二次創作 バカとテストと召喚獣 (じゅつふいつみかし)
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主要な登場人物紹介

主人公

 

設定

  

名前 吉井 雪耶(よしい ゆきや)イメージするVCとしては福山潤   年齢16歳(2年生に進級した時点) 性別 男 職業 高校生兼雑誌モデル 2年Fクラス在籍 

 

身長 186cm 体重84kg 誕生日 10月18日生まれ 睦月小学校・神無月中学校出身

吉井 明久とは二卵性双生児の双子の兄弟であり兄(生まれた時間が10分早かったため)

 

容姿はトップレベルによく身長も高いためスカウトをされ、現在芸能事務所に所属している。ファッション雑誌の表紙を飾るレベルには有名。学校では弟である明久とは逆の意味で有名である。仲の良い友達からは「雪耶」と呼ばれている。

基本的に嫌いな事や、苦手な事に対してはめんどくさがりで、適当な性格をしている。女の子が大好きなため、女の子には積極的だったりする。 勉強は大の嫌いなため、勉強への情熱や意欲が人並み以下で、重要なテストがなければ滅多に勉強しないタイプ。そのため普段勉強しない雪耶は暗記メインの科目が苦手だったりする。ただ頭の良さは並以上はあるので成績はまあまあ良かったりする。交友関係はそこそこ広いため、2年生A〜Fクラスまでの全クラスに知り合いがいる。友達もそこそこ居て、特に木下姉弟や霧島、坂本、土屋、姫路らとは仲が良い。弟である明久とも仲が良い。

ボケ役であり、ツッコミ役でもある。

 

 

 

得意科目(350点以上)      英語 現国 数学 化学 物理

 

苦手科目(200点以下)       世界史 日本史 古典

 

不可もなく可もない(200点以上)  家庭科 保健体育

 

 

 

 

主要登場人物

 

吉井 明久(よしい あきひさ)

2年Fクラスに在籍する男子生徒。10月18日生まれ。主人公の双子の弟 睦月小学校・長月中学校出身。自称左利き。一人称は「僕」。

誰もが認めるバカで、文月学園におけるバカの代名詞「観察処分者」でもある。論理的な会話にはついていけず、嘘もまともにつけないが、感性は常識人の部類に入り、また他人のために真剣に怒れる真っすぐな心根の持ち主。基本的にはツッコミ役だが、バカであるためか図らずもボケになってしまうことも多々ある。

  

坂本 雄二(さかもと ゆうじ)

本作の準主人公。2年Fクラス代表。中学生のときからの雪耶の悪友。一人称は「俺」。

180cm強の巨漢で精悍な顔立ちを持つ不良少年。水無月小学校・神無月中学校出身。興味のないことにはとことん無気力で、基本的には己の欲望や保身といった目的でしか行動しないが、やる気を出した時にはかつて「神童」と呼ばれた頭脳の冴えを見せる。

 

姫路 瑞希(ひめじ みずき)

2年Fクラスに在籍する女子生徒。12月21日生まれ。血液型はA型。睦月小学校・長月中学校出身。一人称は「私」で、家族以外には親しい間柄でも丁寧語を用いる。

目測でFカップはあるとされる巨乳が特徴。髪はピンク色のふんわりしたロングヘアーで、横髪に明久からもらった雪ウサギの髪留めを付けている。

 

島田 美波(しまだ みなみ)

2年Fクラスに在籍する女子生徒。ドイツ育ちの帰国子女。一人称は「ウチ」。

勝気な緑色の瞳と、大きな黄色いリボンで束ねた赤茶色のポニーテールが特徴。すらっとした細身の、スタイルのいい体型で美脚だが貧乳であり、そのことがコンプレックスになっている。

 

木下 秀吉(きのした ひでよし)

2年Fクラスに在籍する男子生徒。中学生のときからの友人。Aクラスの木下優子とは二卵性双生児で双子の弟だが、外見は一卵性のごとく瓜二つ。一人称は「ワシ」で、語尾に「〜じゃ」をつけるなど古風な爺言葉が特徴。

れっきとした男子であるが、そのかわいらしい容貌と小柄で華奢な体格から「稀代の美少女」と称されている。

 

土屋 康太(つちや こうた)

2年Fクラスに在籍する男子生徒。高校1年生のときからの友人。一人称は「俺」だが、基本的に寡黙なため口数は少ない。

並外れたスケベ心を持ち、本心に実直な行動を取るが、それを絶対に認めないことから「ムッツリーニ(寡黙なる性識者)」の異名を取る。

下睫毛と後ろにはねた髪型が特徴。男子にしては小柄だが、引き締まった身体で運動神経もよい。

 

霧島 翔子(きりしま しょうこ)

2年Aクラス代表で、2年生の学年首席。一人称は「私」で、呟くような口調が特徴。中学1年生の時からの友人

黒髪(イラストでは紫色に着色されている)のストレートロングで、瞳は紫色。スタイルもよい美少女。

男女を問わず人気が高いが、本人は小学校の頃に自分を庇ってくれた出来事がきっかけで雄二に一途な想いを寄せており、「雄二のお嫁さん」になることを夢見ていて、料理などの花嫁修業も欠かさない。

 

木下 優子(きのした ゆうこ)

2年Aクラスに在籍する女子生徒。中学生からの友人。秀吉とは二卵性双生児で双子の姉だが、外見は一卵性のごとく瓜二つ。貧乳なのがコンプレックス。一人称は「アタシ」。

学校では社交的で明るい優等生として振る舞っているが、実はかなりズボラで、自宅では常に下着かジャージ姿で生活している。また腐女子であり、自宅にはネット通販で購入した大量のBL本が溜め込まれている。歌は大の苦手。



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第一問

俺の名前は吉井雪耶、親しい人からは雪耶と呼ばれている。俺が現在通っている文月学園は世界初の特殊なシステムを導入した進学校だ。何が特殊かと言うと、まず試験召喚戦争だ。最先端の技術の導入により実現された、召喚獣によるクラス間戦争だ。

次に、成績累進式の教室設備だ。1年生の終わりに振り分け試験を行い、その結果によりAからFクラスのどこに振り分けられるかが決まるようになっているのだ。

まあ、俺は現在日本にいないので回答が物理的に不可能、つまり自動的に学力最低のFクラスに振り分けられる運命だ。まあ、弟の明久と一緒になるだろうから、退屈はしないだろう。何せあいつは、生粋のトラブルメーカーで、学校1番のバカで問題児なのだから。それに、俺は勉強が嫌いだ。何せ所詮は決まった範囲の問題に答えるための勉強だ。出る内容全てが授業で扱うものなのだから、授業を適当にでも聞いていればある程度は答えれるものだ。なぜ殆どのやつが、あんなに必死に机にかじりついてるのか理解でできない。そんな俺にとってFクラスという環境はある意味幸運だろう。うちの学校ではFクラスといえば向上心の欠片もない奴が集まる学年ワーストクラスというレッテルを貼られる訳だが、俺にとっては全く気にならないものだ。周りも向上心のない奴がFクラスに来るのだ。所謂木を隠すのなら森の中みたいな感じだ。人目を気にせず、くつろぎながら授業を適当に過ごしても悪目立ちをすることはないだろう。俺からしたらプラスでしかない。ワールドクラスな学校でワーストクラスとかなり寒いことを考えながら俺は、日本へ向かう飛行機に揺られていた。

今、日本にある空港に着いたので、一様弟にテストできたか聞いてみることにした。

prrrrrrprrrrrrprrrrrr pi!!

「もしもし明久?アメリカから帰ってきたよ。今時間大丈夫?」

「えっ?今もう日本に居るの?」

「うん 今日本に居るよ。今日だっけ? 振り分け試験どうだった?」

「振り分け試験!? えっとね......」

どうやら明久は途中退席をしたため、試験失格になり0点となったそうだ。理由としては、試験中倒れた女子生徒を保健室まで運んだからだそうだ。教室には教師がいたのに自ら試験を放り投げてまで運んだのはバカだ。だがそれを聞き、弟らしいとも思った。

 空港から電車に乗り継いで、ぼーっと外の景色を見ていると自分の住んでいる町が見えてきた。そして停車駅が見えてきたところで車内の自動放送が聞こえてきた。

「This is the ~~~~line train bound for~~ The next station is~~~ doors on the left side will open  Please change here for ~~~line  ~~~line 」

一週間日本に居なかっただけなのだが、帰国してきたときは毎回何年ぶりかのように思えるのだ。町の景色や、周りの人がしゃべってい居る言葉などを懐かしく感じた。

そんな風に考えているうちに最寄駅に着いたので、改札をくぐり、自宅へ向かって歩く。俺たちが住んでいるのはファミリー向けのマンションだ。もともとは家族全員で住んでいたのだが、両親は仕事で、姉は留学で外国にいるため、2人暮らしなのだ。そうこうしているうちに、家に着いたのでドアのカギを開けて中に入る。

俺の持っていない靴が玄関にあることからみると、弟が学校から帰ってきているようだ。

「ただいま、帰ってきたよ」

「お帰り! 1週間お疲れ様! またすぐに外国に行くの?」

「いや、仕事の予定を調整したから、長期休み以外は国内に居るよ」

「そっか、さすがに学校の日と被るのは嫌だしね!」

「確かにな。あんまりさぼりすぎると姉さんや母さんにどやされるしな」

 

 

 

 

 

年も明け、仕事が落ち着き、しばらく経つと新学期が始まった。今日は新学期初日だ。遅刻ギリギリに登校でもいいのだが、教師に目を悪い意味でつけられるのは癪なのでちょっと早めに登校することにした。

「おーいっ。ゆきやー」

野太い声がしたので後ろを振り向くと、後ろには雄二が居た。

「よう。最近見てねーけど仕事か?」

「ああ、仕事でね。アメリカから帰ってきてやっと一息って感じだ」

「お前は大変だな。 お、鉄人がいるぞ」

「おはよう!吉井に坂本 少し待ってろ」

玄関の前でドスのきいた声でに呼び止められる。声の主は、浅黒い肌をした短髪のいかにもスポーツマン然とした姿で立っている男だ。

「「おはようございます。西村先生」」

俺と雄二は、軽く頭を下げて挨拶する。何せ相手は生活指導の鬼、西村教諭だ。目を付けられるとロクな目には合わないと学校では有名なのだ。ちなにみに生徒の間では鉄人と呼ばれて居たりする。趣味がトライアスロンで真冬でも半袖でいることが由来だそうだ。

「ああ、おはよう! 吉井に坂本。 ほら、お前達の結果通知が入った封筒だ、受け取れ。今日からそこがお前たちのクラスになる。吉井、俺は去年1年間を見てきて、お前はとてもできる生徒でAクラス入りも確実だと思っていたのだがな...」

「俺は勉強が余り好きではないのでね」

「はぁ......まったく。ほら行くんだ」

鉄人に渡された封筒を開きつつ、2階の2年生のフロアーへ移動する。

「お前何クラスだ?」

「Fクラスだよ。雄二は?」

「俺もお前と同じFだよ。 しっかし、まさかお前がFクラスとはな。思わぬ戦力が手に入った」

「はぁ? 何をやらかすつもりだ?お前」

「心配すんな、何にもやらかすつもりはねーよ」

「お前が言うなよ」

「おい、おい、信用ねーなー」

俺が雄二をからかい、お互いくすくすと笑いながら教室に入る。中にはなんとびっくり、びっしりとちゃぶ台と座布団が置かれていた。その設備を見て俺は声を失った。

「何してる? 早く座るぞ」と雄二が言う。なぜこの男はこの設備を前にして平然とした態度でいられるのだろうか?常識的に考えて教室とは、椅子と学習机が置かれているはずなのだが。

「本当に教室なのか?ここ」

「ああ、いかにも俺達Fクラスの教室だ。 まあ、思うところもあるだろうが、設備については後で話す。このクラスの代表は俺だ。好きな席に座ってくれ」

「まあ、こうなったのも自業自得か..仕方ない、座るか」とりあえず後ろの方寝てもバレなそうな席に座る。

席に座り寝ようとしていると、誰かが教室に入ってくる足音がした。

「雪耶に坂本、おはよう。わしもFクラスじゃ。よろしく頼むぞ」

今俺と雄二に挨拶をしたのは木下秀吉だ。見た目は清楚な美少女だが、性別は男だ。ちなみに秀吉には双子の姉がいて、木下姉妹とは中学からの友達だ。

「はろはろ~~ 雪耶に坂本~うちもFクラスよ、よろしくね~」

俺と雄二に声をかけてきたのは島田三波だ。彼女は我が弟に好意を寄せており、積極的にアタックしているのだが弟がバカすぎて気づかないというところが不憫に思えて仕方ない。ちなみに俺は人の恋路は応援するタイプだ。

「み、み、見えそうで見え.....」

今島田のスカートの中を覗こうとしてるのが土屋康太、またの名をムッツリーニという。男子からは敬称として、女子からは蔑称で呼ばれてる。カメラをいつも持ち歩いているのが特徴だ。彼はカメラで写真を撮り、よく小遣い稼ぎをしている。それらは裏ではムッツリ商会と呼ばれているらしい。

「秀吉、俺は寝るから先生来たら起こしてくれ」

とりあえず知り合いが来るのが途絶えたので、秀吉に一言言って寝ることにする。勉強するには酷い設備だが、寝るのにはもってこいだ。まあ、勉強はしないから関係ないのだが。自分の席に寝転んでいたら、徐々に眠くなってきたので俺は目を閉じた。

 

 

 

ふと、肩を誰かに触られている感覚が俺を、現実に引き戻した。

「ん? 秀吉か。どうかしたか?」

「雪耶よ そろそろホームルームが始まるぞ」

「もうそんな時間か。サンキュー、秀吉」

俺は起こしてくれた秀吉に礼を言って、体を起き上がらせる。

教卓の前には寝ぐせのついた髪にヨレヨレのシャツを貧相な体に来た、いかにも冴えない風体のオジサンが居た。学生服を着ていないし、どう見たって十代には見えない。どうやらこのクラスの担任みたいだ。

「えー、おはようございます。二年F組担当の福原慎です。よろしくお願いします。」

福原は薄汚れた黒板に名前を書こうとして、やめた。チョークすらろくに用意されていないらしい。

「皆さん全員に卓袱台と座布団は支給されてますか?不備があれば申し出てください」

五十人程度の生徒が所狭しと座ってい居る教室には机がない。あるのは畳と卓袱台と座布団。一年生の時から噂に聞いていたが、冗談ではないのが驚きだ。

「せんせー、俺の座布団に綿がほとんど入っていないですー」

と、クラスメートの誰かが先生に不備を申し出る。

「あー、はい。我慢してください」

「先生、俺の卓袱台の脚が折れています」

「木工ボンドが後で支給されますので、後で自分で直してください」

「センセ、窓が割れていて風が寒いんですけど」

「わかりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう。

教室のすみには蜘蛛の巣が我が物顔で形成されており、壁はひび割れや落書きのない箇所を探す方が困難といった状態だった。ここって本当に教室なのだろうか?むしろ廃屋といわれた方がしっくりくる気がするけど。

「必要なものがあれば極力自分の力で調達するようにしてください」

どこからというわけでもなく、教室全体からかび臭い独特の空気が漂う。きっと床に敷き詰められている古い畳のせいだろう。

「では、自己紹介でも始めましょうか。そうですね。廊下側の人からお願いします。」

福原先生の指名を受け、車座を組んでいた廊下側の生徒の一人が立ち上がり、名前を告げる。

「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる。」

独特の言葉遣いと小柄な体。肩にかかる程度の長さの髪をゆったりと縛ったいでたち。

中学の頃から交友関係があり見慣れているはずなのだが、時々ちょっとした仕草でドキッとしてしまうのは内緒だ。

多分、女子の制服を着て言葉遣いを直したら男子と気づく奴は少ないだろう。男ばかりのこの教室なら尚更だ。

「というわけじゃ。今年一年よろしく頼むぞい。」

軽やかに微笑みを作って自己紹介を終える秀吉。語尾にぞいを付けても、違和感がないのはあいつだけだろう。

「・・・・・・・・・・・土屋康太」

次の生徒が立ち上がって同じように名前を告げた。どうやら土屋の番のようだ。

土屋の口数は相変わらず少ないな。小柄で引き締まった体で運動神経も良いのに、かなり静かな奴だ。

彼は目立ちたくないのだろう。イロイロな意味で。

それにしても、見渡す限り男だらけだ。学力最低クラスともなると、女子はほとんどいないんだろうか。

「島田美波です。海外育ちで、日本語はできるけど読み書きは苦手です。あ、でも英語も苦手です。育ちはドイツだったので。趣味は————」

島田がこのクラスの唯一の女子だ。むさくるしい男共の中に女子が1人いることは救いだろう。

「趣味は吉井明久を殴ることです☆」

それにしても言い切ったなぁ...完全にヤバい女にしか聞こえないのは俺だけだろうか?

「はろはろ!」

「・・・・・・あぅ。し、島田さん」

「吉井、今年もよろしくね」

明久はもうちょっとまともな返事が返せないのだろうか。まあ、知り合いが多いので俺がこのクラスに馴染むのも簡単だろう。俺の横辺りの席に座っている明久は複雑そうな顔をしていた。大方バカなことでも考えているに違いない。

島田の自己紹介が終わり、その後は淡々と自分の名前を告げるだけの作業が進む。

「—————です。よろしく」

「——————コホン。えーっと、吉井明久です。——————」

次は明久の番のようだ。彼が普通に自己紹介をするかは謎だ。

「気軽に「ダーリン」って呼んで下さいね♪」

うん、何となくは分かっていたつもりだったが、想像をさらに下回った。どうやら説教をお望みのようだ。

『ダァァーーリィーーン!!』

「———————失礼。忘れて下さい。とにかくよろしいお願い致します」

野太い声をした男約30人が同時に叫んだ。これは、言うまでもなく不快だな。叫んだ奴全員の口を縫い合わせたいと人生で初めて思った今日この頃でした。

明久の事故紹介?が終わり、その後しばらく自己紹介が続き俺の番が回ってきた。

「俺の名前は吉井雪耶。 長所は英語が喋れる所 短所は飽きっぽい所 皆、1年間よろしく頼む。」

俺の番が終わり、起きている意味が無くなったので寝ようとしていた所、誰かが教室の扉を勢い良く開けてきた。何か急ぎの用でもあるのだろうか?そんなことを思っていると、息を切らせて胸に手を当てている女子生徒が現れた。

「あの、遅れて、すいま、せん・・・・・・」

『「えっ?」』

誰かからというわけでもなく、俺も含め教室全体から驚いた声が上がる。何故かといえば、彼女は1年生の最初の試験で学年2位の成績を修めている才女で有名だからだ。誰もが驚くのは無理もないことだ。

クラスがにわかに騒がしくなる中、数少ない平然としている人物の一人、担任の福原がその姿を認めて話しかけた。

「丁度良かったです。今自己紹介をしているところなので姫路さんもお願いします。」

小柄な身体をさらに縮こませるようにして声を上げる姫路。

肌は新雪のように白く、背中まで届く、柔らかそうな髪は、優しげな彼女の性格を表しているようだ。

保護欲を掻き立てられるような可憐な容姿は、男だらけのFクラスで異彩を放っている。

でも、皆はその容姿を見て驚きの声を上げたんじゃない。

「はいっ!質問です。!」

既に自己紹介を終えた男子生徒の一人が高々と手を挙げる。

「あ、は、はいっ。なんですか?」

聞きようによっては失礼な質問だが、疑問に思う奴がいても不思議じゃない。

彼女の容姿は可憐で人目を引くし、なにより学年トップレベルの成績だ。そんな彼女が最下位のFクラスに居るはずがない。

普通はAクラスにいるのが道理だ。

「そ、その・・・・・・」

緊張した面持ちで身体を硬くしながら姫路が口を開く。

「振り分け試験の最中、高熱を出してしまいまして・・・・・・」

その言葉を聞き俺は明久の途中退席に合点がいった。おそらく高熱を出した姫路の付き添いで明久が保健室に一緒に行ったのではないだろうか。クラスの奴らも姫路の言葉を聞き『ああ、なるほど』とうなずいたようだ。

試験途中での退席は0点扱いになる。彼女は昨年度に行われた振り分け試験を最後まで受けることができず、結果としてFクラスに振り分けられてしまったというワケだ。

そんな姫路の言い分を聞き、クラスの中でもちらほらと言い訳の声が上がる

『そう言えば、俺も熱(の問題が)出たせいでFクラスに』

『ああ。科学だろ?アレは難しかったな』

『俺は弟が事故に遭ったと聞いて実力を出し切れなくて』

『黙れ一人っ子』

『前の晩、彼女が寝かせてくれなくて』

『今年一番の大嘘をありがとう』

嘘しかないじゃいか。それに想像以上にすらバカさがにじみ出ている。

「で、ではっ、一年間よろしくお願いしますっ!」

そんな中、姫路は逃げるように明久と雄二の隣の空いている卓袱台に着く。

彼女のような学生の本分をしっかりと果せる生徒にとってこのクラスの設備は恵まれていない。だが振り分け試験の結果だから仕方ない。ドンマイ姫路!

「き、緊張しましたぁ~・・・・・・」

明久は彼女に話しかけようとしていたのでちょっと弄って遊ぶことにする。

「あのさ、姫————」

「「姫路」」

同じタイミングで俺と雄二が名前を呼んだ。どうやら雄二も同じことを考えていたようだ。

「は、はいっ。何ですか?えーっと・・・・・」

「坂本だ。坂本雄二。よろしく頼む」

「吉井幸雪耶だ。姫路、よろしくな」

「あ、姫路です。よろしくお願いします。」

深々と頭を下げる彼女。挨拶も丁寧で、育ちが良いように見える。

「ところで、姫路の体調は未だに体調悪いのか?」

「あ、それは僕も気になる。」

思った以上に彼女は体が弱いようだ。なのでこのFクラスの劣悪な環境は彼女の体調にとってかなりネックになるのではないだろうか?

「よ、吉井君!?」

姫路の反応を見るに恐らく、彼女は明久に気があるのだろう。ただそれでは明久には伝わらないだろうことは確かだ。なぜならバカだからだ。がんばれ!姫路!

「姫路。明久がブサイクですまん」

雄二がフォロー?をしたのでとりあえず俺も便乗することにする。

「姫路。弟がブサイクなことを謝罪するよ。すまん」

「そ、そんな! 目もパッチリしてるし、顔のラインも細くて奇麗だし、全然ブサイクなんかじゃないですよ!むしろ・・・・・」

「そう言われると、確かに見てくれは悪くない顔をしているかもしれないな。俺の知人にも明久に興味を持っている奴がいたような気もするし」

「え?それは誰—————」

「そ、それって誰ですかっ!?」

俺は知っている。そう、知っているが知らない方が彼のためだ。だが、あえて俺は言う。

「雄二、あいつだな?」

「ああ、あいつだ。二年生のーーーー」

「確か久保ーーーーー」

雄二はこういう時に毎回明久を持ち上げては落とすことをしているのだが、何故毎回引っ掛かるのだろうか?

「——————利光だったかな」

そう、残念ながら久保は女子ではなく男子の方だ。諦めましょう。

「・・・・・・・・・・・・・」

「おい明久。声を殺してさめざめと泣くな」

「半分は冗談だ。安心しろ」

「え?残り半分は?」

「知るか」

「ところで姫路。体は大丈夫なのか?」

「辛くなったら無理するなよ」

「あ、はい。もうすっかり平気ですよ。心配してくれてありがとうございます」

「ねぇ雄二、雪耶! 残りの半分は!?」

明久が大きな声を出したので教師の視線がこっちに向いた。

「はいはい。そこの人達、静かにしてくださいね」

そのせいで、パンパン、と教卓を叩いて先生が警告を発してきた。

「あ、すいませーーーーー」

 

バキィッ バラバラバラ・・・・・

 

突如、先生の前で教卓がゴミ屑と化す。えぇ・・・ここまで酷いのか。叩いただけで落ちるとは。

「え~・・・替えを用意してきます。少し待っていてください」

気まずそうに告げると、先生は早足に教室から出て行った。

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最近「どやされる」という表現が個人的ブームなので今後よく登場するかもしれません。関西出身の友人に教えてもらったのですが意味としては「怒鳴られる」とか「怒られる」らしいです。


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第二問

前回の続きです。前回は福原先生が教卓を交換するために教室を出るところで終わっています。


「あ、あはは・・・・・・・・」

姫路が苦笑いをしていた。無理もない。俺達みたいな奴らはともかく、彼女はこんな劣悪な環境でこれから一年間勉強をするのだ。

「・・・・・・雄二、ちょっといい?」

明久が雄二に真剣な表情で語りかける。彼も何かしら思うところがあるのだろう。

「ん?なんだ?」

「ここじゃ話しにくいから、廊下で」

「別に構わんが」

「雪耶も一緒に来てほしい」

「あいよ」

「んで、話って?」

「この教室についてなんだけど・・・・・・・」

この教室とは言うまでもなくFクラスのことだ。

「Fクラスか。想像以上に酷いもんだな」

「確かに。一年間ここで過ごすのは陰鬱だな」

「雄二に雪耶もそう思うよね?」

「もちろんだ」

「ああ、それには同意だ」

「Aクラスの設備は見た?」

「ああ。凄かったな。あんな教室は他に見たことがない」

一方はチョークすらないひび割れた黒板で、もう一方は値段もわからないほど立派なプラズマディスプレイ。これに不満のない人間はいないはず。

「そこで僕からの提案。せっかく二年生になったんだし、『試召戦争』をやってみない?」

「戦争、だと?」

「ふーん。で、どこと戦うつもりだ?」

「うん。Aクラス相手に」

「・・・・・・何が目的だ」

「言っておくが俺達は学力最底辺なんだぞ。なぜAクラスに?」

「いや、だってあまりに酷い設備だから」

「嘘をつくな。まったく勉強に興味のないお前が、今更勉強用の設備の為に戦争を起こすなんて、そんなことはありえないだろうが」

「雄二の言う通りだ。なぜ今更設備にこだわる?勉強には興味ないだろ?お前は」

「そ、そんなことないよ。興味がなければこんな学校に来るわけがーー」

「お前がこの学校を選んだのは『試験校だからこその学費の安さ』が理由だろ?」

「あー、えーっと、それは、その・・・・・・」

「・・・・・・姫路の為、か?」

「ど、どうしてそれを!?」

「明久。それだけ動揺したら誰だって解るぞ」

「本当にお前は純粋だな。カマをかけるとすぐに引っかかる」

「べ、べつにそんな理由じゃ――」

「はいはい。今更言い訳は必要ないからな」

「だから本当に違うってば!」

「気にするな。お前に言われるまでもなく、俺自身Aクラス相手に試召戦争をやろうと思っていたところだ」

「え?どうして?雄二だって全然勉強なんてしてないよね?」

「だな。それについては俺も疑問に思う」

「世の中学力だけが全てじゃないって、そんな証明してみたくてな」

「ふーん。今朝言ってたことは本気だったのか」

「???」

「それにAクラスに勝つ作戦も思いついたし――おっと、先生が戻ってきた。教室に入るぞ」

「あ、うん」

「さて、それでは自己紹介の続きをお願いします」

壊れた教卓を替えて(それでもぼろぼろだけど)、気を取り直してHRが再開される。

「えー、須川 亮です。趣味は――」

特に何も起こらず、また淡々とした自己紹介の時間が流れる。

「坂本君、キミが自己紹介最後の一人ですよ。」

「了解」

ゆっくりと教壇に歩み寄るその姿にはいつものふざけた雰囲気は見られず、クラスの代表として相応しい貫録を身に纏っているように思えた。

「坂本君はFクラスの代表でしたよね?」

福原に問われ、鷹揚にうなずく雄二。

別にクラス代表とは言っても、学年で最低の成績を修めた生徒たちが集められるFクラスの話。何の自慢にもならないどころか恥になりかねない。

それにも関わらず、雄二は自信に満ちた表情で教壇に上がり、こちらの方に向き直った。

「Fクラス代表の坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂道でも、好きなように呼んでくれ」

クラスメイトから大して注目される訳でもない。Fクラスというバカの集まりの中で比較的成績が良かったいうだけの生徒。他から見れば五十歩百歩といった存在。

「さて、皆に一つ聞きたい」

そんな生徒が、ゆっくりと、全員の目を見るように告げる。

間の取り方が上手いせいか、全員の視線はすぐに雄二に向けられるようになった。

皆の様子を確認した後、雄二の視線は教室の各所に移りだす。

 

かび臭い教室。

 

古く汚れた座布団。

 

薄汚れた卓袱台。

 

俺達は雄二の視線による誘導に乗せられ、それらの設備を順番に眺めていった。

「Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいがーーー」

一呼吸おいて、静かに告げる。

「―――不満はないか?」

『大ありじゃっ!!』

二年F組生徒の魂の叫び。

 

「だろう?俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として問題意識を抱いている」

『そうだそうだ!』

『いくら学費が安いからと言って、この設備はあんまりだ!改善を要求する!』

『そもそもAクラスだって同じ学費だろ?あまりに差が大きすぎる!』

堰を切ったかのように次々と上がる不満の声。

「みんなの意見はもっともだ。そこで」

級友たちの反応に満足したのか、自信にあふれた顔に不敵な笑みを浮かべて、

「これは代表としての提案だが―――」

これから戦友となる仲間たちに野性味満点の八重歯を見せ、

「―――FクラスはAクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う」

Fクラス代表、坂本雄二は戦争の引き金を引いた。

 

 

 

Aクラスへの宣戦布告。

それはFクラスにとってあまりに現実味の無い提案にしか思えなかった。

『勝てるわけがない』

『これ以上設備を落とされるなんて嫌だ』

『姫路さんが居たら何もいらない』

そんな悲鳴が教室のいたるところから上がる。AクラスとFクラス普通に戦ったところで負けるのは火を見るより明らかだ。

文月学園に上限の無いテストが採用されてから四年が経過した。

このテストには一時間という制限時間と無制限の問題数が用意されている。その為、テストの点数は上限がなく、能力次第でどこまでも成績を伸ばすことが出来る。

また、科学とオカルトと偶然により完成された『試験召喚システム』というものがある。これはテストの点数に応じた強さを持つ『召喚獣』を呼び出して戦うことのできるシステムで、教師の立会いの下で行使が可能となる。

学力低下が嘆かれる昨今、生徒の勉強に対するモチベーションを高めるために提案された先進的な試み。その中心にあるのが、召喚獣を用いたクラス単位の戦争―――試験召喚戦争と呼ばれる戦いだ。

 

その戦争で重要になるのがテストの点数だ。AクラスとFクラスとでは点数に天と地の差がある。正面から戦うとしたら、Aクラス一人に対してFクラスは最低でも四、五人は居ないと話にならないだろう。つまり、正面からでは勝算はないのだ。ではどうしたら勝算があるのかだが、Aクラス相手に弱みを握り戦うか、特殊なルールが必要だろう。それもFクラスが有利な。現状はかなり難しところだ。

「そんなことはない。必ず勝てる。いや、俺が勝たせて見せる」

そんな圧倒的戦力差を前に雄二はそう宣言した。

『何をバカなことを』

『できるわけないだろう』

『何の根拠があってそんなことを』

否定的な意見が教室中に響き渡る。彼らの言うことはもっともだ。だが雄二はあえて言ったのだ。「勝たせて見せる」と。彼なりに考えがあるのだろう。

「根拠ならあるさ。このクラスには試験召喚戦争で勝つことのできる要素が揃っている」

こんな雄二の言葉を受けてクラスの皆が更にざわめく。ただクラスを鼓舞するだけではなく、具体性があるかのように言ったのだ。ざわついて当然だろう。

「今から説明してやる」

雄二はお得意の笑みを浮かべ、檀上からクラスメイトを見下ろす。

「おい、康太。畳に顔を付けて姫路のスカートを覗いてないで前に来い」

「・・・・・・・・・!!(ブンブン)」

「は、はわっ」

必死になって顔と手を左右に振り否定のポーズを取る康太と呼ばれた男子生徒。姫路がスカートの裾を遠ざかると、アイツは顔に着いた畳の跡を隠しながら檀上へと歩き出した。

流石だ。あそこまで恥も外聞もなく低い姿勢から覗き込むなんて、アイツ以外に出来る人間はいない。階段の下から除くしか方法が思い浮かばない俺とは格が違う。

「土屋康太。こいつがあの有名な、沈黙なる性識者《ムッツリーニ》だ」

土屋の本名は有名ではない。クラス外の奴に聞けばほとんどが知らないというだろう。でも、彼のあだ名のムッツリーニという名前は別だ。その名は男子生徒には畏怖と畏敬を、女子生徒には軽蔑を以て挙げられる。

『ムッツリーニだと・・・・・・?』

『馬鹿な、奴がそうだというのか・・・・・・?』

『だが見ろ。あそこまで明らかな覗きの証拠を未だに隠そうとしているぞ・・・・・・』

『ああ。ムッツリの名に恥じない姿だ・・・・・・』

畳の跡を手で押さえている姿が果てしなく哀れを誘う。たとえどういった状況であろうとも、自分の下心は隠し続ける。異名は伊達じゃない。

「???」

姫路は多数の疑問詞を浮かべているみたいだ。おそらく土屋のあだ名の意味がよくわかっていないのだろう。ムッツリスケベ故についたあだ名なのだが。ただ、知らない方がいいことだって時にはあるのだ。

「姫路のことは説明する必要はないだろう。皆だってその力はよく知っているはずだ」

「えっ?わ、私ですかっ?」

「ああ。ウチの主戦力だ。期待している」

試召戦争で彼女ほど頼りになる戦力はいないだろう。

『そうだ。俺達には姫路さんがいるんだった』

『彼女ならAクラスにも引けを取らない』

『ああ。彼女さえいれば何もいらない』

おい、どさくさに紛れて熱烈なラブコールするなよ。

「木下秀吉だっている」

秀吉は学力では有名ではないが、他のことで有名だったりする。例えば演劇部のホープといわれていたりとか、双子の姉の優子のことだったりとか。

『おお・・・・・・!』

『ああ。アイツ確か、木下優子の・・・・・・』

補足すると、秀吉は演劇などは金を稼げるレベルで上手だが、演劇に打ち込みまくってい居るせいで学力は絶望的だ。まあ雄二のことだ。今はモチベーションを落とすようなことは言わないだろう。

「当然俺も全力を尽くす」

『確かになんだかやってくれそうな奴だ』

『坂本って、小学生の頃は神童とか呼ばれていなかったか?』

「さらに吉井雪耶だっている。こいつも姫路と並んで主力の一人だ」

『おおおお・・・・・・!!!』

『吉井がAクラス入りは確実だったって噂を聞いたことがあるぞ』

『なんでFクラスに居るんだ?体調でも悪かったのか?』

『実力はAクラスレベルが三人もいるってことだよな!』

絶望的ともいえたクラスの雰囲気が一気に良くなった。やはりこれも雄二の計算の内なのだろう。神童と呼ばれていたのは小学生の時だが、実は今もその頭脳は健在なのかもしれない。

「それに、吉井明久だっている」

 

・・・・・・シン―――

 

良かった雰囲気が一気に凍り付いた。

明久はオチ扱いのようだ。ドンマイ明久!

「ちょっと雄二!どうしてそこで僕の名前を呼ぶのさ!全くそんな必要はないよね!」

『誰だよ、吉井明久って』

『聞いたことないぞ』

『吉井って二人いるけどもしかして・・・・・・』

「ホラ!折角上がりかけていた士気に翳りが見えるし!僕は雄二たちと違って普通の人間なんだから、普通の扱いを―――って、なんで僕を睨むの?士気が下がったのは僕のせいじゃないでしょう!」

「そうか、知らないようなら教えてやる。こいつの肩書は<<観察処分者>>だ」

あーあ。もう知らね。

『それって、バカの代名詞じゃなかったっけ?』

クラスの誰かがそれを口にする。悲しいけどそれ・・・・事実なのよね。

「ち、違うよ。ちょっとお茶目な十六歳につけられる愛称で」

「そうだ。バカの代名詞だ」

「肯定するな、バカ雄二!」

「はぁ。間違っているぞ雄二」

「いいぞ!雪耶もっと言って―――」

「学習意欲に欠け、成績不良の、更生する余地のないどうしようもないバカだ」

「悪化したっ!」

<<観察処分者>>。普通に生活していたら絶対に縁がない称号だ。余程学校生活において問題を起こさない限り、成績が悪くてもこの称号は付かない。

「あの、それってどういうものなんですか?」

彼女はこの学校の頂点に居たのだ。縁のなかった最底辺の事情など知らないのも無理はない。

「具体的には教師の雑用だな。力仕事とかそういった類の雑用を、特例として物に触れるようになった試験召喚獣でこなすといった具合だ」

本来は試験召喚獣は物に触ることができない。彼らが触れることができるのは他の召喚獣だけ。要するに幽霊みたいなものだ。もっとも、学校内の床には特殊な処理が施してあるらしいから、立つことだけはできるみたいだけど。ただ、明久の召喚獣が特殊なだけだ。

「そうなんですか?それって凄いですね。試験召喚獣って見た目と違って力持ちって聞きましたから、そんなことができるなら便利ですよね」

姫路の目がキラキラと輝いている。なぜ明久に羨望と尊敬の眼差しを向けるのだろうか?教師にこき使われる、都合のいい存在だけだというのに。

「あはは。そんな大したものじゃないよ」

「大したことないどころか、それはむしろ足かせになるかもな」

何故かというと、まず召喚獣は教師の監視下でしか呼び出せない。なので教師の承認が必要で、当然私的な利用が許されるはずもない。なので彼に何のメリットはない。さらに、明久は試験召喚獣に負担が自身に何故フィードバックする使用なのだ。例えば、召喚獣に重い物を持たせ走りまわすと、その分の疲労の何割かがフィードバックする。これは彼に与えられた賞ではなく罰だ。当たり前だが、生徒の都合のいいように作られているわけがない。

「雪耶!?なんで本当のことを言っちゃうの!」 

『おいおい。<<観察処分者>>ってことは、試召戦争で召喚獣がやられると本人も苦しいってことだろ?』

『だよな。それならおいそれと召喚できないヤツが一人いるってことになるよな』

「気にするな。どうせ、いてもいなくても同じような雑魚だ」

「雄二、そこは僕をフォローする台詞を言うべきところだよね?」

「とにかくだ。俺達の力の証明として、まずはDクラスを征服してみようと思う」

「うわ、すっごい大胆に無視された!」

「皆、この境遇は大いに不満だろう?」

『当然だ!!』

「ならば全員筆を執れ!出陣の準備だ!」

『おお――っ!!』

「俺たちに必要なのは卓袱台ではない!Aクラスのシステムデスクだ!」

『うおお――っ!!』

「お、おー・・・・・・」

バラバラで無気力そうなFクラスの奴らをここまで乗せることができるのは、雄二の才能だ。

何故、かつて神童と呼ばれていた男が、学力だけが全てじゃないことの証明をしたいのかはわからないが、なかなかに捻くれていて面白そうだ。システムデスクは手に入るか分からないが、授業は試召戦争で確実に潰れるのだ。丁度いい暇つぶしにはなるだろう。

「明久にはDクラスへの宣戦布告の使者になってもらう。無事大役を果たせ!」

雄二がどさくさに紛れ明久に大役を押し付けた。使者とは宣戦布告をする役目で基本酷い目に合うのだ。

「・・・・・・下位勢力の宣戦布告の使者ってたいてい酷い目に遭うよね?」

「大丈夫だ。やつらがお前に危害を加えることはない。だまされたと思って行ってみろ」

「本当に?」

「もちろんだ。俺を誰だと思っている」

「大丈夫、俺を信じろ。俺は友達を騙すような真似はしない」

「わかったよ。それなら使者は僕がやる」

「ああ、頼んだぞ」

明久は雄二の説得に応じ、使者の役割を果たしにDクラスへ行った。明久よ、そこでお前はもっと疑わないからバカなんだぞ。

 

 

 

 

続く



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