バトルスピリッツ Flip Over (puls9)
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初めてのバトル。時空龍 クロノ・ドラゴン、転醒。

バトスピ小説は初となります。プレイングミスや誤字脱字等があれば優しくご指摘ください。


それでは、お楽しみください。








「超龍騎神グラン・サジット・ノヴァでアタック!」

「魔星神ゾディアック・デスペリアでブロック!」

 

テレビの中。神々しいドラゴンが雄叫びを上げる。相対するは禍々しい姿をした怪物。両者は互いに勢いよくぶつかり、激しい鍔迫り合いを繰り広げる。

時川 天晴(ときがわ てんせい)はその光景に目を奪われた。手に持っていたアイスが溶けていた事にさえ気付かない程に。

 

 

 

 

 

バトルスピリッツ。略してバトスピ。

この世界において、今大流行しているカードとコアを使ったTCG(トレーディングカードゲーム)だ。

 

「創造龍ジェネレイタードラゴンでアタック。」

 

カードショップ<ヒストリー>の中、一際大きな歓声が上がる。人だかりの中心に居るのは茶髪の青年と小学生位の少年だ。

 

「クッソー。また負けた。」

「でも、前よりまた上手くなってたぜ。次は勝てるかもな。」

 

悪態を付く少年に対し茶髪の青年、古賀 龍斗(こが りゅうと)は笑顔で応じる。

 

「おう。次こそは勝ってやる。お前ら特訓だ!」

 

少年は後ろから観戦していた仲間達に声をかけると、別の場所へ移動していく。それを見て、人だかりは徐々に減っていく。

 

(今だ!)

 

天晴は心の中で気を引き締める。ゆっくりと歩き出し、椅子から立ち上がっている龍斗の元にたどり着く。

 

「あ、あの!」

「ん、どうしたんだ?」

 

天晴の声に気付き、龍斗は振り返る。

 

「そ……その。」

「おっ!バトルのお誘いか?」

「えっと、その。近いと言えば近いんですけど……。」

「?」

 

天晴はやや俯いたまま、恐る恐る口を開く。

 

「僕、見ての通り引っ込み思案なので友達とか居なくて……。それで一回もバトルした事が無くて。」

「ふむふむ。」

「ルールは一通り調べたんですけど。急に戦うとなると不安で。」

「成る程。なら俺が相手をして、間違ってないか確認するって感じでいいか?」

「は、はい。よろしくお願いします!」

「一回もバトルした事が無いんだったな。なら、RBSで戦おうぜ。」

 

RBSとは、リアルバトルシステムの略称である。デッキを機械にスキャンする事でカードを実体化させる画期的な発明。バトルスピリッツを大流行させる礎になった素晴らしき装置である。

 

 

 

 

龍斗に連れられ、店の奥に行くとそこには複数のテーブルが陳列していた。テーブルの横には手すりが付いている。

 

「そう言えば、名前はなんて言うんだ?」

「時川 天晴と言います。」

「そうか。天晴か。俺は古賀 龍斗。よろしくな。」

「はい。」

 

龍斗がテーブルの引き出しにデッキをセットする。天晴もそれを真似てデッキをセット。テーブルが光を放ち、盤面にプレイマットが浮かぶ。

 

「それじゃあ早速、始めようぜ。」

 

天晴と龍斗は同時にお決まりのセリフを叫ぶ。

 

「「ゲートオープン、解放!」」

 

瞬間、部屋が揺れる。そして、天晴を囲む様に壁が迫り上がる。

 

「言い忘れてたけど、テーブルの手すりにしっかり掴まっておけよ。怪我すると危ないからな。」

 

壁越しに龍斗の声が聞こえる。そしてすぐに上から重力がかかる。まるでエレベーターが上昇していく様に。

 

「ええええええええ!!」

 

 

 

 

 

 

程なくして、重力が収まる。壁が下がっていき、目の前に広大な荒野が広がっていた。向かい側から箱が現れ、壁が消えると龍斗が顔を出す。

 

「びっくりしたか?でも、本当に驚くのはこれからだぜ。」

 

プレイマットの上には、いつの間にかデッキとコアが指定の場所に置かれていた。恐る恐るデッキに触れると、上の四枚のカードが宙に浮かび、胸元の位置で静止する。天晴はそれを手に取り、バトルの準備が完了する。

 

「ルールは把握してると思うけど、確認も兼ねて俺が先行でいくぜ。」

 

【ターンプレイヤー】古賀 龍斗

【ライフ】5

【リザーブ】3+S(ソウルコア)1

【手札】4

 

「まずは、スタートステップ。ターンの開始を宣言する。」

 

龍斗の声に呼応するようにテーブルが光る。

 

「次にコアステップ。ボイドからコアを持ってこれる。……んだけど、先行は出来ない。」

「その次はリフレッシュステップ。トラッシュのコアをリザーブに、疲労状態のカードを回復状態に出来る。けど、こちらも先行は行えない。」

「そして、ドローステップ。デッキからカードを1枚引く。ここまではいいか?」

 

龍斗は天晴を見ながら言う。

 

「はい、大丈夫です。」

「そっか。なら次はお待ちかねのメインステップ。ここから本格的にカードの使用が出来る。」

 

手札からカードを1枚抜き取ると、プレイマットに置く。

 

「仙竜シュローカを召喚。」

 

赤いシンボルがどこからともなく現れ、砕け散ると民族衣装に身を包んだドラゴンがフィールドに降り立つ。

 

「凄い!本当にスピリットが現れた。」

「ちなみに、カードの使用にはコストが必要となる。今回の場合は、リザーブからコア3個をコストとしてトラッシュに、シュローカをレベル1にする為に1個。初期リザーブ4個丁度だ。」

「成る程。」

「さあ、バトルを続けるぞ。シュローカの召喚時効果。デッキを上から4枚オープン。」

 

シュローカから赤いオーラが輝き、呼応するようにデッキから4枚が捲られ、小古龍シャルラ・ハロート、創界神(グランウォーカー)ブラフマー、イグニートフレイム、大神剣アラマンディーがオープンされる。

 

「その中から、「ブラフマー」を含むネクサス、「ジェネレイター」を含むスピリット、そして、神話(サーガ)ブレイヴを1枚ずつ手札に加える。」

「よって今回は、創界神ブラフマーと大神剣アラマンディーを手札に。残ったカードはデッキの下に。」

 

2枚のカードが手札に、残りの2枚が浮き上がったデッキの下に置かれ、その上からデッキが降りてくる。

 

「それでは、突然だが、ここで問題だ。俺が次に宣言するステップは何か?」

「えっ!?」

 

天晴は突然の事に驚くが、すぐに落ち着く。そして、考えを巡らせる。

 

(確か、次のステップはアタックステップ。……だけど、今は先行のターン。って事は!)

「次はエンドステップです。先行はアタックステップを行えません。」

「その通り、正解だ。という訳で、俺はターンエンド。次は天晴、お前のターンだ。」

「はい。」

 

 

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】5

【リザーブ】3+S1

【手札】4

 

「スタートステップ。コア……ステップ。」

 

リザーブにコアが追加される。

 

「リフレッシュステップ。そして、メインステップ。」

(リザーブのコアは5個。)

 

公式ルールを思い出し、1枚のカードを掲げる。

 

「創界神ネクサス、放浪の創界神 ロロを配置。」

 

すると、天晴の後方に光が集まり、杖を携えフードを被った少年が現れる。

 

「おっ、創界神か。」

「ロロの効果。同名のカードが無いので、デッキの上から3枚破棄。」

 

デッキの上、3枚のカードが宙に浮き、そのまま、トラッシュへと送られる。

カード内容は、道化竜 ドラゴ・フランケリー、道化竜 ドヴェルグドラゴン、絶甲氷循。

 

「その中に神託条件が達成したカード1枚につきボイドからコアをロロに置く。」

 

放浪の創界神ロロの神託条件は〔道化/起幻&コスト3以上、転醒スピリット〕〔転醒ネクサス〕

この場合、系統:「道化」を持っているドラゴ・フランケリーとドヴェルグドラゴンの2枚がいるので、ボイドからコア2個が置かれる。

 

「そして、神域発揮。系統:「起幻」を持つスピリットを召喚する時、ロロのシンボルは赤/白/緑/紫/黄/青として扱う。」

「って事は。」

「はい!手札より、ゴッドシーカー ロロドラを召喚。神託発揮。ロロにボイドからコアを追加。」

 

赤のシンボルが砕け、緑の小さな龍がフィールドに降り立つ。

カードには軽減シンボルがある。フィールドに該当するシンボルがあれば、召喚等にかかるコストが減らせる。今回はフィールドに放浪の創界神ロロがいるので、コスト2で召喚。レベル1を維持する為にコア1個を使用。

 

「召喚時効果を発揮します。デッキから3枚オープン。その中のカード名:「放浪の創界神ロロ」1枚と、転醒カードかカード名に「道化竜」を含むカード1枚を手札に加えられる。」

 

デッキが捲られ、道化竜トリックスタードラゴン、時空龍クロノ・ドラゴン、道化竜メルトドラゴンの3枚がオープンされる。

 

「あっ。」

「どうした?」

「いえ、あの。本当に転醒カードの裏面がBSロゴになってると思って。」

 

転醒カードとは、つい最近登場したバトスピ初の両面カードである。通常のデッキに入れるには、スリーブを使わないといけないのだが……。

 

「良い所に気付いたな。RBSでは、デッキをスキャンしてデータ化してある。そのおかげで、転醒カードの裏面をロゴマークで隠す事が出来るんだ。」

「転醒させる時はどうなるんですか?」

「大丈夫。転醒する時にロゴマークが消えて本来の裏面が現れる仕様になってるから。安心していいぜ。」

「成る程。ありがとうございます。」

「それで、今回は何を手札に加える?」

「……道化竜トリックスタードラゴンを手札に加えます。残りは破棄。」

 

トリックスタードラゴンのカードが天晴の元に移動し、残った2枚のカードはトラッシュに置かれる。そして、天晴は深呼吸の後、龍斗を眼前に見据える。

 

「アタックステップ!ゴッドシーカー ロロドラでアタック!」

 

ロロドラのカードを横向きに変え、疲労状態にする。ロロドラは力強く嘶くと、勢い良く駆け出す。

 

(シュローカでブロックも出来る。……けど、お互いのBPは共に2000。よくて相討ち。なら、)

「ライフで受ける。」

 

龍斗の前にバリアが張られる。ロロドラはシュローカの横を通り過ぎ、その勢いのまま体当たり。ガラスが割れる様にバリアが砕ける。

 

「ぐっ!」

【ライフ】5→4

「バトスピの勝利条件はライフを全て無くす事。つまり、今のアタックでお前は勝利に近付いたって訳だ。」

「はい。僕はこれでターンエンドです。」

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!」

 

龍斗は流れる様にスタートステップからリフレッシュステップまでを終わらせる。

【ターンプレイヤー】古賀 龍斗

【ライフ】4

【リザーブ】5

【手札】6

【フィールド】仙竜シュローカレベル1(S1)

 

「こっちも行くぜ!創界神ブラフマーを配置。」

 

龍斗の背後に赤い民族衣装を纏った青年が現れる。

 

「3枚をトラッシュに置き、神託発揮。」

 

デッキから、古代象龍マンモ・ラーガ、四拳龍ムドラー、神環杖リガ・シャクティが破棄される。

 

「古竜を持つ2枚と神話を持つブレイヴが破棄されたのでコア3個をブラフマーに置く。さらに、シュローカをレベル2にアップ。」

「そして、アタックステップ開始時。ブラフマーのコア2個をボイドに送り、転神(グランフォーゼ)!」

 

ブラフマーが赤いオーラを纏い、フィールドに降りてくる。

 

「転神の効果。このターンの間、ブラフマーをBP5000のスピリットとして扱う。つまり、アタックも可能。」

「!」

「アタックステップ!ブラフマー、シュローカでアタック!」

 

2体のスピリットが天晴に迫る。

 

(ロロドラは疲労状態。ブロックは出来ない。)

 

「ラ、ライフで受ける。」

 

ブラフマーの拳が、シュローカの杖が、天晴のライフを砕く。

「うわああああ!」

【ライフ】5→3

 

「ターンエンドだ。」

 

ブラフマーは宙に浮き、龍斗の背後に戻る。

 

 

 

 

 

 

「僕のターン。メインステップ。」

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】3

【リザーブ】7

【手札】5

【フィールド】

ゴッドシーカー ロロドラレベル1(S1)、放浪の創界神 ロロ(3)

 

「手札から道化竜トリックスタードラゴンを召喚。ロロドラをレベル2にアップ。」

 

シンボルが砕け、ウサギの様な耳が付いたドラゴンが出現する。

 

「トリックスタードラゴンの効果。アタックステップ開始時トラッシュにあるSコア以外のコア3個を起幻を持つ自分のスピリットに置く。よって、トリックスタードラゴンはレベル3にアップ。」

 

道化竜 トリックスタードラゴンが体を奮わせて、戦闘体勢に入る。

 

 

「アタックステップ。トリックスタードラゴンでアタック。アタック時、トラッシュにある転醒カードを1枚手札に戻す事で回復する。」

 

トラッシュからクロノ・ドラゴンが手札に移動。トリックスタードラゴンが雄叫びを上げ、龍斗に迫る。

 

「ライフで受ける。」

 

トリックスタードラゴンの攻撃でライフが砕ける。

 

「まだ行きます!再びトリックスタードラゴンでアタック。」

 

トリックスタードラゴンが起き上がり、龍斗のライフをもう一度砕く。

【ライフ】4→2

 

「ターンエンドです。」

「ロロドラをブロッカーに残したか。」

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】古賀 龍斗

【ライフ】2

【リザーブ】7

【手札】5

【フィールド】

仙竜シュローカレベル2(1+S1)、創界神ブラフマー(1)

 

「ドローステップ。」

 

デッキからカードを引いた龍斗の雰囲気が変わる。

 

「なあ、天晴。お前、センス良いな。殆どルール完璧じゃん。」

「そんな!僕なんてまだまだ。……でも、そう言って貰えると嬉しいです。」

「そっか。なら、最後の試練だ。俺のキースピリットを越えて見せろ!」

 

そう言うと、手札からカードを1枚掲げる。

 

「神話を編み出せ、変革の化身。創造龍ジェネレイタードラゴンをレベル2で召喚!不足コストはシュローカより確保。よってレベル1にダウン。」

 

空から4つの腕を持った赤いドラゴンがゆっくりと舞い降りる。

 

「神託発揮。ブラフマーにコア1個追加。そして、アタックステップ!」

 

転神が発揮され、再びブラフマーがフィールドに降り立つ。

 

「ジェネレイタードラゴンでアタック。アタック時効果。BP10000以下のスピリットを破壊し、手札の神話を持つブレイヴを1コスト支払って召喚出来る。破壊対象はロロドラ。」

 

ジェネレイタードラゴンの炎がロロドラを包み込み爆散。そして、龍斗が手札からカードを場に出す。

 

「手札より、1コスト支払い大神剣アラマンディーをブラフマーに合体。」

 

空より、赤い剣がブラフマーの前に突き刺さる。ブラフマーはそれを手に取る。

ブレイヴ。それは、特定のスピリットに合体出来るカード。その中でも神話ブレイヴは創界神とも合体出来る特殊なブレイヴだ。

 

「そして、ジェネレイタードラゴンのアタック時効果、その2。自分の創界神に合体しているブレイヴを分離し、ジェネレイタードラゴンに合体出来る。そうした時、ジェネレイタードラゴンは回復する。」

 

ブラフマーからジェネレイタードラゴンへ、アラマンディーが投げ渡される。ジェネレイタードラゴンはアラマンディーをキャッチ。赤のオーラがさらに濃くなる。

 

「そしてさらに、ジェネレイタードラゴンレベル2、3の効果。自分のアタックステップ中、神話ブレイヴと合体している自分のスピリット、創界神に赤のシンボル1つを追加。」

「それって!?」

「そう。合体してるスピリットにはブレイヴのBP、そしてシンボルが追加される。アラマンディーには赤のシンボルがある。つまり、今のジェネレイタードラゴンは3つのシンボルがある。そして、ライフの減少はシンボルの数によって増える。つまるところ、ジェネレイタードラゴンはトリプルシンボル。ライフを3つ削る!」

 

ジェネレイタードラゴンは天晴の目の前でゆっくりと振りかぶる。

 

「フラッシュタイミング!」

「ここでか!」

 

フラッシュタイミング。それはアタックした時、ブロックした時に発生するシークエンス。

 

「マジック、白晶防壁。相手のスピリット1体を手札に戻す。手札に戻すのは……シュローカ。」

 

白い旋風が吹き荒れ、シュローカを吹き飛ばす。

 

「さらに、ソウルコアをコストに支払った事でこのターンの間、自分のライフは1しか減らない。」

 

アラマンディーが振り下ろされ、ライフが砕けるもその数は1つ。残りのライフは無事。

【ライフ】3→2

 

「おおっ!凌ぎきったか。ターンエンドだ。」

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】2

【リザーブ】6

【手札】5

【フィールド】

道化竜トリックスタードラゴンレベル3(3+S1)、放浪の創界神 ロロ(3)

 

(相手の場には、合体したジェネレイタードラゴンがいる。しかも、回復状態で。でも、次のターンを凌げそうも無い。つまり、)

「このターンで決めるしかない。トリックスタードラゴンのソウルコアを普通のコアと入れ替えます。」

 

そして、天晴は覚悟を決める。

 

「今度は、僕のキースピリットの番です。」

「時間を越えて、起源へ至れ!時空龍クロノ・ドラゴンを召喚!」

 

フィールドの空間が歪み、徐々にひび割れていく。そして、そこから緑のドラゴンが現れ、手に持っていた剣を龍斗、ひいてはジェネレイタードラゴンに突きつける。

 

「クロノ・ドラゴンをレベル2にアップ。そして、トリックスタードラゴンの効果で、トラッシュのコア2個をクロノ・ドラゴンへ。さらに、レベル3にアップ。」

 

クロノ・ドラゴンは光輝く。

 

「アタックステップ。時空龍クロノ・ドラゴンでアタック。アタック時効果。デッキからカードを1枚ドロー。」

 

剣を握りしめ、クロノ・ドラゴンが駆ける。

 

(さて、どうするか……。)

「……ライフで受ける。」

 

クロノ・ドラゴンの剣が龍斗に叩き込まれる。

【ライフ】2→1

 

「この瞬間、クロノ・ドラゴンのレベル2、3の効果発揮。相手のライフが減ったので、クロノ・ドラゴンにソウルコアをおいて転醒!」

 

プレイマットの上、クロノ・ドラゴンのカードが舞い上がり、裏向きのままフィールドに着地。そして、ロゴマークが消え、そこに新たなドラゴンの絵柄が現れる。

 

「起源の果て、大いなる時の化身よ降り立て!

時空龍皇クロノバース・ドラグーンに転醒。」

 

時計を模した魔方陣が出現。クロノ・ドラゴンは魔方陣を通過し、その姿を巨大なドラゴンへと変える。

 

「転醒時効果。系統、起幻を持たない創界神ネクサスを破壊。」

 

クロノバース・ドラグーンの炎の息吹きがブラフマーを襲う。ブラフマーは炎を諸に受け、破壊される。

 

「さらに、回復する。」

 

クロノバース・ドラグーンがゆっくりと起き上がる。

 

「時空龍皇クロノバース・ドラグーンでアタック!」

「迎え撃て、創造龍ジェネレイタードラゴン!ブロックだ。」

 

フィールドで2体のドラゴンがぶつかり合う。片や、緑の巨大な龍。片や、剣を携えた赤い龍。だが、少しずつクロノバース・ドラグーンが追い詰められていく。

 

「ジェネレイタードラゴンのBPはレベル2、9000。アラマンディーを合体させて、さらにプラス5000。合計BP、14000。」

「クロノバース・ドラグーンはレベル3、BP13000。」

 

バトルではBPの高いスピリットが勝利する。この為、ジェネレイタードラゴンがBP1000の差で勝利する。このまま行けばだが……。

 

「フラッシュタイミング!」

「また来るか!」

「マジック、フォースブライトドロー。クロノバース・ドラグーンにBP3000を追加。」

 

クロノバース・ドラグーンに赤いオーラが付与され、BPが16000に上昇する。そして、一瞬の隙を突き、アラマンディーを尻尾で弾き飛ばすと、ジェネレイタードラゴンの懐に自身の角を突き立てる。そして、ジェネレイタードラゴンが爆発、破壊される。

 

「トリックスタードラゴン。最後のライフを砕けー!!」

 

トリックスタードラゴンが龍斗に迫る。

 

「……ライフで受ける。」

【ライフ】1→0

 

 

 

 

 

 

 

「今日はありがとうございました!」

 

店の中、天晴は頭を下げる。前には龍斗がいる。

 

「おう、いいバトルだったな。またいつかやろうぜ。……今日はもう遅い。気を付けて帰れよ。」

「はい。本当にありがとうございました。」

 

再びお辞儀をして、天晴は店を後にする。

 

(RBS凄かったな。クロノバース・ドラグーンも格好良かった。)

 

帰り道、天晴はデッキからクロノバース・ドラグーンのカードを取り出し、見つめる。

 

(明日も……バトル出来るかな。)

 

次なるバトルに想いを馳せ、居ても立っても居られず、天晴は家への道を駆け出す。デッキをしっかり握りしめ、笑顔を浮かべながら。



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鉄壁の要塞。白き機神、君臨。

Flip Over第2話。

どうぞ、お楽しみください。







「はっ……はっ…はっ。」

 

街の中、天晴は駆ける。道行く人混みを潜り抜け、足を止める。

 

「ふぅ。」

 

息を整え、前を見る。そこには、カードショップ<ヒストリー>の看板があった。入り口に向かうと、自動ドアが開く。

 

(今日こそは!)

 

店内に足を踏み入れると、龍斗が手をひらひらさせていた。

 

「おはよう。」

「おはようございます。」

 

天晴は龍斗の元へ向かう。

 

「今日は誰とバトルするつもりだ?」

「ええっと……その。」

「?」

 

歯切れの悪い返答に龍斗は不思議な顔をする。

 

「他の人に何て声をかければいいんですかね?」

「まさか、お前。あれ以来、誰ともバトルしてないのかよ。」

「うっ。……実は…その通り…です。」

「マジかー。」

 

申し訳なさそうな顔をする天晴を見て、龍斗は呆れ顔になる。

その時、入り口のドアが開き、一人の少女が来店する。氷の様な印象をあたえる目付きの鋭い少女だ。

 

「おっ!あれは。」

 

それに気付いた龍斗に名案が浮かぶ。

 

「おーい!鈴音ー!」

 

少女が声に気付き、顔を向ける。龍斗は笑顔を浮かべながら手招きする。

 

「こっち、こっち。」

 

少女は表情を変えることなく、こちらに歩き出す。

 

「何か様ですか?」

「おう。実はこいつ、バトル相手がいないらしくてさ。良かったら、どうだろうと思って。」

 

龍斗が天晴の肩に手を置きながら言う。少女は、じっと天晴の方を見る。

 

「……いいけど。デッキ調整が終わってからで良い?」

「だってよ。」

「えっ!?あっ、はい。大丈夫です。」

 

少女は近くにあるテーブルに向かう。それを尻目に天晴は龍斗に抗議する。

 

「古賀さん!」

「大丈夫、大丈夫。殺される訳じゃあるまいし。……それに、初対面でしかも異性相手に慣れとけば後は怖い者は無いだろ。」

「それは、そうですけど。」

「調整終わったよ。」

 

いつの間にか、背後に少女が立っていた。

 

「RBS使えるぞ。」

「分かりました。行くよ?」

「は、はい。」

 

簡潔に述べ、少女はRBSのテーブルへ向かう。天晴もそれに続く。

 

「頑張れよ。」

 

龍斗小さく呟いてそれを見送るのだった。

 

 

 

 

 

「「ゲートオープン、解放!」」

 

天晴と少女はフィールドで対峙する。お互いに準備完了。

 

郡山 鈴音(こおりやま りんね)。」

「えっ。」

「私の名前。」

「ああ。そう言えば、名乗ってませんでした。僕は時川 天晴です。今日は、よろしくお願いします。」

 

そして、深々とお辞儀する。

 

「うん。よろしく。先攻はどうする?」

「僕が貰っても良いですか?前の復習がしたいので。」

「わかった。」

「それじゃあ、スタートステップ。」

 

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】5

【リザーブ】3+S1

【手札】5

 

「メインステップ。放浪の創界神 ロロを配置。3枚トラッシュに置いて神託発揮。」

 

トラッシュに置かれたのは、道化竜 ギンガードラゴン、道化竜 ポルドラ&カスタードラ、クリメイションフレイム。

 

「ボイドからコア2個をロロに置く。…ターンエンド。」

 

天晴の後方にて、ロロに光が宿る。

 

 

 

 

 

「私のターン。」

 

【ターンプレイヤー】導木 鈴音

【ライフ】5

【リザーブ】4+S1

【手札】5

 

「パイオニア シルバーオールを召喚。」

 

白いシンボルが砕け、中から亀の様なスピリットが現れる。

 

「召喚時効果。3枚オープン。」

 

カードが捲られ、導きの少女ヴィーナ、氷女王ヴェルン・フロスト、メタルラージがオープンされる。

 

「導きの少女ヴィーナと系統:「起幻」を持つヴェルン・フロストを手札に加える。残りは破棄。」

 

メタルラージがトラッシュに置かれる。鈴音はさらに、手札からカードを出す。

 

「導きの少女ヴィーナを配置。」

 

後方に緑色の髪を靡かせた少女が現れる。

 

「3枚トラッシュに。」

 

デッキから小氷姫クラーラ、鎧装獣スコール、盾甲機レイド・キャバリアーが破棄される。

 

「系統:「起幻」を持つコスト3以上が3枚。よって、ボイドからコア3個をヴィーナへ。このまま、ターンエンド。」

(確か、白は防御力が高い。気を引き締めないと。)

 

バトルスピリッツには6色の色がある。天晴が使う赤。鈴音が使う白。その他に、緑、紫、黄、青の4色。その中でも、攻撃力が高い赤と防御に優れる白は対極に位置するのだ。

 

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】5

【リザーブ】4+S1

【手札】5

【フィールド】放浪の創界神 ロロ(2)

 

「道化竜ドヴェルグドラゴンを召喚。神託でロロに1コア追加。」

 

機械の様な体をした赤のスピリットが降り立つ。

 

「次に道化竜メルトドラゴンを召喚。」

 

カードをプレイマットに乗せる。

 

「あれ?」

 

しかし、反応しない。

 

「えっ、故障!?」

「違う。ドヴェルグドラゴンの効果。互いの創界神のシンボルは神シンボルとなり、変更出来ない。」

 

見かねた鈴音が説明する。

 

「ってことは…。」

 

リザーブのコアは2個、メルトドラゴンのコストは3、軽減は2。ドヴェルグドラゴンだけでは召喚出来ない。

 

「召喚はしないで、ターンエンド。」

 

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】導木 鈴音

【ライフ】5

【リザーブ】4+S1

【手札】6

【フィールド】パイオニア シルバーオール(1)、導きの少女ヴィーナ(3)

 

 

「バーストをセット。」

「!?」

 

バースト。それは、指定された条件を満たす事で発動出来る能力。ターンに1度、手札からバースト効果を持つカードをバーストエリアに1枚だけ伏せておけるのだ。

 

「そして、導きの少女ヴィーナの神域。系統:「起幻」を持つカードを召喚/配置/使用する時、その軽減シンボルを満たす。よって、氷女王ヴェルン・フロストを4コスト支払って召喚。」

 

フィールドに透き通る様にきらびやかな人型のスピリットが出現。

 

「召喚時効果。ボイドからコア2個をこのスピリットに。神託でヴィーナにも1コア追加。」

 

「このまま、アタックステップ。ヴェルン・フロストでアタック。」

 

ヴェルン・フロストが深く息を吸い、勢い良く氷の息吹きを吐き出す。

 

「ライフで受ける。」

【ライフ】5→4

 

「ターンエンド。」

 

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】4

【リザーブ】5+S1

【手札】5

【フィールド】道化竜ドヴェルグドラゴン(1)、放浪の創界神ロロ(3)

 

「ゴッドシーカー ロロドラを召喚。神託でコアを増やしつつ、召喚時効果発揮。」

 

デッキの上から3枚のカードが捲られる。その中から、道化竜トリックスタードラゴンが手札に加わり、残りの2枚、絶甲氷盾、時空龍クロノ・ドラゴンがトラッシュへ送られる。

 

「手札に加えた、道化竜トリックスタードラゴンを召喚。不足コストはドヴェルグドラゴンより確保。よって、ドヴェルグドラゴンは消滅します。」

 

フィールド、ドヴェルグドラゴンと入れ替わる様にトリックスタードラゴンが現れる。

 

「アタックステップ。トリックスタードラゴンをレベル3へ。そのまま、トリックスタードラゴンでアタック。アタック時効果でクロノ・ドラゴンを手札に加えて、回復。」

 

トリックスタードラゴンが嘶きながら飛翔。真っ直ぐ鈴音に迫る。

 

「相手の手札が増えた事によりバースト発動。トリックスタードラゴンを手札に戻す。」

「えっ!?」

 

トリックスタードラゴンが白い光に包まれ、手札へ戻っていく。

 

「その後、このスピリットをコストを支払わず召喚する。浮遊要塞サルファ・ボトムを召喚。ヴェルン・フロストをレベルダウンして維持コアを確保。」

 

ヴェルン・フロストが脱力する。フィールドに巨大な鯨が現れ、浮遊。

 

「バーストでの召喚も召喚なのでヴィーナにコアを追加。」

「くっ……ターンエンド。」

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】導木 鈴音

【ライフ】5

【リザーブ】4+S1

【手札】4

【フィールド】パイオニア シルバーオール(1)、浮遊要塞サルファ・ボトム(1)、氷女王ヴェルン・フロスト(2)、導きの少女ヴィーナ(5)

 

「ドローステップ。」

 

カードを引いた鈴音の雰囲気が変わる。ソウルコアをトラッシュに送り、カードを掲げる。そこから白のオーラが吹き出る。

 

「雪原の要塞、蠢く機械達の氷河。転醒ネクサス、白の世界を配置。」

 

オーロラがフィールドを包む。鈴音の後方に鉄塔が聳え立つ。

 

「そして、全てのスピリットを最高レベルにアップ。」

 

3体のスピリットにコアが振り分けられ力を漲らせる 。

 

「サルファ・ボトム レベル2でアタック。ターンに1度回復する。」

 

サルファ・ボトムが嘶きながら、直進。そして、トラッシュのソウルコアが白の世界へ置かれ裏返る。

 

「自分のスピリットが効果で回復した事により条件達成。」

「雪原に聳えよ、機械仕掛けの神!白き機神、転醒。」

「転醒した事により、カウント1追加。」

 

プレイマットの側面が展開し、カウントエリアが出現。そこにコアが1個置かれる。

そして、フィールドが凍り付き、迫り上がる様に現れるのは白き機神。瞳に光を宿し、動き出す。

 

「転醒時効果発揮。自分のトラッシュに白1色のスピリットカードが3枚以上あるとき、自分は、相手の手札2枚を内容を見ないで破棄する。」

 

白き機神の目が輝き、白い衝撃波が一直線に天晴の元へ。

 

「ぐっ!」

 

その衝撃で手札のトリックスタードラゴンと道化竜ドラゴ・フランケリーがトラッシュに飛ばされる。

 

「メインアタックは続いてる。サルファ・ボトム、行け。」

「フラッシュタイミング!絶甲氷盾を使用。バトル終了後、アタックステップを終了させる。このアタックはライフで受ける。」

 

サルファ・ボトムが突撃。天晴のライフを砕く。

【ライフ】4→3

 

「ターンエンド。」

 

 

 

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】3

【リザーブ】7+S1

【手札】3

【フィールド】ゴッドシーカー ロロドラ(1)、放浪の創界神ロロ(5)

 

「ロロの神域発揮。シンボルを赤に変更。そして、」

「時間を越えて、起源へ至れ。時空龍クロノ・ドラゴンをレベル2で召喚。」

 

トラッシュにソウルコアと普通のコア1個ずつが移動。

そして、空間を割りフィールドに時空龍クロノ・ドラゴンが登場。

 

「さらに、ロロドラをレベル2にアップ。効果発揮。手札の起幻を持つコスト5以上のスピリットを召喚する時、赤のシンボルを追加出来る。よって、1コストで時砂の竜子サンドラグラスをレベル2で召喚。」

 

星の様な輝きを放ち、サンドラグラスが召喚される。

 

「召喚時効果。BP10000以下のスピリット1体を破壊。破壊するのは白き機神。」

 

腹部の砂時計が輝き、舞い上がった砂が竜巻となって白き機神を襲う。瞳から光を失った白き機神は白のシンボルへと変わる。

 

「!?」

「根幻回帰。このスピリットが相手の効果でフィールドを離れる時、裏返して配置する。」

「それって……。」

「よって、白き機神を裏返し白の世界を配置。」

 

白のシンボルは後方の鉄塔へと吸い込まれていく。

 

「それでも、スピリットは減った。時空龍クロノ・ドラゴンでアタック。効果発揮、1枚ドロー。」

 

クロノ・ドラゴンが剣を構え、勢い良く駆け出す。

 

「シルバーオールでブロック。」

 

行く手を阻む様にシルバーオールは嘶きながら、突進。それを易々と回避するクロノ・ドラゴン。

BPはクロノ・ドラゴンが5000、シルバーオールが4000。

クロノ・ドラゴンは一瞬の隙を突き背後にまわる。そして、剣を振り上げ背中の甲羅ごと叩き斬る。爆発を起こし、シルバーオールは破壊される。

 

「BPはそっちが上。でもこれで転醒は出来ない。」

「まだだ!時砂の竜子サンドラグラスでアタック。アタック時効果。カウントを1増やす。」

 

再び砂時計が輝き、舞い上がった砂が今度は天晴のプレイマットへ。展開し、現れたカウントエリアにコアが1個置かれる。

 

「さらに、カウント1以上の時、起幻を持つスピリットを1体回復させる。回復させるのはクロノ・ドラゴン。」

 

フィールドで片膝をついていたクロノ・ドラゴンが起き上がる。

 

「サルファ・ボトムでブロック。ブロック時、回復。」

 

サンドラグラスにサルファ・ボトムが迫る。サンドラグラスはBP7000対するサルファ・ボトムはBP8000。

 

「フラッシュタイミング!フォースブライトドロー。BP3000アップ。」

 

サンドラグラスのBPが10000に上昇。砂の竜巻が複数に分かれ、四方八方からサルファ・ボトムを襲う。そのまま、爆散。

 

「時空龍クロノ・ドラゴンでもう一度、アタック。」

「氷女王ヴェルン・フロストでブロック。BP11000。」

 

氷の吐息でクロノ・ドラゴンを氷漬けにし、抱き締める様にクロノ・ドラゴンを砕く。そして、そこから時計を模した魔方陣が出現。トラッシュのソウルコアがクロノ・ドラゴンに置かれる。

 

「起源の果て、大いなる時の化身よ降り立て。時空龍皇クロノバース・ドラグーンに転醒。」

 

魔方陣よりクロノバース・ドラグーンが出現し、咆哮。

 

「転醒時効果。系統:「起幻」を持たない創界神を破壊。」

 

クロノバース・ドラグーンの息吹きがヴィーナを襲う。しかし、ヴィーナの展開した魔方陣の壁に阻まれる。

 

「ヴィーナは系統:「起幻」を持つ創界神ネクサス。破壊されない。」

「でも、回復は出来る。3度目のアタックだ。」

 

クロノバース・ドラグーンが巨体を上げ、動き出す。

 

「ヴェルン・フロストの効果発揮。1コスト支払う事で起幻を持つスピリットを回復させる。」

 

ソウルコアをトラッシュに置き、ヴェルン・フロストが起き上がる。そして、白の世界が再び裏返る。

 

「再び転醒せよ。白き機神。」

 

再びフィールドが凍り付き白き機神は姿を現す。

 

「転醒時効果。手札を2枚破棄。」

 

天晴の手札から、道化竜メルトドラゴンがトラッシュへ置かれる。

 

「白き機神でブロック。ブロック時効果。相手のスピリットを1体手札に戻す。クロノバース・ドラグーンを手札に。」

 

白き機神の衝撃波を受け、クロノバース・ドラグーンはフィールドから消える。

 

「そんな。……ターン…エンド。」

 

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】導木 鈴音

【ライフ】5

【リザーブ】4

【手札】4

【フィールド】、白き機神(S1)、氷女王ヴェルン・フロスト(3)、導きの少女ヴィーナ(5)

 

「ヴェルン・フロストをもう1体召喚。召喚時でコア2個追加。レベル3。」

「アタックステップ。白き機神でアタック。アタック時効果。ロロドラを手札に戻す。」

 

衝撃波を受け、ロロドラが手札へ戻っていく。

 

「ライフで受ける。」

【ライフ】3→2

 

「続けて、ヴェルン・フロストでアタック。コストを支払って、白き機神を回復。」

 

ヴェルン・フロストの息吹きが迫る。その傍らで静かに白き機神が起き上がっている。

 

「ライフで受ける。」

【ライフ】2→1

 

「これで終わり、白き機神でアタック。」

 

天晴は手札を見る。全てスピリットカード。逆転の手立ては無い。それでも、天晴は顔を上げ、真っ直ぐに鈴音を見る。その様子に鈴音は一瞬、目を見開く。

 

「ライフで……受ける!」

 

白き機神の一撃が最後のライフを砕く。

 

【ライフ】1→0

 

「私達の……勝ち。」

 

鈴音の勝利宣言とともに2体のヴェルン・フロストは優雅にお辞儀をし、白き機神は微動だにせず悠然と佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

「お疲れ~。」

 

バトルを終えると、龍斗がやって来た。そして、天晴の肩に手を置く。

 

「まぁ、プレイングミスは誰にでもある。そっから立て直しただけマシだろ。」

「うっ……はい。」

 

天晴は鈴音の方へ向かう。

 

「あ、あの、郡山さん。今日はありがとうございました。いいバトルは出来ませんでしたけど。」

「うん。そうだったね。」

「うぐっ。」

「だから、今度はいいバトルをしよう。楽しみにしとくから。」

「えっ!?……は、はい。ありがとうございます。」

 

鈴音は踵を返しながら顔だけを天晴に向ける。

 

「それと、アドバイス。最新弾のパックを買うといいよ。そのデッキと噛み合うカードが入ってるから。」

「はい。分かりました。」

「それじゃ。」

 

用は済んだとばかりに、鈴音は歩き出す。天晴も龍斗の方へ向かう。

 

「あの、最新弾のパックってありますか?」

「おう。あるぜ。」

「買います。」

「まいどあり~。」

 

会計を終え、複数のパックを手に近くのテーブルへ。早速開封を始める天晴をよそに、龍斗は鈴音に近く。

 

「んで。どうだった、あいつは?」

「まだまだ経験値が足りてないです。……けど、のびしろはあると思います。」

「へぇ、どうして?」

「最後まで諦めてなかったので。カードバトラーに一番大事な事ですから。」

「そうだな。ならあいつは伸びるな。」

 

龍斗は天晴を見る。

 

「あ、あ、あーー‼」

 

パックを開封していた天晴が仰天する。気になった龍斗は天晴の元へ向かう。

 

「どうした。」

「古賀さん。こ、これ!」

「おお!これは!」

 

それを見て、龍斗も目を見開く。そう。天晴の手に握られていたのは紛れもなく赤のXレアだった。




書いていて、コアの管理が難しいです。なので、実際に回しながら、書いてます。それでも難しい。カードゲームの小説って大変ですね。
稚拙な文章ですがこれからも頑張っていきたいと思います。


次回もお楽しみに。


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トラブルメーカー!?豊穣の女王神 テスモポロス、進撃。

やっと投稿できました。Flip Over 第3話。
お楽しみ下さい。


「あっ。」

 

ここは天晴が通う中学校。その玄関口で意外な人物と出会う。そこに居たのは、鈴音だった。

 

「……おはよう。」

「お、おはようございます。」

 

天晴は慌てて頭を下げる。

 

「同じ学校だったんですね。」

「みたい。私も驚いてる。」

「そ、そうなんですか。」

 

鈴音の全く変わらない表情に天晴は心の内で困惑する。

 

「ここで会ったが百年目ー!勝負だ!郡山 鈴音ー!!」

 

そこにかん高い声が響き渡る。勢いよく2人の前に現れ、その場でターン。そして、人差し指を鈴音に向けて決めポーズ。そこにいたのは見るからに活発そうな少女。

 

「はぁ。」

 

少女を見た瞬間、鈴音があからさまなため息をつく。

 

「えー。ノリ悪いですよー。そこは、

「フッ。良いだろう、我が好敵手、豊原 魔菜よ。今こそ、長きに渡る我らの宿命に決着を着けようぞ。」

的な感じで返してくれないと。」

 

対する少女は頬を膨らませ、抗議。

 

「誰がやるか。」

「ひ、酷い!ワタシとの関係はその程度のものだったの!!」

 

鈴音は文字通り頭を抱える。天晴はその様子にどうすることも出来ず途方に暮れる。

そして、少女は天晴の方を向くと、決めポーズを取って自己紹介。

 

「初めまして。ワタシは豊原 魔菜(とよはら まな)!よろしくね!!」

 

魔菜は胸を張り、腕を組む。

 

「あ……はい。僕は時川 天晴です。よろしくお願いします。」

「うんうん。時川君……時川……時……。よし、君のあだ名はトッキーだ!!」

「ト……トッキー……。」

 

いきなりのあだ名呼びに天晴は困惑。

 

「えーっと、嫌でした?」

「いえ。ただ、あだ名で呼ばれるのは初めてなので、びっくりしてただけです。」

「そっか、そっか。」

 

一安心とばかりに魔菜が胸を撫で下ろす。

 

「それで、用件は何?」

 

すっかり蚊帳の外となった鈴音がため息混じりに聞く。

 

「あっ!そうでした。デッキ新しく組み直したんですよ~。」

「相手をしろと?」

「そうそう。」

「……まぁ、良いけど。」

「よし、それじゃあ、ヒストリーに向けてゴー!」

「これから授業なんだけど。」

 

鈴音は出ていこうとする魔菜を睥睨。その時、チャイムが鳴る。

 

「あ、時間だ!」

「それでは放課後ここに集合って事でよろしく~。皆の衆、また会おう!」

 

魔菜は一方的にそう決めるとあっという間に遠ざかって行くのだった。

 

「もしかして、僕も入ってます?」

 

鈴音の方を見る。

 

「だろうね。」

 

鈴音は頷く。その表情は見るからに疲れはてていた。

 

 

 

 

 

そして、放課後。玄関口に行くと、既に2人が揃っていた。

 

「全員揃いましたね。それではしゅっぱーつ。」

 

靴を履き、揃って外へ出る。

 

「そう言えば、台場は誘わなかったの?」

 

ふと思い出した様に尋ねる鈴音に対し魔菜は苦笑しながら答える。

 

「あー。誘ったんですけど、補習で先生に連れてかれました。」

「……そっか。」

「台場……さんってどなたですか?」

 

話が気になり、天晴は口を挟む。

 

「同じクラスのカードバトラーです。多分そのうち会えますよ。」

 

そうこうしている内にヒストリーにたどり着く。魔菜を先頭に中に入るとそこは異様な空気に包まれていた。

 

「くっ!……俺の負けだ!!」

 

1人の少年が地面に膝をつく。彼の前には3人組が立っている。中央には紫のバンダナを巻いた少年。右側には赤のパーカーを着た青年。左側には黄色のリボンを付けた少女。

 

「何事ですかねぇ?これ。」

 

眺める様に額に手を付けて魔菜が呟く。そこに龍斗がよってくる。

 

「腕試しだとよ。」

「腕試し?」

「何でも色んなショップを渡り歩いてはその店で片っ端から対戦しているんだと。」

「へぇ~。面白い事してますね。……良いこと思いついた。」

 

そして名案が浮かんだとばかりに魔菜は3人組へと向かう。

 

「ヘイヘーイ。そこのお三方。」

「あん。何だ?対戦希望か?」

 

3人組の1人。紫のバンダナを巻いた少年が魔菜を見る。

 

「その通り。ただし!」

 

魔菜は手を後方へ向ける。そこには、天晴と鈴音が。

 

「3on3。三対三のチームバトルといきましょう。」

「えっ!?」

「はぁ、また勝手に。」

 

鈴音は本日2度目のため息。

 

「あー……駄目でした……かね?」

「私は良いけど。時川はどうする?」

 

さすがに申し訳なさそうな表情で魔菜が振り向く。鈴音は天晴の方を見る。

 

「僕も良いです。参加させてください。」

「なら、決まりですね。」

 

天晴の返答に魔菜の表情に笑顔が戻る。

 

「こっちもオーケーだ。お前らの挑戦、受けて立つ。俺は久地縄 智季(くちなわ ともき)。こっちのでかいくて無愛想なのが層間 陸(そうま りく)。こっちの紅一点が主井 陽子(おもい ようこ)だ。」

「それではこちらも、」

 

互いの自己紹介を終え、6人のカードバトラーが3人一組で並び立つ。

 

「先鋒は俺だ。」

 

陸がデッキを構え前に出る。

 

「なら、こっちは言い出しっぺのワタシがいきましょう。」

 

魔菜がデッキを手に前へ。

 

「「ゲートオープン、解放!!」」

 

そして、2人の呼び声にRBSが起動する。

 

 

 

 

 

 

店内にある巨大なモニター。そこに魔菜と陸の映像が映し出されていた。

 

「あの、豊原さんって強いんですか?」

 

天晴が鈴音に聞く。

 

「魔菜は私より早くから始めてるから、経験値は上だと思う。」

「それはつまり?」

「強いよ。」

 

 

 

 

 

 

「俺のターン。ドロー。」

【ターンプレイヤー】層間 陸

【ライフ】5

【リザーブ】3+S1

【手札】5

 

「創界神アヌビスを配置。デッキの上から3枚を破棄。」

 

陸の後方。長刀を携えた武人のごとき神、アヌビスが姿を現す。

デッキが捲れ、カードがオープン。

冥界の処刑人カルノ、ゴッドシーカー 冥神官オヴィラ、冥界の角龍人カスモがトラッシュに送られる。

 

「神託によりボイドからコア3個をアヌビスの上に置く。さらに、ネクサス、アヌビスの地底神殿を配置する。」

 

まずは階段が、そして、次に巨大な神殿が迫り上がる。

 

「これでターンエンド。」

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】豊原 魔菜

【ライフ】5

【リザーブ】4+S1

【手札】5

 

「メインステップ。こちらも創界神を呼びましょう。創界神デメテールを配置。」

 

魔菜の後方より、数多の木々が生い茂る。その中心から魔方陣を用いてデメテールが出現。

そして、デッキから魔導女皇アンブロシウス、君想うトリックスター、魔導双剣ジェミナイヴズが破棄。デメテールの神託は系統 起幻:「導魔」のスピリットもしくは転醒ネクサス。よって、デメテールにコア2個が置かれる。

 

「まだまだいきますよ。ドルイドの少女マリンを召喚。神託でコア追加。」

 

黄色のシンボルが砕ける。スコップを携え、マリンがその姿を現す。

 

「そして、デメテールの神技。コア3個をボイドに送り、デッキを2枚破棄。その後、デッキの下から1枚ドロー。ワタシはこれでターンエンドです。」

 

 

 

 

 

「黄色のカード!って事は豊原さんは黄属性の使い手なのか。」

 

モニターを見ながら天晴は呟く。

 

「戦い方ちゃんと見てた方がいい。見て覚えれば、自分がバトルする時、役立つから。」

「あ……はい!」

 

鈴音のアドバイスを受け、天晴は改めてモニターに目を向ける。

 

 

【ターンプレイヤー】層間 陸

【ライフ】5

【リザーブ】4+S1

【手札】4

【フィールド】創界神アヌビス(3)、アヌビスの地底神殿

 

「暴走竜バリオウを召喚。レベル2。神託でアヌビスにコア追加。」

 

赤の甲冑を纏った恐竜が嘶きを上げ、フィールドに降り立つ。

 

「そして、アタックステップ。バリオウでアタック。行け!」

 

バリオウは主たる陸を見て頷くと、魔菜を目指して駆け出す。

 

「アタック時効果。デッキから1枚ドロー。そして、BP5000以下のスピリットを破壊。」

 

バリオウはマリンの懐に入ると鋭く長い鈎爪で切り裂く。爆発を起こしマリンが破壊される。

 

「マリンの破壊時効果。手札を1枚破棄することで疲労状態でフィールドに戻る。」

 

爆風が晴れるとフィールドに膝をつき、マリンが帰ってくる。

 

「このアタックはライフで受けます。」

【ライフ】5→4

 

「ターンエンドだ。」

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】豊原 魔菜

【ライフ】4

【リザーブ】6

【手札】3

【フィールド】ドルイドの少女マリン(S1)、創界神デメテール(0)

 

「ドルイドの少女ブリジットを召喚。召喚時効果。デッキの上から1枚破棄。」

 

デッキからゴッドシーカー ドルイドの占い師セイラムがトラッシュへ。

 

「系統 導魔を持つカードが破棄された時、デッキの下から1枚ドロー。さらに、ネクサス。デメテールの魔導神殿を配置。」

 

石のサークル。その中心に巨大な樹木が茂る。

 

「そして、2体のスピリットをレベル2にアップ。デメテールの魔導神殿にもコア1個追加。」

 

魔菜は顔を真っ正面に向け、宣言。

 

「アタックステップ。2体のスピリットでアタック。」

 

マリン、ブリジット。2体のスピリットはそれぞれ魔方陣を出現させ、光の弾を発射。一直線に陸の元へ。

 

「ライフで受ける。」

【ライフ】5→3

 

「どうだ!ワタシはこれでターンエンド。」

 

ライフを2つ砕き、魔菜は得意気な表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

「なかなかやるな。」

 

陸が薄く笑みを浮かべる。そして、1枚のカードを掲げる。

 

【ターンプレイヤー】層間 陸

【ライフ】3

【リザーブ】5

【手札】5

【フィールド】暴走竜バリオウ(1+S1)、創界神アヌビス(4)、アヌビスの地底神殿

 

「なら俺のキースピリットで再逆転させてもらう。」

「地の底より輝け闇の紅玉。太古の化身、闇輝石六将(ダークストーンズ) 冥恐斬神ディノヴェンジを召喚。」

 

フィールドに亀裂が入る。大地を突き破り、刀を携えし漆黒の恐竜が姿を現し、咆哮。

 

「アタックステップ。ディノヴェンジでアタック。」

 

ディノヴェンジがゆっくりと歩き出す。

 

「闇解放、発揮。BP12000までスピリット/アルティメットを破壊する。」

 

ディノヴェンジの刀が炎を纏う。

その瞬間、トラッシュから2枚のカードが浮き上がり、赤い光をディノヴェンジへ一直線に放射。

 

「この時、トラッシュにあるオヴィラ、カスモの効果。系統、地竜を持つスピリットのBP破壊効果を+2000させる。よってBP14000まで破壊する。」

 

光を浴び、纏う炎の勢いは徐々に強くなる。そして、刀を振るい、炎の斬撃がマリン、ブリジットを焼き尽くす。

 

「そして、自分のフィールドとトラッシュが【赤のカード&7枚以上】のとき、アヌビスのコア2個をこのスピリットに置くことで、相手のライフのコア1個をボイドに置く。ディノヴェンジはレベル2にアップ。」

 

ディノヴェンジの口から火の玉を発射。魔菜のライフを砕く。

【ライフ】4→3

 

「さらに、レベル2のアタック時。疲労状態のこのスピリットは、BP+5000され、相手の効果を受けない。」

 

ディノヴェンジが眼下に迫る。その眼は、獲物に狙いを定めた狩人の如く鋭い。その時、バリオウの足元から木々が生えてくる。その木々に閉じ込められ、バリオウがフィールドから姿を消す。

 

「何!?」

「系統:「導魔」を持つ自分のスピリットが、相手によってフィールドを離れたとき、相手のスピリット1体をデッキの下に戻し、1コスト支払って召喚できる。 」

 

魔菜が手札から1枚のカードを抜き取り、フィールドに出す。

 

「恵みを此処に。母なる大地の化身。豊穣の女王神テスモポロスを召喚。レベル3。」

 

フィールド全体が揺れる。大地が隆起し、巨大な樹が出現。その周囲を魔方陣が取り囲み、徐々に形を変えてゆく。木造の瞼が開き、瞳に輝きが宿る。

歌う様に、声を高らかに上げ、テスモポロスは召喚される。

 

「テスモポロスでブロック!BP16000。こっちの勝ち。」

 

ディノヴェンジを阻む様に、フィールドから蔦が纏わりつく。

ディノヴェンジはそう簡単にはやられまいと刀で迎撃するもBPは15000。手数が足りず隙をついたテスモポロスの拳が鳩尾に炸裂。ディノヴェンジは破壊される。

 

「くっ!ターン……エンド。」

 

キースピリットが破壊され、苦々しい表情のまま陸はターンの終了を宣言する。

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】豊原 魔菜

【ライフ】3

【リザーブ】4

【手札】3

【フィールド】

豊穣の女王神テスモポロス(3+S1)、創界神デメテール(3)、デメテールの魔導神殿(0)

 

「メインステップ。2体目のブリジットを召喚。効果で1枚破棄。」

 

トラッシュに送られたのは系統:「起幻」を持つドルイドの少女マリン。

 

「デッキの下から1枚ドロー。さらに、トラッシュに系統:「起幻」を持つ黄のカードが増えた為、リザーブのコアをデメテールの魔導神殿に置き、転醒。ドルイドの巫女ジェニファ。カウント+1。」

 

神殿が黄色のシンボルに変わり、そこから巫女装束のスピリットがフィールドに降り立つ。

 

「アタックステップ。テスモポロスでアタック!カウント1以上のとき、自分の手札/トラッシュにある系統:「導魔」を持つコスト6/7/8のスピリットカード2枚までを、コストを支払わずに召喚できる。 」

 

テスモポロスが黄色のオーラを発する。それに共鳴する様に、トラッシュから魔導女皇アンブロシウス、森の魔女エルヴィラがシンボルを砕いて出現。

 

 

 

 

「トラッシュからスピリットを!?」

 

フィールドの外。戦いを見ていた天晴は驚愕に目を見開く。

 

「これがテスモポロスの効果。凄い!」

 

 

 

 

「成る程。バリオウがマリンを破壊した時、エルヴィラをトラッシュに送っていたのか。」

「その通り!……ターンを続けます。コスト確保の為、テスモポロスはレベル2にダウン。そして、デメテールレベル2の神域。

系統:「導魔」を持つ本来のコストが6/7/8の自分のスピリットすべては、シンボル2つになり、ブロックされない。」

 

テスモポロスが拳を勢いよく振り下ろす。

 

「ダブルシンボル!くっ、ライフで受ける。……ぐわぁぁ!」

【ライフ】3→1

 

「これで最後、エルヴィラでアタック。」

 

エルヴィラの杖から光弾を発射。眩い光が陸を包み、最後のライフを砕く。

【ライフ】1→0

 

「winner、ワタシと最強のスピリット(仲間)達!!」

 

人差し指を天高く突き立てる魔菜に呼応する様に、5体のスピリット達が勝利のポーズを取るのだった。

 

 

 

 

 

「イエーイ!勝ちました。」

 

魔菜は2人の元に駆けてくると両手を上げる。鈴音も両手を上げ、ハイタッチを交わす。

 

「トッキーもほら!」

「あ、はい。」

 

恐る恐る上げた両手に魔菜の手が重ねられる。

 

「すまない。負けた。」

 

その傍ら、陸が智季達に謝罪。

 

「気にすんなよ。」

「まだまだこれからですよ。」

 

智季が陸の肩に手を置き、陽子が胸の前で両の手で握り拳をつくる。

 

「時川。次どっちが行く?」

 

勝利の余韻もそこそこに中堅戦の話し合いが始まる。

一度目を閉じる。そして、深呼吸の後、天晴はデッキを握りしめ、鈴音を見る。

 

「……あの、僕に行かせてくれませんか。」




一気に新キャラがたくさん出てきました。うまく活用できる様に頭をひねらせていきたいと思います。


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新たな力。赤き神龍皇、飛翔。

ゴッドブレイクよりコロナブレイクが欲しい今日この頃。早く友人とバトスピがしたい。

気を取り直して、Flip Over第4話です。どうぞ。







「あの、……僕に行かせてくれませんか。」

 

カードショップ<ヒストリー>の店内に天晴の声が鮮明に響く。

 

「改良したのデッキを試してみたいんです。」

 

鈴音と魔菜が顔を見合わせる。

 

「うん、分かった。」

「どうせなら二連勝で決めちゃいましょう。」

 

鈴音が小さく頷き、魔菜がサムズアップで応じる。

 

「こっちからは俺が出るぜ。」

 

智季が意気揚々と前に出る。

 

「「ゲートオープン、解放!!」」

 

RBSが起動し、2人はフィールドへ向かう。

 

 

 

 

「先行は僕です。」

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】5

【リザーブ】3+S1

【手札】5

 

「リザドエッジをレベル2で召喚。」

 

赤のシンボルが割れ、小さなトカゲが現れ、智季を威嚇する様に鳴く。

 

「さらに、ネクサス。新しき世界を配置。」

 

天晴の背後。自然のアーチが連なる水域が出現。

 

「ターンエンドです。」

 

 

 

 

「俺のターン。」

【ターンプレイヤー】久地縄 知季

【ライフ】5

【リザーブ】4+S1

【手札】5

 

「創界神オシリスを配置。」

 

機械の四肢に機械的な杖を携えた神、創界神オシリスが智季の後方に現れる。

オシリスは紫のオーラを放ちながら杖を掲げる。デッキからカイゼルマスタッシュスネーク、白晶防壁、ウシルコブラがトラッシュへ落ちる。

 

「神託発揮。コア2個をオシリスに置く。そして、ウシルコブラを召喚。」

 

紫のシンボルが砕け、ウシルコブラが召喚される。

 

「召喚時効果。デッキの上から2枚オープン。その中の神話ブレイヴ1枚か、系統:「妖蛇」を持つスピリットカード1枚を手札に加える。」

 

ウシルコブラが紫のオーラを発する。2枚のカードが捲られ、その姿を露にする。オープンされたのは、クリスタニードル、スネークビジョン。

 

「クリスタニードルを手札に。そして、スネークビジョンの効果。自分の紫の効果でデッキからオープンされた時、手札に加えられる。」

「!?」

「さらに、バーストセット。これでターンエンド。」

 

智季の場に裏向きのカードが出現。

 

(……バースト。)

 

天晴の脳裏に前回のバトルが甦り、緊張がいっそう高まる。

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】5

【リザーブ】2+S1

【手札】4

【フィールド】リザドエッジ(2)、新しき世界(0)

 

「新しき世界の効果。系統:「起幻」を持つスピリットを召喚する時、シンボルを全色としても扱う。」

 

瞬間、新しき世界が赤のオーラに包まれる。

 

「時間を越えて、起源へ至れ。時空龍クロノ・ドラゴンをレベル2で召喚。」

 

フィールドの空間が歪み、徐々にひび割れる。そして、緑のドラゴンがゆっくりと現れ、手に持っていた剣を智季に突きつける。

 

「不足コストはリザドエッジより確保。ありがとう、リザドエッジ。」

 

リザドエッジがフィールドから姿を消す。

 

「アタックステップ。クロノ・ドラゴンでアタック。アタック時、デッキから1枚ドロー!」

 

天晴は勢い良くカードを引く。

 

「さらに、相手はバーストを発動出来ない。」

「バースト封じか!厄介だな。」

 

剣を振り上げ、クロノ・ドラゴンが飛び出す。

 

「……ウシルコブラでブロック。」

 

智季のブロック宣言を聞き、ウシルコブラがクロノ・ドラゴンに飛び掛かる。クロノ・ドラゴンはそれをひらりと躱すと剣で真っ二つ。ウシルコブラは爆発を起こし破壊される。

 

「ターン……エンド。」

 

 

 

「クロノ・ドラゴンはライフを減らすか、フィールドから離れなければ転醒出来ない。だから、ウシルコブラを犠牲に転醒を防いだ訳ですか。」

 

モニターを見ながら、魔菜は推察する。

 

「それだけじゃない。新しき世界もライフを減らした時が条件。」

 

「成る程。二重で防いだ訳ですか。相手もやりますね。リンリンもそう思いません?」

 

魔菜は感心しながら聞く。

 

「その呼び方やめて。私はパンダじゃない。」

 

リンリンこと鈴音は呆れ顔で睨み付けるのだった。

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】久地縄 知季

【ライフ】5

【リザーブ】5+S1

【手札】6

【フィールド】創界神オシリス(3)

 

「クリスタニードルを2体召喚。」

 

羽を生やした龍のごとき姿をした蛇、クリスタニードルが連続して現れる。

 

「そして、闇王蛇ペンドルクスを召喚。」

 

紫の特大シンボルがフィールドに出現。そこから、龍の鎧を纏った下半身が蛇、上半身が骸骨のスピリットが召喚される。

 

「召喚時効果。相手のスピリットすべてのコアを、それぞれ1個だけになるように相手のリザーブに置く。」

 

コアが2個リザーブへ移動。クロノ・ドラゴンが力無く項垂れる。

 

「レベル2にアップ。不足コストはクリスタニードル1体から。よって、消滅。」

 

クリスタニードルが消え、ペンドルクスにコアが追加される。

 

「ペンドルクスでアタック!アタック時効果。相手のスピリットのコア1個を相手のリザーブに置く。 」

「それって!」

「お察しの通り。クロノ・ドラゴンのコアをリザーブに。」

 

クロノ・ドラゴンから最後のコアが外される。バトルスピリッツにおいてコアはスピリットを維持するエネルギー源。コアが無くなれば当然フィールドに存在出来ない。

よって、クロノ・ドラゴンは苦悶の声をあげながら消滅する。

 

「クロノ・ドラゴン!!」

「クロノ・ドラゴンの転醒はレベル2から。レベル1の時なら安心してご退場願えるってわけだ。」

「そんな……。」

 

天晴は悔しげな表情を浮かべる。

 

「続けるぜ。この効果でそのスピリットのコアが0になったとき、自分はデッキから1枚ドロー。そして、メインアタック。」

 

ペンドルクスが迫る。骨の手から禍々しい波動が溢れ出る。

 

「ライフで受ける。」

【ライフ】5→4

 

「ターンエンド。」

 

不敵な表情で智季のターンが終了する。

 

 

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】4

【リザーブ】6+S1

【手札】5

【フィールド】新しき世界(0)

 

「リザドエッジを召喚。さらに、道化竜トリックスタードラゴンを召喚。」

 

シンボルが割れ、リザドエッジ、トリックスタードラゴンがフィールドへ。。

 

「新しき世界をレベル2にアップ。」

「!!」

「アタックステップ。効果で系統:「起幻」を持つトリックスタードラゴンをレベル3にアップ。そのまま、アタック。」

 

トリックスタードラゴンが宙に舞う。

 

「新しき世界の効果。系統:「起幻」を持つ本来のコストが4/5/6の自分のスピリットがアタックしている間、相手は、バースト効果を発揮できない。さらに、トリックスタードラゴンのアタック時効果。トラッシュのクロノ・ドラゴンを手札に加え、回復。」

 

智季が手札から1枚のカードを抜き取る。

 

「フラッシュタイミング。マジック、スネークビジョン。コスト確保の為、ペンドルクスをレベルダウンしクリスタニードルを消滅。」

 

紫の衝撃波がフィールドの全域に広がる。

 

「相手のスピリット/アルティメットすべてのコアを、それぞれ1個になるように相手のリザーブに置く。」

「またしても!?」

「それだけじゃない。自分の紫1色の創界神ネクサスのコア1個をボイドに置くことで、相手のスピリット/アルティメットのコア1個を相手のリザーブに置く。よって、トリックスタードラゴンを消滅。」

 

苦悶の声をあげ、トリックスタードラゴンは消滅。

 

「せっかく回復してたのに。」

「どうする?ターンエンドか?」

 

天晴は暫し考え込む。

 

「……リザドエッジでアタック。」

「ライフで受ける。」

【ライフ】5→4

 

「ライフが減ったのでトラッシュのソウルコアを置いて新しき世界を転醒。風雅龍エレア・ラグーンへ。」

 

空より雲が裂き、エレア・ラグーンがフィールドで咆哮する。

 

「転醒時効果。ボイドからコア2個を系統:「起幻」を持つ自身の上に置いてにレベル2にアップ。……ターンエンドです。」

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】久地縄 知季

【ライフ】4

【リザーブ】6+S1

【手札】4

【フィールド】闇王蛇ペンドルクス(1)、創界神オシリス(3)

 

「悪いが、このターンで決めてやる。まずはペンドルクスをレベル2へ。そして、行くぜ!」

「死の淵より現れよ。叡智の化身。冥界蛇神アウザールを召喚。」

 

フィールドの一部に亀裂が入り、穴が開く。そこから機械の腕が現れ大地を掴む。ゆっくりと地上に這い出るは冥界蛇神アウザール。

 

「神託でコア追加。そして、召喚時効果。コア3個以上の相手のスピリットすべてを破壊する。エレア・ラグーンを破壊。」

「エレア・ラグーン!」

 

アウザールの手がエレア・ラグーンの首を掴む。そして、そのまま悲鳴をあげ、エレア・ラグーンは握り潰される。

 

「この効果で破壊したスピリット1体につき、ボイドからコア1個をこのスピリットか自分の紫の創界神ネクサスに置く。今回はアウザールに置いてにレベル2だ。」

 

アウザールにコアが置かれ、その力が増す。

 

「アタックステップ!【界放】発揮。オシリスのコア3個をこのスピリットに置くことで、このターンの間、系統:「妖蛇」を持つ自分のスピリットすべてに紫のシンボル1つを追加する。アウザールはレベル3に上昇。」

「!?」

「アウザール、ペンドルクスはダブルシンボルとなる。」

 

アウザールが咆哮。するとアウザールとペンドルクスは紫のオーラを纏う。

 

「行け、アウザール。アタックだ!」

 

アウザールが天晴に迫る。

 

「フラッシュタイミング。」

「!?」

「マジック、クリメイションフレイム。BP6000以下のスピリットを破壊。」

 

カードより炎が吹き荒れ、ペンドルクスを包み込む。そのまま爆発。破壊される。

 

「クリメイションフレイムはカウント1以上の時、ターンに1度だけ手札に戻せる。」

「だが、この時、バースト条件は満たされた。バースト発動!相手のスピリットのコア3個はリザーブへ。リザドエッジを消滅。」

 

裏向きのカードが捲れ上がる。

 

「カイゼルマスタッシュスネークをレベル3で召喚。神託でコアを追加、不足コストはアウザールより確保。よって、レベル2にダウン。」

 

フィールドにカイゼルマスタッシュスネークが降り立つ。

 

「アウザールの効果はこのターンの間。つまり、カイゼルマスタッシュスネークもダブルシンボルだ。」

「そんな。」

「カイゼルマスタッシュスネークのBPは8000。クリメイションフレイムでは破壊出来ない。これで終わりだ。」

「ライフで受ける。うわぁぁぁ!!」

【ライフ】4→2

 

ライフが砕ける。その衝撃で天晴は少しよろめくも真っ直ぐに前を見据える。

 

「……相手によって自分のライフが減ったとき、自分のトラッシュに赤1色のカードがあれば、コストを支払わずに使用できる。」

「何!?」

「マジック!ペネレイトフレイムをノーコストで使用。BP12000以下のスピリットを破壊。カイゼルマスタッシュスネークは範囲内です。」

 

炎の弾丸がカイゼルマスタッシュスネークに降り注ぎ爆散。

 

「くっ、ターンエンド。」

 

 

 

 

「何とか凌ぎましたね。」

 

魔菜はほっと胸を撫で下ろす。

 

「でも、フィールドはがら空き。次のターンも凌げるかは分からない。」

 

鈴音が冷静に戦局を読む。

 

(つまり、このターンが正念場。)

 

天晴がデッキに手をかける。

 

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】2

【リザーブ】11+S1

【手札】3

【カウント】1

 

「ドローステップ。ドロー!」

 

カードを引き、恐る恐る中身を見る。その瞬間、天晴の顔がぱっと明るくなる。

 

「来た!僕の第二の切り札。」

「灼熱の大地、龍巣食う活火山。転醒ネクサス、赤の世界を配置。」

 

天晴の後方。龍の顔を模した火山が迫り上がる。

 

「配置時効果。最もBPの低い相手のスピリットを1体破壊する。」

「何だと!」

 

智季のフィールドにはアウザールのみ。赤の世界の火山。その火口から炎が放射。アウザールを焼き尽くす。

 

「アウザール!!」

 

キースピリットを破壊され、智季は目に見えて動揺。額に汗がにじむ。

 

「さらに、時空龍クロノ・ドラゴンを再召喚。コア4個置いてレベル2!」

 

空間を裂き、クロノ・ドラゴンがフィールドに帰ってくる。

 

「アタックステップ。クロノ・ドラゴンでアタック。」

「……。」

 

智季はフィールドを見る。オシリスの神技はコアを外す効果。現在オシリスに置かれているコアは2個神技は発揮可能。しかし、外せるコアは1個のみ。コア4個置かれているクロノ・ドラゴンの転醒は止められない。

 

「ライフで受ける。」

【ライフ】4→3

 

クロノ・ドラゴンの剣がライフを砕く。

 

「ライフが減ったことでクロノ・ドラゴンは転醒する。」

「起源の果て、大いなる時の化身よ降り立て。時空龍皇クロノバース・ドラグーンに転醒。」

 

魔方陣を潜り、クロノ・ドラゴンはクロノバース・ドラグーンに転醒。

 

「創界神オシリスを破壊。そして、回復。」

 

クロノバース・ドラグーンのブレスがオシリスを破壊。そして、勝ち誇る様に嘶く。

 

「クロノバース・ドラグーンでアタック。」

 

クロノバース・ドラグーンが智季の元へ歩き出す。

 

「コスト5以上の自分の赤のスピリットがアタックしたとき、このネクサスは裏返る。」

「紅蓮の炎より転醒。飛翔せよ!赤き神龍皇。」

 

火山が振動する。その内部に丸まったドラゴンがゆっくりとまぶたを開く。瞬間、マグマが溢れ、火口から吹き出る。その上空。大きな翼を広げ、赤き神龍皇がフィールド全体に咆哮を轟かせる。

 

「赤き神龍皇の効果。本来のコストが5以上の自分の赤のスピリットすべてに赤シンボル1つを追加する。」

 

赤き神龍皇が再び吠える。クロノバース・ドラグーンに赤のシンボルが追加される。

 

「クロノバース・ドラグーンはコスト7。よってダブルシンボル。」

「ライフだ。」

【ライフ】3→1

 

「これで最後。赤き神龍皇でアタック!!」

 

赤き神龍皇が翼を広げ、飛翔。フィールドを一直線に突き抜ける。

 

「ふぅ。……ライフで受ける。」

 

1度深呼吸。目を開け、智季は真っ直ぐに赤き神龍皇を、そして天晴を見る。その表情は清々しく晴れやかだった。

赤き神龍皇が灼熱の息吹きを放つ。その炎が最後のライフを破壊する。

 

【ライフ】1→0

 

天晴はガッツポーズをつくる。

 

「みんな、ありがとう。僕達の勝ちだ!!」

 

その言葉を受け、クロノバース・ドラグーンと赤き神龍皇は勝利の雄叫びをあげるのだった。

 

 

 

 

「か~~!ストレート負けかよ。」

 

智季は悔しそうに頭を掻く。

 

「わたしの出番……。」

 

傍らで陽子がしゅんと落ち込む。それを慰める様に陸は肩に手を置く。

 

「やりましたね、勝ちましたよ!」

 

魔菜がハイタッチの姿勢で駆け寄る。後ろから鈴音も寄ってくる。

 

「勝利、おめでとう。」

「はい、ありがとうございます。」

 

魔菜にハイタッチされながら、天晴は鈴音に笑顔を向ける。

 

「天晴だっけ?やるじゃねえか。」

 

智季は天晴の前に立つ。そして、右手を差し出す。

 

「次は負けねえからな。」

「!……はい。またよろしくお願いします。」

 

差し出された手を握り、握手。天晴は嬉しそうに顔を綻ばせるのだった。




そう言えば、早くも第2章の名前が判明しましたね。
8月が待ち遠しいです。

次回もお楽しみに。


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押し寄せる荒波の様に。青き異神、浮上。

Flip Over第5話。どうぞ、お楽しみ下さい。









今日は休日。天晴はいつもの様にヒストリーを訪れる。今回の目的は戦力増強。すなわち、デッキ強化。カウンターに向かう。

 

「「すいません。これください。」」

 

声が被る。横を見るとオールバックの如く髪を逆立てた少年がこちらを見ていた。

 

「あっ……えっと。お先にどうぞ。」

 

手をカウンターへ向け、天晴は場所を譲る。

 

「おう。サンキューな。」

 

少年は破顔する。そして、会計を済ませ、踵を返す。

天晴も、会計を終え、近くのスペースでパックの開封を行う。

 

「あっ。」

 

出てきたのは青のXレア。

 

(醒海皇ヴァルシャルク……か。)

 

カードを確認しながらどうするべきか思い悩む。

 

「うぉ!ヴァルシャルクじゃん!!」

 

背後から叫ぶ声。振り返ると先程かち合った少年が立っていた。

 

「えっと……。」

 

戸惑う天晴。

 

「悪い悪い。オレの名は台場 海旗(だいば かいき)。よろしくな。」

 

そう言うと、海旗は片目を瞑ってサムズアップ。

 

「台場……。つかぬことを聞きますが、豊原さんとか、郡山さんとかご存知ですか?」

「えっ!?豊原……郡山。……ああ。魔菜と鈴音の事か。」

(やっぱり。)

 

心の内で得心がいく。

 

「もしかして、魔菜が言ってたカードバトラーってお前か?」

「はじめまして。時川 天晴です。」

 

天晴は丁寧にお辞儀する。海旗は納得いった表情で腕を組む。

 

「は~。成る程、お前がか。いや、魔菜の野郎が「新しく始めた子がとっても丁寧な人なんですよ。オダイバーと違って。」とかのたまいやがったからよ。どんな奴か気になってたんだよ。」

「あ……はは……は。」

 

天晴の脳裏にその光景がありありと浮かぶ。

 

「ところでだ……。」

 

海旗は真剣な表情になる。そして次の瞬間、海旗が目の前から消えた。

 

「頼む!オレにそのカードを譲ってくれ!!勿論、只でとは言わない。」

 

下から海旗の声がする。体を屈め、床に額をつけている。それは間違いなく土下座だった。その異様な状況に周囲の人々が何事かと目を向ける。

 

「え……えっと。」

(めちゃくちゃ目立ってる。)

 

天晴の顔を冷や汗が伝う。

 

「い、いいですよ。」

「本当か!!」

 

海旗が嬉しそうに顔を上げると近くに置いてあったバッグからバインダーを広げる。

 

「お前、どんなカードが欲しい?トレードだ。」

「えっと、僕のは赤デッキなので赤のカードですかね。」

「了解。赤な。……ここから赤のカードだ。好きな奴選んでくれ。」

 

慣れた手つきでバインダーを捲り、天晴に見せる。目を通すとそこには様々な種類のカードが収められていた。

そして、1枚のカードに目を奪われる。その名は……

 

「醒龍皇リバーサルドラゴン。」

「そのカードにするか?」

「はい!」

「そんじゃ、トレード成立だな。」

 

天晴は醒海皇ヴァルシャルクを、海旗は醒龍皇リバーサルドラゴンをそれぞれ交換。

 

「よし、これでデッキの完成だ!」

 

海旗はヴァルシャルクをそのままデッキに組み込む。

 

(取り敢えず、後でもう一度組み直そう。)

 

天晴はリバーサルドラゴンをケースにしまう。

 

「なぁ、時川。これから時間ある?あるならオレとバトろうぜ。」

 

海旗がデッキを突き出す。

 

「いいですよ。」

「そうこなくっちゃ。」

 

2人はRBSに移動。テーブルに着く。

 

「「ゲートオープン、解放!!」」

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】台場 海旗

【ライフ】5

【リザーブ】3+S1

【手札】5

 

「オレのターン。異海人シャークマンを召喚。」

 

青のシンボルが砕け、人型のサメ、異海人シャークマンが現れる。

 

「シャークマンの召喚時効果。手札にある青のネクサスをノーコストで配置出来る。」

「!」

 

シャークマンが青のオーラを纏いながら吠える。すると海旗の後方より巨大な門が迫り上がる。

 

「大海門を配置。そうしたときシャークマンの効果でネクサスにボイドからコア1個を置く。そのコアをシャークマンに追加してレベル2にアップ。これでターンエンド。」

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】5

【リザーブ】4+S1

【手札】5

 

「放浪の創界神 ロロを配置。デッキから3枚をトラッシュへ。」

 

デッキが捲られ、時空龍クロノ・ドラゴン、道化竜トリックスタードラゴン、新しき世界がトラッシュに落ちる。

 

「神託で3コアを置く。そして、ゴッドシーカー ロロドラを召喚。神託でコア追加。召喚時効果で3枚オープン。」

 

再びデッキからカードが捲られる。オープンされたのは、赤の世界、ペネレイトフレイム、道化竜ポルドラ&カスタードラ。

 

「赤の世界を手札に加え、残りを破棄。さらに、」

 

天晴は手札からカードを1枚抜き取る。

 

「バーストセット。アタックステップ。」

「大海門の効果。青以外のスピリットがアタックするとき、リザーブのコアをトラッシュに置かなければアタック出来ない。」

 

大海門から青の波動がロロドラを襲う。ロロドラはその力に怯み動けない。

 

「……ターンエンドです。」

 

結局、何も出来ぬまま、天晴のターンが終わる。

 

 

 

 

 

「そこでワタシは言ったんですよ。キテラがフィールドに来てら~、って。」

「ふーん。」

 

店内に2人組が入ってくる。鈴音と魔菜だ。

 

「もう少し興味持ちましょうよ~!」

「あまりにも寒すぎて反応したくなかった。」

「酷い!!」

 

頬を膨らませ抗議する魔菜を無視し、鈴音はモニターを見る。

 

「あれって、トッキーとオダイバーじゃないですか。いつの間に知り合ったんです?」

「さぁ。まだ序盤……か。」

「さてさてどちらが勝ちますかね~。」

 

 

 

 

 

そんな会話をよそにターンは進む。

「オレのターン。」

 

【ターンプレイヤー】台場 海旗

【ライフ】5

【リザーブ】3+S1

【手札】4

【フィールド】

異海人シャークマン(2)、大海門(0)

 

「角仮面の巨人ドゥーガルドを召喚。召喚時効果で3枚ドローし2枚破棄。」

 

海旗は3枚引き、暫し悩んだ後に2枚をトラッシュに置く。

 

「召喚時効果発揮によりバースト発動!」

「マジか!?」

「クリメイションフレイム。BP15000以外のスピリット、ドゥーガルドを破壊します。」

 

バーストがオープンされ、そこから出現した炎がドゥーガルドを焼き尽くす。

 

「さて、どうするか。」

 

リザーブにはまだコアが2個残っている。

 

「……異海人シャークマンをレベル1にダウン。そして、異海人シャークマンをもう1体召喚。召喚時効果でこのネクサスを配置させてもらうぜ。」

 

海旗は好戦的な表情で1枚のカードを掲げる。

 

「巨人達の海原、異形達の闘技場。転醒ネクサス、青の世界を配置。」

 

水しぶきが上がる。そこから現れたのは大海門よりも巨大な闘技場。

 

「ボイドからコアを青の世界に置く。そして青の世界の配置時効果。相手の創界神ネクサスのコアを全てボイドに置く。」

 

青の世界から放たれた濁流がロロを直撃。その一撃を受け、ロロは力無く膝を着く。

 

「そんな。」

「青の世界のコアを片方のシャークマンに移動させ、レベルアップ。さらに、バーストセット。」

 

シャークマンに力が宿る。そして、2体は共鳴する様に嘶く。

 

「アタックステップ。レベル2のシャークマンでアタック。」

 

シャークマンがフィールドに潜る。背ビレのみを露出させ、天晴へと一直線。その動きは水の中を泳いでいる様。

 

「ライフで受ける。」

 

天晴の宣言を聞き、シャークマンは眼前に飛び出す。手のヒレで切り裂き、ライフを削る。

 

「ぐっ!」

【ライフ】5→4

 

「相手のライフが減ったので条件達成。大海門、裏返れ!」

「!?」

 

シャークマンのコアが大海門に置かれ、レベルダウン。

 

「海門機兵オーシャンゲート・ゴレムに転醒。カウント1増やす。」

 

大海門は大きく揺れ動き変形、その姿を人型へ変える。

 

「転醒時効果でコスト合計6まで相手のスピリットを好きなだけ破壊する。ロロドラを破壊。」

 

オーシャンゲート・ゴレムがロロドラを鷲掴みにする。

 

「ロロドラ!」

 

天晴の叫びも空しくオーシャンゲート・ゴレムに握り潰されロロドラは破壊される。

 

「オレはこれでターンエンドだ。」

 

海旗はライフを砕き、スピリットを破壊し、ロロのコアもゼロ。圧倒的優位な状況にご機嫌でターンを終える。

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】4

【リザーブ】6+S1

【手札】4

【フィールド】放浪の創界神ロロ(0)

 

「リザドエッジを召喚。」

 

リザドエッジがフィールドに出現。

 

「こっちも行きます。」

「灼熱の大地、龍巣食う活火山。赤の世界を配置。神託でコア1個をロロに置く。」

 

龍を模した火山が出現。

 

「配置時効果。シャークマンを1体破壊。」

 

赤の世界から放たれた炎がシャークマンを焼き払う。

 

「マジック、ブライトフォースドロー。デッキから4枚になるまでドローする。手札はゼロ。よって最大ドロー。」

「手札補充か。」

「そして、道化竜トリックスタードラゴンを召喚。神託発揮。」

 

天晴はフィールドを見る。

(リザーブにコアが無い。……なら!)

 

「リザドエッジ1体のコアをリザーブへ移動。よって、消滅。」

「そう来るか!」

「ありがとう、リザドエッジ。」

 

リザドエッジはその声に応える様に頷き、フィールドから消える。

 

「アタックステップ。トリックスタードラゴンにトラッシュからコアを3個置きレベル3へ。そのまま、アタック。」

 

トリックスタードラゴンがフィールドを翔る。

 

「トリックスタードラゴンのアタックにより条件達成。」

「紅蓮の炎より転醒。飛翔せよ!赤き神竜皇。」

 

赤の世界が裏返り、フィールドに赤き神龍皇が舞い降りる。

 

「転醒時効果によって、オーシャンゲート・ゴレムを破壊。」

 

赤き神龍皇のブレスがオーシャンゲート・ゴレムを焼き尽くす。

 

「そして、トリックスタードラゴンのアタック時効果。トラッシュのクロノ・ドラゴンを手札に加え、回復。」

「相手が手札を増やしたとき、バースト発動!」

 

バーストが開かれる。

 

「トラッシュの大海門を再び配置し、リザドエッジ、赤き神龍皇を疲労。」

「えっ!?」

 

フィールドに大海門が再び出現。さらに、青の波動がトリックスタードラゴン、赤き神龍皇を包み込む。

 

「この効果発動後、フォッシルゴレムは召喚される。レベル2。」

 

フィールドにフォッシルゴレムが足を踏み入れる。

 

「くっ!……でも、トリックスタードラゴンのアタックは継続してます。」

「フォッシルゴレムでブロック。BP10000。」

 

トリックスタードラゴンが黄色の弾を発射。しかし、フォッシルゴレムはびくともせず、トリックスタードラゴンの首を掴む。そのまま、地上に叩きつけられ、トリックスタードラゴンは破壊される。

 

「ターン……エンド。」

 

悔しそうに、天晴は顔を歪ませる。

 

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】台場 海旗

【ライフ】5

【リザーブ】2+S1

【手札】2

【カウント】1

【フィールド】異海人シャークマン(2)、フォッシルゴレム(2)、大海門(0)、青の世界(0)

 

「マジック、ブルーフィールド。デッキから2枚ドローし、1枚破棄。さらに、タイプ:フィールド発揮。お互いの創界神ネクサスのシンボルを0にする。」

「それじゃあ、ロロのシンボルは軽減に使えない!?」

「そう言う事だ。そして、このままアタックステップ。シャークマンでアタック。」

 

シャークマンが再びフィールドに潜り、迫る。

 

「ライフで受ける。」

【ライフ】4→3

 

「相手によってライフが減ったので、ペネレイトフレイムをノーコストで発動。フォッシルゴレムを破壊。」

「ならこっちも再び転醒。オーシャンゲート・ゴレム。効果でリザドエッジ、赤き神龍皇を破壊。」

 

オーシャンゲート・ゴレムの鉄槌がフィールドに亀裂を生む。そこから隆起した地面がリザドエッジ、赤き神龍皇を襲う。

 

「根幻回帰。赤き神龍皇は裏返して配置します。配置時効果でシャークマンを破壊。」

 

赤き神龍皇はシンボルに戻り、火山の中に帰っていく。そして、火山から吹き出た炎がシャークマンを破壊する。

 

「ターンエンドだ。」

 

 

 

 

「これは厳しいですね。」

 

魔菜が顔をしかめる。

天晴のフィールドには放浪の創界神ロロと赤の世界の2枚だが、ブルーフィールドの効果で軽減に使えるのは赤の世界のみといった状況だ。

 

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】3

【リザーブ】8+S1

【手札】4

【カウント】1

【フィールド】

放浪の創界神ロロ(2)、赤の世界(0)

 

「まずは、バーストセット。次に時砂の龍子サンドラグラスをレベル2で召喚。神託でコアを増やす。そして、召喚時効果でオーシャンゲート・ゴレムを破壊。」

「この瞬間、青の世界の効果発揮。オーシャンゲート・ゴレムを疲労させる事で相手の召喚時効果を無効にする。」

「そんな!!……でもまだ終わってない。赤の世界にコアを1個置いて、ロロの神技発動。コア3個をボイドに送って、赤の世界を転醒させる。」

 

フィールドに再び赤き神龍皇が舞い戻る。

 

「カウント追加。転醒時効果でオーシャンゲート・ゴレムを今度こそ破壊します。」

 

青の世界の効果を発揮させるには回復状態のスピリットが必要になる。

しかし、海旗のフィールドには疲労状態のオーシャンゲート・ゴレムしかいない為、青の世界の効果は発揮出来ない。

 

「これでそっちのフィールドはがら空き。ここで決める!!赤き神龍皇でアタック。」

「ライフで受ける。ぐっ!!」

【ライフ】5→3

 

赤き神龍皇のブレスが海旗に直撃。

 

「だが、オレのライフが減った事で転醒。お待ちかねの時間だ。」

「まさか!!」

「大海原より浮上。深淵なる混沌よ現れろ。転醒!!青き異神。」

 

闘技場に渦が巻く。それは徐々に上昇し、竜巻へ。竜巻が晴れ、現れたのはまさしく異形、青き異神。

 

「転醒時効果でサンドラグラスを破壊。」

 

青き異神は蛇の様な龍の様な顔がついた足を伸ばす。それに絡め取られ、啄まれ、サンドラグラスはみるみるうちに食い尽くされ、破壊。

 

「うっわ……エグ!」

「絵面が酷い。」

 

その光景を見て、魔菜と鈴音は何とも言えない表情になる。

 

「サンドラグラスの破壊でバースト発動。BP12000以外、青き異神を破壊。」

 

何処からともかく現れた炎が青き異神を包み、爆散。

 

「根幻回帰。青き異神は青の世界となって再び配置。」

 

青き異神はシンボルに戻り、闘技場の中に帰る。

 

「道化竜フール・ジョーカードラゴンを召喚。」

(駄目だ。このターンじゃ決められない。)

「ターンエンド。」

 

釜を携えた竜、フール・ジョーカードラゴンが次に備え構えを取るのだった。

 

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】台場 海旗

【ライフ】3

【リザーブ】9+S1

【手札】2

【カウント】3

【フィールド】青の世界(0)

「ふぅ。凌ぎきった。」

 

海旗は文字通り胸を撫で下ろす。

 

「なぁ、天晴。ひとつ言っておくぞ。」

「へっ!?」

「今のオレの手札にはこの状況を打開するカードは無い。つまり、勝つか負けるかはこのドローに懸かってるって訳だ。」

「!!」

「だからオレは引くぜ。この状況を打開出来る切り札を!……ドロー!!」

 

海旗は勢い良くカードを引く。そして、内容を見て、笑みを浮かべる。

 

「フフッ。ハハハハハハ。よっしゃー!!」

(一体何を引いたんだ。)

「行くぜ!!」

 

海旗はドローしたそのカードをフィールドに出す。

 

「神秘の海より目覚めよ。神殺しの剛腕。醒海皇ヴァルシャルク、召喚。」

 

水の柱が上がる。そこを掻き分け、姿を現すは銛を携えし巨人、醒海皇ヴァルシャルク。

 

「ヴァルシャルクの効果。カウント1につき、レベルを1つ上のものとして扱う。」

「なっ!?」

「オレのカウントは3。つまり、ヴァルシャルクのレベルは前人未到のレベル4。」

「レベル4!!」

 

その強大なレベルに天晴は驚く。

それを余所に銛を振り回し、ヴァルシャルクは戦闘態勢に入る。

 

「アタックステップ。ヴァルシャルクでアタック!」

 

ヴァルシャルクが駆け出す。

 

(落ち着け。焦るな。まだフール・ジョーカードラゴンがいる。それに手札には白晶防壁もある。)

「アタック時効果。お互い手札/手元の青以外のカードは使えない。」

「そんな!!」

「さらに、レベル4のアタック時効果。相手のライフをリザーブに送る。」

 

ヴァルシャルクが銛を投擲。一直線に天晴に突き刺さる。

 

「ぐっ!!」

【ライフ】3→2

 

「相手のライフが減ったので青の世界が再び転醒する。来い!青き異神。カウント追加。」

 

フィールドに青き異神が出現。息をつく暇もなく足を伸ばす。

 

「転醒時効果でフール・ジョーカードラゴンを破壊。」

 

青き異神に食い千切られ、フール・ジョーカードラゴンはフィールドから消える。

 

「これでブロッカーはいない。メインアタック。」

「ライフで受けます。ぐっ!」

【ライフ】2→1

 

「ヴァルシャルクの効果は終わらない。バトル終了時、カウント4以上で尚且つ相手スピリットがいるなら回復する。」

 

ヴァルシャルクが起き上がる。

 

「これで終わりだ。ヴァルシャルクでアタック!!」

「ライフで……受けます。うわぁぁぁ!!」

【ライフ】1→0

 

「バトルは豪快、気分は爽快。おっしゃー!!」

 

海旗のガッツポーズに合わせ、ヴァルシャルクは銛を地面に突き刺し、青き異神は仰々しく両手を広げ、勝利の咆哮を轟かせるのだった。

 

 

 

 

 

「うっしゃー!勝った、勝った。」

 

喜び足りてないのか海旗は未だガッツポーズを取っている。

 

「うう、負けた……。」

 

一方の天晴はデッキを手に項垂れている。

 

「気にすんなよ。オレが勝てたのは、お前に交換してもらったヴァルシャルクのおかげだ。つまり、これはオレとお前の勝利って事だぜ。」

 

海旗は天晴の肩に手を回す。

 

「それは……どうなんでしょう?」

「まぁ、細かい事はいいんだよ。またやろうぜ、天晴。」

「……はい!」

「おやおや。随分と仲が良いですね~。」

「げっ!その声は。」

 

海旗が横を向く。視線の先には予想通り、魔菜がいた。傍らには鈴音の姿もある。

 

「郡山さんに豊原さん。」

 

天晴もそれに気付き、声をかける。

 

「げっ、て何です?げっ、て。失礼過ぎません?」

「日頃の行いだろ。胸に手を当てて考えてみろ。」

「ん~、覚えがありませんね~。」

「おまえなぁ……。」

 

調子の良い魔菜の態度に海旗は思わず呆れ顔になる。

 

「郡山さんも来てたんですね。」

「うん。時川達のバトルの序盤に。」

「そうだったんですか。」

「惜しかったね。」

「そんな。まだまだですよ、僕なんて。」

「……そっか。」

 

苦笑いする天晴に鈴音は何も言えず、無難な応答になる。

 

「随分賑やかになったな。」

 

そこに見慣れた人物がやって来る。龍斗だ。手には何やら紙らしきものを持っている。

 

「古賀さん。」

「よっ。」

 

龍斗が片手をあげる。

 

「なんですか、それ?」

「ん、これか?見ればわかるぜ。お前らにも関係あるし。ほら。」

 

龍斗が持っているものを1枚渡す。それはポスターだった。天晴達は揃って覗き込む。

 

「ショップ大会ですか?」

「そっ、来週やるんだ。良かったら参加してくれ。」

「お~、良いじゃん。勿論、優勝はオレが貰うぜ。」

「ないない。優勝はワタシが貰いますから。」

「ヘッ!じゃあ、お前には出来るのかよ?」

「出来るに決まってるじゃないですか。ワタシですよ。」

「ふ、2人共落ち着いて。」

 

海旗と魔菜は互いに火花を散らして睨み合う。

その様子に天晴は慌てて間に入る。

 

「無理だよ。」

 

天晴達が声の方を振り返る。そこには、珍しく挑発的な表情をした鈴音がいた。

 

「優勝は私が貰うから。」

 

その言葉に魔菜と海旗は暫し呆然とするもすぐにいつもの調子に戻る。

 

「へぇ~。リンリン、何時になくやる気じゃないですか。」

「まぁ、どうせなら2連覇したいし。後、リンリンはやめろ。」

「うっし。オレ、カード見てくる。」

 

そう言うと、海旗は移動。あっという間にいなくなる。

 

「ワタシも今回はガチで行きますよ。大会で会いましょう。」

 

魔菜も続く様に去る。

 

「それじゃ、私も行くね。」

 

鈴音もカウンターへ向かって移動する。

 

「んで、天晴はどうするんだ?」

 

龍斗が天晴に聞く。

 

「僕は……。」

 

脳裏に今までの戦いが甦る。特に初勝利の瞬間が。

 

(また、勝ちたい。)

 

天晴の心は決まる。

 

「出ます。自分がどこまで出来るか試してみたいです。」

「そうか。俺も楽しみにしてるぜ。」

「はい。」

 

天晴は店を出る。目指すは自宅。新しいデッキを作るべく帰路につくのだった。




コラボカードを出すか出さないかめっちゃ悩んでいる今日この頃。

次回、ショップ大会編開始。


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