爆転ニギリ スシブレード:ファンタジア ~The Lucifer Ascension~ (Mr.後困る)
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第五章:希望の光
オープニング・クロール


この作品を爆天ニギリ スシブレード作者bamboon氏に捧ぐ


何と言う事だ!!

鶴帝国がシャリ王国と併合し、 ダークネスシ帝国となってしまった!!

ダークネスシ帝国初代皇帝となったシャリーラ13世は魔王との戦争に備えた

統一人類国家を建国を宣言、 全ての人類国家に対し人類同士の諍いを無くし協調し

共に魔王と戦う事を要請したのだった。

 

だがしかしダークネスシ帝国が世界征服を目論んでいる事は明白だった。

ダークネスシ帝国を陰で操る寿司の暗黒卿『闇』『ブタの男』は

帝国内の才能ある料理人を徴兵し

闇のスシブレーダー達にすべく精神酢飯漬けにしている。

明らかなる欺瞞!! 何という邪悪か!!

 

しかし周辺各国も黙って見ている訳では無い

サンシャイン王国は相手の兵力が整う前にダークネスシ帝国に攻め込んだ

だがしかしサンシャイン王国騎士団達がダークネスシ帝国に攻め入ると

既に国内では闇寿司思想が蔓延しており

闇のスシブレーダー達と化した国民達の洗礼により

王国騎士団は壊滅してしまったのだった。

それでも王国騎士団団長、 ベケンノビが果敢に攻め込むも

『闇』がこの世界で見出しダークネスシ帝国で新たに生まれた

寿司の暗黒卿『ダースシ・ノーテン』の集団リンチに敗北。

ダークネスシ帝国はサンシャイン王国の攻撃を一方的な戦争と称し

正義の戦いと銘打ってサンシャイン王国に攻め入った。

サンシャイン王国国王オーガスは無惨にもその身を三枚におろされ

寿司にされてしまった、 何という残虐な所業なのか!!

 

サンシャイン王国辺境ミンガンでは

オーガス王の遠縁レーア伯爵令嬢を旗印に再攻の準備を進めていた。

だがしかし卑劣な闇寿司は誘いをかけていた!!

その誘いに看過された裏切り者ジューンにより

レーア伯爵令嬢は拉致されてしまったのだった・・・

 

圧倒的戦力差、 そして旗印の消失に反乱軍は混乱し空中分解してしまった。

そんな中、 レーア伯爵令嬢の護衛をしていた部隊長ハルトは逆転の一手として

禁じられた山に行く事を提案する。

禁じられた山の神の力を借りる事で闇のスシブレーダー達に対抗しようと言うのだ。

しかし禁じられた山の神は人間には計り知れない存在であり命の保障は無い。

禁じられた山に行くかどうかはそれぞれの任意とされた

レーア伯爵令嬢御付きの執事バルトはレーア伯爵令嬢を攫われるのを見過ごしてしまった

不甲斐無い自分を少しでも役立てる様に禁じられた山に行く事を決意するのだった。

 

今・・・生まれる筈の無い正しきスシブレーダーが生まれようとしているのだった。




以下のハブの設定を使用しております
スシブレードハブ(http://scp-jp.wikidot.com/sushiblade-hub)
闇寿司ハブ(http://scp-jp.wikidot.com/sushiblade-hub/offset/1/page2_limit/1)


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禁じられた山に向かう騎士達

ミンガンのレーア伯爵令嬢が住まうサイト城では

ダークネスシ帝国の闇のスシブレーダー達に占拠されていた。

 

「何ぃ?  レーア伯爵令嬢の護衛部隊の隊長が居ねぇだぁ?」

 

サイト城に侵攻した侵攻部隊隊長、 チキンヘッドはその名の通りの鶏の頭をしている。

正に鶏冠に来ながら部下に聞き返した。

 

「は、 はい!! 如何やら数名を連れ出して禁じられた山へ向かった模様です」

「禁じられた山ぁ? 何だそりゃあ?」

「何でも山の神とやらが居て力を与えてくれるとか何とか・・・

噂によると山の神の怒りに触れて死んでしまった者も居るとか」

「下らねぇな!! 神とやらが居たのならばこの世界は魔王に侵略されてねぇわ!!」

 

コッコッコと高笑いするチキンヘッド。

 

「いかがいたしましょうか」

「レーア伯爵令嬢は既にジューンが捕えているんだろう?

既に勝敗は決した、 我々はここでお宝とやらとご対面と行こうじゃ無いか」

「では追撃は無しで・・・」

「いや、 とりあえずソルジャースシを三人程送れ」

「はっ、 編成は如何しましょう」

「カルビとウィンナーで」

「分かりました」

 

ソルジャースシとはダークネスシ帝国の

闇のスシブレーダー達の中でも最下級のスシブレーダーである。

最下級と侮るなかれ、 一般的な村人でも闇のスシブレーダーになれば

戦闘職の騎士と同等の存在になる、 そして帝国から支給されたスシブレードを装備すれば

騎士等容易く捻じ伏せられる存在になる。

とは言えソルジャースシは最下級スシブレーダー。

一般的な闇のスシブレーダーたるヤミ・アプレンティスよりも弱い存在である。

チキンヘッドの階級はヤミ・アプレンティス、 多少闇のスシブレーダーとしての力は有るが

まだまだ上位のヤミ・マスター、 スシの暗黒卿には及ばない。

文字通りひよこである。

 

「コッコッコ!! この城に隠されたお宝さえ有れば俺も・・・コッコッコ!!」

 

サンシャイン王国には建国以前より守り抜かれた宝が有ると言う。

その宝を使えば物理法則等容易く捻じ曲げられるらしい。

チキンヘッドはサイト城にある宝を使い上位の闇のスシブレーダーになるつもりなのだ。

まだ見ぬ未来を夢想しながらチキンヘッドは遥か彼方に見える山を見る。

禁じられた山、 その山を見つめていた。

 

「神頼みをした時点で人間は終わりなのだよ・・・コッコッコ!!」

 

 

 

 

 

高笑いをしているチキンヘッドの眼下、 街道を走る数匹の馬。

部隊長ハルトとその部下達である、 成生でレーア伯爵令嬢御付きの執事バルトも居る。

彼等は禁忌とされる場所である禁じられた山に向かっていた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

執事バルドは慣れない馬の扱いに苦戦しながら馬を走らせていた。

 

「追手が来る前に急ぐぞ!!」

「「おお!!」」

 

ハルトは部下達に檄を飛ばす。

禁じられた山、 神によって様々な恩恵が得られる事も有るが厄災も振りかかる。

神の意志一つで発狂する事も有るのだ。

 

「でも本当にそんな事が有るのかねぇ・・・」

 

ハルトの部下であるゴハン・ソロが不審がる。

 

「ゴハン、 お前さんは傭兵で最近北から実際に見た事が無いから信じ難いだろう

だが実際に有った事なんだ」

 

騎士の一人であるハウが馬で並走しながら喋る。

 

「あの山に入ると如何なる摂理かは不明だが知識が頭の中に入るのだ

大昔に拳法の知識が頭に降りて来た者は天下無双の拳法家になった」

「伝説とかそう言う事じゃねぇのか?」

「少し前にも魔王の侵攻により実験が行われた

その結果、 何処かの森の正確な見取り図の知識を得たり

この国の脱税者のリストを把握したり、 知っちゃいけない事を知ったのか自殺したり・・・

色んな奴等が居たんだ」

「眉唾な話だけどなぁ・・・」

「今の俺達にはその眉唾にすがるしかない・・・!!」

 

ハウが振り向く。

軽鎧に身を包んだソルジャースシが馬に乗ってやって来た!!

 

「畜生!! 追手だ!!」

「もう来たのか!! くっそ!! ハルトの旦那!! 如何するよ!?」

「部隊長!! スシブレードの射程に入られたら終わりです!!

我々が囮になるのでその隙に行って下さい!!」

 

数名の騎士がその場に留まる。

 

「くっ・・・すまない!!」

「ハルト様!! 囮ならば私が!!」

 

バルトが叫ぶ。

 

「いや、 レーア様御付きの執事を危険な目に遭わせているだけでも申し訳無いのに

死ぬような目に遭わせる訳には行かない・・・」

「そんな!!」

「バルト!! 其方には戦闘以外に出来る事が有るだろう!! 裏方は其方に任せるのだ!!」

「!!」

 

バルトはそれ以降黙った。



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ソルジャースシの流儀

騎士達がソルジャースシに向き直る。

 

「行くぞ!! 突撃いいいいいいいいいいいいい!!」

 

騎士達がソルジャースシ達に向かって来る。

 

「あ? 何かこっち来たぜ?」

「馬鹿じゃねぇの?」

「とっとと片付けて先行こうぜ」

 

ソルジャースシ達は馬上で落ち着いて割り箸と湯呑を構えた。

割り箸を割り、 懐からスシを取り出す。

そのスシはダークネスシ帝国一般スシブレードのカルビとウィンナー。

読者の中には何故この二種が一般的なスシブレードとされているのか疑問に思われる方も居るだろう。

簡単に手軽に誰でも作れる、 更にコストパフォーマンスも優秀。

この二点から兵站の面から見てこれが最良と判断されたのだ。

そしてそのスシを割り箸で掴み、 箸頭を湯呑で叩く。

スシは高速で発射され騎士達に襲い掛かる!!

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

騎士達は馬で全力で駆ける!! しかしカルビの速度は馬と同等以上!!

それもその筈、 カルビのタレが摩擦を打ち消し高速機動を可能にしているのだ!!

カルビは高速で馬に攻撃を仕掛け次々と騎士達を地面に倒れさせる!!

そしてカルビの超高速攻撃に成す術がない騎士達!!

 

「くっ・・・まだまだぁ!!」

 

騎士は必死にカルビを剣で斬ろうとする!!

だがカルビの高速機動に対応できず空振りする!!

 

「ならば・・・!!」

 

ソルジャースシに攻撃を仕掛けようとする騎士達!!

しかしソルジャースシ達との間にウィンナーが潜んでいた!!

ウィンナーはカルビスシと比べ機動力は心許ない、 しかしその実態は!!

 

「ぐはぁ!!」

 

ウィンナーはカッパマーキュリーの上位互換である!!

つまりウィンナーを射出して絶大な破壊力を誇る攻撃力が売りなのだ!!

その破壊力はカルビの比では無い!! 容易く騎士の鎧を貫通するのだ!!

騎士の一人が胸をウィンナーで貫かれ殺される!!

 

「くっ・・・そぉおおおお!! 騎士を舐めるなぁああああああ!!」

 

それでも騎士達はソルジャースシに向かって行く。

 

「あーあ、 馬鹿みたいにやってるなぁ」

「本当だねぇ、 あぁやって必死になって勝てれば俺達はもっと早く負けてたっての」

「そうだなぁ・・・」

 

ソルジャースシは左程興味が無いのか雑談をしながら前方の騎士達を眺めていた。

実際にカルビの速度に対応出来ずに次々と騎士達は地に伏した。

 

「ぐっ・・・」

「終わった、 終わったと」

 

スシブレードを回収するソルジャースシ達。

 

「じゃあさっさと後追うか」

「ま、 待て・・・」

 

騎士は立ち上がった。

 

「この先には・・・行かせんぞ・・・」

「・・・・・どうする? もう一発やるか?」

「いや、 ほっといて大丈夫だろ」

 

ソルジャースシ達は少し迂回してハルト達の後を追う事にした。

 

「貴様等・・・私を無視するのか!!」

 

騎士は激昂して叫ぶ。

 

「いや、 俺達の仕事は逃げた奴を殺す事だしな」

「そーそ、 アンタはもう死んだも同然じゃんか」

「無駄な労力って奴だ、 帰りに生きてたら殺してやるよ」

「ふざけるな!! ダークネスシ帝国は騎士として戦って死ぬ機会すら与えんのか!!」

 

騎士は叫んだ。

 

「いや死にたいなら勝手に死ねば?」

「騎士の誇りって奴なら俺達には分からんし、 そんな事言われてもって感じだな」

「そうそう、 馬鹿らしい」

「馬鹿らしいだと!?」

 

騎士は尚も叫んだ。

 

「俺達騎士でも何でもないし」

「唯の闇のスシブレーダーだし」

「普通の農民だったからな俺達、 じゃとっとと行こうぜー」

 

話もそこそこにソルジャースシ達はさっさと行ってしまった。

一人残された騎士は慟哭した、 自分達の誇りを踏み躙られた事に激昂したのだった。

しかしその叫びもやがて消えていくのだった・・・





作中に登場して来たSCP
SCP-1134-JP - 爆転ニギリ スシブレード
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1134-jp


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知識、そして覚醒するバルド!!

騎士達と別れたハルト達は禁じられた山に辿り着いた。

 

「ここが禁じられた山・・・・・なのか?

見た所鉱山にしか見えないんだが・・・」

 

ゴハンは尋ねた。

 

「あぁ、 ここだ、 中に入ろう」

 

そう言ってハルト達は中に入って行った。

禁じられた山の中は何と言うか不思議な感覚がした。

 

「・・・・・」

 

始めて来たゴハンとバルトは山の中の様子を不思議そうに見ていた。

 

「何と言うか・・・神秘的な場所を想像していましたが・・・これは」

「あぁ、 まるで何かの建物の様だ」

 

走りながら感想を述べるゴハンとバルト。

 

「元々は何かの施設の跡地、 だったらしい、 私も詳しい事は分からない」

「そうですか・・・」

 

ハルトは問いに答えた。

迷路の様な場所を超えて目的地にたどり着いた様だ。

 

「ここだ」

「・・・ここが・・・」

 

ハルト達の眼の前に広がるのは、 何かの貯蔵庫の様だった。

 

「ここで本当に神の力が得られるのか?」

「さっきも言ったが完全にランダムだ、 何が起こるか分からない」

「・・・一か八かって奴か」

「今の状況ならば確実に死ぬ、 生き延びられるチャンスが有るのならやりましょう!!」

 

バルトが強く主張する。

 

「そうだな・・・じゃあまず私から行こう」

 

ハルトは貯蔵庫に歩み出した。

一歩、 二歩、 三歩・・・暫く歩いた後にバルトの体は止まった。

 

「ハルト様?」

「ハルトの旦那? 大丈夫か?」

「・・・・・如何やら私は駄目だった様だ・・・この状況を打開できる知識では無い」

 

泣きながらハルトは言った。

 

「泣くこたぁないだろう・・・じゃあ次は誰が行く?」

「私が行きます」

 

バルトが挙手して進んだ。

 

「ハルトの旦那、 どんな感じだったんだ?」

「知識が唐突にやって来た・・・そんな感じだ・・・」

「ハルトの旦那は何を知ったんだ?」

「それは・・・」

「!!」

 

バルトが立ち止まった。

 

「バルト? 大丈夫か?」

「・・・・・」

 

バルトは振り返った。

 

「ハルト様、 これなら勝てます!!」

「!!」

「い、 一体何の知識を得たんだ!?」

 

ハウが尋ねる。

 

「あらゆる寿司の歴史と作り方、 そしてスシブレードの扱い方です!!」

「な、 何と!?」

「敵が使うスシブレードの知識だと!?」

「いや、 違います!! 連中の使う闇のスシブレードでは無い!!

正しいスシブレードの知識です!!」

「正しいスシブレードだと!?」

 

驚愕するハルト達。

 

「良く分からないが・・・連中にも対抗出来るというのか!?」

「まだ未熟な私で何処まで行けるか分かりませんが・・・やってみます!!」

 

バルドは決意を込めた瞳でそう言った。

 

「良く分からないがバルド、 ここに来るソルジャースシ達を倒せるのか?」

「彼等に勝たねば未来は無い、 やるしかないでしょう!!」

「バルド・・・だけど一つだけ言って良いか?」

 

ゴハンが申し訳なさそうに言う。

 

「何ですか?」

「スシブレードの知識を持っても肝心のスシが無ければ何の意味も無いだろう・・・」

「・・・今から作ります!!」

 

バルドは執事、 食事の準備の為の用具一式は揃えていたのだった。

 

「そうか、 ならば早々に作れ!! ソルジャースシがやって来るぞ!!」

「分かりました!!」

 

バルトは寿司を作る準備に取り掛かった。

炎の魔石を使い火を起こして米を焚いた。

 

「米か・・・ソルジャースシのスシも米を使っていたな」

「米、 つまりシャリは寿司の根幹部分です、 重要な所なのです」

「そうか・・・我々は寿司に関しては何も分からない、 お前に未来を託すぞバルト!!」

「心しておきます!!」




――――――――――――――――――――――――――

作中に登場して来たSCP
SCP-028 - 知識
http://scp-jp.wikidot.com/scp-028


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進撃のソルジャースシ

バルトが調理を行っている時、 ソルジャースシ達は禁じられた山に辿り着いた。

 

「ここが禁じられた山かぁ・・・」

「如何する? ウィンナーでこの出入口塞いじまおうか?」

「いや、 別の出入り口が有るかもしれない、 中に入って調べよう」

「めんどくせ・・・」

 

馬から降りる三人。

そして山の中に入った。

罠を警戒して慎重にソルジャースシ達は進んだ。

ソルジャースシ達は自分達のスシブレードに対して絶対の自信を持っていた。

しかしスシブレードの弱点、 スシブレードは撃たなければただのスシ。

つまり不意打ちに弱い。

それ故に罠や不意打ちを警戒し進んで行った。

 

「・・・如何やら罠の類は無いようだな」

「拍子抜けだな、 もうパパっと行っちまうか?」

「いや、 奥に罠が有るやもしれん」

「だが面倒だろ? 俺が哨戒役で先に進むからお前等二人で付いて来い」

「良いのか?」

「その代わり大将首は俺んだからな」

「そいつは駄目だな・・・」

「・・・・・」

「じゃあこうしようぜ、 全部終わったら三人で勝負して勝った奴が手柄総取りで」

「「のった」」

 

彼等三人はとても仲が悪い様に見えているがこの時考えていた事は同じだった。

『スシブレードならば俺が勝てる』と

彼等三人はスシブレードを過剰に信頼しているのだ。

 

閑話休題、 彼等は宣言通り哨戒役が走って残り二人が後を追う形で着々と進んでいた。

 

「・・・・・んあ?」

 

間抜けな声を出すソルジャースシ。

 

「ほっほぉ・・・これはこれは」

「そう来たか」

 

通路には大量の物が積み上げられていた、 恐らくバリケードだろう。

 

「これはまぁ・・・」

「馬鹿だなぁ・・・」

 

ソルジャースシ達は笑う、 こんな物スシブレードを使えば簡単に壊せるだろう。

騎士達は何を考えているのか? スシブレードを過小評価しているのかと思った。

 

「じゃあこんなの打っ壊そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どごぉん!! と轟音が鳴った。

 

「バリケードが打ち破られたか!!」

 

ゴハンは叫んだ。

 

「バルト!! まだか!!」

「まだご飯が炊けません!!」

「くそ・・・ならハウ!! 俺達で足止めに行くぞ!!」

「ゴハンさん・・・!!」

「バルト、 スシが出来次第すぐに来てくれよ!!」

 

そう言ってゴハンとハウは轟音がした方に向かった。

 

「くっ・・・早く焚けないかな・・・!!」

「赤子泣いても蓋取るなだ・・・バルト」

 

ハルトが諫める。

 

「今のうちに具の準備もしておいたら如何だ?」

「・・・そうしましょう」

 

バルトは具材の準備を始めた。

逃げてきた際に食材を幾つか持って来ていたのだった。

この具材を使ってスシを作らなければならない。

ただ作れば良いだけではなく美味しくスシでなければならないのだ。

バルトは具材を前に目を瞑った。

 

「・・・・・」

 

バルトが手に取った食材、 それは卵であった。



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3、2、1、へいらっしゃい!!

崩れたバリケードを進むソルジャースシ達。

そこにやって来るゴハンとハウ。

 

「二人かよ、 馬鹿が」

 

カルビのスシブレードを射出するソルジャースシ。

 

「馬鹿はテメェだ!!」

「あ?」

 

ゴハンは崩れた荷物の上に乗る。

 

「・・・・・ふん」

 

床を動き回り荷物を次々に破壊するカルビ。

 

「狭い所ならばカルビの機動力は発揮出来ん!!」

「あ、 そう、 なら」

 

ウィンナーを構えるソルジャースシ。

 

「馬鹿!! こんな所でウィンナーを発射して外れでもしたら俺達生き埋めになっちまうぞ!!」

「チッ」

 

舌打ちをするソルジャースシ。

彼等が最下級なのが幸いした。

最下級のソルジャースシは一貫しかスシブレードを持つ事が出来ないのだ。

 

「おい、 ぼへっとしないでお前もカルビ撃てよ」

「そうだな」

 

二発目のカルビが射出される。

荷物を次々と崩しながら徐々に逃げ場が無くなるハウとゴハン。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

ハウが突撃をした!!

ソルジャースシ達はカルビを戻そうとするが機動力が散乱した荷物で削がれている!!

 

「だが馬鹿な奴、 この距離でこっちに全力疾走しているなら問題ねぇ」

 

ウィンナーを構えるソルジャースシ。

 

「おいおい、 だからウィンナーは」

「ウィンナーを射出しなければ良いんだろ? この程度、 ウィンナーはそのままで十分!!」

 

そう言ってスシブレードを打つソルジャースシ。

ウィンナーはウィンナーを射出しなければ持ち味を発揮出来ないが

それでもそれなりの攻撃力を持つ。

ウィンナーが体に激突しダメージを受け転倒するハウ。

 

「ハウのおっさん!!」

 

ゴハンが叫ぶ。

 

「隙有り!!」

 

カルビが荷物を破壊し転倒するゴハン。

 

「くっ・・・」

「これで俺達の勝ちだな、 さっさと片付けて先行くか」

「畜生・・・」

 

ゴハンは眼を閉じた。

 

「ん・・・?」

 

タッタッタと走る音が此方に近付いている。

 

「・・・・・」

「・・・・・」

 

ソルジャースシ達は地面に走らせていたスシブレードを手元に戻した。

何故そうしたのか、 彼等には分からないかった。

しかし弱小とは言え彼等の中に染みついているスシブレーダーとしての本能!!

本能がそうさせたのだ!! 何かが来る、 何かが・・・

その何かに対して備えなければならないと!!

 

「・・・・・」

 

ソルジャースシ達は動けなかった、 そして彼はやって来た。

 

「待たせました!!」

 

バルトとハルトが奔ってやって来た。

 

「おせぇよ・・・」

 

ゴハンが減らず口を叩く。

 

「何だお前は・・・」

 

ソルジャースシが声を絞り出した。

そうソルジャースシは眼の前のこの男に恐怖している!!

何故!? 自分達は天下無敵の闇のスシブレーダー!! 負けるはず等無い無敵の存在!!

その矜持が彼等に逃亡と言う手段を択ばせなかった。

 

「僕はバルト、 そして・・・」

 

バルトは手に持った海苔巻きを見せる。

 

「こいつがエッグヴィーナス!!」

「エッグヴィーナスだと・・・?」

「くっ・・・」

 

エッグヴィーナスと称した海苔巻きを箸で掴む。

ソルジャースシ達も各々のスシを箸で掴んだ。

そして各々の箸頭を湯呑で叩いた。

そしてバルトは叫んだ。

 

「3、 2、 1、 へいらっしゃい!!」



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激突!!ソルジャースシ!!

エッグヴィーナスと呼ばれた海苔巻きは回転しながらカルビとウィンナー向かって行った。

 

「へっ、 少しビビったがカルビよりおせぇ!!」

 

カルビがエッグヴィーナスに襲い掛かる!!

しかし!! エッグヴィーナスのスピードは落ちない!!

攻撃が当たっているにも関わらず!!

 

「な、 何ぃ!?」

「馬鹿な!?」

「どういう事だ!?」

「エッグヴィーナスに生半可な攻撃は通じない!! 次はこっちの番だ!!」

 

エッグヴィーナスは攻撃して来たカルビにカウンターを仕掛けた!!

その結果カルビは無惨に弾け飛んだ!!

 

「ば、 馬鹿な、 俺のカルビぐわぁ!!」

 

弾け飛んだカルビの持ち主のソルジャースシは爆発した!!

これがソルジャースシが闇のスシブレーダーの中でも最下級と呼ばれる所以である!!

彼等は闇のスシブレーダーとしての力を得た一般人と言い換える事が出来る

碌な鍛錬も無しに闇のスシブレーダーとして力を扱える代償として

彼等はスシと密接な関係に有る。

通常のスシブレーダーがスシブレードと育む絆では無く

スシに対する依存と言い換えても良い。

『自分は闇のスシブレーダー』『スシブレードが負ける筈が無い』

そんな思想が彼等の根底に根差している!!

そんな彼等がスシブレードを破壊されるとどうなるのか?

スシの破壊=自身のアイデンティティの破壊=爆発である!!

故に彼等ソルジャースシはスシを一貫しか持ち歩けず一貫ずつしか使えないのだ!!

 

「くっ、 馬鹿な!! 一体何のスシなんだ!!」

 

彼等ソルジャースシが驚くのも無理はない。

彼等には海苔巻きと言う概念は存在していないのだ。

そもそも本来のスシと言う物を理解していない。

ひょっとしたらスシが食べ物なのかすらわかっていないのかもしれない。

そんな彼等がスシを理解したバルトに勝つのは不可能!!

 

「うおおおおおおおおお!! いっけえええ!! エッグヴィーナスぅ!!」

 

バルトはスシの回転を上げてもう一体のカルビスシを撃破する!!

そしてもう一体のソルジャースシも爆発!!

 

「ひっ!!」

 

最後の生き残り、 ウィンナーを使っているソルジャースシは震えた。

何故? 末席とは言え人類最強の存在である闇のスシブレーダーである自分達が

こうもあっさりやられるのか? 全く理解出来ないソルジャースシ。

逃げるか? そんな思考が頭に浮かぶ。

ダメだ!! そんな事をしたらチキンヘッドに殺される!!

ならば戦う? このままでは勝ち目は無い!! 爆発してしまう!!

ならば・・・

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

絶叫するソルジャースシ。

射出されるウィンナー!!

ウィンナーの軌道はエッグヴィーナス・・・では無くバルト本人!!

このままではバルトは死んでしまう!!

 

「危ない!!」

 

バルトを押しのけるハルト、 そしてハルトの体にウィンナーが深々と突き刺さる!!

 

「ハルト様!! うおおおおおおおおおおおおお!!」

 

エッグヴィーナスがウィンナーを射出した後のスシに激突砕いた。

最後のソルジャースシも爆発したのだった。



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衝撃の告白!!さらば父よ!!

倒れているハルトに駆け寄るバルト。

 

「ハルト様!! 大丈夫ですか!?」

「ふっ・・・無理だろうな」

「そんな!! 今手当てを!!」

「無駄だ・・げほっ」

 

血を吐くハルト。

 

「そんな・・・」

「バルト、 最期に一つ、 いや二つだけ言っておく事が有る」

「・・・何でしょうか」

「まず、 私が禁じられた山から賜った知識についてだ・・・げほっ」

「あぁ!!」

「私には・・・若い頃、 身分違いだったが愛し合っていた相手が居た・・・」

「え?」

 

そんな話は初めて聞いた、 長い間執事をやっていたバルトも聞いた事は無かった。

 

「家の事を考えて・・・その娘とは別れる事になった・・・

しかしその娘は私の知らぬ所で私の息子を遺し・・・

流行り病で死んでしまった・・・」

「何を・・・何を言っているのですか?」

「その息子は・・・孤児院に入れられた・・・そして・・・レーア様の執事となった」

「!!」

「そう・・・お前は私の息子だったのだ」

「・・・・・ハルト様・・・」

 

涙を流すバルト。

 

「父親として何もしてやれなくて・・・すまない」

「いいえ!! 今まで言いませんでしたが私は貴方を父親の様に思っていました!!

貴方の心遣いに触れて私は幸せでした!!」

「そうか・・・ぐふっ」

 

血を吐くハルト。

 

「あぁ!!」

「最後に一つ・・・レーア様とこの世界を・・・たの・・・む・・・」

 

ハルトはそこで弛緩したのだった。

 

「ハルト様!! ハルト様!! お、 お父さんんんんんんん!!」

 

絶叫するバルト。

 

「・・・・・」

 

ハウは俯いた。

 

「・・・バルト、 悪いが・・・泣いている暇はねぇぞ

ここを離れて何とかしないといけねぇ、 お前のスシブレーダーとしての知識を広めるんだ

そして闇のスシブレーダーと戦わなきゃならねぇ・・・」

 

泣きながらゴハンは言った。

 

「・・・はい・・・」

 

バルトは立ち上がってエッグヴィーナスを拾った。

 

ここからバルト達の戦いの火蓋が切って落とされたのだった!!

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

スシブレード名鑑

エッグヴィーナス

卵の海苔巻きのスシブレード

卵をチョイスした理由はバルトの得意料理が卵料理だから

因みにバルトのオムレツはレーア伯爵令嬢の好物でもある。

やや硬めに巻かれているのは知識のあるだけの素人が作った物なのでご愛敬である

しかし卵は焼き慣れておりふんわりとしている為

VH装甲板の様に防御力を高める事に成功している。

守備重視のスシブレードだが、 使い手のバルトまだまだ発展途上なので

秘められたポテンシャルが有るのかもしれない



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集結、スシの暗黒卿

ダークネスシ帝国首都ニーガタ。

シャリーラ13世は居城であるニーガタセンターで

自分と同じスシの暗黒卿達からの報告を聞く為の定例会議を行っていた。

魔術による遠隔会議である。

 

「ごきげんよう皇帝陛下」

 

恭しく挨拶をするのはスシの暗黒卿、 恐怖のアソウ・タノ。

女学生服のスカートを摘まんで御辞儀をする。

彼女もニーガタセンターに住んでいるので問題は無い。

 

「うむ、 他の者達は準備は出来ているか?」

『私は大丈夫ですよ』

 

白い割烹着を着た中年男性であるスシの暗黒卿、 悲しみのダースシ・セキユー。

彼はスシの暗黒卿だが穏健派で普通に店を開いている店主である。

 

「店は良いのか?」

『お昼も過ぎましたし』

「そうか」

『やみー!!』

 

通信に入って来た黒いシーツを被っているのはスシの暗黒卿、 幼きやみちゃん。

闇のスシブレードの力に侵されてしまいやみとしか喋れなくなってしまった。

 

『おいっすー』

 

気だるげに通信に入ったマグロの頭の男はスシの暗黒卿、 苛烈なるダースシ・ノーテン。

ダークネスシ帝国の将軍でもある彼は苛烈な性格で知られていた。

 

『ドーモドーモ!!』

 

力強い印象の海の男と言う言葉が似合う彼もスシの暗黒卿、 豪快なるダースシ・オーモリ。

海で闇のスシブレーダー達の為に漁をしている漁師部隊の責任者である。

 

『・・・・・』

 

黙って通信に入って来た幼女、 彼女はスシの暗黒卿、 フグ。

文字通り毒を使っての毒殺を得意とする異端のスシブレーダーである。

 

『よう、 私が来てやったぞ』

 

偉そうに通信に入る両目が縫い合わされた男はスシの暗黒卿、 美しきヘカトンケイル。

スシの美しさに魅了され闇のスシブレーダーになった元芸術家である。

 

『わた・・・わた・・・わたしが・・・きて・・・』

 

目をグルグル回しながら通信に入る女、 この女はスシの暗黒卿、 魅入られしサーストン。

とある寿司ネタの調達の為に精神崩壊しかかってしまっている。

 

『よぉ人間共!!』

 

角と翼を生やし、 10人中10人が悪魔の様だと称するこの男。

魔族にして元四天王、 スシの暗黒卿、 邪悪なるバリゾーゴン。

闇のスシブレーダー達に恐れをなして自分もスシブレーダーになった男である。

 

『皇帝陛下、 ご機嫌麗しゅう』

 

漆黒の顔全体を覆うコック帽とコックコートに身を包んだ男。

スシの暗黒卿の中でも最も謎多き男、 ダークイタマエがやって来た事で場が静かになった。

 

「さて、 これで全員かな?」

「陛下、 ダースシ・ヴォルフガングがまだです」

『すみません!! 遅れました!!』

 

最後に現れた平凡そうな顔の男のスシの暗黒卿。

汚辱のダースシ・ヴォルフガングが息を整えていた。

 

「さて、 全員揃った所で報告を聞こうか」



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開かされる闇の目的!!

「ではまず、 ダースシ・オーモリ、 そっちに居る親方と兄弟子の様子は如何だ?」

『おう!! 御二方も漁に出て食材を取るのに熱心ですぜ!!』

 

サムズアップをするオーモリ。

 

「二人自らを漁に出す? それはちょっと危ないんじゃないの?」

 

アソウは疑問を呈する。

 

「あの二人にそんな心配は無用だろう」

 

そんな疑問を切って捨てるシャリーラ。

 

「次に各国の情勢について聞こうか、 ダークイタマエ」

『はっ、 各国に対して恭順を迫りましたが返答は良くないですね

考えさせてほしいと言う答えばかりです』

「・・・・・師曰く『保留すると言う事は断られたも同じ事』

つまり宣戦布告の理由にはなるな」

「全世界と戦うおつもりですか陛下、 それは幾ら何でも・・・」

 

アソウが諫める。

 

「闇のスシブレードの力は偉大・・・しかしそこまで過剰な期待もしていない

まだまだ静観する事にしよう」

「ほっ・・・」

「それに師である親方が戻り次第、 話したいアイデアがある」

「アイデア?」

「国一つを滅ぼせる大量破壊スシブレードのアイデアだ」

 

騒めく一同。

 

『大量破壊スシブレード、 それは美しそうだなぁ・・・』

『やみやみやみー!!』

『悲しいな・・・』

『けっ、 俺達軍の仕事も取っておいてくださいよぉ』

『そいつぁビッグですなぁ・・・』

『・・・・・』

『すご・・・すごい・・・』

『大量破壊スシブレード・・・ヤバいもん考えるなぁ人間は』

『・・・・・』

『大量破壊か・・・』

「静粛に、 諸君、 まぁあくまで脅しの手段の様な物だ

スシブレードで国を滅ぼしたら国の資産価値が減る

なるべくなら明け渡して欲しいと言う所だ」

「なるほど・・・」

『人間やべぇな、 魔物より考え方鬼じゃん、 退くわ・・・』

「ではバリゾーゴン、 魔物達の懐柔は如何なっている?」

『え・・・あ・・・うん、 魔物達も闇のスシブレーダーになる奴は結構居るな

俺のお抱え部隊も闇のスシブレーダーになったし、 やっぱ力こそ正義だな』

「そうか、 着々と闇のスシブレーダーが増えているのは喜ばしい

このまま全人類と全魔物が闇のスシブレーダーになる日も近い」

『あの・・・一つ聞いても良いでしょうか?』

 

セキユーが挙手をする。

 

「如何した?」

『闇のスシブレーダーを増やして如何するのでしょう?

世界征服だったら全人類闇のスシブレーダーにするのは過剰戦力では無いでしょうか?』

「ふむ、 親方である闇の目的を知らない者がこの中に居たとは・・・」

「セキユーさん、 貴方は市井に下っているとはいえ

スシの暗黒卿としての自覚が足りないのでは?」

『やみー?』

『俺達の目的って世界征服じゃないのか?』

『俺もそう思ってました』

『・・・・・(目を逸らす』

『目的か・・・知らんな』

『?????』

『俺も良く知らんな』

『僕も知らないです・・・』

「皆知らないのか? ダークイタマエ、 君は知っているか?」

『勿論知っております陛下、 しかしながら理解の深さは陛下の方が上

陛下のお口からご説明して頂けるとありがたいです』

「・・・なるほど、 じゃあ説明しようか・・・」

 

軽く溜息を吐くシャリーラ。

 

「まず始めに親方はこの世界の覇権には興味はない」

『その割にはガンガン侵略してますけど?』

「うむ、 親方は異世界から来たと言う事は知っているな?」

『そうなの?』

「それすら知らなかったのか・・・

まぁ兎に角、 親方は異世界に戻る事が目的なのだ

異世界に戻る方法を探すついでに闇のスシブレーダーの軍勢を作り上げる

そして作り上げた闇のスシブレーダーの軍勢で異世界を征服するのが親方の目的なのだよ」

『それでもオーバーだとは思いますが・・・』

「いや、 この世界の住人全てが闇のスシブレーダーになっても

まだ厳しいかもしれない」

 

アソウが不安そうに言う。

 

「アソウは心配性だな」

 

シャリーラがくつくつと笑う。



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蠢く闇!!

「さてサンシャイン王国侵攻は如何なっているヴォルフガング?」

『あ、 はい!! 首都に攻め込んでほぼ侵攻は完了したと言って良いでしょう

後は辺境だけです』

「オーガス王は?」

『オーガス王が三枚におろされて寿司になりました』

『人間サイコ過ぎるだろ・・・魔族より考える事ヤベェじゃん』

 

バリゾーゴンが絶句する。

 

「それでサンシャイン王国に伝わる秘宝とやらは?」

『それに関してはまだ分かりませんね、 ですがオーガス王の居城を探しても無かったですし

伝説とか作り話の類じゃ無いでしょうか?』

「いやいや、 鶴帝国には噂通り色々と面白い道具が揃っている

今、 色々と調査中だが使えそうな物も多い」

『使えそうな物? 例えば?』

「物を巨大化させる魔法のじょうろ」

『想像以上に便利な物が有りますね』

『魔王も色んな道具を持って居たぞ、 エリクサーとか』

『そうなんですか・・・兎も角サンシャイン王国にはそういう物の情報はまだ有りません

生き残り達に事情聴取をして聞き出す事にしましょうか』

『おぉこわ、 ヴォルフガングは拷問が得意だからなぁ』

 

ノーテンがケラケラ笑う。

 

『拷問が得意、 と言うのは聞き捨てなりませんね

僕の性格が悪いみたいじゃないですか、 僕は普通ですよ

普通に嫌な事が有れば不快になり行動が荒くなる

普通の一般的な小市民ですよ』

『そうか、 じゃあ君の父親は如何なった?』

『糞に塗れて死んだ』

『えぐいなぁ・・・』

 

ニヤニヤとノーテンが笑う。

 

「兎に角早急の道具の収集を行う事、 スシブレードと同等の物も有るかもしれない

逆転の機会を敵に与えるな!!」

『肝に銘じておきます』

「他のスシの暗黒卿も肝に銘じておきましょう、 スシブレードと言う物が

存在するのなら、 スシブレードを打ち破る物も有るかもしれないと」

 

アソウが纏めた。

 

『馬鹿じゃねぇの? スシブレード以上の力なんて思いつかないだろ

アソウはビビり過ぎなんだよ』

「人間の所業に一々引いている貴方が言いますか」

『んだと?』

「落ち着け、 兎に角驕らずに各々自分が為すべき事をしようじゃないか

今日は会議はここまでにする、 では解散!!」

 

魔法の通信が切れて静寂が訪れる。

 

「・・・アソウ、 スシブレードよりも強い力が有るのか?」

「えぇ、 異世界には海の向こうから街一つを滅ぼしかねない恐ろしい兵器が有ります」

「そうか、 君の話は信じ難いがそれをいうならスシブレード自体が信じ難い物だ

信じようじゃ無いか」

「有難うございます」

 

アソウは頭を下げた。

 

「さてと、 じゃあ酢飯の準備でもしようかな」

「陛下が態々なさらずとも・・・」

「割と暇だからな、 スシブレーダー達に任せているから内政は楽だしやる事が無い」

「それは羨ましい事で・・・」



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希うヴォルフガング

ヴォルフガングは駐屯している、 サンシャイン王国首都ヒノモトのヒノモト城で

会談用の遠見水晶をオフにした。

 

「ふう・・・」

「良いんすか? 嘘言っちゃって」

 

左腕が巨大な蟹バサミになったヤミ・マスター、 ピースメイカーがへらへらと笑いながら尋ねる。

 

「良いんだよ、 お宝は僕の物だ、 これ位は報酬で貰っても文句は言わせない」

「バレても知らねーっすよ」

 

けらけらと笑うピースメイカー。

 

「君達スシトルーパーが裏切らなければ問題は無い」

 

スシトルーパーとはスシの暗黒卿直属の闇のスシブレーダーの事である。

階級はヤミ・アプレンティス以上から指名される

大量に選ぶ者や少数精鋭、 スシの暗黒卿の個性によって決まる物である。

 

「まぁね、 俺は弱い物虐めが出来ればそれでいーんで」

「楽で助かるよ」

 

立ち上がるヴォルフガング。

 

「旦那? 何方へ?」

「レーアに会って来る」

「へーい、 レーアを連れて来た奴は如何します?」

「バラムツをたらふく食わせてやれ」

「きひひひ」

 

笑うピースメーカーを背に地下に向かうヴォルフガング。

そして地下牢屋に着くヴォルフガング。

 

「ヴォルフガング様・・・ようこそいらっしゃいました」

 

見張りのソルジャースシが牢屋の前に立っていた。

 

「お客さんは?」

「そちらに」

 

牢屋の中には気丈そうな娘が居た。

 

「下がれ」

 

ソルジャースシは下がった。

 

「貴女がレーア嬢ですか?」

「貴公が指揮官か?」

 

牢屋の中に居るにも気丈さは失われず気品を感じさせる佇まいで逆に尋ねるレーア。

 

「えぇ、 スシの暗黒卿、 ダースシ・ヴォルフガングです」

「ヴォルフガング? 確かシャリ王国の名門貴族・・・」

「そこの現当主です」

「はっ、 現当主がスシの暗黒卿とは、 先祖が気の毒だな」

「気の毒にしてやりましょう、 さてレーア嬢

私の質問に答えて頂きたいのですが良いですかね?」

 

話は終わりと手を叩くヴォルフガング。

 

「質問? 何だ? スリーサイズなら教えないぞ」

「興味が有りませんね、 貴方も僕のスリーサイズには興味無いでしょう」

「確かに」

 

はっはっはと笑う両名。

 

「次、 余計な事を言ったら舌を引っこ抜くぞ」

「おや? それでは質問に答えられないなぁ」

 

べーと舌を出すレーア。

 

「減らず口を・・・まぁ良い、 質問に答えてくれたら貴女の解放を約束しましょう」

「私一人助かって何の意味が有る?」

「なら貴女の領地もセットで構わない」

「大盤振る舞いだなぁ・・・勝手にそんな事をやって良いのか?」

「こっちの望みが叶うならば問題無い」

「望みだと?」

「その通り、 死ぬ前にオーガス王が言っていたよ

『レーアの領地にはあらゆる願いが叶う物が眠っている』と

僕はそれが欲しいんだ」

 

ヴォルフガングは牢屋の鉄格子に顔を近づける。

 

「僕の望みが叶うならばこんな国の侵略なんて止めても良いと思っている」

「自分勝手だな」

「ありがとう、 それでそのお宝の場所が何処でどんな物なのか具体的に教えて欲しい

今の所、 部下に君の城を探させているが手間を省きたいんだ」

「答えないと言ったら?」

「そうだな、 この街の人達を虐殺する、 なんて如何だ?」

「出来ない事を言う物じゃないよ」

 

脅しにぴしゃりと釘を刺すレーア。

 

「何故出来ないと?」

「何故? 如何やら君の行動はダークネスシ帝国とは無関係な独自の行動じゃないか」

「そうだが」

「では君がそんな行動をして目立って他の連中にバレる事はしないだろう」

「あ・・・」

 

間の抜けた声を出すヴォルフガング。

 

「・・・・・」

「気が付いていなかったのか?」

「五月蠅いな、 君が願いの叶うお宝を素直に教えてくれれば何も問題は無いんだよ」

「誰が教えるか、 ただでさえ危険な代物なのに

お前の様な闇のスシブレーダーに教える訳が無い」

「・・・・・」

 

ヴォルフガングは箸を取り出した。

 

「仕方が無い、 本当はこんな事はしたくないのだが

話が成り立たない以上はやるしかない、 君の様な他者を思いやれるいたいけな女性に

こんな事をするのは本意じゃないんだが君が話をしたくないというのならば

こちらもそれ相応の対応を取らなければならない、 本位では無い

君が話したくなったら何時でも言ってくれ、 さっき言った通り望みが叶うと言うのならば

この国何か如何でも良い、 君だって如何でも良い、 どんな状況でも話してくれるのならば

君の解放は約束しよう」

「・・・・・」

 

ヴォルフガングの異様さに唾を飲むレーア。



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かんかん、がちゃがちゃ

かんかん、 と鉄格子を叩く音が響いた。

 

「・・・・・」

 

ヴォルフガングが音の方向に振り返った。

ピースメイカーが鋏で鉄格子を叩いたのだった。

 

「お楽しみ中すんません」

「お楽しみ中? ピースメイカー

君は僕がいたいけな女性をいじめて悦に居る様な人間だと思っているのか?

僕は無抵抗な人間を痛めつける事は有るが全て理由が有ってやっている事だ

今回も不可抗力で仕方なく嫌々やっているんだ、 君の様に弱者を一方的に痛めつける事を

楽しむ様な変質的な精神は持っていない、 訂正を求める」

「それはすんません、 チキンヘッドから報告が入ってますが如何します?」

「・・・そうか」

 

箸をしまうヴォルフガング。

 

「チキンヘッドがお宝を見つけたのなら君を生かして置く理由も無い」

「ふん・・・」

 

レーアは顔を逸らした。

 

「所で一つ聞きたいんだが」

「僕の質問には答えず質問するとは厚かましいね」

「この鍵穴の事だ」

 

構わずレーアは質問を続けた。

 

「今までに見た事の無い鍵穴だ、 この鍵は一体・・・」

「あぁ、 それならその鍵穴は鍵寿司でしか開く事は出来ない物に取り換えて有る」

「なんだ鍵寿司って・・・」

「僕が出そうと思わない限り君はそこから出れないんだ

まぁ精々後悔するんだな」

 

そう言いながらヴォルフガングは去って行った。

 

「・・・・・気丈そうな顔、 いじめたいな」

 

ピースメイカーがレーアの顔を見ながら言う。

 

「なら出してよ」

「減らず口を・・・そういう抵抗する奴は嫌いだ、 俺は無抵抗の奴をいじめたいんだ」

 

ピースメイカーも去って行った、 そして見張りのソルジャースシが帰って来た。

 

「・・・・・」

 

カチャカチャと錠前を弄るレーア。

 

「またか・・・その鍵はヴォルフガング様しか開けられないってさっきも言ったろ」

「・・・・・」

 

(ガチャガチャ)レーアは構わず(ガチャガチャ)に弄る。

(ガチャガチャ)(ガチャガチャ)

「・・・好きにしろ」(ガチャガチャ)

(ガチャガチャ)

ソルジャースシ(ガチャガチャ)は(ガチャガチャ)そっぽを向いた(ガチャガチャ)

(ガチャガチャ) どうせ開かないのだから好きにさせよう。(ガチャガチャ)

そう思って(ガチャン)気を抜いていた。

 

「・・・・・がちゃん?」

 

ソルジャースシが振り返るとそこには牢屋から出て来たレーアの姿が!!

 

「なっ!? ば、 馬鹿な!?」

 

ソルジャースシはスシを構えようとするがレーアに近付かれ箸を叩き落とされた!!

 

「ひっ」

 

逃げようとしたソルジャースシはレーアに羽交い絞めにされて牢屋まで引き摺られていった。



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脱走

ヴォルフガングがチキンヘッドに遠見水晶越しに会話をしている。

 

『これはこれはヴォルフガング様、 ご機嫌麗しゅう・・・』

「前置きは良いから、 報告を聞こう」

『はい、 件の宝が有るとされる宝物庫に辿り着きました』

「ふむ、 それで?」

『鍵がかかっていて開きませんでした、 仕方が無いので宝物庫の扉を開けようと

私の唐揚げを放ったのですが・・・』

「待て、 スシブレードを放ったのか?」

『え、 えぇ、 開かなかったので・・・』

「馬鹿!! 中身が壊れたら如何する!!」

『し、 失礼しました!!』

 

慌てて頭を下げるチキンヘッド。

 

『し、 しかし、 扉は開きませんでした』

「そうか・・・じゃあ鍵を探せ」

『それなんですが・・・』

 

言い淀むチキンヘッド。

 

「如何した?」

『いえ、 尋問した結果、 鍵はレーアが持っていると』

「・・・・・」

 

ヴォルフガングは立ち上がった。

 

『あの・・・ヴォルフガング様?』

「・・・・・」

 

つかつかと部屋の外に出るヴォルフガング。

向かった先はレーアが入っている地下牢。

 

「レーア嬢、 一つ聞きたい事が・・・」

 

牢屋の中を見て絶句するヴォルフガング。

そこに居たのは身ぐるみを剥がされたソルジャースシ。

 

「・・・・・」

 

牢屋の鍵は開いている。

 

「馬鹿な、 鍵を開けられるのは僕だけだぞ!? どうやって外に出た!?」

「旦那、 ひょっとするとお宝の効力かも・・・」

 

ピースメイカーが助言する。

実際彼の言っている事が正解である。

レーアはありとあらゆる錠前を解錠出来る鍵を持っている。

その鍵で牢屋を開いたのだった。

鍵寿司を過信し過ぎてボディチェックを怠ったのが不味かった。

 

「探せ!! まだこの近くに居るかもしれない!! 探し出せ!!」

「わ、 わかった、 ソルジャースシの装備をパクったから

ソルジャースシに化けているかもしれない、 ソルジャースシ達を集めて調べよう」

「さっさとしろ!!」

 

檄を飛ばすヴォルフガング。

さて逃走に成功したレーアだったが

彼女はソルジャースシの装備を奪った後、 すぐさま外に向かう事はしなかった。

そんな行動を取れば確実に怪しまれるのは必至。

ならば如何するか、 答えは簡単。

隠れてしまえば良い、 ソルジャースシ達を集めて調べる。

調べ終わった後にソルジャースシとして出歩き隙を見て脱出するつもりなのだ。

肝心の隠れ場所だが牢屋から出たレーアはすぐさま逃げるのはリスクが高いと判断し

隣の牢屋に移っていたのだった。

なのでヴォルフガング達のこれからの行動も把握出来た。

レーアは暫く待ってから行動に移す事にするのだった。




登場したSCP
SCP-005 - 合い鍵
http://scp-jp.wikidot.com/scp-005


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これからの事

場面を戻して禁じられた山にてこれから如何するか話し合う

バルト、 ゴハン、 ハウの三人。

 

「この国はもうおしまいだ、 ダークネスシ帝国に対抗するのなら

外国に逃げてその国の対ダークネスシ帝国の反抗組織に所属するのが良いと思う」

 

ゴハンが提言した。

 

「この国を見捨てるのか?」

 

ハウがゴハンを睨みつける

 

「いや、 だが仕方ねぇだろ、 この国は殆ど死に体だ」

「しかし・・・この国には他にも反抗勢力が有る

レーア伯爵令嬢の親友たるライ辺境伯がいらっしゃる」

 

ライ辺境伯はレーア伯爵令嬢から国が有する宝の一部を任される程の信頼を得ている。

 

「ライ辺境伯の元に行けば道は開かれるんじゃないのか?」

「レーア様の所に集まっていた反乱軍よりはグレードが落ちると思うぞ

人数も少ない筈・・・そもそもレーア様の反乱軍結成の時にライ辺境伯は何故来なかった?」

「・・・・・」

 

押し黙るハウ。

 

「・・・・・」

「バルト、 黙ってないでお前の意見を聞かせて貰おうか」

「そうだな、 お前は如何思う?」

「うーん・・・二人の案を統合してライ辺境伯と共に他国に逃げる、 と言うのは如何だろうか?」

「それは難しいだろう、 ライ辺境伯は勇猛な方だ、 そんな事は望まれないと思う」

「いや、 そっちの方が良いかもしれねぇ、 幾ら何でも手勢が少な過ぎる

その方が有効だと俺は思うぜ」

 

バルトの意見に同調するゴハン。

 

「・・・ならばそれで行こうか・・・では行くぞ二人共」

「待った、 ハウのおっさん、 その前にやる事が有るだろう」

「?」

 

ゴハンの言葉に首を傾げるハウ。

 

「バルトが手にしたスシブレードの知識、 俺達にも教えるのが先決だと思うぜ」

「ふむ、 それもそう・・・か? バルト、 スシブレードは我々にも使えるのか?」

「一応可能だとは思います、 ですが食材はあまり無いのでバリエーションが選べません」

「文句は言わない、 スシブレードにはスシブレードで対抗するしかない」

「じゃあまずは作りましょうか」

 

そう言ってバルトは食材を出した。

残った食材は魚等が多かった、 魚が多いのはタンパク質を多くとるのには

牛や豚よりも魚の方が良いだろうと言う考え方に由来する。

 

「肉が少ないのがネック、 だな」

「いや、 スシブレードは本来魚メイン、 肉が主体なのは闇のスシブレードだけです」

「そうなのか? 気持ち的には肉の方が強そうだが・・・」

「邪道は所詮邪道ですよ」

「そうなのか・・・じゃあスシブレードの組み立てに関しては素人だし任せる」

「僕も作るのは素人ですよ」

 

そう言って先程炊いたご飯の残りを作って、 ゴハンとハウにスシを握るバルド。

 

「できました、 アルティメットマグロです」

 

それぞれゴハンとハウにマグロ寿司を手渡す。

 

「これがスシブレードか・・・あとは箸と湯呑が有れば良いんだな?」

「ですね」

 

箸と湯呑はこの世界にも存在する。

 

「でも回す時に3、 2、 1、へいらっしゃいの掛け声を出して

寿司を回転させた後には両腕を大きく広げて下さい」

「なんだそれ? そんな事ソルジャースシはやってなかったぞ?」

「えぇ、 これはスシブレードのマナーと言う奴です」

「マナー? 必要なのか?」

「心意気と言う奴だろうよ」

「本来スシブレードはスポーツで戦う物では無いのですが・・・仕方ないでしょう」

「ふーん・・・」



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辺境伯の街へ

ライ辺境伯の領地に向かうバルト一行。

道中ソルジャースシと交戦したが難無く倒す事が出来た。

 

「このアルティメットマグロ、 ややパワー不足感は否めないが扱いやすいな」

「アルティメットマグロはこれといった長所はないが、 安定した回転が可能ですので」

「ふむ、 言うならば初心者用と言う所か?」

「そうですね」

「だったらお前もアルティメットマグロを使ったら如何だ?

まだまだスシブレードには慣れていないだろう?」

「うーん、 何と言うか卵のスシを握らなくてはいけない

でも卵のスシは攻撃特化のスシ、 厳しいと思い海苔巻きにしました」

「・・・禁じられた山の英知は常人には計り知れないな・・・」

 

そんな事を言いながらライ辺境伯が住んでいる領地。

イグニス領にやって来たのだった。

街の門に入ろうとする三人。

 

「さて辿り着く事が出来た、 では中に」

 

弓矢がバルトの足元に刺さった。

 

「動くな!!」

 

凛とした女性の声が響く。

門の上に弓矢を構えた女性が居た。

その姿は赤い髪を後ろで結ったポニーテールだった。

 

「貴女はマオ嬢!?」

 

バルトは叫んだ。

マオはライの妹でレーアとも親交が有った。

 

「私です!! バルトです!!」

「五月蠅い!!」

 

構わず矢を打ち放つマオ。

 

「止めろマオ」

 

杖をついた老人が止める。

彼はタオ、 先々代の辺境伯で今は隠居している。

マオの祖父でもある。

 

「お爺様・・・しかし!!」

「良いから、 儂に任せろ、 バルト君、 良く来たね、 いきなりの不作法を許してくれ」

「い、 いえ、 こちらも急に来たので・・・」

「うむ・・・とりあえず中に入って来てくれ」

 

門が開かれた。

 

「・・・あんまり歓迎ムードじゃなさそうだな」

 

ゴハンが愚痴る。

 

「・・・・・まぁいきなりやって来て信用してくれ、 と言うのも難しいな」

「そうですね・・・」

 

街の中に入るバルト達、 街の中に入って驚愕した。

 

「人が居ない!? な、 何故!?」

「ほっほ、 驚く事は無い」

 

杖をつきながらマオの介添えと共にタオが現れる。

 

「予め、 我が領民達は非難させておいた、 残りは儂等二人と数名の騎士だけだ」

「二人? ライ辺境伯は如何なされたのですか?」

「レーア伯爵令嬢を助ける為に単身で突っ込んで・・・」

 

マオはそこまで言って下を向いた。

 

「・・・すみません」

「元はと言えばジューンの裏切りを察せなかった貴方にも責任は有るんじゃないの!?」

「おい、 それはちょっと言い過ぎじゃないのか?」

「そう、 アイツはそれなりに信頼が厚かった

裏切りを見切るのは難しい」

「!!」

 

マオは弓を構える。

 

「待て、 マオ、 ここに残った意味が無くなるから止めろ」

「・・・・・」

 

弓を下げるマオ。

 

「さてとマオの為にも君達には命を張って貰おうと思うが良いかな?」

「タオ様? それは一体どういう事ですか?」

「付いて来たまえ」



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嘘吐きの揺り籠

タオに連れられてとある建物にやって来た一行。

 

「ここは?」

「ここは刑務所だよ」

 

辺境伯領には国最大の刑務所が有る。

 

「何故刑務所に?」

「ここにとある秘宝が有るのだ、 レーア伯爵令嬢の所にも沢山有るだろう」

「・・・噂には聞いていましたが実際に見た事は有りません、 伝説では?」

「私も君位の歳にはそう思っていた、 実際に見ると全く変わるよ」

 

そう言ってタオは刑務所の一角にある石炉の所にやって来た。

 

「これは?」

「これが先程言った秘宝だよ」

「これが・・・ですか?」

「ただの石の炉に見えるが・・・」

「これが何だと言うんだ?」

「ふむ、 実はマオは今人間不信になっていてね

ジューンの裏切りが相当応えたらしい」

「・・・・・」

 

マオはそっぽを向く。

 

「ジューンの裏切りが・・・」

「私は今でも信じられません、 ジューンが裏切るだなんて・・・」

「私もだ、 良い子だったと思ったのにな、 残念でならない」

 

タオが俯く。

 

「そこでだ、 君達が裏切らないと言う証明が欲しい」

「裏切らない証明? そんなのある訳無いだろう」

 

ゴハンが悪態を吐く。

 

「確かにこれが私の信念です、 って物的に見せられる物じゃありません」

「そこでこの石炉だ」

「?」

 

首を傾げる三人。

 

「この石炉は嘘吐きの揺り籠と呼ばれる物でな

この石炉に入って真実でない事柄を言うと、 焼け死ぬと言う物なんだ」

「真実でない事柄?」

「そう、 例えば『明日雨が降る』とか」

「・・・未来を予知出来るのですか?」

「そうだな、 これを使えば将来的に君達が裏切るか否かを判断する事が出来る」

「ちょい待ち爺さん」

「爺さん!?」

 

ゴハンの物言いに驚くハウ。

 

「無礼な・・・!!」

 

マオが弓矢を構える。

 

「無礼はそっちだろ、 裏切るかもしれないからこの良く分からん炉の中に入れと?

失礼過ぎるだろうが」

「御尤もな話だがね・・・ウチの孫娘が納得しないのよ」

「お孫さんを甘やかしすぎないか?」

「慕って居た兄を亡くしたんだ、 察してあげてくれ」

「それは虫が良過ぎるぜ、 俺等には関係の無い事だ」

「関係が無いだと!?」

「ジューンの裏切りを見抜けなかったって言うのはいちゃもんだろ」

「貴様ッ!!」

「そもそもだ、 アンタ達はこれを使ったのか?」

 

ゴハンが畳みかける。

 

「・・・如何いう意味かな?」

 

タオが静かに尋ねる。

 

「いや、 裏切るのが分かるのならばアンタ等はこれを使って確かめたのか?

『アンタの事が信用ならないんでこの嘘吐きを焼き殺す炉で確かめさせて下さい』って言ったのか?」

 

当然ながら言える訳が無い、 そんな事したら信用が無くなるのだ。

 

「それは確かめたよ」

「正気かよ、 信頼関係ぶっ壊れるじゃねぇか」

「儂がこの中に入って『辺境伯に仕えている騎士達は将来裏切る者は居ない』と言った」

「・・・正気かよ」

「彼等が裏切ったら儂は終わりじゃなからな、 遅いか早いかの違いよ」

「・・・・・分かりました、 入りましょう」

 

バルトが一歩前に出る。

 

「おい、 バルト、 正気かよ」

「タオ様とマオ様の信用が手に入るなら容易い事です

それに信用して貰うのは厳しいと思っていましたし、 お膳立てを立ててくれたんです

寧ろ感謝するべきでしょう」

「信用して貰うのが難しいとは如何いう意味かの?」

「・・・・・」

 

バルトはエッグヴィーナスを回して見せた。

 

「これは・・・スシブレード・・・初めて見た」

「一体どうやっている!?」

「禁じられた山で知った知識です、 敵方と根源は同じ力を使っている訳です

信用して貰えるのは難しいかなと思っていました」

「う、 うむ、 ならばこの炉で信を確かめよう」

「そうしましょう」

 

そう言って炉の中に入るバルト。




登場したSCP
SCP-2128 - 嘘吐きの揺り籠
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2128


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ファウンデーション

炉の中に入ったバルト。

 

「レーア伯爵令嬢御付きの執事バルトと

傭兵のゴハン・ソロ、 騎士のハウはダークネスシ帝国に与する事は無い」

 

炉に変化はない。

 

「はい、 じゃあ出ます」

 

バルトは炉から出た。

 

「これで文句は無いな、 マオ」

「・・・・・」

 

しかめ面をするマオ。

 

「マオ!!」

「良いんです、 レーア様を連れていかれてしまいましたし・・・」

「バルト・・・」

 

かくしてタオの元に身を寄せる事になったバルト。

最初にする事は隣国へ移動する為の荷づくりだった。

 

「荷造りって・・・雑用じゃん」

 

文句を言うゴハン。

 

「色々と貴重な物が保管されているんだ、 仕方が無いじゃろ」

 

タオもハチマキを巻いて荷造りをしている。

 

「貴重な物ねぇ・・・パッと見、 変な物にしか見えないんだが・・・」

「ふむ、 隣国のファウンデーション教国から持って来て欲しいとの事だ」

「ファウンデーション教国か・・・」

 

ファウンデーション教国とは人類最大規模の宗教国家である。

教会と言う単語は大体ファウンデーション教国の教会の事である。

聖人達と神を崇拝し、 無辜の人々が光の中で暮らす為に闇の中で戦う武闘派の団体でもある。

しかし国家規模は中の上位だろうか、 鶴帝国に比べれば国力は劣る。

人類の為に魔王と先陣を切って戦うのは素晴らしいが・・・

 

「あんまり好かんな」

「私もです」

 

ゴハンに同調するバルト。

 

「確かにな、 闇をこの世界に呼び寄せたのは教会だ」

 

異世界から勇者を召喚する術式は教会が所有していた物である。

今回の闇の召喚が切欠でファウンデーション教国の信頼は失墜。

更に初動の対応が遅れ鶴帝国も併合されてしまうと言う大失態を犯してしまった。

 

「そして今回の我が国への侵攻

ファウンデーションも流石に何もせぬ訳には行かぬよ

あの国の友人に頼んで我が領民の保護と今後の反攻作戦の協力を取り付けた」

「何とか反攻の切欠になれば良いのですが・・・」

「如何だろうな・・・あの国の上層部は最近停滞気味だしなぁ・・・

言葉だけの可能性も有る」

「そんな事にはさせませんよ」

 

バルトはしっかりと言う。

 

「スシブレードの知識もあります、 反攻は充分可能だと思います」

「そうだな、 じゃあ次はこれを持って行ってくれ」

 

そう言って何かの瓶ケースを手渡すタオ。

瓶ケースには20本の何かが有った。

 

「何ですか、 これ?」

「これは死ぬけど強くなれる飲み物らしい、 飲むと死ぬけど」

 

重要なので二回言うタオだった。

 

「飲むと死ぬ・・・か・・・」

 

瓶を揺らしながらごちるバルドだった。





登場したSCP
SCP-207 - 瓶コーラ
http://scp-jp.wikidot.com/scp-207


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出立

荷造りを一昼夜かけて終えた一行はファウンデーション教国に向かった。

馬車の中でこれからの話し合いをするタオとマオ、 そしてハウ、 ゴハン、 バルト。

 

「まずバルト、 君のスシブレードの知識だがファウンデーション教国が

兵力の一部とするのは正直難しいと思う」

「何でですかタオ様!?」

「落ち着け、 ファウンデーション教国は

基本的に異常な物は余程切羽詰まらないと使わない切羽詰まって状態でも使うかは怪しい」

「異世界の召喚はしたじゃねぇか」

「ファウンデーション教国はシャリ王国支部の独断だと言っている」

「どうだか」

「だから基本的に君がスシブレードを広めると言う事は無いのでは無いか、 と儂は思う」

「むむむ・・・」

「しかしスシブレード自体は戦力になるから君が前線に出る事になるだろうとは思う」

「・・・レーア様の為ならば大丈夫です」

「お熱だなぁ」

 

ぴゅーと、 ゴハンが口笛を吹く。

 

「なっ、 そんなんじゃ・・・」

「ゴハン、 その辺で」

 

ハウが制する。

 

「所でタオ様、 荷造りは時間がかかりましたが大丈夫だったんですか?」

「あぁ、 それは心配無い、 嘘吐きの揺り篭で何時連中が攻めて来るか

調べて有る、 奴等が攻め込むのは明後日、 充分逃げられる」

「・・・少々不安ですね」

 

ハウの顔が沈む。

 

「どういう事だ?」

「『攻め込む』のは明後日、 という事は『包囲される』日付は分からないと言う事ですよね」

 

はっ、 とタオが気が付く。

 

「周囲は警戒しています、 大丈夫ですよ、 お爺様」

「ほんとかぁ?」

 

マオの言葉につっかかるゴハン、 マオはキッと睨む。

 

「まぁまぁ二人共喧嘩は止しなさい」

「!! 伏せて!!」

 

バルトが叫ぶと馬車の上部が吹っ飛んだ!!

 

「!!」

「何だ!?」

「動くんじゃねっきゅ!!」

 

大きな叫びが聞こえる、 馬車の外から見ると

そこに居たのは下半身がタコの八本脚の男だった。

その男は人間の手とタコの八本脚でそれぞれ湯呑と箸を構えている。

コイツは闇のスシブレーダーだ!!

 

「きゅっきゅっきゅ!! 待ち伏せしていればきっと来ると思ったっきゅ!!」

「その恰好、 ソルジャースシでは無いな!!」

「その通り、 ダースシ・ヴォルフガング様に使えるヤミ・アプレンティスだきゅ!!」

 

ヤミ・アプレンティス!!

その言葉に固唾を飲むバルド!!

今まで戦って来たソルジャースシとは訳が違う!!

 

「お前達を捉えて手柄とするきゅ!! 一人で戦果を挙げれば俺の評価も上がるきゅ!!」

「と言う事はここにはお前一人か」

「そうだきゅ、 だがこの手足を見るきゅ」

 

その通り、 計五つのスシブレード発射準備が既にできている!!

装填されているのはタコ焼きだ!! しかも揚げタコ焼きだ!!

カロリーの化け物!! それが5個!! 太る!!

 

「さっきはわざと外したきゅ、 その気になれば脳天に当てるきゅ」

「・・・・・」

 

バルトは馬車から降りた。

 

「きゅ? 命知らずきゅ?」

 

そしてバルトもスシを構えた。

 

「きゅきゅ!? お前もスシブレーダー・・・ならば戦うのが必定!!」

「俺達も加勢するぜ」

 

ゴハンもスシを構える。

 

「いや、 相手は1人、 僕が」

「きゅっきゅ!! 手間が省けるきゅ!! 2人でも3人でもいっぺんに来いきゅ!!」

「ならば私も行こう」

 

ハウもスシを構える。

 

「ふふふ、 これは良い手土産になるきゅ・・・それじゃあいくっきゅよ!!」

「「「3、 2、 1、 へいらっしゃい!!」」」

 

そしてスシが射出されたのだった!!



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3人VS5個

バルト達VSヤミ・アプレンティスのオクトパス・レッグの戦いが始まった。

三対一の戦いになったがこれは卑劣では無いのだろうかと思う読者諸賢も居るかもしれない。

だがそうではない、 オクトパス・レッグは5つのタコ焼きを同時に射出してきたのだ!!

ならばオクトパス・レッグの方が有利? 否、 複数のスシブレードを操るのは技術が必要なのだ。

オクトパス・レッグは未だに未熟!! 完全には5つのタコ焼きを完全に操れていない!!

体の変質で複数のスシブレードを射出出来るがそれだけである!!

完全にコントロールは出来ていない、 大雑把な動きしか出来ないのである!!

 

しかし未熟なのはバルト達三人も同じ・・・否!!

 

「躱せ!! エッグヴィーナス!!」

 

タコ焼きの攻撃を躱すエッグヴィーナス。

 

「くっ・・・こいつ・・・!!」

 

バルトは急成長を見せているのだ!!

何故!? バルトはスシの知識を持っている男!!

言うならば答案用紙を持ってテスト回答を解いているに過ぎない・・・

だがしかし既に答えが分かっているのならば道筋さえ分かれば熟達出来る!!

つまり相手が強いスシブレーダーであればあるほどバルトは成長出来る!! 出来るのだ!!

ならばエッグヴィーナスだけに集中攻撃を仕掛ければ良いじゃ無いか。

そう思う方も居るかもしれない、 だがしかし

 

「いっけええええええ!! アルティメットマグロおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

ゴハンのアルティメットマグロがタコ焼き達を薙ぎ払う。

安定した回転が特徴のアルティメットマグロ、 初心者用とも言われるスシブレードだが

初心者用=弱いと言う図式にはならない、 ナイフの様な短刀でも人は殺せる。

しかしタコ焼きは闇のスシブレード、 アルティメットマグロより強い。

ならば何故こんな状況が発生しているのか? 理由は二つ。

 

ゴハンは幼少時から傭兵として死にそうな目に遭って来た

ナイフ一本でも抵抗し戦う術を知っている。

この状況はナイフを持たされて戦っている状況に等しい。

厳しい状況、 ならば攻め込むしかない!!

ゴハンは操作が甘くなっているタコ焼きをアルティメットマグロで弾いて停止させていく。

いわば巧みに攻め込む!!

 

そしてハウも着実に活躍している!!

派手さは無いが少しずつタコ焼きにぶつかりながら勢いを落させる!!

タコ焼きとアルティメットマグロが正面からぶつかればアルティメットマグロに分が悪い。

だが勢いを落す事に注力するのは可能、 ハウが勢いを落しゴハンに倒させる。

この連携がこの状況を作り出しているのだ!!

 

ソルジャースシ達との交戦で経て出来たアルティメットマグロでの戦い方である!!

 

「くっそ・・・俺のタコ焼きが・・・」

 

タコ焼きが次々と止められる事に焦るオクトパス・レッグ。

 

「こうなれば・・・」

 

ダイレクトアタック、 オクトパス・レッグの脳裏にその言葉が浮かんだ。

タコ焼き達に意識をやっている間に相手の脳天にタコ焼きを打ち込む。

馬車を破壊したオクトパス・レッグならばタコ焼きで相手を倒す事も充分可能。

 

「死に腐れえええええええええええ!!」

 

オクトパス・レッグがバルトにタコ焼きを放とうとした刹那。

ストン、 とオクトパス・レッグの手に矢が突き刺さった。

 

「私にはスシブレードは分からんが

スシブレードの戦いを放棄して直接攻撃に移ろうとしたその行為は醜い」

 

そう言ってマオは矢を射ったのだった。

 

「ぐ、 ぐうう・・・」

 

集中を切らしたその隙に全てのタコ焼きが破壊されたのだった。

 

「ぐ・・・だ、 だが俺はソルジャースシじゃないきゅ!!

スシブレードでやられた程度で死なない・・・っきゅ?」

 

すこん、 と脳天にエッグヴィーナスが激突し、 オクトパス・レッグは意識を失った。



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O5爆発した

オクトパス・レッグを打ち倒した一行。

 

「とりあえずコイツは足を切って寿司ネタにしましょう」

「何言ってんだお前、 タコなんて食うのか?」

 

バルトの言葉に突っ込むゴハン。

 

「寿司ネタにタコは有ります」

「マジか、 スシって頭可笑しいわ」

「足を斬るのは賛成だ、 動かれると厄介だし、 但し殺すな

色々情報を聞き出したい」

 

タオが冷静に纏める。

 

「ふむ、 では足を切って、 武器を取り上げて縛り上げておきましょうか」

「それが良い」

 

そんなこんなでオクトパス・レッグは脚を切断され縛り上げられたのだった。

脚なんか斬ったら出血死するんじゃないかと思われてが足には血管が無かった。

 

「謎の構造だな・・・」

 

憂いは無くなったので一行はファウンデーションに向かうのだった。

 

 

 

 

 

一方その頃、 ファウンデーション教国首都イエローストーンでは

教国の大聖堂で最大司教O5が一同に会していた。

O5は13人で構成されそれぞれO5-1、 O5-2と番号で呼び合っている。

そんなファウンデーション教国の頂点に位置するO5だが

彼等は今絶体絶命のピンチに陥っている。

 

「落ち着け!! O5-1!!」

「これが落ち着いていられるかぁ!! 俺の言う事全部無視して

異世界から召喚して案の定ヤバい奴が来て

それで全部シャリ王国支部の独断で済むと思ってんのかぁ!!」

 

O5-1が手製の爆弾でO5全員と心中しようとしているのだ。

O5達は腐敗が進み各々私腹を肥やし、 自浄作用が機能していないのだ。

教会のやり過ぎを諫める倫理委員会も最早まともに機能していない。

 

「流石の俺でも真面目に動かざるを得んわ!! 何だお前等!!」

「待て!! お前も死んでしまうぞ!?」

「殺せるもんなら殺して見ろやぁ!!」

 

そう言って手製の爆弾を爆発させるO5-1、 閃光が大聖堂を包み大爆発した。

 

「な、 何だ!?」

 

O5直属部隊レッド・ライト・ハンドが大聖堂の中に入る。

 

「こ、 これは一体・・・」

「兎に角O5-1を探せ!!」

 

部隊隊員達が大聖堂の中を隈なく探す。

 

「有ったぞ!!」

 

隊員の一人がルビーの首飾りを見つける。

 

「とりあえず付けろ!!」

「分かった!!」

 

拾った隊員がルビーの首飾りを着ける。

 

「O5-1!! 一体何が起こったのですか!!」

 

首飾りを着けた隊員に尋ねる部隊長。

 

「今回の一連の不始末を悔いて我々は自決する事にした」

「そ、 そんな!!」

「そうでもしなきゃならねぇ状況だったんだよ!! てめぇも私腹を肥やしていたんだろうが!!」

 

隊員が部隊長に怒鳴る、 異様な光景である。

隊員が着けたルビーの首飾りは不死の首飾りと呼ばれる物で

首飾りを着けた人間はO5-1になると言う代物なのだ。

 

「これから、 如何するのですか」

「とりあえずO5全員が責任取って自死した事にして後任を決めれば良い」

「そんな無茶な・・・」

「さっきまでのO5は無能だからな、 誰でも良いだろ」

「無茶ですって・・・」

「早急に殺さなきゃならない連中だったからな

兎に角新しいO5は形だけでも決めねばならない

或はO5という指示体形すら無くすべきかもしれないな・・・」

 

遠い目をするO5-1であった。





登場したSCP
SCP-963 - 不死の首飾り
http://scp-jp.wikidot.com/scp-963


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ヴォルフガングと愉快な仲間達

オクトパス・レッグが倒されている頃、 ヴォルフガングが駐屯しているヒノモト城では

ダースシ・ヴォルフガングが自身のスシトルーパー3人を集めた会議がされていた。

 

「んじゃ会議を始めるっすよー」

 

ピースメイカーが会議を仕切る。

 

「何でお前が仕切るんだ?」

 

スシトルーパーでヤミ・マスターの一人、 ビッグナイフが尋ねる。

 

「ヴォルフガングさん、 良いっすよね?」

「別に構わない」

「ちょっとヴォルフガングさん

ピースメイカーよりも俺の方が強いから俺の方が偉いんじゃないのか?」

「ピースメイカーは強い者には大人しく従うから」

「そう言う事、 目上を立てられるんだよ」

「どっちでもいーじゃん、 早く始めてー」

 

ヴォルフガングのスシトルーパー紅一点、 カスタードがネイルを弄っていた。

 

「小娘が・・・」

「その小娘の言葉に一々キレるアンタもどーるいだよオッサン」

「貴様!!」

「はいはい、 そこまで、 カスタードも挑発するな

それじゃあサンシャイン王国の侵攻具合を発表して貰おうか」

「はーい、 ウチの手下のチキン・ヘッドがサイト城を侵略して

その他の辺境も着々と侵攻済みだよ、 ナイフのオッサンは如何?」

「空中分解した反乱軍の後追いをさせている、 順調だ

それで? ピースメイカーは如何だ?」

「極秘任務中だから言えないなぁ」

「はぁ? 何だ極秘任務って」

 

逃げたレーアの探索の事である。

 

「極秘は極秘だ、 知りたかったらヴォルフガングさんをボコって聞き出すんだな」

「・・・・・チッ」

 

舌打ちをするビッグナイフ。

 

「ビッグナイフ、 カスタード、 君達にはここから離れて前線に出て貰う」

「マジ?」

「ちょっと待て、 そこのピースメイカーは如何なる?」

「極秘任務継続中だ」

「チッ・・・」

「いやいや、 俺も前線に出て弱い物イジメしたいから正直お前達が羨ましいよ」

「このサディストの変態野郎が」

「お前だって似た様なもんじゃないか」

「まぁまぁ二人共落ち着きなさい」

 

ヴォルフガングが制する。

 

「とりあえず、 君達にはまだ頑張って貰おう」

「あ、 ボスー、 そう言えば忘れてた事が有ったー」

「如何したの?」

「ウチの手下のアプレンティスの・・・何だっけタコ足の・・・」

「オクトパス・レッグ?」

「そうそう、 アイツが行方不明になった

置手紙には『貴族拉致って手柄にしますきゅきゅっきゅー』って書いてあった」

「最後のきゅきゅっきゅーって何だ?」

「笑い声」

「手紙に?」

「手紙に」

「・・・・・」

 

少し頭を抱えるヴォルフガング。

 

「あ、 それからソルジャースシが何人か帰って来てないって」

「んー・・・まぁソルジャースシだからな、 返り討ちにでもあったんだろ・・・

じゃあ会議はここまで、 解散」

 

ヴォルフガングが号令を出しスシトルーパーはその場から離れた。



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第六章:ダークネス・チョコレート・オン・ザ・アイス
オープニング・クロール


風雲急を告げる!!

世界は魔王の物になるかと思いきや、 異世界からやって来た闇の物になる

そう思われた時に禁じられた山から知識を得た異端のスシブレーダーバルトが

闇のスシブレーダーを薙ぎ払う!!

 

間一髪の思いでサンシャイン王国を脱出したバルト一行。

厳しい戒律で有名なファウンデーション教国に辿り着いた

バルト一行は想像以上の歓待を受けた。

それと言うのもO5達が闇達の召喚に対しての責任を取る形での集団自死。

跡継ぎを決めていたのはO5-1のみなのであった。

そこでファウンデーション教国はO5に代わる制度の試験運用として

議員達を選出する議会制民主主義に移行する事になった。

当然ながら反発も有ったがO5-1はそこを承知し

亜人と形容されるエルフ族や獣人族達の権利拡大を盛り込んでおり

彼等の協力を得て何とか形にする事が可能になったのだった。

 

議会を設立するに当たっての議員の一人として

サンシャイン王国からの移民代表としてタオが選出された。

タオの意見によりバルトのスシブレードはファウンデーション教国に広まった。

無論バルトのスシブレードに対して懐疑的な物も多かったが

シャイニング王国を占拠しているダースシ・ヴォルフガングが放った

ヤミ・アプレンティス、 ネギ乗せ率いるソルジャースシの軍勢に対して

勝利を収める事が出来た、 ネギ乗せが未熟だった事と

オクトパス・レッグを尋問して得られた情報により圧勝する事が出来

スシブレードは評価を得られる事に成功したのだった。

 

華々しい勝利を収めた一方、 ダークネスシ帝国はこの事態を重く見ており

スシの暗黒卿のやみちゃんとやみちゃん麾下のスシトルーパー、 プリンの部隊を派遣を決定。

ファウンデーション教国はスシの暗黒卿との対決を強いられる事になったのだった。

 

そしてレーア伯爵令嬢はヒノモト城の地下に隠されし

複数の秘宝を持ち出して逃亡する事に成功したのだった。

レーア伯爵令嬢はサンシャイン王国で戦っている反抗勢力と合流

秘宝の力で何とか抵抗出来る様にはなったが勝利には遠いと感じ潜伏する事に決めたのだった。

 

サンシャイン王国へ帰還し反攻したいバルトだったが

まだまだファウンデーション教国は一枚岩とは言い難く自由に身動きが取れない。

内患外患、 共に多発、 人間に例えれば不摂生な不健康人間状態である。

果たしてバルトはサンシャイン王国を解放し、 世の中を闇のスシブレーダーの脅威から

救い出す事は出来るのか。

それは神とスシのみぞ知る!!



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部隊編成

ダークネスシ帝国首都ニーガタ。

シャリーラ13世は居城であるニーガタセンターでシャリを握っていた。

そして射出する、 射出されたシャリは壁に食い込んでいる。

 

「・・・まだまだ師には遠く及ばずか」

「破壊力は充分でしょう、 陛下」

 

アソウがやって来る。

 

「アソウか、 何の用だ?」

「やみちゃんの部隊編成が終わりました、 何時でも出撃出来ます」

「そうか、 部隊構成は如何なっている?」

「スシトルーパーのプリンが総指揮を取り

ヤミ・マスター、 フォビドゥン・フルーツ、 フレンドリーファイヤー

鞘、 ビア、 アリアリの五人が中間指揮、 その下にヤミ・アプレンティスが付く形になります」

「フレンドリーファイアー? あの仲間殺しを平然とやる危険な奴か

やみちゃんに捌き切れるのか?」

「やみちゃんは子供程度の知能しかありませんが

彼女に勝てるスシブレーダーは居ないでしょう

私でも彼女に勝てるかどうかは怪しい

闇のスシブレーダーではないスシブレーダーがヤミ・アプレンティスを葬ったとしても

ヤミ・マスターに勝てるとは思えない

ましてややみちゃんとプリンに勝てるとは想像出来ませんね」

「・・・・・」

 

シャリを握りながらシャリーダは言う。

 

「知って居るか? 我々の闇寿司は寿司の中では外道の部類らしい」

「存じ上げております、 寿司の知識ならば師と同じ位詳しいと自負しております」

「相変わらず物知りだなアソウ、 だがしかし外道って何だよ

武器に外道なんて有るのか? 強い武器を使って悪い

なんてそれは弱者の僻みじゃないのか? 私はそう思う」

「・・・・・そもそもスシは武器じゃないんですけどね」

「何か言ったか?」

「いえ、 何も・・・?」

 

アソウが振り返った。

 

「如何した?」

「少し・・・寒い?」

「失礼します!!」

 

ヤミ・アプレンティスのマヨラーがやって来た。

頭は白の巻き毛でぽっちゃり系の男子である。

 

「如何したんだ?」

「フレンドリーファイア様がやみちゃん様に下剋上の戦いを挑みました!!」

「馬鹿な事を、 やみちゃんがボケーとしてたから勝てるとでも思ったか

・・・まぁ一応聞いておこうかどっちが勝った?」

「フレンドリーファイア様は討ち死にました!!」

「あぁ・・・そうだろうね、 それで?」

「フレンドリーファイア様の部隊の指揮を是非とも私にお任せ頂きたい!!

私はフレンドリーファイア様の副官で御座いました!!」

「ふむ、 まぁ良いだろう、 あのイカレよりも良い働きをしてくれそうだ」

「有難うございます!!」

 

画して部隊は編制されたのだった。



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議会への乱入

一方、 ファウンデーション教国でも部隊編成が行われていた。

新設された議会場で部隊の編制の会議が行われていた。

最高議長O5-1が閣議決定を下す。

 

「それでは部隊の編制はこれで良いな」

 

意義ナーシ、 と賛同する議員達。

 

「ふぅ・・・」

 

タオも思ったよりもスシブレードが受け入れられて良かったと胸を撫で下ろした。

 

「スシブレード部隊が出来るのは良いですがバルトの負担が大きくなるのでは?」

 

同席したマオがタオに尋ねる。

 

「まぁ仕方ない、 ここは頑張って貰うしかあるまいて」

「・・・・・」

「ほっほ、 バルトの事を最初は信頼して無かったのに

最近は彼の心配をしてやるようになるとはのぉ」

「なっ、 か、 からかわないで下さいっ」

 

ぷぃとそっぽを向くマオ。

 

「それでは今回の会議はこれにて」

「あ、 ちょっと駄目ですよ勝手に入っちゃ!!」

「退きなさい!!」

 

バンッ、 と会議場のドアを開いた。

当然議員達は注目する。

 

「サイだ」

「サイか・・・」

 

入って来たのはサイ、 シャリ王国の教会から逃げて来た聖女の娘である。

 

「納得が行きません!!」

 

議会場の机をドンと叩く

 

「サイ、 主語を言え、 主語を」

 

O5-1は苛立ちながらサイにそう言った。

 

「新しく出来たスシブレーダー部隊ですよ!!

何で我々を追いやったスシブレーダーと共闘しなければならないのですか!!」

「スシブレーダーは戦力として確かな実力を持っているし

きちんとスシブレードの扱い方をレクチャーできる

貴女とは違って人に物を教えられる人なんだよバルト君は」

「っ!!」

 

歯軋りをするサイ。

 

「そもそも貴女は謹慎中の筈だ、 何故ここに出て来た?」

「それは教会が誤った方向に行こうとするのを正す為です!!」

「・・・・・」

 

O5-1が軽蔑した眼でサイを見る。

 

「お前が教会の事を思うのは勝手だが

それは我々の仕事だからお前は大人しく謹慎してろ」

「なっ!? そんな!!」

「そもそも謹慎で済んでいる状況が可笑しい」

 

シャリ王国から逃げて来た移民代表、 ヴァラリアンはギロリとした眼でサイを睨む。

 

「議長、 彼女には厳罰を与えるべきでは?」

「確かに謹慎処分は以前のO5議会で下された判決、 考え直すのも一考か」

「そんな!! 私の様な優秀な人材は残しておくべきです!!」

「優秀? ハッ!! 優秀なのに返り討ちに遭うのかお前は」

「何だとォ!!」

 

剣を抜くサイ。

警備兵のボウガンが一斉にサイに向かれる。

 

「っ・・・」

「警備、 サイを連れ戻して置け」

「はっ」

 

警備に連れられてサイは議会場の外に出た。

 

「・・・あのサイって娘、 何をしたんですか?」

 

マオがタオに尋ねる。

 

「あの娘は無茶な作戦でダークネスシ帝国に無許可で攻撃して捕まって

彼女の母親の聖女が率いる部隊に救出されたんだ、 但し母親の聖女と引き換えにね」

「そうなんですか・・・」

「剣術に優れていて人に教えるのが得意、 とか自称していたが

木剣で訓練兵をボコボコにするだけだったらしい」

「ちょっと可笑しい人じゃないんですか?」

「らしいな、 この前のネギ乗せとの戦いも

勝手に出撃しようとして迷惑をかけたらしい

O5-1が無理矢理引き留めなければどうなっていたか・・・」

「警戒した方が良いですかね」

「そうじゃな・・・」



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脚を喰ってでも生き延びる

サイが議会へと乱入していた頃

バルトはスシブレーダー訓練生にスシブレードを教示していた。

とは言ってもバルトもまだまだ発展途上であるので教えられる事は少ない。

バルトの知識から複数の種類のスシブレードを見繕って

最良の組み合わせを探しているのだった。

 

「色々と苦労しているな」

 

ゴハンがやって来る。

 

「ゴハンさん、 新しいスシブレードの調子は如何ですか?」

「アルティメットマグロよりも扱いは難しいな、 確かに攻撃的だが・・・

まぁ慣れて見せるさ、 それよりも開発部から頼まれていた物を持って来たぞ」

 

ゴハンが大量の油揚げを持って来る。

 

「有難うございます!!」

「良く分からないが、 これで如何言うスシブレードを作るんだ?」

「Oinari3と言う防御力が高いスシブレードを作ろうと思います」

「高防御力かハウが好きそうなスシブレードだな」

「だがやはり問題が有りますね」

「あぁ、 件のショーユ、 とか言う奴だろ?」

 

寿司とは切っても切り離せない物、 醤油、 それがこの世界には無いのだった。

これはスシブレーダーにとっては死活問題である。

ましてやOinari3には醤油は必須である。

闇も醤油が無い事に対しては非常に頭を悩ませていた。

 

「無いとそんなに問題なのか?」

「えぇ・・・スシには醤油は必須と言っても良いですから・・・」

「そんなもんかなぁ・・・おい、 タコ!! スシブレーダー達の育成は如何だ?」

 

スシブレーダーの教官と化したオクトパス・レッグに尋ねるゴハン。

 

「順調っすよ、 ソルジャースシと同等、 いやソルジャースシと違って

スシブレーダー壊されても爆発しないからソルジャースシより強いかも・・・」

「それは心強いな」

「だけどもよぉ、 スシ・アプレンティスと同等に戦えるのは居ないんじゃないかぁ?

やっぱり闇寿司を・・・」

「闇寿司よりも普通のスシブレードの方が強い」

 

断言するバルト。

 

「闇寿司は寿司では無い、 正統派に勝てないよ」

「如何だかなぁ」

「そもそも闇寿司って言うのになると

お前みたいなタコ足になったりするんだろ?

正直言ってキモイわ」

 

ゴハンが断言する。

 

「タコ足便利だぞ? 吸盤で壁にくっつけるし足で複数のスシブレードを射出出来る

正直に言うと俺がヤミ・アプレンティスの地位に居たのは

タコ足のお陰と言っても良い」

「自慢げに言う台詞じゃないな」

「それはスシブレードを使っているんじゃなくて

スシブレードに使われているんじゃないのかな?」

「かもしれねぇな」

 

あっさり認めるオクトパス・レッグ。

 

「だけどよ、 スシブレーダーになる前の俺の人生は控えめに行っても糞だ

どうにもならない人生を変えるにはやっぱり力が必要なんだよ

正道、 良いね、 でも正道を学ぶには時間も金もかかる

そして俺にはそんな余裕は無かったんだよ」

「・・・悲しいね」

「悲しむ余裕すら俺には無かったねぇ・・・

まぁ俺は生きる為なら外道に手を染めようが

仲間を裏切ってアンタ等に情報を売ったり教官をしてやったりしてやるよ」

「節操無いな」

「俺だって生きてぇからな、 死ぬとかゴメンだ」



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生まれる強者達!!

 

「所でアンタのスシブレード、 エッグヴィーナスだったか?

機種変更はしないのか?」

「卵を使ったスシブレードにしたいんだよね」

「色々スシブレードを使っていくのは悪い事じゃないと思うぞ?」

 

オクトパス・レッグの言い分にも一理ある。

自分と相性のいいスシブレードを選ぶのはスシブレードに対しての不義理にはならないだろう。

 

「でもなぁ・・・何と言うか・・・卵を使え、 と言われている様な・・・」

「どういう事だ?」

「何と言うのかな・・・スシの神? あるいはスシその物に言われている様な・・・」

「スシの握り過ぎでイカれたのか?」

「いや、 大丈夫だろう、 多分」

 

不安がる二人である。

 

「ま、 まぁそんな事より他のスシブレーダー達はどんな感じだよ

見所の有る奴はいるのか?」

「結構居るよ」

 

大勢のスシブレーダーの中から特に有望なスシブレーダーをピックアップするバルト。

 

「まずはウェッジ、 彼はイクラリオンを的確に使いこなす」

「軍艦巻き、 というタイプのスシブレードを使うんだったか

イクラリオンは魚卵を拡散させて相手のスシブレードのスピードを落とすから

妨害型の印象を受けるな」

「ウェッジはイクラ、 つまり魚卵をスシブレードに当てて倒す技術に秀でている

まさにスナイパーと言えるだろう」

「なるほどな、 他にはどんな奴がいる?」

「ウェッジの妹のシャルと言うのも凄い逸材だ

テッカマーズと言う鉄火巻きのスシブレードを使う」

「お前のエッグヴィーナスと同じ海苔巻きタイプだな

テッカマーズの特性はどんなのだ?」

「テッカマーズは安定した回転を見せるタイプですが、 時折、 強い一撃が出ます

これは僕の握り方の問題でしょうか」

「ラッキーヒットが出やすいと言う事か?」

 

事実鉄火巻きの名の由来には鉄火場、 つまり賭博場で手軽に食べられたから

という説もある、 運関係の可能性も大いにある。

 

「後はサバヒルバー使いのケイさん、 ホターⅩ使いのマドカ

シンコフェネックを操るグレン、 イカルオンのナル

それから箱使いのエミリー、 思ったより少女の方が強い傾向にある」

「そりゃあスシブレードには腕力入らないからな

男女関係無く活躍出来る、 女のヤミ・マスターやヤミ・アプレンティスも多い」

「そりゃあ良いな、 女子スシブレーダー部隊でも作るか」

 

冗談交じりに言うゴハン。

 

「女子男子で分ける事自体ナンセンスだな」

「男性にも強いスシブレーダーは大勢居ますよ、 シーエーチンのラルフさんや

ワサビジュピターのグリードさん、 ファットプラネッツ使いのゾーバさん」

「結構強者も居るんだなぁ・・・

まだスシブレードを広めてから一ヶ月も経ってないぞ」

「やはりネギ乗せとの戦いで実戦を経験したのが大きいと思います」

「なるほど、 俺も実戦を経て強くなった実感が有るしそれは一理あるな」



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部隊成立の恩恵

「強者が生まれる事は嬉しいがやっぱり数が多いのが一番大きいと思うぞ」

 

オクトパス・レッグは告げる。

 

「数が多い事は良い事だ、 英雄1人よりも一兵卒100人だ」

「タコはロマンが無い事を言うなぁ」

「だって美味しい所はヤミ・マスターとかスシの暗黒卿が持って行っているが

一番戦果を挙げているのはソルジャースシ達だぞ?

やっぱり戦争は数だよ数」

「数かぁ・・・・・でもスシブレーダーの数をこれ以上増やすのは・・・」

「問題が有るのかの、 バルト」

 

タオとマオがやって来た。

 

「タオ様、 議会はもう良いのですか?」

「おう、 朗報じゃ、 スシブレード部隊が正式に認められる事になった」

「・・・? 今もスシブレーダーを編成しているのでは?

ボケられましたか?」

 

タオに暴言を吐くオクトパス・レッグ

 

「いやいや、 これはあくまでも同好会と言う扱いだったのじゃよ」

「同好会、 同好会だったのかぁ・・・」

「まぁスシブレーダーになりたいって人は少なかったですしね

ネギ乗せとの戦いで結果を出したからスシブレーダー希望者が増えましたし」

「少し前までは食べ物も自由に使えなかったが今では開発部から新素材も貰えたしな」

 

油揚げを見せるゴハン。

 

「それで部隊になるとこれからどうなるのですか?」

「使える予算が正式に出るからスシを色々握れる」

「今でもそれなりに結構握れていると思いますよ」

「まぁ現状は儂のポケットマネーからお金を出して

市場で買ってそれでスシを握っていると言う形じゃが

これからは国費でそれが出来ると言う訳じゃな」

「そうなんですか」

「それから部隊として認められたから、 これから国外に出撃して貰う事も有るかもしれない」

 

マオが申し訳なさそうに言う。

 

「嬉しい事です、 ダークネスシ帝国を打ち破りたいと思ってましたし

それに・・・」

「レーア様の事?」

「はい、 レーア様はきっと生きていると信じています、 早く探しに行きたいと思います」

「そう・・・」

 

憂いた眼をするマオ。

 

「まぁ、 アレじゃな

スシブレーダーのみの部隊編成は若干行き過ぎじゃから

マオも同行すると良いじゃろう」

「マオ、 さん、 の、 矢、 めっちゃ、 痛かった、 です」

 

何故か片言になるオクトパス・レッグ。

 

「そうですね、 僕達もまだまだ未熟ですしマオさんが一緒だと心強いです」

「しょ、 しょうがないわね!! 貴方達だけじゃ心配だから付いて行ってあげる!!」

「これがツンデレか・・・初めて見た」

「タコよ、 俺は傭兵やってたが結構居るぞ、 こういう女」

「マジか、 俺も傭兵になる」

 

馬鹿を言っているゴハンとオクトパス・レッグ。

 

「さてとスシブレード部隊が発足したから隊長就任とか色々ある

隊長はバルト、 お前で良いかの?」

「とりあえずそうなるでしょうね」

「うむ、 それでは隊長就任の為に色々手続きがあるから来い」

「分かりました」



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聖人達

とある一室に通されたバルトとタオ。

 

「失礼します」

「来たか」

 

O5-1が書類を前に待っていた。

その周辺には様々な人が居た。

 

「議長、 周りの方々は一体・・・」

「聖人だよ」

 

ファウンデーション教国には政治機関としてO5が有った。

今は議会になっている。

そして部隊隊長任命等の行事には象徴として聖人がその手続きを見守る

という行為が存在するのである。

 

「まぁ聖人とか言っているが客寄せパンダの様な物だね」

 

聖人の一人が自嘲気味に笑う。

 

「カインさん、 そんな事無いでしょ、 僕達が居る事で人々は安心出来るんですから」

 

別の聖人が釘を刺す。

 

「君は外に出られるけどさ、 カクタスマン、 私はそうもいかないんだよ」

 

カインと呼ばれた聖人は土で成長するすべての生命に対し害を与えてします。

その為、 外に出る事が出来ない。

 

「まぁ仕方ないですけどねぇ・・・」

 

カクタスマンと呼ばれた聖人はサボテンの力を身に着けた聖人である。

その為、 普通の人間よりも長寿である。

サボテンパワーで食い逃げを倒したり

重い荷物を持っているお年寄りを手助けしたりするのである。

 

「とりあえずバルト君

ここに君の部隊の設立やら何やらの為の手続きの紙が有る

サインを頼むよ」

 

読者諸賢に分かり易く言うならば

これは就職の際に書かされる色々な契約書と同じ事である。

 

「・・・・・」

 

当然ながら書類の紙を見るバルト、 そしてその中の一つに対してこういった。

 

「あのすみません、 この給料の所なんですが・・・」

「給料は新設された部隊の部隊長だから少ないと思うが

これからの功績に比例して昇級していく予定だ」

「そう言う事では無く・・・」

「?」

 

O5-1が怪訝そうな顔でバルトを見る。

 

「経費が降りるのならば私は給料要りません」

「・・・・・何故?」

「私はレーア様の執事ですし・・・

隊長になってもせめて給料は主からしか貰いたくないというか・・・」

「駄目だな、 仕事をしたのならば給料は必ず貰わなければならない

これは君だけの問題じゃないんだよ」

「どういう事ですか?」

「大昔に仕事を安請け合いし過ぎて業界全体の賃金が下がったケースが有る

君が給料を受け取らないせいで未来の兵士達の給料が下がって

それで兵士達が居なくなって世界の終焉とかになったら困るだろう」

 

理路整然というO5-1.

 

「そ、 そうですか・・・」

「もしも要らないのならば、 孤児院にでも寄付したら如何だ?」

 

カクタスマンが言う。

 

「飲み会の代金にでも使ったら如何だ? 仲間と打ち解けられるんじゃないかな?」

「そうは言っても飲み会の代金とかは経費で落ちるし・・・」

「いやいや、 ここは・・・」

 

聖人達でわいわいやり始めた。

 

「・・・聖人と聞きましたが、 意外い俗っぽい方々なんですね」

 

タオに耳打ちするバルト。

 

「そうじゃのう・・・」




登場したSCP
SCP-073 - "カイン"
http://scp-jp.wikidot.com/scp-073
SCP-2800 - カクタスマン
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2800


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サイとレボ

 

「納得が行かない!!」

 

ドンと自室でテーブルを叩くサイ。

 

「聖女の娘であり剣術の達人である私が

何でこんな謹慎なんて受けないといけないのよ!!」

「お嬢、 あんまり暴れんでくださいよ」

 

大柄で痩身のサイの執事のレボがボケーとしながら言う。

 

「レボ!! アンタも主がこんな事になっているのに何とも思わないの!?」

「うーーーーーーーーーーん・・・・・」

 

ぐぅうう、 とレボの腹が鳴る。

 

「むつかしい事考えると腹減りますなぁ・・・」

「このおバカ!!」

 

レボにクッションを投げるサイ。

クッションを受け止めるレボ。

 

「兎に角お嬢、 母君がお亡くなりになったんだし

これからは母君の死後年金で食い繋いでいきましょうよ」

「死後年金だぁ!? 何言ってんのよ!!」

「教会の制度で戦死した者の遺族が受け取れるお金で」

「そういう事を聞いているんじゃない!!」

 

レボの声に激昂するサイ。

 

「このまま負け犬としての生涯を送れと言うの!?」

「負け犬所か勝ち組だと思いますよ、 一生分の飯には困らないんですし」

「そういう事を言ってるんじゃない!!」

 

ドンと机を叩くサイ。

 

「この私の剣術の冴えを忘れたか!?」

「いやいやお嬢の剣術は凄いですよ、 俺みたいな素人でもこう思いますもん

『すごいなぁ』って」

「馬鹿にしているのか!?」

「何でぇ?」

 

レボは泣きそうになる。

自分は褒めているのに何でこの人は怒っているのか分からない。

 

「・・・・・」

 

サイはレボの馬鹿さ加減にあほらしくなって怒るのを止めた。

 

「はぁ・・・」

 

思えば自分の従者は今やこの馬鹿で大食いの執事のみ。

母に仕えていた者達はサイを嫌悪、 酷い者に至っては憎悪している。

レボは他の従者よりも無能だったからこそサイから離れられずにいる。

 

サイは自身の行動で母を死なせたのは悪いと思っている。

だからこそ挽回の機会を得なければ、 とサイは目論んでいる。

 

「あのスシブレーダーとか言う奴等を何とかしなければ・・・」

「良い人だと思いますよ、 食べ物くれますし」

「知らない人から食べ物を貰うんじゃありません」

「うーーーーーーーーーーーん、 でもお嬢、 お嬢じゃスシブレーダーには勝てないですよ

前にも負けたじゃないですか」

「痛い所を突く・・・でも敵はスシブレーダーよ

そして・・・・・・・ズロ・・・」

 

遠い目をするサイ。

 

「お嬢?」

「・・・・・何でもないわ、 兎も角何か策を考えなさい!!」

「うーーーーーーーーーーん・・・・・」

 

ぐぅうう、 とレボの腹が鳴る。

 

「むつかしい事考えると腹減りますなぁ・・・何か食べません?」

「このおバカ!!」

 

癇癪を起すサイ。

 

「でも実際俺は何も出来ないッスよ、 お嬢が考え付く事は俺には全く分かりません

強いて言うなら俺はめっちゃ音楽が上手」

「全く役に立たないスキルの提示をありがとう」

 

頭を抱えるサイ。

 

「まぁ何ですかな、 お嬢はマジで強いのにスシブレーダーはそれより強いってズルっすよね」

「・・・・・それに関しては私の修行不足ね・・・

そうよ、 修行よ!!」

 

サイは立ち上がる。

 

「武者修行に行くわ!!」

「むしゃむしゃしゅぎょう? 何か食べるんです?」

「おバカ!! 良い!? 経験を積んで強くなるのよ!!」

「うーーーーーーーーーーん・・・・・」

 

ぐぅうう、 とレボの腹が鳴る。

 

「良く分からんすけど、 俺も行くんすか?」

「足手まといは要らないわ!! アンタはここで適当にオルガンでも弾いてなさい!!」

「はーい」

 

外に出ようとするサイだったが警備に止められる。

 

「お嬢、 修行は謹慎が終わってからにしましょうよ」

「ぐぬぬ・・・」



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スシブレーダー、ピザを喰う

ファウンデーション教国の兵士の士気は高い。

それと言うのも・・・

 

「はい、 この箱に触って」

「はい」

 

ピザボックスに触れる兵士、 するとピザボックスから好みのピザが生成される。

この摩訶不思議なピザボックスのお陰で兵の士気が高まり

更に食費も減ると言う二段構えである。

ピザのカロリーは訓練で相殺されるから良しとしよう。

 

「しかしスシブレードが部隊として認められるとは驚きだ」

 

紫のオールバックのスシブレーダーラルフが呟く。

 

「そうかい? 先の戦いでは結構活躍したじゃない」

 

スシブレーダーグレンがヘラヘラと笑う。

 

「まぁスシブレーダーとしてこれから前線に出るとか考えたけどよ

俺達やっていけるかな?」

 

ウェッジが不安そうに声を絞り出す。

 

「どういう事?」

「ヤミ・マスターやスシの暗黒卿達に勝てるかなって事だよ」

「・・・・・」

 

辺りのムードがシン・・・となる。

 

「馬鹿かよ」

「下らねぇ」

 

スキンヘッドのグリードと

もじゃもじゃドレッドヘアの大柄なゾーバがビール片手に悪態を吐く。

 

「・・・ごろつきが」

「へっ、 家柄が良い人は心配症だなぁ」

「ラルフ、 勝てる勝てないか問題じゃねぇよ、 やるだけだ」

 

ゾーバがビールを呑んで、 ピザを貪り食う。

 

「ボス、 どうぞ」

「おう」

 

グリードが酌をする。

 

「だが我々は未だに未熟だ」

「敵さんも未熟だ、 考えても見ろ、 スシブレードがこの世界に来てから

まだ半年も経っていない、 俺達がスシブレーダーになってからまだ二ヶ月も経っていないが

言い換えれば経験の差は左程無いと俺は考える、 そして時間は誰にも平等だ」

 

ビールを呑むゾーバ。

 

「こっちが修行すれば相手も修行して強くなる

ならば相手がまだ未熟な今の状況は悪い状況じゃねぇだろ」

「聡明ッス、 ボス」

「差が有るとすればスシブレード、 そして魂の差だろうが」

「流石ッス、 ボス」

 

グリードが合いの手を入れる。

 

「・・・ごろつきが」

「ごろつきはごろつきでも俺は腹を括ったごろつきだ

こっちは息子を殺されているんだ」

 

ゾーバは元々、 鶴帝国で幅を利かせるギャングだったが

とある事件が原因で捕まり、 闇のスシブレーダー達の手によって逃げ出す事に成功した。

しかしゾーバの息子、 ジャバが闇のスシブレーダー達に殺された事を知り

復讐の為にファウンデーション教国に身を寄せて一兵卒となっている。

グリードは鶴帝国のチンピラだった。

 

「つまり修行は無意味、 と?」

「無意味じゃない、 修行で差は埋まらないと俺は考える

相手も修行していたら差は変わらないだろう」

「ふむ・・・」

「つまり、 一生懸命に戦えば良いと言う事だね」

 

魚介ピザを食べるエミリー。

 

「うん、 おいしい」

「絵になるなぁ」

「映えるって奴だな」

「ナウいッス、 ボス」

「ふ、 これでもヤングな心は忘れていない」

(((((いやナウもヤングも古いだろう)))))

 

周囲の人々はそう思ったが口に出す野暮な事はしなかった。




登場したSCP
SCP-458 - はてしないピザボックス
http://scp-jp.wikidot.com/scp-458


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やみちゃん達の会議

ナウでヤングなゾーバがピザを食べている頃

ニーガタセンターではヤミ・マスター達が集まっていた。

 

そこにやって来たスシの暗黒卿、 やみちゃんとスシトルーパーのプリン。

 

「やみー!!」

「初めまして諸君、 君達の指揮をとるスシトルーパーのプリンだ」

 

ぷぷっ、 と噴き出すヤミ・マスターの鞘。

鞘は一見普通の男に見える地味な奴である。

 

「何か可笑しい事を入ったかね?」

「いや、 アンタガタイの良い良い歳の男がプリンって・・・ぷぷっ・・・」

「・・・可笑しいかね?」

「いえー、 そんな事は無いですねー」

 

ウェイトレス姿のヤミ・マスター、 ビアがにこやかに否定する。

 

「下らんな」

 

顔の下半分を包帯で隠した小柄なヤミ・マスター、 フォビドォン・フルーツが自重する。

 

「俺も甘党だがら可笑しいとは思わんな」

 

中年の小柄な禿のアリアリも否定する。

 

「え、 えーっと・・・良いと思います」

 

フレンドリー・ファイヤーの代わりに入ったマヨラーも否定する。

 

「・・・けっ、 ビアは同意してくれても良いんじゃねぇのか? 俺の娘だろうに」

「いえいえー、 結構甘い物好きな男の人って居ますよー」

 

にこにことビアが言う。

 

「・・・さて、 それでは今回のファウンデーション教国侵攻作戦について話そう」

 

プリンが資料を渡す。

 

「それぞれのヤミ・マスターにヤミ・アプレンティス

そしてソルジャースシ部隊を与える」

「なるほど、 妥当な作戦だと思うぞ」

「ちょっと過剰戦力じゃないかなー、 って思いますねー」

「上の言う事に従うのみ」

「へっ・・・」

「・・・・・」

 

一様の反応を見せるヤミ・マスター達。

 

「今回は敵にもスシブレーダーが居る」

 

ヤミ・マスター達は驚き、 目を見開いた。

 

「ど、 どういう事だ!? スシブレーダーは我々だけでは無いのか!?」

「裏切り者・・・か?」

「そう言う訳では無いらしい」

「ではスシが鹵獲されたー・・・という事でしょうかー・・・」

「詳細は不明だ、 だがこっちもヤミ・アプレンティスがやられている」

「・・・・・」

 

ごくり、 と生唾を飲むヤミ・マスター達。

常勝不敗だった自分達が敗北した、 その事実はとても大きかった。

 

「今回は私とやみちゃん様、 ヤミ・マスター4人とヤミ・アプレンティス1人が指揮を取り

その下に24人のヤミ・アプレンティスが付く事になる」

「24人とは中途半端な」

「マヨラーが格上げになったからな」

「ふぅん、 メンバーは如何なっている?」

「ポテト5兄弟、 ゴーカイ、 ハイボール、 ホット&コールドブラザーズ

コーラ、 ワラビー、 チキンライス、 五目、 タン

オニオン、 ガーリックシュリンプ、 カルパッチョ、 ガーリックマヨ、 カリフォルニア

タツタァーゲ、 トリニティ、 あがり、 白水、 黒霧島」

「凄い面子だな・・・」

「これなら相手がスシブレーダーでも勝てる・・・」

「油断は禁物だ、 君達には頑張って貰いたい」

「やみぃ・・・」

 

やみちゃんがゆらゆら揺れている。

 

「・・・・・やみちゃんが眠い様だ、 会議はここまでとする」

 

プリンがやみちゃんを抱えて去る。

 

「まるで娘を守る父親の様だな」

 

鞘が思う所が有るのか呟いた。



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マヨラーズ・タクティスク

ヤミ・マスター達の会議が終わり、 解散する一同。

自室に戻ろうとするマヨラーの前に二人のヤミ・アプレンティスが現れる。

 

「上手くやったじゃねぇのよぉ、 えぇマヨラーよ」

 

白い衣裳に身に纏った悪い目つきの男が睨みを効かせる。

 

「俺達の上になったからマヨラーさんかぁ? えぇおい」

 

頼みもしないのにさん付けをした赤いメッシュの男が下から睨みつける。

 

「ガーリックマヨとカリフォルニアか、 何の用だ?」

「俺達はお前が俺等の上に立つ事に納得いってねーんだわ」

「フレンドリーファイヤーの副官だぁ?

媚を売るのが一番上手いってだけだろ? えぇおい」

「つまり?」

「「その席には俺が座る、 お前は退けって事だよ」えぇおい」

 

スシを構える二人、 それぞれイカ天のガーリックマヨかけと

カリフォルニアロールを構えた。

 

「ふん」

 

マヨラーもスシを構える、 構えたスシは・・・

 

「あ? 何だそのスシは?」

「マヨコーンじゃねぇだと? 舐めてんのか? えぇおい」

 

白い軍艦!? これは一体・・・

 

「マヨネーズだ」

「何だと・・・」

「マヨネーズだけ・・・どういう事だ、 えぇおい」

 

狼狽する二人を後目に笑うマヨラー。

 

「何を戸惑う? スシは所詮道具、 ならばマヨコーン以外を使っても文句は有るまい」

 

闇寿司の理屈で言えばそうだが、 持ち寿司を変えるのは異様。

例えるならば昨日まで剣の名手だった男が急に斧を使い始める様な物。

マヨラーはフレンドリーファイヤー同様、 マヨコーン使いだった筈・・・

挑戦者二人は固唾を飲んだ。

 

「如何する? ここまで来て止めるなんて言わねぇよな」

「・・・落ち着けカリフォルニア、 マヨネーズ軍艦のポテンシャルは未知

マヨコーンよりも強かったとしても俺達二人なら取れる!!」

「そうだな、 マヨネーズだけなんて舐めた事しやがって

・・・後悔させてやるぞ、 えぇおい」

 

三人はスシを構え射出する!!

イカ天のガーリックマヨかけとカリフォルニアロールが着地し勢い良く回転する!!

そしてマヨネーズ軍艦はべしゃり、 と床にマヨネーズを散乱させて砕け散った。

 

「「!?」」

 

眼の前で起きた出来事に困惑する二人、 次の瞬間!!

 

「がっ!?」

 

吹き飛ばされるガーリックマヨ!!

マヨコーンの直撃を受けた!!

 

「な、 何!?」

 

カリフォルニアは驚愕しガーリックマヨに目線を映す。

 

「はっ!?」

 

カリフォルニアも歴戦の強者、 瞬時に理解した。

マヨラーが使ったマヨネーズ軍艦はフェイク!!

目線を集中させる為のデコイ!!

本命のマヨコーンを後で射出しダイレクトアタックをする事が狙いだったのだと!!

 

「く」

 

そしてマヨラーはマヨコーンの第二打を打とうとしている!!

放たれればガーリックマヨ同様にマヨコーンを打ち込まれ、 絶命!!

ならば如何する!? 地面のカリフォルニアロールでの対応、 間に合わない!!

第二打の射出、 言って遅れるかもしれないがこれにかける!!

瞬時に計算したカリフォルニアは二つ目のカリフォルニアロールを装填する。

 

「間に合えぇおい!!」

 

カリフォルニアが装填する間にマヨコーンが射出される!!

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

カリフォルニアロールも射出される!!

相打ちか!? 否!! マヨコーンの縦回転でコーンが散乱する!!

 

「ぐっぐううううううううううううううう!!」

 

飛びちったコーンがカリフォルニアの体に穴を開ける!!

何と言う事だ!! これは蓮の様だ!!

そして軍艦とカリフォルニアロールの激突!!

地面に落下!! だが勝敗は最早決した。

 

「くそ・・・」

 

カリフォルニアは地に伏した、 自身の勝ちの目は無くなったのである。

第三打のマヨコーンを回避する事も迎撃する事も不可能なのだった・・・

 

この激闘を見てマヨラーが強者だと思った読者は少なくないだろう。

だがマヨラーの実力とガーリックマヨ、 カリフォルニアの実力は拮抗していた。

しかしマヨラーの機転で集中を逸らされたのが彼等の敗因だったと言わざるを得ない。

敵味方区別しないフレンドリーファイアーの副官を自認していたとあって

マヨラーの状況判断は並ではなかったのだ!!



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ファウンデーション教国の会議

表向きは闇寿司に従っている旧シャリ王国の地方領主ベイルから

やみちゃんの進軍が始まった事がファウンデーション教国に通達が有った。

 

「さて、 それでは如何するか」

 

O5-1が部隊の隊長達を招集する。

当然バルトも来ている。

 

「今回の軍勢は以前の物よりも遥かに大軍勢らしいですな」

 

第一騎士団団長、 アクバーが特徴的なギョロ目を見張りながら言った。

 

「こちらにもスシブレーダーは居る、 何も問題は有りません」

 

魔導師団団長、 モスマは自身の母親の頭蓋から作ったアイマスクを磨いていた。

 

「大魔導と言われたモスマ殿とは思えない程楽観的な発言ですなぁ」

 

第二騎士団団長、 ボースクは顎鬚をさすりながら言った。

 

「ダークネスシ帝国はスシブレーダーを過剰評価している

故に奴等の兵隊は全てスシブレーダーだ、 これは兵種のバランスに欠く愚行と言える」

「ならば、 スシブレーダーを組み込んだ戦術を考案しなければならない

という訳だな、 バルト君、 君とも話し合わなければ無いだろう」

「は、 はい!!」

「緊張し過ぎよ、 もっとリラックスして」

 

弓兵団長のエルフのマリアムが青いポニーテールを揺らしてバルトを宥める。

 

「工兵部隊は如何動くかね?」

 

工兵部隊隊長カッソーは黒い顔から尋ねた。

 

「フレキシブルに動こう」

 

救護部隊隊長クレニックはやせ細り悪い顔色で決意する。

 

「・・・・・・・」

 

寡黙な第三騎士団団長チャルマンは沈黙していた。

 

「チャルマン、 眠っていないか?」

「起きています、 O5-1・・・ただ、 自分はこういう軍議はからっきしで・・・

前線に出るタイプなのです・・・指揮は副隊長にお任せします・・・」

「なんだかなぁ・・・」

「給料分は働きます」

「傭兵かよwww」

 

傭兵部隊隊長のナヴィックがへらへらして言う。

 

「それはお前だ、 兎も角まず決めるのは打って出るか迎え撃つかですが」

「それは迎え撃つに行くだろ」

 

ホークスが自信満々に言う。

 

「ボークス団長、 それは無いでしょう」

「何故だアクバー団長」

「だってここで攻め込むのは幾ら何でも早過ぎる

ダークネスシ帝国の連中は『一体何処から情報を入手した?』『もしや内通者が?』

と疑心暗鬼になり、 ベイル殿の身が危険になる」

「だがこのままと言うのもどうかと思うぞ?」

「折衷案としてサンシャイン王国に入って暫くしたら出撃、 という形にするのは如何だろうか

これならばベイル殿の身も安全だろう、 サンシャイン王国の誰かが通報したと言う事になるし」

「ではそうしましょうかO5-1」

「うむ」

 

画してスシブレーダーを初めて部隊運用戦略に組み込んだ戦い。

通称ジーオノシスの戦いの火蓋が切って落とされたのだった。



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接敵

会議から暫く後に進軍したファウンデーション教国軍は

サンシャイン王国のジーオノシス平原に陣を展開した

彼の草原はファウンデーション教国からやや近く陣を展開するには丁度良い場所であった。

 

「待ち伏せ、 されているな」

 

ヤミ・マスターの一人、 アリアリがファウンデーション軍を見る。

 

「プリンの旦那、 どうするね?」

「敵の数は?」

「大体1万行くか如何かって所だな」

「こっちの数は2万以上、 倍以上ある上に全てがスシブレーダー

恐れる事は無い、 進もう」

 

鞘が進言する。

 

「しかし敵も無策では有るまい」

「倍の数を打ち破る策が有ると?」

「有ると考えるべきだろう」

「聊か慎重になり過ぎじゃねぇですか? 俺が部隊を率いて一当てしてきましょう」

「親方の軍勢を無駄にするな、 不用意に戦うな」

「だがしかし眼前の敵を放置するのは如何かと思うぞ」

 

ヤミ・マスター達が言い合いを始める。

 

「ふぅ・・・付き合い切れん」

 

マヨラーが本陣から離れる。

 

「マヨラー様、 如何いたしましょう」

 

ソルジャースシが尋ねる。

 

「出番を欲しがってうずうずしているタンに先陣を切らせろ」

「よろしいので? まだ会議中の様ですが・・・」

「構わん、 どうせ会議中に独断専行で誰かが行くだろうさ」

「かしこ参りました」

 

ソルジャースシが去っていく。

 

「さて・・・ファウンデーションは如何来るつもりなのか見せて貰おうか・・・」

 

 

 

一方その頃、 ファウンデーション軍は

 

「おい、 これで大丈夫なのか?」

「ここまで来てビビってんじゃねぇよ」

 

重厚な盾と鎧に身を包んだ第一騎士団団員達が声を上げている。

 

「アンタ等もしっかりやってくれよな」

「分かっている!!」

 

そのすぐ後ろにはスシブレーダー部隊が、 今回の作戦はこうである

敵のソルジャースシのスシブレーダーを盾でガードしスシブレードで迎撃する。

そういう作戦なのだ。

 

「相手の数は多い、 武者震いが止まらんな」

「怯えてるんじゃねぇのか?」

「はは・・・」

 

騎士団達が減らず口を叩く。

 

「・・・・・」

 

スシブレーダー達は緊張している。

 

「おいおい、 お前達大丈夫か?」

「初めての実戦なんです・・・」

「そうか、 ならばこう胸に刻み込め

『俺達が闇の中で戦う事で無辜の人々が光の中で暮らせる』

俺達は一般兵だ、 何かの劇ならモブキャラも良い所だろうさ

だけどよ、 俺達が戦う事で人々を救えるんだ、 こんなに誇らしい事は無いだろう?」

「!!」

 

スシブレーダー達の迷いが消えた!!

 

「騎士さん、 アンタ、 名前は」

「メラーズだ、 アンタは?」

「俺はヴォレル、 生き残ったら奢らせてくれ」

「そういう事を言うと死亡フラグだぜ」

「俺達みたいなモブキャラは死亡フラグは立ちっぱなしだ!!」



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開戦

「タン様、 出撃せよと命令が」

「関係ねぇよ、 もうそろそろ行こうと思ってた所だ」

 

ソルジャースシがヤミ・アプレンティスのタンに命令を伝えに来た時

タンは長い舌で自身の顔を舐め回しながら笑っていた。

 

「ひひひ、 それじゃあ行くぜぇお前等!!」

 

タンは先陣を切りながらソルジャースシを引き連れてファウンデーション教国の元に殺到した

その数、 およそ1000、 相手は1万だと言うのに突っ込んでいくのは

無謀と考える者も居るだろうか。

否、 闇のスシブレーダーはこう考える。

 

「あ!! タンの野郎!! 勝手に出てやがるじゃねぇか!! 抜け駆けは許さん!!」

「俺の功績!! 俺の功績!! 俺の功績!!」

「ん~、 何か皆行っているね、こっちも行こうか」

「ここはチキンライスの出番か!!」

「・・・・・ここは私が出る・・・」

 

次々と功を焦ったヤミ・アプレンティス達がソルジャースシを引き連れて前に出る。

そしてあれよあれよと言う間に6000まで数を増やすのだった。

 

「スシブレードをはなてぇ!!」

 

走りながら絶叫するタン。

ソルジャースシ達はスシを放つ、 カルビ、 ウィンナーと言った

ソルジャースシの定番ネタである。

 

「来たか!!」

 

ファウンデーション教国は作戦通りに騎士達がスシブレードを盾で防いだ。

ウィンナー射出攻撃もあったが

ウィンナーの威力を計算して盾を作って有るので問題は無い。

 

「くっ、 今だ!!」

「「「3、 2、 1、 へいらっしゃい!!」」」

 

掛け声と共に射出されるスシブレード。

色とりどりのスシブレードがカルビやウィンナーに襲い掛かる!!

盾に一度激突したスシブレードは勢いが落ちていた為

あっさりと破壊される!!

そして爆発するソルジャースシ達!!

ソルジャースシの爆発に巻き込まれ誘爆するソルジャースシ!!

 

「くっっそお!! どおりやぁ!!」

 

タンがスシブレードを射出する!! タンが射出するのは

己の闇寿司としての号と同じく牛タンである。

カルビよりもディフェンシブなスシブレードな特徴を持つ。

攻撃力はカルビに劣るがカルビよりも薄い、 つまり相手の下に潜り込む事が容易!!

タンが騎士の盾の下に挿入されて盾をカチ上げる!!

 

「今だ!! 穴に雪崩れ込め!!」

 

うおおおおおおおおおおおお!! とスシブレードが盾をカチ上げられた騎士達に殺到する!!

しかし第一騎士団は即座に穴を埋める!! 盾をカチ上げられた騎士の右隣りの騎士が

護る様に盾をズラす、 そして更にその右隣りの騎士が盾をズラして盾をズラした騎士を守り

その隣の騎士が・・・とスムーズに穴は塞がれた。

そして背後に構えるスシブレーダー達が順調にソルジャースシのスシブレードを打ち砕く。

 

「くっ!!」

 

タンは狼狽していた。

こんな筈ではなかった。

今までならばこんな事にはなっていなかった。

スシブレードを戦略に組み込んだ戦略は見事に大当たりしたと言う事だった。

 

「おい、 タンよぉ勝手に出張ってやられかかってんじゃん、 ゲラゲラ」

「この馬鹿!! この馬鹿!! この馬鹿!!」

 

いや、 寧ろ結束力の差なのだろうか。

打ち破られても穴をカバーする騎士達と

仲間の失敗を嘲笑う闇寿司、 この差はダンチである。



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混乱する前線

やみちゃんが発した冷気が戦場を包んだ!!

当然ながら全員大混乱に陥った!!

ファウンデーション教国は意味が分からずに混乱し

ダークネスシ帝国は意味が分かって混乱した。

 

「この」「冷気は」「・・・」「やみちゃん」「か!!」

 

前線で戦っていたポテト5兄弟が狼狽える。

圧倒的冷気、 つまりやみちゃんがスシブレードを使ったと言う事

それ即ち本陣への攻撃を意味する!!

 

「これは不味いかもしれませんねー、 本陣に戻りましょうお義父様ー」

「はぁ・・・はぁ・・・折角本陣からここまでやっと来たと言うのに戻るのか!?」

 

ビアの言葉に肩で息をしながら鞘が叫ぶ。

 

「仕方ありませんよー、 本陣に敵が来たのならばこれは一大事ですからー」

「だからと言って・・・」

「さぁ戻りますよー」

 

ビアが本陣に向かって走る。

 

「あぁ!! もう!!」

 

鞘が走って戻る。

 

「タン様、 我々も戻りますか?」

 

ソルジャースシがタンに尋ねる。

 

「あ、 あぁ、 ここは戻って加勢した方が手柄に・・・」

「来た!! 来た!! 来た!!」

「は?」

 

本陣に戻るヤミ・アプレンティスを見て

一気に戦線を押し上げて来るファウンデーション教国軍!!

 

「ちぃ!! 奴等これを待っていたのか!!」

 

ファウンデーション教国の狙いはこれである。

戦線で膠着状態を作り出した後に本陣に向かって

バルト達とゾーバ達の2グループを迂回させて襲撃させる。

本陣が襲撃し混乱した所で戦線を押し上げるのだ。

それまでは盾で防御しながらスシブレーダー達で応戦すると言う手筈。

しかし攻撃に転じたファウンデーション教国の攻撃は激しい。

攻撃魔法や矢が雨の様にダークネスシ帝国軍に降り注ぐ!!

 

「舐」「め」「る」「な」「ぁ!!」

 

ポテト5兄弟が大量のフライドポテトを空に向けて

射出する事で空から降り注ぐ攻撃魔法と矢を相殺している!!

 

「良し!! 今の内に本陣に下がるぞ!!」

「いや、 ここは前進して敵を打っ殺して後腐れ無くしてからの方が良いんじゃないか!?」

「何をぉ!?」

 

揉め事を始めるヤミ・アプレンティス達。

現場指揮官の不在が嘆かれる。

そもそも闇寿司で上位に存在するのは実力が無ければ不可能である。

生半可な者が上に立てば下剋上されるからである。

 

「うー!! うー!! うー!!」

 

コーラが思い悩む。

 

「めんどくせぇ!!

敵が眼の前に居るならぶっ殺せば良いじゃねぇか!!

俺に続けぇ!!」

 

チキンライスがソルジャースシ達を引き連れて特攻をする。

 

「ここは引くべき!!」

「いや戦おう!!」

「・・・・・難しい」

 

酒類三人衆は言い争いをしていた。

前線は混乱していた。



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本陣の緊張

「何だと!?

白水、 ゴーカイ、 チキンライス、 タン、 コーラ、 黒霧島が

勝手に兵を引き連れて突撃したと!?」

 

本陣で激怒するプリン。

 

「しかし彼等の突撃も仕方ありますまい

プリン殿の決断の遅さも問題なのでは?」

 

ぎろっ、 と発言した鞘を睨むプリン。

 

「ひっ」

 

腰を抜かす鞘。

 

「しかも敵の策略に嵌った様で此方は多くのソルジャースシを失ったと」

「何という事だ・・・」

「ソルジャースシ」「程度」「幾ら」「居なくなっても」「問題無いだろう」

 

雁首を並べてやって来たポテト5兄弟。

 

「何しに来た?」

「我々」「兄弟が」「戦線を」「覆して」「来ます」

「出来るのか?」

「闇寿司が」「この程度だと」「思われる」「のには」「我慢なりません」

「良いだろう、 行って来い」

「「「「「はっ」」」」」

 

ポテト5兄弟は本陣から去った。

 

「彼等だけでは心配ですねー、 私達も行きましょうお義父様ー」

「え・・・」

 

チラリとプリンを見る鞘。

 

「行って来れば?」

「し、 しかしいきなり私が前線に出るのは兵達が混乱を・・・」

「ここに居て何か建設的な意見をお前は出したか?」

「い、 行って来ますー!!」

 

ビアと鞘も本陣から去る。

 

「戦力の逐次投入は愚の骨頂

私も残りのヤミ・アプレンティスを率いて出撃しましょう」

 

マヨラーは提案した。

 

「オニオン、 ガーリックシュリンプ、 カルパッチョの部隊を任そう

激突している前線を回り込んで側面から攻めろ」

「じゃあ俺が残りの連中を率いてもう一方の側面から攻めろって事ですかい?」

「いや」

 

アリアリは訝し気に見る。

 

「残りは待機して本陣を守れ」

「幾ら何でもビビり過ぎじゃないですかい?」

「・・・・・」

「何を恐れているんで?」

「・・・・・」

 

アリアリの挑発とも取れる問いに沈黙するプリン。

 

「悪いっすけど、 アンタはスシトルーパーと言えども

俺達と同じヤミ・マスター階級、 納得の行く説明が欲しいですね」

「同じだぁ?」

 

フォビドゥン・フルーツが吐き捨てる。

 

「俺もヤミ・マスターだがお前と同格だとは思われたくないなぁアリアリ」

「ふん、 アンタは出ないのか?」

「雑魚を何百殺してもつまらん、 俺は強敵が出て来たら勝手に行かせて貰おう

それで良いよな、 プリン」

「構わない」

「話が分かるな」

「プリン、 俺も出撃を」

「・・・・・お前は私と共にここの守備だ、 文句は言わせない」

「しかし」

「くどい、 これ以上言うのなら・・・」

 

プリンは己のスシブレード、 プリンを取り出す。

 

「・・・・・分かったよ」

 

流石にプリンと戦って勝つ自信はアリアリには無い。

 

「だがしかし余りにも防御的な戦術だな

負けたらただじゃすまないぞ」

「負けはない、 やみちゃん様が居るのだから」

「やみー」

 

本陣の奥でやみちゃんが無邪気に言った。



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酒戦線

衝突しながらもソルジャースシのスシを砕き

次々とソルジャースシを爆発させていくスシブレーダー達。

 

戦局は此方が有利か、 と思われたが

ヤミ・アプレンティス達の攻撃で徐々に押され始めたファウンデーション軍。

 

「ぐ、 ぐ・・・」

「お、 おい!! しっかりしろよ!!」

 

ふらつく騎士達、 無理も無い、 攻撃に参加したヤミ・アプレンティスの中

白水、 ゴーカイ、 チキンライス、 タン、 コーラ、 黒霧島

この内、 白水、 ゴーカイ、 黒霧島の扱うネタにはアルコールが含まれていた。

騎士達はスシブレードの激突により多量のアルコールを摂取させられて酩酊状態になりつつあった!!

 

「よっしゃあ!! 最初は怪しかったがこのまま押し切れぇ!!」

 

うおおおおおおおおお!! とスシブレードを放つソルジャースシ達。

 

「くっ・・・不味いな・・・」

 

盾を構える騎士達に脂汗がにじむ。

 

「押せ!! 押せ!! 押せ!!」

「・・・たわいのない・・・」

 

ヤミ・アプレンティス達が勝ち誇る。

白水、 ゴーカイ、 黒霧島は各々のネタを装填し発射する。

彼等のスシネタは酒、 つまりはアルコールである。

それぞれ違いは有るがアルコール分で相手を酩酊状態にさせるのが彼等の常套手段。

デバフと言う物だろうか、 しかもアルコールは液体なので器に入れる必要が有る。

故に通常のスシブレードよりも固くなり、 強さも並のスシブレードの比では無い。

しかし弱点として中身が零れると一気に無力化されるピーキーなネタでも有る。

並のスシブレーダーならば回転させただけで中身を零してしまう。

ヤミ・アプレンティスの位に上り詰めた彼等彼女等にとって液体を回すのは容易い。

とは言え平らな面なら兎も角、 地面の上を走らせるのは彼女達にとっても骨が折れる。

スピードはやや遅めである。

 

「・・・・・恐らく次の我々の衝突で・・・完全に酔い潰れる・・・・・・」

 

黒霧島は黒い長髪でクールに振舞いながらも笑みを押さえられない。

 

「ふぅー!! ははは!! これはデカイ手柄だぜ!!」

「ん~、 お手柄だぁ」

 

ゴーカイも豪笑を上げ白水も満足気である。

しかし!! 回転していた三種の酒類が注がれたスシブレードが突如として横転した!!

 

「何!?」

「ん~?」

「・・・・・何が起こった・・・・・」

「おいおい、 しっかり回せよなぁ」

「この下手糞!! 下手糞!! 下手糞!!」

 

困惑するヤミ・アプレンティス、 しかし彼等はソルジャースシとは違い

スシに回されているのではなくスシを回す側の人間、 即座に次のスシブレードを装填し放った!!

しかし再度倒れる。

 

「な、 なにぃ・・・」

「・・・・・何かされてるな・・・・・」

 

黒霧島が割れた自身のスシブレードのグラスを見る。

グラスの外には魚卵が!!

 

「・・・なるほど・・・こいつか・・・」

 

ウェッジのイクラリオンだ!!

ウェッジはイクラを射出してアルコール類スシを転倒させたのだ!!

 

「しかし・・・これはやや不味いな・・・」

「うぐ・・・酔って来た・・・」

 

酒スシが倒さればら撒かれた事で闇寿司側も酩酊が始まった!!

アルコールを少し摂取したからと言って酔いは回らないだろうと読者諸賢はお思いだろう!!

だがしかしただのアルコールでは無く、 ヤミ・アプレンティスのスシブレードなのだ!!

闇寿司の闇のパワーがスシブレードの中に混入し酩酊しやすくなっているのだ!!

これで状況はイーブンになったか!!

読者諸賢はそう思いたいだろう!!

だが現実は非情である!!

 

「こ」「の」「程」「度」「か」



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ポテト5兄弟

「ポ、 ポテト5兄弟・・・」

 

黒霧島が呟きを漏らす。

ポテト5兄弟、 フライドポテトを使うヤミ・アプレンティスである。

五つ子である彼等は息もぴったり喋るのも5人で1人分と言う念の入れようである。

仲が良い五つ子だが彼等の食べ物の好みは微妙に差異がある。

特にフライドポテトの形状には各々拘りが有り

各々が使うスシブレードとしてのフライドポテトの形状も異なっている。

そしてその破壊力は5人でヤミ・マスターと同等になる!!

 

「で」「は」「い」「く」「ぞ」

 

ポテト5兄弟がスシブレードを射出する。

先述の通り彼等のスシブレードはフライドポテト。

形状は各々異なり微妙に差異は有るが器に盛られているのは変わらない。

そしてフライドポテトをばら撒いて攻撃するのだ。

その破壊力は先述の通りヤミ・マスターと同等!!

 

「ぐわあああああああああああああ!!」

 

盾を構えた一人が吹き飛ばされる!!

フライドポテトの集中砲火を喰らい盾を貫通され腹部にフライドポテトが深々と突き刺さっている!!

 

「な、 こ、 これほどの破壊力だと・・・」

「呆けているな!! カバーしろ!!」

「は、 はい!!」

 

抜けた穴をカバーする騎士達。

 

「ぐ・・・ぐ・・・」

「しっかりしろ!!」

 

フライドポテトが刺さった騎士を救護班が治療する。

魔法が存在するこの世界では魔法による治療も行われているが

今回の様にフライドポテトの様な異物が突き刺さっている場合

摘出しなければならない、 それ故に外科的な医療も行われているのだ!!

 

「・・・・・・・・・・」

 

黒霧島は戦線を見る。

 

「見たか」「無能共」「勝手な事をして」「戦線を」「乱しおって」

 

ポテト5兄弟が悪態を吐く。

 

「ポテト達、 何か妙じゃ無いか?」

「な」「に」「が」「だ」「よ」

「・・・・・連中は一向に攻めて来ない、 ただ対処をしているだけだ

・・・・・戦線を押して来ようとしていない」

「我々に」「恐れを」「なして」「いるの」「では?」

「・・・・・だと良いのだが・・・・・」

「酔ってダウナーになってるだけじゃね黒霧島、 水でも飲めよ」

 

ゴーカイが水筒を手渡す。

 

「・・・・・これ、 酒だぞ」

「ひっかからなかったかぁ」

 

けらけらと笑うゴーカイ。

 

「全く・・・」

 

ぽいと水稲を投げ捨てる黒霧島。

 

「しかし俺達ヤミ・アプレンティスの前には連中も歯が立たない様だな

気の利いた奴は居ないと見える」

「それも仕方のない事だ」

「だがこれでは俺のチキンライスが鈍るぜ!!」

 

チキンライスが腕組みをしながら笑う。

 

「後は」「我々に」「任せて」「見て」「居ろ」

 

ポテト5兄弟が攻撃を再開する。



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迂回、接敵、衝突

オニオン、 ガーリックシュリンプ、 カルパッチョを引き連れてマヨラーが

前線から回り込んで側面に移動していた。

 

「緊張しますね・・・」

 

オニオンが不安そうに声を上げる。

彼女はまだ年若い少女である。

 

「ほーほっほ!! 落ち着きなさいオニオンちゃん!! 自信を持つのよ!!」

 

ガーリックシュリンプは縦ロールを揺らしながら高笑いする。

 

「がーちゃん、 静かにしてばれるよ」

 

カルパッチョが冷静に窘める。

 

「何で女の子ばかりなんだ・・・」

 

マヨラーは頭を抱える、 彼に付き従うヤミ・アプレンティスは全員女性である。

人選に特に意味は無い。

 

「安心して、 ここで生きて帰ってネビットとうひひひ」

 

カルパッチョが端正な顔を歪めながら笑う。

 

「誰だよネビットって」

「彼女です」

「彼女・・・お前そっちの趣味か」

「いやネビットは素晴らしい女性なんですよ、 もう皆メロメロで」

 

カルパッチョが自分の恋人の事を自慢げに話す。

 

「おいおい、 あんまりそういう妄想は後で・・・」

 

そんな無駄話をしている彼等の元に寿司が襲う!!

形状からして海苔巻きだ!!

 

「!?」

「なっ!?」

「馬鹿な!!」

「くっ!!」

 

後ろを向いていたマヨラーは対処出来ずにスシに激突!!

バランスが崩され転倒した所に脳天にスシが!!

そのままマヨラーは昏倒した!!

ガーリックシュリンプは自身のスシブレード、 ガーリックシュリンプを射出して

海苔巻きを弾き飛ばす!!

 

「・・・どうやら同じ事を考えていた様だな・・・」

 

スシを放ったのはファウンデーション側のスシブレーダー!!

ラルフ!! グリード!! ゾーバの三人だった!!

グリードは弾き飛ばされた海苔巻きをキャッチする!!

 

「前線をぶつかり合わせている間に回り込んで本陣に攻め込む・・・

人類皆兄弟だな、 考える事は一緒だ」

 

ラルフがスシを構える。

 

「ふっ、 礼を言うぞ!!」

 

カルパッチョがスシを構える、 彼女が構えるのは玉ねぎにソースがかけられたハム

俗に言うカルパッチョ寿司だ!!

 

「マヨラーが倒れたならばこのまま進めば私の手柄になる!!」

「捕らぬ狸の皮算用と言う奴だな」

 

ゾーバがスシを構える。

彼のスシブレード【ファットプラネッツ】は太巻き!!

しかも切っていない上にかなり大きい

 

「で、 でかい・・・」

 

闇寿司から見てもその形状は異様!!

 

「・・・・・」

 

オニオンは空中に鏑矢を撃った!! しかも二本!!

大きな音が周囲に鳴り響く!!

 

「オニオン!! 救援は早い!!」

「救援の合図か・・・なら速攻で行くぞ、 二人共、 気を抜くな」

「OKボス!!」

 

スシを構え射出し合うスシブレーダー達。

 

「3, 2, 1, へいらっしゃい!!」

 

ラルフが掛け声の後にスシブレードを射出する。

 

「掛け声しないのか二人共」

「時間の無駄」

「そうだ」

 

ラルフは少ししょんぼりした。



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協力し合う者、協力出来ない者

マヨラーが倒れた事により3VS3の構図になったスシブレーダー達

と読者諸賢は思うだろう。

 

「まずはあの縦ロールの奴からだ!!」

「OKボス!!」

「分かった」

「わたくしですの!?」

 

ガーリックシュリンプに一斉攻撃を仕掛けるゾーバ達。

ガーリックシュリンプはその名の通りガーリックシュリンプを使う闇スシブレーダー。

ガーリックシュリンプとは海老をたっぷりのガーリック

そしてオイルと一緒に炒めた料理である、 それが器に盛られている

これがスシブレードとしてのガーリックシュリンプである。

海老を射出して相手にダメージを与えるタイプのスシだが

3VS1では分が悪過ぎる!! ならばオニオンとカルパッチョも助けに入れば良い

懸命なる読者諸君ならばそう思うだろうが・・・

 

「・・・・・」

「くっ、 ガーリックシュリンプさん、 今助けます!!」

 

オニオンが自身のスシブレード、 オニオンのせサーモンを飛ばす。

しかしガーリックシュリンプと激突する。

カルパッチョに関しては我関せずの立場である。

 

「ちょっと!! オニオンちゃん!!」

「わ、 ご、 ごめんなさい!!」

「止めておきなよ」

 

カルパッチョはスシブレードを回収し身を翻して後退する。

 

「ちょ、 ちょっとカルパッチョ!? 何処行くんですの!?」

「相手は複数で一つのスシブレードを叩く戦術で来ている

きっと互いに邪魔をしあわない訓練をしているんでしょうね

一方私達はそんな訓練をしていないから互いの邪魔になる

ならば一人ずつ戦えば良いがそれでは負ける

ならばガーリックシュリンプさんが戦っている間に私は逃げるよ」

「なぁっ!? ふざけないでくださいまし!!」

「え・・・えっと・・・」

 

ガーリックシュリンプは激昂しオニオンは戸惑う。

カルパッチョはすぐさま逃げる。

 

「お、 御待ちなさい!!」

「何処を見ている!!」

 

ガーリックシュリンプ達が内輪揉めをしている間に

ファットプラネッツがガーリックシュリンプに激突し撃破する。

 

「ひ、 ひぃ!!」

 

オニオンもガーリックシュリンプを見捨てて逃げる。

 

「こ、 こんのぉ!!」

 

ガーリックシュリンプは二発目のガーリックシュリンプを放とうとしているが

二度目を許すほど彼等は優しくない、 スシブレードを打ち込まれて倒れるのだった。

 

「二人・・・逃げましたね、 如何しますボス?」

 

グリードがゾーバに尋ねる。

 

「作戦通りに本陣まで進むぞ、 連中は無視だ無視」

「良いんですか?」

「さっさと敵の本陣に行かねぇと遅れちまうだろうが」

「それもそうですね」



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食べ物の禁忌を破る者

少し時間は前後してやみちゃんが居る敵本陣。

鏑矢の音が鳴り響く。

 

「むっ、 この音は?」

「やみー」

 

プリンが眉を顰める。

 

「オニオンの鏑矢の音だな、 如何する?」

「俺が行こう、 暇だしな」

 

フォビドゥン・フルーツが立ち上がる。

 

「良いのか?」

「構わん、 ヤミ・マスターの力を見せつけてやるよ」

 

フォビドゥン・フルーツがメロンを取り出した。

彼の自家農園で造りだしたメロンだ!!

 

「おい、 何故ここでメロンを取り出した?」

「何だ、 俺の技を知らないのか?」

 

フォビドゥン・フルーツはプリンとは別方向にメロンを射出した。

メロンは縦回転しながら直進する。

 

「・・・・・何をするつもりだ?」

「こうするのよ」

 

ぴょんとメロンに飛び乗るフォビドゥン・フルーツ!!

スシブレードは食べ物、 その食べ物を踏みつけるとは何という暴挙!!

これがパンだったら間違いなく地獄に堕ちる所業である!!

常人が回転するメロンの上に飛び乗れば転げ落ちる!!

だがしかし!! フォビドゥン・フルーツはヤミ・マスター!!

フォビドゥン・フルーツから供給される闇のパワーによってメロンの回転は増し

フォビドゥン・フルーツを乗せたまま超高速で走り出したのである!!

その様はまるでバイクだ!!

 

「じゃあ行って来るぞ!!」

 

本陣からフォビドゥン・フルーツが出発する。

鏑矢の音がした方向に向かうと逃げて来たオニオンとカルパッチョの姿が有った。

 

「むっ、 お前達、 如何した?」

 

回転を維持したままフォビドゥン・フルーツが停止する。

 

「フォビドゥン・フルーツ様!! 実は強力なスシブレーダー達の部隊と出くわしてしまい

マヨラーとガーリック・シュリンプが撃破されてしまいました!!」

 

カルパッチョが勢い良く説明する。

 

「敵の数は?」

「三人です!! 敵の一人は物凄い大きい海苔巻きを使いました!!」

「そうか、 それで何故お前達は逃げているんだ?」

「敵は3人がかりで1人を攻撃してきました!!

連携の訓練を積んでいると見て我々では不利だと判断して逃げました!!」

「そうか、 中々楽しめそうだな・・・」

 

フォビドゥン・フルーツはにやりと笑った。

 

「じゃあお前達を始末してさっさと行くか」

「え?」

 

フォビドゥン・フルーツは剣を抜いて

超高速でメロンを起動させ一気にオニオンとカルパッチョの首を刎ね飛ばした!!

 

「な、 何故・・・」

 

カルパッチョが死ぬ前に言の葉を紡ぐ。

 

「なぁに肩慣らしだ、 最近は人の首を刎ね飛ばしていないからな」

「そ、 そんな・・・ね・・・びっと・・・」

 

恋人の名前を呟きカルパッチョは息絶えた。

 

「それでは行こうか!!」

 

フォビドゥン・フルーツはゾーバ達の所に向かった。



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ゾーバVSフォビドゥン・フルーツ

ゾーバ達が本陣に向かって進む、 すると眼の前からメロンに乗ったフォビドゥン・フルーツ!!

 

「来たぞ!!」

 

スシを放つゾーバ達!!

メロンの圧倒的な質量の前では並のスシでは勝てない!!

しかしゾーバのファットプラネッツは並のスシでは無い!! 太巻きなのだ!!

しかもかなり大きい!!

メロンは回転軸が崩れフォビドゥン・フルーツはメロンから飛び降りた!!

 

「やる!!」

 

グリードの涙巻きのワサビジュピター

雲丹軍艦のシーエーチンがフォビドゥン・フルーツに襲い掛かる!!

しかし二個目のメロンを懐から取り出したフォビドゥン・フルーツがメロンを放つ!!

 

「二人共先に行け!!」

 

ゾーバが叫ぶ!!

 

「し、 しかし!!」

「お前達のスシブレードでは勝ち目が無い!! ここは俺に任せろ!!」

「・・・・・分かった行こうグリード」

「ラルフの旦那!!」

 

グリードを掴むラルフ。

 

「ゾーバさん、 後で追って来て下さいよ」

「あぁ」

「~~~っ!! ボス!! 勝って下さいよ!!」

 

グリードとラルフは走って行った。

 

「話は済んだか? ゾーバさん」

 

フォビドゥン・フルーツは律儀に待っていた。

 

「・・・俺の事を知っているのか?」

「一応は裏社会に居たからな、 とは行っても末端だったが」

「そうか、 なら俺に勝てないと分かるな」

「それはやってみないと分からない、 わくわくするなぁ」

「ワクワク?」

「強い奴と戦うってワクワクして来ないか?」

「・・・分からんね」

「ロマンの無い奴だ、 なっ!!」

 

射出したメロンに飛び乗り急加速し、 剣で斬りかかるフォビドゥン・フルーツ!!

しかしゾーバはブリッジをして回避した!!

 

「やるっ!!」

「・・・・・」

 

ゾーバのファットプラネッツがメロンを追いかける!!

しかし闇のパワーで増した回転の速さに追い付けない!!

 

「何という速さだ・・・さっきの連中とは格が違う様だな・・・

ヤミ・マスターって奴か」

「その通り!! ヤミ・マスターのフォビドゥン・フルーツの技の冴え良く見るが良い!!」

「スシブレーダーなのに剣を使うのか? スシブレーダーとしては如何なんだ?」

「はっ!! 勝てれば良いんだよ勝てれば!!」

 

闇寿司らしい考え方である。

 

「アンタのスシはでかくてパワーが有るが俺のメロンもパワーは有るし

スピードは段違いに速い!! さぁ如何するね!!」

「舐めるな小僧こんなの修羅場の内にも入らんわ」

 

相手は自分よりも遥かに速い、 だがしかしゾーバにとってみれば

そんな事は日常茶飯事、 自分の巨体で相手よりも先手を取れる事は稀である。

寧ろ奇襲で相手が先手を取られてからがゾーバの常であった。

ならば寧ろこの状況、 余裕の部類に入る。

 

「言うね!!」

 

フォビドゥン・フルーツは再度剣で襲い掛かる!!

ゾーバはファットプラネットを手元に戻した!!

 

「なるほど、 読めたぜ!!」

 

フォビドゥン・フルーツは自分がゾーバに近付いたと

共にスシブレードを射出するのだろうと思い至った。

 

「ならば近づかなければ良い!!」

 

フォビドゥン・フルーツは剣を仕舞ってナイフを投げた!!

ゾーバは腕でガードしてナイフを受け止めた!!

 

「むっ、 防刃か・・・」

 

ゾーバ手製の鎖帷子である。

ゾーバは落ちたナイフを拾った。

 

「ナイフで攻撃か!? このメロンのスピードに追い付けるか!?」

 

メロンの高速機動、 これを目で捉えるのは困難である!!

 

「さぁ如何するよ!?」

「・・・・・」

 

ゾーバはスシを射出した。

 

「あん? アンタのスシは俺のメロンよりも・・・」

 

フォビドゥン・フルーツが言い終える前にメロンにスシが激突した!!

 

「なっ、 なにっ!?」

 

フォビドゥン・フルーツはバランスを崩して転倒した!!

 

「な、 何故・・・!?」

 

メロンと激突したゾーバのスシブレードを見てフォビドゥン・フルーツは全てを理解した。

メロンに激突していたゾーバのスシブレード、 ファットプラネッツは

切り分けられていた!! 先程のナイフで自身のスシブレードを切っていたのだ!!

太巻きは切り分ける物!! 実に理に適った戦術である!!

 

「く、 くそ・・・」

 

立ち上がるフォビドゥン・フルーツ、 しかしゾーバはその隙を見逃さない

切り残したファットプラネッツを射出する!!

だがしかしフォビドゥン・フルーツはヤミ・マスター!!

ただでは死なぬ!! フォビドゥン・フルーツは闇のパワーでメロンを動かし引き寄せて

ファットプラネッツに衝突させて自身への攻撃を防いだのだ!!

 

「っ・・・」

 

立ち上がるフォビドゥン・フルーツ。

しかし闇のパワーを使い過ぎたのか動きに精彩が欠ける。

果たしてこの勝負、 どちらに軍配が上がるのか!?



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本陣強襲!!

アリアリとプリンが本陣で待ち構える。

プリンにやみちゃんがじゃれつく。

 

「・・・・・」

 

アリアリがその光景をまじまじと眺めている。

 

「何だ?」

「いや・・・こうしてみるとスシの暗黒卿とは思えないなと思って・・・」

「こう見えてもやみちゃんは相当強い、 侮るな」

「やみー!!」

「如何しました?」

「やみー!! やみー!!」

「・・・・・何て言ってんだ?」

「何を言っているんだ、 やみーとしか言っていないだろう」

「やみぃ・・・」

 

しょんぼりするやみちゃん。

 

「はいはい、 もう少し待っていましょうね」

 

奥に引っ込むやみちゃんとプリン。

 

「全く・・・・・」

 

溜息を吐くアリアリ。

がさり、 と本陣に誰か入って来た。

 

「誰だ?」

 

アリアリがその方向に目をやるとそこに居たのは・・・

 

「初めましてファウンデーション教国スシブレーダー部隊隊長のバルドです」

 

バルトとスシブレーダー達だった!!

 

「敵、 か」

「えぇ、 貴方が司令官ですか?」

「いや? 司令官は奥に引っ込んだ

一応やみちゃんって言う娘っ子が指揮を執っていると言う事になっているが

プリンと言うオッサンが事実上の指揮官だな」

「そうですか」

 

エッグヴィーナスを構えるバルト。

アリアリも懐からコーヒーを構える。

その名の通りミルクと砂糖アリアリである。

だがゴハンが間に入る。

 

「バルト、 お前はボスを、 こいつは俺が」

「ゴハンだけじゃ不安だ、 俺も残る」

 

ハウも前に出る。

 

「・・・お任せしましたよ」

 

バルト達が奥に行こうとする。

 

「行かせると思うのか?」

 

バルト目掛けてコーヒーを射出するアリアリ。

 

「させるか!! へいらっしゃい!!」

 

ゴハンがスシブレードを射出する!!

ゴハンのスシブレード【タコボーグO】だ!!

このスシブレードは相手のスシブレードに吸い付くように回転し

超至近距離からの攻撃が可能な攻撃的なスシブレード!!

しかしバランスを取るのが困難であるため、 上級者向けである!!

だがゴハンは訓練によってタコボーグOを使いこなしている!!

タコボーグOによってコーヒーが弾かれる!!

 

バルト達は奥に進む!!

アリアリも後を追おうとしたがゴハンとハウに阻まれる!!

 

「良いだろう、 俺もヤミ・マスターお前達二人始末しよう」

「何言ってやがる、 お前のスシブレードは俺のタコボーグOに攻撃をされているんだ

そう簡単に倒せると思うな」

「ふん、 見て見ろ」

「何・・・!?」

 

ゴハンは自分の目を疑った!!

アリアリのコーヒーに貼り付いていたタコボーグOが

へにょへにょになって離れているでは無いか!!

 

「こ、 これは・・・一体・・・!?」

「・・・・・この熱気・・・そうか熱か」

「その通り、 俺のコーヒーは砂糖ミルクアリアリかつあつあつのほっかほか

温度は非常に高い、 生魚のスシネタは熱が通って使い物にならない!!」

「くっ・・・」

「ゴハンだけだったら間違いなくやられていただろう・・・だが!!」

 

Oinari3を取り出すハウ。

 

「む・・・何だそれは?」

「Oinari3だ」

「魚のスシじゃないのか・・・これは長丁場になりそうだな・・・」

「いくぞ・・・3, 2, 1, へいらっしゃい!!」

 

Oinari3が射出されコーヒーに向かって行く、 これから激闘が始まる!!



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やみちゃんとの邂逅

バルト達が本陣の奥に進むとその先に有ったのは・・・

 

「やみー♪ やみー♪」

 

シーツを頭の上に乗せてプリンに舌鼓を打つやみちゃんと

バルトに驚愕するプリンだった。

 

「貴様!! 何者だ!?」

「ファウンデーション教国スシブレーダー部隊隊長のバルドだ」

 

エッグヴィーナスを構えるバルト。

プリンもスシブレードを構えようとする、 が。

 

「しまった・・・食べさせてしまった・・・」

「え・・・」

「やみー♪」

 

やみちゃんは美味しそうにプリンを頬張る。

 

「・・・・・あー・・・つまり貴方は今、 戦えないと言う事ですね?」

「そうなるな・・・」

「・・・・・では降伏して貰えますか?」

「それは・・・出来ない相談だ」

 

剣を構えるプリン。

 

「・・・無謀ですよ」

「分かっている、 スシブレード相手に剣で戦うのは無謀だ

だがそれでも守らなきゃいけない者の為には戦わなければならない」

 

やみちゃんを見るプリン。

 

「やみー?」

 

やみちゃんは首を傾げる。

 

「・・・・・その御嬢さんには手出しをしない、 だから降伏して下さい」

「信じられるか!!」

 

プリンはぴしゃりと拒絶する。

 

「バルト君、 ここは戦うべきだよ」

 

グレンがスシブレードを構える。

 

「そうだよ、 今まで攻めて来たのに

自分が攻められたから降伏は虫が良過ぎるよ」

 

ナルも追従する。

 

「虫が良過ぎる? それはこっちの台詞だと言っておこうか」

 

ぎりっ、 と歯軋りをするプリン。

 

「貴様等ファウンデーション教国がして来た事を考えればこれ位妥当だろう?」

「教国に恨みでも有るのか?」

「私は元々教会の騎士だったからな教会の非道を見て来たから」

「そうか・・・だけどももしも戦うとしたらその子も巻き込むよ?」

 

バルトはやみちゃんを指差す。

 

「・・・・・死んでも守る」

「やみー!?」

 

やみちゃんがバルトとプリンの間に割って入る。

それと同時にシーツがずり落ちる。

 

「なんと・・・」

 

やみちゃんの姿は真っ白い肌と髪に赤目と言う所謂アルビノの少女だった。

その姿はとても美しかった。

 

「やみー!! やみやみやみー!! やみやみー!! やみー!!」

 

口をぷくーと膨らませながらやみちゃんが語る。

 

「何を言っているのか分からないよ・・・」

「私を守っているのですか? 危険ですので下がって下さい」

「やみー!!」

 

やみちゃんは懐からアイスクリームを取り出した。

チョコソースがかかっている、 美味しそうである。

 

「やる気か?」

「やぁぁぁぁぁぁぁみぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

やみちゃんはふわふわと空中に浮くと同時に周囲に冷気が満ち始める。

そして空間が渦を描くように歪んでいく・・・

 

「な、 なんだこれ―――――」

 

全て言い終える前にバルトとやみちゃんは消失した。



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ここからが本番だ

ファウンデーション教国軍の本陣にて。

 

「冷気と共に敵前線は混乱に陥っています!!」

「そうか!! あの冷気は敵のボスの仕業だったのか!!」

 

ナヴィックが叫ぶ。

 

「アクバー団長、 何とか目論見通りになりましたね」

「あぁ・・・罠も特に張られていなかったしな、 良かったよ・・・」

 

ほっと息を吐くアクバー。

 

「しかし敵も侮りがたし、 こちらの攻撃を相殺して防いでいる」

「凄まじいわね、 私達の矢だけなら兎も角モスマ達の魔法迄防ぐなんて・・・」

 

モスマとマリアムが嘆く。

 

「スシブレード、 侮りがたしだな」

「だがそれだけに偏るのは愚行以外の何物でもない」

 

ボークスは以前にも吐いた言葉を再度言う。

 

「しかしこのまま状況が膠着するのは宜しくない

バルト君が敵本陣に居ると言う事は周囲は敵だらけ

急いで攻めて助け出す必要が有る」

「それならば我々に任せて貰いましょう」

「カッソー、 何か策でも有るのか?」

「あぁ、 煙幕を張って敵の眼を晦ませよう」

「それには賛同しかねる、 と言うか逆効果だろう」

「何故だ?」

「敵の本陣から冷気が此方に来ている、 つまり此方が風下と言う事だ

煙幕を張ったらこっちに来る」

「なるほど・・・では焼夷弾を打ち込もう」

 

焼夷弾と言われて科学的な物を想像する読者諸賢も居るかもしれないが

焼夷兵器自体はギリシア火薬等が昔から存在している為

手投げ弾の様な焼夷弾は存在する。

とは言えコストが高いのが難点だが・・・

 

「いや、 こちらの行軍の邪魔になるからそれも止めておこう」

「そうか・・・では攪乱するだけにしよう」

「それで頼む、 では此方も備えの騎士達に伝令を出して兵を進める様に通達!!」

「はっ!!」

 

伝令兵が去って行った。

 

「この戦い、 勝てるか?」

「・・・・・分からん、 敵本陣から冷気がここまで届くと言う事は

敵本陣にはかなり強大な力を持っているスシブレーダーが居ると推測する

バルト達が倒せれば良いのだが・・・」

「バルト達が倒せなくとも我々は歩みを止める訳にはいかない!!」

 

アクバーが叫ぶ。

 

「そうだな・・・」

「報告します!! ゾーバ殿が交戦中!! 如何やら敵の中でも手練れの模様!!」

 

伝令が叫ぶ。

 

「・・・増援を送るか?」

「あぁ、 ゾーバ殿の居る場所は主戦場から離れているだろう?」

「は、 はい!!」

「ならばそこにこそ焼夷弾や火炎放射を使って貰おう」

「分かった準備する!!」

 

カッソーが外に出る。

 

「ここからが本番だ、 皆、 気を抜くな!!」

「「「「おおっ!!」」」」

 

叫ぶ一同だった。



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ゾーバVSフォビドゥン・フルーツ part2

時を前後してゾーバとフォビドゥン・フルーツの戦いは混迷を極めた。

スライスされたファット・プラネットを回避するフォビドゥン・フルーツ

そしてフォビドゥン・フルーツはメロンの上に乗りながら別のメロンを食べていた。

 

明らかに異様!! 戦闘の最中に食事等正気の沙汰では無い!!

しかし当然ながらこれには理由がある。

 

フォビドゥン・フルーツの闇のパワーが凄いのは読者諸賢も知っての通り。

だがしかし闇のパワーを使い過ぎたのだ、 フォビドゥン・フルーツは遠隔地のスシブレードの

コントロールは苦手で闇のパワーを多く消耗してしまった。

ゾーバを倒した後も戦闘は続くのに後先考えない戦い方と言われても仕方が無い。

しかしフォビドゥン・フルーツは闇のパワーで動かしたスシブレードには

闇のパワーが残留していると言う事を知っているのだ!!

 

即ち、 フォビドゥン・フルーツがメロンを喰らっているのは

闇のパワーの補給の為である!!

 

「・・・・・」

 

逆のゾーバは窮地に追いやられた。

ファットプラネッツをスライスして素早い攻撃が出来たのは良い。

しかしどんどんファットプラネッツが短くなっていく!!

何と言う理不尽か!! 使えば使う程無くなっていくなんて!!

 

「・・・・・」

 

だがゾーバの顔に絶望は無い。

彼は元ギャングスター、 この程度で絶望していては明日の朝日すらも拝めない!!

 

しかしここで冷気が二人を包んだ!!

やみちゃんのスシブレードだ!!

 

「!?」

「ほう・・・本陣まで行けた上にやみちゃんを戦いに引き摺り出した、 か」

 

フォビドゥン・フルーツは浅く笑った。

 

「一つ問いたい、 本陣に向かった連中はお前よりも強いのか?」

「知らん、 ただあの男はやる男だ」

「そうか」

「まさか儂を無視して本陣に行くつもりではないだろうな」

「まさか!! 一期一会と言う奴だ、 お前も強敵だ、 そして真の強者だ」

「真の強者?」

「そうスシブレーダーには二種類ある

スシに回される愚者、 そしてスシを回す戦士!!

そして戦士にも二種類いる、 安定を望む屑と血を好む真の戦士だ!!」

「ふん、 下らんな」

 

ゾーバは一蹴する。

 

「お前の様な御託を吐く奴はゴマンと見て来た

そしてそんな奴等を殺して来たし死んで来たのを見て来た」

「ほう!! 経験豊富だな!!」

「若造、 お前にゾーバの恐ろしさを思い知らせてやろう!!」

 

これはゾーバのハッタリである。

しかしゾーバは時間を稼げば事態は良くなると確信していた。

何故ならば運が無ければここまでやって来れないからである!!

ゾーバは自分の運を、 自分を信じているのだ!!



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冷害

戦場のヤミ・アプレンティス達の状況は大別すると三つ。

一つは前線で戦う者、 二つは本陣に向かう者、 三つは現状維持のまま動かない者の三つである。

 

現状維持? と首を傾げる読者も居るだろう、 しかし仕方ないのだ。

 

「くっ・・・が・・・何という事だ・・・」

「ちくしょうめぇえええええええ!!」

 

嘆いているチビとノッポの二人組。

彼等はホット&コールドブラザーズ、 兄はホットコーヒー、 弟はアイスコーヒー。

二つのコーヒーの温度差で攻撃を仕掛けるコンビなのだが彼等は現在大ピンチである。

 

「どうすんだよ兄貴!! さっきの冷気で兄貴のコーヒーが冷めちまったじゃないか!!」

「ちっくしょうめぇ!!」

 

やみちゃんのスシブレード解放による冷気で兄のコーヒーが冷めてしまったのだ!!

 

「!! そうだ、 あがりの爺さんに聞けば良いじゃねぇか!!」

「あがりの爺さん!?」

 

あがりの爺さんとはヤミ・アプレンティスのあがりの事である。

彼はその名の通りあがりをスシブレードとしている。

普通のスシブレーダーに最も近い闇寿司と言えよう。

そして彼も温度が関係するスシブレードを使う。

彼の行動を見れば対処も可能だと踏んだのだ。

 

「あがりの爺さんは今何処に居る!?」

「は、 はい!! あがり様はワラビー様、 トリニティ様と

ソルジャースシの部隊を引き連れて撤退しました」

「逃げたああああああああああああああ!?」

「何やってんだあああアアアアアアアアア!?」

「冷めてしまい行動出来ないと・・・」

「あのやろおぉぉぉ・・・だからって逃げる馬鹿が居るか!!」

「ど、 どうする? 俺達も逃げるか?」

「馬鹿野郎!! 逃げたら責任問題になるだろうが!!

こうなったら・・・俺もアイスコーヒーで行く!!」

「あ、 兄貴!? 正気か!?」

「これしか手はねぇ!! こうなったら本陣に向かってもっとコーヒーを冷やすぞ!!」

 

本陣に走る兄。

 

「分かったぜ!!」

 

弟も追従する!!

本陣に向かい走る兄弟、 しかし横からスシブレードが飛んで来た!!

グリードのワサビジュピターだ!!

 

「ちぃ!!」

 

飛んで回避する兄弟!!

 

「敵か!!」

「不意打ちを避けられたか・・・」

 

グリードはワサビジュピターを手に戻した。

 

「舐めてくっ!!」

 

兄が吹き飛ばされる。

ラルフのシーエーチンだ!!

 

「兄貴!!」

「傷は浅い!! らぁ!!」

 

ホットコーヒー、 いや今や冷めたコーヒーか

兄がコーヒーを射出した。

しかし温度が低くスピードが鈍い。

 

「いける!!」

 

コーヒーに激突するシーエーチン!!

コーヒーは倒された。

 

「ぐっ・・・」

「兄貴ぃ!!」

 

弟がアイスコーヒーを射出する!!

シーエーチンは回避する!!

 

「本陣には向かわせないぞ!!」

「くっ・・・」

 

ラルフとグリードが兄弟の前に立ち塞がった!!



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次元間スシ・フィールドとは!?

一方本陣では

 

「・・・・・」

 

アリアリはやみちゃんの冷気によって自身のスシブレードである

アリアリのホットコーヒーが冷めてしまった事に眉をひそめた。

 

「はぁ・・・しゃあねぇ轢かせて貰おう」

「何だと!?」

「このままでは勝てるか怪しいんでな、 では」

 

アリアリは本陣の外に出た。

 

「待て!!」

「いや、 ハウ、 ここは先に奥に行ったバルト達の所に行った方が良い」

 

熱が入り使い物にならなくなったタコボーグOを食べながらゴハンが言った。

 

「しかし!!」

「この冷気、 ただもんじゃねぇのは分かるだろ?

俺達も援護しなければならない」

「・・・・・分かった、 行こう!!」

 

ハウがゴハンと共に本陣の奥に向かった。

本陣の奥にはプリンとスシブレーダー達が居た。

 

「バルトは!?」

 

ゴハンが尋ねる。

 

「・・・眼の前で消えた!!」

 

グレンが今起こった出来事を端的に伝えた。

 

「どういう事だ? お前何をした!?」

 

プリンに向かって絶叫するゴハン。

 

「教えたやろう、 次元間スシ・フィールドだ」

「じ、 次元間スシ・フィールド?」

「優れた闇のスシブレーダーのみが到達出来る境地

闇の力で空間を捻じ曲げて異空間を作り出してそこでスシブレードの戦いを行う

闇寿司の極意だ、 こうなった以上、 戦いが終わるまで我々には手出し出来ん」

「異空間を作り出す・・・だって・・・それは最早神の領域じゃない・・・」

 

膝をつくグレン。

 

「やみちゃんは元々は教会によって仕立てられた聖女

故に神の力に近い存在やのかもしれん」

 

プリンは語る。

 

「やみちゃんが戦うならばさっきの小僧も命は有るまい」

「やってみなければわからない!!」

「さきほどの冷気は感じただろう?

あれ程の冷気を持ったスシブレードと相対して勝てると思うのか?」

「くっ・・・」

 

言葉に詰まるゴハン。

 

「こうなった以上、 決着がつくまで次元間スシ・フィールドは解除されない、 詰みだ」

「・・・・・ならばお前を倒そう」

 

スシブレードを構える面々。

 

「悪いがここでは死ねないな」

 

剣を抜くプリン。

 

「お前、 スシブレーダーじゃないのか?」

「スシブレードが無ければ戦えない、 そんな甘えた事を言う趣味は無い」

 

ゴハンの言葉に答えるプリン。

 

「さっきスシブレードのプリンを食べられちゃったらしいのよ」

「馬鹿じゃねぇの」

「・・・・・うるさい」

 

プリンは剣を構える、 そしてスシブレーダー達は戦慄した。

圧倒的闇のオーラ!! スシブレード無くとも間違いなくヤミ・マスターであると!!

 

「悪いが死ぬ訳にはいかない、 行くぞ」

「・・・来い!!」

 

ゴハンは冷や汗を流しながら叫んだ。



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バルトVSやみちゃん part1

やみちゃんの次元間スシ・フィールドに入ったバルトが感じたのは圧倒的な冷たさだった。

見渡す限り一面氷の地平線、 空には星一つ無い暗闇。

にも拘らず眼の前の視界は明るく視認が出来る。

 

「・・・・・」

「やみー!! やみー!!」

 

手をブンブン振り回しながらやみちゃんが喚いている。

そして時空がまた歪み氷が渦巻き二人の間には直径10mはあろうかという

円形の氷で出来た闘技場が形成された。

 

「この中でスシブレードで戦え、 と言う事か?」

「やみー!!」

 

肯定、 なのだろうか。

この空間が眼の前の少女が引き起こした事象だとバルトは理解し戦慄した。

流れた冷や汗が凍り付くような圧倒的冷気。

 

「・・・・・」

 

エッグヴィーナスを見るバルト。

果たしてエッグヴィーナスで勝てるだろうか・・・

 

『行こう』

「誰だ!?」

 

この空間には自分とやみーとしか喋らない少女しか居ない。

にも拘わらず確かに声が聞こえた。

 

『行くんだ、 私を信じて』

「私・・・まさか・・・」

 

そうこの声は・・・

 

「エッグヴィーナスなのか!?」

『そう・・・彼女を見なさい』

 

やみちゃんを見るバルト。

 

「やみー、 やみ~」

 

良く見ると血色が悪い、 震えている様にも見える。

 

「あれは・・・寒がっている?」

『そう、 彼女は闇寿司の力を自分の限界以上に引き出している

彼女も自分の力に蝕まれている・・・』

「これじゃあ彼女も危ない、 と言う事か?」

『そうだね、 だがしかし君とぶつかれば君の方が危ないだろう』

「じゃあ如何すれば良い!?」

『君の魂の熱さで暖めてあげれば良い・・・レーアが君にした様にね・・・』

「!!」

 

バルトは孤児だった自分がレーアに拾われた時の事を思い出した。

嘗ての自分は何故自分には親が居ないのか、 その事を悲しんだ。

しかしその事を表に出す事は無かった、 悲しみが増大し腹の中を渦巻いた。

そんな時にレーアに出会った、 彼女に拾われ救われた。

レーアの優しさにバルトの魂は救われたのだ。

 

「・・・・・そうか・・・・・」

「やみー?」

 

やみちゃんはスシブレード、 チョコソースがかかったアイスクリームを構えた。

バルトもエッグヴィーナスを構えた、 この一戦でこの戦争の全てが決まると言っていい。

 

「3, 2, 1, へいらっしゃい!!」

「やーみー!!」

 

バルトとやみちゃんはスシブレードを射出した!!

回転するエッグヴィーナス!!

 

「やみっ!?」

 

やみちゃんは驚いた、 自分のスシブレードと戦って動けるとは想定外。

今までのスシブレードは着地と共に凍り付いて終了だった。

それなのに動けるとは・・・やみちゃんは興味を抱いたのだった!!



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バルトVSやみちゃん part2

エッグヴィーナスの回転のパワーは普段の比にならない。

これは一体如何なる理由なのか!?

勿論メンタルの部分も大きいだろう、 スシとの対話を経てメンタルが向上した

それだけの理由では無いのだ。

 

本陣突入直前でこんな場面が有った。

 

「ここが本陣か・・・それじゃあ準備するかな」

 

懐から白い棒状の物を取り出す。

 

「バルト、 それは?」

 

グレンが尋ねる。

 

「エッグヴィーナスのネタ部分です、 ここに海苔を今から巻いて行きます」

「何故?」

「戦う直前に海苔を巻くと良い感じに回るんですよ」

 

其れ即ち海苔のパリパリ加減と言う事だろう。

戦う直前に海苔を巻く事で海苔がしならないのだ。

もしも海苔が水分を吸っていた状態で戦っていたのならば水分を含んだ海苔は

凍り付いていた事だろう、 戦う前に九死に一生を得ていたバルト。

 

時間を現在に戻してやみちゃんとの戦闘シーンに戻る。

 

チョコソースがかかったアイスクリームは回転している。

一行にエッグヴィーナスに近付く素振りすら見せない。

 

「いっけえええええええ!! エッグヴィーナス!!」

 

エッグヴィーナスの高速回転がチョコソースがかかったアイスクリームを襲う!!

激突したチョコソースがかかったアイスクリームは大きく弾かれた!!

しかし回転が鈍くならず、 まるでダメージを受けている様には見えない!!

 

「これは・・・!!」

 

チョコソースがかかったアイスクリームの接地面が冷気で凍り付いている!!

氷により摩擦が低くなり回転力を増しながら更に回転力を強めているのだ!!

つまり攻撃を受ければ受ける程、 更に回転が増すと言う事だ!!

ならば攻めなければ良い、 という考えは無謀で有る!!

チョコソースがかかったアイスクリームの冷気は徐々に広がり

黙っていればスシブレードが凍り付いてしまう!!

攻めても相手の回転が増すだけ、 しかし攻めなければ凍り付く・・・

 

「ならば・・・・・!!」

 

バルトは更にアタックを続けた!!

当然ながらチョコソースがかかったアイスクリームの回転は更に増した!!

何と言う自殺行為!! しかしこれしか無いのだ!!

どんな時にも前に進み続けるしかない!!

 

「やみぃ・・・」

 

やみちゃんはその光景を見ていた。

何と言う光景だろうか、 例えるならば針の上を裸足で歩くような物である。

危険過ぎる行為!! 自傷行為と行って良いだろう。

しかしその攻撃に対しやみちゃんは見惚れていたと言って良いだろう。

 

「やみぃ・・・・・」

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

尚も死闘は続く。



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氷解

回転力を増し続けるチョコソースがかかったアイスクリーム。

冷気も強まっているが・・・

 

「やみぃ・・・・・」

 

やみちゃんの顔は暗い、 回転力が増し続けたチョコソースがかかったアイスクリームは

回転が臨界点に近いのだ、 回転を上げ過ぎた結果

自己崩壊を起こしかねない領域に達しかけている!!

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

だがバルトの顔も暗い、 何故なら回転が上がる度に冷気も強まっているのだ・・・

この冷気は次元間スシ・フィールドの外にも影響を与えているのだがそれは後に回すとしよう。

 

「・・・・・はぁ・・・ぐっ・・・エッグ・ヴィーナス・・・」

 

回転を続ける自分のスシブレードの名を呼ぶバルト。

エッグ・ヴィーナスには霜が降りた見るも無残な姿になっていた。

だがしかし回転に一切の減退は無かった!!

これがスシブレードとスシブレーダーとの間の絆!!

 

「や・・・み・・・」

 

やみちゃんも寒さに震えながらその光景を見る。

やみちゃんの頬に一筋の筋が光る。

 

「涙・・・?」

「や・・・あみ・・・」

 

やみちゃんが自分の頬を撫でる、 その手には涙が・・・

 

「・・・・・・・・・・」

 

チョコソースがかかったアイスクリームの回転は尚も上がり冷気も強まり続けた。

 

「やみ・・・・・」

 

やみちゃんが手を伸ばした。

 

「なにを・・・するつもりだ?」

 

しかし何も起こらなかった。

 

「・・・・・」

 

やみちゃんは闘技場の中に飛び込んだ!!

 

「なっ!? 馬鹿な!?」

 

辺りを極寒に包む冷気の根源に近付くのは自殺行為だ!!

しかしやみちゃんはチョコソースがかかったアイスクリームに近付き、 持ち上げ平らげたのだった!!

 

「!!!・・・!!!」

 

寒さに震えるやみちゃん。

先程まで周囲を凍らせていた冷気の根源を食べたのだ。

魂まで凍り付くだろう!!

バルドも闘技場の中に飛び込んだ!!

そしてやみちゃんの元に駆け寄った!!

 

「な、 何であんな事を!?」

 

バルトは叫んだ、 眼の前の少女は敵の大将だったが

何故唐突に自殺行為を取ったのか・・・

やみちゃんは近くを回転していたエッグ・ヴィーナスを捕まえて食べた。

 

「んぐんぐ・・・・・・・だ・・・って・・・き・・み・・・

みた・・・いな・・・いいひとを・・・ころせない・・・よ・・・」

 

そう言ってやみちゃんは眼を閉じた。

 

「お、 おい!!」

 

やみちゃんは寝息を立てていた、 如何やら眠っているだけの様だった。

 

「・・・・・あ、 そうだ、 拘束しておこう」

 

やみちゃんをロープで縛るバルト、 縛ったと同時に

次元間スシ・フィールドは解除された。



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終結

次元間スシ・フィールドが解かれるまで時間は前後する。

次元間スシ・フィールドの外では戦いが・・・行われていなかった・・・

 

「が・・・が・・・」

「ぐが・・・・・」

 

次元間スシ・フィールドの近辺を中心に極寒、 と言うか極地すら生温い

文字通りの紅蓮地獄が形成されていた。

 

「何だ・・・これは・・・」

「寒い・・・寒すぎる・・・」

 

震えてスシブレードを握る所の騒ぎでは無い、 最早戦える状況ではない。

戦場すら巻き込んで大パニックに陥っている!!

 

「俺達・・・このまま氷漬けで死ぬのか・・・?」

「ば、 馬鹿野郎・・・気合いで負けて如何する・・・」

 

震えるゴハンとハウ。

 

「お、 おいオッサン・・・今何がどうなってやがる・・・」

「やみちゃんの冷気が強まっている・・・のか?

幾ら何でも強くなりすぎ・・・」

 

プリンが絶え絶えに答える。

 

「だが・・・間違いなくやみちゃんは勝利する!!

そして次はお前達だ!!」

「その前に死ぬ・・・寒すぎて死ぬ・・・」

 

ガチガチと歯を鳴らすグレン。

 

「ね、 ねぇ・・・貴方、 さっきの娘が冷気使いだって知ってたでしょ

しかも凄い強い・・・・・」

「あぁ・・・そうだな・・・」

「じゃ、 じゃあ冷気を防ぐ手段は無いの?」

「無い・・・・・!!」

「馬鹿じゃ無いの? 何で用意し無いの・・・」

 

ナルが煽る。

 

「やみちゃんも寒いのを我慢してるんだ・・・!!

俺が耐えないで如何するよ!!」

「・・・・・?」

 

寒さが和らぎ始めた。

 

「ふっ・・・如何やら終わったようだな・・・」

 

次元間スシ・フィールドが解かれてバルトと拘束されたやみちゃんが現れる。

 

「!!!!?!!?!?!?!?!?

ば、 馬鹿なあああああああああああああああああああああああ!!!?」

 

驚愕するプリン。

 

「・・・・・僕の勝ちだ、 大人しく降参しろ」

「そ、 そんな馬鹿な話が有るか!! やみちゃんが負けるなんてそんな事が!!」

「あぁ、 勝ってないよ」

「・・・・・何だと?」

「彼女は自ら自分のスシブレードを食べた」

「食べた!? 馬鹿な!! そんな筈が・・・!!」

 

プリンは眼を見張った、 やみちゃんの口元にはチョコソースが!!

それは即ち、 やみちゃんが自分のスシブレードを食べたと言う事に外ならない!!

 

「彼女も君も悪人には思えない、 僕が全力で何とかするよ

この子の命は保障しよう、 だから降伏して撤退してくれないか?」

「・・・私も共をさせて貰おうか、 彼女がこれ以上利用されないように・・・」

「良く分からないけど、 それで良い」

 

戦争はここに終結した。



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撤退

ゾーバとフォビドゥン・フルーツの戦いは途中氷結してしまい中断されていたが

工兵部隊の火炎放射や焼夷弾によって氷が解けた事により戦闘は再開された!!

 

「はははははははははっははっはははっはははあああああああ!!!」

「いかれてやがるな・・・」

 

ゾーバが燃えながら戦うフォビドゥン・フルーツを見てドン引きする。

工兵部隊達も引いていた。

しかし冷気対策としてはアリな戦術であろう。

勿論炎で焼け死なない為の対策をしているのならと言う言葉が付くが。

フォビドゥン・フルーツは闇のパワーで炎をガードしている。

そんな中、 冷気が途絶えた!!

 

「む、 冷気が消えた? もう勝負は終わったのか?

ならば燃える必要は無いな!!」

 

闇のパワーで炎を吹き飛ばすフォビドゥン・フルーツ。

炎が飛び火して工兵部隊の燃料に直撃、 大爆発を起こす!!

 

「無茶苦茶しやがるな!!」

「はっはー!! ゾーバ、 アンタのして来た事に比べれば屁でも無かろう!?」

「それもそうだな、 ガソリン、 生き埋め、 危険労働

今となっては懐かしい」

「ひくわー」

 

その時、 戦場に鏑矢の轟音が鳴り響いた!!

 

「なんだ?」

「・・・・・撤退の合図だな、 ゾーバ、 この勝負は預けたぞ」

「何?」

「このままでは勝負を楽しめそうに無いからな!!」

 

そういうなりフォビドゥン・フルーツは戦場からすぐさま逃げ出したのだった。

 

「・・・」

 

ゾーバは状況判断してすぐさま本陣に向かった。

 

 

 

 

戦場は大混乱に陥った!!

 

「撤退!?」

「何で!?」

「冷気が消えたからやみちゃんが殺された!?」

「いや、 しかし・・・」

「そんな馬鹿な・・・」

「おい冷気で死にかけている奴がいる!! 誰か手を貸してくれ!!」

 

ソルジャースシ達が口々に叫ぶ。

 

「どどどどどどどどどどどどどどうするビア!?」

「落ち着いて下さいお義父様、 ここは落ち着いて撤退を」

「撤退!? もう脚パンパンで走れないぞ!!」

「そうですか、 ではこれをこうしてこうこうこう」

 

ビールを何処からともなく取り出して何か粉を入れた後に

鞘に飲ませるビア。

 

「・・・・・な、 何を飲ませた」

「暫く寝なくても大丈夫な薬です、 じゃあ走りましょうか」

「絶対ヤバいじゃないかああああああああああああああ!!」

 

そんな事を言いながら逃げるビアと鞘。

他のヤミ・アプレンティス達も思い思いの行動を取り始める

そんな状況を見逃すファウンデーション軍では無く

突撃を始め多くの戦果を挙げる事に成功したのだった。

 

これにてスシブレード部隊の初任務は成功に終わったのだった。



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激震の教会

ジーオノシス平原での戦闘から一ヶ月後。

ファウンデーション教国では阿鼻叫喚の事態になっていた。

と言うのも捕虜として連れ帰ったやみちゃんこと、 トゥーンウィと

やみちゃんの副官だったプリンこと、 ラマスが齎した情報は悍ましい物だった。

 

トゥーンウィとラマスは旧シャリーダ王国の教会に所属していた聖女と護衛の騎士であった。

しかしトゥーンウィと言う聖女は公式には居ない事になっている。

旧シャリーダ王国の教会が極秘に聖女に仕立て上げた存在、 それがトゥーンウィである。

聖女に仕立て上げる為に裏でシャリーダ王国の教会の重鎮達は様々な事をしていたらしい

他の聖女に使う為と偽って様々な特殊な物品等を彼女に使用し強化していたらしい。

彼女がチョコソースがけのアイスクリームを食べても生きていたのは

その強化が原因らしい。

 

聖女をファウンデーション教国の認可無しで行うのは重大な違反行為である

これがけでもシャリーダ王国から逃げて来た教会の重鎮達の首を

物理的に飛ばすのには十分すぎる事なのだが

トゥーンウィを連れて来る為に相当無茶をやったらしくトゥーンウィの両親を殺した事。

更にシャリーダ王国が魔王を倒すべく異世界から勇者を召喚しようとする儀式も

彼等が提供していたらしい、 更に儀式の際に生贄が必要らしく

教会の信徒、 無辜の民を徴用して生贄として使い多くの犠牲を出していたとの事。

トゥーンウィを聖女として強くする為に

使用すると数年後に死ぬが強靭な力を得られる危険物を使おうとしていた事。

極めつけにシャリーダ王国の教会が管理していた異常効果が有る秘宝の横流し

横領、 無許可での使用、 それらをラマスは全て証言した。

 

当然ながら旧シャリーダの重鎮達は反論するも

腕を入れた者が嘘を吐くとその者の腕を食い千切る顔の彫刻によって

真偽は確かめられた。

旧シャリーダの重鎮達は『シャリーダの王族達に結果を出せと言われて仕方なくやった事だ』

と主張しているが旧シャリーダの重鎮達は全員死刑宣告よりも恐ろしい

Dクラスと言う苦役に死ぬまで従事する事になったのだった。

 

その後、 トゥーンウィは捕虜として扱われる事になった。

スシブレーダーとして戦力に組み込むべき、 と言う意見も有ったが

無理矢理戦いの場に引き摺り出された少女で有る事。

またジーオノシス平原での冷気の強大さから

彼女を実践に投入するのはリスクが高過ぎると判断された。

プリンもまたトゥーンウィの傍で仕える事になったのだった。




言及されたSCP
SCP-645 - 真実の口
http://scp-jp.wikidot.com/scp-645


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優しく彼女は微笑んだ

トゥーンウィとラマスは捕虜とは言え静かで良い湖畔の屋敷で生活をしていた。

アルビノと言う特異な外見で奇異の眼で見られない様にと言う配慮だ。

 

「監視下とは言え日当たりの良い部屋だ」

「喜んで貰えて何より」

 

そんな二人の元を訪ねたバルト。

 

「所でトゥーンウィは何をしているんだ?」

 

トゥーンウィは鏡の前で「あー」「いー」と喋っている。

 

「闇寿司の影響でやみーとしか喋って無かったから喋る為のリハビリをしているんだ」

「なるほど・・・ラマスさんは闇寿司に関してどれ程の知識を持ってます?」

「無知に近いな、 ダークネスシ帝国で闇寿司に関して理解しているのは

異世界からやって来た闇とその弟子、 スシの暗黒卿程度だろう」

「無知って・・・そんな事は無いでしょう」

「闇寿司は理解とは縁遠い、 ソルジャースシの様に寿司に回されている者が程遠い

私も何でスシが回転するのか未だに意味が分からない」

「・・・・・」

 

がっくりと肩を落とすバルト。

 

「だがしかし、 だ、 一つ気になる情報が有る」

「気になる情報?」

「スシの暗黒卿達からの報告を聞く為の定例会議の際にシャリーラ13世が

アイデアが有ると言っていた」

「アイデア?」

「国一つを滅ぼせる大量破壊スシブレードのアイデアらしい」

「国一つを滅ぼすスシブレード・・・想像が着きませんね」

「私も如何言う物か想像も出来ない、 一体何を企んでいるのか・・・」

 

顔が曇るラマス。

 

「所でラマスさん、 先日スシが語りかけて来ると言う事があったんですよ

闇寿司でも似た様な事は無かったですか?」

「語り掛けて来る? スシが?」

「はい」

 

バルトの言葉に怪訝そうな顔をするラマス。

 

「・・・バルト、 君は神を信奉するかね?」

「あまり熱心では無いですね」

「そうか、 ならそれは君の本能がスシを通して話しかけた、 と私は考える」

「スシを通して本能が語り掛ける?」

「うむ、 サードマン現象と言うべきなのか・・・

つまり霊や神のような目に見えない存在が安心や支えをもたらす・・・

君の脳内が造り出した虚像、 なのかもしれない」

「良く分からないですね・・・」

「うむ、 私も若い頃に勉強したきりだから分からない・・・」

「そうですか・・・山から得た寿司の知識には無かったので

闇寿司に何かヒントが有ると思いましたが・・・」

「私も闇寿司に関しては無知だ・・・すまない」

「良いんですよ・・・」

 

バルトが言う。

 

「あ・・・ばつ・・と・・・きて・・・たの・・・」

 

トゥーンウィが気が付いた様だ。

 

「や、 元気にしてた?」

「う・・・ん」

 

ぎこちない声だがトゥーンウィは優しく微笑んだ。



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極秘!!第六章終了時のファウンデーション教国のスシブレーダーとスシブレード名鑑

バルト

禁じられた山から寿司の知識を得たスシブレーダー。

髪は栗色の短髪。

レーア伯爵令嬢御付きの執事だったが

現在はファウンデーション教国のスシブレーダー隊長を務めている。

スシブレーダー達のスシブレードの原型は全てバルトが作っている為

彼の重要性は計り知れないが、 後方で安全に振舞う事も出来ない立場である。

孤児だったがレーア伯爵令嬢に拾われて充実した生活を送った事により

心優しい性格である、 しかしやる時はやるタイプである

 

使用スシブレード:エッグヴィーナス

攻撃力:C 防御力:A 機動力:C 持久力:A 重量:B 操作性:A

卵の海苔巻きのスシブレード。

卵を使った料理はバルトの得意料理でもあり。

笑顔を見たいと言う純粋な意思から作られている

その為、 闇に深く沈んだスシブレーダーに対しての癒しの効果がある。

事実、 アイスを食べて闇の力に侵されたやみちゃんことトゥーンウィが

エッグヴィーナスを食べて持ち直している。

バルトは試作を重ねており、 まだまだ能力の向上の余地が有る。

 

ゴハン・ソロ

レーア伯爵令嬢に雇われた傭兵。

髪の毛は黒にやや天然パーマ。

元々は孤児だったがバルトとは違い人間関係には恵まれなかった。

幼少時はコソ泥、 スリ、 何でもござれだったが

ある時、 仲間のストリートチルドレンが薬物汚染に晒された事から

義憤に駆られてとある麻薬組織に重大なダメージを与えた

その事から裏社会から眼の仇にされる。

この経験から善行を行うのは割に合わないと感じ

傭兵として戦場を転々とする。

その後、 何の因果かレーア伯爵令嬢に雇われ現在に至る。

現状に関しては不満は特に無い様子。

 

使用スシブレード:タコボーグO

攻撃力:S 防御力:E 機動力:B 持久力:C 重量:C 操作性:D

タコのスシブレード。

相手のスシブレードに吸い付くように回転し超至近距離からの攻撃が可能。

バランスを取るのが困難であるため、 上級者向けである。

 

ハウ

レーア伯爵令嬢の護衛をしていた部隊の正規隊員唯一の生き残り。

髪型はあまり気にしていないのか茶色の短髪。

彼は孤児だったがハングリー精神で必死に勉学や訓練に励み

サンシャイン王国少年騎士団に入団、 キャリアを順調に重ねて

レーア伯爵令嬢の護衛部隊に入隊する。

騎士としての力量は確かだが礼節はややぎこちない。

勉強に使っていた物が拾った本だった為かやや古い常識なのが残念な所。

上流階級に気に入られる為に

バーテンダーの資格も持っているがそれが活躍した事は無い。

 

使用スシブレード:Oinari3

攻撃力:C 防御力:A 機動力:C~D 持久力:A 重量:D 操作性:C

防御力が高い磨き抜かれた一品。

射出後も回転数を上げることができる持久戦向きのスシブレードである。

 

ウェッジ

彼は優秀なスナイパーであった。

両親が狩人で彼に弓の使い方を丁寧に教えた為である。

彼の髪型である刈込もその教えの賜物。

両親は彼をファウンデーション教国の弓兵学校に通わせる予定だったが

ある夜に押し入り強盗に両親が殺害されてしまった。

両親の保険金で装備を購入して押し入り強盗を追いかけて報復に殺害する。

押し入り強盗は有名な賞金首だった様で賞金を手にしたウェッジは

安定した生活を送る為に事業を始めた、 しかし取引先の鶴帝国が崩壊した事により

事業は倒産、 復讐の為にファウンデーション教国の兵に志願した。

新しい物好きで先見の明がありスシブレードに関しては

スシブレード部隊が出来る前から注目していた。

 

使用スシブレード:イクラリオン

攻撃力:S~A 防御力:C 機動力:C~E 持久力:C~D 重量:B~D 操作性:C

イクラ軍艦のスシブレード。

イクラを周囲に拡散させることで相手のスシブレードの回転を妨害することができるが

イクラが少なくなるほど回転速度が落ちる。

ウェッジのイクラリオンはピンポイントの狙撃が可能であり破壊力は並のイクラリオンを上回る。

 

シャル

ウェッジの妹で才女、 幼少時から家から出て

特待生として学校に通い卒業してファウンデーション教国で働いていた。

とは言っても上司も彼女を持て余しており、 彼女自身も自分の能力を持て余していた。

情熱が無い女性だったが、 ダークネスシ帝国の暴虐に正に心が引き裂かれんばかりの衝撃を味わい

前線に志願したのだった、 ウェッジからは妹扱いされやや過保護気味だが

それを若干鬱陶しく思っている。

自慢はセミロングの金髪、 母親譲りの髪の毛で休みの日は手入れをしている。

 

使用スシブレード:テッカマーズ

攻撃力:S~C 防御力:C 機動力:C 持久力:B 重量:B 操作性:B

鉄火巻きのスシブレード。

安定した回転の巻き寿司タイプの寿司だが、 時折ラッキーヒットの様な

強力な一撃を出す事が出来る、 鉄火巻きが鉄火場から来ているからなのか運に関係する寿司の様だ。

 

ケイ

元シャリ王国の女性騎士。

生真面目な性格だが家柄だけのあまり実力の無かったされど誇り高き騎士で

シャリ王国が闇寿司に乗っ取られるのを見逃せずレジスタンス活動に傾向する。

しかし戦力差があまりにも開いていた為にシャリ王国の教会の重鎮達と共に

ファウンデーション教国に亡命する。

騎士としての力量は無かったがスシブレーダーとしてのセンスは有った様で

スシブレーダーとしての強者として名前が上がる。

髪型はロングヘアー、 しかし手入れは行っていない。

 

使用スシブレード:サバヒルバー

攻撃力:C 防御力:B 機動力:B 持久力:B 重量:D 操作性:C

鯖寿司のスシブレード。

ツルツルした皮が戦車の傾斜装甲がごとく攻撃を弾く

攻撃を受け止めるのではなく受け流すタイプのスシブレードである。

 

マドカ

跳ねた髪型のファウンデーション教国の上級司祭の娘だが

それを感じさせない強気で勝気な性格、 聡明な一面も持っている。

司祭の娘と言う事で持ち上げられるのを嫌がって人のサポートに徹するタイプ。

 

使用スシブレード:ホターⅩ

攻撃力:D 防御力:C 機動力:B 持久力:A 重量:C 操作性:B

ホタテのスシブレード。

直接戦うのではなく攪乱等で他のスシブレードのサポートに

回るタイプのスシブレードである。

 

グレン

突如としてファウンデーション教国にやって来た流れ者の女性。

角と形容される、 良く分からない髪型をしている。

スシブレードに対して強い興味を持ちスシブレーダーとしての才能を開花させた天才。

無邪気であっけらかんとした性格で正義感が強く、 ダークネスシ帝国の暴虐には

怒りを見せる一面も、 なおかなりの巨乳である。

 

使用スシブレーダー:シンコフェネック

攻撃力:C 防御力:E 機動力:S 持久力:E 重量:E 操作性:A

新子のスシブレード。

小さなシャリに新子が二枚乗っている、 作るのが非常に難しいスシブレードである。

他のスシブレードと比べて小型故にスピードが速く防御力、 持久力共に低いスシブレード。

スピードで相手を圧倒し手数を多く出すのが特徴的。

 

ナル

小さな少女スシブレーダー。

水色のボブカットをしている。

両親がダークネスシ帝国の戦闘で亡くなったサンシャイン王国の孤児である。

少年兵として志願して来て紆余曲折が有ってスシブレーダー部隊に入る。

小さいが死生観はシビアで容赦が無い。

ただ間違いを起こすとはわはわする。

 

使用スシブレード:イカルオン

攻撃力:B 防御力:C 機動力:C 持久力:B 重量:C 操作性:B

イカのスシブレード。

タコボーグOと同じく吸盤で吸い付いて攻撃出来るが、 攻撃力が控えめの代わりに

全体的にバランスが向上している中級者向けのスシブレード

 

 

エミリー

眼鏡をかけた少女スシブレーダー。

髪型はセミロング、 これにも拘りがある。

研究者でもあり、 新しいスシブレーダーの開発に余念が無い。

異様にプライドが高く高飛車なところがあり、 物事を論理的に解決する事に拘りがある。

とは言えプライドに比例する高い実力を持っており

ファウンデーション教国最強のスシブレーダーの呼び声高い。

 

使用スシブレード:ジュエリー・ボックス

攻撃力:可変 防御力:可変 機動力:可変 持久力:可変 重量:S 操作性:E

箱寿司から12個の寿司が展開するスシブレード。

箱寿司に入っている寿司によって基本的なステータスは変わるが

単純計算で12個のスシブレードを操る事になる。

相当使用が困難なスシブレードである。

 

ラルフ

ファウンデーション教国の名家の跡取りで城主もしている。

紫のオールバックの紳士的な振舞いで

伝統の銀色の鎧を身に纏っているが見た目だけでそれなりに軽いらしい。

ハッタリの様に見えるが軽量化に拘った鎧との事。

軽量化の拘りはスシブレードにも見て取れる。

 

使用スシブレード:シーエーチン

攻撃力:B 防御力:D 機動力:B 持久力:D 重量:D 操作性:B

ウニの軍艦巻きのスシブレード。

本来のシーエーチンはバランスが良いスシブレードなのだが

ラルフのスシブレードはバルトに頼んでウニの分量を多くする事で

軽量化に成功している。

その為、 ややスピードが速い速攻型である。

 

グリード

自称凄腕の賞金稼ぎのチンピラである。

賞金首を狙うも何時も失敗するが何だかんだ生きて帰る。

ゴハンを狙った事も有るが、 ボウガンを乱射したのにも関わらず

ゴハンに一本も命中せず、 ゴハンも呆れて何もせずに帰った。

悪運の強さならば誰にも負けておらず、 スキンヘッドの頭には傷は一つも無い。

ゾーバとも顔見知りだが実力からではなく見ていて面白いからである。

そんな彼だがスシブレーダーとしての実力は高い。

 

使用スシブレード:ワサビジュピター

攻撃力:C 防御力:C 機動力:C 持久力:C 重量:C 操作性:C

涙巻きのスシブレード。

中身が山葵の海苔巻きのスシブレードで特筆すべき性能は無い。

しかし中身が山葵なのでもしもこのスシブレードを打ち破ると

山葵が飛び散るので偉い事になる、 スシブレード同士の戦いなら相打ちもあり得る。

また余裕を見せる為に相手が食べた場合偉い事になる。

 

ゾーバ

もじゃもじゃドレッドヘアの巨漢。

元々、 鶴帝国で幅を利かせるギャングだったが

とある事件が原因で捕まり、 闇のスシブレーダー達の手によって逃げ出す事に成功した。

しかしゾーバの息子、 ジャバが闇のスシブレーダー達に殺された事を知り

復讐の為にファウンデーション教国に身を寄せて一兵卒となっている。

ギャングとしての経験から冷静に状況判断をして着々と進んでいる。

体が巨体なので隠れたりするのが苦手。

 

使用スシブレード:ファットプラネッツ

攻撃力:A 防御力:A 機動力:E 持久力:A 重量:S 操作性:E

太巻きのスシブレード。

極めて大きいスシブレードでかなりの重量級のスシブレードである。

また切断されても使用可能なので切断に対して耐性が有ると言って良い。



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極秘!!第六章終了時のスシの暗黒卿とヤミ・マスターのスシブレーダーとスシブレード名鑑

闇号:やみちゃん

本名:トゥーンウィ

元々はシャリ王国の片田舎の少女だったが珍しいアルビノの体質だった。

その特異性に目を付けたシャリ王国の教会が聖女に仕立て上げる為に両親を殺して拉致し

聖女として教育と改造を施した、 壮絶な人生を送っていた彼女だったが

彼女の護衛騎士に配属されたラマスのお陰でギリギリ人間らしい生活を送れた。

しかし教会の重鎮達は取り返しの付かない致命的な改造を施す危険物を摂取させようとした事を

知ったラマスの機転で教会から脱走、 その後、 闇と出会う。

闇と出会った事により闇寿司の影響で「やみ」としか喋れなくなり

やみちゃんと言う号を闇から貰う。

その後バルトに出会い彼の生き方に感銘を受けてダークネスシ帝国から離反。

良くも悪くも純粋な性格なので影響を受け易いらしい。

 

使用スシブレード:チョコソースがかかったアイスクリーム

攻撃力:SSS+ 防御力:C 機動力:B 持久力:SSS+ 重量:D 操作性:E

チョコソースがかかったアイスクリームのスシブレード。

最高級品質のアイスクリームに最高級品質のチョコソースがかかった逸品。

アイスクリーム単体でも冷気は発生させられるが

チョコソースがかかる事で糖度と冷気は増す、 冷気が増した事で床は凍り付き摩擦が低くなり

どんどん回転数を上げる事が出来る、 更に回転数と比例してどんどん冷気が強まる。

回転が強くなりすぎて自壊しない限り冷気は強くなり続ける。

一見すると無敵のスシブレードに見えるが冷気を強くし過ぎた影響で

使用したスシブレーダーにも冷気が襲い掛かり、 本体にもダメージを与える。

更に上がり続ける回転数は凍って滑って回転数が増している為

実質暴走状態にある、 その為スシブレーダーの意思で止める事は出来ず

止める為にはやみちゃんがした様に直接介入するしかない。

回転数が少なければやみちゃんも軽傷ですむが回転数が多い場合重篤な症状になる。

また冷気が弱い内に熱攻撃で溶かす等の対応をされると無力化出来る。

 

親方”闇”からの総評

人生が闇な人生だったので闇との親和性が高かった。

ただ自分の意思と言うのが弱かったのが残念、 これで確固たる自分の意志が有れば

歴代のスシの暗黒卿の中でも上位に食い込む逸材になった。

 

 

闇号:プリン

本名:ラマス

ガタイの良い中年の男性騎士のラマスの人生は教会に左右される人生だった。

元々地方領主の三男坊だったラマスは家を出て騎士になり教会の教会騎士として過ごした。

教会のシスターと恋仲に落ち、 結婚したが待望の娘が難産でその後妻が死亡。

子供も病弱だったが教会のサポートで生き永らえる、 教会は彼の娘をシンボルとした

難病の子供を支援する為の基金を設立した、 彼は教会に忠誠を誓ったのだった。

教会の支援の甲斐なく子供が亡くなった時に教会の上層部に呼び出される。

そこで彼は自分の娘を生きている事にしてシンボルとして活動させる為に替え玉の子供を

養子にする事を命令して来た、 ラマスは激怒して怒り狂ったが

ラマスが拒否した場合に養子として用意して来た子供とラマスの命が無い事を通達し

渋々養子を引き受ける、 養子に引き取った娘はすくすくと成長しやがて少女騎士と名を馳せる

養子の娘はラマスに良く懐き、 初めは強制だったがラマスと養子の間に絆が生まれていた。

しかし養子の娘はとある任務中に魔物との戦闘で命を落としたのだった。

その後抜け殻の様になったラマス、 情熱も無く淡々と仕事を熟し年功序列で

それなりに地位に着いた頃にある事実を知る。

彼の養子の娘は魔物と戦い怪我を負ったが治療されずに死んでいったのだった。

教会の重鎮達が彼女の死を魔王との戦いへの士気上昇の為に利用したのだった。

この事を知ったラマスは教会に反旗を翻す事を決意し、 教会に表向きは従いながら

様々な教会の悪事を調べ上げて行った、 しかし裏事情に近付き過ぎた彼は

左遷の様な形でトゥーンウィの護衛騎士となる、 トゥーンウィが二人の娘と重なり

彼女を守る事を最優先として活動した、 その後トゥーンウィと教会を脱走し

闇と交戦する、 軽くあしらわれたがトゥーンウィを守ろうとする心の強さを買われ

闇のスシブレーダーとなる、 しかしトゥーンウィが前線に出る事に複雑な心境になっていた。

トゥーンウィがバルトに出会い彼の生き方に感銘を受けてダークネスシ帝国から離反した事により

彼も離反した、 トゥーンウィを第一に考えている為、 彼女に害をなすのならば

ファウンデーション教国をも敵にしかねない。

 

使用スシブレード:プリン

攻撃力:C 防御力:B 機動力:D 持久力:B 重量:B 操作性:C

プリンのスシブレード。

ディフェンシブなスシブレードで特に特徴は無いが

アイスクリームとコンボが出来る様にチューンされていた高級品。

トゥーンウィも好んで食べていた。

 

親方”闇”からの総評

目的の為に嫌な相手に頭を下げて従いながら反撃の機会を伺っていた。

回りくどいが目的意識の高さは素直に賞賛出来る。

目的の為に手段を択ばないのは闇のスシブレーダーの素質が有るが

他者の為に自己を殺すのは頂けない。

しかし闇のパワーは有ったので闇のスシブレーダーとして大成出来たと思う。

 

 

闇号:ビア

本名:マーウィゴー・ジェットスター

ビアはその恰好が指し示す通り元ウェイトレスだった。

街の酒場の看板娘で笑顔が眩しい少女だった。

しかしその笑顔の裏では玉の輿に乗ろうと画策し貴族階級のお坊ちゃんと結婚か

何処かの家に養子に入りたいと強く切望していた。

そんな時にシャリ王国が闇によって占拠され、 闇のスシブレーダー募集の触れが出た。

闇のスシブレーダーになれば良い家柄の人とも近づけて自分の望みも叶うかもしれないと

闇のスシブレーダーになった、 そんな折に丁度娘を欲しがっていた

貴族階級の鞘とマッチングしジェットスター家の跡取り娘になった。

鞘と相性が良く、 鞘共々ヤミ・マスターになる位には優秀。

またこっそり手に入れた違法薬物で鞘を強化したりしている。

ジーオノシス平原での戦いからは無事離脱出来た模様。

 

使用スシブレード:ビール

攻撃力:E 防御力:C 機動力:B 持久力:E 重量:C 操作性:S

ビールのスシブレード。

攻撃力は皆無だが周囲にアルコールを散布して相手を酔わせる効果がある。

酒類のスシブレードの中では泡立ちが激しい分、 酔いが回るのは早いが消費も早い。

他のスシブレードと組んで真価を発揮するスシブレード。

 

親方”闇”からの総評

チャレンジ精神旺盛な娘。

闇のスシブレーダーになって夢を掴んだ。

まさにダークネスシドリームと言う奴か。

目的の為に行動する奴は好き。

 

 

闇号:鞘

本名:デクスター・ジェットスター

鞘は貴族でそれなりに平凡に暮らしていた。

妻を娶り、 かわいらしい一人娘を愛でていた。

愛でて愛でて30年、 可愛がった一人娘は我儘放題の醜い30越えのおばさんになっていた。

社交界でも自分勝手に過ごし嫁の貰い手が無かった。

鞘は娘に対し諫めたが娘はそれを聞かず逆上した鞘は娘を殺害した。

娘を殺した所で鞘は『自分で自分の跡取りを殺してしまった!!』と気が付いた。

困った鞘は新しい跡取りを探す事にした、 新しい子供を作っても

可愛がった娘が酷い事になったのだからもっと優秀な子供を貰えば良い

そう考えて養子を募ったが優秀な子供が見つからない。

そんな中に闇と出会う、 闇に力を貸す代わりに良い娘を見繕って欲しいと依頼する。

そして丁度良く貴族の娘になりたいと思っていたビアとマッチングされて

無事跡取り娘を手に入れる事に成功した。

目的を果たしたので早くドロップアウトしたい所だが

ビアが前線に出たがるためそうも言っていられないのが現状である

とは言えビア共々ヤミ・マスターになる位には優秀。

ジーオノシス平原での戦いからは無事離脱出来た模様。

 

使用スシブレード:さやえんどう

攻撃力:C 防御力:D 機動力:A 持久力:E 重量:E 操作性:S

さやえんどうのスシブレード。

器にさやえんどうが幾つか盛られており

拡散して周囲にさやえんどうを撒き散らして攻撃する。

攪乱用のスシブレードだがビールと特に相性が良く。

ビールで酔った相手に攻撃を加えて相手にパニックを起こす事が出来る。

 

親方”闇”からの総評

可愛がり過ぎた娘さんがかわいそうだ。

兄貴に無理矢理鍛えられた俺だが、 甘やかしすぎるのも問題だな。

今の娘は寧ろコイツを引っ張るタイプだから安心出来る。

 

 

 

闇号:フォビドォン・フルーツ

本名:エグゾゴース

顔の下半分を包帯で隠した小柄な男。

かなりの戦闘狂で裏社会で壮絶な人生を送っていた。

とある麻薬農場で警備をしていたが戦えない事にフラストレーションが溜まり

何度か諍いを起こす、 そんな所を闇に拾われ闇のスシブレーダーになる。

趣味は自家農園、 麻薬農場の片隅に勝手に栽培していたらしい。

ジーオノシス平原での戦いからは無事離脱出来た模様。

 

使用スシブレード:メロン

攻撃力:A 防御力:A 機動力:S 持久力:A 重量:A 操作性:E

メロンのスシブレード。

自家農園で造りだしたメロン、 回しやすいこぶりなメロンだが

それでも並のスシと比べて圧倒的質量を誇る。

球形なので転がる力が働く為、 本来の操作性は低く真っ直ぐにしか移動できないのだが

フォビドゥン・フルーツは闇のパワーで自由自在に操る事が出来る。

 

親方”闇”からの総評

かなりの有望株。

戦闘狂でスシブレーダーだがスシブレードのみに頼らない節操の無さが好印象。

もっと鍛え上げればスシの暗黒卿になるのも夢では無い。

 

 

闇号:アリアリ

本名:スリーン

アリアリは中年の小柄な禿の男でその外見から

彼がヤミ・マスターだと伺い知るのは難しい。

事実彼は特筆する所は無い、 彼の人生は特に特筆する所は無い。

その日暮らしをしつつ一発逆転を夢見た市民が

闇のスシブレーダーになり才覚を見出され出世した典型例である。

毎日のフラストレーションが闇寿司とリンクしたのだろう。

ジーオノシス平原での戦いからは無事離脱出来た模様。

 

使用スシブレード:コーヒー(砂糖とミルクアリアリ)

攻撃力:A(瞬間的にS) 防御力:A 機動力:C 持久力:E 重量:C 操作性:C

砂糖とミルクアリアリのコーヒーのスシブレード。

通常のホットコーヒーと同じと思うなかれ

砂糖とミルクを闇のパワーで反応させて温度を上昇させて

生魚のスシブレードを一瞬にして火を通す事が出来るのだ。

またその気になれば反応熱を極大に上げる事で熱兵器としても使用可能である。

その場合、 熱が早く下がる為、 一発使い切りの必殺技である。

 

親方”闇”からの総評

思い通りにならない毎日のフラストレーション、 それこそがアリアリの原動力なのだろう。

ならば良い生活が出来ている現状が彼のモチベーションを下げないか心配。

 

闇号:フレンドリーファイア

本名:ムスタファ

笠を被っている壮年の男性でシャリ王国の最も不名誉な将軍として知られる男。

彼の号は彼の仇名である、 その名の通り彼は味方すら巻き込む様な戦いを好んで行っていた。

無論、 彼は軍事裁判に何度もかけられるが彼は貴族を巻き込まない様に慎重に行動し

更に教会に多大な寄付をしていた為、 彼の行動による死者は過剰に賛美され

彼の裁判による謹慎は彼自身が死者への黙祷の為に取った自発的な物として広められた。

そんな事をしていたフレンドリーファイアだったが当然ながら下から恨まれ

闇のスシブレーダーとなった部下達に殺されかける

闇に庇護を求め、 彼自身の闇のスシブレーダーとなり、 部下達を返り討ちにしながら

ヤミ・マスターとなった、 彼は自身が部下を殺す度、 自分が強くなる事を実感した

そして彼はやみちゃんに対して勝負を挑んだのだった。

闇のスシブレーダーにとって下剋上は当たり前の行為である。

しかしやみちゃんの強さを見誤った彼は無惨にも氷の彫像となりその命を終えたのだった。

 

使用スシブレード:マヨコーン

攻撃力:B 防御力:C 機動力:B~C 持久力:D 重量:D 操作性:B

マヨコーンのスシブレード。

縦回転してコーンを撒き散らして攻撃するスシブレードだが

フレンドリーファイアは自在に横回転に切り替えて

撒き散らすタイミングを見計らう事をしていた。

 

親方”闇”からの総評

部下からの恨みを買い過ぎてスシブレーダーとしての戦闘経験は相当多い

ある意味幸運なスシブレーダー、 とは言え実力差を測れなかったのは致命的だし実際死因だ。

来世に期待。



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極秘!!第六章終了時のヤミ・アプレンティス(故)のスシブレーダーとスシブレード名鑑

闇号:ネギ乗せ

本名:ナードニス・プラージ

金髪の青年で騎士学園から卒業し新卒採用された騎士だった。

騎士時代は平々凡々で可もなく不可も無かったがスシブレードと出会い

ソルジャースシの一人になる、 その後戦闘を重ね

ヤミ・アプレンティスにまで上り詰める。

彼に与えられたスシブレードはソルジャースシ時代のカルビ寿司をカスタムした物だったが

それでも実力は並のソルジャースシとは比較にならなかった。

ソルジャースシを率いてファウンデーション教国に攻め込むもバルトに敗北し戦死した。

 

使用スシブレード:ネギ乗せカルビ

攻撃力:C 防御力:C 機動力:B 持久力:C 重量:C 操作性:C

カルビ寿司にネギが乗ったスシブレード。

通常のカルビ寿司と比べて機動力が増している。

カルビ寿司に慣れた者ならば充分にポテンシャルが発揮出来るだろう。

 

親方”闇”からの総評

ヤミ・アプレンティスの中ではまだまだ未熟だったが

スシブレードで力を振う快感を覚えてまだまだ強くなる有望株だった。

ヴォルフガングが使い潰したのが痛い。

 

 

闇号:ガーリックマヨ

本名:ブランガス

白い衣裳に身に纏った悪い目つきの男。

旅をしながら小銭を稼ぐ風来人だったがスシブレードと出会い闇寿司に魅入られ

やがて上位のスシブレーダーになる事を切望する。

上手くやったマヨラーを倒してその椅子に座る為にカリフォルニアロールと共に

マヨラーを襲撃するがカリフォルニアロール共々殺される。

 

使用スシブレード:イカ天のガーリックマヨかけ

攻撃力:B 防御力:B 機動力:D 持久力:C 重量:B 操作性:D

イカ天のガーリックマヨかけのスシブレード。

重量が有るタイプのスシブレードで熱が加わっている為、 熱に強い。

更にガーリックマヨで滑らかさもアップしている。

 

親方”闇”からの総評

あまり印象に残らない奴だった。

 

 

闇号:カリフォルニアロール

本名:グリー・ネイムス

赤いメッシュの男。

元々は王族の近衛部隊の隊員だった。

家柄だけで大した実力は無かったが、 近衛部隊が精神酢飯漬けにされた際に

耐性が有ったのか洗脳を免れる。

しかし大局を変える力も意思も持たない為に闇寿司に加担する。

えぇおい、 と言うのが口癖であり相手を煽る。

カリフォルニアロールと合わせて相手を操る為の手口と考えられる。

上手くやったマヨラーを倒してその椅子に座る為にガーリックマヨと共に

マヨラーを襲撃するがガーリックマヨ共々殺される。

 

使用スシブレード:カリフォルニアロール

攻撃力:D 防御力:D 機動力:B 持久力:D 重量:B 操作性:B

カリフォルニアロールのスシブレード。

重大な欠点が無く素直で扱いやすいが他の巻き寿司に比べると

外殻となる海苔が存在しないため攻撃防御ともに劣る。

また精神酢飯漬けによる精神攻撃も使用可能。

 

親方”闇”からの総評

精神酢飯漬けに対して耐性が有ったのは驚いたが素直に従ってくれたいい子。

ただ口の聞き方が悪い。

 

 

闇号:タン

本名:パチウェンコ

一見すると普通の男だが闇寿司の影響で舌が長く変異している。

嬉しい事が有ると舌で自分の顔を舐め回す癖がある。

貧民の出で大物スシブレーダーになって一山当てる為に手柄を欲していた。

ジーオノシス平原での戦闘での開戦の火蓋を切ったが目立った活躍が出来なかった。

それ所か前に出過ぎた為、 撤退時に逃げ損ねて戦死した。

 

使用スシブレード:タン

攻撃力:C 防御力:B 機動力:C 持久力:C 重量:C 操作性:b

焼いたタンのスシブレード。

カルビよりも平べったく防御力が有るが誤差と言って良い。

盾をカチ上げたり守りを固めた相手には有効打になりやすい、 か?

 

親方”闇”からの総評

ハングリー精神は認めるがもっと頭を使おう。

 

 

闇号:マヨラー

本名:カーギー

白の巻き毛でぽっちゃり系の男子。

闇のスシブレーダーになる以前からフレンドリーファイアの副官を自称している太鼓持ち。

フレンドリーファイアの部隊を受け継ぐ等、 ちゃっかりしている。

野心家で何れヤミ・マスターになり上がる夢を持っていたが

ジーオノシス平原での戦闘でゾーバと接敵し気絶。

その後、 ゾーバとフォビドォン・フルーツとの戦いに巻き込まれて死亡

 

使用スシブレード:マヨコーン

攻撃力:B 防御力:C 機動力:C 持久力:D 重量:D 操作性:B

マヨコーンのスシブレード。

縦回転してコーンを撒き散らして攻撃するスシブレード。

フレンドリーファイアと違って回転の変更は出来ない。

 

親方”闇”からの総評

フレンドリーファイアと同じマヨコーンを使うが

フレンドリーファイアよりも面白味が無い、 多くを望み過ぎたな。

それ自体は悪い事では無いが研鑽が必要だった。

 

 

闇号:オニオン

本名:トレイダム・ポール

おどおどとした年若い少女。

しかし彼女は人づきあいが苦手なだけで気弱な性格では無い。

ポール家は代々シャリ王国の軍事行動で開戦の鏑矢を討つ

重要な役割を担っていた一族で彼女も矢を得意とする

しかしスシブレードの方が殺傷能力が高いのでスシブレーダーに転向している。

また彼女には鏑矢で救援を要請する権限も与えられていた。

ゾーバとの戦闘時に逃げ出し、 フォビドゥン・フルーツに景気づけで殺害される。

 

使用スシブレード:オニオンのせサーモン

攻撃力:B~C 防御力:C 機動力:B~C 持久力:B~C 重量:B 操作性:C

オニオンがのったサーモンのスシブレード。

自身の油分をシャリに浸透させる事で摩擦力を減らした高速回転が持ち味のサーモンの上に

玉ねぎをトッピングする事で高速回転時に玉ねぎをばら撒いて攻撃する事が出来る。

 

親方”闇”からの総評

あまり話した事も無いから分からない。

 

 

闇号:カルパッチョ

本名:レイン・ザナー

ストレートな水色の長髪の少女、 それがカルパッチョである。

彼女はやる気の無さそうな顔をしているが彼女の中に渦巻く闇は凄まじい。

元々彼女は騎士学園の生徒会書記だった。

そこで彼女は幼馴染で生徒会長のネビットと共に学園生活を過ごしていた。

ネビットと同姓だが性的な意味で好意を抱いている同性愛者である。

ネビットを守る為にネビットに近付く相手に汚名を着せて

ネビットから遠ざける事をしており中には汚名が原因で自殺に追い込んだ事も有る。

カルパッチョの行動原理の全てはネビットの為であり自分はネビットの守護者だと本気で信じていた。

そんなある時、 シャリーラ13世が王位を継承、 闇のスシブレーダー中心の

軍の改革路線が始まり、 騎士学園もその改革に巻き込まれる形となった。

ネビットはそんなシャリーラ13世のやり方に反発、 心ある貴族達と共に

騎士学園を拠点に反攻作戦を目論んだ、 しかしカルパッチョは

ネビットに負担がかかり、 更にネビットの命の危険が有ると危惧。

裏で闇とコンタクトを取りネビットを裏切って騎士学園を陥落させる。

ネビットの命を救った事を切欠にネビットに愛の告白をする。

「地獄に堕ちろ」と闇のスシブレーダーとなった自分を気遣って冷たく接するネビットを

深く愛おしいと思ったカルパッチョ、 ネビットの為にもっと出世する為に

手柄を欲したカルパッチョ、 自分の留守中の世話を闇に任せて戦場に出る毎日。

しかし帰ればネビットが居るのだから幸せじゃない筈が無い。

だが運命は非情でカルパッチョがゾーバとの戦闘時に逃げ出した後に

フォビドゥン・フルーツに景気づけで殺害される。

彼女は最期まで恋人の事を想っていた。

 

使用スシブレード:カルパッチョ

攻撃力:B 防御力:C 機動力:B 持久力:C 重量:B 操作性:B

カルパッチョのスシブレード。

オニオンがのったサーモンのスシブレードとよく似た性能を持つが此方の方が安定する。

 

親方”闇”からの総評

恋する乙女は無敵だなぁ

しかし彼女が死んだからネビットの事は好きにさせて貰おう

死後の世界で一緒になれると良いな

 

 

 

闇号:ガーリックシュリンプ

本名:ザブウェン

縦ロールのお嬢様の様な恰好の女性

元々彼女は騎士学園の副生徒会長だった。

会長選挙でネビットに敗北してから彼女に対抗心を燃やしていた。

軍の改革路線が始まり、 騎士学園もその改革に巻き込まれる形となった。

ネビットはそんなシャリーラ13世のやり方に反発

心ある貴族達と共に騎士学園を拠点に反攻作戦を目論んだ

ガーリックシュリンプはネビットを追い落とすチャンスと考え

闇のスシブレーダーとコンタクトを取り騎士学園を陥落させようと目論む。

しかしカルパッチョが闇と直接交渉し先に騎士学園を陥落させた為

折角の手柄がふいになる、 その事からカルパッチョに対抗意識を持つようになったが

ネビットがカルパッチョに軟禁されている事を知りヤバい奴と距離を取られる。

ジーオノシス平原での戦闘でゾーバと接敵し気絶。

その後、 ゾーバとフォビドォン・フルーツとの戦いに巻き込まれて死亡

 

使用スシブレード:ガーリックシュリンプ

攻撃力:A 防御力:D 機動力:C 持久力:C 重量:B 操作性:B

ガーリックシュリンプのスシブレード。

器に盛られたガーリックシュリンプを射出する事が出来る。

イクラリオンと同様に射出する度に回転数は落ちる。

 

親方”闇”からの総評

中々筋は良かったが見た目と違いあまり花の無い子。

 

 

闇号:チキンライス

本名:ビーカン

荒々しいならず者の様な男。

元々は山賊の頭領だったが闇のスシブレーダーにアジトを襲撃されて山賊ごと取り込まれる。

ジーオノシス平原での戦闘でソルジャースシ達を引き連れて特攻し死亡

 

使用スシブレード:チキンライス

攻撃力:B 防御力:B 機動力:D 持久力:B 重量:B 操作性:D

チキンライスのスシブレード。

瓶に入っておりチキンライスが詰まっている。

遅いがパワーの有るスシブレード。

 

親方”闇”からの総評

荒々し過ぎて特攻をしたのが不味かった。

次の人生に期待。

 

 

闇号:コーラ

本名:モーラドミン・バスト

コーラは長身の美しい男性だったが、 過去の戦いにより頭部に怪我をしてしまった。

その事を隠す為に鬘を被っている、 注意深く見れば彼が鬘なのが理解出来るが

それよりも彼の言動は「○○!! ○○!! ○○!!」と言う連呼する物なので

彼の言動に気を取られて鬘は気にならないだろう。

彼がこの言動になった理由は頭部の損傷による物である。

彼は貴族の嫡男だったがある時とある女性に恋をしたが

しかしその女性には婚約者が居た、 コーラは相手の家柄が自分よりも下だと思い

構わず襲い掛かったが婚約者に止められた。

婚約者はコーラよりもガタイが良く簡単に止められた。

コーラは謹慎処分を受けたが納得出来ず、 闇と接触して闇のスシブレーダーになった。

闇のスシブレーダーになったコーラは改めて恋した女性の元に行くが

恋した女性も闇のスシブレーダーとなっていて、 頭部にスシブレードを叩き込まれ現在に至る。

手柄を求めてジーオノシス平原での戦闘で前に出過ぎ、 撤退時に逃げ遅れて死亡。

 

使用スシブレード:コーラ

攻撃力:E 防御力:E 機動力:C 持久力:D 重量:D 操作性:C

コーラのスシブレード。

カルビ以上に安上がりなスシブレードだがカルビ以上に弱く

実戦に耐えられる代物では無い。

酒類の様な相手を酩酊させる事も無い。

 

親方”闇”からの総評

適性は有ったがコイツが横恋慕していた二人の方が闇のスシブレードの適性が有ったので

そっちを優先した、 コーラと言う如何しようも無いスシブレードで成り上がれたら

認めてやろうと思ったがやっぱ駄目だったか

 

 

闇号:白水

本名:コナン・ザ

銀の短髪の女性。

彼女は元々、 シャリ王国でそれなりに高い地位に居たが

家柄のみで能力が無かった為に闇が着た事によりその地位を追われる。

闇のスシブレーダーとなって返り咲きを狙う。

手柄を求めてジーオノシス平原での戦闘で前に出過ぎ、 撤退時に逃げ遅れて死亡。

 

使用スシブレード:白水

攻撃力:E 防御力:D 機動力:B 持久力:E 重量:D 操作性:C

酒類の一種、 白水のスシブレード。

麦焼酎と米焼酎の二種類がありブレンドしてある。

相手をアルコールで酩酊させる。

 

親方”闇”からの総評

誰だっけこいつ

 

 

闇号:黒霧島

本名:モッティ

黒い長髪のクールビューティーである。

しかし彼女の本性は残虐で独善的な性格である。

元々はシャリ王国の地方裁判官だったが地方機関と結託して

賞金稼ぎ達が持って来た賞金首を横領し、 賞金首を殺して金銭を奪っていた。

黒霧島は奪い取った一部を孤児院に寄付し

『自分は恵まれない子供達の為に荒くれ者を殺している善人』と本気で信じていた。

だが悪事がバレて斬首を待っている間に

司法取引で闇のスシブレーダーとして戦う事で無罪放免になった。

スシブレードが酒なのは賞金首を殺す際に酩酊させていた時の名残らしい。

手柄を求めてジーオノシス平原での戦闘で前に出過ぎ、 撤退時に逃げ遅れて死亡。

 

使用スシブレード:黒霧島

攻撃力:E 防御力:D 機動力:C 持久力:E 重量:D 操作性:C

酒類の一種、 黒霧島のスシブレード。

黒麹仕込み由来のトロッとした甘み

スッキリとした後切れの良さを持ち、 香りに癖がなく非常に飲みやすい。

相手をアルコールで酩酊させる。

 

親方”闇”からの総評

自分がやっている事を殺人だと認識していない馬鹿。

押し込み強盗の方がまだ潔い。

 

 

闇号:ゴーカイ

本名:アントニオ

大柄で豪快な大男。

元々、 ダースシ・オーモリの所で働いていた漁師だったが

前々から酒癖が悪かった為に放逐される。

手柄を求めてジーオノシス平原での戦闘で前に出過ぎ、 撤退時に逃げ遅れて死亡。

 

使用スシブレード:豪快

攻撃力:E 防御力:D 機動力:C 持久力:E 重量:D 操作性:C

酒類の一種、 豪快のスシブレード。

凛としてすっきりしたのどごしが特徴で特に燗を付けた時に燗映えする清酒。

相手をアルコールで酩酊させる。

 

親方”闇”からの総評

酒を呑まなければ良い人、 なので酒を呑まなければ良かったのに。



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第七章:鮮血のオルフェンズ
極秘!!第六章終了時のヤミ・アプレンティスのスシブレーダーとスシブレード名鑑


闇号:ポテト5兄弟

本名:フィグリン・ダン

フライドポテトをイメージした刺々しい髪型をしている男。

ポテト5兄弟は貧民街の育ちで貧しい生活を送っていた五つ子である。

貧民街の五つ子は育てる親が大変そうだが両親は口減らしをする事は無く

寧ろ五人も育てられるのは良い事だと思っていた。

五人に連携を取る事を叩き込み、 言葉ですら五人で分担して喋る様に教育した。

名前ですら五人全員に同じ名前を付ける徹底ぶり。

その結果、 彼等は五人でスムーズに行動する事が出来

単純計算で普通の人間の五倍の行動力を持つ彼等は貧民街で敵無しだった。

そんな噂を聞きつけた闇がスカウトし闇のスシブレーダーとなった。

ヤミ・アプレンティスだが五人合わさればヤミ・マスター相当の力を誇る。

ジーオノシス平原の戦いでは全体的に目立った功績を上げて引き際も鮮やかで生き残る事に成功した。

 

使用スシブレード:フライドポテト

攻撃力:A 防御力:E 機動力:C 持久力:E 重量:D 操作性:A

フライドポテトのスシブレード。

フライドポテトを拡散して相手を攻撃する使い切りタイプのスシブレード。

ポテト5兄弟はそれぞれフライドポテトのカットや味付けに拘りが有る為

微妙に差異はある。

 

親方”闇”からの総評

中々無い発想、 彼等の親には先見の明が有った。

お亡くなりになっているのが残念。

 

 

闇号:ハイボール

本名:オーワン・デ・マル

顔色の悪い禿げ頭。

これは変装を容易にする為の物であり、 鬘などを被ったりする。

本来はダークネスシ帝国に所属していない闇のスシブレーダーで密輸業者をやっている。

密輸の際に便宜を図ると言う約定で一時的にダークネスシ帝国に協力している。

その為、 やる気が無かった。

ジーオノシス平原の戦いでは命令されなかったので陣の中程で待機。

撤退命令が出たのでそのまま撤退して生き残った。

 

使用スシブレード:ハイボール

攻撃力:E 防御力:C 機動力:D 持久力:D 重量:D 操作性:D

ハイボールのスシブレード。

中に氷が入っているので通常の酒類スシブレードと異なり

アルコールで酔わせる以外に若干の冷気攻撃が出来る。

 

親方”闇”からの総評

強くは無いが強かな男、 見習いたい。

 

 

闇号:五目

本名:チャチ・デ・マル

顔色の悪い禿げ頭。

これは変装を容易にする為の物であり、 鬘などを被ったりする。

本来はダークネスシ帝国に所属していない闇のスシブレーダーで密輸業者をやっている。

ハイボールとは元夫婦だが姓は戻していない、 所謂偽名。

密輸の際に便宜を図ると言う約定で一時的にダークネスシ帝国に協力している。

その為、 やる気が無かった。

ジーオノシス平原の戦いでは命令されなかったので陣の中程で待機。

撤退命令が出たのでそのまま撤退して生き残った。

 

使用スシブレード:五目御飯

攻撃力:B 防御力:B 機動力:D 持久力:B 重量:B 操作性:D

五目御飯のスシブレード。

瓶に入っており五目御飯が詰まっている。

遅いがパワーの有るスシブレード。

 

親方”闇”からの総評

姓を戻していないのはちょっと不気味、 女って怖い。

 

 

闇号:ワラビー

本名:エンフィールド

表情筋が死んでいると形容される男性。

元々貴族の従者だったらしいがそこでの経験から無表情になってしまったらしい。

シャリ王国の王族に気に入られ、 王族の従者となるも無表情は変わらなかった。

シャリーラ13世が即位する時に他の王族が死ぬ時も微動だにしなかった為に闇に気に入られるも

内心殺されるんじゃないかとびくびくしていた。

闇のスシブレーダーとしての才能があり、 ヤミ・アプレンティスになった後も

部下達に下剋上されるのでは無いかと内心震えながらも無表情で振舞った。

部下からも無表情さから強者と認識され持ち上げられる。

ジーオノシス平原の戦いでも内心震えあがっていたが

強い冷気が襲って来たのと同時にトリニティとワラビーと共に即撤退し生き残る。

帰国後、 戦場の恐怖に耐えられずに退職し市井に下った。

元部下達は行動から『敗戦を予期して戦争責任を追及されない様にしているのか?』と疑われている。

 

使用スシブレード:わらび餅

攻撃力:E 防御力:A 機動力:D 持久力:A 重量:D 操作性:C

わらび餅のスシブレード。

もちもち加減で防御力が高く、 更にきな粉でくっつかない様にしている。

攻撃力が低い為、 攻撃役が必要な所が難点。

 

親方”闇”からの総評

無表情だからと鉄面皮かと思ったらそんな事は無かった。

 

 

闇号:タツタァーゲ

本名:グレンウィック

何時も不機嫌な顔をしている男。

日常生活が平凡でつまらないと感じていた彼は闇のスシブレーダー募集に食い付いた。

闇のスシブレーダーとなり、 ヤミ・アプレンティスとなった彼は

初めての戦場としてジーオノシス平原の戦いの戦いに参陣した。

しかし初めての実戦は思った以上に激しく体が恐怖ですくみ上り

突然襲って来た冷気に怯えて逃げ出してしまった。

 

使用スシブレード:竜田揚げ

攻撃力:B 防御力:B 機動力:B 持久力:B 重量:B 操作性:D

竜田揚げのスシブレード。

油で揚げられており香ばしく装甲が厚い。

攻撃力もまぁまぁ有るバランスの良いスシブレード。

 

親方”闇”からの総評

逃げ切れるかな?

 

 

闇号:トリニティ

本名:リーサブ・サーリン

弁髪の女性で物静かで大人しい。

元々はシャリ王国の教会に勤めていたが教会の腐敗に落胆。

闇のスシブレーダーと共謀して教会の施設を明け渡す。

その後、 闇のスシブレーダーとなったがあまり昇進には興味が無い様だ。

ジーオノシス平原の戦いの戦いでもその気質が発揮されて特に動く事は無かった

強い冷気が襲った時にワラビー、 あがりと共に撤退した。

 

使用スシブレード:三食団子

攻撃力:B 防御力:B 機動力:D 持久力:D 重量:B 操作性:A

三食団子のスシブレード。

三回だけ団子を発射して相手に強力な攻撃が出来る。

当然ながら三回発射したら唯の棒である。

 

親方”闇”からの総評

自分に厳しいのは好感が持てるが上昇志向が無いのがネック。

 

 

闇号:あがり

本名:マーク・サンレット

気難しい老人男性。

それもその筈、 彼は貴族の家のセキュリティが安全か如何かを調べる仕事に就いていた。

その為、 裏社会からセキュリティの情報を強請られる等の気苦労の絶えない人生を送っていた。

彼がこの年まで生きて来れたのは自分の家にも強力なセキュリティを仕掛けていたからである。

天性のひきこもりの彼だったがスシブレードと言う強力な武器の登場で

自分のセキュリティが破られる事を危惧し、 それならばと自分のスシブレードを始める事を決意した。

スシブレーダーとしてはヤミ・アプレンティスの中でも実力者だが寄る年波には勝てず

ジーオノシス平原の戦いの戦いでも体調を理由に動かず。

強い冷気が襲った時にワラビー、 トリニティと共に撤退した。

撤退時も歳のせいで難儀したらしい。

逃げた後、 年齢を理由に職を辞す、 とは言えスシブレードの研鑽は怠らない様だ。

 

使用スシブレード:あがり

攻撃力:A 防御力:D 機動力:E 持久力:D 重量:D 操作性:B

お茶のスシブレード。

とても熱く攻撃に熱が加わっており、 生魚のスシに対して有効に働く。

 

親方”闇”からの総評

歳を取っても戦うチャレンジ精神は見習いたい。

 

 

闇号:ホットコーヒー

本名:イールホイ

チビの男で弟共にホット&コールドブラザーズを名乗っている。

両親から不当に差別されて育った過去が有る。

弟のアイスコーヒーはまともな性格で二人で何時か両親を殺す事を目論んでいた。

二人が成人した時に弟と共謀し事故に見せかけて両親を殺害。

その後、 普通に生活していたが結婚した弟の嫁が駆け落ちして逃げ出す。

そして逃げ出した嫁を殺して刑務所に入る。

刑務所で闇と司法取引で闇のスシブレーダーとして働く事で釈放される。

半ば無理強いで働かされている身だが上昇志向に溢れて弟とコンビを組んで活躍する

やみちゃんの冷気で自身のホットコーヒーが冷めても戦ったが

勝てる筈も無くラルフとグリードに阻まれ敗走する。

 

使用スシブレード:ホットコーヒー

攻撃力:B 防御力:D 機動力:A 持久力:D 重量:D 操作性:B

ホットコーヒーのスシブレード。

熱が有るタイプのスシブレードで熱い程にスピードが増す。

手数で圧倒するタイプ。

 

親方”闇”からの総評

中々上昇志向に溢れるいい子、 有望株。

 

 

闇号:アイスコーヒー

本名:エンジケット

ノッポの男で兄共にホット&コールドブラザーズを名乗っている。

両親から甘やかされて育てられたが兄に対し不当な差別を行っている両親に強い不信感を抱く。

兄と共に二人で何時か両親を殺す事を目論んでいた。

二人が成人した時に弟と共謀し事故に見せかけて両親を殺害。

その後、 普通に結婚し普通に生活していたが嫁が駆け落ちして逃げ出す。

呆然としていた彼だったが兄が嫁を見つけ出して殺害。

兄の為に減刑の手続きの為の裁判を行っている時に司法取引で兄は出所。

兄と共に闇のスシブレーダーとなり活躍する。

兄よりも引っ込み思案でやみちゃんの冷気で自身のホットコーヒーが冷めた時に

戦おうとした兄に驚く。

兄と共にラルフとグリードに阻まれ敗走する。

 

使用スシブレード:アイスコーヒー

攻撃力:A 防御力:B 機動力:D 持久力:D 重量:D 操作性:B

アイスコーヒーのスシブレード。

ホットコーヒーとは対照的に一撃一撃が重い。

一撃必殺タイプ。

 

親方”闇”からの総評

俺も弟だがここまで引っ込み思案じゃないなぁ・・・



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オープニング・クロール

世界は混迷の最中に突き落とされた。

ファウンデーション教国とダークネスシ帝国のジーオノシス平原での戦闘から半年後。

トゥーンウィがファウンデーション教国にやってきてからの政治的ゴタゴタも片付き

ダークネスシ帝国も大規模な軍事行動を行っていなかった。

ダークネスシ帝国への反攻作戦を各国と共に調整を進めている時に大事件が起こった!!

マナ法国の内部分裂が深刻化だ!!

マナ法国は世界の食糧庫と呼ばれる広大な農業地帯が広がる国で

食料供給の為に世界中に食料を販売している国である。

 

マナ法国内で闇寿司思想が広がっているのが内部分裂の原因の様だ。

しかしマナ法国では信教の自由が認められており闇寿司思想の普及は法律に違反していない

と言うのがマナ法国の法王ベンドゥの見解である。

 

愚かな!! 自国を蝕まれているのに何をやっているのか!!

と憤る方も居るだろう、 しかしマナ法国は誰であろうと食料を売る

いわば食料版、 死の商人の様な事を行っている国。

ダークネスシ帝国は多くの食品を買う得意先、 失う訳にはいかないのだ。

 

とはいえ放置すれば世界を征服されかねない

マナ法国に対して派兵の受け入れを行おうとするO5-1だったが

ベンドゥは流石に派兵は受け入れられないと拒否。

そこで謹慎が終わり武者修行でマナ法国に出ているサイに物資を届けると言う名目で

バルト達、 スシブレーダーチームを送り込む事に成功したのだった。

 

一方その頃、 ダークネスシ帝国から闇寿司の普及を任されている

ヤミ・マスターのインフレーションは直々にシャリーラ13世から呼び出しを受けた。

マナ法国に入ったスシの暗黒卿、 ダースシ・セキユーのサポートをする様にと言う指令である。

ダースシ・セキユーはダークネスシ帝国の活動は一切行っていないが

彼の握る寿司は闇からして絶品と称される程の物である。

インフレーションは何故自分が怠けれいるスシの暗黒卿の世話をしなればならないのか

と不満げだったがシャリーラ13世のすごみによって、 渋々従う事になった。

インフレーションの態度が気に食わなかったシャリーラ13世は

監視としてヤミ・マスターのアイラブミーもインフレーションに同行する事になったのだった。

 

インフレーションはマナ法国に戻ると信者達に闇寿司思想を拡げるのだった。

 

そしてダースシ・ヴォルフガングの元から逃げ出したレーア伯爵令嬢は

レジスタンス達と共にざるな国境警備を抜けてマナ法国に侵入する事に成功。

そこで恐るべき物を目にするのだった・・・



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パクス・ダークネスシーナ

「いいですか皆さん!! ファウンデーション教国が発展を遂げたのは

彼等が神に愛されていたからでも正義だからでもない!!

彼等が強大な軍事力を持っていたからなのです!!」

 

街中で市民達を集めて集会を行っているマナ法国の枢機卿の一人にして

ヤミ・マスター、 インフレーション、 本名はテロエンザが弁舌を振っていた。

 

「強大な力によるパクス・ファウンデーションの元、 ファウンデーション教国は

各国に教会を設置して国政に干渉して来ました!!

彼等の決めたルールの中で我々は暮らしているのです!!

しかし未だに我々は魔王の脅威から逃れられてはいない!!

パクス・ファウンデーションは我々を教国の奴隷にする制度なのです!!

だが神々は異世界から闇寿司を送って下さったのです!!

闇寿司は下剋上を認めている力の世界!!

より強き社会!! より強い正義!! より強いシステム!!

それが闇寿司です!! 我々人類が世界の覇者になる為に

そして未来に生まれてくる子供達の為にも古き弱い法を滅ぼし

新しく強い法、 パクス・ダークネスシーナで戦おうでは有りませんかみなさん!!」

 

住民から歓声が上がる。

歓声を上げているのは貧民たち、 食べる物にも困り

上に昇りたくても上には貴族が居て登れない

そんな中で登れるチャンスが有るのならば心躍らない訳が無い。

 

「如何思う?」

 

遠く離れた所から様子を伺うゴハン。

その隣にはハウが居た。

 

「色々耳障りの良い台詞を言っているが弱肉強食って事だ

弱者が悲惨な事になるのは眼に見えている」

「だな・・・宗教家と言うよりは詐欺師だ」

 

二人は溜息を吐いた。

 

「だがしかし、 だマナ法国の内部分裂は貧民だけじゃなく

貴族達の間でも闇寿司に付くべし、 という声も多いと聞く」

「つまり富裕層を取り込める材料が闇寿司に有るって居る事か?」

「かもしれない、 力を得て好き勝手したいというだけかもしれないが・・・

今、 バルトがサイの所に行っている」

「サイ? あの聖女の娘の?」

「そうだ」

「アイツスシブレードを目の仇にしてたじゃないか」

「一人じゃないから大丈夫だろう」

「バルトの他に誰が付いているんだ?」

「エミリーとグレン」

「両手に花って奴だなぁ・・・こっちはおっさんと一緒なのに」

「そうか? 女でもちょっと迷惑な部類だし、 寧ろ罰ゲームな気もしなくはない」

「まぁ仕方ないだろ、 彼女達は実力はあるんだから」

 

はははと笑い合うハウとゴハン。

 

「しかしスシブレーダー5人で大丈夫か?」

「大々的な侵攻はされていない様だから大丈夫だろう」

 

ハウは答えたのだった。



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脅威!!スシの屋台!!

「あむあむ・・・」

 

露店で買った肉の棒を食べながらグレンとバルトとエミリーが歩いていた。

 

「ねぇ、 バルト隊長、 本当にサイと会う気?

正直あの娘は死んでも良いと思っているんだけど」

「あんまりそう言う事はいうもんじゃないですよエミリーさん」

「そうだよバルト君の事も考えなよエミリー

殺す時は黙ってやるんだよ、 んぐ」

 

グレンが肉の串を一本食べた。

 

「グレンさん」

「バルト君、 サイのお母さんは本当に立派な人だったよ

シャリ王国の聖女グリアータと言えばその功績は計り知れない

まさに聖女の中の聖女だった、 それをサイの身勝手で死ぬなんて・・・」

 

ぼき、 と串を圧し折るグレン。

 

「彼女に良いイメージを持っている者は少なくないし

何時か彼女は後ろから刺されるよ

ファウンデーション教国に戻ろうが戻るまいが敵を作り易い性格だ」

「国外に出ている今の内に殺した方が良い」

「落ち着きなよ・・・そう直ぐ殺すのは良くない・・・

政治的な問題とかも有るでしょう、 一旦話をしてからにしよう」

「話になれば良いですけどね、 隊長、 貴方はサイに嫌われている」

「うっ・・・」

 

確かにサイは自分及びスシブレーダーに関してサイは眼の仇にしていた

そんな自分達にサイが協力してくれるだろうかとバルトが思いながら歩いていた。

 

「所でバルト君、 サイとの待ち合わせ場所は何処になるの?」

「えぇっと・・・ここですね」

 

サイとの待ち合わせ場所、 そこは貧民達の為の炊き出しの場所だった。

 

「ここ?」

「貧民に紛れているのか?」

 

そう思いながら歩いていると・・・

 

「!? 隊長!! あれ見て!!」

 

エミリーが貧民の持っている物を見る!! スシだ!! スシを喰っている!!

 

「スシ!? じゃ、 じゃあここは闇寿司の勢力圏内!?」

「そうじゃないよ」

 

サイが現れる、 割烹着を着ている、 炊き出しを手伝っていたのだろうか。

 

「サイ・・・さん、 これは一体・・・」

「こっちに来て、 落ち着いて座って話しましょう」

 

サイはバルト達三人を案内する。

 

「さぁここですよ」

「ここって・・・」

 

連れて来られた場所・・・それは屋台である!! スシの屋台である!!

 

「こ、 これは!?」

「へいいらっしゃい!!」

 

スシの屋台から顔を出す白い割烹着を着た中年男性の大将、 まぎれもなく寿司職人だ!!

 

「あ、 貴方は一体・・・」

「私はマラキリと言います、 闇の親方からはダースシ・セキユーとも呼ばれていますが・・・」

「セキユー・・・スシの暗黒卿!!」

「えぇ、 そう言う事になりますかね」



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食べない?ならば戦おう

スシブレードを構えるバルト達。

 

「落ち着いて下さい、 戦うつもりはありません」

 

ダースシ・セキユーは落ち着いた様子でそう言った。

まるで子供を宥める様に、 実際にセキユーの年齢からすると

バルト達は子供も良い所なのだが・・・

 

「スシの暗黒卿が戦うつもりが無い?」

「えぇ、 私の目的は唯一つ、 スシを食べさせるだけです

と言う事でどうぞ」

 

バルト達の眼の前にスシが出された。

赤い・・・肉寿司だろうか。

 

「ザクロになります、 さぁ召し上がれ」

「召し上がれって・・・」

 

流石に急に食べろと言われて食べろと言う程、 素直では無い。

 

「そうですか・・・では仕方ありませんね、 食べさせます」

「へ?」

「次元間スシ・フィールド展開!!」

 

セキユーが叫ぶと周囲の空間が捩れて次元間スシ・フィールドが展開される。

辺り一面の闇、 闇の中でぽつんと台座が置かれている。

 

「・・・スシブレードで戦えと?」

「えぇ、 私が勝ったらスシを食べて貰う」

「・・・僕が勝ったら?」

「貴方は私には勝てない」

「・・・・・良いでしょう」

 

エッグヴィーナスを構えるバルト。

 

「待った、 隊長自らが出る事は無い、 ここは私が行こう」

 

ジュエリー・ボックスを構えるエミリー。

 

「誰が相手でも一緒ですよ」

「言ったなぁ!! 行くぞ!! 3, 2, 1、 へいらっしゃい!!」

 

スシブレードを互いに放つセキユーとエミリー。

セキユーのスシブレードは先程のザクロと言う肉寿司。

エミリーのジュエリー・ボックスは12個の寿司が展開するスシブレード!!

ファウンデーション教国でも最強と呼ばれるその実力は如何に!!

 

「いっけえええええええええ!!」

 

12個の寿司が箱から飛び出す。

 

「むっ・・・ならば・・・」

 

ザクロは的確に全ての攻撃を躱す。

 

「な、 ならば・・・包囲!!」

 

展開された12個のスシブレードがザクロを取り囲む!!

完璧な包囲陣!! しかし!!

 

「飛ぶんだ!!」

「え」

 

ザクロは飛び跳ねた!!

 

「嘘でしょ!?」

「馬鹿な!?」

 

飛び跳ねるスシ等前代未聞だ!!

 

「これが闇のパワーですよ、 まだやりますか?」

「まだ包囲が解かれただけ・・・まだ・・・」

「・・・そうですか、 では少しだけ本気になりましょう」

 

ふっ、 とザクロが消える、 そして12個の寿司が一気に粉砕された!!

 

「ば、 馬鹿な!!」

「さぁ私の勝利です、 ザクロを食べて貰いましょう」

 

ザクロ寿司がエミリーの口目掛けて飛び跳ねる。

 

「危ない!!」

 

エミリーを守る為にバルトがエミリーの前に立つ、 そしてバルトの口の中にザクロが入る。

 

「むぐ・・・むぐ・・・!!」

「た、 隊長!!」

「だ、 大丈夫かい!?」

「うん、 おいしい」

 

美味しかった様だ。



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美味しいスシを召し上がれ

次元間スシ・フィールドが解かれる。

 

「私はね確かにスシの暗黒卿だよ

でも私はね、 戦いが嫌いなんだ、 私はスシを食べて貰いたい、 それだけなんだよ」

 

にこりと笑うセキユー。

 

「・・・と言う事は貴方はダークネスシ帝国とは関係が無い?」

「いや? 帝国からは資金援助を受けている代わりに

何処何処で店を開いてくれと言う指示が出ている

今回はサイさんが協力してくれて屋台で炊き出しをする事になった」

「・・・サイさん、 どういう事ですか?」

 

エミリーがサイを睨む。

 

「その前に謝らせて頂戴、 ごめんなさい」

 

土下座をするサイ。

 

「・・・どういう事ですか、 一体」

「私は貴方達スシブレーダーを可笑しな連中だと勘違いしていた

でもスシって本当に奥深い物だと分かったの

そのスシの奥深さを教えてくれたのがセキユーさん」

「・・・・・どういう事ですか?」

「私は最初セキユーさんを殺そうとしたの」

「スシの暗黒卿ですからね、 殺そうとするのは仕方が無い・・・」

「でもセキユーさんは私とスシブレード勝負をしたの」

「サイさんはスシブレード無いじゃ無いか」

「私が貸しました」

「なるほど・・・」

 

納得するバルト。

 

「そして私はスシブレード勝負に負けてセキユーさんの寿司を食べたんです・・・

何と言うか本当に美味しかった・・・」

 

涙を流すサイ。

 

「確かに美味しかった」

「セキユーさんはこのザクロ寿司を作るのに本当に苦労しているのよ

何度もシャリを握って・・・見てセキユーさんの手」

 

セキユーの手は不自然に凸凹している。

 

「こ、 この手は?」

「寿司を握る為に変質したんです、 闇のスシブレーダーにはよくある事です」

「怖い・・・」

「そしてセキユーさんが

純粋にスシを握って食べて欲しいって言う気持ちを持っているって知ったんです」

「加えると食べて美味しいって言ってくれる事だね

私は私の子供、 スシが世界の役に立って認められるのが嬉しいんだよ」

 

セキユーは優し気に語った。

 

「・・・・・セキユーさん、 貴方は上流階級にもスシを?」

 

エミリーが少し考えて話す。

 

「それは如何だろう・・・身形の良い人は一杯店にも来る、 その人たちにもスシを振舞うよ」

「つまり上流階級に闇寿司思想を植え付けているのは貴方、 そう言う事ですね」

「如何だろう・・・私はスシを握って食べさせているだけだ・・・

そういう思想とかそういうのは良く分からない・・・」

 

セキユーは優し気に語った。

この雰囲気、 如何見てもスシの暗黒卿には見えない。

バルトもトゥーンウィと対峙した時と比較しても威圧感が無い事に驚いている。

 

「では私は店の方に戻りますので、 では」

 

そう言うとその場から消えるセキユー。

次元間スシ・フィールドの応用である。



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情報共有

バルトとエミリーとグレン、 そしてサイはハウとゴハンと

公園の片隅で合流したのだった。

そして情報共有を行った。

 

「ふむ・・・つまりそのダースシ・セキユーって奴が上流階級にも闇寿司を広めている、 と?」

「そうなりますね、 実際かなり美味しかったです」

「味は問題じゃねぇ・・・セキユーとやらと妥当せねば不味い事になるだろうな」

「そうなりますね、 しかし僕から見ても・・・強い」

 

エミリーとの戦いを想起するバルド、 飛び跳ね、 圧倒的なスピードを誇るスシブレード。

 

「勝ちの目は有るのか?」

「厳しいな、 数で押すのも・・・」

「くっ・・・どうすれば・・・」

「仲間にする、 と言う方法は取れないんですか?」

 

サイが口にする。

 

「それは無理だ、 奴は上流階級にも闇寿司を広めている」

「だけど彼の寿司は美味しいですよ?」

「・・・おい、 バルドこの娘洗脳されてるんじゃないのか?」

「いえ!! ただ単に私はセキユーさんの寿司が美味しいからとこういう事を言っている訳じゃないです

彼の寿司に対する真摯な態度を見ているんです」

「真摯な態度ぉ?」

 

ゴハンが怪訝そうに見る。

 

「彼は屋台で寿司を握る前に店でも寿司を握ります

そしてその準備の為に朝早くから起きて準備しているんです

何と言うか職人の魂を感じました」

「朝早く起きて仕事するのは結構良く有る事じゃない」

「そうだな・・・朝早く起きて稽古とかするだろう?」

「・・・・・待った二人共」

 

エミリーとグレンの言葉を遮るハウ。

 

「如何したの?」

「変だ、 闇寿司の思想と異なっている」

「どういう事ですか?」

「インフレーションの演説の中にこういう一節が有った」

 

インフレーションの演説は以前載せた物が全てでは無い。

インフレーションの演説の一節にはこういう物が有った。

 

「闇寿司は使い手を選ばない、 楽をして強くなれる手段だ、 と」

「それが?」

「楽をしてないじゃないか、 セキユーとやらは」

「確かに・・・闇寿司としては異端・・・なのでしょうか?」

「そもそもザクロ寿司とは一体何なんだ? バルドお前の寿司知識に無いのか?」

「分からない、 既存のネタでは無い事は確かだ」

「お手上げだな・・・」

「じゃあザクロ寿司が何なのか聞いてみるのは如何?」

 

サイが提案する。

 

「自分の手の内を明かすか疑問だが・・・」

「聞くだけ聞いて見るのもアリじゃないのか?」

 

がさり、 と音が聞こえた。

一斉に振り返る六人。

そこには誰も居なかった。

 

「気のせい?」

「六人全員が気のせいな訳有るか、 移動しよう」



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奈落の底に宝は有るのだろうか?

時間は前後して六人の会合から逃げていたソルジャースシ二名。

彼等はコーネリアスとエヴァザンである。

 

「聞いたか?」

「あぁ、 まさかこんな所でファウンデーション教国の連中がいるとはな

直ぐにインフレーション様に報告しよう」

「馬鹿か」

 

こつんとソルジャースシのメットを殴るコーネリアス。

 

「良いか、 連中が言っていただろうザクロ寿司の事を」

「あ、 あぁ言っていたが・・・それが?」

「そのザクロ寿司とやらを奪い取ればヤミ・アプレンティスもヤミ・マスターもすっ飛ばして

俺達が寿司の暗黒卿になれるんだよ」

「無茶だ、 俺達じゃ殺されるがオチだ」

「いや、 さっきの話じゃあセキユーとか言うのは優しい

寿司を食べたいと言って持ち帰れば良いんじゃねぇか?」

「・・・・・その場で喰えと言われたら如何するんだ?」

「食べると見せかけてスシブレードとして射出すれば良い」

「危険過ぎる博打だ」

「このまま最底辺でうろつくのは俺は御免だ、 俺は賭けに出るぜ」

 

コーネリアスはセキユーの店に走って行った。

 

「・・・勝手にしろ」

 

エヴァザンはインフレーションの元に帰還したのだった。

 

 

 

 

コーネリアスはセキユーの店に辿り着いた。

ドアには鍵が掛かっている、 如何やら留守の様だった。

 

「・・・・・」

 

コーネリアスはカルビを射出して店の中に入って行った。

店の中はこじんまりとしていてコの字にカウンターが有り

カウンターの中で調理をして寿司を提供すると言う形なのだろうと推測出来る。

 

「・・・ザクロは何処だ?」

 

ザクロ寿司を探すコーネリアス。

カウンターの中に入る、 カウンターの中にも無い様だ。

 

「じゃあ奥か?」

 

店の奥に入るコーネリアス、 店の奥には地下に続く梯子が有った。

そしてその地下梯子の隣にはエレベーターが有った。

エレベーターは昔にも存在はしていたのだ現代と技術は違うが・・・

 

「・・・・・地下?」

 

首を傾げたコーネリアス、 地下にザクロが有るのか?

若しかしたらザクロとは地下生物の事なのか?と思うコーネリアス。

しかしここまで来たのならば帰るという選択はコーネリアスから消えていた。

 

「降りるか・・・」

 

梯子を降りていくコーネリアス。

彼はこの梯子を降りて行った事を心の底から後悔する事になるのだが

今の闇寿司特有の攻めの姿勢の彼は知る由も無かったのだった。

そして何より・・・

 

「ただいまー、 あれ? 扉が壊れている泥棒かなぁ・・・」

 

ダースシ・セキユーがコーネリアスが地下に入って直ぐに帰って来たのを彼は知らなかった。



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裏切りの果てに宝は有るのか?

インフレーションの元に帰って報告をしたエヴァザン。

 

「ふむ・・・」

「如何しますか? このままファウンデーション教国の連中を叩きますか?

それからコーネリアスは・・・」

「放置しよう」

「は?」

 

インフレーションの言葉に呆気に取られるエヴァザン。

 

「それは如何言う事かしら?」

 

まるで人形の様に真っ白い化粧をした金髪の女性が現れた。

 

「アイラブミーか、 君は下がって良いよ」

「は、 はい!!」

 

エヴァザンは慌てて逃げた。

 

「さてインフレーション、 何で敵を放置するの?」

「敵が此方に来るなら返り討ちに出来る、 そしてセキユー様も襲われれば返り討ちに出来る

態々動く必要も無いだろう」

「怠慢じゃあ無いのかしら? もっと自分から動かないと愛されないわよ?」

「愛される? 良く分からないですがねぇ、 動かないと愛されないのならば

セキユー様は怠けすぎだと思いますね、 寿司の暗黒卿なのに全然動いていない」

「あらら、 それは不敬じゃない? 上の指示には従わないと駄目よー」

「従う相手は自分が決める、 それよりももし私じゃなくセキユー様に

ファウンデーション教国の連中が攻め込めば如何なる?」

「返り討ちになるってさっき言ってじゃない」

「そうだ、 しかし消耗はするだろう」

「・・・まさかセキユーを殺す気?」

「その通りだ、 そしてザクロ寿司を手に入れて寿司の暗黒卿になる」

「・・・・・」

「如何する? 私を殺すか?」

 

アイラブミーは手を横に広げた。

 

「良いじゃない、 その話、 私も噛ませなさい」

「良いだろう」

 

すっ、 と手を差し出すインフレーション、 アイラブミーはにこりとして握手に応じたのだった。

彼等二人は『手を組んだと見せかけて、 土壇場で相手を裏切る』事を決めた

皮肉にも彼等の心は通じ合ったのである。

 

「さてとではソルジャースシに例のファウンデーション教国の見張りをさせて

ついでにセキユーの所にも見張りを立てておこうかな」

「それが良いわねぇ」

「所でアイラブミー、 一つ気になったんだが・・・」

「何?」

「セキユーのザクロって一体何の事だ? 魚か? 動物か?」

「無学ねぇ、 ザクロって言うのは果物の事よ」

「果物の寿司? 見た事は有るが肉っぽかったぞ?」

「・・・じゃあ何かの隠喩なのかしら」

 

首を傾げるアイラブミー。

 

「まぁ良い、 毒が有る訳じゃないだろう? 普通に喰える訳だし」

「そうね、 取り扱いが危険な訳じゃないし猛獣でも倒せるでしょ」

「そうだな、 じゃあ今日は休ませて貰おうか」

「私も今日は寝るわ、 おやすみー」



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オルフェンズ

かんかん、 と梯子を下るコーネリアス。

 

「随分長い梯子だな・・・」

 

どんどん下に下る・・・もう三階建ての建物位は降りた頃だろうか?

やっと地面に辿り着いた。

 

「・・・・・」

 

そこに有ったのは扉だった。

扉に手をかけて開くコーネリアス。

 

「むっ・・・」

 

血の匂いに目を顰めるコーネリアス、 生き物を捌いているのか?

と思いながらも歩みを勧める。

 

「・・・・・」

 

奥に進むと奇妙な物が置いてあった、 瓶詰の内蔵である。

 

「なんだこれは・・・」

 

コーネリアスは瓶を拾う、 小さい子供位の大きさは有る瓶だ。

 

「うーむ・・・」

 

瓶のラベルにはルーフ―と書かれていた。

 

「るーふー? 何の事だ」

 

瓶を置いたコーネリアス。

何れにせよ早くザクロを見つけないと、 と足を進める。

また扉だ。

扉を開くコーネリアス。

 

「・・・・・」

 

コーネリアスはしめやかに失禁した。

扉の奥に広がっていたのは吊るされた子供達の死体、 死体、 死体死体死体。

いや中には生きている子供達も居る。

 

「・・・・・・・・・あ・・・あぁ・・・」

 

コーネリアスはこの地獄の様な光景を見て言葉も出なかった。

 

「見てしまったか」

「!!」

 

コーネリアスの後ろにセキユーが立っていた。

 

「やぁ」

「・・・・・セキユー、 様、 これは一体」

「ザクロと言うのは人肉の事なんだよ」

 

そう言いながら包丁を取り出して吊り下げられている子供の死体から肉を削ぐ。

 

「・・・・・うおおおおえ!!」

 

コーネリアスはソルジャースシのメットを脱いで嘔吐した。

人肉を喰う、 その禁忌の悍ましさに吐いたのだ。

 

「汚いなぁ・・・まぁ良いや、 じゃあザクロを食べようか?」

「ひっ、 い、 嫌だ!! 食べたくない!!」

「駄目だよ、 我儘言っちゃあ」

「な、 何でだ!! 何で食べなくちゃならない!!」

「私はスシを食べて貰いたい、 更に食べて美味しいって言って欲しい

私は私の子供、 スシが世界の役に立って認められるのが嬉しいんだよ」

「何を言って・・・」

「この子供達は孤児なんだ」

 

セキユーは語った。

 

「孤児って如何なっても人の役に立たないだろう?

だからこうやって私が寿司にして美味しく食べて貰う事で世界の役に立たせようとしているんだ」

「誰が孤児だ!!」

 

吊り下げられている子供、 いや少女が叫ぶ、 少女の片足は無くなっている。

 

「君の親は死んだんだよ・・・認めないと」

「アンタ達が殺したんでしょう!!」

「そうだけどねぇ・・・仕方ないよね」

 

セキユーがそっぽを向いている間にコーネリアスはカルビ寿司を射出した!!

 

「おっと」

 

セキユーは避けた。

 

「うおおおおおおおおおお!!」

 

複数のカルビ寿司を持っていたコーネリアスは次々とスシを射出していた。

しかし全て回避されたのだった。

 

「無駄だよぉ」

 

そしてザクロ寿司を構えるセキユー。

ザクロは弧を描いてコーネリアスの口に入る。

 

「おうえ!!」

 

コーネリアスは吐き出す。

 

「駄目だよ、 吐いちゃあ」

 

セキユーは無理矢理コーネリアスの口の中にザクロ寿司を押し込んで行ったのだった。



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進む者、揉める者

「・・・・・何かが起きているな」

 

バルド達は情報共有を終えて一度、 セキユーの店を見に行こうと言う事になった。

しかしセキユーの店のドアが壊されていた。

 

「如何する? 入ってみるか?」

「うーん・・・・・」

「・・・一旦入ろうか」

 

ゴハンがウィンクする。

 

「?・・・うん、 じゃあ入りましょうか」

 

バルド達が店の中に入る。

 

「外に見張りが居る」

 

店の中に入ったゴハンが窓の外を指し示す。

 

「・・・確かに、 でも何で? ダークネスシ帝国とは協力関係じゃないのか?」

「・・・・・首を狙われているのだろう、 トゥーンウィも自分の地位を目当てに

何度も襲われていたと言っていた」

「悲しいな・・・心休まる暇が無いじゃ無いか」

「そうだが・・・」

「・・・・・ん?」

 

バルドが店の奥に行く。

 

「バルド?」

「地下が有るみたいです」

「地下・・・・・」

 

地下への入口を見つけたバルド達。

ゴハンがコインを落して見る、 反響音が聞こえない、 相当深い様だ。

 

「・・・・・何だ、 ここは・・・」

「仕込み場・・・でしょうか?」

「入ってみるか?」

「・・・・・・・・・・」

 

バルドは考えた、 自分でも勝てないだろうスシブレーダーのセキユーが

待ち構えているかもしれない、 そう思うと身が竦んだ。

 

「私が様子を見て来る」

 

サイが梯子に手をかけた。

 

「サイ、 お前が行くのか?」

「セキユーさんは悪い人間じゃないよ、 私はそう思う

だからこの先に行っても問題は無い」

 

いや、 その理屈はおかしい、 とその場の誰もが思ったが

行かなければならないだろうなと言う事は薄々分かっていたので黙っていた。

 

「僕も行きますよ、 女の子だけに行かせません」

 

バルドも出た。

 

「隊長だけに生かせる訳には行かないね、 私も行くよ」

 

グレンが前に出た。

 

「じゃあ俺も行こう」

 

ゴハンも進んだ。

 

「なら我々二人は退路を確保しよう」

「危なくなったら直ぐに逃げてね」

 

エミリーとハウが待機する事になった。

 

「じゃあ行きましょうか!!」

「「「「「おう!!」」」」」

 

画して彼等は行動を開始したのだった。

 

 

 

 

同時刻、 外で見張っていたソルジャースシ達は如何するか揉めていた。

 

「隙を見て連中をやっちまおうぜ」

「馬鹿、 ヤミ・アプレンティスと同等の連中相手に出来るか」

「そこはほら、 セキユー様と戦って消耗した所を」

「ここは命令通りにインフレーション様に報告に行った方が良い」

「馬鹿正直に従っていたら何時までも出世出来ねぇよ」

 

やいのやいのと揉めている、 ソルジャースシ、 初動が遅れたのは不味かった。



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ぽろぽろ

コーネリアスはこの世の地獄を見ていた。

次々と口の中に入れられる人肉寿司。

 

「げほっ・・・普通のスシでもこんなに喰えるか!!」

「君は最初から食べようとしていないじゃ無いか」

 

尚もセキユーは次々と口に人肉寿司を入れ続ける。

 

「あぁ・・・人の為になるって素晴らしい・・・私は勘当すら覚える」

「ふざけ、 むご」

 

セキユーは涙を流しながら次々と人肉寿司をコーネリアスの口に入れ続ける。

 

「テミリ・・・ブラック・・・良かったねぇ・・・」

「何を言って・・・」

「あぁ・・・・・・・・・・・・え?」

 

動きが止まるセキユー。

セキユーを見るコーネリアス。

 

「え・・・」

 

セキユーの脇腹から血が流れている。

包丁が突き刺さっている。

刺したのは足の無い少女。

如何やら吊り下げられて叫んでいた少女の様だった。

 

「思い知りなさい!!」

 

次々と包丁でセキユーを滅多刺しにしていく少女。

セキユーは倒れ内蔵が露出し始めた。

 

「ひ、 ひぃいいいいいい!!」

 

パニックになったコーネリアスは慌てて走って梯子まで逃げようとする。

コーネリアスの手が梯子にかかった瞬間。

 

「うわあああああああああアアアアアアアアア!!」

「はっ?」

 

どんがらがっしゃーん!!

梯子の上から滑って落ちて来たサイの下敷きになってしまった。

そのままコーネリアスは意識を失った。

 

「サイ!! 大丈夫ー!?」

「あたた・・・何とか助かりました!! ・・・何か下敷きにしてしまったみたい!!」

「何だそれ・・・」

 

バルド達も後から降りて来る。

 

「何だこの人・・・」

 

コーネリアスを見て絶句するバルド、 大量のザクロを吐いたのだから物凄い顔なのは確かだ。

そして奥からざくざくと音がする、 奥に入ってみるとそこには吊るされた子供達の死体

滅多刺しにするセキユーと少女。

少女は少し小休止していた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

「・・・・・これは一体何が起こっているんだ・・・」

「いや、 それよりこれは・・・おえ!!」

 

バルドは吐いた、 自分が子供の肉を食べてしまった事を悟って。

 

「・・・・・やぁ」

 

どん、 と少女は刎ね飛ばされた。

セキユーは腹から内蔵をぼろぼろ落としながら立ち上がりバルド達に向き直る。

 

「昼間の人達だね」

「セキユー・・・さん、 これは一体どういう事ですか・・・」

 

サイが震えながら尋ねる。

 

「ザクロとは人肉の事なんだよ」

「私を騙していたんですか!? 美味しいスシを作って食べて貰いたいって・・・嘘だったんですか!?」

「嘘じゃない、 本当の事なんだよ」

 

セキユーは語り始めた。



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出遅れを憂う

「まず私が寿司ネタにするのは孤児の肉だ、 孤児はとても可哀想な存在なんだ

両親から愛情を注がれる年齢にも関わらず両親が居ない、 とても可哀想な存在なんだ

そして可哀想な事に彼等の未来はとても暗いんだ、 暗黒と言って良い

彼等の未来はとても制限されている学業、 就職、 結婚

全てにおいて孤児と言う肩書はマイナスに作用する、 そして暗黒が深い者は

その闇を周囲に振りまくんだ、 闇のスシブレーダーが周囲を攻撃する様に

孤児も未来においては周囲に迷惑をかけるんだ」

「・・・全ての孤児がそうとは限らない」

「そうだろうとも、 だがしかし・・・彼等は可哀想な存在なんだ・・・

だから私は美味しい寿司ネタにして食べて貰って社会に貢献させようとしているんだ・・・」

 

涙を流すセキユー。

 

「私にはこうするしか彼等を救う事が出来ない・・・」

「セキユーさん、 僕も孤児でした」

 

バルドがセキユーに向かって言う。

 

「だけど、 僕はお嬢様、 レーア様に救われた

孤児でも救う方法は他に有るでしょう」

「愛を与えて慈しみ育てるとか?」

「そうです」

「駄目だ・・・」

 

ごぼっ、 と血を吐くセキユー。

 

「何故!!」

「もうやったんだよ!!」

 

セキユーの目が見開かれる。

 

「私は彼を愛した!! 育てた!! 慈しんだ!! 他の子と同じ様に!!

だけど彼は駄目だった!! 愛で闇を掃う事は出来なかったんだ!!」

「・・・何の話ですか」

「どうやっても駄目な子は居るんだよ!!」

 

げぼげぼと血を吐き続けるセキユー。

 

「だから・・・どんな子でも私は寿司ネタにして美味しく食べて貰う方法で

私はこの子達を救うしか無いんだ」

「・・・・・セキユーさん、 アンタその傷ではもう助からねぇよ」

 

ゴハンが静かに言った。

 

「まだだ・・・まだ・・・」

「如何するつもりだ?」

「確かに私の内蔵はバラバラ・・・だけども眼の前に新しい内蔵が有る・・・」

 

そう言ってバルドを見るセキユー。

 

「孤児ではサイズは違うが私と同じ位の背格好の君なら

君の臓腑ならば今すぐに詰め替えれば命は繋げられる・・・」

「・・・・・その状態で戦うつもりですか」

「・・・・・」

 

血塗れになりながらスシを構えるセキユー。

致命傷を負った、 半死人、 どころか八割死人のセキユーだったが

彼から溢れるオーラは生半可な物ではなかった。

 

「・・・・・バルド、 全員で行くぞ」

「分かっています、 一人では勝ち目が無い」

「行くわよ・・・」

 

バルド、 ゴハン、 グレンもそれぞれスシブレードを構えた。

 

「「「3, 2, 1, へいらっしゃい!!」」」

 

それぞれスシブレードが射出された。



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アリの100歩と像の1歩

血で濡れたザクロがバルド達のスシブレードに襲い掛かる。

当然ながら血で濡れた事によりザクロは弱体化を極める。

更にスシブレーダーであるセキユーもほぼ死にかけ。

闇のパワーによるサポートも殆ど期待出来ない。

 

「いっけえええええええええ!! タコボーグO!!」

 

ゴハンのタコボーグOがザクロに吸い付く。

ダメージをザクロに与えながらタコボーグOが吸い付いて機動力が格段に落ちる。

 

「・・・・・」

 

軽く息を吐いたセキユー。

そして軽く手を動かした、 ひゅん、 と飛び跳ねるザクロ。

タコボーグOは振り払われた。

 

「何!?」

 

闇のパワーによるサポートも殆ど期待出来ない、 だが逆に言えば僅かなサポートは出来る、

 

「スシの暗黒卿を舐めるな・・・」

 

僅かなサポートでも充分!!

 

「其方こそ舐めないで!!」

 

グレンのシンコフェネックによる多段攻撃!!

しかしザクロの急加速で回避される!!

圧倒的素早さを誇るシンコフェネックの攻撃すら回避するとは・・・恐るべしスシの暗黒卿!!

 

「がはっ・・・」

 

しかし臓腑が無くなったダメージは深刻!!

血を吐き出し悶えるセキユー!! 攻めに転じるザクロ!!

バルドに襲い掛かるザクロ!! 危うし!!

 

「!!」

 

ザ、 と床に伏せるバルド!!

 

「くっ!!」

「なんだ!?」

「これは・・・!!」

 

グレンはその意図を察した、 バルドはザクロの跳躍を警戒しているのだ。

床に伏せれば飛び跳ねても問題は無い。

だが・・・

 

「それならば・・・」

 

ザクロが接近する!!

このままではバルドの頭が吹き飛ばされる!!

いや、 バルドとザクロの間にエッグヴィーナス!!

 

「貫け!! ザクロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「弾き飛ばせ!! エッグヴィーナスうううううううううううううううううううううううう!!!」

 

スシとスシとの激突!!

果たして勝つのは何方なのか!?

ザクロとエッグヴィーナスがぶつかり合い鍔迫り合いが発生している!!

闇のパワー切れか!?

 

「一気に畳みかけるぞグレン!!」

「おっけー!!」

 

シンコフェネック、 タコボーグOもザクロに迫る!!

3対1!! 拮抗状態に増援が来ればザクロに勝ち目はなかった!!

ザクロは弾け飛び、 回転が消えたのだった。

 

「・・・・・」

「これで、 我々の勝ちだな」

「・・・・・だ・・・」

「え?」

「まだだ・・・まだ・・・」

 

がふっ、 と再び血を吐くセキユー。

寿司を構えようとしているセキユーだったが右腕が痙攣を始め

寿司を射出する事が出来ない!!

 

「ならば・・・」

 

脇腹に刺さっていた包丁を抜くセキユー。

 

「包丁で戦う気か?」

「いや・・・こうする・・・」



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意地の激突

言うや否やセキユーは首を叩き落とした!!

 

「なっ!?」

「・・・・・」

 

セキユーの首は地面に落ちて高速回転を始めた!!

 

「馬鹿な!! 僕の内蔵を奪って生きるんだろう!?

自分の首を叩き落として如何する!?」

 

自分を殺そうとしている相手だが行動が意味不明過ぎて叫ぶバルド。

 

「勝たなければならない!! 人生とは如何に有利に進められるかが求められる!!

負ければ如何にもならない!! 愛を与えても能力が無ければ無意味!!

能力が有っても無条件に勝利とはならないこの世界!!

私は最後に勝って終える!!」

「セキユーさん・・・」

「さぁ行くぞ!! 私の最後のスシブレードファイトだ!!」

 

スシの暗黒卿としてのプライドか!?

それとも彼自身の意地か!?

何れにせよ最終局面!!

 

セキユーの頭は余りにも質量が大き過ぎる!!

当然である!! 人間の頭の重さは成人であればだいたい体重の10%!!

体重が50kgであれば約5kg、 60kgであれば約6kg!!

圧倒的質量!! 問題はスシブレードとして扱えるかという点だが

セキユーはその関門を難無く突破!!

 

「くっ・・・」

 

シンコフェネック、 タコボーグOの攻撃はまるで意に介さない!!

破壊される両スシブレード!! まさに質量の暴力!! 危うし!!

 

「くっ!!」

 

エッグヴィーナスを戻すバルド!!

圧倒的質量の前ではスシブレードは余りにも無力なのか!!

回避するつもりか!? バルドは動かない!! 不可思議!!

 

「バルド!! 何をしている!? 逃げるなり何なりしろおおおおおおおおお!!」

 

ゴハンの絶叫!!

 

「受け止める!!」

「何だと!?」

「セキユー、 貴方の過去に何が有ったかは聞かないし知らない!!

だけど貴方から逃げる事は出来ないししたくない!! 貴方を受け止める!!」

「良いだろう!! その五体バラバラにしてあげよう!!」

 

セキユーの頭部が迫る!! セキユーの頭部がバルドの体に激突したらバルドの体は

木っ端微塵になってしまう!! 確定的に明らか!! しかしバルドは逃げない!!

彼の想いを受け止めなければ、 更なるスシの暗黒卿達との戦いを乗り越えられる筈も無し!!

腹を括っている!! 意地を持っているのはスシの暗黒卿のみならず!!

スシブレーダーにも意地があるのだ!!

 

セキユーの頭部が迫る!! その距離がどんどん縮まる!!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

絶叫する二人!!



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光に包まれる闇

激突の刹那のタイミング、 バルドはどん、 と押された。

 

「へ?」

 

間抜けな声を出すバルド、 押したのは・・・

 

「さ・・・」

「い・・・?」

 

サイを押して倒れたバルド、 そしてセキユーの頭部がサイに激突!!

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

激痛に絶叫するサイ!!

しかしサイはセキユーを抱きしめた!!

 

「何の真似だああああああああああああああ!! 邪魔をするなあああああああああ!!」

 

セキユーが叫ぶ!!

 

「セキユー・・・さん・・・!! 私は・・・貴方を尊敬していた・・・・!!

でも貴方の暗黒を・・・・わかってやれなかった・・・っ!!

もっと踏み込んでいれば・・・・!! 貴方を助けられたかもしれないのに!!

だから・・・私が貴方を止めます!!」

「・・・・・」

 

セキユーは回転しながら語った。

 

「・・・・・サイちゃん、 君に私が救えるのか?」

 

セキユーはぽつりぽつりと語り始めた。

 

「愛が意味の無い物だった、 私が孤児達に与えられる物は愛だけだったのに

そんな私を君が救えると?」

「貴方の過去を・・・私は知らない・・・・・でもだからって何もせずにいる事は出来ないっ!!」

「・・・・・・」

 

サイは血を吐きながら言った。

 

「・・・・・」

 

セキユーは徐々に回転を落してやがて止まった。

 

「サイちゃん、 孤児に救いを、 救われない者に救いを」

「はい・・・必ず・・・・!!」

「・・・・・・・」

 

セキユーの瞳孔が開いた、 死んだのだ。

 

「死んだ・・・のか?」

 

ゴハンが尋ねた。

 

「・・・・・えぇ・・・」

 

ぎゅ、 とセキユーの頭を抱きしめるサイ。

 

「・・・・・セキユーは狂っていた、 だけどきっと良い人だったんでしょう」

「そうですね・・・彼が狂う前に会いたかった・・・っ!!」

 

サイは涙を流した。

 

「・・・・・・あの・・・悪いんだけど助けてくれないかな?」

 

足が無くなった少女がバルド達に声をかける。

 

「・・・生存者を探そう」

「私以外には生存者は居ない・・・私は頑丈だからね

何とか生きてられたけど他の子は・・・」

 

目を伏せる少女。

 

「君は?」

「私はネビット、 シャリ王国国立騎士学園の生徒会長、 いや元生徒会長かな・・・はは・・・」

「道理で頑丈な訳だ・・・立て、 そうにはないな」

「他に何か無いか探さない?」

「そうだね、 でも何も無いと思うわ、 ここは単なる食材貯蔵庫だし・・・」

「一応は探した方が良いと思うよ」

 

そう言ってバルドは包帯を取り出した。

 

「一応包帯を巻いておこう」

「ありがとう」

 

ネビットの足に包帯を巻くバルド。



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閉店

地下を探索するバルド達。

やはりここは単なる食材貯蔵庫だったようで重要な物は何も無かった。

 

「・・・・・彼等を弔おう」

「そうだな」

 

彼等とは吊り下げられている孤児達の事である。

 

「・・・・・ん?」

「如何したのグレンさん」

 

バルドがグレンに声をかける。

 

「いや、 なんだか・・・変な感じ・・・」

「変?」

「うーん、 なんだろう・・・隅の方が・・・」

「うん?」

 

隅を見るバルド、 空間が歪んでいる。

 

「何だアレは・・・」

 

空間の歪みがどんどん広がっていく!!

何事!? その理由をバルド達は知る由も無いが読者諸賢には説明しよう!!

この地下空間と店はダースシ・セキユーの次元間スシフィールドの応用によって造りだされた物!!

だからこそ自由自在を各地を移動できたのだ!!

ダースシ・セキユーが居なくなった今!! 維持出来ずに次元の狭間に飲み込まれる運命!!

 

「何だかやべぇ!! 逃げるぞ!!」

 

危険を逸早く察知し、 ネビットを背負うゴハン。

 

「分かった!! サイ!! 立てる!?」

「え、 えぇ、 回復した」

 

聖女の娘なのか回復力が高いサイ。

バルドも即座に梯子に手をかけて上に登った!!

バルド達は上に登る!!

 

「う、 うぅ・・・・・うわ!? な、なんだぁ!?」

 

コーネリアスは歪みに飲まれかかった所で目が覚めた!!

 

「何で・・・何でこんな事にいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

 

絶叫するコーネリアスだった、 彼に合掌しよう。

 

 

 

 

 

 

一方その頃、 上で待機しているハウ達も異常に気が付き始めた。

店が歪み始めたのだ!!

 

「い、 一体何が!?」

「どうするのよ!! 隊長達は未だ中よ!?」

「くっ・・・・・」

 

カンカン!! と梯子を上る音が聞こえる!!

 

「この音は・・・」

「ハウさん!! エミリーさん!! 逃げますよ!!」

 

バルド達が地下から上がって来たのだ!!

 

「分かった!!」

「直ぐに逃げよう!!」

 

出口に走り逃げる面々!!

 

 

 

 

一方その頃、 外で見張っているソルジャースシ達は混迷の極みに居た!!

 

「店がぐにゃぐにゃになっているぞ!? 一体何が起こっている!?」

「と、 とりあえず報告に行こう!! これは俺達の手に負える事態じゃねぇ!!」

「待て!! 中から誰かが出て来るぞ!!」

 

店から出てくるバルト達、 バルド達が店から出て来ると同時に店がぐにゃぐにゃと

次元の彼方へ消滅したのだった!!

 

「き、 消えた!?」

「ま、 まさかスシの暗黒卿が倒されたって事か!?」

「マジか・・・」

 

呆然とするソルジャースシ。

 

「す、 すぐさまインフレーション様に報告を・・・」

「う、 うわぁ!!」

「如何した!?」

「連中がこっち来たぁ!!」

 

バルド達はソルジャースシ達の所に向かって行った。

 

「Oh・・・」



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精神感応インフレーション

見張りのソルジャースシを倒したバルドは即座に街を出発した。

セキユーを倒した以上、 インフレーション達が黙っているとは思えないからである。

インフレーションを放置して良いのかとバルドは疑問に思ったが

 

「非協力とはいえ敵の最高幹部を倒したんだ、 戦果としては充分!!」

 

当初の目的であった闇寿司思想を普及の妨害は出来なかったが

戦果としては充分おつりが来る事だった。

 

一方インフレーション達が事の事態を知ったのはバルド達が街を出た後だった。

 

「なんだと・・・セキユー様が負けた・・・」

「店が消滅したので恐らく・・・」

 

店が消滅してはザクロを手に入れる事は出来ない・・・つまり目的は破綻している。

 

「これは一体如何するつもりなのかしらインフレーション

セキユー様を助ける筈の貴方がむざむざと殺させるなんて」

 

アイラブミーもやって来た。

 

「アイラブミー・・・私とお前は一蓮托生だろう・・・?」

「何の事かしらぁ?」

「貴様っ!!」

 

インフレーションがスシブレードを構える、 カリフォルニアロールの一形態、 ツナロールだ!!

 

「ふふ、 愚かな」

 

アイラブミーもスシを取り出した、 真っ白いスシ、 これは一体!!

 

「脂身、 か」

「御名答」

 

自身の油分をシャリに浸透させる事で摩擦力を減らした高速回転が持ち味のスシブレード【サルモン】

ならば油分を更にシャリに浸透させれば摩擦力を更に減らし更なる高速回転が可能になる

そう言うコンセプトで造られたスシブレード、 脂身。

 

「ひ、 ひぃ・・・」

「直ぐに終わる、 下がっていろ」

 

ソルジャースシを下がらせるインフレーション。

 

「私の勝利でね!!」

 

脂身が射出される!! 圧倒的高速回転が生み出すスピードと破壊力は圧倒の一言!!

シャリーラ13世の信頼の厚さも伺える!!

一方のインフレーションもツナロールを射出する!!

 

「ツナロールは所詮カリフォルニアロールの一形態に過ぎない!!

そんなスシブレードで私に適うと!?」

「馬鹿が!! スシブレードの破壊力とスピードのみが全てでは無い!!」

「何ですって!?」

「私のスシブレードを見ろ!!」

「!? な、 こ、 これは!!」

 

ツナロールが5つに増えている!?

いや、 これは幻覚!!

 

「生魚では無いツナ缶を用いて精神に働きかける力を増しているツナロール

貴様には勝ち目が無い!!」

「ふっ、 侮られてた物ね、 5つに増えて見えるならば5つ全部破壊すれば良い!! 脂身!!」

 

脂身が回転しツナロールが破壊される、 宣言通り幻覚のツナロール諸共。

 

「ふっ、 瞬殺・・・」

 

二個目のツナロール射出!!

 

「いくらやっても無駄・・・!?」

 

アイラブミーは我が目を疑った!!

空間が歪み始めた!!

 

「馬鹿な、 これも幻覚・・・!? ぐわああああああああああああああ!!!」

 

アイラブミーは倒れたのだった。

 

「・・・起きろ、 アイラブミー」

「・・・・・・・」

 

アイラブミーはのろのろと立ち上がった。

 

「正気に戻られても面倒だ、 ここで始末しよう」

 

ぐさり、 とアイスピックをアイラブミーに突き刺したインフレーション。

アイラブミーの胸から血が噴き出して彼女は息の根が止まった。

 

「さて・・・ではセキユーを殺した奴を追うとしようか」

 

インフレーションは外に出るのだった。



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街中大パニック!!全員洗脳!?

おだやかな朝の風景、 一般的な市民のモノックは窓の外を見ると大勢の人々が闊歩していた。

 

「何が有ったんだ?」

 

外の人々に尋ねても答えが返ってこな・・・・

 

そこでモノックの精神は酢飯の中に捕らえられた。

精神酢飯漬けにされたのだ、 インフレーションのツナロールの影響である。

インフレーションのツナロール、 いやインフレーションの特別制のツナロールの

精神攻撃力は並の精神酢飯漬け兵器の比では無い。

何故ならば薬物が混ぜ込まれているのだ。

 

インフレーションは元々、 麻薬を使っての超常体験で信徒を増やした

詐欺教団の教祖、 麻薬と精神酢飯漬け、 この二つを両立すれば街一つを洗脳する事など容易!!

 

「インフレーション様、 街中を調べた結果、 如何やら連中は外に逃げた様です」

 

ソルジャースシがインフレーションに報告する。

 

「ではこのまま外に調べに行くか」

「行くのですか?」

「このまま逃がせば私の命も危うい・・・ならば殺すしかあるまい」

「ですが街の外に逃げられて一体如何すれば・・・」

「街中の人間を使っての飽和偵察、 これしか有るまい」

「この街の人間全員を使い潰すおつもりですか?」

「あぁ、 悪いか?」

 

ツナロールの支配率を高めてソルジャースシの精神も精神酢飯漬けにするインフレーション。

 

「・・・・・いえ、 そんな事は有りません」

「このまま一気に・・・」

「インフレーション様!! 大変です!!」

 

別のソルジャースシが入って来た。

 

「今度は何だ!?」

「基地から報告が来ました!!」

「基地から? 何だ? 直ぐに通せ」

「はっ!!」

 

ソルジャースシは慌てた様子のモヒカンのヤミ・アプレンティスを連れて来た。

 

「はぁ・・・はぁ・・・どうも、 ヤミ・アプレンティスのサクラです」

「インフレーションだ、 一体何の用だ?」

「実は基地に有る例のアレを見られました!!」

「な、 何だとォ!?」

 

インフレーションは驚愕する。

 

「見た奴のグループの大半は殺せましたが何人かに逃げられてしまい・・・」

「くっっそ!! こっちも忙しいと言うのに・・・」

 

ギリギリと歯軋りをするインフレーション。

 

「今すぐそいつ等諸共連中をぶち殺せ!!」

「はい!!」

「あ!! 敵の一人は恐ろしい武器を持っているので気を付けて下さい!!」

「恐ろしい武器!?」

「ヤミ・マスターが穴だらけにされてました・・・」

 

ごくり、 と固唾を飲むインフレーション。

 

「くっ・・・前に出るのは危険だが前に出なければ綿密なコントロールが出来ない・・・

止むを得まい前に出よう!!」

 

インフレーションは出撃するのだった。



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再会

バルド達が町から離れて2時間後、 追手がやって来た。

 

「おいおい、 何だアレは!?」

 

バルド達は馬に乗って逃げている、 2時間も有れば街からかなり離れられる。

にも拘わらず追い付かれた。

麻薬入りツナロールの効果である、 身体能力が向上

いや町の人々の身体能力のリミッターを解除して無理矢理追跡をしているのだ。

町の人々は足が圧し折れても全力疾走する。

足が無くなれば腕を使って逆立ちでやって来る、 腕も無くなれば転がって来るのだ

何と言う悍ましさ!!

 

「何らかの方法で操られている様だな・・・」

「如何する?」

「逃げても無駄だろう、 ここは戦おう」

 

スシブレーダーと言えどもこの数は多勢に無勢、 万事休すか・・・

 

「・・・・・分かった、 やろう」

 

各々スシブレードを構えた、 先程破壊されたゴハンとグレンも

バルドにスシを握って貰ったので問題は無い。

 

「「「「「3, 2, 1, へいらっしゃい!!」」」」」

 

それぞれスシが射出される、 スシブレードと強化されたとは言え普通の人間

スシブレードに軍配が上がるが何とか襲い掛かる人々を制圧できるが数が足りない。

 

「くっ・・・数が多過ぎる!!」

「万事休すか・・・」

「諦めちゃ駄目だよ!!」

「まだまだ絶望には程遠い!!」

 

バルドが諦めかけたその時、 蹄の音が聞こえた。

 

「何だ・・・?」

「敵の増援か!?」

 

バルド達が振り返るとそこに居たのは。

 

「バルド!! 無事なの!?」

 

レジスタンス達を率いたレーア伯爵令嬢達だった!!

 

「お嬢様!! ご無事でしたか!!」

「ええ!! ここは私達に任せて!!

相手は洗脳されているみたいだけどもこちらには武器が有る!!」

「武器?」

 

レーアは物体を取り出した。

我々からすればそれは自動小銃の様な物だったがバルド達には理解不能な物として見えている。

 

そして町の人々に向けて射撃を開始した、 ぱららと街の人々に銃弾を撃ち込み。

何とか攻撃を押さえる事に成功した。

 

「それは・・・」

「生きている銃と呼ばれる道具・・・らしいよ、 良く分からないけどね」

「生きている銃? 死んでいる銃もあるんですか?」

「分からないけど・・・そんな事よりも一旦逃げよう!! 知らせたい事が有るんだ!!」

「知らせたい事? それは一体・・・」

「ハッキリ言って魔王以上の人類最大のピンチかもしれないんだ!!」

 

切羽詰まったレーアの状況を見て、 危険を察知するバルド。

 

「・・・一旦ここから離れましょう」

「そうね!!」

 

画してバルド達はレーア達と合流してその場から離れたのだった。




登場したSCP
SCP-127 - 生きている銃
http://scp-jp.wikidot.com/scp-127


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山の囁き

バルド達とレーア達はとある山の麓に逃げて来た。

そこは如何にも禁足地の様な所だったがレーアは構わず入って行った。

 

「入って大丈夫ですか?」

「本人からの許可は貰っているよ」

「本人?」

「山その物よ」

「???」

 

バルド達が山に近付くと声がした。

 

「やぁ、 来たかい、 レーアちゃん」

 

どこからか声が聞こえる。

バルド達はきょろきょろする。

 

「あぁ、 君達の眼の前の山が僕です」

「山その物に意思が・・・!! 何と神秘的な」

「照れる、 と君達はあの忌々しいスシ使い達と戦う連中なんだよね?」

「えぇ・・・一応そうですが・・・」

「うん、 僕も彼等は妬ましいから全面的に協力するよ

とは言っても匿う程度しか出来ないけどね・・・もっと僕に力が有れば・・・

この世界に破滅的な災害を齎せるのに・・・」

「・・・うん?」

 

レーアが耳打ちをする。

 

「この山は”もっと危険な天災” になりたいらしい、 でもそんな力は安心して」

「分かりました」

「うん・・・鬱になって来た・・・とか言っている場合じゃないんだよね

スシ使い達は恐ろしいスシを造り出したんだ、 そのスシを何とかして破壊して欲しい」

「スシを破壊・・・?」

 

首を傾げるバルド達。

 

「スシが恐ろしい・・・確かにスシは凄い武器になる、 しかし山が言う程・・・」

「それは私が説明するよバルド」

 

レーアが割って入る。

 

「私はヒノモト城から脱走して幾つか宝を持ち出して来た

その宝の力でサンシャイン王国の反攻勢力のレジスタンスを纏めて

このマナ法国に逃げて来たんだ」

「流石ですレーア様」

「しかしレジスタンスと言う割には数が少ないんじゃないの?」

 

グレンが疑問を口にする。

 

「私達がこの国に入るまでは百人以上の仲間が居た」

「・・・・・となるとこの国でその仲間の大半が死んだ、 と

不思議な力のお宝を持っていたのに、 一体何が有ったんだ、 教えてくれ」

 

ゴハンが尋ねる。

 

「まず始めに轟音が聞こえた」

「轟音?」

「地鳴り、 山崩れ、 それらの音とは違った、 それより凄まじい轟音だった

大地が砕けた様な、 そんな感じ」

「僕も昔は凄い噴火をしたもんだよ・・・今は駄目だけど・・・」

 

山がしょげる。

 

「でもあれは噴火よりも凄い音だった」

「一体何が有ったんですか?」

「私達が見たのは小さな山の様なスシだった」

「!?」

「即ち超巨大なスシブレードだ」

「な・・・なんだって・・・」

「山一つを木っ端微塵にする大量破壊スシブレードと言う事だね

僕もああいう大破壊をしてみたいもんだよ」

 

山が呟いた。




登場したSCP
SCP-1699 - 劣火山
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1699


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寿死

レーアは語り始めた、 レジスタンス達を集めて国境越えをした時に轟音を耳にした。

何かと思い探ってみると超巨大な軍艦巻きが山を破壊していたのだ!!

何と言う恐ろしさか!!

これが後に世界を震撼させる超巨大大量破壊スシブレード【アポビオーシス】!!

 

「私達はその巨大なスシブレードを見た時に絶叫を挙げてしまった・・・

それからスシブレーダー達と交戦して・・・この様よ」

「・・・敵の数は」

「圧倒的なソルジャースシとヤミ・アプレンティス・・・

随伴するスシブレーダーだけで一国の軍隊に匹敵する部隊だった

我ながら生き残れたのが不思議な具合よ」

「・・・・・」

 

冷たい汗が流れるバルド。

 

「何と恐ろしい・・・」

「奴等は巨大なスシを使って一体何をするつもりなんだ?」

「・・・・・世界征服じゃ無いの?」

 

山が答えた。

 

「世界征服・・・マジでやる気なのか」

「そんな馬鹿みたいな破壊力のスシブレードを作っているんだ

馬鹿みたいな野望を持っていても可笑しくはない」

 

エミリーは言い切った。

 

「だがしかし、 もしもそんなのが打ち込まれたら・・・」

「国一つが終わるな、 しかしまだまだ終わっていない

その超巨大なスシブレードは未だに未完成の筈です」

「何でそう言えるんだバルド」

「完成していたら既にファウンデーション教国に打ち込まれている筈です」

「・・・・・ならば未完成の内に叩く、 と言う事か・・・」

「しかしどうやって叩く? このマナ法国内では無暗に軍を派兵する事も難しいだろう?」

「そうだな・・・」

「この状況、 まさに地上の孤児の状態だ・・・」

「・・・・・」

「ここで唸っていても仕方が無い

一旦ファウンデーション教国に戻って対策を練りましょう」

「そうね、 所でバルド、 今はファウンデーション教国に身を寄せているの?」

「えぇ、 禁じられた山から寿司の知識を手に入れてスシブレーダーとして尽力しています」

「あの山に行ったのね・・・苦労を掛けてごめんなさい」

 

頭を下げるレーア。

 

「頭をお上げくださいレーア様!! こちらこそ助けに行けず申し訳ありませんでした!!」

 

慌ててレーアに近付くバルド。

画して彼等は合流しファウンデーション教国に戻るのだった。

彼等の足取りは重かった、 彼等の今後を想うのならば当然だろう。

 

 

だがしかし運命は彼等に味方するので有った。

否、 ダークネスシ帝国が運命に敵対したと言った方が正しいのだろうか

闇のスシブレーダーとしての本能か、 彼等は力を誇示したいのだ

彼等は力を思う存分振るいたいのだ、 こそこそずっと隠れる事はしないのだ!!

バルド達とレーア達が合流しファウンデーション教国に戻る前日に事は起きた!!



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極秘!!第七章終了時のスシの暗黒卿とヤミ・マスターのスシブレーダーとスシブレード名鑑

闇号:ダースシ・セキユー

本名:マラキリ

元々はシャリ王国の小さな孤児院を営む院長先生を務めていた。

とは言え本当に小さな孤児院で孤児達の世話をするのは自分一人。

大変な生活だったが孤児達に愛情を注いで日々を暮らしていた。

そんな日々を数十年続けたある日の事、 孤児院に強盗が入った。

強盗はマラキリを襲い、 マラキリは深手を負った。

しかしマラキリはそんな傷等如何でも良かったのだ、 強盗に入ったのは

この孤児院を卒業していた孤児の一人だったからである。

何故この孤児が自らが居た孤児院を襲ったのか

それはただ単に内部状況を詳しく知っていたからである。

マラキリは包丁で反撃し、 その孤児を返り討ちにした。

その時彼の精神は狂気に堕ち『孤児は社会にとって悪影響を齎す』と言う考え方から

孤児を殺して社会に役立てる為に調理して食べさせる事を目的にする狂気の料理人となった。

そんな生活を続けていた頃に自身の闇を親方”闇”に見いだされスシの暗黒卿の一人になった。

ネビットに隙を突かれて包丁で滅多刺しにされた後に戦闘、 そして死亡した。

因みにセキユーとは人肉食専門店の名前らしい。

 

使用スシブレード:ザクロ

攻撃力:B 防御力:B 機動力:B 持久力:B 重量:C 操作性:SSS

人肉のスシブレード。

素のステータスは平凡だが闇の力との親和性が非常に高く

闇のパワーによるステータスの底上げに修正が入る。

またセキユーのスシブレーダーとなった孤児のへの執着が高く更なる強化も見込める。

 

使用スシブレード:自らの頭部

攻撃力:SSS 防御力:SSS 機動力:B 持久力:E 重量:SSS 操作性:SSS

自らの頭部を切り落としてスシブレードとして扱う離れ技。

確かに並のスシブレードよりも遥かに強いだろうが使ったら間違いなく死ぬ。

 

親方”闇”からの総評

料理をする理由は兎も角、 料理人としての腕は超一流だった。

もっと積極性が有れば良かったが無い物強請りだろう。

隙を見せなければ間違いなくバルド達は死んでいた。

 

 

 

闇号:インフレーション

本名:テロエンザ

元々は世界を股に掛けるインチキ宗教の教祖で麻薬を使い神秘的な体験をさせて

勢力を拡大していた、 スシブレードに対しては精神酢飯漬けと言う物に強い興味を抱き

自分の宗教諸共ダークネスシ帝国に加入し、 ヤミ・マスターの称号を手に入れる。

精神酢飯漬けによる精神攻撃、 洗脳に長けており、 その気になれば街一つを洗脳出来る。

また弁が立ち、 人々を扇動する才能や冷酷な非情さを持つ。

 

使用スシブレード:ツナロール

攻撃力:E 防御力:E 機動力:B 持久力:C 重量:D 操作性:SS

カリフォルニアロールの一形態、 ツナロールのスシブレード。

最初からぶつかり合いによる戦いでは無く精神を破壊する事に特化させている。

また薬物を混ぜ込んだ精神攻撃力の高い特別制のツナロールも存在する。

 

親方”闇”からの総評

薬物と酢飯を混ぜ合わせて相手の精神を揺さぶるには

薬物と酢飯両方に強い知識が必要である。

その両方を持っているのは羨ましい限りだ。

これからに期待。

 

 

闇号:アイラブミー

本名:ヒジャ

元々は鶴帝国の侯爵令嬢で我儘放題だった。

親の権力で好き勝手して彼女に言い寄る男も大勢居た。

しかし唯一言い寄らない男が居た。

その男に恋をして無理矢理その男の婚約者と婚約破棄をさせてさぁ結婚だ。

となった時にその男が男の婚約者と心中する。

その時に『愛す為に死ぬなんて凄い!!私もそんなに愛されたい!!』

と言い寄る男に自殺する様に頼むが、 当然の事ながら彼等は自殺する事は無く

自分が持っていた愛が全てまやかしだと気が付き苛立ちが募る。

そんな中、 力を手に入れれば万事上手く行くと言う闇寿司思想に囚われ。

闇のスシブレーダーになる、 鶴帝国の首都侵攻時に特に協力した功績から

シャリーラ13世の直属の部下になる。

インフレーションの監視の任に付くが最終的にインフレーションに殺害される。

 

使用スシブレード:脂身

攻撃力:S 防御力:C 機動力:SS 持久力:E 重量:C 操作性:A

脂身のスシブレーダー。

油分をシャリに浸透させれば摩擦力を減らし更なる高速回転が可能になる。

ならば油その物をスシにする思想で造られたスシブレード。

似た性質を持つサルモンよりも高い攻撃力とスピードを持つが

油を消費し続けるので燃費は悪い、 また熱にも弱い。

大量に所持して使い捨てる戦術が有効である。

 

親方”闇”からの総評

力こそ全て、 でゴリ押ししようとする姿勢は素晴らしい、 が

精神酢飯漬けに対しての対策をしていないのは未熟と言わざるを得ない。



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第八章:新たなる希望
オープニング・クロール


マナ法国がダークネスシ帝国の手に堕ちた!!

正確にはマナ法国の反闇寿司派が壊滅した!!

ダークネスシ帝国の超巨大スシブレード【アポビオーシス】による攻撃により

マナ法国首都オルデランは壊滅しオルデランに居た反闇寿司派と無辜の人々20万が虐殺されたのだった!!

何と言う事だ!! 20万人の大虐殺はこの世界の歴史史上最多となる!!

魔王ですらこんな事はしなかった!!

 

この大虐殺を指揮した鬼畜外道卑劣たるダークネスシ帝国の公式発表では

『人類の恒久的平和を達成しようとする我々人類の平和と秩序と安寧を願う

ダークネスシ帝国に攻撃準備をしていたテロリスト達を排除した

僅かばかりの犠牲が出た事は深く謝罪する』と発表された。

また『人類諸君の協力を強く求める』との言葉も付加されたのだった。

 

この様な事態に陥っても

『テロリストを生かしておくと無辜の人々に犠牲が出るのでダークネスシ帝国の行動は

極めて理に適っており、 人道的に見ても正しい

犠牲になった人々への鎮魂の祈りとし黙祷を捧げます』

と言うのがマナ法国の法王ベンドゥの見解である。

ベンドゥの言葉に怒り狂ったマナ法国の人々は反乱を起こすも

ダークネスシ帝国のスシブレーダーに制圧されてしまう。

 

ベンドゥとダークネスシ帝国は裏で結託しているのは明白。

事態がここに至れば最早遠慮は行かない、 マナ法国に攻め入るべき。

最早ダークネスシ帝国の傀儡政権になっているのだ、 と言う意見が占められる。

 

しかしマナ法国に実際に攻めるのは危険過ぎると言う意見も有る。

何故ならば【アポビオーシス】による攻撃が予測されるからである。

 

幾ら大軍勢をかき集めたとしても【アポビオーシス】によって迎撃されては意味がない。

象に蟻の軍勢が挑めば踏み潰されておしまいなのだ。

会議が堂々巡りしているその時、 マナ法国にて大事件が起こる。

 

所属不明のスシブレーダーによるベンドゥの拉致である。

ダークネスシ帝国はスシブレーダーを戦力としているのは自分達と

ファウンデーション教国だけであり

今回の事件はファウンデーション教国の拉致であると断定し

世界平和の秩序を守ると言う名目でファウンデーション教国に進軍を開始した。

 

ファウンデーション教国にとっては寝耳に水の事態。

果たしてバルド達は大量破壊スシブレード【アポビオーシス】に打ち勝つ事が出来るのだろうか?

そしてベンドゥを拉致した謎のスシブレーダーの正体とは?

謎が謎を呼び混迷する大スシブレーダーバトルオペラ、 いざ開幕。



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説明要求

ダークネスシ帝国首都ニーガタ。

シャリーラ13世は居城であるニーガタセンターで

自分と同じスシの暗黒卿達からの報告を聞く為の定例会議を行っていた。

魔術による遠隔会議である。

 

「さてと本日の会議だが先日、 我等が師に話した

大量破壊スシブレードが稼働を開始した

これからはこの大量破壊スシブレード【アポビオーシス】を戦略の基盤として考えたいと思う」

『ちょっと待って下せぇ、 陛下』

 

ダースシ・オーモリが話を遮る。

 

「如何した?」

『この前、 親方が戻り次第話すって話じゃなかったんですかい?

親方はまだこっちに居ますよ? 元気に釣りをしていますが・・・』

「あぁ、 それなんだがこの間魔術の遠隔通話で少し話したら

『態々会って話す事も無いだろう』と言う事で認可された」

『マジっすか、 重要そうな話だけど良いのか?』

「私も言ったんだが、 『来るなら来い』だそうだ」

『なんともまた・・・』

『・・・・・なぁ、 もっと慎重になった方がいいんじゃねぇか?

幾ら何でも警戒が無さ過ぎじゃねぇのか?』

 

バリゾーゴンが静かに言葉を紡いだ。

 

「どういう事だ?」

『やみちゃんとダースシ・セキユーが居なくなったんだぜ?

もっと警戒して然るべきだと思う、 最高幹部が二人も居なくなったんだ

四天王ならもう最大限の警戒をするべき状況だ

それなのにこうも派手に活動するのは警戒が無さ過ぎないか?』

「問題無い」

『いやしかし』

「くどい」

 

これ以上話したくないとぴしゃりと言い放つシャリーラ13世。

 

『・・・そういう言い方は無いだろう、 あのデカブツを動かすには

サイクロプスやらジャイアントやら巨人スシブレーダーを数多く使っているんだ

そいつ等の長として安全確認をしたいと思うのは可笑しくないだろう』

 

バリゾーゴンがまともな事を言っている。

元四天王、 つまり中間管理職として気になる事は言わなければならないのだ。

 

『それは全く持って問題無いと言えるよバリゾーゴン』

 

ヘカトンケイルが通信に割り込んで来る。

 

『どういう事だ?』

『あの【アポビオーシス】は単なる巨大なスシブレードでは無い

まさに発想の勝利と言っても良い芸術品なんだ

そんな芸術品が易々と打ち砕かれる訳が無い』

『・・・・・意味が分からないな、 説明を求める』

『・・・・・如何するね、 陛下』

 

シャリーラ13世に対応を求めるヘカトンケイル。

 

『これ位の説明はして貰える権利が有る

俺はアンタの下についているがアンタの奴隷じゃない』

「良いだろう、 説明してあげよう【アポビオーシス】が如何言う物なのかを」



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アポビオーシス基本情報

「まずは【アポビオーシス】の基本的な事から説明しよう

アソウ、 資料を」

「はい」

 

魔術的データが送信されて各々の元に送信される。

 

超巨大大量破壊スシブレード【アポビオーシス】

寿司としての種類はマグロ叩き軍艦(ネギトロのネギ抜き)であり

通常のスシブレードよりも遥かに巨大にする事で

遥かに高い攻撃力を実現したスシブレード。

射出の為に使われる箸は世界樹と同等の素材を使った特別製の巨大箸と

超巨大湯呑をサイクロプスやジャイアント等の巨人達、 数百人態勢で持ち上げ使用する。

湯呑を箸頭に叩きつける為の攻城砦も併用する。

使用せずに移動する際には専用皿にのせている、 この専用皿は反重力魔法により制御されており

制御には数十人の魔術師が必要だが、 軍隊行動が可能になる。

 

『・・・・・一体どうやってこんばバカでかいスシブレードを作ったんだ?

ネギトロと言っても足りないだろう、 一体マグロを何匹釣れば良いんだ?』

「それは物を巨大化する特殊な道具を使って確保した」

『ふむ・・・しかし実際こんなバカでかいスシが回るのか?』

「それは問題無い、 回しやすくする為に神経伝達システムを導入している」

『何だそれ?』

「魔術的改造を加えて回転速度を上げているんだ」

『魔術的改造か、 そんな技術有るなんて初めて聞いたぞ』

「実験的な物だからな、 言うのが遅れた」

『ふむ・・・その魔術的改造にリスクは無いのか?』

「リスクは無い、 コストが莫大だったが」

『コスト?』

「そう人間の神経をスシブレードに配置してスシの回転率を上げているから

【アポビオーシス】一つ作るのに数万人の犠牲が必要になった」

『す、 数万人だと・・・作るだけで虐殺しているのか・・・?』

 

バリゾーゴンが絶句する、 余りの恐ろしさに。

 

「そうなるな、 だが安心しろ、 犠牲になったのは捕虜は

我々に否定的だった物が大半だ、 忠実な臣民は全体の1%未満だ」

『それでも少しは使ったんだな』

「そうだな」

 

事も無げに語るシャリーラ13世。

 

「それから維持コストもかなりかかっているしネタが腐ったら全てが終わりだ」

『そうだよ、 これは生物なんだぞ、 一個作る度に莫大なコストがかかるのでは

そう易々と使用出来る物じゃない!!』

「うん、 だがこれで恐怖は与えられる、 我々には強大な力が有る

その力で有利に交渉事が進められると思う

いずれにせよ、 腐る前にファウンデーション教国に攻め込んで

我々がこの世界の宗主国にならせて貰おうか」

 

にやりと笑うシャリーラ13世。

 

『・・・・・護衛のスシブレーダーはどんな編成だ?』

「ソルジャースシを多数配備、 後はヤミ・アプレンティスを100人程」

『ヤミ・マスターが居ないのか!?』

「巻き添えを防止する為だ」

『・・・・・』

 

心配そうにするバリゾーゴンだった。



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ビジョン

『巻き添えとは一体? 何か問題でも有るのですか?』

 

 

 

ダークイタマエが尋ねる。

 

 

 

「誤作動による死亡事故が有ったのだ」

 

『誤作動・・・』

 

「大き過ぎる分操作性は無いに等しいからな」

 

『止める時は一体如何するのですか?』

 

「止まるまで待つしか無いな」

 

『・・・・・』

 

 

 

頭を抱えるダークイタマエ。

 

 

 

『軽く暴走していませんか?』

 

「制御して破壊力が低下する事の方が問題だと考える」

 

『・・・・・』

 

 

 

スシの暗黒卿達は不安になった、 大丈夫なのか、 と

 

 

 

「皆さん、 聊かマイナスのファクターに目をやりがちですがこう考えて下さい」

 

 

 

アソウが語り始めた。

 

 

 

「デメリットの塊ですが我々のみが持つ強大な力

 

この力を利用しての我々の取れる行動は幅広くなりました

 

これで他の国も簡単には我々に手出し出来ないでしょう」

 

『それは如何だろうか、 ベンドゥとやらが拉致された事に関しては如何考える』

 

 

 

バリゾーゴンが口を挟む。

 

 

 

「特に問題は無い、 ベンドゥの補佐が後任になると言う話だ

 

我々にとってベンドゥ等如何でも良い、 マナ法国の潤沢な食料さえ確保出来れば

 

マナ法国が如何なろうと知った事では無い」

 

『人間怖いな・・・』

 

 

 

バリゾーゴンが呟いた。

 

 

 

『というかだな・・・この国が世界の覇権を握ってそれから如何するか

 

明確なビジョンは有るのか?』

 

「ビジョン?」

 

『そうだ』

 

『ほう、 魔王には明確なビジョンは有ったのか?』

 

 

 

バリゾーゴンの言葉に野次を飛ばすオーモリ。

 

 

 

『・・・・・』

 

「その通りだ、 明確なビジョンとやらを考えている暇が有れば世界を取るべき

 

兵は拙速を尊ぶだ」

 

『・・・それでこれから如何する?』

 

「ファウンデーション教国に【アポビオーシス】で攻め込む

 

これでスシブレーダーを壊滅させて我々のみがこの世界のスシブレーダーとなるのだ」

 

『・・・本当に大丈夫なのかね』

 

 

 

ノーテンがマグロの頭を掻きながら呟く。

 

 

 

「どういう事だ?」

 

『【アポビオーシス】がこちらに向く事は無いのか?

 

つまり【アポビオーシス】を動かしている連中が裏切る可能性は?』

 

「裏切る可能性なんて言っていたら君達を信用出来ないだろう」

 

『俺達は信用しても良いんじゃないかぁ?』

 

「私が信用しているのは我が師"闇"の実力のみだ」

 

 

 

断言するシャリーラ13世。

 

 

 

「それは兎も角【アポビオーシス】の指揮官は私を裏切らないさ」

 

『何故言い切れる?』

 

「【アポビオーシス】の指揮官は反乱出来る程器の大きい男では無い

 

さて、 他にはなす事も無いし、 今回の会議はこれにて終わらせようか、 ではまた」



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口笛

一方その頃、 マナ法国の壊滅した首都に代わり暫定首都に選定されたナヴ―では

 

マナ法国の法王ベンドゥの拉致によりマナ法国の枢機卿達はパニックに陥った。

 

ベンドゥは日和見主義で反闇寿司派が壊滅したと知るや否や

 

闇寿司への融和の姿勢を見せていた。

 

 

 

そんな中、 急に拉致されてしまった。

 

残った枢機卿達は困惑し代理の法王を選定するのも

 

責任の押し付け合い擦り付け合いで一向に進まなかった。

 

ナヴ―城では延々と対策を話し合うばかりであった。

 

ファウンデーション教国に対しての遺憾の意を示そうにも

 

代理の法王を選ばなければそれすら出来ない始末。

 

 

 

「た、 大変です!! 城の外に市民達が詰めかけています!!」

 

 

 

警備兵が枢機卿達に報告する。

 

 

 

「闇のスシブレーダー達は如何したぁ!?」

 

「彼等はここを既に発っています!!」

 

 

 

【アポビオーシス】と共にファウンデーション教国の攻撃に加わる為

 

余剰な戦力は無いのだ。

 

 

 

「ダークネスシ帝国は我々を見捨てる気か!?」

 

 

 

否、 そもそも同盟を組んでいないので見捨てるも何も無い。

 

 

 

「ど、 如何しましょう・・・」

 

「・・・・・」

 

 

 

枢機卿で大枢機卿の地位に立つキンタローは考えた。

 

一体如何すれば我が身を守れるのか? 国の事なんて如何でも良い、 我が身を守れれば・・・

 

 

 

「市民の寄せ集め等!! 兵隊達で如何にかしろ!! 我々は逃げる!!」

 

 

 

枢機卿の一人が叫ぶ。

 

 

 

「馬鹿な!! 市民達は数万人!! 兵隊は数千人だ!! 戦いにすらならない!!」

 

 

 

他の枢機卿が否定する。

 

 

 

「くっそ・・・如何すれば・・・」

 

 

 

キンタローは考えた。

 

ここは如何するのが得策なのか・・・

 

 

 

「火を放て!! 焼き殺せ!!」

 

「そんな事したら我々も巻き添えになる!!」

 

「逃げ道は無いのか!?」

 

「駄目です!! 周囲は既に取り囲まれて・・・」

 

 

 

キンタローは震え始めた、 恐怖、 混乱、 パニック、 絶望

 

死、 死、 死、 死、 死、 死、 死、 死、 死、 死!!

 

ここに長居していたらここが永の寝所となる!!

 

 

 

「この世界には神の慈悲は無いのか!!」

 

 

 

そんな叫びに呼応したのか鳴り響く爆音!!

 

何事かと外を見れば聞こえる口笛

 

そして一般的な寿司と比べて明らかに巨大な軍艦巻きが隊列を組んで出現する!!

 

そして軍艦巻きと共にやって来た男!!

 

 

 

「す、 スシブレーダー・・・か!?」

 

「助けに来てくれたのか!?」

 

 

 

民衆が男を取り囲む、 しかし男は物怖じせずに持っていた物を見せる!!

 

ベンドゥの首だ!! 血も滴るベンドゥの首を持ち歩いていたのだ!!

 

 

 

「な、 何だとぉ!?」

 

 

 

枢機卿達は叫んだ。



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ある男の良心の呵責

同時刻、 マナ法国でファウンデーション教国に移動中の【アポビオーシス】。

 

専用皿と行軍する部隊達の士気は非常に高い、 何しろ自分達は世界最強のスシブレードを

 

運用しているのだ、 心躍らない筈が無い、 闇寿司にとって

 

スシブレードによる世界征服は悲願と言って良い。

 

浮かれているとも言って良い、 だがしかしそんな陽気に関わらず暗い顔の男が居る。

 

 

 

彼の名はグラニート。

 

スシブレーダーでは無い、 彼はバリゾーゴンの配下のサイクロプスであり

 

【アポビオーシス】射出の為のサイクロプス、 ジャイアント混成部隊の指揮官である。

 

彼の号令で【アポビオーシス】は射出され壊滅的な破壊を齎すのだ。

 

 

 

グラニートは歴戦の強者、 人間を相手の戦争は経験して来た。

 

そんな彼が20万の人々を虐殺した事実に対して圧倒的に慚愧の念を感じていた。

 

自分が今まで戦って来た者は敵対者、 戦人、 しかし自分が虐殺した20万人は

 

敵対していたが無辜の人々が殆どだった。

 

人間を幾ら殺しても魔族は気にも留めないと思う読者も居るだろう。

 

しかし魔族にも心が有り、 ダークネスシ帝国に与している以上人間とも接する。

 

彼等が人間に思う所が出来るのも無理は無いだろう!!

 

だがしかしグラニートは自分の想いを誰にも打ち明けずに居た。

 

何故なら

 

 

 

「グラニート、 この前は大手柄だったな!!」

 

「これからもよろしく!!」

 

「いやぁ凄いな本当に尊敬するよ!!」

 

「羨ましいなぁ・・・」

 

「グラニート!! 一杯呑もうぜ!!」

 

「隊長、 御疲れ様でした!!」

 

 

 

自分以外、 誰も虐殺を忌むべき事と認識していないのだ。

 

いや気持ちが沈んでいる者も居る、 しかし口には出さない、 圧倒的な少数派だからだ!!

 

 

 

「・・・・・」

 

 

 

グラニートは静かに一人外れた場所で強い酒を煽る様になっていた、 しかし酔えない。

 

グラニートは激しい良心の呵責に苦しんだ、 自分が二十万の人々を死に至らしめたのだ

 

自らを史上最大の殺戮者として見るようになり

 

もしこの戦争でファウンデーション教国が勝利すれば

 

自分は戦争犯罪者として裁かれ処刑されるだろうと考えていた。

 

 

 

この時点で自分が負ける事を考え始めていた、 望んでいたのかもしれないが・・・

 

何れにせよ、 彼は更なる惨劇を起こさなければいけない自分の境遇に悲嘆した。

 

今度は20万では済まない人々が虐殺されるのだろう、 彼は一つしか無い目から

 

涙を流しながら酒を煽った、 酒は琥珀色に輝いていたがグラニートには赤色に見えた。

 

そして血の味がしたのだった。



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夢の中で

O5-1は夢を見ていた。

 

 

 

「ん、 ここは・・・」

 

「やぁ、 久しぶりだね、 ジャック・ブライト、 いや今はO5-1か」

 

 

 

ビジネススーツを着た成人男性に話しかけられるO5-1。

 

 

 

「SCP-990・・・」

 

 

 

SCP-990、 通称ドリームマン、 人の夢に現れて予言を残す謎の人物。

 

O5-1は以前にも彼に会っていた。

 

 

 

「その名前は嫌いだな」

 

「じゃあ何て呼ぶ? 選ばせてやるよ

 

ブラッドリー、 ブランドン、 ブレンダン、 ブレンドン

 

ブライアン、 ブルース、 ブライアン、 バイロン

 

カルヴィン、 キャルヴィン、 キャメロン、 カメロン好きな物を選べ」

 

「のりおで行こう」

 

「・・・・・分かった、 じゃあのりお、 一体何の用件だ?」

 

「君達が頭を悩ませている【アポビオーシス】についてだ

 

【アポビオーシス】を止めたければナヴ―に行くんだ」

 

「ナヴ―・・・マナ法国の第二の首都と呼ばれるナヴ―か?」

 

「なるべく早く、 そして手練れを送ると良いだろう

 

バルド君が適任だろう、 なるべく早く送り給え」

 

 

 

ドリームマンは語った。

 

 

 

「・・・・・お前を信じるしかないこの状況が恨めしいよ」

 

「君も真面目になったものだな」

 

「ほっとけ」

 

 

 

そしてO5-1は目覚めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

O5-1の部屋に呼び出されたバルドは困惑した。

 

 

 

「ナヴ―・・・そこに何が有るのですか?」

 

「そこにこの状況を打開出来る何かが有るらしい」

 

 

 

O5-1に朝一番で呼び出されるなり、 ナヴ―に行く事を指示されたバルド。

 

 

 

「何か、 とは」

 

「私にも分からない」

 

「???」

 

「これは唯一の情報筋からの情報だ、 藁にもすがる思いだがこれしか信じられる物が無い」

 

「そんな・・・」

 

「このまま座して死を待つよりは良い、 尤も私は死なないが」

 

「・・・・・」

 

 

 

バルドは考えた。

 

 

 

「勿論君一人じゃない、 部隊は君が選定して、 私も秘蔵の宝を使用しようじゃないか」

 

「・・・・・」

 

 

 

バルドは考えた【アポビオーシス】に随伴するスシブレーダー達に対処する為にも

 

イエローストーンにはスシブレーダーを残しておくべき、 ならば選定するメンバーも

 

熟慮する必要が有るだろうか。

 

 

 

「君に協力は惜しまない、 だがしかし時間が無いから今すぐに選んで決めて旅立って貰おう」

 

「そんな無茶苦茶な・・・」

 

「この程度の事は無茶にも入らん、 世界を守る為だキリキリ働いて貰おう」

 

「そんなぁ・・・」

 

 

 

情けない声を出すバルド。

 

 

 

「そんな情けない声を出すんじゃないよバルド」

 

 

 

レーアが部屋の外から入って来た。

 

 

 

「レーア様!?」

 

「やるしかないんだからやるしかないのよ」

 

「・・・・・」

 

 

 

顔を叩くバルド。

 

そしてキリッとして目を見開いた。




登場したSCP

SCP-990 - ドリームマン

http://scp-jp.wikidot.com/scp-990


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メンバー決定

「唐突にナヴーに行け・・・どういう事なんだ?」

 

 

 

スシブレーダーの詰め所でバルドが話をした時、 ゴハンが当然の疑問を口にした。

 

 

 

「ファウンデーション教国には預言者が付いている・・・」

 

「何ですか、 ボス?」

 

「昔から噂されている事だ」

 

 

 

ゾーバが語る。

 

 

 

「予言者ぁ? オカルトか?」

 

「的中率100%らしい、 過去には世界の滅びを止めたと言う噂も有る

 

ナヴーとやらの状況は分からんが昔取った杵柄だ、 ここはワシが出よう」

 

「ボスが行くなら俺も」

 

 

 

ゾーバとグリードが志願する。

 

 

 

「ゾーバさんの様なパワータイプが行くなら私の様なサポート型も一緒に行った方がいいわね」

 

「私もだ、 ギャングの、おに任せてられん」

 

 

 

マドカとケイも前に出る。

 

 

 

「俺も行こうか」

 

 

 

ゴハンも志願する。

 

 

 

「おや予言を信じるのか? 意外だな」

 

「ゾーバさんよ、 俺はシビアな性格だ、 たしかに胡散臭いが

 

即座にO5-1が信じる所を見ると確実な話だと推測する」

 

「なるほど・・・じゃあ僕とレーア様を含めた7人で行こうと思う

 

他はここで待機して敵を迎え撃って下さい」

 

「・・・・・一つ尋ねたい」

 

 

 

エミリーが口を開いた。

 

 

 

「あの件の超巨大スシブレード、 我々で止められるとお思いか?」

 

「下らんな」

 

 

 

ラルフが切って捨てた。

 

 

 

「止められるか否かではない、 何としてでも止めなければならない

 

もしここで件の巨大なスシブレードを止められなければ我々の敗北どころか

 

この世界は征服されるだろう」

 

「・・・・・根性論って奴?」

 

「事実だ」

 

「なるほどね・・・アタシも出来る限り頑張ろう

 

それからもう一つ質問、 ナヴーまでどうやって行くつもり?

 

馬で行ったら帰って来るまでにイエローストーンは潰されるわよ?」

 

「それは心配無い」

 

 

 

レーアが口を開いた。

 

 

 

「宝を開帳してくれるそうだ」

 

「宝、 ね」

 

「そう、 瞬間移動系の宝らしい、 詳しい事は知らないけど」

 

「大丈夫なのか?」

 

「この状況で出すんだもの、 大丈夫に決まっているでしょ」

 

 

 

レーアが断言する。

 

 

 

「そうか、 なら何も言う事は無い・・・全部終わった時の祝勝会は奢って下さいよ」

 

 

 

エミリーがにこりとして軽口を叩く。

 

 

 

「えぇ、 君達に我が家に伝わる伝統料理を食べさせてあげるわ」

 

 

 

レーアが返答する。

 

 

 

「それは楽しみですね」

 

「えぇ、 私の得意料理のシナモンロールを食べさせてあげるわ」

 

 

 

意外にお菓子作りが趣味なのであった。

 

 

 

「それじゃあ行きましょうか!!」

 

「「「「「「おうっ!!」」」」」」

 

 

 

画してナヴーに向かう7人のメンバーが決定したのだった。



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瞬間移動

ナヴーに向かう7人がイエローストーンの地下に向かっている。

 

地下には宝物庫が有り、 そこはO5-1と警備員が居た。

 

 

 

「遅いぞ」

 

「すみません・・・それで宝と言うのは」

 

「持って来た、 これだ」

 

 

 

置かれているのは小さな淡いピンク色の何かだった。

 

 

 

「これは・・・何です?」

 

「子供遊び用のプールだな、 ここに水を溜めて水遊びをするんだが

 

これは唯のプールでは無い」

 

 

 

確かに溜まっているのは明るい白い輝きの液体である。

 

 

 

「詳しい説明は省く、 と言うか原理が分かっていない」

 

「分かっていないんですか?」

 

「あぁ、 このプールに飛び込むと瞬間移動出来る」

 

「おぉ、 それは凄い」

 

「但し一方通行、 色によって出る場所が変わる

 

今回は偶々ナヴーの近くにワープ出来る色で良かった」

 

「そうなんですか・・・」

 

「とりあえずワープした先には色々と資源は準備はしておいてある、 有効に活用してくれ」

 

「分かりました」

 

「じゃあ急いで行ってくれ、 時間は残されていないんだ」

 

「はい!!」

 

 

 

プールの中に飛び込む7人。

 

 

 

「頼んだぞ・・・」

 

 

 

O5-1が呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワープした先の施設内で物資を調達するバルド達7人。

 

馬や地図や食料等、 必要な物は一通り揃っていた。

 

 

 

「地図から判断するにナヴーは近いな、 急ぎましょう」

 

 

 

バルド達は馬に乗ってナヴーに向かって行った。

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

 

 

ナヴーに向かう迄の道のりは特に問題無く進めた。

 

しかしバルドは顔をしかめた。

 

 

 

「どうしたのバルド?」

 

「最近スシに対する感覚が鋭敏になっているのか・・・

 

如何やらスシが近いようですね」

 

「スシに対する感覚?」

 

 

 

レーアが首を傾げる。

 

 

 

「スシの匂い・・・ですかね」

 

「酢の匂いか?」

 

「そうなりますね、 ゾーバさん」

 

「山葵の匂いもするだろうぉ?」

 

 

 

グリードが言い放つ。

 

山葵の残り香がする様なスシは最早狂気の産物であろう。

 

 

 

「兎に角、 ナヴーで闇のスシブレーダーが居る、 と言う訳だな」

 

「えぇ・・・恐らくは・・・」

 

「・・・・・バルド、 戦い方を決めておきましょう」

 

 

 

レーアが提案する。

 

 

 

「貴方達がスシブレードを使っている間にこの生きている銃で

 

敵スシブレーダーを蜂の巣にする、 これで如何かしら?」

 

「お嬢ちゃん、 それは悪手だ」

 

 

 

ゾーバが却下する。

 

 

 

「お嬢ちゃ!?」

 

「アンタのその武器は凄い早い、 目にも止まらぬスピードだ

 

ハッキリ言ってスシブレード以上と言って良い

 

その武器は切札としてギリギリまで取っておくのが無難だろう」

 

「・・・取っておいて宝の持ち腐れになったら如何するの?」

 

「ならない様に見極めろ」

 

 

 

ゾーバが言い捨てる。





登場したSCP

SCP-120 - 瞬間移動プール

http://scp-jp.wikidot.com/scp-120


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謎の男

ナヴーに辿り着いたバルド一行、 ナヴーを取り囲む壁には磔にされた人々が

 

服装から察するにマナ法国の枢機卿達であろう。

 

 

 

「これは・・・一体・・・」

 

 

 

口笛が鳴り響く、 そして一般的な寿司と比べて明らかに巨大な軍艦巻きが隊列を組んで出現する。

 

 

 

「こ、 これは一体・・・」

 

 

 

軍艦巻きの陰から男が現れる。

 

 

 

「闇のスシブレーダー、 では無いな?」

 

「貴方は?」

 

 

 

スシブレードを構える男。

 

 

 

「やる気か!?」

 

「スシブレーダーならばスシブレードで語るべきだと思う」

 

「・・・良いだろう」

 

 

 

男のスシブレードはネギトロの様である。

 

バルドもエッグヴィーナスを構える。

 

 

 

「卵巻き・・・珍しいな」

 

「・・・」

 

「「3、 2、 1、 へいらっしゃい!!」」

 

 

 

互いのスシブレードが激突し合う。

 

防御に秀でたエッグヴィーナス、 相手はネギトロ。

 

スシブレーダー同士の模擬線でネギトロとも戦った事はある。

 

だがしかし・・・

 

 

 

「早いッ!?」

 

 

 

回転が普通のネギトロよりも多く回転している。

 

ただのネギトロでは無い!!

 

 

 

「いなせ!! エッグヴィーナス!!」

 

「ネギトロイヤー ZZ!! 推し進め!!」

 

 

 

ネギトロイヤー ZZと呼ばれたスシはエッグヴィーナスに押し寄せる。

 

エッグヴィーナスの防御性能でもこの一撃は不味い!!

 

いなすのが正解、 しかしネギトロイヤー ZZがその正解の前に立ち塞がる。

 

逃がすまいと追いすがるネギトロイヤー ZZ。

 

 

 

「っ!! 進め!! エッグヴィーナス!!」

 

「むっ」

 

 

 

逃げられないと感じたバルドはエッグヴィーナスを反転させ

 

ネギトロイヤー ZZに向かわせる。

 

 

 

「破れかぶれでは勝てないぞ!!」

 

「破れかぶれでは無い!! エッグヴィーナス!!」

 

 

 

ネギトロイヤー ZZとの激突の瞬間。

 

エッグヴィーナスは逆回転しネギトロイヤー ZZの背後を叩いた!!

 

 

 

「!!」

 

 

 

男は眼を見開いて驚愕した。

 

そしてネギトロイヤー ZZを手に取った。

 

 

 

「もう良いだろう、 君の実力は良く分かった」

 

 

 

ネギトロイヤー ZZを食べる男。

 

 

 

「・・・貴方は?」

 

「僕は三崎 総司、 闇寿司を憎む者だ

 

君達ファウンデーション教国のスシブレーダーは噂では聞いていたが

 

実力は良く分からなくてね・・・接触は迷っていたんだ」

 

「偉そうな態度だな、 何様だよ」

 

 

 

ゴハンが悪態を吐く。

 

 

 

「悪いが今回は君の実力を見たかっただけで僕は本気を出していない」

 

「本気を出すとどうなるんだ?」

 

 

 

すっ、 とスシブレードを取り出す。

 

マヨコーンだ。

 

 

 

「それが君の本気、 と言う事か?」

 

「驚かいのか?」

 

「何が?」

 

「闇寿司を使っている事をだよ」

 

「???」

 

「・・・ふむ、 如何やら寿司に関しての理解が低い様だ・・・まぁ良いか」



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止める

ナヴーの城に入るバルド達一行と三崎。

 

 

 

「僕は闇寿司が嫌いでね、 闇寿司と組する者も嫌いだ

 

故に彼等枢機卿と法王には死んで貰った」

 

 

 

三崎は事も無げに語った。

 

 

 

「ミザキ、 さん、 君が【アポビオーシス】を止める方法を知っているのかい?」

 

「【アポビオーシス】? 何だいそれは?」

 

 

 

三崎は首を傾げた。

 

 

 

「物凄い大きなスシブレードだ、 都市一つを破壊出来る程の破壊力を持つ」

 

「・・・・・最初に言っておこう、 あり得ない」

 

 

 

三崎は断言する。

 

 

 

「超巨大スシブレード、 僕も大きな軍艦を使う事はある

 

しかしそんなに巨大なスシブレードを作る事は不可能だ」

 

「何故?」

 

「スシブレード構造力学上、 スシブレードが成り立つ大きさは決まっているんだ」

 

「つまりどういう事?」

 

「スシブレードのみの力で回っているんじゃない、 スシブレードの力にプラスして

 

何らかの力が働いている、 ちょっと待ってて」

 

 

 

三崎が図面を出す。

 

 

 

「そのあぽ何とかとか言うスシブレードは何のスシブレードだ?」

 

「ネギトロのネギ抜き」

 

「だとするならば・・・・・」

 

 

 

三崎は頭の中で【アポビオーシス】が成り立つ条件を考え出す。

 

如何言う構造なのか、 如何すれば回転するのか。

 

回転する為には如何すれば良いのか、 正確な設計図を頭の中で構築したのだった。

 

 

 

「す、 凄い・・・」

 

 

 

禁じられた山から寿司の知識を得たバルドもこの三崎と言う男の知識には舌を巻いた。

 

 

 

「君もスシブレードに対しては一家言有る様だが僕もこう見えて

 

スシの学校を出ている、 この程度の事は少し詳しく学習すれば誰でも分かる事さ

 

よし・・・恐らくこれであっていると思う」

 

 

 

【アポビオーシス】の図面を完成させる三崎。

 

 

 

「【アポビオーシス】を駆動させる為には一体どんな動力を使っているかは分からない

 

しかしながら駆動させる為には確実にエネルギーが通過する通路が必要な筈だ

 

そのエネルギー駆動の為の通路にスシブレードを打ち込めば・・・」

 

「破壊出来る、 と言う事?」

 

「そう言う事だ」

 

「意外と単純なんだなぁ・・・」

 

「そう単純でも無い」

 

 

 

グリードの言葉を否定する三崎。

 

 

 

「恐らくエネルギー駆動通路は上部に付いて居る筈」

 

「つまりバカでかいスシブレードの上を登るって事?」

 

「そうなるな」

 

「一気に無理難題と化したな・・・どうやって上るんだ?」

 

「スシブレードのメンテナンスに通行出来る場所が有る筈だ、 僕も行こう」

 

「君も来るのかい?」

 

「当たり前だ、 街を一個破壊出来るスシブレードだぞ?

 

止めなければ何百人、 何千人も死ぬだろう、 止めに入るのが普通だ」

 

 

 

三崎は言い切った。



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闇寿司死すべし慈悲は無い

「だが問題は他にも有るだろう」

 

「問題?」

 

 

 

ゾーバが口を開く。

 

 

 

「騎馬の周りに随伴する歩兵が居る様に

 

【アポビオーシス】の周りには護衛が大勢居る筈だ

 

その数はかなり多数だろう、 我々だけで行くのは無理だ」

 

「・・・・・ならば如何する?」

 

「ここからファウンデーション教国までどれ位だ?」

 

「・・・急いでも5日はかかる」

 

「ファウンデーション教国に戻って軍を動かす、 それしか方法は有るまい」

 

「ちょっと待って下さい、 何か通信手段は無いんですか?」

 

 

 

バルドが割って入る。

 

 

 

「マナ法国には魔術的な通信手段はコストの関係上使われていないわ」

 

 

 

レーアが指摘する。

 

 

 

「そんな・・・」

 

「早馬を使って早急に行くしかない」

 

「あー・・・それは少し問題が有るよ」

 

 

 

三崎が申し訳なさそうに言う。

 

 

 

「問題?」

 

「それは一体・・・?」

 

「僕は乗馬の経験が無い」

 

 

 

驚愕する一同。

 

 

 

「き、 君、 一体どういう事なんだ? 馬に乗った事が無い?」

 

「そこまで驚く事か?」

 

「いや、 だって・・・」

 

「今までずっと歩いていたのかよ」

 

「・・・・・実は僕は異世界の住人でね、 馬に乗る習慣が無いんだ?」

 

「何ぶっとんだ事言ってんだコイツ」

 

 

 

ゴハンがツッコミを入れる。

 

 

 

「いきなりこんな事を言われても信じられないかもしれない

 

けれど僕は闇寿司が許せなくてね

 

闇寿司の親方"闇"がこの世界に来たと知っていても経っても居られなかったんだ」

 

「ちょっと待て、 一体どうやってこの世界にやって来た」

 

「次元間スシフィールドの応用さ」

 

「そんな事が出来るのか!?」

 

「恐らく闇寿司には不可能だろう」

 

「そうなのか?」

 

「僕の様に闇寿司に対して絶対に許さない

 

何処に居ても捕まえる、 地獄の果てまで追い詰めて殺してやる

 

その一点のみに特化したそういう思いが無ければこの境地には至らない」

 

 

 

闇寿司に対しての憎悪、 この男が持っているのはそれだ!!

 

 

 

「・・・一体何が有ったんだ」

 

「闇寿司は我々から大事な物を奪い取る敵だ、 一人たりとも生かしては置けない」

 

「過激だな・・・」

 

 

 

ゴハンが呟いた。

 

 

 

「・・・・・・・それではこうしよう、 この街で一番の早馬を出して貰いましょう

 

その早馬でレーア様、 ファウンデーション教国に救援をお願いします」

 

「私が?」

 

「えぇ、 貴方の銃はとても強力です、 貴方なら確実でしょう」

 

「・・・・・分かったわ、 行きましょう、 それでバルド達は如何するの?」

 

「【アポビオーシス】の所に向かいます、 付かず離れず見守りながら

 

ファウンデーション教国の援軍が来たら攻め込みます」

 

「なるほど、 それでいいわ」

 

 

 

作戦が決まったのだった。



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心労で倒れる男

同時刻、 マナ法国でファウンデーション教国に移動中の【アポビオーシス】。

 

現在トラブルが起きて一旦停止中である。

 

 

 

「グラニート殿が倒れたらしい」

 

「最近強い酒を飲み続けていたからなぁ・・・」

 

「幾ら名声を上げたとはいえ呑み過ぎだ」

 

「はしゃぎすぎたかなぁ・・・」

 

 

 

グラニートが倒れたのだ、 同伴する医者の診察の結果は・・・

 

 

 

「強い精神的な疲弊が見られますな」

 

「強い精神的な疲弊・・・精神攻撃を受けている、 と?」

 

「それは分かりませんが・・・」

 

「うぅ・・・うぅ・・・」

 

 

 

魘されるグラニート。

 

 

 

「許してくれ・・・・・許してくれ・・・」

 

「何を魘されているのか・・・」

 

「・・・・・よもやこの間殺した連中の亡霊達が居るのか?」

 

 

 

部下のサイクロプスやジャイアントが訝しむ。

 

彼等はあまり賢くない、 その上に共感力も欠けている。

 

彼等にグラニートの心情は理解出来ないだろう。

 

 

 

「早急に回復して指揮能力を取り戻して貰わないと

 

俺達が困る、 早急に何とかしろ」

 

「うーむ、 ならば陛下から預かったこれを使いましょうか」

 

 

 

医者はそう言うと巨大な箱を取り出した。

 

サイクロプスのグラニートよりも大きい箱である。

 

 

 

「これは?」

 

「中を見れば分かりますよ」

 

 

 

その箱の中に詰められていたのは大量の酢飯だった。

 

 

 

「これは・・・一体?」

 

「精神酢飯漬けにします」

 

「お、 おい!! どういう事だ!?」

 

 

 

ジャイアントが医者の襟首を持ち上げる。

 

医者は人間なので高く持ち上げられる。

 

 

 

「ぐあ!! お、 落ち着いて!! グラニート殿は明らかに精神的な疲弊!!

 

正規の治療方法では時間がかかり過ぎる!!」

 

「だからって精神酢飯漬けにするこたぁねぇだろうが!!」

 

「し、 しかしこのまま留まり続けるのは!!」

 

「・・・・・・・」

 

 

 

部下のサイクロプスがジャイアントを止める。

 

 

 

「お、 おい!! 良いのかよ!! 俺達の指揮官が精神酢飯漬けにされるんだぞ!!」

 

「このまま留まり続けて何か致命的な事が起こった後では遅い・・・

 

我々には戦って勝つ事しか許されないんだ、 魔王の下でも

 

シャリーラ13世の下でもだ」

 

「・・・・・・・・・・畜生」

 

 

 

ジャイアントが医者を話した。

 

医者はげっほげっほと咳き込んだ。

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・御理解いただけたら箱の中にグラニート殿を入れて貰って良いですか?」

 

「っ・・・・・すまねぇ・・・」

 

「・・・・・」

 

 

 

ジャイアントとサイクロプスは申し訳なさそうにグラニートを持ち上げて

 

酢飯が詰まった箱の中にグラニートを押し込めたのだった。



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物凄い馬

レーアはファウンデーション教国に向かう為に一番足の速い駿馬に乗っていくことになった、 が

 

 

 

「この貴族のお嬢様を乗せてファウンデーションに向かえば良いんだな?」

 

 

 

駿馬は明らかに可笑しい喋れる上に

 

シルクハットと金色の刺繍に"W.G.W"のモノグラムがあるライトブルーのスカーフを身に纏っている。

 

 

 

「喋る馬・・・か」

 

「何か知らんけどここら辺の馬は喋れない奴多いんだよなぁ・・・

 

初めまして、 オレっちはウエリントン・ギャレット・ワンダーホースだ

 

ホワイトチャペルで最高の馬車馬だ!!」

 

「ほわいとちゃぺる・・・って何処?」

 

「ホワイトチャペルに帰る為の資金作りの為でここで働いている

 

とは言えホワイトチャペルが未だに有るか分からんが・・・」

 

 

 

ウエリントンは俯く。

 

 

 

「しかし馬車馬?」

 

「あぁ、 背に乗せる事も出来るぜ、 オレっちがここで一番早い馬だ

 

とは言え大体の馬はそう言うがオレっちは本当に早く辿り着けるぜ」

 

「そうなの?」

 

「あぁ、 ここに来る前までは色々有って経験豊富だ

 

的確に素早く対処出来るぜ」

 

「ふむ・・・確かに知能は高そうね・・・」

 

「だろぉ? じゃあ御嬢さん、 早い所行くぜ」

 

「えぇ、 戦場に近いと思うけど覚悟は良い?」

 

「当たり前のコンコンチキよ!! こんな所で死ぬ訳には行かねぇんだ!!」

 

「へぇ、 何か事情が有るの?」

 

「おうともよ!! 俺には嫁さんと子供達が居るんだ!!

 

あいつ等の元に変える迄死ぬ訳には行かない!!」

 

「ちょっと待って、 本当に大丈夫?」

 

 

 

レーアは不安になって来た。

 

 

 

「あん? 何がよ?」

 

「いや、 その言葉・・・死亡フラグじゃない?」

 

「・・・芝居か小説の見過ぎだぜお嬢ちゃん、 さ乗りねぇ乗りねぇ」

 

「うーん・・・」

 

 

 

少し不安を感じながらレーアはウエリントンに乗った。

 

この時レーアは驚いた。

 

 

 

「こ、 これは・・・!!」

 

「ふっ、 違いの分かる御嬢さんだ、 乗り心地最高だろ?」

 

「え、 えぇ・・・これは今まで乗ったどの馬よりも最高の乗り心地・・・!!」

 

「伊達に食わせていないさ、 馬車馬として働いていたが

 

最近は乗馬させてくれって依頼も多いからな、 最高の乗り心地を提供する為に

 

創意工夫をしている訳だ」

 

「なるほど・・・これほど乗り心地の良い馬は初めてよ・・・

 

ウエリントンさん、 よろしく頼むわね」

 

「任せな!! じゃあいくぜ!!」

 

 

 

ウエリントンとレーアはナヴーから旅立った。

 

本人の申告通り本当に早く的確に状況判断を行った結果。

 

なんとたった四日でファウンデーション教国に辿り着く事になったのだった。

 

 




登場したSCP

SCP-1156 - 驚異の馬・ウエリントン

http://scp-jp.wikidot.com/scp-1156


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闇寿司とは

時間は前後して【アポビオーシス】の元に向かうバルト達一行。

 

三崎はバルドと一緒の馬に乗せる事にした。

 

 

 

「ちょっと待ってくれ、 普通二人乗りって上に二人乗るんじゃないのか?」

 

 

 

馬の下に括りつけられる状態で三崎は抗議をする。

 

 

 

「いや、 咄嗟に動けなくなりそうなので・・・」

 

「それでもこれは無いだろう」

 

「お前が馬に乗れないのが悪い」

 

 

 

ゾーバに一喝される。

 

ゾーバも裏社会の大物だがいざという時の為に乗馬の訓練は欠かさなかったのだ。

 

 

 

「ぐぬぬ・・・・・」

 

 

 

確かに乗馬の訓練をしなかった自分が悪いので言い返せない三崎だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、 一旦野営する事にした一行。

 

急ぐ彼等だったが無理し過ぎて馬を壊すのは本意では無いし。

 

そんな事をすれば確実に追い付けないのである。

 

 

 

「・・・所でお前さん、 異世界から来たと言っていたが

 

異世界ではスシブレードは普通の技術なのか?」

 

 

 

ゴハンが尋ねる。

 

 

 

「いや、 僕はスシの専門学校に通っていたんだ」

 

「スシの・・・」

 

「専門学校?」

 

「そう、 スシアカデミアにね・・・懐かしい」

 

 

 

遠い目をする三崎。

 

 

 

「スシアカデミア・・・どんな事を学ぶんだ?」

 

「寿司の歴史やお寿司の美味しい握り方

 

現代寿司学、 軍艦設計理論、 寿司工学

 

「スシとアート」「スシとオカルト」理論/実践、 それから闇の寿司に対する防衛術」

 

「闇の寿司の防衛術・・・闇寿司の事?」

 

「そうだね」

 

「僕は訳有って寿司の知識は有るが闇寿司の知識は無いんだ

 

具体的には闇寿司って何なんだ?」

 

 

 

バルドが尋ねる。

 

 

 

「闇寿司というのは寿司職人の誇りを失い邪道に堕ちた外道達の事だ

 

連中は人としての心を捨て去った、 一人たりとも生かしておけない」

 

「そういう精神的な所じゃなくてスシブレードの方が気になる

 

僕が知識として持っているスシとは違うんだけど・・・」

 

「うん、 重要なのは「寿司」という概念的枠組みだ

 

闇寿司は寿司では無い物もスシと言い張ってスシブレードとして扱う事が出来る

 

闇寿司の総元締め親方の"闇"はラーメンすらスシブレードにしてしまうらしい」

 

「ラーメン? と言うのは分からないが兎に角強そうだな」

 

「あぁ・・・彼等に潰された寿司職人、 料理人は数知れない

 

連中による犠牲者をこれ以上出さない為にも連中は皆殺しにしなければならない」

 

「・・・・・君も相当物騒だな、 使っているスシブレードもそうだが

 

君も闇寿司の力を?」

 

「・・・・・力が無ければ闇寿司には勝てない、 つまりそう言う事さ」

 

 

 

バルド達は追及を止めてその日は眠ったのだった。




言及されたSCP

SCP-1644-JP - スシアカデミア 築地校

http://scp-jp.wikidot.com/scp-1644-jp


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発射準備

レーアがイエローストーンに戻った事により

イエローストーンから出撃した軍隊が【アポビオーシス】の眼前に立ち塞がる。

 

「大軍ですね・・・何処からか情報が漏れていたんでしょうか・・・

グラニート様、 これは・・・如何します?」

 

グラニートに指示を求める部下。

 

「・・・・・・・・・・・【アポビオーシス】発射準備」

「え、 えぇ!? ここでですか!?」

「・・・・・・・・【アポビオーシス】発射準備」

「し、 しかし・・・」

「【アポビオーシス】発射準備」

「は・・・はい・・・」

 

精神酢飯漬けされた影響かグラニートに迷いは無い。

しかしイエローストーンを目前にしての

【アポビオーシス】発射は聊か早計だったかもしれない。

そもサイクロプスやジャイアント等の巨人達、 数百人態勢で持ち上げ使用する

【アポビオーシス】は攻城戦等拠点制圧には絶大な破壊力を発揮する。

何しろ逃げられない城や街ならば避けられる心配は無い。

しかし今回の様な遭遇戦では聊か事情が異なる。

発射耐性に入って撤退されたのでは目も当てられない。

そもそも【アポビオーシス】の運用の為に使っている巨人達を戦いに出した方が

手っ取り早いケースもある。

しかし精神酢飯漬けされたグラニートにはそんな考えは浮かばない。

強い武器が有るのならば使っておくのが自然の摂理である。

 

ならば部下からの進言は如何だろうか?

先程グラニートから指示を受けた部下は分別が有ったようだが

一般的な兵士は【アポビオーシス】の圧倒的破壊力に酔いしれている

故に【アポビオーシス】の運用に迷いが無い。

【アポビオーシス】を使った方が犠牲も少ないのだ。

作る迄に虐殺をするが人的コストならばとても軽いだろう。

 

護衛を務めるスシブレーダー達も同様である。

闇寿司の力に染まる余り【アポビオーシス】に多大な信頼を置き

柔軟な思考が出来なくなっている。

回転寿司でハンバーグが一番美味しいんだから

ハンバーグだけ食べれば良いと言う発想に似ている。

子供舌か。

 

それならば今回の戦いはファウンデーション教国の勝利か?

そう断定するのは早計と言う物である。

油断しても勘違いしても巨人は巨人。

マグロの赤身ではハンバーグの油分に対応は不可能な様に

無策で挑めば敗北は必須である。

子供舌か。

 

【アポビオーシス】を破壊する策は有る

しかしマグロの赤身に山葵を付けてもハンバーグの油分に対応は不可能。

勝つのは困難である。

子供舌である。

 

この戦いの勝敗は神のみぞ知ると言う所だろうか。



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進化するスシブレーダー達!!

ソルジャースシがファウンデーション軍の前に展開する。

その数3000。

 

「まぁこっちには来ないだろう」

「何故?」

「アポビオーシスに突っ込むなんて馬鹿な事する筈が無いし

そもそも3000人も居るんだ、 これならば小国も落とせる」

 

少し前ならばこの数でも充分脅威だろう。

 

「敵が来たぞ!!」

「ふん、 愚かな連中だな!!」

「スシブレードが飛んで来た!!」

「何をぉ!! 負けるかぁ!!」

 

ソルジャースシとファウンデーション軍のスシブレードの激突!!

本来ならばカルビの方がスペック的には勝る筈!!

しかし今のファウンデーション軍のスシブレーダー達の練度は

ソルジャースシ等とは比べ物にならない!!

 

「ぐわあああああああああ!!」

 

押し切られ爆発していくソルジャースシ達!!

 

「何をしている!!」

 

三人の男が現れた!!

 

「あ、 貴方はヤミ・アプレンティスの三男爵!!」

「ヴァレンだ!!」

「ルドールだ!!」

「ルーダーだ!!」

「「「纏めてこいつ等と一緒にするな!! 不愉快だ!!」」」

「そ、 そんな事よりも戦線が・・・」

「ふん、 情けない連中だな」

「ソルジャースシ等この程度・・・」

「私が蹴散らしてくれよう!! さぁ行くぞ!!」

 

三男爵がそれぞれ肉寿司を出す!!

見た目には差異は無いが各々が産地から厳選してコックに焼かせた最高級品である!!

ヤミ・アプレンティスの彼等は技量は低い、 しかしスシネタは

実家の資産を使う事で非常に優秀な食材を使っているのだ!!

命中すれば一撃でスシブレードを粉砕出来るだろう!!

しかし!!

 

BARARARARARARARARARARARARARARA!!

 

銃声が響き三男爵は穴だらけに!!

 

「な、 なんだぁ!?」

「さ、 三男爵がぁ!!」

「い、」

「いっしょに・・・」

「するな・・・」

 

三男爵は射殺されたのだ!! レーアの生きている銃による銃撃である!!

当然ながらソルジャースシ達は困惑!!

ヤミ・アプレンティスも未知なる攻撃に及び腰になる!!

 

「今だ!! 進めぇ!!」

 

ウェッジがスシブレーダー達を鼓舞する!!

ファウンデーション教国の士気が高まる!!

 

「糞ッ!! アポビオーシスはまだか!!」

 

一方ダークネスシ帝国側はアポビオーシスを心待ちにする!!

士気は低い!!

 

アポビオーシス便りにしていた弊害か!!

もしもここに『アポビオーシスなんかよりも俺の方がつえーぜ!!』と言う

自信と力に満ち溢れたヤミ・マスターが居たのならば話は違ったが

ダークネスシ帝国側の士気は地に落ちている!!

ファウンデーション教国に優勢か!?



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フェルティパンの策

「報告!! 三男爵がやられました!!」

 

ヤミ・アプレンティス達の元に報告にやってくるスシトルーパー。

 

「さっきの訳の分からん音がした途端に死んだぜ?」

「如何する?」

「臆病者共め、 人間って皆こうなの?」

 

角の生えた鬼の様な魔族のスシトルーパー

フェルティパンは呆れながらに前に出る。

 

「お、 おいフェルティパン、 行くのは危険じゃないのか?」

「そうだ、 スシブレード同士の打ち合いならまだしも

正体不明の攻撃には注意を払うべきだ」

「ふん、 俺には秘策が有る」

「秘策?」

「後から付いて来い!!」

 

フェルティパンが前に出る、 戦線に現れると同時に弓矢がフェルティパンの脳天に直撃!!

フェルティパンは息絶えた。

矢を放ったのはマオ!! 彼女はスシブレーダーでは無い、 弓兵である。

しかし訓練を重ね長距離狙撃を可能にしたのだ!!

 

「策って何だったんだよぉフェルティパン!!」

「フェルティパンの考える事は分かる」

 

フェルティパンの相棒、 小鬼のバルーが前に出る。

 

「如何するって言うんだ!?」

「こうするんだよぉ!!」

 

地面に這いつくばるバルー。

 

「こうして頭を下げて居れば謎の攻撃は当たらない!! 少なくとも当て難い!!」

「な、 なるほどぉ!!」

 

銃に対して頭を下げる、 賢い戦術である。

 

「で、 でも弓矢は如何するんだ?」

「腕やスシブレードでガードすれば良い、 盾とかも拾っておこう」

「なるほど・・・それで行こう」

 

確かに防御出来るが、 匍匐前進は圧倒的にスピードが遅い。

もしもヤミ・マスターが居るなら『死ぬ事なんて考えずにさっさと行けやボケ』と

一人二人殺して見せただろう。

ヤミ・マスターが居ないのがここまでネックになるとは

シャリーラ13世も予測していなかっただろう。

いや、 親方”闇”でも予想がつかなかった

何故ならここまでの団体行動を闇寿司が取る事は稀である。

もしも団体行動を取るとしても強者が率いるパターンばかりである

こうして階級的に同じ者同士が集まっているとこうなるというのは

流石に想像出来なかったであろう!!

 

 

 

「レーア様、 何だか敵が頭を低くしてきましたが・・・」

 

伝令から報告を受けるレーア。

 

「こちらとしては好都合、 この銃は多用出来る物じゃないからね」

「そうですか、 では如何します?」

「一旦下がります、 スシブレーダーの方々に頑張って貰いましょう」

「分かりました」

 

レーアは少し歯がみした、 この生きている銃が無ければ自分は非力な娘でしかない。

スシブレードについて学ぶ必要があるとレーアは痛感した。



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酒盛り

ファウンデーション教国とダークネスシ帝国の激戦が始まった頃

主戦場から離れた後方では・・・・・

 

「かぁー!! うめえなぁ!!」

「もう一杯・・・」

「お、 悪いな」

 

ヤミ・アプレンティスが酒盛りをしていた。

 

「い、 良いんですか?」

「あ? 何がだ?」

 

ソルジャースシが不安になって尋ねた。

 

「今戦っている最中でしょ?」

「かまやしねぇよ、 どうせこっちには来ねぇよ」

「そうでしょうか・・・」

「あのなぁ、 来た所でこんなデカブツ相手に勝てる訳ねぇだろ!?

テキトーで良いんだテキトーで」

「は、 はぁ・・・」

 

酒盛りを続けるヤミ・アプレンティス。

彼はリー=イーズ、 アル中の犯罪者である。

偶々スシブレードに適性が有ったからヤミ・アプレンティスをやっているが

本人に向上心が無い為、 こうして酒を飲んでいる。

 

「ははははははは」

「おい」

「うん?」

 

見知らぬスシブレーダー達にスシブレードを構えられている!!

 

「どしたぁ?」

「・・・・・3,2,1 へいらっしゃい!!」

「ぐわあああああああああああああああああ!!」

 

バルド達がやって来たのだ!!

バルド達の奇襲によって倒されるヤミ・アプレンティス達。

 

「感謝するぞ!!」

 

四つん這いで真っ青な姿の異形のヤミ・アプレンティス、 フォーシーズンが現れた!!

 

「リーはマジで死んでほしかったからな!! 手間が省けた!!」

「そうかよ!!」

 

ゴハンのタコボーグOが向かう!!

しかしブーボもスシブレードを出した!!

稲荷寿司である!! しかしOinari3よりも速い!!

タコボーグOが抜かれゴハンへのダイレクトアタックを許してしまった!!

 

「ぐはぁ!!」

「な、 何だと!? コイツ・・・見た目からは想像もつかない戦い方を・・・」

「ふっふっふ・・・舐めてくれるなよ・・・このブーボことフォーシーズン

そんじょそこらのヤミ・アプレンティスとは違うのだよ!!」

「・・・・・」

「げほ・・・バルド・・・こいつは俺に任せろ」

 

よろよろとしながらゴハンが立ち上がる。

 

「しかしゴハンさん!!」

「心配するな、 アバラに罅が入っただけだ

お前はそれに急がなくちゃ行けねぇんだ・・・」

「・・・・・行きましょう皆さん!!」

「行かせるかよぉ!!」

 

手足を器用に使い二つの稲荷寿司を射出するフォーシーズン。

 

「舐めるなよ!! 俺が倒れても俺のタコボーグOは死んでねぇ!!」

「何!?」

 

向かって来るタコボーグOの迎撃に急いで稲荷寿司を呼び戻すフォーシーズン。

そしてバルド達が先に向かう・

 

「てめぇ・・・生きて帰れると思うなよ・・・」

「こっちの台詞だ!!」



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足元

走り回ってフォーシーズンの攻撃を回避し続けるゴハン。

次々とフォーシーズンが放つ稲荷寿司だがそれぞれ特徴が違うのだ。

加速が異常に早い、 カーブが滑らか、 左右に揺れまくる。

ブレが激しい等、 Oinari3では考えられない挙動をしているのだ。

 

「なるほど・・・読めたぜ、 お前のスシブレード・・・」

「気が付いたか・・・」

「Oinari3とは違い、 中身が変わっているんだろう?」

「その通り・・・俺の稲荷寿司は中身をそれぞれ入れ替えてカスタマイズしている!!

故に起動性能や旋回力、 攻撃力が変動していると言う訳だ!!

この使い分けの技巧、 習得するには結構かかったぜ!!」

「なるほど・・・その時その時に対して有効なスシブレードを使う・・・強敵だな

気色悪い見た目と違って中々出来るな・・・」

「舐めて貰っては困るぜ・・・後、 この見た目は闇寿司のパワーによって

人体が変異した物だからな」

「だがしかし地の利は此方に有る!!」

「地の利だと?」

「俺の足元を見て見な!!」

「ん・・・?」

 

ゴハンの足元には先程酒盛りをしていたヤミ・アプレンティス達が!!

 

「・・・馬鹿かお前?」

 

フォーシーズンは嘲りを持って返答した。

 

「そんな連中の事を俺が気にするとでも思っていたのか!?」

 

倒れているヤミ・アプレンティスを吹き飛ばしながら稲荷寿司が飛んで来る。

 

「何!?」

「ヤミ・アプレンティスは仲間ではない!! 互いに蹴落とし合う敵なんだよぉ!!」

「仲間意識が無いのか・・・しかし馬鹿め!!」

「あん?」

 

フォーシーズンが間抜けな声を出す。

そして回転していた稲荷寿司が急にばらけてしまった!!

中身のシラスやら何やらが飛び出す!!

 

「な、 何だとぉ!?」

「いや、 だから、 俺の足元を見て見な!!」

「な、 何ィ・・・」

 

フォーシーズンがゴハンの足元を見る。

 

「くっ・・・一体何が・・・」

 

今度は注意深く観察する。

 

「こ、 これは!!」

 

注意深く見て分かった、 酒瓶の破片!!

この酒瓶の破片の上を稲荷寿司が回転、 そして木っ端微塵!!

何と言う事だ!!

 

「だ、 だがお前のスシブレードを使えま」

 

い、 と言い切る前に頭に向かって酒瓶が飛んで来るフォーシーズン。

酒瓶はファーシーズンの頭に激突しフォーシーズンの意識は頭の外に飛んで行ったのだ。

 

「戦場ではあらゆる物に気を付けなければ生きていけんぞ・・・」

 

そう言いながら地面で気絶した振りをしていたヤミ・アプレンティスの頭を

蹴とばしてバルド達の後を追うゴハンだった。



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コンビネーションバトル

アポビオーシスに接敵するバルド達。

 

「近くで見るとデカいな・・・どうする?」

 

グリードが尋ねる。

 

「・・・・・上に登ろう」

 

バルドが呟いた。

 

「如何やって?」

「待ちな」

「三崎さん、 如何しました?」

「数多くのスシを握って来て闇寿司も学んだ僕の目は誤魔化せない・・・

あそこ、 海苔で造られた梯子が有る、 と言うか足場もある」

「何だって?」

「恐らくメンテナンス用だな・・・こんな技術が有るとは脱帽だよ・・・」

「おい!! お前達!! 何者だ!!」

 

敵のヤミ・アプレンティスに見つかった!!

 

「見つかった!!」

「ここは我々が何とかしよう、 お前は先に行け」

 

ゾーバが敵に向き直る。

 

「ボスが残るなら俺も!!」

 

グリードも残る様だ。

 

「すまない!!」

 

バルド達は先に進んだ!!

 

「・・・・・」

「追わんのか?」

 

ヤミ・アプレンティス達に問うゾーバ。

 

「お前こそ逃げなくて良いのか? 俺達は8人、 お前等は2人、 戦力の差は」

「「3, 2, 1, へいらっしゃい!!」」

 

ゾーバとグリードはスシブレードを射出した。

 

「問答無用か!!」

「くっ・・・散れ!!」

 

ゾーバとグリードは散らせまいと端のヤミ・アプレンティスの所に向かった!!

 

「う、 うわ!! こっち来、 ぐわぁ!!」

「これで7人!!」

「舐めるなぁ!!」

 

7人のヤミ・アプレンティスがスシブレードを射出する。

しかし連携が取れていない、 寧ろ激突し合って力を削ぎ合っている!!

 

「おい邪魔するな!!」

「そっちこそ!!」

「くっ・・・いっけええ!!」

 

一つだけ突出した進むわさびなす、 そのわさびなすを挟撃するゾーバとグリード。

 

「な、 何っ!?」

「残り6人!!」

「ふん、 何を勘違いしている!? まだスシブレードはあるんだよぉ!!」

 

わさびなすが再射出された!!

大量に持っている!! 何という事だ!!

そうこうしている内に6つのスシブレードがグリードとゾーバのスシブレードに襲い掛かる!!

危うし!!

 

「グリード!!」

「OKボス!!」

 

ワサビジュピターとファットプラネッツが激突して飛んだ!!

そして6つのスシブレードが正面衝突!! 哀れスシブレードは木っ端微塵!!

 

「こ、 こんな馬鹿な!!」

「悪いがこっちはそれなりに訓練してるんだよ!!」

「そう言う事だ」

 

事実、 ワサビジュピターとファットプラネッツが激突して飛ぶと言う曲芸は

ファットプラネッツ側の力の制御が必要なのだ。

 

「くっそだがまだこちらにもスシブレードがっ!!」

 

倒れるヤミ・アプレンティス達。

後ろからゴハンが来て後ろから殴り倒していたのだ。

 

「ゴハンか、 さっきの奴は?」

「ぶっ倒した」

「ならば我々も行くぞ!!」

「「おうっ!!」」

 

先に進んだ三人だった。



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壁に立つ男

海苔の足場を登りながら上に進むバルド達。

それを見るアポビオーシスポビオーシスを運用する巨人達。

 

「なぁ・・・俺達、 アイツ倒さなくて良いのか?」

 

サイクロプスの一人が呟く。

 

「気持ちは分かるよ、 でも俺達じゃあ足場毎崩しちまうから無理だ

ヤミ・アプレンティスに任せるしかない」

 

別のサイクロプスが答える。

 

「敵を眼の前にして戦わないとはな・・・優しくなったもんだ、 我々も」

 

 

 

 

 

 

バルド達は海苔の梯子を上って行くと驚愕の光景を目にした!!

何とアポビオーシスに垂直に立っている男が居たのだ!!

 

「な、 なんだ一体!?」

「くくく、 俺はクリーム、 俺の足は粘度が高いクリーム状になっていてな

こうやって張り付く事が出来るのだ」

「説明どうも!!」

 

両手を放してマヨコーンを射出する三崎。

 

「ふん!!」

 

クリームは足を外し落下してマヨコーンの直撃を防いだ!!

そして再度壁に足を接着させ落下を防ぐ!!

 

「俺のクリームケーキは特別製でな、 壁にくっつく仕様になっているんだ!!」

「なんて無駄な特別仕様・・・」

「ほっとけ!! ここにおいては俺は無敵だ!!」

「・・・・・」

 

バルドは梯子を上って行った。

 

「ふふ、 逃げるつもりか」

「3、 2、 1、 へいらっしゃい」

 

梯子を上り終えて壁にくっつけてエッグヴィーナスを射出するバルド。

壁を走るエッグヴィーナスだが、 当然ながら壁にくっつく仕様では無い。

重力落下に従って下に落ちていく。

 

「クリームケーキの様には行かないなぁ!?」

 

クリームがせせら笑う。

しかしエッグヴィーナスはクリームの足に激突、 クリームは絶叫をあげて落下していった。

 

「・・・・・何だったんだ今の奴は?」

 

三崎が呟いた。

 

「さぁ・・・?」

 

バルドは分からんと言う風に手を広げる。

エッグヴィーナスを回収して上に向かった。

そして最上部、 マグロの部位にやって来た一行。

そこに佇む一人の男。

 

「誰か居る・・・」

「流石に誰も居ない訳は無いだろうとは思ったが・・・」

「・・・・・」

 

丼としゃもじをかまえる男。

男はおもむろに自分が立っているまぐろを掬い丼に叩き込んだ。

 

「マグロ丼・・・か」

 

唾を飲み込む三崎。

 

「気を付けろ質量は今までのスシブレードと違う」

「あぁ・・・ここは皆ばらけて先に進んで、 このデカブツの弱点を攻撃しましょう」

「それが賢明ね、 見た所、 奴は一人」

「いやマドカさん、 それは違うよ」

 

マドカの言葉を否定する三崎。

 

「如何して?」

「彼が足元に置いて有る物、 あれは御櫃、 即ち御飯が入っている」

「!! つまりスシブレードを沢山発射して来る?」

「可能性は高、 撃って来た!!」

 

飛んで来るマグロ丼のスシブレード!!

果たしてバルド達は打ち破れるか!?



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語り掛ける寿司

マグロ丼のスシブレードを次々と発射して来る男。

彼の名はデジャリック、 しかしもっぱらマグロ丼と呼ばれている。

元々は平凡な一兵士だったが闇寿司のパワーにより発狂してしまい

全く言葉を喋れなくなり、 近付く者に見境無く

マグロ丼を射出する狂気のスシブレーダーになってしまった。

それ故に名乗る事も出来ずにマグロ丼と呼ばれる。

トゥーンウィがずっとやみやみ言って

やみちゃんと呼ばれていたのと同じ理屈である

勿論寿司の暗黒卿の彼女と比べ、 格は落ちる。

しかし彼は近付く者にマグロ丼を打ち出す機械と化している!!

充分に脅威である!!

素早くご飯を盛り、 マグロを乗せて射出、 この間十秒もかかっていない!!

 

「くっ、 如何すれば・・・」

「・・・・・」

 

狼狽えるバルド達を後目に三崎は冷静にマグロ丼の行動を観察する。

如何やら一番近い者に向かってマグロ丼を射出する様だ。

そしてマグロ丼は恐ろしく速く、 曲がろうともしていない。

曲げた方が良い場合も有るのに直線のみである。

最初から曲がるつもりが無く速度に極振りしているのか

それとも最初から早過ぎて曲がれないのか不明だが

兎も角直線運動しか出来ないと見た。

 

「僕が囮になる!! その隙にエネルギー駆動の為の通路にスシブレードを打ち込め!!」

「良いの!?」

「安心しろ、 こっちも全力でやる!!」

 

マヨコーンを構え口笛を吹く三崎、 そして射出する!!

この口笛は唯の口笛では無い、 スシを戦艦と化す秘法に近いのだ!!

つまり三崎のスシブレードは普通よりも強い!!

激突するマグロ丼とマヨコーン、 鍔迫り合いが発生するも

数秒でマヨコーンが弾け飛びマグロ丼が三崎の頬を掠る。

 

「三崎さん!!」

「良いから早く行け!!」

 

続くマグロ丼をマヨコーンと相殺する三崎を背に

エネルギー駆動の為の通路を探すバルド達。

 

「こっちに穴が有る!!」

「こっちにもだ!!」

 

通路と思わしき穴は見つかる。

思った以上に簡単に見つかった、 しかし・・・

しかしこの穴にスシブレードを突っ込んで大丈夫なのだろうか?

この穴で合っているのか? そもそも今突っ込んで大丈夫なのか?

アポビオーシスが崩壊して自分達も巻き込まれないのか?

そんな疑問がバルド達の中に浮かぶ。

 

『バルドよ・・・』

「!?」

 

バルドに唐突に声が聞こえる!!

 

『スシを信じるのだ・・・スシの声を聞け・・・』

「スシの声・・・・・?」

 

スシブレーダーの中にはスシの声を聴く者が居ると言う。

バルドは今、 スシブレーダーとして覚醒しようとしている!!



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恐怖からの解放

読者諸賢は花言葉と言うのを御存じだろうか?

象徴的な意味を持たせるため植物に与えられる言葉で

一般にバラの花言葉は愛情のように植物と単語の組み合わせで示される物である。

宝石言葉と言う物もある、 魚言葉と言う物もある。

当然寿司言葉も有る。

 

アポビオーシスに寿司言葉を着けるとするならば、 絶望である。

アポビオーシスが発する寿司の声は絶叫、 止めて欲しいと叫ぶ嘆き。

アポビオーシスを造り出す為に虐殺された数多の人々。

彼等全てがアポビオーシスの破壊を望んでいる。

 

「・・・・・」

 

バルドの迷いが消えた。

バルドはエッグヴィーナスを穴に向かって射出した。

「やった・・・!! だ、 大丈夫なのか?」

 

不安げに声を出す、 エミリー。

そしてその場に座るバルド。

 

「ば、 バルド?」

「ここは壊れるまで待とう」

「正気か?」

「至って正気だよ」

「間に合ったか!?」

 

上層部に現れたゾーバ達3人。

 

「今どうなっている!?」

「今、 スシブレードを打ち込んだ!!」

「・・・・・!!」

 

 

 

 

一方その頃、 アポビオーシスを駆動させる巨人達はアポビオーシス発射体勢を整えた。

 

「グラニート様、 発射体勢が整いました」

「・・・・・」

「グラニート様?」

 

部下の報告を聞きながらグラニートの心の中で自我を少し取り戻した。

あの大量虐殺をしなければならないのか?

己の運命を呪い心が凍り付いた。

誰かに自分をこの恐ろしい運命から救い出して欲しいと必死に願った。

だが悲しいかな、 彼の心は精神酢飯漬けされているのだ

グラニートの自我が齎したのは数秒の停滞だった。

 

「グラニート様?」

「・・・スタンバイ」

「はっ」

 

その数秒の間、 エッグヴィーナスがアポビオーシスの内部に到達し

アポビオーシスの核を貫いた。

 

「アポビオーシス発射」

「はっ、 発射あ!!」

 

巨大な箸の上に叩きつけられる巨大な湯呑。

 

アポビオーシスは微動だにしない。

 

「なんだ?」

「え?」

 

困惑する巨人達。

そしてアポビオーシスが音を立てて崩れる。

 

「う、 うわああああああああああああああああ!!!」

「アポビオーシスが!! アポビオーシスが!!」

 

アポビオーシスの崩落巻き込まれる周囲の巨人達。

グラニートもその崩落に巻き込まれる。

グラニートの望みは彼の死と引き換えに適う事になった。

グラニートは最後に微笑みながら逝ったのだった。

 

この日、 アポビオーシスと言う恐怖から世界が解放されたのだった。

バルド達アポビオーシスの上に乗っていた者達は無事に生還し

ダークネスシ帝国側の兵もアポビオーシスの破壊により混乱し散り散りになり

今回も大勝利を収める事が出来たのだった。



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極秘!!第八章終了時のヤミ・アプレンティスのスシブレーダーとスシブレード名鑑

闇号:三男爵

本名:ヴァレン

シャリ王国時代から続く男爵家の若き当主

ルドールとルーダーとは昔からライバル関係に有り反目し合っている

ヤミ・アプレンティスの彼等は技量は低いがスシブレードは

産地から厳選してコックに焼かせた最高級品を使用しており

旨い素材を使えば強い闇寿司としての力を発揮している。

レーアに射殺されて死亡。

 

使用スシブレード:高級カルビ

攻撃力:A 防御力:C 機動力:A 持久力:B 重量:C 操作性:B

産地から厳選した高級な肉を使用したカルビ。

通常のカルビの数倍は強い。

 

親方”闇”からの総評

敢えて三男爵と括って互いに反目させて競争させてみたが射殺は想定外。

 

闇号:三男爵

本名:ルドール

シャリ王国時代から続く男爵家の若き当主

ヴァレンとルーダーとは昔からライバル関係に有り反目し合っている

ヤミ・アプレンティスの彼等は技量は低いがスシブレードは

産地から厳選してコックに焼かせた最高級品を使用しており

旨い素材を使えば強い闇寿司としての力を発揮している。

レーアに射殺されて死亡。

 

使用スシブレード:高級カルビ

攻撃力:A 防御力:C 機動力:A 持久力:B 重量:C 操作性:B

産地から厳選した高級な肉を使用したカルビ。

通常のカルビの数倍は強い。

 

親方”闇”からの総評

敢えて三男爵と括って互いに反目させて競争させてみたが射殺は想定外。

 

闇号:三男爵

本名:ルーダー

シャリ王国時代から続く男爵家の若き当主

ルドールとヴァレンとは昔からライバル関係に有り反目し合っている

ヤミ・アプレンティスの彼等は技量は低いがスシブレードは

産地から厳選してコックに焼かせた最高級品を使用しており

旨い素材を使えば強い闇寿司としての力を発揮している。

レーアに射殺されて死亡。

 

使用スシブレード:高級カルビ

攻撃力:A 防御力:C 機動力:A 持久力:B 重量:C 操作性:B

産地から厳選した高級な肉を使用したカルビ。

通常のカルビの数倍は強い。

 

親方”闇”からの総評

敢えて三男爵と括って互いに反目させて競争させてみたが射殺は想定外。

 

 

闇号:旨辛

本名:フェルティパン

角の生えた鬼の様な魔族の男。

魔族なので人間よりも巨躯が特徴的。

最近結婚したが結婚相手は彼を食料としてしか見ていない

マオの矢によって射殺される。

 

使用スシブレード:旨辛ネギのせカルビ

攻撃力:B 防御力:C 機動力:C 持久力:C 重量:B 操作性:B

旨辛いタレをかけたネギを乗せたカルビ。

通常のカルビよりに加えネギと旨辛いタレが掛かっている為。

重量が重く、 攻撃力が高い。

 

親方”闇”からの総評

魔族は身体能力が高いからか闇堕ちしている奴が少ない

その為闇寿司との親和性は残念ながら低い奴が多い。

彼もその一人。

 

 

闇号:おろし

本名:バルー

フェルティパンの相棒の小鬼。

しかしフェルティパンからは軽んじられている。

だがフェルティパンの結婚相手が危険な女だと察知する等勘が鋭い。

フェルティパンの策を察して匍匐前進で行動する事を提案。

このお陰で行軍速度が下がり、 敗戦の一因となった。

アポビオーシス崩壊後は素早く逃げ出して生き残り帰還したが

行軍速度が下がった一因となった為に叱責を受ける。

 

使用スシブレード:大根おろしのせカルビ

攻撃力:C 防御力:C 機動力:C 持久力:C 重量:B 操作性:C

大根おろしを乗せたカルビのスシブレード。

大根おろしを乗せる事で重量を増している

 

親方”闇”からの総評

賢いけどもっとガンガン行って欲しい

 

闇号:フォーシーズン

本名:ブーボ

真っ青な姿の異形のスシブレーダー。

元々は人間だったが闇寿司の影響で体が変異した。

普通の人間の頃から無能を演じて来て、 旨い事立ちまわっており

スシブレーダーとなってからもその事実は変わらない。

出世に興味無くそこそこの地位で満足するタイプである。

ゴハンに殴られ気絶したが直ぐに覚醒。

しかしアポビオーシスが崩壊したので逃亡し

市井に紛れ込む、 スシブレードで好き勝手する予定。

 

使用スシブレード:稲荷寿司

攻撃力:C~A 防御力:C~A 機動力:C~A 持久力:C~A 重量:C~A 操作性:C~A

稲荷寿司のスシブレード。

通常の稲荷寿司とは違い、 複数の中身の違う稲荷寿司を使用し

巧みに使い分ける事で相手を追い詰める。

 

親方”闇”からの総評

俺はコイツは出来る奴だと見抜いていた。

近々探し出して迎えに行く。

 

 

闇号:アル中

本名:リー=イーズ

アル中の犯罪者で流れ者。

何となく闇のスシブレーダーと向上心が無く粗暴で嫌われている。

だが馬鹿な為、 上手く彼をコントロールして敵対者を消そうと

ヤミ・アプレンティスの間では試みられている。

アポビオーシス崩壊に巻き込まれ死亡。

 

使用スシブレード:密造酒

攻撃力:? 防御力:? 機動力:? 持久力:? 重量:? 操作性:?

密造酒のスシブレード。

アルコール分は入っているが作成方法が適当な為

どんな性能になるか全く予測出来ない謎なスシブレード

 

親方”闇”からの総評

努力しろ、 酒を断て。

 

 

闇号:わさびなす

本名:アゼロウ

顔がナスの様に紫色に変色したスシブレーダー。

ソルジャースシからヤミ・アプレンティスに出世したが

未だに下っ端根性が抜けずに飲み会では下座に座し、 注文を取る。

複数のスシブレードを持つ技量は有った。

ゾーバとグリードと交戦し、 ゴハンに後ろから殴られ気絶。

気絶中にアポビオーシス崩壊に巻き込まれ死亡。

 

使用スシブレード:わさびなす

攻撃力:B 防御力:B 機動力:D 持久力:B 重量:B 操作性:D

わさびなすのスシブレード。

わさびがピリリと聞いて持ち運びに便利、 そしてやや操作に難が有るが

そこそこ強いスシブレードである。

 

親方”闇”からの総評

努力家で死んだのが惜しい。

 

 

闇号:クリーム

本名:エファント

闇寿司の影響で顔がしわだらけになった人間。

元は人間なのか疑わしいがハンサムだったらしい。

手足を自在にクリーム化出来る能力を持ち壁に張り付く事が出来る。

彼だけの特異な能力だが同僚からはだから如何したとみられる事が多い。

バルドとの交戦で壁から落とされ地面に激突。

重傷の為、 戦線離脱してアポビオーシス崩壊に巻き込まれずに済んだ。

アポビオーシス崩壊を見て力の無常さを悟り戦いの無常さを唱える宗教を開き

アポビオーシス崩壊にショックを受けた闇スシブレーダー達の受け皿となった。

 

使用スシブレード:クリームケーキ

攻撃力:E 防御力:E 機動力:E 持久力:A 重量:D 操作性:B

クリームケーキのスシブレード。

壁に張り付く事が出来る以外特徴が無い。

寧ろ普通のスシブレードより弱い。

 

親方”闇”からの総評

壁に貼り付けるからなんだと言うんだ。

 

闇号:マグロ丼

本名:デジャリック

元々は平凡な一兵士だったが闇寿司のパワーにより発狂してしまい

全く言葉を喋れなくなり、 近付く者に見境無く

マグロ丼を射出する狂気のスシブレーダーになってしまった。

アポビオーシス崩壊後も生き残るがファウンデーション教国に拘束され

治療を受ける事になった。

 

使用スシブレード:マグロ丼

攻撃力:A 防御力:E 機動力:S 持久力:E 重量:B 操作性:E

マグロ丼のスシブレード。

マグロ丼と言うよりはネギトロのネギ抜き丼と言った方が正確だがマグロ丼で通す。

本来はもっと動作は色々と出来る筈だが一切の制御を放棄しており

打ち出す事のみを考えている為、 威力と引き換えに操作性が皆無になっている。

 

親方”闇”からの総評

やみちゃん枠だが器が小さかった



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第九章:混沌会談
オープニング・クロール


ダークネスシ帝国の超巨大スシブレード【アポビオーシス】の撃破は

人類にとって喜ばしい出来事だった。

一方的に起こされる虐殺が起こり得なくなったのは誰にとっても喜ばしい。

しかしアポビオーシスの撃破は誰にとっても試練だった。

 

まずダークネスシ帝国は最終兵器を潰されたのだ

当然ながら内部の動揺は大きい。

【アポビオーシス】の発案者で運用を担当していた

シャリーラ13世の責任問題が追及されシャリーラ13世の退位がちらつき始めた

スシの暗黒卿が大人しくシャリーラ13世の後塵を押し続ける筈も無く

フグを始めとして、 独自の行動を取る者が出始めた。

シャリーラ13世の治世に暗雲が立ち始めた。

そして【アポビオーシス】破壊により各国からの反撃も懸念されている。

現状最も苦しいのはダークネスシ帝国だろうか

いうならば針の筵と言った所だろうか。

親方”闇”もまだ静観を続けている、 果たして彼は一体何を考えているのか。

 

一方、 ファウンデーション教国も頭を悩ませていた。

【アポビオーシス】破壊の後に【アポビオーシス】の護衛に当たっていた

闇寿司ブレーダーが飛散し揉め事を起こしているのだ。

ダークネスシ帝国から離反した彼等の行動を読む事は難しく頭を悩ませる

更に魔の悪い事に【アポビオーシス】破壊後にスシブレーダー部隊隊長のバルドが

意識不明の状態に陥ってしまったのだ。

この状態は極めて問題が有ると言える、 寿司の知識を持っているバルドが居なければ

スシブレードの発展に遅れが生じるのだ。

常に進化し続けなければ闇のスシブレーダーには対抗出来ないだろう。

三崎もファウンデーション教国に身を寄せているが彼の技術を真似る事は難しい。

そして三崎も現状に不安と不満を持っているのだ。

 

更にタイミングが悪い事に

指導者のほぼ全てを居なくなってしまったマナ法国。

そのマナ法国の潤沢な領土を狙い動き出す各国。

この機に乗じて勢力拡大を目論む者達。

現状協力すべきなのに協力出来ない人類のジレンマか。

果たして人類は協力し合えるのか・・・

 

そして今まで沈黙を守って来た魔王も遂に動き始めるのだった。

魔王軍を裏切ったバリゾーゴンを滅する為の部隊を編制しているとの事。

果たして闇のスシブレーダーに勝つ事が出来るのだろうか?

 

この世界を制するのは人類か!!

闇のスシブレーダーか!!

それとも魔王か!!

運命はスシブレーダー達だけの物ではない。

この世界に居る全ての者に託されたのだ!!

これから一体どうなるのか!?



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見舞い

ファウンデーション教国のとある病室にて眠っているバルド。

そばにレーアが座って見守っている。

 

「レーアさん、 来ていたんですか」

 

三崎がやって来た。

 

「三崎君、 君も来ているの?」

「えぇ、 毎日」

「毎日?」

「彼が一番良いスシの握り方が上手い人だそうじゃないですか

この国の寿司職人は駄目ですね」

「ハッキリ言いますね・・・」

「何年か修行して初めてスシ職人ですから、 仕方ないですよ」

「・・・・・こう言っては何ですがスシって生魚を御飯に乗せるだけじゃないですか

違いとかって有るんですか?」

「・・・・・」

 

三崎はむすっとした表情になる。

 

「・・・レーアさん、 寿司を食べた事は?」

「食べ物と言う事は知っていますが・・・生魚じゃないですか」

「あぁ・・・生物は御嫌いですか、 まぁ仕方ないですけど・・・

でも寿司はシャリ、 つまり御飯の部分が一番大事ですからね」

「そうなんですか?」

「えぇ、 例えばシャリを固く握ってしまえば

食べる部分も当然固くなります、 固いのは良くない

かといって柔すぎると崩れてしまう、 スシブレードにおいて致命的といえますし

食べるのに適さない」

「なるほど・・・力加減が大事、 と言う事ですね」

「御理解頂けて嬉しいです

バルドさんは寿司の知識を何やら怪しい方法で手に入れた様ですが

本来なら何年も修行して初めて寿司を握れるようになるんです」

「さっきも聞きました」

「それは失敬、 兎も角僕は寿司を握る為には彼の様な人材は必要不可欠です

国防と言うマクロな視点からだと尚更です」

「マグロ?」

「・・・・・大きな視点ですかね、 気取った言い回しで失礼」

「気にしてませんよ」

「それは有難いですね、 座って良いですか?」

「どうぞ」

 

椅子を出して座る三崎。

 

「三崎君、 バルドの容態は毎日変わり無いの?」

「えぇ、 意識不明ですが何時起きても可笑しくないですね」

「何時起きても・・・それって凄い長い期間とか・・・」

「外傷は無いですから問題無く近日中には起きると思いますよ」

「外傷が無いのに何で目を覚まさないの?」

「心労じゃないのですか?」

「心労?」

「精神的な疲労とか」

「バルドはそんなに柔な男ではありません」

「精神の磨耗は誰にでもありますよ、 僕も大量に寿司を握った時

スシの出来栄えが不安になる事があります

増してや国防に関わるのなら尚更です

まぁ今回はスシの出来栄えとかとは無縁でしょうが」

「どういう事ですか?」

「ややオカルティックな推測になりますがそれでよければ」

「構いません」



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寿司の声

「まず始めにこれから話す事は僕も授業で聞いただけで知識であり

実感はした事が無い、 故に真実かは分かりません」

「つまり推測ね? 大丈夫、 続けて」

「バルドはあの巨大スシブレードを破壊する前に何かを呟いていたそうです

誰かと話しているかの如く」

「・・・・・もしかして神降ろしとかそう言う事?」

「スシとの会話かもしれません」

「スシとの?」

「えぇ、 寿司と心を通じ合わせ寿司の声を聴く者、 それがバルドさんかもしれません」

 

バルドを見る三崎。

 

「スシの声を聴く・・・それでバルドが倒れた原因だと?」

「えぇ、 恐らく巨大な寿司の声を聞いたから巨大な声だったんでしょう

恐ろしい声だったかもしれません」

「恐ろしい声・・・」

 

アポビオーシスに人体が使われていた事はレーアも三崎も知っている。

 

「確かにその可能性は有る、 人間を使った寿司なんて・・・」

「聞くだけでも悍ましいな・・・流石は闇寿司・・・考える事が邪悪過ぎる・・・

閑話休題、 恐らく寿司の声を聴いて脳が処理し切れず眠ったままなのでしょう」

「じゃあ暫くすれば起きる?」

「その可能性は高いと思います」

「いざとなれば強制的に起こすよ」

 

唐突に現れるO5-1。

 

「い、 いらしてたんですか!?」

 

レーアが立ち上がる。

 

「強制的に起こす・・・ってどうやって?」

「裏技が有るんだよ、 三崎君、 兎も角君も闇寿司と戦ってくれるようで助かるよ」

「い、 いえ、 どうも・・・」

「後半月以内に起きて貰わなければ、 叩き起こす事になるけどね」

「それは如何言う・・・」

「各国と会談を行う事になった、 会談の予定は半月後だ」

「なんと・・・」

 

驚くレーア。

 

「会談? それって・・・」

「この世界の国の代表が集まって会談を行うんだ」

「・・・・・それって大丈夫なんですか? 闇寿司からの襲撃とか」

「だからこそバルト君を起こして行こうと言う事だよ

戦力は多い方が良い」

「・・・・・」

「三崎君も当然付いて来て欲しい」

 

ごくり、 と固唾を飲む三崎。

 

「分かりました」

「よろしく頼むよ」

 

O5-1は去って行った。

 

「・・・・・・・・・・まぁ闇寿司を倒せれば良いか・・・」

「やはり来るんでしょうかね会談にも闇寿司」

「来ない理由が無いでしょう・・・バルドさんも早く目を覚ましてくれればいいんですが」

「待つしかないわね・・・」

 

レーアと三崎がバルドを見る。

バルドは未だに眠り続けている。

 

「全く・・・白雪姫みたいに眠っているのは、 普通なら女の私の方じゃ無いのかしら」

「えっ白雪姫?」



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バックレる者達

ダークネスシ帝国首都ニーガタ。

シャリーラ13世は居城であるニーガタセンターで

自分と同じスシの暗黒卿達からの報告を聞く為の定例会議を行っていた、 が

 

「集まりが悪いね」

 

集まっているのはアソウとサーストンとダークイタマエのみである。

 

『うあ・・・うあ・・・』

『サーストン女史は置いておきましょう、 彼女は可哀想ですが役に立たない

しかし今回の失態は大いに問題が有ると思います』

「それですが、 今回の失態、 私は陛下では無く他の寿司の暗黒卿に有ると思います」

 

アソウが宣言する。

 

『・・・・・我々の中に裏切り者が居ると?』

 

ダークイタマエが聞き返す。

 

「えぇ、 それが自然だと思います」

『何故?』

「それは今回のアポビオーシスの破壊、 如何やら内部から破壊された様です」

『ふむ、 それはこちらでも把握しています』

「先日の会議で内部のデータを送信しました、 そのデータを誰かが漏らし」

「下らない」

 

シャリーラ13世が一喝する。

 

「そんな下らない企みをするスシの暗黒卿は存在しない」

「ですが」

「くどい、 王の座を奪いたければ私を殺しにくればいい

シンプルな理屈だ、 それが分からない程馬鹿ではあるまい」

『しかし今回の失態、 如何するつもりですか? 親方に何と言い訳を?』

「親方には手土産を用意した」

『手土産?』

「その通り、 そもそも親方は私を”まだ”殺したりはしない」

『まだ何か隠し玉が?』

「あぁ、 そろそろだと思うけどね、 今度有る会談

そこで私の秘密が暴露されるのだ」

『秘密の暴露・・・それは一体?』

「相手が弱点と思って触る私の逆鱗と言った所かな」

『・・・・・』

 

話の流れが良く分からないダークイタマエ。

 

「しかし陛下、 今回の出来事はどういう事になるとお考えで?

誰かが情報を漏らしたのではないとすれば一体何が・・・」

「それは先日親方からの言葉で判明した」

「!?」

『それは・・・いったい・・・』

「スシの声を聞いたのではないかと言う事だ」

『スシの・・・声?』

「一体如何言う・・・」

「我々闇寿司が持たない感情、 スシに人格が、 心が有ると思っている一団

所謂江戸前寿司、 その信仰を持ったスシブレーダー達

彼等の中にはスシの声を聴く者が居ると言う」

「スシが喋る・・・? 何という馬鹿げた事を・・・」

「その馬鹿に既に二人のスシの暗黒卿が無力化されている・・・警戒は必須だろうな・・・」

『・・・・・しかし他のスシの暗黒卿は一体何処に行ったのでしょうか?』

「フグは分かっている」

『なんと? フグは一体何方に?』

「ファウンデーション教国に向かっている」



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すべすべすべすべまんじゅうまんじゅう

フグ及びフグのスシトルーパー5名はファウンデーション教国に向かって行った。

目的はファウンデーション教国の主要人物の暗殺である。

フグは親方“闇“に心酔しているので闇の敵対者には容赦が無い。

シャリーダ13世に従っているが、 今回シャリーダ13世の失敗により

独自に行動を起こしていた。

 

「フグ様、 誰かが近づいてきています」

 

スシトルーパーの一人スベスベマンジュウガニがフグに進言する。

 

「・・・・・」

 

フグはハンドサインで全員を制する。

スシトルーパーは全員止まってスシを構えた。

 

「待て、 俺だ」

「貴方は・・・兄弟子か」

 

兄弟子、 つまりブタ面の男である。

闇と共にこの世界にやって来た闇のスシブレーダー。

 

「師匠から止めて来いと言う指示だ」

「・・・・・」

「兄弟子さん、 それは聞けん話です」

 

スベスベマンジュウガニは変異した自分の頭部をグギグギ言わせながら言った。

 

「敵さんは二人もスシの暗黒卿を無力化しました

そして今回デカブツスシも破壊しました、 これ以上闇寿司が舐められるのは

我々の本位では無いのです」

「そうか、 分かった」

 

あっさり引き下がるブタ面の男。

 

「・・・・・自分で言っといて何ですが引き下がり方あっさり過ぎませんか?」

「お前等にも通す意地が有るんだろう? 俺は何も言わないよ」

「ほっ・・・」

 

スベスベマンジュウガニが安堵する、 と同時に後ろに居た

スシトルーパーのアイゴが吹き飛ばされる!!

 

「な、 何ィ!?」

「まぁお前等にも意地が有る様に俺も師匠からお前等を連れて帰るって言われてるから

ボコって連れて帰るわ」

「我等6人・・・いやアイゴが倒されたから5人ですか

5人相手に勝てると?」

 

ゴンズイが変異した髭を撫でながら語り掛ける。

 

「あぁ、 因みに5人じゃなくて4人な」

「は?」

 

ごすっ、 と音がして倒れた。

 

「な、 なにぃ!? ハオコゼまでも!?」

 

驚愕するゴンズイ。

アイゴを倒したスシブレードがハオコゼも倒したのだ!!

 

「くっ・・・これが噂に聞いたハンバーグ・・・ッ!! 何てパワーだ!!」

「・・・・・・・・・」

 

フグは黙って見る。

 

「フグ様!! ここは・・・」

「・・・大人しく従いましょうか」

 

フグが口を開いた。

 

「フグ様!? 今でも数は此方が・・・」

「分からない? このデミグラスソースの香り・・・」

「・・・確かに美味しい匂いです、 しかしそれでも此方が・・・」

「分からないの? 香りが強過ぎる、 即ち、 複数のハンバーグを持っている・・・」

 

はっ、 とするスベスベマンジュウガニ、 ゴンズイ、 そして最後の一人キタマクラ。

 

「これほどのパワーのスシブレードを複数操る・・・何というパワー・・・」

「これが兄弟子の力か・・・」

「貴方に一旦は従います、 しかしもしも闇寿司や親方の顔に泥を塗る様な事があれば・・・」

「それは無いから安心しろ」

 

そしてフグ達はブタ面の男に連れていかれたのだった。



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大爆笑

『あはあははっはははははははははははははあはははは!!!』

『バッカじゃねのか!? あははははははは!!』

『ひゃはははははははははははははははははははは!!』

「な、 何で笑う!? 何が可笑しい!?」

 

秘密の通信を行っていたバリゾーゴン。

通信相手のダースシ・ヴォルフガング、 ダースシ・ノーテン

ダースシ・オーモリから提案を爆笑と言う形で返されてしまった。

 

『あー・・・バリゾーゴン? お前の提案が可笑しい事は自覚しているか?』

 

ヘカトンケイルからも呆れられている様だ。

 

「何も可笑しい事は無いだろう、 現ダークネスシ帝国皇帝

シャリーラ13世への不信任案!! 奴はヘマもしているし出されても可笑しくないだろ!?

これを使えば俺達は上に上がれるんじゃねぇか!!」

 

そうバリゾーゴンはシャリーラ13世に不信任案を出して

皇帝の座から引きずり降ろし自分がその席に座る事を画策しているのだ。

 

『何で魔族なのにそういう発想がショボいのか俺には理解に苦しむね』

 

ダースシ・ノーテンがマグロの頭部を煙草をセットする。

彼の頭は脊髄から垂直に繋がっているので普通に煙草を銜えると

煙草の灰が顔にかかるので専用機材を使わないといけないのだ。

 

『全くだ、 闇のスシブレーダーならばこんな事をせずに

闇討ちなり下剋上なりをしたまえ、 その方が美しい』

 

ヘカトンケイルも興味無さそうに言う。

 

「下剋上だ・・・馬鹿じゃねぇのか?

シャリーダ13世の強さはお前達も知っているだろう?」

『そうだね、 彼は強いから僕は逆らわないよ、 じゃあね』

 

通信を切るダースシ・ヴォルフガング。

 

「あ、 おい待て!!」

『じゃあ俺も失礼するわ』

『俺もー』

『私も』

 

次々と通信を切るスシの暗黒卿達。

 

「くっそぉ!!」

 

通信水晶を叩き割るバリゾーゴン。

 

「バリゾーゴン様!! 大変です!!」

 

翼を生やした鳥顔の部下がバリゾーゴンの部屋に入る。

 

「何だ!? 騒々しい!!」

「四天王のイイッパナシ様

じゃなかったイイッパナシが兵を引き連れて此方に向かっています!!」

「な、 何だとォ!?」

 

バリゾーゴンが立ち上がり、 外を見る。

すると外には巨大な赤い悪魔と鳥型の魔物達の姿が!!

 

「間違いないイイッパナシだ!!」

「ど、 如何しますか!? 制空権は握られています!! このまま逃げますか!?」

「逃げ切れるか!? このまま迎え撃つ!! スシブレードを準備させろ!!」

「は、 はい!!」

 

部下が慌てて立ち去る。

 

「イイッパナシめぇ・・・俺が今までの俺だと思ったら大間違いだぜぇ・・・」



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空を舞う魔

「イイッパナシ様、 バリゾーゴンの城が見えました」

「うむ」

 

バリゾーゴンが在住する城付近上空で空を飛びながら向かって来る魔族の一団。

彼は魔王軍四天王の一人イイッパナシとその軍勢である。

この度バリゾーゴン討伐の任務を受けてバリゾーゴンの元に向かっているのだ。

 

「バリゾーゴン、 前々から四天王最弱だと聞いていたが

人間に膝を折る腰抜けだったとは情けない!!」

「全く持ってその通りです、 しかしスシブレードに対して一体如何対処するおつもりで?」

「ふん、 ここから攻撃をするのだ」

「え?」

 

イイッパナシは槍を思い切り投擲した!!

そしてバリゾーゴンの城に命中した!!

 

「ここから攻撃しまくれ!! 遠距離から攻撃すればいい!!」

「「「了解しました!!」」」

 

次々と攻撃を銜える魔物達。

一方的な攻撃にバリゾーゴンは成す術もないのか?

否、 伊達にスシの暗黒卿を名乗ってはいない。

 

「う、 うわぁ!?」

 

急に魔族の一体が落下する。

 

「は、 羽が動かない!! 助けてくれ!!」

「ち、 救助してやれ」

 

救助される魔物、 羽を見ると黒い何かがびっしりと着けられていた。

 

「これは・・・何だ?」

「さぁ・・・お、 おい!! お前の羽にも何かついてるぞ!?」

「えぇ!?」

 

驚愕する魔物達。

イイッパナシも自分の翼を見る、 黒い粒が着けられている。

 

「こんな物が大量に付けられては羽が動かなくなる・・・

一個一個は軽いから気が付かなかった・・・」

「如何しますか!?」

「恐れるに足りず、 とは言い難いな、 このままでは」

 

そこまで言って影が差す。

振り返るとそこにはバリゾーゴン。

 

「馬鹿な!? どうやって!?」

「俺の足元を見な!!」

 

バリゾーゴンの足元にはシャリ!!

懸命なる読者の皆さんには分かるかもしれない!!

バリゾーゴンは己をスシブレードとして部に射出させたのだ!!

 

「喰らえ!!」

「くっ!!」

 

イイッパナシはガードをする、 しかし腕の動きが遅い!!

腕の間接にも大量の黒い何かが!!

 

「何だと!?」

「タピオカ集中砲火!!」

 

バリゾーゴンのスシブレード、 それはタピオカである。

外見はイクラリオンに近いがダメージはイクラより遥かに大きく

相手にくっついて動きを妨害する。

それをタピオカの力を闇の力で引き上げているのだ!!

 

「ぐわあああああああああああああああ!!」

 

集中して放たれたタピオカは徹甲弾の如くイイッパナシの顔を貫通した!!

何と言う破壊力!!

 

「おのれぇ!! この裏切り者!!」

 

イイッパナシの部下が襲い掛かろうとする!!

しかし次々とバリゾーゴンの部下達が射出され襲い掛かる!!

 

「ぐわああああああああああ!!」

「ふん、 他愛もない」

 

バリゾーゴンは勝敗が決したと見て去って行ったのだった。



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赤い草原

夕焼けより赤い空が広がる原野に立っているバルド。

 

「ここは・・・何処だ?」

 

原野を彷徨うバルド。

 

『こっちだ』

 

振り返るバルド。

そこに居るのは輝かしい男。

 

「誰だ?」

『私だ、 エッグ・ヴィーナスだ』

「エッグ・ヴィーナス? え? 一体何がどうなっているの?」

『お前は寿司と振れ合い、 寿司の声を聴くに至った

しかしアポビオーシス、 あの巨大なスシの声を聴いてお前の精神は

この赤色の原野まで飛ばされてしまったのだ』

「ここは・・・一体何なんだ?」

『ここは阿頼耶識の中、 詳しい説明をする暇は無い、 行くぞ』

 

空を飛ぶエッグ・ヴィーナス。

 

「行くぞって・・・」

『お前も飛べる』

「え・・・・・」

 

自身が空を飛べることに気が付くバルド、 根拠は分からないが空を飛ぶ。

 

『行くぞ、 奴が来る』

「奴?」

『この阿頼耶識を飛ぶ認識の鳥だ、 急げ、 追い付かれれば死よりも酷い事になる』

「?」

『知らない方が良い事も有る』

「分かった」

 

飛び続けるバルドとエッグ・ヴィーナス。

次第に風景がぶれて来た。

 

『そろそろ現実空間に出る・・・さぁ行け

レーアとついでに三崎が待っている』

「・・・それなら行かないといけないね、 君は如何する?」

『私はお前の傍に居る』

「これからもよろしくね」

『否』

 

否定するエッグ・ヴィーナス。

 

「なんで?」

『まだまだ卵巻きのスシは強くなれる、 もっと精進するんだ』

「え・・・・・」

 

そこで意識は覚醒した。

 

 

 

 

 

 

目が覚めると、 そこはファウンデーション教国の病室の一つだった。

 

「ここは・・・」

「目が覚めたかい」

 

三崎が声をかける。

 

「三崎さん・・・僕は一体、 アポビオーシスは・・・?」

「無事に破壊できたよ、 君には勲章が授けられる予定らしい」

「そうですか・・・」

 

ちらり、 とスシブレード【エッグ・ヴィーナス】を見るバルド。

 

「・・・・・聞いたのかい?」

「え?」

「スシブレードの声を聞いたのかい?」

「・・・・・」

 

頷くバルド。

 

「そうか・・・君は選ばれしスシブレーダーかもしれないな」

「選ばれた、 ですか・・・確かにそうかもしれません

でも戦おうと決めたのは僕です、 それは譲りません」

 

禁じられた山に向かって寿司の知識を手に入れたのは

天上に存在する誰かの意思だったかもしれない

だが禁じられた山に向かうのを決めたのは自分。

プライドを持つバルドだった。

 

「そうだな、 僕もそうだよ、 僕も寿司の才能が有った

でも寿司を握ろうとしたのは僕の意志だった」

「三崎さん・・・」

 

固い握手を握り締め合うバルドと三崎だった。



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醤油と世界で二人きり

ニーガタセンター、 シャリーラ13世の元に現れた親方”闇”。

 

「さてとシャリーラ、 俺は込み入った話は苦手だ、 例のブツを」

「はい、 こちらです」

 

ボトルに詰められた透き通った茶色の液体を渡すシャリーラ13世。

我々はこの液体を知っている!!

この液体は何を隠そう醤油である!!

ボトルを開けて確かめる闇。

 

「この匂いは確かに醤油だ、 しかし醤油の作り方を教えてから1年も経っていない筈

そして醤油を作るには長い年月が必要だ、 一体どんな魔法を使ったんだ?」

「えぇ面白い箱が有りましてね」

「箱?」

「えぇ箱と言っても小さな家位の大きさの魔法の品でしてね」

「ふぅん、 どんな物だ?」

「箱の中と外では時間の流れが異なっているんですよ」

「・・・・・ん? どういう事だ?」

「例えばですね、 箱の中に人が入る、 外では一時間経過しても

中では1分にも満たない時間だったり」

「ん? 意味無いじゃ無いか?」

「いえいえ、 逆に1分入れて中では1時間立っていたいり」

「ほうほう」

「中では数年経過していたり」

「・・・・・ん?」

 

不穏な空気を感じる闇。

 

「苦労しましたよ、 醤油の作り方を教えて

それで醤油づくりを箱の中でさせるのは・・・

中には醤油を作れても数百年経って醤油所か死体すら残らない・・・」

「なるほど、 醤油の材料と人を時間をランダムに経過させる箱の中に入れて

醤油作りをさせていた、 と言う事か、 となるとこの醤油は貴重品、 と言う事かな?」

「いえいえ、 物を増やす宝も有りますし、 今では大量に造り出す事が出来ます」

「何れにせよ御苦労、 これで俺も本来の力を発揮出来る様になる」

 

笑う闇。

 

「嬉しそうですね」

「嬉しいよ、 醤油が手に入ったんだ

これでお前のあのアポ何とかの失態は帳消しだ」

「そうですか・・・実はアイデアが二点ありまして」

「・・・・・何だ、 また失敗するつもりか?」

「今度は納得できるアイデアかと思います」

「ふん、 言って見ろ」

「はい、 普通の寿司よりも大きい寿司、 ジャイアント寿司の提案と

ヤミ・アプレンティス大量生産の提案です」

「ジャイアント寿司・・・語呂は悪いが要するにデカい寿司を作ろうって事か?」

「えぇアポビオーシスよりも小型にしかし普通のスシブレードよりも

大きいスシブレードを作れば敵は居ないでしょう」

「なるほど、 道理だなぁ、 それでヤミ・アプレンティス大量生産って言うのは何だ?」

「ソルジャースシをヤミ・アプレンティスに成長させる修行方法です」

「聞かせて貰おうか・・・」

 

闇とシャリーダ13世の企みは続く。




言及されたSCP
SCP-728 - 永遠がある部屋
http://scp-jp.wikidot.com/scp-728


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会談の準備

ファウンデーション教国にて会議が行われていた。

国家間会談に連れて行く者達を決めるのだ。

 

「では会議の結果、 サンシャイン王国からの客分として

レーア伯爵令嬢、 マオ女史、 そして私ことO5-1

護衛として第一騎士団、 スシブレード部隊の一部を連れて行きます

これでよろしいか」

「異議なし」

「異議なーし」

 

如何やらすんなりと決まった様だ。

レーアが結果をバルドに伝えに行く。

バルドはもう復帰してスシブレーダー達の詰め所にいる。

 

「バルド、 国家会談に連れて行くスシブレーダー達が決まったぞ」

「決まりましたか・・・どんなメンバーになります?」

「まずはスシブレーダー部隊を数部隊、 これはそちらで決めてくれ

有名なスシブレーダーは隊長である君、 ゴハン、 ハウ、 ウェッジ

シャル、 ケイそしてラルフね」

「俺の名前が無いのはちょっと納得が行かないな」

「そーだそーだ、 ボスは強いんだぞ」

 

ゾーバが悪態を吐き、 グリードも追従する。

 

「いや、 だって君前科者じゃない」

「それを言われると弱い」

「ちょっとぉ・・・」

 

しょんぼりとするゾーバ。

 

「まぁ俺達が居ない間の守備は任せた!!」

「良いだろう、 任された、 所で各国が参加する会談だが

具体的には何か国が参加するんだ?」

「参加するのはメイテイ国、 モグサール共和国、 ゴック国、 MDの三国だ」

「名前だけ言われてもピンと来ないな・・・どんな国何だ?」

 

三崎が尋ねる。

 

「メイテイ国は昔から難民を受け入れる平和な国だ、 不思議な物品も数多くあると言う

モグサール共和国は生まれてから二百年程の新興国、 共和制と言う民の代表を選んで

意思決定を行う一風変わった手法を取り入れているらしい」

「僕の居た世界ではそれが普通だけどね」

「ゴッグ国は魔法や不思議な宝を全否定していてそれらの破壊に血道を上げている国だ

しかし話は分かる連中だ、 出し抜かれる事を警戒する必要が有るが・・・」

「油断ならない相手だな、 MDって言うのは何だ? 国なの?」

「国、 と言うか商人の連合体の様な物だ、 一個の会社だと思って良いかもしれない」

「そっちも油断ならない相手・・・なのかな?」

「魔王に世界征服されるよりはマシって結構協力的だけどね

寧ろモグサールが一番警戒する相手かもしれない」

「何故?」

「今回の話の発起人はモグサールなんだ、 一体何を企んでいるのか・・・

年若い国だから読めない・・・」

 

険しい顔をするレーア。

 

「殺し合いよりも厄介な話し合いかもしれませんね」

「気が重いのは確かね・・・」



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復活の闇

ダークネスシ帝国首都ニーガタ。

ニーガタセンターの厨房で親方"闇"が腕を振るっていた。

そこにやって来るフグとブタ面の男。

 

「師匠、 フグを連れて来ました」

「おう」

「親方自ら厨房に・・・? 何故私はここに連れて来られたんですか?」

「御馳走してやろうかなと思ってな」

「へ?」

 

間抜けな声を出すフグ。

 

「今までお前達に任せてばっかりだったからな

漸く俺もまともに戦える様になる」

 

寸胴から鶏ガラを取り出す闇。

 

「まともに戦える様になる?」

「あ、 そうかフグは師匠の本気を見た事が無いんだったか」

「これまではハンバーグを使っていたが、 俺の持ちネタがやっと作れる様になった」

「持ちネタ・・・? ハンバーグよりも強い寿司が有るのですか?」

「無論だ」

 

醤油を取り出す闇。

 

「それは・・・まさか噂の醤油ですか?」

「そう、 シャリーダは醤油を作っていたんだ、 これだけでもう大殊勲だ」

「・・・・・調味料一つで?」

 

ピクリ、 と止まる闇。

 

「ふん、 醤油の有る無しではスシブレードの強さは段違いになる」

「そうなんですか?」

「スシに醤油をつける事でスシブレードの摩擦が下がり回転率が上がる

まぁ米の結合が弱くなり自壊の恐れがある諸刃の技だが」

「毒を扱う私には打ってつけですね」

「そうだな」

 

闇は慣れた手付きでネギを刻み。

テクズで煮卵を真っ二つにし。

チャーシューをスライスする。

タイミングを見計らい闇が麺を湯切りをして、 丼にスープを注ぎ麺を入れる。

そして準備した具を乗せる。

 

「これが俺の最強のスシブレード、 ラーメンだ、 さぁ喰え」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

困惑するフグ。

 

「さっさと喰え、 麺が伸びる」

「す、 すみません、 頂きます」

 

麺を啜るフグ。

 

舌先に巡る魚介の旨味!!

脳髄に直撃する鶏ガラの旨味!!

食事と油断してたフグは舌先から脳髄に突き抜け頭蓋を砕かんとするような

旨味の暴力に衝撃を受けた!!

そのダブルスープから生じる醤油味の圧倒的破壊の旨味は

まさに歯車的旨味の小宇宙!!

 

「ほわあああああああああああああああああああ!!」

 

解説しよう!!

フグは美味しい物を食べると絶叫するのだ!!

その為、 自分のスシブレードであるフグの肝を造り出す際に余る

フグの身を自分で食べて叫ぶ事から結構叫ぶのだ!!

しかし今回の絶叫は今までの比較にならない!!

 

「な、 こ、 こんなに美味しい寿司が有ったなんて・・・」

「これが闇の最強寿司、 ラーメンだ」

「師匠、 フグを捕まえる時にタケノコを見つけました」

「でかした、 これでメンマが作る事が出来る」

「ま、 まだ美味しくなると言うの!?」



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ラーメン

麺を啜るフグ。

啜る啜る啜る、 一心不乱に啜る。

 

「ふぅ・・・美味しくて全部一気に食べてしまいました」

「替え玉居るか?」

「一生付いて行きます」

 

フグは替え玉を二杯食べた!!

三杯目に行かなかったのはスープが無くなってしまったからだ!!

 

「この旨さ・・・圧倒的です」

「だろぉ?」

 

自分のラーメンを褒められて上機嫌の闇。

 

「これだけ美味しい物を作るのならシャリーダ陛下の失点も無くなると言う物ですね」

「まぁな、 醤油が重要なファクターを担っている

しかしこれだけ旨くするのは俺の腕だと言う事だな」

「そうですねぇ」

 

笑うフグと闇。

 

「師匠、 余ったチャーシューでチャーシュー丼作ってみました」

「上出来だ」

「私にも下さい」

 

チャーシューも良い感じに仕上がっている。

脂身と肉、 そして御飯が醸し出すハーモニー。

ハンバーグとは違う、 肉の強さが活きる丼である。

そしてネギが全体を引き締める。

 

「腕を上げたな」

「有難うございます」

「御代わり下さい」

「良く食べるな」

「成長期か」

「まぁどんどん喰え」

「はい」

 

もくもくとチャーシュー丼を食べるフグ。

 

「ふぅ・・・御馳走様でした」

「中華スープも作って有る」

「至れり尽くせりですね師匠、 いただきます」

 

ズズーと中華スープを飲むフグ。

口の中の油分が洗い流される。

 

「しかしチャーシュー・・・美味しかったですね

チャーシューを最初から沢山入れるラーメンとか如何でしょう」

「俗にチャーシューメンだな、 駄目だ」

 

きっぱりと断る闇。

 

「何でです?」

「フグよ、 俺は凄い旨いラーメンを作れる

そのラーメンを客が如何食べようとも勝手だ

その逆も然り、 俺が如何言うラーメンを作ろうが勝手だ

最初から胡椒やニンニクを入れても俺は怒らん、 客の勝手だ

だが最初からニンニクを入れてくれと言うオーダーは受け付けん

ヤサイニンニクカラメアブラマシマシ? 知らん言葉だ

俺は旨いと思う最高のラーメンを出す、 そのラーメンを如何喰うかは客次第

客に干渉しないんだから客も俺に干渉するな

要するにチャーシューメンは色々精密なバランスが崩れるから出さん」

 

闇寿司らしからぬ考え方である。

闇寿司ならチャーシューを迷い無く追加するだろう。

しかし闇には闇の矜持が有る、 即ちチャーシューメンよりもラーメンの方が旨い。

そして強いのだと。

 

「そうですか・・・じゃあ最初にラーメンを頼んで後からチャーシューを頼んで

入れると言うのはアリですか?」

「それは認めよう」

 

彼も自分の生き方を邪道と呼ばれた男、 抜け道、 外道、 邪道は寧ろ望む所である。



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後の先

お腹が満たされたフグ。

 

「親方、 御馳走様でした

美味しかったです、 しかし何故私が呼ばれたのですか?」

 

フグが疑問を口にする。

 

「ラーメンの旨さを自慢したかったのが一つ

もう一つはお前を止める為だ」

「敵を殺すのを何故止めるのですか?」

「今度開かれる会談で発表される事が有る

その発表を止められたら困るんだ」

「会談で発表? それは一体?」

「ふむ、 面倒な話だが戦争には大義名分と言う物が必要なんだ

その大義名分を相手側から成り立たせてくれると言う訳だ

だから今回は放置で良い」

「・・・・・」

 

少し考えるフグ。

 

「その発表と言うのは私が見て分かる物ですか?」

「あぁシャリーダに関しての秘密の暴露だ、 だから分かると思う」

「秘密の暴露・・・それならばやはり私行って来た方が良いのでは?」

「ん? 何でだ?」

 

闇が尋ねる。

 

「その発表が終わった後ならば敵は殺しても問題無い筈

ならば会談が終わったら直ぐに殺せば良いのでは?」

「・・・良いかもしれないが、 会談の場所が分からんぞ?」

「それならば私が後を追います」

「ふむ・・・・・」

 

少し考える闇。

 

「めんどくさ、 会談が始まってから俺が国を一つ落として来よう

それならば問題無い」

 

力押しで行く事にした闇。

 

「確かに美味しいラーメンですが国一つを落せますか?」

「お? 舐めてんのか? じゃあスシ回すか?」

「いえ・・・流石に親方とは・・・」

「ふん、 このラーメンは魔王とか何とか言う奴にも効いた奴だ

国一個落とすのは訳ない」

「そうそう、 ラーメン無しでもスシの暗黒卿が数人居れば問題無い

この間、 鶴帝国を皆で落としただろう」

 

ブタ面の男が断言する。

 

「そうですよね」

「それにだ、 戦力増強の良いアイデアをシャリーダが出してくれた」

「またアイツの作戦ですか」

「心配するな、 今回は俺の御墨付きだ」

「前回もそうじゃないですか」

「ふふん、 今回は割と凄い作戦だ」

「そうなんですか・・・」

「とりあえず次は大々的に侵攻する事になった

準備期間は長めに見積もって1~2ヶ月かな」

「大々的ですか」

「お前達二人にも働いて貰うからな、 覚悟しろよ」

「分かりました」

「やっと暴れられる」

 

やる気になるフグとブタ面の男。

 

「さてと、 俺はラーメンのスープの研究をするから出ていけ」

「スープの研究?」

「うむ、 まだまだ俺の理想とは言い難い

と言うかこの世界の具材しかないからな

この世界の具材を使ってベストなスープを作りたいんだ」

「そうですか・・・」

 

闇寿司にも関わらずこの向上心、 流石である。



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疑念

ファウンデーション教国、 メイテイ国

モグサール共和国、 ゴック国、 MDの五ヶ国で行われる

世界会談はマナ法国にて行われる事になった。

マナ法国は現在各国の軍隊が治安維持の名目で出入りしている為

移動は不自然では無いからだ。

そしてマナ法国の領土分配も話し合われるだろう

マナ法国で会談を行うのは不自然では無い。

 

「腑に落ちないわね」

「またですか」

 

移動中の馬車で愚痴るレーア。

傍に居るバルド。

 

「今回の会談の発起人はモグサール・・・

一体何を企んでいるの?」

「うーん、 この状況を打開しようと言うのでは?」

「モグサールがそんな機敏は動きが出来るとでも?」

 

モグサールは民主的な国である、 そんな事を自発的に行う程の

身の熟しが有るとは思えない。

 

「では何か有利になる物でも有るんでしょうか?」

「有利になる物ね・・・例えば特殊な効果を持つ宝とか?」

「それは無いんじゃないのか?」

 

ゴハンが口を挟む。

 

「隣国は魔法や不思議な宝を全否定しているゴッグ

新興国がそんな物持って居たら襲撃されて破壊されるだろう」

「それならば・・・強力なスシブレーダーとか?」

「それも破壊対象に・・・なるのか?」

「如何だろう、 勇者の様なワイルドカードでも持っているとは思い難いですが・・・」

「そんな物が有るならもっと早く使うと思いますが・・・」

 

首を傾げる一同。

 

「・・・フェイクなのでは?」

 

バルドが口に出す。

 

「フェイク?」

「そう、 モグサールが表向きに会談の発起人になったが

実態は他の国が仕向けたとか」

「何の為に?」

「うー・・・ん・・・思いつかないですね」

「マナ法国の領土分配をさっさと行いたかったから、 とかは如何だ?」

 

ゴハンが提言する。

 

「マナ法国の領土を何とかしたいのは皆そう思っていると思うけど・・・」

「自分から言い出すのはちょっと意地汚いとか思うじゃ無いか」

「いや、 他の国からの指示としてもやりそうなゴックとMDは

そんな綺麗事を言う様な国じゃないと思う」

「うーん、 じゃあ他に何か有るとか?」

「分からないな・・・」

 

実際分かるはずも無い。

この会談は異例な事だらけだ。

大国の鶴帝国がこの手の会談に参加しないのも初めて。

鶴帝国が無くなり、 各国のパワーバランスが乱れている

この状況で果たして国同士で協力する事が出来るのだろうか。

 

「・・・・・不安ね」

「大丈夫ですよレーア様、 僕がお守りします」

「・・・安心してバルド、 こっちにはこれがある」

 

生きている銃を見せるレーア。

 

「レーア様、 会談の場に武器は持ち込めませんよ」

「あらら・・・」



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集まる代表

会談が行われるマナ法国の一都市シードに

辿り着いたファウンデーション教国御一行様。

シードの近くには広大な川が流れており美しい風景を醸し出している。

 

「綺麗な場所ですね」

「美術館が有名らしいけども今回は会談だから関係無いわね」

「そんな事も無いよ」

 

O5-1が唐突に現れた。

 

「何時も当然来ますね・・・如何したんですか?」

「今回の会談の場所はシードのパーネリ美術館で行われるんだ」

「美術館でですか?」

「そう」

「何故?」

「ここには宮殿なんかも有るけど、 そっちには別部隊を送る

所謂陽動と言う事さ」

「なるほど・・・ダークネスシ帝国は来ると思いますか?」

「来ない・・・理由が無いと思うが・・・覚悟はしておこう」

「そうですね」

「こっちもお任せ下さい」

 

画してパーネリ美術館に向かう一行。

会談の場所であるパーネリ美術館には

既にメイテイ国、 ゴック国、 MDの代表が集まっていた。

 

「あ、 どーもどーも!! ファウンデーション教国の代表の方々ですね?

私はMDから派遣されましたカーターです、 よろしくお願いします」

 

スーツ姿の男が深々と頭を下げる。

 

「ゴックのアルフィーネだ、 よろしく」

 

白い頭巾にゴック国のシンボルマークが書かれた格好の女性が此方を憮然と見る。

 

「どーもー、 メイテイのももせです」

 

ぺこりと頭を下げるほんわかした雰囲気の女性のももせ。

 

「ファウンデーションのO5-1です」

「サンシャイン王国のレーアです」

「同じくサンシャイン王国のマオです」

 

別の馬車に乗っていたマオも合流して来た。

 

「それで・・・モグサール共和国の代表は何方に?」

「それがまだ来ていないのですよ」

「来ていない? 一体どういう事ですか?」

「さぁ・・・」

 

カーターが困ったように両手を上げる。

 

「何かトラブルでも有ったのでしょうか・・・」

「呼び出して置いて遅刻とは感心しないな」

「遅刻なら良いのですが・・・」

 

もしや既にモグサール共和国の代表はダークネスシ帝国の魔手に堕ちているのか?

そう考えた次の瞬間、 モグサール共和国の馬車がやって来た。

 

「おや、 来たようですよー」

 

ももせがにこにこと伝える。

 

「・・・・・心配して損した」

 

吐き捨てるアルフィーネ。

 

「ふむ・・・うん?」

 

モグサール共和国の代表コブが馬車から数名の護衛を引き連れてやって来た。

コブの隣には頭巾を被った謎の人物が。

 

「誰だ?」

「さぁ・・・しかし頭巾を被っていては誰だか分からないぞ?

一体何を考えている?」

 

頭巾を被っているアルフィーネが呟く。

全員が『いや、 お前が言うんかい!!』と心の中で突っ込んだ。



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よろしくお願いします

パーネリ美術館の一室で始まる国際会談。

護衛は外で待機している。

 

「この度は皆さまにお集まりいただき誠に恐縮です」

 

モグサール共和国の代表コブが恭しく頭を下げた。

 

「それで今回モグサールの提案で集まった訳だが議題は何かね?」

「えぇ、 この度私共モグサール共和国に

ダークネスシ帝国の暴挙を止める人物が亡命してきたのです」

「・・・・・」

 

他の国の代表達の反応は冷ややかだ。

ダークネスシ帝国の暴挙を止める人物?

何処かの大公か何かだろうか?

しかし何処から如何考えてもその様な人物に心当たりがない。

鶴帝国の主だった貴族は全滅である。

シャリ王国は元々大した国では無い、 そんな国の貴族では心許ないだろう。

 

「そちらの黒頭巾の方ですかな?」

「そうです、 ではお顔を見せて下さい」

「・・・・・」

 

頭巾を取る男。

 

「貴様ッ!! やりやがったなッ!!」

 

アルフィーネが激昂する。

 

「バルドッ!! 直ぐに中に入れッ!!」

「護衛ッ!! 突入せよ!!」

 

O5-1とレーアが絶叫を挙げる、 直ぐにバルド達が中に雪崩れ込む。

護衛が一斉にコブと男に武器を向ける。

 

「お、 落ち着いて下さい」

「落ち着けだと!? 貴様堂々と裏切りやがって!!」

「レーア様、 コブ代表の隣の男は一体・・・」

「シャリーダ13世!!」

「何ですって!?」

「それは違う!! まず話を聞いて下さい、 話はそれからだ」

「・・・・・良いだろう、 話を聞こう、 変な動きをすれば即殺す

構いませんね皆さん」

「異議無し」

「異議在りません」

「えぇと・・・はい・・・」

 

息を整えるコブ。

 

「まずこの方はシャリーダ13世では無くヴィネガー王子です」

「王位を継承する前はそうだったな、 それで?」

「今現在シャリーダ13世を名乗っているのはヴィネガー王子の影武者なのです!!」

 

驚愕する一同。

 

「皆さん、 どうか闇寿司に乗っ取られた我が国を御救い下さい!!

お願いします!!」

 

頭を下げるヴィネガー。

 

「・・・なるほど、 武器を下げろ」

「失礼ですがヴィネガー王子

貴方が闇寿司で無いかの確認をしたいのですが宜しいでしょうか?」

 

バルドが前に出る。

 

「えぇ大丈夫です」

「ではお手を確認」

 

闇寿司か否かの判定。

それは手の匂いを調べる。

闇寿司か否かの判定と言うよりはスシブレーダーか否かの判定になるだろう。

手に酢飯の匂いが付いているか否かの判定である。

 

「手に匂いがしませんね、 スシブレーダーでは無い

つまり闇寿司では無い」

「そう言う事です、 君がバルドか、 よろしく頼む」

「えぇ、 よろしくお願いします」



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包囲網

「しかしシャリーダ13世が影武者の偽物だと言う事は分かりましたけども

それが如何したと言う話にならりませんか?」

 

ももせが疑問を口にした。

 

「いえ、 今まで王家の力も有って支持がされていた筈です

弱体化は出来ると思います」

「そうでしょうか?」

「少なくとも旧鶴帝国の貴族達は王族ですら無い者に従うとは思えません」

「ですが闇寿司は力こそが全てと言う連中ですよ?

そういう身分制度とかは無視して来ると思いますし

なによりシャリーダ13世が王座から離れるとは思いません」

 

バルドが追従する。

 

「それなら内乱が起こる可能性もあります」

「内乱・・・か、 民が心配ですが・・・」

「闇寿司思想に憑りつかれた時点でもう手遅れです」

「その通りです、 皆様にはこの事実を喧伝して貰いたいと思います

そして混乱の隙にダークネスシ帝国を叩き

元のシャリ王国に戻したいと考えています」

「・・・・・そうなると元の鶴帝国の領土は如何なりますかな?」

 

カーターが商人の眼付になる。

ダークネスシ帝国を叩き、 打倒した後の事を考える。

聊か先走り過ぎだが、 敗北した際の時の事を考えるのは愚の骨頂。

攻める事を考える。

 

「領土よりも人々の事を考えましょうよ!!」

 

ももせは住んでいる人々の事を考える。

亡命者を受け入れるメイテイ国らしい考え方だ。

 

「闇寿司は滅びねばならないだろう・・・私は協力するよ」

 

アルフィーネは闇寿司の妥当に協力的だ。

 

「我が国もダークネスシ帝国に侵略されています

追い払ってくれるのならば協力は惜しみません」

 

レーアが発言する。

 

「O5-1は如何思います?」

「協力も何も私達が一番多く闇寿司と戦っている、 戦わざるを得ないだろう

しかしどの様に戦うおつもりか?」

「まずヴィネガー王子の情報を流して内乱が起きるのを待つ

大体1,2か月程待ちましょうか」

「なるほど、 それが妥当だろうか」

「その間に我々も準備をしておこうか、 マナ法国に軍隊を駐在させるが問題無いな?」

 

アルフィーネが提案する。

マナ法国の領土も視野に入れた提案だ。

 

「それなら我々も傭兵を送りましょう

同盟国にも話を付けておきますよ」

 

カーターも同じ腹積もりらしい。

 

「私達は出るであろう難民達の為にキャンプを張ります」

 

ももせは人道主義を貫く姿勢の様だ。

 

「それではみなさん、 我々の絆の力で闇寿司を打倒しようではありませんか!!」

 

コブが鼓舞する。

 

「我々の絆ってちょっと距離感間違っているぞコブ」

「え・・・そうでしたか、 それは失礼」



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演説

シャリーダ13世が影武者だった!?

その情報が発信されダークネスシ帝国にも伝わった!!

シャリーダ13世は直ちに演説を行った。

そしてその演説は魔術的機工により大々的に広まったのだった。

 

「まず始めに諸君らが気になっているであろう

私が影武者か否かの話だがこれは各国が主張する通りに

私はヴィネガーの影武者だった、 しかしヴィネガーよりも優秀であり

ヴィネガーには無い闇寿司の知識と技術が有る

そもそも私は王族だと言う事をひけらかした事は無い

全て力で解決して来た、 能力で解決して来たのだ

 

王族だからと尊ぶ連中は頭が可笑しいと言わざるを得ない

そもそも私はヴィネガーの影武者だが実態はヴィネガーが怠けて遊ぶ為に

代わりに勉強や執務を行う役割だった

ヴィネガーが如何しようもない怠け者で遊び人だった

血筋以外に彼に尊ぶべき物は無い、 彼よりも私は能力が有る

 

そもそも王政とは王と言う優秀な個人が自分の子孫を贔屓するシステムである

先祖が優秀だったからと言って子孫が優秀な筈が無い

貴族達も同様、 今は堕落した屑も多い

 

私は民衆に投げかけたい、 これで良いのか?

身分で差別されて能力が低い者にのさばらせていいのか?

ダークネスシ帝国は平等では無いが公平である

能力の有る者は貴族だろうが奴隷だろうが公平に良い生活が出来る

努力して上に登る事も可能なのだ!!

努力し続けて貴族の下に居続ける生活が望みなのか?

素力しても報われない社会で良いのか?

否、 断じて否、 能力が有る者が能力が無い者の上に立つ

これは真理であり常識である

 

私が王の座に座っているのも私が純粋に強いからである

もしもこのダークネスシ帝国の玉座が欲しいのならば挑んで来れば良い

反逆も下剋上も私は厭わん、 強い者が上に立てれば良い

もしも私よりも強い王が現れれば私は喜んで玉座を譲ろう

だがしかし私は一国の王に収まる器では無い

世界の血筋や身分のみで上に座り続ける無能な王や貴族を全て妥当し

全ての国を平定し、 魔王を倒し、 人間の、 人間による、 人間の為の

国を作らなければならない!! 能力の有る者が人々を導き!!

能力の有る者は道を開ける!! 身分の差が存在しない!!

公平な機会が与えられたそういう新しい国家を造り出す!!

人間の安全と安定を確保、 維持するために

この世界史上初の!! 全世界統一帝国を作り出すのだ!!

人類の安心かつ安全な社会のために!!

 

貴族であろうと平民であろうと奴隷であろうとも強ければ誰だって構わない!!

我こそはと思う者は闇寿司の元に集え!!」



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第一章:見えざる脅威
オープニング・クロール


シャリ王国国王シャリーダ12世は名君では無かったが暴君でも無かった。

しかし人並みに自己顕示欲が有った。

シャリーダ12世は自分が魔王討伐の功労者になる事を夢見て

禁忌とされているファウンデーション教国に無許可で聖女を仕立て上げる事と

多大な犠牲を払い、 異世界から勇者を召喚する為の儀式を始めた。

 

だが召喚の準備を始めた途端に魔物の襲撃が激しくなった。

魔王麾下の四天王の一人ヨモヤマバナシの予言によるとシャリ王国が召喚する者は

魔王を倒すという事らしい。

 

シャリーダ12世は自分が呼び出す勇者がそんなに強いのかと喜び勇んだが

魔王軍の攻撃の激しさが日に日に増していき

魔王軍の攻撃でシャリーダ12世は愛妻のネタ妃を喪った。

 

自己顕示欲の為だった勇者召喚の為にシャリーダ12世は常軌を失い

急ピッチで勇者召喚の為の生贄を用意して息子と娘達と共に勇者召喚の儀に挑むのだった。

自分の妻を奪い去った憎々しい魔物共を滅する存在を呼び出す為に・・・

 

王位継承者第一位ボグルは父の所業に対して怒りを覚えていた。

しかしここで拳を振り上げては犠牲になった人々が無駄になる。

そこで勇者を召喚した後に父親を断罪しようと準備をしていた。

既に警備兵達を買収しており勇者召喚を今か今かと待っていた。

 

王位継承者第二位シーゾーは勇者と共に

魔王討伐の旅に出て自身が王位を継ぐ事を夢想していた。

今まで自分が磨いていた武術の腕前はきっと魔王軍を蹴散らす一助になるだろうと信じて。

 

王位継承者第三位ワサビは異世界の住人にこの世界の命運を託すのは間違いと考え

呼び出した瞬間に殺してやろうと短刀を胸に隠し持っていた。

自分はあまり体格が良くないから油断を誘う事が出来るだろう。

 

王位継承者第四位アサージは一般的な夢見る少女と同じ様に

自分が勇者と結ばれる未来を夢想していた。

 

王位継承者第五位ヴィネガーは儀式なんて長々しい物を見るのは馬鹿馬鹿しいし

面倒なので何時もの様に儀式は影武者に任せて城下町に出て遊びに行く事にしたのだった。

仲間と共に酒場で馬鹿騒ぎをするのは楽しかった、 

王位継承者と言っても自分に王位が巡って来ない憂さ晴らしである。

 

一方魔王軍は勇者が召喚される事を察知して四天王及び魔王総出で

シャリ王国首都コメドコロに向かうのだった。

四天王バリゾーゴン、 イイッパナシ、 ヨモヤマバナシ、 サンテンリーダ

そして魔王はコメドコロの城であるコメドコロセンターに向かっていたのだった。



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勇者召喚の儀

シャリ王国首都コメドコロで

シャリーラ12世は居城であるコメドコロセンターの一室で自分の子供達と

魔法使い達を呼び集めて勇者召喚の儀式を始めていた。

 

「ご機嫌麗しゅうございます陛下、 それに殿下方」

 

シャリ王国宮廷魔導士長サーストンが恭しく頭を下げる。

 

「この度は勇者召喚の儀を任せて頂き光栄の至りで御座います!!」

 

明らかに興奮している。

 

「挨拶は良い、 早く勇者召喚の儀を始めろ」

「は、 はい、 ではう、うん!!」

 

サーストンが深呼吸をしている、 興奮を覚ます様だ。

 

「サーストンってあんな方でしたっけ?」

 

アサージは隣に居るヴィネガーの影武者に尋ねる。

 

「重大な魔法事案に対してはあんな感じです」

「そうでしたの・・・」

 

サーストンが深呼吸を終えて魔方陣を描き魔法の詠唱を始める。

ズガガガガガガガガガガ!! 轟音が城内に鳴り響く!!

 

「何事だ!!」

 

ボグルが絶叫を挙げる!!

 

「失礼致します!! 魔王軍の進撃です!!」

「ここにか!?」

 

魔力による結界は張っていた筈なのにまさか破られるとは予測もしていなかった!!

 

「敵は四天王!!」

「四天王の誰だ!?」

「四天王全員です!! そして強力な魔力を持つ者が更に一体!!」

「!! ま、 まさか魔王!? 父上!!」

「狼狽えるなボグル、 逆に考えれば

ここで勇者を呼び出せば一気に魔王軍を殲滅出来る」

「そんな無茶苦茶な!!」

 

ボグルが絶叫する。

 

「では父上!! 私は魔王軍を足止めして参ります!!」

 

シーゾーが部屋から出る。

 

「し、 シーゾー!?」

「一刻も早い勇者の召喚をお願いしますよ!!」

 

タッタッタと駆け抜けるシーゾー。

 

「私も行こう」

 

ワサビも立ち上がる。

 

「勇者なんて、 何処の馬の骨かも分からない奴に自分の命運を預けたくは無い」

「・・・・・」

 

ワサビを睨みつけるシャリーダ12世。

ワサビが勢い良く部屋から飛び出る。

 

「ち、 父上、 一旦安全な場所に避難を」

「黙れ」

 

愛娘の言葉を一喝するシャリーダ12世。

 

「勇者が召喚されれば何もかも問題は無い・・・」

 

外から息を切らして部屋に戻って来たワサビ。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

「ワサビ、 一体如何し」

 

部屋のドアが弾け飛ぶ、 ドアの外に居たのは触手を持った巨人。

四天王の一人ヨモヤマバナシである。

触手の一本には首が圧し折られたシーゾーの姿が有った。

 

「貴様、 何者だ?」

「四天王の一人ヨモヤマバナシ・・・勇者は召喚されていない様だな

ここで死んでもらうぞ!!」

 

触手の一本がサーストンに迫る!!

 

「詠唱は全て完了している」

「何ッ!?」

 

魔法陣が輝いた。



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ダークネス・エントリー

魔法陣が輝き、 輝きが収まると黒装束の二人組が居た。

闇寿司の親方”闇”とブタ面の男である。

 

「なんだぁ?」

「こ、 これは師匠!! 異世界転生って奴っすよ!!」

 

ブタ面の男がテンションを上げる。

 

「異世界転生? 何だそりゃ?」

「何か魔法みたいなので異世界に召喚されるって奴です!!

ほら王様みたいなのも居ますし!!」

「ふーん、 それで?」

「きっとこれから魔王をやっつけて欲しいとか言うんですよ!!」

「漫画の読み過ぎだ、 馬鹿め、 さてとこの状況、 誰か説明出来るか?」

「そっちのブタ頭の人の仰った通りです」

 

シャリーダ12世が喋る。

 

「初めまして、 私はシャリーダ12世です、 現在四天王と魔王の襲撃を受けています」

「ふーん」

「勇者覚悟!!」

 

ヨモヤマバナシが触手で攻撃しようとしてくる!!

ドゴォ!! とヨモヤマバナシが吹き飛ばされる!!

 

「ぐはぁ!! い、 一体何が・・・」

 

次々と射出されるラーメンの嵐にヨモヤマバナシは爆発四散した。

 

「す、 凄い・・・」

「こ、 これが勇者の力・・・」

 

感嘆にくれるアサージとヴィネガーの影武者。

 

「さてと、 帰るか」

 

闇がぼそりと呟いた。

 

「い、 いやいやいや、 まだです」

 

シャリーダ12世が慌てる。

 

「何が?」

「今の魔王じゃないです!!」

「だから?」

「だからって・・・魔王を倒して貰わないと困ります!!」

「知らね」

「知らねって」

「魔王を殺して俺に何か得が有んの?」

「それは・・・」

「とっとと元の場所に戻せ」

「それは出来ません」

 

サーストンが断言する。

 

「じゃあ死ね」

「しないのでは無く出来ないのです」

「何?」

「一方的に呼び出すだけで戻す為の魔術は無いのです」

「・・・・・そうか、 じゃあ死ね」

「私はこの国一番の魔法使いです

元の世界に戻す為の魔術を探す一助になれると思います

それに私はこんな無理矢理人を呼び出して戦いを強いる魔法なんて使いたく無かった」

 

シャリーダ12世は驚愕の表情を浮かべた。

さっきまであんなにテンション高かったじゃないか!!

 

「陛下に無理矢理脅されて・・・」

「なるほど、 じゃあやっぱりお前が悪いんじゃねぇか」

 

闇が怒りながらサーストンに言い放つ。

 

「やりたくも無い事ならやらなければ良いだけじゃねぇかよ」

「ですが陛下はこの国一番の有力者、 逆らえば命は」

「黙れ、 お前が弱いのが悪い」

 

キッパリと言い放つ闇。

 

「師匠、 気持ちは分かりますがこの人が凄い魔法使いなら生かした方が良いかと・・・」

「そーなのか? 異世界転生とやらの勝手が分からん」



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魔王と対峙する闇

「そもそも、 だ、 何で自分の国を他の国の人に助けて貰おうと思うの?

そんな事したら国民の大顰蹙は免れないと思うぞ?」

 

闇が疑問を口にする。

 

「魔王は強いのです」

「だったら軍備を強化すれば良いだろう」

「軍備を強化しても勝てません」

「・・・・・OK、 なるほどよーく分かった」

 

シャリーダ12世の言葉に闇がゆらりと立ち上がる。

そしてどごおおおおおおおおおおおおおおんと轟音が鳴り響く。

 

「んあ?」

「現在四天王と魔王の襲撃を受けているんですよね・・・如何します師匠?」

「よし、 俺が魔王を殺すからお前は四天王な」

 

闇が部屋の外に出る。

ブタ面の男も外に出た。

 

「大丈夫ですかね」

「今の戦闘能力を見れば分かるだろう、 心配は無用だ」

 

シャリーダ12世が答える。

 

 

 

 

 

一方その頃、 魔王はヨモヤマバナシからの念話が途切れた事を気にしていた。

 

「ヨモヤマバナシからの念話が途切れた、 恐らくやられたのだろう」

「そんな馬鹿な、 奴は預言者ですがそれ以上に力が有ります

人間如きにやられるのはあり得ない」

 

サンテンリーダが魔王に提言する。

 

「うむ・・・まずは・・・」

 

ドゴォ!! ドゴォ!! ドゴォ!! ドゴォ!! ドゴォ!! ドゴォ!! ドゴォ!! ドゴォ!! 

ドゴォ!! ドゴォ!! ドゴォ!! ドゴォ!! ドゴォ!! ドゴォ!! ドゴォ!! ドゴォ!! 

 

連続的に爆発音が鳴り響く。

 

「な、 なんだ?」

「魔王様!!」

 

魔物の伝令が魔王に跪く。

 

「敵の新手です!! 何やら訳の分からない攻撃で次々と我が軍勢を虐殺しています!!」

「勇者だ!! 如何します魔王様!?」

「好都合、 叩き殺してくれる」

 

魔王はマントを翻して大剣を掲げる。

 

「行くぞサンテンリーダ」

「他の四天王達は如何しますか?」

「念話を使えるヨモヤマバナシが死んだ以上、 呼びかける事は不可能

このまま放置だな、 勇者は今何処に?」

「勇者はぐへ!?」

 

伝令の魔物の脳髄が弾ける。

 

「何事、 !?」

 

魔王が慌てて剣を自らの前に構える。

すると剣が木っ端微塵に粉砕される。

 

「馬鹿な・・・我が魔剣『オーガナイザー』が砕けるだと!?」

「どっちが魔王だ?」

 

魔王二人の前に現れる闇。

 

「…!!」

 

サンテンリーダの敵戦力把握スキルが発動する。

敵の戦闘能力は魔王よりも遥かに上!!

魔王では勝ち目が無い!! ならば・・・

 

「私が魔王だ・・・」

「!?」

 

サンテンリーダは自らを魔王と名乗り魔王の前に出た。

 

「お前では歯が立たない、 奴の戦闘能力はお前を遥かに上回る」

「・・・・・」

 

魔王もそれを察した。

 

「お前でも勝てんぞ?」

「かもな、 だが行こう、 お前は逃げろ」

 

サンテンリーダは魔王を逃がして爪を展開して襲い掛かった。



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罵詈雑言

サンテンリーダはリザードマンである。

トカゲ男と言い換えられるリザードマンは剣や武術等に卓越しており

四天王の一人たるサンテンリーダがリザードマンの中でも最強。

鋼鉄の爪からの攻撃は天下一品である。

 

その天下一品の爪が闇の攻撃で圧し折られた。

 

「ぐわあああああああああああああああああああああ!!」

 

サンテンリーダは叫んだ。

意識を手放すまいと叫んだ。

自分が死んだら魔王が逃げる時間を稼げない。

時間を稼がなければ。

 

「お前魔王じゃねぇな?」

 

気が付かれた!! 何故!?

 

「何を根拠に・・・」

「てめぇの爪とさっき折った剣、 剣の方が明らかに良い物だ」

「分かるのか!?」

「こう見えても料理人だ、 刃物の良し悪しは見ただけで分かる」

「・・・・・料理人・・・料理人に俺は負けるのか!?」

「トカゲ、 丸焼きが旨いとかって聞いた事あるな

鱗を落してあらびき胡椒で喰うのが良いらしい」

「・・・・・」

 

自分を食材として見ている事に戦慄するサンテンリーダ。

 

「・・・・・俺を喰う気か?」

「いやぁ、 さっさと殺して魔王を殺さなきゃ」

「させん!!」

 

サンテンリーダが闇を見据える。

 

「魔王様は魔物の希望!! 殺させる訳には行かん!!」

「なるほどな、 異世界だとか色々分からんが

要は人間とそれ以外の戦争って事か」

 

闇は興味を無くし、 後ろに振りかえる。

 

「ま、 待て、 何処に行く!?」

「興味が失せた」

「なっ!?」

 

闇はスタスタと去って行った。

 

「・・・・・何だって言うんだ・・・」

「サンテンリーダ様!!」

 

四天王の一人のバリゾーゴンがやってくる。

サンテンリーダよりも格下なので彼に様付けをしている。

 

「バリゾーゴン・・・? 何故お前が・・・」

「連中強過ぎでしょ!! バケモンか!!」

「あ、 あぁ・・・それは俺も実感した・・・」

「・・・・・嘘だろ、 アンタの爪が砕けてるじゃねぇか!!」

「あぁ・・・両腕も・・・」

 

サンテンリーダはふらふらと意識を失いかけている。

 

「おいおい、 大丈夫ですか?」

「あぁ、 暫く休む」

「ずっと休んでて下さい」

「?」

 

バリゾーゴンはサンテンリーダの首を刎ねた。

 

「・・・なんの・・・まねだ・・・」

「魔王より強い奴なんて相手に出来ない

俺は、 いや俺達はこの国に寝返る

アンタの首を手土産にな」

「ばかな・・・れんちゅうは・・・」

 

サンテンリーダはそこまで言って意識を手放した。

 

「ふふふ・・・四天王最弱だったが

これで魔族と人間の架け橋とか呼ばれる様になるのかな・・・

いずれにせよ次の魔物のトップは俺だ・・・」



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シャリーダ13世の胎動

魔王が逃走しシャリ王国への侵攻が収まった。

しかしコメドコロセンターの玉座の間では緊張感が走っている。

 

「この椅子、 固いな」

 

玉座に座るは親方”闇”。

シャリーダ12世は既に殺害されている。

 

「・・・・・何故父上を殺したのですか?」

 

勤めて冷静に尋ねるワサビ。

主を殺された近衛が襲い掛かり、 いとも容易く殺害したのだ。

ヘタな事を言うと殺される、 ならば対応もこうなるだろう。

 

「俺を呼んだから」

「・・・どういう事でしょうか?」

「お前さ、 自分が家でのんびりしていて突然引っ張り出されたら怒るだろ?

つまりそう言う事だ」

「・・・・・」

「つまりムカついたから打っ殺したと?」

 

恭順の意を示したバリゾーゴンが尋ねる。

 

「そうそう、 魔族の方が物分かり良いじゃ無いか」

「ははは・・・」

 

乾いた笑いをするバリゾーゴン。

 

「俺は強いから王様になる、 別に王様になりたいって訳じゃないが」

「ならば私が代わりに王座に座りましょう」

 

ヴィネガーの影武者が宣言する。

 

「あ?」

「面倒ならば私が貴方様の代わりに玉座に座りましょう

勿論、 貴方の指示は全て聞きます」

「全て・・・ね」

「貴様!! 王族としての誇りは無いのかヴィネガー!!」

 

ボグルが叫ぶ。

 

「いや、 お前さ、 人さらいしている時点で誇りとか無くね?

何言ってんのお前?」

 

心底軽蔑した眼で闇がボグルを見る。

 

「俺は人殺しとかしても人殺ししたなって思うよ?

でも人殺しが良い事だって思った事は一度も無い強いて思っても

弱い奴が悪い位だ、 それなのにお前人さらいしても誇りとか言われても・・・ねぇ?」

「確かに冷静に見ると異世界転生って人さらいだわ」

 

闇とブタ面の男が笑い合う。

 

「御二方の戦いを見ました」

 

ヴィネガーの影武者が呟く。

 

「ほう、 後ろで引っ込んでいたと思ってたら」

「えぇ、 見た所、 お二人の使う技は同じ様に見受けられます

もしも宜しければ私にもお二人の技を伝授して頂きたい!!」

「好印象だぞ、 小僧、 それにお前の心に闇を感じる」

「闇・・・ですか?」

「そうだ、 お前みたいな王子様が

恵まれた環境の奴がそんなに強い闇を宿すのは珍しい」

「・・・・・」

 

ヴィネガーは黙っていた。

 

「良いだろう、 俺達闇寿司の傘下に入る事を認めてやろうじゃないか」

「さっきから聞いて居れば勝手な事を!!」

 

ワサビが立ち上がる。

しかしワサビの足元にハンバーグが撃ち込まれる。

 

「勝手で何が悪い、 俺の方が強い」

「くっ・・・」

 

歯軋りをするワサビだった。

 

「さてと、 では弟子になった・・・名前なんだっけ?」

「そうですね・・・新しく玉座に座るからシャリーダ13世とお呼び下さい」

「貴様っ!!」



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ケーキが食べたい

「納得が行かない!!」

 

ボグルが叫んだ。

 

「お前は末っ子じゃないか!! 何でお前がシャリーダ13世を襲名するんだよ!!」

「そうだそうだ!! 俺や兄上の方が良いじゃ無いか!!」

 

ワサビも追従する。

 

「そうか、 じゃあお前達にこれから三日、 闇寿司の知識を叩き込む」

「な、 なんだと?」

「その闇寿司の知識を使い殺し合いを行い、 最終的な勝者

そいつがシャリーダ13世になる、 と言うのは如何だ?」

 

闇が提案する。

 

「怖い事提案するな、 人間は・・・」

 

戦慄するバリゾーゴン。

 

「あ、 あの・・・私は事態しても良いでしょうか」

 

恐る恐るアサージが挙手する。

 

「何で?」

「私は女ですし・・・こういう王位継承にも興味無いですし・・・」

「ふーん、 別に良いと思うが・・・まぁ良いや、 やる気の無い奴は興味が無い

だが王族だからと特別扱いするつもりは俺には無いし

お前の兄弟達がお前を贔屓するとも思えない

ここはお前も参戦した方が良いと思うぞ?」

「っ・・・・・」

 

震えるアサージ。

 

「ふん」

 

カリフォルニアロールを出してアサージを精神酢飯漬けにする闇。

 

「gばいうういfgしjぎおhふぃsじfhづぎうgヴぃxhしhさぢうぎhfdしょh!!」

 

声にならぬ絶叫を挙げるアサージ。

 

「・・・・・そうですね、 言われてみれば確かにその通り

闇様の御言葉通り、 王座を狙いに行きたいと思います」

「うむ」

「な・・・今のは!?」

「闇寿司の技の一つ、 精神酢飯漬けだ」

「精神酢飯漬け・・・凄い技だ」

 

目を輝かせるヴィネガーの影武者。

 

「洗脳した・・・のか?」

「何と恐ろしい・・・力技だけでは無いのか・・・」

 

ワサビとボグルは対照的に恐怖を浮かべた。

 

「何という技なの・・・闇寿司、 魔法以上に素晴らしい技!!」

 

サーストンは興奮している、 恐らく下着はびしょびしょだろう。

 

「・・・・・・・・・・」

 

バリゾーゴンは戦慄している。

 

「じゃあ今日はこれ位にして休もうか、 飯でも作ろう、 何か食いたい物は有るか?」

「え、 貴方が作るんですか?」

「俺が一番飯を作るのが上手いんだから当たり前だろ」

「何が当たり前なのか分からないですが・・・じゃあお任せします」

「「我々は結構だ」」

 

ボグルとワサビは何か盛られるのを警戒して食事を拒否した。

 

「明日からびしびし行くから喰っておいた方がいいんじゃないか?」

「なんで節々でまともなんだ・・・結構です、 茶菓子がありますから」

「私はケーキが食べたいです!!」

 

アサージが叫ぶ。

 

「ほうほう、 ケーキか良いだろう」

「菓子まで熟すのか!?」



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ケーキを作ろう

厨房にやって来た闇とブタ面の男。

 

「・・・・・中世だからと予想はしていたが・・・これは酷いな」

「えぇ・・・」

 

闇は絶望した、 自分達が如何に文明の利器に頼って料理をしていたのかを。

 

「簡単な調理器具一式は持って来ているからヴィネガーの飯は出来るだろう

だがしかし・・・ケーキだと? 調理用レンジも無しに作れと?」

「厳しいですか」

「厳しいな、 そもそもケーキってアイツは言ったが何ケーキだ?

ショートケーキ? チーズケーキ? チョコレートケーキ? モンブラン?

ロールケーキ? ミルフィーユ? ケーキなんて色々有るぞ」

「・・・いや、 親方ここは中世っぽい世界

そんなに料理の種類が多いとは思えません」

「そうなのか? てっきり貴族共がケーキを喰ってあははうふふしているかと・・・」

「それは無いんじゃないですか? 色々見ていますが輪型も無いですよ?」

「はぁ!? どうやってケーキ作るんだよ!! くっそぉ・・・

何と言う文明が遅れているんだ異世界は!!」

「如何しますか? 白旗でも上げます?」

「馬鹿を言うな、 ここで暫く暮らさなければならないのならば

ここでの料理の仕方を工夫してやらねばならないだろう」

「そうなると如何しようと?」

「科学が駄目ならば魔法だ、 さっきの魔法使いを呼んで来い」

「分かりました」

 

サーストンを連れて来たブタ面の男。

 

「と言う事だ、 我々の文明レベルと比べてこの世界の文明レベルを低過ぎて

我々が使っている料理器具が殆ど無い、 故にお前が代わりを果たせ」

「料理の為に魔法を使うんですか? そこまでやる必要有ります?」

「ケーキをリクエストされてほいほい受け入れた俺のミスだ

素直に受け入れてケーキを作ろうじゃ無いか」

「はぁ・・・」

「あ、 師匠、 この人に一般的なケーキってどんな物か聞いて見たら如何ですか?」

「何で?」

「ケーキが食べたいといってカステラが出て来たら嫌でしょ?」

「カステラ美味しいだろうが」

「あー・・・自分の想定していたケーキ以外が出て来たら嫌じゃないですか」

「確かに嫌だな・・・いや、 待て、 俺は思い違いをしていた様だ」

 

はっ、 とする闇。

 

「何がですか?」

「確かに自分の好みのケーキが一番だ

だがそれすらも上回るケーキを俺が作れば良いじゃ無いか」

「何だかカッコいいですが・・・この文明レベルじゃねぇ・・・」

「無理か」

「無理です」

「仕方が無い、 おい魔法使い、 この世界の一般的なケーキを教えろ」

「あ、 はい・・・そうですね・・・フルーツケーキが一般的ですね」

「今、 食糧貯蔵庫見ましたがフルーツ無いです」

「糞がッ!!」



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貧しい食生活

「師匠、 探してみましたが泡だて器も無いです」

「正気か!? 一体どうやってケーキを作っているんだ!?」

 

頭を悩ませる闇。

 

「あの・・・貴方が洗脳しているんだから

別にケーキを作らなくても良いのではないでしょうか?」

 

サーストンが疑問を口にする。

 

「馬鹿か、 ケーキを喰いたいと言われてケーキを出さない馬鹿が何処にいる!?」

「でもこれじゃあケーキを作る事は実質不可能・・・如何します?」

「あのー・・・パンを切ってクリームを塗った物がケーキじゃないんです?」

 

サーストンが口にした言葉はこの世界の常識である。

現代のケーキのルーツはいくつかあり

その一つはパンであり長い歴史の中でケーキとパンの概念の差は非常に曖昧であるが

ぜいたくな平らなパンをケーキと称していたようである。

 

「それをケーキとして出せと? 俺のプライドが許さん」

「ハッ・・・思いつきましたよ師匠

この女に色々調理器具とか食材とか召喚させましょうよ」

「そんな事出来る訳無いじゃないですか

勇者様を呼ぶだけでも生贄とか凄い必要だったのですよ」

「その生贄達を武装させて軍隊を作れ・・・愚痴っても仕方が無い

やるしかねぇな」

「やるしかないって・・・何を作る気ですか?」

「パンケーキを作る、 これならばこの環境でも作れるだろう

手間はかかるだろうが、 メイプルシロップは有ったか?」

「無いです」

「ハチミツは?」

「無いです」

「無い物だらけじゃねぇかこの城!!」

「砂糖も無かったです」

「ちょっと待て、 食糧庫を見せろ」

 

食糧庫を見ると保存食の干し肉にパンが大量に有った。

安物で有るのは見て分かる、 決して王族に出して良い物では無い。

 

「これは・・・」

「王族は今回の勇者召喚の為に相当切り詰めた生活をしていた様です」

 

サーストンが答える。

 

「・・・なるほどな、 この状況ならクリーム塗ったくったパンもケーキと呼べるだろう」

「そうですよ」

「だがノー!! ここは俺流で通す、 魔法使い熱した鉄板を二枚用意しろ」

「な、 何をするつもりですか?」

「ホットサンドを作る、 クリーム塗ったくったパンをケーキと呼ぶのならば

これもケーキと呼んで貰おうか、 幸いにも手持ちに餡子が有る」

「餡子ホットサンド、 絶対旨い奴じゃないですか、 俺にも下さい」

「良いだろう」

 

画して闇は美味しいホットサンドをアサージに食べさせる事に成功したのだった。

 

「とても美味しいです!!」

 

ホットサンドを頬張るアサージ。

 

「そうだろうそうだろう」

「何で洗脳しているのにこんな手間を・・・」

「だからこその俺だ!!」



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少女との出会い

ケーキを作り上げて気分良く寝室で眠りに就こうとする闇。

 

「ふむ、 所でさっきからずっと俺を付けているお前は何だ?」

「・・・・・」

 

ふっ、 と闇に短剣を突き付ける少女、 闇は構わず殴り飛ばし

少女は吹っ飛んだ。

 

「まだ居るな」

 

後ろから迫る二人組、 前からも二人、 横からも二人。

横の一人を掴んでスシブレードの要領で射出し前方の二人と吹き飛ばし。

もう一人を掴んで後方に射出し吹き飛ばす。

 

「この程度、 修羅場にもならんな、 誰からの差し金だ?」

 

少女の頭を掴む。

 

「・・・・・」

「ふむ」

 

少女の爪先に思い切り箸を捩り込む。

 

「っ~~~!!」

「誰からの差し金だ?」

「誰が言うか!!」

「強情だなぁ・・・」

 

死屍累々になった襲って来た者達に腰かける闇。

 

「まぁ王子様の誰かって所だろう、 何で喋らないんだ?

忠誠心って奴か? だったらはっきり言って王子様はお前が仕えるに値しない

こんな程度で俺を殺すのは無理なのを分からないって時点で無能以下だ」

「いや、 王子は関係無い

我々は王国の影故に王国に仇なす所か王を殺したお前を殺す」

「ふん、 なるほどね、 さっきの爺さんの手駒か

だがお前の意見は可笑しいだろう」

「何故だ?」

「俺がこの国に仇なす? 王子達に闇寿司を啓蒙してやろうと言うのに?

寧ろこの国に有益だと思うが・・・」

「あの技の事か・・・」

「そう、 結局の所一番強い奴が好き勝手出来る

それは異世界も俺が居た世界も変わらない

世界平和を謳っている大国も決国は一番戦争が強い国って事だ」

「・・・・・」

「お前の心にも闇を感じる・・・如何だ? お前も闇寿司を学んでみないか?

強い暗殺者になれるぞ?」

「世迷言を、 殺しに来た相手に教えを乞う暗殺者が居るか」

「ハッ、 俺を殺せる奴なんてこの世に居ない」

 

つかつかと少女に近付く闇。

 

「それじゃあ闇寿司に付いて教えてやろう」

「おい、 私が何時聞くと言った」

「無理矢理聞かせる、 お前の意思なんて関係無い

無理矢理首根っこ掴んでも教える」

「・・・・・その技でお前に歯向かったら如何するつもりだ?

殺されるかもしれないぞ?」

「上等だ、 殺せるもんなら殺してみろ」

「!?」

 

少女が同様した。

 

「俺を殺せる程の腕が有るのならば俺が持つ闇寿司の親方の地位を譲ってやってもいい

闇寿司は力が全て、 誰だろうと俺に成り代われる、 力さえ有れば」

「・・・・・」

 

少女が震えた。

 

「貴方の・・・名前は?」

「闇だ、 お前は?」

「私には名前なんて無い」

「そうか・・・じゃあお前は・・・そうだな見た所

お前は毒寿司に向いていそうだな、 フグと名乗れ」



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レーンブラスト

一夜明けてシャリ王国王族の3名+影武者+暗殺者に闇寿司の稽古を行っていた。

闇寿司とは寿司とは言えない外道を主に使うスシブレード。

ネタの強さがスシブレーダーの強さに直結する。

 

「と言う訳だ以上」

「は?」

 

簡単なスシの回し方と座学のみで稽古は一区切りした。

 

「また一分も経ってないぞ・・・」

「じゃあここからは実技だ、 俺が只管攻撃するからスシブレードで反撃しろ」

「殺す気か?」

「安心しろカリフォルニアロールだ、 死にはしない」

 

読者諸賢にロールプレイングゲームの経験者が居るのならば

闇のこの行動は納得が行くだろう。

強い相手と戦えば高い経験値が得られると言う事だ。

 

「カリフォルニアロールは殺傷能力が低いのですか?」

 

ヴィネガーの影武者が尋ねる。

 

「あぁ、 だから安心しろ」

「もっと殺傷能力が有る物でお願いします」

「何・・・?」

「強いスシブレードと打ち合えば強くなれると思います」

「なるほど、 命の保障は出来ないがそれでも良いのならば」

「やります」

 

ヴィネガーの影武者のやる気は天井知らずだ。

 

「お前達は如何する?」

「「「・・・・・」」」

 

他の王族は及び腰である、 死の危険が有る行為にそんなにほいほい行ける物では無い。

洗脳されているアサージも同様である。

 

「ここで差をつけられるかもしれないぞ?」

「・・・・・いや、 今日は見送ります」

 

ワサビが冷静な判断を下す。

 

「ほう・・・その心は?」

「貴方の攻撃にヴィネガーが耐えられるとは思いません自滅に等しい」

「いやいやこいつは見所が有る、 死なないだろ、 多分」

「貴方の不見識に賭けましょう」

「そうか、 じゃあ行くぞー」

 

ボグル、 ワサビ、 アサージ、 フグにはカリフォルニアロールが

ヴィネガーの影武者にはスシブレードの波頭が襲い掛かった。

まるで回転寿司のレーンの如く大量のスシがヴィネガーの影武者を襲う。

 

「師匠、 やりすぎじゃあ・・・」

「見て見ろ」

「?」

 

ボグル、 ワサビ、 アサージ、 フグにはカリフォルニアロール一つに手を焼いている。

しかしヴィネガーの影武者は全身がボロボロになりながらも

原型を留め立ち上がってこようとしている。

 

「あのスシの群れを生きて躱すとは・・・」

「少し手を抜いていたからな、 生きて貰わないと困る」

 

ヴィネガーの影武者はシャリを口に頬張り立ち上がる。

 

「ほう、 自己精神酢飯漬けか」

「何すかそれ」

「自己暗示の様に自分自身を洗脳して肉体の限界を超える方法だ

しかし独力でそれを見つけるとは唯者ではないな・・・」



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耳打ち

王族達+αへの闇寿司の稽古は日暮れまで続いた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」

「ひゅー・・・ひゅー・・・」

「御指導ありがとうございました・・・」

 

ボグル、 ワサビ、 アサージ、 フグが息を切らす。

 

「やはり見込みが有るのはお坊ちゃん達は見込みが無いな

暗殺者のフグと・・・こいつか」

 

闇がちらりとヴィネガーの影武者を見る。

自己精神酢飯漬けの為にシャリを大量に摂取し

闇寿司の力を解放した為、 体の所々がシャリになって来ている。

 

「シャリの祝福と言う奴か・・・兄弟でこんなにも差が生じるのか」

「あー・・・それなんですがね師匠」

 

ブタ面の男が闇に耳打ちをする。

 

「こいつ影武者らしいんですよ」

「なんで分かる?」

「師匠が稽古つけている間に本物のヴィネガーって奴が城に来たんすよ」

「ふむ、 それで?」

「とりあえず牢屋に閉じ込めてます」

「そうか、 こいつの方が強いからそのヴィネガーって奴は逃がして良いぞ」

「逃がして良いんですか? 王子ですから利用出来ると思いますが・・・」

「いやいや、 後々逃げた奴が良い仕事をするんだよ」

「? まぁ逃がしておきますが・・・」

 

耳打ちを止める二人。

 

「それじゃあ飯を作ろうか」

「いや・・・良いです・・・」

「自分も良いです」

「ひゅーひゅー・・・」

「食べます・・・」

 

息も絶え絶えでほぼ食事出来るコンディションではない。

フグが食べようとしたのはプロ根性故か。

 

「ヴィネガーは如何だ?」

「お腹一杯です」

 

ヴィネガーの影武者はシャリを大量に摂取している故に満腹である。

 

「そうか、 じゃあ今日はこれまでにしよう

しかしこの調子ならはヴィネガーがシャリーダ13世になりそうだな」

「ぐっ・・・」

 

ボグルがキッと睨む。

 

「・・・・・」

 

ヴィネガーの影武者はふらふらと外に出て行った。

 

「御言葉だが王に強さは必要でしょうか?」

 

ワサビが提言する。

 

「要るだろ、 魔王だって強いんだから人間の王が弱くて如何する」

「ぐっ・・・ですが・・・強いだけの王なんて・・・」

「強くない軟弱な王に誰が憧れる、 強ければ良いんだよ強ければ」

「その言葉・・・お忘れにならない様に」

 

ボグルがワサビの肩を掴む。

 

「兄上・・・」

「ここは私に任せろ・・・」

 

ボグルがワサビに耳打ちをする。

 

「ふっ」

 

闇が薄く笑う。

 

「さてとでは、 厨房に行くとするか」

「我々は食事良いですって」

「俺達が自分で食べる分とかだよ」

 

闇がブタ面の男と一緒に厨房に行く。

 

「兄上、 一体何を考えているのですか?」

「ふふ・・・」



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麺は伸びる前に喰え

厨房にやって来た闇とブタ面の男。

 

「さて、 おい、 所で醤油は見つかったか?」

「無いですね、 今日調べて回りましたが

この世界に醤油は存在しない様です」

 

ブタ面の男は報告した。

 

「そうなると俺のラーメンは封じられたも同然か・・・」

「醤油さえ有れば・・・」

「いや醤油だけの問題じゃねぇ、 この城の小麦粉を見たか?

あれは安いだけの屑小麦だ、 水だけは質が良かった

井戸水らしいが良い水質だ」

「俺にはさっぱりです師匠」

「旨い物を作ろうとしたら拘るだろう」

 

闇寿司らしからぬ闇寿司の言葉である。

旨ければ強い闇寿司らしい言葉、 しかし闇寿司とは言い難い言葉。

江戸前寿司を極め邪道を極めた闇ならではの言葉だ。

 

「いずれにせよラーメンに必要な三要素、 麺、 スープ、 具材、 器の内

三つが欠ける、 四要素だった」

 

器は手持ちが有り、 何度も洗い直せるが具材はそうはいかない。

 

「如何しますか?」

「とりあえず手持ちのラーメンを喰うか」

「良いんですか?」

「しょうがないだろ、 早くしないと麺が伸びる」

 

ラーメンは寿司よりも日持ちがしない食材である。

麺が伸びてしまったら何もかも終わりなのだ。

 

「そういえばこの間秋葉原にラーメン缶が有りましたよ」

「あれか・・・確かに悪くは無い」

 

糸こんにゃくを使用する事で伸びない麺を造り出す事に人類は成功した。

 

「だが小麦の方が良い」

「ふむ・・・」

 

闇が懐からラーメンを取り出し、 受取るブタ面の男。

ラーメンをすする闇とブタ面の男。

 

「塩ラーメンで行ったらどうですか?」

「ラーメンは醤油が一番旨いんだよ」

 

個人の感想です。

 

「自作するしか無いか」

「醤油、 作れるんですか?」

「作り方は分かるし作った事もある、 しかしやはり買って来た方が良いな

プロに任せた方が間違いは少ない」

 

資本主義の真理、 自分でやるより買った方が手間が少ない。

しかし中世ファンタジーの世界では通用しない論理である。

 

「魔法で醤油造りだせませんかね」

「出来そうではあるが・・・多分出来ねぇだろ

自分の世界も救えないのに醤油が作れるとは思えない」

「変な理屈ですね」

 

ズズーとスープを飲み干すブタ面の男。

 

「でもファンタジーの世界なら色々と調理出来そうな物も有るんじゃないんですか?」

「そうだな、 トカゲ男をさっき見た、 となるとあれかな

不死鳥とかそういう類の生き物も居るのかもしれない」

「不死鳥・・・不老不死になる為に求める人は多いけれど

食べようとするのは師匠が初めてだと思います」

「そうか? 一人くらいは居そうな気がするが・・・」



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出待ち

「暗殺!?」

「声が大きいッ」

 

ボグルの部屋に来たワサビが大声を上げる。

 

「失礼・・・しかし暗殺ですか・・・」

「そうだ・・・あの闇とブタの顔は暗殺は無理だろう

しかしヴィネガーとアサージならば暗殺は出来る筈だ

寧ろ今の内に殺しておかなければ手が付けられない」

 

ボグルが語る。

 

「アサージは洗脳されている、 ヴィネガーも闇寿司の思想に染まっている

こうしなければこの国の将来が危うい」

「・・・闇に報復されないでしょうか?」

「奴がその事について文句を言ってきたら”ヴィネガーは弱かったから殺された”

と言い返してやろう、 強さ云々を散々語って来たんだ

この位の事は見過ごされる筈・・・」

「しかし暗殺ですか・・・影の者をいつの間に手懐けていたのですか?」

「・・・・・」

 

彼が手懐けていたのは警備兵である。

 

「まぁ良いだろう、 そろそろ」

 

コンコンとドアがノックされた。

 

「誰だ?」

「わたしです、 ヴぃねがー様を暗さつして来マシタ」

「・・・・・」

 

ボグルはドアの前に立つとドアに思い切り剣を突き刺した。

 

「何を!?」

「さっきの声からして操られている!!」

 

ドアを蹴破るボグル、 すると外には大勢の兵が武器を構えていた。

揺れていたり、 目の焦点が合っていなかったり明らかに尋常では無い。

 

「なるほどヴィネガーを殺しに行ったら洗脳されたと言う事か」

「如何します兄上・・・」

「決まっている、 この人数を相手に勝てる訳が無い、 ここは逃げる」

 

そう言って部屋の奥に引っ込むボグル、 ワサビも追従する。

王族の部屋にはそれぞれパニックルームが存在する。

パニックルームとは不法侵入者が発生した際に

一時的に避難するために設置しておく部屋である。

王族など身分の高い者の部屋には必ず付いている、 そして王族のパニックルームは

特別製である、 パニックルームから外に出られる通路が存在するのだ。

 

「この城から逃げるぞ」

「逃げるんですか・・・」

「あぁ、 もう駄目だ、 あの闇という男

勇者所か魔王よりも更に悪質だ、 あんな奴をこの世界に招いてしまったのは

我々のミス・・・ここは生きてこの国を脱出して奴の脅威を世界中に知らしめねばならない」

「・・・・・」

 

ワサビはギリッ、 と歯軋りとした。

ボグルも手が震えている。

パニックルームから秘密の通路に出た二人。

 

「しまった・・・・・」

 

自分のミスを悔やむボグル。

王族のパニックルームから外に出られる通路は全て同じ所から出る。

それならば同じ王族であるヴィネガーの部屋からも同じ通路に出られるのだ。

 

「待ち伏せていたか」

 

通路に既にヴィネガーの影武者が佇んでいた。



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シャリーダ13世の誕生

ボグルとワサビがヴィネガーの影武者を認識した瞬間。

シャリ玉が二人を襲った。

 

「ぐはぁ!!」

 

スシブレード攻撃だ!!

二人はのた打ち回った。

シャリだけでは攻撃力はまるで無い!!

しかし唯のシャリでは無い!! このシャリに使われた酢飯は

ヴィネガーの影武者が造り出した物!! つまり新鮮!!

そして尚且つ酢の量を極限までに上げている!!

即ち精神酢飯漬けには最適なスシブレードなのだ!!

 

ボグルとワサビが精神酢飯漬けにされて戦闘不能になった。

彼等の末路は余りにも悲惨かつ凄惨な為、 ここに記す事は出来ない。

一体彼等が如何なったのかは読者の想像にお任せするが

死んだのは間違いない。

 

 

 

翌日、 ヴィネガーの影武者とフグが闇の元にやって来た。

 

「他の連中は如何した?」

「ボグルとワサビは私が殺しました」

「ほう、 娘は?」

「アサージは二人が始末した様ですね」

「なるほどなぁ、 では必然的にお前がシャリーダ13世と言う事になるな」

「そうなりますかね、 これも全て闇寿司のお陰と言って良いでしょう」

「闇寿司のお陰だろうなぁ、 それでこれから如何するシャリーダ13世?」

「まずは軍備の再編成でしょうね

闇寿司を浸透させてスシブレーダーの養成をしたいと思います」

「そうだな、 それではここは任せる」

「任せる?」

「俺にはやらねばならない事が有る」

「やらねばならない事?」

「元の世界に戻る方法を探る為にも力は必要だ

それならばこの世界に居るであろう強い闇を持つ者を

闇のスシブレーダーにするのは必須だろう」

「つまり強い手駒を探すと言う事ですか?」

「その通りだ、 お前は兎に角雑多な雑兵でも良いから手駒を増やせ

強力な手駒は俺とこいつで探す」

「分かりました」

「でも師匠、 強い闇を持った人間なんて探せるんですか?」

「あぁ、 出来る、 闇が強い奴を探す事なんて造作も無い

闇が強い者同士は惹かれ合う」

「そうなんですか?」

「フィーリングって奴だ、 兎も角行くぞ」

「御武運を期待しております」

「私は如何しましょうか?」

 

フグが闇に尋ねる。

 

「うん、 お前は殺傷能力が高い毒寿司がマッチすると思う」

「そうでは無く、 私はこれからどう行動すれば・・・」

「任せる」

「任せる?」

「俺に付いて来るもよし、 この城に留まるも良し

好きにすれば良い」

「・・・・・でしたらこの城に残って他の影達にもスシブレードを学ばせます」

「それが良いだろうな」

 

画して各々の行動が決まった。

そしてここに居ないあの女も行動は決まっている。



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マジふざけんな

「サーストン殿、 よろしいのですか?」

「何が?」

 

コメドコロの地下の秘密工房で集まるサーストンと部下の宮廷魔法使い達。

 

「無断で邪神を召喚するなんて正気の沙汰じゃないでしょう」

「甘いわね、 連中が使うスシブレードという物の力は強大なのよ

こっちも力を得なければならない」

「だからと言って邪神を召喚するのは危険過ぎます」

「ふん、 確かに力を利用しようと思ったら危険ね

だが今回は力を一方的に搾取するのよ」

「力を搾取?」

「そう、 スシブレードのスシとは本来魚とか海鮮料理の事を言うらしいの

私が呼ぶ邪神はくとぅるふ、 タコの邪神、 コイツを狩ってスシブレードとする」

「そう上手く行くでしょうか?」

「幾ら邪神とは言え呼び出された直後に

我々の魔術の集中砲火を食らわせれば倒せるはずだ

さぁ始めるぞ」

 

宮廷魔法使い達は邪神召喚の儀式を始めた。

冒涜的な祝詞を唱えながら、 生贄の家畜を血に染め上げて邪神が魔方陣から現れる。

 

「・・・・・」

 

邪神がその身を表す、 くとぅるふと呼ばれた邪神はタコの様な姿をした

大きな人型の生き物だった。

 

「あのさ」

「う、 うわああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

次々と狂った様に叫ぶ者、 狂った様に逃げる者、 狂った様に魔法を唱え攻撃する者。

対応は様々だが邪神を見た途端に皆精神崩壊した。

 

「あぁもうめんどくさいなぁ!!」

 

魔法を触手の一本で撃ち落として振り払う、 触手の一本が落ちた様だが

さして意に介さない。

 

「全員沈まれ!!」

 

邪神の一喝で皆、 止まった。

邪神の精神関与能力なのか如何かは不明だが邪神の一喝で皆平静を取り戻した。

 

「で、 何? 何の用? もう人間と関わり合いになりたく無いんだけど?」

「あ、 貴方様の体の一部を下さい」

 

サーストンが精神崩壊しかかりながら言葉を絞り出す。

 

「あ、 じゃあ今千切れた触手あげるから、 それで良いね?」

「は、 はい」

「じゃあ帰るからもう二度と呼ぶなよ」

 

邪神はそう言って帰って行った。

 

「・・・・・」

 

サーストンは触手を拾うとケタケタと笑い始めた。

画してサーストンは自身の正気と引き換えに邪神をスシネタにする事に成功したのだった。

 

正気を失ったサーストン達が秘密の工房から出るのはもう暫く後である。

正気を失った者が外に出るのは難しい構造なのだ。




登場したSCP
SCP-2662 - くとぅるふ ふっざけんな!
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2662


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第十章:大海戦
オープニング・クロール


会談が行われてから2ヶ月後、 ダークネスシ帝国で内乱が勃発したと言う情報が流れる。

モグサール共和国、 ゴック国、 MD、 そしてファウンデーション教国の連合軍は

ダークネスシ帝国に攻勢をかける、 しかしダークネスシ帝国の反撃は予想以上に激しかった。

それもその筈、 内乱は終結しかかっていたのだ!!

その理由は圧倒的戦力の質の差!!

 

ダークネスシ帝国は戦力の底上げをする為に

ソルジャースシ同士で本気の殺し合いをさせて闇を深めてヤミ・アプレンティスに

そしてヤミ・アプレンティス同士で本気の殺し合いをさせてヤミ・マスターに

そしてヤミ・マスター同士を戦わせスシの暗黒卿に出世させると言う

とんでもない方法を取って来たのだ!!

 

ダークネスシ帝国は兵の頭数を減らし質を圧倒的に向上させた!!

希望者のみの殺し合いだった為、 ソルジャースシは半減したが

その半減した数値の半分、 ヤミ・アプレンティスが生まれ

更にヤミ・アプレンティス同士での戦いによる数十のヤミ・マスターに出世し

ヤミ・マスターの戦いでたった一人だけとは言えスシの暗黒卿が現れると言う

悪夢の様な事が起きたのだ!!

 

まさにこの世界ならではの出来事である。

魔王によって脅かされ続ける世界、 そんな世界では力こそ全てと言う考え方になり易い

ならば闇寿司も是とされ力を求める為に闇寿司に陥る者も多い。

 

事実、 闇のスシブレーダーとなりソルジャースシとなる者も後を絶たない。

力だけ得て逃げ出す臆病者も少なくは無い

しかし逃げ出した後に力無き者を虐げ力無き者がまた力を得る為に闇寿司に・・・

この無限連鎖の地獄絵図、 闇寿司の理想世界

力有る者の回転寿司チェーンに等しい状況が生まれている。

 

だがそれこそが闇寿司の弱点である。

闇寿司は力こそが全て、 ならば成り上がる為に上を殺そうと

思う者が出ても可笑しく無いのである。

そしてその成り上がりたがりの内の一人が連合軍にコンタクトを取って来た。

 

ダークネスシ帝国の魚介類を賄っている漁場の場所への手引きを行う

しかしそこにはスシの暗黒卿【ダースシ・オーモリ】とスシトルーパーが存在する

撃破の為の戦力を求む、 と。

 

ダークネスシ帝国のスシは肉も多い、 しかし魚介は未だにスシの本流。

漁場を叩けばダークネスシ帝国の戦力は確実に低下する。

 

モグサール共和国、 ゴック国、 MDの三国軍でダークネスシ帝国を食い止める間に

ファウンデーション教国のスシブレーダー部隊が

ダークネスシ帝国の漁場である【海】に向かうのだった。



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モン・カラ湿原戦

モグサール共和国、 ゴック国、 MDの三国軍はモン・カラ湿原で陣を展開した。

この湿原のぬかるみは寿司にとっては最悪である。

スシブレードと言えども寿司で有る以上は厳しい。

 

とは言え三国軍側も攻勢をかけにくい、 湿原のぬかるみで馬の機動力が発揮出来ない。

その為、 馬は湿原の外に配置し、 必然的に魔法や矢での攻撃になる。

 

と思っていたのだが。

 

「地面が凍る・・・ッ!!」

「アイスクリーム系スシブレードだ!!

他のスシブレードも来ている!! 総員衝撃に備えろ!!」

 

アイスクリームやソフトクリーム等冷気が強いスシブレードで地面を凍らせ

湿原の地形効果を無効化し突っ込んで来るスシブレード達。

三国軍の戦術は盾でスシブレードをガードし迎撃する。

サンシャイン王国のジーオノシス平原戦でのファウンデーション教国の戦い方を

流用した戦い方である。

しかし・・・

 

「ぐわぁ!!」

「な、 防ぎきれない!!」

 

数は兎も角、 敵の質はジーオノシス平原での戦いとは比べ物にならない!!

 

「な、 何という事だ!! 戦線が滅茶苦茶では無いか!!」

 

三国軍指揮官、 ミーナは自分の眼の前で起きている事が信じられらない。

 

「指揮官殿!! 既に敵軍はこちらに殺到してきています!! 撤退を!!」

 

伝令が叫んで飛んで来る。

 

「不可能だ!! 湿原に追い込んだ時点でこちらの馬は使えない!!

既に後方に置いてある!!」

「なら如何しろと!? このまま連中の攻勢を座してみろと!?」

「・・・・・ッ!! ならば半数は私と共に残り殿を行う!! 残りは撤退せよッ!!」

「そんな指揮官自らが!?」

「ファウンデーション教国と同じ戦い方をしてしまった私のミスだ

対策を相手が練って来る事を想定していなかった・・・」

「そんな・・・」

「早急に伝令を飛ばせ!! 一分一秒を無駄にするな!!」

「はっ、 はい!!」

 

伝令が本陣から走り去る。

 

「撤退の部隊指揮はナダール、 君が取れ」

「自分がですか!?」

 

副指揮官のナダールに撤退を任せる。

 

「良いか、 ここで全滅する訳には行かないんだ!!」

「で、 ですが・・・」

「分かったらさっさと行け!!」

「は、 はい!!」

 

女性だが強い言葉で激を飛ばすミーナ。

走り去るナダールの背中を後ろに見ながら弩を構える。

 

「ここが本陣かっ!?」

 

中に入って来たスシブレーダーに弩の矢を放つ。

所激が鎖骨に刺さり後ろに下がり周囲を守る兵士に斬り倒される。

 

「もうここまで来ているのか・・・」

「ミーナ殿・・・」

「震えた声を出すな!! 連中に我等の底意地を見せてやる!!」



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君は海を知っているか?

ダークネスシ帝国の漁場である【海】に向かう

ファウンデーション教国のスシブレーダー部隊一行。

 

「ゾーバ、 君は【海】を知っているんだよな?」

「あぁ、 知っている」

「【海】って一体何なんだ?」

 

歩いている時にラルフがゾーバに尋ねる。

 

「物を知らないとは嫌だね、 海も知らないとは」

「巨大な湖の様な物だと聞いている」

「水の地平だな、 一面が湖だ

俗説ではこの世界の半分以上が海だと言う説もある」

「デカすぎだろ」

「一つ疑問だが良いか?」

 

三崎が尋ねる。

 

「何だ?」

「海を知らないで一体如何やって魚を調達して来たんだ?

マグロとか海の魚だろ?」

「そうなの?」

「そうなのって・・・じゃあどうやってマグロを手に入れてたんだよ」

「ファフロツキーズ」

「は?」

 

解説しようファフロツキーズとは、 一定範囲に多数の物体が落下する現象のうち

雨・雪・黄砂・隕石のようなよく知られた原因によるものを除く

その場にあるはずのないものが空から降ってくる現象を指す。

つまり空からマグロが降って来る、 幸いにも触ると溺死する毒は持っていない。

他の海産物も同様である、 鮭等は普通に戻って来たのを捕まえる。

 

「そんな運任せで調達して来たのか?」

「いやいや、 降って来たマグロは保存して養殖している」

「つまりは全て養殖と言う事だ」

「悪いかい?」

「天然物が旨いんだよなぁ・・・一度食べて見ろ」

「機会が有れば・・・」

「待て待てぇい!!」

 

ファウンデーション教国、 スシブレーダー部隊一行の前に立ち塞がる軽装の男。

 

「金目の物を置いて行け!!」

「この人数相手に盗賊かよ」

「ふふふ、 これを見てもそう言い切れるかな!?」

 

盗賊が取り出したのはスシブレードである。

カルビだ!!

 

「俺は元ソルジャースシだ!! このカルビの餌食になりたく無ければ」

 

ゾーバがファットプラネッツを構える。

ラルフもシーエチンを構える。

三崎もマヨコーンを構える。

 

「あ、 すんません、 何でもないです」

 

盗賊は大人しく引き下がった。

 

「待て」

 

ゾーバが盗賊の背中を掴む。

 

「すみませんすみません!! 命はお助け!!」

「こんな奴如何するんですか?」

 

グリードが尋ねる。

 

「海の状況を確かめるのには丁度良いだろう

知っている事を全て話せ」

「話します!! 何もかも洗いざらい全て話しますからお命だけはお助けを!!」

 

号泣する盗賊。

 

「うわぁ・・・これは引くわ」

 

三崎もこの見苦しさにはドン引きである。

 

「よし、 バルドを連れてこい

一応隊長だからな、 あいつも必要だろう」

「分かりました」



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海と船

盗賊に堕ちたソルジャースシが言うには

自分は海近くに住んでいた普通の住人だった。

海近くの男達は漁師になるのが通例だったが自分は人一番船酔いし易い為

漁師になる事が出来なかった、 周囲の白眼視を受ける毎日だったが

網元が闇のスシブレーダーになった事により闇のスシブレーダーとして生きる道が開けた。

自分は戦争に出るつもりは無かったが重要拠点の警護と言う名で

地元の警護作業をしていた、 しかし昨今起きた内戦により戦争が起きた為

自分を含めたソルジャースシの何人かは既に脱走しているとの事。

 

「内戦か・・・」

「我々に手紙を送って来たのはそいつだな、 如何するバルド?」

 

バルドにハウが尋ねる。

 

「今、 海の周りの村は治安がヤバい、 行くのは危険だぜ」

「危険な場所に行くのが仕事だ、 あそこで待っている奴が居る」

「そうかい、 俺は逃げるぜ」

「待て、 抜け道とか教えろ」

「教える!! 教えるよー!! だからスシブレード向けないでくれー!!」

 

漫画の様なジェスチャーで助けを求める盗賊。

 

 

 

 

 

盗賊の案内で抜け道を通って来たスシブレーダー部隊一行。

 

「あの青いのが海か・・・何か色々浮かんでいるが」

「あれは船だよ」

「船!? 海の船ってあんなに大きいのか・・・」

「一隻は難破している様だが・・・動いているのも有るな」

「あぁ・・・あの船は鯨を取る船だよ」

「鯨?」

「捕鯨船・・・にしても技術がちょっと違うんじゃないか?

明らかにオーバーテクノロジーだ」

「いや、 偶にやって来る訳分からん船だ、 鯨を取っていくんだが

中に誰も居ないんじゃないかって言われている

後あの難破船には行かない方がいいぞ」

「何故だ?」

「気味の悪い幻覚だか何だかが見えるらしい

しかしアンタ等、 ついてるな」

「何が?」

「あの捕鯨船が来ている時は漁は出来ねぇ

つまり暇を持て余した漁師達に紛れ込めるって訳だ」

「陰キャの発想だな」

 

ゾーバが切り捨てる。

 

「な、 何だとォ」

「漁師達が見張りの役割をするだろう、 阿保か」

「うぐ・・・」

「・・・・・いや、 ここから見るとそうでもないぜ旦那」

 

ゴハンが目を凝らしている。

 

「ん?」

 

漁師達とスシブレーダー達が言い合いをしている様だ。

 

「何だ?」

「如何やら漁師とスシブレーダー達、 仲が良いとは言えないらしい」

「本当に行くのか? 俺は逃げるぞ?」

 

しつこく確認する盗賊。

 

「あぁ、 勝手に逃げろ」

「それじゃあな!!」

 

逃げる盗賊。

 

「さてと・・・じゃあ僕達も行きますか」

「「「「「「「おうっ!!」」」」」」」




言及されたSCP
SCP-455 - 貨物船
http://scp-jp.wikidot.com/scp-455
SCP-1245 - 捕鯨船
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1245


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鼻っ柱を折る

村に降り立ったスシブレーダー部隊一行。

まずは大人数で怪しまれない様に分かれる事になった。

 

バルド、 ラルフ、 グレン、 エミリー

ゴハン、 ハウ、 ナル

ウェッジ、 シャル、 ケイ

グリード、 ゾーバ、 マドカの四チームに別れる事になった。

 

「では後程、 また」

「おう」

 

それぞれ四組は散会した。

 

 

 

バルド達はまずは村の様子を探った。

村と言っても街並みはきちんとしており、 街と言ってもいいかもしれない。

しかし・・・

 

「これは酷いな・・・」

 

そこら中に怪我をして立ち上がれない兵隊やスシブレーダー、 漁師が道に座り。

 

【自分は長年○○として働いていました、 お恵みを】

と書かれた札を首からぶら下げていた。

 

「これは・・・」

「もう耐えられねぇ!!」

「!?」

 

建物の一つからガタイの良い男が出て来る。

 

「おい!! 考え直せ!!」

「ふざけんじゃねぇ!! 戦の関わらない所だって聞いていたが

毎日変な生き物や訳分からん物に関わる海なんてもう沢山だ!!」

「現場監督に聞かれたら事だぞ!!」

「都合良く出て来る訳が」

「きちゃった」

 

鼻が異様に長い男が現れた。

 

「現場監督!! 俺はもう嫌だ!! こんな訳の分からん所で漁なんかしたくねぇ!!」

「ほう、 だが子供達や嫁さんは如何する?

ここに出稼ぎに出ているアンタの稼ぎが無けりゃあ明日のパンにも困るんじゃねぇのか?」

「ぐ・・・っだが俺の身が持たねぇ!!」

「そうかい・・・じゃあ・・・」

 

すっ、 と懐からスシブレードを・・・

いや、 スシブレードでは無い!!

取り出したのはカジキの吻!! 即ち尖った部分である!!

 

「このカジキの餌食になって貰おうか!!」

「ざけんな!!」

 

吻を腕で受け止めて現場監督の頭を殴る。

こめかみからのフック!! 強烈である!!

 

「・・・・・」

 

よろめいたがよろよろと立ち上がる。

 

「舐めるなよ、 これでも闇のスシブレーダーだ」

 

吻をぽろりと捨てると、 懐からスシブレードを出す。

ネタは赤身、 しかしその顔から察するに恐らくカジキマグロである。

 

「ぐっ・・・」

「死ねぇ!!」

「3, 2, 1, へいらっしゃい!!」

 

バルドがエッグヴィーナスを射出する!!

意識外から飛んで来たスシブレードに現場監督は吹き飛ばされ

鼻っ柱を二つの意味で圧し折られた!!

 

「大丈夫か!?」

「あ、 あぁ、 すまねぇ兄ちゃん・・・だが兄ちゃん

ダークネスシ帝国の兵隊かい?」

「いや違うけど・・・」

「だったら直ぐに逃げた方が良い、 こいつをぶっ飛ばしたら

ケツ持ちのダークネスシ帝国の駐屯スシブレーダーがやって来る」

「う・・・」

「バルド隊長、 聊か軽率では?」

「すみません・・・」

 

ラルフの苦言に申し訳なさそうにするバルド。

 

「ダークネスシ帝国の連中から身を隠したいならアマギゴエって酒場に行くと良い

そこの店主は闇のスシブレーダーが嫌いだ」

「分かりました、 ありがとうございます」

 

バルド達は逃げ出した。



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強襲

ゴハン達は大通りに出た。

大通りでは馬車が行きかっていた。

冷気を感じた事から、 恐らく冷凍魔法で凍らせた魚を

ダークネスシ帝国のスシブレーダー達に供給する為に走っているのだろう。

馬車の屋根の上には警護のスシブレーダー達も乗っている。

 

「ここで襲うのは得策じゃ無いな・・・」

「そうだな」

 

ゴハンの言葉に同意するハウ。

供給は断っておきたい、 しかし無理をする必要は無い、 そう考えた次の瞬間!!

ドゴォ!! と馬車が横転する!!

 

「ヒャッハー!! 今の内に積み荷を頂いちまえ!!」

「盗賊共が!!」

 

盗賊達と警護のスシブレーダー達のスシブレードの撃ち合いが起こった!!

盗賊達と警護のスシブレーダーは闇寿司としての階級はほぼ同格!!

互いにヤミ・アプレンティス階級の実力は有る!!

 

「ヒャッハ―!! 群れてぬくぬくしていたお前達とは鍛え方が違うんだよぉ!!」

「だが次々と援軍が来るぞ!!」

 

そう、 馬車は常に行きかっている、 そして馬車の殆どが

ダークネスシ帝国への物資輸送馬車

ならば馬車の警護をする者達が次々と増えるのは当然。

 

「ヒャッハ―!! 誰が戦うって言ったぁ!?

野郎ども!! 落ちた魚を奪い取れぇ!!」

「「「おおおおおおおおおう!!!」」」

 

落ちた魚を回収する盗賊達、 そして粗方回収する。

 

「じゃあなぁ~!!!」

 

盗賊の一人がボンッ!!と煙幕を張った!!

 

「げほっげほっ!! お、 追え!!」

「い、 いや追ったら馬車の警護が出来ない、 ここは・・・って!! お前等!!」

 

落ちた魚を拾うのは盗賊達のみでは無い。

生活に困っている市民達も散乱した魚を持って逃げだしている。

 

「畜生!!」

 

逃げる市民にスシブレードを打ち込む闇のスシブレーダー。

 

「八つ当たりは止せ・・・くっそぉ・・・」

 

歯軋りする闇のスシブレーダー達。

 

「・・・・・」

 

陰から様子を伺っていたゴハン達。

 

「無法地帯ですね・・・これは酷い」

 

ナルは呟いた。

 

「闇寿司が世界を支配したらこんな光景が日常になる・・・」

「何としても止めねばなりませんね」

「あぁ・・・」

 

対闇寿司への意識を強める三人。

 

「しかしさっきの盗賊の動き、 見事だった

無謀に見えたが結局一人の犠牲も出さずに魚を奪い取って行った」

「確かにそれは凄かったな」

「もしかしたら私達が探している闇寿司の裏切り者と関係が有るのかも?」

「その可能性は有るな、 しかし如何する?

簡単に追いかけられるとも思えない」

「そうですね、 もっと情報を集めないと」

 

その場を後にする三人だった。



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喧噪の港

ウェッジ達は港の方に向かった。

港ではズタボロになった船の残骸を海から引き上げたり

大怪我を負った船員を運んだりしながら魚の引き上げが行われていた。

絶叫を挙げている船員や俯いて泣いている男も居る。

血の匂いが辺りを包んでいる、 魚の血だけじゃない、 人間の血も流れている。

 

「ほら、 退いた退いた!!」

 

魚を積んだ担架がウェッジの前を通る。

 

「いやいや、 待て待て、 魚を持って来ている場合じゃねぇだろ

怪我人を先に運べや」

 

ウェッジは思わず突っ込んでしまった。

 

「オタクらも出稼ぎ?」

「ん?」

 

港の作業員の一人が尋ねる。

 

「いや・・・出稼ぎじゃない」

「あ、 そう、 兄さん良い体しているから良い金になるよ」

「気持ち悪いな・・・と言うか変な船が出ている間は漁には出ないって聞いたぞ?」

「あぁ、 地元の連中は出ねぇよ、 危ないからな

でも何も知らない出稼ぎの連中は喜んで漁に出ているよ」

「・・・・・」

 

ドン引きするウェッジ。

 

「アンタも如何だい? 三ヶ月で一千万は稼げるぞ?」

「悪いが断る、 命の方が大事だ」

「そうかい・・・」

 

ウェッジの後ろの二人をちらちらと見る作業員。

 

「何だ?」

「いや、 イイ女だなと思って」

「殴り飛ばすぞ」

「ははは、 悪い悪い」

「・・・兄さん、 少し怖いわ

荒くれ者が居ない食べ物を食べる場所は無いかしら」

 

シャルは別に怖くは無いが情報を得る所と言えば飲食店である

ここで飲食店の情報を手に入れるのは当然である。

 

「んー、 アマギゴエって店なら閑古鳥が鳴いて居るぜ?」

「それはちょっと・・・閑古鳥が鳴いているのは味が悪いそうなイメージが」

「いや、 評判は良かったんだ、 この前までは」

「この前まで?」

「アマギゴエの看板娘が闇のスシブレーダー達の抗争に巻き込まれて

店主が闇のスシブレーダー嫌いになっちまってな」

「・・・・・ふむ・・・」

 

ウェッジは少し考えこんだ。

 

「他に店は有る?」

「あぁ、 逆に荒くれ者が多過ぎて揉め事が起こらない

ニョハネスって酒場が有るが、 でも」

「多過ぎて揉め事が起こらないって如何言う事?」

「荒くれ者が多過ぎるから逆に秩序が出来上がるって仕組みだ」

「カオスな店だ・・・行ってみるか?」

「そうね・・・行ってみましょうか・・・」

 

人が多いのならば集まる情報も多いだろうと推測しニョハネスに向かってみる。

 

「あ、 夜しか空いてねぇぞ?」

「・・・まだ昼だからじゃあアマギゴエとやらに行ってみるよ、 ありがとう」

「如何いたしまして」

 

アマギゴエに向かうウェッジ達三人組だった。



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居なくなった三崎を追え!!

ゾーバ達は迷い無く裏路地に向かった。

 

「ボス、 いきなり裏路地に来たんですが大丈夫なんですかい?」

 

グリードが尋ねる。

 

「馬鹿め、 既に現状が大丈夫じゃないわ」

「何でですか?」

「どういう事?」

「お前達気が付いていないのか?」

「何にです?」

「最初のチーム分けを思い出せ」

「???」

 

バルド、 ラルフ、 グレン、 エミリー

ゴハン、 ハウ、 ナル

ウェッジ、 シャル、 ケイ

グリード、 ゾーバ、 マドカの四チーム。

 

「何か変な所有りますかい?」

「馬鹿、 三崎が居ねぇじゃねぇか」

「「!?」」

 

グリードとマドカは仰天した。

 

「ほ、 本当だ!! 何処に行ったアイツ!!」

「恐らく人さらいに捕まったんだろ、 そしてアイツの居場所はこれで辿れる」

 

裏路地を良く見るとマヨコーンの粒が落ちている。

 

「な、 なるほど・・・でも何でバルド隊長にこの事を伝えなかったの?」

「あの優しい坊やの事だ、 捕まったのを気が付けば全員で行こうと言い出しかねない

それだと分散して情報収集が出来ないからな」

「優しいなら三崎が居ない事に気が付いて欲しいが・・・」

「最近仲間になった奴だからな、 忘れていても仕方が無い・・・

お、 この店の中っぽいな」

 

ニョハネスと書かれた酒場の前で途絶えるマヨコーン。

ドアを開けると鍵がかかっている。

 

「ふむ・・・」

 

ファットプラネッツを取り出すゾーバ。

 

「ブチ破る気ですかい?」

「あぁ、 下がってろ」

 

ガチャリ、 とドアが開いた。

 

「・・・・・三崎」

 

中から三崎が現れた服は乱れて血が付いているが無事な様だ。

 

「闇のスシブレーダー関係かと思ったら唯のゴロツキだったらしい

何も無いから財布を盗んで来た」

 

そう言って黒革の財布を見せる三崎。

 

「財布ねぇ・・・中身は?」

「結構一杯入っているぞ」

「そうか、 豪遊したい気分だが、 まぁそれは帰っ」

「待った!!」

 

三崎がゾーバの口を塞ぐ。

 

「・・・・・何だ?」

「それは言っちゃいけない様な気がする、 帰ってからの事を喋るのは危険だ」

「そうか・・・じゃあ今の内に使うか?」

「情報屋とかが居れば良いんだが・・・」

「はっ、 坊やだな三崎、 金で喋る奴の情報なんて高が知れてる」

「そうなのか・・・やっぱりどぎつい交渉の方が良いな」

「何だそれ?」

「暴力で解決」

「それがベストかもな」

 

三崎がゾーバ達と合流した。

 

「じゃあ三崎も回収したし、 一回戻るか」

「そうだね、 行こう行こう」

 

ゾーバ達が戻ると既に他の三チームも戻っていた。

 

「あ、 ゾーバさんおかえりなさい

一旦アマギゴエと言う店に向かおうという事になりましたが大丈夫ですか?」

「何だその名曲そうな店は・・・」

「闇のスシブレーダー嫌いの店主らしいので何か情報が得られるかも」

「なるほど・・・」



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アマギゴエ

合流したスシブレーダー部隊一行はアマギゴエに向かった。

アマギゴエは良く有る大衆食堂の様な店だった。

しかし閑古鳥が鳴いている、 中は空だった。

 

「・・・・・」

 

眼鏡をかけた壮年の主人がバルド達を見る。

 

「アンタ等スシブレーダーだろ?」

 

壮年の主人がバルド達に問う。

 

「何で分かる?」

「酢飯の匂いがする」

「分かるのか?」

「こう見えても料理人だ、 それ位分かる、 帰れ

ウチはスシブレーダーお断りだ」

「金なら払うよ」

 

財布から金を取り出そうとする三崎。

店主は眼の色を変える。

 

「おい、 その財布、 何処で手に入れた?」

「ごろつきから奪った者だ」

「ほぅ・・・気に入った店の奥に行きな」

「???」

 

店の奥に通されるバルド達。

店の奥にも飲食出来るスペースが有り、 そこで数人食事をしていた。

 

「親父、 そいつらは?」

 

食事をしていた数人がバルド達を見る。

 

「あ、 アンタはさっきの盗賊」

 

ゴハンが呟く。

 

「流れ者のスシブレーダーらしい」

 

店主が紹介する。

 

「なんで流れ者だと?」

「ワトーの財布を奪って持っていた」

「ははぁん・・・アンタやっちまったな

ワトーはここいらでは実力者だ、 下手に手を出したらケツ持ちの

ダークネスシ帝国の闇のスシブレーダーに睨まれる」

「それ位何ともない」

「ひゅぅ!!」

 

口笛を鳴らす盗賊。

 

「我々はファウンデーション教国のスシブレーダーだ」

「噂は聞いている、 ダークネスシ帝国と戦っているんだろ?

それ位しか知らないが・・・」

「・・・この街でダークネスシ帝国の裏切り者と協力する手筈なんだが

君達何かしら無いか?」

「バルド、 そこまで言うのか?」

「・・・・・俺達のボスならば墓場に居るぜ」

 

盗賊が答えた。

 

「・・・死んだのか?」

「いや、 生きている、 何で死んだと思った?」

「墓場に居るっていうから墓の下かと」

「いや、 墓場をアジトにしているからって意味だから」

「そうだったのか」

「ダンのオヤジぃ!! 居るかぁ!?」

 

店の方から声が聞こえる。

 

「・・・ここで待ってな」

 

店主が店の方に向かった。

バルドは物影から様子を伺っている。

店主を呼び出したのはスシの暗黒卿【ダースシ・オーモリ】である。

 

「例の話は考えてくれたかぁ!?」

「悪いが断るよ、 もしも娘がアンタ達に殺されて居なくても断るね」

「何でだ!?」

「喪中だよ、 暫くは仕事をしたくない」

「でも働かないと喰ってけねぇぜ? アンタが飢え死にしたり

店を閉じるのを俺は見たくねぇ、 アンタは俺を嫌っているかもしれねぇが

俺はアンタを村の仲間だと思っている」

「ありがたいね、 だがアンタのせいで娘は死んだ、 出てってくれ」

「・・・また来るよ」

「もう来るな」



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サンドイッチと墓

店主が戻って来る。

 

「店主、 さっきの男は?」

「ここいらを支配しているスシの暗黒卿とか言う闇のスシブレーダー

サヴァージだ、 今はダースシ・オーモリとか名乗っているが」

「・・・知り合いなのか?」

「あの男は元々ここら辺では網元の家系だ」

「網元?」

 

網元とは漁網や漁船を所有する経営者のこと。

つまり船や道具を漁師達に貸して漁業の利益を得ている者と言う事である。

必然的に有力者だ。

 

「強引な所は有ったが良い男だったよ、 でもこの村を良くする為に

闇寿司に魂を売り渡してしまった、 それからこの村には金が入って来た

街並みも立派になった、 でも争いが絶えない場所になっちまった

娘のソーンも死んじまった・・・」

 

店主が俯く。

 

「・・・・・店主」

「頼む、 あいつを倒してくれ、 この村を解放してくれ」

「・・・任せて下さい」

 

バルドが力強く行った。

 

「それじゃあ墓場にまで行くかバルド」

「待った、 こっちに来い」

 

更に店の奥に案内されるバルド達。

そこには秘密の抜け道が有った。

 

「墓場に続いている」

「ありがとう店主」

「それからこれも」

 

つつみを渡される。

 

「これは?」

「ウチの店の名物、 ニシンの薫製のサンドイッチだ

良かったら食って行ってくれ」

「何から何まですまない店主」

「いいってことよ、 さぁ行け」

 

店主に背中を押される形で秘密の抜け道を通り墓場へとやって来たバルド達。

墓場は草だらけでとても整備されているとは思えない。

 

「これは酷いな、 発展した街並みとは対照的だ・・・」

「・・・・・墓自体も酷いぞ」

 

墓石がある墓なら兎も角、 適当に穴を掘って埋めただけの墓も多い。

 

「その墓はよそもんの墓だァ」

「!?」

 

振り返ると腰の曲がった墓守の男が居た。

 

「待つだァ、 おらは敵じゃないだァ

アンタ等、 アマギゴエの抜け道通って来ただァ?

ボスに会いたいんじゃないかァ?」

「ボス・・・」

「ダークネスシ帝国に逆らう闇のスシブレーダー達のボスだァ」

「・・・・・会えるのか?」

「こっちだァ」

 

墓守の男が建物の中に誘う。

如何やら地下に続いている様だ。

 

「カタコンベって奴か」

 

三崎が呟く。

 

「かた・・・何?」

「地下墓地さ」

「あんちゃん良く知ってるだァ、 カタ何とかじゃないが

ここは地下墓地だァ」

「何で地下に墓地を?」

「今よりずっと前、 墓石を買う金も無い時に

皆で骨をこの地下墓地に置いただァ」

「何とも悪趣味だな・・・」

「価値観の違いって奴だァ、 文句言うなだァ」

 

墓守がランタンに火を点けて先に進む。

 

「ボスは一番奥だァ、 付いて来るだァ」



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再開

地下墓地の先にどんどん進む墓守とバルド一行。

しゃれこうべで造られたアーチ、 人骨で造られた柱。

髑髏の装飾、 と何処を見ても人の骨だらけである。

 

「・・・・・」

 

女性陣は気分が若干悪くなっている。

 

「悪趣味・・・葬るのならこんな事しなくても・・・」

「これは死を忘れない為らしいだァ」

「ここ独自の宗教観と言う奴だな」

「そんなモンだァ、 そろそろ最奥だァ」

 

迷路の様な構造を進んで行くと、 最奥の部屋に辿り着いた。

 

「ボスぅ、 お客さんだァ」

 

カウボーイハットの男が机に脚を乗せながら横になっていた。

 

「客かぁ、 やっと来たかー」

 

カウボーイハットの男がバルド達に顔を向けた。

 

「!!」

 

バルドはつかつかとカウボーイハットの男に歩む寄ると殴り飛ばした。

 

「がっ!! いってぇなバルド!!」

「この裏切り者が!! お前のせいでどれだけ僕達が苦労したと思っている!!」

「けっ、 知るかよ!! レーアが俺を取り立てなかったのが悪い」

「お前如きを取り立てる訳無いだろう!! この騎士見習いの怠け者が!!」

「んだとぉ!? 今は俺はヤミ・マスターの実力を持つんだ、 俺と戦ってみるか?」

「良いだろう!! やろうじゃないか!!」

「ストップ!! ストップー!!」

 

グレンが二人の間に割って入る。

 

「如何したの急に!! アンタらしくも無いよバルド!!」

「如何したもこうしたも無い!! この男はジューン!!

レーア様を拉致して闇寿司に引き渡した裏切り者!!

この男のせいで反乱軍は混乱し空中分解してしまった!!

ハルト様もこの男が遠因で死んだも同然!!」

「おいおいハルトのおっさんは俺は知らんぞ」

「貴様ァ!! 白々と!!」

 

殴りかかろうとするバルドを止めるグレン。

 

「バルド、 コイツを殺すのは事が終わってからだ」

 

ハウがバルドを諫める。

 

「おいおい、 ハウさん、 怖い事を言うなぁ」

「お前は殺されても可笑しくない位恨まれているんだ」

「そうかよ、 俺だって闇寿司には力を得て感謝はしているが

ダークネスシ帝国には恨みが有る、 とりあえずここは協力しようじゃないか

ダークネスシ帝国と共に戦う同志として」

「一度裏切ったお前を信用する事は難しい」

「だが俺を信じないと話は始まらないぜ?」

「・・・・・」

 

ジューンを憎々し気に見るハウ。

 

「まぁてめぇが裏切ったお陰でバルドがスシブレードの知識を得たんだ

そこは感謝しても良いのかもしれない」

 

ゴハンが割って入る。

 

「ゴハン!!」

「そうなのか、 じゃあ俺に感謝しろ」

「まぁそれを差し引いてもてめぇは後で打っ殺す

とりあえず情報を吐け」

「・・・・・分かったよ」



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ダースシ・オーモリとは

ジューンが説明を開始する。

 

「この街に住んでいるスシの暗黒卿、 ダースシ・オーモリは

暗殺を防ぐ為に毎日居場所を転々としている」

「暗殺?」

「闇のスシブレーダーには下剋上は日常茶飯事だ」

「裏社会でも暗殺予防に居場所を変えるのは常識だ」

 

ゾーバが口を出す。

 

「オーモリの場合は相手するのが面倒だという理由だ」

「何だそれは」

「それほどスシの暗黒卿の実力は高い、 何の策も無しに挑めば

まず間違い無く殺されるだろう

そして奴の取り巻きのスシトルーパーも厄介だ」

「強いのか?」

「いや、 強さはそれ程でもない

だがこのスシトルーパーはオーモリがスシの暗黒卿になる以前から

網元として雇っていた漁師達だ、 腕っ節は強く強靭な体

そして何よりオーモリを裏切らない、 数も多い」

「数はどの位だ?」

「30人前後って所だ、 ヤミ・マスターからヤミ・アプレンティス級まで

強さにバラつきが有るが厄介な事には変わりはない」

「ジューンの戦力は?」

「こっちの戦力はヤミ・マスター3人

ヤミ・アプレンティス25人、 そして俺の合計29人」

「そこに我々も加われば数では勝る」

「あぁ、 だがはっきり言ってこれでも正面切って戦っても勝ち目は無い」

 

断言するジューン。

 

「オーモリはそんなに強いのか?」

「スシの暗黒卿と戦った事が有るって噂のバルドに聞いて見れば良い」

「戦った・・・トゥーンウィに関しては勝ちを譲って貰った印象だね

セキユーは大怪我を負っていた、 今回はスシの暗黒卿との真剣勝負・・・」

 

ごくりと唾を飲むバルド。

 

「まず最初にオーモリのスシブレードについて話そう

奴のスシブレードはマグロ大盛りだ」

「何だそれは?」

「大量にマグロの切り身が乗っかったスシだ」

「大量に?」

「一つのシャリに何枚もマグロが乗っかった物を想像して貰えば良い」

「・・・・・想像するだけで馬鹿みたいな代物だな・・・強いの?」

「圧倒的質量を誇る為、 攻撃力は他のスシブレードとは桁違いだ」

「でもバランス悪そうだなぁ・・・色んな意味で」

 

高く重ねる事で造形としてアンバランス。

スシとしてもアンバランスである。

 

「そのアンバランスさを闇のパワーで補っている」

「なるほど・・・」

「そして単なるパワー押しの重量級のスシブレードでは無い

上に乗った大量のマグロが弾け飛び軽量級にシフトチェンジ

マグロによる射出攻撃等、 見た目に反して出来る事が多い」

「マグロを射出、 俺のイクラリオンみたいだな・・・」

 

ウェッジが呟く。

 

「イクラよりも質量が大きい、 相殺は無理だ」

「分かっている・・・」



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ふざけた作戦

「ダースシ・オーモリが強いのは分かったが、 どうやって勝つ気だ?

策は有るんだろうな? 無かったらここでお前を殺す」

 

ハウが脅迫する。

 

「そう脅さないでくれ、 策は用意してある

連中がこれから一週間、 何処で寝泊まりするのかのタイムスケジュールを手に入れた」

「如何やって手に入れた?」

「部下にシックス・ブラザーって奴が居てな」

「どんな名前だ」

「ここら辺ではメジャーな名前だ」

 

日本人が一郎、 二郎、 三郎と名付けるのをイメージして貰えば分かり易い。

 

「オーモリのスシトルーパーに双子のフォース・ブラザーって言うのが居る

そいつとすり替わってタイムスケジュールを手に入れた」

「なるほど、 では襲撃をするという事か、 何時襲撃する?」

「今日から一週間」

「何?」

 

困惑するゴハン。

 

「今日から一週間、 襲撃をし続けオーモリを倒す」

「無茶じゃないか?」

「一回の不意打ちでは効果が無い

ここは襲撃を重ねて行うのが良いと思う」

「重ねて行う意味が分からない、 二度目以降は警戒されるだろう

最初襲撃を受けて警戒されない訳は無い、 予定を全て変更されると思う」

「まず最初の襲撃でフォース・ブラザーを殺害し

シックス・ブラザーに成り代わっていてもらう、 そして情報を流し続けて

襲撃を行い続ける」

「それに対するメリットは?」

「オーモリが内部に裏切り者が居ると思って部下に不信感を持つようになる」

「不信感って闇のスシブレーダー達に信頼感が有るとは思えないが・・・」

「普通はな、 しかしオーモリが闇のスシブレーダーになる前からの子飼いの部下

信頼感を持っていても可笑しくはない

事実、 オーモリのスシトルーパーは網元時代から親交の有る漁師ばかりだ」

「・・・不信感を与えて勝てる相手なのか?」

「確かに不十分、 だがそこにお前達が加わる」

 

指を指すジューン。

 

「どういう事?」

「新たに信頼感を与える」

「???」

「つまり表向きオーモリに協力する闇のスシブレーダーとして俺の配下を

お前達にぶつけて勝たせるって寸法さ」

「回りくどくない?」

「そうだ、 それにそんな方法で信頼を得られるのか?」

 

疑問を口にするシャルとゴハン。

 

「お前達の何人かを殺せば信頼も付くだろう」

「ちょっと待った、 殺すってどういう事だ?」

「俺の部下が信頼を得る為にお前達の何人かを殺す

普通、 信頼を得る為に仲間を殺すなんて発想は無いだろう?」

 

事も無げに言うジューン。

 

「ふざけるな!!」

「ふざけてるのはお前だ、 犠牲無しに事を成せると思っているのか?」



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夜の始まり

「良いか? 犠牲無しには大行は成し得ないんだ、 覚悟を示せ」

 

そう言って書類の束を渡すジューン。

 

「これは?」

「一週間のオーモリの居場所のリストと俺達仲間の配置

そしてお前達の配置だ、 概ねこの指令書通りに動いてくれ」

「そして死ねと?」

「そうだオーモリを倒す為だ、 協力してくれるな」

「・・・・・一つ聞きたい」

「何だ?」

「何でお前はダークネスシ帝国を裏切ったんだ?」

「・・・・・それはお前には関係無い、 お前は俺の指示通りに動けば良い

さっさと行け、 後ろのドアから外に出られる」

「・・・・・」

 

バルドは黙って地下墓地から立ち去った。

 

「バルド、 如何するつもりだ?」

 

ハウは尋ねた。

 

「この指令所には一週間のオーモリの居場所が書かれている

我々はジューンを無視して独自にオーモリを討ちに行きましょう」

「良いのか? そんな雑な作戦で」

「自ら殺される事が前提のジューンの作戦よりはマシでしょう

そもそもそんな馬鹿げた作戦をこちらが了承するとジューンも思っていないでしょ

アイツには恨みも有りますし、 奴もそういうプランを立てて居る筈」

「ふむ・・・確かにな」

 

鮮やかな裏切りを見せたジューンがそこまで考えていないとは考えづらい。

 

「ジューンもこちらに信用されようとしていないし

明らかに裏切ってくれと言わんばかりでしょう」

「それもそうだな・・・ん?」

 

墓場から村を見下ろす一行。

既に夜の帳が降りて村中に灯が灯り見回りがされている。

しかし妙に空気が張り詰めている。

 

「・・・・・何だ?」

「皆が街を動き回っている様だ、 何が起こった?」

 

ドゴォンと爆発音がした。

 

「な、 何が起こった!?」

 

ジューンが驚いて墓の外に出て来た。

 

「これもお前の作戦か?」

「そんな訳無いだろう!!」

「・・・・・」

 

バルドは前に進んだ。

 

「ま、 待てバルド!! 何処に行く!?」

「今の内にオーモリの所に行って戦力を削ぐ」

「な、 なにぃ!? 作戦は如何するつもりだ!?」

「知るか」

「馬鹿な!! オーモリを倒す為の犠牲が惜しくなったのか!?」

「そもそも我々はお前を信用していない」

「信用しなければ始まらないだろう!?」

「いや、 信用出来ない奴とは組めないだろう」

 

頷くスシブレーダー一行。

 

「ば、 馬鹿な、 何を考えている」

 

驚愕するジューン。

 

「それでは僕達は行くぞ」

「ま、 待て!!」

 

バルド達は先に行ってしまった。

 

「くっそ!!」

「ぼ、 ボス・・・如何しますか?」

 

ジューンの手下がジューンに尋ねる。

 

「・・・・・ここで動くのは悪手だ

バルド達を倒してアピールするのも悪くないが、 命は大切だ」

「分かりまし・・・」

 

ぷしゅーと狼煙が上がる。

 

「あれは・・・!?」

「仲間からの救援を求める狼煙ですね」

「糞ッ!! 行くぞ!!」



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見回り

ダースシ・オーモリは自分がケツ持ちをやっている

バーの経営者であるワトーが何者かに襲われた為、 見回りをする事になった。

 

「いや、 でも旦那、 態々旦那が出張る必要有るんですかね」

 

一緒に見回りをしているスシトルーパーのサンドイッチが

やる気無さそうにダースシ・オーモリに問う。

 

「まぁ暇潰しにはなるだろ、 ワトーには世話になったし」

「そっすね、 ガキの頃に酒とか飲ませて貰いましたし」

「そーそー・・・」

 

オーモリは振り返ってスシブレードを射出した!!

大量に乗せられたマグロが拡散し周囲に破壊的にダメージを与え爆発した!!

 

「旦那!?」

「居るぜ、 出て来い!!」

 

建物の上から飛び降りるスシブレーダー達。

 

「良く分かったな!!」

「匂いで分かる」

「そんなに臭くないが・・・」

「海の匂いがしないんだ」

「良く分かんねぇなぁ!!」

「見ない面だな、 何者だ?」

「アンタの座を奪いに来た者だよ!!」

「またか」

「また?」

「ここはダークネスシ帝国の中でも最重要拠点と言って良い場所だ

そんな場所の責任者になりたい奴なんてゴマンと居るぜ!!」

「ふん!! じゃあ行くぜ!!」

「来い!!」

 

敵のスシブレーダー達がスシブレードを撃って来た!!

撃って来たスシブレードは酒である!!

見た所ビールの様だ!!

 

「酔わせれば勝てると?」

 

オーモリがスシブレードを放ちビールを撃破する。

 

「・・・・・これビールじゃねぇな」

「発泡酒と新ジャンルだよ!!」

「ふん、 そんな安物で俺を酔わせられると?」

「足止めは出来る、 そしてぇ!!」

 

後ろのスシブレーダー達が巨大なスシブレードを持ち出した!!

人の胴体部分程のサイズが有る!!

 

「新兵器のジャイアント寿司だ!!

デカいから巨人じゃなければ一人で扱えないがこの人数なら打ち出せる!!

行くぜ!!」

 

巨大なジャイアント寿司がジャイアント箸にセットされてジャイアント湯呑が箸頭を叩く!!

否!! 叩く寸前にジャイアント湯呑が飛ぶ!!

 

「な、 何だと!?」

「俺を忘れて貰っちゃ困る」

 

サンドイッチのスシブレード!! ネタとネタでシャリを挟んだサンドイッチ寿司が

ジャイアント湯呑を弾き飛ばしたのだ!!

 

「何だとぉ!?」

「悪いがここで死んで貰うぞ!!」

「待てタスケン」

 

タスケンとはサンドイッチの本名である。

 

「何すか?」

「殺すな、 まだ利用価値が有る」

「利用価値?」

「あぁ、 連れて帰って聞き出したい事が有る」

 

逃げ出そうとするスシブレーダー。

オーモリは散乱したネタの一枚を射出して止めた。

 

「逃げたら殺す」

「・・・・・」

 

こうして彼等は敵を止める事に成功したのだった。



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史上最低のスシブレーダー、ジューン

場所は変わってジューンの手下のアジトの一つ。

現在、 敵襲を受けている。

バリケードで防いでいるが、 数分で破壊されそうな勢いである。

 

「狼煙は上げたか?」

 

ジューンの手下の一人が尋ねる。

 

「あぁ・・・だが何でここがバレた?」

「分からねぇ・・・誰かが漏らしたのか?」

「だとしたら一体誰が?」

「そんな事は如何でも良い、 さっさと逃げようぜ」

 

地面の隠しドアを開く。

 

「待て」

「何だよ」

「・・・・・シックス・ブラザーは何処行った?」

「確かに居ねぇな」

「さっき出て行ったぜ?」

「・・・・・フォースと入れ替わりになっているって可能性も無くは無いな」

「おい、 だからそんな事は如何でも良いだろ、 さっさと逃」

「奴が内通していた場合、 この隠し通路の奥でスタンバイしている危険が有る」

「・・・・・」

 

隠しドアを閉めた。

 

「一体如何しろって言うんだ・・・」

 

バリケードを叩くスシブレードの音が途絶えた。

 

「何だ?」

 

数秒後、 バリケードを突っ込んで巨大なスシブレードが飛び込んで来た!!

ジャイアント寿司だ!!

ジャイアント寿司に押し潰されて何人かのスシブレーダーが吹き飛ばされた!!

 

「なっ!?」

「何だこの寿司は!?」

「でけぇ!!」

「バリケードが破られたならスシブレードを撃てぇ!!」

 

スシブレードを撃つジューンの部下達!!

しかし外ではジャイアント寿司第二打が撃たれようとしていた!!

危うし!!

 

「どけええええええええええええええ!!」

 

ジューンがやって来た!!

ジューンのスシブレードが放たれる!!

コップに注がれし何か!!

 

「ふん!!」

 

ジャイアント寿司発射の為に傍に居たスシブレーダーに狙撃される!!

コップは破壊されて周囲に液体が飛び散る!!

 

「・・・・・!? こ、 この匂いは!!」

「今更気が付いても遅い!!」

 

次に放たれたのはおにぎりの様なスシブレード!!

しかしそのスシブレードには導火線が付いていた!!

 

「逃げろ!! 揮発油(ガソリン)だ!!」

「それだけじゃない」

 

おにぎりに導火線が着火!!

おにぎり爆発!!

これが俗に言うバクダンおにぎりか!?

否!! 黒色火薬をシャリで包みスシブレードとした物である!!

最早スシでは無い!!

先程放った液体もガソリンと酒を混ぜた飲み物!!

カクテルと言い張る!!

最早飲み物では無い!!

ジューンはスシブレードを自由自在に操れる術として捉え

相手を爆殺する事に注力した異端のスシブレーダーである!!

最早食べ物に対する最低限の礼儀すら無い!!

史上最低のスシブレーダーだ!!



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同盟成立

ダースシ・オーモリはアジトに戻って襲撃者を尋問していた。

 

「お前さん達、 エイは知って居るか?」

「エイ・・・って魚の?」

「そうそう魚のエイだ、 煮つけにすると旨いんだ」

 

ダースシ・オーモリがエイを取り出す。

 

「で、 だエイの尻尾には毒が有るって知って居るか?」

「初めて聞いた」

「そうか、 刺されたら割と偉い事になるんだが・・・」

 

エイの尻尾を切り離すオーモリ。

 

「誰の命令でここに来た?」

 

オーモリが襲撃者の眼前にエイの尻尾を突き付ける。

 

「い、 言えない・・・」

「言えない・・・そうかそうか・・・つまりスシの暗黒卿の手下と言う事か」

「ど、 どういう事ですか旦那!?」

 

オーモリの部下がざわめく。

 

「俺に逆らうって事はつまり相手はスシの暗黒卿って事だろ?

新兵器のジャイアント寿司も持って来てたしな、 まず間違い無いだろう」

「・・・・・」

 

沈黙、 恐らく肯定の意なのだろう。

 

「ふむ、 それでは一体誰がお前達のボスだ?」

「それは・・・」

「隠す必要も無いだろう」

「!?」

 

振り返るノーテン、 そこに居たのは首から下をマントで覆い隠した

両目が縫い合わされた男。

 

「よう、 私が来てやったぞ」

「ヘカトンケイル・・・何の用だ?」

「余りにも余裕で戦争に勝てそうだからな

戦争に勝った後の事を考えてこの街を乗っ取りに来た」

 

椅子に座るヘカトンケイル。

 

「この街を?」

「その通り、 海が近いこの街はとても美しい

寿司の材料も手に入る、 是非とも欲しい」

「欲しがる奴はゴマンと居るから驚きはしない、 だがお前めくらじゃねぇか」

 

ぎょろと縫い合わせた目が見開きノーテンを凝視する。

ノーテンの部下達は仰天して仰け反る。

 

「勘違いするな、 私は美しくない物を見たくないから目を閉じているだけだ」

「ふん、 それでここに来たという事はやり合う気か?」

「それも悪くはない、 だがお互いに千日手になるだろう

美的センスではお前の遥か上を行く私だがお前は実力だけは高い」

「鬱陶しいね、 じゃあお前は何をしに来た?」

「貴様に手を貸そうじゃないか」

「何?」

「お前は如何やらこの街を完全には支配できていない様子じゃないか

お前の部下じゃない連中に私の手下が爆殺された様だし」

「爆殺・・・あぁ、 そんな事をしている何処ぞの馬の骨が居たな

それでお前が俺に協力して何の得が有る?」

「そうだなぁ、 お前を観察して弱点を探るとしよう

その上でこの街を綺麗にしたら殺し合いと行こうじゃ無いか」

「ふん、 まぁこの村の掃除を手伝ってくれるのならば良いだろう

協力しようじゃないか」

 

手を差し出すオーモリ。

 

「握手の習慣はないから断る」

「あ、 そう」



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美しさとは強さ

「それで協力してくれるのは嬉しいがまずは如何する?」

「決まっているだろう、 取れたての魚の型を取って彫刻を彫る」

「何もかもがおかしい、 そうじゃなくてだ馬の骨共を始末する作戦案だよ」

 

オーモリがヘカトンケイルに尋ねる。

 

「ふむ・・・作戦・・・か」

「無いのか?」

「我々スシの暗黒卿は美の極致と言って良い」

「・・・・・まぁ最後まで聞いてやるよ、 続けろ」

「じゃあ何故スシの暗黒卿が美しいか、 分かるか?」

「知らね、 何でだ?」

「それは圧倒的なまでの力だ」

「力=美しいか?」

「海が美しいのは圧倒的な力を持つからだ、 津波、 高潮

経験が無いとは言わせないぞ」

「・・・・・」

 

確かに海辺育ちには恐ろしい物である。

 

「そして、 だ、 海をバケツに汲んだとしよう」

「それで?」

「如何思う?」

「質問返しか、 汲んだから何だって言うんだ?」

「その通り、 汲んだからと言って何だ、 と言う話になる」

「・・・・・」

「要点を言えって言ったら如何です?」

 

サンドイッチがオーモリに耳打ちをする。

 

「余計こんがらがるのは眼に見えている、 泳がせよう」

「バケツの水は海では無いのだ、 塩水だ」

「・・・だから?」

「そこに美しさも意味も力も無い、 つまりだ

我々スシの暗黒卿は力を持って美しいと言えるのだから

作戦を下手に立てて力を制限するのば馬鹿らしいと思うのだが如何だろうか?」

「つまり作戦は無いのか」

「有るさ、 片っ端から建物を破壊し続ければ何時かは敵のアジトに当たるだろう」

「何考えてんだ、 そんな事指せる訳無いだろ、 馬鹿じゃ無いのか?」

「駄目か、 まぁ良いならばセカンドプランだ」

 

2本指をオーモリの前に差し出す。

 

「この港町の隅から隅まで調べつくす」

「俺達も色々調べたが・・・見つかっていないのが現状だ」

「探し方が甘いな、 私が直々に調べてやろう」

「ふん、 何も見つけられなかったら指差して笑ってやろう」

「ならば私が見つけられた時は貴様の眼前でドヤ顔を決めてやろう」

 

バチバチと火花が散るオーモリとヘカトンケイル。

 

「そういえばヘカトンケイル、 お前が連れて来た手下達はどんな編成になっている?」

「ふむ、 ヤミ・アプレンティス7とソルジャースシを大量に連れて来た」

「スシトルーパーは連れてきていないのか?」

「彼奴とは美の探究者と言う共通点は有るが求める美の方向性が違うからな

彼奴は置いて来た、 とは言え戦力は充分だ、 ジャイアント寿司があるからな」

「なるほど・・・確かに戦闘力には申し分無いな」



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海鮮の海戦の開戦

「はぁ・・・はぁ・・・」

「糞ッ!! スシの暗黒卿が二人だと!? ふざけるな!!」

 

オーモリの拠点の外で成り行きを見守っていたバルド達だったが

流石にスシの暗黒卿二人では勝ち目が無いと判断し逃げ出した。

 

「お前達・・・」

「ジューンか、 作戦を練り直す必要が出て来た」

「俺の作戦を採用する気になったか」

「違う、 とんでもない事が起きた」

「?」

「お前の所で話そう」

 

途中でジューンとも合流し地下墓地に戻った。

 

「オーモリが別のスシの暗黒卿ヘカトンケイルが手を組んだ」

「はぁ!?」

 

ジューンに事情を説明するバルド。

 

「スシの暗黒卿が二人・・・一体如何しろって言うんだ!!

いや・・・仲違いさせるというのは如何だ!?」

「既に仲が悪い様だし難しいんじゃないか?」

「くっ・・・如何すればいいんだ・・・」

「相手は化け物ならばこっちも化け物をぶつけるのは如何だろうか?」

 

ゾーバが提案した。

 

「どういう事だ?」

「あの捕鯨船とやらを如何にか利用するんだ」

「つまり海戦に持ち込めと?」

「話にならんぞオッサン!!」

 

ジューンがダンッと机を叩く。

 

「相手は海の男!! あの化け物船の危険性は誰よりも承知だろう!!

そんな奴が態々出る訳が無い!!」

「いや・・・出来る!!」

 

ゴハンが断言する。

 

「な、 何ィ・・・どういう事だ傭兵・・・」

「ふん、 単純な話だ、 追いかけなければならない状況を作れば良い」

「如何やって!?」

「それはおいおい考えれば良い・・・まずは敵の戦力を削ろう」

「それこそ如何するつもりだ!? 敵の戦力を削っ」

 

ジューンの電流奔るっ・・・!!

 

「いや・・・それもそうだな・・・」

「何を納得している? いや、 それは言い、 ジューンとやら

食材を幾つか持って来て貰いたい」

「食材を?」

「如何するつもりだ?」

「海での戦いを目的とするのならば

海用のスシブレードのチューンナップする必要がある」

「海用にチューンナップ!?」

「あぁ、 海に近い場所では辛い戦いになるだろう

スシブレードにとってもスシブレーダーにとってもだ

覚悟は有るか!?」

「・・・・・」

 

バルドは自分のスシブレードを見た。

 

『覚悟は出来ている』

 

バルドはスシブレードからの声を確かに聴いた。

 

「覚悟は出来ています」

「応ともよ!! 俺達も行くぜ!!」

「あぁ!!」

 

ゴハン達も掛け声を発する。

 

「俺は早速作戦を練って来る」

 

ジューンはそそくさと退散した。

 

「・・・さてとではやるぞ!!」

「「「応ッ!!」」」

 

これがスシブレード史上類を見ない海上戦闘。

通称【大海戦】の始まりであった。



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コンバート

ジューンがアジトにしていた地下墓地には一通りの厨房が揃っており

調理は出来る様になっている、 三崎はスシブレードのチューンナップの為に

海苔巻き型と軍艦巻き型のスシブレードを使うスシブレーダー達を呼び集めた。

 

「何で普通のタイプのスシブレーダーは呼ばないんだ?」

「海上は水分が強過ぎる、 海苔は直ぐにふやけて駄目になってしまう

そこで今回海苔をコンバートする事にする」

「海苔をコンバートだって!?」

 

驚くバルド。

 

「僕が得たスシの知識には無い知識だ・・・」

「ふむ、 海苔巻きは兎も角、 軍艦巻き自体歴史が浅い物

知識量が異なるのは仕方の無い話だ」

「だけどよぉ、 海苔を使わないで一体どうやって海苔巻きを作るつもりだ?」

「軍艦巻きもだ、 如何やってやるつもりなんだ?」

 

グリードとラルフが疑問を呈する。

 

「軍艦巻きはキュウリを使って巻く」

「キュウリを?」

 

三崎はキュウリを縦にスライスして細長くして見せた。

 

「おぉ・・・これを巻いて軍艦巻きにするのか」

「なるほど、 これならば海苔の代わりにはなるな」

「じゃあ海苔巻きは如何するんだ? ちょっと長さが足りないだろう」

「海苔巻きは卵を薄焼きにして巻く、 もしくは巻かない」

「巻かない?」

「ゴマをまぶす等の方法がある」

「そう来たか・・・ならば僕は自分の分は自分で作るよ」

 

バルドが言った。

 

「それが良い、 自分のスシブレードは自分で作った方が馴染むからな

僕も自分用のスシブレードを作っておくよ」

「私達はスシを作れないから任せる」

「うむ俺も頼むわ」

「任せろ」

 

バルトと三崎がスシブレードを作り始めた。

 

「うん、 こんな感じかな」

「どれ・・・」

 

バルドが薄く焼いた卵を見る三崎。

 

「確かに出来ている・・・しかしちょっと焦げが

と言うより焼き目があるな」

「焼き目出たらまずいの?」

「見栄えが悪いだろう」

「見栄え・・・」

「見栄えは大切だからな

でも卵は焼き慣れているんじゃないのか? 卵巻きの卵は如何しているんだ?」

「それとはまた別なんだよ」

「ふむ・・・そっちも鍛えると良いかもしれない

卵の具材に対しての理解度が増せば強さも増すだろう」

「うん、 やってみるよ」

 

二人は着実にスシブレードを仕上げていっている。

 

「・・・俺達は居る必要有るのか?」

 

グリードが尋ねる。

 

「うん」

「何でだ? 使うのは俺達だが作るのは二人だけで充分じゃあないのか?」

「否」

 

グリードの手を掴む三崎。

 

「普段はしない事だけど、 今回は君達の手に合わせたスシブレードを握る」

「俺達に合わせたスシブレード・・・」

「そうだ、 確実なフィット感と余裕、 その両方を両立する為にもここに居て欲しい」

「なるほどな、 待つぞグリード」

 

ゾーバがどかっと座り込む、 それに倣って他のメンバーも座ったのだった。



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狂気の施条

三崎とバルドがスシブレードを作っていた頃。

オーモリのアジトでは・・・

 

ギャリギャリカカカカカカッ!! ギリリリリリリリリッギュルッルルルルルルルル!!

 

「なんすかこの異音は・・・」

 

オーモリのスシトルーパーの食べ比べはオーモリに尋ねた。

 

「ヘカトンケイルの奴がスシブレードを作っているんだ」

「スシブレードを作っている音では無い・・・何をしているんだ・・・」

 

空けるなと書かれたドアからそっと中を除こうとするモド。

 

「馬鹿ッ!! 開けるなッ!!」

 

ドアごと吹き飛ばされる食べ比べ。

 

「なぁ、 オーモリ、 お前とお前の部下が馬鹿なのは知って居たが

まさか文字すら読めないとは思わなかったぞ?」

「こいつが全部悪い」

「部下の責任は上司の責任だろう」

「ふん、 自分の責任は自分の責任だろう」

 

バチバチと火花を散らすオーモリとヘカトンケイル。

 

「まぁまぁ二人共落ち着いて下さい」

 

サンドイッチが諫める。

 

「お前は黙ってろ」

「その通りだ」

「えぇ・・・」

 

困惑するサンドイッチ。

 

「しかしヘカトンケイル、 お前うっさいわ」

「ふん、 お前とこうして協調関係に有るんだ今の内に戦力増強をしなければならない」

「戦力増強か・・・そのスシブレードか?」

「あぁ」

 

マントの下から伸びる手に握られたいたのは見事なマグロ寿司である。

 

「確かに立派なスシブレードだがそんな物で勝つつもりか?」

「・・・・・」

 

黙って射出するヘカトンケイル。

スシブレードが真っ直ぐ飛び、 オーモリのすぐ横を通過する。

そして背後の柱を貫通する。

 

「ふん、 この位スシの暗黒卿なら出来て当然だ」

「否、 私は闇のパワーを使っていない

純然な完全美たる我がスシブレードの力だ」

「何?」

 

オーモリは海で鍛えた獲物を狙う視力を

闇のパワーで強化したスシの暗黒卿視力で見た!!

何と言う冒涜か!! ヘカトンケイルの操るスシブレードはスシに

否!! 食品にすら非ず!! それは寿司型の彫刻であった!!

マグロの筋は見た目では分かり難いが深い溝が刻まれライフリングの役割を果たす!!

ライフリングとは銃の弾丸に旋回運動を与え

ジャイロ効果によって弾軸の安定を図り直進性を高める物である!!

つまりこの彫刻寿司は横回転しながら真っ直ぐ飛ぶという物である!!

通常ライフリングは銃身に行われる物だが

弾丸側にライフリングを行うとは・・・狂気!!

 

「これは普通の一般ソルジャースシにも使えると言う事だ

分かるか? 我が闇のパワーはスシブレードを作る為に使う物なのだ」

「なるほどな・・・」

「さて・・・もう朝か・・・昼まではほっといてくれ」

 

そう言って部屋に戻るヘカトンケイルだった。



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前哨戦

バルドと三崎がスシブレードを作っている間の数日間

ゴハン、 ハウ、 ケイ、 マドカ

グレン、 ナル、 エミリー、 そしてジューンとジューンの手下は街中に散らばって

敵戦力を削いでいた、 無論、 ただ削いでいる訳では無い。

それでは意味が無いのだ、 戦力差は開いている、 単純に戦っても

ジリ貧で負けるのだ、 しかし幸運な事にヘカトンケイルが

ジャイアント寿司を持って来てくれた。

闇寿司は誰でも使えるスシブレード、 それ故にスシブレードの心得が有れば

誰でも使えるのだ、 鹵獲に弱いのが弱点である。

加えてジャイアント寿司を運用しているのはソルジャースシ。

弱いスシブレーダーに強いスシブレードを与えて

戦力の向上を図るヘカトンケイルの戦術は今回はヘカトンケイルに悪い方に働いた。

そしてジューンは船を鹵獲する事に成功、 鹵獲と言っても

働きに出ている者を買収や脅して得た船を使っての海賊行為で

船を次々と手に入れているという形か。

 

当然ながらオーモリも黙っていない、 攻勢に入る。

しかし捕鯨船が出ている間はあまり船を出したがらない。

その為、 船に乗りながらジャイアント寿司で攻勢をかけるジューン達。

ジューン達は捕鯨船を回避しながら何とか逃げ延びつつ

オーモリ達は攻撃を受けてスシトルーパーが半減してしまう大打撃を受けたのだった。

ジューン達の仲間が三人捕鯨船に殺されるという犠牲は有ったが。

 

「ヘカトンケイル!! 出て来い!!」

 

オーモリが自分のアジトでヘカトンケイルが籠っている部屋のドアを乱打する。

 

「如何した?」

「お前が持ち込んだジャイアント寿司が奪われて使われて

こっちは大迷惑してるんだ!! 既に死人も出てる!!」

「だから何だ?」

「貴様ッ!!」

 

スシブレードを射出しようとするオーモリ。

しかし腕を先手を取って射抜かれた!! 貫通はしていないが青痣が出来ている。

 

「お前は勘違いをしている様だが

私は別にお前が不利になれば良いなと思ってジャイアント寿司を持ち込んだ訳では無い」

「じゃあ如何言う理屈で持ち込んだんだ!! 言って見ろ!!」

「お前達が恐れるあの巨大怪船、 確か捕鯨船とか呼んでいたか?

お前達からここを奪い取った後にアレの始末をしなければならない

と思っていたのだが・・・まさか奪われるとは予想外だった

泥棒なんて恥知らずな真似するとは思わなかった」

「予想外だったで済むか!! 俺と協調するのならばお前も戦え!!」

「ふむ・・・ならば良いだろう、 私も戦おう

しかし私の戦い方にいちゃもんをつけるなよ」

「結果を出せよ」

「心得た」

 

ヘカトンケイルは外に出た。



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跳躍

ヘカトンケイルは外に出ると只管ハケでマグロ寿司に何かを塗っていた。

 

「・・・ヘカトンケイル、 一体何をしている?」

 

オーモリが見かねて尋ねた。

 

「時間が無いのならば美しい彫刻寿司を作れない、 しかし手持無沙汰だ

ならば簡単に出来る創作活動をする必要があるだろう?」

「聞かれても困るんだが・・・それで?」

「ハケでマグロにつやを出す為にニスを塗っている」

「お前は一体何をしているんだ」

「気持ち強くなる気がする」

「本当に一体何をしているんだ」

 

ぎゅるんとヘカトンケイルが振り返る。

 

「如何した?」

「戦闘音だ、 少し行って来る」

 

そう言うなりヘカトンケイルは跳躍した。

 

「なんだと!?」

 

オーモリは驚愕した、 明らかに人間が飛べる高さと距離では無い。

闇のパワーか!!

ヘカトンケイルは跳躍、 飛行しながら戦場に辿り着く着地の前に

大量のニスを塗ったマグロ寿司の乱舞で敵を薙ぎ払った!!

 

「ぐわっ!?」

「ぎゃ!!」

「何だ!?」

 

一人物影に隠れられたが二人仕留めた。

 

「ヘカトンケイル様!!」

「離れて居ろ」

 

交戦中だった部下のソルジャースシを下がらせるヘカトンケイル。

 

「隠れず出て来い、 スシブレーダーならば戦うのが美しいと心得よ」

「っ!!」

 

挑発されたジューンの手下のヤミ・アプレンティス

"カニカマ"はスシブレードを射出した!!

繰り出したのはカニカマである!! 蟹の模造品であるカニカマ寿司!!

カニカマに比べ大分弱い!! しかしその安さから大量にカニカマを持っていたのだ!!

次々と繰り出されるカニカマ!!

 

「ほう、 ならばこちらも物量で勝負だ」

 

カニカマが列となって襲い掛かるのならばヘカトンケイルの攻撃は正に波頭だった。

ヘカトンケイルのマントの中から大量に飛んで来るマグロ寿司

全てにニスが塗られつやつやと輝くその姿はまるで天の川の様だった・・・

 

「美しい・・・」

 

カニカマの最後の言葉はそれだった。

カニカマは文字通り血肉一つ残さずに消滅したのだった。

 

「弱いな、 醜い相手だった」

 

侮蔑の言葉を吐くヘカトンケイル。

 

「ヘカトンケイル様!! 助かりました!!」

 

ソルジャースシが礼を言う。

 

「ふむ、 お前一人か?」

「えぇ、 敵は情報を私から奪う為に仲間を殺されました」

「なるほど、 分かった、 では・・・ふむ、 また戦闘か」

「え?」

「離れて居ろ」

 

言うや否や再び跳躍するヘカトンケイル。

更なる戦場を見つけた様だった。

 

「ふむ、 今度は美しい敵だと良いな」

 

ヘカトンケイルはそんな願望を抱きながら攻撃を開始するのだった。



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着地地点は恵方

「まぐろステーキ、 ほたてステーキ

人造イクラ、 ブリュレ、 そしてカニカマ、 五名が戻って来ません

そして連中が行った後の破壊跡を見るに

恐らくは空中からスシの暗黒卿クラスからの攻撃とみて間違い無いかと」

 

ジューンは手下からの報告を聞いていた。

 

「ついに動き出したか・・・鹵獲したジャイアント寿司は如何だ?」

「問題無く使用可能です、 それからジャイアント寿司を解析して

こちらで独自に開発する事も可能になりました」

「快挙だな」

「バルドと三崎のお陰です、 とは言えまだ奪った方が安上がりかと」

「・・・・・」

 

顔を顰めるジューン。

 

「それで如何しますか?」

「スシの暗黒卿が出て来たのならば今度は海に誘い込もう

捕鯨船とぶつけるんだ」

「ぶつける迄我々が生きていられるとお思いで?」

「・・・ならば案が有る」

「案?」

「バルド達を呼んで来い、 話をする」

 

数時間後、 街中に爆音が鳴り響いた。

アジトにいたオーモリとヘカトンケイルは外に出た。

 

「ふざけやがってぇ!!」

「私が先行しよう、 君は後から来たまえ」

 

ヘカトンケイルが跳躍した。

飛行しながら敵を発見しマグロ寿司乱打!!

 

「ぐぎゃ!!」

「がっ!!」

「ふん!!」

 

二人は倒れたが一人だけ海苔巻きを射出せずに回転して

スシブレードの攻撃を全て弾いた!!

 

「ほう・・・これは凄いな

スシブレードを射出せずに回転エネルギーを使う技術・・・

ヤミ・マスターか、 良いだろう名乗れ」

「恵方巻き!! スシの暗黒卿と見た!!」

「我が名はヘカトンケイル、 ヤミ・マスターが相手ならば

雑魚相手の雑多なスシブレードでは失礼と言う物」

 

ヘカトンケイルは彫刻寿司を取り出した。

 

「来いッ!!」

 

恵方巻きが叫ぶ!!

それと同時にヘカトンケイルがスシブレードを射出する!!

ライフリングで前方に回転しながら飛ぶスシブレード!!

恵方巻きは巨大な恵方巻で真正面から立ち向かった!!

だがしかし!! 相手はスシの暗黒卿!! パワーが違い過ぎる!!

 

「くっ!? 馬鹿なッ!?」

 

恵方巻きはいざとなれば受け流すつもりだった

しかしこのパワーは受け流せない!!

圧倒的なまでに強大なパワー!!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

本来は奇襲用に使うギミックだったが恵方巻きに仕込んでいたチェーンを展開する!!

即ち恵方巻をヌンチャクの様に扱う事でリーチが長く

より動きやすい形になるのだ!!

展開の時の衝撃で何とか彫刻寿司は弾き飛ばす事に成功した!!

 

「ほう、 やるじゃないか」

 

彫刻寿司に近付きそしてマントの下に潜り込ませる。

そして粉々になった音がした。

 

「スシを破壊した・・・!?」

「巻けた者は醜いからな使いたくない」

「・・・・・」



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手八丁

「海苔巻きを切らずに長物の武器として扱う・・・

なるほど思いつく様で思いつかない発想だ

更にその武器の中に仕込みまで入れているとは君の発想に脱帽する」

 

ヘカトンケイルはつらつらと語り始める。

 

「だがしかしその仕込み、 その仕込みで私を倒すつもりなんだろう?

もうネタはバレているじゃないか」

「そいつは如何かな!!」

 

恵方巻きはヌンチャクになった恵方巻きをヘカトンケイルに叩き込んだ!!

 

「無駄だ」

 

ガキィ!! ヌンチャクのチェーン部位にノミを叩き込んで恵方巻を両断してしまった。

 

「・・・・・」

「さて、 これで終いか?」

「ふっ・・・いや、 これで準備完了だ」

「何?」

 

ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

壁を破壊してジャイアント寿司がヘカトンケイルに直撃した!!

 

「恵方巻き!! 無事か!?」

「ジューンさん、 何とか大丈夫です」

 

肩で息をする恵方巻き。

 

「部下が二人やられましたが・・・」

「あぁ、 大丈夫だ、 スシの暗黒卿とならおつりが出る」

「えぇ・・・」

 

恵方巻きに肩を貸すジューンの部下達。

 

「さて、 スシの暗黒卿を倒した、 倒せないにしても深手を与えた筈だ

もう一人のオーモリが来る前に」

 

ギュリリリリリッリリリリリリリリリリリイッリ!!

ガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!と轟音が鳴り響いた。

 

「な、 何だ?」

「ま、 まさか・・・生きているのか!?」

「当たり前だ!!」

 

月夜に輝く満月を背に飛び上がるヘカトンケイル。

手に持っているのはたった今造り出した彫刻寿司!!

恵方巻きに向かって射出する!! 恵方巻きの心臓に風穴を開けて恵方巻きは倒れたのだった。

マントが破れたヘカトンケイルは縫い合わせた目を見開きながら

ジューンを見た、 そしてジューンもヘカトンケイルを見た。

 

「・・・・・化け物め」

 

ヘカトンケイルのマントの中は腕だった。

大量の腕がマントの中を蠢いていた、 その内の幾つかの手先は橋や湯呑に変化していた。

恐らくスシブレードを射出する為の変容なのだろう。

ジャイアント寿司による攻撃で幾つかの腕は折れた様だが致命的なダメージでは無い。

腕の骨折なのだ、 臓器の損傷では無い、 故に致命傷では無いのだ。

 

「良くもやってくれたな」

「怪我をしている今なら倒せる!! うおおおおおおおおおおお!!」

 

ジューンの部下達がスシブレードを撃つ、 しかし脳天が炸裂する結果になった。

 

「愚か者、 私に勝てる訳が無いだろう」

 

箸を構えるヘカトンケイル。

次の瞬間ジューンは知った、 自分達ではヘカトンケイルに勝つ事は出来ないのだと!!



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高等技・つまみ出し

ヘカトンケイルは素早く打ち出されたスシブレード達を掴む。

そして体が回転した!! ぐるんぐるんと開店したのだ!!

スシブレードの回転を使った回転だろうか!?

凄まじい回転なのだ!!

 

「な・・・こ、 これは・・・」

 

これは闇寿司の高等技、 つまみ出し!!

闇寿司は強く誰でも扱う事が出来る。

ならば敵の寿司を使ってしまうという発想は当然である。

実際ジューン達はジャイアント寿司を鹵獲して使っていた。

ならば敵対する闇寿司が放って来た寿司を掴んで

運動エネルギーを帳消しにする事が出来れば

それは敵の放ったスシブレードを強奪する事が出来ると言う事なのだ!!

 

「そんな馬鹿な・・・」

「まだまだ甘いな」

 

しかし敵のスシブレードを掴むと言う事は非常に困難である。

扱えるのはせいぜい未熟なスシブレーダーのみであろう。

しかも自身の力量も無ければ話にならない。

卓越したセンス、 スシを受け止めるパワー

そしてスシを握りつぶさない繊細さも必要なのだ。

 

「返すぞ」

 

受取った寿司を射出して放つヘカトンケイル。

闇のパワーも付け加えているのだから攻撃力は増している!!

哀れヤミ・アプレンティス達の脳天はザクロめいて爆発!!

 

「次はお前だ」

「くっ!!」

 

ジューンがスシブレードを射出する。

 

「ふん」

 

スシブレードを箸で掴むヘカトンケイル。

 

「むっ、 この感触は・・・」

 

直ぐに放り投げるヘカトンケイル。

そうジューンの爆弾入りおにぎりである。

中に爆弾が入っていると悟られ直ぐにリリースされたが煙で周囲が見えない。

 

「耳に頼るのは厳しいか・・・爆音で耳が喧しい・・・

それにしてもあの男・・・アイツか」

 

にやりと笑うヘカトンケイル。

 

「ヘカトンケイル、 生きてるか? って何だこの煙は!?」

 

オーモリが手下のスシトルーパーとやって来る。

 

「一人逃げられた」

「げっほげっほ・・・良し、 ならば手分けして追おう!!」

「いや、 鹵獲したジャイアント寿司が使われたんだ

何らかの策が向こうにはあるんだろう、 小細工は醜いというのに」

「なら如何する?」

「小細工無しに真っ直ぐ行くというのは如何だろう」

「真っ直ぐ・・・真っ直ぐに居るのか?」

 

ピュン。

オーモリの額に何か飛んで来た。

オーモリは手でそれを受け止めた。

 

「ふむ・・・イクラか」

 

自分の手を見るオーモリ、 イクラが付いていた。

 

「如何やら真っ直ぐに行く、 と言う事で合っている様だな」

「決まりだな、 なら行こうじゃないか」

「罠だぞ」

「ふん、 全て踏破してやろうじゃないか」

「・・・分かった、 行こう」



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追う者、待つ者

ヘカトンケイルとオーモリ、 そしてオーモリのスシトルーパーは

逃げるジューンの後を追った。

後を追う闇寿司一行にスシブレードが襲う!!

 

「馬鹿が」

 

ヘカトンケイルが箸でキャッチ!!

闇寿司ではヘカトンケイルには勝てない!!

 

「何?」

 

キャッチした筈のスシブレードの群れがヘカトンケイルの箸を砕く!!

そしてヘカトンケイルに全てのスシブレードが直撃し吹き飛ばされる!!

 

「ぐぬ・・・」

「おいおい大丈夫か?」

「問題無い」

 

大量のスシブレードの直撃を受けても平然としているヘカトンケイル。

 

「これは闇寿司の攻撃では無いな・・・

恐らくファウンデーションのスシブレーダー・・・」

「ふむ、 やれるか?」

「愚問、 とは言え少々困ったな、 敵の位置が分からん事には反撃できん

片っ端からやるか」

「街を壊すのは許さんぞ」

「・・・・・」

 

一触即発、 姿勢が下がる二人。

 

「ふん、 さっきのイクラ野郎、 まだ狙っているのか」

「如何やら誘っている様だな、 乗ってやるか」

「あぁ」

 

前に進む一行。

進んで行くうちにスシブレードの攻撃が飛んで来る。

しかしオーモリやヘカトンケイルでは無くスシトルーパーを狙っている様だった。

 

「なるほど、 我々には通じないと悟り、 後ろの取り巻きを狙いに来たか」

「くっ、 大丈夫かお前等!!」

「旦那、 雑魚は俺達が!!」

「任せた!!」

 

スシトルーパーの中からヤミ・アプレンティスが散会した!!

隠れているスシブレーダー達と戦うつもりなのだ!!

 

「残りの連中はヤミ・マスターか、 手練れだな、 見て分かる」

「分かるか」

 

オーモリ達の後を追うヤミ・マスター5人。

ファントム・シェル、 シースネーク

レッド、 フレアオクトパス、 ノスタルジー、 何れも強者である!!

 

「じゃあ露払いだ!! ファントム!!」

「おう!!」

 

ファントム・シェルはロコ貝のスシブレードを複数いっぺんに射出した!!

ロコ貝はアワビの代用としても使われる貝である!! 大量に用意する事が出来る為

大量に放って攪乱する事が出来るのだ!!

更にファントム・シェルのロコ貝はネタが薄く、 攻撃力を下げている!!

今回の様に街を傷つけたくないが攻撃しなくてはならない時に効果的である!!

 

「っ!!」

 

ロコ貝に対してスシブレードで応戦するスシブレーダー!!

スシブレーダーの射出音が響く!! 自分に向けられている場合なら兎も角

この時ならば探知は容易!!

 

「そこか」

 

ヘカトンケイルが彫刻スシを放ち建物の天井を崩しスシブレーダーを押し潰す!!

 

「おい!!」

「いや、 これは良いだろう、 別に」



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12VS3!!

ジューンの作戦を掻い摘んで説明するとこうである。

①ヘカトンケイルを誘き出し誘導

②誘導して移動し、 移動する道順にスシブレーダー達を配置

そして攻撃を加え、 戦力を削ぐ、 追跡してこない場合は

ウェッジのイクラリオン狙撃で挑発する

③海に誘導し決戦に持ち込み捕鯨船に巻き込んで殺す

 

現在作戦は②の段階である。

この時に配置されたスシブレーダーは海上戦用にスシブレードをコンバートしてない

つまり海苔巻きでも軍艦巻きでも無いスシブレードを使う者や

ジューンの部下から選択されている。

 

まずエミリーがヘカトンケイルに攻撃をしたが効果が無かった為

スシの暗黒卿以外に攻撃を行う事をした。

一方的にやられる事を良しとしなかったオーモリは手下達を分散させて

隠れているスシブレーダー達に攻撃させる事にした。

 

 

 

スシトルーパーの食べ比べとタルタルは共に敵を探し

建物の中に入り、 外を伺うエミリーを発見した。

 

「居たぞ!! 喰らえッ!!」

 

食べ比べのスシブレードは中トロの炙り寿司と普通の寿司。

二つセットと言う異端のスシブレード!!

タルタルも追撃する、 彼女が放つスシブレードはとり天タルタルソースがけ

タルタルソースの油分で相手の攻撃を受け流す事が出来る!!

 

「3, 2, 1, へいらっしゃい」

 

対してエミリーが放ったスシブレードはジュエリーボックス!!

12個のスシブレードの前では3個のスシブレードは多勢に無勢!!

 

「舐めるな!!」

 

食べ比べもタルタルも実力で言えばヤミ・アプレンティス相当だが

場数は踏んでいる!! この程度の数の暴力は押し切れる!!

以前に二人で30のスシブレードにも勝った事が有るのだ!!

だがしかし!! 二人は追い詰められている!! 何故!?

 

原因は主に二つ!! まずジュエリーボックスに入っていたスシブレードが

エビリュウオウを始めとした闇寿司では無い事による不慣れさ!!

そして完全に行動を制御された12のスシのコンビネーションに彼等は押し切られたのだ!!

 

「くっそぉおおおおおおおおおおお!!」

 

再度二個新しくスシブレードを投入しようとする食べ比べ。

だがその隙をエミリーは見逃さない!!

 

「させない!!」

 

スシブレードの一つが食べ比べの額に激突!! 昏倒!!

 

「食べ比べ!!」

 

食べ比べが居なくなった事で12個のスシブレードと戦う事になったタルタル!!

当然叶う筈も無く敗北!!

 

「ふぅ・・・他の皆は大丈夫かな・・・心配だ」

 

エミリーは他の仲間を心配しながら再度外を見やるのだった。



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ブラック・ダークネス・スパゲッティ

ケイはジューンの手下達と共に待機をしていた。

 

「・・・所で何で貴方達はジューンの部下に?」

「ダークネスシ帝国のやり方で力を手に入れたが

待遇が低いからな、 反乱する事にした」

「俺は上司が嫌だったからぶっ飛ばしてジューンの手下に」

「自由が欲しかったから」

「何だか色々ね・・・」

「しっ、 誰か入って来たぞ」

 

黒々とした男がケイ達が待機する建物に入って来た。

彼の名はブラック

その名の通り真っ黒なスシブレードであるイカスミスパゲッティを扱う!!

ブラックはイカスミスパゲッティを回転させた!!

 

「何をするつもりだ? もう見つかったのか・・・?」

 

困惑するケイ。

ジューンの部下の一人がガクリと肩を落とし倒れた。

イカスミスパゲッティに含まれるイカ墨による精神イカ墨漬け攻撃だ!!

ブラックの力量が低い為に洗脳されないがそれで充分。

一瞬でも力を奪えれば問題無い!!

音がした方に向かってイカスミスパゲッティを移動させるブラック!!

 

「させるか!!」

 

ケイのサバビルダーが吠える!!

イカスミスパゲッティによる墨による着色を

つるつるとした皮で無効化するサバビルダー!!

そして攻撃を受け流し、 逆に反撃し攻撃を多段ヒットさせる!!

 

「ぐ・・・」

「俺達も続くぞ!!」

「おう!!」

 

ジューンの手下も次々とスシブレードを射出する。

様々なスシブレードが飛び交う!! 圧倒的にこちらが有利!!

だがしかし!! イカスミスパゲッティが突然皿の上から転げ落ちて

スシブレード達を襲う!! 圧倒的イカスミスパゲッティの質量で

スシブレード達は破壊されてしまった!!

ブラックは精神イカ墨漬けの力量は低いが

回転によるバランス感覚は一級品なのだ!!

 

「ば、 馬鹿な!!」

「畜生!!」

 

スシブレードが破壊された事により、 必然的にこの場の戦いは引き分け

 

「うおおおおおおおおおおお!! ならば袋叩きにしてやるぅうううううう!!」

 

訳も無く、 殴り合いの戦いになった。

ブラックは港町に住む海の男、 鍛え方が違う。

ジューンの部下達を全て軽々と倒し放り投げる。

 

「・・・強い、 けども所詮は腕っ節の強いならず者の強さね」

 

剣を抜くケイ、 彼女は女性騎士である。

 

「行くわよ!!」

 

ケイが向かって行く、 ブラックは逃げ出した。

当然である刃物を持った女が向かって来たのだから。

 

「・・・・・私の勝ちね、 何だか釈然としないけど」

 

否、 スシブレードを破壊されて追撃がほぼ不可能になった時点で

ブラックの目的は達成されたと同じ、 実質負けである。



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たこさんウィンナーは商標登録されている

待機していたゴハンとナルは既に激戦を繰り広げていた!!

だが二人共苦戦を強いられている!!

 

「くっ・・・コイツは!! ただのウィンナーじゃねぇ!!」

 

ゴハンが苦戦するのは

スシトルーパーMr.オクトパスのタコの様に切られたウィンナーだ!!

ウィンナーの突進力を犠牲に手数を上げている!!

 

「なんなの・・・コイツ硬い!!」

 

ナルが戦っているのはスシトルーパー、 イカゴロのルイベ!!

凍ったまま薄切りにした刺身!! 固い!!

奇しくもタコ同士、 イカ同士の戦いになってしまった!!

 

「離れる事に成功したけど連携が上手いから2対1に持ち込むのも難しい

一体如何すれば・・・」

 

ナルは考えたが良い案が思い浮かばない。

するとゴハンがこっちに突っ込んで来た!!

 

「ゴハン・・・?」

「・・・・・」

「そうか!!」

 

ゴハンとナルは互いに戦う相手を交換した。

タコ同士、 イカ同士で戦う事は無い。

防御力の高いルイベにはタコボーグOの攻撃性能は充分に発揮出来るだろう。

そしてナルのイカルオンはたこの様に切ったウィンナー相手に

タコボーグよりも戦える。

なぜなら攻撃の多さでバランスを崩しに来る相手に対して

バランスが比較的良いイカルオンは効果的である。

徐々に押しており何とか勝てるだろう。

 

 

 

待機しているスシブレーダー達は何とか勝っているが

ジューン達はと言うと・・・

 

「海だ!! 船に乗りこめー!!」

 

作戦通り海に出る事になった。

 

「海に出るだと?」

「ほう、 捕鯨船とやらが来ているのだろう? 如何する? まだ追うか?」

 

オーモリに問うヘカトンケイル。

 

「・・・・・如何する?」

 

スシトルーパーに問うオーモリ。

 

「ここは追ってさっさと倒して帰るで良いと思う」

「右に同じく」

「俺も同意見だ」

「だな」

 

全会一致で後を追う事になった。

 

「敵も待って居るだろう、 気を抜くなよ」

「「「「「おう!!」」」」」

 

オーモリは自身が所有する船、 大盛り号に乗って後を追った。

ジューン達が手に入れた船と比べかなり速い上に大型の船である。

 

「後を追って来たか・・・良し!! このまま海に叩き落としてくれる!!

海上からジャイアント寿司を発射して船を撃沈させてしまえばこちらの物!!

相手の数が一隻だけなのでこれで行ける!!」

 

船の上で叫ぶジューン。

 

「ふむ、 残念だがそれは如何かな?」

 

ジューンの背後から声がするジューンが振り返るとそこには・・・

 

「何故お前がここに居る!?」

 

ヘカトンケイルである!! 跳躍して飛んで来たのだ!!

 

「さて・・・君の事は知っているぞ?」

「っ!!」



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土壇場、海難、絶叫

「俺を知っている、 か、 どんな風に紹介された?」

 

スシブレードに手を伸ばすジューン。

 

「ヴォルフガングの寿司を食べたんだろ?」

「・・・・・あぁ」

「気の毒にねぇ」

 

ニヤニヤと笑うヘカトンケイル。

ジューンは怒り狂った!!

火を点けた大量の爆弾スシブレードをばら撒く!!

 

「おっと」

 

ドゴン!! と船を大きく揺らし再度跳躍するヘカトンケイル。

 

「自分の爆弾で自分の船を沈めるが良い」

 

けらけらと笑うヘカトンケイル。

ドゴォ!! とヘカトンケイルの背中にスシブレードが激突する!!

海仕様のワサビジュピターだ!!

 

「笑ってんじゃねぇぞ!! 敵がジューンだけと思ったら大間違いだ!!」

「ぐっ、 ぐぅ・・・」

 

ヘカトンケイルは海に叩き込まれた。

そしてジューンの船から大量の爆弾スシブレードが落ちて来る!!

 

「ふん、 海に入れば導火線の火は消えるだろう」

 

否、 導火線の火は消えない!!

導火線には防水処理がしてあるのだ!!

 

「なん・・・だと・・・!?」

 

大量の爆弾スシブレードがヘカトンケイルを襲う!!

次の瞬間、 爆弾は炸裂し、 ヘカトンケイルの大量の腕が周囲を舞う!!

 

「なんとか行けたか・・・」

 

ジューンが呟いた。

 

「ジューン、 尋ねたい事が有る」

 

同じ船に乗っていたバルドが出て来る。

 

「何だ?」

「スシの暗黒卿に覚えられるってお前一体何をした?」

「黙れッ!! ぶち殺すぞ!!」

 

物凄い剣幕で叫ぶジューン。

 

「・・・・・こっちは裏切られているんだ知りたいと思うのは必然だろう」

「お前には関係無いッ!!」

「・・・・・」

 

イライラするバルド。

 

「くっくっく、 教えてやれよぉ!!」

 

オーモリが船を出してジューンとバルドの船に肉薄する。

 

「距離を取れッ!!」

 

船頭に指示を出すジューン。

船との距離は離れた。

 

「そいつはなダースシ・ヴォルフガングの寿司を喰ったんだ」

 

構わず話し続けるオーモリ。

 

「言うなっ!!」

 

爆弾スシブレードを射出するジューン、 ダースシ・オーモリに迎撃され阻まれる。

 

「スシの暗黒卿の寿司を・・・?」

「聞くな!!」

「ヴォルフガングの寿司を喰ってしまうと腹を下す、 つまりおもらしと言う訳だな」

「あああああああああああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああ!!!」

 

絶叫するジューン。

 

「・・・ちょっと待って、 そんな理由でダークネスシ帝国と戦ってるのか?」

「俺にだって誇りは有る!!」



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地獄の中で息絶える

「誇り?」

「そうとも!! 俺はこう見えても騎士の端くれ!! 誇り位は有る!!」

「主を裏切っておいて?」

「ふん!! 力無き主に従う道理が何処にある!?

騎士が皆から尊敬され称えられているのは力が有るからだ!!

力無き騎士等話にならない!!

そんな騎士が力を持たない主に従う理由が有るか!?」

「だからレーア様を裏切ったと?」

「力が無い無能な小娘に従って何が楽しい?

何が誇らしい? 寧ろ恥だろう、 女などに従う等

王の遠縁とは言え辺境の伯爵令嬢に従う奴なんてお前みたいな孤児の従者しか居ない!!」

「・・・・・」

 

怒りを覚えるバルド。

ぱんぱんぱんと手を叩くオーモリ。

 

「御高説どうも、 如何でも良いが、 お前ピンチだぞ?」

「何?」

 

腕が吹き飛ばされるジューン。

ジューンが振り返ると後ろには頭から手が数本伸びているヘカトンケイルの姿が!!

死んでいなかったのだ!! 大分手の数は減ったが確かに生きている!!

 

「彫刻のスシブレードで助かった、 普通のスシブレードだったら

バラバラに分解されていた所だったよ」

「・・・・・」

 

ジューンは出血からもう自分が助からないと確信していた。

 

「俺、 死ぬのか?」

「だろうね」

「・・・・・ざけんな」

 

ジューンはヘカトンケイルに走って行った!! 爆弾の導火線に火を点けた!!

自爆するつもりである!! スシブレードでは無く自分毎自爆!!

船上での自爆は船が落ちると船から逃げ出すバルド!! 小舟で別の船に乗る!!

 

「こんな所で一人で死ぬかああああああああああああああ!!」

「ふん、 馬鹿が」

 

同じ手は二度も通じない。

バルドの懐の爆弾から導火線を引っこ抜くヘカトンケイル!!

何と言う早業か!!

 

「そう来る事は知って居た!!」

 

ガソリンとの混合酒スシブレードを導火線にかけるジューン!!

導火線の火にガソリンが引火!! 爆発!!

 

「・・・・・」

 

ヘカトンケイル炎上!! しかし海に潜っては再度爆弾による追撃で

今度こそ死は免れない!! ヘカトンケイル、 懇親の首絞め!!

ジューンは窒息必至!!

 

「ぐがが・・・」

 

短剣でヘカトンケイルを刺すジューン!!

しかしヘカトンケイルの頭部は固い!! 頭部は重要部位だからか強固に変容している!!

 

「このおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

何度も短剣でヘカトンケイルの頭部を殴り刺すジューン!!

短剣の刃が欠けるがヘカトンケイルにもダメージが入る!!

そうしながら彼等二人はガソリンの火に巻かれて

激痛と苦しみと憎悪の中で死んでいったのだった。



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地獄の中で息絶える

「誇り?」

「そうとも!! 俺はこう見えても騎士の端くれ!! 誇り位は有る!!」

「主を裏切っておいて?」

「ふん!! 力無き主に従う道理が何処にある!?

騎士が皆から尊敬され称えられているのは力が有るからだ!!

力無き騎士等話にならない!!

そんな騎士が力を持たない主に従う理由が有るか!?」

「だからレーア様を裏切ったと?」

「力が無い無能な小娘に従って何が楽しい?

何が誇らしい? 寧ろ恥だろう、 女などに従う等

王の遠縁とは言え辺境の伯爵令嬢に従う奴なんてお前みたいな孤児の従者しか居ない!!」

「・・・・・」

 

怒りを覚えるバルド。

ぱんぱんぱんと手を叩くオーモリ。

 

「御高説どうも、 如何でも良いが、 お前ピンチだぞ?」

「何?」

 

腕が吹き飛ばされるジューン。

ジューンが振り返ると後ろには頭から手が数本伸びているヘカトンケイルの姿が!!

死んでいなかったのだ!! 大分手の数は減ったが確かに生きている!!

 

「彫刻のスシブレードで助かった、 普通のスシブレードだったら

バラバラに分解されていた所だったよ」

「・・・・・」

 

ジューンは出血からもう自分が助からないと確信していた。

 

「俺、 死ぬのか?」

「だろうね」

「・・・・・ざけんな」

 

ジューンはヘカトンケイルに走って行った!! 爆弾の導火線に火を点けた!!

自爆するつもりである!! スシブレードでは無く自分毎自爆!!

船上での自爆は船が落ちると船から逃げ出すバルド!! 小舟で別の船に乗る!!

 

「こんな所で一人で死ぬかああああああああああああああ!!」

「ふん、 馬鹿が」

 

同じ手は二度も通じない。

バルドの懐の爆弾から導火線を引っこ抜くヘカトンケイル!!

何と言う早業か!!

 

「そう来る事は知って居た!!」

 

ガソリンとの混合酒スシブレードを導火線にかけるジューン!!

導火線の火にガソリンが引火!! 爆発!!

 

「・・・・・」

 

ヘカトンケイル炎上!! しかし海に潜っては再度爆弾による追撃で

今度こそ死は免れない!! ヘカトンケイル、 懇親の首絞め!!

ジューンは窒息必至!!

 

「ぐがが・・・」

 

短剣でヘカトンケイルを刺すジューン!!

しかしヘカトンケイルの頭部は固い!! 頭部は重要部位だからか強固に変容している!!

 

「このおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

何度も短剣でヘカトンケイルの頭部を殴り刺すジューン!!

短剣の刃が欠けるがヘカトンケイルにもダメージが入る!!

そうしながら彼等二人はガソリンの火に巻かれて

激痛と苦しみと憎悪の中で死んでいったのだった。



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マッチメイク

「ヘカトンケイルは逝ったか」

 

オーモリが呟いた。

 

「の様ですな、 流石に爆弾と炎で焼かれてはスシの暗黒卿と言えども・・・」

 

フレアオクトパスがそこまで言って口を押える。

 

「失言でした」

「ふん、 気にするな、 ここからが本番だ!! ノスタルジー!!」

「へーい」

 

ノスタルジーがメロンシャーベットを射出した!!

たちどころに海は凍り付いた!!

 

「これで歩いて敵の元に行く事もスシブレードを射出する事も可能ですな」

「良し来た!! 行」

 

オーモリはそこまで言いかけて絶句した。

周囲の船がジャイアント寿司を取り出したのだ!!

包囲されかかっていたオーモリ達!!

 

「面白れぇ!! でけぇだけの寿司なんぞ何するものぞ!!

お前等根性見せろおおおおおお!!」

「応ッ!!」

 

船から飛び降りるオーモリとスシトルーパー5人。

船はジャイアント寿司で木っ端微塵になった!!

 

「それぞれ船を打っ壊せ!!」

「いいんすか!? 各個撃破されるッスよ!?」

「いいんだよ!! 全力出して同士討ちになるかもしれねぇだろうか!!」

 

画してオーモリとスシトルーパー5人はそれぞれ別れる事になった。

 

 

 

ファントム・シェルが乗った船には大勢の船乗りが乗っていた。

 

「うん? 巻き添えを食った民間船・・・と言う訳じゃ無いな?」

「あぁ!! この機会だ!! 俺達はダークネスシ帝国に反対しているんだ!!」

「幾らスシブレーダーとは言えこの人数は相手に出来ないだろう!!」

「・・・・・」

 

ファントム・シェルはロコ貝のスシブレードを複数いっぺんに射出した。

 

「ぐば!?」

「ぎゃ!?」

 

常人ならばこの程度で充分である。

 

「・・・スシブレーダーも乗っていたか」

「あぁ」

 

ハウが船乗りの後ろから現れた。

 

 

 

 

 

 

続いてシースネークが乗船しようと氷上を走っていた!!

しかし地面の氷がひび割れた!!

 

「む・・・イクラ狙撃野郎か・・・あの船に乗っているのか? 面白い!!」

 

シースネークが船に向かって進み始めた!!

 

 

 

 

レッドが辿り着いた船にはシャルとラルフの二人のスシブレーダーが居た。

 

「二対一か・・・」

「卑怯とは言うまいね?」

「構わん、 こちらも二刀流で行こう」

 

二個のスシブレードを構えるレッド。

 

「赤身・・・マグロか?」

「くくく・・・どうだろうな」

 

 

 

 

フレアオクトパスが来た船には大勢のスシブレーダー達が居た。

 

「ジューンの敵討ちだ!! 行くぞ!!」

「あのおもらし野郎の手下か・・・面白いやってやろう」

 

 

 

 

ノスタルジーが乗った船にはゾーバとグリードが乗っていた。

 

「爺さんか・・・俺も若くないが相当歳言っているな」

「若い者には負けんよ」

 

 

 

 

そしてバルドが乗った船に乗るのはダースシ・オーモリ。

 

「さぁ始めようか!!」

「行くぞ!!」



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ハウVSファントム・シェル

ハウとファントム・シェルの戦いが始まる・・・

 

「うぅ・・・すまねぇハウさん・・・無理して載せて貰ったのに

俺達何の役にも立てなくて・・・」

 

船乗り達が謝罪する。

 

「構わない・・・俺がやらねばならない・・・」

「ふっふっふ・・・愚かな、 俺はスシトルーパーで

力量はヤミ・マスタークラス、 大人しく降参するのが良いと思うが?」

「馬鹿を言え!! 3, 2, 1, へいらっしゃい!!」

 

Oinari3を射出するハウ。

 

「愚かな、 ハッ!!」

 

ロコ貝のスシブレードを大量に撃つファントム・シェル。

まずはロコ貝で牽制、 攪乱する作戦だ!!

しかし!!

 

「無駄だOinari3の防御力はその程度では揺らがない!!」

「・・・・・」

 

ロコ貝は問題にはならない!!

容易く捻じ伏せていく!!

 

「・・・・・ならば本命と行こうか」

 

本命のアワビのスシブレードを取り出すファントム・シェル。

厚みも充分、 まさに逸品だろう。

 

「そのスシブレード・・・闇に堕ちずともやっていけるだろう

何故ダークネスシ帝国に与する?」

「愚問だな、 普通に働いても待遇が悪い

ダークネスシ帝国に与した方がよっぽど良い」

「ふざけろ・・・!! スシブレーダーじゃねぇ奴は酷い目に遭ってるじゃねぇか・・・!!」

 

船乗り達が呻く。

 

「俺は踏み躙られるよりも踏み躙る方を選んだ、 それだけだ」

「・・・いいだろう、 来い」

「おう!!」

 

アワビのスシブレードを射出するファントム・シェル!!

激突するOinari3とアワビ!! 決着は早かった!! アワビが砕け散った!!

 

「何ィ!?」

 

予想外も外。

しかしアワビが敗れてもまだ二個目が有る!!

ファントム・シェルは二個目のアワビを射出した!!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

船乗りが身を挺してアワビに激突した!!

 

「くっ!! 邪魔だ!!」

 

アワビを射出しても船乗り達が邪魔をする!!

そうこうしている間にOinari3がファントム・シェルに激突した!!

 

「ぐはっ!! ば、 ばかな・・・何故・・・」

 

倒れ落ちるファントム・シェル!!

 

「・・・お前とは相性が良かった様だな・・・

使い捨てる様にスシブレードを使いまくるんじゃあ

俺とOinari3のタッグは崩せない・・・」

 

ハウとOinari3の絆、 その絆がスシブレードの力を増して

圧倒的な勝利を齎したのだ!!

相手をスシブレードの手数で圧倒する小技が防御力で阻まれると言う

戦略的な相性も有ったのだろうが今回はハウの勝ちである!!

 

「他の奴等は大丈夫だろうか・・・」



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ウェッジVSシースネーク

シースネークが乗船しようと氷上を走る。

しかしイクラリオンの狙撃が来る。

ウェッジの狙撃の制度VSシースネークの脚力の勝負。

否、 状況はシースネークに大分悪い、 何故ならば今走って居る場所は氷上。

足場が悪く滑って転べば全てが終わる。

かと言って転ぶ事を恐れて足を止める程シースネークは臆病では無い。

 

シースネークのスシブレードはウミヘビである。

ウミヘビと言っても蛇では無いウナギ目のウミヘビ科に属する生き物で

蛇とは関係無い、 アナゴの代替として使われる。

 

しかし代替品だからこそたっぷり使う事が出来る!!

シースネークのウミヘビは最早シャリでウミヘビを巻いた物!!

圧倒的重量で相手を押し潰す!!

しかし近付かなければ話にならない!!

 

「と普通のスシブレーダーなら思うだろう」

 

シースネークは凍った波の後ろに隠れた。

そして凍った波にウミヘビを叩き込む!!

波は砕かれ氷の破片となって船に激突する!!

船に当てたい訳では無い、 船上のウェッジに対する攻撃だ!!

 

「ぐぅ・・・」

 

ウェッジの額に氷が激突した!!

致命傷にはならないがそれでもダメージは大きい!!

脳震盪を起こしている!!

 

「くっ・・・不味い視界が・・・!!」

 

視界がぼやけて狙い撃ちが出来ない!!

 

「はっ・・・こうなったら心の眼で見る」

 

心眼と言う奴である、 そんな物で見えれば苦労はしないのだが・・・

 

「!!」

 

ばっと振り返るウェッジ。

ぼやけた視界でとんでもない物を目にした!!

素早く船から降りる!!

 

 

 

一方その頃シースネークは船上に警戒しながら船に進んだ!!

 

「どうやら効いたみたいだな・・・」

 

イクラの狙撃が来ない、 先程の攻撃は効いたのか!!

そして船に近付いて船に乗り込んだ!!

 

「・・・居ない?」

 

ウェッジが船上に居ない、 不審に思い辺りを警戒するシースネーク。

 

「・・・・・!!」

 

シースネークも気が付いた!!

 

「捕鯨船!!」

 

捕鯨船が近づいてきている!! 船が喰われる!! ピンチ!!

 

「ちぃ!! もう逃げた後だったか!!」

 

否!! 逃げたのは逃げたが近くに居るのだ!!

船から飛び降りるシースネーク!!

 

「空中なら避けられまい!!」

 

シースネークの額に向かいイクラを放つウェッジ!!

 

「!!」

 

シースネークはイクラを撃たれバランスを崩し転倒!!

一時昏倒!! その隙に捕鯨船に船ごと食べられる!!

 

「ふぅ・・・じゃあ俺も逃げるか」

 

ウェッジがその光景に背を向けて逃げ出した。

 

シースネークとウェッジの戦いはウェッジに軍配が上がった。

 



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レッドVSシャル&ラルフ

レッドとシャルとラルフの戦いが始まった。

ラルフはキュウリで巻いたシーエーチン。

シャルは卵で巻いたテッカマーズ。

対してレッドが使うのはマグロ、 では無くアカマンボウ。

マグロの代用魚である、 アルティメットマグロの下位変換。

しかしマグロよりも数が多く持てる。

 

アカマンボウを二個いっぺんに射出するレッド。

シャルとラルフは迎撃する。

容易く破壊に成功する。

 

「ふむ、 では次だ」

 

レッドが再度アカマンボウを射出する。

当然ながらアカマンボウは再度砕け散るが、 多少動きがマシになった。

そしてレッドは再度アカマンボウを射出する。

ここまで来てシャルとラルフは理解した

レッドは大量のアカマンボウでトライアンドエラーを繰り返しながら

戦いの中で進化するスシブレーダーなのだ!!

 

「本体を狙うしかない様だな!!」

「無駄だ」

 

追加でアカマンボウを放つレッド。

複数個のスシブレードを操るのは彼にとっては容易な事!!

更にアカマンボウは数を揃えるのが容易なのだ!!

 

「ふん、 ならば!!」

 

ラルフがシーエチンを再度手に取り射出!!

ラルフのスシブレードはバルトに頼んでウニの分量を多くする事で

軽量化に成功している、 無論カスタムしていてもその特性は変わらない。

その為、 ややスピードが速い速攻型である!!

 

「むっ!!」

 

再射出をした事でスピードが向上しアカマンボウを巧みに躱しながら

レッドの元に向かうシーエチン!!

 

「ならばこうだ!!」

 

レッドは一列横隊でアカマンボウを並べる!! その数8!!

ジュエリーボックスの様な多数で一個と扱われるスシブレードとは訳が違う!!

この数をいっぺんに操れるとは恐るべし!!

 

「くっ、 飛べッ!!」

 

空中に飛ぶシーエチン!! バルドの体験談を聞いて空中機動を出来るスシブレードが有ると知り

練習してきたのだ!! とは言えバランスを崩しスピードダウン!!

だが一列横隊は抜けた!!

 

「ふん!!」

 

レッドはシーエチンに思い切り激突した!!

シーエチンはバラバラに砕け散った!!

 

「な、 何だと!?」

「俺は海の男だ、 スピードが鈍ったスシブレード何て逆に返り討ちにしてくれる!!」

「・・・・・」

「ふふふ、 覚悟しろよ」

「こっちの台詞だ」

「!!」

 

ラルフに気を取られ過ぎたレッド!!

シャルの存在を完全に忘却していた!!

レッドの側頭部にテッカマーズが射出されレッドは吹き飛ばされた!!

 

「助かったぞシャル」

「構いませんよ」

 

何とかレッドの隙を突いてシャルとラルフは勝利を掴んだのだった!!



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フレアオクトパスの炎球

ジューンの部下のスシブレーダー達とフレアオクトパスの戦いが始まった。

 

「しかしあのおもらし野郎、 部下を中々多くそろえて来たな・・・面倒だ」

「何ッ!?」

 

フレアオクトパスはスシブレードを取り出した。

タコの唐揚げである、 それを箸で掴んだ。

 

「来い!!」

「・・・・・」

 

そして・・・更にもう一対の箸でタコの唐揚げを掴んだ!!

 

「な、 何ィ!?」

「何の真似だ!?」

 

タコの唐揚げは高速回転を始めた!!

闇のパワーである!!

そしてタコの唐揚げが発火を始めた!!

 

「な、 何だ!?」

 

摩擦熱による高温が唐揚げに含まれる油分に着火したのである!!

そしてフレアオクトパスは飛び上がりタコの唐揚げを船に目掛けて打ち出した!!

 

「う、 うわあああああああああああああああああ!!」

 

タコの唐揚げは超高温の火の球となり船を襲った!!

そして大爆発を起こし船は炎上した!!

 

「ふん、 この程度か」

 

フレアオクトパスの攻撃力は極めて高いが高さ故に街中では戦えなかった

しかしこの場でならばフレアオクトパスの戦い方は極めて有利に働く!!

 

「さてと負けた奴が居ないか確認するか」

 

フレアオクトパスは首を鳴らして他の船の元に向かった。

 

 

 

 

ノスタルジーとゾーバ、グリードの戦いは膠着状態に陥った。

 

「くっ・・・如何しろって言うんだ・・・」

 

ノスタルジーのスシブレード、 メロンシャーベットの冷気で

氷の繭、 卵、 兎に角氷で覆いを作ってガードをしている。

グリードのワサビジュピターを射出したら凍り付いてくっついてしまった。

攻撃はして来ないが攻撃も出来ない状況である。

 

「まさに膠着状態か・・・」

「そうっすね・・・如何しますか?」

「・・・・・あの爺さんの眼を見たか?」

「いえ?」

「あの眼は唯者じゃない・・・

恐らくあの氷の中から様子を伺い隙が出来るのを待っているんだろう」

「なるほど・・・」

 

正解である、 ノスタルジーの戦術は待ち、 闇の力で増した冷気で

氷を造り出して相手の攻撃を防ぎ、 相手の隙を伺い突く!!

そう言う戦術である。

 

「ただ黙っている訳には行かねぇ・・・伏せろ!!」

 

ゾーバは体を俯せに慌ててグリードもそれに倣った!!

すると頭上に火の球だ!!

フレアオクトパスの攻撃だ!!

 

「新手か!!」

「如何しますか!?」

「逃げる訳にもいかん!! 何とかして時間を稼げ!!」

「如何やって!?」

「・・・爺さんを盾にしろ!!」

 

画してゾーバとグリードはノスタルジーとフレアオクトパスのタッグに

翻弄される事になったのだった。



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激戦!!バルトVSダースシ・オーモリ!!その1

ダースシ・オーモリとバルドの戦いが始まった!!

ダースシ・オーモリのマグロ大盛りから切り身が飛んで来て

エッグヴィーナス・カスタムEに激突する!!

しかしエッグヴィーナスは無傷!!

 

「!?」

 

今までのエッグヴィーナスならばこの攻撃で大破していただろう。

しかし今のエッグヴィーナスは海苔が卵のコンバートされている!!

これだけならばまだまだ防御力不足、 この卵はバルド本人が丁寧に

心を込めて焼き上げたのだ、 エッグヴィーナスとバルドの絆は深まっているのだ!!

 

「・・・・・」

 

バルドはエッグヴィーナスを見ている、 この攻撃を防げると確信しているのだ。

 

「ほう、 中々やる様だな・・・だが・・・」

 

懐からマグロの切り身を取り出して自身のスシブレードに追加するオーモリ。

一度回したスシブレードに手を加えるのは外法中の外法!!

そもそも回転するスシブレードに対してそんな事をすればスシブレードは止まる!!

にも拘らずスシブレードの回転が増す!! 何故か!?

答えは単純明快、 マグロの切り身を闇のパワーで回転させながら落としている!!

切り身の回転とスシブレードの回転が合致して強大な回転となるのだ!!

とは言えマグロの切り身がエッグヴィーナスに通じないのは明白!!

ならばどうするのか!?

 

「・・・・・はぁあああああああ・・・・・」

 

船上が揺れる!! 地震か!? 否!!

ダースシ・オーモリの闇の力である!!

闇の力が周囲に溢れ出て周囲に影響を及ぼしているのだ!!

何と言う強大な力か!!

 

「・・・・・」

 

しかしバルドは動じない!! 必ず勝てるという自信が有ったのだ!!

スシブレードを信頼するスシブレーダーの力はスシの暗黒卿にも引けを取らない!!

 

「はああああああああああああああああああ!!」

 

オーモリのスシブレードに乗ったマグロの切り身が直立を始めた!!

そして次々と直立したマグロにマグロが絡まり一本の槍、 いや銛を造り出した!!

 

「喰らええええええええええええええええええええええええええ!!」

 

銛がバルドに向かって放たれる!! バルドは咄嗟に回避し銛は遥か彼方に吹き飛んだ!!

そして沖合に飛ばされた銛は海面に着水!! 巨大な水柱となった!!

その水柱は津波となりて船上を揺らした!!

 

 

尚、 この戦いとは別に行われていたフレアオクトパスとノスタルジー

グリードとゾーバの戦いはこの津波による余波によってフレアオクトパスのタコの唐揚げが

海水で駄目になり戦闘不能!! ノスタルジーも津波で増えた水量を凍らせてしまい

身動きが取れず戦闘不能!! グリードとゾーバの勝利に終わった!!



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激戦!!バルトVSダースシ・オーモリ!!その2

津波で船が揺れる!!

 

「上手く躱した様だな・・・だが次は無い!!」

 

再度マグロの切り身をスシブレードに乗せるオーモリ。

 

「オーモリ、 だったか?」

「あん?」

「逃げたな」

「は?」

 

オーモリの動きが止まる。

 

「君は逃げたんだ」

「・・・何の事だ?」

「何故僕を狙った? スシブレードに当たって砕ければ僕の敗北は必至だ

それなのに何故僕を狙った? 僕のエッグヴィーナスが恐ろしいのか?」

「・・・・・挑発か」

 

くすり、 と笑うオーモリ。

 

「面白い事言う餓鬼じゃねぇか、 さっきの破壊力を耐えられる、 と?」

「あぁ、 僕のエッグヴィーナスはあの程度の攻撃は耐えられる」

「大きく出たな・・・」

 

オーモリがバルドの眼を見る、 濁りも曇りも無い眼だ。

 

「良いだろう、 その挑発、 乗ってやるよ」

 

再度展開される赤身の銛!! そして銛が放たれエッグヴィーナスに激突する!!

 

「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」

 

互いに叫ぶ二人!! 魂と魂のぶつかり合い!! 果たして勝者は何方か!?

 

がきぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

衝撃音が鳴り響く!! 弾かれたのは赤身の銛!!

 

「くっ!!」

 

向かって来るエッグヴィーナスをマグロ大盛りで迎撃する!!

がっがっ!! と打ち合う!! 互いに吹っ飛び互いのスシブレーダーの手に戻った!!

 

「互いに力を使い果たしての相打ちか・・・だがもう一度だ!!

3, 2, 1, へいらっしゃい!!」

「っ!!」

 

再度射出されるエッグヴィーナスとマグロ大盛り。

 

「こうなったら・・・やるしかねぇ!!」

 

決心するオーモリ!!

マグロ大盛りとは別にシャリ玉を取り出して回転をさせた!!

 

「なんだ?」

 

オーモリは懐から何かを取り出した、 あの輝きは・・・大トロ!!

大トロを取り出してシャリ玉に・・・乗せない!?

いや、 乗っている物も有るがこれは一体・・・!?

 

「ふっ・・・懐かしいぜ・・・これを使うのはあの時以来だ・・・」

 

 

 

鶴帝国がまだ存在した時の事、 オーモリが自身の村を守る時に使った

大トロ大盛り!! 当時はまだ闇の力のコントロールが甘く

まともにシャリの上に切り身が載せられなかった

そして赤身より大トロの方が強いだろうという考えから大トロを使用して銛を放ったのだ!!

 

結果として恐ろしい破壊力の三又の銛が出来上がった!!

摩擦とマグロの油分で火が点火されその威力マグロの赤身の銛の数倍!!

強大な力だが反動もデカくあわや大惨事になりかけた!!

 

 

「あの時は俺一人だけだった・・・だからこそ周囲を気にせず使えたが・・・

今こそ使わねばならない様だな!!」



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激戦!!バルトVSダースシ・オーモリ!!その3

雑に積み上げられた大トロ、 直立し硬化

そして雑に積み上げられた部分が三又となり地面と接地し摩擦で着火!!

 

「これがダースシ・オーモリ最大の奥義!! 受けて・・・みろ!!」

 

着火した三又の銛が投擲される!!

その銛の狙いはバルド!!

 

「くっ・・・!!」

 

回避しようとするバルドだったがスピードが段違いである!!

万事休す!! ここでバルドが死んでしまったら誰だダークネスシ帝国を打倒するのか!?

しかしここでエッグヴィーナスとバルドの絆が奇跡を生んだ!!

エッグヴィーナスが急加速し三又の銛をカチ上げたのだ!!

 

「何ィ!?」

 

読者の中で物理学に博識な方は居るだろうか!?

前に進む力が強い程、 横からの力には弱い!!

つまり三又の銛の進む力た強過ぎるあまり横からの力に負けてしまい

銛がカチ上げられる事になったのだ!!

 

燃え上がりカチ上げられた銛は物理法則の何たる悪戯か!?

ゆらりとダースシ・オーモリの元に向かって行った!!

 

「あっ」

 

ぐさり

 

あまりの異常事態に呆気に取られて出遅れたオーモリは哀れ

三又の銛に突き刺され炎上を始めたのだった!!

マグロ大盛りのスシブレードも持ち主の運命と共に爆発四散!!

 

「ぐあああああああああああ」

 

オーモリは燃え上がりながら思った、 何故自分はバルドを狙ってしまったのだろうか。

エッグヴィーナスに三又の銛で攻撃すれば勝てたのでは無いだろうか?

実際そうだったのかもしれない、 しかしオーモリの心の奥底で

恐怖と不信感を抱いてしまったのだ

真正面から自分の銛と激突し無事だったエッグヴィーナスに恐怖を

そして自分のスシブレードであるマグロ大盛りを信じ切れなかったのだ。

その結果が最高の技でバルドを狙った、 と言う事なのだ。

しかし絆で結ばれたバルドとエッグヴィーナスは予想以上に強かった。

その為、 オーモリは敗北しバルドは勝利したのだった。

 

「・・・・・」

 

消火バケツに手を伸ばすバルド。

 

「余計な御世話だ!!」

 

オーモリが叫ぶ。

 

「負けて捕虜になるつもりはねぇ!!」

「闇への忠義立てのつもりか?」

「忠義、 か!! 闇の親方は俺達の村を評価し認めちゃんと金を支払ってくれた!!

搾取するだけだった連中とは違って対価を払ったんだ!!

だから俺も義を通そう!! ここで死んで闇に忠義立てをして村を守る礎となる!!」

 

ばっ!! と両手を上げるダースシ・オーモリ。

 

「勝ってくれよ!! 闇の親方!!」

 

そう叫ぶとダースシ・オーモリの体の中の闇の力に火が燃え移り

オーモリの体は爆発四散した!!

 

「うわあああああああ!!」

 

バルドも爆風に巻き込まれ吹き飛ばされたのだった。



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病室にて

バルドが目を覚ますと見知らぬ天井だった。

 

「ここは・・・」

「目が覚めたか、 バルド」

 

ハウがバルドが寝ているベッドの横で待機していた。

 

「ハウさん・・・僕は・・・僕達は・・・」

「ジューンの手下は殆ど死んだが俺達は勝利したよ」

「オーモリは・・・倒せたんですか」

「あぁ死体がバラバラになって確認したよ」

「そうですか・・・ここは?」

「治療院だ」

「・・・・・」

 

一息つくバルド。

 

「あれから如何なりました?」

「あれからダークネスシ帝国派の連中は駆逐出来た

ダースシ・オーモリを打倒出来たのが良かった様だ

この街はダークネスシ帝国から奪い取ってダークネスシ帝国の魚の供給はこれで断ち切れた」

「良かった・・・」

「良い報せばかりではない、 モン・カラ湿原での戦いで三国軍が敗北したらしい」

「そんな!?」

 

驚愕するバルド。

 

「じゃ、 じゃあ僕達は急いで戻」

「いや、 ここで待機だ」

「待機!?」

「ダースシ・ヴォルフガング率いる部隊がこちらに進軍しているらしい」

「ダースシ・ヴォルフガング・・・」

「あぁ、 ヒノモトに駐屯していた様だが如何やらヒノモトよりも

ここの奪取の方が優先されるらしい」

「そうですか・・・」

「休む暇も無しだな・・・」

「そうですね・・・」

 

窓の外を見るバルド。

 

「恨む間も無し、 ですね」

「ジューンか」

「えぇ・・・恨み言を言いたかったけどももう死んでしまった」

「あぁ、 奴とヘカトンケイルの死体も出て来た

両者酷い死に顔だった・・・」

「・・・・・」

 

戦争とは何もかも奪い去る物なのか、 死者を悼む時間も惜しむ時間も恨む時間も無い。

何と凄惨な物だろうか。

 

「ヴォルフガングが来るまでどれ位ありますか?」

「半月かかるかかからないか位だろう」

「そうですか・・・他の皆さんは?」

「休んだり修行したりスシブレードの試行錯誤をしたりと・・・色々だ」

「そうですか・・・」

 

その時部屋のドアが開かれた。

 

「バルド、 起きたか」

「三崎さん」

 

三崎が部屋の中に入って来た。

 

「まずはスシの暗黒卿を倒せた事を祝おう」

「ありがとうございます」

「それで色々聞きたいんだが良いか?」

 

食い気味に来る三崎。

 

「え、 えぇ大丈夫ですよ」

「じゃあまずはちょっとスシブレードを見せて貰えないか?

スシの暗黒卿の技の切れは遠くから見ていたがアレに対抗出来るとは思えない

是非とも調べさせてほしい」

「見る程度だったら・・・」

「ありがとう」

 

画してダースシ・オーモリとヘカトンケイルを倒した一行。

次なる戦いに向けて準備が始まったのだった。



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極秘!!カスタマイズスシブレーダーズ!!

スシブレード:エッグヴィーナス・カスタムE

攻撃力:C 防御力:S 機動力:C 持久力:S 重量:B 操作性:S

バルドが使用する卵の海苔巻きの海苔が卵になったスシブレード。

対海用に作り上げたスシブレードだが

手を加えてじっくり作り上げた事でバルドのスシブレードとの絆が増し

カタログスペック以上の力を発揮する事が出来るので実際の能力は

一回り以上増していると考えて差し支えない。

バルドの想い込められたスシブレード、 彼の相棒と言って良い。

まだ卵の焼き加減が甘いので向上の余地がある。

 

スシブレード:イクラリオン・カスタムQ

攻撃力:S 防御力:E 機動力:E 持久力:D 重量:D 操作性:E

ウェッジが使用するキュウリでのイクラの軍艦巻きのスシブレード。

キュウリを使用した事による耐水性の向上の他に

ウェッジの狙撃性能の高さからスシブレードの運用はほぼ捨てて

イクラ狙撃特化のスシブレードになっている。

ピーキーなスシブレードの為、 通常のイクラリオンと二台持ちである。

 

スシブレード:テッカマーズ・カスタムE

攻撃力:A~C 防御力:B 機動力:B 持久力:C 重量:B 操作性:C

シャルが使用する鉄火巻きの海苔が卵になったスシブレード。

ふり幅が大きい攻撃力は相変わらずで高威力が出やすくなったが最大火力は低めになった。

まだ全体的に扱いが難しくなった。

 

スシブレード:シーエーチン・カスタムQ

攻撃力:C 防御力:C 機動力:A 持久力:D 重量:D 操作性:B

ラルフが使っていた海苔の代わりにキュウリを使った

ウニの軍艦巻きのスシブレード。

キュウリを使う事で防御力、 機動力は上がったが攻撃力が下がった。

スピードの向上はラルフにとって好ましかったがレッドに破壊されてしまった。

 

スシブレード:ワサビジュピター・カスタムE

攻撃力:C 防御力:C 機動力:C 持久力:C 重量:C 操作性:C

グリードが使う涙巻きの海苔が卵になったスシブレード。

卵を使用する事でワサビジュピターの山葵の良さが薄れてしまい

耐水性以外ではあまり強みが無いスシブレードになってしまった。

ノスタルジーに氷漬けにされてしまい、 使用不可になる。

 

スシブレード:ファットプラネッツ・カスタムE

攻撃力:A 防御力:S 機動力:E 持久力:S 重量:S 操作性:E

ゾーバが使う太巻きの海苔が卵になったスシブレード。

カタログスペック自体は悪くなく寧ろ向上しているのだが

卵を外枠に使ったと同時にゾーバの好みに合わない具材に変更した為

ゾーバとの親和性は低くカタログスペック通りの力量を発揮出来るかは疑問。



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極秘!!ジューンと手下達とスシブレーダーとスシブレード名鑑

ジューン・ナグラ・ヤナイカイ

日に焼けた顔の年若い男

元サンシャイン王国辺境ミンガンのレーア伯爵令嬢の騎士だったが

レーア伯爵令嬢を裏切りダークネスシ帝国に着く

しかしダースシ・ヴォルフガングのスシブレードを食べた事による脱糞を機に

ダークネスシ帝国からも離反、 その後、 各地を回って手下を集める。

忠義を得られたかは微妙だが騎士としての教養から無駄にカリスマ性が在った様だ。

食べ物とすら言えない物を無理矢理食べ物と組み合わせスシブレードとして扱う外道。

最終的にヘカトンケイルと共に地獄の苦しみの中相打ちになった。

 

使用スシブレード:ガソリンカクテル

攻撃力:- 防御力:- 機動力:A 持久力:E 重量:E 操作性:C

ガソリンと酒を混ぜた飲み物とすら言えないスシブレード。

ガソリンをばら撒く事が目的なので攻撃力防御力共に無しと表記される。

 

使用スシブレード:おにぎり爆弾

攻撃力:SS 防御力:- 機動力:B 持久力:E 重量:C 操作性:C

爆弾を入れたおにぎりのスシブレード。

相手を爆殺する事が目的なので最早食べ物とは言えない。

破壊力は高いが使い捨てである。

 

親方”闇”からの総評

史上最低のスシブレーダー。

これをスシブレードと認めるならばトラックですらスシブレードだろう。

所詮裏切り者の考えなんてこんな物。

 

 

闇号:カニカマ

本名:エイト・ラフ

白い肌と赤い髪が特徴的なヤミ・アプレンティス階級の闇のスシブレーダー

元々は漁民だったが闇のスシブレーダーになった。

しかし現状に不満を抱き離反しジューンの軍門に下った。

好物はカニカマ、 安くて旨い、 蟹が何であんなに高いのか理解出来ない。

ヘカトンケイルに殺害される。

 

使用スシブレード:カニカマ

攻撃力:D 防御力:D 機動力:C 持久力:C 重量:D 操作性:B

カニカマのスシブレード。

安っぽいチープな物だが大量生産が可能で大量に持つ事が可能である。

カニカマはこのスシブレードを大量に持って扱う事が可能だった。

 

親方”闇”からの総評

蟹とカニカマの違いが分からないって馬鹿舌にも程があるだろ。

何だコイツ。

 

 

闇号:恵方巻き

本名:オーン・フリー・ター

ドレッドヘアが特徴的なヤミ・マスター階級の闇のスシブレーダー。

元々は鶴帝国の貴族で棒術の達人だったが祖国を追われ

力を求め闇のスシブレーダーになり、 ヤミ・マスターになった所で

反旗を翻しジューンの手下になる。

ヘカトンケイルと交戦したが殺害される。

 

使用スシブレード:恵方巻き

攻撃力:A 防御力:C 機動力:- 持久力:- 重量:S 操作性:S

恵方巻きのスシブレード、 の様な何か。

非常に長く、 射出せずに棒の様に扱う、 闇の力で回転させたり

鎖を仕込んでヌンチャクの様に使用する事も可能。

 

親方”闇”からの総評

射出しないスシブレードって意味が分からない。

トラックの方がまだスシブレードをしていた。



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極秘!!スシの暗黒卿のスシブレーダーとスシブレード名鑑

闇号:ヘカトンケイル

本名:シーリン

首から下が大量の腕で構成されているスシの暗黒卿。

より素晴らしい作品を造り出す為の変容と考えられており

ヘカトンケイルの美的センスによると美しいとされる。

ヘカトンケイルは芸術家で彫刻を主に作っていたが伸び悩んでいた。

躍動感のある作品を作りたいと徘徊していた所に”闇”と出会い。

スシブレードを見た事により、 動く造形物としてのスシの美しさに惹かれ

スシブレーダーとなった、 それ以来スシブレードにのめり込み

スシをより美しく見せる為に様々な工夫を凝らしスシブレードを造り出した。

様々な過程を経てヘカトンケイルが最も美しいスシは自分で作り上げた彫刻であった。

しかし作成する労力が非常に高い為にマグロにニスを塗ったスシを造り出した。

腕を使っての超高度跳躍が可能など凄まじい能力を持った彼だったが

最後はジューンと壮絶な相打ちになった。

 

使用スシブレード:ニスを塗ったマグロ

攻撃力:B 防御力:B 機動力:C 持久力:C 重量:C 操作性:C

ニスを塗ったマグロのスシブレード。

普通のアルティメットマグロにニスを塗った代物。

当然食べられない、 艶やかで美しくなっただけであるが

ヘカトンケイルは好んで使用する。

ニスを塗った事で多少の好守の上昇が見込める。

 

使用スシブレード:彫刻

攻撃力:SSS 防御力:- 機動力:A 持久力:- 重量:B 操作性:-

寿司型の彫刻のスシブレード。

見た目では分かり難いが深い溝が刻まれライフリングの役割を果たし

横回転しながら真っ直ぐ飛ぶ、 銃弾の様な運用が可能なスシブレード。

美しさに拘るヘカトンケイルが魂を込めて造り出した逸品。

 

親方”闇”からの総評

スシの美しさに着目するあまり旨さを完全に放棄した男。

スシを芸術作品と見るその感性には正直付いていけない。

 

 

闇号:ダースシ・オーモリ

本名:オード・マンテル

力強い印象の海の男と言う言葉が似合う風貌。

元々は鶴帝国の大規模な漁村の網元だったが、 安く魚が買い叩かれ

無茶な注文、 災害時の支援の不足等による扱いの悪さに不満を持っていた。

そこに”闇”が接触して闇のスシブレーダーになった。

兎に角大量に豪快に使う事を是としておりマグロを大量に使った

マグロ大盛りを自分のスシブレードとしている。

また網元時代から自分を慕い闇のスシブレーダーとなった配下達を

とても大切にしており、 実力を問わずにスシトルーパーに任命している。

その為、 スシブレードも部下も大盛りと揶揄させる。

”闇”が自分達を評価し多大な見返りを与えた事に恩義を感じ

助かる道を選ばす爆死した。

 

使用スシブレード:マグロ大盛り

攻撃力:S 防御力:S 機動力:E 持久力:S 重量:S 操作性:D

マグロの切り身が大量に乗ったスシブレード。

マグロの切り身をイクラリオンのイクラの様に飛ばす事も可能だが

その真価は銛状にマグロの切り身を纏めて射出する事にある。

切り身を大トロにする事で摩擦熱で燃え盛る銛にする事も可能。

 

親方”闇”からの総評

実力は高くネタも発想も非常に良い、 しかし悲しいかな

守る物と手下が多過ぎて実力を発揮出来たかは怪しい。

守る物の為に実力を出せずに手下が多過ぎて戦闘経験が少ない

それが自信の喪失に繋がったと推測する。



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極秘!!スシトルーパーのスシブレードとスシブレーダー名鑑その1

闇号:ファントム・シェル

本名:カーボン・コウィル

ダースシ・オーモリのスシトルーパー、 実力的にはヤミ・マスターである。

帳簿係を務めており金庫番の様な仕事をしていた。

腹に入れば何でも一緒の精神で代替魚を好んで食べる傾向にある。

ケチな性格だが戦いにおいてはケチりながらも惜しまない。

ハウと漁師達によって倒され捕らえられたがいざという時の為に

作っておいた牢屋からの脱出口から逃走。

横領で作った隠し財産を元手に再出発を試みる。

 

使用スシブレード:ロコ貝

攻撃力:E 防御力:E 機動力:C 持久力:E 重量:E 操作性:C

ロコ貝のスシブレード。

アワビの代替品であるロコ貝を使う事で大量に用意出来る。

更にロコ貝が薄っぺらいのでかなり能力は低く更にコストが抑えられている。

非情に弱いスシブレード故に街中での防衛戦で街を傷つけずに済む等の利点がある。

 

使用スシブレード:アワビ

攻撃力:C 防御力:C 機動力:B 持久力:D 重量:D 操作性:S

アワビのスシブレード。

ファントム・シェルの本命のスシブレード。

操作性が高く、 非情に滑らかな動きが出来る。

 

親方”闇”からの総評

ちょっとケチり過ぎじゃないか?

もっとちゃんとネタを使ってもバチは当たらないだろ。

 

 

闇号:シースネーク

本名:スキンガ

ダースシ・オーモリのスシトルーパー、 実力的にはヤミ・マスターである。

元漁師の中でも特に体力があり逞しい男である。

オーモリを認め弟分の様に接され、 オーモリと同じく闇のスシブレーダーとなる。

質よりも量を欲するので代替魚を好んで食べる。

ウェッジの計略に嵌り捕鯨船に食われ死亡する。

 

使用スシブレード:ウミヘビ

攻撃力:A 防御力:A 機動力:E 持久力:E 重量:S 操作性:C

ウミヘビのスシブレード。

アナゴの代用魚のウミヘビをたっぷり使用し

最早ネタがシャリにとぐろを巻いている様な形状になっている。

高い攻撃力の代償として持久力が犠牲になっており、 射程距離が短い。

 

親方”闇”からの総評

ちょっとネタを存分に使い過ぎているな、 もう少し自重しろ。

 

 

闇号:レッド

本名:トライオキュラス

ダースシ・オーモリのスシトルーパー、 実力的にはヤミ・マスターである。

元々は競り師で様々な魚を競り落とし鶴帝国の様々な場所に卸していたが

代替魚を本物と偽って販売する等、 信用を著しく損なう行為を平然と行い

利益を得ていた、 その事が取引先にバレてしまい、 職を追われた所を

オーモリに拾われ闇のスシトルーパーになった。

裏で金次第でダークネスシ帝国以外のスシブレーダーにもネタを提供する等

あくどい事を行っていたが実力だけは本物だった。

ラルフとシャルによって倒され捕縛されファウンデーション教国に寝返る

彼が金で集めていた様々な食材を提供する事で命は繋げたが

前々から確執が有ったフレアオクトパスに闇討ちに遭い死亡する。

 

使用スシブレード:アカマンボウ

攻撃力:C 防御力:C 機動力:C 持久力:D 重量:C 操作性:C

アカマンボウのスシブレード。

アルティメットマグロの下位変換。

コストが安いのが特徴。

 

親方”闇”からの総評

コイツが裏で集めていた食材は結構凄いのが揃っていた

闇のスシブレーダーとしてでは無く食品調達の腕の方が凄かったな。

 

 

闇号:フレアオクトパス

本名:レイアニ

ダースシ・オーモリのスシトルーパー、 実力的にはヤミ・マスターである。

元々は料理人でダースシ・オーモリとそのスシトルーパー達のスシブレード製作者である。

レッドに何度も騙されており恨みを抱いているが

彼の分の仕事に手抜きはしない職人気質な性格。

料理人で包丁捌きも素晴らしいが本人はスシを生魚で料理していないと思い

スシを見下している、 その為、 自分のスシブレードは火を通した物である。

また闇の力は凄まじいがスシブレードに関しては素人並の実力であり

スシブレードの力に全て任せた戦術である。

オーモリの攻撃の余波でスシブレードが濡れて戦闘不能になるが逃亡

潜伏した後に恨みを持っていたレッドを殺害後逃走する。

 

使用スシブレード:タコの唐揚げ

攻撃力:S+ 防御力:- 機動力:S 持久力:- 重量:C 操作性:-

タコの唐揚げのスシブレード。

本来ならばスシブレードとして運用するべきなのだが

フレアオクトパスは保持したまま高速回転させて着火

暴走状態で無理矢理スシブレードが射出すると言うやり方で使用する。

暴走状態で放っているので操作は殆どしておらず狙いもまともに付けられない。

しかし破壊力は凄まじいの一言。

 

親方”闇”からの総評

スシブレーダーよりも寿司職人になった方が良い人材。

しかしスシを見下すのは許せん。

 

 

闇号:ノスタルジー

本名:ティバナ

ダースシ・オーモリのスシトルーパー、 実力的にはヤミ・マスターである。

オーモリのスシトルーパーの中でも最古参で謎の多い老人である。

元々は鶴帝国の大貴族だったらしいが何故か流れ着き漁師として働き

順調に出世してオーモリの御意見番になった。

オーモリが闇のスシブレーダーになった時には自分も付き従い

最期まで見守る事を決意する等、 オーモリに対して特別な感情を抱いている。

氷を操り相手の出方を伺う戦術を取るがグリードとゾーバとの戦闘中に

オーモリの攻撃の余波で身動きが取れず戦闘不能になった。

その後、 何とか抜け出たがオーモリが敗北した事を知り投降。

ファウンデーション教国への協力を拒否し縛に着く。

 

使用スシブレード:メロンシャーベット

攻撃力:B 防御力:A 機動力:C 持久力:S 重量:D 操作性:A

メロンシャーベットのスシブレード。

氷を操る冷気系のスシブレードで主に防御面に重きを置いており

氷を周囲に張り巡らせて防御しつつ相手の隙を伺う運用をされていた。

 

親方”闇”からの総評

何と言うか闇のスシブレーダーには中々居ないタイプの爺さん。

何で闇のスシブレーダーになったんだろ?



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極秘!!スシトルーパーのスシブレードとスシブレーダー名鑑その2

闇号:サンドイッチ

本名:タスケン

ダースシ・オーモリのスシトルーパー、 実力的にはヤミ・アプレンティスである。

オーモリの昔馴染みで舎弟の様な男、 オーモリには昔から世話になっており

オーモリを慕っている、 大海戦には参加しなかったが

オーモリの死後、 オーモリが守りたかった村の中でも

オーモリの支持者達を集めて逃走する等、 オーモリへの忠義を見せる。

 

使用スシブレード:サンドイッチ寿司

攻撃力:A 防御力:B 機動力:A 持久力:B 重量:A 操作性:C

サンドイッチ寿司のスシブレード。

ネタとネタでシャリを挟んだ代物でネタの摩擦で素早く行動出来

更に大型化も容易なスシである。

反面、 摩擦で操作性が低いのがネックである。

 

親方”闇”からの総評

もう少し上を目指せる人材だが舎弟根性が染みついている、 残念。

 

 

闇号:食べ比べ

本名:オートラン

ダースシ・オーモリのスシトルーパー、 実力的にはヤミ・アプレンティスである。

自称美食家と言う触れ込みの成金で旨い魚介を食べる為に行動している。

闇のスシブレーダーになったのも旨いスシが目当てでオーモリの宴にも良く参加していた

気前の良い男で食にしか興味が無く、 身形にも気を使わないので

彼が金持ちだという事を知る人は少なかった。

エミリーとの戦闘で昏倒し捕縛される。

 

使用スシブレード:中トロの炙り寿司と普通のマグロ寿司

攻撃力:B/C 防御力:D/C 機動力:B/C 持久力:D/C 重量:C/C 操作性:B/D

中トロの炙り寿司と普通のマグロ寿司のスシブレード。

世にも珍しい二つで一つのスシブレード。

グルメならではの発想とも言える、 緩急の付いた攻撃は厄介である。

 

親方”闇”からの総評

発想は買うが実力は無いな、 面白いのは確かだが。

 

 

闇号:タルタル

本名:ヴァラリアン

ダースシ・オーモリのスシトルーパー、 実力的にはヤミ・アプレンティスである。

流れ者の女で過去の経歴は不明、 ヴァラリアンと言う名前も偽名の可能性が高い。

色々あくどい事をやっており、 オーモリと険悪になりかけたが

オーモリの蜂起に同調し彼に付き従う事になった。

彼の庇護下で様々な非合法活動を行っておりそれなりの資金を得た彼女は

エミリーとの戦いで敗れ捕縛されたが見張りを買収して脱走。

その後の足取りは知れない。

 

使用スシブレード:とり天タルタルソースがけ

攻撃力:B 防御力:A 機動力:A 持久力:A 重量:C 操作性:E

タルタルソースのかかった鳥の天婦羅のスシブレード。

タルタルソースの油分で相手の攻撃を受け流す事が出来る。

更に油分で素早く動けるが代償として操作性が悪くなった。

 

親方”闇”からの総評

良くも悪くもテンプレートな闇のスシブレーダー、 これからに期待。

 

 

 

闇号:ブラック

本名:ミゼル

ダースシ・オーモリのスシトルーパー、 実力的にはヤミ・アプレンティスである。

漁師達の中でも花形と呼ばれるマグロ漁の漁師の家系の息子。

しかし子供の頃に親が漁での事故で死亡し

見舞金が殆ど支払われなかった事からやさぐれる。

オーモリが家の金を持ち出し支援を受ける事で何とか立ち直り

オーモリに忠誠を誓い、 彼が闇のスシブレーダーになった後も付き従える。

スシブレードが破壊され刃物を向けられた事により命の危機を感じ逃走。

しかしオーモリ敗北後は自分達の生活が如何に苦しく凄惨な物だったかを

知らしめる発言の機会を得る為に自首をして自ら縛に着いた。

 

使用スシブレード:イカスミスパゲッティ

攻撃力:B+ 防御力:D+ 機動力:A 持久力:C 重量:B+ 操作性:D+

イカスミスパゲッティのスシブレード。

麺による攻撃をメインとした寿司で回転とともに飛散するイカ墨は

相手の回転の阻害や戦意の喪失を引き起こす。

 

親方”闇”からの総評

ハングリー精神溢れるスシブレーダー。

自首をするというのは少し面食らったがこれからに期待。

 

 

闇号:Mr.オクトパス

本名:ティナ

ダースシ・オーモリのスシトルーパー、 実力的にはヤミ・アプレンティスである。

彼は村の出身者だったが村から出ていった男である。

稼ぎにならないから都会に出たが都会は彼に冷たかった。

やがて彼は闇のスシブレーダーとなり、 ソルジャースシになった。

そしてヤミ・アプレンティスになった時点で故郷に戻る事を決心した様だ。

故郷を愛した彼は故郷の変化を良い物と思い、 オーモリに協力した。

ゴハンとナルとの戦闘を行い、 最初は優勢だったが徐々に押され逃走。

 

使用スシブレード:タコの様に切られたウィンナー

攻撃力:C 防御力:C 機動力:C 持久力:D 重量:C 操作性:B

タコの様に切られたウィンナーのスシブレード。

タコの様に切られた部位で多段攻撃が見込める。

 

親方”闇”からの総評

段階を踏んで前に進む、 好青年だな。

 

闇号:イカゴロ

本名:グリーズ

ダースシ・オーモリのスシトルーパー、 実力的にはヤミ・アプレンティスである。

彼の詳しい経歴は明かされてはいないが本人曰く村の漁師だったらしい

しかし彼の知っている村とは差異が激しいらしい。

何を思ったのか難破船の中に入ってしまい、 暫く彷徨い何とか脱出に成功したとの事。

難破船に入って生きて帰って来た数少ない人間でやや不明瞭な事を言う事もあるが

生活の為に仕事をする常識力は有る様だ、 闇のスシブレーダーになったのも生活の為である。

ゴハンとナルとの戦闘を行い、 最初は優勢だったが徐々に押され逃走。

 

使用スシブレード:ルイベ

攻撃力:C 防御力:A 機動力:B 持久力:C 重量:C 操作性:B

凍ったまま薄切りにした刺身のスシブレード。

イカの内臓を凍らせており、 高い防御力が特徴。

しかし凍らせた物なので時間経過で解けるのが難点。

熱攻撃にも弱い。

 

親方”闇”からの総評

謎が多くて良く分からん、 何なんだコイツ?

 

 

闇号:カジキマグロ

本名:ニル・スパー

ダースシ・オーモリのスシトルーパー、 実力的にはヤミ・アプレンティスである。

出稼ぎの現場監督をしている、 カジキマグロの様に顔が変容した男。

元々は出稼ぎ労働者の息子で身寄りが無かった為に一緒に親とやって来た。

しかし親が死んで、 自分一人残され劣悪な環境で働かされる事になった。

何度も死にかけながらも海の男として成長した彼はやって来た

出稼ぎ労働者に自分と同じ目に遭わせる事を生きがいとして陰湿な事をする人間になった。

出稼ぎ労働者をいびろうとした時にバルドから背後から襲われ倒れる。

その後、 暫く入院している間に大海戦が終わり縛に着く。

 

使用スシブレード:カジキマグロ

攻撃力:C 防御力:C 機動力:C 持久力:C 重量:C 操作性:C

カジキマグロのスシブレード。

アルティメットマグロと大差無いスシブレードである。

 

親方”闇”からの総評

誰だっけこいつ



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第十一章:スシブレード・バトル・アソシエーション
オープニング・クロール


大海戦を勝利で飾ったバルド達ファウンデーション教国スシブレーダー一行だったが

勝利のお祝いパーティをする事態では無いのだ。

 

モン・カラ湿原での敗北により戦局は大混乱に至った。

 

その混乱の最中に入って来た情報によるとダースシ・ヴォルフガング率いる部隊が

バルド達の元に進軍中との事、 休む暇は与えないつもりなのか。

ファウンデーション教国及び三国からの救援は期待出来そうに無い状況。

バルド達が如何に強かろうと軍隊に勝ち目が有るのかと問われれば否と答えるしかない。

しかしながらバルド達が居る村は極めて重要な拠点。

ダースシ・オーモリを死闘の末に撃破してやっと手に入れたのだ離れる訳には行かない・・・。

 

ダースシ・ヴォルフガングが来るのは半月後

半月の間攻撃を耐え忍ぶのは地獄の一言、 凄惨の二文字!!

ファウンデーション教国が急ぎ部隊を編成しても一月はかかる!!

果たしてバルド達はダースシ・ヴォルフガング達に勝つ事が出来るだろうか!?

 

バルド達はバルド達で出来る事をする事にした。

スシブレードとの理解、 新しいスシブレードの開発、 強化。

陣形、 戦略、 議論は進めど答えは見えず。

天はバルド達を見放したのだろうか? 否、 希望はまだ潰えてはいないのだ。

 

 

 

モン・カラ湿原で敗北し捕虜となりサンダリ牢獄に囚われたサイ。

彼女は一兵卒としてモン・カラ湿原での戦いに参加していたのだ。

彼女は聖女の娘、 七光りと軽んじられていたが彼女自身、 並の女では無いのだ。

彼女は隙を見て脱獄に成功した、 そして何とか捕虜解放の機を伺っていたのだった。

そんな中でダースシ・ヴォルフガングの軍隊がバルド達を襲う事を知ったのだ!!

軍隊相手ではバルド達も旗色が悪い!!

何としてでもダースシ・ヴォルフガングを止めなくてはならない!!

しかし自分では如何にも出来ない、 そこでサイは一縷の望みを託して

何かしらの理由で捕まっている闇のスシブレーダー達を解放する事に決めたのだった。

闇のスシブレーダーにも悪人ばかりではない、 ダースシ・セキユーの様な人間も居るのだ

力になってくれる様なスシブレーダーが居るのかもしれない。

博打に近い、 いや、 最早身投げに近い策、 策とすら呼べない物かもしれない。

しかし急がねばバルドは殺されてしまう!! バルドが死ねばファウンデーション教国の

勝利は無いだろう!! 人的損失、 そして村を取り戻されるのは非常に手痛いのだ!!

 

過去に多大な失敗を犯し、 母親を失ったサイ

彼女はバルド達を救えるのか!?



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何故捕まえているのか?

サンダリ牢獄の外部、 外で巡回しているヤミ・アプレンティスの二人組。

メネギとハムは欠伸をしながら見回りを続けていた。

 

「くだんねーなぁ・・・ハムちゃんよ、 こうやって見張りする意味有るのか?」

「逃げられたら困るじゃないですか?」

「逃げて如何するって訳だよ、 連中の連合軍でも

俺達は止められなかった、 逃げてリターンマッチをしても俺達には勝てねぇだろ」

「まぁそれは道理ですけど・・・

噂では主なスシブレーダーは一緒に居なかったらしいじゃないですか」

「けっ、 如何だかねぇふわぁ・・・」

 

メネギは尚も欠伸をしていた。

 

「所でメネギさん、 一個聞きたい事が有るんですけど」

「何だ?」

「何で私達は三国の敗残兵を捕まえてるんですか?」

「あ?」

「だってその場で殺した方が良く無いですか? 飯とかも与えないといけないですし」

「さぁな、 捕虜にして何か交渉に使うかもしれない」

「交渉ですか・・・何をするつもりなんでしょうね」

「それは俺にも分からん、 きっと上が何とかするんだろうさ」

「あー・・・じゃあもう一個聞いても良いですか?」

「何だ?」

「闇のスシブレーダーも捕まっているじゃ無いですか

アレこそとっとと殺した方が良いんじゃないですか?」

「・・・・・知らねぇな、 何で殺さないんだろ」

「殺さないのでは無く殺せないのだ」

 

ヤミ・マスターの豆巻きが二人の元にやって来る。

 

「お、 おぉ!? マスター豆巻き、 何故ココに!?」

「捕虜共と同じ空気を吸うのは気が滅入るからな、 散歩だよ」

 

豆巻きは炒った大豆をぽりぽりと食べ始めた。

 

「喰うか?」

「いえ、 結構です・・・」

「マスター、 殺せないとは一体・・・?」

「ふむ、 単純な話だ、 捕まっている闇のスシブレーダー達は

殺すまでも無いが失敗した者、 頭が可笑しくなった奴とかそういう連中なんだ

そういう連中を一ヶ所に閉じ込めた内に闇の力が合わさり合ったのか何なのかしらんが

異空間が形成されたのだ」

「異空間?」

「そうだ、 お陰で闇のスシブレーダー達が居る区画は

行きはよいよい帰りは恐い、 と言う滅茶苦茶な場所になってしまったのだ」

「そうなんですか・・・」

 

ぽりぽりと大豆を食べる豆巻き。

 

「ホントに大豆要らんのか?」

「結構です・・・」

「ふむ・・・そうか」

 

不機嫌になる豆巻き。

 

「あ、 わ、 私達は見回りの仕事が有りますのでこれで失礼します!!

行くぞハム公」

「は、 はい、 失礼しますマスター!!」

 

そそくさと立ち去るメネギとハムであった。

 

「ふん・・・」

 

ぽりぽりと大豆を食べながらその場から去る豆巻きだった。



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美人のソルジャースシ

ぽりぽりと大豆を食べながら適当にサンダリ牢獄の周囲をうろつく豆巻き。

塀の中では息が詰まると外に出て来たのは良いが大して気晴らしにもならない。

 

「あぁ・・・何か面白い事無いかな・・・」

「あのー・・・マスター豆巻き、 よろしいでしょうか?」

「あぁ?」

 

豆巻きが振り返るとソルジャースシが一人居た。

 

「ソルジャースシか」

「はい」

「その声・・・女か」

「えぇ・・・まぁそうなんですが・・・」

「ふぅん、 顔を見せて見ろ」

「・・・・・・・・」

「如何した?」

「・・・・・何を見せろと?」

 

ソルジャースシが近づく。

 

「顔だよ顔」

「顔・・・ですか? マスター豆巻きとは初対面ですが・・・」

「美人か如何かを見るんだよ」

「こ、 こんな明るい所でですか?」

「は?・・・・・あぁそう言う事ね」

 

豆巻きの下心が発動した、 彼は十八禁な事を想像したのだ。

 

「まぁ、 とりあえず顔を見せて見な」

「え、 えぇ・・・では・・・」

 

ソルジャースシは近付いてヘルムを外した。

 

「おぉ、 美人さんじゃないか」

 

ソルジャースシはヘルムを被った。

 

「まぁ美人なら話を聞いてやってもいい」

「美人じゃなかったら殺されてたんですか・・・」

「まぁつまらん報告じゃなければ殺さんよ

何だ? ヤミ・アプレンティスが殺し合いでもしたのか?」

「え、 えぇ・・・そんな事しないでしょう」

「何だお前新入りか? 最近は殺し合いが流行っているんだぞ?」

「殺し合いが流行っている!?」

「そうだ、 ソルジャースシ同士、 ヤミ・アプレンティス同士で殺し合う事で

レベルが格段に上昇するんだ」

「そ、 そうなんですか・・・物騒ですね」

「実戦が有れば実力が上がる、 自明の理だ」

「は、 はぁ・・・しかし私の話は少し違っていまして・・・」

 

そう言ってソルジャースシは一枚の書類を出した。

 

「ん? 何だこれは?」

「捕らえられている闇のスシブレーダー達のエリアに行く為の許可が欲しいのです」

「許可?」

「はい」

「許可か・・・必要なのか?」

「えぇ、 見張りの人に入ろうとしたら許可が居ると言われまして・・・」

「ふぅん・・・まぁ良いだろう」

 

サラサラと書類にサインを書く豆巻き。

 

「・・・メクノ?」

「おっと間違えて本名を書いてしまったな、 失敗失敗、 ははは」

 

二本線で修正してちゃんとサインを書いた豆巻き。

 

「そういえば何で闇のスシブレーダーのエリアに行きたいんだ?

あそこは魔窟だぞ?」

「・・・・・」

「ふぅむ、 まぁ行くのは勝手だから止めはしないが

・・・その前に少し話でもしないか?」

「話・・・別に構いませんが・・・」



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豆巻き、死す!!

豆巻きは豆大福を海苔巻きで巻いたスシブレードを使うスシブレーダーである。

旨いのか如何かは謎だが相性が良いのだ。

やや太り気味だが上昇志向が強い、 ヤミ・アプレンティスとの殺し合いで

ヤミ・マスターになった彼はもっと上を目指していた。

何故ならば上に行けば行く程、 待遇が良くなっていくからだ。

彼は平民の出身で特にこれといった特徴も技能も無かった。

しかし出世すれば待遇が良くなっていくのだ。

ヤミ・アプレンティスの時点で貴族と見間違うばかりの部屋が自室となっている。

そして美人の部下と色んな事が出来る、 まさに理想の出世コースである。

そんな彼だが美人のソルジャースシを連れて来て自室で刺されていた。

心臓を背後から直撃、 即死である。

強いからと慢心し過ぎた様だった、 完全に気を抜いていた。

やったのはソルジャースシに化けていたサイであった。

 

「このエロ親父」

 

そう一瞥して部屋の中を物色していた。

とは言え彼はこのサンダリ牢獄では高い地位だが戦力としての地位であり

指令系統からは一歩下がった立ち位置である。

情報として囚われている闇のスシブレーダー達の情報を手に入れる事に成功し

幾つか物資は調達出来た、 酢飯やネタの幾つかである。

豆巻きは上昇志向が高く自分に合うスシネタは何か

その為に様々な創作寿司を思案し使っていたのだった。

目的はゲスでもその為の手段と努力は厭わない男なのだ。

 

「闇のスシブレーダー達への手土産としてはアリなのかしら・・・

持って行こう」

 

そう言って荷物をバッグに詰めて兜を被り直し豆巻きの部屋から立ち去った。

 

 

 

 

捕らえられている闇のスシブレーダー達のエリアに向かうサイ。

途中の見張りに豆巻きのサイン入りの許可証を見せる。

 

「確かに、 通れ」

「はい」

「待ちなさい」

 

サイの後ろから声がした。

振り返るとそこには顔面に巨大な第三の目が有る女性が立っていた。

 

「サーアイ様、 どうかしましたか?」

 

サーアイ、 マグロの目玉をスシブレードにするヤミ・マスターだ。

 

「ここは闇のスシブレーダーが囚われている場所

一体何の用事でここを通るんだ?」

「許可は頂いていますが・・・」

「許可? 誰から?」

「豆巻き様から・・・」

「やれやれあの色情魔め・・・少し説教をしないと・・・」

 

スタスタと去っていくサーアイ。

 

「じゃあ改めて通るわよ」

「あ、 あぁ・・・」

 

鉄格子を開けるソルジャースシ、 サイは鉄格子の中に向かって行った。

 

「さてさて、 アイツは生きて帰って来れるかなぁ?」

 

下卑た笑いがくつくつと聞こえる。



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サイケデリック・ダークネス・シティ

闇のスシブレーダー達が囚われている区画に向かうサイ。

長い長い廊下を進んで行く。

 

「長い・・・長すぎる・・・」

 

何と長い廊下なのだろうか、 ハッキリ言ってもう三十分は歩いて居る筈・・・

 

「・・・・・ちょっと休憩しよう」

 

サイは休憩を挟んだ、 疲労感は物凄い。

何故ならゴールが見えないのだ。

サイは水筒の水を飲んで懐中時計を見た。

 

「!?」

 

懐中時計を見て驚いた、 まだ1分も時間が経過していない!!

 

「時間も捻じ曲がっている・・・と言うの?」

 

ごくり、 と固唾を飲み込んだサイ。

 

「・・・・・」

 

ぱんぱんと自分の頬を叩く、 ここで音を上げてはいけない。

まだまだ先は長いのだ。

前に進むサイ、 かなり長い時間を歩いていると光が見えた。

光の下に進むとそこに有ったのは、 街並みだった。

屋内の筈なのに空が見える、 しかし空の色は青では無くサイケデリックな模様だった。

闇のスシブレーダー達の闇の力が作用しているのだろうか?

真っ当な空では無い。

 

「気が狂いそうね」

 

ソルジャースシの兵装を捨てるサイ。

ソルジャースシの兵装をしては舐められる可能性もある。

 

「ふう・・・」

 

街中を探索する。

街中は普通の街の様に店が並んでいる、 アパートも有る。

しかし周囲には潮と血の匂いが充満し

店先には”新鮮!! 本日取れたて!!”と書かれ吊り下げられた人の死体がある。

 

「・・・・・人肉スシはここではメジャーな様ね・・・」

 

ダースシ・セキユーを思い出すサイ。

彼のお陰で自分の人格は大分修正されているのだろう、 彼に感謝しなければ。

 

「・・・・・待てよ、 店が有ると言う事は通貨が有ると言う事?

ここではお金が無いと駄目なのかしら・・・」

 

サイが思い至る、 次の瞬間、 店の窓ガラスが割れる。

 

「ひゃっはー!!」

 

強盗の様な強盗にしか見えない、 概ね強盗の強盗が店から荷物を盗んで逃げ出した。

 

「強盗も居るのね・・・」

 

次の瞬間、 強盗は大量のスシブレードで貫かれた!!

街々の窓から発射されたのだ!!

そして死体に群がるスシブレーダー達!!

 

「こ、 これは一体・・・」

「お嬢ちゃん、 新入りかい?」

 

サイが振り返ると全身が鮫と一体化している様な男が現れた。

鮫の体から手足が生えているという風貌である。

 

「貴方は?」

「俺はシャーク、 アンタ見ない顔だが新入りかい?」

「外から来た・・・貴方は一体・・・」

「ふん、 まぁ良いこっち来な」

 

シャークに手を握られ連れられる。

咄嗟に手を振り払い距離を取るサイ。

 

「ふん、 そういう女は嫌いじゃない、 まぁ話だけでも聞きなよ」



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生きてる聖堂

シャークが連れて来たのは悍ましき冒涜的な建物であった。

 

「これは・・・人?」

「スシブレーダー達だ、 スシブレーダー達を使って聖堂を立てた」

 

スシブレーダー達が縫い合わさって建物を形成している

何と言う冒涜!!

 

「そんな・・・」

「助けて・・・くれ・・・」

「!?」

 

建物から声が聞こえる。

 

「これは・・・生きているの?」

「あぁ、 新鮮さが第一だからな」

「・・・・・」

 

目を伏せるサイ。

 

「ボス、 新入りを連れて来ました」

「おう」

 

何人かのスシブレーダー達が聖堂の中に居た。

そこに居たのはケンタウロスの様な半人半馬、 四本腕の巨漢。

14の足と14の腕と7つの頭を持つ何か

そして帽子を被った男だった。

 

「よぉ、 アンタは何のスシブレーダーだ?」

 

帽子の男がサイに尋ねる。

 

「スシブレーダーじゃない」

「はぁ? じゃあ何でここに来たんだ?」

「私はここに助けを求めに来た」

「助けを? どういう事だ?」

 

サイは事情を説明した、 バルド達がピンチに陥っている事を

戦力が必要な事を。

 

「つまり、 戦力が欲しくて闇のスシブレーダーの力を借りる為にここに来たと?」

「イカレているね」

「自分でも望みの薄い賭けだとは思っているよ」

「ふん・・・別に協力する必要は無いんだが・・・」

「ここから出たく無いの?」

「出る必要は無いね」

 

キッパリと言う帽子の男。

 

「ここには食べ物も飲み物も有る」

「でも敵対者が居るんじゃないの? こんな建物まで立てているんだから

伊達や酔狂でこんな事をしている訳じゃないんでしょ?」

「勘が鋭いな、 ここは対スシブレード用の聖堂だ

スシブレーダー達によって対スシブレード防御力が上がっているという訳だ」

 

スシブレードを統べるスシブレーダーでスシブレードに対抗する

尤もな理論である。

 

「外に行けばそんな敵対者に煩わされる事は無くなる」

「外ねぇ・・・でも外の方が敵が多そうな気がするが・・・」

「考えては貰えない?」

「考えてはやるよ、 ここは外に比べて時間の流れが遅い

ゆっくり考えても罰は当たらないだろうし間に合うだろう

数日ゆっくりと考えても良いだろう」

「・・・・・分かったわ、 他にも協力してくれる人が居ないか

呼び込みをしてみる事にするわ」

「おう、 しっかりなー」

 

外に出るサイ。

 

「外かぁ・・・外ってどんな風になってんスカ?」

 

シャークが尋ねる。

 

「あぁ、 お前はここの生まれだったか」

「まぁそうなりますね・・・」

「外の世界は空が青い、 そして広い」

「空が・・・青い・・・? 薄気味悪いですね」




登場したSCP
SCP-1788 - 大人たち
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1788
SCP-2478 - 一般的日本人
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2478


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カラースプレー・サービス

サイが街並みを歩くと死者が時たま発生するが概ね平和な街だった。

街並みを歩いて調べると普通の街の様な生活環境になったのは

結局の所、 普通に生活した方が楽、 という結論になったかららしい。

時々現れる強盗を働く馬鹿は解体して臨時収入に当てられる。

この街は主に三つの派閥に分けられる。

 

先程有った帽子を被った男であるトレジャーハンター率いる『スシブレード・バトラー』

何故か食糧を供給出来ている高い商業基盤を作ったマックス率いる『スーパーマーケット』

数は多いが戦力としては雑多な連中が多いチンピラの頭目

カラースプレー率いる『オーバー・ザ・レインボー』

 

「難しいわね・・・・・カラースプレーって情報には無かったけど・・・」

 

サイは歩きながら如何するか考えた、 そして路地裏に入った。

後を追いかけた奴が走って追う、 追いかけた奴の喉元に剣を向けるサイ。

 

「何の用?」

「俺達を嗅ぎまわっている奴を連れて来いってボスからの連絡だ」

「ボス?」

「カラースプレーさ」

「・・・・・」

 

如何やって接触するか考えているとあちらからお呼びがかかった。

渡りに船、 大人しくカラースプレーの元に向かった。

 

「ようこそ・・・えーと・・・」

「サイ・・・その恰好は何?」

「?」

 

カラースプレーは女性だった、 しかし恰好が異様だった。

パンツにサスペンダー、 そしてカラフルなシルクハット。

女性の恰好にしては破廉恥と言わざるを得ない。

 

「殆ど裸じゃない・・・」

「何か問題でも?」

「大ありよ、 肌を露出するのは倫理的に問題が有るわ」

「倫理? 私がおっぱいを丸出しにして文句を言う奴が居るの?」

「眼福っすボス」

「ドヤァ」

「・・・・・羞恥心は無いの?」

「まるで無いわねぇ、 私は男所帯で生まれ育ったから」

「男所帯で生まれてもこうはならないでしょ」

「いやぁ、 食料はマックスの所が卸しているけど

服はそうも行かないのよ、 ここで手に入る服には限りがある」

「元から着ていた服は如何したのですか?」

「元から着ていた服?」

「ここに放り込まれた時に着ていた服ですよ」

「あぁ・・・私はこの街の生まれなのよ」

 

にこりと笑うカラースプレー。

 

「この街で生まれた・・・」

「そう、 この街での時間の流れは外に比べて遅いらしいけど

この街が生まれてもう100年位経っているのよ?」

「ちょっと待って、 つまり入れられた人は老衰で死んでいる?」

「いや? 何故かは知らないけど中年位で老化が止まるのよ

外の世界の老人って言う奴? 私は見た事無いんだよね」



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脅威!!ドラゴンスシ!!

「それはさておきサイさん、 アンタ色々嗅ぎまわっている様だけど

何の用なの? 外で何か有ったの?」

「えぇ、 外で私の仲間が危機に陥り助けを求めに来ました」

「この街を抜け出す、 か

確かにこの街の連中全員が一斉に蜂起すれば可能ね

でもそこまで切羽詰まった状況じゃないのよねぇ・・・」

 

退屈そうにするカラースプレー。

 

「衣食住は問題無いし」

「衣類に関しては大問題かと」

「ほっときなさい、 まぁ兎も角無理に戦う理由は無いのよ」

「そうですか・・・」

「まぁ待ちなさい、 何も協力しない訳じゃ無いのよ」

「え?」

「私には欲しい物が有ってね、 それを手に入れるのを協力してくれれば

アンタに協力するのも吝かじゃない」

「欲しい物・・・服ですか?」

「私はこのファッションが好きなのよ」

「露出狂ですか?」

「私は変態じゃない、 私が欲しいのは唯一つ親父の仇たる

ドラゴンスシの首、 勢力拡大も最終的にはそのスシドラゴンを葬る為の物」

「ドラゴン・・・スシ?」

「その名の通りスシの様なドラゴンよ」

「どんなドラゴン?」

「そうね・・・白いドラゴンが巨大な魚の切り身を持っている

これなら想像がつくかしら?」

「・・・まぁ何とか・・・」

「奴の首を取ったならば協力しても良い」

 

にこりとするカラースプレー。

 

「ドラゴン殺し・・・やった事は無いですがやりましょう」

「本当にやるつもりなの? 見た所貴女はスシブレーダーじゃないみたいだけど?」

「スシブレーダーじゃなくても戦えますよ

それでドラゴンスシって言うのは何処にいるんですか?」

「この街の外れに山が有る、 その山に住んでいる」

「分かりました、 何か弱点とかってあります?」

「さぁ・・・知って居たら自分で戦うよ」

「そうですか・・・じゃあ情報収集から始めますか・・・」

 

そう言ってサイは立ち去った。

 

「カラースプレーさん、 マジで協力するんですか?」

 

カラースプレーの手下がカラースプレーに尋ねた。

 

「まぁドラゴンスシは殺してやりたいからね、 私の手で出来ないなら

他人に任せるよ、 それに殺せれば御の字だし

もしもドラゴンスシを殺せる奴に嘘を吐いたら私達が殺されるよ」

「ですよねー・・・でもあの娘、 他の勢力にも声をかけるかも知れませんよ

戦力が欲しいんですから、 無くは無いと思います」

「まぁその時はその時ね、 他の連中とは敵対しているけど

ここを出れば、 まぁ敵対関係も如何でも良くなるでしょ」

「ここを出る・・・か・・・想像もした事ないです」

「私もよ、 外になんか興味無いのになぁ・・・」



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スシ生命体

ドラゴンスシについて情報を集めるサイ。

 

「一体ドラゴンスシとは何なんだろう・・・・・?」

 

何かの視線を感じて振り返るサイ、 視線の主は奇妙なスシだった。

 

「スシ・・・?」

 

スシを拾い上げるサイ。

 

「すしー」

「喋った!?」

 

驚愕するサイ。

 

「すしーすしー」

 

良く見るとネタの下がシャリでは無く丸っこい間の抜けた顔の変な生き物になっている。

棒の様な手足が生えている。

 

「何コレ、 可愛い」

「すしー」

 

頭を撫でると嬉しそうに体を揺らす変な生き物。

 

「すしーすしー」

「ん? 如何したの?」

 

棒の様な手足で指を指す変な生き物。

導かれるままにすすむサイ。

すると一つの廃屋に来たのだった。

 

「ココに何かあるの?」

「すしー」

「うわぁ、 お酢の匂い・・・」

 

廃屋の中に入るとそこには沢山のスシの様な生き物が沢山住んでいた。

ネタを乗っけた白い犬、 猫、 海苔巻きの様な蛇。

ネタをだっこしている哺乳類、 様々な生き物が居た。

 

「ここは・・・」

「誰ー? 勝手に入って来てー」

 

間の抜けた声で尋ねられる。

サイが振り向くとそこに居たのは

大きな人程の大きさの丸っこい生き物だった。

丸っこい生き物が間の抜けた声で尋ねる。

 

「・・・貴方は?」

「でぶ」

「でぶ?」

「でぶ」

「・・・でぶさん?」

「でぶちゃんで良いよ」

「・・・おでぶちゃんで」

「ステキだわぁ・・・」

 

ぽわぁとなるおでぶちゃん。

 

「それはそうとこの子達は一体・・・」

「この子達はスシ生命体

この闇のスシブレーダー達の力によって生み出された空間で生まれた新しい生き物」

「すしー」

 

おでぶちゃんにすり寄るスシ生命体達。

 

「普通の空間で言う野良犬猫に当たる」

「ふーん・・・じゃあドラゴンスシって言うのもスシ生命体?」

「そうなるね、 だけどドラゴンスシは陰のスシ生命体、 この子達とは違う」

「陰のスシ生命体? どういう事?」

「ふむ、 君は如何やらスシブレーダーじゃないみたいだね」

「分かるの?」

「君の手からは酢飯の匂いがしない」

「この酢の匂いの中で嗅ぎ分けられるの?」

「ドヤァ・・・」

 

ドヤ顔をするおでぶちゃん。

 

「兎も角君はスシブレーダーじゃないのなら、 君にだったら頼めるかもしれない

この空間を破壊して欲しい」

「この空間を破壊? 如何言う事? 話が読めないんだけど」

「にょー・・・色々ムツカシイ話で恐縮だけど・・・

まぁ最初から説明するよ」

 

廃屋のがらくたからソファーを取り出すおでぶちゃん。

 

「とりあえず座って、 長い話になるから」

「まぁ構わないけど・・・」

 

ソファーに座るサイ。



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魂の陰陽

おでぶちゃんが語るには自分は異世界から

闇のスシブレーダーの闇の引力で吸い寄せられたらしい。

この街の外に出た事は有るが重苦しい空気だったので街の中に居る。

元の世界に帰りたいがこの街、 いや空間が有る以上元の世界には帰れない。

故にこの空間を破壊して欲しい。

 

「この空間を破壊ねぇ・・・」

「この空間は壊れなくちゃいけないにょ」

「何故?」

「このスシ生命体達が答えにょ

このスシ生命体達はこの空間で死んでいった者達の魂が

空間内を彷徨いスシに憑依して生まれた新しい生命体

この空間の外で生きられるかは怪しい位、 歪な生命体なにょ」

「・・・・・」

「すしー?」

 

おでぶちゃんがスシ生命体を撫でる。

 

「死んでいった者の魂・・・と言う事はスシ生命体は

闇のスシブレーダーだったという事?」

「半分正解、 この子達は陽のスシ生命体」

「陽のスシ生命体?」

「光のスシ生命体と言った方が分かり易いかな?

魂の陰陽、 つまり光と闇の部分が分離して

それぞれスシ生命体として構成されている」

「つまり良いスシ生命体、 悪いスシ生命体って事?」

「善悪で分けるのは人間の悪い癖にょ

大人しいスシ生命体、 乱暴なスシ生命体の方が分かり易い

まぁ陽のスシ生命体は大人しいというかパワーが無いにょ

闇のスシブレーダーの魂だから陰のパワーが強いから仕方ないけど」

「要約するとドラゴンスシは陰のスシ生命体、 って事で大丈夫?」

「大丈夫にょ、 でも何でドラゴンスシの事を知ってるにょ?

ここに来たばかりじゃないにょ?」

「何で分かるの?」

「君の体に付いたこの街のスシの匂いが淡い」

「なるほど・・・」

 

サイは説明した、 カラースプレーとの取引を。

 

「ふむ、 つまりドラゴンスシをやっつければ

『オーバー・ザ・レインボー』達は外に出る、 と」

「そう言う事ね、 貴方の目的のこの空間の破壊は

如何すれば良いのか分からないけど・・・」

「いや、 可能にょ」

「?」

「この空間に居る闇のスシブレーダー達が沢山この空間から出ていけば

この空間は崩壊するにょ」

「そうなの?」

「そう、 この空間はスシブレーダー達の闇のパワーで支えられている状態

闇のスシブレーダー達が居なくなれば柱が無くなった建物の如く崩壊する

そして僕はスシ生命体を連れて元の世界に帰るにょ

スシ生命体が僕の世界でも生きられるかは謎・・・

でもこのままここに閉じ込められるのは可哀想にょ・・・」

 

涙をほろりと流すおでぶちゃん。

 

「任せて、 私がドラゴンスシを倒すよ」

「任せるにょ」



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闇の包丁

「ドラゴンスシについて何か弱点は無いの?」

「ドラゴンスシの弱点はペース配分の下手さ

最初に全力を出すから長期戦が苦手、 と言う事位しかない

後力でゴリ押しするから搦め手には弱い・・・かな?」

「・・・・・一つ聞きたいけどドラゴンスシって本当にドラゴンなの?」

「スシの様にネタをだっこしている以外は普通の白いドラゴンと変わらない」

「・・・」

 

ドラゴン殺しをやるのか、 と怖気出すサイ。

 

「怖いにょ?」

「えぇ・・・ドラゴン殺しはやった事が無い・・・」

「なら止めるにょ?」

「いや・・・このままじゃあ駄目なのよ

速く助けを連れて行かなきゃならない・・・だから行く!!」

「ふにゅ・・・じゃあ良い事を教えてあげるにょ」

「良い事?」

「この街の外れに山が有る、 その山にドラゴンスシは住んでいる

でも反対側の外れに泉が有る」

「泉?」

「そうなにょ、 そこは特殊なフィールド・・・

そのフィールドの何処かに闇寿司の親方”闇”の使っていた包丁が有るらしい」

「”闇”の包丁!?」

「にょ、 ”闇”の包丁を無くしたと嘘をついてくすねて

ここに送られた闇のスシブレーダーが居たんだけど彼が死ぬ前に隠したらしい

そしてその”闇”の包丁を中心に泉が構築された」

「その”闇”の包丁があればドラゴンスシにも勝てるの?」

「分からない、 でも何かしらの助けになると思う」

「・・・・・分かった、 行ってみる」

 

サイは廃屋から出て行った。

そして外れの泉に向かって行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

同時刻、 泉に向かって行ったサイを見つけた一人の男が自分のボスの元に向かう。

 

「ボス!!」

「ん? 何だ?」

 

ボスの名前はマックス、 『スーパーマーケット』の首魁である。

彼はオレンジのつなぎを着て悠々と食事をしていた。

 

「新入りの色々嗅ぎまわっている奴が泉に向かいました!!」

「泉に? あの”闇”の包丁があると噂の?」

「えぇ!! 如何しますか!?」

「ふむ・・・・我々闇のスシブレーダーが何人も行って帰って来なかった泉

嗅ぎまわっている奴はスシブレーダーですらない・・・

ひょっとしたら帰って来るかもしれないな・・・」

「”闇”の包丁・・・強大な力を持つと言われる包丁・・・

一体どんな力が有るか分からない代物ですよ!! 奪いますか!?」

「まぁ、 私はこの街で一番の金持ち、 包丁一本位・・・と思うが

”闇”の包丁・・・うーむ・・・」

 

マックスは考えた、 考えた挙句。

 

「ふむ・・・じゃあとりあえずそいつが帰って来たら私の所に連れてきたまえ」

「分かりました!!」



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泉のメイド

泉にやって来たサイ。

 

「ここに包丁が・・・」

 

周囲を探すサイ。

しかし包丁は見つからない。

 

「やっぱりこの泉の中にあるのかな?」

 

泉に一歩足を踏み入れるサイ。

すると泉から一人のメイドが現れた。

 

「・・・・・え?」

「貴方が落としたのはこのアルティメットマグロですか?」

 

そういってアルティメットマグロを見せるメイド。

 

「い、 いえ・・・」

「ではこのハンバーグですか?」

 

ハンバーグを見せるメイド。

 

「い、 いえ何も落していません」

「何と正直者でしょう、 では貴方にはこの包丁を差し上げましょう」

 

そう言って懐から包丁を取り出すメイド。

 

「!!」

 

目当ての物が早速見つかって驚くサイ。

しかし次の瞬間、 メイドが間合いを詰めて包丁で刺しに来たのだった!!

サイは咄嗟に身をよじって避けた!!

 

「くっ!? 何をする!?」

「くくくくく・・・この包丁は親方”闇”の包丁・・・

この包丁が目的なのは知っている・・・この包丁は私の物だ・・・

これは私の力だ!!」

「っ!!」

 

再度突き刺そうとするメイドの攻撃を避けようと間合いを拡げようとするサイ。

しかし足が泉から抜けない!! 何故!?

 

「馬鹿め!! この泉は私の体の一部!! そう簡単には抜けない!!」

「くっ!!」

 

サイは持っている剣を抜いて包丁をガードする!!

それなりの名剣だが包丁の一撃で罅が入る!!

 

「っ!!」

「そんな鈍でこの包丁を防げると思」

 

包丁で一旦止めた時に片手でメイドの顔を殴った!!

メイドは吹き飛ばされて泉にどぼんと落ちた!!

サイは何とか泉から足を引き上げる事に成功した。

 

「殴るとは予想外だ・・・普通闇のスシブレーダーならば

スシブレードを使うのだが・・・お前は何だ?」

「私はサイ、 闇のスシブレーダーではない、 ”闇”の包丁を求めて来た」

「ご丁寧にどうも・・・私も名乗り返そうか

私はミンチ!! ”闇”の包丁の正当な持ち主だ!!」

「正当な持ち主って・・・その包丁って

元々は闇のスシブレーダー達のボスの包丁でしょ?」

「その通り、 私が盗んだから私が持ち主だ!!」

「何という無茶苦茶な論理だ・・・その包丁を貸してくれない?」

「何を言っているんだ? 借りパクするつもりだろ? 分かるんだよ」

「私はドラゴンスシを倒したいだけなんだ、 その為に力が必要なんだ」

「断る!!」

 

手を前に出すミンチ、 手が液状となりサイに迫る!!

サイは巧みに液状となった手を躱して叩き斬った!!

液状化した手は斬られ地面に水となって落ちる!!

 

「ふん!! そんな攻撃が通用するか!!」



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止むを得ない

ミンチの攻撃とそれを迎撃するサイの攻防は膠着状態になった。

ミンチの攻撃は避けられてサイに斬られてしまう。

斬られてもダメージも痛みも無い、 しかしミンチの体積は確実に減って行った。

 

「ぐっ!! うおおおおおおおおお!!」

 

ミンチが水面を引き延ばし押し潰そうとするもサイに全力で回避されてしまう。

逆にサイに首を刎ね飛ばされてしまった。

 

「あっ・・・!!」

 

ミンチが慌てて首を元に戻す。

 

「如何やらその慌てぶり、 首が弱点で間違い無いわね」

「・・・・・」

 

ギリリと歯軋りするミンチ。

スチャと包丁を持つ。

 

「うああああああああああ!!」

 

包丁を持った手を液状化、 伸ばしてリーチを上げて振る!!

 

「包丁を持っただけの素人に負けない」

 

ずば、 と腕を切断して包丁を拾うサイ。

 

「・・・・・」

「甘い!!」

 

包丁を投げるミンチ、 包丁を投げて迎撃するサイ。

 

「なるほど、 ”闇” の包丁以外の普通の包丁も持って来ている

と言う訳ね」

「そう言う事だ!!」

「・・・・・」

 

サイは全力で立ち去った。

 

「あ、 おい!!」

 

ミンチが手を伸ばすが逃げられてしまった。

 

「えぇ・・・何アイツ・・・」

 

 

 

 

街に戻って来たサイ。

 

「おっとお嬢ちゃん、 ”闇”の包丁は手に入れられたのか?」

 

マックスの手下がサイの前に立ち塞がる。

 

「持っている奴がいるから始末する為の道具を調達しに来た」

「・・・・・道具? 何を如何使う気だ?」

「油ぶっかけて焼き殺す」

「・・・・・」

「油ぶっかけて焼き殺す」

「あ、 うん、 二回言わなくて良いや・・・」

「じゃあそう言う事で」

 

サイがスルーする。

おでぶちゃんの廃屋にやって来たサイ。

 

「にょ? もう戻って来たにょ?」

「いや、 普通じゃ勝てないから道具を持とうかなと思ってね、 油有る?」

「オリーブオイルなら」

「ガソリンが欲しい」

「それは無いにょ」

「じゃあオリーブオイルで良いよ、 なるべく沢山頂戴」

「おっけーにょ」

 

おでぶちゃんがオリーブオイルを一樽持って来た。

 

「これだけ有れば良いかな、 後は松明って有る?」

「あるにょー」

 

松明を入手したサイ。

必要な物を入手して再び泉に戻って来たサイ。

 

「急に居なくなったと思ったらまた来たか」

 

泉からミンチが再び出て来た。

 

「この装備じゃ勝てないと思ったから装備を調達して来た」

「お前さぁ!! 戦っている最中に荷物取りに行く馬鹿が何処にいるんだよ!!」

「悪いが私はここで勝って先に進まないと行けないんだ

手段や方法に拘っている暇は無い、 卑劣だし失礼な事だとは思っているが止むを得ない」



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蒸発した意思

樽からオリーブオイルを泉に向かって流し込むサイ。

 

「おい、 何をするつもりだ?」

「・・・・・」

「何をするつもりだ!?」

 

ミンチが叫び、 手を伸ばす。

しかし巧みに躱して樽を投げつけてオリーブオイルをミンチの全身に浸透させるサイ。

 

「これは・・・オリーブオイル!?」

「その通り」

 

松明を投げるサイ、 オリーブオイルに引火する。

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

絶叫するミンチ、 暴れ回り体中の水分が蒸発していく。

 

「これで終わりだな・・・」

 

勝利を確信しているサイ、 しかし警戒を怠らない。

 

「・・・・・!?」

 

視界が暗転するサイ。

何故!? それはミンチの蒸発した体を吸い込んだ事による弊害である。

 

「ぐぅ!?」

 

踏み止まろうとするが倒れるサイ。

そして意識が暗転する・・・・・

 

 

 

 

 

昔々ある所にランゴと言う少女がおりました。

ランゴは貧しい家の生まれで多くの兄弟達と一緒に暮らしていました。

ある時、 貧しい生活に耐えかねて家を飛び出したランゴは

路上生活者として暮らしていました。

 

ある時、 偶然お忍びの貴族を助けた事から

その貴族の御屋敷でメイドとして働く様になったランゴは

日々、 少しずつお屋敷の物を盗んでは売りさばき一財産を築いていました。

しかしある時盗みがバレてあわやしょっ引かれる所で

”闇”と出会いました、 ”闇”はランゴの盗んだ物の金額と同額でランゴを買うと

スシブレーダーとしての技を叩き込みました。

ランゴは新しくミンチと言う名前を手に入れました。

 

ミンチは力を欲しました、 力が有れば何でも出来る

力が無ければ何も成せない、 意味が無いのです。

故に彼女は力を手っ取り早く手に入れる為に何時もやっている方法

つまり盗んで力を手に入れる事にしました。

”闇”の持つ包丁を失くしたと嘘を吐いて盗んだ彼女は包丁を手に入れましたが

”闇”からは包丁を失くした罰で牢屋に閉じ込められてしまいました。

 

包丁の力に酔いしれた彼女は更なる力を得る為に多くのスシブレーダー達を殺し

溶かし取り込んで行きました、 そうして彼女は泉の様に大きく体積が有る姿になったのです。

 

「こ・・・れ・・・は・・・」

 

イメージが流れ込んで来る、 これはミンチの記憶なのだろうか。

頭が破裂しそうである。



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挫けぬ心

泉の水を飲めば水が全身を駆け巡る様にミンチの意思、 記憶が

サイの全てに流れ込んで来た。

 

「私の体を乗っ取るつもりか!!」

 

暴虐的な意思と記憶、 その全てがサイを蹂躙する。

サイの自我が引き千切られる。

サイの自我が摩り下ろされる。

サイの自我が切り刻まれる。

サイの自我が焼き尽くされる。

サイの自我が叩き潰される。

サイの自我が噛み砕かれる。

暴虐的に執拗にサイの自我に襲い掛かるミンチの全て。

ここでミンチがサイを負かさなければミンチは死ぬ。

故に全てを使いサイを乗っ取りにかかる。

 

「・・・・・・・」

 

サイは黙っている。

サイは冷静に事象を見ている。

引き千切られれ切り刻まれれば繋ぎ合わせ。

焼き払い摩り下ろされれば固め直し。

潰され砕かれたのなら破片を拾い集める。

 

「・・・・・」

 

苦痛である、 しかし手を止めない。

心を動かし続ける。

 

「何故だ!?」

 

サイの中のミンチの意思が記憶が叫ぶ。

 

「何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!!

何故お前は諦めない!? 私は”闇”の包丁を持った最強の存在の筈なのに!!」

「簡単だよ」

 

サイは呟いた。

 

「私は自分の為に戦っているんじゃない

外で待っている人達の為に戦っている、 自分一人で戦っているんじゃない

待ってくれている誰かの為に戦っているの

自分の為では無く誰かの為に戦う、 その力はとても強い物なんだよ」

 

嘗て自分の眼の曇りを掃った、 純粋に他者にスシを握って食べて貰って

美味しいと言って欲しいと言ってくれたスシの暗黒卿を思い出す。

彼は狂っていたかもしれないけど彼の心は思い遣りは本物だったと思う。

自分の為だけに戦っていた自分とは大違いだった。

 

「私は貴方に負けて立ち止まる訳には行かない

貴方に勝って前に進む!!」

「なるほど・・・一人では無く皆で戦っているのか・・・」

 

勝てない訳だ、 と声が聞こえた。

 

サイは目が覚めた、 泉は消えていた。

そして地面に”闇”の包丁が突き刺さっていた。



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無限の食料

”闇”の包丁を手に取るサイ。

 

「・・・・・」

 

光に翳したりして隅々までよく見る。

極めて高度な技術で造られた包丁だろう。

しかし霊的な、 魔的な、 そう言う感じはまるでしない。

ただ物凄い良く切れる包丁で有る様に感じた。

試しに周囲の木を切って見たが確かに切れ味は良い。

しかしリーチに難があり、 普段使っている剣の方が良いと判断した。

サイは聖女の娘で剣に付いては一家言有る。

過小評価も過大評価もせずに下した判断である。

 

「手に入れたけど大して役に立たないかもね

・・・でも持っているだけ良いかもしれない」

 

そう言って懐に包丁を仕舞うサイ。

そして町に戻った。

 

 

 

「お、 帰って来た」

 

町に戻るとマックスの部下が待ち構えていた。

 

「アンタのボスは多分マックスって奴でしょ?」

「何で分かる?」

「カラースプレーとトレジャーハンターには会ったからね

残りはマックスとなる」

「・・・・・」

 

一気に距離を詰めて喉元にナイフを突き立てるサイ。

 

「アンタのボスの所に案内しなさい」

「分かった・・・と言うか連れて来いと言われていたしな」

 

画してマックスの元にやって来たサイ。

 

「やぁ、 初めまして私がマックスです」

「サイです、 早速ですが取引をしたい」

「取引? 君の事は噂で聞いているが外に出て戦いに協力してくれって事かい?」

「えぇ」

「断る、 私はここの環境に満足しているんだ」

「満足?」

「そうだ、 これを見給え」

 

マックスは部屋の脇に取り付けられた牢屋の見張り窓を開けた。

牢屋の中に居るのは二人組の奇妙な人型だった。

一人はまるで肉の様な姿で、 もう一人は真っ白だった。

 

「何、 これは?」

「動物の肉で出来た人間とバターで出来た人間だ

他にも色んなタイプの食べ物で出来た人間がいる

奴等は体の一部分を切り取っても再生する

つまり無限の食料が私の手中にあると言う事だ

そして私はその食べ物を流通させて商売をしている

元手ゼロでここまで出来るんだ、 これで満足しない訳が無いだろう?」

「・・・・・」

「君の包丁は欲しいが手に入れるべきか悩むレベルだよ

そこまで欲しいという訳でもない」

「じゃあこうしましょう、 この包丁をあげても良い」

「本当かね?」

「その代わり、 私がドラゴンスシを倒すのに協力して欲しい」

「ドラゴンスシを倒す? 何故?」

 

サイは事情を説明した。

 

「なるほどね、 あの痴女はそんな事を言っていたのか・・・」

「やっぱりあの格好は変よね?」

「まぁな、 私が奴だったら着る服が無かったら全裸になる

ハッキリ言って全裸よりも変質的な格好だし」

「あらら・・・」




登場したSCP
SCP-1630 - 食品人間ピラミッド
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1630


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剣を研ぐ

「しかしドラゴンスシを倒すとなると我々に協力出来る事は少ないと思う」

「いや、 色々用意して頂きたい」

「ふむ、 何か策が有る様だな・・・」

「まず私がドラゴンスシの所に行ってドラゴンスシに如何対応すれば良いのか探ります

そしてその為の物資を用立てて頂きたい」

「なるほどね、 他に必要な物は?」

「剣が欲しいですね」

「剣、 か、 来な」

 

マックスに案内されるサイ。

案内された所は大量の刃物が保管されている場所だった。

 

「ここは・・・」

「ここは武器庫だ、 この中から好きな物を持って行くが良い」

「・・・・・」

 

サイが一通り見まわった。

 

「・・・・・」

 

幾つか手に取って振ってみる。

 

「駄目ね、 砥石は有る?」

「あるぞ」

「研いでも構わない?」

「あぁ、 砥石だったら幾らでもある」

 

そう言って砥石を大量に持って来るマックスの部下。

 

「・・・・・何で砥石がこんなに有るのに研がないの?」

「研ぎ方が分からない」

「スシブレーダーってスシ職人じゃないの?

料理人じゃないの? 包丁研げないって・・・」

「スシなんて食えれば良いんだよ食えれば

道具に拘るのは愚かだと思うね」

「・・・・・水それから木とかも用意出来る?」

「おう、 幾らでも用意しよう」

 

サイは何本かの剣や短剣を持ち出した。

 

「良いんですか何本も持ち出させて」

「古い剣だから錆も有るしな問題無いだろう

それよりもアンタ、 研ぐのは分かるが木は何に使うんだ?」

「柄に使う、 見て見なよ、 柄がボロボロになった剣も有る」

「良く分からんが・・・アンタ研ぎ方とか分かるのかい?」

「分かるよ、 こう見えても研ぎ方とかは勉強した」

 

剣に関しては一家言あるのだ。

剣の名手である自分、 剣が無ければ戦えませぬ。

それでは話にならない、 研ぎ方を熟知しており

時間さえ有れば石でも剣を作る事が出来る。

 

「じゃあちょっとスペースを貸して貰えるかな」

「図々しくないか?」

「構わんよ」

「ボス」

「別に良いだろ、 ”闇”の包丁と引き換えなんだ、 これ位安い物さ」

 

マックスは別に気にしていない様子でサイの要求を呑んだ。

サイは剣を研ぎ始めた、 荒くない砥石から徐々に荒い砥石に変えていき切れ味を上げる。

恐ろしく時間のかかる作業で途中何度か睡眠と食事を挟んだ。

真剣な作業を黙々とやっている事からマックスも一目置いて

かなり豪勢と言うか合成な良く分からない豪華っぽい食べ物を出された。

食べ物にしてはわちゃわちゃした食べ物だった。

 

「旨いか?」

 

マックスが尋ねる。

 

「味濃いからパンが欲しい」



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人生

「所で何で貴方はこんな事を?」

「こんな事とは?」

 

食事をしながらマックスに問うサイ。

 

「何でこんな愚連隊の様な事を?」

「ふむ、 俺はなぁこういう生き方しか知らねぇんだよ」

 

もぐもぐと食べるマックス。

 

「こういう生き方?」

「あぁ、 スラムで生まれてな、 今まで必死になって暮らしていた

生きる為には徒党を組んでやる位しか出来ねぇんだ」

「そうだったの・・・何でここに?」

「あー・・・親方”闇”から色々食べ物をくすねたからな・・・」

「横領?」

「つまみ食いだ、 誰かに食べさせるには勿体無い」

「子供っぽいわね」

「好きな物を腹一杯喰うって言うのが長年の俺の夢だった

でも好き勝手に食い物を得られる立場でも無かったからな・・・」

「お腹一杯なるのが長年の夢・・・か・・・」

 

遠い目をするサイ。

貧しい人達はこんな当たり前の事すら夢になってしまうのか、 と思った。

 

「だから毎食腹一杯喰える現状は俺にとって満足、 の筈だが

アンタのひたむきさは見ていて好ましいと思うよ」

「口説いてんの?」

「いや・・・・・俺も腹一杯になりたくて一生懸命になってた時期が有ったなぁって」

 

遠い目をするマックス。

 

「生きていれば目標や目的なんて次々と見つかるんじゃないの?」

「如何だろうな、 ただ生きて居れば良い何て言う奴も居るし

それも夢になる環境で生きていた」

「スラムってえげつない所なのね・・・」

「あぁ、 生きるだけでも毎日戦いだ」

 

常在戦場を旨とするべき騎士達でもこんな環境で生きていない。

ひょっとしたら彼等の方が・・・と思うサイ。

 

「アンタは?」

「え?」

「アンタは何でこんな事をしている?

必死になってここまで頑張る必要が何処にある?

もっと気を抜いても良いんじゃないか?」

「・・・・・誰かの為に何かをするのは素晴らしい事だ

私はある人から教えられた、 自分の事だけ考えた私の眼の曇りを覚まさせてくれた」

「ふぅん、 良く分からないが・・・」

「私も良く説明できない、 彼は凄い人だった、 狂っていたけど」

「狂っていたのか・・・」

「そうね・・・ごちそうさま」

 

食事を終えたサイ。

研ぐ作業を再開する。

 

「じゃあ俺も失礼する、 何か必要な物が有れば言ってくれ」

「分かったわ、 ありがとう」

「・・・・・どういたしまして」

 

改めて礼を言われるのは何だかむず痒いなと思いながらマックスは去って行った。

それから数日後、 全ての剣を研ぎ終え柄を交換し

睡眠と食事を十分にとったサイはドラゴンスシが居る山に向かうのだった。



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ドラゴンと戦士

ドラゴン。

それはこの世に存在するあらゆる生き物の中でも上位に存在すると言われる生き物である。

下等な者は使役される存在だが上位の者は魔王すら上回ると言う。

過去の英雄はドラゴンを倒して一人前とされる。

しかし現在ではドラゴンを倒すのは極めて危険な行為であり

ドラゴンを如何切り抜けてこそ一人前の英雄とされる

ドラゴンを倒せる者は英雄を超えた存在とされる。

 

何故か?

ドラゴンが倒され続け強いドラゴンだけが生き残っているからである。

という単純な話ではない、 弱いドラゴンも徒党を組む等して対策をする。

ドラゴンを殺しに行くという行為は崖から飛び降りると同義と考えて良いだろう。

 

今日、 崖から飛び降りるのは聖女の娘、 サイ。

彼女の母親の聖女もドラゴン退治はした事が無い、 対応した事は有るが

それでもドラゴンを退治した経験はない、 今、 彼女は母親を超える!!

 

「ふぅ・・・・・」

 

息を整えながらドラゴンスシが待つ山に登るサイ。

その表情は一切の奢りや逸りは無い、 立ち向かう意思がある。

 

「・・・・・」

 

感覚を研ぎ澄まし集中する。

そして!!

 

「酢飯の匂いッ!!」

 

飛び仰け反るサイ!!

サイが立っていた場所に白いドラゴンが降り立つ!!

巨大なマグロの切り身を抱えている!! 間違いない!! ドラゴンスシである!!

 

『ほう、 躱したか』

「喋!!・・・っては無い」

 

脳内に響く声!!

酢飯を媒介にした酢飯通信だ!!

闇寿司の技術だがそれを会得しているとは何という高度な知性か!!

恐るべしドラゴンスシ!!

 

『貴様は何者だ?』

「私はシャリ王国聖女パドメの娘、 サイ!!

貴方の首を頂きに馳せ参上した!! そのお首級頂こう!!」

『何と丁寧なアイサツ・・・・・!!

しかし無謀なりサイ、 人間がドラゴンに勝てると本気で思っているのか?』

「人間を舐めるな!!」

『ほう・・・ならば行くぞ!!』

 

ドラゴンスシが思い切り蹴り飛ばす!!

土煙が巻き上がり石が吹き飛ばれる!!

サイも吹っ飛ぶが後ろに下がってダメージを軽減する!!

 

『ほう、 中々やる!!』

「再三言うが舐めるな!!」

 

短剣をドラゴンスシに投げるサイ!!

ドラゴンスシの体に食い込む短剣!!

ドラゴンスシの体は柔らかい!! 剣が通じる!!

 

『ほう、 で? この程度の傷が何だと言うのだ?』

 

ドラゴンスシはマグロの切り身を片手に持って殴りかかって来た!!

切り身で攻撃すつのは強く無さそうだと読者諸賢は思うだろう!!

しかし圧倒的な質量が強いのは自明の理!! サイの命が危険だ!!

危うし!!



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GOGOGO!!

ドラゴンスシとサイの戦いが始まって1時間後。

まだ激戦は続いていた。

ドラゴン退治に留まらない死闘である。

 

「・・・・・」

 

マックスは高い建物の上から双眼鏡でドラゴンスシとサイの戦いを見ていた。

 

「ボス、 戦況は如何ですか」

「・・・・・・・・・・・」

 

手を振わせるマックス。

 

「ボス?」

「出るぞ」

「へ?」

「我々もドラゴンスシの所に向かう!!」

「正気ですか!?」

「あぁ!! もっと近くで戦いを見たい!! 参加したい!!」

「・・・・・でも、 俺達が行く理由には・・・」

「ボス、 大変です!!」

 

別の部下が飛び込んで来た。

 

「如何した?」

「下を御覧下さい!!」

 

下を望遠鏡で覗くと倍率が大き過ぎて地面しか見えない。

裸眼で見る事にしたマックス。

すると大勢の人々が山に向かって行った!!

 

「これは一体どういう事だ・・・?」

「オーバー・ザ・レインボーの連中が向かっている様です!!

如何しますか!?」

「何で連中が・・・まぁ良い、 我々も山に向かうぞ」

「分かりました!!」

 

マックス達も山に向かった。

 

 

 

 

さて何故カラースプレー達が山に向かっているかと言うと・・・

 

「戦闘音が凄いな・・・」

 

カラースプレー達のアジトにもドラゴンスシとサイとの戦闘音が響いていた。

 

「もう結構経ちますね・・・膠着しているという事でしょうか・・・」

「・・・・・じゃあ私達が協力すれば勝てるかもしれない!!」

「おぉ!! じゃあ皆に召集かけて来ます!!」

 

こんな理由である。

 

オーバー・ザ・レインボーの数が多過ぎてマックスは察知出来なかったが

スシブレード・バトラーもこの現状を見逃せずに山に向かって行った!!

そしてこの三つの組織に属していないスシブレーダー達も山に様子を見に行った!!

つまり殆どのスシブレーダー達が山に向かって行ったのだった。

 

廃墟からおでぶちゃんがスシ生命体を撫でながら様子を見る。

 

「人を想い戦う心・・・それこそが人の強さなにょ・・・」

「すしー?」

「何かが劇的に変わるにょ・・・楽しみにょ・・・」

 

サイの真摯な思いがこの世界を変える!!

 

 

 

一方その頃、 山では・・・・・

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

片膝をつくサイ。

 

『いい加減に死んでおけ』

 

斬られた腕をくっ付けるドラゴンスシ。

再生能力も伊達では無い、 一から全て再生する事は無理でも

斬られた腕を付ければ元に戻る。

 

「・・・・・ふっ」

『何が可笑しい?』

「私の様な半端者すら殺せていない紛い物のドラゴンのお前がだよ」

『ふん、 その紛い物にすら勝てない半端者が何をぬかすか』



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生きている理由

ドラゴンスシは闇のスシブレーダーの陰の魂が集まったスシ生命体。

よって攻撃は獣の様に爪では無く人間の様な技が主体である。

マグロの切り身を使った武器攻撃や蹴り技が主であり

ドラゴンが主に使う尻尾などの攻撃は滅多に使わない。

その為、 サイが見切るのは容易であった!!

 

(相手のサイズは軽く見積もっても十倍以上・・・問題無い!!

自分より体が大きい奴にも勝つ為の"技術"だ!!)

 

相手がマグロの切り身を振り回す!!

紙一重で回避!! そして切り身を持っていたドラゴンスシの指を切断する!!

 

『小賢しい!!』

 

ドラゴンスシは指を拾いくっつける。

空を飛ぶ行為は避難として多用するドラゴンスシ。

そして急降下!! 下敷きを寸前の所で回避する!!

更に足を切断!!

 

『ちぃ!! 鬱陶しい!!』

 

足を拾いあげようとするドラゴンスシの両手を切断しようとするサイ!!

しかし寸前の所で回避されてしまった!!

 

『なるほど、 考えたな、 両腕を狙いに来たか・・・』

 

くっ付ければ再生する、 ならばくっつけられない様に

両腕を切り離してしまえば良い、 何という効率的な戦い方か!!

サイが諦めずに戦っていた結果である!!

 

『ならばこうだ!!』

 

ドラゴンスシはマグロで山肌を砕き大量の岩石を集めた!!

そしてドラゴンスシはその大量の岩石をサイの頭上から落としたのだった!!

制空権を握ってしまえば一方的に攻撃される!!

何と言う無情!!

 

「・・・・・」

 

だが恨み言一つ漏らさない!! 逃げる事もしない!!

恐らく逃げようとしたらその瞬間にやられる事を本能的に察知しているのだ!!

 

『ふん、 だがこちらは一方的に攻撃させてもら』

 

ドゴッドゴッ!!

 

ドラゴンスシの両手に攻撃が命中する!!

剣は届かない筈!! 一体誰が!?

 

『ほう・・・』

「貴方達は・・・」

 

集まって来た闇のスシブレーダーである!!

 

「何故ここに!?」

「ここで加勢すれば勝てると思って」「もっと近くで見たかったから」

「何か皆来てるから」「盛り上がってそうだから」「理由要るか?」

 

集まって来たスシブレーダー達と相対するドラゴンスシ。

 

『面白い!!

今までお前達が生きて来れたのは

このドラゴンスシと戦っていなかったからだと知れ!!』

 

ドラゴンスシが咆哮をあげる!!

 

「サイ、 説明しておこう」

「カラースプレー?」

 

カラースプレーがサイに語りかける。

 

「スシブレードの攻撃はあくまで牽制位にしかならない

シャリは奴に吸収されるからな、 だから最後は剣で首を取れ!!」

「分かった!!」



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一方その頃サンダリ牢獄では

サンダリ牢獄の豆巻きの部屋にやって来たサーアイ。

 

「豆巻き、 いるか?」

 

ノックをしても返事が無い。

 

「居ないのか? 可笑しいなぁ・・・」

「あ、 サーアイ様・・・」

「ん、 あぁ」

 

ソルジャースシが頭を下げる。

 

「豆巻きを知らないか?」

「居ませんか? 先程ソルジャースシと部屋に入っていたのを見ましたが」

「部下を喰ったのか・・・やれやれ、 あのエロ親父め」

「鍵はかかっているのですか?」

「ふむ・・・」

 

ドアノブを回すと鍵はかかっていなかった。

ヤミ・マスターから物を盗む馬鹿は居ない、 と思えば当然である。

 

「豆巻きー? いないのかー?」

 

周囲を見渡すと服が脱ぎ散らかされている。

風呂? と言う訳でも無さそうだった。

 

「何だ? 寝てるのか?」

 

不審に思い始めるサーアイ。

 

「・・・・・・・・・・・」

 

鼻を鳴らすサーアイ。

 

「血の匂い・・・・・まさか!?」

 

サーアイはクローゼットに近付き思い切り扉を開いた!!

中からばたんと豆巻きの遺体が落ちて来た!!

 

「ひ、 ひぃ!!」

「・・・・・心臓を一突き・・・敵襲だ!!」

「い、 一体何処から!?」

「いや、 待てよ・・・」

 

回想するサーアイ。

 

「さっきの奴か!!」

「さ、 サーアイ様?」

 

ソルジャースシを置いてきぼりにして

捕らえられている闇のスシブレーダー達のエリアに向かうサーアイ。

 

「ど、 如何しました!?」

「さっき入って行った奴、 多分スパイか何かだ!!」

「な、 何ですと!?」

「ここを封鎖しろ!! 他のヤミ・マスター達を呼んで来る!!」

「騒がしいから来てやってぜ」

 

ポマードをたっぷり付けた青年

ヤミ・マスターのオイル・サーディンが現れた。

 

「サーアイよ、 話は大体分かった、 ここは俺に任せて

他の二人を呼んで来い」

「あぁ!! 任せろ!!」

 

サーアイが他の二人のヤミ・マスター

海老のバジルソースがけのスシブレード、 シュリンプ・ウィズ・バジルソース。

このサンダリ牢獄最強のスシブレーダー、 プラスチックを呼びに向かった!!

 

「さぁてと、 では俺も行くかね、 おい開けな」

「え、 えぇ!?」

「中に入って中の連中皆殺しにしてくる」

「そ、 そんな」

「ウチの幹部がやられてるんだ、 文句は無いだろう」

「い、 良いんですか? 危険では?」

「なぁに俺様に任せて置け、 良いから開けな」

 

鉄格子を開けるソルジャースシ

オイル・サーディンは鉄格子の中に向かって行った。

 

「気を付けて下さい」

「釈迦に説法、 孔子に読経だ、 心配いらん」

 

そう言ってオイル・サーディンは中に向かって行ったのだった。



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スシブレード・バトル・アソシエーション

『これまで・・・か』

 

ドラゴンスシが地に倒れる。

 

「何というスシブレードだ・・・」

「アレがトレジャーハンターのオゴポゴ・・・

何と恐ろしいスシブレーダーだ・・・」

「いや・・・サイ、 アンタが必死に戦ってそれに触発された俺達全員の勝利だ

さぁ早くドラゴンスシの首を・・・」

『それには及ばない』

 

ドラゴンスシは最後の力を振り絞って起き上がる。

 

『天に還るに人の助けは借りん!!』

 

ドラゴンスシは自分の首を刈り取った!!

 

『さらばだ人間共よおおおおおおおおおおおお!!』

 

ドラゴンスシは消滅したのだった。

 

「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」

 

スシブレーダー達の勝鬨の雄たけびが周囲に響き渡る。

 

「約束だからね、 私達オーバー・ザ・レインボーは貴方達と共に戦おう」

 

カラースプレーが宣言する。

 

「俺達も行こう」

「トレジャーハンター?」

「アンタを見ていたらここまで人は強くなれる事を知った・・・

俺達も外で鍛え直したい、 良いよな?」

「「「おう!!」」」

 

スシブレード・バトラーの面々も答える。

 

「我々も行こう、 生きる喜びを知れるかもしれない」

 

マックスも宣言する。

 

「俺も行く、 俺も強くなりたい」「俺も」「私も」「アタイも」

 

次々と仲間になってくれる闇のスシブレーダー達。

 

「じゃあ行こう!! 皆!!」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「おう!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

画してここに囚われていた闇のスシブレーダー達を

全て仲間に引き入れる事に成功したサイであった。

 

「じゃあチーム名決めようぜ」

「チーム名?」

 

トレジャーハンターが提案する。

 

「スシブレード・バトラーとスーパーマーケットとオーバー・ザ・レインボーの

三団体合併だからスシブレード・マーケット・レインボーだな」

「ネーミングセンス悪い」

「そうだな・・・じゃあハイパーマーケットで」

「スーパーマーケット色が強過ぎる」

「じゃあカラースプレー、 お前は如何思う?」

「オーバー・ザ・フェンス」

「あんまり御洒落じゃないな」

 

名前決めは揉めに揉めて最終的な候補を絞りくじ引きで決定した。

 

「それじゃあ今日から我々は

スシブレード・バトル・アソシエーションと名乗ります」

「異議無し」

「異議なーし」

「うーん・・・チーム名決める必要有ったのかな・・・」



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現実への帰還

闇のスシブレーダー達が囚われている区画に向かうオイル・サーディン。

長い長い廊下を進んで行く。

 

「面倒になって来たな・・・戻って外で待つか・・・」

 

空間が異常なのは推測出来ていたがこんな事になっているとは予想外だった。

面倒になったオイル・サーディンは鉄格子の有る所まで戻って来た。

 

「え? どうかしたんですか?」

「いや、 走ったが廊下が長い・・・

如何やら空間が捩れている様だ、 他のヤミ・マスター・・・」

 

そこまで言って止まるオイル・サーディン。

サーアイの後ろ姿が見える。

 

「俺がここに入って戻って来るまでどの位の時間が経った?」

「え?」

「答えろッ!!」

「じゅ、 10秒も経っていないかと・・・」

「・・・・・」

 

如何やら時間が捻じ曲がっている事に気が付いたオイル・サーディン。

 

「ふむ、 如何やらここは思った以上に有用な所らしい」

「え?」

 

入っている間の時間が延びるのならば色々悪用出来る空間だと気が付いた。

 

「何でもない」

 

これは凄い秘密を得た、 と笑うオイル・サーディン。

これを使えば・・・・・

 

「!?」

 

オイル・サーディンは振り返る。

 

「如何しました?」

「来るっ!!」

「来るって」

 

カラースプレーが塗されたスシブレードがソルジャースシの頭を貫いた!!

 

「ぐはっ!!」

「・・・・・」

 

オイル・サーディンは自身のスシブレードを取り出した。

オイル・サーディンのスシブレードはその名の通り

オイル・サーディンである、 いわしを油に漬けて加熱したものである。

油で艶やかに輝いている。

 

「何者だ!?」

「カラースプレーだ」

 

カラースプレーが闇から現れる。

 

「痴女!?」

「御洒落だ!!」

 

カラースプレーのカラースプレー寿司が飛び掛かる!!

 

「無駄ァ!!」

 

オイル・サーディンもオイル・サーディンを放つ!!

油で弾かれてしまいカラースプレーが飛ばされる!!

 

「甘いわ!!」

「こっちの台詞だ」

 

闇から次々と現れる、 闇のスシブレーダー達。

 

「え・・・おい・・・ちょ・・・ま」

 

オイル・サーディンの静止も聞かずに

大量のスシブレードがオイル・サーディンを襲う!!

 

「うおおおおおおおお!!! 舐めるなああああああああああああ!!」

 

オイル・サーディンは体から油を噴出して油で全身をコーディングし

スシブレードを弾き飛ばした!!

 

「如何だ!!」

「ならばこうだ!!」

 

サイが頭から唐竹割にする!!

頭から真っ二つになるオイル・サーディン!!

流石に剣を弾く事は不可能だったか!!

 

「さぁ!! 行こう!!」

「「「おう!!」」」



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引くか押すか!!

「豆巻きが殺されたぁ!?」

「あの色ボケは何時か女に刺されると思ってましたよ」

 

サーアイがヤミ・マスターのシュリンプ・ウィズ・バジルソース

プラスチックの二人に報告する。

 

「恐らく犯人は闇のスシブレーダーが囚われている区画に行ったと思われる」

「何故そんな事を・・・」

「分からんなぁ・・・まぁ兎も角だ、 さっさと行くのが良いだろう」

 

どごおおおおおおおおお!! と轟音が鳴り響く。

 

「何の騒ぎだ!?」

「大変です!! 皆様方!!」

 

ソルジャースシが報告にやって来る。

 

「如何した!?」

「闇のスシブレーダー達が脱獄しました、 その数軽く数百!!」

「な、 何だとぉ!?」

「数百!? 何でそんなにいっぱい居るんだ!?

閉じ込めた奴は100より少し多いくらいだろう!?」

 

区画内部での時間経過は外に比べ凄い早いのだ

子供が生まれ世代を重ねればこの位の数は居る!!

 

「畜生め!!」

「如何する!?」

「如何するって・・・数百って数からして駄目だろ!! 撤退だ!!」

「撤退って正気か? ここに閉じ込めている連中を解放されたら偉い事になるぞ・・・」

 

プラスチックが立ち上がる。

 

「やる気かよプラスチック!!」

「黙れ海老野郎、 出来る出来ないじゃなくやるかやられるかだ」

 

プラスチックは走り去っていった。

 

「くっ・・・」

「ど、 如何します?」

「このサンダリ牢獄の戦力全てをぶつけろ!!

近隣から救援を要請!! 私達も出るぞ!!」

「分かった!! もう腹を括ったぜ!!」

 

シュリンプ・ウィズ・バジルソースとサーアイも外に出たのだった。

 

 

 

 

 

「ぐわぁ!!」

「メネギさーん!!」

 

交戦に当たっているヤミ・アプレンティス達!!

しかし敵の数は圧倒的である!!

メネギは吹き飛ばされた!!

 

「ひゃああああああああああはあああああああああああ!!」

「ぐはぁ!! コイツ・・・強い・・・!!」

「数だけ揃えても勝てねぇモンには勝てねぇんだよぉ!!」

 

ヤミ・アプレンティスの中でも実力者コンビニエンスが現れた!!

 

「面白い!! 私が相手をしよう!!」

 

マックスが肉まんの前に立つ。

 

「ひゃっはああああああああああああああああ!!」

 

奇声を挙げながら肉まんを射出するコンビニエンス!!

マックスは自身のスシブレード、 コンビーフ軍艦を繰り出した!!

質量は圧倒的に肉まんが有利!!

 

「俺の勝ちだああああああああああああ!!」

「間抜けめ!!」

 

次々とコンビーフ軍艦を打ち出すマックス!!

数で圧倒する気だ!!

 

「ちいいいいいいいい!! お前達も援護しろ!!」

「は、 はい!!」

 

ハムや他のヤミ・アプレンティス達も援護に入る!!

果たして何方が勝つのか!?



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脱出!!

三国軍指揮官、 ミーナは牢屋で何かが起こっている事を察した。

 

「何だ? 何が起きている!?」

 

守衛も居ない、 これは脱獄のチャンスか!?

 

「指揮官殿!! ここは逃げましょう!!」

 

他の牢屋に居る兵が叫ぶ。

 

「あぁそうだな」

「そうはいかない」

 

ぬらりと真っ黒い服を着たヤミ・マスター、 プラスチックが現れた。

 

「な、 何者だ貴様!!」

「俺はヤミ・マスター、 プラスチック

如何やら捕らえていた闇のスシブレーダー達が逃げ出した様だからな

お前達と合流して一大勢力になられても困る、 だからお前達を殺しに来た」

「な、 何だと!?」

 

そう言って懐からプラスチックの容器を取り出すプラスチック。

しかも二つである、 その容器の中には大量の寿司が入っていた。

これがプラスチックのスシブレード、 寿司折である。

ジュエリーボックスと原理は同じで

大量のスシブレードを射出出来るスシブレードなのだ!!

 

「くっ・・・これまでか・・・」

「それでは覚悟」

「するのはお前の方だ」

 

声がした方を見るプラスチック。

 

「これはこれは何時ぞやの狂人ではないか」

「誰が狂人だ、 寧ろお前の様な黒づくめの方が気が狂っている様に見えるぞ」

 

声の主はトレジャーハンター。

 

「皆さん!! 助けに来ました!!」

「サイ!! 君・・・助けに来たのか!!」

「はい!!」

「私を前に良くもまぁそんな事が言えた物だな・・・

助かると思っているのか?」

「ふん、 心配いらない俺がお前を倒す」

 

トレジャーハンターがプラスチックを睨みつける。

 

「この牢獄では最強と謳われた私とお前とでは天と地ほどの差がある

そもそもお前は一度私に敗北しているのではないか?」

「男子三日合わずば刮目して見よ、 と言う言葉を知らんのか?」

「ふん、 男子ってお前も良い歳だろうに」

「男は何時までも少年の心をもっているのさ・・・

ここでやったら巻き添えになる、 場所を変えるぞ」

「ふん、 そこまで激しい戦いにもならないだろうに・・・

まぁ良いだろう、 場所を移してやろうか」

 

場所を変えるトレジャーハンターとプラスチック。

 

「今すぐに鍵を開けます!!」

 

サイが次々と牢屋の鍵を開ける。

 

「サイ、 さっきの人は一体・・・」

「捕らえられていた闇のスシブレーダーです!!

何とか仲間になってもらえました!!」

「そうか・・・この騒ぎは・・・」

「捕らえられていた闇のスシブレーダー達の交戦の音です!!」

「そうか・・・じゃあ私達も急いで武装して加勢するぞ!!」

「はい!!」

 

大急ぎで牢屋の鍵を開けて早急に戦場に向かうミーナ達であった。



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迫りくる決着

プラスチックとトレジャーハンターは修練場にやって来た。

 

「こうして二人で戦うのは久しぶりだな」

「そうだな、 お前が狂う前までは何度か模擬線をしたが・・・」

「模擬線ね、 本気で俺を殺そうとした記憶が有るが・・・気のせいか?」

「模擬線で殺そうとしたから」

「お前に恨まれる覚えは無いぞ?」

「・・・・・ロシュディ、 トグルータを覚えているか?」

 

ロシュディと言うのはトレジャーハンターの本名である。

彼等二人は幼馴染なのだ。

 

「忘れる筈がない・・・俺の婚約者だった女だ」

「奴はお前のせいで死んだんだ」

「・・・・・」

「お前がオゴポゴなんて居もしない魚を捕獲する為の無謀な冒険のせいで!!」

「オゴポゴは実在する、 何度も俺はお前に言っていた

前回は俺がオゴポゴを使いこなせず敗北したが今回はそうはいかない」

「お前はオゴポゴが居ると思っている様だがオゴポゴなんていないんだよ」

 

今二人が激突する・・・

 

 

 

 

 

一方その頃

 

「舐めるなよおおおおおおおおおおおおお!!」

「喰らええええええええええ!!」

 

ヤミ・マスター二人組の登場により戦線は膠着した!!

 

「くっ!! なんて強さだ!!」

「ぐぅうう・・・トレジャーハンターが戻る迄耐えるんだあああ!!」

 

スシブレーダー達も応戦する!! しかし戦力差は圧倒的!!

 

「数が多いとしり込みしていたが廊下で戦うならば

一度に戦う数は限られている!! これならいける!! いけるぞおおお!!」

「!! サーアイ!! そっちは任せた!!」

「シュリンプ!? どういう事・・・!?」

 

サイが解き放った三国軍捕虜が武器を構えて

サーアイとシュリンプ・ウィズ・バジルソースの元に向かって来ていた!!

 

「くっ・・・」

 

ヤミ・アプレンティス達の援護をしてやりたいが

前面のスシブレーダー達を押さなければキツイ・・・。

 

「任せた!!」

「行くぞオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

シュリンプ・ウィズ・バジルソースが海老のバジルソースがけを放った!!

サイが疾走する海老のバジルソースがけに短刀を投げる!!

しかし海老の尻尾に弾かれてしまう!!

 

「なんと!?」

「伊達にヤミ・マスターになってはいないわぁ!!」

「うおおおおおおおおおお!!」

 

サイは海老のバジルソースがけに剣と突き立てる!!

何とかを海老のバジルソースがけを止める事が出来た!!

 

「まだまだあるんだよぉ!!」

 

二個目のスシブレードを放とうとするシュリンプ・ウィズ・バジルソース!!

 

「こっちもだ!!」

 

ミーナが弩でシュリンプ・ウィズ・バジルソースに矢を放つ!!

 

「くっ!!」

 

腕で致命傷を避けたシュリンプ・ウィズ・バジルソース!!

しかし迫りくる捕虜達に一体如何するのか!?



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全力疾走

「くっそおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

シュリンプ・ウィズ・バジルソースは床にスシブレードを叩きつけて穴を開けた!!

そしてそこから逃げ出した!!

 

「しゅりんぷうううううううううううううううううううううううう!!」

 

サーアイは激昂しながら後を追った、 ヤミ・アプレンティス達や生き残りも後に続いた。

 

「勝った・・・のか?」

「急いで追わないと!!」

 

カラースプレーが前に乗り出す。

 

「痴女!?」

「御洒落だっつの!! 急いで追いかけた方が良いんじゃないの!?」

「戦うよりもまずは戦況を確認した方が良い

さっきの黒装束と戦った帽子の彼を・・・」

「俺ならココだ」

 

トレジャーハンターが歩いてやって来た。

 

「トレジャーハンター・・・勝ったの?」

「あぁ・・・」

 

どさり、 と倒れるトレジャーハンター。

 

「と、 トレジャーハンター!?」

「流石に強敵だったぜ・・・暫く休ませてくれ・・・」

「休んでいる暇は悪いけどないよ」

 

サイがぴしゃりと言い放つ。

 

「サイ、 一体どういう事?」

「えぇ、 実は・・・」

 

ダースシ・ヴォルフガングの軍隊がバルド達を襲う事を説明するサイ。

 

「なんだって・・・これは一刻も早く救援に行かねば!!」

「行きましょう!!」

「くっ・・・体に鞭打つ奴だなぁ!!」

「とりあえず馬小屋に行きましょう!!」

 

足を確保する為に馬小屋に向かう一同。

しかし!!

 

「くっ・・・!! 一足遅かったか!!」

 

逃げ出したスシブレーダー達によって馬は連れていかれるか

連れていけない馬は既に殺されていた!!

 

「い、 一体如何しろって言うのよ・・・」

「ふん、 嘆く必要はねぇぜ」

 

半人半馬のスシブレーダーが前に出る。

 

「俺達には足が有るんだ、 走って行けばいい!!

傷付いたトレジャーハンターは俺が連れていく!!」

「そ、 そんな無茶な・・・」

「無茶でもやるしかありませんよ司令官殿」

 

キッとした眼付で言うサイ。

 

「・・・・・親の七光りかと思いきや良い事言うじゃない・・・」

「ふふっ・・・」

「分かったわ、 無茶な強行軍だけどやるしかないのならやるしかないじゃない!!

行くわよ皆!!」

 

ミーナが檄を飛ばす。

 

「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

そして皆が叫び走り始めた!!

これが後に言う全速力行軍である!!

果たしてダースシ・ヴォルフガングの軍隊がバルド達を襲う目に

バルド達の所に辿り着けるのか!?

全力を持って走った先に希望は有るのか!?

それを知るにはまず走れ!!



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とても幸せな夢であった

一方その頃、 闇のスシブレーダー達が捕えられていた区画

異常に膨張した空間は闇のスシブレーダー達が居なくなった事で崩壊し

残っていたおでぶちゃんとスシ生命体達は世界と世界の狭間に落っこちてしまった。

 

「すしー・・・」

「大丈夫にょー」

 

おでぶちゃんは勝手知ったる他人の家といった様子でにょにょにょと移動し

あっという間に自分が元居た世界に戻って来たのである。

 

「にょにょにょ・・・ただいまー」

「「「「「おかえりー」」」」」

 

おでぶちゃんと同じ様な姿の生き物がおでぶちゃんを出迎える。

間の抜けた顔の太陽が照らすのほほんとした世界である。

おでぶちゃんの仲間達がわらわらと集まって来る。

 

「すしー」

「にょー? 何その寿司みたいなのは?」

「スシ生命体」

「ほにょー、 変な生き物も居るにょー」

 

おでぶちゃんの種族は極めて強靭な肉体を持ち大食いだが

戦闘能力は皆無に近く極めて怠惰である、 スシ生命体を食べたくても

返り討ちにされてしまうし何よりも可愛いので食べない。

 

「何処に行ってたにょ?」

「スシブレーダー達の街にょー」

「にょー・・・良く分かんないにょ」

「にょー・・・おねむにょ・・・にょこいせっと」

 

横になるおでぶちゃん。

 

「にょおおおお」

 

そして欠伸をする。

 

「すしーすしー」

「よしよしにょー」

「すしー♪」

 

スシ生命体は如何やらこの世界でも生きていけるようだった。

おでぶちゃんにとって喜ばしい事だった。

やがてスシ生命体はこの世界の住人として認められ健やかに暮らしていくだろう。

この世界には沢山の食べ物が無尽蔵に沸いて来るのだ、 何一つ問題はない。

 

おでぶちゃんの世界はのほほんとしている発展はほぼ無いかわりに争いもほぼ無い

争いと言っても食べ物の取り合い程度の物で直ぐに仲直り出来る。

知能が発達し万物の霊長を自称する人類とは雲泥の差である。

果たして我々人類は争う為に成長するのか

何故仲良く出来ないのか、 争う為にスシを握るのか

愛らしいスシ生命体を生み出す事が出来るのに・・・

スシブレーダー達は争う事しか出来ないのだろうか?

スシブレードは争いの道具なのだろうか?

そんな難しい事を考えている内におでぶちゃんはすやすやと眠りに落ちた。

 

夢の中でおでぶちゃんは皆で仲良くごはんを食べる夢を見た。

闇のスシブレーダー達も普通のスシブレーダー達も

おでぶちゃん達も皆仲良く色んな物を食べている。

とても幸せな夢であった。

 

「むにゃむにゃ・・・もうたべられないにょ・・・」

「すしーZzz・・・」



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極秘!!サンダリ牢獄の見張りのスシブレーダーとスシブレード名鑑

闇号:ハム

本名:ウォックリンク

良くも悪くも平凡な少女で友達と一緒にスシブレードを始めたら

才能が有ってヤミ・アプレンティスになった少女

全体的に向上心が薄く特にこれと言って特徴が無い

サンダリ牢獄崩壊時に逃走。

 

使用スシブレード:ハム

攻撃力:C 防御力:B 機動力:C 持久力:B 重量:C 操作性:C

ハムを乗せたスシブレード。

生ハムでは無く普通のハムなのがポイント。

特に特色は無いが油分で攻撃を弾き粘り強い戦い方が出来る。

 

親方”闇”からの総評

向上心が無いのが難点、 今時の普通の少女ってこんな感じなのか?

 

 

闇号:メネギ

本名:デュロック

ハムとは知り合いだったらしい青年。

ハムでも成り上がれるのならば自分でも行けるだろうと応募して

ヤミ・アプレンティスになった、 簡単に言っているが結構な奇跡である。

サンダリ牢獄崩壊時に交戦し死亡。

 

使用スシブレード:メネギ

攻撃力:C 防御力:C 機動力:S 持久力:E 重量:E 操作性:S

メネギのスシブレード。

対人戦を意識して作られたスシブレード、 相手を傷つける事に主眼を置き

相手を甚振る事で敵全体の士気を下げるを目的としている。

スシブレード同士の戦いにおいては不得手。

 

親方”闇”からの総評

人を傷つけるスシブレードを選ぶ時点で実力はお察し

 

 

闇号:コンビニエンス

本名:ヴァルガー

努力も無しに強くなりたいと思っていた怠け者の元騎士。

そんな彼に闇のスシブレードはマッチしていた。

闇のパワーで肉まんを常時ほかほかにしている。

サンダリ牢獄崩壊時に交戦し死亡。

 

使用スシブレード:肉まん

攻撃力:B 防御力:A 機動力:E 持久力:A 重量:A 操作性:E

肉まんのスシブレード。

闇のパワーで何時までも温かいままなので熱量攻撃として使用可能。

更に防御力も高いが機動力は極めて低い。

グラシン紙の開発が急がれる。

 

親方”闇”からの総評

心の闇は本当に凄いのに面倒臭がりが全てを殺している。

実に惜しいが無理矢理スシを握らせても上手く行くはずが無いのでほっといた。

 

 

闇号:豆巻き

本名:ゴルニーシュ

元平民でヤミ・アプレンティスから殺し合いで

ヤミ・マスターに昇格した闇のスシブレーダー。

ハングリー精神が高く、 ヤミ・マスターとの殺し合いを熱望する程。

上昇志向も高く、 スシブレードの改良に余念が無かった。

出世欲が強い、 また女好きで女絡みの揉め事にも暇が無い。

サイに殺害される。

 

使用スシブレード:大福巻き

攻撃力:D 防御力:SS 機動力:D 持久力:A 重量:A 操作性:A

大福を海苔巻きで巻いたスシブレード。

防御力に特化したスシブレードで豆巻きは持久戦からの搦め手を主にしていた。

 

親方”闇”からの総評

せめてスシブレードで戦って死ね。

 

 

闇号:サー・アイ

本名:モラーグ

三つ目の女性でヤミ・マスターである。

理知的な女性でサンダリ牢獄では主に頭脳労働を担当していた。

自らのスシブレードを使っての監視等も行っていたが

サイの擬態は見破れなかった様だ。

サンダリ牢獄崩壊時に逃走。

 

使用スシブレード:マグロの目玉

攻撃力:E~S 防御力:E 機動力:S 持久力:S 重量:C 操作性:S

マグロの目玉のスシブレード。

スシブレードとしての能力はお世辞にも高いとは言えないが

サー・アイが自身の闇のパワーで視覚をリンクして監視カメラとして使用可能。

但し本気になると目の周囲の肉が全て落ちて眼の核のみとなり攻撃能力が格段に上昇する。

 

親方”闇”からの総評

強い寿司を使っているからヤミ・マスターになれるという風潮に

一石を投じる女傑、 ゴリ押しで勝つだけがスシブレードでは無い。

まぁゴリ押しの方が好きだが。

 

 

闇号:オイル・サーディン

本名:ブライト・ツリー

ポマードをたっぷり付けた青年でヤミ・マスター

旧シャリ王国の貴族でもあった。

上昇志向が強く、 出世の為に様々な事を試す等野心家だが

自身の命を大事にする小心者でも有る。

体から油を流れ出させる様に体が変容しておりスシブレードの直撃なら

体から滑らせてダメージを受けない、 しかしサイによって叩き斬られ死亡する。

 

使用スシブレード:オイル・サーディン

攻撃力:C 防御力:S 機動力:S 持久力:D 重量:D 操作性:E

オイル・サーディンのスシブレード。

かなり油で煌いており、 並大抵の攻撃なら滑らせて無力化する事が出来る。

 

親方”闇”からの総評

個人的にはアンチョビの方が好き。

 

 

闇号:シュリンプ・ウィズ・バジルソース

本名:レクー

元々はダースシ・オーモリの部下だったが内地での生活に憧れを抱き

移動して来たヤミ・マスター、 ダースシ・オーモリから良いエビを仕入れて

かなり大振りのスシブレードを造り出した。

サンダリ牢獄崩壊時に逃走。

 

使用スシブレード:海老のバジルソースがけ

攻撃力:SS 防御力:C 機動力:C 持久力:C 重量:B 操作性:B

海老のバジルソースがけのスシブレード。

普通のエビリュウオウよりも良いエビを使用しており

剣の一撃すら弾き飛ばす程である。

 

親方”闇”からの総評

逃げ出したのは頂けないが負けるよりは良いか・・・

 

 

闇号:プラスチック

本名:アサック・ダン

サンダリ牢獄最強の闇のスシブレーダー。

ヤミ・マスター階級の中でもスシの暗黒卿に近いとも言われているが

本人としてはヤミ・マスターで充分自分の思い描いた戦術が取れるので

ヤミ・マスターで満足している、 トレジャーハンターと因縁があり

彼と激突し敗死する。

 

使用スシブレード:寿司折

攻撃力:SS 防御力:SS 機動力:E~A 持久力:E~A 重量:SS 操作性:SS

寿司折のスシブレード。

ジュエリーボックスと原理は同じだが此方の方が大量にスシブレードを収納でき

更にプラスチックを使用する事で再利用が可能である。

プラスチックは二個所有し一度に60個のスシブレードを自在に操る事が出来た。

 

親方”闇”からの総評

まさか負けるとは思わなかった、 最悪プラスチックだけでも勝てると思っていた。



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極秘!!サンダリ牢獄に囚われていたスシブレーダーとスシブレード名鑑

本名:デイブ

スシブレーダーと間違われて連れて来られた人、 その1

トレジャーハンターと一緒に居た四本腕の巨漢で

闇のスシブレーダーだろうと捕まえたが実態は四本腕の人であった。

持て余し気味にサンダリ牢獄に閉じ込めたが

サンダリ牢獄崩壊後にこっそりトレジャーハンターからも逃亡している。

 

親方”闇”からの総評

スシブレーダーじゃ無い奴をどう評価しろと

 

 

本名:かたじん・ゐおん

スシブレーダーと間違われて連れて来られた人、 その2

トレジャーハンターと一緒に居た14の足と14の腕と7つの頭を持つ何か。

"闇"にはでかい人に見えていた。

スシブレーダーではないが異様さからサンダリ牢獄に閉じ込めた。

サンダリ牢獄の中でスシブレードを学びスシブレーダーになった。

強さ的にはヤミ・アプレンティス程度だろう。

使用スシブレードは拘りが無く、 鹵獲した物を使用する。

 

親方”闇”からの総評

でかい人にしか見えないけどなぁ・・・

 

 

本名:シャーク

サンダリ牢獄の闇のスシブレーダー達が囚われていた区画で生まれ育った

スシブレーダー、 鮫の体から手足が生えているという風貌。

親から受け継いだ、 鮫のスシブレードを扱う。

割と単純な性格だがスシブレードに対しては苛烈。

 

使用スシブレード:鮫

攻撃力:A 防御力:B 機動力:B 持久力:B 重量:B 操作性:B

鮫のスシブレード。

全体的に高いポテンシャルを持つ、 食用に改良された物だと推測されるが

詳細は不明。

 

親方”闇”からの総評

見た事も無い奴をどう評価しろと

 

 

本名:ミレニアム・ファルコン

ケンタウロスの様な半人半馬の自称スシブレーダー。

スシブレードを見て、 自分なりに考えた結果。

馬車は手綱を握り、 車輪が回転するのでスシブレード。

そして体がケンタウロスの様に変異した。

意気揚々とスシブレーダーを名乗っていると"闇"に捕まり

牢獄に叩き込まれる、 トレジャーハンターと徒党を組み彼の右腕となる。

 

使用スシブレード:馬車

攻撃力:SS 防御力:SS 機動力:SS 持久力:SS 重量:SS 操作性:C

馬車である、 早くて強いがスシブレードと言えるのかは謎。

 

親方”闇”からの総評

馬車はスシブレードでは無い。

 

 

闇号:ミンチ

本名:ラニック

"闇"の包丁を紛失したと嘘を吐いて盗み出したスシブレーダー。

紛失の責でサンダリ牢獄に囚われていたが

サンダリ牢獄内部で包丁に血を捧げて強化しようと目論んでいた。

"闇"の包丁に魅入られスシブレードを使う事を止めてしまった為

正確にはスシブレーダーでは無いがスシブレーダー特有の体の変容は起こっており

体を自在に液状化させて泉の様にする事が可能である。

 

親方”闇”からの総評

折角研いだ包丁を失くしたから牢屋に打ち込んだがまさか横領していたとは思わなかった。

 

 

闇号:マックス

本名:ボグウィング

スラムで生まれ育ち徒党を組んで悪さをしていた悪童が大人になった人。

ヤミ・アプレンティス階級までのし上がったが食料の横領が発覚し

サンダリ牢獄に叩き込まれた、 世話をしていた者から贈り物として

無限に再生する食材人間を提供され、 その食材人間を元に勢力を築いた。

サイのひたむきさに感銘を覚え、 サンダリ牢獄から勢力諸共脱出する。

 

使用スシブレード:コンビーフ

攻撃力:C 防御力:B 機動力:C 持久力:B 重量:B 操作性:C

コンビーフ軍艦のスシブレード。

単純だが癖が無く、 大量にマックスは撃って来るのでかなり厄介な相手である。

 

親方”闇”からの総評

ハングリー精神の意味が違う。

 

 

本名:カラースプレー

痴女の様な恰好をした女性、 本人曰く御洒落のつもりらしい。

チンピラ達の頭目を務めるカリスマ性は有ったらしく

斬った張ったは日常茶飯事、 ドラゴンスシに恨みがあり討伐をした

サイを助ける為にサンダリ牢獄から勢力諸共脱出する。

 

使用スシブレード:カラースプレー

攻撃力:E 防御力:E 機動力:A 持久力:S 重量:E 操作性:S

カレースプレーが塗されたスシブレード。

通常のスシブレードよりも軽く相手に直接当てる事を主眼に置いたスシブレード。

 

親方”闇”からの総評

痴女じゃないか(呆れ)

 

闇号:トレジャーハンター

本名:ロシュディ

帽子を被った男でヤミ・マスター階級と同程度の実力を持つが

自由を求めてヤミ・アプレンティスに留まる男。

オゴポゴと言う謎の魚を求めてチームを編成し探しに出かけて

彼のみが生きて帰って来た、 その際にオゴポゴを捕獲したと言い張るが

オゴポゴを目視した者は誰もおらずサンダリ牢獄に囚われる。

プラスチックと因縁が有り、 死闘の末に撃破するも重傷を負う。

 

使用スシブレード:オゴポゴ

攻撃力:B 防御力:B 機動力:D 持久力:D 重量:B 操作性:D

未確認生物オゴポゴのスシブレード。

詳細不明

 

親方”闇”からの総評

オゴポゴは実際に有るのか・・・謎は深まるばかりだ・・・



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第十二章:ヴォルフガングの願い
オープニング・クロール


サンダリ牢獄に囚われていたサイ一行は全力疾走でバルド達の元に向かう事になった!!

途中休憩を挟む時間的余裕は無い!!

大怪我を負ったトレジャーハンターはミレニアム・ファルコンが引く馬車に乗れるが

その他は全員走りである!!

サンダリ牢獄からバルド達の元までは全力で走っても半月以上はかかる!!

全力で行ってもダースシ・ヴォルフガングの軍勢が

数日はバルド達を襲う計算になる!!

何と言う事だ!!

 

しかしバルド達は腹を括っている!!

各々が出来る事を全力でやっているのだ!!

だからこそサイ一行も全力で走るのだ!!

全力でやれる事を一生懸命にやっているからこそ

サイに闇のスシブレーダー達が惹かれてサイに付いて行った様に

バルドも一生懸命やって勝利の女神を引き寄せる事になるのだ!!

 

一方その頃ダースシ・ヴォルフガングはバルドと過去に自分が捕えていた

レーアが関係がある事を既に掴んでおり、 バルドと引き換えに

レーアに交渉を持ちかけていたのだった。

その交渉内容は『行軍の中止と引き換えに件の品を渡されたし』と言う物だった。

件の品、 それは過去にオーガス王が言っていた

『レーアの領地にあるあらゆる願いが叶う物』の事である。

ダースシ・ヴォルフガングの勝手な行動をキャッチした"闇"は護衛の名目で

監視としてダーク・イタマエをダースシ・ヴォルフガングに付ける事にした。

ダーク・イタマエが監視で有る事を察したダースシ・ヴォルフガングは

ダーク・イタマエを買収しようと試みるも失敗。

ダーク・イタマエとダースシ・ヴォルフガングの戦いが始まった。

 

両者の戦いはダーク・イタマエが只管にダースシ・ヴォルフガングとの

落としどころを探し続けながら行われた事により

互いの消耗はそこまで酷く無かった。

最終的にバルドを人質にする事でレーアとの交渉に使う事で何とか両者は和解し

ダースシ・ヴォルフガングとダーク・イタマエはバルド達の元に行軍を再開した。

そしてこのスシの暗黒卿二人の元にサンダリ牢獄陥落の報が飛び込む。

そしてバルド達の元に合流しようと全力疾走している事も・・・

 

二人は諍いで一時行軍が中断した事で勝機を逸すると危惧し

彼等も全力疾走でバルド達の元に向かったのだった。

 

果たしてバルド達の元に辿り着くのは

ダースシ・ヴォルフガングとダーク・イタマエの軍か!!

サイ率いる囚われていた闇のスシブレーダーと三国軍残党連合か!!

 

果たしてバルド達は無事に帰る事が出来るのか!!

乞うご期待!!



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裏をかかれる

馬車に乗ってバルド達の元に向かう

ピースメイカーとダースシ・ヴォルフガングとダーク・イタマエ。

周囲には大勢の軍隊が随伴している。

 

「・・・馬車では無く馬のみで行った方が早いのでは?」

「僕は馬に乗れないからね、 貴族とは言っても元々平民

乗馬の趣味も経験も無い」

 

包帯を頭に巻いた状態で愚痴るヴォルフガング。

 

「まぁ、 君が素直に買収されていてくれたらもっと早く迎えたんだけどね」

「責任転嫁の仕方が無茶苦茶ですね」

「そんな無茶苦茶な事は言ってないつもりだ、 寧ろ君の方が信じられない

何か"闇"の親方に弱みでも握られているの?」

「そんな事は無いですが・・・正直私は信じられませんよ」

「何が?」

「レーア嬢の領地にあるあらゆる願いが叶う物ですよ

そんな物が有れば今頃、 こんな戦争は起こっていない筈です、 違いますか?」

「リスクが有るとかオーガス王は言っていたよ」

「リスクですか・・・今の貴方ならば権力と力で大抵の事は叶うでしょう

態々リスクを支払う必要がありますか?」

「叶えられない願いも世の中には有るんだよ

確定した因果とかね・・・君だって経験無い?

闇のスシブレーダーをやっているんだ覆したい過去の事象とかあるだろ?」

「無いですね」

 

キッパリ言い切るダーク・イタマエ。

 

「・・・話が合わないなぁ・・・君には過去のトラウマとか無いの?」

「有りますよ、 ですがそれを如何こうしたいとは思いません」

「何で?」

「終わってしまった事ですから」

「あっそ・・・じゃあ聞かないよ」

 

退屈そうに頬杖をするヴォルフガング。

 

「君にやられた頭が痛い・・・」

「私も貴方にボコボコにされた胸と腹が痛いです」

「痛いで済むのか・・・結構本気でやったつもりだけどな」

「私は手加減していました」

 

ヴォルフガングがぎりりと歯軋りをする。

 

「自分の方が上だと言いたいのか?」

「まぁ・・・はい」

「正直に言う事が全面的に良い事では無いぞ・・・嘘を吐くのは論外だが」

「一つだけ言わせてくれ」

 

ピースメイカーが口を挟む。

 

「何だ?」

「如何したの?」

「これから一緒に戦う訳だし、 一緒の馬車に乗ってるんだから

空気悪くなるような事を言うなよ、 これから向かう迄の間

空気感が地獄の状態で過ごすこっちの身にもなれよ」

「何で君が僕達と一緒の馬車に乗っているのかが疑問だね」

「ヤミ・マスターも一人同席しようってなって

それでジャンケンで俺が選ばれたんだ」

「君はチョキしか出せないからねぇ・・・」

「いや右腕は普通の人間だから普通にパー出せるんだよ

そしたら他の二人が示し合わせた様にチョキを・・・」

「それは気の毒に」



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件の品

一方、 ファウンデーション教国では議会が招集された。

レーア伯爵令嬢の証人喚問である。

 

「件の品と言うのは恐らくあらゆる願いが叶うとされている宝だと思われます」

 

レーアの言葉に騒めく一同。

 

「願望を叶える魔法の品、 と言う事か」

「ちょっと待ってくれ、 何でそんな便利な物があるのならば使わないんだ?」

 

議員達が次々と騒ぎ出す、 O5-1が諫め沈める。

 

「推測するにただ願いを叶えてくれるだけの代物ではない・・・と言う事か?」

「御明察です、 願いを叶える代わりに代償を要求する悪魔を呼び出す

マホガニー製の家具一式です」

「代償・・・? 代償とは一体・・・?」

「えぇ、 何でも他者の命や記憶等を奪い取って

願いを叶えると記録にはあります

余りにも恐ろしいので使おうとも思いませんでした」

「この状況を打開出来る可能性はあるのか?」

「尋常じゃない代償を要求される気がします」

「その通り、 超常的な物品で事態を打開するのは

悪手の場合もある、 危険だ」

「ですがこの状況を何とかするのに手段は選んでいる場合では無いのでは?」

「いや、 しかし倫理観を置き去りにしては意味はない」

「倫理よりも命だろう」

 

如何するべきか混迷する会議。

 

「今現在、 スシブレーダー部隊への救援を送っている最中です

その救援を援護するのに使える物品は教国は所有していません」

「・・・O5-1、 御言葉ですが我々でもリスクが有るとはいえ

願いを叶える事が出来る物が有ります、 この教国にはそういう物品は無いのですか?」

「教国にも不思議な宝物は幾つも有る、 だがしかし手に余る物ばかりだ

能動的に使う事は難しい」

「それではバルド達が危険では無いか!!」

「そう言う事になる・・・」

 

バンッ、 と会議場のドアが開かれた。

当然議員達は注目する。

 

「はぁ・・・はぁ・・・伝令です!!」

「如何した?」

「サンダリ牢獄に囚われていた三国軍が囚われていた

闇のスシブレーダー達と蜂起し合同でバルド達の元に救援に向かっています!!」

「なんと!?」

「それでは援軍が間に合うと言う事か!?」

「時間的にはかなり切羽詰まっています!! 半月以上はかかりそうですが

我々が部隊編成を行い軍を送るよりも早く辿り着けるかと!!」

「希望が見えて来たな・・・」

「こちらも部隊編成を急ぎましょう!!」

 

議会が再度過熱し始めた。

 

「しかしSCP-738がサンシャイン王国に有ったとは・・・予想外だな・・・」

 

O5-1がぽつりと零したがその言葉を誰も聞いてはいなかった。




言及されたSCP
SCP-738 - 悪魔の取引
http://scp-jp.wikidot.com/scp-738


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体を動かして作戦会議

渦中の人であるバルド達は自分達に出来る事を模索していた。

バルドや三崎はスシブレードの強化のための試行錯誤。

その他のスシブレーダーは研鑽の為に模擬試合や合同演習を繰り返していた。

 

そしてゴハンやハウ達はと言うとジューンの部下だった者達

協力してくれた現地民と街内に使える物は無いか調べていた。

 

「地下通路の出入り口や罠とか色々有るな・・・」

「敵が去る迄、 地下で隠れていたらどうですか?

援軍が來る迄隠れて、 援軍が来たら挟み撃ちに出来ますよ」

「いや、 それは無いな、 隠れているのを見つかったら俺達はやられる

半月も誤魔化し続けられるとは思えない」

 

ジューンの部下の言葉を否定するゴハン。

傭兵の視点からシビアに判断する。

 

「・・・この地下通路を崩して堀にするって言うのは如何だ?

スシブレードの進軍を遅らせる事は出来そうだ」

「悪くない案だが・・・街中でそれをやるのは如何だろうか?」

「ちょっと待ってくれ、 それは止してくれ街が滅茶苦茶になる」

「このまま奴等に攻め込ませた方が滅茶苦茶になりそうだが」

「・・・・・」

 

考える現地民。

 

「バリケードならば作るのを手伝うよ」

「いや、 ジャイアント寿司で吹き飛ばされるのがオチだ」

「あ・・・そうか・・・じゃあ火炎瓶とかを作ろうか

それならばスシブレードにも対抗出来るだろう」

「良いのか? アンタ達は漁民だ、 逃げても文句は言わないぞ」

「俺達は戦う兵隊じゃないが、 この村の人間だ

逃げたりはしないよ」

「ありがたいが・・・戦力に出来るかと言えば微妙な所だな」

「そうだな、 それは俺達も分かっているさ、 でも協力は出来る

例えば・・・スシを無力化するのならば地面に砂利でも捲くのは如何だ?」

「それは良いアイデアだな」

「良し、 じゃあ用意しよう」

 

こうして彼等は迎撃の準備を始めていた。

 

「これはいわば防衛戦、 攻め込ませない様に準備をしていく必要がある」

「それは分かっている、 出来る事は全部やろう」

「そうだな・・・ここで死んだらジューンさんに顔向け出来ない」

「あぁ、 俺の親父達やご先祖さまにも顔向けできない」

「私は・・・レーア様に顔向けできない」

「無理に顔向けできなくしなくても良いんだぞ?」

 

ははは、 と笑う一行。

 

「地下通路は長期間隠れるのは無理だとしても

隠れて市内での不意打ちには使えそうだな」

「そうだな・・・・・作戦を考えよう」

 

ハウとゴハンは元々戦争を生業としている

その為詳しい作戦は彼等に一任する事になった。

果たして彼等の作戦は通用するのだろうか。



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小さなことからコツコツと

村から離れた場所でスシブレーダー部隊の面々がスシブレードで模擬線を行っていた。

 

「うむ、 やはり海苔の方が卵よりも良いな」

 

ゾーバが自分のスシブレードに満足している様だった。

 

「俺も卵より海苔の方が良いっすね」

 

グリードも追従する。

 

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ゾーバさん・・・見た目と歳の割に体力有りますね・・・」

「はぁはぁ・・・本当だ・・・俺達が息を切らしているって言うのに・・・」

 

ケイとウェッジが息を切らしている。

 

「この程度の事は裏社会ではトレーニングにも入らない」

「裏社会でもトレーニングってするの?」

 

シャルが興味津々に聞いて来る。

 

「するぞ、 備えるのは大事だ」

「備えるってイメージじゃ無いなぁ・・・じゃあ避難訓練もするの?」

「するぞ」

「ますますイメージ違うなぁ・・・」

「いや・・・シャル、 避難訓練は何処の業界でもするぞ?」

「騎士団でもする」

「えぇぇ・・・」

 

避難訓練は大事である。

避難訓練を怠った結果、 大惨事と言うのは良く有る事だ。

 

「寧ろ騎士団とか裏社会の方がそう言う事にはきっちりしてるんじゃないのか?」

「イメージ違うなぁ・・・もっとシビアなイメージが有った」

「いやいやシャルよ、 命の取り合いをするシビアさが有るからこそ

つまらない事で命を落とすのは馬鹿馬鹿しいだろう

些事を気にしない者に大行は成せない」

「ことわざみたい」

「裏社会の大物の実体験の言葉だ、 肝に銘じろ」

「・・・例えば?」

「例えば新入りのチンピラの挙動が変だった時が有る」

「それで?」

「何処かのスパイかと思ったんだが調べるとそいつの親が病気がちで

治療費の為に逸早く出世して金を儲けたがっていたらしいんだ」

「なるほど・・・それで?」

「それでそいつに金を貸してやったんだよ」

「・・・・・で?」

「今じゃあそいつはワシの一番の手下、 と言う訳だ」

 

ドヤ顔をするグリード。

 

「・・・まぁコイツ以外に今のワシに手下は居ないがな」

 

ヽ(・ω・)/ズコーとなるグリード。

 

「何れにせよ、 身を守るにせよ、 成り上がるにせよ

貪欲に些事を気にしてピンチを乗り越えたりチャンスを物にしなきゃならない

有体に言えばやるべき事に全力投球と言う事だ」

「なるほど・・・」

「ワシもスシブレードのチューンナップを色々試している

この街は魚介が豊富だからなファットプラネッツの中身を新調して見るのも悪くないだろう」

「俺のワサビジュピターも新調出来るかも・・・」

「いや、 お前のは難しいんじゃないか?」

「そうでもない」

 

沸いて出て来る三崎に驚く一同。



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たこわさ

「急に出て来るなよ三崎」

「悪かったよ、 だけどもグリードさん

ワサビのみの涙巻きのワサビジュピターではパワー不足は否めない」

「確かに特出した所は無いな、 だけど色々試した結果

これが一番合うと判断されたんだよ」

「あぁ、 だから今回は創作寿司に片足を突っ込もうと思う」

「闇寿司!?」

「いや、 ギリギリセーフな筈だ」

 

そう言って三崎はタコのスシブレードを出した。

 

「これは?」

「たこわさのスシブレードだ」

「たこわさ?」

「たこのワサビ漬けの様な物だ」

「旨いの?」

「喰って見ろ」

 

もっしゃもっしゃと食べるグリード。

 

「旨い!!」

「だろ?」

「だがしかし・・・酒が進むな」

「未成年だからそれは良く分からない」

「うむ・・・だけどもやはり海苔巻きが良いと思う」

「何故?」

「シャリだけじゃあ勿体無い、 大量の飯が必要だ」

「なるほど・・・じゃあ刻んで海苔巻きの具にしてみよう」

「ちょっと待った」

 

ゾーバが待ったをかけた。

 

「何だ?」

「たこわさと言う名前、 これはひょっとすると三崎が居た世界の料理か?」

「そうだが・・・それが?」

「ワサビはグリードに相性がいい、 だからたこわさを作った

そう言う事だろう?」

「そうだな」

「だったら他にも山葵を試したネタを作るべきじゃないのか?」

「どういう事だ?」

「タコ以上に山葵漬けに適したネタが有るかもしれないと言う事だ」

「!!」

 

三崎がハッとした。

 

「その発想に至らなかった自分の首を絞めてやりたい!!」

「そこまで思い詰めんでも良いと思うが・・・

兎に角色々試してみよう、 ワサビの量の調整とか

グリードの好みに合えばもっと親和性が増すのかもしれない」

「確かに好みが合えば上手く行きそうだな・・・そうだな、 直ぐにやってみよう」

「あ、 ちょっと待ってくれ、 三崎」

「っとと!!」

 

立ち去ろうとする三崎を止めるウェッジ。

 

「危うく転びそうだったよ、 何だ?」

「バルドがあのスシの暗黒卿に勝てた理由って言うのは分かったのか?」

「!!」

 

三崎が俯く。

 

「ど、 どうしたんだ?」

「・・・・・それを聞いても参考になるか分からないよ」

「???」

 

首を傾げるウェッジ。

 

「聞いて見なきゃわからんだろう、 言って見ろ」

 

ゾーバが促した。

 

「少し話が長くなるかな・・・」

「構わない重要な事だろう」

「それもそうだな・・・」

 

どがっと三崎は座った。

 

「分かった、 話そう」

「おう、 じゃあこのたこわさをつまみに酒でも持って来るか」

「いや出来れば普通にアルコールを入れないで聞いて欲しい」

「そうか・・・」



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好きになれたら良いのに

「エッグヴィーナス・・・いや、 エッグヴィーナス・カスタムEか

あのスシブレードはバルドの思いが込められている」

「つまり自家製だから強かった、 と?」

「確かに自分で作ったスシブレードと

他の人が作ったスシブレードならば前者の方が親和性が高いだろう

だけども何と言うんだろうか・・・スシブレードとスシブレーダーとの絆

そういう物が彼等には出来上がっているんだ」

「絆・・・か」

 

しみじみと呟くゾーバ。

 

「愛着が湧く道具ならば強さもひとしお

そして絆が有れば実質強くなる」

「何だかオカルトめいてますよボス」

「ふん、 こう考えて見ろ、 相手がスシブレードとスシブレーダー

この二つが分かれていれば1と1、 そしてスシブレードとスシブレーダー

合わさって居れば2、 つまり1VS2、 勝てる道理が無い」

「良く分かりませんね・・・」

「つまり信じる力が強さになると言う事だ」

「裏社会の大物が言う台詞じゃないですね」

「信じられない奴を部下にした覚えはない」

「深いな・・・」

「羨ましい・・・」

 

三崎が呟いた。

 

「僕も最初はスシブレードを信じていた、 愛情も有った・・・

だけど何時からかな・・・僕にとってスシブレードは強さであり力になってしまった・・・」

 

涙を流す三崎。

 

「僕は今更ながらスシブレードを好きになりたい・・・ッ!!」

「・・・・・ワシも子供の頃はチンピラ以下の屑に殴られていた」

 

語り始めるゾーバ。

 

「そんなワシでも必死に努力を続けた結果、 裏社会の大物になれた

思いを抱き続ければ夢は必ず叶う、 叶わなくても今よりも良い状況になるだろう」

「ありがとうゾーバさん」

「いいって事よ、 子供の面倒を見るのは大人の務めだ」

 

にかっ、 と笑うゾーバ。

 

「そうだな・・・俺達はバルドより年上だからバルドより先に諦めないでやろう!!」

 

おぉー!! と拳をあげる一同。

 

「私は年下だけどね」

「私は同年代? かなぁ」

 

シャルとエミリーも軽口を叩く。

 

「それじゃあ僕も厨房で作業を始めるとするよ」

「頑張れよ!!」

「えぇ!!」

 

三崎は立ち去り厨房に走って言った。

厨房ではバルドが真剣な目で卵焼きを作っていた。

 

「バルド・・・」

「三崎さんですか・・・」

「今の貴方・・・僕が女ならば股を濡らしますね」

「え、 何ですか急に・・・」

「貴方の真剣な姿勢に感銘を受けましたよ」

「そうですか・・・」

 

尚も真剣な目で卵焼きを作っている、 そしてそれを食べた。

 

「ふむ・・・海老入りはやはり好きにはなれないな・・・」

「もっと焼き方に拘りを?」

「いや・・・・・そうだな・・・」



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自分の為に寿司を握る者に店は持てない

厨房で調理するバルド。

その姿はまるで彫像を思わせる。

 

(凄いな・・・)

 

三崎は感銘を覚えた。

何故ならばこの状況で慌てていない、 本来ならばすぐさまにでも

卵焼きを焼きたいのだろう、 時間制限の有るこの状況ならば尚更である。

それなのにも関わらずバルドの姿には焦りは見えない。

 

(この人は一体どんな人生を歩んで来たんだろうか・・・)

 

三崎はその疑問をバルドにぶつけた。

 

「バルド、 君はスシブレーダーになる前は一体何を?」

「執事をしていました、 元々孤児でレーア様に拾われて教育を受けました」

「なるほど・・・料理もその時に?」

「えぇ」

「凄い堂に入ってますね・・・師匠が良かったんですかね?」

「いえ、 独学ですね、 本を読んだりとかで・・・」

「独学で!?」

「えぇ・・・」

「独学でこれは凄い・・・」

 

卵焼きを巻き始めるバルド。

そして食べる。

 

「結構食べてますよね」

「えぇ・・・今日で試作は12回位ですかね・・・」

 

もぐもぐと卵焼きを咀嚼するバルド。

 

「この味で決まりですね」

「そんなにいい味なのですか?」

「えぇ」

「少し頂いても?」

「どうぞ」

 

もぐもぐと三崎は食べた。

旨い、 旨いのは旨いが飛びぬけて旨いとはならない。

出汁の配分が違う様だが・・・

 

「何故、 この味で決まりなのですか? 理由を聞きたい」

「この味が僕が求める味だからです」

「何故?」

「レーア様の好みの味だからです」

「!!」

 

三崎はハッとした。

 

「・・・つまり自分では無い誰かの為のスシブレード・・・だと?」

「僕が自分の事だけ考えていたら戦いなんてしませんよ」

「・・・・・」

 

自分の為じゃなく、 誰かの為に戦う。

 

「これも絆・・・か」

 

三崎は呟いた、 そして悟った。

自分はスシブレードしか見て居なかった事に。

何と愚かだったのだろうか、 スシブレードと絆を結びたい? 好きになりたい?

他者を好きになれず絆を結べない者がスシブレードと絆を結べる訳が無い!!

誰かの為に戦う者こそが真の強者なのだと!!

三崎はハッキリ自覚した。

 

「羨ましいよ・・・本当に・・・」

 

三崎は呟いた。

 

「何か言った?」

「いや・・・何でもない・・・」

 

三崎は人との絆を紡げるだろうか?

早々簡単にはいかないだろう、 だが・・・

 

「よし!! 僕もやろう!!」

 

三崎は準備を始めた。

自分に出来る事を一生懸命やらない者に未来が来るはずも無い!!

三崎は覚悟を決めた!! 自分に出来る事を精一杯やる事を彼は決意したのだった!!

 

「さて・・・次は酢飯だ・・・」

 

バルドも調理を再開したのだった!!



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ダブルアイスクリーム

一方その頃、 ファウンデーション教国では。

 

「気乗りはしないな・・・」

「ですがこれしか我々に出来る事は無いと思います」

 

とある湖畔の屋敷にやって来たレーアとO5-1とその護衛達。

 

「戦力として使わないと決めただろう?

それを横紙破りで使うのは少々気が引ける」

「ですがO5-1、 ここで使わないのは愚策です」

 

この屋敷は元スシの暗黒卿、 やみちゃんことトゥーンウィが居る屋敷である。

 

「御両人、 一体何の御用で?」

「ラマス君、 実は今日は話が有って」

 

トゥーンウィの護衛のラマスが二人の前に立つ。

 

「・・・・・話はここでも耳に入ります、 しかしここに来たと言う事は・・・」

「そう言う事だ」

「アンタ達は子供を戦場にまだ立たせる気か!!」

 

激昂するラマス。

護衛が剣を構えるもO5-1は制止する。

 

「君の言う事も尤もだ、 私も気乗りしない、 だが・・・」

「やるよ」

 

トゥーンウィがラマスの後ろから現れる。

 

「トゥーンウィ・・・」

「ばるどくんがあぶないんだったらわたしもたたかうよ」

 

たどたどしい言葉遣いでトゥーンウィが言った。

 

「ありがとう」

「だけどわたしのすしぶれーどのあいすくりーむはあるの?」

「用意している」

 

そう言ってクーラーボックスからアイスクリームを取り出してO5-1はトゥーンウィに渡した。

 

「・・・・・」

 

トゥーンウィは手元から箸を取り出して射出した。

湖畔に着水し、 湖畔の表面が一気に凍り付いた。

 

「これだったらいけるかな・・・ちょこれーとそーすは・・・

ぼうそうのげんいんになるからいらないか・・・でもあいすくりーむはたくさんほしいな」

「沢山? 何故だ?」

「ばるどのところにいくのにひつようだから」

「どういう事だ・・・?」

「意味は分からないが用意してあるよ」

「ありがとうちずはある?」

「地図? あるが・・・」

「ありがとう」

 

地図を広げるトゥーンウィ。

 

「きたがあっちでみなみはこっち、 ここからむらまではこうかな・・・」

「トゥーンウィ・・・一体何を・・・」

「らます」

 

ラマスに向き直るトゥーンウィ。

 

「いままでありがとう」

「え?」

 

トゥーンウィは屋敷の外に走り出した。

 

「え?」

「お、 おい何処へ」

 

トゥーンウィが屋敷の外に出るとアイスクリームを射出して地面を凍らせて

その凍った地面を滑る様に高速で進んだ!!

その速さは馬よりも早い!!

 

「ま、 まさかこのまま一人で向かう気か!?」

「おい!! どうするつもりだ!!」

 

ラマスは激怒した。

 

「これでは追い付けない・・・だが追跡は出そう!!」



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一週間後

第十二章開始から一週間後。

残り一週間位でバルド達の所に辿り着くヴォルフガング達であったが。

 

「・・・・・何か寒くない?」

「そうだな・・・」

「へっくしゅ!!」

 

馬車の中でヴォルフガング達が寒くなっていた。

 

「・・・・・」

 

ずぅんとダーク・イタマエが巨大な次元間スシフィールドを展開した。

 

「ちょ、 ちょっと!? 何をしているんですか!?」

 

ピースメイカーが慌てる。

 

「おちつけ、 これは探査用スシフィールド」

「探査用スシフィールド!?」

 

ヴォルフガングの言葉をオウム返しするピースメイカー。

 

「そうだ、 次元間スシフィールドの亜種で

触れたスシを探査する機能を持つ・・・」

「見つけたぞ」

「早いな、 何処に居るの?」

「遠いな・・・ここから山を一つ離れた所だ」

「探査する範囲が広ッ!!」

「それでは今から行って来る」

「その間、 先に進んでいるよ」

「うむ」

 

ダーク・イタマエは馬車から飛び出して行った。

 

「大丈夫なんですか?」

「見ていなよ」

 

飛び出したダーク・イタマエは消滅した。

 

「今のは!?」

「移動用スシフィールド、 自身を次元間スシフィールドに移動させて

再出現する場所を選択する事で遠距離への移動を可能にした」

「すごい・・・スシの暗黒卿ってそんな事が出来るんですか?」

「いや、 これはスシフィールドの扱いに特に長けた

ダーク・イタマエだから出来る事だ」

「そうだったのか・・・」

「いずれにせよ、 誰が居るのか知らないがダーク・イタマエならば

圧勝確定だろう」

「そうとも限らない」

 

ダーク・イタマエが馬車の中に再出現した。

 

「・・・・・如何したの?」

「如何やら教国はなりふり構わない姿勢の様だ

やみちゃんが居た」

「やみちゃん?・・・あぁあのやみーやみー言っている子か」

「仮にもスシの暗黒卿、 一人では辛い」

「僕一人でも大丈夫だと思うけどねぇ・・・」

「油断は禁物だ、 一緒に来てくれ」

「分かったよ、 じゃあピースメーカー」

「ピースメイカーです」

「あ、 そうだった、 じゃあちょっと行って来るから進んでて」

「良いんですか?」

「ヴォルフガング、 ここは待たせるのが良いと思う

相手はスシの暗黒卿、 生きて帰れるかは分からない」

「所詮は負けた、 スシの暗黒卿だろう? だったら余裕だよ」

「油断が過ぎるぞ」

「はいはい、 分かったから連れて行ってよ」

「・・・・・」

 

ダーク・イタマエはヴォルフガングを連れて再度移動用スシフィールドで

トゥーンウィの元に移動したのだった。

 

「おう、 これは凄いな」

 

霜が降る光景を見てヴォルフガングは呟いた。



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トゥーンウィVSダースシ・ヴォルフガング&ダーク・イタマエ part1

霜が降りて凍り付いた地面を疾走するトゥーンウィ。

それを見るダーク・イタマエとヴォルフガング。

 

「こうまで能動的に動ける奴だったのか

プリンに守られている印象が強くて一人で動くイメージは無かったが・・・」

「"闇"の親方はやみちゃんのスシブレードは極めて強力な上に暴走しているから

単独での突入が一番効率的だと仰っていた

実現は出来なかったが、 ここで実現するとは・・・」

「・・・・・速いな、 流石に全力は出したくないんだが・・・」

 

ちらりとダーク・イタマエを見るヴォルフガング。

 

「足止めをするからその隙に頼む」

「OK」

 

ダーク・イタマエが次元間スシフィールドから巨大な巻き寿司を取り出し射出する。

この巻き寿司はダーク・イタマエのスシブレードの一つ。

中に大量の隠し包丁が仕込まれている!!

包丁の雨霰は死の予感を濃密に感じさせる!!

 

「ッ!!」

 

トゥーンウィはもう一つのアイスクリームを頭上で回転させる事で

上から降って来る包丁の弾幕を凍り付かせ攻撃を避けた!!

 

「まさか減速もせずにこれを躱すとは・・・やるな」

「おいおい、 しっかりしてくれよ」

「案ずるな」

 

コォォォォオオオオ、 と独特の呼吸を始めるダーク・イタマエ。

 

「寿司の呼吸・刃のネタ・闘剣乱舞!!」

 

ダーク・イタマエは地面に突き刺さった包丁を引き抜き、 素早くトゥーンウィに投擲した!!

凍り付いた包丁の弾幕を貫通しトゥーンウィに突き刺さる包丁!!

 

「っうううううううう!!!」

 

トゥーンウィは転倒したが尚も滑り続け疾走する!!

 

「!?」

「おいおい、 止まらないぞ?」

「まだまだこれから!!」

 

次々と包丁を投擲するダーク・イタマエ。

次々とトゥーンウィに突き刺さる!!

 

「!!」

 

トゥーンウィはたまらずアイスクリームをダーク・イタマエに向かって射出した!!

 

「ヴォルフガング」

「あぁ、 行くぞ」

 

ヴォルフガングはスシブレードを射出した。

そのスシブレードはバラムツ!!

全長2mにもなる大型の深海魚であり大変美味な魚として知られている!!

しかしバラムツ体内の油脂成分のほとんどを占めるワックスエステル

即ち蝋は人体では分解することができない!!

食べ過ぎにより消化できなかった脂が尻の穴からドロドロと流れ出てくる様は地獄!!

バラムツは超高速で回転し始め、 接地面はドス黒き稲妻を放つ!!

バラムツの白い身と黒く煌めく稲妻が混じったかと思うと

寿司ブレードの聖霊がバラムツの上に浮かび上がりトゥーンウィを恨めしそうに見下した!!

聖霊の姿は腐敗したドロドロに崩れたゴーレム!!

汚物の塊と形容しても差し支えの無い化け物である!!

 

「さてと、 これで終いだ」

 

巨大な腕を振り下ろす聖霊!! 危うしトゥーンウィ!!



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トゥーンウィVSダースシ・ヴォルフガング&ダーク・イタマエ part2

ダーク・イタマエにアイスクリームを射出し

足が止まったトゥーンウィに聖霊の腕が迫る!!

 

「はああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

同時に周囲に冷気が満ち始めそして空間が渦を描くように歪んでいく。

 

「なるほど・・・そう来」

 

全て言い終える前にダーク・イタマエとトゥーンウィは消失した。

そしてトゥーンウィが居た場所に聖霊の腕が叩きつけられる。

 

「・・・・・ち」

 

聖霊が抉った地面を忌々し気に見るヴォルフガング。

 

「次元間スシ・フィールドで逃げたか・・・

ダーク・イタマエと一対一で戦うつもりか?」

 

トゥーンウィの次元間スシ・フィールドでは激戦が繰り広げられていた!!

見渡す限り一面氷の地平線、 空には星空!!

そしてダーク・イタマエが次元間スシ・フィールドから取り出した

大量の隠し包丁入りの巻き寿司が大量に展開され

まるで墓場の様に大量の地面に突き刺さっていた!!

 

「・・・くっ、 抜けない」

 

地面から包丁を抜いて投擲を試みたダーク・イタマエだったが

凍って地面から抜く事は出来ない!!

寿司の呼吸で身体能力をあげれば話は別かもしれないが

隙を突かれる危険が有る!!

 

「ならば・・・」

 

氷の地面を触るダーク・イタマエ。

氷がみるみる内に溶けていく。

トゥーンウィはアイスクリームを打ち込んで再度冷やす。

 

(ねつ・・・じゃない? あつさはかんじない

なに? なにをしているの?)

 

トゥーンウィは顔には出さずに困惑した。

これはステータスの握りである。

人間、もしくは物体の"ステータス"即ち能力を奪い取り寿司にしてしまう技である。

これをされた相手は概念的に弱体化する。

"ステータス"を奪うには相手に直接触れることが必要となる。

寿司の強さは、奪った人物や物品の"ステータス"に依存する。

一般に物体から奪った"ステータスの握り"はそれほどの強さを持たないが

物体から"ステータス"を奪い取る事で有利に働かせる事が出来る。

今回の場合は冷気を奪い氷を溶かしたのだ。

 

そして包丁を手に取ったダーク・イタマエ。

 

「・・・ひとつきいていい?」

「な・・・お前喋れるのか!?」

 

驚くダーク・イタマエ。

 

「うん」

「そ、 そうか・・・それでなんだ?」

「あなたはじげんかんすし・ふぃーるどからほうちょうがしこまれたまきずしから

ほうちょうをだしてひろってなげるけどもなんでほうちょうをそのままいれないの?

にどでまじゃない」

「寿司の呼吸・刃のネタ・闘剣乱舞とのコンボを狙っているのだ

こちらも質問が有るが良いか?」

「いいよ?」

「何故お前は戦っているのだ?」



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トゥーンウィVSダースシ・ヴォルフガング&ダーク・イタマエ part3

「なんでたたかうか?」

「あぁ、 私の記憶が確かならなばお前は戦いが好きと言う訳ではないだろう」

「きらいだよ、 たたかいなんて」

「ならば何故戦う?」

「ばるどのためだよ」

「バルドの為? お前を倒したのばバルドだろう?

何故バルドの為に戦う?」

「かれはひとのことをおもいやれるひとだよ

だからわたしもかれのことをおもうんだ

だれかのためにかれはたたかっている、 だからわたしもかれのためにたたかいたい」

「なるほど、 青臭いな」

「じゃあきみはなんでたたかっているの? きみはいつもだんまりだった

なにをかんがえているのかわからない、 いったいなんでたたかっているの?

なんで”やみ”にしたがっているの?」

 

アイスクリームを投擲するトゥーンウィ。

 

「何故? そんな事は決まっている

寿司の呼吸・回転ネタ・我廻!!」

 

包丁を手に持ち回転し迎撃するダーク・イタマエ。

 

「あの"闇"が居た世界に私は行ってみたいのだ!!

あの"闇"の力を以てしても支配できない世界と言う物が如何言う物か

魔王すら凌駕する"闇"の力よりも上の世界と言う物を私は見たい!!

故に"闇"と共に歩む事を選んだのだ!!」

「それでどうするの? ”やみ”のいたせかいをみてどうするの?

そのためにおおくのひとをふみつけてもへいきなの?」

「平気だとも!! 他者を踏みつけにするのは人ならば誰だってやっている事じゃないか!!」

「みんながやっているからやる、 いがいとぞくなんだね」

 

接近するトゥーンウィ。

ダーク・イタマエが手に持った包丁で切りつけるも

さっきの迎撃で凍ってしまい刃が役に立たなくなっている。

 

「凍り付かせる気か」

「うん」

 

零距離アイスクリームがダーク・イタマエに迫る!!

 

「侮るな」

 

地平線と星空に綺麗に長方形の立方体状に線が入る。

 

「!?」

「次元間スシ・フィールドの扱いならば私の方が上だ」

 

通常の空間に戻って来るダーク・イタマエとトゥーンウィ。

 

「戻って来ーたーかっと!!」

 

聖霊の拳がトゥーンウィに激突する!!

吹き飛ばされるトゥーンウィ!!

 

「・・・・・ふん、 流石はスシの暗黒卿か」

 

ぐおおおと聖霊が唸り、 殴った拳が凍り付き砕け散る。

 

「咄嗟にアイスクリームを射出してダメージを軽減したか

まぁそれでも大ダメージは必至だろうな」

 

残った聖霊の腕でトゥーンウィを拾い上げて握り締め殺そうとするヴォルフガング。

 

「待て」

「何故止める?」

 

ダーク・イタマエが制止する。

 

「如何やらやみちゃんとバルドにはそれなりに関係があるらしい

人質に使えるだろう」

「ふーん、 分かった」

 

そう言うと握る力を押さえるヴォルフガングだった。



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ω-メチルチオアルキルイソチオシアナート

全速力行軍を始めているサイ一行は全力でバルド達の元に向かって行った!!

 

「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

彼等全員の精神テンションは振り切れてランナーズハイになっている。

最早苦痛が苦痛として作用していない、 その為、 全力で走れるのだ。

当然ながら通常の人間ならばそんな状態で長くは持たない。

だがしかしサンダリ牢獄から持って来た大量の兵糧を食べる事により

体力を意地する事が出来た。

サンダリ牢獄の兵糧とは寿司である、 寿司は優れたエネルギー補給食なのは言うに及ばず

更にサンダリ牢獄に囚われていたスシブレーダー達は自ら寿司を握れる者も多い。

 

サイ一行は道端に落ちている可食物を片っ端から寿司にして食し体力回復。

そして無茶な行軍を続けていた、 その光景は異様であった。

 

闇のスシブレーダー達も彼等の行軍を見てドン引きし戦闘は起こらなかった。

 

「お、 おい!! お前達!! 一体何だ!?」

「我々はサンダリ牢獄から逃げて来た!! バルドの救援に向かう!!」

 

教国軍と遭遇した際にそのようにやりとりをしたので教国にも認知されている。

 

 

 

「くっ・・・皆がこうして走っていると言うのに・・・無念・・・」

 

トレジャーハンターはミレニアム・ファルコンが引く馬車の中で横になりながら悔しがっていた。

プラスチックとの戦闘の傷がまだ癒えていないのだ。

 

「大丈夫か?」

 

ミレニアム・ファルコンがトレジャーハンターを気遣う。

 

「大丈夫だ、 前をしっかり見ろ・・・」

「アンタもしっかり傷を治しなよ、 ほらスシだ」

「もーぐもーぐ・・・からい・・・」

「生えていた野山葵をスシにしてみました」

 

山葵には抗酸化作用がある。

抗酸化作用があるから如何したと言う所だが

ストレスによって体内で活性酸素が大量に生成されると

老化や免疫力の低下につながる恐れがある

現状動けないトレジャーハンターはストレスフルである。

活性酸素のはたらきを抑えたり、生成を抑制する物質を抗酸化物質と言い

山葵に含まれるω-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートという成分は

抗酸化物質の一つで活性酸素の生成を抑えるという抗酸化作用がある。

 

「大量に喰って抗酸化しろ」

「ぐっ・・・仕方が無い・・・むーしゃむーしゃ

せめてマグロの切り身をくれ」

 

がつがつと山葵寿司を食べるトレジャーハンター。

 

「まだまだ道のりは長い・・・傷を早く治せよ」

「分かっているとも」

 

トレジャーハンターはキッと鋭い目で答えた。



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半月後

遂にバルド達の元に到達したヴォルフガング軍。

 

「ついに来たか・・・」

 

双眼鏡でその様子を見るバルド達。

すると軍団から一人の男が現れた。

 

「あー、 あー、 こほん、 スシブレーダーバルドよ!!

聞こえるか!? 我はダースシ・ヴォルフガングの代理人

ヤミ・マスターのピースメイカーだ」

 

蟹バサミでピースするピースメイカー。

 

「戦う前にこれをみろ!!」

 

そう言って磔にされたトゥーンウィを見せるピースメイカー。

 

「トゥーンウィ!? 何故ココに!?」

 

驚くバルド。

 

「何故かコイツが襲撃したから捕えて捕虜にした!!

コイツの命が惜しければ降伏する事を提案する!!

コイツも君達の命は保障しよう!!」

「何を馬鹿な事を・・・戦おうバルド」

 

三崎が冷酷に言う。

 

「三崎さん!?」

「君の気持ちも分かるがここで引く訳には行かない」

「加えて!!」

 

声を上げるピースメイカー。

 

「お前達には寝耳に水だろうが

こちらの軍にはスシの暗黒卿のダーク・イタマエ様も居る!!」

「!!?」

 

驚愕するバルド達。

 

「スシの暗黒卿が二人・・・」

「この前だってスシの暗黒卿二人と戦ったじゃない」

「あれとは状況が違い過ぎる・・・」

 

前回とは敵の数が違い過ぎる、 この状況は絶体絶命の危機である。

 

「・・・あ、 おい、 あれ・・・」

 

ハウがピースメイカーの元に近寄った。

 

「ハウさん? 一体何を・・・」

「俺はバルドからの伝言を伝えに来た!!」

 

ハウが叫んだ。

 

「ほう、 彼は何と?」

「時間が欲しいとの事だ!! 2時間頂こう!!」

「何故?」

「話し合う時間が必要だからだ!!」

「話し合う時間だと?」

「そうだ!! そもそもお前達は先触れも出さずにいきなりやって来た!!

こちらの混乱も少しは考えて貰おう!!」

「ふむ、 正論だな、 良いだろう2時間でも3時間でも待つよ」

「では3時間貰おう!! 3時間後にこちらから返事を出す!!

それまでゆるりと待たれよ!!」

「厚かましいな、 でもこちらが言った事だ、 3時間待つよ

3時間ゆったりと如何するのか考えなよ」

 

ハウはそう言うと戻って行った。

 

「ハウさん・・・独断専行でしたが時間を稼ぎましたね」

「・・・・・ねぇ、 これって可笑しくない? 何で素直に待ってくれるの?」

 

三崎は疑問を口にする。

 

「変な事ではないだろう」

 

ケイが説明する。

 

「こちらに時間を与えるのは確かにメリットも大きい

だがしかし時間があればある程、 心は安定を求める物だ

決意が鈍る、 と言う事だな」

「つまり?」

「相手はこっちがビビると思っているのだろうさ

まぁ軍相手ならばそれが普通だけどね」



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三時間・sideバルド

「それで、 一体如何するつもりだ?」

 

ハウに対して尋ねるゴハン。

皆で集まり作戦会議をする事になった。

 

「それを話し合おうと言う事じゃないか」

「・・・当然だがバルド、 戦うよな?」

「それは勿論だが・・・」

 

バルドの顔は暗い。

 

「・・・・・気持ちは分かる、 あの娘っ子はお前が助けたんだ

だからここで見捨てたくはない、 だろ?」

「・・・・・」

 

こくりと頷くバルド。

 

「それですがバルド隊長、 心配は無用かと」

 

双眼鏡でケイが様子を伺いながら言葉を発する。

 

「何故だ?」

「サインですよ」

「サイン?」

「シャリ王国の暗号符丁です

トゥーンウィが手で此方にサインを送ってくれています」

 

ざわっ、 とする一同。

 

「何て言っている!?」

「『当方、 次元間スシ・フィールドに残弾アリ、 合図有れば放ち

戦場を攪乱する事は可能、 時間稼ぎも三日ならば出来る

命と引き換えならば半壊は可能』」

「!!」

 

驚愕するバルド達。

 

「『敵、 スシの暗黒卿、 ヴォルフガングはスシの聖霊を操る者』」

「スシの聖霊?」

 

聞き慣れない単語に三崎を見る一同。

 

「あり得ない・・・スシの聖霊はスシとの絆が無ければ現れない霊的な実体だ」

「つまり幽霊を使役すると言う事か?」

「あぁ・・・聖霊、 僕も見た事は無い・・・」

「続けますよ『敵、 スシの暗黒卿、 ダーク・イタマエ

寿司の呼吸を操りし包丁使い、 全容は不明』」

「寿司の呼吸?」

「寿司を扱う為の呼吸法の一種だろう」

「『この二人、 全力を引き出せず、 私でも戦えば死する』」

「・・・・・」

「これは・・・どうなんだ?」

 

バルドを見るゴハン。

 

「どう、 とは?」

 

ゴハンの言葉をオウム返しするバルド。

 

「以前のお前とほぼ相打ちになったスシの暗黒卿でも全力が出せない二人

これは強いのか?」

「強いに決まっているだろう」

「いや、 今のお前ならばもっと強いんじゃないのか?」

「それでも二人は厳しい・・・僕とトゥーンウィの二人で並び立つ・・・」

「それも厳しいですかね『当方のスシブレード

アイスクリーム、 チョコソースが無い為、 全力が出せない』」

「うーん・・・」

「『こちら共闘は難しい、 戦略的に敵味方関係無く凍らせてしまう』」

「厳しいな・・・死んで貰うか?」

 

三崎の冷酷な発言に睨みつけるバルド。

 

「・・・そんな切り捨てる戦い方ではジリ貧になってダークネスシ帝国に勝てないですよ」

「・・・そうだな」

 

三崎は納得した。

 

「作戦を練ろう!!」

「今できる事はそれだけか・・・良し、 やろう!!」

 

一同が机に向かい作戦会議を始めた。

 

「敵の動きも見ておきましょう」

「そうだな」



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三時間・side闇のスシブレーダー

一方その頃、 ヴォルフガングは

 

「勝手に三時間も敵に時間を与えるなよ!!」

 

ヴォルフガングはピースメイカーが勝手に話し合う時間を設けた事に怒っている様だった。

 

「御言葉ですが交渉の際は俺に一任したのは貴方じゃないですか」

「だがなぁ!!」

「いや、 これで良いのではないか?」

 

ダーク・イタマエがフォローする。

 

「如何いう意味だ?」

「兵の展開にそれ位の時間がかかるだろう」

「・・・・・」

 

ヴォルフガングが黙る。

 

「・・・あー、 ダーク・イタマエ様?」

「何だ?」

「俺達は作戦の内容を聞いていませんが・・・」

「何? ヴォルフガング、 お前、 作戦を話していないのか?」

「特に作戦は無い、 物量で圧倒する」

「何と単純な」

「下手に策を打って墓穴を掘りたくない

そもそも僕も僕のスシ・トルーパーもそういう策には疎いんだ」

「疎いって・・・」

「僕は元はと言えば唯の平民だぜ?

そんな都合よく軍を動かす才能が有る訳無いだろう」

「それはそうだが・・・」

「君だって何処かの将軍と言う訳では無いんだろう?

寧ろ、 君も戦士タイプの筈だ」

「確かにそうだ、 しかし策は有る」

 

次元間スシフィールドから丸みを帯びた男が現れる。

 

「次元間スシフィールドに人を隠していたのか」

「驚く事じゃない、 次元間スシフィールドに換気と衣食住の環境が揃えば

人を次元間スシフィールドに入れる事は難しくはない

但し、 私でも3人が限度だがね」

「ふーん、 それで彼は?」

「彼はボール、 私のスシ・トルーパーだ

階級はヤミ・アプレンティスだが元将軍

兵の運用において私よりも秀でている」

「へぇ・・・それでボールとやら、 この状況を如何する?」

「いや・・・状況も何も、 私は今次元間スシフィールドから出て来たんで

状況が分からないのですが・・・」

「それもそうだ、 ピースメイカー、 状況を説明してやって」

「了解しました、 現在三時間ほどインターバルを貰った所だ」

「インターバルって・・・如何いう状況だ?」

「ほら困っているじゃないか」

「そうじゃなくて・・・敵の数とか味方の数とかもっとそういう情報が欲しいんだが」

「あぁ・・・そう言う事・・・」

 

具体的な説明を始めるピースメイカー。

 

「ふぁわ、 三時間も暇だなぁ・・・寝ようかな」

「食事でもしたら如何だ?」

「そうだなぁ・・・あ、 そうだボール」

「何ですかな?」

「指示は君に任せる」

「ありがとうございます」

「但し、 失敗したら君はこれ以上無い位の汚辱に塗れた死に方をする事を心せよ」

「・・・肝に銘じておきます」



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三時間後

三時間が経過した、 太陽は真上に登った。

ダークネスシ帝国軍は兵を拡げ町を囲んだ。

右翼にはスシ・トルーパーのカスタード、 左翼にはビッグナイフ

そして中央にはピースメイカーがそれぞれ陣取った。

 

「時間だ!! 答えを聞こう!!」

 

町に青い旗が上がった。

 

「・・・?」

 

旗は左に向いた。

次の瞬間、 トゥーンウィは拘束から抜け出て次元間スシフィールドから

複数のアイスクリームを取り出して冷気を撒き散らし周囲を凍らせた。

 

「な、 何だァ!?」

 

驚愕するピースメイカー。

サインを通じて作戦を如何するのか? そのやり取りをしていた。

簡単な作戦は旗で通じる様にしていたのだ、 つまり先の青い旗が左を向く。

これは『左翼を殲滅した後に時間稼ぎを行う』と言うサインだったのだ。

 

「くっそ!!」

 

ピースメイカーは蟹クリームコロッケを取り出して自身の鋏の上に乗せて射出した。

攻撃の為では無く周囲を温める為の行動だった。

 

「まさか抜け出すとは・・・!?」

 

ピースメイカーは驚愕した、 右翼に向かって行くバルド等スシブレーダー達。

 

「やる気か!?」

 

名を持つスシブレーダー達、 あの数ならばカスタード程度の者ならば簡単に斃されるだろう。

 

「・・・・・冥福を祈ろう」

 

流石にカスタードを守る為の行動を取る気になれなかったピースメイカーは本陣に戻って行った。

 

 

 

さてバルド達の作戦は伸び切り広がった左翼右翼を切り崩し殲滅すると言う物である。

包囲をするのは逃げられなくなるだろうが、 兵の層を薄くする行為にもなると言う事だ。

実質兵が少なくなる、 ならば各個撃破は可能だろう、 各個撃破と言っても

右翼全て、 左翼全てを潰すと言うのでは無く、 現場指揮官。

ここで言う所のスシ・トルーパーの事である。

 

「うおおおおおおおおお!!!」

 

次々と兵を撃破してカスタードの元に向かうバルド達。

 

「うわっ!? こっち来た!?」

 

カスタードが驚愕する。

 

「お前が現場指揮官だなぁああああああああ!!!」

「う、 うわあああああああああああ!?」

 

カスタードはスシブレードを射出する!!

茶碗蒸しである!! その中には大量のゆり根が入っており

着地と共に茶碗蒸しが炸裂し大量のゆり根が相手を貫く!!

しかし茶碗蒸しは着地の前に無情にもバルド達のスシブレードに砕かれ破壊!!

そしてカスタードの元にスシブレードが殺到しカスタードの体も砕かれ

変質していた内部構造から茶碗蒸しが溢れ出た!!

 

「カスタード様がやられた!!」

「逃げろ!!」

 

兵達が混乱し逃げ惑っていた。



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ナイフと短刀

カスタードが倒された頃、 トゥーンウィが左翼に向かっている。

 

「やみちゃんがこっち来てます!! ビッグナイフ様!! どうしますか!?」

「落ち着けお前達、 とりあえず邪魔だから本陣に戻って置け」

「は、 はい!!」

 

周囲からスシブレーダー達が退避してビッグナイフが自分の得物を取り出す。

大きな押し寿司である、 両手の掌を合わせた大きさよりも大きい。

その押し寿司を射出する。

押し寿司は回転を開始する、 暫くするとトゥーンウィがやって来た。

 

「来たか、 喰らえ!!」

 

押し寿司から射出されるナイフ!!

これがビッグナイフの名の由来の仕込みナイフである!!

押し寿司の中にナイフを仕込んでいたのだ!!

 

「・・・・・だーく・いたまえとくらべたらうんでいのさだね」

 

トゥーンウィは冷静にアイスクリームを取り出して迎撃する。

しかしナイフはアイスクリームを貫通する!!

 

「!?」

 

咄嗟にトゥーンウィはナイフを腕で防御する!!

 

「ふっ、 俺の本名を教えてやろう」

 

ビッグナイフがぽつりと語り出した。

 

「俺の本名はソーラ・パルク!! 元鶴帝国の八十八剣聖の一人!!」

「はちじゅうはちけんせい・・・」

 

鶴帝国八十八剣聖とは今は亡き鶴帝国最強の八十八人の剣の達人の事である。

剣の達人とは言っても鶴帝国では『相手を殺す物ならば全て剣』と言う理屈で

剣とかけ離れた武器を使う物でも列名出来た称号である。

それぞれ聖剣と呼ばれる鶴帝国の技術力で造られた武器を持っている。

特に何か能力が有る訳ではない、 刀で言う所の名刀と言う称号の様な物である。

 

「お前が防いだのは聖剣『短刀』、 並の剣の鋭さではない」

「・・・・・で?」

 

溢れ出る血を凍らせて止血するトゥーンウィ。

 

「ふっ、 流石にこの程度は防ぐ、 か」

「きみのせいけん、 だっけ? はこっちにある、 どうするの?」

「安心しろ、 俺は鶴帝国からダークネスシ帝国に寝返った時に

殺した剣聖から聖剣を奪い取った、 お前に刺した『短刀』も奪い取った聖剣の一つ」

「かりぱくってやつ?」

「殺したから強盗殺人だな、 俺の聖剣はこれだ」

 

ビッグナイフが取り出したのはその名の通り大きなナイフ二本だった。

 

「・・・・・このたんとうとどうちがうの?」

「これからたっぷりと教えてやるよぉ!!」

 

ビッグナイフは押し寿司を突撃させながらナイフを構えて突っ込んで来た!!

 

「・・・はなしにならない、 こおっておしまいよ」

 

強い冷気がビッグナイフとスシブレードに襲い掛かる!!

 

「無駄だ!!」

 

ビッグナイフがナイフを投擲した!!



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凍り付く鮮血

ビッグナイフのナイフ投擲。

先程の短刀による攻撃がアイスクリームを貫通した事から

アイスクリームによる相殺は不可能、 更に短刀よりも大きく

ビックナイフが自信を持って攻撃して来た事から

短刀よりも破壊力が高いのは自明の理、 ならば・・・

 

即座にトゥーンウィは行動に移した、 アイスクリームを取り建てナイフに激突させた。

しかし当然ながらアイスを貫通してトゥーンウィにナイフが突き刺さる!!

そして派手に飛び散る鮮血!!

 

「これで終いだ!!」

 

残る一本も投擲するビッグナイフ!!

ビッグナイフの聖剣『ナイフ』、 二本一組のそのナイフは非常に鋭く重い!!

並のナイフとか比べようも無い!! しかしトゥーンウィに命中したが刺さらずに落ちた!!

 

「!? ば、 馬鹿な!?」

 

驚愕するビックナイフ!!

一体何が起こっているのか!? 答えは単純明快!!

トゥーンウィの飛び散る血が散布されナイフに付着!!

そしてアイスクリームの冷気で凍り付き刃が使えなくなったのだ!!

 

「くっ、 やはりスシの暗黒卿!! 何か分からないが唯者では無い!!」

 

ここで引くならばビッグナイフにも勝ちの目が有ったかもしれない

鮮血が噴き出すトゥーンウィは放っておけば失血死する。

だがしかし!!

 

「唯者では無いのはこちらも同じ!!」

 

ビッグナイフにもプライドが有ったのだ、 そのプライドから彼は前進した!!

短刀を、 ナイフを拾い、 トゥーンウィに襲い掛かる!!

鮮血でナイフと短刀は既に刃が立たない状態で攻撃されても致命傷にはならない!!

 

「ぐっ・・・」

 

それでも攻撃されればダメージは通る!!

しかし!!

 

「ちかづいたね・・・」

「!!」

 

トゥーンウィの攻撃は近ければ近い程、 有効!!

あっと言う間にビッグナイフは凍り付いた!!

 

「さすがはつるていこくのはちじゅうはちけんせい・・・きょうてきだった・・・」

 

肩で息をするトゥーンウィ、 出血は凍らせて塞いだ事で命を繋いだ。

そして主を失った押し寿司を喰らった、 捕まってから何も食べていない。

一種の飢餓状態にあった。

押し寿司は非常に美味しい、 ビッグナイフには料理の腕前も有ったのだろう。

空腹と言うスパイスもあるだろうがそれを差し引いても旨い。

 

「さて・・・じゃああばれますか」

 

トゥーンウィは戦場に向かった。

出血で多少ふらついているがまだまだ元気である。

 

右翼左翼が壊滅し戦場は大混乱に陥っていた!!

数は未だにダークネスシ帝国の方が膨大!!

だが士気は圧倒的にバルド達に分がある!!

勝負の行方はまだまだ分からない!!



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残り二人、登場

ダークネスシ帝国軍本陣にて。

 

「ボール、 僕は君に指示を任せた時に何て言ったっけ?」

「・・・・・」

 

ヴォルフガングの前で滝の様な汗をかくボール。

 

「たった三時間前の記憶も無いとは、 君は健忘症なのかな?」

「・・・・・」

「まぁいいや、 忘れたんなら教えてあげよう

『失敗したら君はこれ以上無い位の汚辱に塗れた死に方をする』と言ったんだよ」

「・・・・・じ、 慈悲を・・・」

「だぁめ」

 

ヴォルフガングはスシブレードを回して聖霊を召喚し

大量のバラムツをボールの口の中にねじ込む。

 

「ぐががががぁぁ!!」

 

ボールは苦しむ。

ドスッ、 とダーク・イタマエが包丁でボールを刺し殺し苦しみの声は消えた。

 

「ダーク・イタマエ、 何をするんだ?」

「無用な甚振りは止せ」

「ふん、 こっちはスシ・トルーパーを二人も失ったんだ

残りはピースメイカーだけ・・・君の御自慢のボールの策でこの有様だ

一体如何するつもりだ?」

「・・・・・」

 

ダーク・イタマエは次元間スシフィールドから二人のスシブレーダーを呼び出した。

 

「誰だいそいつ等は?」

「彼等は私のスシ・トルーパー

麻薬の握り使いのスモーカーと闇の握り使いのフェロシティーだ」

「さっきの奴より出来るのかい?」

「彼は作戦能力を買っていたがこの二人は戦闘能力を買っている」

「あたしは戦闘能力よりも特殊能力が強いからねぇ」

 

けらけらと笑う美女、 スモーカー。

 

「特殊能力・・・まぁ麻薬の握りなんていうからには

嫌な予感しかしないが、 まぁ良いさ、 もう策を練るのは止めだ

この物量ならば押せば勝てる」

「おっと失礼、 俺は少し休んでも良いかな?」

 

帽子を被った小男、 フェロシティーが尋ねる。

 

「・・・何で?」

「俺は闇の握りの使い手だ、 闇の握りは闇が無いと使えない

心の闇とかそう言うのじゃ無くて暗くないと威力を発揮出来ないんだ」

「つまり夜中まで動きたくないと?」

「そう言う事になるな」

「好きにしなよ」

「あ、 そうだ、 あたしの能力で兵隊を強化する?」

「兵隊の強化・・・ドーピングって奴?」

「そうなるかな」

「任せるよ、 困るのは僕でも無いし」

 

冷酷に決定するヴォルフガング。

 

「あのー・・・俺は如何しますか?」

 

ピースメイカーが尋ねる。

 

「うーん、 本陣に留まらせるか

それともやみちゃん対策に突っ込ませるか・・・迷うな」

 

蟹クリームコロッケの熱量はトゥーンウィにも有効なのだ。

 

「いやいや、 あたしのドーピングは理性が飛ぶから本陣で待機で良いと思います」

「じゃあそうするか」



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戦況報告

ダークネスシ帝国の軍団の攻勢が始まった。

下っ端のソルジャースシ達をスモーカーの大麻の握りにより理性を失わせ突撃させる。

トゥーンウィが前線に出て押しとどめようとしたが

アイスクリームの冷気は狂気をシャットアウトするに及ばなかった。

それでも半数は止められたが狂気に来るったソルジャースシの大軍が殺到。

トゥーンウィは冷気を身に纏い無事だったが街中に入り込まれて少なからずダメージを受けた。

 

薬物で狂気に落ちたソルジャースシは恐怖すらも無い為

ソルジャースシでも打撃を与える事に成功した。

続くヤミ・アプレンティス達の追撃はトゥーンウィの冷気の障壁を超える事が出来ずに

追撃を行う事が出来なかった。

凍り付いたソルジャースシ達でバリケードを即興で造りだしたトゥーンウィには脱帽するしかない。

 

状況は停滞したかに思われたが業を煮やしたダースシ・ヴォルフガングにより

凍り付いたソルジャースシが砕かれヤミ・アプレンティス、 ヤミ・マスターが

ピースメイカーの蟹クリームコロッケによる熱量にてサポートされた。

思う様に戦えなくなったトゥーンウィを庇う為に前線を下げるバルド達。

 

ソルジャースシでダメージを受けたがまだ戦えるバルド達。

街中では投網で足止めをしてからの攻撃等の待ち伏せを行い効率的に戦う事で

何とか押しとどめる事に成功した。

ジューンが掘っていた地下通路からの不意打ちも効果的であった。

 

ソルジャースシだけならばまだしもヤミ・アプレンティス

ヤミ・マスターに被害が出てしまったとなれば如何に大軍でも兵を惜しむ物。

 

町の外縁部に陣取ったダークネスシ帝国軍。

二日程、 軽い小競り合いが起きたが大きな攻勢は起きていなかったが

三日目、 山と見まごう程、 巨大な聖霊が現れ町を粉砕し

瓦礫と廃墟の山へと変えた。

 

地下通路から街外れと逃げていたバルド達だったが

まさかここまでやるとは想像もしていなかった。

ダークネスシ帝国にとってもこの街は重要な拠点だった筈

海産物の補給を諦めたと言うのか。

 

ダークネスシ帝国にとっては重要でもヴォルフガングにとっては重要ではないのだ

ヴォルフガングも港さえ残って居れば良いだろうと言う考えで町を破壊したのだった。

とは言えバルドを人質にする事でレーアとの交渉を行う予定だったので

バルドを殺さない様には気を払っていた。

だがヴォルフガングはバルドを評価しておりこの程度では死なないと判断していた。

事実死んでいないのだが。

 

町が破壊され壊滅的な打撃を受けたバルド達、 果たして彼等の運命は如何に・・・



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包囲

「うっひゃあ・・・流石だなぁ・・・きれーに壊滅状態だわぁ・・・」

 

ピースメイカーが呟いた。

 

「これほどの力が有るのならば我々が無駄に戦う必要は無かったのでは?」

 

ダークネスシ帝国側の兵達がぼやく。

 

「これ程の大技をほいほい使えるか、 溜めとか色々制約が有るんだよ

じゃあお前達、 バルド達を探して来い」

「いや、 これは既に死んでいるでしょう・・・」

「ならば死体を探して来い」

「・・・了解しました・・・」

 

兵達は渋々と瓦礫の山に向かって行った。

 

 

 

 

「・・・しかしこれは酷いな」

 

ヤミ・アプレンティス達が瓦礫の山を見渡す。

 

「あの聖霊・・・何という力だ・・・あ、 崩れた」

 

如何やら山の様に大きい聖霊は長時間の発動には耐えられない様だ。

バラバラになり小さな聖霊となってうぞうぞと這い回っている。

街中を取り囲んで逃げられない様にする構えだ。

 

「全く・・・心配性だなぁ・・・

こんな瓦礫の山の中では死んでいるに決まっているだろうに」

「居たぞ!! 街外れだ!!」

 

聖霊が感知した者を皆に伝えるヴォルフガング。

一斉に街外れに向かう聖霊とダークネスシ帝国軍。

 

街外れではバルド達を始めとしたスシブレーダー達が居て交戦を始めていた。

ヴォルフガングのスシの聖霊達は人型だが数十は軽く超えており

スシブレーダー達と合わせると数百は軽く超える。

 

健闘するバルド達は長時間の戦闘に耐えきった。

しかし多勢に無勢、 夜中になるまで戦闘は行われたが

バルド達は未だに苦戦を強いられていた。

 

「うわっ!!」

 

シャルにスシブレードが激突し倒れる。

 

「シャルうううううううううううううううううう!!」

 

ウェッジが叫び、 その隙を突いて聖霊が突貫して来る。

聖霊を容易く葬るバルドのスシブレード。

 

「ウェッジ!! 回収は私が!! ウェッジは皆のカバーを!!」

「くっ・・・頼みます!!」

 

ラルフの叫びに引いてウェッジがイクラリオンで狙撃を行う。

ウェッジのイクラリオンは制圧には役に立つのだが、 やはり多勢に無勢。

 

「もう駄目・・・」

 

エミリーが倒れる、 彼女のスシブレードのジュエリー・ボックスは

12個のスシブレードを操る物、 つまり普通のスシブレードの12倍

疲労が溜まるのだ、 こんなに長時間の戦いで良くぞ持ったと言う所だろうか。

 

「くっ・・・グリード!! 何人やられた!?」

「ナル、 マドカ、 エミリー、 ハウがぶっ倒れました!!

死んでませんけどヤバいっす!!」

 

ゾーバの言葉にグリードが叫ぶ。

 

「くっそおおおお!!」

 

ゾーバが絶叫する。



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救援

倒れた者達を庇いながら円陣を組むバルド達。

 

「くっ・・・如何すれば・・・」

「弱音を吐くんじゃねぇ!! 弱気になっても何も良い事はねぇぞ!!」

 

グレンの弱音に発破をかけるゴハン。

 

「円陣になった事で互いに近くなった、 同士討ちに気を付けながら

自分の右隣りを守れ!!」

「おう!!」

 

ゾーバが激を飛ばし、 皆全力で戦った。

スシブレードが舞い踊り次々と聖霊を打ち倒して行った!!

 

 

 

 

 

「これは少し問題が有るかもしれないな・・・」

 

包囲から少し離れた所で見ていたヴォルフガングが呟く。

 

「何がですか?」

「聖霊があっさりとやられている

普通よりも小さいし複数を操っているから通常よりも弱いのは確かなんだが

それを加味しても減りが早過ぎる・・・予想以上だ」

「それでも一斉に全軍を進めれば勝てるだろう」

 

ダーク・イタマエが言った。

 

「それもそうだがね・・・少し気になるな・・・全軍止まれ」

 

聖霊達が止まった、 スシブレーダー達も動きを止めた。

 

「バルドよ!!」

 

ヴォルフガングが高らかに声を上げた。

 

「凄い戦いぶりだった!! 歴史に残る戦いだっただろう!!

これ以上戦うならば君を殺しかねない!! 降伏したまえ!!」

 

バルドが皆を見る、 傷付き、 橋は折れ、 湯呑は割れ

足は震えているが目がまだ死んでいない。

 

「悪いけど僕達は交渉の為の人質になる訳には行かない!! 戦おう!!」

 

バルドが高らかに宣言した。

 

「そうか、 残念だ」

 

聖霊達が再度身構えた、 その瞬間!!

 

「どけどけぇええええええええええええええええええええ!!」

 

ミレニアム・ファルコンが引く馬車が包囲陣を押し潰しながらバルド達の傍に近付いた!!

 

「「な、 なんだ!?」」

 

バルドもヴォルフガングも半人半馬の馬車を見て何が起こったのか理解出来なかった。

 

「乗れ!!」

 

ミレニアム・ファルコンが引く馬車からトレジャーハンターが顔を出して

バルド達に向かって叫ぶ!! そして!!

 

「バルド!! 無事か!?」

 

サイがサンダリ牢獄から抜け出したスシブレーダー達を引き連れてやって来たのだった。

 

「な、 なんだ!?」

「喰らええええええ!!」

 

一斉に射出されるスシブレードを回避するヴォルフガング。

 

「一体こんな数のスシブレーダー何処から・・・」

「い、 一旦退いて体勢を立て直した方が良いんじゃないんですか?」

 

ピースメイカーの言葉にキッ、 と睨むヴォルフガング。

 

「ここはまずはあの新手に対応せねば・・・フェロシティー、 行け」

「はい、 今は夜中ですので十分に戦力が発揮出来ますよ」

「ピースメイカー、 お前も行け」

「分かりましたー」



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戦場での再会

「貴方達は一体・・・」

 

馬車の中に入ったバルド達がトレジャーハンターに尋ねる。

 

「俺達はサンダリ牢獄から出て来た闇のスシブレーダーだ

アンタ等に協力しよう」

「何故闇のスシブレーダーが・・・」

「サイと色々有ってな、 奴に協力する事にした」

「サイさんが?」

「あぁ、 アイツはやる女だよ・・・ちょっと出るぜ

ミレニアム、 彼等を安全な所へ」

「分かった」

 

トレジャーハンターは馬車から飛び出した。

ズキリと痛み顔を歪ませる。

 

「っ・・・まだ全快時の6,7割って所か・・・」

「アンタが俺の相手をしてくれるのかい?」

 

トレジャーハンターが前に目を向けるとそこに居たのは濃密な闇を纏った小男だった。

 

「それは・・・闇の握りか・・・」

「そうとも、 今は丁度夜中・・・お前に勝ち目は無い」

「俺のオゴポゴは無敵だ」

「抜かせ!!」

 

両雄それぞれスシブレードを撃ちだしたのだった・・・・・

 

 

 

 

 

一方その頃戦場の別の場面では。

 

「ぐはぁ!!」

「数は多いが雑魚ばかりだなぁ、 いじめがいが無いぞ」

 

退屈そうにピースメイカーがスシブレードを撃っていた。

 

「それなら私は如何かしら?」

「あ?」

 

気怠そうに振り返るとそこにいたのはサイだった。

 

「久しぶりねズロ」

「おやおやこれはこれは久しぶりだなぁサイ」

 

にやりと笑うピースメイカー。

 

「ズロ?」

「俺の本名だよ」

 

手下に説明するピースメイカー。

 

「いやぁ会いたかったぜぇ?

お前をドロドロにしてやりたかったんだよなぁ・・・

前はお前の母親が邪魔して逃げられたが・・・今回はそうはいかない」

「私も逃げないわよ」

 

剣を構えるサイ。

 

「知り合いなんですか?」

「昔から俺をイジメて悦に浸ってたドSさ」

「そんな事はしていない・・・けどそう思われて居たら悪かったわよ」

「どういう事です?」

「俺の家柄は何処ぞのお偉いさんの家柄でな

聖女の家系のコイツの家とはそれなりに仲が良かった」

 

自分に飛んで来たスシブレードを鋏で掴んで粉砕するピースメイカー。

 

「んで、 コイツが鍛えるとか何とか言って毎回ボコボコにするんだ」

「イカレてますね」

「あぁ、 こいつはしかも俺がこいつの事好きだと思っているんだよ」

「頭可笑しいですね」

「あぁ、 キチガイだ」

「っ・・・」

 

ギリッと歯がみするサイ、 そして飛んで来たスシブレードを剣で切り落とす。

 

「でも会いたかったぜぇ、 お前には色々礼をしたかったからな」

「その前に教えて、 何で闇のスシブレーダーになったの?」

「何で? おいおいおい、 何を常識的な事を

そんな事は決まっている、 強くなりたかったからだ」



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楽しい物は楽しい

「強くなりたかった?」

「あぁ、 そうだ」

 

ピースメイカーの言葉を鸚鵡返しするサイ。

 

「何故?」

「何故って力が無ければ何も出来ないだろう

家の中でも外でもだ、 それで闇のスシブレーダーになって力を得た

試しにムカつく使用人を皆殺しにして咎めた親父も打っ殺した」

「叔父様を!?」

 

驚愕するサイ。

 

「嫌いな奴って大体身近な奴じゃねぇの?

まぁ兎も角だ、 俺は力を思う存分振るって理解出来た事が有る」

「理解出来た事?」

「あぁ、 長年、 俺はお前にたいして疑問を持っていた

『こいつは何で俺をこうも痛めつけるんだろうか?』」

「痛めつけてない・・・剣術の訓練よ・・・」

「骨が折れるまでやるか普通?」

「キチガイですね」

「だろぉー」

 

部下の声に反応するピースメイカー。

 

「それでだ、 俺は力を思う存分振るって分かった事が有る」

「・・・・・それは?」

「弱い物イジメって楽しいな、 って事だ」

「は?」

 

発言の突拍子の無さに驚くサイ。

 

「弱い物イジメって楽しいな、 って事だ」

「・・・・・つまり?」

「俺はお前みたいな弱い奴をイジメると楽しい

だからスシブレーダーとしてダークネスシ帝国に仕えている」

「・・・それだけ?」

「あぁ」

「そんな理由で・・・」

 

ギリッ、 と歯軋りとして剣をピースメイカーに向けるサイ。

 

「そんな理由で私のお母様を殺したのかあああああああああああああ!!」

「うん」

 

ピースメイカーは鋏から蟹クリームコロッケを射出した。

サイは水平からの突きで蟹クリームコロッケを貫いた。

だが蟹クリームコロッケの熱量に剣が溶解した。

 

「っ!!」

 

慌てて剣を離すサイ、 後ろまで吹っ飛んだ剣が溶解し切る音が聞こえた。

 

「素手になったぞ、 やれ」

「はっ」

 

ピースメイカーの手下達のスシブレードがサイに襲い掛かる。

 

「甘い!!」

 

サイの元にやって来るサンダリ牢獄のスシブレーダー達。

 

「皆!!」

「雑魚は私達に任せろ!! お前はあの男を!!」

「分かった!!」

 

カラースプレーの言葉に返してサイは走って行った。

 

「何だあの痴女は・・・」

 

カラースプレーの恰好にリアクションをするピースメイカー。

 

「はあああああああああああああああああああ!!」

「気合い入れれば勝てるとかそんな訳無いだろ、 第一素手で勝てると・・・」

 

二本目の剣を取り出すサイ。

 

「あー・・・なるほど、 剣一本だけじゃ駄目だって学習してやがるな

イイよ、 全部の剣を溶かして殺してやろうじゃないか」

 

にひひと笑うピースメイカーが蟹クリームコロッケを射出したのだった。



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頭上注意

打ち出される蟹クリームコロッケを剣で切り落とすサイ。

斬った剣は次々と溶解し使い物にならなくなり次々と捨てていく。

 

「後剣は何本だ?」

「5本だ!!」

「素直だねぇ・・・じゃあこっちも五個だ」

 

蟹クリームコロッケを打ち出すピースメイカー。

次々と打ち出される蟹クリームコロッケ!!

その数は5!!

 

「っ!!」

 

蟹クリームコロッケを剣で切り落としながら前に進むサイ!!

余りの猛スピードに一つの剣で二つの蟹クリームコロッケを切り落とす境地に至っている!!

 

「おぉ、 これは凄いなぁ、 頭上注意だ」

「は?」

 

ピースメイカーが上に向かって指を指すと頭上から蟹クリームコロッケがサイの頭の上に落下

それと同時にコロッケが砕け高熱の蟹クリームがサイの顔にかかる。

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「うぅん、 良い声だぁ・・・ずっと聞きたかったぁ・・・

安心しろ、 大分温度は下げて置いた・・・死にはしないが戦闘不能になって貰おう

後でじわりじわりと甚振り殺してやるよ・・・」

「ふざけるなあああああああああああああああああああああああ!!」

 

両手に剣を構えて突撃するサイ。

 

「あほか」

 

鋏でサイを掴むピースメイカー。

 

「動けたのは素直に驚くがなぁ・・・そんな攻撃が俺に通用する訳が」

 

ぐさり、 とピースメイカーの頭上から剣が突き刺さる。

 

「悪いけど本当は6本有ったの」

「あぁ・・・頭上に投げていたのね」

 

ぴくぴくと痙攣するピースメイカー。

ピースメイカーの鋏から抜け出すサイ。

 

「これで終わりね・・・」

「・・・・・」

 

ピースメイカーは頭の剣を引っこ抜いてサイに突き刺して押し倒した!!

 

「!? な、 何で生きている!?」

「お、 れの体!! には神経せつ!! が有る!!」

 

痙攣しながら喋り続けるピースメイカー。

 

「こがたの脳が体中に分散!!していると、 いうこと、 だ!!

頭が吹っ飛ばされた程度では死なん」

「じゃあ全身バラバラになって貰おうか!!」

「あん?」

 

ピースメイカーが顔を上げるとスシブレーダー達の姿が!!

 

「楽しみ過ぎた・・・か」

 

次々とスシブレードに貫かれて体がバラバラになって行くピースメイカー。

 

「一旦退くか・・・」

 

バラバラになりながら逃げるピースメイカー。

 

「アイツ・・・まだ生きているのか・・・化物か・・・」

「大丈夫? サイ・・・」

 

サイに肩を貸すカラースプレー。

 

「・・・・・」

 

大火傷を負った顔を歪ませるサイ。

 

「大丈夫じゃないわね、 誰か!! 手当を!!」



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これからが本番だ

「報告!! ピースメイカー様がバラバラにされました!!」

「あの遊び好きめ・・・」

 

本陣に待機していたヴォルフガングが伝令の報告に苦々しい顔をする。

 

「大丈夫か?」

 

ダーク・イタマエが尋ねる。

 

「どうせ遊んでやられたんだろう、 強いのに遊びが過ぎるから・・・」

「報告します!!」

「またか、 今度は何だ?」

「フェロシティー様が敗北し戦死しました!!」

「何だと!? まだ夜は明けていないぞ!!」

 

まだ早朝にすらなっていない夜更け。

闇が濃ければ濃い程強いフェロシティーが十分に力を発揮出来る。

それなのに既に敗北したフェロシティーに驚くダーク・イタマエ。

 

「相手は一体誰だ!?」

「それが・・・新手の男でして・・・」

「どんなスシブレードを使う!?」

「フェロシティー様の闇で全く周囲が見えず把握出来ませんでした・・・」

「くっ・・・フェロシティーが敗北したとなると私が出るしかないが・・・

そいつは今何処に?」

「フェロシティー様との交戦後に傷を負ったのか逃げました」

「・・・・・今はバルド達を追った方が良いか?」

「それが良いだろうな、 バルド達は今何処に?」

「突っ込んで来た馬車の中かと・・・馬車は見失いました」

「っ!!」

 

頭を抱えるヴォルフガング。

 

「ダーク・イタマエ、 探査用スシフィールドで探せないか?」

「これだけスシが飛び交う状況では情報量が多過ぎて私の頭が可笑しくなる、 無理だ」

「・・・・・」

「巨大な聖霊で戦略的破壊は出来ないのか?」

「戦略的破壊?」

「大規模破壊と言っても良いか」

「悪いがチャージに時間がかかる上に今じゃあ無理だ、 スシが足りない」

「そうか・・・ではどうする?」

「・・・・・僕達も出よう」

「自らの出撃ですか!?」

「あぁ・・・ダーク・イタマエも良いね?」

「スシ・トルーパーが倒されたんだ、 黙って見ている訳には行かないな」

 

そう言いながら二人は本陣の外に出た。

 

「ヴォルフガングだ!! いっけええええええええええええ!!」

 

本陣の外に出るとスシブレーダーや矢や魔法の嵐が飛び掛かって来た。

 

「ふん」

 

ヴォルフガングはスシブレードを回転させて聖霊を召喚して自分の身を守った。

ダーク・イタマエは次元間スシ・フィールドに隠れて攻撃をやり過ごして

再度出現し、 大量の包丁が仕込まれた巻き寿司を射出し大量の包丁で

反撃するのだった。

 

「さてとこれからが本番だ」

「あぁ、 後れを取るなよ」

「それを僕に言うのかダーク・イタマエ、 遊び好きのピースメーカーとは違うんだよ」

 



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スリップストリームで付いて来い!!

バルド達はミレニアム・ファルコンに連れられてミーナ達の元にやってきた。

 

「ミーナ司令官!! スシブレーダー部隊が到着しました!!」

 

伝令が声を上げる。

 

「ミーナさん!!」

「久しぶりねバルド君、 ここは私達に任せて一旦休んでて」

「休ませるのか!?」

 

傍に居たシャークが驚愕の声を上げる。

 

「既に疲労困憊の状態よ・・・」

「でもこの状況で休むって言うのは・・・猫の手も借りたい状況だぜ!?」

「そうですよ、 僕達も」

 

一瞬ふらついて伝令の肩を貸して立ち上がるバルド。

 

「その状態じゃあかえって足手まといよ、 休んで全快したらまた戦って貰う

だから最大限まで休んでいてね」

「でも・・・」

「スシの暗黒卿を倒した戦力、 期待してるんだから・・・」

「はい・・・」

 

バルド達は渋々用意された寝床に案内されて休んだ。

 

「さてと・・・ここからは私達が頑張らないとね!!」

「っしゃあ!! バルド達の出番を奪うつもりでやったるぜ!!」

「その意気や良し」

 

マックスがにゅっと現れた。

 

「お? マックス? どうした?」

「スシの暗黒卿自らが出張って来た、 総出で出ないと時間稼ぎすら出来ない」

「ならば総出で行くしかないか・・・」

「そうだな・・・ファルコン!! 乗せてってくれ!!」

「嫌だね」

 

ミレニアム・ファルコンは即答した。

 

「何で?」

「俺が先陣を切る」

「うん?」

「俺が奴等に突っ込む、 だから荷物は載せたくない」

「!?」

「考え直せ、 スシの暗黒卿相手に単純な質量攻撃は通じない」

「陽動にはなるだろう?」

「・・・・・」

 

にっ、 と笑うミレニアム・ファルコン。

 

「・・・・・分かった、 それで行こう」

「良いのかよ!!」

「死ぬぞ」

「早死にする位が丁度良い人生さ!! 行くぜえええええええええ!!」

 

ミレニアム・ファルコンは走って行った。

 

「・・・いいだろう、 行くぞ!! 鮫小僧!!」

「おうよ!!」

 

シャークとマックスも後を追う。

 

「・・・・・闇のスシブレーダーにも誇り有る者達は居るのだな・・・」

 

ミーナは彼等の背に敬礼を送ったのだった。

 

「ミーナ司令官、 我々は如何しますか?」

「私達も出来る事をしましょう、 例の準備を」

「はっ」

 

部下達に指示を飛ばして作戦の準備を始めるミーナ。

 

「司令官殿!! トレジャーハンター殿が帰還しました!!

かなりの重傷です!!」

「また強いスシブレーダーと戦ったのね・・・直ぐに手当てを!!」

「了解しました!!」

 

血塗れのトレジャーハンターに肩を貸しながら別の寝床に連れて行くミーナ達だった。



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アンブッシュ

次々と襲い来るスシブレードや兵達を退けながら悠々と進む

ヴォルフガングとダーク・イタマエ。

 

「流石だねぇ・・・」

 

スモーカーが大麻煙草を曇らせながらゆったりと語る。

 

「・・・・・何してるんだ?」

「あんた等二人が出張っている以上、 アタシに何が出来るって言うんだ?」

「まぁ、 それもそうだが・・・ね・・・」

 

ガラガラガラと此方に向かう馬車の音。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

ミレニアム・ファルコンの馬車によるアンブッシュだ!!

 

「ふん」

「とぅ」

「うわっ!?」

 

三者三様それぞれ回避行動を取った。

 

「なんと至らぬアンブッシュか!!」

「そいつは如何かな!?」

「何ッ!?」

 

ミレニアム・ファルコンの背後から大量に放たれるコンビーフの弾幕!!

 

「DamnDamnDamnDamnDamnDamnDamnDamnDamnDamnDamnDamnDamnDamnDamnDamnDamnDamn!!」

 

ヴォルフガングは聖霊の百裂拳で次々と来るコンビーフを打ち砕き!!

 

「ふん!!」

 

ダーク・イタマエは防御用スシフィールドを展開して防御する!!

 

「ぐわあああああああああああああああああああああ!!」

 

哀れ、 スモーカーは全身を強く打たれて吹き飛ばされた。

 

「畜生!! 倒せたのは一匹だけか!!」

「一匹も倒せてねぇよおおおおおおおおおお!!」

 

マックスの言葉にスモーカーが起き上がり飛び掛かって答えた!!

大麻を摂取した効果により彼女の体は痛覚を感じていないのだ!!

 

「な、 何だと!?」

「はっはあ!! 死ねぇえええええええええええい!!」

 

マックスの首を絞めるスモーカー!!

 

「させるかぁあああああああああ!!」

 

シャークのフライングボディプレスが炸裂!!

スモーカーは吹き飛ばされた!!

 

「ぐはああああ!! まだまだぁ!!」

 

立ち上がろうとするスモーカーだったが足の骨が折れたらしく動けなくなってしまった。

 

「糞オオオオオオオオオオオオ!!」

「馬鹿はほっといて、 不意打ちはこれでおしまいか?」

「我々も舐められた物だな」

「何処を見ている!!」

 

ミレニアム・ファルコンが旋回しながら突っ込んで来る!!

 

「無駄だ」

 

ヴォルフガングとダーク・イタマエの二人は擦れ違い様に馬車の車輪を破壊した!!

 

「!?」

「こうすれば動けまい」

「くっ・・・」

 

普通の馬車ならば馬のみで走れるかもしれないがミレニアム・ファルコンは

馬車と融合している故に重りを付けると言う状況になってしまった!!



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空に明星が輝いた

「さて・・・残りは2人、 いや3人か?」

 

飛んで来るカラースプレースシを聖霊で防御するヴォルフガング。

 

「ちぃ!!」

 

カラースプレーが舌打ちをする。

 

「「痴女か・・・」」

「誰が痴女よ!! 御洒落よ!!」

「・・・・・カラースプレーか・・・」

「早速だけど私の攻撃が防がれたって事は相当早いよ!! どうする!?」

「戦うだけだああああああああ!!」

 

七つのスシブレードがダーク・イタマエとヴォルフガングを襲う!!

しかし容易く回避した!! そこに7本の剣を持ったかたじん・ゐおんが突っ込んで来る!!

 

「何だこの化物は!!」

「貴方の聖霊とどっこいどっこいだ、 ここは任せて貰おう

寿司の呼吸・握りのネタ・握り拳!!」

 

回転しながらの拳がかたじん・ゐおんに突き刺さり吹き飛ばされる!!

しかし14の脚で地面にブレーキをかけて耐えた!!

 

「まだまだぁ!!」

「そうかならば寿司の呼吸」

「こっちを忘れてるなよ!!」

 

コンビーフが次々と打ち出される!!

 

「話にならないな、 寿司の呼吸・回転ネタ・我廻!!」

 

片手に包丁を持って高速回転を始めるダーク・イタマエ!!

かたじん・ゐおんにダメージを与えるとともに自分の身を守った!!

 

「ぐぅううう!!」

「ゐおん!!」

「だ、 だいじょうぶだぁ・・・この程度ならば・・・」

「ならばこうしよう」

 

ヴォルフガングがかたじん・ゐおんの頭部を思い切り聖霊で殴りつけた!!

 

「ぐううううううううううう!!」

「7つも頭が有るからな次々と殴ろう」

「ぐわあああああああああああああああ!!」

 

かたじん・ゐおんは膝をついた。

 

「よし、 終わりと」

「ま、 まだだ・・・」

「・・・」

 

ヴォルフガングは聖霊のアッパーでかたじん・ゐおんを吹き飛ばした。

ずどんと大きな音がした。

 

「気絶程度か、 まぁ良いか、 さっさと終わらせよう」

「くっ・・・舐めるな!!」

「その通りよ!!」

 

ミーアが兵達を引き連れてやって来た!!

 

「・・・・・ふーん・・・」

「何よ、 その顔は」

「君が持って来たそれ、 役に立つと思うの?」

 

ミーアが持って来た物、 それはバリスタである。

据え置き式の大型弩砲、 威力は有る、 しかし小回りが利かない。

スシブレーダーにとって時間稼ぎが出来れば良い所である。

 

「役に立つさ」

「ふん、 無駄な事を・・・」

 

そう言いながらバリスタは吐き出す矢の雨に飛び込むヴォルフガング。

無論聖霊で全ての矢を弾き飛ばしている、 圧倒的なスピードである。

 

「如何した? 肩慣らしにもならないぞ?」

「っ!!」

 

ミーア達は尚も矢を放ち続けた

飽きたのかヴォルフガングは聖霊でバリスタを次々と破壊して回った。

最後の一個を破壊した所で一息付いた。

 

「さてと、 では次は何だ?」

「・・・・・」

 

苦々しい顔をするミーナ。

 

「終わりならば・・・」

「まだ終わりじゃ無いさ!!」

「?」

 

空に明星が輝いた。



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朝日

空中から降って来るスシブレード!!

まるで明けの明星である!!

 

「!!」

 

聖霊で迎撃するヴォルフガング!!

ドギャアアアアアアアアアアア!! と轟音が鳴り響く!!

 

「・・・・・バルド!?」

「お待たせしました!!」

 

降って来たスシブレードはエッグヴィーナス・カスタムE!!

操るのば勿論バルド!!

バルドの背には太陽が昇って来ている。

 

「もう夜明けか・・・時間を与えすぎたかな?」

「・・・・・無駄話はもう止めようヴォルフガング」

 

大量の巻き寿司を次元間スシフィールドから取り出すダーク・イタマエ。

 

「私の本命のスシブレードで勝負を付ける、 喰らえ」

 

巻き寿司から大量の包丁が飛び出す!! 隠し包丁だ!!

バルドとエッグヴィーナスは巧みに回避する!!

 

「この程度!!」

「ただの時間稼ぎだ、 これが私のスシブレードだ」

 

ダーク・イタマエの手にスシブレードが乗っていない。

いや乗っている? これは一体!?

 

「これは次元間スシフィールドをスシブレードのサイズに圧縮した

スシフィールドの握り、 いわば無の握りだ」

 

空間を握った!? 何という巧の技か!!

 

「行くぞ」

「来い!!」

 

放たれる無の握り、 そしてエッグヴィーナス。

激突する両者、 弾かれるのは無の握り!!

 

「ば、 馬鹿な!?」

 

驚愕するダーク・イタマエ。

無の握りはダーク・イタマエの本命の握り、 手持ちで最強のスシブレードである。

その破壊力は凄まじく、 城壁を砕き、 聖剣を真っ向から圧し折る。

スシブレードですら崩壊させる物である、 それなのに何故!?

 

「簡単な話だ」

 

ヴォルフガングが前に出て口を開く。

 

「相手がより凄いスシブレードだったと言う話だ」

 

正確には違う、 バルドとエッグヴィーナスの持つ絆の力。

その絆の力が次元間スシフィールドと言う闇の力を打ち砕いたのだ。

エッグヴィーナスは製作者であるバルドの

人の笑顔を見たいと言う純粋な意思から作られている

その為、 闇に深く沈んだスシブレーダーに対しての癒しの効果がある。

その力が闇の力を砕いたのだ、 要するに相性が致命的に悪い。

 

「無の握りよりも強いスシブレードだと!?

ならば我々に勝ち目は無いじゃないか!!」

「ダーク・イタマエ、 そんな事は無いよ」

 

そう言ってバラムツを改めて構えるヴォルフガング。

そして射出する。

 

「ダーク・イタマエよりも僕の方が強い!!」

「!!」

 

聖霊がエッグヴィーナスに攻撃を加える!!

エッグヴィーナスは耐えながらも反撃して聖霊を押しのける!!

 

「互角、 と言う所か!!」

「ならば私も加勢しよう!!」

「こっちのせりふだよ!!」

 

トゥーンウィが飛び出して来た!!



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ヴォルフガングの願い

トゥーンウィが次元間スシフィールドを展開してダーク・イタマエを連れ去った。

 

「こっちはまかせて!!」

「・・・頼んだよ!!」

 

次元間スシフィールドに消えるトゥーンウィとダーク・イタマエ。

 

「分断された、 か」

 

ヴォルフガングがぽつりと呟いた。

そしてバラムツを手元に戻した。

 

「・・・何のつもりだ?」

 

バルドもエッグヴィーナス・カスタムEを手元に戻す。

 

「なぁ、 君はこうなる前何だった?」

「こうなる前?」

「スシブレーダーになる前だよ」

 

ヴォルフガングが尋ねる、 まるで何かに縋りつく様に。

 

「・・・ただの執事だよ」

「そうか、 そういえばそうだったな・・・

僕は色々有って貴族の隠し子だって事が分かった平民でね

死ぬまで戦うとかそう言う事はやりたくないんだよ」

「何が言いたい?」

「僕ははっきり言って戦いたくないんだ

目的を達成出来れば良い、 僕は君の主が持っているお宝で願いを叶えたいんだよ

その為ならばダーク・イタマエの首を差し出しても良い」

「裏切るって事か?」

 

バルドが睨みつける。

 

「目的の為ならば手段を択ばない事は

闇のスシブレーダーにとっては当然の事だ」

「信用出来ない」

「信用できないか・・・でもここで戦っても君は死ぬだけだ

断言しよう、 君は僕には絶対に勝てない」

「何故言い切れる?」

「僕には世界を犠牲にしてでも叶えたい願いが有る、 強い想いは全てを凌駕するんだよ」

 

バラムツを構えるヴォルフガング。

 

「僕には世界を犠牲にしたいとは思わないが守りたいものは沢山有る」

 

エッグヴィーナス・カスタムEを構えるバルド。

 

二人の間に静寂が流れた。

 

「3、 2、 1、 へいらっしゃい!!」

 

放たれるエッグヴィーナス・カスタムEとバラムツ。

バラムツの聖霊がエッグヴィーナス・カスタムEに襲い掛かる。

しかし跳ね返す。

 

「ならばこれだ」

 

聖霊が蠢き形を変え収縮した。

 

「小さくなった・・・いや、 圧縮されたのか!!」

「そのとおり」

 

小さくなったがその分密度が増した聖霊の一撃。

先程よりも重くエッグヴィーナス・カスタムEは弾かれる。

 

「くっ・・・エッグヴィーナスが・・・」

「勝ったな」

 

バラムツがバルドに迫りくる!!

危うし!! 圧縮強化された聖霊の一撃は強力無比!!

 

「くっ!! エッグヴィーナス!!」

「間に合わないよ!!」

 

バラムツがバルドに迫り聖霊が殴りかかる、 その瞬間!!

 

「どおりゃああああああああああああああああ!!!」

 

ゴハンがバルドを蹴り飛ばし自ら聖霊の一撃を喰らった!!

 

「ご、 ゴハンさん!!」

 

バルドは叫んだ。



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願いの障害

ゴハンに駆け寄ろうとするバルド。

 

「待て小僧!!」

 

ざっ、 と現れるゾーバとグリード。

 

「敵から目を離すな!!」

「・・・・・はい」

 

ヴォルフガングの周囲を取り囲むスシブレーダーの面々。

 

「皆さん!! もう大丈夫なんですか!?」

「休めたとはいえ七割程度だ、 しかしここでやらなきゃ何時やるんだ!!」

 

グレンが叫んだ。

 

「ゴハンは心配するな、 鍛えているし気絶しているが命に別状は無い」

 

ラルフが答える。

 

「ちぃ!!」

「させない!!」

 

ウェッジのイクラリオンの狙撃によりバラムツがバランスを崩し聖霊があやふやになる。

 

「っ!!」

 

バラムツを手元に戻したヴォルフガング、 そして包囲される。

 

「今度はこっちが包囲したぞ!! さぁ如何する!!」

「それが如何した」

 

ヴォルフガングが感情のこもらない様な奈落の様な眼でバルドを見た。

 

「僕の願いは本来ならば絶対に叶わない願いだ

僕も諦めていた、 しかし願いが叶うチャンスが来たんだ!!

この程度の障害なんて・・・取るに足らない!!」

「取るに足らねぇか試してみろ」

 

ゾーバがファットプラネッツを射出した。

ヴォルフガングもバラムツを射出して聖霊で防御する。

次々と飛んで来るスシブレードも聖霊でガードしようとするが

幾つかガードし損ねて体に激突してダメージを受ける。

 

「ぐはっ・・・・・」

 

血を吐くヴォルフガング。

 

「やむを得ない・・・・・暗黒の中に向かおう・・・」

 

ヴォルフガングが聖霊にダイブした。

腐敗しドロドロに崩れた聖霊の体の中に飛び込んだ。

 

「な、 何をする気だ!!」

 

聖霊の中に飛び込んで上半身が聖霊の中に入った時。

ヴォルフガングの体が回転を始めた、 血も飛び散っている

明らかに致命的な状態である。

腐った聖霊に鮮血の色味と匂いが混ざり合った。

 

「ゴミ溜めに死体を打ち込んだみたいだな・・・」

 

余りに凄惨な光景にゾーバも顔を顰める。

聖霊も形を崩し始めてぐじゅぐじゅと音を鳴らす。

球形の腐った卵の様だった。

 

「・・・攻撃してみるか?」

「・・・・・あれにか?」

 

汚物さながらの様相の相手に対して無暗に攻撃したくない面々。

やがて聖霊の動きが止まり、 うぞうぞと手足が生えた。

 

「なんだ・・・?」

「何が起こると言うんだ?」

「・・・死の川を越えて」

 

聖霊から声が響く、 ぞっとする声だった。

その声を形容するとしたら死者の声だろうか。

 

「願いを叶えるために僕は立つ」

 

聖霊からヴォルフガングが顔を出した。

その顔はさかさまで顎が有らぬ方向に曲がっていた。

 

「聖霊と・・・融合したのか!?」



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トゥーンウィVSダーク・イタマエ partFinal

次元間スシフィールドで戦うトゥーンウィとダーク・イタマエ。

無の握りとアイスクリームが激突するもアイスクリームは砕かれる!!

 

「くっ!!」

 

二個目のアイスクリームを取り出して地面を凍らせながら疾走するトゥーンウィ。

激突すれば負けは必至、 この勝負彼女が不利か。

否、 ダーク・イタマエも苦しんでいる。

 

「早くヴォルフガングの元へ向かわなくてはならないのに・・・!!」

 

無の握りは次元間スシフィールドをスシブレードの形にした物である。

即ち無の握りを使っている間は次元間スシフィールドを使用する事が出来ない。

無の握りを使っていなければ次元間スシフィールドの応用で

次元間スシフィールドを解除出来るのだがそうはいかないのが現状である。

ならば無の握りを解除すれば良いのではと賢明な読者諸賢は思っているだろうが

それも無理である、 無の握りを作り出すのに時間がかかる様に

無の握りを解除するのにも時間がかかる、 ここでの隙は致命傷になりかねない。

 

「いそがなきゃいけないのに・・・!!」

 

トゥーンウィも焦っていた、 外でバルドが待っているのだ

こんな所で油を売っている暇は無い。

 

「・・・・・」

 

無の握りを見つけて逆転の一手を思いつくトゥーンウィ。

移動して無の握りとダーク・イタマエが直線状になるようにしてから

闇の力で冷気を一点に凝縮して無の握りにぶつける!!

圧縮された時空間スシフィールドと冷気の対決!! 果たして何方が勝つのか!!

 

「愚かな!! 真っ向勝負で勝てると思っているのかぁ!!」

「そんざいしていないむなんかにまけない!! はああああああああああああ!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

互いに咆哮をあげる二人のスシブレーダー。

砕かれたのはトゥーンウィのアイスクリーム!!

 

「良し!! これで」

 

破壊された瞬間に闇の力で凝縮された冷気が解放されダーク・イタマエに直撃した!!

 

「がっ!?」

 

ダーク・イタマエは半身が凍り付いてスシブレードの制御が出来なくなり

無の握りは消え去った!!

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

「お・・・のれ、 こんな・・・こんな所で!!」

 

ダーク・イタマエは包丁で凍り付いた半身の氷を砕こうとしているが

トゥーンウィの二発目のアイスクリームで完全に凍り付き倒れ砕け散った。

 

「・・・・・ふぅ・・・よし!! いこう!!」

 

現実世界に帰還するトゥーンウィ、 だがそこに待っていたのは驚愕の光景だった!!

 

「こ、 これは!?」

 

倒れているスシブレーダー達!! 果たして一体何が有ったのか!!



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変異

トゥーンウィは周囲を見渡して見えた光景は

聖霊と融合し悍ましい怪物と化したヴォルフガングと

それに対峙するバルトと三崎、 そしてゾーバとグレンだった。

 

「ダーク・イタマエはやられたようだね」

「トゥーンウィ・・・!!」

「はぁ!!」

 

ヴォルフガングに向けてアイスクリームを射出するトゥーンウィ。

ヴォルフガングは地面に拳を叩きつけて一気に持ち上げてアイスクリームを吹き飛ばした。

 

「な、 なんてちから・・・」

「力だけじゃない」

 

瞬時にトゥーンウィの背後に移動するヴォルフガング。

殴りかかるももう一つアイスクリームを射出して拳に当てて防御するトゥーンウィ。

それでも吹き飛ばされゾーバのふくよかな体に激突する。

 

「ぐふぅ、 大丈夫か?」

「うぅ・・・」

「トゥーンウィ!!」

「随分と余裕だな」

 

ヴォルフガングが聖霊の体でバルドに攻撃を行う。

エッグヴィーナスで何とか防御する、 しかし防戦一方である。

 

「く、 なら!!」

 

トゥーンウィが冷気でヴォルフガングを凍り付かせる。

動きを止める事には成功したが微振動を続けており、 明らかに時間稼ぎにしかなっていない。

 

「はぁ・・・はぁ・・・どうしよう・・・」

「聖霊と融合するなんて想像だにしていなかった・・・」

「三崎さん、 聖霊の弱点とかって・・・」

「スシの聖霊はスシブレードが回転している時にしか出て来ない

つまりスシの回転を止めればスシの聖霊が消え去り

奴のぐちゃぐちゃになった体だけが出て来る

体がぐちゃぐちゃでも生きて行けたら完全に手詰まりだけど」

「それしか無いならやるしかないでしょう!!」

「当たって砕けろだ!!」

「うぅ・・・ふあんだなぁ・・・」

 

凍り付いたヴォルフガングの氷が砕けて動き始めた。

 

「とりあえず囲め!!」

 

ヴォルフガングの四方を囲む四人。

 

「・・・・・」

 

ヴォルフガングは顔を引き裂き右と左に分けて眼球を対極に配置した。

これで視覚的に四角は無くなった、 そして腕が更に四対生えた。

 

「何と悍ましい・・・」

「勝てれば良いんだよ、 勝てれば」

 

そう言ってバルドに向かうヴォルフガング。

超高速で移動するヴォルフガングとリンクしてスシブレードも超高速で移動する。

圧倒的なスピードと圧倒的なパワー、 だがしかし。

 

「くっ!!」

 

バルドは咄嗟に回避した、 眼球の配置を変えて前後に視覚を拡げた代わりに

立体的な感覚を失くしてしまった為に容易く回避されてしまうのだ。

 

「ならば数打てばいい」

 

増えた腕でラッシュを繰り出すヴォルフガング。

 

「舐めるな!!」

 

適当に打った攻撃をエッグヴィーナスで相殺するバルド。

本格的な戦闘が始まった。



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悪魔になろう

「はぁ!!」

 

トゥーンウィがアイスクリームで地面を凍り付かせる。

こうする事で摩擦が少なくなり素早く動く事が出来る。

 

「ちぃ!!」

 

ヴォルフガングは戦慄した。

4対1、 更にスピードも増してしまっては対応が難しい

地面が凍り付いた為に超スピードで動くと滑って通り過ぎてしまう恐れがある。

 

「いや、 落ち着け・・・」

 

パワーもスピードも圧倒的に自分が上なのだ。

ヴォルフガングは冷静に考えて行動を始めた。

ヴォルフガングは凍り付いた地面を溶かす為にトゥーンウィに向かった。

 

「こっちを無視とは良い気な物だな!!」

 

口笛を吹きながらマヨコーンを射出する三崎。

コーンが飛び散りながらダメージを与える。

通常ならば大した事無いが凍った地面では滑り

あらぬ方向に飛ばされるヴォルフガング。

 

「うおおおおおおおおお!!!」

「こっちに来たか!! 行くぞ!! 3, 2, 1、 へいらっしゃい!!」

 

バルドの元に向かったヴォルフガング。

バルドはエッグヴィーナスを射出しヴォルフガングに命中させる。

 

「ぬわ!!」

 

ヴォルフガングは体勢を崩しながらヴォルフガングにぶつかる。

破壊力は無い、 意志を持った攻撃で無ければ聖霊がダメージを与える事は無いのだ。

しかし聖霊の体はバルドを包み込んだ。

 

「ぐわ!!」

 

バルドは短い叫びをあげた。

 

 

 

 

 

 

 

聖霊に飲み込まれたバルドはヴォルフガングの心の内を知った。

彼の心に有ったのは後悔、 慙愧、 渇望。

 

彼の心の内に有ったのは一人の女性である。

 

情景がありありと見える暖かな日差しの中に草原でランチバスケットを拡げて

ヴォルフガングと笑い合う小柄な女性。

 

雪が降る街並みで馬車に乗るヴォルフガングを心配そうに見つめる女性。

 

そして墓から掘り起こされ痩せ細り棺桶の中の中で横たわる女性。

 

「これは・・・」

『僕の恋人だよ』

 

ヴォルフガングの心が語り掛けているのだろうか?

 

『僕は彼女を殺された復讐としてスシの暗黒卿となった

だがしかし彼女を取り戻す手段が有ると言うのならば

僕は全てを捨て去って良い』

「・・・・・」

『君には無いのか? 全てを犠牲にしてでも守りたい人が』

「ヴォルフガング、 僕には大切な人が居るよ

でも今の君を見て君の恋人が君を如何思う?」

『・・・・・』

 

ヴォルフガングが黙る。

 

『僕は恨まれても良いし殺されても良い

彼女にしてしまった事は故意では無いにしろ僕が全面的に悪いと言える

だから彼女が僕を捨てても僕は恨まない

僕は彼女に幸せになって欲しいだけなんだ、 その為ならば僕は悪魔になろう』



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聖霊の光

『彼女の幸せの為ならば何万、 何億の人間が死んでも悔いは無い』

 

ヴォルフガングの強い意志に気圧されるバルド。

 

『君には有るのか? 愛する者の為に全てを犠牲にする覚悟が?』

「・・・僕には貴方の様な覚悟は無い

だけどここで負ける訳には行かない」

『ならば如何する? 君は僕の、 聖霊の中に取り込まれているんだ

成す術は無い、 君はここで一人如何する事も出来ないだろう』

『否』

 

声が響く。

 

『私が傍に居る』

「・・・・・そうだね、 君が居たよ」

『・・・・・何を言ってるんだ?』

 

ヴォルフガングが困惑する、 如何やらもう一人の声は聞こえない様だ。

 

「さぁ行くよ」

『あぁ』

 

バルドがエッグヴィーナスを構える。

 

『今更スシブレードで如何するつもりだ? この世界を壊せると?

僕の心を砕けると思っているのか?』

「3, 2, 1、 へいらっしゃい!!」

 

エッグヴィーナスが射出される、 そして輝き始める。

 

『こ、 これはまさか!!』

「そう聖霊だ!!」

 

バルドが聖霊を使うのは切欠が有った。

それはバルドが現在居る空間、 ヴォルフガングが造り出した

内的な精神世界、 彼の心象である。

その空間に入る事によりバルドは肉体の束縛から離れ

スシの声を聞き易くなり、 寿司と心を通わせ聖霊を呼び出すと言う事である。

ヴォルフガングと言う聖霊の使い手と出会う事で聖霊の使い方

呼び出し方を無意識に学んだ事も大きかった。

 

『さぁせぇるぅかぁ!!』

 

絶叫しながら心象をブチ破って聖霊と融合したヴォルフガングが現れた。

 

「ヴォルフガング、 君を倒して僕は先に進む!!

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

輝きながら回転するエッグヴィーナス。

そして現れる輝く男、 彼こそがエッグヴィーナスの聖霊である。

 

ヴォルフガングが拳を振り上げる。

エッグヴィーナスの聖霊がその拳を受け止めカウンターで拳を叩き込む。

 

『ぐあ・・・あ・・・ああああああああああああああああああ!!!』

 

聖霊の肉体が溶け始め気化しヴォルフガングの体が徐々に見え始める。

 

「哀れなスシの暗黒卿よ、 恋人の所へ行くが良い」

『・・・・・彼女は僕を許してくれるだろうか・・・』

「知らないよ、 それは君と彼女の問題だ」

『・・・・・・・・・・・』

 

ヴォルフガングの体も消滅し、 心象も砕けた。

真っ暗な空間に取り残されるバルドとエッグヴィーナス。

 

『・・・行くぞ』

 

エッグヴィーナスの聖霊が呟く。

 

「あぁ!!」

 

聖霊が飛び立ち空中に向けて拳を突き出した。

空中に罅が入り砕け散る、 その後を追うバルド。



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夜明け前が一番暗い

ヴォルフガングがバルドを飲み込んだ後

動かなくなったヴォルフガングに攻撃を加えるゾーバだったが効果が無かった。

 

「やめてぇ!! なかにばるどがいるんだよ!!」

「効いてないみたいですね・・・」

「ちぃ!! ・・・うん?」

 

聖霊の体に露出していたヴォルフガングの体が体内に吸い込まれる。

そして球形になり震え始める。

 

「な、 何だ?」

「こ、 これは・・・」

 

頭頂部から罅が割れて光り輝き

エッグヴィーナスの聖霊とバルドが飛び出した。

そしてヴォルフガングとその聖霊は爆発四散した。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

「ば、 バルド・・・これは・・・」

「倒せた、 と言う事か」

「ばるど!!」

 

トゥーンウィがバルドを抱きしめる。

 

「ははは・・・」

 

バルドはがくりと倒れている。

 

「お、 おい大丈夫か!?」

「かなりの疲労だな・・・大丈夫か?」

「それならば問題は有りません!!」

 

伝令がやって来る。

 

「敵軍は司令塔を失い既に敗走の態勢に入っています」

「そうか・・・何とか勝てたって所だな・・・」

「今回も首の皮一枚繋がった、 って所か

凄いラッキーボーイだよ、 バルドは、 裏社会でも一旗上げられるだろう」

「ほめてるの?」

「最大級の賛辞だよ」

 

画して絶望的だったこの状況を何とか打開する事に成功したのだった。

被害も大きかった、 街が破壊されたのだ

ファウンデーション教国は港も破壊し、 魚の供給を断つ事にした。

完全に放棄する形になった訳だ。

街が残っていれば良かったのだが破壊されてしまったのでこうするしかない。

 

こうしてダークネスシ帝国は供給が絶たれてしまった。

だがしかしそれでスシの暗黒卿が諦める事は無い。

希望が見えた来た、 しかし夜明け前が一番暗いと言う言葉が有る。

この闇を乗り越えなければファウンデーション教国を始めとした

反ダークネスシ帝国に未来は無いのだ。

 

一番キツイ状況に追い込まれたのは敵も味方も同じ事。

考え無しになった場合、 ダークネスシ帝国は一体どんな行動に出るのか?

想像だに出来ない・・・

 

 

 

 

 

そしてこの状況を心待ちにしていたのは人間では無くこの男である。

 

「アーマゲドン様、 人間共は如何やら疲弊している様子

ダークネスシ帝国はスシブレードに必要な魚の調達も出来なくなっている模様です」

 

世界の何処かで真っ赤な悪魔に報告する魔物の伝令。

 

「うむ・・・ならばもっと争い合わせ疲弊した所を我等が討ち魔王様の仇を討つ!!」

 

彼は四天王最後の一人、 アーマゲドンである。

現状の魔物達の最高指導者である。

果たして魔王は一体何処に行ったのか!?



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極秘!!第十二章終了時の闇のスシブレーダーとスシブレード名鑑

闇号:ダースシ・ヴォルフガング

本名:アナキン・ヴォルフガング

スシの暗黒卿の一人。

元々はシャリ王国の貴族、 ヴォルフガング家の隠し子で平民をやっていたが

ヴォルフガング家に見つかり連れていかれる、 その際に恋人と離れ離れになった。

彼は直ぐに戻るつもりだったが引き留められて帰った頃には恋人は死んでいた。

如何やら自分と引き裂く為にヴォルフガング家が工作をしたらしい。

その際に"闇"の親方に出会い薫陶を受けてバラムツを使い。

自分と恋人を引き裂いた者達を汚辱の末に殺した。

家名を名乗っているのは汚辱の貴族として辱める為である。

聖霊を扱う事の出来る稀有なスシブレーダーだったが

バルドとの戦いで戦死する。

 

使用スシブレード:バラムツ

攻撃力:B 防御力:B 機動力:B 持久力:A 重量:C 操作性:A

バラムツのスシブレード。

人間には消化できない油を持っている為、 食べ過ぎると酷い目に遭う。

ヴォルフガングはこのバラムツを使い聖霊を召喚する事が出来る。

聖霊込みのステータスは尋常じゃ無く高い。

 

親方”闇”からの総評

聖霊を使う巧みな腕前、 そして悲惨な過去。

闇のスシブレーダーには理想的な実力者だったが忠誠心が低いのが玉に傷。

一般市民が一番エグイと言う事か。

 

 

 

闇号:ダーク・イタマエ

本名:不明

スシの暗黒卿の一人。

スシの暗黒卿の中でも最も謎多き男で闇号は元々名乗っていた偽名で本名は不明である。

自称探検家らしいのだが脛に傷が付いているらしく過去の事は話したがらない。

うさんくさいが探検家と言う言葉に嘘は無く、 獣を起こさないような静かな身の熟しや

料理経験が豊富であり、 様々な料理を作り出すことが出来る。

巻き寿司の中に隠し包丁を仕込んだり、 次元間スシフィールドの派生形が使えたりと

料理人としてのスキルも極めて高い、 トゥーンウィとの死闘で死亡する。

 

使用スシブレード:無の握り

攻撃力:S 防御力:SS 機動力:A 持久力:SSS 重量:E 操作性:SS

次元間スシフィールドを握り寿司の形状に圧縮したいわば空間の握り。

操作するスシブレーダーの次元間スシフィールドの強度に合わせたステータスになり

大概の場合は極めて固く強いスシブレードになる。

また本人が次元間スシフィールドを維持できる限り回転が止まらない持久力の高さも魅力的である。

反面、 発動までに時間がかかり

このスシブレードを使っている間は次元間スシフィールドを使う事が出来ない。

 

親方”闇”からの総評

かなり有能な男、 元居た世界でも間違い無くスシの暗黒卿になれる逸材。

倒されたのが惜しい。

 

 

 

闇号:ピースメイカー

本名:ズロ

ダースシ・ウォルフガング配下のスシトルーパー。

左腕が巨大な蟹バサミになっているヤミ・マスターで

元シャリ王国のお偉いさんの家柄でサイに訓練と称した暴行を受けていた。

強くなりたいという理由で闇のスシブレーダーとなり力を得て使用人と父親を殺害する。

その際に弱い物イジメって楽しいと感じ"闇"の下で様々な活躍をする。

サイにバラバラにされるも肉体が変質していた為、 命は無事である。

 

使用スシブレード:蟹クリームコロッケ

攻撃力:S 防御力:D 機動力:B 持久力:B 重量:C 操作性:C

蟹クリームコロッケのスシブレード。

凄まじい熱量を持っており、 内部の蟹クリームは剣をも溶かす威力である。

本来ならば揚げたて出なければこの破壊力は出ないが

闇の力で揚げたての状態をキープしている。

また破壊のみならず周囲を温める使い方も出来る。

 

親方”闇”からの総評

中々に性格が捻じ曲がっている為、 闇との親和性は高いが

弱い物イジメに執着している為、 向上心が無いのが難点。

 

 

 

闇号:カスタード

本名:ペーストリー

ダースシ・ウォルフガング配下のスシトルーパー。

今時のギャルの様な見た目をしているがヤミ・マスターである。

楽して儲けたいと言う雑な志から闇のスシブレーダーになった。

見た目は普通だが変質した内部構造の中には茶碗蒸しが詰まっており

スライムの様に小さな隙間に入る事が出来る。

スシブレードの大軍に撃ち抜かれて死亡。

 

使用スシブレード:茶碗蒸し

攻撃力:A 防御力:E 機動力:E 持久力:E 重量:B 操作性:E

茶碗蒸しのスシブレード。

通常の茶碗蒸しとは違いゆり根を大量に入れて茶碗蒸しの容器自体を

極めて薄く焼く事で割れ易くしてゆり根をばら撒く戦術を取っていた。

こうする事で瞬時に面での攻撃が可能である。

反面、 使い捨てになってしまう。

 

親方”闇”からの総評

広い草原では無く、 狭い所が多い市内での戦いならば希望が有ったかもしれない。

 

 

 

 

 

闇号:ビッグナイフ

本名:ソーラ・パルク

ダースシ・ウォルフガング配下のスシトルーパー。

元鶴帝国八十八剣聖の一人、 『ナイフ』のソーラの異名を持っていた

しかし八十八剣聖の中での序列は八十二位とお世辞にも高いとは言えなかった。

"闇"からの勧誘を受けて鶴帝国を裏切り殺した剣聖達の聖剣『短刀』を貰った。

本人が希望すればもっと貰えたが本人が扱える聖剣がそれ位しか無かった為に固辞する。

スシブレードと聖剣『ナイフ』のコンビネーションは強かったが

トゥーンウィに撃破される。

 

使用スシブレード:押し寿司

攻撃力:S 防御力:C 機動力:D 持久力:B 重量:A 操作性:D

押し寿司のスシブレード。

聖剣『短刀』が仕込んであり、 いざという時に射出する様にしてある。

並の隠し包丁の比では無い威力だが一回ごとに回収しなければならない。

 

親方”闇”からの総評

スシブレーダーと言うかスシブレードが使える剣聖と言った印象を受ける

まぁ強ければ良いけど。

 

 

 

 

 

闇号:ボール

本名:ココ

ダーク・イタマエのスシトルーパー。

階級はヤミ・アプレンティスだが鶴帝国の元将軍で

鶴帝国崩壊後にダークネスシ帝国に寝返った。

スシブレーダーとしての実力は今一つだが兵の運用に関してはとびぬけている。

ヴォルフガングに粛清される。

 

使用スシブレード:毬寿司

攻撃力:E 防御力:E 機動力:A 持久力:D 重量:E 操作性:A

毬寿司のスシブレード。

小さくて愛らしい、 スシブレードとしては機動力と操作性に特化している。

 

親方”闇”からの総評

毬寿司・・・毬寿司かぁ・・・意外に難しい・・・うん

 

 

 

 

 

 

闇号:スモーカー

本名:コマリ

ダーク・イタマエのスシトルーパー。

元々裏社会ではとある大物の情婦だったが実質その大物は彼女の傀儡だったという。

強かな美女であり、 元々は貴族の家柄だとか様々な噂が流れる。

足を折られて捕縛される。

 

使用スシブレード:麻薬の握り

攻撃力:E 防御力:E 機動力:C 持久力:C 重量:C 操作性:C

大麻を巻いたスシブレード。

破壊力は皆無だが麻薬の成分を散布して周囲の人間を強化したり

集中すれば操る事も可能。

 

親方”闇”からの総評

LSDの開発が急がれるな、 ヤクの売人じゃないけど

 

 

 

 

闇号:フェロシティー

本名:ジュヨー

ダーク・イタマエのスシトルーパー。

ヤミ・マスターの中でも1,2を争う強者でダーク・イタマエとは昔からの付き合いらしい

訓練により完全な闇の中でも眼が見えるらしい。

トレジャーハンターとの激闘により死亡

 

使用スシブレード:闇の握り

攻撃力:E~SS 防御力:E~SS 機動力:E~SS 持久力:E~SS 重量:E~SS 操作性:E~SS

闇のスシブレード。

周囲の闇の量によって強さが変動し、 真夜中ならば比類無き力を発揮する。

 

親方”闇”からの総評

闇の握りは現代社会では使える場所が限られる上にスマホの光でも弱体化するから

ファンタジー世界ならば強いと思ったが闇の恐怖に怖気づいて使える奴が少なかった。

使える彼は貴重だったが残念だ。



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第二章:闇の攻撃
オープニング・クロール


勇者召喚に対して攻め込んだ魔王及び四天王達だったが

"闇"との戦闘でヨモヤマバナシとサンテンリーダが戦死。

バリゾーゴンが離反し四天王はイイッパナシの一人だけになってしまった。

魔王は魔王城に帰還した後に魔物達の動揺を避ける為にヨモヤマバナシの副官の

ステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロックと

サンテンリーダの副官のアーマゲドン。

そしてバリゾーゴンの兄であり怪我により一線を退いたマントラを新しい四天王として登用した。

魔王は拠点の魔王城にて対策を練り始めるも裏切り者のバリゾーゴンを警戒して

急いで新しい拠点を探していたが移動を察知されない為に少数での捜索となった。

 

シャリ王国ではシャリーダ13世の即位と

彼によるスシブレードの普及が行われスシブレーダーの軍団が出来る日も近い。

反対する者は精神酢飯漬けにされるか暗殺され

闇のスシブレーダーが支配する暗黒の国となり始めた

他国に情報もまるで出て来ない為、 他国も介入が出来ずにいた。

他国は魔王によって侵攻された事から魔王に支配されたと考えており

手を出しても旨味が少ないと判断され誰からも助けらない事態になっていた。

 

一方の"闇"はシャリ王国からブタの男とバリゾーゴンと共に魔王討伐に出かけた。

"闇"は魔王と言うのが脅威ならば予め倒しておいた方が良いと判断したのだ。

そのついでに闇のスシブレーダーに適性の有る者達を探し出して

闇のスシブレーダーにする事も彼の目的の内の一つである。

"闇"は鶴帝国を抜けてサンシャイン王国を通り過ぎ、 マナ法国を経由して

魔王が潜んでいる魔王城に向かう手筈だったのだが

闇のスシブレーダーの適性を持つ者への声掛けでかなり時間が経過してしまった。

特に鶴帝国の漁村に立ち寄り鶴帝国の軍人を倒してスシブレードを広めたのは

非常に時間をロスしてしまったとバリゾーゴンも焦りを見せ始めた。

鶴帝国も軍人を始めとした人員の行方不明が多発している事から何者かが国内で

何らかの工作をしていると察知し

鶴帝国八十八剣聖から序列八十一位『短刀』のシャアク

序列七十三位『ハルバード』のティン

序列五十三位『モーニングスター』のコーラー

序列三十一位『スリングショット』のフィストー

序列九位『ガントレット』のウィンドゥの五人を調査隊として送り込む事を決定した。

 

果たして"闇"は魔王が居城を変える前に魔王城に辿り着いて魔王を倒す事が出来るのだろうか

それはまだ分からないのであった。



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魔王会議

魔王城にて話し合う四天王と魔王。

 

「移転先は飛行城にするべきです

今後はイザという時に逃げられます」

 

黄色い鳥のような頭の鳥人イイッパナシが口火を切る。

 

「しゅるしゅる・・・海の底の海底城こそがふさわしいと思いますね

飛行城は揺れが激しい欠陥城らしいじゃないですか」

 

ステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロックが触手を動かしながら意見する。

 

「いや、 この場に留まり最後の一兵まで玉砕の覚悟で突っ切る!!

これが最良だと判断します。」

 

赤い悪魔アーマゲドンが熱弁する。

 

「否、 それは無理だ、 奴の強さは半端じゃない

そんな事をすれば皆殺しの憂き目に遭う」

 

魔王が反論する。

 

「しかし!! ヨモヤマバナシ様とサンテンリーダ様の仇を取らねばなりませぬ!!」

「しゅるしゅる・・・気持ちは分かるよアーマゲドン、 でも落ち着こうよ

ここは冷たくて頭も冴える海底城へ」

「いや、 そこは水棲生物しか住めないだろ、 俺達は行けん」

 

ツッコミを入れるイイッパナシ。

 

「・・・マントラ様、 意見をお聞きしたいのですが・・・」

 

アーマゲドンが恐る恐るマントラに問う。

マントラはバリゾーゴンを二回り大きくした隻眼の悪魔である。

 

「様は不要だ」

「い、 いえいえ!! 怪我で一線を退いたとは言え貴方は誰もが認める強者ですよ!!

呼び捨てなんか出来ませんよ!!」

「裏切り者は私の手で片付ける、 その禊を落さなければ

四天王とは言えない、 そうでなければ諸君らと肩を並べない」

「貴様の弟は前々から軽薄な奴だった

貴様の弟だから血縁を見て登用した私のミスだ、 気に病む事は無い」

 

魔王が諫める。

 

「兎も角だ、 四天王の半数が死ぬという異常事態に対処しなければならない

各々足の引っ張り合いはせずに魔族の未来の為に尽力して欲しい」

「はい!!」

「しゅる・・・分かっております」

「サンテンリーダ様の為にも頑張ります」

「弟の不忠を挽回します」

「うむ、 皆の意見を纏めても長期的な解決法にはならない

部下に良い場所を探す様に命じているがあまり良くは無いな」

「そうですか・・・」

 

魔王の発現に肩を落とすイイッパナシ。

 

「しゅるしゅる・・・バリゾーゴンはこの魔王城の正確な位置を知っていますが

直ぐに来るでしょうか? 我々を侮って直ぐには来ない可能性も・・・」

「希望的観測は好きでは無いし侮られるのも嫌いだ

だがしかしそうであってほしいと心から願いたい物だ・・・」

 

神の敵対者であるのにも関わらず祈りたいと言い出す魔王であった。



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直談判

「納得が行かん!! 何故調査に俺を使って下さらないのか!!」

 

鶴帝国、 皇帝の居城コルサントの玉座の間にて

八十八剣聖序列八十二位『ナイフ』のソーラが鶴帝国皇帝女帝テタに直訴していた。

女帝テタはまだ14歳だがそれでも帝王学を学び、 鋭い眼光でソーラを射抜いた。

 

「ウィンドゥが決めた事だ、 文句ならば奴に言え」

「彼が決めた事を翻した事がお有りですか!!

下位の剣聖達に活躍の機会が無ければ何時までも序列は変わりません!!」

「八十一位のシャアクにも出番が有るではないか」

「あの女に実力が無い事は公然の事実でしょう!!

能書きが上位の者達に気に入られているだけです!!」

「力のみならず技や精神等も評価の対象になる」

「精神ですと!? そんな目に見えず比べられない物で優劣を競うと!?」

「少なくともこうして文句を言う貴様よりは精神的に優れていると思う

貴様もこうしていないでもっと自分を磨いたらどうだ?」

「自分を磨いても発揮する場所が無ければ無意味ではありませんか!!」

 

溜息を吐くテタ。

 

「何れにせよ、 出番が欲しければ上位陣に頼むんだな」

「納得が行きません!! 上位陣に気に入られなければ上に上がれないなんて!!」

「上に気に入られなければ出世出来ないのはどんな集団でもそうだろ・・・下がれ」

「しかし!!」

「二度は言わんぞ?」

 

皇帝を守るロイヤルガードが武器を構える。

ソーラは渋々と玉座の間を去った。

 

「納得いかん・・・」

 

ぶつぶつとソーラが呟きながらコルサントの廊下を歩き一室に向かった。

一室には彼の同僚である剣聖達が待っていた。

 

「ソーラ、 どうだった?」

 

序列八十三位『ポールウェポン』のリーアムがおどおどとソーラに尋ねた。

 

「駄目だ、 陛下はウィンドゥに言えの一点張りだ」

 

落胆をする一同。

 

「このままでは誇り高き八十八剣聖は上位陣の好きにされてしまう!!」

 

序列八十五位『契木』のパートラが吠える。

 

「その通りだ!! 武芸の冴えは我々の方が上なのに貴族出身だからと

不当に持ち上げられている者達が多過ぎる!!」

 

序列八十四位『熊手』のジェンパが追従する。

 

「全く持って同意見だね、 貴族のお飾りになり果ててしまう」

 

序列八十六位『アイスピック』のボビーが同意する。

 

「私より劣るシャアクが八十一位なのは納得が行かない、 同じ女なのに」

 

序列八十八位『含針』のアシュラが歯がみする。

 

「如何だろうか、 ここは我々だけで先んじて行動すると言うのは如何だろうか?」

 

序列八十七位『マカナ』のキアンが提案する。

 

「今回は無理だろうウィンドゥは既に調査に出発している

追いかけて先を越すのは無理だ」

「ならばシャリ王国の内情調査は如何だろうか?

魔王に侵略されているのは確実だろう、 何か情報を持って帰れば・・・」

「なるほど・・・良いかもしれないな」



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ウィンドゥさんは凄い

コルサントから出発した鶴帝国八十八剣聖序列八十一位『短刀』のシャアク

序列七十三位『ハルバード』のティン

序列五十三位『モーニングスター』のコーラー

序列三十一位『スリングショット』のフィストー

序列九位『ガントレット』のウィンドゥの五人からなる調査隊は

多発する行方不明の調査の為に直近で起こった行方不明の現場のメラナイ森付近に向かっていた。

それぞれ馬に乗って移動している。

 

「それにしても一体何なんですかね、 行方不明と言うのは」

 

シャアクが移動中に疑問を口にした。

 

「魔王の仕業に決まっているだろう、 それ以外に考えられない」

 

ティンが答える。

 

「シャリ王国に向かった魔王が次は鶴帝国に向かうと言う事か・・・

面白い、 腕が鳴る」

 

コーラーがケラケラ笑いながら言った。

 

「ウィンドゥさん、 貴方は如何思います?」

 

フィストーが尋ねる。

 

「如何なる敵が相手でも私は負けない」

「流石ウィンドゥさん、 含蓄ある言葉ですな」

「うんうん、 その通りです」

「魔王も敵じゃ無いですね」

「流石です・・・」

 

ウィンドゥのズレた言葉を持ち上げる一同。

 

「しかしながら行方不明とは奇妙な事だ」

「そうですね、 一体何なんでしょうか・・・」

「しかしウィンドゥさんが居るのならば何も問題無いでしょう」

「その通りだ」

「ウィンドゥさんにかかれば行方不明なんてあっと言う間に解決出来る」

「うむ、 その通りだ」

 

よいしょを真に受けるウィンドゥ。

 

「一人、 二人が魔物に襲われて死んだのなら分かるが

今回は部隊レベルでの行方不明が出ている

部隊が全滅したと見るのが正しいだろうが

それならば感知出来る筈と見るのが正しいだろう」

「なるほど・・・そこまで考えて・・・」

「なんと思慮深い・・・」

「頭も切れるなんて・・・」

「しかしそれならば単純な理屈ですよウィンドゥさん」

 

フィストーが答える。

 

「ほう、 どういう事だフィストー?」

「部隊を壊滅させる強さを持った何かが居る、 と言う事でしょう

恐らくは八十八剣聖クラスの強さを持った何かが」

「そうなると魔王か四天王が出張っているのか?」

「魔王は無いとしても四天王・・・」

「我々で勝てますかね? 応援を呼びますか?」

「いや、 我々だけで充分だろう、 何故ならばウィンドゥさんが居るのだから」

「うむ、 私に任せておけば何も問題は無い」

 

自信満々のウィンドゥで有った。

 

「それではウィンドゥさん、 今日は日も暮れたのでここで野営しますか?」

「ふむ・・・野宿か、 気分は進まないが贅沢も言ってられない、 仕方が無い、 良いだろう」



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コカトリスを喰う

ウィンドゥ達が野営をしている頃、 闇達も野営をしていた。

闇が自ら包丁を握り腕を振るって料理をしていた。

 

「とは言っても鳥刺しだがな、 バリゾーゴン、 さっき言っていた事は真実か?」

「あぁ、 間違い無い、 こいつは血抜きをしない方が旨い」

「本当かよ」

 

闇達が話しているのは今日の夕飯である。

今日の彼等の夕飯は野生のコカトリスである。

コカトリスとは雄鶏とヘビとを合わせたような姿の生き物である。

サイズは2m位だろうか。

 

「鶏だから喰えるとは思うが旨いのか? 体が大きいから大味とかじゃないよな?」

「肉質はしっかりしているから歯ごたえは充分ある

さっきも言ったが血抜きをしない方が旨い」

「血抜きをしない方が旨いかぁ・・・」

「ジビエみたいなもんだろうか」

「いや、 そういうんじゃないんだよ

コカトリスは血抜きをすると駄目なんだよ」

「うん? どういう事だ?」

「コカトリスは草食性だ」

「おい、 さっきめっちゃ襲われたけど」

「襲い掛かるけど草食性だ、 そしてコカトリスの血には喰った草の成分が多く含まれる」

「なるほどな・・・納得した」

「ど、 どういう事ですか師匠」

 

ブタの男が説明を求める。

 

「この辺りの草を見て見ろ、 野生ネギとかハーブ類が多い

かなりの旨味成分を蓄えていると見て間違いは無い」

「その通りだ、 流石と言うべきか」

「さてと、 それじゃあ早速鳥刺し出来たから食べようか」

「頂きます」

 

ブタの男が鳥刺しを一口食べた。

瞬間脳内にイメージされたのは口いっぱいのネギとハーブである。

形容するのならば肉のメントス、 ネギ味である。

 

「おぉ・・・食べていた物の味がダイレクトに来る・・・

けど肉の味がしない・・・何かスースーする」

「どれどれ・・・」

 

闇が一口食べる。

 

「・・・・・確かに風味は凄いけど血抜きした方が絶対旨いだろ」

「えぇー!? そんな事無いだろぉ」

 

ぼりぼりとコカトリスの骨を喰うバリゾーゴン。

 

「・・・骨食うのか?」

「うん、 俺は主食岩だし、 固い物は結構好きだぜ?

特に黒曜石は旨い」

「「・・・・・」」

 

闇とブタの男は確信した、 コイツ味音痴だと。

 

「ま、 まぁ兎も角、 食おうか」

「そうですね、 勿体無いですし」

 

コカトリスはスープの出汁にして食べた。

癖のあるスープが取れたので魚介と混ぜて食べたいと思った闇であった。

 

「所で四天王とかって食えるのかな?」

「いや・・・えぇ・・・それは・・・ないでしょー・・・

貴方美味しいからって人間喰うか?」

「無いかぁ・・・」

 

がっかりする闇であった。



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メラナイ森にて

一夜明けて再びる行方不明の調査の為にメラナイ森に向かうウィンドゥ一行。

 

「ウィンドゥさん、 ここから先は歩きになります」

「仕方あるまい、 馬はココに繋いでいこう」

「え? ウィンドゥさんを態々歩かせると?」

 

シャアクが疑問を口にする。

 

「シャアク、 この森にはコカトリスと言う化物が居るのだ

我々八十八剣聖ならば遅れは取らないが万が一と言う事も有る

警戒しながら先に進むには馬を降りて進むのが一番だ」

「な、 なるほど・・・勉強になりますウィンドゥさん」

「よろしい」

 

歩きながら森を移動するウィンドゥ一行。

 

「ウィンドゥさん、 少しいいですか?」

 

フィストーが進言する。

 

「如何した?」

「血の匂いがします」

「それは恐らくはコカトリスに襲われた犠牲者では?」

「否、 この森にコカトリスが出るのは誰でも知って居る事だ

態々この森に入る馬鹿は居ない、 その血の匂いの所にまで行くぞ」

 

ウィンドゥ達がフィストーに連れられて血の匂いの地点まで移動する。

闇が野営していた所である。

 

「ふむ・・・血が有るな、 乾いている・・・」

「野営していた所をコカトリスに襲われたんでしょうか?」

「死体が無いぞ?」

「・・・・・」

 

乾いた血を舐めるフィストー。

 

「これはコカトリスの血ですね・・・」

「なんと、 コカトリスを倒す者が居るのか?」

「八十八剣聖の誰か・・・では無いでしょうね」

「だろうな・・・フィストー、 追跡は可能か?」

「えぇ、 問題有りません、 足跡はしっかり残っています

追跡は容易です、 ただ・・・」

 

言葉を濁すフィストー。

 

「如何した?」

「敵は恐らく3人、 足跡の形状から一人・・・いや一匹魔族が紛れていますね」

「魔族と人が共に行動をしているというのか?」

「どういう事だ?」

「行方不明者は魔族に拉致された人で連れ回している?」

「可能性としては無くは無いな、 よし早速足跡を辿って行こう」

「そうしましょう」

 

足跡を辿るウィンドゥ達、 足跡は森の外にまで続いていた。

 

「森の外に出たのか・・・・・ん?」

 

遠くで馬が駆けている、 馬には誰かが乗っている。

 

「って良く見ればあの馬は我々が乗っていた馬じゃないか!!」

「森の手前で置いて来た馬ですね・・・残っている馬は2匹ですか・・・」

「おのれぇ!! 許さん!! お前達は後から馬に乗って来い!!」

 

ウィンドゥは走って駆けている馬に追いかけていく。

ウィンドゥの身体能力はすさまじい為、 馬にも追い付けるだろう。

 

「・・・じゃあ我々は二人乗りで四人行くか」

「そうしましょうか・・・」



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ハンバーグVSガントレット

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

待てええええええええええええええええええええええええ!!

馬泥棒ううううううううううううううううううううううう!!」

 

全力で走るウィンドゥ。

 

「ん?」

 

馬に乗っている闇達が後ろを向いて止まる。

 

「むっ!! 魔族と見るからに怪しげな二人組!! 名を名乗れ!!」

「闇だ」

「カイだ」

「バリゾーゴンだ」

「馬を返せ!!」

「今急いでいるんだ、 後にしてくれ」

「盗人猛々しい!! 何なんだお前達は!!」

「俺達はこれから魔王を殺しに行く」

「なんだと・・・」

 

ウィンドゥが驚愕の表情を浮かべた。

 

「いや、 お前(バリゾーゴン)は魔族だろ? 何で魔王を倒しに行くんだ?」

「俺は魔王を裏切ってこの人に付いて行く事にした」

「何だと!? ではお前が新しい魔王と言う事か!?」

「違う、 俺は親方だ」

「むむ・・・如何やら戦うしかない様だな」

「何でだ?」

 

ウィンドゥの言葉に疑問を投げかける闇。

 

「はっきり言おう、 お前では俺には勝てない」

「ふん、 行ってくれるじゃないか

私は鶴帝国八十八剣聖序列九位『ガントレット』のウィンドゥ

お前達を倒す事等造作も無い」

 

そう言って両手に籠手を嵌める。

これが彼の聖剣『ガントレット』である。

 

「鶴帝国八十八剣聖? なんだそりゃ?」

「何か八十八人居る強い連中ですよ」

「八十八人ってそれ強いのか?」

「良いだろう、 ではこれを見るか良い」

 

そう言って石を何個か拾って空に放り投げるウィンドゥ。

次の瞬間、 石は全て砕かれた、 ウィンドゥの拳打によってである。

 

「中々素早いな」

「ふ・・・まだ本気では無いぞ?」

 

ウィンドゥがにやりと笑う。

 

「本気・・・つまり剣を使うと言う事か」

「いや、 剣は使わない、 剣聖と言う地位だが

必ずしも剣を使わなければならないと言う決まりは無いし

相手を害せれば全て剣だ」

「親近感が沸くな」

「ここは俺がやりますよ」

 

ブタの男が馬から降りる。

 

「任せる」

「良いのか? 一人で? 三人がかりでも構わんぞ?」

 

余裕を見せるウィンドゥ。

 

「舐めるなよ、 俺一人で充分だ」

 

ハンバーグを構えるブタの男。

 

「・・・・・は? 何だそれ」

「ハンバーグを知らないのか?」

「いや、 知っているが・・・何をするつもりだ」

「こうするんだよ」

 

ハンバーグを射出するブタの男。

ウィンドゥは驚いたがガントレットで殴り粉砕した。

 

「ぐ!? こ、 この力は!!」

 

以前戦ったドラゴンにも勝るとも劣らない力。

それをハンバーグから感じた。

 

「良」いだろう本気で戦ってやろうと全部言い切る前に二個目のハンバーグが飛んで来た。



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望外の決着

飛んで来るハンバーグに拳を突き出して相殺する事、 三回目でウィンドゥは回避を試みた。

このままでは腕が使い物にならなくなる可能性が有るからだ。

ウィンドゥの考え方はハンバーグを射出してくる相手に対しての行動ならば

悪くない手である、 しかしながらブタの男が射出しているのは

ハンバーグでは無く、 ハンバーグのスシブレードなのだ

当然回避しても追って来る。

 

「何だと!? 物理法則無視か!!」

「スシブレードなんだから当たり前だろう」

 

スシブレードが一般的では無い時代にスシブレードは余りにも驚異的である。

 

「くっ!!」

 

回避し続けてもスシブレードは増える一方。

 

「あいつ等は何をやってるんだ!?」

 

彼が言うあいつ等とはウィンドゥが連れて来た剣聖達の事である。

馬に乗って後を追うつもりだったのだが、 闇達が連れて行った3匹の馬以外の

馬は闇によって捌かれ馬刺しにされてしまったのだった。

よって剣聖達も走って後を追っている。

 

「役立たず共めぇえええええええええええええ!! あっ」

 

足にハンバーグが激突し骨が折れて倒れるウィンドゥ。

 

「・・・・・・・」

 

当然ながら倒れるウィンドゥ。

 

「俺の勝ちだな」

 

ハンバーグ達がウィンドゥを取り囲んで収束する。

このままではハンバーグによってミンチにされてしまう、 が。

ドゴォ!! とウィンドゥは地面を思い切り打ん殴り反動で飛び上がり空中に回避する。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

叫びながら空中からブタの男に向かって落下するウィンドゥ。

 

「く、 来るなら来い!! 返り討ちにしてやるううううううううう!!」

 

ウィンドゥに向かってハンバーグを射出するブタの男。

ウィンドゥは左手でガードしながらも落下、 左腕が捥げたがブタの男まで

目と鼻の先まで迫った。

 

その瞬間ウィンドゥの首が斬られた。

バリゾーゴンが横からでしゃばったのだ。

 

「お、 おい!! 横から手出すな!!」

「いや、 残念だが遊んでいる暇は無い様だ」

「どういう事だよ」

「人間がこっちに近付いている気配がする」

「何!?」

「コイツの仲間かもしれないって事だ、 如何する? 相手するか?」

 

バリゾーゴンが闇に尋ねる。

 

「相手をする? 何で?」

「何でって後を追いかけられたら面倒だろう」

「そうか? 相手する方が面倒だろう、 さっさと先に進むぞ」

「分かりました」

 

ブタの男が馬に乗ってその場から三人とも立ち去った。

剣聖達がウィンドゥの元にやって来たのは三人が立ち去った後であった。



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旅立ちの準備

八十八剣聖序列八十二位『ナイフ』のソーラはコルサント城下町にある自宅にて

旅立ちの準備をしていた。

 

「すまぬな、 ソーラ殿」

 

序列八十四位『熊手』のジェンパが礼を言う。

ソーラに準備の手伝いをして貰っているのだ。

八十八剣聖は下位と上位で扱いに差が有り、 下位に与えられる物も大した事は無い。

事実ソーラの自宅は普通の民家と大して変わり無い物である。

 

「構わないよジェンパ殿、 貴方は実家への仕送りが大変だろう」

「あぁ・・・八十八剣聖になれば安泰だと思っていたが

給金が一般将校と変わり無いとは・・・」

「うむ、 我々の事を軽く見ている証左だな、 許せん」

 

一般将校でもそれなりの給金を貰えるが、 ジェンパの実家は子沢山であり

かなり苦労しているのだ、 更に八十八剣聖だからと

立派な格好をする事を求められ、 出費もかさむのだ。

 

「これなら地元に居た方がマシだった」

「そういうな、 出世するのはこれからだ、 身勝手な行動だが

我々が手柄を立てれば陛下も認めざるを得ない」

 

コンコン、 と家の外からノックされる。

 

「・・・・・」

「誰でしょうか? ソーラ殿の知り合いでしょうか?」

「いや・・・俺を尋ねる者は宮廷からの者だろう・・・一応準備した物を隠して下さい

談笑していた事にしよう、 もしかしたら我々の行動がバレたのかもしれない」

「そうしましょうか」

 

準備していた物を隠しドアを開ける、 そこには帝国の伝令が居た。

 

「・・・如何した?」

「ハッ!! 陛下から出頭命令が来ています!!」

「出頭命令? 何故だ?」

「鶴帝国八十八剣聖序列九位『ガントレット』のウィンドゥ様が討たれたとの事です!!」

「「何だと!?」」

 

二人は驚いた、 『ガントレット』のウィンドゥは攻撃範囲がほぼ素手の時と変わらない事が

ネックだが彼の実力は非常に高い。

過去50年、 序列一位に留まっている伝説の剣聖『聖剣』ヨーダと

模擬線とは言え引き分けた事が有る。

 

「信じられない・・・」

「つきましてはウィンドゥ様の国葬の為に

八十八剣聖全員を招集せよとの陛下からの命です!!」

「分かった・・・参列しよう・・・しかしウィンドゥ殿は調査に向かった筈だ

その時に他の剣聖も同行していた筈・・・他の剣聖は如何したんだ?

彼等も死んだのか?」

「いえ、 彼等を置いて一人で先行して戦死したとの事です!!」

「そうか・・・彼らしいな・・・

分かった、 喪服を買い次第向かおう」

「分かりました!!」

 

ソーラとジェンパは一旦葬式用の喪服を購入してその足でコルサント城に向かったのだった。



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集結、鶴帝国八十八剣聖

ウィンドゥの葬式に鶴帝国八十八剣聖が集まって来た。

 

序列八十八位『含針』のアシュラ

序列八十七位『マカナ』のキアン

序列八十六位『アイスピック』のボビー

序列八十五位『契木』のパートラ

序列八十四位『熊手』のジェンパ

序列八十三位『ポールウェポン』のリーアム

序列八十二位『ナイフ』のソーラ

序列八十一位『短刀』のシャアク

序列八十位『鈎』のイーヴン

序列七十九位『棒』のジャージャー

序列七十八位『フィランギ』のサー

序列七十七位『石鏃』のセフジェット

序列七十六位『鐺ハ』のジョソール

序列七十五位『鎖』のニカナス

序列七十四位『布』のタスー

序列七十三位『ハルバード』のティン

序列七十二位『ジャガイモ』のスタ

序列七十一位『毒矢』のデン

序列七十位『銅矛』のイーキン

序列六十九位『メリケンサック』のネム

序列六十八位『狼筅』のパブロ

序列六十七位『義眼』のヴァーゲア

序列六十六位『兜』のオフィー

序列六十五位『バトル・フック』のジル

序列六十四位『木刀』のバルター

序列六十三位『釵』のバリス

序列六十二位『鏢』のブランド

序列六十一位『苦無』のスワン

序列六十位『ジャベリン』のゼンダー

序列五十九位『ブーメラン』のマキスシャラス

序列五十八位『鉄扇』のヘット

序列五十七位『鉤爪』のジャクジン

序列五十六位『月牙』のシャラド

序列五十五位『火炎瓶』のエンパトジェイオス

序列五十四位『人形』のカズダン

序列五十三位『モーニングスター』のコーラー

序列五十二位『大戦斧』のマーズ

序列五十一位『槍』のジュンダ

序列五十位『ヌンチャク』のゴム

序列四十九位『枝』のキュー

序列四十八位『鉄牙』のカル

序列四十七位『鉄球』のケスティス

序列四十六位『ソードブレイカー』のシア

序列四十五位『鋸』のマラ

序列四十四位『破城槌』のマー

序列四十三位『万力』のツッソ

序列四十二位『鋏』のマオタ

序列四十一位『ヌンチャク』の

序列四十位『チャクラム』のシスリン

序列三十九位『投石器』のタロン

序列三十八位『手裏剣』のジェレク

序列三十七位『手甲剣』のチャーフ

序列三十六位『トンファー』のチョイ

序列三十五位『分銅棒』のヴィン

序列三十四位『多節棍』のサラマンダー

序列三十三位『メイス』のツイ

序列三十二位『フレイル』のジェイス

序列三十一位『スリングショット』のフィストー

序列三十位『火矢』のベアドン

序列二十九位『ファルシオン』のルミナーラ

序列二十八位『カットラス』のエズラ

序列二十七位『レイピア』のアンドゥリ

序列二十六位『コラ』のブリッジャー

序列二十五位『ハンマー』のヴァレンサイン

序列二十四位『クロスボウ』のティプリー

序列二十三位『警棒』のファーファラ

序列二十二位『鎖分銅』のアルシス

序列二十一位『ホルカンカ』のベルス

序列二十位『大鎌』のタパル

序列十九位『脇差』のアディ

序列十八位『匕首』のイース

序列十七位『ランタン・シールド』のパーニカー

序列十六位『ピヌティ』のマー

序列十五位『斬馬刀』のジャロ

序列十四位『ヤタガン』のヌー

序列十三位『マチェテ』のジャラス

序列十二位『ウルミ』のケイナン

序列十一位『サーベル』のコールマン

序列十位『吹き矢』のジョカスタ

序列八位『斧』のプロ

序列七位『胡蝶刀』のアディ

序列六位『ケペシュ』のクワイ

序列五位『薙刀』のオポー

序列四位『大太刀』のオビワン

序列三位『魔法剣』のスタス

序列二位『盾』のヤレアル

序列一位『聖剣』のヨーダ

 

以上八十七名の剣聖が集まり喪に服した。



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出撃準備

葬儀も一段落して皆が帰ろうとした頃に事は起きた。

 

「お前達!! 何でウィンドゥさんを一人にしたんだ!!」

 

序列二十八位『カットラス』のエズラが

シャアク、 ティン、 コーラー、 フィストーを叱責する。

 

「エズラ、 気持ちは分かるがここは葬儀の場だ

静粛にしろ」

 

序列十三位『マチェテ』のジャラスが諫める。

 

「しかし!!」

「そうそう、 死者を弔う為には叱責よりも行動だろう」

 

序列二十位『大鎌』のタパルが言う。

 

「行動?」

「仇打ちだろう」

「その案に全面的に賛成いたします!!」

 

序列七十八位『フィランギ』のサーが声を上げる。

 

「是非ともその仇討ちには私をお使いください!!」

「いえ!! 是非とも私を!!」

 

下位の剣聖達がわいのわいの始める。

 

「やめないか騒々しい!!」

 

テタが諫めた。

剣聖達は一斉に跪いた。

 

「確かにウィンドゥを倒した者は気になるが

それに気を取られ過ぎて浮足立つのは良くない、 ヨーダ」

「はっ」

 

序列一位『聖剣』のヨーダがテタの傍による。

 

「ウィンドゥの仇討ちの為の部隊編成はお前に任せる」

「了解しました、 つきましては国軍を動かす許可を下さい」

「ふむ、 どの程度だ?」

「一個中隊を」

「なっ・・・それだけで立ち向かうと!?」

「良かろう」

 

ソーラの驚きの声を無視して話は進んだ。

 

「無謀です!! 剣聖でも無い者に戦えると」

「誰が戦わせると言った?

一個中隊を捜索に向かわせる、 そして」

 

剣聖達は一斉に戦慄した。

猛烈な殺気!! この小柄な老人であるヨーダから溢れ出る殺気!!

 

「見つけ次第、 ワシが叩っ斬る」

「それには賛同しかねますな」

 

序列五位『薙刀』のオポーが立ち上がる。

 

「ワシの作戦に異議が有ると?」

「怒って居るのは貴方だけではありませぬ」

 

ぴしり、 と殺気で窓ガラスに罅が入る。

 

「御言葉ですがヨーダ殿、 敵は3人との事、 私も同行しましょう」

 

序列六位『ケペシュ』のクワイも立ち上がる。

 

「剣聖上位陣が3人・・・相手が四天王でも充分に打ち勝てますな」

「あぁ・・・これは勝った・・・」

 

剣聖達が騒めく。

 

「良かろう、 ではヨーダ、 オポー、 クワイ

ウィンドゥを殺した者の首を取って来い!!

他の者達はここで待機せよ」

「「「了解いたしました!!」」」

「では者共解散!!」

 

剣聖達はその場を立ち去った。

 

「妙な事になりましたな、 ソーラ殿」

「そうだな、 ジェンパ殿、 如何する?」

「待機命令が出ている・・・ん?」

 

普段城下町に居ない剣聖達がテタに詰め寄る。

如何やら滞在場所の交渉らしい。

 

「連中は大変だな・・・」

「そうだな・・・」



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魔王城に向かう闇

闇達は馬を手に入れた事により機動力が増加したお陰でスムーズに進む事が出来た。

鶴帝国を出国してマナ法国を経由し魔王城が有る山に辿り着いたのだった。

 

「この山に魔王城が有るのか? 見た所なんだか平凡な山だが・・・」

 

ブタの男が指摘する通り、 険しい崖だとか厳しい山岳地帯が有る訳ではない。

緑が生い茂る普通の山である。

 

「元々は霊峰と呼ばれる険しい山々だったが代々の魔王の地下魔力資源の採掘で

普通の山になっていたらしい」

「地下魔力資源?」

「恐らくは龍脈とかそういう地面のパワーの事だろうな」

「その通りだ、 闇の親方、 そう言う事は知って居るんだな」

「あぁ闇寿司も色々勉強していかないとな」

「流石、 ここから先は俺が先導しよう、 色々な罠が仕掛けられている」

「なるほど、 任せたぞ」

「あぁ」

 

バリゾーゴンの先導で闇達は先に進んだ。

 

 

 

 

一方魔王城では。

 

「魔王様!! バリゾーゴン様、 いやバリゾーゴンが来ました!!

二人連れています!!」

「来たか!!」

 

伝令の報告に席を立つ魔王。

 

「如何します魔王様!? 敵は恐らく」

「狼狽えるな!! 来るのは予測が付いていた事!! 魔王城の機能を全開放する!!」

「魔王城の機能?」

「イイッパナシ!! ステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロック!!

マントラ!! アーマゲドン!! お前達は全軍で奴等を足止めせよ!!」

「足止め・・・ですか?」

「あぁ30分で良い、 時間を稼げ、 攻よりも守る事に重点を置け

兎に角時間を稼げ!! そして生き残れ!!」

「「「「了解しました!!」」」」

「それからもしも敗色濃厚になった際は部隊を引き連れて逃げろ」

「魔王様、 それは・・・」

「良いから聞け!! ここで魔族の灯を絶やす事が一番起きては行けない事だ!!

逃げ回ってでも良い!! 奴等人類よりも我々は寿命が長い!!

最悪の場合は寿命による死を待つ以外に無い!!」

「魔王様、 それは幾ら何でも臆病では?」

 

アーマゲドンが口にする。

 

「アーマゲドン、 貴様はこの中で一番若い、 だから無鉄砲な事を言うが

我々の双肩に魔族の未来がかかっているんだ、 無謀と勇気は違う

それを忘れるな」

「・・・はい」

 

イイッパナシ、 ステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロック

マントラ、 アーマゲドンはそれぞれ部隊を率いて魔王城の周囲に仕掛けられた罠の

内側に待機した、 闇と裏切り者バリゾーゴンを迎え撃つ為に・・・

果たして勝利の女神は何方に微笑むのだろうか?

それはまさに神のみぞ知る!!



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三昧

バリゾーゴンのお陰で罠を全て乗り越えられた闇一行。

 

「待て!! バリゾーゴン!!」

「むっ」

 

闇一行の前に現れたのはバリゾーゴンの兄、 マントラ。

 

「兄貴」

「良し、 殺すか」

「待て、 話をしよう」

「断る」

 

ハンバーグを射出する闇。

マントラはそのハンバーグを紙一重で回避した。

 

「これが噂の・・・」

「避けたつもりかよ」

 

回避したハンバーグがマントラを襲う。

マントラは空を飛びながら話を続けた。

 

「何故だバリゾーゴン!! 何故お前は」

「飛べ、 ハンバーグ」

 

ハンバーグが空を飛んだ。

マントラは辛うじてそれも回避する。

 

「あの・・・師匠、 話聞いてあげたら如何ですか?」

 

あまりの空気が読めない行動にブタの男も苦言を呈する。

 

「ふん、 奴は攻撃に移って来ない」

「はぁ・・・」

「つまりは時間稼ぎをしに来ているという事だ

付き合ってられん」

 

ハンバーグを乱射する闇。

大量に飛び交うハンバーグに激突するマントラ。

 

「マントラの旦那ああああああああああああああ!!」

「しゅるしゅる・・・我々も突撃しよう、 後に続けええええええええ!!」

 

イイッパナシとステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロックが

部下を引き連れて突撃する。

 

「私も行きます!!」

「アーマゲドンはマントラの旦那の手当てを!!」

「くっ・・・分かりました!!」

 

アーマゲドンはマントラを担いで下がる為に飛び上がった。

 

「ふん、 馬鹿め、 もう助からないぞ」

「師匠、 俺も」

「馬鹿、 俺一人で充分だ、 寿司の呼吸、 全集中の型【三昧】」

 

寿司に対しての行動力を上げる三昧を発動。

次の瞬間、 魔物達の群れに対して放たれるスシブレードの数々。

まるでスシブレードの津波、 否、 スシブレードの嵐である。

 

「ぐわああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「しゅるばかなああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

大量のスシブレードに貫かれ一瞬で分子レベルにまで分解される

イイッパナシとステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロック

そして追従して来た魔物達も・・・

 

「・・・・・・・・・・・」

 

飛び上がったアーマゲドンは無事であった、 しかし見た光景が現実か如何か分からない位に

今起きた出来事に対し混乱している。

 

「アーマゲドン・・・俺を置いて逃げろ・・・」

「くっ・・・馬鹿を言わないで下さい!!」

「・・・・・俺はもう助からない・・・」

「っ!! 生き残った全軍撤退せよ!!」

 

そう言い残してアーマゲドンはマントラと共に逃げ出した。



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秘中の秘

四天王とその軍勢を撃破した闇一行。

 

「ふむ・・・来ない様だな・・・まさかアレで全部だったのか?」

「だな・・・さっき倒した連中は四天王のイイッパナシ

ヨモヤマバナシの副官のステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロックと

サンテンリーダの副官のアーマゲドン

そして俺の兄であり怪我により一線を退いていたマントラ

名の有る魔族だ」

「何か一人だけ名前やけに長くね?」

「ステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロックの事か?

奴の家ではこういう長い名前を付けるのが普通らしい」

「親は何でステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロックなんて名前つけたんだろう」

「俺は親に感謝した事はなかったが

ステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロックなんて

名前を付けられなくて良かったな」

「寿限無よりはマシでしょう」

「それもそうだな」

「なんすか寿限無って」

「そういう話が有るんだよ、 馬鹿みたいに長ったらしい名前を付ける話」

「へぇ・・・」

 

そんな事を言いながら魔王城に辿り着いた。

魔王城は禍々しい姿だった。

血管の様な赤い線が城に張り付いている。

 

「薄気味が悪いな・・・」

「な、 何だこれは・・・」

 

バリゾーゴンが驚く。

 

「前はこんな風じゃなかった」

「つまり・・・何かしてくるって事か・・・とりあえず攻撃するか」

 

闇は空中に電気のレールを張り巡らせた。

寿司の呼吸・電気のネタ・ベルトコンベアである。

これで電磁誘導を行う事が出来る、 要するにレールガンと似た事が出来る。

ラーメンのストックが心配な状況で、 対物スシブレードにするのならばこれが一番である。

そして射出された鉄火巻きが城の一部を破壊した。

 

『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

アああああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああ!!!』

 

爆音の絶叫が響く。

 

「この声は・・・魔王!!」

「なるほど、 そう言う事か」

「どういう事ですか師匠!!」

「分からないか、 城を壊したら絶叫した、 つまり・・・

この城の中に魔王が居る!!」

『正解だけどそう言う事ではないいいいいいいいいいいいいいいい!!』

 

城がガタガタと揺れ動き直立した!!

まるで巨大ロボットが如く!!

 

『私はこの城と一体化したのだ!!』

「一体化だと!? そんな事が出来るなんて聞いて無いぞ!!」

『当たり前だ!! 秘中の秘だったからな!!』

 

バリゾーゴンに答える魔王。



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魔王の死

『城が壊れると痛覚が働くがそれも些細な事だ!!』

「城と融合したか・・・しかしそれは的を大きくしただけだぞ」

 

次々と電磁誘導された鉄火巻きが城を貫く。

 

『ぐわああああああああああああああああああああ!!!!

おのれえええええええええええええええええええええええええ!!!』

 

まるで手の様に伸びる尖塔!!

しかし無情にも尖塔は電磁誘導された鉄火巻きによって破壊される。

 

『くっそおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

こんな!! こんな所でええええええええええええええええ!!』

 

絶叫する魔王、 しかし尚も攻撃は止まない!!

 

「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

自ら生やした様な血管の様な管を引き千切りながら魔王は闇に突貫した!!

 

「ふん語るに落ちたな、 おい」

「はい」

 

ブタの男がハンバーグを射出する。

 

「ちぃ!! 私は直接相手にするまでも無いと!!?

侮るなよ異世界から来た勇者!! いや、 最早勇者とも呼べん化け物よ!!」

「闇のスシブレーダーだ」

「何だか知らんがその程度では落ちんわああああああああああああああああ!!」

 

ハンバーグを腕で払いのける、 払いのけた腕は砕ける。

それでも魔王は止まらない。

 

「見事、 せめて最後は俺の本気を見せてやろう」

 

ふ、 と周囲を闇が包んだ。

 

「なん・・・だ?」

 

いや闇では無いスシブレードの壁である。

そこから飛び交うスシブレード。

先程四天王とその軍勢を叩き潰したスシブレードの比では無い質と量。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

魔王は必死で迎撃を試みたが圧倒的なスシブレードの量に敗北し

骨は砕け足は折れ、 手が弾け飛び、 体が原子レベルで分解された。

 

「呆気ない最後だったな・・・」

 

闇がしみじみと言う。

 

「・・・・・・・ああああああああああああああああああ!!」

「おぉ!? 何だ急に大声出して如何した!?」

 

バリゾーゴンが叫ぶ。

 

「いや、 ちょっと首まで消しちゃっているじゃ無いですか!!」

「・・・・・それが何か問題でも?」

「いや、 魔王を殺したっていう証拠が無くなるじゃないか!!」

「・・・・・・・・?」

「別に殺した事を証明する必要は無いだろ、 邪魔になりそうだから消しに来ただけだし」

「いや、 そういう問題か!?

魔王を殺したって事を喧伝すれば世界征服も容易に出来るだろう!!」

「うーん・・・とりあえず帰ってから考えるか」

「そうですね・・・」

 

闇達は魔王を倒し帰還する事にしたのだった。



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マントラの死

時間は前後してアーマゲドンはマントラの治療の為に戦線離脱し

生き残り部隊と合流してマントラの治療を試みていた。

 

「ぐは・・・はぁ・・・」

「くっ、 マントラ様、 しっかり!! しっかりして下さい!!」

「はぁ・・・はぁ・・・」

「医療班!! 医療班は居ないか!!」

「アーマゲドン様・・・医療班は逃げ遅れて・・・」

「なん・・・だと・・・治癒魔法が使える者は居ないのか!?」

「・・・・・」

 

目を伏せる兵卒。

そして感じる魔力の消失

 

「今の・・・魔力の消失は!!」

「・・・・・魔王様が・・・亡くなったか・・・」

「ま、 魔王様が・・・」

「嘘だろ・・・」

 

絶望する魔族達。

 

「狼狽えるな!! 今はマントラ様のお体を!!」

「いや・・・げほ、 もう良い・・・」

 

血を吐くマントラ。

 

「し、 しかし!!」

「治療に必要な物資も、 治癒魔法が使える魔物も居ない・・・

私はここで死んでいこう、 置いて行け」

「そんな事出来る訳無いじゃ無いですか!!」

 

涙を流しながらマントラに縋るアーマゲドン。

 

「アーマゲドンよ・・・これからはお前が魔族達を纏め上げるのだ」

「そ」

「やるんだ!! がふ」

 

血を吐くマントラ。

 

「マンt」

「ここで今、 お前がやらなければ魔族に未来は無い!!

やるしかないんだ・・・」

 

急に目が映ろになるマントラ。

 

「私も先に行く・・・すまないな・・・こんな無茶を言って・・・」

「マントラ・・・様・・・」

 

がくりとするマントラ。

 

「畜生・・・ちくしょおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

マントラの死体を抱えて叫ぶアーマゲドン。

 

「アーマゲドン様・・・御指示を」

「・・・」

 

アーマゲドンは立ち上がる。

 

「スコップを」

「え?」

「せめて弔ってから行く」

「は、 はい!!」

 

穴を掘りマントラを埋葬するアーマゲドン。

 

「この恨みは必ず晴らす、 マントラ様

貴方の仇に打って見せます」

 

黙祷して立ち上がるアーマゲドン。

 

「それでアーマゲドン様・・・一体何処に御逃げになるつもりですか?」

 

兵卒が尋ねる。

 

「まずは戦闘員と非戦闘員を集めよ、 非戦闘員は飛行城と海底城にそれぞれ避難

我々は潜伏を開始する」

 

騒めく兵達。

 

「御言葉ですが何故その様な事を・・・」

「我々戦闘員はこのまま人類の傍で雌伏の時を過ごす

その間非戦闘員は我々が全滅した際に魔族の存在を絶やさぬ様に隔離する」

「なるほど・・・」

 

アーマゲドンが進む。

 

「覚えて居ろ、 裏切り者のバリゾーゴンと異世界の人間よ

必ずこのアーマゲドンが首を落してやる」

 

アーマゲドンは前に進んだのだった。



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第三章:進撃の闇
オープニング・クロール


魔王を殺害する事に成功した"闇"とブタの男とバリゾーゴンは

シャリ王国へと帰還を始めた。

道中に闇のスシブレーダーに慣れる様な人材を探しつつの旅路だった為

余り急いではいなかった、 急いで帰る事も無かったので

ゆったりのんびりと人々の目を気にしながら先に進んだのだった。

 

鶴帝国では鶴帝国八十八剣聖の序列一位『聖剣』のヨーダ

序列五位『薙刀』のオポー、 序列六位『ケペシュ』のクワイが主導し

ウィンドゥ殺害の犯人を捜している。

ウィンドゥが殺害された事により鶴帝国に緊張が高まった。

事態を重く見たテタは自分の周囲に八十八剣聖を待機させたが

普段コルサント城下町に居ない八十八剣聖達は無用な出費が増えて不満が噴出。

彼等の保障をする為に下位の八十八剣聖の給金を下げる事になり

更に不満が噴出し、 金に困った八十八剣聖の中では勝手な行動を取る者が続出。

領地内での勝手な税の取り立て、 他国への密通や亡命

挙句の果てには盗賊紛いな事を始める者まで現れ軽いパニックも置き始めていた。

序列七十六位『鐺ハ』のジョソール、 序列七十二位『ジャガイモ』のスタ

序列六十八位『狼筅』のパブロ、 序列六十七位『義眼』のヴァーゲア

序列四十三位『万力』のツッソ、 序列三十位『火矢』のベアドン

序列二十九位『ファルシオン』のルミナーラ、 序列二十八位『カットラス』のエズラ

序列二十七位『レイピア』のアンドゥリ、 序列二十一位『ホルカンカ』のベルス

序列十九位『脇差』のアディ、 序列十八位『匕首』のイース、 以上十二名は

この事態に対して鶴帝国に幻滅し鶴帝国から立ち去ったのだった。

彼等は『失われた十二人』と呼ばれる様になった。

そして序列八十八位『含針』のアシュラ、 序列八十七位『マカナ』のキアン

序列八十六位『アイスピック』のボビー、 序列八十五位『契木』のパートラ

序列八十四位『熊手』のジェンパ、 序列八十三位『ポールウェポン』のリーアム

序列八十二位『ナイフ』のソーラの七人は前々から計画していた

シャリ王国への潜入を開始したのだった。

 

一方のシャリ王国ではスシブレードの普及により

スシブレードの軍団を構築する事に成功した、 しかしながら急造のスシブレーダーは

スシブレードが破壊されると爆発してしまうと言う従来のスシブレーダーなら

持ち合わせていない重大な欠陥を持っていた。

これに危惧したシャリーダ13世は更なる人材発掘の為に

シャリ王国全土に調査網を張り巡らせ、 より良い人材を探し回っているのだった。

 

果たしてこれから一体どうなるのだろうか、 それはまだ分からない・・・



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新しい仲間・その1

闇達はシャリ王国へ帰還する為にマナ法国から鶴帝国に入った。

しかしウィンドゥを殺した犯人捜索から逃れる為に人目を避ける必要が有った。

その為、 森の中等人が立ち寄らない場所を移動する事になった。

 

「師匠だったら連中をぶっ倒せるんじゃないんですか?」

「流石に面倒だ」

「そうですか・・・」

 

そんな感じで森の中を歩いていると一匹の獣に出くわした。

牙が物凄い長い虎である。

 

「あー・・・何だっけコレ?」

「サーベルタイガーですね、 ファンタジーだと思ったら古代生物も出て来るとは・・・」

 

サーベルタイガーとは漸新世後期から更新世にかけて栄えたネコ科に属する食肉獣の中で

上顎犬歯がサーベル状となったグループである。

マカイロドゥス亜科として分類される。

 

「肉食獣は不味いんだよなぁ・・・」

「あ、 逃げて行った」

「そりゃあ俺が居るからな」

 

ドヤ顔をするバリゾーゴン、 野生動物だから危険度が分かり易いんだろうか?

しかし短い獣の叫び声が聞こえた。

如何やら逃げた先でサーベルタイガーが襲われた様だ。

 

「・・・誰か来る様だな」

 

がさり・・・がさりと音がする。

人影が見える。

 

「び・・・・・び・・・・」

 

妙な声も聞こえる。

 

「攻撃してみますか?」

「いや、 ちょっと待て、 何だか面白そうな奴だ、 興味が有る」

「面白そうか?」

 

闇達の前に現れたのは頭の無い男だった。

 

「頭が無いのか・・・一周廻って凄い個性の奴だな」

「デュラハンか・・・」

「何だそれ?」

「首無し騎士だ」

「首・・・首・・・俺の首・・・」

「ん・・・しょうがないな・・・」

 

闇は次元間スシフィールドからマグロの頭をデュラハンに乗せる。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・???」

 

デュラハンは明らかに困惑している。

 

「これ・・・俺の首じゃない・・・」

「だがそれは上物のマグロだ」

「上物のマグロ・・・俺の首じゃない」

「おいおい、 冷静になって考えて見ろ、 お前は何で首を失くしたんだ?」

「・・・・・サーベルタイガーに落とされた・・・」

「そうだろ? つまりお前が弱かったからサーベルタイガーに首を落された

つまりお前の首は弱かったって事だ、 ならばもっとより良い首として

そのマグロのお頭を付けて見るのが良いだろう」

「でも・・・俺の首・・・」

「良いか? お前の首の為にお前が居るんじゃない

首はあくまでもお前の付属品なんだ、 だからそれでも問題無い

寧ろお前は強くなっているんだ」

「・・・・・そ、 そうなのか?」

「そうだ、 だからお前はそれで良いんだ」

「お、 おう・・・」

 

画してデュラハンが仲間になった。



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新しい仲間・その2

デュラハンを仲間にした闇一行は再びシャリ王国へ戻る為に歩みを進めた。

 

「何だこの集団、 魔族に闇のスシブレーダーに

マグロを頭にしたデュラハンって傍目から見ても可笑しいだろ」

 

デュラハンが明らかに知性が上がっている、 恐らくマグロに含まれるDHAの効果だろう。

 

「思ったより賢いなぁ・・・」

「休んでいる時にスシブレード教えたら凄い上達してて吃驚」

「バリゾーゴンよりも上だ」

「マジでぇ・・・?」

 

バリゾーゴンが涙目になる。

 

「お前も頑張れ」

「はい、 精進します・・・」

 

再び歩き始める一行。

 

「そう言えば首無し、 お前は何でこんな森に居たんだ?」

「あぁ、 実は頭の可笑しい変人が家畜を盗んでこの森に来たらしいから

そいつを捕まえに来たんだ」

「そうか・・・」

 

がさり、 と音がする、 闇達が目を向けるとそこには目がイっている男が立っていた。

手にはのみと首の無い鶏が握られていた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

明らかに異常な目つきでこちらを見るヤバイ男。

 

「お前が噂の変質者か?」

「誰が変質者だ!! 彫刻家だ!!」

「彫刻家? 百歩譲っても家畜泥棒だろ?」

「違うんだよ!! 私が作品の為の躍動感が欲しいから家畜を殺させてくれって頼み込んだら

打ん殴られたから仕方なく家畜を盗んだんだよ!!」

「結局家畜泥棒じゃないか」

「つうか作品って何だ?」

「良く聞いてくれた!! 私はシーリンと言う彫刻家でな

躍動感を持った彫刻を作っている

代表作は『大英雄セバン・ヴィーカンに

ステップ・オーバー・トウ・ホールド・ウィズ・フェイス・ロックを決められる

サンド・アクア・モンスター』」

「全く想像がつかねぇ」

「皇帝に献上したら即破壊された」

「だろうな」

「躍動感が有ったから破壊されたのは良いとして」

「良いのか!?」

 

シーリンに翻弄される一行。

 

「私は作品に躍動感が欲しい!! 故に躍動的な動物を題材にしている」

「ふっ、 甘いな」

「何ィ?」

「お前の作品は彫刻だろ? 彫刻は実際には動かない」

「!!」

 

闇が論破する。

 

「じゃ、 じゃあ実際に動く彫刻を作れと言うのか?」

「ふむ、 俺は芸術には疎いがこれを見て見ろ」

 

ハンバーグを射出する闇。

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

凄い!! 凄い躍動感だ!!」

「実際に動いているからな」

「何という事だ!! これは一体どうなっているんだ!?」

「これはスシブレードと言って・・・」

 

シーリンにスシブレードを解説する闇。

 

「おぉおおおおおおお!! すげえええええええ!!」

 

まるで子供の様にはしゃぐシーリン。

画してシーリンが仲間に加わった。



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帰国

闇達はシャリ王国まで戻って来る事が出来た。

首都コメドコロのコメドコロセンターで待っていたシャリーラ13世に出迎えられた。

 

「おかえりなさい親方、 そっちの珍妙な二人は?」

「ここに来る途中で見つけた新人だ、 そっちの首尾は如何だ?」

「実はそれについて相談が有りまして・・・」

「うん?」

 

シャリーラ13世は急造のスシブレーダー軍団を見せた。

 

「おー、 中々に立派じゃないか専用の鎧とか」

「コスト面を考えた軽装ですが・・・問題が有りまして・・・」

「問題?」

「スシブレードが破壊されると本人も爆発するんです」

「なんだそりゃ・・・」

 

頭を抱える闇。

 

「こんな事ってあるんですか?」

「いや・・・そもそもこうして大勢のスシブレーダーを作ると言うのが

無理が有ったのか・・・うーん・・・まともなスシブレーダーは居ないのか?」

「えぇ、 一応多少は居るのですが・・・数が少なくて・・・」

「マジかー・・・如何します師匠」

 

ブタの男が尋ねる。

 

「仕方が無い、 この国から適性の有る者を探し出そう」

「探し出すってそんな事出来るんですか?」

「おいおい、 俺がお前を偶然見つけ出せたと思っているのか?

日本国内1億越えの日本国民から偶々お前を見つけ出せる

そんな偶然が有るとでも?」

 

ブタの男の言葉ににやり、 と笑いながら返す闇。

 

「つ、 つまり師匠は闇のスシブレーダーの素質が有る者を探し出せるという事ですか?」

「いや、 地道に足を使っての調査が得意だ」

 

ヽ(・ω・)/ズコーとなる一同。

 

「もっと・・・なんか闇の気配とか・・・そんなんで探せるんじゃないかと・・・」

「何だ気配って? 漫画の読み過ぎだ」

「兎も角見つけ出せるのならばお任せしてもよろしいでしょうか?」

「そうだな、 この首無し、 芸術家、 悪魔にも稽古を付けなきゃならないから

それなりに時間がかかりそうだ」

「おっしゃ!! がんばるぞー」

「芸術的なスシブレードを作る」

「俺もかー・・・」

 

三者三様のリアクションを取る。

 

「それならば親方、 一人推薦したい者が居ます」

 

シャリーラ13世は提言した。

 

「推薦? ・・・誰だ?」

「私がヴィネガーの影武者として王立学園に通っていた時に

少々気の触れた事を言う娘が居たのです、 その娘は自分が異世界から転生して来たとか

言っておりまして、 事実ならば中々面白いのでは?」

「異世界転生と言う奴か・・・面白いんじゃないですか師匠?」

「ふん、 異世界転生とか良く分からんが、 まぁ会って見るのも良いか

そいつは今何処に?」

「まだ学生ですので学園にいるかと・・・」

「ふぅん・・・」



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新しい仲間・その3

王立学園に向かった闇。

他のメンバーはコメドコロ・センターに置いて来た。

 

「ようこそ、 話は伺っております

私王立学園のヒューヤングと申します」

 

王立学園に付くと教師が一人現れた。

 

「今日は生徒に面会したいとの事で私が案内を務めます」

「あぁ・・・しかし・・・ここは本当に学校か?」

「はい、 お気持ちは分かります」

 

学園内は閑散としており、 教師は愚か、 生徒の姿が殆ど見えない。

 

「殆どの生徒と教師は学園から去ってしまいました」

「何故だ?」

「それが・・・その・・・」

 

汗を流すヒューヤング。

 

「如何した?」

「いや・・・何と言いますか・・・」

「王国の方針転換の影響ですよ」

 

コツコツ、 とやって来る女学生。

 

「お前は?」

「初めまして、 噂のアソウ・タノです」

 

女学生服のスカートを摘まんで御辞儀をする。

 

「ふむ、 お前か、 方針転換の影響と言うとどういう事だ」

「貴族の間ではスシブレードに対する対応策で真っ二つに分かれています

スシブレードを認めるか否か、 乗っかるかの歯向かうか」

「なるほど、 座って話すか」

「でしたらカフェテラスにでも」

 

学園内にはカフェテラスを始めとした食堂が有った。

アソウはカフェオレを、 闇は何も頼まなかった。

ヒューヤングは帰った。

 

「まずこの学園の貴族達は既存権益を守る為に反スシブレードの立場を取る者が多いですね

そういう人達は姉妹校の騎士学園に向かったらしいです

スシブレードに恭順する者はスシブレーダーになりましたが」

「根性が有る奴だな」

「そうですね、 体制に歯向かうなんて馬鹿らしい」

「いや、 お前の事だよ、 言い難い事をズケズケと言う」

「ヴィネガー殿下、 じゃなかったシャリーラ陛下から聞いてません?

私、 異世界から転生して来たんですよ」

「それは聞いた、 中々に面白い経歴だ、 好きな寿司ネタは?」

「炙りサーモン」

「好きな食べ物は?」

「鳥の軟骨揚げですかね、 最近食べてないけど」

「では鳥の軟骨揚げはスシか?」

「回転寿司では流れて来ますかね」

「良し、 お前、 闇のスシブレーダーになれ」

「えぇ・・・何ですか唐突に・・・」

「お前には素質が有る」

「うーん・・・それなりの立ち位置が得られるならば・・・」

「甘ったれるな、 勝ち取れ」

「えぇ・・・」

 

画してアソウ・タノが仲間に加わった、 と言って良いのだろうか?

 

「所でお前は何故学園に居たんだ?」

「前世での知識を如何にか活かしたい・・・しかし

如何にも活かせる機会が無く、 気を伺っていたら出遅れてしまい・・・」

「駄目じゃねぇか・・・」



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ある女学生の告白

闇はアソウに軽い勲等を施した。

鳥の軟骨揚げは彼女と親和性が高いらしく少し鍛えればかなりの強者になるだろうと推測した。

上機嫌に闇が帰ろうとすると闇の前に一人の女生徒が現れた。

制服が違うのでこの学園の生徒では無いという事は一目でわかった。

 

「誰だお前」

「すみません、 何処かでお話しできないでしょうか?」

「良いだろう」

 

空き教室の一つに入る女生徒と闇。

 

「それで何の用だ?」

「私は騎士学園で生徒会書記をしているレイン・ザナーと言います

親は」

「親の事とか家の事とか知らん、 何の用件だ」

「えぇ・・・御存じの通り騎士学園は現在反スシブレード思想の者達が

反攻作戦を目論んでおり彼等の拠点となっております」

「それは初耳だな」

「そうですか・・・こちらは色々調べさせて頂きました

貴方が闇のスシブレーダーの首魁と言う事も」

「そうか、 最初の話に戻るが俺に何の用件だ?」

「貴方に恭順の意を示したい、 貴方にスシブレードの力を貰って

騎士学園を陥落のお手伝いをしたい

その代わりに騎士学園の生徒会長のネビットの助命をお願いしたい」

「話が見えないな、 どういう事だ?」

「私はネビットを愛しています

しかしネビットは色々背負い込むタイプの人間なのです

ネビットはそんなシャリーラ13世陛下のやり方に反発し

意志を同じくする貴族達を纏め上げて反攻作戦を目論んでいます

貴族達を抱え込むのは余りにも負担が大きい

そしてスシブレーダー達と戦えば被害も出て来る

彼女も死んでしまうかもしれない」

「彼女?」

「ネビットの事です」

「ネビットは女なのか」

「女なのに女を好きになる事を気持ち悪く感じますか?」

「知らん、 好きならば女でも犬でも猫でも好きにしろ」

「ありがとうございます、 私も今まで誰にも打ち明けられなかったので」

「誰にも打ち明けられない事を有って数分の奴に良く言ったな」

「ハッキリさせる必要があると思いました

隠し事をして貴方の不評を買いたく無いので」

「素直だなぁ、 好印象だ」

「話を戻して彼女は反攻作戦を目論んでいます

ネビットに負担がかかり、 ネビットに命の危険が有ります

だからとっととその反攻作戦を潰してネビットを救わなければなりません」

「だがそのネビットちゃんに嫌われたら元も子もないぞ? 大丈夫か?」

「何を言っているんですか、 私はネビットの為に行動するんです

それでネビットに嫌われる訳が無いじゃ無いですか」

「・・・・・そうか、 まぁ俺は闇のスシブレーダーが増える事に異論はねぇよ」

「良かったぁ・・・」

 

ホッとするレインだった。



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強い光は闇も強い

レイン・ザナーに薫陶を授けた後、 闇はコメドコロ・センターに戻り

シャリーラ13世に事の次第を伝えた。

 

後日、 騎士学園にスシブレーダーの軍団が襲来。

騎士学園に居た騎士学園の生徒、 及び騎士学園で反攻作戦に協力的な貴族及び

王立学園から協力に来た生徒達は成す術も無く全滅させられた。

 

レイン・ザナーが揉め事を起こして予め戦力を削いだり混乱させていた影響である。

闇は約束通りネビットをレインに渡し、 ネビットは「地獄に堕ちろ」とレインに言った。

 

「残念でも無いし当然だな」

「そうだよな、 俺だったら打っ殺すレベルだ」

 

闇とブタの男が談笑していた。

 

「しかし集めて来た連中、 良い感じに強くなって来ているな

スシの暗黒卿レベルだ」

「才能ある奴は羨ましいですねぇ・・・」

「お前は才能無いが闇が凄いからな」

「ハイ、 精進します」

「それじゃあ俺も勧誘活動をするから、 この城は任せた」

「任されました、 けども勧誘って当ては有るんですか?」

「あぁ、 この国の教会って連中が居るらしいからそいつ等の所に行こうと思う」

「教会・・・ですか?」

「あぁ、 ガ・ガって知ってるか? スシの暗黒卿だった奴なんだが」

「知らないですね、 どんな人です?」

「大昔に異端扱いされて偉い目に遭って

闇のスシブレーダーになった奴だ、 宗教の弾圧はえげつないからな

弾圧を強めれば反動が来ると言う事だ」

「なるほど、 確かに・・・」

「と、 いう訳で教会に行って来るから後は任せた」

「急ですね・・・任されました」

 

闇はスタスタと去って行った。

そして城門から出る。

 

「あ!! 親方!! 出かけるんでしたら馬車を・・・」

「要らん、 歩いている時にバッタリ闇のスシブレーダーの素養が

有る奴が見つかるかもしれない」

 

シャリーラ13世が声をかけるも無視する闇。

 

「闇のスシブレーダーの素質が有る者が見つかるかもしれないけれど

敵にも出会うかもしれないじゃないか・・・」

 

シャリーラ13世がぽつりと呟く。

 

「師匠なら大丈夫だろう」

「兄弟子」

 

ブタの男がポンとシャリーラ13世の肩を叩く。

 

「うーむ・・・不安だ」

「師匠で対処出来ない奴が襲ってきたら俺達でも対処出来る訳ないじゃないか」

「それもそうですが・・・」

「陛下!!」

 

伝令が二人の傍にやって来る。

 

「如何した?」

「鶴帝国から我が国に何者かが入り込んだ模様です!!」

「大国だからと調子に乗りやがって・・・皆殺しにしてやる

飛空船を準備しろ」

「は!!」

 

伝令が去って行った。

 

「飛空船・・・空飛ぶ船か?」

「えぇ、 ちょっと皆殺しにして来ます」



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ヴォルフガング、悩みを打ち明ける

闇が一人で教会に向かい知らない街並みを進んでいると

一人の男がとぼとぼと歩いているのを見かけた。

身形の良い服装だが妙に肉付きが悪い、 そしてまるで世界の終わりの様な顔をしている。

闇は声をかけた。

 

「よぉ」

「・・・・・? 誰ですか?」

「通りすがりの者だ、 見た所、 アンタ相当ヤバいな」

「・・・・・ほっといて下さい」

「いやいや、 アンタみたいな奴をほっとける程、 俺はお人好しじゃない」

「・・・むしろ構う方がお人好しじゃあ・・・?」

 

闇のスシブレーダーになるかもしれない相手を捨て置く方がお人好しだ。

と闇は心の中で呟いた。

 

「まぁまぁ奢るから、 どっかで吐き出そうぜ?」

「・・・・・金なら有りますよ、 僕が持ちます」

「あらそう? じゃあ奢られよう」

 

二人は酒場に向かった。

酒場の者達は二人を見たが直ぐにそそくさと立ち去った。

 

「アンタ有名人なのか? アンタを見るなり皆どっか行ったが・・・」

「・・・僕はアナキン・ヴォルフガングと言います」

「ふぅん、 有名な人?」

「ヴォルフガング家、 知りませんか? 貴族の家なんですが・・・」

「そうか、 糞みてぇな家だな」

「・・・何故?」

「いやぁこんな顔して歩かせる様な目に遭わせる家なんて禄でも無いだろ」

「いや・・・家は関係無いんですよ・・・」

「どういう事だ?」

「実は・・・僕には恋人、 が居たんですよ」

「過去形?」

「実は・・・何時の間にか居なくなっていたんですよ」

「ふむ、 中々深そうな話だ続けてくれ」

「はい・・・僕はつい最近まで平民をしていました

ですがヴォルフガング家の隠し子だったんです

それでヴォルフガング家に見つかり連れていかれたんです

その際に恋人と離れ離れになってしまった・・・」

「何という外道だ、 ウォルフガング家」

「彼は直ぐに戻るつもりだったんですが・・・引き留められてしまって・・・

やっとの事、 今日戻って来たんですが・・・彼女は既に何処かに行ってしまって・・・」

「うん? 何処かに行ってしまった? 何処に行ったんだ?」

「それが・・・分からないんです・・・彼女の近所の人達は遠くに行ったとした・・・

必ず戻ると彼女に言ったのに・・・彼女は・・・」

 

涙を流すウォルフガング。

 

「それならばいい方法が有るぜ」

「良い方法? 何ですか? 良い方法って・・・」

「彼女の居場所、 知りたいんだろ? 知る方法は有るぞ」

「・・・・・でも・・・知った所で・・・」

「知った所で行くか如何かはまた後で考えれば良いだろう?

知って、 その女が幸せに暮らしているか確認して

会うか如何か決めれば良い」

「・・・・・その方法を教えて下さい」

「良いぜぇ・・・」

 

闇はにやりと笑った。



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ヴォルフガングの選択

「それで・・・えーっと・・・お名前は?」

「闇と呼んでくれ、 ヴォルフガング、 まずはその彼女さんの近所の人の所迄案内してくれ」

「構いませんが・・・」

「あ、 その人の家族構成は? どんな人?」

「普通のおばさんで一人暮らしですが・・・」

「よし、 なら問題無いな」

 

ヴォルフガングが闇を恋人の近所の人の家まで案内した。

闇は家のドアをノックした。

 

「はい、 どちらさ」

 

がっ!! と闇はドアの隙間に足を差し込んで閉められなくして無理矢理中に侵入して来た。

 

「ちょ、 何やってるんですか闇さん!!」

 

ヴォルフガングも後に続いた。

 

「落ち着けヴォルフガング

こうやって話し合いの場に持ち込むには家の中に入るのが一番だ」

 

そう言って闇は椅子に座った。

 

「な、 何よアンタ・・・ってアナキン!?

さっきも言ったけど私にも生活が」

「落ち着けよ、 アンタコイツの恋人の居場所知ってるんだろ? 吐け」

「いや・・・さっきも言ったけどアナキン、 パドメは」

「パドメ?」

「僕の恋人です」

「パドメはもう他の男と出て行ったのよ・・・」

「ふぅん、 じゃあ何処に行ったか教えて貰えるか?」

「いや、 人の話聞いてる? パドメは男と出て行ったのよ・・・居場所は分からない」

「居場所が分からないなんて事有るか? 近所の人にも知らせずに出かけるとは思えないが?」

「いや・・・それは・・・私にも分からない

でもアナキンは貴族の人との縁談が有るじゃない」

「そんな物僕には要らない!!」

 

闇は椅子から立ち上がった。

そしてハンバーグをおばさんの足に撃った。

 

「え」

 

当然ながらおばさんの足は折れて倒れ込んだ。

 

「叫んだら殺す」

「え、 え?」

「これから5秒ごとに体の部位を破壊していく」

「え、 え、 え?」

「喋りたくなったら言え」

「ちょ、 ちょっと闇さん!! これは余りにも・・・!!」

 

ヴォルフガングが止めようとする。

 

「じゃあお前はこのまま恋人と何も言わずに別れて良いのか?

お前は恋人を大事に思っていたんだろう? 恋人を他の男に取られて良いのか?

取られたとしてもこのまま擦れ違いで終わって良いのか?」

「・・・・・!!」

「まぁ良いだろう、 これは俺のお節介だ

お前が如何するか決めて良いぞ」

「・・・・・・・・・・・・おばさん、 パドメの居場所を教えて下さい」

「・・・・・・・・・・・それは・・・」

「5」

「・・・・・・・ひいい!! 言えない!! ヴォルフガング家の人達に口止めされてるの!!」

 

おばさんが泣きながら失禁して叫んだ。

 

「どういう事ですか・・・?」

 

ヴォルフガングがおばさんに詰め寄った。



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ヴォルフガングの夜明け

「じ、 実は・・・パドメはアンタと別れた後に死んだのよ・・・」

「は?」

 

おばさんに詰め寄るヴォルフガング。

 

「続けろ」

「ぱ、 パドメはヴォルフガング家から帰って来ないアンタを心配して

ヴォルフガング家に言ったんだけど門前払いされて・・・

それから泣きはらして体を壊して死んじゃった・・・」

「・・・・・それで、 おばさん、 アンタは何か?

パドメが死ぬのを黙って見ていたと?」

「勘弁してよ・・・何かしてヴォルフガング家の気に障ったら私の生活が成り立たない・・・

それにパドメが死んだ後にヴォルフガング家の使いが

パドメが死んだ事を隠して遠くに行った事にしろって・・・そうしないと色々不利益が・・・」

「・・・・・闇さん、 さっきの奴、 貸してくれませんか?」

「おう、 良いぞ、 これをこうこうこうすると射出出来る」

「ありがとうございます」

 

そう言ってハンバーグを受取るヴォルフガング。

そしておばさんの頭に向かってハンバーグを突きつけるヴォルフガング。

 

「あ、 アナキン・・・ちょ、 ちょっと待って・・・?」

「僕がアンタの言葉を信じて彼女に裏切られたと思い込まされたまま

一生を送る羽目になったかもしれないと思うと虫唾が奔る

いやアンタだけじゃない、 この周囲の連中も同罪か」

「ま、 待って!!」

「安心しろ、 アンタの次は近所の連中全員皆殺しにしてやる」

 

そう言ってハンバーグをおばさんの頭部に射出しておばさんの首の骨を折ったヴォルフガング。

 

「・・・・・・・・・・」

 

ヴォルフガングは家から出た、 闇もその後を付いて行った。

ヴォルフガングは次々と周囲の家々を回りハンバーグによる虐殺を繰り広げた。

朝になる頃には街は静かになっていた。

 

「俺の見込み通り、 凄まじい闇の持ち主だ・・・

じゃあヴォルフガング、 次はお前のご自宅の連中か」

「あぁ、 連中の骨を砕いてこの世の苦しみを味あわせてやる・・・」

「ならばハンバーグよりも良いネタが有るぞ」

 

次元間スシフィールドからバラムツを取り出す闇。

 

「それは?」

「こいつはバラムツと言う、 こいつを多量に食べるとバラムツに含まれる成分を

人間が消化できずにケツから油が漏れ出る、 つまり強制おもらしのスシって事だな

コイツで汚辱の限りを尽くしてやれ」

「・・・・・」

 

ヴォルフガングがバラムツを手に取った、 そして回す。

 

「おぉ・・・何かしっくりくるじゃないか・・・ふふふふふふふ

あははあはははっはははははははははは」

 

ヴォルフガングの狂った笑い声が静寂の街を包んだ。



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スシの暗黒卿VS剣聖 part3

ハンバーグの制御を奪って高速移動をするヨーダ。

 

「アレはお前達じゃどうにもならない、 下がってな」

 

蓮華とラーメンを用意する闇。

 

「分かりました、 師匠お気をつけて!!」

「死ぬなよ」

「要らぬ心配だ」

 

ブタの男達は下がった。

 

「・・・・・一対一ならばワシに分が有る!!」

 

ヨーダが叫んだ、 怪しい台詞だった。

寧ろ自分に言い聞かせている様な悲痛な叫びだったとも言える。

 

「言ってろ爺」

 

ラーメンを射出する闇。

超威力のラーメンを回避するヨーダだったがラーメンはハンバーグを追尾する。

 

「くっ、 何という圧!!」

「ほら、 まだまだ行くぞ」

 

ラーメンを次々と射出する。

追尾するラーメンも有れば乱反射してまるでピンボールの様に跳ねまわるラーメンも有る。

 

「くっ・・・そ!!」

 

もしもヨーダがスシブレーダーだったのならば闇を倒せたかもしれない

しかし彼は剣聖である、 スシブレーダーでは無い。

だが忘れてはならないのは彼は鶴帝国八十八剣聖一位『聖剣』のヨーダ。

つまり並の剣聖では無い!!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

身を低くしながらヨーダが闇に突貫する。

 

「来い!! 俺のラーメンの力を思い知らせてやる!!」

「ワシの聖剣の力こそ知るが良いワアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

ヨーダが剣を振り下ろし、 闇がラーメンで迎撃する。

剣とラーメンが激突する、 ラーメン回転しながら剣とぶつかり合い火花を散らす。

 

「くっ、 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

闇が闇の力を籠める、 更にラーメンが回転を全マシ状態になり威力が更に増す。

その威力軽く数倍を超える。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

聖剣に罅が入り、 ラーメンが聖剣を砕く。

そしてヨーダの体を上下に真っ二つに貫く。

 

「ば、 馬鹿な・・・」

「危なかったぞ・・・もしもお前がスシブレーダーなら

倒れていたのは俺だったかもしれない・・・」

 

戦慄する闇だったが勝者は闇である。

 

「・・・るな」

「あん? 何だって爺さん?」

「・・・剣聖を舐めるな」

 

上下に千切れた体の上半身で飛び上がり砕けた聖剣で斬りかかるヨーダ。

しかし闇はラーメンを操作して四方八方からヨーダを貫いて殺害したのだった。

 

「さてと・・・おい!! 終わったぞ!!」

 

外で待っているブタの男達に声掛けをする闇。

そしてコルサント城内に入って行くのだった。



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ヴォルフガング家の将来

闇とは一旦別れたヴォルフガングはヴォルフガング家の邸宅に着くと

使用人全員に無理矢理バラムツを食べさせて腹痛で脱糞させ拘束した。

次に自分の父親で有るヴォルフガング氏の元にやって来た。

ヴォルフガング氏の部屋では生き残った執事や使用人達が籠城していたが

そんな事は知らぬとヴォルフガングはバリケードを叩き壊した。

 

「どうも、 ただいまですー」

「アナキン・・・何のつもりだ・・・この騒ぎは・・・」

 

ヴォルフガング氏は病床の身でありベッドに横たわっていた。

 

「いやいや、 僕からパドメを奪った復讐ですよ

何の慰めにもならない単なる憂さ晴らしですがね」

「パドメ・・・? 奪った・・・? どういう事だ・・・?」

「はっはっは、 恍けても良いですけど、 どっちみち死にますよ?」

「そ、 それは違います!!」

 

執事長が前に出た。

 

「パドメ、 さんとおぼっちゃまを離したのは旦那様の指示ではありません!!

私の指示です!! ヴォルフガング家の名を貶めずに残して行く為に」

 

ヴォルフガングはバラムツを射出して執事長を殺害した。

この時のヴォルフガングの憎しみは凄まじく、 バラムツの聖霊を呼び出す事に成功した。

しかしヴォルフガングは怒りに震えてその事実に気が付くのは後の話。

 

「・・・・・・・まぁ、 話を戻しましか

パドメは死んでしまった訳です、 貴方の執事長のせいで」

「何の事だか分からない・・・」

「パドメは僕の恋人です、 そしてここに来た事で離されてしまった」

「ま、 待ってくれ、 執事長は貴族の令嬢と君が懇意だと言っていたぞ!!

プレゼントも既に渡したと・・・」

「あ、 そう、 その貴族の令嬢とやらも始末しておきましょうか

兎も角、 貴方達はこれから腹を下してうんこに塗れて死んでいく訳ですが

まぁ、 お父さん、 貴方の意志を汲む事にしましょう」

「私の・・・意志だと?」

「えぇ、 貴方は僕に家を継いでほしい、 本当ならば死んでもゴメンですが・・・

まぁ家名を継ぎましょう、 ヴォルフガングの名を名乗り続ける事を約束しますよ」

「ほ、 本当か?」

「えぇ、 これからヴォルフガング家はうんこの代名詞となるんです

この屋敷もうんこだらけの汚辱に塗れた場所になるんです

これから永久にヴォルフガング家はうんこその物になるんです」

「な、 なんだと・・・」

 

ヴォルフガング氏は絶望に満ちた顔をした。

 

「や、 止めてくれ!! 家名を貶めないでくれ!!」

「はいはい、 じゃあお父さん、 貴方もうんこだらけのゴミ屑になりましょうねぇ」

 

そう言ってバラムツを喰わせるヴォルフガングであった。



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逃げる二人

シャリ王国の教会の支部から馬に乗って逃げ出す二つの影。

 

「おじさん、 一体如何したの?」

「黙っていてくれトゥーンウィ様、 あのままでは貴方の命が危なかったんだ」

 

彼等はトゥーンウィとラマス、 シャリ王国の聖女とその護衛騎士である。

ラマスは教会の重鎮達は取り返しの付かない致命的な改造を施す危険物を

トゥーンウィに摂取させようとした事を知ったのだ。

トゥーンウィの命を守る為に彼等は逃げている真っ最中である。

 

「そ、 そんな事をしようとしていたの・・・」

「あぁ!! だから貴女を逃がさなければならない!!」

 

事情を馬に乗りながら説明するラマス。

 

「おじさん・・・でも私は・・・生きていても、 もう何も無いじゃない・・・」

「そんな事を言うな!! 私には二人の娘が居た!!

二人共死んでしまったがかけがえのない娘だった!!

死んだ娘達がこうして命の危険に有る貴女を放置する事を良しとしない!!」

「おじさん・・・」

「う!!」

 

ラマスは馬を止めた。

教会の追手が先回りしていたのだ。

 

「おじさん・・・」

「ここで待って居ろ」

 

ラマスは剣を抜いた。

 

「ラマスよ、 今なら見逃してやる、 聖女を置いて去れ」

 

包囲していた教会の騎士達が警告する。

 

「断る!!」

「聖女の犠牲を無駄にするのか?」

「餓鬼の命を犠牲にして生き永らえるつもりはない!!」

「ならば良いだろう、 死ね」

 

騎士達は一斉に襲い掛かった。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

ラマスが叫びながら特攻する。

しかし騎士達の背後から大量のスシブレードが飛んで来る。

 

「ぐわ!?」

「ぎゃ!!」

「な、 なんだあああああああああああああ!?」

 

騎士達が叫びながら散っていく。

 

「な、 何だ!?」

「ひ、 ひいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

トゥーンウィが絶叫する。

 

「し、 しっかりしろ!!」

「闇、 やみがやみがやみいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

絶叫し錯乱し馬から落ちるトゥーンウィ。

そして頭を抱えて震えだす。

 

「ほう、 中々の闇を持っている小娘が居るな」

 

闇が現れた。

 

「な、 何者だお前は!!」

「俺は闇、 お前は?」

「・・・ラマスだ」

「そうか、 さっき襲われていたから助けてやったんだ、 礼位言え」

「・・・・・ありがとう」

「そうか、 じゃあそいつは連れて帰るな」

「・・・何を言っている?」

「俺の目的は闇のスシブレーダーの才能が有る奴を見つけ出す事だ

その娘には才覚が有ると見た、 だから連れて行く」

「話が見えんが、 そうはさせん!!」

 

剣を構えるラマスであった。



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逃避の先

「落ち着けよ、 別に殺す訳じゃない

手駒になりそうだから連れて行きたいだけだ」

「この子を道具になどさせん!! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

ラマスは剣を振り被って攻撃して来るも、 闇はまるで意に介さず

乱雑に唐揚げで迎撃する。

 

「ぐは・・・」

 

ラマスは吹き飛ばされるが立ち上がる。

 

「おいおい、 今のはクリーンヒットだろう

何で立ち上がれる」

「私には娘が二人いた・・・二人とも死んでしまった・・・この子だけは助ける!!」

「・・・・・」

 

ラマスは血を吐きながらも剣を構える。

 

「内蔵と骨がやられて居る筈なのにまだ立つか、 面白い

ならばお前も来い」

「何だと・・・如何言う・・・事だ」

「お前が俺に勝てないのは既に分かっているだろう

このまま行けば、 その娘が俺に良い様に使われるだろう

だからお前も一緒に来てその子を守れば良い

まぁ俺の予測ではお前はその子を上回れないだろうが・・・」

「・・・・・」

 

ラマスはトゥーンウィを見る。

 

「やみ。や、み、やみやみやみ・・・」

 

震えてやみやみ言っている。

 

「分かった、 良いだろう、 だがしかし!!

もしもこの子を裏切る様な事が有れば・・・その時は・・・」

「安心しろ、 俺はよっぽど馬鹿な真似をしない限り見限る事はしない」

「・・・・・」

 

そこまで聞くとラマスはばたりと倒れた。

 

「さてと・・・とりあえず帰るか」

 

ラマスとトゥーンウィを連れて闇はコメドコロセンターに帰ったのだった。

ラマスは大怪我を負っていたが何とか治療には成功した。

 

「そういえば人が少なくないか?」

 

闇が通りすがりの衛兵に尋ねる。

 

「実は鶴帝国から我が国に何者かが入り込み、

陛下が飛空船で迎撃に向かったのです

それで色々と付いて行って」

「何だそれ面白そう、 俺も行きたいな

その飛空艇とやらはもう一隻有るか?」

「いえ、 残念ながら一隻のみでして」

「何だよしけてんな・・・まぁ良いや、 適当に追いかけて行こう」

「いえ、 恐らく追い付けないかと・・・飛空艇は空を飛んでますし物凄い早いです」

「待っているのも暇だし良いよ、 追いかけて行くよ」

「そうですか、 では馬車を」

「要らん、 歩いている時にバッタリ闇のスシブレーダーの素養が

有る奴が見つかるかもしれない」

「そうバッタリ見つかりますかねぇ・・・」

「一人見つけたぞ、 アナキン・ヴォルフガングとか言う奴だ」

「アナキン・・・あ、 そう言えば我々に恭順の意を示して来た貴族に居ましたね」

「ドヤァ・・・」

 

ドヤ顔をする闇であった。



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暗雲

鶴帝国八十八剣聖序列八十二位『ナイフ』のソーラ

序列八十三位『ポールウェポン』のリーアム

序列八十四位『熊手』のジェンパ

序列八十五位『契木』のパートラ

序列八十六位『アイスピック』のボビー

序列八十七位『マカナ』のキアン

序列八十八位『含針』のアシュラ

手柄が欲しくて内情を調べる為にシャリ王国に潜入していたのだが・・・

 

「おらぁ!! 出てこんかいワレェ!!」

「何処に行きやがった鶴帝国の屑野郎ども!!

脊髄引っこ抜いて祭壇を立てて聖遺物にしてやるよ!!

シャリーラ13世様に殺される事を光栄に思え!!」

 

突如飛空艇から現れたシャリーラ13世とブタの男

そして兵隊達からの猛攻を受けて

既に序列八十五位『契木』のパートラ、 序列八十六位『アイスピック』のボビー

序列八十七位『マカナ』のキアンが撃破されている。

生き残った鶴帝国八十八剣聖序列八十二位『ナイフ』のソーラ

序列八十三位『ポールウェポン』のリーアム

序列八十四位『熊手』のジェンパ、 序列八十八位『含針』のアシュラは

森林地帯に逃げ込んだ。

 

「はぁ・・・はぁ・・・如何だ!? 追って来ているか!?」

 

ソーラが逃げながら叫ぶ。

 

「兵隊が来ている!!」

「こんのぉ・・・!! 喰らえ!!」

 

聖剣【含み針】で追手に攻撃するアシュラ。

聖剣【含み針】は数百本からなる含み針で一本一本が正に聖剣と言っても差し支えない鋭さである。

その鋭さで正確に追手の神経を貫き足を止める。

しかし這ってでも追って来る兵士達に戦慄する。

 

「な、 何アレ!?」

「手も狙え!!」

「あ、 そうか」

 

アシュラは手足に攻撃を加える事で追撃を阻止する事に成功した。

そして何とか追跡を撒く事が出来た。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

「くっ、 あり得んだろ、 幾ら80位以下だとしても

鶴帝国八十八剣聖がこうもあっさりと・・・」

「連中はシャリーラ13世と言っていた・・・

王が代替わりしたのか? いずれにせよかなり好戦的な王が生まれた様だ」

「この情報を鶴帝国に持ち帰れば我々の地位も上がるな!!」

「ジェンパ殿・・・ポジティブだな・・・」

 

ソーラが憂鬱そうに言った。

 

「この状況、 生きて帰れるか怪しい状況だぞ?」

「それもそうだが、 この状況

無理矢理にでもポジティブに捉えないとやっていけないぞ」

「それもそうか・・・」

「しっ、 こっちに来た様だ」

「如何する? 打って出るか?」

「・・・・・いや、 ここは逃げた方が賢明だ」

「敵は飛空艇を使っているんだぞ!? 逃げ切れるのか!?」

「森の中ならば・・・」

 

剣聖達は揉め始めた。



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廃屋にて

「よくよく考えると歩きで移動ってクッッッソめんどくせぇえな!!」

 

闇が一人で飛空船が向かった所まで歩いて向かっている。

 

「必死になって人材集めるって駆け出し闇のスシブレーダー親方の頃を思い出すから

最初ノリノリだがやっぱりめんどくせぇ!!」

 

もう疲れて独り言を物凄い大声で言うテンションになっている。

 

「あぁ疲れたし今日はもう休もう、 丁度良い所に廃屋が有るし」

 

丁度良い所に寂れた家屋を見つけたので勝手に侵入する闇。

 

「さてと・・・寝ようか」

「誰だ?」

「んあ? 何だ廃屋じゃなかったのか、 悪いな勝手に入って」

「いや、 構わない」

 

皺が深い中年男性が家屋の中から現れた。

 

「・・・・・ふむ、 アンタ相当闇が深いな」

 

闇が男性の闇を察知した。

 

「何の事だか分からないな、 それよりも飯を食べてくれないか?

私は料理人でね」

「その割には髪がぼさぼさで爪も伸びている、 飲食に関わる奴には見えないぞ?」

「・・・すまない、 気が回らなかった」

「個人営業の店・・・と言う訳でも無いな」

「流しの料理人なんだ」

「流しの料理人ねぇ・・・何か暗い過去が有る様だが・・・」

「いや、 暗い過去・・・は有るかもしれないが

寧ろ暗い未来の方が私を悩ませる」

「暗い未来?」

「聞いてくれ、 私は小さな孤児院を営む院長先生を務めていたんだ

とは言え本当に小さな孤児院で孤児達の世話をするのは自分一人だけ

名ばかりの院長で大変な生活だったが孤児達に愛情を注いで日々を暮らしていたんだ」

「・・・続けて」

「ある日の事、 孤児院に強盗が入ったんだ・・・その時に私も深い傷を負った」

 

そう言って胸をはだけさせて傷を見せる。

 

「刃物傷だな」

「そうだ、 だがこんな傷なんて如何でも良いんだ

強盗に入ったのはこの孤児院を卒業していた孤児の一人だった」

「何でそんな元孤児が孤児院を襲ったんだ?」

「自分が居た孤児院を襲ったのかだって?

それはただ単に内部状況を詳しく知っていたからだよ

大人は私一人だけ、 容易いと思ったんだ

私は包丁で反撃し、 その強盗を返り討ちにした

だがしかし強盗に入られて私は痛感したよ

『孤児は社会にとって悪影響を齎す』んだ

だから私は孤児を殺して社会に役立てる為に調理して食べさせる事にした」

「随分打っ飛んだ目的だが・・・だがその目的、 協力してやれるかもしれないぞ」

「協力? 一体どうやってですか?」

 

闇は一つのカルビを射出して見せた。

 

「これは・・・」

「スシブレードだ、 お前も闇のスシブレーダーとなるのだ」



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ダーク・イタマエの登場

廃屋で出会ったマラキリと共に飛空艇の元に向かう闇。

 

「こうですか?」

「違う、 こうだ」

 

歩きながらシャリの握り方をマラキリに指南する闇。

 

「うんうん、 筋は良いな」

「子供達に料理を長年作っていたんで料理は得意なんですよ」

「なるほどな、 うん?」

 

どさり、 と二人の前に置かれたのは息も絶え絶えなソルジャースシ。

 

「こいつは即席のスシブレーダーか、 何で死にかけているんだ?」

「私が説明しよう」

 

漆黒の顔全体を覆うコック帽とコックコートに身を包んだ男が現れた。

 

「お前は?」

「私はダーク・イタマエ、 冒険家だ」

「名前と見た目から冒険家に見えないんだが・・・寧ろ料理人じゃないのか?」

「料理上手だ」

「なるほど、 それでダーク・イタマエ、 一体何の用だ?」

「うむ、 実はこの少し先に飛空艇が停泊しているんだ」

「あぁ、 俺達はその飛空艇を目指しているんだ、 それで?

冒険家さんが俺達に何の用だ?」

「飛空艇から降りて来た連中がアンタと似た様な物を使っていた」

「スシブレーダーか、 それで?」

「私は貴方に興味が出て来た、 それが何か、 アンタ達が何か

教えて欲しい、 実に興味深い、 探検家は好奇心旺盛なんだ」

「良いだろう、 歩きながらでも良いか?」

「良いぞ」

 

闇は語って聞かせた。

スシブレードの事。

自分が異世界から呼び出された事、 魔王を始末した事。

元の世界に戻る為に色々画策している事。

元の世界の事、 元の世界には魔王を超える存在がうようよしていると言う事。

 

「実に、 実に興味深い!! このダーク・イタマエの是非とも

闇のスシブレーダーになりたい!! 是非とも薫陶を!!」

「良いぞ、 来る者拒まずだ、 遠慮無く来ると良い」

「実にありがたい!!」

「うむ、 さて、 そうこうしている間に飛空艇? が見えて来たな」

 

飛空艇が見えて来た一行。

 

「飛空艇と言うよりは飛行船? じゃないのか?」

 

デザイン的には飛行船に見えなくはないデザインだが

空気より比重の小さい気体をつめた気嚢によって機体を浮揚させ

推進用の動力や舵をとるための尾翼などを取り付けて操縦可能にした飛行船とは違い。

魔力的な作用で飛行している為、 まるで構造から言って違うのだ。

因みに飛空艇を所持しているのはシャリ王国のみである。

何故シャリ王国のみが飛空艇を所持しているのかと言うと

飛行艇を使った戦争が過去に起こって、 教国を始めとした国々が禁止したからである。

シャリ王国が査察の目を盗んで所持している飛行艇が

現存して存在している飛行艇である。



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闇の躍進

森林地帯に逃げ込んだ鶴帝国八十八剣聖序列八十二位『ナイフ』のソーラ

序列八十三位『ポールウェポン』のリーアム

序列八十四位『熊手』のジェンパ、 序列八十八位『含針』のアシュラは

何とか逃げようと画策していたが森林地帯を取り囲まれていた

辛うじて包囲が決まっていない所から逃げ出そうとしていたが・・・

 

「うん? お前達は鶴帝国の連中か?」

「こいつ等は鶴帝国八十八剣聖・・・しかも四人、 如何しますか?」

「楽勝だろ」

 

闇達と遭遇してしまったのだった。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

ジェンパとリーアムは闇の危険を逸早く察知して聖剣【ポールウェポン】

聖剣【熊手】をそれぞれ構えて突撃した。

 

「はいはい」

 

闇は事も無げにスシブレードを射出して二人を殺害した。

 

「くっ!! 喰らいなさい!!」

 

含み針を放つアシュラ。

しかし事も無げに迎撃されて尚且つ顔にカルビを叩き込まれるアシュラ。

 

「ぐ・・・が・・・」

 

口から血を吐きながら見据えるアシュラ。

 

「降伏するなら命を助けてもやらんぞ」

「だ、 誰・・・が?」

 

アシュラの首が落ちた、 首を落したのはソーラだった。

 

「良いだろう、 アンタに着こうじゃないか

その代わりそれなりの地位を用意して貰おう」

「地位は用意して貰う物じゃなくて勝ち取る物だ、 スシの回し方は教えてやるから

自分で鍛え上げて見ろ」

「お、 おう・・・」

 

ソーラが仲間に加わった。

その後、 飛空艇の所に向かった闇達はシャリーラ13世達と共に

コメドコロセンターに戻って行ったのだった。

 

「いやはや、 鶴帝国八十八剣聖の一人を味方に引き入れられたのは大きいですよ」

 

シャリーラ13世が闇を称える。

 

「いやいや、 今回色々と大勢の人材を集められた

お前達の方でも色々集めているんだろう?」

「えぇ、 徴兵しています」

「ならば良し、 鍛え上げれば一国位は簡単に落とせる軍勢が出来上がるだろう」

「すると鶴帝国も落とせますかね?」

「楽勝だろう、 まぁ今すぐは攻め込まないが・・・」

「鶴帝国を落すに当たってソーラさんにも色々頑張って貰います」

「地位を得る為ならば努力は惜しまん」

「良くぞ言った、 ならばさっさとコメドコロセンターに戻って特訓だ

少なくても3ヶ月は地獄を見て貰うぞ」

「覚悟の上です」

「シャリーラ、 お前も鍛え直してやる」

「ありがたく頂きます」

「それでは行くぞ・・・世界を取りに!!」

 

こうして闇の野望が大幅に一歩前進したのだった。



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第四章:スシ・ウォーズ
オープニング・クロール


シャリ王国は闇による採用活動と徴兵、 スシブレードの普及によって

スシブレードの大軍を編成する事に成功した。

急造のスシブレーダーはスシブレードが破壊されると爆発してしまうと言う弱点はあったが

それを補って有り余る数を揃える事に成功したのだった。

勿論、 スシブレーダー政策に対して反対の者達も居り

彼等は国外に逃げ出したが、 イマイチスシブレードの危険性を分かって貰えず

各国は手を出しにくい状況になっていた。

シャリ王国の教会上層部も脱出しファウンデーション教国に逃げたが

トゥーンウィの件が漏れる事を危惧して詳しい説明はしなかった。

 

こうしてもたもたしている間に着々とシャリ王国で生まれたスシブレーダー達は

スシブレードの力量が上がり始め親方"闇"から見ても

ヤミ・アプレンティス、 ヤミ・マスター、 寿司の暗黒卿と呼んでも差し支えないレベルの

スシブレーダーが生まれ始めた、 号を名付ける闇の筆も冴えわたる。

 

一方その頃、 鶴帝国では

鶴帝国八十八剣聖序列九位『ガントレット』のウィンドゥ殺害から端を発する

国内の緊張、 それに伴う防衛費の値上げ、 八十八剣聖の不満による勝手な行動により

不満が噴出していた、 『失われた十二人』に続く離反者が出ない様に

八十八剣聖は監視され八十八剣聖内でも不満が出始めていた。

そんな折に行方不明になっていた序列八十二位『ナイフ』のソーラが鶴帝国に帰還したのだった。

ソーラは自分と行動を共にしていた序列八十八位『含針』のアシュラ

序列八十七位『マカナ』のキアン、 序列八十六位『アイスピック』のボビー

序列八十五位『契木』のパートラ、 序列八十四位『熊手』のジェンパ

序列八十三位『ポールウェポン』のリーアムの六人がシャリ王国に潜入した際に

殺害された事を発表した、 シャリ王国に対する説明を求める鶴帝国。

シャリ王国は『自衛権を行使したまで』と説明。

元々鶴帝国は国内の不満を逸らす為にシャリ王国が何を言おうと

難癖をつけてシャリ王国に攻め込むつもりだったので左程問題は無かった。

鶴帝国の無法な行いにシャリ王国に同情の声が有ったが

自らどうかしようという国家は無かった、 鶴帝国は大国なのだ。

進んで睨まれる様な事をする国は無い。

 

しかしソーラが鶴帝国に戻ったのは全てシャリ王国の差し金で

ソーラが仲介役になり、 鶴帝国の内部情報を探り

内部の裏切りを誘発しているという事を

鶴帝国はまだ気が付いていない。

 

シャリ王国と鶴帝国の戦争の行方は如何に!?



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帝国会議

鶴帝国、 皇帝の居城コルサント議会場にて女帝テタを始めとした大臣。

そして鶴帝国八十八剣聖の序列十位『吹き矢』のジョカスタ

序列八位『斧』のプロ、 序列七位『胡蝶刀』のアディ

序列四位『大太刀』のオビワン、 序列三位『魔法剣』のスタス

序列二位『盾』のヤレアルの剣聖の中でもコルサント近辺に居る者の中でも

上位の者達が集められた。

 

「集まった様だな、 それではこれより会議を始めたいと思う」

「その前にお待ち下さい陛下、 その前に質問にお答えください」

 

テタの開始の合図に割って入るオビワン。

 

「不敬だぞ、 オビワン」

「剣聖と言えどもこれは問題では?」

 

オビワンを咎める大臣達。

 

「いえ、 これは剣聖達ほぼ全員の疑問です

これに対する疑問を解決しない限り八十八剣聖は動かないと断言しましょう」

「なんと!?」

「全員だと!?」

「・・・・・質問を許す、 何だ?」

「は、 此度のシャリ王国に勝手に侵入した序列八十八位『含針』のアシュラ

序列八十七位『マカナ』のキアン、 序列八十六位『アイスピック』のボビー

序列八十五位『契木』のパートラ、 序列八十四位『熊手』のジェンパ

序列八十三位『ポールウェポン』のリーアムの六人が殺害された件ですが

我々八十八剣聖は信じられないのですよ、 幾ら下位の者とは言え

6人もの剣聖が殺されたのは信じられません」

「何が言いたい?」

「我々八十八剣聖は上位剣聖の保障の為に削減されている

下位剣聖の給金等と同様に下位の剣聖を切り捨てて犠牲にして

戦争の口実を作ろうとしているのではないかと思っているのですが」

「ありえないな、 戦争を始めるのに戦力を減らして如何する?

何の為に八十八人も剣聖を任命したと思っている?

遊びでは無く単純に戦力として任命したのだ、 使い捨ての手駒にするのならば

もっと下っ端を使うだろう」

「なるほど・・・」

「下位の剣聖達にも伝えるが良い」

「わかりました」

「では改めて会議を始める、 軍事大臣、 軍備の首尾は?」

「はい」

 

老齢の軍事大臣が立ち上がる。

 

「兵の準備は完了しております、 帝国騎士団とも連携していく準備は整っています」

「騎士団長、 魔術師団長、 首尾は?」

「「完了しております、 直ぐにでも迎えます」」

 

帝国騎士団長ティプラーと帝国魔術師団長ティプリーはシンクロしながら答えた。

彼女達は双子である、 騎士と魔法使いだが仲の良い双子で

不仲が慣例の騎士団と魔術師団は蜜月の時を迎えていた。

 

「良し、 それでは残っている剣聖達にも出撃準備をさせて頂戴」

「分かりました」

「それでは諸君の健闘を祈る」



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ソーラへの問答

議会場で会議が行われていた頃、 ソーラは剣聖達に取り囲まれていた。

 

「ソーラ!! 何でお前だけ生きて帰って来た!!」

 

序列七十七位『石鏃』のセフジェットがソーラに詰め寄る。

 

「何でって・・・分からんよ・・・」

「お前の聖剣はナイフだろう!? 近距離武器だ!!

そんなお前が何で生き残れる!? 他の連中よりも上位の存在だが敵は剣聖を殺せる連中だ!!

それなのにいってぇ!!」

「そこまでね」

 

序列七十九位『棒』のジャージャーが聖剣【棒】でセフジェットを叩く。

 

「生き残ったのは嬉しい事ね、 それを責めるのは可笑しいよ」

「だ、 だがしかし!!」

「こう考えられないか?」

 

序列八十一位『短刀』のシャアクが割って入る。

 

「序列八十八位『含針』のアシュラ、 序列八十七位『マカナ』のキアン

序列八十六位『アイスピック』のボビー、 序列八十五位『契木』のパートラ

序列八十四位『熊手』のジェンパ、 序列八十三位『ポールウェポン』のリーアム

彼等はソーラよりも強いと見做された、 一番弱いと見做されたソーラが

メッセンジャーとして帰された」

「な、 私を侮辱するのか!?」

 

ソーラが激高しかける。

 

「落ち着きなさい、 だって貴方の武器はナイフじゃない

他の武器の方が強そうじゃないの?」

「アイスピックの方が弱そうだろ!!」

「まぁまぁ、 喧嘩はだーめよ」

 

ジャージャーが割って入る。

 

「・・・・・ソーラ、 敵はどんな感じだった?

人数は? 容姿は? 使う武器は?」

「見た事も無い武器を使っていた・・・飛び道具だった」

「飛び道具・・・盾を持って行った方が良いのか?」

 

ソーラは鶴帝国を裏切っているが特にスシブレードに対しての口止めはされなかった。

と言うのも闇は自信からスシブレードの機密が漏れても問題無いと判断し

ソーラも剣聖の性格を良く理解していた。

 

「敵がどんな異常な武器を使おうとも聖剣には適うまい」

 

鶴帝国の剣聖達は聖剣に絶対の自信を持っていた。

 

「でもアシュラ達はやられたよ、 油断は禁物よ」

「連中は下位の連中だからな、 油断しなければ我々が負ける道理も無い」

「ならば良いのだが・・・ヨーダ様はまだ戻られないのか?」

「陛下が早馬を出したらしいから直ぐにでも戻ると思うが・・・

ヨーダ殿も頑固だからな、 戻らないかもしれない」

「うーむ・・・今回死んだ6人とウィンドゥ殿、 そして『失われた十二人』

これで19人の剣聖が失われた事になるな・・・大丈夫か?

4分の1だぞ?」

「まだまだ上位剣聖が居る、 まるで問題はない」



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港町の死体

鶴帝国八十八剣聖の序列一位『聖剣』のヨーダ

序列五位『薙刀』のオポー、 序列六位『ケペシュ』のクワイが

ウィンドゥ殺害の犯人を捜している途中にとある港町に立ち寄った

その街で歓待を受ける3人であった。

 

「ふむ・・・かれこれここに留まり3日が経つ

そろそろ出発しようと思う」

 

村の代表である網元のオード・マンテルにヨーダが言った。

 

「その事なんですが・・・少々問題が発生しました」

「問題?」

「この近くに死体が発見されました」

「!!」

 

驚愕する3人。

 

「死体・・・この村の者か?」

「いえ、 如何やら余所者の様で・・・軍人さんの様ですから見て貰えませんか?」

「良いだろう、 行こう二人共」

「案内しましょう」

 

マンテルが3人を村はずれに案内した、 案内した場所には人だかりが出来ていた。

 

「「「「「旦那!! 剣聖様達も御疲れ様っス!!」」」」」

「御疲れ様!!」

「マンテル殿、 この者達は?」

「一応村の若い衆を集めておきました!!」

「何の為に?」

「そりゃあ人が死んでいるんですし、 人を呼ぶでしょう」

「ふむ、 だが我々だけで充分だ、 下がらせて下さい」

「えぇ!? そんなぁ!!」

「そりゃあ無いっすよ!!」

 

口々に不満を言う若い衆。

 

「あー、 分かった、 分かった、 お前達は先に村に戻ってろ」

「ちぇー・・・」

 

とぼとぼと帰る若い衆。

 

「殺されていた人はこっちです」

「うむ」

 

案内される3人。

そして死体の場所に辿り着く。

死体は殺されてから1日と経っていない様だった。

 

「彼は・・・ストームだな」

 

クワイが死体を見て判別した。

クワイは帝国軍の兵士の顔と名前を全て覚えているのだ。

 

「彼は確か早馬に乗れる程の逸材だった筈だ」

「ふむ、 ここに来たという事は何か有ったのかの・・・」

「一旦コルサントに戻りますか?」

「戻るのならばお主一人で戻るが良い、 ワシ等二人は調査を続ける」

「一人って・・・良いんですか!? 近くに殺した犯人が居るかもしれないんですよ!?」

「構わない、 返り討ちにしてやる」

「それは・・・まぁ・・・」

「じゃあ一旦荷物を取りに宿屋に帰ってから行きますか」

「あ、 剣聖様、 是非とも村の者達で見送りさせて下せぇ」

「別に構わないが・・・直ぐに発つから早くしてくれよ」

「へい、 直ぐに村の者達を集めます」

 

そう言ってマンテルは村に戻ったのだった。

 

「粗暴な奴かと思ったら意外と良い人そうだったな」

「確かに意外でしたね、 田舎の権力者だから傲慢なイメージだったが

寧ろ腰が低いかったな・・・」

「良きことだな」



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見送り

村はずれに集まった村の人々。

若い衆だけでは無く女も集まっていた。

 

「態々見送りに来て貰って済まないな」

「いえいえ、 お気になさらず」

 

クワイを見送りに来たのだ。

 

「しかしクワイさん、 歩きで大丈夫ですか?」

「こう見えても剣聖だ、 走った方が早い」

「そうですか・・・」

「ではな」

「じゃあお前達」

「「「「「「「「はい!! クワイ様!!

ばんざあああああああああああああああああお!!!!!!」」」」」」」」

 

女達が喧しい位の声援をあげる。

 

「照れるな」

 

声援を背に歩き始めるクワイ。

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「

ばんざあああああああい!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

スシブレードを構える若い衆、 そして射出する。

 

「!!」

 

クワイが振り向き聖剣【ケペシュ】を抜いて振り返った。

ケペシュは鎌型の剣で戦斧から発展した武器と言われている。

その形状から盾をはぎ取る形状なのだが

スシブレード相手にはその効果は発揮出来ないだろう。

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「

ばんざあああああああい!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

「くっ・・・」

 

スシブレードを被弾しながら茂みに隠れるクワイ。

声援は攻撃を隠すカモフラージュだったのだ。

 

「!! ヨーダさん達にも伝えないと!!」

 

クワイが気が付き、 移動しようとする。

しかしフレアオクトパスのタコの唐揚げが飛んで来る。

ケペシュでガードしようとしたが弾き飛ばされ、 次々にスシブレードが殺到。

クワイが息絶えたのだ。

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「

ばんざあああああああい!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

「よし、 死んだな、 女衆、 もう黙って良いぞ」

「はぁ・・・」

「疲れたぁ・・・・・」

「喉が枯れそう・・・」

 

女衆には声を挙げさせて隠す必要があったのだった。

 

「旦那、 これから如何します? 残りの剣聖も打っ殺すんですよね?」

 

レッドが腰を低くしながら尋ねた。

 

「さっき話しただろうが・・・

じゃあこれからの流れを再確認するぞ、 クワイが死んだ事を剣聖共に伝えて

ここに誘き出す、 出来れば分断するぞ、 そして速攻でトドメを刺す」

「おっしゃ!! やるぜぇ!!」

 

気合十分の若い衆。

 

「ふんどし締め直せよ、 ここで剣聖のトップをやれたら

俺達の闇のスシブレーダーとしての価値も鰻登りだ」

「もう上位の奴やれたし相当評価高そうですけどね」

「もっと上に上り詰めるんだ」



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逃走

「剣聖さん方!! 大変だ!!」

 

ヨーダ達が居た宿屋に走るマンテル。

 

「ど、 如何した、 そんなに息を切らして・・・」

「さっき送った・・・その・・・」

「クワイか?」

「そう!! そのクワイさんが襲われた!!」

「何だと!?」

「見送っている最中に突然・・・今、 医者とか呼んでいる!!

直ぐに来てくれ!!」

「分かった!!」

 

オポーとヨーダは聖剣を構えながら向かった。

クワイが倒れている場所は村はずれだった。

 

「クワイ・・・」

 

クワイに近寄るヨーダとオボー。

 

「これは・・・一体、 飛び道具か?」

「ふむ・・・オポー、 気が付いているか?」

「えぇ・・・・・」

 

後ろからスシブレードが放たれる。

しかし

 

「やあああああああああああ!!」

「ふん!!」

 

聖剣【薙刀】、 聖剣【聖剣】で迫りくるスシブレードを迎撃する二人。

 

「くっ、 撃て撃て!!」

 

スシブレードを撃ちまくるスシブレーダー達。

ヨーダとオボーは横に避けて逃げた。

 

「くっ、 逃がすか!!」

 

タコの唐揚げ、 ウミヘビ、 アカマンボウ。

様々なスシブレードを撃ち尽くすも回避される。

 

「皆離れろ!! 近寄られたら終わりだ!!」

 

そう言って走って逃げるスシブレーダー達。

茂みが無い見晴らしの良い所にまで逃げる。

 

「さぁ・・・来るが良い、 姿を見せたらマグロ大盛りでぶっ飛ばしてやるよ・・・」

 

マンテルがスシブレードを構える。

しかし剣聖達は姿を見せない。

 

「・・・・・如何したんだ?」

「・・・・・まさか逃げた?」

「いや、 そんな筈は・・・」

 

そのまさかである。

ヨーダとオポーは走って逃げていた。

 

「ヨーダさん、 これは少しビビり過ぎでは?」

「いや構わない、 奴等は見た事も無い武器を使っていた、 警戒は充分するべきだ

それにあんな武器を持っていたという事は流している黒幕が居るかもしれない

更に早馬が来たという事は何か起こっているのかもしれんしな」

「なるほど、 クワイの死体をそのままにしておくのは気が引けますが・・・」

「ワシ等も何時かは戦場で死体を晒す事になるじゃろうて・・・

それに一旦戻って兵を連れて来て取り返しに来ればいい、 気にするな」

「そうですね・・・我々は天国には行けませんかね」

「今更な話じゃろうて・・・」

 

そんな事を言いながらヨーダとオポーは走って行ったのだった。

 

「クワイは気の毒な事になりました」

「・・・・・人を殺しているからの・・・何時かはこうなるだろうさ・・・」

「地獄に落ちてもクワイの仇はとりましょうぞ」

 

そう決意してコルサントに戻る二人であった。



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ヨーダ達の帰還

コルサントに戻ったオポーとヨーダを待ち構えていたのは女帝テタを始めとした大臣

そして上位の剣聖達だった。

 

「待って居たぞヨーダ!! オポー!! ・・・クワイは如何した?」

「実はとある村で殺害されまして・・・」

「何だと!?」

 

テタは驚愕した。

 

「連中は見た事も無い武器を持っていました、 不覚を取る可能性も有ったので

念の為に帰還しました、 直ぐにでも討伐を!!」

「そうしたい所だが・・・シャリ王国との戦争が有る」

「シャリ王国との戦争?」

「早馬で届けた手紙に書いてなかったか?」

「早馬で来たメッセンジャーも殺されて・・・知らなかったです」

「そうか・・・では説明しよう」

 

テタが事情を説明した。

鶴帝国八十八聖剣序列八十八位『含針』のアシュラ

序列八十七位『マカナ』のキアン、 序列八十六位『アイスピック』のボビー

序列八十五位『契木』のパートラ、 序列八十四位『熊手』のジェンパ

序列八十三位『ポールウェポン』のリーアムの六人がシャリ王国に潜入した際に

殺害され戦争の準備をしているのだと。

 

「剣聖がこうも立て続けに撃破されるとは・・・

何か良く無い事に兆しでしょうか・・・」

「何を言っとるんじゃオポー、 剣聖が殺される事自体が既に悪い事じゃ

陛下、 ここは外交的に何かリターンを得るとかでは如何じゃろうか?」

「つまり戦争をするなと?」

「戦争は外交のカードです、 戦争をちらつかせて

こちらが有利になる条約を結ぶとか方法は幾らでもあるでしょう」

「向こうが完全に戦争をする構えだ」

「すると向こうには何かしらの手が有ると言う事ではないですか?」

「そうかもしれん、 だがしかし剣聖達と強力な軍事力が居るのならば問題は無いだろう」

「不安ですなぁ・・・」

 

ヨーダは不安になっている。

彼は強さのみならず冷静さも強いのだ、 だからこそ老齢になっても生き残れるのだ。

 

「ヨーダ様、 師匠が・・・」

 

序列四位『大太刀』のオビワンが涙を流しながらやって来た。

 

「すまなんだ・・・」

「いえ・・・師匠も覚悟の上だったと思います・・・」

「それで陛下、 村は如何しますか?」

「うむ、 シャリ王国との国境線に兵が集まりつつあるらしい

そこでまずは国境を落そうと思う、 主戦力は国境に

さっき言った村には剣聖を20人送ろう、 それだけ居れば足りるだろう?」

「送る剣聖は如何しますか?」

「ヨーダ、 お前に一任しよう、 村の連中を知って居るのはお前だからな

的確な人選が出来ると信じている」

「分かりました、 しかし剣聖だけでは不安です」

「なら帝国陸軍から一個中隊を出そう」



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出撃の内訳

鶴帝国とシャリ王国の戦争が始まった。

シャリ王国はソルジャースシを中心にヤミ・アプレンティス

ヤミ・マスターを中心にした軍勢で推し進め鶴帝国との国境線を超えた。

 

鶴帝国は鶴帝国八十八剣聖

序列八十二位『ナイフ』のソーラ、 序列八十一位『短刀』のシャアク

序列八十位『鈎』のイーヴン、 序列七十九位『棒』のジャージャー

序列七十八位『フィランギ』のサー、 序列七十七位『石鏃』のセフジェット

序列七十五位『鎖』のニカナス、 序列七十四位『布』のタスー

序列七十三位『ハルバード』のティン、 序列五十位『ヌンチャク』のゴム

序列四十九位『枝』のキュー、 序列四十八位『鉄牙』のカル

序列四十七位『鉄球』のケスティス、 序列四十六位『ソードブレイカー』のシア

序列四十五位『鋸』のマラ、 序列四十四位『破城槌』のマー

序列四十二位『鋏』のマオタ、 序列四十一位『ヌンチャク』の

序列三十五位『分銅棒』のヴィン、 序列三十四位『多節棍』のサラマンダー

序列三十三位『メイス』のツイ、 序列三十二位『フレイル』のジェイス

序列二十六位『コラ』のブリッジャー、 序列二十五位『ハンマー』のヴァレンサイン

序列二十三位『警棒』のファーファラ、 序列二十二位『鎖分銅』のアルシス

序列二十位『大鎌』のタパル、 序列十九位『脇差』のアディ

序列十八位『匕首』のイース、 序列十七位『ランタン・シールド』のパーニカー

序列十六位『ピヌティ』のマー、 序列十五位『斬馬刀』のジャロ

計34名の剣聖、 帝国騎士団長ティプラーと帝国魔術師団長ティプリー率いる

帝国騎士団と帝国魔術師団、 そして帝国陸軍兵士の大部隊を展開した。

 

村への部隊は

序列七十一位『毒矢』のデン、 序列七十位『銅矛』のイーキン

序列六十九位『メリケンサック』のネム、 序列六十六位『兜』のオフィー

序列六十五位『バトル・フック』のジル、 序列六十四位『木刀』のバルター

序列六十三位『釵』のバリス、 序列六十二位『鏢』のブランド

序列六十一位『苦無』のスワン、 序列六十位『ジャベリン』のゼンダー

序列五十九位『ブーメラン』のマキスシャラス、 序列五十八位『鉄扇』のヘット

序列五十七位『鉤爪』のジャクジン、 序列五十六位『月牙』のシャラド

序列五十五位『火炎瓶』のエンパトジェイオス、 序列五十四位『人形』のカズダン

序列五十三位『モーニングスター』のコーラー、 序列五十二位『大戦斧』のマーズ

序列五十一位『槍』のジュンダ、序列四十位『チャクラム』のシスリン

以上20名の剣聖に帝国陸軍一個中隊。

 

順当に行けば勝てない筈は無いのだが・・・果たして・・・



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嵐の前の静けさ

鶴帝国軍は国境に近付いた場所で野営を行った。

 

「こうして剣聖が集まるのは滅多に無いな」

「だな」

 

八十八剣聖達が集まって食事を取っていた。

 

「行軍中とはいえ、 もっと良い食事を用意して欲しい所だな・・・」

 

支給されたシチューに文句を言う序列五十位『ヌンチャク』のゴム。

 

「そうぼやくなよ・・・所でゴムよ、 尋ねたい事が有るんだが良いか?」

「何だ? キュー?」

 

序列四十九位『枝』のキューがゴムに尋ねた。

 

「序列四十一位もお前と同じヌンチャク使いだよな」

「あぁ、 そうだな、 剣聖が使う武器が被ると言うのは

珍しいが歴史上無いわけではない」

「だろうな、 序列四十一位との仲は?」

「悪くも無いが良くもない、 アイツが誰かと関わるのを見た事が有るか?」

「無いな、 アイツは徹頭徹尾一人ぼっちの気味の悪い奴だったよ・・・」

「俺も仲良くなろうとは思ったさ、 同じヌンチャク使いだしな」

「対抗心は無かった?」

「無かった・・・と言えば嘘になるな

でも俺は自分が強いって事が分かっていればそれで良かったんだ

だがアイツは何時もだんまりだ」

「そうか・・・だけど序列四十一位の名前すら誰も知らないって可笑しくないか?」

「知ってるぞ」

 

序列三十四位『多節棍』のサラマンダーが現れた。

 

「サラマンダー殿、 序列四十一位の名前を知って居るのか?」

「知って居るぞ」

「どんな名前なんですか?」

「名前が無いのが名前だ」

「どういう事ですか?」

「言霊って知って居るか? 言葉には霊魂が宿るとか何とかいう・・・」

「良く分かりません」

「まぁ兎に角名前を知られると支配される、 そういう呪術的な観点から奴の親は

奴に名前を付けなかったんだ」

「なるほど・・・」

「だから名前の無いのが奴の名前だ

鶴帝国序列四十一位『ヌンチャク』の    、 それが奴の名前だ」

「呼ぶのにめんどくさいですね」

「奴の性格も捻じ曲がって誰とも話したがらない・・・」

「キラキラネームも問題だが名前を付けないのも大問題だな・・・」

「敵襲うううううううううううううううううううううううううう!!!!!」

 

伝令兵が叫びながら飛び込んで来た。

 

「遂に来たか!!」

 

立ち上がる3人。

 

「全員戦闘配置に付け!! 私に続け!!」

 

帝国騎士団長ティプラーが叫ぶ。

 

「我々も続くぞ!! 鶴帝国八十八剣聖の力!! 思い知らせてやる!!」

「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」

 

サラマンダーが叫び、 ゴムとキューが後に続いた。

そして多くの剣聖達も突撃するのだった。



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真夜中の開戦

シャリ王国と鶴帝国の国境近くで両軍が衝突。

シャリ王国はソルジャースシを押し出し先制攻撃を成功させるが鶴帝国八十八聖剣により

戦況を逆転される、 がヤミ・マスター達が前線に出て来て更に逆転される。

特にフェロシティーの闇の握りは当日が新月かつ真夜中だった事が災いし

尋常じゃない戦果を挙げたのだった。

 

序列七十三位『ハルバード』のティン、 序列五十位『ヌンチャク』のゴム

序列四十九位『枝』のキュー、 序列四十八位『鉄牙』のカル

序列四十七位『鉄球』のケスティス、 序列四十六位『ソードブレイカー』のシア

序列四十五位『鋸』のマラ、 序列四十四位『破城槌』のマー

帝国騎士団長ティプラーを含めた帝国騎士団の大半がフェロシティーに殺害される。

 

闇の握りの圧倒的な力にパニックになる鶴帝国軍。

序列十五位『斬馬刀』のジャロがフェロシティーに特攻。

闇の握りに腕を捥ぎ取られる大怪我、 聖剣『斬馬刀』の半壊と言う

痛手を被るも闇の握りの破壊に成功しフェロシティーに打撃を与える。

フェロシティーは戦線を離脱、 闇の握りの破壊に再度攻め込む鶴帝国だったが

フォビドォン・フルーツ、 プラスチックによる猛攻により戦線が停滞し

ヤミ・アプレンティス達も参加し、 鶴帝国が劣勢に追い込まれる。

鶴帝国側は序列二十六位『コラ』のブリッジャー、 序列二十五位『ハンマー』のヴァレンサイン

序列二十三位『警棒』のファーファラ、 序列二十二位『鎖分銅』のアルシス

序列二十位『大鎌』のタパル、 序列十九位『脇差』のアディ

序列十八位『匕首』のイース、 序列十七位『ランタン・シールド』のパーニカー

序列十六位『ピヌティ』のマー、 序列十五位『斬馬刀』のジャロ

そして騎士団と魔術師団の部隊が犠牲になり

シャリ王国側は天丼、 うな丼、 おくら、 ツナサラダ、 うどん、 かきあげ

ソルジャースシが犠牲になった。

 

シャリ王国にも犠牲が出て来た所で勝敗が分からなくなって来たという所で

裏切り者である序列八十二位『ナイフ』のソーラが勧誘していた

序列七十五位『鎖』のニカナス、 序列七十四位『布』のタスーと部隊を引き連れて

突如として鶴帝国の背後から強襲。

 

後衛に構えていた帝魔術師団は総崩れ、 帝国魔術師団長ティプリーも戦死。

裏切りに動揺したのか軍はパニックに陥り

序列八十二位『ナイフ』のソーラ、 序列八十一位『短刀』のシャアク

序列八十位『鈎』のイーヴン、 序列七十九位『棒』のジャージャー

序列七十八位『フィランギ』のサー、 序列七十七位『石鏃』のセフジェットが戦死。

 

大敗を悟った序列四十一位『ヌンチャク』の   、 は殿を務め

生き残りの部隊をコルサントに逃がしたのだった。



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戦の合間

鶴帝国とシャリ王国との初戦が終わった後、 シャリ王国軍は体勢を立て直していた。

そして本陣では・・・

 

「アンタが闇の親方が言っていた裏切り者の剣聖か」

「あぁ、 よろしく頼む」

 

序列八十二位『ナイフ』のソーラがフォビドゥン・フルーツの前に立つ。

序列七十五位『鎖』のニカナス、 序列七十四位『布』のタスーが後ろで様子を見ていた。

他数名の裏切り者達も居た。

 

「勧誘出来たのはこれで全部か?」

「バレない様にするのに苦労したんだぜ? 所で闇の親方は?」

「闇の親方は別動隊で動いている、 俺達はこれから港町に向かう」

「港町・・・例のクワイが殺された村か?」

「クワイ?」

「剣聖の一人だ」

「ふむ、 恐らくそうだろうな、 そこで網元を回収してコルサントに向かう」

「なるほど・・・そっちにも剣聖達と部隊が派遣されている」

「どんな構成だ?」

「序列七十一位『毒矢』のデン、 序列七十位『銅矛』のイーキン

序列六十九位『メリケンサック』のネム、 序列六十六位『兜』のオフィー

序列六十五位『バトル・フック』のジル、 序列六十四位『木刀』のバルター

序列六十三位『釵』のバリス、 序列六十二位『鏢』のブランド

序列六十一位『苦無』のスワン、 序列六十位『ジャベリン』のゼンダー

序列五十九位『ブーメラン』のマキスシャラス、 序列五十八位『鉄扇』のヘット

序列五十七位『鉤爪』のジャクジン、 序列五十六位『月牙』のシャラド

序列五十五位『火炎瓶』のエンパトジェイオス、 序列五十四位『人形』のカズダン

序列五十三位『モーニングスター』のコーラー、 序列五十二位『大戦斧』のマーズ

序列五十一位『槍』のジュンダ、序列四十位『チャクラム』のシスリン

以上20名の剣聖に帝国陸軍一個中隊、 遠距離の剣聖が多い、 大丈夫だろうか?」

「問題無い、 こっちにはヤミ・マスターが大勢居るんだ

さっきの闇の握りは凄かっただろう?」

「でも俺も怪我をさせられた」

 

フェロシティーが負傷した腕を見せる。

 

「闇の握りは暫く使えない」

「心配無い、 俺とプラスチック、 サー・アイの他にも大勢ヤミ・マスターが居るんだ」

「死んだヤミ・マスターもいるけどな」

「まぁそれはそれだ、 戦争だし死ぬ奴は死ぬだろ、 少し休んだらすぐさま行軍する」

「待ってくれ」

 

ソーラが制止する。

 

「何だ?」

「聖剣の回収をしても良いだろうか? 聖剣は鶴帝国の技術の結晶だ

放置するなんて事は勿体なさ過ぎる」

「それならば闇の親方から一応は回収しろと言われているから安心しろ」

「そうか・・・」



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舌が捥がれる

一方その頃、 村では鶴帝国が押していた。

闇のスシブレーダー達は村の入口でバリケードを張っていたが

剣聖達の決死の特攻で鶴帝国八十八剣聖序列五十三位『モーニングスター』のコーラー

序列五十二位『大戦斧』のマーズの二名を犠牲にするもバリケードを突破し村の中に侵入した。

 

「ぐは!!」

「ぎゃ!!」

 

スシブレーダー達が次々と倒される、 幾ら海の荒くれ者でも

戦闘の本職には分が悪い。

遠距離からスシブレードで攻撃するも村に来た剣聖達は遠距離攻撃が得意なので

距離のアドバンテージがまるで稼げないのだった。

 

「旦那!!」

「情けねぇ声出すなよ!! うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

マンテルが前に出てマグロ大盛りを繰り出した。

次々と繰り出されるマグロの切り身に帝国陸軍兵士を撃破する。

 

「旦那!! 前に出過ぎちゃ駄目だ!!」

「旦那を死なせるな!! 男衆来い!!」

 

タスケンとミゼルがサンドイッチ寿司とイカ墨スパゲッティを射出する。

 

「あの男が大将の様だ!! あの男を狙えええええええええええ!!」

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

 

毒矢、 バトル・フック、 火炎瓶、 チャクラム等、 様々な武器がマンテルに襲い掛かる。

慌てて逃げるマンテル、 剣聖達は彼を分断させるつもりなのだ。

 

「旦那!! 俺達が行くまで逃げてくれえええええ!!」

 

絶叫するタスケン、 しかし剣聖達は強い、 万事休すか。

一方で後方で待機している序列六十六位『兜』のオフィー、 序列五十四位『人形』のカズダン

そして数名の陸軍兵士。

 

「何故俺達は後方待機何だ?」

 

カズダンが聖剣『人形』の頭を撫でながらオフィーに尋ねる。

 

「全員で行く事も有るまいよ、 後方で何かが有った時に対応出来る様にしないと」

「それもそうか・・・うん?」

 

早馬に乗って伝令がやって来た。

 

「如何した?」

「はぁ・・・はぁ・・・国境沿いのシャリ王国軍との戦闘で当方大敗北!!」

「「!?」」

 

驚愕に目を開くオフィーとカズダン。

 

「八十八剣聖序列八十二位『ナイフ』のソーラ

序列七十五位『鎖』のニカナス、 序列七十四位『布』のタスーが敵に寝返り

当方の軍は総崩れ!! 戦闘に参加した剣聖で健在なのは序列四十二位『鋏』のマオタ

序列三十五位『分銅棒』のヴィン、 序列三十四位『多節棍』のサラマンダー

序列三十三位『メイス』のツイ、 序列三十二位『フレイル』のジェイスの五名!!」

「ば、 馬鹿な・・・ティプラーとティプリーは!? 帝国騎士団と帝国魔術師団は!?」

「両名戦死!! 帝国騎士団と帝国魔術師団も大打撃!!」

「・・・・・」

 

言葉を失う二人だった。



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報告し合う三人

「・・・・・」

「・・・・・オフィー、 こうやって唖然としている場合じゃねぇぞ

一体如何するよ」

 

カズダンがオフィーに尋ねる。

 

「如何するって・・・想定の範囲外だ、 剣聖が20人以上も死ぬって何だあり得んだろ!!」

「・・・・・陛下は何と?」

「この村の討伐を終えた後にすぐさまディムUに向かい生き残った剣聖と

コルサントからの増援と合流し、 シャリ王国軍と再度戦闘を行う様にとの命です」

 

伝令が伝える。

 

「コルサントからの増援は?」

「帝国陸軍兵士と鶴帝国八十八剣聖序列三十六位『トンファー』のチョイ

序列三十九位『投石器』のタロン、 序列三十八位『手裏剣』のジェレク

序列三十七位『手甲剣』のチャーフ、 序列三十一位『スリングショット』のフィストー

序列二十四位『クロスボウ』のティプリーの6名です」

「悪くない布陣だが・・・如何思う?」

「どうもこうもない、 まずはこの村の制圧を進めるべきだ・・・むっ」

 

村の方角から序列五十七位『鉤爪』のジャクジンが走って来た。

 

「如何した?」

「村のボスを分断する事に成功した、 こっちに来るかもしれない」

「なるほど・・・ジャクジン、 早々に片を付ける必要が出て来た」

「どうしてだ?」

「シャリ王国との国境との戦いでこっちが大敗北だ

3人の剣聖が裏切って20人以上の剣聖が死んだ、 双子団長と

騎士団魔術師団が大打撃だとよ」

「信じられないな、 誤報じゃないのか?」

 

ジャクジンが訝しむ。

 

「そう思いたくなるのは当然だ、 しかし・・・」

「この話は後だ、 今は冷静に眼前の敵に対処するべきだろう」

 

ジャクジンが話を遮る。

 

「それもそうだな・・・さっさと終わらせてしまいたい所だが・・・

そっちの戦況は?」

「村に配置されたバリケードをコーラーとマーズがその身を犠牲に破壊してくれた

敵の抵抗は激しく未知の武器を使うとは言え、 相手は体を鍛えた素人

俺達が負けるとは思えないが手こずるだろうな・・・」

「そうか・・・」

「敵のボスを殺す事で士気を下げられれば勝機は見える、 俺達が要と言う事だな」

「・・・敵は地元の奴だ、 素直にこの道を通るとは思えない」

 

カズダンが割って入る。

 

「裏道が有るかもしれないって事か?」

「可能性としては無くはないだろ」

「まぁ追っている連中も手練れだ、 そう簡単に捲ける相手じゃない」

「追っているのは?」

「遠距離武器組だ」

「お、 おい!! 良いのかよ!! 村の所が近距離武器だけになるじゃないか!!」

「まぁ心配すんなってボスを殺せばすぐに住む」

 

楽観視するジャクジンだった。



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火柱

マンテルは追手から逃げていた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・くそ!! 流石に剣聖が・・・何人だ?」

 

マンテルを追っているのは

鶴帝国八十八剣聖序列七十一位『毒矢』のデン、 序列五十五位『火炎瓶』のエンパトジェイオス

序列六十五位『バトル・フック』のジル、 序列五十九位『ブーメラン』のマキスシャラス

序列六十一位『苦無』のスワン、  序列四十位『チャクラム』のシスリン

計6人、 彼等は全員遠距離武器を使っている。

彼等の攻撃を回避しながら裏道を逃げ回るマンテル。

 

「ちぃ!! こうなれば・・・あれしかねぇ!!」

 

マグロ大盛りからマグロを取り除き大量の大トロを乗せ始めるマンテル。

闇のパワーで銛の形に無理矢理収める。

不完全で不格好な技だが威力は計り知れない。

マグロの赤身で同じ様に銛を造り出して的に向かって撃ちだした結果

地面が抉れる程のパワーだった。

大トロを使えば更に強いパワーが出せるとマンテルは踏んだ。

即興だったが何とか大トロは三又の銛になった。

そしてその三又の銛をスシブレードの要領で射出した。

 

ここでマンテルは誤算が有った。

まずマンテルは剣聖の数を減らす為に銛を造り出して射出したのだが

銛が地面と接地し摩擦で着火し炎の銛と化した。

その為、 威力が凄まじい事になってしまった。

結果として6人の剣聖は何が起こったのか理解する間もなく爆発四散してしまった。

予想以上の破壊力で剣聖を吹き飛ばしたマンテルだったが威力が高過ぎて火柱が巻き起こり

村の周囲の森に飛び火してしまった。

自身も破壊力の高さに吹き飛ばれて肋骨を骨折してしまった。

 

「「な、 なんだあれは!?」」

 

剣聖、 スシブレーダー共に火柱に仰天する。

 

「隙ありいいいいいいいいいいいいいい!!」

「ぐはあ!!」

 

隙を見逃さずにタスケンが攻撃を加えて剣聖を撃破する。

 

後方に待機していた剣聖3人達は・・・

 

「逃げろおおおおおおおおおおおおお!!」

 

ジャクジンが全力疾走で逃げ出した。

 

「お、 おうジャクジン!? 何処に行くんだ!?」

「馬鹿野郎!! あんなの俺達如きで如何にか出来るかぁ!!

ここは逃げるしかねぇだろう!!」

「逃げるって何処にだよ!!」

「コルサントだ!! コルサントに行ってヨーダ先生になんとかして貰うしかねぇ!!」

「落ち着け!! ディムUに国境戦の生き残りが・・・」

「合流しても仕方ねぇだろおがあああああああああああああ!!」

 

そう言ってジャクジンは去って行った。

 

「ど、 如何する?」

「如何するって・・・こうなったら仕方ない、 急いで状況を収集するしかない!!」



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合流

オフィーとカズダンは村に向かい、 大急ぎで現状を剣聖達に説明しようとした、 だが・・・

 

「戦闘の真っ最中だな、 説明何て出来る状況じゃねぇ!!」

「だとしても一体如何する?!」

 

頭を抱える二人、 更に追い打ちをかける報せが届く。

 

「伝令!! 国境線を越えたシャリ王国の軍隊が

この村に向かって来ている模様!!」

「なんだと!?」

 

オフィーとカズダンは頭を抱えた、 この状況で攻められては勝ち目が無い。

伝令をすぐさま飛ばして聖剣達を回収して連れ戻す事にした。

しかしながらシャリ王国の部隊が来ている事を喧伝して回ったので

村の者達の士気が向上し、 犠牲者が多数出てしまった。

剣聖達も序列六十三位『釵』のバリス、 序列六十二位『鏢』のブランド

序列六十位『ジャベリン』のゼンダー、 序列五十八位『鉄扇』のヘットの四名が犠牲になり

生き残った者達も怪我を負った者が多かった。

とは言え村の方にも打撃が有り多くの若い男衆達が犠牲になってしまったのだった。

 

「何とかなったようだな・・・」

 

マンテルがよろよろとやってくる。

 

「旦那!! 大丈夫ですか!?」

「アバラが折れた・・・・・それよりも凄い活気だな・・・」

「シャリ王国の援軍がこっちに来るらしいですよ!!」

「マジか、 親方には悪いが俺は休ませて貰おうか・・・」

 

そうこうしているとシャリ王国のスシブレーダー達がやって来た。

 

「・・・闇の親方は?」

 

マンテルがやって来たスシブレーダーに尋ねる。

 

「闇の親方はこっそりコルサントに向かっている」

「マジか・・・」

「俺達はアンタを連れて来る様に言われているんだ」

「あー・・・俺アバラいっちゃってるんだけど・・・」

「マジか・・・如何しよう・・・」

「お、 俺が代わりに行く!!」

「俺も!!」

 

タスケンとミゼルが名乗りを上げる。

 

「いや、 じゃあ俺が行くよ」

「「旦那!!」」

「良いのか?」

「俺の事を想っているんだ、 期待には応えてやらないと、 あつつ・・・」

 

ふらつくマンテル。

 

「お、 俺も付いて行きます!!」

「俺も!!」

 

タスケンとミゼルが名乗りを上げる。

 

「まぁ好きにしろ・・・」

「ほ・・・所で親方の所には何人いるんだ?」

「何人?」

「まさか一人で出歩いているって事は無いよな?」

「豚の男が一緒に居る」

「・・・・・二人か?」

「正気かよ・・・」

「あの二人ならば心配は要らないだろうさ・・・」

「ならば良いんだが・・・所でシャリ王国の王様は?

この国に来ているのか?」

「如何だろうな、 詳しい事は聞いていないから分からない」



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右往左往

鶴帝国、 皇帝の居城コルサント議会場にて女帝テタを始めとした

大臣達が悲痛な表情を浮かべていた。

 

本来ならば八十八聖剣も会議に参加させるべきなのだろうが

大臣の中に裏切り者が出た剣聖に不信感を持つ者が出た為

参加を自粛して貰う事にした。

 

「無意味な事だな」

 

テタが自嘲した。

帝国騎士団長ティプラーと帝国魔術師団長ティプリーが居ない今。

もしも剣聖が反旗を翻したら自分達は如何する事も出来ないのだ。

 

「陛下、 聖剣達の今後は如何するべきでしょうか?」

「剣聖に対する権利の縮小を提言します」

「お前ッ!! 剣聖に今まで助けて貰ってそれはッ!!」

「剣聖から裏切り者が出て更に今回大打撃を受けた

剣聖は我々の期待を裏切った形になった訳です

信用と実力の両方で」

「裏切り者が出たのは下位の剣聖だ!! 下位の剣聖の褒章が少なかったのも問題だろう!!」

「聖剣一人一人に上位剣聖と同じ褒章をしていたら国が破綻する!!」

「だったら最初から上位剣聖達の待遇を考えるべきだろう!!」

「国政を左右する剣聖の待遇を下げるのは恥だ!!」

「財政に問題をきたすならば恥も飲み込め!!」

 

大臣達は責任の擦り付け合いをしていた。

 

「・・・・・はぁ」

 

テタは溜息を吐いた、 前皇帝の激動の時代を経験していない

二世三世の大臣達ではこの程度か・・・と俯いた。

 

「会議中に失礼します!!」

 

伝令が大慌てでやって来た。

 

「何だ!? 今会議中だぞ!! 後にしろ!!」

「いや、 構わない何だ?」

 

大臣の叱責を却下してテタが伝令を促した。

 

「それが」

 

どごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

と凄まじい轟音が聞こえた。

 

「な、 何だ!?」

 

大臣達が慌てて廊下に出て窓から確認した。

会議室は狙撃を恐れて窓が無いのだ。

 

「お、 おい!! 正門が何者かに破られているぞ!!」

「何だと!?」

 

驚愕する大臣達。

 

「すぐさま剣聖達を現場に向かわせて乗り込んで来た奴を始末しろ!!」

 

テタが伝令に指示を飛ばす。

 

「え、 あ・・・」

「早く行け!!」

「は、 はい!!」

 

伝令が慌てて走り去った。

 

「我々も避難しましょう!!」

「あぁ分かった、 諸君らも気を付けてな」

 

テタと大臣達は護衛達を連れて別れた。

要人用の避難経路が有るのだ。

避難経路には皇族専用の物が有るので別れて逃げる事にした。

 

「・・・・・」

 

テタは足を止めた。

 

「如何したのですか陛下、 早く逃げないと・・・」

「いや・・・さっきの伝令何を伝えに来たんだと思ってな・・・

まぁ良い、 さっさと避難しよう」

 

テタは走って行った。



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コルサント城下町食べ歩き

時間は少し遡りコルサント城下町。

二人のローブを被った男が歩いていた。

 

「デカい街だな」

「そうですね、 東京や大阪程じゃないですけど結構凄いんスかね」

 

闇のスシブレーダーの親方"闇"とブタの男である。

 

「そこの二人!! ケバブは如何かね!?」

 

露店でケバブ売りのオッサンが声を挙げる。

 

「おう兄ちゃん、 それくれよ」

「あいよー」

 

親方"闇"は露店で売っていたドネルケバブを購入した。

 

「あ、 そっちじゃなくてそのデカい肉の塊をくれ」

「は? 何言ってんだ?」

 

ドネルケバブは香辛料やヨーグルト、 マリネなどで下味を付けた肉を大まかにスライスして

積み重ねて特別な垂直の串に刺し、 あぶり焼きにしてから外側の焼き上がった褐色の層を

大きなナイフで薄くそぎ落とした肉料理である。

 

原型はマトンかラム肉のみを使うが

このケバブ屋は如何やらシチメンチョウと鶏肉などが使われている様だ。

ライスやサラダを添えてメインディッシュとして

また、屋台などで売られているドネルケバブではピタなどにケバブと野菜をはさみ

好みのソースをかけて食べる方法が広がっている。

 

しかしながら闇は串毎肉を全部買って行ったのだ。

金なら幾らでも有るのだ。

 

「お、 うめーな」

 

むしゃむしゃと骨付き肉の要領で齧る闇。

 

「ケバブをそんな喰い方しますか?」

「漫画で見た事有るぞ」

「漫画と現実をごっちゃにしないで下さいよ・・・」

 

コルサントに向かって食べ歩きをしながら進む二人。

 

「魚は割と少ないですね」

「いやぁ、 露店で魚と言えばタコ焼き位だろう

焼き魚売ってる露店とか見た事あるか?」

「あんまり見ないですね・・・」

「だろぉ? それであのデカい城がコルサントか?」

「そうですね・・・どうします?」

「とりあえずは挨拶して行こうか」

 

闇はガブリと肉に喰らい付いて箸で肉の串を持ちスシブレードの要領で射出した。

圧倒的質量のドネルケバブはコルサントの城門に激突し破壊した。

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!

と轟音が鳴り響いた。

 

城下町の住民達は逃げ回り、 城から衛兵が出て来た。

ブタの男がハンバーグで衛兵たちを迎撃する。

 

「凄いっすね・・・あの質量のケバブを射出するなんて・・・

ラーメンを超えたのでは?」

「いや、 駄目だな、 威力は有るが形が串型で制御がまるで出来ない

まぁ最初にハッタリかますには良い感じだろうな

ラーメンも今回使う奴でラストになるだろうし、 じゃあ中に入るか」

「そうですね」

 

城の中に入るブタの男と闇。



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二重の衝撃

コルサント城内に居る12人の剣聖

序列十四位『ヤタガン』のヌー、 序列十三位『マチェテ』のジャラス

序列十二位『ウルミ』のケイナン、 序列十一位『サーベル』のコールマン

序列十位『吹き矢』のジョカスタ、 序列八位『斧』のプロ

序列七位『胡蝶刀』のアディ、 序列五位『薙刀』のオポー

序列四位『大太刀』のオビワン、 序列三位『魔法剣』のスタス

序列二位『盾』のヤレアル、 序列一位『聖剣』のヨーダも大臣や女帝達とは

別の部屋で会議を行っていた。

 

「今回の剣聖の大量死はテタ陛下の運用ミスでは無いでしょうか?」

「ヌーよ、 それは如何言う事だ?」

「はい、 少ない数で出撃して各個撃破されてしまう隙を与えたかと・・・」

「話にならないな」

「全く、 その通りだ」

 

スタスとオポーが嘲る。

 

「我々剣聖は一騎当千の強者として国から認可を受けている

弱いから負けましたでは話にならん」

「その通り、 第一剣聖30人でも過剰戦力とされていたんだ」

「しかし現実に剣聖は撃破されているでは無いですか」

「気持ちは分かる、 ヌーよ」

 

ヨーダが諫める。

 

「大勢の剣聖が殺されたのを我々は受け止めなくてはならない

それは誰のせいでも無いのだ、 誰かの責任にしても眼の前の刃は止まらない

我々は剣を振い続けるしか無いのだ」

「しかしヨーダさん・・・」

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!

と大きな音が鳴り響いた。

ヨーダはその場から走り去った。

 

「敵襲か!!」

「ヨーダさんに続けえ!!」

 

ヨーダに続く11人。

音源に辿り着くとそこには闇とブタの男が居た。

彼等は既に城内に侵入していた。

 

「二人だけとは舐めてくれたな!!」

「如何やら向こうも一騎当千の様だな・・・」

 

冷たい汗が背筋を流れるのを感じるヨーダ。

明らかに今まで相手にして来た者達とは違う、 濃密な死の気配を感じた。

 

「うん? 気が付いて無いのか?」

「てっきりもうバレているかと思ったが・・・」

 

闇とブタの男の言葉に違和感を感じるヨーダ。

 

「何の事じゃ・・・」

「まさか二人で来る訳無いだろう」

「!?」

「まさか仲間が居るのか!?」

「あぁ、 後から来るが・・・そろそろかな?」

「?」

 

遠くの空から影が見えた、 アレはシャリ王国の飛空艇!!

 

「ま、 まさか!!」

「そのまさかだ」

 

飛空艇がコンサルトに突っ込んで来た。

言葉に形容しがたき轟音を超えた轟音が鳴り響き。

コルサントが半壊した。

 

「さぁ戦争の時間だ」

 

燃え盛る飛空艇から複数の影が降りて来た。



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スシの暗黒卿VS剣聖 part1

飛空艇から降りて来たのはシャリーラ13世。

アソウ・タノ、 ダースシ・セキユー、 やみちゃん、 ダースシ・ノーテン

フグ、 ヘカトンケイル、 サーストン、 バリゾーゴン、 ダークイタマエ

そしてダースシ・ヴォルフガング。

スシの暗黒卿11人である。

 

「一人一殺でもこっちが余る位だな」

「くっ、 いくぞおおおおおおおおおおおお!!」

 

ヨーダが先陣を切って剣聖達が剣を振う。

アソウ・タノがスシブレードを取り出す。

彼女のスシブレードは鶏の軟骨揚げ、 器毎回し威力は大した事は無いが

数による散布で圧倒的な制圧力を誇る。

軟骨揚げの怒涛の津波がクレイモア地雷の鉄球の様に剣聖達に襲い掛かる。

 

「舐めるな!!」

 

鶴帝国八十八剣聖序列二位『盾』のヤレアルが聖剣『盾』を構える。

その名の通り防御専用の聖剣だが圧倒的防御力を誇り、 展開式になっており

鳥の軟骨揚げをガードする。

 

「甘い」

 

ダースシ・ヴォルフガングが聖霊を召喚して盾を構えたヤレアル毎吹き飛ばす。

 

「ヤレアル殿!!」

「馬鹿な!!」

「喋っている暇は無いぞ!!」

 

ヨーダが闇に向かって聖剣『聖剣』を振り下ろす。

しかし彫刻のスシブレードがヘカトンケイルから射出される。

 

「ぐぅ!!」

 

聖剣でガードするも数が多過ぎる。

 

「ヨーダ殿!! 今行きます」

 

序列四位『大太刀』のオビワンがヨーダの元に向かおうとするも足が凍っている!!

やみちゃんのアイスクリームチョコソースがけの冷気攻撃である!!

 

「油断するなオビワン!!」

 

序列三位『魔法剣』のスタスが聖剣『魔法剣』で熱を造り出してオビワンの氷を溶かす。

 

「スタス殿すまない」

「気にs」

 

全てを言い終える前にスタスの上半身は吹き飛んだ。

バリゾーゴンのスシブレード、 岩石が飛んで来たのだ。

バリゾーゴンは岩喰いの魔族、 故に岩石を食べ物=スシブレードと見做して

射出する事が可能なのだ。

 

「この化物共めぇええええええええええ!!」

 

序列八位『斧』のプロ、 序列七位『胡蝶刀』のアディ、 序列五位『薙刀』のオポーが

一斉に武器を構えて向かって来る。

その間に割って入るサーストン。

 

「ひひひひひひっひひひひいひひひひいひいひひ!!!」

 

狂笑を笑いながらスシブレードを回す。

邪神の体の一部をスシネタにした逸品である。

 

「う、 うわああああああああああああああああああああああ!!」

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!」

「ひぃ・・・ひいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

 

三者三様で逃げ惑う、 邪神は精神攻撃のスシブレードである。

剣聖とは言え所詮は人間、 神の前では無力である。



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スシの暗黒卿VS剣聖 part2

戦況は圧倒的に聖剣側に不利である。

アソウ・タノの軟骨揚げの弾幕とダースシ・セキユーの絶え間ないザクロによる攻撃。

ダーク・イタマエによる隠し包丁の乱打、 やみちゃんの冷気。

一人一殺と闇は言っていたが完全に全員が一人で全員を相手取ろうとしている。

 

「くっ、 そお!!」

 

序列十四位『ヤタガン』のヌーが前に出ようとするが聖霊や彫刻で消し飛ばされる。

 

「ヌー・・・!!」

「ヨーダ殿!! 撤退しよう!!」

 

オビワンが叫ぶ。

 

「ヤレアル殿は深手で立ち直れない!! こんな広範囲の攻撃を多用して来る者達が

共同して襲い掛かられては我々の拙いチームワークでは太刀打ち出来ない!!」

「くっ・・・オビワン、 生き残りを連れてここから逃げろ!!

ワシが殿を務める!!」

「そんな!!」

「良いから聞け!! ワシはこの国に長くお仕えして来た!!

このまま逃げる等戦略として有りでもワシのプライドが許さん!!

ここは奴等に一太刀でも浴びせてから行く!!」

「待ちなされ・・・」

 

ヤレアルがオビワンの肩を借りて立ち上がる。

 

「私も限界です・・・私もお付き合いしましょうぞ・・・」

「すまぬな・・・さぁ行けオビワン!!」

「くっ、 行くぞ皆!!」

 

序列十三位『マチェテ』のジャラス、 序列十二位『ウルミ』のケイナン

序列十一位『サーベル』のコールマン、 序列十位『吹き矢』のジョカスタは

オビワンに連れられて逃げた。

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!! 行くぞおおおおおおおおおおお!!」

 

ヨーダが前に出た、 ヤレアルがガードしながら聖剣で攻撃をいなすヨーダ。

 

「話にならない、 もう一度聖霊で吹き飛ばされろ」

 

そう言ってダースシ・ヴォルフガングは聖霊でヨーダに殴りかかる。

 

「危ない!!」

 

ヤレアルがガードする、 聖霊で殴り飛ばされた彼は今度こそ彼岸に渡ったのだ。

 

「たあああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

続けざまの攻撃をヨーダは聖剣で聖霊の拳毎叩斬った。

 

「な、 なにぃ!?」

「はあああああああああああああああああああああああああ!!」

 

追撃しようとするヨーダ。

しかしハンバーグで阻止される。

ヨーダはハンバーグに飛び乗って攻撃を回避しながら移動する。

 

「くっ、 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

ヨーダがハンバーグに乗って動き回る。

 

「くっ・・・な、 何だ!? 師匠!! ハンバーグのコントロールが奪われました!!」

「ふん、 如何やらかなりのスシブレードの素質が有ると見た・・・良いだろう

俺が相手だ」



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鶴帝国の顛末

剣聖達との決着が着いた後の行動は何もかもすんなりと片が付いた。

ソーラから大臣達の避難経路については予め聞いていたので大臣達は全て始末し

王族の脱出経路も調べ上げて半月に渡る追跡の結果、 テタを捕縛。

テタを精神酢飯漬けにして反攻勢力を一ヶ所に集めて虐殺を行った。

逃げ出した鶴帝国八十八剣聖序列十三位『マチェテ』のジャラス

序列十二位『ウルミ』のケイナン、 序列十一位『サーベル』のコールマン

序列十位『吹き矢』のジョカスタ、 序列四位『大太刀』のオビワンは

テタの名前を使いヨーダを始めとした者達を殺した反乱者として

指名手配を行い処刑した、 オビワンだけは逃げられてしまった。

 

次に生き残りの剣聖、 序列三十六位『トンファー』のチョイ

序列三十九位『投石器』のタロン、 序列三十八位『手裏剣』のジェレク

序列三十七位『手甲剣』のチャーフ、 序列三十一位『スリングショット』のフィストー

序列二十四位『クロスボウ』のティプリー、 序列四十二位『鋏』のマオタ、 

序列三十五位『分銅棒』のヴィン、 序列三十四位『多節棍』のサラマンダー

序列三十三位『メイス』のツイ、 序列三十二位『フレイル』のジェイス

序列七十位『銅矛』のイーキン、 序列六十九位『メリケンサック』のネム

序列六十六位『兜』のオフィー、 序列六十四位『木刀』のバルター

序列五十七位『鉤爪』のジャクジン、 序列五十六位『月牙』のシャラド

序列五十四位『人形』のカズダン、 序列五十一位『槍』のジュンダ

彼等も再編の為と偽り全て招集されて一ヶ所に集められて始末された。

彼等もまさか鶴帝国の皇帝が操られているとは思っていなかったようで

すんなりと事は上手く運んだ。

 

残る聖剣、 鶴帝国に幻滅し鶴帝国から立ち去った

序列七十六位『鐺ハ』のジョソール、 序列七十二位『ジャガイモ』のスタ

序列六十八位『狼筅』のパブロ、 序列六十七位『義眼』のヴァーゲア

序列四十三位『万力』のツッソ、 序列三十位『火矢』のベアドン

序列二十九位『ファルシオン』のルミナーラ、 序列二十八位『カットラス』のエズラ

序列二十七位『レイピア』のアンドゥリ、 序列二十一位『ホルカンカ』のベルス

序列十九位『脇差』のアディ、 序列十八位『匕首』のイース、 以上十二名は

『失われた十二人』と呼ばれる者達の足取りは掴めなかったが

彼等にこの状況を何とか出来るとは思えなかったので

情報を引き出したテタは始末したのだった。

 

こうしてシャリ王国は鶴帝国に完全勝利したのだった。



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ダークネスシ帝国の誕生

シャリ王国と鶴帝国が併合した事により各国は衝撃を受けた。

すぐさまに警戒を強める他国に対してシャリ王国首脳陣が考えた事は一体・・・。

 

「国号を変える?」

「その通りです」

 

シャリ王国首都コメドコロ、 居城であるコメドコロセンターで

シャリーラ13世は闇に言った。

 

「領土が広がり、 我々は最早大帝国となったならば新しい国号を名乗るのが筋かと

これからのビジョンも有りますし」

「ビジョン? 世界征服だろ?」

「そうですが唯単に世界征服を打ち出しても誰も納得しないでしょう

殺したが事実を隠している魔王との戦争に備えた

統一人類国家を造り出して全ての人類国家に対し人類同士の諍いを無くし協調し

共に魔王と戦うという大義名分を掲げて全世界を併合したいと思います」

「悪くないアイデアだ」

 

闇が指差す。

 

「その為にもシャリ王国、 鶴帝国と言う国号を廃した

新しい国号を名乗るべきかと思います」

「確かになぁ、 お前は影武者だからシャリ王国の王家の血を引いていない

新しい国号を名乗ると良い、 だが何と名乗る?」

「そうですねぇ・・・闇スシブレーダー帝国は如何でしょうか?」

「本当にそれで良いのか?」

「駄目ですか?」

「ダサく無いか? まぁお前がそれで良いなら良いが・・・」

「うーん・・・ちょっと考えますね」

 

国号を変えると言う事は流石に大事なので様々な観点から物事を決められた。

言語学者や占い師、 更に闇も交えて長期の会議の結果。

 

・闇寿司を表す単語を入れる。

・帝国と言う形にする。

・馴染みやすい形にする。

・字画は16~25画以内(帝国は含めない)

 

という形になった。

 

「闇寿司帝国で良いのでは?」

「字画がオーバーだし馴染みやすいとは言い難い

ダーク、 とかそう言う感じで良いのでは?」

「ダークスシ帝国では?」

「もう少し一ひねり入れたい、 ダークネススシ帝国・・・」

「語呂が悪いな、 ダークネスシ帝国、 これで良いんじゃないか?」

「ダークネスシ帝国・・・うーん、 どうだろうなぁ・・・

スシダーク帝国と言うのは?」

「ふーむ・・・如何だかなぁ・・・」

 

会議が紛糾した結果

ソルジャースシを始めとしたスシブレーダー達による多数決で決められた。

彼等もこんな事になるとは思っていなかった様だが。

投票の結果。

馴染みやすく分かり易いとしてダークネスシ帝国と国号は改められる事になった。

ついでにコメドコロもニーガタと名前を変更する事になった。

こうしてダークネスシ帝国が世に産声を上げ、 惨劇が始まるのだった。



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最終章:スシの夜明け
極秘!!第四章終了時の闇のスシブレーダーとスシブレード名鑑


本名:アソウ・タノ

スシの暗黒卿の一人。

普段は王立学園に通っている女学生だがその正体は異世界からの転生者である。

しかし異世界から転生してきたは良い物のスキルを発揮出来ずに困っていた所に

闇からの勧誘を受けて闇のスシブレーダーになった。

シャリーラ13世とは学友で丁寧に接しているが

彼女にとって他人は全てゲームのキャラクターで自分がヒロインだと思っている。

極めて自分勝手な性格であり、 他人を平気で害する事が出来る外道である。

しかし好き好んで人を害する正確ではない為、 スシの暗黒卿の中では

穏健派だと思われている、 その為よく相談を受けるが相談相手を裏切る事もしばしばである。

 

使用スシブレード:鳥の軟骨揚げ

攻撃力:E 防御力:E 機動力:E 持久力:E~S 重量:E~S 操作性:SSS

鳥の軟骨揚げのスシブレード。

大量に鳥の軟骨揚げが入った器で鳥の軟骨揚げを大量に射出し

大勢の相手にダメージを与える事が出来る軍隊が相手でも対応出来るスシブレードである。

軟骨一つ一つのダメージは小さいが大量に射出するのでダメージは甚大である。

反面、 防御力が高い相手には大してダメージは無い。

 

親方”闇”からの総評

異世界転生か・・・俺も勉強が足りないな

 

 

本名:バリゾーゴン

スシの暗黒卿の一人。

元四天王の一人の魔族だったが魔王を裏切り闇に着いた。

四天王の中では最弱で上昇志向が強く、 他人を蹴落としても平然としている。

普通に殴り合っても強いがスシブレードを扱う事で更に強くなった。

因みに成人男性よりもガタイが良いが、 魔族は成人の形で生まれる為

見た目よりもずっと若く、 実年齢は5歳である。

主食は岩で大好物は石炭。

 

使用スシブレード:岩

攻撃力:S 防御力:S 機動力:C 持久力:B 重量:SS 操作性:C

岩のスシブレードである。

バリゾーゴンは岩喰いの魔族なので岩をスシブレードとして扱う事が出来る。

威力が高く当たれば即死は免れない物だが派手さは無い。

しかし岩ならば調達出来れば幾らでも使う事が出来る為

コストパフォーマンスが良い。

 

親方”闇”からの総評

スニークを思い出すなぁ・・・

 

 

 

本名:サーストン

スシの暗黒卿の一人。

シャリ王国宮廷魔導士長で闇達を召喚した魔法使いでもある。

魔法使いとしての力量は高いが先任の宮廷魔導士長と比較されては落ち込んだり

大きな魔法の際には緊張する、 功績を求めて勇者召喚を行い

闇を呼び出した際には猛省して邪神の力を得ようと邪神を召喚するも

精神が半ば崩壊しかけている。

 

使用スシブレード:邪神

攻撃力:- 防御力:E 機動力:E 持久力:E 重量:E 操作性:SSS

邪神のスシブレード。

異次元のタコの様な邪神の触手を使ったスシブレードでスシブレードそのものの

ステータスは非常に弱いが、 精神攻撃でスシブレーダーに

ダイレクトアタックする事が出来る。

反面、 強い心を持っていれば打倒は可能だが相当に厳しい。

 

親方”闇”からの総評

精神酢飯漬けに似ているな・・・



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オープニング・クロール

バルド達がファウンデーション法国に戻り体制を立て直している間に

ダークネスシ帝国の復讐が始まった!!

ファウンデーション法国に向けて闇を含めた全てのスシの暗黒卿を含めた大軍勢が

ファウンデーション法国に向かう!!

スシの暗黒卿を葬る事は人類に対する著しい損失だとシャリーラ13世は非難した。

 

ダークネスシ帝国とファウンデーション法国と全面戦争が始まった!!

この戦いに勝った者が世界を制するとあっては最早傍観は出来ない

モグサール共和国、 ゴック国、 MD、 そしてファウンデーション教国

メイテイ国、 マナ法国は死に物狂いで同盟を結んだ。

しかしダークネスシ帝国の圧倒的な力の前に次々に連合軍は打倒される。

鶴帝国に幻滅し鶴帝国から立ち去った

序列七十六位『鐺ハ』のジョソール、 序列七十二位『ジャガイモ』のスタ

序列六十八位『狼筅』のパブロ、 序列六十七位『義眼』のヴァーゲア

序列四十三位『万力』のツッソ、 序列三十位『火矢』のベアドン

序列二十九位『ファルシオン』のルミナーラ、 序列二十八位『カットラス』のエズラ

序列二十七位『レイピア』のアンドゥリ、 序列二十一位『ホルカンカ』のベルス

序列十九位『脇差』のアディ、 序列十八位『匕首』のイースからなる

『失われた十二人』もファウンデーション教国への加勢を表明。

それでも戦局は圧倒的であった。

 

サンシャイン王国を跨りファウンデーション教国目前にまでダークネスシ帝国軍は迫り

先発して来たダースシ・オーモリと新しくスシの暗黒卿になった

フォビドゥン・フルーツの部隊とバルド達は激戦を繰り広げる!!

そしてファウンデーション教国内部にはフグとその配下のスシトルーパー

スベスベマンジュウガニ、 ゴンズイ、 キタマクラ、 ハコオゼ、 アイゴの

毒殺スシブレーダー部隊が侵入して来ていたのだ。

 

圧倒的不利な状況下でO5-1は逡巡した。

最終手段を使うしかない・・・彼は思い詰め始め腹を括り始めていたのだった。

 

一方四天王最後の一人にして現状の魔物達の最高指導者であるアーマゲドンは

攻勢の機会を伺っているが明らかに不甲斐無いファウンデーション教国を始めとした連合に

歯がみして魔王が既に死んでいる事実を暴露しようとしていたのだった。

 

スシブレードが舞い、 策謀が交錯し、 思いが飛び交う混沌の世界。

果たして最後に笑うのは一体誰なのか・・・

 

爆転ニギリ スシブレード:ファンタジア ~The Lucifer Ascension~

最終章:スシの夜明け 開幕



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戦線を死守せよ!!

ファウンデーション教国軍は

サンシャイン王国のジーオノシス平原に陣を展開した。

否、 ジーオノシス平原まで陣を押し下げられたと言った方が正確だろうか・・・

 

「戦況は!?」

 

本陣で指揮官のミーナが叫ぶ。

 

「レーア令嬢とスシブレーダー達が右翼でスシの暗黒卿フォビドゥン・フルーツと交戦中!!

中央部でスシブレーダー部隊バルド隊長がスシの暗黒卿ダースシ・ノーテンと交戦!!

左翼から敵スシブレーダー部隊が殺到して来ています!!」

「押さえられないか・・・!!」

「撤退しましょう!!」

「それは出来ない!! この陣を下げてしまえば

スシブレーダー部隊がスシの暗黒卿に勝って帰って来たとしても後が続かない!!

彼等の生存がこの戦争の勝利を握る!! 死んでも戦線は下げない!!」

「しかし!!」

「伝令!!」

 

伝令が慌てて本陣に入って来た。

 

「左翼から魔物の群れが現れて敵スシブレーダーと交戦!!」

「何で魔物が!?」

 

様子を伺っていたアーマゲドンが戦況の悪さに加勢したのだ。

こうしないと漁夫の利にすらならない。

 

「首の皮一枚で繋がった・・・」

「傍観は出来ません!! 左翼の一部が此方に来ています!!」

「抑えられるか!?」

「・・・厳しいかと・・・」

 

敵の質はスシブレーダー同士の殺し合いにより高められている

数を犠牲にしたがそれでもヤミ・アプレンティス以上のスシブレーダーが

多数を占める現状は悪夢と言うほかない。

 

「本隊が来ていない状況でこれか・・・笑える位散々な状況だな」

「我々は勝てるでしょうか・・・」

「兎も角、 ここは死守するぞ」

 

叫び声と爆音が聞こえる、 ミーナが弩を構える。

 

「敵攻撃来ます!!」

「!!」

 

スパイシーな香りを漂わせてジョロキア寿司が飛んで来る!!

 

「げほっ!! げほっ!!」

 

尋常じゃない辛み成分で周囲は大パニック!!

 

「くそおおおおおおおおおお!!」

 

弩で正確にスシブレードを貫くミーナ。

辛み成分の散布は何とか収まったが次々とスシブレードが飛んで来る。

 

「怯むな!! 持ちこたえるんだ!!」

 

ミーナのこめかみにスシブレードが掠る。

 

「ぐわ!!」

「だ、 大丈夫ですか!?」

「掠り傷だ!!」

 

滴る血を押さえながらミーナが下がる。

 

「良いか!! 何としてでもここは死守するんだ!!」

 

弩の矢をやってきたスシブレーダーに放つ。

しかし鎖帷子でも着こんでいるのか大してダメージは無い。

危うし!! ミーナ!! 危うし!! ファウンデーション教国軍!!

果たしてこんな状況の中でバルド達は一体何をしているのだろうか!!



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バルドVSダースシ・ノーテン

中央突破を目論んだダースシ・ノーテンはバルドと交戦を始めた。

 

ノーテンのスシブレードはマグロの脳天、 つまりマグロの頭の肉である。

 

ほほ肉に近い質感であり尋常ならざる力を持っている。

 

更に頭としての特性も持っており自己判断で行動する

 

オートインテリジェンス機能も搭載している。

 

自己判断で行動できるがスシブレード故にスシブレーダーが居なければ

 

行動出来ない、 脳天のスシブレードにとってスシブレーダーは

 

自身を動かす素材に過ぎない。

 

 

 

とは言えダースシ・ノーテンはスシの暗黒卿

 

闇の力によりスシブレードを強化出来る。

 

そして高い地位故に大量のスシブレードを仕入れて使用する事が出来る。

 

 

 

その結果、 闇の力により強化された自立行動する大量のスシブレードを扱う事が出来る。

 

単独で100のスシブレードを使うダースシ・ノーテンは実力者だ。

 

 

 

そのダースシ・ノーテンが押されている。

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

 

次々とスシブレードを射出するノーテン。

 

一度に扱えるスシブレードが100なので有って破損に備えて

 

千を超えるマグロから奪い取った脳天で造り出した脳天のスシブレードを持っている。

 

 

 

そのスシブレードの群れにバルドは立ち向かう。

 

 

 

「やああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

『とおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

 

 

エッグヴィーナスの聖霊が脳天の群れを叩き落とす。

 

エッグヴィーナスは守備力が高い鉄壁のスシブレード、 故に聖霊も防御力が高く

 

まさに鉄壁の防御、 次々に脳天が破壊されジリ貧に陥るノーテン。

 

 

 

「こうなれば・・・」

 

 

 

ノーテンが地面に散らばった脳天を拾い始めた!!

 

馬鹿な!? それを行うのは・・・

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

 

・・・・・何という事か!! スシブレーダー、 否、 人間として最大の禁忌!!

 

地面に散らばったスシネタの再利用!! 何という悍ましい事なのか!!

 

 

 

「この外道が!!」

 

『許さん!!』

 

 

 

バルドとエッグヴィーナスも怒りに震えている!!

 

 

 

「何とでも言うが良い・・・お前達がバテる迄耐えきれば俺の勝ちだ!!」

 

「お前の様な外道には負けない!!」

 

『その通りだ!!』

 

 

 

エッグヴィーナスは鉄壁の防御力でバルドを完全にカードしながら脳天を砕き続ける。

 

脳天を砕かれてスシブレードを再利用する人類史上最低のスシブレーダー

 

ダースシ・ノーテン、 じわじわとだがバルドが押し始めている・・・

 

彼等の決着は遠い・・・



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ソルジャースシ達の死

「ぴ、 ピースメイカー様・・・なんと?」

 

ダークネスシ帝国の本陣にてまるで地獄の底を見たかの様に

本陣を任されたピースメイカーに尋ねるソルジャースシ達。

 

「聞こえなかったか? スシブレードを置いて下がれと言ったんだ」

「何故ですか!?」

「何故も何もあるか、 現状は極めて繊細な状況だ

ダースシ・ノーテンとフォビドォン・フルーツがそれぞれ戦い

ヤミ・アプレンティス、 ヤミ・マスターが敵の本陣を襲っている

ダースシ・ノーテンとフォビドォン・フルーツの何方かが勝てれば状況は一気に良くなる

しかし逆もまたしかり、 何としてもダースシ・ノーテンの現状を維持する必要が有る」

「ノーテン様の現状? い、 一体何が起きているんですか!?」

「私が説明しよう」

 

サー・アイが横から出て来る。

 

「私のスシブレードは目玉、 私の視界と繋がっている

そして現状、 ノーテンは自分の砕けたスシネタを利用しながら戦っている現状だ

この現状を維持するには圧倒的にシャリが足りない

お前達ソルジャースシのスシブレードを解体してシャリを集めようと言う事だ

分かるな?」

「し、 しかし・・・それでは私達の命が危ういのでは!?

私のスシブレードがバラバラになれば・・・」

 

ソルジャースシとソルジャースシの持つスシブレードは一蓮托生。

何方かが死ねば片方も後を追うのだ。

 

「何か問題が?」

「し、 死にたくない!!」

「ここで命を使わず、 何処で使う!?」

「ひっ!?」

 

ピースメイカーが怒声を放つ。

 

「お前達が命を張って殺し合いをしてヤミ・アプレンティスになれば

話は違ったかもしれない!! しかしお前達は命を惜しんでその選択を拒んだ!!

そんなお前達が出来る事は二つ!! ここで死を選択するか

俺に殺されるかだ!!」

「ひ、 ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

ソルジャースシ達が恐慌を起こして逃げ惑う。

ピースメーカーは蟹クリームコロッケで虐殺する。

 

「殺して良いのか?」

「良いさ、 最近弱い物イジメしていないから気分が落ち込んでいた

あぁー・・・さいっこー・・・」

 

恍惚とするピースメーカー。

 

「じゃあ転がったシャリを回収してノーテンに持って行こう」

「地道な活動な・・・」

「まぁそれ位しか出来る事ないしな」

 

ケラケラと笑いながらシャリを集める二人。

 

「フォビドォンフルーツの方は援護に行かなくて良いのか?」

「今のアイツに近寄ったら死ぬ、 実際にファウンデーション王国の連中も死んでるだろ?」

「そっちは見てないけども・・・まぁあの人の近くに行きたく無いわね・・・」



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絶影メロン

フォビドォン・フルーツ、 元々はヤミ・マスターだったが

ヤミ・マスター同士の殺し合いの末に闇の力を高めて

スシの暗黒卿になったスシブレーダーである。

メロンに乗って高速移動しながらの剣術は眼を見張る物が有った。

そんな彼がスシの暗黒卿になった時に何が起こるか。

 

答えは大虐殺である。

 

フォビドォン・フルーツが戦線に出て来た時点で崩壊。

圧倒的なスピードで次々と兵の首が刎ねられる!!

ファウンデーション教国のスシブレーダーとレーアが出て来たが・・・

 

結果として膠着状態である。

スシブレーダー部隊とレーアが一纏めになってフォビドォン・フルーツに

スシブレードや銃弾を撃つのが精一杯の状況になっている。

そんな彼等の攻撃を高速移動で回避するフォビドォン・フルーツ。

一纏めになっている彼等を取り囲みながら高速移動している形になっている。

 

「ふっ!! その程度かぁ!!」

「くっ・・・以前よりも早過ぎる!!」

 

フォビドォン・フルーツの影を追う事すら出来ない・・・

まさに風の如くに・・・万事休すか・・・。

 

「方法は有る・・・」

 

ウェッジが立ち上がる。

彼のイクラリオン、 イクラリオン・カスタムQは既に破壊されており

彼に出来る事は無い筈。

 

「何をする気だ?」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

ウェッジがフォビドォン・フルーツに突撃しようとする。

 

「待て」

 

ゾーバに肩を掴まれ倒れる。

 

「なにすん」

 

ウェッジは顎から出血した。

 

「ちっ、 掠っただけか」

 

フォビドォン・フルーツの剣の攻撃である。

 

「そんな破れかぶれで倒せるならとっくの昔に奴は死んでいる

奴には実力がある・・・」

 

ゾーバが冷静に分析にする。

 

「ならどうすれば・・・」

「それは・・・伏せろ!!」

 

ゾーバがウェッジに覆いかぶさる様に倒れる。

ゾーバが居た所にメロンが飛んで来た!!

メロンを射出して来たのだ!!

 

「ぐはっ!!」

 

避け損ねたラルフがメロンと激突し倒れる。

 

「大丈夫かラルフ!!」

「・・・くっ・・・おおおおおお!!」

 

ラルフが転がったメロンに覆いかぶさる。

 

「ラルっ」

 

ぼん!! とメロンが弾けた。

闇の力による爆発である、 実質爆弾の様な感じである。

辛うじてラルフの決死の行いで皆の命は助かった、 しかし・・・

 

「ラルフ・・・」

 

ラルフは腹が抉れて即死だった。

 

「泣いてる暇は無い!! 敵を見ろ!!」

 

ゾーバが激を飛ばす!!

 

「うおおおおおおおおおおお!!」

 

スシブレードを射出する一同であった。

涙を堪えながら絶叫をあげていた。



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隙を突く

フォビドォン・フルーツは超高速で移動し剣で攻撃する。

そして爆発するメロンで一挙に殲滅する戦法を取っている。

読者諸賢ならば『メロンを使えば剣で攻撃せずとも安全に攻撃出来るのは無いか?』

そういう疑問を持つ方も居るだろう。

 

否、 フォビドォン・フルーツにとってはメロンでの攻撃は寧ろやりたくないのだ。

メロン爆発攻撃は寧ろ彼にとって苦肉の策。

実はフォビドォン・フルーツの乗っているメロンが闇の力で爆発寸前になっているのを

敵にリリースして攻撃に転化しているに過ぎない。

寧ろフォビドォン・フルーツにとってはメロンに乗って攻撃し続ける方が

隙が無くて良いのだ、 加えてメロンが許容できる闇の力はメロンごとに異なっている。

 

スシの暗黒卿になった事で闇の力が増し攻撃方法も増えたが

それで隙が生じるとはやり切れない・・・フォビドォン・フルーツはそう考えている。

そうこうしている内にまたしてもメロンが闇の力に耐えられなくなっている。

新しくメロンを射出して乗り換えて古い方を

ファウンデーション教国のスシブレーダー達にリリースする。

 

「また来たか!!」

 

今度は避けられる、 しかしそれも想定内、 空中でメロンが弾け飛び

メロンの欠片が手榴弾の破片の如くダメージを与える。

 

「ぐは!!」

「きゃあ!!」

 

ダメージを与えた一瞬の隙を突いて突貫するフォビドォン・フルーツ。

しかし真正面からゾーバのファットプラネッツ・カスタムEがメロンを撃ち抜く。

 

「ちぃ!!」

 

メロンの闇の力は凄まじく弾かれたが車線は変更出来た。

何とか剣で首を刎ねられる事は免れた。

ファットプラネッツ・カスタムEは破壊されると犠牲は出した・・・

 

「くっ・・・如何するゾーバ!!」

 

ゴハンが叫ぶ。

 

「狼狽えるな!! 死の危険に直面した時こそ好機!!

寧ろ相手がトドメを刺しきれないのならばこちらが有利だ!!」

「しかし!!」

「ここで焦って全滅する事が一番回避しなければならない事だ!!」

 

ゾーバが叫んで皆に檄を飛ばす。

 

「やはり・・・ゾーバは厄介だな・・・」

 

フォビドォン・フルーツはファウンデーション教国スシブレーダー達の頭上に

ハンバーグを射出した。

 

「なんだ・・・」

「料理には隠し包丁が大事なんだよ!!」

 

ハンバーグから溢れ出る大量の包丁が

ファウンデーション教国スシブレーダー達の頭上に降り注ぐ。

 

「なっ・・・お前・・・」

「ゐおん!!」

 

14の足と14の腕と7つの頭を持つ:かたじん・ゐおんが身を挺して皆を守ったのだ。

 

「ぐお・・・」

「ゐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!」



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血飛沫ヴァージンロード

かたじん・ゐおんはどさりと倒れ伏した。

何とか皆の上に倒れない様に体を退かす事が精一杯だった様だ。

 

「ゐおん!!」

 

ゐおんに駆け寄ろうとするハウ。

しかしフォビドォン・フルーツが剣で牽制してくる。

 

「くそっ!!」

「どうする!?」

「っ~!!」

「うぐお・・・」

 

かたじん・ゐおんが起き上がろうとする。

 

「立つな!! このままじゃ死んじまうぞ!!」

「・・・・・」

 

かたじん・ゐおんが自分刺さった包丁を抜く。

抜けた際に溢れ出る血、 恐らく致死量だろう。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

包丁をフォビドォン・フルーツに投擲するかたじん・ゐおん。

フォビドォン・フルーツは難無く包丁を回避する。

レーアも生きている銃で狙っても剣でガードされる。

ゾーバのファットプラネッツで足元のメロンを狙うも巧みに躱される。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

かたじん・ゐおんが叫ぶ!!

そして血が周囲に撒き散らされる。

 

「うお!?」

 

一瞬怯むフォビドォン・フルーツ。

何とか回避して血で目潰しされる事は防いだ。

そしてレーア達の追撃が来る。

 

「この程度!!」

 

メロンで高速移動して躱そうとするフォビドォン・フルーツ。

しかしスリップしてしまう!!

 

「なっ!?」

 

あり得ない、 何故だ?

転びながら考えるフォビドォン・フルーツ。

そして地面を見て気が付いた。

地面にべったりとこびり付いた血でスリップしてしまったのだと。

 

「ぐう!!」

 

転倒しても尚転がり続けて何とか回避を試みるフォビドォン・フルーツ。

しかしそんな隙だらけの状態の敵を見逃すレーア達では無い。

総攻撃を叩き込まれる。

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

闇の力で体を強化して何とか弾かれながら立ち上がるフォビドォン・フルーツ。

メロンを取り出すも射出する前に破壊される。

 

「くっそおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

砕けたメロンに飛び乗り無理矢理ダッシュして

戦線を離脱しようとするフォビドォン・フルーツ。

 

「させるか!! ラルフの仇をここで逃がすかよ!!」

 

エミリーのジュエリー・ボックスによる包囲攻撃によりフォビドォン・フルーツは倒れた。

 

「く」

 

そを言う前にレーアが頭部に弾丸を打ち込みフォビドォン・フルーツは倒された。

 

「ゐおん、 やったよ!!」

「・・・・・」

 

かたじん・ゐおんはサムズアップをするとがくりと腕を下ろした。

見るからに致死量の血液が失われていた。

 

「ゐおん・・・ラルフ・・・」

「泣いている暇は無い、 他の所に援護に行くぞ」

 

ゾーバが檄を飛ばして皆が散って行った。



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中央の現状

本陣にて作戦会議に使うテーブルを横にして盾にしながら弩で応戦するミーナ。

魔法使いや弓兵が応戦しているも旗色が悪い。

 

「くっ!! 怯むな!! ここで引いたら全滅だぞ!!」

「しかし・・・うわ!!」

 

皿に乗って突貫するスシブレーダー。

両手には鉤爪が装備されていた、 その鉤爪で一気に数人の首を落す。

 

「くっ」

 

弩を向けるも弾かれる。

万事休す、 と思ったその瞬間、 そのスシブレーダーは頭を剣で貫かれる。

 

「サイ!!」

「指揮官殿!! ご無事で!!」

 

机の裏に隠れるサイとミーナ。

 

「スシブレーダー達の様子は!? ・・・・・」

 

ミーナの微表情を見てサイが答える。

 

「スシの暗黒卿は撃破されました!! 直ぐに救援が来ます!!」

 

これは本当の事だがサイは知らない筈の情報である。

ならば何故そう言ったのか? 士気をあげる為のデタラメである。

嘘も方便と言う奴だ。

 

「聞いたか!! もう少し持ちこたえれば我々の勝ちだ!!」

 

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!と士気が一気に上がる。

 

「ありがとう、 サイ」

「いえ・・・死ぬ時は一緒です」

 

サイもミーナも腹を決めた!!

その時、 一気に本陣の前面が燃え盛った!!

 

「な、 何!?」

「落ち着け、 一旦火の壁を作った、 ファイアーウォールって奴だ」

 

鶴帝国序列三十位『火矢』のベアドンが本陣に入って来た。

 

「これで小休止出来るだろう、 まぁほんの少しだが・・・」

「ベアドンさん・・・他の人達は・・・」

「序列七十六位『鐺ハ』のジョソール、 序列六十八位『狼筅』のパブロ

序列六十七位『義眼』のヴァーゲア、 序列四十三位『万力』のツッソ

連中は死んだよ、 序列七十二位『ジャガイモ』のスタは頑張っている

序列二十九位『ファルシオン』のルミナーラ、 序列二十八位『カットラス』のエズラ

序列二十七位『レイピア』のアンドゥリ、 序列二十一位『ホルカンカ』のベルス

序列十九位『脇差』のアディ、 序列十八位『匕首』のイースは分からん

前に出過ぎているからもう死んでるかも」

 

バタリと倒れるベアドン。

 

「ベアドンさん!?」

「俺ももう大分死んでる・・・見ろよ」

 

わき腹から血が溢れ出ている。

 

「直ぐに止血を!!」

「見て分からんかもしれんが腸が大分出て行っている、 もう助からねぇ・・・

こいつを頼む」

 

聖剣『火矢』を渡すベアドン。

そしてがくりと意識を失った。

 

「ベアドンさん・・・」

「指揮官殿!! 炎が消され始めている!!」

「くっ、 悲しみに浸る暇も無いの!!」

 

火矢を弩に装填して撃つミーア。

 

「来い!!」



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バルドVS史上最悪の存在ダースシ・ノーテン

場面をダースシ・ノーテンとバルドの戦いに戻す。

スシブレーダーとしても人間として最大のタブーである

地面に散らばったスシネタの再利用という史上最悪の行為を行うダースシ・ノーテン。

良識が欠片でもある者ならば例え仲間でも後ろから撃つ行為だが

良識がまるでないピース・メーカーはシャリを大量に集めてダースシ・ノーテンに供給する事で

ダースシ・ノーテンは劣化しているとは言え脳天を大量にリユースする事に成功した。

 

「この外道が!! 仲間のスシブレードを解体してシャリを奪い

そのシャリで落ちたネタを使ってスシブレードを作るとは!!」

 

歴史上類を見ない大悪党、 否、 最早人間の形をした理外の怪物に向けて

叫ぶバルド。

 

「何とでも言え、 勝ちゃあいいんだよ、 勝ちゃあ」

 

ノーテンは次々と脳天を射出する、 脳天はオートインテリジェンス機能で

バルドを囲い始めるもバルドのエッグ・ヴィーナスの聖霊は鉄壁の防御で

脳天を砕き続ける、 じわりと前に進めるも遅い。

 

「く、 時間が無いと言うのに・・・」

「ならば俺達が加勢しよう!!」

 

そう言って現れたのは鶴帝国八十八剣聖序列二十九位『ファルシオン』のルミナーラ

序列二十八位『カットラス』のエズラ、 序列二十七位『レイピア』のアンドゥリ

序列二十一位『ホルカンカ』のベルス、 序列十九位『脇差』のアディ。

 

「ふん、 敗北者風情が!! 調子に乗るなよ!!」

「こちらの台詞だ!!」

 

そう言って剣聖達が次々に脳天を切り刻み始める。

通常状態の脳天ならば五分五分の勝負が出来ていただろう。

しかし史上最低最悪、 人として大事な物を捨て去った極悪非道の

屑馬鹿阿保のダースシ・ノーテンが人としての尊厳とプライドと良心を捨て去って

地面に落ちたスシネタで造り出した脳天は尋常じゃなく劣化している。

それ故に一方的に聖剣達に切り刻まれる事になった。

脳天が自己判断で剣聖よりもバルドを優先して攻撃していた事も大きい。

如何にオートインテリジェンス機能が有ったとしても所詮はスシの思考

更に劣化している為、 高度な判断が出来ないのだ。

これによりバルドは包囲を突破しノーテンの傍に辿り着く事に成功した。

その距離は5m、 既に射程距離内である。

 

「良い気になるなよ!! こちらにはまだ奥の手がある!!」

 

そう言ってノーテンは自身の頭部であるマグロの頭を取り外した。

 

「魚の頭を乗せていた事でそれは既に読んでいた!!」

「ならば如何するよおおおおおお!!」

 

マグロ頭部を射出するノーテン。

マグロ頭部が脳天を押しのけながらバルドに突撃する。

バルドはエッグ・ヴィーナスと共に前に走りマグロ頭部を弾き飛ばす。

 

「ば、 馬鹿な!!」

「聖霊を!! 舐めるな!!」

 

ノーテンの体にエッグ・ヴィーナスの聖霊の一撃が入り脳天全ての動きが止まった。



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ふりだしに戻る

本陣にて応戦するミーナ達。

もう大分兵が少なくなっている。

ベアドンから聖剣『火矢』を託されミーアが応戦しているが

焼石に水である。

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

 

緊張に耐えきれずに机の裏から出てスシブレードに射抜かれる兵士。

 

「ここまでか・・・」

「全軍撤退!! 先発部隊総員本隊に帰還せよ!!」

 

敵の攻撃が一斉に止んで撤退を始めるスシブレーダー達。

 

「な、 何が・・・罠?」

「分からない・・・」

 

サイとミーアが顔を見合わせる。

少ししてからファウンデーション教国のスシブレーダー達がやって来た。

 

「・・・買ったの?」

「あぁ・・・こっちも犠牲は出したが・・・何とか・・・」

「敵さんは逃げて行ったようッスね・・・」

 

ゴハンとグリードがやって来た。

 

「バルドも勝ったってよー!!」

 

ウェッジが叫ぶ。

 

「大将、 手を貸そうか?」

「あ、 あぁ、 すまない・・・」

 

グリードの手を借りて立ち上がるミーア。

 

「それで、 如何する? 追撃するか?」

「この状況では・・・」

「ここが人間共の陣地か・・・」

 

アーマゲドンと手下達がふらりとやって来る。

 

「うわ!? ま、 魔物!?」

「ふん・・・手助けしてやったのに、 何だその言い草は・・・」

「まぁこの状況ではそういう反応になるか・・・」

 

手下が椅子を起こし座るアーマゲドン。

 

「手を貸してやる・・・と言いたいが私が手を貸して如何にかなる状況では無いな」

「悲しいがそうだろうな・・・敵にはまだスシの暗黒卿が居る

先行部隊との戦いで全滅寸前だ」

「使えんな・・・漁夫の利にもならんじゃないか・・・

もう我々は引っ込んでいようと思う」

「逃げるのか?」

「戦略的撤退だ!!」

「正直に言って戦力差が大き過ぎる・・・最後に一つ言っておこう

魔王様は既にダークネスシ帝国の連中に殺されている

連中のプロパガンダは口先だけのデタラメだ」

「まぁ今更知って居るが・・・」

「だろうな、 じゃあな、 私は行く」

「武運を祈る、 と言っておくぞ」

「じゃあな」

 

そう言ってアーマゲドンと手下は去って行った。

 

「・・・・・如何します?」

「そうだなぁ・・・進むか帰るか・・・」

「本国より伝令!!」

 

伝令がやって来た。

 

「如何した?」

「ファウンデーション教国首都イエローストーンにて戦闘が発生!!

敵はスシの暗黒卿とその部隊の模様!!」

「なんだって!?」

「ま、 回り込まれたって言うのか?!」

 

驚愕する一同。

 

「大将、 どうする? 戻るか?」

「戻るしかあるまい!! バルド隊長を呼んで来てくれ1!」

「はい!!」



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フグの奇襲

時間は前後してファウンデーション教国首都イエローストーン。

トゥーンウィは納得いかない様子で大聖堂の一室で待機していた。

部屋にはソファーと机が有った。

ソファーに横になりながら怒るトゥーンウィ。

 

「うー・・・なんでよー・・・」

「まだぐずっているのか、 そろそろ納得しろよ」

「なっとくできないよ!!

なんでわたしがぜんせんにいっちゃだめなの!?

みんながたたかっているというのに!!」

「気持ちは分かるが落ち着けトゥーンウィ・・・」

 

トゥーンウィを宥めるラマス。

 

「あなたがわたしをまもりたいというきもちはわかるよ

でもなんでわたしをたいきさせるようにいったの!?

ここでたたかわないとみんなしんじゃうよ!!」

「君を戦いから遠ざけたい気持ちはある

本音を言えば全く戦闘とは無関係の所に置きたいがそうも言ってられない

ならばここにも戦力を残しておかないといけないのだから

それならば君を残して行った方が良いだろうと言う判断だ」

「ばるどくんたちががんばっているんだからここにくるわけないでしょ!!」

「いや、 そういう訳でもないだろう・・・

とりあえずここで待機してくれ」

「もー!!」

 

ぼふん!! とクッションに顔をうずめて足をじたばたさせる。

 

「こうしてられるのもバルドのお陰だな・・・」

 

ぽつりとラマスが呟いた。

 

「ばるどくん、 だいじょうぶかな・・・」

「殺されても死ぬような奴ではないよ・・・」

 

コンコン、 とノックされる。

 

「どちら様?」

「失礼しますー、 お食事をお持ちしました」

「はい、 今開けます」

 

若い女性の声が部屋の外から聞こえる。

ラマスがドアを開けようとドアノブに手をかけたその時。

トゥーンウィに肩を掴まれて後ろに倒された。

 

「なっ・・・」

「間に合え・・・!!」

 

アイスクリームを射出するトゥーンウィ。

ドアが破られてフグの生肝のスシブレードが飛んで来る。

アイスクリームの冷気で何とか止める事に成功した。

 

「っ!!」

 

ドアを開くトゥーンウィ。

メイド服の後ろ姿が角を曲がった。

 

「と、 トゥーンウィ、 今のは・・・」

「さっきのこえはすしのあんこくきょうのふぐ・・・

まちがいない、 もうここにきていたんだ」

「何だと!? 直ぐにここの警備に連絡を」

 

戦闘音が遠くから響いた。

 

「もうたたかいははじまっている!!

わたしたちもいそごう!!」

「分かった!! 私の後ろに続け!!」

 

ラマスが先導してトゥーンウィが後を追った。

 

「まえにふぐがはしっているはずだよ、 きをぬかないで」

「分かっている!!」



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霊長の拳

フグのスシトルーパーの

スベスベマンジュウガニ、 アイゴ、 ゴンズイ、 ハオコゼ、 キタマクラは

O5-1を捕まえにフグとは別行動をしていた。

厳重に管理された中を密かに移動していた。

彼女達五人は全て毒のスシブレードを使う為、 出会った者を暗殺をしながら

先に進んだ。

 

「ここがO5-1の部屋か・・・」

「・・・」

 

ドアを開くとカランカランと音が鳴った。

 

「しまっ!!」

「誰だ!!」

「えぇい、 ままよ!!」

 

部屋の中に居たO5-1に向かって攻撃をする5人。

毒のスシブレードが5発も喰らっても流石に一たまりも無かった。

 

「やった・・・の?」

「意外とあっさりね・・・」

「こいつがO5-1?」

「確か赤いルビーの首飾りを着けているとか・・・」

「何も付けてないわよ?」

 

次の瞬間、 ゴンズイとハオコゼは地面に頭を叩きつけられていた。

 

「!?」

「な、 何だ!?」

「こ、 こいつは!!」

 

生き残った3人が見た者は霊長類ヒト科オランウータン属に属する生き物

オランウータンである!!

しかもフランジが非常に発達している!!

天井を良く見ると鉄の棒が張り巡らされており上に待機していたのだ!!

 

「猿か!? くっ!!」

 

スシブレードで迎撃しようにもオランウータンの身の熟しは素早く。

まるで当たらない。

 

「馬鹿な!!」

 

人間よりも圧倒的に高い身体能力、 凄まじいまでの怪力により

全員倒されてしまった。

 

「ぐっ・・・フグ様・・・申し訳ありません・・・」

 

スベスベマンジュウガニが顔面を殴り飛ばされて倒れる。

 

「こっちから物音がするぞ!!」

 

O5直属部隊レッド・ライト・ハンドがO5-1の部屋の中に入る。

 

「こ、 これは・・・一体どういう事ですか!?」

「おおーぅ、 おーくぇい、 おけ おぉぉけ

(訳:敵に侵入された、 スシブレーダーだったが何とか倒す事に成功した)」

「いや、 チンパンジーの言葉で言われても分からんですよ・・・」

 

チンパンジーの首のルビーの首飾りを着ける隊員。

 

「敵襲だ、 見ての通り殲滅した」

「流石・・・しかし、 まさかここまで入って来るとは・・・」

「予想外だったが仕方ない、 他にも来ている奴がいるかもしれない、 探し回れ」

「了解しました!!」

 

レッド・ライト・ハンド部隊が部屋から立ち去った。

 

「しかしここまで入って来られるとは・・・・・予想外だったな」

「おぉーう、 おーくぅぅう、 おけえおけえええ

(訳;本当に予想外だった、 ここも安全ではないな

逃げる準備をした方が良いかもしれん)」

「何て言っているか分からん」



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バイオテロ

走っている内にフグを見失ってしまったラマスとトゥーンウィ。

 

「くっ・・・一体何処に・・・」

「ふぐのいばしょがわからなきゃあいすくりーむをつかえない・・・」

 

アイスクリームの冷気で無差別攻撃すれば当たるかもしれないが

周囲にも大ダメージになってしまう。

 

「ラマス殿とトゥーンウィ殿!! ここで何を!?」

 

O5直属部隊レッド・ライト・ハンド隊員が尋ねる。

 

「スシの暗黒卿、 フグが侵入して来た!!」

「何ですと!? そ、 それでフグとやらは何処に!?」

「きしゅうをうけてにげられた、 おっているけどみうしなった・・・」

「なんと!! それでフグとやらはどんなスシブレーダーなのですか!?」

「手下のスシトルーパー5人含めて毒寿司を使う、 でしたっけ?」

「あんさつしゃだからかくれんぼがとくいみたいだな・・・」

 

ラマスとトゥーンウィが苦々しい顔をする。

 

「毒・・・ですか・・・スシトルーパーと思わしき5人は既に倒されています」

「油断は出来ない、 他に手下が居るかもしれない」

「可能性は高いですね・・・兵達を叩き起こして探し回る事にします」

 

兵達を起こしてフグを探す。

しかしフグは見つからなかった。

フグの連れて来たスシトルーパー以外にも何人かスシブレーダーが居た様だったが

巧みに逃げ回ったりしている。

捕まった者達は毒を飲んで自害した。

そうこうしている内に夜が明けた。

 

「・・・・・如何します? O5-1」

「・・・一旦食事にしよう」

 

流石に夜中に起こされて食事も抜きでは問題だろうという配慮だ。

とは言え流石に席に座っての食事という悠長な事は出来ないので

簡単なサンドイッチを食べる事にした。

 

「しかいO5-1自らも捜索に来るのは・・・」

「いや、 落ち着いて座ってばかりいる訳には行かないだろう」

「そうですか・・・もぐもぐ」

 

レッド・ライト・ハンド隊員がサンドイッチを食べながら探し回る。

 

「んぐ!! んぐ!!」

「ど、 如何した?」

「み、 水・・・」

「おいおい慌てて食べるからだよ・・・ほら、 水だ」

「すみません・・・」

 

O5-1から水を受取って飲むレッド・ライト・ハンド隊員。

 

「・・!!?・・・!!?」

 

喉を押さえてレッド・ライト・ハンド隊員。

 

「!!?」

「な、 何だ!?」

「ま、 まさか・・・!!」

 

O5-1やレッド・ライト・ハンド達は水を調べた。

何と毒が混入しており詳しい調査で

イエローストーンの水源に尋常じゃない量のフグ毒が混入しており水を飲んだ市民や兵達が

次々に呼吸困難で亡くなっていた。



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猛毒会議

「街中大混乱ね」

「そうだな・・・働いたかいが有った」

「ビールでも如何?」

「いや、 遠慮しておくよ」

「余裕そうだな、 お前達」

 

イエローストーンの郊外で集まるフグとその仲間達。

スシトルーパーと共に侵入して来たフグだったが

予めイエローストーンに潜入させていたスシブレーダー達にも指示を出していたのだ。

 

まずフグはイエローストーンで残っている者達の中で

一番強いであろうトゥーンウィの始末に向かう。

これは失敗したがあくまでトゥーンウィの目を逸らす陽動の意味が有った。

本命はO5-1の暗殺、 スシトルーパー全てを投入したがまさか失敗するとは思って見なかった。

サブプランと用意していた水源や食料への毒の混入のみが上手く行った。

フグのスシブレードフグ肝は闇の力で殺傷能力が尋常じゃ無く上がっている。

そのフグ肝を少しでも混入すれば即死レベルの超猛毒になるのだった。

 

「スシトルーパー達は残念だったけど大打撃を与える事が出来た

やみちゃんが居なければ全滅も夢では無かったが・・・まぁそう上手く行かないか」

「こっちもホット&コールドブラザーズがやられたけどね

残りはヤミマスターがビアと鞘とアリアリの三人

ヤミアプレンティスが私とハイボールの二人、 戦力としては不安が残るわね」

 

トリニティが物鬱げに言う。

 

「但し攪乱としては充分有効だと思う、 私達はここに待機

ダークネスシ帝国の本隊が来たら行動を起こすとしましょう」

「そうですか、 まだまだ働くと言う事か・・・」

「では見つからない様に市井に紛れていてね」

「了解しました」

 

皆、 解散した。

 

「さてと・・・私も行くか」

 

フグは大聖堂に向かおうとする。

 

「フグ殿、 何方に?」

 

鞘が尋ねる。

 

「スシトルーパーの遺体を回収しに」

「何の為に?」

「・・・・・」

 

黙るフグ。

 

「お気持ちは分かりますが、 余りにも危険ですしここは抑えて下さい」

「気持ちは分かる? 私が何を考えているか分かるって言うの?」

「え、 えぇ、 腹心の部下を失って悲しいかと・・・」

「あぁ、 そう言うんじゃないよ、 私達は暗殺者

何時かは死ぬ事が決まっているわ」

「ならば何故・・・?」

「私のスシブレードがまさかただ毒が強い毒寿司だと?」

「違うのですか?」

「まだまだ隠し玉が有るのよ・・・」

 

にやり、 と笑うフグ、 そしてふっと消えた。

 

「流石はスシの暗黒卿、 という所か・・・」

 

鞘がぽつりと呟いた。

 

「お義父様、 そろそろ行きましょう」

「そうだな、 ビア」

 

そう言って彼等も立ち去ったのだった。



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最終手段

バルド達がイエローストーンに戻って来た頃には大騒ぎになっていた。

兵達がフグ毒で重篤な状態になっている者達や路上で死んでいる者達を運んでいた。

 

「これは・・・一体何が・・・」

「来たかバルド!!」

 

マオとタオが走って来る。

 

「御二方これは一体・・・」

「敵が水や食べ物に毒を混ぜた様だ・・・」

「何だって!?」

 

驚愕するバルド。

 

「レーア嬢、 O5-1が至急集まって欲しいとの事じゃ・・・」

「分かったわ・・・」

 

タオの言葉を聞いてレーアは支度もそこそこに議会場に集まった。

そこでは大勢の代表達が議論が紛糾していた。

 

「イエローストーンの市民の二割、 軍部でも一割の人員が猛毒で死亡

同数の人々が辛うじて生きていますが介抱を必要としています!!」

「毒の除去には甘く見積もっても半月の時間がかかります!!」

「半月も経ったら敵が来るぞ!!」

「復旧までの水と食料は如何する!?」

「確保は厳しい・・・」

「死体と病人を如何するかが問題だ・・・介抱と埋葬にも人員が・・・」

「まだスシの暗黒卿が市内に居るかもしれないから巡回も・・・」

 

議論は困窮していた。

 

「このままでは敗北は必至です!! O5-1!! どうなさるおつもりか!!」

「・・・・・」

 

O5-1は重苦しい表情を浮かべた後に一つの言葉を発した。

 

「君達、 この世から消え去る覚悟は良いか?」

「それは全面降伏と言う事ですか?」

「まさか、 この状況を打開できるかもしれない物が一応は存在する

それを使えばこの状況は愚か闇のスシブレーダー達の問題も解決出来るかもしれない」

「なんで今までそれを使わなかったのですか!!」

「あくまでかもしれない、 だから、 確実に全てが上手く行くとは限らない」

「可能性があるのならやるべきだ!!」

「いや、 そうじゃないんだよ、 失敗しても成功しても我々は消え去る」

「どういう事ですか!?」

「良いだろう、 話そう・・・だがしかし君達、 この話を聞いた後では

最早後戻りはできない事を覚悟して貰おう」

「・・・・・・・」

 

議員達は顔を見合わせた。

 

「やるしかないでしょう!!」

「そうですとも!! このまま座して死ぬ訳には行かない!!」

「分かった、 なら話そう」

 

O5-1は最後の手段について話し始めた。

その内容は憶測を含んでおり希望的観測も有ったのだが信頼性も有る話だった。

 

「・・・・・・・以上で話は終了だ」

「・・・・・それでO5-1、 一体誰がそれを使うんでしょうか?」

「今一番、 何とかする可能性が有るとすれば・・・」



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片付け作業

レーア達が会議をしている間、 バルド達は街の人々を輸送していた。

 

「数が多過ぎる・・・」

 

どさりと座り込むグリード。

 

「おい、 グリード、 こんなんでヘタるなよ」

「ボスぅ・・・そうはいっても・・・」

 

ゾーバは素直に死体を猫車に乗せて運んでいた。

 

「でも数がスゲェですよぉ・・・」

「気持ちは分かる、 しかし片付けなきゃまともに戦えんだろう

何時連中が来ても問題無いようにしなければ、 俺達に勝ち目は無い

屑屑言わずにさっさときびきび働け、 俺も働いてるんだからな」

「裏社会の大物がやる事じゃないですよぉ・・・」

「裏社会の大物でも現場に出る必要が有れば出るさ」

 

そう言って作業を続けるゾーバ。

 

「おーい、 グリード、 ほら、 水だ」

「すまねぇなウェッジ」

 

ウェッジから水を受取る。

 

「毒は入ってないよな?」

「確認済みだ、 問題無い」

「ならば良し・・・」

 

水を一気に飲むグリード。

 

「うめぇ・・・」

「それは良かった」

「グリード!! こっちの担架運ぶの手伝ってくれー!!」

「OK!! ハウ!!」

 

水を飲んで元気になったグリードは作業を再開した。

 

「しかしこれじゃあ焼石に水だな・・・」

「ゴハン・・・萎える様な事言うなよ・・・」

「病院の方に行って来たが・・・酷い状態だったよ」

「そんなに酷い状態なのか?」

「あぁ、 医者もベッドも足りない状態だ、 雑魚寝させられている状態だ

ロビーだけじゃなく病院の外にもだ」

「う・・・それは・・・なんとも・・・」

「オマケに食料も水も不足している・・・もつか分からんぞ」

「そんな後ろ向きな事を言うなよ、 このイエローストーンが落ちたら我々の敗北だぞ」

「四捨五入すれば落ちている様なもんだろ・・・」

 

ゴハンが悲観的な事を言い出す。

 

「我儘抜かすな、 絶望的な状況でもやらねばならんのだ」

 

ゾーバが喝を入れる。

 

「それにこの程度は絶望には程遠い」

「この地獄の窯の蓋が開いたような状況で良く言えるな・・・」

「まだまだ仲間が大勢居る、 地獄では仲間所か全員敵同士だ」

「希望的観測だな」

「希望が無くては何も出来ないよ」

「失礼します!!」

「ん?」

 

伝令がやって来た。

 

「如何した?」

「バルド隊長は何方でしょうか!?」

「バルド君は今倒れている人を運んでいる最中だが・・・」

「レーア様がお呼びです!! 至急連れて来る様にと!!」

「ふむ・・・如何する?」

「如何するもなにもバルドは元々レーア様の執事だ、 問題は無いだろう」

「そうだな」

 

画してバルドはレーアの元に向かったのだった。



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世界の為に地獄に落ちる事が出来る?

バルドが伝令に連れられてレーアが待つ部屋に連れて来た。

 

「レーア様!! バルド隊長をお連れしました!!」

「・・・・・分かったわ、 貴方は下がって」

「はっ!!」

 

伝令が下がって部屋に二人切りになるバルドとレーア。

 

「レーア様・・・如何しました?」

「・・・・・とりあえずお茶でも飲みなさい」

 

自分の座るテーブルの対面を指差すレーア。

 

「いただきます・・・」

 

椅子に座ってお茶を飲むバルド。

 

「・・・・・」

 

バルドは立ち上がってお茶を淹れた。

 

「見事な手際ね」

「一応執事ですし・・・しかしレーア様にこんなお茶を出すなんて

一体何処の馬の骨ですか?」

「私が自分で淹れたの」

「あ・・・」

 

気まずくなるバルド。

 

「と、 所で私をここに呼んだのは如何言う用件ですか?」

「バルド・・・貴方は私の、 いや世界の為に死ねる?」

「はい」

「即答ね・・・世界の為に地獄に落ちる事が出来る?」

「何をさせるおつもりですか?」

「説明するわ」

 

 

レーアが説明したのは驚くべき事実であった。

 

SCP-1968 世界を包む逆因果の円環

 

ファウンデーション教国、 否、 ファウンデーション教国の前身

SCP財団が確保していた最終手段と言うべき手段の一つである。

O5-1が説明した事を理解するのは困難を極めた、 まるで分からない。

訳の分からない言葉の羅列、 簡単に説明するならば

 

非活性状態にある未知の組成を持つブロンズ色の円環。

長径は320cm、 短径は90cm。

隆起した機構、 あるいは絵文字が刻印されており

それらは制御面として機能するものという推定される。

 

人間によって操作された時、 適度な力が加えられた時に

それは予測不可能な方法で変形し始め、活発に動作するようになり

被験者の周囲に渦巻き、 ますます速く波立ち

予測不可能な閾値に達した時、 その最初の効果がはっきりと現れ

その後、 元の状態に戻る。

 

「そして操作した者の記憶が改竄される」

「・・・・・あの・・・それが一体何だって言うんですか?」

「これは仮説、 しかしかなり信憑性のある仮説よ

改竄されているのは世界の方」

「・・・・・」

 

たらり、 と冷たい汗が流れるのを感じるバルド。

 

「ど、 どういう事ですか?」

「この円環は記憶じゃなくて世界を改竄する円環なのよ・・・

O5-1の話によると起動するたびに

今の世界によく似た世界のその過去に飛ばされるらしい」

「らしいって・・・」

「実験をした結果、 そうなったらしいのよ・・・」

 

ずず、 とお茶を飲むレーア。

 

「改変された世界はここより酷いかもしれない

だからもう一度聞くわね、 世界の為に地獄に落ちる事が出来る?」




作中に登場して来たSCP
SCP-1968 - 世界を包む逆因果の円環
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1968


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迫る決断の時

「世界を改竄する円環・・・ですが、 それなら円環を操作した人間はどうなるのですか?」

「円環を操作した人間は改竄から守られる・・・らしい」

「らしいって・・・」

「最早イエローストーンの立て直しは不可能、 攻め込まれたら私達は確実に負ける

だから私達は世界を包む逆因果の円環で貴方を過去に飛ばし

ダークネスシ帝国が生まれる前に滅ぼす」

「僕じゃないと駄目な理由が有るんですか?」

「最強のスシブレーダーは貴方よ、 だから貴方が適任とされた」

「で、 でも!! 僕が過去の世界に行った所で現在が良くなる保障は無いでしょう!!」

 

立ち上がるバルド。

 

「・・・・・それは違うわよ、 貴方が過去に行くんじゃなく

この世界が過去の少し違う世界になるのよ」

「そ、 それじゃあ僕がレーア様を、 皆を殺すって事じゃないですか!?

この世界が無くなるなら戦う意味なんて!!」

「それでも世界が闇寿司に支配されるよりは良いでしょう、 って事よ」

 

レーアはお茶を飲んだ。

 

「久々に飲んだけど、 貴方のお茶は本当に心が安らぐわ」

「・・・・・ありがとうございます」

「さっきは地獄って言ったけども天国の様な世界かもしれない

行く気が有るならO5-1が案内するそうよ」

「地獄ですよ、 貴方が居なければ、 皆が居なければ

一人ぼっちの世界はきっと地獄でしょう」

「・・・・・・・・・・」

「そんな事を考えなくて良い、 既にお前達の行く先は無限地獄と決まっている」

 

ばん!! と天井のタイルの一部が剥がれ落ちてそこから降りて来る影。

 

「なっ・・・なんだ!?」

 

降りて来たのは頭に損傷を負っている見るも無残な少女5名。

怪我のレベルから最早既に死んでいるのではないかと言う状態の者も・・・

 

「何だお前達!!」

 

そう言うなり生きている銃で撃つレーア。

撃たれて穴だらけになる5人。

 

「如何しました!?」

 

銃声を聞きつけ慌てて警備兵が入って来る。

 

「敵だ!! レーア様が成敗なされた!!」

「そ、 そうですか・・・」

 

びくん!! びくん!! と動く穴だらけの少女達。

 

「ま、 まだ生きているのか!?」

「う、 うわあ!!」

 

警備兵が槍を突きたてる、 血がまるで出ない。

死体なのだろうか。

 

「う、 動く死体だと・・・一体どうなっているんだ・・・」

「分からない・・・スシの暗黒卿の、 或は闇のスシブレーダーの力なのかもしれない」

「とりあえず警戒を強めましょう!!」

「そうね・・・それでバルド、 一体如何するの?」

「・・・考える時間を下さい」

「良いわ、 但し一晩だけとO5-1が言っていたわ」

「・・・・・」



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再会議

「また呼び出しですか・・・」

「大混乱しているとはいえあまり変な行動はとりたくないよ」

「はぁ・・・はぁ・・・あんまり走らせるな・・・」

 

イエローストーンの郊外で集まるフグとその仲間達。

フグが皆を呼び集めたのだ。

 

「それで、 また何で呼び出されたんですか?」

「ふむ、 それにはまず一つ先に説明しておこうか」

 

フグが口火を切った。

 

「何を出すか?」

「私のスシブレードには死者をゾンビ化して操る能力もある」

 

フグがいきなり説明を始めた。

 

「へぇ・・・」

「いきなり何の話だ?」

「まぁ聞け、 実はさっき私のスシトルーパーを回収ついでに諜報活動を行っていたんだ

すると連中は何やらこの絶望的な状況を

文字通り無かった事に出来るアイテムを持っているらしい」

「それは嘘だよ、 あり得ない」

 

鞘が断言する。

 

「何故?」

「そんな物が有るのならもっと早く使う筈でしょ?」

「いや、 それが多大なリスクを持っているらしい

世界を改竄する物らしいがどう改竄するのかは分からないそうだ」

「世界の改竄・・・」

 

ごくり、 と唾を飲む鞘。

 

「この情報を闇の親方に伝える

とりあえず私はこのイエローストーンを出る、 お前達は陽動だ」

「断ったら貴女のスシブレードでゾンビにされると言う事ですな?」

「話が早くて助かるな、 そう言う事だ、 どうする」

 

やる、 以外の選択肢が無い。

 

「わかりました・・・それではどの様にしますか?」

「ふむ、 ビアと鞘とアリアリが陽動を行い

トリニティとハイボールが私の援護をしろ」

「それで良いの? ヤミ・マスターとヤミ・アプレンティスの割合を逆にした方が良くない?」

 

鞘が疑問を口にする。

 

「それだと目立ち過ぎるだろ」

「なら一人の方が良いのでは?」

「最終的には一人になるだろうが・・・とりあえずイエローストーンを脱出したら

トリニティとハイボールは自由にして良い」

「それは助かるが・・・フグに情報を抜き取られた事を向こうは分かっているのか?」

「スシトルーパーを置いて来たから恐らくは分からないと思う」

「回収したスシトルーパーを置いて来たんですか?」

「あぁ、 ダークネスシ帝国の危機だからな

警戒は少しでも解いておきたかったから襲わせた」

「襲わせたら逆に警戒されるのでは?」

「逆だ、 襲って倒させて勝利させる、 そうする事で警戒を解く事が出来る」

「そんなもんかね・・・それでは今すぐ行動に移すので?」

「えぇ、 今回の行動でダークネスシ帝国の命運がかかっている

全力でやるように」

「「「「「了解!!!!!」」」」」



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ちょっといいとこ見て見たい

「それでは御二方と私はばらけようでは無いか」

 

アリアリがビアと鞘に提案する。

 

「それが良いと思う」

「アリアリ、 逃げるなよ」

 

鞘が念押しする。

 

「まさか!! ここで逃げて何になりますか、 ヤミ・マスターとして

大暴れさせて頂きますよ!!」

 

そう言ってアリアリが去って行った。

 

「・・・・・ビア、 ここは私と共に逃げないか?」

「あら、 お義父様、 何故そんな弱気な事を?」

「だってそうだろ・・・」

 

鞘が力無く呟く。

 

「混乱していて片付けの最中とは言え、 敵の本拠地で暴れて

生きて帰れる保証は無いだろう? ここは逃げ延びて生きる事が大事だと思うぞ」

「お義父様、 娘さんの事を覚えているでしょう?」

 

ビアが諭すように言った。

 

「お前の事か?」

「いえいえ、 本当の娘さんですよ」

「う・・・」

 

鞘の実子はかわいらしい一人娘で鞘は愛でていた。

その結果、 可愛がった一人娘は我儘放題の醜い30越えのおばさんになっていた。

社交界でも自分勝手に過ごし嫁の貰い手が無かった。

最終的に鞘が殺してしまった。

 

「・・・・・確かに娘は残念だったよ、 それがこの状況と如何関係が有る!?」

「関係ありますよ、 いざという時に動かないと我々も腐って死ぬだけです」

「だが命は惜しい・・・」

「命をここで惜しんで如何しますか」

「・・・・・しかしだな・・・」

「それに良く考えて下さい、 私と貴方のスシブレードは攪乱に向いています

人が多ければ多い程、 パニックは大きくなる

つまり我々の力がフルに活用できる状況なんですよ」

「そうなのか・・・」

「ここは名を上げるチャンスです、 それにここで戦って

何としてでもフグを逃がさないと私達がヤバい状態になります」

「さっきの世界の改竄って言うのか? あまりにも壮大過ぎる

嘘じゃないのか?」

「食べ物を回転させる我々がそれを言いますか・・・」

「うーむ・・・」

「しょうがないですね・・・」

 

ビアはジョッキにビールを注いだ。

 

「呑みましょう」

「へ?」

「こういう考えてばかりじゃ話が先に進まない

ちょっと酔って馬鹿になりましょう」

「戦場に出るのに酒を飲む馬鹿が何処にいる・・・

流石にそんな事は出来ん」

「じゃあ行きますか?」

「うぅむ・・・」

 

止まる鞘。

 

「・・・・・えぇい!! もうめんどくさい!! のめえええええええええええええええええ!!」

「ごぼ!? ごぼぼぼ!! ちょ、 やめ・・・」

「はいはいはいはい!! 鞘さんの!! ちょっといいとこ見て見たい!!」

 

まるで歓迎コンパの様にビールを飲まされる鞘であった。



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運搬

ミレニアム・ファルコンに次々と死体を乗せていく。

 

「すまんな、 こんなやりたくもない事をさせてしまって・・・」

 

作業をしている兵が申し訳なさそうに言う。

 

「良いんだよ、 片付けを一日でも早く終わらせないと行けないからな」

「そうだな・・・片付けって言うのも嫌な気分だが・・・」

 

現在、 一刻も早く死体を片付けなければならない為、 一緒くたに穴に放り込むという

倫理的に問題の有る死体の片づけを行っている。

 

「仕方ないだろ・・・」

「おいファルコン、 俺も乗せて行ってくれ」

 

トレジャーハンターが樽を抱えて言う。

 

「如何した?」

「いや、 死体の穴掘り達に差し入れを持って行こうと思ってな

ちゃんと毒見はしておいたよ」

「そうか、 死体と相席だが乗りな」

「背中に乗せてくれよ」

「いや背中に乗せるのは少しむず痒いから断る」

「ちぇ」

 

文句を言いながらトレジャーハンターはミレニアム・ファルコンの背中に乗った。

 

「ひでぇもんだよな」

「あぁ・・・毒を使っての大量殺戮とは酷い・・・民間人も巻き添えじゃねぇか」

「おーい!! ちょっとー!!」

 

ミレニアム・ファルコンを止める中年の小柄な禿の男。

 

「如何した?」

「ちょっと運ぶの手伝ってくれ」

「これは死体を墓に・・・いや、 墓と言って良いか分からんが・・・

兎も角死体を乗せてるからあんまり・・・」

「良いからちょっとこれを見てくれ」

「うん?」

 

ミレニアム・ファルコンが中年の小柄な禿の男の指差す方向を見る。

 

「おい、 何もッ!? トレジャーハンター敵」

「遅い」

 

中年の小柄な禿の男はアリアリでコーヒー(砂糖とミルクアリアリ)で

ミレニアム・ファルコンに攻撃をした!!

 

「ぐわ!!」

 

ミレニアム・ファルコンは横転し大ダメージを受けた。

コーヒーの匂いで異常を察知したからか、 直撃は避けたが大ダメージは免れない。

ミレニアム・ファルコンが積載していた死体が路上にばら撒かれる。

 

「こ、 このぉ!!」

 

顔の右半分が焼け爛れながらも突進するミレニアム・ファルコン。

アリアリは真正面から迎撃する。

 

「ぐはっ!!」

 

二度目は直撃をして息も絶え絶えになるミレニアム・ファルコン。

 

「さてと・・・」

「おい」

「!!」

 

殺気で振り返るアリアリ。

後ろに居たのはトレジャーハンター。

 

「あんまり舐めた事をすると殺すぞ」

「殺して見ろよ・・・」

「・・・・・」

 

ピリピリと空気が張り詰め始めた。

その時、 叫び声が聞こえた。

 

「!?」

「ふっ、 向こうも始まったようだな」

「なるほど、 お前に時間をかけて居られないと言う事だな!!」



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悩む暇などありはしない

時間は前後してバルドは一人で自室で悩んでいた。

世界を救う為に過去を変えて世界を変化させる。

しかしそれは世界中の人々を殺す事になるのではないのだろうか。

そう思考がぐるぐる回っていた。

 

「如何思う? エッグヴィーナス」

 

スシブレードとの対話を行うバルド。

 

『世界は回る物、 そしてスシブレードも回る物

右回転だろうが左回転だろうが、 本人の意志によって回される』

「つまり?」

『停滞するのは死体だけという事だ、 選択肢が有るだけ良いだろう』

「・・・・・君は如何思う?」

『それは卑怯だ』

「!?」

『自分の意志で考え、 決めなければならない』

「・・・・・世界は僕の双肩に背負わせられるって事か

まだ僕は20にもなっていないんだぞ」

『・・・・・最終的に未来を決めるのは君自身だ』

「・・・・・」

『・・・・・』

 

エッグヴィーナスは沈黙した。

そして外から叫び声が聞こえた。

 

「な、 何!?」

『恐らく敵の攻撃だろう、 行こう』

「うん!!」

 

バルドは外に飛び出した。

外はパニックになっていた。

ビアのビールと鞘のさやえんどうにより攪乱されて群衆がパニックになっている。

 

「くっ、 3, 2, 1、 へいらっしゃい!!」

 

バルドはエッグヴィーナスを射出してビアと鞘の元に向かった。

 

「お義父様!! バルドです!!」

「ひいいいいいいいいいいいいはああああああああああああああああ!!

さやえんどうを喰らえええええええええええええええええええええええ!!」

 

さやえんどうの集中攻撃。

しかしエッグヴィーナスの聖霊にはまるで通じない!!

 

「ならばアルコールならば!!」

 

ビールの気泡が周囲に撒き散らされる。

しかしアルコールが回るよりも早くビアは

エッグヴィーナスの聖霊に倒されてアルコールの影響は抜け出たのであった。

 

「くくくぅうううううううう!! 我々を倒した所で無駄だぁ!!」

「どういう事だ!?」

「我々は陽動だああああああああああああああああああ!!

フグが今世界を改竄できるという情報を持って逃げているうううううううう!!」

「な、 なんだって!?」

 

バルドは鞘をエッグヴィーナスでのして戦闘不能にした。

 

「バルド!!」

「レーア様!! 敵は件の情報を手にした様ですよ!!」

「何ですって!?」

 

やって来たレーアと情報共有するバルド。

 

「とりあえず僕は見回りに行って情報を外に逃がさないようにします!!」

「それが良いわね!! 私も行くわ!! 誰か!! この二人を縛り上げて!!」

 

パニックが一段落して捕縛されるビアと鞘。

そして駆け出すバルドとレーアだった。



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マッチポンプ

「はぁ・・・はぁ・・・・・思った以上に強敵だったな」

 

アリアリを何とか撃破出来たトレジャーハンター。

 

「こ、 この有様は・・・!!」

「トレジャーハンター!! ファルコン!! 大丈夫!?」

 

バルドとレーアがやって来た。

 

「俺はかなり痛手を負っている・・・かなりキツイ・・・」

「酷い火傷だ・・・ファルコン、 動けるか?」

「何とか・・・トレジャーハンターは如何だ?」

「辛うじて勝てたという所だ・・・それよりもさっきの悲鳴は・・・」

「そっちは解決した」

「そうか、 それじゃあ何でお前達は走っているんだ?」

「奴等は陽動らしい!! 他にこのイエローストーンから逃げる奴がいる筈だ!!」

「何だと!?」

「これからイエローストーンの周囲を見回りに行く!!

悪いけどファルコンの手当ては任せる!!」

「分かった!! 俺もファルコンを手当てしたら直ぐに行く!!」

 

そしてトレジャーハンターと別れるバルドとレーア。

 

 

 

一方イエローストーンの外れでは・・・

 

「無事に陽動は上手く行っている様だな」

「その様ですな」

「・・・・・」

 

フグとトリニティ、 ハイボールがフードを被って街の外に出ようとしている。

 

「良い感じにパニックになっているな」

 

街の門には市民達が殺到している、 疎開の為に街の外に出ようとしているのだ。

 

「さてと、 では・・・」

 

フグはしゃがんで市民達の足元をするすると移動して対応している兵の元に近付き

フグ肝を打ち込み殺害する。

 

「うっ・・・」

 

ばたり、 と倒れる衛兵。

 

「な、 なんだああああああああああああああああああああああああ!!!?

急に倒れたぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

大げさに叫び声をあげるフグ。

 

「い、 一体何が!?」

「ひ、 ひいいいいいいいいいい!!」

「も、 もしかして毒に・・・」

 

市民達の中に不安が広がった。

 

「皆あああああああああああああ!!!!!!

街から早く逃げろおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!

闇のスシブレーダーに殺されるぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

フグが叫ぶ、 こうすることによって・・・

 

「わあああああああああああああああ!!!」

「きゃあああああああああああああああああああ!!」

「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

市民達の恐怖を煽りパニックを起こす事に成功した。

 

「こ、 こら!!」

 

兵士達も市民を攻撃する訳にはいかず

パニックになり街から逃げ出した市民が発生したのだった。

 

当然ながらその逃げ出した市民の中にフグ達も居たのだった。



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出発強行

「情報が敵方に漏れただとぉ!?」

 

自身の執務室でO5-1が叫んだ。

 

「お、 恐らくですが・・・」

 

レーアがたじたじになって答える、 バルドも隣にいる。

 

「市民達が街から逃げ惑いその中に紛れ込んでいたかもしれません」

「十中十はそうだろうな、 良し分かった、 バルド君」

「はい」

「悩む時間は無くなった、 直ぐに向かうぞ」

「む、 向かうって・・・」

「逆因果の円環の元にだよ」

「!!」

 

汗がどっと溢れ出るバルド。

 

「で、 ですが!!」

「もう一刻の猶予も無い、 早々に行かないと不味いんだ」

「しかし・・・!!」

「くどい、 直ぐに準備して出発をする」

 

話は終わりと手配を始めるO5-1。

 

「・・・・・」

「失礼します」

 

バルドとレーアはその場を立ち去った。

 

「一体如何しろって言うんだ!!」

 

部屋から出た途端に気持ちを吐き出すバルド。

 

「・・・・・」

 

レーアが背中をぽんぽんと撫でる。

 

「最後の瞬間には私も立ち会うよ」

「それで良いんですか!? レーア様も死ぬような物じゃ無いですか!!」

「それでも君は生きて居られるよ・・・」

 

バルドが涙を流した。

レーアが涙をハンカチで拭く。

 

「昔を思い出すわね、 泣いていた君の涙をこうやって拭っていたっけ・・・」

「・・・・・お嬢様、 私は・・・」

「良いんだよ・・・・・」

 

うわあああああんとレーアの胸で泣くバルド。

 

「何やってんだあいつ等・・・」

「青春だねぇ・・・」

「私もズロと・・・何でもない」

 

呼ばれてきた女性陣達が二人を見守っていた。

 

 

 

 

 

「納得が出来ない」

 

スシブレーダー達の詰め所でゴハンが疑問を口にする。

 

「何で俺達スシブレーダーが集まって警護しなくてはならない?」

「重要だから・・・と言う言葉では済まされないな

O5-1は重要人物だが、 イエローストーンの守りを放棄してまでする事ではないだろう

何故移動するんだ?」

 

スシブレーダー達はO5-1からの指示でバルド達の護衛をする事になったのだった。

 

「バルド達に説明を求める必要が有る様だな・・・」

 

ゾーバが重々しく口を開く。

 

「何だか女子達がキャピキャピ言ってたな」

「シャルに聞いて見たが何だかレーア様と良い仲になっているとか・・・

ゴハン、 ハウ、 お前達は昔からバルド隊長と知り合いだろ?

何か知らないか?」

「分からん」

「うーむ、 レーア様とバルドは良い仲だがあくまでも主従関係のそれであって・・・」

「いや恋愛関係じゃなくてだな・・・今回の事だよ、 何が有ったか知らないか?」

「分からないな・・・」

「同じく・・・」



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11人で行く!!

イエローストーンを脱出したフグ、 トリニティ、 ハイボール。

かなりの猛スピードで移動しながら闇達が率いるダークネスシ帝国の本隊にやって来た。

そしてフグが手に入れた情報を話した。

 

「世界を改竄する? もっと詳しく話せ」

「はい!!」

 

闇から説明を求められてフグは世界を包む逆因果の円環の事を話し始めた。

 

「人間によって適度な力が加えられた時に

予測不可能な方法で変形し始め、活発に動作するようになり

被験者の周囲に渦巻き、 ますます速く波立ち

予測不可能な閾値に達した時に世界が改竄されるそうです」

「・・・・・」

 

興味深そうに闇は話を聞いていた。

 

「なるほど・・・」

「闇よ、 これは荒唐無稽な話では無いのですか?」

 

シャリーラ13世が割って入る。

 

「否!!」

「は?」

「回転はパワーを生むのはスシブレードを見ても分かるだろう

件の物も渦巻、 つまりは回転だ、 その回転のパワーを世界の改竄に使う物

とするのならば強ち嘘っぱちとも思えない」

「つまり・・・? 何ですか? その・・・逆なんたらの円環とやらを見つけようと?」

「その通りだ!!」

「闇親方!! 偵察をしていたサー・アイ様から伝令です!!

バルドを含む数名のスシブレーダー達がイエローストーンから出発したようです!!」

 

伝令が叫ぶ。

 

「行先は!?」

「こちらではありません!! 別の方角に向かって行っております!!」

「決まりだな、 今からバルド達を追いかけるぞ!!」

「えぇ!? イエローストーンを放置するのですか!?」

「スシブレーダーが居ないイエローストーン等、 戦う価値も無い

全力でバルドを追うぞ」

「しかし!! 陽動と言う可能性も!!」

「くどい」

 

シャリーラ13世と闇が口論を始める。

 

「・・・この大軍ではスピードが落ちるだろう

ここは如何だろう、 精鋭部隊でバルド達を追い

残りはイエローストーンに行軍と言うのは如何だろうか?」

 

バリゾーゴンが間に割って入る。

 

「それなら両方いけるか・・・」

「ではどの様に部隊を分けますか?」

「よーっし、 じゃあお前イエロースローンに行け」

「お、 俺ェ!?」

 

ブタ頭の男に指示をする闇。

 

「流石に下っ端ばかりじゃあ問題が有るだろう

お前が指示を出せ」

「良いんスカ・・・」

「あぁ、 問題無い、 お前と兵隊達で充分だろう」

「師匠はどの位人を連れて行きますか?」

「スシの暗黒卿5人、 ヤミ・マスター5人で行こうと思う

これならば間違いは無いだろう」

「師匠含めて11人・・・間違いはないでしょうね」

「当たり前だ、 この布陣で負ける方が可笑しい」



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ロープと真実

この世界に置いて最後の戦いが始まろうとしていた。

イエローストーンから出撃するO5-1、 バルド、 レーア、 ゴハン・ソロ

ハウ、 ウェッジ、 シャル、 ケイ、 マドカ、 グレン

ナル、 エミリー、 グリード、 ゾーバ、 トゥーンウィ、 ラマス、 シャーク

そしてO5-1の近衛10名の27名。

 

マックス、 カラースプレー、 トレジャーハンター

ミレニアム・ファルコンはイエローストーンに残った。

ミレニアム・ファルコンは負傷しており

マックス、 カラースプレーは数多くの

スシブレーダー達の派閥の長で彼等を見捨てられないと残ったのだ。

 

一方、 ダークネスシ帝国側も追撃に走る。

闇寿司の元締め"闇"を筆頭に

寿司の暗黒卿シャリーラ13世、 アソウ・タノ、 サーストン、 フグ、 バリゾーゴン。

そしてヤミマスター、 ピースメイカー、 サー・アイ

そして"闇"が秘蔵していたヤミマスター、 カプサイシン、 キャタピラー、 インゼリー。

計11人の凶悪なスシブレーダー達が追撃に向かい。

大部分のスシブレーダー達はイエローストーンに向かったのだった。

 

果たしてバルド達はSCP-1968を発動出来るのだろうか?

その答えは神のみぞ知る・・・

 

 

 

 

イエローストーンからSCP-1968までの行軍は2日以上かかり

1日目何事も無く進行が済んだのだった。

 

バルドは行軍中にまともに他のスシブレーダー達の事を見る事が出来なかった。

彼等を殺す様な事をしているのだ、 当然である。

 

「・・・・・」

 

レーアの胸を借りて泣いたがそれでも割り切れる物じゃない。

バルドは自分のテントの中で横になった。

 

「バルド、 今良いか?」

 

ゴハンがバルドのテントに顔を出す。

 

「・・・何ですか?」

「ちょいと話が有るんだ、 すまんが来て貰うぞ」

「・・・分かりました」

 

憂鬱な気分になりながらバルドはテントの外に出た。

 

「・・・・・」

「バルド、 お前如何したんだ?」

「え? ・・・!?」

 

外に出ると後ろからロープで拘束される。

 

「これで良し、 っと」

「良しじゃないですよグリードさん!! これは一体何の真似ですか!?」

「落ち着け、 別に取って食おうって訳じゃない

暴れられたら困るからだ」

 

グリードが冷静に説明する。

そして別のテントに移動させられるバルド。

そこにはO5-1と近衛、 そしてレーア以外のメンバーが揃っていた。

そしてゾーバが口を開く。

 

「さて、 とバルド、 我々とお前はそれなりに長い付き合いだ

だからお前が何か我々に隠しているのは明白だ、 だからそれを話してはくれないか?」

 

ゾーバが静かに語った。

 

「断ったら、 爪を捥ぐ」

 

脅しながら。



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反応

「・・・・・分かった、 話すよ」

 

この時点でバルドに話す以外の選択肢はない。

無論、 無理矢理拘束を解く事も可能だろう。

しかし後が続かない、 追いかけて来るダークネスシ帝国の追撃を

バルドとO5-1の近衛で躱すのは無理な話である。

バルドは信じ難い話だがと前置きしてからSCP-1968、 世界を包む逆因果の円環について

話し始めたのだった。

 

「嘘じゃねぇのか?」

 

グリードが疑いの言葉を吐く。

 

「いや、 恐らくは真実だろう」

「何でそう思うんですかボス?」

「嘘だったら我々全員から袋叩きにされるぞ」

 

ゾーバが冷静に見定める。

 

「だがしかし、 現状でも我々から袋叩きにされるんじゃないのか?

今の世界を失くして新しい世界を作り出すと言う事は

今の世界の人々を皆殺しにする事に等しい」

 

ウェッジが疑問を口にする。

 

「確かに・・・だがしかし人間なんて何時死ぬか分からないじゃないか

そして何時かは死ぬ、 ならば今死んでも問題有るまい?」

 

ゾーバがなんて事無い様に言う。

 

「世界の改竄は俺達の現状が良くなるかもしれねぇって事だ

なら儂は喜んでその改竄とやらに賭けよう」

「正気かよゾーバ!!」

「俺も賛成ッス」

 

グリードも同調する。

 

「俺は元々チンピラ、 より良くなるなら乗って見るのも一興ッス」

「そう言う事だ、 もしかしたら息子が生きている世界になるかもしれないからな」

「思い切りが良いな、 今より悪くなるかもしれないんだぞ?」

「その時は元々そうなっていたという事になる

賭けに負けた事すら分からないのは癪だが、 儂はどん底から這い上がった

最悪からも這い上がって見せるさ」

「カッケーっすボス」

「あんまり深く考える事も無さそうだな、 俺も世界の改竄に乗るぜ」

 

シャークも賛同した。

 

「面白そうだからな」

「面白そうで賛成するのはどうかと思うぞ?」

「人生の使い道と同じ様に考えれば良いさ、 人生に正解は無い

ならばこうしたいと思う様にするのが正解だ」

「哲学だな・・・」

「これで賛成は3人だな、 お前達如何する?」

 

ゾーバが他のスシブレーダーに尋ねた。

 

「・・・バルド、 世界の改竄とやらにはレーア様も賛同しているのか?」

 

ハウがバルドに尋ねた。

 

「・・・・・不本意ながら賛同していますよ」

「そうか、 ならば従おう、 私はレーア様の配下だからな」

「そんなんで良いのかよ!!」

 

ウェッジが叫ぶ。

 

「俺達が消えてなくなるかもしれないんだぜ!?

それで良いのかよ!!」

「消滅に賭けるか、 存続に賭けるか、 それもまた一興」

 

ゾーバは言い切った。



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多数派の意見

「兄さん、 私も賛成よ」

「何だと・・・」

 

シャルの言葉に驚くウェッジ。

 

「良く考えろ? お前と俺が赤の他人になるかもしれないんだぞ?」

「寧ろ好都合」

「好都合?」

「それはさておき兄さん

このままだと兄さんと離れ離れになるのは確実だよ、 死に別れるのがオチよ」

「だがしかし・・・」

「ふん、 男らしく無いなウェッジ」

 

ケイが口を挟む。

 

「兄離れ、 とは違うが妹が自分の意志で歩き出したんだ

喜ぶべき所だろう」

「しかし・・・」

「私も賛成だ」

 

ケイが即座に言う。

 

「な、 何故だ?」

「私は消滅だの何だのそういう事は考えん

だがしかし今までバルドに助けられてきたんだ、 そのバルドがやると言うならば

私は賛成するよ」

「私も賛成するよ」

「右に同じだよ」

「私も賛成よ」

「勿論私も」

 

マドカ、 グレン、 ナル、 エミリーも賛成した。

 

「な、 何故だ?」

「バルド隊長はレーア様にぞっこんだけど私達もバルド隊長に助けられたからね

彼に従うよ」

「・・・・・ゴハン、 お前は・・・」

「雇い主がやると言うなら傭兵の俺は従うまでだ

決まり切っているだろう」

 

ゴハンがきっぱりと言う。

 

「・・・・・トゥーンウィ、 お前は如何だ?

バルドとの思い出が消えるかもしれないんだぞ? それでも良いのか?」

 

縋る様にウェッジが尋ねる。

 

「ウェッジさん、 貴方は・・・」

「うぇっじ、 あなた、 だいじなことをわすれてる」

 

ラマスを制止してトゥーンウィが語り始めた。

 

「え?」

「このままやみずしをほっとけば

わたしみたいなかわいそうなこがせかいじゅうでうまれるよ

そうなったらこのせかいはじごくだよ、 でもそうならないかのうせいがあるのならば

そのかのうせいにかけるべきだよ」

「・・・・・」

 

ウェッジは俯いた。

 

「ウェッジさん、 僕もこれは心から賛成できない」

 

バルドが呟く。

 

「でもトゥーンウィの言う通り、 このままじゃ僕達は絶対に勝てない」

「黙ってくれ」

 

ウェッジが呟やきふらふらと外に出る。

 

「ウェッジさん?」

「少し一人にしてくれ」

 

そう言って外に出た。

 

「・・・・・それじゃあ今日は解散だな」

「女子でパジャマパーティしようか」

「何だそりゃ」

 

そう言いながらばらけ始める。

それぞれ覚悟を持ちながら・・・

 

「皆さん、 良いですか?」

「何だ、 バルド?」

 

皆がバルドを見る。

 

「・・・・・ロープ、 外して貰っても良いですか?」

「あ、 すまないな」

 

そう言ってバルドはロープを外された。

 

「ありがとうございます」

「何、 構わないよ」

 

バルドはロープを外されて自分のテントに戻ったのだった。



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星空の下で

ウェッジは一人で夜空を見上げた。

 

「畜生・・・」

 

がさり、 と芝生の音がする、 振り返るとそこにはO5-1が居た。

 

「!?」

「少し話そうか」

 

そう言ってウェッジの隣に座ったO5-1。

 

「・・・・・」

「気持ちは分かるよ」

 

O5-1は静かに言った。

 

「何で自分がこんな目に? と思っているな」

「・・・当然でしょう、 自分が消えるかもしれないんですよ?」

「不老不死とどっちがマシかな?」

 

何でもない様にさらりと言うO5-1。

 

「私は世界を救う為に数百年

色んな体に乗り移っては今まで散々な目に遭って来た

蜥蜴に喰われたり、 彫刻に首を圧し折られたり

シャイな野郎に体を引き裂かれたり、 眼球が腐り落ちたり

肉塊の化け物に襲われたり、 色んな死に方をしたもんだ」

「それは・・・お気の毒です」

「まぁ色々ふざけたりもしたがね、 最初の百年は本当にふざけたよ」

「今の貴方からは想像も出来ませんね」

「真面目に仕事が出来るのが私だけだからな

昔の仕事仲間達が懐かしい・・・」

 

O5-1は眼を閉じた。

通り過ぎた仲間達を思い浮かべているのだろうか。

 

「ウェッジ、 消えたくないんだな?」

「はい、 当り前でしょう」

「世界は何度も滅んだ」

「え?」

「その度に私が世界を救った」

「・・・・・信じ難いですね」

「誰もその事を覚えていない、 だからそんな事実は無いんだろう」

「・・・・・」

「私の仲間を私が覚えている、 だから私の仲間は実在した

ならばお前は決して消える事は無い

私の記憶に彼等が居る様に、 バルドの記憶が残っている」

「・・・・・」

 

俯くウェッジ。

立ち上がるO5-1。

 

「柄にも無く説教をしてしまったな、 明日までに如何するか決めてくれ

もしも賛同出来ないと言うのならば、 そのまま立ち去ってくれ」

「・・・・・」

 

O5-1は去って行った。

 

「畜生・・・」

 

ウェッジはポツリと呟いた。

 

 

 

 

 

 

翌日、 レーアに皆に事実を話した事を伝えたバルド。

 

「そ、 それで皆はなんて!?」

「ウェッジさん以外は賛成すると・・・」

「ウェッジは今何処に?」

「さぁ・・・」

 

出発の時間になり皆が集まった。

 

「ウェッジさんは・・・」

「ここに居るぞ」

 

ウェッジが胸を張って皆と同じ所に集まった。

 

「ウェッジさん・・・」

「昨日マジで色々考えた結果、 付き従う事にした」

「ありがとうございます」

「礼は要らない、 さぁ、 行こう」

 

そうして皆はSCP-1968の元に向かうのだった。

 

 

 

 

その彼等を草むらから見る一つのスシブレード。

サー・アイのマグロの目玉であった。

 

「捕捉しました」

「良し、 急ぐぞ」

 

闇達が近づいていたのだった。



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芋虫と激辛

サー・アイが捕捉し闇達は全力で後を追いかける。

闇は馬車に乗っておりどっしりと構えている。

 

「闇の親方、 ここは俺が先手を撃っておきますかー?」

 

キャタピラーが馬車に並走しながら尋ねる。

 

「うむ、 良いだろう任せる」

「へーい」

 

キャタピラーがスシブレードを射出した。

キャタピラーのスシブレードはキャタピラーロール。

芋虫をモチーフにした巻き寿司である。

自立行動し圧倒的なリーチの長さを誇る。

そのキャタピラーロールがバルド達の元にやって来た。

 

「ぐはっ!!」

 

最後尾に居た近衛の一人がキャタピラーロールに倒される。

 

「敵だ!!」

「な、 何!?」

 

バルドはキャタピラーロールを視認するとエッグヴィーナスを射出する。

キャタピラーロールはエッグヴィーナスを視認すると巧みに躱す。

 

「くっ、 自立しているのか!?」

「ふん、 巻き寿司なら負けん、 3,2,1 へいらっしゃい!!」

 

ゾーバがファットプラネッツを射出してキャタピラーロールを迎撃する。

キャタピラーロールはファットプラネッツと激突し合い徐々にスピードを落としていく。

 

「良し、 これなら・・・何だと!?」

 

ゾーバは驚愕した、 次々と現れるキャタピラーロール。

そうキャタピラーは遠距離攻撃が出来るだけでは無い。

複数のスシブレードを射出する事が出来るのだ。

 

「全員で打ち倒さなければ!! くっ!! 時間が無いのに!!」

 

各々がスシブレードで対応する、 近衛たちも武器で応戦するが

何分スシブレードには相性が悪い。

 

「みんな、 どいて」

 

トゥーンウィのアイスクリームが周囲を冷気で満たしキャタピラーロールを凍らせる。

 

「やった!!」

「いや・・・そううまくいかないみたい」

 

戦慄するトゥーンウィ、 冷気を操るスシブレードのトゥーンウィは敏感にキャッチしていた。

向こうからやって来る熱気を。

 

闇の秘蔵っ子その二、 ヤミマスター、 カプサイシン。

彼女のスシブレードは激辛ロール。

大量の唐辛子をふんだんに使ったスシブレードである。

最早食べる事すらままならない代物である。

カプサイシンの激辛ロールは炎を噴き出す、 最早触るだけでも劇薬なのだ

その炎の力で冷気を晴らしながらバルド達の元に向かって来る。

 

「ばるど、 さきにいって」

「なっ!!」

「バルド、 彼女の言う通りだ」

 

O5-1が追従する。

 

「このまま戦闘になれば君が死ぬ危険性が有る、 先に向かおう」

「っ・・・トゥーンウィ、 死なないでね」

「だいじょうぶだよ」

 

トゥーンウィと彼女に付き従うラマスを置いて先に向かうバルド達だった。



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氷VS炎

「らます、 みんなといっしょにいっていいんだよ?」

「いや、 一緒に付いて行きます」

「・・・・・ありがと」

 

ラマスとトゥーンウィがやってくる激辛ロールとキャタピラーロールを次々と打ち倒す

そうこうしている内に闇達がやって来た。

 

「・・・・・」

 

ごくりと生唾を飲むラマス。

 

「よぉ、 やみちゃん」

 

闇がフレンドリーに語り掛ける。

 

「・・・・・」

「そこを通して貰って良いか?」

 

トゥーンウィはアイスクリームを闇に射出した。

ピースメイカーがアイスクリームを迎撃し相殺する。

 

「雄弁な返事だな、 ピースメイカー」

「はい」

「カプサイシン」

「はいよー」

「ここは任せた」

「さきにはいかせないよ!!」

 

アイスクリームの冷気で氷の壁を作るトゥーンウィ。

しかしカプサイシンの激辛ロールの炎で氷の壁が溶かされ悠々と通る闇達。

 

「させるか!!」

 

ラマスがプリンを射出するもキャタピラーロールに阻まれた。

 

「くっ」

「らます、 しょうがないよ、 ここはこのふたりをたおしてさきにすすもう」

「あらぁ? 幾ら何でもそれは無謀じゃないのぉ?」

 

カプサイシンが煽る。

 

「もととはいえすしのあんこくきょうをなめないでね」

「ふふふ、 貴方がスシの暗黒卿を張れていたのはチョコソースがかかっていた

アイスクリーム有っての物、 私の激辛ロールは貴方の冷気を超えている

相性は最悪の筈よ?」

「それにここには俺も居るからな」

 

ピースメーカーが鋏を掲げる。

 

「ヴォルフガングさんの時はみっともない事になったし

ここで汚名挽回と行こう」

「・・・・・らます」

「分かった」

「「3,2,1,へいらっしゃい!!」」

 

掛け声を出して同時にスシブレードを射出するラマスとトゥーンウィ。

プリンの上にアイスクリームが乗ったコンボ攻撃だ!!

 

「くっこれは・・・」

 

カプサイシンは咄嗟に躱し激辛ロールの炎をプリンに当てた。

アイスは解けたが焼きプリンになるばかりで勢いが収まらない!!

ピースメーカーの蟹クリームコロッケで漸く相殺出来た。

 

「中々に面倒な相手だな、 二人コンビのコンボ技・・・中々に厄介だ」

「如何するピースメーカーさん」

「片方を二人で始末しよう、 あのオッサンからだ」

「らます」

「分かっています」

 

ラマスとトゥーンウィの二人を覆う様に氷の壁が出来る。

分厚く中々溶けにくい様にしている。

 

「む、 これは如何するの?」

「あんな氷の壁に囲まれたら凍えるだろう、 長期戦すると見せかけて短期決戦だな」

「ふーん、 じゃあ如何する? 攻めずに待っている?」

「それだと追い付けなくなるからな、 ここは攻めようじゃないか」



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怒りの絶対零度

少し打ち合わせをしたピースメーカーとカプサイシンは行動を開始した。

 

「行くぞ!!」

 

カプサイシンの激辛ロールで炎が巻き起こる。

しかしトゥーンウィのアイスクリームの冷気で相殺される。

 

「それを待っていた!!」

「な」

 

ピースメーカーが炎の中を突っ込んで来た。

大きな鋏の腕でトゥーンウィに襲い掛かる、 がしかし。

がきん、 とラマスが持っている剣で防いだ。

 

「下調べが甘かったな、 これでは私は元騎士だ!!」

 

剣でピースメーカーを叩き斬るラマス。

だがしかしピースメーカーは斬られても動きラマスの首を鋏で掴んだ。

ピースメーカーは体が斬られても体にある神経節により行動が可能!!

 

「下調べが甘かったな」

 

ばつん、 とラマスの喉を斬るピースメーカー。

 

「次は」

 

お前、 と言い切る前にピースメーカーは凍り付いた。

怒り狂ったトゥーンウィの冷気は最早激辛ロールでは相殺できない。

 

「なっ」

 

カプサイシンは翻って逃げようとするも逃げ切れず凍り付いてしまう事になった。

 

「らます!!」

 

トゥーンウィはラマスに駆け寄った、 喉が斬られて血が止まらない。

 

「っ!!」

 

トゥーンウィは地を凍らせた。

 

「はっ・・・はっ・・・」

「だいじょうぶ!?」

「・・・気道は斬られていない様です、 傷は深いですが致命傷では無いです」

「よかった・・・」

 

涙を流すトゥーンウィ。

 

「だが、 油断出来ない状況です・・・トゥーンウィ

このままバルド隊長達の所に行って下さい」

「そんな!!」

「この状況、 あまり良いとは言えない

バルド隊長の改竄とやらが真実で成功させなければ私が危うい」

「・・・・・・・わかった!! しなないでね!!」

 

トゥーンウィはアイスクリームで氷を作って滑りながら後を追い始めた。

 

「我が二人の娘と妻よ・・・如何か彼等に祝福を・・・」

 

ラマスは凍った首を労わりながら、 静に呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

闇がカッと目を見開いた。

 

「これは予想外、 カプサイシンがやられたようだ」

「何ですと!?」

 

驚愕する一同。

 

「少し軽く見過ぎていた様だったな・・・次誰かが待っていたら俺が出よう」

「その必要はねーよ」

 

バリゾーゴンが軽口を叩く。

 

「寧ろ俺一人で残り全員かたずけても良いんだぜ?」

「四天王の生き残りよ、 それならば丁度良い相手が居る様だ」

「あん?」

 

インゼリーがぼそりと呟き、 後ろに指を指す。

そこには魔物の群れが居た。

 

「ふーん、 雑魚が1000匹位か、 楽勝だな」

「楽勝に思えるか!?」

 

アーマゲドンがまさに飛んで接近して来る。

 

「じゃあバリゾーゴン、 ここは任せた」

 

闇達はさっさと先に進むのだった。

 

「へっ、 来いやあああああああああああ!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

バリゾーゴンと魔物達の戦いが始まる・・・



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達者で!!

遠くで戦闘の音が聞こえる。

 

「これは・・・」

 

馬を走らせながら双眼鏡で確認するO5-1。

 

「魔族達が戦ってくれている様だ」

「何だか知らないがこれはチャンスか!?」

「いや・・・敵は一人置いてさっさと向かって来ている・・・」

「さっきの芋虫達が来ているよ!!」

 

迫りくるキャタピラーロールの群れに叫ぶエミリー。

 

「仕方あるまい、 ここはワシが残ろう」

 

ゾーバが翻る。

 

「ボス!!」

「質量は圧倒的にこちらが上だ、 グリードはさっさと進め」

「年寄りだけに仕事はさせられないなぁ・・・」

 

エミリーも馬から降りる。

 

「私も行くよ」

「ボスを置いて行けないッス!! 俺も残ります!!」

「・・・・・提案だ、 ゾーバもエミリーも実力が有るスシブレーダーだ」

 

O5-1が語り始める。

 

「最低限の人数だけ連れて後は全員置いて行くのは如何だろうか」

「っ!!」

 

バルドが顔を顰める。

 

「それは・・・!!」

「いや、 アリだろう」

 

バルドの反論をゴハンが遮った。

 

「O5-1、 それでは護衛が少なくなります」

「ここでの敵は後ろから追って来る奴等だけだ

ならばここで喰いとめるのも悪くないだろう」

 

近衛の反論を論破するO5-1。

数秒の議論の後に、 ハウ、 ウェッジ、 シャル、 ケイ、 マドカ、 グレン

ナル、 エミリー、 グリード、 ゾーバ、 シャーク、 そして近衛7名がそこに残り

迫るダークネスシ帝国の面々を食い止める事にした。

 

「じゃあな!! 達者で!!」

「・・・ごめんなさい」

 

ゾーバの見送りを涙ながらに背を向けて走り去るバルドだった。

 

そしてゾーバ達の元に闇達がやって来た。

 

「ヤバそうなお前が闇だな!!」

 

ゾーバが叫ぶ。

 

「そうだ、 お前は?」

「ワシはゾーバ!! お前に殺された息子の仇を取らせて貰う!!」

「面白れぇじゃねぇか、 強そうだし俺が出よう」

「親方が出る迄も無い!! 私が相手になろう!!」

 

アソウ・タノが鳥の軟骨揚げを放ち、 大量の軟骨で攻撃を仕掛けた。

 

「ふん!!」

「はぁ!!」

「いっけえ!!」

 

ゾーバのファットプラネッツ、 エミリーのジュエリー・ボックス

ウェッジのイクラリオンによって軟骨揚げは相殺された。

 

「まだまだ!!」

「3,2,1、へいらっしゃい!!」

 

ハウがOinari3を射出した!!

鳥の軟骨揚げで迎撃するアソウだったが軟骨揚げの攻撃力ではOinari3を止める事は出来ない!!

 

「くっ!!」

「行けえええええええええええ!!」

 

ドゴン!! とOinari3毎地面が抉れた、 闇のラーメンである。

 

「こんなに強そうな連中が沢山居るんだ、 俺にも遊ばせろ」

 

そう言って闇が前に出た。



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決戦

「遊ばせろ、 か、 遊びで済むと思っているのか?」

 

ゾーバが前に出る。

そして地面が抜ける、 まるで沼の中に足を踏み入れた様にずるりと地面の中に入り込む感覚。

泥中に夥しい虫が這い回り、 それらが体内に潜り込む感覚がする。

 

「下らん手品だ」

 

ゾーバが立ち上がった。

 

「おい、 邪魔すんなよ」

 

闇が忌々しそうにシャリーラ13世を見る。

シャリーラ13世がシャリによる精神酢飯漬けでサーストンを操作していたのだ。

 

「いえいえ、 親方、 ここは我々が戦いましょう

お楽しみは後に居ます故に」

「何ぃ?」

「件のバルドとやらが見当たりません」

「ふん・・・ならばお前の話に乗ってやろうか

じゃあここはお前とサーストンとアソウに任せるよ」

「誰一人として先に進ませんぞ」

 

ゾーバが仁王立ちになる。

 

「けっ、 じゃあ来れる奴だけついて来い」

 

そう言ってから揚げやケーキ等のスシブレードを大量に放ちながら前に進む闇。

 

「くっ、 数が多過ぎる!!」

 

エミリーのジュエリー・ボックスでも捌き切れない。

一つ一つがかなり強いスシブレードである、 闇がまともに戦う気が無かったのが幸いだった

もしも闇が戦うつもりならば全滅していただろう。

 

「奴は仕方ないとしても他の連中は通す訳には行かない!!」

「闇の親方を一人にする訳には行かない、 通させて貰おう」

 

サー・アイが宣言する。

 

「その必要はねぇよ」

 

インゼリーが口を開いた。

 

「闇の親方は一人でも強いんだ、 一人でも充分」

「しかし」

「それよりも俺は今スゲェ興奮しているんだ」

 

くくく、 と笑いながらインゼリーが自身のスシブレードを出す。

寿司のゼリー寄せである、 ゼリーの柔らかく重い感触は圧倒的なパワーを持ち

そして防御力を兼ね備える。

 

「闇の親方に秘蔵されてこれが初めての実戦、 もう俺の下半身はフル勃起だ」

「下品な野郎だ・・・全員纏めてかかって来い!!」

 

ゾーバが叫ぶ。

 

「我々も居るのを忘れるなよ」

 

ケイ達も前に出る。

 

「寿司の暗黒卿を舐めるなよ!!」

 

フグが叫ぶ。

 

「寿司の暗黒卿何するものぞ!! 恐れるに足りんわぁ!!」

「ほざいたな!! その言葉あの世で後悔するが良い!!」

 

一斉にスシブレードを放つスシブレーダー達。

近衛達も剣を抜いて一斉に走り出した。

 

「ここは絶対に通さない!!」

「押し通る!!」

 

アソウの軟骨揚げが舞い上がり、 その軟骨揚げを巧みに受け止めるOinari3。

サーストンの精神攻撃が飛んで来るも、 精神攻撃に屈する柔な心の持ち主は

ここには誰一人居なかったのだった。



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老兵は死なず

バルド達は遂にSCP-1968 世界を包む逆因果の円環が有る場所までやって来た。

そこは山だった、 そこに重厚な扉が備え付けられていた。

 

「・・・・・禁じられた山を思い出しますよ」

 

スシブレードの知識を得た山の事を想起するバルド。

守備をしていた部隊から敬礼を持って迎えられる。

重厚な鉄の扉が開かれる。

 

「じゃあ行くぞ、 バルド・・・!!」

 

しゃきんと剣を抜く近衛。

 

「如何やら我々はここまでの様だ、 先に行け!!」

「な、 何を・・・O5-1」

 

バルドは直ぐに察知した、 闇がすぐそこまで来ている。

 

「僕も戦います!!」

「否!! ここは私が残ろう」

 

O5-1が言い切った。

 

「しかし貴方では闇に勝てません!!」

「分かっている、 しかしお前の目的は勝つ事では無く希望を先に繋ぐ事!!

人類に必要なのは勝利では無い!! 生き続け戦い続ける事だ!!」

「だけど!!」

「議論の余地は無し!!」

 

近衛二名がバルドとレーアの二人を扉の中に押し込めた。

 

「な、 何を!!」

「門を閉めろ!!」

「ここは我々が殿を務めよう、 ここは私に任せて先に行け!!」

 

重厚な門が閉じられる。

 

「一度は言って見たかった台詞だ、 言えて満足だよ」

 

ふっ、 と笑うO5-1。

 

「まさか財団の問題児と呼ばれた私がこんな状況に追い込まれるとは・・・」

「そうでも無いだろう」

 

警備兵が言葉を紡ぐ、 この場所の警備兵は全て不死の首飾りで

人格がO5-1になっているのだ。

 

「こうして世界を守る為に長年働いている、 財団の問題児の名は返上したも同然だ」

「そうだな・・・後は大人として未来を子供達を託すとするか」

「お、 カッコいい」

「だろぉ」

 

軽口を叩きながらにこりと笑うO5-1。

 

「・・・・・来たか」

 

闇がやって来た。

 

「俺の目が黒い内はここは通さんぞ!!」

「ふん、 ならば目を白黒させてやろうか!!」

 

闇がスシブレードを構える。

 

「・・・ふん、 偉そうな恰好している割に骨が有る様だな」

「ほほう、 褒めて貰って嬉しいね」

 

O5-1が尚も軽口を叩く。

 

「寿司を握るのには五感を研ぎ澄まさなければならない」

「ん?」

 

唐突に話が変わった。

 

「故に俺の五感は鋭敏なんだ」

「何が言いたい?」

「鼻が利くからな、 分かっているぞ? 匂い消しの香水に紛れた火薬の匂い

自爆するつもりだな? 兵隊達も爆弾を抱えている

特攻上等カミカゼアタックってところか?」

「!!」

 

爆薬に火を点けて闇に迫るO5-1と警備兵達。

 

「その意気や良し!!」

 

大量のスシブレードを放つ闇、 そして・・・



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新世界へ

どごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!

轟音が鳴り響いた。

 

「い、 今のは!?」

「恐らく自爆だろう」

 

バルドに近衛が答えた。

 

「自爆!?」

「我々全員に爆発物を携帯している、 いざという時は自爆してでも相手を倒す構えだ」

「そんな・・・」

「さぁ、 先を急ごう」

 

近衛達の先導で地下バルド達はSCP-1968 世界を包む逆因果の円環の元に辿り着いた。

 

「これが・・・」

「急いでこれに触」

「おっと、 そうはいかないぞ」

 

バルド達が後ろを振り返るとそこには闇が立っていた。

 

「ば、 馬鹿な・・・」

「爆風の握りで爆風を無効化させて貰った」

「くっ!!」

 

レーアが生きている銃で銃撃を行った。

しかし闇は銃弾を握ってしまった。

 

「銃弾の握りだ、 さて如何するよ?」

「・・・・・」

 

SCP-1968までの距離は離れている。

向かっている最中に後ろからスシブレードが飛んで来るのは必至である。

 

「・・・・・」

 

バルドはスシブレードを構えた。

 

「止めろ!! ここで戦って負けたら全てが終わるんだ!!」

 

そう言って近衛がバルドと闇の間に割って入った。

しかし闇が放った唐揚げで吹き飛ばされる。

 

「ぐはぁ!!」

「!!」

 

バルドは戦慄した、 今のフォーム

スシブレードの威力、 どれを取っても今までのスシブレーダー達とは一線を画す。

 

「3, 2, 1, へいらっしゃい!!」

 

エッグヴィーナスを射出し聖霊を召喚するバルド。

 

「ふん」

 

レンゲとラーメンを構える闇。

 

「見せてやろう、 これが俺のラーメンだ」

 

ラーメンを射出する闇、 聖霊が拳で攻撃し迎撃しようとするも押し切られそうになる。

 

「くっおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

聖霊の連打により何とかラーメンを破壊する事に成功した。

 

「ほら次だ」

「な!?」

 

ラーメンが次々と打ち込まれる。

聖霊で防ごうとするもガードして何とかダメージを最小にするのが精一杯だった

それでもダメージは計り知れなかった。

 

「うおおおおおおおおおお!!」

 

吹き飛ばされるバルド、 そしてSCP-1968に激突する。

そして急速に変形し、 バルドの周りを高速で渦巻き始めた。

 

「うわ!!」

「あ・・・やっちまったか・・・」

「バルド!!」

 

レーアが叫ぶ。

 

「どうか・・・元気で、 そして私の事を」

 

涙を流しながら言葉は途切れた

バルドがどんなに悩んでもあっという間に話は先に進んでしまった。

もう戻れない、 さようなら世界、 さようならスシブレーダー部隊。

そして新しい世界が始まるのだ。



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第一話【新しい幕開け】

SCP-1968の変形が収まった時にバルドの周囲には見知った顔が並んでいた。

ゴハン・ソロ、 ハウ、 ウェッジ、 シャル、 ケイ、 マドカ、 グレン

ナル、 エミリー、 グリード、 ゾーバ、 そしてラルフ。

 

「こ、 これは・・・一体」

「バルド、 我々が分かるか?」

 

ゴハンが尋ねる。

 

「え、 えぇ・・・存じ上げて居ますよ」

「何だその喋り方・・・一体如何言う状況だか分かるか?」

「え、 えぇと・・・分かりません」

 

世界が改変されているのだから状況が分かる筈も無いので正直に答えた。

 

「お前はこの記憶を書き換える円環に触って魔王に侵略されかかっている

この世界を打開する術を模索している最中だ」

「魔王・・・異世界から闇は来ていない?」

「闇が来ていない? という意味が分からんが異世界からは誰も来ていないぞ?」

 

話が微妙に食い違っているゴハンとバルド。

如何やら魔王を討伐すれば異世界から闇を召喚する事もない。

 

「つまり魔王を討伐すれば何も問題は無い?」

「軽く言ってくれるな・・・如何やらその様子だと魔王を倒せる記憶が手に入ったようだな」

「まぁ・・・はい」

「歯切れが悪いな」

「この円環って頻繁に使われる物ですか?」

 

何とか二度と円環が使われない様にするバルド。

 

「いや? お前の得た記憶が戦いに役立つ物ならば二度と使う事は無いだろう

上も極力使いたくないみたいだったからな」

「そうですか・・・」

「喋り方すらも変えるのか」

「え?」

 

バルドは困惑する。

 

「まぁ良いさ、 とりあえず色々知識を我々に教えてくれ」

「分かりました」

 

バルドはスシブレードの事をゴハン達に伝え、 この事実は改変前の世界と同様

新しい世界の武術基盤となるのだった。

 

「なるほど、 スシブレードか・・・陛下にも伝えて新しく部隊編成をしよう

バルド、 お前も忙しくなるぞ」

「そうでしょうね・・・」

 

バルドは闇との戦いを想起しながらそう答えた。

これからも戦いが始まると思うと憂鬱だが今度こそ世界を救おうと心に決めたのだった。

 

「所でバルド、 後で牢屋に向かって親父さんとレーアに顔を出しておけよ」

「親父さん? レーア・・・って呼び捨て?」

「・・・まさか二人の事を忘れたのか?」

 

ゴハンが不安そうにバルドを見る。

 

「いえ、 親父さんって・・・もしかしてハルト様じゃなかったお父さん?」

「そうだが」

「後なんでレーア様を呼び捨てに?」

「何で様付けしているのか分からんが、 レーアはお前の幼馴染だろう?

今回、 お前が円環に触るって記憶が改変されるから

二人とも大騒ぎして捕まっているんだ、 会いに行って来てやれ」

「・・・・・はい!!」

 

バルドは泣いた、 そして走り出したのだ。

 

新しい世界は今までの世界とは似ているが違っていた。

だがその世界にも希望は有ったのだ。

 

「あ、 場所は何処ですか!?」

「ここを出て外のテントに居る」

 

バルドは外に出た、 外では明けの明星が輝いていた。




この物語は終わるがバルド達の戦いは続く


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極秘!!最終章終了時の闇のスシブレーダーとスシブレード名鑑

本名:マンダロリアン

闇号:キャタピラー

闇の秘蔵のヤミ・マスター。

闇がダークネスシ帝国の夥しいスシブレーダーの中から選出したスシブレーダー。

圧倒的な空間把握能力を持っており、 その脳内演算能力から

研究中だったキャタピラーロールを使用する事になった。

 

使用スシブレード:キャタピラーロール

攻撃力:C 防御力:C 機動力:A 持久力:C 重量:A 操作性:S

芋虫の形を模した巻き寿司のスシブレード。

自立行動が可能な上に脳天の様な距離の制限が無いスシブレードだが

自立行動には使用者の脳内キャパシティを使っている為

大量に使うには訓練が必要である。

 

親方”闇”からの総評

悪くは無いがノーテンと被っていて能力が低かったので

大量に仕える様に訓練して置いた。

 

 

本名:スパイス

闇号:カプサイシン

闇の秘蔵のヤミ・マスター。

闇がダークネスシ帝国の夥しいスシブレーダーの中から選出したスシブレーダー。

情熱的で荒々しい性格で勝手にスシブレードの試作品を持ち出す等問題行動も目立つ。

研究中の激辛ロールを使う事になった。

 

使用スシブレード:激辛ロール

攻撃力:S 防御力:D 機動力:D 持久力:D 重量:A 操作性:A

激辛の巻き寿司のスシブレード。

辛すぎて炎を操る事が出来る。

 

親方”闇”からの総評

炎は強いが似た様な事がやみちゃんでも出来るのでとっておいた。

 

 

本名:ディバナ・ガス

闇号:インゼリー

闇の秘蔵のヤミ・マスター。

闇がダークネスシ帝国の夥しいスシブレーダーの中から選出したスシブレーダー。

詳細不明。

 

使用スシブレード:寿司のゼリー寄せ

攻撃力:SSS 防御力:SSS 機動力:SSS 持久力:SSS 重量:SS 操作性:SSS

寿司のゼリー寄せのスシブレード。

圧倒的なスペックを持つが寿司と認識出来ずに回せない者が殆どである。

 

親方”闇”からの総評

一体コイツは何なんだろうか。

 

 

本名:フグ

スシの暗黒卿の一人。

シャリ王国の暗殺者だったが闇に誘われてスシの暗黒卿になった。

少女だが暗殺者としての力量は高く、 暗殺者としての隠密術に長けている。

反面真正面から戦った際の力任せの勝負は不得手で

スシの暗黒卿の中では最弱の部類である、 しかし相手を殺すと言う事には長けている。

 

使用スシブレード:フグ肝

攻撃力:D(対人のみSSS) 防御力:C 機動力:S 持久力:C 重量:D 操作性:SSS

フグ肝のスシブレード。

当然ながらフグ肝も猛毒であり摂取すれば死は確実である。

 

親方”闇”からの総評

毒寿司との親和性が高かったが使いこなしているとは言い難い

もっと相性のいい毒が有ったかもしれない

 

 

本名:アンバラン

闇号:ダースシ・ノーテン

スシの暗黒卿の一人。

元々は冒険家だったがサーベルタイガーに殺害されデュラハンとなる。

闇と遭遇して新しい頭としてマグロの頭部を乗せられる。

最初は不服だったが強い頭部に入れ替える事を闇に説かれ受け入れる。

人間の頭部が無いからか倫理観に問題が有り、 落ちたスシネタを再利用すると言う

人間として最大の禁忌を犯した人類史上最低のスシブレーダーである。

 

使用スシブレード:脳天

攻撃力:A 防御力:A 機動力:A 持久力:A 重量:C 操作性:A

脳天のスシブレード。

ほほ肉に近い質感であり尋常ならざる力を持っている。

更に頭としての特性も持っており自己判断で行動する

オートインテリジェンス機能も搭載している。

 

親方”闇”からの総評

これは幾ら何でもモラルが無さ過ぎるだろ・・・

 



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あとがき

ご拝読頂きありがとうございます。

作者のMr.後困るです。

この度はスシブレードを題材にしたSSを一年近くに渡り掲載させて頂きました。

爆天ニギリ スシブレード作者bamboon氏並びに関係者様に感謝の意を表します。

本当にありがとうございました。

 

この作品はスシブレードを題材にしたSSですが

スシブレードに関しては門外漢な為、 スターウォーズをメインにパロディさせて頂きました。

その為、 作中の章の表記も1からスタートしない特殊な形式を取り

一部の読者様から不評を頂きました、 これは別に1章から始めても良かったかもしれませんね

反省点かもしれませんがこう書く事で過去編も出来たので個人的には気に入っています。

 

今回は、 色々と反省点が多い作品になりました。

まず第一に主人公バルド君と女性スシブレーダーを良い雰囲気に出来なかった事。

当初の考えでは女性スシブレーダーとのハーレムを考えていたのですが

私の力量では実現しませんでした、 色々と残念でした。

 

そして第二にトライピオモチーフのスシブレードを出せなかった事。

トライピオは最弱とも揶揄されるベイブレードですが人気が高く

動画サイトでのトライピオ改造動画等、 ネタには困らない物でした。

そのトライピオモチーフのスシブレードを出せなかった事は悔いが有りますね。

 

第三にレギュラーキャラが多過ぎるて使いこなせなかった。

特に私はゾーバさんが好きなので多用してしまって

他のキャラが動かす事が出来なかった、 ハーレムの構築が難しかったと同じ位問題ですね

シャルとウェッジの兄妹等色々なキャラが居たのに動かせなかったのは残念です。

 

最後に海外創作寿司を知らなかった。

カリフォルニアロール以外にも海外の創作寿司は有るんだなと

知らなかったのは痛かったですね、 もっと早く知って居れば

作品に膨らみが出たと思います、 最後の隠し玉のヤミ・マスター3人衆に持たせましたが

もっと良い展開に出来たんじゃないかなと後悔しています。

 

色々と悔いが残る作品でしたがめでたく完走と相成りました。

一年近くお付き合いして下さった読者の方々には感謝し切れません。

このSSではSCPを何体か出しましたがSCPその物の異世界転生の様な作品も

書いてみたいなと思っているので私が書いた暁にはそちらもよろしくおねがいします。

 

それでは皆さん、 私の別作品でまたお会い出来る事を楽しみにしています。

改めて最後に皆様どうも御拝読ありがとうございました!!



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