Bois and бак (COTOKITI JP)
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Танковый аванс

一度現代車両での戦車道を見てみたかった。
ムシャクシャして書いた、後悔はしていない。


狭くて小汚い部屋。

外側の壁は潮風のせいで錆びて余計に汚さを増している。

そこのリビングにて、一人の男がテレビを見ていた。

戦車道関連のニュースだった。

 

テレビに映っているのは最近そこかしこで話題を呼んでいる日本の学校、確か大洗と言ったか。

まぁそいつらはニュースに拠れば数々の強豪校を破り、勝利を手にしていると言う。

 

こちらにはあまり関係の無いニュースだが、情報源がこれとラジオしかないのだから、大人しくテレビを見るしかない。

アンテナがあるのでテレビは見られるのだが、WiFiの契約はしておらず、ネットは使えない。

 

テレビをつけっぱなしにしながらハンガーに掛けてあったTシャツと黒のバイカージャケットを身に付け、冷蔵庫を開ける。

中にあったサンドウィッチを取り出し、そのまま食べる。

やっぱり冷たい。

暖かい飯が食べたくなるがコンロも電子レンジも無いのでしょうがない。

 

「……本土(・・)に行きてえな……」

 

「まだそんな事を言ってるのか? いい加減慣れろよ、兄弟」

 

突然上から声が聞こえて来たかと思うと天井のハッチが開き、梯子が降りてきた。

そこから降りてきたのはダボダボのツナギ姿の女だった。

この光景にはもう慣れているので今更何を言うまでもない。

 

ツナギ姿の女、ケティはズカズカと俺の家に踏み入り、薄汚いソファに座っていた俺の隣に座った。

ケティの方を見やると何やら意味深な笑みを浮かべている。

こういう顔をしている時は、大抵ろくな事を考えていない。

 

「で、何の用だ」

 

メタルストーム(・・・・・・・)のことなんだが──」

 

「だからそれは無理だって言ってるだろう。 そもそも車両が無い」

 

「最後まで話を聞けって!その事だが、手に入ったんだよ!車両が!」

 

その言葉を聞いた瞬間、俺は立ち上がってケティに詰め寄る。

金を手っ取り早く稼ぐ方法にはメタルストームへの参加があったが、如何せん車両が無かったせいで今まで選択肢から外していたのだ。

メタルストームは取り敢えず車両さえあれば参加は可能だ。

車両が手に入っただけでも大きな進歩と言える。

 

「本当か!?何両だ?」

 

「三両だ。 ウチの野郎共をかき集めれば搭乗員はちょうど足りると思うぜ」

 

「一応確認するが三両とも動くんだろうな?」

 

「安心しろ、どれも損傷が少なく綺麗な状態だったから少し修理しただけで動いたぞ」

 

何たる僥倖か、と俺は内心歓喜した。

まともに動く車両が三両も見つかったのだ。

これ程の幸運はそう起こるものではない。

そこら中を探したとしても見つかるのはジャンクヤードに積み上げられているような鉄屑しかない。

早速手に入れた車両を確認したいとケティを急かす。

 

「まぁ落ち着けって。 これからお前を連れて見に行く所だったんだ」

 

「なら善は急げだ。 行くぞ」

 

家の扉を開け、外に出る。

ドアを開けた瞬間に吹き込んでくる潮風が心地よい。

天気は晴天。

外出するにはうってつけの天気だ。

俺の家はここの端っこに建てられているため、家を出て直ぐに海が見える。

景色がいいのは結構だが潮風で建材が傷むのは少し困る。

 

ケティを連れ、俺は三両を保管しているガレージへと急いで向かった。

住宅街を抜け、商店街を抜け、更に暫く歩くと着いたのはケティとその仲間達が営んでいる修理屋の工房だった。

とはいえ店の業績はあまり良くはないが。

精々来るのは中古車の修理の依頼位だ。

 

「こっちだ」

 

ケティの後に着いていき、店の裏手にある大きなガレージの前に立つ。

 

「俺達が手に入れた戦利品はこれだ!」

 

そう言いながらケティはシャッターを開き、俺にその中を見せた。

外から日光が差し込み、その全容を顕にした車両を見て俺は感嘆の声を漏らした。

 

「確かに、これは凄いな……」

 

目の前に鎮座する三両の戦車。

どれも新品同様に綺麗で日光に照らされた緑の塗装が輝いている。

そこら辺で拾って来たとは思えない程の状態の良さに言葉が出ない。

感動する俺をよそにケティは一番左にある車両から順番に説明していく。

 

「一番左にあるコイツは『PT-76B』。 スタビライザーは健在だ。 サーマルと暗視装置は無いがな」

 

「で真ん中のコイツは今回の主役といっても過言じゃねぇ。 『T-55AM1』だ!コッチはスタビライザーだけじゃなくて他の電子機器等の装備品も全部生きてる」

 

「そして最後のデカブツはObject 120だ!砲身はデカすぎてガレージに収まりきらなかったから外してある」

 

ケティが車両の解説を行っている中、俺は既に自分が乗る車両を決めていた。

勿論T-55AM1だ。

メタルストームでは俺は隊長になるだろう。

ならば一番性能の安定しているこれに乗るべきだ。 そう思った。

 

日常では触れることのなかった戦車が目の前にある。

それだけでも充分感動モノなのにそれに乗って戦えると来たもんだ。

幸福感に満たされながらT-55AM1に歩み寄り、正面装甲に手を触れる。

冷たく、そして頼りがいのある装甲だ。

まぁ現代の戦車の砲弾からは守ってくれないだろうが。

 

装甲に手を触れながらケティの方を向き、俺は言った。

 

「それじゃあ、俺達の戦車道を始めるとするか」

 

「おう、もう部隊登録の手続きは終わらせておいたから安心しろよ。 勿論お前が隊長だ!」

 

全ては、この三両から始まった。

 



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Таран

作者は大の東側兵器好きですので主人公側は基本的に東側オンリーでやってくつもりです。


車両が揃い、そして部隊登録の手続きも終えた俺達が今やるべきことと言えば一つだ。

眼前にはこれから三両の戦車に乗る搭乗員であるケティの部下達がいる。

皆やる気に満ちた表情で俺を見ている。

息を二度三度吸って吐き、口を開く。

 

「これからこの三両の慣熟訓練をやるぞ」

 

まずメタルストームの試合においてフラッグ車となるT-55AM1を除く二両に搭乗員を割り当てる。

メカニックである彼等ならば直ぐに操作方法も覚えられるだろう。

PT-76BとObject 120の搭乗員割り当てが終わった次はフラッグ車の割り当て。

 

「俺は車長で、ケティは装填手、砲手はカイルお前がやれ」

 

既に粗方誰を割り当てるかは決まっていたのでトントン拍子に作業は進む。

 

「操縦手はイーライ、お前に任せる」

 

「あいよ」

 

「よし、コレで全員割り当てたな」

 

「じゃあ早速始めるか!」

 

ケティがそう言うと全員そそくさとそれぞれの車両に乗り込み、唐突に模擬戦が始まる。

車内に積んでいる砲弾は既に全部模擬弾に変えてあるので別に何時始めてもよかったが。

 

場所はある友人から借りた演習場なので戦車戦をするにはうってつけの場所だ。

それなりに広い森林地帯で近くに植物に水分を供給する為の人口の大きな川もある。

あそこは結構川底が深く、流れが早くて危ない(・・・・・・・・・・・・・・・)から近付く奴はあまりいない。

散開した三両はそれぞれの車長の判断の下、決めたポイントまで向かう。

俺の車両はここら一帯を見渡せる小山の上を目指した。

 

キューポラから半身を出し、辺りの様子を見ながらこれからの事を考える。

まずPT-76は相手にならんだろう。

脆弱な足回りに軽装甲の癖にやたらデカい図体。

水陸両用車だし支援車両なので仕方ないといえば仕方ないが。

 

最も警戒すべきはObject 120。

装甲は薄く、機銃にも抜かれかねず、機動性にも欠けているが恐るべきはその主砲である。

152mmの滑腔砲から放たれる砲弾の初速は1700km/hを超えており、射程も同世代の他の車両を凌駕している。

もし見つかれば回避行動をとる暇もなく撃ち抜かれるだろう。

 

「よし、ここで止めろ」

 

無線で車両を停車させ、俺は双眼鏡片手に外へ出て偵察に出た。

ここは演習場で一番高い場所。

ここならば敵の様子も見れるかもしれない。

首から提げていた双眼鏡を手に取り、見回す。

敵車両が隠れていないか、草木の間までしっかりと目を凝らす。

 

それから暫く見ていたが敵車両の動きは見られなかった。

更に遠い場所へ行ったのか、何処か死角に隠れているのかは分からない。

兎も角見つかる前にここから早めに動いた方が良さそうだ。

立ち上がり、車両に戻ろうとしたその時だった。

 

突如爆発音と共に車両の真後ろから爆風による粉塵が上がった。

 

「敵弾!?」

 

双眼鏡を覗き、着弾点のその先を見ると、そこにいたのは相手にならないと高を括っていたPT-76Bだった。

遠くに見える川辺から撃ってきたようだ。

直撃を免れたのは幸運だった。

 

本来ならばこちらの車両周辺は深い森が広がっていて普通の戦車が通るのは不可能である。

そう、普通の戦車ならばだ。

 

「あいつら……川を渡って来たのか!」

 

PT-76Bは水陸両用車だ。

だから水上航行も可能。

それだけじゃない。

あそこの川は流れが結構早い為、その流れの強さを利用して通常よりも早い速度で進み、あの場所に先回りをしていたのだ。

 

初弾を逃れた車両は何とか次弾が飛んで来る前に稜線の向こう側に逃れ、俺も急いで車内に戻った。

ハッチを開き、車長の席に飛び込むと中にいた搭乗員は意外と平然とした表情で座席に座っていた。

 

「このままじゃ不利だ。 一旦向こうの山道を直進して身を隠すぞ」

 

川辺にいたPT-76Bとはまだそれなりに距離が離れている。

逃げる時間は残されている。

坂道を一気に下り、右手にある山道を通っていく。

整備された道を進む続け、先にある小さな丘を指差した。

 

「あそこに隠れるぞ」

 

「分かった」

 

イーライは俺の言う通り、丘の向こう側まで走らせて丁度車体が完全に隠れる位置で停車した。

いつでも発砲出来るように砲塔を先程通った山道に向けさせ、来るのを待つ。

 

 

 

そして一方、PT-76Bの方では。

 

「バカっバカっ!!何外してんだ!!折角の奇襲が台無しじゃねえかこの野郎!!」

 

「悪かったって!これ撃つの初めてなんだよ!」

 

怒鳴り散らしながら砲手の肩を蹴ったくるのはPT-76Bの車長であるジェラルド。

蹴られている方は砲手のミゲル。

憤怒の表情で砲手を蹴りまくるジェラルドだったがまぁ完全に後ろを取れていてしかもスタビライザーによる補助もありながら外したのだから怒るのも無理は無い。

 

「早く追うぞ!」

 

「オーケー!!」

 

操縦手のヘイヴィスがアクセルをふかし、坂を越えようとする。

 

「何してんだ、早くしろ!」

 

「しょうがないだろう、コイツ足回り脆弱なんだか───」

 

ヘイヴィスが喋りかけた瞬間突如凄まじい衝撃がPT-76Bを襲った。

外部から加わったその衝撃はあまりの大きさに車内がシェイクされて揉みくちゃ状態になった。

 

「な、何事!?」

 

「どう考えたって撃たれたんだろ!」

 

ジェラルドがハッチから出て確認すると、車体の左側面に模擬弾の塗料がベッタリと付いていた。

即ち撃たれたということだ。

コレで彼等は脱落という事になる。

 

「マジかよ……」

 

深追いしなければと過ぎたことを悔やむジェラルドだった。

 

 

 

Object 120の車内

 

「凄いな……あんなに離れていたのに一秒足らずで着弾したぞ」

 

「仰角も殆ど上げてないのに……」

 

 

 




火力全振りのタランくんと安定した性能のT-55AM-1くん。
どちらが上かな?


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комедия

模擬戦が始まってからもうそれなりに時間が経った。

撃破されたPT-76Bは既にこの場から離れているので今は俺達とObject 120だけの場所となっている。

 

戦況が動く気配は無く、俺達は何処にいるかも分からない敵と睨み合いを続けていた。

この気を抜きたくても抜けない状況に仲間達も焦りが顔に出てきている。

 

「……そろそろ動いた方がよくないか?」

 

ケティの提案に俺は決心してようやく頷いた。

 

「一か八かだ、あそこにある左の道を通ってその先にある小さな丘の上に向かう」

 

指示通り、イーライは車両を動かし、山道を通って分かれ道を左に曲がる。

右側の森の中から撃たれないように祈りながら辺りに目を凝らす。

無限軌道が時々小石を踏んで砕ける音にすら過敏に反応してしまう。

車内は終始無言で聞こえて来るのはエンジンと無限軌道の駆動音と吹き付ける風の音だけだった。

 

人間そう長く集中力を保つのは容易ではない。

注意力が散漫になり、索敵が杜撰になってきた。

あの長きに渡る睨み合いで気付かない間に疲労を溜め込んでいたのが仇となったようだ。

 

だが、そんな俺でも見つけられた異変があった。

 

「……!イーライ!停車しろ!」

 

「どうした?」

 

車両が止まると俺は先程異変が発生した場所を注意深く見る。

あの時、確かにあそこにある木の一本が不自然に揺れたのだ。

風によるものではない。

まるで何かがぶつかったような揺れ方をしていた。

 

間違いない、あそこにいる。

そう確信し、より目を凝らすと遂にそれは姿を現した。

遠くからでハッキリとは見えず、時々木々の間に隠れるが確かにそこにいる。

 

「見つけたぞ!ケティ、2時の方角だ!見えるか?」

 

「どれどれ……いた!見えるぞ!」

 

「良し、撃て!」

 

森の中を走る敵に向かってT-55AM-1に搭載された100mm D-10T2SからAPFSDSが放たれた。

高初速のAPFSDSはあっという間に遠くにいたObject 120を捉え、着弾する。

しかし、敵車両に模擬弾が着弾した様子は無かった。

もう一度双眼鏡でよく見てみると、砲弾は僅かにズレて敵車両を通り過ぎて奥の地面に着弾していた。

 

「仰角を上げすぎちまった!」

 

自らが犯した致命的なミスにケティは頭を抱えて唸る。

こうなってしまった以上、逃げようとしたところで奴の的になるのは想像に難くない。

現に、こちらの発砲炎に気付いた敵は砲塔を回転させて反撃しようとしている。

 

「こうなったらもう突撃だ! 一気に間合いを詰めるぞ!」

 

最早正攻法などかなぐり捨てて、被弾覚悟の突撃を敢行した。

全速で突撃し、蛇行運転をしたり、岩場を盾にしたりと被弾率を少しでも下げながらどんどん距離を詰めていく。

敵が撃ってきた152mm砲弾がすぐ傍に着弾する度に土が舞い上がり、顔に降り掛かってくる。

 

砲塔の旋回が追いつかない程のスピードで接近し、後方からの攻撃を試みる。

全速で回り込み、奴の後部装甲が照準器に収まったその時だった。

突然の衝撃、激しく揺れる車内。

 

「何があった!?」

 

「岩を思い切り踏んづけちまったみたいだ! 多分履帯が切れたぞ!」

 

岩に乗り上げたことで傾いた車内で怒鳴る。

 

「だったらもうここで撃て!どうせ相手は紙装甲だ!」

 

だが、ケティが主砲を発砲する気配は無い。

焦燥感に囚われていた俺はまた怒鳴る。

 

「何をしている!今しかないんだぞ!?」

 

そう言ってケティに指示を出すが、ケティは歯切れの悪そうに喋り出す。

 

「あぁ……悪い、岩に乗り上げたせいで俯角が足りなくなった」

 

「……は」

 

抵抗する力を失った俺達を嘲笑うかのように敵車両の砲塔はゆっくりと回転する。

そしてObject 120の砲口がこちらの正面装甲を捉える。

俺達の負けだ。

 

「チキショオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

森の中に一発の砲声と咆哮が鳴り響いた。

 

 

 

 

 




毎話4000文字とか書く人いるけど自分には無理ゾ……。
モチベーションを保つのがキツすぎるってはっきりわかんだね。(なろうエタり常習犯並感)


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Мальчик встречает войну

Me:*Reading my novel.

Me:Hm,ketty is a girl I see.

Novel title:”BOIS” and бак.

Me:*Confused screaming.


《とあるサイトのスレッドにて》

 

『そういえば近々メタルストームでまた大きな大会やるみたいだぞ』

 

『それマ?』

 

『メタルストームってなんぞ』

 

『知らんのか、インド洋沖にある放棄された洋上プラットフォームで行われている非公式の戦車道やぞ』

 

『詳しい説明オナシャス!』

 

『テレビとかネット界隈では裏の戦車道とか呼ばれてる。 詳しい事は余りよく分かってないんだけど簡単に言うとレギュレーションのレの字も無い戦車道。 使う戦車は豆戦車だろうがMBTだろうがOK。 しかも何両編成でも参加可能』

 

『マジか、MBTの戦車道とか見てみたい』

 

『不謹慎だぞ』

 

『早速不謹慎厨湧いてんよ〜』

 

『不謹慎厨は出て行けぇ!(レ)』

 

『なんで不謹慎なん?』

 

『理由は簡単、安全性の欠片も無くて命を落とす事もあるから』

 

『確か費用削減の為に安くてペラペラなカーボン装甲使ってるせいだっけか?』

 

『そう。 その所為でAPFSDSやHEATFS等の貫徹力の高い砲弾を防げずに中の搭乗員が死亡する事故が毎年必ず起こってる』

 

『なにそれこわい』

 

『ワイ海外のグロ画像まとめサイトでメタルストームで死亡した人の死体見たけどやばかったぞ。 自分では結構死体とか見慣れてたつもりだったけどあれは流石に吐き気を催した……』

 

『そんなにヤバいのか……』

 

『うん、交通事故とかそういう死体は大体人としての原型をまだ留めてるんだけど、メタルストームで戦車砲に撃たれた人の死体は文字通りミンチ肉状態になってて初めて見た時人間の死体じゃなくてなんかの動物の死体で作った偽物かと思ったぐらい』

 

『ヒェッ……』

 

『しかもHEATFSとかATGMで撃たれた奴は全員真っ黒焦げで骨まで炭化してる奴もあった。 弾薬庫が誘爆したケースとか最早死体そのものが消し飛んでた』

 

『ヴォエ!!』

 

『オマケにあそこは人道もへったくれも無いから女子供が戦車に乗せられてる事もある。 勿論それらの死体も画像として残ってる』

 

『あの洋上プラットフォーム建造したのって国連なんやろ? なんでこんな悪魔じみた競技を取り締まろうとしないんだ……?』

 

『それは今も分からない。 でもプラットフォームを占領している武装勢力やマフィア、ギャング相手に国連ですら手を出せないってことは何かしら裏があるんだと思う』

 

 

 

 

 

 

時刻は9時。

あの悲しい結果で終わった模擬戦から一日経ち、メタルストーム参加に向けて準備を進めている俺達だったが、今日はケティを連れて街の市場に出向いていた。

 

左右どちらを見ても商店がずらりと並んでおりそこにいる店主が客寄せをしていて通りは朝にも関わらずとても賑わっていた。

過去にテレビで見たアフリカ辺りの市場にこの景色はよく似ている。

自分自身、賑やかなのは嫌いではないのでこの喧騒に満ちた市場は散歩スポットでもあったりする。

 

ここにいる店の店主の殆どと既に顔見知りなので時々自分にピンポイントで商品を売ろうとしてくる人もいる。

頼み事を断りにくい性格の俺はその度何かしら買わされてしまうのだが……。

兎も角今回の目的は食料の確保だ。

 

メタルストームに参加するとなれば財力の無い俺達は節約を強いられることとなる。

そうなると必然的に食事も質素な物へと変わる。

問題なのはアイツらをこの食材に慣れさせることなのだが。

 

「うげぇ……どんだけ買うんだよ……」

 

「今日は運良く店主がまけてくれたからな、一週間分は手に入りそうだ」

 

俺とケティの両手に握られているビニール袋。

そこには何か黒光りするもの(・・・・・・・)灰色の球状の何か(・・・・・・・・)がぎっしりと詰まっていて口を紐で縛らなければ溢れ出しそうになっている。

これが何かは言うまでもないだろう。

貧困層の貴重なタンパク源(・・・・・・・・)である。

 

「よし、今度はあそこでパンの耳を貰えないか聞いてみよう」

 

こうしてゲテモノや余り物にありついていたのも今だけの話じゃない。

昔、ここに放り込まれた時からここで死に物狂いで生きてきたものだ。

そこら辺の店の店主に物乞いをし、断られても必死に縋り着けば結果は蹴り飛ばされるか諦めて食料を分けてくれるかの二択だった。

 

物乞いだけじゃない、盗みを働いたり人を脅して金をせしめたり或いは殺して奪うといったこともやった。

逼迫した状況に於いて他人の命に気を配れるほど俺にそんなに余裕は無かった。

こんな事が許されるのだからこの場所は恐ろしい所だと改めて思う。

そしてそれに甘んじる自分も常識人から逸脱していると自覚している。

 

物乞いばかりしてきたせいか随分とこの市場の人々とは仲良くなれた。

昔の借りはこうしてちゃんと買い物をする事で返すようにしている。

 

 

 

 

 

「お前らー帰ったぞぉ」

 

大量の袋を手に持って足で扉を開ける。

イーライ達は袋の中身を訝しげに見ている。

既に中身を察して卒倒しかけている奴と目が死んでる奴がいる。

 

「まだ調味料って残ってたか?」

 

「あぁ、まだ残ってるぞ」

 

「よし、じゃあイーライこれで昼飯頼むぞ」

 

工房の厨房担当であるイーライに大量のビニール袋を押し付ける。

中身を知ったイーライはまるで神に見捨てられた信徒のような表情をしているが知ったことか、早く飯を作れ。

お前だけ茶色い方を倍で食わせてやろうか。

 

そういうと厨房に駆け込むイーライ。

恨み辛みは後で聞くだけ聞くとしよう。

 

 

 

 

 

地獄の昼食を終え、イーライ達が机に突っ伏している中、俺とケティは今後の予定を伝える。

まず最初の対戦相手が決まった。

俺たちと同じ小規模のチームで車両数もそこまで多くはない。

初戦にはピッタリの相手だろう。

 

既にあちら側の隊長と話をして明日、対戦する事が決まっている。

相手の部隊名は『バレットビー』という。

こちらの名前は適当に多数決で決めて『ストレルカ』という名前になった。

 

車両編成がどのようになっているかも分からないので当日作戦を練る事になる。

まだ無名の部隊とはいえ、こちらもそれは同じだ。

油断してはならない。

 

「本当に三両でどうにかなるのかねぇ……」

 

イーライが不安そうに呟く。

まぁ状態が良かったと言っても車両が車両だ。

どうなるかは相手の車両次第となる。

しかしこちらとで何も用意しない訳では無い。

 

「大丈夫だ、その為にアレ(・・)を買ったんだからな」

 

部屋の隅に積まれている幾つかの大きな木箱を指さし、自信ありげに言った。

恐らく、これなら車両の性能差は覆す事が出来るだろう。

寧ろ大金はたいて買ったのだから効果が無くては困る。

 

「兎に角、明日の対戦の勝敗が今後を左右すると言ってもいい。 何としてでも勝つぞ」

 

初戦は、絶対に勝たねばならない。

 

 

 

 

 

翌日、太陽の照り付ける平原に多くの人が集まっていた。

そこには三両の戦車と五両の戦車が向かい合って並んでいる。

俺達の目の前には対戦相手であるバレットビーのメンバーがいる。

相手のリーダーが前に出てきたので俺も前に出てリーダーとの距離を詰める。

 

そして相手の方から手が差し出されたのでこちらもその手を握って握手をした。

相手はそれなりに歳は取っているようだ。

多分年上だろう。

 

「今回は宜しく頼む」

 

「あぁ、お互い最良の戦いを願っている」

 

自信に満ちた表情で挨拶をする。

結構人の良さそうな男だった。

口に咥えている煙草が良く似合う。

無名の割には顔など所々に傷跡があって歴戦の猛者を感じさせる。

 

互いにチームの元へ戻り、戦車を所定のスタートポイントまで移動させる。

今頃俺達かバレットビーのどちらかに大勢の博打打ちが賭け金を賭けている所だろう。

 

これはメタルストーム公式の対戦なので勝てば多額の賞金が出る。

今後の活動の為にも、そして新しい車両の入手の為にも勝利は必須だ。

 

遠ざかっていく相手の車両を見る。

 

「RU-251が五両……いけるか…?」

 

「ボルトカノーネのHEATFSには注意が必要だな。 多分機動力を活かした奇襲攻撃を仕掛けてくるだろう」

 

数では不利だが性能差ではどうだろうか。

いや、性能に於いても勝ててはいないだろう。

俺の車両なら兎も角、PT-76BやObject 120ではRU-251からは逃れられない。

 

加えてここは丘陵地帯。

軽戦車が隠れられる稜線はいくらでもある。

距離を詰められればお終いだ。

高台からの狙撃が最善と思われる。

 

それかフラッグ車を三両で全力で狙うか。

上手く誘導してObject 120の射線に持って来れれば可能性はある。

ある程度考えて、導き出した答えはフラッグ車の優先的撃破だった。

 

地図を見ながら何処が最適か、何処にどの車両を配置するか、移動中も考えは尽きない。

長い間地図と睨めっこを続け、作戦を練り終えた時には既にスタートポイント到着していた。

 

全車が停車したことを確認し、無線で仲間達に繋ぐ。

 

「これから、作戦を伝える。 地図を開いてくれ」

 

俺が考えた作戦はこうだ。

まず、この場所で一番標高の高く、ここら一体を見渡せる丘が東にある。

そこにObject 120を配置する。

そしてT-55AM-1とPT-76BはObject 120からの発せられる敵の位置情報を元にそのルート上に待ち伏せ、フラッグ車と本隊を分断し、PT-76Bが本隊を食い止め、俺達がフラッグ車を追撃してObject 120の車線まで誘導する。

 

敵はわざわざ狙われやすい平原は通らない筈だ。

ならば通る箇所と言えば中心にある森位しかない。

軽戦車が相手なので迅速な行動が必要になる。

もし敵を逃せばRU-251の機動力に翻弄されてやられるのが目に見える。

 

幸い森の中はさほど道の整備がされていない不整地なので最高速度で向かってくる事は無い。

作戦通りにいけば、この戦いは短時間で終わるだろう。

 

「以上が作戦の内容だ。 勝敗はObject 120の狙撃にかかっている。 頼んだぞ」

 

《了解、コイツの152mmで木っ端微塵にしてやんよ!》

 

「それくらいの自信があるのなら俺達も安心出来るな。 ジェラルドも敵の足止めを任せるぞ」

 

《お前こそ敵のフラッグ車に置いてかれるんじゃねえぞ!》

 

「了解した……っともう始まるぞ、準備しろ!」

 

腕時計を見ると開始までもう十秒も無かった。

カウントダウンが残り五秒まで進むと緊張が強まるがそれを気力で抑え込む。

 

五秒、今出来ることは全てやった。 後は最善を尽くすだけだ。

 

四秒、ここで勝って、その賞金で新しい車両を買おう。

 

三秒、それと新しい隊員も集めなければ。

 

二秒、まもなく始まる、覚悟は出来た。

 

一秒、神には祈らない、実力と性能が全てだ。

 

 

…………ゼロ。

 

「全車前進!! Танковый аванс!!」

 

 

 

 

 

 




4000文字書くのキツスギィ!


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