異世界転生したらTSさせられて結婚してました!?は?まじ??? (すやき)
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俺ぇ!?
行き当たりばったりだけど頑張って書くぞい!
正真正銘初投稿
───地球系植民地348番惑星ドーム
ここは主に地球系人型種族が植民地として開発した星。都市部は人口密度も高く、雑多な種族が押し込めれるように暮らしているが、ひとたび都市部郊外に出れば森や農地が広がる、どこかちぐはぐな印象を受ける土地だ。それは、この星を地球系移民達が開発したせいだ。周辺惑星との距離が平均的であり、交通の要として開発された星だったが、豊かな自然も存在し、農耕地としても大変優秀だったために、交易に必要な土地を開発してあとはそのままのうちにしたのが、この星の歪さの理由だ。そんな星でいまある一組の男女が、役所である書類を受け取っていた。
それは生殖パートナー契約合意書、通称セフレ契約書だった。
はぁ………。
俺は1枚の薄っぺらい紙を持ったまま、ため息をつく。必要な欄に個別生体ナンバーを書き込みながら、呆れるほど読み返した注意書きを見る。生殖パートナー契約合意書。それは地球系人類種に定められた法によって、必ず決められた相手と交さなければならない契約だ。この契約は至って簡単で、種付けする側と産む側を決めてどのくらいの数子供を産みますよと決める書類なのだ。地球系列の生まれは絶対に守らなければならない法の1つであり、これは種の保全としても破ってはいけないものとされている。そんな契約を、俺は産む側として全く知らない奴と結んでしまった。男なのに。
いや、これには訳があるんだ。ただの愚痴になってしまうが聞いてくれないか?
時は数百年くらいまで遡る。俺たちの祖先の人類が宇宙に進出し、他の星に存在する文明と交流を持つようになってからのことだ。異星文明との交流は地球に大きな利をもたらし、地球はさらに発展していった。それ事態は喜ぶことなのだが、如何せん問題の方も出てきてしまった。
敵対勢力の出現だ。人間を下等生物と見下し奴隷として攫っていく種族、捕食対象としてもそもそこちらを認識しない宇宙生物などが大挙して地球に攻めてきたんだ。でも地球もやられっぱなしなわけなくて、交友のあった異星文明の力を借りて撃退したり、逆に攻めてきた星を征服したりして植民地を増やし、今では和平交渉によって多くの星とは停戦中だ。
ま、あくまで停戦なので、地球連合軍はバリバリ現役で活動してる。
つかの間の平和を得られた地球が次に何をするかってーと、異星人の受け入れだな。初めての接触から友好的だった星の民から始まり、他の星の技術を吸収するべくどんどん移民なんかを受け入れていった地球は、あっという間にそこら中に異星人が歩いてるようになった。
そんなこんなで、異星人との混血なんかも生まれて宇宙社会に溶け込んだんだが……
またまた問題は山積みになって襲ってきた。今度は種の存続としての問題だった。
最悪なことに、人間てやつは宇宙生物からしたら遺伝されにくいタイプの遺伝子もちだったらしく、気付いた時にはそこら中に混血はいるが人間らしい見た目のやつは、親がもともと人間に近い姿の奴らしかいなかった。
まだ純人間が結構いた頃だったから良かったものの、人間の大半が混血になってしまいました、後の祭りですとかだったらゾッとするよ。
それで肝心なのはこっからなんだが、当時の地球連合政府はある法を打ち立てた。
それが人類種存続のための生殖パートナー契約だ。
あけすけに言うと、男女が政府の命令で子作りしろってこと。当時は相当な批判も出たらしいが、自分たちの血が混ざり物になるのを拒否した層も一定数いて、今現在も少しづつ形を変えながらも、この法は続いてしまっている。
俺も純人類種の生まれだからこの法は絶対だ。混血だったらもうちょい緩いんだが、それはそれ父ちゃんと母ちゃんを恨む気はない。夫婦仲良いし、見てて守ってやるって思えるいい両親なんだよな。
転生した当時の俺はこの法を聞いてどう思ったかだって?ガッツポーズしたに決まってんだろ。男に生まれりゃ将来は強制的に童貞卒業決定だぞ。前世童貞舐めんじゃねえ。それにもしお嫁さんが来ても絶対優しくしようと思って、俺の頭が悪かったら可哀想だと思って勉強頑張ったし、いいとこに就職して安定した給料もある。
さてこれで嫁を迎える準備は出来たぞって時に政府からきた任命書には─―君のパートナーを決めたよ!男だから性転換して嫁になってね!知ってると思うけど拒否権はないよ!君成績いいみたいだからとってもいい人をあてがってあげたから子供いーっぱい作ってね^^─だ。
もうそれを理解した瞬間叫んだわ。心配した親が慌てて飛び込んでくるレベルで叫んだ。こんなのってないよ、ひどい。
一応続きには相手の簡易的なプロフィールが乗ってたけど、めちゃめちゃ有名なやつでさらにビビった。地球連合軍の中で異例の速さで出世してる英雄とも言うべき男が俺の相手だった。しかもイケメン。生まれ変わってもフツメンの俺では到底かないっこないやつが相手で、俺のプライドはボロボロ。しかも性転換するための施術日が割と近くて心の準備も出来そうになくてグロッキーだよ………
それにこれはあとから聞いた話なんだが、最近は敵生命体や異星人によって純人類種が攫われるとこがあって、女性が足りなくなりそうだから男を性転換させる事例があるそうで、俺はそれに適用されてしまっだとの事だった。
許すまじ異星生物……
これは旦那に仇をとってもらわねばな!!(ヤケクソ)
こうして俺は性転換して3日後、初対面の旦那様(白目)と一緒に契約書を提出したあと子作り♡の為に立てられた政府の施設で、一週間共に過ごすことになってしまったのでした。
いったいどうなるのおれぇ……
主人公
まだ名前が無い
この度男に転生できたのに生まれのせいでTSしちゃった哀れな子
勉強はできるけど地頭がアホ
未来の旦那がイケメンで悔しい
未来の旦那
姿すらない
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この反応…童貞?
役所で書類を提出すると、奥からでてきた役人に案内され、役所裏の発着場に連れてこられた。
隣を歩くやつとはお互いに無言のまま促され、待機していた宇宙船に乗り込めば直ぐに扉が閉まり、そのまま飛び立ってしまった。
仕方ないから探索がてら周りのものを見ていれば、じぃっと視線が刺さる。なんだか居心地悪くなって手に持ったグラスをテーブルに置くが、まだ視線は俺から離れない。
ここには俺以外にあと一人しか存在しないから必然的に犯人は分かってしまうのだが、不快だからやめろとも言えない。
べ、別に怖いからじゃないんだからな。ただ無言でこっち見てくるのはやめてくれよ……
えぇい!ままよ!とヤケになって俺もやつを睨みつけてやると、一瞬視線が交わって直ぐにそらされてしまった。
はぁ?そっちからやってきたのにそーゆー態度ですかそーかそーかふーん。
なんて心の中ではムカつくヤローだなとか思ってるけど表には出てないぜ。俺は品行方正な男だからな。無言で見てくる失礼なやつとは違うんだよ。
そうして勝手に俺が声なき攻防を繰り広げていると、いつの間にか船は目的地についたのか、少しの揺れとともに扉が開いた。
「お待たせしました。ここがこれからお二人が共に過ごされる所です」
宇宙船が降り立ったのは、めちゃくちゃ豪華なザ・超高級マンションといった外装の建物の前だった。そしてこれまた教育の行き届いているといったふうな案内人がピカピカしてて、綺麗な中を案内してくれる。
「ここは外に出なくとも大丈夫なように各種娯楽施設や飲食店、図書館などが完備されています。欲しいものがある場合スタッフに言いつければできる限り入手致しますので、お二人はどうぞごゆるりとお楽しみください」
粗方の案内が終わり、最後ににっこり笑って部屋の鍵を俺に手渡したスタッフは、足早に去っていく。未だに一言も発さない男と2人きりにされるのは心細いから、出来ればいかないで欲しかった。縋るような目で見ても、視界には遠ざかる背中しか見えない。
仕方ない、とりあえず部屋に入ろう。
ため息ついて、ドアの横にあるカードリーダーに鍵をかざす。あっさり開いた鍵はオートロックなので、締め出してやりてぇとか考えるのは中々に残酷なことだが、可愛いものだと思う。
というかなんで鍵1個しかくれないんだ?四六時中一緒にいろってこと?……まじでそのまんまだった。
部屋の中にある机の上には、どーんと乗った分厚い冊子と薄っぺらいパンフレットが綺麗に並べられていた。俺がパンフレットの方を取るとやつは冊子の方を取り、どちらからともなく唯一ある2人がけのソファに腰掛ける。もちろん人一人分くらいの距離はあるが、近くないか?部屋の内装をざっと見ても、なんか近くない?確実に入れたヤツらの距離(物理)が近くなるように出来てやがる。これは寝室を見るのが怖い……
俺は最悪の想像をしてしまう前に気を逸らすためにパンフレットを読もうとした。したけど、目に飛び込んできたあまりのバカバカしい言葉に呆れてしまった。えーと、
『当施設ではご利用される皆様に快適な生活をご提供致します』
『より良い子作りのためのワンツーステップ!』
『気になる性の悩みQ&A』
『あらゆる性癖に対応致します!ご相談は○○○まで!』
ふっざけんなよ!!!
手の中の紙束を投げ捨てたくなる衝動を必死に抑える。
ここほんとに政府が管理してる施設なのか?真面目に?本気で?それともこのパンフレットがぶっちゃけすぎてるだけなのか?
隣のやつをちらりと見れば、真剣な眼差しで分厚い冊子を熟読しているようだった。ちょっと覗きみようと、すすすっと後ろに回る。だけど頭が邪魔でよく見えない。
あーもうちょっと右に…ちょ!捲るなよ!
仕方ない、背伸びすると少し前屈みになりやつの顔と俺の顔を近付ける。今まで無反応だし平気平気。
そう思っていた時期がありました。
慣れない女の体に距離感を誤ったのか、俺のナイスバディ(笑)がやつの背中に押し付けられてしまった。効果音をつけるなら確実にむにゅ、だな。マシュマロのような感じ。それくらい俺のおっぱい(人工)は柔らかいぞ!
これで俺についてなきゃ惚れてたね。
それで俺の胸がやつの背中に当たったらどうなったと思う?
正解はめちゃくちゃ素早く距離を取られた。
あれはそう、一昔前に流行った背後に置かれたきゅうりに驚く猫ちゃんのようだった。実物は猫ちゃんなんてもんじゃなくて狼みたいなやつなんだけどな?ケッ可愛くねえ。
とゆーかこの反応、ははーんさてはこいつ童貞だな?
なるほどなるほど。俺みたいな美女(美少女)は軍にはいないから、照れて無言だったんだな?その気持ち分かる。これで今までの無言の意味が分かった。特別に許してやろう。
今の俺ってまじでパーフェクトな美女(美少女)だもんな?
おっぱいは…ちょっとばかし小さいけど美乳だし肌も張りがあってつるつるで小柄な身長は抱き締めたくなる。顔は言わずもがな美女(美少女)って感じ。この年齢不詳感がマニアにはたまらないね、知らんけど。
髪だけは自前だけど、他は政府お抱えの医療機関で整えられたまさに完璧な美女(美少女)だからな!
この美貌にひれ伏していいぞ!しない?あっそう。
そんな童貞くんはまだ距離を取ったままだったので、俺はこの体を最大限有効活用して上目遣いで話しかけてやる。こいつには俺が男だった事が知られてると思うから、そんな元男が上目遣いなんてただ気持ち悪いだけだ。せいぜい気持ち悪がって俺に手を出さないでくれ。
女になって3日でママになりたくねぇ!
主人公
名前がまだ無い
相手を童貞とみなして調子に乗った
後で分からせが来るかもしれないし来ないかもしれない
相手の男
童貞ではない(ネタバレ)
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俺は童貞ですけど??(キレそう)
どんな際どい性癖も受け入れます(ニッコリ)
GWの連勤終わりましたーーお疲れ様です
「あの……アーベントさん」
ここまで来て1度も会話してこなかったやつに俺から話しかけた。
相手が童貞だと分かれば今までの無礼も水に流してやれる。
ここは人類全ての何よりも貴重な美少女になった俺がせいぜいいい思いをさせてやるかと率先して関わってやろうじゃないか。
心細そうに上目遣いで見てくる美少女はグッとくるよな。
例えそういう趣味じゃなくとも年齢不詳なこの外見ならやつの方でいいように解釈してくれるだろう。
実際俺はもうとっくのとうに成人済みであるからしてあらゆる方面で合法だ。
「その…始めまして…?」
必殺!小首を傾げる!元の俺がやったら鳥肌もんだが今の俺ならめちゃくちゃ似合う。
そしてあえて気弱な女の子風な喋り方を意識した。
おらっ!最強に可愛い女の子が話しかけてるだろいい加減なんか言え!
「……ああ」
………しゃべったぁぁぁぁぁ!
ほんとに喋るやつがあるか!えぇ何て返せばいいんだよ。もう無言でいいや。(ヤケクソ)
とりあえずお辞儀しとけばええやろ。
ふっ、日本人特有の頭下げる文化がここで生かされるとはな……
ぺこりと頭を下げる。
この時俺は知らなかった。見えなかった。意識していなかった。
頭を下げたほんの少しの間でやつがどんな顔をしたのか。
知っていたら、何か変わってたのかな…
そろそろと顔を上げた。
見上げる顔は涼しげで変わらず無表情なやつだ。
しかしほんとに背は高い顔はいい地位があるの三拍子で人生イージーモードって感じ羨ましいな。
もとの身長より十数センチ低くなった視界で見ると威圧感すらあって時々目を逸らしたくなる。
なるけど、ここでほんとに逸らしたらなんか負けた気になるから意地でも目を合わせてやる!
野生では先に逸らした方が負けなんだぞ知らないのか?
数秒間なぜだか分からないが目と目を合わせていたらやつが顔ごと横を向いたからこの勝負は俺の勝ちな!
誰に言うでもなく内心でドヤる俺。
客観的に見れば幼女がむふーっと心なしか胸をはって自慢げにしているように見える。
やつの方は移した目線の先にある玄関をずっと見ている。
若干警戒しているようにも見えるその行動は何を感じてなのだろうか。
あいにく一般人だった俺には訳の分からない行動だ。
「……誰か来る」
その一言を発した次の瞬間、ピンポーンと呼び鈴の音がした。
「ひょぇ!ほ、ほんとに来た…!」
驚いて変な声が出てしまった。もしかしたら少し浮いたかもしれない。
びっくりして飛び上がる美少女って可愛くない?中身が俺がじゃなきゃ良かったのにな。
なんて考えているうちにコンコンとドアがノックされてついつい出そうになるのをアーベントに止められる。
太い腕に遮られて前に出れなくなり腕と体の隙間から向こうを伺うしかない。
外にいたのは先程までここにいた案内人だった。結構な大きさのダンボールを持っている。
「突然来てしまい申し訳ございません。お渡し忘れの品がございましたのでお届けにまいりました。こちらをどうぞ」
アーベントが俺なら持つのも大変そうなダンボールを受け取った。ガタガタと言う音からはあまり重いものは入っていないと感じる。
中身を確認しようとしているのか1番広いテーブルの真ん中にどんと置かれたダンボールは謎の存在感を放つ。
まずアーベントが蓋を開けるのだが一瞬見たら直ぐに閉じてしまった。眉をひそめているがそんなにやばいものでも入っていたのだろうか?
俺もダンボールの中を覗こうと引き寄せるとパカリと開く。
「ミ゜ッ!?!!?!!??」
俺はダンボールをゆっくり閉めるとそれからずざざっと後ずさった。心臓はバクバクしてるし絶対に顔は真っ赤だ。逃げた拍子にダンボールがテーブルから落ちて中のものがまろびでる。
何をそんなに慌てているのか……それは中に入っていたのはいわゆる大人のおもちゃと呼ばれるものだったからだ。
軽い音を立てた物からゴド、と音をたてたもの、見ただけでもローションやらその…あれと同じ形のえぐい色のやつが開いた隙間からこぼれて見えた。
そりゃあ俺は元男ですけどね!?
そーゆーエッチな小道具ってのはエロ本の中だけのものだったというか見たことしかないし実物なんて触った事ねーのよっ?!!
こちとら童貞やぞ!?
なんてものを寄越してきたんだと喚き散らしたい。それをしないのはここにアーベントがいるからだ。
一般的に地球連合軍は謎の多い組織だ。
軍事組織なのだから謎が多いのは当たり前でバカバカしい陰謀論なんかもよく聞くのだけれど、度を越してやばい噂をまことしやかに囁かれているのがアーベントの所属する極東エリア担当第6支部団だ。
あそこは俺の生まれ故郷である日本を守ってくれている。
そこに感謝の念はあれど聞こえてくる噂が他の支部とは桁違いで出来れば近寄りたくないし関わりたくない。
夜な夜な実験台にされた異星人の悲鳴が聞こえたりするだとか所属しているのは人の死を悲しまないヒトデナシのバーサーカーばっかりだとか。
別に怖いってことは無いんだよ?ほんとだぜ?
ただちょっと半径2m以内には近寄らないでください!俺なんか殴られたらすぐ死んじゃうんだから!!
主人公
今回も名前が出なかった
アーベント
なんと主人公より先に名前が決まった人
やばい組織に所属しているらしい
主人公の口調がブレブレなのは仕様です
これからメス堕ちしてくと─って感じのテンプレにしたいけどできたらいいね………
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こちとら女の子4日目ですよ??
不定期ながら続けようと思ってます
俺はこれ以上頭がおかしくなりそうな空間にいたくなくて部屋から飛び出した。
うううっ…これから一緒に住むやつもやばくて働いてる人もやばいって詰んでね?
ぜひぜひ息が切れるまで走って曲がって、現在位置がどこか分からなくなるまで遠くに行った。
てかここ広すぎんだよ!迷った!
「ここどこ……」
「ここは第3居住区中央、自然解放区域だな」
「そうなんだ……ぇ、うわっ!いつの間に!」
ガラス越しに植物が生い茂る公園のような場所を眺めながらぽつりと独り言を呟いたつもりだったのだが、何故か後ろから返事が返ってきた。
ごくごく自然にその返答を聞き流したのだが、何かが引っかかり後ろを振り向くと息一つ切らしていないアーベントが立っていた。
「お前が飛び出してからずっと着いてきたが、気付かなかったか?」
「え、えぇ…そうだったんですね」
「ああ、鍵もひとつしかない。俺が居なければ部屋にも戻れないならな」
あー鍵、ね。すっかり忘れてたけどそれは有難いわ。いや、でも、引くわ。
ずっと無言だったの?
俺ががむしゃらに走ってる間ずっと無言で着いてきてたの?
はっきり言っていい?きもい。
でも俺は大人(こいつよりは年上)なので頬を引きつさせながらも微笑んでやった。
俺のお淑やかな演技に刮目しろ!
「それはそれは、ありがとうございます。
では……えーと、そう、せっかくですしここら辺を見て回りませんか?
ここには来たばかりですので環境を知るというのも大事かと思います」
「ふむ…それも一理ある。ならば共に行こう、地図は全て覚えている。安心しろ」
「頼もしいですね」
部屋に戻ったら直ぐにセックスが始まるかと思うと嫌すぎて、でもこいつと一緒にいなきゃいけなくて。
天秤にかけてアーベントを誘った方が何倍もマシだと半ばやけくそで誘えば予想外に食いつき施設を見て回ることになってしまった。
うわぁ緊張して鳥肌立ってる。
泡立った腕を擦りながらアーベントの後ろを歩く。時折振り向いて俺が着いてきているか確認する姿はまさに"いい男"だ。
中央自然解放区域から始まって、レストランやショップが立ち並ぶ区画を見て回る。
普通のスーパーの隣にスポーツ用品店からはてはアクセサリーショップ、専門店などがごったに並んでいて、見ているだけで楽しめるだろう。ここが普通だったらな。
お互いに無言のまま一通りぐるりと施設を回って、入口のところで立ち止まった。
ちくしょう、アーベントのやつ何が地雷かも分からないから手の出しようがない。
話題の振りようがないから無言でいるしかない。相手は何考えてるかも分からない。
チラホラと見えるかわいい女の子やおキレイなお姉さんがこっちを引いた目で見てくるのに泣けるぜ。ん?男?知らんな。
このままここに居続けるってのも座りが悪い。
さてどうしようか、と思って「あの………」と声をかけたところで空気を読んだ(?)腹がグゥ〜と鳴った。
──う、ぅわあぁぁぁぁぁぁ!!!!
声には出さずに内心で絶叫する。
触れなくとも分かるくらい顔が熱くなる。アーベントの方から見れば耳まで真っ赤だっただろうな。
謎の脂汗が背中を伝たって気持ち悪い。
アーベントの視線が咄嗟に伏せたことで丸見えのつむじに刺さる。
羞恥心が悲鳴を上げていつの間にか理性はかなぐり捨てられていた。
俺は衝動的にアーベントの手を取って屈ませるとその顔面に向かって「忘れろっ!」と叫んでいた。
そこからどうしてそうなったのか分からないが、俺は今アーベントと知らない人2人と一緒にご飯を食ってます。
いや、時は数十分前に遡るんだ。
俺が自分でもびっくりな異様な行動力でアーベントに忘れろくださいしてから、何故かアーベントの挙動がバグりだした。
いきなり動きがギクシャクしだして、目線もうろうろと泳いでしまっている。
俺は腹の虫の羞恥心とアーベントの行動が分からなくてしばらく呆然としていると、突如手が潰れてしまうんじゃかいかってくらいの力で握り潰されて、手のひらの骨が別の意味で悲鳴をあげたのが聞こえた。
「い゛っ、つぅ……!」
普通のリーマン、まして今や美少女の俺に痛みの耐性があるなんてこともなく、普通に美少女がしなさそうな呻き声を上げてしまった。
その声にはっと我に返ったらしいアーベントは手の力を緩め、離す。
大きくて硬い手が離れていくと握られていた箇所が見えてくる。そこは白い肌とのコントラストがエグいくらい赤くなっていた。
ぶつけたとか言い訳できないくらいベッタリとついた細い腕を一周する痣は時間が経てばグロい色に変わるのだと分かるものだった。
「す、すまないっ……」
アーベントの方も俺のあまりの脆さは予想外だったようで無表情が嘘のように焦り顔だ。
上から覗き込まれるが冷や汗の滲んだ顔はあまり見られたくないな。
俯き黙っているとアーベントは手の痣を確認しようとしたのか1度目よりか優しく触れてくる。けど触れられた瞬間びりっとした痛みがはしり、アーベントの腕を振り払ってしまった。
「……っ、」
「あ…その……」
腕を振り払われたアーベントの顔は一瞬だが酷く悲しそうで、俺に非はないはずなのになぜだかとても心が痛い。
そんな顔させたかったわけじゃないのに……。
普通なら出会ってまだ一日も経ってない相手に怪我させられてもっと怒ってもいいはずなのに、アーベントの顔を見ると不思議と逆に傷つけてしまったと思うんだ。
……俺ってこんなに面食いだっけか?
分からないけど、分からないなりに何か言わなきゃって思って、でも何も言えなくて。
「あの、どうかしましたか?」
「きゃあ!あなた怪我してるじゃないですか!!」
そうこうしているうちに親切な2人組が俺たちに気付いて話しかけてくる。
女の子の方が俺の怪我を見て驚くのを申し訳ないなと少し思う。
2人して無言でいたらあれよあれよと医務室に連れてかれて、今の俺は包帯を腕に巻かれながら死んだ目をしている。
主人公
名前が決まらない
アーベント
やらかしちゃった男
今後このことで長い事主人公にからかわれる予定
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美味しいご飯は正義、はい常識
今回はご飯回です
可愛い女の子がご飯食べてるのいいよね……
「いいですか?女性の体は男性のものとは違いとても繊細なんです。力加減を謝って怪我をさせるなど有り得ません。ですから─────。
……聞いていますか?気をつけていかなければならないのは貴女もですよ!」
長い。説教が長い。
アーベントにつけられた痣の手当をされた俺は、アーベントと一緒に椅子に座ったまま医者に説教されていた。
神経質で真面目そうな医者は、やや目つきの悪い目で俺を睨む。それでいて手当する時の手つきは優しかったから、本当にただくそ真面目なだけなんだろう。
説教されてるこちらからすればいい迷惑なんだけどな。
説教も一通り言ってしまったのかなんなのか。医者は、はぁぁぁぁぁと深く息を吐くと「もう医務室には来ないでくださいね」と言って俺たちを追い出した。
「出てきたようだぞ」
「あっ!心配ましたよ〜。怪我の具合はどうでしたか?」
これ幸いとドアを開けると、なぜだか知らんが俺をここまで連れてきてくれた2人がいた。
いやなぜ???
見れるヤツがいれば俺の頭上にクエスチョンマークが大量に飛んでいるのをしっただろう。
アーベントの方が知り合いなのかもと思い後ろを見たがそっちもそっちでよく分からない表情をしていた。
どことなく雰囲気から、たぶんこれは困惑している時の顔かな?とあたりをつける。
そうして見るからに俺たちが誰だこいつら?って顔をしているのに気付いたのだろう2人組はハッと驚いた顔になる。
「い、いきなりごめんなさい!わたしはフィニーチェ、気軽にフィーって呼んでください」
「オレはリフだ」
ご丁寧に自己紹介をしてくれたフィーとリフ。
アーベントが素っ気なく自分の名前を告げて俺は、と言おうとしてぐうぅぅぅと腹がなった。
「あ、はは。まずは食事でもどうでしょう?」
引きつった笑顔で俺は提案した。腹の音は殴ったら止んだ。いたい。
────場所は変わってどこかのレストラン
はい、前に言ったようにアーベントと知らない2人組とご飯を食べてます。メタ?なんの事かな(すっとぼけ)
俺の目の前には見た事ない食材を使った料理や、懐かしい地球の料理なんかが所狭しと並べられている。
注文したのは主にフィーだ。
とても楽しそうにおすすめはこれ、あれは甘くて美味しいなど、色んな料理を注文していた。
美少女が楽しそうにするだけで眼福だなぁ。
これ全部食べ切れるのか、とかの現実は横に置いて、目の前の妖精のような彼女を眺める。
ま、最悪アーベントに押し付ければいっか。この腕の迷惑料でいいでしょ。ご飯は残しちゃ怒られるからね。
うんうんひとりで納得していると、フィーが期待するような眼差しを俺に向けてくる。
何となく何が言いたいのか分かったから素直にスプーンを取って空きっ腹によさそうなコンポタに口をつけた。
「………うま」
え、まって美味しい。
ただのコーンポタージュなのにめちゃくちゃ美味しいぞ?!
人工的な甘みを感じさせないで食材の味をここまで引き出すなんて、いったい誰が作ったんだ!シェフを呼べ!
と、茶番はここまでにしておくが、正直とても美味しかった。思わず食べきってもいないのに次の料理に橋をつける行儀の悪いとこをしてしまった。それくらい全部美味しくて食べきれないのが嘘みたいに悲しい。
満腹まで食べ物を詰め込んで張ったお腹を擦りながら、限界まで食べた俺は残りをアーベントに食べてもらった。
男のままだったらもっと食べれたのに今だとそれの半分くらい。
腹の具合を誤って手をつけてしまった料理の残りを恥ずかしいが皿ごと差し出してアーベント食べてくれるように頼む。
「……お願いします」
「ああ……」
ひとつ頷いてペロリと完食してしまった。
まだテーブルに残っている料理も平らげてしまう胃袋が羨ましい。
「美味しいかったでしょう、ここの料理は私の1番のおすすめです!」
ニコニコと笑顔で俺たちの食事を眺めていたフィーが自慢げに胸を張る。
フィーの前にも、リフの前にも食べ終わった皿が山のように積まれていて1番少食なのは俺のようだった。
アーベントが食べているパイをじっと見つめる。切れ味のいいナイフが生地に切れ目を入れると、ふわりと食欲を誘う匂いと共にホカホカと湯気が立ち上る。具がぎっしり詰まったミートパイは厚く作られていて食べごたえがありそうだ。
あ、いけないヨダレが……
あまりにも見すぎていたのだろうか、アーベントに
「食うか?」
と一口に切り分けられ差し出されたパイを
「食べますっ!」
と即答し目の前のフォークに齧り付いていた。
はぁ〜美味しいぃぃ!
じんわり広がる肉汁とスパイスの刺激が絶妙なバランスで、交互にやってくるからくどくならない。
具を包むパイ生地も、外はサクサクだが中の方は肉汁でしっとりとした食感で食べ飽きない。むしろ生地に練り込まれたバターが肉に一味加えていて、全く新しい味を生み出している。
なんというか……純粋に美味しい。
頬を弛めながらもきゅもきゅとパイを食べる。
久々に誰かと、暖かい料理を食べたなぁ。
主人公
名前が決まらない
食べるのは楽しい
最近は楽しくなかった
アーベント
そんなつもりではなかったが主人公のせいであーんをしてしまった
本人は気付いていない
フィー
アーベントと主人公のあーんを微笑ましく見守っていた
お節介焼きのフィー
リフ
主人公たちをまったく気にせず食べていた
体格に見合った大食い
医者
ただ生真面目な人
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人はみんな美少女に弱いもの
大変遅くなって済まない。
他の短編に浮気したりFGOしたりしてたんだ。
ぜってー北斎じゃよは取りたい!
いつにも増して短いけど許して……
起承転結で言うなら転だから!これから話進むから!
「はぁ、ご馳走様でした。美味しかったです」
言葉数は少ないけれど暖かい雰囲気でした食事に久しぶりに胸がほっこりした。
ここ2、3日は緊張と恐怖で頭がおかしくなりそうだったから、このゆるい感じは悪くないと思う。むしろ天国みたいに心地いいや。
相変わらず仏頂面で隣を占拠するアーベントにも何となく慣れてきて、気が強くなったのだろう。俺は珍しく、食休み中のアーベントに積極的に話しかけるという行動力を見せた。
「いっぱい食べましたね。アーベントさんはどの料理がお好きでしたか?」
山のように積まれた皿を見ながらアーベントに聞く。俺の視線を追うように皿の山を見たアーベントは顎に手を当てて少し考えるとぽつりと口を開いた。
「あの……黄色くてツルリとした甘いの、だな」
「黄色くて甘い……もしかしてプリンですか?プリンお好きなんて意外でした」
「そうか」
「はい。あっ、私はお肉が好きです」
「肉?」
「はい!」
そうか、アーベントはプリンが好きなのか。心のメモに1つ書き残す。
ふんふんうなずいているとアーベントも俺の好物を聞いてきた。
俺は肉ならなんでも好きだ。コトコト煮込んで口の中に入れた瞬間崩れるトロットロの肉から強火で豪快に焼き上げたステーキまでなんでも好きだ。おっと危ない涎が。
緩みそうになった口元をきゅっと締める。
この体になってあんまり食べられなくなった結果、好物を思い出すだけでヨダレが溢れそうになる。好きな物は声高に主張しろ。そうすれば思わぬ事態になったときに情報を回してもらえる率が高くなるぞ。
例えばどこそこで食い放題バイキングがやってるとかをな。
ま、俺は友達なんていなかったから1人で調べたけどな!あはは……泣いてないぞ。これは汗だ。
「いっぱい食べましたね。食後の紅茶でもどうでしょうか?」
「ここの料理人は紅茶を入れるのも上手いんだ」
フィーとリフの2人は、俺たちが一段落着いたところであらかじめ頼んでおいたのだろう紅茶をごく自然に出してくる。あまりにスマートに一連の流れをしてくるものだからちょっと引いた。これがコミュ強の実力なのかな??
無理だわこれ、勝てないわ。
「わぁ!いい匂いですね」
先程まであった料理の名残を一掃するかのようで、紅茶の香りがふわりと広がり爽やかな心地にさせる。
少し熱いそれをふーっと息をふきかけてさます。カップに口をつけて少しだけ口に含む。やっぱりまだ熱いけれど、それ以上に今まで飲んだ紅茶のどれよりも美味しいそれに間を見開く。人が手ずから入れた紅茶に高々数百円のティーパックが勝てるわけがなかった。
カップ越しの熱を感じながらほぅ、と恍惚の息を吐いた。
「美味しい……」
お腹がじんわりと暖かくなって、先程よりリラックスしているのが分かる。すごい。
「こんなに良くしてもらって…ありがとうございます」
自然と、感謝の言葉が出ていた。なんというか、心がすっごく清らかになった気分だ。
「ふふ、ありがとう。でも、まったく善意でと言う訳では無いんです。じつはリフがあなたのパートナーであるアーベントさんを気にしていたの」
「…俺は軍に所属しているんだが、そこで貴方の噂は聞いていた。ぜひこの後手合わせしてくれないか」
リフからの申し出にアーベントは横目に俺の方を見る。1つ頷いてやる。
「…ああ、いいだろう」
「ありがとう!」
「それじゃあ、レクリエーションルームに移動しましょうか。よかったら、私もお話してくれませんか?」
フィーがこて、と首を傾げて俺を誘ってくる。その仕草は美少女でなきゃ許されないぞ!まじやばすぎて吐きそう。(それはただの食べすぎだ)
はぃ、と消えそうな声で返事した俺は無事フィーの太陽のような笑顔に焼かれてしまった。
カチコチになりながら移動したからフィーに変に思われたらどうしよ。あっ、今から泣きそう……。
短時間で絆されすぎだと思うが仕方ない。超絶美少女が俺に無邪気に笑いかけてくる光景が目の前にあったとしてどうする?
どう考えたって負けイベントでしょ、そんなの!
と、まぁとりあえず俺たちはその後4人でレクリエーションルームに行ったんだ。
それからのことは酷く曖昧な記憶しかない。
美少女が目の前にいてニコニコしてるしアーベントとリフは何やら超人的な動きでよく見えない。時折ドンだかバンだかの鈍い音がする。だから撃ち合ってはいるんだろうけど俺にはさっぱりだ。
今はただフィーの前で溶けそうになる表情筋をフル稼働させて平静を保つので精一杯だ。
だから頼む、なにかやらかさないでくれよ旦那たちよ。
主人公
いっぱい食べる君が好きな感じで食事中は3人に暖かく見守られている。
いっそどこまで名無しで行けるか試したくなってきた
アーベント
1話でチョロっと説明されてるが軍で若手ながら実力者として知られるとりあえずチートバグ野郎
その実力は今後発揮される
プリンを知らない程度には世間知らず
フィー
天使のごとき美少女フェイスで速攻主人公を陥落させた恐ろしい子
リフのことはそれなりに大事なのでちょっと強引に主人公たちを誘った
ら、のこのこついてきた主人公が心配
天然お嬢様
リフ
チートバグ野郎と対等にやりあえる時点でこいつもバグ野郎なのは確定的に明らか
バグ野郎より幾分か年上
軍ではアーベントとは別部隊所属の同じ基地にいた
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友達っていいよね
そろそろ話が進みます
具体的には次の回で4人がある事件に巻き込まれます
大丈夫、チートバグ野郎が二人もいるので心配はいりません
衝撃波と共に額から汗が散る。
ギリギリの動作で避けた相手の拳は、あと数瞬遅ければまともに顎に入っていただろう。拮抗する実力だが、体格の分だけこちらが不利だ。
相手の隙を探せ。
久しぶりに実力のある相手に心臓がどくどくと煩い。乾いた唇を舐める。
ギラギラと闘争心に溢れた瞳と目が合う。
こちらを喰らい尽くそうとする気迫に頬が引き攣る。知らぬうちに笑みを浮かべていたようだ。目の前の相手も笑う。お互い似たような表現なのだろうな。
「はあぁぁぁ!!」
「でりゃぁぁぁぁ!!」
気合いの入った声と共にパタリと音が止んだ。少しするとアーベントとリフが汗だぐになって帰ってくる。何がどうなったのか全く分からないが、決着はついたらしい。爽やかな笑みを浮かべたリフと相変わらず無表情のアーベントが肩を並べて握手をしているのを俺はぼけーっと見ていた。
いや、むり。
怖すぎてチビりそうになった。なってないけど。
軍人てのはどいつもこいつもヤバいやつしかいないのか?姿がぶれて見えるとか音速超えてないか?え?人じゃなかった?
俺の結婚相手人じゃなかったの!?そんな馬鹿な!!
助けを求めるようにフィーの方を見て、テーブルに突っ伏した。なんというか、うん。
フィーとリフはお似合いのカップルですね、はい。
露骨に目がハートになってリフを応援してるフィーを見ると、恋する乙女ってまじ可愛いよな……と現実から逃げてしまいそうになる。
純正美少女ってこんなにも一途に恋することが出来るのか……
アーベントには悪いけど俺は無理そうです。だってさぁ、無理だよこんなテンションぶち上げて好きですオーラとか出せないよ。
俺はいつでもクールにクールに生きたいのよ。おうこらそこ!誰がポンコツだ、だれが!
忘れてたけど俺たちは今日初めて会ったからな。一目惚れとか、俺はそんなチョロインムーブなんてしねーから。
せいぜい仕方ないから産むしかないか……(諦め)だから。そこんとこ忘れんなよ?
あっ、ちょっ、汗だくのままこっち来んなよ。俺はいいけどフィーが汚れる。ほらこっち来い、汗拭ってやるから。まったく、俺がハンカチ常備してる綺麗好きでよかったな?
え、備え付けのタオルがあった?それを先に言え!
まったく…どうしてくれようか。アーベントの汗で湿ったハンカチを仕方なくポケットに入れる。これはもう使えないな。実家にいた頃から使っていたお気に入りの柄だったのだが仕方ない。部屋に帰ったら捨ててしまおう。
「2人とも汗が凄いですしシャワーでも浴びてきたらどうですか?」
「私たちはここで待ってますから」
「フィーも、さっきの分までお話しましょう?」
はっきり言うなら汗臭いから近寄るな。
ま、そんな直接は言わんよ?これでも常識はある。けど言ってしまいたい。
男の汗とか気持ち悪いだけだからさっさと行ってしまえ。ついて行きたそうなフィーはステイステイ。
イチャつくのはいいけど公共の場では止めような。そうゆうのは部屋に帰ってからにしなさい。めっ!
フィーの額に軽いデコピンをお見舞すると正気に戻ったフィーが恥ずかしげに頬を赤く染める。うーんこの、美少女だから許せる事だよね。
また元の席に座り直して今度はまともなフィーとお話をする。
会話は至って健全な話題から始まりちょっと踏み込んだ所までいってしまった。
「フィーってすごくリフさんと親しいけれど、以前から知り合いだったんですか?」
「はい。リフとはここに来る前からお付き合いしていまして、あの手紙が来た時に私を選んでくれたんです…」
その時のことを思い出したのか、少し照れながらフィーは教えてくれた。
リフは軍でA級戦果を上げていたため相手を選ぶ権利が与えられていたのだと。より上にいくと細かい指定ができるようだ。
そうするとアーベントの野郎、まじで俺の事をランダムで選びやがったな?
普通元男を選ぶわけないもんな。俺は純粋な女性とお付き合いしたいもん。
でもあいつもある意味では可哀想かもな。そこまでこだわりがないとしてもめちゃくちゃ可愛い子とか期待してたら来たのが俺って……これ以上考えるのは止めよう、虚しくなってきた。
「それなら私が当たったのは偶然かぁ」
「そうなのですか?とても仲良く見えましたが……」
「あぁ、だって私はリバースで、そもそもあいつとはあったこともなかったしな」
「まぁ!リバースでしたの。それは苦労することも多いでしょう。よろしかったらいつでも相談に乗りますわ」
「うん……ありがとう…」
リバース。それはいわゆる性別が逆になった人の事を指す。性別が変わったりすることは今の世の中じゃ稀によくある状態で、そうなる理由は様々。
異星の薬を飲んだらとか俺みたいに上からの指示だったりとか、多くは理不尽な事故だったりする。そーゆーのがリバースって呼ばれてる。
フィーも俺がリバースだってことに特に驚いた様子はない。それほど生活に馴染んだ存在なのだ。
「ふふ、それに時折口調が乱れていましたので何となく分かっていました」
「えぇ!ほんとに?恥ずかしいなぁ」
「ええ。ですので、私にはそのままの口調でお願いします。せっかく仲良くなれたんですから」
「お、おう……わかった」
可愛い女の子に仲良くなれたんだからとか言われたら断れないよ。なんで俺には息子が付いてないんだろうな???意味わからん。
フィーと改めて仲を深めて(やらしくないぞ?)アーベントとリフが戻ってきたのがだいたい30分後って所かな。
そして1度解散して部屋に戻ったのが1時間後。俺たちはこの時まだ予想すらできていなかった。
あと1時間後に、とんでもない事態に巻き込まれることに。
主人公
誰か名前決めてくれない?
リバース
アーベント
チートバグ野郎その1
フィー
リフにベタ惚れ
純正美少女
リフ
チートバグ野郎その2
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晴れ時々襲撃
課題が一段落したから初投稿だと思います
「はぁーーー。疲れた」
体がズブズブ沈むダメになりそうなソファに腰掛ける。座ると途端に疲労がのしかかって、今はもう立つのも億劫だ。
なんだろう。知らない人と話すのがこんなにも疲れることだったとは忘れていた。
今日一日のこと、隣の部屋にいるアーベントの事を思い出す。
プリンも知らなくて、思ったよりも人見知りで、それでいて初対面の人間とも平気で拳を交える子供みたいにアンバランスな奴だ。
でもちょっとだけ楽しかった、かな。
ソファの背もたれに沈みながら薄れる意識で天井を見る。
部屋の明かりがつけっぱなしだけど、いいかな。
ぼんやりと光が膜に覆われたみたいに見えて、ゆっくり目を閉じる。
一人部屋の中はスー…スー…と1人分の静かな寝息しか聞こえない。
「ふぁぁ〜……ん〜よく寝たぁ」
パッと意識が覚醒してまだダルい体を起こす。俺は寝起きが良い派の人間だが、さすがにソファで寝ると身体中バキバキで動くとゴキッと美少女にあるまじきやばい音がする。
それでもマシになったから、立ち上がって部屋の隅に置かれたスーツケースに手を伸ばす。
確かこれってリビングに置きっぱなしだったはずだが、アーベントが届けてくれたのか?
だとしたら意外と親切な奴だ。会ったらお礼の一つも言った方がいいかな。
うん、自分がしたいならすればいい。べつにお礼ぐらいで出し惜しみしてたらこれからどうすればいいってんだ。
俺はYDK(やればできる子)なんだよ。
そうと決まれば、こんなしわくちゃの服なんがじゃ会えないよな。サラリーマンだってシワだらけのスーツじゃみっともないのと一緒だよ。
スーツケースを全開にしてぎゅうぎゅうに詰め込まれた中から服を探す。
うーん、男物の服は今の俺には似合わない。
なら仕方ない、もう一個の真新しい方のスーツケースも開ける。中には見覚えのない服やら何やらがぎっしり詰まっていた。
母さん…頑張りすぎじゃない……?
俺が女の子になってから、必要になるよって言って渡してくれたこのケースの中身、確かに役に立ってたけど量がおかしい。
よく分からないヒラヒラのスカート?だったり履く意味あるの?って感じのパンツだったり母さんは俺をどうしたいのか分からない。
いや普通に考えて、息子(むすめ)の勝負下着を選ぶ母親って嫌すぎるだろ。
でも正直言って助かる。ごそごそ探った中から、まだ着やすそうなワンピースタイプのものを取り出して体に当ててみる。うわぁ、気持ち悪いくらい似合う……
俺の全てがミニマムな体が映える白地のワンピースは、細やかな刺繍がされていて一見簡素なものだがその実とても可憐だ。
俺の趣味にもあっていてどこのブランドなのかとタグを見れば小さくメイド・イン・Mと書かれていた。
M……マザーかよ。そういえば母さんの趣味は手芸だったなぁ……とか思い出しながら、おそらく母親手製のワンピースを身に纏う。
泣いてない、泣いてないんだからなっ……
うん、涙を拭って笑顔だ笑顔。にっこり笑っときゃ男なんてどうにでもなる。俺がそうだった。ありがとう母さん、息子(むすめ)は元気にやれてます。
よしっ!いくぞー!
「キサラか……」
扉を開けたら、目の前にアーベントがいた。
────………あっ、ぶな。心臓止まってたわ。
びっくり要素とか要らないから。俺を殺す気なのか?何気に俺の名前初めて聞いた気がするけども?
あ、そうそう俺は木更津明(きさらあかり)ってゆーの。自己紹介でちょっとしくじってファミリーネームを先に言ってそのままになってたんだよな。
ま、キサラってこの顔に似合う名前だから全然いいけどね。ただの苗字が名前になるのも呼び捨てとかで慣れてるから全然OK。
むしろ名前呼びとかより気楽でいいや。
「ええっと、何かありましたか?」
「ああ……いや、何も無いならいいんだ」
「はい、?……あ、もうこんな時間なんですね。もしかして、起こしに来てくださったのですか?そうでしたら…ありがとうございます」
「いや、感謝されるほどのことはしていない」
アーベントのやつ、妙に歯切れの悪い返事だな?こんなにまごまごと喋るようなやつだったか?もっと、こう…口数は少ないけど簡潔に喋るようなやつだった気がするんだが?
それに、何も無いなら?どこが引っかかる言い回しだ。訝しんだ俺がアーベントに尋ねようとした時、アーベントの端末が鳴った。
ピリリリリッ!!ピッ!
「なんだ」
アーベントが電話に出ると聞き慣れない声で喋りだした。なんだか前より低くて怖い。
声だけでビビらせてくるのはやめてくれぇ。そろそろと横を通って共有スペースへ向かう。1度水でも飲もう。
不思議なことに共有スペースの明かりか着いていない。パチリとスイッチに電源をつけて、パッ明るくなる……ことは無かった。
「??どうして…?」
ぱち、ぱちと何度も繰り返すが明かりはつかない。
「電気は通っていない」
「閉じ込められたんだ」
スイッチを押す手が何倍も大きな手に覆われた。力なんぞ篭ってもない、手をただ重ねるだけ。その手が妙に冷たく感じた。
後ろからの声に反応して、振り返りながら仰ぎ見る。暗い中で、僅かな光を反射した瞳が煌めいていた。
伏線もなんもない突然の襲撃回です
一応、1話で攻めてくる奴らとか人間を捕食する生物がいることにはなってます
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新!脱出ゲームは大抵1度は死ぬ
後半をこねくり回して再構成しました
それに伴い内容の被る前話は消します
結果、新キャラは影も形もなくなり登場は先送りになりました
コメントくれた方ありがとうございました
これからは再度定期連載に向けて書き溜めつつ投稿していこうと思います
「閉じ込められたって、どういうことですか?」
寝起きの頭にドギツイに冗談は勘弁してくれ。それとなく深刻そうな顔で問い詰めてみるけど早くドッキリだったって言ってくれねぇかな。きっとどこかにスタッフさんとかが隠れているんだろ?
キョロキョロと首を回しても真っ暗なだけ。僅かな光源はアーベントが手に持つ端末の目に痛い明かりだけだ。
「言葉通りだ。この部屋に限らず全施設の扉にロックが掛かっている。管制塔が乗っ取られたようだ」
「えっ?……乗っ取られたって……」
「今この施設は外部からの侵略にあっているということだ」
まるでなんてことないかのように告げられる言葉の数々に俺の頭はもういっぱいだ。着いて初日で侵略?どこのラノベだよ。
「ここにいてもどん詰まりにしかならない。いいか?俺の言う事以外のことをするな」
え、え〜〜〜!ちょっと待ってよアーベントさん!キャラ違くない?
俺と話すと照れて無口になっちゃう純情ピュアボーイはどこに行ったの??
それともこっちかお前の素なのかぁ?わっかんね。とりあえずよく分からんから頷いとけ!
「は、はい」
「よし。今から扉のロックを解除するが俺が合図するまで待機だ」
そういうとアーベントは腰に下げていたナイフを鍵を入れる部分にぶっ刺し…ぶっ刺した!まさかの物理。かっこよくハッキングとかじゃなかった。
ガッピギッ、ギギップシュゥ--
ちょっと危なくないかと思う音がして静かに扉が開いた。アーベントは扉から廊下に顔を出して左右を確認している。あ、ヒラヒラと手を振られたから多分合図だろうな。あまり速さはないけど、小走りで近づくと守るように手を伸ばされる。少しだけ俺からも身を寄せた。具体的には服に縋り付く感じ。だって怖いもんは怖いんだもん。
「音がしない。敵はまだここまで来てはいないようだ。ひとまずシェルターまで行くぞ」
あそこなら食料と武器がある。
感情を見せない真顔のアーベントは瞳だけがギラギラと敵意を剥き出しにしている。横からちょっと覗くだけでぞくりと背筋が凍るような冷たさで、俺が敵じゃなくて良かったと心の底から思った。俺だったらアーベントと対峙しただけで降伏してただろう。
「シェルターはここから第3居住区中央植物園を横切り、東へ向かうとある。俺に何かあっても走れ、そして必ず辿り着け」
俺と向き合って真剣に投げかけられた言葉に、ふざけて茶化すことも出来ない。
こくり、ひとつ頷く。
「いい子だ」
俺の外見が幼いからか、それとも身長差からか、頭をぽんと撫でられる。突然の接触に場違いに頬が熱くなるのを感じる。
「必ず……生き残れ……」
「アーベントさんも」
すっ、と拳を掲げると、アーベントは驚いたように目を開いて、それからふっ、と気の抜けたように笑って俺の小さな拳に何杯もの大きさのある拳を合わせてくれる。
ゴッ、て感じじゃないけどうん、ちょっと痛い。手のガードが硬い。
「行くぞ!」
アーベントの合図で俺たちは走り出した。
──────────────────
アーベントと俺が部屋から脱出してすぐは、とても順調に進んでいた。
扉が締め切られた廊下はがらんとしていて背筋が震えてゾッとする。
折を見て連絡先を交換しておいたリフたちにメールを送るがまだ帰ってきていない。そもそも届いているのかすら分からない。
彼らの部屋がある階層はここからさらに上にあり、どうしたってアーベントに提示されたルートにかすりもしない。
諦めて行くしかない。そう暗い決意をした時だった。
「止まれ」
アーベントが背を向けたままこちらの進行方向を塞ぐように手を突き出した。まだ遠くの通路から足音がする。
ここはちょうど曲がり角で、向こうからくる人物からは死角になっているようだった。何も無い通路に相手のものと思わしき影が伸びている。照明の光を受けて伸びる影が濃くなっていくに連れて足音も少しずつ鮮明に聞こえるようになる。その影の主の姿が見える前に、アーベントは身を乗り出して影の主に掴みかかった。
「ぎゃっ!」
低く呻き声をあげてアーベントに絞め落とされた男は床に崩れ落ちる。ここの職員やじゅうにんのものとは似ても似つかない身なりに、この男がここを襲撃した集団の一味だということが分かる。
「ちょうどいいからこいつのを借りよう」
アーベントは慣れた手つきで男の服を脱がしていく。アーベントと男の体格はそこまで変わらなそうなので着れるだろう。
男の服を見に纏ったアーベントは、今のトゲトゲした雰囲気も合わさってか初めからこうであったかのようにとても馴染んでいた。
アーベントは男の装備を全て取り上げると元の服を適当に破り拘束し、適当に空き部屋と思わしき部屋に押し込める。ここの住人がどういう事情でいないのか、どうなったかは知らないが、アーベントの勝手にやったことなので許してくれ。
「キサラはこれを。使えなくても威嚇にはなる」
男の持っていたデカい銃?のような武器を手に入れたアーベントは俺に元々持っていた方の、比較的俺でも使えそうなナイフを渡してくれた。これで一応自衛手段は手に入れたことになる。もし捕まってしまったり、やばい事をされそうになったらこれで……
急に喉がカラカラになって唾を飲み込もうとするけど喉が張り付いて上手く飲み込めない。
見るからに緊張している俺の心情を察したのかアーベントは比較的気軽に
「使わなければそれだけいいんだ。血の手入れは大変なんでな」
と言った。
はぁ〜〜〜〜??!それってその、戦士的なジョークだったりするのか?
ついて行けねーわごめんなさいね。ま、でも助かった。ありがとな。言わないけどアーベントには。
はい、というわけで今回はアーベントが装備を整える話となりました
次回は戦闘シーンが入ると思います
エセ戦闘シーンなのでキンッ!キンッ!キンッ!キンッ!でも許してください!
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潜入とかダンボールが欲しくなるな
そろそろFGOがどこに向かっているのか分からない今日この頃、
今月初めての投稿なので初投稿です
敵の制服を強奪しなりすますことにしたアーベントとナイフを装備した俺は堂々と通路を歩いていた。
アーベントが言うには下手にキョドキョドするよりいて当然ですが?って顔をしていた方が紛れ込めるんだと。
別に知らなかったし知らなくていい知識だったなー。それかもっと平和な時に知りたかったよ俺は。
アーベントのおかげで俺は無事でいられているんだから感謝しなくちゃだ。
俺たちはいま敵の本部、もしくは捕虜のいる場所に向かっている。
あらゆる施設にロックがかかっているということは部屋にいた住人はそのまま監禁、職員は下手なことをされないように管理のしやすい部屋に固められているはず。
もっともここまでの規模の相手でなおかつ目的が人攫いだった場合すでに敵艦に攫われてしまった人もいると言うことだった。
計画性の高い相手の場合狙うのは妊婦、次に子供。もし突発的なものなら根こそぎも有り得る、らしい。
……胸糞悪くなるが、転生前の世界でいわゆるオタクだった俺もなんとなくだが理解できる。妊婦は孕むことの出来る雌の証であり腹の中には次の資金となる赤ん坊が入っている。
もし女性を売るとしても赤ん坊を産ませた後に売れば手元には次の資金源が残る。まさに一石二鳥だろう。子供もそうだ。弱い個体は扱いやすい。
あぁ嫌だ。こんなことを考えついてしまった自分の思考に反吐が出る。一気に頭が痛くなってきた。
元の世界ではラノベ何かの中にしかなかった[ぼくわたしのかんがえたさいきょうのやみせってい]みたいな考えがここでは普通に有り得ることなのだ。
そしていまの俺はさしずめ対抗虚しく捕まってしまい、今から収容されようとしている哀れな奴隷役だった。
そしてアーベントは俺を捕まえた男役。
捕虜の居場所に目処が立っているらしきアーベントに大人しくしおらしくして着いて歩く。
一応目的地を目指しつつ歩いていると、向かいからアーベントと同じような顔の隠れる装備をした男がやってきた。
「おつかれさん。そいつはどうしたんだ?」
「ああ。これは持ち場の近くで見つけたんだ。今から届けるところだ」
「そうかい」
「ところででどのくらい集まったか分かるか?場所は足りるか?」
「あ?大丈夫じゃねーの?2船団いるんだ、足りないってことはねーと思うがね」
「そうかならよかった。……それなら、そっちはどうだった?こちらは退屈でな」
「俺ん所ぉ?同じくらいじゃねぇの?地球人は怯えて扱いやすいしな。
あーでも、あれがあったか。なんでも俺たちに散々煮え湯を飲ませてきたあの化け物がここにいるらしいぜ。もっとも、まだ見つかってないらしいけど」
「それは……楽しくなりそうだな。情報ありがとう」
「おう、お前も頑張れよ」
今の心中を10文字以内でどうぞ。
ピンポーン!はいっキサラくん早かった。
スゥーーーー(深呼吸)
はぁ??????!
いやまったく何が起きたのかわからん。
敵と遭遇して?アーベントがほがらかに談笑を始めて?さらっと情報を抜いて?え??
その話術はどうしたの??知らないよ。
俺はもうアーベントが分からねぇよ。
童貞で口下手のお前はどこに消えたの?戦闘も侵入も出来るとかカッコイイとか、そんなギャップ萌えはいらねぇんだよなぁ!!
クール、クールに行こうぜキサラちゃん。今は大事な潜入任務の途中だぜ。
そう、立っている敵の数も多くなってきていよいよ人質の収容場所も近いようだ。
俺も少し緊張して動きがぎこちなくなってるがそこはあれだ、怯えてる演技ってやつで見逃してくれ。
ん?一際厳重そうに左右を守られてる扉が一つ、アーベントにも目配せされた。あれが目的地ね。
「止まれ、要件を言え」
「持ち場の近くにこいつがいたから連れてきた」
「……分かった。さっさと入れて持ち場に帰れ」
呆気ないほどあっさり通してくれたな。ちょっとセキュリティガバじゃない?大丈夫?
もしかしたら罠だったりするんじゃないかと怖々扉をくぐるとそこは、結構広い空間だった。
シャンデリアや精密なさ行くの施された飾り細工が施された壁。内装はちっちゃいパーティーなら出来そうなものだ。多分大人数入れるって設計的には間違ってはいないけど、人質を入れる檻として使うのは用途的に間違ってるよな。
こんなことに使うためにあるんじゃないのに何も出来ないのは悔しい。
「とりあえず、ここにいてくれ」
アーベントが小声で耳打ちする。うん、分かってる。
「アーベントも……その、がんばって、ね?」
「……ああ」
周りのヤツらに勘づかれないよう小さな声で応援して、余計なことは言わずにその背中を見送る。
そうしてアーベントが出ていって人質だけになった部屋で、1人でただ突っ立っていた。
ふと視線を下にして手のひらを見る。僅かに震えが走るその手をぎゅっと握りしめて胸の前で祈るように組んだ。きっと大丈夫。だってアーベントはあの、戦場の悪魔って呼ばれてるんだから。
……あいつが安心して戦えるように、少しでも役に立たなきゃいけない。
言われたことはちゃんとやる。それって人として当然の事だよな。
(擬似的に)捕まってしまったとかTS主人公可愛いよなー!!
アーベントは不思議と敵方の装備が似合う王道系主人公にはなれない人です。どっちかというとダークヒーロー系。これから暗い過去を捏造していきます
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仕様書呼んだだけでガン○ムに乗るより簡単な作業
嘘だろバーニィ!!前回の投稿が2ヶ月前なんて嘘だって言ってくれよ!
作中の工作はマジで何も知らない状態で書いたので間違ってても優しく見守っといてください
そっと壁際によって、薄暗い室内を見渡す。
人質はみんな反対側の壁の方に集まっているようだ。少し数えにくいけど、だいたい50人前後は居るかな。この施設の規模としては少ない気がするんだけど、もしかしたら他の部屋にも集められてたりする?
もしそうだったら厄介だ……ま、そんなこと考えてもしゃあないか。
さてさて、雑にだが人質の人数把握も済ませたし次は脱出のための小細工を始めようか。
扉は1箇所だけ?いやいやこんなことで脱出経路が1つだけなわけないでしょ。
とりあえず適当に近くの人に聞こうか。
「ちょっとそこのお兄さん、この部屋に詳しいかな?」
「へっ?!」
うん驚いてる。いきなり話しかけられたらテンパるその気持ちわかるよ。だけど今は目的が1番だから落ち着くまで待ってやれないんだ、ごめんな。
「この部屋、出入口が1箇所だけじゃないですよね。どこかしら閉じ込められたりした時ように、薄い壁の場所とかありますよね?それか電気配線のいちだけでも十分です」
え、あ、と口ごもっている職員のお兄さんに務めて優しく話しかける。お願いだからせめて電気配線の位置くらいは知っててくれ〜!
内心焦りまくる俺に天は手を差し伸べてくれましたよやったね。お隣のお姉さんがまさかのそっち方面担当で配置図にも詳しかったのです。この勝負勝ったな。
お姉さんに教えてもらった場所をえいっ!とナイフで抉る。
おおっ、このナイフ意外と優秀だ。壁紙を剥がして1番大変な作業の硬い部分もお兄さんの力を借りて取り除いたら、断熱材までは楽。あとは配線を傷つけないように慎重に剥がして、見つけた。
この部屋の近くに通ってる配線はデカい。それを遠慮なくぶちんっとナイフで両断する。もともと部屋は暗かったしへーきへーき。
とばっちりで個室のドアが開かなくなるかもしれないけど別設備である水道は生きてるから水は出る。だから最悪すぐに死にはしない。
これでこの施設の電気で動く設備の大部分が使えなくなった。あとはアーベントの活躍次第で、俺に出来ることはもうない。
ん、なんだか寒いなぁ。空調までいかれちゃったのかな。大丈夫これは寒いから震えてるだけなんだから。
……ちょっとすみませんね。申し訳ないけど一塊になっている職員さんたちの中に紛れさせてもらう。だって俺が犯人だってバレたら絶対ろくな目に遭わないでしょ。
バンッ!!ガンッガンッガンッ!
「んびゃっ!」
空間が揺れているのかと思えるくらいの音と衝撃がやってきて部屋の中にこだまする。
シャンデリアがグラグラと揺れている様子が不安を煽る。音は外から聞こえている用で時折怒号も聞こえてくる。
これはきっとアーベントが暴れている音だろう。怯えて縮こまりさらに密着していく職員さんたちにもみくちゃにされながら、前の方に波をかき分けるように出ようとする。どうせ1番に扉を開けるのはアーベントだろうし、1番に労ってやることもやぶさかではない。
「そこっ!君みたいな小さい子が前に出たら危ないだろう!」
えっ、ちょっ、まって。
なぜだかこんな時に親切心を発揮した優しい人が俺を庇うように背後に押し込もうとしてくる。周りの人たちも合わせて俺を引き留めようとするからちっとも前に進まない。
ちょっと、変なとこ触るなよっ!絶対わかっててやってる奴この中にいるよ!女の子になってそういう視線には敏感になったんだからな俺!
あー!アーベントーここに変態がいまーす!早く来て助けてくれー!
こんな時にも変態行為に勤しむバカの手を力いっぱい抓る。痛がる素振りを見せた奴の足を事故を装って思いっきり踏み抜いてやれば露骨に痛がっているのが声だけで分かった。態とらしいほどわざとらしく、しょんぼりして謝ってやればそれで許してくれるんだからチョロいな。
とりあえず人の塊からは抜け出し反対方向の隅に避難した。善意の塊ってのは優しいがその分傍にいるだけで厄介だったりもする。
そうこうしているうちに戦闘音はより激しさを増していく。
ドンッ!と壁に重いものが激突する音や銃を発砲する音、どう表せばいいのか分からない生き物の叫び声。いまもぐちゃりと何かが潰れる音がした。
部屋の中にいるみんなが息を潜めている中で、ここ1番の衝撃を受けて部屋が揺れた。天井からパラパラと埃が降ってきた。
一際強い衝撃に「ひぃっ……」と、どこからかか細い悲鳴が聞こえる。その恐怖が伝染するように、か細い悲鳴と涙声がそこかしこから上がり始めた。
それから、恐れざわつき出す職員たちとは違い、彼女は外の様子を伺っていた。
いつの間にか外の戦闘音は聞こえなくなり、次いで扉が歪な音を立てて開かれる。無理やり開かれた扉の隙間から照明の光が漏れだし、人ひとりが通れるほどの光量ともなれば外の硝煙と血鉄の匂いも漂ってくる。
闇に慣れた目に光が刺さる。僅かに細めた目が男の影を捉えた。
来てくれた。歓喜に震える胸に手を重ねて抑え込む。至って冷静に行こうと決めたばかりなのだ。ここではしゃいでしまったら三日坊主所ではない。
ふぅーーと深く息を吐く。
一拍あけて、よしっと顔を上げて影の持ち主を見る。
「ああ、そこにいたんですねキサラさん」
「………え?」
影は、待っていたあいつじゃなかった。
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終わりよければすべてよしってね
第一部[完]!!!!
扉をこじ開けて入ってきたのはアーベントじゃなかった。
室内は暗いし背後の光でよりその男の顔はよく見えない。なんだか知らないけど俺の名前を呼んだ。ここには今日来たばかりだから知り合いなんて全然いないのに……
なんて事を頭をぐるぐる回しながら考えていたら、答えが呆気なく向こうからやってきた。
「あれ、会ったばかりなのに忘れちゃったんですか?私です、フィーですよ」
「え、……あっ、フィーと、リフさん!」
男の後ろからひょっこり現れたのは今日知り合ったフィーだった。
ということはこの男はリフか。
ここに来るまでに色々ありすぎてすっかり忘れていたが、そういえばリフもアーベントと同じ軍に所属していたんだったか。なら封鎖された部屋からの脱出も、見つからないように変装することも簡単だろう。
それにしても今日初めて知り合った相手が前見たのとは全く違う身なりになられると、困ってしまう。それで誰か当ててなんて無茶言わないで欲しい。
言ってしまえば情けないが俺は暗記はそこそこ苦手なんだ。
いや、本気出せば覚えられるけどね?勉強も得意だったし。ただし対人は一瞬でへなちょこに成り下がる。営業や会社の人、家族以外とまともに話したことがないからそういったスキルは磨かれなかったのだ。……予想以上にダメじゃないか?
ま、まぁその分コミュ力に振ったからな。初対面でこうして覚えて貰えるくらいには人間ができてるからいいんだよ。べ、べつに負け惜しみじゃないから!
「無事でよかった!アーベントとは会いましたか?怪我とかしてないかな?」
「はい、そちらこそよくご無事で。アーベントさんも怪我ひとつなく、今頃は元気に敵を殲滅中でしょう。おひとりですしあと五分ほどで終わると思います」
そっかアーベントは無事なのか。……よかった。怪我が無いなら心配いらな、…せんめつちゅう?……あと5分?
「…え、っと、あと5分で終わるの?」
「ええ、本人が言っていましたので。正確にはあと2分28秒でしょうか」
今どき珍しいアンティークの時計を取り出したフィーは生真面目に時を刻む秒針を見つめている。俺もそれを覗き込んで一緒に数えた。3、2、1、…………─────
「わっ!」
時間ぴったりに大きく部屋が揺れた。遠くからドォン!と何かが爆発する音に続いて崩れる音もする。これが終わりの合図なのだろうか?
「さ、行きましょうキサラさんっ!」
「へ、どこに?」
「アーベントさんのとこですよ!よく頑張ったって褒めてあげましょう!」
「う、うん」
道中をリフに警護されながらフィーに手を引かれ、アーベントのもとに向かった。
至る所に戦闘のあとと敵の下っ端が転がっているのを見ると、本当に全部アーベントがやったのか不思議な気持ちになる。
だってそれくらい数が多かったんだ。
「もうすぐですよ、もうすぐ合流地点に到着します」
フィーは楽しみですね、とまるでここで戦闘があったことなんて感じさせない口調で話す。こういう事態に慣れているのかと聞けば、フィーはなんてことない顔で頷いた。もともと生まれた土地の治安があまりよろしくない場所だったらしい。
「前に以前からお付き合いしていたと言いましたよね。リフとは幼馴染だったんです。そこでずっと守ってもらっていてですね。喧嘩とかも日常茶飯事でしたので巻き込まれるのにも、巻き込むのにも慣れてしまいました」
なるほどそれならこれほどまでの肝の座り方にも納得だ。俺の生まれた場所はとても治安の良い場所だったから、血が流れる所なんて事故かテレビの中でしか見たことがなかった。どこか浮いているような気持ちの俺が、アーベントをみてどんな反応をするのか自分でも分からなくて、少し怖い。
「大丈夫かな……」
「大丈夫です!アーベントさんの事だからきっと傷一つないと思いますよ」
フィーは俺の言葉をいい方に解釈して励ましてくれる。違うんだ。俺が心配しているのはアーベントを怖がってしまわないか、というところなんだ。
よくマンガやアニメの中には助けてくれた恩人を化け物などと罵るモブがいるが、俺はそんな人間になりたくはない。「あ、アーベントさん」「遅い」「ごめんなさい。でも、わざわざキサラさんを迎えに来るなんてよっぽど好きなんですねー」「やだなぁ照れないでくださいよ」
落ち着いて、落ち着いて……深呼吸して会う覚悟を決めろ。
「キサラ」
「ピョエッ」
あ、あ、アーベントぉっ!いつの間にっ!いきなり来ないでよ、こっちは心臓が口から出そうになったんだから!
変な声が出て飛び上がる俺はさぞかし気持ち悪いだろうな。なんなもうやだなぁ。
ぐずついた思考のまま、いつの間にかあと一歩で手が届く距離にいるアーベントを俯きがちに見る。
「無事か」
「ぅ、はい。アーベントは……それ」
「傷はない」
全身血まみれでなんなら滴ってもいるアーベントだが、傷はないということは全て返り血なのだろう。うぅ、血の匂いってキツイのな。
とりあえず本当に傷がないのか、もっと近くて確認しようと距離を詰めるために1歩踏み出すと、何故かアーベントも1歩下がった。
俺が1歩2歩と近づくとその分下がるアーベント。どうやら俺に近寄って欲しくないみたいだ。
「なんで??」
「その、血がついてしまうだろう」
そりゃまあ俺の今の装備は真っ白なワンピースですけどね?今の今まで頑張ってた人を、血まみれだからって拒絶するほど人間できてない訳では無いんですが?
なるほど、アーベントがそのつもりなら俺もそれ相応の態度で行かせてもらいますよ。
「とりゃーー!!」
俺は助走もそこそこにアーベントに飛びかかった。さぁ!こんなか弱い女の子が地面に激突してもいいんだったら避けるがいいさ!
だがアーベント!お前には無理だろうよ、諦めて俺を受け止めろ!
アーベントは俺の思惑通りめちゃくちゃ安定感のある腕で抱きとめてくれた。
すっごい……元同じ男として悔しくならないくらい、こんな安心できる腕は初めてだった。
ガッチリと筋肉の着いた硬い腕だが俺を抱きとめる力強さが半端ではない。
揺らがない体幹が、いくら体重をかけても落とされないと解るから、思いっきり身を任せてしまえる。
その上不器用ながらも女の子の大事なとこには触らないように配慮するその精神がもう完璧。
「んふふ、よく頑張りました。お疲れ様、アーベント」
美少女の抱擁に、頭なでなでも追加してやろう。今日はとにかくアーベントを褒めて褒めて褒めてやろうな。本当に、ありがとう……アーベント。
こうして、俺とアーベントの怒涛の1日は終わりを迎えたのだった。
ちゃんちゃん。
思いつきで書き始めた本作でしたが、想像以上に長い小説を書くのって大変なんですね。
ぜんぜんプロットの通りに書けないし、途中で設定忘れてトチって書き直したりするし、これは1度キリのいいところで終わらせてもっと練習してからだな、と思いまして。
突然で申し訳ないのですが、今回で完結とさせていただきます。
これからは短編を中心に書いていこうと思ってるので、もし見かけたら覗いてやってください。
今までお付き合い頂き、誠に感謝しております。
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