

「えっ……」

 

ただ、無意識に発せられた自分への問いを自分の声では無いものが答えた。その事実とは後半の答えにヤマトは冷や汗をかき、そしてまた早く鳴る心臓を抑えながら後ろを振り返る。

すると、そこには──

 

「ヤマト先輩、やっと来てくれたんですね?」

 

「ずっと、待ってた」

 

「ジェシカ…それにレッドまで…!」

 

いつからいたのか、レッドとヤマトの後輩であるジェシカが立っていた。

ヤマトは地面に腰をつけたまま後ずさり、そして湧き上がる恐怖心を抑えながらジェシカ達に話しかける。

 

「い、いつから…どうやって…?」

 

「それに関しては1時間くらい前にそろそろ先輩戻ってくるだろうなって思って、レッドさんにお願いして通気口を辿ってここに入りました」

 

「潜入、成功」

 

(完全に不法侵入じゃ…!)

 

目のハイライトが消えた状態のジェシカとふんすっと胸を少し張っているレッドの対局的な雰囲気に戸惑いつつも、このことに関してはしっかりアーミヤ、ドクター、そしてケルシーに言いつけることをヤマトは心に決めた。

しかし、このままだとそれをする前に色んな意味で終わりそうなので、とりあえずヤマトはドアに行く時間を稼ぐためにも、ジェシカとレッドに話しかける。

 

「そ、それでまた同じようなこと聞くけど、なんでこんなことを…?」

 

「………」

 

「簡単ですよ…先輩の事が狂ってしまうほどに好きなのと、貴方がいつ死んでしまうか分からないからです」

 

「……俺って、いつ死んでもおかしくないぐらい弱い?」

 

「違います!」

 

ジェシカの前者はともかく、後者の発言でヤマトは自分が信じられていないことに少し落ち込みながらも問いを重ねた瞬間、ジェシカは力強くそれを否定した。

 

「先輩、あなたは…!何故か私たちを見る時は、届かない存在を見るかのように見てますよね…そして、ムサシ先輩を見る時は悲しそうに見ますよね…そして、戦場に行く時は…!死に場所を求めるかのような目をしています…!しかも、戦いの場じゃいつも無理無茶ばっかりして、味方を庇って、酷い時は大怪我して戻ってきてますよね!?それを見て、不安にならない方がおかしいじゃないですか!?」

 

「レッドも、不安…ヤマト、いつも怪我してる、胸が痛い…」

 

「私は…いえ、私たちは先輩の過去を知らないです…ですけど、私達はあなたの事を好きになって、愛してしまったんです!そんな大事な人がいつもボロボロで帰ってくるのを見て、悲しいはずが、不安に思うはずがないじゃないですか!」

 

「ジェシカ…レッド…」

 

ヤマトは彼女達の言い分に胸がズキリと痛むのを感じた。

実際、最近ある悪夢を見るようになってからヤマトは自分の生きている価値を見失っていた。自分は生きていい人間なのか?と考えるようになってから、ジェシカ達が遠い存在のように見え、そして自身の至らなさで片腕を失ってしまったムサシにはこれまで抱えたことがない罪悪感を抱くようになってしまった。

 

何も言えないでいるヤマトにジェシカは、軽く息を吐いた。

 

「だからですね、みんなと話したんですよ。もし、今日中に誰もヤマト先輩を落とせなかったら、みんなで囲ってしまいましょうって」

 

「え…」

 

ジェシカがそう告げた瞬間、プシューという音ともに部屋のドアが開き、ヤマトはロックしたはずのドアが開いてしまっている事実に戦慄しながらも、油が切れたロボットのように首をぎこちなく動かして。

 

「はぁ…まさかジェシカの言った通りになるなんてね…」

 

「…まあ、私も予想してはいたからまだいいけども」

 

「ちっ…コイツらとね…」

 

「ちょっと露骨に嫌そうな顔しないでくれる?」

 

「そうだよ…ボクだって不服なんだ」

 

「まあ、お兄ちゃんのためにも妥協するしかないんだよね」

 

「は、ははは…」

 

いつからいたのか、ドアの前に立っているフランカたちを見てヤマトは乾いた笑みを浮かべ。

 

「それじゃあ先輩…私たちを置いていかないでくださいよ?」

 

「え、あ、ちょ、リスカム先輩らなんでベッドに連れてくの!?あ、服脱がさな、やめ、やめろー!って、尻尾触らない…はっ!?」

 

 

 

 

 

 

「うわあああああああっ!!」

 

 

 

 

 

****

 

 

 

「って、なる前に何とかしたいんだけどムサシ、シラヌイさん、なんかありません?」

 

「それってドクターの妄想話じゃねーか!って言いたいけど、まじでそんな目で俺らの事見てるもんな…」

 

「というより、あの子の幼少期知ってる分現実味が帯びてきたわよ…」

 

ドクターの熱弁にムサシとシラヌイが頭を抱え込み始めた。

そう、シラヌイも言っていたようにドクターが話した「ヤマト包囲網完成間近説」はヤマトの過去と彼の最近の行動、そしてジェシカ達がコソコソ裏で何かやってるのを含めると、何故ジェシカがラスボス枠なのか聞きたいが、正直妄想話とは言えなくなってしまった。

というより、今こうしてる間に実現してそうなのがこの説の恐ろしいところであり、シラヌイは冷や汗を流し始めた。

 

「どっちにせよ、何かしら手を打たないとロドス内で×××事件(放送禁止用語)が起こって、ヤマトさんが大変なことに…!」

 

「アーミヤちゃん、真剣に心配してくれるのはありがたいんだけど、R-18系列の言葉は言わないで?キャラ崩壊もあるし、この小説一応健全な中学生以上向けのやつだからさ」

 

「しかし、正直何をしたらいいか分からない…もう、ヤマトには犠牲になってもらうしか…!」

 

「いや、8股は流石に色々とまずいわよ!?そんなの私許さないからね!!」

 

「…いや、ぶっちゃけヤマトを縛り付けるにはそれぐらいした方がいい説ワンチャン?」

 

「あるか!このアホ独身ムサシ!」

 

「ぐはっ…!シラヌイ…言ってはならないことを言ったわね…!ぐふっ…」

 

「ああ!?む、ムサシさんが口から血を吐いて…!?」

 

「いや、どんだけその話題に弱いのよ!?」

 

執務室でこんなやり取りがやられている中、ヤマトはシルバーアッシュの腰元にしがみついていい感じに隠れ、ジェシカ達の修羅場から逃げ出していた。

 




何じゃあ、こりゃあ…

キャラ紹介
ヤマト:ムサシが生きてるルートのヤマト。人の良さが災いして天然フラグメーカーとして数々の女性を引っかけってしまった。結果として、日々修羅場に巻き込まれており、酒の席では「なんで俺なんかを…」とガチで困惑した様子でこぼす姿が…。最近、孤児院のみんなのことを夢で見るようになってて…?ちなみにリスカムの事は「厳しいけど面倒見のいい先輩」、フランカは「優しいけどからかってくる先輩」、ジェシカは「大事な後輩」、Wは「前に一緒に仕事した人(無事でよかった)」
リーシーは「イカズチの面倒見てくれたり、自分が作ったご飯を美味しそうに食べてくれる人」、ラップランドは「なんか自分に気をかけてくれる人」、イカズチは「大事な妹」、レッドは「初めてのループスの友達」と言った感じに見てます。

ヒロインズ:ヤマトガチ勢。ちなみにWはヤマトがBSWで働いていた際にたまたま同じ戦場で戦ったことがきっかけで、リーシーはチンピラに絡まれているところを迷子になっていたヤマトに助けられて、リスカムは素直なところやしっかりしてるのに子供舌というところ、フランカはヤマトの天然ジゴロセリフで…という感じで。

ムサシ:ヤマトってなろ○系主人公なのか?因みにシラヌイの口撃で全治3時間の心の傷を負った。

シラヌイ:そ、その悪かったわよ…。ちなみにこのルートでは数少ない常識人にして、胃薬が手放せない苦労人。

ドクター:俺は絶対にああはならないようにしないと…いや、そもそも俺に好意持つやつなんていねーか、ははは(笑)

アーミヤ:ドクター…

シルバーアッシュ:あまりにも可哀想だったので助けてあげた。

ラスボス後輩:ジェシカ。



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修羅場ですよ!ヤマト君!(辺境の守護者ルート)

お待たせしました!
メンテでアークナイツ出来ないのでこの時間に投稿です。
今回は1番平和なルートの修羅場となっております。

それでは本編の方どうぞ!


「ケルシー先生、ヤマトは迷惑かけてないですか?」

 

それはロドスにあるバーにて、ヤマトの父親でありガーディアンとロドスに業務提携をしている貿易会社「カグラ・カンパニー」の社長であるユウキは、ふとケルシーにそのようなことを聞いたてきた。

 

「ふむ、俺としても送ったガルーダ小隊がしっかり役に立ってるか気になるところではあるな」

 

「って言いつつ、ロドスでは馴染めてるのか、迷惑をかけてないか、朝昼晩3食しっかり食べてるのか凄い心配してたくせに」

 

「カ、カシマ…!それは言うなってあれほど…!」

 

「マサムネさんって本当に心配性ですよね〜」

 

「私としてはガーディアンとカグラ・カンパニーのツートップがお忍びでここに居るのが心配なんだがな」

 

「「「「…………」」」」

 

「目を逸らすな」

 

ケルシーは、ユウキとマサムネは来るということを一報入っていたので知っていた(返信するより前に勝手に来た)が、カシマとユウキの妻兼秘書であるムツキが来るのは直前まで知らなかったので、来た時は頭を抱え込む羽目になり、急遽ロドスのバーを貸切にしていた。

 

「そ、それよりヤマトくん達の小隊はどう?ご迷惑かけてないかしら?」

 

「露骨に話を逸らしたな…まあそれに敢えて乗っかって言うとすれば、彼らのおかげで作戦で負傷するオペレーターの数が減り、更に彼らが進んで訓練にも臨時的な教官、模擬戦相手として入ってくれたのもあり、こちらの質も上がっていたりと、かなり助かっている」

 

自分たちの大事な仲間(家族)であるガルーダ小隊が、ロドスに迷惑をかけてないことにマサムネとカシマは安堵の息を吐いた。

 

「それは良かっ──」

 

「AMRを訓練所でぶっぱなして施設の1部を破壊したり、レッドと共に通り魔のようにうちのオペレーターの尻尾を触って気絶させたり、作戦会議中に何も関係ないこと言い出したりと言った点を除けば、な」

 

「「本当にすみませんでした」」

 

マサムネとカシマはケルシーでさえ驚くほどの早さで頭を下げ謝罪した。因みに上記のようなことをしたガルーダ小隊の面々の言い訳は「AMRの威力見てみたいって言われてつい…すみませんでした!」、「モフモフがそこにあったから」、「おにぎり食べたくなってきたから」であり、ヤマトは彼らと共に迷惑をかけてしまった各方面に土下座謝罪する羽目になったのだった。最も、ガルーダ小隊のメンバーは変わり者であることは数日で知れ渡っていたので、ライフルブッパとモフモフの件はかなり怒られたものの、作戦会議中の発言に関しては軽く流されたのだが。

 

「そ、そうだ!ヤマトは?ヤマトは特に迷惑掛けては…?」

 

「ヤマトか…彼は特にこれといってないと…いや、ただ面白いことはしてたな」

 

「面白いこと?」

 

「ああ…そうだ。…ふむ、酒の肴として話すのも悪くは無いか」

 

話を変えようと出来る女のムツキが話題を変えるために聞いた質問に、ケルシーはそこまで言いかけたところで、ふと先日見たとある出来事を思い出し、それを首を傾げている4人に話すことにしたのだった。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

それは先日、ケルシーが珍しく気分転換としてロドスの館内を歩いてた時の事だった。

 

「~〜、~~!」

 

「~~!」

 

「ん…?」

 

近くから言い争うような声が聞こえ、ケルシーは自分らしくもないと思いつつも興味半分で誰が言い争っているのか見に行くことにし、そちらへ足を進めていく。すると段々声が聞こえてくる訳であり。

 

(…どうやら、ヤマトは人気のようだな)

 

聞こえてきた内容にケルシーはフッと軽く笑みを零し、学生のような青春をしているオペレーターたちを実際に目で見ようと思い、気配を殺しつつ、廊下の曲がり角から顔を少しだけ出す。

 

(さて、どんな風に言い争って──)

 

「さっきも言ったけど、彼はこれから僕と訓練所で戦うんだ。分かる?」

 

「だーかーら!悪いけどヤマト君はこれから私とお茶する予定だったの。悪いけど引いてくれない?」

 

「申し訳ないがヤマトは本来、私と買い物に行く予定だったんだ。だから退くのはお前たちの方だが?」

 

「お兄ちゃん…もちろん、私を選ぶよね?」

 

「ヒェッ……」

 

(ほう…これはこれは…)

 

順にラップランド、ブレイズ、フロストリーフ、イカズチに四方を固められているのは、ガーディアンとロドスの提携で出向しに来ていた特務隊ガルーダ小隊の小隊長のヤマトであった。

ヤマトのことはケルシーも小耳に挟んでおり、大きいナイトシールド、貴重な拳銃、源石剣、そして彼専用に作られた特殊な機械仕掛けの大剣を自在に使いこなすオペレーターでありながら、個性が強いガルーダ小隊を纏めあげている人当たりのいい青年、と聞いてきた。しかし、どうやらそこに女難の相もある、という情報も足した方がいいかとケルシーが冗談半分で考えている中、事態が動き出した。

 

「ご、ごめんなさい…お腹痛いから御手洗行ってきてもいいですか……?」

 

4人が展開する修羅場のど真ん中に放り出され、それを身に浴びていたヤマトが根を上げたのだ。これには、ケルシーもヤマトは精神方面の耐性も高いということを耳にしていたこともあって驚いた。いや、どちらかというと、耐性があるヤマトの胃を痛くさせるという偉業を成し遂げた4人に驚いているのだが。

 

「そっか。我慢は体に良くないから行こうか」

 

「………」

 

「そうだね、ほら早く行こ」

 

「……すみません、なんで着いてくるんですか?」

 

「そりゃあ、ヤマトが逃げないようにって決まってるだろう?」

 

「そーだよ、お兄ちゃん前にそう言ってたまたまあったダンボール使って隠れながら逃げたの忘れてないからね?」

 

そんな面白いことがあったのかとケルシーは思った。というより、親が親なら子も子ということが判明した瞬間でもあり、ケルシーは感慨深いものを感じた。

 

「…はい。分かりました……」

 

(…少し、どういう結末を辿るか気になってきたな)

 

肩、耳そして尻尾を落としたヤマトがラップランド達に囲まれながら移動し始めたのを見て、ケルシーは自分らしくないことを自覚しつつも追跡を開始したのだった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「それで、その後トイレでたまたま会ったミッドナイトにモコモコのコートを着させ、その中に入って腰にしがみつき4人をまこうとしたが、尻尾が出たせいでバレて、そこからプロヴァンスも加わって5人から逃げ回っていたな」

 

「「ヤマト……」」

 

「その後は監視させ…見ていた者が言うには、結局一瞬の隙をつかれてラップランドに尻尾をモフられて無力化されたところを訓練所に連れてかれたらしいな」

 

「なんで味方陣営の場所で貞操喪失の危機に…?」

 

「私が聞きたい」

 

話し疲れたのかケルシーはそこで息を吐き、周りの反応を改めて見る。

まずマサムネとユウキは頭を抱え込むという予想通りの反応。正直、勝手に来た仕返しができたので内心ざまあみろとケルシーは思っていたが、カシマとムツキは予想に反して呆れた顔であったのが少し不思議であった。

そしてそれを何となく察したのだろうカシマとムツキは遠い目をしながら、口を開いた。

 

「ユウキさん、顔も性格もいいし無自覚でフラグを建てるから結構モテてたのよ。ヤマトの話を聞いて、その話しを思い出してね…」

 

「私も似たようなものよ…傭兵時代のマサムネって無口なクール系イケメンって感じで、ふとした時に微笑むと思ったら優しくして欲しい時に優しくしてくれたりと、それを天然でやっててライバル多かったのよね…」

 

「「本当、似なくていい所まで似たのね…」」

 

「「………」」

 

(そういえば、結構苦労したという話を聞いてはいたが…なるほど、聞いた話以上に大変だったのか)

 

疲れたようにため息を吐く妻たちに夫たちはすっと申し訳なさそうに顔を逸らす。何の因果か、この2人は直前まで彼女らが自分に好意を抱いているとは気づいてなかった、いや正しくは持つはずがないと思っており、押し倒されて既成事実を作られそうになった時にやっと妻と自分の想いに気づくという鈍感を発揮していたからだ。

 

 

因みにマサムネとユウキは今のヤマトみたいな目に遭ってはいないため、まだ恵まれていると言える。最も、マサムネは手作り料理という名の野生動物の丸焼き、ユウキはダークマターを食べさせられたりと、彼らも散々な目にあった訳ではあるが。

 

閑話休題。

 

「…今度、ヤマトのお嫁さん候補に会ってみようかな」

 

「そうねぇ…多分、色々アドバイス出来るだろうし」

 

「是非、そうしてやってくれ。正直私ももどかしい」

 

((…今度、ヤマトに何かプレゼントでも送ろうかな……))

 

この後、妻2人がよって若い頃の夫を巡る女たちによる仁義なき恋愛戦争の内容を大暴露し、そのエピソードの一つ一つを聞く度にケルシーが「お前ら…」という呆れた視線をマサムネとユウキに送り、その度にマサムネとユウキは平謝りするという構図がカシマとムツキが寝落ちするまで続くのだった。

 

 

因みに後日、ヤマトの元に2人の父から彼の好物のココアと欲しかった銃のカスタムパーツが送られ、貰った本人は嬉しそうに尻尾を振りながら周りに話していたのだとか。




キャラ紹介

ヤマト:変わり者の隊員を纏めあげている小隊長。このルートでも無自覚にフラグを建ててしまっているが、それは親の血ということが判明。因みにプレゼントを送ってくれた父2人には満面の笑みで嬉しそうにお礼を言ったのだとか。因みに結構純粋です。

ラップランド:模擬戦で手も足も出ずにボコボコに叩きのめされてからヤマトが気になって絡んでくるオオカミさん。最近の楽しみはヤマトと戦うことと彼の尻尾をモフること。

ブレイズ:実はヤマトとは彼が特務隊の隊員時代からの付き合いであり、ガーディアンとロドスの合同任務で度々一緒に行動した仲でもある。そんな中でヤマトの人柄に惚れ、それ以来アタックし続けている。因みにヤマトと飲み比べで勝てる数少ない人物でもあったり。

フロストリーフ:こっちでは原作とは違い、傭兵時代の時に宛もなくフラフラしていたところを当時特務隊の隊員であったヤマトに拾われ、暫くはガーディアンでヤマトのお世話の元生活していたという過去がある。鉱石病の治療の関係で結局ロドスに来た訳だが、実はヒロインズの中ではイカズチに次いでヤマトと過ごした時間が長い。

イカズチ:お兄ちゃんガチ勢。こっちのルートではマサムネとお出かけしていたヤマトが、空腹と寒さで死にかけていたイカズチを見つけたことで保護、そのままガーディアンで暮らすという経緯になっている。そのため、当初からヤマトのことを慕っており、自分のことを誰よりも気にかけてくれるヤマトのことが次第に…。1番好きなのは、ヤマトに尻尾のお手入れをしてもらうこと。

プロヴァンス:あんまり出番がなかったモフモフオオカミ。ヤマトのことはとある件で彼が根は甘えん坊ということを知って以来、普段のギャップや人となりもあって好意を抱くように。因みに隙あらば甘やかそうとしてくるお姉さんムーブをよくしてるが、当のヤマトは中々それに反応してこないという。

ケルシー:マサムネ達とは顔見知りで酒を飲み合うほどの仲ではある模様。

ユウキ:ヤマトの実父にして社長さん。種族はループスで、顔は結構整っておりしかも見た目は20歳と言われても騙されるほど若い。なおプレゼントのお礼に関しては素直に嬉しい反面、ちょっと心苦しかった。

ムツキ:ヤマトの実母にして秘書。種族はループスで、童顔よりだが美人で20歳と言われても(ry。ヤマトの容姿は彼女の血が濃く出ている。
余りにも鈍感な夫に業を煮やして既成事実をでっちあげようと夜這いしたことがある。因みに今でもよく夜這いを仕掛ける。

マサムネ:ヤマトの育ての親にしてガーディアンの創立者で現総司令官。結構な苦労人でありながら、自分も他人を振り回すこともある色んな意味でプラマイゼロな人。カシマ曰く「昔に比べたらめちゃくちゃ丸くなった」とのこと。銃のカスタムパーツを送ったのはマサムネ。因みに強さは健在でスカジとヘラグの二人を同時に相手しても苦戦はするが倒せるレベル。こいつ出せば全て終わるんじゃね?ってレベルでくっそ強い剣術とアーツの使い手。因みにヤマトの剣の師匠でもある。

カシマ:ヤマトの育ての親にしてマサムネの秘書兼ガーディアンの交渉担当。そしてめちゃくちゃ強いマサムネを襲ってそのままゴールインした猛者でもある。彼女自身もそれなりに戦え、槍術を嗜んでいる。因みに後日、当時のことを思い出してマサムネを襲っ(その先は読めない…)


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修羅場ですよ!ヤマト君!(本編ルート)

という訳で、長かった修羅場編の最後を飾るのは本編ルートとなりました!

実を言うと、ヒロイン候補の1人をどう出せばいいのか思いつかなかったため、その人抜きでの修羅場になってしまいました…本当にすみません!

*テリーVIP落ちしたので、ゆっくりもこうって名前のテリーに当たったら自分だと思うので遠慮なくボコしてください。あとFEキャラとクラウドとリンクも使ってるので会ったら遠慮なく(ry


「えー、それでは第1回、ヤマトの修羅場対策会議を始める」

 

「「「ちょっと待って(くれ)(下さい)」」」

 

「どうした?」

 

「いや、どうしたも何も急に集まれって言われて早々ね…」

 

突如フロストリーフから招集を受けて早々謎の会議の開始を宣言された、メテオリーテ、テキサス、ホシグマは思わず待ったをかけた。それもそうだろう、いきなり話し合いたいことがあると言われ来たら、修羅場対策会議という訳の分からないものをフロストリーフが始めようとしたのだから。

そしてフロストリーフも何も説明してないことに気がついたのか、そういえばと言った雰囲気で説明を始めた。

 

「お前らも知ってはいるが、ヤマトに異性としての好意を向ける人物が増えたため、ヤマトの貞操やロドスの施設、そして私たちの胃を守るために情報交換、対策を話し合おうと思ってな」

 

(((ああ、そういう…)))

 

フロストリーフの説明に3人は納得したような表情を見せた。イカズチが来てからというものの、ヤマトを巡ってラップランド、リーシーそしてイカズチによる修羅場がよく展開されていた。そしてそれが起こる度に毎回何かしらの被害(主にヤマトに)が及ぶので、フロストリーフ達は毎回胃を痛めていた。因みにドクターもお腹を痛めていた。

 

確かにこれ以上放置しておくと大変なことになるのは明白。そのため、メテオリーテ達はため息を吐きながらも賛同の意を示した。

 

「そういえば、隊長は?」

 

「……あいつは修羅場には参戦してないが、なんかヤマトのことを見る度に顔を赤らめてたのもあって……」

 

「あっ…(察し)」

 

「…それより、何か情報ないか?」

 

フロストリーフの問いかけにテキサスがすっと手を挙げた。

 

「テキサス、あるのか?」

 

「…ああ、あれは確か──」

 

 

*****

 

 

あの日、私がヤマトに用事があってアイツの部屋を訪れようと…ん?何故ヤマトの部屋に、だと?……済まないがそれは黙秘権を行使させて欲しい。ただ、私はラップランド達みたいにヤマトへ異性に向ける好意は持ってないことはちゃんと言っておく。…さて、話を戻すか。

 

それでヤマトの部屋を訪ねるために歩いていたんだが、言い争ってる声…いや、一方的に怒鳴っているような声が聞こえてきたんだ。

最初、誰の声なのか分からなかったが方角がヤマトの部屋の方というのもあって、歩いていると段々それがイカズチの声だと分かってな。無論、アイツが暴走したら大変なことになるから急いで向かったんだ。そしたら…

 

「お兄ちゃんどいて!その赤いのにはお兄ちゃんの尻尾は私だけのものって分からせないといけないの!」

 

「イカズチ、とりあえず落ち着いて?レッドも怖がってるし…あと俺の尻尾はいつから所有物に?」

 

「お兄ちゃんが私のお兄ちゃんになった時から!」

 

「ええ…(困惑)」

 

レッドを後ろに庇いつつ荒れ狂うイカズチを抑えようとしているヤマトの姿があったんだ。この時は正直関わりたくなかったから、見守ることにしたんだが…

 

「と、とりあえず後で触らせてあげるから。それで手を打とう?」

 

「やだぁ!どうせ、お兄ちゃんのことだからその赤いのには私の倍以上モフらせるんでしょ!?私、お兄ちゃんがそのチンチクリンに甘いの知ってるんだからぁ!」

 

「ちんちくりん…?」

 

「レッドは知らなくていい言葉だから、気にしなくていいよ」

 

「分かった」

 

と、まあイカズチが駄々をこねだして…ん?ああ、ヤマトがレッドに甘いというのは本当だ。というより、ループスのオペレーターの中では結構有名な話だぞ?具体例?そうだな…尻尾をモフらせるのはもちろんの事、お菓子を一緒に作ったり、または自作のをあげる、イカズチが来る前ではレッドの尻尾の手入れをしてたり…だな。無論、それはイカズチの耳も入っていたわけだ。

 

「うわああああ!!義妹ポジションは私だけなの!赤いのに渡さないんだからあ!」

 

「いや、妹はイカズチだけしか…あ、ちょっ!落ち着いて!尻尾ならいくらでも触らせて…!ひゃんっ!?」

 

「…レッド、先」

 

「れ、レッド!?今は触ら…」

 

「うわあああ!ぶっ○してやる!」

 

 

 

 

****

 

 

 

「流石にまずいと思って、後ろからイカズチを手刀で気絶させてその場は何とかなったが、下手するとあそこは黒焦げになっていただろうな」

 

「マジか…そんなことがあったのか…ん?待てよ、それってまさかレッドも…」

 

「いや、それはない」

 

フロストリーフは普段の言葉遣いが崩壊している中、ふとある恐ろしい可能性があることに気がつき、頭を抱え込み始めたところでテキサスが待ったをかけた。

 

「レッドは恐らく、ループスで仲がいい人レベルでしか思ってないだろう。少なくとも、異性としての好意は持っていないはずだ」

 

「そうか…」

 

「…次、私が見た話をしていいかしら?」

 

フロストリーフらが胸をなで下ろしたところで、次はメテオリーテが挙手をした。

 

「あ、ああ。頼む」

 

「えっとね──」

 

 

 

*****

 

 

 

 

1週間くらい前のことなんだけど、あの日は訓練所でヤマトがリーシーの組手しながら彼女に指導してて、私はヤマトのお願いで第三者目線で見て欲しいってことで見てたのよ。

 

「ふっ!はっ!」

 

「うん、フェイントも交えられるようになってきたね…けど!」

 

「うぬをあああ!?」

 

「もう少し相手の動きをよく見るようにしようね」

 

 

それでヤマトはリーシーの正拳突きをしゃがんで避けて、伸びた腕と彼女の襟首を掴んで背負うようにぶん投げてたわね…ああ、そういえば皆ヤマトが実は結構厳しいっていうの知ってたわよね。それで、リーシーがちょっと不機嫌そうに抗議したのよ。

 

「ヤマト…私、一応女だから優しくして欲しいなーって…」

 

「…うん、分かった。それじゃ今日は訓練倍にしようか」

 

「ごめんなさい!謝るから許してくだ…いや、待てよ。よくよく考えてみたら合法的にヤマトと一緒に過ごせる時間が増えるということに…!」

 

…ええ、言いたいことは分かるわよ。私も恋って凄いんだなって思ったわよ。まあ、その後もリーシーはヤマトと一緒に訓練しててね。それで、二人が休憩を取り始めた時に。

 

「ヤマト…疲れたから膝枕してもらっていい?」

 

疲れで地面に仰向けでぶっ倒れてたリーシーが、急にそんなことをヤマトに向かって言い出したのよ。正直膝枕ってその…な、なによ、そんなニヤニヤしだして…んんっ!まあ、ともかくそうお願いしてたのよ。そしたらヤマトなんて返したと思う?

 

「尻尾枕じゃなくていいの?」

 

って返したのよ…いや、正直「枕はしてあげるんかい!」ってツッコミを入れなかったあの時の私を褒めたいわ…。結局リーシーはめちゃくちゃ悩んだ挙句、まさに苦渋の決断って感じで膝枕を選んで、ヤマトもそれを普通に承諾して膝枕してあげてたのよ。

 

…ええ、そんな視線を向けられなくても分かってるわよ……というよりあの時リーシーを止めてれば良かったって今でも思い返すわよ。

 

「お兄ちゃん!スポーツドリンクもってきた…よ…?」

 

「ヤマト、出来たら僕と模擬戦…を……」

 

「あ」

 

あの時、時間が止まったわね。てかなんでこうタイミングが悪くラップランドとイカズチが来るのかな…って。え?その後、どうなったか?想像つくと思うけど…

 

 

「リーシーお姉ちゃん酷い!私だって、まだお兄ちゃんに膝枕してもらった事ないのに!」

 

「そんなのボクだってしてもらった事ないのに…!」

 

「おぉん!?ラッピー、あんたヤマトを抱き枕にして寝たことがある癖によくそんなこと言えるわね!?」

 

「え!?なんでリッちゃんが知って…」

 

「はあ!?この白黒…もういい、全員叩きのめしてやる!」

 

「ふっ、出来るものならやってみなよ…まあ、無理だと思うけどね?」

 

「上等よ、訓練の成果見せてあげるわ!!」

 

 

 

 

*****

 

 

 

「その後、3人による三つ巴戦が始まちゃって私はヤマトから誰か呼んでくるように言われて訓練所を出て、たまたま会ったヘラグさん、シュヴァルツ、あとチェンを連れてきて何とか止めたって感じね」

 

「ああ、あの騒ぎはそういう…」

 

因みにあの時救援を呼びに行ったメテオリーテは知らなかったが、訓練所をに残ったヤマトは3人を止めようと乱闘が始まり、雷やらアーツの斬撃やら拳が飛ぶ戦場に単身飛び込み、リーシーが放ったアーツの高出力衝撃波(パワーゲ○ザー)を運悪く食らって吹っ飛ばされるという事件が起きていた。

 

「ホシグマは何かないか?」

 

「いや、私も正直似たような話しかないからな…とりあえず幸いなのはまだ3人だけしかいないということだろう」

 

ホシグマの発言にその場にいた全員が「確かに」と内心同じ感想を抱いた。正直な話、これ以上増えたら大惨事になるのは明白。それにチェンはメテオリーテの話を聞く限りでは3人を止める側に回ってくれたことが判明したので、4人が抱いた感想は正しいものと言える。

 

「まあ、とりあえずはなるべくあの3人を一緒にしないようにするしかないな」

 

「そうね…イカズチちゃんがアーツ全力解放なんてことが起きないようにもする為にもね…」

 

その後も、4人の間で色んな意見が飛び交いこの「ヤマトの修羅場対策会議」はかなり白熱したものとなったのであった。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「~♪~♪」

 

「~♪~♪」

 

「「~♪~♪~♪」」

 

「ヤマトくん!今最後の方音程ズレたよ!」

 

「ひ、ひい!ごめんなさい!」

 

「あはは、ソラも結構厳しいねぇ」

 

「うーん、これは予想以上に厳しい指導だねけど………が結構高レベルで歌えてるからちょっと計画変更しようかな。…あ、ならどうせだし………にもお願いしてみるか

 

 

「ん?何か言ったかい?」

 

「いや、なんでもないよ」

 

一方その頃、ヤマトはソラとドクター監修の元とある人物と歌の練習をしていたのであった。




前書きではあんなこと言っておきながら、回線の調子が悪くて急に切れたりして潜るのが怖くなってたり。


キャラ紹介

ヤマト:最後にチョロと登場した主人公。実はリーシーと扱うアーツが似ていることが判明し、ドーベルマンらの采配で専属の教導官に。そしてそれにあたってみっちりと教導のことをドーベルマンに教えこまれ、結果としてスパルタ教導官へとクラスチェンジ。ただ、褒める時はしっかり褒め、甘やかす時は甘やかすためそこまでやばくはない。因みにレッドに対してあまい自覚はない。

イカズチ:義妹ポジとお嫁さんポジは絶対渡さない系義妹。義妹なら結婚できることを最近知った。なお、リーシーは愛人枠ならいいかなと考えてたり。ただし白黒ループス、テメーはダメだ。因みに叫んでる時は某水の駄女神並の泣き声と顔芸を披露してる。

リーシー:ついにパワーゲイ○ーを習得したやべーやつ。3人の中ではちゃっかりとヤマトと触れ合う時間が多い…訓練の時間込みというのがつくが。最近、ヤマトの厳しい教導でなにかに目覚めかけてる。

ラップランド:メインヒロインムーブが1番多いが、最近はそのムーブが少ない悲しいオオカミさん。因みに3人の中で唯一ヤマトを抱き枕にしたことがある。因みにイカズチとはなんかソリが合わないらしい。

レッド:無自覚で義妹ポジションに居座りかけている、イカズチの天敵。因みにイカズチはレッドへ抱く恐怖はもう慣れたとのこと…尻尾は垂れ下がるが。

チェン:ヤマトのことを意識しだした隊長。ちょっと初々しい感じだが、保護者組としての仕事はしっかり全うした。

対策会議に参加した皆さん:後日、今回の会議が無駄となるのをまだ知らない。因みにメテオリーテはイカズチの保護者ポジです。

ソラ:本場のアイドルというのもあって、歌に関しては結構ビシバシ教えてくれそうという訳でヤマトととある人物に歌の指導をし、ヤマトをある曲だけ人並みに歌えるレベルまで仕立て上げるという快挙を成し遂げた。

ドクター:なんか企んでる。

ヤマトと一緒に歌ってた人:一体どこの何ティマさんなんだ…

感想や批評、お待ちしています!


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クリスマススペシャル!小話集その1

お待たせし致しました!

今回は思いついたらいいものの、短くて1話分としては出せなかったり、他のルートの話だったりといわゆる没集の寄せ集め回です。

そしてアークナイツグローバル版1周年おめでとうございます!


その1:実はこんなこともしてました(その1)

 

 

「ついでだからさ、これも付けてみてくれる?」

 

「…ナニコレ」

 

「何って…チョーカーだけど…」

 

それは、もふもふグランプリの優勝権利としてヤマトを着せ替え人形にし、彼がメランサが学生時代に着ていた服を着らされ何かが砕け散った後の事だった。

メランサが思い出したかのように取り出してきたのは黒のシンプルなチョーカー。ヤマトはそれを虚ろな目で見ながら受け取る。

 

「そのチョーカーって昨日の話ではなかったはずですが…」

 

「その、朝ドクターに、これ良かったらヤマトに付けてみなよ!って言われて渡されまして…」

 

(絶対ろくな物じゃない…)

 

アズリウスとメランサの会話を聞いたヤマトはそんな感想を抱きつつも、渋々といった様子で首につける。

 

(…うん、なんでサイズピッタリなのかは深く考えないようにしよう)

 

「…なんか、イケナイことをしてる気分になりますね」

 

「…個人的にはゾクゾクしてきましたわ」

 

明らかに1人ヤバいモノに目覚めかけているが、ヤマトはそんなことを気にする余裕はなく着替えていいか許可を取ることにした。

 

「ねえ、もう着替えてもいい?」(CV釘宮理○)

 

「「……え?」」

 

「え?な、なんで俺の声変わってるの!?」(CV釘宮理○)

 

予想外の事態にメランサとアズリウスが目を点とさせ、ヤマトは慌てふためいていた。それもそうだろう、普通自分の声が急に女性の声になったら誰でも慌てる。そのためヤマトの反応は正しかった。しかし…。

 

「……アズリウスさん、ヤマトに今すぐ着させたい服がどんどん思い浮かんできました」

 

「…奇遇ですわね、私もです」

 

「お願いだからもうやめて!!」(CV釘宮理○)

 

結局、ヤマトの懇願によりこの日女装することは無かったが、後日あのチョーカーに変声機能があることが分かり、そのチョーカー型変声機を渡したドクターはヤマトに猛抗議を食らう羽目になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

その2:ブラッシングもお手の物なんです。

 

 

ヤマトはロドスで任されている仕事は主に3つある。1つ目は言わずもがな厨房で料理を作ること。2つ目は貿易所や製造所での業務だ。最も、ヤマトのコミュ障ぶりを考慮して一緒に組むのはフロストリーフやラップランド、テキサスといった面々に限られている訳であるが、仕事ぶりはかなり良いため特に文句などは上がっていない。そして最後の3つ目は訓練の実践相手役だ。最も、最近はヤマトにも小隊を持たせてもいいのではないか?とドクターが考えてるのもあって、最近では指導役として動くことも増えてきているのだが。

 

以上がヤマトがロドス館内で任されている仕事だ。だが実を言うとヤマトはこれ以外にもとある事をやっている。それが…

 

「お兄ちゃん!早く早く尻尾のブラシやってー!」

 

「はいはい、ちゃんとやってあげるから落ち着いてね?」

 

子供たちの尻尾(主にループスやヴァルポ)のブラッシングであった。ヤマトがこれをするキッカケになったのは、たまたま子供たちの尻尾のブラッシングを忙しそうにしていた子供たちの世話を担当している者たちを見て、つい「手伝う」と言ってしまったことだ。

その頃には、とある件のせいでヤマトのことは苦労人兼(どっちかと言うと)常識人というのがロドス内での人物達(子供は除く)総意の認識がであったため、拒否されるどころか寧ろお願いされ、注意事項を軽く受けたところで早速ブラッシングをしたのだが。

 

「痛くない?」

 

「うん…痛くないよぉ…はふぅ…」

 

この男、あまりにも自分がモフられまくったせいでどういったように触り、どれくらい力を込めると心地よいのかを無意識ながら理解してしまっていた。その上自分の尻尾の手入れの一環でブラッシングをするのもあって、手際がいいのもあって男女(どっちかという女の子の方が多い)問わずヤマトにブラッシングを頼む子供が続出。結果としてヤマトはほぼ毎日子供たちのブラッシングをすることになったのだった。

 

「すみません、ヤマトさん。お疲れのところ毎回お願いしてしまって…」

 

「いえ、俺もこの子達のブラッシングをするのは好きですから大丈夫ですよ。それに、こういう時間もいいかなって…」

 

「?オオカミのお兄ちゃーん!止まってるー!」

 

「ああ、ごめんね」

 

子供たちと過ごす時間も密かな楽しみの一つとなったヤマトであった。

 

なお、後日どこからかヤマトのブラッシングの評判が漏れ、それを聞いたレッドとリーシー、ラップランド果てにはイカズチがヤマトの部屋に突撃してブラッシングを強請る事件が起こるのだがそれは別の話。

 

 

 

 

 

 

その3:ヤマトの情操教育(傭兵時代+ラップランドENDルート)

 

「ねえ、ムサシ。子供ってどうやって出来るの?」

 

「ブフッ!?」

 

それは賊を蹴散らしたお礼として、1泊取らせてもらうことになった村の村長の空き部屋にてヤマトが突然とんでもないことを聞いてき時の出来事。なおそんな質問を投げかけられたムサシは驚いて吹き出してしまっていた。

 

「うわ、急に吹き出さないでよ…」

 

「わ、悪い(お前がいきなり下ネタぶち込んでくるからだろうが!)」

 

内心で思っていることを表に出さずにムサシは言葉だけの謝罪を送り、ヤマトを見て、考える。──こいつに『教育』をしていたやつはそっち関係の方は手をつけてなかったのか、と。だが、ムサシはそれよりも先に何故ヤマトが急にそんなことを聞いてきたのかを聞くことにした。

 

「…なあ、ヤマト。なんで急にそれを聞こうと思ったんだ?」

 

「…村の子供たち見てたら、そういえば知らないなって思って」

 

「…そうかそうか」

 

ヤマトのシンプルな理由にムサシは頷きながら内心少し喜んでいた。それも、これまでこれといった興味を持たなかったヤマトが、初めて興味を持って自分から聞いてきたというのが分かり、彼が段々と人間味を帯びてきたことを実感できたからだ。

最も、質問内容が内容なため純粋に喜べないのが問題なのだが。

 

(しっかし、どう説明したものか…)

 

ムサシが考えているとおり一番の問題はそこだ。バカ正直に「男と女が×××すればできる」なんて中身幼女疑惑のヤマトに言うのは気が乗らず、かといってコウノトリはヤマトの年齢的に言うのはダメだろう。

ムサシはそこまで考えてチラッとヤマトを見る。

 

「……?」

 

(くそ、なんか妙に様になってやがる…)

 

こてん、と首を不思議そうに傾げているヤマトを見て、顔が無駄にいいのと雰囲気が柔らかいせいで様になっていることにムカつきながらムサシが下した答えは──。

 

「いいか、ヤマト。子供ってのはなコウノトリが──」

 

 

 

*****

 

 

「だから本で子供ができるのがその…行為でできるって知った時はすごい驚いたんだよね」

 

「へー、そうだったんだ…」

 

恋人の情事を致したあとの会話でヤマトが話した内容にラップランドは心底興味深そうに返したところで、ふとある疑問が浮かび上がった。

 

「けど、その割にはボクと初めてシた時は色々知ってたような気がするんだけど…それはなんで?」

 

「………その、ラーちゃんが気持ちよくなれたらって思って頑張って勉強したんだよ……」

 

「………」

 

顔を赤くして恥ずかしそうに言った恋人にラップランドはきゅんと胸を高鳴らせ、同時にある箇所が疼き出し──

 

「ヤマト…そのもう1回シない?」

 

「え?あ、ちょっ、ラーちゃ…んんっ!?」

 

どうやら自分は意外にも情熱的なタイプみたいらしい、とラップランドはそう考えながら、すぐに蕩けた顔になったヤマトの口内を己の舌で蹂躙し始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

その4:本編BADENDルート

 

「し……りしろ!……ト!」

 

誰かが俺を呼ぶ声が聞こえた気がして、目を開けると俺を覗き込むようにフーちゃんやラーちゃん、俺の妹と自称している子、他にもドクターやアーミヤ代表、チーちゃんや色んな人が泣きそうな顔で俺を見ていた。

 

「み…んな…?ごふっ!」

 

皆、と声を出そうとして喉に何かが引っかかって上手く声が出せず、咳き込むとお腹に激痛が走った。それと同時にみんなが俺を見る顔が変わったのが見えた。

 

「ヤマト!?気がついたか!いいか、絶対に意識を保てよ!!」

 

「ケルシー、聞こえるか!?このポイントに急いでヘリコプターを手配してくれ!早く!!」

 

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!!」

 

ああ、そうだ。確か俺はこの子を引き寄せようと鎖のムチで繋がれた腕を引っ張って、その時に撃たれちゃったんだ。それを認識した瞬間、撃たれた腹…正確には心臓の近くの痛みが余計に増し、同時に自分が助からないということが何となく分かってしまった。

 

「ヤマト諦めるなよ!絶対に助か「い、いよ…」…は?」

 

「…も、うだめな、の…わか、てるから…ゴホッゴホッゴホッ」

 

フーちゃんそんな顔しないでよ。ラーちゃんも、皆も悲しそうな顔しないでよ。俺は、皆と会えてすごい暖かい時間を過ごせて幸せだったし、それに俺なんか居なくても、あまり変わらないはずだから泣かないで欲しいな。心残りはないのに、俺まで泣きたくなってきちゃうじゃないか。

 

「ごめんなざい…わだじが…わだじが…わだじのぜいで…!」

 

ああ、でもあるとしたらこの子に、君は俺の【妹】だってはっきり言えなかったことかな…。本当は伝えたいけど、今言っても困るだけだろうし…皆にお願いしないといけないなぁ…

 

「み、な…おねが、いある…」

 

「ヤマト、もういい!喋らなくていいから!今は意識を保つことに集中してくれ!頼むから…!」

 

血が喉で絡まって声が上手く出せないや…それに段々眠くなってきちゃった…でも、これだけはお願いしないと。

 

「この、こ…おれの、いもうとを…おねが…い……このこに、も…あた、かいじかん…おしえ、て…」

 

「え…」

 

俺が頼んだ内容が予想外だったのか、あの子は驚いたような顔をして呆然としていた。ふふ、これは俺も予想外だったから最後にハプニング…じゃなくて、なんだっけ?あれ、こういうのなんていうんだっけ。なんか、みんなのかおよくみえないしもうねむくてよくかんがえられなく…。

 

「分かった!分かったから、そんな…!お願いだよ!ボクを置いていかないでよ!!」

 

──。

 

このこえはらーちゃん?なんでないてるんだろう?わからないや…けど、ないてほしくないなぁ…なみだ、ふかないと…おれのうで、まだあがるかな…よかった、まだあげられる…

 

「らー、ちゃ…なかない…で……」

 

「ヤマト…」

 

ふけたのはいいけど、らーちゃんのかおに、ち、ついちゃった…あやまらないと…でもそれより、おれにあたたかいものをくれたおれいわなきゃ…

 

「いま、まで、ありがとう…」

 

…ああ、こころのこりなんて、なかったはずなのに、いいたいことがどんどんでてきちゃった……でも、もうめあけるのも、こえだすのもげんかい…けどせめて、これだけはいわなきゃ…

 

おれ、みんなのこと、だいすきだったよ。

 

 

「……ヤマト?ヤマト!?しっかり…!?なにか、流れ込んで…?」

 

 

──もう、なにもみえないし、きこえないや……

 

 

***

 

 

 

 

「…ヤマト、今日も頼むよ」

 

「ラップランド、行くぞ」

 

「…うん、わかった」

 

あの日、1人の心優しい少年の命の灯火が消えた。しかし、彼の想い、そして彼がいたという記憶はいつまでも残り続けるだろう。彼の願いと剣、そして力を受け継いだ者たちの中に永遠と…。

 

 

 

 

 

その5:コミュ障狼のとある一日

 

 

ロドスのオペレーター、ヤマトの朝は早い。彼は5:00に目を覚ますと、部屋の電気をつけてからベッドを下り、部屋に備え付けてある台所へと向かい電気ケトルに水を入れてお湯を沸かす。

そしてお湯が沸く間に洗面所に行き顔を洗い、寝癖を治し歯磨きを終えたところで台所へ戻り、コップにココアの粉末を入れケトルで沸かしたお湯をコップの中へ適量分注ぎ、火傷しないように息をふきかけて冷ましながら慎重に口へと運ぶ。

 

「……ふぅ」

 

幸せそうな顔を浮かべ一息をついたところで、飲み終わったコップを洗い、それを終えたら寝間着から仕事着──今日は気分的に妹が自分用意したものに着替え、部屋を出て厨房へと向かおうとして。

 

「あ、そういえば今日は俺の担当じゃなかった…」

 

結局ヤマトは食堂が開くまで部屋の中で自己鍛錬をして時間を費やすのであった。

 

 

 

****

 

 

「はっ!セイッ!」

 

朝食後の訓練にてヤマトはリーシーの攻撃を的確に捌きつつ、彼女の直すべき箇所を脳裏に思い浮かべながら、どう伝えるべきかを考える。

一方でリーシーは「一撃でも入れたら何でもしてあげる」というご褒美を貰うため、めちゃくちゃ必死にやっていた……周りで訓練している人たちが軽く引くレベルの気迫をまといながら。

 

だが、全く一撃を与えられる気配がしないのにリーシーは無意識ながら焦っており、結果として早くカタをつけるために昨日やっと秘密裏に完成させた大技を使ってしまった。

 

「この、バスター…!」

 

「…それを再現したのは驚いたけど、少なくとも今だすタイミングじゃないね」

 

「ウルf…うわああ!?ぐえっ!!」

 

が、勢いよく真っ直ぐ突っ込むだけでは馬鹿げた危機察知能力と反射神経をもつヤマト相手には通用するわけがなく、リーシーは伸びた腕を掴まれ背負い投げをの要領で投げ飛ばされ、受身を取り切れずとても女性が出すものでは無い声を出して地面に転がった。

 

「あ、ごめん…つい……」

 

「ゲホッ…いや、受け身取れなかった私のミスだからいいわよ…」

 

「…ちょうどいいし、休憩にしようか」

 

「お願いします…」

 

そのまま寝転がった状態で息を整えてるリーシーを見ながら、なるべく手短に分かりやすく修正点を伝えられるように再度頭を動かし始めたのだった。

 

 

 

*****

 

 

 

 

「ヤマト~」

 

「すかー…」

 

「その、私だって色々気にしてはいるんだ…そもそもあんな天然タラシなアイツが悪いんだ…」

 

 

そして時間は飛び時刻は22時を超えた頃、ヤマトの部屋にてラップランド、リーシー、チェン、ホシグマ、フロストリーフが集まり飲み会をしていたのだが、その前者3名が酔っ払っていた。なおイカズチはチェンから、「お前合法じゃないだろ」とストップがあったせいで血涙を流しそうな勢いで泣く泣く飲み会には参加していない。

 

「流石に今日はお開きだな…取りあえず、私がリーシーを部屋にぶち込んでおく」

 

「でしたら、私は隊長を」

 

「そしたら俺はラーちゃんかな…」

 

「ぐへへ…ヤマトの尻尾もふもふ…」

 

「こいつは一体どんな夢を見てるんだ…」

 

そうして片付けを終えてから、各自が指定した酔っぱらいを背負ったり、あるいは肩を貸してヤマトの部屋から出ていった。

 

「「おやすみ、ヤマト」」

 

「おやすみなさい、フーちゃん、ホシグマさん…さてと」

 

ヤマトは部屋に残っていたラップランドを器用に背負うと、自分の部屋を出て彼女に宛てがわれている部屋へと歩き始めた。

そしてその道中。

 

「すー…やまとぉ…」

 

(背中を気にするな背中を気にするな背中を気にするな)

 

ヤマトはスリスリと体を密着させるラップランドの匂いや背中にあたる柔らかいものの感触を気にしないようにと、全力でひたすら暗示をかけていた。

 

そしてそうしているうちにラップランドに宛てがわれている部屋につき、ヤマトは器用に片手でラップランドを落ちないように支えながらもう片方の手でドアのロックを開けて中に入り、彼女を優しくベッドに寝かしつけようとして。

 

「ん~っ」

 

「うわっ」

 

ラップランドが勢いよく引っ張ったせいで、いつものようにベッドの中へ引きずり込まれてしまい。

 

「すー…すー…」

 

(だよね…)

 

ガッチリとラップランドにホールドされたヤマトは遠い目で今の現状を受け止めていた。というのも、こういったことは何度かあるためヤマトは段々慣れてきてしまっていた…最も、抱き枕には慣れて、おんぶには慣れないというのはおかしい気もするが。

 

「すー…すー…」

 

「…おやすみ、ラーちゃん」

 

ヤマトは抜け出すのを早々に諦め、自分が大好きな人の温もりに包まれながら目を閉じた。

 

これはとあるコミュ障狼が大事にしている日常のある1幕である。




結構無理矢理感が半端ない…
あと、関係ないですがセフィロ○の対策が全く出来ず勝率が悪いです(激怒)

各小話解説

その1実はこんなこともしてました(その1):実はこれは当初考えていたオチのひとつ。しかし、メランサの制服でメンタルブレイクで十分オチが付いてると思ったのでボツに。因みにCVは釘宮理○さんになってますが、そこは読んでくださってる皆様のお好きな声優さんで脳内変換してください。

その2ブラッシングもお手の物なんです:日常回として考えていた話で、きっかけは「ヤマトって結構モフられてるよな」と思ったことでした。その後はヤマトのスキルでいけるやろと考えて書いていたのですが、字数や展開がいい感じに足りずボツに…

その3ヤマトの情操教育(傭兵時代+ラップランドENDルート):実は結構前から考えていたネタなんですが、ぶち込むタイミングが分からなかったり、文字数が足りなかったりと言った理由で没。なお、なんでラップランドENDルートなのかというと…ただ単に自分の最推しキャラだからという贔屓です(白目)

その4本編BADエンドルート:これは本編ファーストシーズンの「兄として」の感想で不和解ルートも見たい的な感想を見て思いついたものです。色々悩んだんですが、あの段階でのイカズチはヤマトを殺してしまったらすぐに敵対をやめるだろうと思ってあんな感じに。そしてヤマトがただラップランド達のことを想っていたことが伝わったらな、と思ってあんな感じになりました。なお、このエンドのラップランドは何故かヤマトのアーツを使用でき、ヤマトと関わりが特に深かったメンバーはバラされた彼の合体剣をそれぞれ持っています。

その5コミュ障狼のとある一日:これは投稿する前に「流石に最後シリアスはなぁ」と思い、突貫で仕上げたものです。そのため、内容はかなり酷いものとなっていて…いや、本当にすみません…いつかリベンジするんで許して貰えませんか!!


感想や批評などありましたら遠慮なくどうぞ!お待ちしています!


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聖夜の過ごし方(各ルート)

今回の1周年記念の放送凄かったですね…特に記念アニメが凄くて「ほわああ…」ってなりました。チェン隊長やペン急組といった推しキャラが出ていたのと、怒られてビビるジェシカが個人的にポイント高かったり。

さて今回はそれに触発されて各ルートでのクリスマスの様子を即興でやらせて頂きました…が、間に合いませんでした(無能)


12/26 2:24 タイトルを修正しました。


その1:ペンギン急便テキサス√の場合

 

(…よし、エク姉寝てるね)

 

とある聖夜の夜、ヤマトはグースカと寝ているエクシアの部屋に入ると、足音を立てずに彼女の枕元に近寄り、背負っているリュックサックを音を出さないように漁り目当てのものを取り出すと、それを丁寧に置いた。

 

(エク姉はこれで大丈夫…じゃないな。もう、掛け布団剥いだら風邪ひいちゃうじゃないか…)

 

ヤマトは心のなかで小言を言いつつも、掛け布団を丁寧にエクシアに掛けなおすと、無駄に高いスニーキングスキルを利用して部屋を出るとマスターキーを使って鍵を静かにかけ直した。

 

ヤマトが行っていること、それは不法侵入ではなく普段お世話になっているテキサス達にクリスマスプレゼントを置いていくことだった。一応、社長であるエンペラーには既に話を通しており、普通なら借りられない寮の部屋のマスターキーがヤマトの手元にあるのもしっかり話を通していたからだった。

 

因みに費用は完全にヤマト持ちであるのだが、元々そんなにお金を使わないのと傭兵時代に沢山稼いでいたので、まあまあ高価なものも迷うことなく買えていた。

 

閑話休題。

 

そうしてヤマトはクロワッサン、ソラの部屋に入りそれぞれが欲しかったもの(ソラは特に無いと言われたのである物を)を無事に枕元に届けると、最後に自分の恋人であるテキサスの部屋の前へと来ていた。

 

(最後はテキサスのだね…よし、最後気を抜かずに行こう!)

 

ヤマトはマスターキー鍵穴に差し込み器用に音を立てずに開けると、これまた無音で部屋の中を移動し彼女の枕元に立った。テキサスは穏やかな寝息を立てており、ヤマトから見ても起きてるようには見えないため内心ほっとしていたが。

 

(……やっぱり、綺麗だなぁ)

 

部屋の照明が常夜灯の状態で真っ暗ではなかったため、テキサスの寝顔が見え、ヤマトは暫く見惚れていたが気を取り直すとリュックサックから彼女に用意したプレゼントを枕元に置いた。

 

(メリークリスマス、テキサス)

 

ヤマトはそう心の中で呟くと、彼女を起こさないように気をつけながら額に軽く口付けをしそっと部屋を出たのであった。

 

「…………」

 

愛しい人が顔を赤くそめ口元が緩んでいたのに気が付かずに。

 

 

 

****

 

 

その2:龍門√(修羅場の話後で誰ともくっついていない)場合

 

「「「乾杯」」」

 

龍門のいつもの居酒屋にて龍門特別督察隊組の3人は集まって飲んでいた。因みにスワイヤーがここにいないのは、彼女を呼ぼうとしたヤマトをチェンがいい感じに言いくるめ阻止したからだ。なおこれに関してホシグマはスワイヤーへ同情は抱いたものの、ライバルを増やしてしまうのは避けたかったのでチェンの行動には目を瞑った。

 

そしてチェンとホシグマはただヤマトと飲みたくて居酒屋に来た訳では無い。今回飲み会を開いた目的、それは…。

 

「それにしても、今日はクリスマスだというのに私たちと飲んでていいのか?」

 

「大丈夫だよ。お父さんは昔の仕事仲間と飲みに行くって言ってたし、誘ってくれなかったら今日は1人寂しくクリスマスの夜を過ごす羽目になってたのでむしろ有難いくらい」

 

 

((よし、まだ彼女はいないな))

 

ヤマトに彼女が出来たかどうかのチェックである。これは最重要項目であり、次点に気になる異性がいるかどうかを聞くである。因みにヤマトの養父は彼がモテていることを耳に挟んでいるため、こういったイベント系がある時は大抵昔の仲間達のところ行っている。最も、ヤマトはそんなこと気がついていないのだが。

 

「まあ、俺みたいな奴を好きになってくれる人なんていないでしょうよ…学生時代も告白されたことなんてなかったし」

 

(ん″ん″っ″!)

 

自分で言っておいて悲しくなってきたのか、ヤマトは少し拗ねたような声を出したところで、未だにそういうのに慣れていないチェンが人知れずいい意味のダメージを受けていた。なおヤマトが学生時代全く告白されなかった理由はちゃんとあるのだが…これは別の話である。

 

閑話休題

 

「あ、そういえば2人に渡すものがありました」

 

飲み会が始まってから30分が経ち酔いがまわり始めたころになって、ヤマトはカバンを漁り始めるとそこから包装用紙で包まれたもの2つを取りだすとそれを2人に手渡した。

 

「チェン隊長、ホシグマさん。クリスマスプレゼントです」

 

「…用意してくれていたのか?」

 

「はい、お2人にはいつもお世話になってますから!」

 

「…あけていいか?」

 

「はい!」

 

酔いが回っているせいもあって満面な笑みでニコニコとヤマトに見守られながら、2人はそれぞれ渡された包装を開けてみると。

 

「これは…マフラーか?」

 

チェンとホシグマの手にあるのは色違いの手編みマフラーであり、そしてそれを少し見てからホシグマがあることに気がつき、ばっとヤマトを見る。

 

「ヤマト、まさかと思うが…これお前の手作りか?」

 

「はい!本当はちゃんとしたものを買うべきだと思ったのですが、少しでも気持ちを込めたくて手編みにしました!」

 

「そうか…」

 

ホシグマとチェンは改めて手元にあるマフラーを見る。想い人の手作り。それだけでこのマフラーの重みが更に加わり、彼女らは軽く笑みを浮かべ。

 

「ヤマト。せっかくだからこの後ショッピングモールによらないか?」

 

「え?いいですけど…なんでですか?」

 

心底不思議そうな顔をするヤマトに2人はふっと笑い。

 

「「お前のプレゼント選びだ」」

 

そう告げたのだった。

 

 

 

 

なお、後日スワイヤーには高級のお菓子がヤマトからプレゼントされ、「ボクには?」と襲撃してきたラップランドには彼女の要望でヤマトは自身の尻尾を10分間差し出したのだった。

 

 

 

****

 

 

その3:根本にあるもの√

 

 

 

「ヤマトの欲しいもの?」

 

「はい、シラヌイさんなにか心当たりありませんか?」

 

「なるほどねぇ…(なんかデジャブを感じるんだけど?)」

 

自身の工房に尋ねてきたプリュムにシラヌイはそんなことを思いながら、考える。正直シラヌイもヤマトのことを100%理解している訳では無いため、ヤマトが欲しいものと言われて何も思い浮かばないのが事実だ。

 

「ヤマトには欲しいものないか聞いてみたの?」

 

「はい、聞いてみたんですが…特にないって言われてしまいまして…」

 

「そっかぁ…」

 

シラヌイは内心「そうだよね」と思いながら考えをめぐらす。が、正直名案といったものは全く浮かばず云々頭を悩ませていた時、プシューという音ともに工房のドアが開かれた。

 

「やあ、シラヌイ義姉さん。聞きたいことが…あれ、キミもいるのか」

 

(お前も来るんかい!!)

 

入ってきたのはラップランドであり、直後ラップランドとプリュムの間に火花が散り始め、それを肌身で感じたシラヌイをお腹を抑え始めた。その直後、またもや工房のドアが開かれ。

 

「やほー!シラヌイちゃん、グレースロートがあなたに聞きたいことが…あれ?プリュムちゃんにラップランドも来てたの?」

 

「……(露骨に嫌そうな顔)」

 

(うぐぅ…なんでグレースロートちゃんも…?)

 

後からヤマトに想いを寄せていることが判明したグレースロート(+ゴリラ猫)までもが参戦したことで、シラヌイの胃は致命傷を負った。なお、その致命傷を与えるきっかけの人物を連れてきた本人は今更になって「あ、やべ」といった顔を浮かべている。

 

がそんな中でも3人の火花は激しさを増しており、それに連れてシラヌイの胃痛は酷くなり、ブレイズは顔には出してないが内心ではめちゃくちゃ焦っていた。

 

「…!みんな、ここにいたのか」

 

そこへタイミングが良いのか悪いのか、3人を落とした張本人であるヤマトが少し驚いた表情(ギリギリわかる程度)を浮かべた。

 

「…その様子だと、私たちに何か用があるみたいだけどどうしたの?」

 

雰囲気を変えるためにブレイズが咄嗟にヤマトに声をかけ、シラヌイは心の中で親指を立てる中、ヤマトは少しだけ照れくさそう(ギリギリわかる程度)に口を開いた。

 

「ケーキを作ったから、食べないか」

 

それはヤマトとしては何気ない提案だったが、シラヌイとブレイズはそれがこの状況を打破するチャンスだとすぐに理解し、目で意志を取り合いすぐに行動に移した。

 

「いいわね!皆食べましょう!」

 

「そうね、3人も折角ヤマトが作ってくれたわけだから一緒に食べるわよね?」

 

「…そうですね、そうしましょう」

 

「…ちっ、仕方ないね……」

 

「…今回はヤマトのために下がるわ」

 

((な、何とかなったあぁぁぁ!))

 

何とかなったことにシラヌイとブレイズは心底安心するのだが、この後、また一悶着あり胃を痛めることになるのだがそれはまた別の話。

 

 

****

 

 

その4:BSW八方塞がり済み(←重要)√

 

 

 

(よし、子供たちの分はこれで終わったかな…)

 

深夜のロドスを赤い衣と赤い帽子、そして白い付け髭に身を包んだヤマトは歩いていた。

この日、ロドスではクリスマスということで子供たちにチキン、クリスマスケーキといったクリスマスにちなんだ食べ物が振る舞われ、そして子供たちが寝静まると、枕元にクリスマスプレゼントを置くというイベントがドクターの提案の元行われていた。

 

そして今回のサンタ役の1人としてくじ引きで選ばれたのがヤマトであり、さっきの部屋で今回の仕事を無事に終えたのだった。

 

(そういえば、シルバーアッシュさんは妹さん達にプレゼント無事に置けたかなぁ…俺はこれから渡す人達が同じ部屋だからまだ楽だけど…)

 

そこまで考えてヤマトは軽く疲れたように息を吐く。実を言うとヤマトのプレゼント配りはまだ終わっていない。彼はこれから自分の、正確に言えば自分たちの部屋で寝ている大事な人達に、個人的に用意したクリスマスプレゼントを渡さなければならない。

 

(よし、早くプレゼントを置いて早く寝よう)

 

ヤマトはそう思考を切り替えると早歩きで部屋に戻ったのだった。

 

 

 

****

 

 

(よし、寝てるね……)

 

ヤマトが部屋に戻ると、明かりは常夜灯の状態で彼の恋人達は全員スヤスヤと寝ている様子であり、それを確認するとヤマトは無駄なく手際よく音を立てないように慎重にプレゼントを置いていく。

 

(…よし、何とか全員分置き終わったね。さて、俺もさっさと着替えて──)

 

「早く寝よう、って考えていませんか?」

 

!?

 

既に寝ているはずの人の声が聞こえ、ヤマトは背筋を凍らせ、恐る恐る振り返るとそこには上体を起こして笑顔のジェシカ、欠伸を漏らすWや背筋を伸ばすフランカだったりと、寝ていたはずの恋人達が全員起きている光景が目に入った。

 

「な、なんで起きて…?」

 

「もう、子犬ちゃんったら分からないの?」

 

「ヤマト、分からない?」

 

「……うん、本当に分からない」

 

Wとレッドに詰め寄られるも本当に分からないヤマトはそうそうに考えるのを諦めると、女性陣からは「やっぱりか」と呆れた視線を注がれる。

 

「ヤマト、クリスマスって特別じゃない?」

 

「?はい、そうですね」

 

「私たちとして、そういう特別な夜にこそシたいのよ」

 

「うんう…うん?」

 

「だからね、皆で話してたのよ」

 

「…何を?」

 

「どうやってお兄ちゃんとコトをするかって」

 

「………」

 

「まあ、結論としては寝たフリをしてヤマトが戻ってきたところで…ってことになったんだけどね」

 

 

「…………」

 

ヤマトはダラダラと汗を流し始める。いや、彼とて大事な人達とコトを致すのはやはり好きだし、する度に自分の覚悟が引き締まるのだからそれを拒否するというのはあまり取りたくない選択肢ではある。しかし、8人をいっぺんに相手した時の感覚は初めて襲われたシた時に既に知っているわけであって。

 

「……その、疲れてるからまた今度というのは……?」

 

『ダメ』

 

「ですよね…」

 

「それじゃ、先輩。お願いしますね♡」

 

「はい…わかり…ちょ、待って!流石に服は自分で脱がせて!!」

 

 

 

次の日、妙に機嫌がいいシルバーアッシュとは裏腹に異様に疲れた様子のヤマトが目撃されたのは別の話。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

その5:辺境の守護者√(思いつかなかったのでガチで短いです…)

 

 

「ふぅ…俺に届け物って誰から…」

 

ヤマトは先程受け取った2つの段ボール箱を部屋に運ぶとまず送り主の名前を確認した。すると、送り主の欄には自分の実の親と育ての親の名前が書かれており、同時に今日がクリスマスであることを思い出しヤマトは嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「全く…クリスマスプレゼントを貰うような歳じゃないんだけどなぁ…」

 

口ではそう言いつつも、嬉しさを隠しきれないヤマトは尻尾をブンブン振りながら2つの段ボール箱を開けていく。

 

「あ、これ俺が前に欲しいって言ってた銃のカスタムパーツ!それに、お父さんの方は最新式の圧力鍋だ!…ん?」

 

中には以前酒の席でうっかり「欲しい」と零してしまった物が2つ入っており、ヤマトにしては珍しく興奮した様子でパーツと圧力鍋を取り出して行くと、カシマとマサムネの名前で送られてきた段ボール箱にまだものが入っていることに気がつき、手を突っ込んで取り出すと。

 

「何コレ…」

 

それは言ってしまえば精がつく食材が詰め合わされたものであり、思わず面食らっていると、ヒラヒラと紙が落ちてきた。

 

「これは手紙…?…カシマさんと母さんの名前…?」

 

どういう事なのか。ヤマトは疑問に思いながら手紙の封をあけ、内容を読み始め…そして。

 

 

「か、母さんとカシマさんのばかあああ!!」

 

顔を真っ赤にして手紙を地面に叩きつけ、早く忘れるようにと壁にガンガン頭を打ち付けるもも、先程の手紙に書かれた内容がフラッシュバックした。

 

『それ食べて早く孫作って見せてね☆』

 

「なんで付き合ってる人いるのバレてるのおおお!?」

 

ヤマトの心からの叫びは部屋の中で木霊して終わるのだった。

 

 

なお、念の為言っておくとカシマと母親から送られたものは全く無駄にならなかったことだけは記しておく。

 

 

 

****

 

 

その6:本編√

 

 

「えー、本日はクリスマスという訳なので…今夜ぐらいは盛大に盛り上がろうや!という訳でメリークリスマス!」

 

『メリークリスマス!』

 

ドクターの雑な音頭で始まった食堂で行われているクリスマスの宴はすぐにどんちゃん騒ぎとかした。卓に並んだ様々料理を凄まじい勢いで食べていくペッローとそれを見守る鍛治職人、ワイワイ騒ぐ子供たちをカウンター席でお酒を飲みながら見守る老人、歌を歌い始まるアイドルとそれに合いの手をいれる天使、主人にアーンされて顔を赤面させるフェリーンの女性と各々が思い思いに過ごしていた。

 

その中で我らがヤマトはというと。

 

「………」

 

珍しく、誰にも囲まれることなく隅の方でココアが入ったコップを片手にその光景を立ちながら見ていた。

 

「やあ、ヤマト。隣、失礼するよ」

 

「ラーちゃん…」

 

するとそこへ同じく飲み物が入ったコップを片手にラップランドが隣に立った。

 

「………」

 

「………」

 

 

お互い喋ることなく、目の前で繰り広げられる光景を見る。が、二人の間には気まずい雰囲気はなく、寧ろ穏やかで落ち着いた雰囲気が流れていた。

 

「……ラーちゃん、ありがとう」

 

「え?」

 

唐突に礼を言われたラップランドは驚いた表情を浮かべ、それを見たヤマトは少しだけ笑みを浮かべながら話を続けた。

 

「俺、ずっと思ってたことがあってさ。もし、ラーちゃんと友達になれてなかったら今の俺はなかったんじゃないかって」

 

「…そうかな?」

 

「うん。じゃないとチーちゃんやテキサスさんと仲良くなるどころか、リーちゃんにも会えなかったと思うし、あの子…イカズチもロドスに連れて来れなかったと思うんだ」

 

「………」

 

「だから、ラーちゃん。ありがとう」

 

「…どういたしまして」

 

「あー!白黒が抜けがけしてるー!」

 

理屈はかなり無理やりではあったものの何故か説得力がある内容と、改めてお礼を言われたことに面食らいつつも、彼の感謝の言葉を素直に受け止めたところで、イカズチが騒ぎ出し「なんですって!?」と更に騒がしくなる中、ヤマトとラップランドは互い顔を見合わせて吹き出した。

 

「そろそろ皆のところに行こうか?」

 

「うん、そうだね」

 

ラップランドの言葉に頷き、イカズチ達の方へ足を動かし始めた時だった。

 

『ちゃんと楽しめよ、ヤマト』

 

「え?」

 

「?ヤマト?どうかした?」

 

「……いや、何でもないよ……ありがとうムサシ

 

先程の声は気のせいだったのかもしれない。それでもその幻聴ははヤマトにとっては十分なプレゼントであり、ヤマトは今は亡き相棒に感謝の言葉を伝えると、大事な人達の元へと足を進めたのだった。

 

 

 

 




300連する前にWを当てたい所存でございます(

各話補足説明や解説

その1ペン急テキサス√:テキサス√にした理由は彼女が推しキャラだからという杜撰な理由です。これは文句言われても仕方ない()因みにプレゼントの内容なんですが、エクシアは銃のアタッチメント、クロワッサンは商品券、ソラにはテキサスと彼女をモチーフにデフォルメした羊毛フェルトの人形。テキサスにはマフラーでした。

その2龍門√:最初はスーお嬢様もぶち込む予定だったのですが、展開がゴミだったためボツに。許せお嬢様。因みにそんなお嬢様はチェンに手作りマフラー貰ったというマウントを取られました。可哀想。

その3根本√:やっとこさifルートの設定にあったヒロインの1人であるグレースロートを参戦させることが出来ました。因みにあの後誰がヤマトからアーンをしてもらうかで修羅場になりました。最も、ヤマトが全員にしたため呆気なく治まりましたが。

その4BSW八方塞がり済み√:何とかならなかったパターンのクリスマスです。因みにこのルートのヤマトは特殊な訓練と専用の食事をとっているため耐えられています。最も理性吹っ飛ぶと全員良い意味でなかされるんですが()

その5:守護者√:ガチで思いつきませんでした…因みに誰とくっ付いたパターンなのかは皆さんのご想像に。


その6:本編√:ちょっとしんみりした感じに。因みに最後のムサシの声が幻聴なのか、はたまたマジなのかは…皆さんのご想像にお任せします。


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ガキの○いやあらへんで!~笑ってはいけないロドス24時~その1

というわけで、アンケートの結果、ガキ○となりましたのでその話をあげさせていただきます!

それと今回は誰が喋ったり笑ってるのかを分かりやすくするため、「」名前の頭文字(例:ヤマトなら、ヤ「」という感じ)を起きます。それと、作者のギャグセンスは壊滅的なので、あまり面白くなかったら本当にすみません…

なお、今回は長くなってしまったのでいくつかに分けます。続きは細かい修正が終わり次第出します。


〜理性0のドクターでもわかるあらすじ〜

ドクターに「午前8:00にロドスの入口に来てね」と言われたある5人のオペレーター。彼らはそれに嫌な予感がしつつも仕方なく入口に来たところ…?

 

****

 

 

 

ドクター(以下ド)「皆、いきなりだったけど集まってくれてありがとう」

 

いきなりロドスの入口に来るように言われて来ていたオペレーター達が一斉に口を開いた。

 

アンセル(以下アン)「ドクター、なぜ私たちをここに呼んだのですか?」

 

ヤマト(以下ヤ)「うん、本当になんで…?」

 

バイソン(以下バ)「正直嫌な予感しかしないのですが…」

 

ラップランド(以下ラ)「それはボクも同じだよ」

 

エクシア(以下エ)「てか、このメンツが結構謎なんだけど」

 

全員が疑問の声をあげる中、ドクターはそれは予想通りと言わんばかりそれを無視して説明を始めた。

 

ド「うん、単刀直入に言うとこれからあらゆる仕掛けやキャストにが笑わせてくるけど、皆24時間笑わないように過ごしてもらうよ」

 

全員「え?」

 

ド「訳が分からない、何言ってんだこいつ?って思ってると思う。けどね、俺はこういう催ししないと落ち着かない病でね…だから諦めて受け入れて欲しい」

 

アン「受け入れたくないんですが…」

 

ヤ「でも笑わなきゃいいってことなら、簡単ではあると思うけど…」

 

バ「ちょっと、フラグっぽい発言しないでよ!」

 

ド「まあ、簡単かどうかは…実際にね?あと、笑ったらお仕置があるのでそこも忘れずにね」

 

全員「え?」

 

ド「それじゃあ、そこに作った着替えペースに服を置いておいたから着替えておいでー」

 

ドクターに指示されたヤマト達は釈然としないものの、仕方なくそれぞれの着替えペースに入り始めた。

 

 

 

***お着替え中****

 

ド「それじゃあ着替え終わったと思うので、アンセルから順にお願いしまーす!」

 

ドクターの指示を聞いて出てきたアンセルの格好は普通のロドスの制服…ではあるのだが、下はスカートであった。最も彼の場合は長ズボンも支給されていたため露出はほぼない形ではあったのだが。

 

アン「スカートは履かされるだろうとは思ってましたが、ズボンまで用意してくれたのは普通に嬉しいです…12月なのもあって寒いですし」

 

ド「反応は悪くなさそうでこっちとしては助かるな…それじゃ次バイソンくん!」

 

続いて出てきたバイソンは残念なことに何の変哲もない男性用のロドスの制服姿であった。

 

バ「…とりあえず普通でよかったです……」

 

ア「…チッ」

 

バ(今、舌打ちされた…!?)

 

ド「あまりネタに走り過ぎちゃうとあれだからね。さて次エクシアよろしく!」

 

エ「はーい」

 

続いて出てきたエクシアの格好はロドスの制服で下はミニズボン+ストッキングである。

 

エ「あんまり違和感はないかな…バイソン、どう?似合ってる?」

 

バ「ハイハイ、似合ってますよ」

 

エ「むー、面白くないなー。そんなんじゃモテないぞー?」

 

バ「余計なお世話だよ!」

 

ド「ハイハイそこまでにして。そんじゃ、次ラップランドよろしく」

 

ラ「分かったよ」

 

ドクターの指示で出てきたラップランドの格好は、ロドスの女性用の制服ではあるのだが下はミニスカ+ニーソで絶対領域があるという仕様であった。

 

バ「普通に似合ってますね」

 

ラ「……どうも、ありがとう」

 

アン「…バイソン、だからあなたはダメなんですよ」

 

バ「え?」

 

エ「うーん、これは空気を読むべきだったね」

 

バ「なんで!?」

 

バイソンは褒めたのに何故ここまで辛辣な言葉を投げかけられなければならないのか頭を抱えるが、ドクターはそれを助けるなんてせず笑いながら進行を進める。

 

ド「まあ、もう少し女心を理解しようってことで。さて、トリのヤマト出ておいで〜」

 

ヤ「…………ねえ、本当にこれで出るの?」

 

が、ドクターの指示の代わりに返ってきたのは戸惑っているのか声が震えているヤマトの声であった。

が、ドクターとしてはそんなの関係なく。

 

ド「うるせえ!ここまでで、1500文字近く使ってんだ!出てこないなら強引に連れ出すぞぉん!?」

 

ヤ「わ、分かった!自分で出るから!……うぅ」

 

そうして渋々といった感じで出てきたヤマトの格好は…

 

 

 

 

 

 

ロングヘアのウィッグ+女性用のミニスカサンタ+ニーソのコスプレであった。

 

アン「フッww通りで私の方が軽いわけですww」

 

バ「なんでサンタコスww」

 

ヤ「わ、笑わなっ、は、はっ…へぷちっ!」(限りなく女の子っぽいくしゃみ)

 

エ「くしゃみ女の子ww」

 

ラ(似合ってるけど寒そう)

 

 

と、女装ヤマト…もといヤマトちゃん(+くしゃみ)を見てそれぞれの反応を示した時だった。

 

デデーン

 

「アンセル、バイソン、エクシア、アウト〜」

 

突如どこからか変な効果音とクルースの間の伸びた声が響き渡った。

 

アン・バ・エ「え?」

 

ド「言ったじゃん、笑ったらおしおきだって…」

 

全「え?もう始まってんの!?」

 

ド「当たり前でしょ。ここで誰かは笑うだろうって確信してたし」

 

ヤ「…ところで、おしおきって?」

 

??「私が担当する」

 

アン「え、ドーベルマン教k…あいたあっ!?」

 

バ「ちょ、ま、まっ…うぐっ!?」

 

エ「え、ちょ、まっ、いっつ!?」

 

スポンジでコーティングされたムチでケツを叩かれた3人は、スポンジで出来ているとは思えないほどの衝撃と痛みで叩かれた場所を抑えていた。

 

ド「はい、という訳で笑ったらドーベルマン教官のスポンジコーティングムチがお仕置としてとんできます」

 

叩かれた3人「〜っ!」(予想以上の痛みで悶えてる)

 

ヤ・ラ(スポンジであの威力なのか…)

 

ド「さて、ヤマトの衣装はあとからちゃんとしたもの持ってくるからとりあえず中に入ろう」

 

バ「開幕からこんなんで大丈夫なのかな…」

 

全員が思っているであろうことをバイソンはつぶやき、ドクター先導のもと5人は笑いの刺客が待ち受けるロドス館内へと入っていった。

 

 

 

 

*******

 

 

ド「さて、皆は新米オペレーターっていう設定だから、まずはここの代表の人に会ってもらうよ」

 

バ「代表…普通に考えたらアーミヤさんかドクターでしょうけど…」

 

エ「ワンチャンケルシー先生の可能性もあるんだよねぇ…」

 

アン「いや、アーミヤさんはともかくケルシー先生がこんな企画に参加するとは思えないのですが…」

 

ラ「どっちにせよ、何が来ても笑わないようにしないとね…」

 

ヤ「あのムチは食らいたくない…」

 

ド「はいお喋りはそこまで。この中に代表がいるから中に入ってもらうんだけども…その前にこれを付けてくれ」

 

そんなこんなで普段であればドクターの執務室である場所にたどり着き、ここでドクターは5人にあるものを手渡した。それは…

 

エ「なぜにアイマスク?」

 

至ってシンプルな作りで尚且つ柄も特にない単色のアイマスクであった。ただし…

 

ヤ「…それで、なんで俺だけ(´・ω・`)のアイマスクなの?」

 

アン(だめだ、なんか吹き出しそうに…!耐えなくては…!)

 

ド「この中じゃいちばん不憫な目にあってることが多い感じがしたから」

 

アン「フッww」

 

デデーン

 

「アンセル、アウト〜」

 

アン「あ、しまっ…あ、待ってk「バチンッ!」あいったぁ!」

 

そう、ヤマトのみ(´・ω・`)の顔が描かれたアイマスクであり、何故か笑いが込み上げたアンセルは堪えきれず軽く吹き出したせいでドーベルマンの一撃をうけ悶える。

 

ド「はい、それじゃあヤマトからアイマスク付けてくれる?」

 

ヤ「いいですけど…これでいいですか?」

 

全(なんか予想以上に似合ってる…)

 

ド「ごほん、それじゃあ入ったら俺がいいって言うまでアイマスクは外さないでね…すみません!今新人を連れてきたので中に入りますよ」

 

そうして、ドクターの先導のもと全員で手をつなぎながら進んでいき、ドクターが立ち止まったところで全員その場に止まった。

 

ド「それじゃあ、外していいよ」

 

アン「一体何g…ブフッwwww」

 

バ「何笑っt…ブハッwwww」

 

エ「なんか怖いんd…アハハハwww!」

 

ラ「なんでそんな笑っ…フッwwww」

 

ヤ「え、い、一体…フクッwww」

 

アイマスクを外した全員が笑った理由。それは…

 

 

 

 

 

 

 

お祭りで和太鼓を叩く人が着る衣装を着て頭にねじり鉢巻を巻き、何故か太鼓バチを両手に持った状態で腕を組んで座っているケルシーと、その後ろにピンク色のくまのような外見をした着ぐるみが立っていたからだ。

 

 

デデーン

 

「全員、アウト〜」

 

アン「ケルシー先生…なんて格好してるんですか…あいたっ!」

 

バ「何故か違和感がないのが不思議です…うぐっ!」

 

エ「というよりよく参加してくれよね…いっつ!」

 

ラ「ボクとしては後ろの変なのが気になるんだけど…ぐっ!」

 

ヤ「(だめだ、少しでも気を弛めたらあのくまのせいでまた笑い…!)っつ!」

 

ド「ケルシー先生、彼らが今回の新人です。これから自己紹介を…」

 

ケ「いや、その必要は無い…こいつらの情報はもう既に頭の中に入っている…時間の無駄だ」

 

エ(めちゃくちゃきついこと言うね!?)

 

バ(てか、きてる衣装とセリフのギャップの差が…!)

 

アン(笑ったら殺される笑ったら殺される笑ったら殺される…!)

 

ケルシーはそんな参加者を後目にすくっと立ち上がり歩き出すと、バイソンの前に止まった。

 

バ(え、な、なんだろう…)

 

ケ「バイソン。フェンツ運輸の役員であり、ロドスでは重装オペレーターとして入職。経歴としてはペンギン急便と龍門にてシラクーザからきたマフィアと交戦。耐久力は優秀。」

 

バ(あれ…思ったよりまともな内容だ)

 

バイソンが案外まともな内容であったことに安堵の息を漏らした時だった。

 

ケ「そんなお前の初恋の相手の名前は…××××××」

 

バ「ブハッwwwwなんで知ってるのwww」

 

ラ「当たってるんだww」

 

エ「てか最後の下りいらないでしょww」

 

デデーン

 

「バイソン、ラップランド、エクシア、アウト~」

 

ケルシーの不意打ちにバイソンら3人は吹き出してしまった。因みに笑ってないアンセルは顔を上にあげて全力でこらえ、ヤマトは唇を噛んで笑いを堪えていた。

 

ケ「…さて、最後にお前たちにやってもらうことがある…ミッシ○ル、アレを」

 

ミッシ○ル?「はい、分かりました」

 

ヤ「フッwwアーミヤ代表www」

 

アン・バ・エ・ラ「え?」

 

デデーン

 

「ヤマト、アウトー」

 

ミッシェ○と呼ばれたクマのような着ぐるみが返事をした瞬間、ある事に気がついたヤマトは先程からこらえていた笑いを抑えきれず、吹き出してしまった。そして他の4人は今ケツを殴られて悶絶しているヤマトへ視線を向ける。その直後。

 

ミッ○ェル?「ヤマトさん、これ終わったら後で私の執務室へ来てください」

 

ヤ「ピィ」

 

アン・バ・エ・ラ「ブフッwww」

 

デデーン

「アンセル、バイソン、エクシア、ラップランド、アウトー」

 

アン「確かにアーミヤさんの声でした…いっつ!」

 

バ「お呼び出しくらいましたね…つう!」

 

エ「これは詰んだね…あうっ!」

 

ラ「耳どうしてるのかな…ぐっ!」

 

4人が殴られている間に○ッシェルは何かを取りに部屋を出ていった。そして残ったアンセル達は一体何が来るのかを各々考えていた。

 

アン(一体、何を持ってくるんでしょうか…)

 

バ(アーミヤさんが持ってこれるものなら多分そんなに大きいものでは無いはず…)

 

エ(ダメだ、全然予想つかない)

 

ラ(何が来ても笑わないようにしないと…)

 

ヤ(アーミヤ代表怖いアーミヤ代表怖いアーミヤ代表怖いアーミヤ代表怖い)

 

待つこと数分、コンコンとドアをノックする音が部屋に響きわたりケルシーの返事を待つことなくドアが開き、そこから入ってきたのは…

 

ロ「太鼓?」

 

そうミッシェ○ことアーミヤが持ってきたのは太鼓は太鼓でも和太鼓であった。

 

ケ「ありがとう、アーミ…ミッシェ○」

 

エ「いいかけてんじゃん…」

 

ケルシーのうっかり発言にエクシアが思わずツッコムも、ケルシーはそれを気にする様子を全く見せず話を続けた。

 

ケ「…ごほん、ではこれからお前らには私の太鼓を叩く音に合わせてある掛け声を出してくれ。…とは言っても、新米のお前らではすぐに出来ないだろうから、手本を見せてやる」

 

ケルシーはそう言うと、いつの間にか持っていた太鼓のバチを器用にくるくる回し、そして力強く、リズミカルに和太鼓を叩き──!

 

ケ「ソイヤッ!ソイヤッ!ソイヤソイヤソイヤソイヤッ!ソイヤアァァァァッ!」

 

全「ブハッwww」

 

デデーン

 

「全員、アウト~」

 

ケルシーの掛け声に全員が吹き出した。それもそうだろう、普段はミステリアスな雰囲気を出している人が、熱血になってこんな掛け声を出せば困惑するか、笑うかの2択になってしまう。そして5人は笑わないようにと念をかけていたのが災いして笑ってしまったのだ。

 

アン「ケルシー先生、本当に何やってんですか…うぐっ!」

 

エ「ふ、ははwお腹痛い…wwおっふ!」

 

バ「なんかしっくり来てしまうのも余計に面白いんですよね…いたっ!」

 

ラ「中の人的な問題かな?…いっつ!」

 

ヤ「結構メタい発言…ぐっ!」

 

ケ「さて、それでは始めるぞ」

 

そしてケルシーはバチを振り上げそれを思いっきり振り下ろし…!

 

 

 

 

 

ケ「あ」

 

 

 

 

 

豪快に空振りした。

 

 

全「フグッwwww」

 

ド「ぶあはははっ!www」

 

ミッシェ○「え…」

 

デデーン

 

「全員アウト~」

 

恐らく台本になかったのであろう、ガチの空振りに台本を知らないヤマト達はもちろんのこと、知っているドクターは笑っていた。というよりドクターは爆笑していた。因みにアーミ…ミ○シェルは驚きの声を上げていた。

 

ケ「…よし、お前たちが出来ることはわかった。もう戻るといい」

 

全(まさかのスキップ!?)

 

ド「ケルシー、勝手に台本を変えないd」

 

ケ「もう戻るといい」

 

ド「わかった、それじゃあ皆行こうか」

 

全(従うのか…)

 

ケルシーの発する圧に耐えきれなくなったドクターは全員を部屋を出た。

 

 

 

*****

 

 

 

ド「さて、ここが今日一日過ごしてもらうことになる部屋だよ」

 

ドクターの案内の元連れてこられたのは娯楽室で、中はいつもとは違い、引き出し3段あるうち一番下の段が大きいタイプのデスクが人数分部屋の真ん中に置かれていた。

 

ド「それじゃあ、呼ばれるまではここで待機しててね」

 

ヤ「分かりました…あ、なんか名前書いてある」

 

ラ「あー…自分の名前が書かれてあるところに座れってことか」

 

アン「私は…ここですか」

 

 

図解(□はデスク)

 

エ バ

アン□ □ □ |モ

ラ□ |二

ヤ□ |タ

 

ロ「それにしても、座って見た感じ特に違和感は無さそうだけど…」

 

バ「……え、何コレ」

 

ヤ「?どうしたの?」

 

バ「いや、引き出し開けてみたらこんなのが…」

 

そういってバイソンが取り出したのは、『押しちゃダメ!』と張り紙が付けられた謎の赤いボタン。正直嫌な予感しかしない。そしてそれを見た全員が気になって自分のデスクの引き出しを開けてみると。

 

アン「何も入ってない…」

 

エ「あたしの方は…デフォルメしたスズメのぬいぐるみ?」

 

ラ「…何故にマイク?」

 

ヤ「…俺もマイクだ」

 

アンセル以外の者は引き出しに入っていたものをそれぞれデスクの上に出して、怪訝そうな顔を浮かべる中、エクシアはジーッとバイソンが出したボタンを見つめ。

 

エ「えい」(カチッ)

 

エクシア以外「!?」

 

何食わぬ顔でポチッとボタンを押した。

 

バ「な、ななな何やってんですか!?」

 

エ「いや…押しちゃダメってあったら押したくならない?」

 

バ「分かりますけど、この状況で押すものじゃないでしょうが!!」

 

ア・ラ・ヤ(正論ですね(だね)(だ))

 

??「失礼する」

 

悪びれもせずに口笛を吹くエクシアにバイソンがガチ説教をし始めていた時だった、ノック音と共に入ってきたのは慌ただしい様子のニアールとロドスの制服を来たアブサントであった。

 

ニ「いきなりすまない。少し調べさせて…」

 

アブ「ニアールさん!これじゃないですか?」

 

ニ「!…ふむ……」

 

そう言ってアブサントが指を指したのは先程エクシアが押したボタンであり、それを見たニアールは懐からゴム手袋を取り出してそれを手に着け、ボタンを持ってあらゆる角度から見る。そしてある程度見ると険しそうな顔を浮かべ、何事なのかと怪訝そう表情をするアンセルたちに向き直った。

 

ニ「申し訳ないが、このボタンを預からせてもらう。理由は…機密事項なため言えないが、いいか?」

 

エ「んー、まあ別にいいけど」

 

ニ「すまない…よし、行くぞアブサント」

 

アブ「はい」

 

ヤ「何だったんだろう…」

 

ド「みんなー、これから訓練場で特別訓練をやるから着いてきてー」

 

慌ただしく出ていったニアール達と入れ替わる形で今度はドクターが現れ、彼の指示に全員大人しく従い彼の後をついて行くのだった。

 

 

***

 

 

 

 

そしてこの後!

 

バ「やばいやばいって!あの人はシャレにならないって!」

 

エ「ドクターのバカ!あんなのヤマトぐらいしか…はっ!?気づかれた!あ、この輪っかのせい!?」

 

アン「あ、ちょ、まっ…うぐわっ!?」

 

ラ「ひっ!く、来るなぁ!!」

 

ヤ「ど、どうする…?どうすれば…」

 

??「みぃつけた

 

ヤ「うわあああ!?」

 

5人に一体何が…!?この続きはその2にて!




アークナイツ勢力診断のやつやったんですが、自分はロドスでアクナイ仲間兼リア友達はアビサル、ライン生命、ウルサス学生自治団と結構バラバラで驚きました。なお、アビサルのやつに関しては妙な説得力があったり。


解説

ヤマトちゃん(ミニスカサンタ):R18でクリスマスの話しかけなかったので、腹いせに書いてやりました。

ミニスカ+ニーソ:神の組み合わせ。なお、ヤマトがやると御御足は綺麗なので普通にいける。

ケルシー:和太鼓などは中の人ネタ。今回はバンド○のソイヤ姉御ネタを使わせてもらいました。因みに空振りはガチミスで、台本ではヤマトに「ソイヤが足りん!」と理不尽に怒鳴りつけるはずだった。

ミッシェ○(inアーミヤ):同じく中の人ネタ。出典は上と同じくバ○ドリ。

エクシア×スズメのぬいぐるみ:中の人ネタ。

マイク×2:その2で判明しますが、何となく予想できる人もいるかも…?

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ガキの○いやあらへんで!~笑ってはいけないロドス24時~その2


という訳で笑ってはいけない編その2です!

いや、本当はもっと早く出す予定だったのですが予想以上にガバがあったのでその修正の結果こんな時間に…。

こんなんで年内に投稿しきれるのでしょうか(白目)

それと誤字脱字の報告ありがとうございました!皆さんの手間が省けるように精進して参ります…!


前回のあらすじ

 

なんやかんやあって訓練場に来ました。

 

ヤ「いや雑すぎでしょ!?」

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

アン「訓練場に来たわけなんですが…」

 

エ「何あの台?」

 

バ「もう嫌な予感しかしませんよ…」

 

ド「さてこれから行う訓練について説明するね」

 

訓練場に来て早々、いつもはない謎の大きめな台を見て5人が嫌な予感を抱き始めたと同時にドクターが説明を始めた。

 

ド「これから皆にはお昼ご飯をかけた鬼ごっこをやってもらうよ」

 

ヤ「鬼ごっこって…子供たちがたまにやってるあの鬼ごっこ?」

 

ド「うーん、あれとはルールは結構違うかな。今回の鬼ごっこは、皆は30分間逃げる側固定で、鬼に捕まるとその鬼特有のお仕置きを受ける感じなってるよ…ああ、そうそうこの時間帯は笑ってもドーベルマンのお仕置はないから安心してね」

 

エ「いや、捕まったらお仕置なんだから安心できなくない?」

 

アン「というより、結局ケツを叩かれるんですか…」

 

ド「んー、それは鬼によるかな…さて、お昼ご飯に関してなんだけど。これは捕まった回数で順位を決める方式で、多ければ多い程下の順位になる感じで、順位が下であればあるほど昼食のランクは下がるから頑張ってね!というわけで、よおいスタート!」

 

全「え、早速!?」

 

ざっくりとした説明を受けた全員が驚くも、時は止まるはずがなく台から煙が吹き出したと同時に飛び出してきたのは…

 

スカ「………あいつらを捕まえればいいのね」

 

バ「やばいやばいって!あの人はシャレにならないって!」

 

ヤ「それには激しく同意!」

 

「フルスイング」と書かれたシャツ直用し、スポンジで出来た大剣をもったスカジが現れ、それを視認した5人は悲鳴をあげつつ一斉にバラバラに駆け出した。

 

スカ「…さて」

 

品定めするように逃げ出した5人を見つめるスカジの目に止まったのは…

 

アン「はあ…はあ…!」

 

アンセルだった。

 

スカ「…………」

 

アン「え…ひい!なんかこっちに来てる!?」

 

走ってくる足音が聞こえたのか、後ろを向いたアンセルはスポンジ大剣を片手に全力疾走してくるスカジを見て悲鳴をあげながら全力で逃げようと足掻くも──

 

スカ「捕まえたわよ」

 

アン「やめてください!お願いしますから!」

 

スカ「ちょっと私が悪者みたいな感じにしないでくれる?」

 

悲しいかな、医療オペレーターでは前衛オペレーターにかなうはずもなくあっさり捕まってしまい、スカジは何としても逃れようと足掻くアンセルの襟首を片手で掴むと、もう片方の手で持っているスポンジ大剣を振りかぶり。

 

アン「あ、ちょ、まっ…うぐわっ!?」

 

スパァン!という音が訓練場に響き渡り、フルスイングを受けたアンセルはお尻を抑えながらその場に倒れ込み悶え、それを遠くから一部始終を見ていたエクシアはガタガタと身体を震わせた。

 

アン「あ…お、おしりが…」

 

エ「ドクターのバカ!あんなのヤマトぐらいしか…はっ!?気づかれた!あ、この輪っかのせい!?」

 

スカ「目印があると探しやすいわね」

 

エ「あ、完全にバレテーラ…く、上手い具合に誰かに擦り付けられるように逃げなきゃ…!」

 

 

こうして逃走を開始したエクシアであったが、この数十秒後にはエクシアの悲鳴とスパァンといういい音が訓練場を木霊したのであった。

 

 

 

****

 

 

ラ「はぁ…はぁ…結構疲れるな」

 

一方で訓練場の高台や障害物、そして自身の高い身体能力を駆使してスカジからの追跡を逃れていたラップランドは高台の物陰に身を潜めながら、周りの探索をしているときだった。スカジが出てきた台の方でまた煙が出たのだ。

 

ラ「まさか鬼の追加?そんなの言ってなかった気が…」

 

そこまで言いかけてラップランドは体を固まらせた。なぜなら

 

レ「ハンティング、開始」

 

「モフモフ」と書かれたTシャツ着たレッドが台から現れたからだ。それを見たラップランドは冷や汗をかいたところで、レッドがラップランドがいる場所へ視線を向けると。

 

レ「モフモフ…!」

 

ラ「っ!」

 

目をキラーンと光らせたレッドは真っ直ぐラップランドが隠れている場所へ駆け出し、ラップランドは彼女の手つきを知っているのもあってその場を全力で離れた。

 

レ「モフモフ…!」

 

ラ「な、あの赤いのなんかいつもより速くな…うわっ!?」

 

レッドに意識を割きすぎてしまったのと、抑えきれない恐怖によってラップランドは足をもつらせて転んでしまった。そう、転んでしまった。

 

ラ「ぐっ…っ!?お、お前なんでもうそこに…!?」

 

レ「モフモフ…!」

 

ラ「ひっ!く、来るなぁ!!」

 

レ「いただきます」(ガバッ!)

 

ラ「や、やめ…うわあああああああああ!!」

 

哀れラップランド。彼女は赤い彗星の如く飛びかかったレッドにモフられ始めたのだった。

 

 

 

*****

 

 

バ「うっ…お尻が…」

 

スカジに2回、レッドに2回捕まって散々な目にあっているバイソンは、ジンジンと痛むお尻を抑えながら隠れられる場所を探していた。

 

バ「他の皆さんはどれくらいなんだろう…ラップランドさんとヤマトは恐らく1度も捕まってないだろうけど…うん?」

 

バイソンがそんなことを考えている中、またもや台の方からプシューという音ともに煙が吹き出され、今度は誰かと注視していると。

 

バ「…え?誰もいない……?」

 

そんなはずがない、と目を擦って再度凝視するもやはり台の上、その付近すら人影がなくバイソンが疑問符を頭の中で浮かべた時だった。

 

??「捕まえましたよ…」

 

バ「っ!!?い、いつのま…あ、ちょ、あああっ!!」

 

 

 

*****

 

 

ヤ「はあ…はあ…」

 

3人目が投下されてからというもの、ヤマトは全然休めずにほぼ足を動かしていた。何故か分からないが、止まったらダメだと彼の直感がずっと警鐘を鳴らしていたからだ。

 

ヤ「はぁ…はぁ…ゴホッ…はあ…」

 

だが、並外れた体力をもつヤマトでも休みなくただひたすら走り続けるのは限界であった。しかし、休むために止まれば終わるという確信めいたもののせいで止まることはできない。

 

ヤ「ど、どうする…?どうすれば…」

 

思わず声に出してしまい、無意識ながら走るスピードが落ちた瞬間であった。

 

??「みぃつけた

 

突如背後から声が聞こえヤマトはすぐに後ろを振り迎えると…!

 

スペ「うふふ…ごきげんよう、深き海よりあなたの背後に這い寄りました…」

 

ヤ「うわああああ!?…あっ…」

 

スペ「あら?…ドクター、聞こえますか?実は──」

 

 

 

 

*****

 

 

 

ド「えーと、結果発表なんだけども…まず1位は5回捕まったラップランド、2位は6回捕まったエクシア、3位は8回のバイソン、4位は12回のアンセルで、5位はその回数は1回だけのヤマトなんだけど…」

 

ヤ「シスター怖いシスター怖いシスター怖い」ガタガタガタガタ

 

ラ「ヤマト、大丈夫だよ。落ち着いて落ち着いて」

 

気まずそうにドクターは、先程からラップランドにしがみついてガタガタと体を震わせているヤマトへと視線を向ける。そう、ヤマトはスペクターに捕まった際に気絶してしまい、鬼側と色々会議した結果、最下位という扱いになってしまった。

 

ド「と、とりあえず部屋に戻ろうか。あと、笑ったらお仕置はヤマトが正気に戻ってからにしよう」

 

ドクターの指示に全員異議を示すことはなく、時折ヤマトを励ましながら戻ったのだった。

 

 

 

*****

 

 

 

ヤ「ご迷惑をおかけしました…」

 

娯楽室に戻って暫くしてからヤマトはようやく復帰、4人に謝罪をしていた。

 

アン「いえ、大丈夫ですよ」

 

バ「いきなり背後にいるってのは心臓に悪いからね…」

 

エ「激しく同意」

 

ラ(ああ、もうちょっとヤマトを慰めたかったんだけどなぁ…)

 

??「邪魔するでー」

 

独特な喋り方で入ってきたのは、クロワッサンであり彼女の両手には出前の人が料理を入れている箱が握られていた。

 

エ「ご飯届けるのクロワッサンの役目なんだー」

 

ク「せやな。ソラにはあんまり重いもん持たせたらアカンって旦那はんに言われとるし、テキサスはんは別件があって来れなかったんや」

 

バ「結構色々言っちゃうんだね…」

 

ク「ま、細かいことは気にせんといて!ほな、昼食渡していくでー」

 

クロワッサンは箱を開けると、ラップランドにはお寿司の詰め合わせ(味噌汁付き)、エクシアには生姜焼き定食、バイソンには牛丼(大盛り)+豚汁、アンセルにはハンバーガーセット、そしてヤマトにはザルそば、と手際よく置いていった。

 

ク「ほな、ウチはこれで…」

 

ヤ「あの、クロワッサンさん。ちょっといいですか?」

 

ご飯を配膳し終え、退散しようとしたクロワッサンをヤマトは自分のデスクに置かれたザルそばを見ながら呼び止めた。

 

ク「ん?なんや?」

 

ヤ「あの…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで、汁がこんなに微妙に黄緑っぽいの?」

 

ヤマト以外「え?」

 

ヤマトの発言にクロワッサンとヤマトを除いたメンバーが声を漏らした所でクロワッサンはフッと息を漏らし。

 

 

ク「最下位には、わさびたっぷりの汁のザルそばが支給ってことになってるんや」(キリッ)

 

ヤ「え」(絶望した顔)

 

ヤマト以外「www」

 

デデーン

 

「アンセル、バイソン、エクシア、ラップランド、アウト〜」

 

クロワッサンの謎のキメ顔とそれを聞いて絶望したような表情を浮かべたヤマト、という落差に4人は思わず吹き出してしまった。

 

アン「あそこまで絶望したような顔します…?いたっ」

 

バ「そういえばヤマトって辛いものとか苦手だった気が…うぐっ」

 

エ「あ、そうなの?あいたっ」

 

ラ「(カレーも甘口と中辛の間が限界だったもんね)いっつ」

 

ク「ほな、それじゃ今度こそお暇させてもらうわ~」

 

ヤ「………」

 

ヤマト以外「…………」

 

ヤ「…………」

 

ラ「あー、ヤマト?良かったらボクと代え──」

 

ラップランドが気を遣ってヤマトのザルそばと自分のお寿司の交換を提案しようとしたとき、ヤマトはおもむろに箸を取り蕎麦を汁に付け、一気に…!

 

ヤ「……!……!」

 

涙目になりがらも、必死にワサビ汁と化した汁を蕎麦に付けながら口の中へと運んでいく。

 

ヤ「ふぐっ…!……ぷはっ、んぐっ…!」

 

ラ「や、ヤマト?無理して食べなくてもいいんだよ?」

 

ヤ「……」(フルフル)

 

アン「いや本当に無理しなくていいんですよ?顔、すごいことになってますし…」

 

ヤ「………」(フルフル)

 

バ「ヤマト、僕ワサビ好きだから交換しよう?ね?」

 

ヤ「…………」(フルフル)

 

エ「や、ヤマト?涙出てるけど…本当に無理しないで?ね?」

 

ヤ「…………」(フルフル)

 

半泣きで蕎麦を啜り…いや、啜ることすら出来ずひたすら口の中へと入れ、水で流し込むヤマトの姿に耐えきれなくなったラップランド達は彼にあれこれ言葉を投げかけるが、ヤマトは力なく首を振ってそれを拒絶しつつ、蕎麦を食べていった。

 

ヤマト以外(後でドクターしめよう)

 

この時、4人は同じことを考えたのだった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

ヤ「まだツーンとした感覚抜けない…」

 

ラ「どんだけワサビ入れてたのさ…」

 

ピッ

 

昼食を食べ終わって暫くしてから、雑談をしていると急にモニターが1人でにつき映像が流れ始めた。

 

エ「うわ、びっくりしたぁ…」

 

バ「何でひとりでに着いたんですかね?」

 

アン「時限式で着くようにしてたのではないでしょうか…無駄に凝ってるというか」

 

ソラ『ロドスですれ違った50人に聞いてみた!お仕置を受けるべきだと思う人〜!!』

 

3人が話しているとモニターに急にソラが現れ、5人にとって恐ろしいことを言い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水着姿で。

 

全員「季節感www」

 

デデーン

 

「全員アウト〜」

 

アン「みんっ!」

 

バ「なっ!」

 

エ「かえっ!」

 

ラ「てっ!」

 

ヤ「ないっ!?」

 

全員がお仕置きを受けていく中、モニターのソラはお構い無しにロドスの中を歩いていく。

 

1人目

 

ソラ『あ、フロストリーフさん!』

 

フロ『ん?なんだ?…ってなんで水着…というよりカメラ持ってるのはドクター?』

 

ソラ『あー、そこは気にしないで欲しいな…えっと、この5人の中でおしおきを受けるべきだと思う人は?』

 

フロ『随分いきなりだな…ふむ…ラップランドだな』

 

ラ「え、何で!?」

 

フロ『まあ、理由は…いつも迷惑かけられてるから、だな』

 

ラ「納得できない…」

 

アン(妥当では?)

 

2人目

 

ソラ『あ、テキサスさーん!』

 

テキ『……ソラか、何か用か?』

 

ソラ『実は(以下略』

 

テキ『ふむ…それならエクシアだな』

 

エ「え、どうして!?」

 

テキ『このメンツなら1番リアクションが面白いだろう』

 

エ「いつから私はリアクション芸人になったのさ!?」

 

バ(まあ、リアクションに関してはこのメンツなら一番面白いかも)

 

3人目

 

ソラ『次は、あっWさんですかね』

 

W『ん?あんた、何で水着なの?てかドクター、あんたはなんでカメラ持ってんの?』

 

ソラ『実はですね(以下略』

 

W『へ〜、随分と面白そうなことしてるじゃない。まあ、暇だし答えてあげるわ。…そうね~、子犬ちゃんかしら?』

 

ヤ「え?お、俺なんかWさんにしちゃったっけ…?」

 

ソラ『えーと、ヤマトにした理由を聞いても?』

 

W『んー、色んな女にフラグを建てちゃってるからかしらね?あ、あと子犬ちゃんがお仕置受けて涙目になってるの見たいのもあるわね♪』

 

ヤ「後半の理由はともかく、最初に関しては冤罪だよ!」

 

ヤマト以外(いや、最初のは有罪だよ)

 

こうして投票は進んでいき、ラスト1票を前にして。

 

アンセル:5票

バイソン:12票

エクシア:12票

ラップランド:12票

ヤマト:8票

 

アン「結構接戦ですね」

 

ヤ「うん、そうだね…(良かった回避出来そう)」

 

そして最後を飾ったのは…

 

ソラ『最後は…あ、リーシーさんですね!』

 

ラ「ボクなの確定じゃないか!!」

 

ラップランドが台パンをかますも、映像は続いていく。

 

ソラ『──という訳なんですけど、誰にお仕置を受けて欲しいですか?』

 

リーシ『そうね…バイソンくんかな』

 

全「え?」

 

予想外な答えに全員が思わず声を漏らす中、ソラも以外だったのか驚きながらも理由を聴き始めた。

 

ソラ『えーと、理由を聞いても?』

 

リーシ『そうね…まず、ラッピーは確かにライバルではあるんだけどどちゃクソ気に食わないってわけじゃないし、どちらかというとつるんでると普通に面白いやつなのよね。だからあいつは一旦除外で、ヤマトは言うまでもなく除外。それで残り3人なんだけど…まあ、1番頑丈そうなバイソン君ってことで』

 

バ「僕か選ばれた中で1番多い理由じゃないか!」

 

ラ「…全く、変なやつだね」

 

バイソンが頭を抱え込み、ラップランドがヤレヤレと呆れながらも少しだけ嬉しそうに首を振り、いい話で終わりかけたその時だった。

 

リーシ『まあ、かといって巨乳は許さないけどね!!というわけで、あんたは別枠でお仕置よ!!』

 

ラ「は?」

 

デデーン

 

「バイソン、ラップランド、バスタ~ウル○〜(お仕置ver)」

 

リーシ「待たせたわね!」

 

映像が終わり、クルースの声が響いた瞬間娯楽室に元々備え付けてあったロッカーから勢いよくツバ付きの帽子をかぶったリーシーが飛び出した。

 

ラ「え、は?え?」

 

ヤ「い、何時から居たの!?」

 

リーシ「最初からスタンバってたのよ…さて、それじゃまずはバイソン君からいきましょうか」

 

バ「え!?ちょ、まだ心の準備が…!」

 

リーシ「つべこべ言わない!男の子なんだからシャキッとしなさい!」

 

リーシーは手を開いては閉じてを繰り返すと逃げようとするバイソンを一喝し、それに怯んだ隙を逃さず…!

 

リーシ「バス○ーウルフッ!!」

 

バ「うぐあっ!!…スカジさんより痛い…」(ドサッ)

 

かなり出力を抑えられたリーシーの必殺技を食らったバイソンは、未知の激痛に悶えながら床を転がり、それを見たラップランドは冷や汗を流す。

 

リーシ「よし、次はラッピーね!」

 

ラ「リーシー、ちょっと落ち着こう。ほら、ボクそんなに硬くないからさ?」

 

リーシ「大丈夫、あんたならこの一撃食らっても大丈夫だと信じてるから」

 

ラ「嫌な信頼だね!?」

 

リーシ「ほら、早くケツを…あ、こら!逃げるな!」

 

ラ「あんなの見て素直に出すわけないだろ!」

 

リーシ「それは分かるけど、先に進まないんだからさっさと出せや!」

 

ラ「くっ、どうすれば…!」

 

リーシ「(!背を向けた今が…!)喰らえっ!」

 

ラ「あ!しまっ…」

 

リーシ「バス○ーウルフ!!」

 

 

 

 

******

 

 

 

ラ「うっ…まだお尻がすごい痛い…」

 

バ「あれ、お仕置きで打つレベルじゃないですよ…」

 

ヤ「?そうかな。あれ、本来は物理と術の両方で攻撃する技で重装兵すら吹っ飛ばせる技だから、あれ8割ぐらい抑えてたよ」

 

アン「なんて恐ろしい技なんですか…」

 

エ「でもなんでヤマトくん知ってるの?」

 

ヤ「ああ、理論とか細かいところ考えたのは俺だから」

 

ラ「開発者だったんだね…」

 

5人がそんなことを話していた時だった。

 

『緊急事態発生!緊急事態発生!全オペレーターはブリーディングルームへ集合せよ!繰り返す、緊急事態発生!緊急事態発生!全オペレーターはブリーディングルームへ集合せよ!』

 

バ「え?何これ!?」

 

突如警報とともにスピーカーで機械音声が流れ始め、全員が戸惑う中、慌てた様子のドクターが部屋の中へ入ってきた。

 

ド「皆、どうやら緊急事態があったようだから急いでブリーディングルームへ行くよ!」

 

全「はい!」

 

ド「…あ、そうそう。これも企画の一部だからガチで取らないでね」

 

ドクターの言葉を聞いた全員が思わずずっこけた。

 

 

 

****

 

 

そしてこの後!

 

アーミ「どうやら、素材管理室に何者かが侵入したようです」

 

ニ「管理室のドアのロックを開けたのはこの装置であることが判明した」

 

???「ガッデム!!

 

??「ひいいいい!嫌だあぁぁぁぁ!!」

 

 

一体何が…!?




100連した上でウィーディーとW達と今回のピックアップキャラは全部当たりました。飼い猫を必死に拝み倒した結果ですね!因みにサポート枠にWスキル3起きましたので何なりとお使いください(パラガ○)

解説

アビサルの皆さん:これはとある話の感想のおかげです。ぶっちゃけこの感想のおかげで鬼がすぐに決まったような感じで、すごい感謝してます。

レッド:ラッピーを骨抜きにしました。

スペクターさん:ヤマトはSANチェックに失敗しました。

ワサビ汁:元ネタは自分で、ついワサビを入れすぎてとんでもない目にあった体験談です。水飲みながら食べきったのは今でもいい思い出です()年越しそばを食べる人は気をつけましょう!

水着:多分今でも着せたままの人はいると思います。てか自分がしてます。可愛いから仕方ないじゃないですか!

W:当たったので本編より先に登場。本当はこの話の前に彼女が入った話を上げたかったのですが、こちらの事情で先だし。いや、本当にすみません…。

バスターウル○:本家のタイキック。いや、ただのタイキックじゃ面白くないし、折角なので豪華な技に。あとバイソンとラッピーの2人なのは、上げて落とすネタをやりたかったのと、バイソン君があまり笑いを取れてない気がしたからです。(理不尽)

蝶○さん枠:これはリア友と話して決めました。誰になったのかは次回にて!

感想や批評お待ちしております!


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ガキの○いやあらへんで!~笑ってはいけないロドス24時~その3

…えー、皆さん新年あけましておめでとうございます。

…はい、新年が始まるまでに間に合いませんでした…しかもクオリティも重大なガバの修正が追いつかなかったためかなり低いです…

なので、それでもいいという心が海より広い方はお読み下さい…。


前回のあらすじ

 

いつもあなたの後ろに這い寄るスペクターに声をかけられたヤマトがガチ気絶したり、バイソンとラッピーがバスターウル○をお尻にぶち込まれたりと、散々な目にあっている中、突如警報が鳴り響きドクターの指示のもとブリーディングルームへと向かった五人だったが...

 

 

 

 

 

*******

 

 

 

 

5人がブリーディングルームに来ると、そこにはもう既に多くのオペレーターが集まっており、最前列の真ん中に丁度6人分のパイプ椅子が空いており、ドクター達はそこに座った。

 

アン「なんかもう嫌な予感しかしないのですが…」

 

アーミ「皆さん急な招集にも関わず、迅速に集まって下さりありがとうございます。これより、何があったかをしぇつめい…説明しましゅ」

 

ヤマト以外「ふっwwww」

 

デデーン

 

「アンセル、バイソン、エクシア、ラップランドアウト〜」

 

アン「これは予想外でしたね…いっつ!」

 

バ「あれ、わざとなんですかね…いてっ」

 

エ「どうだろうね…わざとだとしたら中々…いたっ!」

 

ラ「よく見たら顔赤いからガチミス…あいたっ!?なんかいつもより強めに叩いてない?」

 

ヤ(あ、危なかった…)

 

ド(顔赤くしてるアーミヤ可愛い)

 

アーミヤは顔を赤くしながらも、こほんと咳払いをすると手元の端末を操作しながら説明を始めた。

 

アーミ「実はつい先程、ロドスの素材保管庫から上級糖源、中級糖源、初級糖源、ブドウ糖合計で80個を何者かが盗まれたとの報告がありました。そして保管庫の警備にあたっていた者は電子ロックされているドアのロックが急に解除されたことに気を取られているうちに、何者かによって気絶させられ、近くにいた警備犬は1匹を残して殺されていた、ということです。」

 

バ「結構えげつないですね…」

 

アーミ「なお、今回の事件は2人の犯行であるとされておりうち1名は既にアブサントさんが捕まえており、今はその被疑者から情報を聞き出している段階です」

 

エ「なんかもうほぼ終わってない?」

 

ラ「集まる必要あったのかな?」

 

ニ「失礼する」

 

アーミヤの説明を聞いてエクシアとラップランドが思った感想を口に出した直後、ブリーディングルームの入口からニアールが入室し、すぐにアーミヤの元へ向かい、耳打ちをした。

 

アーミ「なるほど、ニアールさん。ありがとうございます。今入りました情報によると、どうやら犯人は娯楽室に電子ロックを解除する特殊な電波を流すボタンを引き出しに置き、それを何も知らないオペレーターに押させるように『押しちゃダメ!』と書いた紙も一緒に置いたそうです」

 

バ「……ねえ、これって」

 

アン「もしかして…」

 

エ「……いやいや、まさかそんな…ね?」

 

心当たりしかない5人、主にエクシアはダラダラと冷や汗を流し始める。そんな中、アーミヤは顎に手を当て何かを考え始めると、ポンと手を叩き。

 

アーミ「今回は主犯格は捕まってますし、知らずにやってしまったというのもありますから、罰はあの人の制裁ビンタでチャラにしましょう」

 

ヤ「結局制裁は受けるんだね…」

 

アーミ「なので、お呼び致しましょう…お願いします!」

 

アーミヤがそういった直後、部屋の中が暗くなりそしてロック調のBGMが流れ始め、5人がキョトンとした顔になった所で部屋に入ってきたのは。

 

サリ「ガッデム!!

 

 

全「え?」

 

アーミ「ご紹介します、制裁ビンタ担当のサリアさんです」

 

アン(そのまんまですね!?)

 

ヤ(危ない、なんか面白くないはずのに笑いそうになっちゃった…)

 

部屋に入ってきたのはサングラスを掛けたサリアであり、彼女はアーミヤの隣に立った。

 

サリ「教えてくれ、アーミヤ。私は誰をビンタすればいい?」

 

アーミ「はい、実は先程二アールさんからボタンを押した人の指紋を頂いていますので、それに合致する人をこれから探していきます。皆さんにはこの透明のシートに触れていただき、それをこちらの機械で読み取って判別していきます。」

 

エ(あ、終わったわ)

 

サリ「分かった、それではやって行こう…まずは、おいお前名前は?」

 

ヤ「や、ヤマトです」

 

サリ「念の為聞くが…ボタンを押したのは、お前か!?」

 

ヤ「ピイっ!や、やってません!」(シートに触れる)

 

アン・バ・ラ「悲鳴ww」

 

デデーン

 

「アンセル、バイソン、ラップランド、アウト〜」

 

サリ「ふむ…「あいたっ!?」…検査の結果「うぐっ!」お前はし「ぐっ!」うるさいぞ、お前ら!!」

 

ヤマト以外「理不尽www」

 

デデーン

 

「アンセル、バイソン、エクシア、ラップランド、アウト〜」

 

セリフが悲鳴に被ったことでキレたサリアに4人は吹き出したが、検査は続いていき、ヤマト、ラップランド、アンセルは検査の結果白であることが確定し、残ったのはエクシアとバイソンであった。

 

サリ「次はお前だな…名前は?」

 

バ「バイソンです…」

 

サリ「念の為聞くが、ボタンを押したのは…お前か!?」

 

バ「違います!」

 

サリ「なら、このシートに触れろ…ふむ……お前は違うようだな…そうすると最後はお前か…名前は?」

 

エ「え、エクシアです…」

 

サリ「そうか…ではこれに触れろ…」

 

エ(もう、逃げられないし素直に出すかぁ…ヤマトだってワサビ蕎麦頑張って食べてたんだし)

 

サリ「ふむ、では確認するか…」

 

サリアがエクシアの指紋がついたシートを機械に入れた直後、その機械のランプが赤く点滅しだし…!

 

『てやんでぃ!てやんでぃ!曲者じゃ!曲者じゃ!』

 

ヤ「なんか変www」

 

デデーン

 

「ヤマト、アウト〜」

 

ヤ「痛い!」(スパァン!)

 

サリ「そうか、お前が『てやんでぃ!てやんでぃ!』こっちに『曲者じゃ!曲者じゃ!』うるせええ!」(ガシャン!!)

 

全「wwww」

 

デデーン

 

「全員アウト〜」

 

アン「確かにうるさい…いたっ!」

 

バ「止め方聞いてないんですかね…うぐっ!」

 

エ「てか、あれ投げたせいで壊れてない…?いた!」

 

ラ「確かに止まってるもんね…ぐっ!」

 

ヤ「誰が作ったんだろ…いっつ!」

 

サリ「…よし、エクシアといったか。こっちこい」

 

犯人が確定したことで、エクシアは無理やりサリアに立たされ、前に連れてかれ胸倉を掴まれた状態で尋問がスタートした。

 

サリ「おい、何で押した?」

 

エ「その、押しちゃダメって書かれてあったので…」

 

サリ「押しちゃダメってあったら普通は押さないだろうが!!」

 

エクシア以外「正論ww」

 

デデーン

 

「アンセル、バイソン、ラップランド、ヤマト、アウト〜」

 

4人が叩かれている間にも話は進んでいき。

 

サリ「まあ、いい…これからお前には私のビンタを受けてもらう…覚悟はいいか?」

 

エ「……はい、大丈夫です」

 

バ(意外だな…てっきり嫌だって叫ぶと思ったんだけど…)

 

サリ「よし、1から数えて3でビンタするぞ…いいな?…いー「ひいいいい!嫌だあぁぁぁぁ!!」おい、暴れるな!」

 

エクシア以外「wwww」

 

デデーン

 

「アンセル、バイソン、ラップランド、ヤマト、アウト〜」

 

アン「さっき覚悟を決めたような顔だったのに…うぐっ!」

 

バ「絶対僕らを笑わせに来てますよね…いっつ!」

 

ラ「手のひら返しがすごい…っ!」

 

ヤ「痛い!」

 

サリ「全く…覚悟を決めろ!」

 

エ「怖いものは怖いんだって!仕方ないでしょ!?お願いだから叩くにしても優しくしてぇぇぇぇ!」(サリアにしがみつく)

 

サリ「優しくしたら制裁の意味が無いだろう!何を言ってるんだ、お前は!!」

 

エクシア以外「ブハッwwww」

 

デデーン

 

「アンセル、バイソン、ラップランド、ヤマト、アウト〜」

 

アン「往生際が悪いというか…いてっ!」

 

バ「ド正論で返されてましたね…いっぐ!」

 

ラ「お尻が限界だから早く…ぐっ!」

 

ヤ「ラーちゃんたちはそうだよね…痛い!」

 

それからもエクシアはビンタを回避するために色々し、その度に4人を笑わせたが、ついにその時は訪れた。

 

サリ「くっ、もうカウントダウンはいらないな!歯、食いしばれよ!」

 

エ「ま、待って!お願いだからまっ…「バチンっ!」へぐぅ!!」バタン!

 

エクシア以外「うわぁ…」(ドン引き)

 

痺れを切らしたサリアによる制裁ビンタが炸裂し、そのあまりの威力にエクシアは地面に倒れこみ、それを見た4人は顔を引きつらせた。

 

サリ「ガッデム!!

 

エ「いひゃい……」

 

ド「さて、本来なら待機室に戻るんだけど…その、時間が押しちゃってるからこのまま次の部屋に向かうから着いてきて」

 

ヤ「エッちゃん、肩貸そうか?」

 

エ「大丈夫…」

 

こうして地面に倒れているエクシアが立ち上がったところで、全員歩き始めたのだった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

エ「あれ、ここって訓練所?」

 

そうしてドクターの元に連れてこられた場所は、まさかの訓練所であった。ただ、先程と違うのは…

 

アン「…なんか、真ん中にすごい大きい舞台があるんですが?」

 

バ「しかも、なんかめちゃくちゃ人いますね…って、あれ?」

 

ドクターの案内の元、席に誘導されている最中にバイソンがあることに気がついた。

 

エ「バイソンくん、どうしたの?」

 

バ「いや、ラップランドさんとヤマトがいつの間にか居なくなってるなって…」

 

アン「あ、そういえば居ませんね…どうしたんでしょう?」

 

ド「あー、あの二人はちょっと…ね?あ、あとはいコレ」

 

エ「…ペンライト?」

 

アン「…これ、ボタン押すと色が変わるタイプですね」

 

バ「とは言っても、青と緑しかないですね…ん?なんか暗くなってきましたね…」

 

ド「お、始まるみたいだね…それじゃ楽しもうか」

 

訓練所の照明が落ち始めたと同時に、音楽が流れ始めそして舞台にライトが当たり、そこに立っていたのは。

 

ラ「…………」

 

テ「…………」

 

エ「え、テキサスとラップランド!?てか2人の格好って…前、ソラが着てた衣装に似てる?」

 

バ「それにしてもなんか似合ってますよね」

 

アン「ええ、それは同感です」

 

3人がそれぞれ感想を漏らしたところで歌が始まり始めた。

 

テ「かじかんだ唇~♪ほどいた歌声が 彼方へ紡ぐ 旋律は群青~♪」

 

ラ「今なら分かる~♪願いの先で 二人出会ったのは~♪」

 

「「きっと本当の自分〜♪誰も真似のできない♪」」

 

テ「色を君と確かめ合うため♪地図はいらない~♪」

 

~申し訳ないですが途中はカット~

 

「「見せてあげる鮮やかな~♪私たちの未来を~♪」」

 

エ「はえー…あの二人、めちゃくちゃ歌上手いじゃん!」

 

バ「それに息ぴったりでしたね…」

 

ラ「それじゃ、ヤマト。次はたのむよ」

 

アン・バ・エ「え?」

 

曲が終わった直後に言ったラップランドのセリフに3人が体を強ばらせると、同時にまた別の曲が流れ始め下から…。

 

エ「え?は?モ、モスティマ!?ってブフっwww」

 

アン・バ「フクッwwww」

 

ミニスカートを履いたモスティマとヤマトが現れた。

 

 

 

 

 

 

 

モスティマのミニスカートより丈が短いミニズボンを履き、上はへそ出しという格好で。

 

*既に3人笑っていますが、このまま進めます*

 

モ「伝説の朝に~♪」

 

ヤ「誓った言葉~♪」

 

「「革命を~♪Let's shout~♪革命を~♪Let's shout~♪」」

 

アン「え、ヤマトが普通に歌えてる!?」

 

バ「しかもめちゃくちゃ上手くないですか!?」

 

エ「なんでモスティマが歌ってんのさ!?」

 

3人が混乱している間にも歌は進んでいき、そしてサビに入った。

 

「「どんな人生だって~♪いつか混じり合う~♪」」

 

「「その日~♪君はジャッジメントする~♪革命を~♪Let's shout~♪」」

 

そして歌い終わった直後、煙が吹き出し現れたのは。

 

ソラ「さよならはあなたから言った~♪それなのに頬を濡らしてしまうの~♪」

 

アン「ここでガチが来ましたね…」

 

観客「うおおおおぉ!ソラちゃあぁぁぁん!」

 

ソラ「(皆に向けてウィンク)」

 

観客「うおおおおぁあああ!!」

 

バ「なんかガチ勢いません?」

 

アン「まあ、ソラさんを知らない人なんてロドスにはいませんからね…てか大抵の男オペレーターはソラさんのファンって聞きましたよ」

 

エ「なにそれ凄い」

 

ソラ「笑いあってさよなら♪…さて早速ですが、今回のライブのトリを務めさせて頂くのは、このおふたかたでーす!」

 

エ「もう誰が来ても驚かないよ…」

 

アン「私もです…」

 

バ「そうですね…」

 

そしてBGMと共に舞台したから現れたのは…

 

ケ「HMM…」

 

モ「まさに今宵♪」

 

3人「は?」

 

出てきたのは白いヒラヒラのドレスっぽい衣装を着て剣の形をしたマイクを持って高音の歌声を出すケルシーと、先程来てた衣装とは違い、極東風の衣装に身を包み同じく剣の形をしたマイクをもって歌うモスティマの姿。

 

アン「ケルシー先生、実はめちゃくちゃノリノリですね?」

 

エ「あー、もう(キャラが)めちゃくちゃだよ…」

 

バ「それにしてもケルシーさんよくあんな高音出せますよね…」

 

3人がそれぞれの反応を示している中、会場のボルテージは最高潮へ達していた。

 

モ「この手から零れ去った♪イノチ紡いだ♪」

 

観客+エクシア「コ・ド・ウ!」

 

ケ「欠けたムーンライトその光は♪残した者に♪」

 

観客+エクシア「ナ・ニ・ヲ・問・う!」

 

バ「エク姉も乗り始めちゃった…」

 

アン「この曲が最後っぽいですけど、こうなったら楽しみましょう…こんな機会中々ないでしょうし」

 

バ「…そうですね」

 

バイソンとアンセルもペンライトを持って周りに合わせて振り始めた。

 

モ「二度と消えることない♪」

 

ケ「魂の叫びをさ♪」

 

「「とーもーせー♪」」

 

「「イグニション」」

 

2人がそう言ってマイクを地面にトンと刺した直後、舞台から火が勢いよく吹き出した。

 

モ「行きなさ~い♪」

 

ケ「アツく~♪」

 

「「羽撃き合い♪」」

 

ケ「響き伝う♪」

 

モ「奏伝う♪」

 

観客+3人「き・ず・な・ッ!」

 

「「歌えPhoneix song♪」」

 

観客「うおおおおぉ!!」

 

 

 

 

*****

 

 

ド「こうして特にオチもなく笑ってはいけないロドス24時は終わるのでしたとさ、チャンチャン♪」

 

ヤ「絶対読者の皆様離れるって!!」

 

お仕置回数(裏も含める)

アンセル:35回

バイソン:45回

エクシア:26回

ラップランド:25回

ヤマト:15回

 

気絶回数

ヤマト:1回

 

 

おまけ:蝶○枠がメランサだった場合。

 

メ「その…反省してください!!」

 

エ「え、あ、ちょっと待っ、タコス!!」(バタン!)

 

メ「が、ガッデム…うぅ、恥ずかしいし叩いてすみませんでした…」

 

バ「エク姉大丈夫?」

 

エ「…………」

 

ヤ「エッちゃん?大丈…き、気絶してる…」

 

 

あまりの威力によってエクシア気絶。




自分じゃこれが限界でした(白目)
いや、いいオチがギリギリまで思い浮かばないというガバです…本当にすみません…。

解説

サリア:身長も高いし強そうってことで蝶○枠で参戦。正直痛そう(小並感)

テキサス&ラップランド:中の人ネタ。なお、2人の衣装は青いミニスカドレスっぽい衣装です。…これで伝わった人はめちゃくちゃ頭いいと思います。

モスティマ&ヤマト:モスティマの中の人ネタ。なお、修羅場ですよ!ヤマト君!(本編ルート)の回の最後の方でヤマトが練習してたのはこの曲で、一緒に歌ってのはモスティマでした。

ソラのソロ歌:中の人がシャルルを歌う的な話を聞いて採用という雑な流れ。なお彼女を出した一番の理由はアークナイツでの本筋を出さない訳にはいかんやろ!ということだったり。

ケルシー&モスティマ:はい、中の人ネタです。本家はニコ○にあるので気になる方はそちらをぜひ、お聞きください。何気今回の曲の中では一番好きな曲ですし。


こんな風に低クオリティな小説ですが、これからもよろしくお願い致します!


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コミュ障オオカミとグラスゴーの戦士たち

お気に入りが500件突破しました!本当にありがとうございます!
これからも精進していきますので、これからもよろしくお願い致します!

さて今回はリクエストにあった話を投稿させて頂きました。


それではどうぞ!

1/9 後書きの次回予告(嘘)の内容を少し書き換えました。


訓練所にて、ヤマトは模擬戦用の刀を腰に着けた状態で、少しだけ不満そうな表情のインドラと対峙していた。脇の方を見れば、真剣な顔で見学しているメランサ、何時になく真面目な雰囲気のフランカ、そして──

 

「……」

 

まるで見定めるかのように目を向けるシージが立っている。

 

(なんでこんなことに……)

 

ヤマトは心のうちでそんなことを思いながら、こうなる経緯を思い返した。

 

 

*****

 

 

 

 

 

「おーい、ヤマト!今空いてるかー!」

 

それは訓練所にてフランカ監修の元、ヤマトはメランサと実戦形式の訓練をしていたのだが、その最中に乱入してきたエンカクをヤマトが何とか倒して追い返して暫くしてからの事だった。

さも当然のようインドラが入ってきて、彼女の姿を捉えたヤマトは今度はなんだと言わんばかりの雰囲気を出しながらも、無視するのは気が引けるため、一応返事をする。

 

「……なんか用?」

 

「おう!俺と模擬戦やってくれよ!」

 

「( ・᷄ὢ・᷅ )」←心底嫌そうな顔

 

「だははは!なんだその顔!」

 

「ふふっ…!変な顔~!」

 

(確かにちょっとだけ面白い…)

 

インドラとフランカは初めて見たヤマトの表情に笑い声をあげ、メランサは笑いを必死に堪え、そしてそれに対してヤマトは更にムスッとした雰囲気を出し、インドラに理由を話す。

 

「さっきエンカクとやったばっかだし、そもそもメッちゃんの模擬戦の話が先だから今回はなしにさせて…」

 

「ケチケチすんなよー。1本だけでいいからよ!頼む!」

 

案の定、引くわけが無かったインドラにヤマトは再度嫌そうな顔をする。ヤマトは別にインドラの事は嫌いではないし、寧ろ彼女の真っ直ぐな性格は好感を持てるほどだ。しかし、かと言ってエンカクと同じレベルで模擬戦を吹っかけられれば良い気はしないのは当然のこと。それに今回に限っては途中でエンカクが割り込んだものの、元々はメランサの模擬戦の相手役というのが本来の話。そのため、その話を破るような行為はこれ以上したくないのがヤマトの本音であった。

なので、何とか断ろうと口を開こうとして。

 

「私からもお願いできないか?」

 

突如入口の方から声が聞こえ、振り返るとそこには──

 

「お、王!?何故ここへ…」

 

インドラ達、グラスゴーの者たちが王と慕っているシージが何食わぬ顔で訓練所の入口に立っていた。インドラは彼女がこの場に来ていることに驚き、そしてそれはヤマトら3人も同様であった。

 

「お前がやけに機嫌良さそうに訓練所に入っていくのが見えてな。自分らしくないとは思うが、気になって着いてきただけだ」

 

シージの答えは分かりやすいものではあったものの、彼女の性格を知っているインドラは驚いたような表情を浮かべている。が、それも一瞬であり、すぐにヤマトの方へ向き直り。

 

「ヤマト、王もこう言ってるからやってくれよ?な?」

 

「えーと…」

 

余計に断りづらくなったヤマトはチラッと、フランカとメランサに助けを求めるよう視線を向ける。そしてそれを向けられた2人は一言。

 

「まあ、もう1戦ぐらいならいいんじゃない?それに、拳闘士相手の場合に気をつけた方がいいこと教えられるし」

 

「えーと、その…頑張って?」

 

メランサは少し戸惑いがちではあったものの、内容はフランカ同様助け舟は出すものではなかったため、ヤマトは諦めたのだった。

 

「あ、ヤマトが使う武器はそれ(合体剣)じゃなくて、この模擬戦用の刀ね」

 

「「え」」

 

ヤマトとインドラの声が重なった珍しい瞬間であった。

 

 

 

****

 

 

 

ヤマトとインドラが模擬戦をするにあたって設けられた縛りは2つ。

1つはアーツによる身体能力の強化をしないこと、もう1つはアーツによる斬撃などの使用禁止。更にヤマトは普段使っている合体剣ではなく、メランサが使う武器と同様のタイプの模擬戦用の直刀を使うことが追加された。

 

このルールは、ヤマトみたいにアーツによる衝撃波などが使えないメランサでも参考になる模擬戦ができるようにというフランカの判断の元で決定され、理由を聞いたヤマトはあっさりと承諾し、インドラは「それじゃヤマトの全力と戦えねえ!」と文句を垂らしていたが、シージの一声により渋々了承し、冒頭に至っている。

 

(…久しぶりに刀を使うな)

 

そこでふと、ヤマトは刀を見てそんなことを考えた。そして更に思い出せば【先生】から初めて教わり、そして他の武器よりも丁重に教わったのも刀であった気もした。だからだろうか、何故か異様に手に馴染んだ。

 

「始め!!」

 

(って考えるのは後。今はやるべきことに集中しろ……!)

 

(……!来る……!)

 

フランカの開始を告げる声が耳に入ると同時にヤマトは意識を切りかえ、鞘から刀を抜き放ち距離を一瞬で詰め、抜刀し斬りかかる。

 

「うおっと!?」

 

インドラはそれをギリギリで躱し、二太刀目が振り下ろされる前にヤマトの懐に入り込み正拳突きを放とうとするが、その前にヤマトの逆袈裟斬りが振るわれ、それを避けるも、それも予想のうちだと言わんばかりに振るわれる横一閃の三太刀目をインドラはしゃがんで躱す。そして足払いをヤマトにかけるが、それをギリギリで察知したヤマトは後ろに跳んで回避し、着地と同時に再度インドラに接近し刀を振り下ろしたが、インドラはそれをメリケンサックを着けた右手で弾くと、ヤマトの懐に入り込み、ラッシュをかけた。

 

「オラオラオラァ!」

 

「っ!」

 

「ああいう風に拳を武器に戦ってくる相手に間合いを詰められちゃうと、手数、スピード共に負けちゃうから、こっちの間合いを常に保つように意識しなさい」

 

「は、はい!」

 

(インドラの連撃をああも捌くとは…なるほど、アイツが楽しそうに話す訳だ)

 

そのラッシュをヤマトは的確に刀で受けたり、体を逸らして捌いていくが、次第に攻撃がかすり始めていく。そしてそれを観戦しているフランカがメランサに色々と教えていた。その一方でシージはインドラの攻撃を捌くヤマトを見て、道理でインドラが彼のことを楽しげに話す訳だと、1人納得していた。

 

インドラの怒涛の攻めは、その合間を縫って放たれたヤマトの膝蹴りを防御したことによってよって止められ、その一瞬をヤマトは逃がさず刀を振るって牽制しつつ距離をとった。

 

「…まあ、あんな風に距離を離す方法もあるけど、他にもアーツで身体能力を強化して思いっきり下がったりとか、色々あるわね」

 

「な、なるほど…」

 

フランカの解説にメランサが頷く中、ヤマトはインドラが仕掛けてこないのを見ると、ヤマトは腰を深く落とし刀の切っ先をインドラに向け、左手を峰に添え──突進し、刺突を放った。

 

「しっ!」

 

「っ!」

 

予想以上の速さで離れた刺突をギリギリ視認出来たインドラは、体を横に逸らして何とか躱し、カウンターのの拳を叩き込む直前に、自身の直感が命ずるがままに体を後ろに逸らした。その直後、インドラの眼前をヤマトの刀が通り過ぎた。インドラはそのまま体を後ろに倒しブリッジをするように両手を地面につけると、両足を折りたたみがら空きとなったヤマトの胴体へ蹴りを入れた。蹴りを食らったヤマトは衝撃を逃すためにも、そのまま後ろに跳んで距離を離す。

 

「……」

 

「流石だな、今のを防ぐか…」

 

仕切り直しとなった場面で、インドラは先程の蹴りの手応えの無さからヤマトが攻撃を防いだことを悟っていた。そしてそれは正解であり、ヤマトはインドラの蹴りが胴体に入る直前左腕を盾にして防いでいた。

 

(……やっぱり真正面からの攻撃じゃ、全部反応されちゃうな。それなら…)

 

(……?ヤマトの野郎、なんで鞘を外して左手で持って刀を収めやがった?)

 

ヤマトは少しだけ痺れた左腕を軽く振ると、鞘を腰から外して左手で持ち、刀を鞘に収め腰を深く落とした。そしてそれを見たインドラは内心で疑問に思いながらも、飛び込んだら負けるという確信めいたものが渦巻いていたため、警戒を緩めず様子を伺った。

 

「「っ!」」

 

ほぼ同時、いや僅かだがヤマトが先に動いた。

 

ヤマトはインドラへ駆け出しながら刀の間合いに入った瞬間、鞘から刀を抜き放ち斬りかかるが、インドラはそれを危なげなく躱しそのまま懐へ潜り込み決定的な一打を加えようとして、あることを思い出した。

 

──なんでヤマトは鞘を左手で持ってた?

 

「くおっ!?」

 

結果として、その事を思い出したことによってインドラは意識から外れていた、ヤマトの鞘による奇襲をギリギリで躱すことに成功した。が、それはヤマトとしても想定内、いや、インドラなら躱すだろうと確信を持っていた。

 

ヤマトは鞘による攻撃の勢いを殺さず、そのまま回転するようにインドラに一閃。インドラはそれを手に持っているメリケンサックで受け止めるが、威力を抑えきれず体制を崩してしまう。そしてそれをヤマトが見逃すはずがなく──

 

「そこまで!!」

 

「……」

 

「……」

 

フランカの言葉で動きが止まった2人。ヤマトの刀はインドラの首に、インドラのメリケンサックはヤマトの鳩尾、とそれぞれ寸止めされている状態であった。つまり──

 

「納得出来ないかもしれないけど、引き分けってことでいいかしら?」

 

「だー、くそ!!納得いかねえ!!ヤマト、もう1回だ!!」

 

「やだ」

 

「即答かよ!いいじゃんかよー、お前だってスッキリしてないだろ〜?」

 

フランカの判定を聞いたインドラはスッキリしないのか、ヤマトにもう一度模擬戦の誘いをかけるも、当の吹っかけられた本人は即拒否。それを聞いて尚インドラはぶうたれ、ヤマトはため息、フランカはヤレヤレと首を振っていた。なおメランサはどうすればいいのか分からず、オロオロしていた。

 

「インドラ、そこまでにしておけ」

 

「お、王!?」

 

「彼女達の訓練の時間の間に1度やって貰っただけありがたい話なのだから、次回に取っておけ」

 

「…王がそう言うのなら」

 

「…さて、迷惑かけたな。行くぞ、インドラ」

 

「はっ!じゃーな、ヤマト!また明日やろーな!」

 

(それは嫌だ)

 

そうして嵐のように去っていったシージたちを見送った、ヤマト達はようやく自分たちの訓練ができると安堵の息をついたところで。

 

「ヤマト、もう1回やろう──」

 

「帰れ」

 

何故かまた来たエンカクに対して、ヤマトはただ一言そう告げたのだった。

 

 

 

******

 

 

 

別の日、訓練所にてヤマトは仮想の敵──クラッシャーの一撃をバックステップをして躱すと、合体剣と足にアーツを流し込み、強化された脚力を活かして急接近。

クラッシャーが接近してきたヤマトを迎撃するためにその巨大な武器を振り下ろす直前に、ヤマトは合体剣を全て分離、ギリギリでクラッシャーの攻撃を避け、近くの剣を取り隙だらけのクラッシャーに一閃、続けざまに散らばった剣を手に取って斬り付けていき、そしてそれを計5回行ったところで、空中にある、流し込んだアーツが抜けたファーストブレイドを取り、再度アーツを流し込んで急降下斬りを叩き込んだ。

 

「…………ふう」

 

クラッシャーのホログラムが消えると同時にヤマトは息を吐く。

 

「……やっぱり上手くいかないかぁ」

 

ヤマトが試していたこと、それは自身の切り札である剣技にアーツを流し込み、術攻撃が出来るかどうかであった。

結果としては失敗。最初の斬撃の段階で事前に流したアーツの出力が0に近いレベルまでになっており、術攻撃にはなっていなかった。ならば、その攻撃する度にアーツを流し込めばいいのでは?という話にもなる訳だが、これにも当然問題があった。

 

「攻撃のスピードが落ちゃうんだよなぁ…」

 

そう、アーツを込める時間が僅かに増えてしまうため並の相手ならともかく、ラップランドやチェン、ヘラグといった実力者達レベルになると見破られてしまうという別の問題が起きてしまうのだ。

 

(…相手によって使い分ける?いや、それだと重装備の相手には通用しないし…いっその事最後の段だけアーツを込めて…)

 

「精が出るな」

 

突如声をかけられたヤマトは、少し驚きながら振り返るとそこにはシージが立っており、手には何故か彼女の武器であるハンマーが握られていた。

 

「……あんたはシージ、さんだったか」

 

「無理に敬語は使わなくていい、その方が私も楽だからな」

 

「……用件は?」

 

「らしくないと分かってはいるがな。お前を理解するにはこれが一番だと思ってな、悪いが付き合ってもらうぞ」

 

(何で?)

 

ヤマトは天を見上げ、自分みたいなやつと模擬戦をやりたがる人がこんなに多いのか疑問に思い始めたが、その考えをすぐ脇に追いやってシージに向き直る。

 

「……1度だけだ」

 

「感謝する」

 

直後、2人はお互い武器を振り上げながら互いに駆け出したのだった。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

「ヤマト、ポテトをやろう」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「なんで俺じゃなくてヤマトなんだ……」

 

後日、食堂で付け合わせのポテトをヤマトに渡すシージと、それを見て面白くなさそうな表情のインドラの姿が見受けられたのだった。




キャラ紹介

ヤマト:インドラとシージに目をつけられてしまった本作主人公。今回の話で刀と、何か見たことあるような技を扱っていたが、この技は全て【先生】から教わったものだと後に零した。シージとインドラの2人とは今回の話以来それなりに話すようにはなった。因みに刀を持ったヤマトは連撃をメインにした戦い方になる。

インドラ:公開求人でしかスカウトできない幻のツチノコオペレーター。ヤマトと1度模擬戦して以来、彼の並外れた勘と剣技、更に人となりが気に入った設定。最近、王であるシージとヤマトが親しげに話してるのが面白くないと感じてる。

シージ:星6先鋒のセイバーライオンさん。彼女も自分らしくはないとは思いつつも、ヤマトの事が1人の戦士として気になり刃を合わせ、彼の人となりを何となく知った。なお、ポテトは「もっと食べて力をつけろ」と言った感じでヤマトを言いくるめて食べさせている。そしてヤマトはそれを何一つ疑っていない。

メランサ:剣聖。今回のインドラとヤマトの模擬戦で、ヤマトの剣技と動き方をある程度学習し、ヤマトが放った刺突技を今は練習中。かわいい(脳死)

フランカ:かわいい(脳死)

次回予告(嘘)
やめて!今、CFのインチキメテオを食らった挙句、リーシーに煽られたら、イライラするわ、煽られて負けるわでWがキレちゃう!
お願い、キレないでW!あんたが今キレたら、ヤマトのあんたに対する印象はどうなるか分からないの?ストックはまだ残ってる、ここを耐えて冷静にやれば、リーシーに勝てるんだから!(多分)
次回、「W、ブチ切れる」 デュエルスタンバイ!


感想や批評お待ちしております。あと、次回予告の内容は…気が向いたら多分やります()


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イカズチの悪夢と調香師

遅くなってすみませんでした!色々修正してたらどんどん遅くなってこんなことに…いや、本当にすみませんでした…。

今回の話もリクエスト回です。それではどうぞ!


「──っ!!」

 

真っ暗な部屋の中、イカズチは勢いよく体を起こした。

 

「はっ、はっ、はっ……」

 

先程見た光景のせいで心臓が破裂しそうなほど早く鼓動し、汗をびっしょりとかいていた。息を荒く吐きながらも、胸に手を当て気持ちを落ち着かせる。

 

「はっ…はあ……はあ……まだ、0時……」

 

ある程度落ち着いてから、枕元に置いてある時計を見たイカズチは1時間も寝れていないことに気がつくと、落胆したように息を吐き。

 

(やっぱり、お兄ちゃんのところ行かないとだめなんだね……)

 

イカズチはそう思いながら、ベッドから降りると枕を持って部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「ドクター、ちょっといい?」

 

「ん?イカズチか、どうかしたのかい?」

 

お昼頃、執務室にてノックをせずに入ってきたイカズチにドクターは特に気にした様子なく、彼女の話に応じた。勿論、書類を捌くのは止めて真剣に聞く体勢を取った状態でだ。秘書であるアーミヤもイカズチの様子が普段と違うのを見抜いているのもあって、黙っている中、イカズチはバツが悪そうに口を開いた。

 

「実は…最近嫌な夢ばっか見ちゃうせいで、でお兄ちゃんと一緒じゃないとよく眠れないんだけど…どうしたら1人でも眠れるようになれるかな……?」

 

「……ごめん、質問に対して質問する形になっちゃうけど、いつからその夢を見るようになったか教えてくれる?」

 

「えっと……1週間前ぐらいかな……」

 

「なるほどね…もう少し詳しく話を聞いてもいいかな?」

 

「……う、うん」

 

イカズチの相談内容を聞いて、「もしかしたら」と考えたドクターの質問に対する彼女の答えを聞いたドクターは、確信を得るためにも更に質問を続けた。

 

 

 

*****

 

 

「……なるほどね」

 

 

自分が出した質問に対するイカズチの答えた内容から、ドクターは自身の予想が当たっていたことを確信した。

 

今回の話の発端は、今から1週間程前…つまり、イカズチが悪夢を見始めた前において、彼女はヤマトとコンビを組んでとある任務に当たっていた。その際に、敵部隊の奇襲を受け、ドクターたちが駆けつけるまで2人で敵部隊と戦闘、そしてイカズチの認知外から放たれた狙撃をヤマトが庇って軽傷を負った。結果として、ドクターたちが駆けつける前に奇襲をしかけた敵部隊はクラッシャークラスも居たものの、ヤマトとイカズチの活躍によって全員無力化し、被害もヤマトの軽傷のみだったため、ドクターを含めヤマトも気にしていなかった。

 

しかし、「(ヤマト)が自分を庇って怪我をした」というのは彼女にとってはとてつもないストレスであったのだろう。それ以来、彼女は「(ヤマト)が自分を庇って死ぬ」という夢を見るようになってしまった。そして、その悪夢はヤマトと一緒に眠ると見ないという訳だった。

 

(それに眠れると言っても、眠りは浅いみたいだしどうしたものか……)

 

「……あの、イカズチさん。悪夢を見なくなるまでヤマトさんと一緒に寝ていくのはダメなんですか?」

 

「……それも考えたけどさ、その、お兄ちゃんに迷惑かけたくないし、それに、なんかズルいというか……私もよく分からないけど、ダメな気がしちゃって」

 

アーミヤの提案にイカズチが少しバツが悪そうに答えた内容に、ドクターとアーミヤは驚いた。それもそのはず、三度の飯より兄のイカズチがここまで考えていたというのは予想外だったからだ。

だが同時に、彼女が本気で何とかしたいと思っているのが2人には伝わり、ドクターは少し考える素振りをして、何か思いついたのか、メモ用紙にサラサラとペンで何かを書き込んでイカズチに手渡した。

 

「何これ…?」

 

「この紙を療養庭園にいるパフューマーのラナって人に渡してくれるかい?今回に限っては俺より彼女の方が適任だと思うからね」

 

「んー……わかった。わざわざありがとうね」

 

紙を受け取ったイカズチはドクターに一言お礼を告げると、部屋を出ていった。そして、その姿を見たアーミヤは心配そうにつぶやく。

 

「……イカズチさん、大丈夫でしょうか?」

 

「こればっかりは、時間をかけていかないとダメだろうね。だからこそ、あの子が立ち直れるまで俺らが別の方面を支えていかないといけない、そうでしょ?アーミヤ」

 

「……はい、そうですね!」

 

アーミヤのつぶやきを聞き取ったドクターは、彼女を安心させるように自分なりの答えを投げかけ、それなアーミヤは笑顔でそれに反応した。

 

「……さて、それはそれとして。ドクター、まだ書類が沢山ありますから、まだ休んじゃダメですよ?」

 

「……いい話で終わりそうだったんだけどなぁ」

 

ドクターはそうぼやきながらも、せっせと書類に目を通しつつペンを走らせていくのだった。

 

 

 

 

****

 

 

 

(ここが療養庭園…始めて来る場所だなぁ…)

 

イカズチはドクターの言われた通り療養庭園に来ていた。一応、ヤマトからそういう場所があるというのは聞いてはいたものの、匂いに関しては「とりあえず臭くなければいいや」の精神、そして花に関しては「有害じゃなければいいや」の考えを持ち、ヤマトをめぐる修羅場さえ起きなければ精神面も安定していたイカズチにとっては無縁の場所であったため、彼女は物珍しそうに視線を動かしながら歩いていた。

 

「あら?本当に来た人がいたのね……」

 

「っ!」

 

後ろから声をかけられたイカズチは驚き、そして気を抜きすぎていた自分に内心舌打ちしながらすぐに振り返る。そこには、作業着を着たミノスの女性が何故か驚いた表情を浮かべながら立っていた。

 

「驚かせてしまってごめんなさいね。初めまして、私はパフューマーのラナ。あなたの名前は?」

 

「あんたが…私はイカズチ。あんたに用があって来たの、とりあえずこれを読んでくれる?」

 

「ああ、あなたが……」

 

「?」

 

「ああ、気にしないで。それじゃ早速読ませてもらうわね…あら、ドクターくんからなのね」

 

イカズチのぶっきらぼうな言い草に嫌な顔をせずに、ドクターからの手紙を受け取ったラナはそれに目を通し、そして段々と真剣な表情に変えて行った。そして読み終えた彼女は顔を上げてイカズチに視線を向けた。

 

「なるほどね……とりあえず、ここで立ち話は疲れるでしょうから…そうね、私の作業部屋で話しましょうか」

 

「分かった」

 

「うん、それじゃついてきて」

 

イカズチはラナの提案をすぐ承諾し、彼女のあとについていったのだった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

「それじゃあ、お茶を淹れてくるからそこに座って待っててね?」

 

「はーい」

 

作業場に案内されたイカズチは、近くの椅子に座りラナが戻ってくるまで、することがないためキョロキョロと首を動かしていた。作業場と言っても、イカズチが想像していたような色んな器具が所狭しと置かれていたりということはなく、それっぽいものはあるものの沢山ある、という訳ではなかった。なお、ラナとは作業場に行く道中で話したところ、すぐに打ち解け、イカズチの彼女に対する態度もかなり軟化しており、ラナもそんなイカズチを受け入れていた。

 

「ふふ、思ったより道具とかないでしょ?」

 

「うん。こういうのは全く知らないってのもあるけど、予想以上になくてビックリしちゃった」

 

(血は繋がってない聞いてたけど……ふふ、()()()()と同じ反応ね)

 

イカズチが来る前に来ていたある人物と同じ反応をしていたことに笑みを零しながらも、ハーブティーが入ったカップをイカズチに渡す。

 

「あっ、ありがとう!……なんか落ち着く香りだね」

 

「ふふ、気に入ったかしら?」

 

「うん!」

 

「それじゃあ、早速本題に入っていきましょうか」

 

「うん、分かった」

 

年相応の明るい笑みを零すイカズチを見て、ラナは軽く微笑んでから話を切り出した。一応、ラナはドクターの手紙と()()()()()の話から事情を知ってはいる。しかし、イカズチ本人の口から聞くのも大事だ。

そして、それはイカズチも理解しており素直に応じた。

 

「ドクターくんの手紙だと、1人じゃ1時間すら寝れなくて、ヤマト君……っていうあなたのお兄ちゃんと一緒でも眠りは浅いって書かれてるけど、ここの所を詳しく聞いてもいいかしら?」

 

「……えっとね、1人の時だと、その…お兄ちゃんがね、私を庇って死んじゃう夢を見ちゃうの。お兄ちゃんと一緒だと……夢は見ないんだけど、起きたらお兄ちゃんが居ないんじゃないかって怖くてよく眠れないの……」

 

「そうなのね……あと、あなたのお兄ちゃんが庇って怪我をした、っていうのを実際に見てしまったことはある?」

 

「……うん」

 

(なるほどね……)

 

ラナはイカズチの話から、彼女が精神状態がこちらの予想以上に安定していないことを察した。そしてラナはイカズチがこちらの質問に対して答えた内容から、彼女は心的外傷の原因となった場面を再現した悪夢、所謂再現性悪夢と言われる悪夢を見てしまっていると、推測した。

 

そして悪夢を見ないようにする方法も幾つかある。ラナは椅子から立ち上がると、予め作っていたとある効果が見込める香りがするアロマオイルが入ったアロマスプレーを棚から持ってきた。

 

「イカズチちゃん、今日から寝る時はこのアロマスプレーを吹き付けてから眠ってみてくれる?」

 

「……それは良いけど、これって何?」

 

「それはね、睡眠の質を高める効果と心を落ち着かせる効果がある香りのアロマスプレーなの。悪夢って、その人の精神状態とかもそうなんだけど、睡眠の質を改善することで見なくなることもあるらしいから、まずはそこからやっていきましょう」

 

「……うん、分かった。それじゃあ使わせてもらうね……それじゃあ、話を聞いてくれてありがとう、ラナお姉ちゃん」

 

イカズチはラナから手渡されたアロマスプレーを大事そうに手で持つと、席を立ち上がるとペコリと頭を下げて作業場を出ていった。

 

「……ヤマト君、いつまで隠れてるつもりなの」

 

「……今出る」

 

イカズチから出ていってから暫くして、ラナが珍しく呆れたような様子で声をかけると、物陰からひょっこりと気まずそうな表情のヤマトが出てきた。

実は、ラナにイカズチのことに関しての話をしていた人物というのはヤマトであった。

1週間前から眠れずに自分の元に来るイカズチのために、何とかしなければと思ったヤマトは、イカズチに隠れてコソコソと色々調べ回っていた。そして昨日の夜にパフューマーのラナの存在を知り、今日になって早速相談をもちかけ、そして話が終わったタイミングでイカズチが来た予感がしたヤマトは、思わずラナに「妹が来たから隠れる」と意味不明なことを言って物陰に隠れていた、というのが流れであった。

 

「別に隠れる必要はなかったのだと思うのだけど…」

 

「……」

 

「……まあ、この話はこれで終わりにしときましょうか?」

 

「そうしてくれると助かる……では、失礼する」

 

ラナの心遣いによって追求されなかったことにヤマトは内心ほっとしつつ、その場を去ろうとして、ふと何かを思い出したかのように振り返ると。

 

「次は、イカズチと来る」

 

「……ええ、待ってるわよ」

 

そう一言だけ告げると、ラナに見送られながら今度こそ作業場を出ていったのだった。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

結論を言うとイカズチは悪夢を見ることはなくなった。ラナが作成したアロマスプレーのお陰で、イカズチは全く眠れなかった時とは打って変わって熟睡することができるようになった。

 

「だけど、今度は寝坊すること多くなっちゃって……」

 

「あー、それは私も経験あるので分かりますね」

 

「ポデンコちゃんも?」

 

「はい。確かあの時は──」

 

「あ、あははは……」

 

しかし、今度は逆に熟睡しすぎて朝に起きれなくなるという事態が発生し、それを聞いたポデンコは当時の事を話しだし、製作者のラナは困ったような笑みを浮かべるのだった。




……こんな感じで良かったですかね?

キャラ紹介

ヤマト:イカズチの悪夢の元凶にして、裏で色々してたお兄ちゃん。なお、撮影外ではあらかじめ書いていおいた台本を片手にラナさんとの相談を望んだという……コミュ障は健在である。因みにポデンコとは後にハーブティーとフラワークッキー関連でよく話すようになった。更に言うと、イカズチが夜遅くに部屋を訪れた時は、何も言わずに「おいで」と優しく言って、一緒にベッドで寝るというムーブをかましてた。

イカズチ:今回の話の主人公。ある任務でヤマトが自分を庇ったことが原因で、悪夢を見るようになってしまったが、癒し系お姉さんことラナさんのお陰で無事改善。最も、今度はアロマスプレーが効きすぎて寝坊することが多くなるという、別の悩みの種ができた。ポデンコとは仲良くなり、暇な時は彼女とよく話してる姿が見受けられるようになったとか。因みにオシャレに関しては無頓着系ガール。

パフューマー(ラナ):殆どのドクターがお世話になったであろう、星4範囲医療。素質がリジュネなのでフィリオプシスやナイチンゲール、ブリーズがいても使う人は多いとか(てか自分がそうですし)。実は、ラナとパフューマーのどっちをイカズチに呼ばせるか悩んだ結果、ゲームの入職会話でラナと名乗ってたから、という理由でラナに。そして今回の1件でイカズチの保護者枠に入ってしまった(というより小さいキツネちゃんにロックオンされた)

ポデンコ:星四補助。かわいい(脳死)

ドクター:アーミヤが膝枕してくれたらもう少し頑張れる。

アーミヤ:ひ、膝枕ですか!?……ちょっとだけですよ?

ケルシー:お前ら…なんであとがきでイチャついてんだ…?

感想や批評、お待ちしております!


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第2回ヤマトの修羅場対策会議

お待たせしました!

今回はリクエストの前に、そろそろ彼女を出さないと絡ませられないという訳でこちらの話となりました。

それとこちらの都合で2週間ほどは投稿できないと思います…本当にすみません……




「あら、子犬ちゃんじゃない」

 

「W…さん?」

 

「そうよ、久しぶりね」

 

「……ヤマト、知り合いなのか?」

 

「あ、う、うん。俺が傭兵時代の時にお世話になった人で、俺にとっては恩人だよ」

 

「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」

 

それは偶然であった。その日、フロストリーフと一緒にロドスの廊下を歩いていたヤマトは、恩人であるWと再会した。そして隣にいたフロストリーフの質問に対して、ヤマトが答えた内容を聞いたWは笑みを浮かべる。

 

「Wさん、ありがとうございました。あなたのおかけで、俺はこうしてこの場にいます」

 

「大袈裟ね、たまたま会ってただけよ」

 

「それでも、俺にとっては感謝することでした。ですから、もし俺に出来ることであったら何でもしますよ」

 

「おい、ヤマト。そういうことは言わない方が…」

 

「……へえ、何でも?」

 

(……嫌な予感がする)

 

ヤマトとWの会話の中で、彼が発言した「何でもする」という言葉にWが怪しげに笑みを浮かべたのを見たフロストリーフは、キリキリと痛み出したお腹を抑えた。絶対ろくでもないことが起こる気がする。

 

そして、その予想は当たっていた。

 

「なら、今度私の買い物に付き合ってくれるかしら?」

 

(は?)

 

「買い物ですか?」

 

「ええ、そうよ。子犬ちゃんには私の服選びと荷物持ちして欲しいのよね~」

 

「そういうことですか。ならいつ行きましょうか?」

 

(まずいまずいまずいまずい!)

 

突然の流れにフロストリーフが内心で惚けている間にも、ヤマトはなんの疑いもなくホイホイとWの提案に賛同、同時にフロストリーフは色んな意味で良くない流れになってしまっているのを悟り、焦っているとふとWと目が合った。

そしてそれを見たWはニヤリと口角を歪ませ。

 

「うわっ、だ、Wさん!?」

 

「というわけだから、子犬ちゃん借りるわね?」

 

(……マジか)

 

ヤマトの腕を自身の胸に抱え込むように抱いたWと慌てるヤマトを見て、フロストリーフはただでさえ悪い修羅場が更に悪化してしまうことを確信してしまったのだった。

 

 

 

 

****

 

 

「──という訳で、第2回ヤマトの修羅場対策会議を始める」

 

(((なるほど、そういう訳で)))

 

「え?え?」

 

フロストリーフの招集を受け、彼女の部屋に来たホシグマ、テキサス、メテオリーテの3人は同じ感想を抱き、同じく招集を受けたラナは困惑してた。そんな彼女らの視界には、ホワイトボードがあり、そこにはヤマトの写真(何故かぼーっとしてる時の顔写真)を中心に周りにはラップランド、リーシー(変顔)、イカズチ(寝顔)、チェン、そしてWの顔写真が貼られてそれぞれが中央のヤマトへ矢印が引かれ、そのすぐ側にはチェンは?マーク、その他にはハートマークが書かれていた。

 

そう、このホワイトボードのヤマト修羅場相関図(フロストリーフ命名)から分かるように、新しくWが参戦してしまったのである。

 

「先程の話したことと、この相関図から分かるようにWが参戦してしまったため、私達の胃とロドスを守るためにも協力して──」

 

「その、ちょっといいかしら?」

 

「む、ラナか…どうかしたのか?」

 

「いや、なんで私もいるのかなーって…」

 

フロストリーフの言葉を遮って、やっと状況がある程度理解出来たラナが待ったをかけ、何故自分がここにいるのか不思議に思い声を上げた。それもそうだろう、ラナの視点で見ると療養庭園でポデンコ、イカズチと話していたところを切羽詰まった表情で来たフロストリーフに「ラナを少し借りるぞ」と一言告げられ、気がついたらこの場に連行されていた、という感じだ。その上、正直ホワイトボードの5人に対して自分が何か出来るとは到底思えないため、ラナの疑問は当然といえば当然であった。

 

「お前はイカズチの抑え役を頼みたいんだ」

 

「え、あの子の?」

 

「ああ、イカズチを単独で抑えられるのはこの中では恐らくお前ぐらいしかいないと思ったのでな…というより、Wのヤバさが未知数だから1人でも戦力が欲しかった」

 

「えぇ……」

 

「だから頼む!このままだとロドスが半壊するだけじゃなく、心労でドクターや私達の胃が死ぬ!!」

 

「そこまでの規模なの!?」

 

フロストリーフの説明を聞いたラナは困惑し、そしてそんな狐さんの悲痛の叫びを聞いてラナはさらに困惑した。正直、後者はともかく前者に関しては誇張しているのでは無いかと考え──

 

 

 

***

 

 

──「そういえばイカズチちゃんのアーツってどういうのなの?」

 

「私のアーツは電系統だよ。例えば…えい」(ポデンコにタッチ)

 

「きゃあ!?これって、静電気?」(バチッ!!)

 

「うん、私のアーツはそんな感じに電や電気を放出出来るの。だから、精密機器とかにブッパなせば狂わせることもできるし、人なら痺れさせることも出来て結構応用聞くんだよ~」

 

「すごいですね!」

 

「だからやろうと思えばロドスを止めることもできるよ!」

 

「あ、あはは…や、やらないわよね?」

 

「うーん、多分やらないかも?」

 

「ふふ、イカズチちゃんのジョークはきついですね~」

 

「ねえ、本当にやらないでね?お姉さんとの約束よ?いい、絶対にやらないでね?」

 

「分かってるって~」

 

 

***

 

 

 

 

 

「分かった、私も協力させてもらうわ」

 

「すまない、助かる」

 

ポデンコを混じえてそんな話をイカズチとしたのを思い出したラナは、案外実現しそうだと感じフロストリーフの申し出を受けた。正直、修羅場による巻き添えで死ぬのは御免だ。

 

そして対策会議の話は本題へと移る。

 

「さて、今回の議題として取り上げたいのはWの抑え方だ。一応私の方で集められる情報は集められたが…もし、彼女に関して何かしらの情報を持っている者がいたら遠慮なく言ってくれ」

 

「では、小官から。まずW殿とは少し話しましたが、私たちを含めて相性は悪く、そしてあの三馬k…もとい、あの3人とは最悪を通り越してるレベルで悪いと思います」

 

「やはりそうか…」

 

ホシグマの意見を聞いたラナを除くメンバーはそれぞれどういう感じになるかを想像する。

 

・Wが3人の目の前でヤマトに抱きつく等の行動をして煽る。

・ブチギレる。

・リアル大乱闘勃発。

・ロドス半壊&ストレスで胃が死ぬ。

 

((((これはかなりまずい))))

 

もし、想像が正しければWとヤマトが一緒の場にいるという条件のみでロドス半壊ルート一直線というとんでもないことになる。4人は冷や汗を流しながら、すぐに対策を練らないという焦燥感が募り始めた。

 

「な、なにか対策は無いのか!?Wを含め、全員をすぐに無力化する方法は…!」

 

「あったらこんな会議開かれてないわよ!」

 

「落ち着け、まずはラップランドをシバいて…」

 

「それはテキサスの私怨では?」

 

(なんか、すごい場違いな気がしてきたわね……)

 

「~♪」

 

会議が難航(ぐだぐだ)し始めた時、フロストリーフの連絡端末からコール音が流れ始めた。彼女は一言、テキサスたちに詫びを入れて端末の画面を見ると連絡してきたのはドクター。

 

「………もしもし、私だ」

 

嫌な予感がしつつも、フロストリーフは無視する訳にも行かずドクターとの通話を開始した。一応、スピーカーをオンにした状態で。

 

『あ、フロストリーフ!?突然で悪いんだけどそこにホシグマとテキサスもいる!?』

 

「……ああ、いるが」

 

『それなら丁度良かった!実は訓練所で、Wがラップランド、リーシー、イカズチとリアル大乱闘始めちゃったから、止めるのを手伝っ…あ、ヤマト!1人で止めるなんて無茶だ!と、とりあえず来る途中で力になってくれそうな人いたら連れてきて!!なるべく早めに!』

 

ブツンと通話が切れ、プープーと通話が終了した音が部屋の中に静かに鳴り響く中、フロストリーフは疲れたような表情を浮かべ。

 

「……とりあえず、行くぞ」

 

「「「……分かった」」」

 

(これ、私も行かなきゃダメな感じね……)

 

フロストリーフの一言で、テキサスたちは溜息をつきながら重い腰を上げて席を立ち、ラナも立ち去る訳には行かず額に手を当てながら席を立ったのだった。

 

 

 

****

 

 

 

『アーユーオーケイ?バスターウルフッ!』

 

「はああああ!?何よこの厨キャラ!」

 

「私の勝ち。なんで負けたのか明日までに考えといてください」(ダブルピース)

 

「……!」

 

後日、ロドスにおいて実力行使の喧嘩は全面的に禁止というルールが発令され、変わりに何かしらの争いごとの解決はUNOやトランプといったものによる平和的なものでの解決になった。そして、どうしてもという場合のみドクター、アーミヤ、ケルシー、ドーベルマンの4人のうち2人以上から許可を取れたら訓練所にて喧嘩してもいいということになった。

 

「それじゃ次は私ね。言っとくけど手加減しないからね?」

 

「ほう、セフィロ○か…面白い、その細い体で筋肉ダルマに勝てるとでも!」

 

「白黒、練習付き合って」

 

「その呼び方やめてくれない?」

 

「みんなー、ちょっと休憩しよう?クッキーと紅茶用意したからさ」

 

そして、ヤマト案件でぶつかり合うラップランド達はことある度にヤマトの部屋でゲームによる勝敗を付けているのであった。




オチが思いつきませんでした(自首)

キャラ紹介

ヤマト:フロストリーフ達の胃を痛める元凶。訓練所でリアル大乱闘を始めた4人を止めようと1人突撃、無事吹っ飛ばされた。なおスマブ○を最近始めたばかりのWに3タテされた。そんな彼はカービ○を使っており、理由は「ドクターにおすすめされたキャラだし、それに可愛いから」とのこと。

フロストリーフ:ヤマトの保護者組のリーダー的存在。今回のルールのおかげですごい楽になった。

テキサス:ヤマトの保護者の1人。ゲームはあんまりやらないらしく、苦手な部類らしい。

ホシグマ:ヤマトの保護者の1人。とりあえず丸く治まって良かったと心底安心した。

メテオリーテ:イカズチの保護者の1人。イカズチに誘われてゲームに付き合う時間が増えた。

ラナ:イカズチの保護者枠に認定された癒しお姉さん。イカズチ、ポデンコ、ヤマトの4人でトランプをやっている姿がたまに見受けられるようになったとか。なお、大抵ヤマトが最下位。

三馬鹿:ラッピー、リーシー、イカズチ。

W:星6範囲狙撃オペレーターにして、作者の推しキャラの1人。このキャラの強みはやはりS3の火力。敵が密集している時にやるとそれはとてつもなく気持ちいい感じになる。我がロドスでは、S3特化3済みなので是非!因みにこっちではたまにキャラ崩壊する。まあ、リーシーがいるからね、仕方ないね。スマブ○では某伝説の傭兵を使ってる設定。

リーシー:最近CFからテリ○に乗り換えた。

ドクター:これでロドスが壊れることはないだろ(震え越え)

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謎の狼美少女の正体発覚!

今回もリクエストからのお話なのですが、他のリクエストの都合上順番を前後させて頂きました…遅くなっただけではなく、本当にすみません。

そして今回の話の時系列的には、
第2回ヤマトの修羅場対策会議→笑ってはいけないロドス→今回の話

となっているのを頭に置いてくださると、次の話が分かりやすくなると思います。

それでは、どうぞ。


「ねえ、これってお兄ちゃんだよね?」

 

食堂でご飯を食べ終えて、食後のお茶をまったりと飲んでいる時にイカズチがバンッ!と叩きつけるようにテーブルの上に置いた数枚の写真──色んな服を着ているループスの美少女を見て、ヤマトとメランサ、アズリウスは固まり、その様子を大勢のオペレーター達が何事かと見守る中、数秒後先に我に返ったヤマトが声を震わせながらイカズチに質問を投げかけた。

 

「こ、この写真……ど、どこから見つけて……」

 

「知らない人に貰った」

 

なんてことがないようにイカズチが答えた内容に、ヤマトは頭を抱えたくなった。そもそも、知らない人が物を普通に貰ってはいけません、と言いたいところだが、それよりもヤマトはこの話を早急に終わりにしたかった。

 

というのも、殆どの方が気づいているようにイカズチがテーブルに出した写真に写っているループスは、女装したヤマトだからだ。

一応、補足しておくとロドスにおいて女装したヤマト…通称「ヤマトちゃん」は「1日だけしか現れなかった幻のロ美少女ループス」という形で、ロドス七不思議(誰かがテキトーに作った)のうち1つとして勝手に語られており、正体を知る者はいない、とされている。

 

その上、ヤマトにとっては不幸なことに購買部の某K氏の陰謀…という名のお小遣い稼ぎのために、「謎の美少女ループス写真集」という名の隠し撮りの写真集が裏ルートで売られまくったせいで、そのループスを推し始めたり、ガチ恋勢になってしまったオペレーターが出てしまっている。

 

そのため、お昼時で人が集まっている食堂で正体を明かしてしまえば大惨事…具体的に言うと、美少女ループス(男)を推している者たちとバラされたヤマトが精神的な意味で大変なことになるのは誰でもわかる事だ。

 

なお正体を知る者云々に関しては、知っている面々がヤマトに気を使って黙っているだけなのだが。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「そ、その話はまた今度しようか?」

 

「お兄ちゃん……正直に答えて欲しいなぁ……」

 

「分かった!ちゃんと答えるから、アーツを抑えて!」

 

何とか話題を逸らそうとするも、そんなのは許さないと言わんばかりにバチバチと体からスパーク音を鳴らし、そのスパークのせいで髪の毛が逆立ち始め、その上ハイライトが消えた目で迫り来るイカズチの姿を見て、ヤマトは冷や汗をかきながら「答える」と言ってしまった。

 

「本当?それじゃあ早く答えて!」

 

あっという間にアーツを抑え、いつもの様子に戻ったイカズチを見て、ヤマトは彼女が演技をしていたことに気づくも後の祭り。答えると言ってしまった手前、今更なしなんてことも出来ず、かといって場所を移そうとも言い出せず、ヤマトは肩を落として口を開いた。

 

「イカズチの言ってる通り、その写真に写ってるのは俺だよ……」

 

「やっぱり!そうだと思ったんだよ!だって、この写真の困ってる顔の目の感じとかお兄ちゃんに似てるし、この写真は立ってる時の姿勢の重心の位置がお兄ちゃんと一緒だし、あとこの足を組んで座ってる時の写真なんかは、足の組んでる角度とかそういうのがお兄ちゃんと一緒で──」

 

「分かった、分かったからもういいよ」

 

嬉しそうな表情を浮かべながら、暴走し始めたイカズチをヤマトは宥めながら周りの様子を伺う。予想通りというべきか、様子を伺っていた者たちからヤマトへ向けられる視線というのは、疑問的なものもあれば、懐疑的なもの、中には嫌悪感や失望といったような向けられて嬉しくないものが殆どであった……最も、一部は目を輝かせている者もおり、その視線に晒されたヤマトは謎の悪寒を感じ、ブルりと身体を震わせた。

 

そしてそれは一緒にいたアズリウスとメランサ、そしてイカズチにも伝わったようで、特にイカズチは嬉しそうな表情から一変、不機嫌そうな態度になると。

 

「ちょっと、何お兄ちゃんにそんな目……特にエ○同人のモブがヒロインを見つめるみたいな目を向けてんの?あんたら、そこに並びなさい。まとめてビリッと……」

 

「イカズチ、頼むから穏便に事を済ませるってことを覚えて?本当にお願いだから…!あと、その○ロ同人云々に関しては誰に聞いたか教えてね?」

 

「それですわ!」

 

またもやバチバチと音をたてて、周りを威圧し始めたイカズチにヤマトが押さえ込むための説得として、そんなことを発言した時、アズリウスが椅子から立ち上がって食いつき、メランサも何か分かったかのような表情でポンと手を叩いていた。

 

その瞬間、何となく2人が何を思いついたのかヤマトは持ち前の勘の良さで察したものの、自分の予想が外れていることを期待して声を震わせながら2人に聞く。

 

「……何をやろうと?」

 

「それは勿論、ヤマトにまた女装してもらうんだよ」

 

「皆さんが納得してもらえるほどの仕上がりにしますから、安心して下さい」

 

「やっぱり……」

 

女装させられる時点で安心も何もないというのに、メランサとアズリウスは全く気づいていない様子に、ヤマトは天を仰ぐように顔を上げた。だが、補足しておくとこの2人は何の考えもなしにこんなことを言ったわけではなかった。この場であのような発言をすれば、ヤマト自身が望んで女装した訳ではなく、あの二人の手によって女装させられたというふうに周りは思うはず、という考えの元での発言であった。

 

実際、その発言のおかげでヤマトへ向ける視線は段々と同情的な物へと変わっていっており、ヤマトに対するヘイトは幾らか少なくなっていた。

 

「じゃあ、そうと決まったら早速行こう?」

 

「いや、なんでそんな普通に俺を女装させようとしてるの?」

 

「あ、あのさ……ちょっとお願いがあるんだけど…」

 

「イカズチちゃん、どうしたの?」

 

「実は……」

 

いざコーディネート、というタイミングでイカズチが珍しくしおらしい様子でメランサに声をかけ、そしてメランサは彼女のお願いを聞くと、一瞬驚いたような顔を浮かべるが、すぐに優しい表情を浮かべ了承したのだった。

 

 

 

 

*****

 

 

「……?食堂の方が騒がしいな」

 

昼食を摂るにしては少し遅い時間帯で、食堂の近くを歩いていたドーベルマンの耳は、食堂内がシャッター音やら叫び声やらで騒がしくなっているのを捉えた。

 

彼女はこめかみを抑えながら、騒ぎすぎだと注意するために自身のスイッチを切り替えていざ食堂へ行こうとした時、入口付近で左手人差し指だけを立てた状態で左腕を頭上側へ伸ばしうつ伏せに誰かが倒れているのが目に入った。

 

一瞬、ドーベルマンは戸惑うもののすぐに意識を切り替えて倒れている人物へと急いで駆け出し、抱き起こそうとした所でその倒れている人物が龍門近衛局特別督察隊隊長のチェンであることに気がついた。

 

「お、おい!しっかりしろ、一体何があった…!き、気絶してる…?だが…」

 

「( ˘ω˘ )」←幸せそうな顔

 

「な、何故こんなにも幸せそうな顔で鼻から血を出しながら…?」

 

自分が知っている人物であれば、100%しないであろう表情で気絶していることにドーベルマンは戸惑いつつも、未だに騒がしい食堂の方へと目を向ける。十中八九、チェンがこんな状態になっているのは食堂が騒がしいのが関係あるはず。

 

──確かめる必要がある。

 

ドーベルマンは覚悟を決めると、チェンの鼻血を拭き取り彼女を壁に寄りかかるように座らせ、食堂の中へ入っていくとそこには──

 

「次、2人でハートマーク作ってみて!」

 

「分かった、お兄ちゃん早くー!」

 

「はいはい…これでいいかな?」

 

「ああ~いいっすね~」

 

「なあ、信じられるか?あれが男でしかもあのヤマトなんだぜ…?」

 

「印象が違いすぎてギャップ萌え」

 

「可愛いは正義、はっきりわかんだね」

 

「折角だから、俺は兄と妹どっちも推すことにするぜ!」

 

「姉妹丼っていうネタも書ける…!」

 

一言で言えば、ドーベルマンにとってそこは混沌としていた。まず、中央にはメランサが学生時代に着ていた制服を着ているノリノリのイカズチと、それと同じ服を着て諦めたような、悟りを開いているような目をしている女性のループス。その近くにはカメラを片手にポーズの指示をしながらシャッターを切るクロージャ。そしてその周りにはガヤガヤと男女問わず多くのオペレーターが騒いでいた。

 

「こ、これは一体……?」

 

「ドーベルマン教官、あなたも来ていたのか」

 

「ドクターか…」

 

後ろから声をかけられたドーベルマンが振り向くと、そこにはいつ来たのか分からないがドクターが立っており、彼女はドクターが神出鬼没なのはもう当たり前のことなのでスルーしつつ、今の状況の説明を求めた。

 

「ドクター、これは一体?」

 

「あー、簡単に言えばロドス七不思議の1つの、謎の美少女ループスのネタばらしだよ。まあ、言っちゃうとイカズチの隣にいるヤマトなんだけどね」

 

「……ドクター、私の目にはイカズチの隣にいるのは女性のループスが写っているんだが?」

 

「うん、だからヤマトだよ。メランサとアズリウスによってコーディネートされて、女装してるヤマトだよ」

 

ドーベルマンはドクターの答えに言葉を失った。そして、目をゴシゴシと擦ってイカズチの隣にいるループスの女性を見る。確かに、よく見るとヤマトの面影が見えないことはないのだが、正直言われないと分からないレベルだ。

 

だが、ここでもう1つだけドーベルマンの中にある疑問が浮かび上がった。

 

「……なあ、ドクター。何故チェンが食堂の入口でた倒れていたのかわかるか?」

 

「あー…多分、丁度入ってきたタイミングでヤマトとイカズチがあざと可愛いポーズとってたから、それでやられたんだと思う」

 

「そう、なのか…」

 

 

 

****

 

 

 

それから数日後、某K氏の裏ルートで売られた今回のヤマト兄妹の写真集はかなり売られ、彼女の懐はかなり潤い、そして今回の1件でヤマトは女装したらイケる口なのが判明し、一時期女装した彼が18禁展開になる本が一部の者達に売れ渡ったのだった。

 




キャラ崩壊が凄まじい!!

キャラ紹介

ヤマトちゃん:遂にロドス全員にバレた…が、何故かいい感じにまとまってしまった。なお、今回の件でもう女装に関しては何も感じなくなった模様。なのでメランサとアズリウスに声をかけられても、二つ返事で応じる様に…

イカズチ:兄と同じ服装を着れただけでなく、ツーショット写真も貰ったので暫く顔がゆるっゆるだった。

メランサ:ヤマトちゃん専属コーディネーターその1。

アズリウス:ヤマトちゃん専属コーディネーターその2。

チェン:死因、尊死。止まるんじゃねえぞ……(そして今回の話で1番キャラ崩壊が酷かった犠牲者。ファンの方、本当に申し訳ない)

ドーベルマン:新しい世界を知った。

ドクター:まさか自分が全ての発端だなんて言えない…(震え声)

W:へえ、子犬ちゃんったらこういうのもイケるのね…へぇ……

ラップランド:ペアルック羨ましい

リーシー:私じゃなければ即死だった…

知らない人:どこの別世界のドクターなんですかねぇ…(すっとぼけ)そして、勝手に出演させてしまって本当にすみません。

感想や批評などありましたら、遠慮なく!


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女体化すると何故か胸が大きくなる話は多い

前の話が結構間が空いてしまったので、早めの投稿です。

そして今回の話もリクエストなのですが…性転換が含まれているので苦手な方はブラウザバックをお願い致します。



ここまで読んだということは問題ないということですね?それでは本編どうぞ!


早朝、ロドスのオペレーター達は全員訓練室に集まっており、そこにいる者たちは各々の姿を見て驚きの表情を見せている。

 

「あー、テステス。皆、聞こえてるか?」

 

そんな女性の声がマイク越しに訓練室に響きドーベルマンの訓練の賜物なのか、全員が話すのをやめ一斉に黙った。

どこからかそれを見ているのか女性は場が静まってから続きを話した。

 

「まず、こんな朝早くに皆を訓練室に集めてしまったことに関して謝罪する。…が、今の状況を見れば何故朝早く、しかも朝食の前に集めたかは分かると思う。…まず、結論から言うと…子供たちと一部の者を除いて今のロドスは男女逆転しています」

 

その言葉を聞いたオペレーター達の一部は遠い目をしたり、膝から崩れ落ちたり、目を光らせたりと様々な反応であったが共通であったのは全員「やっぱり夢じゃなかったのか」という感想を抱いたことであった。

 

「一応原因は既に判明していて、昨日クロージャとライン生命の方で新しく出来たとある製品が流出してしまったことだ…幸い、効力は1日程しかないらしいから今日だけ頑張って乗りきって欲しい。そして、それに当たって多分トイレとかが大変だと思うから、各自の部屋におまる、あと各オペレーターに携帯非常用トイレの配布、性転換していない者たちによる補佐を──」

 

──結構色々してくれるんだ。

ドクターの説明を聞いたオペレーター達は、アフターケアがしっかりしている事にちょっと驚いたのだった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

「えーと、あんたがラッピーよね」

 

「そうだね」

 

「そんで、あんたがテキサスと」

 

「そうだな」

 

「そんで…えーと、ホシグマさん?」

 

「……ああ、そうだ」

 

「……なんか、違和感ないわね」

 

食堂にて、奇跡的に性転換せずに女性のままであったリーシーは目の前の3人の美男子たちを見てため息を着く。まず、ラップランドは擦れた感じのイケメン、テキサスはクールな正統派イケメン、ホシグマは面倒みの良さそうなイケメンとなっていた。というより、リーシーの周りで性転換した人はもれなく美女かイケメンになっていた。

 

「お兄ちゃん…いや、今はお姉ちゃん?」

 

「……今はエンシアが呼びやすいように呼べ」

 

「それじゃあ、お姉ちゃんで!」

 

(お兄様がお姉様になるとこんな感じになるのですね…)

 

その中でも1番わかりやすいのはカランド3兄妹であろう。あの3兄妹…いや、現在では3姉弟となっているが、クリフハートは活発的なイケメン、プラマニクスは物静かな青年、そしてシルバーアッシュはクールなカッコイイ系の大人の女性、といった具合になっている。そしてそんなシルバーアッシュは一見胸は絶壁のように見えるが、厚着しているせいでそう見えるだけで、実際は本来の性別の時のプラマニクスと同等レベルの大きさだ。なお、これを知ったリーシーは膝から崩れ落ちた。

 

 

閑話休題

 

 

「そういえば、ヤマトは?」

 

「ああ、それなら確かフロストリーフとチェン、メランサ、あとイカズチに着替えの手伝いをしてもらってると聞いたが」

 

「なんだって!?(なんですって!?)」」

 

「黙っておいて正解でしたね」

 

「そうだな」

 

テキサスが言った通り、現在ヤマトはとある事情でフロストリーフ、チェン、メランサ、そして勝手について行ったイカズチの3名の元手を借りながら着替えていた。そしてそれに過剰反応した2人を一瞥しながらホシグマとテキサスは溜息をついた。

 

「お前らここにいたのか」

 

「噂をすればなんとやら…だ…ね……?」

 

「……は?」

 

男性化したフロストリーフと思われる人物の声に反応し、振り返ったラップランドとリーシーは絶句した。先に言っておくと、2人は本来であればヤマトと一緒に来るはずのないWが一緒いることに絶句しているわけではない。2人が絶句してる理由、それは──

 

「ご迷惑をおかけしてすみませんでした……」

 

((く、クラッシャー級だって(ですって)!?))

 

ヤマトの胸であった。隠しもせずバカ正直にいえばでかい。正直、チェン並の大きさだ。因みに今のヤマトの服装は縦セタ+スカートという完全に女性の用の服であり、彼…いや彼女は何回も着せられて慣れたのか、はたまた今は女性だからなのか不明だが、もはやなんの恥じらいもなくそれを着ていた。

 

「結構時間がかかったんだな」

 

「ああ…ヤマトの胸が大きすぎてな……そのせいで下着をつけるのと今の体格に合う服を全員持ってなかったせいでWに助力を求めることになったりとかで予想以上に時間がな」

 

「?」

 

やはりそうか、と全員がヤマトの胸へ視線を向ける。動く度に服越しでも分かるほど揺れる胸は身長と顔とは全く合わないほど大きく、そしてそれは密かに女性陣の心を傷つけていた。

そんな中、リーシーはふらりと立ち上がってヤマトへ近づき。

 

「?リーちゃん?どうした…」

 

──その彼女の様子を不思議そうに見たヤマトの胸を思いっきり揉んだ。

 

「ひゃんっ!?」

 

「は?」

 

「ちょ、あんた何してんの?いや、本当に何してんの!?」

 

「……!」

 

ヤマトの両胸を鷲掴みした。そして、胸を揉まれたヤマトは悲鳴をあげ、フロストリーフら保護者組は目を見開き、Wはキャラが崩壊しているレベルのツッコミを入れる一方、リーシーは胸を揉む手を止めないどころか、その柔らかさを堪能する……いや調べるかのように更に手を動かした。

 

「あっ……んっ……」

 

「ば、バカな……私の数百倍のおっぱい力…!?」

 

デカさ、弾力、柔らかさがいずれも高クオリティに仕上がっているヤマトの胸にリーシーは驚きながらも、更に堪能…いや、正確なおっぱい力調べるために揉む手の動きを激しくし…!

 

「いつまで触ってんだお前は!!」

 

「あべしっ!」

 

「っ!ヤマト、大丈夫か?」

 

「う、うん……その、痛くはなかったし、どちらかと言うとちょっと気持ちよk「それ以上は絶対に言うな!!」わ、分かった」

 

一足先に我に返ったチェンのビンタを食らったリーシーは、ビンタの衝撃でヤマトの胸から手を離した。

そしてその隙にハッとしたフロストリーフがヤマトを保護し、彼が口を滑らせる前に何とか阻止していた。

 

「ひどい!ヤマトにも(訓練以外では)ぶたれたことないのに!!」

 

「ヤマトが無抵抗なのをいい事に胸をも、揉みしだいておいて何を言う!」

 

「なんでチェンお姉ちゃん、あんなに顔真っ赤にしてるんだろう」

 

「それはね、あの隊長さんがムッツリだからよ」

 

「おい、貴様はイカズチに変なことを教え込むな」

 

「フフっ、怖い怖い」

 

某機動戦士のパイロットが言ったようなセリフを言うリーシーをゴミを見るかのような目を向けながらも、顔を真っ赤にして叱るチェンを見て、イカズチが不思議そうに首を傾げる。そしてそれを見たWはニヤリと笑い、イカズチの疑問に答えるもすぐに向けられた殺気を受けて、やれやれと首を振った。

 

「ん……」

 

「ヤマト、どうかしたのか?」

 

「いや……その、なんか重いなって……」

 

「「「……」」」

 

ヤマトが放った言葉に、本来の性別が女性で胸が慎ましい2名と絶壁な1名が自分の胸に反射的に視線を落とした。そこにあるのは、女性であった時より少しだけ凹んでいる胸、あるいは膨らみがほとんどない胸。

 

(((一体何が足りないんだ(ろう)?)))

 

「んっ…よっこいしょっ」

 

そんな自分へ疑問を抱いている3人に追い打ちをかけるかのように、ヤマトは自身の胸をテーブルの上に乗るように乗っけた。そしてテーブルの上に乗った瞬間、まあまあ衝撃があったのか、テーブルの上にあった空の紙コップが軽く振動した。

 

「ふー…こうすると結構楽だね~」

 

「ヤマト、それは行為としてはちょっとはしたないし、リーシーたちが死んだ魚のよう目をしてるからやめとけ」

 

「?分かった」

 

(これが狙ってやった訳ではなく、素でやってるから恐ろしいところだ…)

 

(………戦闘の時に邪魔になるからな、別に大きくなくても問題はない)

 

じっと魚が死んだような目でテーブルの上に乗っけられたヤマトのメロンを見ている3人に、ある恐怖を感じたチェンがヤマトにテーブルからそのブツを下ろすようにいい、ホシグマは天然で心を抉りにかかるヤマトを末恐ろしいものをみるかのような目で見て、テキサスは誰かに言うつもりはないものの、内心で自分を納得させていた。因みにWとラップランドは心の余裕があるためか、そのやり取りを見て爆笑していた。

 

「あ、皆さんここにいたんですね」

 

「アンセルくん!……あれ?」

 

そんな混沌とした状況下の中で、アンセルの声が聞こえ振り向くと、そこには普段と変わらない様子のアンセルがそこにあった。この時、その場にいた全員は彼もリーシーみたいに性転換を免れた数少ない人物だと思い、そしてヤマトも同様にそう考え思わず心の声が漏れ出てしまった。

 

「よかった、アンセルくんは性転換しなかったんだね…」

 

「えーと、あなたはヤマトですよね?……一応言っておきますけど、私も性転換してますが」

 

「え?」(全員)

 

「……やっぱり、皆さん勘違いしてましたか」

 

ヤマトの心の声にアンセルに答えた内容に全員が驚いた。それもそうだろう、今のアンセルは服装と見た目はおろか、声も性転換前…つまり男の時とあまり大差はないのだ。正直、これで性転換してると思う方が難しい話だ。

 

そんな中、リーシーはどこか縋るような目をしながら椅子から立ち上がると、立ったままのアンセルに近づき、彼(今は彼女)の胸にそっと手を置いた。

 

「……?急に人の胸に手を置いてどうかしましたか?」

 

「……アンセル、ようこそ私たちの世界へ」

 

「いや、本当にどうしたんですか」

 

自分と同じレベルの絶壁ぶりを確認したリーシーは、穏やかな表情で歓迎するかのような目でアンセルを見つめ、そしてそんな目を向けられたアンセルは訳が分からないといった様子で返したのだった。

 

 

そしてこの性転換騒動は次の日には既に収まったのだが、パイソンが悟りを開いたような顔で女性物の服を着て部屋から出たのを目撃したヤマトは、静かに手を合わせて合掌したのだった。




これ、性転換タグつけた方がいいんですかね?

おまけ(やりたかった流れ)

「私より…大きい……なんて…!」バタッ

「リーシー(の女性としてのプライド)が死んだ!」(ラップランド)

「この人でなし♪」(W)

「ええっ!?」(ヤマト)

余談ですが、WのS2が危機契約のリベンジャーくん達に結構刺さりますね…そのせいでS3より先に特化3にしてしまいました()ナノフレが足りない()

キャラ紹介

ヤマトちゃん(ガチ):性転換するとパーフェクトな胸を装備するやべーやつ。なお、縦セタ+スカートはWの物を借りた模様。そして男性に戻ってからも、インスピレーションを得たメランサ達によって女装のコーディネートをさせられた。

リーシー:性転換は免れたものの、代わりに想い人から精神的な大ダメージを負わされた。揉んだ感想は「いつまでも触れる」とのこと。

保護者チーム(チェン含む):とりあえずラップランド達が暴走しなくて一安心。なお、チェンは鼻から尊みが出かけたが気合いで抑えてた。

ラッピー:正直、自分も触りたかった。

W:今回の1件で、ヤマトちゃん専属コーディネーター仲間入りが秒読みになった。やったねヤマト!際どい服を着る機会が増えるよ!()

イカズチ:わ、私は将来的にはボンッキュッボンなナイスボディになる予定だから…お、お兄ちゃんがなれたから、私もなれるよね?(震え声)

アンセル:女体化してもあんまり変わらないことが判明。本人としてはちょっと複雑な気分。

パイソン:ペンギン急便の皆様に無事おもちゃにされた。

感想や批評ありましたら遠慮なくどうぞ!というより、感想下さいお願いします(土下座)

あと、リクエストはこちらの方とR18版どちらも募集中なのでこちらも遠慮なく!


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かつての思い出

お待たせしました、今回もリクエストの話です。

……なんですが、リクエスト主さんの想像通りの内容になっているかちょっと微妙な感じとなってしまいました。本当にすみません。

それとまたアンケートを取っておりますので、宜しければご協力の方をお願いします!


 

ヤマトにとって焚き火というのは野宿する際には必ずするべきものであり、同時に傭兵時代から必須のサバイバルスキルの一つでもあった。

ロドスに来てからも、ヤマトは実践こそはしていないものの、時折やり方の確認や必要な道具類の点検を欠かしたことはない。

しかし、人間というのはどんなに知識などを詰め込んだり、道具の点検などをしていたとしても実際にやらなければ、コツなどを忘れてしまう。

しかし、実践しようにもロドスではそんな機会は全くと言っていいほどなく、やるとしたら休暇を取らなければならない。だが、そこまでやる価値があるかと言われると、その休暇でラップランド達と過ごす時間を無くしてまでやる価値は無いに等しい。なら、ラップランド達を誘って一緒にやるというのも、ヤマト的には自分の勝手な都合に付き合わせることになってしまうため、最初から入っていなかった。

そのため、ヤマトは焚き火の実践というのを殆ど諦めていたのだが。

 

「ヤマト兄ちゃーん、これどう使うのー?」

 

「えっと、それはね──」

 

まさか、子供たちに、近くには川や森があったりする所でキャンプの仕方を教えることになるとは、いくらヤマトでも予想できないことであった。

 

キャンプの仕方を子供たちに教えることになったきっかけはドクターのある提案であった。その提案というのは、「子供達を外で遊ばせてあげたい」というものであり、彼がその提案を出した理由も「たまにはロドスの外の空気を吸うべきだろう」と、理性がなくなったんじゃないかと心配になったケルシー達が案外まともだと思ったものであった。

 

しかし、ここで問題になってくるのはロドスにいる子供たちの多くが感染者であることであった。つい忘れがちになってしまうが、このテラにおいて鉱石病にかかった感染者は排斥される存在であり、その感染者がゾロゾロと外で何かしているのを目撃されたらあらぬ疑いをかけられる可能性が高い。そのため、この提案は無くなる……はずだった。

 

ここからは一部の幹部しか知りえない話なため、ヤマトは詳しくは聞かされていないが、簡潔に言ってしまうと、とある企業がレジャーが楽しめる私有地を貸してくれるとの事で、今回のキャンプが決まったとの事だ。

 

そしてキャンプをするにあたって、流石に一度にロドスの全ての子供を出す訳には行かないので、3分の1に分けて日にちもそれぞれ別にして結構することになったのだが、ここでとある問題が発生した。

キャンプに関して詳しくて尚且つ、子供たちと交流があって好かれている人物が予想以上に少なかったことだ。最も、これに関しては子供たちに「キャンプするなら誰と行きたい?(大人の中で)」といったアンケートを取ったせいで、普段から子供たちの相手をしている人物のみ選ばれたというのが原因なのだが。

 

閑話休題

 

そのため、急遽ロドスの幹部で話し合いをしてメンバーを決めることになり結果として引率兼指導役として任命されたメンバーは、メテオ、ブレイズ、ヘラグ、プロヴァンス、メテオリーテ、ヤマトと子供たちの相手をしている女性オペレーターの計7名であり、この7名は当初こそ自分が選ばれるとは思ってなかったようで驚いていたが快諾、そして時は流れて現在の状況へとなる。……因みに、ラップランドとWは子供たちにとっては色んな意味で刺激的、イカズチとリーシーは野営をした事がないため除外されていた。

 

「ヘラグお爺ちゃーん!魚釣れたよー!」

 

「…これはなかなか大きい。よく釣れたな、偉いぞ」

 

「むー!俺だってー!」

 

「お姉ちゃぁぁん、餌付けられないよ…」

 

「はいはい、やってあげるからそんな声出さないの」

 

川の方ではヘラグと子供たちの世話をしている女性オペレーターの計2人が、子供たちと魚釣りをしており、ヘラグは穏やかな顔で子供たちを見守りながら自身も釣りを楽しみ、女性の方は餌を付けられずべそをかき始めた子を慰めながら餌をつけている。

 

「それで、ティピ型ってのはこうやって、こう組み立てるの!」

 

「???」

 

「いや、ブレイズさん。もっと分かりやすく説明しましょう?全員わかってませんよ?」

 

「あ、あれ?」

 

「仕方ない……いい、ティピ型っていうのは地面に小枝とか杉の枯葉を置いてから──」

 

「猫のお姉ちゃん…」

 

「子供から哀れみの目を向けられる私って……」

 

一方で、ご飯を作るための焚き火を焚くグループの指導をしているブレイズとメテオリーテは、焚き火の型やそのやり方を教える……ことになっていたのだがブレイズの説明は実際にやりながらの説明で、言葉の説明がないため「?」を浮かべて固まる子供が続出。それを見たメテオリーテが呆れつつも、ブレイズの担当分の子供たちも集めて焚き火のやり方をゆっくり実践しながら説明し始め、それを見た子供から可哀想なものを見る目で見られたブレイズは軽く凹んでいた。

 

そして我らがヤマトを含むメテオとプロヴァンスの3人はと言うと。

 

「──こうやってテントは建てるんだよ!それじゃ、やってみようか?」

 

「はーい!」

 

特に問題なくコトが進んでいた。それもそうだろう、メテオは落ち着いた大人のお姉さんという雰囲気があるため怖がったりだとかそういうのはなく、プロヴァンスに関しては持ち前の明るい性格のおかげですぐに子供たちと打ち解けたため、こちらも全く問題がない。そしてヤマトに至っては元々子供たちとは面識があり打ち解けていたのと、教え方が丁寧でわかりやすいというのもあって問題なくスムーズにテントの設営は進んでいったのだった。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

「それじゃあ、ヤマトとメテオさん。何かあったらすぐに起こして下さい」

 

「分かりました、お休みなさいメテオリーテさん」

 

「お休みなさい」

 

「はい、お休みなさい」

 

時刻は飛んで夜中、設営したテントの近くにある焚き火の傍でヤマトとメテオは火の番と見張りをしていた。子供たちは既にテントの中で寝ており、ヘラグ達も睡眠をとっている。

今回のキャンプは、距離があるのもあって現地で1泊してから帰還という日程になっており、そのためテントの設営をする必要があったため、このような形になったのだった。

そして、引率役の殆どが戦闘を経験しているオペレーターなのも、万が一現地で野生動物や賊などに襲われた時、すぐに対応出来るようにという理由からであり、先程のメテオリーテの発言はその万が一が起こった時のことを指してのことだ。

最も、引率役に来てるメンバーがメンバーなので、襲ったら襲ったで襲った側がとんでもない目に遭う上に、その危険性も私有地というのもあってほぼ無いのだが。

 

「……ヤマトくんさ、結構手馴れてたけど誰から教わったの?」

 

パチパチと焚き火の音だけが鳴る中、メテオが昼間から思っていたことをヤマトに聞いた。

 

「……そうです。けど、知識の方を教えてくれたのは別の人でした」

 

「そう…」

 

ヤマトは一瞬だけ懐かしむような表情を浮かべて返事をし、燃える焚き火に視線を向けて静かに見始め、メテオも変に踏み込まないためにも黙り同じように焚き火に目を向け、2人の間から会話は無くなった。

しかし、この沈黙から気まずさというのはなく、むしろ穏やかでありメテオにとってはかなり良かった。

 

「……初めて焚き火を焚こうとした時、なかなか出来なかったんです」

 

「え?」

 

「知識としてはどうやってやればいいかは知ってました。だから、やってみようとしたんですけど、組み立てるのは上手くいかないわ、組み立てられても中々火がつかないわで全然ダメだったんですよね」

 

突然、話し出したヤマトに思わず目線を向けたメテオは、彼が懐かしそうに穏やかな顔をしていたのを見て、少しだけ驚いたが話をしっかり聞くため黙って耳を傾ける。

 

「そしたら、ムサシ……あ、傭兵だった頃の相棒で俺にとっては恩人なんですけど、中々上手くできない俺のために教えながら一緒にやってくれたんですよね……説明は擬音とか手振りばっかで分かりにくかったですけど」

 

「あら……」

 

「それでも、あの時、俺は凄い嬉しかったんだと思います。誰かと一緒に何かを騒ぎながらやるっていうのは初めてでしたから。だからなんですかね、今日子供たちに教えながら皆と騒いでたらムサシと過ごしたこと思い出しちゃって……あ、すみません。急にこんな話をしちゃって……」

 

そこまで言い終えると自分だけ話してしまったことに負い目を感じたのか、申し訳なさそうにするヤマトは、メテオからすると彼がまだ話し足りないように見えた。それに、メテオとしてはたまにしか話せないヤマトともう少しコミュケーションを取りたいのもあり。

 

「私は気にしてないわ。それより、君の話をもっと聞いてもいいかしら?」

 

「え、でも…」

 

「私が純粋に気になって聞いてるんだから、変に気負わないで。いい?」

 

「……分かりました。それじゃ、オリジムシを食べる羽目になった話を──」

 

「ごめんなさい、話しを振っておいて失礼なんだけど、その話はやめてもらえる?」

 

危うくオリジムシ食事会の話を聞かされそうになったものの、無事回避できたメテオはヤマトの昔話に耳を傾けたのだった。

 

「──それで、何故かそれ以来俺がいつもご飯を作ることになって、今思えば俺が料理をするようになったのは、誰かと話せるきっかけを作りたいというのもありましたけど、本当のきっかけはムサシの代わりにするようになったからだったんだと思います。あ、勿論ムサシの料理も美味しかったんですよ?でもその味付けが結構大雑把で、「飯は感覚よ!」って感じで……けど俺はそれでも凄い好きで──」

 

(……まさか、ヤマト君って結構ムサシさんのこと好きだったのかしら?)

 

なお、その話の殆どはムサシに関する内容で要約すると「ムサシ大好き」の一言に収まる内容であった。

 

 

後日、この一件でメテオは何故かヤマトに懐かれ始め、互いに暇な時は2人でキャンプをする仲になったとかならなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 

「…はい、はい。それではその日程で。はい、分かりました、失礼します……ふぅ、疲れたぁ…」

 

「お疲れ様です、社長の好きなホットチョコレートをお持ちしました」

 

「ああ、ありが──あっつう!」

 

「…ふっ」

 

「……わざと、熱々で持ってきたね?僕が猫舌なのを知った上で!あー、舌がヒリヒリする……」

 

(ループスのくせに何言ってんだこいつ……ああ、けどもっと虐めてみたい)

 

「……なんか悪寒を感じるんだけど」

 

「んんっ!…それで、ロドスとは?」

 

「ああ、とりあえず何とか直接面談までは持っていけたよ……まあ、いくら貸しをこっちが向こうに作ったとは言え、よくこんな胡散臭い条件で話を聞こうと思ったよね……」

 

「……それを見越して私有地を貸したのでしょう?」

 

「まあ、そうだけどさ」

 

「……結局、彼がそうなんですか?」

 

「……いや、正直な話直接会ってみないと分からない。写真だけじゃ他人の空似ってやつの可能性もあるわけだし…まあ、それなしでもロドスとはウチの会社で感染者になってしまった従業員達の治療をお願いしたかったから、協力体制をしきたかったんだけどね」

 

「……本人だといいですね」

 

「うん……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が先代の忘れ形見であることを僕は只管祈るよ」

 






今だから言えますけど、当初はヤマトくんにはG○バスターソードⅢか○NソードⅡ(ソードとビームサーベル機能のみ)を使わしてみようと思ってました(カミングアウト)



キャラ紹介

ヤマト:実はムサシ大好きオオカミ。もっともその好きは家族的なもので、尚且つ本人もちゃんと吹っ切れているので大丈夫。今でもムサシが買ってくれたサバイバル道具を愛用してる。

メテオ:星四狙撃の優しいお姉さん。こういう、ラナさんとは違った穏やかなお姉さんは個人的に結構好きです。ただ、今回の話でそのメテオさんらしさが出たかと言われると……はい、(出て)ないです。

引率役の皆さん:それぞれ、戦闘能力と子供たちと上手くやれるかを念頭に選抜。なお、名無しのオペレーターさんは戦闘能力は皆無なものの、子供たちからの人気が1番あったため選ばれた。皆様のご要望があれば、オリキャラ化の可能性が…?

イカズチ:血涙を流す勢いで一緒に行けないことを悔しがってた。

フロストリーフ:保護者陣営が1人増えそうなので少し嬉しい。

最後の2人:あからさまな伏線。

元相棒M(霊):お前……私の必死の説明をそんな風に思ってたんだな……あと、味付け大雑把で悪かったな!どうせ女子力ねえーよバーカ!(泣)

感想や批評などお待ちしております!というより下さいお願いします(土下座)
また、R18の方も含めリクエストは募集しているので活動報告の方からリクエストの方をお願いします!


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外伝~「お前もジャングルに行くんだよ!」「ええ…(困惑)」(辺境の守護者√)~ 前編

えー、今回のイベントやってたら思いついたネタです。本編ルートだとごちゃごちゃになっちゃう為、別のルートがいいかなーと思って考えた結果、辺境の守護者‪√‬が一番適任かなと思いこのルートになりました。「あっちの‪√‬が読みたかったんじゃ、このアホ!チンパンジー!」と思った方もいると思いますが……そこは各自脳内補完でお願いします(震え声)




 

──サルゴン。

砂海とオアシスの境目に国土が広がっているいて、サルゴン人の多くは荒野と密林の中に暮らしているとされている場所であり、一言で言ってしまえば、自然豊かなところ、というのがヤマトの感想である。

そしてヤマトはそのサルゴンの熱帯雨林の中で──

 

「皆、どこに……?」

 

絶賛彷徨っていた。

 

 

 

 

*****

 

 

 

「サルゴンに行く?」

 

「そう、ガヴィルがちょっと用事があるらしくて帰るらしいんだけど、ついでにドクター含む私達も着いていくことになったの!」

 

「えっ、よくケルシー先生が許してくれたな…あ、はいココア」

 

「ありがとう!んー、美味い!」

 

自分に宛てがわれている部屋に普通に入ってきた挙句、お茶を強請ってきたブレイズの話を聞いたヤマトはアイスココアを差し出して意外そうな顔をする。それは、エリートオペレーターとドクターというロドスの重要な位置にいる人物2人にお暇をあげるとは、ヤマトとしてはあのケルシーが許すとは到底思えない故の反応であったが、ブレイズに絡まれない日が数日出来たことに同時に気が付いた。

 

「けどそっか。ちょっと寂しいけど、ブレイズとは暫く顔を合わせられないのか…」

 

色んな意味で喧しいものの、気のおける友人と会えなくなるのが寂しく感じたヤマトは、少しだけ気落ちしたような声を出しながら自分の分のアイスココアを飲み──

 

「え?君も行くんだよ、何言ってんの?」

 

「ぶフォッ!?」

 

「あ、ちょっ、大丈夫?」

 

盛大に吹き出した。ブレイズが慌ててティッシュ箱を持ってきて、吹き出されたココアを吹いていくが、ヤマトはそれどころではなかった。それもそうだろう、話の展開からしてヤマトはてっきりブレイズ達がガヴィルの故郷に行く、と思っておりまさかそこに自分も含まれているとは思ってなかったからだ。

 

(いや、あれだ、多分聞き間違いか幻聴なんだろうな……後で仮眠を取ろう……)

 

「言っとくけど、聞き間違いとか幻聴じゃないからね?」

 

(なんで考えてる事が…!?)

 

(って思ってるんだろうけど、正直プライベートの時のヤマトって顔に出るから分かりやすいんだよねー)

 

自身の考えてることを当てられたことにヤマトが驚いている中、ブレイズはコロコロ表情が変わる彼を微笑ましい目で見て、それから事情を説明し始める。

 

「ケルシー先生から働きすぎなキミも連れていくように言われてね。あと、お義父さんとお義母さん、ガーディアンのマサムネさんとカシマさんからも同じような言伝を貰ってるし、キミの仕事も小隊の子が肩代わりしてくれる手筈にもなってるから、実質強制だよ!」

 

「お、おうそうなの……って、ちょっと待って。お義父さんお義母さんの言い方おかしくなかった?」

 

「そうだぞ、ゴリラ猫。何勝手にヤマトのご両親をお義父さんお義母さん呼ばわりしてるんだ」

 

「え?そんなの私とヤマトがそういう関係に……」

 

「よし分かった。まずは表出ろ」

 

いきなり部屋に入ってきたフロストリーフとブレイズが殴り合いに発展しかけたり、それを止めるためにヤマトが鳩尾にいいのを食らったり(事故)、フロストリーフも行くことになったり、プロヴァンスとラップランドそしてイカズチが血涙を流す勢いでブレイズとフロストリーフを睨んだり、と色々あったが、結局ヤマトは荷物とともに飛行装置の中へぶち込まれ、サルゴンへと向かったのだった。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

それから、ヤマト達が乗っていた飛行装置は何者かの攻撃によって落とされてしまい、ヤマトは反射的にフロストリーフを抱えて一緒に外へ飛び出した…までは良かったが、その最中でフロストリーフとハグれてしまい、現在はこうしてジャングルの中を歩きながら今回飛行装置に乗っていたメンバーを探しているのだが。

 

「……だめだ、どこにいるか全然分からない」

 

周りは高い木や蔦、図鑑で見た事があるような無いような植物だらけでロドスのオペレーターどころか、現地に住む人にすら会えない始末。

一応、集落や村を見つけられないかと木を登って高所から探してみたものの、全く見えず結局足で探すことになっている。

 

「それにしても、ユイお姉ちゃん本当にこうなることを見越してサバイバルキットとバックパックを持たせてくれたのかな……?」

 

ふとヤマトは出発前に渡されたサバイバルキットや多めの水と食料が入ったバックパックを渡した、自分の小隊のメンバーであるユイの一言を思い出した。あの時、ユイは「墜落するかもしれないからこれ持ってって」と一言だけ告げ、「墜落させねーよ!」と言うパイロットのディランを無視してさっさと帰ってしまったが、こうなることを予見していたとすれば、流石ガルーダ小隊のブレインだ、とヤマトは1人見習うところがまた更に増えたなと頷いていた。

 

……なお、真相はユイが最近やった某バイオなシリーズのゲームではどの作品でも大抵の飛行装置が墜落していたため、ついネタ半分で渡したというものだが……世の中には知らない方がいいこともあり、後にユイは純情な眼差しで「凄い!」と褒め倒してくるヤマトから、この真相を必死に隠す羽目になる。

 

閑話休題

 

 

「でも、2日歩いても誰とも会えないどころか現地の人の村とかに辿り着けないのはマズイな……せめて何処かで水を補給しないと…」

 

ユイが渡していた水と食料は3日分と多めだったが、2日間歩いて川や食べられそうな植物などを見つけられてないのが現状。食料は念の為初日から少なめに食べていたので、あともう2日はもつと見ていい。だが水に関しては、熱帯雨林の気候のせいで汗を沢山かいてしまうため節約するわけにもいかなかったため、明日にはもう無くなるというのが今の状態。そのため、川か村を見つけて物資を補充するというのが今のヤマトの行動の方針となっている。

 

「……本当に誰とも会わないなんて。ブレイズやフーちゃん、ドクター達は大丈夫なのかな……っ!」

 

ブレイズ達は無事なのか、はたまた誰かと一緒に行動しているのか。彼女達の心配をしながら歩いている中、何かが近づいてくる気配を感じたヤマトは、背中の機械仕掛けの剣の柄を握り何時でも斬りかかれる体制を取りながら、その何かが出てくるのを待つ。そして現れたのは──

 

「………」

 

「……女の子?」

 

リーベリの小柄の女の子であり、手にはボクシングで使うグローブを持っていた。最初こそ、予想していなかった人が現れたことで呆けていたヤマトだったが、すぐに気を取り直すとこの地に来て初めて会った人というのもあって、剣の柄から手を離してから話しかけた。

 

「すまない、君はここに住む人かな?俺は訳あって別の国から来たんだけど、出来たら君が住んでいる所に連れて行って欲しいんだけど……」

 

『誰だお前は?』

 

「え?あれ?初めて聞く言語…?」

 

『何を言ってるんだ?』

 

「あー、どうしよう……」

 

(それよりも……こいつ、出来るな)

 

ヤマトはここで言語の壁という問題が発生したことで、額に手を当て真剣に悩み始めた一方で、リーベリの少女は目の前でウンウン唸っているループスの青年がかなりの強者であることを読み取っていた。すると段々少女の中に闘ってみたい欲が出始める。

 

(……まあ、ちょっとした肩慣らしとしてやるのはありだな)

 

「えーと、本当にどうし……っ!?」

 

未だにどうしようかと頭を抱えこみ始めたヤマトは、自分に振るわれた拳にギリギリで気が付きをそれを後ろにバックステップをしたことで躱し、距離を取る。ヤマトは自分に拳を振ってきたリーベリの少女に目を向けると、そこにはグローブをつけファイティングポーズをとる彼女の姿があった。しかし、彼女からは敵意や殺気のようなものは発せられたおらず、同時にラップランドやエンカクと同じように感じる闘志から、ヤマトは何となくどういうことかを察し、そしてそういうのに慣れている彼はため息を吐いて同じく拳を構える。

 

「何で俺はこんなに戦闘狂とかに好かれるんだろうなぁ……」

 

『やる気になったか?まあ、いい。いくぞ!』

 

「少しは痛いかもしれないけど、我慢してね!」

 

ヤマトは拳を握りこんでこちらに向かってくる少女を真っ直ぐ見すえて迎え撃った。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「いやー、それにしても合流出来て良かったよ」

 

「そうだね、ブレイズとフロストリーフの2人と合流出来て良かった」

 

熱帯雨林を歩いてる中、大声を出しながら自分たちを探しているブレイズとその隣でうるさそうな表情をしているフロストリーフと合流したドクター一行。彼らは現在、先程の2人を交えてトミミとの集合場所である大滝へと向かっていた。

 

「そういえば、フロストリーフはんも水着持ってきてたんやっけ?」

 

「……まあ、一応な」

 

「それって、もしかしなくてもヤマトたいちょーに見せるようでしょ?うーん、恋する乙女って感じ~」

 

「そんな訳ないだろう。普通に何となくで選んだものだ」

 

嘘である。フロストリーフは態々ヤマトの好みを事細かに調査し、そして自分なりに分析し、配色も自分に合うものを選ぶだけではなく、ヤマトは程よい大きさで綺麗な形を好む傾向があるのを知ってからは、そういうマッサージやトレーニングをして程よい大きさまで何とか上げるという徹底ぶり。この通りガチでヤマトを落としに来ているが、それが知られるのが何となく恥ずかしいため、彼女はそっぽを向いて誤魔化しにかかった。

しかし、ウタゲとクロワッサンにはそんなことお見通しであり、ニヤニヤしていたが変にからかうと斧が飛んでくるorあとから知ったヤマトによる「マサムネ式トレーニング~死んだ方がマシレベル〜」を強制的に受けさせられる可能性があるため、ニヨニヨしてフロストリーフを見るだけに留め、今度はブレイズへと矛先を変える。

 

「ふ~ん、まあそういうことにしておいてあげるよ」

 

「そうなると、ブレイズはんもあんまり考えてないん?」

 

「私?私は勘で選んでる感じかなー」

 

半分嘘である。確かにブレイズはフロストリーフ並の調査などはしていない。だが、ある程度ヤマトの好みを考えてそこからあとは自分の女の勘が命ずるものを選ぶ、と言った感じである。なお、彼女はヤマトの好みを知ってからはどこがとは言わないが、垂れないように必死こいてマッサージやトレーニングをしている。

そして、これまた半分嘘だと見抜いたウタゲとクロワッサンがそこを着いて彼女をオモチャにして遊ぼうとした時、近くからガサガサと物音が聞こえた。

 

「皆、一応警戒態勢を……」

 

「ん?もしかしてその声はドクター?」

 

「お?この声って「ヤマト!」あ、フロストリーフ!」

 

「ちょっと!?あーもう、ドクター私も先行するから!」

 

「恋する乙女って凄いんやな~」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ、俺らも行くよ」

 

「私も同感だな、ほらさっさと行くぞ」

 

ドクターが念の為陣形を整えようと指示を出したところで、それに反応した声から、物音を立てた正体がヤマトということが分かったフロストリーフはすぐに駆け出し、それを見たブレイズも一緒に突撃。その一連の行動を見たクロワッサンがそんな感想を漏らしている中、珍しくドクターが呆れながら言ったことにガヴィルも同調し、ヤマトの声がした方向へ行くと。

 

「ヤマト、正直に答えてくれ。お前は小さい女が好みなのか?そうなのか?その枠は私じゃだめなのか?」

 

「いや、何言ってんの?もしかして暑くて頭がおかしく…?」

 

「いや、それはこっちのセリフだよ。なんで…なんで…

 

 

 

 

見ず知らずの女の子をお姫様抱っこしてるの!?」

 

 

そこには気絶している見知らぬ女の子をお姫様抱っこをしているヤマトに詰め寄るフロストリーフとブレイズの姿。正直、この時点で色々ツッコミどころ満載な上、絵面としてはなかなか面白いのだがドクターは少し考えて。

 

「取り敢えず、ヤマトが女児誘拐しロリコンってことをケルシーに報告すればいいかな?」

 

「変な言いがかりはやめて!?」

 

「くっ…!ヤマトの好みを修正しないと私の勝ち目が…!」

 

「ブレイズ?それいつもの悪ノリだよね?本当にそんなこと思ってないよね!?」

 

「お前、クマールまで手を出すとはな……まあ、悪いやつじゃねえしなんやかんやお前と相性いいと思うぜ?」

 

「ガヴィルさんも頼むから俺の話を聞いて!?」

 

悪ノリするドクターとガヴィル、腹を抱えて大笑いしてるウタゲにクロワッサン、目がマジになってるブレイズ、そして「これは押せばいけるのでは…?」と呟くフロストリーフというカオスな状況。ヤマトは無責任にも、早くロドスに帰りたくなったが、サルゴン旅行はまだ終わらない。

彼のバカンスはこれからだ!

 

 

 

~[完]~

 

 

「あ、何か打ち切り漫画みたいな終わり方してるけど、もう1話あるからな?」




今回は外伝というのもあって地の文も少しはっちゃけてみました。因みにフリントは(ヒロインにはなら)ないです。

キャラ解説

ヤマト:辺境の守護者√のヤマト。基本的に1番しっかりしてる(当社比較)がやはり素でとんでもないことをする。今回のお姫様抱っこ事件は、単純に背中に剣やらバックパックやらを背負ってるせいでおんぶ出来ないから、というもの。因みにフリント(クマール)とその部下は纏めてぶちのめした。因みにこの√のヤマトもバスターウル○とパワーゲイ○ーをとある死んだほうがマシだと思えるトレーニングの果てに、習得してます。

フロストリーフ:辺境の守護者√のヒロインの1人。多分、この√の中では1番まとも。なおヤマトの好みの情報源はヤマトの部屋を掃除した際に見つけてしまった聖本と、現ガルーダ小隊のサンクタの男性。

ブレイズ:辺境の守護者√のヒロインの1人。この√の中では3番目にヤマトとの付き合いが長く、コンビネーションも息がすごい合う。ヤマトを良い意味でも悪い意味でも振り回すが、振り回される本人はそんなに悪い気はしてないらしい。因みに腕相撲などの力勝負はヤマトより強い。

ガヴィル:今回のイベントの主人公。彼女の水着姿を見て驚いた方も多いのでは?なお、作者は雰囲気が変わりすぎて「???」状態に。いや、本当に変わりすぎ。

ドクター:体が丈夫になったらしい。

フリント(クマール):星5前衛でボクシングを幼い頃からやっていたとのこと。こっちの小説では、ゲームとは違いブレイズではなくヤマトに勝負をふっかける。でも、総合戦闘力はブレイズより上なヤマトには勝てるはずもなく……。

ウタゲ&クロワッサン:人をからかう時は息ぴったし(当小説設定)。それにしても、キョウイ的な格差でs(ここから先は血がこびりついて読めない)



感想お待ちしておりますので、是非遠慮なくお書きくださいお願いします(土下座)
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外伝~「お前もジャングルに行くんだよ!」「ええ…(困惑)」(辺境の守護者√)~ 後編

という訳で、遅くなりましたが後編です。

今回はいつもよりちょっと長めですが、それでもいいという方は続きの方をどうぞ!


 

~前回のあらすじ~

 

つい先程、女の子をお姫様抱っこして現れたヤマト容疑者をYESロリータ!Noタッチ!を破った罪で現行犯逮捕しました。

 

「めちゃくちゃ間違ってるし、あらすじが雑すぎる!」

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「へー…こんなに大きい滝があるなんてね」

 

「俺もここまで凄いとは思わなかったな…」

 

「だろ?」

 

ロリコン疑惑というあらぬ冤罪をかけられたヤマトだったが、必死の弁明とフリントからの証言で何とか自身の潔白を証明することに成功。その後、ドクターからの説明でトトミとの集合場所である大滝へと移動し、その壮大な光景にヤマトは珍しく感動していた。

 

「いやー、水着が無駄にならなくてよかったー!」

 

「ま、まあそうだな(本当に無駄にならなくてよかった…!)」

 

(……なんで、サイズがピッタリ?)

 

水着に着替えたウタゲとフロストリーフは、水着が無駄にならなかったことに安堵し、ヤマトはバックパックに入っていた水着のサイズがピッタリなことに少し疑問を抱いていた。因みにフロストリーフの水着は赤色のホルダーネックタイプのビキニで、彼女の努力の成果もあって予想以上の色気を出していた。

 

「?ヤマト、なんでパーカーを…」

 

「フロストリーフ。その水着結構似合ってるんだけど、あんまり人前では見せないように、いいね?」

 

「そ、そうか……ならお前の前の時だけ着るとしよう……(あ、ヤマトの匂いがする)」

 

そしてそれを見て、純粋に似合っていると同時にある危機感を抱いたヤマトは来ていたパーカーをフロストリーフ着せた。フロストリーフは最初こそ、ヤマトの行動に疑問を抱いたものの、彼の言葉とパーカーの匂いで特に言及することなく納得していた。

 

因みにヤマトの抱いた危機感というのは、フロストリーフの余りの可愛さと色気に誘われて変態紳士共が寄ってくる可能性があるというもの。正直、この場に男はヤマトとドクターしかいないので、過保護だと言われても仕方ないのだがヤマトにとってフロストリーフはまだ子供。しかも、彼女を最初に見つけて拾ってその後一緒に過ごしたのもあって、このような行動を取ってしまうのは仕方の無いことなのだろう……

フロストリーフもそんな過保護なことに少し鬱陶しく感じる時はあるものの、嬉しくもあったりと複雑なものではあるのだが。

 

(……なんで、あの子は褒めて私の方は何も言わないのよ!)

 

「………」

 

「ん?あー、早速やる気?まあ、いいよ。ヤマトとの約束もあるし、少しイラついてたから、気分転換で数ラウンドは相手してあげる!」

 

「おー、中々派手にやっとんなぁ」

 

一方で既に水着に着替えていたブレイズは、ヤマトが水着姿の自分に関して何も言ってこないことにモヤモヤしていたが、拳を静かに構えたフリントと気分転換がてら、早速派手に戦い始めており、クロワッサンがそれを他人事のように見てそんな感想を漏らしていた。

 

なお先程ブレイズが言っていたヤマトとの約束というのは単純で「フリントの相手になる代わりに何でも言う事聞く」というものだ。 この約束をヤマトが提案することになったきっかけが、気絶していたフリントが目を覚まして早々ヤマトに弟子入りをした事だった。いきなり通訳のガヴィルからそんなことを告げられたヤマトは驚き困惑したが、すぐに理由を聞くと「ズゥママにない強さを感じたから」というのを聞かされると、少し考える素振りをしてから「それならブレイズの方が俺より強いから、そっちに弟子入りしてくれ」とまさかの丸投げ。

それを聞いたブレイズとフリントはヤマトに詰め寄り、理由の説明を求めるも「少なくとも俺はブレイズよりも純粋な格闘戦に関しては弱いし、強い信念も持ってない」と即答。フリントはその節を聞かされてすぐにヤマトの目を見て、嘘をついて無さそうだと判断し渋々納得。

だが、無論ブレイズとしてはそれだけでは納得出来ず色々渋り始め、どうしようか迷ったヤマトにニヤケ顔でウタゲとクロワッサンが先程の約束をヤマトに提案、疑い半分でそれをブレイズに言った結果あっさり承諾というのが事の顛末だった。

 

 

 

「あ、そういえばさっき言ってたけど、ヤマトたいちょー格闘戦だとブレイズさんに負けるってホントー?」

 

「ん?ああ、それは本当だよ。実際負け越してるしね」

 

「本当なんだ……正直、ヤマトが負ける姿って全然想像できないんだけど……」

 

「それは過大評価だよ、ドクター。俺は全体的に負けてる方が多いよ」

 

ドクターの感想にヤマトは苦笑いを浮かべながらそう答える。実際、ヤマトが答えたことは本当で基本的にヤマトはこれまでの模擬戦において負けている数の方が圧倒的に多い。事実、ヤマトはブレイズとの素手の模擬戦での勝率は4割で負け越している。というより、一時は勝率が1割なんていうこともあったぐらいだ。

 

「まあ、あのゴリラは力もあるしタフだからな。技術と連撃で攻めるヤマトとは体格の差もあって相性がかなり悪かったんだ」

 

「フロストリーフはん、なんでそんなこと知ってはるん?」

 

「……まあ、色々あったんだ」

 

横から話に入ってきたフロストリーフが言った内容に、クロワッサンが純粋に疑問をぶつけるも、フロストリーフは一言で済まし口を閉じる。

それを察知したドクターは、彼女に追撃がいかないように話題を変えるために口を開いた。

 

「そういえば、ヤマトはブレイズの水着姿見て何も言ってなかったけど、ちゃんと感想とか言ってあげた方がいいんじゃない?」

 

「え?なんで?」

 

「……ヤマトはん、それは流石にあかんわぁ」

 

「おう、それに関しては私も同感だ」

 

「ヤマトたいちょー、サイテー」

 

「流石にその反応は私もどうかと思うぞ……」

 

女性陣からの集中砲火。正直、ヤマトの反応に関しては流石にこの後の展開を何となく分かっているフロストリーフも同情せざるおえない。このままではブレイズが不憫だ。だが、ここで終わらないのが数多の女性を落とした父親と師匠の天然タラシぶりを引き継いでいるヤマトだ。彼は集中砲火を受けた後に少し困ったような顔をして。

 

「言わなくても、ブレイズは美人なんだから水着姿は似合うに決まってるでしょ?」

 

「へ!?」

 

『!隙あり!』

 

「へぐおっ!!」

 

何でそんなことも分からないのか?と言わんばかりの口調で流れるように言い、そして運悪くそれが聞こえてしまったブレイズは動揺してしまい、その隙をつかれてイイのを貰って変な声を上げ、フロストリーフは「やっぱりか」と言わんばかりに呆れ顔で額に手を当てる。

そしてそれを見たクロワッサンが、フロストリーフに声をかける。

 

「フロストリーフはんはこうなるの分かってたん?」

 

「当たり前だ。何年ヤマトと一緒に過ごしたと思ってる……コイツは何故か落として上げるっていうのが上手くてな…しかもそれを無意識にやるもんだから、やられる側としてはある程度この展開を予想してないと心臓がもたないんだ……」

 

「なるほどなぁ……」

 

「ようはアイツの天然タラシは末期ってことでいいんだな?」

 

「その認識で大丈夫だ」

 

「なんか猛烈に失礼な事を言われた気がする」

 

その後、トミミと合流してからブレイズも含めて水の掛け合いっこなどをしたり、ヤマトが前より泳げるようになってるか確認ということで水泳勝負をブレイズとヤマトがやり始めたりと、それなりに満喫したが行方不明になっていたケオベがまたどこかへ行ってしまい、見失う前にドクター達は慌てて彼女の後を追うことになった。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

「レユニオンめ!おいらの名前を奪おうなんてそんなことさせないぞ!」

 

「な、なんだコイツ!?強っ…あべらっ!」

 

「この、タダでやられてたまるっ…タコスッ!?」

 

「なんも出来ずにやられてるじゃねーか!?」

 

「なんだこの惨状」

 

ケオベの後をついて行くと、そこには1人ズゥママの人達相手に1人無双するケオベの姿があり、それを見たフロストリーフ(水着+ヤマトのパーカー)は思わずそんな感想が漏れ出た。このままでは流石にマズイとドクターは判断し指示を出す前に、ヤマト(ガーディアンの制服袖捲りver)が飛び出してケオベを羽交い締めし。

 

「うわっ!レユニオンめ、何をするんだー!」

 

「ガヴィルさん!」

 

「ナイスだヤマト!おら、起きろケーちゃん!」

 

「いたーい!……あれ?ここはどこ?あっ、ガヴィルだ!みんなもいる!」

 

「おはよう、ケーちゃん」

 

「ドクター、おはよう!」

 

「正気に戻ったみたいだな」

 

ガヴィルが自身のアーツユニット(医療用)でケオベの頭を思いっきり叩いた。すると、ケオベは暫く辺りを見回してドクターたちの姿をその目に捉えると純粋な笑顔になる。彼女が正気に戻ったことにフロストリーフがほっと息を吐いたところで、ドクター一行がここに来た理由の一つである、このズゥママの族長であるユーネクテスが近寄ってきた。

 

「ガヴィル、これはどういうことだ?」

 

「あー、お前に説明しないといけないのか。でもその前にケーちゃんの容態見てからで……」

 

「それならケーちゃんの方は俺がやっとくよ。医療関係の知識もあるしね」

 

「あー、そういやお前そっち方面の知識も本職と変わらねえんだっけな…んじゃ任せるわ」

 

「ん、それじゃあケーちゃん。一旦横になってくれる?後ではちみつクッキーあげるから」

 

「はーい!」

 

「え?ヤマトたいちょーってそっち方面も出来んの?」

 

「知らないのか?ガーディアンの各隊の小隊長になるための条件の1つとして、医療関係の知識も医療オペレーター以上の知識を持つことってのがあるんだぞ」

 

「うっは、マジで」

 

ガヴィルがケオベの診察をヤマトに任せているのを見たウタゲの疑問に、フロストリーフがさも当然かのように答える。フロストリーフは一時期ガーディアンにいたので勿論知っていた。その上、当時数少ない交流相手であったヤマトが特務隊の小隊長の選考対象の資格を得るために、自室で夜な夜な勉強をしていたのを見ていたので、その厳しさもある程度は把握している。そのため、ヤマトがロドスに特務隊の小隊長として派遣された時は、彼の努力が身を結んだことが自分の事のように嬉しかったのを記憶している。

 

「最も流石に専門職のベテランには敵わないのが実態だがな。あくまで1人でもある程度様々な状況に対応出来るため、という意味合いの方が大きい」

 

「へー、そんな意味でやってるんだ」

 

「なんでこの中では私の次に付き合いが長いお前が知ってないんだ…」

 

 

 

 

*******

 

 

 

 

「はぁ……まさかケーちゃんの容態の確認が終わったと思ったらこんなことになるなんて…ねっ!」

 

ケオベの容態を確認し終えたヤマトは、彼女と共に集落の奥の方へ行ったドクター達の方へ合流すると、ロドスの飛行装置をつけたビッグ・アグリーが暴走状態に入りそれを止める為に戦うことになっており、彼はビッグ・アグリーの一撃を避けて、機械仕掛けの剣──レッドクイーンでビッグ・アグリーの腕に向けて兜割り(スプリット)を放つ。

 

「むっ、予想以上に硬いな」

 

「これはガヴィルを倒すために作ったんだ。頑丈に作るのは当たり前だろう」

 

「……ガヴィルさん=バケモンってことはよく分かったよ」

 

「ヤマト、お前後で覚えてろよ?」

 

しかし、アーツで身体能力を強化したヤマトの一撃をもってしてもビッグ・アグリーの堅牢な装甲を破ることは出来ず、軽く傷を入れた程度で弾かれてしまい、ヤマトはカウンターが来る前に弾かれた勢いを利用してビッグ・アグリーの腕を蹴って後方に下がる。そして漏れ出た感想に対して、ユーネクテスがどこか誇らしげに言ったことを聞いて、ついうっかり出た言葉を聞いたガヴィルから死刑宣告を受け、軽く苦笑いをうかべる。

 

「けど、確かにお前の攻撃防げるって結構だな」

 

「そうだな。ヤマトの攻撃が通用しないんじゃ、私の攻撃も通用しないと見ていい」

 

「というより、それだと殆どのメンバーの攻撃通用しなくなーい?」

 

「……いや、ウタゲはあの剣術なら通るはずだ。それとヤマト。イクシード使えば装甲は破れそう?」

 

「……そうだね、イクシード有りならいける」

 

「よし、それならガヴィル、ヤマト、ウタゲの3人が前衛に出てビッグ・アグリーの武装破壊、残りのメンバーは3人の援護でいこう。細かい指示はその場でまた出すから」

 

「はいよ、それじゃあいっちょやるか!」

 

「はー、だるいなー」

 

「そう言わずに、やるよ!」

 

ドクターの指示を聞いた全員が持ち場につき、ガヴィルは拳を鳴らしながら不敵な笑みを浮かべ、ウタゲはだるそうに刀を抜き、そしてヤマトはレッドクイーンを地面に突き立てて柄を捻る。するとレッドクイーンからバイクの排気音のような音が上がり、同時に刀身が熱を発し赤くなり始める。

 

「っ!?そ、その剣は…」

 

「?あー、珍しいのはわかるけど話は後で!」

 

ユーネクテスが目を輝かせてレッドクイーンを見たのを視界にとらえたヤマトは、一言入れて断るとビッグ・アグリーに向けて駆け出す。

 

「またも突撃か?お前さんの攻撃はこのビッグ・アグリーの装甲には通用せん…」

 

「って、思うじゃん?」

 

「ヤマトはん!」

 

「クロワッサン、ありがとう!」

 

大祭司の言葉を聞いたドクターが、1人仮面の下でほくそ笑む。ビッグ・アグリーの攻撃をクロワッサンが受け止め、ヤマトはその隙に上に跳躍、レッドクイーンを逆手に持ち替えて一回転し、剣先をそのままビッグ・アグリーの関節部分に向けて、剣の柄をまた捻る。すると剣から炎が吹き出し、排気口から噴射された勢いで急降下。そして──

 

「関節部分とはいえ、ビッグ・アグリーの装甲を貫いたじゃとっ!?」

 

ヤマトの急降下突きはビッグ・アグリーの装甲を突破し、片腕の破壊に成功した。

そもそも、レッドクイーンは自分の攻撃力の限界に気が付き始めたヤマトがアーツ無しでも重装甲の相手に対しても決定打を与えられるようにと、ガーディアンの装備開発部と共同で作成したものだ。これぐらいの装甲を打ち破れなければ、装備開発部が更なる魔改造を施す案件になるので内心ヤマトはほっとしていた。……最も、現段階でも当初より魔改造されたゲテモノなため、ヤマト自身使いこなせるようになるのに少し時間がかかったという裏話があるのだが。

 

「ガヴィルさん、ウタゲ!」

 

「おうよ!」

 

「それじゃあ、いっちょいきますか~」

 

「あっ、すまん。弾が暴発する!」

 

ヤマトの声掛けにガヴィルとウタゲが反応し、もう片方の腕に接近していく途中で、大祭司から警告がとび、その直後ビッグ・アグリーの大砲から榴弾が発射される。が、それをフロストリーフのアーツとケオベの手斧が迎撃したため、ガヴィルとウタゲに当たることはなかった。

 

「おらぁ!」

 

「はあっ!」

 

そしてガヴィルの拳とウタゲの斬撃によってビッグ・アグリーのもう片方の腕の関節部分が破壊。ビッグ・アグリーの残る武装は大砲のみとなった。

 

「ぐむむ……!このビッグ・アグリーをここまで追い詰めるとは…!」

 

「ねえ、なんであの大司祭…だっけ?あの人はあんなこと言ってんの?」

 

「多分、ノリなんじゃない?」

 

「なるほど、ノリなら仕方ないね」

 

「つべこべ言わず、さっさと動け。ドクター、ゴリラ猫」

 

「はいはい、分かってるよ」

 

明らかに悪ノリして悪役が吐くようなセリフを言う大祭司と、それを看破したドクターと納得するブレイズにフロストリーフがツッコミを入れる。ブレイズはそれを軽く流しつつも、前線に上がりヤマトに声をかける。

 

「ヤマト!」

 

「!分かった!」

 

一瞬のアイコンタクト。だが、共に何度も戦場駆け抜けた2人に十分な意思疎通。ブレイズがヤマトの方向へ跳び、彼はブレイズをレッドクイーンの刀身の腹の部分に乗せるように調整し、ブレイズが乗った瞬間に思いっきりビッグ・アグリーの方への振るって飛ばす。

 

「な、なんじゃと!?」

 

「これで、おしまい!」

 

そしてブレイズの急降下蹴りがビッグ・アグリーの砲身へ命中し、その砲身は見事粉砕されたのだった。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

「とんだバカンスだったな……」

 

飛行装置に乗っての帰り道にて、ヤマトはスヤスヤと気持ちよさそうに寝ているフロストリーフの頭を撫でながら疲れたように呟く。

ブレイズがビッグ・アグリーの最後の武装を破壊した後、暴走のせいで熱が溜まりすぎたのかビッグ・アグリーは爆発四散。大祭司は吹っ飛び、ドクター達は「ビッグ・アグリーをなるべく破壊しないで止める」という目標が達成出来なかったため、全員苦虫を噛み潰したような表情になるも、周りへの被害を抑えられたのと、取り付けられていた飛行装置のエンジンが無事だったため、とりあえず一件落着…とはならなかった。

 

「まさか、トミミちゃんがあそこまでガヴィルさんのことを想ってたなんてね……」

 

そう、あの後ガヴィルをどうしても大族長にして一緒に暮らしたかったトミミはビッグ・アグリーとの戦闘で消耗してるガヴィル達に戦闘を仕掛けてきたのだ。

しかし、消耗してるとはいえどあの場にいたのはロドスの歴戦のオペレーター達。向かってくるガヴィルウィルのメンバーをいとも容易く蹴散らし、残ったトミミもガヴィルのお尻尾ペンペン(めっちゃ痛そう)を受けて半べそをかきながら戦意喪失。

その後はなんやかんやあってユーネクテス、トミミそしてフリントもロドスに着いてくることになり、現在ユーネクテスはレッドクイーンを解体して「おおっ…!」と目を輝かせながら手を動かし、トミミはガヴィルの隣に笑顔で座り、フリントは普通に寝ていた。

 

「そういえばヤマト。フリントちゃんの弟子云々はどうすんの?」

 

後ろの席から見下ろすように顔をひょっこっと出したブレイズの質問にヤマトは「ああ、その件ね」と言って、少し考えてから口を開いた。

 

「……まあ、まだ暫くはロドスに滞在するし手が空いてる時は俺が教えられる技術は時間がある限り全部教えるよ。……正直、あの子の指導は俺よりブレイズの方が適任だと思うけどね」

 

「あれ?私に全投げするんじゃなかったの?」

 

「よくよく考えたら、流石に全部任せるのは無責任だと思ってさ……」

 

「ふーん……ちっ、全投げしててくれば貸しを作れたのに

 

「聞こえてるからね?……今度、好きな食べ物奢るからそれでいい?」

 

「えー、それより今度の休暇の時1日付き合って欲しいんだけど?」

 

「おい、ゴリラ猫。黙って聞いてればお前は何勝手に抜け駆けしてるんだ?」

 

「え?それ膝枕してもらった上に頭も撫でられてる君がそれを言う?」

 

「これはこれ、それはそれだ」

 

グルルっと唸るフロストリーフとこめかみに青筋が少し浮かび始めたブレイズら2人の様子にヤマトは額に手を当て、結局自分には心休まるバカンスは出来ないのだな、と諦めの境地に至りながらも、放っておくと喧嘩し出す2人を収めるために口を開くのだった。

 

「なら、今度3人でどっか行こうか?」

 

「「違う、そうじゃない」」

 

因みに、ヤマトはそこにラップランド、プロヴァンスそしてイカズチを加えた合計5人とショッピングモールに行くはめになるのだが、それは別の話。




最近、スマブラはレートが落ちるの怖くて1on1のトーナメントばっか潜ってます。あと、ホムラヒカリ使うの楽しいです(‘ω’)

キャラ解説

ヤマト:何とかロリコン容疑を払拭できた本作主人公。因みにフリントからは「ヤマト師」と呼ばれるようになり、何故かよく慕われるように。因みにガーディアンの制服への早着替えはめちゃくちゃ早い。

ガヴィル:通常モードのビッグ・アグリーとの力比べが互角というやべーやつ。俄然、この人が前衛やったらどんな感じになるか気になります()因みに統合作戦では結構使ってます。いや、S2がいざと言う時使えます。

フロストリーフ:1番ヒロインしてる狐っ娘。たまにはヒロインしてるフロストリーフが書きたかったんや…あと、可愛い(訳:皆もフロストリーフをすこれ)統合作戦ではラッピー、シルおじ召喚できない時は彼女を使ってます。何気便利。

ブレイズ:例えゴリラと言われても、心は乙女。因みにヒロインの中ではラップランドに次いで図々しい。

クロワッサン:今回のパーティーのメイン盾。ゲームの方でももっと使ってあげたいオペレーターの1人。許せ、クロワッサン…

ウタゲ:脱いだらさらに凄い人。今回はガヴィルと一緒にビッグ・アグリーの片腕を破壊に貢献。実際、強いですし。

ケオベ:S3がラップランドになる術士。こういう、アホ可愛いというか元気な子も結構個人的に好きです(カミングアウト)

ユーネクテス:素のステータスでブロック数まさかの1。だが、噂によると結構火力が出るとか(何も知らない無能)

トミミ:今回のイベントの全ての元凶。でも可愛いから許す()

フリント:活躍させることが出来ずごめんよ……その代わり早く昇進2にしてあげるから…!


感想などありましたら是非お願いいたします!
あと、エイプリルフールのアンケートも取っていますので、そちらもご協力の方お願いいたします!
あと、活動報告にてR18含めてリクエストの募集をしていますので、そちらも遠慮なく!


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某バイオなゲームRE:2をこのメンバーで実況してみた

という訳で、遅くなりましたが久しぶりのリクエスト回です。

話は変わりますが、もうすぐモンハンライズが始まりますね。やる方はなんの武器を使う予定ですか?自分はMHP3以来なのですが、チャックスです。いや、超高出力が気持ちよくて……


 

「ボクに撮影の手伝いをして欲しい?」

 

「うん!話に聞いたところラップランドさんって、某バイオゲームのシリーズやりこんでるって聞いたから、是非やって欲しいなって!」

 

自室に突如乗り込んで来たカシャからそんな話を持ちかけられた、ラップランドは珍しく面食らったような表情になる。そもそも、何故自分がこのゲームのシリーズをやり込んでいるのを知っているのかが分からない。

このロドスにて、ラップランドがゲームを特にとあるシリーズを好んでやっているのを知っている人物はかなり少ない。そのため誰が漏らしたのかは、ある程度絞りこめるのだが。

 

「因みに誰から聞いたんだい?」

 

「ヤマト君だよ!」

 

(よし、後で部屋に呼びつけよう)

 

この瞬間、ヤマトはラップランドに勝手にバラしたお仕置という理不尽な名目で尻尾を限界までモフられることが決まった。恐らく数時間後には、ラップランドに呼ばれて何も疑うことなくホイホイ部屋に訪れる哀れな狼が目撃されるだろう。……実をいえばラップランドは別にゲームをしていることは隠していた訳では無いのだが。

 

「それで?どのシリーズをやればいいんだい?」

 

どっちにせよ暇なのは変わらないので、ラップランドはカシャの頼みを受けることにした。因みに、ラップランドが1番好きなのはシリーズ番号4の作品である。そしてそんなラップランドに対してカシャが出した作品はというと。

 

「このRE:2の方をやっていただきまーす!」

 

「え?マジで?」

 

「マジで!」

 

(……これは中々運がいいね!)

 

発表された物にラップランドは思わず聞き返してしまったが、カシャはそれに対し即答し、そしてそれを受けたラップランドは内心めちゃくちゃ喜んでいた。

というのも、実はカシャが提示した作品はまだラップランドがプレイしてないもので尚且つこれから買ってやろうとしていたものだ。

実況プレイをしなければならないというのと、誰かに見られるというデメリット込みでも、ラップランドからしたらタダで出来る上に買いに行かずに済むのだからこの時点で十分メリットの方が勝っている。だが、カシャは抜け目がなかった。

 

「勿論、タダとは言わないよ!この話を受けてくれたら、このゲームタダであげるよ!」

 

ここで追い討ちの報酬発表。1度タダでプレイ出来るというメリットが、この話を受ければ無料で貰えるという大きなメリットに変わった。そしてそれを聞いたラップランドは──

 

「喜んで引き受けさせていただくよ」

 

「やったー!ありがとうございます!」

 

実況プレイの撮影協力の話を快諾し、カシャと固い握手を交わした。

 

「それで日程は?」

 

「うーんと、ラップランドさんの都合に合わせるよ!あ、あともし他に一緒にいて欲しい人いたらその人誘っていいからね!勿論誰が来るのかは撮影前に教えて欲しいけど!」

 

「へー?呼んでもいいんだ?」

 

「うん!人が多い方が面白いかもしれないからね。あ、でも呼ぶのは4人までにして欲しいかな?流石に多すぎると文字つけるのが大変で──」

 

ラップランドはカシャからの説明を適当に流しつつも、内心でほくそ笑んでいた。この時、彼女は前回の初代リメイクをやった時に中々面白い反応をしてくれた人物が2人のことを思い出しており、その2人を呼んでやれば自分的にも撮れ高的にも中々面白いことになるのは明白。

 

(ふふっ、それじゃあどうやって2人を呼ぶか考えないとね?)

 

ラップランド2人をどうやって撮影に誘い込むかを普段は使わない脳みそをフル活用して考え始めた。

 

(けどヤマトも来るから、それを上手いことやればいけるかな?)

 

……因みに、この時点で彼女の中ではヤマトは既に頭数の中に入れられているのだった。

 

 

 

****

 

 

 

 

そんな出来事から1週間後、ロドスの某日某場所にて、テキサスとチェンは死んだ魚のような目になっていた。

 

「はいどーも!カシャの撮影部屋の主のカシャでーす!今回はリクエストにあったあの有名作品のリメイクを、なんと!半年記念ということでこの方々とやることになりました!それでは自己紹介どーぞ!」

 

「初めましての方は初めまして。ラップランドだよ」

 

「ペンギン急便のトランスポーターのテキサスだ(死んだ目)」

 

「チェンだ(絶望している目)」

 

「えっと、ヤマトです」

 

「フロストリーフだ(疲れた顔)」

 

結論から言うと、ラップランドが誘ったメンバーはこの通りかつて初代リメイクを一緒にやったメンバーという形になった。経緯を各々たどっていくと、まずヤマトはラップランドにモフられた後、参加を強制させられて参加。チェンはラップランドに煽られて参加。テキサスはラップランドの手によってけしかけられたヤマトちゃんによるお願いで参加。フロストリーフはヤマトから「今度某バイオRE:2の実況プレイの撮影をラーちゃんたちとやるんだ~」と聞かされ、チェンとテキサスの為に参加、という形である。

 

「今回のこのメンバーでゲームの実況を進めていきたいと思います!それでは、ラップランドさんお願いします!」

 

「はい、それじゃあ早速やって行こうと思うけど……ただボクがプレイするだけじゃつまらないと思うからね。交代しながらやっていこうと思う」

 

「「っ!?」」

 

「は?聞いてないぞ?」

 

ラップランドの発言にチェンとテキサスが動揺し、フロストリーフはラップランドがどういう考えでその発想を思い浮かんだのか察しながらも、一応抗議の声を上げると、その提案をした主はその反応は予想通りと言わんばかりに口を開く。

 

「ごめんごめん、言い忘れちゃったよ。でもさ、こんなに人が揃ってるのにボクだけってのもおかしいし、色んな人がやった方が見所も増えると思ったんだ」

 

「そうだね、あたしとしてもそうしてもらった方が助かるかな~」

 

(あいつ、やりやがったな)

 

カシャからの援護が飛んできたことで、フロストリーフはここまでの流れをラップランドは想定して動いていたと確信を抱いた。因みにテキサスとチェンはポーカーフェイスと平静を保つのに精一杯でそんなことを思う余裕はなく、ヤマトは話に全くついていけていなかった。

 

「そういうわけで順番は、テキサス、ボク、ヤマト、隊長さん、フーちゃんで行こうと思うよ。死んだり、チェックポイントについたら交代って感じでいこう」

 

「交代の仕方はともかく、完全にお前の私利私欲な順番じゃないか……あとフーちゃん呼びはやめろ、お前にそう呼ばれると何だか顔面を殴りたくなってくる」

 

「……せめてヤマトを私とラップランドの間に挟んでくれ」

 

「まあ、確かにそうすべきだろうな。流石にテキサスが不憫すぎる」

 

「えー」

 

そうして、ぐだぐたしつつも順番はテキサス→ヤマト→ラップランド→チェン→フロストリーフの順番となり、ゲームをスタートした…のだが。

 

「テキサスさん、逃げて逃げて!」

 

「走るのってどのボタンだ!?」

 

開始早々テンパって操作を忘れたテキサスは歩くことすら出来ずに早々ゲームオーバー。

 

「なんだコイツ、全然怯まないぞ!?」

 

「あー、そいつは変に戦わずに逃げた方がいいよ」

 

「お前、そういうのは早く言え!」

 

チェンは空から降ってきた大男に叩きのめされたりと、ゲームとホラー系列が苦手な2人は自分の番になると様々なリアクションをしつつも、ゲームオーバーになるという撮れ高的に良いものを残した。

 

一方で、ヤマトとフロストリーフの2人はボス戦で1度だけゲームオーバーになったものの、それ以外の場面では普通にザコ敵や謎解きを捌いていき、ラップランドは時折魅せプレイというものをしたりとテキサスとチェンとはまた違う面白さが際立った。

 

そして──

 

「やっとエンディングまでこれたね……」

 

開始から12時間ほどで何とかクリア出来た5人は疲れたように、特にテキサスとチェンは魂まで抜けそうな勢いで息を吐く。ゲームのグラフィックやら演出が以前やった物とはレベルが全く違うことと、何故か自分らの番に限って心臓に悪い演出が入ってきたのだから、2人の負担はかなりのものなため、あのような息を吐いても仕方ないだろう。

 

「みんな、お疲れ様~!後はあたしの方で編集するだけだからもう解散で大丈夫だよ!」

 

「そうか…では失礼する」

 

「私も、この後用事があるから先に失礼する」

 

カシャからの終了の宣言を聞いたテキサスとチェンは、ラップランドからの追撃を逃れるために早急にこの場を立ち去ろうと腰をあげて、出口に向かおうとして──

 

「次のRE:3の方もよろしくね~!」

 

「「…………」」

 

カシャが放った言葉を聞いてピタッと立ち止まり、暫くしてからギギギッと油が切れた人形のような音が出そうな感じに首をぎこちなく動かして振り返る。

 

「「……今なんて言った?」」

 

「?ラップランドさんから聞いてない?さっきやったやつの続編もやることになってるんだけど……ラップランドさん、言い忘れてたの?」

 

「ああ、ごめんごめん。すっかり忘れてたよ!まあ、事後報告になっちゃうけど、もちろん付き合ってくれるよね?」

 

テキサスとチェンは決意した。かの邪智暴虐なラップランドを絶対に泣かすと。

 

 

 

 

****

 

 

 

後日、カシャがアップロードした動画を見たとあるサンクタの女性がボロ雑巾のように転がっていたり、同じくその動画を見たとあるお嬢様と取っ組み合いをしてる近衛局の女性が目撃され、一方でとあるヴァルポの少女はある行動予備隊のメンバーとゲームする機会が増え、ループスの青年はそのゲームで完膚なきまでにボコボコにされたとかされなかったとか。

 

「何で即死コンボ俺にしかしないの!?」

 

「いや、だってなんかお前やりやすいし、受け身とらないし……後は普段の鬱憤晴らしだな」

 

「ひどい!」

 

この後、めちゃくちゃ即死コンボ食らった。




こんな感じでいいでしょうか…?

キャラ紹介

ヤマト:対人ゲーじゃなければ、普通に上手いオオカミ。因みにテキサスが操作してない時、彼女が驚いた拍子で尻尾をがっしり掴まれた時は変な声が出たり、ラップランドが操作してない時いつも尻尾触られたりと、結構散々な目にあってた。スマブ○最弱王。

カシャ:悪意は全く無いものの、テキサスとチェンを苦しめた元凶。動画は高評価がかなりついたようでご満悦。次の動画は何を撮ろうか考え中。

ラップランド:今回の話を仕組んだ元凶。テキサスとチェンのビビる姿を見れたし、ヤマトの尻尾も堪能出来たし満足。そのうち天罰が下りそう。

テキサス:被害者1。ビビったものの、声には出さないという意地を最後まで見せた。でもヤマトの尻尾をついつい掴んでしまったのはご愛嬌。動画を見て性懲りも無く弄りにやってきたとあるサンクタを鬱憤晴らしとしてボコボコにした。八つ当たりダメ、絶対。

チェン:被害者2。テキサスと違い、途中でビビって変な声を上げてしまうという失態を犯してしまった。因みにやばいと思った時はフロストリーフの尻尾を抱きしめてた。動画を見て、弄りに来たあるお嬢様と取っ組み合いの喧嘩をして、ホシグマとヤマトに怒られた。

フロストリーフ:対人ゲーもそれ以外のゲームも普通に上手い(オリ設定)バイ○やってる時は、チェンを気遣って尻尾を貸してた。スマブ○ではアイスクライ○ーを使い、受身がまだ満足に取れないヤマトを即死コンボでボコボコにした。本人曰く「なんかスっとして、気がついたらボコボコにしてた」とのこと。

ボロ雑巾にされたサンクタの女性:学習しないからこまたこんな目に…

あるお嬢様:弄った私も悪いけど、なんでそんな怒るのよ!特にホシグマ!

感想や批評お待ちしております!感想をくだされば、作者のモチベの向上にも繋がりますので是非!
リクエストの方もR18の方も含めて活動報告で募集してますので、そちらもぜひ!


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密着!ロドスアイランド製薬24時!

えー、1週間投稿出来ず大変申し訳ございませんでした。

はい、遅れたのはモンハンやらスマブラやらやってたせいです…本当にすみませんでした!

待っていた方がどれくらいいるか分かりませんが、とりあえず出来ましたので上げさせて貰いました。

それとアンケートを取りますので、是非ご協力の方をお願いします。


 

 

「密着24時の番組?」

 

「ああ、龍門のとある番組が近衛局と繋がっている私たちのことを、向こうの住民に知ってもらうために企画したそうだ」

 

某日、ロドスのとある場所に呼び出されたドクターはケルシーからそのようなことをいきなり言われた。が、正直なんで自分にだけそんなことを急に言う理由が分からなかった。こういうのはアーミヤも交えて話すのが普通な上、これまでもそうしてきたのでドクターが持った感想は仕方の無いことだ。そしてそれもケルシーも理解しており、訳を説明し始めた。

 

「キミにはアーミヤが無事にロドスの案内及び紹介が終われるように裏方に回ってもらうため、先に話させてもらった」

 

「あ、そういう?それならそのことを先に言って欲しっ──」

 

「ドクター、君にはほかのオペレーター達が何かやらかす前に抑える役をやってもらう」

 

「ちょっと何言ってるか分からない」

 

納得しかけたところでケルシーの口から出たあんまりな役に、ドクターはすぐさま現実逃避をする。一応言っておくと、ドクターはケルシーが本当にどんな意味であんなことを言ったのか分からずに先程の返答をした訳では無い。むしろ、ロドスのオペレーターとケルシーの言った役が必須だということをよく理解している…いや、ロドスにおいて1番理解していると言っても過言ではないだろう。

 

そんな彼が何故その役を嫌がるか?それは至って単純であり──

 

「ドクター、キミにしか出来ない仕事なんだ。現実逃避している暇があるならさっさと承諾してくれ」

 

「いくらケルシーの頼みだからってその役だけは嫌だ!俺じゃ皆がやらかす前に止められるわけがないだろ!?」

 

自分だけではそんな大役できるわけが無いとよく理解しているからだった。ロドスには個性的なオペレーター(変人)が数多く在籍している。一応、例をいくつか上げると。

 

・えんどう豆をサヤごと食べたり感電が趣味の残念イケメン

・モフモフを求めるモフリスト

・あるループス2名に執着してるやべーやつ

・とあるループスが関わると頭のネジが2、3本吹っ飛ぶヤベー奴ら

・料理で刀を持ち出すヴァルポの少女

 

ぱっと思いつく限りでこれだけの個性的な面々が思い浮かぶのだ。しかも厄介なのは全員が全員、ドクターの一声で止まってくれる人物ではない。正直、詰んでいるのが現状でドクターはオペレーターの抑え役など投げ出したかった。そして現在、正に断ろうとケルシーに直談判を──

 

「そうか…ならば、アーミヤに全てを任せるしかないな」

 

「……!」

 

「どっかの誰かさんが断ったせいで、アーミヤの負担が倍になるわけだ。だが、強制する訳にも行かないからな、悪いがアーミヤに全てを任せると──」

 

「やってやろうじゃねーか、コノヤロウ!!」

 

する前に、ドクターは最愛の彼女(アーミヤ)を守るために仕事を引き受けたのだった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「皆さん、お待たせしました!密着24時シリーズの今回は、謎多き企業ロドス・アイランドを生放送で密着していこうと思います!アナウンサーはこの私メイリンが担当します!そして、案内役として…」

 

「皆さん、こんにちは。ロドス・アイランドの代表のアーミヤです。今回はこのような機会を設けさせて頂き──」

 

(……よし、とりあえず始まったみたいだな)

 

(まさか、本当にこんな役目を負うことになるとは思いませんでした)

 

そして密着取材の当日、取材班と話すアーミヤを影からドクターとホシグマがヒソヒソと声を潜めながら話していた。

 

結局、ドクターは自分1人ではどう足掻いてもこのロドスが誇るオペレーター達を抑えられる自信が全くなかったため、一応全体に密着取材の方が来ることを全体に連絡し、失礼がないように念を押した。しかし、それだけでは悪戯心を刺激されたWがなにかやらかす可能性が拭いきれなかったため、ヤマトに当日は仕事以外の時はなるべくWと部屋で二人っきりで過ごすように指示し、そして道ず…もとい万が一の抑え役の仲間として年齢や見た目的にも問題ないホシグマにスライディング土下座をしてこちら側につけたのだった。…因みに、ドクターのスライディング土下座を見たホシグマは「あんな無駄に綺麗であんな無駄に完璧な土下座は初めて見た」と零したとか。

 

 

閑話休題

 

 

「──それでは、アーミヤさん。早速ですがロドス内部のご紹介からしてもらってもいいでしょうか?」

 

(あ、動きがありましたね)

 

(そうみたいだね。よし、台本だとまずはロドス内の設備を説明する感じで、最初はパフューマーのところ行くみたいだから先回りしてヤバいやついたら排除して鉢合わせないようにしよう)

 

(ドクター、あなたがオペレーターに対してその言葉を使うのはマズイのでは?)

 

ドクターはケルシーから手渡された取材の流れを記された台本を開いて、この後に行くルートを確認すると音を立てないようにコソコソしながらその場をホシグマと共に立ち去った。

 

「えーと、それでは時間も時間ですし当初の予定を変更して、食堂に行きましょうか?」

 

「え?いいんですか?」

 

「はい、お腹が空いている状態で取材はこちらとしても心配ですので」

 

「うーん、それじゃあお言葉に甘えてもよろしいですか?」

 

「はい!それではこちらです!」

 

お昼時からのスタートということもあって、お腹が空いているであろう取材陣にアーミヤが気を利かせて急遽予定を変更したというの聞かずに。

 

 

 

 

**以下、特にアーミヤが慌てたやつのみをお送り致します**

 

その1:カランドの主、苦手な食べ物がバレる

 

「ほほう…こちらがロドスの食堂ですか」

 

「はい、ここでは感染者非感染者関係なく平等に食事を取っています。メニューはあちらの券売機から選ぶシステムとなっていて、あとは券を所定の位置にお盆を持って向かって渡せばあとは調理してくださってる皆さんが作ってくださいます」

 

「ほうほう…因みに、アーミヤさんのオススメは?」

 

「そうですね…個人的には日替わり定食がオススメですかね。その名の通り、毎日内容が変わるのでいつも何が出てくるの楽しみになりますからね」

 

「なるほど…って、んん?あそこにいるのって…カランド貿易のシルバーアッシュさんじゃないですか!?」

 

「あ、えーとですね……」

 

「…あれ?そのシルバーアッシュさんが券を受け取りに来たループスの少年に何かしら言って…?あ、その少年は笑みを浮かべて戻りましたね。彼は受付係なんですか?」

 

「あ、ヤマ…彼は料理人で、ロドスの中でもトップクラスの料理の腕前を持っていますよ」

 

「おおう、これはアナウンサーたる私が見た目で判断してしまいましたね…これは修行が足らない…おっ、ループスの少年が戻ってきましたが…シルバーアッシュさんの頼んだメニューはハンバーグ定食?」.

 

「どうやら、今日の日替わり定食はハンバーグみたいですね」

 

「ははあ、なるほど~。実は、私ハンバーグが大好物でしてこれは運が良かったみたいですね!」

 

「ふふ、そうですね。それではメイリンさんは日替わり定食になさいますか?」

 

「はい!ではそのように…ってあれ、他の人のハンバーグ定食にはニンジンありますけど、シルバーアッシュさんのやつにニンジン乗ってましたっけ?」

 

「メイリンさん、それより早く食べましょう!席が埋まってしまいますからね!!」(必死)

 

「アッハイ」

 

 

 

一方その頃……

 

「……ねえ、なんでまだ来ないんだろう?」

 

「小官に聞かれましても…」

 

「……なんか、アーミヤ達探してきた方がいい気がしてきた」

 

「……すれ違いになる可能性もありますけど、一応いきますか」

 

 

 

 

****

 

 

その2:ブラコン狼娘

 

 

「ここが療養庭園です」

 

「ここ、療養庭園というのは一体どういうところで?」

 

「こちらは精神的に何かしらの──「あっ、アーミヤちゃん!」あ、イカズチさん!」

 

「アーミヤちゃんがこの時間帯に来るなんて珍しい…って、なるほど。そういうことか~」

 

「アーミヤさん、こちらの方は…?」

 

「彼女はここで療養して下さっている患者の1人で、私の大事な友人の1人です」

 

「ふむふむ…その、差し支えが無ければそちらの方にお聞きしたいのですが、ロドスでの生活はどうなんでしょうか?」

 

「そんなの、最高に決まってるじゃん!ここは私を受け入れてくれた暖かい場所だからね。それに、今回は特別に言うけど私はここの人達も大好きだからさ…」

 

「イカズチさん…」

 

「それに、お兄ちゃんもいるからね!」

 

「(お?この子美少女だし、もしかしたら兄妹で美男美女なら絵的にいい感じに…よし)因みに、貴方にとってお兄ちゃんはどのような人ですか?」

 

「あ、イカズチさんにその話題はっ…!」

 

「あ、うーんとねお兄ちゃんはね。私の唯一の家族ですごい強くてかっこよくて可愛いの!例えばね、カッコイイところなら私が少しでもなにか悩んでることがあったらすぐにさり気なく一緒に遊んだりお喋りとかしてくれて聞き出してくれたりとか、汗かいた時に髪の毛を一気にかきあげたりする仕草とか凄いカッコイイの!可愛いところだと、実は身長が低いことをすごい気にしてて未だに牛乳を沢山飲んだりとか、背が伸びるストレッチとかやってたり、あと少しでも恥ずかしくなったら照れ隠しで拗ねたみたいな感じに顔を赤らめて来たりとか!あとね、ノリもすっごいいいの!私とお揃いのポーズしようって言ったらすぐに笑って乗ってくれるし、女の子の格好しようって言ってもすぐに着てくれるし!あとはね──」

 

(これは、もしかしてイケナイ感じの…!?やばい、個人的にはめっちゃドストライクで気になる…!)

 

「い、イカズチさん!その話はまた今度!また今度聞きますから!!」

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「はあ…はあ……」

 

「あ、アーミヤさん?大丈夫ですか?」

 

「は、はい…大丈夫れす…」

 

アーミヤは困惑していた。何故、今日という日に限って皆カメラの前でやらかしていくのか、と。そしてその度に何とか話を逸らしたり、注意をこちらに向けるためにアーミヤは声を大にして止めたり、話題を必死に考えたりと奮戦しまくった。

これも、ロドスが変なところだと思われないため、という一心でやってきた所だがアーミヤ自身の精神的なキャパはもう限界に達していた。彼女自身、次また変な場面に出くわしたらプッツンしそうだと自覚していた。

 

そのため、これ以上はと心の底から願っていたが──

 

「ちょっと、ヤマト。これはどういう事だい?」

 

「えっと、これは…」

 

「ちょっと白黒。見て分からないの?子犬ちゃんは、私と過ごしたいから私と一緒に居たのよ?それも分からないの?」

 

(ああ……なんでこんな時に限って…)

 

そんな願いとは裏腹に、廊下に響くとある人物達の口論。女性の声2つと男性男の声はこの場にいる取材陣と取材器具のマイクが拾ってしまっているため、大抵の人物は修羅場が起こっているのだと考えつくのは自明の理。「やばいのでは?」といった雰囲気になった中、アーミヤの堪忍袋の緒がついに切れてしまった。

 

「すみません、皆さんちょっと待っててくださいね。一人の男性を未だに落としきれてない人達と、決めきれてないヘタレさんとお話してくるので」

 

「あ、えーとアーミヤさん?」

 

「それでは、少しお時間を頂きます」

 

今まで見た中で1番綺麗な笑顔を浮かべたアーミヤに、メイリン達は戸惑ってる中アーミヤはペコりと頭を下げた後、ズカズカと足を進めていき──

 

「はっ、どうせ君のことだからヤマトを拉致して連れてきたんだろう?それぐらいお見通し──」

 

「御三方、ナニをやってるんですか?」

 

「あ、アーミヤ代表!?騒がせてごめんな──ひっ!?」

 

「あ、アーミヤ?ど、どうしたんだい?そんな笑顔で…」

 

「……ドクターが皆さんに伝えましたよね?今日は密着取材があるから、あまり変なことしないでくれって」

 

「そ、そうだけど突っかかってきたのはあっちの──ぴゃい!?」

 

「何か言いましたか?」

 

「…………」

 

「私にも、我慢の限界というのがあります……分かってない貴方達にはお仕置を与えたいと思います……なるべく、静かに受けてくださいね?」

 

「あ、アーミヤさん?それは流石に静かには受けられ──」

 

「え?なんですか?」

 

「いやいや!流石にそれは冗談抜きで──」

 

「──反省して下さい!!」

 

 

「え、えーと!という訳で、今回の密着取材はここまで!ロドスはとても個性豊かな人たちがいるとても凄いところでした!次の密着取材は何時になるか分かりませんが、近いうちに会える事を祈っております!それでは!!」

 

取材班のディレクターの指示で、メイリンは急いで締めの言葉を告げカメラマンも放送を直ぐに切り、これ以上の放送事故を無事に防いだのだった。

 

そして、後にこれは密着取材シリーズでもグダグダしつつも、内容が濃かったため1番の人気を誇る伝説の回になるのだが、それは別の話。

 

 




チャージアックス使いをそんなに見かけられなくて悲しい(チャアク使い)

キャラ紹介

ヤマト:とばっちりを受けたヘタレオオカミ(アーミヤ命名)。因みに、シルバーアッシュに人参抜きハンバーグ定食を出したのもコイツ。何やってんねん。

アーミヤ:今回めちゃくちゃ頑張った。そして今回の功績として、ケルシーから「ドクターを好きにしていい券」を貰った。

ドクター&ホシグマ:1度もアーミヤ達とはすれ違わないという戦犯をやった…と思いきや、レッドのプロヴァンス追跡を止めたり、ラッピーとリーシーの口論を止めたりとちゃんと仕事をしていた。でも、防ぎきれなかったのは事実なので、ドクターは売られた。ホシグマはお咎めなし。

シルバーアッシュ:人参をこっそり抜いてもらってたのがバレ、巫女な妹には呆れられ、元気な妹には軽く注意された。完璧な人間はいないのだ。

イカズチ:療養庭園の主を差し置いて自身のブラコンを茶の間に流したやべー義妹。

W&ラッピー:そろそろこの2人を推してる人達に怒られそう。

メイリン:兄妹の恋愛や身分違いの恋など、禁断の恋愛シリーズ大好きなフェリーンの女性アナウンサー。オリキャラです。因みに、取材後にイカズチからちゃっかり彼女のお兄ちゃん大好き話を聞いて、趣味のやつが捗ったとかなんとか。

感想や批評などありましたら遠慮なく書いてください、お願いします()
そしてアンケートの方もどうか、ご協力の方お願いします…!


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隠れた才能

えー、皆様お待たせしました。

まず、アンケートに御協力して下さった皆様大変ありがとうございました!お陰様で、これから記念話に向けての制作に取り掛かることが出来ます!

さて、それでは今回のお話はリクエスト回のものです。宜しければどうぞ。


 

「アズリウスはゲームとかやらないの?」

 

「え?」

 

「ちょっと気になってね」

 

「えーと…特にやっていないですわね。ドクターはしてらっしゃるのかしら?」

 

「そうだね、結構やってるかな?ヤマトとかやってる人多いし、最近はアーミヤも始めたから一緒に遊んでるし」

 

「そう、ですの…」

 

それは、アーミヤがケルシーに引き摺られてドクターの秘書から物理的に外されて代わりにアズリウスが入ったある日の会話。

ドクターとしては軽い雑談程度の話であったが、アズリウスとしては好意的に思っているドクターとの話が合わないことに少し落ち込み、同時アーミヤがゲームを始めたと聞いて少し焦った彼女はその次の日。

 

 

「ヤマト、この大乱闘スマッシュブラザー○というものの遊び方を教えて頂けます?」

 

「ふぇ?」

 

ドクターを含めた色んな人とやっており、教え方も丁寧で分かりやすいと子供たちから評判のいいヤマトの元へ買ったばっかりのSwitchを片手に朝早くから訪ねた。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「なるほど…それでついはやる気持ちが抑えきれずに来てしまった…と」

 

「はい…ヤマト、ごめんなさい」

 

「ううん、気にしないで」

 

寝起きで頭があんまり働いていない状態でありつつも、アズリウスを迎え入れたヤマトは彼女から事の顛末を聞き納得したような顔で頷き、表面上は冷静っぽく振舞っていたが、内心はめちゃくちゃパニクっていた。

 

(まさか、アッちゃんまでドクターの毒牙に掛かってたなんて…!)

 

ドクターはともかく、他の人が聞いたら「お前が言うな!」とツッコミを入れられそうなことをヤマトは考えているが当人は至って真剣だ。

先に言っておくと、ヤマトはアーミヤから「ドクターと恋仲になるために協力して欲しい」と頼まれており、つい先日もドクターがやっているゲームを教えたばっかり。

 

そう、非常にまずい状況なのだ。これで変にアズリウスにも教えてしまうと、彼女がアーミヤの強力なライバルとして参戦してしまう。というよりこれは完全に敵に塩を送る形となり、もしこれがアーミヤにバレればハイライトoff+圧多めで迫られること待ったナシだ。ヤマトとしてはそれは避けたい未来ではあるが…

 

「…うん、分かった。俺自身そこまで上手くないけどそれでいいなら」

 

「え?よろしいのですか?」

 

「うん、勿論!それじゃあ、朝ごはん食べてからやろっか?」

 

しかし、ケーキを初めとした料理作りを教えてくれるアズリウスの頼みを断るというのはヤマトに出来るはずがなく、彼は腹を括って彼女の頼みを了承し、空腹を告げる音がお腹から出る前にそう告げたのだった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「あっ」←ハンマー暴発

 

『ウリャー!』

 

『ペルソナカウンター!』

 

『ゲームセット』

 

 

「……………」

 

「え、えっと……」

 

それから1時間、ヤマトはアズリウスに操作を教えつつスマブ○をやっていたのだが、彼女の使うジョーカ○に早速ボコボコにされていた。

アズリウスは基本的な操作と空ダや滑り横強といったテクニックやコンボを教わった後の初の実践において、ヤマトが教えてもない空上落としからのコンボをいきなり決め、そしてそれを使った撃墜などを行い初めてにも関わらずそれなりにやっているヤマト相手に3タテ。そして、それからの試合に関しては本当にヤマトは為す術なく完膚なきまでにボコボコにされた。

 

あ、アッちゃん凄い上手いね…これぐらい上手いならもうドクターともやれるよ」(震え声)

 

「え?け、けど…」

 

自信を完全に無くしたヤマトが声を震わせながらアズリウスにそう告げ、それを告げられた彼女が少し困ったような表情を浮かべた瞬間。

 

「子犬ちゃん、話は何となく分かったわ」

 

「「っ!?」」

 

「ヤマトの仇、私たちがとるわよ!」

 

「もちろん!」

 

「ヤマト、コントローラー借りるよ」

 

「へ?」

 

背後から聞こえてきた声に驚き2人が振り返ると、そこにはいつの間にかWらヤマトガチ勢の姿。なんでここに居るんだ、とかそもそもどうやって入ってきたんだとツッコミどころは満載ではあるのだが、ヤマトとアズリウスがツッコミを入れる前にラップランドが彼のコントローラーをサッととり自分のキーコン設定にしてある名前にし、自分の持ちキャラを選択する。

 

「確かにヤマトはロドスでスマ○ラをやってる中では最弱だ…けど、それを見て黙ってられるほどボクらは大人じゃなくてね…悪いけど相手してもらうよ!」

 

「え?あ、はい」

 

「ちょ、ちょっと!アッちゃんはついさっき始めたばっか──」

 

「ヤマト、これは私たちにとって引けない戦いなの。申し訳ないけど目をつぶってくれるかしら?」

 

「ええ……」

 

「ヤマト、私は大丈夫ですからそんなに気に病まないでくださいな。それに、これは色んな人とやれるいい機会ですもの。やらない方が損というものですわ」

 

「へー、やる気は充分みたいだね…いいよ、本気でやってあげようじゃないか!」

 

(……とりあえず、お茶とか出しとこう)

 

そして始まった試合を観戦してギャーギャー騒ぐ女性陣を見て、ヤマトはどこか場違いな気分になりつつも、紅茶と作り置きのお茶菓子を出すためにその場を立ってそちらの準備を始めたのだった。

 

 

 

*****

 

 

『パワーゲイザーッ!』

 

「それは読んでましてよ!」

 

『ペルソナカウンター!』

 

「なにィ!?」

 

『ゲームセット』

 

結論から言うと、ラップランドたちは3タテされた。まず、ラップランドは当初こそクラウ○のガーキャン上Bや横Bで順調にダメージを稼いだが、早くもクセを把握したアズリウスの差し返しや回避読みのスマッシュ、そして復帰をメテオされて3タテ。

次のイカズチの使うセフィロ○は当初こそ武器のリーチや2つの飛び道具、そして下Bでアズリウスのストックを1つ削る直前まで行ったが、ついやってしまった強気の攻めをつかれて調子を崩され、最後は復帰阻止空後を食らって撃墜。

3番手として出たWは特にこれといった見せ場もなく3タテ。というより、投げた手榴弾を空中でキャッチして、それを上手く利用してダメージを稼ぐなどアズリウスの上手さが際立つようなことばっかされ、最終的には神プレイをされキレ散らかした。

そして、4人の中で1番上手いリーシーが扱うテリ○は最もいい試合をしたのだが…彼女の超必殺ブッパのクセをアズリウスが読んで、敢えてパナしたくなるような行動を多めにして後隙を狩ったりされ、最後は先程のようにカウンターをおかれ敗北。

 

正に完敗。これには流石の4人も呆然とするしかなく、その空気にアズリウスとヤマトはオロオロと戸惑うばかりであったが。

 

もう1回…

 

「え?」

 

「もう1回やるわよ!こうなったら、勝つまでとことんやってやるわ!!」

 

「…まあ、確かに負けっぱなしてのは性にあわないね」

 

「あら、同じく意見が一致したわね」

 

「本当に奇遇だね、私も同じ意見」

 

完全にマジの目になったリーシーがそう言い放ち、周りの3名も同調しやる気MAX!といった雰囲気になったところで、我に返ったヤマトは手をパンパンと叩き。

 

「それよりも、もうお昼近いからその話は後にしようよ。ね?」

 

「「「「でも…っ!」」」」

 

い い よ ね ?

 

「「「「はい…」」」」

 

(……ヤマトがあの4人に言う事聞かせるって、結構レアな場面ですわね)

 

ヤマトの発した圧によって、珍しく言うことを聞いたガチ勢を見てアズリウスは一人感動するのだった。

 

 

 

そして後日、モンハ○ブームがロドスに巻き起こったことでアーミヤにアズリウスの件を聞かれながらも、モンハ○を教えるヤマトの姿があったとかなかったとか。




テリ○でコマンドダンクで暴れまくってたせいでルフ○の立ち回り忘れました()

キャラ紹介

ヤマト:何故か一向にスマブ○で皆に勝てない本作主人公。なお、教え方に関しては結構大好評。モンハ○ブームが起こった時も、一足先に各武器の動き方を覚え、それを聞かれたら皆に教えていた。アーミヤ代表怖い。

アズリウス:スマブ○が強いのは本小説オリジナルなんですが…何となく得意そうなイメージが何となくあります。なお、その後ドクター相手に善戦するも敗北。だが、上手いことを凄い褒められた上に約束も取り付けられたので結果オーライ。

ガチ勢の皆さん:弱いように思えるが、実は実力的には魔境手前ぐらいあるためめちゃくちゃ上手い。そしてその4人相手に3タテしたアズリウスを倒したドクターの実力は…

アーミヤ:本小説本編√において色んな意味でのラスボス(ヤマト視点)

感想や批評などありましたら、作者の励みや作品の質の向上にも繋がるため、是非お願い致します。

またリクエストの方もR18含めて活動報告にてやっておりますのでそちらの方も是非!


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アイスとオオカミとスルト

すみません、少しブランク気味で投稿がかなり遅れてしまいました。
その上、今回の話はリクエストさせてもらった話だったのですが中々展開が思いつかず、いつもより短めです。


 

「ヤマト、今日のアイスクリームはなんだ?」

 

「今日はシンプルにバニラ味のやつだよ」

 

「お兄ちゃーん!私の分はー?」

 

「イカズチの分もちゃんとあるから、そんな急かさないの」

 

ヤマトはスルトとイカズチに左右を挟まれる形でロドスの廊下を歩いており、それを見た男性オペレーターは「ああ、またか」というよな呆れたような目を、女性オペレーターは微笑ましいものを見るかのような目で、そして一部の変わり者は息を荒らげて見る中、その渦中のヤマトは遠い目をしながら、何故スルトに絡まれるようになったのか、思い返していた。

 

 

 

****

 

 

 

 

既に知っている人が多いと思うが、ヤマトの趣味は料理だ。そして彼がどれだけ料理が好きなのかというと、厨房に立っている時はどんなに忙しくても意識しなければパタパタと尻尾が上機嫌そうに振られるぐらいだ。

 

「~♪」

 

そしてその日ヤマトは、イカズチからのリクエストもあって、子供たちの分を含めアイスクリームを作っていた。製造所の仕事のせいで時計の針は15:30を指しているものの、夕飯を作るのは17:00からなので、厨房内には誰もおらず、そのためヤマトは尻尾を振って機嫌良さげに鼻歌を歌いながら作業をしていた。

 

(よし、あとはバニラ、チョコ、ストロベリーは1時間冷やせば完成だね!あとは冷凍庫に入れるだけなんだけど…予定より時間、余っちゃったな…)

 

冷凍庫にアイスクリームの入れて時計を見たところで、ヤマトは想像以上に作業がスムーズに進み終わっていたことに気が付き、どうしようか考えたところで、部屋にストックしてあるお茶菓子が少なくなっていたことを思い出した。

 

(…そうだ、トッピング用でクッキーも少し多めに作ろう!…そしたら、ついでに前に調べたピーナッツバターカップも作ってみるのもありかな?材料も前に纏めて買ったし…よし、それなら♪)

 

そうと決まれば善は急げだ、と言わんばかりにヤマトはエプロンを外すと機嫌良さげに調理場から出ると、早速必要な材料を取りに鼻歌を歌いながら自室へと向かったのだった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

「………」

 

(えっと…次にこれを砕いて混ぜて…)

 

「…………」

 

(……し、視線が凄くて集中できない……)

 

 

必要な材料を持って戻ってきたヤマトはすぐにクッキーとピーナッツバターカップの2つを作りにかかったのだが、途中から視線を感じ、その視線の主に声をかけようか迷ったものの、中々声を出すことが出来ず結局その視線に気づいていないふりをして料理を行っているのが現状。無論、鼻歌なんて歌う気分になれるはずがなく、尻尾も垂れ下がっている。一応、視線からは敵意といったものは感じないのが救いではあるが。対処としてはこのまま放っておく、というのもあるがこうも強烈な視線を浴びせられ続けるのは精神衛生上宜しくない。

そのため、ヤマトは丁度調理の方があとはクッキーはオーブンで焼く段階、ピーナッツバターカップは冷蔵庫に入れる段階になったところで、勇気をだして声をかけることにした。

 

「…さっきから、こっちを見てるが何か用か?」

 

「……思ったより、声をかけるのが遅かったな」

 

その声に反応して出てきたのはスルトであり、ヤマトは予想外の人物の登場に驚いてしまった。それもそのはず、たまに作戦で一緒の部隊にこそなるものの話したことなんて、片手で数える程しかない上に彼女の気に触るようなことをした覚えがないからだ。

そのため、顔にこそ出てないものの戸惑うヤマトに対して、スルトは一瞬だけ視線をとある方向──冷凍庫に向けた後、狼狽えるヤマトに話しかけた。

 

「アイスクリームを作っていたよな?」

 

「あ、ああ…」

 

彼女の発言を聞いて、アイスクリームを作ってる時から見られていたのかと、ヤマトは考えた時、ノリノリで花歌(鼻歌)を歌いながら作ってるところも見られていた可能性があるということに気がつき、羞恥心で今すぐ部屋に返って布団の中で丸くなりたい衝動に駆られるも、何とか堪えてその場に留まる。

 

(いや、まだ鼻歌歌ってたことはバレてない可能性はあるんだ。大丈夫、先に話を逸らせば──)

 

「そういえば、鼻歌を歌いながら作っていたな…尻尾も凄い勢いで振ってたし随分と上機嫌だった上に、顔も凄い気の抜けたというか…こう、ふにゃっとした感じというか…正直、同一人物かどうか疑うレベルで普段と違ってたな」

 

(思いっきり聞かれてたし、見られてたー!)

 

話を逸らそうとした瞬間、スルトにトドメを刺されたヤマトは鼻歌を歌ってノリノリでアイスクリームを作っていたのがバレたこと、しかもそれがあんまり話したことも無ければ、当然そんなに交流がないスルトということもあり──

 

「その、だな。出来たらお前が作っていたアイスクリームを味見──」

 

「くっ、殺せ…!」

 

「いや、待てなんでそうな…って顔がすごい赤いじゃないか!?熱でもあるのか?」

 

「もう、切腹するしか…!」

 

「落ち着け!バターナイフじゃ腹は切れないし、そもそも腹に刺そうとするな!!…くっ、やけに力が強い…お前、さてはアーツで身体能力を……!ぐっ、くだらない事にアーツを使うな!!」

 

錯乱したヤマトの突然の奇行にスルトは驚きつつも、恥ずかしさで顔を真っ赤にしてバターナイフで自害しようとする目がグルグル状態のヤマトを押さえつけにかかったのだった。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

(──それで、その後にただアイスクリームを食べたくて声をかけたってことが分かって、イカズチに内緒で先に食べさせてあげたらよく俺のところに来るようになったんだっけ?……っ)

 

そして時は現在に戻り、ヤマトは当時のことを思い出している中、勝手に錯乱して暴走したという黒歴史が作られていることに気が付き、むず痒い感覚に襲われるもののここでまた変な行動をしたら、今度はこの場にいる全員に醜態を晒すことになるので何とか堪える。

 

「ヤマト、早くアイスクリームを…」

 

「はいはい、ちゃんと持ってくるから…」

 

「いや、お前の部屋で食べればいいだけの話だろう。イカズチもそう思うだろ?」

 

「(この女は私のレーダーが反応してないからヤマトお兄ちゃん狙いじゃないわね…ならいっか)そうだね、私もお兄ちゃんと一緒にいたいし!」

 

(……なんか、妹が2人に増えたみたいだ)

 

ヤマトはアイスクリームの時だけ子供っぽくなるスルトに対し、苦笑いを少しだけ浮かべつつも、彼女の拠り所の1つとして慣れていることに対してちょっとだけ、嬉しく思ったのだった。

 

 

 

 

なお、この後たまたま非番であったレッドやWも入ってきて部屋の中が騒がしくなるのを、この時のヤマト達は知る由もなかったのであった。

 

 

 

 

****

 

 

 

ヤマトについて?…あいつは第一印象と今の印象とのギャップが凄い感じだな。

初対面はとある作戦で一緒になった時だったんだが、無口で人と馴れ合うのが苦手な部類で、あと冷たいイメージが強くてな。私も特に興味がわかなかったから、そんなに話すことは無かった。

 

それが変わったのはつい先日、ロドスの中をブラブラ歩いてたら鼻歌が聞こえてきてな。気になってそこに足を向けたら、ドアが空いてる厨房から鼻歌をノリノリで歌いながら、そして凄い機嫌良さげに尻尾をフリフリと振ってるヤマトを見てな。ちらっと見えた横顔も凄いふにゃっとした感じで、あの時の同一人物かどうか疑うレベルで印象が違ったな。

……まあ、その後にも色々あって、あいつの冷たいイメージはただ緊張して張り詰めてたから、っていうのが分かったわけなんだが。

 

結局、今はどう思ってるか?…か。ふむ…まあ、悪いやつではないな…おい、何故そこでニヤつく。いいか、別にアイスクリームを作ってくれたり、食べさせてくれるからという理由ではないからな?本当だからな?




喧騒の掟復刻を記念して、ペン急ルート軸のヤマト達の喧騒の掟の話を書こうかちょっと迷ってたり。

キャラ紹介

ヤマト:料理が趣味の女子力高めオオカミ。スルトにノリノリで鼻歌を歌いながらアイスクリームを作っているところを見られて、心に大ダメージを負って以来、なるべく鼻歌は歌わないようにしてる。好きなアイスの味はチョコ。

スルト:星六前衛にして、S3がやべー性能のやべーやつ。色々と謎が多い人物でもあり、ボイスからしてちょっと近寄り難いようなイメージを受けるが、そのボイスでアイスクリームが好き的なことを言ってたりと、結構可愛い。特化3の道が長い()

イカズチ:アイスクリームを一気に食べて頭がキーンとなった。

レッド:アイスを食べながらのモフモフは至高だとか。

W:抜けがけの気配を察知して、それは許さんとばかりに乱入。無事抜けがけは阻止した。好きなアイスの味は勝手なイメージですけどストロベリーだと思います。

そういえば、字数ってどれくらいあると読みやすいんですかね?4000~5000はやっぱりあった方がいいんでしょうか…


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外伝:喧騒の掟(ペン急‪√‬)上

皆さん、久しぶりです…とりあえず生きております。

ここまで投稿に間が空いたのには理由があり、1つはスランプに陥ってしまったこと。もう1つはウマ娘の沼にハマってしまったことです。

2つ目に関しては完全に自分の自制心のなさのため、読んでくださっている皆様に本当に申し訳ないです。
これからは前みたいに週一投稿できるように精進して参りますので、どうか暖かい目で見守ってくだされば幸いです。

それでは、長くなりましたが今回はペン急ルートでの喧騒の掟の話となります。
それではどうぞ。


「はぁ……」

 

 ペンギン急便のトランスポーターであるヤマトは、龍門のとある箇所をバイクで走りながらため息をついた。

 別に、1人だけのご指名依頼を任されたから寂しくて溜息を吐いたわけではないことでもないのだが、一番の理由は今日入ってくる新しい仲間となるバイソンという少年が振り回されてないか、不安で仕方ないというものであった。

 

 とはいっても、ヤマト的にはテキサスとソラの2人ならバイソンを困らせるようなことはしないと考えており、やってくれそうなのはエクシアとクロワッサン、そして皇帝の3人だろうと予想していた。実際、ヤマト自身も入りたての頃にはこの3人に色々と苦労させられた。

 

 ──『ヤマトくん、これ着てみなよ! 絶対似合うから!』

 

 ──『これを着て、写真撮られるだけやから!』

 

 ──『安心しろ、絶対にお前はメイドコス似合うし売れる。この俺が保証してやる!』

 

 

(…………なんか余計不安になってきた)

 

 ペンギン急便に入ってやっと普通に話せるようになったくらいの時に味わった黒歴史を思い出したヤマトは、バイソンも同じような目にあってしまうのではないか、と余計に心配になってきた。というより、あの3人ならバイソンが困るようなことをやりかねない。ヤマトはため息を軽く着きながらも、ミラー越しに先程から自分を追ってきている標的がちゃんと着いてきてるのを確認すると、人気のない廃工場のど真ん中にバイクを停めてヘルメットを脱いで降りる。その直後に、数台の車が廃工場内に入ってきて急停車すると、中から黒い服を着た男たちがゾロゾロと降り始め、ヤマトにそれぞれが互いに距離をとって持っている武器を向け、その中の一人が余裕たっぷりでありながらも、気を抜いていない様子でヤマトに声をかける。

 

「まさか、お前自らこんな場所に案内してくれるとはな……後始末が楽になるから感謝するぜ……」

 

「……もう勝った気でいるのか? (てか、アンタら誰?)」

 

「数は俺らが圧倒的に上、隠れる場所も近くにはない、そしてお前は変な剣と拳銃による変則的な中近距離戦闘、特にタイマンを得意としているが、あの剣を今は持ってねえ……こんなに条件が揃ってるのに勝てないと思えない理由を教えて欲しいぐらいだな……!」

 

(……まあ、普通はそう思うか……って、なんで俺の事そんな調べてるんだろう? というより、なんでそんなベラベラ喋るんだろう……)

 

 男たちの言い分にヤマトは内心で疑問に思ったり一応は納得すると同時に、まだ二流だなと結論づける。確かに、ヤマトの得意な戦闘スタイルは本当で、その結論を抱くまでに色々と情報収集などをしたのだろう。だが、彼らはヤマトの手札はそれだけと判断し心のどこかで僅かに油断している。それが、ヤマトが彼らを二流と判断した理由であった。

 

(ボウガン3のナイフや警棒が7の計10……はあ……なるべく使いたくはなかったけど、早く終わらせないといけないし、出し惜しみしてやられたら意味無いもんね……)

 

「さて、悪いがお前はここで……!?」

 

「……聞きたいことがあるからな、手短に済ませよう」

 

 ヤマトは左腰のホルスターからシラヌイが作成した源石剣の柄を取り出して軽く振りながら刃をだすと、先程まで笑みを浮かべていた男たちの顔が固まる。そして、それを逃すはずもなくヤマトは狙いを敵の狙撃手に定めると、アーツで脚力を強化して跳躍。前衛の男たちを飛び越えてボウガンを持っている男の1人の前に着地する同時に、源石剣の出力を最大にまで上げてボウガンに一閃。すると、ボウガンはまるでバターのように斬れ、その一部が切断面を赤熱化した状態で地面に落下した、と同時にヤマトは男の鳩尾に強烈な蹴りを食らわせる。

 

「お、……お、ご……」

 

「な、このやろう!」

 

「遅い」

 

 お腹を抑えながら白目を剥き倒れる仲間を見て、周りの男たちはすぐさまヤマトに向けて攻撃を仕掛けようとするも、その頃にはヤマトは既に別の狙撃手に狙いを定めており、その男の手と頭に向けてゴム弾が装填された拳銃を発砲。男がボウガンを落としたと同時に近づいて膝蹴りを顎に食らわせて気絶させる。

 

(ボウガンはあと一人。それを片付ければ、リスクは減る)

 

 ヤマトは背後から放たれたボウガンの矢をしゃがんで躱すと、すぐにボウガンを撃った男へ拳銃を発砲して牽制しつつ、スナイパーを守るように前に出てきたナイフ持ちの男の1人の攻撃を躱してカウンターの蹴りを放とうとしたところで、自身の直感が命ずるがままにしゃがむ。すると、背後からいつの間にか接近していた男が横に振ったナイフがヤマトの頭上をスレスレで通過し、追撃の射撃が飛んでくる前にヤマトは地面を蹴って横に転がって距離を取ってから体制を整える。

 

(……ふむ、それなりの連携は取れる程度の練度あるのか)

 

 これは少し見誤ったとヤマトは自身の未熟さを痛感しながらも、この程度のレベルなら問題ないと判断し、そこからどうやって相手を倒すかをすぐさま考える。

 

(前衛のヤツらは残った狙撃手を守るために更に気を張る。そうすると最初みたいな不意打ちは通らないと見ていい。そうすると、狙撃手を放置することになるけど、普通のやり方じゃすぐには片付けられない……仕方ない、向こうにはちょっとだけ我慢してもらうか)

 

 ヤマトはそこまで考えをまとめると、拳銃をしまって源石剣を右手に持ったまま間合いを詰めるため男たちへ駆け出す。その直後、ヤマトの顔面へボウガンの矢が放たれ、ヤマトはそれをいとも容易く源石剣で上に軽くはじき飛ばし、その弾き飛ばされた矢を跳躍して取ると呆気に取られる狙撃手の右腕に向けてキャッチした矢を投げつける。

 

「ぐわああっ!」

 

「ヨルン!」

 

「矢を弾いて、投げ返しただと……!?」

 

「余所見とは余裕だな」

 

「え? ……うわあああっ!」

 

 普通じゃ考えられない行動を目の当たりにした男たちは動揺してしまい、そしてそんな男たちをヤマトが見逃すはずもなく彼らが体制を整える前に彼は無事に制圧したのだった。

 

 

 

 ****

 

 

 

 

「そういえば、ペンギン急便にはヤマトさんっていう男性の方がいらっしゃるはずなんですけど、どんな人なんですか?」

 

「……まだ会ってなかったのか?」

 

「? ええ、そうですけど……」

 

 大地の果てにて、襲ってきたシチリアのマフィアたちを追い返して一息をつけた頃、バイソンは未だにあっていないペンギン急便の男性社員の1人であるヤマトがどのような人物なのか気になり聞くと、ソラの手当を受けているテキサスが予想外のような顔をして聞き返し、バイソンはそれを不思議に思いながらも頷き返す。それを見たペンギン急便のメンバーは納得した様子で、各々の印象を話し始めた。

 

「アタシの印象としては、弄りがいがあって女装が似合う面白い子かな!」

 

「え」

 

「そうそう! ヤマトはんは身長も男としては低いくせに、体のバランスが良くてなぁ。メイド服着せた時は、ほんまに女の子かと思ったわ!」

 

 一体どういう経緯でそんな目に合わされてしまったのか。バイソンは戸惑いや疑問で頭がいっぱいになっていく一方で、男としての尊厳が傷つけられたであろうヤマトなる人物に合掌していると、テキサスとソラが続けて話す。

 

「私からは……そうだな、一見頼りなさそうだが頼りになる仲間、といったところか」

 

「私もテキサスさんと同じですかね~。あ、でも付け加えるなら初めての後輩だから、ちょっと弟みたいな感じもあるかな?」

 

「ああ、やっとまともな意見が出てきた……」

 

 テキサスとソラの2人からの話を聞いて、少し安堵しつつ軽くそのヤマトなる人物について纏める。そして、出来上がったのは……

 

(女装が似合ったり見た目的には頼りない感じだけど、本当は頼れる人ってこと?)

 

 なんとも言えない印象だった。というより、全く容姿が思い浮かばないどころか、余計にヤマトという人物がどんな人間なのか分からなくなってしまった。

 

「ま、まあ、バイソン君とは結構仲良くなれると思うよ? ヤマト君、優しいし、結構素直でいい子だし……」

 

「そ、そうですか……」

 

 バイソンの微妙な表情を見たソラがフォローを入れられ、バイソンは苦笑する。結局、バイソンはヤマトのことは「直接会ってから判断すればいい話だ」と判断し、近いうちに彼に会えること待ち望むことにした。

 

 

「あ、因みにその時のヤマトはんの写真集買わんか? 結構大好評で在庫あんまりなくて値上げしてるんやけど、今回は社員割引として500龍門……」

 

「(いら)ないです」

 

 バイソンはちょっとだけ不安になった。

 

 

 

 ****

 

 

「へっぷし!」

 

「あら、風邪?」

 

「いや、それはないと思う。ちゃんと布団被ってるし……」

 

「うーん、そしたら誰かがヤマトのことを話しててそれでくしゃみが出たんじゃない?」

 

「噂されたらくしゃみするって、そんな迷信みたいな……へっぷち!」

 




Q.なんで普通に矢をはじき飛ばしてるんですか?

A.【先生】の教えじゃ必須科目だったから+持ち前の感の良さと反射神経で対応出来る範囲だから

キャラ紹介

ヤマト(ペン急):この小説のオリジナル男主人公。ヤマトだけなんかハブかれてるのは、ご指名の配達依頼を受け、そしてその依頼人がとある白黒ループスだったせいで中々帰れなかったから。つまり、遅刻。なお、合体剣は龍門内では職質されたり、周りから変な視線を浴びせられるのを防ぐため基本的には持ち歩かない。なので、メインウェポンはシラヌイ特性源石剣モドキ。因みに胸のサイズは絶壁。

ペンギン急便の皆さん:この時点ではまだヤマトに異性の好意を向けてはいない。強いて言うなら、テキサスがギリ沼に片足突っ込んでるくらい。

モスティマ:実はヤマトが入社してから1度も会ってない。

バイソン:まだ見ぬヤマトがどうかマトモであることを祈っている(女装の話はスルーしつつ)

ヤマトを指名した白黒ループス:いったい、○○○ランドなんだ…?

W&イカズチ:私の出番は?



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外伝:喧騒の掟(ペン急‪√‬)下

どうして、投稿がこんなに遅いんですか?(電話猫)

…はい、また一週間以上空いてしまい大変申し訳ございません。
多分、これからはリアルの影響もあって投稿頻度がおちてしまうと思います…なので、大変申し訳ないのですが、これまで以上に気長に待ってくださると幸いです。

さて、喧騒の掟の後半の方、どうぞ。


「うっ……ぐっ……」

 

「ふー……これで何回目なんだろう……?」

 

 ヤマトは呻き声をあげて倒れている男たちを見下ろしながら、疲れを吐き出すかのようにため息を吐く。

 現在に至るまでにヤマトは最初に襲ってきた男たちと同じ服装の者たちと何度も交戦しており、ついさっきので5回目になる。正直、5回も襲撃されれば、幾多の戦場を経験した元傭兵であるヤマトと言えど肉体的にも精神的にも疲労を覚える。

 

 だが収穫ももちろんあった。

 

(まさか、俺が入る前にあったシチリアでの喧嘩が原因とはね……)

 

 平和的な方法で聞いた話によれば、どうやらヤマトがペンギン急便に入社する前にとあるマフィアといざこざがあったようで、自分を襲ってきているのはそのマフィアの者たちで、復讐とペンギン急便の立場を自分たちのものにしようということで動いている、とのことだった。

 

(まあ、これが嘘だったらどうしようもないんだけど……でもそういうことなら俺のことを戦い方まで知ってること、襲撃をしかけてきてることにも辻褄が通る)

 

 正直、頭が痛い案件であった。よりにもよってまだ見ぬバイソンが職場に入る初日にこんなことが起こるという最悪のタイミング。

 

 別にヤマトはバイソンの戦闘力のことは心配していない。事前に聞いていた話や彼の写真からして、自分の目で見てもそうそうやられる程弱くはない。むしろ、自分が相手する場合少しだけ本気を出さないと時間がかかると思えた程だった。自分のペースが乱されなければ。

 

 写真越しとはいえ、バイソンの目を見た時ヤマトは何となくであるが、バイソンはいい意味でも悪い意味でも「真面目」なのではないかと感じていた。もし、そうであれば、ペンギン急便のメンバーのハチャメチャ具合を見て動揺したりと何かしら精神的に影響を及ぼすのは難なく予想可能。

 

 そうなってしまえば、瞬時の判断が遅くなってしまったり、迷いが出てしまう可能性が高い。ヤマトは、そのせいでバイソンだけではなくその彼をフォローしようとしたテキサス達の身に危険が及ばないかが心配であった。

 

 そのため、先程からテキサスを始めとしたペンギン急便のメンバーに連絡を取ろうと連絡端末を弄っているのだが。

 

「……ダメだ、また繋がらないし、返信も来てない」

 

 結果はどれも著しくなく、それがどういったことを示しているのかをヤマトは理解しており、焦りと何も出来ていない無力な自分への苛立ちが募るばかり。

 

(どうする? 無闇矢鱈に探しても時間の無駄だ。かといって、何もしないのはダメだ。聞き込みするにしても、時間がかかりすぎる。どうすれば──っ!)

 

「やあ、こんなところで何してるんだい?」

 

「!あんたは──」

 

 必死に打開策を考えてる最中、後ろから声をかけられ振り返ったヤマトは、その声の主が予想外の人物であったため驚愕の表情を浮かべた。

 

 

 

 ****

 

 

 

 

「さて、見せてもらうとしようか。エンペラーがどんな変わり者を飼っていたのかを」

 

「──っ! 剣が砂に触れた瞬間折れただと……? 厄介な」

 

「そうじゃ。これのおかげでワシに剣を向けようとする者は少なくてな……」

 

「それならこれはどうだ!」

 

 戦闘態勢を取った鼠王に向けて振り下ろされたテキサスの源石剣による斬撃は、鼠王を纏うようにある砂に触れた瞬間に刃が折れる結果となり、それを見たエクシアは自身の愛銃のトリガーを引き銃弾の雨を浴びせる。

 

「残念じゃが、銃弾も効かないのじゃよ」

 

「やっぱりダメかー!クロワッサン、任せた!」

 

「ダメや。うちのハンマーも砂に絡み取られとる。ビクともせえへんわ」

 

 しかし、エクシアの銃を持ってしても鼠王の砂の盾を打ち破ることは叶わず、突破できなかった銃弾が地面に転がる。予想していた現実にエクシアは悪態を着きたくなる気持ちを抑え、クロワッサンに声をかけるも彼女のハンマーは鼠王が撒き散らしている砂によって絡め取られており、彼女の力を持ってしても全く動かせないほど強力に絡められていた。

 

「無駄な足掻きじゃよ。この程度かの?ペンギン急便」

 

「まだまだ、こんなものじゃないよ……それに、1人忘れてるんじゃないかな?」

 

「む……? ──っ!」

 

 プレッシャーを更に強く放ちながら、そして余力をまだ残しているのが一目で想像つくような態度で告げる鼠王に対し、モスティマは軽い調子で返し、鼠王の後方に向けて軽くウィンクする。

 モスティマの場と状況に合わない仕草に鼠王は怪訝そうな目を向けるも、その直後背後から急に思わずゾッとするような殺気を感じ、振り返った瞬間、鼠王の周りを囲むように6本の形状が違った剣が浮いていた。

 

「む……?」

 

「え……」

 

 それを見て困惑する鼠王とバイソンを他所に、テキサス達は安堵の息を吐き、エクシアはにへらと表情を崩してこの現象を巻き起こした人物の名を呼ぶ。

 

「もう、大遅刻だよ。ヤマト君!」

 

「……はあっ!」

 

「ふっ!」

 

 その直後、目に止まらぬスピードで浮いた剣を手に取っては刃にアーツを流し込んでから鼠王に斬撃を加え、そしてすぐにその場を離脱してまた別の剣を取ってを5回繰り返し、最後の一撃に合わせるようにモスティマがアーツを1発だけ放つと、鼠王の砂の盾はまるで風が吹いたかのように霧散した。

 

「「今だ、エクシア(エクねぇ!)」」

 

「オッケー、弾幕射撃ターイム!」

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

「お疲れ様、バイソン」

 

「あ、ヤマトさん……」

 

 鼠王を退け一連の騒動の流れを推測したテキサスの話を聞き終え、そして自身の執事を話をしたあと散歩して迷子になったところでバイソンはヤマトに声をかけられた。

 今のヤマトは鼠王と対峙した際に持っていた合体剣を持っておらず、表情を含めた雰囲気もあの時とは違い柔らかいものであり、ヤマトはバイソンの隣に立ち少しだけ明るくなり始めた空を黙って目を向け、何を話していいか分からないバイソンも何となくそれに倣って空を見る。

 

「……良い目になったな」

 

「え?」

 

 唐突に隣にいるヤマトから告げられたバイソンは思わず声を零して、ヤマトの方に視線を向けるが、当の本人は顔をぷいっと逸らして先程と同じように空を見つめる。が、何故いきなりあんなことを言ったのかが何となく気になってしまったバイソンは、ジッとヤマトの横顔を見る。

 

「…………」

 

「………………」

 

「……最初、君の情報が乗ったデータで君の写真を見た時と比べて、真っ直ぐで振り切れた目になってると思ったんだ」

 

「…………」

 

「……正直心配していたけど、君は俺が思っていた以上に強くて、しっかりしたトランスポーターみたいだ」

 

「.そうですか」

 

 バイソンの視線に耐えきれなくなったヤマトは視線を隣で熱烈な視線を向ける彼に戻して、先ほどの発言の理由を話し、そして彼を一人前のトランスポーターとして認めているかのようなこと述べ、それを聞いた本人は少しだけ嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「.ともかく、君がうちにまだ残るのか、別の道に歩むのかは分からないが……その……なんだ……」

 

「?」

 

「……初めての後輩なのは事実だから、困ったらいつでも頼ってくれ。可能な限り力になる」

 

(……ああ、なるほど)

 

 言いたいことを言い終えたヤマトは自分でも恥ずかしいことを言ったのを自覚しているようで、恥ずかしげに顔を赤くしながらそっぽを向く。

 その姿が、鼠王と退治していた時に見た頼もしい姿から遠く離れていたことにポカンとしつつも、バイソンはテキサス達がヤマトのことをあんな風に言っていた理由が何となく分かった。

 

(……僕に、こんなお兄ちゃんみたいな人がいたら良かったのにな)

 

 バイソンはフッ軽く笑みを零し、ヤマトと一緒に日の出を見届けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 なお、この後絡んできたチンピラを2人は息のあったコンビネーションで返り討ちにし、その帰り道でペンギン急便に対するとあることで盛り上がるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ……全くボクの約束すっぽかすなんて酷いじゃないか」

 

 フォルテの少年と仲良さげに歩いている茶髪のループスの青年を少し離れた物陰から見ながら、服を赤く染めている彼女は拗ねたように零す。

 正直、今すぐ約束をすっぽかしたループスの青年に文句を言いながら自分達にとっての楽しいデートと洒落こみたいところではあるが、とある情報が手に入ったことと、青年の珍しい照れた顔を見れたということ、そしてちょっとした憂さ晴らしが出来たのもあってか、彼女は今回だけは許すことにした。

 どうせ、彼とはこれからも定期的に会えるのだし、よくよく考えてみれば彼の剣を持ってきて、更に仕事仲間の場所と状況を教えてあげたという恩を売りつけることも出来ているのだ。(もっとも、自分が彼の剣を持っていたことに対して、彼は露骨に引いたような態度を取ったのは解せなかったが)

 

 

(そうすると、今はここで油売ってる場合じゃないね。何を彼に要求するか考えておかなきゃ)

 

 彼女はそう纏めると、その場を去る前にもう一度ループスの青年の方を見やる。すると、こちらの方に顔を向けている青年の姿が目に入る。

 

(ふふ、やっぱりボクらは気が合うみたいだね……それじゃ、また今度ね)

 

 彼女は今度こそ彼に背を向けて歩き出す。頭の中には、彼の仕事場の先輩であるループスの女性とその彼のことしかない。

 

 ──そうだな、まずは手始めにテキサス達にヤマトの傭兵時代のこと教えてあげようかな? 

 

 ──ボクはその過去を受け止められた上でヤマトのことを想えてるけど、果たしてテキサスにはそれが出来るかな? 

 

 ループスの女性──ラップランドはこの後に起こるであろう出来事に想いを馳せるのだった。




最後が怪文書めいてて、もう目が当てられない…

キャラ紹介

ヤマト(ペン急):前回の話の後に、シラヌイの隠れ家にバイクを預け、それから襲いかかってきたマフィア達を返り討ちにしていた所やべーループスと遭遇し、彼女の情報を元に遅れながらも現場に到着し、鼠王の砂の盾を破壊するのに尽力した。何故か、バイソン君に対してはコミュ障のよるあがり症の症状があんまり出なかったため仲良くなれたようで、後日嬉しそうに尻尾を振っているのを仕事先の先輩達が目撃したとか。

バイソン:今回の1件で吹っ切れた男の子。ヤマトのことはこの後交流を重ねていくうちに、ヤマトの無自覚なお兄ちゃんムーブの餌食となり無事彼を兄と慕うように。どけ、僕は弟だぞ!とは言ってないためセーフ。

テキサス:なんか、嫌な奴の匂いがヤマトからしてちょっとだけ機嫌が悪くなったが、テキサス専用ヤマト特性クッキーが献上されたため期限は良くなった。チョロすぎぃ!

エクシア:モスティマ…

クロワッサン:後日、バイソンにもメイド服着させようと計画してるのがヤマトにバレた模様。

ソラ:バイソン君がソラ姉って呼ぶようになってから、ソラ姉って呼んでくれなくなっちゃった(´・ω・`)

ラップランド:この時期からヤマトへの好感度は限界突破してるやべーやつ。どこからか、ヤマトの傭兵時代のことを知りそれを知ってヤマトが最初会った時遠距離武器を持ってなかった理由だけでなく、それがトラウマになってるというのを察した。これをテキサス達にばらまいて、それを知った彼女たちがヤマトを拒絶したところをGETしようと画策中(計画は失敗する模様)
なお、ヤマトはこの日合体剣を自分が住んでる部屋にある専用のケースにしまっていた。なのにラッピーが持ってこれたということはつまり…?


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ヤマトから見たドクターの修羅場と好感度が分かるメガネ

おまたせしました。今回はリクエスト+流行りのものを混ぜた回です。

これからの投稿頻度はこんな感じで遅くなっていくと思いますので、申し訳ないですがご理解の方よろしくお願い致します。

それでは本編どうぞ。


「好感度が分かるメガネ…ですか?」

 

「ああ、開発部のヤツらが二徹のハイテンションで作り上げた傑作(ゴミ)だ」

 

「なんて物を作っ…待ってください、今ゴミっていいました?」

 

「気の所為だろう。非番なところ申し訳ないが、お前はこの眼鏡をかけた状態でドクターを一日観察してくれ」

 

「???」

 

 早朝、部屋でくつろいでいたらレッドの手によってずた袋を被せられて拉致られ、そしていきなりロドスのトップの1人からとんでもないものを紹介され、そして変なことを頼まれたヤマトの頭の中は、何故か分からないが宇宙が広がっていた。

 

 それもそうだろう、上記のようなことをオフだからということでたまにはイカズチと二人でどこか行こうとした矢先にやられたのだ。平然と受け入れろというのが難しい。

 が、ヤマトは時間を掛けながらもこれまでの流れとケルシーの話を無理やり納得させ。

 

「嫌です」

 

残念ながら、決定事項だ。お前の口座に報酬も送ったからやるんだ」

 

(職権乱用…いや、理不尽では…)

 

「だが、お前一人だけにやらせるほど私も鬼じゃない。記録係として──「ケルシー、連れてきた」ふむ、丁度いいな」

 

 ケルシーがヤマトの拒否を突っぱね、もう1人犠牲者の名前を告げようとしたところで、レッドが「んー!んー!」とバタバタ暴れるずた袋を肩に担いだ状態で部屋に入室。

 ヤマトは声と僅かにはみ出ている足と尻尾を見て、何となく誰が連れてこられてしまったのか予想がつき、冷や汗を流す。

 

 ──そして、レッドはその人物を地面に下ろしてずた袋を開けると。

 

「んんん!?(ヤマト!?)」

 

「…………」

 

「では改めて、記録係はフロストリーフだ。お前たちならレッドと一緒にこの仕事をこなせるだろう」

 

「え?」

 

「レッド、頑張る」

 

「んー!んー!(いいから早く解いてくれ!)」

 

 猿轡を付けられているだけではなく何故か簀巻きにされてビタンビタンと暴れているフロストリーフ、目の隈と目の雰囲気がやばい状態のケルシー、むんっと両拳を握るレッド。

 ヤマトはこの惨状から逃げたい衝動に駆られたのだった。

 

 

 

 ****

 

 

 

『テステス…ヤマト、聞こえてるか?』

 

「うん、聞こえてるよ」

 

 そんな惨劇からしばらく経ってから、ヤマトは眼鏡をかけた状態でロドスの中を歩き、そしてフロストリーフとレッドは別室から眼鏡に埋め込まれたマイクロカメラから映し出されている映像をモニターに映して見ていた、

 

『それにしても、マイクロカメラだけじゃなく通話機能までついてるとはな…無駄に高性能じゃないか?』

 

「確かに…これ、本当に徹夜のハイテンションで作ったのかな?」

 

『……正直、作れそうだと思えてしまうのがあいつらだからな…それにしても、好感度は60~70台が殆どみたいだな』

 

「そうだね。60台が友人程度、70台が信頼しているレベルだから、ドクターってやっぱり皆から慕われてるんだね~

 

「ヤマト、ちょっとよろしくて?」

 

 そんなことを話しながら廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。そして、その声の主はヤマトにとって聞きなれた人物であり、ケーキ作りの師匠の声。

 ヤマトは自分がやべーメガネを掛けているのを忘れてしまっているのか、何事もないように振り返り。

 

「アッちゃん、俺に何……か、よ…う?」

 

「あら、メガネを掛けているとは珍しいですわね」(1500)

 

「あ、ヤマトじゃん」(65)

 

『………は?』

 

『1500…最高記録』

 

 予想に反してリーシーもいたが、そんなことよりアズリウスの頭上にでかでかと浮かんでいるピンク色の数字を見て、ヤマトとフロストリーフは動揺し、レッドは何故か感心しているという中々訳が分からない状況に一瞬で陥る。

 突然驚愕の表情を浮かべ、耳と尻尾を一瞬だけ立てたヤマトを訝しんだアズリウスは怪訝そうな表情を浮かべつつも声をかける。

 

「ヤマト?どうなさいましたか?」

 

「え!?あ、いや何でもないよ。それでどうしたの?」

 

「あ、ええとですね。ドクター見てらっしゃいませんか?」(1510)

 

「え、えっと見てないよ」

 

「そうですか…もし、見かけましたら私に教えてくださいまし」(1600)

 

「う、うん…そ、それじゃまたね…」

 

「あ、ヤマト。この後暇ならモンハ○でも……」(68)

 

「ごめん、ちょっと今ケルシー先生から仕事貰ってて…」

 

「あ、そなの?んじゃ、また今度誘うわね」(60)

 

「うん、ありがとう。またね」

 

 一瞬だけ、アズリウスの目が濁ったように見えたことにヤマトは動揺しつつも何とか受け答えをし、更にリーシーの誘いも断り、彼女達が背を向けて歩き出し背中が見えなくなったところでフロストリーフ達に先程から自分が持っている疑問を聞くために声をかけた。

 

「ね、ねえ。好感度の最大限って100じゃないの?なんか、4桁行ってるんだけど…」

 

『……ヤマト、残念だがあれが正しい数字だ』

 

『愛に、上限ない』

 

「レっちゃん?それっぽいことを言わないで?」

 

『ちなみにだな、今調べたら1000〜2000は好きすぎて夜も眠れない程の好感度らしい』

 

「うん、聞きたくなかった情報を教えてくれてありがとう」

 

 フロストリーフからの疲れたような声音と共に告げられた恐ろしい内容にヤマトはため息を吐いた。正直、今日初めて遭遇したドクターLOVE勢の中で、比較的まともだと思っていたアズリウスの好感度が某龍玉の主人公の兄貴並の戦闘力という事態でお腹がいっぱいだ。というより、ちゃんと夜寝れているのかヤマトは心配になった。

 

「フーちゃん、俺もう帰りたいよ…」

 

『……気持ちは分かるが、金はもう既に支払われてるんだ。我慢して続けよう…』

 

『次、行こう』

 

 なんで自分はこんなことに巻き込まれているのか。

 ヤマトはそんな疑問を抱きつつも、重い足取りで廊下を歩き始めたのだった。

 

 

 

 ****

 

 

「なあ、レッド。ヤマトは気がついてないからあえて言ってないが、茶色の数字はもしかして……」

 

「フロストリーフの予想、当たってる」

 

「……あいつが駆り出されたのと、私がこの役になった理由が何となくわかったよ……それにしても、4000か……」

 

「ナッ○と同等」

 

「いや、それもそうだが…レベルとしては本人の匂いを嗅ぐだけで気持ちが昂るって…なんかあいつを見る目が変わってくるんだが……」

 

 

 

 ****

 

 

 

「ドクター!話聞いてる?」(8000)

 

「え、ああ聞いてるよ…」

 

「ちょっとドクター?何よそ見してるのよ?」(9500)

 

「え、えっとスワイヤー?なんか近くない?」

 

「あ、先輩。唐揚げにレモンかけて起きますね~」(18000)

 

「は?」(120000)

 

「────」

 

『ヤマトが処理落ちしたな…』

 

『アーミヤ、ギニュ○並の戦闘力』

 

 お昼時ということもあって、食堂によったヤマトは端っこの方で繰り広げられる修羅場の中心人物達の好感度を見て現実逃避を始め、フロストリーフは死んだ目でそれを受け入れ、レッドは紙に記録を写していた。

 

 一応言っておくと、ヤマトとフロストリーフ(前者は何となくであるが)はドクターに好意を向ける女性が多いのは察していた。というより、アーミヤとエイヤフィヤトラに関してはヤマトは実際に目の当たりにしている。

 

 そのため好感度は高いだろうとは予想はしていたが、まさかここまで高いとは予想出来なかった。

 

『8000~10000は隠し撮り写真が複数枚以上あるで、18000は本妻以外許さない、120000は隙あらば既成事実を作りたいレベルか…』

 

「…ねえ、会社の代表の人がその数値ってまずくない?」

 

『まずいどころの話じゃないだろう…というより、寝てる間とかにドクターそ、そつ…』

 

『卒業してるかも』

 

『れ、レッド!そんな普通にサラリと言うな!』

 

「流石にないよね…ないよね?」

 

『ヤマト、お前まで不安がるな!現実味を帯びてくるだろう!』

 

 なんとか復活したヤマトを踏まえてのレッドによる好感度の数値による行動目安を聞いて、頭を抱え込むヤマトとフロストリーフだったが渦中の本人は…

 

「へー、エイヤはアンジェと同じでレモンかける派なのか。俺はどっちでもいい派だけど、確かアーミヤとスワイヤーはかけない派だったよね?」

 

「あら、よく覚えてるわね?」(9700)

 

「?立場的に、皆の趣味趣向を把握するのは当たり前じゃない?」

 

「へ、へー…やるじゃない」(10000)

 

「流石だね、ドクター!」(11000)

 

「アンジェさんと一緒の時は警戒しますか…」(19000)

 

「……私だけ覚えてればいいのに」(140000)

 

『『「………」』』

 

 流石と言うべきか、4人の好感度と2人ほどの闇を上げつつ立ち回るというとんでもないことを平然とやってのけている。というより、1万前半組に関しては態度からして察せると言うのにそれを察しないドクターの鈍感ぶりは凄まじい。いや、鈍感だからこそ、あの修羅場でも平然としていられるのだろうが。

 

「……ああは絶対なりたくないなぁ」

 

『『(お前が言うか?)』』

 

 ヤマトの心から思わず溢れ出た呟きに、奇しくもフロストリーフとレッドは同じことを思ったのだった。

 

 

 

 *****

 

 

 

 調査報告

 

 ドクターへの好感度、アーミヤとスカジ、エイヤフィヤトラの100万が最高。他は高くても2万程度。ドクター、いつか既成事実作られる。

 

 

 ヤマトへの好感度、ラップランドの150万が最高。次点でイカズチとWの54万。リーシーの最高、52万。ヤマトの方が、危ない。

 

 ──レッド

 

 




テキサスorラップランドとのイチャついてる話を書いてみたい…単発物で書こうかな?

キャラ紹介

ドクター:ガチ勢の多くが色んな意味でヤベー奴ばっかと言う。比較的まともなのがアズリウスとスワイヤーな気がするのは気のせいでしょうか?

アーミヤ:私の好感度は100万です。ですが、私はあと2回変身を残しています(ニッコリ)

フロストリーフ:被害者。近いうちに逆○○○事件が起きてもおかしくない現状に頭を抱えた。ちなみにドクターへの好感度は70、ヤマトは80(家族愛レベル)。

レッド:ロドス最強のモフリスト。とりあえず、ドクターとヤマトの貞操がやばい事には気がついた。

ヤマト:\(・ω・\)貞操!(/・ω・)/ピンチ!
因みに、メガネの自分に対する好感度が映ってないのは仕様。

メガネ作った人達:無駄に高性能で、ドクターとヤマトの好感度しかわからないというピンポイントなものを作った元凶。後日、結果を見て現実逃避をした。

けるしーせんせい:当小説では苦労人枠として動いていただきます。


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番外編:NG集(他ルートも含む)

えー、お久しぶりです。そして今回もリクエスト回です。

関係ない話ですが、龍門幣って円換算だとどんくらいになるんですかね?


 その1:エクシア「わざとじゃないんだって!」(テキサス誕生記念話)

 

「………」

 

「うん、分かった」

 

 テキサスからのキスを催促するサインを受け取ったヤマトは、彼女の頬に手を添えて自分の唇と彼女のを合わせようと顔を寄せ──

 

 ガタッ

 

「え?」

 

「む?……」

 

「あっ……」

 

 2人の距離がゼロになろうとした瞬間、物音がし2人がその方向へ顔を向けると、僅かに空いていたドアから覗くエクシアの姿が。

 

「…………」

 

「な、な…」

 

「え、えっと……その、あたしはお水を飲もうと思ってね?べ、別に見に来た訳じゃなくてでね……」

 

「…………」

 

「…………」

 

「そ、その……ごゆっくり……」

 

 パタンと気まずそうにエクシアがドアを閉める。そして暫くの間沈黙が続き。

 

「……あいつの記憶を消してくる」

 

「あ、えっと……程々にね?」

 

「……善処する」

 

「あ、ちょっと待って」

 

 折角の時間を取られた怒りと見られた恥ずかしさで顔を真っ赤にしたテキサスがエクシアを追いかけようとしたところで、ヤマトは彼女を呼び止める。

 

「?なん……」

 

 そしてテキサスが振り返った瞬間。

 

「んっ……」

 

「っ」

 

 一瞬だけ唇に柔らかい感触が走り、呆然とするテキサスを見てヤマトは柔らかい笑みを浮かべる。

 

「……行ってらっしゃい」

 

「……すぐ終わらせてくる」

 

 ヤル気が最高潮までに達したテキサスの手によってエクシアはボロ雑巾にされ、そしてひと仕事終えた彼女は待っていたヤマトによって沢山甘やかされたとかなんとか。

 

 

 

 

 

 その2:耐えきったラップランド(コミュ障狼×酒盛り=???)

 

「………」(ポケー)

 

「やっと酔ったね…」

 

 チェンの提案の元始まった飲み会にて、酔ったヤマトを見たいがためにスクリュードライバーを持ち込み彼に飲ませていたラップランドは少し疲れたように零す。

 

 ヤマトがくぴくぴととんでもないペースで飲んでいることに気がついたラップランドは、無警戒で飲み続けて話してくるヤマトに勘づかれないようにペースを落としたが、正直そのペースを落とした状態でもギリギリなのが現実であった。

 

(まさか、ボクの倍以上強いなんてねぇ…次からはそこら辺も考えないとね)

 

 顔を真っ赤にしてぼーっとしているヤマトを見ながら、次回ではどうするかをラップランドが考え始めた時だった。

 

「ラーちゃん~」

 

「おっと?」

 

 横から衝撃を感じ振り返ると、お酒の酔いで顔を赤くしたヤマトがラップランドのお腹に抱きつく形でくっついていた。

 

「どうしたんだい、ヤマト?」

 

「ラーちゃん、あったかいな~。ギュ~ッ」

 

 ──何だこの生き物。

 

 いつもであればこんなことをしてこない人物が、無警戒!無防備!程よい撫で声!の3点セットでくっついてくる。しかもそれが気に入っている相手に加えて、自身はお酒が入っているせいで正常な判断が出来てない。つまり──

 

(持ち帰ってもバレないかな?)

 

 思考が暴走して少しやばい事になる。

 

「ヤマトも酔っちゃったからお開きにしようか?とりあえず、ヤマトはボクが担当するから、キミはそこの隊長さんを頼むよ」

 

「あ、ああ分かった……ほらチェン行く……おい、酒瓶を抱え込むな!」

 

「まだ飲ませろぉ~!」

 

「それじゃ、ヤマト行こうか?」

 

「は~い」

 

 スワイヤーが見たら大爆笑しながら写メを連続で取っている程に愉快なことになっている状況の中、ラップランドはこれ幸いとホシグマが自身の煩悩に勘づく前に腕にしがみついてにへらと笑うヤマトを連れてその場を後にするのだった。

 

 

 なお、ヤマトを自分の部屋まで連れ込んでベッドに寝させたまではいいものの、酔いが回って眠気が急に襲われたため、ラップランドはヤマトをモフる前に寝落ちしてしまい、そしてそれをフロストリーフが見て勘違いしたせいで2人は説教を受ける羽目になったのだった。

 

 

 

 

 

 その3:伝説の超…(ペガサスの目を持つ女性たちから見たとある狼騎士さん)

 

 それで、お姉ちゃんが来てから急に3vs3のルールになって相手側からもう1人騎士が出た瞬間にお兄ちゃんが来てくれたんだけど……その、あの時の私って結構ボロボロだったんだよね。

 それを見たお兄ちゃんが「遅れてごめん…!」って泣きそうな声で私に言って、相手の騎士たちの方に向き直ると「貴様ら…絶対に許さない!!」って叫んだ直後にお兄ちゃんの筋肉が急に膨れ上がって上の服が破けたと思ったら、髪の毛が緑色に変色して逆立ってね……お姉ちゃんとお兄ちゃんの登場で盛り上がってた会場が一瞬で静まり返ったよ。

 

 え、その後?えーとね…まず、弓を使ってた人がアーツを込めた射撃…多分あの人が出せる最高出力のものをお兄ちゃんに放ったんだけど、当のそれを真正面から受けたお兄ちゃんは無傷で、その人の近くに行くと「なんなんだ?今のはァ…」っていいながら胸ぐらを掴んでから上に放り投げたと思ったら、その人の、その…こ、股間に強烈な蹴りを加えて気絶させたんだよね。

 

 追加で入った人はそれを見て固まってたんだけど、我に返ってから雄叫びを上げながら突撃して…うん、普通にお腹に回し蹴りを入れられて、地面に転がったところをサッカーボールを蹴るような感じでお兄ちゃんに蹴飛ばされたと思ったら、多分腰の刀を使ったのかな?それで服を切り裂いて、そ、その…お、おパンツ一丁にしてた…

 

 それで、最後残った人は「ば、化け物だ…」って言って逃げようとしたんだけど、「どこへ行くんだァ?」って言いながら追いかけてきたお兄ちゃんを確認して「ふおお!?」って驚いた声を上げた瞬間、顔面掴まれて壁に叩きつけられてね……「もう終わりか?」って聞いたお兄ちゃんの質問に答えることなく気絶しちゃってその試合は終わって、お兄ちゃんも元に戻ってね。

 

「次マリアちゃんやゾフィアさんに手を出したら血祭りにあげてやる」って宣言してその場を去ったんだよね。

 

 え?怖くなかったのか?だって?

 うーん、確かに最初はちょっとビックリしちゃったけど、私のために怒ってくれてあそこまでやってくれたんだって思うと嬉しい気持ちになっちゃってね……あとお兄ちゃんの裸(上のみ)見れて眼福だったし、合法的にお兄ちゃんの筋肉触れたし……

 

 でも、個人的にはいつものお兄ちゃんの方がいいかな。あれはあれで良かったのは事実だけどね。

 

 そして後日、執務室にて。

 

「クラウス」

 

「ん?なんだドクター?」

 

「俺、ヤマトだけは絶対に怒らせないようにする」

 

「え?急にどうした?」

 

 そんな会話があったとかなかったとか。

 

 

 

 

 その4:ヤマト「加減間違えた」(外伝~「お前もジャングルに行くんだよ!」「ええ…(困惑)」(辺境の守護者√)~ 後編)

 

 

 

「おらぁ!」

 

「はあっ!」

 

 ガヴィルの拳とウタゲの斬撃によってビッグ・アグリーのもう片方の腕の関節部分が破壊。ビッグ・アグリーの残る武装は大砲のみとなった。

 

「ぐむむ……!このビッグ・アグリーをここまで追い詰めるとは…!」

 

「ねえ、なんであの大司祭…だっけ?あの人はあんなこと言ってんの?」

 

「多分、ノリなんじゃない?」

 

「なるほど、ノリなら仕方ないね」

 

「つべこべ言わず、さっさと動け。ドクター、ゴリラ猫」

 

「はいはい、分かってるよ」

 

 明らかに悪ノリして悪役が吐くようなセリフを言う大祭司と、それを看破したドクターと納得するブレイズにフロストリーフがツッコミを入れる。ブレイズはそれを軽く流しつつも、前線に上がりヤマトに声をかける。

 

「ヤマト!」

 

「!分かった!」

 

 一瞬のアイコンタクト。だが、共に何度も戦場駆け抜けた2人に十分な意思疎通。ブレイズがヤマトの方向へ跳び、彼はブレイズをレッドクイーンの刀身の腹の部分に乗せるように調整し、ブレイズが乗った瞬間に思いっきりビッグ・アグリーの方への振るって飛ばす。

 

 ──はずだった。

 

「あっ」

 

 が、思った以上にブレイズのジャンプが低くそれに合わせたせいで狙いが下がっていることにヤマトが気が着いた瞬間、大剣は振り抜かれ。

 

「え、あっちょ…!あ″み″ゃ″」

 

 ブレイズはビッグアグリーの砲身部分へと突撃する羽目になり、彼女が防御体制をとる前に人間ミサイルと貸した彼女は砲身へロケット頭突きをかまし、鈍い音と変な声を上げながら地面にまるでつぶれたカエルのような形で激突。

 

「うわぁ……痛そう」

 

「今のはモロに入ったで~」

 

「ブレイズごめん…」

 

「ブレイズ…お前は良い奴だったよ。ヤマトは私が貰っておくから安らかに眠れ…」

 

 ちなみに、ブレイズはこの数秒後たんこぶすら出来ずに意識を取り戻し、ロケット頭突きを受けたビッグアグリーの砲身はねじ曲がり、彼らの無力化という目標は無事に達成できたのだった。

 




自分が考えられる限りのNGシーンはこんな感じでした(

キャラ紹介は今回は多いのでカットです()



感想や批評お待ちしております。

あと、有難いことに自分の作品を元にした三次創作がありますので、目次の方にリンク先貼ってるので興味が湧いた方は目を通していただいたら幸いです。


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100話記念:悪魔と狼

気がついたらこのロドス劇場も100話。ここまで話を執筆をできたのは、読んでくださっている皆様のおかげです。

更新は遅いですが、どうかこれからもロドス劇場をよろしくお願い致します。

そしてその記念すべき100話は、あの二人の因縁に関する内容です。
それでは本編どうぞ!


 その日、エンカクの機嫌は最悪であった。理由は自分に課せられた仕事が敵の狙撃部隊を奇襲して壊滅させることというもので、強者を求めている彼からしたら奇襲というのがそもそも気に食わない上、狙撃手が相手では自身が望むような近距離での殺し合いが出来ないため、イラついていた。

 今回はハズレ、だと彼は思いながら戦場に向かい、そしてそれは狙撃部隊にいた1人のループスの少年と対峙した際その考えは覆させられた。

 

「まさか、俺とやり合えるやつがいるとはな…」

 

 エンカクは目の前で短刀を二刀流で逆手で構えながら、こちらの様子をじっと見ているループスの少年を見て笑みを浮かべる。

 そもそも、エンカク達の部隊の奇襲はこのループスによって失敗に終わり、狙撃手も殿を務めた目の前のループスの立ち回りか上手かったせいで殆ど逃げられてしまい、作戦失敗ということで撤退が決まっていた。

 

 しかし、エンカクはそれを無視。そして彼が傭兵ということもあって部隊のものたちは彼を置いて撤退し、ここに残っているのはエンカクとループスの少年の2人だけであった。

 

「……っ!」

 

 睨み合いの末、先に動きだしたのはエンカクであった。彼は右手に持っている刀で目の前の少年に斬り掛かる。対して少年はそれを紙一重の動きで躱し、続けて飛んできたエンカクの大刀の一閃を横に跳んで躱し、その大刀が地面にあたった瞬間にそれを踏みつけてエンカクの首元に短刀を振りかぶるも、それをエンカクは大刀から手を離して体を後ろに逸らすことで回避。すぐに体勢を立て直して、左手の刀を突き出す。

 

「くっ……」

 

 ループスの少年はそれを短刀を交差させることで防いだものの、大刀の上という足場の悪さ、そしてエンカクの放った突きが強力なものであったことから体勢を崩してしまい、地面の上を転がる。

 そして、その隙を逃すほどエンカクは甘くはなく、すぐに大刀を手に取って左手に大刀、右手に刀の二刀流で一気に攻めたてる。

 

「はあっ!」

 

「っ!」

 

 しかし、エンカクの怒涛の攻めに対してループスの少年は冷静に斬撃を見極めて躱したり、躱しきれないものは短刀を上手く使って受け流し反撃の機会を伺い、そして──

 

「しっ!」

 

「チッ!」

 

 いつまでもヤマトの守りを崩せないことに無意識に焦ったエンカクが放った大ぶりの攻撃の隙を付いて、ループスの少年はエンカクの首元に短刀を突き出し、そしてエンカクはそれをギリギリで避けたものの、頬に刃がかすりそこから血が流れ出た。

 

(予想以上に守りが硬ぇ上に俺に傷をつけるだけじゃなく、攻めてるはずのこっちが追い詰められているように思えるほどの圧……なるほど)

 

 ──今回は大当たりだな。

 

 大刀を振り回して無理やり距離をとったエンカクは、頬の血を舌で舐めとると笑みを浮かべる。

 これまで、彼は多くの強者と戦いそして勝ってきた。無論、その殆どが自身の命が無くなってもおかしくないものであったが、目の前のループスとのやり取りはこれまで以上に命の危機を感じた。つまりは、この少年は今まであってきた猛者の中で1番。

 

「ふっ、良いじゃねえか……戦いってのは、これくらい切羽詰まってねえと楽しくねぇ……行くぞ!」

 

 これまでにない高揚感で気分が最高潮までに達したエンカクが、再度ループスの少年に攻撃を仕掛けようとした時だった。

 

「時間切れだ」

 

「はっ……ぐわっ!?」

 

 少年が何かを呟いた直後に、突然閃光が走りそれをモロに食らったエンカクは目がくらみ立ち止まる。

 

「俺の目的は果たした……(正直体力残ってないから)撤退させてもらう」

 

「なっ、てめえ!待ちやがれ!!」

 

 ループスの少年と思しき声にエンカクは憤りながら、何とか回復した目で辺りを見回そうとすると、煙が彼の視界をおおっており、それでエンカクはあのループスの少年は最初からこのつもりだったのだと察した。

 

「……ちっ、最悪だ。……だが、お前の雰囲気と顔は覚えた。次に会った時は絶対に殺してやる」

 

 エンカクは既に少年の気配が無いことに気がつくと、舌打ちをしながら彼との再戦を心の底で望むのだった。

 

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 

 あの戦いから数年が経ち、エンカクは多くの戦場を渡り歩いて多くの兵士や傭兵達を相手に戦い、そして勝利を収めてきた。しかし、最近では手応えがある相手と戦うことが全くなく、彼は退屈していた。

 

 そんなある日、エンカクがとある戦いの場に傭兵として雇われ迫り来る敵を一刀のもとに切り捨てていっている時であった。首に刃を添えられているような、悪寒に襲われたのは。

 

「っ!?」

 

 自身の本能が命ずるままエンカクは後ろに大きく下がると、その直後彼が先程までいた位置に黒い影が飛び込み、そしてエンカクはその飛び込んできた影…ループスの顔を見て驚きの表情を浮かべ、そして笑みを浮かべる。

 

 狙撃用のボウガンと短刀は持っておらず、代わりに腰に少し短めの剣を差し、剣と剣を組み合わせた奇妙な大剣を両手で構えているが、顔と纏う雰囲気からしてエンカクは数年前に自分相手に逃げ切ったあの時のループスだと確信した。

 

 

「まさか、お前に会えるとはな……あの時の借り、返させてもらおうか!」

 

「っ!」

 

 挨拶がわりと言わんばかりに振り下ろされたエンカクの大刀をループスの少年は大剣で受け止め、それを力任せに振るって押しとばす。

 そして押し返されたエンカクは驚きの表情を浮かべる。それもそのはず、ループスの少年のパワーが少しだけ油断していたとはいえ、サルガズである自分を押し返すほどあったのだ。あの時よりは確実に実力が上がっているだろうと予想していたとはいえ、ここまでパワーが付いているとは思っていなかったため、エンカクはループスの少年への警戒を高める。

 

「はっ!」

 

 ループスの少年は大剣を両手で持ってエンカクへ接近し、エンカクはそれを迎え撃つように大刀を構え振り下ろす。金属と金属がぶつかり合う甲高い音が戦場に響きわたる。

 

 2人は互いに時にはフェイントを、時には受け流してカウンターと己の持てる技術全てを使って相手にぶつけるも、どれも決定打には至らず、かすり傷が増えていくだけのみ。

 それでも、2人はほんの少しの気の迷いや集中が掛ければ確実に死に繋がることを肌で感じとっていた。

 

「はあっ!」

 

「ふっ!」

 

 互いの全力の攻撃が再度ぶつかり合い、そのまま鍔迫り合いにもつれ込むが、ここでエンカクは目の前の少年が距離をとる前に上から彼を抑え込むように力を入れた。

 

「っ!?」

 

 ループスの少年が息を呑む音がエンカクの耳に入る。確かに瞬発的な全力の斬撃の打ち合いではほぼ互角であった。しかし、鍔迫り合いのように持続的に力を使うような状況では、体格の関係でエンカクが上から抑え込むように力を入れることが出来る。同時にそれは、腕力だけではなく自身の体重もかけられることにつながり。

 

「ぐっ……!」

 

 僅かではあるが、徐々にループスの少年は押し負け始めており、初めて彼の顔に苦悶の表情が浮かび始める。このままであれば、確実にエンカクの大刀がループスの少年の頭に入り、彼は絶命するだろう。

 

 ──終わりだな。

 

 エンカクは自身の勝利を確信し、同時にこんな呆気ない終わりに肩透かしをくらった気分になり気落ちするも、早く決着を付けようと更に体重をかけようとしたところで。

 

「はあっ!!」

 

「ぐっ…!?」

 

 直後、エンカクの全身に衝撃ととてつもない()()が彼の体を襲った。

 風圧のせいで閉じてしまった視界を開けば、ループスの少年から数メートルほど離れており、その少年は肩で大きく動かして息を吐いている姿が入った。

 

(何が起こった?あの状況から、俺を押し返したのか?)

 

 エンカクは状況を確認するためにそこまで思考を働かせたところで、すぐにその考えを否定する。

 あの状態から押し返すのは目の前のループスの少年の力では無理なはずで、事実あの時あの少年は()()()()()()していた。

 無論、あれがエンカクを騙すための演技であったという可能性もあることにはあるが、エンカクの経験上あれが演技にはとても見えず、もしあれが本当に演技なのだとしたらあの少年の演技力は、賞賛していいレベルものだ。最も、エンカクはこの可能性は全く入れてないのだが。

 

(まさかアーツか?……いや、それならまだ分かるが出し惜しみしていた理由はなんだ……待てよ、やつのアーツに何かしらの代償があるとしたら?)

 

 エンカクはその思考に至ったところで、この説は当たっている可能性があるのでは無いかと考えた。もし、この考えが当たっていればあのループスの少年が苦悶の表情をうかべたのも、アーツを使うのが苦渋の決断だったからということで納得が行く。

 

(だが、やつのアーツ能力はなんだ?身体能力を上げるだけの能力なら確かに俺を吹っ飛ばした理由は着くが、あの風圧に関しては説明がつかねぇ)

 

 それでもエンカクの中で納得しきれていないのは、距離を離された時に感じたあの凄まじい風圧。ただ単に押し返されただけで、自身の前方からあそこまでの風圧を感じるのはおかしい。風を操るアーツならば、まだ分かるものの、エンカクはこれまでの人生でそのようなアーツがあることを聞いたことがないため、その考えは除外していた。

 

(……あれこれ考えたところで意味ねえな、判断するための材料が無さすぎる。とりあえず、身体能力の強化は頭に入れておいたほうがいいだろうな)

 

 エンカクはそう結論づけると、改めて目の前の少年を見やる。ある程度息を整えられたのか、肩で息をしている様子はなく寧ろ鋭さが増している。

 少年は腰に差していた剣を抜くと、それを右手に持っている剣に組み込むと勢いよく回して肩に担ぐ様に構える。

 

(なるほど……次のぶつかり合いで終わらせるつもりか)

 

 少年が放つ気迫と自身の経験でエンカクはそう判断する。合理的に考えるのであれば、自身はあの少年の一撃にカウンターをいれる流れで行くのが1番だろう。これならば、仮に少年のあの気迫が演技だとしても隙を晒すことはない。

 だが、エンカクの中でその選択肢は最初からなかった。何故か?それはごく単純なものであり、ただ目の前のループスの少年を自身の力で確実に倒しきるという理由からだった。

 もしかしたら、自分がこのように考え実際に行動に移させることがあの少年の狙いかもしれない。

 

(それがどうした?それこそ、そんな小細工で俺が倒せないことをあいつに思い知らせてやればいい)

 

 エンカクは方針を決めると、意識を集中させ自身のアーツを発動させる。その直後、一瞬のタイムラグも無しに彼の持つ大刀と刀に炎が包み込んだ。

 

「………なるほど、炎のアーツか」

 

「……久しぶりに聞いたな、お前の声」

 

「殺し合いで、長く喋るヤツはいない」

 

「確かに、その通りだ」

 

 それが、2人が初めてした会話らしい会話であり、それもすぐに途絶えた。

 

「「………っ!」」

 

 そしてしばらくの睨み合いの末、2人は同時に駆け出し──

 

「天災だあぁぁぁぁ!!」

 

「「っ!?」」

 

 突如、戦場に響いた声…正確にはその声が発した言葉と空から響いた轟音を聞いた2人は思わず立ち止まり、そして周りで戦っていた者たちも反射的に空を見上げる。

 すると、そこには──

 

「う、うそだろ……」

 

 空から無数の黒い塊のようなものが見え、そしてその直後その塊のようなものが数えるのすら馬鹿らしくなるほど骸が転がっている戦場に降り注ぐ。

 

「うわあああ!し、死にたくがっ」

 

「く、くそったれ!こんなんぶっこぎゃ」

 

「予報と違うじゃない!なんで、こんな…!」

 

 

「……ちっ、興醒めだ。こんな中やり合っても、楽しくねえ」

 

「……」

 

「ふんっ、だんまりか……まあいい。また今度、会えるのを楽しみしてるぜ」

 

 周りが悲鳴をあげながら、降り注ぐ黒い塊を避け、そして避けきれずもの言わぬ肉塊になっていく中、その塊を息をするように弾きながらエンカクが言った内容を聞いた少年のループスは、一瞬だけ顔を顰めるも、次の瞬間には背を向けてエンカクから遠ざかっていた。

 

「……さて、今は如何にこの天災を乗りきるかだな。こういう、スリルもたまには悪くない、なっ!」

 

 エンカクは離れていくループスの少年を見届けると、自分に降ってきた一際大きい塊を、まるで決着をつけれなかった鬱憤を晴らすかのように自身の最大出力のアーツを使って両断したのだった。

 

 

 

 

 後にエンカクとループスの少年──ヤマトの両名はとある場所で再開し、時には訓練所で戦いあったり、時には戦場で背中を預け合うことになるのだが、この時の2人はそんなことになるとは全く思いもしなかったのだった。

 




エンカクのアーツを炎にしたのは、第2昇進のイラストで炎っぽいの纏ってるからという雑な理由です。


解説コーナー

1戦目:体格差、装備の差もあってヤマトの方は神経を研ぎ澄ませて常に先を考えながら行動していた+エンカクの攻撃がすごい重かったため、体力の消費が激しく終わらせるつもりで放ったカウンターが決まらなかったので元々考えていた撤退を決意。フラッシュバンで目が眩んでる内に仕留めるのも考えてはいたが、失敗した時のリスクを考えて逃げる方を優先した。実質エンカクの勝ち。

2戦目:体格差はあるものの、筋力を含めた身体能力が上がっていたためアーツで身体能力を強化すれば、体格差による体重の押し込みがなければ力勝負は互角。技術面もほぼ互角で、最後の互いの全力のぶつかり合い次第で決着はつきそうだったが、天災のせいで引き分けに。エンカクとしては楽しかったが、不燃焼気味。

ヤマト:謎の傭兵少年ループスとして登場。ここでヤマトのアーツが強化と放出の2つであることが判明。なお、放出の方は所謂アーツの斬撃などにも応用されており、こういった形の放出ならそんなデメリットはないものの、体から直接放出するような形は体力をかなり使うとのこと。今回の話で、2戦目の時にエンカクが吹っ飛ばされたのはこの体から直接アーツを衝撃波のように放出を食らったから。威力を抑えたのは、仕留めきれなかった時のリスクを考えてのことだったとか。
因みに、顔を顰めたのはヤマトの直感が「面倒なことになる」と反応していたから。

エンカク:原作の設定では、戦いの勝利が目標ではなく、あくまで殺し合いの過程と生死の間を彷徨うスリルを楽しんでいるとあるが、ヤマトが相手の時だけはそれに加えて、勝利を望んでいる感じ。多分、この小説でキャラ崩壊がやばい白黒ループスと同じレベルで厄介な感じに。
しかも、どの√でも1回戦うと気に入られてしまうという……。ヤマトは泣いていい。

とあるサルカズの女傭兵:なんか知り合いが勝手に自分のモノをキズものにしようとしてた件について


感想や批評、リクエストお待ちしております。

P.S.うちのロドスにも遂にスズランがきて明るくなりました。なにかに目覚めそう……


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決別:(龍門チェン‪√‬)

えー、今回もリクエストなのですが、まず本編7章のネタバレを含む+本来のストーリーとは別の話、となっております。

そのため、本編7章をやってない方と以上の2つがダメな方は今すぐブラウザバックしてください。

それでは、大丈夫な方のみ先をお読み下さい。


 

──心から愛していた。私が悩みに悩んで告げた秘密を「そんなのなんの問題もないですよ」と言って、私を優しく抱きしめて受け入れてくれたあいつとの日々は、本当にかけがえのないものであった。

 

 

 ──だからこそ。

 

「……まさか、お前が立ちはだかるとはな」

 

「……隊長」

 

 ──ヤマト、お前には会いたくなかった。

 

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

「……ホシグマと一緒だと思ってたんだがな」

 

 自分の口から出た声は、いっそ清々しい程震えていた。

 予想外だった、と言えば嘘にはなる。心のどこかで来るだろうとは思っていた。しかし、来るとしてもあいつのポジションを考えれば何処か狙撃ポイントで待機しているか、もしくはホシグマやスワイヤーと一緒だろうと決めつけていた。

 最初は私を油断させるために敢えて1人だけ姿を見せた、とも考えたが周りから気配は感じないため、その線は薄いだろう。

 

「……隊長、貴女は今指名手配されています。手錠をかけたくないので今すぐ近衛局に戻ってください」

 

「……色々と聞きたいことはあるが、つれないな、少しは会話を楽しもうという気は無いのか?」

 

 普段とは違い、コートの前を閉めているヤマトがこちらを見下ろす形であるのに加え、顔を俯かせているせいでどんな顔をしているのかは見えない。しかし、声と体が震えていることから少なくとも正の感情が籠った表情は浮かべてないだろう。

 

 だが、突破しやすいという点においてはヤマト1人だけで良かった。正直、ホシグマとスワイヤーでは話し合いでの解決を望んだとしても、時間がかかって強行突破、もしくは最初から戦うことになることを考えれば、失礼な言い方になるが物分りのいいヤマトが相手なら事情を説明してくれればどいてくれる──

 

「はぐらかさないでください」

 

「っ」

 

 珍しく、怒気が籠った声だった。

 そのせいで思わず思考が止まってしまい、その隙を逃さないとばかりにヤマトはさらに言葉を続ける。

 

「ウェイ長官と、貴方の会話をたまたま聞いてしまいました……貴方が怒る理由も、近衛局に失望した理由も、全部とは言いませんが分かります……俺も、失望しましたから」

 

「…………」

 

 近衛局の連中の中でもスラムに気を使ってくれていた数少ない、そして心優しい彼にあの会話を聞かれてしまっていたことに絶句する。深く考えなくても、ヤマトが近衛局に失望してしまうのは当然のことだ。

 

「そして、貴方にとっては大事な、それこそ自分が感染者であることをあの場でばらして飛び出す必要があるぐらいの理由があって、そのために龍門を抜ける、というのも分かりました」

 

 冷静な口調でヤマトが続けて告げた内容に、自分から多くを説明する必要がないことが分かり、ヤマトの事だから後はしっかりと細かい点を補足すれば、恐らく自分を見逃してくれるはずだと、内心安堵した。

 

 

「──でも、ここから先は行かせません」

 

 

「……は?」

 

 直後に、放たれた言葉が信じられず固まる。

 今、ヤマトはなんて言った?

 

「……ヤマト、もう1回言ってくれるか?」

 

「ここから先は行かせません、と言いました……龍門には貴方が必要なんです……だから、行かせません」

 

「……悪いが、そういう訳にもいかない。私には、『彼女』を止めなければ──」

 

「なら!!」

 

 私の言葉を遮るように大声を出し、ずっと俯かせていた顔を上げたヤマトは──

 

「どうして、俺の事を頼ってくれないんですか!?」

 

 泣いていた。顔を歪ませ、目から流れる涙は逆光のせいで光っていて、何故かそれが何処か綺麗に見える。

 

「それは──」

 

「近衛局が介入している、という事実を作らせないため、貴女が言う約束がとても重要なものであること、それに俺が弱いから頼りにならないからってのは分かる……分かるけど!それでも、頼って欲しかった……!」

 

「そんなことない!お前が、一緒に来てくれるなら正直心強い!」

 

「じゃあ、なんで、1人で背負っていこうとするんだよ!?」

 

「…………」

 

 正直な話、ヤマトがもし私と一緒に乗り込んだとしても足手まといになる可能性はほぼない。というより、ホシグマやスワイヤーを始めに他の局員たちと比べた場合でも、最優とも言える。

 それもそうだ、ヤマトの狙撃の腕は私が知る中でもトップクラスなだけではなく、狙撃手でありながら中距離ではカスタマイズしたハンドガンによる高機動戦闘、近距離では刀とハンドガンを使った敵を翻弄するような戦いを得意とするだけではなく、一対多も相手がそれこそホシグマ以上の実力を持った集団でなければ難なくこなせられる程の実力を持っている。

 

 それを踏まえれば、後方からの支援を得られるだけではなく、場合によっては前に出れるというオールラウンダーなヤマトほど心強いことは味方はいない。

 

 だが……

 

「……逆に聞くが、お前は私の死角から攻撃が来た時、あるいはそれを私が防げないというのに加えて、お前の射撃ではそれを防げないと判断した時、どうする?」

 

「そんなの、助けるに決まってるだろ!」

 

「……正確に言えば、それは()()()()()()()にしてでも助ける、だよな?」

 

「…………」

 

「……沈黙は肯定と受け取るぞ」

 

 だから頼めないんだ。ヤマトは、誰かのためなら自分の命をまるでゴミをゴミ箱に捨てるような勢いで捨てるような行動をする。事実、私と付き合うきっかけになったあの時だって、なんの躊躇もなく飛び込んで私の代わりに怪我を負い、付き合ってからも狙撃手という立場なのにも関わらず誰かを庇って怪我をよくしていた。

 

 もし、それがタルラとの戦いで起きたら?アーミヤたちの話が確かならば、あいつの一撃全てが致命傷になるレベル。そして、その一撃からヤマトが私を庇ったら?

 

「確かに、今回の件は私の個人的な事情があるのも事実だ。だが、それ抜きでも、私のせいでお前が死ぬなんて耐えられない……だから、頼れないんだ」

 

「……どうしても、一人で行くと?」

 

「…………」

 

「……そっか。それなら──」

 

 ──殺してでも止める

 

「っ!?」

 

 反応できたのは奇跡的だった。一瞬だけ感じた悪寒を感じ、気がついたら姿勢を低くして刀の柄に手をかけるヤマトの姿が目に入り、全力で後ろに下がってからほんの一瞬だけ遅れて、銀色の光が目の前を横切った。

 

「……流石だね、今ので完全に仕留めるつもりだったんだけど」

 

「や、ヤマト……?」

 

「……これが最後の警告。本当に行くというなら、俺は貴女を討ってでも止める」

 

 本気の目だった。いつも、私のことを陽だまりのように暖かく見てくれる優しい目ではなく、刃物を連想させるような殺気がこもった目であり、彼が本気だということが嫌でも伝わってくる。

 

「ヤマト、頼むからそこをどいてくれ……お前を傷つけたくない……」

 

「……それが答え?」

 

「頼む!!お前に剣を向けたくないんだ…!」

 

「…っ、このわからず屋!!」

 

 一瞬だけ、ヤマトが息を呑むような音が聞こえたが返ってきた言葉は私が望むものではなく、同時に彼の刀による大上段からの振り下ろしも襲いかかり、反射的に自分の刀を抜きそれを防ぎ鍔迫り合いの状態へとなる。

 

「くっ……!」

 

 訓練の時より、何倍も重い剣圧。それが、今までヤマトが模擬戦のときどれだけセーブしていたのかというのと、そして本気で私を殺す気でいるという向き合いたくない現実を実感させられる。

 

「っ、本気なんだな…」

 

「……チーちゃんのことなんだ、本気になるに決まってるで、しょっ!」

 

「ぐっ…!?」

 

 ヤマトに押されて距離を強引に離された、つまり初めて力勝負で負けたことに驚愕していると、それを逃がさないとばかりに追撃が飛んでくるが、刀で何とか受け止める。

 

 まさか、ここまでヤマトが強いとは思ってもみなかった。模擬戦では確かにそれなりに粘りはするものの、力勝負でも、スピードでも、技術でも私が全て勝っていたが、今はあの時よりも数段も上の相手だと認識を改めなければ確実に殺られる。

 

 理想的な倒し方としては、ヤマトの刀を破壊もしくはあいつの手から外すこと。銃を抜かれる可能性も無くはないが、あいつの早撃ちより私の剣の方が早いからそこは考えなくていい。

 だが、今のヤマト相手ではその手加減にも等しいやり方で倒すのはほぼ無理だろう。かといって赤霄を使えばヤマトは間違いなく死ぬ。

 

 ……仕方ない、ヤマトには悪いが少しだけ痛い目にあってもらうしかない。

 

「はあっ!」

 

「ぐっ!?」

 

 ヤマトの刀を弾くように自身の剣を動かし、彼の胴体に蹴りを入れながら後ろに下がる。蹴られた箇所を抑えながら()()()()()()()()()()ヤマトに罪悪感が浮かぶものの、ここで手を緩めれば勝てない。

 

「せあっ!」

 

「ちっ!」

 

 再度接近してヤマトに斬り掛かるも、その全ての攻撃が躱されるか防がれる。私とたくさん模擬戦をしたからか、剣筋が読めているからだろう。このままでは、ただ私の体力が消耗するだけだろうが今はこれでいい。

 

 狙いはこちらがあえて作った僅かな隙を、ヤマトが狙って攻撃してくること。そしてそれを利用してこちらの全力の攻撃を防がせて体勢を崩させた所で一気に抑える。これが上手く行けば…!

 

 そしてその時は来た。

 

「っ!」

 

 一瞬だけ敢えて作った連撃の合間の隙。そして先程まで防戦一方だったヤマトが逃すはずもなく、私の胴に横から斬撃を加えようとしたのを、赤霄の鞘で弾き全力の突きをヤマトに放ち。

 

 

 

 ──ズブリ

 

 

「え……?」

 

 手に伝わるのは、肉を鉄で刺したような感触。その直後にナニかが私が持つ剣から離れる感触がし、前を見ると。

 

「ごふっ」

 

 地面に刀を刺して膝をつき口から血を吐いているヤマトの姿。

 

「ヤマト!!」

 

 剣をその場に捨て急いで駆け寄る。何故だ、何故防がなかった?あの時のヤマトの実力、いや普段の模擬戦での状態でもあの攻撃は反応できたはずだ。

 

「脱がすぞ!」

 

「あ、まっ……」

 

 どちらにせよ、血を止めなければならない。

 コートを脱がそうとヤマトのコートに手をかけた瞬間、弱々しくも慌てた様子で私を止めようとした彼に目もくれず、脱がして私の目に入ったのは、私の剣が刺さってしまった所とは()()()()()()()()()()が染みている彼のシャツ。

 

 その瞬間、私は何故ヤマトがあの攻撃を防げなかったのか理解したと同時に、怒りが湧いた。

 

「この、大馬鹿者!!何故怪我をした状態で剣を向けた!?」

 

 あの時、ヤマトが反応できなかったのは私が直前に胴体に蹴りを入れたせいで傷が開いた又は悪化し、そのせいで体の動きが鈍りあの攻撃が防げなかったのだろう。

 

 傷は思ったよりも深く、応急処置では気休めにしかならず早く本格的な治療を受けさせねばならないといけない。

 

「クソっ、待ってろ!すぐに助けを……!」

 

「俺のことは、いいから先に、行って」

 

 ヤマトの無線を使って助けを呼ぼうとした時、彼は私の手を取り首を振って先に行くように促した。

 

「何を馬鹿なこと!今のお前を放って…!」

 

「だから、先に行ってくれないと、助け呼べないんだって……チーちゃん、指名手配されてるの忘れたの…?」

 

「忘れてないさ!だが…!」

 

「だったら」

 

 ヤマトは私の言葉を遮るように言葉を紡ぎ、そして1回息を吸ってから。

 

「チーちゃん……いや、チェン・フェイゼ。貴女が自分で決めた選択を最優先で取るべきだ」

 

「……っ」

 

 射抜くような視線を向けられ、暫く私とヤマトは互いの目を見つめ合い、そして私は震える手を抑えながら先程反射的に投げ捨てた剣を拾い上げ、龍門の出口へ足を進める。

 

「……ヤマト、頼みたいことがある」

 

 そして、刀から手を離して地面に座っているヤマトに──。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

「……というわけで、なるべく早く来て下さると助かります」

 

 そう言って無線を切った俺はため息を吐く。

 結局、チーちゃんを止めることは出来なかった。何とか心を殺して、本当に殺す気で挑んだけど、やっぱり俺程度の実力じゃ適わなかった……いや、本当にあの人を殺す気なら銃も使って中近距離の戦闘を行って自分のペースに引き込むべきだった。

 

 けど、出来なかった。刀にはアーツを刃を潰すような形で薄く纏わしていたし、銃も抜けなかった。

 

 前提として、中途半端な覚悟なんかで覚悟を固めた人を倒せるわけが無い。当たり前のことだ。

 

「……この様子だと、どうやらチェンは止められなかったようだな」

 

「……ホシグマさん」

 

「全く、まさか背後から鞘でぶん殴って私を気絶させるとはな……正直裏切られた気分だったぞ」

 

「ゔっ、すみません……」

 

 後頭部を擦りながら呆れた様子で言ってくるホシグマさんの視線から、目を逸らす。正直、あれに関してはああするしかなかったし……。

 

「……まあ、お前でも止められなかったならば、恐らく誰もチェンのことは止められなかったさ。お前のせいじゃない」

 

「…………」

 

 本当にそうだろうか。もしあの時立っていたのが俺ではなく、ホシグマさんであればちゃんと止められたのではないか、そう思えてならない。

 

「……ヤマト、ここには私しかいないんだ。好きなだけ泣いていい」

 

「………泣いていい、権利なんてないで、すよ」

 

 滲む視界の中、俺は胸がぽっかりと空いた鋭い痛みを無視しながらあの人が通って行った道をぼんやりと見つめた。




解説及び補足(という名の言い訳)

Q.なんでホシグマの姐御いないん?
A.ヤマトが途中で合流して、その向かう道中後ろからガツンと鞘で殴って気絶させられてました。

Q.なんでストーリーの方とは違う掛け合いなん?
A.2つ理由がありまして、1つは恋人として過ごしたヤマトならチェンにそういう話をさせないようなことを言いそうだから、もう1つはただ単にその会話をヤマトverに変えられるほどの脳みそがなかったからです()

Q.なんで怪我してるのにヤマトあそこまで動けたん?
A.アーツと気合と根性と愛です。

Q.結局ヤマト何したかったん?
A.チェンを止めたかっただけです。最終的には、彼女の覚悟を尊重して見逃す体にはなりましたが。


ヤマト(龍門チェン√):やってることがメンヘラのそれというやべーやつ。最も、殺す気で剣を向けたものの、本当に殺す気はなく銃を使わなかったり、刀に薄くアーツを纏わして当たっても切り裂かないように配慮していた。絶賛、失恋中。

チェン:恋人であるヤマトと対峙したせいで少し揺らぐも、最終的にその本人から励ましの言葉をもらって覚悟を決めた。去り際、彼に龍門のことを頼み、チェルノボーグへと向かった。

ホシグマ:重要なポジションをかっさわられた姉御。本来ストーリーで知る内容は後日、別方面から聞くことになる。


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虹6コラボ話(BSW八方塞がり済み√):第一印象って本当に大事だと思う


えー、今回の話なんですが短い上に低クオリティとなってしまっています……遅くなった上でこんな形となってしまって本当にすみません……




 

 サルゴンのロングスプリングの町にて起こった事件。その騒動において、その町の感染者の保護と防衛、そして事件の解決に力を尽くしてくれたレインボー小隊の4人はロドスの本艦に来ていた。

 そして、そんな彼らは現在──

 

「リスカムさんとフランカさんがお世話になりました」

 

((((え?誰?))))

 

 ループス族の(見た目は)少女に頭を下げられており、思いっきり困惑していた。

 それもそうだろう、レインボー小隊からすると「私たちの彼氏が貴方達にお礼を言いたいって聞かないから、ちょっと会ってくれる?」とフランカに言われ、気になるところはスルーして待っていたら来たのは、ゴスロリの服を着た声が少し低めの少女。

 男性が来ると思っていたレインボー小隊の面々からすれば、困惑するのも仕方の無いことだ。

 そして、ここまでの展開からして聡明な者は気づくかと思われるが、このゴスロリを服を着たループスの少女、実は女装させられたフランカ達の彼氏のヤマトである。

 何故ヤマトが女装しているのか、その訳をなるべく言葉を少なめに説明すると、理性がお亡くなりになられたドクター発案の「ロドスで最も女装が似合う男コンテスト」という頭の悪いコンテストにエントリーさせられてしまい、それに出るための服装を選んでいるから、というものであった。……尤も、ヤマトが女装に対して抵抗がないのは別の理由があるのだが。

 

(なんで女の子?彼氏ってことだから男のはずじゃ……)

 

(女にしては声が低いが……いや、体格は華奢だしな……)

 

(こいつ、本当に女か?なんか違和感が……)

 

(何故にゴスロリ?)

 

(あれ?なんで固まってるんだろう?)

 

 困惑するレインボー小隊とそれを見て困惑するヤマト。

 ここで察して貰えるように、この天然アホ狼は自分の今の格好に気がついていない。そのため、この状況を打破にするにはヤマトが自身の格好に気づく、あるいは第三者が間に入ることなのだが。

 

 

「先輩!やっと見つけましたよ!」

 

 どうやら神はレインボー小隊とヤマトを見捨てていなかったようであり、ジェシカが声を張り上げながらヤマトの元へ近寄る。走ってきたのか、彼女の額には汗が出ており、肩で息をしていた。

 

「あ、ジェシカ──」

 

「もう!リスカム先輩たちがお世話になったってことで、すぐにお礼を言いに行きたい気持ちは分かりますけど、なんで急に飛び出しちゃうんですか!」

 

「いや、その──」

 

「大体、その格好で出ていったらレインボー小隊の皆様が先輩だって分からないですよ!先輩は女装が似合いすぎるんですから!!」

 

「えっと、ありがとう?」

 

「「「「は?」」」」

 

 ジェシカと呼ばれた少女が発した言葉とヤマトの言葉を聞いて、思わず声を漏らしつつ信じられないと言った目でありがらも、もう一度女装しているヤマトの姿をよく見るレインボー小隊のメンバー。

 なるほど、確かによくよく見れば女装している男性に見えなくもない気がちょっとだけ──

 

「いや、あるかこれ?」

 

「Tachanka、私も同じ意見よ」

 

「奇遇ね、私もよ」

 

「感じてた違和感の理由は何となくわかったが……完成度マジでたけーな」

 

「その、すみません!ヤマト先輩の格好、元に戻してきますのでもう少しだけ待っててください!」

 

「え、このままでも話は出来る──」

 

「いいから!行きますよ!!」

 

「ちょっと待って!自分で歩けるし、当たってるから!」

 

 1人感心しているBlitz以外のメンバーが納得出来ずに困惑している中、ヤマトはジェシカに腕を組まれた状態で、抵抗虚しく強制連行されて行ったのだった。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

「改めて、フランカさんとリスカムさんがお世話になりました」

 

「いえ、気にしなくていいわ。寧ろ、こちらも助かった身だし」

 

 十数分後、化粧を落としいつもの服装に戻ったヤマトとジェシカ、レインボー小隊の面々は彼に宛てがわれている部屋にて彼が作ったクッキーを振る舞われていた。

 ヤマトの部屋は、ある家具と彼の武器が保管されている武器ラックを除けば特におかしいところはなく、初めて来たレインボー小隊でもくつろぎやすい家具配置と雰囲気であった。

 

「へぇ……トンプソンコンテンダーか。ベレッタ92Fもロングマガジンやら色々と改造してるし、可愛い顔していい趣味してんな」

 

「そうなんですよ!ヤマト先輩はとても手が器用で、色々とカスタマイズしちゃうんですよ!実は私が持ってるやつも先輩が私のために色々とカスタマイズしてくれた物でしてね……!」

 

「お、おう。その話はまた今度聞くわ」

 

「ふむ……中々美味しいな。紅茶とよく合うクッキーだ」

 

「そう言って下さると、作った側からしたら嬉しいです。良ければ、何セットか包みましょうか?」

 

「ASH、お言葉に甘えて貰いましょう」

 

 Blitzは武器ラックにあるヤマトのトンプソンコンテンダーとカスタマイズされたベレッタ92Fを見て感想をこぼすと、それに反応したジェシカが目を輝かせながら早口で何かしらを語り始めようとしてそれを止められたり、Tachankaが息を吐きながらクッキーと紅茶の感想を呟き、それを聞いたヤマトがクッキーを包んで渡そうとしたりと、かなり穏やかな時間が流れていた。

 

 だが、レインボー小隊の面々はとあることが気になっていた。それは……

 

(((((なんでベッドがあんなにクソでかいのか気になる……)))))

 

 そう、ヤマトの部屋の中で一番異彩を放つキングサイズのベッドより大きいベッド。これがレインボー小隊の気を散らしていた。

 というより、詰めれば9人はいけそうなほど広いクソデカベッドを見て気にするなというのが無理な話だ。というより気にしない人がいるのかどうか逆に聞きたい。

 

 そしてそれに気がついたのか、ヤマトは苦笑いを浮かべながら口を開いた。

 

「詳しい事情はあんまり話せないんですが、実は俺彼女が8人いるんですよ」

 

「「「「「……え?」」」」」」

 

 ヤマトの口から出た予期せぬ爆弾発言に、今度こそレインボー小隊の面々は固まったのだった。

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

「……なんか、ロドスって色んな人がいるのね」

 

「そうだな……尤もヤマトはどちらかというと周りのせいでああなってしまった感が否めないが」

 

「ま、本人たちは受け入れて楽しくやってるようだし、俺らがどうこう言うことじゃねえよ」

 

「その通りね……にしても、まさか保存食までくれるなんてね」

 

 ロドスから離れ、このテラの地を己の目で見て生きようと決意したレインボー小隊でこのような会話があったとかなかったとか。




質を上げたい所存です。

キャラ紹介

ヤマト(BSW八方塞がり):8人の女性に囲われて逃げ場を失ったオオカミさん。女装に抵抗がないのは、そういうアソビを何度もやったことで悟りを開いたから。男性の尊厳破壊されて可哀想。

ジェシカ:このルートでは覚醒してラスボスと化してるヤマトの後輩。普段のオドオドした雰囲気はヤマトの前では跡形もなく消え、寧ろガンガン引っ張る。

Ash:シージコラボにて実装の星六狙撃。S2がアホみたいに火力出るため、幸せになれる。今回は終始困惑していた。

Tachanka:シージコラボ配布の星5前衛。周りがアニメっぽい感じになる中、唯一あんまりそんな感じにならなかったお人。

Blitz:シージコラボで実装のスタン持ち重装。AshとS2と合わせれば彼女の火力をあげられるイケメン。今回の話では、唯一ヤマトちゃんの性別を見抜く1歩手前までいった。

Frost:シージコラボにて実装の星5特殊。罠を仕掛けられるタイプのオペレーターだが、作者の脳みそでは上手く使えない(白目)今回の話では、ヤマトのクッキーを黙々と食べていた。

感想と批評お待ちしております。


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自称医者Aさん「正直これは予想外だった」

えー、遅くなってすみません……実はちょっと最近体調を崩してしまいまともに動けない状況でして……皆様も体調には気をつけるようにしてくださいね!

そして今回も執筆しやすい方から投稿させて頂きました…誠に申し訳ございません。


 

「*溺愛する娘に「パパ臭い」と言われた父親が膝から崩れ落ちるのと同等のダメージのスラング*」

 

「────」

 

「ら、ラッピー!」

 

 ロドスの医務室にて、いつもより刺々しい雰囲気のヤマトの口から出た心を抉るスラングを受けたラップランドが白目を向いて倒れるように気絶。そしてそれを近くにいたリーシーが地面にキスする前にキャッチし、死にかけの戦友に声をかける兵士のような形相で声を張り上げる。

 

 そして、それを見たフロストリーフは一言。

 

「なんだこれ」

 

 至極真っ当な感想を零しながら、頭痛がし始めた箇所を抑えるように手を当てたのだった。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

「「ヤマトが倒れた!?」」

 

「うん、原因はある程度予想はできるんだけど……いmうわっ!?」

 

「ヤマトはどこに居んのかさっさと教えなさいよ!教えないなら股間にバスターウルフ打つわよ!?」

 

「ひっ!?」

 

「それは流石にやめてやれ……というか、頭冷やせ」

 

「ぴゃああぁぁぁっ!!」

 

 いまから10数分前、食堂にて朝食を食べ終え談笑していたラップランドとリーシーの元へ慌てた様子のドクターが駆けつけ、ヤマトが倒れたことを告げた。

 そして、その情報に頭に血が上ったのかリーシーがドクターの肩を掴んでぐわんぐわん揺らした挙句、男からしたら恐ろしすぎる脅迫を迫り、それを傍から見ていたフロストリーフが呆れながらリーシーの首元に自身のアーツを弱めて流し、リーシーを無力化させ、ドクターに話の続きを促す。

 

「えっとね、それで医務室に運ばれてさっき起きたんだけど……」

 

「?起きたなら別に良かったじゃないか」

 

「いや、その……」

 

 どこか歯切れの悪いドクターの様子に3人が不思議思いながら、続きを促すようにドクターじっと見つめる。

 暫くその視線に晒されていた彼はかなり渋っていたものの、観念したのか、はたまた心を決めたのか口を開いた。

 

「実はね、今のヤマトは()()()()()()じゃなくなってるんだ」

 

「は?」

 

「どういうことだい?普段のヤマトじゃないって」

 

「……まあ、行けば分かるかな」

 

 ドクターが告げてきた内容に3人はあまり理解出来ず首を傾げるも、とりあえず行けば分かるのだろう、という軽い気持ちで3人はドクターの後を着いていくのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

「ラッピー……あなたの分までヤマトのことはちゃんと愛してあげるから安らかに眠りなさい……」

 

 そして、ドクターが止める前にヤマトがいる部屋にラップランドが突撃したところで、話は冒頭に戻る。

 ベッドの上でこちらをまるで敵意むき出しの猫のように威嚇してくるヤマトを見たフロストリーフは、気絶してるラップランドで妙な寸劇をしているリーシーを視界に入れないようにしつつ、目線でドクターに説明しろと訴えると、ドクターは渋々といった様子で説明を始めた。

 

「今のヤマトは激しい興奮状態になってる挙句、目に入る人全員が敵のように見えてる状態らしくてね……結果として常に心が休まらず攻撃的な状態になってるっていうのが今のところの診断結果かな」

 

「つまりどういうことだってばよ」

 

「ようは、グレた状態……もっと簡単に例えていうと全然人に懐かない気難しい猫ってことだね」

 

「なるほど、理解した」

 

「すごい端的すぎないか……」

 

 ドクターの説明を聞いて、イマイチ理解出来ずに聞き返したリーシーのために一言で完結した症状を聞かされたフロストリーフは何か違うような気がしつつも頭を抑えてため息を吐く。

 

 だが、この頭痛の1番の原因はグレたヤマト……グレヤマトだ。こんな状態の彼をここから放牧しようものなら、大惨事になることは間違いないだろう。具体的に言うと一番まずいのはイカズチが発狂してロドスが沈むこと。

 

「それで、原因はわかってるのか?」

 

「推測だけど、多分昨日アが打ったアドレナリンのせいかなって……」

 

「よし、そいつ殺そう」

 

「復活したのは何よりだが、まずなんでも殺そうとするな」

 

 いつの間に復活したのか、むくっと起き上がったラップランドが早速原因を作ったアを殺る気満々で抹殺しに行こうとするのをフロストリーフは慣れた手つきで羽交い締めして何とか抑えて、彼女と一緒に部屋から退出しようとした時だった。

 

モフっ

 

「……?」

 

 フロストリーフは自身の腰辺りにモフモフしたものが、ピトッとくっつけられたような感覚を覚え、「HA☆NA☆SE」とバタバタ暴れるラップランドを抑えつつ振り返ると。

 

 

「……」

 

 いつの間にかベッドから離れ近くに立っていたヤマトが、フロストリーフの腰に尻尾を器用に巻きつけていた。纏う雰囲気もツンツンとしたようなモノはあるものの、「置いていくの?」と言わんばかりに何処か寂しそうな空気も混ざっている。

 

 瞬間、フロストリーフは察したくはなかったが何となく察してしまった。しかし、信じたくないため、一筋の希望を掛けてドクターに確認を取るために声をかける。

 

「……なあ、ドクター。これはどういうことか分かるか」

 

「……多分、フロストリーフには心を開いてるんじゃない?」

 

「( ゚∀゚)・∵. グハッ!!」

 

「あ、ショックでリーシーが倒れた」

 

「お前らのメンタル弱すぎないか?」

 

 顔面から勢いよく地面にキスしたリーシーは無視しつつ、フロストリーフはこの状況に頭を抑える。まさか、ヤマトが今のところだけ自分にのみ心を開いているとは思わなかった。無論、彼と最も付き合いが長い彼女からしたら心を開いてくれているという事実が嬉しくない訳はない。ただ──

 

『お兄ちゃん……ねえ、なんで私じゃなくてフロストリーフお姉ちゃんなの?ねえ、教えて?なんでフロストリーフお姉ちゃんなの?私、怒らないから教えて?……答えられない?それなら私と2人っきりになって分かり合えるまで話すならいいよね?』

 

『……へえー、子犬ちゃんったら尻尾を振るべき相手すら分からなくなっちゃたの?仕方ないわね、子犬ちゃんを分からせる必要があるから、ちょっと貸してくれる?』

 

(こんなの、あいつらに見られたらろくなことにならない……!)

 

 ヤマトガチ勢の残り2名の存在がデカすぎた。イカズチなら間違いなく目のハイライトをオフにして迫ってきて、ヤマトを軟禁しそうだし、Wに至ってはヤマトが本当に子犬の如く躾られてしまう可能性がある。そして、それを阻止すべくガチ勢が大乱闘をするまででワンセット。

 頭痛を発生させるな、というのが難しい話だった。

 

 どちらにせよ。

 

「なあ、ヤマト。とりあえず離してくれないか?動こうにも動けん」

 

「……!べ、別に寂しくてやった訳じゃない……こ、このオカンキツネ!

 

「……反応に困るな」

 

「多分、これがヤマトがフロストリーフに吐ける精一杯の悪態なんだろうなぁ」

 

黙れ鈍感朴念仁ヘタレタマなしドクター

 

「すごい、悪口なのにほとんど事実」

 

「泣いていい?」

 

「泣くとしてもアーミヤの胸の中で泣いたらどうだい?」

 

 とばっちりで心に深い傷を負ったドクターを他所に、口で威勢があったものの、渋々といった様子でフロストリーフの腰から自身の尻尾を離したヤマトをおいて、彼女らは今回の原因を作ったであろう容疑者の元へ向かうのだった。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

「まさか、うっかり試作のやつを打ち込んだだなんて……とんだヤブ医者じゃない!」

 

 アから事情聴取という名の尋問を終えた4人は怒りと呆れが入り交じった感情を抱いていた。

 話しを簡潔にまとめれば、昨日の作戦においてアはヤマトのお願いでアドレナリンを打ったのだが、それが普段持ってきているのではなく試作のものであったということであった。

 アも一応多少の罪悪感は抱いてたらしく、薬の効能などを纏めたレポートを既に作成しており、それを先程渡した上で軽く説明もした。

 

「まあ、効果自体は一日だけでしかもその間の記憶も失くなるとのことだからマシではあるな」

 

「ボクとしては、なんかテキサスみたいな感じもあって良いかなって思えてきたんだけどなぁ」

 

「またえげつない暴言吐かれて気絶しても知らんぞ」

 

「気難しい猫だと思えば痛くも痒くもないよ」

 

「無敵か、こいつ」

 

 ラップランドの返答を聞いてフロストリーフは調子の良い奴だと思いつつも、よくよく考えてみればテキサスに普段から無視されるか冷たくあしらわれている彼女からすれば、事前に言葉のナイフが飛んでくることがわかっていればそこまでのダメージはないのかもしれない。

 

「まあとにかく!ヤマトには悪いけども、効果が完全に切れるまでは隔離ということで──」

 

「ドクター、大変です!ヤマトさんが脱走しました!!」

 

「今すぐ探すぞ!!俺は片っ端に協力してくれそうな人に連絡しまくるから、3人は捜索を!」

 

「「「わ、分かった!!」」

 

 医療オペレーターの切羽詰まった言葉を聞いたドクターの行動は素早く、彼の一声でフロストリーフ達は被害が広がるの防ぐためにその場を駆け出したのだった。

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 結論からいえば、グレヤマトの被害は予想よりは広がらなかった。

 というのも、グレヤマトが悪態を着いた人達が。

 

「まさか、会って早々実は面倒見がいいスケバン!なんて言われるのは思いませんでしたよ」

 

「私はツンデレだぞ……」

 

「わ、私は静かすぎるって言われました」

 

「なんかさ、アタシの場合は引き際が分からない万年ボロ雑巾バカ天使ってシンプルな悪口だったんだけど?」

 

「ヤマトちゃんから、あんな蔑んだ目であんな罵倒を受けられるなんて……お陰で新しい扉が開けました!」

 

 悪態をつこうにもつけない人物であったり、メンタルが異様に硬かったりといった人物であったからだった……約1名のみダメージを受けた結果新しい世界へ旅立ってしまったが。

 

 そして件のグレヤマトは現在どうなっているかと言うと……

 

 

「くっ、離せ!!俺に変なことするつもりなんだろう?変態女が書いてた薄い本みたいに!」

 

「ボクとしてはお望み通り分からせてあげてもいいんだけどねぇ」

 

「*50代の男性が泣き崩れるのと同等のダメージのスラング*!」

 

「ふふっ、結構乗り気じゃないか。ドクター、ちょっとヤマトと2人っきりにさせてもらってもいいかな?」

 

「ひっ……!イカれてる!」

 

「流石にヤマトが可哀想……というよりそんな事やらせるわけないでしょーが」

 

 とある部屋にて、拘束された状態でベッドの部屋で寝かされており、先程まで陸に上げられた魚のように跳ねながら結構えげつない悪態を着いていたが、もう慣れてしまったラップランドからしたらそよ風に吹かれる程度の衝撃しかなく、イタダキマス宣言をしたところでドクターが待ったをかける。

 こちらは健全な方なので、ドクターの行動はファインプレイと言えるだろう。

 

「まあ、監視役兼お世話役としてフロストリーフを置くのが1番いいのかもね……納得したくないけど」

 

「おい待て。こんな状態でヤマトが脱走できるとでも思ってるのか?」

 

「いや、普通に考えてこのまま放置だとご飯やトイレどうするんだい?この状態でも普段の通りできる方法を教えて欲しいな、フーちゃん?」

 

「ぶち殺していいか?」

 

「フロストリーフ、ステイステイ」

 

 やけにいい笑顔に加えてなんか癪に触るような言い方で煽ってくるラップランドに、フロストリーフはマジな方の殺意を抱くも、ドクターに止められたこともあって何とか堪えたのだった。

 

 

 後日、元に戻ったヤマトはアが言っていたようにグレヤマトになっていた時の記憶はまったくなかったものの、朧気ながらちょっとだけスッキリしたと言っており、もしかしなくてもヤマトは結構ストレスを溜めているのではないかという話が出てきて、やけに周りの人物がヤマトを優しく接するようになるのだが、それはまた別の話。




今回のイベントの現段階での感想を色んな人から怒られるのを覚悟で一言で言うと、ケルシー先生のコスプレ大会でしたね()

キャラ紹介

ヤマト:被害者兼加害者。脱走した理由は頑なに喋らなかった。

ラップランド:初手気絶をしたものの、次のヤマトの悪態を軽く受け止めるという短期間で耐性を得るというやべーやつ。

リーシー:悪態よりも、グレヤマトがフロストリーフの方を信頼してることにショックを受けていたものの、復活は早かった。実は脱走したヤマトをみつけたのも彼女だったり。

フロストリーフ:ヤマトのオカン。結局、フロストリーフの前ではグレヤマトは終始大人しかったとか。

ア:まさかあんなことになるとは思わんかった

罵倒されて新しい扉を開いた女性オペレーター:薄い本の作業が更に早くなったらしい。

年末の話、何やろうかすっごい考え中です。大晦日のまったり系にしようかなぁ…決まらなかったらアンケも取るかもしれないです()


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修羅場ですよ!ヤマトく……じゃなくてヤマトさん!(僧侶ルート)

えー、これまでに色んなifルートが追加され、折角なのでその追加されたルートの修羅場編を書かせていただきました。

初っ端は恐らくあの人の生存の有無が気になってる人が多いであろう、このルートからです。

それではどうぞ。


 

「いやー、本当に助かったよ。ありがとう、ヤマト」

 

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、僕は大したことはしてないよ」

 

「暴走したビッグアグリーを秒殺し、たった1人でガヴィルウィルのメンバー4割を無力化した人が何言ってんのさ……」

 

 ガヴィルの故郷であるサルゴンの熱帯雨林の滝にて、たまたまそこで休んでいたヤマトはガヴィルの里帰りとして来ていたドクター一行と遭遇。その後、流れで彼らの後を付いて行き、今回の騒動の鎮静にほんの少しだけ貢献した。とヤマトは思っているのだが、そのやったことがやったことであるためブレイズからは呆れた様子で言われ、彼は苦笑を浮かべる。

 

 ちなみに、余談ではあるがどうやってビッグアグリーを秒殺したのかというと、ヤマトはアーツで出来た光の玉を12個生み出し、そのうち4個を自分の近くに展開、残りをビッグアグリーの周辺へ飛ばし、錫杖と光の玉による術攻撃……いや、もはやビームといった方が適切なアーツでビッグアグリーに取り付けられているロドスの飛行装置の()()()()()()()()()()()達磨みたいな感じにして撃破というもの。

 更に付け加えれば、ガヴィルウィルのメンバーの無力化も、気絶で済む程に威力を加減した状態で、ビッグアグリーを撃破したような感じで武器破壊や気絶させたりしていた。

 

 閑話休題

 

「ああ、そうだ。今回の件に関するお礼をしたいから、このままロドスに来てくれないかな?」

 

「別に、お礼を受け取るほどのことなんてしてないさ。オペレーターとして当然のことをしたまでだしね」

 

「でも、そろそろ戻ってきて欲しいんだ……その、色んな意味で」

 

「…………」

 

 困った様子のドクターの言い分を聞いたヤマトは苦笑いを浮かべながら、思考を巡らせる。正直な話を言ってしまえば、ロドスには寄りたくはない。というより、「ロドスに行かない方がいい」「行ったら色んな意味で死ぬゾ」と先程から自身の生存本能が激しく警鐘を鳴らしている。だが、ここで戻らないそれなりに交友がある面々と()()()()会っていないことになり、その上その面々の内の何割かは自分のお願いでロドスで暮らせるようにしてもらっている。

 一応、そのお願いの代わりとしてヤマトはロドスと契約して、ちょっと特殊なオペレーターとなって働いている。が、正直これだけでは返すことが出来ない恩があるのも事実。そのため──

 

「……うん、分かった。丁度詳しい報告や物資の補給とかもしたかったからね。久しぶりに寄らせてもらうかな」

 

「!ほ、本当!?」

 

「?うん、そうだけども……」

 

「良かった……これで私たちの胃の負担も軽減される……」

 

「?」

 

 ヤマトの返事に何故かその場にいたロドスのメンバーがほっとしたような態度をとる中、何故まるで起爆寸前の爆発物を無事に解除できたかのような、もしくは厄介事を押し付けることが成功したかのような安心感を出しているのか、ヤマトは全く理解出来ず首を傾げるのだった。

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

「半年ぶりだな、ヤマト」

 

「……まさか、最初に出迎えにきてくれるのが君だとは思わなかったよ」

 

──フロストノヴァ

 

 久しぶりにロドスに戻っヤマトは、出迎えに来たであろう目の前にいるコータスの女性を見て少し意外そうな声を出した。それもそうだろう、彼の予想であれば何かと甘えん坊な義妹か、何故か自分のことを気に入ってしまったループスの女剣士が来るだろうと予想していたのだ。全く予想していなかった人物がいて、驚くなというのが無理な話だろう。

 

 が、当の名前を呼ばれた本人は少しだけムッとした様子でヤマトの顔を見やる。

 

「前にも言ったが、その名ではなくエレーナと呼べと言ったはずだが?」

 

「おっと、そうだったかな?最近、物忘れが酷いから忘れてたよ」

 

「…………」

 

「さて、報告をする必要があるからね。続きはまた今度に」

 

「あ、ちょっと……」

 

 ヤマトは彼女の追求を惚けたような様子で躱しつつ、それ以上は踏み込ませないとばかりに話を打ち切ると、反応が遅れた彼女を置いてさっさと奥へ向かおうと──

 

「あら、久しぶりに帰ってきてそれは無いんじゃない?」

 

「本当に予想が外れてばっかりだ。まさか君も来るなんてね、W()()

 

 ──したところで、横からこれまたヤマトにとって予想外であったWに声をかけられた。彼女の様子はいつものように捉えどころのない煙のような雰囲気をまとっているものの、それだけではなく怒りや呆れの雰囲気も混ざっていた。が、ヤマトの返しを聞いて眉をピクっと動かし怒りの念が更に増した。

 

「ねえ、前にも『さん』付けは辞めてって言ったわよね?煽ってるなら買うわよ?」

 

「別にそういうわけじゃないさ。ただ、これも前に言ったと思うけどこれは性分みたいでね。寛大に見てくれると非常に助かるんだけどな」

 

「……本当に口の回り早いわね。まあ、私は寛大で優しいから晩酌に付き合ってくれるなら許してあげるわよ」

 

「それはありがたいね。君みたいな美人な人とお酒を飲むだけで許されるなんて、ただのご褒美みたいだ」

 

「……よくそんなセリフ吐けるわね」

 

「色んなところ行ってると、こういうことも言えるようにはなるさ」

 

「……ふん」

 

(す、すごい……あのWを……)

 

(照れさせた……だと……?)

 

 Wとヤマトの会話を聞いていたサルゴンから帰ってきたドクター一行や、それを出迎えに来た一部のオペレーターは信じられない物を見るかのような目でその状況を見ていた。

 それもそうだろう、何かと神経を逆撫でするような物言いが多いWは元レユニオンの幹部ということもあってあまりいい印象は持たれていない。そして、彼女に仲間を殺されたオペレーターが突っかかって口論に発展するも、言い負かされてる場面の目撃もそれなりに多い。

 そのため、照れるWという光景はレアすぎた。どれぐらいレアかというと、10連ガチャで狙ったSSR3枚抜きした!?というレベルで。

 

 そしてこれで話が終わり、ヤマトが今度こそその場を後にしようとした時だった。

 フロストノヴァがかつて戦った時と同様の鋭い雰囲気を出しながら声を上げた。

 

「おい待て。その晩酌に私も混ぜてもらおうか」

 

「は?あんたはお呼びじゃないのよ、白うさぎ。ヤマトは私と2人っきりで付き合うって約束したのよ?」

 

「それはお前が勝手に決めたことであって、別に私が勝手に参加して一人増えても問題は無いだろう?そもそも抜け駆けを許すと思うか?

 

ちっ、流石に目の前でやるのはダメだったわね……まあ、どうしようとも貴方抜きでやらせてもらうけどね?」

 

「ほう?面白い冗談だな、お前ごときが私を出し抜けるとでも──」

 

(……仲がある意味良さそうで何より)

 

 ヒートアップしていく2人の口論を聞き流しながら、ヤマトは周りの「おい、お前が原因なんだから何とかしろ」という視線を気づいていないフリして今度こそその場を去ったのだった。

 

 三十六計逃げるに如かず。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

「はぁ……まさかあんな命令が出るなんてねぇ……」

 

 ヤマトはロドスの廊下をため息を吐きながら困った様子で歩いていた。

 先程、ケルシーやアーミヤらに各地の情勢や感染者の動き、そしてサルゴンでの一件を報告したのだが、それが終わったあとアーミヤに、休養を含めて3()()()は滞在するように、と業務命令が下ったことが、彼を困惑させていた。

 本当であれば、物資の補給やアーツユニットの点検、そしてロドスにいる友人たちとの交流を含めて長くても1週間、短くて3日滞在したら出ようと予定を立てていた。しかし、現実はその予定が全てぶっ飛んだのだから困惑するなというのが無理な話かもしれない。

 

 だが、ヤマトの困惑はそれだけが理由ではなかった。

 

(ここに来る前に感じてた、嫌な予感が余計に強くなってる気がするんだよねぇ……)

 

 そう、先程から「もう逃げられないゾ」「オワコンなんですわぁ」と言わんばかりにとてつもない嫌な予感が彼を襲っていた。しかも彼のこういった予感というか虫の知らせというのは、良いこと悪いこと両方をひっくるめてほぼ当たるため、それが余計に彼を困惑させていた。

 

(まあ、それはその場その時で臨機応変に対応すればいいか。問題はどこで寝泊まりするかかなぁ)

 

 これ以上は考えても仕方ないと、半ば投げやり気味に重大な問題について考えるのを諦めたヤマトは次点の問題の方に思考を割くことにした。

 

 ここまでの話からして察してる方もいると思われるが、ヤマトはロドスにいる時間はかなり少ない、というよりほぼいない。

 そのため、他のオペレーターと違って借りている部屋がなく、普段であればノリがいいスノーデビル小隊のメンバーのところか、もしくは自分に着いてきてくれた者たちのところ、それすらもダメな場合は()()のところへ転がり込むのだが、今回は3ヶ月という長丁場。流石に3ヶ月も知り合いとはいえ同じ場所に留まるのは、泊める側もいい気分はしないだろう。

 

(さて、本当にどうしようかな……ん?)

 

 本当にどうしたものか、と真剣に悩み始めたところでヤマトの耳は遠くから誰かが走ってきている音を捉え、そして感じる気配から恐らくすぐ後に来るであろう衝撃に備えるため、()()()()()()()()()()()して身構える。

 

おーにーいーちゃーんーっ!

 

「おっと」

 

 そしてその数秒後に姿を現したと思ったと同時に全力で飛び込んできたループスの少女を、勢いが抑えきず1歩だけ後ろに下がってしまったものの受け止めてその頭を撫でる。

 

「久しぶりだね、イカヅチ。けど、アーツを使ってまで走ってくるのは感心しないかな」

 

「えへへー、久しぶりのお兄ちゃんだー!」

 

「うーん、全然聞こえてないや」

 

 ヤマトの胸に顔を埋め離さないと言わんばかりに背に腕を回して、ギューッと効果音が出そうな勢いでハグをして幸せそうな雰囲気を出しているイカヅチに、ヤマトは叱るに叱れずそのまま彼女の頭を撫でる。

 

 実を言うと、ヤマトはイカヅチを叱ったことは片手で数えられるほどしかなく、それも結構緩いため彼が義妹に対して甘いというのは自他共に認められている事実だ。

 彼もこれを何とかしないといけない、というのは分かっているのだが、義妹とはいえど『家族』というこれまで越えさせないようにしていた一線を超えてきたせいもあって、つい甘やかしてしまっているのが現状だ。実際、ヤマトはイカヅチとこうしてハグする時間は彼女の体温から生きているということを感じさせ、それが心を穏やかにしてくれるため好ましく思っている。

 

「ねえ、お兄ちゃん。今さ、寝泊まりするところどうしようか考えてたでしょ?」

 

「おっと、声に出てたかな?」

 

「いや、何となくそうじゃないかなーって。もし、まだ決めてないならロドスを出るまで私のところに()()()!」

 

「ん?」

 

 考えていたことを読まれるなんてまだ未熟だな、とヤマトが自身の失態に呆れようとした次の瞬間にイカヅチが発した言葉に違和感を持った。

 もし、先程の言葉が「私のところに()()()()()()!」なら分かる。これならば、まだ仕方なく、といったように捉えられるし、また選択権があると考えることも出来る。そのため、なんの疑問も持たずに「そのお言葉に甘えようかな」や「候補の1つに入れておくよ」と無難な返しができただろう。

 

 だがしかし、実際に出てきた言葉「私ところに()()()!」であり、これだと意味合いが違ってくる。これでは、選択権がなく強制的に彼女のところで3ヶ月寝泊まりするように捉えることが可能……というより現にヤマトはそう捉えてしまった。

 

「イカヅチ。聞き間違いかもしれないど、さっき私のところに居てよって言った?」

 

「?そうだよ?3ヶ月もロドスに滞在できるんでしょ?それなら私のところにしてよ!」

 

(うーん、聞き間違いじゃなかったかー)

 

 ミシミシと嫌な音が背中からなり始め、目のハイライトが少し消えかけているイカヅチを見ながらヤマトはどうしたもんかと考え始めた。

 

 流石に3ヶ月も一緒の部屋で就寝を一緒にする、それも異性でというのは、倫理的な観点でもアウトだ。いや、実を言えばヤマトは彼女の部屋で寝泊まりしたことがない訳では無いのだ。だが、それも1泊だけだったし、1泊する羽目になったのも当時まだ精神が不安定だったイカズチに、まるで木にしがみつくコアラのようにがっちりとホールドされて「一緒に寝てくれないとやだぁぁぁ!」と泣かれて折れた、というやむを得ない事情があったからだ。

 

(何とか説得してこの窮地を脱しないとだね)

 

 何としても断らないといけない、そう思ってヤマトが口を開こうとした時だった。

 

「ふふっ、お困りのようだねぇ?」

 

「ちっ……」

 

「………………」

 

 女の子が舌打ちしちゃいけません、とイカズチに言おうとしてそれを何とか飲み込んだ自分をヤマトは褒めたい心境になった。もし、そんなことを言えば色々と面倒臭い状況になるのは明白だからだ……尤も声をかけてきた人物の登場によって既に面倒臭い状況ではあるのだが。

 

 だが、ここでイカヅチやその声掛けてきた人物よりも先に話の主導権を握らなければマズイことになると、自身の直感が告げているため声をかけてきた人物の方向に顔を動かして声をかけた。

 

「元気そうだね、ラップランドさん」

 

「ボクとキミの仲だというのに、そんな距離を置くような呼び方じゃ寂しいねぇ」

 

「は?微塵もそんなこと思ってもない癖に、よくベラベラ喋れるね?」

 

「まあ、それはいいんだ。アーミヤから聞いたよ?3ヶ月ここに滞在することになったんだってね?」

 

「おい、無視するな白黒」

 

「……ラップランドさんの質問に関して答えるなら、YESって言わせてもらおうかn……イカヅチ、あんまり腕に力込めないで?」

 

「むー!!」

 

 ラップランドとヤマトの会話が進んでいくにつれて、ヤマトの腕の中にいるイカヅチの機嫌はどんどん悪くなっていき、それに比例していくかのように背中からなる嫌な音も大きくなっていく。このままでは、背骨がぽっきりと折れて、ロドスの滞在が3ヶ月どころではなくなると感じたヤマトはイカヅチの機嫌を早急に立て直すためにも、ラップランドとの会話を早めに終わらせることにした。

 

「それで、ラップランドさんは何をしに来たのかな?」

 

「うん、率直にいうとだね……ボクの部屋で寝泊まりしたらどうだい?」

 

ブッコロ

 

「こらっ、イカズチ。女の子がそんな言葉使っちゃいけません……あと背骨が折れそうだから力を弛めて欲しいな」

 

「うん、分かった。あのへそ出し痴女白黒を殺せばいいんだね!」

 

「ダメだ、何も分かってない」

 

 嫌な予感の正体はこれだったか、とヤマトは内心でごちる。まさか、居候先をどうするかでこんな目に遭うとは思いもしなかった。というより、胸元のイカヅチと痴女呼ばわりされたラップランドの怒気が凄く、挟まれているヤマトはどうしたものかと、頭を悩ませた。

 

 が、こういう時に限って神様というのは悪戯をしてくるものである。

 

「ヤマト、私のところに来たらどうだ?」

 

「ヤマト、寝床なら私のところ使ってもいいわよ?」

 

「…………」

 

 先程から大声でイカヅチが騒いでいたせいなのか、仲良く話していた筈のフロストノヴァとWまでもがやってきてしまい、この状況にヤマトはイカヅチを落ち着かせるために撫でている手とは逆の手を自身の額に当ててため息を吐く。

 

 と、同時にスノーデビル小隊の中でも特に仲のいい人物が視界の端に映り込み、何故かバチバチと火花を散らしている4人に気づかれないようにヤマトは目で助けを乞う。

 

「(すみません、俺死にたくないんで無理です)」

 

 が、返されたのは必死に手を合わせてペコペコ頭を下げてくるというジェスチャーであり、それを一通りやった彼は巻き込まれる前にと戦線を離脱。救いはどうやらないようです。

 

「……なるほど」

 

 ロドスに来る前の嫌な予感はこれだったのか、とヤマトは目の前で口論を繰り広げる4人を見ながらため息を吐き、とりあえずは踏み込まれたくない一線を越えさせないための妥協案を考えることにするのだった。

 

 

 

 なお、この騒ぎを聞きつけたアーミヤのお陰で急遽空き部屋を借りることが出来たものの、そのせいで突撃してくる人物がたくさん出てきてヤマトが頭を抱えるのはまた別の話。




キャラ崩壊が激しい……

キャラ紹介

ヤマト(僧侶ルート):闇落ちしかけたところをサガを拾った『住職様』に拾われて、僧侶くずれでありながら、旅に出た先でレユニオンの元幹部になったルートのヤマト。久しぶりに帰ってきたロドスで早速散々な目にあったが、それも問題を着火するだけして放置した結果なので仕方ない。なお実は某機動戦士のストライクな自由みたいにドラグーンモドキをとばしたり、フルバーストモドキによる制圧射撃も結構得意だったり。ただ、これは行いすぎると鉱石病の進行が悪化するため使うとしても1週間に3回までとロドスの担当医から制限されている。
そして、とあることが原因で自分が敷いたラインより親しい人を作らないようにしているらしい?


フロストノヴァ:多くのドクターの心を破壊したヤベー奴。作者も発狂した。このルートでは、ヤマトの尽力によって自身の配下、家族でもあるスノーデビル小隊全員が1人も欠けることなくロドス入りを果たしている。火種1号。

W:負けたらギャグ要員の洗礼を浴びてしまっているサルカズのお姉さん。なお、当小説でもギャグ要員なのでW推しの方はお気をつけください(遅い注意喚起)。火種2号。

イカヅチ:オリキャラ。ヤマトの義妹。ロドスに来たきっかけは、ヤマトがロドスと契約して世界各地の情勢を確認するために旅に出た3ヶ月後に彼を見つけて、本編同様に襲いかかるも、ドラグーンモドキ+フルバーストモドキで部下諸共無力化され、その後の対話であっさりと義妹として受け入れられ、感染者でもあったため治療させるという意味も込めて送られたというもの。中々会えないせいで、愛が他のルートより重い。火種3号。

ラップランド:色々とヤベー奴。こちらのヤマトを気に入ったのは、普段の温和な雰囲気と不殺の志と彼が殺した人の数の多さからくる差。つまりギャップ萌え。それ以外にも、自分相手でもほかの人物と変わらない態度で接してくれるからというのもあったり。火種4号

スノーデビル小隊:ヤマトのことは恩人だとは思っているものの、とんでもねぇ人たらしだとも思ってる。姐さん派閥。

ヤマトの元配下:ヤマトの事は恩人だと思ってるが、とんでもねぇ人たらしだとも思ってる。イカヅチ派閥。

ドクター:ヤマトがいない時でもバチバチする4人のせいでお腹が痛い。

アーミヤ:ヤマトさん。早く誰にするか決めるか、いっその事全員娶って下さい(投げやり気味)

おまけ

ロドスの人から見た僧侶ルートのヤマトの印象

・本当にレユニオンの元幹部なのか疑わしいくらい穏やかで話がわかる人

・ロドスにいる時間が短いよく分からん人

・アホみたいな術攻撃してくるとやべー人だと思ったら、アホみたいに接近戦も強いやべー人

・頼むから火種を燃やしてそのまま放置するのやめてください(総意)

感想お待ちしております。


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修羅場ですよ!ヤマト君!(白き殺戮者ルート)

次はこのルートなんですが……結構難産でした。

あと、僧侶の方はキャラを追加した上でまた投稿するかもしれません。いや、僧侶ルートのヤマトと相性が良さそうなキャラが実装されたのと、とあるキャラがいるのを忘れてた自分が悪いんですけども……


 ──ヤマトさんは私の恩人だ。

 

 数年前、傷が治りきってない状態で感染者の賊に襲われた私を助けてくれただけではなく、完全に治るまで付きっきりで面倒を見てくれたあの人は私がお礼をする前に姿を消してしまった。

 それ以来、またいつか会えることを祈って歩き続けていた中でロドスで再会することが出来た。

 

 けれど──

 

『誰だお前は?』

 

 あの人は私の事なんて全く覚えていなかった。それでも、助けてもらった恩は返したかったから、何度も会いに行って何か欲しいものはないか、して欲しいことはないか聞いてみた。けれども、あの人は無欲なのか何も答えてくれなかった。

 

 だから色々考えてみた結果……というよりあの人が普段食事をゼリー飲料やら栄養調整食品のもので済ませているのしか見たことがないのを思い出して、手料理でも振る舞えばいいのではないかと考えに至り、調理室で早速作ろうとしたけど……

 

『……何をやっている?』

 

『え、ホットケーキを作ろうと……』

 

『それならコンロは強火にする必要は無い。……出来るまで見てやるから続けてくれ』

 

『え……』

 

 どうやら私の作り方は結構危なっかしかったらしく、その日は付きっきりで教えてもらいながらホットケーキを作った。あの人は教えてる最中も無表情だったけども、纏っている雰囲気はいつもより柔らかかった気がするかな。……正直、お礼したい人に教わりながら作るというのはちょっと恥ずかしかったけど。

 

『やれやれ、ホットケーキ作るだけにここまで見てやらないと危ないヤツがいるとはな……』

 

『ゔっ……すみません……』

 

『で、それは誰にあげるやつだ?ドクターはともかく、ケルシーに渡すつもりならあと3時間ぐらいは待つべきだが』

 

『いえ、これは貴方にあげようと思って……』

 

『……何?』

 

『その、貴方の食生活見てたらいつもレーションとかしか食べてないので、お節介だとは思ったけどあの時助けて貰ったお礼も兼ねて……』

 

『……変わったヤツだ』

 

 あの人はこのホットケーキが自分に向けて作られたものだと分かると、驚いた表情を見せただけでなく、少しだけ、本当に少しだけですが口角がちょっとだけ上がりました。

 

『……そこまでして貰って食わないというのは流石に礼儀知らずだな。早速で悪いが食べさせてもらおう……ふむ、初めてにしては上出来じゃないか』

 

『そ、そうですか……良かった

 

『だが、調理過程を見るに正直不安なところがありすぎる。また何か作りたいものがあったら言え。慣れるまで見てやる……調理室を爆破されたくないからな

 

『え、えっと……ありがとうございます?』

 

 それ以来、私は何かを作る度にあの人に声をかけて料理を付きっきりで見てもらった。その時間は、任務の時や普段の時とは違う雰囲気のあの人が見れてとても穏やかで、好ましい時間だった。

 ……そして、恥ずかしながらもそんなあの人と過ごしていく度に自分の中である感情が芽生え始め、それもあってあの人と会うのが楽しみになっていた。

 

 でも、それは唐突に終わりを告げてしまった。

 いつも通り料理をしていたあの日、あの人が突然頭を抑えだして呻き出した。

 突然の事態に戸惑いつつも必死に声をかけても、あの人は苦痛で顔を歪めながら呻き続け、結局駆けつけたレッドさんがあの人用に配合された鎮静剤を入れた注射を打つまで私は何も出来なかった。

 

 そしてその後あの人を背中に担いだレッドさんにケルシー先生の所に連れられて、早々言われたのがあの人と関わるのを止めるようにという事だった。

 当然納得できるはずがなく、私はケルシー先生に理由を問いただした。最初の方は教えても意味が無い、の一点張りで中々教えてくれなかったが私が引かないのが分かったのかあの人の現状について教えてくれた。

 

 まさか、恩人であるあの人がそんな酷い状況で生活していたなんて思いもしなかった。しかも、最近あの人は一日一日の出来事さえ忘れてしまうようになってしまっていたとも言われた。

 だが、それだと何故あの人が私の料理に付き合ってくれたのか、という疑問が浮かび上がってくるのだが、それに関してはケルシー先生から渡された彼の手帳を見て分かった。

 

『○月×日

 ヴァルポの女刀使いが僕すら忘れてる命を助けたお礼ということでホットケーキを作った。が、正直調理過程が下手すると器具を爆発させる可能性があったため付きっきりで指導。以降、後述する特徴のヴァルポの少女と会ったり、その少女が調理室に入っていくのを見かけたらちゃんと対応すること。特に調理に関連する場合は何があっても優先しろ、面倒を見ると言ったからには見ないと筋が通らないからな。それに調理室を爆発現場にさせる訳にはいかない』

 

 ──書いていたのだ。あの日のこと、私のことを。

 それから暫くは私とその日にしたことが書いてあって、最後の爆発云々はともかく、思わず嬉しく感じてしまった。

 そして頭痛に襲われる前日には──

 

『*月×日

 段々と彼女のことを忘れないようになってきた。何故かは分からないが、彼女と一緒にいると安心すると言えばいいのか、楽になれる。今度、レッドも誘って3人でやるのも悪くないかもしれない。らしくないと思うがその日が来るのが待ち遠しい』

 

 そんなことが書いてあった。そして、同時にケルシー先生から接触しないように言った理由を話された。

 

 曰く、あの人は私との交流の影響で元の人格が()()()()()のではないかと。

 曰く、その起き始めた元の人格がこれまでの人を殺してきた罪悪感とかつての相方を死なせてしまった無力感に襲われたのではないかと。

 曰く、その結果出たのが頭痛では無いかと。

 そして、これ以上は何が起こるか分からないから彼を刺激させないで欲しい、との事だった。

 

 確かに、あの人のことや周りのことを考えれば接触しないようにするのが1番なのかもしれない。

 けれども、自分が初めて抱いたこの感情を諦めたくなかった。だから、私は覚悟を決めた。

 

 ──私があの人を支え続けてみせる。そして、あの人が周りに危害を加えようとした時は──

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

「カッター?」

 

「あ、すみません、ちょっと考え事をしていました」

 

「……調理中はなるべく調理の方に集中しておけ。怪我でもされたら後味が悪い」

 

「気をつけます……」

 

 あれから数ヶ月ほど時間たった現在でも、私とヤマトさんの関係は続いていた。そして、この数ヶ月で分かったことがあるとすればヤマトさんを狙ってる人……正確にはヤマトさんを負の道へ引きずり込もうとしている女性がいるということであった。

 

 この関係を続けているのも、勿論私がヤマトさんと一緒にいたいのと料理を教えてもらうなどの私的な理由もあるが、1番大きい理由は彼女からヤマトさんを守るためだ。

 

 ヤマトさんは、あちら側の道に入るべき人じゃない。いや、彼は本当は剣なんか握らずに争いから離れた穏やかな生活をすべき人だ。

 

「…………」

 

 ああ、さっきからラップランドが私だけに殺気を飛ばしてるのは分かってる。やっぱり私が彼の隣にいるのは気に食わないみたいだ。

 正直、いつ殺されてもおかしくはないだろう。それほどまでに彼女からは嫌われている。

 

 けども、私は彼の隣を諦めるつもりは無い。いや、彼の隣は譲らない。それが、例えケルシー先生だろうとレッドさんだろうと関係ない。

 

 私の覚悟(想い)は──

 

 

 ──あの人が周りに危害を加えようとした時は、私が殺します。

 

 

 ──本物だ。

 

 

 

 

 

トロフィー:「死神のヒカリ」を取得しました

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

「ケルシー、話聞いてくれて、ありがとう」

 

「ああ、別に構わない……ふぅ」

 

 ケルシーは先程まで話を聞いていたレッドが部屋を出ていったタイミングでため息を吐いた。

 

 いつか彼女もそういう感情を抱くだろう、とはケルシーも考えていた。だが予想以上に早く、そして予想外の感情まで持ってしまっていることがケルシーの頭を悩ませていた。

 

「まさかヤマトに対して()()を、カッターやラップランドに()()の感情を抱くとはな」

 

 正に予想だにしていなかった展開だった。ヤマトに向けての恋心に関しては、唯一と言っていい自分を怖がらずに受け入れてくれたループスでありながら、あれこれ面倒を見てくれることを考えれば恋心を持つのは時間の問題であったため、予想より早かったもののそこまで驚く話ではなかった。

 

 だが、同時に嫉妬の感情を持つことは予想外であった。それも、比較的仲の良いカッターに対して持ったことだ。

 

『ヤマトと話してる、ラップランド、カッター見てると、胸がモヤモヤする……ケルシー、レッドおかしくなった?』

 

 ケルシーは相談しに来たレッドの不安そうな顔を思い出す。レッドからしてみれば、ラップランドはともかくヤマトを通して仲良くなったカッターに対して不快感を抱いてしまったことは相当不安だったのは容易に想像出来る。しかも、話を聞く限りそれは1ヶ月ほど前に起き始めたというのだから相談しに来たのも悩みに悩んでの結果だったのだろう。

 

「……ヤマトの精神状態がまともになってくれれば全てをアイツに投げられたんだがな」

 

 ふと、頭に浮かんだことを呟いてからケルシーは即座にそれは本当にありえないことだと否定する。

 ヤマトの精神状態をまともな状態にするというのは、恐らく完全に目を覚ましていないであろう元の人格が目覚めて尚且つ精神崩壊を起こさずに、元の人格を保たせるということ。

 

 正直、ほぼ不可能と言ってもいいぐらいの難易度だ。そもそも、ヤマトはかつての相棒に似ているブレイズを見るだけで拒絶反応を起こすのだ。そんな状況で元の人格を目覚めさせて尚且つ壊れないようにした上で安定させるなど、無理な話である。

 

「……可能性があるとすれば、カッターとレッドか」

 

 もし、仮に僅かでも可能性があるとすればカッターとレッドの2人の動きが重要になってくるだろう。あの2人がヤマトの元の人格を起こしつつ、その人格を支えられるほどの大きな存在になりうれば──

 

「いや、結局は確証も何も無い想像だ。そんな簡単な話になる問題ではない」

 

 そこまで考えたところでケルシーは頭を振るう。

 

 だが、やはりどこか期待してしまっている自分がいるのをケルシーは気づき、そしてそれを気づいてないことにして仕事に戻るのだった。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 なんでだ、なんでヤマトの隣にキミがいる?

 ヤマトはボクと同じ道を歩いてくれるかもしれない、唯一の存在かもしれない。それなのに、何故ボクから彼を奪おうとする?

 

 どれだけボクから奪えば気が済むんだ?

 

 ふざけるな、ヤマトはボクのものだ。そして彼を救えるのも、彼の安らぎになれるのもボクだけだ。

 

 なのに、何故キミは……いやキミたちはヤマトのことをこれ以上苦しめる?彼が本当に救われるには、コワレルしかないというのに、それを分からないキミたちが平然と彼の隣に立っているのが、恨めしい。本当であるなら今すぐ殺してやりたい所ではあるものの、流石にこの状況下では出来ない。やれば待っているのは、彼に殺されるかまた彼以外に殺されるの2択だ。前者ならともかく、後者の方は最悪だ。殺されるにしてもヤマトの方がまだマシだ。

 

 さて、殺して自分のモノにするというのが悪手となった以上取れる手はヤマトと親密になるしかない訳だ。けれども、これもあの赤いオオカミや女狐がうろちょろしてるせいで中々交流する時間を長く取れない。

 

 正直、ヤマトと話す時間がかなり短いせいで不利だ。それもかなり。だが、それがどうした?時間が短いというのなら、質で攻めれば良いだけの話だ。幸い、彼もボクのことは覚えてくれる程度には印象に残っているみたいだし、まだ挽回できる。

 

 ──さあ、どちらが早くヤマトを堕とせるか勝負と行こうじゃないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トロフィー:「少年をコワスモノ」のトロフィーを獲得しました。

 

 

 

 




今回のイベントのボスは、何か前回の国土おじさんと比べたらそんなに強くなかった気が……まあ、厨キャラ(W、銀灰、エクシア、ASH)でタコ殴りしたせいもあるとは思いますが。



ヤマト(白き殺戮者ルート):戦闘に向いている才能を持ちながら、命の奪い合いに不適切な人格の持ち主。食事レベルがかなり低いが、これは味覚が死んでる+必要な栄養素さえ取れれば問題ない思考+手早く済ませたいという3つの考えが合体して出来たもの。修羅場を作っている自覚なし。

カッター:このルートのヒロインの1人。最初はただ恩を返したくてヤマトと交流を持ち始めただけなのに、彼の内情を知った+ヤマトに想いを寄せる+ラップランドのことを知るのせいでヤンデレへと化した。完全にどうしてこうなるまで案件。なお、とある条件下でのヤマト相手なら殺すことが可能な程特殊な訓練を受けて戦闘力は原作より上がってる設定があったり。

レッド:このルートのヒロインの1人。ロドスに来てからのヤマトと行動しているため、ヤマトと過ごした時間は1番多い。初めて持った感情に戸惑いつつも、今は皆でヤマトを共有できないかと考え中。ヒロインの中では1番平和的な考えの持ち主かも。

ラップランド:このルートのヒロインの1人にして、不穏なことを考えてるキャラ崩壊的な意味でもヤベー奴。ある意味ではこのルートのヤマトのことを1番理解してる人でもあったり。

感想や批評お待ちしております。












今回の話で、不自然な間隔のところをドラッグしてメモにコピペすると……?


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ハロウィンですよ!ヤマトさん!(僧侶ルート)

えー、お久しぶりです。皆様、ハロウィンはどうお過ごしの予定でしょうか?

え?聞いてきたアンタの予定は?……家でまったり過ごす予定です(震え声)





 ロドスにオペレーターとして所属しているヤマトは中々帰ってこない割には、小さい子供に好かれている。理由は幾つかあるが、1番の要因は彼が子供に好かれやすい態度や接し方をしているのがあるだろう。

 さて、何故唐突にこのような話をしたのか?それは──

 

「あ、ヤマトおじさん!今年も約束守ってくれたんだね!」

 

「ああ、そうだね。今年もちゃんと守ったよ」

 

 今しがた、可愛い幽霊の顔がプリントされたフード付きのパーカーを着た子供が言ったように、ヤマトは子供たちとハロウィンにはちゃんと帰ってくるという約束をしていたのだ。

 というのも、まだ子供たちがヤマトが中々ロドスに帰ってこないというのを知らなかった年のハロウィンにて、彼と遊びたいと思っていた子供たちがヤマトが居ないということを知って落ち込んでしまったり、酷い場合には泣きだしてしまうという事態にまで発展。新年に戻ってきたヤマトは、子供たちの世話をしているオペレーターから言われる前に、その子供たちに詰め寄られ結果として彼は子供たちに謝罪、そして次からのハロウィンには帰ってくることを約束し、その年は極東の文化である「餅つき」をやり、そしてその餅から彼特製のお雑煮を振舞ったことで事なきを得た。

 

 そしてヤマトの言葉にあるように、彼は深刻な事態や大きい事件に巻き込まれない限りはハロウィンまでに帰ってくるようにしており、現在までにその約束を破ったことは無い。有言実行とは正にこのことを示すのだろう。なお、今のヤマトは極東の伝説に出てくる天狗が来ていたという「山伏」と呼ばれる服装で仮装していた……西洋のお祭りなのに、極東の妖怪に仮装していいのか、というツッコミは置いといて。

 

「あ、おじさん!トリックオアトリート!」

 

「はい、飴をどうぞ」

 

「ありがとー!」

 

 可愛い幽霊さんにヤマトは懐から飴を取り出して渡し、お礼を言ってパタパタと駆けていく幽霊さんに手を振りながら、これで子供たちには全員渡し終わったと息を吐いた。が、それも疲れを出すかのように吐いたものではなく、無事に今年も約束を守れたという安堵の息であった。

 

(さて、明後日にはまた少しだけ外に出ないといけないし、戻って準備の方を整えることにしようか)

 

「ヤマト、トリックオアトリートだ」

 

 ヤマトがこれからの予定を決め、いざ足を進めようとした時背後からこの催しに参加しなさそうな人物の声が聞こえ、ヤマトは自分の耳を疑うも反応しないのは流石に失礼なので後ろを振り返ると。

 

「……聞き間違いかと思ったけど、フロスト「エレーナだ」……本当にエレーナだったとはね」

 

「なんだ、意外か?」

 

「失礼かもしれないけど、意外だったね。ましてや仮装もしてるなんて全く思わなかったよ」

 

 そこには魔女の仮装をしたフロストノヴァことエレーナの姿。去年までは参加していた記憶がなかったヤマトとしては、本当に予想外の人物の奇襲であった。

 

「なに、たまにはこういうのもいいかと思ってな」

 

「なるほどね……それにしても中々似合ってるね」

 

「そう言ってくれると、態々準備したかいがあったというものだ……さて、話を戻すがお菓子をくれないとイタズラするぞ?」

 

「うーん、誤魔化せなかったか」

 

 エレーナの魔女の格好は長袖ロングスカートと露出こそないものの、彼女の雰囲気によく似合っており本当に魔女が絵本の中から飛び出してきたのではないか、と言えるほどの完成度であった。そして、それをダシにしてヤマトは逃げようとするものエレーナが見逃すはずもなかった。

 

 そして、これはエレーナの計画通りであった。

 彼女の計画、それは「ヤマトが手持ちのお菓子を全て渡しきった瞬間に奇襲をしかけて合法的にイタズラする」作戦である!

 最初に言うと、エレーナはヤマトに好意を抱いている。が、当の好意を向けられている本人はそれに気づいてなさそうな上、そもそも会う機会がめちゃくちゃ少ないせいでアピールはおろか、スキンシップさえ取れない状況であった。

 もし、ヤマトに好意を向けているのが自分だけならまだ良かった。時間はかかるだろうが、ゆっくりと距離を詰めればいいだけの話なのだから。

 

 が、現実は違う。エレーナからしたら非常に残念なことに、サルカズの爆弾魔を始めに、義妹を名乗るヤベー奴や死体でミルフィーユを作るサイコパスオオカミ、泥人形と楽しそうに話をするかつての同胞、しまいには極東の女武士と、ヤマトは色んな女性から好意を向けられている。

 

 ──このままじゃとられる。

 

 そう危惧したエレーナは何とか1歩だけでも彼女たちから出し抜けないかと考えた結果、思いついたのがあのネーミングセンスが皆無な作戦である。

 

(あとは、イタズラと称して頬にキスをすれば私の勝ちだ──!)

 

 お菓子を渡しきったのは既に確認済み。あとはヤマトが「お菓子がないからイタズラで手打ちしてくれるかな?」と言えばチェックメイト。自身の勝利を確信したエレーナ。

 

「はい、飴」

 

「──え」

 

 が、現実というのは非常なものでヤマトはさも当然かのように懐から赤い紙で包まれた飴を差し出し、それを見たエレーナは固まった。

 

「予想外だったかな?」

 

「あ、ああ……予想外だったな」

 

「ふふっ、イタズラ大成功!……ってところかな?」

 

 イタズラが成功したことに満足しているのか、笑みを浮かべるヤマトに毒気を抜かれたエレーナは声を震わせながらも飴を受け取って口に頬張ると、それが慣れ親しんだものであることに驚き目を見開いた。

 

「ヤマト、これは……」

 

「うん、君専用の飴だよ。君が飴を舐めたい時にいつでも渡せるようにと常備してたんだ」

 

 そう、その飴は味覚がないエレーナの為に用意されていた辛味がある飴であった。そして、これは市販で買って舐めている飴と違う辛さでありながらも、懐かしい辛味。そこから導き出せるものは至って単純であり──

 

「……手作りのを用意してくれたのか」

 

「……レユニオンにいた時以来だったからね。最初はちゃんと作れるか不安だったけど、その様子なら大丈夫そうだね」

 

「……ええ、ありがとう」

 

 当初の企みは失敗に終わったものの、久しぶりのヤマトの手作りの飴を貰えたこと、そして自分のためにその飴を常備してくれているということをしれた彼女の心は満たされたのであった。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 そしてそれからというもの──

 

「やあ、ヤマト。トリックオアトリート、お菓子をくれないとイタズr……え?チョコレートのミルフィーユをあげる?」

 

 吸血鬼の仮装をした黒いコートを来ている白髪のループスの女性が来たり。

 

「お兄ちゃん、トリックオアトリート!お菓子をくれないとイタズラしちゃうよ♪……え、なんでお菓子持ってんの……?イタズラさせてよぉぉぉ」

 

 可愛い幽霊の顔がプリントされたフード付きのパーカーを着た義妹が来て、ヤマトの頬にキスをしようとしたり。

 

「トリックオアトリート。お菓子をくれないとイタズラしちゃうわよ~?……って、なんで本当に持ってんのよ。そこは持ってても出さずにイタズラされるのが普通でしょ?」

 

 ロングコートを着て来たと思ったら、部屋に入るなりそれを脱いで際どいサキュバスの仮装をしたWに文句を言われたり。

 

「ヤマト、トリックオアトリート……その、らしくないとは思うが……え?似合ってる?可愛い?……その、あんまり言わないでくれ……流石に恥ずかしい……」

 

 ミイラの仮装をしたマドロックが来たので、ちょっとしたイタズラ心でべた褒めしたり(ちゃんとお菓子はあげた)

 

「とりっくおあとりーと!ヤマト、菓子をくれないとイタズラ……ほう、羊羹か。む?イタズラは何にするつもりだったか、だと?そんなの鍛錬に決まっておろう!」

 

 同じ山伏の格好をしたアカフユがやって来て、保存食替わりに持っている羊羹をあげて、何とか彼女との鍛錬から逃げようとするも結局付き合わされたりとヤマトが借りている部屋には多くの来客があった。

 

「やれやれ、本当に予想外な人が多かったな……イカズチは予想通りだったけど……と、来客か」

 

 鍛錬を終えて部屋に戻ってきたヤマトは、ここまで来たら次は誰が来ても驚かないと決めた直後、来客を知らせるインターホンがなり、さて次はドクター辺りかと思いながらドアを開けて、先程決意したものがあっさりと崩れ去った。

 

「ヤマト、トリックオアトリート」

 

「兄者、とりっくおあとりーとでござる!」

 

「……本当に予想外な人達が来たな」

 

 現れたのは、シーとサガの2人。かなり予想外……いや、サガに関しては有り得なくはないものの、普段引きこもって中々外に出てこない上にこういう催しにあんまり興味を持たないシーが来たことは想定外であった。

 

「とりあえず、中にどうぞ。確かまだお菓子はあるはずなので」

 

「……そうか、では邪魔するぞ」

 

「お邪魔します!」

 

 流石に部屋の前出立ちっぱなしというのも失礼なため、ヤマトは2人を中に招き入れ、椅子に座らせてから急須にお茶っ葉とお湯を入れ、その間にお茶菓子を取り出そうと、普段入れている引き出しを開けて首を傾げた。

 

「あれ……おかしいな、ストックがない……?」

 

 アカフユと鍛錬するまでには()()()()()のお茶菓子が全てなくなっており、ヤマトは首を傾げ自分の記憶違いだったかと1人納得して、2人の方に向き直る。

 

「すみません、丁度お茶菓子を切らしてしまっているようでして……大変申し訳ないのですがお茶だけでもよろしいでしょうか?」

 

「……ふむ、それは構わないがそしたらイタズラということでいいな」

 

「……ええ、そうなりますね」

 

 降参しましたと言わんばかりにヤマトは両手を上げる。正直、なんのイタズラをされるのか恐ろしいところではあるが、シーやサガならそんな変なことを要求はしてこないだろうと踏んだ。もし、これがラップランドやWだったら今すぐ購買所に行ってお菓子を買って渡していたが。

 

「そしたら、その……久しぶりにお前の尻尾を触らせてくれないか?」

 

「拙僧は久しぶりに兄者の尻尾枕で眠らせていただきたい!」

 

「……うん?」

 

 これまた予想外であった。そもそも、どういうイタズラをしてくるのか全く想像つかなかったのはあるが、まさか尻尾に関連することを言われるとはヤマトは全く予想していなかった。というより、これはそもそも。

 

「それってイタズラですかね……?」

 

「いいから触らせろ。私が言った以上はイタズラなのだからな」

 

「?」

 

「……サガはとりあえずシーさんが納得してからね」

 

「分かりました!」

 

 よく分かってない顔をしているサガは置いといて、ヤマトは尻尾の感覚を遮断しシーの方へ向ける。現在、シーの目の前には毛艶のいいふさふさした尻尾があり、彼女はそれを優しく触る。

 

 もふっ

 

 そんな効果音が聞こえてきそうな感触を味わいながら、シーはまるでガラスを扱うかのように優しい手つきでヤマトの尻尾を堪能している。そして、触られているヤマトは感覚を意図的に遮断しているため嬌声をあげることなく目を閉じて彼女が満足するまで身を委ねる。

 

「……やはり、お前の尻尾はいいものだな。中々いい手触りだ」

 

「そう言って貰えると手入れしている苦労が報われますね」

 

「この調子でこの尻尾の気持ちよさを維持してくれよ?」

 

「分かりました」

 

 そんな会話をしながらも、シーはかれこれ30分ほどヤマトの尻尾を堪能し、そしてサガはヤマトの尻尾枕で寝たはいいもののそのまま爆睡してしまい、サガにも甘いヤマトは結果として朝まで起こすことが出来ず、朝帰りしたサガを見たイカズチが脳を破壊されるのはまた別のお話。




一応、カボチャの仮面+黒ジャージでマフティーダンスなるものを踊って自分に反省を促すことも視野に入れてたり。
あと、天馬ルートのヤマト君と相性がいいウマ娘って誰なんでしょうかね……ゴルシぐらいしか思い浮かびません。

キャラ紹介

ヤマトさん(僧侶):子供たちからはおじさん呼びされている20代。前回の修羅場のおかげで彼専用の個室が与えられた。が、戻ってくることは中々ないため埃っぽいはずなのだが何故か戻ってくるといつも掃除されている。実は子供好きでロドスの子供たちとお話をしたり、遊んだりするのは結構気に入ってる時間だったり。そして妹ポジションの2人には結構甘い。

フロストノヴァ:キャラ崩壊が激しい元レユニオン幹部。チョロい。なお、ヤマトの尻尾は事故で触ったことはあるものの自発的に触らせて欲しいとは言ったことはない。

ラップランド:イタズラしようとするもお菓子を渡され泣く泣く撤退した恋愛くそ雑魚ループス。ミルフィーユは美味しかった。

イカズチ:ヤマトの義妹。お菓子を渡されてもイタズラ(ほっぺにキス)を強引にやろうとするも逆に自身のおでこにキスされて撃沈した。なお、サガには天然爆撃をされてはいつも脳を破壊されている。

W:サキュバスという際どい格好で押しかけるも、普通にあしらわれてしまいちょっと自信をなくした。が、次は強引にトリックを仕掛けるべきかとも考え始めた。

マドロック:満を持して参戦。ヤマトとの馴れ初めはまた別の機会に。なお、ミイラの仮装にした理由は事情をしているドクターたちの助言でもあったり。

アカフユ:最近追加された星5へラグ系前衛。彼女もヤマトとの馴れ初めは別の機会に。ヤマトのことは異性として慕っているものの、どうすればいいかわからず、鍛錬という名の逢い引きで心を満たしている。ヤマトに想いを寄せてるやつら全員恋愛くそ雑魚です。

シー:ヤマトとは彼が旅をしている時にたまたま会い、少し言葉を交わした結果気に入りそれ以来友人として見ている。なお、彼の尻尾の虜にされた人物でありなんやかんや理由をつけては尻尾を触る。なお、ヤマトの部屋のお茶菓子が無くなったのは彼女の仕業でもあったり。

サガ:出番が少なかったヤマトの妹弟子。異性の好意は持ってないものの、ヤマトのことは慕っており距離感も寺にいた頃と変わらない。その結果、それを見たイカズチが脳みそを破壊されるという事態になっている。なお、途中の「?」は完全に何も理解してない時の顔を浮かべていた。

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修羅場ですよ!ヤマトく…ヤマトさん!(僧侶√マドロック&アカフユ参戦秘話)

えー、今回は天馬ルートより先に僧侶ルートのマドロックとアカフユのお話です。天馬ルートの方はもう少しお待ちを……。


あと関係ないですが、あの反省を促すダンス結構体力使いますね(貧弱もやし)


 

 ──彼との出会いは偶然だった。

 

「おや……こんな所で人と会うとは珍しいね」

 

 雨が降ってきたため、何処か凌げる場所がないかと探していたところたまたま見つけた洞穴に火を炊いて座っていたのが彼だった。

 先客がいた事に驚く私たちに「そこに立ってないで、早く中に入ったら?」と彼は手招きしながら声をかけ、それに従い私たちが入ると彼は人数を数え始めると「うん、これなら足りるかな」と呟くと持ち物であろうバックパックから鍋を取り出したと思ったらそこに水を入れて沸かしたと思ったら、乾燥した縄のようなものをそこに入れたのだ。

 

 正直、驚いたな。縄をお湯が入った鍋に入れるなど正気の沙汰ではなかったからな。実際、声を荒らげた者もいたよ。ただ、彼はその声を荒らげた者がサルカズであったにも関わらず、怯える素振りを見せるどころか、普通に説明を始めた。

 彼が入れた縄は、芋茎をミソという調味料で煮しめてから乾燥させた干し芋茎と呼ばれる彼の住んでいた地域の保存食であるらしく、ミソで煮しめたものはお湯に入れれば染み込んでいたミソが溶けだし、芋茎も柔らかくなりミソシルというものになる、と丁寧に教えてくれた。

 そして、彼はそのミソシルやホシイイというオコメを乾燥させた物を、お湯に入れて柔らかくしたものを私たちに振舞ってくれた。

 

 ──何故私たちにここまでしてくれる?

 

 私たちは忌み嫌われるサルカズだ。だが、目の前の男はそんなの関係ないとばかりにまるで久しぶりに会えた親しい友人をもてなすかのようにご飯を振る舞い、そして普通に会話をする。それが、私……いや私たちにとって不可解だった。

 

 だが──

 

「一人旅というのは寂しくてね。だからこそ、こういった出会いは大事にしたいのさ」

 

 サルカズなんかどうでもいいと言わんばかりに、彼の持論がぶつけられた。目を見ても、騙してるようには見えず本心で言ってるようにしか見えなかった。

 

 だから、彼の第一印象を答えろと言われたら……変わった人になるだろうか。

 

 それからというもの、たまに彼と会うようになりその度に彼は料理を振舞ったり、時には情報をくれたりと良くしてくれた。私に着いてきてくれた仲間達も彼と話していくうちに打ち解け、笑顔で語り合うことが増えてきた。無論、それは私もだった。

 今思えば、彼自体が争いごとを好まない穏やかな性格でこちらが落ち着くような言葉遣いをしていたり、サルカズである私たちに対して変わった反応を見せなかったこと、そしてこちらが呆れてしまうほどのお人好しだったからこそ、私達は彼と友好的な付き合いが出来たのだろう。

 

 争いごとを好まず、そして見た目や纏う雰囲気からしてもお世辞にも戦士としての強さや才を見いだせなかった私達は、友人である彼が心配になって何度か「一緒に行かないか」と誘ったこともあったが、当の本人は「僕の仕事に君たちを付き合わせる訳にはいかない」の一点張りで中々応じず、彼が意外と頑固というのも分かり、どこか人離れした感じの彼が人間臭く見えて何故か安心した。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

「やれやれ、何となく嫌な予感がしたから急いで来たけど……間に合ったみたいだね」

 

 次に彼と会ったのは、ウォルモンドを離れて暫くしてから正体不明の部隊に襲われ交戦状態になった時だった。いきなり私達のに後ろから青白い光線が走り、向かってきた矢を撃ち落とし、そして敵対していた部隊の半数以上の武装を破壊した。

 そして、少しだけ安堵した声とともに突然現れた彼に全員が混乱する中、当の本人はなんてことの無いように言葉を続けた。

 

「マドロック、君の仲間たちをすぐに下げて。ここは僕が引き受ける」

 

「お、おい!お前正気か!?」

 

「正気だよ」

 

 私の隣にいたレユニオンを抜け出した頃からの付き合いの仲間が驚きの声を上げながら問いを投げる。そして、それに対してヤマトは何とでもないように即答した。

 

「……詳しい事情は分からないけど、新しい仲間が入ったんでしょ?それも多分まだ戦闘経験が少ない人達が」

 

「…………そうだ」

 

「なら、君たちがすべきことは僕にここを任せて彼らが、そして君ら自身が討たれないように撤退する事じゃないかな?」

 

 私たちの現状を一目で見抜き、そしてそこから出された彼の言葉に思わず口篭る。確かにウォルモンドから着いてきてくれた者たちは戦闘に不慣れだ。被害を抑えるには彼の言う通りにするのが1番手っ取り早いだろう。

 

 だが、それは……

 

「……私たちを真摯に受け止め、そして友として歩み寄ってくれた貴方を置いていくことなど──」

 

「──大丈夫、相手はともかく、僕自身は無傷で済ませられるからさ」

 

 私が仲間たちを代表して彼の言ったことを否定しようとした矢先、彼はそれを遮るようにすぐに言葉を紡いだ。それも、普段の穏やかな雰囲気を纏いつつも自信ありげに。いや、正確に言えばそれは既に決まっていることかのように言ってのけた。

 その自信満々な彼の態度に唖然とする私たちに「それに」と彼は続け。

 

「お相手さんもいつまでも待ってくれる訳じゃないからね、と!」

 

「っ!?」

 

 ヤマトは飛んできた敵の術攻撃を右手に持っている錫杖の先から青白い刃を出して斬り消したあと、錫杖を軽く振って自身の周りに8つほどの青白く輝く光球を出すと、飛んできた複数の矢をその光球から光線を出して全て撃墜した。

 

「文句や言いたことは次会った時に甘んじて受けるから、早く行ってくれるかな?」

 

 先程の行為を普段の生活でもしてるかのように自然体でこなした彼の実力を疑うことは出来なかった。そして私達は結局──

 

「次会ったら、お前が言っていた『ヨウカン』ってのを食わせろよ」

 

「それなら君の舌に合うように頑張って腕を振るうとしようかな」

 

「……次会った時、正座で私の話を聞いてくれ」

 

「それは思ったより酷い目に合いそうな気がしてきたから、遠慮していい?」

 

 撤退することを選んだ。そして、なんでヨウカンを食べさせるのは嫌な顔をしないどころか笑みで答えたのに、なぜ正座で私の話を聞くのは苦笑いだったのだろうか。

 

「それじゃ、また今度」

 

「ああ、また今度」

 

「……また今度」

 

 そうして、私達はいつも別れる時の挨拶をいつも通りの調子で答えて別れた。

 

 

「さて、君たちは……少しだけ僕とオハナシしてもらおうか?」

 

 去り際、何処か怒気が混ざった彼の声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

「そして、次に彼に会ったのは──」

 

「マドロック、ちょっとステイ」

 

 執務室にて。

 マドロックが装備を脱ぐくらいには信頼を得たドクターは、彼女の話を一旦ストップさせて仮面に手を当てる。

 

「どうした、ドクター」

 

「いや、ヤマトのこと好きになった理由のついでに、馴れ初めについて聞いたけどさ、肝心の内容に辿り着くのは何時なの?」

 

 不思議に思ったマドロックの問いにドクターは問いで返した。彼は「質問を質問で返すな」というのを習わなかったのだろうか。

 

 それはさておき、そもそも何故こんなことになったのかと言うと、なんちゃって僧侶ことヤマトを巡る修羅場のメンバーにマドロックが加わってしまったのを知ってしまったドクターは、恋愛関連に興味があるメンバーに「なぜ好きになったのか聞いて欲しい」と頼まれ、ついでに個人的な理由で馴れ初めについても聞いたのだが、マドロックから出てくる話はヤマトとの出会いやそれからのことばかり。本題である好きになった理由は全く触れていないことに、ドクターはこのままでは何時になっても終わらないと判断し問いを投げかけた

 

 そしてそれに対してマドロックは不思議そうな顔を浮かべた。

 

「ドクター、悪いが先程から話していることは全て本題なんだ」

 

「……え?」

 

「いや、質問を貰ってから少しだけ時間を貰った時に考えたのだが、彼のことを想い慕うようになったのはこれといった大きいきっかけではなく、彼と会ってから少しずつ積もっていったのではないかと思ったんだ」

 

「ウソでしょ……」

 

 ドクターは戦慄した。まさか、これまでの話が全て本題だったとは思いもしなかったのだろう。そして、理性を失っていないせいで聡明である彼は気づいてしまった。マドロックは想いが少しずつ積もっていったと言った。ということは、先程までの話はまだ序の口では無いかということに。

 

「さて、続きなんだが……そうだな、あと2時間もあれば終わるだろう」

 

「oh……」

 

 自身の恐ろしい予感が当たってしまったドクターはは思わず声を漏らし、後日話を聞くように頼んできた者たちには「3時間ほどの話になるから、簡潔に色々あって好きになった、でまとめさせてくださいお願いします」と懇願し、察した彼女たちは同情の眼差しをドクターに送ったのだった。

 

「ん、珍しいね。君がここに来るなんて」

 

「いや、たまにはゆっくり話したいと思ったからだ」

 

「分かった。それじゃ、お茶とか持ってくるから待っててくれるかい?」

 

「ああ、ありがとう」

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 ・アカフユの場合

 

 

 ──彼奴と初めて会ったのはロドスの廊下内ですれ違った時だった。が、あの時のヤマトはあまりにも普通すぎて一般職員かと思うほど普通の雰囲気を纏っていたため、僧の格好をしているところから極東の出の者ぐらいにしか思えなかった。いや、はっきり言ってあの時のヤマトからは戦士としての力や才が全く感じられなかった。

 まあ、そのすれ違い以来全く合わなかったのだが、次にあったのは私と同じ舞台に所属した時だった。

 

「初めまして、僕の名前はヤマト。一応術師としてこの隊に所属することになった者なんだけどよろしくね」

 

「アカフユだ、こちらこそ頼む……ところで、お前は剣術も修めているのか?」

 

「まあ、()()()にはね……とは言ってもこの刀を抜くなんてことはそうそうないんだけどね」

 

 奴の挨拶を聞いて、術士なら確かに戦士としての力や才が無くても仕方ないと感じたが、そんなやつが腰に刀を差していることが気になり思わず聞いてしまったが、彼奴はすぐに返事をしてくれた。この時は人並みという言葉を信じたんだが、後にこれが裏切られるとは全く考えてなかったがな。

 

 まあ、そんなこんなで彼奴とは廊下ですれ違ったりしたら軽く話すようになってな。なんというか聞き上手な上に話し上手でもあるせいか、親しくなるのはそんなに遅くはなかった。この部分は、私が好いているところでもあるな。……何?「そんな正直に言うとは思わなかった」だと?彼奴の前じゃないんだ、言い淀む理由がどこにある。……話が逸れたな、この後予定もあるし本題に入るとしよう。

 

 ヤマトの印象が変わった、というより明確に意識するようになったのは3ヶ月ほど前の事だ。あの日、私は鍛錬をするために訓練所に足を運んだのだが生憎使用中でな。普段であればそこですぐに自室に戻ってたんだろうが、何となく誰が使っているか気になって中を覗いたのだ。そしたら、誰がいたと思う?予想外だろうがヤマトとエンカクの2人だ。

 

 なんでこの2人が、という感想の前にヤマトが模擬戦用の刀を使っていることに驚いたな。何せあの時は彼奴の言っていた「人並み」というのを信じていたのだ。前衛として動いているエンカク相手に術士のヤマトが適うわけないことに思い至ったと同時に止めようと中に入ろうとしたんだが、それは出来なかった。

 

 何故か?それは彼奴がエンカクに向けて放った剣技が余りにも綺麗だったのだ。まるで、夜の空を奔る流れ星を思わせる流れるような素早い連撃。今まで、数々の剣術を見てきた私ですら初めて見た真に綺麗な剣技であった。そして、その剣技からヤマトがかなりの使い手であること、そしてその道に至るまで想像を絶する鍛錬を積んだ来たことは容易に想像できた。

 

 ああ、正直言おう。私はヤマトの剣技、そしてその域にたどり着いた彼奴の努力、そして強さに惹かれた。勘違いだと言われてもあの時の胸の高鳴りは、私にとっては本物の感情だ。

 

 その後は、ヤマトの剣技を食らって気絶したせいで訓練続行が出来なくなったエンカクの代わりに私が相手を務めた。そして実際に剣を交えると更に彼奴のことが気に入ってしまった。

 

 まあ、ヤマトのことを気に入ったのは他にも色々とあったのだがそれはあくまでこの想いを更に熱くさせるものであるからな、今回は省かせてもらおう。……「それって、もしかして前にヤマトが意識不明の重体で帰ってきたと思ったら、彼のことを兄貴!!って慕う元賊の人達が関係してるのか」だと?……まあ、そういうことだ。

 

 さて、私はこの後用事があるからな。失礼させてもらおう。

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

「はぁ……なんでヤマトって一癖以上ある人ばっか引っ掛けるかなぁ」

 

「ヤマトさん自体は悪い人どころか、凄いいい人なんですけどね……」

 

 アカフユが退室してからドクターはため息を吐き、そして本日の秘書であるミッドナイトは困ったような笑みを浮かべる。一応、ヤマトのことを擁護するのであれば、彼とて好き好んでラップランドやW達を引っ掛けた訳ではなく、彼の考え方や普段の行動などが彼女たちにどストライクであったせいであって、こればっかりは仕方ないだろう。だが、そのヤマトが中々帰ってこないことや、ガードがメ○ルキング並に硬いせいで彼を慕う面々が睨み合ったり、果てには喧嘩(主にW、イカズチやラップランド)してしまうことを考えると、ドクターが零した愚痴は当然のものでもある。

 

「そういえば、ヤマトが意識不明の重体で運ばれた時はロドス中が騒いだよね」

 

「そうですね……かく言う俺も動揺したのですが」

 

 それは1ヶ月ほど前に起こったこと。村を襲う賊の捕縛をロドスからヤマトとアカフユの2名を含めた部隊が行いに行ったのだが、その任務でヤマトが人質に取られた子供を庇い重傷を負っただけならまだしも、アカフユの制止を振り切って戦闘を続行し、戦闘終了後意識を失ったというものだった。結果として一命を取り留めたものの、目を覚ましたヤマトはイカズチと彼を慕う子供たちには大泣きされるわ、フロストノヴァとW、ラップランドには「バカ」やら「アホ」やらと悪態をつかれるわ、マドロックには抱きしめられるわ、アカフユには謝られたりと色々な目にあっていた。

 

「……考えてみたら、1週間後にはヤマトさんはまた外に出てしまうんですよね」

 

「ああ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!そうだったあああっ!!」

 

 ドクターは目を背けたい現実の目の前にして泣きそうになった。先程述べたように、ヤマトがロドスから出るとガチ勢の方々による修羅場のせいで周りに被害が及ぶ。幸いなのは、これにマドロックが参戦してない事だろう。もし彼女まで参戦してしまえば大惨事である。

 そこでふと、ドクターは思いついた。

 

「……ヤマトとラップランド達を休暇という体でシエスタにまとめて送り出すなんてどうだろう?これをすれば全員幸せになれるぞ!!」

 

「シエスタを火の海にするつもりですか」

 

 結局、この案は途中までは通ったものの最終的にはボツになったのであった。

 

 

 

 *****

 

 

 

「ヤマト、体はもういいのか?」

 

「うん、ガヴィルさんからもOKサイン出たからね」

 

「だが、病み上がりだというのに軽く打ち合いをして欲しいとは……自分に厳しい奴だ」

 

「勘を戻しておきたいしね」

 

「……しかしなぜ私なんだ?エンカクやラップランドもいただろうに」

 

「あの二人は限度を知らないからね……その点、君はちゃんと自制出来るからね。だから君を選んだんだよ」

 

「ほぅ……嬉しいことを言ってくれるじゃないか。褒めてもやる気しか出ないぞ?」

 

「ふふっ、それなら良かった」

 

「さて、そろそろ始めようぞ」

 

「そうだね……それじゃあいくよ?」




投稿ペースを早くしたいこの頃です。
因みにヤマトがエンカクに向けて放った技は、某炎印のクラス:ソードマスターや剣聖の奥義です。



キャラ紹介

ヤマト(僧侶):見た目や雰囲気詐欺をしたり、O☆HA☆NA☆SHI☆が得意だったり、実は前衛として暴れ回った方が強い脳筋な元レユニオン幹部。やっぱりこのルートのエンカクにも気に入られてしまった。なお、1回闇堕ちしたせいもあってか自己犠牲の気は他のルート以上に酷く、自分の命だけはとてつもなく軽く見ている節がある。そのくせ周りの人の命は重く見るからタチが悪い。ちなみにヤマトのバックパックはシラヌイ製の特別なもので、見た目の割に物が結構入るため、それを利用してヤマトは干し芋茎を始めに色んな保存食を入れている。

マドロック:いつの間にか愛が重くなってた中身美女。修羅場には参戦しないため被害的な意味で言うと唯一まともな人。愛は重いが。

マドロックの仲間たち:ヴォルモンド以前からのメンバーはヤマトのことを結構気に入っている。ヨウカンは美味かった。

マドロックを襲った方々: 脳筋僧侶とのO☆HA☆NA☆SHI☆の結果、全員辺境の色んな村の農家や狩人に転職した。

アカフユ:なんか変な方向に覚醒してしまった女武士。最初こそ、ヤマトの剣技とその努力に惚れていたものの、現在では完全にヤマト自体を好きになってしまっている。が、恋愛クソ雑魚なためデートが鍛錬ということになってしまっている。まあ、本人はそれで今のところ満足しているが。

村を襲った賊の皆様:自分たちが人質にとった子供を助けるために体を張り、そして大怪我を負ってなお戦い続けるヤマトの姿に心を打たれて勝手に舎弟になったよく分からない人たち。贖罪として襲った村で畑仕事を手伝ったり、用心棒として働いている。

シラヌイ:私に作れぬものはあんまりない!(ドヤァ)


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修羅場ですよ!ヤマト君!(天馬ルート)

えー、ちょっとブランク気味なのとダイパリメイクやっていたら遅くなってしまいました……本当に申し訳ございません。

そして今回の話はリクエストの方にあった内容を修羅場編に組み込んで頂きました。それではどうぞ。


「ヤマトお兄ちゃん、プール行こうよ!」

 

「えーと……急にどうしたの?」

 

「だから、プール行こうよ!」

 

「うーん、唐突」

 

それは正しく唐突であった。ロドスでヤマトが借りている部屋で2人っきりでお茶会をしているタイミングでブレミシャイン──マリアはプールの誘いをヤマトに吹っ掛けた。が、すれ違った人10人のうち10人が「美人」と答えるだろう容姿をしているマリアのプールの誘いを吹っかけられたヤマトは少し困った様子である。

というのも。

 

(あまり、泳ぐの好きじゃないんだよなぁ……)

 

この通り、泳ぐのがあまり好きではないからである。しかし誤解しないで欲しいのは、ヤマトは泳げない訳では無いということだ。というより、ヤマトが泳げないのならば、幼少期からの付き合いで知っているはずのマリアの先程の誘いが鬼畜なものとなってしまう。

さて、そんなヤマトが泳ぎがあまり好きではない理由、それは至って単純でショタヤマトの時に初めてのプールで両親の制止の声を聞かずに大人用のプールにダイブして溺れかけたからというもので、正直自業自得である。なお、どれくらい嫌いになったのかと言うと、大好きな父親相手でも「泳ぎの練習するぞー」と言われた瞬間、ショタヤマト(6歳)が「およぐのヤダ!パパだいっきらい!!」と声を大にして泣き叫ぶぐらいに。なお、溺愛する息子の拒絶を食らった父親であるユウキはSANチェックに失敗したのか、膝から崩れ落ちながら口から泡を吹き、白目を向いてぶっ倒れたとかなんとか。

 

閑話休題

 

結果として、ヤマトは元の身体能力の高さと「自分たちが助けられない時のために」と心配性な両親との必死の練習によって今では水泳が得意、と胸を張って言えるぐらいには泳げるようにはなった。しかし、だからといって泳ぎに対する苦手意識と言えばいいだろうか、それ自体は克服出来ていなかった。

そのため、マリアからの誘いにもあまり乗り気では無かったのだが──

 

「その、久しぶりにゆっくりしたいなって思ったんだけど……だめ、かな……?」

 

「……うん、いいよ。行こっか」

 

(よしっ!!)

 

ここが勝負ところだと判断したマリアによる涙目+上目遣い+落ち込んだ様子というコンボを受けたヤマトは、元来のお人好しな性格に加えて、妹みたいな存在である彼女の願いを突っぱねることなどできず、受け入れた。

そして、マリアは内心で計画通りと思いながらも胸を撫で下ろす。ここでヤマトが首を縦に振らなかった場合、強硬手段に手を出さざるおえなくなってしまうからだ。

 

(あとは私の水着姿で悩殺すれば──)

 

「ゾフィアさんとマーガレットさん達とも一緒にゆっくりするなんて、久しぶりだね」

 

は?

 

「え?」

 

ヤマトの口からさも当然かのように出された言葉にマリアは思わず低い声を漏らしてしまった。そしてそれを聞いてしまったヤマトはびっくりしたように固まる。それほどまでに、マリアが出した声は普段の彼女からは想像つかない声だったのだ。

 

が、マリアがそんな声を出したのも仕方ないことだ。

泳ぎが苦手なヤマトでも楽しめるプール施設探しから始まり、それを見つけ次第ヤマトが好きそうな水着を厳選し、更に自分の姉であるマーガレットと叔母のゾフィアが任務や教導で手が空かず、尚且つヤマトが非番の日を狙って約束を持ちかけるという、かなり手を込んで誘ったというのに当の相手がこんなことを言うのだ。普通であれば不満の声を1つや2つが出てくるのも仕方ないのだが、1文字だけで済んだのはマリアの強靭な精神力のおかげだろう。

 

「う、ううん。何でもないよ。ただ、その日お姉ちゃん達は仕事があるらしくて、せめて私たちだけでも行ってきなって(お姉ちゃん、ゾフィア叔母さんごめんなさい!)」

 

「うーん?それなら仕方ないかぁ……」

 

「そ、そうだね!(良かった、ヤマトお兄ちゃんが騙しやすくて…でも、正直心配だなぁ……)」

 

マリアはついた咄嗟の嘘を簡単に飲み込むヤマトを見て、安堵すると同時に少しだけ不安になる。ヤマトは親しい人、正確に言えば彼が心を許した人物に対してはとことん無防備になる。それこそ、その人が言ったことをよっぽど嘘くさいものでなければ疑うということをしない。事実、マリアの記憶の中ではヤマトが自分のことを疑ってきたことはなかった。

 

そのため、ヤマトが自分以外に心を開いている異性に騙されてホイホイ着いていき性的な意味で食べられてしまうのでは無いかと不安になってしまった。

 

(これは、何としてでもここで落とすか、せめて妹じゃなくて一人の女性ってことを強く意識させないと……!)

 

そう、ここが勝負になるかどうかの分かれ目。ここで意識させることが出来ればまだ勝負の場に上がれる女性になり、ダメだった場合は一生妹扱い。そうなれば待っているのは「僕と○○さんの結婚式招待するね!」「結婚式のスピーチお願いしてもいい?」と愛する人からお願いされるという最悪な未来!もはやNTR(そもそも付き合ってすらないのだが)となり、マリアの心が木っ端微塵になるのは確定した事象となってしまう!

 

(大丈夫、お兄ちゃんの部屋にある本やお兄ちゃんと親しい人から色々聞いたし、策もある。絶対にこのデートで意識させてみせる……!)

 

マリアは自身の覚悟を再確認すると同時に、手を強く握りしめたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

は?

 

「む、これはまずいな……」

 

それをとある手段で聞いていた者たちがいるとは知らずに……

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

そして待ちに待ったプールデート翌日、マリアは早速自分の計画にはない想定外なことに直面していた。それは何かというと──

 

(マリアちゃん、まだかなー)

 

(顔と筋肉が良すぎる……!)

 

割とそんなに重大なことではなかった。が、今マリアが考えたようにパーカーを羽織っているとはいえ、低身長でありながらもヤマトの鍛え上げられた筋肉と整った顔立ちがいい感じに混ざりあって(良い意味で)とんでもない感じになっていた。というより、そもそもマリアは異性の上裸などを見た回数はかなり少ない。それに男性慣れしていないというのに加え、意中の人の引き締まっている体というのはマリアには刺激が強すぎた。

 

(ど、どどどどうしよう!?なんか急に恥ずかしくなってきた…!)

 

今更になって自分の水着姿を見せること、そして2人っきりのデートという事実を改めて認識したマリアの頭は沸騰寸前だった。もし、漫画やアニメの世界であれば、今頃彼女の頭からは「プシュ〜」という効果音と共に湯気が出ているだろう。つまり、マリアは混乱していた。

 

だからこそ気づくのが遅れてしまった。

 

「あ、マリアちゃん!そんな所にいてどうしたの?」

 

「ひゃっ!?お、おおおおお兄ちゃん!?」

 

「?どうしたの?」

 

「な、なんでもないよっ」

 

いつの間にか近づいていたヤマトに気が付かず、心の準備をしていなかったマリアは声をかけられた瞬間変な悲鳴を上げてしまい、ヤマトに心配されるも何とか誤魔化す。が、今の彼女の脳内はパンク寸前だ。ここで変に追求されてしまえばボロを出すことになるだろう。

 

「うーん、それならいいんだけど」

 

(良かった……何とか誤魔化しきれ──)

 

「あと、ちょっとごめんね」

 

「え?」

 

誤魔化しきれたと安堵した瞬間、ヤマトの顔がマリアの視界にドアップで入ると同時に何かを肩にかけられ、彼女は何をかけられたのかはヤマトの上半身が映った瞬間把握した。

 

「オ、オニイチャン?ソノ、ナンデパーカーヲ……?」

 

「ああ、マリアちゃんの水着姿すごい似合ってて可愛いから、他の人に言い寄られないようにってことでね。悪いけど、プールの中に入るまでは羽織ったままでいてもらってもいいかな?」

 

「!!!」

 

そう、今マリアにかけられたのはヤマトがつい先程まで来ていたパーカー!そして、彼女の鼻にはその人物の匂いがダイレクトにイン!男の癖に何故か柔らかい優しい匂いに加え、彼女にとってはとてつもない威力を誇る殺し文句+上裸のヤマトの姿の連続攻撃を受けたマリアは。

 

 

「………きゅう」

 

「ま、マリアちゃーん!?」

 

情報を処理しきれずぶっ倒れたのであった。

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「う、ん……」

 

「あ、起きた?」

 

「ん……?お兄ちゃん……?」

 

さて、マリアが意識を取り戻して早々であるが問題を提示しよう。今、彼女の視界には自分を覗き込むようにヤマトの顔が写っており、後頭部には少し硬いものの少し温かみのある感触がする。さて、この状況は一体どういう状況だろうか?正解は──

 

(ひ、膝枕されてるー!?あ、でもこれはこれで……)

 

そう、膝枕であった。正直逆じゃないかと思うが、されている本人が混乱しつつも喜んでいるため大丈夫だろう、ヨシ。そして、彼女が膝枕をゆっくり堪能しようかと真剣に検討し始めた時だった。

 

「ヤマトー、マリアは起きた?」

 

「!?」

 

「あ、ゾフィアさん。今起きたところだよ……ってあれ、マーガレットさんは?」

 

「!!?」

 

「マリアが起きた時になにか飲めるようにって自販機に行ったわよ」

 

「ん、分かった」

 

「???」

 

「あ、なんで2人が来てるか分からないよね?一応説明するとね」

 

さも当然のように現れたウィスラッシュことゾフィアとその彼女の発言からして、自身の敬愛している姉のマーガレットが来ていることにマリアは驚いた。それもそのはず、直前までに確認した段階では2人とも仕事が入っていたはずだからだ。ロドスの仕組み上、直前で休みを取るのは不可能なはずなのにどうやって?それより、何故バレているのかとマリアが思考の渦に飲まれかけた時、彼女の困惑を感じ取ったのかヤマトが説明を始めた。

 

曰く、ヤマトとマリアがプールに行くというのを2人が計画を立てた日に聞き、何かあったらと思い急いで有給を申請したこと。

曰く、2人だけで行くというのだから変に邪魔しないためにギリギリまで休暇を取っていることを内緒にして欲しいとドクターに頼んでいたこと。

曰く、マリアが気絶したため見守るどころじゃなくなり登場したとのこと。

 

以上のことをヤマトから聞いたマリアは即刻思った。

 

(これ、絶対盗聴してたでしょ!!)

 

そうでなければ、誰にも漏らさなかったこの秘密のデートがバレるわけがない。因みにヤマトは盗聴のことを全く疑っていない。無条件に人を信じすぎるのも如何なものだろうか。

 

それはさておき、状況はマリアにとってかなり深刻だ。それもそのはず、自身の恋敵として警戒レベルがトップのゾフィアとマーガレットが水着姿で来ているのだ。深刻じゃないと考えない方がバカだ。しかも、ゾフィアの水着は完全にヤマトが好きそうなのをチョイスしており、実際にヤマトはちょっとだけ意識しているように見える。

 

(まずい、このままじゃ意識させるどころの話じゃなくなってくる)

 

まず、前提としてゾフィアのスタイルはかなりいい。世の女性が羨むボンッキュッボンであり、しかも容姿も美しいと来た。対してマリアはどうかというと確かにスタイルはいいが、まだ成熟しきってないためゾフィアには劣る。加えてマリアには「妹」というフィルターがヤマトの視点では掛かっているので、更にきついものへとなる。

 

(しかもお姉ちゃんも来てるから、余計にまずい……どうすれば……)

 

(ってマリアは考えてるでしょうね……私としてもまさかマーガレットさんまでくるとは思わなかったから、慎重に時には大胆に動かないとまずいわね……)

 

「それにしても、4人揃って何処か遊びに行くなんて本当に久しぶりだよね……」

 

バチバチと女同士の心理戦が繰り広げる中、ヤマトが珍しく昔を懐かしむような声でぽつりと呟き、それが聞こえた2人はその呟いた本人に顔を向け記憶を探り始めた。

 

確かにマーガレットが故郷を去るまでは4人は顔を合わせることはあったし、お茶会をすることもあった。だが、ヤマトが言ったように4人一緒にどこかに出かけて遊びに行くというのは何時ぶりだろうか。マーガレットが競合騎士になる前か、はたまたヤマトが競合騎士になる前か、もしくはヤマトの元からクラウスが去る前からか。いつの頃から遊びに行かなくなったのか、マリアもゾフィアも答えられなかった。

 

 

「……たまには、こうやって皆で何処か遊び行けるように予定とか合わせられたらいいね」

 

「……そうね」

 

「待たせたな、今戻っ……どうした?なんかちょっと雰囲気が静かだが……」

 

「……ううん!何でもないよ。さっ、マリアちゃんの調子が良くなったら泳ぎに行こっか!」

 

しんみりとした雰囲気になったタイミングで戻ってきたマーガレットは、その雰囲気に首を傾げるも彼女に余計な心配をさせないようにとヤマトは明るい声を出しながら、笑顔を浮かべるのであった。

 

なお、この後ヤマトが逆ナンされて二アールの三騎士がマジの殺気を出したり、マリアが攻めすぎて逆に撃沈したのを見てゾフィアの目からハイライトが消えたり、そんな様子を見たマーガレットとヤマトがオロオロしたりと、なんやかんやあったものの4人はまだ大きなものを背負ってなかった頃に戻ったかのようにこの時間を過ごしたのであった。




世代バレしますし様々な意見がありますけど、やっぱりダイパリメイクは懐かしい気分になれましたし、地下探検は面白いし、可愛い2頭身シロナさんとかっこ美しいリアル等身シロナさんを見れて個人的には大満足です。けどこの前地下探検で会った初手自爆ゴンベ、おめーだけは絶対許さん。


キャラ紹介

ヤマト(天馬ルート):修羅場製造機でありながら、同時に修羅場破壊機でもある天然タラシ。顔には出してないものの、マリアの水着姿には結構ドキドキしてた。が、その後に来たゾフィア達の方が余計にドキドキした。1番得意で好きな泳法は背泳ぎで理由は疲れた時はプカプカ浮けるからとのこと。

ブレミシャイン(マリア):今回の騒動を作った原因。なんとか意識してもらおうと頑張ったものの、全て空回り(マリア視点)で終わってしまったためちょっとしょんぼり。でも、膝枕して貰えたのは普通に良かった。

ウィスラッシュ(ゾフィア):ヤマトの部屋に盗聴器をしかけてるヤベー奴。ヤマトのことはこの中では1番長く想っているため少々行動が過激になる。後日、ヤマトに膝枕を所望したとか。

二アール(マーガレット):ヤマトの部屋に盗聴器を仕掛けるというとんでもないことをしてる。が、実態は3人で仲良くヤマトを囲もうと考えており、盗聴器もマリアとゾフィアが抜け駆けした時に防ぐために仕掛けているだけ。現在の目標は如何に2人を説得して囲む準備を終えるか。

ヤマトママ:孫の顔はまだかしら〜。

ヤマトパパ:息子と奥さんにだけはかなり弱い。

ムリナールおじさん:ヤマトが3人のうち誰か一人を選んでも、はたまた3人に囲まれても結果としてお腹を痛める未来は決定している。


感想や批評お待ちしております。

あ、あとちょっとした宣伝ですが原作ブルアカの新作を投稿しておりますのでそちらも宜しければぜひ。


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コラボ回:「皆過保護過ぎない?嫌じゃないけどさ」+天馬ルート(その1)

えー、皆さんお待たせ致しました。ここ最近リアルが忙しくて中々新しい話を投稿できていませんでした。

さて、今回はタイトルにある通り黒狼の「皆過保護過ぎない?嫌じゃないけどさ」とのコラボ話です!自分の作品なんかとコラボしてくださり、ありがとうございます。そんなわけで皆さんも黒狼さんの作品も読むと話がわかると思います。

そして今回は天馬‪√‬での隠し設定が出ます。そのため、そこも少し見てくださると幸いです。

それではどうぞ。


 拝啓お父さんお母さん、ヤマトです。

 突然ですが、僕は……

 

「あの……ここどこなんですかね?」

 

「それよりお前は何者なんだ?」

 

 なんか見たことがあるようなループスの人に源石剣を突きつけられてます……

 

 なんでこんなことになったのか、現実逃避と思考をまとめるのも併せてこうなるまでに起こった出来事を思い返すことにしたけども……

 

(突入した施設の敵にアーツを撃ち込まれてからの記憶が無いんだよなぁ……)

 

 正直、そこまで考えることでもなかった。今いる所が見た感じあの施設の内部ではないことから、ありえないとは思うけども、時空に関する操るアーツだったのだろうか? いや、仮にそれだとしても何故あの場面で僕に撃つ必要があった? 自分に向けてやれば逃げれたはずなのに……いや、それよりも……

 

「え、えっと..とりあえず武器を下ろしてもらっていいですか?」

 

「無理だな、少なくともおまえがまだ安全だという保証がない」

 

 先程から突きつけられている源石剣を下ろしてもらうように、ループスの女性に頼んでみるも上手くいかなかった。多分、信用してもらうというより無害だと思われるには武装の破棄をするのが1番なのだろうが、ここがあのアーツを撃った人物の拠点の1つである可能性もあるため、武器を全て彼女に渡すのは得策ではない。というより、知らない人と話すのそんなに得意じゃないから精神的に辛い……。

 

「この……とカジミェー……しゅ……ん?」

 

「多……な」

 

 どうするべきか考え始めたところで、目の前のループスの女性とは違う人の声が聞こえ、気づかれないようにそのもう1人の声がした方に目を向けると、そこには見慣れたところの制服──ロドスの制服を着たフェリーンの女の子がいた。

 つまり、ここはもしかして……? ……聞いてみる価値はある。

 

「あ、あの! ここはロドスなんですか?」

 

 そう思って出した声は、アウェーな環境+知らない人との会話で精神をすり減らしたせいかちょっと震えてしまった。

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

「……ごめん、君のこと、君のご両親、君の師匠である騎士を知っている人、そして君のことを兄と慕っている女の子はロドスに居ないことがわかった」

 

 そんな話をドクターとしたのがつい先程のこと。初めて僕と会った人──テキサスさんとグローサーさんの案内で武装を全て預けた状態でドクターやドーベルマンさんといった人達に2日ほど事情聴取という形で僕が知っていること、そして僕自身のことについて話したのだが、返ってきた話はさっきの内容。加えて最終的に出た結論は、僕は平行世界いわゆるパラレルワールドから来てしまったのではないか、ということになった。

 

 正直、あまりにも話が非現実的すぎて信じたくないけども、父さんや母さん、そして僕自身が居ないことがその非現実的な話を証明していた。それからはショックで放心してしまったけども、とりあえず僕は元の世界に戻れるまでロドスのオペレーターとして働くことにした。何もせずにただ無為に時間を過ごすのは嫌だったからだ。

 

 そして僕はロドスのオペレーターの適性検査を受けており、現在はその一つである戦闘試験を受けるためにその試験相手の人と対峙しているんだけど……

 

「……まさか、あなたが相手とは思いもしませんでした」

 

 目の前にいる相手──チェンさんを見て思わずそんなことを漏らしてしまう。僕の世界にいた彼女とは何度か任務を一緒にした程度でそこまで関わったことは無かったけども、彼女の剣の腕もとい戦闘能力の高さはドクターを始めに色んな人から聞いていた。だからこそ、そんな人が僕の戦闘試験の相手として出てくるとは思っていなかったため正直困惑している。

 そしてその困惑が伝わってしまったのか、チェンさんが口を開いた。

 

「これまでの検査の結果、どれも高水準の結果を叩き出しているからな。そこから正確な戦闘能力を判断するには、私が適任なのではという話になったんだ」

 

「……過大評価じゃないですか?」

 

「いや、正当な評価だ。何せ、ドーベルマン含め多くの人が考察した上での評価だからな」

 

「そう、ですか……」

 

 正直頭を抱えたくなるほどではあるけども、それは今は置いておこう。問題はどうやって目の前にいる歴戦の戦士に勝つかだ。恐らく、盾を使う余裕は絶対になく、クラウス(せんせい)の剣術はギリギリ通用するかどうか、刀と弓による戦闘は通用する、といった感じだろうか。だが、刀と弓の戦闘は言ってしまえば僕の切り札に近い。疑っている訳では無いが、正直その切り札を見せることに関しては躊躇ってしまう。

 そして散々悩んだ挙句僕は──

 

「……ほう、盾は使わなくていいのか?」

 

「悔しいですが、貴方相手に盾を使う余裕なんてありません。こちら1本じゃないと太刀打ちなんて出来ませんから」

 

 嘘と真実を混ぜた事を言いながら大剣を両手に持って正眼の構えをとり、嘘をついてしまったことの罪悪感を振り払うように首を振って、意識を引き締める。何としてもこの戦い方が全力だと思わせないといけない。

 

「それでは……はじめ!!」

 

 ドーベルマンさんの開始の合図と共に僕は地面を蹴ってチェンさんへ急接近した。

 

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 

「っ!」

 

 挨拶代わりと言わんばかりのヤマトの一撃をチェンはギリギリ反応してそれを防ぐと同時に、身長や戦闘前の雰囲気からは想像もできない重さに驚愕した。油断はしていなかった。だが、「試してやろう」という僅かな慢心があったのは事実であり、実際その僅かな慢心のせいで不意を打たれかけ、そして動揺してしまった。それを競合騎士時代の時、「天狼」という異名を付けられた狼が見逃すはずがない。

 

「はあああっ!」

 

「ちっ!」

 

 チェンに立て直させす暇を与えないと言わんばかりに、怒涛の連撃を振るっていく。しかもその一撃は攻撃を防ぐのが不得手と言えるほどの重さでありながら、チェンの目を持ってしても見切るのがギリギリの鋭さ。彼女は思わず舌打ちをしながらも、冷静にヤマトの一撃一撃を見極めなるべく体制が崩れないように自身の剣で防御、あるいは受け流しつつ反撃の機会を伺う。

 

(そこだっ!)

 

「っ!」

 

 そしてヤマトの連撃の僅かな隙にチェンは剣を差し込んだ。普通に見れば防戦一方の中から放たれた苦し紛れの一撃に見えるが、戦闘経験が豊富な者から見れば隙を着いた見事と賞賛できるほどの精密な一撃。事実、それを受けたヤマトはそこから一気に崩される未来を感じとり、チェンが攻めに転じる前に苦し紛れの蹴りをチェンに放ち、防御された勢いを利用してすぐさま距離をとった。

 

「……ここで距離をとるのはいい判断だ」

 

「……勝負を決めきれなかったのは痛いですけどね」

 

 チェンの言葉にヤマトは苦々しそうな顔で返す。事実、ヤマトはあの不意をついたラッシュで勝負を決めるつもりでいた。が、結果は全て防がれた挙句、隙をつかれて逆にこちらが防戦一方になりかけてしまい、咄嗟の判断で距離を取らなければそのまま負けていただろう。

 

(侮っていた訳じゃないけど、予想以上に強い……)

 

 ヤマトは改めて目の前に立ちはだかるチェンを見てそう考える。恐らく、この剣術では自分の持てる全てをぶつけても勝率は良くて3割だろう。

 

(いや、無駄にあれこれ考えても意味ないな)

 

(雰囲気が変わったな……)

 

 ヤマトは気を引き締め、それを見たチェンは更にヤマトの一挙一動を注視し、そして互いが示し合わしたかのように2人は同時に駆け出し武器をぶつけ合った。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 

「お疲れです」

 

「ああ、助かる」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 試験終了後、グローサーさんからスポーツドリンクとタオルを受け取り、すぐに水分を欲してる体にスポーツドリンクを流し込む。完全に冷えているものではなく、程よく温くなっているものを出してくれているあたりちゃんと考えて出してくれたのが分かる。

 

「あ、ヤマトさん」

 

「はい、どうかしましたか?」

 

 タオルで汗を吹いているところでグローサーさんに声をかけられ、話を聞いてみると、どうやら僕が元いた世界に帰る方法が見つかるまで態々部屋を用意してくれたらしく、それもマーガレットさん達……いや、この世界の二アール家の人達の部屋の隣にしてくれたらしい。

 

「何から何まですみません……」

 

「いえいえ」

 

 ここまで迷惑をかけてしまっているのにも関わらず、グローサーさんは笑顔で返事をしてくれた。……本当に何から何までお世話になってしまって申し訳ないや……。でも、とりあえず今日は早く休んでしまおう。

 

 そう思って訓練所を後にしようとしたところで、グローサーさんに部屋の場所が分かるかどうかを指摘されてしまい、無論知るはずもない僕はあまりの恥ずかしさに穴があったら穴に入りたい気分になった。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

「はぁ……」

 

 案内してもらった部屋にある浴室のシャワーを借りて汗を流したあと、着替えとして渡されたロドスの制服を着てベッドにボスンと腰掛ける。

 うっかりこちらの世界のマーガレットさん達に元の世界のマーガレットさん達みたいな態度を取らないようにと、一人称や言葉遣いを変えて今日1日過ごしてみたのだが、予想以上に疲れた。

 

「けど、少しでもボロを出して不快な気持ちにさせたくないしなぁ……」

 

 僕にとって、あの3人は特別な人達だ。自分の全てを投げ打ってでも守り抜きたい人達で、そして大事な人達。だからこそ、僕が知っている3人じゃないとしても、僕は困らせたくない。ならば、やれることは全てやるべきだ。

 

 でも。

 

「……マーガレットさん、ゾフィアさん、マリアちゃんにイカズチ。皆、今頃どうしてるんだろう」

 

 どこか寂しいと感じてしまっているのは事実であった。

 

 

 




グローサーらしさ、ちゃんと出てましたかね……?

キャラ紹介

グローサー・クルフュスト:狼黒さんのところのオリ主で女性。種族はフェリーンであり、愛され体質。詳しく知りたい人は今すぐ狼黒さんの小説へGOだ!

ヤマト(天馬ルート):黒い噂が出ていたとある施設を襲撃したところ、そこにいた人物のアーツを食らって異世界へ飛ばされた。一人称を本来の「僕」から「俺」に変えたり、言葉遣いを常に敬語にしたりと色々努力しているが、やはり自分のことを誰も知らない環境というのは予想以上に応えている模様。因みに戦闘試験はいい所までは行きましたが負けました。

イカズチ(天馬ルート):設定の方では存在すら言及していませんでしたが、ちゃんと居ます。ただ、経歴としては『先生』死後ブラついていたところをケルシーに見つかってそのままスカウト。今は彼女の私兵部隊の1人として働いている。が、たまたま見かけたヤマトに何かを感じたらしく、兄として慕っている。念の為言っておくと異性へにむける愛情は持ちません。あくまで、兄と慕って甘えているだけです。

マリア(ヤマトの世界の方):(イカズチに対して)なんだぁ……てめぇ……

感想や批評の方、お待ちしております。


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コラボ回:「皆過保護過ぎない?嫌じゃないけどさ」+天馬ルート(その2)

えー、お待たせ致しました。

今回は引き続きコラボの方でございます。

とりあえず本編の方どうぞ~


「ヤマト、訓練手伝ってくれてありがとね」

 

「いえ、そんな気にしないで下さいウィスラッシュさん。あ、俺はこれで失礼しますね」

 

「うん、お疲れ様」

 

「……ふぅ」

 

 僕はボロが出る前にその場を足早に去る。

 2週間。それが僕がまだこの世界にいる期間及び、何とか自分を偽っている期間だ。僕は元の世界にいた人達と同じような態度で接しないように、言葉遣いを変え距離感も少し遠目に取っているようにしているのだが、やはりと言うべきかロドスのオペレーターの人たちはかなりお人好しで色々と気遣ったり声をかけたりしてくれる。その中には、勿論この世界のマーガレットさん達もいて、特にゾフィアさんとは彼女の教導の手伝いとして付き合わされる機会が多く、過ごす時間も比例して多くなってしまっている。正直、いつボロが出てもおかしくない、というより1度うっかりゾフィアさんと呼びそうになって危なかった時があった。あの時は何とか誤魔化せたけど、次同じことが起こったら誤魔化しきれる自信が全くない。

 

「はぁ……どうすればいいんだろ……」

 

「──危ないっ!」

 

「え?」

 

 どうすればボロを出さないように立ち回れるか、そんなことを考えながら歩いてたせいか、僕は誰かの注意の声が耳に入ってからその方向へなんの警戒もせず顔を向けてしまい──

 

「〜~~~~~っ!!?」

 

 物凄く熱いものが顔面にあたり、思わず大声を上げたのだった。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

「大変申し訳ございませんでした」

 

「い、いや大丈夫ですから……」

 

 現在、僕の目の前でグローサーさんが見事な土下座をしていた。一応順を追って説明すると、まず僕の顔面に当たったのはエクシアさんが何となくで投げた温められた熱々のパイであり、そして僕の声にもなってない大きい悲鳴を聞いたグローサーさんたちが来て、僕はシャワー室に連れてかれ顔のパイを落とし、ケルシー先生に火傷がないか見てもらった。一応火傷とかにはなっていないのと、当たったのがスズランちゃんといった子供たちではなかったことは不幸中の幸いだった、寧ろ僕でよかったと思っている。あ、エクシアさんにはもう謝罪は受け取って僕もすぐに許しました。そこまで怒ることの内容でもないですし。

 

「本当に、大変申し訳ございませんでした」

 

 それより、問題は未だに土下座での謝罪をしているグローサーさんをどうするかだ。パイをぶつけた本人ではないというのに、態々こうやって謝罪をしてくる人間性というか、心構えは皮肉とかそういうの無しで本当に素晴らしいことだと思う。けど、僕自身そんなに怒ってもないし、寧ろ訓練の汗と一緒に流せたから別にいいかなーって思ってたりするから正直、心臓に悪い。

 

「あ、あの、大丈夫ですから、頭を上げて……」

 

「本当にすみません……怪我がなくて何よりです」

 

「い、いえ、大丈夫ですよ」

 

 やっとこさ立ってくれたグローサーさんを僕は見下ろす形で会話をする。……それにしても、グローサーさんって思ってたより身長低いと思う。そう思ってしまうのも、なんて言えばいいのか分からないが対応が大人というか、そういう感じだからだろうか?

 

「グローサーぁぁぁ!」

 

「あ、Wさんってにゃあぁぁ!?」

 

「!?」

 

 そんなことを考えていたら、突如赤い角のサルカズの女性が大声を出しながらグローサーさんに抱きついた。……なんだろう、サルカズの筈なのに競合騎士になってから仲良くなったペッローの子供みたいな感じがするなぁ。いや、失礼だなこの考えは。

 

「ち、ちょっとWさん、一旦離れて‥」

 

「いやよ、グローサーニウムの補充をしないと死んじゃうわ」

 

「えぇ‥」

 

 なんて現実逃避するためにあれこれ考えていたら、またちょっとよく分からないグローサーニウムという単語が飛び出して来た。ダメだ、何がなんだか分からない……一応声をかけてみるべきかな?

 

「あ、あの……」

 

「あら、貴方誰?」

 

 声をかけられたところでやっと僕の存在を認識したのか、Wと呼ばれたサルカズの女性はこちらを見る。そして僕を視界に入れるや目から光……と言えばいいのだろうか?そのようなものが消えた目で見られた僕は底冷えするような感覚に襲われた。その瞬間悟る。

 

「ネェグローサー?コノオトコダレ?」

 

 ──声をかけるべきでは無かった、と。

 

「ネェ?ハヤクコタエテ?」

 

 全く熱を感じさせないような声を出しながら、グローサーさんの顔を両手で挟んで質問するWさん。戦いの場などで感じる敵意や殺気や殺意、それとはまた違うようなドス黒いナニカが恐怖を掻き立てられる。しかも、僕が感じているのはあくまで余波として流れているものであり、それを一身に受けているグローサーさんは僕が感じているのより数倍は怖いはずだ。実際に物凄く震えている。……どちらにせよ、それを直接向けられているグローサーさんに説明を求めるのは酷な話し、そもそも自分自身のことは自分で説明するのが筋というものだろう。

 気持ちを整えて声をかける。

 

「ナニ?グローサーヲタブラカシタオトコガナンヨウカシラ?」

 

「ぴいっ!?」

 

 思わず悲鳴を上げてしまったがやっぱりだ、この殺気は戦場や競技とかで感じるものとは別物だ。慣れない別物の殺気に思わず震えてしまいながらも何とかして口を動かしていく。

 

「えっとですね、まず僕は訳ありでここで働くことになった者で……詳しい経緯は今話しても、信じられないと思うので省きます」

 

「ふーん……」

 

 よし、ここまではちゃんと聞いてくれたみたいだ。でも肝心なのはここから、一言でも言葉を間違えたり言い方をやらかしたら大惨事確定だ。

 

「それで、僕とグローサーさんが話してたのは、ついさっきエクシアさんが投げた熱いパイがたまたま近くを歩いていた僕の顔面に当たってしまって、そのことで謝罪ということでグローサーさんと話していた、という訳なんです」

 

「なるほどね……ごめんなさいね、早とちりしちゃって」

 

「いえいえ……」

 

 たどたどしく話してしまったせいで思っていた以上に時間がかかってしまったが、物分りが良い人なのかWさんは納得して下さり何とか無事に場を収めることが出来た。

 

「良かったら一緒に食堂行かない?お詫びに奢るわよ?」

 

「は、はい‥」

 

 つい先程の殺気のせいでまだ恐怖が残ってしまっているが、断るのは失礼だと思い、僕らは一緒に食堂へと向かった。

 

 

 

 ****

 

 

「はい、グローサー。あーん」

 

「あーん」

 

 食堂に向かう途中で反省としてとあることを書かれたプラカードを首に下げた上体で正座をさせられていたエクシアさんを回収し、そして現在食堂でご飯を食べているのだけれど、グローサーさんがエクシアさんとWさんに「あーん」と呼ばれる行為をしながら食べている。

 そういえば、この3人の関係ってどういったものなんだろう?友人にしては距離が近すぎるし……でも、聞いてもいい事なのかな?いや、でも気になるし……一応聞いてみよう。

 

「グローサーさんとお二人ってどういう関係なんですか?」

 

「私の世界で一番大切な存在!あと婚約者!」

 

「婚約者ね、掛け替えのない存在だわ」

 

「…………?」

 

 ……?

 

「あ、えっとね。説明してもらうとね……」

 

 Wさんとエクシアさんが言った内容が理解できず固まった僕のために、グローサーさんが説明してくれたのだが、簡潔に言うとお2人はグローサーの恋人の中の一員ということらしい。そして、それの証明のためかWさんがグローサーさんと……そ、そのキスまでした。思わず手で自身の視界を隠してしまったが、失礼だと思われていないだろうか。

 

「そういえば恋人の中の一員って言ってましたけど、もしかして他にも?」

 

「うん、そうだね。あとはテキサスさん、ラップランドさん、チェンさん、ブレイズさん、モスティマさんもですよ」

 

「す、すごいですね……というかラップランドさんまで……」

 

 グローサーさんは本当に凄い。あのラップランドさんまで恋人にしてしまうとは……僕の世界の方だとあの人に会う度に絡まれるからなぁ……模擬戦とかも何回もやる羽目になるし、マーガレットさん達と一緒にいる時に限っていつも以上に距離が近かったりするのもあってちょっと苦手なんだよなぁ。いや、騎士競技の企業の人達と比べたら悪い人ではないのは分かるんだけども。

 

 

 

 *****

 

 

 

「はぁ……なんか疲れた……」

 

 あれから解散した後、僕は疲労感を覚えながらロドスの廊下を歩いていた。ご飯を食べ終わったあと、Wさんとエクシアさんに「グローサーに手を出さないでね?」というような内容のことをあの慣れない殺気と共に言われたからだ。正直な話、最初から僕はグローサーさんのことはそういった目で見てないし、というよりあの話を聞いてから手を出そうなんて考えてなかったから本当に予想外だった。というより、元々住んでいる世界が別だから帰る方法が見つかれば、もう二度と会えないと思われるため余計にこの世界の人に対してそういった風に見ることはなかった。

 

 ……それにしても恋か。今までそういったことに無縁な生活だったため意識したことは無かったけども、今日のグローサーさん達の雰囲気を見ていたら少し羨ましく思ってしまった。

 

「……まあ、僕にはまだ無縁なものなんだろうけども」

 

 僕みたいな男を好きになる人なんていないだろうしね。……自分で言っておいてなんだけども、なんか悲しくなってきた。

 

「おっ、ヤマトー。暇ならこれからスマブ○やらねえか?」

 

「……分かりました。ご一緒させて頂きますね」

 

 まさにベストタイミングと言った所で最近仲良くなった男性オペレーターの方からゲームのお誘いが入り、僕はそれを了承した。

 

 

 因みにその場にはマリアちゃん達もいて、そして僕はボコボコにされたのは別の話だ。




キャラ紹介

ヤマト(天馬ルート):パイを顔面にぶつけられたり、Wやエクシアに脅されたりと散々な目にあった本作主人公。ウブなので耐性は無いが、人並みには興味があったり。この世界の二アール三人娘とはちょっと距離を置いている。因みに途中の、「……?」のところでは背景に宇宙が浮かんでいた。

グローサー:恋人がめっさいる。

エクシア&W:グローサーに手を出したらどうなるか分かってんだろうな?(^ω^#)

感想や批評お願い致します〜


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コラボ回:「皆過保護過ぎない?嫌じゃないけどさ」+天馬ルート(その3)

えー、大変おまたせしました。投稿する直前で色々直していたり、最近ブランク気味なせいでこんなに遅くなってしまいました……コラボ先の狼黒さんに迷惑をかけてしまい、大変申し訳ございません。

さて、今回はそのコラボ回の最終回です。とりあえず本編の方どうぞ。


「転送装置が出来たんですか!?」

 

「ええ、だから1回このマップの部屋のところまで来て欲しいってグローサーから伝えて欲しいって言われたわ」

 

「そうですか……分かりました。態々伝えてくださってありがとうございます」

 

「別にいいわよ、部屋隣なんだし」

 

グローサーさんにたくさんの恋人がいるということが判明してから数日後、ウィスラッシュさんから朗報が入り僕は内心喜んでいた。彼女に一言告げてからその指定された部屋に向かう途中でも、意識しなければ尻尾が動いてしまったり、早足になってしまうほどに嬉しかった。

 

「すみません、遅れました……って凄いですねこれ」

 

そんなことを考えながら指定された部屋に入ると、そこには高さ2m程の装置が置かれていた。異世界へ転送するというのだがらそれなりに大きいのだろうとは思っていたが、無骨なデザインのせいで余計に圧迫感と言えばいいだろうか?それのせいで気圧されてしまう。

 

「これで僕は元の世界に戻れるんですか?」

 

「まあ、そうなるな」

 

「そうですか……すみません、僕のために」

 

「良いってことだ、お礼はキスで良いぞ?」

 

「き、キス!?」

 

キスってあれだよね!?口と口にやる方のこと!?いや、こんな美人な人にキスっていうのはある意味役得なのかもしれないけど、やっぱりそういうのは恋人とかそういう関係からになってからした方がいいものであって……

 

「ふぐっ!」

 

突然あんなことを言われたせいで混乱している中、お礼をキスでと言ったティルピッツさんが隣にいたビスマルクさんに強烈な拳骨を頭に食らわされ、その拳骨は余程威力があったのかティルピッツさんは変な悲鳴を上げつつそのまま床に倒れ込んだ。……音も凄い鈍い音だったし、相当な威力だったんだろうなぁ。

 

「ごめんなさいね、妹が」

 

「い、いえ……」

 

「じゃ、私は他にやることがあるからこれで」

 

ビスマルクさんは手を振りながら、空いてる方の手でティルピッツさん引きずって行ったけど……なんというか……

 

「凄いですね、あの二人……」

 

「まぁあの人達天才ですから‥」

 

「私達からしたら妹の方は只のビッチだよ」

 

「び、ビッチ‥?」

 

ビッチって、もしかしなくても痴女とかああいう意味でのビッチのことなのかな?

 

「あ、あんまり気にしないで下さい……あはは」

 

余程僕は困った顔を浮かべていたのか、気遣うような形でグローサーさんがフォローを入れてくれた。やっぱりこうやって話していたりすると、グローサーさんがかなり気遣いができる優しい人だということがよくわかる。というよりもう装置が完成したということは。

 

「あ、荷物纏めなきゃ行けないのでここで失礼しますね」

 

「あ、お疲れ様です」

 

荷物の整理とお世話になった人達にお礼をしなければならない事に気が付き、僕はグローサーさんとブレイズさんと別れ部屋へと戻った。

 

 

 

*****

 

 

 

「はい、ヤマト。お疲れ様」

 

「あ、ウィズラッシュさん。ありがとうございます」

 

そして現在、借りていた部屋の整理を終えて廊下を歩いていた。因みに「暇だから」という理由でウィスラッシュさんも手伝ってくれたおかげで早く終わり、彼女から缶ココアを貰う。まあ、部屋の方はこちらに来てから新しく置いた家具がほとんど無かったのもあって、整理事態は早く終わった。まあ、いつか帰ることになるのは分かってたし、ベッドさえあれば良かったから元々買わなかったのもあるんだけども。

 

「それにしてもまさか携帯端末を返さなくていい、って言われるとは思いませんでした」

 

「もしかしたらまたこっちに来るかもしれないから……ってのが理由なのは、アンタとしてはちょっと複雑かもしれないけどね」

 

「あはは……」

 

実はこの世界に来てオペレーターとして働くことが決まった際、元の世界で使っていた連絡端末が何故か圏外の表示しかでず使えなかったため、急遽ドクターから支給品という形で渡された連絡端末があるのだが、それを返却しようと訪れたところ先程ウィスラッシュさんが言った理由でそのまま所持するように言われてしまったのだ。

正直、理由が理由なため複雑ではあった。そう何度も異世界旅行することになるとはあんまり考えたくないものの、同時に僕がこのロドスの一員として認められていることが嬉しいのも事実であった。まあ、だからこそ複雑なんだけど。

 

「でもそっか……もう帰っちゃうのか……」

 

「……そうですね」

 

寂しそうに呟くウィスラッシュさんを見て、胸が締め付けられるような感覚に襲われる。世界が違えど彼女はゾフィアさんであり、そして元の世界にいる彼女は僕にとって大切な人だ。別人だと分かっていても、彼女にそのようなことを言われてしまうと、かつて彼女が引き止めに来たのを断ってまでマーガレットさんを探しに出たあの時のことを思い出してしまう。

 

「……ねえ、1つ聞きたいんだけどさ。向こうの世界の私の事──」

 

ウィスラッシュさんが僕に何かを聞こうとした時、突如胸騒ぎがした。しかもこれはマーガレットさんが不利な試合を強いられることになったのと同じぐらい嫌な予感だ。

 

()()()()()()!腕が立つ人に()の連絡端末の反応場所に急いで集まるように連絡をして!」

 

「えっ!?ちょっとヤマト!?」

 

驚いたような声を上げる彼女を置いてすぐさま廊下を駆け抜ける。昔から頼りになる自身の勘が正しければ、多分もうすぐのはず……!

 

「いた……っ、あの男は!」

 

廊下の角を曲がったところで、僕をこの世界に飛ばした術士の男がいた。ブレイズさんの後ろにはグローサーさんがおり、丁度ブレイズさんがあの男に腹を蹴りを入れた瞬間、あいつが左手に小刀を持っているのが視界に入り、その直後何をするつもりなのかをすぐに悟る。

 

「っ!」

 

距離的にグローサーさんの前に割り込むのは不可能に近い。だからといって、アーツで斬撃を飛ばすのも間に合わない。それならば弓矢でグローサーさんに向けて投げられるであろう小刀を破壊しない程度に手加減した上で撃ち落とす必要がある。

背中にかけてある弓を左手に持ち、矢筒から矢を取り出して番える。

 

「………」

 

またこの感覚だ。世界から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そして100%当てられるという()()()()()()が沸き上がる。

 

男の手から小刀が離れグローサーさんの方へ飛んでいく。

 

「………」

 

今だ。右手を離して矢を放つ。僕の放った矢は真っ直ぐ狂いなく飛んでいき、予想通りグローサーさんに向けて放たれた小刀とぶつかり、鉄と鉄がぶつかり合う甲高い音を立てながら小刀と矢は床に落ちた。そして同時に世界から音が戻り、スローモーションに見えていた目も正常に戻る。

 

「大丈夫ですか!?下がっててくださいね!」

 

僕はグローサーさんを後ろに下げて、室内という狭い空間のため比較的取り回しがきく刀を抜いて男へ斬りかかった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

「全く、あんたってやつは予想以上に無茶苦茶なやつなのね」

 

「あ、あはは……」

 

結果として、あの男は無事……いやあの状態を見る限り無事とは言えないけども捕縛された。というのも、ウィスラッシュさんは僕が頼んでいたことを戸惑いながらもすぐに実行してくれたおかげで、グローサーさんの恋人の皆さんが直ぐに集まってくれて、怒りのままにボコボコにしたからだ。まあ、正直な話あの男だけなら僕だけでも充分倒せるほどなのだ、過剰に戦力をぶつけてしまった感じは否めない。というより、文字通り般若みたいな顔で襲いかかってたから味方のはずなのに凄い怖かった。

 

「まあ、でも良かったわね。結果としてあの男が変なことする前に捕まえることが出来て」

 

「そうですね……これでまた別の人がこっちに来てたら大変なことになってた可能性がありますし……あ、そういえば」

 

「ん?どうしたの?」

 

「あの時、何を聞こうとしてたんですか?」

 

ふと気になったのは、あの時ウィスラッシュさんが僕に聞こうとしていたこと。状況が状況だったためしっかり聞けなかったんだけど、何を聞きたかったんだろう?

 

「……いや、もう解決したから大丈夫よ」

 

「それならいいんですが……あ、じゃあ他の人にも挨拶してくるので失礼します」

 

「ええ、分かったわ」

 

少しだけ間を置いてからそう答えたウィスラッシュさんはどこか満足気な表情であり、気になるものの他の人にも挨拶をしないといけないため一言断ってからその場を離れ、そしてそれから数十分後僕はこの世界の皆さんに見送られる形で転送装置で元の世界へと戻ったのだった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

「──それで?戻ってきた先が私の部屋だった、と?」

 

「……はい」

 

そして現在、僕はゾフィアさん、マーガレットさん、マリアちゃん達に囲まれている状態で正座をしていた。こうなった経緯を簡潔に説明すると、僕は元の世界のゾフィアさんの部屋に飛ばされてしまい、装備を外してラフな格好で僕の写真を手に泣いているゾフィアさんと目がバッチリ合い、そしてお互いに状況が読み込めず固まり、次の瞬間にゾフィアさんが悲鳴をあげて、それに僕も驚いて悲鳴をあげて、それを聞いたマーガレットさん達が来て僕の姿を見て、抱きつかれたりされた。その後はドクターと父さん達にこれまでにあったことを全て話し、そして証拠としてあっちの世界で貰った連絡端末を見せて納得させて、部屋に戻って休もうとしたところでゾフィアさん達に部屋に連れてこまれ、「乙女の秘密を見た罪」で説教されていた。……いや、これかなり理不尽では?

 

「大体、あんたはデリカシーが無さすぎなのよ!」

 

「ゾフィアおば……ゾフィアお姉さん。そこまでにしておこうよ。ヤマトお兄ちゃんだって、故意で入った訳じゃないんだし……」

 

「昔、私が着替えてる最中に部屋のドア開けたことまだ覚えてるんだから!!」

 

「ヤマトお兄ちゃんどういうこと?」

 

どうしよう、なんかどんどん酷くなってきてる気がする!それとゾフィアさん。その件に関しては本当に反省してますので、そろそろ水に流して──あ、睨まれたということはまだダメみたいだ。本当にごめんなさい。

 

「2人ともそこまでにしておけ。こうしてヤマトは五体満足で生きて戻ってきたんだ。向こうでも大変だったようだし、今日ぐらいしっかり休ませよう」

 

「……仕方ないわね。ヤマト、今回は見逃してあげるけど次やったら……分かるわよね?」

 

「わ、分かってるよ……」

 

マーガレットさんの介入のおかげで何とかなったものの、ゾフィアさんの何かを握りつぶすような仕草を見たせいで背中に悪寒が走った。いや、本当に怖いよ……

 

「それじゃ、お兄ちゃん。今日は一緒に寝ようか?」

 

「え?」

 

「は?」

 

「む?」

 

そしてマリアちゃんが爆弾を放り込んだせいでまた一悶着あったものの、この騒ぎのおかげで元の世界に戻ってこれたと改めて実感できた僕はこういう日常を大切にしようと、心から思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──・──・──・──・──・──

 

from:ウィスラッシュ

────────────────────────────────

To:ヤマト

────────────────────────────────

件名:遠慮するな

────────────────────────────────

 

次、こっち来た時は元の世界の私と話してる時みたいに接しなさいよ。遠慮する必要なんてないんだから。

 

次、こっち来た時はちゃんと連絡しなさいよ。そうすれば迎えに行ってあげるから。

 

────────────────────────────────

 

 

 

 




改めまして、狼黒さん。今回私のような駄作とコラボして下さり本当にありがとうございました。本当であれば、遅くとも狼黒さんが出した次の日には出す、という形にしたかったのですが投稿する直前であれこれ直してしまったり、ブランク気味で余計に時間がかかってしまったりと迷惑をたくさんお掛けしてしまい大変申し訳ございませんでした。
こんなダメ作者でもよろしければ、またコラボ出来たら幸いです。
最後に、繰り返しになってしまいますがコラボして下さり本当にありがとうございました。

キャラ紹介

ヤマト(天馬):実は色々と凄いヤベー奴。なお、ゾフィアの着替えを見てしまったことに関しては本当に反省している模様。また、最後の最後でボロを出すという間抜けっぷりを出す。

ウィスラッシュ(狼黒さんの方):向こうの世界のウィスラッシュ。一応、話的には彼女と関わる機会が多く、そしてヤマトがどこか遠慮していることに何となく気がついており、それについて聞こうとしたタイミングでボロを出してくれたので解決。ちゃっかりメールを送ってるあたり、その……やりますねぇ()

グローサー:出番少なくてごめんなさい

グローサーの恋人の皆さん:怒らせたら死が待っている

ヤマトを飛ばした術師:女性を怒らせたらとんでもない目に合うことを身体に分からされた。

二アール家の皆さん(天馬):ヤマトがMIA(作戦行動中行方不明)という名の事実的な死亡報告を受けて暫く放心していたものの、多くの情報を元にヤマトを飛ばした術師を襲撃し吐かせようとしたがその前に逃げられ、絶望していたところで本人が帰還という目にあっていた。因みにゾフィアの着替えを見られた〜に関してはもう10年ほど前の出来事である。

感想や批評、お待ちしております。


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ヤマトの楽しいドッソレスバカンス:その1(龍門チェン√)

えー、おまたせしました。今回は推しキャラの1人であるチェンがメインのイベントということなので、急いで構成をねって執筆致しました。

そして今回は物語の分岐を皆さんに決めてもらうためにアンケートの方にご協力してくだされば幸いです。

それでは本編へ……の前にちょっとした前提として、この話は龍門√のチェン√であること、そしてその√の上で「決別(龍門√)」のお話の後というのがあります。

以上を踏まえた上で読んで下さるとわかりやすいと思います。それでは、本編の方どうぞ

1/27:サブタイトルを変えました


「お嬢様。この都市にきてもう何日も経ちますが、本当にリンお嬢さんを探すつもりはあるんですか?」

 

「確か、見つけたらこっそり忍び寄って驚かしてやるとか言ってましたね」

 

「んー、あんたもアイスクリーム食べる?」

 

 ボリバルのドッソレスにてヤマトはいつもの近衛局の制服ではなく、Tシャツの上にパーカー、そして薄いデニムと比較的ラフな格好で上司であるホシグマとスワイヤーと共に歩いていた。さて、ここで何故龍門近衛局の特別督察隊の隊員である彼がこんな所に来ているかというと、元恋人の親代わりであったフミツキ夫人からの「そろそろ羽を休めてはどうか」というお願いと人事部からの「頼むから有休を消化してくれ!」という悲痛な叫びからだった。

 正直な話、ヤマトは後者の人事部からの悲痛な叫びだけであるならば有休を取って自主訓練やら自宅で出来る書類仕事とかをするつもりであった。しかし、元恋人の親代わりとはいえ何かと自分を気にかけてくれるフミツキには頭を上げることができず、というより自身が入ってる組織のトップにあたる人からのお願いという形であれば取らざるおえなかった。

 その上で、なぜヤマトがボリバルのドッソレスに来ているのかというと、これまたフミツキからのお願いであり、簡潔に言ってしまえばフミツキらの代理として来ている「リン・ユーシャ」ともう1人の代理人が困っているのを見つけたら手助けすることであった。が、これもワーカホリック気味であるヤマトを体良くバカンスさせるための口実であり、実際ヤマトはその件の2名が何処にいるのかを聞かされておらず、ドッソレスのトップであるカンデラに挨拶と軽い談笑を済ましてから、お土産でも見繕うために誰に渡すかを考え始めた瞬間、()()()()()のことを思い出して固まっていたところを、全ての有休と帰ってからは週休1日勤務という代償を払ってバカンスに来た上司であるスワイヤーとそのお目付け役として来たホシグマの2人と会い、どうせまた同じことを考えて放心する時間が出来てしまうならば、という考えの元ヤマトはその2人と行動を共にすることにしたのだが。

 

「いや、何話しを逸らそうと──」

 

「トリプルでお願いします。フレーバーはミントに、ストロベリー、それからチョコレートで」

 

「あのねえ、遠慮ってものを知らないの?てか太るわよ……そうね、まあいいわ。ヤマトも遠慮せずに頼みなさい」

 

「……では、シングルでフレーバーはチョコレートでお願いします」

 

「ホシグマ、部下を見習いなさいよ」

 

「ふむ、ヤマト。こういう時は遠慮せずにトリプルにしてもいいん──」

 

「おじさん、注文いいかしら。アイスクリームを頂戴。フレーバーはチョコレートのシングルと、「バニラ」にストロベリー、チョコレートのトリプルと、もう1つは、その3つにレモン追加で」

 

「はいよ」

 

「「その食べっぷりで、よく「太るわよ」なんて言えましたね」」

 

「はっ倒すわよ?てか、ホシグマは誰のおかげでVIP待遇を楽しめているか忘れないことね。このアタシがいたんだから、ユーシャと違って公式的な手順を踏まずにここへ来られたんじゃない」

 

 上司2人に振り回されているので、正直ちょっとだけ後悔していた。因みに念の為言っておくと、ヤマトは自身の財産で来た訳では無く、彼がここに来れたのは龍門から来た客の護衛、という形でフミツキが手順を踏んでくれたおかげで入れているのだ。一応極秘ということなので、「もしも知り合いにあった場合には自分の名前を出して誤魔化してくれ」とフミツキから言われているため、ヤマトはフミツキの名前で誤魔化そうとした瞬間、何かを察したのかホシグマとスワイヤーはそれ以上追求してこなかった。

 

「ふふふっ!きっとアイツは、まだドッソレスに辿り着いてもいないわよ。バカンスは長いんだし、気長に待ちましょ?」

 

「まあ、後半の方に関しては一理あるとは思います」

 

「それにしても、あのネズ公……アタシに黙ってこんな素敵な場所でバカンスを過ごそうだなんて!見つけたら、ぜーったいタダじゃおかないんだから」

 

「ホシグマさん、つまりどういうことですか」

 

「要は自分に何も言わずにここに来たリンお嬢さんにヤキモチを焼いてるんだ」

 

「ねえ、あなたたちは何でそんなに息ぴったりなのかしら?あとはっ倒すのは確定よ」

 

「ははっ、良かったなヤマト。上司からありがたい一撃を──ヤマト?どうした?……は?」

 

「なに、どうかした……の……」

 

 会話の途中で近くにあるモニターに視線を向けた状態で目を見開いて固まっているヤマトの様子を見て、声をかけたホシグマ、そしてその彼女も固まったのを見て同じくモニターを見たスワイヤーも固まった。そう、なぜならそこには──

 

「チー……ちゃん……」

 

 龍門を抜けて現在はロドスのオペレーターとして働いているはずの「チェン・フェイゼ」がモニターに映っていたからだ。無論、これだけならヤマトは驚きはするものの放心状態になることは無かった。だが、問題はもっと根本的なものである。それは──

 

(本当にあなたって人は、タイミングが悪いというかなんというか……)

 

(バカンスの時ぐらい、少しでもチェンのことを忘れさせて休ませようとしてたのになんで来てんのよ!!)

 

「…………」

 

 実はチェンとヤマトは恋人関係であったのだが、レユニオンが起こした一連の騒動によって自然消滅してしまったのだ。しかもその中でヤマトは龍門を去ろうとするチェンを止めるために剣を向けたりしてたのもあり、周りには悟らせないようにしていたが、自然消滅しからて暫くヤマトの心は荒れ、落ち着き始めてもまるでチェンへの想いを忘れるかのように訓練や仕事に没頭していた。そしてこれがフミツキがヤマトを気遣っていた理由でもあり、ヤマトがドッソレスに来て早々固まった理由でもあった。

 そして、ヤマトがここに来た理由でフミツキの名前を挙げた瞬間、ホシグマとスワイヤーは彼女が肉体的にも精神的にも疲労しているヤマトのためにバカンスとして来させたのだろうと察して、あれこれやって彼の気を紛らわせようとしていた。が、その矢先にこれである。ホシグマは額に手を当てて空を仰ぎ、スワイヤーは頭を抑えていた。

 

「おーい、お嬢ちゃんたち出来た……あれ、どうした?」

 

 そしてアイスクリーム屋の店主は放心状態のループスの青年、空を仰いでいるオニの女性、そしてセレブっぽい服装に身を包んでいるのにも関わらず頭を抱えこんでいる3人を見て困惑するのであった。

 

 

 

 

 ******

 

 

 

「……チェン・フェイゼ?どうかしたの?」

 

「……いや、仲が良かったやつの()()()()()()()だ。恐らく気のせいのはずだ。問題ない」

 

(……全く大丈夫そうには見えないけども、地雷っぽいし触れないでおくか)

 

(ああ、そうだ。あいつが……ヤマトがいるはずがない……いや、仮に居たとしても私にはあいつに会う権利なんて……)

 

 

 

 

 *****

 

 

 

「ヤマトがここに来た本当の理由は分かったけど、フミツキさんもいい性格してるわね……」

 

「……あの人も来てるって言うなら断ってたんですけどね」

 

 チェンとユーシャがチーム名を発表したのを見届けたところで、ヤマトは改めてホシグマとスワイヤーにドッソレスに来た本当の理由を話し、それを聞いたホシグマとスワイヤーは頭を抱えた。言葉ではああいう風に言ったものの、恐らくフミツキはヤマトとチェンにしっかり面と面を合わせてしっかり話して欲しいと思ってヤマトをここに向かわせたのだろう。無論、ヤマトに休息を与えたいというのも理由の一つだとは思われるものの、本当の理由は前者の方だろう。その結果として、現在ヤマトの雰囲気はだだ下がりなのだが。

 

「……なあ、ヤマト。お前はどうしたいんだ?」

 

「……え?」

 

「まどろっこしいからストレートに聞くが、チェンの手助けをしたいのか?」

 

「……っ」

 

 ホシグマの問いかけにヤマトは詰まる。彼の本音としては出来るならば今すぐ彼女のチームに入ってできる限り力になりたい。だが、実際に彼女にあって平常心を保てるのかというのと、自分が行ったところで何も役に立てないのではないか、という考えもあるのが確かだ。

 

(全く、失恋って拗らせるとこんなに酷くなるのね……)

 

「まあ、どんな選択をするにしても悔いのない方を選んだ方がいい。決められないなら、話ぐらいは聞いてやるしな」

 

「ホシグマさん……俺は──」

 

 




因みに水着チェンは最初の10連で来てくれました+既にS3特化3までして、サポートに置いてるので興味ある方は是非使ってください。あと、アークナイツでのプレイヤー名も「ゆっくり妹紅」に変えましたので、そこの方もご了承ください。

キャラ紹介

ヤマト(龍門チェン√):失恋を拗らせ中。が、それを忘れるように訓練したおかげで狙撃能力や近接戦闘能力はかなり上がっており、条件次第ではチェンを倒せるぐらいには強くなった。一方、自分のことを「愛が重いクソ野郎」というのは自覚している。一応、ここでは異格的な扱いになっていますので、後ほどスキルとかはのせるかもです。

チェン:剣じゃなくて水鉄砲持った方が強いとか色々言われてるお人。実はこっちはこっちで拗らせており、ある意味似た者同士ではある。てか、ヤバさでは気配を察知できた分こっちの方が上かも。ちなみに、水鉄砲を持ったチェンさん、マジで強いっす。前衛チェンさんに戻れなくなっちゃう!

スワイヤー:お嬢様。ヤマトのことは気遣っており、彼のために色々やったがチェンのせいで台無しになってしまった。それはともかく、アイスクリーム6つはどうやって食べたんだろうか……

ホシグマ:我らが頼れる姉御。こちらの方はヤマトの心情などを他の人より知っているため、更に気遣っていた。ヤマトの背中を押そうと声をかけたが、果たして……それはともかくオフのホシグマさんまた見れて満足です。

ユーシャ:鼠王の娘さんであり、チェンとスワイヤーとは旧知の仲。特にスワイヤーには結構絡まれている模様。それにしてもこの人はこの人で派手な水着を着てるのを見て、流石スワイヤーお嬢様のお友達()だなって思いました。

感想や批評、そしてアンケートの方お願い致します。


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ヤマトの楽しいドッソレスバカンス:その2(龍門チェン√)

アンケートの結果、ヤマトくん参加となりました。という訳で、ヤマト君には初恋の相手と一緒に頑張ってもらいましょう( ◜ω◝ )

という訳で本編の方どうぞ。


追記:1/22 2:40 何故か同じ話の内容が2話投稿されていたので削除致しました。読んでくださった皆様には大変ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

1/27:サブタイトルを変えました


 皆さんこんにちは、ヤマトです。早速ですが俺は今大変まずい状況に陥っています。

 

「チームに新しく入りたいって言って来た奴がいる……ねぇ」

 

「うん。近接も狙撃もそれなりにはできるから入れて欲しいってことで、2人の意見を聞きたくて連れてきたんだけど……」

 

「おい……ヤマト、ヤマトなんだよな?何故そんな格好をしているんだ!?似合って……いや、私が見ない間に本当に何が……まさか、ウェイがお前になにかしたのか!?」

 

「うぇーい!君結構グイグイくるねー!俺としてはありよりのありだけど……その、そろそろ口からリバースしちゃうからやめて……」

 

「ウェーイ!?やはり、あいつが……!」

 

「と、とりあえず落ち着いて!()()()さんの顔色マジでやばいから!」

 

 ホシグマさんとスワイヤーさんの施した変装と前のとある捜査で必要になって必死こいて鍛えた演技力が見破られる直前でやばいです……あと本当に吐きそうでやばい……うぷっ。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

「ホシグマさん……俺は……迷惑だとしても、足手まといになるのだとしても、あの人の……チェンさんの力になりたいです……!」

 

 遡ること1日前。ホシグマにチェンの手助けをしたいかどうか聞かれたヤマトは、ほんの少しだけ間があったものの秒で彼女の力になりたいと噛み締めるように答えた。スワイヤーはそんな様子のヤマトを初めて見たため少し驚いていたが、ホシグマは予想通りの答えを彼が提示したのに、ふっと笑みを浮かべて彼の肩の上に手を置き。

 

「よく言った、それでこそ私やあの人達が認めたヤマトだ。……さて、それじゃあ早速変装といこうじゃないか」

 

「……???」

 

 そうしてヤマトは理解が追いつかぬままホシグマに服屋に連れてかれ、そのホシグマと途中からノリノリで服を選び始めたスワイヤーお嬢様の協力の元、チェンが龍門を去ってからの囮捜査以来のパリピコーデを着せられた。無論ヤマトは抵抗した。何故またあの格好をしなければならないんだ、あの格好はもうしたくないって捜査が終わったあと言ったじゃないですか、と。

 

「今のお前だとシラフでチェンに顔を合わせただけでへこたれるだろうし、チェンだってきまずくなるだろう」

 

 しかし、そんなヤマトの悲痛な反論も上記のホシグマの一言で無情にも切り捨てられ、若者……詳しく言うとパリピ系の若者を狙った通り魔事件を解決するために一時的に世の中に爆誕した、謎のパリピループスチャラ男「シナノ」がヤマトの尊厳を犠牲に再降臨したのだった。

 

 因みに。

 

「いいか、ヤマト。基本的に話し方は前のおとり捜査の時と同様、パリピ語でやれ。声の高さは……とりあえずアンセルさん当たりを目安にやれば大丈夫だろう」

 

「んっ、んんっ……これぐらいで……っていうか、なんでここまで大掛かりなんですか?」(程よい高さの声)

 

「やるからには徹底してやるべきだ。半年会わないだけでも人は変わるとはいうが、流石にここまで真反対な感じになれば気づかないだろう」

 

「真反対って……あの、一応どういう意味か聞いてもいいですか?」

 

「そんなの、真面目が服を着て歩いてるみたいなあんたが、パリピになったってことに決まってるじゃない」

 

「俺そんな風に見られてたんですか!?」

 

 こんな会話が3人の間で繰り広げられたとか、られなかったとか。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

「はあー、流石にやばたにえんだったわ~。エルネストくん、マジでサンキューね~」

 

「どういたしまして。それにしても、シナノさんって本当に強いんだね……チェンさんやリンさん相手にほぼ互角に戦えるなんて」

 

「男は強くないとモテないからね〜。つらたにえんだったけど、こうして役に立ってるのはまじ卍(本当にこの喋り方疲れる……)」

 

 あの後、口から色々なものが出かけたシナノことヤマトであったが、エルネストの頑張りによって何とか耐えることが出来、それから試験ということでヤマトはチェンとユーシャのそれぞれと模擬戦をした結果、チェン相手には僅差で勝利、ユーシャには熾烈な近接戦闘の末カウンターのアッパーをくらって敗北という、口調と派手な見た目からは想像できない戦闘力を見せたヤマトは「足手まといにはならないだろ」ということで、チームに入ることが認められた。チェンは物凄い目でヤマトを見ていたが。

 

「それにしてもエルネストの店ってまじ凄いね~。水圧銃なんて初めて見たわ」

 

「まあ、確かにドッソレス意外では見ないだろうね。もしかして、シナノさん結構気になってるの?」

 

「まあね~。ボウガンや拳銃だとどうしても殺傷力が高いし~。あ、そうだ!お金はちゃんと払うから借りてもいい?」

 

「まあ、いいけど……」

 

「サンキュー!さてどれにしよっかな〜」

 

(……強い人がさらに来ちゃったな)

 

 店内に置かれている水圧銃を目を輝かせながら物色しているヤマトを見ながらエルネストは心の中でため息を吐いた。チェンやユーシャが強いというのは想定外ではあるが、まだ何とかなる。だが、チェンとユーシャの2人に対して二丁拳銃と()()()()()()で食らいついた実力をこのヤマトが持っていることに関しては本当に想定外過ぎた。しかも、2人とは違ってノリで生きていそうな雰囲気を出してるのもあって、エルネストの予想斜め上を行く行動をする可能性が高い。

 

(本当にどうしたものかな……)

 

「エルっちー。ラテラーノで言うスナイパーライフル的なやつないのー?」

 

「エルっち……?えーと、水圧銃の仕組み的にそういうのはないかな」

 

「うーん、そっかー」

 

「それにしても、スナイパーライフルって言葉よく知ってるね。ラテラーノ出身じゃないと知らないと思うんだけど」

 

「あー、カラオケに行くいつメンにガンオタのサンクタがいてねー。そいつのおかげで色々と知った感じなんよ」

 

「なるほどね……」

 

「そしたら……チェンちゃんが持ってるアサルトライフル系統を使うしかないかー。うーん、それだと遠距離からの援護がきつくなるけど……まあ、そこは仕方ないか」

 

(……本当によく分からない人だ)

 

 エルネストは口調や纏う雰囲気とは裏腹に、真剣にあれこれ考えるヤマトを見ながらも本当に掴みにくい人だと改めて認識しため息を吐くのであった。

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 そして本戦の1回戦目の当日、観客たちは2度驚いた。1つ目は飛び入りで入ったルーキーチームである『龍威鼠心』にチェンとユーシャ、エルネストの3人の他に新たにもう1人の男性が入っていることだ。どこから漏れ出たのか『龍威鼠心』はエルネストを加えた3人だけで新しく誰かを入れない、という情報が出回っていたというのと、その新しく入った男が金髪に派手目な服といわゆるチャラ男みたいな服装という、エルネストはともかくチームの女性陣のイメージからすると快く受けたとは思えなかったからだ。そして2つ目は──

 

「おおっと!シナノ選手、今回で何度目か分からない背面撃ちをまたもや決めたァ!後ろに目でも着いてるのか!?」

 

 1回戦目が始まって早々『龍威鼠心』を3つのチームが徒党を組んで襲いかかり戦闘が勃発したのだが、シナノことヤマトを後ろから攻撃しようとした選手全員が彼が持つアサルトライフルタイプの水圧銃で頭をピンポイントに撃ち抜かれてダウンするということが起こっているからだ。無論、片手間と言わんばかりにヤマトはチェンやユーシャ、エルネストに援護射撃を送りつつも、自身に襲いかかってくる選手を軽い身のこなしで攻撃を華麗に躱し、源石剣モドキや水圧銃で次々に倒しているのも驚く理由に含まれている。

 

「……やっぱりあいつっておかしいと思うのよ」

 

「後ろを向かずに1発で頭を撃ち抜いてますからね。しかもそれを実現してるのはただの『勘』と来てますからね。お嬢様のその感想は正しいと思いますよ」

 

「剣術の腕もチェンの訓練相手として務まるには十分あると……まさにオールラウンダーよね」

 

 観客がヤマトの戦いっぶりに驚いている中スワイヤーとホシグマは呆れ半分でドローンからの映像を見ていた。彼女たちからすれば普段から

 そのヤマトと任務や訓練をしているためこの光景は見慣れたものであり、寧ろ客観的に見るのは新鮮なものであった。

 

「それにしても、チェンとリンお嬢さんが上手く連携を取れてないのをすぐに察知し、それと同時に2人が互いに攻撃し合わない位置に上手く誘導しているのも見事と言わざる負えません」

 

「……失恋1つでここまで強くなれるって凄いわね」

 

「その代償として結局想いを捨てきれないどころか、余計に大きくなっていくという拗らせ具合になってますけどね」

 

 ヤマトの身を削るような鍛錬の仕方を思い出したホシグマは少しだけ顔を歪ませてため息を吐いたところで、ドローンのカメラ越しで写っている『龍威鼠心』は遅いかかってきたチームを全て倒し切りそして別行動を取り始めたのだった。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

「まさかリンちゃんからご指名とはね〜。俺っちにも春が来た感じ?」

 

「……貴方、フミツキさんが言ってた私の助っ人としてきた人でしょ」

 

「……このタイミングでそれ言います?」

 

 チェンとエルネストの2人からある程度離れたタイミングでユーシャはいきなり核心をついた。そして元々服装や言葉遣いを変えたのはチェンにバレないためというのと、ヤマト自身を動揺させにくくするものであったため、彼はここで続行する必要が無いと判断し言葉遣いを元に戻した。尤も元に戻したのはこの言葉遣いが疲れるというのもあるのだが。

 

「なんであんたがそんな演技をしてるのか、なんて聞くのは時間の無駄だし聞かないでおくわ。それよりあんたはどこまで把握してるの?」

 

「カンデラさんから聞いた話ぐらいなら把握してます。一応調べているんですがこれといった情報はないですね……いや、正確に言えば疑ってる人はいますが証拠がないです」

 

「……そう。とりあえず私たちの方針は──」

 

「建物とか目立つところの金塊を探すのではなく、目立たないところを中心に探しつつ例の件を調べる、ですよね?」

 

「……ええ、そうね」

 

 自分の考えを先に言われたユーシャは少しだけ不機嫌そうな雰囲気を出すものの、直ぐに切り替えてヤマトと共に早速行動に移したのだった。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

「あ、ところでこれも気になってたんだけど、シナノさんってそんなにヤマトさんって人に似てたの?」

 

「…………」

 

(あ、これ地雷だった)

 

 ところ変わってチェンとエルネストの方はユーシャとの関係を話し終わったところで、興味半分でエルネストがシナノに関することを聞いた瞬間チェンの目から生気が失われ、それを見た質問者は自身の失策を悟った。

 

「あー、ごめん。この話はなかったこと──」

 

「ヤマトは私が心から愛した元恋人だ」

 

(あ、なんか話し始めちゃった)

 

 話を終わらせようとした瞬間に話し始めたチェンに対し、遅かったかと内心で後悔しつつも話を振った手前エルネストは耳を傾ける。それに対しチェンは特に気にすることなく話を続ける。

 

「私みたいな可愛げのない女を慕ってくれてな。その上、あいつは勘が異様に鋭くてどんなに隠しても私の不調を軽微でも見抜いて休ませてくれたり、私が心細くなった時は何も言わずにそばに居てくれる……暖かい陽だまりのような存在だった」

 

「良い人だったんですね」

 

「ああ、本当に私には勿体ないぐらいいい男だよ。あいつは……。そしてそんなヤマトを私はそうせざるおえなかったとはいえ傷つけた挙句捨てたんだ……」

 

「…………」

 

「それ以来会ってはなかったが私がヤマトを見間違えるはずがないんだ。確かに服装から髪の色、果てに喋り方や纏う雰囲気は私があんまり得意としてない男そのものだ。だが気配や立ち方、そしてあの正確無比な射撃やフォローはヤマトなんだ。何故、あいつがあんな格好で名前を変えて、そして私を知らない体で接してくるのかは分かっているし、覚悟もできていた。だが、いざ目の前に現実として出てくるときつくてな……結局目を逸らして気がついていないふりしかできてないんだ」

 

「そうだったんですか……」

 

 ──重い。

 エルネストが真っ先に思ったのはこれだった。正直色々な意味で重い。まず、話事態が愛した恋人を傷つけ挙句捨てるという段階で重いというのにその後に気配や立ち方でその恋人だと断定するという反応に困る内容をぶちまけられたのだ。

 そしてそこまで考えて、エルネストが持った感想はただ1つ。

 

 ──ああ、この人めっちゃ拗らせてるな。

 

 エルネストは未だにウジウジ何か呟いているチェンを見ながら、彼女を拗らせた元凶であるヤマトに対して八つ当たりだとは思いつつも、心の中で悪態をつかざるおえなかった。

 

 

 

 *****

 

 

 

「っぷし!」

 

「……良かったわね、あいつらがいないタイミングでくしゃみが出て」

 

「すみません……いつもなら耐えられるはずなんですけど……っぷし!」

 

「……なんでアンタが派遣されてきたのか理解しきってた気になってたけど、ここに来るまでに言われたことと今のくしゃみのせいでやっぱり分からなくなってきたわ」

 

「……本当にすみません」

 

 因みにエルネストが悪態をついていた頃、ユーシャとヤマトの間でこんな会話がされていたとか。




半年ぶりにあった友人が金髪のパリピ系になってて驚いた、という実話を参考にしてたり。あと、陰キャなのでパリピ語は調べながら書きましたが……うん、全然分かんねえっす!!(諦め)

キャラ紹介

シナノ:チェンが龍門を去ってから起こったとある事件を解決するためにヤマトが変装したパリピ系チャラ男の名前。因みに名前の由来は、当初大和型3番艦として建設されていたが、諸々の事情で最終的に航空母艦として建設された信濃から。

ヤマト(龍門チェン√):失恋をバネに実力をさらに伸ばした拗らせオオカミ。チェンとの1戦から自身の近接戦闘のスタイルを考え直し、最終的にロドス所属の武器職人シラヌイ特製の源石剣二刀流に辿り着き、攻める時は剣の長さを伸ばし、守りの時は刃を短くするというスタイルに落ち着いた。因みにチェンとは違い、ユーシャの調査方法に関しては、龍門でやるならバレないようにして欲しいぐらいにしか思ってない。

チェン:チェンさんにはこれぐらい拗らせて欲しいという願望があったり。ちなみにヤマトが自分と同じ一刀流のスタイルから二刀流に変えていることも地味にダメージを負ってたり。

ユーシャ:実力や寛容な部分に関しては認めてあげる、くらいの好感度はもっている。因みに途中でヤマトがカミングアウトしたとあることに関しては心底呆れた表情を向けた。

エルネスト:お腹が痛い。

ホシグマ:チェンがシナノの正体に気づいてるのを既に何となく察知してる。

スワイヤー:ヤマトが器用すぎるせいで戦闘の際どう扱うべきか頭を悩ませている。

シラヌイ特製源石剣:シラヌイがヤマトの個人的な依頼を受けて作成したもの。テキサスの源石剣を参考にして作られているが性能は全く別物。具体的に違う点をあげると、刃の伸縮が可能ということ、刃を実態として残すことが出来ないということ(要は剣雨みたいなことが出来ない)、斬るではなく溶断ということ、柄が円筒タイプであること、2本の源石剣を繋げて両端から刃を出せること、とかなり違う。正式名称は決まっていない。

感想や批評お待ちしております。


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ヤマトの楽しいドッソレスバカンス:その3(龍門チェン‪√‬)

えー、すみません。大変お待たせしました……

課題や試験の関係上、なかなか時間を取れずにこんなに遅くなってしまい大変申し訳ございません。
これからは時間は取れると思いますのでペースの方を上げていきたいと思います。

それでは本編の方どうぞ。


 

 

『ヤマト、中々の大活躍だったじゃないか』

 

「……急に着信が来たので急いで取ったら第一声がそれですか」

 

 第1ラウンド終了直後、急に連絡端末にホシグマから着信が来たヤマトはチェンとユーシャにホシグマからの連絡だと気づかれないように2人に一言入れてから急いで距離を取って耳を傾けてみると、彼の耳に届いたのは労いの言葉。普通であればお礼の一言や二言を述べている場面ではあるが、状況が状況なためヤマトとしては少しだけ気分が良くなるものではなかった。

 

『冷たいな。上司からの労いの言葉をそんな風に切り捨てる様なやつに育てた記憶はないぞ?』

 

「ホシグマさんは僕のお母さんですか……確かに教育係として着いてはもらいましたけども」

 

『あの時はお前がここまでの猛者になるとは思えなかったからな。教育係を務めた身としてはかなり誇らしいよ』

 

「……」

 

『ふっ、お前は照れるとすぐに黙る癖があるよな』

 

「……ホシグマさんには言葉でも一生勝てる気がしません」

 

『当たり前だ。まあともかく、しっかり休んで第2ラウンドに備えることだ。お前たちのチームにかけてるんだからな』

 

「え?ちょ」

 

『じゃあな』

 

「ホシグマさ……全くあの人は……」

 

 からかうだけからかった挙句最後にとんでもないことをぶちまけた上司にヤマトはため息を吐きつつも、気を使って態々連絡をしてくれたことに内心申し訳ない気持ちになっていた。これはホシグマという人間とそれなりに仲良くなればわかるのだが、基本的には彼女が連絡をしてくるのは仕事に関する話、飲みの話、もしくはツーリングの誘いと3択しかなく先程みたいになんの用事も無い雑談というのは全くしない。そして彼女がかなり気を使える人物ということさえ分かれば、いくら鈍感な者でも先程の連絡が気を使ってしてくれたことぐらい気づける。

 

(本当に俺はまだまだだな……)

 

 ヤマトは自分の未熟さを痛感し、そして次の第2ラウンドで自分が最後の方は全く使えないということを残りの2人にどうやって伝えるべきなのかと頭を悩ますのだった。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

「皆お待たせ!2日間のお休みが終わって、いよいよ大会第2ラウンド──トライアスロンを始めるよ!」

 

(あぁ……結局泳げないってことチェンさんに言えずじまいだった……)

 

 D.D.D.が第2ラウンドの説明をしている中ヤマトは死んだ魚のような目をしていた。何故か?それは第2ラウンドが始まるまでの2日間でヤマトは自身の最大と言ってもいい欠点である、全く泳げないカナヅチということをチェンにだけ伝えられなかったからだ。無論彼女だけに言えなかった理由はちゃんとあり、一番の理由としてはシナノ=ヤマトということがバレる可能性があまりにも高すぎたからだ。自惚れている、と言われればそこまでの話ではあるものの、変装状態で顔を合わしただけで正体を疑われたというのにそこにまた新しくヤマトと同じ特徴をぶち込めばチェンなら気がつくだろう。そのため、現在チームでヤマトが泳げないのを知っているのは第1ラウンドの最中にこのことを伝えられたユーシャとチェンがいないタイミングで言われたエルネストの2人のみだ。

 

(遅かれ早かれバレるから早めに言っておいたほうがいいとは頭ではわかってたけど……次問いつめられたら誤魔化しきれる気がしないし……)

 

「以上で今回出るチームの紹介は終わりだよ!」

 

(って、もうチームの紹介終わったのか……今は目の前のことに集中しなくちゃ)

 

「──なあ、やはりお前は……」

 

 D.D.Dの言葉が耳に入ったヤマトは先程まで考えていたことを振り払うかのように軽く頭を振り、頬を軽くパンと叩いて意識を切り替える。そしてこれはヤマトがよくやる無意識な癖でもあった。無論ヤマトとて時と場所を弁えた上でやることでもあるが、そんな彼と一緒に過ごした人物からすれば既視感を覚える行動だ。そのためそれを何処かぼーっとしていた彼に声をかけようとしたチェンはそのまま自身の予想を聞くために声をかけ──

 

「大いに楽しめ、若者たちよ。それではこれより──第二ラウンドを開始する!」

 

「チェンさん!」

 

「っ!」

 

 ──ようとした瞬間スタートを告げる合図が会場に響きわたり、チェンはヤマトの声を聞いて反射的にしゃがむ。するとその直後に水の弾が彼女の上を通り抜け後ろで武器を振り下ろそうとしていた男の顔面に当たり弾け飛び、追撃として男の腹にヤマトの飛び蹴りが刺さり男の意識はすぐに暗転した。

 

「狙われてるよ……って言いたかったけど、言うまでもなかったかな?」

 

「まあ敵意ガンガン飛ばしまくってたからねー。気づくなってのが無理な話だし、それに女性を守るのは男として当然っしょ。んで、どうすんの?」

 

「速攻で蹴散らすわよ」

 

「即答なのは助かるわー」

 

 ユーシャの発言を聞いたヤマトは後ろから不意打ちとして振るわれた一撃をしゃがんで躱すと同時に右足で足払いをかけて男の体制を崩すと、右手に持っている源石剣を模擬戦モードで起動し思いっきり振り切って一撃でダウンさせる。その直後に第1ラウンドで使用した水圧銃を右手に、そして新たに用意してもらった拳銃型の水圧銃を左手に持つと横に構えて左右から機会を伺っていた2人の武器を持っている手と頭をほぼラグなしに撃ち抜き無力化。すぐに周囲を見渡せば流石と言うべきか、チェン達は既にこちらに向かってきていた者たちを全員倒していた。ヤマトはそれをやってのけている人物達の実力の高さにもはや呆れの感情を持ったところでユーシャの近くに股間を抑えながら白目を向いて気を失っている男性が視界に入り、そしてそれを同じく目に入ったエルネストと共に顔を青くしながらも手を合わせた。

 

「一応近くに近道あるけど使っちゃう?」

 

「いや必要ない。地図を見るに、バイク区間には近道が多くあるようだからな」

 

「りょーかいっと」

 

 方針を決めた彼らは更に足を動かすスピードを早めたのだった。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

「やられたな……」

 

 ヤマトは近道に配置されているドッソレスの精鋭達に囲まれた状態で1人愚痴る。『龍威鼠心』は自転車のコースに入ったところで他のチームからの妨害を受け中々前に出れていないタイミングでエルネストの提案により近道を使用。そして近道には事前に知らされていた通りドッソレスの市長であるカンデラの中でも精鋭の部下たちが待ち構えており、戦闘が始まる前にエルネストが「チェンとユーシャに自身の店の近道を使った方がいい」と進言し、2人は了承。更に彼から「シナノさんはここの抑え役を手伝って欲しい」と言われヤマトはユーシャとアイコンタクトを交わした上でそれを受け入れ先程まで2人で奮闘していたのだが。

 

(まさか、店を爆破してそれに気を取られた振りをしてやられてリタイア判定を貰うなんてね)

 

 突如チェンとユーシャが向かった方向から爆発音が鳴り響き、それにその場にいた全員が僅かに気を取られ、そしてエルネストはそれにやや過剰気味に気を取られた振りをしたところをカルデラの部下にやられてしまった。だがエルネストのそれが演技だと気づけたのは人の嘘などに敏感なヤマトだから気づけたもの。無論、元々疑っていたのもあるのだが。

 

(多分エルネストさんは僕が泳げないのを知ったからここに残したって感じかな。チェンさんとユーシャさんさえ封じればあとは泳げない俺しかいなくなって、決勝には行けなくなるわけだし)

 

 そこまで考えたところでヤマトはすぐに思考をこの場面を乗り切るかに変える。正直な話、店を爆破した程度でチェンやユーシャがどうにかなるとはヤマトは微塵にも思っていない。強いていえばこの遅れをどう取り返してゴールするかの方が心配だ。一応砂浜に着いたあとの動きは事前にユーシャと話したのでそこにさえたどり着ければどうとでもなる。

 

「って、少しぐらいはゆっくり考えさせて欲しいんだけ、どっ!」

 

 ヤマトはそこまで考えたところで自信に飛んできた矢を水圧銃で撃ち落としつつ、その隙に接近してきていた男の一撃を右手の源石剣で防いで鍔迫り合いの状態にもつれ込むも、男が押し込もうと体重を入れた瞬間に刃を消して体制を崩した所に左肘を首に入れてそこに追撃として蹴りを加えようとしたところで敵意を感じ、すぐに後ろに跳んで術士の攻撃を躱す。

 

(前衛と後衛がしっかり役割分担できてるだけじゃなくて、前衛はタフで後衛は援護が的確と来たから簡単には突破できないな)

 

 首に思いっきり肘を叩きつけたというのに叩きつけられた男は痛そうにはしているものの、戦闘の続行は可能であることにヤマトは内心ため息を吐く。まるで近衛局の小隊1つを相手しているかのような錯覚に陥っていること自体にイラつきも感じているが、それ以上にこの程度の相手を全力でやらねば突破できない自分の無力さも腹正しかった。

 

(……仕方ない。チェンさんには見られないことを祈って思いっきりやるか)

 

 ヤマトはそう結論づけると、左手に持っていたアサルトライフル型の水圧銃を背中にかけて拳銃型の水圧銃に持ち替えると、アーツで脚力を強化して警戒している精鋭達に突っ込んだ。

 

 

 

 ****

 

 

 

「何とかここまで来れたけど、エルネストとシナノはまだ来てないということはやられたのかしら」

 

「……かもしれんな」

 

 時は進み、瓦礫から何とか抜け出し予想以上に後続がいないことも相まって怒涛の追い上げを見せたユーシャとチェンは、最後のチェックポイントに来るまでにエルネストとヤマトの姿を確認してないことから、2人がカンデラの部下たちにやられてしまったと結論づけた。

 

「全く、シナノがいればもうちょっと楽だったんだけど……」

 

「何をしている?早く行くぞ」

 

「急かさないで。こういうのは久しぶりだから準備が必要なの。分かったらさっさと行ってきな──」

 

「すみません、遅くなりました!」

 

「なっ……」

 

「……遅かったわね」

 

 いざゴールへ泳ぎにというタイミングで声が聞こえ、振り返るとそこには金色ではなく茶色の髪のループスの青年が片手にビート板と思しきものを抱えながら、あちこち切り傷やら擦り傷やらでボロボロな姿で息を切らしながら立っていた。そしてその姿を見た瞬間、チェンはシナノの正体が自身が思っていた通りであることを確信し、彼の肩を掴んだ。

 

「ヤマト。何故ここに?それになんで名前や姿を偽ってまでここにいる?」

 

「チーちゃん。話は後でゆっくり聞くから、今は優先すべきことをやろう?」

 

「……分かった」

 

「……まとまったならいいけど。とりあえず私は準備してから行くから先行ってなさい」

 

 チェンは不服そうではあるものの先を急がねばならないのは事実であるため、ヤマトと共にゴールへ向けて泳ぎ始めた。だが、いくらヤマトの身体能力が高いと言ってもビート板ありなためバタ足でしか進めないという関係上、あっという間にヤマトとチェンの間には距離が空いてしまっていた。尤もそのヤマトの進むスピードもバタ足の割にはとんでもなく早いのだが。

 

「……シナノとチェンがあそこだからこれぐらいあれば十分かしらね」

 

 そして浜辺でバタ足で頑張って泳ぐヤマトとチェン、そして他の選手の位置を見ながらユーシャは砂を集めると、おもむろに走り出しそのまま必死こいて足を動かして進んでいるヤマトへ向けて跳躍した。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

「いやー、チェンとヤマトの反応面白かったなー」

 

「ああ。特にチェンの踏まれた時の顔は……ふくっ」

 

「いつまで笑ってんのよ、あんたたちは」

 

 第二ラウンドが終了してから、エイヤフィヤトラの付き添いとして来ていたロドスの前衛オペレーターであるムサシはホシグマと先程目に入った中々愉快な場面を思い出して話していた。特にヤマトに関しては踏まれた瞬間にビート板から手を離したせいで、そのビート板をまた手に取るまで必死こいて犬かきしていた様はヤマトのことを真面目が服を着て歩いているようだ、と思っていたムサシとしては意外だったのだろう。

 

「あ、そういえばよ。ヤマトの坊主がここの市長さんの部下とやり合ってる時、『本来の戦い方に戻したか』って言ってたけどありゃどういう意味だ?」

 

 そこでムサシがふと思い出したかのように聞いたのは、ヤマトがカルデラの精鋭部隊を突破した、多少の被弾は構わないと言わんばかりにやった捨て身に近い戦い方だ。ムサシは「派手にやるなー」程度にしか思っていなかったが、それを見ていたホシグマが先程のようなことを額に手を当てながら呟いていたのが気になったのだ。そして聞かれたホシグマは苦笑いを浮かべながら答えた。

 

「ああ、実はあの戦い方はヤマトがチェン隊長と付き合う前まで……正確に言えば付き合ってちょっとするまでにしていた戦い方でな。本人曰く、『戦線離脱や四肢欠損しない程度の攻撃なら避けずに突撃した方が早い』ということでやっていたものでな。実際、あいつはその戦法で敵を倒すの早かったからな。だが、付き合ってからはチェンに余計に口酸っぱく言われたらしくてな。最終的には余程のことがない限りは被弾を0にする戦い方に変えたんだ……まあ、あのバカはその戦法だとウィッグが外れるってことまで想定できなかったわけだが」

 

「なるほどなぁ」

 

 ホシグマの話を聞いたムサシはヤマトの肝っ玉の強さに感心していた。彼女が傭兵時代に渡り歩いた戦場でもそのような戦い方を最初からするものはおらず、取るとしても最早助からないと感じた者だけがとる捨て身の戦法だ。常人ならやろうとは思えない。

 

(あいつの異質さ?みたいなものは前から薄々感じてはいたが……俺が口を挟むのはお門違いだな。それに……)

 

 ムサシは思考を一旦やめてドローンに映っている映像を見る。そこには──

 

(今、まさに注意してる奴がいる訳だからな)

 

 両肩を掴まれて思いっきり揺さぶられて青い顔をしているヤマトと、如何にも怒ってますという顔でヤマトを揺さぶりながら何かしら言っているチェンの姿があったからだ。




早くギャグ時空の話に持ち込みたい……

キャラ紹介

ヤマト(龍門チェン√):なんか色々バラされてる+正体バレした狼さん。ウィッグに関しては戦闘中に術士の攻撃でどっか飛ばされてしまい、探す時間も惜しかったためバレるのを覚悟して泣く泣く進んだ。なお、ビート板は運営に事前に泳げない事を伝えたら慈悲として渡されたもの。犬かきよりビート板+バタ足の方が速い。

チェン:シナノの正体がやっぱりヤマトで感情が爆発しかけたものの、久しぶりの「チーちゃん」呼びのおかげで何とか耐えれた。因みにどちらか片方が再度告白すれば万事解決だったり。

ユーシャ:何となく二人の関係性を察し、なんだコイツらと思った。

エルネスト:暗躍店主

ムサシ:ムサシィ!生きとったんかワレェ!……冗談は置いといて、このルートではヤマトと傭兵時代に遭遇及びバディを組んでないため生存してます。現在はロドスで大剣を振り回す前衛オペレーターとして活躍中。

感想や批評、お待ちしております。


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ヤマトの楽しいドッソレスバカンス:その4(龍門チェンルート

えー、皆様おまたせ致しました。
最近レジェンズアルセウスにハマってるせいですぐに投稿できず申し訳ございません。いや、ポケモンを背後から捕獲したり、サーナイトネキ捕まえたり、ブイ族に囲まれたり、と楽しいのが悪いんだ!!

という訳で本編の方どうぞ。



 

(結局バレちゃったなぁ……)

 

 最終ラウンドの舞台である船の中にてヤマトはため息を吐きながら船内を歩いていた。考えていた内容は、チェンに自分のことがバレてしまったことと「これ終わったら覚えておけよ」と釘を刺されたせいで逃げられなくなったことだ。元々、正体を明かすことなく彼女のサポートをし、終わり次第さっさとドッソレスから出ていく予定だった。しかし結果は自身の間抜けなミスのせいで隠し通すことは出来ず、船に着いてからはボロボロなことについて追求されて白状した結果ガチめに怒られて説教され、そして最後にはどこか縋り付くような目で先程のことを言われたのだ。もう彼女との対話は逃れられない事象となってしまった。

 

(本当にどうしたものか……)

 

「シナノだな?突然で悪いが、武装を放棄して俺たちについてきてもらおうか」

 

(……思ったより行動起こすのが早いな)

 

 ヤマトは武器を持ってこちらに話しかけてきた3人男たちを見遣りながら背後からも2つほど敵意を感じ取った。どうやら相手は断られても逃げられないように挟撃を考えているようであり、ちゃんと考えていることが分かる。普通であればピンチだと考え焦るのだが今回のヤマトは違った。何故なら──

 

「悪いけど武装解除も君たちについていく気もないよ。それにね……」

 

「……なんだ?」

 

「ちょっと個人的にむしゃくしゃしてるから八つ当たりさせてもらおうか!」

 

 ヤマトはそう叫ぶや否や目の前の男たちへ突っ込み一人のみぞおちにストレートを放ち、その男が体をくの字に曲げた所へサマーソルトを顎に食らわせ気を失わせる。そして着地すると同時に残っている2人のうち片方の男の顔面を掴むとそのまま思いっきり地面に叩きつけ、すぐ隣の男の顔面に拳銃型の水圧銃を向けて発砲、男を怯ませている隙に地面に叩きつけた男の顔面に至近距離で水圧銃を3発ほど撃ち込んで気絶させると、そのまま襟首を掴んで隣の男に叩きつけダウンさせる。

 

「なっ、おまっ……!」

 

「ちょっと反応が遅いかな?」

 

「っ!?」

 

 そしてヤマトの後方で待機していた男女の計2名は僅かな時間で自身の仲間が3人もやられていたことに動揺した隙を突かれ、接近を許してしまった。慌てたように男が手に持っている武器をヤマトに振り下ろすもそんな攻撃が当たるほどヤマトは甘くなく、男の腕を掴むとそのまま背負い投げをし追撃として水圧銃の銃撃を顔面に撃ち込み気絶させた。

 

 戦闘が始まってここまでにかかった時間は1分もたっておらず、この時ただ1人残った女性は初めて自身の……自分たちの失策を悟った。

 

「それじゃあ、ちょっとだけ寝てもらうよ……ごめんね」

 

 仲間があっという間にやられたという事実に呆然とする中、女性はそんな申し訳なさそうな声が耳に入ると同時に意識が暗転した。

 

 

 

 *****

 

 

 

『それで、襲われたから返り討ちにしたと』

 

「はい。でも今思えばあえて捕まるべきでした。恐らく用意してるであろう拘束具も俺のアーツなら壊せるでしょうし」

 

『今更悔いても仕方ないわ……ところで、さっきから何かを溶かすような音聞こえるんだけど何してるの?』

 

「相手の武器を源石剣で細かく溶断してるんです。一応武器が無い方がまだ楽なので」

 

『……とりあえず倒しちゃったからにはアンタにもチェン同様暴れて頂戴。人質の方は私一人でなんとかするから』

 

「分かりました、ご武運を」

 

 ヤマトはユーシャとの連絡を終えると細かく溶断した武器の残骸を廊下に放り投げ、チェンにも連絡を取ろうとして直ぐにそれを止めた。正直な話、ヤマトは未だにチェンと顔を合わせて一緒に行動するのに戸惑いを感じていた。実際このラウンドに入るまではユーシャがエルネストも共にいたりしていたので、チェンと2人だけで行動というのはしていない。そのためこれまでは『シナノ』という仮面を付けていたのもあってまだ何とか普通でいられたが、その仮面も剥がれた状態でまともにできるかヤマトは不安になり、連絡をとって合流するという選択肢を捨てた。

 

(それに大きいとはいえ船の中なら歩いてればいずれは合流できるだろうし、連絡する必要は無いね。うん)

 

 ヤマトは自分の考えを正当化するかのようにあれこれ考えながら、廊下の角を曲がろうとしたタイミングで。

 

「奇遇だな、ヤマト」

 

「…………」

 

 丁度ばったり曲がってきたチェンと遭遇してしまった。ヤマトは自身の運の悪さと無警戒さが腹立たしく感じるも、チェンの様子を見てそれはすぐに吹き飛んだ。

 

()()()()()、怪我してるじゃないか!なんで手当もろくにしないでほっつき歩いてるの!」

 

 チェンは誰かと既に戦闘を行った直後なのか大きい怪我は無いもののかすり傷などがあった。普通であればそこまで気にする程の怪我では無いのだがヤマトとしてはとても見過ごせるものではなく、そしてチェンは今更ながら自分が悪手を取ってしまったことに気がつき、慌てて弁解をしだした。

 

「待て、ヤマト。これはお前に手当してもらおうと思って敢えてしなかったわけではなくて……あっ」

 

「言い訳無用!はい、そこに座って!今手当するから!」

 

「……分かった」

 

 チェンはうっかり本音が出かけたことに内心ハラハラするもヤマトがプリプリと怒りながら聞き逃してくれたお陰で何とかなったことにほっとしつつ、大事な局面だというのに久しぶりにヤマトの手当を受けれることを嬉しく感じていた。もうこの人はダメなのかもしれない。

 

「全く、チーちゃんって前からそうだよね!俺の事を衛生兵だと勘違いしてない!?」

 

「ふくっ……」

 

「何笑ってるの!俺、怒ってるからね!」

 

「ああ、すまない。それと頼むから治療中の時に説教はやめてくれ、治るもんも治りづらくなるからな」

 

「しばき倒すよ?」

 

 かつて良くしていたやり取りがまだ実現しているという現実に、チェンは、そして怒ってはいるもののヤマトもどこか懐かしく、心が安らぐような感覚を味わっていた。

 

 ──もう少しだけこの時間を味わいたい。

 

 2人がそう思いながら静かに時間を過ごしている最中だった。

 

「見つけたぞ!お前ら、よくも俺らの仲間を!」

 

 奥の方から怒鳴り声が聞こえ振り返ると武装している数人の男たち。武装していることと怒鳴った内容からしてパンチョについている者たちであることが分かり、彼らはヤマトによって筒巻きにされた同胞たちの仇を討たんとばかりに、勢いよくヤマトたちへ襲いかかろうとして──

 

「「黙ってろ」」

 

「ぶべっ!?」

 

 チェンとヤマトの水圧銃による射撃を頭、鳩尾に当てられ戦闘を走っていた男は後ろへ倒れ込みそのまま気を失った。そして残った男たちはそれに多少は驚くものの、仲間を倒した2人への怒りをさらに募らせさらに前進しようとして──足を思わず止めた。

 

「ヤマト……私が言いたいことはわかるな?」

 

「うん、分かるよ。因みに俺もチーちゃんに言いたいことがあるんだけど」

 

「大丈夫だ、無論分かっている……ふっ、どうやら私たちが考えていることは同じみたいだな」

 

「そうだね……」

 

 男たちは二人の会話の意味が全く、正確に言えば何故何も言ってないのにお互いの言いたいことがわかって尚且つそれが同じだと思えるのか不思議でならなかった。いや、それよりも彼らの足を止めている理由はそんな不可解なことではなかった。では一体何なのか、それは──

 

「「お前ら、タダで済むとは思うなよ」」

 

 ──この時、男たちは自分たちが龍の逆鱗に触れてしまったことを身をもって知るのであった。

 

 

 

 ****

 

 

 

「──結局、パンチョの思惑はたまたま来ていたチェンとリン・ユーシャの活躍により阻まれ、パンチョに協力していた者はボリバルを追放という形でとどまった……と」

 

「なあ、ワン公。お前休日でもそんな堅い生活してるのか?」

 

「ムサシさんは俺の事なんだと思ってるんですか……個人的に思うことがあったからこうしてまとめてるんですよ。あと俺はループスなんでワン公ではありません。はっ倒した後にシラヌイさん(飼い主)にクレームに送り付けますよ」

 

「なんでお前は私に対してだけは扱いが雑なんだよ」

 

 パンチョが企てた事件が一段落したその日の夜、ヤマトは結局ボリバルに来ていたことがチェンとユーシャの2人にバレたホシグマとスワイヤーのお酒を飲む約束を断って、ムサシを「奢るから」と誘って2人でお酒を飲んでいた。なお、ヤマトが断ってさっさと逃げた時ユーシャは何故か心底同情したかのような顔をしていた。

 

「まあ、酒に誘ってくれただけじゃなく奢ってくれるってのは有難いけどよ……別にお前の話ならタダで聞くぞ」

 

「……なんでこんな時に限って鋭いんだか」

 

「はっ、伊達にお前より長く生きてねえよ……誰にも話せねえから早くゲロった方がいいぞ」

 

「……俺、チーちゃんの力になれたかな」

 

 ムサシの言葉を聞いたヤマトはそこから今までホシグマや自身を拾ってくれた育ての親にすら言わずに秘めていたことをポツリポツリと話し出した。彼女に追いつきたくて剣術を彼女のとは別のものにしたこと、直接会った結果彼女への想いがさらに大きくなってしまったこと、それでも自分は彼女を愛する資格がないと思っていること、それでも愛してしまっていること、そして一緒に戦ってまだ自分が彼女の隣に立ててないこと、思っていることを全て話した。

 

「……女々しいし重い男だとは思う……本当、どうすればチーちゃんへの想いを断ち切れるんだろうね」

 

 ヤマトが最後にそう呟いてから、彼は黙り聞いているムサシも何も話さずにグラスに入っている酒を飲む。

 

「……なあ、なんでお前はチェンへの想いを捨てようって思ってるんだ?」

 

 1分、10分それともそれ以上経っていたのかもしくは1分すら経っていなかったのか分からないほど重い沈黙を破ってムサシはグラスを揺すって浮かぶ氷を見つめながらヤマトに質問を投げかけた。

 

「……迷惑だと思うんだ。俺みたいな男から今でもこんな想いを向けられても」

 

 ヤマトはもはや隠すということを忘れ、自分が考えていることをそのまま話した直後──

 

「迷惑じゃないさ、このたわけ」

 

「え──」

 

 愛している人の声がヤマトの耳に入ると同時に後ろから懐かしい力加減で誰かから抱きしめられた。ヤマトは突然の事態、正確に言えばここにいるはずの無い人物の声に戸惑いながら振り返る。するとそこには──

 

「さっきぶりだな、ヤマト」

 

「チー、ちゃん……?」

 

 目から涙が滲み出ていながらも優しげでありながらどこか安心したような表情のチェンの顔。ヤマトは驚きのあまり呆然とする中、ふとムサシの方を振り返ると彼女は呆れ顔で左手に連絡端末を持ってこちらに「通話相手:チェン・フェイゼ」という画面を見せつけていた。そしてヤマトはすぐになぜチェンがここにいるのか悟った。

 

 簡単な話、ヤマトは嵌められたのだ。ヤマトとチェン、ユーシャを誘う前にいい加減拗れ組二人の進展の無さに痺れを切らしたホシグマ、スワイヤー、ムサシ、そして巻き込まれたユーシャはヤマトの本音をチェンに通話越しで伝えるという計画を立てたのだ。最初のホシグマ達が誘った方はヤマトが逃げることを想定してのものであり、そしてヤマトがムサシへ飲みを誘うのも予想の範疇であった。つまりヤマトは完全にホシグマたちの手のひらで踊っていただけだった。

 

 しかし、ヤマトにとってはそんなことはどうでも良かった。それよりもチェンには一生伝える気でなかった隠し事が全て伝わってしまったことへの恐怖でいっぱいだった。どんなことを言われるのか、どんな罵倒が飛んでくるのかヤマトは自身の震えが抑えることが出来ず、せめてもの抵抗として目を閉じようとして──

 

「ヤマト。私もお前のことを愛している」

 

「……え?」

 

 チェンから予想外な言葉が飛んできてヤマトは思わず目を開けて彼女の方へ顔を向けた。ふっと優しく笑みを浮かべるチェンの表情はとても嘘をついているかのように見えず、先程の言葉が真実であることを告げていた。

 それではこれは夢なのだろうか、ヤマトがそう自分が都合のいい夢を見ているのだと考えたタイミングだった。

 

「んっ──」

 

「んっ──!?」

 

 唇に伝わる柔らかくそして暖かい感触がし、その直後自分の口内に舌が入り込みそのまま蹂躙していく。ヤマトはそこまでされて自分がキスはキスでもディープキスをされていること、そしてこれが夢でないことにようやく気がついた。

 そしてこれが夢ではないと気がついたヤマトはすぐにここが酒場という公共機関の場であることとムサシと一緒に飲んでいることを思い出し、チェンを話そうと肩に手をやって押しつつ、隣にいるはずのムサシに助けを請おうと横を見ると。

 

『あとは二人で楽しんでくれ。ここリンのお嬢さんの子分のところらしくて今日だけ貸切だから周りの目は気にすんな。P.S.酒代は多めに払っておいたから気にすんな』

 

 上記のような書置きが残されているのみでムサシ本人はどこにもなく、そして今更ながら周りに他の客が全く居ないことにヤマトは気が付き、さらに焦燥感を募らせる。が、周りに視線を向けてしまったことは完全に失策であった。

 

「おい、何よそ見をしてるんだ?私だけを見ろ、このたわけ……んむ」

 

(またキ……舌も入って……!?ああ、なんかもう頭がふわふわして何も考えられなくなってきた……)

 

 自分のことより周りを見た事に嫉妬したチェンによる猛攻撃が始まり、ヤマトはお酒を飲んでいたことも相まって思考が段々と鈍くなっていき先程から一生懸命押していた腕の力も徐々に無くなっていき。

 

「……ヤマト、この後付き合え。分かったな?」

 

「ふぁい……」

 

 こうして哀れなヤマト(獲物)チェン()に支えられながら店を後にした(お持ち帰りされた)のだった。

 

 

 

 *****

 

 

 

「ふふっ」

 

「どうした、急に笑って」

 

「いえ、先程気がついたのですがユーシャからもう1枚写真が送られてきてたのですよ」

 

「一応聞いておくがどんな写真だ?」

 

「私の企みが上手くいった証拠の写真、ですね」

 

 

 

 *****

 

 

 

 おまけ:チェン側のざっくりとした流れ

 

 チェン「ヤマトのこと愛してるけど、剣でぶっ刺した挙句捨てた私にそんな資格あるのか……」

 

 ホシグマ「ヤマトはまだあんたのこと引き摺ってると言うかぞっこんLoveだぞ」

 

 チェン「!?」

 

 スワイヤー「携帯端末鳴ってるわよ、出たら?」

 

 チェン「あ、ああ(通話を開く)」

 

 ヤマト『チーちゃん愛してる(要約)』

 

 チェン「!?」

 

 ユーシャ「貸切だから早く行ってきたら?」

 

 チェン(店を飛び出す)

 

 




本分めっちゃ詰め込んだのに、オマケがあまりにもざっくりしてる……

キャラ紹介

ヤマト(龍門チェンルート):ついに重い想いがチェンにバレた拗らせループス。夜のプロレス(意味深)の結果無事復縁。バカンスから戻ってからというもの、仕事のスピードがさらに早く正確になった。ロドスの方も綿密な調整をすることなく行くようにもなった模様。

チェン:復縁ができた拗らせ龍。周りの策略によりやっと決着がつき、復縁ができた。なお、ヤマトに猛攻撃を仕掛けられたのはクソデカ感情が爆発したこと+アルコールが入っていたお陰で朝起きてシラフになってからめちゃくちゃ布団の上を転げ回ったが、ヤマトとゆっくり話し合って無事復縁という流れ。なお、途中のクルーズ船でばったり会ったのは完全に狙ってやってた。

エルネスト:話を上手く入れられるほど余裕がなかったのでカットという……エルネスト好きの皆様本当にごめんなさい()

ホシグマ:やっとこじらせ2人組から解放された。

スワイヤー:復縁できたのは良かったけどなんかムカつく。

ユーシャ:巻き込まれ事故。

ムサシ:後日、ヤマトとチェンの手によってボロ雑巾にされた。因みにムサシのルックスは黙ってただ静かにしてればかなりスタイルもいい美人。黙ってただ静かにしてれば。



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コラボ回:「ヤンデレって怖いね(小並感)」(本編ルート):その1

えー、まずは投稿がこんなに遅くなってしまい大変申し訳ございません。どうも最近ブランク気味で中々筆が進まない状態でして……大変申し訳ございません。

そして今回はタイトルの通りまたコラボです。コラボ相手の方にはこんなに遅くなってしまい本当に大変申し訳ございません。

それでは、本編の方どうぞ。


 

発端はここ数週間で起こっていたトランスポーターや傭兵の消息ががとある地点を中心に掴めなくなる事件が度々起こっていたことだった。当初ロドス側は介入するという考えはもっておらず、契約しているトランスポーター達に注意喚起を促す程度の対応しか取っていなかったけが、つい先日遂にロドスのオペレーターの1人がその地点で連絡が途絶えるということが起こったため、ヤマトを隊長、イカズチを副隊長に何人かオペレーターでその行方不明になったオペレーターの捜索及び調査を任務として、隊が組まれ派遣された。

 

 

 

 ****

 

 

「どういう事だ……?」

 

「ヤマトさん?どうかしましたか?」

 

 思わず声に出てしまった呟きを聞いた医療のオペレーターの人に聞かれてしまい、なんて答えるか少しだけ考えてから思ったことを正直に伝えると変に混乱させる可能性があるため「なんでもない」と告げてから、改めて耳を澄ませる。

 

「…………」

 

 やっぱりおかしい。聞こえてくる音が俺らの足音や話し声しかない。こういう浅い森の中でも普通なら鳥や動物など野生の生き物の音がするはずなのに、そういった音がまったく聞こえない。それに加えてこれは漠然とした感覚的な話になるけども、生き物の気配を全く感じない。

 

 これは異常事態だ。行方不明になったオペレーターやトランスポーター達の手がかりはまだ見つけてないけども、今回の隊は捜査がメインだから小規模な上装備も心許ない。手遅れになる前に撤退すべきか?

 

「お兄ちゃん!こっち来て!」

 

 そう考えていたタイミングでイカズチに呼ばれ、思考を中断し近くにいるオペレーターと共にあの子の元へ走っていく。なにか手がかりでも見つけたのだろうか?

 

「イカズチ、どうしたの?」

 

「お兄ちゃん、これ……」

 

「っ、これは……」

 

 イカズチが指を指した方向を見るとそこにあったのは刃こぼれが激しい剣を片手にうつ伏せで倒れて血を流している人の姿。位置的には道から外れており周りも膝まで伸びた草が生い茂っているためそう簡単には見つからないところであり、血の量からしても死んでいるのは明らかだ。しかし、問題なのは位置や血の量、死体ということではない。問題なのは──

 

「な、なんで源石がこんな大きく体表に出てるんですか……?」

 

 そう、ついてきた医療オペレーターが言ったように()()()()()()()()()()()()()()のだ。ここまで大きく出ているパターンは滅多になくあるとしても鉱石病の末期の患者とかだ。結論としては末期の患者が不幸にもナニカに襲われ出血死した、で片付けてもいい内容かもしれないけども、俺はそれ以外でも体表に源石が大きく出てくるパターン……いやこうさせることが()()()()()()()のを知っている。けどそれは100%ありえないのだ。その人物は既にレユニオン事変で死亡したという報告がある。でも、もしその人物が持っていたアーツに近しい能力を持っている者がいた場合は?

 

 ──そこでふととある考えが浮かんだ。

 ──もし、その人物が何か事を起こそうと考えていたら?

 ──その人物が何かを起こすために人……駒を集めているのだとしたら?

 ──今までの行方不明の事件はその人物が全てやっている事だとしたら?

 ──これが、さらに新しい駒を呼ぶための罠だとしたら?

 

「……全員、直ぐにこの場を離れるぞ!」

 

「え、お兄ちゃん!?」

 

「訳は後で説明する!」

 

 その考えが頭によぎった瞬間、直ぐに隊の全員に一方的に無線機でそう連絡を告げる。もうここに来てからそれなりに時間が経っていることを考えると、正直今から撤退したとしても遅いぐらいだ。恐らくは──

 

「っ!」

 

 何かが走ってくる音と異様な気配を感じ、反射的に腰に差しているバタフライソードを左手で抜き取り振り向きざまに振るうと重い手応えに手につたわり、同時に金属と金属がぶつかり合う音が鳴り響く。そして視界に入ったのは──

 

「やっぱりか……」

 

 体から大きな源石が出ている大男の姿。手には身の丈あるほどの鈍器を持っており、そしてその男の存在が自分の考えがあっていることを示していた。

 

「全員Eポイントに急いで撤退。道中の指揮権は副隊長のイカズチに譲渡するけど、戦闘は避けて逃げることを意識して」

 

「待って、それじゃお兄ちゃんは!?」

 

「殿を務める。イカズチ、仮に戦闘になった場合は君のアーツを凝縮した一撃で倒しきって。あいつらの硬さと再生力だとそれくらいやって何とか倒せるぐらいだから」

 

「いやだ!お兄ちゃんを置いて……!」

 

「ここで全滅するわけにはいかないし、あいつらとの戦闘経験はあるから大丈夫。すぐに追いつくから」

 

「でも……」

 

「いいから早く!」

 

「っ……」

 

 心配そうな目でこちらを見遣りつつも最終的には他の隊員に声をかけて離脱するイカズチに視線を向けることなく、目の前の感染者を注意深く見る。どうやら向こうはまだ仕掛ける様子がないみたいであり、今のうちに肩にかけてあるファーストブレードを右手で抜き放ち、バタフライソード1本ととセカンドブレイドを連結させ、左手にルーンブレードを持って構える。

 ──寄生流れ者。目の前にいる敵はかつてのレユニオン事変で猛威を奮った敵の1人であり、情報が回る前ではかなり苦戦を強いられた。彼らの特徴としてまず挙げられるのは異様なほどの硬さだ。彼らの体表は源石が成長したせいかとても硬く、当時の龍門近衛局特別督察隊が持っていた都市の防壁さえ打ち砕くほどの武器でも突破することは出来なかった。そして実際に先程から俺の攻撃は全て弾き返されており、せいぜいかすり傷を付けるのが限度だ。

 そして1番特筆すべきことは彼らの再生速度。ただでさえ馬鹿げた再生能力を持っているとういのに、彼らを操る主のアーツを受けるとその再生力はさらにとてつもないものになり、仮に彼らの硬い防御力を突破できたとしてもすぐに再生されてしまう。他にも痛覚などがなかったりと厄介な所が多々ある。実際に戦闘した際は中々倒すことが出来ず、最終的には術士のオペレーターの一撃で吹き飛ばすまで倒すことは出来なかった。結局倒し方としてはブレイズさんのアーツとパワー、チーちゃんの赤霄による一撃といった高火力で押し切るパターン。もう1つは──

 

「弾けろっ!!」

 

 何度か剣を合わせてから、一瞬の隙を付いて寄生兵の一撃を右手の合体剣で弾いて体制を崩し、寄生兵の口にアーツを纏わせたルーンエッジの刃を中に入れるように突きをいれ、中に入ったのを確認すると同時にアーツを爆発させるように外へ放出させる。すると、寄生兵の頭は内部から肉片を撒き散らしながら弾け飛び、「頭」という体を動かすのに必要な器官を失った体は後ろに倒れ込んだ。

 

 ──もう一つの方法は内部から破壊することだ。いくら頑丈になっているとはいえ体の中まで体表みたいに硬くなっている訳では無い。いや、厳密に言えば体内も硬い。しかし、剣が全く通らないというほど頑丈という訳ではなく、小型の爆弾でも体の内部にさえ入れば吹き飛ばすことが可能だ。そして俺のアーツは強化と放出の特性があり、後者に関しては半分程度の出力でもサルカズの大男の剣士を吹き飛ばすことが出来るぐらいの勢いはある。あとはそれを相手の内部で放出すれば俺のような非力な者でも倒すことは可能だ。それ以外にも、自身の腕や武器に自信があれば最初から首を切り落としたり、頭を破壊するという選択肢もある。尤もこの方法だと結局硬い皮膚を切り落とせるほどの技術や力、もしくは武器やアーツが必要になるから人を選ぶんだけども。

 

「さて、早くイカズチたちと合流しないと……っ!」

 

 悪寒を感じ、すぐにその場から跳んで離れる。と同時に先程まで自分が立っていた位置に人型のシルエットが飛び込んできて地面を抉った。この図体、まさか──!

 

「「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️──っ!!」」

 

「狂化寄生兵……!しかも2体だと!?」

 

 聞こえてきた人とは思えない叫び声が聞こえると同時に、2体の狂化寄生兵はこちらに攻撃を仕掛けてくる。こいつも先のレユニオン事変で猛威を奮った敵だ。こいつらは先程の寄生流れ者とは違い馬鹿げた再生能力はないが、代わりに人体の限界を超えたパワーや挙動を取り並の兵士ではまともに対処することすら出来ずやられてしまうほど危険性がある。

 幸いなのは限界を超えた状態で暴れ回るおかげで放置するだけでも勝手に死んでいくことがあること。もし、それがなく他の寄生兵のように再生能力があったらどうしようもなかっただろう。

 

「って、考えてる暇はないよ、ね!」

 

 狂化寄生兵の一撃をバックステップで躱し、その合間にルーンエッジを腰に差してもう一本のバタフライソードを合体剣に連結させる。こいつに関してはパワーが桁外れなため1度でも攻撃を防御すればそこから崩される。かといって先程戦った流れ者のように一瞬の隙を突いて口に剣を突き立てるというのは難しい。そのため取れる選択肢は最後に挙げた首を切り落とすということになる。

 

「っ、やっぱり硬いな……」

 

 予想通りと身体能力を限界まで強化しても、ただアーツを表面に纏わせた一撃では奴の体表を突破することが出来ず軽く傷を入れることしか出来ない。だが、衝撃までは防ぐことは出来ないためこの渾身の一撃で一体はこの距離から離すことは出来た。

 

「ふぅ……」

 

 ルーンエッジを1本だけ連結させて合体剣を肩に担ぐように構え、アーツを刃のみに集まるように鋭く凝縮させる。

 

「…………」

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️──っ!」

 

 そして奴が咆哮を上げてこちらにに突っ込んで来るのに合わせて、こちらも地面を蹴ろうとした時だった。

 

「っ!?」

 

 聞きなれたここでなる筈のない銃声が耳に入り、攻撃を中断して寄生兵から距離をかなり離して思わずその方角を見やる。そしてそのすぐ後に全てを切り裂くような甲高い音も僅かに聞こえ、その事実に驚く。

 

「サブマシンガンの音に、シルバーアッシュさんの剣技の音……!?なんでここで……」

 

「お兄ちゃん!助けに来たよ!」

 

「イカズチ!?」

 

 そこへ先に撤収ポイントに向かったはずのイカズチの声が聞こえ、思わず振り返るとそこにはイカズチだけではなく今回一緒に同行した隊員たち全員の姿があった。何故、と思いつつもこちらに拳を振り下ろしてきた寄生兵の攻撃を躱しつつすぐに思考を戦闘の指揮へと切り替える。

 

「イカズチと他の者はこいつの相手を!俺は奥のもう一体をやる!」

 

 それだけ告げてアーツを先程やったように合体剣に纏わせつつ、先程飛ばした寄生兵の方へ向かう。向こうも俺の事を確認したようで咆哮を上げながらこちらへ突っ込んでくる。

 それを確認すると同時に俺は地面を踏み砕くように蹴って一気に距離を詰めて寄生兵の拳を躱しながら奴の首をすれ違いざまに一閃。合体剣は奴の体表を切り裂きそ頭部は鈍い音をたてて地面を転がる。

 それを最後まで見届けることなく、イカズチたちの方へ視線を向けると丁度あの子も寄生兵の首を切り落としたところだった。

 さて、なんで戻ってきたのか話を聞かないと……

 

「イカズチ。なんでこっち戻って──」

 

「お兄ちゃん、それは後で話すから私についてきて!ヤバいやつがいるの!」

 

「え、ちょっと!?」

 

 慌てた様子のイカズチに引っ張られる形で歩き……いや、走り出したところで他の隊員はどうかと思い視線を向けるとちゃんと彼らも着いてきており、スピードもちゃんと着いてこれるようにイカズチはセーブしてあるようで少し安心した。

 だが、走っていくうちに戦闘音が聞こえ、イカズチが先程耳に入った場所へ連れていこうとしていることに気がつく。そして少し開けたところに出たところで俺が目にしたのは──

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

「はぁ……色んなことがありすぎたなぁ……」

 

 あの任務から何日かたった日の深夜、俺は風呂上がりの熱を覚ますためロドスの廊下を歩いていた。

 あの時イカズチに連れてかれて目にしたのは、エッちゃんのVector、テキサスさんの源石剣に剣雨、ラーちゃんの双剣に技術など色んな人の武器や技を使って蹴散らす隻腕のサンクタの女性──カドヤさんがいた。イカズチたちの話によると、撤退している時に奇襲を受けた際に助けてくれたのがカドヤさんであり、彼女──正確に言うと彼──のお陰で難を逃れ、彼から離れるように言われたのを機に俺を助けるために戻ったという事だった。

 尤も、話がそれで終わればまだ良かったのだけれどもそうはいかず、カドヤさんとロドスに一緒に戻り彼の話を聞いたところでかなりややこしい事態となった。

 

 彼の話を簡潔に纏めてしまえば、彼は別の世界線所謂パラレルワールドからきたロドスのオペレーターということなのだ。証拠として彼が持っていたロドスのドッグタグは識別番号こそ違うものの、材質などはロドスで作られたものだったため嘘ではないことは明白で、更にいえばこちらの事情にある程度詳しかった。

 

 結局、数日に及ぶ話し合いの末カドヤさんは元の世界に戻れるまではロドスのオペレーターとして働くことになり、様々な検査や試験を受けた。結果的にいえば試験に関しては殆どが優秀な結果をたたき出していたので即戦力レベルだった。実際、模擬戦の試験で俺が相手したけど全く歯が立たなかった訳だし。ただ、問題は検査の方でありこちらも端的に言ってしまえば、彼は重度な味覚障害、睡眠障害、そして痛覚がないという状態であった。

 こちらの検査に関しては、模擬戦の後にケルシー先生からイカズチと共に呼び出されそうなってしまった経緯も込みで話され、聞いた時は絶句してしまった。金目的で売られて、体を改造されたなんて余りにも惨すぎる。俺が経験したことなんかよりはるかに酷い。

 そしてケルシー先生から言われたのは、なるべく彼のことを気にかけて近くにいるようにということ。理由に関しては俺とイカズチが彼に初めて接触した人物だからということらしく、理由にしては弱くて納得できないところはあるものの、断る理由なんてなく俺とイカズチはその話をすぐに了承した。でも──

 

「本当に、俺なんかに出来ることがあるのかな……」

 

 俺なんかにそんな器用なことが出来るのだろうか。そんな不安とともに自販機の近くを通りかかった時、そこでやっと誰かがそこにいるのに気がついた。居たのは──

 

「あ、カドヤさん」

 

「おー、ヤマトじゃないの」

 

 先程まで考えていた人物であった。この時間帯でも起きているということは、やはり……

 

「どうしたの?こんな時間に」

 

「まぁ水でも買おうかなとね、お前さんは?」

 

「俺はこれから乾かして寝ようかなと」

 

 念の為聞いては見たが、カドヤさんはそう返すだけで眠れなくなったなどということは言わない。こちらのことを気遣っている、あるいはまだ信用に足る人物だと思われてないのかもしれない。

 

「ほーう……いい夢を見ろよ、おやすみ~」

 

 そのためかもしれないけど、カドヤさんはそう言って会話を打ち切った。……今はこれ以上踏み込むことは出来なさそうだし諦めよう。

 

「うん、おやすみ」

 

 そう彼に告げてその場を去る。その時ちらっと見えた彼の顔は何処か羨ましそうな顔をしていた。




今更だけど、都市の防壁を打ち砕くほどの武器(SEやモブ隊員のセリフからして恐らく爆弾かグレラン?)すら耐える寄生兵って普通にやばいと思います(小並感)

キャラ紹介

ヤマト:本作のオリ主。一応レユニオン事変が起こった時には既にロドスにはいた設定。そのため、寄生兵との戦闘経験もあり彼なりに対策を練っていた模様。カドヤのことを気にかけようと頑張ってはいる

カドヤ:『ヤンデレって怖いよね(小並感)』のオリ主。元の性別は男性だったが、とある事情で女性の体になり特殊な装備を使った戦闘を行う。エクシアのVectorやシルおじの真銀斬などを使えたのはこの装備のおかげ。詳しい設定を知りたい場合は狼黒さんの小説へGOだ(団長並感)

イカズチ:寄生兵に最初こそ戸惑うものの、高い戦闘能力とアーツ適正でしっかり対処は出来ていた。カドヤのことは恩人でもあるため気にはかけるようにしている。

感想や批評お待ちしております。


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コラボ回:「ヤンデレって怖いね(小並感)」(本編ルート):その2

お久しぶりです……すみません、全く筆が進まずここまで長引いてしまいました……大変申し訳ございません。





 

あの夜以降、カドヤさんと接してきて分かったことが幾つかある。カドヤさんは自分自身に対しての価値観がとんでもなく低い。いや、無頓着と言った方が正しいのだろうか?とにかく自分のことは二の次という感じの考えを持っているようなのだ。これに関しては、フーちゃんが俺にしてくれたように何度も話しかけたり、ご飯を一緒に食べたり、訓練をしてきてた事で感じるようになったことだ。事実、イカズチも同じように感じたとのことなので、恐らくこれは間違いでは無いはずだ。他にも分かったことは幾つかあるけど、これは置いておこう。因みに言うと、今現在わかったこともある。それは──

 

「あ、カドヤさん!ちょっと待っ」

 

「はい、上スマ」

 

『GAME SET』

 

 この人、スマブ○のスティー○くそ上手い(白目)。ラーちゃんたちとスマブ○をやっている所にちょうどカドヤさんがやってきたので、彼も入れてやってみると扱いが難しいことで有名なスティー○でラーちゃんたちと互角に渡り合い、そして俺はボコボコという程の腕前を見せた。

 

「か、カドヤさんやっぱり上手いですね……」

 

「いや、こればっかりはヤマトが弱すぎると思うんだが」

 

「ゔっ」

 

 容赦がない。いや、こればっかりは俺の周りの人が強すぎるせいだと思うんだ。メッちゃんなんてコンボ以外だと基本先端ズバシャアだし……。

 

「まあ、子犬ちゃんが弱すぎるってことに関しては私も同感ね」

 

「ボクも同じく」

 

「ごめん、ヤマト。私もそう思う」

 

「お兄ちゃん、ごめん」

 

「……ゴメンネヨワクッテ」

 

「その……すまんな。まさかここまで言われるとは思わんかった」

 

 ここまでフルボッコ言われるとは思わなかったのか、カドヤさんは申し訳なさそうな顔で謝罪してくる。……何も悪いことをしてないはずなのに罪悪感を抱いてしまうのは何故だろうか?

 因みにこの後俺がドクターに呼ばれるまでTAありのチーム乱闘やアイテムありの何でもありの乱闘をやったけど、やっぱり全く勝てなかった……

 

 

 ****

 

 

 

「大変だねぇ、調査ってのも」

 

「まぁそうだけど‥気が抜けすぎじゃない?」

 

「警戒はしてるからへーきへーき」

 

 木にもたれかかって最低限の警戒をした状態でリラックスしているカドヤさんに目を向けつつも、先日ドクターと会話した内容を思い出す。あの時の会話の内容は例のポイントについてだった。俺らの報告書とカドヤさんの証言から、向こうの世界からメフィストがこちら側に来てしまった可能性が濃厚であるため再度捜査をするということ。その捜査には俺やイカズチ、カドヤさんも含めそれなりの人数で行うとのこと。そしてもう1つはカドヤさんのフォローだ。

 カドヤさんは敵を倒せるならば無茶を必ずする。そしてこれはあくまでドクターたちの予想だが、恐らく彼は俺との模擬戦に見せたあの超高速戦闘よりも更に反動がある形態を持っている可能性が高い。だから、俺の役目を正確に言えば俺はカドヤさんが無茶しないようにすること、場合によっては殴り倒してでも止めて後方へ下げることだ。

 

 けど、俺は本当にそれが出来るだろうか?勿論、彼のことは一人の人間としては好感が持てるし無茶をして欲しくないのは本音だ。けど、もしそれが出来ないほど切羽詰まった状況になった時は?彼の無茶を黙認した方が状況を打破出来る、あるいは解決の糸口になるとなった時は?

 

 ……本当に心底自分のことが嫌いになる。こうやって人の命を数で計算してしまう自分が本当に嫌いだ。

 

「全く‥野生の動物の一匹や『ガァァァァァァァ!』‥おいでなすったか」

 

 が、そんな思考もカドヤさんとの会話の中で急に聞こえてきた獣では100%ないものの、人間が出すとは思えないような咆哮が耳に入りすぐに切り替えられた。

 

「これって‥!」

 

「多分あってると思う‥行くぞヤマト」

 

『アーツライド ブレイズ』

 

 カドヤさんも俺と同じ考えに至ったのか、アーツドライバーをを使ってチェンソーを出して手に持ち、お互いに交戦を開始した。

 

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 戦況としては若干こちらが押されてはいるものの、奇襲を受けた割には思ってる以上には被害は出ていない。これにはドクターの指揮や今回捜査にきたオペレーターの練度が高いということもあるには思うけど、それ以外の要因としてはやはりカドヤさんの戦闘力もある。

 

 今俺らを襲っている寄生兵はとんでもない硬さと再生能力を持っている。これを倒すためにはその硬さを突破した上で確実に殺しきらないとならず、人によっては傷をつけるだけで精一杯という程に倒すのには手間がかかる。その点、カドヤさんは色んな人のアーツや武器が使えるため、寄生兵に対して有効な攻撃手段を多く持っている。現に彼はブレイズさんのアーツと武器を使って寄生兵を次々と倒しており、後ろに下がるのが遅れたオペレーターたちを助けているというのを先程走ってこちらへ走ってきたオペレーターから聞いた。

 

「本当なら、カドヤさんの援護に回りたいんだけど……っ!」

 

 後ろに気配を感じ、右足を軸に振り返りながら後ろ回し蹴りを放ち背後の寄生兵の体制を崩すと同時に合体剣をバットを振るかのようにフルスイングし首を跳ね飛ばす。と同時に他の寄生兵と交戦している重装オペレーターの方に圧縮したアーツの斬撃を飛ばして援護しつつ、その寄生兵との距離を詰めて跳躍、すれ違いざまに首を斬り落とす。

 ──このようにカドヤさんの援護に行けるほどこちらも余裕が無い。しかも近くにはドクターやケルシー先生もいるため余計にだ。……ケルシー先生に関しては護衛なんていらない気がするのだけれども。

 

『ヤマト、10時の方向の敵の対処!それが終わり次第カドヤのフォローに回って!』

 

「分かりました」

 

 無線で入ったドクターからの指示に対して了解の意を示したところで、早くカドヤさんの援護に向かうためにすぐに敵の処理へと動きだそうとしたところで、丸太のようなものがこちらに飛んでくるのが視界に入る。

 

「ちっ!」

 

 気づくのが遅れてしまったせいでギリギリ躱す形となったためか僅かに掠ってしまい、その直後に甲高い音が耳に入った。

 

「……トランシーバーがやられたか」

 

 掠ったところをみれば、そこにしまっていたトランシーバーは一目で壊れていると判断できるほど無惨な状況となっており、ため息を出したい気持ちに駆られるも、それを抑えて耳のインカムを外して懐にしまい合体剣を構える。

 

「……始末書書くの、あんまり得意じゃないんだよなぁ」

 

 愚痴を少し零しつつも、こちらに投擲物で攻撃してきた下手人がいるであろう位置に向かって俺は駆け出した。

 

 

 

 ****

 

 

 

「はあっ!」

 

 敵と交戦を始めて暫くたった頃、ドクターの指揮や他のオペレーターの尽力によって襲撃してきた敵の数は確実に減っていた。こちら側の被害としては負傷者こそそれなりにいるものの死亡者は0らしく、奇襲を受けた割には被害は少ないと考えるべきだろう。

 

「お疲れぃ」

 

「あ、お疲れ‥って!怪我してるじゃないか!」

 

「うん?‥あぁ、ほんとだ」

 

 戦闘が終わったのか、声をかけてきたカドヤさんの方を見るとお腹から血を流しており怪我をしていた。全くこの人は……!

 

「ちょっと大人しくして!今止血するから!」

 

「いや別にい「良いから!」お、おう」

 

 有無を言わさずにカドヤさんを座らせ、ポーチから携帯応急処置キットを取り出し彼の服を捲る。怪我自体はそこまで大きいものでは無いものの、普通であれば痛覚をはっきりと感じるほどの負傷。医療関係は齧っている程度の知識しかないけども、少なくとも放っておけば傷口が化膿して悪化するのは明白だからこの段階で気づけてよかった。

 

 

「‥はい!これで一時的に大丈夫!早く医療所に行くよ!」

 

「うーい‥っ!伏せろ!」

 

「えっ!?うわっ!」

 

 応急処置を終えて、早速本格的な治療をしてもらうためにカドヤさんとその場を離れようとした直後、何かに気がついたカドヤさんの警告に少し遅れて自身の直感が反応しすぐに伏せる。そして伏せてから1秒もなく頭上をとてつもない風圧と共に拳が通り過ぎた。威力的にも、当たっていたら2人仲良く頭を破裂させていただろう。すぐに体勢を直して顔を上げると──

 

「あらら……多いもんだねぇ」

 

 カドヤさんの呟きの通り、そこには先程相手していた寄生兵より大きいサイズのタイプが軽く見積もっても10数体以上そこに立っていた。接近に気づかなかったのはもう過ぎてしまったことだからそのことについては後で考えるとして、この最悪な状況を抜けるために頭を働かせる。

 正直な話、2人だけでこの大群を殲滅するのは不可能に近い。いや、正確に言えばカドヤさんが俺の安否を全く気にすることなく暴れ回れば殲滅は可能だ。これは単なる勘ではあるけども、カドヤさんはこの大群を自身の命を削ることを代償にすれば殲滅できるほどの力を隠し持っている。勘ではあるものの、1度だけこの人と剣を合わせた俺だからこそこの勘は外れてないという確信はある。だが、恐らくカドヤさんの性格を考えれば俺を巻き込むのを避けるために使う可能性はほぼないと見ていい。仮に援軍を来るまで持ちこたえる、というのも先程確認した限りでは連絡手段を失っている俺とカドヤさんだとドクター達が気づくまで持ちこたえるという博打になるため消去していい。そのため2人で共闘するというのは取るべき手段ではない。そうすると取れる手段は1つ、どちらかを囮にしてもう片方が応援を呼ぶのみだ。

 

「ヤマト、ちと増援頼むわ」

 

 そして問題のどちらが残るか、という問題で自分が残ると言う前にカドヤさんは戦闘態勢を整えた状態であっけらかんとそんなことを言ってきた。

 

「か、カドヤさんは!?」

 

「ここに留まる、安心しなよ、時間稼ぎぐらい出きる」

 

「駄目だよ!危険すぎ「早く」‥っ!怪我しないでね!?」

 

 説得する時間さえ惜しい状況のため、心苦しいもののカドヤさんに一言だけ告げて急いでドクター達の元へ駆け出す。いくらカドヤさんといえど、数が数だ。恐らくそう長くは保てないと判断していい。だからもっと早く、早く走らないと!

 

「っ!?」

 

 そう走り出してそんな時間も経たぬうちに前方に1つの人影が見えて止まる。遠目からでも分かるほどに発達した源石、特徴的な角、そして手に持っている巨大な剣。あれは──

 

「サルカズの魔剣士!?」

 

 俺が相手のことを認識したと同時に向こうもこちらに気がついたらしく、おたけびをあげながらこちらに突っ込んでくるのが目に見え避けるのは無理だと判断して合体剣でガードの構えを取る。

 

「くっ!?」

 

 ──重い!?

 

 予想以上の速さと剣圧に気を取られたけど、すぐに切り替えて受け流し鍔迫り合いを拒否すると同時に距離をとる。あの剣士は特徴からして恐らく寄生兵の一種と見ていいかもしれない。だが、報告書で見たことないことを踏まえると新しいタイプの寄生兵であり、普通の魔剣士よりも耐久力、パワーは上とみていい。普通であればゆっくりと対処したいところだけども。

 

 ──今回は時間が無いから被弾覚悟で特攻するしかない。

 

「邪魔するな!!」

 

 俺は合体剣の刃にアーツを凝縮させて纏わせてサルカズに突進した。

 

 

 

 

 ****

 

 

 あの調査から数日がたった。あの日、増援を連れて戻ってきたらカドヤさんはレユニオンの元リーダーであるタルラさんのアーツを使って対処していた。けど、やはり無理をしていたのか緊急手術を行わければならないほどの重症であり、確率的には死ぬ可能性の方が高かった程の大怪我だったそうだ。だが、大変だったのはここからで元とはいえレユニオンのリーダーであったタルラさんのアーツを使えたことに関して色々疑問に思ったオペレーター達が出てきてしまい、仕方なく全員にカドヤさんの事情を説明することになった。反応としては悲嘆な顔をうかべる人、複雑な表情を浮かべる人、納得できなさそうな人だったりと様々であり、そちらのメンタルケアを追って実施することも決定した。

 そして俺とイカズチに新しく任務として言い渡されたのは、カドヤの監視と護衛であった。彼のことだから起きたら絶対安静という状況下でもベッドから抜け出すのは予想できるためそれを止めること、そして彼に危害を加えようとする人が出た場合の対処、というのが理由であった。

 

「カドヤさん、お見舞いに来ました」

 

 そして今日、俺はカドヤさんが寝かされている病室まで足を運んでいた。彼には呼吸器が付けられており、所々包帯まみれであり彼の怪我の具合が見ただけでよく分かる。

 

「……あの時、俺が残ってれば貴方はこんな怪我をおわなくてよかった」

 

 ……俺にもっと力があれば、彼がこんな怪我を負わずにすんだ。彼の世界の友人たちには謝っても謝りきれない程のことを俺はしてしまった。

 

「……早く起きて、とはいいません。今だけはゆっくりと休んでください」

 

 自身の無力さに苛立ちを覚えながらも、自分のことを顧みないどうしようもないこの人が少しでも休んでくれるように、彼の穏やかな寝顔を見ながら俺は願った。

 




今回でた寄生サルカズ魔剣士はオリジナル敵です。

キャラ紹介は今回は割愛させてください……本当に申し訳ございません……

オリジナル敵紹介

寄生サルカズ魔剣士:何者かのチカラによって体を支配されたサルカズの魔剣士。源石が血液中に流れている彼らは粗末な改造を施されたアーツの巨剣をも扱えるが、元の剣術などは全く使えず自身の力を周りにぶつけるような戦い方しかできない。まさかこの様な生物が存在し戦場で戦うことになるとは。


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