エチエチブルーファンタジー(嘘) (風鈴花山)
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エチッ!

「カトルってさ──エッチだよね」

「は?」

 

 こいつは何を言っているんだ?

 カトルがまず思ったのはそれだった。

 

「いやさ、カトルの羽織っているマントからたまに見える背中が綺麗でさ、なんていうかその、良い具合にチラリズムを刺激してエロいんだよね」

「ついに頭がおかしくなりましたか?一回頭を打って死んでみたらどうです?次の人生でまともな頭に生まれ変わることを祈っていますよ」

「なんか当たり強くない?」

 

 しまいには解説まで始める青年をみてカトルはついて行く人を間違えたのかという考えがよぎった。

 

 目の前の青年はとある騎空団の団長を務めており、カトルはその騎空団に所属はしていないが団長である青年と少し前に一悶着ありその結果、騎空団のお手伝いという名目で居座ることとなった。

 自身の所属する騎空団の頭目には何も言っていないが、まあ大丈夫だろう。

 

 そんなこんなで共に旅を続けていたわけだが先ほどの青年の言葉だ。ついに頭がおかしくなったか?(2回目)

 

「……悪い、知り合いの騎空団がまた女の子を仲間にしたっていう話を人づて聞いたから気がおかしくなってた」

「醜い嫉妬ですね」

 

 顔を伏せ謝罪する青年を一蹴するカトル。なおも顔を上げない青年にカトルがため息をつきながら声をかける。

 

「それで、何があったのですか」

「そうなんだよ聞いてくれよ!」

 

 傷心していた青年だがカトルの言葉を聞き、待ってましたと言わんばかりの変わり身をみせる青年。そのあまりにも速い変わり身を見て少し苛つくが、適当に話を聞いてどこかへ行ったほうが良いと考え話を聞く。

 

「さっきさ、かわいい女の子を見つけたから騎空団に誘おうと声をかけたんだけどさ、おれの顔を見るなり一目散に逃げたんだよ!酷いと思わないか!?おれの顔そんなに酷いか?結構整ってる方だと思ってたんだけど…」

「耳元で大声を出さないでくださいうるさいです。どうせ鼻息を荒くしながら話しかけたのでしょう?そもそもあなた、全空の女性の間で指名手配されていることを知らないんですか?」

「え、何それ知らない」

 

 カトルの言った事実に青年は呆然とした様子でそんな物は知らないと返す。

 

「何でだ?おれはこんなにも女の子が好きだというのに」

「あなたの好みはともかくこの騎空団のあり方に問題があるのでは?」

 

 そう、カトルの言ったように青年が全空の女性から指名手配されているのは青年が率いる騎空団そのものに問題がある。

 

『エチエチファンタジー団』

 

 それが青年の率いる騎空団の名前だ。

 騎空団の立ち上げ理由は「かわいい女の子とエッチがしたいから」だそうだ。名前に関しては分かりやすい方が良い、という理由でこのような名前になったらしい。

 

 青年の素行に特別問題があるわけではないが、どこからか騎空団の立ち上げ理由が漏れてそれが噂になり、人から人へ伝わる内に噂に尾ひれがついていき、最終的に全空の女性の間で指名手配されるまでとなってしまった。

 青年が100%悪いわけでは無いがそもそも自分の願望を曝け出さなければこのような事態にはなっていなかったからやっぱり青年が悪い。

 

 現状を思い返しカトルは頭を痛めるが、青年に再び問いかける。

 

「心当たりは?」

「???」

「ああそうですか、どうやらあなたとはここまでのようです。今までお世話になりました」

「ごめんなさいぃ!ちょっとした出来心だったんです!本音を包み隠さないおれかっこいいとか思ったんです!すいませんでしたぁ!」

「やっぱり頭おかしいだろテメェ」

 

 青年の言った言葉に呆れたカトルはついて行く人を間違えたと思った。

 

 

 

 

 とある島のとあるところで一人の女性が民間人に聞き込みを行っていた。

 

「この辺りで『エチエチファンタジー団』の団長を見かけたという通報がありましたがあなたは見かけていませんか?」

「あ、はい!さっきまで『エチエチファンタジー団』の団長がこの通りを歩いていましたよ!」

 

 聞き込みを行っているのは栗色の髪に青眼の女性だ。フリル袖のトップスに黒いビスチェタイプのインナーとショートパンツにニーハイソックス、赤茶色の革靴を履いている。

 

 秩序の騎空団、第四騎空挺団船長、リーシャ。

 

 それが彼女の持つ肩書きと名前だ。

 そんな彼女がこの島にいるのは、ある任務が終わり本拠地のあるアマルティア島へ帰還する最中に、この島から通報があり、調査するため立ち寄ったわけである。

 

「あの人、かわいい女の子を見かけると鼻息を荒くして自分の方に親指を向けて『どう?』って言って回ってたんですよ!」

「なるほど、そうでしたか。男はその後何処に向かったかわかりますか?」

「ああそれならあっちの方に」

 

 リーシャの質問に答えていた女性はある方向へと指を向ける。

 

「わかりました。ご協力感謝します」

 

 調査に協力してくれた女性に礼を言いその場を後にするリーシャ。

 その足取りは速く、先ほどの女性から教えてもらった場所、船着場へと向かう。

 

(この島には船着場が二つある。一つは私達の騎空挺を止めてある西側。もう一つは例の騎空団が船を止めてあると思われる東側。西側の船着場から東側の船着場までは距離がある。となると船に残してある団員を連れていくのは得策では無い。時間がかかりすぎる。彼らは二つの部隊に分けて、一つはあの男に声をかけられた女性への聞き込みとケアを頼みましょう。もう一つはそのまま船に乗って東側まで回ってもらいましょう)

 

 聞き込みを行った情報をまとめ、作戦を練るリーシャ。年若い彼女だがその作戦を練る姿は船団長を預かる立場としてふさわしいものだろう。

 

(私と共に民間人へ聞き込みを行っている団員を集め、すぐに東側の船着場へ向かう。そして騎空挺で向かわせた部隊と挟み撃ちにする。この島で必ずあの男を捕まえる)

 

 決意を固めるリーシャの脳裏には現在捜している男の姿が浮かんでいる。

 

 悪逆非道、女の敵である『エチエチファンタジー団』団長。

 甘いマスクを利用して女性を籠絡し、陵辱の限りを尽くす。らしい。

 

 らしいというのはリーシャ自身、人から聞いた話でしか知らないからだ。しかし彼については様々な噂がある。

 

 曰く、変態の化身。曰く、拉致監禁など日常茶飯事。曰く、女を騙すことにおいては神算鬼謀。曰く、星晶獣すら彼を恐れている。曰く、変態堕天使と闇の取引を交わしている……。

 

 これはまだ一部に過ぎないが少し挙げただけでも彼の異常性が分かる。噂の真偽は分からないが、火のない所に煙は立たない。実際に噂に近いことはやっているはずだとリーシャは考えている。

 

 それにリーシャが彼に対して明確に敵意を向けているのには理由がある。

 

 リーシャの尊敬する人物。秩序の騎空団、第四騎空挺“元”船団長。そして現在はリーシャを支える船団長補佐であるモニカの一言が原因である。

 

『その、だな…酒場で共に酒を飲んでいた男性に……胸を、もまれた』

 

 リーシャ、怒髪衝天。

 

 話を聞くと、その日モニカは多くの仕事をこなしいつもより疲れていたそうだ。これは酒でも飲まないとやってられないなぁ!?と考えたモニカは仕事を終え、酒場に向かった。しかし、向かった酒場は既に満席で相席でしか飲めないという。

いつもならここで諦めて帰っていたがこの日は違った。モニカは相席でもいいと言い、店員に席を案内された。

 

案内された席では既に青年が飲んでおり、酔いつぶれていた。その様子を傍目にモニカも酒を飲み始めるが、いつの間にか青年は体を起こし愚痴を言い始めた。女の子に振られただの、自分には魅力が無いだの、自分は一生独り身だの、少年は泣きながらそのようなことを口にしていた。

 

モニカはその様子を見て不憫に思ったのか、青年を励ました。

自分も同じだ、周りが結婚していくなか相手すらいない、辛い、など言って少年に一人ではないと励ました。

 

酒は進み、それでも口は動きを止めず、いつの間にか愚痴から談笑へと変わりそして──胸をもまれていた。

 

我に返り急いで席を立ち、金を払い店を出て、先ほどの言葉だ。

 

顔を赤らめながら言うモニカをリーシャは思わずかわいいと思うが、モニカをそんなふうにした男に怒りを覚える。モニカは酒と雰囲気に流された自分が悪いと言っていたが実際のところどうなのかはリーシャには分からない。

モニカを騙そうとした悪い男であれば公然猥褻罪として捕まえるが、もしも良い男であれば──。

 

男について調査を進めるとその正体は世間を騒がせている『エチエチファンタジー団』の団長だと言うことが分かった。

 

それからは男の目撃情報が入ると自らその地へ行き、その男を捕まえようと行動していた。

全ては尊敬するモニカにセクハラした罪を償わせるため。

空の秩序を守るため。

リーシャは男を必ず捕まえると誓った。

 

しかし、男を見つけたところで確実に捕まえられる保証がないというのも事実である。実際、男は騎空団立ち上げから現在に至るまで誰にも捕まっていないのである。それが力によるものか悪運が強いのかは不明だが並以上の力は有しているだろう。

それに、団員も少数ながらもそれぞれが一癖も二癖もあり、突出した能力の持ち主という噂もある。

 

「厄介ですね……」

 

リーシャは先のことを不安がる言葉を吐くが、その顔は先を見据えた歴戦の騎空士の表情であった。

 

 

 

 

 島の東側の船着場。そこには一隻の騎空挺と青年とカトルがいた。

そこで青年とカトルは自分たちが搭乗している騎空挺に物資を搬入していた。

 

「くっそー、なんでこんな雑用を団長であるおれがやらなきゃいけねーんだよ。普通は団員が率先して『団長、ぼくたちに任せてください!』って言いに来る場面だろ」

「人望がないんですね(笑)」

 

 カトルの嘲笑を聞き、最後の物資を運び終わった青年の体が止まる。

 

「ぷっつーん。あーあ、言っちゃいけねえこと言っちまったなぁ。実はこの間からおまえの性格を矯正してやろうかと思ってたとこなんだよ」

「奇遇ですね。ぼくもあなたの残念な頭を治してあげたいと思ってたんですよ」

「……」

「……」

 

 一瞬の静寂。そしてお互いに自分の得物を抜き──。

 

「くたばれカトルぅ!!」

「このド低脳がっ!!」

 

 青年は一本の剣を。カトルは一対の短剣を構え衝突する。

 その瞬間。

 

「そこまでです!あなた方は既に包囲されています!おとなしく投降してください!」

 

 突如現れた少女の言葉に二人は動きを止め、声のした方へ視線を向ける。

 そこには一人の少女と統一された衣服を身にまとった者達が十数人で青年達を囲うようにして睨み付けていた。

 

「と、投降?おれたち悪い事したっけ」

「ぼくが先ほど言った事をもう忘れたんですか?あとおれたちじゃないです。一緒にしないでください」

「は!?あれ冗談じゃ無かったのかよ!いや、本当だったとしてもまさか捕まるまでなんて…」

「こんな馬鹿なことで捕まるなんてぼくも思ってませんでしたよ。しかしあの服を見てください」

「服…?」

「あの制服は秩序の騎空団です。となると少し厄介です。このまま逃げても追跡が来るでしょう。それに彼女は”あなた方は包囲されている”、と言っていました。まだ見えませんがおそらく、騎空挺がやって来て島からの脱出も困難になるでしょう」

「となるとさっさとなんとかしてこの場は見逃してもらうように説得するしか無いのか…」

 

 先ほどまで剣呑とした雰囲気だった二人はすぐにこの場をどう乗り切るか考えることに切り替えた。

 

 その様子を見て投降するように言った少女、リーシャは静かに歯噛みする。

 

(戦闘態勢からすぐに状況把握、そしてこの数の差を見るやこの場をどうしのぐかに切り替える…やはり厄介ですね。それに()()()()()()()()()()()()

 

 リーシャは直前のことを思い出す。

 

 リーシャ達、秩序の騎空団は『エチエチファンタジー団』の団長を拘束するためリーシャの指揮の下、東の船着場へと向かった。

 目標の騎空団はすぐに見つかった。まずは様子を伺うため物陰に隠れ、身を潜めた。リーシャの視線の先には二人の男がおり、一人はヒューマン、もう一人はエルーンの青年だった。

 事前情報からヒューマンの青年が件の団長と言うことが分かった。すぐさま二人を囲おうと団員達に指示を出す。

 

(どうやら騎空挺に物資を運んでいるようですね。こちらとしては好都合です。今のうちに包囲網を展開しすぐに突撃──いや、搬入しているのならそれを利用する。彼らが最も気を弛めるのは物資を運び終わったその瞬間!その隙に突入し一気に取り押さえる)

 

 リーシャは冷静にそう判断し、彼らが物資を運び終わるのを静かに待つ。しばらくの間、息を潜めヒューマンの青年が最後の物資を運び終えた。

 

──今!

 

 リーシャ達は物陰から飛び出そうとするがその動きは嫌でも止められた。

 

 ヒューマンの青年が突如、()()()()()()()()()()

 

(ばれた!?)

 

 続けてエルーンの青年も殺気を放ち始め二人は得物を抜く。

 まずい、と思ったリーシャはすぐに二人の前へ飛び出した。

 

「そこまでです!あなた方は既に包囲されています!おとなしく投降してください!」

 

 そして、今に至る。

 二人の動きに注意しながらリーシャは策を考える。

 

(数はこちらの方が上。だからおとなしく投降すればこちらも武器を向けない。そういう風に脅してみましたが、どうやらおとなしく投降はしなくても自分から進んで戦いはしないみたいですね。ということは今の殺気はカマをかけられた。自分たちが追われる身だと知っているからいるかもしれない追跡者に向かって殺気を放った。私達はまんまとそれに引っかかったわけですか……)

 

 リーシャはそう判断するとエルーンの男を注視する。

 

(団員が尖っているとは聞いていましたが、あの少年が羽織っているマントはまさか十天衆?十天衆が彼の騎空団に手を貸しているということですか?でもそれが本当なら彼の騎空団がこれまで誰にも捕まらなかったというのもうなずける)

 

「あなたが『エチエチファンタジー団』団長、そしてエルーンの方は十天衆のカトルで間違いありませんね?」

「あ、はい。そうですけど…なに、カトルって十天衆だったの?」

「逆に今まで何だと思ってたんですか。十天衆のマントを羽織ってるじゃ無いですか」

「コスプレかなぁって。意外と可愛いとこあるじゃんと思ってた」

「……あなたとは後でお話しする必要がありますね」

 

 リーシャは二人の会話までは聞き取れなかったが本人だと、そう言ったのは確認できたため聞きたいことをいくつか質問する。

 

「団長さん。あなたについて様々な噂が飛び交っています。それについて何か言いたいことはありますか?」

「噂って……ああ、あれ?本当なわけ無いじゃん!だからここは見逃してつかぁさい!あと指名手配も取り下げてください!」

「指名手配については正式に出ている訳ではありませんので知りませんが、そうですか。噂はまったくの嘘だと、そう言うのですね?」

「ああそうだよ!だからここは穏便に」

「モニカ、と言う名前に心当たりは?」

「──あ」

 

 リーシャの口から出たモニカという名前に青年の動きが固まる。そこへカトルが驚いたように声をかける。

 

「あなた、まさか女性に手を出したんですか?」

「出したっつーか、いやあれはノーカン……でも逃げられたし……雰囲気は良かったからやっぱりノーカンに……」

 

 モニカという名前を耳にしてから明らかに動揺し始めた青年の様子にリーシャがため息をつく。

 

「やはり、噂は本当のようですね。私達はできる限り武力行使で拘束はしたくありません。ですからここはおとなしく投降してください。後で話を聞きますから」

「やだよ!これ冤罪じゃねえの!?」

「冤罪であれば謝罪します。ですからここは投降を」

 

 引く様子を見せないリーシャに青年はどうしたものかと頭を悩ませる。青年はカトルに助けを求めるように視線を向けるが、カトルは何かを考え込んでいてこちらを見ていない。

 しかしカトルは何かを思い出したかのように青年の方へ向くと、現状を一変させる事を言い放った。

 

「あなた、噂についてはあながち嘘では無いのでは?」

「え?」

「ほら、幼い女の子を騎空挺に拉致監禁しているじゃないですか。ぼくたちには一切口を利きませんが、人形とはよく話しているあの子」

「あ……」

 

 カトルの言葉に信じられないような者を見る目で青年を見るリーシャ。拳をわなわなと震わせ、そして──開戦の火ぶたを切る。

 

「全員突撃!『エチエチファンタジー団』団長とその団員、そして十天衆・カトルの身柄を拘束してください!」

 

 リーシャの号令に武器を構え、一斉に動き出す秩序の騎空団たち。青年とカトルもその様子を見てすぐに武器を構える。

 

「カトルお前何してくれてんの!?てかあの女の子だって拉致監禁に入んないでしょ!」

「あなたがどう言おうと端から見ればただの誘拐犯ですよ」

「くっそー!なんでこうなるんだよ!」

「元はと言えばあなたの所為でしょう…まあこの場は僕に任せてください。考えがあります。あなたは出航の準備を」

「え、任せても良いの?でもこの人数はさすがに……」

「考えがあると言ったでしょう。それに──十天衆の力をあまり舐めないで下さい」

「……そうか、わかった。じゃあここは頼んだぞ!」

 

 青年はカトルに背を向け騎空挺へ乗り込む。その直後にリーシャの剣がカトルに迫るがそれを一本の短剣で難なく受け止める。

 

「この人数差を一人で覆すつもりですか」

「秩序の騎空団、あなた方も十天衆の力を見くびりすぎです」

 

 カトルはそう言うとリーシャをはじき飛ばし、そのまま手に持つ一対の短剣を振るう。その斬撃が秩序の騎空団を襲い、後退させる。

 

「くっ!」

 

 リーシャもカトルから放たれた斬撃を受けるが自身が持つ剣でなんとか受け流す。

 カトルを睨み付け再び斬りかかろうとするが──。

 

「なっ──」

 

 斬りかかろうとしたリーシャが突如膝から崩れ落ち、地面に膝をつく。それは先ほどの斬撃を受けた他の団員も同じようで、突然の変化に団員達に隙が生じる。

 

(これは、“グラビティ”!)

「隙だらけですよ」

 

 カトルは先ほどの斬撃を受けていない、まだ立っている団員を狙い、短剣の柄で殴り沈めていく。

 

「ぐはっ!」

「っ!立っている者は先ほどの攻撃を受けた者の援護をお願いします!私は彼を抑えます!」

 

 リーシャは団員達に指示を出して、力を振り絞り再びカトルに斬りかかる。しかしその動きは先ほどよりも遅く、カトルに届く前に短剣に防がれた。

 

「どうしました?動きが鈍いですよ」

「くっ、この……!」

 

 リーシャは剣を振るうがその悉くが短剣によって阻まれる。

 

「先ほどあなたが質問していたのでこちらからも少し良いですか?」

「っ、なんですか」

 

 このままでは埒があかないと思ったのかカトルの話を聞くリーシャ。その返答を聞きカトルはリーシャにしか聞こえないように小さな声で質問する。

 

「どうしてあの人を捕らえようとするんですか?」

「なにを言いたいのですか」

「秩序の騎空団は噂だけで、罪のない者を捕らえるのですか?」

「それは……」

 

 カトルの言葉に少し覇気が小さくなるリーシャ。その姿を見てカトルは内心でほくそ笑む。

 

(かかりましたね。ですがまだもう一押し)

 

「でも、あなたが子供を拉致監禁しているって言っていたじゃ無いですか!」

「あれは言葉の綾ですよ。それに──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「なっ──」

 

 カトルの言葉に息をのむリーシャ。カトルはそれを好機とみたのか続けて言う。

 

「そもそもおかしいを思わなかったのですか?あの人が噂の火消しを行わないことに。噂の中には誹謗中傷のものまで入っています。普通なら噂の元を特定するなりあなた方秩序の騎空団に相談するでしょう」

「っ、それは、そうですけど……」

 

 リーシャにも心当たりはあるのか言葉に詰まる。

 

「裏があるんですよ。我々十天衆が動くほどの()()()

 

(全くの嘘ですけどね)

 

 堂々と嘘をつくか取る。しかしリーシャは既にカトルに惑わされ、その言葉を信じてしまっている。

 

 なぜカトルがこんなことをしているのかというと秩序の騎空団にはあの男がいるからだ。

 

秩序の騎空団団長にして七曜の騎士が一人、青の騎士、ヴァルフリート。

 

(あの男がこんなことで動くとは思えませんが、念のために手を打っておく必要がある。こちらには何か大きな理由があり、現状を甘んじていると思わせれば良い。そうすることで秩序の騎空団も迂闊に動くことは無くなるでしょう)

 

(確かに、いろいろ不審に思うところはあった。異様なほどの噂、そして普通ならばつけないであろう常軌を逸した騎空団名。何よりその団長がモニカさんに近づいたという事実。何か狙いがあった?モニカさんも彼については詮索するなと言っていた。モニカさんのあの発言は何かの暗号だった?つまり、何か裏がある?)

 

 全くそんなことは無いのだが、カトルの思惑通り無い裏を読むリーシャ。狙い通りリーシャを思考誘導することが出来たことを悟ったカトルはリーシャに提案する。

 

「ここはお互いに引きませんか?こちらはあまり目立ちたくない。あなた方も余計な騒動は起こしたくない。利害が一致していると思いますが」

 

 カトルの提案にリーシャは逡巡する。当たりを見渡すと団員達は半数以上が倒れており、リーシャを含め立っている者達も限界に近かった。

 一瞬で人数差を覆したという事実。このまま戦闘を続けたところで勝ち目は無く、自分たちの騎空挺も間に合わないと判断する。

 

 リーシャは己にふがいなさ、そしてモニカの意図を読み取れなかった失態に悔しそうにしながらも、カトルの提案を飲もうとする。

 

「わかりました。ここは我々も引きましょう。しかしあなたの言葉を全て信じた訳では──」

 

 そこまで言って、その言葉は騎空挺から聞こえてくる会話によって遮られた。

 

「ばっかお前が出たらややこしくなるって!」

「止めないでくれエロイドス。俺のパトスを信じろ」

「信じられるかっての!良いから早く、あっ!」

 

 青年と誰かもう一人、男性の会話。騎空挺から出ようとする男を青年は止めようとするが、男は騎空挺から飛び出し、カトルとリーシャの間に割って入る。

 

(この方は一体…?)

「──新しい世界を作っていたんだ」

「なにを…」

「この世界は残酷だ。俺達を追い立て、切り裂き、嬲り続ける」

 

 突如現れたギターを持った男、“アオイドス”の登場にカトルは面倒な奴が来たと顔をゆがめ、リーシャはアオイドスの言葉を訝しげに聞く。

 

「でも、俺は最高の気分さ。だってそうだろ?苦痛、絶望、孤独が糧となり……俺を何度でも舞台に立たせるんだ!」

「カトル!出航の準備は出来たからアオイドスを回収してとっとと島から出るぞ!」

「わかりました。アオイドスさん、早く騎空挺に──」

 

「俺と世界を滅ぼさないか?」

「世界を、滅ぼす……!?」

 

 アオイドスの発した言葉にリーシャは顔を驚愕に染め、カトルは舌打ちをする。

 

「行きますよ」

「待ってくれ!彼女にまだヘイブンして」

「いいから来いクソ野郎!」

 

 アオイドスのこの場を離れないという意思を聞きカトルは感情を爆発させ、アオイドスの首根っこをつかみ瞬く間に騎空挺へと乗り込む。

 

「ま、待って下さい!」

「先ほどの言葉、忘れないで下さいね」

「こうなって仕方ない。またどこかの島でGIGを行う。それまでは君のヘイブンは、君が見つけるといい」

「てめえはもう黙ってろ!団長さん、船を出して下さい!」

「了解!騎空挺、フロンティア号出航!目的地は遠くのどっか!」

 

 青年のふざけたかけ声と共に騎空挺、フロンティア号が動き出す。空へ出る手段を持たないリーシャ達はその姿を眺めることが出来ず、秩序の騎空団の騎空挺が到着する頃には既に青年達の姿は見えなくなっていた。

 

「リーシャ船長、遅くなり申し訳ありません」

「いえ、こちらまで距離があったので仕方ありません。それよりも……」

 

 リーシャはギターを持った男の不可解な言葉を思い出す。

 

(新しい世界を作り、世界を壊す?どこかの島でぎぐ?を行うというのも気になります。ヘイブンというのもきっと何かの暗号でしょう)

「これよりアマルティア島へ帰還します。各自、準備をお願いします」

(表だって行動すると彼らを刺激して何か起こすかもしれない。幸いカトルさんの話は私にしか聞こえてないようですし、この件は私が秘密裏に動いた方がいいでしょう。団員達に伝えて情報が錯綜するのは望ましくないですし。あとはモニカさんにあの件についてもう一度問いただす必要がありますね)

 

 アマルティア島へ帰還するため動き始める秩序の騎空団。

 アマルティア島へ帰還し、リーシャが頭を悩ませることになるのだった。

 

 

 

 

「本当に面倒なところで出てきましたねあなたは」

「ここしばらく作曲部屋に篭もってたもんなぁ」

「それよりもエロイドス。新しい曲を作ったんだ。早速GIGに向けて練習しようじゃないか」

「おれは子の船の舵取ってるから手を離せられねえよ。見て分かれ。後、その呼び方は止めてくれ」

「そうか、ぶっつけ本番がエロイドスのポリシーだったな。わかった。共に次のGIGで観客をヘイブンさせよう」

「おい話を……行っちまった」

「で、何処に行くんです?」

「そうだなぁ。とりあえずじいさんを探すか」

「そういえばあの人と自称デザイナーの変態、何処に行ったんですか」

「じいさんは『海釣りしてくる』とだけ書かれた書き置きがあったからたぶんアウギュステだと思う。あいつは知らん」

「……僕が言うのもあれですけどよくこれで騎空団として成り立っていますね」

「そりゃおれには人望があるからな」

「まだ根に持っているんですか……」

「そういやあの時、秩序の子となんか話してなかったか?」

「誤解を解いておいただけですよ。追いかけてくることは無いでしょう」

「まじか、サンキュー。そんじゃとりあえずアウギュステに行ってじいさんを探すか」

 

 

 とある島で起こった、悪名高い『エチエチファンタジー団』と空の秩序を守る『秩序の騎空団』の騒動。それは大きな騒ぎにはならず、静かに決着を迎える。

 

 それぞれが目的の島へと向かい、その地で再び騒動を起こすのは待て別のお話。




グラブル復帰記念に。
短くするつもりが長くなってしまった。
キャラの口調がおかしかったり、設定の矛盾があれば教えて下さい。

あと、カトルはエロい。


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ぐへへ

 空を進む一隻の騎空挺、フロンティア号。

 その一室で一人の少女が、二つの人形と話していた。

 

「どぅし……」

「ほうほう……どうしたらいいかわからない。とダヌアは言っている。グレーテルはどう思う?」

「そんなもん、決ってるダロ!あいつに事情を説明して協力してもらえばいいヨ!噂と違ってお人好しみたいなんだからサ!」

「いまぃ……」

「ほうほう……いまいち信用できない。とダヌアは言っている。確かに()()()()()()()()()()()()()()()な」

「そりゃそうだけどヨ……だからっていつまでもこのままじゃ前に進めネェゼ」

 

 暗い部屋で人形に語りかけるドラフの少女、ダヌア。そしてそれに反応する人形、ヘンゼルとグレーテル。

 グレーテルの現状を憂う言葉にダヌアは自分も思うところはあるのか視線を落としてしまう。

 部屋に重苦しい空気が漂うが、そこへ突如として部屋の扉が開かれる。

 

「おーっす!!ドラフ少女、元気にしてるか!?」

「……」

「……んだよこの空気。まぁいいや。飯の時間だ、ほら行くぞ!」

 

 この騎空挺の主であり、『エチエチファンタジー団』の団長である青年。青年が部屋に入ってきたことで部屋の空気が変わるが、表情を変えないダヌア。青年はそんなことは関係ないと言わんばかりにダヌアの手首をつかんで無理矢理外へ連れ出し、目的地である食堂へと連れて行く。

 

「今日の当番はカトルだからうまいぞ!いや、おれとアオイドスが下手って訳じゃないんだけどな?あいつ妙にこういう家事が上手いからな」

「……」

「いやー、カトルがいてマジで助かったわ!おれなんて旅を始めるまで料理なんてしたこと無かったからさ!最初の頃は焦がしてばっかだったからほんと辛かったんだよ!」

「……」

「アオイドスなんかは料理しててもいつのかにかシャウトし始めて料理どころじゃ無くなるしな!いつかは嬢ちゃんの手料理も食べてみたいもんだ!ん?ん!?」

 

 一人で延々としゃべり続ける青年だがダヌアは反応を示さず、青年に引っ張られ続ける。

 そうしている内に二人は食堂に着き、中に入るとそこにはカトルとアオイドスが二人を待っていた。

 

「お、来ましたか。って……また無理矢理連れてきたんですか」

 

 食堂に青年がダヌアを引っ張って連れてきたのに気づいたのかカトルがジト目で青年を見つめる。

 

「おう。やっぱり飯はみんなで一緒に食べるのがいいからな!」

「皆で共に食す。これはバンドと同じだ。皆でパトスを合わし、GIGする。これがエロイドスのヘイブン、と言う訳か」

「あなたは何を言っているんですか……」

 

 アオイドスの言葉をカトルは意味が分からないというふうにうなだれる。

 

「騎空挺の操縦は大丈夫なんですか?」

「自動操縦にしてるからしばらくは大丈夫だ。まわりに浮遊物とか魔物はいなかったからな」

「そうですか」

 

 青年達は話しながら料理の用意してあるテーブルへ近づき、青年はダヌアを席に座らせ、自身も席に座り両手を合わせる。

 

「そんじゃ、いただきます」

 

 青年の言葉に三人が食事を始める。ダヌアも恐る恐るだが食事に手をつける。

 

「……!」

「お、おいしいか!やるなぁカトル。おれの料理じゃ、ぴくりともしなかったんだけどな」

「まぁ、僕は昔から自分で作ってましたらね」

「へー、アオイドスはどう思う」

「いいパトスだ」

「アオイドスもそう思うか!おれも思ってたんだよ!」

「なんで自然に会話が出来ているんですか……」

 

 賑やかに食べ進める青年達を傍目にダヌアも少しずつ食べる。そんなダヌアの影から二つの人形が出てきて青年達の会話に混ざる。

 

「おめぇらほんと飽きないナ!」

「ん、おまえらは確か、ヘンテルとグレーゼル」

「混ぜてんじゃねエ!俺がグレーテルでこっちガ」

「ヘンゼルだ。そろそろ覚えて欲しい」

「悪い悪い。ヘンゼルとグレーテルね。よし覚えた」

「本当カ……?」

 

 普通に会話をし出す青年と人形達に困惑するダヌア。その様子を見てヘンゼルがダヌアに語りかける。

 

「この通り彼は無害だ。名前ぐらいは言ってもいいんじゃ無いか?」

「まあまあ、そんな無理に聞き出すようなことじゃねーよ。ゆっくり、そのうち言ってくれたらそれでいいだろ」

「とかいってもう半年経っていますよね」

「うぐっ……!」

 

 カトルの鋭い突っ込みに言葉に詰まる青年。

 カトルの言った通りダヌアが青年達の騎空挺に乗ってから半年が経っている。

 

「あれからもう半年経ってんのかー、早いなあ」

「時が経つのは一瞬だ。だから俺は全空をヘイブンさせるんだ。この一瞬を忘れないように」

「もうそれを歌詞にしたらどうです?」

 

 アオイドスの物言いにカトルが呆れたように返す

 するとアオイドスは天啓を得たとばかりに目を見開き、カトルの方へ向く。

 

「良いアイデアだ。そうだ、俺のこのパトスをダイレクトに届けると言う方法もあるのか。盲点だった。そうと決れば早速作らねば!」

 

 アオイドスは一瞬でご飯を食し、そして席を立つ。

 

「ありがとう、君のおかげで新しい曲が出来そうだ。良ければ共に作らないか?」

「ええ……」

 

 アオイドスの提案にカトルは心底嫌そうな顔をする。

 

「いいじゃん、曲作るなんて滅多に出来ないから良い経験になると思うぞ」

「あなた絶対面白がってますよね……」

「そういやアオイドス、カトルも曲作るんだったら芸名はどうすんだ?」

 

 青年の言葉にアオイドスは逡巡し、そして。

 

「チイサイドス」

「は?一体何が小さいんですか?」

「ぶふっ!お似合いじゃんチイサイドス!」

「あ?」

「そうやってすぐキレるところが小さいんだよ、チ・イ・サ・イ・ド・ス」

 

 カトルをからかう話題を見つけすぐにカトルを煽り散らかす青年。思わず青年に手が出かけるカトルだったがダヌアがいるからか、怒りをすんでの所で抑えるカトル。

 

「後で覚えておいて下さいよエロイドスさん」

「楽しみにしとくわチイサイドス」

 

 アオイドスに続きカトルも手早く食事を終わらせ、食器を片付けてアオイドスと共に食堂から出て行く。

 その様子を見てダヌアは本当にこの人達は大丈夫なのだろうかとおもいながら、ちびちびと食べ進めるのであった。

 

 

 

 

「で、何か言うことは?」

「ごべんなざい……」

 

 フロンティア号の甲板ではボロボロになりながら倒れ伏す青年とその姿を冷めた目で見下ろすカトルがいた。

 カトルは青年の言葉を聞き、それで気が済んだのか拳を納め、青年を立ち上がらせる。

 

「いてて……もうちょっと手加減してくれないわけ?」

「あなたが弱すぎるんでしょう。もっと鍛え直したらどうです?」

「カトルが強すぎるんだって」

 

 軽口を叩きながら体を動かす青年。青年は軽くストレッチをして乱れた衣服を整えたところでカトルが口を開く。

 

「剣のような近接武器じゃなくて弓や銃のような遠距離武器を使ってみたらどうですか?」

「あー、それな。考えたんだけど銃を完璧に使えるわけじゃ無いからさ。だったらまだましな剣で良いかなって」

「でも魔物討伐の依頼を受けたときあなたまで前に来るとやり辛いんですよね。だからあなたには後ろで援護して欲しいんですよ。銃だったら連携の形は知ってるんで少しはお手伝いできますよ」

「ほーん、まあ考えとくわ」

 

 青年は今後のスタイルについてを頭の片隅に置いておき、操舵室へ向かう。船内に行こうとした青年をカトルが引き留める。

 

「で、アウギュステまではあとどのくらいですか」

「ああ。それなんだけどさ、少し寄りたい島があるんだよ」

「寄りたい島?」

「シェロさんから依頼を頼まれててな。まあ依頼つってもお使い程度のものなんだけど、領主に書状を届けて欲しいんだと」

「そうでしたか」

 

 そこでカトルは青年に片手を挙げながら背を向け見張り台へ上っていく。

 

「島に着くまでは見張り台にいますよ」

「おう」

 

 見張り台へ行くカトルに返事をして、青年も操舵室へと向かう。

 

 時折、アオイドスのシャウトを響かせながら騎空挺、フロンティア号は今日も青年達を乗せ、空を走る。

 

 

 

 

「──はい、確かに確認しました。届けて下さりありがとうございます」

「いえ、依頼なので当然ですよ。それでは私はこれで」

 

 青年達は目的の島へと着き、領主の屋敷へと向かった青年は預かっていた書状を領主へと渡した。

 無事、依頼を達成した青年はそのまま領主のいる部屋から出ようとするが、不意に引き留められる。

 

「ああ、すいません。少しお待ち下さい」

「はい?」

「いえ、あなたの顔をどこかで見た気が……」

「……」

 

 青年の顔を見てうーんと唸る領主を見て肝を冷やす。ふと青年は事前にカトルから言われた言葉を思い出す。

 

『あなたは様々な噂が立っており少々有名です。ですが噂がありすぎることでそれが逆にあなたを隠れさせています。様々な情報がありすぎてどれがあなたなのか分からない状態です。ですからすぐにはバレないと思いますが危険だと思ったらすぐに逃げて下さい。あなただってここでも追われたくは無いでしょう?』

 

 青年の頬を一筋の汗が流れ、心臓は鼓動を速くさせる。

 

「いえっ!今回が初対面だったかと思いますっ、それではっ!」

「ええ!?」

 

 速くこの空間から逃げ出したかった青年は領主の疑問に答え、あっという間に部屋から出て行き、屋敷を後にする。

 

「行ってしまいましたか……。依頼はしっかり果たして頂いたみたいですしシェロカルテ殿の紹介だから気にする必要は無いか……?」

 

 領主は自分の疑問を捨てようとするが、そこで一つ聞いていなかったことを思い出す。

 

「そういえば騎空団名を聞いていませんでしたね……」

 

 

 

 

 屋敷から飛び出した青年は外で待機していたカトルとダヌアの二人と合流し、そのまま街へと繰り出す。

 

「ふーっ、危なかった」

「気づかれなかったんですね」

「ああ。でももうちょっとで気づかれそうだったからとっさに逃げ出して良かったよ」

「男性の領主で良かったですね。男性にはあなたは驚異だと思われていないんでそこまで知られていませんから」

「……?」

 

 青年は安心したのか一息つく。ダヌアはいまいち状況が分かっていないのか首をかしげる。

 その様子を見てカトルがダヌアに答える。

 

「この人が馬鹿やっていてそれがバレるとちょっとまずいんですよ」

「馬鹿とはなんだ、馬鹿とは」

「好みの女性を見つけたら気持ち悪い笑みを浮かべながら声をかけるのは馬鹿ですよ」

「……」

「ちょっとカトル、人聞きの悪いことを……って嬢ちゃん!?引かないで!?」

 

 ダヌアは青年から少し離れ、カトルの背に隠れる。

 するとグレーテルが笑いながら青年の前に出てくる。

 

「はははっ!オメェそんなことやってんのカ!」

「やってねぇよ!いや、やってるけどそんなヘンな顔はしてない、はず……」

 

 青年は否定するがこれまでの経験から自信が無くなり、言葉が尻すぼみになる。

 そこへヘンゼルが疑問に思っていたのか青年とカトルに聞く。

 

「空に出回っている彼に関する噂は本当なのか?」

「さあ、噂についてはわかりませんね。ただ、僕がわかっているのは彼がお調子者の変態で、軟派な人で、救いようのない馬鹿と言うことです」

「言い過ぎじゃね……?まあ俺からも言えることは無いな。そもそも噂ってのもそんなに詳しくないからな」

 

 青年達は話しながら街中を歩いて行くと、街の広場で人だかりか出来ているのを見つける。

 青年達は気になって人だかりへと近づいていくとそこには──。

 

『Ahhhhh────っ!!』

「うおおおっ!!」

「アオイドス様ーっ!!」

「アオイドスのゲリラライブが見られるなんて!!」

「俺もヘイブンしてくれー!!」

 

 アオイドスを中心に、アオイドスに熱い声援を投げかける彼のファン達がいた。

 

「うっわぁ……アオイドスすげぇな」

「何をやっているんですかあの人は……」

 

 アオイドスのシャウトとそれに呼応するように大きくなっていく声援は地鳴りのように響き地面を震わせ、人だかりを大きくしていった。

 

「……っ」

「ん?あー、ちょっと別の場所に行くか」

 

 ダヌアは聞いたことも見たことも無いような大声と人だかりに驚いてしまい、それに気づいた青年がダヌアの手を引きながら他の場所へと移動した。

 

「俺が何もしなくてもアオイドスが騒動起こすんじゃね?」

「……あれはもう無視で良いでしょう」

 

 おもしろそうに肩を揺らしながらそう言う青年に、カトルは騒動を起こさないようにするのは諦めたのか、投げやりに言った。

 

 青年達はアオイドスのいた広場から離れ、適当な通りを歩いていた。

 

「ん?君は……」

「はい?」

 

 近くの店から出てきた女性が、青年達とすれ違う際、カトルに声をかける。

 

「お、おおおお、おい。カトル誰だよ知り合いか?」

「いや、彼女のような女性は少なくとも僕の記憶にはないですが」

 

 青年は女性の容姿に惹かれたのか、カトルに女性のことを聞くがカトルは知らないと答える。

 女性は青みを帯びた銀髪を膝の当たりまで伸ばしており、特徴的な大きなバッグを肩に提げていた。

 

「そのマント、十天衆の……」

「へぇ、知っているんですね」

「当然だろう。空を股にかける騎空団、十天衆。その圧倒的な強さは全空の脅威とされるほどのものという」

 

 女性は何かを思い出すかのように十天衆を語る。

 その様子を見たカトルが何かを感づいたのか問いを投げる。

 

「十天衆と何か因縁でも?」

「ああ、少し、な……」

 

 女性は空を見上げ、何かを悔いるような表情をする。

 しかし、すぐに切り替えたのかカトルに向き直る。

 

「急にすまなかったな。まさかこんなところで十天衆と出会うとはな」

「いえ、こちらこそあなたと出会えて良かったです。最近は十天衆の名を軽んじる人が多くて」

 

 カトルはそう言いながら青年をギロりと睨むが、その視線を青年は下手くそな口笛を吹きながら受け流す。

 女性はその様子に苦笑して青年の方へと向く。

 

「君もすまなかったな、時間を取らせ、て……」

 

 女性の言葉は青年の顔を見ると、その言葉を途中で句切ってしまい、青年に指を指す。

 

「ま、まさか君はあのえ、えち、『エチエチファンタジー団』団長か!?」

「あ、はい」

 

 顔を赤らめながらそう言うに青年は思わず肯定してしまい、カトルはあからさまに面倒な顔をする。ダヌアはどうしたら良いか分からず、事の成り行きを見守る。

 

「まさか実在するとは……!」

「え、俺空想上の人物だと思われてたの?」

「当たり前だ!あれほどの噂、ただの与太話だと思うだろう!」

 

 女性は一歩引き、身構えるようにして青年を観察する。

 

「くそ、どうする?星晶獣すら逃げ出すというその力、この場での戦闘は避けたい。だがそうやすやすと見逃してくれるか……?」

「あ、あのー?」

 

 青年が困ったように声をかけるが女性は思考を続けており青年の声が届いていない。青年は助けを求めるようにカトルへ視線を向ける。

 

「はぁ、わかりましたよ。面倒ごとは避けたいですしね」

 

 カトルは仕方なく、本当に仕方なく青年の頼みを聞き入れ、青年と女性の間に割って入る。

 

「すいません、聞こえていますか?」

「こんななんの覇気もないような男が噂の人物とは……。いや、実力を隠しているのか?ククル、それに銃工房の方々は何とかして逃がさなければ……!」

「おい聞いてんのかクソババア」

「ババ……!?私はまだ27歳だ!」

 

 カトルの言葉に女性が反応してカミングアウト、そこで我にかえったようで、カトルへと声をかける。

 

「あ、ああすまない。少し考え込んでいたみたいだ。……聞きたいのだがなぜ十天衆である君が彼と共に行動を?」

「なぜ、と言われても成り行きでとしか言えませんが、そうですね。とりあえず誤解だけは解いておきたいので」

 

 そう言うとカトルは青年の服を引っ張り無理矢理横に並び立たせる。

 

「噂については僕も知っています。ですがこの馬鹿丸出しの顔を世に曝け出しているような人が噂通りのことをするような人に見えますか?」

「あ、あの、頭叩かないで……」

 

 カトルは青年の頭をガンガンと叩きながら説明する。青年はそれを止めてくれと言おうとするが、自分が原因であるため強く言えないでいる。

 

「彼とは出会って一年以上経ちますが噂通りの人物ではありませんよ。そもそも十天衆である僕が着いています。万が一、噂通りのことをしようとしても僕が止めますよ」

「む、そうか……君がそこまで言うのであればそうなんだろうな……」

 

 女性はカトルの言葉を飲み込み、青年は噂通りの人物では無いと考えを改め、青年の方へと向き、謝罪する。

 

「すまない。私ともあろう者が噂に踊らされ、真実を見抜けないとは。本当にすまなかった」

「あ、いや別にいいっすよ。おれにも悪いところがあるみたいなんで」

「悪いところか?」

「カトルが、彼がそう言ってるんでそうらしいっすけど。それよりお姉さん。一つ良いですか?」

「む、何だ?」

 

 カトルのおかげで場の雰囲気が元に戻ったおかげで、青年は元の目的を思い出し、己の目的を果たす。

 

「い、いやー、その、もし良かったら、このあと一緒に、ご飯でもどうかなって、ぐへへへへ……」

 

 瞬間、場の雰囲気が凍り付いた。

 

 女性は青年の言葉にあっけにとられるが、青年の下卑た笑みと汚らしい笑い声を聞いて先ほどの考えは正しかったのかと考える。

 

「なぁ、君は──」

「だからテメェは馬鹿で屑で能無しなんだよっ!!俺がせっかく誤解を解いてやったてのにどうしてテメェはそこまで馬鹿をさらせるんだよ!会ったときからそうだったけどな、本当にテメェは救いようのない馬鹿だなぁ!!そんなんだからいつまで経っても噂が消えねぇんだよ!!」

 

 女性の声はカトルの怒声でかき消された。女性だけで無くダヌアもカトルの豹変に萎縮してしまう。

 青年もここまで怒られたのは初めてなのか縮こまってしまっている。

 

「ご、ごめんって……。おれが悪かったから……」

「本当に反省してんのかテメェは!いつもそうだ、テメェが起こす騒動に団員でもない俺が尻ぬぐいさせられる!!テメェが起こした騒動ならテメェが片付けやがれ!」

「そこまでにしてはどうだろうか。周囲からも注目されて……」

「ああん!?ババアは黙ってろ!!」

「」

 

 青年どころか女性にまで当たり始めるカトルはもうともる気配が無く収拾がつかなくなってきている。通りを歩く一般人もカトルの怒声に思わず足を止め、小さな人だかりが出来てしまっている。

 そこへ、カトルのマントをダヌアが弱々しい力で引っ張る。

 

「ゃめ……」

「止めてあげて。と言っているぞ」

「ああ!?」

 

 ダヌアがカトルを止めようとし声をかけ、ヘンゼルがダヌアの言葉を伝えるが、カトルは反射的にダヌアを睨み付けてしまう。

 

「ひっ……」

「なっ……!ぐ、ぐぅ……」

 

 カトルの睨みにダヌアが驚いてしまい、目に涙を浮かべている顔が目に入り、頭が一瞬冷静になる。そこで、ようやく自分たちが注目を浴びていることに気付く。

 

「あーくそっ、こっちに来て下さい!」

 

 カトルは周囲からの注目を避けるため青年達を路地裏へと連れて行く。

 

「……すいません。少し言い過ぎました」

 

 ダヌアを見て、怒りを抑えたカトルを見て青年は胸をなで下ろすと同時にこれからはダヌアと一緒に行動すればカトルに怒られねーじゃん(笑)、とほくそ笑んだ。

 当然、カトルも青年の悪巧みを見抜いたようで、青年を睨み付ける。

 

「ですが!今後このようなことはないように。あなたが醜態をさらすことで団員の底が知れてしまいますよ」

「うっ……はい……」

 

 釘を刺された青年はカトルの鋭い視線に身を縮めてしまう。

 そこへ、さらにダヌアが追い打ちをかける。

 

「ぁれ……やめ……」

「ほうほう……あれは気持ち悪いからやめてくれ。と言っているぞ」

「ぐはっ……!」

 

 ダヌアにも一刀両断された青年は灰になって消えたい、と呟きながら地面に手をつく。女の子からの口撃は効くようである。

 その様子を傍目にカトルは巻き込んでしまった女性の方へ向く。

 

「あなたも巻き込んでしまってすみま……何やっているんですか」

「私は……ババアじゃ……27歳……いや、ババアなのか……?」

 

 壁偽を預け、うずくまってうわごとのように呟く女性を怪訝な様子でカトルは見つめる。

 

「あの、どうされました?」

「そうか、私はもうババア……え、あ、いや、何でも無いんだ。ははは」

 

 カトルに気付いた女性は笑ってごまかし、カトルもそれ以上追求しなかった。話がさらにこじれることが目に見えていたからだ。

 

「団長さん。大丈夫ですか」

「心に開いた穴は戻らない。だが、新たに得た世界もある。そうか、これがヘイブンか……!」

「それ、あなたが言うとうざいだけなんで止めて下さい」

 

 カトルの突き放すような言葉に青年は口を尖らせ、カトルと軽口を言い合う。そこへ女性が申し訳なさそうに割って入る。

 

「先ほどはみっともない姿を見せてすまなかった」

「もういいんですか?」

「ああ。しかし、そうか……君が、十天衆か」

 

 女性はカトルの気遣う言葉に大丈夫だと言い、そしてカトルのマントを見て物思いにふける。

 

 

──本当に、凄まじいな

 

──これが君の言っていた……

 

──化け物の、力……

 

 

「……これも巡り合わせ、か」

「ん?どったの」

 

 女性の自身に言い聞かせるように言った言葉は青年達には届かなかった。

よし、と女性は呟き、青年に頭を下げる。

 

「どうか私を君の騎空団に入れてもらえないだろうか」

「いいよ」

「いや早すぎません?もうちょっと考えて発言を……」

「いいじゃん。そもそもおれたち人数少ないからな、人は多い方が良いだろ」

「はぁ……もういいです、好きにして下さい」

 

 女性の頼みをあっさりと聞いた青年に呆れるカトルだがいつものことかと思い、青年の決定に従う。

 

「私の名はシルヴァだ。これから宜しく頼む、団長、カトル、そしてドラフのお嬢さん」

 

 改めて自己紹介をした彼女、シルヴァは、さて、と一息つき自身の目的を明かす。

 

「私の旅の目的は十天衆、ソーンと勝負を挑むためだ」

「へー」

「なるほど……」

「……」

 

 シルヴァの決意に満ちた言葉に青年はぴんとこないがカトルは納得した表情を、ダヌアは女性を()()()()で見ていた。

 

 

「だから、私の銃の整備をしたい。少し時間がかかるがいいだろうか?」

 

 シルヴァはそう言い、自身の肩にかけていたバッグを少し開け、銃を見せる。

 

「まぁ、そういうことなら。こっちも仲間がGIGしていてまだ終わってないと思うから丁度良かった」

「GIG……?時間があるのなら見ていくか?飽きないと思うが」

「うーん、まあすること無いしなー。カトルと嬢ちゃんもいいか?」

「僕は構いませんが。ついでにあなたの銃を見繕ってもらったらどうです?」

「ああ、それもそうだな。シルヴァはいいか?」

「それぐらいなら問題ない」

「おっけー、嬢ちゃんはどうする?」

 

 青年はダヌアに軽く言葉をかけるが、反対にダヌアは重く、深く思考を沈めていた。

 

(私は……何がしたいの?)

 

 

──自分は一体何をしたいのだろうか

 

──父を殺され、母を殺され……兄を殺され

 

──ヘンゼルとグレーテルとふらふらと生きていたら恐ろしい人と出会って

 

──他足助手くれた青年に無理矢理着いてきて

 

──でも青年の仲間に怖がってばかりで行動が出来なくて

 

──ずっと青年の優しさに甘えてばかりで

 

──目の前の女性は決意を決めて、あの人の仲間になったというのに

 

──怖がってばかりの自分じゃそんなことは出来ない

 

 

 

『だからっていつまでもこのままじゃ前に進めネェゼ』

 

 

 

「……ぁの……!」

「ん?ヘンゼル、嬢ちゃん今なんて言ったんだ」

「……」

「?」

 

 ダヌアの言葉を聞き取れなかった青年はダヌアのそばにいるヘンゼルに聞くがヘンゼルは口を開かず静観を貫いている。青年は不思議に思うが、次のダヌアの言葉を待つ。

 

「だぬぁ……」

「──え?」

「”ダヌア”……なまぇ……」

「なま、え……そうか、そうか!嬢ちゃんはダヌアちゃんっていうのか!」

「ぅ……」

 

 嬉しそうにダヌアの名前を呼ぶ青年にダヌアも青年の呼びにこくりと頷く。

 

「なぁ、もしかしてあの子の名前を知らずに連れていたのか?」

「こちらにもいろいろありましてね。今度また話しますよ、あなたには感謝していますし」

「感謝?」

 

 カトルの感謝、と言う言葉にシルヴァは疑問を持ち、聞き返す。

 するとカトルはこれまでの出来事を懐かしむように語る。

 

「ええ。半年程、ある事件が起きてあの子を連れて旅をするようになったんですよ。ですが名前を言うどころか、なかなか口を開いてくれなかったんですよ。本当に少しですが話すようになったのもごく最近なんですよ」

「それは……それでどうして私に感謝を?」

「名前を言わないということはぼくたちを信用していないということ。あの人は信頼を得ようと躍起になっていましたがなかなか上手くいきませんでした。本能のところ、僕もあの人があの子にひたすら話しかけてるのは結構キてたんです。ですが今、あの子は名前を言った。おそらく、あなたの言葉に揺るがされたんでしょう」

「そうなのか?」

「はい。まぁあなたの言葉はきっかけに過ぎないでしょうが、そのきっかけをぼくたちは与えられずにいた。だから感謝しているんです」

「……そうか」

 

 シルヴァは理由を聞き、ほほえましそうな目で青年とダヌアのやりとりを眺めた。

 

「ダヌアちゃん!」

「ん……」

「ダヌアちゃん!」

「ん……」

 

 青年がダヌアの名前を呼び、それにダヌアが頷くだけ、というものだったが二人の姿がシルヴァにはまぶしく見えた。

 

(私もいつか、ソーンと……)

 

 未だに、名前を呼び続け、それに頷いている青年とダヌアにグレーテルがうずうずした様子で声をかけた。

 

「なぁなぁ、仲良くすンのもいいけどよォ。お前、なンか言うことあるンじゃねェカ?」

「ああ、私もそう思う」

「言うことって……」

 

 

『もし、あの子が名前を君に伝えたら言って欲しい言葉があるんだ』

『なんだ?』

『”──”っ、あンまりこういうまねはしたくねェけど、頼ム』

『……その言葉な』

 

『俺も言おうと思ってた』

 

 

「そうだな、あれを言わなきゃなんねえな!」

 

 グレーテルの言葉にヘンゼルも同調し、青年に目線を送る。すると青年も合点がいったのかダヌアにある言葉をかける。

 

 

「ダヌア!俺と来い!仲間になれ!」

 

 

 青年の言葉は普通の人が聞けば上から目線で、馬鹿丸出しの言葉だが、ダヌアにはその言葉が心に響いた。

 

 

「ん……!」

 




青年
主人公。19歳。15歳の時に故郷の島を一人で飛び出して騎空団を立ち上げた。考えなしの馬鹿。恵まれた顔が言動のせいでマイナスに振り切っている。女性に対して目が無い。ただし年上のみ。ダヌアに対して興奮しないのもそのせい。
現在、団員は6人。うち2人が別行動している。そこに団長である青年の意思はない

カトル
えっち。2年前、青年とは因縁があって衝突し、それ以降は青年に着いてきている。団員では無い。たまに故郷に帰るため、別行動することがある。ちなみに因縁というのはカトルがふっかけただけで特にシリアスなものではない。青年のことをよく罵倒しているが、つきあいも長くなんだかんだ信頼している。

アオイドス
平原で気を失っていたところを青年に助けられ、それ以降青年の騎空団に所属している。2人目の仲間であり、『エチエチファンタジー団』古参。青年の性格上、いろいろな島に行くため、島に行くごとにゲリラライブを行っているといつの間にか有名になる。今では様々なイベントに呼ばれたり、ワンマンライブを行ったりすることが多いためよく別行動する。

ダヌア
 半年前、とある事件に遭い、その際青年に助けられる。その後、青年の騎空挺に忍び込みいつの間にか部屋を与えられ、普通に住んでいる。半年前の事件で、とある人物から与えられた恐怖におびえる。その後、いろいろ考えるものの事件の渦中にいた青年の騎空挺に忍び込み、それから考えることにした。半年前の事件にまだけりをつけてはいないが仲間を得たことで立ち向かう勇気を持てた。

シルヴァ
 27歳。十天衆のソーンとの決着をつけるため入団。青年の団を選んだのは直感。青年に食事を誘われたとき、あまりの汚さに引くが、若い子から誘われてほんの少しだけ、ほんの、少しだけ、嬉しかった。


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