やはり俺に義妹が出来るのはまちがっている。 (マッキーガイア)
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1話:義妹が出来ました。

「ーー八幡、小町、実はな養子を取ろうと思うんだ。」

 

 

 学校から帰ったら珍しく親父がリビングに居たので何気なく話しかけたら、いきなりカミングアウトされた。

 

「は?…容姿?」

 

「違う、養子だ。」

 

「ああ!用紙か!」

 

「それは紙だろ…いい加減現実見ろよ」

 

そう言うとデカデカと「養子」と書かれた紙を見せられる。

 

「お前に妹ができる、まぁ、小町には姉だけどな…」

 

そう言われると小町が少し反応する

 

「お姉ちゃんかぁ…少し憧れてたんだよねまぁ、今はお兄ちゃんが一番だけどね!あ、今の小町的にポイント高いー!」

 

「ああ、その発言が無ければポイント爆上がりだったよ。

……で?なんでそんな事に?」

 

「……まあ、言いにくいんだがな?…その子な親がちょっとアレでな…」

 

「………アレ?」

 

「察しろよ……まあそれで行き当たりばったりで助けたら身寄りがなくて…まぁ、そんなとこだ」

 

「かなり、省いたな…まぁ、別に良いけど…でいつから来るんだ?」

 

 

俺が親父にそう聞くと親父はふと、「何言ってんだこいつ?」見たいな顔になる。

 

「おいおいしっかりしろよ、さっき言ったろ。身寄りがないんだって。」

 

 

「は?」

 

 

そう言うと親父は天井をさした。

 

 

「お前の部屋の半分。今日からその子のだから」

 

 

 

 

ーーは?

 

 

まてまて待てよ、ーーーは?

 

「えっーーと…もう一度よろ?」

 

「だから、お前の部屋の半分だけ今度からその子が住むからな?…だってお前の部屋、なんだかんだリビングと俺たちの部屋を除けば一番広いじゃんか、だから…な?」

 

「いやいやいや、な?じゃなくて、俺と歳若き乙女の部屋を一緒にするっておかしいだろ!!同じ屋根の下でも不味いのに.、もうちょっと配慮をだな…」

 

「いや、だって仕方ないじゃん、最初は小町と部屋替えしようかと言ったんだが、あの子、このままで良いって意見変えなくてよ…

……なんでもまだ自分は要らないものだと思ってるから、どうなったって良いと自棄になってんだろ…それにこれ以上迷惑かけられませんって言ってたし、こちらも無理矢理って訳にもいかないからなぁ。」

 

「はぁ、マジか…」

 

「まあ、気を落とすな…こう言うのはいつの間にかどうとでもなってるってもんさ。、、、それによ、言っちゃなんだが、かなりのべっぴんさんよ?」

 

「いや、顔だけな人はいっぱい居るからなぁ…」

 

一瞬頭の片隅に今日もまた合コンで一人はぶられてそうな一人の教師の顔が浮かぶ…早くもらってやってあげてぇ、

 

「まぁ、同じ部屋なんだし、今もう居るから挨拶行ってきなさいよ、」

 

「はぁ……わかったよ」

 

 

そう親父は親指をたてて言った。

ため息を吐きつつ、どうしたもんかと考えながら一人リビングからの扉を開いた。

 

 

「あ、あと、明日からお前んとこの学校通う事になるから、よろ!」

 

 

「………は?」

 

 

今日何度目かの「は?」をまた使った。

 

 

☆☆☆

 

★???side★

 

 

 

 お父さんはいつも言っていた。

他人に迷惑をかけるなって……そう言いながら私を叩いた、

あゝ、だめだ、迷惑かけちゃったなぁ…

私は、ふと時計を見るともうとっくに、あの人が言った例のお兄ちゃんが帰ってくる頃だ。気持ちは何処か憂鬱でなんだか気分が悪い。

 

 

私は男が嫌いだ。

 

 

お父さんが男気一つで私をここまで育ててくれた事には感謝はしているけど、やっぱり無理なものは無理っぽい、

 みんなみんな嫌な目で私を見てくる、、、嫌い嫌い、いつも、嫌なのに…嫌いなのに……

 私は言わばおもちゃだった、おもちゃはいつか箱の中、

 

 けど言うなら女も嫌いだ。いつも私を見ては笑う、私を見ては髪を掴んで怒る、理由はいつも男を奪ったとか寝取ったとか…なんで?なんで私なんだろう、あっちが襲ってきたのに…なんで私が悪いんだろう。

 

理不尽、

 

もう訳がわからない。

 

何が正しくて、何が間違ってるんだろう。

 

 

誰も助けてくれないのに……負けたらなんでダメなんだろう、、、?

 

 

私はまだ新しいベッドにまた顔を埋めた。

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

ーーー地雷臭がする。

 

 

 

 

 

 

俺は自分の部屋の扉の前で感じたそれに反応した。

 核爆弾並みの匂いだ。いや、地球破壊爆弾か?どちらにせよ、俺がどうこうできる問題じゃないくらいの爆弾だ、

 

 

「ーーでも男は勇気!!」

 

 

 俺は勇気を持ってドアノブに手をかけた

 

 

……訳もなく、部屋の前で狼狽てる。

 

 

 

ああ、そうか、そうだ、べつに挨拶なんて必要ないんだ!俺はこのままここに住めばいい!そうすれば挨拶なんか必要ない、だって部屋にいないんだもん!

 

「何やってんのお兄ちゃん、挨拶してきなよ」ガチャリ

 

「マジかよ、おまっ、漢だな!」

 

 

 

無理やり開けられた扉に押し込められると布団から誰かが顔を出す。ゆっくりとひらりと黒い髪が宙へ舞った。

 

 

 

 

 

ーーー次の瞬間、俺は自分の目を疑った。

 

 

 彼女の姿は可憐というにはあまりにも大人らしく、綺麗というには可憐すぎた。

 そんな表現ができるのは今世、彼女だけとすら思えてしまう。…正直、俺の中でそれは美少女という枠組みをとうに超えていた。

 

「だ、誰…ですか?」

 

彼女はそう呟いた。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆、

 

 

「だ、誰…ですか?」

 

 

そう言った彼女に目を奪われる。引き込まれる程にそれは十分過ぎるほど魅力的だった。

 

「……もうしかして……お兄ちゃん…?」

 

「ーーーーーっ……!!??」

 

 

まって!それはダメだよ!死ぬよ!俺がぁ!!

 

思わず呼ばれた言葉に俺は萌え死にそうになる。

やべぇ、こいつは危険すぎる…

すー、はー、取り乱すな、顔に出すなよ。

俺が堕ちたらだれがこの子と挨拶を交わすんだよ…あーまじっべーまじっべー、そうだ!戸部あたりと挨拶を交わしていると思え!そうすれば少なくとも挨拶くらいはできるだろさ!

 

「あー、俺比企谷八幡!よろしく」

 

「あ、私は神田 心っていいます。よろしくお願いします。(比企谷脳内再生:あ、俺は戸部…あれ名前なんていうんだっけ?まいいやよっろー)」

 

「そうか戸部さんね、宜しく」

 

「え!?いや、私神d…(比企谷脳内再生:え!?いや、俺戸b…)」

 

「そういえば戸部さんは趣味か何かやってるの?」

 

「いやだから私、戸部じゃなくて神田ですって!(比企谷脳内再生:いやだから俺、神田じゃなくって戸部だって!)」

 

「そうか、神田が趣味なのかぁ…」

 

「いや、だから話聞いてます!?」

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

しばらく後、

 

 

 

「…あー、すまん正気失ってたわ」

 

「ほ、本当に大丈夫ですか?」

 

「うん、まぁ、大丈夫だろ、まさかいきなり小町が入ってきて蹴り飛ばしてくるとは思わなかったけど」

 

「…アクロバティックでしたねぇ…」

 

 

俺は頭の上あたりを撫でてると、彼女は不思議そうに俺を見る

 

「でもお兄ちゃんって凄いですよね」

 

「ん、なんでだ?まだ会って1分経つか立たないかくらいしかしない気がするんだが…」

 

「いや、だって私と話してても落ち付いてるじゃないですか、」

 

いやさっきの見てたの?この子、俺、気失ってたんやで?

 

「だって、他の人だと、話しても言葉にもならないっていうか…ちょっと会話にならないんですよね、」

 

あ、それはどんまい…

しかし…こいつ、あれだな。少し無理してるというか…この笑顔は無理やり継ぎ接ぎして作ってる感じがする。

 なんでも、かなり無理に作っていたせいか、顔の筋肉が死んでるとさえ思える、笑顔のまま死んだ表情筋なんて気味が悪い以外の何者でもない…辛いが、これは、

 

「あー、無理しなくても良いぞ?」

 

 

「………え?」

 

 

 

 

一言で返事を彼女は返してきた。

 

「その笑顔…辛いだろ?」

 

「……っ、、、でも、これをしてないと私は…」

 

「うーん、どうせここはお前の家だしよ、そんなの気にする奴いねーよ、少なくとも俺は気にしない」

 

そう言うと彼女は考える様な形を取る。

 

「…そうですね、たしかに。ここは私の"家"でしたね…」

 

家の言い方に少し違和感を覚えた。

 



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2話:義妹が転入した

今朝、起きたら彼女が居なかった。

親父は大丈夫だって言ってたし大丈夫なんだろうが少し心配というのが実だ。小町によるとなんだかわからないが非常に真剣な顔をしていたという。

 

「やっはろーヒッキー!」

 

時刻は8時半、もうすぐ先生がホームルームを始めると言った時間帯だった。由比ヶ浜が珍しくグループから離れて俺の所に来る。

 

「どうした?」

 

「昨日、先生が言ってたあれ、なんだろうね?なんでも今日重大ニュースがあるとかって」

 

「…さぁな、わからん」

 

「ヒッキーも分からないんだ。」

 

まぁなと返すと不完全燃焼の様に少し拗ねて戻っていく。…正直察しはついている。きっと神田の事だろう、嗚呼そうか、俺のクラスだったか…この後起こるであろう祭りに少し溜息を吐く。

 

そう言えば小町のやつなんだか楽しそうだったな…なんでも仲良くなったって自慢してたっけ、流石は我が妹、俺に似なくてよかった

 

しばらくするとガラガラと扉が開く音が聞こえる。

寝ぼけながら顔を上げると、何故か担任では無く平塚先生だった。

 

「おはよう、皆んな…今日は重大法表がある。まぁ、一部のものは気付いているだろうが…」

 

一部の者の部分で俺を睨みつける。怖いっす、怖いっす先生…

 

 

「あー、じゃあ、紹介しよう。転校生だ。」

 

 

瞬間、ざわざわと周りに驚きの声が漏れる。驚きよりも意外性が重視された様だ、男子も女子も中々に良い反応をする。

 

「では、入れ」

 

手招きしたそれに少し間が空き。扉の窓から影が落ちる。

 

「女子か?」「…男じゃないんだ」「ラブコメの予感!?」「腐…腐……」「自重しろし…」

 

各々の反応に少し耳を向けつつ、なんだ、この茶番…と少し呆れた。

 

次第に足音は扉の前で止まり、ガラガラと扉が開いた。

 

 

 

「………うっそ」

 

 

 

そう誰かが言った。

 

 

 

 

 

前回、俺は彼女を見て確かにこう言った。『とうに美少女の枠組みを超えている』…と。

 

それは明らかな敗北だった。

 

蹂躙され尽くされた乙女たちがそこらに散らばっている。

 

彼女たちには少なからず自信があった。昔からこの学校の顔面偏差値は高いと言われ続けたおかげで自分が美少女だと思い込んでいたのだ。

 

男達も少なからず自信があった。女子たちの顔面偏差値が高いおかげか、自分はもう耐性が出来ている。そう、思い込んでいたのだ、

 

しかし、贋作は真作に劣る

 

クラス全員が目を瞑らざる得なかった。

この空間にアレ(真作)は眩しすぎる。

 

、、、なんだ。この茶番…

 

 

 

「……あー、、、良いか?つづけても」

 

 

 

 

平塚先生はそう聞くと。少しして少しずつ全員が首を縦に振る。それに安心したのか紹介を始めた。

 

「わかった。では紹介しよう。今日からうちのクラスに転校となった。"神田心"さんだ。」

 

「"神田 心"です。よろしくお願いします。」

 

ちらほらと拍手が聞こえてくる。ついでに少し喝采も入ってるが…後で潰した方が良いかもしれない

 

「では、質問あるか?」

 

そう平塚先生が問うと手が次々と上がる。

 

「じゃあ。田中…」

 

「はい!彼氏っていますか!?」

 

「いません。」

 

「じゃあ、気になってる人とかって…」

 

そう聞かれると「うーん、」と唸り、一つ答えを出した。

 

 

 

「…お兄ちゃん…ですかね、」

 

 

 

次の瞬間、驚きの声が出る。俺も少し焦る。

 

 

「ブラコン…だと?」「なんて、属性の持ち主だ!」「あれ?兄弟で結婚ってダメじゃなかったっけ?」「愛にそんな物はゴミも同然!」

 

いや、ゴミだったら世の中滅亡してるわ、

 

「お、お兄さんのこと…好きなんですねぇ(LOVEな意味で)」

 

「まあ、そうですね…(今まで会って来た人の中では)好き(likeな意味で)ですかね」

 

 

なんか圧倒的に言葉が足りていない気がするんだが、気のせいか…否、気のせいじゃないな…

 

「じゃあ、神田はあの席に座ってくれ」

 

「はい………………あ、」

 

 

平塚先生に指を刺した場所は常に空いている俺のとなりだった。ところでさっきから俺の方を凝視してるのはなんでかな?神田さん…?

 

ちょっと…見ないで…辞めて、

 

スタスタと俺の席に近づき睨み付けてくる。

 

 

 

 

 

「今朝ぶりですね。"お兄ちゃん"…」

 

 

 

 

 

賑やかだったクラスが静かになった。

 

『お兄ちゃん』クラスの全員が彼女からこの言葉を聞いたのはこれで合計二回。

 

一つは純愛(一般的に)報道で、

 

2回目は…

 

 

 

「……ひ、ひっきー?」

 

 

どこかの誰かがそう呟いた瞬間、俺は返事を返す。

 

 

 

「…よ、よう…"心"」

 

 

 

この呼び方になってから久しい、まるで昨日のように思い出せる(昨日の事だけど)

曰く、家族で苗字呼びは虚しいと小町が言った事から始まり、神田が泣きそうになりこう落ち着いた。簡単に言うとこうだ。

妥協の妥協である。最初はもっとやばいのを強制されていたけどここまでに落ち着いたのは俺の頑張りのおかげだろう…小町よ、兄妹でハニーは可笑しいだろ…

 

 

「ヒキタニが…」「お兄ちゃんだと……?」

 

 

その衝撃はクラスを包み込んだ。

 

「でも…お世辞にも全然、むしろ、比べるのも痴がましいくらいに似てないし」「たしかに以前妹がいるとは聞いたことはあったけど…まさか…こんな」「しかし、どうなんだこれ…まじで似てねぇぞ」

 

 

右折左折さまざまな憶測が飛び交う中、しばらくして平塚先生が言う。

 

「あー、お前ら。何を勘違いしているかは知らんが、比企谷と神田は義兄妹だからな?」

 

 

「じゃあ!じゃあ!良くネット小説にあげられる、アレみたいな状況じゃん」「でも、ヒキタニだぞ?騙されてるんじゃ」「それあるー、可哀想に」「目が腐ってる以外はクラスでも顔だけは良いしな」

 

真っ直ぐに直されたのに、また左折した。そんな光景に少し呆れつつ。俺は頭を下に下げた。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

休み時間、神田の周りには人が集まっていた。ただ隣に俺は座っているのをいい事に肘を頭にぶつかったり、散々だったので、戸塚の元まで逃げていた。

 

「ちっす俺、戸部翔、」

 

「……あなたが戸部さんですか…」

 

「えっ!?俺のこと知ってんの!?」

 

「ぇ……いえ、……ごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

「神田さんって綺麗だよねぇ」

 

戸塚がそう呟く。

 

「まぁ、あれは天性の物だろう…しかし、なんか気の毒だな…」

 

「どうして?」

 

「ん、いやな、あそこまでチート級だとな…前の学校でも色々問題があったのだろうなってな。特に男関係で…」

 

「あー、たしかにね。ちょっと色っぽいし」

 

「いや、それは戸塚に言われたくないと思うぞ。」

 

「……?どうして?」

 

朝チュンか!?朝チュンなのか!?

 

あの時の作画は異常だった。そう心の中で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「皆んな、落ち着けよ。神田さんが困っているだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

そんな声が聞こえた瞬間、周りの人は少しずつ消えていく。

 

……葉山だ。

 

いつものイケメンスマイルで奴は彼女の前に現れた。

 

「初めてまして、葉山隼人っていいます。よろしく」

 

「は、はい、よろしくお願いします…」

 

挨拶を交わした後、葉山は手を差し出すと、握手を求めているようだった。

 

「ご、ごめんなさい、握手はちょっと…」

 

「何?隼人が握手してやるって言ってるのに出来ないん?」

 

ごめん、あーしさん…口調これであってる?

痺れを切らしたように三浦がそう言うと由比ヶ浜と海老名さんが押さえる。

 

「ごめん、不快だったかな?」

 

「い、いえ、すいません。」

 

 

 

 

 

 

「やっぱりな…」

 

俺がそう呟くと戸塚は不思議そうに見上げる。

 

「どうしたの?」

 

「ん…あぁ、心の事だ。あれはかなりの男性不信だと思ってな…」

 

「、なんか、ちょっと嫌そうだったね」

 

…全員にああいう態度って訳じゃないのは知っている、何か規則性があるのか…それとも…

 

「…今考えても無駄か。」

 

この人生の中で察しは良い方になった。なんだか、今は触れてはいけない気がする。

俺はしばらく顎を支えると時計を見た。



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3話:義妹はほのぼのする。

「…やっぱ、昼はマッカンに限る。」

 

ベストプレイスで昼飯を食う安らぎ、臨海部に位置するこの学校は、お昼を境に風向きが変わる。

朝方は海から吹き付ける潮風がまるで元いたところに帰るように陸側から吹く。この時間が俺は嫌いじゃない。

 

「お兄ちゃんがどこに行ったか、知りませんか?」

 

購買部の方からそんな声がする。こんな時になんの様だと少し顔を上げるが、声の主の周りの人を見て、俺は関わるのを辞めた。

俺は人混みが嫌いだ。

あれに進んで入っていく奴の気がしれない。次第にテニスのラケットの音が鼓のように気持ちの良いリズムを刻む。…意識が朦朧としている中で頭を下に向けた。

 

「あー、やっぱここにいた!」

 

目を覚ますと後ろから聞いた事のある声がする。見ればスカートを手で押さえながらこちらを覗く由比ヶ浜と神田の姿があった。

 

「…やっぱりさ、なんでこんな場所でご飯食べてるの?」

 

「察しろよ、マジで……で、なんの様だ?」

 

「なんか、かんちゃんがヒッキーの事探してたから連れて来たの!」

 

なんだそのあだ名、お前も諦めたタチか妹よ、

 

「…久しぶりですね。兄さん…」

 

「いや、さっきあったばっかだろ…」

 

後ろにはふて腐れた様な顔をした神田の顔がある。いつの間にかお兄ちゃんから兄さんに変わっていた事はあまり言わないでやろう、…大勢の人の中でお兄ちゃんはいくらなんでも恥ずかしかろう…

 

「兄さん、ご飯一緒に食べましょうよ」

 

「…いや、もう食っちゃったよ…」

 

片手にパンの袋を見せつける。

 

「…じゃあ…勝手に食べます。」

 

そう言って俺の隣に座り込む神田

 

「じゃあわたしもー、」

 

「……?雪ノ下さんに買い物頼まれてたんじゃ?」

 

「あ!忘れてた!早く行かなきゃ怒られちゃう」

 

いつもの様に雪ノ下に勝負を挑んでいた様だ、まぁ、また負けた様だが…走り去っていく由比ヶ浜を見ながらマッカンを啜った。

 

「…兄さん……お昼は今度から私を呼んでください…」

 

「…ん、なんでだ?」

 

そう聞くと神田は髪の毛を弄る。

 

「なんか、居辛くて…」

 

「相わかった。」

 

彼女の出で立ちからしてあの空間は居辛いのはなんとなく察していた。隣から弁当の開く音が鳴り呟くと少し弱目の風が吹く。

 

 

 

「………此処いいですね。人が頑張ってるところを離れた位置でこんな風に……何か自分が社会的優位な位置にいる様な気分になります。」

 

 

 

 

 

 

 

「………やっぱ、おまえ人間嫌いだろ。」

 

「え、好きですよ」

 

ゼッテー嘘だ。

そんな言葉を飲み込む様にマッカンを飲み干した。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「……で、これはどういう意味かしら比企谷くん」

 

場所、奉仕部部室、

時刻、放課後

6時間目の眠気の強い時間帯を超え目を擦りながら部室に入る。そこには眼光をギラッギラに光らせた雪ノ下が俺を睨みつけていた。

 

「いや、だから入部希望者。」

 

「……一応聞かせてもらうけど、どんな手を使ったのかしら、場合によっては警察を呼ぶことも吝かでは無いわ。」

 

「吝かだわ。そんなに俺を刑務所に入れたいか」

 

「ええ、だから、行ってくれるかしら?」

 

「行くか!!

 

………はぁ、義妹だよ。帰り道一緒だし、先に帰らせるのも怖いから…一緒の部活だったら安心できるしな」

 

「義妹…ね、変な設定を作った物だわ」

 

「いや、本当だし、文句あるんだったらあいつに言え、」

 

「…過保護も行き過ぎると嫌われるわよ、」

 

「分かってるよ。」

 

雪ノ下は神田を見ると少し、ため息を吐く。

 

「まぁ、良いわ。私は雪ノ下雪乃、貴方は…」

 

「神田心です。よろしくお願いします。」

 

「…ええ、よろしく。」

 

そう言うのを眺めると俺はいつもの位置に座り込んだ。

さて、今日はなんのラノベを読もうか…

 

「あ、比企谷くん、今日は4時半までに誰も来なかったら、早めに締めるわよ」

 

「……ん?どうかしたのか?」

 

「いえ、……雪ノ下の分家の方から呼び出しをくらってしまって。少し早めに帰るわ」

 

「ん、わかった。由比ヶ浜にも伝えとく、」

 

「……え、由比ヶ浜さんもこの部活なんですか?」

 

「まぁな、今日は後から来るっつってたが、来なくていいって言っとくわ。」

 

「ええ、よろしく」

 

ケータイを取り出し小文を送ると、『分かった』と返ってくる。

こんなの中学まではあり得なかったからな、少し感動した。

 

「…では、神田さんに奉仕部の存在意義を知ってもらおうかしら。」

 

、、、始まった。

…ふと懐かしい思い出が蘇る。

 

「存在理由ですか…」

 

「じゃあ質問、初心者の釣師が魚を釣る時にまず最初に必要な物は何かしら?」

 

「竿……ですか?」

 

「違うわ、知識よ。

魚を釣るのに知識が無くては意味がないわ、知識もなしに竿なんて渡しても相手にとって、それはただの棒でしかない。」

 

「……それはそうですね。」

 

「ここは万屋では無いわ、あくまで知識を与えるだけ、後は、相手がやるか次第よ。

ようこそ奉仕部へ、歓迎するわ」

 

 

俺の時より幾分かマシな受け答えに少し感心しつつ、なんで俺の時だけ、あんな…

と少し悲しくなった。

 

「まぁ、どうせ暇だがな…」

 

俺はページをめくった。

 

いつもなら一色か材木座あたりが来る時間帯だが今日は来ないらしい、窓から少し涼しい風が入る。まだ空は真っ青で何か忘れた様なそんな雰囲気を醸し出してくれる。でもそんなものは日差しで塞ぎ込み、ある程度の位置で止まった。

ふと俺の顔を覗き込む顔が一つ、

 

「どうしたのかしら、私の方を向いて。」

 

「……ん、いや、今日はいい風が吹くなと思ってよ」

 

「あら、ロマンチストなのね。」

 

「…まぁ、今日だけだがな。」

 

やっぱりこの空間は居心地が良かった



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4話:義妹と悪魔。

放課後、茜色に染まった坂を俺たちは降る。

 

 いつもなら真っ直ぐ家に帰って、ベッドダイブしたい所だが、神田がこの街に来たばかりだと言うので少し遠回りをする。

いつものコンビニ、いつものサイゼ、いつものららぽ、俺にとってはいつもの風景、いつもの場所に対して彼女からしてみればまだ見ぬ桃源郷くらいの心構えらしい。少しはしゃぎすぎじゃありませんかねぇ、少し腰が据えた気がする

 

「なぁ、お前はこんなのが珍しいのか?」

 

サイゼで軽くスパゲティをつきつつ問う。すると目の前のハンバーグに目を輝かせた神田はハンバーグに目を離さず問いに答える。

 

「まぁ、そうですね。お父さんが外食は体に悪いって許してくれませんでしたから。だから、はじめての外食になりますね!」

 

「ふぅん、言ってくれたらもっと凄いとこに連れてやったのに…まぁ、あんま高いところは無理だけどな」

 

笑いながら返すと彼女も笑う。

 

「十分ですよ。兄さんが連れてきた場所ですから、それだけで宝物です。」

 

「…サイゼが宝物ねぇ」

 

なんと言う無欲。お兄ちゃん泣きそうだよ

 

 

 

ふと、時計を見ると5時半を超えていた。時間もいいくらいだし、神田もハンバーグを食べ終えたらしい。

 

「さて、そろそろ行くか、」

 

俺はソファーから立ち上がる

 

「ええ、そうですね。……少し待ってください、財布取るので」

 

「いや、俺が払うよ」

 

俺がそう言うと少し渋る様な動作を起こす。

 

「え、でも…」

 

「払わせてくれ、仮にもお前の兄やってるからな、妹に払わせるわけにもいかねぇーよ」

 

俺は財布を取り出し、レジに向かった。それに続こうと走り出す神田、そんな雰囲気に少し失っていた青春を思い出した。まぁ、まだ青春終わった覚えもないがな。

 

因みに支払いは二人で大体1000円で済んだ、流石サイゼクオリティー、俺の期待を裏切らない。

 

「もう…悪いですよ……今度なにかおごります。」

 

「そんな事はもっと一丁前になってから言え」

 

俺は財布にお釣りを入れつつ答えると彼女はむくれっ面になる。そんな顔に苦笑しながら、ふと窓から外を見てみると、赤い建物が見えていた。

 

「……あー、心、最後にあそこ行かないか?」

 

神田はむくれた顔を元に戻し、外を覗き見る。ふと、看板に何か英語で書いてあるのに気付いた。

 

「game center?…」

 

「あぁ、行ったことあるか?」

 

「いえ、無いですね。どんな所かも想像できません。」

 

ゲームセンターを知らないだと?

 

「すいません、世間には疎くて……テレビや新聞にも目を通させてもらえなかったので…」

 

「……………そうか、」

 

 

なんで、この子はこんな目にあったのだろうか…やはり、周りの環境のせいだろうか、少し、人間に嫌気がさす。

 

 

「それで、どんな所なんですか?」

 

「あ、あぁ……まぁ、なんだろうな。基本的に遊ぶ所って言うしかないな、そう気を入れる必要は無いさ、自然体だ、自然体。」

 

「……なんか行き慣れてる雰囲気ですね。」

 

「…まぁな、昔は学校が終わった後、必ず通ってたんだがな、一年くらい前にある事があってから、ぱったりと行かなくなってな」

 

 

もはやあの頃が懐かしい、

 

「じゃあ、行くか。」

 

「はい!」

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

神田side

 

兄さんがはしゃいでる。こんな事を言うのは失礼だと思うけど、言葉に出来ないくらい可愛らしい、

 

今、私は兄さんがいうgame centerの前にいる、いつもだったらこんな胡散臭い店入ったりはしないけど、兄さんが言うのなら、少し入ってみるのも一興だと思い、結局前でいさ迷っていた。

 

「あ、ちょっと目に悪いかも知れんから気をつけろ」

 

兄さんはそう言うと赤い建物の中に入っていった

昨日今日兄さんと過ごしてみてわかった事は信用し得る人物だと言う事だ。兄さんが言うのなら気をつけよう。そう思い私は目を細くして兄さんに続いた。

 

 

次の瞬間、目の前に広がる景色に絶句する。

 

 

 

いろんな人が色々な事をしてる。ここまでは理解した。

でも、何をしてるかとか何をやってるかほ一切わからない。ただみんな楽しそうに笑ってる…

 

笑う事はいい事だ。

だけど私は塗り固められた笑顔は嫌いだ。前の自分に戻ったみたいで、だけどここの笑顔はみんな『楽しそう』を前提とした笑い。

……これは嫌いじゃない。

このカオスはいつになく、綺麗なカオスだった。

 

ふと兄さんが私の方をみて指を刺す

 

「何か遊びたいものはあるか?」

 

「遊びたいもの……ですか、」

 

「そう、なんでも良いぞ。今日はにいちゃんの奢りだ、」

 

「むぅー、なんか子供扱いです。」

 

そう言いつつ、目の前の人形が入っている機械に目が及ぶ、

 

「ほぅ、UFOキャッチャーか…」

 

「ゆふぉー…?」

 

「あー、この人形をあのクレーンで取るともらえるんだ」

 

兄さんが察した様に言う。なんか兄さんの思うようになってる様でつまんないけど、合ってるから何も言わずに機械に触れた。

 

「ちょっとまて、最初に100円入れるんだよ。」

 

横から兄さんはお金を入れる、するとなんだかアームみたいなものが光出した。

 

「あー、操作方法わかるか?…いや、ここのアームかなり弱いからな、まぁ、一回やってみろ」

 

そう言い簡単な操作とちょっとしたテクニックを教えてもらいながら操作板に触れるとちょっと動く、

 

「………」

 

緊張しながらぬいぐるみの上でアームボタンを押すと、

 

「よしっ……」

 

兄さんが呟く。

ぬいぐるみは少しずつ上がりもう直ぐ穴に入る…

 

 

次の瞬間だった、

 

 

バンッと音がなりぬいぐるみは自由落下、地面に落ちた。何がなんだかわからないでいると隣から声が聞こえる。

 

 

 

「そこの彼女ぉ、すげー可愛いじゃん、俺とお茶でも飲まない?」

 

 

二人のチンピラっぽい人達が私が使っていたUFOキャッチャーを揺らしたらしい。

 

「辞めろよ、みっともないぞ。」

 

兄さんの言葉に怒りを感じる。

 

「なんだてめぇ、俺はそこの嬢ちゃんに話してるんだ、彼女がとられんのがそんなに嫌かよ、」

 

「俺はこいつの兄だ。…マナーのマの字もわからんらしいな」

 

「あぁん?」

 

「こんな当たり前な事すら理解出来ないとは馬鹿にも程がある。俺は妹と遊んでるんだ、さっさと出て行け。」

 

 

「なんだとテメェ!!」

 

逆上した、チンピラが兄さんを殴ろうと腕を上げた瞬間、

 

 

「おい、山田、辞めておけって、出禁になっても知らねーぞ」

 

そう言い、もう片方の人が止める。それを言われるとチンピラは悔しそうな顔をして腕を引っ込めた。

 

 

「……くそっ、じゃあ、ゲームで勝負だ」

 

「何?」

 

突拍子もない言葉に驚く。

 

「ここはゲームセンターだ。ならゲームで勝負が普通だろ!お前が負けたらその女を貰う。」

 

「…お前、本人の意思を尊ちょ…」

 

「いいですよ。」

 

 

私がそう言うと兄さんは驚いたように私をみた。

 

「お前、いいのか?」

 

「勝てるんでしょ、兄さん。」

 

私がそう言うと困ったように頭を掻く。しばらく考えて考えがまとまったようだ。

 

「……分かったよ、やりゃあ良いんだろ。やりゃあ」

 

 

 

そう言うと、兄さんはチンピラ達について行った。

 

 

 

 

「ほう、久しぶりだな。あれが来るのは…」

 

 

 

 

後ろで誰かが呟く。

ふと、後ろを振り返ると、何故か赤い帽子に赤いスーツを着用した男が一人佇んでいる。

 

「…ふむ、お嬢ちゃん。彼の妹かね?」

 

「え、あ、はい。義理のですが」

 

「そうか、それは良い事を聞いた。"腐眼の悪魔"はかなりの妹想いだと聞くからな」

 

「腐眼の?…どう言う意味ですか?」

 

そう聞くと彼は「聞いていないのかね?」と呟き、ゆっくり兄さんの方を向く。

 

「……彼はこのゲームセンターの生きる伝説さ、」

 

「伝説…?」

 

「…このゲームセンターは出来た当時、荒れていてね。二つの派閥に別れたんだ。

コアゲーマーが集まる"レッドハーブ"と

ライトゲーマーの集まるグリーンハーブ"

三年くらい前は不毛な争いが頻発して、多くのものが出禁になってしまった。」

 

彼はそう言うと残念そうに顔を伏しす。

 

「しかし、その争いは一方的で、いつしか、レッドハーブがグリーンハーブを食い荒らし掛けた時…彼が現れた。」

 

「兄さん…ですか」

 

「彼が示したのはコアゲーマーの経験の強さでも無く、ライトゲーマーの純粋な心でもない。明らかな圧倒的力だった。

彼が現れた瞬間、グリーンとかレッドとか関係なく全て叩き潰された。

コアゲーマーは自信を失い。ライトゲーマーは楽しむ気持ちを失った。」

 

「……ん?待ってください。それってバッドエンドじゃ?」

 

「そして失われた者たちは手を組み、その一人の人間に先制攻撃を企てようとして失敗、呆気なく打ち落され、挙げ句の果てには目玉をも取られた。(ゲームの中で偶に出る特別演出)

彼は圧倒的であるが故にコアゲーマーとライトゲーマーの壁を壊したのだ。

そして約一年前にこのゲームセンターから姿を消した。」

 

そう言うと彼はすこし死んだ目をした。あ、この人…

 

「……ちょっと兄さん見てきた方が良いですかね?」

 

「その方が良い。また逃げられんうちにな」

 

まぁ、そうですよね!

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



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5話:義妹とあの日

結局帰路に着くのは6時をすぎた頃だった。神田はあの後チンピラどものキン○マを蹴り潰し、

 

『ち○こなんか無ければ良いのよ』

 

と爆弾発言をかました後、こうして無言の威圧で俺を睨みつけ、俺は股間に無駄な緊張感を抱えながら帰っていた。

 

ふと彼女の視線が下の方に行く事に気づくと、俺に向けて口を開く。

 

「……兄さん、ゲーム上手だったんですね。」

 

「まぁな、中学の時はやる事が無くて、ずっと入り浸ってたからな。」

 

「やる事が無くてって…?」

 

「……まぁ、あれだよ。

中学の頃、色々あってな、」

 

俺がそう答えると彼女は心配そうに俺を見つめる。

すると、少し察した様な口ぶりで俺の言葉に返した。

 

「…一緒ですね、」

 

「一緒?…どこがだ。」

 

神田は薄らに微笑む。

 

 

 

「私、昔好きな人がいたんです。」

 

 

 

神田は自嘲したようにそう言った。

それは何処か寂しそうな…そんな雰囲気を醸し出している。

 

「…そうか、さぞかしそいつは幸せだったんだろうな」

 

「ううん、…彼にとっては重みでしか無かったと思います。彼、好きな人が居るって言ってたから、」

 

首に掛けていた十字架を持ち出すと、彼女は少し悔やんだ様に首を垂らす。

 

「彼の目に私は存在しなかったし、存在できなかった。まあ、私みたいなのが誰かを好きになる事自体間違って居るんですが。」

 

「間違っている?」

 

彼女の言葉のニュアンスに違和感を感じる。

 

「ええ、間違ってますよ。」

 

「どう言う意味だよ?」

 

「私は人間の………ううん、女性としての務めを果たせないんですから。」

 

果たせない。意味を持たせた言葉にピースを嵌める。

 

「…お前、」

 

「ええ、」

 

彼女はお腹を摩った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私、産めないんです……子供」

 

 

 

 

 

 

 

風が吹く。

 

…何を言えばいいのか、何と返せばいいのか、

あれもこれも全て俺に返って来た。これは自分の問題じゃない、何を言おうと彼女のそれが治るわけじゃないし、治せるわけもない。

 

「彼は私を恨みました。彼を取り巻く環境が全て、私中心になっていた様なものだったので、」

 

ふと、彼女は十字架を握りしめる。

 

「あの後、、、私の居場所は無くなり。唯一の砦だった物が消えたあの日、

今までの景色の裏側が流れ込む様に、私はその流れに揉まれました。」

 

ふと、彼女は俺に向かって笑いかけた。

 

「…すいません、こんな暗い話しちゃって、空気悪くしちゃいましたよね。」

 

「…いや。大丈夫だ。」

 

「こういうのは先に言っておかなくちゃって思って、私なんかに愛情を持つ前に」

 

大丈夫じゃない、今にもこの世界の不条理を呪いたい。

 

「…じゃあ、早く帰りましょう。まだお母さんに会った事ないので今から会うのが楽しみですね。」

 

「ああ、そうだな。」

 

彼女の声に変えす。不思議と消えていたあの感情は一時的な病気の様な、

 

すると、夜道の電灯の下で、

 

次の瞬間だった。

 

 

 

 

「………っ、…え、、、」

 

 

 

 

彼女は怯えた様に、

 

震えた様に、

 

そう呟いた。

 

 

 

明らかに普通じゃない。

 

何かに怯えている様で、

 

 

ーーーまるでトラウマが目の前にいる様な、

 

 

 

 

過ぎていく気配が消え去る頃には、標準という状況が分からなくなっていた。

 

 

 

いくら聞いても「な、……なんで、」としか答えない。

 

 

 

「ど、どうしたんだよ、、、?」

 

「なんで?なんで、彼が……?」

 

 

 

そういった次の瞬間だった。彼女は怯えたよう俺の両腕を掴み、大声で言う。

 

 

 

「は、早く帰りましょう!!」

 

 

 

 

「え、お、おう、」

 

腕が震えてる。何があったのだろうか?

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

「………へぇ、」

 

 

 

 

電灯の影で瞳が濁りを見せながら光る。

その瞳はあの二人の影を捉えていた。

口元は釣り上がり、楽しそうに笑みを浮かべる。

 

しかし、ふと、片方の影に目を向けると顔を歪めた。

 

「……誰だ?……アレ?……イルノ?….…あんなのが?」

 

 

歪みは少しずつ確実に増えていく。

 

 

「ハハ、アレいらないよ、だって心ちゃんは単体であるべき物なんだ。別の異物が紛れ込んでる。

あはは、いらないおもちゃは捨てなくちゃ、」

 

 

笑い声が出る。

 

 

「ゴミはゴミ箱、おもちゃはおもちゃ箱、

 

ふふ、あれはゴミ箱だ。」

 

 

 

彼女がいなくなる頃にはその影は消えていた。



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6話:義妹とクリスマス

あれから、同じ日々を繰り返している。

中に神田と言う存在がいるだけの至って同じ日常、同じ暮らし、

 

あの夜からとうに二週間はたっている。

 

…神田も最初の頃と比べ学校に馴染み始めた。友達も少なからず出来たらしい、義妹だからって俺に似なくてをよかったです。まぁ、その友達とやらからも少し溝はあるようだが、

 

今日も今日とて、一日が過ぎようとしていた昼休み、

やはり心は俺の隣にすわり昼食を食べる。今日はコロッケ、最近は俺もお弁当をもらっている、金の節約になるのでありがたい。

 

 

「兄さん、兄さん、」

 

「なんだ?」

 

俺は隣に座る心に目を向ける。正直ちょっと近い、…蜜じゃないから、

 

「どうですか?兄さんのコロッケだけ中にコーン入れてみたんです。それなりに良く出来たと思うんですが、」

 

「やっぱこのコーンお前の案か、うん、ソースの塩みに甘いコーンがうまく溶け合ってて、美味かった。」

 

そう俺が言うと彼女は笑いながら「そうですか、よかった」と言う。

 

日常こそが平和の証、

やっぱり、なんだかんだここに戻るか、

 

俺はまた一口コロッケを口に運んだ。

 

 

「あ、先輩ーー!!」

 

 

遠くからあざとい声が聞こえる。

はい、日常終了のお知らせです。シートベルトは右から左に、多分、飛ばされるので、

 

「ふぅ、凄いですね。結衣先輩、先輩の位置常に把握してるんですもん、」

 

「いや。ストーカーみたいに言ってやるな、あいつだって最初はたまたま此処を見つけたんだ……あれ?たまたまだよな?」

 

心に問うが、頭をふられる。

 

「…そんな事より、生徒会の仕事手伝ってくれませんか?人数が少ない割にかなりの量押し付けられちゃって、」

 

「は?なんで俺が…」

 

「本物が…」

 

「はい!!手伝わせていただきます!!」

 

俺は思わず立ち上がる。心が驚いたように「きゃっ」と声を上げる。ごめん

 

「あれ?そう言えばそこの女性誰ですか?…まさか…不倫?」

 

「結婚もしてねーのに不倫も何もあるか、義理の妹だよ、聴いてなかったのか?」

 

「ええ、そもそも奉仕部に行く時間すら無かったですからね。」

 

「そう言えばそうだったな平和すぎて忘れてた。」

 

「ヒドイ!!私を忘れるなんて!!」

 

そんな言葉を片耳に入れながら心に耳打ちをする。

 

「…ゴニョゴニヨ……じゃ、そう言う訳だから、」

 

「はい、わかりました」

 

そう、笑いながら言う心に少し安堵した。彼女の身に何があったのかは分からないが、あの時の異常なほどの恐怖を持って欲しくない。

 

「むー、何か秘密ですかー?」

 

「んなんじゃねーよ、ほれ、暇してないでさっさと行くぞ生徒会長」

 

俺は項垂れる一色を連れて生徒会室に向かった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

この世界観に時間軸とか気にしたら負けだ。

一応、冬って設定にはなっているが何分作者の気分次第で季節が変わる。昨日冬だったよね?あれ?今日は夏?そんな感じの事を考慮して読んで欲しい。因みに原作は一年の頃の話で、ちょっと設定が変わったりしているのでよろしく。

 

ここからキャラ崩壊注意、みんなクリスマスで浮かれてやがるから、

 

☆☆☆☆☆☆☆、

 

 

去年のクリスマスは地獄だった。よくわからんイベントを差し向けられ、あーだ、こーだ、してる内にクリスマスは過ぎ去ったイメージだ。

クリスマスイベントの時の廻先輩も気の毒だった。生徒会長だからって強要されてあれこれ押し付けられる様は見てられないものだったよ、

 

まぁ、そんなクリスマスも過ぎ、もう直ぐ次のクリスマスに差し掛かる今日というこの日、

 

今年は去年と違い神田がいる。それだけでも心構えが変わるもので、

 

「今年はサプライズにしよう!」

 

と小町が言うのも納得がいった。

人間とは変化を嫌い変化を好む習性があるらしい、矛盾しているが、それが人間というものだろう、神田は好まれる系の変化だった様だ。妹達が仲良くなって、お兄ちゃん嬉しいよ…

因みに今、神田は二階にいる、つまり元俺の部屋だ。解せぬ。

 

「…で、何やるんだ?…」

 

「クリスマスって言えばサンタさんじゃん、……という事でお兄ちゃん、、、サンタになって、」

 

ド○キーから買ってきたのだろうか、安物のサンタコスを渡される。ため息を吐きつつとりあえず中身を確認した

 

赤い帽子に、赤いブラジャーに、赤いミニスカート、、、、

 

 

「……え、まって、小町ちゃんこれ、女性用の際どい奴じゃない?ねぇ、完全にこれブラなんですけど?」

 

「あ、間違えた、まぁ良いや着て、」

 

「え、なんの拷問?」

 

 

 

ーーー(漢)少女着替え中

 

 

「…うわぁん(泣)…いっそ殺せよ、」

 

「漢のくっころなんて需要ないからさ、早く、サプライズ!サプライズ!」

 

「いや、ピッチピッチで動けないんだけど…てか俺がこの格好してる時点でサプライズじゃない?…いや警察沙汰か…ともかく俺の人生詰んだな。」

 

俺はとりあえずピッチピッチに張り詰めた上半身の服を見る。

 

 

露出度たっけぇ、

 

 

需要なくない?ねぇ、お腹が冷めるんだけど…後スカート、、、スカーっとする、ははは、……笑うとこだよ?

 

「とりあえず、お兄ちゃん、さっさと二階に行って着て!」

 

「だからピッチピッチ、」

 

「いやほぼ、裸じゃん。早く行って」

 

 

……いや、だから嫌なんだってェ

 

 

 

 

 

ーー神田心サイド、

 

こんにちは!私、神田心です。初めましての方は初めまして、また初めてじゃ無い方は始めてじゃないまして!

…意味が分からない?私も分かりません!!

 

さてと、何故今日私はこんなにテンションが高いと言いますと、今日は12月24日、クリスマスイブでございます! パチパチ、違う?違いません。

 

実は、私知ってます。

 

兄さん、コスプレするって事、

いや、実際サンタさんって言ってたけど内容はよくわかりません!内容が無いよう…なんちって、、、ここ笑うとこですよ?

 

では、サンタさんってなんでしょう?意味はそこからです。

サンタさんって小町ちゃんに言われましたけど大体サンタさんと言うのはなんなんでしょうか?クリスマスイブの夜に現れる泥棒の上位互換らしいですが、、、、うーん、、、クリスマスに現れる人って言うと無機物を子供に投げつけ、家の中に無断侵入して、かえり血で染まったと言われている赤い帽子と服を着て人間の皮を被った殺人鬼しか出てきません…

 

まぁ、いいでしょう、

私は負けず嫌いです。彼がコスプレすると言うのならば、対抗しましょう、

 

 

 

…コスプレで!

 

 

 

 

 

 

 

 

比企谷八幡side

 

 

俺は俺の部屋の前で足踏みをする。

大の理由とすれば寒いからだがもう一つの理由とすればこれからの生活に明らかに支障をきたすであろうこの格好に寒気を被っているからである。

 

つまり、絞首刑の一歩手前の心境である。

 

とりあえず、俺はドアを叩く。

 

「はーい、兄さん入って、」

 

何処かいつもの100倍くらい元気そうな神田が返事を返してくれる。その声と同時にドアを開ける。

 

「じゃ、じゃあ失礼、、、す、、、?」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーおっぱいである。

 

 

 

 

 

「…………………?」

 

 

 

 

 

ーーーおっぱいである。

 

 

 

 

 

 

 

 

はっきり言うと心の顔が、おっぱいに挟まっていた。

 

意味が分からないって?俺も分からない。着ぐるみだろうか、なんだあれ?アンナン売ってんの?なんで持ってんの?てかその前になんでそのチョイス…?

 

 

「どうしたんですか?兄さん、」

 

 

えぇ、、、なんで何も無いような顔できんの?

なんなん?もしかして俺、寒すぎて幻覚みてる?心のちっぱいがでっぱいになる訳ないじゃんw

 

…ごめんなさい(切実)

 

「いや、何でもないよ、今日はご馳走だからな。」

 

「それは楽しみですね!」

 

 

パンと手を叩く心、共に右と左のパイもぶるんっと震える。

 

 

「そうだな、小町の料理うまいからな、楽しみにしておけよ?」

 

笑わなかった俺は偉いと思う。

 

 

 

 

 

神田心side

 

「はーい、兄さん入って、」

 

私はそう言うと着ぐるみを準備する。

因みにこの着ぐるみは父さんのものだ、私の父さんじゃないよ?兄さんのだよ?

 

「じゃ、じゃあ、、、失礼す、、」

 

驚いた声が聞こえる。

 

ふふ、やっぱり私の格好に驚いた様だ、

ならば、私もサンタの姿を拝見させていただこうじゃないか、

 

 

 

 

次の瞬間、視界がソレを拒んだ。

 

 

 

 

「ぐぅっ……!?」

 

 

 

 

思わず目を塞ぐ。

 

目の前に異物が現れる。

 

 

ソレは人間と言って良いものなのか、

 

赤い流星、真紅の稲妻、、色々な通り名が頭に浮かぶ、…あれは確かにカッコ良かった。

 

しかし、目の前のいるのは赤いブラジャー、装着者は…兄だった。

 

なんでとか、そんなとか言う御法度はどうでも良い、わたしにとってそれは異物以外の何物でもなかった。

 

次の言葉を考える。本来だったらドッキリでしたーみたいな言葉を返すのに今回は無理っぽい、

 

とりあえず、触り当てのない言葉を並べた。

 

 

「どうしたんですか、兄さん、」

 

 

あれ?なんでだろ?、内容が一切入ってないんだけど?

その服についてとか話す内容あったでしまょ?なんで今それなの?

 

「いや、なんでもないよ。今日はご馳走だからな。」

 

えぇ、なんで何もない様な顔できんの?変な物でも食べましたか?心無しか目が腐ってますよ…いや、それは元からか、

 

 

くっ、こうなったら!

 

私は手を叩く。

 

「それは、楽しみですね!」

 

 

 

寄せ乳である。

 

昔、もう合わなくなった友人が言っていた。寄せ乳しちゃえば胸も大きく見えるし男などイチコロよ☆と、

 

ならば落としてしまおう、この兄を、

 

 

「そうだな、小町の料理うまいからな、楽しみにしておけよ?」

 

 

はて、なんでだろう、この兄、私はこんなに恥ずかしい思いしてるのに…なんでこんなに淡白なんだろう。

 

…あ、そっか、私に魅力のかけらもないからだ。

 

そうか、そう言う事なのか……

 

 

 

 

 

 

 

その後二人揃って小町ちゃんに叱れました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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7話:義妹と告白

放課後の事だった。

奉仕部が終わり、ふと、窓を覗く。赤い夕日が上り、水々しい木々が空を舞う。幻想的な雰囲気に一つ異物が紛れ込む。

 

「……心?」

 

義妹が外を駆けていくのが見えた。

なんだろうか、少し疑問に思いながら眺める。…あんなに焦っている心も珍しい、

 

しばらくすると俺は彼女を追いかけてみようと玄関に向かうことにした。そこまで遠くまで行っていないだろうし、きっと一人で帰っても「なんで一人で帰ってきたの!?」と、小町に怒られるのがオチだろう。

 

「しゃーない、行くか、」

 

俺はゆったりと彼女が向かったであろう体育館に向かう。

 

ふと、聞こえる声が一つ、最初は男の声だった。

 

「付き合って下さい!!」

 

勢いよく聞こえる声に思わず足を止める。

 

「ごめんなさい、」

 

次に女の声、それは聴き慣れた声だった。響くのは緊張という空気、

続く声、

 

「……な、なんで?」

 

「私貴方のことあまり知りませんし、貴方だって私の事知らないでしょう?」

 

少し歩き角からその風景を覗く、

 

やはりと言うか何というか、女の方は心だった。ここから見える彼女の目はいつもより冷たく感じる。

男の方は…たしか隣のクラスの陽キャか…なんかイケメンとか担ぎ上げられて可哀想なイメージだった子だったが…

 

「ま、まさか、あいつだろ!ヒキタニとか言った奴!」

 

彼がそう言うと心はむっとあからさまに口を噤む、

 

「比企谷です、義兄がどうかしたんですか?」

 

「あ、あいつの事が好きなんだろ!!

だ、だからいつも一緒に居たんだ!」

 

前言撤回、ストーカーだったとは知らなかった。

 

「見てたんですか、」

 

「あ、ああ!君の事はなんでも知ってる!!」

 

 

そう言う彼に心は不愉快の念を出した。

 

 

 

「知ってる……?私の全てを…?」

 

 

 

空気が変わる。

 

「あ…ああ!そうさ!」

 

「そうですか、、、私の全てを…ね、、、だったら知ってるはずです。その上でこうやって告白しに来てくれたのだから…ね?

今まで、私が何をしてきたか…」

 

彼女の目は少し濁る。あの感じ、すこしベクトルが違うが俺と似た雰囲気を感じた。

 

 

「え、?」

 

「そして分かってる筈です。私が貴方に何をするか…

…まさか、今更知らないなんて言わせませんよ。」

 

心は彼の肩を掴んだ。

 

「な、何を…?」

 

彼は肩を外そうとし、彼女に問う。

そして彼女は問いをヒントに変えて返した。

 

 

 

 

「私の愛した人はみんな居なくなっちゃうんです、なんででしょうね?」

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

「……おい、心、帰るぞ、」

 

 

しばらく経ち俺は心に話しかける。

 

あれから、彼女は座り込んで動かない。ひたすら自身の影を見つめていた。

 

「…………お前は悪くない。」

 

彼女にそう言う。

それはなんの意味を持たない、きっと彼女にとってあたりさわりの無いただの言葉に過ぎない。それ程に彼女の闇は深い様だ。彼女は影に言いつつる。

 

 

 

「…彼、私を化け物を見た様な目で見るんです。

何か私じゃない何かを見るような目で…

いや、それが私なのかな…」

 

 

「…………」

 

 

「私にとって彼は関係ない人の筈なのに、、、あの目は…私を傷つける。

…ダメですよね、自分からああいう風に仕向けたのに、」

 

 

自嘲したように呟く彼女に生気はない。

自分を責めているのか、はたまた慰めているのか……いや、きっと責めているに違いない、この子はそう言う子だ。人とは違う事を嫌い、人と同じ事を嫌う。

彼女の矛盾はいつしか自身の首を絞めていた。

 

しばらく、彼女は影を見つめると笑顔で立ち上がる。

無理に作った笑顔…正直見れた物じゃない。

 

「さぁ、帰りましょう、今日小町ちゃんにコロッケの作り方教える約束してたんですよ」

 

「……そうか…まぁ、楽しみにしてるよ、小町の料理スキルが上がるのは願っでもない事だしな、」

 

「…もう兄さんったら、シスコンなんだから、」

 

「言ってろ、」

 

今、彼女の拠り所になれるのは俺だけだ。彼女の帰り場所くらい、笑顔で染めてやらなきゃ、

 

せめて、今のうちだけは、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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8話:義妹のストーカー

夜中の事、

小町がアイス食べたぁぁい!!と言った為に俺はアイスをコンビニで買って帰り道。夜道にはもう慣れた物でコンビニにも行き慣れていて怖いとか言う気分にはなれない、と言うか、ただの流れ作業に過ぎない。流石に心には家で待機してもらった。夜の街はヤバイときっと誰かが言っている。

 

両手にぶら下げた冷たいアイスが手を冷やす。まったく冬なのにアイスなんか所望しやがって、

 

マフラーは少しずつ、揺れている。

 

いつしか暗かった道は段々と灯を灯し始め、あたり一面に光が蘇った。

一つ一つの小さな光が集まって、世を照らす。

 

 

「ねぇ…ひひ、君が比企谷八幡くん、、?」

 

 

声が一つ、響く、

 

「…誰だ?」

 

俺がそう問うと姿を見せる前に「失礼したね」と声が帰ってきた。

声だけ響く空間に一人ぽつりとその声に返す、側から見たらかなりの異常者だとお見受けする

 

「君の義妹の元恋人だよ…今は婚約者かな?」

 

「婚約者…?そんな話は聞いていないが、」

 

そう問い返すと笑い声が漏れてきた。

 

「今は聞いていなくても、いずれは嫌でも聞くことになるさ、」

 

「へぇ、…いずれね、」

 

「…ふふ、安心して、今日は前挨拶さ、祭りの前のね、」

 

祭か、楽しければ良いんだかな、、、まぁストーカーに何言っても無駄か、

 

「今なら間に合うよ、」

 

ストーカー男はそう呟く

 

「間に合う…?」

 

「君が彼女から離れてくれたら、これ以上は何もしない、」

 

「は、冗談。お前を脅威と捉えていないのに、何故彼女を見放す筈がある?」

 

俺はそう言うと歩き始めた。

これ以上話していても無駄だな、

 

「逃げるのかい?」

 

「生憎、今俺の手元には溶けやすいでお馴染みのラクトアイスがあってな、冬といえど安心はできない。だから、帰らせてもらうぜ、」

 

「…じゃあ、これだけは覚えておいて。

これ以上彼女を惑わせたら、君を……」

 

「殺すか?拘束するか?…はたまた小町をどうにかするか?」

 

俺はそう聞くと奴は笑みをやめる。

しばらく睨みつけると次第に震え出した。

 

…なんだ、こんな奴に彼奴は怖がっていたのか、

 

体を彼奴に向け歩き始め、彼の目の前にとどまった。

 

 

「…へ、へ、へ?」

 

 

何に怯えてる?俺は彼の肩に手を置いた。

 

 

 

 

「二人とも俺の妹だ。

妹達に何かしてみろ、、、

 

……殺すだけじゃ済まさんぞ、」

 

 

 

俺はそれだけ言うと回れ右して走り出した男を見た。

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆☆★☆

                          

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

男は走っていた。

いつしか自分の居場所が分からなくなってしまう程必死に走った。その先では何が待っているとかはどうでも良かった。とりあえず走った。

あの目は人を狂わせる。

 

ズザサァァァ!!

 

足を滑らせて地に跪く。

 

 

「あ、あ、あ、あれは……き、危険だ…」

 

 

不思議と涙が止まらなかった。

なんなんだ、なんなんだ!?僕は!!

何に恐怖してる?

 

 

震える手を握ると自分が少しずつ小さく見える。

 

風が吹く。

 

ポケットから写真が落ちてきた。

 

 

 

 

 

「………ははは、なんだよ。

可笑しいか?可笑しいかよ?」

 

写真に必死に語りかける。

写真には大きく笑顔で笑う少女の姿をあった。

 

 

「……君は僕をどこまで惨めにすれば気が済むんだ…」

 

 

そう呟き、彼は住処であるゴミ捨て場に足を向けた。

 



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9話:義妹と恋愛

 

日曜日の朝8時ごろ、俺は例のプリ○ュアを見るためにリビングに座っていた。最近ヒーロータイムの時間が遅くなったらしいがプリ○ュアだけ時間がズレないため前と同じ、だが、仮面ライダーが観れる様になったのは評価しよう。

 

「…お兄ちゃん、やっぱり日曜日の朝だけは早いんだね。でも今日はなんか特別早い、どしたの?」

 

小町が後ろから声をかける。

 

「いや、まぁ、それは…」

 

「うんうん、わかってるわかってる。心お姉ちゃんでしょ。一緒の部屋に寝てるし、それで恥ずかしくなったとか、」

 

「……ん、い、いや、違う。そもそも日曜はいつもこれぐらいだったろ…」

 

「なわけ、お兄ちゃん。プリ○ュアは8時半からだよ?ギリギリまで寝てるお兄ちゃんがなんで30分前から来てるのさ、秘密ごとなんて小町的にポイント低いよ。」

 

そう言うと小町は自慢げな顔をして俺を見ていた。

ため息をつく。

 

「……ま、まぁ、たしかにそれもあるんだがな…じ、実は…」

 

「実は…?」

 

「実は今朝、起きた時なんだが。なんだか体が重かったんだ。

昨日寝不足だった訳でもないし、なんか重点的に…そう、お腹辺りが痛くて…」

 

 

ーーーー今朝ぁーーーーーーーーーーー

 

 

「ん………ん?…」

 

(怠くはないが…なんだ?体が重い…)

 

「ふにゃぁ………」

 

(…………?…なんだ、今の声…)

 

グッ……

 

(うっ……ぐっ、体が起こせないだと?

おかしい、、、昨日はプリキュアを見るために早めに寝たはずなんだが………金縛り…?)

 

(は!?、、、そ、そうか、昨日のサっちゃんの噂!!あれが作用してるのか…?

ま、まさか、お化けなんか無いさと謡曲でも言うじゃないか!居ないはずなんだ!!

しかし、体が動かないのも事実…何か起こるのか?)

 

 

「ふぁ…すぅん……ふぁにぇ…」

 

 

(な、何!?さっちゃんはね!?…し、死ぬのか?俺は!?)

 

 

「おにぃ……ちゃん……」

 

 

(………?、待てよ…)

 

 

 

 

 

 

ガバァ…、、、カサッ…

 

 

 

 

 

「………ふにゃあ………」

 

 

 

 

ガバァ!!カサッ……

 

 

 

 

「…すぅ…………はぁ………」

 

 

 

 

ーーーーーーっ……ココロォォォ!!???

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで俺のベッドに!?

なんで俺の上に居るの!?

なんで!?なんで!?なんで!?なんで!!??

 

ナンデェェェェ!!!!

 

 

 

 

ーーーーーーげんじゃいーーーーーー

 

 

 

「ーーと言う事があって早くに起きたんだ。6時に、」

 

「へ、へぇ………それは役得だねぇ…」

 

そう言う小町はコーヒーを口にした。

ブラック…飲みきれるのか?

 

「で…?お姉ちゃんは知ってるの?」

 

「いや、知る訳ないだろ、当然。知られる前に起きてる。」

 

「ふぅーん、」

 

つまらなそうに小町が呟くと、あ、そうだ!と言う。

 

「今日、お姉ちゃんとデートしてきなよ、デート!!」

 

「デート…?」

 

「なんか最近お兄ちゃんとお姉ちゃんの周りがゴタゴタしてるじゃん、だから気分転換にデートにでも行ってくれば…

あ、ケーキ買ってきて、」

 

「…それが目的か、まぁ、そうだな。わかった。心に聞いてみる。」

 

 

小町の言葉を正定してみると小町はニヤッと顔を歪めた、、、これは……何か企んでるな、

 

「お姉ちゃんが本物のお姉ちゃんになる日も遠くないなぁ、」

 

 

なんか聞こえた気がするが知らん、

時計を見る。

8時29分…そろそろか…俺はテレビに目を移した。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「あのこ見てー、お人形さんみたいー!」

「確かに、可愛いわね、隣のは…彼氏?」

「いや、いくらなんでも釣り合ってないだろ、荷物運びかなんか?」

 

少し離れた場所で声がする。

 

 

 

「久しぶりですね。此処、」

 

 

サイゼリヤ、なう

 

あれからデートに行ったは良いが行く場所がなく結局サイゼでごはんを食べることになった。心はこの間と同じハンバーグを食べている。ちなみに俺も前と同じスパゲティだ。トマトは嫌いだがケチャップは嫌いではない…

 

…だが一つ問題が生じる、普通に行く場所がない。

一色の時みたいに別段遠くに行くつもりもない為、近場で済まそうとしたのが失敗だった。

 

カラオケ?…遠い。

 

遊園地?…遠い。

 

水族館?…遠い。

 

逆方向だからその他多数が全て遠く感じる…此処から行くなら"ららぽ"くらいしか無いが、態々デートで行く場所か?

 

少し考えるが……ららぽかぁ…

 

「……う〜ん、何処か行きたい場所あるか?」

 

「兄さんがいる場所だったら何処でも大丈夫ですが…」

 

「…そうかぁ…」

 

頭を抱えていると少しして心が言う。

 

「…そう言えば、私、映画館って言う物に少し興味があって…」

 

「映画館……?」

 

「はい、昔から周りのみんながそういった話をしていたので、少し興味があるんです。ダメ…でしょうか…?」

 

「映画館か……そうだな、一回行ってみるのも良いな、」

 

スパゲティを口に含み、そう呟く。

 

映画、映画かぁ…

 

スケジュールを確認する。近場にある映画館はそれ程遠くない。ジャンルは乏しいが行く価値はある。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

昔から言うだろう、恋は盲目って、

くっそ、ならばいっそ本気で盲目にしてやろうかこのヤロー

 

俺は映画館にてそう思う。

何故か、理由は簡単今は恋愛映画しかやってなかった。周りはカップルだらけ…分かるだろう?カップルしかいないのだ。

しかもそいつらは時と場所関係なくイチャイチャイチャイチャイチャイチャ発情期か!

 

全く、だからリア充は…マジで爆発しろ!俺のいない場所で!!

 

心の中で中指を立てる。

 

待ち場のソファーにカップル、壁にカップル、トイレにカップル(海老名さんが喜びそうだ)、カップルカップル…ついでに隣の席にもカップル、

スクリーンの中にもカップル…

 

二次も三次も関係なくカップルに襲われている現状……死にたいな、

 

 

あー、胃が痛い。砂糖を吐きそう、

 

 

そう思っていると隣で心が俺に呟く。

 

「なんか、居づらいですね。此処」

 

「まぁ、恋愛映画だしな…」

 

「そうですね、、、…って、あれ、もしかして他の人から見たら私達ってカップルに見えるんですかね〜?」

 

「…いや、そんな事ないだろ、」

 

 

悪戯っぽく言う心に俺は真顔で返す。

 

「…なんでですか?」

 

「そりゃ、釣り合ってないだろ?俺たち…」

 

「釣り合って…って」

 

「人間は否が応でも見た目を重視する。俺たちは相場が合ってねぇんだよ。まぁ、お前と釣り合うやつなんかそうはいないと思うがな?」

 

「…むぅ〜」

 

なんでだろうか、心が少しむくれる。

 

目をスクリーンに戻す…

次の瞬間、心の目を封じた。

 

「え、え?…目、目が見えませんよぉ」

 

「まだ、お前には早い!」

 

「いや、年齢的にはお兄ちゃんと同じでしょ!?ねぇ!」

 

 

しばらく目を隠して、例のシーンが通り過ぎるのを待った。

ったく、面倒かけさせやがって…

 

「…ん、ほい、良いぞ」

 

「…む〜、、、」

 

「す、すまん、」

 

ますますむくれる心に謝罪を入れるすると彼女はニッコリ笑う

 

「絶対許しません」

 

「なっ…!?」

 

「許してほしいなら、さっきの言葉訂正してください、」

 

そう言う心、さっきの言葉…釣り合っていないって話か?

 

「いや、あれは現に事実だろう?」

 

「事実じゃありませんから!」

 

珍しく心が怒っている。なんだって言うんだ。

 

 

 

「事実だったら、私、兄さんと一緒になんて思いませんよ、絶対」

 

 

 

「心…?」

 

「兄さんはいつも卑屈過ぎるんです。だから反省して下さい。」

 

 

何故だ?なんで心は今、泣きそうなんだ?

俺は自分の心に問いかける。

問いかけた所で自分には答えはない。

……だが、まぁ……

 

「わかったよ、」

 

俺がそう言うと心はニッコリ笑った。

 

「そうです、反省してください。」

 

 

 

「へいへい、」

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「今日は楽しかったですね!あのキスシーンは胸がギュッとなりました!」

 

「まぁ、確かにな。

最近では珍しい良作だったな、あれ」

 

帰り道、そんな話をしながら歩く。

とうに日は沈み、月が上がっている。歩く道はいつも通り、一寸の狂いもなく歩いていた。

 

「…はぁ、良いなぁ、あんな恋してみたいなぁ、」

 

心がそう言う。

 

「…お前なら男なんて何人でもひっ連れてけるだろ、」

 

「いや、私なんかに付いてくる男の子なんて居ないですよ」

 

笑いながらそう言う心に少しため息を吐いた。

 

「はぁ、お前、俺に言えた立場じゃないだろ…卑屈過ぎるんだよおまえも」

 

「…なっ、」

 

「それにお前に付いてくる男がいないって本気で思ってんのかよ?」

 

「え、だって今までそんな人一人も…」

 

 

親指を自分に向ける。

 

 

「じゃあ、俺はどうなんだ?」

 

「えっ……そ、それは、」

 

「義理でも兄貴だから?…見縊るなよ、確かになんの接点も無ければお前に付いていくなんて事はないだろう。だがな、」

 

彼女の瞳を見つめる。

 

「絆された瞬間、お前の負の部分をみてお前の前から消える事は絶対にない。」

 

「…………」

 

「だから、安心しとけ、お前を一人にはしないさ」

 

そう言うと俺は心の頭を撫でる

 

「……で、でも…あの時聞いてたでしょう?

私が愛した人はみんないなくなっちゃう…どうせ…」

 

「おまえが必要としてるんだろ?その愛せる人を」

 

「…………」

 

「だったら俺がなってやるから、必要だったら言えよ。何度でも愛してやる」

 

 

 

 

「っ…………///」

 

 

 

 

「家族として…」(ここ舞い上がりすぎて心ちゃん聞こえてないです)

 

 

「だから、安心して恋をしろよ。」

 

「う、うん///」

 

 

 

何故かその後、心との距離が異様に近くなった気がした。




自分の!!駄文が!!憎たらしい!!

クソがぁぁぁぁ!!!


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10話:義妹と初夜

 

「兄さん、一緒に寝ません?」

 

「………へ…?」

 

呆けた声が部屋に響く。最近、心との距離感が近い。

 

なんか良く解らないけど近いのだ。

学校の休み時間も前はあの子にも友達が居たしそんな構ってこなかったけど最近はそんなこと関係なく近い…なんなら俺の膝の上が特等席だと言わんばかりの近さだ。

昼休みも前までは一人一つ分開いていた間の席がいつの間にか埋まってた、

 

「…マジで言ってるの?」

 

「はい、マジです。」

 

「マジですか…」

 

心は真面目にそう返してくる。

…忘れてるかもしれないけど、彼女は″美少女″だ、それもかなりのレベルの…

最近になってやっと慣れてきたんだぞ、最初の時なんかそんなのが同じ部屋に居るって考えるだけでも死ぬかと思ったのに、同じベットしかも一夜をそのまま過ごせというのか?

 

「いや普通に考えて…」

 

「駄目ですか?」

 

話を途中で切られる。

 

上目使いでじっとこちらを見る心。彼女は背が小さいからか常に見上げる形になるのは仕方ないがこんな姿は正直始めてだ。

 

 

「駄目ですか?」

 

 

駄目押し観丸出しなそれは完全に保護欲をくすぐりに来ていた

 

 

「ぐッ……ど、どこでその技を覚えた…?」

 

「小町ちゃんです。こうすれば兄さんなんか一コロだって……」

 

「分かった分かったけど…もう二度とそれやるなよ。」

 

死ぬよ?俺が…

 

「…了承得ましたね。では」

 

「え、そういうことじゃ………ふぐっ」

 

 

 

「分かったと……言いましたよね?」

 

 

 

布団に入られ耳元でそうつぶやかれた、頭を思い切り縦に振る。

 

殺されるかと思いました まる

 

 

 

 

ーーーカチっとスイッチ音とともに暗闇が広がる。

 

「スゥ…………」

 

耳元で呼吸音が小さく聞こえる。

ベットが小さい分密着度は凄い高い。やばい、心臓音なんか聞こえてないよな…もうバクバクだ…

しかし、何故だろうか…なんでこんなに懐かれてるんだ…俺、思い当たりが一切ない(無いとは言っていない)

すぅ……はぁ……まじで、なんなんだこの状況…

 

「………眠りましたか…?」

 

そう聞く心

 

「……ネマシタヨ」

 

「寝てませんね…」

 

「こんな短時間で寝れるかよ」

 

「のび太君はいけましたよ?」

 

「あれは、漫画だろ…」

 

部屋内にことッと音がする。

背中にびくっと振動が伝わる。ふむ……

 

「……怖いのは苦手か?」

 

「え、、、い、いえそんな事は…」

 

「じゃあ、怖い話をしてやろう。」

 

「な、なんでですか!?」

 

俺は少し笑う。

 

「これは友達H君の話だ」

 

「本当にやるんですね!?」

 

「……昔々有るところにH君という小学生が居ました。その子はクラスでいつも一人でした。

天敵は体育の授業で二人一組になれという言葉です。

…しかし、彼は花が好きでした。だから、いつもクラスの花壇に行っては水をあげて、眺めていたんです。」

 

ぽつりぽつりと呟いて行く。

 

「ある時、その花壇がぐしゃぐしゃになっていました。彼が育てていた花は無残にも転がっています。もちろん先生は怒りました。

『誰があんな事をやったんだ。やった奴は出てきなさい』

……もちろん出てくる人なんかいません…」

 

 

 

「すると、ある″友だち″がHくんを指さします。

『Hくんが昨日花壇に向かったところを観ました』

、非難の目がH君に向きました。彼は必死に否定します。でも、信じてくれません。」

 

息がひそめられる。

次第に暗闇は迫ってきた。

 

「いつしか、H君はクラスの影からクラスの汚れに変わっていました……

汚れはいつか掃除されるものです………H君に味方はいません……

彼はどうやってこの状況を変えられるか…そんな事ばかりを考えていました。」

 

「…ある時、彼は考えるのを辞めました。

理由は簡単、言い訳すればするほど、自分を見る目はひどくなるからです。」

 

「兄さん…それって」

 

「彼は思いました。

人は人を否定する事でしか自分を主張出来ない。ならば、俺は自分を否定し続けてやろう、否定が自分を主張出来るチャンスだと言うのならば、俺は構わずそうしてやる。きっと、そうすれば自分を認めてくれる人もきっと現れるから…………って」

 

 

 

 

 

 

「そして…彼は…自分を信じられなくなり、汚れはカビに変色し…いつしか、自分という個体を見失ったのです。」

 

 

 

 

しばらく着いていたからだろうか背中の違和感はいつのまにか無くなっていた。窓から月明かりが照らす。

 

「それは……怖い話ですね、」

 

心は呟く

 

「まったくもってな…」

 

「優しいとか、そんなものじゃ表せませんね…それ……もう馬鹿ですよ。」

 

「優しい話じゃなかったはずだが…」

 

「…ええ、そうですね……馬鹿で、駄目で、どうしようもない話です。それに面白みもない…」

 

心がそう言うと、キュッと背の服を握る。

 

「……兄さん…こっち向いて」

 

少しした空間を埋めるように心は呟く。

身体は硬着したように動かない。それを無理に動かして少し首を後ろに向ける。

 

 

 

「…………………………んっ、」

 

 

 

 

彼女の息が唇をかする

 

それを確認した時には月明かりは俺たちを照らしていた。

 

唇に温かいものを感じる。

 

「……っ、」

 

…キス……か?

 

「…ファーストキスじゃありませんが…」

 

「…っな、何を……」

 

「……証です。」

 

心はそう言う、

 

「証……?」

 

「兄さん、私は貴方に好きと言う感情はありません。」

 

「………なんだよいきなり…」

 

「"好き"じゃないんですよ、もう…」

 

すると、彼女は俺を押し倒すように体を預ける。

 

 

「まだ分かんないんですか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛してます。」

 

 

 

「……………っ、」

 

 

息を詰めたように肺に空気が圧縮される。

神経は切り取られたように無感覚になり、心臓が音を鳴らす。

 

 

 

暗闇に…月はまだ登っていた。

 

                                                           



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11話:義妹と発覚(単機)

「ふん、ふふ〜ん、」

 

朝6時、比企谷小町は何故かいつもより早くに起きていた。朝ごはんを作るためだ。

この時間に作ればいつもよりプラス3品いや4品は下らない…

 

それより…はぁ寝不足っぽい、昨日何故か隣の部屋からガサガサ煩かったから眠れなかったんだよねぇ…

 

ふと時計を見ると7時を超えていた。

 

あ、しまった。たしか昨日お姉ちゃんが早めに起こしてくれって言ってたんだっけ。きせ…なんとか確認だかなんだかで…

 

 

仕方なく、作りかけの朝食を放置して、お姉ちゃんを起こしに行く…いつもならとっくに起きてるはずなのになんで起きてないんだろ…

 

 

コンコンッ

 

 

部屋の前に立ち、ノックする。

 

……返事がない。屍の様だ。

 

「はぁ………」

 

ため息を吐きドアを開ける

 

 

ギィィィーーーーー、

 

 

老朽化の所為だろうか…ドアから音がなる。

何せ築30年だ。いたしかたないだろう…

 

ベットが二つ。お兄ちゃんのベッドとお姉ちゃんのベッド、間はそう遠くない。いやしかし良く考えるとなんと無用心な…まぁお兄ちゃんはヘタレだから手を出す事なんか無いだろうけどさ。

 

…ふとお姉ちゃんの方をみる…あれ?お姉ちゃんが居ない…

良くみると一回り大きな影がある布団を見つける。

 

「………………………お兄ちゃん?」

 

呟くと布団がビクッと反応した。

 

 

「ま、まままままま、まさか!」

 

 

バサァと音を立てて布団を上げる。

 

 

二人の影、裸で抱き合う男女、

 

 

事後だった!?

 

 

 

 

 

「キャァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

ついでに言うと事前だった。

安心………じゃねーよ!!

 

 

 

「ヘタレ」

 

「ヘタレ」

 

「酷い言い草だな。寧ろ理性を保った俺を褒め称えるべきだと俺は思うんだ」

 

 

 

みんな罵倒にキレがある。もしかしたら死ぬかもしれないね。俺のsan値が…

 

昨日あれから俺は心を必死の思いで止めに入ったその間6時間に及ぶ、しかし、その弾みではだけてしまった服を脱いで洗濯したのだ。正直に言おう、その時点での俺は正気じゃなかった。物凄い眠気に圧倒され意識が朦朧としてしまい結果、裸で抱き突き。それにキョドった心がいざ本番に入ろうとして結果眠気にやられ沈んだと、そして今心が俺に対する気持ちを小町に伝えてキョドっている所にこれだ。

 

結果から言おう。俺はいまだ童貞です。純白は守られました!!やったね!

 

 

「ムーーー、」

 

「心、そろそろ機嫌なおせよ、」

 

「ついに本番って言う時にヘタレたお兄ちゃんなんかに機嫌を直す余地は無いよ。ヘタレお兄ちゃん。」

 

「ぐっ……だ、だけどあんなのまだ早いだろ。まだ18も過ぎてない若造がする事じゃ…」

 

「何言ってるの?最近はみんなヤってるよ」

 

「小町ちゃん!?ヤッてるなんて汚い言葉使っちゃダメですよ!!」

 

「…じゃあセっ…」

 

「やめなさい!!」

 

 

心が口を抑える…ふぅ、良くやった心…

 

 

「でもお兄ちゃん、心の事嫌いなの?」

 

「は!?何言ってやがる嫌いな筈あるもんか、 世界で小町と同列一位になるくらい愛してるよ。」

 

「愛ってそっち…じゃあ、なんで抱いてくれないの…?なんだか心自信なくなっちゃうよ…」

 

「大事だからこそ、そう言うのは好きなひt……いや、失言だ。もうちょっと経ったらな。」

 

そう言いつつ心の頭を撫でる。すると上目遣いで「うん」と言った。尊いです。

 

「………誰これ可愛いっ…てかお姉ちゃん敬語辞めたんだね。」

 

「え、あ、うん。なんかお兄ちゃんと張り合ってたら馬鹿らしくなってね。まぁ、もちろん学校とかじゃ敬語で行かせてもらうけど。」

 

最初の敬語無しで言われた言葉が「ヤらせろ!」だよ?…あの時程身の危険を感じた事は無いね。

 

「で、でも!抱いては貰えなかっけど、一回キスはしたよ。」

 

「あんな不意打ちキッスはキスに入りませーん」

 

「むー、キスはキスでしょ!だからお兄ちゃんの初キスは心の物!!」

 

「な、なんだと…?小町と戸塚の為に残してたのに…」

 

「……それは流石にキモいよ、お兄ちゃん。後で戸塚さんに謝っておいてね」

 

「…ハイ」

 

 

流石にキモかったと自覚はしている。

だが、間違えじゃなかったって信じてる!

だけどキモいのは本当で…あ、はいこれ以上墓穴を掘りたく無いんでだまります。

 

 

 

「じゃあ、朝ごはん食べよ。もう時間がな………」

 

「そうだな、お腹も空いたし。もう時間がな………」

 

「そうだね〜、もうお腹ペコペコだよ、遅刻はしたくな………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチカチカチ、チーン、

 

 

 

 

8時だよ、8時だよ。

 

テレビでミノ○ンタが言う。

 

 

時間…….

 

 

「時間ねーーーじゃん!!」




もってても無駄だからボツ11話の序盤特典としてつけときます。








ーーーーーーーーーーーーーーーー

妹…今までそんな存在を恋愛の対象に思った事はない。
小町然り、心然り、そんな対象に抱く恋心など偽りか、勘違いだ。

彼女が俺の目を覗く。真っ直ぐな目が俺を突き刺すように放たれた。

「……………っ、」

なんだよ、なんでそんな………優しい顔するんだよ。
意味が分からない、分かりたくもない、
息が出来ない。

月はいつもの様に俺を見つめる。

何か言いたげな彼女の顔は、何処か寂しそうに俺の顔を見つめていた。


「…愛してるって…お前」


そんな簡単に言っていい言葉なのか?………いや、分かってる。本気なのは…
さっきの言葉で理解はした…


「お、俺たちは義理でも兄妹だぞ…」


「知ってます、だけど、それ以前に男と女の関係ですよ。」

「…………」

ま、不味い、マジで何を考えて今この時にこんな話を持ち出したからわからない…

「…愛してくれるんですよね…?」


ん、どっかで聞いた気が………

たしか昨日…


ホワンホワンホワン

『おまえが必要としてるんだろ?その愛せる人を』

『…………』

『だったら俺がなってやるから、必要だったら言えよ。何度でも愛してやる』

ホワンホワン




……え、そう捉えたの?


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12話:義妹と距離感

奉仕部にての事

 

「神田さん…あなた比企谷くんと異様に近くないかしら?」

 

雪ノ下がそう言った。たしかに、昨夜から異常に距離が近かった。以前は近いは近いが人前では絶対に見せなかった、だが今ではもうこの距離、只今俺の足にストンと座っている。何処でも構わず俺との距離感がおかしい。というのが実だ。

 

「何があったのー、2人とも、元から仲良いなぁーとは思ってたけど」

 

「い、いや、ただ自動的に…な、」

 

「自動的って何かしら?まさか…」

 

そう言うとケータイを取り出す雪ノ下。

 

「や、違う!そう言うのじゃない、」

 

「……じゃあどう言うのかしら?」

 

「…ぐ、うん、こう言うのだとしか言えないな…」

 

ピッ、と雪ノ下がボタンを押し始める、辞めてもらえないですかねぇ、すると心は思いついたように雪ノ下を見る。

 

 

「雪ノ下さん。」

 

「……何かしら?」

 

「まさか、雪ノ下さんも……ですか…」

 

へ?何が?

 

「………まさか、貴方も…?」

 

え、わかったのですか?雪ノ下さん…?

 

「負けませんから!」

 

何口走っちゃってんの?ココロ・サン

俺は困惑しながら二人を眺めた。なんか寒いなぁ、そう思いつつ、俺は紅茶を飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

「…はぁ、」

 

マイベストプレイスでイチゴ牛乳を片手に座り込む。

周りには誰もいない。部活を途中で抜けてきたのだ。テニス部やサッカー部が練習しているのをしばらく眺めていた。

 

…最近、プライベート空間と言った物が全くない。

 

一人でいる空間が限りなく少ないのだ。

自分の家でも、学校でも…細かく言えば自分の部屋でも…

 

「………はぁ、」

 

ぼっちが恋しい…

 

今の状況は普通ならかなり嬉しい物なのだろうがそんな青春ラブコメ的イベントは俺には似合わない。否、そもそも選ぶ相手を間違っている。神は気でも狂ったのではないだろうか、俺は軽く自分の正気を疑った。

 

「…にしても、愛してる…か、」

 

昨日の事を頭の固唾に思い浮かべる。

ため息しか出ない

…彼女は美少女だ。100人中100人がきっとそう答えるだろう。もしブスといった奴がいたらぶん殴るが…

そんな子が俺に想いを寄せている。それが

信じられないし、勿体ないとさえ思う。

 

あいつだったらきっともっと素晴らしい人間を見つけられるだろう。

 

 

この様な色々な思いが頭を覆いつくした。

 

 

とりあえず、落ち着きたかったのだ。

背を壁に置いて深呼吸をする。

幾分か肌寒い空気が襲う

 

 

 

「…俺は彼女を知らない」

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

ーーーおい、こいつ初めてみたいだぜ?

 

 

ーーーおぉ、マジかよ。最高だな。

 

 

 

やめて…やめてよ!!

 

来ないで、触らないで、

 

イヤだ!いやだよ!!

 

 

ーーーーーーお兄ちゃん…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー目が覚めたかしら?」

 

声が聞こえる。

 

目を開けると、雪ノ下さんと由比ヶ浜さんが何が心配そうに私を見つめていた。いつの間に寝て寝てしまっていたのか…

 

「あ、雪ノ下さん…?由比ヶ浜さん?」

 

声を掛ける。

 

「心ちゃん大丈夫?…魘されてたよ。」

 

由比ヶ浜さんが心配そうにそう言う。

 

「え、あ、はい…」

 

「…大丈夫そうには見えないわね。」

 

雪ノ下さんが何か言いたそうに呟く。

 

 

「……………………ずっとやめてだとか触らないでだとか…貴方は…」

 

 

「貴方は…」ここまで行って止める。私が俯くと雪ノ下さんは言葉を失った様だった。

 

 

 

「……そういえば。兄さんは…?」

 

私が呟くと由比ヶ浜さんは言った。

 

「あ、ああ、ヒッキーはトイレに行くって出て行ったよ。もう10分経ってるからそろそろ帰ってくるんじゃないかな?」

 

 

「そう……ですか…」

 

 

 

自分の手を握る。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

あの子は元気だろうか。

 

 

僕の鞭が無くても元気にやれてるだろうか…

 

 

 

 

 

 

あ、そうだ。

ここを出たら一番に会いに行こう。

 

よろこんでくれるかな〜

 

 



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13話:義妹と子。

「……なぁ、八幡。心ちゃんと仲良くなったのは良いんだが…

 

近くね?」

 

夕方、心と二人でテレビを観ていると珍しく早く帰ってきた親父がそんな風に言う。

因みに今俺は心の膝枕を楽しんでいます。

 

「おかしいだろ!!なんなんお前ら!義兄妹の距離感じゃねーよ!恋人のそれと同じか、それ以上だよ!!」

 

愚痴の様に怒鳴り始めた親父殿はどうやら酒に酔っている様だ。こんな真っ昼間から…

 

「こ、恋人って…///しかもそれ以上って///……夫婦///」

 

真っ赤になっている心を見て親父が察した様に俺を見た。

 

「……なんだよ…」

 

「いやぁ、いつの間にか息子が大人になってと思って、まさかヤるとこまでやった感じ?」

 

「いやねえよ、……………………まだ…」

 

「ほぅ…まだね…マァ⤴︎ダァ⤵︎ね…」

 

ウゼェ……

 

「父さんなんかあれだよ?母さんとあれだよ?いっぱいあれだよ?」

 

「うっせーし、そんな話聞きたくねーよ、

息子に何で張り合ってんだよ。なんだ?まさかまた母さんと喧嘩でもしたのか?」

 

「いやそんなんじゃねーし、ただ口聞いてもらえて無いだけだし」

 

マジで何やったんだよ…、あの温厚(大嘘)の母さんに口聞いて貰えないって…

 

「ま、ま、まぁ?俺には?小町居るし…」

 

「とりあえずお前は母さんと小町どっちにも謝れ。」

 

そう言うと親父はガックリと項垂れる。

はぁ、もうちょっと反省しとけ。

 

「ねぇ、ねぇ、八くん。」

 

「はいはい、なんだよハチくんって、」

 

「ウチの方針です。」

 

「方針ってなんだよ。なんかメタい空気したよ。」

 

「それよりも「まだ」ってなんでですか?」

 

不思議そうに心は聞いてくる。

 

「……………?」

 

分からない。何が言いたいんだ?

そう思っていると、次第に恥ずかしくなってきたのか心は両手で恋人結びをしはじめた

 

 

 

 

 

「…本当に「まだ」で良いんですか///」

 

 

 

 

 

 

「「………っ!!」」

 

 

親父がガバッと頭をあげる

真っ赤になった心を見て死にそうになる俺

そして今にも蒸発しそうな心

 

「…おおお、俺たちは義兄妹だよ、?

それにまだ17だしさ、早いとおもうんだ!」

 

 

 

「…何を言っている八幡」

 

 

 

キッと親父を睨みつける。

気が付いたらゲンドウポーズをしている親父が目に入った。

 

何…やってん…の…?親父…

 

「…フッ、出撃。」

 

「何を…?」

 

「乗るなら早くしろ…でなけれぱ帰れ。」

 

「いや、帰ってるんだが…」

 

「乗りなさい。シンジくん貴方は何のために此処にきたの?」

 

「いや、帰るためだけど、心ちゃん?え、このノリにのるの?シンジくん誰だよ。」

 

「駄目よ逃げちゃ、お父さんから…何よりも自分から」

 

「逃げるも何も八方塞がりなんですがそれは?」

 

プルルルル…

 

 

「………例の奴を…」

 

 

バタッ

 

 

「小町!!(ちゃん!!)」

 

「小町…?いつ帰ってきたんだよ。」

 

「ぐっ…うぅ…乗らなきゃ」

 

「「「逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」」」

 

「いや、それ俺じゃなくみんなでやんのかよ。」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「こんな茶番に付き合ってられねーよバーカ!」

 

 

バタンっ、

 

兄さんが拗ねて自分の部屋に籠もってしまった。嗚呼、あそこ私の部屋でもあるのになと思ったが言わないでおく。

後で兄さんで遊ぼ。

 

「いや、にしてもあの子があそこまで惚けるとは…子供の顔を見るのが楽しみだな!」

 

父さんの声が聞こえる。

 

「そ、、そうですかね?私はあまり欲しいとは思わないですが…」

 

要らないわけじゃない、でも嗚呼…今は言わないでおく

 

「お?お姉ちゃんまさか子供とか嫌いな感じ?」

 

「い、いえ、好きでは有るんですが…ちょっと早いかなって…」

 

私がそう言うとお父さんがちょっと考えたように言う。

 

「…まぁ、現実的には…ね?でも子供もいい者だよ。八幡がいて、小町がいて…実際俺は寂しかった事なんかない。まぁ、大変なこともあるけどね、それも一人でいちゃ出来ないことなんだから…」

 

「…そう…ですか…」

 

不意に、少し欲しいと思ってしまった。

 

…お兄ちゃんと私のの子か……もし出来たら…どんな子になるんだろう…

 

 

 

 

私はなんとなく…お腹を摩った。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

私に子供は出来ない…

そう父さんが言った。ろくに病院に行かせてもらえないから元お医者さんだったという父さんの言葉を信じるしかない。

 

あの日からだ。あの日私が全てに押しつぶされた日。とうに絶望は味わったつもりだったけど、あれ以上の地獄を…私は味わった事がない。

 

人であって人では無い。昔から父に言われてきた言葉だ。自分は母さんの出来損ないだって…

察するに父さんは母さんを本当に好きだったんだと思う。

好きだから、中途半端に母さんに似た私を許せなかったんだ。

母さん私を産んだ時に死んだ。

それも父さんが私を憎んでいる事の一つだろう。まぁ、多分父さんは私を憎んでいることに気づいてないだろう。

 

 

 

 

 

「…兄さん………」

 

 

 

 

 

 

 

「出来るなら…私は貴方の子を……」

 

 

 

 

否、意味がないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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14話:義妹と…フフっ、

ピノ美味しい。
授業がぁぁ!!


ある休日。リビングから部屋に戻ろうとソファーから立ち上がり歩き出すとトイレら辺で声が聞こえた。お兄ちゃんの声らしい。電話をしてるようで一人で会話している

 

 

「…、言…わかり………言……」

 

 

電話である事ははっきり分かったけど何か籠ってて音が聞きにくい、

 

 

「ーーー愛してるよ。」

 

 

「っ…!?」

 

 

 

 

な、な、な、何を言ってるんだろう、あの人は…!?

色っぽい声でたしかに「愛してる」と聞こえた気が、でもたしかにお兄ちゃんの声だ。

 

 

「じゃあ、後は宜しくお願いします。」

 

 

そう言うと話し声は途絶えた。

慌てていると暫くしてガチャっと扉を開ける音が聞こえる。

 

 

「ん…?心か、どうかしたか?」

 

 

何もない様に惚けた顔で私に向かい合う義兄。

 

 

「なんだ?相談か?」

 

さっきまであんなに色っぽい声で"私"以外に愛を囁いていた、あの声で私に話しかける。

 

私に無断で誰かにあんな事を…

 

あの夜、あの時、最初だったのは、私の筈なのに。

 

 

 

 

、、、あ〜、そう言う事ですか。

 

 

 

 

「…ん?なんだ…?急に冷や汗が…。」

 

 

 

 

兄さん貴方は、私の知らない場所で。

 

 

 

「え、笑顔が怖いんだけど、、、?心さん…?」

 

 

 

フフフ、そう言う事ならこっちにも考えがあります。

 

 

 

「いえ、なんでもないですよ。」

 

 

 

 

そう、彼に笑いかけた。

 

 

 

 

 

 

…ユルサナイカラ。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

怖い。

 

ってか怖い。

 

なんなのあれ?何あれ凄い怖い。

 

 

 

今朝、雪ノ下さん…つまり雪ノ下雪乃の姉、雪ノ下陽乃さんに電話をかけられた。

まぁ、いつも通り適当に話を振られるのを流すのだが、

 

「ねぇ、比企谷くん。」

 

「何ですか?」

 

「この間ね、面白い物を見ちゃったんだよね〜、比企谷くんが可愛い女の子と歩く所…あれ誰なの?」

 

「あ〜、前言ったでしょう?義妹出来たって、それですよ。」

 

「それにしては仲良かったけど?まあ良いや。この間頼まれた"あの件"だけどさ、お礼まだだったよね?」

 

「お、お礼ですか…?と、とりあえず聴きましょう…」

 

「「愛してる」って言ってくれない?私最近色恋沙汰から離れちゃっててさ〜、ちょっと気分だけでも良いから感じてみたいって思うの」

 

「気分だけって…俺の愛してるにそれだけの価値ありますか?」

 

「あるよあるよ、ありまくるよ〜、私の冷え切った慈愛の心が暖まり過ぎてマグマに溶けるくらいあるよ〜、それに雪乃ちゃん辺りを揶揄うのにこれ以上の素材無いからね〜」

 

「本音漏れ出してるよこの人。」

 

「…で?言ってくれるの?くれないの?」

 

「ま、まぁ、雪ノ下さんには今回頼りっぱなしでしたからね…」

 

「うん、そうだね〜、何度即死トラップに引っかかりそうになったか分からないよ。」

 

「…即死トラップって何すか…そんなに危険だったんすか…?」

 

「うん、でも下手したら雪乃ちゃんにも被害が及ぶからね。私頑張ったよ。」

 

「本当にありがとうございます!」

 

「…で…?」

 

「…ぐっ、わかりました言いますよ、言えばいいんでしょう?…」

 

 

 

 

 

「ーーー、愛してるよ。」

 

 

 

 

「……っ、き、効くねぇ、」

 

「薬かなんかですか…?

じゃあ、後は宜しくお願いします。」

 

 

 

まぁ、あの後悶えて水道に足をぶつけたのだが。

 

なんかあれから心の視線が、笑顔が、怖い。

ハイライトが消えていて、何かずっと壊れた様に笑みを浮かべている。

 

 

「どうしたんだ?」と聞いても、

「なんでもありませんよ。」と敬語で目が笑ってない笑みを浮かべる

 

 

小町に聞いても分からない見たいだし、

 

 

もしかして、誕生日忘れた?…いや、そんな訳ない。妹達の誕生日は朝起きたら毎日音読している。(心に引かれた前科持ち)

 

 

 

約束事…も無いよな、妹達の予定は全て携帯のカレンダーに書いてある。(自分のは無い。)

 

 

 

じゃあ何をした…?分からない。あのままじゃ俺を殺しかねないぞ、

 

 

 

 

 

俺…まさか死ぬんじゃ…?

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

お兄ちゃんに彼女かぁ〜、雪ノ下さんとか由比ヶ浜さんは無いよねぇ、告白したら一目散に私たちに言いそうだし。

 

となると外部の人かぁ〜、

 

だったら比較的、

 

 

 

 

殺りやすいな、

 

 

 

 

 

 

 

 




なお、この状況が最終回まで続く模様。
ヤンデレエンドは無いからね!!


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番外:義妹の親衛隊。

なんとなく書いた
あ、今日は2話連続だから前見て前


最近気に食わない奴がいる。

俺は寒川優斗、普通and普通の高校生である。

そんな普通の日常がつまらないとは思わないが、こうふと、非日常を見るとそれが時々ほしくて堪らないなんて事があって。

 

そんな非日常は昼休み、窓を見ると広がっていた。

 

 

 

壁に寄り添う二人の男女、

どちらも俺は知ってるし、どちらも俺を知らない。

 

 

冷たい風が吹いている。少し肌寒さを感じた。ここですら寒いんだ。向こうはよっぽどなんだろうと少し同乗しようとしたが、よく見たら0距離でビッタリだったのでギョッとした。

 

「…くっそ、」

 

気に食わない。

葉山になびかない女も、その女に尽くされているあの男も、、、

 

別段何をしようかと思ってる訳じゃない。

むしろ応援する。あいつらに手を出そう物なら本気で殺す程に。

気に食わないが、尊いものだ。

 

「………副総隊長。」

 

背から声が聞こえた。

 

「ああ、そんな時間か…」

 

俺は背に向け、歩み出した。

 

いつだったか、ある男が彼女に告白したらしい。そいつ曰くこっ酷く断られたと言う。そのとき恐怖を味わった。あれは危険なモノだと判断したと彼は言った。

それ同時と保護欲が沸いたらしい、不安定な状態の彼女を助けてやりたいと。

だが、彼女に自分の顔は悪い意味でしられている。それで彼はふと考えた。

 

 

組織を作れば良いと。

 

 

 

神田心を守る組織を…

 

 

正直、この時点では神田心を守ることしか考えていなかった。

身体さえ守れればそれで良いと、

だが、ある時ふと、休日、義兄妹仲睦まじく過ごす彼女らをみて感じたのだ。

こいつらくっ付けなきゃダメだ。

 

尊いし何より…尊いっ!

 

 

 

 

と言う事で、組織が出来上がった。

 

 

ガラッ

ドアを開けると広い教室に机を並べ数十人と言う人が詰め寄っていた。

 

 

「副総隊長…来たか。」

 

総隊長はサングラスをかけなおし、そう言うと周りを一周する。

 

「皆、よく集まってきてくれた。

我らが最初の隊会議な訳だが。最初に、我ら親衛隊はただひたすら彼女だけを守っていけば良いわけでは無い。比企谷八幡、奴は正直憎き敵だ!

……だが、あの空間は比企谷八幡でないと生み出せん。比企谷八幡しか、彼女を救う事は出来んのだ…。彼はきっと彼女を救うだろう。だから我らが守らねば。あの二人を守らねばならんのだ。

隊員達よ立て!我ら”八オリ親衛隊"の底力!奴らに見せてやろうぞ!」

 

「「「ウォォォ!!」」」

 

"八オリ親衛隊"

それが俺たちの名前だ。

 

八幡を助け。オリヒロを守る。

 

 

シリアス?知るかぶっ飛ばしてやるよ。

 

 

それくらいの勢いで行かなくちゃ、やってられん、

 

 

 

みんな同じだ。八オリが見たいのだ。メタい話そうじゃないと話進まないのだ。

 

 

 

総隊長も初期の頃はガリガリのヒョロヒョロだったが、最近では過度な筋トレをしまくり、筋肉モリモリマッチョマンの変態だ。

 

今や影でオリアンチ殺しのターミネーターと言れてる。

 

「しかし、片っ端から救ってたんじゃ何も変わらん。策を講じなくては…」

 

総隊長が考えると一人手を挙げる。

 

「はい!」

 

「第二アサシン部隊隊長のイヴンラハドだったか?言ってみろ。」

 

「はっ、結婚すれば良いと思います!」

 

「たわけっ!!そんな簡単に結婚できたら楽で仕方ないわ!はよ結婚しろ!!

次っ!」

 

また手が挙がる。

 

「はい!」

 

「…第00MS部隊隊長の二宮か、言ってみろ。」

 

「はっ、結婚すれば良いと思います!」

 

「わかるけど!分かるけど!!今は結婚から離れて!」

 

 

「え〜、でもどうせ結婚するんでしょ?」

 

 

「っぐ、ま、まぁ…」

 

総隊長ェ…

 

「すいません。私から一つご報告があります。」

 

俺は手を挙げる。すると隊長は指を刺した。

 

「副総隊長…なんだ?」

 

「実は先程、あの二人を監視…及び守護していた所。なんだか最近、距離感が近くなったと感じます。やはりあの夜からでしょうか?」

 

あの夜、あの夜はなんだかいやらしい雰囲気になっていたのは知っている。音声だけ撮ってた。まぁ電池ギリギリで同じ布団に入ってキスしたとこまでしか知らんが。

野郎ぶっ殺してやる!って奴が続出したから大変だったわ

 

「ああ、それは俺も思っていた。しかし、距離感が近くなったか…少し問題が起きそうだな。」

 

「やはり、例の男が…」

 

害悪ストーカーが出る。

 

「ああ、最近行動が落ち着いてきたと思ったんだがな…何やら、動き出した様だ。我々側からも防衛体制を整えなければな…」

 

「彼の行きつけのゴミ漁り場に即死トラップ引っ付けましたけど音沙汰無しですねぇ〜、それに周辺のトラップも全て破壊してありました。」

 

第6部隊プレデター隊隊長コードネーム"スカー"がぼやく。

 

「まぁ、プレデター隊としてはあのトラップは序歩してあげたに過ぎないけど

…で、あれを相手にするとして、副総隊長、奴を事前に仕留めるんですか?なら手をかしますが…」

 

「いや、あれはまだ脅しだけで何もしていない。手を出した方が負けと言う事を見せつける。潰すなら徹底的に潰すさ、社会的にも身体的にも…な、」

 

「やっぱ、副総隊長は俗っぽいですよね。」

 

「言ってろ」

 

俺はそう返すと、少し項垂れた。

目を開けると開いた席が一つ。

 

「そういえば三番隊がいないが。どうかしたか?」

 

「ああ、あの戦闘狂共はいつも通り付近の暴力団制圧です。あそこら辺はデートスポットとしては最高ですからね。潰して置いて損はないでしょう。」

 

「ふむ、なんか頑張ってんなぁ…」

 

「そりゃそうですよ。あそこの隊長、比企谷の幼馴染みですから…別アースでは。」

 

「別アースかよ…」

 

アース、、地球、つまり並行世界の事だが、これは前に本人曰くとつく。つまりなんの証拠も確証もないので適当に取ってもらっても良いとしている。

俺ぇ〜並行世界では〜神田心さんの彼氏だったんだとのたまった野郎をぶちのめしたことがあるが故である。

 

「…うむ、考えも、方向性も決まらないな、」

 

まぁ、そうでしょうね。としか言えない言葉を総隊長は呟いた。

まぁ、そうでしょうね。

 

「まぁ、そうでしょうね。」

 

「…ふむ、とりあえず、今日も張り切ってパトロール行くぞーー!」

 

 

 

「「「「「オー!」」」」」

 

 

 

ほんと、テンションだけは高い組織である。

そんな空気が俺は好きなのかも知れない。

 

 




本編出番はほとんどないかも…裏工作ばっかりやってて


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オリキャラ紹介

☆神田心:

子供の頃から母が死んだ原因として父親から虐待を受けていた。それがきっかけで基本的男が嫌い。しかし、表に出すことが少ない為周りには気付かれない事が多い。なお、彼女は気付いていないがかなりの美貌の持ち主、故に昔からいじめられたりしていた。

中学生の時、初恋の相手あったとある男子学生によって性的外傷を負った事がきっかけでさらに男子への恐怖心を抱く。因みにこれがきっかけで女性的機能を失った

と思ってる。

(設定として性的虐待を父親にされていたとか考えたりはしたが多分引かれてしまうので消した。)

因みに父親と比べ精神的には強いは強いが比企谷八幡という絶対的な人間がいる今、それを失えば父親にと同じ道を辿ります。

多分設定は増えるか変わる!

 

 

 

 

☆神田春翔

心の父親、妻を溺愛していた。

しかし、妻は身体が弱く出産を機に亡くなってしまう。妻には娘を大事にすると伝えはしたが、元から精神が弱かったので、どんなに頑張っても良くならない生活などの現状から、病んでいった。

自分では娘を大事にしているつもりだが何処かで憎んでいる、しかし、それの一切に気付いていない。

因みに、かなりの過保護。娘を基本的に学校と家以外には行かせない様にしたり、テレビや新聞等の俗世的異物には触れさせもしない。痣などを見られるのを恐れたのか病院にも行かせた事がない。(まぁ、ほぼ外へ出ないので風邪すらあまり引いた事がないが)

(没案として妻と兄妹関係であったというのがあります。が特に兄妹であった意味が無いのでやめました。)

多分設定は増える!

 

 

 

☆神田美波:

心の母親それ以上でもそれ以下でもない、今名前を考えたから適当です。なんか、ぽいじゃん。

後、夫が娘を虐待していると知ったら片手で夫を捻り殺す事が出来るほどには強いです。たしかに身体は弱いですが、筋肉が全てそれを無にする。

つまりこの人にいくら設定を載せても死んでるのであんま関係ないです!

(今考えた設定としてなんかの世界チャンプで帰ってこれないとか考えたけど必要性を感じなかったらんで殺しました。)

 

 

 

 

☆???(心の初恋の相手)

元々、神田心とは普通の友達同士で良く彼自身の幼馴染と三人で過ごしていて仲も良かったが、覚悟を決めて幼馴染でもある初恋相手に告白した所、彼女は実は同性愛者で神田心に恋心を持っていた事を知る。それがきっかけで神田心に嫉妬心を抱いたが、ある時その初恋相手が心が好きな人は彼だと知ってしまう。

彼女は例の如く彼に嫉妬し、嫌った。

故に彼は神田心を嫌い否定した。

因みに上記で彼が襲ったとしているが実際は地域の不良グループがその間に入り込み彼自身は手を出していない。(つまり勘違い)まぁ、見てただけで何もしなかった彼が悪いが…つまる所。

 

ナズェミテルンディス!!

 

ってとこ。

出番ないけど、心が葉山が苦手な理由。

 

 

 

 

 

☆神田ナツヲ

 

ふと、今、一瞬思いたった実兄

でないかもしんないし出るかも知んない。

まぁ、今のところは兄妹なんかいなかったからいない。

 

 

 

 

☆???(ストーカー)

一応言うがまだ設定を考えてない。

てか、出したは良いが、なんでああなったのかは、これから考えるつもりだった。

とりあえずは中身がないお人形さんです。

(後日:設定はもう出来上がってたりする。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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15話:義妹と彼女探し…ぱーとわん!

「はい、あーん。」

 

「ほえ?」

 

昼休み、教室にていつもの場所へ行こうと立ち上がろうとする俺に心はそうやってフォークに刺したハンバーグを向ける。

 

周りの皆んなも何が起こってるかわからない状況でシーン、、、としていた。

 

「だから、あーん、」

 

「え、あーん…」

 

モグっと口に含む。

うん、流石小町、うまい。

 

「ねぇ、兄さん…今日さ、此処で食べよ?」

 

「え?…別に良いけど…どうして…?」

 

「それは兄さんの彼j…こほん、とりあえず、食べよ。」

 

そう言い弁当を開く心にクラス全員が凝視していた。

 

「あ…ああ。分かった。」

 

とりあえず、了解する。義理とは言え妹の我儘には服従する達でね。悪く思うなよ。

中身は綺麗に整頓された。卵焼きやハンバーグが入っている。

 

「実は今日のお弁当…私が作ったんですよ〜」

 

その瞬間俺に向いていた殺気の目が弁当に向けらる。

 

「今なんて言った…?手作り…だと?」「あ、あれが伝説の…愛妻弁当…、くっ、なんて眩しい…浄化される様だ。」「まじっべー、まじっべー、」「まさかそこまで進んでいたとは…副総隊長…?副総隊長ぉぉ!?」「……萌えたぜ、萌え尽きたぜ…真っ白にな…」

 

なんか周辺が騒がしい、とりあえず何となく返す。

 

 

「へぇ、そりゃあ驚いた。流石小町だと思っていたが、まさかお前が料理とは…上手だ。」

 

「「「「「Kill you!!」」」」

 

全員から流暢な英語で死刑宣告された。

解せぬ。

 

 

☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー☆

 

 

私は神田心。今私は兄さんの彼女さんを探している。

 

今日兄さんが話した相手は大体わかる。平塚先生に戸塚さんに後、何処かで会ったであろう材木座さんって言う人くらい。

ついでに生徒会長である一色さんも居たが今回彼女さんを探すにあたって協力関係を結んでいる為とりあえずは除外しよう。

協力を仰いだのは雪ノ下さんと由比ヶ浜さんと一色さん。

この3人は少なくとも例のあの人では無いだろう。

 

全員、本気と書いてマジと呼ぶくらいのヤンデレさんだったのは驚いたなぁ〜。

(↑人の事言えない人)

 

とりあえず、今私は兄さんといつもは恥ずかしくてしない昼食を教室で食べると言う愚行に出ていた。…作戦としては私と兄さんのいちゃいちゃ具合を見せびらかし彼女さんを逆上させる作戦だ。

 

「……出てこないなぁ…」

 

「ん?何が?」

 

「ううん、何でもない。」

 

やっぱり兄さんは鈍感だな、なんて言葉を心に秘めつつ、兄さんの顔を見る。

 

私の料理を美味しそうに食べてくれてる……嬉しなぁ…

 

「…はい、あーん。」

 

「ん、あーん。」

 

パクッと私の上げたハンバーグを食べてみせる、その瞬間、幸せな気持ちになって次に次にと与える…

ふふ、餌付けみたい…

 

って、今私は何考えてたの!?

 

違う違う…私がしたいのはこんな事じゃ……

 

「はい、あーん」

 

「ん、あーん。」

 

 

 

 

……あ〜、もうなんかどうでも良いや。

 

 

 

☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー☆

 

 

 

「もう!何やってるの!?心ちゃん!」

 

「す、すいません…なんかやってたら楽しくなってきて…」

 

「理解は出来るわ…遺憾ながら…ね」

 

昼休みの終了間際、私は奉仕部のみんなに叱られる。一応、一色さんもいるけど私の話を聞いたら惚けた様に黙りこくってしまった。

 

「……センパイが…///」

 

ダメだこいつ、どうにかしなきゃ、

 

「とりあえず、ヒッキーに向けた殺気らしき視線は感じたけど、それ以外は特に何も無かったよ、」

 

空気を読む事に定評がある由比ヶ浜さんがそう言う。

 

「何の確証も得られなかったわけね…では、学校内ではない可能性も出てきたわね…

でも、彼の行動範囲は比較的小さいから分からないなわね…」

 

「同感です…私も兄さんが私や小町ちゃんを連れる以外で外に出かける事が全然じゃないですが見た事無いですから…まぁ前は良く一人で良く出かけてたりしていた様なので確証は得られないですが…」

 

「そうなの?それはそれでズルい気がするんだけど…毎日デートしてんじゃん。」

 

「デートって言ったって本屋に行ったり、話題の映画観たりですが…」

 

「ガッツリ、デートじゃん!?」

 

そう由比ヶ浜先輩が言う…あれ?デートって最後に♡な事して終わる事なんじゃ?

 

「比企谷くんの中学時代の同級生に聞くのが早いのでしょうけど。悪い意味で目立っていた様だし…あまり正確な答えが返ってくるとは限らないから…暫くは私達だけで調査するしか無いわね…」

 

 

「……そうですね。とりあえず今はそろそろ授業なので…失礼します。ほら由比ヶ浜さんも…」

 

「う、うん、ゆきのん。後で奉仕部でね…いろはちゃんも…大丈夫?いろはちゃん…?」

 

 

その後しばらく一色さんを慰めて私は教室に戻った。

 

 

 



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16話:義妹と彼女探し…ぱーとつー?

あれでもでない…これでも…ない……

 

ついぞ、例の彼女は出てこなかった…

奉仕部での活動が終わり、兄さんと帰りの道を行く。

 

ここで出てくれたら完璧だろうけど…

 

カバンが少し重くなる幻想に気づきつつ歩みを進めた。

 

「そういえばどうしたんだ?なんだか雪ノ下も由比ヶ浜も一色も…ついでにお前も様子が変だったが…?」

 

「え?あ、いやぁ…ちょっと…う〜ん…」

 

正直、話しちゃっても問題ないかも知れないと思いかけている…

いやいやダメだよ、きっと兄さんにも言えない事情があるんだよ、多分きっと…

 

「え、えっと…じ、実は一色さんが好きな人が出来たって…」

 

ごめんなさい一色さん!

多分後々ちゃんと誤解は解きますので!!

 

「…葉山だろ?」

 

誤解じゃなかった!?

 

え、えぇ…兄さんにあんなに反応していたのに、葉山さんが好きなの?

 

「え、えぇ…っと、だけど私達…ほら、恋愛経験が乏しいじゃないですか、

だから辿々しくなっちゃって…」

 

「ほぉ〜、由比ヶ浜あたりは豊富だと思ったんだが、あいつビッチだし、」

 

「兄さん…?女の子にそう言う事いっちゃダメですよ?」

 

「…ア、ハイ」

 

ジト目で睨み付けるとヘラジカの様に震えている兄さんが一つ、

 

あ、ダメだ。

 

そう思った瞬間だった。

 

 

次の瞬間、私は、兄さんの腕に抱きついた。

 

 

 

「ばッ、な、なんだよ。いきなり抱きついたりして!?」

 

 

 

いきなり抱き付かれて驚いたのか兄さんは声を荒げる。

 

「………ほんの少しだけ…こうさせてください。」

 

少し心に風穴が開いた様なそんな不器用な気持ちが私の中に残る。兄さんに好きな人が出来て、兄さんが私の前から居なくなるって考えたのが悪かった。

『じゃあな、』

って、言われる日がくるのが怖かった。

 

「…お、おう、」

 

兄さんは意味が分からないように私の頭を撫でる。

 

「いっぱい…甘やかしてください。」

 

「はい、はい、いくらでも甘やかしてやりますよ。お嬢様」

 

「本当ですか?」

 

「当たり前だろ。

妹のお願いを聞かない奴が何処にいる。」

 

妹のお願い…か、

 

「……義妹、でもですか…?」

 

「義理でもなんでも妹は妹だよ。」

 

兄妹……兄さんと私の間にはこの壁がずっと立ちはだかっている

 

あの夜、告白してもなお、その関係は薄れる事は無く。むしろ強まっていた。

 

しかし、私もこの関係を少なからず好んでいた。この関係なら少なくとも兄さんと離れないで済む、私を愛してくれる。

そして、何より今の私を見てくれる。

 

ーーー今まで外見で物を言われていた神田心にとってそれは破格の条件だった。彼の前だけは色眼鏡で見られず、内面だけを見てくれる。今まで欲しくても手が届かなかった愛をくれる。

 

 

しかし、基本的に彼女は男が嫌いだ。

 

兄である八幡以外にはまったくと言い程内面を見せない。

外には出さないが男子と話すことすら煩わしく思っている。だから傷ついたしつけた事がある。

 

対して義兄である比企谷八幡もまた内面を全くと言っていいほど見せない。妹達や奉仕部の人間達にもあまり内面を見せない分神田心よりも重症であり、それを自分自身で知っている。

 

故にこの関係は歪だった。

 

どちらも似たもの同士、だから分かり合えない。

 

どちらも傷ついた。だから愛し合える。

 

だが、この愛はきっと恋愛の類では無い。

この関係を一言で表すと言うならば

 

"傷の舐め合い"であった。

 

「………」

 

「………」

 

私と兄さんの間を風は吹き抜けた。

 

どちら黙って茜色の空を仰ぐ、

汚い事も、嫌な事も、綺麗な事も、優しい事も、悲しい事も、嬉しい事も、

全部嘘だったら良いのに、兄さんに会う前……あの時はそう思っていた。だけど今は私を思ってくれる人はいる。だから、もうこの関係を義理…偽物とはもう見たくない。嘘なんかじゃない、

 

本物だから、

 

 

「……ねぇ、兄さん…」

 

「…ん…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛してます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心臓の音は、激しかった。

 

 

☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー

 

 

『あ、ゆきのちゃーん?』

 

「…姉さん…、何かしら?」

 

『実はね、聞いて欲しい事があってね!』

 

「……?」

 

『これなんだけど、』

 

 

 

 

 

 

【愛してるよ】

 

 

 

 



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17話:義妹と大地に立つ

今回は短いし駄文ですいません。切るなら此処かなぁ、って思ったらこの通り、次回は頑張ります…
あとサブタイは…特に意味はありません


朝、比企谷八幡はとてつもなく眠かった。

というか最近はずっとこんな感じだ。

起き上がるとかならず隣のベットに心はいない。

片手を見ると綺麗な長髪が俺の腕に引っかかっていた。

 

「はぁ…またか、」

 

仕方なく手から髪の毛を取っていきため息を吐く。

しばらく目を擦り周りの寒さに肌を震わせると現実に目を向けた。

 

「1ヶ月前の俺が見たら発狂するだろうな」

 

となりにはあり得ないほどの美少女が一人俺の枕の半分を占領している。この小さいベッドの上に二人の男女、まず義理の兄妹でもなければ勘違いされる。否、義理の時点で兄妹でも勘違いされる。

このおかしな状況を俺はしばらく冷静に考えた。

 

あれ?兄妹ってなんだっけ?

 

これって恋人云々の関係じゃないの?

 

いや勘違いするなよ比企谷八幡!俺たちは兄妹だ!義妹に愛してるって言われても俺たちは兄妹だ。…だよな?

 

 

「…はぁ、まったく可愛い顔して、考えることはまさに狼だからな…」

 

 

俺をこの状況に抑え込むとはお前まさに悪女だな、なんて思いながら彼女の頬をふにふにと押す。

なんだよ、柔らかっ、

 

「むにゅ…に、兄さん恥ずかしいんですけど…」

 

ほっぺを押されながら目が覚めた様だ。

 

「ベッドを半分貸してやってるんだからこれくらい我慢しろ。」

 

「むー、だったらこっちも触らせてくださいよ〜」

 

「あー、、、、、、そのうちな」

 

「…兄さんって卑怯ですよね。」

 

「ははは、よく言われる」

 

しばらく心の頬を押したあと時間に気づきとりあえず俺たち向き直った。

 

「とりあえず兄さん。おはようございます。」

 

「…ん、ああ、おはよ」

 

心の目を擦りがなら言う言葉にこちらも目を擦りながら答えた。

 

最近もっぱら心が俺のとなりから離れようとしてくれない。ソファーに座っても必ず俺の隣に座るし、学校でもトイレや先生の手伝い以外基本俺のとなりに鎮座している。はっきり言おう、俺は一人の空間を失った。

まぁ良い、別に良い。心がそれで安心するようならば別に良いだろう。可愛いし可愛いし、可愛いは正義だよね!

 

だがしかし、お風呂に侵入しようとするのだけはやめてほしい切実に…

 

「あれ?かまくら。久しぶり。」

 

俺のベッドの上を見ると猫が一匹ぽつんと座っていた。いや、俺より心側の布団だが、ふとかまくらの頭を撫でながら聞く。

 

「お前がこの部屋にくるなんていつぶりだ?珍しいな」

 

「にゃー、」

 

触んなってことか。てめぇ、

 

「まったく、愛想がないな、」

 

「それは兄さんだけですよ。」

 

「さいですか、」

 

そんな会話をしながら撫でるとふと時間を見る。もうそろそろ時間か。

 

「お兄ちゃーん、お姉ちゃん!朝だよー!」

 

下から小町の声が聞こえてきた。朝ご飯が出来た頃かな。そういえばと心を見る。

 

「そう言えばお前今日目が覚めるの遅かったな」

 

「えぇ、じつは課題が中々終わらなくて、」

 

おっと聞き捨てならないことを聞いたぞ?

 

「…えっと、心さん?課題ってなんの話でショーか?」

 

 

「え、数学の課題ですけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オワタ

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

朝起きて身支度を整えようと洗面台に立つ。

 

「はぁ……」

 

雪ノ下雪乃は学校に行くのが億劫だった。数日前、姉から電話が来たのだがある事実が判明したのである。

 

神田さんが聞いたという『愛してるよ』と言う電話なのだが、

 

『あー、それ私〜、なんだか言ってもらいたくて電話かけたの。テヘツ』

 

だそうで姉さんだった。姉さんの声を聞くあたり悪気のわの字もなさそうだったが、つまりは私たちは見えない敵と戦っていたのである。はぁ、疲れた

ついでに姐さんが私にその事をみんなに伝えといてと伝言を残して勝手に切ってしまうと私は顔を真っ青にした。

 

「…私、殺されるかも…」

 

知ってる人は知っているだろう。みんな私も含めてその『彼女探し』話をしている時、修羅の顔であった。もう人を殺せるんじゃないかと言う程に、そのせいで数日たった今でもいまだに言えてないのだが、

 

時刻は7時半もう学校に行かなくてはならない。

 

、、、はぁ、行きたくないなぁ、

 

 



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18話:義妹と平和と不安

「神田さん、今日は一緒にお昼食べないかい?」

 

事の発端は葉山隼人が神田心をお昼に誘った事だった。

その一言でクラスの空気は凍る。事実彼、葉山隼人はクラスの人気者である、だがそれと同時にあまり表ざたには言えないが彼は一定数に嫌われている、その代表格がクラスの嫌われ者(最近は空気)比企谷八幡(周りにはそう認識されている)とその義理の妹である"神田心"である。

 

比企谷八幡は言わずもがな、神田心…彼女は以前彼を表立って拒絶したことがある。

 

今でも語り草になっているソレ以降彼は一切と言うほど彼女に接触してこなかった。

 

だからこの状況をあり得ないと思っていた生徒も多かったのだ。

 

「…葉山さんでしたっけ。ごめんなさい義兄とお昼を共にする約束なので」

 

「でもそればかりじゃ、友達とか周りの交流が図れないよ?」

 

「いえ、それは貴方が心配する様な事ではないですし、貴方とはあまり関わり合いが無かったですよね?」

 

彼女は淡々とそう言う。

たしかに彼女と葉山は一緒にお昼を食べる程の仲ではない、なんだったらまだ比企谷がお昼に呼ばれる方が自然だった。

比企谷と葉山は実は側から見ればそれなりに仲良い様に見える。時折、自動販売機の近くで話をしている二人を他生徒に発見された事もあるし、持久走だってなんだかんだ一緒に走っていたのを確認できた。

 比企谷八幡と葉山隼人は仲はいい、が意見が合わず嫌い合っているというのがクラス内の見解であった。

実際それは正しいのだろう。比企谷八幡はともかく葉山隼人は比企谷八幡を信用している。断じて信頼はしていないが。

しかし、妹の神田心は別である。男子を基本的に信用してないし、嫌いだし、実は陽キャグループを毛嫌いしている。一応由比ヶ浜の様な例外もいるが、それに目の前にいる葉山隼人はこころにとって陽キャ+男子という最悪な布陣である。

 

「そうか…確かにな、すまない足を止めさせてしまって、」

 

「…いえ、では」

 

愛想なくそう呟くと、がらがらがらと部屋を出ていく心にクラスの皆は見守った。

 

「どうした?なんかやけに教室が静かだったが、」

 

「兄さんが気にする必要はないですよ!」

 

なんて打って変わって明るい声が向こうのほうで聞こえる。…葉山隼人が二度も振られたか、葉山は静かにグループの席に戻ると弁当を開けた。

 

その姿を近くにいた女は面白くなさそうに見つめていた。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「眼福眼福、」

 

なんて兄さんはテニスコートを見ながらそういった。目線の先には戸塚さんが走っている。

 

戸塚さんを最初見た時は驚いたものだ。あの容姿にあの物腰の柔らかさである。

なんだったらそこら辺の女子ですら超越しうる、あの容姿はきっと国宝ものだろう。

 

しかし女子にすらあんな顔見せた事ない兄さんがあんな風になるなんて、女としては複雑ですね…

 

文字だけ見れば男性の方が好きな人なんだろうかと思うところですが、実際見ると分かってしまうのが辛いところです。

 

私だって少しは容姿に自信はあるのですが…

 

女の子とは色々複雑なんです…

 

 

そんな事を思いながら箸を進めると兄さんは黄色い缶を取り出す。

 

「兄さん…それ…」

 

私が指を指すと兄さんは軽くコーヒーを振った。

 

「マックスコーヒー、略してマッカン。千葉のソウルフードだよ。」

 

「でも良く甘すぎるって聞きますが…」

 

「何を、この甘さが良いんだろうが、人生は苦いから、コーヒーくらいは甘くていい」

 

それを聞いて私はため息を吐いた。

 

「…まったく、誰の人生が苦いんでしょうね?」

 

そう聞くと兄さんは明後日の方向に視線をずらした。

あの雪ノ下雪乃等部活仲間全員に好意を向けられてハーレム状態であり、側から見てあっまあまな人生を送っている兄さんにそれを言われたらこの日本の人の殆どが苦い人生を送っていると思う。

 

「しかし、まぁ、今日も、」

 

 

 

 

 

 

 

 

「平和だなぁ、」

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「おい、あのナントカ親衛隊って奴らがまた隣の組潰したらしいぞ、」

 

 

 

とある路地裏で柄の悪い男二人が話をしていた。深い夜に落ちる前の空はまだ薄ら青く周りが薄く見えている。

 

「ああ怖っ、いつウチが襲われるかわかったもんじゃねーぞ、まったく何モンだ?アイツら、」

 

「なんでもオリヒロを守り、ハチマンを助けるとかなんとか狂ってんじゃねーかって思ってたんだが、じゃああんな党勢作れるはずねーしな。なんかヤバイ宗教みたいで正直こぇな」

 

「だけど…だからってこんな場所で事務所の護衛って…あー寒っ」

 

ただでさえ寒い夜に組の常用のうっすいジャージを着て立っているのだ。

気温は0度を切っていた。

身体の芯から凍りつくほどに寒い、

しばらく体を温めようと手足を擦り付けると少し周りが明るくなった様に感じた。

 

 

「最近はオヤジも表に立つ事すらままならねぇ状況だしな、

俺たちヤクザもんには生きづらい世の中だよ、」

 

 

 

 

それは端の方から聞こえた。

 

 

 

「じゃあ、一つ俺と取引しないか?」

 

 

 

 

 

 

 

ゆったりと一目みてホームレスだとわかる男が一人、そこには立っていた。

 

 

 

 

 

 

 



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19話:義妹と〇〇コン

これ以上、この話で話を広げられ無い私を許してくれぇ…まじで広がんないの…
今回はひじょーに短いです。


放課後。

テスト前だからか、部活動は休止をしていて、学校がシーンと静かになっていた。ある日

頼まれていた先生への手伝いが終わり帰ろうかと廊下を歩く。心は先に帰っていた。

 

「なぁ、比企谷!」

 

後ろから知らない声がする。

 

「ん?」

 

「お前、あの神田心の義兄なんだろ?

心ちゃんの連絡先おしえてくれよぉ〜」

 

誰だよお前。

そんな事が最近頻発して起きるようになって来た。今まで俺に目もつけなかった癖に、今になって、心に付け入ろうとしている輩だ。

嗚呼、ウザい。

 

「誰だよ、お前」

 

「えー?同じクラスだろ!俺だよ俺!寒川優斗!」

 

「知らねえよ。」

 

「とりあえず、俺の連絡先渡しとくから」

 

男は俺の手に奴の連絡先であろうかみをポンと乗せた。

 

「しつこいな、絶対渡さないからな。ほら帰れ。」

 

俺はそう促し、無視を決め込み歩いて行く。

俺はああいった輩が嫌いだ。煩いし、煩いし、煩い。俺みたいなボッチにはああいうタイプは無縁であった筈だった。まったく心が転校してきて数ヶ月でこのネームバリューはやばいなとしみじみ思う。

 

「…あいつも苦労してるんだなぁ」

 

俺は自販機でマッカンを買いベンチに座るとそう呟いた。

少し前に此処に転入してから何回告白を受けたか、なんて事を何気なく聞いてみたのだが、あらびっくりその時点で両手じゃ数え切れない程受けていたのだ。その時は驚いたより先に身体の内からドロドロと煮えたぎるものがあったのだが、今再び思い出してみるとあれ?この子モテすぎて後々酷い目に遭うのでは?と思ってしまう。

 

もし、そうなったら俺は多分その"酷い事をした奴"を許せなくなる。きっと社会的に殺す事になるだろう。

 

正直にいう。

比企谷八幡は現在進行形で

シスコンを拗らせていた。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

優しいお父さんと

優しいお母さんと

優しい妹と

 

そして優しいお兄ちゃんと 

 

みんなで笑って毎日を過ごして、

みんなで笑って美味しいものを食べて

みんなで笑って美しい物を見る。

ある時、好きになった人と結婚して、

そして子供が出来て、

時が経ち、おじいちゃんおばあちゃんになって二人で一緒に沢山の孫に囲まれて笑って死ぬ

 

そんなささやかな人生、それが私の唯一の夢だった。

 

 

数ヶ月前まで私にはそのどの一つも手元に無かったのに、いつの間にか私の前にその全てが揃っていた。

 

優しい家族も好きな人も、みんなみんな

 

心の底から欲しかった物が今手元にあって、私は今幸せを噛み締めている。

 

今更だけど、信じられない。

 

私にこんな幸せな日が来るなんて信じられなかった。

だからだろうかこの恐怖は、何も無かった私にいきなりこれだけの物をくれたのだ。いつかこの幸せが滑り落ちるんじゃいかってそんな事を考えてしまう。

 

大丈夫かな、今日も私笑えてたかな。

 

 

私は頬の表情筋に触れながら、また笑顔を作った。

今実感できているのはこの感覚だけだ。この笑顔だけが、私が幸せだって実感させてくれる。理解されてくれる。

 

やっと、夢が叶ったんだって思わせてくれる。

 

だから、この笑顔が崩れた時きっと私は…私はまた失ってしまうだろう。

 

 

だから私は頬に力を入れた。

 

 

 

学校から比企谷家への帰路、いつもは隣に兄さんがいたのだけれど、今日は先生の手伝いとかで一緒に居ない、はじめての経験だった。

もう帰路は頭に入っている。

 

何ヶ月も歩いているんだ兄さんが居なくても一人で帰れるよ。

 

物凄い兄さんが心配していたけど、そんなに不安なのかなぁ、

ちょっとムスッとしてしまうが、兄さんの優しさはよくわかっているつもりだ。

兄さんは前まで自転車で通学していたらしい、けど最近はもっぱら徒歩で通学している、私が来たからって事はわかっているけどそれを聞いた時、心の底から愛おしい気持ちでいっぱいになった。

 

 

やっぱりカッコいいなぁ、兄さんは

 

 

そのいつも言ってる言葉に今日はいつも以上の愛を込めて放った。

 

 

神田心は現在進行形で

ガッツリ、ブラコンを拗らせていた。

 

 

 

「はぁー、早く帰って小町ちゃんとコーヒータイムしよ」

 

 

そう呟く私のとなりに黒い塗りワゴン車が止まった。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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20話:義妹の幸せ、義兄の心

後半は没ネタ集になってます。


分かってた。

分かってた…

分かってた……

 

こんな私にとって都合が良すぎる幸せ、こんな幸せが長く続くはず無いって、

人はその人の身の丈に合った幸せを譲受されるのが普通なんだ。

 

肌に強めに巻かれた縄が跡を付ける。

 

口にはガムテープが施され、目隠しをしっかりとされている。いかにもの慣れた手つき…常習犯か…

 

これは…逃げられないな、

 

 

「おい、目隠しを外せ、もういいだろう。」

 

 

男の声がする。

瞬間後ろから手が伸びてきて目についている布を取り払った。

 

一目でわかる廃墟、天井も地面もコンクリート詰めで出来ており、窓は一つも見つからない。今があれから何時間経ったのか、昼か夜かもわからなかった。

周りには中肉中背の男が3人座っている。サングラスに影が交わって顔がよく分からない、

 

「ふーん、中々良い顔してんじゃねーか、

ここは一つ…」

 

男はそう言うと手を私に伸ばす。

身体を身構える。

 

「辞めとけ、相手はガキだぞ。

それに気にいらねぇがあの野郎から傷一つ付けることがない様に言われてるからな」

「はん、なんだってあんな非力なガキにびびってんだよ。」

「びびってんじゃねぇよ。テメェはもう少し現実を見ろ。」

 

私に触れようとした男の手をもう一人がピッと叩き落とした。

"あの野郎"とは誰の事だろうか、どうせ直ぐわかる事か、

男たちは倫理観のカケラもないと言う感じではないが罪の意識は感じてない。仕事だからと割り切っているという風に見える。

そう言う人はタチが悪いと知っている。自然と震えているだろう私の手は少し寒い。

 

この感じ、懐かしいな。

 

半年前を思い出す。まだ兄さんの義妹ではなかった時の事を…

 

 

決して嬉しい訳じゃない。

 

 

だけど、私の人生はいつもこうだった。いつもこんな感じに狂ってしまう。

何というか諦めに近かった。このギャップが私の心を壊してしまう。

 

幸せが過ぎれば必ず絶望が来て、

 

絶望が過ぎればまた幸せが来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

……しあわせ……?

 

 

 

 

違和感。

 

私、本当に幸せを感じた事があるのだろうか、好きな人が出来ても、友達が出来ても、高ぶる感情はあっても平穏は無かった。

あれは幸せというよりも前振りだ。絶望の前振りなんだ。

 

 

 

じゃあ、"幸せ"ってなんだろう。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

帰路、暁に照らされる鞄を俺は見ていた。誰かが落としたらしい鞄だ。

 

鞄の横にはブレーキ痕が一つ残ってる。

カバンを落とした時、カエルのキーホルダーがタイヤ痕に干渉したらしく、バラバラに割れている。

 

知っている、俺が買ったキーホルダーだ。

 

義妹である心がなんか兄さんみたいだと笑っていたキーホルダーだ。

 

 

「………こころ…」

 

いつかこうなるかもとは思っていた。いつか別れてしまうかもと思っていた。

 

そんな"いつか"が何故か俺には当たり前の様に感じられていた。

 

 

おかしい事は無い、彼女は本当は居なかった存在なんだ。

 

そもそもの話、彼女の存在はおかしい。

存在そのものがイレギュラー、本来、存在感の化身とも言える"ヒロイン"達が居るのか居ないのかすらはっきりしないモブに代わってしまった程だ。

 

 

何故そこに居るのか、何故登場したのか、そんな事すら分からない周りの色彩と同調するテンプレートな"キャラクター"

それが神田心だった。

 

 

俺は運命とか希望とかはあんまり信じていない。

だけど、そんなもんが例え本当に有ったとしても、今ならはっきり言える、

 

アイツと俺は運命的な出会いなんかして無いと、

 

これが運命だったらそれはきっと嘘だ。

心が義理の妹になった時点から、全てが俺に対して甘くなっている。人間関係も、俺に対する風当たりも、敵の有無も、全てが甘すぎる。

 

 

神田心という女の子はきっとその甘さを感じたいが為の誰かのエゴでしか無かった。

 

きっと俺もそのエゴの一部だ。

承認欲求、不満、精神的趣向、性癖、この全ての欲求の代弁者

 

 

「愛してくれ」「優しくしてくれ」「一人にしないでくれ」「忘れないでくれ」この感情は俺の心から出てきた言葉じゃ無い、きっと、きっと、他の誰かの言葉なんだ。俺じゃ無い誰か、君か、僕か、私か、

 

 

この悔しい気持ちは俺から溢れ落ちた気持ちなんかじゃない。

誰かの行って欲しい、行かなくちゃならないと言う気持ちだ。

 

なら、俺の気持ちは?

 

 

 

俺の心は何処なんだ。

 

 

 

 

「…俺がアイツを助ける理由はなんだよ…」

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

Time???(2020/12/6)いつかの没ネタ

 

 

 

 

 

 

神田こころは意気込んでいた。

なぜ意気込むのか、理由は簡単、

今まで兄とは一緒にさまざまな事をしてきた。放課後デートを始めとして、一緒にお弁当を食べたり、ベットイン(健全な方)したり、き、キスなんかもしちゃったり…

そろそろ新しい初めてを作りたい時期なのだ。そう初めてを!作りたいのだ!

 

「ねぇ、お兄ちゃん…」

 

「ん?」

 

「一緒にお風呂入ろ。」

 

「ん、ああ」

 

 

お兄ちゃんはペラっと手にあった漫画の次のページを捲る。

 

「じゃあ、お兄ちゃんお風呂場いこ、」

 

「ああ、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………は?」

 

 

 

 

 

やっと気付いたようだ。漫画も手からズレ落ち私を凝視する。

 

「だからお風呂はいろ、」

 

「いや、いやいやいや、一緒にお風呂って何考えてんの!?」

 

「義理でも兄妹だよ?私たち、それくらい普通じゃん」

 

「それは小学生ならな!俺らもうそろそろ18になるんだぞ?」

 

兄さんは何故か狼狽えてる。まったく、兄さんはチェリーなんだから…

 

 

 

 

 

マッキーメモ/ 流石にお風呂回は…、僕は心をビッチにしたい訳じゃない、ここまで書いて名残惜しいけど没で、

 

 

/////////////

 

 

Time???(2020/1/30)いつかの没ネタ

 

 

彼女に初めて会った時、一番最初に思ったのは姉さんに良く似ている事だった。

声も、笑顔も、雰囲気も、死んだ姉さんによくに似ていて、180度全て見返しても姉さんにしか見えない。

 

僕は姉さんを愛していた。

 

人生の全てを通してでも彼女を守ろう、そう思えるくらいだったのに

 

 

マッキーメモ/ ストーカーさんの話、過去編をやろうとしたが、なんか姉の方のシスコンを書くとリアルの姉が頭に過ぎるから没、僕はシスコンじゃ無い。妹キャラが好きなだけだ。

 

 

///////////////

 

Time???(2020/9/17)コラボネタ

 

 

朝、目を覚ますと何か身体に違和感を感じた。何かカオスをカオスで埋めたてたそんか感じの違和感がふと頭をよぎる。

 

「あ、あれ……?」

 

部屋の構造が変わっている。

幾分か広くなった様な…、

 

周りを見渡し、やはり違和感のある物が見えた。

横にもう一つベッドがあるのだ。

 

「スーーー、、、」

 

誰かが寝息を立てている。

だ、誰だ…?

この感じ女の子…か…?

 

起こそうかと立ち上がると、「ご飯だよー、お兄ちゃん。お姉ちゃん達呼んできて〜」と下から小町の声がする。

…お姉ちゃん達とはこの子を指しているのだろうか、達って言う事はあと数人いるはずで…いつからそんな大家族になったんだろうか、ウチは…

 

「お、、、おい、小町が…朝だって…」

 

 

ベッドにいくとやはりというか女の子が居たので、肩を揺らす。これ痴漢にならないよな?

 

「…うん?、、、ふわぁ、、、あ、兄さん…おはよ…」

 

目を覚ました彼女は長い髪を靡かせながら起き上がる、初めてみたはずなのに見覚えのある美少女に少し困惑する。正直今まで見てきた中で1位2位を争う程の美少女レベルだ。

 

「お、おはよう…」

 

「……どうしたの?……あれ?なんか部屋なんか広くなってないですか?」

 

「………」

 

 

顔を見ていると何故かはわからないが名前が頭に浮かび上がる。

こいつは"神田 心"俺の義理の妹だ…

親父が連れ込んで来た少女で、少し前に義兄妹になった…

 

「どうしたんですか?」

 

「い、いや。少し混乱していて…すまん、心、先に下に行っててくれないか?…」

 

「え、あ、わかりました…先に行ってますね…」

 

 

心はガチャとドアを開けて外へ出て行く、

 

俺は力尽きた様にベッドに座り込む。

なんなんだ?この状況、、、知らないはずの女の子が俺の部屋に居て、でも俺は知らないはずなのに知っていて…

意味が分からない。頭を抱える、

 

「……どうしちまったんだ…俺……」

 

考えても考えても意味不明の八方塞がりの状況、仕方ない。小町の所に行くか……

 

「ふぅ…あ、そっか」

 

小町の言葉を思い出す。

 

「お姉ちゃん"達"を呼んできてだったんだよな…まだ他に居るのか…」

 

 

そんな事を考えるとガシャッとドアの音が聞こえた。

 

 

 

 

 

「ハチくん…?あの娘…誰…?」

 

 

 

 

 

怒りマーク全開で、部屋に入ってきた彫りの深い、白髪の女の子…

俺の頭に名前が浮かび上がる…

"リーラ・エルフェ"…元ハリウッド女優だ…彼女曰く俺は幼馴染であり結婚を約束した仲…らしい…

 

俺としては記憶ないからなんとも言えないが、実は俺自身が二重人格だったらしくて、もう片方の俺がやらかしたからこうなっているらしい…それでちょっと前から付き合っている。

 

「下に行くの見かけたけど…まさか、他に女の子作ってたとはね…」

 

「い、いや!義理の妹だよ!義理の妹!!」

 

「そんな筈ある筈ないでしょ!!」

 

かなりご立腹らしい、

嗚呼、不味い…!

 

「ほ、ほら見ろよこの部屋!ちょ、ちょっとおかしいと思わないか?」

 

「部屋…ですか…?」

 

 

エルフェは周りを見渡すと少し混乱し始めた。

 

「部屋が…広い……?」

 

そう呟くと俺を見た。

 

「昨日まで普通だった筈なのに…どう言う事ですか…?これ…」

 

「し、知らないよ、起きたら隣に女の子が居て、その子が何故か義理の妹だと知ってて……正直今困惑してる、」

 

 

マッキーメモ/ 自分の作品とクロスオーバーしようと思ったけど、流石に恥ずいので辞めた。いや、知ってる筈ない人もいるし…

コラボ元https://syosetu.org/novel/161266/

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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