東方博麗子伝 (疾風海軍陸戦隊)
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プロローグ

 

僕の名前は・・・・・・・・・分からない。いつも、お父さんとお母さんに怒鳴られ殴られ、自分がどういう名前なのかわからなかった。

なぜ、お父さんとお母さんは僕をぶつの?何で蹴るの?何で酷いこと言うの?もしかして僕が悪い子だから?僕が邪魔だから?

わからない・・・ただ僕は黙って殴られるだけだった。そしてなんでいつも『お前さえいなければ!』とか『出来損ない』なんてひどいことを言うの?

わからない・・・・・僕にはわからない。ただわかるのは痛くて苦しくて寂しい・・・・そんな感情だけだった。

そして僕は夜、二人が寝ている隙をついて家を出た。これ以上ここにいるのが嫌だったからだ。僕は暗い道を一人で歩いた。お父さんやお母さんに殴られ蹴られたところが痛いけど、あそこにいるよりはまだマシだ

僕は当てもなく彷徨い、気が付けば山の近くまで来ていた。そして僕は古くて今にも倒れかけそうな神社の階段に座っていた。辺りは静かで所々虫の声が聞こえ。そして月の光が神社と僕を照らしていた

 

「・・・・・・帰りたくない」

 

僕はポツリとそう呟く。帰ればまた痛い思いをする。でも僕には友達もいなければ行く当てもない・・・・・・僕は独りぼっちだ。そう言えば神社って確か神様の住むお家だったよね?僕は階段をいったん降りて鳥居の前に立ちそして建物の前にお辞儀すると

 

「神様・・・・・少しの間だけここに泊めてください」

 

そうお願いした。そして僕はそのまま進みお賽銭箱の前に立つと

 

「神様。僕はお金を持っていませんけど飴を持っているから。あげます」

 

そう言いお賽銭箱の中に飴玉を入れると階段を上って神社の中に入る。中はクモの巣が張っていて所々床に穴が開いていた。普通なら幽霊が出てきそうだと怯えるところだったが、今の僕にはそんな感覚がなく床の上に横になる

 

「痛い・・・・体が痛い・・・・それに寒い・・・・」

 

両親に殴られ傷つけられた体が激しく痛む。しかも真冬のこの寒い日には尚更だ

 

「・・・・・・うう・・・」

 

その寒さに耐えながら僕は目を閉じ、そこで僕の意識は途切れた・・・・・・

 

 

 

 

 

「あらあら・・・・・こんなところに子供が・・・・」

 

少年が眠った瞬間、空間から不気味な裂け目が出てその裂け目からふわふわとした長い金髪に赤い瞳、そして紫のドレスを着た女が現れた

 

「酷い怪我をしているわね。しかもこんな寒い日に一人で・・・・・親は何をしているのだろ?」

 

少年を見て女性は軽くため息をすると

 

「仕方がないわね。このまま放っておけば死んでしまうし。連れて行くしかないわね。場所は・・・・・そうね・・・・霊夢にでも預けましょう」

 

そう言い彼女は少年を抱え上げると隙間の中へと入っていくのであった

 

 

 

 

 

 

 

此処は幻想郷……妖精、妖怪、神、忘れ去られた者達が住む場所であるそして、其処には博麗神社という。幻想郷の端にある神社だ。

其処に住む博麗霊夢は秋の風景を楽しむ序に軽い散歩をしていた

そんな、ある日の事……博麗神社に一人の4,5歳くらいだろうか?男の子が倒れていた

 

「どうして、こんな所に子供が・・・・誰か置いて行ったわね!全く、育てる気が無いなら産むなっつうの!」

 

呆れたようにそう言う霊夢。しかし子供はピクリとも動かない

 

「ちょっと、どうしたのよ?もしかして寝てるのかしら?」

 

そう言い子供に近づくと、その少年は体中あざだらけで所々に切り傷があり虫の息の状態であった

 

「っ!?酷い怪我をしているわね・・・・・・・もう!しょうがないわね。いったい誰がこんなことをしたのよとんだ恥知らずね!!まったく!!」

 

とブツブツ文句を垂れる中、霊夢は少年を抱えて境内の中へと入っていったのだった

 



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さくら、幻想郷の迷子

一週間後、茜色や黄色に染まった木の葉がひらりひらりと舞う日、そんな博麗神社に小さな子供が箒を履いて神社をきれいにしていた。そうそれが僕だ

 

「よし。だいぶ集まった・・・・・・」

 

少し重い箒を必死に持ち汗を拭う僕。そして僕は集めた落ち葉の山をじっと見ていた

 

「・・・・・・」

 

これジャンプして遊んだら楽しそうだな・・・・・そう言う目で見ていると

 

「さくら。それ、これから焼き芋を焼くのに使うから飛び込んで散らかしちゃだめだからね。それ以前に散らかしたら怒るわよ?」

 

「し、しないもん!僕絶対にしないもん!」

 

「ふ~ん。そうかしら?」

 

博麗霊夢は僕の目をジト目で見ている。僕は慌てながら目を逸らしている

 

「ほ、ほんとだよ?」

 

「・・・・・・まあ、いいわ」

 

「(ほっ・・・)」

 

「でも・・・・・もし、落ち葉にダイブしちゃたらどうなるかわかるね?」

 

「はい……(ガタガタガタ)」

 

僕は耳元で、そう囁かれた。よかった・・・・・やんなくて。もし、やっちゃっていたら怖いお仕置きが待ってたかも・・・・・

 

「まあ、それはいいわ。さくら。台所からお芋を取ってきて。私は火をつけるから」

 

「うん。お母さん」

 

そう言い僕は台所へと走るのであった。僕の名は博麗さくら。え?女の子みたいな名前?よく言われます。でも僕にとってこの名前はお母さんがつけてくれた大切な名前だから・・・・あ、お母さんっていうのはさっきの巫女さんで僕はその人の養子です。

え?なぜ僕があの人をお母さんって呼ぶのかって?それは一週間ぐらい前に戻るんだけど・・・・・・

 

 

 

時は遡り、一週間前、

 

『お父さんお母さん止めて!!痛い!痛いよ!!』

 

『うるさいっ!お前さえ生まれてこなければ!!』

 

『この失敗作!!なんで生まれたんだ!!お前さえ!!お前さえいなければ!!』

 

激しく僕を床や壁に叩き付け殴る蹴ることを繰り返す本当の両親。僕は痛くて痛くて苦しかった・・・・なんで僕はこんなに痛い思いをしなければいけないの?僕が悪い子だから?いらない人間だから?まだ幼い僕にはわからなかった。ただ僕は泣き続け二人の暴行に耐えるしかなかった。そして家を出てあの神社で眠っていたあの日。僕は不思議な温もりを感じた

 

「(暖かい・・・・・)」

 

身が裂けるような寒さから急にまるで暖かい太陽な温かさを感じた僕は目を開ける。そこはさっき僕が寝ていたはずの神社だけど。なんか周りが奇麗になっているし、蜘蛛の巣も床の穴もなくなっていた。そしてまるで誰かが住んでいるかのように部屋が暖かく、そしてなぜか僕は固く氷のように冷たい床の上じゃなくて温かく厚い布団の中で寝ていた。

 

「ここ・・・・・・どこ?」

 

僕が首をかしげると

 

「あ、やっと目が覚めたわね」

 

と、赤い服を着たお姉さん?が入ってきた。あの服って確か・・・巫女さん?ていうんだっけ?

 

「ここは・・・・・」

 

「ここは博麗神社よ。それよりあなた三日間も眠っていたけど。大丈夫?酷い痣とか切り傷があったけど?何かあったの?」

 

少しぶっきらぼうにそう言う巫女お姉さん。お姉さんの質問に僕は俯き黙る

 

「・・・・・ま、いいわ。大方、悪戯妖精にでもいじめられてたんでしょ?て、言うよりあなた見たところ外来人ね」

 

がいらいじん?外国人のことかな?

 

「僕外国人じゃないよ?日本人だよ?」

 

「にほんじん?・・・・・まあ、ともかくその反応から察するに、幻想入りね」

 

「?」

 

聞きなれない言葉に僕は首をかしげる。すると巫女のお姉さんは

 

「わからないって顔ね?まずここは、幻想郷という場所なの。アンタは幻想郷に幻想入りした訳。簡単に説明すると主に地上で忘れられたものがここに来る場所なの」

 

「???」

 

余計に訳が分からなかった。確か僕は廃墟同然の神社で寝てて目が覚めたら普通の神社で布団で寝ていた・・・・・・つまり・・・

 

「ここは天国で・・・・僕、死んじゃったの?」

 

「なんでそう言う解釈になるのかな・・・・・まあ、あながち間違ってはないと思うけど・・・・子供には難しすぎたかしら?」

 

僕の言葉にお姉さんは頭を抱えて悩んでしまった。たぶんここは天国じゃないらしいけど地獄でもないみたいだってお姉さんの頭に角とかないもん

 

「まあ、いいわ。たぶんあなたはここに迷い込んじゃったらしいみたいだからすぐに外の世界に帰してあげる」

 

「っ!!」

 

お姉さんがそう言い立ち上がろうとすると僕は思わずその人の袖をつかんでしまう

 

「な、何よ・・・・どうしたのよ?あなた帰りたいんじゃないの?」

 

「・・・・・・・」

 

「(・・・・怯えている?)」

 

お姉さんはこの時、僕が怯えているのに気づいた。僕は帰りたくはなかった、家に帰ったらまたあの思いを繰り返す。だけど僕には他に行く当てはない。もしかしたらここなら僕の居場所があるかもしれない。たとえここがあの世でも忘れ去られたものが集う場所でもいいここに残りたい。その時の僕はそう思った。すると巫女さんはため息をついて

 

「まあ、いいわ。別に強制じゃないし、幻想郷(ここ)に居たいならいなさい」

 

「いいの?」

 

僕は生まれて初めて花が咲くような笑みを出す。

 

「いいわよ。後、住むならここのほうがいいわね。下手に放りだして妖怪たちに襲われでもしたら目覚め悪いし、でも住むからには働かざるもの食うべからず。ここに居たいならちゃんと仕事をする。いいわね?」

 

「うん!!」

 

僕は頷くとお姉さんは

 

「そう言えば自己紹介がまだだったわね。私は博麗霊夢・・・・・あんたの名前は?」

 

「なま・・・え?」

 

「そうよ。あんたの名前よ。名前くらいあるでしょ?」

 

「名前・・・・名前・・・・・・あ!」

 

「あるのね。何て名前?」

 

「うん。「お前」」

 

「それ、名前じゃないわよ」

 

「出来損ない」

 

「違うわね」

 

「失敗作・・・・・」

 

「だからそれも名前じゃないわよ!全く誰よそんなひどいことを言う人は?」

 

「お父さんとお母さん・・・・・」

 

「・・・・はぁ~あんたの怪我の理由少しわかっちゃったわ。全く酷い親ね。名前がないと不便だし・・・・よし!じゃあ、あんたはさくらよ!」

 

「さく・・・ら?」

 

「そう、さくら。春の咲く花のあの桜よ。苗字は‥‥私のを使いなさい。だからあんたの名前はこれから博麗さくらよ!」

 

「さくら・・・・さくら・・・さくら!!」

 

僕はその名前を嬉しそうに何度も言った。そして霊夢さんは

 

「それじゃあ、ここに住むならそんな汚い恰好じゃいけないから風呂に入りなさい。今いれてあげるから」

 

「うん。ありがとうお母さん!」

 

「お?お母さん?」

 

僕がお母さんって言うと霊夢さんはいきなりの僕の言葉に驚く

 

「うん・・・・・なんかお母さんのような感じがしたから・・・・・・だめ?」

 

「(っ!?めっちゃ可愛い!!)」

 

少し涙目の上目遣いの僕の言葉に霊夢さんは顔を少し赤くし

 

「こ、コホン・・・・・ま、まあ悪くはないわね・・・ちょっと複雑だけど。今回だけ特別よ。お母さんでも何でも好きに呼びなさい」

 

「うん!ありがとうお母さん!」

 

僕がそう言うと霊夢はまた顔を真っ赤にすると・・・・・・

 

「お~い!霊夢!!遊びに来てやったぜ~」

 

と、そこへ金髪の白黒した服を着たお姉さんが突然入ってきた。するとそのお姉さんは僕を見る

 

「・・・・ん!?お、おい・・・霊夢お前まさか・・・・・」

 

と、驚いた表情をした瞬間

 

「大変だぁー!!霊夢のやつに隠し子がいたぞぉー!!!」

 

「ちょ!?待ちなさい魔理沙!!」

 

そう言い飛び出した魔理沙と呼ばれたお姉さんをお母さんは顔を真っ赤にして追いかけるのであった。

 

 

 

 

 

 

そして現在

 

「ほら、さくら。お芋が焼けたわよ。食べましょ」

 

「うん♪」

 

僕とお母さんは今、集めた落ち葉で焚火をし、そして僕の持ってきた芋を使って焼き芋を焼いていた。そしてお母さんは

 

「ほら、熱いから気をつけて食べなさいよ」

 

「うん!」

 

そう言い僕はお母さんに大きい焼き芋をもらうと、僕はお芋を半分にして少し大きい方をお母さんに渡す

 

「はい!!お母さん半分こ!」

 

「え?私のはあるから。さくら食べなさい」

 

「でもお母さんのお芋焼きあがってないから、半分こ!」

 

「そう…じゃあ、貰うわね。ありがとう。さくら」

 

「えへへ♪」

 

僕はお母さんに頭をなでられて思わず笑顔になる。そしてお母さんも少し微笑み僕が挙げた半分のお芋を食べる。

この日の幻想郷はいたって平和であった

 

 



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幻想郷の生活と初めての外出

「お母さん。本当に外で遊んできてもいいの?」

 

「ええ。いいわよ。でも暗くなる前に帰ってくるって約束するならね」

 

神社の境内で霊夢は自分の養子であるさくらにそう言い、さくらは嬉しそうに頷いて

 

「うん!約束する!!」

 

と、嬉しそうに燥いでいるさくらを見て思わず笑みをこぼす霊夢。

そして霊夢は

 

「さくら、少し待ちなさい」

 

そう言い、いったん神社の中に入るとすぐに戻ってくる。そして霊夢は

 

「はい。帽子とお弁当よ。持っていきなさい」

 

霊夢が持ってきたのは秋というのになぜか麦わら帽子とそして、おにぎりだった

 

「秋といっても日差しは強いからね。それとそのおにぎりはお腹がすいたときに食べなさい」

 

「これ、お母さんが作ってくれたの?」

 

「ええ、そうよ。何?いらなかった?」

 

「ううん!嬉しい!お母さんありがとう!!」

 

「ちょっ!?もうあなたはいちいち抱き着かないでよ!!」

 

あ余りの嬉しさに抱き着くさくらに霊夢は顔を赤くしそう言うと、さくらはおにぎりを風呂敷に包んで

 

「じゃあ、お母さん。行ってきます!!」

 

そう言い、元気に走っていくのだった。そして霊夢は

 

「やれやれ・・・・・まだ子供ね・・・・・・・・それより、いるんでしょ紫」

 

霊夢がそう言うと、霊夢の背後にある空間が裂けそこから傘を差した女性が出てくる。彼女の名は八雲紫。、幻想郷最古参の妖怪で幻想郷の境界を操る能力を持つ実力者であり幻想郷の管理人である

 

「あら?分かってたの?」

 

「バレバレよ。・・・・で、何の用?」

 

疑うように紫を見る霊夢に紫は

 

「ただちょっとあなたの息子さんの様子を見にね。それよりも霊夢。ようやくあの子を外に出したのね」

 

「何のこと?」

 

「とぼけても駄目よ。最初はその子の存在をほかの人に知られないため、そして先ほどの魔法使いのように冷やかされたくないため、あの子に時が来るまでこの博麗神社の外には出てはいけないと言っていたらしいわね」

 

「そ、そうね・・・・」

 

「でも、本当はあの子をほかの凶暴な妖怪たちに襲われないため・・・・危険な目に合わせたくないから、外に出さなかったのよね?」

 

「そ、それも…あるわね」

 

「ふふ・・・・立派なお母さんになっているわね」

 

「ひ、一言多いわよ紫!」

 

「・・・・・・で、なんでまた急にあの子を神社の外に?育児放棄?」

 

「違うわよ!!そろそろあの子も神社の外のことを知って友達とか作らないといけないと思っただけよ!!」

 

「あら?本音が出たわね?」

 

「・・・・あ」

 

「ウフフ・・・ほんと見た目はぶっきらぼうな霊夢も内心ではあの子のこと大切に思っているのね~」

 

「う、うるさい!!」

 

と、紫の言葉に顔を真っ赤にさせそう言う霊夢であった。そして紫は

 

「・・・・で、一人で行かせて大丈夫なの?」

 

「大丈夫よ。あの子の能力はある意味すごいから・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

森の中

 

「♪~♪~♪~」

 

少し薄暗い森の中、さくらは霊夢からもらったお弁当を手に嬉しそうに歩いていた。

今日は初めての幻想郷での外出だからだ。いつもは神社のお掃除やらお手伝いなんかで外に出ることが一切なく霊夢からも『いずれ時が来れば出してあげるから』と神社から出してもらえなかったのだ。

そして神社にだれかがやってくると霊夢はさくらを部屋の奥に隠したりしていた。しかし魔理沙が来た時はすでにさくらの存在がばれてたため一緒にお菓子やお茶を飲んでいたが基本的に神社の外に出してもらえることは一切なかった。

しかし、今回、母である霊夢が

 

『外に行って遊んできてもいい』

 

と言い出したので、さくらは喜んで出たというわけだった。

 

「わぁ~どこを歩いても森だらけだ~」

 

さくらは初めて歩く幻想郷の森の中を無邪気に楽しそうに歩いていた。歩く中、奇妙な色どりのキノコやそしてたまにウサギやリスなんかの野生動物を見てははしゃいでいた。

一週間前までは体中あざだらけ切り傷だらけで、いつも何かに怯えてあまり喋ることのなかったさくらだったが、今では明るく無邪気で好奇心旺盛な子になっていた

さくらはしばらく森の中を歩いていると・・・・・・・

 

「おまえ~おいしそうなのだ~」

 

「・・・・え?」

 

突然、声がして辺りを見回すが誰もいない。その瞬間突如さくらは謎の黒い塊に襲われた

 

「わっ!?」

 

いきなりのことにさくらは驚く。そして視界が真っ暗になるのだった・・・・・

 

 

急にあたりが暗くなる。え?もう夜になったの?どうしよう。お母さんに叱られる・・・・僕がそう思った瞬間

 

「オマエ~食べてもいい人間~?」

 

いきなり女の子の声が聞こえた

 

「え?食べる?」

 

突然の言葉に僕は訳が分からなかった。え?人間て食べれるの?そんなふうに当時僕は思っていたが、それと同時に何やら恐怖感があった。そして

 

「じゃあ、食べちゃお♪いただきまーすなのだ!!」

 

と何やら黒い空間の中からさらに真っ黒いのが僕に襲い掛かってきた。あまりの怖さに僕は目をつぶりそして思わず両手をクロスして

 

「ボディ!スパァーク!!」

 

「うわあぁーーー!!!?」

 

とっさに出た言葉を言い放つと僕の体から眩しい光がはなたれ、僕を包んでいた暗いのも消え気が付けばいつもの森の中にいた。そして辺りをきょろきょろとみると・・・・

 

「うわ~眩しいのだ~」

 

と、黒い服を着た金髪の女の子が目を回しながら倒れていた。あれ?さっきの声ってこの子からだったのか?

 

「あの・・・・・大丈夫?」

 

僕は先ほどの恐怖なんかすっかり忘れ、僕を襲おうとした黒い影の正体である女の子に近づくと・・・・

 

「お腹が空いたのだー…」

 

と少女は今にも泣きそうな震えた声でそう言っていた。確かに彼女のお腹から腹の虫が鳴っていた。それを見た僕は

 

「はいこれ。お腹が空いてたならあげるよ」

 

と、僕はお母さんからおにぎりを女の子の前に出した。お母さんがせっかく作ってくれたおにぎり。僕も食べたかったけど。何か困った人がいたらお母さんもきっとそうすると思った僕は、彼女におにぎりをあげることにした。

 

「いいのか~?」

 

「うん!」

 

「わぁーい!ありがとうなのだ!」

 

そう言うとその子は僕が挙げたおにぎりを美味しそうに頬張る・・・・・美味しそうだな・・・でも人助けだもん。そこは我慢

 

「ちょっと塩辛かったけど美味しかったのだ~」

 

と、その子は嬉しそうにそう言った。そして彼女は僕に

 

「私は人食い妖怪の『ルーミア』っていうのだー」

 

「ようかい?」

 

僕はお母さんから妖怪のことは聞いていた。お母さん曰く凶暴なのもいると言ってはいたが僕の目の前にいる子はどう見ても凶暴そうには見えなかった

 

「そーなのだーねぇ、君の名前は何なのか?」

 

「僕は博麗さくらだよ。よろしくねルーミアちゃん」

 

「よろしくなのださくら~」

 

と、僕とルーミアちゃんは互いに挨拶する

 

「ねえ、さくらはここで何をしてたのだ?」

 

「僕?僕は幻想郷のことをもっと知りたくて今、お外歩いているんだよ?」

 

「そうなのか~?」

 

「うん。ルーミアちゃん。ここいら辺でなんかいい場所とか知っている?」

 

僕がそう訊くとルーミアちゃんは考えるそぶりをする

 

「う~ん・・・・あ、そうだ!この後大きな湖でチルノたちと一緒に遊ぶんだけどさくらも一緒に来るか~?」

 

「湖!?うん!いくいく!僕も行く!!」

 

ルーミアちゃんの誘いに僕は頷く。僕は生まれてから湖なんか見たことがなかったからだ。それにルーミアちゃんの友達もとても気になる。

好奇心に勝てない僕はルーミアちゃんについていくことにした

 

「じゃあ、さくら~行くのだ~」

 

と、ルーミアちゃんは飛ぶ。いつもお母さんやたまに来る魔理沙お姉さんが飛んでいるのを見ているのでさほど驚かなかった。

 

「あ、待ってよルーミアちゃん。僕は飛べないんだよ~」

 

「そーなのか?!」

 

ルーミアちゃんは宙に浮いて驚いていた

 

「うん。ごめんね・・・・・」

 

僕はルーミアちゃんに謝るとルーミアちゃんは降りてきて

 

「じゃあ、運んであげるのだー」

 

「え?」

 

そう言うとルーミアちゃんは僕を抱え上げて宙を飛ぶ。これはさすがに驚いたがルーミアちゃんは妖怪だからきっと不思議な力があるんだろうと僕はそう思ったのだった

そして僕はルーミアちゃんに持ち上げられながら湖へと向かうのであった

 

 

 

 

一方、博麗神社では・・・・

 

「おぉ~い霊夢。遊びに来たぜ~・・・・・て、あれさくらは?」

 

部屋の中でお茶を飲んでいる霊夢に魔理沙がやって来た

 

「ああ…魔理沙ね・・・・て、その手に持っているおにぎりは何なのよ?」

 

「ああ台所に美味しそうなおにぎりが置いてあったからな。貰うぞ」

 

そう言い魔理沙はおにぎりにかぶりつくのだが・・・・・

 

「っ!?げほっげほっ!、おい霊夢。ナンダコレ!?」

 

「何っておにぎりでしょ?」

 

「いやいや、これ塩のかけすぎだろ!すごいしょっぱいぞ!」

 

「え?・・・・・」

 

魔理沙の言葉に霊夢は魔理沙の持ってきたおにぎりの一つを食べると

 

「しまった・・・・朝早く起きて、さくらのために張り切って作ったんだけど。かけすぎたわ・・・・」

 

「え?さくら?…そう言えばさくらは何処だよ姿が見えないけど・・・・・・お前まさか追い出したのか!?」

 

「そんなわけないでしょ!さくらは今外で遊びに行っているのよ!!」

 

「な、なに!?」

 

そう言って魔理沙は部屋を飛び出ようとする

 

「どこ行く気よ!」

 

「人里に行って知らせないと!あの過保護でさくらを部屋に閉じ込めてた霊夢が外に遊びに行かせるなんてきっと天変地異が起こる」

 

「どういう意味よそれ#!!あとさくらのことはまだ知らせるな!!」

 

と、神社の中はドタバタしていた。

一方、湖にあるとある赤い大きな屋敷の中では・・・・・・

 

 

 

「咲夜・・・・」

 

「はい。なんでしょうかお嬢様?」

 

「湖に行ってそこにやってくる人間の男の子をこの屋敷に連れてきなさい・・・・あの子はとても大きな運命を持っている。きっとこの計画で私たちの強いカードになるわ・・・・」

 

「かしこまりましたお嬢様」

 

そう言い主人らしき少女の言葉に従者らしき人物はそう言い背後から姿を消し、残された人物はワイングラスを持つと・・・・

 

「さぁ・・・勝負よ。博麗の巫女」

 

と、そう言うのであった

 

 

 

 

 




※ボディスパーク:ウルトラセブン第47話「あなたはだぁれ?」でウルトラセブンが光に弱いフック星人に使用した技である


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誘拐は決して愉快じゃない

「それっ!!」

 

「うわぁー!!すごいチルノちゃん!」

 

「へっへー!あたいはすごいでしょ~!」

 

幻想郷にある大きな湖のところで、僕と森で知り合ったルーミアちゃん。そしてルーミアちゃんの友達のチルノちゃん。大精霊ちゃんこと大ちゃんと一緒に水切り遊びをしていて今チルノちゃんが投げた石が20回以上水の上を跳ね飛んで行った

 

「次はさくらの番なのだ~」

 

「頑張ってさくら君!」

 

ルーミアちゃんと大ちゃんの声援に僕は頷いて平たい小石を掴み、先ほどチルノちゃんが投げたのと同じやり方で思いっきり投げてみた

 

ピチャッ!ピチャチャッ!!ポチャン!

 

僕の投げた小石はチルノちゃんほどじゃなかったけど何回か跳ねて水面に沈んでいった

 

「おおっ!さくらもすごいのだ!!」

 

「すごい!さくら君!!初めてなのに!!」

 

「さいきょーのあたいほどじゃないけど誉めてあげるわ!」

 

「えへへ・・・・・」

 

初めてできた友達に褒められ、嬉しくなって照れ笑いをする僕。初めて外で遊んでそしてできた友達と遊ぶのがとても楽しかった。そして気が付けばもう夕方になっていた

 

「あ、もうそろそろ帰らないと」

 

「そうだね。もうすぐ日が暮れるもんね」

 

「じゃあ、さくらまたね~」

 

「ばいば~い!!」

 

「うん!みんな、ばいばい」

 

そう言うとみんなは手を振って飛んで帰って行っちゃった。少し寂しも気がしたけどまた明日会えるから・・・・・だから寂しくないもん。そう僕は自分にそう言い聞かせた

 

「あ、暗くなる前に早く帰んないとお母さんに怒られる」

 

僕は急いで神社に向かうため森に入った。本当は暗くなる時に一人で行っちゃいけないってよく来る魔法使いのお姉ちゃんに言われていたけど、遅くなったらお母さんとの約束を破っちゃう。僕がそう思っていると・・・・・

 

キュルルル~~

 

「あ・・・///」

 

急にお腹が鳴った。そう言えばお母さんの作ってくれたお弁当、ルーミアちゃんに全部上げちゃったんだっけ・・・・・・

ルーミアちゃんが喜んでくれたのは嬉しいけど、やっぱりお腹が空く・・・・どうしよう。そう思った時だ

 

「・・・・・ん?」

 

その時僕は何か変な視線を感じた。辺りをきょろきょろ見渡しても誰もいない?気のせいかな?なんかあの茂みら辺から変な視線を感じたんだけど・・・・・僕は首をかしげる

 

「あ、早く帰らないと・・・・」

 

ふいに僕の脳裏にお母さんが怒っているというか笑っているが目が笑っていない姿が浮かび上がってしまう。その姿に僕は身震いがし、森の中を入ろうとしたその時、頭になにかぶつかるような衝撃がした

 

「きゅ~」

 

空腹で今にも倒れそうな僕に追い打ちをかけるかのように頭になにかの衝撃が襲い僕はそのまま気を失うのであった・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間を遡り、さくらの様子を見る者がいた

 

 

「・・・・・あれがお嬢様の言っていた子ね・・・・・」

 

私の名前は十六夜咲夜。紅魔館の主であるレミリア・スカーレット様に仕えるメイドです。わたくしはお嬢様の命により湖に来るという男の子を紅魔館へとお連れすることになっています。最初、お嬢様に命令されたときは驚きましたメイドを始めて数十年、まさか人の子を拐ってこいと言われるなんて思ってもいなかったから。

 

でも仕事なので仕事は完璧にこなさないといけません。

そして今私は目的地である湖に来ています。すると湖の片隅に数名の子供たちが遊んでいるのが見えた。

妖精が2人に1人は妖怪ね。もう1人は…短い黒髪で麦わら帽子をかぶった・・・・・・・・女の子?

 

変ね…お嬢様は男の子だと言っていたけど。今遊んでいる人間らしき子はどう見ても女の子だわ。お嬢様が言い間違えたのかしら?ともかく男の娘だろうが女の子だろうが紅魔館にお連れしないと。そう思い私はじっとその子の監視を続けた。

そして時間が経ち夕焼けになったころ、

 

「あ、もうそろそろ帰らないと」

 

「そうだね。もうすぐ日が暮れるもんね」

 

「じゃあ、さくらまたね~」

 

「ばいば~い!!」

 

「うん!みんな、ばいばい」

 

他の三人が去っていき、ターゲット一人になった。好都合だと思った私は、時間を止めてすかさず彼を気絶させて連れて行こうとしたんだけど・・・・・

 

「っ!?」

 

急にあの子が私の方へ振り向き、私は慌てて隠れた。もしかして気づかれた?私はこっそりあの子を見るとあの子はジーと私の隠れている茂みをじっと見た後きょろきょろと見渡す。そして森の中へ入ろうとするのを見た私は、まずいと思った。

しかしあの子は何処かしら勘が鋭そう。時間を止めて接近してもすぐに回避されそうだわ。

 

ここは何か気をそらしてその隙に接近してあの子に眠ってもらうしかないわね・・・・・・でもどうやって・・・・・

 

そう私が考えていると、不意にそばに在った小石を見つける。そうだ。これで気をそらそう。

そう思い私は小石を手に持ち、あの子の後ろにある木に向けて投げた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

・・・・・・そのつもりだった。

 

 

 

 

カツゥーン!!

 

「きゅ~」

 

「っ!?」

 

私の投げた小石は木ではなくあの子の頭に見事にクリーンヒットし、あの子はとてもかわいらしい声をあげて倒れた

 

「・・・・・・・はっ!?しまった!!」

 

かわいらしい声に思わず見とれてしまったが、すぐに事の重大さに気づいてしまう。

私としたことがつい、昔・・・・というよりあの中国にナイフを投げる感覚で投げてしまった。

どうしよう。誘拐する前にその子を殺してしまった!!

顔を青ざめ慌てて私はその子のそばに行く。もし死んでいたら、お嬢様になんて言わなければ・・・いいや、それよりも罪もない子供を殺してその子の親になんて詫びればいいのか・・・・・

ああ…こんなことになってしまうんだったら、普通に声をかけて紅魔館へ誘導するべきだった。そう、ものすごい罪悪感を感じながら私は倒れている子を見る。

幸いにもその子は目を回して気絶していただけだった

 

「ほぉ・・・・・よかった」

 

死んでいないことに安心して私はほっと息をつく。しかしその子の頭にはたんこぶができていた。予定とは違うけど、とにかくこの子を手当するため私は紅魔館へ運ぶことにしその子を抱きかかえる・・・・

 

「・・・・・いい匂い」

 

その子を抱きかかえた瞬間、やわらかい感触と花のような、いい香りがした。なにより、その匂いに心がポカポカと暖かくなる感じに私はどこかしらの懐かしさを感じたのだった。

 

「・・・・・・はっ!いけない。いけない」

 

私ははっと我に帰り、その子をわが主のいる紅魔館へと連れて行くのであった・・・・・

 



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目覚めたらそこは真っ赤な館だった

博麗神社

 

「・・・・・・・・遅いわね」

 

鳥居の前で霊夢は立って、わが子であるさくらを待っていた。空はもう暗くなっており、どこかしら烏の鳴き声が聞こえた

 

「いったい、いつまで遊んでいるのよ、あの子は・・・・」

 

霊夢はため息交じりにそう言う。神社の中ではすでに夕食の準備を済ませており、さくらが帰ってきたらすぐにご飯が食べれるようにしていた

 

「全く。せっかく私が張り切って御馳走を作ったのに・・・・・・」

 

あの子が約束を破る子じゃない。それは霊夢がよく知っていた。だが約束の日暮れになってもさくらは帰ってこない。

初めて外に出て、初めてできた友達と遊ぶのに夢中なのか・・・・それとも何かの異変に巻き込まれたのか…あるいは

 

「もしかしてここが嫌になったんじゃないのかな・・・・・」

 

ふいに霊夢がそう呟く。もしかしたらさくらはここが嫌になって出て行ってしまったんじゃ・・・・・そう思ってしまった

 

「やっぱり、こんなお母さんは嫌だったのかな・・・・・」

 

少し悲しそうに言う霊夢。いつもさくらに自立できるように掃除だとか選択だとかはやらせていた。料理はさすがに幼い子が包丁や火を扱うのは危ないので一緒にやっていた。そのことに霊夢自身は母親らしいことをさくらにしてあげれていないんじゃないかと思っていたのだ

 

『お母さん~♪』

 

霊夢の脳裏に無邪気に笑うさくらが浮かんだ

 

「さくら・・・・・」

 

霊夢はそう呟くと

 

「きっと森の中で迷子にでもなっているのかもしれないわね。少し探すか・・・・」

 

そう言い、霊夢は飛び上がるのであった

 

 

 

 

 

 

 

寒い・・・・・痛い・・・・・苦しい

 

僕の脳裏にはあの嫌な思い出が浮かび上がった

 

『この出来損ない!何度言えばわかるんだ!!』

 

『私たちはね忙しいのよ!ごはんなんかあげる暇もないの!わかったら大人しく部屋の隅に居な!この失敗作!!』

 

いつものようにお父さんとお母さんだった人たちに殴られ蹴られ、僕は部屋の隅っこの壁に寄り添った。痛い・・・・・もう楽になりたい・・・・

冷たい北風が吹く中、僕はそう思った。なんで僕は生まれてきちゃったんだろう・・・・僕が生きる意味なんてあるのだろうか・・・・何のために僕は生きているのだろうか・・・・

辛く激しい痛みと激しい寒さが襲う中僕はそう思った。

すると、急に僕の体が暖かくなった

 

「え?・・・・」

 

急に僕の体がポカポカ暖かく感じ僕は辺りを見るとそこは布団の中で隣には・・・・・

 

「さくら・・・・どうしたの?」

 

「ん・・・・・お母さん?」

 

「またうなされていたわよ。大丈夫?」

 

そこには本当のお母さんじゃないけど。僕にとってお母さんのようなお姉さんが優しく僕に話しかけていた。お母さんは少し男勝りで守銭奴?って魔法使いのお姉ちゃんが言っていたけど。本当はとっても優しいお母さんなんだ。そしてお母さんは僕をぎゅっと抱きしめた・・・・

 

「お母さん・・・・・?」

 

「さくら・・・・今まで辛かったと思うけど、もう大丈夫よ。これからは私が・・・・お母さんがあなたを絶対に守るわ。もうあなたに怖い思いをさせたりしないからね。だから安心してさくら・・・・」

 

「お母さん・・・・・」

 

僕はお母さんの心暖かく優しい言葉に涙を流し、ぎゅっとお母さんを抱きしめるのであった。

そしてその瞬間僕の周りの景色が光りだすのであった

 

 

 

 

 

「ん・・・・・ううん・・・」

 

目をさましたら、そこは知らない部屋だった。辺り一面真っ赤な部屋でふわふわの柔らかいベッドで寝ていた。一瞬だけ殺人現場にでも来ちゃったのかと思ったけど、赤いのはただたんにそう言う色の部屋だとわかった。

だけど・・・・

 

「・・・・・・」

 

なんで、僕がここにいるの?僕は確か湖でルーちゃん(ルーミアのこと)達と一緒に遊んで、それで日が暮れて、お家に帰ろうとしたら・・・・・・したら・・・・・

・・・・この先、僕は何やってたんだろ?

僕が首をかしげると、ドアが開き、そこから奇麗な銀色の髪をしたお姉さんが入ってきた

 

「あら、目が覚めたのね。よかったわ」

 

お姉さんはにっこり笑ってそう言う

 

「・・・・お姉さんは誰?ここは何処なの?」

 

「・・・・私は十六夜咲夜。ここ紅魔館のメイドよ」

 

「・・・・紅魔館?」

 

「そうよ。あなた湖で倒れていたのよ?覚えていない?」

 

「・・・・ううん。でもなんか頭になにか当たったようなのは覚えてるよ。お姉さんがここに運んできてくれたの?」

 

「ええ、そうよ」

 

そう言うと僕はまず言わなきゃいけない言葉があった。

 

「お姉さん。ありがと。」

 

どんな人でも妖怪でもちゃんと感謝を込めてお礼を言う。そうお母さんに教わったことを僕はした。

 

「え・・・ええ・・・どういたしまして」

 

僕がそう言いい頭をさすると咲夜お姉さんは少し気まずそうな表情をした。あれ?何でかな?・・・・・・あ、それよりも!!僕は外を見ると外はすでに暗くなっていた

 

「どうしたの?」

 

「僕・・・家に帰らないと。お母さんが心配している」

 

「でも外は暗いわよ?」

 

「でも、お母さんに暗くなる前に帰るって約束したから・・・・・」

 

僕がそう言うと咲夜お姉さんは僕の目線ぐらいの位置でしゃがみ

 

「約束を守ろうとするのは偉いわ。でも今夜はもう真っ暗だし、その中で出歩いたら怖い妖怪に襲われて怪我をしちゃうかもしれないわ。もしあなた怪我しちゃったらお母さんは悲しむと思うわ」

 

「・・・・・・・」

 

「よし。じゃあこうしましょ。今夜は泊っていきなさい。そして明日になったら私があなたのお母さんのところまで送ってあげる。もちろん私がお母さんに説明してあげるから。だから、ね?」

 

お姉さんに優しく言われた。本当は早く帰りたかったけど、確かに怪我したらお母さんはきっと悲しんじゃう。

 

「・・・・うん。わかった」

 

「ごめんなさいね・・・・・えっと。あなたお名前は?」

 

「僕はさくらっていうの」

 

「そうさくらちゃんね。さくらちゃん。悪いけどこれからお嬢様のところに連れて行かないといけないから一緒に来てくれる?」

 

「お嬢様?」

 

「私の主人であり、この館の主人よ」

 

「どんな人?」

 

「それは会ってからのお楽しみ」

 

そう言うと僕はベッドから降りてお姉さんと一緒に部屋を出るのであった

 

 

 

 

咲夜サイド

 

「はぁ・・・・あの子大丈夫かしら・・・・」

 

廊下を歩き私は運んできた少女のことを思い出す。館に帰った後お嬢様に『目的は達したけど、怪我させてどうするの?』と呆れられた。確かにこんなはずじゃなかった。

そしてあの子のいる部屋に入るとあの子は目を覚ましていた。

名前はさくらって言うらしいけど。なぜか女の子なのに僕っていう変わった子だった。そういえば前に小悪魔が持ってた本にあったわね、女の子なのに一人称が僕って言う娘。確か僕っ子ていうのかしら?

それよりもさくらちゃん。家に帰りたがってしかもお母さんのこと心配している。お母さん想いの優しい子ね・・・・

いくらお嬢様の命とはいえすごい罪悪感を感じるわ・・・・

でも、あの涙目姿・・・・なんでしょう何か母性本能というか保護欲を沸き立つようなそんな感覚はするわ・・・・いやいや、そう言う問題ではないわ。今は誘拐してしまったその子のことを考えなくては

 

私はその後、なんとかさくらちゃんを説得し、さくらちゃんは納得してくれた。

 

ああ・・・・あの子の笑顔、本当に見れば見るほど可愛いわ。将来が楽しみね。下手をすればお嬢様よりもずっと魅力的…あぁ、ダメよ私、私はお嬢様一筋なの…

 

「咲夜お姉さん?どうしたの?」

 

「え?何でもないわさくらちゃん。さ、行きましょう」

 

そう言い私はさくらちゃんを連れてお嬢様のところへと案内した。

でもお嬢様は何でこの子を連れてこいと言ったのでしょうか?確かに可愛さは百点満点な子だけど。

そのこと博麗の巫女を倒し幻想郷を手に入れるのに何か関係があるのかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、森の中・・・・・・

 

「ひ、ひえぇ~お助けをー!!」

 

「俺たち何もも知らないって!!」

 

「嘘を言うな!あんたたちうちの子をどこにやったの!まさか食べたんじゃないでしょうね!!」

 

森の中で霊夢が大ムカデや大蜘蛛らの凶暴人食い妖怪を袋叩きにしていた。

 

「ほ、本当です!!俺たち巫女様のお子さんなんて襲ってないですよ~!!」

 

「私たち、そんな子供を見ていません!!」

 

「黙らシャラープ!!これはじっくりと訊かなきゃいけないようね~#」

 

「「ひぃ~~!!???」」

 

「覚悟しなさい!レッドファイト!!」

 

「それ巫女さんのセリフじゃないでしょ!?」

 

「いや、赤いからそうなのか?」

 

と、暗い森の中で叫び声が聞こえるのであった・・・・



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ナイト・オブ・ヴァンパイア

咲夜に連れられたさくら。しかも真夜中なので廊下は蝋燭の火の光でうっすらと明るくまるで某ネズミランドのお化け屋敷のようだった

 

「うっ・・・・」

 

真夜中の神社とは違う不気味さ。いつも夜の神社を歩くときは母親である霊夢がそばにいてくれたが、今夜はその霊夢はいない。

その不安さでさくらは少し震えていた

 

「さくらちゃん。どうしたの?」

 

その状況を見た咲夜はさくらに訊くと

 

「・・・・・怖い・・・・お姉さん。手…繋いでもいい?」

 

「………」

 

「お姉さん?」

 

「え、ええ、良いわよもちろん」

 

さくらの言葉に一瞬彼女は黙ってしまったが、すぐに言葉に出せないような笑顔を見せ、咲夜は彼の手をそっとつかんだ

 

「もうこれで怖くないわよ。さくらちゃん」

 

「うん…ありがとうお姉さん」

 

「///」

 

天使のような笑みでそういう咲夜にさくらは無邪気な笑顔でそういう、その笑顔に咲夜は顔を赤く染める。そしてしばらく二人は手をつなぎながら廊下を歩き、そして二人は大きな扉の前に着く

 

「さくらちゃん。ここで待ってて。お嬢様とお話しをするから」

 

「うん・・・・」

 

「大丈夫。すぐに戻るから・・・ね?」

 

咲夜はそう言うが桜の不安そうな顔を見て咲夜は安心させるように頭を優しくなでにっこりと笑うと、さくらは頷く

咲夜は内心ではさくらの手を放したくはなかったが・・・・・・

扉の向こうで

 

「咲夜。来たのね。客人を待たせるわけにはいかないわ。そのまま入りなさい」

 

と、幼い少女の声がした

 

「かしこまりましたお嬢様」

 

そう言い咲夜はさくらの手をつないだまま部屋に入る

 

「ご苦労様、咲夜。その子が…ね。それにしてもまぁ、手をつないで楽しそうね?」

 

部屋の中央にはさくらより二、三歳ぐらい年上の少女が立っていた。そして咲夜がさくらの手をつないでいる姿を見て、悪戯っぽい笑みでそう言う

咲夜はすぐに手を離し、主人である彼女の後ろへ着こうと思ったのだが、

 

「お姉さん…」

 

と子犬が捨てられそうな目で咲夜を見ながら繋いだ手を離さないとばかり体全体で抱きついてきた。その姿に咲夜はどうするべきか困っていると

 

「咲夜、そのままでいいわ、こんにちは可愛い小さなお客さん。私はレミリア、レミリア・スカーレットよ。あなたの名前は?」

 

「ぼ・・・僕は・・・・さくらです。初めましてレミリア・・・・さん」

 

さくらは丁寧にお辞儀をして自己紹介をする

 

「これはご丁寧にどうも。見た目の割に紳士的じゃない」

 

そう言うとレミリアはさくらの前に立ち、手を差し伸べる。

 

「握手をしてくれるかしら?」

 

「うん」

 

そう言いさくらはレミリアの手を握るとレミリアは満面の笑みで

 

「歓迎するわ。あと、私はこう見えて500歳の吸血鬼なの、よろしくね」

 

「吸血鬼?じゃあドラキュラさんなの?」

 

「う~ん・・・・ドラキュラ公とは遠い親戚になるのかな?まあ同種族よ」

 

とニコッと笑って言うレミリア。咲夜が桜がレミリアが吸血鬼だと知って怯えるんじゃないかと思ったのだが・・・・・・

 

「本物の吸血鬼!?すごーい!!」

 

ズコッ・・・・

 

予想とは全く違う反応に咲夜はもちろんレミリアも思わずずっこけてしまう。さくらは人見知りなところがある反面、好奇心がとても強い子で、霊夢にずっと質問攻めしたことがよくあった

 

「じゃあ、咲夜お姉さんも吸血鬼?」

 

「いえ、私は人間よ」

 

咲夜は苦笑してそう言うとさくらは

 

「あ、あの!質問してもいい?レミリアさん?」

 

「あら?なにかしら?」

 

「あ、あの!吸血鬼ってニンニクが嫌いってホント?」

 

「ええ、私はニンニクアレルギーなの。食べると喉が腫れるのよ。後、銀も駄目ねそれもアレルギーだわ」

 

銀アレルギーは本当だけどにんにくはただの好き嫌いでしょ?咲夜は聞こえないように小声でそういう。そして

 

「じゃあ、十字架も駄目なの?」

 

「ええ、悪魔は宗教上、嫌わなければいけないお決まりなのよ」

 

「じゃあ、心臓に杭を刺されたら死んじゃうってホント?」

 

「普通、心臓に杭を刺されて死なない生き物はいないでしょ?もしいたら、この私が見てみたいわ」

 

と呆れた口調でいるレミリアだが、すぐにフフッと笑い

 

「あなたは面白い子ね。気に行ったわ。今夜はゆっくりしなさい・・・・」

 

「うん。ありがとうレミリアさん」

 

「(かわいい子・・・・・・///)

 

「(お嬢様…分かります…分かります。あの可愛さは///)」

 

さくらの無邪気な笑顔に二人は顔を赤くし照れる

 

「さて・・・・今夜はゆっくりなさいさくら」

 

「うん…でも明日は・・・」

 

「明日?」

 

「お嬢様。実は・・・・・」

 

咲夜はレミリアに先ほど部屋でさくらと話した内容をレミリアに話した

 

「なるほど・・・・・確かにあなたのお母さんに何も話さずにつれてきたのはまずいわね・・・・・でも明日帰られると私も困るのよ」

 

「・・・え?」

 

「実はね。私があなたを連れてきたのはあなたの力がどうしても必要なのよ」

 

「僕の力が?」

 

「そう。あなたにしかできないことなのよ」

 

レミリアがそう言うとさくらはしばらく黙って考えていた。そして

 

「うん!わかった!僕にできることなら手伝う」

 

「え?さくらちゃんいいの?お母さんのところに帰りたくないの?」

 

咲夜が少し驚いて訊くと

 

「うん。お母さんに会いたいけど・・・お母さんいつも言ってたよ『困っている人がいたら、妖怪でも人間でも助けなさい』ってレミリアちゃんが困ってるなら僕、ここに残る」

 

「そう…いい母親ね・・・・ではこうしましょう。明日、彼方の家に使者を送ってあなたを借りたいって言うわ。なんならあなたのお母さんをここに連れて来て、住んでもらっても構わないわ」

 

「ほんと?」

 

「ええ。構わないわ。」

 

さくらの言葉にレミリアは妖艶な笑みを見せた後

 

「さて・・・あなたよく見たところ泥だらけね。これはいけないわ。咲夜、直ぐお風呂の準備をなさい」

 

「既に完了しておりますわ」

 

「…そう、じゃあお願いね」

 

「かしこまりました。さくらちゃん、こっちへ」

 

「うん。レミリアさん・・・・またね」

 

そう言いさくらは咲夜に連れられて、部屋を出るのであった。

 

 

そして二人が部屋を出た後、一人部屋に残されたレミリアは・・・・

 

「何あれ!?超可愛いんだけど!!」

 

少しは鼻血を出してそう叫ぶレミリア

 

「(何あの子、めちゃくちゃ可愛いわ!あんな笑顔向けられたら誘拐した罪悪感に押しつぶされそうじゃない!!何あの子は天使なの!天界から遣わされた天使なの!?ああ、吸血鬼であり悪魔である私がここまで心がきゅんとするなんて!!!)」

 

先ほどからレミリアはさくらの態度に心が熱くなる感覚に襲われていたのだ。

 

「(それにしてもあの咲夜まであんなにやけた顔をするなんてね・・・しかも手を繋いじゃって。そういえばさくらは男の子のはずよね?全然そうは見えないけれど。咲夜はずっと『さくらちゃん』って呼んでたけど女の子と勘違いしてるのかしら?でも行く前にちゃんと伝えたし…まあ、いいか・・・はぁ。とにかく計画を始める前に彼の家族に使者を送んないとね。ここまま誘拐犯と呼ばれるのもなんだか目覚めが悪いし、住所は・・・・後であの子に訊けばいいか)」

 

そう自分の考えに結論をつけ納得するレミリア。そしてレミリアは空に輝く赤く染まる月を見て

 

「私の見た運命・・・・彼こそがあの子を・・・・フランを救ってくれる鍵になってくれるわ。その時までもう少しだけ我慢して頂戴ね」

 

レミリアは一人そう呟くのであった

 

 

 

 

 



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過去の傷

咲夜に浴場へと連れられたさくらは服を脱いで、先に風呂に入っていた。

 

「大きいお風呂・・・・・」

 

さくらは見たこともないような大きな浴場を見てポツリと呟く。浴場は大理石の床に池みたいに広い湯舟。そしてその湯舟にある獅子の口からお湯が出ていてまるで高級ホテルのような感じの浴場であった

さくらは体を洗って、一人広い湯舟に入る

 

「・・・・・木の匂いがしない・・・・」

 

さくらは霊夢の家でよく霊夢と一緒に入っていた檜でできたお風呂を思い出す。桜はあの木でできたお風呂の木の香りが好きだったが、ここではその香りはしない。

 

「・・・・お母さん」

 

さくらは母である霊夢を思い出す。きっと自分のことを心配している。そう考えるとさくらは胸が締め付けられるようなつらい思いを感じた。

すると・・・・

 

「さくらちゃん。お湯加減はどう?」

 

扉の向こうで咲夜の声が聞こえた

 

「うん。気持ちいいよ」

 

そう返事をすると

 

「そう…ならわたくしも入ろうかしら?」

 

そう言うと、咲夜が一糸纏わぬ姿で入ってきた。そして咲夜はにっこりと笑うとさくらもにっこり笑みをこぼすと

 

「咲夜お姉ちゃん。背中流してあげる」

 

「え?いいの?」

 

「うん。僕いつもお母さんの背中流してたから」

 

「そう…じゃあ、おねが・・・・・っ!?」

 

咲夜がさくらの無邪気な笑顔に微笑みそう言うと、その瞬間、咲夜の時間がピタッと止まった(※能力ではなく、文字通りに)。

そう女の子だと思っていたさくらに女の子にはないものがあったからだ。そしてしばらく固まっていた咲夜だが、

 

「お、男の子!?」

 

「?」

 

咲夜が驚いて絶叫をする中、さくらは首をかしげる

 

「さ…さくらちゃん?じゃなくてさくら君は男の子なの?」

 

「うん…そうだよ?どうしたの咲夜お姉ちゃん?もしかして背中流すの嫌だった?」

 

「え?いいや違うわ。ちょっと驚いただけよ。ごめんね驚かせちゃって」

 

さくらが男だということに驚いたものの、咲夜は男でも女でもさくらはかわいいからと割り切り、そして咲夜自身も小さい頃は美鈴とよく入っていたいたし、たまには人に背中を流してもらうのも悪くはないと思った咲夜はさくらに背中を流してもらうのだった

 

「じゃあ、行くよお姉ちゃん」

 

そう言い、さくらはスポンジに石鹸をつけて泡立てると、咲夜の背中を優しく洗う

 

「ひゃあ!?」

 

その手のくすぐったさに小さな悲鳴を上げてしまう咲夜

 

「お姉ちゃん大丈夫?痛かった?」

 

「ううん…大丈夫ちょっとくすぐったかっただけだから。そのまま続けて」

 

「うん♪」

 

咲夜の言葉にさくらは嬉しそうにそう言うと再び咲夜の背中を洗う。小さな手が必死に自分の背中を洗う感覚を感じる。その感覚はとても暖かい感じであった

 

「じゃあ流すよー」

 

そう言いさくらはお湯で咲夜の背中を流す

 

「お姉ちゃん気持ちよかった?」

 

鏡越しで無邪気に言うさくらに咲夜は笑顔で

 

「ええ。とても気持ちよかったわ。お返しに私もさくら君の背中を洗ってあげるわ」

 

「いいの?」

 

「ええ・・・さぁ」

 

「う・・うん」

 

さくらは恥ずかしそうにそう言うと背中をくるっと向けた。そして咲夜はスポンジに石鹸をつけ泡立てて洗おうとした時

 

「さ、さくら君!その背中・・・・」

 

咲夜はさくらの背中を見て目を見開く。彼の背中には酷いやけどの跡があったのだ。まるで誰かが熱した鉄板で押し付けたかのように・・・・

 

「・・・・・本当のお母さんに僕が悪い子だって言って付けたの・・・・」

 

「本当のお母さん?」

 

咲夜の問いにさくらは顔を青くし震え始める

 

『ええい!なんでこう、字を書くのが下手なのこの子は!』

 

『痛い!痛いよお母さん!!』

 

『うるさいわ!あんたなんかこうしてやる!!』

 

『うわぁぁーーー熱いよ!!!痛いよー!!』

 

小さいころ実の母親に熱したアイロンを背中に押し付けられたことを思い出したさくらは震え始め今にも気絶しそうになっていた

 

「さくら君!?大丈夫!?大丈夫だから!!」

 

咲夜が抱きしめさくらを落ち着かせる。しばらく咲夜がさくらを落ち着かせてさくらは少しだけ落ち着く

 

「大丈夫?」

 

「うん・・・・ありがとうお姉ちゃん・・・・」

 

咲夜の言葉にさくらは悲しげな表情でそういう。それを見た咲夜は

 

「(それにしても、さくら君にこんな酷い怪我をさせるなんて酷い母親だわ・・・・・もし会ったら、この手で八つ裂きにしてやる・・・・)」

 

さくらにやけどをさせた母親に対し激しい怒りと殺意を覚える咲夜。だが・・・・

 

「そう言えばさくら君。さっき本当のお母さんって言っていたけど…じゃあ、今あなたが言っていたお母さんって・・・・?」

 

「本当のお母さんじゃないよ?でも僕にとっては本当のお母さん。名前がなかった僕にさくらって名前を付けてくれたし、僕が寂しくならないようにいつもそばにいてくれたんだよ」

 

「そう。いいお母さんね・・・・・」

 

そう言い、背中を優しく洗う咲夜。

 

「お母さん・・・今どうしているんだろう・・・・きっと心配してる」

 

「あ・・・・」

 

さくらの心配そうな表情に咲夜は再び、ここに連れてきてしまったことを悔やんだ。主の命とは言え、母親と引き離してしまったんだから

 

「大丈夫よ。明日にはお母さんのところに知らせるから、それまで我慢して・・・・」

 

「うん・・・」

 

咲夜の言葉に咲夜は小さくうなずくのであった。そして咲夜はさくらにお湯をかけ、湯船から出すとタオルで体を拭く。

すると、さくらはウトウトし始める

 

「あら?さくら君。眠いの?」

 

「だいじょうぶ・・・だよ?」

 

「無理はダメよ。部屋に案内するわね?」

 

そいい咲夜はさくらの服を着せて、そして桜の手を繋いで部屋に連れて行きさくらをベッドに寝かせる。

そして、スヤスヤと眠るさくらを見た咲夜は微笑む

 

「(私にも子供がいたらこんな感じなのかしら?)」

 

そう思い優しくさくらの頭をなでる

 

「さくら君・・・・あなたのお母さんが来るまでは。私があなたを守るわ・・・・絶対に」

 

そう小さくつぶやき、さくらと約束をするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森の中・・・・

 

「さくら・・・・・さくら・・・・・」

 

暗い森の中で霊夢はわが子である、さくらをずっと探していた。その姿はもはや亡霊みたいであり、ただ無心に彼を探していた

 

「どこに行ったの・・・・さくら」

 

小さな涙を流し霊夢は夜空を見上げ、愛するこの名を呼ぶのであった



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unOwen地下に潜む赤き少女

紅魔館大図書室

 

「ちょっといいパチェ?」

 

「あら、レミィじゃないの。どうしたのこんな真夜中に?」

 

レミリアが声をかけたのは紅魔館図書室の主であり七曜の魔女。そしてレミリアの親友でもある、パチュリー・ノーレッジだ

 

「あら?私が来ちゃ何か都合が悪いことでもあるの?」

 

「いいえ。それよりも例のレミィが言っていた客人は来たの?」

 

「ええ来たわ。とってもかわいらしいお客様がね」

 

「かわいらしい?ねえ、レミィ。私は疑うのは好きじゃないけど、本当に運命を変える?」

 

「大丈夫よ、そう運命が定めているから」

 

自信満々な笑みでそう言うレミリアに、パチェリーは自分が観た運命の行く末を確信していると感じた

 

「そう。レミィがそう言うのならそうなんでしょうね・・・・それで本当は何しに来たの?」

 

「話が早くていいわパチェ。実は、こあを借りたいのよ」

 

「小悪魔を?」

 

「ええ、ちょっとお使いに行ってほしいのよ」

 

「使い?全く話が見えないわ。ちゃんと説明してくれる?」

 

「ええ。実は・・・・・」

 

レミリアはパチェに事情を説明した。運命を変える力を持つさくらを連れてきたのはいいもののさくらが母親のことを心配し、その不安を取り除くため、また急にいなくなった息子のことを不安に思っている母親にも説明させるため、小悪魔こと、こあにさくらの母親のもとに行かせて状況を説明。できればその母親も紅魔館へ連れて行くということであった

 

「事情は分かったわ・・・・で、なんで小悪魔なの?咲夜ではだめなの?」

 

「知っているでしょ?明日の明朝に例の作戦を始めるって、咲夜は博麗の巫女を倒すための一角としていなきゃいけないのよ」

 

「なるほど…だから戦力外の小悪魔を使いにね・・・・・・分かったわ。後で小悪魔にその子の家に使いに行くように言っておくわ」

 

「ありがと、パチェ」

 

「いいわ・・・・それで、その子の家は何処にあるか知ってるの?」

 

「・・・・・・あ」

 

パチェの言葉にレミリアはしまったというかをになるとパチェはジト目で彼女を見る

 

「・・・・・まず、そのさくらって子にお家の場所を聞くことから始めるといいわレミィ・・・・」

 

「はい・・・」

 

パチェの指摘にレミリアは気まずそうに返事をするのであった

 

 

 

 

 

 

 

その夜、さくらは目を覚ましていた。

 

「おかあ・・・・さん」

 

誰もいない部屋、ベッドに座りそう呟く。今頃霊夢は自分のことをどう思っているのか。心配してくれているのか。それとも・・・・・

 

『さくら』

 

さくらの脳裏に笑顔で自分の名を呼ぶ霊夢の姿が浮かび上がる

 

「お母さん・・・・・・」

 

さくらは目に涙を浮かべてそう言う。明日にはレミリアの使いの人が霊夢に自分がここにいることを知らせに来てくれる

だが、まだ幼いさくらは母である霊夢がいないことに強い寂しさを感じた。

ここ幻想郷に来る前のさくらはいつも一人だった。いつも寒く暗い部屋で一人っきりだ。両親はいつも外に出かけて帰ってくることはほとんどなかった。帰ってきてもいつも憂さ晴らしなのか殴る蹴るの暴行ばかり

だが幻想郷(ここ)に来てからは違った。ぶっきらぼうで守銭奴でそして厳しい時もある霊夢だったが。それでもさくらにはたっぷりの愛情を注いでいたその優しさは、さくらにも伝わっており

そして今さくらは霊夢のことを思うと寂しい気持ちが募るばかりだった

 

「お母さん・・・・・会いたいよ・・・」

 

さくらはそう呟き、窓の方へ行くそして紅魔館から見える夜空を見て

 

「お母さん…僕は・・・僕はここにいるよ」

 

そう言う。そしてさくらは手を伸ばすと、さくらの手から光みたいなのが空へと飛びそして※空から文字が映し出される。

 

「・・・・・」

 

さくらはその文字で霊夢が気づいてくれることを祈った。なぜ自分にこのような能力を持っているかはさくら自身にも分からなかったが、なぜか無意識にそれができるのだ。

そしてさくらは窓から離れる。すると・・・・

 

「・・・・え?」

 

部屋の外から歌声が聞こえる。あまりにも静かなためその声ははっきり聞こえた

 

「誰・・・・・だろう?」

 

歌声の主がだれなのか興味を抱いたさくらは部屋を出て廊下を歩く。いつもなら薄暗いところは怖くて行けないのだが、その歌がだれが歌っているのかという好奇心が勝り、その歌声のする方へどんどんと歩き出すのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

とある暗い部屋・・・・・

 

「暗い部屋の中、私は一人・・・・・」

 

小さなピアノのおもちゃを弾きながらわたしは一人歌う。この部屋に閉じ込められてから何年経ったのかわからない。お姉さまと同じ永遠を生きる私はずっとこの部屋で一人っきりで人形遊びをしたり、咲夜がある所から買ってきた外の世界から持ち出されたというゲームなんかで遊んだりもした。けど、たった一人じゃつまんない・・・・・

 

「寂しい・・・・・」

 

お姉さまたちはいつも私を仲間はずれにして楽しそうにしている。それに対し私はずっと一人このまま暗い部屋の中を何も言わない人形相手に過ごすだけ・・・・これほど寂しくつまらないことは他にあるのだろうか・・・・

ああ…誰か私を外の世界に出してくれないかな・・・・・

私は一人そう呟くと階段の方から足音が聞こえてきた。

 

いつも料理を運んできてくれる足音ではない。その足音は扉の前で止まり、数回のノックの後、扉は開かれた。

 

「こ・・・・こんにちわ・・・」

 

入って来たのは私より小さな……女の子?

 

 

 

 

 

 

 

歌声に誘われた僕は廊下歩くと階段を見つけた。その階段の下から歌が聞こえる。僕は薄暗い地下階段を下りていく。暗くて怖かったけど。あの歌を歌っている人がどういう人なのか僕は知りたかった。

そして階段を降りると目の前に赤い扉があった。歌声はここから聞こえた。僕は戸を叩く。入る前に戸を叩いてからって前にお母さんに教わったから。そして僕は戸を叩きそっとドアを開けて中に入る。そこは地下室?でもベッドがあるしたくさんの可愛いお人形があるし、誰かの部屋だって言うことが分かった。

 

「だぁ~れ?」

 

「ひゃうっ!? だだだ、誰か居るの!?」

 

急に真後ろから、しかも耳元で誰かにそう言われ、僕はびっくりして振り向くと、そこには赤い服を着て赤い目をした金髪の女の子が立っていた。

そしてその子は僕の目を覗き込むように見て

 

「貴女はだぁれ?」

 

「ぼ・・・僕の名前はさくら・・・・博麗さくらだよ?君の名は?」

 

「私は・・・フランドール。フランドール・スカーレットよ」

 

「フランドール・・・・・じゃあ、フーちゃん」

 

「フ・・・・フーちゃん?」

 

「うん。あ・・・・ダメだったかな?」

 

「ううん・・・・・・それよりあなたは人間?」

 

「うん。そうだよ?」

 

と僕はそう言うとフーちゃんは僕の目をジーと見て

 

「咲夜以外の人間を見るのは初めてだわ・・・・・」

 

「そうなの?あ・・・あのフーちゃん。フーちゃんてもしかして吸血鬼?」

 

「ええ。そうよ。そうだけど、なんで?」

 

「とっても綺麗な羽が生えてるから。奇麗な羽に奇麗な目をしてるからまるで天使みたいだよフーちゃん」

 

「そ・・・・そうかな?」

 

僕の言葉にフーちゃんは顔を赤くしてそして僕の顔をジーと見る

 

「ふ・・・・フーちゃん?」

 

「なに?」

 

「顔が近いよ?」

 

「別にいじゃない減るもんじゃないし・・・・それよりさっ君」

 

「さっ君?」

 

「さくらだから、さっ君。さっき私のことフーちゃんて呼んだでしょ?だから私もあなたのことをさっ君て呼ぶ。いいよね?」

 

「さっ君・・・・・・うん!いいよ!!」

 

僕は笑顔でそう言うと、フーちゃんは少し顔を赤くしちゃった。どうしたんだろ?

 

「こ・・こほん・・・じゃあ、さっ君。こっち来ない? 退屈で仕方がないのよ」

 

「うん、行く!」

 

僕はフーちゃんに手を引っ張られて部屋の奥に行くのだった。

 

 

 

 

これが僕とフーちゃんの初めての出会いだった

 




※ウルトラサイン
M78星雲ウルトラの星のウルトラ戦士が通信用に使用する信号で手やビームランプ等から上空にエネルギーを発射して文字を形成し、メッセージを伝える。
地球から300万光年先にあるウルトラの星にすら一瞬で届くほどの性能を誇る


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巫女の息子と吸血鬼の妹の友情

深夜の紅魔館の廊下、一人の寝間着姿の女性が歩いていた。そう子の紅魔館のメイド長である咲夜であった。

こんな真夜中になんで彼女が歩いているのか?

それは・・・

 

「(ふふふ・・・・・さくら君は今頃眠っているのかしら?もし寝ていたら添い寝して、私の抱き枕に・・・・・)」

 

誰も見たこともないような下心丸出しでにやにやした表情をしていた。

夜中を歩く目的はそう・・・・・さくらだ。

さくらの寝顔を見ること、あわよくばベッドに入り込みそのまま添い寝しようという魂胆だ。

他にも何か企んでいるみたいだが‥‥それは咲夜自身にしかわからないだろう。

そしてさくらがいる部屋につき、そしてそっとドアを開け中を覗き見る

 

「さくらく~ん。起きていますか~?」

 

と、声をかけるが返事がない。そしてベッドにある布団を見ると大きく膨れていることから、布団の中に入っていることがわかる

 

「ふふ・・・あらあら・・・・」

 

咲夜は妖艶な笑みをし、布団に近づくと布団の中でもぞもぞと動いているのがわかった

 

「ふふふ・・・・さくらくん。鍵もかけないで不用心ですよ~?」

 

そう言いながら、布団の中に入り込む咲夜そして

 

「そうじゃないと‥‥お姉さんがさくら君に悪戯しちゃいますよ~?」

 

そう言い、咲夜はえ妖艶な笑みを見せるのと同時にさくらが逃げないようにギュッと抱きしめ自分の手をその人物の太ももらしきところを触ろうとした瞬間、抱きしめた人物がくるりと咲夜の顔へと振り向く

 

「へぇ~悪戯って‥‥どんな悪戯なのかしら咲夜?」

 

「お!おおおおお、お嬢様ぁっ!!!????」

 

その人物に咲夜は心臓が止まりそうなぐらいの衝撃を受けた。さくらだと思って抱き着いていたのは、なんとレミリアであった

 

「お、お嬢様!?なんでここに!?」

 

「それはこっちのセリフよ咲夜。なんであなたがここにいるのかしら?しかもこんな真夜中に?」

 

「それはその・・・・・さくらちゃんが一人で寂しくないか心配で寝顔を見に・・・・・」

 

「それであわよくば夜這いをかけようとしたと?」

 

「い、いいえ。そんなつもりじゃ・・・・・・と、言うより。お嬢様。お嬢様こそ。なんでさくら君の部屋に?ご自身の部屋はもっと奥ですよね?」

 

「え゛っ‥…え…とそれはそのね?何というか・・・・・」

 

咲夜の指摘にレミリアは急に動揺し始める。その時、咲夜は何か悟ったのか目を細め

 

「お嬢様‥‥…もしかして抜け駆けしてさくら君を?」

 

「ギクッ・・・・・・・」

 

「それに香水の香りがしますね?それで誘惑しようと考えていましたか?」

 

「ギクギクッ!!」

 

「ほら、お嬢様?怒ったりしませんから私の目を見て何か仰ってください・・・・・ね?」

 

怖いくらいの笑みでそういう咲夜にレミリアは珍しく悪寒を感じる。そして・・・・・

 

「え…と…その・・・・・咲夜!そんなことよりも緊急事態よ!」

 

「(ごまかした・・・・)それでその緊急事態とはお嬢様?」

 

「わからないのかしら?さくらがいないのよ」

 

「・・・・・・はっ!?」

 

レミリアの言葉に咲夜ははっとした表情になる。そう今まで主であるレミリアに先を越されそうになったことで意識を取られていたが、本来ここはさくらが泊っている部屋。だが、この部屋には肝心のさくらがいないのだ

 

「お嬢様・・・・・・まさか・・・・・食べました?」

 

「食べるわけないでしょ!私を何だと思ってるのよ!」

 

「性的にさくら君を食べようとした吸血幼女」

 

「うぐっ・・・・・性的って言われるとあまり否定できないのが悔しい・・・・て、咲夜それはあなたもでしょ!」

 

「それよりお嬢様。さくら君はどこに・・・・」

 

「ちょっと無視しないでよ!」

 

「お嬢様。お静かにお願いします。近所迷惑です」

 

「う~」

 

咲夜に止めたく言われレミリアは頬を膨らませる。そんなレミリアを無視して

 

「それよりもお嬢様。さくら君がいなくなったってことは・・・・・まさか家を飛び出してお母さんのいる家に・・・・・」

 

「それはないわね。私はしばらく外にいたけど、誰かが密かに屋敷を出るようであったらすぐに気が付くわ。無論。咲夜。あなたもわかるはずでしょ?」

 

「そう言えばそうですね‥‥ではまだ屋敷の中に?」

 

「ええ・・・・・まったく。困ったお客さんね。咲夜。悪いけど一緒に探すのを手伝ってくれるかしら?」

 

「かしこまりましたお嬢様」

 

エミリアと咲夜は部屋から消えたさくらを探しに行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、さくらはというと・・・・・・

 

「アハハ‼ふーちゃん!ここまでおいで!!」

 

「待って‼さっ君!絶対に捕まえるんだから!」

 

フランの部屋で鬼ごっこをしていた。こんな時間に鬼ごっこをやればうるさいと誰かに言われるだろうがここは地下の部屋。騒音はあまり出ないし、上にも聞こえない。そして今二人は楽しそうに笑いながら鬼ごっこをしていた。最初はさくらが鬼の役だったのだが、今度がフランが鬼となってさくらを追いかけていた

 

「(楽しい!こんなに楽しいの初めて!)」

 

フランは誰かとこうして遊ぶのがこんなに楽しいものなんて知らなかった。その楽しさに夢中になっていた。今まで何かを壊すことしか知らなかったフランに新たな感情が芽生えた。

この笑顔を壊したくない。この気持ちを壊したくない。さくらと一緒なら大丈夫だ。そう感じていた。

すると・・・・・

 

『(ねえ?何楽しそうに笑っているの?)』

 

心の底からもう一人の自分が語り掛ける。それは破壊をするのが好きな自分であった

 

『(ねえ?その子は壊さないの?この子の泣き叫ぶ声…壊れていく音が聞きたくないの?)』

 

「(うん・・・・さっ君は友達だから‥‥壊したくない。もう壊すのは嫌だ・・・・)」

 

『あなたがそうは思ってもその子はそうは思っていないと思うよ…人間なんて大きくなったらきっと私たちを怖がるにきまってるもん。そんな無意味なことするよりもいつも通りにその子でお人形遊びしましょ?きっと楽しいよ?』

 

「(うるさい‥‥さっ君はそんな子じゃないもん!だから壊さない。これからも私は壊さない。だからもう出てこないで!)」

 

『・・・・あっそ。じゃあ、今は出てこないで上げる。でも忘れないで私はあなたあなたは私‥…私はあなたの心の影・・・・あなたが心の底から絶望したその日はまた出てきて破壊するから‥‥・何もかもね…』

 

そう言いフランの心の闇はスーッと頭の中に聴こえてた声が消えていった。

 

「フーちゃん。どうしたの?」

 

さくらが先ほどから立ち尽くしているフランを見て、心配になり、フランに聞くとフランは

 

「ねえ・・・・さっ君。さっ君と私は、ずっと友達?」

 

羽をパタパタさせそう訊くとさっ君はニコッと笑って

 

「うん!フーちゃんと僕は友達だよ!」

 

「そっか……」

 

さくらがそう言ったことがうれしかったのかフランは笑顔になり

 

「えいっ!!」

 

「わっ!」

 

急にさくらに抱き着いた。そして抱き疲れたさくらは後ろにあったベッドのシーツに倒れこみ、そして抱き着いたフランは

 

「えへへ♪捕まえたよさっ君!」

 

かわいらしい笑顔でそういうとさくらは

 

「あ~つかまっちゃった!」

 

と無邪気な笑顔でそう言い、そして二人は時を忘れ楽しそうに笑いあう。

すると・・・・・

 

「ふわぁ~」

 

「さっ君?眠いの?」

 

あくびをするさくらにフランが訊くとさくらは今にも眠ってしまいそうだ。フランは壁に掛けてある時計を見るともうすでに遅い時間だ。そしてフランも眠気が襲ってきた

 

「さっ君。眠いんなら、一緒に寝よう。私も眠くなってきちゃったし・・・・ね?」

 

「うん・・・・」

 

フランの言葉にさくらは頷きそして二人はベッドに横になり互いに抱き合うような形になっていた

 

「(フーちゃん‥‥‥とってもいい匂いがする)」

 

「(さっ君の体…温かい。まるで本で読んだお日様みたい・・・・)」

 

二人はまるで恋人のように互いに抱き合いそして顔をうずめ。ぬくもりを感じながら二人は眠りにつくのであった。

 



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霊夢の涙、さくらは何処へ

朝・・・・

 

「「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・」」

 

紅魔館の中では丸一日、さくらを探していた咲夜とレミリアは目にくまができ、息を切らしていた。どうやら一睡もしないでさくらを探していたみたいだ

 

「本当に…どこに行っちゃったのよ…あの子は」

 

「お嬢様。もうほとんどの部屋を見ました・・・・残る部屋はあそこだけです」

 

「あそこって・・・・・まさか。そんなわけないでしょ?」

 

「ですがもう他に探す場所はありませんお嬢様」

 

咲夜は眠たそうな目をこすりそう言うとレミリアも眠たそうな表情をしているが真剣な顔つきになり

 

「すぐに地下の部屋に行くわよ。博麗の巫女の対決の協力してくれる子を死なすわけにはいかないわ」

 

「はっ!畏まりましたお嬢様」

 

そう言い二人は慌てて、その部屋に行くのであった

 

そしてその部屋はというと・・・・

 

 

「「すう・・・・すう・・・・・すう・・・・」」

 

幼い男女がお互いの温もり、鼓動を感じながら抱き合って寝ていた。その姿はさながら姉弟のようであった

 

「ん・・・・・」

 

すると、少女ン、フランが目を覚ます。眠たそうに眼をこするフラン。そしてフランが横を見るとそこにはすやすやと眠るさくらの姿があった

 

「さっ君・・・・まだ寝てる?」

 

小さく首を傾げ、さくらの顔を除くフラン

 

「ふふ・・・・・さっ君可愛い」

 

とニコっと笑う彼女その笑みは吸血鬼ならでは微笑んだ口から牙がちらっと見えた。そしてその目は赤く輝き頬は赤く染まっていた。

 

「今なら・・・・いいかな?いいよね?さっ君と私は友達なんだから・・・・」

 

そう言いフランの顔はだんだんとさくらの首筋に近づく。しかし彼女がさくらの首筋に噛みつくことはなかった。代わりにフランはさくらの唇に口づけをした

 

「ん・・・・」

 

少しの間長く続いた口付け。そしてフランはそっと顔を離し妖艶な笑みでまだ起きないさくらを見て

 

「だいすきだよ・・・・さっくん」

 

そう言うと・・・・

 

「さくら!無事!?」

 

と、そこへフランの姉であるレミリアとメイドの咲夜が入ってきた

 

「しっ!お姉さま静かにして!さっ君が起きちゃうでしょ!!」

 

「え?」

 

フランにそう言われレミリアが少し驚いた顔をする。それもそうだフランの能力はありとあらゆるものを破壊する程度の能力|・・・触れたものは何でも壊してしまうのだ。もしさくらがここにいたらきっと大変なことになっている。そう思っていたのだが、ベッドを見るとさくらがすやすや寝ていたのだった。傷一つなく

 

「フラン?なぜ彼がここで寝ているの?」

 

「夕べ、さっ君が部屋に来て、一緒に遊んでたら疲れちゃってさっきまで私と一緒に寝てたの。だからお姉さま。起こしちゃダメ」

 

「え・・ええ・・・・それでフラン…あなたさくらに何かした?暴力とかはしていないでしょうね?」

 

「しないわよ。私とさっ君は友達なんだから!」

 

少し頬を膨らませてそう言うフランにレミリアは

 

「そ・・・・そうなの。そう・・・さっ君ね。あなたたちそこまで仲良くなってるのは喜ばしいことね」

 

と、レミリアはさくらが無事なことと妹であるフランに友人ができたことに安心し、笑みを見せる

 

「それで、お姉さま。さっ君に何の用?」

 

「いいえ。なんでもないわ。咲夜。戻るわよ」

 

「はい。畏まりましたお嬢様。それでは妹様さくら君のことお願いします」

 

そう言い部屋を出ていくのであった。それを見たフランは

 

「……何しに来たのかしら?お姉さま?」

 

そう言い首をかしげるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「「ふう・・・・・・」」

 

さくらが無事だとわかり、安堵のため息をつき、そして寝ずにさくらを探していたからか眠気からかしゃがみ込むレミリアと咲夜

 

「とんだ骨折り損でしたね・・・・お嬢様」

 

「ええ。でもフランに友達ができてよかったわ・・・・・さくらならいい友達になれると思っていたけどこれは予想外ね」

 

と疲れ気味にでもどこか嬉しそうに言うレミリア

 

「お嬢様・・・・それで今日はどうするので?予定では朝に赤い霧をパチュリー様に出してもらう予定ですが・・・・」

 

「そうだったわね・・・・・でも咲夜。あなたも私も一睡もしていないわよ。今にも寝ちゃいそうだし。こんな状態で博麗の巫女と戦える?」

 

「半日、いえ三時間ほど睡眠時間をいただければ・・・・・」

 

「構わないわ。私もこんな眠い状態では万全に戦うことはできないわ。パチェには予定は昼過ぎに変更だと伝えて・・・・それが終わったらあなたは少し休みなさい」

 

「畏まりましたお嬢様・・・・」

 

そう言い、咲夜の姿は消え、レミリアだけ残るのであった

 

「さて・・・・・私も少しだけ眠ろうかしら・・・・ふわぁ~~~」

 

 

 

 

 

 

 

一方、博麗神社では

 

「お~~~い!!霊夢!!遊びに来たぜ!!さくらは元気か!!」

 

いつものように箒にまたがって飛んできた魔理沙が神社に遊びに来た

しかし境内にはいなかった

 

「あれ?いない・・・・もしかして中で寝ているのか?」

 

そう思い魔理沙は神社の中に入る。

 

「お~い。霊夢。いるのか?遊びに来たぜ?さくら?ほら魔法使いの姉ちゃんが来たぞ?」

 

と神社の中でそう言うが、なんも反応がない。すると・・・

 

ガタッ・・・

 

「ん?」

 

急に物音がし魔理沙はその場所に向かうと、そこは台所であった。台所には冷めきってしまった料理が置いてあり、そしてその床には

 

「うっ・・・うう・・・・」

 

髪がぼさぼさで所々服が汚れすすり泣いている霊夢の姿があった

 

「お、おい!霊夢どうしたんだよ!?」

 

その姿を見た魔理沙は驚いて霊夢に駆け寄る

 

「魔・・・・理沙?」

 

すすり泣いていた霊夢が顔を上げる。その顔は目にくまができ、頬はコケ、顔色も青白く。まるで亡霊だった

 

「おい、どうしちまったんだよ!?さくらはどうしたんだ?」

 

「さ・・・くら?」

 

霊夢が養子であるさくらの名を口にした瞬間、彼女の目から大粒の涙が流れ

 

「うわあぁぁーーーん!!さくら~~!!!」

 

「ちょ、!?どうしたんだよ!?」

 

急に大声で泣き始める霊夢。

 

「ぐすっ…魔理沙~さくらが・・・・さくらがいなくなっちゃったのよ!!」

 

「え!?さくらが!?」

 

「昨日遊びに行ったきり帰ってこなかったのよ・・・・・変えるのが遅いから探し回ったけど見つからなくて・・・・・きっと、こんなお母さんが嫌だから出て行っちゃったのよ…うわあぁーーん!!」

 

とまた泣き始める霊夢。桜が返ってこなかったあの日、霊夢は必死にさくらを幻想郷中探し回ったが見つからなかった。

そしてさくらが返ってこない理由は自分のことが嫌いになったからじゃないかと思ったからだ。

号泣する霊夢を魔理沙は

 

「おいおい。しっかりしろよ。さくらがお前を嫌うはずないだろ!あんなにお前を「お母さん」「お母さん」と懐いていたさくらが出ていくはずなんてないだろ!きっと何かトラブルに巻き込まれたんだよ」

 

「トラ・・ブル?」

 

「そうだぜ。例えば誰かに誘拐されたとか、異変に巻き込まれたとか?大丈夫。私もさくらを探すの手伝うからさ、だからもう泣くなよ」

 

「魔理沙・・・・・ありがとう」

 

涙を拭き魔理沙に礼を言う霊夢。すると

 

「あ、そう言えば異変で思い出した。なんか空に変な文字が浮かんでいるんだけど、霊夢何か知っているか?」

 

「え?」

 

そう言い霊夢はふらつきながら神社の外に出る。すると空に文字が浮かんでいた

 

「なんて書いてあるかわからないんだよ。霊夢これって何かわかるか?」

 

そう言う魔理沙に霊夢はその空に浮かんだ文字をじっと見る。すると目を開き

 

「さくら・・・・」

 

「え?」

 

「さくらよ。あの文字を出したのはさくらだわ!!あの文字の方角は・・・・・湖ね!!待ててさくら!お母さんが今行くから!!」

 

「あ!ちょっと霊夢!?」

 

そう言った霊夢は飛び上がり、湖のところへ向かいそしてその後を追うように魔理沙も飛び上がるのであった・・・・・



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霊夢、紅魔館へ殴り込む

霊夢がさくらが空に描いた文字を見てさくらの居場所が分かり、その場所へと飛んでいく

 

「(さくら…待ってて。私が・・・お母さんがすぐに行くから!)」

 

高速の速さで霊夢はさくらのいる場所へと向かったのであった。

 

「お、おい霊夢!まってくれ!?」

 

と、そこへ魔理沙が追いかけてきた

 

「何よ魔理沙!私は急いでいるのよ!」

 

「分かってるけどさ。本当にさくらがそこにいるのか?」

 

「間違いないわ!空に描かれた文字。あれはさくらの能力の一つよ!」

 

「え?さくらの!?」

 

「あれが空に上がったということはさくらの身に何かあったのよ!きっとあそこできっと怖い思いをしているんだわ!」

 

「あっ!?ちょ、霊夢!?」

 

そう言うとさらに速度を上げるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一歩、紅魔館では

 

「・・・・ということで小悪魔。その子の母親のもとへ行って、伝言を伝える。もしくは連れてくる・・・・出来る?」

 

「はい!お任せを!!」

 

レミリアと咲夜が仮眠をとっているころ、事情を聞かされたパチュリーは小悪魔にお使いを頼んでいた

 

「それで・・・・パチュリー様?その子の家の住所は・・・」

 

「まだ聞いていないわ。ただいまその子はフランの部屋にいると思うから、直接聞くといいわ」

 

「え?妹様の・・・・大丈夫ですか?」

 

「大丈夫。今の時間帯はフランも寝ているはずだから。大丈夫よ」

 

「わ、分かりました・・・・でも本当に大丈夫なんですか?」

 

「問題ない・・・・」

 

パチュリーの言葉に小悪魔は少し安心した顔をし、さっそくさくらのいるフランの部屋へと向かうのであった。そしてパチュリーは

 

「・・・・・・・・そう言えば小悪魔はショタコンだったような・・・・まあ、大丈夫でしょ」

 

そう言い、霧を発生させる準備を始めるのだった

 

 

一方、フランの部屋では

 

「ふわ・・・・・」

 

めをさましたさくらが目をこすりながら体を起こす。すると隣には友達になったフランがすやすやと寝息を立てて眠っていた

 

「ふーちゃん?」

 

さくらは首をかしげてフランを見ると気持ちよく眠っているのがよく分かった。だが布団がはだけて何もかけてない状態で若干寒そうな表情だった

 

「ふーちゃん。風邪引くよ?」

 

そう言いさくらはそばに落ちてた毛布を取るとフランにそっとかけた

 

「うん!これで寒くない!」

 

と、そう言うさくら。そしてあたりをきょろきょろ見て

 

「今何時だろ?」

 

あたりは赤い壁に石の階段だけの地下室。おもちゃはあっても時計は一切ない。外に出ればわかるかもしれないけど・・・・

 

「・・・・さっ君・・・」

 

フランが袖をつかんでいた。もし自分が外に出てその間にフランが目を覚ましたらきっと寂しがる。霊夢に出会う前は一人ぼっちで寂しい思いをしてきたさくらはフランを一人にしたくはなかった。

だから、母親である霊夢が迎えに来るまでここで待つことにした。

すると・・・・

 

「失礼しますね~あら、可愛い子がいるわ」

 

そこに赤い髪をしたお姉さんがやってきた。しかも目をキラキラ輝かせて

 

「お姉さん・・・・・だれ?」

 

少し人見知りなさくらは恐る恐る訊くと

 

「(あらあら可愛い。ぞくぞくしちゃうわね~)」

 

と、妖艶な笑みをし、荒い息を立てる小悪魔だったが、小さくせき込むとさくらの目線まで屈んで

 

「こんにちわ~私は小悪魔。紅魔館の図書室の司書をしているんですよ~。ぼくのお名前は言える?」

 

「さくら・・・・だよ?」

 

「さくら君。いい名前ね~実はねお姉さん。さくら君のお母さんを連れて来ようと思っているの?咲夜さんから聞いてない?」

 

さくらは昨日咲夜が母親を連れてくるということを約束したことを思い出し頷くと

 

「そう!実はお姉さん。あなたのお母さんに会いに行くのよ。でもお姉さんあなたのお家の住所知らないの。だから教えてくれないかしら?」

 

と、にこやかな顔で桜にそう言うとさくらは頷いて

 

「うん。あのね。僕のお家はね。東の根端っこにある山の頂上にある神社なの」

 

「へ~さくらくんは神社の子だったのね……ん?神社?」

 

さくらが神社の子だとわかった小悪魔は違和感を覚える。神社なんていくらでもあるだけど嫌な予感がした

 

「あ…あのさくら君?その神社の名前って・・・・・博麗神社って名前?」

 

「うん。そうだよ?」

 

「じゃあ、お母さんの名前は?」

 

「博麗霊夢」

 

「もしかして、博麗の巫女とか呼ばれてない?」

 

「うん。お母さんの仕事巫女さんだもん」

 

「・・・・・・」

 

そのとたん、小悪魔の顔が青ざめる

 

「あ…あのさくら君。最後にいいかな?」

 

「なに小悪魔お姉ちゃん?」

 

「お母さん。君について何か言っていなかった?なんていうか?君が危ない目にあったときとか?」

 

「?・・・・えっと・・ね?『お母さんが絶対に僕を守る』とか前に魔理沙お姉ちゃんと話しているのをこっそり聞いたんだけど『もし僕に危害を加えるような奴がいたら八つ裂きにしてぶち殺すとか言ってたよ?」

 

「・・・・・・・」

 

その言葉を聞いて小悪魔は顔が青ざめるのを通り越して真っ白になる

 

「どうしたの?」

 

「ああ、言え大丈夫です…そうですかさくら君は博麗の巫女の息子さんでしたか~あはは・・・・じゃあ、お姉さん行ってくるわね」

 

冷や汗をかきながら小悪魔は小走りでその部屋を出るのであった

 

「?」

 

小悪魔が難で顔を青ざめたのかしらずにさくらは首をかしげるのであった

 

 

 

 

一方霊夢は、しばらく飛ぶと湖のところに赤い屋敷があるのを見つけた。

 

「あれね・・・・・」

 

そう言いその屋敷の門の前に立つと門の前にチャイナ服を着た長身の赤毛の女性。恐らく門番であろう人物が立ち、霊夢を挑発するかのように手をちょいちょいと手招きする

 

「・・・・あんたと遊んでいる暇はないわ・・・・邪魔よ」

 

そう言い霊夢は巨大な光弾を門番・・・・紅美鈴に向けて放つ。美鈴は構えるがあまりの巨大な光弾になすすべはなくそのまま光に包まれるのであった

 

 

 

 

 

「まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい!!!!」

 

小走りだったのが慌てた様子でダッシュする小悪魔。そして

 

「さ、咲夜さん!起きていますか!?」

 

「何ですか・・・・騒々しいですよ・・・・」

 

小悪魔は慌てて咲夜の部屋に入るとそこにはパジャマ姿ではあったが起きた咲夜が立っていた

 

「咲夜さん。起きてたんですか?」

 

「ちょうど三時間経ちましたので・・・・それで?お使いは済ませたのかしら?」

 

「いいえ・・・それが大変なことになっちゃいまして・・・・」

 

「大変なこと?・・・・・あなた。もしかしてさくら君を襲いましたか?」

 

「なんでそうなるんですか!?というより咲夜さん顔が近いです!ナイフも締まってください!!」

 

「どうでしょうか?あなたが幼児好きなのはすでに知っていますからもしかしたらさっ君を性的に襲ったのかと・・・・?」

 

「違います!断じて違います!まだ手を出してません!?」

 

「まだということは、手を出すつもりだったのね?」

 

「そ…それは可愛い子でしたし・・・て、すみませんすみません!お願いですから悪魔退治用のナイフは出さないでください!?」

 

「それで…お使いにもいっていないあなたが何の用ですか?あなたにはさくら君のお母さんを迎えに行くという仕事があったはずですよ?」

 

「そ、それなんですが咲夜さん・・・・・実はさくら君。博麗の巫女の息子さんだったようで・・・・」

 

「・・・・・え?」

 

小悪魔の言葉に咲夜は固まる

 

「え?ちょっと待ちなさい。さくら君が博麗の巫女の息子?それほんと?」

 

「はい。本人がそう言っていました」

 

そう言った瞬間、咲夜も顔を青ざめる

 

「(どうしましょう・・・・・まさかさくら君が博麗の巫女の息子だったなんて…でもそれが事実だとすれば・・・・間違いなく、激怒しているわね・・・・聞けばさくら君をとても愛しているって言っていたし)」

 

「ど、どうしましょう咲夜さん!私たち完全に誘拐犯ですし、相手と戦う前に怒らせちゃいましたよ!私神社に行ったら間違いなく絶対に殺されちゃいます!?それ以前に悪魔が神社に行く時点でアウトですお母さんにメっ!!てされるどころか滅っ!!てされてしまいますよ~!」

 

「お・・・落ち着きなさい!?こ、こここういう時は冷静になるのよ」

 

そう言い落ち着かせるが、咲夜もあせっていた。まさか、レミリアに秘密兵器と言われ連れてきた相手がまさかこれから戦うことになる博麗の巫女の息子だなんて思いもしなかった

すると、紅魔館の門のあたりから轟音がした

 

「「っ!?」」

 

その音に驚く二人

 

「さ、咲夜さん・・・まさか」

 

「ここは手筈通りに私がお出迎えします」

 

いつの間にかメイド服に着替えた咲夜はそう言うと、咲夜はあっという間に消えて残された小悪魔は

 

「あ~~~!!咲夜さん~私はどうすればいいんですか~~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館門では完全に破壊された門に門番である紅美鈴が霊夢と戦っていたのだが、息子をさらわれて怒り心頭の霊夢にあっさりと敗れそして霊夢に胸ぐらをつかまれ

 

「あなた!私の子をどこに隠したッ!!正直に言いなさいよ!!」

 

と、鬼のような剣幕でそう言うが美鈴は霊夢の一撃で目を回し気絶していた

 

「ちっ!加減するべきだったわね・・・・・まあ、いいわ。さくらはこの屋敷にいるのね」

 

そう言いキッと紅魔館を睨み霊夢は美鈴を地面に落とすと、赤い怒りのオーラを体にまといどすどすと足音を立てて紅魔館へと歩むのであった

 

「さくら…待っててお母さんが今助けるからね」



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紅魔館の決戦

紅魔館を破壊した霊夢は屋敷の正面扉を開く。中は明かりがなく当たり中赤い壁と赤い絨毯があった。そんな中一人の青いメイド服を着た銀髪の女性が階段の上の廊下で霊夢を待っていた。そして彼女、サクヤは霊夢を見て笑い

 

「ようこそ・・・・博麗の巫女」

 

感情のない声で霊夢に言うが霊夢は目を細め

 

「あんた・・・・人間?」

 

咲夜が人間だということを聞く霊夢だったが、咲夜は霊夢を見て

 

「(この小娘が・・・・さくら君のお母さん・・・・でもこれもお嬢様のため)・・・・招待状もなしに屋形に上がり込むなんて礼儀がなっていないようですね?」

 

「誘拐犯にだけは言われたくないわね?それで・・・・・私の子は何処?あんたたちが誘拐したのはわかっているのよ!桜は!私の可愛い息子をどこにやったの!!」

 

霊夢がキッと咲夜を睨んだ瞬間、その瞬間咲夜の姿が消え、開いてあった扉が閉じていた

 

「さくら君はここにはいません」

 

と、突然霊夢の背後に現れ霊夢の耳元で

 

「ですが、私が責任をもって可愛がっていますのでご安心を・・・・・」

 

「っ!?」

 

霊夢が咲夜を振り払うと、咲夜は太ももに隠し持っていた数本のナイフを抜き攻撃態勢になる

 

「うちの子を素直に返せば、拳骨一発で勘弁してあげるわよ」

 

「そう言うわけにはまいりません。あの子はお嬢様の野望に必要な子ですので今返すわけにはまいりませんよ」

 

「なら、力づくでも返してもらうわ!!」

 

霊夢がそう言った瞬間、咲夜が飛びあがり、ナイフを投げる。しかし彼女は数本しか投げなかったのにいつの間にか数百本と増え霊夢に向かってくる。それは咲夜の能力である時間を操る程度の能力によるものであった

 

「なっ!?」

 

霊夢はすかさず、その攻撃をよける。そして霊夢も反撃に護符を咲夜に向けて

 

「無駄よ」

 

そう言い咲夜は時間を止めるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢が表門から殴り込み咲夜と戦っている間、魔理沙は裏の窓から侵入していた

 

「霊夢の奴。さくらのことになると人が変わるな・・・・・以前ふざけて頬にキスしようとした時もぶっ飛ばされたしな。まあちゃんとさくらのことを愛して母親らしいことをしているってことだな」

 

窓から侵入し暗い廊下を歩く魔理沙。

 

「それにしてもこんな大きな建物いつできたんだ?あったらあの文屋が飛びついて新聞に載せるはずなのに・・・・・まあいい。霊夢がさくらはここにいるっていうし探すか。もし見つけたら・・・・」

 

 

魔理沙の妄想

 

誘拐犯を全部倒す魔理沙

 

『魔法使いのお姉ちゃんこと霧雨魔理沙ここに参上!!さくら助けに来たぜ!誘拐犯は全部私が倒したからもう怖くないぞ!』

 

『わ~い。魔理沙お姉ちゃん大好き~!!』

 

さくらに抱き着かれる魔理沙

 

妄想終了

 

 

「・・・・・」見たこともないニヤニヤ顔

 

「よぉーし!!張り切って探すぞ!それにこんな豪邸なら宝とか珍しいものもありそうだし、さくらを探すついでにそれも貰っていこうかな?」

 

と、堂々の泥棒宣言をしながら屋敷の中を捜索する魔理沙

 

「それにしても暗いな・・・・・ん?」

 

あたりを探していると扉を見つけた。そして魔理沙は扉をそっと開けると目を開き瞳を輝かせた

 

「おい・・・・うそだろ?」

 

魔理沙が見たものは大量の本が保管されている部屋。つまり図書室であった

 

「すげぇーこんなにたくさんの本初めて見たぜ。まさに宝の山だ!!」

 

そう言いながら魔理沙は部屋にあった大きな風呂敷を手に持ちそれを広げ片っ端から本を入れる

 

「うしし~大量大量~♪」

 

と、魔理沙は珍しい貴重な本をどんどん風呂敷にいれていく。すると・・・・

 

「何をしている」

 

いつの間にか薄紫のパジャマみたいな服を着た長い紫髪の女性。パチェがジト目で見ていた

 

「博麗の巫女が乗り込んできたとは聞いてはいたが、まさか火事場泥棒をするネズミまで侵入していたとは・・・・・」

 

「ネズミじゃねえ!霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ!」

 

「どっちだっていいわ。私の秘蔵の本を盗もうとしているんだから同じよ」

 

「別に盗もうとはしてないぜ。ただ借りていくだけさ死ぬまでな」

 

「それを盗むというのよネズミ・・・・・」

 

堂々の泥棒発言にパチェは魔理沙を睨む

 

「まあ、いいさ。本を持っていくのはついで。本命はこの屋敷にさらわれた子供の救出だ!もし隠すのならこの霧雨魔理沙が退治してやる!」

 

そう言い魔理沙はパチェにミニ八卦炉を向けるのだが、パチェはため息をつき

 

「はぁ~見たところあなたは人間のようだけど、そんな子供がかじった程度の魔法でこの私を倒せると思うなんて、なめられたものね」

 

そう言いパチェは本を浮かせページを動かす

 

「人間・・・・・私が本物の魔法を見せてあげる。お前の一生より長い研究の先にある世界をね…冥土の土産にでもするがいいわ!!」

 

そう言った瞬間、無数の魔法陣が魔理沙を囲むように現れるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、場所は戻り霊夢と咲夜は激しい戦いを続け部屋の中は咲夜のナイフが無数に突き刺さっていた

 

「あんた・・・・さくらを誘拐しただけあってなかなかの腕じゃない」

 

息を切らしながら言う霊夢。そして咲夜は急に眠気に襲われていた

 

「(やはり三時間じゃ足りなかったわね。早く終わらせないと。でもそれには・・・・・さくら君には悪いけどこれもお嬢様のため)」

 

咲夜はナイフを取り

 

「そろそろ終わりにしましょう・・・・博麗の巫女」

 

そう言い、咲夜は時間を止め先ほどの数百倍のナイフを霊夢の目の前に囲むように留める

もし時間を動かせば霊夢は確実に死ぬだろう。そうすればレミリアの野望をかなえることができる

だが、それとは逆に母親を失ったさくらは悲しむだろう

 

「ごめんなさい、さくら君。でも他に方法はないの。だから、あなたは私がお母さんの分まで・・・・・・お母さん代わりにちゃんと育ててあげるわ。それが私にできる償いよ・・・・・・・・停止解除!」

 

咲夜がさくらに謝りつつ、そう言った瞬間。無数のナイフは霊夢の額や体にあっちこっちに突き刺さる。これで霊夢が死んだと思ったのだが、突如霊夢の体が数十枚の護符に変わった

 

「なっ!?身代わり!?」

 

先ほどまで戦っていたのが護符による身代わりだと驚いた咲夜。そしてその後府は咲夜に向かってきて咲夜は時間を止めそれを避けたのだが、着地他場所の床にも護符が張られており、咲夜が降りた瞬間護符の働きで咲夜の動きが封じられる

 

「なっ!?」

 

驚く咲夜に背後の階段から霊夢が降りてくる

 

「やっと罠にかかってくれたわね。あんた新参者みたいだから知らないと思うけど、ここ幻想郷でわね。あんたみたいな能力者、そう珍しくないのよ。この先ここで生活するんだったら覚えておきなさい」

 

そう言いと霊夢は

 

「それよりあんた・・・・・・さっき『お母さんの分まで私が桜の母親代わりになる』って言っていたわよね?」

 

「えっと・・・その」

 

ハイライトオフの目でそう言う霊夢に咲夜は恐怖を覚える

 

「ねえ、ショタコン誘拐犯さん?お祈りは済んだか?奥歯をガタガタ振るわせてぶっ飛ばされる準備はいいかしら?拳骨だけじゃすまないわよ?」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!?これには理由が!!」

 

「人の子供誘拐しといて、訳も何もないでしょ?さあ、覚悟しなさい。今の私は手加減なんてできないからね!!」

 

そう言い霊夢は拳をバキバキと鳴らした後、拳を力強くぎゅっと握る

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいお義母さん!!!!」

 

咲夜がそう言うと霊夢がピタッと立ち止まる。咲夜は話を聞いてもらえるんじゃないかと少し安心したのだが・・・・・

 

「誰がぁ、お前のお義母さんだぁぁーーーー!!!!」

 

そう言うのと同時に夢想封印を咲夜の腹に叩き込み、それと同時に部屋から咲夜の悲鳴が響くのだった



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紅魔異変決着

どぉーん!!どぉーん!!

 

「・・・・・・・・ん?」

 

「あ、さっ君起きた」

 

外から聞こえる大きな音にさくらは目を覚ました。それは隣で寝ていたフランも同じく起きてドアの方を見ていた

 

「ふーちゃん。なんだか外が騒がしいね?」

 

「うん。なんだろ?」

 

普段この地下の部屋は外の音は聞こえないはずなのだが、そんな部屋にまで聞こえる轟音。時たま部屋が揺れるときもあった

 

「地震・・・・・じゃないね?」

 

「うん・・・・あ。さっ君紅茶飲む?」

 

「うん」

 

普通の子なら不安を感じるはずなのだが二人は紅茶を飲んでのほほんとしていた。だが音は鳴りやまない。そのことに二人はだんだん気になり始めていた

 

「鳴りやまないね?」

 

「うん。お姉さまがまた咲夜のパッドを盗んで怒られているのかな?」

 

「・・・・ねえ、ふーちゃん。部屋出て確かめてみる?」

 

「え?でも・・・・さっ君。今この部屋鍵が掛かっているんだよ?」

 

「そうなの?開けられない?」

 

「うん。パチェが魔法を使っているから私が何度もやっても壊せないの」

 

そう。部屋の扉は外からしか開けられない。さくらが入ってきた時は鍵が掛かっていなかったが、今は鍵が掛かっていて、しかもパチュリーの魔法が勝っており、フランの能力で破壊することもできない

 

「それなら、大丈夫!!ふーちゃん。なんか針金みたいなのある?」

 

「うん。はいこれ」

 

そう言いフランはさくらに針金を渡すと、さくらはドアのカギ穴に針金を差し込み耳をドアに当てる。

 

「さっ君。何やってるの?」

 

「もうすぐ開くよ・・・・・あ、開いた」

 

ガチャッという音と一緒にドアは簡単に開いた。どうやらパチェリーの魔法はフランの能力が効かないようにするだけであったみたいだ

 

「さっ君…今のって?」

 

「魔理沙お姉ちゃんに教わった」

 

「誰その人?」

 

「僕のお母さんの友達。さ、ふーちゃん行こう!」

 

そう言いさくらはフランに手を差し伸べる。フランは最初は戸惑ったが、さくらが一緒にいれば何も怖くない。彼女はそう思い

 

「うん。行こうさっ君!」

 

そう言い彼の手を握り二人は階段を上るのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ~なんとか勝った・・・・・」

 

多くの本棚が倒れ、本が大量に散りばった図書館に汗をぬぐう魔理沙。そしてパチェリーはというと蒼い顔をして目を回しながら本に埋もれて倒れていた。

あの戦いではパチェリーが一歩リードし魔理沙を倒せそうだった。倒せそうだったのだが、突如、彼女の持病が発症しめまいに襲われてしまう。その隙をつかれ魔理沙にマスパを喰らわされ倒されてしまったのだ

 

「むきゅ~~~貧血・・・・眩暈が・・・・・」

 

顔色が悪く目を回すパチュリーをよそに

 

「さてと・・・・さくらを探すか・・・・」

 

そう言いさくらを探しに行こうとすると・・・・

 

「魔理沙お姉ちゃん?」

 

振り向くとそこには金髪の女の子と手をつなぐさくらの姿がいた

 

「おっ!さくら!!そこにいたのか!!」

 

「わぷ!!」

 

さくらを見つけた魔理沙はさくらに抱き着く

 

「怖かったろ~もう大丈夫だぞさくら!!魔法使いのお姉ちゃんが助けに来たからもう安心だぜ!!」

 

「魔理沙お姉ちゃん、くすぐったいよ~~」

 

「いいじゃないかよ~お姉ちゃんの愛の証だぜ~」

 

と魔理沙はさくらを抱き着きモフモフし始める。

 

「・・・・・・」

 

その姿を見たフランはジト目で魔理沙とさくらを見る

 

「ん?さくら。この子は誰だ?」

 

魔理沙はフランの存在に気づきさくらに訊くと

 

「ふーちゃん!僕の友達だよ。ふーちゃん。この子は霧雨魔理沙お姉ちゃん。さっき言ってたお母さんの友達だよ」

 

「と、友達!?」

 

魔理沙は少し驚き、フランを見ると、フランはニコッと笑い

 

「フランドール・スカーレット。さっ君の友達よ。よろしくね」

 

「お、おう・・・よろしく」

 

と挨拶してを伸ばすフランに魔理沙はフランの手を握り握手した

 

「あ、そうだ!さくら。なんでお前こんなところにいたんだ?霊夢が探していたんだぞ?」

 

「お母さんが」

 

「昨日からさくらが帰ってこなくて一晩中お前のこと探して、もしかしたらさくらが私のことが嫌いになって出て行ったのかもしれないって家で泣いていたんだぞ」

 

「ごめんなさい・・・・」

 

さくらは霊夢が必死になって探してくれたことに罪悪感を感じていた。それを見た魔理沙は

 

「まあ、見たところ、さくらにも事情があるみたいだし、なんでここにいたんだ?」

 

「実は・・・・」

 

さくらは今までのことを魔理沙に話した

 

「なるほど・・・・・まあ霊夢の言う通り誘拐に近い理由か・・・・でもなんでさくらを誘拐する必要があったんだ?」

 

「分からない。レミリアちゃんが僕に協力してほしいからって。でも今日、レミリアちゃんっちが神社に行って母さんに事情を説明してここに連れてくることになっていたんだよ?」

 

「う~ん・・・・わからない。なあフランはここの家の子だろ何か知らないか?」

 

「私も知らない?私ずっと地下室にいたから。」

 

事情を大体知った魔理沙だが、なぜ紅魔館の人たちが桜をさらった理由はわからなかった。そしてフランもわかることだが、ずっと地下で生活をしていたためなぜレミリアがさくらを連れてこようとしたのかはわからなかった

 

「よし!こうなったらそのレミリアを捕まえて理由を聞くか」

 

と魔理沙は頷くとさくらは

 

「そう言えば魔理沙お姉ちゃん・・・・お母さんは?」

 

「え?霊夢は・・・・・」

 

さくらに霊夢がどこにいるか訊かれて魔理沙が答えようとした時、図書館の向こうから大きな爆発音がする

 

「なに!?」

 

「きっと霊夢だな」

 

「お母さん!!」

 

さくらは図書室の扉を開けて走り出すのだった

 

「あっ!ちょっとさくら!」

 

「さっくん!!」

 

さくらに続き、魔理沙とフランも彼を追いかけるのだった

 

 

 

 

 

 

 

「(お母さん…お母さん!!)」

 

激しい轟音が響く中さくらは、母がいると思われるその場所へと走る。そしてついた場所では

霊夢とレミリアが空中で激しい弾幕をぶつけて戦っていた

 

「うちの子を返しなさい!!」

 

「今はまだ返すわけにはいかないわ!!」

 

と激しく弾幕をぶつけていた

 

「(止めなくちゃ・・・・)」

 

二人の姿を見たさくらは戦いを止めなきゃと思った。だがさくらははは霊夢のように弾幕ごっこをできる力はまだなかった 。もしここで割り込めば怪我をするかもしれない・・・でも

 

「(お母さんとレミリアちゃんが怪我するのはもっとヤダ!!)」

 

大好きな母と知り合いになったばかりの人が気付着け合う姿はさくらは見たくなかった。

その時、さくらは目をカッと見開き

腕をクロスさせるとさくらの体から念力波が発せられ二人の動きを止める

 

「「っ!?」」

 

見えない力によって急に動きが封じられた二人は驚く

 

「な・・・・何この私が動けないなんて・・・」

 

「ど、どういうこと?」

 

二人が驚いていると

 

(お母さん…お母さん・・・・もうやめて、僕はここにいるよ)

 

「さくら!?」

 

(僕は大丈夫だから・・・・もうやめて!!)

 

「さくら!どこ!どこにいるの!?」

 

霊夢の頭の中にさくらの声が響き霊夢はあたりを見渡すとドアの近くでさくらが立っていた。そして霊夢がさくらに気づいた時

 

「よかった・・・・お母さん気づいてくれた・・・・」

 

と、ニコッと笑うと、さくらは倒れれてしまう

 

「さくらっ!!!」

 

さくらが倒れたのと同時に念力が解けると動けるようになった霊夢はさくらのもとに舞い降り抱き上げた

 

「さくら・・・さくら・・・・心配したのよ。もう帰ってこないと思ったわ・・・・」

 

我が子に会えた喜びなのか霊夢は涙を流しさくらを抱きしめるとさくらは

 

「お母さん・・・・ごめんなさい・・・約束破っちゃった」

 

さくらは霊夢に謝る。約束。昨日日が暮れるまで帰るという約束だ。だが霊夢は首を横に振り

 

「いいのよ…いいのよさくら。あなたが無事ならそれでいいわ」

 

そう言い霊夢はさくらの頭をなで再びぎゅっと抱きしめるのだった。その後、レミリアは計画していた赤い霧を発生させるのを中止し、

こうして、赤い館での出来事は終わりを迎えたのだった

 



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紅魔異変が終わりを告げて数日後、博麗神社で宴会が行なわれていた

宴会に来たのは霊夢と魔理沙。そして紅魔館のメンバー他、妖精や妖怪たちが酒を飲んだり食事をしたりして楽しんでいた

 

「もっと酒を持って来~い!」

 

「魔理沙、あんた飲み過ぎじゃない?」

 

「そんな事ないんだぜ!」

 

「私も霊夢の言う通りだわ」

 

「何だよ、レミリア~お前まで、そんな事言うのか~?」

 

「酒臭いから近づくな!十分酔っ払ってるじゃない!」

 

「この程度で根を上げる魔理沙さんじゃないぜ!」

 

魔理沙はレミリアに寄り掛かる。レミリアは魔理沙を押し退けて飲み続ける。クイクイ!不意に誰かが霊夢の服を引っ張った

 

「霊夢」

 

「あら、フランじゃない。どうしたの?」

 

「さっくんは?」

 

フランはきょろきょろとあたりを見てさくらを探していた。フランにとってさくらは初めてできた友達であり大切な存在であったのだ

 

「(さくらなら神社の中よ……)」

 

「どうして外に出してあげないの?」

 

「まだ時期じゃないのよ」

 

「?」

 

霊夢の言葉にフランは首をかしげる。霊夢はさくらに外出を許したのだが、まだ公に息子であるさくらの存在を教える気はまだなかった。それは何か考えがあってのことだろうがその考えは霊夢でしか知らない。

 

「フランには分からないだろうから、さくらに会いに行きなさい。あの子も会いたがってると思うわ」

 

「うん、有り難う!」

 

 

 

タタタ!と音を立ててフランは神社の中へと入ったその様子を見たレミリアと霊夢レミリアが最初に口を開いた

 

「あの子、本当に変わったわ」

 

「その様ね」

 

「えぇ、私が500年掛けても出来なかった事を貴方の息子がやってくれた」

 

「余り大きな声で喋らないで頂戴ね」

 

「分かっているわ。フランを助けてくれた家族に、無粋な真似はしたくないわ。それにいずれはフランの婿にでも迎えたいと思っているしね」

 

「何を言っているのレミリア。あの子はあげないわよ」

 

「あらそう?もしかして私たちが吸血鬼だから神社の巫女としてダメってことかしら?じゃあ、咲夜はどうかしら?人間だしいい奥さんになるわよ」

 

「あのメイドはダメよ。この前もさくらに会うなり桜の唇にキスしようとしていたじゃない。あのメイドとの結婚なんて私は絶対に許せないわ」

 

「あの時は霊夢が顔面めり込みパンチをしていたわね。昔ボクシングでもしていたのって言うくらいのすごいパンチだったわ」

 

「私の息子にいきなりキスしようとしたんだもの。そのくらい当然よ」

 

そう、実はあの異変後、霊夢が桜とともに神社へ帰る時見送りに来た咲夜が桜に口づけをしようとしたのを見た霊夢は咲夜の顔面にめり込みパンチを食らわし、吹っ飛ばされた咲夜は壁に衝突し大穴をあけたことがあった。それ以来霊夢は咲夜のことを警戒はしているのだが、さくらは咲夜を姉のように慕っているため、少し複雑な感情を抱いてたりもした

 

「まあ、いいわ。まだあの子は子供。時間はまだ少しだけあるわ」

 

「どういう意味よそれ・・・・」

 

とワイングラスをゆっくりと回すレミリアに霊夢は少し呆れた顔をするのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋の少し奥。

 

さくらは夕食を食べ終えた後、縁側で夜空を眺めていた。

 

「奇麗だな・・・・・・」

 

そうぽつりとつぶやいた。元居た世界ではこんな景色を見ることは決してなかった。いつもは暗い狭い部屋の中窓は戸でふさがれ明かりなんかは一切入ってこない。そしてご飯なんかはもらえないあるとすれば・・・・・

 

『なんでお前のような奴がここにいるんだよ!!』

 

『あんたなんて死んじゃえばいいのよ!!』

 

両親に憂さ晴らしに痛めつけられる地獄のような毎日だった。凍えるような寒さ。極限の空腹・・・そして体の激しい痛みが経常襲っていた。

だがここに来てからそんなことはなかった。そして今まるで宝石をちりばめたようなきれいな夜空を見ることができた。

そう思ってくると少し涙が出てきた。

 

其処にタイミング良く、フランがやって来た

 

「さっくん~!」

 

「フーちゃん!?」

 

「そうだよ~」

 

「あ、今日宴会だったね」

 

「うん、ところでさっ君。泣いてるの?」

 

「え?」

 

「だって涙の痕があるよ?」

 

「何でもないよ?ちょっと夜空を見てたら少し感動したから・・・」

 

「夜空?・・・・うわぁほんとだ奇麗~」

 

と、フランはさくらの隣に座り一緒に星空を見た。フランもずっと地下にいたためこのような夜空を見て感動していた

 

「所でフーちゃんは、どうして此処に来たの?お酒とか美味しいものは向こうにあるでしょ?」

 

「そういうのは館で食べてるから良いの!今はさっ君と話していたいから」

 

「ふーちゃん・・・・・」

 

さくらは嬉しく思った。一人だった自分にフランがやってきてくれたことに。そしてフランもさくらと星を眺めてこう思った

 

「(ずっと、さっ君とこの夜空を見られたらいいな・・・・・)」

 

フランはそう思っていた。だが自分は吸血鬼。さくらは人間。人間の寿命は永遠に近い寿命を持つ吸血鬼にとっては短すぎる命。さくらと一緒にいるのも彼女にとってはあっという間の出来事だろう。大事な友達が自分を置いて先に逝ってしまう。それがどれだけ悲しいかフランは想像しただけで悲しくなった

そんな思いをするのなら・・・・・

 

「どうしたの。ふーちゃん?」

 

そんな表情を見たさくらが心配そうにフランに訊くとフランは

 

「ねえ・・・・さっ君」

 

「うん」

 

「私は吸血鬼、さっ君は人間じゃない」

 

「うん。そうだよ。そして僕とふーちゃんは友達じゃない」

 

「そう・・・・でもそれでいいの?」

 

「え?」

 

「私、吸血鬼だし‥‥やっぱりさっ君は私なんかより人間の友達の方が・・・・」

 

「そんなの関係ないよ」

 

「え?」

 

「人間だろうと吸血鬼だろうとふーちゃんはふーちゃんだよ。ふーちゃんが何かなんて関係ないよ。ふーちゃんは僕の大切な友達なんだから」

 

「さっくん・・・・」

 

ニコッと笑うさくらにフランは心の底に何か別の感情が生まれた。友達とは違う何か別の温かい物。絶対に壊しちゃいけない感情が彼女の心の中に生まれたのだ

するとさくらは両肩をに身を寄せ震える

 

「さっ君?寒いの?」

 

「う、うん…ちょっと風が寒いかな?」

 

「じゃあ・・・・えい!」

 

と、フランはさくらに抱き着いた

 

「え?ふーちゃん?」

 

「こうすれば暖かいでしょ?・・・・こうして一緒に星空を見よう」

 

「うん!」

 

二人の影が一つになり、二人は抱き合いながら奇麗な星空を見るのだった。

 

「(さっ君と私はいつか別れる時が来るけど・・・・だから、その分いっぱい思い出を作って、さっ君の声を聞きたい。さっ君のことを感じたい・・・・いつまでも私が覚えていられるように・・・・)」

 

フランはぎゅっと親友であるさくらを抱きしめるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、宴会場では・・・

 

「ところでレミリア。咲夜はどうしたの?」

 

「ああ…咲夜なら・・・・」

 

 

 

 

 

紅魔館

 

「私も宴会に行きたかったですわ・・・・・・」

 

「それは私も同じですよ咲夜さん~」

 

霊夢の怒りが収まるまで留守を任され、ため息をつきながら、『私はショタコンです』という看板を首にぶら下げて紅魔館の清掃をする咲夜と同じくさくらに手を出そうとしたのを霊夢に見つかり制裁を受けた小悪魔の姿があったのだった




皆さんお待たせしました。今回で紅魔郷編は終了です。次回は新章に入りたいと思います


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終わらない冬

とある冥界の地で幾つもの魂が漂う空間の中に大きな桜の木があった。

その桜の名は「西行妖」。た多くの人間の精気を吸った妖怪桜であり、幻想郷でも最高クラスの力を持つ八雲紫ですら手出し出来ないほどの力を持っていたさくらだが、今は花をつけることもなく静かに冥界を漂う魂を見ているだけだった。

そんな桜のもとに二人の人物が立っていた

 

「幽々子様・・・・・準備が整いました。すべて手はずとおりです」

 

銀色・白色の髪をボブカットにし、黒いリボンを付けた少女がピンク髪のミディアムヘアーに水色と白を基調としたフリフリっぽいロリィタ風の着物を着た女性に言うと、その女性はふふと笑い

 

「ふふ・・・・・始めましょう。命ある者の訪れぬ暗き地で・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さくらがフランと出会って半年が過ぎようとしていた。幻想郷の季節は春・・・・・と言いたいところだが、あたり一面雪景色。とても春とは思えない世界観であった。

そして雪の降る中の博麗神社ではとある小さな事件が起きた。それは・・・・・

 

 

「ごほっごほっ!」

 

「完璧な風邪ね」

 

そう、さくらが風邪をひいたのだ。初めての幻想郷での雪ではしゃいだまではよかったのだが、結果は今この通りな状態になっている

風邪をひいたさくらに霊夢はさくらの額に水で濡らした手拭いを乗せ、体には厚い布団をかぶせてあたりには火鉢やらで部屋を暖め、そしておかゆを食べさせた後、自分で調合した風邪薬をさくらに飲ませ看病していた

 

「お母さん・・・・ごめんなさい」

 

「何が、ごめんなの?」

 

「迷惑掛けちゃって……」

 

さくらがそう謝る。さくらはなるべく霊夢に迷惑をかけないように気を使っていた。だが寒い季節に神社で遊びすぎたうえ風邪をひいてしまい今現在、霊夢に看病されている。さくらは自分が風邪をひいたことで母親である霊夢に迷惑をかけたと思っていたのだが・・・・・

 

「お馬鹿」

 

「あうっ」

 

霊夢はさくらのおでこに軽いデコピンをした

 

「そう思うなら早く治しなさい」

 

「うん・・・・」

 

「それじゃあ、お粥は食べたわよね?」

 

「うん・・・・」

 

「薬も?」

 

「苦かったけどちゃんと飲んだ」

 

「よし・・・・・じゃあ、私は隣の部屋にいるから何かあったら呼びなさい」

 

「わかった・・・・・」

 

そう言うと霊夢は軽くさくらの頭を撫でると、立ち上がり隣の部屋に通じる襖をあけてこたつの中に入る。そして霊夢はじっと隣の部屋に耳を傾けるとさくらの寝息が聞こえた

どうやら眠ったようだ

 

「まったくあの子ったら・・・・」

 

お茶を飲む霊夢

 

「『ごめんね』と謝るから何かと思えば、家族は迷惑掛けて当然なのよ・・・・」

 

そう呟きお茶を飲み、そしてみかんを食べると霊夢。すると・・・・

 

「よっ霊夢!そこらへんで氷の妖精を捕まえたぜ!」

 

とそこへ魔理沙がチルノを連れてやってきた。チルノは魔理沙にまるで子猫のように襟首をつかまれ宙ぶらりんの状態になっているためか表情は不機嫌だった

 

「あ~いらっしゃい魔理沙。それと大声出さないで、さくらが今寝たばかりなんだから」

 

「ああ、ごめんごめん。それよりも霊夢。もう春なのにこの雪景色!冬の妖精やら妖怪やら!これは異変だ!すぐに解決しに行こうぜ!

 

「は~な~せ~~~!!」

 

魔理沙がそう言うと魔理沙に捕まっているチルノはバタバタと暴れる

 

「今年は春がまだ遅いってだけよ・・・・去年も残暑が続いたでしょ?あれと同じよ」

 

「そんなわけないだろ!」

 

「うわっ!?」

 

そう言うとの同時に魔理沙はチルノを遠くに投げ飛ばし、チルノは雪山に突っ込んでしまうが魔理沙は気にもせず霊夢に

 

「これは異変!きっとどこかに犯人の妖怪がいるはず!異変解決!妖怪退治が巫女の仕事だろ!!」

 

と、そう言うと、霊夢はお茶を飲み

 

「悪いけど、今はそう言う場合じゃないのよ」

 

「場合じゃないってどういうことだよ!」

 

霊夢の興味なさげな言葉に魔理沙は強く彼女に訊くと霊夢の部屋の隣から咳をする声が聞こえた

 

「ん?・・・・この声ってさくらか?もしかして寝てるってことは風邪をひいているのか?」

 

「そうよ。今はあの子の看病をしないといけないし、それにこういう時こそ母親である私が傍にいてあげないとね」

 

そう言いちらっと桜のいる部屋に通じる襖を見る、今霊夢が桜に対し母親らしいことをできるのはこれぐらいだから、それに今出て行ったらきっと寂しがるから、彼女はなるべく、さくらの傍にいたいと魔理沙に言うと魔理沙は

 

「事情は分かったぜ。いいぜこの異変は私だけで解決してやるからさ!」

 

事情を知った魔理沙は頷く。魔理沙もさくらのことは弟のように思っており、霊夢の気持ちも理解できた。そのため魔理沙は霊夢の代わりに異変を解決すると言い出した

 

「悪いわね魔理沙」

 

「いいって、いいって。じゃあ、行ってくるぜ、さくらによろしくって伝えておいてくれ」

 

そう言うと、魔理沙は箒にまたがり、空へ飛び、異変についての手掛かりを探しに行くのだった

 

「も~バカバカバカバカバカ!!」

 

そして飛び立つ魔理沙に先ほど魔理沙に強制的に連れていかれ、挙句の果てには雪山に歩降り投げられたチルノは木の上で魔理沙に悪態ついていたが、足を滑らせ、また雪の中に落ちて行った

 

「・・・・・・」

 

そして霊夢は飛び立った魔理沙を見て静かに障子と襖を閉めるのだった

 

 

 



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華のメッセンジャー

終わらない冬の原因を探しにあっちこっち魔理沙が頑張っている最中、霊夢は神社の居間で炬燵に入りながらみかんを食べていた。

そしてたまにちらっと隣の部屋に続く襖をそっと開けて風邪で寝込んでいるさくらの様子を見る

 

「・・・・・・」

 

顔はまだ赤いが先ほどに比べ咳が少なく、静に寝ている我が子を見守る霊夢。

今自分にできることはこの子を見守るだけ。だが、だからと言ってさくらを一人にする訳にもいかなかった。

 

「(今回は魔理沙だけなら・・・・・何とかなるはずよね?)」

 

冬が終わらない異変の原因は魔理沙だけでも解決できるはずだと心に思いながら霊夢はお茶を飲むと・・・・・

 

「お邪魔します・・・・・こんにちわ」

 

外の襖が開き、咲夜が現れた

 

「あら・・・・本当にまだいた」

 

「どうしてみんな玄関から入ってこないのかしら?・・・・それより入るんなら静かに入って頂戴。後、襖も閉めて頂戴ね」

 

「畏まりました」

 

そういい、咲夜は襖を閉める

 

「・・・・で、吸血鬼のところのメイドが何の用?」

 

「話は白黒の魔法使いから聞きました。さくら君が風邪のようなのでお嬢様から風邪によく効くお薬と果物を届けるよう申し付けられました」

 

「そう・・・・わざわざありがとね・・・・で今日はあんた一人?」

 

「はい。お嬢様は寒くて出たくないと・・・・妹様はさくら君に会いたがっていましたが、お嬢様に止められまして。よって代わりに私が・・・・それでさくら君の容体は?」

 

「さっき、薬とお粥を飲ませて今は隣に部屋で眠っているわ。・・・・言っとくけど変な気は起こさないでね?」

 

と、目を細め咲夜を警戒する霊夢に対し咲夜は

 

「ご安心ください。病人に手を出すようなことは致しません、それに私にとって弟のような子ですので」

 

「どうだか・・・・まあいいわ。それで要件は何よ?」

 

霊夢がそう言うと、咲夜は

 

「お嬢様からの伝言です。『いつまでこの異変を放って妖怪の好きにさせておくのか』・・・・・とのことです」

 

「大きなお世話よ」

 

咲夜の言葉に霊夢はそっけなく言うと、咲夜は少し驚いた顔をするが

 

「・・・・なるほど。まあ、あなたの考えもわからなくはないけど」

 

「なによ?」

 

「一児の母として風邪をひき、苦しむ息子の傍にいてあげたい。その気持ちはよくわかりますが、幻想郷のバランスを保つのが巫女としてのお仕事ですよね?」

 

「そ・・・・それもあるわね」

 

気まずそうに目線をそらす霊夢に咲夜は

 

「ですがそろそろよろしいんではないんですか?それに早く解決できたらさくら君の風邪も早く直るんじゃないかと?」

 

「そうかもしれないわね・・・・でも私が出るべきかどうか決めるのも私の仕事よ」

 

「・・・・ごもっとも。伝言は伝えました」

 

そう言い咲夜はさくらへのお見舞い品を置き部屋を出る

 

「白黒の魔法使いは冥界へ向かったわ。冥界で死んだら成仏できるのかしらね?」

 

そう言い咲夜は霊夢のいる部屋を出て襖を閉めるのだった

 

「・・・・・・」

 

霊夢は咲夜が去った後、しばらく黙って考え事をしていた。

そして何か決断し炬燵から出ると、タンスからマフラーを取り出す

 

「・・・・・・よし」

 

それを首に巻き、数枚札を袖に入れ部屋を出ようとすると・・・・

 

「・・・・お母さん」

 

呼ばれたので、襖をあけて可愛い息子の様子を見に行く霊夢。見て見るとそれはさくらの寝言だった。

その表情は不安そうな顔だった

 

「一人にしないで……」

 

不安そうに言う我が子に霊夢はそばに寄りそして頭を優しくなでて

 

「大丈夫よ。私は此処に居るわ」

 

「お母さん・・・・・」

 

霊夢が声を掛けたら安心した表情になった。その顔を見て霊夢は微笑んだ

どんな夢を見てるのだろうか

霊夢はしばらくさくらの頭を撫でていた。

 

「さくら・・・・お母さんこれから悪い奴等をやっつけて来るわ。帰ったら、治ってる事を祈ってるわね」

 

霊夢はそう一言言うと部屋を出た。すると・・・

 

「行くのですね?」

 

「あんた。まだいたの?」

 

部屋の外に咲夜がいたことに霊夢は呆れたような顔をした

 

「まあ、いいわ・・・・・・・さくらのことお願いできる?言っとくけど私の子に変な子をしたらただじゃすまないからね?」

 

「お任せを・・・・・体の隅々までお世話させていただきます」

 

「それを聞くと安心できないんだけど・・・・まあ、いいわ。さっさと終わらせて帰ればいいだけだしね」

 

一抹の不安を抱きながらも霊夢はさくらのことを咲夜に任せ、異変を解決するために飛び立つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて・・・と」

 

霊夢がいなくなったことを確認した咲夜はさくらが寝ている部屋に入り、そして彼の傍に正座し、見守る

 

「ふふ・・・・可愛いわねさくら君。さて…看病なら熱で出た汗をぬぐってあげましょう・・・・ふふふ・・・・」

 

今まで見たこともない、たまげた笑顔をし、そう言う咲夜

 

「その前に手拭いを濡らさないと・・・・あと飲み水もなくなっているし、それも持ってきてあげないと」

 

そう言い咲夜は乾いた手ぬぐいをとり、そして空っぽになった湯呑を持ち台所へと向かうのだった

 

「ふふふ・・・・そうこれは看病だからあんなことやこんなことしても問題ないわよね?」

 

と、にやけながらぶつぶつとそう言う咲夜であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は夢を見ていた。お母さんが何処か遠い所に行っちゃう夢を

 

『行かないでお母さん!一人にしないで……』

 

僕はそう叫んだ。すると・・・

 

「私……に……わ」

 

お母さんの声が聞こえた様な気がした。確かにお母さんの声だと思うけど安心出来る声だった

僕は夢の中で笑った気がした

 

「これ……等……わ・・・か……る……わ……」

 

お母さんの声が近づいてる様な気がした。その瞬間僕の目が覚めた。だけどなんかおかしい?

なんか天井が近く感じた。あたりをきょろきょろ見ると

 

「僕・・・・浮いている?」

 

そう僕の体は浮いていた。そして下を見るとそこにはなぜか僕が布団で寝ていた

 

「あれって・・・・僕?なんで?」

 

なんで僕があそこに寝ているのか不思議に思った。もしかして・・・・

 

「僕・・・死んじゃったの?」

 

今の僕は幽霊で、僕は死んだと思ったが布団で寝ている僕が微かに寝息を立てているので死んでいないことはわかった。

じゃあ、なんで僕はこんな状態なんだろう?

不思議に思ったが、でも・・・・

 

「頭、痛くないし苦しくないし・・・・・・よし!!」

 

風邪のせいで頭や咳がひどかったのに、今は何も感じないし苦しくない。

なら、僕は決めた。それはお母さんのところに行くこと。

大人しく待ってなさいって言われるかもしれないけど、

でも、何故か分からないけど嫌な予感がするんだよね

 

「よしっ!!いこう!!」

 

せっかく飛べるんだし、僕は空高く飛びお母さんを探すことに決めたのだった



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